仮面ライダーカブト (桂ヒナギク)
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Episode 1

 七年前、東京の渋谷に巨大な隕石が落下し、その一帯は壊滅した。

 その頃から、ワームという地球外生命体が姿を見せ、やつらは人々の殺戮を繰り返し、彼らに擬態して人間社会に浸透している。

 ZECTは、ワームに対抗すべく、マスクドライダーシステムの開発に着手した。

 港湾にワームが出現したとの情報がZECTに入った。

 指令車とゼクトルーパーが現場へ急行する。

 そこへ、後からバイクで駆け付ける新米の青木(あおき) 啓太郎(けいたろう)

「遅いわよ」

 そういうのは、上司の女性、鈴木(すずき) (あかね)だ。

「すみません」

 青木はカメラを手にゼクトルーパーとワームの抗争を撮影し始めた。

 無数のワームの内の一体が脱皮してアラクネアワーム・ルボアに変態した。

 ルボアが超高速移動(クロックアップ)をする。

 目にも留まらぬ速さでゼクトルーパーを倒していくルボア。

 ZECTはクロックアップの前に為す術もなく撤退を余儀(よぎ)なくされた。

 

 

 青木は帰路に就いていた。

 後ろから走ってきた男が青木にぶつかり、そのまま前方へ駆けていく。

 ポケットに違和感を感じた青木はそこに手を入れた。

(財布がない!)

 走り去る男を追い掛ける青木。

「俺の財布返せ!」

 男の前方から、赤木(あかぎ) 裕一(ゆういち)が歩いてくる。

「どけよ!」

 男がナイフを取り出して振り回す。

 赤木はひらりと(かわ)して男のナイフをはたき落し、財布を奪還して青木に投げた。

「覚えてろ!」

 男は捨て台詞を吐いて逃げていった。

「ありがとうな。しかしどうして避けなかったんだ?」

「俺の歩く道は俺が決める」

「はあ?」

 赤木は(おもむろ)に去っていく。

 

 

 遊園地にワームが現れた。

 駆け付けるZECT。

「青木くん」

「はい?」

「マスクドライダーシステムが届いたわ。これを使いなさい」

 鈴木がライダーベルトを青木に差し出した。

「出来上がったんですね!?」

「今はあなたしか頼れる人がいないわ。約束してた資格者もまだ来てないし。駄目元でやってちょうだい」

「解りました!」

 青木はベルトを巻いて指令車を出ると、敵地へと乗り込んだ。

「おい、ワーム! 俺が相手だ!」

 天に手を掲げる青木。

 赤いカブトムシ型のメカ、カブトゼクターが飛来する。

 青木はゼクターを掴もうとするが、それはひらりと避けて別の男の手に収まった。

 その人物は先日会った赤木だった。

「それは俺の!」

「選ばれし者は……俺だ!」

変身──と、赤木が腰に巻いてるライダーベルトにゼクターをセットする。

{HENSHIN}

 ゼクターから音声が放たれ、赤木の体がバトルスーツに包まれた。仮面ライダーカブト・マスクドフォーム。

「うわ!」

 青木は変身時の衝撃波で吹っ飛ばされた。

 カブトがカブトクナイガンでルボアを銃撃する。

 弾丸を連射し、ルボアを追い詰めていく。

 

 

To be continued...



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Episode 2

 追い詰められたルボアだが、クロックアップで形成を逆転させる。

 目にも留まらぬ速さでカブトを翻弄する。

 宙に舞い上がり、地面へ叩き付けられるカブト。

「カブト! ライダーシステムにはクロックアップに対抗する機能がついてる! それを探せ!」

 と、青木が言う。

「知ってるよ」

 起き上がり様に言うカブト。

「何?」

「悪いがこのベルトとは長い付き合いでね。この姿でどこまでやれるか、試してたんだ」

「それじゃ、まさか?」

 カブトは左手でゼクターホーンを起こした。

 ファンデルワールス(りょく)で貼り付いていたマスクドアーマーが浮き上がる。

「キャストオフ」

 右手でゼクターホーンを展開する。

{CAST OFF}

 アーマーが弾け飛び、カブトホーンが顎のローテートを基点に起き上がる。

{CHANGE BEETLE}

 仮面ライダーカブト・ライダーフォーム。

「うわ!」

 カブトのアーマーがぶつかり、宙に舞う青木。

「クロックアップ」

 カブトがベルトのサイドバックルを叩いた。

{CLOCK UP}

 カブトが超高速でルボアに反撃を始める。

 それは、青木が地面に落下するまでの一瞬の出来事であった。

 カブトが圧倒的な速度とパワーでルボアを完膚無きまでに痛めつけ、カブトクナイガン・クナイモードの刃先をルボアの胸部に突き刺した。アバランチスラッシュ。

 爆裂霧散するルボア。

{CLOCK OVER}

 その音声と共に青木が地面に叩き付けられた。

「痛!」

 青木はカブトを見る。

 ルボアの姿はない。

 カブトのゼクターが外れ、変身が解けた。

 青木は起き上がった。

「やったのか?」

「ああ」

 立ち去ろうとする赤木。

「待て。お前、職業は何だ?」

「それをお前に言って何か意味あるのか?」

「いや。しかし、カブトである以上は今の仕事を辞めてゼクトに入ってもらう」

「警察官だ」

 赤木はそう言い残して去っていった。

 青木はZECT指令車に戻った。

「彼は何者なの?」

「警察官、らしいです」

「そう。あ、ライダーシステム返して」

 青木はベルトを鈴木に渡した。

「じゃ、お先に失礼します」

 青木はそう言うと、指令車を出て帰路に就いた。

 

 

