艦隊これくしょん〜ブラック提督(笑)の奮闘 (SKYアイス)
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第一部〜戦闘海域
第1話


初期秘書艦は今でも編成に組み込む。愛着あるから…(嫁とは言ってない)


提督業は忙しい。現在の解放海域から第一〜第四戦隊の編成と出撃の予定。艦隊の指揮や感娘のケア等…だがこの提督は感娘のケアは決してしない。する必要性を感じないからだ。

 

「………」

 

目の前にある書類を片付けつつ、ちらりと時計を見る。現在時刻ヒトヒトヨンマル。そろそろ正午になる時間だ

現在の資材、修復材の確認を一人で進める。勿論最近の戦況報告書もすませながら。

 

「燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイト…共に一万オーバー…あれ?ボーキサイトが…」

 

資材の管理書を見ると、明らかに今までの出撃、建造、開発によって使用した筈の量を超えて、ボーキサイトの量が減っていた。

 

「何でだ?俺の管理が間違ってたか?」

 

この間沖ノ島海域を突破した時は、全ての資材と高速修復材が枯渇状態になりそうになってしまった。だが潜水艦の三人による強制的なオリョクル、駆逐艦の過激な遠征によってある程度回復した筈。その間空母や戦艦には鎮守府内に残らせていたので消費する事は無い筈だと思っていた。なのに…

 

「240の誤差だと!?どこで間違えた…」

 

これでは後々の作戦に影響が出てしまう。これではいけないと思って、提督はある場所へ電話をかけた。

 

「もしもし間宮か?提督だ。現在の甘味の在庫を確認したい。…………そうか、ならば鳳翔と協力し、間宮パフェを一週間分確保しろ、今すぐだ。何?無茶だと?ならば川内型も向かわせる。いいな…これは命令だ、甘味一週間分を今すぐに作り始めろ。また連絡する」

 

 

間宮との電話を切り、次に掛けたのは…

 

「俺だ、提督だ…神通か。那珂と川内は?そうか、なら丁度良い。川内型三人に命ずる。甘味処間宮にて、間宮パフェの量産に手を貸せ。無論対価は払う、今度お前らの要求を何でも聞いてやる」

 

『『『何でも!?』』』

 

「お、おう…とにかく頼んだぞ」

 

川内や那珂はともかく、神通まで釣れるとは思わなかったが、とりあえず間宮パフェの確保はできたと思い、書類に間宮パフェ一週間分の材料、費用を書き出した。

 

 

「川内の要求はどうせ夜戦だろう。那珂は今度旗艦にしろとでも言うだろうな。まぁ神通は分からんが…何とかなるだろうな」

 

とりあえず書く書類が増えたので、その分の仕事量も計算しなくてはならない。

時計を見て、現在時刻を確保する。ヒトフタマルマル。正午の時間だ。

 

「もうこんな時間か…」

 

今のペースの事を考えると、とてもじゃないが満足に昼飯を食べる事はできないと判断した。だがこんな事が起こったのは一度や二度ではない。こういう時の為に、執務室には常にカロ○ーメイトが常備してある。

 

「………駆逐艦、潜水艦、軽巡、重巡、軽空母、空母、戦艦用の3時のおやつ分、遠征のおやつ、お弁当分、オリョクル中のお弁当、おやつ分を合わせて…ろくに給料が貯められん…が、背に腹は代えられない」

 

自分で思うのも何だが、自分は相当ブラックだと思っている。感娘に反乱されないようにモチベーションは保たないといけない。その為ならば自分の給料は惜しくない

 

 

「よし、これで…」

 

 

 

コンコンと、扉を叩く音がした。昼時に一体誰が訪ねてきたのだろうか?

 

 

「入れ」

「失礼するよ」

 

 

入ってきたのは、駆逐艦時雨だった。彼女がこんな時間に来るとは珍しいと思いつつ、用件を聞こうと思ったら

 

「提督、僕はもう我慢の限界だ」

「ほう」

 

いきなり物騒な話をしてきた。恐らく何時もの通り待遇の改善についてだろう。だがそれは変える気は無い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で秘書艦を付けないで一人で仕事するんだい!?この間倒れたばかりじゃないか!」

「知らんな!一々お前達の意見を聞く気は無い!お前達は大規模な作戦に控え英気を養うといい!今日の3時のおやつは特別だぞ?」

「そ、そんな言葉じゃ騙されないよ!」

「ぐ…」

 

この時雨、提督が苦手としている感娘の一人である。執務室に来ては、仕事量が大変だから秘書艦付けろ、深夜まで仕事しないで早く寝ろ、早くレベル99に自分を上げろ等、提督を困らせている。

 

「ええい黙れ黙れ!どうせ作戦が始まれば休みも取れなくなる!その度に休ませろ休ませろと文句を言われるのは困るんだよ!」

「その度にアイス食べさせる提督も提督だよ!しかも僕達にはお金を使わせないなんて、何を考えているのかな!?」

「お前達は自分の事と仲間の事を考えていれば良い!」

「その仲間に提督は含まれているけどね!」

「減らず口を!俺はお前達を兵器と判断している!所詮道具だ!なのに仲間だと?笑わせる!」

「良い加減思うけど、その口癖止めなよ」

「口癖じゃない!良いから出てけ!!」

「あっ!?ちょっと!」

 

時雨を強制的に退出させ、執務室に鍵を閉める。

これで安息の時が訪れた。ゆっくりと仕事に精を出せる。そう思ったら

 

目の前に横になってる瑞鶴がいた。

 

 

 

「…何を、している」

「何をって、提督が時雨ちゃんと話してるから…」

「不貞腐れてんじゃねえ」

「ぶー」

「ほら帰れ」

「瑞鶴の扱い酷く無い?」

「普通だ」

 

 

瑞鶴も部屋から追い出し、やっとこさ仕事に付けると思ったら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちくしょう瑞鶴の奴、さり気なくカロ○ーメイト持って行きやがった」

 




この鎮守府の編成

第一艦隊
榛名、日向、瑞鶴、鈴谷、阿武隈、時雨or雪風or吹雪

第二艦隊
金剛、長門、陸奥、隼鷹、千歳、龍驤、

第三艦隊
霧島、比叡、加賀、大井、北上、58

第四艦隊
天龍幼稚園(天龍、龍田、響、電、雷、暁)
オリョクル(168、58、8)

編成もリアルでこんな感じ。
第二艦隊が露骨ないじめだと思ったそこの君












正解です


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第2話

この提督はツンデレじゃないです。提督が自分がツンデレじゃないと思ってないので、ツンデレじゃないです。


瑞鶴にカロ○ーメイトを持って行かれ、昼食に困っていた提督。昼食抜きで執務を進めるしかないと割り切り、再び机の上の書類に手を付け始めた。

 

「沖ノ島を突破して早2週間。わざわざ第二艦隊から第四艦隊の枠を使ってまで資材確保に回してたんだ、無駄である筈がない」

 

沖ノ島海域を突破した提督は、近々大本営から発令されるであろう大規模な作戦に向けて資材の確保に専念していた。第二艦隊から第四艦隊にかけて遠征、オリョクルを行っていたのだ。

 

「午前一回、午後に二回のオリョクル…これが限界か」

 

遠征、オリョクルはどうしても時間がかかる。オリョクルには約1時間。遠征は任務にもよるが基本20分。

遠征については天龍、龍田等の軽巡を筆頭に全駆逐艦からローテーションを組み向かわせる。因みにオリョクル、遠征一回につきアイス一個だ。本来なら全員分用意したいが流石に提督の財布事情によってそれは断念せざるを得なかった。

 

アイス一個を編成したメンバー全員で分けている為だ。その影響があるのか本来稼げる筈の資材や高速修復材が余分に取れるというのもあるが…。

 

「とにかく情報が足りないな」

 

今提督は、大本営に問い合わせていずれ来る大規模な作戦に向けての情報を集めていた。

勿論情報を集めるだけではない。提督も情報を提供していた。

 

「例の海域周辺の深海戦艦の編成、特徴…そして姫級、鬼級、水鬼級の確認」

 

提督は索敵に優れた第二艦隊に第一艦隊を任せ、低速戦艦である長門型を軽巡にし、索敵重視の編成にして海域の情報を集めていた。

 

軽空母にはそれぞれ烈風と彩雲を一枠付け、金剛、軽巡には水上偵察機を一枠、電探を付け偵察用の編成を組み込んだ。気づかれた場合の事を考えて、彗星甲による先制攻撃もできるように枠を使っている。ただし流星は無い。

 

「流星の開発と烈風の開発をしなければ…その為の資材は…使えるのが15回分。それ以上は予定に支障が出るな。ボーキサイトの数を間違えなければ…!」

 

現在鎮守府には彩雲、彗星甲といった優れた艦載機が3つもあるが、呪われているのか烈風、流星、流星改が一向に来ないという現状であった。

開発する度にでるのは全てはずれの艦載機。優秀な艦載機は幾らでも欲しいというのが現状であった。

 

「瑞鶴に開発を任せるか…なんだかんだ言って彩雲と彗星を開発したのは奴だしな。サポートにはいつも通り夕張を付けてと…」

 

開発には瑞鶴の幸運、夕張の技術に頼ろうと思って、彼女達に開発を任せる事に決めた。次に纏めるのは深海戦艦の情報だ。

 

 

「確認できた姫級、鬼級、水鬼級は無しだが、フラグシップ級の敵艦が多い。現在の感娘で太刀打ちできるのは出撃組か…やはり全体のバランスを保ちながらでは無く、一点に集中して経験を積ませるべきだったか?だがそれではローテーションを組むのに支障が出る。そして例の戦法も取れない…」

 

特に多く確認できたフラグシップ級が戦艦クラスなので、奇襲による打撃を与えれる第三艦隊をベースに立ち回るべきかと考える。

 

「いや、これは一部の戦力だ…まだ情報が少ない内はどんな状況にも適応でき、尚且つ他に比べて燃費が良い第一艦隊の方が適任か?」

 

まだ見ぬ海域を攻略する為にも、とにかく情報が必要だと判断した。

 

「作戦まで後二週間ある。偵察部隊を送り情報を集めるのが先…だな」

 

とりあえず知る限りの情報を報告書に纏める。ようやく仕事に一段落ついた。時計を見たらヒトヨンマルマル。いつの間にか時間が過ぎていた。

 

「オリョクルの二回目は終わってる頃か。三時のおやつタイムだ」

 

因みにこの鎮守府は休憩時間は無い。就寝時間と食事以外は感娘同士の演習や兵器の開発。そして()()()()()を任せている。繰り返す。休みは無い(提督曰く)

 

「さて、感娘にはキリキリ働いて貰おうか。暁の水平線に勝利を刻む為にな」

 

ニヤリと邪悪な笑みを浮かべて、残った書類を片付ける提督であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

駆逐艦時雨は悩んでいた。提督が憎まれ口を叩きながら感娘をこき使っても、彼女は提督の身を案じていた。

 

この鎮守府は就寝時間はフタフタマルマルと決まっており、提督自らが就寝時間になると巡回し始め、夜更かししている悪い子がいたらお仕置き部屋に連れて行かれるとの事。姉妹艦の夕立に聞いたら顔を真っ赤にしながら体をくねらせて「とてもじゃないけど言えないっぽい〜」と言っていた。相当恐ろしい目にあったのだろう。

 

そんな提督が夜何をしているか気になって、こっそり執務室に見に行ってみたが、提督は執務室にはいなかった。鎮守府内を探してみると、提督がいたのは見張り台の上で水平線を眺めていた。

 

そんな姿を見て益々心配になり、提督に声をかけようとしたが、何故かそこにいた駆逐艦吹雪に止められて、部屋に連れて行かれる。

 

その時に「提督が心配じゃないのかい?」と聞いてみたら

 

「司令官は私が見てますから、何時までも側にいますから。だから大丈夫です」

 

と、言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何だろう、あの時の吹雪が少し怖いって思った)

 

 

そんな光景を思い出し、少しだけ震えた時雨であった。




紛れも無いブラ鎮。提督が感娘をこんな扱いをするのには理由があります


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第3話

艦娘=感娘以外に誤字があれば遠慮無く報告して下さい。多分自分では気付かないと思います。


「さて、そろそろか…」

 

書類を片付け終わり、おやつタイムが終了した後。

時刻はヒトゴーサンマル。

提督はある人物を鎮守府に呼び出していた。その人物とは同じ提督業をしている提督である。そしてその鎮守府は、彼の指揮する現場と同じ…そう、世間で言うブラック鎮守府だ。

 

その提督への迎えとして、最古参の一人である響に迎えを頼んでいた。

 

 

「司令官、失礼するよ」

「うむ」

 

扉を叩く音と共に入って来たのは、駆逐艦響とブラック鎮守府の提督であった。

 

「ご苦労響…そしてわざわざご足労かけました。大佐殿」

「そう硬くならないで。僕も君と話してみたかったしさ」

「はい…響、下がっても良いぞ」

「司令官、瑞鶴から聞いたよ?カロ○ーメイトのチョコ味を持ってるって。ならスモークチーズはあるかい?」

「アイスがあるだろう」

「残念だ」

 

何をしたかったのが若干分からなかったが、とりあえず響を退出させた。

 

「どうぞ、お掛け下さい」

「わざわざありがとう」

 

二人の提督がそれぞれ椅子に座り、そして提督はある物を取り出した。

 

「これが例の海域付近の情報です。我が感娘の活躍によって入手する事ができました」

「ふぅん、艦娘がねぇ…君の所の艦娘は優秀みたいだね。僕の所の艦娘は使えなくてね…君が羨ましいくらいだよ」

「大佐殿の感娘は主力艦隊全てが強者揃いでは…?」

「そうだよ。だけど僕の所の艦娘…無駄なのが多くてさ、足を引っ張る奴がいれば狂う奴もいる。可笑しいよね…たかだか姉妹艦が沈むだけなのに、ただ一人いなくなるだけで精神を病む。本当に感情は厄介だよ」

「だからこその艦娘ですか」

「そうだよ、兵器に感情なんていらない」

 

ブラック鎮守府提督は、実力があり今迄数々の海域の解放に貢献した強者の一人だ。だがそのやり方には賛否両論が分かれる。

 

余らせた艦娘を解体するのは仕方ない事。だがこの提督は解体する前に必ず出撃させ、資材や修復材が手に入る海域に向かわせ、資材を回収する。出撃をすれば損傷する事もある。そうなった場合は入渠させる必要があるが、それをせずに解体するのがこのブラック鎮守府の提督だ

 

そして提督に反する艦娘は全て解体される。それは熟練の艦娘とて例外ではない。が…それ以上に提督は残忍だ。

提督に反する艦娘に姉妹艦がいた場合は、容赦無くその姉妹艦をも解体するのだ。

 

万一熟練の艦娘を解体したとしても、直ぐに他の艦娘の無茶なレベリングに向かい、作戦に間に合わせる。それがこの提督のやり方…

 

因みに我らが提督はそれをしない。理由は色々あるが、その中で最も分かりやすいのが非効率的だと考えているからだ。

そして先程の彼女達にに感情がいらないという事…提督は逆に感情があってこそのメリットの方を重要視しているので、これに関しては気にしていない。どちらかというと無関心の方だが…

 

所詮上司と部下の関係。他の鎮守府では彼女達と一線を越える場合もあるらしいが、この提督はそんな感情は持ち合わせていない。彼女達の事は深海戦艦を打破する兵器と見ているからだ。

 

彼女達を指揮する提督。それが自分の仕事なら、与えられた役割を果たすべき、彼女達に与えられた深海戦艦を打破するのが役割ならば、彼女達はそれを行うべき。だからこそ提督は秘書艦を付けない。そういう役割は自分の役割だと割り切っているからだ。

 

「ありがとう少佐、これと僕が持ってる情報を合わせると…うん、思った通りだ」

 

提督が渡した書類を一通り見終わったら、ブラック鎮守府の提督は一つの紙を手渡した。それはブラック鎮守府の提督が集めた例の海域の情報だ。

 

「これは…羅針盤の?一体どうやって…」

 

書かれていた情報の一つに、羅針盤の固定条件が書かれていた。まだ海域に本格的に出撃してないのにも関わらずにだ。だがその理由はすぐに分かった。

 

「捨て艦さ、余った駆逐艦を単身突撃させたんだよ。それ以外にも潜水艦、軽巡、重巡、空母、軽空母、戦艦の余った者も含めて擬似的な連合艦隊も作り出して、何度も何度も偵察に向かった。戦闘記録、羅針盤の結果。羅針盤の固定条件もある程度分かってきたんだ」

 

自分のように軽空母を主体とした編成による偵察ではなく、単純な特攻…いや、情報の為の生贄…。

 

「貴重な情報ありがとうございます」

「この情報の報告は僕に任せてくれ」

「了解です」

「うん…じゃあ僕はこれで」

「そうですか、なら今お送りを」

「いらないよ。道は覚えてるしね」

「分かりました。道中お気を付けて」

 

ブラック鎮守府の提督は帰って行った。そして提督は彼から聞いた情報を整理し、自分の物と照らし合わせてみた。

羅針盤の条件やフラグシップ級のおおよその数と戦闘頻度。姫級系統の深海戦艦の有無…確かに素晴らしい。が自分の情報はまだ不完全…これで満足はしていられない。

 

「しかし捨て艦か…そんなものは時間の無駄だというのが何故気がつかない…?」

 

捨て艦戦法は確かに燃費についての問題は大きく改善するだろうが、それでも出撃は出撃。場所によってはかなりの時間をかけるそれに、どの道解体するのなら直ぐに解体して他の事に時間を使った方が良い。

 

時間は有限で、尚且つどんな物より貴重だと考えている為に、捨て艦戦法は取らなかった。その分の主力艦隊のレベリングに力を注ぐ方が効率的にも優秀だろうと考えたからだ。

 

「まぁ情報については向こうが上か。これは負けられないな」

 

同じブラック鎮守府であるが為、競争意識が芽生えてくる。誰よりも速く制海権を確保する。それを目標にしている為にブラック鎮守府となった。

 

休み無しの訓練や出撃。これにより一人一人の経験を積み重ね、一人一人を確実に強くする為だ。そうすれば速く敵を倒す事ができる為に、時間をより確保する事ができる。何事も小さな積み重ねなのだと考えている。

 

「さて…これだけの情報、確かめなければならないな」

 

羅針盤の固定条件の情報を確かめる為に、自らが赴く必要がある。その為には…

 

「第一艦隊の出撃だな」

 




どちらがよりブラックかは、分かりません。両方ブラックですから。
響は一応ヴェルヌイになってますが、この提督は響と呼びます。理由は名前が変わっても響は響だからだそうです。因みにこれを直接彼女に言った所逃げられたそうです。


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第4話

ブラック鎮守府がゲシュタルト崩壊しそ…


『感娘に告げる。これより名を挙げる者はヒトヨンサンマルに執務室に来るように。吹雪、漣、電、神通、阿武隈、五十鈴。以上の感娘はヒトロクサンマルに執務室へ来るように』

 

 

羅針盤の固定条件が正しければ、これで連中のボスの元へ損害が少なく進めるルートを記してくれる。急な嵐や予想外の展開が無ければ問題は無い。念の為に吹雪、漣、阿武隈も編成した。

彼女達はこの鎮守府内でも強者の部類に入るし、特に吹雪と漣については数少ない信用している感娘だ。………信頼はしていないが。

 

そして、今回は海域のボスとは戦うだろう。大本営から下された海域の攻略戦は他の鎮守府も交えた決戦になる。

その前に連中の戦力を分析し、できれば減らす事を考えていた。

 

「だが、それだけでは駄目だ」

 

 

やるのなら、徹底に…だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いるんだろう?青葉」

「……あっちゃー、ばれちゃいました?」

「分かっていたさ、大佐と話している頃から…な」

「流石は司令官ですねぇ、青葉の特ダネ根性で磨き上げた完璧な潜伏技術を見破るとは…!」

 

青葉は話を盗み聞きしていた事を反省する事もせずにドヤ顔で言った。そんな青葉の態度に若干イラつくが、落ち着いて次の言葉を発した。

 

「御託は良い。お前なら分かるはずだ青葉。なにせ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前がここにいるということは、見つけたんだろう?今回の海域の連中の補給先が」

「勿論ですとも。苦労しましたよ〜」

 

そう、提督はただ闇雲に海域に出撃していただけではなかった。出撃させている間に第二艦隊から第四艦隊に資材の調達をさせていた提督だが、遠征先は全て例の海域付近の海域だったのだ。

 

その内の第二艦隊の旗艦を任せていたのが青葉である。何故重巡である彼女を遠征に組み込んでいたのかには、きちんとした理由がある。それは

 

 

 

 

「ええ、司令官の見解は正しかったようですねぇ。補給先…作戦予定の海域の近くにありました…そしてこれは特ダネです!青葉…見ちゃいましたよ!連中の姫級、鬼級を!」

「やはりいたか…」

 

彼女の情報収集能力と、逃走経路の割り出し、そしていかに逃げるかを計算できる能力故にだ。彼女はそれを取材と称しているが…感娘のプライベートな情報を入手し、如何に素早くその場を離れられるかを磨いた結果こうなったのは、ある意味では誤算なのかもしれない…だが今では感謝しているが。

 

そして、予想された姫級クラスの敵存在…当然と言えば当然だが…作戦前に情報を入手できたのは上々だ。

 

「確認できたのは戦艦水鬼に駆逐棲姫。それだけですがねぇ」

「充分だ」

 

今はそれだけでも上々だと提督は思った。元々深海棲艦には常識は通用しない、ならば少しでも情報を集め、少しでも勝利できるような作戦を立てるのが提督の役割だ。

 

 

「ご苦労青葉。良い働きだったぞ」

「いやぁ〜それ程でも〜」

 

褒められて気分が良いのか青葉は顔を赤くして恥ずかしそうに頬をかいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まったく…これだから感娘というのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではでは!青葉はこれにて!ご褒美楽しみにしてますよ!」

「ああ」

 

自分の内心を悟られないように、平静を保って青葉を見送る。

 

時刻はヒトヨンサンマル。少し時間ができた…

 

 

 

 

 

「く…ククク………」

 

青葉の情報に歓喜し、思わず笑みが溢れた。

これだけの情報が手元に揃った。後はブラック鎮守府の提督から聞いた情報を確かめれば、手元にあるカードは最高の物となる。

 

これらのカードは切っては損はない物。そしてこれらを如何に利用して確実に勝てる戦法を取れるか…それが提督の楽しみであった。

 

「これだから、提督は止められない…!」

 

深海棲艦との戦い。感娘というピースをどれだけ上手く運用し、敵を追い詰め、撃破するか。

 

遊びではないのは分かっているが、どうしても…この時だけは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったぜぇ!これで彼奴らに勝てる!感謝感謝俺の感娘マジ感謝!!今は無理させてっけど我慢してくれよー!俺は絶対勝たせるからな!いやっふぅぅぅ!!!!」

 

 

素に戻る。

 

実は提督は感娘の前では絶対に冷酷なブラック鎮守府の仮面を付けているが、ある拍子に素に戻ってしまう。

 

「あんなブラック鎮守府の提督ヤローに負けてたまるか!勝つのは俺達の感娘だ!その為なら俺はブラックにでも喜んでなる!その代わり感娘には必ず勝利を約束する!」

 

それが提督の誓い。必勝…それを成す為に感娘全ての練度を上げ、どんな状況にも対応でき、必勝の作戦に対応でき、彼女達に必ず勝利をもたらす…それが提督である彼の本当の役割だと彼は考えてる。

 

その為なら喜んで黒となろう。その為なら喜んで彼女達に恨まれよう。その代わりお前達には最高の勝利を約束しよう。それが提督の誓いだ

 

 

「今回の勝利はなるべく多くの情報を持ち帰る事!できるなら姫級を引きずり出したいな…その為には遠征部隊を削って別働隊を出す必要があるな。それも…時間差で」

 

第一艦隊で羅針盤さえ固定できれば、その時のルートを割り出す事ができる。ただし時間が限られているが。

その限られた時間で他の艦隊を向かわせて、一網打尽にする。それが他の鎮守府では行われていないローテーション戦法と呼ばれるものだ。

 

この戦法は感娘同士の連携が重要になってくるために、普段から必要以上に演習をする必要があった。そしてその演習成果を発揮するために、普段から出撃をこなす必要もあった。

 

ありとあらゆる戦法を取ってきた感娘達は、誰もが強い…百戦錬磨の艦隊だ。勿論艦種毎に強者もいる…それが吹雪、漣、阿武隈だった。

 

そしてその戦法に使う艦隊だが…第四艦隊は流石に削れない為、第二艦隊と第三艦隊を出撃させる事を決めた。

 

「第一艦隊は旗艦を阿武隈にする…水雷戦隊でかく乱してから、第二艦隊は…よし、空母機動部隊なら援護にうってつけだ。水雷戦隊の離脱時にも援護できる。第三艦隊には……」

 

 

第一艦隊でかく乱し、相手の陣形が乱れた所を空母機動部隊で援護、殲滅する。万が一残った場合、敵が此方を追撃してきた場合の事を考える。

 

「まず低速艦は論外だ。他の高速艦の足を引っ張ってしまう。よって戦艦は金剛型がベースとなる…うん、これだな」

 

 

 

「第三艦隊には金剛、霧島、榛名、北上、大井、木曽を入れた奇襲かつ戦艦による集中放火…これで恐らく…」

 

決着は付く。そう確信した

 

 

 




この鎮守府ではレベルをカンストしてもケッコンカッコカリはしてません。

強者の感娘は吹雪、漣、阿武隈以外にもいます。


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第5話

今回は少し短いです…


 

海域攻略作戦。先行隊として軽巡阿武隈が旗艦を務める第一艦隊を先行させ、羅針盤のルートを割り出し、そのルート通りに第二艦隊、第三艦隊を発進させるローテーション戦法。

 

これによって海域の情報を手に入れ、必要ならば敵艦をできるだけ殲滅させる事ができる。だが今回はその艦隊だけを動かす訳ではない。

 

青葉が持ってきてくれた敵の補給艦が通る進路…いくら連中でも予想以上の攻撃を受ければ少なくとも敵の戦力はそちらに向かう筈。そこで第四艦隊には敵の補給路の制圧。可能ならば敵の資材を奪う事…それを命じた。

 

第四艦隊の旗艦は青葉。彼女なら上手く艦隊を指揮する事ができる…そう信用している。

 

 

 

 

目の前の資料には分かるだけの敵艦の情報を纏めてある。これを元に作戦を立てた…そして…これは第一歩だ。敵の海域は広く…果てしない。だからこそ戦う際に敵をできる限り弱らせる必要がある。

 

 

「頼んだぞ、青葉…」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「ローテーション戦法って、何でしょうか?」

 

此度提督から言い渡されたのは、大規模な作戦に向けての本格的な情報収集と補給路の制圧。だがそれを言う際に提督が無駄に漣を鼓舞して、漣が全感娘に自慢し始めたのが原因だった。

 

「そっか、朝潮ちゃんはこの鎮守府に来たばっかりだったね」

 

そんな朝潮は、その話の中の一つ…ローテーション戦法に興味を持って、詳細を吹雪に聞いてみた。

 

「ローテーション戦法っていうのは、第一艦隊に水雷戦隊、第二艦隊に空母機動部隊、第三艦隊に奇襲部隊っていう編成をして、それらで波状攻撃を仕掛けるのがローテーション戦法。ただこれには条件があってね…まずローテーション戦法を組むにはある程度事前情報が必要なの。特に羅針盤の固定条件」

「ふむふむ」

「後はある程度練度がある感娘、そして艦隊10強の中から最低二人選出されるの」

「艦隊10強…」

 

鎮守府に来た朝潮でも、艦隊10強の存在は知っている。

その艦隊の中でも強者の部類に入る者。

10強の中でも特に実力が強い感娘。それが時雨だが、今回の編成には入っていなかった。

 

「私も早く10強になれるよう、頑張ります!」

「うん、朝潮ちゃんならきっとなれる。一緒に頑張ろうね!」

「はい!」

「じゃあ私、そろそろ出撃だから」

「はい、頑張って下さいね!」

「うん!」

 

笑顔で吹雪を見送る朝潮。吹雪もかなりの強者に入るので、彼女に憧れている朝潮にとっては彼女に早く追いつきたいと思っていた。

 

 

 

 

「いやー、美しい友情ですねぇ」

「にゃ!?」

 

そんな朝潮の後ろから出現した青葉。朝潮びっくりして変な声を上げてしまい、しまったと思った。

 

「可愛い声ですねぇ!青葉聞いちゃいましたよ〜」

「わ、忘れて下さい!!」

「まーまー、ここは青葉が知ってる耳寄りな情報一つでどうでしょうか?」

「聞きたくありません!」

「本当に良いんですかぁ?10強を超える感娘について…ですが?」

 

10強を超える感娘。その言葉に朝潮は信じられないと言ってるような表情をした。そんな朝潮の様子に満足そうに頷き、青葉は言った。

 

 

 

 

 

 

「そして、その人がこの鎮守府内で唯一のケッコンカッコカリができる感娘なんですよ〜」

「ケッコンしないんですか?」

「司令官があんな性格なので…」

「あっ………」

 

朝潮はそんな青葉の言葉に納得した。納得してしまった

 

 




10強を超える感娘…一体誰なんだ…?


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第6話

今回から敵と戦って行きます。


 

「考えるべきなのは、相手に反撃の隙を与えない事だ。速攻で片付けられれば一番いいが…姫級が出てきた場合はそうはいかないだろうな」

 

一つ一つの可能性を考えて作戦を立てる、これが提督のスタンス。

全ての敗北的要素をゼロにする為に必要な事…それを一つ一つ確実にこなす。そうする事で勝率がグンと伸びる

 

「さて…向こうの提督の情報によると…戦艦級の深海棲艦とは当たらなかったとのこと。奥に行けばいるだろうが…今回はそこまで踏み込む必要は無い」

 

情報が記された書類の一つ一つに目を通して、繰り広げられるだろう戦いに対するイメージを膨らませる。

 

空母機動部隊には加賀を旗艦とした赤城、龍驤、隼鷹、夕立。そして第三艦隊…彼女達は羅針盤の固定が済み次第出撃させる。既に第二艦隊も第三艦隊の出撃準備は整った。後は…

 

 

「提督、羅針盤の固定が完了しました」

 

作戦補佐艦の大淀から、羅針盤の固定が完了との報告。

それを聞いた提督は直ぐに第二艦隊と第三艦隊の出撃要請をした。

 

第二艦隊と第三艦隊の各感娘の名前を確認する。

 

 

第二艦隊

加賀

赤城

龍驤

隼鷹

夕立

 

出撃

 

第三艦隊

金剛

榛名

霧島

北上

大井

木曽

 

出撃

 

 

それぞれの艦隊の一番下にある、出撃のスイッチを入れる。

これにより出撃用ドックが解放され、彼女達それぞれの艤装が装備され

 

 

 

 

 

出撃する。

 

 

激しい音と共に第二艦隊と第三艦隊の感娘が出撃していった。後は彼女達が到着するまで第一艦隊の面々が耐えれば良い。万が一彼女達が莫大な損害を負ったら…

 

 

 

「いや…いらない心配か」

 

頭に浮かんだその可能性を提督は鼻で笑って否定した。そんな提督の様子を不思議そうな様子で見ていた大淀だったが、直ぐに提督が彼女を睨んだので大淀は視線を通信機材の方へ戻した。

 

そこで大淀は気になっていた事を提督に聞いてみた。

 

「提督…何故第二艦隊に余りを作ったのですか?それと…瑞鶴さんも投入しないで…」

 

 

第二艦隊に不自然に空いた穴。そして感娘10強の一人である瑞鶴…彼女を編成しなかったのには何か理由があるのかと思ったのだが

 

「それをお前に話す必要は無い」

 

提督は質問に対して答えようとはしなかった。

 

「…分かりました」

 

大淀は何度も提督と戦場を渡ってきた。そんな提督がやる事だ…大淀は提督を信じる。彼が何度も起こしてきた奇跡を…そして

 

「(信じてますからね…)」

 

彼が編成したあの子に対しても

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

海域戦…吹雪、漣、電、阿武隈、神通、五十鈴は敵艦と砲雷撃戦を行っていた。

ローテーション戦法を取る場合、援護が来るまでの間敵の攻撃から彼女達は耐えればならない。

 

「い、以外と敵の数が多いですね」

 

吹雪は敵の駆逐艦を三体同時に落としてから、事前情報よりも敵の数が多くなっていた事に気が付いた。

提督から情報はまだ未完成だからイレギュラーな事態が起こる可能性が高いとは聞かされていたが…まさか本当に起こるとは思わなかった。

 

「うっへえ、漣ちょっと船酔いを…」

「感娘なのにぃ!?」

「ナイスツッコミだねアブゥ」

「貴女達!真面目にやりなさい!」

 

そんな若干危機的状況に陥っているのにも関わらずに、漣がふざけ始めるので神通と阿武隈が注意した。その瞬間

 

 

「五十鈴さん!後ろなのです!」

「なっ!?」

 

 

五十鈴の後ろからフラグシップ級の駆逐艦が姿を現した。

そして

 

 

五十鈴のいた地点が、爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何…心配する必要は無い」

 

提督は感娘の艤装に、妖精に無理を言って付けてもらった防水カメラを通して戦場を把握する事ができる。

臨時で来る戦況を見て、その場に合った指示を出す。どんなイレギュラーにも対応できるように

 

そして吹雪からもたらされた敵の数の多い場合…この場合は想定内だった。だから旗艦の阿武隈に指示を出そうとした。

 

だがその前に五十鈴が狙われた………が

 

その場所は

 

 

 

 

 

 

「お前がいるなら、そんな心配は無用だな」

 

 

 

駆逐艦の身でありながら、昼戦にも関わらずに戦艦級と殴り合う感娘がいた。

 

 

 

 

 

 

『勿論です、司令官』

「ふん…」

 

 

彼女によって五十鈴は、駆逐艦イ級が砲撃する前に文字通り殴り付けた。同時に魚雷を発射してイ級が吹き飛んだ先に強力な一撃を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「阿武隈、漣。お前達が10強と呼ばれる所以を見せてやれ」

『はい、司令官!阿武隈、ご期待に応えます!!』

『おおお!!!ktkr!!!漣の本気を見せる時がキター!!!!』

「毎度思うがそのテンションどうにかならんか…神通、五十鈴のフォローを頼むぞ」

『了解です、さ…五十鈴』

『う…ご、ごめんなさい』

「電は索敵をしつつ魚雷をばらまけ。増援が無いとは考えられないからな」

『はい!』

 

布陣は出来上がった。後は第二艦隊と第三艦隊が来るまでの時間稼ぎだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ご主人様、時間稼ぎなのは良いけれど…別に倒してしまっても構わんのだろう?』

「後で吹雪に吹き飛ばされる覚悟があるならな」

『漣ちゃん、真面目にやろ?』

『はい、ごめんなさい吹雪さん』




駆逐艦が駆逐艦してない件について


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第7話

バトル回です。


吹雪が改ニになった際に新たに装備されたのが手で持つタイプの主砲だ。改以下の時には持ってなかったこの装備を利用する事で、人間で言うハンドガンタイプの装備となった事だ。

 

そして、吹雪はそれを使い相手の深海棲艦を一体一体確実に仕留めて行く。昼戦にも関わらずにだ

本来駆逐艦は夜戦で真価を発揮する艦だ。だが艦隊10強に入る駆逐艦…漣、時雨はその常識を超えた戦闘力を持っている。駆逐艦なのに昼戦で戦艦級を落とす彼女達は駆逐艦の姿をした戦艦や!と駆逐艦と良く間違われる軽空母が言っていた。

 

だが吹雪は10強には入っていない。なのに何故そんな芸当が可能なのか?それは彼女が誰よりも戦場を駆け抜けた初代感娘だからである。

 

故に10強でないにも関わらずに、10強と同クラスの戦闘力を発揮できる…

 

「うわぁ!?」

「ッ!!」

 

しかしそんな吹雪でも、数の暴力には敵わない。

10体20体敵を倒した所で、それは相手の艦隊の一部にすぎないからだ。

 

 

 

 

そんな光景を提督は見ていた。そして同時に左手でモニターを、右手で書類にペンを走らせる

 

左手のモニターで作戦を纏め、右手のペンでその状況の一つ一つを記録していき、敵の情報をまとめていく。大淀は提督から下された指示を元に残弾、燃料を確認していくのだ。

 

「提督、吹雪さんが無茶をしすぎたようです。他の皆さんに比べて弾薬と燃料が足りていません。他の皆さんもこのままでは…」

「想定範囲内だ」

 

提督は大淀の報告を受け、即座に左手を伸ばした。

それは第二艦隊の枠。そこに余った感娘を投入した。

島風…40ノットの速力を出す彼女を

 

「島風、出番だ…予定通り資材と弾薬を入れたドラム缶を持たせる。現地で補給させろ」

「そんなっ!?いくら何でも無茶苦茶です!」

 

遠征でドラム缶を使用して普段より多めの資材を持ち帰る…それが本来の役割なのに、現地補給の為にドラム缶を持たせる…装備も何も無いというのに

 

「第一ドラム缶に資材を入れたら機動力が!いくら島風ちゃんでも」

「島風には速度がある…相手の砲撃なんぞ幾らでも回避できる」

「なっ!?」

 

提督は言った。幾らでも回避できると

それは、暗に提督はこう言ってるのだ。回避できなかったら、そのまま戦場で散れと

役立たずはいらない…と

 

「駄目です!これは偵察なんですよ!?こんなリスクが高い戦法なんて」

「黙れ、指図は受け入れん」

「いいえ!言わせて貰いますがー」

「行け、島風」

「だっ、駄目です島風ちゃーーー」

 

 

 

 

大淀が止める前に、猛スピードで島風が出撃した。

止められなかった…こんな無謀とも言える作戦を…

 

「提督…今回ばかりは許せませんよ」

「何を言う?今まで俺の作戦を身近で見てきたお前が言う言葉か?」

「だからこそ、信じられないし…許せないと思います…この事は上層部に報告させていただきますからね」

「…好きにしろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

島風が装備しているのはドラム缶一個と照明弾と、連装砲である。

今回提督から事前に貰っていた指示は、交戦している海域の少し離れた場所…そこで

 

 

「ここだね」

 

照明弾を上げる。

 

それは、ある場所への合図。到着したという合図を空へ上げる。

そしてそれは、敵艦へと自分の位置を知らせる行為。

野戦ではないが、照明弾は目立つのには十分すぎる光量を放つ

 

案の定、吹雪達と戦っている深海棲艦を援護しようとした敵艦が島風に向かっていった。その数およそ15…だが

 

 

 

 

 

「提督の狙い通りですね」

 

 

その深海棲艦を狙い撃ちにする艦隊がいた。

 

 

第二艦隊…空母機動部隊

 

彼女達の艦載機は、全ての敵艦に向け魚雷を発射し、瞬く間に敵を殲滅する。

そして残ったのは…深海棲艦の残骸だった。

 

「やりました」

「うん…上々ね」

「やっぱ違うねぇ、軽空母と正規空母はさ」

「そんな事は無いですよ?隼鷹さんと龍驤さんも、私と加賀さんが撃ち漏らした敵艦を見事轟沈させたので…助かりました」

「そんな褒めんといてやー」

 

そして、彼女達に近づく影がいる。

その影は、青葉達第四艦隊だった

 

 

「おー、また派手にやってますねぇ」

「あ、青葉!おっそーい!!」

「厳しいですねぇ島風ちゃん、はい。これは私の燃料と弾薬です」

「作戦は成功したのね?」

「勿論ですよ、そのおかげで敵の資材がザックザク!ドラム缶を使えば第一艦隊の補給もできますよー」

「なら…タイミング的にそろそろかしら?」

「そうですね、そろそろ第三艦隊の奇襲部隊と入れ替わる頃じゃないでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「…………」

「よし、第三艦隊と交代しろ。第一艦隊は島風と第四艦隊の青葉の持つドラム缶から資材と弾薬を補給しろ。補給が済み次第、第三艦隊と合流し、残存する深海棲艦を殲滅し、速やかに離脱せよ。この際に第二艦隊は決して敵を第一艦隊と第四艦隊に近づけるな」

 

完全に予想外の展開だった。

第四艦隊を敵の補給路攻略戦に向かわせる…そして制圧が済み次第、彼女達に敵の資材を回収させ、それをドラム缶用員の島風と青葉に補給させる…

第二艦隊が二つの部隊を援護して、第三艦隊が奇襲、殲滅を行う。

 

第四艦隊の編成を見たが、その編成を見て二度驚いた。恐らく万が一の事を考えてだろう…第四艦隊には最強と言える感娘を投入していた。

10強のうちのトップ3、その全員を編成に組み込んでいたのだ。

 

「どうだ?大淀」

「…何を勝ち誇ってるんですか?今回は完全に運が良かっただけでしょう」

 

そう。この作戦は運が良かったから勝てたと大淀は考えていた。

もし制圧に時間がかかってたら?もし援護が間に合わなかったら?もし相手に姫級がいたら?考えられる要素は幾らでもある

 

「確かに運が良かったから勝てたってのはあるかもしれん。だがその運を勝ち取るために俺は最善を尽くしたつもりだ」

「後になったら幾らでも言えます」

「ふん…」

 

提督はギロリと大淀を睨むが、大淀もまた提督を睨み返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて言っておきます提督…私は貴方が嫌いです。殺したい程に」

「その怒気を俺じゃなく、深海棲艦にぶつけるんだな大淀」

 

 

 

 

こうして、大規模な海域偵察作戦は無事成功した。




ブラック提督が感娘に嫌われるのは当然です


艦娘なら別でしょうが…


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第8話

タグにヤンデレを付けるべきか迷ってるこの頃


「大淀」

「何ですか?」

 

自分の立てた作戦は自分が思いつく限り最善を尽くした…なのに大淀が散々駄目出ししてきたので内心結構ショックを受けていた。そんな事から提督はある事を考えた。

 

彼女の言ったことは『もしも』を想定した物ばかり…そんな事に対して一々手を回していたら、資材が幾らあっても足りないし、何より一つ一つの海域にかける時間が増えて、全体の攻略が遅れてしまう。

 

石橋を叩いて渡るのは良いが、叩きすぎても結局遅れるだけ…そう考えた結果攻略する海域には万が一を考えていつの間にか呼ばれるようになった感娘10強のうち2名を編成に入れるようにしている。10強ならばレ級クラスと交戦しても艦隊を生き残らせる可能性が高いからだ。それを2名も編成している時点で過保護かもしれないが…

 

そして、データ上で最も最強の感娘も今回編成しておいた。大規模な作戦は何が起こるか分からないし、幾ら最強の感娘であっても燃料や弾薬が尽きたら戦えないので、島風と青葉に補給させる戦法を取った。そして確保した補給路に今天龍を筆頭とした遠征部隊を向かわせている。

 

後の事も考えた作戦に不満があるというのなら…仕方がないと提督は考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前…俺の代わりをしろ」

「…は?」

 

 

大淀は唖然とした。手にしていたワッフルを思わずおとしてしまうくらいに…驚いた

彼女は理解できなかった。彼が何を言ったのか

 

「俺に文句を言うのなら、お前は相当できるんだな?俺以上の戦果を…上げられるのだな?」

「えっ?えっ?」

「本来感娘にはそういう仕事はさせたくないのだが…お前が俺以上に提督業に向いているのなら、話は別だ」

 

提督はこう考える。大淀は提督がやる仕事を知らないから難癖を付けてきたのだと…まぁやらせなかったのは自分だが

 

だからこの際大淀には提督業を押し付けてみて、彼女がどうするのかを見てみたくなった。

そして本当に彼女が提督に向いているのならば、そのまま彼女に提督として着任させるのも悪くはないとも考える。

優秀な人間が上に立つべき…提督は常にそう考えているのだから

 

 

「お前がどうするのかを見させてもらうぞ大淀」

 

 

 

そう言い残して、提督は執務室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冗談ですよ…ね」

 

 

 

 

執務室にいる大淀の表情は、後悔と絶望に包まれていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「いきなり収集命令なんて…どうしたんでしょう?」

「きっと雷に頼りたいけど、二人きりだと頼れないからこんな大舞台にしたのね?司令官ったら照れ屋さんなんだから♪」

「それはあり得ないと思います。データ的に考えて」

「ヒェー」

「まーた比叡が鳴いてるネー」

「ヒェー!?」

「そのヒェーヒェー言うの飽きないっぽい?」

「夕立がぽいぽい言うのと同じだよ」

「睦月ちゃんがにゃしにゃし言うのと同じっぽい?」

「そうそう」

「勝手に睦月のキャラを解説しないで欲しいな!?」

「睦月ちゃん素になってるよ」

 

感娘達は本来自由時間には、全員が部隊内の演習や特訓、相手がどんな体勢で来る時や予想外の事態に対してのイメトレや話し合いを、それぞれ行っている。勿論それは提督の命令だからだ。

 

提督は自由な時間があればそれを利用して学ぶべきだと考えているため、彼女達が出撃や遠征に出ていなければそうさせている。

その為普段出撃しない感娘でも練度が上がり、出撃部隊が何らかの事情で出撃できなくなっても代役を務められる。それも十分な程に

 

そんな自由時間を削ってまで提督から一言ある…そんな事は大規模な作戦がある位だ。

しかしその作戦はまだ先の予定…ならば一体なんなのか?

