ビアンカちゃんが死ぬほど好きなんだ!! (nao.P)
しおりを挟む

プロローグ

全部、僕のせいだ。

 

僕は、勘違いをしていた。

 

単なる、勘違い。

 

隣町の人々が怖がっていた、お化け退治をして、はたまた僕の家の地下室から行くことが出来る妖精の国を支配していた氷の女王をやっつけて、僕は皆のヒーローになれるって思い上がっていた。

 

だから、今回のことだって、お父さんが真っ先に拐われたヘンリー王子を追っていった時に、僕の手だけで救えるよってところをお父さんに見せたかっただけなんだ。

 

でも結果的に、お父さんは、死んだ。

 

殺された。

 

僕が、人質にとられて、そのせいで本当なら、お父さんの力ならあんなヤツにだって簡単に勝てたハズなのに。

 

 

僕が弱かったせいで、殺された。

 

お父さんは、僕の目の前で、僕の首に死神みたいなヤツが死神の鎌の様な物を当てがっているのを見て、指一つだって動かさずに執拗に攻撃を受けて、最期の最期まで一歩も引かず、一歩も動かず、強い心を、いつものガンとした表情を崩すことなく、強いお父さんは僕の方を見て。

 

負けることなく、僕を守り抜いて死んだ。

 

強くなれ、と言っている様だった。

 

お父さんは最期まで僕を見ていた。

 

だから僕は最期までお父さんを見ていた。

 

僕は絶対に忘れない。

 

僕に見せてくれた本当の強さを。お父さんの背中を。

 

だから、今度は見ていて欲しい。

 

僕のことを。

 

きっと。ううん、絶対。

 

絶対、強くなってみせるから。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「ねえねえ! お父さん! お父さんってば!」

 

 

揺れる船室の中。

 

目を覚ました僕は、寸前まで見ていた不思議な夢の出来事をすぐ隣にいたお父さんに話したくて、話したくてたまらず飛び起きた。

 

「おう、起きたかリュカ」

 

そう言ってお父さんは、机に向かって読んでいた難しそうな本から僕の方に視線を移した。

 

「訊いて! 僕ね! 今夢を見てたんだ! 」

 

「夢?」とお父さんは言った。

 

「うん! お父さんが出てきたんだよ! お父さんが王様で立派なお城の中に住んでて、 赤ちゃんの僕のこと楽しそうに見てて、なんか変な夢だった!」

 

お父さんはいつだって格好いいから、夢に出てきた王様の姿だってやっぱり凄く似合ってて、そんなことが言いたかった。

 

「わっはっは! 寝ぼけているな」

 

お父さんは豪快に笑い飛ばしてくれた。

いつだって僕の話を聞いてくれるお父さん。

 

僕はお父さんが大好きだ。

 

強くて、格好よくて、恐いときもあるけど、優しいお父さん。

 

「眠気覚ましに外へでも行って、風にあたってきたらどうだ?」

 

「うん! あ! 港にはあとどれくらいで着くの?」

 

「もうそろそろだろう。岸が見えるかもしれないな」

 

僕はお父さんの言葉に、思わず胸が踊り出す。

海を眺めるだけの船の旅もすっかり飽きちゃっていたし、何よりこれから行く場所が楽しみでしょうがなかった。

 

「やったぁ! そしたら! あの娘に会えるんだね! 」

 

「あの娘?」

 

「ビアンカだよビアンカ!」

 

その子の名前を口に出したら、もういてもたってもいれなくなっちゃって僕は気づいたら勢いよく足踏みをしていた。

 

船室の床の板はスゴく頑丈で、ビクともしないんだ。

 

「ほう、ダンカンさんとこの娘さんか。しかしよく覚えていたな」

 

「覚えてるよ! すっごく生意気でムカつくんだよねあの娘!! 偉そうにしちゃってさあ!! 私の方がお姉さんなんだから私の言うこと聞かなきゃだめなんだからねっていちいち言うんだよ!」

 

「お前の3つぐらい歳上だったか?」

 

「2つだよ! あの時は逆らえなかったけど、僕いっぱい旅して強くなったから今度は僕が勝つよ!」

 

僕はブンブンと腕を回した。僕はあの時より背も伸びたから勝てると思った。

 

お父さんはちょっとだけ溜め息をついてから僕に言う。

 

「ケンカは悪いことでは無いが、女の子に向かって手を上げることはお父さん感心しないぞ?」

 

「どうしてさ! ビアンカは僕より強いんだよ!?」

 

僕はお父さんに食ってかかってみたけど、お父さんはいつだって冷静に、諭してくれる。

 

「どうしてもだ。お前は男の子だ。男の子は女の子を守ってあげなくちゃダメなんだぞ」

 

「ふーん」と僕は言う。ビアンカはそこらの男の子より全然男の子らしいから守るなんて想像も出来ないよ、と思う。

 