 警視庁の捜査一課では殺人事件の捜査会議が行われていた。

「赤木、何か報告はあるか?」

「一連の事件の犯人は、やはりワームであると自分は思います」

「ワーム……か」

 刑事部長が眉間にシワを寄せる。

「それで? そのワームはどうやって捕まえる?」

「捕まえる? いや、ワームは殺してしまうのがよいでしょう」

「ワームは普段は人間の姿をしてるんだろ? だったら人間の法を適用し、逮捕して檻に入れておけばいい」

「本性を現したらどうしますか?」

「それもそうだな。……やはり、不本意だが、ゼクトに任せるしかないか。解散!」

 会議が解散し、捜査員たちは部屋を出て行った。

 



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Episode 3

 都内某所の住宅街。

 赤木と彼の同僚が女を尾行している。

 女はワームであり、人々を殺戮している。

 警察は女を殺人罪で逮捕しようとしていた。

 女は背後の二人に気付き、路地裏へと入っていく。

 後をつけて路地裏に入ると、女はいなかった。

「うわ!」

 赤木の同僚が見えない力を受けて吹っ飛んだ。

 赤木はカブトゼクターを手に、バックルへとセットする。

{HENSHIN}

 電子音と共に赤木はカブトに変身した。

 カブトの目前に、ホタルのようなワーム、ランピリスワームの姿が現われる。

 カブトはカブトクナイガンを手に、ランピリスワームへ攻撃をする。

 ランピリスワームはクロックアップし、カブトを目にも留まらぬ速度で翻弄する。

「キャストオフ」

 カブトはゼクターホーンを展開した。

{CAST OFF──CHANGE BEETLE}

 ライダーフォームになったカブトはサイドバックルを叩く。

{CLOCK UP}

 カブトは高速でランピリスワームを攻撃する。

「ふっ! ふっ! はっ!」

 目にも留まらぬカブトの攻撃がランピリスワームに炸裂する。

{ONE TWO THREE}

 三つのフルスロットルを順番に押した後、一旦ゼクターホーンを反対へ倒し、パワーをチャージする。

「ライダーキック」

 ホーンを展開し、チャージされたパワーを解き放った。

{RIDER KICK}

 カブトの回し蹴りがランピリスワームにクリーンヒットし、そいつは爆裂霧散した。

{CLOCK OVER}

 カブトのバックルからゼクターが外れて変身が解ける。

「矢沢!」

 赤木が同僚の刑事を揺さぶる。

「う……、う……」

 横たわる矢沢が目を開ける。

「赤木……? 俺は一体?」

「女を追って路地裏に入ったらワームに襲われたんだ。さっきの女だろうな」

「そのワームはどうなった?」

「倒した」

「全く、お前にワームに対抗する力があって羨ましいよ」

「兎に角、署に戻って報告しよう」

 二人は警視庁の捜査一課に移動して上司に報告した。

「そうか。倒したか。赤木、この調子で頼むぞ」

「はい」

 赤木は返事をした後、矢沢を誘って食事に出た。

 飲食店に入ると、青木の姿を見付けた。

「青木か」

「赤木!」

 青木は驚いた。

「知り合いなのか、赤木?」

「赤木、そいつは?」

「同僚の矢沢刑事だ」

「青木です」

 青木が矢沢に握手を求めた。

 矢沢は青木の手を握った。

「よろしく」

「矢沢、青木はゼクトだ」

「ゼクトで思い出した。赤木、ゼクトに入ってくれ」

「嫌だね。俺は生涯警察官でいたい。……ま、協力ならしてやってもいい」

「本当か?」

「ああ。だがこれが必要だ」

 赤木は親指と人差し指で丸を作った。

「相談してみよう」

それじゃ──青木が店を出ようとした刹那、女の客が入ってきた。

 女と青木が見つめ合う。

「お、お兄ちゃん!?」

志織(しおり)か! 生きてたんだな!」

 赤木は志織と呼ばれる女を怪訝そうに見詰める。

 志織が赤木の視線に気付く。

「あら、お兄ちゃんの知り合い?」

「赤木だ」

「妹の志織です。兄がお世話になってます」

 赤木は疑った。この女がワームだと。

「矢沢、俺は少し外れる」

「ああ」

 赤木は店を出た。

 志織が追いかけてくる。

「赤木さん」

 立ち止まる赤木。

「何だ?」

「ランピリスワームを倒したのはお前か?」

「やはりワームだったか」

 赤木はカブトに変身した。

「はっ!」

 サナギワーム・サリスに変態した志織がカブトに迫る。

 カブトは接近してきたサリスにカブトクナイガン・アックスモードの刃を叩きつける。

 サリスは衝撃で脱皮してベルクリケタスワームに変態。そのまま飛び去った。

 