そんな事を話の種にして感娘達はワイワイとしていた。

 

「そんな事よりより効率的な戦術やあらゆる敵に対しての経験を積む方が先です。五航戦の子には負けたくないので」

「それ瑞鶴ちゃんだけやん、翔鶴さんおらへんし」

「てか、加賀さん見事に負けてるしぃ〜」

「非常に頭に来ました」

「う、うーちゃんをどうする気なんだぴょん!?」

「撃ちます」

「ねっのひっだよー♪」

「唐突な子日に漣草不可避ですよーこれ」

 

 

「はぁ…キャラに飽きちゃいました」

「比叡はそれが一番ネー」

「飽きるの早いですね!?」

「今誰か早いって」

「島風ちゃん落ち着いてよー」

 

 

雑談に花が咲いてきた所に

 

 

 

 

 

 

 

「諸君、集まっているな?」

 

提督と大淀が現れた。

 

それだけで、艦隊の空気が凍った。先程のワイワイとした空気が凍ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(え?何で大淀と一緒に出てきたんだい提督?秘書艦は付けないんじゃないのかい?僕ですら一度もなってないのに)」

「(ほう…これは酷いな…色々と…)」

「(………へえ)」

「(あら?何ですか?誰ですか隣の人?死にますか?あ、大淀さんですねあの人…酸素魚雷ぶち込みましょうか)」

「(………阿武隈…ちょっとイラついてきちゃいました)」

「(気が付いたらご主人様が寝取られてた件について)」

「(暑さで視界がやられたか…?これは瑞雲を整備しなければ…)」

「(あら〜スキャンダルどころの騒ぎじゃないですね〜…………埋めちゃいましょうかねぇ)」

「(大淀さん…100m位の深海に…案内しましょうか?)」

「(てっ、提督…そんなっ!?計算上ツンデレ気質のあの提督がっ!?…これでは提督☆ハーレム計画がおじゃんに!?)」

 

10強の内8名程の目に光が灯ってなかったが、それに気がつく者は一人もいなかった。

 

そんな感娘の状況なんて知らずに、提督は宣言した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより3日間、俺は鎮守府を留守にする。代わりに大淀を提督代理とする!よってこれまでの俺の方針は取り止めとし、彼女の方針に従う事!以上だ!」

 

 

 

 

更に、空気が凍った。

 

「では大淀、後は頼む」

「ちょっ!?待てよお前!」

「天龍…お前はやめろと言った筈だが?」

「ぐっ…て、提督!どういう事か説明しろ!」

 

天龍の疑問は最も…そしてその疑問は感娘全員…いや、一人を除いてそう考えていた。

提督が理由も告げずに鎮守府を留守にする。今まで大本営や他の鎮守府に赴く事はあっても、提督代理は決して作らなかった彼がだ。

 

「理由か…それは簡単だ。大淀が俺より優秀な指揮を取れると言ったのでな、それを見極める為に3日間留守にし、3日後に改めてまた来る事にした。その間俺は大本営で作戦の立案でもしている」

「なっ……!」

 

天龍は…いや、一人を除いた感娘達は全員更に驚愕する。そして…

 

 

「あんた、私達を見捨てる気?」

「あんたじゃないぞ?曙、それに見捨てる気は無い。現に彼女が有能だった場合にはお前達をより扱えるという事だ。それを確かめる為の3日間だ」

「クソ提督より優秀?そんな保証はどこにあるの?」

「クソは付けるなと何度言わせる…それに保証はある。先日の俺の作戦に訂正を求めた程だ。相当できる筈だ彼女は」

「ふぅん…」

 

提督の説明で曙は納得したのか、それ以上追求はしなかった。だが彼女は依然難しい表情のまま佇んでいる。

 

「俺の方針を取りやめるため、普段の演習や訓練も無しにする。ただし大淀がそれを行うと判断すれば行って良いが…な」

 

そう言いながらチラリと大淀の方を見るが、大淀は提督の視線に気が付くとギロリと睨み返してきた。

 

「元気が良いのはなによりだな。ではこれより解散とする。これからは大淀提督に従う事。それが俺の最後の命令になるかもな」

「了解です、司令官」

「ふっ…」

 

提督の最後の命令…それに対して了解ですと応えたのは、吹雪だけだった。

それを見た提督は満足そうに去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、提督が去った直後に大淀は顔から血の気が引くのを感じた。

提督の事を嫌っているのは事実だが…彼よりも優秀と彼自身から言われ、いきなり代わりを任される事になった…まさかこんな事態になるとは思っていなかった。

非常に、非常に…後悔していた。

 

 

 

「ではご命令を、司令官」

 

吹雪がそう言ってくれるのが、何よりの救いだった。だが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうね…とりあえず何か指示をちょうだい?クソ提督代理さん」

「そうですね、提督代理」

「チッ………」

「天龍ちゃん?ちゃんと提督代理の言う事は聞くのよ〜?」

「わかってるよ!」

 

思ったより、前途多難だと大淀は思った。




10強でバレバレなのが約一名程いますねぇ

地味に強さ順で並べてる10強の心理状況でした。これからどうなる大淀ちゃん

因みに猫被り睦月は睦月語使用して、アニメ版睦月が素な我が艦隊の睦月ちゃんでした


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第9話

この度は投稿が遅れてしまって申し訳ありません。
学校が始まった影響で今までのペースで投稿するのが難しくなりそうです。ですが最低一週間に一度は更新します。


大本営…そこには大将三人の内一人がいる。提督は大淀に鎮守府の運営を任せ、大本営に向かい本格的な作戦会議…の前にその人物に会いに来た。

だがその前に提督はある人物に連絡をしていた。それは彼と同期の者であり、彼が唯一心の底から信じられる人物である。

 

「もしもし…海都だけど、今大丈夫?」

『うん大丈夫だけど…どうしたの?』

「君の力を借りたいんだ。今俺の鎮守府でちょっとしたクーデターが起きてさ…」

『えー…嘘ならもう少しマシな嘘をついてよ』

「嘘じゃないって、その証拠に君の感娘に聞いてくれよ!」

『うぇ…怠いなぁ…』

 

実はこの提督の同期は、酷いくらいのニート精神を持っていて、今までの大規模作戦でも余程の事が無ければ前線に出てこないという問題児であったのだ。

 

だが一度此方に苦戦の色が見え始めてくれば、彼女の第一艦隊がその真価を発揮する。出撃勝利率は驚異の95%。その実力は正に歴戦の猛者である

 

何より彼女の特徴は、仕事をしてなさそうに見えるが実は各鎮守府に感娘を派遣、新人提督や感娘の教育に当たらせているとの事。通常の出撃は行わない分裏方に徹するのが彼女のスタイルだ。もっとも仕事を秘書艦任せにするのが駄目だが…

 

「怠がってないで聞いてくれよ、実は……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『にゃりゅりゅ〜…でもそれって君も悪いじゃん?真面目すぎな君がそんな事すりゅなんて〜、下手したら軍法会議だじぇ?提督が仕事を放棄するなんてさ』

「そ、そうだけど!大淀が」

『言い訳しないの』

「うぐ…」

 

理由はどうであれ提督の仕事を放棄し、大淀に鎮守府の運営を押し付けたのは事実。その事は提督が全面的に悪い。その事は提督も良く分かっていた。

電話越しに聞こえる声も少し怒気が込められている気がして、提督は冷や汗をかき始めた。

 

『まぁやっちったのは仕方ないか…面倒だけどさー…一応私も二航戦サンド向かわせるからさー、ブッキーに宜しく伝えてねー』

「名前で呼んでやれよ…」

『これは私なりの信頼の証だよー提督君』

「そうかい」

『そーなのだー、ところでさー、いつまで秘書艦付けないで…ブラック鎮守府のまんまで入る気なの?』

 

彼女からのその一言がきっかけで、提督の歩みが止まった。

それは、提督が思い出したからだ。そうなるきっかけの出来事を…

 

『ま、いつまでも引きずってんのは良くないよー?んじゃばいにゃらー』

 

そうして、彼女との通話は切れた。

電話が切れた後も、彼はそのまま動かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仕方ないじゃないか、そうするしか…なかったんだから」

 

普段感情を見せない彼が、その日は珍しく悔し気な表情を浮かべ、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「信頼の証がそれなら…なんで俺の事はいつまでも提督や名前呼びなんだよ…結構くるぞこれは…」

 

 

この男、実は思い人がいたりする。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「ふぅ…」

「お疲れ様です、大淀司令」

「え、ええ…」

 

提督に命じられて提督代理を務め始めて2日。彼の代わりに提督業を始めて思った。

これは、想像以上にきつかった。先ず資材の管理、出撃や遠征をするにもこれを管理しなければ始まらず、出撃や遠征の際に消費する数を計算し、尚且つ最低限のかつ最適な量を常に管理…補給しなければならない。

 

そして出撃の際の編成や作戦。そして出撃の際の鎮守府の感娘達の運用や遠征…あの提督がやっていたように空いた時間は強制的には働かせない。当然オリョクルもやらせてないが…そうなると資材がどうしても減る一方となってしまいがちだ。

 

大規模作戦の為にも無駄に資材を使えなく、かつ作戦地域近辺の敵を殲滅する必要もある…

何より常に最悪の事態を考えながら行動すると、どうしてと10強が主体となった編成になりがちだ。提督は最低二人だったが…大淀は最低三人。その最低も最近は四人に増えてきていた。それはつい先日の出撃で深雪と電が大破したためだ。

 

彼女達を守る…誰も沈めない。そんな作戦を考えようにも、上手く作戦が決められず結局10強によるゴリ押しが目立ってきていた。

 

「提督業って難しいですね…」

 

しかもその仕事の役半分は吹雪が担当していた。彼女が秘書艦としてサポートしてくれなければきっとこれ以上に失敗していただろう。

 

そういえばと、大淀は思い出した。

提督の事は初期の頃から知っている。だからこそ…知らない事があった。それは…提督がブラック鎮守府になった原因。その時はまだ提督が新人の頃で、感娘も吹雪とあの感娘以外は大淀と明石しかいなかった頃。

 

提督が大本営に呼ばれ、間宮と伊良湖を連れて来たすぐだった。彼が今までの運用を廃止し、ブラック運用を採用、そして必要以上に感娘と関わらなくなり、他の鎮守府から感娘を奪い始めたのは。

 

大淀は彼がこうなった理由を知らない。故に彼が変わった事を酷く嘆き、そして拒絶した。だが事実を知らず彼の仕事を偶然にも知る機会があったこの時、ふと大淀は吹雪に聞いてみたくなった。彼が変わった理由を…

 

 

「ねえ吹雪ちゃん、提督がこんな体制にした原因って」

「駄目です大淀さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それ以上駄目です」

 

 

 

突然吹雪の様子が変わり、書類の束を片付け始めた。

 

「駄目ですよ?本当に駄目です…………ええ駄目ですよ駄目ですよ?知ろうとしたら駄目です」

「っ…!」

 

ぶつぶつと駄目ですと連呼しながら書類の束を片付け始めた彼女に、大淀は恐怖を覚えた。そしたら

 

 

 

 

「失礼するクマー、お客さんが来たクマ」

「そ、そう?えっと、ど、どなた?」

「横須賀の提督クマ、二航戦連れてやって来たクマ…いや、引きずられて来たクマ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ!観念して下さい!もう目の前ですよ!」

「やだやだやだぁ!鎮守府帰ってガッサのスカート捲って遊ぶんだー!」

「私の口癖真似ないでよ!」

 

 




この度は遅れてしまい…申し訳ありません!本当に…


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第10話

季節の移り変わりの影響か、熱出して寝込んでしまい投稿遅れてしまいました。これからはペースを戻してきたいと思います。


大前提として、提督業を行う人物は優秀でなければならない。感娘達は外見は少女や女性のそれだが武器を持ち、編隊を組み、敵を殲滅するれっきとした部隊なのだ。その部隊を動かすのにも資材が求められ、如何に最低限の資材で殲滅できるか?資材を調達できるか?また上手く彼女達を動かせるかが重要となる。

 

提督はその点では優秀ではあるが性格に難があった。それは今は語るときではないが…だがこれだけは語れよう。

彼は不器用なのだ。それも物凄い…

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは?」

 

大本営、そこに提督はやってきた。

理由は大淀に提督業を一時的とはいえ任せている間に自分も何もやらない訳ではないと思い、大本営で作戦に必要な情報を得るためであった。

 

戦術を立てるのには先ずは敵の情報、海域の情報が戦局を左右すると考える提督ならではの発想だ。そのために大本営へ趣き、そこで元帥の右腕とされる大将に会っていた。そして提督は大将から何枚かの資料を手渡された。

 

「それは海域周辺の深海棲艦の情報だよ。大規模な作戦だから必要だと思ってね」

「なるほど」

 

そこに書かれていた情報は、敵の深海棲艦の主な編隊であった。それも自分だけではなく他の鎮守府が集めた情報も。

 

他の鎮守府が集めた情報は自分が集めた情報と大差ない所もある。自分が知るブラック鎮守府は自分と同等かそれ以上の所もちらほらと見えた。まぁ自分と同じブラック鎮守府だから当然だとも思う。

 

だがある項目を見ると、それまで読み流していた目を留め、手を止めた。

 

 

「こいつは…」

「君は他のフラグシップと遭遇しても、これには遭遇してなかった筈、今回は確かに姫級の奴もちらほら見えるけど…今回はそれ以上に厄介だよ…」

「待って下さいよ、なんなんですかこれ…」

「情報は確か、これは僕が体験したから…元帥と大将、そして君にしか公開してない、今公開したら間違い無く混乱するから」

 

それはそうだと思う。現にこの資料に書かれている情報提供者の名前には目の前の雨宮大将の名前があるから…だからこそだ。だからこそ信じられない

 

 

 

 

 

 

 

「大将の第一艦隊が…たった一体のレ級によって全滅?」

「ただのレ級じゃない、あれは…何て言えば良いか…そう、敵の切り札、悪魔…そう呼ぶべきかな。まさかレ級のフラグシップ級がいるなんてね…」

 

フラグシップ。通常の深海棲艦よりも強く、凶悪な深海棲艦。深海棲艦の主な艦種…例えば戦艦タ級、これがフラグシップとなると姫級よりは弱いが数が揃うと姫級以上に厄介な存在として立ち塞がる。深海棲艦の最終形態とも呼ばれていた。

 

今までレ級のフラグシップは現れてなかったが…ここに来てとうとう姿を現したのだ。

 

「正に悪夢…身震いしたよ…」

「………」

 

確かに悪夢だ。レ級はただでさえ10強、それもトップ3でしかロクに相手ができない奴。ましてやエリート級となると10強最強の時雨くらいしか対応できない程に…これでは単純な戦力差では勝てないであろう…単純な戦力差では

 

 

「君に話したのは…分かるよね?」

「ええ…10強を用いて勝利しろ」

 

だがそれでも隙はあるはずだ、幸い10強には開幕雷撃が可能な阿武隈、そして潜水艦、雷巡がいる。戦術を上手く立てられれば実力差は幾らでも埋められる。

まだ開幕雷撃で削れるかは判らないが…だがここにある情報が確かなら恐らく通用する。ならば…

 

「違うよ、君の自慢の10強じゃあ勝負にはなっても勝利にはならない。君が軍師と呼ばれていてもね」

「お言葉ですが大将、私の感娘は優秀です。彼女達を私が上手く動かせられればフラグシップのレ級をある程度は削れるかと」

 

自分が倒しきれなくても、横須賀のあいつなら引き継いでくれる。それに大将もきっと…

 

 

 

 

 

 

 

「僕が言ってるのは、君の切り札を使えと言ってるんだ。あの感娘を使え」

 

 

 

 

 

その言葉を聞いたとき、自分の頭の中が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「お茶が旨え」

「何しに来たんですか本当に…」

 

横須賀の提督の寛ぎぷりに同じ横須賀の感娘である蒼龍に突っ込まれる。それに対して横須賀の提督は

 

 

 

「なにをー、私だってなー」

「良いから説明しよ?大淀さんも困ってるから」

「ひどー、私だってやるときゃやるんだぞー」

 

口ではそう言ってるがこの提督、飛龍のふかふかな膝枕を堪能しながら言ってるので威厳もクソッタレも無い。しかもこいつ仰向けで寝てるから…恐らく彼女の視線の先は飛龍の豊満な

 

 

「あ、あのー…」

「あ、ごめんねー、今おっぱい堪能してたからさー、大淀たんのスケベスカートも堪能していいよねー?」

「自重して下さいよ!?」

「嫌」

 

吹雪のツッコミをバッサリと切り捨て、横須賀の提督は横になりながらも大淀に言った。

 

 

 

 

「海色君に頼まれてさー、海色君のご自慢の感娘達と演習する事にしたからー、明後日」

 

 

 

 

 

 

「「え、えぇぇぇ!!?」」

 

 

吹雪と大淀は驚き、叫び声をあげたが横須賀の提督は動じずに、ただただ飛龍の豊満な胸を見続けていた。

 

 

 

 

 




大淀は好きですよ?一応言っておきますけど
何でしょうか…好きな子の涙目…特に大淀が涙目になって「ていとくぅ」と言ってきたら心が震えたってのは…


因みにこの大淀は深層心理にはマゾの心得があったりなかったり…そんな妄想


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第11話

今更ながら評価やお気に入り登録をして下さる皆様に感謝の意を込めまして、近々この小説にてスペシャルな話を書かせていただきたいと思います。
今はまだ構想が練れてないのですが、実は話自体をアンケートしたいと思います。自由よし日常よしヤンデレよしなので、もし良い案があればアンケートの方に書き込んで下さい。因みにそれは番外編ではなく、新しい小説として書く予定です。

そっちは展開によってはシリアスですが、基本ほのぼの?です。

後今回は胸糞展開が結構あります…自分で書いててクソッタレと思った程です。


海の色は相変わらず青い…提督は海を見つめながらそんな感想を抱く。

自分の中のどす黒い感情

 

そんな感情を浄化してくれるようだと思う。

 

提督は海の色が好きだ。それが何色であっても

海はその周りの人間によってどんな色にも染まる。自然によって赤く染まる事があれば、地球を染める青色にも、そして人の手によって汚れた色にも…様々な色になる。

 

だからこそ、彼は海が…海という存在が好きだ。それは自分の名前に海が入っているからかもしれないが…

 

そして今の自分の色は…どす黒い、汚れた海の色だと思っている。だがそれは自分が望んで歩んだ道。だからこそ…非情になれる、感娘に対して非情な宣告を告げる事もできる。だが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女はきっと喜んでそれを受け入れるだろう、何よりそれは自分が良く知っているから。

一番付き合いが長い彼女だ。戦場も共にした、慣れない自分の秘書にもなってくれた。彼女は自分に全てを教えてくれた。

 

戦いの中の休息の大切さを

 

戦いにおいて何が重要かを

 

戦いで自分はどう立ち回るかを

 

そして…

 

 

 

 

 

 

轟沈の悲しさを、彼女は身を持って教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コワレテル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分にとっての初めての彼女は、あの日を境にいなくなった。

 

自分にとっての初めての少女

兵器だと聞かされても、兵器だと思っていても、彼女だけは特別だった。故に…

 

 

 

オレハキットコワレテル

 

 

 

 

 

 

ブラック鎮守府になったのは、ささいなきっかけ。荒んだ心を癒すために間宮に当たった。単純にこう言ったんだ。「あいつがいなくなったこんな世界なんてどうでもいい。今日が俺の命日だ、死体は海に流してくれ」

 

そう言ったら鬼のような表情を浮かべ、彼女は自分の頬を叩いて死ぬなと言った。

その時の間宮の言葉は今でも記憶している…けどその時は俺はまだ死に囚われ続けていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が海から帰ってくるまでは

 

 

 

 

 

 

 

 

『司令官、○○帰還しました!』

 

 

 

 

涙が止まらなかった…自分が唯一愛した感娘が、帰ってきてくれたんだ。

 

 

 

 

たとえ彼女がどんな姿になっていたとしても、それが嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

勿論彼女は練度も最高だ、10強最強の時雨でも彼女には敵わないだろう。俺が唯一、カッコカリじゃない、本当の結婚を望んだから

 

 

 

 

 

 

 

アア、オレハモウクルッテル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからだ。俺は彼女のような犠牲を出さない為に、あえて修羅の道を歩く事にした。

感娘を兵器と思い、日夜訓練付け、遠征の為のスケジュール、そして待機中の感娘の行動の徹底管理を。

それについて来れる感娘を全鎮守府から集めた。同じブラック鎮守府から…自分が付いて来れると判断した者のみを。その中でも特に優秀であり、恐ろしい目にあってきた者がいる。それが10強だ

 

彼女を旗艦とした部隊が全滅。その際に鎮守府の提督に見放され、口では言えない位の酷い仕打ちを受け、最後に解体すらされずに海に捨てられた時雨。

 

駆逐艦というだけで姉妹艦全員を捨て艦戦法のために轟沈させられ、彼女自身は放置させられていたが、やがて自分の番が来た時に、その鎮守府から逃げ出した響。

 

空母を捨て駒扱いとした出撃の際に、姉に庇われ唯一生き残ったは良いが、その後生きる意味、目的を失っていた瑞鶴。

 

その鎮守府に所属していた全員を文字通り犯され、姉妹艦全員の精神を崩壊させた提督を殺し、行き場を無くしていた大井。

 

度重なる出撃、無茶な戦闘、入渠もさせず、海域に赴き、後一歩のところで轟沈…する筈だったが、自分達の第一艦隊に救われた阿武隈。

 

ウザいから。好みじゃないから。それだけの理由で他の鎮守府に押し付けられ、挙げ句の果てにその鎮守府の提督に犯され、生きる希望を失っていた漣。

 

海域攻略中に提督に見放され、孤立…それでも最後まで戦い抜き、鎮守府に帰還するが…その鎮守府の提督から使えないという理由だけで解体命令を下された日向。

 

その情報収集能力のせいで、日夜働き詰め。寝ることなど許されない、一秒でも睡眠すれば一日拷問を受け、また働かされる。過酷な生活を送っていた青葉。

 

潜水艦というだけで二週間補給も無し、入渠も無し、鎮守府に帰ることを許されず常にオリョールを潜り、一人だけの孤独な任務を遂行していた168。

 

戦艦として活躍し、栄光も手にしていたが…提督による感娘同士の殺し合いを命令、拒否はしたが、その場合にどうなるか分かるか?と脅され、全ての感娘のバトルロワイアルに生き残り…心を壊した霧島。

 

 

10強全員が自分の方針に文句を言わないのは、自分がいた所よりはマシと考えているからだろう…多分。

 

とりあえずあの日から、俺は徹底的なブラック鎮守府、そしてそれを統べる提督へとなった。

全ては深海棲艦を殲滅する為に…………

 

そう提督は…海色海都は改めて決意した。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「なんだこれは?」

 

提督が鎮守府に帰還した時に目にしたのは、水着を来た響が帽子の代わりに鍋を被って此方を見ている姿だった。

ツッコミ所を探すのは簡単だが…先ず最初に言いたいのがあった。それは

 

「何故…水着が男物なんだ?」

「間違えたのさ」

「普通…間違えないと思うが…」

「そんな事はどうでもいいさ、それより司令官…お帰り」

 

ふわり、と優しく微笑んだ彼女に、思わず見惚れてしまうが

 

「その前に…その…前を隠せ」

「つれないな」

 

そんなこんなで、提督は鎮守府に戻ってきた。




今回は提督の過去を少しだけ振り返ってみました。勿論これだけじゃありません。
10強の感娘は嫌いじゃないです。寧ろ大好きです。

提督の前に現れた鍋響、彼女はただ…自由なだけさ



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第12話

演習ってこんな感じかな?


提督の好物は色々ある。カレーだったり納豆だったり漬物だったり干し肉だったり…、中でも特に好きなのは干し肉や漬物だ。鎮守府にある提督専用の和室でお茶を飲みながら漬物を食べるのが提督の楽しみだったりする。最近は大規模作戦の準備に追われてせいでできないが…

 

「ん?」

「どうしたんだい?司令官」

 

提督が立ち止まった事に気が付いた響が不思議そうに提督を見上げる。提督はそんな響を気にもしないである一点を見つめていた。

何があったのだろうか?と響は思い、提督が見つめる先を見てみた。するとそこには

 

 

 

「クッ………」

 

ちとちよコンビと、何故か龍驤がいた。若干龍驤が涙目なのは気のせいではないだろう。不憫だ、よりにもよってちとちよコンビと龍驤なのだ。何処とは言えないが…不憫だ。

 

そんな龍驤達を見て提督は少し、ほんの少しだけ吹き出しそうになった。それを隣にいた響が見逃す筈も無く

 

「司令官が笑うのを見るのは久しぶりだな。前に鎮守府で夕張がトンデモ兵器を開発して以来かな?」

「よく見てるが、そんな所を見る暇があれば鍛錬に励むんだな」

「それは司令官が決める事じゃないな、私が決める事さ」

 

響は10強の中でも特に癖が強く、命令を自分なりに解釈して行動する癖がある。もっとも大半が良い方向へ向かって行くのだが…それでも提督の計算外の動きは困るものだ。

響の行動すら計算に入れれば特に問題無いが…付き合いが長い提督でも彼女の行動を把握するのは難しい。

 

「響、お前は寮に戻って着替えてこい」

「了解した」

 

今回は素直に言う事を聞いたが、偶に「司令官も一緒においでよ」と言う時がある。そういう時に限って彼女は頑固になってしまう。そんな事があった事から今回素直に言う事を聞いてくれて内心ほっとしていた。

 

「(まぁ、慌てる時じゃない…ふふ)」

 

だから、提督は彼女が黒い笑みを浮かべていた事に気がつかなかった。

 

響を見送った提督は、次に鎮守府に到着しているであろう彼女の元へと向かうのであった

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お帰りー」

「ここはお前の部屋じゃあないんだが…」

 

提督が執務室に入ったら、そこには猫耳カチューシャを付けられている大淀と、マントを羽織る吹雪がいた。

 

「(大方こいつのオモチャにされてたんだろうが…それにしても)」

 

良い眺めだとも思った。あの大淀がオモチャにされている光景…内心大淀に色々とムカつく所もあったので、ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ意地悪しようと考えたが

 

「早かったんだね〜、多分明日になると思ったのに」

「ある意味予想外の事があったんでな…」

「んじゃ予定を早めて今日やっちゃいますかー?演習」

「お前の感娘が来てないだろう?まさかそこにいる飛龍と蒼龍だけでやるつもりか?」

「へーきへーき、もう来てるから」

「なら、問題は無いか…」

 

飛龍と蒼龍だけだったら心許ないと思っていたが、それなら問題無いと提督は思った。

 

「因みに全力だからねー私」

「はっ、全戦力じゃないお前なら怖くないな」

「あ、かっちんと来ましたよー、目にもの見せてやるー」

 

ぷんすこと効果音が聞こえてきそうな顔をしながら怒っている横須賀提督、全く怖くないと思っているのは我らが提督だが…飛龍と蒼龍は涙目で震えていた

 

「く、呉の提督さん!今すぐ謝った方が良いですよ!」

 

飛龍が忠告してくるが、彼女が怒って本気を出してくれないと此方が困ると考えていたのだ。

新人の育成の為にも、有望そうな彼女の為にもこいつを利用してやる…そう考えていた。

 

 

「んー、んじゃあやりますか。演習」

「ああ」

「ま、待って下さい!猫耳カチューシャ取って下さいよ!」

 

涙目で訴えてくるが、提督は無視する。それが横須賀提督との契約でもあったからだ。

 

提督は横須賀提督にもう一つ頼んでいる事があった。客観的に見てこれまでの自分と大淀のどちらが優れているかを判断して欲しいと。もし自分が優れていれば大淀をオモチャにしても良いと。

 

数々の鎮守府の育成を担当した彼女が下した判断に間違いは無い。それぐらい提督は彼女を信頼していた。横須賀提督にこれを付けられているという事は、他でもない彼女が見極めた証という事になる。自分よりも劣っていると

 

と、いう事は大淀に指揮をとらせる訳にはいかない。そして彼女が全戦力ではないといえ全力で来るのなら…

 

「(俺の編成は…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

横須賀提督と提督の演習が行われる前、横須賀提督は自らの感娘を集めていた。

 

大和、長門、飛龍、蒼龍、熊野、那智。

彼女達は提督の感娘達の中でも特に強く、燃費が悪い

 

「演習か…呉の提督とは何度もやりあっているが…中でも時雨と響には要注意だな」

「ああ、時雨は純粋に強く…響は動きが全く読めない。フッ、流石は連中のトップ3というべきか」

 

バトルジャンキーな長門と那智がそれぞれ対策を練ってる中、熊野は紅茶を飲みながら横須賀提督に質問していた。

 

「今回提督が予想できる作戦はなんですの?呉提督は感娘も強く、指揮の質も高い…正直まともに挑んだら勝ち目はありませんわ」

「うん、だから…私も本気出す」

「ほう…今回は貴様もやる気を出したか」

「当然、負けるのは嫌だから」

 

今までの怠そうな雰囲気は無くなり、表情は引き締まり多少の殺気も溢れる。演習に殺気はどうかと思うが…提督はそれ程まで強いと知ってるのは彼女でもあった。

 

「海都君は育成用の感娘を一人必ず入れてくる…飛龍と蒼龍がいる時点できっと瑞鶴ちゃんも来るはず」

「瑞鶴が……」

 

瑞鶴。その名前が出ると同時に飛龍と蒼龍の表情が硬くなる。

 

「大丈夫、二人共負けていない」

「…ありがとう、提督」

「だが瑞鶴か…となると時雨や響も来るか?」

 

長門が他の10強が来る可能性を考えるが

 

「それは無い、時雨ちゃんは強すぎるから新人さんの出番が無くなる可能性を海斗君は考える。響ちゃんは彼女の動きに対応できる経験がないと混乱するから除外。でも海斗君は私達を舐めてないから…おそらく霧島か青葉が来ると思う」

 

「漣ちゃんが来る事は…」

「こっちには飛龍と蒼龍がいる事を知ってるから漣ちゃんは来ない。漣ちゃんは航空戦にめっぽう強いから、新人さんの育成に向かないと思う」

「という事は…」

「瑞鶴ちゃんで私達の艦載機をなるべく減らして、新人さんに落とさせる…かな」

「…随分と舐めてくれますわね」

 

艦載機の相手を新人にさせる。その事に熊野は少なからず怒りを抱いていた。

 

「まぁあくまで予想、多分海斗君は私達の予想を超えてくると思う…新人の育成なら神通が来る可能性もあるしね」

「な、成る程…」

 

大和は彼女の予想について行くので精一杯だった。だがそんな大和はふと思った。

 

「(あれ?もしも瑞鶴ちゃんが来なかったら…どうなるんだろう)」

 

 

そんな不安が大和の中に生まれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い加減あだ名で呼んだらどうですの?私達の前ではダーリンとかあくあんとか」

「それ以上は駄目だよぉ!」

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「提督、僕の出番は…」

「時雨は無しだ、強すぎるから朝潮の経験が不足する」

「僕だって加減できるさ」

「加減した状態で夕立とタイマンできたお前が言うか?」

 

演習の目的は新人の育成。なので朝潮は外せない、そして相手には飛龍と蒼龍がいる…

 

「それにしても驚いたよ、いきなり帰ってきて放送で演習するなんて…」

「性分なんだよ」

「むぅ…」

 

ほっぺを膨らます彼女に少し微笑ましくなるが、直ぐに頭を切り替える。

蒼龍、飛龍のコンビは強い。瑞鶴でも二人同時はキツイ位には…相手の最強の空母だから仕方ないが…ここにもし赤城や翔鶴が来たら航空戦は負ける可能性が出てくる…故に瑞鶴は外せない…と考えていた。

 

だがそれは読まれる可能性がある。なら…

 

「編成はこうだ…旗艦を朝潮とし、僚艦を神通、大井、日向、漣、吹雪」

「なっ!?朝潮を旗艦って!」

「あいつには10強を僚艦とした旗艦経験が無い。どの道今回で積ませる予定だった、あいつの対応能力の強化に役立つ」

「でも、相手は横須賀の提督だよ?せめて旗艦は神通か吹雪にした方が…」

 

確かに神通、吹雪は10強顔負けの指揮力と対応力があるが、それでは駄目だ。才能は埋もれていたらそのまま出てこないかもしれない。緩い戦場じゃなおさらだ…ならば例え相手が何枚も上手でも、経験が詰められれば…それで良い。

 

念の為に日向も入れておいた、あいつは瑞雲に妙な拘りがあるせいか、瑞雲を運用すれば化ける。神通と吹雪にフォローさせれば朝潮もパニックには陥らない。漣が航空機を撃ち落とし、大井が奇襲をかければ相手を逆に混乱させる事もできるはずだ。それに…

 

「(吹雪がいれば、負けは無い)」

 

 

 

 

 

 

 




次は演習戦です


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第13話

「わ、私が旗艦ですか!?」

「ええ、そう聞きましたよ?」

 

食堂では朝潮が霧島からある事を告げられていた。それは横須賀提督との演習の際に旗艦を務めるという事…それを聞いた朝潮は驚き、また…同時に聞かされた事についても

、それは10強を駆使して活躍しろとの事。

 

勿論朝潮は鎮守府に着任して日が浅いのもあり、普段の訓練や鎮守府近海のパトロール、遠征以外には出撃していない。そして旗艦の経験もない。そんな彼女には不安しかない…

 

「大丈夫でしょうか…私に、できるのでしょうか…?」

 

故に朝潮は10強の一員である霧島に聞く。すると彼女は朝潮の頭を撫でながら答えた。

 

「大丈夫ですよ、みんなが助けてくれますよ。10強が三人もいるんですから。ですから落ち着いて…全力を尽くしましょう?」

 

霧島の励ましのかいもあって、朝潮は元気を取り戻したのか、笑顔で「はい!」と返事をした。

 

「あ、そういえば私提督に言われて…朝潮さんの今の詳しい実力を知りたいと、ですから私と軽い演習をしましょう」

「え?でも…」

 

横須賀提督との演習の時間も迫る中、可能なのだろうかと考えたが

 

「問題無いですよ、提督が言うには多少遅れても大丈夫との事ですし…ですから行きましょう?」

「は、はい…」

 

そうして霧島は朝潮を連れて演習場へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな光景を見ていた感娘が二人。青葉と夕立だった。彼女達は物陰からひょこっと飛び出し、悪戯が成功した子供のように無邪気に笑っていた。

それもそのはず、彼女達は今朝潮をストーキングしている最中だったからだ。

 

「提督も相変わらずブラックですねぇ、朝潮さんを霧島さんに解析させてからよりにもよって横須賀提督と演習とは…向こうの感娘は強いですよ〜」

 

横須賀提督は疲労した状態で勝てる程甘い相手ではない。それを分かってはいる筈だが…その行動の理由が分からないと青葉は思った。

 

「夕立は霧島だけは相手したくないっぽい〜」

 

そんな中夕立が霧島だけは相手にしたくないと漏らす。その言葉を聞いた青葉は無理もないと思った。霧島は個人の火力や機動力、装甲は並みの戦艦より少し高い程度。なのに10強のNo.10とはいえ10強を名乗る…その理由は、その戦法にあった。

 

それは、現地で戦闘しつつ相手の情報を集め、それを戦闘に生かす事…それだけだ。だが霧島の場合それが異常なのだ。

 

 

 

曰く、相手の挙動や癖を分析し、相手が何をするかを即座に頭の中で整理、行動に移す。そして相手をデータ通りに誘導し、自らの作戦に相手が気が付かない内にかからせる。

 

曰く、砲撃の射角や身体の向き、角度から砲撃地点を割り出し安全地帯を作り出す。逆に砲撃の軌道を見切り砲撃を砲撃で撃ち落とすという神業も行える。

 

曰く、相手の情報を集め終わった後に相手の状況…例えば残り弾薬や燃料を計算、更に相手の動きからある程度の作戦を予測、それを狂わせるための戦術を実行する。

 

霧島にデータを取らされたら最後。どんなに抗っても彼女の掌の上の出来事。《自分で動いてるつもりでも彼女に動かされている》…それが霧島。それが10強。感娘の全てを操れる…それが彼女だ。

 

「作戦を放棄して自分で考えて動いても…結局やられちゃうっぽい」

「あはは…あれとマトモにやりあえるのは響さん位ですってば〜」

 

そんな霧島に対抗できるのは同じ10強の響だ。相性の問題があって、霧島は響相手だと面白い位に機能しなくなる。データ優先の分不測の事態には弱いのだ。

まぁそれでも彼女は並みよりは強いのだが…

 

そんな中、青葉がぽんと手を叩き、夕立に提案した。

 

「間宮アイス食べませんか?」

「それに賛成っぽい!」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

演習10分前の最終的な確認…その際に横須賀提督は相手の編成を見て頭を抱えていた。確実に来るであろう瑞鶴がいないという事に対して…

 

「うーわー最悪…私の予測外れたし…」

「まさか瑞鶴を外してくるとは…」

 

瑞鶴の不在の代わりに漣を投入。これだけで横須賀提督は大きく動揺していた。彼は恐らく朝潮と漣を使って艦載機を蹴散らす筈だ。そして日向と大井の投入。これが意味するのは…

 

「開幕戦でこっちの戦力を削る…って所かな?」

「それだけで済めば良い。相手はあの大井だぞ」

「やっぱ?最悪二人は覚悟しとくべきかー」

 

大井がいるだけで開幕雷撃による壊滅状態を覚悟しておく。いくら装甲が硬くても耐えられなくては意味がない。彼女の雷撃にはそれ程の威力がある。だがそれは当たればの話なのだが、彼女はピンポイントで雷撃をしてくるので外す事は無い。

 

「霧島さんがいないのがラッキーですね…」

「個人的には日向の方が厄介だな…あいつには近づけないし、手数もある」

「瑞雲ですよね…私達でなるべく落とせれば良いけれど…」

 

早くも予定していた作戦が崩れていく。これは瑞鶴がいて、霧島がいる事を前提とした作戦だったからだ。

 

「どうする?貴様の作戦はこの編成では機能しないぞ」

 

那智が険しい表情を浮かべて横須賀提督に問いかける。

 

「…結構やばいね、この編成」

 

冷静に相手の編成を見てみたら再び頭を抱えたくなる。

 

艦載機を飛ばしても、相手の漣と吹雪に蹴散らされ、その隙を大井と日向にピンポイントで狙われる。艦隊戦になったら日向が手数で圧倒。その際に大井が狙撃し、漣と吹雪がフォローに回り神通が遊撃…

 

「うん、非常に不味い、この編成…悔しいくらいに隙がない」

「10強3人を抑えれば勝てるんじゃないんですか?」

「…そう甘くないんだよなぁそれが」

 

横須賀提督は編成に組み込まれた吹雪という名を見てそう呟く。

 

「(まさか本気は出さないと思うけど…下手したら何もできずに終わる…それ位吹雪は厄介。まだ時雨ちゃんが来てくれた方がマシだった)」

 

時雨は手加減が苦手だが吹雪は違う…何せ経験が段違いだ。そして…彼女自身はそこまで強くはないが、彼女の恐ろしい所は強さじゃない。その能力だ

 

「(頼むから、ウチの家族にトラウマを植え付けないでよね)」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「み、皆さんよろ、よろよろしくおねぎゃいします!」

「お、落ち着いて朝潮ちゃん!」

「先ず深呼吸しましょう?」

「ひゃい!」

 

カチカチに固まった朝潮を吹雪と神通が落ち着かせる。すーはーと深呼吸をした朝潮は少しは落ち着いてきたのか、最初の頃のようにカチカチに固まった状態ではなくなった。

 

「あぁ…北上さん成分が足りないわ…吹雪ちゃん?北上さんとそこのピンク取り替えてきてくれると嬉しいのだけれど…」

「ちょっ!?そこのピンクって何ですか!?」

「五月蝿い」

「酷いっ!漣のグラスでエンジェルなハートは砕け散りましたよ!?」

「そのまま串刺しになりなさいな」

「どうでも良いが瑞雲のRGは何時になったら発売されるんだ?」

「本当にどうでも良い質問ですね日向さん!?」

 

朝潮は唖然としていた。無理もない…ここに揃ったのは10強の中でも一際濃い性格をした者達だ。まだ鎮守府に来て日が浅い彼女にとってはある意味地獄だろう。

 

そんな朝潮を吹雪と神通が必死にフォローするが、朝潮はなんかもう心が折れ始めていた。そんな中

 

「待たせたな」

 

提督が登場した。朝潮はこれで少しは落ち着いてくれるだろう、助かった。そう思った

 

 

 

 

 

「チッ、来やがったかクソ野郎が」

「相変わらずだな大井」

「え」

 

今大井は何を言ったのだろうか?朝潮の頭の中が突然の出来事で混乱してる最中に

 

「ご主人様!今なら千円で漣のパンツ見れますよ〜?」

「興味無いな」

「漣の扱いが酷くないですか!?」

「知るか」

「君、早く要件を…」

「ふん…そんなお前にこれをやろう」

「これは…瑞雲!?………提督殿、ご命令を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝潮ちゃん…大丈夫?」

「…………あう」

 




次回予告

可愛い大井っち


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番外編其の一

今回は時系列的には第1話の前の話です。番外編なのでシリアスは無い!が…お手元にはブラックコーヒーをお持ちになって下さいな。


 

提督には休みは無い。日々書類仕事や海域解放のための計画を立てて彼女達感娘を働かせる。勿論彼女達にもこれといった休日は特別な事でもない限り与えない。特に提督は熱を出そうが怪我をしようが関係無い。真夜中まで働くのである。

 

近々大規模な作戦が開かれる。書類や作戦の立案、これからの計画等が普段よりもずっと大変だ。そのために提督にかかる負担は今までとは比べ物にならないくらいに増えている。

 

 

「…………」

 

更に彼は決して秘書艦は付けない。提督業は提督だけがやるべきだと自分自身に課しているから、決して彼は誰にも甘えない。

 

「…」

 

携帯食料を食べてる間にも書類を書く手を止めずに、ただひたすらに書く。書く。書き続ける。

勿論ミスが無いように見直しもしっかりとやる。そしてまた一枚の書類が完了済み書類置き場に置かれた。

 

だが

 

 

その書類を置いた瞬間に提督の視界が回った。

 

「ぐ…!」

 

気が付くと自分が床に倒れているのを感じた。感じただけだ…それ以上は何も無かった。

ただ提督は自らの体調管理を徹底しなかった事を後悔して、意識を闇に沈めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひんやりとした感触が額にある。これは何だ?

自分はどうなっているのだろうか?確か自分は床に倒れて…それからどうなった?

