ヘータ・サクラの華麗なる戦歴 (あきゅおす)
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本編
英雄と英雄とマス(仮)


「ヘータくんかい?なんと言えばいいかな…。僕がいうのもなんだけど、マイペースな性格だね」―ウェルキン・ギュンター


 征歴1935年3月 ガリア公国 国境の街ブルール郊外。この街は帝国と国境を隔てており、人々は戦火を恐れ、街を脱出しはじめていた。

 

「この道を通るのも3年ぶりかぁ、なつかしいなぁ」

 

 その脱出する流れに逆らい、川沿いに歩いて行く青年の姿が見えた。元々はここの住人だったらしく、懐かしみながら周りを見渡しながら歩いて行く。

 

「おっ!あれは…もしかして!」

 

 ふと青年が視線を落とした先には、綺麗に日光に反射した薄緑色の魚がいた。青年は慌てて川に駆け寄り、その姿を確認する。

 

「やっぱりヒカリマスじゃないか!もうヒカリマスが川をさかのぼる季節なんだなぁ」

 

 独り言、としては少し大きすぎる声を出す青年の横を避難する人々は訝しげに見ながらも、早く避難したいという気持ちが強いからか、何も言わずに通り過ぎていく。

 そんな人々の視線を知ってか知らずか、青年はたすき掛けしていた鞄を下ろし川岸に腰を下ろすと、どこからともなく取り出した手帳に丁寧にスケッチをはじめた。

 そんな青年の背後にゆっくりと忍び寄る影があった。その影は青年に悟られないように背後に付き、青年に聞こえるようにわざとカチャと音を立てる。青年はその音に気付き、身を固くした。

 

「動かないで。ゆっくり両手をあげなさい」

 

 背後から聞こえた女性の声に従い、青年はゆっくりと手をあげる。そして中腰の姿勢のままで後ろを向くと、ライフルを持った赤いスカーフを頭に巻いた若い女性と部下らしき男が2人いた。

 

「見かけない顔ね、名前は?」

「僕の名前は、ウェルキン。きみたちは?」

 

 青年――ウェルキンは女性の問いかけに素直に答えると、3人に質問を返す。

 

「我々は、ブルールの自警団の者です。あたしは分隊長のアリシア。後ろの2人はビックスとウェッジ」

 

 ウェルキンが視線を向けると、

 

「俺がビックスでこっちがウェッジな」

 

とアリシアの右後ろにいた兵が答えた。それを確かめ視線をアリシアに戻すと、彼女は話を続ける。

 

「最近、帝国のスパイがうろついているという情報があって見回りをしてたんだけど…」

 

といって、ウェルキンが持っていた手帳に目を移した。

 

「信じてもらえるとうれしいんだけど…、魚のスケッチをしていただけで…。ほら、今ヒカリマスが川に…」

 

 ウェルキンが弁明するために川を指し示すと、なぜか固まってしまった。その様子を見てとったアリシアはウェルキンの肩越しに川を覗く。

 

「…ヒカリマス?」

「新種、じゃない限りはちがうかな」

 

そこには、川岸に引っかかってる1人の少年がいた。



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妹萌えじゃなくてもぐっとくるよね&夢と悩みとふくらみと

「ヘータ?感謝はしてるけど、ねぇ…」
―アリシア・ギュンター

「ヘータくんですか?頼りになる時は頼りになるんですけど…」
―イサラ・ギュンター


※このお話はArcadia様のほうでは2話だったものが短かったため、統合して1話に直したものです。


 目が覚めたらガッチリした男におんぶされていた。な、何を言ってるかわからねえと(ry

 

「えっ?はっ?」

「やっとで起きましたか。自分で歩けますか?」

「あ、はい。お手数かけました」

 

 あれ?俺、昨日は確か家で飯食って、酒飲みながら戦場のヴァルキュリアやりながら寝落ちして…って、流暢な日本語で話してるから違和感無かったけど、おんぶしてくれてたの外人さんじゃん。やっぱりでかいな、俺177あるけど頭1つ分差があるぞ。

 

 

「怪我らしい怪我はないですね。驚きましたよ、ヒカリマスにまぎれて人が流れてくるとは」

 

 なにやら昔の外国の兵隊さんみたいなコスプレをしてるけど、あれか?コミケも近いから、テンションの上がった外人さんが外でコスプレしてんのか?

 

「って流されてた?」

「ええ。幸い、流された時間が短かったせいか少し水を飲んでるだけで済んでました」

 

 寝てたら川に流されるって夢遊病のレベルじゃねーよ。よく死ななかったな、俺。って、周り、俺んちの近所じゃない気が…。本当にどこだここ?

 

「あの…」

 

 ああ、どっきりか。もしくは夢だろうな。そうでもなけりゃ、知らない土地の川を流れてるはずないしな。だけどこんなドッキリしかけそうなあては…あった。絶対あいつじゃねーか。たしか外国の友人もいるっていってたから、たぶんその人たちなんだろうよ。

 

「ちょっと?」

 

 夢だったら、服がずぶぬれなのを実感するとか、なんかいやな予感がするな。よくて服のまま風呂に入って寝てる、悪くて…考えたくもないな。起きたら風呂入って即クリーニング屋に行きとか。

 

「ねぇったら!」

「うわっ!?」

 

 ビックリした!誰だよ、人がかんが…あ?

 

「あなたの名前を聞かせてもらっていいかしら?」

 

 ああ、こりゃ夢だ。うん、絶対。こんな完璧にアリシアのコスプレできる人が現実にいるわけないし。

 

「えー、ヘータ・サクラといいます」

 

 夢の中でゲームの人物とはいえ、さすがに美人と話をすると緊張するな。しかもピッチリした服着てるせいか胸がね。うん、外人さんはこっちもでかいね!眼福!って、なんで俺若干アリシアを見上げる感じになってんだ?アリシアって180あったけ?