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Episode 4

 赤木は悩んでいた。

 ベルクリケタスワームは倒すべき相手だが、青木の妹であることに。

 やつを倒せば、青木はどう思うだろうか。

プルルルル──赤木の携帯が鳴った。

「はい?」

 赤木は電話に出た。

「赤木、新宿でワームによる殺人事件が発生した。直ぐに向かってくれ。住所は──」

 赤木は現場に急行した。

 現場は新宿の某所にある広場だった。

 赤木は見張りの警察官に手帳を呈示(ていじ)して中へ入った。

 被害に遭ったのは、坂口 賢介(さかぐち けんすけ)という二十五歳の会社員だ。

 遺体は溶けてしまっており、顔まではわからなかったが、所持していた免許証から直ぐに身元が割れた。

 その後の警察の捜査で、被害者とそっくりな顔をした男が見付かる。

 赤木はその男に接触した。

「何ですか?」

 赤木は男に警察手帳を見せた。

「警察だ。殺人事件の参考人として話が聞きたい」

「殺人? 僕が?」

「ああ。署まで来てもらうぞ」

 赤木は男を警視庁へ連行した。

 取調室で、赤木の推理を聞かせると、男は本性を現してサリスに姿を変えた。

 警視庁から脱走するサリス。

 赤木は後を追った。

「待て──っ!」

 拳銃で武装した警察官たちがサリスの正面に回り込む。

 そのサリスを助けるかのように、他のサリスたちが現れ、警察官たちを取り囲む。

 警察官たちは問答無用でサリスたちに発砲する。

 だが、サリスたちは微動だにしない。

 赤木がカブトゼクターを呼ぼうとすると、サリスたちが爆裂霧散した。

{CLOCK OVER}

 その音声と共に、蜂の姿をしたマスクドライダー─仮面ライダーザビー・ライダーフォームー─が現れる。

「マスクドライダー……?」

 と、赤木は疑問符を浮かべる。

 ザビーの腕からザビーゼクターが外れ、変身が解けて容姿端麗な女の姿になる。

「警視庁捜査一課刑事、あなたが赤木さんね?」

 女が赤木に訊ねる。

「失礼。私は吉崎 忍(よしざき しのぶ)。ゼクトの隊員よ」

「赤木 裕一だ。助けてくれなんて一言も言ってないが?」

「私はやるべきことをやっただけで、別にあなたを助けた訳じゃなくてよ」

 吉崎は赤木をまじまじと見詰める。

「俺の顔に何か?」

「いやね、あなた、よく見るといい男だなって。惚れちゃいそう」

「勝手に惚れるのは構わないが、付き合いはしないぞ」

「わかってるって。ま……今回は挨拶ってことで」

ところで──と、続ける吉崎。「ゼクトには入らないって聞いたけど?」

「ああ、入らない。だが、バックアップはする」

「ん……なるほど。……合格。協力もしないって言った時はそれなりの対応をするつもりだったけどね」

「それなりの対応?」

「あなたを倒すってことよ」

「ほう?」

「じゃ、私はこれで」

 吉崎は立ち去った。

 その様子を離れたところで見詰めるベルクリケタスワームは思った。使える。

 




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Episode 5

 青木の妹、志織が吉崎に接触した。

 志織は攪音波催眠を発生させ、吉崎を催眠状態にした。

「あなたにはカブトを倒してもらいたいの」

「わかりました」

 志織はその場を離れると、赤木を捜し始めた。

 赤木は直ぐに見付かった。

「見付けたわ。仲間の仇!」

 赤木の前に姿を見せる志織。

「お前か。お前と戦う気はない」

「どういうことだ?」

「青木の妹だからだ。お前を倒したら、青木に恨まれる」

「そう。ならこいつとはどうかしら?」

 吉崎が志織の後ろから出てくる。

「吉崎?」

 吉崎がザビー・マスクドフォームに変身した。

「赤木 裕一、あんたを殺す」

 不審に思った赤木はカブトに変身して応戦した。

「ワームに味方するとは、一体どういうつもりだ?」

 ザビーと殴り合いをしながら訊ねるカブト。

「あんたには関係ない」

 ザビーはカブトを吹っ飛ばした。

「キャストオフ」

 ザビーはバインドリングを展開し、ゼクターを半回転させた。

{CAST OFF──CHANGE WASP}

 マスクドアーマーが弾け飛び、ライダーフォームが露わになるザビー。

「クロックアップ」

 ザビーがトレーススイッチに触れ、クロックアップする。

{CLOCK UP}

 目にも留まらぬ速度でカブトを襲うザビー。

「うわ!」

 宙を舞ったカブトは、ザビーによって地面へ叩き付けられた。

「ぐっ!」

 蹌踉(よろ)めきながら立ち上がるカブト。

 ゼクターのフルスロットルを押すザビー。

{RIDER STING}

 ザビーの必殺の針、ライダースティングがカブトに炸裂した。

{CLOCK OVER}

「うわああああ!」

 カブトは吹っ飛び、地面に転がって変身が解けた。

「どうして戦わない? 赤木 裕一」

「戦う理由がない」

「ならば死ね!」

 ザビーが赤木目掛けてゼクターから針を発射した。

 赤木にザビーの針が接近してくる。

 だが、赤木には避ける力はなかった。

(ここまでか……)

 赤木がそう思った刹那、針はカブトゼクターによって弾き落とされた。

「何?」

 カブトゼクターは赤木の手に収まる。

「戦士に休息はなしってか」

 赤木はゼクターをバックルにセットした。

{HENSHIN}

 カブトに変身する赤木。

(恐らく、吉崎は操られてる。だったら)

 カブトはゼクターホーンを展開し、キャストオフをしてライダーフォームになった。

 三つのフルスロットルを押し、ゼクターホーンを反対側へ倒す。

「ライダーキック」

 カブトはゼクターホーンを展開し、ザビーの頭部に回し蹴りを放った。

{RIDER KICK}

「うっ!」

 頭を押さえるザビー。

「あれ? 私は何を?」

「使えない女め」

 志織は去っていった。

「吉崎」

 ザビーはカブトを見る。

「カブト……?」

 カブトとザビーは変身を解いた。

「私、今まで何を」

「お前はワームに操られていたんだ」

「何ですって!? あなたが正気に戻してくれたの?」

「ああ」

「れ、礼なんて言わないわよ」

 吉崎はそういうと、頬を赤らめた。

「ところで、吉崎は青木を知ってるか?」

「青木? そういえばそんな名前の男が鈴木班にいたわね。それがどうかしたの?」

「青木に伝えてやれ。妹はワームだってな」

「わかったわ」

それじゃ──と、吉崎は去っていった。

 