………意識が戻ってくる。ぼーっとしていた頭も段々と冴えてくる。目を開けてみた。

 

 

 

 

 

「あぁ…ようやく目を覚ましましたか、提督」

 

そこにいたのは大井だった。

 

 

「大井…?」

「あまり手をかけさせないで下さい、私が北上さんといる時間が無くなっちゃいます」

 

そう言いながらも大井は提督に膝枕をしつつ、提督の額に程よく濡れたタオルをかける。ひんやりとした心地良い感覚が提督を癒した。

そんな提督が気になったのは今の状況だった。自分が倒れてからどうなったのか?どうして彼女がここにいるのか?

 

「…聞きたいことがある、これはどういう状況なんだ?」

 

そんな疑問を彼女に投げてみるが、大井はそんな提督にギロリと睨んだ後

 

「五月蝿いです、口を閉じてそのまま目を閉じて下さい。私なら兎も角北上さんに貴方の世話をさせるなんて羨ましい事はさせたくないんです」

 

どうやら大井はこんな状態の自分に北上が看病する事を嫌ったらしい。これはとんだとばっちりだと思った。

そんな大井の嫉妬?エネルギーは提督も良く知っていたので、ここは素直に彼女の言う事を聞いておこうと思った。仕事は後で再開すれば良いと思い…

 

 

「そう。それでいいんです…手間をかけさせないで下さい、本当に…」

 

呆れたような声色で大井は言うが、今はそれを咎める気力は無かった提督はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督が眠ったのを確認した大井は、そっと提督の頬に手を添えた。

 

「………」

 

提督の事を優しく撫でる大井、その表情は愛しい者を見つめるような表情だった。

 

「さて、もう暫くしたら北上さんとおやつを食べさせあいっこしましょうか…」

 

そんな独り言を言っている間も、提督を撫でる手は止めなかった。

 

「ふふ………♪」

 

やがて彼女は提督を撫でてる途中に提督の首筋に鼻を近づけて深呼吸をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してんの大井っち」

「ほわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

そんな現場を北上に見られた大井は妙な奇声を上げて勢い良く顔を離した。

 

「いやー、大井っちも大胆だねぇ…まさか…ふぅん…にひひっ」

 

北上はニヤニヤしながら大井の様子を見ていた。顔を真っ赤にしながら視線をあちこちに泳がす彼女の姿に思わず笑ってしまう。

 

「きた、北上さん!勘違いです!私は北上さん一筋ですってば!」

「おお…これ程までに説得力が無い言い訳って初めて聞いたよ…」

「北上さぁん!!」

 

北上に必死で言い訳する大井であったが、それでも提督を膝枕し続けていて、撫で続けていた。




大井っちの事をツンデレって言うんだよ、だから提督はツンデレじゃないんだよ


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第14話

ちょっと行き詰まってしまって…遅れてしまいました。申し訳ございません。
すいません許して下さい!なんでもしますから!


「さて…」

 

今回の演習で敗北する事は考えない。全力で挑み、勝利する…といっても勝つための作戦に朝潮は付いてこれる可能性は低いと見てもいい。

 

相手は横須賀の提督だ。生半可な戦法は通用しないだろうし、必ず経験が不足している…艦隊の穴とも言える朝潮に狙いを付ける筈だ。故にフォローが必要だろう…だが

 

10強である3人は…

 

 

「簡単な作戦…というよりフォーメーションだ。漣は来るだろう航空機を吹雪と共に撃ち落せ、神通、大井、日向は基本的には俺の指示に従って貰う…だが、最終的な決定権は朝潮、お前に託す」

「へ…?」

 

提督は朝潮に最終的な作戦の決定権を託した。これが意味する事は一つ…お前が俺の作戦を有効かどうかを判断しろという事だ。

 

その言葉に朝潮は震え上がった。当然といったら当然だろう。彼女は初めて旗艦になるのだ。彼女はまだ経験が圧倒的に不足している。だから顔面蒼白になり、叩きつけられた事実を受け入れられないのも仕方ない事だ。

 

「て、提督…流石にそこまでは…」

「悪いが意見は受け付けない。これは命令だ」

 

神通も流石に見逃せなかったのか訂正を求めるが、提督は神通の言葉に耳を傾ける事は無い。

ただただじっと…朝潮の様子を見るだけ

提督の目に映る彼女の姿は酷く怯えていた。恐れていた。だからこそ…提督はこの言葉を朝潮に告げる

 

「…何もそこまで気負う必要は無い」

「え?」

「誰も失敗しない奴なんていないさ、俺も、君も…大事なのは失敗をそのままにしない事。失敗を受け入れて、何が駄目だったのかを考えて…自分の糧にする事だ」

「司令官…」

「俺は君の可能性を見てみたい…朝潮、お前は誰の感娘だ?」

「ッ…貴方の感娘です!」

「そうだ、ならやるべき事は分かるな?」

 

朝潮は答える。その問いに。そして提督もまた応える。彼女の想いに

 

「はい!司令官、貴方に最高の勝利を!」

「ならば俺も、お前に最高の勝利を与えよう」

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

演習が、始まる。

朝潮を旗艦とした演習が。

相手は横須賀の提督…生きる伝説と呼ばれる提督の一人だ。

 

「編成はこちらが若干不利だな…最初の奇襲がどう転ぶか…」

 

開幕雷撃を持つ大井が相手にどれだけの損害を与えられるか、それで作戦が決まる。それまでは…

 

(腹の、探り合い)

 

此方には航空機を持つのは日向しかいない。相手の航空機を漣達がどれだけ落とせるかで此方の損害が変わってくる。

 

だが、それが何だ?こんな障害は今までもあった。その中でも常に勝利を収めてきた。

 

だから今回も…負ける気はしない。

 

自然と口角が上がるのを感じる。気分が高まる。

 

「さあ…どう出る?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演習、開始

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演習が始まると共に相手の航空機が飛び立つ瞬間を目の当たりにする。その光景を見た朝潮達は改めて身を引き締めた。先ず動いたのは漣と日向と吹雪と朝潮だ。神通は提督から持たされた切り札を仕掛ける為に、航空戦には参加しない。そして大井はいつでも雷撃を放てるように狙いを付ける。

 

「さあ漣、仕事をするんだ」

「日向さんも瑞雲飛ばして下さいよー!」

「はぁ…仕方ないか」

「な、何でそんなに怠そうなんですか…」

 

思わず朝潮は日向の態度に感心するが、直ぐに防空戦へと移行する。

 

朝潮は対空砲撃をするが、一発も当たらない。

 

ーそんな…動きが速すぎる!ー

 

軽空母部隊の艦載機とは速度が違う。予測射撃を行うも当たらない。今までとは何もかもが違う…それが朝潮に焦りを生み出す。

 

その結果益々砲弾が逸れて、艦載機に擦るどころか艦載機がいない方向まで無意味に砲弾を撃ってしまう。そんな光景に朝潮は益々焦ってしまった。

 

だが、そんな時に彼女の側に吹雪が駆け寄る。

 

「落ち着いて朝潮ちゃん!」

「は、はいっ!」

 

吹雪が彼女をフォローし始めたのだ。そのおかげか朝潮も落ち着いてきた。

 

「これは漣がやるべきですね…ふふん!さあ!漣がアニメで学んだ技術、とくとご覧あれ!」

 

そんな最中、漣が迫り来る艦載機に狙いを付ける。そして

 

 

 

 

 

 

 

 

「I am the…なんでしたっけ?まぁいっか!あんただけは…落とす!」

 

ガォォォン!!!と無駄に派手な効果音と共に砲弾が放たれ…

 

艦載機を落とす。だがそれだけではない。

 

 

一つ目は艦載機の翼を砕き、バランスを崩し海へ落とした。

更に二つ目の艦載機のコックピット部分を撃ち抜き、操縦していた妖精さんを強制的に脱出させ無力化した。

その勢いは落ちたが、三つ目の艦載機の武器を的確に撃ち抜き、艦載機を爆発させた。

 

 

これらを漣は、一発の砲弾だけで行ったのだ。

 

「12.7cm砲ですよねあれ!?」

「…漣ちゃん、また夕張ちゃんに効果音付けて貰ったんだ…あ、うん。ただの12.7cm砲だよ?効果音以外は…」

 

どこぞの可能性の獣の主要武器を思い出すような効果音を付けてる漣。彼女はノリノリでまた艦載機を的確に撃ち抜き、そして…

 

「エッ…Xラウン○ーでもない癖にぃぃぃぃ!!!!」

 

艦載機の攻撃を受けていた。

 

「さ、漣さぁん!?」

「漣が死んだ!」

「この人でなし!」

「お、大井さん!?吹雪さん!?」

「はっ…なんか変な電波を拾ったわ…」

「な、何で私…あんな事を…」

「…君達、少しは真面目にやらないか?」

「あら?私はもう2人戦闘不能にしたのだけれど…」

 

大井がしれっと、ありえない事を言っていた。

 

「ってえええええ!?」

「だって正規空母ってうちの七面鳥と違って中破に追い込んだら艦載機飛ばせないでしょ?」

 

そういえばと朝潮は思った。艦載機の数が増えないのだ。先程飛ばされた物を最後に

 

「ふふん」

 

ドヤ顔で胸を張る大井、その胸が羨まし…

 

 

「何考えてんですか私はぁ!」

 

朝潮、自分の思考に自分でツッコミを入れる。

それを見た日向がくすりと笑い、朝潮に告げた。

 

「ふっ…君の才能の片鱗が見えてきたな」

「嫌ですよこんな才能!!」

 

朝潮の才能とは、ツッコミ役である(嘘)

 

 

 




そして舞台は次の話へ…こ、今度は早く投稿したいです


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第15話

艦これ改って面白いのかな?買おうか迷ってる俺ガイル


今回




朝潮、覚醒


「ふむ」

 

状況は一気に動いた。漣が敵の艦載機を撃ち落としている間に大井が魚雷による先制攻撃で相手の空母を中破に追い込んだ。大井の火力でも大破には追い込めなかったものの、これだけやれば充分だろう

 

だが代償も大きかった。相手の艦載機がそれを見通していたのか、大井による攻撃と同時に敵の艦載機が一気に漣に向かったため、艦載機の猛攻撃を凌ぎきれずに漣が戦闘不能になった。これで相手は二隻、こちらは一隻戦闘不能になった。だが相手にはまだ大和、長門、那智、熊野といった歴戦の強者が無傷で健在だ。

 

特に大和と長門は戦艦の中でも最高クラスの戦闘能力を持っている…迂闊に攻めてもまず敵わないだろう。返り討ちに遭うのがオチだ

 

「ここで漣が戦闘不能になったのは痛いな…」

 

本来の筋書きでは、雷撃を警戒して大井に戦力が集中すると思っていた。その為に大井はわざとフリー…攻撃しやすい位置に陣取らせておいた。

 

(だが大井を無視して漣を狙うとは…あからさますぎたか?)

 

本来提督は昼戦においては空母二隻を中破に追い込めば万々歳、欲を言えば熊野と那智を中破に追い込むのが理想だった。だが

 

「それも想定内だ」

 

提督は演習が始まる前に、それぞれ誰が一番最初に倒されるかをシミュレーションして、次の動きの指示を頭の中に叩き込んでおいた。漣が戦闘不能になった場合は、駆逐艦二隻を後方に下げ、神通を前線に上げる。その時に空母二隻が戦闘不能状態ならば、日向のユニークスキルである瑞雲運用技術を駆使して制空権を確保する事。

 

制空権を確保し、相手の動きを制限して鈍足な長門と大和を高速戦闘によって可能な限り消耗させる。熊野と那智は日向で食い止める。

 

 

それが作戦だ。だが戦場にはセオリーなど無い。常に状況が動く戦場においては事前の作戦通りに事が進む事は無いと思え。それが提督のスタンスであった。故に常に新たに作戦を考える…彼女達に確実な勝利を与えるために

 

 

 

 

「朝潮、事前に話しておいた通りだ。今の状況を詳しく教えてくれ」

『は、はいっ!えっと…今は…きゃあ!?』

 

通勤中に轟音と共に水が落ちる音が聞こえる。恐らく相手の戦艦の砲撃だろう。それも大和型の

 

(これがあるから大和型の相手はきつい)

 

大和型の主砲である46㎝三連装砲は、戦艦の中でも最高クラスの威力と射程を誇る。これの砲撃を受けてはひとたまりも無いだろう。

 

 

彼女の編成の中でも最高クラスの編成。火力と射程でねじ伏せ、近寄る敵を長門と那智で蹴散らす。今回は熊野だが、彼女が向こうにいる戦艦のツートップの内の一人である武蔵だった場合を考えると…少し身震いした。

 

 

『す、すみません!えっと今の状況ですが、大和さんの砲撃が雨のように降ってきます!』

 

想像通りだ、どうやら相手は先に空母が戦闘不能に追い込まれたせいで、完全に守りの態勢に入ったようだ。近づこうにも長門と那智で守られ、大和に近寄るのが容易ではない。

 

 

 

今の状況で最高クラスの対空戦闘技術を持つ漣が健在なら話は別だったが…彼女が戦闘不能ならば話は別だ。当初の予定通りに事を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言おうとした所でふと、思い止まった。

今回の戦闘は朝潮の力を引き出し、見極める事だ。彼女の活躍の場を奪うのは…違うのではないか?

こんなピンチの時こそ、真価は発揮される…彼女達が艦娘ではなく、感娘であるが故に

 

 

だから提督は

 

 

 

 

 

「全艦隊に告ぐ。吹雪、神通は那智と長門への牽制を。朝潮は大和の遠距離攻撃を食い止めろ。大井は狙撃位置を変更。場所は任せる…日向は朝潮の援護をしてくれ」

『し、司令官!?』

 

朝潮が驚いたような声を上げる。無理もない…初めての演習でこんな大役を任されたのだから。だが

 

 

「朝潮、お前の力を…日々の訓練で付けた実力を今この場で、この瞬間で使うんだ。お前ならできる、そう確信している」

『……………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はいっ!朝潮、ご期待に応えます!!』

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「やられたねぇ」

 

 

横須賀の提督は最悪の事態は想定していた。大井による開幕雷撃による空母の戦闘不能は…そしてそれが現実になると同時に改めて思い知った。

 

10強と呼ばれる彼女達がどのような存在かを

 

「現に開幕戦はやられっぱなしだしねぇ、漣ちゃんに荒らされまくったし」

 

漣の普段はふざけているが、その仕事は確実にこなす精神…そして実力は知っていた。だからと言って…

 

「8割持っていかれるなんて、予想してないっての」

 

漣が落としただけでも4割、うち2割は先程から不規則な動きを見せる神通だ。後の2割は最後の力を振り絞った空母二隻による最後の一撃で漣と共倒れ。制空権を確保しようとした残りの2割は日向に蹴散らされた。

 

「ま、亀さん戦法で今は凌いでるけど…海色君は絶対に突破してくるよね」

 

彼の事を信頼しているからこそ生まれる考え。彼ならばあらゆる可能性を検証し、最も確率が高い作戦を取るだろうと。

 

それはどういう作戦だ?そしてそれは自分に読める作戦か?

 

 

(ピンポイントで当たるなんて思ってはいないよ、ただ…やられっぱなしは悔しいよねぇ)

 

普段はのほほんとしてる横須賀の提督だが、彼女は人一倍負けず嫌いでもあった。故に彼女も考える

 

(亀さん戦法ははっきり言ってその場凌ぎの時間稼ぎだ、私が向こうの作戦を考える時間稼ぎ。そのままやられてくれれば万々歳なんだけど…それは期待しない方がいい)

 

 

ありとあらゆる不利な作戦を成功させてきた彼だからこそ、この状況でも突破口を見出せる…そんな予感があった。

 

 

(さっきから気になるのは神通ちゃんなんだよね…開幕戦は参加したけど。それ以降の砲雷撃戦じゃ全く参加してない…どう考えてもおかしいよね)

 

神通の動きは、艦隊と共ににいる訳でもなく…本当に単独行動を取っていた。それなのに被弾すらしないのは彼女が避けに徹しているからだろうか?

 

(…………直感だけど彼女を放っておいたらマズイ事になる…そんな気がする)

 

驚異的な火力を持つ大井でも、それは雷撃に限った話だ。現状は無視しても構わない…吹雪は今の所は真価を発揮していないが、彼女を優先的に潰すのは変わらない…日向は那智と長門と熊野でかかれば倒せる…が

 

だからこそ不安になる。

 

 

 

 

 

(まるで彼の掌の上で踊らされてるみたいな感じ…嫌だなぁ、きっと私のこの思考も予測してるんだろうなぁ…だったら)

 

ならばと思う。踊らされてるならばそれ以上に踊ってみせようと。それこそ相手が付いてこれない位に

 

「熊野、ダンスタイムだよ…日向と同じく瑞雲を飛ばせる君だからできる仕事だ」

 

 

 

さあ、最高クラスのステージで…派手に踊ろうではないか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い?朝潮ちゃん…大和さんの砲撃は当たったら私達駆逐艦はひとたまりも無い…全部避ける事を考えて」

「はい……」

 

不思議だと朝潮は思った。あれ程緊張していたのに…今は不思議と落ち着いている。

 

提督に言われた言葉を思い出す。日々の訓練で身に付けた実力を発揮する時…そして、提督に言われたお前ならできるという言葉。

 

胸が高鳴る…配属されて日は浅いが、彼の事は良く理解できている。

 

誰一人沈めない、その為に一人一人の訓練時間を濃厚にかけ、常に成長していく環境を作る。休みは就寝時間やご飯の時間や三時のおやつ、夜の自由時間のみ、それ以外は訓練付け…だからこそ実力はメキメキと付いてくる。そして今回それがよく分かった。

 

だからこそ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あの人の期待に…応えたい!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に世界がゆっくりと動いてるように錯覚した。

全身が軽い。飛んでくる砲弾が文字通りに見える。

この程度の遅さだったら簡単に避けられる

 

「見えた!!!」

 

遅い、遅い、遅い

 

 

全てが遅い

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

 

 

気付いたらもう大和さんの目の前にいた。

 

 

長門さんも那智さんも熊野さんも見えるけど、主砲を構える速度が遅すぎる

 

 

この程度の速度ならば

 

 

 

 

 

全員に攻撃できる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォォン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「想像以上だな…朝潮………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はへ?え?何それ?え?私の負け?え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして演習は、呉の提督の勝利で終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

,

 

 

「………神通に指示しておいた切り札…無駄になっちまったな…まぁ朝潮の成長は喜ばしい事なんだけど…うちって駆逐艦ばかり強くないか?…うぅん…」

 

 

彼は一人唸っていた。

 




某仮面ライダーを参考にしました。


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第16話

ここからは大規模作戦まで日常を過ごしていきます。まぁペルソナシリーズでいう昼の時間みたいなものですかね


「納得いかない、何あれ?作戦もクソもないじゃん、チートじゃんチート」

 

朝潮の電撃特攻のせいで敗れた横須賀の提督は、提督に文句を言いまくっていた。

それもそうだろう。あれだけ思考していたのにも関わらず…受けたのは奇襲による主砲の全損だったからだ。

 

朝潮の攻撃では戦艦の装甲には傷を付けることは難しい…だがその砲撃は的確に主砲、副砲を射抜き…武器を機能させなくなるという、正に戦わずに得る勝利を得たのだ。

最もそのおかげで横須賀の提督はもちろん彼女達の感娘も不完全燃焼なのだが…

 

「俺も朝潮がここまで化けるとは思わなかったんだ」

 

彼もその内の一人であった。

朝潮の覚醒に喜ぶべきなのだろうが、それまで考えていた作戦が全て無駄になった…神通に指示していたアレも無駄になってしまった。

 

今だからネタばらしをするが、神通が持っていたのは照明弾だ。本来夜戦で使われるであろうそれを持たせていたのは、夜戦で使うからではなく昼戦で使う為である。

 

注目すべきは凄まじい光量を発する点だ。これを適切なタイミングで使用すれば僅かな間だが相手を怯ませる事ができる。これは深海棲艦でも同じ現象が見られた

 

なのでそれを使うタイミングを見出す為に神通は砲雷撃戦では積極的に行動しなかった。長門と那智への牽制と同時に彼女にそれを使わせる予定だったのだが…無駄になった

 

 

そして提督自身は今回の朝潮の覚醒についてこう考えていた。

 

彼女自身の実力は、経験を除けば先ず最高クラスの実力であろうと

彼女が今回覚醒したのは、動体視力と反射神経の活性化だ。最初から使えなかったのは恐らく何らかの制約のような物があるのだろうが、圧倒的な動体視力と反射神経…それに付いていける運動能力。特に運動能力に関しては日々の訓練の成果だろう。

 

(10強以外じゃ、これで5人目か…艦娘の力を最大限に発揮する事ができる感娘は…まぁ艦娘の実力自体感娘にしか引き出せないのもあるが…これは中々良い誤算だ)

 

この時点で彼女は感娘の中でもかなりの実力を得た。更に速度に関して覚醒したのは彼女が初めてだ

これは戦略の幅が広がると予感した。奇襲に使ってもよし、遊撃や追撃に使うのもよし、可能性は幾らでもある…島風と並べてみるのも良いかもしれない。

現時点で島風と肩を並べられるのは恐らく彼女だけだろう。反射神経と動体視力の覚醒に伴って彼女自身の素のスピードも上昇したのだから。

 

「ねえ…聞いてる?」

「ん?ああ悪い…聞いてなかった」

 

すっかり自分の世界に入り込んでいたので、彼女の存在を忘れていた。

 

「まぁ良いけど、とにかく近いうちに武蔵連れてくるから、朝潮ちゃん含めてリベンジね。流石にこれは無いわ、納得できる戦闘をしたい」

「受けて立ってやる、俺も今回ばかりは不完全燃焼なんでね、ぐうの音も出ないほどに叩きのめしてやる」

 

 

 

こうして彼等は再戦の約束を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「いやぁ…流石ですねぇ朝潮ちゃん、漣がレギル○1分クッキングされた後にあんな活躍をするなんて」

「何ですかそれ…」

「漣が見てたアニメの壮大な出落ちの事ですよ〜、朝潮ちゃん島風ちゃんと良い勝負するんじゃないんですかねぇ」

「そ、そうでしょうか…」

 

 

演習が終わり、入居を終えた彼女達は食堂にて戦闘後のアイスを食べていた。他の人も誘ってみたが、吹雪は司令官の側にいると言って何処かへ行ってしまい、日向は瑞雲のプラモデルを組み立てると言って部屋に、神通は訓練に、大井は北上を探しに行ってしまった。

 

「今度見てみますか?漣のオススメはですねー、いきなりお前を殺すってヒロインに言う主人公が出る奴ですよー」

「どういう展開なんですかそれ!?」

「後響ちゃんが気に入ってるのはフリー○ムっていう機体が出る奴ですね」

「私はジブ○派です!」

「黙れ小娘!お前にテイトクを救えるか!?」

「何故にモ○!?まぁ好きですけどものの○姫!」

 

謎の空間ができている間に、彼女達に声をかけてきた人物がいた。

 

「中々面白い話をしてるね、私も混ぜてよ」

「おっ、来ましたねYBRさん」

 

そこには、変態技術屋で有名な夕張がいた。

曰く漣の武装の効果音を変えたり、出撃時にゼオ○イマーのBGMを流して提督に怒られたりと、鎮守府変人三人衆の内の一人であった。

 

「そうそう漣、ビー○マグナムの効果音どうだった?」

「最高でしたよ!でもぉ、漣としてはぁ、こんなのも良いかなって…」

「ふむふむ…!?変身する艤装…ですって!?貴方、NT○Dを再現させるつもり!?」

「可能でしょう?」

「勿論よ」

「「ぐふふふふふふふふ」」

 

 

 

 

朝潮は思った。駄目だこれと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小ネタ

 

 

阿武隈ちゃんの挑戦

 

 

 

 

 

 

 

「皆さんこんにちは!阿武隈です!今日挑戦するのは提督に寝起きドッキリを仕掛けるという事ですよ〜!さあ、早速提督の部屋に………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てーとくさんの軍服…………えへへ……………………んぇ?」

 

 

「へ、へ、へ、」

「お、落ち着きなさい阿武隈、貴女は何も見ていない…良いわね?」

「変態〜〜!!!瑞鶴さんの匂いフェチィィィ!!!」

「ちょ!?訂正させて貰うわ!私は提督フェチよ!爆撃にはいつも即効性の媚薬を」

「いやぁぁぁぁ!?犯されるぅぅぅ!!!」

「だから訂正しなさいってば!!」

 

 

 

 

 

 

 

終わり




時雨
心配性のわんこ系女子。


我が道を貫く系女子。

瑞鶴
隠し事しない系女子。

10強トップ3の何系女子でした。
次回の三人は

大井、阿武隈、漣の三人です


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第17話

久々に病ませるか…(ゲス顔)
今回は日常を書きました。最近登場する子が確定してきちゃったな…もっと腕を上げねば


提督が普段から指示している日常の訓練や演習…実はこれらは無理の無い量をやらせているわけではない。

彼女達は感情を持つ…艦娘では無く感娘なのだ、だからこそ彼女達に無理の無い…できる範囲の訓練や演習をさせている。逆に言えば感情は無い感娘を艦娘というのだが…

 

では艦娘とは何か?それは建造で現れた…産まれたばかりの感娘だ

彼女達は産まれたばかりで感情という物が無い。故に先ず彼女達は鎮守府内の専用の施設で教育を受ける必要がある。

 

教育をするのは提督や、鎮守府を運営するにあたって重要な存在である妖精、後は秘書艦なのだが…ここの提督は秘書艦を付けてないのでこれは関係無い。

 

彼女達は産まれたばかりで世界の事を何も知らない。だから提督が知識を、妖精が感情を与える。

 

そして艦娘が感情を持った時、その艦娘の元となった艦隊に応じた性格が芽生えるのだ。個体差はあるものの大抵は同じ性格である。

 

彼女達はこうして艦娘から感娘になるのだ…だが時折彼女達は艦娘のまま、または感娘から艦娘になる事がある。その鎮守府の提督に教育を受けさせて貰えなかった者。それでも妖精は感情を与えるが、それが芽生える前にその鎮守府の提督は分かりやすい方法で心を壊すのだ。または感娘になってもあらゆる方法で艦娘に戻そうとする者もいる。

 

それによって産まれた者が艦娘だ。そして彼女達はそれによって心を閉ざし、人を信用しない存在…感情は無くただただ命令に従うだけの存在となってしまう。提督の事は信頼もしてないし信用もしてないが…己に刻まれたある使命…彼女達の存在意義と言っても良い物に従い、深海凄艦を打倒する。

 

ある人物達にとっては都合の良い道具…それが艦娘という物だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜み〜は〜広い〜な〜おおき〜い〜な〜」

 

満面の笑みで海を眺めながら歌っているのは金剛型戦艦の一員である榛名である。彼女は誰にも話していないが歌が大好きだ。定期的に行われる那珂ちゃんライブにも必ず参加する程の。

那珂ちゃんライブは提督公認である。彼曰く感娘のやる気向上に繋がる為に必要な事であるからだ

 

だが榛名は少し恥ずかしがり屋で、人前で歌うのはあまり得意ではないので、こうして誰もいない場所で歌っているのである

 

 

 

 

 

と、いうのは榛名の思い込みであるが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、今日も良い声でち」

「羨ましいよね、この歌声」

 

 

 

 

海の中にも聞こえる榛名の綺麗な歌声をこっそり聞いてるのは潜水艦の58と168。彼女達は榛名の歌を気に入っていて、良くこっそりと聞いてるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「そ、そんなに落ち込まなくても…」

「提督に負けた提督に負けた提督に負けた提督に負けた提督に負けた提督に負けた提督に負けた提督に負けた提督に負けた提督に負けた提督に負けた」

 

大淀は今猛烈に落ち込んでいた、それも提督に「横須賀の提督から聞いたが、お前よりも俺の方が優秀のようだ、よって今後も俺の方針に従ってもらうぞ」と言われたからである。

だからお昼ご飯の時間を利用して鳳翔に愚痴っていたのだ。

 

「でも良いんですか?そんなに提督に反抗していて…」

 

大淀が提督に反抗的な態度を取っているのは周知の事実である。大淀だけではなくとある感娘も反抗的な態度を取っているので珍しくは無いと思われがちだが、大淀は基本的に提督には反抗しない性格が多いので、そこら辺の事を鳳翔は聞いてみた。すると彼女から意外な一言が漏れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いんです、今の提督が間違ってるって証明して元の優しくてかっこいい提督に戻ってもらいますから」

 

 

 

 

 

 

瞬間、食堂の空気が凍った。そして様々な変化が食堂に現れた。

主には10強の内8人の目の光が消えた事だが、それ以外にも変化は見て取れた。

 

ある者は妹と紅茶ティータイムを楽しんでいたが、大淀の一言によって妹共々動きを止めた。

 

また、空母の一航戦と五航戦が戦術や普段の訓練についての話し合いをしていたが、二人共目から光を失い大淀をじっと見つめ始めた。

 

またある者は手帳を取り出し録音機器を取り出したがその目に光は無かった。

 

普段から百合と思われがちな者も手を止める程の爆弾発言に、誰もが大淀との会話に聞き耳を立て始めた。

 

 

 

「えっと…そういえば大淀さんって昔の提督を知っていらしたんでしたっけ?」

「そうです…彼がこの鎮守府に着任するまでの研修期間からずっとですね、私これでも最古参ですよ?」

 

 

 

(そんなのは知ってるわよ、ずっと見てきたんだから)

(うぅ…分かってたけど悔しいんですけどぉ!)

(にゃーしにゃしにゃしにゃし)

(睦月ちゃんが壊れたっぽい)

 

 

 

 

 

「まぁこの際だから話しますけど…提督って昔はあんな話し方じゃ無かったんですよ」

「えぇ!?」

 

昔はあんな話し方じゃ無かった…その言葉に鳳翔は驚いた。普段知っているのは厳しくも自分達の事を誰よりも考えてくれる提督の姿だったからだ。

 

 

「昔は何ていうか…年相応で明るくて優しくて…でも、頼り甲斐のある人だったんですけどね」

「年相応って…提督ってお幾つなんですか?」

「あれ?言ってませんでした?あの人今年で21ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタリと席を立つ者がちらほら出始めた。

 

「わ、若すぎませんか!?」

「そうですか?世の中にはもっと若い人が提督やってますけど」

「そ、それでもです!」

 

鳳翔の言い分はもっともだ。現に大半の感娘は彼を30前半だと思っていた。だからこそ驚いたし…………

 

 

 

 

 

 

(つまり女の子に耐性が無いって事でしょうか)

(でもあの人鉄壁だよ?)

(我慢してたんでしょうね、青葉…どうせ監視カメラとか仕掛けてるんでしょう?映像を見せなさい)

(流石の青葉も仕掛けてませんって…)

(溜まってるのかい?司令官は)

(水臭いわねー!私に頼れば良いじゃない!)

 

 

 

 

「だ、だからですか?反抗してるのは」

「はい、私は元々の彼を知ってます…こんな事は彼も耐えられないんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、大淀の目から光が消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が反抗するのはその為です彼には耐えられる訳無いんですから私が救わないといけません私が救わないと彼は壊れてしまいますから私が頑張らないと彼はこのままの方針でいってしまうから私が」

 

 

 

 

 

「お、大淀さん!!」

「っ!?」

 

鳳翔の呼びかけによって大淀は正気に戻ったようだ。目にも光が戻っていた。故に気付いた。彼女も、また

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何だ)

(大淀さんも)

(瑞鶴と同じなんだ)

(あはっ、なんか安心しちゃったかも)

 

 

 

 

 

 

そんな中勢い良く立ち上がった者がいた。

 

 

 

「ひ、響ちゃん?どうしたのです?」

 

第六駆逐隊の響。彼女は電の問い掛けに笑顔で答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり私の男物の水着姿を見せた時に顔を赤くしていたのは錯覚じゃ無かったようだ」

 

 

「「「「その話詳しく教えて」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日も鎮守府は平和です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やって来ました!今週の阿武隈です!さて今日挑戦したいのは…じゃじゃーん!雪風さんの幸運調査です!今から雪風ちゃんとポーカーで賭けをします!」

「はい!雪風は負けませんよ!」

「よーし!私も頑張っちゃいますよ!賭けるのはこの提督ブロマイドを」

「早く始めましょう」

「え?雪風ちゃ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですかロイヤルストレートフラッシュ5連続って!ボロ負けなんですけどぉ!?」

「えへへ、司令官だぁ♪」




大井
男でも女でもイける系女子

阿武隈
大体こいつが被害を受ける系女子


空気を読めるが読めない系女子


次は日向、青葉、168、霧島です


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第18話

今更ですが艦これアーケードが楽しみで仕方ないです
ああいうリアルな艦これを家でじっくりやりたかった…艦これ改をどうしてああしなかったし


「そういえば…」

 

提督はふと気がついた。今日はまだ食事を取っていない事に

提督のもう一つの戦場である事務仕事は普段一人で全て行っている。なので暇を持て余す時間というのは存在しないのだ。

また彼は食堂で食事を取る事も滅多に無い。食堂に行く時間すら彼にとっては無駄な行為だからだ。

だが今日は事情が違った

 

 

「カロリー○イトが無い…」

 

先日瑞鶴に持って行かれるまでは残っていたのだが、机にしまっている提督のいつもの昼ごはんが無いのだ。

 

「失態だな…」

 

普段からボーっとしているつもりは無いのだが…と提督は思う。しかし考えている時間も惜しいので今日は止むを得ずに食堂へ向かう事に決めた

 

そう思って執務室を出ようとしたら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄まじい悪寒が提督を襲った。

 

 

 

 

「〜!?」

 

嫌な予感だ

それも、今までとは比べ物にならないくらいの

一体何が…そう考えた所で執務室…いや、鎮守府中にサイレンが鳴り響いた。

それは緊急事態を知らせるサイレン。

 

「馬鹿な!?」

 

緊急事態を鳴らしたという事は何かが起こったという事。提督は直ぐに執務室から飛び出し、作戦司令室に向かう。するとそこにいたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たね」

 

 

 

横須賀の提督だった、周囲には感娘らしき人物が二人程いる。

 

「お、お前なんでこんな所にいるんだよ!?

 

横須賀の提督は帰ったはずだと提督は思っていたが、何故かうちの鎮守府にいたという事、そして警報を鳴らしたのも恐らくは彼女だろう

 

 

「事情が変わったんだ、連中の動きが活性化した…私も動き出さないとこっちが危ない」

 

横須賀の提督の雰囲気がいつもと違う…それだけで提督は気を引き締めた。

 

「…話を聞こう、だが手短に頼む」

「分かった、例の作戦の前に鎮守府が二つ落ちた。敵のレ級によってね」

「…例のフラグシップか」

「話が早くて助かるよ、奴を何とかしないと例の作戦を遂行できない」

「……その二人は?初めて見る感娘だが」

 

 

提督はその人の事を知らなかった。他の鎮守府との演習でも確認できなかったし、彼女が新しく仲間にしたのだろうか?

 

「ああ、紹介がまだだったね、グラーフと嵐って言うんだ、彼女達は前の作戦…海上輸送作戦の時に保護したの。ポテンシャルや実力はそっちの10強と並ぶ…もしかはそれ以上の力を持った私の切り札だよ」

 

 

 

横須賀の提督のその発言に少し驚いた提督は、直ぐにある物を思い出した

 

 

「ケッコンカッコカリか」

「そう、10強はケッコンカッコカリをしなくてもそれに準じた戦闘力を君が引き出せてるけど…それでもケッコンカッコカリには敵わない」

 

 

 

ケッコンカッコカリ。それはある一定の練度を持った感娘と提督が結ぶ仮の結婚式。これは練度が無いとできないが…逆に言えば練度があれば誰でもできる行為。これを行った感娘は強さの限界が無くなり、何処までも強くなれると言われてる。

 

しかしケッコンカッコカリをした後は強さに伸びが生まれにくいという欠点も存在するが、それはデメリットではないだろう。

だが提督はケッコンカッコカリはしない。できる感娘はちらほらといるが…

 

 

 

「海色提督、私と共にこれを討伐してほしい」

「…連合艦隊か」

「そう、私からは12隻、君から12隻の24隻を」

「…無論だ」

 

 

 

提督は身震いした、恐らく感じた嫌な予感はこれだったのだ

 

昔から提督は本当にヤバイ時は総じてこの感覚を覚えた…中でも一番悪寒を感じたのは海上輸送作戦の時だが…今回はそれに匹敵する感覚だった。

 

「それにしてもお前がケッコンカッコカリをしたのはこれで何人目だ?」

「聞きたいかね?昨日までの時点では99822人だ」

「それを言う余裕はあるようだな」

「まぁね、私がケッコンカッコカリをした時に君が聞く…お決まりの流れだね、まぁ実際はこれで9人かな」

「そ、そうか…」

「君もケッコンカッコカリをすれば良いのに」

「いや…俺にも切り札はあるんでね」

「それって、あの子の事だよね…使う気?」

 

 

横須賀の提督が言っているあの子…それは切り札の一つである感娘の事だ。彼女を使うのは主に神経がすり減るが…今回は仕方が無かった。そしてもう一つの切り札も場合によっては使う気だ

 

 

「兎も角奴は何処にいる?」

「………例の海域に向かっている。速度は遅いけどね…多分追撃部隊を誘ってる」

「なら、その誘いに乗ってやるか」

 

 

 

こうして二人は協力する、そしてそれは海軍屈指のコンビの誕生でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所で海色君ご飯食べた?まだなら一緒に食べようよ」

「そんな悠長な時間は…」

「腹が減っては戦はできぬ、だよ?」

「…まぁ良いか、偶には」

 

 

 

 

こうして四人は食堂に向かったのだ。そして端から見れば提督が美少女と美女を連れ歩いてるような光景を見た提督の感娘達は…………

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今週の阿武隈ですが…いきなりピンチです!」

「煩いわね…貴女に貸した提督ブロマイドを取られた…あれは私の物よ?何勝手に賭けの対象にしてるのですか?」

「か、加賀さん落ち着い」

「言い訳は地獄で聞くわ」

「それ聞く気無いと…ぃたたたた!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「今日も鎮守府は平和さ、何故なら私が飛べるからね」

 

 

by響




ちなみにこの二人は友人が出してました。

日向
実は提督を見守ってる系女子(病んでない)

青葉
誰かの役に立ちたい系女子

168
友達を助けたい系女子

霧島
姉妹を大切にしたい系女子(病んでない)

戦艦は病まない法則でもあるのか?…あ、榛名は病んでるから安心してください

次は吹雪と朝潮です

因みにここの提督は萩風、鹿島を持ってるが嵐とグラーフは来なかった模様
え?筆者?やだなー全力で回しましたよ

死ぬかと思いましたよ…でもクリア報酬の子は取った。嵐?グラーフ?知らない子ですね


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第19話

先ずはお気に入り登録をして頂いた読者の皆様にお詫びを…暫くの間スランプに陥ってしまい思うように筆が進まない状況になってしまいました。

なんとか構想が出来上がり再び再開する事ができました、自分の小説を読んで下さる皆様にお礼を…そして不甲斐ない作者ですが、これからもよろしくお願いします


 

 

 

 

横須賀の提督と自分達の鎮守府の提督が同時に食堂を訪れた。それだけで食堂の空気が更に凍った

それもそのはずだ、今まで食堂を訪れた事は数えるほどしか無かった彼が食堂を訪れた。しかも三人の女性と一緒に…それが意味する事は……修羅場

 

 

 

「ねぇ…その女何?」

 

口調が完全崩壊した時雨が濁った瞳で提督を見つめた。

見つめ続けると思わず泣き出しそうになる程の威圧感…某駆逐艦の戦艦並みの眼光も裸足で逃げ出す程の、威圧感。それを見た横須賀の提督の感娘二人は小さな悲鳴をあける。

だが提督はその時雨の瞳を真っ直ぐに受け止めた上で言った。

 

 

 

 

 

 

「お前達、訓練は進んでいるか?今日のノルマを達成した者には特別なご褒美として、俺が何でも言うことを聞いてやろうと思ったのだが」

 

「す、ストォップ!その言葉は言うなぁ!!!」

 

珍しく慌てた様子の日向が止めに入るが

 

 

 

 

 

 

「へぇ…何でもする…か」

 

 

 

既に遅かった。同時に日向は頭の中でこう思った

 

もう手遅れだ、ここは瑞雲を整備しなければ…と

 

 

「まぁそんな事はどうでもい…吹雪、あいつは何処だ?」

 

「あいつ…ああ、あの子の事ですね、今頃は海辺で散歩してるんじゃないですか?」

 

「……そうか、なら少しは時間が稼げるな」

 

 

少しは時間が稼げる。提督が口にした言葉に呉の10強は全員顔を青くした。いや、10強だけではない…その場にいるほぼ全員の顔が青くなったのだ。

そんな10強の反応に一番驚いたのは着任して比較的日が浅い朝潮だった。彼女は勿論何も分かっていないので顔を青くする事にはならなかった。

 

「え、え?な、何ですか?皆さんどうしたんですか?」

 

「…朝潮ちゃんに教えてないの?君の切り札」

 

「まぁ…いずれは教えるつもりだったが…朝潮、簡単に言えばそいつは俺が初めての建造で迎えた艦娘だ。今は感娘だぞ?」

 

「そ、それは大先輩…ですよね?」

 

「まぁ、そうなるな」

 

提督が日向の口癖を真似したせいか、若干日向の頬が紅く染まる。そんな日向を見て微笑ましい雰囲気になる伊勢だったが…

 

 

 

 

 

 

 

 

「伊勢…日向には負けたくないの」

 

「ひぃ!?」

 

 

何処からともなく負のオーラが二人を襲った。日向はともかく伊勢は完全にとばっちりなのだが…

 

 

「それで時間稼ぎって事は?何か不味い事態でも起こったのかしら?」

 

先程から気になっていた事を曙が聞く。彼女は提督に対して強気な態度を取っているので、提督に事情を聴いたり説明したりする役割みたいな事をしている。

彼女にその気があるかと聞かれたら、「べ、別にクソ提督の事なんて気にしてないから!」と否定するだろうが…

とはいえ提督は聞かれた事は答える、というより元々それの説明の為にここへ来たのだから

 

「レ級のフラグシップ…そいつが近場の鎮守府を壊滅させた…二つもな。そしてそいつは大規模作戦付近の海域に向かおうとしている」

 

提督が告げると同時に、先程は少しばかりゆとりを持っていた空間に緊張が走る。

 

 

 

 

(あらら…レ級…しかもフラグシップですか…青葉の情報網にも引っかかりませんでしたねぇ……)

 

青葉は表情には出さないが、そいつの情報を持って帰れなかった自分に対して落ち度を感じ

 

(レ級のフラグシップ…エリート級にも手こずる僕が…勝てるのかな)

 

レ級の恐ろしさを知っている10強最強の時雨もまた、額に嫌な汗を感じた。

 

 

「レ、レ級のフラグシップ……」

 

朝潮はレ級のフラグシップと交戦した事はない。近場とはいえ実戦経験はある彼女にとっては、レ級のフラグシップがどれ程恐ろしいかは想像がつかなかったが…

 

鎮守府二つの壊滅。それだけでそいつがどれ程の実力を持っているかが嫌でも分かった。分かってしまった

 

朝潮は恐れた。まだ見ぬレ級を…そしてそれは他の感娘も同じ。勿論10強も例外ではない

 

レ級のフラグシップは誰も交戦経験がない、未知数の力…だがレ級事態とは交戦した事はある。

 

 

圧倒的な火力、速度、耐久、艦載機の数、雷撃…全ての艦の力を揃えた究極の深海棲艦と言われている奴のフラグシップなのだ。これまでの戦いとは…レベルが、次元が違うだろう

 

「なる程…だからこそ横須賀の提督がいるのだな」

 

この中では珍しく病んでなく、冷静な日向が提督に言う。それに対して提督は頷く事で返事を返した。

 

 

「連合艦隊を組む、奴を倒す必要は無い…時間稼ぎで充分だ。編隊は第一艦隊に時雨、日向、金剛、瑞鶴、響、大井だ」

 

「…全力って訳ね?」

 

横須賀の提督は固唾を飲んでそう呟いた。金剛は10強には及ばないが朝潮を含む10強ではないが力を覚醒した五隻の内の一隻である。それに加えて10強のトップ3である時雨、響、瑞鶴だ。これ以上無い程に全力だと嫌でも分かる。

 

「それにしても、君がトップ3をローテーションを組まずに同じ編成に入れるなんて…意外だね」

 

横須賀の提督は珍しげに言う。彼のスタンスを知ってる自分としては言わずにはいられなかった。

 

「相手が相手だからな、加減してる余裕はない」

 

とはいえ彼には10強全員を投入する気はない、万が一不在の時に鎮守府が襲われた時の為に10強をある程度は残すつもりだ。故に

 

「とはいえ第二艦隊にはこれ以上10強は入れない、吹雪…お前もここに残れ」

 

「なっ…!?」

 

その言葉に横須賀の提督は思わず驚愕した、鎮守府の最古参であり条件次第ではあの時雨を超える吹雪を置いていく…その決定には大淀も驚きを露わにしていた。

 

「て、提督!貴方はまた…!」

 

大淀はそれに対して口を出そうとしたが

 

「そこまでだ大淀、司令官にはまだ話す事がある…そうだろう?」

 

「その通りだが響…その手に持ってるのはなんだ?」

 

響の右手には青色の何かが握られていた、同時に大淀は自分のスカートに手を伸ばし…顔を赤くした。

 

「い、いつの間に…」

 

「漣風に言うなら…私が時を止めた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

「空気をぶち壊すのは漣の専売特許なんですけどねぇ…?」

 

「肩が凝って仕方ないよ、少なくとも私は耐えられないな」

 

そう言いつつ響はそれを頭に被り、茶を飲み始めた。

 

 

その光景を見た提督は…諦めて話を続ける事にした。

 

「と、ところで海色提督、理由を聞いていいかい?」

 

「理由は単純、攻めてる最中の鎮守府の周辺海域の防衛だ、うちの最高戦力を六人も出すんだ、その内の六人にはこっちを守ってもらうのが筋だろ?

