川崎沙希の青春ラブコメは突然始まる。 (たきゃ。)
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秋の夜空のもと、彼と彼女の物語は動き始める。前編

この話は基本、川崎目線で書いていきます。 時系列的には原作6巻の文化祭の後からということになります。


  総武高で過ごす二回目の秋、同じく高校生活二度目の文化祭を終え、すっかり日が落ちるのも早くなり朝と夕方は過ごしやすくなっていた。

 

 

―――早く買い物終わらせて帰ってあげないと大志たちがお腹空かしちゃう

 

 

  店内の時計に目をやると大方夕方の六時になろうとしていた。私――川崎沙希は今日の夕食の材料を集めカゴに入れていく。

  足を止めることなく私は無意識のうちに先日の文化祭のことを思い出していた・・・。

  文化祭二日目ももうそろそろ終わろうかという時、一人教室で呆けていた私のところに彼は急にやってきて急に去って行った。去り際にとんでもないことを言い残して。

 

『愛してるぜ、川崎』―――

 

  急に恥ずかしくなり我に返ると、目的地の野菜コーナーにやってきていた。文化祭のあの日以来私は気付くと無意識のうちに彼の言葉を思い出しては恥ずかしくなり、一人顔を赤くしていた・・・

 

―――はぁ、あいつのせいだよ・・・

 

  たくさん積まれているジャガイモの山に手を伸ばすと丁度他の人の手とぶつかった。

「あ、すいません――」そう言い終わらない内に顔を上げるとそこには

 

「ひ、比企谷っ!?」 

  思わず二歩くらいバックステップしてしまった。

「いやいや、どんだけびっくりしてんだよ?いくら俺の目が死んだ魚みたいつってもそんなにドン引きされたらさすがの俺も傷つくんだが・・・」

  そう、さっきまで私を無意識の内に顔を赤くさせていた張本人――比企谷八幡が私の目の前に現れて、すごく驚いてしまった・・・

 

―――は、ハズイ/// 本人を目の前にするとまた『あのときの言葉』を思い出しそうになる・・・顔赤くなってないかな///

 

「どうした川崎?顔真っ赤だぞ」

 

―――なってましたあああああああああ/// 恥ずかしすぎるんだけど!?

 

「い、いや何でもないから!!そ、それよりどうしてここに・・・?」

「まぁ、普通に買い物だよ。小町が夕食に肉じゃが作るから材料買ってこいってメールあったからな・・・。可愛い妹の手料理のためなら、趣味と特技が引きこもりの流石の俺も買い出しくらい行かんとな」

「・・・あんた本当にシスコンだねぇ。。。」

 

私は本当にこいつにドキドキしてたんだっけ。。。?

 

「うっせ、てかお前だってブラコンかつシスコンだろうが」

「いや、私は違うし!普通に姉として弟と妹を可愛がってるだけだし」

「いやいや川崎さん?それを世間一般ではシスコン、ブラコンって言うんですよ?」

「・・・あんたと一緒にされると否定したくなるのはなんでだろうね?」

「おいこら、当たり前のようにディスるんじゃねえ。雪ノ下かお前は」

 

ふふっ―――思わず笑みがでてしまっていることに自分で気付いた。

―――あれ?私普通に比企谷との会話を楽しんでるの!?

 

  気を抜くとまた顔が赤くなりそうなので、さっきのジャガイモに手を伸ばしてカゴに入れる。

 

「ん?お前んちも肉じゃがなのか?」

 

  彼が私のカゴの中の材料をみて尋ねる。

 

「そうだよ、今日の夕飯は私が作ることになってるからね。大志たち肉じゃが好きだし」

 

―――実際、美味しい美味しいと言いながら食べてくれる妹と弟を見ていると作り甲斐があるしこっちまでうれしくなってくる。

 

「ふーん、やっぱ料理とかできるんだな。俺もたまに小町の代わりに作ったりするがあんま難しいのはできないんだよな。。。」

「案外肉じゃがも簡単なもんだよ?最初は手間取るけど、慣れたら案外ね。私も今は一番肉じゃがが得意だよ」

 

―――あれ、なんでこんな会話してるの!?別に料理出来るアピールじゃないよ!??

