CINDERELLA GIRLS×GRP TOKYO Highway XTREME RACER's M@STER (アマネモ)
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opening DEMO movie
A Moonside 00:01


opening DEMO movie now loading...


@

 

「ん・・・」

 

 あるホテルの一室に微かに聞こえた音は、男女の接吻によるものだった。

 だが、そのキスに含まれていたのはほんの僅かな怒り

 ・・・いや、嫉妬という方が正しいか・・・

 だった。

 

「プロデューサー・・・。

 貴方、今、別なコト、考えていたでしょ」

 

 唇が離れ、女性の方がそう言った。

 

「・・・すまんな、奏。

 悪気はないんだ」

「普通の女の子なら、そんなこと言ったらとっても怒るわよ」

 

 つまり実際に言われた目の前の女性、速水奏が怒っていないかといえばそうとは言い切れない。

 言い切れないが、怒っているようには見えない。

 

「そろそろ、なんじゃない?」

「あ・・・あぁ、そうだな、出るか」

 

 そうして二人、速水奏とプロデューサーはホテルをチェックアウト。

 

「ドイツ語だと、乗り物は「女性」だったわね。」

「なんだ突然」

「私には“乗らなかった”のに、クルマには“乗る”のね」

「あのなぁ・・・」

「ちょっとした意地悪よ」

 

 二人はそのまま、駐車場に止まっていた一台のクルマに乗り込む。

 この駐車場でそのクルマだけ、纏っていた空気が冷たかった。

 そのクルマの名はFC3S。

 

「せめて運転中は、止めてくれよな」

「そうね・・・。

 プロデューサーが運転を誤れば、全国3万6千人のファンを敵に回す事になるわ。

 だから、しない」

「ほっ・・・」

「安全運転でね」

 

 FCのエンジンに火が入り、特徴的なロータリーサラウンドミュージックが駐車場に奏でられる。

 

「私のクルマなんだから」

 

 そして、あまり静かとは言えないエキゾーストを残してFCはホテルの駐車場から夜の街へ消えていった。

 

@

 

 

【挿絵表示】

 

 

「んー、今日はこれでかな?」

 

 ガレージで一人、女性が自分の仕事に納得していた。

 その仕事とは、自らの愛車の整備である。

 名前をBCNR33と言い、そのクルマもまた、やはり纏っている空気が独特なものだった。

 

「R、今日の感じはどう?いい?」

 

 ツナギに染み付いた機械油の臭いは、お世辞にも女性の香りではない。

 

「じゃ・・・行くとしますか・・・!」

 

 だが彼女、原田美世にとってはどんな香水よりもそれがお気に入りなのだ。

 決して香水を知らない訳では無い。

 

「水温・・・ok」

 

 自慢の愛車、そのドライバーズシートで各種計器を確認する彼女の姿には一切の迷いがない。

 

「油温・・・ok」

 

 目を瞑ってても同じことが出来る。

 それだけの自信と、このクルマに対する信頼が彼女の仕草から伝わってくる。

 

「ok、R・・・!」

 

 そうして、美世が操るR33はガレージを出る。

 スグにでも飛び出したいのだがグッと押さえて、時代遅れな手動式シャッターを下げ施錠する。

 

「今夜は・・・逢えそう、かな?」

 

 シートに座り直した彼女はそう一言口にして、クラッチペダルからジワリと力を抜いた。

 

 R33はそのまま、法定速度でまだ始まったばかりの夜に溶けていった。

 

@

 

 原田美世の駆るR33と速水奏を乗せ、プロデューサーがドライブするFC。

 

 二台は違う場所、違う時間に動き出した。

 

 だが、この二台はまるで示し合わせたかの如く、同じ場所を目指していた。

 

 ・・・何故?

 

 此処日本には、美世のR33や奏のFCの様な空気を纏うクルマの楽園があるのだ。

 

 その楽園は、かつてこう呼ばれていた。

 

 

「首都高速道路」。

 

 

 

 略して、「首都高」と。

 




opening DEMO movie NEXT...

@

オープニングの後、少々待つことで流れ始めるデモムービー。
これまでのシリーズとは異なり、ストーリーモードのプロローグを思わせる構成となっている。
その為、デモムービーとしては若干長め。


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GAME shop TRIAL version movie
A Moonside 00:02


GAME shop Trial version movie

now loading…


《you win》

 

 電子音声の乾いた一言が車内に響く。

 

「大分、こいつの乗り方が解ってきたよ、奏。」

「そうみたいね。

 プロデューサー、顔に出ているから、判りやすくていいわ」

 

 先の電子音声とこの二人の声。

 それは「首都高サーキット」の新環状、湾岸線下り区間を疾走するFC3Sの車内にあった。

 

「これで5勝したけれど、まだ走るの?」

「あぁ」

 

 FCは11号台場線区間に移り、レインボーブリッジが近づいてくる。

 

「じゃぁ、私にひとつ教えてくれない?」

「何をだ?」

「そうね、キスの時に考えていた別なコト。

 その正体が知りたいかな」

「ん、そうだな・・・人だ。女性だ」

「・・・女・・・?

 貴方って、キスの時に別な女の事を考えるの?」

 

 奏は助手席からプロデューサーの首を撫でる。

 その手つきは、ドコを掴めば・・・という狙いを定めるそれだった。

 運転中に首を絞められたらただでは済まないのは明白である。

 

「よせっ、あぁ!

 言い方が悪かったよ!

 事務所のアイドルの事だっ」

「・・・そう言って納得する女の子は、私以外にいるのかしら?」

 

 どうやらこの男、アイドルのプロデューサーにも拘らず女性との会話は若干苦手な様だ。

 奏はプロデューサーの首から手を離す。

 

「別の部署で問題児が居てな、ウチで預かるコトになった。」

「へぇ・・・。

 誰?私も知っている人?」

 

 プロデューサーは横に首を振った。

 

「生憎、俺も名前しか知らない、が・・・」

「もしかして・・・"此処"の住人なのね、その人」

「相変わらず、奏は察しが良いな。

 ワンダラー登録されていてな、走行距離400km未満が条件らしい」

 

 2人とも、後方から1台何かが来ているのを感じながら話を続ける。

 

「それで私のクルマを走らせているの」

「俺のナナマル、2000kmはいっているからな」

「私は都合が良かった?」

「それだけじゃない」

 

 バックミラーで車影を確認出来る距離になった。

 

「黒のZ33・・・」

「"彼女"じゃないわ」

「なぜ判る?」

「女の勘ってやつ」

「男の勘もそうだと言っているが?」

 

 車内に取り付けられたカーナビ風専用コンソールが、車両データと「バトル」を受信する。

 Zのドライバーは、男。

 

「当たったら男の勘とは言わないの」

「じゃ、何て言うんだ?」

 

 21世紀の首都高にとって、既にこの専用コンソールは常識である。

 

「走り屋の勘」

「なら奏のもじゃないのか」

「ふふっ、どうかしらね?」

 

 走り屋を合法のレーサーへ昇華させる事に成功し、史上類を見ない「首都高サーキット」の円滑な進行を可能としているのは、この専用コンソールが迅速に走り屋へ普及したからに他ならない。

 

「それで。

 どうするの、後ろの彼は」

「当然、やるさ」

「男って単純ね」

 

 奏はそう言いながらもコンソールに手を伸ばし、「開始」のアイコンをタッチする。

 すると画面が変化し、両者の「スピリットポイント:SP」ゲージ、走行マップ、バトルタイムが専用コンソールのタッチパネルを埋める「バトルモード」となった。

 更にその画面に大きくカウントが始まる。

                    5

「男はそれでいいんだよ。だがこの場所、しゅt」

                    4

 プロデューサーが言いかけた口を奏が人差し指で閉じる。

                    3

「 ”此処を走るヤツは老若男女クルマ含めて全てがイコールだ” でしょ」

                    2

「・・・そういうこと」

                    1

            そして画面には、シンプルな2字が浮かぶ。

 

                    GO

 

「じゃ、お手並み拝見ね」




GAME shop TRIAL version movie NEXT…

@

体験版ではこのムービーの後にZ33とバトルを行い、その後は「首都高サーキット」を自由に走行できるフリーランに移る。
御馴染みSPバトルも行えるが、登場するのは所謂「名無し」のみ。

製品版でのこの場面は、原田美世側からこのバトルに遭遇するまでをプレイする。

「ストーリーリプレイ」からこの体験版のプレイが可能。
ただしZ33とのバトルのみで、フリーランに移らず美世と遭遇する。


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STORY MODE NEW GAME
A Moonside 00:03


START EPISODE now loading...


《you win》

 

 電子音声の乾いた一言が車内に響く。

 

「今夜は逢える、そんな気がする・・・」

 

 先の電子音声とこの声。

 それは「首都高サーキット」の環状線、C1内回りを疾走するBCNR33の車内での事だ。

 

「もう一周・・・そうだね、R」

 

 R33のドライバー、原田美世にとってクルマは幼少期から共にあった自分の一部。

 中でもこのR33とは10年来の付き合い、自分の身体より神経と意識が馴染む程の存在だ。

 

「・・・感じる・・・レインボーブリッジから?」

 

 自分と同じ気配を持つ人物が"判る"様に、彼女は此処を走るクルマの気配が判る。

 

「よし」

 

 今夜、自分と走るクルマの気配だ。

 

@

 

 C1を一周する必要はなかった。

 

「居る・・・間違いない。

 この先に居る・・・!」

 

 自然にアクセルを踏む右足に力が入る。

 眼前の、直前までそのクルマとバトルしていたのであろうZ33を難なくパスし、追撃。

 2、3とコーナーを抜けた先で、お目当てのクルマに遭遇した。

 

「あれだ、FC3S・・・」

 

 極自然に左手がコンソールに伸び、「バトル」を送信する。

 彼女が選んだのは一定距離先のゴールを目指す「ロードスプリント:RS」バトルだ。

 

「・・・」

 

@

 

「ワンダラーネーム「レッドシャイン」。

 車種、BCNR33。

 ドライバー、原田美世・・・女性」

「ビンゴだ。

 向こうから来たな」

 

 奏とプロデューサーも美世のR33を認識する。

 

「どうするの?」

「PAに誘って缶コーヒー、って訳には行かなそうだな」

「最寄りのPAも、そんなに近くないわ」

「じゃあ、仕方無い。

 まずは先に腕前拝見といくか」

「ハイハイ」

 

 奏はコンソールをタッチする。

 先程のSPバトルとは違い、RSバトルの「バトルモード」画面は、バトルタイム、走行マップ、そしてレース順位のみとシンプルだ。

 R33の前にいるFCは、スタート時点で1位扱い。

 

「今夜は・・・楽しめるな・・・!」

 

 プロデューサーはステアリングの感触を確かめ、不敵にそう呟いた。

 

@

 

「いくよ!」

 

 カウントが「GO」になったと同時に、美世の右足がアクセルペダルを踏みつける。

 それに呼応する様にタコメーターとブースト計の針が一斉に右側へ傾き、320km/hスケールのスピードメーターもジワリと頂点を示す。

 

(向こうのFC・・・思ったより加速が鈍い。)

 

 首都高に走るFCは、大抵が軽量なボディとロータリーエンジンにモノを言わせた加速重視に仕上げられている事が多く、美世もそういうFCを相手にした事は少なくない。

 当然前のFCも加速ではR33を引き離したが、追い付く事に造作も無い位だった。

 

「なら湾岸系か・・・厄介かな!」

 

 では、大抵ではないFCは単純に考えると最高速重視という事になるのだが、この場所、新環状でFCのその仕様は相性がいいのだ。

 

(湾岸合流までに前に出られるか・・・だね)

 

 このバトルのスタート地点が丁度C1内回りとの分岐点を過ぎた所で、そこから再度C1内回りと合流するまでが今回のRSバトルとなっている。

 大抵のFCは湾岸に合流してからのストレート区間で速度が伸びず、そこを悠々と追い抜かれるのだが、大抵ではないFCはストレート区間で追い抜かれてから粘るのだ。

 

(ブロックも巧い・・・。

 走行ラインを重視しない辺り、実戦系のバトル派だ・・・)

 

 ここ数年で路面整備が行き届き、すっかり「サーキット」らしくなった首都高。

 大掛りなタイムアタックも容易になり、レコードラインに相応するモノも出来つつある。

 今や「いかにそのラインを走り続けるかで首都高最速は決まる」と嘯く者達も多い。

 

「だから!」

 

 美世はレコードライン上を走るサポートアザーカーと、それを躱すFCの間をくぐり、FCの前に躍り出る。

 

「よし!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

@

 

 かつて、まだこの首都高が「首都高速道路」として運用されていた頃。

 きちんと制限速度が示され、概ねそれを守って通行する車が渋滞を作っていた頃。

 そんな首都高を違法なスピードで駆け抜けた走り屋達はこう言った。

 

「首都高は、生き物である」

 

 目まぐるしく変わる交通状況は首都高に2つと同じ姿を持たせず、常に”生きていた”。

 「首都高サーキット」として生まれ変わる時、運営は”生きている首都高”に拘った。

 その結果誕生したのが「走るパイロン」と呼ばれるサポートアザーカーだった。

 

@

 

 実戦系に見受けられる、余裕を持ったアザーカーパスを、見事に突かれてしまった。

 

「見事だな」

「やるね、彼女」

 

 FCの車内では今のオーバーテイクに評価が下っていた。

 

「湾岸合流よ、プロデューサー」

「だな」

「どうするの?

 湾岸でFCは、キツイんじゃない・・・?」

 

 奏はそう言いながらも、口元は薄く笑っていた。

 

「FCにしては、加速もコーナーも鋭くないと思っていたんだが?」

 

 プロデューサーもまた、ニヤリと口角を上げながらそう言った。

 

「貴方にしては、随分察しが良いのね」

「いつもは、察しが悪いのか?」

「そうね、わるいわ」

「えぇー」

 

 若干オーバーリアクションに項垂れつつ、シフトアップするプロデューサー。

 4→5への滑らかなギアチェンジ。

 

「伸びるな・・・」

 

 車速312km/hはFCとしては十分なスピードだ。

 

「このFC、馬力は?」

「480位?だったかしら」

「100程鯖読んでるんじゃないかと疑うんだよな・・・」

「それはプロデューサーのクルマが250kgこれより重いから、よ」

 

 そんな事を言っている内に美世のR33を眼前に捉える。文字通り当直線上に、だ。

 先程言った湾岸系FCの粘りの正体。

 最高速で劣るFCが脅威の追い上げを見せる、恐怖のトリックの仕組みはシンプルだ。

 

「スリップストリーム、てかバンプドラフトだな」

「クルマに口紅つける趣味はないよ、私」

 

 スリップストリーム。

 レースの世界ではよく聞くどころではない、ドライビングテクニックの一つ。

 前方のクルマにピッタリと張り付く事で空気抵抗を無くし、速度を上げる技だ。

 確かにこれならFCでも前方の車に引っ張ってもらう事で、最高速度を引き上げられる。

 事実、現在FCは320km/hをゆうに超えて走行している。

 

「あのR33・・・意外と伸びないな・・・」

 

 ではなぜそんなに浸透しているテクニックがトリックなのか。その答は単純だ。

 スリップストリームは前方のクルマに追い付く事が絶対条件であり、前方のスピードに追い付けなければ効果が発生しないからだ。

 そして、湾岸系のFCは追い付く事が出来る。

 それ以外のFCは、概ね追い付けずに更に引き離される。

 それだけなのだ。

 

「ナナマルじゃこうもいかないからな。

 真後ろに張り付くのは、結構楽しい」

「女の子の尻を追い駆けるのが好き、ねぇ・・・」

「クルマだよクルマ」

「大抵の男的には乗り物は基本的に女性よ」

「ぬぬぬ・・・」

「ほら、近づいて来たわ」

 

 新環状の湾岸線ストレート区間から、レインボーブリッジへ向かう分岐である結構な右コーナーが迫る。抜き所としては上等、FCなら尚更だ。

 

「いっくぜぇ!」

 

 減速したR33をイン側からド派手なブレーキングドリフトで躱すFCがそこにあった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

@

 

「な、なんて漫画チックな事ををを・・・!」

 

 ブレーキングしたらドア越しにFCのテールランプがコンニチハすれば流石に驚く。

 

「流石首都高・・・変なヒトが居る!」

 

 だが抜かれた事は事実だ。

 バトルに勝つには抜き返すしか方法はない。

 そういうシンプルな世界だ。

 

「レインボーブリッジで並べば、その先で抜き返せる。

 頼むよ、R!!」

 

 そしてレインボーブリッジ。

 美世は自分に掛けた条件を見事クリアする。

 

(この右コーナー、決める!)

 

 そして速度重視でインを開けたFCとラインをクロスさせ、前に出た。

 しかし、無理が過ぎた。

 

「ッ・・・しまっ・・・!」

 

 イン側に拘り過ぎて減速できず、再度FCとラインをクロスさせる。

 

「くっ・・・並べ・・・!」

 

 失速したR33を立て直し、再度アクセルを踏み倒す。

 自慢の相棒はそれに応えようとRB26エンジンを唸らせる。

 

「!?」

 

 だが、それにはゴールが余りに絶妙だった。

 

@

 

「「「ど・・・同着!?」」」

 

《draw》




START EPISODE

played result:SUCCESS!