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Episode 6

「お前はワームに操られていたんだ」
「何ですって!? あなたが正気に戻してくれたの?」
「ああ」
「れ、礼なんて言わないわよ」
 吉崎はそういうと、頬を赤らめた。
「ところで、吉崎は青木を知ってるか?」
「青木? そういえばそんな名前の男が鈴木班にいたわね。それがどうかしたの?」
「青木に伝えてやれ。妹はワームだってな」
「わかったわ」
それじゃ──と、吉崎は去っていった。


 鈴木 茜は青木に言った。

「あなたの妹、志織はワームに擬態されている可能性があるわ」

「そんなことって……」

「悪いけど事実よ」

「調べたんですか?」

「吉崎っていうザビーの資格者がね」

「そんな……」

 落ち込む青木。

 ()(たま)れなくなった青木は帰路に就いた。

 志織がワームだなんて、そんなことがあるか。そう思う青木。

「お兄ちゃん」

 青木が家までの道を歩いていると、後ろから呼び止められた。

 振り返る青木。

「志織……?」

 志織が青木に歩み寄る。

「志織、お前は志織だよな? ワームじゃないよな?」

「ワーム? 何それ?」

「そ、そうだよな! 俺、てっきりお前が殺されたんじゃないかとずっと思ってたんだ」

「死んでたらこうしてお兄ちゃんの前に現れないわよ」

「それもそうだな」

「……あのさ、お兄ちゃん」

 志織の顔に影が差さる。

「何だ?」

「今日、これから空いてる?」

「空いてるけど。……?」

「久しぶりに会ったんだからさ、どっか食べに行こうよ」

「ああ、そうだな」

 青木は志織と並んで歩き出した。

 その後ろをゼクトルーパーが()ける。

 それに気付いた志織は、彼らを誘い込むことにした。

「晩御飯には早いから、どっか寄っていこう?」

 そう言って、志織は青木と一緒に公園へ入っていく。

 公園の広場で、二人はゼクトルーパーに囲まれる。

「お兄ちゃん、どういうこと?」

「やめろ! こいつは俺の!」

 前に出て(かば)う青木だが、その後ろで志織はベルクリケタスワームに変貌してゼクトルーパーをなぎ倒していく。

 ベルクリケタスワームが志織の姿に戻ると、サリスたちが現れた。

「お兄ちゃん、私の仲間が、お兄ちゃんに擬態したいって」

「……………………」

「お兄ちゃんもワームになって、ワームの中で生き続けようよ」

 突然のことで戸惑う青木。

 その時、赤木が現れた。

「人は人を愛すると弱くなる……けど、恥ずかしがることはない。それは本当の弱さじゃないから」

「……赤木?」

 サリスたちが赤木に接近する。

 赤木はカブトに変身し、カブトクナイガン・アックスモードでサリスたちを粉砕していく。

 志織はベルクリケタスワームに姿を変えると、カブトに襲いかかった。

「ぐっ!」

 倒れるカブトだが、直ぐに立ち上がり、また攻撃を食らう。

「どうして戦わない?」

「これは俺のではなくお前の戦いだ。どうする? 決めるのはお前だ」

 青木は木偶の坊状態のカブトを見て腹を(くく)った。

「もうやめてくれ……。カブト! 頼む!」

 倒されたカブトはすっくと立ち上がる。

「キャストオフ」

 ゼクターホーンを展開。

 ファンデルワールス力でくっついていたマスクドアーマーが浮き上がる。

{CAST OFF}

 マスクドアーマーが弾け飛び、顎のローテートを起点にカブトホーンが起き上がってライダーフォームになるカブト。

{CHANGE BEETLE}

 雨が降り始めた。

「クロックアップ」

 カブトはサイドバックルを叩いた。

{CLOCK UP}

 降っていた雨が宙で静止した。

 カブトは目にも留まらぬ速さでベルクリケタスワームを攻撃していく。

 ベルクリケタスワームは反撃する間も無く圧されていた。

「は!」

 ベルクリケタスワームを思いっきり蹴り飛ばすカブト。

{ONE TWO THREE}

 フルスロットルを押し、ゼクターホーンを倒してパワーをチャージする。

「ライダー……キック……」

 カブトはゼクターホーンを展開。

{RIDER KICK}

 クロックアップで接近してくるベルクリケタスワームに、カブトは必殺のカウンターキックを叩き込んだ。

「ぐわ!」

 吹っ飛ばされて倒れるベルクリケタスワーム。

{CLOCK OVER}

「お……お兄……ちゃん……」

 ベルクリケタスワームは徐に立ち上がって言う。

 青木がベルクリケタスワームを見る。

「し、志織!」

 ベルクリケタスワームは微笑むと、爆裂霧散して消滅した。

 雨が止み、変身を解くカブト。

「赤木! 俺は、いつかお前を超えてみせる!」

 そういう青木に対して、赤木は笑みを浮かべるのであった。

 




感想を是非。


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Episode 7

 夜道を歩く女性の後を尾ける、てんとう虫のエピラクナワーム。

 足音に気付いた女性は慌てて駆け出したが、しかし、エピラクナワームがクロックアップで女性の前に回り込み、女性の体液を(すす)ってその彼女をミイラ化させて殺害した。

 そのミイラ化した死体が翌朝に発見され、殺人事件として警察が捜査を始めた。

 被害女性の所持品から免許証が出てきた。

 織田 峯子(おだ みねこ)という若い女性だった。

 赤木が織田の家を訪ねると、織田と同じ顔の女性が出てきた。

「警察だ。殺人事件について聞きたいことがある」

 赤木がそう言って警察手帳を見せると、女性は彼を突き飛ばして走り去る。

「待て──っ!」

 赤木は追う。

「止まらないと撃つぞ!」

 赤木は拳銃を取り出した。

 女性は立ち止まり振り返る。

 赤木も止まるが、拳銃を構えたままだ。

「お前、ワームだな?」

「ワーム? 何ですかそれ?」

(とぼけているのか?)

