とある日、地王、帝王、大魔王との激戦から1年、悠岐達が現実世界へ帰った後、人里に住んでいる、稗田阿求は現実世界と幻想郷の過去について書物に記していた。
「はぁ、まさか現実世界のことまで書くことになるなんて・・・」
大きな溜め息を吐きながら彼女は言う。悠岐達が帰る前、彼女はある一人の男に記すことを命じられていた。男の名前は現実世界最強と呼ばれた男、小宝剛岐である。そんな彼の命令を無視することが出来ない彼女は彼の命令に従った。そして今に至る。と、その時だった。トントンと彼女の部屋にノックが入った。
「入ってどうぞ。」
彼女は部屋の外にいる人物に呼び掛ける。その瞬間、一人の少女が入ってきた。少女は阿求より少し小さく、少し緊張しているのか、中々部屋に入ろうとしなかった。そんな彼女に阿求が口を開いた。
「怖がらなくていいんですよ。さ、こちらへ座って下さい。」
「あ、ありがとうございます。」
そう言うと少女は阿求に案内された場所へ座る。そんな彼女に阿求がいろいろ尋ねた。
「そういえば、あなたの名前は?」
「はっはい、私の名前は河口玲子と言います。玲子って呼んでもらえれば結構ですから。」
「玲子さんですね、分かりました。ちなみに私の名前は稗田阿求って言います。なんと呼んでくれても構いませんよ。」
「じ、じゃあ阿求さんって呼ばせてもらいますね。」
「結構ですよ。それにしてもここへ人が来るなんて珍しいですね。」
「私って珍しいんですか?」
「主にここへ来るのは妹紅さんや慧音さんなんです。でも、あのお二人は人間ではないんです。」
「つまり、妖怪ってことですか?」
「あのお二人は人間も含まれてますが、妹紅さんは蓬莱人ですし、慧音さんは半人半獣ですからどっちにしろあのお二人は人間じゃないんです。」
「じ、じゃあ現実世界から来た人達の中では特に誰が来てたんです?」
「悠岐さんとミクさんですかね。あのお二人も私のこの書物に興味を抱いてくれましたからね。」
「そのお二人ってどういう人だったんですか?」
「この書物を読めば分かりますよ、とその前に幻想郷の方から見たほうがあなたのためになると思いますよ。」
「そ、そうなんですか?ま、まぁ私も幻想郷の過去に起こったことはよく分かりませんから色々知っておくのも悪くはなさそうですね。」
「読みたい時にくれば私はいつでもあなたにお見せしますよ。」
「じゃあ私、また今度来ますのでその時は宜しくお願いします!」
そう言うと彼女は部屋に一礼をした後に小屋を出ていった。そして阿求は再び筆を手に書物を書き始めた。
翌日、阿求はいつものように書物を記していた。と、その時だった。トントンと彼女の部屋にノックが入った。彼女は昨日来た玲子と同じ対応をした。
「どうぞ。」
その瞬間、一人の少年が入ってきた。年は10代前半あたりで背丈は阿求と同じくらいだった。彼は赤面しながらも阿求に言った。
「こ、こんにちはっ!」
恥ずかしながらも少年は阿求に挨拶する。そんな彼に彼女は口を開いた。
「そんなに恥ずかしがることはないんですよ。まずは深呼吸して落ち着いて。」
そう言われた少年は彼女の言う通りに深呼吸をした。そして再び彼女に口を開いた。
「あ、あの・・・僕はお母さんに『幻想郷についてもっと勉強しなさい』って言われて・・・さらに慧音先生にも言われたから、ここにいる阿求さんなら教えてくれるかなぁって思って。」
モジモジしながら言う少年に対して阿求は笑顔を見せながら少年に言った。
「実は私、慧音さんとは腐れ縁みたいなものでしてね、あなたが来ることは知ってたんですよ。だから私はあなたに幻想郷について教えることが出来ますよ。」
「そうなの!?じ、じゃあいろんなこと教えてね!」
「いいですよ。まあ、まずはここに座ってお茶でも飲んだらどうですか?」
「あっうん、そうするよ。」
「素直でいいですね、今お茶を用意しますんでそこに座って待ってて下さい。」
そう言うと彼女は奥の部屋に行ってしまった。少年は彼女の言われた通りに言われた場所へ腰を下ろした。そして彼は部屋を見回し、目を大きく見開く。そこには多くの書物が棚にしまわれていた。それを見た彼はただ呆然とするしかなかった。