「ストーリーリプレイ」が記録されました

NEXT…

@

原田美世R33VSプロデューサー&速水 奏FC
「ストーリーモード」NEW GAMEでの最初のバトル。
難易度は(文章では大仰な事を書いているが)低め。
勝っても負けても引き分けても次のムービーに影響は無い。
(ただし負けるとリザルトは失敗(FAILURE)扱いとなる)
RS(ロードスプリント)形式は某湾岸アーケードレースゲームのオマージュ。
バトルタイムを相手と下3桁まで合わせると《draw》判定になる。
「ストーリーリプレイ」では奏&P側のプレイが可能。


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MOONSIDE AFTER 03:46

story movie now loading...


「缶コーヒーでいいわよね?」

「あ、奏サン・・・ありがとうございます!」

 

 缶コーヒーの蓋を開ける音が周囲のガヤの中に消える。

 

「んくっ・・・くっ・・・

 ・・・よしっ、オイル交換完了!」

 

 美世は、バトル後にFCから近場の台場PA:ピットエリアに誘われた。

 そこで顔合わせとなった訳だが、2名搭乗だと思っておらず少し驚いた。

 更に美世は、そのFCの同乗者である速水奏のファンだった。

 

 美世が相棒の隣に佇むFCを眺めていると、奏が話しかけてきた。

 

「どう?私のFCを見て」

「個人的にですけど、奏サンは湾岸走っているとは思っていたんですよ。

 FCか・・・、完璧・・・。

 これで湾岸を走ればそりゃ、「hotel moonside」に説得力が出ますよ」

「このクルマ、気に入ってくれたかしら?」

「久々にいいクルマに出会いました」

「ふふっ、ありがと」

 

 その話に今夜FCのドライバーだったプロデューサーが加わる。

 

「プロデューサーさんも運転、強いですね」

「まぁ、プロデュース相手の事は知っておきたいからな」

「あれ私の担当って・・・?」

「スカウトされて、正式に書類作ってから1度も事務所に来なきゃ普通はクビだぞ。

 アイドルはスカウトしたが、チューナーはスカウトしていない」

「あ、あはは・・・」

「だから、今日00:00からお前のプロデュース担当は俺だ。」

「・・・そうなんですか!

 よろしくお願いしまーすっ!」

 

 そうして原田美世の所属部署移転の話はあっさりと決まった。

 

「貴方がプロデューサーならアイドルも出来るかな?」

「ナンダそりゃ」

「クルマを速く走らせられるんなら私のアイドルプロデュースも出来るッ!」

「えらく自信満々だな。

 ・・・ひまし油と焼けた鉄のにおいが染み付いているツナギ姿が似合うアイドルか・・・」

 

 その話をプロデューサーの側で聞いていた奏はある疑問が沸く。

 

「でも、スカウトは彼じゃないわよね?」

「今さっきまで名前しか知らなかったからな」

 

 その疑問に美世は答える。

 

「ですね。

 まぁでもたいした問題じゃないでしょ」

「・・・そうかぁ?」

「そうね。

 彼が解っていないみたいだから自己紹介だけでもしておきましょうか」

 

@

 

「原田美世です!

 クルマ弄りとか大大大好きだけど、イロイロちゃんと女の子だよ!

 だから私をアイドルプロデュースするんなら、ちゃんとステアリング握っててね!」

「速水奏よ、一応あなたの先輩になるのかしら。

 この部署は先輩とか後輩とかは気にしない方針だから、仲良くしましょ」

「346プロダクション第13部署、担当プロデューサーの黄間長人(オウマ タケヒト)だ。

 改めてだが、これからよろしくな」

 

 三者三様の挨拶を済ませると、灯りがプロデューサーを照らす位置取りだった。

 

「よろしくお願いします!

 ・・・よく見るとけっこー好みの顔だな~、A70とかに合う顔だね」

 

 一応褒めていると受け取ったプロデューサーは驚きを隠して事実を伝える。

 

「ビンゴだ。

 俺は普段ナナマルに乗っているんだ」

「えっホント!?

 もしかして気が合っちゃう感じなの?運命的なヤツ?解体屋のS30?」

「俺は悪魔かよ!」

 

 そんなやり取りを見ていた奏はプロデューサーの腕に寄り添った。

 

「まぁ、かなり悪魔かもね。

 幼馴染の恋人をアイドルとしてプロデュースしているんだから・・・ね」

「お・・・おぉう。

 何時かのラジオで聞いていたけど、プロデューサーとだったんだ・・・」

「奪ってみる?」

「映画とかでありそうだけど性別逆転してますよねこの状態・・・。

 それにそういうのはまだいいって思っているから・・・」

 

@

 

「所属移転の書類とか書かなきゃいけないから、午前9時には事務所に来てくれ。

 住所はこれに書いてある」

 

 渡された地図を見て、美世は脳内で距離を計算する。

 

「んと、ちょっと距離あるかな。

 クルマで行けます?」

「ガレージ完備だ。

 機材もちょっとしたモンだが一式揃っている」

「・・・じゃそっちに移ろうかな・・・。

 寝泊まり出来ます?」

 

 プロデューサーは嫌な予感がしていた。

 現在担当しているアイドルと候補生にはある共通点があったからだ。

 

「・・・家はどうしているんだ?」

「実家が石川なんですけど、こっちに来た時にガレージしか借りませんでした!」

「で、そこでRと一緒に寝泊まりしていると」

「浮いたお金はガレージの維持費と首都高のキャッシュになりました」

 

 うなだれるプロデューサーに、奏はその肩に手を置くしか出来なかった。

 

「・・・また一人追加ね」

「あぁー、そうなるなー。

 まったく、俺の家は無料のホテルじゃねぇんだぞ・・・。

 いっそ宿泊料徴収してやろうか・・・?」

 

 その発言には美世も疑問を抱かざるを得ない。

 

「他にも居るんですか?」

「というよりこの部署に所属している全員ね。

 彼はホームレス女をプロデュースするのが趣味なの」

「他の部署から流れてきた奴が軒並み家無しなのは偶然じゃないな!?」

「なかなかアットホームな部署なんですね!

 決めましたっ、今からその事務所に移って良いですか?

 ガレージの荷物は追々搬入するんで!」

 

 少し考えて、結局プロデューサーが折れる形となった。

 

「・・・その方が良いな。

 今の時間だと丁度朝飯・・・か・・・」

「周子辺りは起きてそうだけど、ね。

 私、コンビニの弁当も好きよ。

 貴方と一緒なら・・・ね、ふふっ」

 

 そうと決まれば、と各々車に乗り込む。

 FCの運転席には奏が座った。

 

「じゃ、クルマについて来て」

「いいよーっ」

 

「ところで奏さんも家無しなんです?」

「私の住所、彼と同じよ」

「・・・あぁ!」

 

@

 

 346プロダクション第13部署事務所の朝は適度に早い。

 だが、起床の速さと朝食の用意は比例しない方程式が成り立っている様だ。

 

「ん~帰って来たね~」

「すんすん・・・そうみたいだねー」

 

 朝の情報番組のオープニングを其々ソファーに寝そべりながら見る少女が二人。

 片や京都の実家を追い出され、行く当てが無かった所をスカウトされたアイドル。

 片や海外の超有名大学を飛び級し、勝手に帰国してスカウトされたアイドル候補生。

 共通点は、家が無い事と、アイドルである事位だが、仲は良かった。

 名前は、前方に陣取る銀髪が京都から来た塩見周子。後方が帰国子女の一ノ瀬志希。

 

「すん・・・この匂いは初めてだにゃー。

 新しい娘?が来たみたい!」

「よく解るね~。

 しゅーこちゃん窓から確認しないと判んないよ~?」

 

 志希はその、犬より利く嗅覚をフルに使って来客を予測しようとする。

 が、難しかったようだ。

 

「・・・ナニこの匂い!?

 女の子の匂いじゃにゃいのにバッチリシッカリ女の子だー!?」

「判らないん?」

「にゃっはーっ!

 玄関を開けてるー、来るーっ!」

 

 その瞬間リビングのドアが開いた。

 

「おはよう志希、朝から元気ね」

 

 まず入って来たのは奏だった。手にはレジ袋を提げている。

 

「おはよ~ん。

 それが朝飯な~ん?」

「そうよ、周子が作らなかったからね」

「待ってたよん♪」

 

 志希は奏にすり寄ると、匂いを嗅ぎ始める。

 

「ふんふん、奏のクルマは調子良さそうだねっ。

 ペンシルバニアのいい匂いがする~」

「オイルの匂いなんて余り付きたくないわ」

「大丈夫大丈夫、ワタシにしか判んないよ。

 それよりもっ!」

「帰ったぞ~って、ぬぉっ!」

 

 志希は奏の後ろを確認、回り込むとプロデューサーと正面衝突をする。

 

「もふっ!・・・ん~いい匂いだにゃー。

 じゃにゃくてっ!」

「そうだ、新人が仲間入りする事になったんだがー・・・てドコ行った?」

「そうそれっ。

 気になる匂いの子っ」

 

 更に志希はプロデューサーの後ろを確認したが、いない。

 プロデューサーと奏は大体見当が付いていたが、彼女はまだ人間が出来ていた。

 

「おっ、遅れましたー!

 いやーこの人が「ちょっとしたモンが一式」なんて言っていたのに・・・て!?」

「にゃっはーっ!

 んーっ、新鮮なひまし油の匂いがするー」

「わーっ!

 ツナギに抱き付いたら汚れるよ!」

 

 結局、美世のツナギに抱き付いた志希を引き剥がすには二分の時間を要した。

 

「ふ~ん、貴女が新入りさんー?」

「名前は原田美世ですっ。

 塩見周子さんですよね?

 奏さんから聞いておきました」

「しゅーこでええよ~、そんなの堅苦しいん」

「で、そっちが一ノ瀬志希さん」

「こっちも志希でいいよ!

 これからよろしくっ!」

 

 挨拶を交わしていると、2階からもう一人現れる。

 

「フンフンフフ~ン、ん?」

「初めまして、宮本フレデリカさん!」

「ん!見た事ない人がいる!」

「原田美世です、これからよろしくお願いします!」

「んーおっけ~☆

 フレちゃんの事はフレちゃんでいいからね、しるぶぷれ~」

 

 美世が13部署の全員と面識を持ったところで、プロデューサーがこの場を締めた。

 

「よし、じゃあ朝飯にするぞ~」

「やった!」

「準備準備ーフンフフ~」

「ダチャーンも手伝って~ん」

「私ダチャーンですか!?」

「・・・ふふっ」

 

 これからこの事務所は、一層賑やかになるのだった。




START EPISODE complete

unlock:STORY MODE EPISODES

Welcome to this TOKYO highway xtreme racing idol`s story.

Enjoy!

「ストーリームービー」が記録されました

NEXT...

@

このムービーの後、「ストーリーモード」が本格的に開始される。
前作までは1日1キャラクターのストーリープレイだったが、今作では昼、夕・夜、朝の2ターンで各キャラクターのストーリーをプレイする。
「ストーリーモード」に明確な物語の順番は無いが、章で分けられている他に、ほぼ通常の首都高バトルである「クエストモード」では若干ネタバレが発生してしまう。

346プロダクション第13部署の担当Pと所属アイドル(候補生)
詳しい紹介は「キャラクター&マシン」で行う。

速水 奏:この部署のリーダー格。Pとは幼馴染で恋人同士。愛車はFC3S。
黄間長人:この部署のP。幼馴染をスカウトした罪深い男。愛車はA70 3.0L。
一ノ瀬志希:アヤシイ研究で前部署から追い出された。愛車はEVOⅣのクーペ。
塩見周子:寝床欲しさにこの部署に来た。首都高のライセンスは獲得している。
宮本フレデリカ:現実よりフランス語を喋る事になった。愛車はFD3S typeRS。
原田美世:首都高に入り浸っていた為前部署から追い出された。愛車はR33。

この作品ではPに名前が付く為、以降13部署のPは「黄間」「長人」と表記する。


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STORY COMPLETION movie
MOONSIDE AFTER 15:46


story completion movie now loading...


 美世が正式に346プロダクション第13部署の、所属アイドル候補生となったその日の午後。

 13部署に所属するアイドル達と、担当Pの黄間は事務所内のガレージに集っていた。

 黄間曰く「ちょっとしたモンが一式」らしいが、明らかにその範疇を超えた充実度だ。

 何故か喫茶コーナーまである。

 

「で、周子ちゃんはまだクルマを持っていないと」

「うん。

 ライセンスは持っているからたまに奏のを運転したりはしているんけどね」

「そうね、周子の運転は意外と丁寧よ」

「ふんふん。

 で、そんな周子ちゃんはどんなのが欲しいの?」

「う~ん」

 

 唸りながら周子は目前に整列したアイドル達のクルマに指差す。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 黄間の愛車、冷たい白色のA70は前期型の3.0Lエンジン仕様。

 奏の愛車、ミッドナイトブルーのFC3S。

 フレデリカの愛車、純正ではないイエローのFD3S。

 志希の愛車、EVOⅣのクーペモデルカスタムカー”ASTI”はワイン系のツートン。

 そして美世のR33、赤色が映える。

 

 周子が指したのはA70とFCの中間だった。

 

「フレちゃんフラれちゃった」

「指している指が遠いにゃ~」

「あんな感じで、二人のとは違うエンジンが良いかな」

「リトラクタブルでレシプロエンジンなら候補は多いよー。」

「シューコちゃん分かんない~ん」

 

 そこに席を外していた黄間が戻ってくる。

 

「ガレージ側と話は付けてきたから、荷物移動出来るぞ。」

「やった!

 ・・・でもここの設備で十分かも?」

「要らないのは何らかの形で処分した方が良いぞ。」

 

 美世と黄間の会話に興味を持ったやや席から乗り出して志希が質問する。

 

「ちょっとした疑問だけど、美世ちゃんの荷物ってどんなモンなの?」

「そんな、たいしたことないよ。

 こっちに来た時とりあえずで集めたものだから・・・」

「と、コイツは言っているがな・・・!」

 

 黄間がテーブルの上に差し出したのは美世のガレージにある荷物のリストだった。

 全員が1枚の紙に注目する。

 

「ちょ!」

「エンジンクレーンなんてどうやって調達したんだ?

 リストの名前だけならチューニングショップと大差ないぞ」

「確かに・・・」

「ハイ!」

「何だ志希?」

 

 手を挙げて発言権を得たのは志希だった。

 全員が視線をテーブルの紙から志希へ替える。

 

「・・・じゃホントにやるってのは?」

 

 全員の頭上に「?」が浮かぶ。

 

「やるって・・・何をなん?」

「フレデリカ的流れからだと、チューニングショップ?」

「それでもいいけどー、とにかくここを生かしたものがしたいんにゃ」

 

「「「「「成程・・・」」」」」」

 

「首都高がサーキットになって16年、C1GPも今年で10年。

 だったよね、プロデューサー?」

「そのぐらいだったはずだ。

 そして765プロのアイドル達が首都高レーサーだった事が発覚して以来、アイドル達には空前の走り屋ブームが到来。346でもやっている奴は多いし、何せ規模がデカいから相対的にもナ」

「今の時点で15部署あるんだっけ?」

「別な部署のアイドル達に、サービス価格でダチャーンの整備を提供するん?」

「金儲け目的じゃなくても、私も他のアイドルのクルマは気になりますね!」

「美世はR以外のクルマも出来るの?」

「知識は一応あるんで、あとは経験かな?

 ロータリーとかやってみたいんです!」

「やるんなら私のはダメ、もう専属がいるから、ね」

「奏さんの弄って見たかったー!」

 

 志希にとっては何げない一言だったかもしれないが、そういう事から物語は動く。

 

「ほんとにやるの!?

 にゃっはー!おんもしろそぅ!」

「やるとしてもほどほどにな。

 お前は一応アイドルを目指しているんだろう?」

「解っていまーす!

 でもそうと決まればプロデューサー、速く私の荷物取ってきましょ!」

「オィ引っ張るなよ!?」

 

 意気揚々とガレージを後にする美世と、彼女に引っ張られながら付いて行く黄間を見ていた他の4人は、其々にほぼ同じことを考えていた。

 

「あたし、いますっごく面白いトコに居る気がするん♪」

「フレデリカ的にもそう思う!すっごいフンフンフフ~ンな感じ!」

「こういう空気の匂いはとっても好き!ナニか始まるって感じがプンプンするにゃ!」

「そうね、たった今物語が始まったわ。」

 

@

 

 そして時に、複数の物語が同時に始まる事も、ある。




story completion movie NEXT…

@

「ストーリーモード」が本格的に始まる際の最初に入るムービー。
今作のストーリーでは、美世が整備を請け負ったクルマのアイドルがメインになるストーリーが多い形を取っている。


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STORY MODE LOAD GAME Non chapter EPISODE
前川みく1:ExCHANGE MY (working) CAR


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(し、しまったにゃぁ・・・)

 

 前川みく。

 自らを「猫キャラアイドル」として売っている彼女は、プライベートでは一切「猫キャラ」では無い事で一部には有名だ。

 そしてまだ無名の時代に「首都高サーキット」で「猫キャラ」を走り屋達に広めていった事も、知る人は知っている事実だ。

 今、霞が関PAに現れた前川みくは私服姿で、眼鏡まで掛けている。

 「猫キャラアイドルみくにゃん」しか知らない人であれば、ちょっと似ているかもしれない別人とさえ判断するだろう姿だ。

 

(迂闊だったにゃ。

 よりによって猫耳はPチャンに預けちゃったし・・・)

 

 首都高は「仕事」と割り切っていたみくの愛車、FC3Sはド派手なエアロを纏い、真紅に染め上げられたC1アタッカー。とても今の格好で乗るクルマではない。

 救いとしては、普段PAに保管している為乗っている所を見られた訳では無いという事だ。

 

(みくのプライドとしてはこのまま乗り込むのはノー・グッド!