「なぜ逃げた?」

「面倒なことには関わりたくなかったのよ」

「そうか。悪かったな」

 赤木は拳銃をしまい、(きびす)を返した。

 女性はニヤリとほくそ笑むと、エピラクナワームに変態した。

「やはりな」

 襲いかかってくるエピラクナワームに飛来したカブトゼクターが攻撃を浴びせる。

 蹌踉めくエピラクナワーム。

「貴様、資格者か」

 振り返る赤木。

「貴様らワームはなぜ人を殺す?」

「人? 違うな」

「何?」

「我々が殲滅(せんめつ)しているのはネイティブだ」

「ネイティブ?」

「三十五年前、我々より先にこの地球(ほし)に入り込んだ侵略者だ。我々はそれを殲滅するために送り込まれた宇宙警察だ。貴様ら人間がネイティブ殲滅の邪魔をするというのなら容赦はしない」

「……………………」

 赤木は言葉を失った。

プルルルルル──赤木の携帯が鳴る。

「はい」

 赤木は携帯に出た。

「赤木か。先ほどの遺体がワームに変わった」

「何だと?」

「遺体がワームに変わったんだ」

「死んでるのか?」

「ああ、死んでる」

「今立て込んでるんだ。後でまた聞く」

 赤木はそう言って携帯をしまった。

「それで? どっちにつく?」

「少し考えさせてもらおう」

「いいだろう」

 エピラクナワームの姿が赤木の視界から消えた。

 

 

 帰路に就いた赤木。

(遺体がワームに変わった……やつの言ってることは本当なのか)

 赤木は考え事をしていた。

ドン──赤木は四十半ばの男性とぶつかった。

「あ、すまん」

 赤木がそういうと、「こちらこそ」と男性が返した。

「ん? あなた、六本木署の鳥居 勘三郎(とりい かんざぶろう)さんでは?」

「そうですけど、あなたは?」

「警視庁捜査一課の赤木です。あなたの噂は聞いてますよ」

「そうですか」

「お怪我はされてませんか?」

「大丈夫ですよ」

 鳥居はそう言って立ち去った。

 赤木は警視庁に戻る。

「遺体がワームになっただと?」

「はい」

 同僚の刑事とともに霊安室へ移動する。

「これなんだ」

 同僚の刑事がワームの遺体を赤木に見せる。

「こいつは……」

 それはツノの生えたサリスだった。

 赤木は思い出す。子どもの時、親を殺害したサリスを……。

 




友情出演:鳥居勘三郎
 石ノ森章太郎作、おみやさんの主人公。


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Episode 8

 十年前、赤木の両親が彼の見てる前でネイティブに殺害された。

 二体のネイティブは両親の遺体を始末すると、彼らに擬態した。

 それを見ていた赤木に気付いた擬態両親が、彼に歩み寄る。

「どうしたんだ?」

 赤木は恐怖を覚え、その場を逃げ出した。

 その後のことはよく覚えていない。気付いたら祖母の家にいた。

 赤木は祖母に事情を説明し、二人で東京を離れた。

 それから、大人になった赤木は、帰京して警視庁の警察官になった。

 赤木は捜査会議に参加しているが、しかし、頭の中はエピラクナワームとの会話のことでいっぱいだった。

(どっちにつくべきか……)

「……かぎ! 赤木!」

「え?」

「会議、終わったぞ」

 同僚の言葉に我に返る赤木。

 気が付けば部屋には同僚と赤木の二人だけだった。

「どうしたんだ、赤木? ずっと上の空だったじゃないか」

「すまん。ちょっと悩み事」

 その時、署内に放送が流れた。殺人事件が発生したのだ。

「行こう!」

 二人は現場に駆け付けた。

 現場の遺体はドロドロに溶けていた。

 赤木は遠くでこちらを見ている女に気付く。

 女は容姿端麗で、赤木の胸が高鳴った。一目惚れをしたのだった。

(あの人は……?)

 赤木が見ているのに気付いた女はその場を立ち去る。

「どうした、赤木?」

「いや、今、女性がこっちを見ててな。すげえ可愛かった」

「惚れたのか?」

「なっ……!? んな訳ないだろ!」

「どうだか……」

「聞き込み行くぞ」

 近隣で聞き込みを開始する赤木たち刑事。

 あちこちで聞き込みをしていると、先ほどの女性を見付けた。

「君!」

 赤木は女性に歩み寄った。

「君は、さっき殺人現場の近くにいたね?」

「え? ええ、まあ……」

「君の名は?」

金子 聡美(かねこ さとみ)です」

「金子さん、あなたはなぜあそこに?」

「た、たまたま通りかかっただけですよ。そしたら刑事さんたちが来て」

「被害者と面識は?」

「ないです」

 赤木は遺体の遺留品にあった運転免許証を思い出した。

 顔も名前も同じだ。

「そうですか。もう結構ですよ」

 頭を下げて立ち去る聡美。

 赤木は聡美を尾行した。

 聡美は赤木の尾行に気付くと、角を曲がりながら走った。

「……!?」

 赤木は追いかけるが、行き止まりであるのに聡美の姿がない。

「まだ何か?」

 聡美が背後に現れて訊ねた。

「ワームか?」

 聡美がサリスに姿を変えた。

 赤木の手に収まるカブトゼクター。

 刹那、赤木の脳裏にエピラクナワームの言葉がよぎった。

 変身すべきか……。

 赤木は迷う。

 サリスは言った。

「戦わないのですか?」

「お前たちの目的は、角の生えたワームを倒すことなのか?」

「ご明察」

「ではなぜ擬態した人間を殺す?」

「人間? 何を言ってるのです? 我々はネイティブを倒し、そのネイティブだった者に擬態しているにすぎないのですよ」

「それに嘘偽りはないんだな?」

「ええ」

 サリスは聡美の姿に戻る。

 そこへゼクトルーパーがやって来る。

「撃て──っ!」

 ゼクトルーパーが聡美に向かってマシンガンを放った。

 聡美はサリスになり、抵抗する。

「うわ!」

 次々に吹き飛ばされるゼクトルーパー。

「やめろ! 人間を巻き込むな!」

 サリスは攻撃しながら訊ねる。

「なぜ? 彼らはネイティブに味方してるのよ?」

 その様子を、物陰から見ている何者かは、「お前は私のもとまで辿り着けるかな?」と。

 