 

「私の名前はアリシア。あなたを背負っていたのがウェッジで、その隣がビックス。ビックスが連行している不審者が…ウェルキンだったわね」

「不審者じゃないんだけどね…」

 

 って、ウェルキンが不審者扱いっていうことは物語の序章も序章か。とすると、まだ戦闘前か…。

 

「ねぇ、ヘータくん。川から流れてきたけど、どうしたの?親と一緒じゃないの?」

「親?いや、俺はもう成人して親とは別々に…」

「嘘ついちゃだめよ?どう見てもあなた成人してないじゃない」

「えっ?」

 

 成人してない?いや、さすがにそこまで童顔じゃねーぞ…ってちょっと待て。アリシアが俺よりも背が高い?あー、なるほど。俺若返ってんのか。道理で手とかちっちゃくなってるのか。夢の中だからってなんでもありになってんな。

 

「あー、俺の国じゃ15歳が成人って認められてるんですよ。こっちじゃまだ成人見えないかもしれないですけど」

「あら、あなた外国の人なの?」

「ええ、日本人です。成人したんで家を飛び出して旅をしてるんです」

 

 っていう設定にしておこう。夢の中ぐらい旅人でいたいし。

 

「そうなんだ。また大変な時期にガリアに来たわね。今、この国は…」

「帝国と戦争中、なんですよね?」

 

 戦ヴァルのことでしたら結末まで知ってますとも。小国ガリア対東ヨーロッパ帝国連合。不利だったガリアの反撃がそこの不審者の人が起点ってことも。

 

「ええ、だから早く国外に行くことを勧めるわ」

 

 優しいけど強く勧める口調で諭してくれてるけど、夢の中だし自分のしたいようにしたい、ということで。

 

「国外に行きたいんですけど、お金がないんですよね」

「…それは困ったわね。どうしたらいいかしら」

 

 嘘は言ってない。いつの間にか自分の部屋とは違う服を着ていたけど、これっぽっちもお金っぽいものはなかった。

 俺を国外に逃がそうとする案を考えているアリシアには悪いけど、ちょっと話を逸らすか。

 

「あの、ちょっと話変わるんですけど。ここってどこですか?」

「ブルールよ。それがどうかしたの?」

「ブルールっていうと確かギュンター将軍の…」

「ええ、そうだけど」

「ギュンター将軍の息子さんの名前が確かウェルキンだったような…」

「え」

 

 ギギギギと錆びついたようにウェルキンの方に顔を動かすアリシア。だけれど首をぶんぶんと振って、「たまたま同じ名前よ」とか「偽物よ」とか否定しはじめた。ウェルキンは、「そのウェルキンなんだけど…」と言いたそうな感じの困った笑いしてるし。

 

「兄さん!」

 

 おっ、この可憐で元気ながらも死亡フラグが立ってそうな声は、妹萌えじゃない俺の心を揺り動かした、P○の菜○子と双璧をなす妹キャラ…

 

「イサラ!元気だったかい?」

 

 そこからあとは原作通りにウェルキンがギュンター将軍の息子ということがわかり、解放されるまでのやり取り。そのあとに戦闘が起こると思って身構えていたらイサラがこっちを見て、

 

「この方は…?」

 

と聞いてきたので自己紹介しようと思ったら、

 

「オべの名前は…」

 

と噛んでしまい、訂正しようとしたら戦闘開始、しかも戦闘中はイサラにずっと名前がオべと思われていて、

 

「オべさん、大丈夫ですか?」

 

と言われて踏んだり蹴ったり。コントかよ!

 

 そんな戦闘の最中、年下に見えるせいか、イサラは俺をかばいながら隠れてくれた。実際、年上だけど戦争のない世代に生まれた俺はただただ固まるだけだった。なんとか動けるようになったと思ったらこけるし。隠れている最中はずっと放心していたし。まさかこの年で年下の子にかばわれるとは夢にも思わなかった。

 …あとかばわれたときに慎ましいふくらみを味わえたのは内緒。放心していたけど、肘だけ意識を集中させていたとか死んでも言えない。

 あ、戦闘の方は4人がサクッと終わらせました。

 

 戦闘が終わったあと、放心していた俺の復活を見届けたビックスとウェッジとは別れて4人で街を歩くことになっんだけど…。

 

「はぁ…」

「どうしたんだい、ヘータくん」

「いえ、ちょっと思うことがありまして…」

 

 …これ、夢じゃなくね?

 物陰に隠れようとしてずっこけたとき、普通に痛かった。ゴキブリみたいな動きで物陰に隠れて安心したあと、先人たちに習って自分の頬をつねったけどやっぱり目が覚めなかった。

 

(もうなにがなんだか…)

 

 あーと声が出そうになるのを抑えながら考えていると、目の前に大きな風車塔が見えた。おお、これがあの風車塔か。周りの田舎の風景とあいまって、すごく落ち着いた雰囲気が出ている。

 

「この風車塔を見ると故郷に帰ってきたって気がするなぁ」

「…ふふっ、そうだね。親子風車あってこそのブルールだもんね!」

 

 流れるように風車に死亡フラグが立てられてて思わず合掌。3人はいい表情でしばらく風車を見ている。こう、一歩引いてみると、美男美女って映えるね。

 とか考えていたら、アリシアが改まって俺を見てきた。

 

「そういえば、あなたはどうするの?」

 

 もし夢だったらこのままほいほい付いて行ってたんだけど、これが現実だったら、何の訓練も受けていない俺が死ぬ可能性が高い。だけど…。

 

 ちらっとイサラの方を見る。どうするんだろうと首をかしげながらこっちを見ている。

 

(このまま何もしなければ、イサラ、死ぬんだよな)

 

 マルベリー海岸で撃たれて。それを知っているのは、俺だけ。これを他の人に伝えても、見ず知らずの子供が「海岸で撃たれて死ぬから気を付けて」と妄言吐いてるだけと思って取り合ってくれるとは思えない。

自分の命も大事、だけれど、今のところだけど、救えるのは俺だけ。分かっているんだけど。

 

 アリシアからの質問に悩んでいると、ウェルキンから

 

「行くあてがないなら家に来ないかい?」

 

とのお誘いが。

 

「へ?いいんですか?」

「うん。話を聞くと、こっちでのあてもないようだしね。いずれにせよ、一度休んでしっかり考えた方がいいんじゃないかな?」

 

 確かに少しでもいいからゆっくりどこかで考えたい。いろいろ一度に起こりすぎて頭もパンクしそうだ。

 

「それじゃ、お言葉に甘えてお邪魔します」

 

 こうして俺はとりあえずギュンター家で一息つくことになった。



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ギュンター家でのひととき ~パンオタ・序~&~イサラちゃんマジ天使~

「ヘータくん?坊ちゃんのいい友達ですよ。え?お嬢様にとって?うふふ、私の口からは言えません」
―マーサ・リッポネン


「ヘータ?ああ、川から流れてきたあの子?ぱっと見、普通の子だと思うんだけどな」
「普通だが、情報の量、質が共に異常だな。まぁ、それで我々は助かったんだが」
「ちげえねぇ」
―ビックス&ウェッジ


※この話も2話だったものを1話に統合したものです。


「マーサさん、只今戻りました」

「お帰りなさいませ、お嬢様。それと、ウェルキン坊ちゃん!お久しぶりです!」

「マーサさん、さすがにもう坊ちゃんは止めてくれない?」

「いいえ、私にとって坊ちゃんはいつまで経っても坊ちゃんです」

 

 ギュンター家に着くと家政婦さんのマーサさんが出迎えてくれた。ゲームをしていて分かってはいたけど、実際に見てみるとにこやかさが2,3割増している。何だろう、萌えるメイドさんもいいけど、こういう家政婦さんが家にいるだけで安心できていい。