 だけどこのままだと家にも帰れないにゃ・・・)

 

「あらみくちゃん。

 ここで会うのは珍しいわね」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 悩んでいるみくの後ろにやって来たのは奏だった。

 組み合わせとしてはかなり珍しい、と言うより普段や仕事を考えれば接点は無いに等しい。

 肩書は同じアイドルだとしても、片や猫キャラを前面に押し出して雛壇を賑わせるみくと、片や年不相応の雰囲気で人気上昇中の奏ではまず組み合わせる要素が無い。

 だが、そんな二人でさえ組み合わせる接点が発生するのが首都高なのだ。

 

「奏チャン!?

 どうしてって此処に?」

「今日の仕事、同じ現場の違う場所でやってたのよ」

「・・・あっ」

「レギュラー番組の収録後、そして土曜日の22時なら首都高に上がって来ると思ってね。

 でも・・・その気はもしかして無かったのかしら?」

 

 奏はみくに起こっている状態を察知し、尋ねる。

 

「せっかくのFC乗り同士だから、ちょっとデュエットしてみたかったんだけど・・・」

「奏チャンお願い!

 みくを寮まで乗せてほしいの!!」

 

 みくが住んでいる寮には木場PAが近い。此処からだとC1外回りから新環状右回りのルートだ。

 だが、より刺激的な提案が奏から挙がる。

 

「それならクルマ、交換して乗ってみる?」

「えっ!?」

「みくちゃんのクルマが此処に有るままじゃ、寮まで送ってハイさようならよ。

 どうせだから猫耳を付けて戻って来て欲しい、かな?」

 

 確かに、みくのFCは霞が関PA、今目の前にあるのだ。

 寮に帰ってしまえば取りに来る方法は奏にもう一度乗せて送って貰う事位だが、遠まわしに奏はそれを拒否している。

 

「でもみくのクルマだと奏チャンのキャラに合わないよ」

「あら。

 気にしてくれるのは有難いけど、私案外こういうのも好きよ?

 前から乗ってみたかった位には、ね?」

「えぇ・・・」

「それに、偶には仕事じゃない感じで、首都高(ココ)を走ってみるのもいいんじゃないかしら?」

 

 この一言で、みくの心は揺らいだ。

 

「む・・・ぅ。

 わかった、その誘い乗るにゃ。

 でもみくも奏チャンのクルマは運転した事ないよ?

 普通のFCと違うって聞いた事あるけど・・・」

「心配しないで大丈夫よ。

 このクルマ、私以外の人に乗られ馴れているから」

 

@

 

「RSバトルを選択。

 霞が関から木場までのC1外回り~新環状右回りをルート設定っと」

 

 みくのFCに乗り込んだ奏は、その場でコンソールの設定を済ますと内装を見回す。

 ・・・どうやら「仕事用」として造られているのはエクステリアだけの様だ。濃い目のスモークウインドーで隠された、みくのFCのインテリアはシンプル。

 

(堅実って言った方が正しいかしら。

 私のより軽量化しているし、ロールケージもしっかり入っていて・・・)

 

「あら、面白いモノ詰んでいるじゃない」

 

 奏が後ろを覗くと、そこにあったのは後部座席では無くN₂Oシステムだった。

 しかも2本。

 

(・・・使っても文句は無いでしょう・・・)

 

@

 

「所属なし、車種、FC3S。

 通り名は「チャーミングキス」・・・。

 まぁ奏チャンのクルマだから、表示されるのは奏チャンの通り名だよね」

 

 みくも奏のFCの運転席を調節し、奏が乗る自分のFCから送信されたバトルを確認する。

 

「ワンダラー「ロータリーロキャット」・・・。

 仕事じゃなきゃちょっと恥ずかしいにゃぁ・・・」

 

 受信したバトルに載っている自分の通り名を眺めるのを止め、視線を前方へ向けた。

 早々見る事の無い、バトルをする自分のクルマの後ろ姿がそこにはあった。

 

@

 

 PAを出て、いよいよバトルが始まる。

 カウントがGOを示すと、両者躊躇わずアクセルペダルを踏んだ。

 

「成程ッ・・・!」

 

 みく前ではカッコつけてみたが、奏もみくのFCを運転するのは初めての経験だ。

 その結果は、自分のFCが余程セオリーと違うチューンを施しているかを知る事となった。

 

(奏チャンのFC、凄く従順と言うか、FCっぽくないにゃ。

 なんていうか、良く爪を研がれた猫みたい)

 

 一方のみくも、自分のクルマと違う動きをする奏のFCに若干の戸惑いはあったものの、先程奏が言っていた事を理解した。

 

(「このクルマ、私以外の人に乗られ馴れているから」か・・・)

 

「でも奏チャン、みくのFCも結構乗れている・・・?」

 

@

 

「流石に「ロータリーロキャット」ね・・・!

 私のとは、勝手が、違う!」

 

 みくの想像とは違い、奏は結構ギリギリのところでみくのFCをコントロールしていた。

 しかし、初めてのクルマで慣れない挙動、更に得意でない場所でバトルと言う状況だが、その上で相手に「乗れている」とさえ思わせる奏のテクニックはかなりのものだ。

 

「・・・だいぶ慣れて来たわ」

 

 不適に笑った奏はステアリングに存在感を示すスイッチに手を伸ばす。

 N₂Oのスイッチだ。

 

「試しに一発・・・」

 

 一ツ橋、5号池袋線との合流で車線が広くなった地点で奏は一発目のN₂Oを使う。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「来たッ!」

 

 みくのFCに搭載されているN₂Oシステム、亜酸化窒素ガスを直接インテークに噴射するドライショット方式はパワーアップの上限こそN₂Oシステムの中では低いものの、それでも5、60馬力がスイッチ一押しで追加される。

 

(確か以前みくちゃんが話してくれたこのFCの馬力は380位だったかしら。

 それに+50と考えて420オーバーは確実。

 内装から考えて私のより-40kgとすれば、一時的に私のマシンスペックを上回るのね・・・!)

 

 奏は追加された馬力に若干焦りながらもみくとのリードを広げる。

 

@

 

「に゛ゃっ!?」

 

 みくは突然加速した奏が操る自分のFCを見て察知した。

 

(奏チャンが”ナイトロ”を押したっ!)

 

 みくはアクセルペダルを踏みつけるが、奏のFCは自分のより明らかに加速が鈍い。

 

「加速じゃみくのFCに追い付けない・・・!

 ならコーナーでじわじわ詰め寄るよ!」

 

 神田橋を過ぎ、八重洲線分岐過ぎからの呉服橋に繋がる緩やかなバンク付きシケインはみくのオーバーテイクポイントだった。

 スピードを乗せたままクリアするだけで、このFCでも奏の横顔を睨む事が出来る自信がある。

 

「いけにゃあ!」

 

 八重洲線分岐前で奏が乗るFCからブレーキランプが点灯した。

 

@

 

「しまっ!?」

 

 自分としては普段より遅めのブレーキングだったが、乗っているのはみくのFCだ。

 

(もっとブレーキングポイントを遅く出来たのね)

 

 早かったレイトブレーキングによってコーナリングテンポが完全に狂ってしまった。

 そこを見逃さない相手である事は奏も十分理解している。

 

(ちょっとダーティだけど全力でブロックさせてもらうわ)

 

@

 

 奏の執拗なブロッキングにより呉服橋を通過した時点でも奏の横顔は拝めなかった。

 

(箱崎で前に出ないとそこからは奏チャンのフィールド・・・逃がさないよ!)

 

 江戸橋の新環状合流地点でみくは遂にテール・トゥ・ノーズに持ち込んだ。

 C1右回りとの合流で車線が広がる地点を見計らい、アウトから並ぶ。

 

(まずこの左コーナー!)

 

 箱崎にはPAがあるのだが、その入り口が特殊だ。

 なんと3車線の真ん中にあり、一時的に1車線が2本出来るのだ。

 その入り口の前は3車線の左コーナーになっており、広い道路幅から二股に分かれたどちらかの出口を選択する必要に迫られる為ちょっとしたカオスが発生する。

 

(目一杯アウトに振って最速でイン側を潜り抜けるにゃあ!!)

 

 ここでみくが選択したのはイン側のルートだった。

 どうやら両車線共にアザーカーは無しの様だ。

 1車線区間でアザーカーの尻に釘付けになる、最悪の敗北パターンは消滅した。

 

(奏チャンはインを回ってアウトへ行ったにゃ!)

 

 一つの車線の取り合いは流石に危険な為避ける事が出来たのは幸運。

 そして奏が向かった車線はこのコーナーをインから回った以上、みくより進入速度が遅い状態で抜ける事となる。更に合流が右コーナーである為、みくが言っている通りアウト側となる。

 

(このままインから前に出ればゴールまで押さえられる!

 このバトルもらったにゃ!!)

 

 みくは不覚にも、この時勝利を確信していた。

 奏が運転する自らのFCには、”一発逆転の裏ワザ”が搭載されている事も忘れて。

 

@

 

「・・・ここがいよいよ使い所ね」

 

 奏での右親指がN₂Oのスイッチに振れる。

 

(問題はタイミング。

 下手にコーナリング中に押してしまえばホイルスピンで制御不能。

 かといって出口で押しても私のFCにキスするだけ・・・!)

 

「ベストタイミングは・・・ここよっ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

@

 

(・・・しまった・・・ァ)

 

 両車線の合流で2台が並んだ瞬間、みくは思い出した。

 

(みくのFCには”ナイトロ”があったにゃぁ・・・。

 自分のクルマなのになんで忘れてたの!?)

 

 更に”みくのFC”は加速し、”みく”の前に出る。

 結局そのままの順位でゴール地点を過ぎ、みくは敗北する結果となった。

 

@

 

 木場の出口を過ぎ、みくが住む寮の駐車場に二人はクルマを停めた。

 時間は22時40分、寮の住人でクルマを持っている346のアイドルはほぼ出払った後の様だ。

 

「さ、着いたわよ。

 ありがとね、クルマ貸してくれて」

 

 奏はみくにキーを返すと、自分のFCを確認し始める。

 

「あ、今更だけどちょっと使っちゃったわ、あのN₂O。

 もしかしてダメだった?」

 

 奏が少し困った顔をしてみくに言って来た。

 N₂Oシステムの再充填はPAで無料で行えるものの、勝手に使用した事実は変わらない。

 

「・・・気にしなくていいよ」

「そう?」

「みくも、あの場面でナイトロの事、すっかり忘れちゃっていたから・・・」

「・・・」

 

 少しの間だが、二人の会話が途切れる。

 そして、みくは決意する。

 

「・・・猫耳付ければ忘れないよ!

 このクルマは、「猫キャラアイドルみくにゃん」のクルマだから・・・!」

「・・・ふふっ。

 ”クルマ付き合いは人それぞれだ。

 俺はそれに何も言う事は無い”

 うちのプロデューサーの言葉よ。」

「奏チャン・・・」

「ほら、夜は短いのだから、早く「みくにゃん」になって頂戴。

 私達のデュエット、始まったばかりでしょ?」

「・・・それもそうだねっ!

 取って来るにゃ!」

 

@

 

「これならこのクルマにも乗れるにゃ!」

 

 猫耳を付け、戻ってきた「みくにゃん」に奏が言う。

 

「あ、それとね」

「ん

 まだ何かあるの?」

「さっきの続きだけど、

 ”ただし、アイドルが故意にぶつけたりする様な運転をするのは俺は許さん”

 ってさ、当たり前よね?」

「いや、奏チャンそれ案外重要にゃ」

「そう?」

「みくの体験だけど・・・」

 

 そして二人はそれぞれ自分のクルマに乗り込み、首都高ヘ戻って行った。




Non chapter EPISODE complete

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「ストーリーリプレイ」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」において、直接章の前後に関係していないエピソードは総じて「ノンチャプターエピソード」と呼ばれる。
「メインエピソード」をアンロックする為に、幾つかのノンチャプターエピソードをクリアする必要がある。
ノンチャプターエピソードはアイドルごとに用意されており、そのアイドルにとってのエピソードの順番はあるが、時系列上の順番はあまり関係が無い。

そんなノンチャプターエピソードの中でも、ほぼ最初にプレイする事になるのは前川みくの1つ目のエピソード「ExCHANGE MY (working) CAR」
プレイ内容はみくVS奏のFC同士のバトル。
操作はみく側だが、奏のFCをドライブする。
因みにプレイ出来るのは箱崎付近までであり、所謂「負けイベント」である。

「ストーリーリプレイ」では奏側のプレイが可能。
みくのFCに搭載されたN₂Oはプレイ中に2回まで噴射可能。

346プロダクション所属アイドル。
詳しい紹介は「キャラクター&マシン」で行う。

前川みく:仕事として首都高に来たがすっかりハマってしまった。愛車はFC3S。
     所属している部署は第2部署。


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前川みく2:nyan nyan nyan nyan?

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 木場PAにアイドルが4人。

 

「・・・で。

 志希チャンはみく達と走りたい、と」

「にゃは~」

 

 前川みくと一ノ瀬志希。

 

「私は構わない・・・」

「Я также благоприятствуют・・・私も、賛成ですね」

 

 そして高峯のあとアナスタシアだ。

 

「久しぶりに「にゃんにゃんにゃん」で走ろうとしたらひょこっと現れて、みくのコトを弄繰り回した挙句一緒に走りたいって言われたら誰だって困惑するにゃあ・・・」

「ナカナカ良い匂いしているね!ん~~~~」

「ちょっとは反省しろにゃあ・・・離れるにゃあ!」

 

 どうやら志希が3人に、特にみくに近付いた事でこの現場が誕生した様だ。志希にガッチリとホールドされているみくを二人は見ているだけ、いや、1人は楽しんでる。

 

「彼女、なかなか素質があるわ・・・。

 この場に居た3人で真っ先にみくに飛び付くのがその証拠・・・」

「それは本当にчувство・・・センス、なんでしょうか?」

 

 なんだかんだ言いつつ二人はみくと志希を引き離し、4人で走る事が決定した。

 木場から新環状左回り、1対1対1対1のSPバトルだ。

 

@

 

「にゃはーコウイウのを待っていたんだよ~。

 気になる匂いの3人だったからねっ、走るよー!」

 

 愛車、EVOⅣASTIのステアリングの感触を確認しながら志希はますます上機嫌になっていた。

 

「にゅっふふふ。

 「ロータリーロキャット」前川みくにゃん、マシンFC3S!

 「ライカ・ナスターシャ」アナスタシアにゃん、マシン240SX!

 「No.A」(ナンバーエース)高峯のあにゃん、マシンcobra'64R!

 そして志希にゃん、マシン、EVOⅣASTI!」

 

@

 

「「イコライズギフト」・・・equalize gift・・・。

 ”平等な贈り物”と言いたいならуравнять подарок、ですかね・・・?」

 

 アナスタシアは、コンソールに映る志希の通り名「イコライズギフト」について考えていた。

 

「確かに、面白い人かもしれませんね♪」

 

 ギヤを2速へ入れ、戦闘準備完了。

 

@

 

「ゴー」

 

 アクセルペダルを踏み抜き、タコメーターの針が暴れる。

 クラシックアメリカンな4.7L、V8OHVの扱い方としてはとても推奨されるモノでは無い。

 ハイグリップな現代の扁平タイヤが容易く空転し、立ち上がる白煙は最早バーンナウトだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「・・・」

 

 そして、ようやっとタイヤが地面を掴んだと思えばcobra'64Rは圧倒的な加速で道路を駆ける。その接地感の無い加速は名前の毒蛇とは程遠い、獲物を見付けた獣の動きだ。

 

「・・・イケるわね・・・」

 

 高峯のあは、このじゃじゃ馬と言う表現がこうも似合うマシンを涼しい顔でドライブしている。

 

「追い付くわ・・・バックミラーに注目なさい・・・」

 

@

 

「にゃっは~。

 アーニャんものあにゃんもイイねイイネ~!

 じゃあみくにゃんはドウなのカナ~?」

 

 左サイドミラーに迫るのあのコブラと右サイドミラーに映るアナスタシアの240SXを見ながら、志希は前を走るみくのFC3Sに注目する。

 

「1、左ののあにゃんをブロックする。

 2、右のアーニャんをブロックする。

 3、後ろのワタシをブロックし続ける・・・選択肢は3つ、他の方法アリってトコロだね~。

 どう動くのかなっ、志希にゃん気になるねー!」

 

「・・・”ナイトロ”、オン!」

 

 みくが選んだのは、N₂Oで加速し志希の前方に居ながらのあのコブラに加速で対抗する事だった。N₂Oを噴射している間はみくのFCが4台の中で2番目にパワーのあるエンジン、加速を重視したロータリーはアメリカンV8と勝負出来る。「ロータリーロキャット」の通り名は伊達では無い。

 

「なるほどなるほどナイトラスがあったね~悪くない選択だと思うよ~。

 でもでもこの先コーナーだよ、FCだからってそのスピードで抜けられるのかな~?」

 

 箱崎のきつい左コーナーが迫ると、みくは素直にブレーキング、スピードを適正値まで落としてアウトインアウトと基本に沿ったグリップでクリアした。

 

「それじゃсладкий・・・”アマい”ですよ、みく・・・ッ!」

 

「おぉ~アーニャんダイタン!