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Episode 9

「変身!」

 赤木はゼクターをベルトにセットしてカブトに変身し、サリスを取り押さえる。

「放して!」

 ゼクトルーパーがサリスに弾丸を連射する。

 サリスに当たった弾丸が火花を散らす。

 そこにプレクスワームが現れた。

「私の可愛い部下に手を出すな!」

 プレクスワームがクロックアップでゼクトルーパーたちをなぎ倒す。

「カブト、貴様もだ」

 プレクスワームがカブトを宙に打ち上げた。

 宙を舞うカブト。

 ゆっくりと落下するカブトを、プレクスワームは思い切り地面に叩き付けた。

「がはっ!」

 カブトの仮面の下で吐血する赤木。

「キャストオフ」

 立ち上がり様にゼクターホーンを展開してライダーフォームになるカブト。

{CAST OFF}

 弾け飛んだアーマーがプレクスワームを襲う。

「刑事さん」

 サリスが口を開いた。

「何だ?」

 カブトはプレクスワームと戦いながら言った。

「その方を殺さないで」

 カブトはプレクスワームを殴ろうとする手を止める。

「だが……」

「その人だって、ネイティブを倒さなきゃって」

 その時、倒されたゼクトルーパーたちが起き上がり、ネイティブに変態する。

「なに?」

 ネイティブたちがプレクスワームを襲う。

「そういうことか」

 カブトはクロックアップを発動し、ネイティブたちに攻撃を仕掛ける。

「はっ! ふっ!」

 カブトの蹴りで爆裂霧散するネイティブたち。

{CLOCK OVER}

 カブトの周囲の時間の流れが元に戻る、と、同時に変身を解いた。

 その様子を見つめている何者か。

「ん?」

 赤木が何者かの気配に気付いて振り返る。

 しかし、そこには誰もいなかった。

「どうしました?」

 と、聡美の姿に戻るサリス。

 プレクスワームは姿をくらましていた。

「いや、誰かに見られている気がしてな」

 聡美も赤木の目線の先を見る。

「誰もいませんよ?」

「気のせいだったのかもな」

 赤木は歩き出す。

「逮捕、しないのですか?」

「君が殺害したのは人間じゃなかった。それでいいだろ?」

「ありがとうございます」

 聡美は去ってゆく。

 赤木は仲間と合流した。

「そっちはどうした?」

「殺害されたのは人間じゃないことがわかった」

「どういうことだ?」

「角の生えたワームだ。ネイティブっていうやつだ」

「ネイティブ?」

「そのネイティブを殺害したのは、宇宙警察機構を名乗るやつだが……」

「何者なんだ? そいつ」

「ワームだ」

「ワームだって? ZECTが追ってるやつじゃないか」

「人類はZECTに騙されてるんだ。本当の敵はネイティブだ。ワームは地球を侵略せんとするネイティブを処刑しているにすぎない」

 赤木がそう言った刹那、青木が現れた。

「ZECTが人類を騙してるだと?」

 振り返る赤木。

「青木……?」

「赤木、お前は俺が倒す」

 青木がガタックゼクターを呼び出した。

「……!」

「変身!」

{HENSHIN}

 青木がバックルにゼクターをセットしてガタックというクワガタムシのライダーに変身した。

「キャストオフ!」

 ゼクターホーンを展開するガタック。

{CAST OFF──CHANGE STAG BEETLE}

 アーマーが弾け飛び、左右のガタックホーンが起き上がった。

 