 

  と、一人で脳内でノリツッコミをしてしまうくらいどうやら私は動揺しているらしい・・・

 

「ほう。。。そんな得意なら食ってみてーぐらいだわ、・・・なんてな」

「な!?」

 

―――ふえぇぇ!??? さらりとなに言ってんのこいつ!? 見なくても分かる。私は今絶対に顔が真っ赤に違いない・・・

 

「おい川崎?やっぱり顔赤いぞ大丈夫か?」

「もう!あんたのせいだよ!!」

「へ?お、俺!?なんで???」

 

―――もうダメ!早く出ないと私の体力がもたないよ!!

 

  私は頭にクエスチョンマークを浮かべる比企谷をかわしてレジに進み会計をさっさと済ませる。レジ袋に買った物を詰め込んでいると、同じく会計を終わらした比企谷が横でレジ袋に詰め込めはじめた。

  私は何だかまた恥ずかしくなって、ほんの少し距離を離した。

 

「で、さっきのはなんだったんだ川崎さんよ」

 

 ―――まだその話続けるの!? 

 

「い、いや、本当に何でもないから! 気にしないで手を動かしな」

「気にすんなって言われたら気にするのが人間なんですがねぇ・・・」

 

  うだうだ言いながらも、比企谷はもう言及することはなく、大人しくレジ袋に商品を詰め終えてくれた。

 

  無言ながらも二人して外に出ると秋の夜空はすっかり暗くなり、冷ややかな風が少し吹いていた。

  月の明かりにわずかに照らされている彼を見ると、なんだかいつもよりハッキリ顔が見えるような気がした。そしていつもより意識してしまうせいだろうか。 

  私の瞳は少し彼を恰好良い青年のように映した。

  私は少しオロつきながらも比企谷の方へ振り返り、別れの言葉をぎこちなく口にする。

 

「じ、じゃあアタシこっちだから・・・。また・・・ね」

  

「おう、またな」

 

  彼がそう言い終わらない内に私は帰る方向に向き直り、少し速足で歩きだした。このままだと動揺を隠せそうにないから。この胸の動悸がより速くなりそうだから。

 

  その瞬間―――、

 

 

 「え」

  

  私の右手にあったはずの少しばかり重いレジ袋は彼の――比企谷の手に移っていた。

 

 「六時って言ってももう暗いし、姉弟やら親の分の量も買ったから重いだろ・・・。まあ、なんだ・・・お、送ってくよ」

 「っ!!」 

 

  少しためらい、自ら顔を赤くしながらも彼の口から放たれた不意な言葉に、今度こそ私は他人から見ても分かるくらい頬を染めているだろう。まるで真っ赤な林檎のように。落ち着けようとしていた胸の鼓動はいっそう速くリズムを刻んでいる。

  

  そして、もしかしたら私は―――

 

 1話end

 

 




実は作者の初めてのSS投稿だったりするので、文章が拙いところはすいません。良かったら感想お待ちしています


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秋の夜空のもと、彼と彼女の物語は動き始める。後編

  スーパーでの買い物中、比企谷と遭遇した川崎沙希は動揺しながらもなんとか無事買い物を終えたはずだった。
  しかし、不意に彼の口から出た言葉に再び動揺し・・・


  突如彼の口から放たれた言葉に私は時が止まったかのように固まってしまった。いや、その彼、比企谷八幡も恥ずかしさからか同じく固まっている。

 

  「「・・・・・・」」

 

  無言が続く。と言ってもはたから見るとおそらく僅か10秒にも満たない程度だろう。しかし、当事者の私にとっては本当に時が止まってしまったのではないだろうかと錯覚してしまうほど長く感じた。

 

  比企谷という人物はこういうことが出来るような人だったであろうか。誤解して欲しくないけど、彼が優しくないというわけではない。むしろ彼はどちらかと言えば優しいほうだと思う・・・多分。

  いくら部活だからといって、今まで関ったことのない私の、しかも学校外の問題であった私の問題に対して真剣に取り組んでくれてスカラシップという解決策も教えてくれた。おかげでまた弟とも仲良く過ごせている。

 

  だから、多分彼は不器用なだけなんだろう。何か分かるような気がする。なぜなら私、川崎沙希も凄く不器用だから・・・

 

  その長く短い10秒の後、彼を見ると私が何も言わないせいでものすごくバツが悪そうな顔で固まっていた。

 

 ―――な、なんか言わないと!