 このコーナーをそう攻略するのかー」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 アウト側目一杯から、壁を舐める様に派手なドリフトで現れたのはアナスタシアの240SX。彼女はドリフトコンテストで偶にある様な超高速ノンブレーキドリフトを、実践でやってのける。

 

「スンスン・・・」

(タイヤの”焦げ”的にタイムロスはほぼ無し・・・凄いね~)

 

 志希は車内に漂った、240SXから発生した白煙の匂いからアナスタシアの腕前を推測する。

 

(残りSPは全員9割弱・・・まだまだ楽しめそうだにゃ~)

 

@

 

 江戸橋の分岐はC1内回りに進路を取った。現在の先頭は未だアナスタシアだが、その後方に3台がピッタリと連なっている。この距離ではSPは消費されない。

 

「アーニャチャンは兎も角、のあチャンと志希チャンには負けたくないにゃあ・・・!」

 

 あれからズルズルと後退し、最後尾に甘んじているみく。

 だが現時点での逆転のチャンスは、まだ幾らでもある。

 

「まずはのあチャン!」

「・・・来るのね、みくっ」

 

 みくの左右からの揺さぶりに呼応せず、コーナーのインをきっちり守ってスペースを与えない。のあは一瞬もバックミラーを見ることなく順位を防衛する。

 

(シキ・・・獲らせてもらうわ)

「5速」

 

 のあが狙うのは目の前の志希と、更に前を行くアナスタシアのみ。

 後ろに居るクルマのことなど、考えていない。

 

「でもそれでイイのカナ~?

 サーキットやトウゲなら解らなくも無いけど、此処は首都高だよ?」

 

 志希は左足をブレーキペダルに置いた。そしてアザーカーを抜いた所で軽く左足に力を込める。

 アクセルは全開、ブレーキランプが光る、だが減速は一切しない。

 ・・・志希のEVOⅣ ASTIは、減速しない。

 

「ッ・・・!?

 みくっ」

「貰ったにゃア!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 僅か一呼吸分のハーフアクセル、時速にして3km/hの減速をみくは逃さなかった。

 左にステアリングを切り、コブラの横に並んで、N₂Oをスイッチ。カウンターを当てながら加速するFC3Sはのあのコブラをオーバーテイク。

 

「くッ・・・ッ!?」

 

 のあはここで焦った。アクセルペダルを踏み込まれ過ぎたコブラは暴れるだけで加速しない!

 

(・・・やるわね・・・)

 

 体制を戻した時には、既にSPが半分を下回っていた。

 

@

 

(さっきはみくの事アシストしてくれたみたいだけど・・・)

「だからって勝ちを譲る訳には行かないにゃ!」

 

 代官町を過ぎ、霞が関のトンネルへ侵入しても、みくは志希が駆るEVOⅣに抑え込まれていた。このままではアナスタシアが遠ざかるばかりだ。

 

(仕掛けるとしたら”赤坂ストレート”・・・)

 

 みくが示したのは通称「赤坂ストレート」と呼ばれる、僅か500mばかりのC1内回りに存在するストレート区間

 

「の、前ッ」

 

 までにあるコーナーの一つだった。

 

「ココで来るね!」

「ここにゅぁぁあああ!!!!」

 

 霞が関PAへの分岐を跨ぐ様に、みくは志希が通ったラインのかなりイン側を通過した。

 志希をオーバーテイク。しかし、あまりにあっさり過ぎる。

 

「アーニャチャン・・・ッ!」

 

 だがそれを考えていられる程、今のみくに余裕は無かった。

 赤坂ストレートでN₂Oをスイッチ。容量的にこれがこのバトル最後のナイトラス・オキサイド。

 

「Догнанный・・・!追い付いて来たのですか、みくっ」

 

 アナスタシアがアザーカーに手間取った事もあり、渋谷線分岐を過ぎた所で追い付いて見せた。

 残りSPはアナスタシアが7割を残しているが、みくは3割を切っている。

 

(さぁてみくちゃん。逆転出来るカナ~ッとぉ?)

 

 みくに追い越された志希は余裕の表情だ。

 彼女は最初から、一緒に走りたかっただけで、バトルをする気は無かったのだろう。

 

「・・・意外と追い付いて来るモンだね。

 志希ちゃん特製の植物由来を使っていたら、そのまま追い抜かれていたりして?」

「・・・生憎、諦めが悪いのよ・・・!」

 

@

 

「前には出しませんよ、みくっ!」

 

 アナスタシアは天性の才能から成るドリフトを巧みに使い、道幅一杯のライン取りでみくが攻め入る隙を与えない。だがみくもラインの間を突くコーナーへの突っ込みでアナスタシアを脅かす。

 

(残り1割・・・次に賭けるにゃあ!)

 

 みくが仕掛けるポイントに選んだのは、新環状との分岐にある強烈な左コーナーだった。

 このコーナーは角度も急で2車線という狭さも然る事ながら、その直前までが上り傾斜、そしてコーナーインから何と下り傾斜になるという恐ろしいレイアウトをしているコーナーである。

 アウト側の壁とお友達になった走り屋は後を絶たないが、何故か「首都高サーキット」となった現在でも目立った改修はなされていない。

 

「ジャンプして当たったら祈るしかないにゃあ・・・」

 

 SP残量が1割弱という時点で、あのコーナーで攻めるという発想に至るには相応の度胸と覚悟が必要になる。アナスタシアも、みくがこの先のコーナーで追い抜きをやるとは考えていなかった。

 

(PAまでには決着が付きますかね・・・?)

 

 だから、みくがテール・トゥ・ノーズの距離に迫っても銀座PAの事を頭の中で考えていた。

 そのコーナー、浜崎橋コーナーが迫る。

 

(前にアザーカーが居るけどッ)

「行けにゃあ!!」

「みくっ!? Что все равно!?」

 

 アナスタシアが2速までギアを落とした瞬間、彼女の240SXとみくのFC3Sは並んだ。

 

(このまま前に――――――――ッ)

 

 そしてみくが前に出ようとしたその時。

 

(!?)

 

 サポートアザーカーがコーナー入口で”アウトインアウト”をしたのだ。

 みくは動物的反射で右にステアリングを切った。アナスタシアはブレーキペダルを踏んだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あっ――――――――――――――」

 

 そのままみくは、新環状線の分岐に乗ってしまったのだった。

 コンソールは無慈悲な事実を伝える。

 

《draw》

 

@

 

<<アー、その、みく・・・無事に戻って来てくださいね?

 銀座PAで、待ってイマスから・・・>>

<<やはり、アナタは素質を持っている様ね・・・バラエティ枠という素質・・・>>

<<にゃっはー、今夜は楽しかったよ~んじゃまたね~。

 あ、ソウソウ志希にゃんギンザには居ないからね~>>

 

「み、認めないにゃ・・・ァ・・・」

 

 レインボーブリッジから銀座PAまでは、新環状左回り→C1内回りのロングラン約・・・。




Non chapter EPISODE complete

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「ストーリーリプレイ」が記録されました

NEXT…

@

前川みくのノンチャプターエピソード「nyan nyan nyan nyan?」
内容は志希、のあ、アナスタシアとのSPバトル。

”引き分けになる”事が成功条件というエピソードである。
(江戸橋までで前に居る場合、C1左回りに行けばクリアとなる)

アナスタシアの240SXは中高速コーナーで減速しない為、中々強敵。
のあのcobra'64Rはコースと相性が悪いためあまり考えなくていい。
志希はみくのアシストらしい事をするが、アテにしない方が良い。

「ストーリーリプレイ」では志希、のあ、アーニャでプレイ可能。
コチラの条件はバトルの勝利。
安定しているのは志希のEVO、のあのコブラはコーナーとギヤ比が合わずMT操作では恐らく一番難しい。アナスタシアの240SXは逆にコーナーで曲がり過ぎる為、慣れていないと壁に張り付いてしまう。

346プロダクション所属アイドル。
詳しい紹介は「キャラクター&マシン」で行う。

高峯のあ:いつの間にか首都高を走っていたらしく、自分では経緯を話さない。
 愛車はcobra'64R。アメリカンレーサーのファインチューン。
アナスタシア:ロシアに居た頃から愛車の240SXでドリドリしていたらしい。
 日本に来てから”ロケットバニースタイル”にモディファイしたのだが、よく勘違いされる。
 2人とも第2部署に所属している。


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川島瑞樹:A ah yeah i know i know ! 0

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 川島瑞樹。

 

「午前6:30の皆さん、おはようございます。

 「モーニング・ワイド・ニュース's」

 さぁっ、今日も1日が始まるわよっ」

 

 朝から昼は、ニュース・ワイドショー番組のアナウンサー。

 

「次のコーナーは各地のお天気予報ね。

 小山さ~ん今日は予報、当たります?」

「ボクの予報が当たらなかったのは昔の話でしょ!?」

 

 ゴールデン・タイムでは雛壇を彩るアイドル。

 

「今夜の「ミュージック・スターアリオン」

 ゲストにはこの方、川島瑞樹さんです~」

「こんばんは~ミズキの登場よ~」

 

 そして首都高では、346プロダクション第7部署のアイドルが集まって出来たチーム

「V・d!・D・b・s・s.」のリーダーである。

 

@

 

「尤も、チームがまともに活動しているわけじゃないのよね」

「ハナっから寄せ集めって言うか、とりあえずチームで括っといたってカンジだもんね~」

「結局何時でも集まるのは私と早苗だけ。

 はぁ~・・・」

 

 溜め息を吐きながら瑞樹はグラスをあおる。確認だが、中に入っているのはノンアルコールだ。

 

「コイツ以外に誰か居ないのかしら私って」

「第7部署はみんな忙しいからね~私達も含めて」

「そう言ってヒマな奴は地方局時代から結構見てきたけど、早苗はホントに忙しいハズだから言い返せないのがシャクだわ」

「ヒマは造るモノよ!」

 

 瑞樹から早苗と呼ばれた隣の女性、片桐早苗はそう言いながら右手に握ったジョッキを掲げる。くどい様だが、こちらも中身はノンアルコール。

 

 何しろ二人が飲んでいる場所は大井PAに設備されたノンアルコール専売の居酒屋である。

 

「あぁ~っ、いい時代になったものね!

 二日酔いの心配も無し!おまけに車まで運転出来るノンアルのビール!!」

 

@

 

「さっき

 「ヒマは造るモノよ!」

 とは言ってみたものの、確かに何時も2人だと寂しいわね~」

「・・・ねえ早苗、いいこと思いついたわ」

「お?」

 

 瑞樹は隣の席に置いていたカバンから手帳を取り出す。

 携帯端末全盛の世の中だが、ペンで紙に書く行為は中々に人間から排斥される事は無く、今日でもメモ帳や手帳がカバンの中に入っている人は少なくない。

 

「さて・・・。

 早苗、アンタの記憶力を試させてもらうわ」

「なにを突然!?」

「今夜、私達と同じ時間に此処を走れるヤツを探すのよ」

「あ~~、おっけぇ~」

 

 瑞樹と早苗が何時になく真剣な表情になっているが、やっているのは”絡み酒”ならぬ”絡み車”の餌食探しだ。

 

「留美!」

「経理関係でちひろサンのとこに出向いたわ。酒代増やしたければ自由にさせないと」

「瞳子!」

「トレンディードラマの撮影。夜景のシーンは夜にやらないとダメってね」

「真奈美サン!」

「ラジオのゲスト。今月の木場さんはもう埋まっているわ」

「シュガハ!」

「”センチュリオン21”へ出張ライブ。帰ってくるのは3週間後ってあったわ」

「ぐぬぬ・・・」

 

 チームのメンバーやワンダラーで仲のいいトコを出してみたが、ものの見事に全滅。

 

 因みに、シュガーハート(佐藤 心)の出張先で出た「センチュリオン21」とは1996年に経済水域内で出土した油田を中心に建設された海上人工都市である。2001年に完成し、翌年から一般市民の入植が開始された。現在では170万人が住む「首都」の一つである。

 

「楓!」

「礼子サンと志乃サンに連れて行かれる姿を目撃しております」

「てことは礼子さんと志乃さんもダメね・・・」

「あの人達はアルコールで動いているからね~」

「・・・東郷ちゃん!」

「薫ちゃん家に行ったわ」

「レナ!」

「マカオのカジノイベントに招待されたわ。今頃飛行機の中よ」

「うぅぅ~ん・・・」

 

 いよいよ瑞樹の脳内メンバーのストックが無くなって来た。

 早苗も考えてみるが、ここまでで思い当たる人がほぼ出揃っている。

 

「わかったわ。

 今回はダメみたいね」

「イイ提案だったとは思うんだけど・・・出した日にちが悪かった感じかな?」

「・・・えぇいっ。

 次は必ず、3人以上を集めるわよ~!」

「やっぱ人数は多い方が、って~っ!」

 

 そして、二人は居酒屋を後にした。今夜の会計は瑞樹持ちだ。

 

@

 

 

【挿絵表示】

 

 

「おぉっ!」

「川島瑞樹と片桐早苗だ・・・!」

「ヴィーディーディービーエスエスの2トップだ!」

「カッケ~」

 

「・・・アイドル時代より声援が多い気がするのは気のせいよね!」

「まあ悪い気はしないでしょ」

「えぇ!」

 

 PA居酒屋から二人のマシンまでは20mも無い距離だが、生憎二人とも知名度が高い。

 それでもサイン攻めの様な事が起こらないのは、首都高サーキットを利用する走り屋達が定める暗黙の了解に他ならない。どんな役職の人でも、ここでは一人の首都高ランナーである。

 

「さてと」

 

 早苗が胸ポケットから取り出したのは首都高では珍しい愛車のキーレス・エントリーだった。

 

「今夜もハジケるわよ」

 

 早苗がキーレスのボタンを押すと、「ピッ」と言う音の後に目の前から爆音が鳴り響く。

 3.4Lまで排気量の上がった直列6気筒ビッグシングルターボの、破壊的だが整ったアイドリングがそのマシンの調子を主張する。良好、と言う主張だ。

 

「「「おぉっ!」」」

 

 その音に観客もつられてこの場に居る者達の視線が集中する。

 視線の先に在ったのは、冗談なまでに改造の施された二人の愛車。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「片桐早苗の「S900 "MADCOP"」と川島瑞樹の「SN95'00RSM」だぜ!」

「ドっ派手!」

「”あの”「S900」を更に弄った早苗さんSPLと、元純レーシングカーを首都高用にモディファイした川島さんSPLだもんな~スゲェよ・・・」

 

「相変わらずね」

「パーキングで目立たないでドコで目立てと?」

「はいはい、わかったわ」

 

 瑞樹も自らのマシンに乗り込み、ミサイルスイッチ式のスターターを押す。

 珍しくDOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)方式が採用されている4.6LのV8、レース用に弄られたスーパーチャージドエンジンは日本では余り聞く事の無い独特なサウンドを奏でる。

 

<さ、て、と。

 どう行こうかしら?>

<今夜は、そうね・・・西!>

<おっけ~>

 

 そして、瑞樹と早苗は今夜の大井PAから姿を消した。




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「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

@

「ノンチャプターエピソード」川島瑞樹(片桐早苗)編

「A ah yeah i know i know !」

瑞樹と早苗が346プロに所属する20歳以上のアイドル達をメインターゲットに”絡み車”をするエピソードシリーズとなっている。

346プロダクション所属アイドル。
詳しい紹介は「キャラクター&マシン」で行う。

川島瑞樹:所属する第7部署のアイドル達で結成されたチーム「V・d!・D・b・s・s.」のリーダーだが、メンバーが滅多に集まらない状況を何とかしようとしている。
愛車のSN95'00RSMは、元純レーシングカー。
片桐早苗:「V・d!・D・b・s・s.」の結成以前から瑞樹とつるんで首都高を走っている。シリーズドラマ「MAD COP/28」の主奴を務めており、本来とてつもなく忙しいハズ。
愛車はS900のオリジナルカスタムカー"MADCOP"。

@

作中の世界観は所謂パラレルワールドであり、幾つか現実とは違う歴史を歩んでいる。
その中でも特筆の出来事は、1996年に経済水域内で出土した大規模な「油田」であり、ここからこの世界は現実との世界観の剥離が濃くなったと言ってもいい。

これ以上の詳しい説明は「用語集」で行う。


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兵藤レナ:A ah yeah i know i know ! 1"RENA THE GAMBLER"

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 この世には、賭け事(ギャンブル)に生きる者達がいる。

 

 そして、兵藤レナもまた、その道に生きる者だった。

 

「♪~」

 

 彼女は今、己の人生を賭けた大勝負をしている最中だ。

 

「うん、すごくいいよ。

 また一段レベルが上ったんじゃないか?」

「ありがと。

 そういう事言ってくれる人が傍に居れば、レベルなんて幾らでも上がっちゃうかもね?」

 

 アイドルというゲームでの”ジャックポット”を手にする為に、プロデューサーである偉戒 卓(イカイ スグル)が場(合法カジノ店の軒先)から引き寄せた(スカウトした)エースカード。346プロダクション所属アイドル、それが彼女の今の姿。