多少リスクはあるが…今回は合流させないで撃退するのが主な目的だからな」

 

「さ、流石司令官です!…あれ?六人?」

 

朝潮は違和感に気付く、10強を投入してるのは時雨、日向、瑞鶴、響、大井だ。金剛は10強に入ってないので除外されるにしても、残りは漣、168、阿武隈、青葉、霧島…二人多い事に気がつく。

 

「僕が説明するよ、実は吹雪は条件次第じゃ僕と並ぶ…ううん、それ以上に強いんだ」

 

10強最強の時雨がそう言った。朝潮は最古参でありいつも自分に良くしてくれている吹雪を見て

 

「え、えぇぇぇぇぇ!?」

 

思いっきり叫んだ

 

「いやぁいつ見ても新人さんが驚く姿は良いものですねえ」

 

「あ、あはは…隠してるつもりは無かったんだけど…ごめんね?朝潮ちゃん」

 

困ったような表情でそう言う吹雪だが、むしろ朝潮はそれで彼女に対して更に憧れた。

 

ーあの時雨さんに並ぶ実力…ー

 

同じ駆逐艦、時雨の驚異的な強さに憧れを抱くのは当然である。現に他の駆逐艦も彼女に憧れ、ある者は並び立ちたいと、ある者は超えたいと口々に揃えて言うのだ。勿論朝潮もその一人だ

 

だからこそ彼女は時雨と並ぶ吹雪を…改めて尊敬した。

優しくて強くて…照れ顔が可愛い彼女を……

 

 

 

「朝潮…顔」

 

「はっ!?」

 

いつの間にかトリップしていた朝潮を時雨が正気に戻した。

 

「君の鎮守府って、面白いよね…本当」

 

「…………」

 

横須賀提督の軽口に提督は頭を抱えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「んー」

 

 

 

その感娘は海辺を散歩していた。今日は良い事が起きそうだと感じたから。

そういう時は決まって海辺に来る。海が自分を歓迎してくれると、そう感じるのだから

 

 

「えへへ、楽しいです!」

 

彼女は散歩してるだけでも幸せな気分になれる。彼女の性格は明るく誰もが良い子だと思う子だから

 

だからこそ…彼女を怖れる。

 

彼女は味方にはこれ以上無いくらい優しいが、敵には無慈悲だ。

彼女自身は慈悲の心があるだろう、だがその体質がそれを許さない

 

彼女に敵対する者は…彼女が愛している男性に敵対する者には、容赦無くあるものが降り注ぐ。

 

 

それは、深海棲艦も例外では無い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナゼッ!コノカイイキニキテキュウニ!!」

 

空母ヲ級を旗艦をする深海棲艦六隻は、謎の嵐に襲われていた。波は荒れ、海に渦が巻き、豪雨で前を見る事すら出来ない。

 

 

「ギャ!」

 

深海棲艦である彼女と同じく深海棲艦の駆逐艦イ級が衝突した、その影響で隊列が乱れ、次々と深海棲艦が渦潮に飲み込まれていく。

 

(マダダ、マダニゲラレル!)

 

ヲ級は渦潮に飲み込まれはしなかったが、他の艦は手遅れだった。同胞を見捨て…自分が生き残ろうとした時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エ?」

 

 

 

 

途端に自分の足が爆発した。理由もなく、偶々

 

 

「ナンデ…」

 

海を走れなくなった彼女は、再び水底に沈む。

 

「イ、イヤダ!モウウミノソコハ…イヤ!シズムノハ…イヤ!」

 

必死にもがくが、身体はどんどん沈む。

沈んでいく。

沈んでしまう。

 

 

 

 

「イやァァァァァァ!!!!!」

 

 

 

そして彼女は、二度と海の底から出る事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ…ふふっ…」

 

海辺を散歩している彼女に風が吹く。優しい風が。彼女を守るように風が吹く

 

 

 

「〜♪」

 

そして彼女は、鼻歌を歌いながら鎮守府へ帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

場面は変わって鎮守府、時間は提督が第二艦隊の編成を口に出した頃から始まる

 

「わ、私…?」

 

そこには、真っ青な顔をした朝潮がいた

 

それもその筈…彼女は第二艦隊に編成されたのだから

 

 

「提督!朝潮ちゃんは戦闘経験が他の人と比べて少ないです!幾ら何でも…!」

 

「悪いが今回は大淀に賛成だ、五十鈴ならまだしもコイツを入れたら俺達の足を引っ張りかねない。置いて行った方がマシだ…足手纏いはいらない」

 

同じ編成にいる木曾がそう言う。無理も無い…朝潮は新人で、能力は高くとも経験が圧倒的に不足している

だが提督は

 

「いや、俺が描いてる作戦には朝潮と島風の二人が重要なんだ、万が一の事に備えてお前と神通がいる。それに比叡も入れているんだ…お前らならやれる」

 

「確かにそうだ、俺や神通に比叡…それにあいつがいれば先ず誰も沈む事は無い…が、この作戦は失敗出来ない。不安要素は取り払うべき…そうじゃないか?」

 

木曾が言う事は最もだ、彼女が正しい事は誰よりも提督が理解している。普段の自分なら朝潮を戦場に立たせる事は無い…だが彼には理由があった

 

それは、朝潮の可能性…彼女自身気付いてない成長の兆しを…提督は横須賀の提督との演習でそれに気が付いた。そして…全身が震え上がった

 

時雨と吹雪…二人に並び立つ才能を垣間見たのだ。

 

 

そしてそれは過酷な環境でないと芽生えない可能性だと…それに万が一を考えて彼女達はレ級とは交戦させない。あくまで主役は第一艦隊だ

 

そして切り札の一つである彼女も編成に入れている。木曾の言う通り彼女がいれば文字通り誰も沈む事はない、沈みようがない。それが彼女の代名詞でもあるのだから

 

 

故に提督それを話した。彼女達に…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…やっぱお前は自分勝手だ…だが俺はそんなお前に命を預けた。そしてお前は俺達を信じてこの編成を組んだ…それで良いんだな?」

 

「ああ、俺が信じるのは一つ…お前達感娘の可能性。それだけだだからこそ俺は全力でお前達をサポートする。俺は一つの言葉を…お前達に送る」

 

「なら俺はこう答えよう」

 

 

 

 

 

 

 

「我が部下に、最高の勝利を収めさせる、どんな手を使ってもな」

 

「お前に最高の勝利を与えてやる、どんなに危険な目にあってもな」




いかがでしょうか?

我がままですみませんが…できれば感想とかくれたら嬉しいです。


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第20話

艦これアーケードの秘書艦は吹雪、名前もこの作品の主人公でやってますよ、やってますとも。

なのに10強が誰もこないってどういう事なの…?漣とか時雨とか響とかは来ても良いよね…?あ、朝潮は来ました。



食堂での一件が終わった後、提督と横須賀提督は二人で作戦を立てていた。

側には横須賀提督の秘書艦である長門もいる。

 

「相変わらず君は秘書艦はいないんだね」

 

「ああ、言うことは後にしよう…何せ時間がない」

 

「そこなんだけど、時間稼ぎについて聞きたい事があるんだ、私は吹雪ちゃんとは何度も戦ったから分かるけど…君の切り札の子については殆ど知らない」

 

「何だ?呉の提督と付き合いが長い提督にも分からないことがあるのか?」

 

長門が意外そうな顔をして聞くが、実は横須賀提督は提督の切り札と演習を行った事は一度も無い。提督から聞いている事しかしらないのだ。

横須賀の提督は長門にそれを伝えると、納得したように頷く。

 

「今回のような事にしかあいつは使わない…あいつを運用するとこっちの神経が削れるからな」

 

「リスクがあるって事…?」

 

「まぁな、響よりもキツイ…」

 

「あの響よりだと?あいつの動きは味方を混乱させ、作戦に支障が出ると思うのだが…」

 

「だからあいつと朝潮を同じ編成には入れなかった。朝潮にはフォローが得意な神通と木曾を入れてるからな」

 

響ーーその名前を聞いて横須賀の提督は彼女の戦い方を思い出していた。

 

常識が通用しない…言葉にするのは簡単だが、相手にするのは難しい。

中でも思い出す戦い方はー

 

 

「あの子、ランダムシュート簡単に使えるからなぁ」

 

「ランダムシュート?何なのだそれは」

 

「長門は見た事なかったっけ?」

 

「私が見たのは艦載機や砲弾を踏み台にして飛ぶ、夕張に改造してもらった錨を射出して絡みつかせる…他には…自分の魚雷を砲弾に向けて投げて囮にして、撃墜したと誤認させる…後は思い出したく無いな」

 

響の動きはトリッキーな物が多い。他にも魚雷を深海棲艦の口内に放り込んだり、突撃してくる艦載機や仲間の艦載機を踏み台にして、空中戦を繰り広げる等…感娘という存在では考えられない立体的な攻防を可能にしている。

 

これは彼女が他の艦種より小さく素早い駆逐艦だからこそできる芸当でもあり、それを可能にする身体能力の高さが彼女の売りだからだ。

 

ただ強いだけではなく豊富な戦術を駆使して相手を混乱させ、此方にはその動きから多数生まれる戦術を駆使できる事が主な利点となる。

 

勿論他の感娘が彼女についてこられればの話であるが…

 

「ランダムシュートってのは…簡単に言えば回りながら砲撃を放つ技。回るってのは側転の事だよ?何で出来るかは不思議だけどね…」

 

「響が言うには夕張から借りた漫画の戦法らしい。二次文化も馬鹿にはできんからな」

 

「ふむ、という事は呉の提督も嗜んでいるのか?二次文化を」

 

「戦争物のな。偶に参考になる戦術もある…まぁ参考程度だがな」

 

「馬鹿にできないよねー、ロボット系のアニメとか漫画って」

 

「まぁ必要であればそういった物を感娘にも見せてる、漣に教えてもらったあれは価値観が変わったよ。今までは訓練にならないと思ったからな」

 

提督はこういったように感娘から意見を聞いて訓練を効率よく回そうと常に努力してはいるが…

 

(騙されてるよ海色君…だから初雪ちゃんとか望月ちゃんには何も言わないんだね…)

 

休みはない(提督曰く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

 

「話を戻そう、問題は奴をどの位置で追撃するかだが…」

 

「うん、偵察はナシ…時間が限られてるからね、君の時間稼ぎは?」

 

「何とも言えないな…あいつに関しては…運が良ければ、だからな」

 

「ん?もしや呉の提督の時間稼ぎは運が良ければ相手は足止めを食らっている…そう言いたいのか?それはどうかと思うのだが」

 

「そうだ、まぁこれに関しては信用して良い、あいつの運は誰にも勝てないからな」

 

「な、何その自信…どこぞのアカ○とか宮永○さんじゃないんだから…」

 

「○風に言うならネ○ー並だが…まぁこの際はどうでも良い。必要なのはどう追撃するかだ」

 

「ちょっ!?ネ○ーってそれ運命変えちゃってんじゃん!何者なのその子!」

 

「………話について行けない…」

 

「と、とにかく作戦はこうだ!」

 

 

そう言って提督は海図を広げる。そこにはとある海域が赤く塗られている。それは例の作戦海域だ

 

「ここにたどり着くのを妨害するのが今作戦の目的だ、長門にも改めて伝えておく…勝とうと思うな。下手をすると轟沈の危険も考えられる」

 

「ああ…確かにそうだ、レ級のフラグシップ…強さは想像できないが…鎮守府を二つ壊滅させたのだからな」

 

「そうだ、その鎮守府は決して戦力が並以下の鎮守府では無かった。にも関わらずだ」

 

ゴクリ、と固唾を呑む音が聞こえた。

 

 

「改めて此方からは第一艦隊に時雨、響、瑞鶴、大井、金剛、日向を。第二艦隊には神通、木曾、島風、朝潮、比叡、○○を」

 

「私からは第一艦隊には長門、大和、武蔵、グラーフ、蒼龍、飛龍。第二艦隊には嵐、叢雲、白露、綾波、熊野、那智を」

 

それぞれの連合艦隊が今、明かされた。

それを聞いて提督は意外な顔をする。第二艦隊には横須賀提督にとっては珍しく駆逐艦が多かったからだ

 

「駆逐艦が多いのが気になる?まぁダメージソースは第一艦隊だし…君には逆立ちしたって駆逐艦の性能は敵わない。だから第二艦隊はサポート用。

火力は低いけど動きは早いよ?熊野と那智も駆逐艦について行けるしね」

 

そう横須賀の提督はニヤリと意地の悪い表情を見せた。

それを見て提督はやれやれ…と内心で思って、簡単な作戦を立て始めた

 

「なら遠慮なく第二艦隊は使わせてもらうぞ?主に牽制役としてな」

 

火力が心許ない駆逐艦には、牽制役の砲撃を放ってもらう事に決めた。ただ威嚇射撃を行いだけでも意味はある。本命の砲撃の命中精度を少しでも高めるために。

加えて此方の第二艦隊もサポート寄りだ、これなら両方の第二艦隊をサポートとして立ち回らせれば向こうのレ級への牽制になるし、艦載機もある程度落とせる筈。

 

 

「よし、簡単だが作戦を立てた…繰り返すが今回は撃退が目的だ。無理はしないでくれよ?二人共」

 

「当然だよ」

 

「当然だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、提督は簡単な作戦を二人に伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

場面は変わり、海域。ここではレ級率いる艦隊がが足止めを食らって立ち往生していた。

 

「ウンガナイナァ…イヤマジデドーナッテンノ?」

 

それは全員の舵が軽い故障。足を止めて修理すれば治るレベルだが、それだけでは無かった。

 

それは、海域の突然の嵐。先に向かっていた同胞が運悪く巻き込まれたのを見た。

強すぎて此方からは様子が少ししか伺えないが、あの強さでは恐らく帰らぬ者となっているだろう

 

「シニガミニデモトリツカレタカナァ?ムコウニトッテハ、コウウンノメガミナンダロウケドサ…コッチニトッテハシニガミダヨ…」

 

レ級は考える。故障してから感じるこの嫌な予感についてを…死神が此方に鎌を向けて、今にも首を狩りそうな感覚を。だがレ級は笑う

 

 

死線なら何度も潜り抜けた。

感娘とも、何度も交戦した。

無論艦娘とも殺りあった。その度に生き残ってきた。

 

そして、今の自分がいる

 

 

 

 

「クルナラキナ、カンムスドモ…ウミノソコガテンゴクダトオモウクライノ………………

 

 

 

ジゴクヲミセテヤルヨ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてレ級は、獰猛な笑みを浮かべた。




多分バレバレだろうなぁ…隠す意味あるかなぁ…
最強の感娘…一体誰なんだろ〜な〜


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第21話

書いてて思ったけど、別に大淀が嫌いな訳じゃないよ?
ただ設定的に動かしやすいだけで…本当だよ!?


 

 

『これより深海棲艦レ級、フラグシップの追撃を行う。第一艦隊、第二艦隊に選出された感想は直ちに出撃準備を整えるように』

 

提督は鎮守府内に放送を使い呼びかけた。側には横須賀の提督と作戦補佐の大淀がいる。

提督と大淀の間に不穏な空気が流れてるのを感じ取った横須賀の提督は、事前に胃薬を飲んでいた

 

そんな空気の中、提督は手元にとある資料が無い事に気が付いた。それは鎮守府内に現在いる感娘の資料だ。

出撃に12隻も出撃させるので、これが無いと正確な数を把握する事ができないと思い

 

「悪いな、資料を取ってくる」

 

と、席を立って部屋を出て行った。

それを見た横須賀の提督と大淀は、あの提督が忘れ物を…?と、違和感を感じたが、間近に迫る作戦に備える為に提督をそのまま見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが、この鎮守府始まって以来の大事件に繋がるとも知らずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、第一艦隊の旗艦は時雨、第二艦隊の旗艦は神通って提督は言ってた。僕に教えてくれた簡単な作戦をみんなに説明するね」

 

時雨は提督が率いる感娘全員に告げた、提督の作戦の一つを。

 

「先ずレ級を沈めるのは考えるな。これは後一週間位で来る大規模作戦に備えて戦力を補充しているから。

レ級のせいで僕達が沈んで作戦に支障が出るのは誰も望んでないからね」

 

レ級はあくまで前哨戦だと提督は考えていた。確かにレ級が合流するのは危険だが…それは合流したらの話。ならば合流させなければ良い。

 

そしてそいつを撃退したとして、いずれはレ級と決着を付ける必要もある。今回の戦闘でなるべく情報を得る必要もある。

そして万が一の保険も用意している。それが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二艦隊に配属された彼女、名を雪風

 

 

不沈艦として後世に名を馳せた彼女。

 

そして

 

呉の提督の切り札の一人

 

 

そんな彼女は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっきゅ、もっきゅ、もっきゅ」

 

 

瑞鶴から貰ったカロリー○イトを美味しそうに頬張っていた。

 

「聞いてるかい?雪風…というか瑞鶴も渡さないでよ」

 

時雨が瑞鶴を叱るが瑞鶴は苦笑いするだけで、反省をしてるようには見えなかった。

それを見た時雨は少しいらついて、瑞鶴にぺしぺしとチョップする。

 

「あうぅ」

 

「まったくもう、とにかく朝潮と島風には速さを十二分に活かした戦法の、ラン&ガン戦法で行くんだ。

第二艦隊の陣形は複縦陣形、第一艦隊は単縦陣で行くよ」

 

「後は提督さんからの指示で動くの?」

 

「提督からの指示もあるけど、詳しくは道中で話すね。時間稼ぎがどの位有効になってるかは分からないし」

 

「ええ、分かったわ」

 

こうして感娘達は出撃準備に取り掛かるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「全艦隊出撃完了しました。柳林提督、指示を」

 

「んー…遅いなぁ海色君…」

 

「柳林提督?」

 

「あぁ、ごめんごめん」

 

横須賀の提督は提督が忘れ物を取りに行ってから帰って来ないのを気になっているが、大淀はそんな事はどうでも良いように振舞っていた。

 

横須賀提督の中では彼女は別に提督の事を好いてる訳でもないから気にするほどではないとは考えているが…

 

「ん…よし、取り敢えず第一艦隊はレ級が潜伏されてると思わしき場所付近に辿り着いたら、航空機を出して」

 

『了解です、あの…横須賀の提督さん?私達の提督は』

 

「何か忘れ物をしたみたいで…多分もうすぐ戻ると思うけどね」

 

『分かったわ』

 

やはり提督が直接指示を出して来ないのが気になったのだろう、瑞鶴が不安気な声色で聞いてきた。なるべく安心させる為にそう言ったのだが、それでも横須賀の提督は違和感を拭えなかった。

 

「あら…?」

 

そうこうしている内に、大淀が何かに気がついたように声を上げるが、直ぐに「いえ、気の所為です」と、訂正した。

 

 

(今…一瞬だけ鎮守府にいないはずの12人分の反応があった気が…気の所為でしょうね、彼女達は先程出撃したのだし…)

 

見間違いだと大淀は判断して、海域を移すレーダーの方に視線を集中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がふぅっ………」

 

「この瞬間を待っていた…君は警戒心が高いからね、必ず時雨、瑞鶴、響の何れかはこの鎮守府に残していた。

だから今回のは千載一遇のチャンスだったのさ、君を捕らえる為の…ねぇ!」

 

 

 

バシィ!ドゴォ!

 

 

 

 

 

「何故…貴方が…大佐ァ!」

 

 

 

 

提督は資料室に入った直後に謎の影に襲われ、気を失った。

次に目を覚ましたのは車の中。それも輸送車の中だった。

 

そこにいたのは先日鎮守府に来た上司だった。

 

 

「教育だよ、君は黒を名乗ってる癖に非情になりきれてない、挙げ句の果てに自分が背負いこまなくて良い物を背負い込んでる!それは提督の領分ではないだろう?」

 

「提督の領分はその提督が決める事…そして感娘の領分は戦う事だ!」

 

「違うな、間違ってるよ。前提がさぁ!!!」

 

「ぐぼぉ!?」

 

 

鳩尾に重い一撃が叩き込まれる。その衝撃で込み上げてくる吐き気を堪え、提督は大佐を睨み付ける。

 

「君は甘いんだよ、根本的にさ。兵器一つを休みなく訓練させる。訓練だけだ…それ以外には縛りはない」

 

「それの何が」

 

「監禁させる事もなく、一人一人に恐怖を植え付けて艦娘にする事なく…ありのままの感娘を使う…彼女達が人類に反乱したらどうするんだい?

僕達人類は二つの脅威に挟まれ、滅びるんだよ?」

 

「そうならない為に、私は彼女達が望む最大限の望みを叶えてます!疲労を感じさせないように適度な出撃、出撃がない場合の適度な訓練、それをスケジュール制にして日常として覚えさせる。

最初は辛くとも彼女達は耐えてきた!耐えられるのですよ!彼女達は!不満があるのならそれを解消させましょう!私が嫌なら喜んで代わりを探しましょう!!」

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いた時、大佐はニヤリと笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の所の大淀君は君を憎んでるじゃあないか?ならば代わりを探し、後任を任せられる者に任せたらどうだい?」

 

「ッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

確信を、突く

 

 

反乱なんて今まで無かった。そうならないように最大限の努力をしてきた。

今まで時雨から秘書艦を付けろと言われてもしなかったのは、そうなると必然的に大淀とも関わってしまうから。

 

大淀とは最低限の付き合いしかしない。彼女が自分を嫌ってるのは明白だったから。

理由を聞いても睨まれるだけ、会いに行っても閉め出される。これじゃあ対話のしようがない。

 

だからこそ見ない事にした…してしまった。

 

 

 

 

先日言われた、殺したい程に憎いと…

 

 

前に聞いた時は幻聴だと自分に言い聞かせていた。なのに今回改めて言われて…そして気が付いた。

 

自分がやってきたのは間違ってるのではないかと

だから彼女がどうするのかを見させて貰った。

その時の資料を見たが、確かに敗北は増えてるものの…日常的には何処か余裕があるようにも見えた。

 

自分は訓練付けで余裕があるようには思えない…それは彼女達にとっては大きくストレスになってるのではないか?ならば大淀のやり方こそ、正しいのでは?

 

10強と呼ばれる彼女達も素質が開花されたからだ、自分の中に眠れる素質…それを目覚めさせたのがたまたま自分であって、それは他の誰でも出来るのではないか?

 

 

そう考えると…今まで歩んで来たこの道が酷く醜く思えて、歩みを止めそうになった。

 

 

 

 

だがそれだけは、それだけは駄目だと言い聞かせた。

 

それでは今まで彼女達に無理をさせてきた彼女達に申し訳ないと、最後まで彼女達を導かないと、そう新たに言い聞かせてきた…のに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に大淀だけかな?君を殺したいと憎んでるのは」

 

 

 

 

 

ぐにゃりと、視界が歪む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の所の朝潮だっけ?君に無茶なオーダーをされてさ…恨んでるんじゃないかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝潮の青い顔が、絶望していた彼女の顔が目に浮かぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで彼女は轟沈しないなんて言えないよね?君の切り札の彼女…彼女は運が良ければの話だ、運が彼女に微笑まなかったら…きっと朝潮は恨むだろうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君を殺したい程に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ぁぁぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その為には君はあの鎮守府には相応しくない…後は僕に任せるんだ」

 

 

 

 

 

 

そう言い残して大佐はその場を離れる。護送車が止まったのを感じた。

大佐は護送車の荷台の扉を開けて、閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分はもう、何も考えられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

一人の感娘は、それを見た。

先日来た大佐が自分達の提督を誘拐する所を。

証拠写真もきちんと取れた。一人でも飛び出しそうになる心を懸命に抑えた。

 

そして彼女は初代秘書艦である彼女にそれを伝える。そして彼女はある四人に声をかけた。

 

 

そして彼女達は集う。秘密裏に、そして彼女達は報復する。何に手を出したのかを分からせる為に

 

 

一人は無表情で魚雷の数を確認し、言う

 

「夕張ちゃん考案のフルアーマー漣です、武装が多くて動けない?違いますね…動くんですよ、無理矢理でも…誰のモノに手ェ出したと思ってんですか?連中……………

誰も逃さない。漣はしつこいから」

 

一人は真剣な表情を浮かべ、資料を漁る

 

「やるなら徹底的にです、幸いにもあの大佐のデータは全て揃ってます。裏も表も…交渉するのも報復するのも自由です…が、みなさんの様子だと報復以外考えてませんね。良いでしょう、この霧島…覚悟を決めました」

 

一人はただ空を見上げ、言う。

 

「本当に偶然見つけられて良かったですよ〜、幸運の女神の加護ですかねぇ?ま、大佐の方にとっては死神でしょうねぇ、確実に…ま、言える事は一つです、青葉に見られたからには逃げられないって事ですねぇ」

 

一人は周りを見ながら言う

 

「本っ当に血の気が多いわね貴女達は…まぁイムヤも人の事言えないけどっ!!!………うーん、魚雷の調子はバッチリだ!………で、誰から深海に沈めるの?

イムヤは容赦はしないから」

 

その一人の放った魚雷は、大音量と共に爆発、鎮守府の地面の一部にクレーターを作った。

 

それを見た一人は苦笑いしながら…だがその瞳に光は宿ってないが。そして彼女もまた言う。

 

「あ、阿武隈的には獲物は残しておいて欲しいなって…私の提督を傷付けたのはすっごく。すっっごく!ムカつきましたからね!…………気が付かない内に海の底にいるのって、どんな気持ちなのかなぁ…ふふっ」

 

 

 

 

そんな彼女達の様子を見て、彼女達を集めた少女は言った。

 

「送り出してくれたみんなには感謝しないとね」

 

そう、彼女達は鎮守府の守りは自分達に任せて、提督を助けに行ってほしいと言ったのだ。

この事は横須賀の提督も、大淀も知らない。完全なる隠密作戦

 

先程の爆発音も鎮守府の感娘と妖精さんの協力で作戦司令室には届く事はないだろう…むしろ届いたら提督を攫われて怒り狂った感娘達の八つ当たりの砲撃や魚雷音が絶え間なく流れるだろうが。

 

おかげで鎮守府内は軽い内乱状態である。

 

 

 

 

「さ、行こうみんな…提督が私達を待っている」

 

 

 

 

 

そして最強戦力である彼女達は、提督を取り戻す為に大佐の鎮守府に乗り込む事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日は二面戦。レ級追撃と、提督奪還作戦。

 

何方がどのような展開になるかは、まだ誰も分からない。




大佐は怒らせちゃったねぇ、彼女達の事をねぇ、本気で怒らせちゃったねぇ!


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番外編其の二

なんということでしょう、アーケード版のむちゅきがあざとすぎて辛いという事が判明しました。
駆逐艦だけでもやっていけるのがアーケード版の強み。ウチの時雨ちゃんが夜戦じゃないのに戦艦を落としたぜ!
春イベ?き、聞かないで…うち弱小鎮守府だから!

今回は息抜きに番外編を書きました。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その感娘は一言だけ言い放つ

 

 

 

 

 

たべりゅ?

 

 

 

 

 

それだけで幾多の提督は堕落した。

 

 

 

 

 

 

その感娘は言い放つ

 

 

 

私がいるじゃない!

 

 

 

 

その一言だけで数多の提督は子供になった。

 

 

 

 

 

また、ある提督は言った。

 

 

 

 

 

世に文月のあらん事を、ドジっ子可愛い、MNBは神からの啓示である等訳のわからない事を。

 

 

少なくとも我らが提督はそう思っていた。

 

 

 

そう…思っていた。

 

 

 

これは、鎮守府の長い長い騒動、その始まりの1日であった。

 

 

 

まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝手に話を書くんじゃない」

 

「えぇ?良いじゃん!提督と秋雲の仲でしょ?」

 

秋雲は提督が業務を行っている最中に遠征の報告、そして今日の訓練の成果を報告しに来たのだが、何を考えたのか少し休憩して鎮守府を見回らないかと言ってきた。

無論提督は一度断ったが、秋雲からある提案を出されたので、止むを得ずに提案を呑むことにしたのだ。

 

「秋雲…本当なのか?」

 

「もちもち、信頼できる人からの情報だよ!今鎮守府で内乱が起こりかけてるんだ!」

 

内乱。それを聞いて提督は頭を抱えそうになってしまう。

日々内乱が起こりえる要因は取り除いてきたと思っていたが、見通しが甘かったようだ。

提督は自分の管理能力を徹底する事を新たに決めて、秋雲に詳細を聞いた。

 

「内容?提督ペロペロ派と提督クンカー派の戦争と、ぽいぽい教とにゃしぃ教の争い、後ビルドストライク二式大艇ちゃんフルパッケージとか言って飛んでいった、かもかも教のー」

 

「待て待て待て!何だその内乱は!」

 

提督が思わずツッコミを入れる程にぶっ飛んでいた内容だった、何だ提督ペロペロ派とクンカー派は、ぽいぽいとにゃしぃ?挙げ句の果てには飛んでいった?何だこれは

 

「提督」

 

すると秋雲が真面目な表情をして提督を見つめる。漣と同じように何時もはふざけてるが、やる時はやるのが彼女。

もしかしたらこれは本当に危険な状況なのかもしれない…そう考えた。

 

「秋雲は真面目。このままじゃ本当に内乱が起こっちゃう。だから明日の鎮守府の運営は休みにして?大規模作戦も無いし、1日だけなら休みを取れるでしょ?」

 

「し、しかし」

 

確かに秋雲の言う通り、取れない事も無い。近頃の海域は大人しく、目立った戦闘も無い…必要最低限の警戒をしておけば鎮守府内限定とはいえ、出撃や遠征、演習も無い基本的なパトロールで終わるだろう。

現に他の鎮守府の休みはそうしているらしい。らしいというのはこの鎮守府ではそういった休暇を取ったことは無かったからだ。

 

「提督の方針は秋雲も理解してるし、納得もしてるけど…詰め込み過ぎも良く無い、何処かでおっきく休まないとまいっちゃうし、今回みたいな事も…」

 

秋雲の言う事も一理ある。そう考えた提督は、考え抜いた末に

 

 

「…………そうだな、お前の言う事も一理ある…その提案は呑もう」

 

休暇を許可した。

 

「うんっ、ありがとうね提督!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(計画通り………)

 

 

提督は秋雲の黒い笑顔を見抜く事は出来なかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

大本営に許可について連絡したら、何故か喜んで許可をくれた。むしろ1日だけで良いのかと言われる始末だ。

 

「足手まといになってるのだろうか?」

 

思わずそう呟いてしまった。とりあえず提督は今日と明日、大規模な休暇を取り部下をリフレッシュさせる事を決意した。

秋雲が提案してきたのはヒトゴーマルマルだったのもあるが、提督自身も行きたい場所があると思ったからだ。

 

「久々に親方のラーメンでも食べに行くかな…」

 

思い出すのは少年時代から通っていたラーメン屋のラーメン。このラーメンが美味く、余ったスープを半ライスにかけてのりと一緒に食べるのがまた美味い。

 

女性と行く店では無いが、今回の休暇で久々に一人で行ってみようかと思っていた。

 

「いや…この際親方の味を布教するのも良いかもな」

 

だが彼女達は部下でもある。雰囲気も何も無いがラーメン屋に誘ってみても良いかもしれないと思った。ラーメン屋なら雰囲気もぶち壊せると考えたからだ。

これがおしゃれな店なら嫌でも意識せざるを得ないだろうし、ラーメン屋なら大丈夫だろうと思った。

 

「やあ、提督」

 

そう考えていると、日向に呼び止められた。

 

「日向か…放送で聞いての通りだが」

 

「分かってるさ、まさか休暇を取るとはな…最近話題になってる抗争と関係があるのか?」

 

「ま、全く無いって訳じゃないな」

 

やはり内乱は起きている、改めて確信した提督は日向にそれについて聞こうと思った。

内乱…抗争についてを

 

「ふむ、私も詳しくは分からないが…まぁ分かりたくもないが、霧島と私以外の10強も参加するらしいぞ」

 

「…冗談」

 

思わずそう呟いてしまった。

 

「ふむ、提督の冗談…も聞くのは久し振りだな。この休暇で肩の力を抜く事にしたのか?」

 

「まぁ…程々に…全く、誰か誘って食事にもと思ったのだが」

 

「なっ!?だ、駄目だ!新たな争いを生むつもりか!」

 

「ひ、日向?落ち着け!」

 

「す、すまない…兎に角それは他言無用だ!行くならせめて男と行け!」

 

「お、おう」

 

 

日向の慌てように怯みながらも、取り敢えず了承した。

そして二人は暫く会話した後に別れた。

 

 

 

 

 

 

 

「久々にプラモでも作るかな…ビルドフ○イターズよろしく改造でもするか…作るのはやっぱり個人的に好きなA○Eとユニ○ーンを基盤に…」

 

 

 

これから何をするかを考えながら提督は私室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その姿を見ていた者がいたとも知らずに

 

 

 

 

 

 

「青葉、見ちゃいました!聞いちゃいました!」



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第二十二話

アーケード艦これにアブゥと瑞鶴まだですか?…そうですか…
アーケードで瑞鶴が中破したらどうなんだろ?



提督が大佐の鎮守府に到着し、独房に入れられる。

提督は大佐の鎮守府に到着してから落ち着かない様子で周囲を見渡していた。それは気になることができたからだ

 

「大佐」

 

「ん?何かな」

 

「この鎮守府…誰一人貴方に挨拶をしませんでしたね…?貴方と共にきた彼女達には挨拶をしたのに…何故です?」

 

その疑問を大佐に聞いてみた。上司に挨拶をしないどういう事だと思ったからだ。

 

「あぁ、その事?それは僕に挨拶をしてはいけないと僕が言ったからだよ」

 

意外な事に大佐はその事に対してすんなりと答えてくれた。

そしてその理由に提督は思わず「何故です?」と聞いた。挨拶は上司、部下の関係には無くてはならないもの…それを省くとはどういう事か?すると大佐はあっさりとこう言った。

 

「何故兵器に挨拶する必要があるんだい?」

 

逆に質問をした自分に対して不可解な表情を見せる大佐。その時に提督はこの人物とは相容れないと思った。

 

確かに彼女達は兵器…それでも彼女達には意志がある。心がある。そこから生まれる力を重要視する提督にとってはただの兵器として接するのはリスキーだと考えてる。

 

何故ならば彼女達にはただの兵器には宿る事のないものがある。手酷く扱えばいずれ手痛いしっぺ返しが来ると考えてるからだ。

 

だが、同じ海の平和を取り戻す者同士としては、彼のしてる事のリスクを教えたかったが…

 

「それに君は人質さ、万が一君の所の艦娘が来ても君を人質にとれば良い。君がここにいる時点で僕の勝ちは決まってるのだよ」

 

それを教える前に大佐がそう言い残して立ち去って行った。彼の感娘と共に。

 

提督は直ぐに独房の扉に付いてる小窓から外の様子を見た。そこには誰一人として感娘の存在は無かった。

 

「見張りを付けないとは…余裕の表れか?」

 

見張りの感娘が一人もいない事に違和感を感じる。

それとも助けに来る感娘を警戒しての事か?それを考えたが…提督は今自分が出来ることをやろうと思った。

 

提督は常日頃からこういった状況が来るのを想定していた。そして自分がどうやって助かるのかを想定していた。

 

携帯していた銃は取り上げられている。だが…細かい所は見られていない。

 

先ず提督はベルトのバックルを外す。そこには小型のナイフが仕込まれていた。

 

提督は軍服の右端を切る。するとそこから分解された銃と弾丸が出てくる。

分解された銃を組み立て、弾丸を装填する。次に左端を切って銃のオプションパーツであるサイレンサーとプラスチック爆弾を取り出した。

サイレンサーを銃に取り付け、扉目掛けて何発か弾丸を発射する。そして幾つかの小型のプラスチック爆弾をポケットに移した。

 

鍵は開いた、見張りも誰もいない。幸いな事に提督は大佐の鎮守府には何度も出入りしてるので、地形は頭に入っている。

 

敵に回るのならば徹底的にやる。それが提督だ。

 

提督は資材庫への最短ルートを進んで行った。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

駆逐艦白雪は日々働く。大佐の無茶な命令にも文句言わずに

でないと姉妹が犠牲になる…それを知っているからだ。

僚艦である五月雨と若葉もまた、そんな彼女達に与えられた任務は鎮守府近海の警備。

 

ーあの呉の提督の艦娘10強が攻めてくる可能性があるー

 

そう聞かされ、三人は近海の警備をする。

 

正直生きた心地がしなかった。呉提督の10強は鎮守府を運営する者なら知らぬ者はいない程に有名だ。

その彼女達が攻めてくる…正直逃げ出したい。

だがそれは許されない。でないと仲間が犠牲になるから

 

 

「あれ?」

 

ふと五月雨が違和感を感じた。何かを見た感じがしたから

ゆらゆら、ゆらゆらと何かが見える。けどそれは女性のシルエットではない。

何かのーーーーーー

 

 

 

 

「油断大敵ですよ」

 

瞬間、五月雨が爆発した。

 

誰かの声が聞こえたと思ったら、五月雨が悲鳴をあげて爆発したのだ。彼女の服は一瞬でボロボロになった。中破…いや、この様子だと大破しただろう。

 

「敵襲…!」

 

間違いなく敵襲。だが索敵には何もかからなかった。

若葉は潜水艦の可能性を考えたが、それを改めた。何故ならばそこにいたからだ。

 

 

「貴女は…阿武熊さん!?」

 

「んんっ、違います!阿武隈です!漢字!漢字違いますってば!」

 

何故か意味不明な事を言っているが、彼女は間違いなく阿武隈だった。

だが阿武隈一人…先程の爆発は彼女の力なのだろうか?なす術も無く五月雨が行動不能になってしまった。

 

「た、たとえ10強が相手でも!」

 

「ああ、先手を取れば…!」

 

白雪と若葉が一斉に砲撃する。阿武隈との距離は近く、撃てば間違いなく当たる距離だ。

 

事実砲弾は寸分狂わず彼女に命中する。同時に駆逐艦の砲撃とは思えない程の爆炎が上がった。

 

「や、やった!」

 

「っ……?」

 

 

白雪は舞い上がるが、若葉は違和感を覚えた。

 

あの10強がこの程度の筈は無い。駆逐艦の砲撃ではあの爆炎はありえない。

そもそも煙で阿武隈の姿が見えない。

 

「ぐっ!」

 

直後、嫌な予感がしてその場から咄嗟に離れる。

 

その直後、何かが鼻先を掠めた。

真横からの砲撃だ。

 

若葉は偶然回避できたが、白雪は不可視の一撃を受けてしまった。

 

「あぁぁ!!」

 

あっという間に大破。彼女はもうこの戦闘では戦えないだろう。

 

「目を奪うほどの爆炎で目を奪い、注意が移ってる間に砲撃か…その技量…成る程、10強と呼ばれるだけはある」

 

しかし不可解な点もある。あれだけの爆炎をどうやって上げれたのかが

彼女の装備にそれらしき原因は…

 

「いや、魚雷か、魚雷を砲撃に当てて、爆破したのか」

 

「正解です!」

 

ビシィ!と指を突き付けてきた阿武隈に若葉は苦く笑った。

 

正直、勝てる要素が無い。

あっという間に二人が蹴散らされ、それでも余裕がある素振り…10強の名は伊達では無かった。

二人が轟沈してないのを見ると、彼女には自分達をどうこうする気は無いのかもしれない…だが

 

ここを通せば仲間と戦う。その時彼女達は仲間達を沈めないと断言できるか?否、できない。

 

故に通すわけには行かない

 

 

「んんっ…あたし的にはOKですよ?その心意気…」

 

ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる阿武隈。恐らく此方の意図は伝わったのだろう。

 

「………」

 

「じゃあ…行きますよ!」

 

そして二人が、激突した。




あくまで提督は物言わない兵器として扱う事のリスクを考えています。これがホワイト鎮守府なら彼女達をそんな扱いにしやがって!と怒るでしょう。

ですがここの提督はブラックですから、あくまでリスクがない方法を取ります。

そして大佐が艦娘と言うのと、提督が感娘と言うのも意識の違いから生まれています。
ただの兵器として扱うか、そうでないか…それらが二人のブラック度を別けたのです。

最後に提督の脱出シーンはある漫画のリスペクトですが…気づく人はいるかな?


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第23話

ネタを分かってくれる人がいてくれて嬉しかったです。
この小説を更に良くするために、色々なアドバイスがあったら遠慮なくメッセ、感想、評価に書いて下さいね!

新たに注意3を付け加えましたよ〜


「おかしい、海色君がまだ来ない…」

 

もうじき作戦海域に到着するというのに、彼が来ない。

その事に横須賀の提督は焦り始めた。

彼の作戦指揮は今回の作戦では必要不可欠。彼の力が無ければ今回の作戦は先ず成功しない…何せあのレ級のフラグシップ級が相手だ。

こちらの物差しでは、測れない程の実力を持っているに違いない。

 

『こちら長門、間も無く海域に到着する。指示を』

 

「う、うん」

 

とはいえ自分も百戦錬磨の提督だ、彼がいないとしても自分にやれる事はある。

 

「じゃあ空母のみんなは偵察機を出して、陣形はそのままを保って…索敵に掛かったら攻撃開始」

 

『了解』

 

彼のような奇抜な指示は出せないが、これでも一通りの策は彼から聞いてはいる。

彼が戻るまでにはーーー

 

 

 

『なっ!?こちら長門!先手を打たれた!!』

 

「えっ…?」

 

そう思った矢先に、長門の焦る声と共に轟音が鳴り響く。

先手を打たれた、彼女は確かにそう言った。

 

「そ、想定外の事態…!」

 

彼女達感娘の艤装には、艦隊から一定の範囲の戦況を第三者視点で観れる特殊な装備が付けられている。これによって執務室からも指示を出せるのだ。

とは言っても今回は、いきなり艦隊に向けられて砲撃が来たので敵影は全く見えないが…

 

「嘘、まさか大和を超える長距離射撃…!」

 

あの大和をも超える射程に戦慄する。これがレ級のフラグシップなのだろうか…

 

「鎮守府が壊滅させられる訳だ…」

 

何も出来ずに沈められる…確かにこの射程ならば可能だろう…だが、幾らレ級のフラグシップだからと言って、それは可能なのか?

 

まだ、何かあるのでは?見落としてるのではないか?