顔は可愛いけどさ。なんて思ったらなんかあっつくなってきちゃった。

 

「まっ、いいや。外に行って来るね!」

 

「ふざけて船から落ちるなよ」とお父さんは僕が船室から扉を開けて出て行くまで、僕のことを見てそう言った。

 

「うん! だいじょうぶ!」と僕はお父さんの顔を見ながら開けた扉を閉め、甲板へと駆けて行った。




色々書いていきたい。

書いて、ゆっくり考えながら、学んでいきたいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

海の上

僕は甲板へと駆け上がって流れてくる潮風の匂いを一気に吸い込んだ。

 

うーん。しょっぱい。

 

空は青、海も青。ずーっと水平線が続いていて、まだなーんにも見えない。

 

「ちぇ」と僕は舌打ちをする。

 

でもまだ分からない。船首の方へ行ったら何か見えるかもしれない。

 

僕は全力で船の進む方向へ走った。凄い。今の僕は船より速く走っているぞ。

 

「おうおう坊主。元気がいいな」と船乗りのおじさんが走る僕に声を掛けてきた。

 

「おじさん! 今の僕船より速いんだ!凄いでしょ!」

 

船乗りのおじさんは「全然凄くねえな。追い越せやしねえからな」と意地悪を言った。

 

「あとな。俺はおじさんじゃねえ。お兄さんと呼べ」

 

「あっ! そうだ! ねえねえおじさん聞いて!!」と僕は、今度はおじさんに向かって駆け寄ってさっき疑問に思ったことを訊ねてみることにした。

 

「坊主、お前はまず人の話を聞け」

 

「うん、わかった! でね、おじさんに聞きたいことがあるんだ」と僕は続ける。

 

おじさんは舌打ちをする。おじさんはとても太い腕をしている。お父さんほどじゃないけど戦ったら結構つよそうだ。

 

「お前は船から降りるまで俺のことをおじさんって貫き通しやがる気か。まあいいや。で、なんだ坊主?」

 

「うん! あのね! 男の子は女の子のこと守ってあげなくちゃダメって言われたんだけど、そうなの!?」

 

と聞いてみた。おじさんは目を丸くする。

 

「どうした坊主。色気付きやがって。好きな女の子でも出来たのか?」

 

「好きな女の子? ビアンカのこと? 僕は別にビアンカなんて全然好きじゃないよ!! もう何勝手なこと言ってるのさ!」

 

「ビアンカって誰だが知らねえが、なあ坊主」

 

「なに?」

 

と言って答えを待っていた僕に向かって突然におじさんは大きな声を張り上げて

 

「がおおお〜!!!!」

 

と驚かせる様な真似をしてみせた。

 

僕は少しだけビックリしちゃったけど「何するのさ!」と言い返す。

 

「大したもんだ坊主」

 

「おじさんなんかモンスターなんかより全然怖くないもんね!」

 

と少しだけ腹が立っている僕に向かっておじさんは「すまん」と言って会話を続けた。

 

「いいか坊主。お前は今泣かなかった」

 

「これくらいなんかで泣くわけないよ! 僕男の子だもん!」

 

僕がそう言ってみせると、おじさんは拳を作って親指だけ立てて「ナイスだ坊主」と言った。

 

「何がさ?」

 

「男の子は泣いちゃダメなんだろう?」

 

「そうだよ。僕は泣かないよ」

 

「それと同じだ。男の子は泣いちゃダメだし、男の子は女の子を守ってあげなくちゃダメなんだ。理由なんかいちいち聞くんじゃねえ。格好悪いだろ。分かったか坊主?」

 

と言った。

 

僕は「うん分かった!」と言ってお礼をした。

 

「尊敬したか? だったらおじさんとは言わずお兄さんと呼んでいいぞ? 」

 

「うん! おじさんみたいなお兄さんありがと!」と言った。

 

おじさんは、今度は本気で僕に向かって「がおお〜!!」と叫んで追っかけてきたので僕はたまらず走った。

 

「おい待て坊主!」

 

「なんだよおじさんみたいなお兄さん! 話はもうじゅうぶんだよ!」と走りながら言う。

 

「アレ見ろアレ!」

 

おじさんみたいなお兄さんの指さした方向を見ると、微かに水平線に薄っすらと岸の影が見えたのが分かった。

 

「やったあ!! やっと降りれるよ!」

 

「嬉しいか坊主。お別れだな」

 

「うん!短い間だったけどおじさんみたいなお兄さんのおかげで楽しい船旅になったよ」と言った。

 

船乗りの人は皆して力持ちで口は汚いけど、心は海みたいに広い人ばかりだなって思った。

 

「ちっ。生意気なガキだ。おい坊主。お前の親父さんに降りる支度をしろって伝えて来い。待ち兼ねただろうからな」

 

「うん! 分かった!」

 

僕はお父さんのいる船室に向かって走った。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

バタン!