 

「それが俺の仕事だからな」

「期待しているわ、プロデューサー」

 

 彼女は、自分の人生と言うゲームで自らの手持ちを彼に賭けたのだ。

 

「今日のレッスンはこれで終わりだ、が・・・今夜もか?」

「そうね、家に帰る途中ですもの。ちょっとした寄り道よ」

「レナはヨコに乗せてくれないもんな」

「多分だけれど、特に今夜はダメじゃないかしら?」

 

 偉戒は、今までにも彼女のこういう発言を耳にした事があった。

 彼女が持つ天性の”勘”とも言うべきそれは、確かに今まで外した事は無い。だが、彼女がそれを告げる時、いつも明確な理由に欠ける。

 

「やっぱり俺もクルマ、買うかなぁ」

「たしか、ライセンスは持っているんでしょ?」

「まぁな・・・」

 

 レナがレッスンルームから退出する間際、彼は問うた。

 

「なんで”特に”今夜はダメなんだ?」

「ふふっ、それはね・・・」

 

@

 

「どうですかー私の賭け、欠けている処はありました?」

「でかした楓ちゃん!」

「やるわねー見事にレナさん狙い撃ちじゃないの。

 でもプロデューサー君はナシなのね」

「仕事多いのよ、カレも」

(その仕事は今頃終わっているでしょうけれどね・・・)

 

 立ち寄った銀座PAの走り屋バーにその人達は居た。クルマを極力目立たない所に停めて、レナが入店するのを心待ちにしていたのは川島瑞樹、片桐早苗の「V・d!・D・b・s・s.」リーダーコンビと、二人に付き合っていた高垣 楓であった。

 

「しっかしこういう所で飲んでいるんじゃ、私達が見付けられない訳ね。わかったわ」

「普段のルーチンとは全然雰囲気違うからねー。

 1時間居たけど早苗ちゃんもうギブですわ!」

「ではそろそろ、酔いもたけなわと言う所でしょうから」

「ここのはアルコール入っていないわよ。それに、私はまだ1杯もしていないわ」

「ままそう言わずに」

「周って帰って来たら付き合ってあげるから」

「それでは、レッツ・ゴー♪」

(ハイハイ・・・)

 

 早苗が手早く勘定を済ませ、瑞樹達は店の裏側へ急ぎ足で向かった。その光景を見てレナは肩をすくめながら、自らの愛車たるFD3Sへ足を向けた。PAのライトに照らされたピンク色が眩しい。

 

「今夜のゲームも頼むわよ、私の相棒サン♪」

 

 ドライカーボンのボンネットに人差し指を走らせ、キーを差し込みドアを開ける。流れる様にワンオフのバケットシートに体を滑り込ませれば、自分が良く知っているダッシュボードとフロントウインドー越しの店の入り口が目の前に映る。ついさっきも見た光景と言えばそうだが、店に入る前と店を出る前では心持ちが違う為に、全く別のモノにすら見える時もある。

 

「相変わらず派手ね!レナさんのFD!」

「アンタには言われたくない筈よ、早苗」

「遅れましたー」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 爆音を轟かせ、例の3人がそれぞれのクルマに乗って店の裏から姿を現す。一体何処に停めていたのだろうか。川島瑞樹のSN95レーシングSPL、片桐早苗のS900マッドコップ、そして高垣 楓のNA2Rは有名カスタムショップが手掛けた”フォーチュンモデル”と呼ばれるエアロを纏い、さらにモディファイが重ねられて元がNA2Rとは言われるまで分からないだろう。レナも自分のクルマは派手な方だという自覚と自信があるが、今この場に居る4台の中では地味にすら見えかねない。

 

@

 

 PAを出発し、4台が一列に並んで一定の距離を保つ。

 複数人でのバトルが行われる前にはよく見られる光景だ。こうすることでコンソールの電波が伸び、最後尾から先頭まで一気にメッセージやバトルが送信出来るのだ。

 

「レナちゃんは「Deal of ACES」か、オッシャレな通り名だこと・・・。

 楓ちゃんは「Ende of E.R.A」・・・エンデ?イー・アール・エー?」

 

 最後尾となった早苗はコンソールを操作し、メッセージを送信した。

 

<どう走る~?>

<新環状右回り一周ってトコでどうかしら、レナさん?>

<良いわね>

<大井を付けるのは多いでしょうか?>

<構わないわよ?>

 

「<じゃ新環状右回り大井経由でRSバトル送信!>ってね」

 

 早苗からのメッセージとバトルを受信した楓は冷静だった。

 

「来ましたね」

 

 コンソールを操作してバトルを受諾。カウントが表示される。

 

「ふふふっ、楽しみね♪」

 

 瑞樹は少なくなってゆくカウントに心躍らせ、それに合わせる様に3速へギヤを落とす。

 

「さぁ、ゲームの始まりよ」

 

 そしてカウントがGOを表示した瞬間、レナはアクセルペダルを踏み込んだ。

 

@

 

「・・・成る程な・・・そういうコトかよ」

 

 そう言いながら、偉戒が眺めていたのはアイドル達のスケジュールボードだ。

 丁度、今の時間帯に川島瑞樹、片桐早苗、そして高垣 楓がオフになる組み合わせになっていたのだ。10代の方でもそれらしいスケジュールデザインが施されている所もあるが、間違いなくレナはこの3人と首都高を走っている。そう確信できた。

 

「やっぱりクルマ買おうかな・・・」

 

 偉戒が携帯端末の画面を開くと、そこには「GRP A1規定クリア済み」という触れ込みの中古車が幾つかラインナップされていた。

 

「買っちまうかな~~~~~~~~~ッ」

 

@

 

 バトルは深川線区間に入り、箱崎PAを通過したところだ。

 

「なぁに!

 まだまだこっからよこっからぁ!」

 

 箱崎PA前の分岐選択をしくじり、見事に黄色いサポートアザーカーのケツを拝むハメになった早苗は最下位になっていた。3位の楓から200mは離れてしまっているが、彼女の言う通りまだバトルは序盤、逆転のチャンスはそこら中に転がっている状態だ。

 

「付いて来なさい!

 わざわざ場に引っ張り出してきたんだから、楽しませてよね!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 レナはトップを快走、2位の瑞樹を車一台分引き離してなお加速する。元ショップデモカーという経緯を持つレナのFD3Sには3ローターのロータリーエンジンが搭載されており、ツインターボによる過給が加わることで730馬力を発生させるモンスターだ。更に瑞樹のSN95'00RSMより軽い車重によって、パワーウエイトレシオ(マシンの1馬力あたりに掛かる重量)においては元レーシングカーと大差ない数値を出すスーパーマシンとなっている。

 

「ほらほら、置いて行くわよっ♪」

 

 ・・・因みにだが、余り大きな声で言う事の出来ないギャンブルに勝利した事で、レナはこのマシンを手に入れた。プロデューサーの偉戒も知らない、彼女のトップシークレットだ。

 

「やられっぱなしってのは、キャラじゃないわね、瑞樹っ!」

 

 アザーカーを巧みにすり抜け、瑞樹のSN95はFD3Sに肉薄しようとする。だがマシンの性能としてはコーナリングで劣るSN95に、深川線区間で勝負するところは無い。むしろ気にするべきは後方、楓のNA2改が路肩を縫って瑞樹に迫っていた。

 

「路肩側から来るなんてねっ、アザーカーも居るのに!」

「狭い所から迫りますよ~」

 

 路肩から脱出した楓は勢いそのままに瑞樹の後方に付き、スリップストリーム効果で追い抜きのタイミングを計る。しかしスリップに付いた地点が悪い事、そして今夜はサポートアザーカーがまだ多い事もあって追い抜きはしばらくお預けであろうと楓は確信した。であれば、彼女がすべきはこの距離感を保ったまま、湾岸線区間に入る事が最優先される。

 

 その2台を、レナはバックミラーで、そして早苗は目前に確認しながら深川線を下って行く。

 

@

 

 湾岸合流で事態は変化した。

 レナが湾岸線との合流地点である辰巳の右コーナーで姿勢を乱し、瑞樹と楓を前に出してしまった。更に千載一遇と言わんばかりに楓が瑞樹をオーバーテイク。

 一瞬で一気に順位が変貌し、4台の差は縮まる形となった。

 

「ならパワー勝負に決まっているでしょーがっ!!」

 

 早苗はここぞとばかりにアクセルペダルを踏み倒す。一見乱暴に見える操作だが実際に乱暴そのものであり、バーンナウトの如き白煙を引きながらS900は湾岸線を疾走する。1000馬力には僅かに届かない程度の馬力はホンモノであり、3位のレナとの差がみるみる消えていく。

 

「流石にスペック差は覆せないわね・・・でもやり様はあるのよっ」

 

 時速340km/hの時点で2台は並び、レナは早苗に前を譲ってスリップに付く。

 

「後ろに付かれてしまいましたね・・・もう少し持って下さいね?」

 

 楓は既に5速を17000回転近くまで回しており、メーターは時速347km/hを記録している。

 

@

 

 NA1/2に搭載されている3Lおよび3.2LのV6ノンターボエンジンは、超高回転まで回すことでハイパワーターボエンジンと勝負するチューニングが主流である。一応だが2005年に崩壊する事となった「F1」の最末期においては、3LのV型10気筒エンジンをなんと20000回転まで回し、ノンターボながら実測で1000馬力を超えていたというデータも存在する。排気量の多さ、もしくは回転数の多さがパワーに直結する自然吸気(normal aspiration)エンジンにおいて、増やせる排気量がある程度決まっている市販車のエンジンを使う以上、回転数を上げる事よりパワーアップが可能なチューニングはほぼ無いと言っていい。稀にあるとすれば”常時噴射式N₂Oシステム”だが、NA1/2のメカチューンにおいては高回転化と併用している場合の方が多い。現に楓のNA2Rにもシステムは搭載されている。

 

 当然だがその非常識なレブリミットではメリットよりデメリットの方が多いかもしれない。だがC1GPや首都高でトップに近いNA1やNA2のエンジンは、ノンターボである場合そのすべてのレブリミットが間違いなく15000rpmを超えている。そうでもしない限り、首都高(特に湾岸)でノンターボエンジンがターボエンジンに勝てる要素はほぼ無いのだ。

 

@

 

 楓が6速へギアを上げる。18000rpmから一気に14000rpmまで回転が下がる。350km/hを過ぎて”加速がもたつく”という感覚は恐怖に直結するが、それは高回転NAの宿命として楓は飲み込むと同時に手動でもN₂Oを噴射して少しでも加速の補佐をさせる。流石に後ろに付く瑞樹のSN95も簡単には追い抜ける程の速度差にならない事もあって360km/hオーバーのランデヴーだ。

 

「お二人さんばっかり仲良くしていないでよ♪」

「早苗ちゃんお仲間に加えてほしいンですけれどーっ?」

「私だって、好きで楓ちゃんの後ろに居るワケじゃないわよっ!」

 

 更には早苗とレナの方も近付いて来ていた。咄嗟に瑞樹はデジタル表示のスピードメーターを見返す。372km/h。恐らくだが向こうは380km/hオーバーかと思うと、出したくないタイプの汗が瑞樹の肌を刺激する。

 早苗とレナが瑞樹の後方に付いた。4台がトレイン状態で海底トンネルへ進入すると、大井までもう長くは無い。

 

 最初に行動を起こしたのは、やはりというか楓のNA2Rであった。

 

「原則事項に乗っ取って、減速ですね」

 

 長すぎる高回転高負荷はノンターボでなくとも一発アウト。かといって一気に減速すると冷却がマヒしてオーバーヒートは避けられないという状況で、楓はアクセル全開のまま左足でほんの一瞬ブレーキペダルを踏み、3台の後ろへ滑り込んだ。

 海底トンネルを抜ける。

 

「チャァンス到来っ、て――――――――――――ッ」

 

 そして早苗がトレインから抜けた。

 大井の分岐が目前に映し出された状態で瑞樹と早苗が並び、更にはレナが外側の車線へ飛んで並びかかる。楓はレナの後方に付いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 大井Uターン、最初に飛び込んだのはレナと楓であった。

 

「イン側締め過ぎッ!?」

「やっば加速しない!?」

 

 早苗に思いっきり”被せられる”格好となった瑞樹と、角度を付け過ぎた為にカウンターを当ててほとんどドリフト状態に陥った早苗が加速出来ないのは当然であった。

 

「お熱い事・・・」

「お先していますね♪」

 

@

 

 結局は大井がバトルのハイライトであった。

 そのままレナと楓が1-2を決め、瑞樹が3位の早苗が4位という結果に終わった。

 

「っは――――――――ッ!

 ぃんやぁひとっ走りした後に1杯ヤるってホント最高だわ~。

 そう思うわよね。思うわよね!」

 

 先程、レナが入店し損ねたバーのプライベートルームを借りて女子会が始まっていた。

 当然ノンアルコール飲料なのだが、早苗の勢いはアルコール入りの場合とあまり変わらない。

 

「私はどっちかっていうと走る前の方が多いのよ・・・。

 でも、ゲームに勝った後だと確かに変わるわね。何時もより美味しいかも♪」

 

 居酒屋の宴会モードな早苗とは対照的なレナ、カクテルを呷る様が決まっていた。

 

「酒の肴はバトルの勝利?」

「しいて言うなら隠し味でしょうか?」

「何でもいいわよ、美味しい1杯が飲めればね!」

「あっ、プロデューサーからだわなになに・・・」

 

 レナの携帯端末にはプロデューサーである偉戒からのメッセージが来ていた。

 メッセージを確認するレナを見ながら、早苗と瑞樹は愚痴り合う。

 

「・・・アタシもね、ああいう感じを想像していたのよ。

 まさかウチの第7部署、プロデューサーが配属されないなんて思っていなかったわ」

「わかるわ。

 でも会社側としては間違っていないんじゃないかしら。私達は自分で自分をプロデュース出来るだけのスキルを持ち合わせている訳だし、なによりね・・・」

「美優ちゃんとるーみん(留美)はよくやったというか・・・瞳子ちゃんもか。

 あたし達のプロデューサークンは遠くへ行ってしまって・・・グスン」

「死んでないわよ彼。

 それに言う程会っていない訳でもないでしょーに」

 

 なにやら重力が増しつつある二人を横目に、楓はレナ宛のメッセージが気になっていた。

 

「どんな手紙が来たのでしょうか?」

「私のプロデューサー、クルマ、買うってね」




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「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

@

「ノンチャプターエピソード」川島瑞樹(片桐早苗)編

「A ah yeah i know i know !」

瑞樹と早苗が346プロに所属する20歳以上のアイドル達をメインターゲットに”絡み車”をするエピソードシリーズとなっている。

今回のターゲットは兵藤レナ。
高垣 楓と共に銀座から大井Uターン経由の新環状右回り1周のRSバトル。
操作するアイドルは選択可能、成功条件はすべて1位でのゴールである。
レナか楓を操作する場合、大井Uターン前で瑞樹と早苗は共倒れを引き起こす。

346プロダクション所属アイドルとプロデューサー。
詳しい紹介は「キャラクター&マシン」で行う。

兵藤レナ:「V・d!・D・b・s・s.」のメンバーだが、第7部署の所属ではない。その為担当のプロデューサーもきちんといる。
愛車はFD3SRSだが、エンジンは3ローターツインターボ、外観はフルエアロでノーマルの面影はない。元デモカー。
高垣 楓:346プロダクションが誇る超大人気アイドルだが、意外とスケジュールには空きが多い。彼女も第7部署の所属ではないが、チームには名を連ねている。
愛車のNA2Rはフォーチュンモデル化され、更にリアカウルを大幅にモディファイしている。エンジンは3.4L化と高回転化が施され、更にN₂Oを常時噴射するシステムが組み込まれている。
偉戒 卓(イカイ スグル):兵藤レナのP。カジノからレナを引き抜いた強者だが、彼女には振り回されている。この度クルマを購入する決心がついたらしい。


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STORY MODE LOAD GAME chapter1 Main EPISODE
A NEW GENERATION'S 23:58


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 新環状右回りの湾岸線ストレート区間を疾走する、蒼い影が一つ。

 

(・・・)

 

 そのクルマのカラーリングは黒だが、真夜中を反射させ丁度蒼く見える。

 クルマの正体はHCR32。上位モデルにはあのBNR32が居るFRのスポーツクーペだ。

 

(むぅ・・・)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ドライバーは不満の様だが、サポートカーを巧くすり抜けている。

 有明のレインボーブリッジへ向かう分岐を過ぎ、更に湾岸を下る。

 

(・・・なんだろう・・・)

 

 5速、メーター読みで278km/h。既にタコメーターはレッドゾーンを指している。

 どうやら湾岸系の最高速マシンでは無いらしい。

 

(ダメだ)

 

 流石にエンジンブローは避けたいのか、R32は徐々に減速してゆく。

 

(やっぱり、今日もダメ・・・)

 

 クルージングの状態で大井をUターン、今度はC1へ向けて羽田線を上る。

 

(走っても、後を引いて残るんだ・・・。

 この、もやもやとした・・・)

 

「感じ・・・!」

 

 アフターファイヤを瞬かせ、もう一度加速するR32は宵闇に消えていった。

 

@

 

 本田未央は美世がガレージ事業を始めた時の最初の客で、以降常連になっていた。

 

