こんなシンフォギアGXの場合キャロルはイージーモード (ルシエド)
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クロス作品に出してはいけないギャグマンガ日和キャラクター筆頭

本編ではきっとトゥメのまま終わるキャロルのトゥメをトゥメで終わらせないために


「クソが!」

 

 キャロルは帽子を床に投げつけた。

 彼女の居城チフォージュ・シャトーの床に帽子が転がり、キャロルは己の精神を落ち着けるためにとてとて歩いて転がった帽子を拾いに行き、かぶり直す。

 不相応なくらいに大きな椅子に座り直したキャロルには、独特の威圧感があった。

 

「……おい、そこの右の奴から順に名を名乗れ」

 

 彼女の前に並び立つは、四人の強大な力を持つオートスコアラー。

 

「聖徳太子」

 

「松尾芭蕉」

 

「ハリス」

 

「マジック三井です……」

 

 ではなく、四人のオッサンだった。

 

「なんでだよ!」

 

 キャロル帽子をぶん投げた。

 それは壁、天井、柱その他にぶつかって跳び回りスポっと彼女の頭の上に戻って来る。

 

「どういう何がどう作用したらこうなるんだ!」

 

「ハーブの香り~ 聖徳太子~」

 

「とりあえずその場の勢いで歌うな!」

 

「む、むむ、ちょっと待て!

 私は聖徳太子だぞ! タメ口とかけしからんんん!

 キサマ何位だ! 冠位十二階第何位なのだ!」

 

「あ? ないわんなもん」

 

「圏外!? グエエエー! 圏外のロリにまでタメ口利かれたー!?」

 

 聖徳太子は激怒した。

 飛鳥一武道会優勝者でありジャージの伝承者である彼がこんな無礼を許せるわけがない。

 

「くらってくたばれ! 飛鳥文化アターーーック!」

 

「錬金術キック!」

 

「なめこっ!?」

 

 冠位十二階の粋を集めて放たれた必殺の一撃。

 されどそれはキャロルの錬金術の粋を集めて放たれたマジカルな一撃にて壁に叩きつけられた。

 

「理不尽だ

 すぐに切れるよ

 キャロルはね」

 

「一句詠んでるんじゃないッ!」

 

「しめじっ!?」

 

 壁に叩きつけられた聖徳太子は気絶、そのまま壁で気持ち悪くバウンドし、キャロルの怒りに応じたかのように一句詠み始めた松尾芭蕉へとぶつかった。

 

「一句……一句……

 だめだあ、季語のチフォージュシャトーがどうしても入らない」

 

「オレのチフォージュシャトーは季語じゃないッ!」

 

「じゃあチフォージュシャトー以外にどんな季語があるっていうんだ!」

 

「いっぱいあるだろ! いっぱい使ってただろ歴史上のお前は!」

 

 ガクンと首を落として気絶した芭蕉を踏んで、壁に手を当て気持ち悪く笑うはハリス。

 

「チフォージュ・シャトー……

 そう、これで、日本に来航する! さすればペリーを超えるハリスインパクトが得られる!」

 

「得られないからやめろッ! 頭ン中に馬肉でも詰まってんのか!」

 

「ご心配なく、キャロル君。このハリスには名案がある」

 

「名案?」

 

「全裸の人間を上に乗せておけば、インパクトは倍増ッ!」

 

「誰が迷案言えっつった頭ン中に鹿肉でも詰まってんのかッ!」

 

「カモン、エルフナイン君!」

 

 ミュージックステーションの最初の階段を人が降りてくる時のBGMをバックに、エルフナイン推参。どこか表情は誇らしげ。

 

「この役目、やりきってみせます、キャロル」

 

「やめろ」

 

「オリジナルキャロルの肉体を再現したボクの裸体を晒すということは!

 キャロルの全裸を世界中に見せつけて録画とかされるということでもありますが!

 ハリスさん達が何かよく分からないですが急を要する事態ということですので!」

 

「やめろ」

 

「キャロルと外見がほぼ同じなこの裸体を晒してきます!」

 

「や め ろ」

 

 精神的に空っぽなホムンクルスに何吹き込んだ、とキャロルはハリスを睨む。

 ハリスは何を勘違いしたのか、両目でウィンク。

 キャロルは錬金術の秘奥・金的にて金の玉をキック錬金した。

 

「エンッ」

 

 沈むハリス。

 しかし一人沈めている間に二人復活しているのがこのおっさんどもの面倒なところだ。

 聖徳太子、アンド松尾芭蕉がリカバリー。

 

「ぷっ、官位もないとか時代遅れー、いつの時代の人間?」

 

「なっ、わ、私は句を読めるから、問題ないしー? それより何そのダサジャージー?」

 

「ダサくない! かっこいいジャージだ!」

 

「こ、この加齢臭!」「こ、このカレー臭!」

 

「カレー臭!?」「加齢臭!?」

 

 ふぅ、とキャロルは一息。

 

「黙ってろしなびたオッサンにクソダサジャージッ!」

 

 そして帽子を投げつけた。

 錬金術パワーを乗せられた帽子はおっさん二人のスネをぶったぎり、ブーメランのごとく彼女の手元へと帰還する。

 

「ウゲゥーッ、曽良君並みに容赦がないぃぃぃ!!」

「アビャーッ、妹子並みに躊躇いがないぃぃぃ!!」

 

 右往左往するエルフナインを見てから、キャロルは最後の一人へと相対した。

 

「おいそこの、マジック三井だったか」

 

「はい」

 

「お前もこいつらの同類か?」

 

「いえ、違うと思います」

 

「……そうか」

 

 ようやくホッと一息ついたキャロルが、肩の力を抜く。

 

「何が出来る? 主戦力四人が消えたせいで、少々難儀なことになっている」

 

「えーっと、そうですね、何をしましょうか……

 あ、思いきって、万象黙示録を完成させてしまいましょうか」

 

「え?」

「え?」

 

 キャロルとエルフナインの声が揃って、最後に残った普通な外見のオッサンへと向けられる。

 

「ま、待て。そんな大それたことをしたら負荷が大きいかもしれないだろう?

 オレが部屋を用意するからそこでしばらく休んでからでも……」

 

「じゃあやりますよ。ビューティープリティーソサエティー!」

 

 ぽん、とキャロルの手元に何かが現れる。

 

「あ、できました」

 

 来るべき達成感は毛の先ほども現れず。

 悲願が達成されたその場に広がるは、痛々しい沈黙のみ。

 

「やりましたね、キャロル!」

 

 エルフナインの素直な言葉も、今のキャロルには届かない。

 

「……」

 

 キャロルは子供が初めて梅干しを食ったような顔をして、上を見上げる。

 

 そうでなければ、何か言葉にしがたい感情が込められたこの涙が、溢れてしまいそうだった。

 

 泣きたいくらいに達成感の無い結末が、そこにあった。

 

 (トゥメ)(トゥメ)で終わらせないために(トゥ)きす(トゥ)めと己に言い聞かせてきたキャロルが、努力を積み上げてきた数百年の日々の終わりは、こんな感じの奇跡にて〆られるのだった。

 

 

 




金髪・アニメでは片言・手紙を届ける人・お調子者・黒髪の相方が居る
以上をもちましてハリス=暁切歌の証明といたします


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