 

 

「お父さん! もうすぐ着くよ」

 

部屋に戻るとお父さんはまだ机の上で難しい本を読んでいた。

お父さんにもまだ分からないことがあるのかな、と思った。

 

僕にはまだ分からないことだらけで、いちいち訊き返さないとわからないことばかりで、さっきも船乗りのおじさん以下略に訊ねたばかりだった。

 

お父さんも、そうしてきたのかな。

 

「そうか。村に着くのは二年ぶりだな」

 

とお父さんは本を閉じてそう言った。

 

「皆、僕のこと憶えてるかな?」

 

「お前は、村の人達のこと、憶えてるのか?」

 

「うん! 村の人は皆家族みたいだし! 早く会いたい! でも僕のことなんか忘れてたらどうしようかな?」

 

僕は急に怖くなる。

 

僕なんかあの頃、豆つぶみたいにすごくちっちゃかったから、もしかしたら皆の記憶からすっかり消えちゃってるのかもしれない。

 

そう思ったらビアンカに会うのが怖くなっちゃった。

 

憶えてくれていたら嬉しいけど、……でもまあいいや。憶えてなかったらその時は知らんぷりしてやるぞ。知らんぷりだ。ざまあみろ。

 

「憶えているさ。お前が憶えているなら、相手も同じように憶えているものだ」

 

お父さんは支度をしながらそう僕に言う。

 

「じゃあ! じゃあビアンカも僕のこと憶えていてくれてるの?」

 

たまらず僕は訊く。

 

「もちろんさ。また仲良く遊んだらいいだろう」

 

「仲良く? 別にビアンカと仲良くなんかないよ! けど、お父さんがそうしろって言うなら、そうしようかな」

 

そう言うとお父さんは、何故だか笑った。なんだか少し腹が立ったけど、ビアンカが憶えてくれてるって言うならまあ、いいか。

 

「忘れものはないか?」

 

「うん、ばっちり! 剣も持ったし! 薬草も持ったよ!」

 

剣はひのきの棒だけど、立派な武器だ。モンスターを追い払うくらいなら子供の僕にだってできるぞ。

 

お父さんが居ないと戦うのは無理だけど。お父さんが居ればちっとも怖くない。

 

「では行くとしよう」

 

「うん!」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サンタローズの村

「ねね! 大人の話って長くなるから二階に行きましょう!」

 

隣に座っている僕に耳打ちしてきたビアンカは、僕が答える間も無く手を引くと二階に向かって歩き出した。

 

「ねえねえビアンカ!」

 

今は僕の家。

 

久しぶりに帰ってきた家には、家事のサンチョおじさんだけがいると思ったら、すごいびっくりなことにビアンカがいたんだ!

 

隣町にビアンカは住んでるんだけど、ビアンカのおばさんと一緒でちょうど村に用事があったみたい。

 

声をかけたビアンカは「なによ?」と手を引いて僕の部屋に向かいながら振り返ると、少しだけ僕を見下ろした。

 

くやしいんだけど、僕よりちょっとだけ背が大きかった。

 

ちぇ。僕もあの頃より大きくなったんだけどなぁ。 二つも年が上だからしょうがないけどなんか悔しいや。

 

ビアンカは、金髪の髪を右と左にみつあみに作ってて、お人形さんみたいで、掴むには丁度良さそうで思わず両手で引っ張りたくなっちゃった。

 

「その髪可愛いね!」

 

「なによいきなり」

 

そう言うとビアンカはプイと前を向いちゃった。

 

階段を一段一段登るたびに三つ編みがぴょこぴょこ動くもんだから、僕はなんだか居ても立っても居られなくなって、気づいたら手が伸びてた。

 

「えい!」

 

「いたっ!」

 

そんな思い切りなんて引っ張ってなんかないけど、ビアンカは振り返ると、眉を思い切り釣り上げて

 

「リュカ!!」と僕の名を叫んだ。

 

僕の名、覚えてくれてたんだ。嬉しい!

 

僕がそう言うとビアンカは「あんたねえ……。まあいいわ。私はお姉さんだからすぐには怒らないの。でも次にまた髪引っ張ったら承知しないわよ。いーい?」

 

と訊いてきた。

 

ほら始まったぞ。偉そうにしちゃって。

 

「うんいいよ!」と僕は返事。返事だけはいいんだよね僕。

 

「返事だけはいいんだから」とビアンカも言った。おんなじこと思うだなんてビアンカってば、相変わらずビアンカなんだなぁ。

 

二年ぶり? よくわかんないけど、そんな感じしないや。なんか昨日も会ったみたい。

 

下でお父さんの笑い声が聞こえた。内容はよくわからないけど、僕とビアンカのことに対して笑ったみたい。まあいいや。

 

二階に着く。

 

僕の部屋。久しぶり!