「聞いてよダチャーン。

 またしぶりんはひとりで走っているんだよー」

「ほうほう」

「今の時代アイドルが首都高走っていても何の問題も無いんだよ。

 みかねぇだって「ステータスだよ☆」って言っているのにさー」

「まぁ・・・おおっぴらに言うのもアレな気はするけどね。」

 

 未央の愛車であるEK9に不調は無く、弄る所は見受けられなかった。

 

【挿絵表示】

 

 美世としてはこれまで弄る機会の無かったクルマである為、悪い気はしていない。

 

「よし、おっけーだよ」

「ありがとっ。

 今日はダチャーン首都高行く?」

「んー今日は後2人予約があるからダメかな。

 ・・・そう言えば島村さんとは?」

「・・・そうなんだよ、しまむーもだよ。

 もー、みんなして恥ずかしがり屋なんだからー」

 

 茶化しているが、未央の顔はそこまで明るくしていなかった。

 

「また調子悪くなったら来るからね、ダチャーンっ」

「それ以外の時に来ても、私は文句は言わないから」

 

 13部署のガレージを後にするEK9の後ろ姿に、美世は軽く手を振った。

 

「・・・さて、次は・・・」

 

@

 

「島村さん、ここのフレーズですが・・・」

「え、あっ」

 

 346プロダクション第12部署、「シンデレラ・プロジェクト」の事務所。

 そこに隣接するレッスンスタジオで、島村卯月は練習をしていた。

 

「私も専門ではないので、説明は難しいかもしれません」

「いえっ、そんな事無いです。

 私もちょっと間違えたっていうか・・・」

 

 その近くで彼女を見守り、指示しているのは12部署の担当プロデューサー。

 かなり強面だが、彼女達の成長を誰よりも願い、全力で手助けする生真面目な男だ。

 名前を弐内雄輔(ニナイ ユウスケ)という。

 

「私からは島村さんが、無理矢理に練習している様に見えます」

「・・・判りますよね・・・」

「今日はもう止めた方が宜しいと思います。

 このまま続けても、身体に好くない負担が掛かってしまうだけでしょう」

「でも、私・・・私は・・・」

 

 なにか言葉を出そうとしたが、卯月は顔を下げた。

 弐内は、彼女が何故このような状態になっているか、ある程度の見当が付いていた。

 

「・・・本田さんと、渋谷さんとの事は、正直、私一人ではどうする事も出来ません」

「・・・」

「何か、切っ掛けが有ればいいのですが・・・」

「・・・じゃあ、もう着替えますね」

「はい」

「切っ掛けも、探してみます・・・。

 卯月、もうちょっと頑張ります・・・!」

「無理の無い程度にお願いします。

 無理や無茶をしていては良い事は起こりませんから」

「はい、プロデューサーさん。

 では、今日の練習お疲れ様でした!」

 

 卯月は隣の更衣室へ消えた。

 その振る舞いはいつもとほぼ変わらないものだった。

 だが、弐内の眼に映るその後ろ姿には、重く暗い、影が見えた。




Main EPISODE:A NEW GENERATION'S 23:58

played result:SUCCESS!

「ストーリーリプレイ」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章前半のメインエピソード

「A NEW GENERATION'S」

最初のストーリープレイは渋谷 凛のHCR32を駆る。
新環状右回りの湾岸合流からスタートし、大井でUターン。
羽田線を上り、C1内回りに合流してフィニッシュとなる。
特に難しいことは無いのだが、湾岸線下り区画で280km/h以上出そうとするとエンジンブローしてしまうので注意が必要。

このゲームの世界では2001年に首都遷都と「新都市循環高速道路」の開通によって首都高が
「首都高サーキット」として生まれ変わっている為、通称”大井Uターン”が存在している。


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A NEW GENERATION'S 23:59

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「・・・」

 

 更衣室には別にドアがあり、そこから外の廊下に出られる。

 卯月が部屋を出て行く音がしても尚、弐内はそのドアを眺めていた。

 弐内にはそのドアが、まるで彼女達との距離を意味している様に感じたのだった。

 

@

 

「・・・予想以上に私って仕事が速いのかな・・・?」

 

 美世は本日最後の客を見送ると暇になってしまった。

 時計は21時32分、行けば程良く首都高が始まる時間帯だ。

 

「未央ちゃんに出くわさないよーに、なんて」

 

 美世はキーを指先で器用に回しながら、相棒のR33の下へ。

 

「あれ、今日はもしかして私だけ?

 ま、いっか」

 

 他の面子の具合を確認しつつ、美世はR33のエンジンを掛ける。

 その少し後、R33は少々五月蠅めのエキゾーストでガレージから出て行った。

 

@

 

「・・・なんでかな・・・」

 

 24時間程前、宵闇を反射し蒼を纏ったHCR32が駆け抜けた道を走るクルマが1台。

 ピンクに寄せた赤が眩しい、そのクルマはST202。上位グレードには4WDとターボで武装したST205が存在するFFのスポーツクーペだ。

 

「誰も悪くないのに、どうして・・・」

 

 このST202、ステアリングを握っていたのは卯月だった。

 格好はあの時に着替えた制服のままで、恐らく家に帰らずにずっと走っていたのだろう。

 だがその運転は明らかに平常のそれではなかった。動きはちぐはぐ、サポートカーの対処もワンテンポ遅れ、最早教科書通りとさえ言える「運転の悪循環」が彼女を取り巻いている。

 

「私のせい、なの?・・・私、が・・・悪かったのかな・・・?」

 

 そのような状態でも最悪の事態に陥っていないのは、彼女の体に染みついているテクニックによるものである事は想像に難しくないだろう。

 

「ダメ、ダメだよぉ・・・」

 

@

 

 精神的に不安定な時は運転を控えましょう。

 限定的にも12歳から自動車を運転出来るこの世の中では、運転教習に一層力が入っている。

 

 「自動車運転文化の存続、及び後世へのモータースポーツの継承」

 

 「首都高サーキット」と「C1GP」を管理・運営する「GRP A1project」が掲げるスローガンにとって、若年層の重大事故は何としても避けたい事例なのだ。

 

@

 

 その動きの異常さは、後方で距離を取って走らざるを得なかった美世も分かっていた。

 

(サポートカーもあれじゃ近づけないか・・・)

 

 美世が卯月のST202に遭遇したのは4分程前、卯月は後ろに車が来た事に気が付いていない。

 もっとも、美世は前方のST202を運転している人が島村卯月という事を知らない。

 コンソールが反応する距離まで近付く事が出来ないのだ。

 だからといって、このまま放って置く訳には行かないのが美世だった。

 だったのだが、少し遅かった。

 

(くっ、このままもたもたしていたら、何が起こっても不思議じゃなかったか!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 目の前ではST202がグリップを失い、スピンを始めていた。

 美世も思わず考えていたことが口に出てしまう。

 

「っと、くぅっ!」

 

 美世は間一髪でそれを避け、左側の路肩に寄せて停止した。

 既にサポートカーが対処にあたっており、通行制限が完成している。

 

「壁には当たっていないか、よかった・・・。

 大丈夫ですかー!」

 

 美世はST202へ駆け寄ると、ドアが開き、卯月がクルマから降りた。

 そして、そこでようやく美世と卯月は出会う事となる。

 

「あれ、もしかして島村卯月さん?」

「は、はい。

 私が島村卯月です」

 

@

 

 




Main EPISODE:A NEW GENERATION'S 23:59

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「ストーリーリプレイ」が記録されました

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@

「ストーリーモード」第1章前半のメインエピソード

「A NEW GENERATION'S」

この回は前半に卯月のST202、後半に美世のR33を操作する。
ルートはほぼ前回と同じだが、大井までで終了する。
前半は湾岸合流~有明、後半は~大井までといったところか。
前半操作する卯月のマシンはパワーもそれ程無いので湾岸を下ると少々退屈に感じるかもしれない(最高速が270km/h前後)。
逆に後半は美世のR33で卯月を追う訳だが、追い越すと「失敗」となる。
美世と卯月のマシンはほぼ倍の出力差がある為、追い越しが容易過ぎるのが問題である。

「ストーリーリプレイ」では前半美世、後半卯月でプレイ出来る。
この場合前半では美世が卯月に追い付くまで、後半は卯月が大井付近に辿り着くまでであり、クリア条件も簡素になっている。
因みに、大井付近まで接近すると卯月のマシンは後輪のグリップ値がゼロになり、更にステアリングが左右逆に入力される様に設定されている為、プレイヤーとしても自然に「突然スピンする」という状態を演出出来る。(スピンするとムービーへ)
(当然それを逆手に取った「大井から何処まで進めるか」という縛りプレイがプレイヤー間で存在する。最長では高速湾岸線を下り切った猛者も居るらしい)


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A NEW GENERATION'S 24:00

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サポートカーの交通規制もあって、卯月と美世は大井PAにクルマを停める事が出来た。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ブラックとブラック、どっちが良いかな。

 て、聞いてましたか島村さん?」

「あ、ブラックで・・・両方ともブラックじゃないですか。

 それに、私の事は卯月でいいですよ、原田さん。」

 

 美世は左手に持っていたブラックコーヒーを卯月に渡す。

 

「私も美世でいいよ。

 じゃあ卯月ちゃんて呼んで良いかな?」

「はい」

「何か悩み事かな、私の予想だけど。

 流石にあの運転を続けられちゃ、色々とマズイからね」

「はい・・・」

「で、どうしちゃったの?」

「・・・」

 

 卯月は口を閉じて俯いてしまった。

 美世としては十分に柔らかい物腰で話を切り出した筈だったが、とても成功とは思えない状態である。だが、そこで退く美世ではない。

 

「私はね、悩み事がある時はその悩んでいる事を口に出す様にしているんだ」

「はぁ」

「そう。

 私おバカだからさ、ただ「うーん」てしていると何で悩んでいたか思い出せなくなったりするのよね。しかもそう言うのに限って大事な事だったりするから、なるたけ悩んだ時はその事を口に出す様にしているの。

 自分で言葉にした「悩んでいる事」を自分の耳で聞き直すって言うのかな?」

「あ、ぁはは・・・」

 

 今度は卯月が若干引き攣っている。

 クルマ同士の駆け引きの様にはいかないと悟った美世だが、卯月にとっては少し思う所があった様で、ポツリ、ポツリと自分の「悩んでいる事」を話し始めた。

 

「まぁ、隣に居るのが壁とでも思って!?」

「・・・私、346プロの12部署でアイドルをやっているんです」

「確か「シンデレラ・プロジェクト」だっけ?」

「他に2人、最初からプロジェクトに居た本田未央ちゃんと、ちょっと後から入って来た渋谷 凛ちゃんの3人で「ニュージェネレーションズ」っていうユニットをやっているんです」

「あれ、順番そうなの?

 私的に卯月ちゃん凛ちゃん未央ちゃんの順だと思ってたんだけどな・・・」

「最初は3人で何とか頑張ろうって雰囲気だったんですけど、レッスンでも本番でも振り付けとかタイミングとかが合わなかったり、そうした失敗が続く内に私と凛ちゃんとの間に”溝”みたいなのが出来ちゃったんです。

 未央ちゃんも、私達を仲直りさせようと色々してくれたんです。けどあんまり巧く行かなくて、遂に3人で集まる時間も無くなっちゃって・・・」

「なるほど・・・」

「・・・私、いつも遅れちゃうっていうか、一人になっちゃうんです・・・。

 首都高も、最初は学校の友達が誘ってきて7人位で始めたのに誰も居なくなっちゃいましたし、アイドル養成所の11人居た同期の子も、オーディションに受かったり、スカウトされたりあと辞めちゃったりで最後は私だけ・・・」

「なるほどなるほ・・・あれ?」

 

 美世は聞き手を放り出して卯月に確認する。

 

「未央ちゃんが首都高を走っているのは知っているんだよね?」

「はい、でもドコを走っているのかまでは・・・」

「凛ちゃんも首都高走っているんだけど」

「え、そうなんですか?」

「・・・3人でいられる時間と場所、どっちもあるじゃん」

 

@

 

「ふ~ぁ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ほぼ同時刻、辰巳PAで未央は背伸びをしていた。

 

「やっぱ・・・物足りないな」

 

 ぽつりとそんな事を呟いた時の横顔は、とても普段の未央と同一人物とは思えない、少なくとも普段の彼女なら到底する事は無いであろう、そんな表情だった。

 未央自身、美世のガレージを出てから直で首都高に入り、休憩を兼ねてPAで情報交換をしていた時間を抜いても3時間、首都高を走り続けていれば多少は焦るかもしれない。

 

(同じ場所に居るはずなんだからさ・・・逢えるんだよね、ダチャーン・・・)

 

 背伸びをしたまま数度身体を前後左右に反らし、マイナスの思考を吹き飛ばす。

 

(いや、逢う、逢ってみせる。

 首都高(ココ)が本当に、それを出来る場所なら・・・!)

 

 EK9に乗り込んだ時の未央の顔は、先程よりは幾分か普段の彼女でもしそうな表情だった。

 

@

 

 何時も、独りになっていた。

 

 学校も、友達っぽい人はいるけどなんか違う。少なくとも話には入れていない。

 「あぁ」とか「うん、そうだね」だけで会話というのは、本当は成立していないと思う。

 

 部活はやっていない。やる気が起きなかったし、仲良しゴッコとか、そういうのに見えた。

 それが嫌だった。そんな中に入りたくは無かった。

 でも多分、別の理由がある。

 例えば、そういう風に見てしまった自分に、嫌になったのかもしれない。

 

(本当は、どうなんだろう・・・)

 

 独りになる事に嫌悪感は無い。

 好きか嫌いかで問われたら、すぐに答えは出せないけど。

 

 実家が花屋をやっていて、それなりに客がいる事は自分でも手伝っているから解る。

 そして、客がいるから、案外一人の夕食が多かった事は納得出来る。

 もしかして、それで独りに慣れてしまっていたのかもしれない。

 原因にはしたくないけど。

 

(・・・親のせいにする気は、無い)

 

 兎にも角にも、私、渋谷 凛という人間は、「独りになる事」が多いというのが事実だ。

 

(首都高だって、最初はクラスのアイツが誘って、たしか5人は居たな・・・。

 結局私だけがハマって、アイツに至っては学校からも消えたんだっけ・・・)

 

 独り、独り、独り・・・。

 これまでが独りなら、これからも独りなの・・・?

 

(誰か、答えてよ――――――――)

 

 葛藤の中で、凛の操るHCR32は更に加速してゆく。

 

@

 

「ええと、大井Uターンから羽田線を上って、C1を外回りですね?」

「うん、たぶん今夜はこのルートだと思う」

 

 卯月は愛車であるST202のドライバーズシートで、美世のアドバイスを聞いていた。

 既にエンジンはかかっており、4気筒ノンターボのアイドリングが2人の間に響く。

 

「でも・・・本当に逢えるんですか・・・?」

 

 疑問を持たない筈が無い。

 「首都高サーキット」と名前にこそサーキットと入ってはいるが、その実態はやはり公道に限りなく近いのだ。分岐、合流、オリジナルのルートは幾らでも創る事が出来る唯一のサーキット。

 だが、そう言われた美世はやけに自信気だった。彼女は知っているからだ。

 

「逢えるよ。

 逢いたいって言う気持ちが本当なら、ね」

 

@

 

「ここは首都高、そういう事が起こる魔法の場所」

 




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「ストーリームービー」が記録されました

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@

「ストーリーモード」第1章前半のメインエピソード

「A NEW GENERATION'S」

このストーリーの所謂「本番」の前に流れるムービー。
このムービーの後、メインでは卯月を操作し、大井→羽田→C1外回りを走る。
「ストーリーリプレイ」では凛、未央側のプレイが可能。
凛は渋谷線から、未央は湾岸→深川線上り経由でC1外回りに合流する。

レースゲームとしてはムービーの多さと長さが指摘される事もあった
(それどころかムービー+レースシーン新規製作のみでビデオ化した事もある)
首都高バトルm@sterシリーズだが、今回もその部分は継承されている。
ただし1度目からでもムービーのスキップが可能な他、「ストーリーリプレイ」では逆にムービーのみの視聴を可能にする等対策が取られている。
(流石に「”金属の歯車”賞」は獲得し飽きたらしい。)

346プロダクション第12部署の担当Pと所属アイドル(候補生)
詳しい紹介は「キャラクター&マシン」で行う。

島村卯月:ダメ元で受けたオーディションに合格してこの部署へ。愛車はST202。
渋谷 凛:Pの勧誘姿勢に負け、スカウトを承諾してこの部署へ。愛車はHCR32。
本田未央:Pと共にこの部署を設立し、仲間を心待ちにしていた。愛車はEK9R。
弐内雄輔:この部署のP。強面だが、真面目なだけの優しい男。愛車はER34D4


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A NEW GENERATION'S 24:01

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「本田さん、新しい部署とプロジェクトが完成しました」

「お!」

「部署番号は12、名前は「シンデレラ・プロジェクト」です」

「ふっふっふ・・・遂に始まるのですな?

 この本田未央のシンデレラストーリーが・・・!

 でもその部署って私だけ?」

「・・・これから集めていく中で、本田さんが一人目の決定となりました」

「やっぱそうだよね。

 「一人目」と「一人だけ」なら、私は一人目の方が断然好きだからね」

「そうですか」

「早く他のメンバーの顔を拝ませてよっ、プロデューサー!」

「・・・善処します」

 

@

 

「卯月ちゃん、これ・・・」

「あ、先生どうしたんですか・・・って、えぇ!?」

「貴女、遂に受かったわよ!」

「本当、ですね・・・!」

「やったわね!」

「は、はい!