 

「あら、そちらの方は?」

「ああ、この人はヘータくん。行く場所がないらしいから、少し休ませてほしいんだけど…」

「かしこまりました。お茶の準備をしてきますわ」

「マーサさん、お腹も大きいんだから無理をしたら…」

「大丈夫ですよ。もう慣れっこですから」

「すみません、ありがとうございます」

「いえいえ、構いませんよ。それではどうぞ中へ」

 

 マーサさんに連れられて家の中に入る。廊下を歩いてみると、華美な装飾は全然見当たらず、質素な生活をしている感じが取れる。将軍の家ってもう少し煌びやかな生活をしていると思ったけど、違ったのか。

 

「兄さんの到着を待ってから疎開しようと考えていたんですよ」

 

 廊下をじろじろ見ながら歩く俺を見て、微笑みながらイサラはそう説明してくれた。

 

「そうだったんですか。そんなときにお邪魔してすいません」

「いえ、気にしないでください。準備自体は済んでいますし、兄さんも帰ってきて疲れてるでしょうから、夕方前まで休んでから出ようと思っています」

 

 疎開前の慌ただしい時期にお邪魔してしまったのに、イサラは穏やかな笑顔でそういってくれる。後光が差して見える。なんだ、やっぱり天使か。

 

 

 

「…あ、このお茶おいしいです」

 

 居間に通してもらって、マーサさんの作ったお茶とお菓子を貰いつつ、感想をポツリ。いや、小学生並みの感想だけど、ほかに表しようがないからしょうがない。

 

「ありがとうございます。それでは私は細々とした準備をしておくので、ごゆっくりどうぞ」

「マーサさん、私も手伝います」

「大丈夫ですよ。それに、お嬢様は坊ちゃんと久々の再開。ごゆっくり会話を楽しんでください」

 

 では、と言って部屋から出て行くマーサさん。うーん、まさに家政婦の鏡。

 

「改めて、忙しい時期にお邪魔して…」

「気にしなくていいよ、ヘータくん。今はゆっくり休んで、それから考えていけばいいよ」

 

 おお…、こっちからも後光が。…むっ、視線を感じる!

 

「…」

 

 何故かイサラから飛ばされていた。主に頭の方に。

 

「ええと、イサラさん。何か俺の頭に付いてます?」

 

 鏡見てないから頭がどんな状態か分からない。はげてないよな?

 

「いえ!ヘータさんの髪の色、ガリアではあまり見たことないなと思って」

「ああ、ヘータくんは日本人なんだって」

「日本の方なんですか!…あの、もしよければなんですけど、日本のこと話してくださいませんか?」

「ええ、いいですよ。それじゃあ…」

「ごめんくださーい!」

 

 ちょうど話を始めようとしたとき、玄関からアリシアの声が聞こえてきた。あれ、ゲームだと玄関あたりで来たような…。まぁ、誤差だし気にしなくていいか。

 

 

 

 

「へぇ、日本ってそんな食生活なんだ」

 

 マーサさんに案内されてきたアリシアの作ったパン(保存食用)をかじりつつ、日本の、主に食べ物の話で盛り上がる。話の途中で荷造りの住んだマーサさんも混ざりつつ話をしたけれど、日本の話をするって戻したときに、「じゃあ日本のパンってどんなの?」ってアリシアがすぐに聞いてきたからこんな流れになったけど、何でパン限定だったんだろう。

 

「私、パンが好きでね。いろいろなパンの作り方を知りたいの」

 

 そういう彼女の目は爛々と輝いていました。パン作るのは知ってるけど、そこまで強い意気込みはなかったようなあったような…。

 

「そしていずれアリシアパンを…」

 

 いや、なかったな。だって一瞬だったけどすごいヘブン状態!って感じのとろけた顔してた。ま、まぁ、重火器にヘブン状態になるお嬢様がいる世界だし、ほかにいるのもうなずけるよね!

 

 

 

「へくち!」

「お嬢様、風邪ですか?」

「いえ、もしかしたら誰かに噂されたかもしれませんね」

 

 

 

「ご、ごめんなさい!つい自分の世界に入っちゃって…」

 

 アリシアのヘブン状態は途中でお茶を入れに行ったマーサさんが戻ってくるまで解けることがなく、マーサさんがおかわりを促すまで続いた。

 

「それにしても、可愛くて研究熱心なお嬢様だこと。坊ちゃんもスミにおけませんね?」

「え…?ああ、そんなんじゃないよ。アリシアには危ないところを助けてもらったんだ」

 

 こっからは原作の流れか。ガールフレンド否定からのこれから仲良く慣れたら宣言。そして、未来の旦那の母親同然の人からのよろしくお願いします。よくよく考えたらこの時期から地盤を固めているのか。さすがヒロインは格が違った。

 そこから、アリシアが壁にかかっていた写真を見てからの、ウェルキンの父親であるギュンター将軍の話、その将軍の専属技師だったイサラの父親であるテイマーの話、イサラの義妹となるまでの流れが続いた。うーん、完全に空気になっているな。

 

「…立ち入ったこと聞いちゃったかな」

「いいえ、気にしないでください。二人とも、私の大切な父ですから」

 

 そう言って微笑むイサラはまさに天使だった。いやマジ可愛い。イサラちゃんマジ天使!…うん、決めた。俺、イサラ、助ける。イサラを死なせずにこの戦争を乗り切る!可愛いは正義、異論は認めない!

2人の父親の話が続いてるなかで精神的な年甲斐もなく熱くなっていると、時計を見たアリシアがあっと声を上げる。

 

「もうこんな時間…。あたし、そろそろ失礼しますね」

 

 やっぱり何度見ても手の当て方が背後にドギャーン!を連想させるな。

 

「兄さん。アリシアさんを送ってあげてください。私たちは残っている荷物をまとめておきますから」

「ありがとう。ヘータくんはどうするんだい?」

「女性2人じゃ大変かもしれないので手伝いしときます。ゆっくり話をしながら送っても大丈夫ですよ?」

「だからそういう関係じゃないって。じゃあ、アリシアを送ってくるよ」

「ご馳走様でした!それじゃあ、失礼します」

 

 2人が出て行くのを見送り、腕まくりをしているとイサラが声をかけてきた。

 

「すいません、お客さんに手伝いをさせてしまって」

「こちらもお世話になってますし、そのお礼ですよ」

「ありがとうございます」

 

 面と向かってその微笑みはいけない!直視したらとろける!と思って顔をそらしたけど、

 

「あらあらうふふ。青春してますね」

 

 そらした先にマーサさんがいたため、結局顔が赤くなったのを見られてしまった。

 

「?」

 

 やめて、首を傾げないで!それ可愛すぎてとどめになっちゃう!い、今の俺にできることは1つ!