 

日当たりが良くて小さいけど居心地がとってもいい部屋。

 

ベッドと本棚があるくらいでなーんもないけど、大好き!

 

僕は思わず自分のベッドにダイブ!

 

うーん! 気持ちいい!

 

もうこのまま目を瞑れば眠れそう。

 

「ねえリュカ」と声。

 

そう言えばビアンカがいたんだった。

 

がばっと起き上がる。

 

「ねえねえビアンカ!」と僕はビアンカを見る。

 

おでこ出してて、目はぱっちりでお鼻はちょこんと出てて、ほっぺたはプニプニみたいで、二年前よりなんだかなんだが可愛いかなと思ったけど、生意気だから

どっちかと言えば生意気さが勝っちゃうんだよね。だから普通かな!

 

「あたしが訊く番よ」とビアンカが言った。僕が訊こうと思ったのにほら生意気だ。

 

「二年間どんなだったの? いろんな所を見てきたんでしょう?」と訊いてきた。

 

「うん! いっぱい旅してきたんだ! 一番綺麗だったのは高い山から見た星空とオーロラかな! 夜なのに空がね!パアッて光ってて! あと滝!大っきいこんくらいの広がる滝がね! 空から水がたくさん落ちてきて! あとね!あとね!」

 

僕が話すとビアンカは「へぇー」と感心そうに聞いてくれた。

 

「ビアンカにも見せたいな」と僕は言う。

 

「いいわね。次は連れていってくれないかしら」

 

「いいけど、モンスターもいっぱいいるからね! 女の子にはちょっと無理かな!」

 

「あら? 忘れたのリュカ。私はあなたよりずっと強いわよ」と自信満々にビアンカはそんなこと言う。

 

「そんな昔のことなんて僕覚えてないし! それにいっぱい旅して僕強くなったからね! お父さんの次に強いんだ!」

 

ちょっと、大げさに言っちゃたけどまあいいや! 強くなったのは本当だし。

 

「そう? じゃあこんどスライム倒して見せてよ」とビアンカは意地悪そうな顔をする。

 

「いいよ! きっと僕の強さにビアンカは腰を抜かしちゃうね。スライムなんか僕の強さに顔を真っ青にして逃げ出して行くよ!」

 

「スライムはもともと青いわよ」

 

「そっか! じゃあ分からないね!」

 

「ふふふ。リュカってば可笑しい」とビアンカは笑った。

 

 

笑った顔はやっぱりちょっとは可愛いかなって思った。

 

生意気だけどね。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サンタローズの村 その2

次の日。

 

僕は村の中を歩き回った。

 

二年ぶりの村の中は見るもの見るもの懐かしくなっちゃってもう大変!

 

ほら、あの村一番の木。旅に出る前はよくよじ登ろうとしては登りきれずに、途中で落っこちて泣き叫んだっけ。でも今の僕なら簡単に登れそうだ。

 

あっ!川だ!

村の中を流れてる小っちゃい川。よくカニさんやザリガニさんを捕まえたことを思い出して、木登りは後回しに僕は水面を覗き込む。

 

「おーいカニさん! 帰ってきたよ! どこかなー! 出ておいで!」

 

そう叫びながら皮の靴を脱ぎ捨てて沢の石をひっくり返す。

 

バシャーンと水を被る。冷たくて気持ちがいいな。あっザリガニさん見っけ!

 

「何してるのリュカ!」

 

見るとビアンカが昨日とおんなじ髪型で金色にキラキラ輝く三つ編み頭をピョコピョコさせて現れた。

 

「ビアンカ! まだ村にいたんだね!」と僕は言う。

 

「居るわよ。昨日言ったじゃない。パパのお薬をホビットさんに作ってもらってるから、それまでこの村に泊まってるって……」

 

「ほら! ビアンカ見て見て! ザリガニさん!」

 

僕は大っきなザリガニさんを捕まえてビアンカに見せてあげた。

 

「あなたねー、人の話を……」

 

「聞いてるよ! ビアンカのお父さんの具合早くよくなるといいね!」

 

そう言うとビアンカは「まったく」と言って僕の側にやってきた。

 

「大っきなザリガニね。私の住んでる町でも男の子たちが捕まえてるの見るけどもっと小さいわ」

 

「この村はやっぱり水が美味しいからね! 大っきくなるんだよ! だから僕もたくさん飲んでお父さんみたいに強くなるんだ!」

 

お父さんも小さい頃はこうやって遊んだりしていたのかな、と思った。ザリガニ捕りや木登り。

 

「それだけじゃ強くならないわよ。たくさん稽古して難しい本も読んで勉強しなくちゃ」

 

「勉強はニガテなんだよね僕」

 

「あらリュカ? パパスおじさまみたいになれなくていいの?」

 