 島村卯月、これからも頑張ります!」

 

「卯月ちゃんのシンデレラストーリーも、これから始まるのね・・・」

 

@

 

「せめて、名刺だけでも・・・」

「ハァ・・・、アンタも懲りないね、いい加減にさ。

 このままじゃ、また警察に連れてかれるよ」

「・・・」

 

「いいよ、やってあげる、アンタには負けたよ」

「本当、ですか?」

「そうじゃなかったら言わないよ。

 アンタが私のプロデューサーなら、まぁ、悪くないかなって」

 

@

 

(後ろから1台来た・・・)

 

 無事にC1外回りに合流した卯月は、後方から迫るクルマを察知した。

 まだよく見えないが、比較的シャープなフォルムをしている。

 

(なんだろう、この感じ・・・)

 

 速度差はあるが、何故か、譲りたくなかった。

 更に近付いてくるとようやくクルマの判別がついた。

 黒いHCR32だ。

 

「本当に、凛ちゃん、なの・・・?」

 

 その時、向こうからSPバトルを受信した。

 画面に映されていた”通り名”は、ワンダラー「アイオライト・ブルー」。

 

「ドライバー、渋谷、凛・・・!」

 

@

【挿絵表示】

 

 

「車種、ST202。

 ネーム「スマイルイング」。

 ドライバー、島村卯月・・・!?」

 

 受信した前のクルマの車両データを、凛はもう一度確認していた。

 

(そういえば、未央が言っていたっけ。

 卯月も此処を走っているって・・・)

 

 だが、バトルを下げる気は起きなかった。

 むしろ、より一層目の前のクルマ、卯月と勝負がしたくなっていた。

 

「・・・」

 

 カウントダウンが始まる。

 だが、GO二文字までの5カウントさえ今の凛にはもどかしく感じた。

 

(卯月は・・・私と走りたいの・・・?)

 

 逸る気持ちを抑えられない。

 残りカウント1でさえ凛にとっては永遠に感じた。

 戦闘態勢、既に完了済。

 

(答えてよ・・・!!)

 

 遂に、カウントがGOを示した。

 

@

 

「ん・・・何だろ!?」

 

 有明から湾岸を東に爆走していた未央は、体験した事の無い何かを感じ取っていた。

 

(今のはなんかあるな~。

 もしかしてっ、しまむーとしぶりんがどっかでバトっちゃってたりする!?!?)

 

 未央にとっては単なる想像の一つ。

 それもどちらかと言うと、”IF”に位置付けされる様な”願望”とも言える考え。

 だが時として、まるで予知した様に実際に起こっている事もある。

 

(無いって言えないよね・・・。

 むしろダチャーン的には逢う方が確率高そうに言っていたし・・・)

 

「こうしちゃいられないっ!」

 

 未央は愛機のEK9を加速させ、深川線を上ってゆく。

 

@

 

「初めましてっ!

 島村卯月です。よろしくお願いしますっ!!」

「おー!

 遂に来たよメンバー二号が!

 私、本田未央っていうんだ!

 待ってたんだよー!」

「ひゃっ、はっ、はいぃ~」

「名前、シマムラ ウヅキだっけ?

 ”しまむー”って呼んでいい?」

「はい、いいですよ」

「これからよろしくね、しまむー!」

「よろしくお願いしますね、未央ちゃん!」

 

@

 

(互角・・・)

 

 凛と卯月のバトルは拮抗していた。

 短期戦になり易い筈のSP(スピリットポイント)バトルだが、時にRS(ロードスプリント)バトルより遥かに長期戦になる場合もある。

 そして、このバトルは必要条件を十分に満たしていた。

 

(マシンスペックは間違い無くこっちが上だけど、卯月の方が加速が鋭い!)

 

 北の丸トンネルの出口でふらついた卯月の隙を見逃さない凛だったが、素早くリカバリーされ逆に加速するスペースを失い若干後退、SPを消費する。

 

(インを閉めれば何とか凛ちゃんを抑えられたけど、この先は厳しいかな?)

 

 神田橋前で前後が入れ替わるが、凛のクルマは卯月の予想より離れない。

 

「卯月っ」

 

 C1という首都高の中でもテクニカルなコースは、マシンスペックをある程度まで補える。

 更に凛のHCR32はFR(後輪駆動)のターボエンジン。

 卯月のST202はFF(前輪駆動)のノンターボエンジンと、クルマの特性がまるで異なる。

 特性が違えば走り方もまた違う。最適な走行ラインは幾度もクロスする。

 

「凛ちゃん・・・!」

 

 呉服橋に向けての緩いシケインでポジションが綺麗に3度も入れ替わった。

 この攻防で壁等への接触でSPを消費し、残りは両者とも50%を下回っている。

 

(この感じ、今までで初めて・・・!)

 

(まるで凛ちゃんとダンスでもしているみたい・・・!)

 

 2台が火花を散らし、全力で首都高を駆ける様は美しい。

 だが、その美しさは勝負と言うより、円舞の美しさだ。

 あれ程合わなかった二人の息は、今、この瞬間にピタリとリンクした。

 

(楽しい・・・。

 卯月と走っていると、もしかしたら、何処までも行けるかもしれない。

 ・・・だからっ)

 

 凛が江戸橋で卯月の前に出る。

 間髪入れず卯月が後ろに付き、ブレーキポイントを遅らせ刺し返す。

 

 旧江戸橋JCT、新環状左回りと合流する角度の深い右コーナーが迫る。

 両者のSPは既に点滅しており、僅かである事を知らせている。

 

(凛ちゃん、勝負だよ!!)

 

(卯月、私は負けない!!)

 

 卯月がインから、凛が並んでアウトからコーナーへ侵入する。

 きっちり減速し、タイヤのグリップを生かして曲がる卯月はアウトへラインを描く。

 それを予感していた凛はクラッチを”蹴り”、ドリフトに持ち込んでインへ動く。

 

 

【挿絵表示】

 

 

((・・・・・・!!!))

 

 アウトから”く”の字にコーナーを攻略した卯月と、合流で増える車線にクルマを振った凛は再度ラインをクロスさせる。

 

(あっちまで行ったらブロック出来ない・・・!)

 

 卯月は敗北を覚悟したが、悔しさはなかった。

 だが、凛が加速体制に入ろうとしたその瞬間、”最後の主演”が合流した。

 

@

 

「渋谷 凛、15歳です。

 ・・・よろしく」

「島村卯月っていいます。

 よろしくね、凛ちゃん」

「私、本田未央っていうの!

 これからよろしくっ、しぶりん!」

「え、あ、・・・うん」

 

「これでやっとアイドル活動が出来るーっ!」

「そうみたいだね。

 ところで未央、わたしたちのユニット名って何?」

「そう言えば・・・決めてませんでしたね」

「じゃあ、決めますか!」

 

@

 

「C1合流って、うぉッ!?」

 

 未央の視点から状況を説明すれば

 「C1外回りに合流した瞬間、猛烈な勢いで黒いクルマが自分目掛けて突っ込んで来た」

 という事になる。

 未央は頭で考えるより先にブレーキを踏み、ステアリングをしっかり握って左へ回した。

 

(しまッ!!!)

 

 凛はライン上のクルマを避けようとする焦りから、インド人を右への勢いでステアリング操作をしてしまった。マシンはトラクションを失い失速、SPが消費し尽された。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 凛のHCR32が前にも左にも居ない事に卯月が気付いたのは、画面に《you win》の文字と、電子音声の乾いた一言が車内に響いてからだった。




Main EPISODE:A NEW GENERATION'S 24:01

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「ストーリーリプレイ」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章前半のメインエピソード

「A NEW GENERATION'S」

メインイベントは卯月VS凛のC1外回りバトル。
卯月か凛のどちらかを選択し、バトルに勝利するのが目標である。
(小説内では卯月側を採用している)
難易度はまだ低めだが、マシンスペックがほぼ互角の為必然的に長期戦となる。
(最低でも谷町から江戸橋まで。)
SPバトルに慣れていないと少し厳しいかもしれない。

因みに、相手を壁やアザーカーに故意に押し当てるという首都高バトルシリーズ禁断の裏ワザを行うとバトルに勝っても失敗(FAILURE)扱いとなるので御注意を。

「ストーリーリプレイ」では逆側でのプレイが可能。


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A NEW GENERATION'S 12:02

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 京橋PAに卯月のST202、凛のHCR32、そして未央のEK9Rが入って来た。

 そして3台は横一列に駐車し、3人が今夜初めて顔を合わせた。

【挿絵表示】

 

 

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 少し沈黙。

 空気が重い。

 

「本当にり、凛「未央・・・」ちゃんと未「えへへ・・・おまたせ!」央ちゃん!?」

 

 沈黙を破ろうと、今度は全員が同じタイミングで口を開けてしまった。

 

「あ、あれ?」

「卯月・・・ふふっ」

「ちょっ、しまむー・・・」

「だって!

 もしかしたら同姓同名の別人かもってーッ」

「落ち着きなよしまむー。

 それとも?しぶりんとバトってなんか不満だった?」

 

 未央の言葉に卯月は少し考えたが、躊躇いは無かった。

 

「ううん。

 不満どころかすっごく楽しかったです!

 まるでダンスみたいに前後が入れ替わったり並んでコーナーを駆け抜けたりして、このまま終わりたくない、ずっと凛ちゃんと走っていたいって想う位に・・・!」

 

 未央は卯月のそれを聞いて、凛にも感想を聞きたくなった

 

「ふむふむ・・・。

 だそうですぞ、しぶりんっ。

 どうだった?しまむーと走ってさ?」

 

 凛も、今回のバトルに語る事は少なくなかった。

 

「卯月と同じ、かな。

 楽しかったよ、首都高を走って今夜が一番って位にはね」

 

 一度振り返り、未央と卯月に背を向ける。

 その芝居がかった動作は、頭上の街路灯の灯りと相まってとてもキマっている。

 

「・・・そう、一番。

 今まで、首都高(ココ)は独りで走っていたんだ。

 誘ってきた奴は、皆ヤメちゃってさ・・・。

 独りで走るのも悪くは感じていなかったけど、今夜、卯月と走ってしまった。

 あんなに楽しいバトルを経験したら、もう、戻れないかもね・・・!」

 

 気が付くと凛の右手を卯月が握っていた。

 凛が振り返ると、卯月の顔が近かった。

 

「うづき・・・!?」

「おんなじですね、私と凛ちゃん」

「え、それって、どういう」

「私も、最初は友達に誘われたんです。

 それでライセンスを取って、チームみたいなのまで作ってやっていたけど・・・。

 気が付いたら、みんな居なくなっちゃってた。

 今でも友達だけど、憶てないって・・・」

「卯月・・・」

「よーするに「コインの表と裏」ってやつなのかな?

 しまむーとしぶりんは、さ」

 

 今まで二人を見て十分満足した未央が会話に加わる。

 

「実は実は未央ちゃんもそうなんだよねー。

 「クラスメートに誘われたけど気が付いたら残っていたのは自分だけ」

 ってやつ。

 ホントこんなに楽しいモノが分からないとは、寂しい人達を学友に持ったわけですなー」

「いや、これは楽しく感じる方が少ないと思うけど・・・」

「今はN-D-V(ノン・ドライバー・ビークル)だったっけ?

 自動車が「自分で運転する物」だったなんて、私首都高に来るまで知らなかったもん」

 

 未央は若干強めに二人の肩を掴んだ。

 

「じゃっ、コレを楽しめる者達同士、仲良くしようじゃありませんか?」

「それ以前に私達、アイドルで同じユニットでしょ?」

「そういえばはそこも一緒ですね♪」

「どう?再結成しちゃう?」

「そう言えば・・・何か仲悪そうな感じになっちゃっていたんだね、私達」

「でも、もうそんな感じなんてありませんねっ」

「あぁ~良かったぁーーーー!」

 

 未央は分かり易く肩を撫で下ろし、まるで今まで呼吸をしていなかったかの様な深呼吸をした。

 

「ちょっと本来の計画と違うけど、また3人でやれそうで良かったよー」

「今度は3人で走ろうね、凛ちゃん、未央ちゃん!」

「そうだね、しまむー!

 しぶりんもいいよね?」

「まぁ、バトルの邪魔にならなければ、悪くないかな?」

「あれはしぶりんがアウトにラインを取り過ぎたんだと思うけどなー?

 それに、複数で走るのが即バトルになるのはあれですぞ?」

「むぅ・・・」

「あーでもほんっと良かった良かった・・・。

 ・・・ちょっとお花摘みに行って来るけど、ついでに飲み物でも買って来るよ」

「言ってる暇あったら行って来なよ、ほら120円」

「私の分もお願いしますね、はいっ」

「おけおけ~」

 

@

 

「ふぃー危ないトコだった~。

 いくら緊張が解けたからってイキナリ来るのはーって」

 

 未央はPAにやって来た1台のクルマに憶えがあった。

 

「あのR33って・・・ダチャーン!?

 あれ、今日は走らないって言っていたハズ・・・」

 

 次に未央がしていた表情は、イタズラを思いついた少年の顔だった。

 

@

 

「んー、どうやら仲直り成功って感じだね♪」

「ハイ!

 美世さんが言っていた通りでした!」

「で、渋谷 凛さんだよね?」

「凛でいいよ」

「じゃ凛ちゃんて呼ぶね。私は原田美世。

 で、早速だけどアレでしょ、黒のHCR32。

 凛ちゃんの愛車と睨んだんだけど・・・!?」

 

 卯月と凛に合流した美世は凛のR32を指差し、その隣に未央のEK9Rを確認した。

 

(やば・・・未央ちゃん近くに居るの・・・!)

 

「うん、正解。

 会って20秒も経っていないのになんで判ったの?」

「だって卯月ちゃんと未央ちゃんがアレに乗るとは到底思えないもの。

 それに、雰囲気って言うか佇まいっていうのが同じだったからねっ。

 いやー、いいクルマだよーアレ。

 なんで未央ちゃん教えてくれなかったんだろう。

 32乗りが居るって教えてくれたらマッハで探し当ててたのにー」

 

 凛は卯月に耳打ちする。

 

「(なんというか、凄いねこの人)」

「(実は私もよく知らないんですけど、凄いのは事実です。

  一応346のアイドルだそうで・・・)」

「(ふーん・・・)」

 

 凛が美世を見ていると、後ろから未央が迫っていた。

 口に人差し指を当て、「しーっ」というジェスチャーをしながら、だ。

 だが、凛はそういう事に察せても、卯月がそうとは限らない。

 

「あ、未央ちゃ」

「えっ!?」

「っえぃやぁ!」

 

 焦った未央は美世にアタックし、両手で目を覆った。

 

「わわっ!?」

「このーっ、ダチャーン!

 「んー今日は後2人予約があるからダメかな。」

 って言っていたのは何処のどいつだーッ!!」

「ご、ごめんなさーい。

 謝るから放してぇ!」

 

 未央はすっかりギブアップした美世を離し、つい先程思いついた「妙案」を提示した。

 

「よし!

 じゃあダチャーンは今から私達「ニュージェネ」とSPバトルしよう!」

「まさか・・・3対1で!?」

「その通り!

 ルートはここからC1外回りでね♪」

 

 それを傍から聞いていた凛が口を挿む。

 

「え、ちょっと聞いてないんだけど」

「ん?

 いいじゃん首都高で私達3人のチーム新しく作ろうよ。

 ユニットと同じ「ニュージェネレーションズ」でさ!」

 

 困惑する凛の隣で、卯月は未央に同調した。

 

「わぁそれイイですね!

 凄く面白くなりそうです!

 どう、凛ちゃん?

 首都高(ココ)でも3人で活動出来るなんて、私、凄く素敵だと思うんだけど?」

「いや、ダメとは言っていないし。

 でもチームの申請って今夜はもう・・・」

「良いの良いのそんな固いことはさ!

 まずは結成前祝いにダチャーンを生贄にするって感じで」

「生贄とは失礼な!

 わかった!

 受けて立ってやろうじゃあないの!!!」

(え!?あんな煽りでイイの?)

(4人で走れるなんて、私、頑張らなくちゃ!)

 

@

 

「・・・てね」

「原田さん、この度は有り難う御座いました。」

 

 数日後、13部署のガレージで美世は12部署のプロデューサー、弐内のクルマを任されていた。

【挿絵表示】

 

 

「一度、キチンと礼を言っておきたかったのですが、時間の調整が難しく遅れてしまいました。」

「いやいや、そんなお礼されるような事はしてないよ。

 それに!

 私としてはコイツを整備してくれと言われたのが、何よりのご褒美だね!」

 

 弐内のクルマは凛の32、美世の33のベースモデルに続く、ER34のセダンモデルだった。

 美世の中では特に力が入る車種の一つである。

 

「ところで、原田さん」

「ん、何でしょか?」

「先程の話の通りでしたら、あの後3人と勝負をしたという事ですが・・・」

「ええ、まあ、やりましたよ」

「どのような結果になったのか、少し関心がありまして」

「いや、別、そんな語る様な・・・あ!