 

「さ、さぁ!手伝うことは何ですか!?」

 

 手伝いに逃げることだけだ!

 

 

 

 そそくさと手伝いに逃げ、10分後。俺はあることを考えていた。

 …そういえばこの後の流れってどうなってるんだっけ?確か、ウェルキンとアリシアが歩きながら話して、親子風車のところで…って!

 と思い出した直後、重低音が響き渡った。



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前略、丘の上より

「ウェルキンさん?普段ぽやーってしてるけど切れ者とかいうハイスペックイケメン。あと戦車の中から自然の有無を察せるってニュータイプかなんかかな?」
ーウェルキン・ギュンターについて、ヘータ・サクラ


「おい、俺たちはこの家に行くぞ」

「どうせガリアの豚どもだ。砲撃の音を聞いてから縮こまってんだろうよ」

 

獲物を目の前にして舌なめずりは三流のすること、とはよくいったもので。現在、カチャカチャと音をたてながら近づいてきている帝国兵に対してトラップを仕掛けようとしています。

 

砲撃の重音が聞こえたあと、この家に帝国兵が乗り込んでくるのを思い出したんで、ちょうど荷造りでロープがあったから、兵士が入ってくる瞬間にイサラと2人で玄関の足元にピーンと張るのを思い付いたのがさっきのこと。

 

「へへっ、ちげえねえ」

「さてと、手柄を立てますか!」

 

 バンッ!

 

「動くな!」

「おとなしく手をあげ・・・」

「せーの!」

「ろぉ!?」

「のうゎ!?」

 

 兵隊たちがビタァァァン!と音を立ててずっこけ、その拍子に手から銃が離れる。いやー慢心しててくれたおかげで助かった。

 

「くそっ、ガリアの・・・」

「動かないでください!そのまま伏せた状態で!」

 

 すぐさま帝国兵が立ち上がろうとしたけど、銃を回収したイサラとマーサさんがホールドアップ。その隙に俺が帝国兵を後ろ手に縛る。

 

「ふぅ、危なかった」

 

 原作通りにするとマーサさんが突き飛ばされて大変だし、兵士たちの罵詈雑言もあるからなぁ…。

 はっ!よく考えたらイサラのローリングイベントを横から見るチャンス・・・つまりはパンチr

 

「みんな!大丈夫…みたいだけど、どうしたんだい、ヘータくん。涙流して」

「いえ、安全を得た代わりに決定的な瞬間を逃しただけです」

「?」

 

 

 

 そのあとは原作通り、家の隣にある納屋にあった戦車――エーデルワイス号に乗って風車塔広場を抜けて大通りの門を守っていたアリシア達と合流、敵部隊を一時的に撤退させて時間を稼ぎ、郊外へと脱出した。原作と違うところは、マーサさんの出産が戦闘後の郊外での一休み中に起こったことぐらいだった。俺の方はというと・・・

 

「…うっぷ」

「ヘータさん、大丈夫ですか?」

「いえ、大丈夫ですよ。あははは…」

 

戦闘中の戦車の揺れにやられて、戦車を降りたあとでもずっと地面が揺れてる感じがががが。

 

「…うっぷ。…ふぅ。あー、俺の方は単なる乗り物酔いなんで、マーサさんを見てあげてください」

「分かりました。何かあったら呼んでください」

 

 そういってペコッと頭を下げてイサラはマーサさんの様子を見に行った。さらっと流したけど、助産婦さんもできるって本当に万能すぎるでしょ…。

 未来の夫婦はというと、丘から占領された街を見下ろしながら二人で話している。あー、2章の終わりのあれか。

 

(確かウェルキンが教師になって…って下りだったな)

 

 やっぱり可愛い義妹(と同じ人たち)が虐げられてるのが関係してるのかなーと思いながら、自分も今後の身の振り方を考える。

 とりあえずは義勇軍には入るのは確定…ってちょっと待てよ。確か戦ヴァル1は瀕死からの放置だと入院なしで普通に死ぬんだよな。俺がまずイサラの死亡イベまで生き残らないといけないじゃん!無理ゲーとまではいかないけど、ベリーハードはある。そもそもノーヘルにヘッドショットが当たり前の世界で生き残れるかどうか…。どうしよう。義勇軍に入れて比較的安全な役割なんてそんなうまい話ないよな。

 

「ぐぬぬ…ぬ?」

 

ちょっと待てよ。今しがた俺が乗っていたのは何だ?ガリアでもトップクラスの性能を持ち、更には主人公補正まで付いている戦車、エーデルワイス号。つまりはエーデルワイスでの役割を確保出来れば少なくとも戦場で死ぬことがないのは確定的に明らか。

 

「勝ったな、風呂入ってくる」

「何に勝つかわからないけど、逆転されそうな気がするなぁ…。あと何でお風呂?」

「ウェルキンさん。いや、必死で逃げたり戦車に揺られて冷や汗かいたりで」

 

いつの間にか丘の上での話し合いが終わっていたらしく、赤ちゃんをだっこしながらウェルキンが歩いてきた。イサラとアリシアも一緒だ。

 

「式はいつ挙げられたんで「ヘッドショットするわよ?」ごめんなさい銃口を突きつけないでください」

「はははっ。…これから僕たちは首都のランドグリーズに向かうけど、ヘータ君はどうする?」

「行く宛がないので、よければ付いてっていいですか?」

「構わないよ。そこからはまた着いてから話そうか」

「…わかりました」

 

多分、自分達は義勇軍に入るから国外に出なさい、って感じの話なんだろうな。…まぁ、入るなって言われても入るけどね。

 

「あと、もしよければ戦車の操作方法を教えてもらってもいいですか?僕、興味があります!」

 

知りたがりの少女みたいにウェルキンにお願いしてみる。中身はあれだけど外見は若いからセーフだと思いたい。

 

「僕はいいけど、イサラは?」

「私も構いませんよ。お教えします」

 

という訳で、ランドグリーズへの道中でイサラの熱心な教育を受けることになった。ありがとうございます!




うちのPS3が逝ったので記憶を辿りながら(あと攻略本見ながら)書いています。日本語PC版はまだですかね、SEGAさん


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ハーレム小隊は一度は誰もが通る道(独断と偏見)

追記 2016/10/10 前書きを追加


「天使」
ーイサラ・ギュンターについて、ヘータ・サクラ


  ランドグリーズに着いた後、ウェルキンやアリシア、それにイサラをなんとか説得し、異国の地から来た俺でも何とか入隊できた。・・・自分から入隊したいと言っておいてなんだけど、外国人をあっさりと入隊OK出して大丈夫なのか?