「お茶を持ってきましたよ。おや、これらの書物にお気に召しましたか?」
彼女の掛け声で少年ははっと我に返る。そして彼女が用意したお茶を一口飲む。そして阿求は少年に尋ねた。
「お聞きしたいことがあるんですが、あなたのお名前は?」
「あ、僕の名前言ってなかったね。僕の名前は田中達也だよ。」
「達也さんですね?分かりました。ちなみに私の名前はご存知ですよね?」
「うん、稗田阿求さんだよね?」
「そうですよ。そう言えばあなたは幻想郷の歴史について知りたいんですよね?」
「あ、うんそうだよ。」
「だったら、ついでに現実世界の歴史についても学ぶのはどうでしょうか?」
「げ、現実世界?」
「1年前、この幻想郷に現実世界から来た人達がいたじゃないですか。そして神も降りてきた日があったじゃないですか。」
「う~ん、あっ分かった!僕はその人達の中から小宝剛岐さんに憧れてるんだ!」
「小宝剛岐さんに?」
「うん、僕はいつか小宝剛岐さんのように世界一強い人になりたいんだ!」
「大きな夢ですね、それが叶うといいですね。」
「そう言えば阿求さんには夢はないんですか?」
「私の夢は世界が平和になることです。それ以外はありません。」
「そうなんだ。」
「少し幻想郷の人についての書物を見せてあげますよ。」
「本当?ありがとう!」
「じゃあまずは霊夢さんから見ましょうか。」
西田悠岐・・・波動を司る程度の能力。
一般的にはさとりと似通った能力。波動の力で様々な攻撃を放ったり(龍の波動、波動弾、悪の波動等)、人の心を読み取ったりすることが出来る。また幽霊と会話することも出来る。他にも『想起テリブルスーヴニール』も使うことが出来るし、炎も使いこなすことが出来る。悪魔の目へと変化できる左目が一番の力の源。
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博麗霊夢編
「あ~暑い、暑い。」
そう言いながら何かが入っている袋を持ってある場所へ向かう青年、森近霖之助がいた。
時は10年前の夏、幻想郷の技術があまり発達していないこの時、ある一つの命が誕生していた。それを祝うために彼が向かった場所は博麗神社だった。
博麗神社に到着した霖之助は神社の方へと歩く。賽銭箱の目の前に来た瞬間、彼は鋭い視線を感じ、神社の中を見る。そこにはおぞましい形相をして彼をじっと見つめる女性がいた。言われなくても表情を見れば分かっている。そう思って彼は賽銭箱の中に金を1銭入れた。その瞬間、女性がガッツポーズを取り、先程霖之助が入れた金を取り出し、それを見つめ始めた。そんな彼女に霖之助は言う。
「君はそうやって参拝客をもてなしているのかい?」
「当たり前でしょ?そうしないと家計が忙しいんだから!」
「まぁそれはさておき、産まれたんだろう?子供が。」
「子供?えぇ、そうよ。今連れてくるからそこで待ってなさい。」
そう言うと彼女は神社の中に入っていった。10秒も経たない内に彼女は寝ている赤ん坊を連れて来た。霖之助は赤ん坊を見ながら言った。
「可愛い子を産んだんだね。それで、名前は決めたのかい?」
「えぇ、勿論よ。この子の名前は・・・
霊夢、博麗霊夢よ。」
「博麗霊夢か、いい名前だね。彼女をこれから博麗の巫女としてやっていけるように育てていかないとね。」
「えぇ、そうね。私が頑張らないと。」
「あ、それとこれ僕からの祝いのプレゼント。」
そう言うと彼は何かが入っている袋を彼女に渡した。彼女はすぐにその中身を見た。中に入っていったのは赤ちゃん専用の服等が入っていた。彼女は霖之助に笑みを見せて言った。
「ありがとな、霖之助。」
そのまま彼女は霊夢を連れて神社の中に入っていった。そして霖之助も香霖堂に帰っていった。
だが2年後、突如彼女が命を落とした。博麗家と霧雨家の争いで彼女は力尽き倒れた。霊夢は彼女の帰りが遅いと目を覚まし、神社の外へ出た。そこには血まみれで倒れている彼女とそれを見つめる長身で後ろ髪が腰まで伸びていて前髪は一部が前に垂れている青年がいた。霊夢はすぐに彼女の元へ行った。そして彼女を揺らしながら言った。
「お母さん!お母さん起きてよ!」