ビアンカは意地悪そうな顔をしてそんな意地悪を言った。

 

僕がうーうーと唸るとビアンカは「そうだわ! 今度リュカにご本を読んであげようか? リュカの居ない間に読み書き出来るようになったのよ」と今度はなんだか「えっへん」と自慢気に僕を見てそう言った。

 

でも僕は読んで貰うのは楽しいから「ほんと!? 」と飛び上がる。

 

「ふふふ。すごいでしょう?」

 

「うん! 僕まだ読めないもん!」と素直に頷く。

最近僕も読み書きの練習をお父さんに教えてもらっているんだけど、さっぱりだからビアンカが読み書き出来るようになったって言うのはすっごく羨ましい。

 

「わかった? だからちゃーんとお姉さんの私の言うこと聞くのよ」と、いばりんぼみたいにビアンカは腰に手を当てる。

 

やっぱりなまいき! 読み書きはまだ出来ないけど僕だってすごくなったってのに。こうなったら分からしてやるぞ。

 

「ねえねえビアンカ!」と僕は叫ぶ。

 

「どうしたの?」

 

「ほらあの木!」と僕はこの村で一番の大木を指差した。

 

いつだってこの村の中心で僕らを見守ってくれている立派な木。

二年前まではまるで登れなかったけど今なら絶対登れるはず。

 

「にひひ」と僕は言う。

 

「あぶないわよ」とビアンカが何か言ったけど知るもんか! 僕だって二年間でいっぱい成長したんだぞってところを見せてやるんだもんね。

 

僕は川から上がってそのまま木に向かって駆けていく。

 

「待ちなさいよリュカ! あぶないってば」

 

「あぶなくないよ! 僕はモンスターだって倒せるんだよ! このくらい朝飯前だよ!」

 

木の下まで行って見上げるとてっぺんは見えないくらいに高いけど全然大丈夫。だてに二年間も旅してきたんじゃないんだよね。

 

手に唾を付けると木に絡まるツタやツルに手を掛け足を掛けてスルスル登る。

 

最初こそ「降りなさいよ!」ってビアンカが叫んでたけど僕の慣れた感じが分かったのかいつの間にか「へぇ」って感心していた。

 

「ビアンカもおいでよ!」と小っちゃくなったビアンカを見下ろすと「無理に決まってるでしょ!」とビアンカは僕を見上げてそう答えた。

 

「凄い景色だよビアンカ! ビアンカの住む町も見えるかな!」

 

ビアンカの住むアルカパと言う町。僕の住む森と山に囲まれたサンタローズの村からは、高いところから見ても遮られちゃっていてやっぱり見えなかった。

 

ちぇ。残念だなーって思って村を眺めていると「ん?」と僕は首を傾げた。

 

浅黒く日焼けした立派な身体の肌に、伸び切った黒髪を一つ結って背中にはカッコいい剣。

 

間違いなくお父さんだ。川の上流の方。何やら小舟に乗って一人どこかに行くようだ。

 

目で追ってみると先には、真っ黒な洞窟が口を開けているが見えていた。

 

洞窟!

 

僕はすぐさま木から駆け下りると「ごめんビアンカ! また明日ね!」と言って僕一人お父さんの後を追うことにした。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サンタローズの洞窟

 

「ねえねえ! サンチョ! ランプない? ランプ!」

 

洞窟へ行く前に僕は家に帰って中で掃除をしていたサンチョに訊ね物をしていた。

 

サンチョは箒を持っていた手を止めると、僕に丸々とした顔を向けて

「お帰りなさい坊ちゃん。ランプですか? ありますが何に使うんです?」と訊いてきた。

 

「なんでもいいじゃんか! 早く早く!」

 

サンチョは顔もそうだけど体もポンポンと膨れているから思わずそのお腹を急かすように僕は何度も叩いた。

 

「わかりました坊ちゃん。ですからそう叩かないでくださいな」

 

「だってサンチョは相変わらずたるんだ体をしてるんだもん! そんなんじゃ駄目だよ! 男だったらお父さんみたいにならなくちゃ!」

 

「そう言われる坊ちゃんはすっかり逞しい男の子になられましたね」

 

「でしょ!? 」と二の腕の力こぶを作ってみせる。まだちょっとだけしか膨らまないけど立派な力こぶだ。

 

「ええ。」

 

サンチョは重そうな体を動かして台所へ行くと奥からランプを持ってきた。

 

「ありがとサンチョ!」

 

「坊ちゃん、もしかして洞窟へ行くのですか?」

 

「え!? どうして分かったの!」と思わず僕はびっくりしちゃった。なんでバレちゃったのかな。

 

「坊ちゃんのことならなんでも分かりますとも」

 

「止めないの?」とランプを受け取りながら、僕は訊いた。

 