それを考えているうちにーー

 

『ぐぁぁ!!?』

 

「し、しまった!」

 

指示が遅れる。結果損害が出る

被弾したのは武蔵、幸いにも中破はしてなかったが…このダメージは小破には至ってるだろうと思う。

 

『こちら時雨、艦隊と分断されたよ』

 

更に悪い知らせが来る。艦隊と分断されたのは時雨…10強最強の彼女が何故そのような事になったのか、横須賀の提督は分からなかった。

 

『簡単に説明するよ、僕達は誘い込まれてた』

 

「誘い…そうか、罠…」

 

『提督も事前に想定していたから、何とか対応は出来た…でも、僕はこいつを止めないといけない。僕じゃないと相手ができない』

 

ノイズが酷くて時雨の戦況が見る事が出来ない。艦隊と遠ざかったので、見る事が出来ないのだろう。

 

「相手は?」

 

『………それが、分からない…初めて見るんだ』

 

またもや、イレギュラー。レ級ではない何かこれでは当初の作戦通りでは動けない。

だが、その場合の作戦も事前には想定されていた。そして横須賀の提督は彼からその詳細を受け取っていた。その場合は…

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「そうだ、これを渡しておく」

 

呉の提督が横須賀の提督にある物を手渡す。それは呉の鎮守府の艦隊の状況と、第三と第四の枠に入っている者、それらの出撃要請だ。

 

「これは?」

 

「万が一の切り札だ、どうも妙な噂が流れていてな…新種の深海棲艦を見た、と」

 

「新種の?」

 

「ああ、レ級のフラグシップと聞いてからどうにもそいつの存在が頭から離れない。万が一…万が一そいつが奇襲を仕掛けてくるとしたら、帰還すらままならないかもしれない…かといって此方の10強は動かせない。だからこそのこれだ」

 

「これ…みんな駆逐、軽巡で編成してるけど…」

 

「迅速かつ確実に援護をするなら、の編成だ。切り札の切りは俺が決めるが、お前にも伝えておく…恐らくそいつが出てきたら時雨が足止めする筈だ、その間に」

 

「彼女達で援護、だね」

 

「そうだ」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「本当に、どれだけ君は…」

 

彼の予感は的中した。だが彼は今ここにいない

使うべきか?それとも…いや

今ここで使わないと、間に合わないー!

 

「出撃要請!私の指示に従って!!!」

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

時雨は新種と思われる深海棲艦と対峙していた。

その深海凄艦の艤装のサイズ的に、駆逐級だろうと思った。だがその艤装が問題だった

 

「まるで怪物の腕みたい…だね」

 

そいつは、他の深海凄艦の長距離射撃と、開幕雷撃による奇襲で此方を混乱させてきた。

それによる作戦の乱れを感じ取った時雨は、自分一人を残して全員を先に進める事にした。

 

直感で感じ取った、こいつを止めないといけないと…

艦隊には響達10強もいる、自分が抜けてもフォローはしてくれる。こいつを沈めて追いつくのにも時間はかからないだろう。

何故なら聞かされた通りに出てきたらだ。

 

「提督は予想していたよ、君が来ることを」

 

「アラ、ソウ…」

 

「残念だったね」

 

「ソンナコトハナイワ…ダッテオナジクチクカン、アナタモワカルデショ?ヨルノコワサ」

 

そいつは、グチャリ…と、全ての感情が壊れたような不気味な笑みを浮かべた。

 

「アハ、アハハ、アハハハ!」

 

狂ったように笑い出し

 

「ヤミノナカニ、シズメェ!!!!」

 

砲撃を放つ。

 

「うん、じゃあ…行こうか」

 

そして時雨も、行動する

 

一対一のタイマン勝負。二人の実力は共に未知数

方や10強最強の時雨、方や謎の多い深海凄艦。

 

二人の勝負が、今、始まる

 

 

 




レ級のフラグシップだと思った?残念こいつでした!


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第24話

金元さんボイスええのお…


独房を脱出し、資材庫に向かっている提督はある違和感を覚えた。

それは、道中に感娘はおろか妖精すらいない事

本来妖精は様々な場所で気まぐれに過ごしているが、鎮守府にいない事は無い。彼女達は鎮守府を支える者の一人だからだ、その妖精が鎮守府にいないのはどういう事なのだろうか?

 

この鎮守府が機能していないのを考えたが、そしたら感娘が大佐と一緒にはいないと思ったので、その考えは直ぐ改める。だがまだ違和感はあった。

 

「静かだ、静かすぎる」

 

余りにも静か。物音一つしない、まるで廃墟のような…不気味な静けさ

だが、それでも前に進むしか無い

 

「…………」

 

静かすぎても、慎重に行動する

誰にも見つからないのは逆に好都合だった、見つからない内に資材庫に爆弾を仕掛けて、爆破すればこの鎮守府の資材に大打撃を与えれる。

そうすれば出撃もままならない状態になる筈

 

 

「よし」

 

やがて提督は資材庫にたどり着いた。

慎重に周囲を確認し、誰もいない事を確認してから扉を開いた。だがそこには

 

 

 

「なっ!?」

 

 

何もない、資材庫には資材が欠片も入ってなかった

かつてこの鎮守府に来た時、確かにここに資材があったのだが、今はもぬけの殻だ

 

「バカな」

 

思わずそう呟くと、途端に周囲が明るくなった

驚き、銃を構えると同時に自分の置かれている状況に気付く。

自分の周囲をライトで照らされている、自分の位置が、存在がバレている。

 

「やっぱりね、君はここに来た…僕は君が優秀なのを知っていた。リスクを犯してもここで僕の手札を減らす事を考え、ここに来る事を選択した、うんうんうんうん、僕の考えた通りのシナリオだ」

 

そこにいたのは大佐一人、周囲に感娘はいない

 

「大佐、それは自分を罠に嵌めた…そういう事ですか?」

 

問いかけたと同時に、左手をポケットに忍ばせる

 

「罠とは酷いな、僕は君の性格上何を選択するのかを予想して動いたんだよ、現に見張りを付けなかったのも、ここら一帯を無人にしたのもそういう事さ」

 

「妖精すらいなかったのは、貴方の…?」

 

「そう、僕の指示さ」

 

大佐は満足そうな表情を浮かべ、ぱち、ぱち、ぱちと、拍手をする。その仕草に提督は酷くイラついた

 

「いやぁ、僕の書いたシナリオ通りの展開だ、君は必ず万が一の切り札は肌身離さず持っていると思っていた。君が慎重だからこそ…そう考えていた。君の性格を知っていたからこそ、この状況を作り出せた…改めて対話しないかい?」

 

この後に及んで大佐は対話を試みようとした。それに対し提督は軽く舌打ちをして、大佐を鋭く睨んだ

 

「対話?貴方と話す事は無い、このような仕打ちを自分にしたんだ、この事は大本営に報告させてもらう」

 

銃口を大佐に向ける。だが大佐は銃口が自分に銃口を向けられても、余裕の笑みを絶やさない

 

「まぁ、落ち着きなよ…君の鎮守府に戻ったところで、君は大淀君に何を言われる?大事な作戦前に姿を消し、大事な仲間を轟沈させようとした、そう思われるんじゃないかい?」

 

確かにそうかもしれない、彼女は酷く自分を嫌っているから…そう思われるのかもしれない、だが

 

「それでも…俺は進んで行く、この海を…あいつらから取り戻す為に!だから今はあんたが邪魔だ!雪平大佐!」

 

上司へ向ける言葉は最早ない!激しい怒りと共に、その引き金を提督は引いた。

その弾丸は寸分狂わずに大佐の胸を貫く…

 

筈だった

 

「そ、そんな」

 

だがそれは立っていた、胸に風穴を開けたまま

いや、風穴は開いているがそいつは笑ったまま立っているし、血も出していない

 

「良くできているだろう?この人形は」

 

それは口も動く、瞬きもする、表情も変えられる人形だった、人類の手ではできないそれは、明らかに妖精の技術が使われているのが分かる。

 

「さて、君の覚悟を見せて貰った所で、君には死んで貰うか」

 

大佐がそう言いだしたら、扉が勢い良く閉められた。驚いて後ろを振り返ると、そこには一人の感娘が立っている。

 

「君は…」

 

ピンク色の髪をした彼女は、発見されている中でも珍しい者。だが彼女の瞳には光は無い、表情も死んでいる、生きる気力を失った目

まるでこの先の運命を、受け入れているような…

 

「あと1分後に、この資材庫の床は爆破される、そしてその床下には無数の針が仕込まれているよ、そこの彼女は君を逃さない」

 

「あんたは彼女を捨てるってのか!?」

 

「当たり前だろ?駆逐艦ごとき、代わりはいくらでもいるしね、君が死んだ後は君の鎮守府は僕が貰い受ける」

 

「お前、お前、お前ぇぇぇ!」

 

「君らしくも無い、そんなに感情を出すとは…やはり君は愚かだな、愚かで、黒になりきれない男だ。最後に言っておくよ、()()()()()

 

そうして、大佐の人形は爆発四散した。

 

「くっそぉぉ!!!」

 

そして提督は、その感娘に突っ込んで行った、だが彼女は提督を止めようとはしなかった。

 

彼女はただもう直ぐ来る死を受け入れている、それだけだから…死ぬ時くらい、憎いあいつの命令を受けるのは止めよう。そう思っていた

 

「えっ?」

 

不意に彼女は、提督に抱き締められる

同時に扉が爆破され、扉の一部が破壊された。

その破壊された扉に向かって提督は飛ぶ。

そして、資材庫から脱出した。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

脱出したと同時にガラガラと崩れる音が聞こえてきた。後少し遅かったら串刺しになっていただろう。

 

「くそっ!爆弾を扉に仕掛けて正解だった、危うく連中から海を取り戻す前に死ぬ所だった!」

 

焦りから普段の口調は崩れ、本来の口調が表に出る。

 

「予定変更だ、向こうは俺を死んでると思ってるなら好都合だ、こっから」

 

「どうして、私を助けてくれたんですか?」

 

考えている内に、腕の中の彼女が自分に問い詰めてくる。

それに対して提督は何も答えず、ただ一言言った

 

「お前は、これでいいのか?あいつに使われるだけ使われてボロ雑巾のように捨てられる…そんな人生で良いのか?」

 

「それは…」

 

「悔しく無いのか!あいつに一泡吹かせたく無いのか!俺は吹かせたいね!」

 

提督は彼女と対話している内にも、奴をどう追い詰めようか?その作戦を練っていた、だがその最中に腕の中の彼女が震え始め

 

「悔しいですよ…訳も分からないまま、酷い扱いを受けて、駆逐艦だからって、あんな…無理矢理囮にされて!みんなみんな沈んで行って!!憎いですよ!名ばかりの司令官が!人間が!」

 

そして、彼女は泣き出した。

提督は黙って彼女を抱き締める、その表情は苦々しく…怒りに燃えていた。

そして提督は更に彼女を強く抱き締めた。

 

ただ彼女が泣き止むのを、黙って待っていた………

 

やがて彼女は泣き止み、提督がぽつりと言葉をかける。

 

「あいつはどす黒いよ、俺なんか足元に及ばない程の黒だ、きっと逆立ちしたってあいつには敵わない。でも俺には頼りになる部下がいる、足りない力は貸してもらえる…だから俺は全力で部下を支える、俺なりのやり方で」

 

「それは、貴方の艦娘ですか?」

 

「ああ、俺の感娘だ」

 

「…………」

 

彼女は驚いたような表情でこちらを見る。きっと彼女には分かったのだろう、自分がどういう意味で感娘と呼んだのかを

 

「何で私達を、感娘と呼んでくれるのに、貴方は自分の事を黒って…」

 

「俺は自分の事を白と呼ぶ気は無い」

 

「何ですかそれ、貴方の方があの人よりよっぽど白じゃないですか…」

 

「それは俺が決める事だよ」

 

「ふふ…ふふふ………」

 

彼女は提督の腕の中で、静かに笑った

 

「俺はお前を拒まない…お前が決めろ、人を信じられないならお前が静かに暮らせるように手配するけど…どうする?」

 

「確かに人は信じられません…けど、貴方なら信じられます、私を貴方の…感娘にしてくれませんか?」

 

「それがお前の選択なら、俺は受け入れるよ」

 

そして提督は彼女を離し、手を差し伸べた

 

「俺は海色 海斗、呉鎮守府の提督をしている」

 

「私は、白露型五番艦の春雨です、宜しくお願いします、司令官!」

 

彼女は笑顔でその手を取った。

 

 








呉鎮守府のデータその1

駆逐艦春雨

ブラック鎮守府から提督に救われたとの情報、ブラック鎮守府にいる時とは違い、その個体の特殊な能力を持つ。本人からの話によると愛故にとの事、
その愛の影響か、春雨の戦闘能力は駆逐艦と変わりはないものの、ケッコンカッコカリができる、もしくはしている感娘の愛情を暴走させ、混乱させる事が可能。

元々ケッコンカッコカリは一定の練度と愛情が無ければ不可能な為、限定的とはいえ感娘を混乱させる事ができる彼女は、ある意味呉鎮守府最強かもしれない。

余談であるが、一部の深海凄艦にも効果ありとのこと


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第25話

今回はハイペース投稿
ここが!ここがこの小説の面白い所!たたみかけるように投稿する!
尚シリアス続きで作者のイチャラブ(病み)が書きたい病が発症してる模様


 

「響、敵艦を捉えたわ」

 

「そうか」

 

敵の奇襲を受けた後、横須賀の提督の艦隊と分断されてしまった呉鎮守府の艦隊。

幸い第一と第二の艦隊はそこまで離れていないが、複数の深海凄艦と戦闘に入った為に現在の燃料、弾薬の消耗や疲労などが積み重なる、そこへ謎の深海凄艦が登場したのでやむ終えず時雨が囮を買って出た。

 

レ級と戦闘になる前に時雨が抜けたのは痛いが、この状況では仕方ないと判断した。そして瑞鶴が索敵して目標のレ級を見つける。

 

「確かにレ級ね、装備も私達が知ってるのとは少し違う…でも他の深海凄艦はいないわ」

 

「What?何故一隻だけなのデース?」

 

「私達を襲ったあれが奴の僚艦だった…そうは考えられないか?」

 

そうだとしても一隻だけなのは不自然だ、あるいはそれは自らの自信の表れなのだろうか…

 

「提督、指示を………駄目です。繋がりません横須賀の提督にも」

 

神通が先程から通信をしているが、依然反応は無かった。

 

「と、なると作戦は俺達である程度決めないといけないな、こっちの位置はバレてないのか?」

 

「私を誰だと思ってるのよ」

 

「おっと、そうだったな」

 

「ま、まぁまぁ…兎に角どうするんですか?」

 

基本的な作戦は把握してるとはいえ、提督が戦況を見極め指示を変更しないのは、レ級相手には少し不安が残る。

だが此方は日夜様々な事態を想定した訓練、作戦についての座学、偵察に来た深海凄艦との戦闘で鍛えられている。

提督の指揮が無くても、彼女達は戦えるのだ

 

「では、陣形を崩さずに基本に忠実に砲雷撃戦を行いましょう。元々時雨さんが一対一に持ち込む前はそうする予定でしたので…朝潮さんと島風さんは隙があれば陣形を離れ、撹乱をして下さい。私と木曾さんで全力で援護します」

 

「は、はい!」

 

遂にレ級との戦闘が始まる…その事に自然と朝潮に力が入った。

 

「ちょっと良いかい?」

 

「どうしたの?響」

 

「いや…一つ提案があるんだ」

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「ヘエ、ケッコウハヤクキタネ〜」

 

レ級が視界に捉えたのは、一隻の感娘だ。

周囲には誰もいなく、そいつが一人で来たのが分かる

 

「モシカシテヒトリ?ホカノヤツハミンナシズンダ?」

 

「想像にお任せするよ」

 

その感娘ーーー(Верный)はレ級を睨みつつ、狙いを定める。

 

「フウン、オマエ…スコシハタノシメソウダナ」

 

そしてレ級も探るような視線を収め…代わりに獲物を狙う獰猛な狩人の目を響に向ける。

圧倒的威圧感、全ての命あるものを狩り尽くす…そんな雰囲気がレ級から放たれた。

そこに先程までの静かな雰囲気は無い、完全なる戦闘モード。

 

「サァテ、コテシラベトイクカ!」

 

そしてレ級は深海凄艦独特の艦載機を繰り出した。

その数は数え切れない程。空を覆い尽くし、驚異的なスピードで響に向かう。

 

「ホラ、ソコニイルトシズムゾォ!」

 

それと同時にレ級は雷撃を放つ。開幕雷撃と呼ばれる技術で、相手の虚を付く戦法だ。

そしてレ級の艦載機から放たれる一撃。これは全てが致命的なダメージになり得るものだ。

 

「流石にこれは厳しいな」

 

だが響は口ではそう言いつつも涼しい表情のまま、艦載機を丁寧に落として行く。

雷撃も余裕で回避し、艦載機の一撃も先程から回避しているのだ

 

「オット、ヤルネェオマエ」

 

「そら、隙だらけだ」

 

「ンッ」

 

そんなレ級に響は一撃砲撃をぶちかますが、その装甲には傷一つ無かった

 

「やっぱり時雨や吹雪じゃないと装甲は抜けないか」

 

「ンンッ、イマナンカシタ〜?」

 

「まぁ、手数はあるんだ…と言いたいが、弾薬も数は無いな」

 

先程の深海凄艦との戦闘の影響で、少なからず弾薬が消費されていた。

これではそう遠く無い内に攻撃が出来なくなるだろう。

そう考えた響は、艦載機の位置を確認した。

 

「なら、アレをやろう」

 

「イキナァ!」

 

レ級は艦載機を再び動かし、響へ攻撃を開始する。

だが響はそれを避けようとしなかった。そして

 

響のいた位置を無数の砲弾が降り注ぎ、激しい音と共に爆炎が立ち昇った。

レ級はそれを確認し、深く溜息を吐いた

 

「アッケナ…キタイハズレカ」

 

一気に気分が沈む。少しは楽しめそうな相手だと思ったが…呆気なくその決着は付いた。

レ級は艦載機を回収しようとしたら

 

自分の艦載機が天から自分に向かって放たれた。

 

 

「ガァ!?」

 

 

レ級の装甲に深いダメージは無いが

ぶつかるたびに爆発して確かなダメージが蓄積されていく。

 

「ナ、ナンダッ!?」

 

天を見ると、其処には自分の艦載機を手掴みし、他の艦載機を踏み台にして空を駆ける響がいた。

 

「不死鳥の名は…伊達じゃ無い!」

 

そして再び艦載機を踏み台にして、此方に向かって飛んでくる。同時に回転しつつ砲撃を放ってくる。

 

「グウッ!?」

 

回転している影響で何処に砲弾が来るのか分からずに防御できず、その一撃を無防備に受けてしまう。移動しようにも弾幕が激しく移動できない!

 

「ypaaaaaaa!!!!!!」

 

そして響は、あろうことか鎖の付いた錨をレ級に投げ付けた。いや正確にはレ級に付いている尻尾のようなパーツに。

そしてそれを巧みに操り、縛る

 

「ナッ!?グアアア!!!」

 

そして縛り上げられた尻尾ごとレ級を持ち上げ、振り回し艦載機をレ級に当てて落として行く。

 

「これでっ!」

 

そして止めに、海面に叩きつけ、空高く打ち上げる

 

「今だみんな!!!」

 

「総員!撃ち方始めぇ!!!!」

 

同時に、第一艦隊と第二艦隊が現れ、空中で身動きできないレ級に一斉攻撃をする。

瑞鶴と日向の艦載機も、金剛達戦艦の強力な砲撃も、ありったけ。

文字通りの一斉攻撃。

 

響はその場から離れ、第一艦隊に合流する。その構図は

 

第一艦隊

レ級

第二艦隊

 

と、挟み討ちの構図になっている。

 

響は挟み討ちに出来るまでの時間稼ぎをしていたのだ。

 

そして、砲撃は終わり、レ級姿が見えてくる。

 

だが

 

 

 

「アッハハハ!!!スゴイスゴイスゴイ!コンナニイタミヲアタエタノハオマエラガハジメテダヨ!!!」

 

「そんな、あれだけの砲撃で…」

 

「中破すら行かないとはな…!」

 

大井、日向がその装甲に驚愕した。

それまでの響が与えたダメージを合わせても中破に行かないとは、どれだけの装甲をしているのだろうか?

 

「イヤァ、ホントウハココデゼンブシズメタインダケドサァ…オモッタヨリダメージクラッタカラ……ココデワタシハヒカセテモラウゼ?」

 

そう言ったと同時にレ級は第二艦隊へ向けて突進する。その速度は圧倒的だった。

 

「そ、そんな!私より速い!?」

 

「オラァ!」

 

「ガフッ!?」

 

島風すら目で追えないスピード、唯一朝潮が反応出来たが、幾らかのフェイントに惑わされ腹部を強打される。幾ら動体視力と反射速度が速くとも、それの扱いがまだ完全ではない彼女は簡単なフェイントすら拾ってしまい、反応してしまったのだ。

 

「ジャアマタナ!コンドハサイゴマデヤリアオウゼ!」

 

そしてレ級は圧倒的な速度で海域を離脱した。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「一応レ級が立ち去った方向は、例の海域じゃない…作戦は成功ね…でも」

 

「ええ、想像以上です…」

 

その場の全員が、奴の実力を目に焼き付ける。

圧倒的な速度、圧倒的な装甲。この分だと恐らく火力もまた…

 

「あのスピードで火力もあるとしたら…それこそ吹雪か時雨じゃないと太刀打ちできない、俺達も成長する必要がある」

 

木曾の言葉に全員が頷く。

 

「じゃあ、時雨の救援に向かおう。あいつもまた強敵には違いないからな」

 

「はい!気合、入れて、行きますよ!」

 

第一艦隊と第二艦隊は、時雨の救援に向かって行った。

 

 





呉鎮守府のデータその2

駆逐艦響

奇抜な戦術やトリッキーな戦法を多用する。彼女のそう言った動きから連携を取るのは非常に困難だが、彼女は必ず仲間の為になる動きをする。
彼女のもう一つの名は信頼、彼女を心から信頼すれば彼女は仲間に最高の状況を作り出してくれる唯一無二の存在であろう。


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第26話

今回は軽い説明会…みたいな?戦闘はありません。次回はきっと…


春雨を連れた提督は、先ず最初に彼女から情報を聞き出した。

この鎮守府の現在所有している戦力、何故他の感娘がいないのか、大佐は何処で何をしているのかを。

 

春雨は驚く程簡単に話してくれた。この鎮守府は戦力としては主観的に見ても二流以下、これまでの大規模作戦の何も貢献できず、常に他の鎮守府の手柄を横取りしてきたとの話。

春雨自体も建造で手に入らないと聞いている。運良く確認されている中でもまだ二人や三人程、こうして四人目の春雨を確認できたが、まさかこんな所で会えるとは思えなかった。

 

春雨曰く、他の鎮守府から珍しい感娘を見つけたから襲撃し、強奪したとのこと。その時の艦隊は大規模作戦の影響で疲弊しており、また一般にはドロップと呼ばれる方法で保護した彼女を強奪するのは難しくなかったとの事。

 

だが強奪した後に自分が駆逐艦という事を知り落胆。直ぐに彼女を観賞用として鎮守府に置いたのだ。

出撃も遠征も演習もしない、軟禁状態に陥っていた…それが彼女だった。

 

ならば何故変わりはいるとあの時言っていたのか?それが疑問に思った

観賞用として置いてるならば、捨てる事はしないだろう…そう考えた。それに対して春雨はこう答えた。

 

「それ程に貴方の鎮守府の戦力が魅力的だったんです。それに私一人ならあの鎮守府にはいるだろうとあの人は考えてました」

 

「買い被りだな、俺は其方に関しては全くと言って良いほどに運が無い」

 

そう、提督はドロップによって保護する感娘は決まって現在鎮守府に所属している感娘なのだ。そういった者は大本営に送り、戦力が足りない鎮守府に寄付してはいるが…ドロップ自体の確率も一般的には高くない。建造が彼女達を確実に手に入れる方法なのだから。

 

もっとも提督は大型艦建造こそはしていないが、建造運はかなり良い。初めて建造したのが雪風だったのでそれはもう驚いたものだ。現在も雪風は誰一人建造、ドロップはしておらず提督の鎮守府に存在するのが唯一の個体との話だ。

 

まぁその後に他の鎮守府からそれなりの練度を誇る者を保護してはいるが…

 

「私は今まで演習も遠征も出撃もしていませんし、そういった情報は他の感娘から聞いていたん…です」

 

確かに軟禁に近い状況だった春雨は練度は低いだろう。現在一番練度が低い朝潮にも確実に劣る存在。だが提督は甘やかさない

 

「悪いがそう言う言い訳は聞かないぞ、俺は徹底的にお前を演習、遠征に行かせる。出撃もな」

 

そう言った提督に驚いたような表情をする春雨。それもその筈、彼女は初めて見た人間には観賞用として扱われていた…彼女を戦力として扱おうとはしなかったのだ。

それが初めて徹底的に使うと言われた。初めて自分を必要としてくれた。これほど嬉しい事は無かった

 

「俺は甘くはない、睡眠時間はきちんと取らせるが休憩時間はほぼ無いものと思え。まぁ初めの内は軽い訓練ですませるが、徐々にキツくなるぞ。泣き言を言う暇も無い、辛くなったら何時でも大本営に行くと良い、紹介先も俺が用意する…ん?」

 

紹介先を用意する、と言った瞬間に春雨の目の光が消えた

その事に少し驚いた提督だが、まぁ何時もの光景だと考えて放置した。

 

 

(嫌、この人と離れたくない。初めて必要としてくれたこの人に失望されたくない、嫌われたくない、初めて私が()()()()にいたいって思ったのは、この人が初めてだから)

 

 

そして春雨は、提督の服の裾を掴み、上目遣いで提督を見上げる。

その瞳には光が灯って無かったが、少し潤んでいるように見えた

 

「大丈夫…です、どんな訓練でも耐えられます。貴方の役に立ちたいから…」

 

ずっと側にいたい、ずっと一緒にいたい、そんな想い。

そしてそれは彼女の力になる。彼女達は心の有り様で力を飛躍的に上げる。

 

ケッコンカッコカリ。それは女性の最大の幸せである結婚を彼女達と交わすこと。

カッコカリなので本当の結婚ではないが、それでも結婚は結婚。愛する人と人生を共にする事は彼女達に最高の幸せ…原理は分からないが、その想いが力となり、彼女達を更なる強さへと導くのだ。

 

ケッコンカッコカリをした者は従来の性能を遥かに超えた力を持つ。愛の力は無限大なのだ。恋する乙女は無敵というが、これは正にそれを明確に表したものだ。

まぁケッコンカッコカリをしても負ける時は負けるが…

 

しかしそんなケッコンカッコカリは条件が厳しく、練度を最高峰に上げ尚且つ提督と艦娘の絆が無ければ不可能との事。

また、絆が無ければいくら指輪を渡しても効果は無い。彼女達との絆が無ければそれはただの飾りに過ぎないのだ。

 

逆に言えば口ではケッコンカッコカリを断っても、効果が現れる感娘に関しては内心ではその提督が好きで好きで堪らないと言えるが。

 

だがそんなケッコンカッコカリには例外もある。練度を最高まで高めずとも、指輪を渡さなくてもその力を手に入れる術がある。更にその場合は一般的なケッコンカッコカリよりも遥かに超えた力を持つとの事。

 

だがそれを成している提督は一人しかいない。そう…それは…

海色提督が率いる10強だ。何故彼女達がそのような力を手に入れているのかは、簡単に言えば

 

愛が重い→結婚まで待てない→好きが爆発しちゃう→でもそれじゃ色々と迷惑かけちゃう、それは嫌だ→なら愛を放出しなきゃいけない→良いこと思いついた、それを力に変えれば良いじゃん←今ここ…である。

 

だからこれは必然なのかもしれない、彼に救われた彼女が新たに10強に続く存在になる事は…そしてこれは、海色提督が率いる鎮守府の最狂伝説の幕開けでもあった…

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「提督、何をしてるん…です?」

 

「万が一を考えてな」

 

現在提督は大佐の執務室に潜入していた。理由は決定的な証拠を抑える為、そして通信施設を使う為に

色々と穴はあるものの、誘拐作戦自体は褒められる出来だ。何せ常に誰かしらが徘徊している自分の鎮守府で穴を見つけ出し、自分をピンポイントで誘拐するとは素直に驚いた。

 

故に今回の作戦は、必ず念入りに計画されたものだと考えたのだ。そして提督は執務室に置いてある金庫を見る

直感でこの中に見られたらマズイ物が入ってると思った。

 

「その金庫の番号は誰にも知らされていません。秘書艦である伊勢さんにも伝えられていないんです」

 

「伊勢か…」

 

伊勢と聞いて自分の鎮守府にいる伊勢と日向を思い出す提督。

そして知らされていないのも予想が付いてた、感娘を艦娘と呼んでる時点で相容れないと思っていた存在。そんな存在は過去に何度も相対してきた。その度に打ちのめしてきたのだ。

 

そしてこの手口も提督は知っていた。

 

「犠牲を良しとする風潮…か」

 

ブラック鎮守府にも様々な種類がある。提督の場合は感娘強制労働(笑)だが、この鎮守府は感娘犠牲を掲げているらしい。

 

提督はこれを非効率的だと批判している為に、良い感情を持っていない。それに過去に相対したブラック鎮守府ほぼ全てが雪風や特別な吹雪といった感娘を狙ったものだ。まして自分以外を信用していないとなると、確実に自分の手の届く範囲…そして誰にも知らされない場所にある。

 

だが、こういう輩には彼女が役に立つ。

 

「出番だぞ、そろそろ出てきたらどうだ?」

 

「え?」

 

提督が急に独り言を言ったのに疑問を持った春雨だが、その疑問は直ぐに解消される事になった。

 

「ありゃりゃ?気付いてましたか〜」

 

後ろから急に聞こえた声に驚き、艤装を展開して提督を庇うように立つ春雨。そしてそれを見た第三者は感心した様に表情を変えた後に、提督をジト目で見つめる。

 

「また誑かしたんですか?しかもその反応…青葉達と一緒ですねぇ」

 

「人聞きの悪い事を言うな、それと気付いたのはこの鎮守府を歩いてる最中にだ。お前が用意していた抜け道…使用されている痕跡があったぞ、青葉」

 

「まぁ確かに良く見れば分かりますけどねぇ、提督にしか」

 

10強の一人である青葉…彼女が新たに登場する。

春雨は大佐から10強の戦力を欲しているのを聞かされていたので、詳しくは知らないが構成されている人物は知っている。

青葉は裏方に徹していて、海域攻略時には表に出ない。だが偵察任務等の裏方の仕事でら唯一無二の存在であるとの事。

 

「でもレ級との戦いに連れて行かなかったんですがねぇ」

 

「少しの情報から相手を隅々まで分析する、それがお前と霧島の専売特許だろう?」

 

「まぁ青葉はそれが一番ですからね!どれどれ」

 

そして青葉は金庫に駆け寄り、誰にも知らされていない金庫を開ける番号をいとも簡単に解いた。

それに驚く春雨を見て、ドヤ顔をする青葉。

 

「おや?驚きました?まぁ青葉は情報収集能力は得意ですし、一度見た事は忘れませんからね!」

 

いとも簡単に自分の能力を話す青葉に提督は少し驚いた。自分の情報は頑なに開示しない彼女にしては珍しい事だったからだ。

 

「話して良いのか?」

 

「青葉達の同士ですから!」

 

その事を聞くと、青葉は笑顔でそう答える。春雨泣きそうな表情で青葉を見つめる、それに対して青葉は春雨に近寄り、優しく頭を撫でながら抱き締める。

それを見た提督はやはり苦労をした者同士、通じあう何かがあるのだろうと提督は思った。

 

「…まぁいい、それよりこれだ」

 

そんな彼女達を優しく見守った後に、提督は金庫の中身を確認する。

そこには予想通り、今回の誘拐作戦の念密な計画とその後の事を記した計画書、更には自分が大本営を支配する計画まであった。

 

「無謀だな、たかだか一鎮守府の提督ができる事じゃない。こんな計画…失敗に終わるのは確実だ」

 

「でも念入りですねぇ…関係者の家族や友人を人質に取って、更には闇討ちで戦力を減らしてから制圧するみたいですねぇ」

 

「それでもだ、大本営をこの男は侮りすぎている…この男、確か民間からの募集だったな」

 

「ええ、生粋の軍人ではなく提督の資格を持った一般人ですね」

 

彼女達を扱う資格のある人間…それは数が多いとは言えない。軍属の人間である者も数える程しかいないのが現状だ、更には確認されている提督は100もいない。提督とは文字通り選ばれた存在なのだ。

 

だが鎮守府が壊滅、黒運営が判明して解体される度に新たな提督候補が現れる。提督は妖精が選ぶと言われてちるがそれも定かでは無い。

その中には女性もいたり、子供もいたりと様々だ。

 

「大本営を運営している人物は生粋の軍人のみで構成されている。それを欠片も理解できなかったのだろうな」

 

一般人だからこそ、軍の厳しさを知らないのだろう。だからこそこんな真似が出来たのだと考えた。

 

「少なくともこの男は自分だけではなく家族や友人を犠牲にしたな」

 

この罪はこの男の首一つでは足りない、この男の恋人、家族、友人…全てに制裁が下されるだろう。

 

「さて青葉、お前がここにいるという事は」

 

「ご察しの通りですよ、全員来ました」

 

予想通りの返答に提督は呆れた表情をして深く溜息を吐いた。

 

「鎮守府を守る為にお前らを残したんだがな…」

 

元々彼女達は鎮守府の防衛を任せていたのだが、これでは意味が無いじゃないかと考えてしまった。

 

「なら早く帰れば問題無い…ですよね」

 

そんな所に春雨がおどおどしながらもそう言った。それを聞いた青葉はニコニコとした笑顔を見せながら春雨を褒める。

 

「良いこと言いますねぇ、えっと…」

 

「あ、私は白露型5番艦の春雨です」

 

「うぇぇ!?春雨ってあの!?」

 

青葉も情報としては知っていたが容姿までは知らなかったのだろう。かなりの驚きぶりだった

同時にこいつの情報収集能力落ちてるんじゃないか?と提督は考えたりもしたが…それは帰ってから指摘すれば良いと考えた。

 

「ああ…どうにもこういった珍しい感娘とは縁があるらしい」

 

「この間プリンツさんと鹿島さんを保護したばっかじゃないですか!?謝って!全ての司令官に謝って!!」

 

「………………」

 

確かにプリンツ、鹿島共に提督の鎮守府にしかいない存在だ。青葉の指摘に対して何とも言えない表情で頭を抱える提督。そんな提督の仕草に思わず笑ってしまう春雨、和やかな雰囲気がその場に流れる。

 

「まぁ鹿島もいるし彼女の訓練に問題は無いだろう、朝潮の才能を開花させたのも彼女だしな」

 

「まぁ…確かに期待の新人ではありますけど…駆逐艦ばっかり強く無いですねぇ?」

 

「この間プリンツに負けたお前がか?10強の名が泣くぞ」

 

「青葉は情報戦主体ですから!」

 

「ふん、まぁ良い…他の艦娘は?」

 

提督は、他の感娘の現在の状況を聞き出した。

 

「大佐の感娘を無双してますねぇ、主に阿武隈さんが」

 

「純粋な戦闘力なら時雨に唯一付いていけるからな、あいつは」

 

「それと漣さんが暴走してますね」

 

「やりやがったかあの野郎…今度は何だ」

 

「夕張さんがクラインフィー○ドの再現をしてますからね、流石に霧の艦隊のアレはできないらしいですけど」

 

「当たり前だ、霧のアレは本物の兵器だ…というかクラインフィー○ドだと!?」

 

「ええ、青葉も驚いちゃいました」

 

クラインフィー○ドとは簡単に言えば攻撃を防ぐバリアである。

それを作り出した夕張の技術力と変態性に益々頭を抱えたくなつまてしまった、

 

「それに加えて重量オーバー必須の装備で出撃してますから、撃っては捨てを繰り返してますね」

 

「となると殆どの艦隊は全滅してるのか?」

 

「阿武隈さんは誰も沈めてませんがね」

 

阿武隈は誰も鎮めてない、という事は他のメンバーは誰かしら沈めてるということになる。

極力同じ艦娘を沈めるのは避けたかったが、これに関しては止むを得ないと判断した。

 

「よし、行くぞお前達…大佐を追い詰める時が来た」

 

そしてこれからは、提督の反撃の時間だ




10強全員が圧倒的戦闘力を持ってる訳ではありません。瑞鶴や青葉や霧島や日向は特にそうです。
違っているのは誰にも真似できない特別な力を持っているか、持っていないか。霧島は敵を陥れる頭脳、青葉は他には無い記憶能力と情報収集、日向は正規空母顔負けの瑞雲の搭載数、他には無い強みを持っています。

瑞鶴の強みはまだ先です。楽しみにしてくださいね〜

一般人からの募集で来た人間は、一通りの軍のあり方とかは訓練で勉強しますが、どうしても意識の低い奴というのは存在します。それらがブラック鎮守府となったりするのです。


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第27話

新キャラ登場

今回の戦闘は戦闘してません。理由?まぁ見ればわかります…えぇ
多機能フォームの使い方がようやく理解できた…


 とある一室…広くはないが狭くもない、鎮守府の一室のような雰囲気のこの部屋で、二人の男性が会談していた。

 

「そうか…確かな事だな?」

 

「はい、雪平エイジ提督は海色海斗提督を誘拐し海色海斗提督の戦力を強奪しようとしました」

 

「ようやく、尻尾を出した…という事か」

 

 彼等はある鎮守府の提督。二人はある出来事から黒と思わしき鎮守府を徹底的に解体させ、その鎮守府の感娘達を救ってきたエリート中のエリートだ。

 

 憲兵と協力したのも数え切れない程。彼等が黒と睨んだ鎮守府は全てが黒…彼等は軍の汚物を徹底的に排除する特別な存在だ。

 海域攻略の際には片方に自分の戦力を貸し出し、もう片方がその際の黒運営を見抜き検挙する。それが彼等のやり方だ

 

 この度は大本営から言い渡されたレ級撃退作戦の際に彼の特別な感娘を狙う者がいるかもしれないとの情報が入っていた、案の定彼は誘拐されエイジ提督の鎮守府に幽閉された。

 その際に海色提督の感娘に彼の位置を教え、救出させに行ったのも彼等の仕事だった。

 

「しかし、海色提督か」

 

 海色提督は非常にグレーな存在。一部では黒、一部では白と呼ばれる彼だが、二人はこれを判断しかねている。

 何故なら彼の行っている黒運営…は、黒に限りなく近い白だからだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「だな、吹雪がもみ消している可能性も否定できない」

 

 海色提督は普段感娘に休み無く訓練を受けさせているとの話…そう、話だ。

 

 そして他に黒と呼べる捨て戦法、身代わり戦法、無謀な出撃…その他諸々の黒と呼べる事はしていない。だが白とも言い切れない微妙なライン

 

 彼の保有する10強もまた、彼が黒と呼ばれる噂に一役買っている。曰く非道な実験で生み出されたのではないか…曰く仲間を犠牲にして得た力ではないか…等の噂。

 

 大本営は否定しているが、大本営も彼の息がかかっているのではないか…そんな噂。

 

 だからこそ二人は困ってる、彼を裁くべきか裁かないべきかを

 

「彼の鎮守府から直接訴えはありませんしね…」

 

「もし彼の鎮守府から直接助けが必要、と言われれば…話は別だがな」

 

 その時は他の黒同様裁く。二人は黒に対しては容赦はしない。ありとあらゆる手段を持って潰しにかかる。でなければ全ての感娘と人間が心から協力するのは不可能だからだ

 

「海色提督、今は様子を見させて貰おう…おい一真」

 

「どうしました?師匠」

 

「雪平エイジの引導を渡しに行くぞ、付いて来い」

 

 一真と呼ばれた一人の提督が師匠と呼んだその男は、厳しい目付きでそう言った。

 これから行われるのは黒の提督の虐殺シーン。海色提督とこの二人の提督、この三人を敵に回した雪平エイジ提督は、最早助かる術は無いだろう。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 時雨は謎の深海凄艦と激闘を繰り広げていた。謎の多いこの敵との戦闘で時雨は未だに余裕のある表情で砲雷撃戦を繰り広げている。

 

「そこ」

 

 時雨の一撃は敵深海凄艦の装甲を軽く吹き飛ばし、大きなダメージを与えている。

 決定的な一撃は未だに無いものの、彼女との戦闘で深海凄艦は確実に焦っていた。これ程までの実力を持つ者の情報が入っていなかった…ましては駆逐艦では。

 

「少し予想外だな、みんなが心配だし…ここからは僕も本気で行こう」

 

「グッ!」

 

 深海凄艦の腕のような砲身から砲撃を放つが、時雨はそれを身体の軸を少しずらすだけで回避する。完全に見切っているのだ。本気で行こうと時雨が言った、今まででも苦戦をしていたのにこれ以上何をどうするのか…?

 

 時雨が本気を出したらマズイと考えた深海凄艦は一気に時雨との距離を詰めた、幾ら強くても相手は駆逐艦…装甲は脆いと考えたのだ。

 

「遅いよ」

 

 それでも、時雨は上を行った。相手の狙いを理解した時雨は、普段の海を滑るような移動ではなく、海を蹴って移動した。そして時雨は深海凄艦の背後に一瞬で回ったのだ

 何が起こったのかは深海凄艦は理解できなかった。ただ分かったのは自らの肉体の一部が吹き飛んだ事だった。

 右腕の…右手の一部分が吹き飛ばされ、激しい痛みが彼女を襲った。

 

 あり得ない!感娘だろうが深海凄艦だろうが肉体そのものにダメージは与えられない!その前に轟沈する筈だった。肉体の部分に損傷が出るのはあり得ない。

 それらの全てのダメージは服が肩代わりし、それが限界を突破したら轟沈する。それが当たり前

 

「演習とかじゃ使ってないけど…僕、本気出したらこうなっちゃうんだ」

 

 次に時雨は深海凄艦の右足を吹き飛ばした。文字通り吹き飛ばしたのだ。

 太ももから先は何も無く、深海凄艦に分かるのは痛みだけ

 

「キャアァァァァァァ!!?」

 

「僕の前に装甲の意味は無い、そう言っておくね」

 

 だが深海凄艦は反撃した。背後にいるならば自分の砲撃が充分届く距離。

 

「オノレェェェ!カンムスゥゥゥ!!」

 

 左腕が時雨を強引に掴む。

 

「シズメェェェ!!!」

 

 そして時雨に深海凄艦の一撃が…………………

 

 入らなかった。

 

「ァァァァァァ!?」

 

 艦載機による一撃が、それも無数の一撃が怯ませたのだ。

 

「アウトレンジで見事に決めたね、瑞鶴」

 

「ド、ドコカラ」

 

 周囲を見渡すも何もいない、艦載機による一撃が可能ならば視認できる距離にいる筈だ、それくらい彼女の目は良かった…なのに何処にもいない。

 

「瑞鶴には艦載機の距離も数も関係無い、瑞鶴は文字通り無限の射程と無数の数の艦載機があるんだ」

 

「アリエナイ!」

 

 理不尽な強さ…これではまるで我らが同胞ではないかーーー

 

「それが10強、それが僕達…特に僕と響と瑞鶴と阿武隈は、そういう存在なんだ…君に教えてあげるよ、それを」

 

「ッ!?」

 

 時雨には策は無い。策を練る必要は無い。時雨の火力は別に駆逐艦と変わりは無い。ならば何故深海凄艦の装甲を容易く貫くのか?

 提督ならば誰もが考えただろう。相手の装甲が硬すぎる…と、戦艦の火力でも足りない時はあるだろう。ならもしもそれが無視できたら?

 

 例を挙げよう。ただの爪楊枝一本…それが文字通りなんでも貫く爪楊枝だったら?

 車だろうが飛行機だろうが何でも良い、硬いもの…それらをたった一刺しで貫くなら?それを何度も何度も刺せば?