 

 「えっと・・・じゃあ。比企谷、お願いしてもいいかな」

 

  私の言葉で、固まっていた彼は我にかえり恥ずかしそうにしながら私の横に並んだ。

 

 「おう・・・。あまりにも無反応だったからドン引きされたかと思ったわ。このまま警察に通報されるんじゃないだろうかと思って思わずダッシュで走りさるか考えちゃったよ・・・」

  相変わらず減らず口をたたく彼も、わずかに月明かりに照らされた顔を覗くと顔を赤くし、目があっち行きこっち行きと泳いで明らかに動揺しているようだった。

 

―――比企谷も恥ずかしかっただろうに。普段つるんでる雪ノ下や由比ヶ浜ならともかく、なんで私にこんな心配してくれたんだろう・・・

 

  二人して歩いている時も、さっきの気恥ずかしさからかお互い無言が続いた。横に並んでいるけど、何ともいえないぎこちない隙間が彼と私の間にあった。そしてその隙間を埋めるかのように彼が持ってくれている買い物袋が歩くたびに少し宙を揺れる。

  

  あまりにも無言が続いたので私は思わず変なことを口走っていた。

 

 「あ、あのさ・・・。あんたって彼女とか、いるの?」

 「・・・・・・は?」

 

 ――――!?! 何を聴いてるの私!? あまりにも唐突すぎだしぃぃ!!

 ――――ほら、比企谷なんかマジで口を開けたままぽかーんとしちゃってるし!

 

 「ご、ごめん!! い、い今のは忘れてっ!!!」

 

  私はいそいで発言を撤回し冷静さを取り戻そうとする。

 

 ―――ホント、私今日動揺しすぎでしょ!? どんだけ比企谷のこと意識してんの!??

 

  私が一人であわあわしていると、再び歩を進め始めた比企谷が口を開く。

 

  「・・・いきなりどうしたんだ。友達もいない俺になんで彼女がいるんだよ?まず友達くれよ・・・」

  「・・・由比ヶ浜や雪ノ下と仲いいじゃん。友達・・・ではないの?」

  「あいつらは・・・よく分からんな。同じ部活動ではあるが。」

 

―――付き合ってないんだ・・・ホッ

―――ってなんで私は安心してるの!? これじゃまるで・・・

 

  そうこうしているうちに私の家まであと少しのところまで来ていた。私は今度は冷静に、一つの疑問を彼に投げかけた。少し前から気になっていたことだ。

 

  「ねえ、話変わるけどさ。あんた文化祭終わってから大丈夫なの?」

 

  私の問いかけに確かに一瞬顔を暗くしながらも、彼は何ともないように答えた。

 

  「・・・大丈夫って何がだ?俺はいつも大丈夫ではないからよく分からんが。」

 

  彼はそう誤魔化した。まるで何ともないように。でも、私は先日見たのだ。朝、登校してきた彼が自分のシューズを取り出そうとしたときに靴箱にゴミが入れられているのを。そして、その時の彼の顔はとても哀しい顔をしていた・・・。

  どうやら文化祭の時、同じクラスメイトの相模南に対して彼が何かを言ったことが発端のようだが詳しいことはよく分からない。ひどい言葉を投げかけたようだが私は、彼が不必要にそんなことをするとは思えない。

  確かに口が悪いところはあるが、彼は人の気持ちをよく読む力がある。そんな彼がどうなるか結果が分からないで、クラスメイトに暴言を吐くとは思えないのだ。

  だからきっと彼は自分がに誹謗の矛先が向くとわかっていながらも、そんな行動をしたのではないだろうか。

 

  と言っても私も彼のことなんて詳しいわけではない・・・。普段特に会話するわけじゃないし、塾であってもそれは変わらない。

  きっと彼女たちのほうが――雪ノ下、由比ヶ浜たちのほうが彼のことをよく知っているし、よく理解しているだろう。 

 

「あんたがそう言うんなら何もきかないよ・・・」

 

  言いたくないなら別に言う必要なんてない。誰でも聞かれたくないことの一つや二つあるはずだ。

 

―――でも。

 

  気が付くと私のアパートの前まで来ていた。

 

―――人に言いたくないようなことを、相談してくれるような関係になれるのなら。

 

  私は比企谷から荷物を受け取り、礼を言う。

 

「ありがとうね、比企谷。本当助かったよ・・・」

「そうか、なら良かったよ」

彼は照れ隠しなのか、手で後ろ髪を掻きながらそう述べた。

「なら、俺も帰るな。小町にしかられちまう」

  そう言って、自らの家に帰ろうと彼は踵を返す。

 