「はい。坊ちゃんももう6歳です。旦那様と旅をしてきっと冒険もたくさんしてこられて随分と大きくなられた。それがサンチョは嬉しいのです。ですから少しくらいなら目を瞑りましょう」とサンチョは目を細めておまんじゅうみたいな顔をした。

 

その顔はいつだって僕を笑顔にしてくれる不思議な笑顔だ。

 

お父さんも大好きだけど、やっぱり同じくらいにサンチョも大好き。

 

「さすがサンチョ! じゃあ行ってくるね!」と僕は言った。

 

「ええ。お気をつけて」

 

 

 

*****

 

 

 

ぼわわっとした明かりが、洞窟の暗闇を照らす。

 

洞窟の中はやっぱり暗かったけど僕はあらかじめ持ってきたランプに火を灯した。

 

それでも奥まで明かりは全然届かないくらいに洞窟の中は広いみたい。

 

「おとーさぁん!!」

 

思い切り叫んでみたけど返事は返ってこない。どうやら奥まで行っちゃったのかな。

 

僕も一緒に連れていってくれたらよかったのに。っと思ったけどまあいいや。一人で探険しちゃうんだもんね。

 

僕はひのきの棒を握りしめて洞窟の中を流れてる川に沿って進んでみることにした。

 

「あ、そうだ。その前にサンチョにビスケット貰ったんだった。一枚食べよーっと」

 

腰に結びつけた布の袋から、サンチョにおやつ用に焼いて貰っていたビスケットを早速一枚取り出して口に入れる。

 

「うーん! やっぱりサンチョの作る物は何でも美味しいな!」

 

甘くて、香ばしくてとっても美味しくて、洞窟へ一人で入った不安も和らいだ。

 

おかげで足はどんどん動いてランプの灯す明かりにも目が慣れてきて、気がつくともう結構奥まで進んでいることに気がついた。

 

「楽しいな。お父さんに会ったらびっくりするかも。にひひ」

 

カコンッ。

 

すっかりこの洞窟に慣れてしまっていた僕は背後の方で小石が転がった音に、ただなんだろうという感じで振り返った。

 

「わっわあ!」

 

僕は声を上げる。

 

目と口の付いた青い丸っこい物体がこっちに向かって跳ねてきたからだ。

 

「スライムだ!」

 

ちっちゃくてプルプルとしたゼリーみたいにぴょこぴょこ跳ねてくるけどちゃんとしたモンスターだ。

 

僕はランプを地面に置いてひのきの棒を両手で握りこんだ。

 

初めてたった一人でモンスターと対峙して僕は一気に緊張が高まった。

 

「大丈夫! 大丈夫!」

 

と自分自身を落ち着かせて、飛びかかってきたスライムを僕は身を構えてひのきの棒で受け止めた。

 

バゴンッ!

 

衝撃はそんなに無い。

 

しっかり顔と体を守ればスライムくらい怖くないって僕は知ってるんだ。

 

「えいやっ!」

 

「ピギギ!」

 

一発目は外れた。

 

本当はお父さんみたいに素早く攻撃を続けたいけど、そうすると僕みたいな子供じゃ力が入らないし、なにより攻撃が当たらないってお父さんが言ってたっけ。

 

「両手でしっかり握って相手の動きをよく見るんだ」

 

僕はお父さんの言葉を口に出して、飛び跳ねるスライム目掛けて狙いを定めてひのきの棒を思い切り叩き込んだ。

 

今度は見事命中!

 

スライムは潰れたみたいに変形して川の中へと飛んで消えていった。

 

「やったあ〜! 僕一人でモンスターをやっつけたぞ! わーい!」

 

と僕は声を大にして喜んだ。

 

「よーし! ガンガン進んでお父さんに追いついちゃうぞ!」

 

僕は再びランプを手にして奥へと進んで行った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サンタローズの洞窟 その2

 

「右? 左? どっちがいいのかな」

 

奥へ進むと分かれ道。一方は真っ暗でもう一方も真っ暗だ。

 

「悩んじゃうね」と僕はひとり言。

 

僕はよく、ひとり言をしているなとお父さんに注意されちゃうけど、今日ぐらいはいいよね、と思う。

 

暗いところばっかり歩いてるとちょっぴり不安になっちゃうからね。

 

でもだからって別にモンスターが怖いわけじゃないぞ。ただなんとなくだもん。

 

お父さんの言葉を思い出す。

 

壁伝いに歩けば迷うことはないって言ってたっけ。

 

理由はなんでか忘れちゃったけど、お父さんがそう言ってたから間違いないことなんだ。

 

あとでまた理由をきいてみようかな。

 

ランプの油の量はまだたっぷりあるし、真っ暗闇の中をしっかり照らしながら僕はボコボコに突き出した岩壁を壁伝いに進むことにした。

 

お父さんは何でこの洞窟に来たのかな。

 

何があるんだろう。

 