 

 爪楊枝なら少し刺しても痛いだけ、穴が開いただけで済むかもしれない…だがこれは砲撃だ。全てを貫く砲撃に、人体はどうなる?

 

 そこには何も無い、そこにいた深海凄艦は跡形も無い。沈んではいない…文字通り消え去った。海の底に沈む暇も無いほどに

 

 これが時雨、これが10強最強。防御力は関係無い攻撃、装甲貫通攻撃。彼女が最強たる所以がここにあった。艤装ではなくそれを操る肉体を失えば、深海凄艦は赤子同然だった。

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 深海凄艦を沈めた時雨は、海色提督の艦隊と合流していた。彼女達の話を聞く限りではまだレ級は本気を出してないとの話だ

 

「すまない時雨、私のミスだ」

 

 申し訳無さそうに俯きながら時雨に謝るが、時雨はそれを慌てて止めた。

 

「ううん、響達は頑張ってくれたよ…それよりも提督と連絡はまだつかないのかい?」

 

「そうなのデース、ちょっと変だと思わないデスか?」

 

 提督とこれ程に連絡がつかないのは初めてのケースだった。逸れた長門達とも連絡は付かずに…どういう事なのだろうと一同は考えていた。

 

『た、大変!大変だよ!』

 

 そこへようやく連絡が来たが、何やら慌てた様子の声色だった。この声は横須賀の提督だろう。

 

「落ち着いて、どうしたの?」

 

『さ、佐世保の提督から連絡が入って、海色君が誘拐されたって!!』

 

「なっ!?」

 

 日向、朝潮、霧島、島風、木曾、神通、金剛、比叡は酷く驚いた。提督が誘拐されたのは初めての経験だったからだ。

 

「ななななな!?」

 

お、落ち着きましょうお姉さま!(ヒェー!!??)

 

 酷く慌てた様子の艦隊だったが、その中で冷静?な雪風が代わりに通話し始めた。

 

「えっと、横須賀のしれぇ…佐世保のしれぇは何て言ってるんですか?」

 

『さ、佐世保の提督は弟子と一緒にこれからそこの鎮守府に行くって言ってるんだけど…な、長門達は?』

 

「長門さん達はまだ逸れてますけど」

 

そういえば長門達とは作戦が始まって逸れてから見ていない、良い加減合流しても良い頃だとは思う…と雪風が思った瞬間

 

『そ、そんな!柳林提督!これを!』

 

酷く慌てた様子の声が聞こえた、恐らく大淀だろう。

 

『……やってくれたね、小物』

 

瞬間横須賀の提督の様子が変貌した。声だけでも分かった、彼女が怒った事が

 

『この瞬間だけで良い、私の指示に従え…海色海斗を救うのだろう?』

 

確か提督から横須賀の提督は三種類モードがあるも教わっていた。のほほんモードと真面目モードと激怒モード、恐らく今回のは激怒モードだろう。少し怖い…だが

 

「当然さ、僕達の提督に手を出した…その意味を教えなくちゃならない」

 

『ああ、私も私の感娘(家族)に手を出されたからには、潰さざるを得ないのでな』

 

彼女の言い方から推測すると、恐らく長門達の事だろう。その敵は提督だけではなく彼女の感娘にも手を掛けたのだ。

 

「なら行きましょう…1分1秒でもそいつらがいるのが気に食わないわ」

 

大井の言葉に一部の感娘が頷く。そして彼女達は鎮守府へ帰投した。余談だが時雨、雪風、瑞鶴、大井、響の瞳に光が宿ってなかったらしい。




まぁ戦闘というより無双ですよねぇ…最強の名は伊達じゃない。

大佐はこれで計4つの鎮守府を敵にしちゃいました。彼ははたして生き残れるのだろうか?

新キャラは佐世保の提督とその弟子です。呉があるなら佐世保も出さないとねぇ?


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第28話

さて、潰すか。な話
大佐さんガクブル、多くの読者に敢えて言われていただきます。

次にお前は…「大佐ザマァwww」と言う!!


 鎮守府は様々な場所にあり、戦力もそれぞれ違うものがある。中でも期待の三大鎮守府と呼ばれる鎮守府は素晴らしい活躍を見せる。

 

 呉の海色(みいろ)海斗(かいと)

 

 横須賀の柳林(やなぎばやし)鈴音(すずね)

 

 佐世保の天色(あまいろ)陸斗(りくと)

 

 この三人は常に最前線で活躍し、多大なる戦果を挙げている者だ。だがそんな三人を妬んだり戦力を我が者にしようとする輩も当然いる。

 

 だが佐世保の天色陸斗は謎が多く、噂によると彼と敵対した黒の鎮守府は例外なく処分されているとの話。横須賀の柳林鈴音もまた、感娘に手を出されるのを嫌い…手を出した者を社会的にも物理的にも抹殺するとの噂。

 だがこの三人のうち海色海斗にはその類の噂は無く、寧ろ黒い噂すら立っている程だ。故に彼は…雪平エイジは狙ったのだ。彼と縁を結んでからその時を待っていた。

 そして今日、その日がやって来て野望のスタートが切れると思った。途中()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()他の感娘が逆らわないようにするためだ。

 

 

 そしてその海色海斗は死んだ。彼はレ級撃退作戦中に戦死、彼の意思を受け継ぎ彼の鎮守府を自分が引き継ぐ…そういうシナリオだ。

 ああ、今日は良い酒が飲めるーー感傷に浸り、グラスに注がれたワインを一口飲んだ。爽やかな風味が鼻を通り、更に良い気分にさせる。

 

 だが、それは長く続かなかった。

 

 

『よお、ヒヨッコ』

 

「っ!?」

 

 突如通信が入った。モニターに映し出されたのは横須賀の柳林鈴音提督だった。

 

「こ、これは横須賀の提督様じゃあありませんか?何用で…?」

 

 このタイミングでかかってくるのが不自然だったが、取り敢えず冷静に対処した。だが

 

『これから貴様の鎮守府を蹂躙するが、異論は認めんぞ、貴様は手を出してはならない者に手を出した』

 

 怒り心頭な様子の彼女に、突如死刑宣告を下された。それに大佐は酷く動揺する。嫌な汗が流れるのが自分でも感じた

 

「なっ、何の事で…」

 

『惚けるなよヒヨッコ、貴様が私の感娘(家族)に手を出したのは知っている、長門達を捕獲したのはな』

 

 バレていた。しかも、よりによって手を出す気は無い人物な手を出してしまった…まさかあの感娘達が彼女のものだったとは。

 

「わ、私は彼女達を保護しただけです。気分を害されたのなら謝ります。彼女達も返します」

 

 必死に彼女の機嫌を直すように取り繕う、今彼女と敵対するのはマズイ…そう思ったのに

 

『そして貴様は海色海斗を誘拐したとの情報もある。一度に二つの鎮守府を敵に回すとは…私でもこう思うよ、馬鹿が』

 

 またもやバレていた、これでは逃げる事は出来ないーーそう考えた大佐は

 

「…………はっ、ならどうするのですか?僕を殺すと?ははっ、無駄ですよ…無駄無駄。僕は確かにボロを出しましたが…貴女の艦娘は此方の手の中にある。下手に此方に攻撃するとーー彼女達には沈んで貰う事になります」

 

『っ……!』

 

 その一言で横須賀の提督の顔色が悪くなる。やはり彼女は自分の仲間を沈められるのを恐れている。

 

「甘いなぁ貴女は、そんなんじゃ軍では生き残れない…貴女も一般枠ですね?それも生粋の甘ちゃんだ」

 

『貴様のような生粋の下衆になるくらいならば、私は甘ちゃんで充分さ…ヒヨッコ』

 

「そのヒヨッコに貴女は縛られている。悔しいでしょうねぇ…」

 

 ギリリ、と歯軋りする音が聞こえる。その反応に大佐は先程の動揺した状態から回復する余裕が生まれた。

 

『そこまでして何が目的だ』

 

「目的ですか、当然僕がこの海で一番強い提督になる事です。その為に呉の提督を誘拐した。そしてついでだが…貴女の力も借りようか。僕がこの海を支配する為に」

 

『反逆を企てる気か!?』

 

「そうですよ、軍の連中にはもううんざりしましたからね、だから僕は力を手に入れる。深海凄艦を殲滅し、人類の救世主になる為に!!だから手始めに呉の提督を殺した!いいざまだったよ!」

 

『そ、そんな………』

 

 海色海斗が殺された…その事実に横須賀の提督は酷くショックを受け、同時に狂っていると感じた。だが彼は初めから狂っていた訳ではない、だが訳も分からないまま提督の座に就き、部下を持ち、兵力を手に入れた…手に入れてしまった一般人だ。

 

 そこで欲を出したのが彼だ。そこで踏み止まりさえすれば彼はまた違う道を歩いて行けたのだろうが…悲しいかなこれが現実。

 問答無用、疑いのない黒。故に

 

 

 

 

『ならば俺がお前を裁こう』

 

 彼に行動させる。天色陸斗…佐世保の仕事人

 

『悪いが今の音声は録音、中継させてもらった。大本営がお前処分を言い渡したぞ?お前は死罪だ大佐……いや、雪平エイジ』

 

 そしてもう一人、佐世保の提督の横には人間がいた。

 

「ばかな、何故君が…海色提督!!!」

 

 海色海斗、呉の提督が…死んだと思われていた彼がそこにいた。

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「まさか貴方がお越しになられるとは」

 

「硬くなるな、お前が証拠を集めてくれたから俺は奴を裁く事が出来る」

 

 提督は佐世保の提督と合流し、共に艦隊の指揮に入っていた。提督は青葉、佐世保の提督は彼の第一艦隊を。

 

「それにしても、お弟子さんには何処へ?」

 

「あいつには雪平エイジが使用している逃走ルートを破壊してもらいに行っている。あいつは優秀だ、雪平エイジを逃す事はしないさ」

 

 そう言い佐世保の提督は通信設備を起動させる。そして彼は大佐の通信を盗聴し、それを逃さずに大本営に流した。

 間も無く彼の衝撃発言を聞き、二人は頷いた後に大佐へ通信を繋ぎ、宣戦布告する。

 

「海色海斗、今回は協力するが…次に会った時は敵同士かもな」

 

 その言葉に提督は佐世保の提督は黒の鎮守府を裁いているという噂を思い出した。恐らく彼は自分の事を疑っているのだろう。

 

「私は…出来れば貴方とは戦いたくは無いです」

 

「俺もだ」

 

 根っからの善人という印象、それが佐世保の提督に抱いた印象だ。だが善人でありながら容赦はしないという漆黒の意思も感じた。

 

 彼は大本営が下す任務を執行する。大本営が有罪と決め死罪なら文字通り死を、それ以外なら捕獲し、その罪を償わせる…彼は提督でありながら憲兵のような人物だ。だからこそ、彼とは敵対したくは無い。

 

「聞こえるか、青葉」

 

『はい!阿武隈さん達と合流しました!』

 

「ならばお前達はそのまま俺の指揮に入れ…久々に暴れるぞ」

 

『もう!ほんっとうに「(`0言'0*)ヴェァァァァ!!!」したんだからね!って漣ちゃん煩い!』

 

 阿武隈の涙声が聞こえてくる。そんなに俺が死ななくて悲しかったのか?そう思って少し心が痛んだ。

 

『うっへぇ…フルアーマー漣ちゃんやらなきゃ良かった…重くて重くて…』

 

「無理に装備を積むからだ…だが行けるな?」

 

『もち、弾薬諸々は敵から奪ったし、一斉射撃する暇もなかったしで火力なら有り余ってますよ〜』

 

 フルアーマー漣…夕張から渡された計画書通りなら文字通り殲滅が可能だ。

 

『ぷはぁ!無事で良かったよ!本当に』

 

 それは俺を沈めるのは自分だからという意味だからか?と、良く168から深海100メートルに連れて行こうか?と言われている提督は身震いした。

 

「と、取り敢えず無事なら良いんです…そうでないと他の子が暴走しますから」

 

 暴走ってどういう意味なんだ霧島よ?

 

「司令官」

 

「吹雪」

 

 ーーああ、やっぱお前は俺の言いたいことを理解してくれる。ーー

 

 ーー当然ですよ、私は貴方の初めてですよ?ーー

 

 ーー全く、困った初めてだーー

 

 ーーそれはこっちの台詞ですよーー

 

 吹雪と通じ合った提督は、満足気に笑みを浮かべる。そして吹雪はそんな提督に頼り甲斐のある背中を向けて応えた。

 

「よし、出撃せよ!暁の水平線に勝利を刻め!」

 

「こっちも行くぞ、第一艦隊…出撃だ!」

 

 佐世保の提督と呉の提督…この二人が組んだ初めての戦闘は、皮肉にも人類同士の争いでの戦闘だった。

 

 




海色海斗21歳

男性

好きな食べ物
パスタ、ラーメン、うどん、蕎麦等の麺類

嫌いな食べ物
こんにゃく

血液型
AB型

趣味
月夜を眺めながらワインを嗜む

青葉調べ☆☆

尚、今回は何処かにデュエリストと黄金体験とイノベイトとお姉ちゃんが潜んでいます。見つけられるかな?


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第29話

夏という季節はアイスが美味い。かくいうSKYアイスの由来も炎天下の夏の空の下でアイスを食べてる時に思い付いたテキトーな名前でね。
自分はパピポとかクーリッシュとかの吸う系のアイスを好みとしてます、贅沢したい時はダッツ先輩買いますよ、ストロベリーの


 呉の提督率いる10強チームは、佐世保の提督が掴んだ大佐が潜伏しているという小さな孤島へと向かっていた。

 旗艦を吹雪とした艦隊は、単縦陣形で移動している。彼女達10強ならこの陣形が一番適しているとの判断をした。そして提督は既に三つ作戦を立てていた。

 

 一つは潜水艦である168を主体とした作戦だ。

 吹雪達を始めとした10強が敵の目を惹きつけている間に168が敵陣に魚雷を発射し敵の陣形を崩し、その際に一気に制圧する。

 だがこの作戦はリスキーな物だ、先ず艦隊に5人しか感娘がいないと知られれば相手は確実に潜水艦の存在を疑うだろう。10強が敵にプレッシャーを与えてくれるとはいえ、相手はそこまで馬鹿ではないとも考える。ならば他の作戦を考えた方が良い

 

 二つ目は相手に裏をかかせ、逆に正攻法で制圧する事だ。

 向こうは恐らく此方の手の内を知っている、自分が如何に常識を超えた奇抜な作戦を立てて行動するかを。

 今までは深海凄艦に使った戦法…例えば探照灯を目眩しに使ったり装備である魚雷を爆発させて相手の攻撃が当たったと勘違いさせ隙を作り出したり、人間の現代兵器が通用しない事を逆手に取ってそれらを感娘に持たせ、牽制用に使用したりもした。

 

 例えばマシンピストルといった軽く連射できる銃を撃たれると、ダメージは無いが衝撃はある。それを利用して相手の手元を狂わせたりできるので、被弾を減らせる。それの弾丸が無くなれば捨てて従来の砲雷撃戦に切り替えられる。手榴弾等の兵器も水中で爆発させれば水柱を立てる事も可能なので、一瞬の目眩しに使える。

 

 戦場だとこの一瞬が生死を分ける事もあるので、これらの戦法はとても大事…そして相手はこの手札を知っているとなると、当然警戒もする。

 だが警戒していればそれだけ動きも制限されてくる。それは従来の砲雷撃戦には無用な警戒な故に。

 

 実際に他の鎮守府との演習ではそれらを警戒しすぎて動きがぎこちなくなる相手もいる、そういった相手には決まって砲雷撃戦に持ち込む。

 相手が対応しきる前に落とすのだ、そして相手が対応した瞬間に現代兵器を駆使した撹乱戦法を使ったりもする。どうにも他の提督は感娘が人の形をしているという利点を生かしきれていない節が見える…まぁ仕方のない事だろうかとは思うのだが。

 

 だが二つ目は使えない。現代兵器を駆使する戦法は事前の準備が必要だとうい事が大事だという事、そしてこの鎮守府には驚く程に戦略に必要な物が無かった。現代兵器ならまだしも探照灯等の兵器すら無かった。恐らくそういった物の開発をしていないからだろう、これでは正攻法で相手をするしかない。

 

 そして三つ目の作戦は艦隊を囮にして戦力を集中させる、そして集中させた影響で手薄になった場所を他の艦隊が叩く作戦。シンプルだが効果は絶大、誰でも思い付く単純な作戦。故に相手はこれを警戒するだろう、何故なら此方の戦力は絶大だからだ。

 

 囮だと気付いても戦力を集中せざるを得ない。それが自分達10強の実力なのだから…だから今回はこの三つ目の作戦を使う。それを佐世保の提督と横須賀の提督に伝えた。

 

「囮か、俺は異論は無いが…横須賀の提督は?」

 

『私も異論は無い、貴官の作戦には何時も助けられているのでな。今回も信頼しているぞ』

 

 二人の了承を得たので、具体的な手順を二人に伝える。反撃の狼煙は上がった…後は敵をどう料理するかだ、今できるベストの作戦…だと思う。だが提督は二人には伝えていないある事を考えていた、それは…春雨の事だ。

 彼女にも強くなる可能性を秘めているだろう事が提督には分かっていた。あの気迫、10強を前にしてもあの気迫を出せる彼女ならば必ず強くなれると。

 その可能性を秘めている彼女に、また楽しみが増えたな…と、提督は密かに笑っていた。そしてまた、そんな提督の表情を幸せそうな表情を浮かべて春雨は見ていた。

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「そ、そんな、やつが、奴が、奴が!!………いた、生きていた!生きていたァ!?」

 

 大佐は酷く混乱していた、殺したと思っていた奴が生きていたからだ。

 

「何で!?何でなんだよ!どうして生きているんだよ!!」

 

 呉の提督の10強はこれ以上に無い程に頼もしく戦力としては最高峰のものだ。だが敵に回るとこれ程恐ろしい存在はいないだろう。

 

 10強の時雨はありとあらゆる装甲を貫き、何者であろうと消し去る、文字通りの暴力…彼女の前では何者であろうと無力と化すだろう。

 

 10強の響は不死身であり、どれだけ傷付けようと無傷で戦場を駆ける、またそれの影響か立体的な動きを可能としてる為に動きが読めない。

 

 10強の瑞鶴は無限の射程と艦載機を持ち姿を見せる事なく、敵対する者を沈める、彼女相対したら最後…一方的に攻撃され沈められる。

 

 10強の大井は誰よりも高威力で数が多い魚雷で数多の敵を骸にする、また仲間を傷付ける分だけ威力が増す。

 

 10強の阿武隈は一度見失うと索敵にも掛からずに敵を沈める生粋の暗殺者、更に戦闘力も10強の中では恐ろしく高い。

 

 10強の漣は対空と装備搭載に優れている、駆逐艦では明らかに詰めない物も重いの一言で済ませてしまい、全ての艦の装備を搭載できるのだ。

 

 10強の日向は瑞雲の搭載数が異常尚且つ航空機じゃありえない軌道を実現させている、またそれらと同時に砲撃もするので手数も豊富すぎて手に負えない。

 

 10強の青葉は戦闘力こそ低いがその情報収集能力の前で並び立つ者はいない、噂によると一度見たものは何であろうと記憶してるとの事だ。

 

 10強の168は潜水艦とは思えない程のスピードを持ち、水中を駆逐艦同様かそれ以上の速さで動く、そしてこれでもかという位に魚雷を放つのだ、大井とはまた違った怖さがある。

 

 10強の霧島も金剛型の霧島とほぼ同じ性能だが、違うのは相手のデータを取りそれを戦術に組み込み相手を意のままに操る事、彼女と青葉が組んだら悪夢そのものだ。

 

 そして雪風、10強ではないが…時雨すら恐れる彼女…

 

 そんな奴等がここへ攻めてくる!!!

 

「ひ、ヒィィ!!」

 

 

 怖い怖い怖い!全身に鳥肌が立ちぶわりと汗が噴き出してくる。額から垂れ落ちる汗が目に入り痛む。どうしようもない恐怖が、絶望が、これでもかという程に溢れて止まらない!

 だらしなく鼻水を垂らし、涙を垂らし、恐怖で口が閉じず震えて中の涎も溢れてくる。呼吸すら忘れ、酸素不足で頭も痛む。

 

 それ程に怖い、それ程に恐ろしい、それ程に…知っている。奴等の実力、そしてそれらが成した功績を。功績とは実力を知る良い材料だ…ましてやそれが全人類にとって希望なり得る存在なら、この道の者は誰もが知っている。

 

 雪風に関しては知る人ぞ知る存在だが、10強は誰もが知る英雄だ。だが今の自分にとっては自らの命を狩に来る死神以外の何者でもない!!

 

 だからこそ大佐は考える。生き延びる道を…だがどう足掻いても思い付かない。呉の提督だけではなく横須賀と佐世保の提督まで敵に回してしまった。そして大本営が下した死罪という事実。自分は確実に生き残る道を……いや、まだ手があった。その事を大佐は考えた。

 

 一応人質はいる。佐世保と横須賀の提督は止められるかもしれないが、呉の提督はそれでも止まらない。彼は口では黒を名乗っているので、必要な犠牲と割り切る可能性も無いとは言えない。そして佐世保と横須賀の提督も止まらないとは言えない。二人もまた軍人なのだ。最早これまでか…そう思ったら、ある考えが芽生えた。

 

「そ、そうだ、僕にはいるじゃないか!同士が」

 

 自分と同じ黒の鎮守府。そこへ助けを求めれば良い、そうすれば自分は助かる!その為には時間稼ぎが必要だ。

 なに、時間稼ぎなら適役が大量に存在する。そいつらを使えば自分が逃げ出せる時間は充分用意できる!そう考えた大佐は早速行動に移した、全ては自分が生き延びるために。

 

「さあお前ら…仕事だ!」

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 だが大佐は知らなかった。逃走経路にある人物がいる事を…

 

 彼の名は雨宮(あめみや)一真(かずま)。舞鶴鎮守府の提督で佐世保の提督の弟子でもある、そんな彼の秘書艦は清霜…だがこの清霜は他の清霜とは違った。

 

 この清霜は金髪で眼の色が翠色と、普通の清霜とは違う。そしてその能力も他の清霜には無いものを持っていた。そしてもう一つ違うのは普通の清霜よりも胸部装甲が…大きい。

 

「ねーかずまー、暇だから遊んでよー」

 

「ちょ!?今見張りの途中って胸!胸当たってるって!!」

 

 そんな彼女は緊張感ゼロで舞鶴の提督にのしかかっている。その柔らかさに顔を赤くするが、直ぐに清霜も引っぺがした。

 

「ぶぅ〜」

 

 そんな彼に如何にも不満ですと言わんばかりに頬を膨らませる。そんな彼女にぽんぽんと頭を優しく撫でて我慢してくれと言う。

 

「一真さん、動きがありましたよ」

 

 そんな彼にもう一人の感娘である古鷹が舞鶴の提督に報告をする。どうやら大佐の感娘が出撃したようだ

 

「よし、このまま見張りを続けるよ。奴が逃走したらちょっと手荒になっちゃうけど拘束するからね」

 

「そんでそんで何時もの決め台詞言うんだよね?俺はスーパーコマンダー雨宮一真だ!って!あれカッコイイよね!!」

 

「ま、まあね」

 

 清霜の屈託の無いキラキラとした笑顔に照れつつ答える舞鶴提督。そんな様子を微笑ましく思いながら古鷹は見守っていた。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 そして、舞台は終幕へと続く。

 

 呉の海色海斗

 

 横須賀の柳林鈴音

 

 佐世保の空色陸斗

 

 舞鶴の雨宮一真

 

 彼等は共闘する。ただ一人の男に引導を渡す為に




今回で10強それぞれの能力が明かされました。皆様が思う敵に回したくない子は誰でしょうか?
個人的には青葉ちゃんですね、情報は武器ですので…


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第30話

気合の連投。

今回の話…大佐のフルボッコではないです、大佐の感娘フルボッコです。
彼女達が酷い目に合うのが嫌だ、大佐なら歓迎だぜ!という方は今回は見送る事をお勧めします。
暫く空白が続きますので、その間に改めて考えて下さい。


































ここまで読んだと言う事は…覚悟してきた…人ですよね?






 大佐が出撃させたのは六人編成での六艦隊、そのうち二艦隊は道中の護衛に当て自分は逃げようという魂胆だ。

 さて、ここで戦局を覗いてみよう。まず海色提督率いる10強はそのうちの四艦隊と戦闘していた。

 

 事前の作戦である囮作戦が成功して殆どの戦力を見事引きつけてみせた。10強が脅威と感じた彼女達が向かったのだ、そして彼女達は囮だと薄々感づいてはいたもののそれに乗るしか無かった。何故ならそれは10強相手だから…

 

 そして大佐の感娘はコンディションも最悪に近い…そんな彼女達が10強相手に敵うのだろうか?否…断じて否。それは無謀な試みである。

 その結果が、これだ

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「敵は多いですね…先ずは少しでも多く攻撃を与えるべきです」

 

『そうだな、それに思ったよりも敵が釣れたのは幸いだ』

 

 囮作戦は見事に成功。艦隊にいるのは吹雪、フルアーマー漣、霧島、168、青葉の五人だ。阿武隈は既にステルスモードに入っている為、()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そして提督はというと、佐世保の提督とは別の場所で指揮を取っていた。同じ部屋にいると声が混じって混乱する可能性があるからだ。

 

 

『では第一段階を開始する、先ずは先制だ…全ての武装を使え漣』

 

「ほいさっさー!」

 

 そう言って漣は空へ飛び上がった。

 

 フルアーマー漣…それは数多の武装で作り上げられた形態。航空戦艦日向の予備の飛行甲板を3つ装備し、右腕と左腕に一つずつ、背中には瑞雲を利用して空を飛ぶ浮力を得る。その内側には15.5cm3連装砲を二つ積み、連続して砲撃を撃つ。

 

 左右の腕には吹雪が使用している主砲タイプに変形した46cm三連装砲だ。漣の能力はあらゆる装備を都合の良い形で装備する事だ、なので装備した瞬間にあらゆる物理法則を無視して装備されるのだ。

 

 そして背中にはもう一つ、金剛型二番艦比叡の艤装タイプの主砲が付いている、そしてその主砲の余ったスペースにと足に試作61cm四連装酸素魚雷を積んでいる。またレーダーやソナー、爆雷も積んでいる為、隙もない火力だ。

 

「感謝しますよ…夕張さん!」

 

 これだけの装備を考案してくれた夕張に感謝を、これだけの火力を駆逐艦の身でありながら出せる自分に感謝を。そして

 

「援護感謝します!瑞鶴さん!!」

 

 見えるのは無数の艦載機…瑞鶴が操る零式艦戦53型(岩本隊)。それらが漣に気付き、航空機で落とそうとした空母達の航空機を落としていく。最早何も止める者はいない

 

「装備なら幾らでもあるんだァ!!!!」

 

 左手と右手に付けている副砲から無数の砲撃を放つ。同時にありったけの魚雷を物凄い勢いで放つ。

 放った分魚雷が物凄い勢いで減り、無くなったと同時にそれらをパージする。これで残りの魚雷は2つになった。

 

「く、そぉぉ!!!」

 

 これだけの火力の前でも諦めず立ち向かう大佐の感娘達、だが現実は甘くはない。

 

 次に副砲の弾薬が切れたら、飛行甲板に魚雷を取り付けてそれらを感娘が密集している場所に投げつける。そしてそれを右手の46cm砲で打ち抜いた。

 そして、大爆発が敵の艦隊を襲った。その地点を背中の比叡砲で適当に撃つ、それだけで敵の艦隊はほぼ壊滅した。

 

「撃ちたくない…撃たせないで…」

 

『満面の笑みで撃っていたのは何処の誰だ?』

 

「テヘペロ☆」

 

『ふん…まぁ良い、良くやった漣』

 

「はぅ☆ご主人様に褒められたぁ!?これはもう結婚ですね結婚!」

 

「ふざけるのはそこまでにしようか?漣ちゃん」

 

「ヒィ!?」

 

 吹雪の威圧感に怯んだ漣は、ブツブツ文句を言いながら次の武装に切り替えた。天龍の剣とと龍田を槍を構え、木曾のマントを身に付ける漣。

 

「フルアーマー漣ちゃんプランB…!」

 

「何方かと言うと…フルウェポンでは…」

 

「なんか海賊っぽいですねぇ」

 

 青葉と霧島のツッコミが入るが、気にする気は無い漣。そして瑞鶴の艦載機が更に増えるのを提督は確認した。

 

『あれは流星…瑞鶴の物か』

 

「岩本隊とあれが来ちゃいましたね、もう瑞鶴さんだけで良いんじゃないんですか?」

 

「確かに瑞鶴さんは鎮守府からも攻撃出来ますけど…ねぇ」

 

『おい、それはもう言うなと言っただろう』

 

 確かに瑞鶴の射程ならば鎮守府で立て篭って艦載機を撃つだけの簡単な仕事になってしまうが、提督はそれを嫌っている。そんな提督を快く思って瑞鶴も更に張り切ってしまうのだが…

 

『第二段階だ、霧島、青葉…残った奴は?』

 

「大佐が持つ最高戦力の艦隊…のみですねぇ、他はみんな瑞鶴さんと漣さんに蹴散らされちゃってます」

 

『ならば都合が良い、青葉は霧島に知る限りの情報を』

 

「あ、もうあげてますんで」

 

『なら…やれるな霧島』

 

「ええ、見事誘い込みましょう」

 

 そして霧島は艦隊から一歩踏み出す。同時に168は艦隊から離れ始めた。

 

「さあ、砲撃戦、開始するわよ!」

 

 先ず霧島は艦隊を挟むように砲撃を放つ。水柱が彼女達を囲むように立ったので、彼女達は左へ移動し始めた。

 

「左へ移動する確率98%、3秒後に此方へ威嚇射撃する確率97%」

 

 そう霧島が呟いた3秒後に、敵の戦艦…伊勢が威嚇射撃を此方へ放った。

 

「威嚇射撃が当たる確率75%、私がそれを砲弾で相殺する確率」

 

 そして霧島は放たれた砲弾に狙いを付ける。

 

「100%」

 

 そして、見事それを空中で撃ち落とした。

 

「感娘、伊勢がこれに動揺する確率100%、次いで感娘満潮が焦り砲撃する確率85%」

 

 そして満潮は伊勢の制止を振り切り霧島に向かって砲撃した。

 

「これを瑞鶴の艦載機が盾になる確率100%、同時に死角から168が雷撃を満潮に当てる確率もまた、100%」

 

 霧島の言う通り砲撃を代わりに艦載機が当たり、同時に満潮が雷撃を受けて大破した。

 

「それに艦隊が動揺し、後方へ下がる確率90%……」

 

 敵艦は後方へ下がる、そしてそこは提督が支持していた座標だった。

 

『見事だ霧島、誘い込めたぞ』

 

「当然です提督…ああ、それと…」

 

 霧島は眼鏡をクイッと上げて、宣言した。

 

「阿武隈が王手(チェックメイト)をかける確率もまた…100%」

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「な、何なのよ…」

 

 死角からの一撃で大破した満潮が泣きそうな声色でそう呟いた。

 最初は空からの一方的な暴力。あの容姿は駆逐艦の漣だという事は分かるが、何故あれ程の装備が積めるのか、何故相手に空母はいないのに艦載機が攻撃してくるのか、何故霧島は砲撃を相殺できたのか

 

 考えたくはないが、これ程にも強かったのか…そう伊勢は歯を噛み締めながら思う。

 

 そもそもここまで追い詰められたなら、降伏も選択肢にある…そう考えた伊勢は降伏を宣言しようとーーー

 

 

「えいっ」

 

 

 戦場に相応しくない無邪気な声、それと同時に艦隊が悲鳴を上げる。

 

「「「「「「きゃぁぁぁぁぁ!!!?」」」」」」

 

 突如目の前に現れた阿武隈、そして彼女の同時攻撃によって艦隊の全ての感娘が大破した。

 

「敵艦を制圧しました!」

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

『ご苦労だ、()()()()()()()()()()()()

 

「はい、誰も沈めてません」

 

 命令通り沈めていないと提督は言った、なら自分達は助かるのか?そう伊勢達は淡い希望を持つ。

 

『ならばその感娘と共に大佐の潜伏している島へ上陸しろ』

 

「了解です司令官…」

 

『悪いが俺は佐世保の提督の所へ顔を出してくる、直ぐ戻る』

 

 そう言って提督は通信を切断した。今は言葉通り佐世保の提督の所へ向かっているのだろう、ならば後やることは…

 

「じゃあみんな、沈めちゃおう、さっさと」

 

「勿論です!」

 

「当然です!」

 

「はぁ、またですか…いつか提督にばれますよ?」

 

「別に168が直接連れてっても良いんだけどなぁ…」

 

「ブラック感娘は殲滅じゃ!」

 

「……………え?」

 

 伊勢は彼女達が何を言ってるのか分からなかった、彼女達は自分を沈める…そう言ったと理解するのは漣の剣が道潮を襲ったからだ。

 

「ご主人様に手ェ出した時点で貴女達も同罪、命令されたからは通用しませんよ?貴女達は幾らでも逆らうチャンスはあったと思うので」

 

 間も無く満潮は沈み、次に飛龍が阿武隈に沈められた。

 

「んぅ…本当は助けたいけど、皆さんちょっとやりすぎちゃったから…あたし……ふふっ、あははっ…♪……なんか楽しくなってきちゃいました♪」

 

 168は駆逐艦の足を掴み、力づくで海に引きずり込んで行く。

 

「潜水艦の気持ちを味わうチャンスだよ?まぁもう海上に上がって来ることはないけどさ」

 

 霧島は誰も沈める事は無く、ただ場を静観する。

 

「何時もの事とはいえ…良く出来ますね」

 

 青葉は淡々と、艦隊の感娘を沈めていく。

 

「まぁ青葉は情報規制も得意ですし?安心して沈んで下さい!なぁに、代わりは幾らでもいますよ」

 

「ど、どうして…」

 

 自分以外の全員が沈む。そして最後は自分の番

 

 吹雪はにっこりと笑い、砲身を此方へ向けた。

 

「だって、司令官の為ですから♪」

 

 そして自らの視界が黒く染まった。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「何時もの事とはいえ、本当にえげつないですね吹雪さん」

 

 目の前には先程の感娘がうなされながら気絶している。念の為に漣に全員に応急修理要員を取り付けて貰った。

 

 吹雪が見せたのは夢幻、相手の五感に訴えて幻覚を見せたのだ、自らが沈むという幻覚を。

 

 かつて横須賀の提督は言った、下手をすると時雨よりも吹雪が厄介だと

 

 かつて10強最強の時雨が言った。条件次第では僕より強いと。

 

 彼女達は幻覚に抗う術を持たない、何を見せるのかは吹雪次第…それが吹雪の特別な力。

 力、速さ。そんなものは意味を成さない。あるのは幻覚を見せられ負けるという事実だ。

 

「や、やりすぎちゃったかな…」

 

「まぁ実際に沈めてないですし…セーフですよセーフ」

 

 何故吹雪がこのような幻覚を見せたというのは、彼女達が自分達に復讐しようと考えないようにするため、根っこにトラウマを植え付ければ逆らう事は無いと考えたから。

 もし再び襲ってきたら、その時はその時…また相手をしよう。そう彼女は考えていた。

 

 




10強の実力、吹雪の実力の一端が少しでも伝わってくれたら嬉しいです。

こいつら、改めて見て結構えげつないでしょう?


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第31話

白露型は合法。え?事案?事案は朝潮型でしょ?(すっとぼけ)
可愛いとカッコ良いを両立させたキソーは俺の親友であり戦友。嫁?しぐにゃんですが何か?
後阿武隈は俺のペット(意味深)で瑞鶴と吹雪は俺の幼馴染。漣は二次創作を語る仲間で大井はブラコンなお姉ちゃんで、168は後輩で霧島は先輩、青葉はクラスメイトで朝潮は妹。

なにかんがえてんだおれ………

ポケモンGOやりたいなぁ、あ、艦これGOでも良いんだよ?艦これアーケードで爆雷モーションの村雨にムラッとした、不覚。


「司令官、島へ上陸しました」

 

 吹雪達は大佐の感娘を全員安全な場所へ運んでから島へ上陸した。島といっても内地とはそれ程離れていなく、更には深海凄艦から奪取したばかりでどう扱うかを検討していたしまでもあった。

 大佐の鎮守府からも距離は無い為に見つけやすくもあったのだが、これを見た提督は隠れ家にしては不用心だとも感じた。

 

『間も無く他の艦隊も合流する、可能ならばその間に横須賀の提督の艦娘を救出してくれ』

 

「了解しました!」

 

 吹雪は通信を終えて、艦隊に提督の指示の内容を伝えて行く。そして彼女達は探索を始めた。

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 一方大佐は焦っていた。いざ逃走しようとして海上に出たら、そこには舞鶴提督が率いる異常な感娘が道を塞いでいたからだ。

 

 金髪の清霜、左眼が緑色に光る古鷹、服装と装備が違う加賀が道を塞いでいた。

 

「こっちに来たか、じゃあもう一方を見張らせていた子を戻さないと」

 

 ボートに乗っているのは舞鶴提督だ、恐らく何らかの理由で逃走経路が漏れていたと思う。

 

「そ、その感娘…まさか貴様は舞鶴の厨二提督!?」

 

「失礼な!」

 

「一真さん、的を得ていると思うわ」

 

 否定する舞鶴の提督に加賀が冷たい目で追撃した。若干涙目の舞鶴提督に加賀が顔を赤くする。

 

「と、兎に角お前は逃さない!大人しくすれば痛い目には合わないけど?」

 

「お前如きに僕が負けると?たったのそれだけの艦娘で!」

 

 大佐は完全に舞鶴提督を下に見ていた。だからこそこのように抵抗してしまった。

 

「なら仕方ないわね」

 

 そして加賀が()()()()()。航空機を使わず、戦艦のように砲撃をしたのだ。

 

「ぐぅ!?ば、馬鹿な…加賀は空母の筈では!?」

 

「本来ならそうね、でも私は違う」

 

「ぐ、だとしても僕は倒す!総員戦闘用意!」

 

 そして大佐は自らの艦娘に指示を出した。

 そんな艦娘を見た舞鶴の提督は心を傷める、彼女達はもう本当の意味で壊れていると感じた。彼女達を救うには一つしかない

 

「古鷹、頼んだよ」

 

「任せて下さい!」

 

「その数で何ができる!!」

 

 舞鶴提督の感娘と雪平大佐の艦娘が激突する。圧倒的に数では舞鶴提督の方が負けている。だが

 

「見つけました…!」

 

 そこへ新たな艦隊が登場した。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 横須賀提督と佐世保の提督は呉の提督の作戦通りに動いた敵の、手薄になった方を攻め落とした。その後に呉の提督は佐世保の提督に提案したのだ、島の制圧は自分がやり、二人は舞鶴提督の援護に向かって欲しいと。

 

 だがそこへ意外な敵が現れた、深海凄艦だ。横須賀提督の艦隊に二艦隊分の深海凄艦が現れたのだ。そこへ横須賀提督は元々出撃させていた10強時雨が率いる艦隊と、呉の提督が用意していた第三艦隊で挟み撃ちにし、見事撃沈する。

 

 何故時雨達を向かわせたというと、一人の感娘が大佐と決着を付けたいと願ったからだ。その感娘の名は朝潮、大佐の暴挙に怒り、10強全員に頭を下げて自分にやらせて下さいと頼んだのだ。

 

 10強はそれを受け入れた。本来ならば自分達が大佐に引導を渡したかったが、提督と同じように朝潮に何かを感じていた。第二艦隊には雪風もいるし、万が一の事態にも対応できるだろう。

 

 そして今、朝潮は大佐と対峙していた。

 

「そんな…!」

 

 朝潮は大佐の艦娘を見て言葉を失った。ただ淡々と砲撃を撃ち、ただ命令に従うだけの艦娘を…

 恐らく彼女達が見る景色には色は無い、全てに絶望した彼女達はもう心が無い。

 

「何故ですか…何故貴方はそこまでして私達を!」

 

「な、何だ…海色提督の所にも君みたいな馬鹿はいたのか…っ!?ゆ、雪風!」

 

 大佐は雪風を見て更に絶望するが、雪風は大佐を見ることなく告げる。

 

「雪風は手を出しませんので、安心して良いですよ」

 

 それに大佐は安心し、改めて朝潮を見た。

 

「まぁ良いさ、君は朝潮だね?答えは僕に都合の良い道具を手に入れる為さ」

 

「テメェ…!」

 

 大佐の答えに木曾は怒るが、それを見ても大佐は寧ろ笑って流した。

 

「おお、怖い怖い…それに君達は僕達人類の兵器だろう?兵器が人類と同じように振る舞うなんて、虫酸が走るんだよ」

 

「お前…!」

 

 次に舞鶴提督が怒る、だが朝潮は怒りはせずにただ黙って話を聞いている。

 

「…少し冷静になりました、貴方の事を少しでも知りたかった…だから私は貴方の話を聞きました…でも、私が間違ってました」

 

「おや、君も兵器と理解「司令官は!!」ん?」

 

「司令官は、確かに私達を兵器と言います、でもあの人は暖かい…貴方みたいに私達を扱わない!同じ言葉でもそこに込められている感情が!全然違うんですよ!人の心を…優しさを…あの人から感じるんです!私達は!」

 

「司令官は貴方みたいに冷たくない!司令官は私達をそんな風に扱わない!貴方みたいに人の形をした何かじゃない!」

 

「な、何だと!?」

 

 朝潮の言葉に大佐は怒った。それもそのはずだ、自らが人扱いしていない存在に自分が人ではないと言われたから。だがそれでも朝潮は止まらなかった

 

「そうですよ!貴方はもう人の心を失っている!私は知っているんです!人は他人を損得無しで気遣い、助けるんだって!司令官は口では捻くれてますけど、とても優しい人なんです!」

 

「貴方と司令官は全然違う!こんな事をする人が人間であるものか!貴方は…………お前は!人の形をした深海凄艦だ!」

 

「き、貴様ぁ!!!」

 

 人の形をした深海凄艦と言われ、とうとう大佐は完全に朝潮を沈めることだけを考えた。

 

「奴を沈めろぉ!」

 

 そして、大佐の艦娘全員が砲撃した。砲弾全ては朝潮に向かって行くが……

 その砲弾は朝潮をすり抜けた。次の瞬間には無数の朝潮が艦隊を取り囲んでいた。

 

「な、何だこれは!?」

 

「「「「貴女達に罪は無い、でも大破は覚悟して貰います!」」」」

 

 次の瞬間には、朝潮が全員消え、四方八方から砲弾が雨のように降り注いだ。次々と駆逐艦と軽巡が大破していく、戦艦や重巡、空母は耐えているが

 

「「「「少ないダメージでも蓄積させればどうですか!?」」」」

 

 

 大破した同じ駆逐艦から主砲を奪い、それを放つ。これを繰り返して少ない火力を補い見事重巡と空母まで大破に持ち込んだ。

 

「く、くそ!見えても残像だけだと!?」

 

 怒りによって朝潮の眠れる力が完全に解放。朝潮型では出せない速度をも出せるようになる。それは最速の島風をも超える速さ。それを見ている肝心の島風は目を爛々と輝かせているのだが…

 

「適当で良い!砲撃しろ!」

 

 戦艦の一撃は駆逐艦を一撃で大破に持ち込める火力、それが当たれば充分だと思ったが…

 

 

「「「「そんな攻撃、止まって見えますよ!」」」」

 

 なんと朝潮は全ての砲撃を砲弾が発射された瞬間に撃ち落としたのだ。同時に四方八方から爆雷と魚雷を投げつけられ、戦艦3隻に大爆発が襲った。

 

 間も無く戦艦は大破し、薄っすらとしか見えなかった朝潮の姿がはっきりと見え始めた。

 

「な、なんだ?服装が、変わっている?」

 

 消えた時の朝潮は他の朝潮となんら変わりは無かったが、現在の朝潮は服装が少し変化していた。そして心なしか先程よりも大人っぽくなっている気もした。

 