 「待って比企谷!」

 

 気が付くと私はそう叫びながら彼の右手を掴んでいた。

 「ど、どうした川崎!?」

 「・・・じゃだめかな」

「・・・え?」

 

  もっと彼のことをよく知りたい、雪ノ下たち以上に―――、

 

  もし、いやなことがあったら相談してほしい、私に―――、

 

  だから、さきほど友達も彼女もいないとそう言った彼に対して私は無意識の内だろうか。いや、違う完全なる私の意志で言葉を述べていた。

 

 「わ、私と友達になって・・・!」

 

 こうして、私たちの歯車は動き始める。

 

 2話end

 




なんか思った以上に展開が遅いような気もしますがご了承ください・・・
全話合わせてそんなに長くならないと思うので、なるべく早い投稿ができるようがんばります


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そして、彼と私は友達になる。

前回、比企谷に友達宣言をした川崎だったがお互いの距離は縮まらず・・・?
高2生最後の大イベントを控えた彼女たちの関係は果たして――


  キーンコーンカーンコーン。授業の終わりを告げる鐘が教室内に響き渡る。

 

  文化祭も体育祭も終わった私たち高校二年生は祭りごとが終わり、多少落ち着きを取り戻したかというとそういうわけでもない。まあ国立の大学を目指す私にとってはもうちょっと教室内の雰囲気も進学校らしく勉強しやすい感じになってくれれば嬉しいんだけど、その願いが叶うのはもっと先になるだろう。というのも、クラスメイトたちが何にこんなにそわそわしているのかというと来週なのだ。来年受験生となる私たち高校二年生最後の楽しみとも言うべきイベント―――そう、修学旅行。

 

  そういうことでここ数日は皆ここ行きたいあそこも行きたいと、修学旅行のプランを立てるのに必死なんだ。ちなみに私たちは京都に行くことになった。

  まあご存じの通り私は特段仲良くしている生徒というのもおらず、自由行動の班もまだ決まっていない。(ちなみに文化祭のあと、なぜか海老名がやたらと懐いてきたのだが彼女はいつもの女王様御一行と行動するので自由行動は一緒に行くことはない)

 

―――まぁ、班が決まってないのはもう一人いるんだけどね、、、

 

  そのクラス内のもう一人のぼっち、彼――比企谷八幡に目を向けると退屈そうに欠伸をしながら帰る準備をしている最中だった。

 

―――私と友達になって

 

 あの夜、いきなり友達宣言してしまったのだがあの後自分で恥ずかしくなり、比企谷が突然の私の謎の宣言に混乱しておどついている中、アパートにダッシュで帰ってしまった。。。

 そしてあの日以来(と言ってもあれからまだ三日しかたってないけど)比企谷と会話もなく、まるで何もなかったかのように時が流れていた。

 だけど、私は決めていたんだ。今日は奉仕部が休みらしいということを耳に入れたのでチャンスは今日しかないと思っていた。

 

 比企谷が教室を気だるげに去るのを視界に入れ私も席を立ち、気付かれないように彼から12メートルくらい離れて昇降口まで下りていく。彼が下駄箱から靴を取り出し、校内用シューズと履き替える。

 

 ―――いまだ!

 

 「比企谷!」

 「!・・・川崎か、どうした?」

  平然を装っているように素気ない返事を返す比企谷だが、明らかに少し落ち着きがない。・・・まあ、もちろん私もソワソワしているのだがそこはスルーで。

 

―――少し恥ずかしいけど、勇気出せ、私。

 

  「えっと、、、ちょっと一緒に帰らない・・・?」

 

  明らかに比企谷は渋々であったけど、了承した彼が駐輪場から自転車を持ってくるのを校門前で待っていた。ちなみに私は先日自転車が故障したので最近は徒歩かバスで通学している。

 

―――ど、どんな会話すればいいんだろう?