知りたくって知りたくって仕方ない僕はどんどん進む。

 

すると今度は暗闇からパタパタって真っ暗なコウモリのモンスターが飛び出してきて周囲を飛び交いながら「ギギギ!」と威嚇してきた。

 

「なにさ! 来るなら早く来いよこのよわむし!」

 

ついさっき一人でもモンスターを倒せたことに自信がついた僕に震えは無かった。

 

あるのはお父さんの様なカッコイイ強さを持ったイメージ。

 

僕の剣じゃ切れないけど、相手をコテンパンには出来るし、だてに長い間旅の途中でお父さんの戦いをただ眺めていたわけじゃないんだから。

 

「お父さんに比べたらお前なんて止まってみえるぞ!」

 

冷静に僕は噛みつこうと向かってきたコウモリのモンスターにひのきの棒をたたき込んだ。

 

バコッ!!

 

「ピギュ〜」と参ったような声で地面に落ちたモンスターは、翼を開いたり閉じたりして痛そうにじたばたのたうち回り始めた。

 

その苦しそうにもがく様子に僕はなんだか可哀想に思ったけど、容赦しては駄目ってお父さんが教えてくれていたことを思い出した。

 

お父さんがそう言っていたから間違いないことだから、とどめを刺さないと。

 

でも………。

 

「もぉ、今回だけだよ」

 

僕は腰に結びつけていた布袋から薬草を取り出すと、それを指に付けて痛そうにもがいているモンスターに塗り付けた。

 

「モンスターにも効くのかな……」

 

「ピギギ」

 

すぐに効いたのかモンスターは何事もなかったように立ち上がる。

 

「よかった。効いたみたいだね。もう悪いことしちゃ駄目だよ」と僕は言った。

 

でも。

 

「ギギギ!!」

 

「痛っ!!」

 

そのモンスターは僕の腕に噛み付くと、そのまま闇の中へと飛んで消えていってしまった。

 

「ちぇ……」と僕は言う。

 

僕はまた薬草を取り出して、血が出ている腕に薬草を塗った。

 

「ちゃんとお父さんの言うとおりにすれば良かったな……」

 

でも。薬を塗ってあげた後のモンスターの表情は、一瞬だけど優しそうに見えたんだ。

 

僕ってば変なのかな。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

そらにくせしありきしか

 

「えーと……。そ…ら…に…く…せし……ありきしか……」とビアンカが言った。

 

「ありきしか?」

 

今は僕の部屋。

 

ビアンカのお父さんのお薬がまだ出来ていないと言うので、まだ僕の村に居たビアンカと遊ぶことにしたんだけど。

 

本を読んでくれるって言ってたから僕の部屋に来たのに、ビアンカってば本をベッドの上に開くなりなんだか難しい顔をしていた。

 

首を傾げ眉間にシワまで寄せちゃって、「うーん……」と唸っている。

 

僕はそんないっしょけんめいに本を見ているビアンカの隣に並んでその顔を眺めた。

相変わらずお人形さんみたいな顔をしていてなんだか突っつきたくなっちゃった。

 

「えいっ」

 

我慢出来ずにビアンカの眉間を指で突っつくとビアンカは「きゃっ」とか可愛らしい声をあげた。

 

不意を突けた僕は嬉しくなっちゃってもっとビアンカのお顔を指で突っつきたいなとウズウズ。

 

「何するのよリュカ!」

 

とシワの寄った眉間をさらに寄せて怒ってきたので、僕は教えてあげることにした。

 

「あんまりシワばっかり寄せてると不細工になっちゃうよ?」

 

「リュカが突然突つくからじゃない!」

 

ビアンカはまだ怒る。せっかく教えてあげたってのに困った子だなと思った。二つもお姉さんだからすぐには怒らないって言ってたのに。

 

ビアンカはため息しながら「まったくもう……、いーいリュカ?」と悟らせるようなことをまた言おうとしてきたので僕はすぐ、

 

「ビアンカ! 早く本読んで!」とお願いをした。

 

でもビアンカは首を振る。

 

「だーめ。ちゃんと良い子にしないリュカにはご本読んであげないんだから」

 

「僕良い子だもん! お父さんの言うことはちゃんと聞くし!」

 

昨日はお父さんの教えを破っちゃって痛い目に遭っちゃったけど、普段は自分で言うのもなんだけど凄く良い子なんだ。

 

「おじ様の言うことだけじゃなくて、私の言うことも聞きなさいよ」

 

「じゃあ、聞いたら本を読んでくれるの?」と訊く。

 

「もちろんよ」とビアンカ。

 

僕はすぐに頷く。いっぱい読んで貰って色んなこと知りたいし、覚えたいし。

 

だからビアンカが怒りんぼでも読んでくれるって言うならビアンカの言うこと聞いてもいいかな。

 

僕が素直に頷いたことが良かったのか、ビアンカも眉間のシワを解いてくれて笑顔を見せて「仕方ないわね。じゃあ、もう一回読んであげる」と言った。

 

「うん!」

 

また一緒に並んで本を眺める。僕は全く読めないけど、きっと楽しいことがたくさん書いてあるに違いない。

 

「えっと……。うーん……」とビアンカが言う。

 

「どうしたの?」

 

「ダメね。残念だけどリュカのおうちのご本、難しすぎて読めないわ」

 

「えぇ〜?」

 

がっくり。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サンタローズの洞窟 その3

 

サンタローズの洞窟 その3

 

どこまであるんだろう。

どこまで続くのかな?