 それはそれとして、義勇軍に入るってところまではよかったんだけれども。

 

(わ、忘れてた・・・。誰も彼もがくるわけじゃなかった)

 

 そう、隊員の制限がある。戦車要員を除いた最大20人まで。そのうち、ウェルキン、パンのヴァルキュリア、歌姫の姉御に野菜ニキは確定だから、残り16枠。これが誰になるのかは固定されていない。アニメ版だと・・・あれ、どうだったかな。ともかく、この16人がどうなるのか、ウェルキン(というかプレイヤー)に決定権がある。

 

(いや、イサラを助けることは第一目標ですよ?だけどキレイどころが多いとうれしいじゃないですか。ツンデレアイドル志望、一匹狼、褐色、ガチユリ、天才ロリ、病弱ドM…は男か)

 

「ヘータさん」

「わっほい!・・・ああ、イサラさん。どうかしました?」

「手が止まっていたので、どうしたのかなと思って」

 

 悩みがあるなら相談に乗りますよ?と続けてくれるイサラ。やはり天使だったか。しかし煩悩溢れる考えにその笑顔は眩しいすぎる。ちなみに現在、食堂でイサラと軽い食事をしています。

 

「いえ、どんな人と一緒の隊になるのかなと思って」

「ふふふっ、きっといい人たちですよ」

(いい人たち、かぁ・・・)

 

 確かにいい人たちではあるんだけど、一部の人が最初はどうしてもダルクスの人への当たりがなぁ・・・とか考えていると、マネk…じゃなくてバーロットさんとの話が終わったウェルキンとアリシアが歩いてきた。

 

「やぁ、ここにいたのか。今からこの施設を見て回るけど一緒に行くかい?」

「はい、ご一緒します。ごちそうさまでした」

「あ、俺も行きます。ごっそさんでした」

 

食器を返却台に戻し、みんなで食堂から出たとき、ちょうど声をかけられた。

 

「すいません、隊長・・・ファルディオ・ランツァート少尉を見ませんでしたか?」

 

 おや、何やら某教育大好きお姉さんに差し出したら喜びそうな子どもが…って、ラマールじゃないか。

 

「ファルディオ・・・少尉ならバーロット大尉の部屋で作戦について話していたよ」

「ありがとうございます!」

 

ウェルキンが受け答えるとお礼を言ってそのまま歩いて行った。ラマールがいるってことはアニメ版なのか、それともゲーム版では出てないけど実際はいたという扱いなのか・・・。あれ、本当にどっちだこれ。

 

「それじゃあ、みんなで施設を見て回ろうか」

 

そんなメタ的な部分で悩みながら、ウェルキンさんたちと施設内を見て回ることになった。

 

ちなみに指令室でバーロットさんに隊員の人数制限について聞いてみたところ、作戦実行時に連れていける人数制限で、それ以外の隊員は作戦指令室預りになり、ランドグリーズの防衛にあたるそうな。んで、要請があったら配置転換を行う、とのことらしい。




更新がかなり遅くなり、かつ短い文章になってしまい申し訳ありませんでしたorz

ラマールがいることによるゲームorアニメどっち問題ですが、2以降でラマールが使えることから、「ラマールは1のゲーム版でもいたけど描写がなかった」という扱いにすることにしました。なので基本的にはゲーム版沿いです。

あと最後の小隊に関することですが、描写があったかどうか思い出せなかったのといろんなキャラを出しやすくするために考えた独自設定という名の苦肉の策です。
もし、原作のどこかで触れられていたらご指摘ください。


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第7小隊初陣(カット)と記者のおねいさん

「ヘータくん?なかなか面白い子よ!なんというか、大人びている部分もあるし、子どもみたいな部分もあるのよ。あと、彼とイサラさんの絡みを見ていると甘酸っぱくて癒されるのよね」
  ―――イレーヌ・コラー(旧姓 エレット)


 施設を見て回った後、バーロット大尉から連絡があったので、ウェルキンさんとアリシアは司令部へ。イサラと俺は車庫でエーデルワイスの整備を行っていた。

 イサラが主に整備をしつつ、俺が見学もかねて助手としていろいろ手伝っていると、ウェルキンさんたちが戻ってきた。第7小隊誕生後の初出陣、ヴァーゼル橋の奪還の第一歩である河川敷の敵拠点制圧を任された。

 まあ、ウェルキンさんの指揮の元、俺は装填手としてエーデルワイスに乗り込んでいたが、主に特に危なげもなく勝利できたのでカット。

 で、制圧した後のことだった。

 

「質問の続きなんだけど…」

 

 従軍記者であるエレットさんがウェルキンさんを戦車の上で質問攻めにしていた。

最初は名乗らなかったから、民間人と思ったアリシアに止めに入られたが、従軍記者であることを名乗ったあと、何事もなかったかのように再び質問攻めをしていた。それを見ながら呆れるアリシア。

その質問攻めになっているウェルキンさんとエレットさんのやり取りを俺とイサラは戦車の中で聞いていた。

 

「あんだけ質問攻めにあったらタジタジになりそう」

「兄さんも疲れているから休ませたいのですが…」

 

 ふむ、そうだな…。ちょっと取材は後回しにしてもらおうかな?

 

「おーいウェルキンさん。ちょっと見てほしい部分があるんだけど」

 

 ハッチから顔を出して、ウェルキンさんを呼ぶ。

 

「あら、何か用事みたいね。それでは、また後ほど質問させていただくわ」

 

 そういってジャンプして戦車を降りるエレットさん。着地するとすぐ駆け出していった。ほかの人に取材しにいったんだろうな。

 

「もしかして助け船を出してくれたのかな?」

 

 戦車の中に入りながらウェルキンさんが声をかけてきた。なぜバレたし。

 

「本当に戦車に対することだったらイサラからくると思うし、タジタジになってたところでいいタイミングで声をかけてくれたからさ」

「いやー、指揮とかで疲れているでしょうし、直後くらいは休んで方がいいかと思って。まあ、先延ばしにしただけなので結局後からもう一度取材来ると思いますけど」

「ははは、それでもありがとう」

 

 朗らかに笑うウェルキンさんの隣で、これまた朗らかに笑うイサラ。やっぱこの兄妹は並んで笑うのが絵になるなぁ。

 その後、ある程度休んだ後に外に出たウェルキンさんだったけど、速攻でエレットさんに捕まっていた。南無三。

 エレットさんに捕まっているウェルキンさんから視線を逸らすと、赤毛のねーちゃんと厳ついおっさんが2人…というよりもウェルキンさんをにらんでいた。あー、奪還前だからまだだったねそういや…。

 

 翌日、上の人たちが奪還作戦の次の手を考える中、エレットさんが第7小隊の人たちに話を聞きまわっていた。

 整備が一息ついたので休憩がてらエーデルワイス号を眺めていると、こっちにも取材に来た。んで、やっぱり聞かれたのがウェルキンさんのことだった。

 