―――とりあえず、修学旅行のことかな・・・

 

 そんなことに頭を巡らせていると彼の声が聞こえた。

 

 「またせたな・・・」

 「あ、・・・うん」

 「とりあえず、校門でようぜ。・・・ここは人が多すぎる」

 

  下校時刻となったこの時間は部活をやっていない帰宅生徒も多く、確かに一目につきやすい場所だった。

  それは私も同じ考えだった。というのも私たちぼっちは何か人が多いところやざわざわしているような場所は苦手だ。よく分からないけど、多分全国のぼっちさん共通なのであろう。

 

  私たちはしばらく歩を進め、ようやく落ち着いた場所に出た。信号機が赤に変わり二人同時に歩を止めたところで彼が口を開いた。

  

 「で、どうしたんだ? 珍しいこともあるもんだな」

 「え、いやその・・・・・・」

 

―――うーん、やっぱり少し恥ずかしいね。。。

―――でも!

  

  「・・・修学旅行の自由行動、一緒にまわらない?・・・なんて」

  「・・・・・・は?」

 

  彼は口を開けたまま、硬直した。何かついこの間も同じような比企谷のぽかーんとした顔を見た気がするけど、デジャヴ?

  

  「だれか一緒にまわる人、いた・・・?」

 

  私が再び質問すると彼の硬直がようやく解ける。

 

  「いや、いねえけどよ・・・。俺ぼっちだし」

  「なら、・・・いいよね?」

 

  しかし、彼は首を縦に振らない。

 

  「海老名さんとかとまわればいいじゃねえか。最近仲いいんだろ?」

  「海老名は三浦たちとまわるし・・・」

  「それもそうか・・・」 

 

―――なんかこいつ、遠回しに私をさけてない?

―――むぅ・・・少しイジワルしてやろう

   少し恥ずかしいながらも、上目使いで

 

 「わ、私じゃ・・・嫌なの?」

 「っ、い、いやそういうわけじゃないんでしゅけど」

 

  こうかはばつぐんだ!▼ 噛んでるし。顔を赤くして比企谷は下を向いた。

 

―――こういうあざといのがいいのかね、男って

  

  なんかの雑誌で見たあざといスキルを披露したことで、比企谷に効果抜群ということは分かったのだけどそういうことはどうでもいい。まだ、肝心の答えがまだ聞けていない。

  

  「で、どうなの・・・?」

  「ど、どうして俺なんだよ・・・?」

 

  信号が青に変わり彼が歩を進めようとした瞬間私はその問いに答えた。いや、答えなら三日前のあの日の夜、もうすでに言っていた。

  

 

  「ともだちだから」

 

  それからお互い会話がなく、無言で歩き続けた。

  彼は私の問いをどう思っただろうか、

  彼は私の答えをどう受け取っただろうか。

 

  隣にいるにも関わらず、聞けないことに少しもどかしさを感じながらも、私は彼の気持ちがよく分かった。おそらく彼は以前、友達関係などで嫌な出来事があったんだろう。

  だから信じ切ることができない。だって彼はあの夜由比ヶ浜たちを友達ではないといったのも、普通の人から見るとハテナだろう。はたからみると明らかに彼らの関係は友達のように見える。それに、同じクラスの戸塚、そして・・・ざ、材木?みたいなのも友達と彼は呼ばない。

 

  友達になってしまえば、裏切られたときがつらいから。彼はもしかしたらそのように思っているのかもしれない。

 

  でも、それは間違いだ。もしそのようになるのだとしたらその友達は『本物』ではない。それはクラスメイトたちがよくやっている薄っぺらい関係、社交辞令のような、レプリカのような。

  だから、私もかれもそのような関係は望まないんだ。

  なら、答えは一つしかない。

 

 

  私は彼と『本物』の関係を築きたい―――

 

  分かれ道まで来たがまだ彼は答えてくれなかった。

―――しょうがない、かな。また今度誘うしかないね・・・

「私こっちだから、じゃあ

私が彼に別れを告げようとした時だった。彼のほうを見ると彼もこちらを見ていた。

 

 

「じ、じゃあ、どこ行くとか・・・相談したいし。・・・よかったらメールアドレス教えてくれないか?」

「え・・」

「・・・と、友達なんだろ」

 

夕日が眩しく差し彼の表情を詳しく見ることはできなかったけど、彼が多分顔を赤くして、一歩を踏み出してくれたことは理解できた。それだけで十分だった。

私は彼の勇気(こたえ)に力いっぱい答えた。

 

「うん!」

 

そうして、彼と私は、友達になった。

 

-- 3話end --

 





なんだか途中いろはすがサキサキに憑依しりゃってましたね(汗
次回は修学旅行編です

良ければ感想、評価お待ちしております


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