この先に一体何があるんだろう?

お父さんはこの先で何をしているんだろうか。

 

僕は好奇心を抑えられず次の日もこの村の洞窟にやってきた。

 

好奇心を抱くことは大事なことだっていつも教えてくれてるお父さん。

 

後で叱られちゃうかもだけど、僕がこうなっちゃったのはお父さんのせいでもあるんだから気にせず探険しちゃうもんね。

 

大丈夫。今日の僕は道具屋のおじさんから、ひのきの棒よりしっかりしたこん棒に取っ替えっこして貰ったんだ。

 

足りない分はお小遣いから使っちゃったからもう使い果たしちゃったけど。

 

ぶんぶん振り回す。重みがあって叩かれたらひのきの棒なんかより何倍も痛そうだ。僕はすごく強くなったみたいで嬉しくなっちゃった。にひひ。

 

昨日のモンスター程度なら今の僕なら簡単にやっつけられるから僕はぐんぐんと進むことにした。

 

 

*****

 

 

途中に文字の書かれた木の立て看板を見つけたんだけど何て書いてあるのかな。

 

僕には読めなかった。

 

「……ビアンカの言う通り勉強も頑張んないとかなぁ。ちぇ」

 

何かの注意書きかな、と思ったけど今の僕には頼りになる武器もあったし気にせず進むことにした。

 

 

「ん?」

 

 

何かの足音に気がついた僕は音のする方へ目を向けるなり、暗闇から兎のモンスターが僕目掛けて突っ込んでくるのが見えた。

 

僕は反射的にこん棒を振り回す。

 

「えいっ!」

 

どごん!

 

と鈍い音を立てて兎のモンスターはその場で崩れ落ちちゃったので、僕は思わず「ありゃりゃ〜」と声をこぼした。

 

その分だけ反動があって手が痺れちゃったけど、手応えがあって強くなったことを実感できた。

 

「昨日のこともあるからもう行くけど勘弁してね」

 

 

*****

 

 

さらに奥まで進んだところで僕は行き止まりに当たったこと気がついた。

 

分かれ道があったところも進んでみたもののそこも行き止まり。

 

お父さんの姿もない。

どうやらお父さんのいる所は小舟でしか入っていくことの出来ない場所みたいだ。

 

「ちぇ。探険も終わりかな」

 

明日は一緒に小舟で連れて行ってくれないかなー、と考えながら洞窟を戻ろうとしたとこで岩かげに人が倒れているのを見つけた。

 

岩と岩との間に挟まれていて顔だけが出ていた。見覚えのある顔に思わず叫ぶ。

 

「ホビットおじさん!」

 

気を失っているのか目を瞑っていて、反応が無かった。

 

この村の薬師でビアンカのお父さんの薬を作ってもらうことになっていた人だ。

 

僕は慌てて声をかけると少しして目を覚ましたホビットおじさんは予想外の言葉を発した。

 

「いやあ……よく寝た。ん? 坊やはもしやパパスさんとこの息子じゃないか? 見ない内にちょっと大きくなったな!」

 

「そうだよ! 僕強くなったんだ! ってそんなことより寝てたの!?」とビックリ。

 

まさか死んでるのかと思ったからちょっと安心したけど。

 

「動けないのでついな。坊や、わるいがこの岩をちょっと押してくれるか。もう少しで動かせそうなんだ」

 

「うん!ちょっと待ってね!」

 

僕は力を込めてホビットおじさんが挟まれている岩をどかしてあげた。

 

「やれやれ助かった! 坊や、ありがとう! これでダンカンのおかみさんに薬をわたせるってもんだ!」

 

幸い怪我は無いようでホビットおじさんはすぐに立ち上がると「こうしゃいられない!」とすぐに歩きだした。

 

僕ももう洞窟に用が無いので一緒に戻る。

 

「ねえホビットおじさん! これでビアンカのお父さんの具合すぐによくなるのかな!」

 

ホビットおじさんは嬉しそうな顔して僕の方を見た。

 

「ああ! バッチリじゃ! 坊やのおかげだな!」

 

僕も嬉しくなって飛び跳ねた。

 

ビアンカ待っててね。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。