「たまたま立ち寄った村がブルールで、その際にウェルキン隊長と知り合った、と。それからの付き合いなんだ」

「ええ、そうなんですよ」

 

 さすがに川から流れてきた、といっても信じてもらえないだろうから、立ち寄ったことにした。

 

「で、あなたから見てどんな人なの?」

「見た目通り、穏やかで優しい人ですね。見ず知らずの自分を拾ってもらいましたし」

「ふむふむ。で、その時にイサラさんとも知り合った、と」

「ええ」

 

 少し考えた後にエレットさんはからかうような笑顔になりながら質問を続ける。

 

「・・・で、どうなの?イサラさんとは?」

「・・・なんでイサラの名前が出てくるんですか?」

「ボーイ・ミーツ・ガールだし、そういう感じかなと思って。イサラさんも可愛いし」

「いやいやそんなんじゃないですよイサラにもよくしてもらってますしだけど」

「はいはい、照れない照れない」

 

 分かってますよオーラを出しながらあしらうエレットさん。なんでこの世界の女性は隙あらばからかってくるんですかね…。

 ある程度からかったあと、「ふー、満足」と言いながら他の人に取材に行ったエレットさんでした。途中から取材というよりかはからかい目的っぽい気がしたけどね!




ヴァーゼル市街地戦(カット)とエレット取材開始まで。エレットさんの断章については本編に含みます。
戦闘描写や主人公の戦争への葛藤とか苦悩をどうするか悩みましたが、話が重くなるというのと、イサラ生存ルートまでが主題なのでカットしました。もしかしたらさらっと追加で断章とかで話を書くかも?


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2戦目(省略)と姉御と野菜人と

「ヘータ?あいつはなんというか…手のかかる後輩みたいなものかな?」―ブリジット・シュターク


 ヴァーゼル橋奪還戦―――「春の嵐」作戦はウェルキンさんの奇策(川を戦車で渡る)が成功し、こちらの被害はほぼない状態で橋を奪還することができた。帝国兵から見たらいきなり背後から敵兵が生えてきたように見えるから動揺するのもわからなくもないけど、小国だから見くびられてる感じがする。こちらとしてはそっちの方が被害が出ないからそのまま油断しててほしい。

 

 作戦後は野菜万歳ラルゴさんと姉御肌のロージーさんがウェルキンさんを隊長と認め、万事解決…とはいかず、ロージーさんとイサラの睨み合いが起こっていた。ロージーさんがダルクス人を目の敵にする理由は、帝国のダルクス狩りが村で起こり、それによって母親と弟さんが亡くなったことだ。そのことに関しては逆恨みっていうのを本人は気づいてると思うんだけど落としどころがないんだろうな…と考えていると、喧嘩が終わったのか2人ともふんと顔を背けあい、正反対の方向に歩き出した。その矢先、進行方向にいた自分の前でロージーさんが足を止めた。一瞬辛そうな目でこちらを見た後首を振り、キツイ目つきでこちらをにらみながら凄んできた。

 

「…あんた」

「は、はい?」

「子供がなんでここにいるんだい?」

「旅の途中でウェルキンさんたちに助けられてその恩返しに…」

「恩返しだぁ?ここはガキのいるような場所じゃないんだ。さっさと家に帰んな」

 

 そういうとロージーさんはまた別の方向に歩いて行った。何で毛嫌いされてるんだ?と首を捻っていると、ラルゴさんが苦笑しながらこちらに歩いてきた。

 

「すまんな。いつもはあそこまで当たりは強くないんだがな…。おっと、ラルゴ・ポッテルだ」

「いえ。なんというか口調はきついですけどこっちのことを思って言ってくれたようなそうでないような…。ヘータ・サクラです。よろしくお願いします」

 

 差し出された手を握り返しながら挨拶する。

 

「それはさておき、野菜は好きか?」

「初対面でそれを聞かれたのは初めてですよ…。好きですけど」

「よし、それじゃあ戻ったら食堂で美味しくとれる野菜メニューを教えてやる。野菜をたくさんとれば生き残る確率が高くなるしな!」

「食事のバランスとか考えたらそうですけど、野菜ってそんな直に影響出るほど万能でしたっけ…?」

「新隊長とその妹と同じで一緒で見どころがあるな!」

「聞いちゃいねぇ。っていうかその質問2人にもしたんですか?」

「当たり前だが?」

「さも当然って顔されても…」

 

 そして初対面だけどやっぱり野菜バカなんだなっていうのがラルゴさんの第一印象でした。

 

 

 基地に帰りラルゴさんと野菜のフルコースを堪能した後、腹ごなしがてら散歩していると綺麗な歌声が聞こえた。そちらの方に向かってみるとやはりロージーさんが歌っていた。バレない様に隠れて聞こうとしたけどあっけなく気付かれてしまった。

 

「誰だい?…ちっ、坊やか」

「すいません、歌声が聞こえたんでつい」

「ふん…、まだ出て行ってなかったのかい」

 

 素直に出ていくと舌打ちされて毒づかれた。

 

「で、何か用かい?」

「いや、ラルゴさんからたらふく野菜をおごってもらったのでその腹ごなしに散歩してたところに歌声が聞こえたのでふらっと」

「…あいつの野菜への情熱、どっから来るんだか」

 

 ぼやくように言った後、かぶりを振ってからかう口調で煽ってくる。

 

「で、坊やはいつ家に帰るんだい?」

「いえ、当分帰るつもりはないですけど…」

「はっ、坊やがいてもせいぜい足を引っ張るぐらいしかできないと思うけどね」

「ぐぬぬ」

 

 ロージーさんが煽ってくるけど、言ってること自体は正論だし、何より自分が思っていることだったのでなにも言い返せない。と思っていたらロージーさんが少し考えた後尋ねてきた。

 

「…さっき言ってたけど、あの隊長とダルクス人へ恩返しって何があったんだい」

「ああ、寝ながら魚と一緒に川に流されていたところを拾ってもらいました」

「本当に何があったんだい…っ!?」

 

 いや、本当に言葉の通りだから困る。というかよくおぼれなかったな自分。

 

「そのまま流されてたら死んでたでしょうし、こうして保護までしてもらっているんで。そのまま別れるには申し訳ないと思ってるんですよ」

「…ふぅん。どうしても辞める気はなさそうだね」

 

 そういうとロージーさんは意地の悪い笑顔をしてどこかに歩いて行った。うーん、これはどう捉えたらいいのやら。

 

 

 

 宿舎に戻った後、戦車のことのほかに基礎的な訓練も受けようかと思った自分に突撃兵の訓練も受けるように通達されたのは次の日のことだった。なんで?と思っているとロージーさんの意地の悪そうな笑顔が見えた。あんたの仕業かぁ!