「れい、む・・・私はもう、駄目だ・・・私は・・・もう命が、ない。」
「そんな!お母さん駄目!起きてよ!」
「ハァ、ハァ・・・霊夢、もう少し、寄りなさい。」
彼女に言われた霊夢はすぐに彼女に泣きながら飛び付いた。泣く霊夢を彼女は抱き締めながら言った。
「ごめんね、霊夢。私は、少しの間しか、お前を見ることが、出来なかったよ・・・本当、に、ごめんね・・・」
彼女の目からも涙の粒が零れ始めた。泣く二人を青年は黙って見ることしかできなかった。そんな彼に彼女が言う。
「グ、グランチ・・・頼みが、あるんだ・・・」
「何かな?卿の頼みは私が引き受けよう。」
そう言うと彼は彼女の元に腰を下ろし、彼女の冷たい手を握った。そして彼女が言う。
「霊夢を・・・霊夢を任せたよ・・・私はもう、無理だ・・・紫と共に、この子を・・・。」
そう言った瞬間、彼女は息絶えてしまった。霊夢は泣きながらも彼女を抱き締め続けた。青年の顔には悔しい表情が浮かんでいた。そして独り言のように言った。
「・・・承知した。彼女は私と八雲紫で育て上げよう。」
そうして青年と霊夢の生活が始まった。青年は霊夢を起こしては毎日家事のやり方やスペルカードの使い方等を教えた。そして休憩の時、霊夢が青年に言った。
「ねぇ、おじさんはお母さんとどういう関係なの?」
「私かね?腐れ縁のようなものだよ。」
「腐れ縁?」
「後に知ることになるよ。さて、私は少し出掛けてくるよ。君はそこで待ってなさい。」
そう言うと彼は霧のように消えていった。彼が消えた瞬間、スキマが霊夢の目の前に現れ、その中から一人の女性、八雲紫が現れた。そして一人で彼を待つ霊夢に言った。
「霊夢ちゃん、疲れたでしょ?私とご飯食べようか。」
「いや、私はあのおじさんが帰って来てからにする。」
「あら、そうなの?じゃあ私もここで待っていようかしらね。」
しばらくすると青年が帰って来た。彼は紫がいることに気付き、言った。
「おや、スキマ妖怪、来ていたのかね。」
「えぇ、ちょっとご飯を食べたくなってね。」
「そうか、まぁいい。さて、昼食にしようか。」
そう言った瞬間、霊夢は飛び上がりながら青年の足に飛びつく。そんな彼女を抱き上げた彼はそのまま神社の中に入っていった。紫も中に入っていく。料理している彼に霊夢はニヤニヤしながら見る。そんな彼女に青年は言う。
「こらこら、料理は出来るまで秘密だよ?」
「はーい!」
そう言うと霊夢は紫の元へドタドタ走っていった。そして飛びついた。紫は押し倒されたものの、すぐに霊夢を抱き上げた。そして言う。
「ちょっと、急に飛びつかれたら痛いじゃない。」
「あはは、ごめんなさ~い。」
そう話している内に料理をし終えた青年がやって来た。彼が作ったのはみんな大好きなカレーライスだった。それを見た瞬間、霊夢はすぐに食いついた。それを見た青年と紫は思わず笑ってしまった。そしてその後に二人もカレーを食べる。食べ終わると霊夢はすぐに眠ってしまった。それを見た紫は青年に言った。
「可愛い子ね、元気で。」
「しっかりとした大人になってもらいたいものだな。」
「ところで、あなたは私のしたいことに乗ろうと思わない?帝王梟雄。」
「卿のしたいこと?それは霊夢がよき存在になってからにしよう。今はやる気が出ないのでね。」
「そうなのね・・・」
「スキマ妖怪よ、私は現実世界に戻る。霊夢の記憶から私を消しておいてくれたまえ。彼女と戦う時がいずれやって来るからね。」
「分かったわ、あなたとの戦いも期待してるわよ。」
そう言うと彼は寝ている霊夢の頭に手を置いた。そして言った。
「良き存在になるのだよ。また会おう。」
そして彼は神社から出てそのまま霧のように消えていった。彼が消えた後、紫は霊夢の頭のところにスキマを展開した。そしてその中に手を入れた。そして彼女の記憶から青年メルト・グランチを消した。紫の顔には涙が零れていた。彼女が消えた幻想郷が悲しかったからである。
次は魔理沙さんの過去を見ましょう。彼女にも色々なことがあったんですよ。
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