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Episode 10

「赤木、変身しろ」

「戦う理由がない」

 赤木はガタックの攻撃をかわす。

「仕方ないな」

{HENSHIN}

 赤木はカブト・マスクドフォームに変身した。

 カブトがガタックに対抗する。

「ふっ! はっ!」

 カブトがガタックを圧倒する。

 が、しかし、ガタックがクロックアップした。

 目にも留まらぬ速さでガタックがカブトを翻弄する。

「くっ!」

 カブトはキャストオフする。

 ライダーフォームになったカブトが、クロックアップした。

「青木、話を聞け」

「うるさい。ワームに味方する奴は敵だ」

「違う! ワームはネイティブを倒す為にやってきた宇宙警察だ!」

「ネイティブ? なんのことだ?」

 ガタックの攻撃が止まった。

「角の生えたワームを見たことがないか?」

「角の生えたワーム?」

「ああ。奴らはネイティブと言ってな」

「そいつがどうしたんだ?」

「ワームはそいつらが地球侵略を企んでいるのを察知して倒しにきたんだ。現にワームに殺された人物は皆ネイティブだ」

「証拠はあるのか?」

「ワームが殺害した被害者の遺体を見た。ネイティブに変わったんだ」

「そうなのか……?」

 クロックオーバーする二人。

 カブトとガタックは変身を解いた。

「どういうことか説明してくれ」

「いや、まだ捜査中ではっきりしたことはわからないんだが……、ワーム側の話によるとそういうことだ。あとはその裏を取る必要がある」

「どうやって?」

「俺がZECTに入隊する」

「何?」

「入隊するって言ってるんだ」

 赤木は赤城山(あかぎやま) 裕一郎(ゆういちろう)の名義でZECTに入隊した。

 赤木は見習い隊員として、青木の下に就くことになった。

 ZECTに潜入し、内部情報を調べる赤木。

 隊員たちの話を聞くと、ZECTはアンチ・ミミック弾なるものを開発している様だが……。

「赤木、どこまで掴めたんだ?」

 青木は誰もいないところで赤木に訊ねた。

「ワームをあぶり出すアンチ・ミミック弾を開発しているらしい。それ以外はまだ何も掴めてない」

 赤木はこれ以上ZECTにいても何も掴めないと考えて組織を抜けて警察官に戻った。

 内部から掴めないのであれば、外側から掴むということだ。

 警視庁の警視総監がZECTのトップであると噂を聞いていた赤木は、警視総監室へ入った。

「あんたがZECTのトップか?」

「うむ。それを聞いて何になるのかな?」

「ZECTは何を考えてる?」

「例え知っていたとしても、私は誰にも教えない。自分で調べたまえ」

 部屋を出る赤木。

「警視総監と何を話していたんだ?」

 通りかかった同僚が訊く。

「防衛省の件でな」

「ZECT関係のか?」

「なぜお前が知ってる?」

「え? あ、いや、何でもない。忘れてくれ。じゃ!」

 駆け足で去っていく彼に対して赤木は怪訝(けげん)に思った。

 