 

 

 

 

「なぁ、ロージー。どうしてあいつに突撃兵の訓練も受けさせるんだ?」

「あいつの根性がどこまであるのか、それを見たくてね。仮に口だけのやつだったら背中を預けられないのさ。それに…」

「それに?」

「…いや、なんでもない」




更新が遅くなりすいませんでしたorz
3とか4の兼ね合いどうしよう…と考えていましたが、とりあえずミスったらあとから修正するか!的な考えで投稿しました。

投稿を誤爆した後慌てて修正したので章とか最新話表示とかがおかしくなっているかもしれませんがボルガ博士、お許しください!


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断章
爆弾は芸術的な


「…親友。くひひ…」
  ――ウェンディ・チェスロック


 それはまだ俺がこの部隊に慣れていない頃の話。

 その日はたまたま仲のいい知り合いと夕食の時間が合わなくて一緒にご飯が取れず、お盆をもってうろうろしていた時のことだった。

 

(んー。どっか空いてないかな…。お、あそこが空いてた)

 

 2人席で片方空いている席があったのでそこに座ろうと近づいた。

 

「すいません、相席いいですか?」

「…どうぞ」

「ありがとうございます。いやー、混んでますね」

「くひ…。そうだね」

 

 ん?なんかこの笑い方聞いたことが…。と思って顔をよく見ると第7小隊の人だった。

 

(あーと確かこの目の下の…隈?ペインティング?は…)

「チェスロックさん…でしたっけ?」

「ん…?」

「ああ、最近第7小隊に配属されたヘータ・サクラです」

「そう…」

 

 挨拶をしたものの興味ないらしくそのままご飯の手を進めていた。それどころか進める速度早くなってない?

 

「…」

「…」

 

 …気まずい。これはなんか話のネタを振らないと。

 

「ええと、チェスロックさんはなんで義勇軍に?」

 

 知ってはいるけどとりあえず話題として振ることに。

 

「…爆弾の威力を試すため」

「へぇ、そうなんですか。爆弾が好きなんですか?」

 

 さらっと返答するとチェスロックさんが面食らった顔をしてこっちを見てた。

 

「どうかしました?」

「くひ…。こんなこと言っても引かなかったのが珍しくて」

「ああ。義勇軍に入る理由なんてなんていろいろありますしね。…銃が好きで士官学校に入るお嬢様もいたりしますし」

「?」

 

 

「へくちっ!…また誰かが噂しているのかしら?」

 

 

「で、爆弾が好きなんですか?」

「くふふ…。わたしが好きなのは…」

 

 それからというもの、爆弾がどれだけ素晴らしいか、どの爆弾がどの場面で役に立つのか、今ある爆弾は自分ならどう改良するとか…、チェスロックさんは語りだしたら止まらなくなった。いやー、さすがに爆弾マニアだわ。しかもちょいちょい役立ちそうな情報もあったりするから面白いし。そのまま話しているといつの間にか食堂の閉まる時間になっていた。

 

「すいません、しめないといけないので…」

「ああ、わかりました。それじゃあチェスロックさん…」

「…続きは部屋で」

「そうですね、また今度…って部屋ぁ!?」

「くひひ、それじゃあ行こう」

 

 今日はこれでお開きだと思っていたらそんなことは全然なく、そのままチェスロックさんの部屋まで引きずられていくことに。さすが突撃兵、引きこもりでも力あるね。話を聞いていると、なんでも、今まで爆弾のことを語りだすとみんな急に忙しくなったりとかいつの間にかいなくなったりしたんだとか。ああ、マニアなことをしばらく語れず、話しても大丈夫な人がいると満足するまで話す人ってどの世界にもいるんだなぁ…と思いながら、その日は夜も爆弾について(一方的に)語られてた。さすがに寝不足はヤバい上に女性部屋で話していたので話を別の機会に、と区切ってもらい(本人はたいそう不満そうだった)、部屋で寝ようとしたころには日をまたいだ時間帯だった。ちなみにチェスロックさんの同室の人からは男が入ってきていることを不快に感じているどころか、話相手になっている自分に好意的な感じだった。お茶と菓子もらったし。

 

 次の日、昨日と同じく時間が合わなかったので朝食も1人でとっていると向かい側に座る人が。

 

「空いているのでど…」

「くひひ…、おはよう。昨日の話の続きなんだけど…」

「…OK、とことん付き合いましょう」

 

 結局、話は次の日の夕食まで続きましたとさ。実に恐ろしきやマニアの話。




3の内容が思い出せないのでちょくちょくやり直ししていたので本編が書けず悩んでいたところ、断章書けばいいんじゃね?と思ったので書いてみました。
ちなみに2の某お嬢様がちょいちょい出てきているのは、戦場のヴァルキュリアでマニアって単語が出るとどうしても作者の脳内に出てくるので。

あと宿舎の描写がメニューの宿舎の後ろの一枚絵しか思い浮かばなかったので、何人かと一緒の部屋という描写にしました。…2ではアバンの部屋は個人部屋だったので少し迷いましたが。


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女優志望というよりはアイドル見習い

「ヘータ?そうですね…、最初は歌の()()に巻き込…もとい付き合ってもらった感じでしたが、彼のサポートがなければ音t…じゃなくて上手いと思い込んだままだと思いますわ。…本人にバレると恥ずかしいのでオフレコでお願いしますの」
 ――イーディ・ネルソン
(ちなみにこの部分はマネージャーであるホーマー・ピエローニ氏より許可を得て掲載しております。)


 訓練がない、ということで陽気に誘われて散歩をしていたときのことだった。趣向を変えて人通りの少ない道を歩いていると、何処かしらから何かが聞こえてきた。ただ、声は歌というには禍々しく、音楽というには不協和すぎた。要するにすごく音痴だった。

 

「…こっちか」

 

なんとなく誰か想像出来たが、何も知らないといった顔で声のする方へ歩いていく。音痴っていうと彼女しかいないよなーと思っていると、案の定イーディがいた。そしてその傍らには恍惚とした表情の某病弱ドMが転がっていた。よし、帰るか。

 

「ふふん、今日も絶好調ですわ!」

「いやある意味絶好調そうだけどさ」

 

確認した後見つからないようにその場を離れようとしたけど、彼女の独り言に反射的にツッコんだのは悪くないと思うんだ。

 

「誰ですの!?って貴方は確か…サクラさんでしたわね?聞いてしまいましたわね?」

「あー、うん。聞いちゃいましたね」

「隠しておきたかったのですがバレたからにはしょうがありませんわ!で、どうでした?上手でしょう?ホーマーもいい歌声だと言ってくれましたの」

 

 そりゃドMにとっちゃいい歌声かもしれないけどさ。

 

「コセイテキナコエデスネー」

「目が泳ぎまくってますわよ!」

 