「彼女達は沈めない、でも…お前だけは沈める」

 

 そして朝潮は砲身をボートに向け砲撃を放った。ボートは爆発し大佐は海へ飛ばされる。

 

「がぼぉ!?がぼっ。ぐ、た、たばずげでぇ」

 

「や、やっべ!」

 

 突然の事で驚き身体を上手く動かせないのか、溺れる大佐

 それを見た舞鶴の提督はボートを動かし大佐の元へと向かう。その間に朝潮は冷めた眼差しを大佐に向け言い放つ。

 

「これが、お前のした事だ、お前は一体何人沈めて来た…?少しでもその人達の気持ちが分かると良いですね」

 

 そして朝潮は大佐に向け砲撃を放った。巨大な水柱が昇り大佐の姿が見えなくなる

 

「………………何故止めたのです」

 

 

 だが砲撃は逸れて、大佐の手前の海へ落ちた。それを逸らしたのは木曾と神通だった。

 

「これ以上貴女の手を汚したくありません」

 

「そういう事だ。ここから先は俺達の仕事だ」

 

 間も無く比叡と雪風と島風も朝潮の周りに集まる。そして雪風は大佐を引き上げ、此方に近づいてきた舞鶴提督のボートに乱暴に放り投げた。

 

 そして舞鶴提督は大佐を縛り付ける。大佐は恐怖で顔が歪み、白目を向いて気を失っていた。その有り様を見て良く溺れなかったなと舞鶴提督は思ったのだが…

 

 

「師匠から言われてるんだけど、今回の戦果報告とこれからについては呉鎮守府で行うって。だから君達も呉鎮守府にもどるんだよ?こいつも尋問する必要があるしね」

 

 そう言って舞鶴提督は大佐を乗せて、舞鶴提督の感娘と大佐の艦娘を連れて行った。

 それを見送る朝潮は、ただ唇を噛み締めて…拳を固く握り締めていた。

 

「許せないです…あんな人がいるなんて…」

 

「許さなくていいさ、この世の中にはうちの提督みたいな奴はいない、黒って言ってる奴は本当の黒しかいないんだ」

 

「寧ろしれぇが珍しいだけですよ…」

 

「確かに…そうですね」

 

 同じ黒を名乗る者でも自分の司令官とは大違い、そう感じた朝潮だった。

 




朝潮ちゃんマジ主人公な回でした。

次回からは少し落ち着いた鎮守府の風景になります


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第32話

暫くほのぼのとした話が続きます


 今回の大佐の行った行為により、当初の予定が大幅に狂った提督。横須賀、佐世保、舞鶴の提督と共に大佐を無事に捕らえて騒動にも決着を付けた。

 だが今回の騒動によって各4名の資材が大幅に減ってしまう。また、レ級との連戦をした感娘達も疲労が溜まっている…そこで提督は思い切って各地方の鎮守府に赴く事にした。

 理由は頭を下げて資材を分けてもらう、また感娘達の疲労回復の効果がある間宮の甘味を自らのポケットマネーで買う事だ。

 

 自分の鎮守府にも間宮はいるものの、自分の鎮守府の全員分の甘味を短時間で用意するのは難しいし、今後もこんな事がある事を考えると幾つかのストックも必要だ。

 そこで提督は近場で交流のある鎮守府に吹雪と共に赴いて甘味を買った、次に大本営へ連絡を取って大規模作戦までの日程を確認した。

 やはり今回のレ級や大佐の騒動の影響は出ており、大規模作戦までの戦力に黒の鎮守府の存在を徹底的に洗うとの事、その影響で作戦までの期間が微妙に延期した。

 

 だが悪い話だけではない、提督が行ったレ級戦の影響か深海凄艦が各鎮守府に偵察部隊を送ってるとの事。その偵察部隊はなんと大規模作戦の海域から送られているとの事。つまり敵の戦力が減り弱体化しているのだ、そして別の海域から援軍は今の所はない。

 

 此方にも猶予はできた。今は戦力を改めて整えて来るべき日に向けて艦隊を強化する時間もできた。この前の戦闘で朝潮が改二になり、経験を積めば10強に匹敵する程の可能性を見せてくれた。そして新たな存在の春雨だ…彼女をどう育成するかを楽しみに考え、提督は今日も書類を片付けいた。

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「これは…」

 

 春雨はこの鎮守府に来て初めての体験を幾つかしている。それらはどれも前の鎮守府では体験してなかったものだ。

 提督は感娘を差別しない。誰もを平等に見ていて戦力として数えている、全ての艦種を均等に訓練しているので全員の実力は高い。

 

 更に訓練には指導のスペシャリストが存在する。神通の指導は厳しくも分かりやすく自分でもメキメキと実力が付くのが実感できた。

 前の鎮守府では演習も訓練も行ってなかったのでこの鎮守府での出来事は感激した、また今までは一種類しかおかずが無く、器もそれほど大きくないのにおかわり禁止の米だけだった…だが今はあり得ない程の豪華な食事だ。

 

 バイキング式という奴なのだろうか?知識としては知っていたが実際に食べるのは初めてだ。それも朝昼晩の3食全てがその豪華な食事だった、最初にそれを見て食べたら感動の余りに泣き出してしまう程だ。

 

 だがそんな春雨に気になることもあった。それは提督が一度も食堂に顔を出さない事、それどころか彼と顔を合わせるのは彼が見回りをする時と朝の朝礼位だ。

 

「あの、時雨姉さん夕立姉さん」

 

「ん?何だい?」

 

「なんか用っぽい?」

 

「どうして提督は食堂に顔を出さないのでしょうか?」

 

 疑問に思っている事を聞いてみると、二人は困ったように笑出だす。

 

「あー…その、うーん」

 

「提督さんはいっつもカップ麺ですませてるっぽい」

 

「ちょっ!?夕立ってば!」

 

「別に隠す事じゃないっぽい」

 

 提督がそんな食事ですませてる事に驚く春雨、感娘がこれ程の食事を取れるなら提督も取る事はできる筈だと思うのだが

 

「僕達の為に自分の食費を削ってるのさ提督は、実際に提督は昼ごはんしか食べないから…青葉から聞いたんだけどね」

 

「そ、そんな」

 

 前の鎮守府でも3食は食べさせて貰ったのに、この提督はそんな食事をしていたのか。

 そんな事実を知った春雨は何故改めるように言わないのかと思った、だけど時雨は春雨の言いたい事を察したのか

 

「丁度いいから、提督か普段どう過ごしているのかを春雨にも知ってもらった方が良いね」

 

 そして時雨は提督の現状(青葉の情報)を春雨に伝える。

 

 提督は夜1時に寝て4時に起きる、間宮と伊良湖の朝食の手伝いをしてから、朝礼をする。

 朝礼後は書類仕事をしつつ感娘の訓練を見守り、遠征や演習や出撃をして指揮をとる。秘書艦を取らない彼は食事を取りつつ書類を片付ける、でないとノルマを達成できないからだ。

 夜になると見回りをしてから灯台に登り鎮守府周辺の海域を見張る。なんと提督は寝泊まりは灯台の上でしているとの事だ

 

「な、なんですか…それ」

 

「困った提督っぽい、夕立達もいつ倒れるかハラハラしてるっぽい」

 

 実際に倒れた時は鎮守府が大混乱したが、吹雪と大井がその場を収めたとの話だ。その後提督の事が心配で居ても立っても居られなかった北上が様子を見たところ、大井が提督を膝枕して寝かせてたとも言われている。(この情報の真相は明らかになっていない)」

 

「言っても聞かないけどね…せめて秘書艦は付けるようにって言ってるのに提督は聞かないから、僕達で提督をちゃんと見ておかないといけないんだ。春雨も提督の事を見てあげてね?」

 

「勿論です!」

 

 提督の業務を聞いて、彼を支えてあげないと…そんな思いを胸に秘めて春雨は春雨スープを飲み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰ですか!?私が提督をクンカクンカスーハーしたってデタラメを鎮守府中に広めたのは!」

 

「いやぁ…事実じゃん」

 

「だから誤解ですよぉ!私がクンカクンカスーハーペロペロちゅっちゅっするのは北上さんですからぁ!」

 

 大井は気付いてない、北上だけだと言ってないのを。そしてその会話を青葉が聞いていた事を。

 




提督曰くこういった仕事は我々人間の仕事だ。感娘が海を取り戻すならばそれを全力でサポートするのが提督の仕事だという事。
提督は人間のできる事は人間がするべき、彼女達にしかできない事は彼女達がするべきと考えてます。


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第二部〜大規模作戦
第33話


あ、今回もほのぼのです、多分


 提督の毎日が忙しく、休む暇が余りないのは観察していて分かった。だから提督の負担を減らす為に彼の力になれれば良いなと思いつつ今日も訓練に励む。

 神通曰く自分は砲雷撃戦に慣れていないので先ずはそれをやり慣れる必要があるとの事。

 

 確かにあの鎮守府では戦闘をする事が無かった。この鎮守府に来てから初めて感娘らしい事をしているのだ、勿論これから実力を付けていけば良いのだが…自分とさほど変わらない時期でこの鎮守府に入ってきた朝潮の事を聞くと嫌でも焦る。

 

 彼女は改二になる為の練度に達していないにも関わらずに改二へとなった。これは数ある鎮守府の中でも異例の出来事でこの呉鎮守府が初めての事だ。

 彼女に追いつきたいーー日々の訓練だけではなく自主練もして少しでも実力を身につけようと日々奮闘する、提督の役に立ちたい…その一心で。

 

 少しでも砲雷撃戦に慣れる為に練習用の的に向けて砲撃を放つ春雨、だが移動しながらの砲撃はこれまた難しい。

 移動する度に小さく波が起こり、それが手元を狂わせる。姿勢を正し…尚且つ狙いは正確に付けなければ当たらない。

 更に実戦では相手は動くのだ、命中率を少しでも上げる為にはもっと工夫が必要…

 

「練習熱心だね」

 

「貴女は…」

 

 そんな春雨の前に現れたのは同じ駆逐艦である睦月だった。彼女は吹雪、夕立と良く一緒に行動している仲良しコンビとして認識している。

 そんな彼女はニコニコと笑いながら此方に近づいてきてペタペタと自分の艤装と砲身を触り始めた。

 

「この間まで新品同然だったのにここまで…春雨ちゃん凄いね!練習熱心で…睦月も嬉しくなっちゃうよ!」

 

「まだまだ…です、早く皆さんに追いつかないと…戦力にならないといけない…です」

 

 そう、自分はまだまだ素人同然だ。延期になったとはいえそこまで延びたわけではない大規模作戦。少しでも力になる為に…この鎮守府に貢献する為に……そう考えてると少し笑えてくる。あれだけ人間に酷い目に遭わされたというのに、その人間の為に力を尽くそうというのだから…自分は相当な馬鹿だと思う。

 

「むぅ」

 

 そんな春雨の様子を見て、何を考えたのか睦月はいきなり春雨の頬を掴んで横に伸ばした。

 

「い、いひゃいれふ」

 

 春雨はじたばたとして手を解こうとするが思ったより力が強くて振り解けない。

 

「春雨ちゃん!そんなに難しい顔をしてると駄目!」

 

 そう言うと睦月は春雨のお腹をくすぐり始めた、意外なところから意外な攻撃を受けた春雨は思わず笑ってしまった。

 

「あひゃひゃ!く、くすぐったいですよ!ひにゃっ!?そこは駄目ぇ!」

 

「にひひ♪ここがええのか〜?ええんか〜?」

 

 暫く睦月のされるがままになった春雨は、睦月から解放されてから涙目になって睦月を見る。すると睦月は優し気に微笑みながら言った。

 

「朝潮ちゃんも最初は凄く焦ってた。早く追いつかないとってね、今の春雨ちゃんみたいに一人で砲雷撃戦の練習をしたり…でも頑張りすぎちゃって一回倒れた事があったの。

 そしたら提督は凄く怒ったんだ、早く戦力になりたいのなら何故周りの感娘に頼らないって…優秀な感娘は幾らでもいるから、そいつらから学べば一人で学ぶより遥かに良いだろうって、倒れるまで訓練した所で何の意味もないってね…だから春雨ちゃんも私達を頼ってね?」

 

 睦月は春雨の焦りを見抜いていたのだろう、普段の彼女からは想像出来ない程に落ち着いた雰囲気の彼女の姿を見て、春雨は驚いたが同時に納得もした。

 焦りすぎていたーー落ち着いて周りを見れば、こんなにも頼れる先輩がいるのだ。こんな所も前とは違った。

 前の鎮守府では殆ど感娘同士の交流は無かったので、こういった感娘同士の繋がりがこれ程に暖かな物だとは思わなかった。

 

「だから、もっと睦月達を頼ってもよいぞ?」

 

 そして睦月はにひひ♪。と悪戯っぽい笑みを浮かべて手を差し伸べきた。春雨は目尻に涙を浮かべながらーーー笑いながらその手を取った。

 

 頼れる存在がーーーこれ程心強く、嬉しい事だとは知らなかった。

 

「っ………はい!」

 

 今度からは頼ろう。自分には仲間がいるのだからーーーー

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 執務室でその光景を見ていた提督はクスリ、と笑う。

 春雨が焦っていたというのは普段の訓練の様子と戦術訓練の時間の合間に練習していた光景を見て直ぐに分かった。

 

 意欲が高いのは良いが、それが焦りに繋がるのは駄目だ。焦れば焦る程に周囲が見えなくなってしまう。理想の実力と自分の現状を比べてしまって自分に自信が付かなくなる…そういった例を自分は何度も見てきた。

 

 そして春雨を中心的に見て危険だと判断したので駆逐艦のフォローが得意な睦月にフォローさせた。同じ姉妹艦の感娘でも良いと思ったが…こういう役割は彼女の専売特許なので睦月を向かわせた。

 そして春雨の様子から問題は解決したのだろう、彼女の笑顔がそれを物語っていた。

 

 

「さてと」

 

 春雨の件も解決したため、次の仕事に取り付いた。内容は作戦前の黒の鎮守府のガサ入れだが…これはあまり当てにはならない、この程度で見つかるなら黒の鎮守府で苦労はしていないからだ。

 もっとも佐世保の提督ならば話は変わるのだろうが…そう思考してるうちにある事に気づく。彼の弟子の舞鶴の提督についてだ

 

 彼は確か最近着任したと同時に異例の出来事に巻き込まれている《不幸の提督》と呼ばれている。

 着任後間も無く戦艦ル級のフラグシップ3隻に襲われるも撃退…結果だけ見れば凄まじかったがその後が問題だ。

 

 立て続けに深海凄艦のエリート級の大規模な艦隊との戦闘、ちょくちょく紛れこむ姫級の深海凄艦、最近では鬼と呼ばれる艦とも戦闘した。

 立て続けの強敵との戦闘だが、それでも誰も沈めていない彼は《不幸の提督》という称号だけではなく、《雪風提督》とも呼ばれていた。

 

 確かに彼の所持している感娘も珍しいのは分かる、自分でも見た事がない者ばかりだから。

 だからこそ心配に思う、彼の感娘を狙う者が現れないかを……

 

「少し探りを入れてみるかな…」

 

 大規模作戦でら彼の力も必要だ、横須賀の提督はこういう事には力を貸してくれはしない(面倒臭がるため)。

 佐世保の提督も積極的に関わると自分の黒が露見する可能性があるために除外。ならば自分一人でやるしかない…そう考えてからは行動は早かった。

 

 また徹夜になるなと思いつつ、眠け覚まし用のドリンクを飲んで書類仕事と調べ物に取り組んだ。

 

「川内参上!!」

 

 するとバァン!と勢い良く執務室の扉を開けて川内が入って来た、良く夜更かしをする彼女は提督の悩みの種の一つでもあるが、こういった時は助かる。

 

「五月蝿いぞ川内、早く部屋に戻って寝ろ」

 

「えー?まだフタマルマルマルだよ?夜はまだこれからなのにぃ!」

 

 少しばかりは気晴らしになる、仕事を手伝わせる気は無いが彼女の明るさと五月蝿さは眠け覚ましに丁度良い。

 連日の疲れが溜まっているので眠さにも耐性が無くなってきている、夕張の試薬も切れかかっているので川内眠け覚ましは助かっている。

 

「やーせーんー!やーせーんー!」

 

 とは言っても、五月蝿い事には変わり無いが

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「では…手筈は此方に」

 

 一人の男性が二人の男性に書類を提出した。それを受け取った男性の一人が目を通し、満足そうな笑みを浮かべてグラスに注がれたジンジャーエールを飲み干した。その男の横に立っている感娘の一人がグラスに新たなジンジャーエールを継ぎ足す。

 

 シュワシュワと気持ちの良い音が鳴り、それが鳴り止む前に再びジンジャーエールを口に含む。

 

「かぁー!やっぱ最高だぜ!仕事終わりの一杯はよぉ!」

 

「貴様、雪平が失敗した今計画は今一度見直す必要があるというのに…その能天気さはどうにかならぬのか?」

 

 ギロリと歳を重ねた歴戦の戦士の雰囲気を見に纏う老人が若者を睨みつけた、そんな老人の視線もケラケラと笑い流して若者は書類をしまう。

 

「とは言っても俺には関係ねぇし、あいつと…佐世保と呉のヤローを殺せるならそれで良いんだよ」

 

「ふん、まぁ儂も横須賀の奴には借りがあるのでな…今回ばかりは見逃してやる」

 

「爺さん硬いぜ?気楽に行こうぜ気楽によぉ」

 

 若者はジンジャーエールを飲んでダーツの矢を取り、投げる。刺さった先は佐世保の提督と呉の提督の顔写真だ。

 

「あいつらは俺の親友を殺した、それだけで殺す理由は充分だ…爺さん、頼りにしてるぜ?行くぜポーラ」

 

「は〜い」

 

 若者はそう言って彼の感娘と部屋を出て行った。部屋に残った老人は溜息を吐いて呟く。

 

「知らぬが仏…無知は罪、貴様の親友が黒に手を染めている事を知っていたら…貴様はそれ程殺意を抱いていたのだろうか?………まぁ儂には関係は無いがな」




睦月ちゃんは長女だからね、仕方ないね。
口調?うちの睦月はアニメ睦月とプラゲ睦月が合わさった究極の睦月だから…

こっから第二部に入ります


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第34話

お待たせしました。艦隊これくしょんブラック提督の奮闘第二部、大規模作戦…始まります。
今回は様々な「黒」が現れてきます。海域攻略の間に起こる様々な障害…陰謀…第一部では私欲に走った一人の男性が立ち塞がりましたが、今回はまた違った「黒」が立ち塞がります…ですがこの「黒」は一味違った「黒」
貴方はこれを黒と見るか、または白と見るか…そんな第二部の新たな「黒」



どうか最後まで、お付き合い下さい………


 深海凄艦にも基地はある。彼女達…と言って良いかは分からないが、兎に角彼女達にも活動するための基地はある。そしてその基地を中心に彼女達は制海権を確保していくのだ。

 

 制海権を奪った後には当然そこに小さな基地が生まれる、その基地を大きくして行き、そこからまた新たに制海権を確保して行く。

 

 此方の感娘、艦娘を投入して深海凄艦が基地を大きくしていく最中を妨害し、まだ小さな基地を奪って深海凄艦を殲滅し、制海権を確保するのが人類が取れる主な戦法の一つだ。

 

 強大すぎる深海凄艦に対しては焦ってはいけないのだ、数が、規模が、強さが、違いすぎる。深海凄艦から見れば人類など取るに足らない存在。深海凄艦が危険視しているのは感娘、艦娘だけだ。

 

 だが深海凄艦に持ってないものは人類はある。それは閃き、観察力、知能、力を貸してくれる存在…物によっては彼女達も持っているかもしれないが、人類程に優れてはいない。そういった所で人類は有利になっている、それを最大限に活用する事で、人類は強大な深海凄艦に対しては少しずつだが戦力を削る事が可能なのを証明してみせた。

 一歩一歩、緩やかだが確かな一歩。その積み重ねがほぼ奪われ尽くしていた制海権を少しずつであるが取り戻す事ができている。

 

 そして深海凄艦から奪い返した基地を利用して、深海凄艦との戦いに役立つようになる。奪い返した基地に感娘や艦娘を配置し、新たな拠点を作る事ができる。

 

 そうする事でこれまで鎮守府から遠くとてもじゃないが攻略できそうになかった海域にも手が出せるようになるのだ。

 

 そういった基地は全て元々の深海凄艦の基地から派生した小さな基地だ、奪い返してきた基地がある程度増えてきたら、その大きな基地を攻め落とす戦力が揃ってきたら、大本営は決まってある命令を下す。

 

 大規模制海権奪取作戦…大規模作戦を……

 

 

 

 

 艦隊これくしょん〜ブラック提督(笑)の奮闘

 

 

 

 ーー第二部ーー

 

 

 ーー大規模作戦ーー

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 あの事件から数日後…執務室で作業していた提督の元にある伝令が届けられた、それは大規模作戦へ向けての詳しい詳細、そしてその日程を。

 

「とうとう来たか」

 

 提督は無意識のうちに左手を握りしめていた、大規模作戦ーーそれをどれ程待ち望んでいたかーー

 元々提督は深海凄艦から奪われた全てを取り戻す為に提督になった。奴らが現れたあの日からずっと…

 大規模作戦が行われる度に提督は笑う、普段の感娘達の成長を見守る笑みでは無く、獰猛で狂気を含んだ笑みを

 

 提督の目の光が失われる。

 この作戦の詳細を知らされてから、まだかまだかと待っていた。

 あの事件のせいで手を止めてしまった。深海凄艦が奪って行った大きな基地を取り戻す機会を伸ばしてしまった。

 

 我慢、してきた。

 

 我慢していた。

 

 我慢しきれた。

 

 今、再びこの機会が巡ってきた。もう逃す気はない、ある筈もない。

 

「この瞬間だ…」

 

 ぞくり、と背中に何かが走るのを感じる。

 ぶるり、と全身が喜びに震えるのを感じる。

 クフッ、と笑いと共に感情が溢れ出るのが感じる。

 全てはこの日この瞬間の為に。

 

 ああ、自分の感娘達はこの時の為に訓練してきたのだ、憎き深海凄艦から海を、奪われたモノを取り戻す為に。

 

「首を洗って待ってろ」

 

 一言そう言って提督は自分の感娘達に招集をかける。

 決戦の日は近い

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 突如提督から招集命令を受けた感娘達、彼女達は広場に出て各々暇を潰している…と言っても姉妹艦や仲の良い感娘と話すだけだが。

 

 その中でも特に仲良しだと自他共に認められている吹雪、夕立、睦月の三人はそわそわしている朝潮と春雨を見て微笑ましい気分に浸っていた。

 

「やっぱり朝潮ちゃん可愛いね」

 

 グフフ、と女の子がしてはいけない笑い方をする吹雪に顔を青くして引く夕立、そんな二人を見て睦月はふふふ、と笑っていた。

 

「と、とりあえず提督さんが何で呼び出したのか予想してみるっぽい?」

 

「えっ?うーむ……」

 

 夕立から話を振られたので考えてみる事にした睦月、提督は性格上無駄な事はしないので、理由があるのは分かる。だがその理由がどう考えても分からない

 

 候補は幾つかある、というのも説教の類だが…この間瑞雲片手に走り回る日向や、由緒あるポーズを真似した駆逐艦がとある雷巡に怒られていた事や、夕張と明石が人体に影響は無い服のみが破れる兵器を作り暴れた事とか…

 

「くだらない事ばっかりしてるっぽい」

 

 訓練の合間にそういった事件が起きる程に鎮守府の面子は余裕があるのだが…

 

「でも春雨ちゃんはそんな余裕無いだろうけどねぇ」

 

「にゃー、確かに息抜きはさせた方が良いよ」

 

 最近鎮守府に入ったばかりの彼女には少しばかりガス抜きが必要なのだが…その役を買って出た睦月は何をしたのだろうか?より訓練に精を出すようになってしまって提督に褒められるようになってしまったではないか。

 

 そんな二人の視線を受けて気まずそうに顔を逸らす、睦月は提督に褒められ隊や構って欲しい隊等のメンバーから若干恨まれていた。

 

 そんな気まずい空気の中、睦月がハッとして直立不動の姿勢を取った。それを見た夕立と吹雪もまた、正面に向き直り直立不動の姿勢を取る。

 

 

 提督が来たのだ。

 

 それまで雑談していた他の感娘の面々も、同じ姿勢を取り提督の言葉を待つ。秘書艦がいれば提督の傍らには誰かしらが常にいるのだが…生憎彼は秘書艦は付けていない。

 

 そんな様子を見る度に提督の秘書艦になり隊の胸の中にはある野望が生まれる…

 

 

 閑話休題

 

 

「この度は招集に応じてくれてありがとう、今回招集した理由は一つ…大規模作戦の日程が決まった」

 

 その言葉に全員の表情が更に引き締まる。鎮守府に来て日が浅い春雨、まだまだ未熟な朝潮もだ。

 大規模作戦の事は知らせれていた…そしてそれが延期されていた事も知らされていた。

 今、それが明かされるのだ…ゴクリと誰かが固唾を呑むのを吹雪は聞く。

 

 勿論自分も同じ心境だ、今までも大規模作戦は生半可な戦いではなかった、今回もまた同じだろう事も予想できる。

 

 やがて提督は口を開き………

 

「今日から一週間後だ、その日に攻略が開始される。それまでの準備段階を説明する、先ずは今まで通り自分達の鎮守府が奪還した基地を一時的な拠点とし、周囲の深海凄艦を殲滅して海域を安定させる」

 

「次にこの鎮守府から駆逐艦をベースとした資材運搬の為の編成をし、一週間までに資材の80%を運ぶ、勿論この鎮守府を防衛する為の戦力は残す」

 

「今日の訓練は中断だ、各々は補給や間宮アイスを食べ英気を養うように、明日から開始する…以上!」

 

 

 提督から告げられた作戦。それらが伝え終わられると同時に全ての感娘は敬礼する。

 

「「「「了解!!!」」」」

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 一人の青年が伝令を見た、この青年もまた提督業を務める者。

 

「ん…」

 

 その海域の調査には自分も貢献していた、だからこそ今回の作戦の難しさが分かる。

 

「まぁ…厳しいよなぁ」

 

 面倒だと思いつつもこれが自分の仕事だ…そう思っていた。

 そしたら、奴が現れた

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤア」

 

「え?」

 

 

 この日、一つの鎮守府が崩壊した

 

 

 

 

 

 

 大規模作戦まで残り…7日




時間があれば、当然予想外な出来事が起こるのは必然なのです


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第35話

まだ……見てくれる人はいるのだろうか?
皆様お待たせしました……はい。


 一つだけ、たった一つだけ残っていたものがある。それは数少ない自分の楽しみの一つであり至福の時間を生み出すモノ。

 それは、プリン……プリンだ。それもただのプリンではない、とある有名店の特性プリンだ。休日はおろか平日でも開店と同時に人が押し寄せ、並ばなければ手に入る事は無いレベルの人気の品。

 

 1口食べれば舌に濃厚な旨みが伝わり、とろり……と、歯を使わずとも形が崩れる程の柔らかさ。文字通りの至高の一品。これを食べた人はその美味さに取り憑かれたかのように買い求める程に、時には買い占める人がいたりする程の人気だ。(危ない材料は一切使っておりませんので安心してお買い求め下さい)

 

 勿論我らが提督もその美味さの虜になった一人……という訳ではなく、この提督は単純に甘い物があればそれでいいやという思考でプリンを二個買った。結果ハマった。

 

 だからこそ数少ない自分へのご褒美として超絶美味いプリンを食べていたのだ、そして今日英気を養う為にもと思いプリンを食べようかと思ってたのだが……

 

 そのプリンは無くなっていた、消えていた、お亡くなりになられました。

 

「……………………………ふぅ」

 

 溜息をついて、椅子に座る。執務室には自分以外に誰もいない、そして自分以外基本的に報告に来る感娘以外はやって来ることは無い。(何人かの例外は除く)

 だが提督は自分の部下はそんな事はしない……と考えている。ならどうして無くなっているんだ?そう考えた所で二度溜息をついた。

 

「……………………………はぁ」

 

 二度目の溜息をついたところで、自分の気持ちが沈んで行くのが手に取るように分かった。

 さっきまで自分の心は柄にもなく浮ついていたにも関わらずに、だ。

 思ったよりもメンタル弱いな……そんな言葉が頭を過ぎった。くよくよしても仕方ない、また新しく買い直せばいいか。そう気持ちを切り替えて執務をしようと……そう考えたのだが

 

「あっ」

 

 ペンを手に取ろうとしたら、机の上に置いておいたカップを落としてしまった。幸い中身は空だったので書類に液体が零れる事態にはならなかったが……それを見たらまた気持ちが沈んでしまった。

 

 何をやっているんだ俺は……そんな事を思ってしまうくらいには、この男は凹んでいた。

 

 

  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 ダン!ダン!ダン!と砲撃をする時に響く音が耳に届く。

 砲撃をする度に感じる反動が、また心地いい。砲撃は良い物だ。

 目標物である海上の的に着弾すると、爆発と共に黒煙が上がり、それが晴れたら見えるのは粉々に砕けた的の残骸。

 それを見る度に私は思う、ああ……何て気持ちが良いんだろうかと。

 

 一発一発撃つ度に、一発一発当てる度に、全身が歓喜に震えるのが手に取るように分かる。

 嗚呼、欲を言えばこれが昼ではなく夜ならばと……彼女はそう思わずにはいられなかった。

 砲撃は良い、だが夜はもっといい。敵と私が戦闘する(殺し合う)のにこれほどうってつけの時間は無いからだ。

 

 夜になる度に思う。夜になる度に身体が疼く。夜になる度に走り出したくてたまらなくなる。私が……私という存在が輝く時間だ。

 

 とは言っても昼が嫌いな訳じゃない、私が輝くのに一番適している時間が夜なだけ、それだけなんだ。

 でも……やっぱり夜がいいな。

 

 

 

 的を全て落としてから、彼女は一息つく、日本に伝わる忍をイメージさせるような風貌の彼女は艤装のチェックを軽く済ませてから、魚雷を手に取った。

 軽く身を震わせてから、自分が向いていた方向と逆の方を向く。そしてそこにはある感娘がいた。

 その感娘は真剣な眼差しをこちらに向けてくる。それだけで彼女がこの訓練にどういう気持ちを持って挑んでくるのかが分かった。

 

 それだけで、自分の感情が昂るのを感じた。

 

 

 

 

 ーいいよ、凄く……良いー

 

 

 

「さあて、時間になったし始めちゃおうか?」

 

 早く戦いたい……もっともっと強くなるために……!

 その強い思いを胸に抱き、彼女は抜錨した。

 

 

 

  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「あっ」

 

 たまたまそれが目に入った。本当に偶然なのだけれど……それを見てしまった。大井が何やら執務室の前をうろうろとしていたのを見た。そして手には何らかの食べ物……いや、あれはプリン?そして大井は深呼吸してから扉をノックして、執務室の中に入った。

 

 この事は私の胸にしまっておこう。そう考えてその場を立ち去ろうとしたら……

 

 

「なんですか抜け駆けですかあざといですねぇ流石は大井さんデレデレなんですよ分かりますか?それがどれだけ罪深いのかをそれにそんな分かりやすい好意に気が付かないのは提督ぐらいですからねぇ助かってますねぇ大井さん色々と本当にああそれにしても本当にあざといですねぇ鎮守府中にその痴態を拡散してやりましょうか普段大井さんが部屋でヤってる行為を青葉が知らないとでも思ってるんですか?青葉の情報力は世界一ィィィィですからねぇ」

 

 何かハイライトを消した青葉がいた。

 

 

 ーそっとしておこう。ー

 

 鎮守府の感娘の中では珍しく病んでいない彼女は……暁は顔を青くして、目尻に涙を浮かべながら立ち去った。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 若干落ち込んでいたところにコンコンと扉を叩く音がした。青葉に頼んでおいた先日の報告書か?そんな事を考えながら提督は執務を中断して扉を叩いた主を招き入れる。

 

 

「入れ」

「失礼します提督」

 

 驚いた事に入って来たのは大井だった、それも手元にはプリンを二つ持って。

 ふと、もしかしたらプリンを盗んだ犯人は彼女ではないかと考えたが、冷蔵庫に入っていたプリンは一つだけだったので、それは無いかと結論を出す。

 

「提督、あの夜戦バカと北上さんに近づく不届き者が訓練していたのだけれど……」

「ん?あぁ……訓練は中断と指示したんだが……まぁ後で二人共お仕置き部屋に連れて行くか。他に訓練している感娘は?」

「いなかったわ……ふん」

 

 お仕置き部屋に連れて行くと言ってから大井が急に不機嫌そうな表情をし始めた。一体何だ?と思っていたら彼女は不機嫌そうな表情を崩さずにプリンを机の上に一つ置いた。

 

 

「ところで提督、少しばかり話題になっているプリンを手に入れたので一緒にどうですか?」

「……北上と食べないのか?俺よりも北上と食べた方がお前にとって……」

「北上さんとはもう食べましたので、それに提督も働きすぎてまた倒れられたら困りますので甘い物で少しは息抜きすれば良いでしょう!?」

「……そ、そうか」

 

 若干大井の勢いに押され気味な提督、困惑気味の彼はさっきまで落ち込んでいたのもあり、素直に大井の提案を受け入れていた。

 プリンに手を伸ばし、一緒に置いてあったスプーンをとり蓋を開ける。すると甘い香りが部屋に漂い、思わず笑顔になった。

 

「そ、そうよ。普段からそう素直になれば良いんですよ」

「お前に言われたくはないな」

「ち、ちょっと!?どういう意味よ!私は何時も素直よ!」

「それより、お前は食べないのか?」

「あーもう!食べますよ!食べれば良いんでしょう!?」

「な、何をそんなに怒っている?」

「うっさいわよ!」

 

 口では文句を言いつつも、一口プリンを食べたら途端に笑顔になってもう一口食べる辺り、こいつも現金な奴だな、と、提督は思った。

 

 




遅れて申し訳ないです。はい
最新話投稿と同時にタグを増やすスタイル。


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第36話

現在作者の作業用BGMはFEifのラスボス全ての路の果てにです。三種類あるけれど全部好きだから交互に聞いているよん。
興味あれば聞いてみてくださいな。

え?艦これbgmはどうしたって?何か艦これbgmと聞くと夜戦bgmが脳内再生されるの……されない?


 

「えーっと……」

 

 訓練は無し、大規模作戦に向けて英気を養えと提督は命令したが、ふと休みを与えられたら何をしたらいいのか分からない事に気が付いた。

 まぁ当然だろう、彼女は……春雨はこの鎮守府に来るまでは監禁生活を送っていたからだ。言い換えれば何もしていなかったと言うべきか……まぁとにかく、彼女はこの鎮守府に来てから初めてマトモな生活を送っているのだ。

 

 そんな彼女は厳しい訓練でもやり甲斐があるし訓練を行う事で自分の実力がメキメキと付いていくのが分かっていた、なので訓練をしないで休むという事に違和感を感じる程に訓練付けの生活を送っていたのだ。

 

 先程鈴谷と金剛が阿武隈と川内の首根っこを掴んで何処かへと連れていったのを見かけた。……その際に春雨は脳内に謎の音楽が流れていたのだが……

 

 

 ードナドナって何なんです……?ー

 

 

 閑話休題。

 

 そんなこんなでやる事が無くなってしまった春雨は、適当に鎮守府内をぶらついていた。

 いっその事鎮守府内にあるプールで泳ごうか……そんな事を考えて水着を持っていない事に気が付いた。

 その事に気が付いた春雨は思わず笑ってしまった、自分は本当に何も持っていないんだな……と、考えて気持ちが沈んでしまう。

 

「なーに落ち込んでいるのよ!」

「ひゃう!?」

 

 急に抱き着かれて思わず声を上げてしまう、その反応が面白かったのか抱き着いてきた人物……瑞鶴は、春雨のほっぺたを人差し指でぷにぷにと突っついた。

 勿論それだけでは終わらず、瑞鶴はほっぺたをむにむにと摘みだし、柔らかさを堪能していた。

 

 

「にゃ、にゃめてくらさいぃ……」

「こ、このほっぺの感触は……癖になりそう!」

「く、くしぇってなんれすかぁ……」

「まぁまぁ、ところで春雨は何してたの?」

「な、何って……さ、散歩?」

「なんで疑問形なの……?ねぇ、もし暇ならちょっと瑞鶴に付き合わない?」

「つ、付き合っ……!?」

 

 付き合う。その四文字を聞いた瞬間、春雨の脳内に電流走る……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だ、駄目です瑞鶴さん……私達、女同士なんですよ?』

『関係無いよ、瑞鶴は春雨の事が好きだから……皆も祝福してくれるよ』

『だ、駄目です……あ、あぁぁぁぁぁ』

『ふふ、春雨……可愛い♪』

『ふわぁぁぁぁぁ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんて事に……!」

「ちょっと何考えてるのか瑞鶴には分からないなぁ……いや本当何考えてるの!?瑞鶴にそんな気は無いからね!?」

 

 春雨がとんでもない妄想をしていたので、急いで否定する瑞鶴だが……その慌てようと必死さに益々春雨は確信してしまった。この女、百合だと。

 

「嘘です!瑞鶴さんは翔鶴さんloveだって!聞きました!それにそんな大慌てで否定するなんて……!」

「この鎮守府に翔鶴姉いないから!!それに誰でもそんな疑いを持たれたら否定するでしょ!?」

「いやぁぁ!!襲われるぅぅ!!!」

「アンタいい加減にしなさいよ!?」

 

 この後むちゃくちゃ説得した。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「か、買い物ですか?」

「やっと本題に入れたわ……そうよ、春雨はまだこの鎮守府に来て間もないから、街で色々と買い物をするのも良いかと思ったのよ」

 

 確かに悪くないと春雨は思った、さっきも水着が無いからプールで泳ごうにも泳げないし、感娘になってから街を歩いたことも無い……ここへ来てから初めてだらけ、それに仲間と一緒に買い物をするというのも初めてだ。

 

 心を許せる仲間といられる、仲間と一緒に色々な事をする……それは、まだ自分が艦娘だった頃に持っていた儚い夢、叶うことのない泡沫の夢。

 そんな夢が叶う……それだけでも春雨は涙が出そうな位嬉しかった。

 

「……はい、私……街に行きたいです」

 

 

 そんな春雨の心情を悟ったのか、瑞鶴は満面の笑みで春雨に言葉を投げかけながら手を伸ばした。春雨はその手を笑いながら手に取り、瑞鶴の言葉に返事をする。

 

「よし!じゃあ今日は楽しんじゃおう!」

「はい!楽しんじゃいます!」

 

 手を繋ぎながら、笑いながら、彼女達は歩いていく。

 そんな彼女達は仲間であり、友人であり、そして……姉妹のようだった。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「来たか、阿武隈、川内……ご苦労だったな金剛、鈴谷」

「ま、鈴谷にかかればこんなもんでしょ、そ・れ・よ・り、後でご褒美頂戴ね♪」

「HEY提督ぅ!私もご褒美が欲しいネ!」

「あぁ、間宮パフェ引換券を……」

「「違ーーう!!!」」

 

 ご褒美に間宮パフェ引換券を渡そうとしたら、二人揃って否定してきた、といっても他にご褒美なんて考えつかない、それに他の感娘は引換券で納得しているのだが……そんな事を考えていたら、阿武隈がバタリと糸の切れた人形の如く床に倒れた。

 よく見たら川内も目に光がなく、ブツブツと何かを言っていた。普段の彼女を知っているだけに、この光景は異常に思う。

 

 そんな光景を見た提督は軽く引き、未だに不満気な表情をしている鈴谷と金剛に質問した。

 

「おい、何をやったら阿武隈がこんな状態になる?」

「え?何って……そりゃ言えないっしょ」

「提督ゥ、細かい事はNothingヨー?」

 

 あ、これ駄目な奴だなと提督は思った。そう思った提督は深く追求せずに死にかけの川内と阿武隈を見る。

 当初の目的は二人をお仕置き部屋に連れて行く事だが……こんな状態なら既にお仕置きになっているのでは?そう考えたのだが甘やかす訳にもいかないと思い、予定通りにお仕置き部屋に連れて行く事に決めた。

 

「さて……」

 

 お仕置き部屋で行うお仕置きはくじで決まる。これはどんな事をしても誰に対しても平等に罰を与えるというコンセプトを元に明石が寄越したものだ。因みに中身は提督も知らない。

 

 まぁ今までお仕置き部屋に連れていった感娘は口を揃えて以後気を付けることを約束しているので、効果はあるのだろうと思っている。正直自分のやる事が多すぎて罰を与えることに対しては気が回ってないのかもしれない。何故なら……

 

「………じゃあ川内は三日間夜戦禁止、阿武隈は一日提督禁止……?なんだこれ……まぁ良いかこれで」

「なんで私のお仕置きがピンポイントで夜戦禁止なのさ!?絶対仕組んでるでしょこれぇ!!!」

「提督、禁止……?あ、はは……阿武隈に死ねって?そう言うことなの……?」

 

 提督禁止が罰になるかは分からないがくじの決定は絶対だ。それにしても今回はお仕置きの内容的に、部屋は夜寝る時位にしか使わないな……と、提督は心の隅でそう思った。

 

 余談だが、阿武隈のお仕置き内容を聞いて金剛と鈴谷は顔を真っ青にして執務室を後にしたという。さり気なく間宮パフェ引換券を手に持ちながら……だが。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 大規模作戦の日程が決定した日、横須賀の提督はガリガ〇君を食べつつのんびりと執務をこなしていた、秘書艦の蒼龍も同じようにアイスを食べつつ執務をこなす、ゆるゆるな空気のままのんびりと過ごしていたのだが……それはある一人の感娘……大淀による報告を受けてから一変した。

 

 横須賀の提督は驚愕し、蒼龍も目を見開き驚く、何故ならその報告は……

 

「壊滅した?鎮守府が?」

「はい、入電通りなら……」

「………大規模作戦まで七日しかないのに……!」

 

 一鎮守府の壊滅、それも大規模作戦前のこの状況でだ……これを知った横須賀の提督は、舌打ちをしながら即座に指示を出す。

 

「大至急その壊滅した鎮守府に艦隊を向かわせるからね、第一艦隊と第二艦隊は急いで準備するように伝える!後大淀は呉の提督にこの事を伝えて!」

「了解!」

 

 鎮守府を壊滅させるほどの何かがいる……この事を伝えるべく大淀は急いで通信室へと走っていった。

 

「蒼龍!第一艦隊の旗艦は任せるからね!」

「了解です!」

 

 蒼龍もまた敬礼と共に執務室を後にした。

 横須賀の提督は急ぎ鎮守府内に緊急放送を送る、内容は勿論……

 

『総員に告ぐ!大規模作戦七日前の本日、○○鎮守府が壊滅!第一艦隊、第二艦隊は至急出撃準備をする事!これより我々は○○鎮守府の救援任務を遂行する!付近に深海棲艦の姿は見えないとの報告だが万が一の事もある!第一艦隊、第二艦隊は救援活動中も警戒を怠るな!』

 

 放送を終え、横須賀の提督は壁にかけている軍服を慣れた手つきで着服し、帽子を被る。

 

「災難……本当に……!」

 

 連日続けて事件が起こる、本当に最近は運がないなと横須賀の提督は改めて思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大規模作戦まで残り六日と9時間。




ドナドナドーナードナドーナー
ドナドナドーナードナドーナー


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第37話

第一部の主人公的ポジションは朝潮が
第二部の主人公的ポジションは春雨が

この鎮守府に主人公は駆逐艦しかいないのか……?つまり駆逐艦は宇宙の意思だった?(錯乱)


「それは、確かな情報なんだな?」

「はい、つい先程の入電によれば……ですが」

 

 川内達と一悶着起こした後大淀が緊急の報告があると言ってきた。その内容はとある鎮守府が壊滅し、調査の為に横須賀の提督が艦隊を派遣したとのこと。

 

 ついこの間大佐と揉め事を起こした後だというのにこの状況……最近は本当に間が悪いなと思わずにはいられなかった。

 ふと、鎮守府壊滅という報告を聞いてあのレ級のフラグシップの事を思い出す、先日奴を撃退したのにも関わらず奴のことを思い出してしまった。

 

 ーまさかな……考えすぎだろう……ー

 

 だが、一度考えてしまってはどうしても思考がそれについて考えてしまう。レ級のフラグシップ……一つの鎮守府を壊滅させるほどの何かを持つのは現状自分が知りうる深海棲艦の中でもそいつしかいないのだ……だからこそ考えてしまう。

 もしも奴が戻ってきたとしたら、そんな可能性を。

 

 故に提督は考える、自分も艦隊を向かわせるべきか。

 今回の案件は既に大規模作戦に少なからず影響を与える物だ、鎮守府壊滅という事態は誰も予想していない事態だろうから、これだけで狂いが出る。

 

 そして、壊滅した鎮守府へ艦隊を派遣した後のメリット、デメリットも考える。

 

 

 

 メリットは生存者がいれば生存者を保護し命を救う事ができるということ……その生存者から情報を貰う事ができ、鎮守府を壊滅させた存在の正体を知る事ができるかもしれないという事。

 

 デメリットは……これらのメリットが生存者がいる前提で(・・・・・・・・・)発生している(・・・・・・)という事だろう。また、現在はこれらのメリットが発生しているという可能性しか存在しないというのも大きな要因だ。

 今はまだメリットが発生しているが現地に赴き生存者がいない事が判明した時点で、この出撃がデメリットしか残らない……言い方は悪いが無駄足となる。

 

 そしてデメリットは、鎮守府を壊滅させた存在と鉢合わせる可能性と、出撃による資材の減少、道中の深海棲艦と戦闘し損傷する可能性がある事、そして……万が一生存者がいなかった場合の自分の感娘が受ける精神的なダメージ……ぱっと思いつく限りでこれだけのデメリットが存在する。

 

 しかも、じっくりと考えれば考える程にデメリットが大きく目立ってしまう。幸い横須賀の提督が既に艦隊を派遣している、彼女に任せるのも選択肢の一つだろうが……その場合は自分が考えているデメリットを彼女一人が負担してしまう事になる。

 

 自分には10強という規格外の存在がいるが、彼女にはそんな存在はいない、たしかに彼女の感娘は歴戦の強者達だが……それでも自分の規格外の彼女達に比べたら……

 

「提督、何故指示を出さないんです?私達も艦隊を派遣し、横須賀の提督の援護をするべきでは?」

 

 思考していると、大淀が何処か怒りを含んだような声色で意見してきた。

 大淀の言うことも分かる、自分と横須賀の提督が力を合わせればデメリットの一つである未知との遭遇にも対処できるだろう、ついこの間レ級とも共闘した実績もあるし、連携についても問題は無い……。

 

 それでも、自分は自分の部下が可愛い物なんだ……確かに恩もあるし横須賀の提督も個人的には好きだ……だがデメリットの事を考えてしまうとどうしても踏ん切りがつかない、それにデメリットはこれだけじゃない。

 

 最大のデメリットは、艦隊運用による資材の消費……現在自分の鎮守府は、レ級の撃退作戦と大佐との戦闘によって資材が心許ない状態になっている。この状況で更に資材を消費させる訳にはいかなかった。

 だからこそ……今回は艦隊を動かすわけにはいかなかった(・・・・・・・・・・・・・・・・)

「……我が鎮守府からは感娘を援軍には向かわせない、そう横須賀の提督に伝えておけ」

「ッ……!何故、です……!」

「メリットとデメリットを吟味した結果……と言っておこうか」

「見捨てるのですか!?横須賀の提督も、壊滅した鎮守府の人達も!!」

「……ああ」

 

 それを言ったら、大淀は全身をわなわなと震わせて提督を睨みつけてから一礼、その後に執務室の扉を乱暴に開け飛び出していった。

 

「…………」

 

 提督はそれを見送り、白紙に文字を書いてそれを机に置いてから、自分も執務室を後にする。確かに今回の件はデメリットが大きいし、自分の感娘をそんなデメリットに付き合わせる事はない。

 

 部下を巻き込む訳にはいかない……そう考え自分も執務室を出る。

 

「まったく、司令官はいつもそうですね」

「お前……」

 

 執務室から出た所にいたのは、自分が最も信頼している彼女だった。

 

「大方部下を巻き込む訳にはいかないーとか、私達が苦労するーとか考えてるんですよね?」

「……この間の大佐の件でうちの資材も心許ない、これ以上無駄に資材を消費する訳にはいかない」

「だから、自分一人が出向くんですか?自分一人なら燃料だけの消費で済むから」

「……」

「沈黙は肯定と受け取りますよ?」

 

 仕方が無い、今回の案件はそういう事なのだから。

 明日からは資材の確保の為の出撃、遠征になる……その為の戦力の消費は許されない。

 だからこそ今回は自分一人で向かうつもりだった、勿論死ぬ気はないが。

 

 

「司令官はたまに馬鹿になりますよね、そんなので私達(貴方の感娘)が納得すると思ってるんですか?」

「なら……どうするんだ?この鎮守府の資材の状況はお前も知っているだろう?」

「はい、私も正直今回の件については……正直厳しいと思います、救援活動に成功した後の感娘の救援にも、資材……特に燃料や弾薬は使いますからね、万が一のためにも」

 

 そう、自分達だけが燃料を使う訳じゃない……救援できたら、その感娘達の道中の深海棲艦と戦うための弾薬や海上を移動するための燃料も必要になってくる、その燃料は、弾薬は何処から持ってくる?