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Episode 11

 庁内にZECTのエスがいる、そう考えた赤木は慎重になっていた。

 一方、巷では、ZECTがアンチ・ミミック弾でワームの一斉あぶり出しを行おうとしていた。

 アンチ・ミミック弾を運ぶ鈴木班。

 秋山がトラックを運転していると、目の前にサリスの大群が現れた。

 急ブレーキでトラックを止める秋山。

 赤木の言葉が半信半疑の青木は、どうしようか迷いながらも外に出てガタックに変身した。

 ガタックバルカンで弾丸を連射してサリスたちを粉砕する。

 そこへベルバーワームが乱入し、ガタックをクロックアップで翻弄する。

「うわ!」

 宙に舞うガタック。

 ベルバーワームはガタックを地面に叩きつけた。

「がはっ!」

 ガタックの仮面の下で吐血する青木。

「キャストオフ!」

 ガタックは起き上がり様にゼクターホーンを展開してライダーフォームにキャストオフした。

「クロックアップ!」

 サイドバックルを叩くガタック。

{CLOCK UP}

 ガタックとベルバーワームが超高速の世界で格闘をする。

「ふっ! はっ!」

 ガタックは攻撃をするが、(ことごと)(かわ)すベルバーワーム。

「お前の攻撃は見切っている」

 ベルバーワームはそう言ってガタックを殴り飛ばした。

「うわああああ!」

 宙を舞うガタック。

 そこへスズメバチの格好をしたライダー、ザビーが現れた。

「何をやってるんだ、青木」

「誰だ?」

 ザビーがゼクターから針をベルバーワームに向けて連射した。

 ベルバーワームは針を躱して戦線を離脱した。

 変身を解くザビー。その下から現れたのは、天谷(あまがい) (さとし)だった。

 天谷はシャドウ隊の隊長で、ザビーの資格者である。

「天谷さん!?」

 驚き戸惑うガタック。

「変身を解け。ワームはもういない」

「あ、ああ……」

 ガタックは変身を解いて青木の姿に戻った。

「天谷さん、どうしてザビーなんかに?」

「どうしてだろうな。突然、ゼクターに選ばれたんだ」

「そうなんですか」

「て言うか、お前がガタックとはな。何があった?」

「俺、一回死んだんです」

「死んだ?」

「はい」

「そうか」

「……それだけですか?」

「詳しくは聞かない。辛い体験だったろうからな。あの世は存在したのか?」

「あの世は、確かにありました」

「そうなのか」

「はい」

 その時、銃声と共に天谷の装着しているザビーブレスが、着弾と同時に吹っ飛んだ。

 振り返ると、カブト・マスクドフォームが立っていた。

「あ、赤木?」

「ザビー、死ね」

 カブトが弾丸を放つ、が、もう一体のカブトが現れてそれを受け止めた。

「カブトが二人?」

「こいつは俺じゃない」

 ガードした方のカブトが言う。

「誰なんだ? そいつ」

「奴は擬態だ」

 カブトはもう一体のカブト目掛けて走り出した。

 カブトクナイガン・クナイモードで斬り付けようとするが、キャストオフされ、弾けたアーマーで吹っ飛んだ。

 アーマーの下から現れたのは、黒いカブト、ダークカブトだった。

「赤木 裕一は一人でいい……」

 サイドバックルを叩くダークカブト。

{CLOCK UP}

 ダークカブトがクロックアップでカブトに迫り……。



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Episode 12

「ぐわっ!」

 吹っ飛ぶカブト。

 ダークカブトが目にも留まらぬ速度でカブトを翻弄する。

「くっ……!」

 地面に転がったカブトは覚束無(おぼつかな)い足取りで立ち上がる。

「トドメだ」

 ダークカブトがライダーキックをカブトの頭部にお見舞いする。

「うっ!」

 カブトは気を失って倒れた。

「ふん」

 ダークカブトは去って行った。

「赤木!」

 青木がカブトの元へ駆け寄る。

 ゼクターを外し、変身を解除させる。

「赤木、しっかりしろ!」

 青木は赤木を揺さぶるが反応しない。

「天谷さん、救急車!」

「あ、ああ!」

 天谷は119番通報で救急車を呼び、赤木を病院に搬送した。

 赤木は集中治療室でドクターの緊急オペを受けた。

 結果、手術は成功だった。

「う……」

 病室で目を覚ます赤木。

「赤木!」

「……誰?」

 赤木は記憶を失っていた。

 青木は手帳を見せた。

「ZECT……? わからない」

「自分の名前はわかるか?」

「名前?」

「ああ、そうだ」

「赤木、赤木 裕一だ」

「お前は警察官だ」

 そこへ赤木の同僚が駆けつける。

「赤木! 大丈夫なのか!?」

 赤木は問う。

「あなたは?」

 青木が言う。

「赤木は記憶を失ってます」

「君は?」

 青木はZECTの身分証を見せた。

「あんた、ZECTか」

 同僚は赤木を見る。

「うっ!」

 赤木が頭を押さえる。

「大丈夫か?」

 同僚がナースコールをして看護士を呼んだ。

 看護士は赤木の様子を(うかが)って、ドクターを呼びに行った。

 ドクターが駆け付ける。

 ドクターの話によると、赤木は頭部に強力な打撃を受けて一時的に記憶を失ってるとのことだった。

 だが、一つ問題がある。

 それは、赤木の脳が人間のソレではないと言うことだ。

「先生、どう言うことですか?」

「結論から言おう。赤木くんは人間ではない」

「何ですって!?」

「赤木くんはワームの可能性がある。監察医をやってる友人に見てもらったのだが、赤木くんの脳はワームのソレに酷似している」

「赤木が、ワーム……?」

 青木が診察室で医師の説明を受けてる一方、病室では赤木がネイティブに襲われていた。

「く、来るなバケモノ!」

 ネイティブの攻撃を避ける赤木。

「お前の記憶が飛んでいて助かったよ。悪いが消えてくれ」

 ネイティブの次の攻撃が、飛来したカブトゼクターによって弾かれる。

「何だと?」

 カブトゼクターがネイティブを攻撃して追い返す。

「今度は何なんだ?」

 その時、赤木はカブトムシ型のワーム、ビートルワームに姿を変えた。

「こ、これは……?」

 ビートルワームの脳裏に今までに起こったことがよぎる。

(そうか。思い出した。俺は、ワームだったのか。でも、なぜ?)

 そこへ青木がやって来る。

「ワーム!?」

 振り向くビートルワーム。

「待て」

 赤木の姿に戻る。

「赤木……なのか?」

「ああ。全部思い出した。だが、なぜ俺がワームなのか、それがわからない」

「お前のことだ。それを捜査するんだろ?」

「当然」

 赤木はその日のうちに退院し、自分の過去を洗い始めた。

 子どもの頃、両親をネイティブに殺されたオリジナルの赤木は、逃げる途中にネイティブに殺され、擬態されていたことがわかった。

 そして、それを見ていたビートルワームが、赤木に擬態していたのだ。

 赤木は、ネイティブの殲滅を、オリジナルの赤木のため心に決めたのだった。

 



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Episode 13

2年ぶりの更新です。


 ダークカブト・ライダーフォームがワームと交戦している。

「ライダーキック!」

 ダークカブトがワームに飛び蹴りを叩き込んだ。

 ワームは緑の血液を撒き散らして爆裂霧散した。

{CLOCK OVER}

 頭を失ったサリスは、後ずさりを始める。

 刹那、ダークカブトの体が空中へ舞い上がった。

「な!?」

{HYPER CLOCK OVER}

 電子音と共に、カブト・ハイパーフォームが姿を現す。

「貴様は?」

 ハイパーカブトは無言で落下してきたダークカブトに追い打ちをかけるように攻撃を浴びせる。

「悪いが貴様には消えてもらう」

「その声は、僕の偽物か」

「お前が言うな」

 ハイパーカブトがハイパークロックアップする。

{HYPER CLOCK UP}

 電子音が聞こえたあとの一瞬。ダークカブトが吹っ飛び、壁に激突して落ちると、変身が解けた。

{HYPER CLOCK OVER}

 消失したライダースーツの下から、ネイティブが擬態した赤木の姿が露わになる。

「なんなんだその速さは。全く見えなかった」

 ベルトからカブトゼクターとハイパーゼクターがはずれ、変身の解除とともにその二機がどこかへ飛び去る。

 ライダースーツの下から、ワームの赤木が露出。

 ワームの赤木は懐から拳銃を取り出した。

「人間の武器で我々に敵うと思うな」

「試してみるか?」

 赤木は赤木ネイティブに銃口を向ける。

「貴様らネイティブが三十五年前に地球に来て侵略活動をしていたのは調べがついている」

「フッ!」

 赤木ネイティブは笑う。

「侵略だと? 我々は貴様らワームに星を追われ、地球に逃げ延びただけだ。我々は人間との共存を望んでいるんだ」

 バン、と弾丸が放たれ、赤木ネイティブに被弾した。

「ぐっ!」

 腹部に穴が開く。

「なにを言ってる。ワームは宇宙警察機構だ」

消えろ——赤木は赤木ネイティブの頭部を撃ち抜いた。

 絶命した赤木ネイティブは擬態が解けてネイティブの姿になった。

 赤木は拳銃をしまい、戦場を後にする。

 その赤木を、少し離れたところに建つビルの屋上から、女が見つめていた。

「ん?」

 視線に気づき、振り返る赤木だが、その先に女を見つけることはできなかった。

 

 

 ある工場の前に、ZECTの隊員が集まっている。

 一部の隊員はワームの目を逃れて中に侵入していた。

 工場に産み付けられた卵を根絶やしにするため、爆弾を仕掛けているのだ。

 無事、工場から出てくる隊員たち。

 工場が大爆発を起こし、ワームもろとも工場を吹き飛ばした。

「作戦成功だ。帰投する」

 隊員たちは基地へと帰っていった。

 



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