 嘘は言ってないけど本音を隠せなかったらしい。

 

「え、とするとまさか…」

 

 自分の態度である程度察してくれたのか、冷や汗をかいているイーディを見て、思い切って真実を伝える。

 

「はい、思い切り音痴です」

「…マジですの!?」

「マジですの」

 

 聞いた瞬間、イーディさんが膝から崩れ落ちた。

 

「隠れて練習してたのが仇になりましたわね…。妹に試しに聴いてもらったときははすごいって顔してくれてましたけど、妄信的な部分があるからあの子は例外として。あと、ホーマーがいい笑顔でいい歌声だといってたのってそっちの意味でしたのね。納得しましたわ」

 

 音痴っていうのをすぐ認めるところを見るとやっぱり根は素直なんだなぁ。あと妹が盲信的っていうのは分かってたんだ。と納得していたら、イーディがこっちを向いて何かひらめいた顔をしていた。あ、これやb

 

「…頼みがあります」

「いやです」

「まだ言ってすらいないのに!?」

 

 だって何言われるか予想付いたし。

 

「私も知らなかった事実を知られたからには逃しませんわ!そもそもここで逃げても同じ部隊にいる限り逃げ切れませんわよ!」

「音痴の人の矯正なんてしたことないですよ!?もっと他に適任がいるでしょうに!」

「アイドルたるもの、容易に努力は見せないのですわよ!?」

「口調若干崩れてない!?」

 

 ギャーギャー騒ぎながら逃げ回ったけど、結局は捕まり、音痴の矯正を手伝うことになった。やっぱり突撃兵の身体能力には勝てなかったよ…。その日は準備があるので解散することにした。病弱ドMな彼は放置されてたのを後から思い出して、結局俺が運ぶことになった。

 嫌々ではあるけど、やるからにはそれなりにしっかりと、ということで次の日、ロージーさんにアドバイスをもらうことに。ちなみにその相手がイーディであることは言ってないんだけど、音痴という単語を出した時点で何かしら察していた。見られてますよイーディさん。

 

「というわけで何かアドバイスをば…」

「なんで私がそんなことしないといけないんだい?」

「少なくともこの隊の中で一番歌に詳しいと思ったんです。今度いいワイン差し上げますんで」

「はぁ、わかったよ。そしたらね…」

 

 なんだかんだで面倒見のいい姉御からアドバイスをもらい、他の隊員にバレないようにしつつ、そこで練習することになった。病弱ドMな彼は毎度毎度ついてきてはいい笑顔で瀕死になっている。毎度毎度運ぶの俺なんですけどねぇ…。

 

 

 

 

「そういえば俺が来る前までは瀕死後のホーマーさんはどうしてたんですか?」

「もう少し歌声の感動に浸っていたいからそのままで、とのことだったので放置してましたの。…一度忘れ物して夜に戻ってきたとき、まだいたのには驚きましたわ。それからは運んでますの」

「えぇ…」




(令和に入ってから)初投稿です。

まずは更新が非常に遅れて申し訳ございませんでした。

リアルの多忙とこの先の展開(3をどう扱うかとか)をうんうん悩んでいたらいつの間にか1年ぶりの更新に…。
とりあえずお茶濁しに断章ということでの投稿です。
ちなみに4はまだ手を付けてられていません。なのでもしかしたらまた先の展開に悩むことになるかもしれません。その時は…遅くならないよう、また断章に頼りますので(震え声)


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本編に(多分)絡まないもの
CM風の何か


(こっちの小説では今年)初投稿です。
予告CM風のなにかの2本立てです


 これは、在り得たかもしれない物語。

 

「…ここはどこだ?」

 

 川から流れてきた異国の男。

 

「その服装…。あのー、日本の方ですか?」

「ああ。お前も日本から来たのか?」

 

 川から流れてきた異世界の青年。

二人の道が交錯するとき、物語が始まる。

 

「俺は、イサラを守りたいんです」

「ふっ、目だけは一人前だな」

 

「ふん!」(片手で対戦車槍をぶっ放す)

「…ヘータくん」

「言いたいことは分かるけど人間です、ウェルキンさん」

 

「L・O・V・E!LOVELY!イーディ!」

「よかったねイーディ(棒)」

「ちょっ!?止めてください!武蔵さんも落ち着いてくださいませんこと!?」

 

 

 

「今度の部隊は今までと比にならないくらい厳しい戦いに出されると思います。いくら武蔵さんだからって…」

「…お前は自分の心配をしろ。手前の決着は手前で付ける」

 

青年は成長し、男は筋を通す。

 

「お前は…生きろ」

「…また、生きて会いましょう!絶対ですよ!」

 

 男が筋を通し、青年は成長する。

 

「バカな!人造ヴァルキュリアと素手で張り合うだと!?」

「今までいろんなことがあってな、すこぶる機嫌がワリいんだ。運がなかったんだよ、お前は!」

 

 

青年の名は佐久良兵太。

男の名は宮本武蔵。またの名を…桐生一馬之介!

 

戦場のヴァルキュリア 見参!

 

「さぁ…。死にてぇ奴からかかってこい!」

 

20XX年○月×日、発売!

 

 

 

 

「このクラスの副担任をすることになったカズマノスケ・キリュウだ。よろしく」

「ブハァ!」

 

 

------------------

 

 

 ガリアでの戦争を駆け抜けたヘータ。ある朝目覚めると、元の体、元の自分の部屋に戻っていた。

 これまでのことは夢だったのかと思ったが…

 

「…ヘータさん、ここは?」

「あ、え、イサラ!?」

 

 なぜかイサラまでついてきた!?

 あの手この手でイサラの生活の基盤を整えていく中、以前の世界とは違う部分に気付く。

 

「戦車道、ですか?」

「戦車道って嘘だぁ…」

 

 そして、神のイタズラによって転勤/入学することになったのは…

 

「大洗に転勤、ですか!?」

「大洗女子学園、ですか」

 

始まり、紡がれる、この世界でのイサラの物語。

 

「この戦車、直させてください!」

 

「なんでこんなところにこの戦車があるんだ…」

 

「行きます!」

「頑張れ、イサラー!」

 

ガールズ&パンツァー イサラ、頑張ります!

20××年秋、パンツァーフォー!

 

 

 

「なにやってるんですかヘータさん…」

「ヘータとは誰のことかな?私の名前は…タンカスロンの騎士、シャムロック仮面!」

「あーっ!変人さんだ!」

「誰が変人だ!」




上の予告は龍が如く維新発売記念時に、下の予告はもうちょいでガルパン最終章だなーと思っていた時に戦ヴァル4の知らせを受けて脳内で混ざり弾けた何かです。

地続きのシリーズとしては7年ぶり、据え置きかつCANVAS採用としては1以来の戦ヴァル。さすが俺らのSEGAだぜ!


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