 

 答えは当然、救援に向かう鎮守府の感娘だ、恐らく横須賀の提督も第二艦隊には燃料や弾薬を積んだ駆逐艦が主体の補給用の編成にしているはず。

 横須賀の提督は資材に余裕があるとこの間の演習でそれとなく聞いているが……うちの鎮守府は違う、大佐の件やレ級の件で資材を著しく消費している、もうこれ以上資材を減らす訳にはいかないのだ。

 

「なら分かっているな?今回出撃するのは俺だけだ……下手したら足でまといになるかもしれんが、人手は1人でも多い方が良い、だがこちらの鎮守府の資材の消費は最低限のみが必要条件……これは作戦だ、救援活動という名の……俺の中ではもう大規模作戦は始まっている」

 

 提督の言葉を静かに彼女は聞いていた、ずっと提督を見てきた彼女は提督がそう言うのを半ば確信していた……だからこそ彼女は提督を一人では行かしたくなかった。

 

「……もしもの時は……横須賀の感娘達が戦闘をするような事態になったら、司令官は逃げられるんですか?」

 

 彼女の問いかけには、答えない……答えられない。

 

「やっぱり司令官は相変わらず、です。……私も行きます、司令官を無事に帰らせる事ができるのは時雨ちゃんより私が適任ですよね?司令官はまだ死ぬ訳にはいきませんから」

「……個人的には反対だが……お前の言うことも正しい、俺一人では万が一の事態に対処できる可能性は少ないが、お前がいてくれたら俺は、俺達は誰一人欠けることなく帰れるだろう」

「じゃあ、雪風も連れて行ってくれますよね?しれぇ」

 

 ふと、声が聞こえた。

 提督達に声をかけたのは雪風、何処から聞いていたのかは分からないが……彼女はにこにこと笑いながら提督達に提案してきた。

 

「雪風、気持ちは嬉しいが……」

 

 自分と対話していた彼女だけの出撃資材も苦しい、そこに駆逐艦とはいえ雪風も連れて行くとなると……そう考えていたら、雪風がドラム缶を持っていた事に気が付いた。

 

「おい、なんだそれは?」

「これですか?この前出撃していたら拾っちゃいました!」

「ほ、報告は……」

「忘れてました!」

 

 ー何だそれは……?ー

 

 開いた口が塞がらない、そんな状態になったのは久しぶりだ……ドラム缶を確認すると、丁度駆逐艦二隻分の資材が入っている事に気が付く。

 これこそ幸運の力か……まるで昔話のご都合主義みたいな展開だと提督思った。

 

 これで資材の心配は解消された。後は二人を連れて海域に向かうだけ。

 

「大丈夫です!雪風がいる限りしれぇには傷一つ付けさせません!」

「私も頑張りますよ、雪風ちゃんだけに負担はかけたくありませんから……ね」

「……ああ、助かる……二人共」

 

 自分は本当に良い部下に恵まれた……そんな心情を胸に抱きつつ、二人の部下に感謝を送る。

 その言葉に二人は笑顔で応え、提督の手を握った。

 

「お前達二人には苦労をかけるな、最初の頃から……」

「そう思うなら、偶には自分を大事にしてくださいね?」

「しれぇも偶には遊びましょうよ!最初の頃にやった大富豪は楽しかったです!」

「おいおい、それはお前の一人勝ちになるだろうに」

「そんな事無いですよ!しれぇの戦略には雪風の幸運も流石に敵わないです!」

「大富豪って運も戦略も必要だからね、あ、その時は私も誘って下さいね?司令官」

「……考えておくよ」

 

 こうして、三人は誰にもバレないようにこっそりと海へ出る。

 

 

 

 

 

 

 これは、大規模作戦まで六日と八時間位の出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、普段からお前達は道具だーって言ってる人が随分と部下思いになりましたね?司令官?」

「道具には使い所って物がある、今回はそういうタイミングじゃない……それを分かっているだろ?」

「それはそうですけど、偶には労ってくれても良いんじゃないですかー?」

「……これが無事に終わったら、お前達に間宮の甘味を奢ってやる」

「本当ですか!ありがとうございますしれぇ!」

(今月の俺の給金……トホホ……)




大富豪は基本的に四人でやるゲーム
雪風は提督が一番最初に開発した感娘です。つまりあとの二人は……
今回の案件は結構賛否両論あると思いますが……まぁ深く考えない方が良いかもしれない……?

そして前書きで書いた主人公ポジションの子が空気になるという現象、大規模作戦の時は活躍するから……(震え声)

最後に一言、雪風は本当に資材を拾ったのでしょうかねぇ……?ドラム缶の中に資材が入ってただけ、報告は忘れていた。つまりこれらが意味することは……?クフフ(暗黒微笑)


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第38話

ハンカチを持つ事をお勧めします。


 何故だろうか、何かが可笑しい。思考ができるのにできない、自分で物を考えられるのに考えられない。矛盾しているけど実際にそうなっているのだなら仕方が無い。

 体を動かそうとしても体が動かない、意識はハッキリしているのに何も出来ない。

 

 なんで?

 

 右腕を上げようとしてもピクリとも動かない、動かせない。腕が上がらないなら足を動かそうとするけど一緒だ、足も動かない。

 

 なんで?

 

 まるで金縛りにあったようだ……いや、実際に金縛りにあった事は無いがもし金縛りにあったとしたらこんな感覚なのだろうか?

 意識もハッキリしているのに、きちんと自分で考えられるのに、体が言う事を聞かない。俺の体じゃないみたいに動いてくれない。

 

 なんで?

 

 声を出す事もできない。簡単なあいうえおや、かきくけこといった言葉すらできない。

 腹に力を込めて思い切り叫び声を上げようとするけど、口すら動かない。

 

 怖い。

 

 何なんだこれは、初めての感覚だ。こんな事は知らない……一体俺はどうすればいいんだ?そもそもどうしてこんな状況になっているんだ?

 

 理解ができない、こんな状況になる前後の記憶が欠けている。いや、冷静になるんだ。落ち着け……

 

 

 

 

 

 そうでないと、この恐怖に押し潰されそうになる。

 

 

 

 

 

 順番に思い出していこう……俺は鎮守府の提督をしていた、といっても着任したての小さな鎮守府だけれども、初期秘書艦は五月雨、右も左も分からない俺に色々な事を教えてくれた明るく可愛らしい少女、ちょっとおっちょこちょいな所もまた愛嬌があって、そんな彼女に良く癒されていた。

 

 鎮守府で生活するうちに仲間も増えていった、五月雨の姉妹艦も加わって彼女が喜んだのを覚えている。

 

 覚えて……いる。

 

 

 俺が鎮守府に着任してから暫くして、大規模作戦付近の比較的深海棲艦の守りが薄い海域の調査を任されていた、鎮守府に着任してから初めての大仕事に興奮して大淀にその時の気持ちを話したのを覚えている。

 

 おぼえて……いる。

 

 けど、何やら他の鎮守府が一悶着起こしたせいで、大規模作戦に少なからず影響が出た事を知った。何でもとある鎮守府の感娘を欲した提督が馬鹿な事をやらかしたと……そう聞いていた。

 

 それを聞いて俺は、面倒な事になっているなと……思って……それで……

 

 それで、どうなったんだっけ?

 

 あれ?俺は何をしていたんだ?

 

 駄目だ、ぷっつりと記憶が途切れている、そうだ、五月雨なら何か知っているかもしれない。

 

 おーい、五月雨ー、どこだー?返事してくれー。

 

 あ、そっか、声が出ないんだっけ?

 

 体も動かせないし、声も出せない……でも意識はハッキリしているんだ。

 あぁ……でも自由になれる所はあるな。それは耳だ、心地良い海水の音が聞こえるのが分かる。

 

 

 

 

 

 

「嫌ぁぁぁぁぁ!!!!!提督ぅぅぅぅ!!!!!」

 

 何だ?誰かが叫んでいる、うるさいなぁ……てかこの声は五月雨じゃないか。良かったそこにいたんだな。五月雨が傍にいるなら安心だ……さっきまでの恐怖も嘘のように消えた、やっぱりお前は最高だよ。

 

「嫌!嫌!目を開けて下さい!死なないで!提督!」

 

 おいおい、死なないでって何言ってんだよ五月雨。まぁ確かに色々と変な所はあるけどさ、それに死ぬ訳無いだろ?意識はハッキリしてるんだから。

 もし死ぬ寸前なら意識はハッキリしてる訳無いじゃないか。だから……

 

 そんな、声を出すなよ……俺もなきそうになっちゃうじゃないか。

 

「駄目、止めて!神様提督を連れて行かないで下さい!お願いします!お願いします!お願いします!」

 

 かみだのみなんて、さみだれらしいな……てかおれはなにやってんだよ、さみだれをなかすなんて、おとことしてさい、ていだ、な、そうだ、おれがわらえば、さみだれも、わらって、くれ、るよ………………な…………………

 

「あ、あぁ……だめ、いや、ていと……っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「初めまして、本日付けで当鎮守府に着任した雨音雫と申します……とまぁ堅苦しい挨拶はこの位にしてと、これから宜しくな五月雨!」

 

 初めて会ったときは明るい人だなと思いました。聞いた話によると民間からの募集で提督になったとの事で、軍の規則や鎮守府の運営もまだまだ分からない事だらけとの事でした。

 

「うーん、目上の人に対して……先輩とか先生に対する態度よりも気を付けないといけないんだよな……大淀、何か変な所があったら教えてくれよ?」

「私は提督の先生ではありませんよ?それにそう言うのは事前に研修で完璧にしたのでは?」

「そ、それはそうだけど……どうしても不安なんだよね」

「仕方無いですね……ふふっ」

「わ、笑うなよ!」

 

 

 提督は分からないことは素直に聞く人でした。提督が言うには俺は分からない事が多いから、勉強するんだって言っていました。

 

 

「なぁなぁ!聞いてくれよ!この間佐世保の天色陸斗って提督と一緒に飲みに行ったんだ!凄く良い人だったぜ!まぁ俺未成年だしまだ酒飲めないけど、そんな事気にしないで俺に良くしてくれたんだ!」

 

 楽しい事や嬉しい事があったらすぐに私や他の感娘に嬉しそうに話してくれました。その時の提督の表情はキラキラ輝いていて……私も一緒に喜んじゃう事もありました。

 

 

「今回の海域で保護したって?……白露?へぇ、姉さんなのか!良かったな五月雨!再会できてさ!そうだ!お祝いしようぜお祝い!金は大丈夫かって?これでも俺の給料って良いんだぜ?奢りだ奢り!」

 

 初めての姉妹艦との再会の時も、提督は自分の事のように喜んでくれて、私と白露姉さんを連れて美味しいご飯を食べさせてくれました。

 

 

「え?何時も失敗してごめんって?気にすんなよ!というか俺も失敗ばっかだしさ……あぁ……その、何ていうか……失敗は成功のもとって言うじゃん!俺も失敗をして勉強しているし、五月雨も勉強すればいいんだよ!失敗は繰り返さなきゃ失敗じゃない!初めての失敗は人生の勉強だ!俺はそう考えている!」

 

 私がドジをしちゃっても、提督は笑って許してくれて……本当に、良い人で……

 

 

 

「俺さ、好きなんだよ……この海が、お前達に俺の知っている海を見せたい、深海棲艦との戦争ばっかりじゃない綺麗な海。お前達に知って欲しいんだ、とても……言葉じゃ表現出来ないくらいに綺麗な海をさ、そう思ったら力が湧いてくるんだ、それが俺の夢……あーもう!恥ずかしい!今のナシ!忘れろ!」

「提督、流石に寒いよ……」

「白露ぅ!忘れろって言っただろぉ!?てか五月雨笑うなよ!」

「あははは!」

「白露も笑うんじゃねぇぇぇ!!!うがぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 良い人……で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 

 私の目の前には血塗れの提督が横たわっていた。

 たまたまだった。私と白露姉さんで街にお買い物に行っていたら、鎮守府の方から煙が出ている事に気が付いて……急いで鎮守府に向かったけど、そこにあったのは燃える建物と瓦礫の山。

 

 白露姉さんと私は一緒に行動して生き残っている人がいないか……提督は無事なのかを確かめた。

 そして、見つけた……四肢が千切れて、全身に酷い火傷を負った提督の姿を……変わり果てた提督の姿を。

 それを見た白露姉さんは気を失ってしまった、私も溢れてくる吐き気を抑えきれずに吐いてしまった。

 

 でも、それでも私は提督の元へ向かった。

 

 

 提督の側に来たら、私は提督に必死に呼びかけました。心臓の音も確かめました。神様にもお願いしました。でもどんどん心臓の音が小さくなっていきます。

 

 必死に叫びました、喉が張り裂けそうになるほどに痛みます、でも声を出すのを止めません、止めたら提督が遠い所に行ってしまう気がして……なのに

 

 どうして、私を置いていったんですか?

 

「ていとく………!」

 

 なみだが、とまらない。

 

「ていとくっ、ていとく!ていとく!やだ……やだ!やだやだ!やだやだやだぁ……いやぁ……あ、ぁぁ……!!」

 

 だって……わたし、あなたのことが……!!

 

「うわぁぁぁぁぁぁん!!!!!うぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 ずっと、すきだったのに…………





うん、五月雨、白露、ごめんな。


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第39話

今更ですけど、提督がモニターで見てる光景はアーケード艦これの奴をイメージした感じです。


 大海原を二人の感娘と一台の船が進む、船の大きさは人三人が乗り込める位の大きさで、速度も特別速いわけでもない船だ。

 またその船の左右をそれぞれの感娘が囲む形で目的の場所へと進む。

 

 提督は今回壊滅した鎮守府の場所、そしてそこにいる人物を知っていた、提督の名は天音雫。性別は男性だがその容姿は中性的な外見をしており、初見では女と思っていた程に幼い容姿をしている。

 確か今年で彼は16歳という年齢だった筈だ、個人的な印象は人懐っこく勤勉な少年という印象だ。

 

 確か佐世保の提督と特に交流していて知識を学び、勤務態度や鎮守府の運営、何より大規模作戦で話題になっていた敵の補給地の大体の位置の特定という、大きな戦果を残していた。

 

 提督が補給地を特定できて、敵の補給地を奪取できたのは彼の情報があったからこそだ。彼の情報が無ければ大体の位置も掴めず青葉を向かわせる事もできなかった。

 

 彼の将来性は提督も期待していたし、元帥も彼の事を気にかける程には将来性を期待されていた。そんな彼の鎮守府が壊滅した……

 

 提督は雨音雫がもしかしたら自分や横須賀の提督や佐世保の提督の並ぶ程の実力を持てるかもしれないと期待していた……期待していた分今回の壊滅したという事実に少なからず怒りを覚えていた、壊滅させた存在に地獄を見せてやると思った程には提督は怒っていた。

 

 普段の提督ならメリットとデメリットが釣り合っていなかったら見捨てるだろう……だが今回は違う。

 これは、個人的な事情だ。だからこそ自分一人だけでも行くべきだと判断した。

 

 信じられなかったのだ……あの雨音雫が死んだ事を、自分の目で確かめなければとどうしても思った。

 とはいえ資材や作戦の日数も考慮すると……自分一人だけで行った方がベストだろうと考えたが……雪風が前の出撃で資材を二人分確保してくれたのが幸いで護衛も付ける事が出来た。

 

 それも吹雪と雪風という、鎮守府の中でも屈指の実力を持つ二人を。純粋な戦闘力は10強に劣るがその能力は10強並の実力を持つ、そんな彼女達と一緒なのは心強い。

 

 柄にもないが……頼もしいと思ってしまう。

 

 ふと、海上を進むうちに考える……もしも生存者がいたとしてその感娘はどうなるのだろうかと、自分の鎮守府はつい最近春雨を迎えた、彼女の育成や朝潮の育成もまだ満足のいく状態に達していない。

 資材の関係もあり意外と現在の鎮守府は余裕が無いのだ……出来れば横須賀の提督に預けたいが、彼女も彼女で余裕があるとは言えないだろう。

 

 レ級の時や大佐の時も合わせると、彼女には随分と苦労させてしまったし借りも作った。佐世保の提督は事情が事情だ……彼の弟子ならあるいは……そう考えていたところで、吹雪が声を上げた。

 

 

 

「し、司令官!あれを!」

 

 珍しく慌てた様子の声色で遥か遠くに見える何かを指さした。

 ああ、こちらでも確認できた……距離が離れて薄らとしか見えないが……それでも分かった。

 立ち上がる黒煙と、距離が離れていても分かるほどの硝煙の匂いが……

 

 

 戦慄した。

 

 海上という広い視野が約束された状況でも辛うじて目視できる距離なのにこの状況……一体何が起こったのか?たらり……と額に嫌な汗が垂れるのが分かった。

 

「こ、こんな……」

 

 雪風が声を震わせて呟く、自分も二人の様子を見る余裕がなくなっているのか、黒煙立ち上る場所から目が離せない……離そうとも思わない。

 

 目に焼き付いてしまう。その光景を……

 

「急ぎましょう、司令官!」

 

 吹雪の言葉に提督は無言で首を縦に振った。

 

 これだけでも生存者がいる事は絶望的だ……それでも、自分は行かなくてはいけない。あの場所へと。

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「……え?」

 

 横須賀の提督は自分が見た物が信じられなかった。

 モニター越しとはいえ見える光景を見た瞬間、ポロリと手元に持っていたペンを落とした。

 傍にいる横須賀の大淀も、その表情を驚愕に染めていた。

 

『こ、こんな……』

 

 第一艦隊の旗艦を任されている蒼龍も、その光景を見た瞬間身体を震わした。彼女ですらこの反応なのだ……勿論僚艦の感娘……特に駆逐艦の面々は初めて見るその光景に悲鳴をあげた。

 

『これが……壊滅した鎮守府……なの?』

 

 蒼龍が小さく震えた声で呟く。そしてその蒼龍の言葉に横須賀の提督も同意せざるを得なかった。

 壊滅したといっても、これ程距離が離れていながら分かるレベルの黒煙……もっと近づけばどうなるのだろうか?

 

 そして、信じられない事は立て続けに起こってしまう。

 

『ほ、報告です!この距離でも分かる程硝煙の香りが……!』

「んなっ!?あ、有り得ないよ!こんなに離れているのに……しかも周りは海なんだよ!?匂いが届く訳が無い!」

『で、ですが香るんですよ!?私だって信じられない!こんな……こんな!!』

 

 蒼龍が悲鳴に似た声色で提督に報告する。

 これ程までに離れていて香る硝煙の匂い……本当に何が起こったのか?そしてそれを行った存在は何なのか?

 

「そ、総員警戒を怠らないで!もしもこの現象を起こした存在が近くにいるなら……間違いなく戦闘になる!!」

 

 

 横須賀の提督の指示の影響か、先程よりも感娘達は落ち着いた様子で目的地へと向かう。

 

 

『あれは……船と感娘?提督、一台の船と感娘を発見した、どうやら同じ方角へ向かっているようだが……』

 

 僚艦の一人である長門からの報告に横須賀の提督は疑問を持つ、この状況で動くなら呉の提督だが……彼は先程呉の大淀から動かないと聞かされていた。

 彼以外にこの状況で動くなら誰だ?そう考えていたが

 

『あれは、呉の提督です!随伴艦は吹雪と雪風、向こうもこちらを発見したのか接近してきます!』

「あ、うん」

 

 結局呉の提督だった、報告は何だったのだろうか?誤報?それとも呉提督のツンデレが発動した?どっちにしろ人手が増えるのは良いことだ。それにしても呉の提督自らが出向くとは……一体どういう事なのだろうか?

 

『こちら、呉鎮守府所属の吹雪と雪風、そして提督の海色海斗。其方の所属を教えてもらいたい』

『横須賀鎮守府所属、旗艦の蒼龍です……あの、失礼ですが呉の提督は何故直接こちらへ?』

「……この目で確認したかった……それだけだ」

 

 嘘だ、呉の提督は損得をきちんと考えられる人間だ。そんな彼が自分の目で確かめる事の危険性をきちんと理解している筈、絶対他になにか理由があるに違いないと考えた。

 だが、それを聞くほど野暮ではないし無駄に聞いて機嫌を損ねるのも面倒なので、このまま合流して件の鎮守府に向かうべき……そう考えた。

 

「ねえ海色君、道中で深海棲艦と遭遇はした?」

『いや、していない……まさかとは思うが』

「うん、こっちも遭遇していない」

 

 それとなく思った事を聞いてみるが、向こうも深海棲艦と遭遇せずにスムーズにこちらに来れたようだ。

 これは中々幸運だなと思うが……彼の随伴艦に雪風がいるならそれも納得する。

 彼女の幸運は前回のレ級騒動で知ったばかりだからだ。

 

『………そうか』

「?……まぁいいや、総員呉の提督を先導しつつ目的地に向かって」

『了解です!』

 

 横須賀の提督の答えに何か思う所があるのか、呉の提督は思い詰めたような表情をして俯いた、だが横須賀の提督はそれに気付く事なく自分の艦隊に指示を出した。

 

 

『……………誘われてるのか?』

 

 ぽつり、と誰にも聞こえない位に小さな声で呉の提督は呟いた。




次回は鎮守府に辿り着き……そして地獄を見るでしょう。


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第40話

うん、今回は難産でした。難しいね。


 横須賀の提督の感娘達と合流し、崩壊した鎮守府を目指し進む、進んで行くうちに硝煙の匂いが強まり、物が焼ける時に匂う独特な匂いがしてくる……同時に、血の匂いもしてきた。

 

 近付く毎に段々とその輪郭をハッキリと表してきた崩壊した鎮守府を見て、思わず固唾を飲んだ。

 

 

 それは、余りにも恐ろしい光景だった。

 

 

 足の踏み場を探すのにも苦労する程に、瓦礫が辺りに数多く散らばっている。

 鎮守府の道という道に巨大な穴が空いていたり、割れた硝子が散乱している。

 大型のクレーンは中間あたりで折り曲がり、先端部分が海へ浸かっていた。

 鎮守府本館は廃屋という言葉が易しく感じる程に崩壊していた、所々が焦げていて、本館の三分の二が瓦礫と硝子の山と化していた。

 入口部分と思われる箇所は本館二階と思われる場所の床が抜け落ちて、その瓦礫で塞がっていて入ることすら困難な状態になっている。

 

 そして何より……そこには死体が多すぎた。

 中には見知った顔も数多くいる、この鎮守府に所属している感娘達の……亡骸が……そのうちの何人かは戦闘の末に倒れたのだろうか、まだその手に主砲を持ったまま亡くなっている者もいれば、前のめりに倒れている感娘もいた。

 

 一体何が起こったのだろうか?一体何がこの鎮守府を壊滅させたのか?

 自分達と共に上陸した全員が言葉を発しない。横須賀の提督の感娘も、自分の感娘も……当然自分も。

 

 酷すぎた、非道すぎた、悲惨すぎた。

 

 自分は黒と呼ばれる鎮守府の有様や結末を見てきた。感娘を艦娘として扱った結果その身を滅ぼしてきた提督の結末を見てきた。

 中には彼女達を奴隷として扱った鎮守府があった。

 中には彼女達を化け物として扱った鎮守府があった。

 中には彼女達を性奴隷として扱った鎮守府があった。

 中には彼女達の存在を認めなかった鎮守府があった。

 中には彼女達を自分の目的の為に利用しようとした鎮守府があった。

 

 当然そのどれもが最終的には鎮守府を解体され、それ相応の罰を受けた。

 

 だが……この鎮守府はそういった黒とは無関係の鎮守府だ、何故この鎮守府がこんな目に合わなければいけない?

 この鎮守府は白だ、他でもない自分がそう言い切れるほどに綺麗な鎮守府だった。

 

 何故この鎮守府なんだ?何故彼が襲われたんだ?どうせ襲われるなら綺麗な彼ではなく、汚れきった自分が相応しいというのに……そして何故彼の感娘が死なねばならない?

 

 自分の中の何かが熱く煮えたぎるような感覚を感じた。

 

「……司令官」

 

 吹雪が自分に声を掛けてくる、彼女の目は自分に真っ直ぐ向けられていて、まるで語りかけてくるかのように自分の瞳を見つめてくる。

 まだやるべき事があるだろう?そう言われているような気がした。そして……嗚呼……確かにその通りだと自分は思った。

 

 嘆いている暇などない、自分は何のためにここへ来た?現実を直視して嘆くために来たのか?

 

 違う。

 

 なら何のためにここへ来た?わざわざ危険を犯してまで、残り少ない資材を使ってまで何をしにここへ来た?答え分かりきっていた、生存者を探すため……そしてこの鎮守府をこんな悲惨な姿に変えた元凶……深海棲艦を討つ、その為の力にするためにここへ来た。

 

 ああ、自分がこれからする行動に傍にいる彼女達はどう思うのだろうか?だが関係ない、自分は既に黒になっている、ならば黒は黒らしく行動するまで。

 

 この鎮守府の装備と資材を最大限に活用する。残り少ない自分達の資材と合わせて……その資材をもって大規模作戦に挑み、敵を討つ。

 それが今、自分ができる事だ。

 

 

 ……お前の鎮守府の力は俺が無駄にしない、そう決めた。誰がなんと言おうが関係無い、これは俺のわがままだ。

 

「指示を出す、雪風と吹雪は鎮守府にあるありったけの資材と装備の回収、そして生存者を探すんだ」

「「了解!」」

 

 吹雪と雪風は自分の指示を受けてから一目散に崩壊した鎮守府を進む。

 自分の指示に何ら疑問もなく従ってくれる彼女達に、心の中で感謝を送った。

 

「資材と装備の回収……?この状況でそれを行うのか?この鎮守府の有様を見て考えたのはそれなのか?何故だ……何故なんだ!?」

 

 予想してた通りだ、横須賀の提督の感娘である長門が悲鳴に近い声色で訴えてくる。

 だが、今は口論している時間さえ惜しい、無駄な口論に時間を掛けるのも惜しいし、横須賀の提督との付き合いは長いし彼女は自分の事を良く理解している。

 後で何かしら言われることは分かっているが……その時はその時だ、ありのままの意見を言おう。

 そう考えて、自分も崩壊した鎮守府に足を踏み入れた。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 あぁ、やっぱり彼はそういう選択したか。

 確かにこの光景を見た瞬間、私も思考が止まってしまった。きっとこれはあの場所にいた全員がそうなんだろう、現地にいない私でさえそうなのに、現地で実際にこれを見た皆んなの内心は……きっと私が考える以上にショックを受けるに違いない。

 

 だって普段冷静な長門でさえ、海斗君の行動を批判しちゃったから。付き合いは長い筈なのになぁ……まぁ説明も無くあんな火事場泥棒みたいな事を命令した海斗君も海斗君だけどね!

 

「じゃあ第一艦隊の皆んなは海域の見張りをして、第二艦隊の皆んなは生存者を探して」

『あ、あの!司令官!呉の司令官の装備と資材の回収は止めなくて良いのです?』

「あぁ、放っておいて良いよでんちゃん、海斗君の事情は分かっているし……私もそうするべきだと考えているから」

『何……?』

「ながもん落ち着いて、理由は後でちゃんと説明するから、今は私の指示に従って……ね?」

『……了解、だが後で理由は聞かせて貰う』

「うん、それでいいよ」

 

 全く本当誤解されやすい人なんだから……ま、多分海斗君を理解できるのは私か元帥だけだろうし……全く幼馴染みも大変だなぁ。

 

 私は同期であり、幼馴染みであり、腐れ縁でもある彼の事を想って溜息をついた。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「ひっく……ひっく、うぅ……うぁぁ……!」

「生存者二名確認……か」

 

 目の前には、変わり果てた姿の雨音雫と彼が初期に選んだ感娘の五月雨がいた。

 隣には気絶している白露の姿も見える……だが……惨い、そう思ってしまう。

 

 全身を赤に染め、左腕を失い脇腹に大きな空洞が空いている、即死……その言葉が頭から離れてくれない。

 

 ああ、くそ!

 

 目を背けたくなるが、しっかりと目に焼き付ける、彼の最後を、彼の死にざまを、彼の最後の姿を。

 

 この姿は、目に焼き付けなければいけない。

 この姿は、忘れる訳にはいかない。

 これは敵だ、奴等に奪われた者……奴等に殺された者と、残された者の怨みは……奴等への報復は必ず果たす。

 

 拳を硬く握りしめ、目を瞑り、静かに祈り、心の中でお前に言う。

 

 ー後のことは俺に任せろ、お前の敵は必ず取る、お前の無念は必ず晴らす。だから安心して逝け……雨音雫。ー

 

 目を開けて、雨音提督の亡骸に寄り添い泣く彼女に歩み寄る。

 

「これから俺は、お前の鎮守府の資材、装備を確保する」

「ひっく、えぐっ……」

「理解しろとは言わない、後で俺を批判するのも構わないし憎んでくれても構わない……だが、俺は決めた。この鎮守府の装備と資材を最大限に使い、大規模作戦を完遂させると、俺がこの鎮守府を無駄な犠牲にしない。してやらない」

 

 こんな事を言ったら色々と問題になるかもしれない、でも言わずにはいられない。

 

「おれが文字通り、言葉通り、雨音提督の分まで戦う、雨音提督が、彼の感娘が魂を込めて集めたこの資材……この資材を使って、俺は戦う。そして敵を取る……そしてあいつに報告する……お前の敵はとったと……」

 

 この鎮守府の装備や資材は本来なら大本営に押収され、然るべき鎮守府に送られるだろう……こんな勝手な行動をするなんて本来なら懲罰物だ、これは完全に俺のわがままだ。あいつの資材とあいつの武器を使って、敵を討ちたいなんてのは……それでも俺は、そうしたい。

 

「これからお前と白露は横須賀の提督に保護させる、そして吉報を待っていてくれ」

 

 そう言い残し、他の生存者を探そうとしたら

 

「……嫌です、保護されて安全な場所で報告を待つのは!……私も戦いたい、敵を、討ちたい……!」

 

 五月雨に呼び止められた、足を止めて彼女と向き合ったら、五月雨が涙を堪え、真っ直ぐな瞳を自分に向けてくる。

 

「…………」

 

 その目には何が宿っているのだろうか?その心は何を宿しているのだろうか?

 復讐心?使命感?それとも……別の何か?

 

 いや、関係ない、自分は強い心を持つ者を歓迎する。それが何であれ……自分はそれを否定しない。

 

「なら、うちに来るか?」

 

 気が付いたら、俺は手を差し伸べていた。

 新人の育成とか、自分の鎮守府の状況はその瞬間は頭から消え去っていた。

 ただ、この少女の願いを叶えてあげたい、そう心が叫んでいたから……自分は、俺は、俺の心に従った。

 

「ッ……!!」

 

 そして、彼女は俺の手を取る。

 冷たく冷えたその手は……自分には暖かく感じた。

 




唐突に現れる提督のブラックモード(笑)いやぁ、これは批判されてもおかしくないですわ


10強紹介part2

駆逐艦時雨

能力は装甲貫通、装甲や火力は普通の時雨改二よりちょっと高い程度だが、敵の装甲を無視する力は恐ろしく強力だ。
響や瑞鶴、漣や青葉みたく複数の能力を持つというわけではないが、その能力や元々の性能の高さも相まって10強最強の名を持つ。
また、さり気なく手加減した状態で夕立改二と互角に戦闘できるなど、頭がおかしいところも見せるが、あくまで普通の時雨改二よりちょっと性能が高いだけである。

次回は10強No.2、響ちゃんの紹介です。

最後に一言。
横須賀の提督は呉の提督を想っています。
想っています。
大事な事なので二回言いました。

シリアス続きだからね!偶には甘い要素も入れないとね!


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第41話

フニャ…………

お気に入りを見たら、なんと1000人もお気に入り登録して下さるとは……プ、プレッシャーが凄いですぅ……
期待を裏切らないように、色々と慎重に投稿します……出来れば投稿速度も上げたいです。



 

 

 音は振動、小さな音だろうが大きな音だろうがそれは振動だ……だが凄まじい音、例えば踏切の近くに立つと風と共に身体の芯が震えるような感覚を覚えた事は無いだろうか?ゾクゾクッ……とも、ブルリ……とも言える、その感覚を味わった事は無いだろうか?

 

 今回提督が味わったその感覚は、電車のそれとは比較にならないほどの

 

 振動。

 

 

「ッッッッッ!!!!??」

 

 全身に衝撃が走るが、身体的な損傷は一切無い。

 それもそうだろう、それは単純な音によって生み出された物だからだ。

 提督の手を握る五月雨も、突然であり強大なその振動に驚き、小さく悲鳴をあげる。

 

 ーー何だッ!?何が起こった!?ーー

 

 これ程の轟音、何かが起こった事は確実だろう、一刻も早くこの原因を突き止めなければならない。

 だが五月雨と白露をここに置いていく訳にも、行かない。どうすれば良い?何をするべきだ?そんな事を一秒間考えていたら。

 

「し、司令官!大変です!」

「お前達!」

 

 吹雪と雪風がこちらに駆け寄って来る、彼女達は隣にいる白露と五月雨を見てから、雨宮提督の亡骸を見て……あまりの悲惨さに言葉を失った。

 

「……ッ!そ、そうです!たった今資材庫と思われる場所が長距離砲撃で爆破されて……!その影響で地形が一部変わっちゃって!!」

「地形が!?それに長距離砲撃だと……?横須賀の所の感娘は敵の確認が出来るていると思ったが……」

 

 地形が変わるほどの破壊力、それだけでも信じられないというのに、周囲にいると思われる蒼龍率いる横須賀の提督の感娘から何も連絡が無い。

 これは妙だ……と、そこまで考えてから雪風が提督にとって……いや、恐らく人類にとって信じられない事を言い出した。

 

「見えなかったんです……!まるで、瑞鶴さんみたいに……雪風達が見えない場所から、まるでそこに何があるか分かってるように……正確に撃ってきたんです!砲撃を……!」

「な……に……?」

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 始まりと終わりが集う場所と呼ばれる海域がある、そこにとある深海棲艦が存在した。

 彼女はとある深海棲艦が一つの鎮守府を興味本位で滅ぼした事を知った……そして、その鎮守府にとある存在が向かった事も知った。

 

 それを知ってから、彼女の胸の内に激しい感情が浮かび上がる。

 

 

 

 愛しい、愛しい、愛しい、愛しい、愛しい、愛しい。

 ただひたすらに愛しく、愛しく愛しく愛しく愛し愛し愛愛愛愛愛愛愛愛

 

「ねェ、ウケトッてくれた?ワタシのセイイっぱいのキモチ……えへへ……」

 

 それは、恋する乙女のように頬を赤く染め、緩んだ頬や照れた顔を、他人に見られないように両手いっぱいに隠しつつ、首を左右に振るう。

 

 そこに彼女を見る存在(モノ)なんて、いないというのに……

 

「アっ、でもデもサスがに資材ヲ回収サセナカッたのはやりすぎたかナ?うーン……これいじょう私のトコロニクルのがおそクなっちゃッたら……なんカいヤダし……でモでも、シカタないよね?

 

 ソロソロイイカゲンワタシノコトヲミテホシカッタシ」

 

 途端、陸地で佇む彼女の周辺ににどす黒い何かが纏ったような錯覚が起こる。

 流れるような長髪がざわざわと揺れ動く、その瞳には黄色い光(・・・・)が宿り……その瞳は遠くの海を映した。

 

「だから、ハヤクワタシヲムカエニキテネ♪感娘の提督さん♪」

 

 

 楽しそうに、楽しそうに、愛しそうに、愛しそうに……その名を呟く。

 

 と、同時に彼女を一発の砲弾が襲う。

 爆音と同時に彼女を覆い尽くすほどの黒煙が彼女の姿を隠す……そして黒煙が晴れた所にいたのは傷を負った彼女ではなく……

 

 無傷の彼女だった。

 

「……ナンダ?キサマハ」

 

 先程までの楽しそうな雰囲気は一変し、凄まじい威圧感がその一帯を覆い尽くす。

 そして彼女を攻撃した存在……それは深海棲艦だった。

 戦艦棲姫と呼ばれる存在、それが陸にいる彼女を砲撃した存在の正体だった。

 

「イレギュラーハココデシズメル……!」

 

 問答無用、その表現がその光景を口にするのが一番正しいだろう。

 戦艦棲姫の砲撃が陸の彼女に文字通り降り注いだ。

 

 

 

 だが

 

 

 

 

 「ジャマダ、ウゾウムゾウ」

 

 

 

 

 

 

 それは、一瞬の出来事だった。

 一撃だけ陸にいる彼女は最大火力で反撃した。それだけ……それだけのたった一度の砲撃が、戦艦棲姫を大破まで追い込んだ。

 

「コ、コンナッ……!?」

 

 彼女は理解できない、今まで確認した事の無い深海棲艦というのもあるし、そのでたらめな能力も理解できない要因の一つだろう。だが……一番理解できないのは彼女の在り方。

 

「ナゼ、ナゼ!テキヲアイスル!!」

「シレタコトヲ、ソレガワタシダカラダ……ニゲルナラニゲヨ、ワタシハニゲルモノヲシズメルキハナイ」

 

 憎むべき存在を愛する彼女、そんな彼女を理解できない。

 戦艦棲姫は歯を食いしばりその海域を後にする。

 それを何の感情も湧かせること無く、陸にいる彼女は見送った……やがて満面の笑みを浮かべながら……今日も彼を見続ける。

 ひたすらに、観続ける。

 見続ける。観続ける。

 

「うェへへ……」

 

 だらしなく頬を緩ませながら……先程の威圧感が嘘のように消え去った状態で。




ヤンデレ深海棲艦とか新しい……そうでもない?まぁ多分正体はバレバレ……でも、ちょっと色んな所が違います。
長距離砲撃はシン・クリア・セノウス・ザレフェドーラをイメージしてくれると……ちょっと古いかな?

10強紹介part2

駆逐艦響

能力は「不沈」大破することはあるが、沈む事はない……何度も蘇るその姿は、正に不死鳥の如く。
彼女の能力はそんな逸話から来ているのかもしれない……

どんな無茶な行動をしても決して沈む事は無い。海に潜ろうが、砲弾の雨に突っ込もうが、敵陣のど真ん中に取り残されようが、決して沈む事はない。
また、ダメージを負えば負うほど性能が上昇する。具体的に言えば大破状態で元の性能の3倍に引き上げられる。
スピードもパワーも通常の3倍、しかも大破状態だから色々見えるよ!やったね紳士諸君!!


イメージ材料としては、ポケモンならタスキがどんなHP帯でも発動して使用制限が1回を超えている。更にこれがメガレックウザ仕様で道具系のわざに左右されない。
スパロボなら常時復活でFGOなら無限ブレイクゲージ
次回はNo.3の瑞鶴ちゃんです。


最後に一言、これで10強No.2です。上には上がいます。


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