 そういえば、今日3人はどうしているの?」

「え、あ、今日の今の時間では、チームの申請に出掛けている筈です」

 

@

 

「えへへ、お待たせ!」

「遅いよ、未央」

「これで揃いましたね♪」

 

 首都高でのチームを申請する為、建物を移動していると未央が懐かしさを覚えていた。

 

「何かこれ思い出すなー」

「ん?

 なにを?」

「ほら、ユニットの名前決めた時さ、こんな感じだったかなーって」

「そうだっけ?」

「しぶりん「プリンセス・ブルー」って付けようとしたんだよねー」

「そういう未央は「フライドチキン」でしょ」

「あれ?

 じゃあ「ニュージェネレーションズ」て誰が付けたんでしたっけ?」

 

 卯月の素朴な疑問は、凛と未央を閉口させるのには十分だった。

 

「そういえば・・・」

「だれだっけ・・・」

 

「「「うーん・・・」」」

 

「今更いいか!」

「まあ、私達が気に入っている訳だし、気にする必要は無いんじゃないかな?」

「それもそうですね!」

 

 「チーム課」と名が付けられた場所が見えてきた。

 

「あ、でも名前同じままだとややこしくなっちゃうかも」

「じゃあちょっと付け足そうか」

「いいよいいよー。

 じゃ提案、クルマを英語にして「AUTOMOBILE」のAを付ける!」

「じゃあ私は名前ごと英字化するかな」

「なら私はちょっとカッコつけて最後を「’S」にする」

「ええと「A NEW GENERATION`S」ね・・・。

 それっぽくていいじゃん!」

「あ、見えてきましたよー」

 

 3人は「チーム課」と付けられた部屋に入っていった。

 

@

 

「フライドチキン・・・」

「プリンセス・ブルー・・・」

 

「あ、あの!」

「ん?何、卯月?」

「3人で単語を出して、それをくっ付けてみませんか?

 私は3人のユニットなので複数形の「ズ」を付けたいんだけど」

「お、しまむーナイス!

 じゃ私新しいの「ニュー」!」

「なら私は・・・「ジェネレーション」、世代って意味」

 

「ニュー・・・」

「ジェネレーション・・・」

「ズ・・・」

 

「「「新世代達・・・!」」」

 

「これスッゴクかっこいいよ!」

「うん、悪くないね」

「この名前なら頑張れそうです!」

「しまむーグッジョブ!」

「えへへ・・・ブイ!」




Main EPISODE complete

「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章前半のメインエピソード

「A NEW GENERATION'S」

このムービーでエピソード終了となる。
ムービーの最後は卯月、凛、未央3人の首都高チーム「A NEW GENERATION'S」の結成と、回想でアイドルユニット「ニュージェネレーションズ」の結成が映される。

このエピソード以降、3人はチームとして首都高で活動する。
ほぼ通常の首都高バトルである「クエストモード」では第2章からチームとしての彼女達とバトルが可能になる。
(これが実は厄介で、凛がワンダラーである為「クエストモード」を完全クリアする為には第1章時点の、ワンダラーである凛を倒さなくてはならない。)
チームを結成する際、3人のプロフィールが通り名を含めて一新される。
(旧プロフィールも保存はされる)
卯月は所属なしの「スマイルイング」から「SmileING・pink」、
凛はワンダラー「アイオライト・ブルー」から「IOLITE・BLUE」、
未央は所属なしの「オレンジスター」から「#STER・ORANGE」に通り名が変わる。
(未央の「#STER・ORANGE」だが、本来は「3STER・ORANGE」の予定だったが打ち間違えたのを未央が逆に気に入ったという裏話がある。)

@

「ノン・ドライバー・ビークル」通称N-D-Vは、この世界では2000年に雛型が完成し、2004年から一般に販売されている「完全自動運転自動車」の事。
政府が普及を支持・支援した事で、販売開始から5年を待たずして旧来の「自分で運転する自動車」から一般公道での役割を勝ち取った。
(旧来の自動車は
 「自動車運転文化の存続、及び後世へのモータースポーツの継承」
 を提唱する「GRP A1project」によって、活躍の場を「C1GP」や「首都高サーキット」に移す事となった。)
現在では卯月の台詞にもある通り、自動車が「自分で運転する物」だった事を知らない世代も増えてきている。
もしくは、「C1GP」に代表される「レース用のクルマ」と言う人もいるかもしれない。

これ以上の詳しい説明は「用語集」で行う。

@

02/02、挿絵と「N-D-V」の説明を追加。


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She met a ...Ⅰ

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「ふぅ・・・あら?」

「やっほ」

 

 奏が神田橋PAで一息つけていると、そこに美世がやって来た。

 その手にブラックコーヒーを2本持って。

 

@

 

「同業者・・・?」

「正確には結構違うんだけどね。

 346のアイドル限定でクルマを弄っている人が居るらしいの」

「へぇ」

「走行距離お構い無し、ほぼ新車だろうとフルチューン。

 って聞いたからには、ちょっと気になるんだよね」

「美世はしっかり慣らすものね」

「まぁね」

 

 美世はその手に握ったコーヒー缶を揺らす。まだ中身は残っている様だった。

 それを見ていた奏は美世から視線を外し、少し遠くを見る。

 様になった動きだ。とても自分より年下のハイティーンとは美世でも思えないくらいに。

 

「一人」

「えっ」

「心当たりは有るわ。

 もっとも、私が知っている訳ではないのだけれど、ね」

「それって」

「志希。

 彼女なら、もしかしたら知っているんじゃないかしら」

「・・・やっぱりね。

 今夜は"来ている"みたいだし、案外バッタリ出会うって事も」

「にゃはははは、ワタシを探しているのは貴女?

 ってね!」

 

@

 

 一ノ瀬志希。

 第13部署に所属するアイドルとその候補生の中でも特に異彩を放つアイドル候補生。

 首都高では「GRP A1project」が受注生産するオリジナルのカスタムカー「EVOⅣ ASTI」を駆り、「イコライズギフト」なる通り名を持つ。

 

「んー多分アキハちゃんかな?

 ダチャーンの言っている娘ってさ」

 

 美世から一通りの説明を貰った志希はあっさりと答を出した。

 もっとも、まだ正解と決まった訳ではない。

 

「奏さん聞いたことある?」

「・・・聞いたことも無い名前よ。

 でも346は規模が大きいし、部署間の連携が薄ければ知らない名前があってもおかしくはないわ」

 

 美世は兎も角、奏も知らない名前だったが志希はこのアンサーに自信ありの様だ。

 

「アキハちゃんは私が元居た部署に居るんだけどけっこースゴいよ!」

「どうするの、美世?」

「手掛かりにはなりそうだし、まだ時間はあるから場所次第なら今からでも行けるかな・・・。

 志希ちゃん!

 その志希ちゃんが元居た部署って何処なの?」

「第7部署なら池袋線の先にあるよ。

 行くの?」

 

 少なくとも、志希は行きたがっている。

 

「・・・ちょっと遠いかな。

 まぁ、行けない距離じゃない、けど・・・」

 

 この時美世は1つ、気配を感じ取っていた。

 池袋線の道程を楽しくさせてくれる気配・・・しかも、3人を同時に相手取れるようなクルマの気配だ。

 

「行きましょう。

 ここで考えていても夜が進むだけ。

 それに、道中が面白そうに感じるわ」

 

 奏もそれらしい反応をするが、美世が感じた気配と同じかは判らない。

 

「にゃっはー!

 じゃあキマリッ!

 行こう!!!」

 

 志希も行動を決定した。

 3人は各々のクルマに乗り込み、PAを後にした。

 

@

 

 そして、それを影から見ていた少女が居た。

 昼間であればどう足掻いても目立ち過ぎるその装束も、宵闇を味方に付ける事によってその姿を現実から消し去る。

 

「・・・ククク・・・さぁ、狂乱の宴を始めようか・・・!」

 

 尤も、彼女自身が現実的であるかと言えばその答えはノーである。

 

@

 

 神田橋PAを出発し、池袋線に進入したすぐ後にそのクルマは美世達3人の後方に現れた。

【挿絵表示】

 

 

「ん、なんだあのマシン・・・」

 

 最後尾の美世が真っ先に気付く。

 

(ボディカラーが黒くて形は判別に難しいか・・・。

 でもライトの特徴から見てJZZ31か、EG1del。

 ・・・多分EG1delの方か、横に長くない・・・ん、ちょっと待ってアレはFFでNAのL4だよね)

 

「後ろのデルソル・・・リアにV6ターボが積んである・・・!?」

 

 そして美世は、後ろのクルマが異常である事も察知した。

 流石に彼女のみがなせる技ではあるが、故に美世が受けた衝撃は大きい。

 

 前の2台も気が付いた様だ。

 

(・・・たしか、聞いたことがあったな。

 デルソルをミッドシップにしたレーシングカー・・・だけどあれは焼失したって話だし、ならばレプリカ・・・?

 だけどそれを首都高の実戦レベルまで仕上げるとすれば・・・!)

 

 その時、美世のコンソールがバトルを受信した。

 余り使う事の無いRSバトルの複数台同時対戦だが、こういうシチュエーションでは都合が良い。

 距離は池袋線の終点、北池袋PAまで。

 そして彼女達はバトルの送信主に更なる驚愕を要求された。

 

「ダ、「ダイ=アモン・ド・ルキフェル」・・・。

 ドライバー・・・・・・!」

 

@

 

-さぁ、参ろうか!-

 

 GOカウントとほぼ同時にデルソルは、およそベースのクルマから想像出来ない加速であっさりと3台の間をすり抜けトップに躍り出る。

 

「にゃは!?」

「何っ今の!?」

「ぐ・・・!」

 

 事前にある程度の想像が出来ていた美世は兎も角、姿を確認出来ていなかった志希と奏には正に電撃に近い感覚がこの時身体を駆け巡る。

 間髪入れずに美世は空いている左車線に自らを"弾き"追撃の姿勢を取るが、奏と志希は追撃体勢への移行に一拍を許してしまった。

 

「すっごぉい!

 今ので体内のアドレナリン分泌量が4倍位になったかなァ!」

 

 志希は自分に起こった現象を解析した。

 普段をしておよそ常人ではない彼女は、紙一重でホンモノの「天才」の方に分類される。

 

(あの加速だと700をちょっと下回る位には馬力が出ていて、それを振り回せる足回りもあるね。

 コレじゃマトモな勝負は出来ないにゃ~)

 

 志希の中でモードが切り替わる。

 

(せめて3位、を取る為に・・・は・・・)

 

 志希の眼に映ったのは左車線から追撃を仕掛ける美世のR33だった。

 

(引っ張って貰おう!

 うん!

 それしかにゃーっ!)

 

 志希は美世R33の後部に滑り込ませ、スリップストリーム効果の恩恵を受ける事にした。

 

「そうね、それで行きましょう」

 

 奏も志希の後方にピタリと張り付き、これで、3台が数珠繋ぎの様な状態となった。

 

【挿絵表示】

 

 

「まああれだけ露骨にプッシュすれば気が付くか!

 いいでしょう!

 付いて来て下さいよぉ!!」

 

 オーバルトラック・ストックカーレースに代表される「ドラフティング」に近いが、首都高でそれをやるには少々リスクが大きい。

 だが、美世にとってもほんの僅かに効果はある。だから美世は二人が同調する様にモーションを掛けたのだ。

 

(追い付けよ・・・!)

 

@

 

-むぅ、なかなかやるな!-

 

 美世はEG1del、デルソルのリアに食い付き2、3コーナーを抜ける。

 コーナーの中間では追い付ける、だが立ち上がりで差が開くという展開に美世が気付く。

 

(前のデルソル、加速も制動もきっちりやっているけどコーナーが甘いな・・・多分、シャシーが負けているんだ)

 

 そして次のコーナーでアウトに付いた美世は、イン側でもがくデルソルを見て確信に至る。

 

(間違いない。

 エンジンとパワートレインにシャシーが追い付いていないから、コーナーでアクセルを開けられないんだ!)

 

「ってぁ!?」

「今まで後ろに付いていたのは、こういう時の為!」

 

 美世がデルソルに意識し過ぎたのか、美世より更にアウトサイドから顔を見せたのは奏のFCだった。

【挿絵表示】

 

 

「にゃはーッ!!

 そう!

 コウイウのが見たかったの!!」

 

 その光景を目の当たりにした志希はすっかりご満悦だ。

 

「だからもっとワタシにソレを見せて!」

 

@

 

-そろそろ宴も終焉の刻が近い、か・・・-

 

 バトルも終盤に差し掛かっていた。

 現在の順位は依然としてデルソルが1位、すぐ後ろには先のオーバーテイクで奏が付けた。美世はその時体制を崩して4位に下がり、志希が3位となっている。

 

「このままじゃ不味いな・・・」

 

 一転して不利な状況に陥った美世だが、実は口で言っている程ピンチだと彼女は思っていない。

 

「逆転出来るとしたら・・・次が最後のチャンス。

 いけるよね、R・・・!」

 

 相棒という関係さえ越えた、自らの一部であるR33を確認した美世の瞳から迷いが消えた。

 

「ダチャーンがヤル気マンマンだね。

 でもワタシだってもう引けにゃーい!!!」

 

 美世の気配を感じ取った志希も覚悟を決めた。

 

「"来る"わね、間違いなく。

 次がこのバトルのハイライトになる・・・!」

 

 奏は後ろの気配を気にしつつも、意識は前のデルソルに向けた。

 デルソルは変わらず、だが後方の気配は察知している様だ。

 

 次が勝負所。

 

 このバトルで最もアツくなるポイントがそこであると、4人の意識が同調した。

 

@

 

-此処からがこの勝負の天王山か!-

 

「にゃはーッ!

 ワタシについてこぉーい!!」

 

 先に仕掛けたのは志希、コーナーを限界ギリギリの減速でターンしてトップに躍り出た。

 

「そうも上手くは行かせない!」

 

 奏がそれに反応する。

 あっさりとスリップに入り、次のコーナーでインを刺そうとモーションに入った。

 

「ッッ!」

 

 だがその瞬間をデルソルに狙われた。

 奏より先にコーナリングポジションを獲ったデルソルに阻まれ、FCは行き場を失い失速する。

 アウト側に車体を振ったが既に遅く、4速で3000回転を差すタコメーターを見た奏はこの瞬間トップチェッカーを諦めた。

 

(美世はまだ仕掛けないつもり・・・?)

 

 奏は自らのFCを悠々と追い抜く美世のR33を見て思った。

 

(・・・ソレを知ることは出来ない、か・・・)

 

 ギヤを2速まで落とし、やっとタービンが仕事を再開した奏のFCは既に、3台から200mは離されていた。

 

「これ以上はムリかっ

 後は頼むよダチャーン!」

 

 デルソルに離される志希は自分のスリップについている美世に託す事にした。

 美世を前に譲り、逆に志希が美世のスリップストリームに付く。

 

「奏ちゃんが珍しくしくじったから3位は揺るがなさそうだけど、もうちょっと粘ってもソンは無いハズ・・・!」

 

 志希はこのバトル、勝利より内容の方が自分を楽しくさせてくれると感じていた。

 

「だって次が絶対オモシロイもん!」

 

 だから、彼女は最も近いところで観客になりたかったのだ。

 

「・・・ここっ!」

 

 そして、遂に美世が動いた。

 コーナーのターンインでブレーキングを遅らせ、デルソルに肉薄してイン側を奪い取る。並んだデルソルはアウト側から、アクセル全開で強引にコーナーの攻略にかかる。

 

「ハマった・・・次!」

 

 2台は並んだまま、次のコーナーに進入する。

 インとアウトが入れ替わり、美世はクラッチを蹴ってRをドリフトに持ち込む。

 本来BCNR33というクルマはドリフトをするようなクルマではないが、美世がその人生を以て"自分そのもの"として造り上げたRは彼女に応えて見せる。

 結果、セオリー通りであれば有利な筈であるイン側のデルソルは、加速する為にその車体を振るアウト側のラインを美世に明け渡してしまう格好となった。

【挿絵表示】

 

 

「見えた、フィニッシュよ!」

 

 コーナーを抜けた先、フィニッシュラインまでの短い直線をそれでも非常識な加速で迫って来るデルソルを抑え切り、このバトルを美世は勝利した。

 

-・・・我の、完敗よ・・・-

 




Main EPISODE:She met a ...Ⅰ

played result:SUCCESS!

「ストーリーリプレイ」が記録されました

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@

「ストーリーモード」第1章中盤のメインエピソード

「She met a ...」

最初のストーリープレイでいきなり正体不明のEG1del(デルソル)とバトルを行う。
美世を操作してデルソルに勝利すればクリアとなる。
相手の方が美世のR33よりマシン性能が高い為、今までより少し難易度が高い。
志希と奏は序盤に必ず美世のスリップストリームに付く為ストレートスピードが少しだけ向上するが、油断しているとどちらかが追い越してくる。

小説内では最終コーナーまで美世は仕掛けなかったが、デルソルはコーナーでアウトインアウトを厳守する為、実はインの時にアウトから並び掛けるだけで追い越せたりする。

デルソルを運転していた人物は次で判明する。

「ストーリーリプレイ」では奏、志希、そしてデルソル視点でプレイが可能。
奏と志希の場合はクリア条件が「4位以上」となっている。


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She met a ...Ⅱ

Main EPISODE story movie now loading...



 北池袋PAで美世と志希は奏と合流し、第7部署を目指している。

 そして、その後方にはあのデルソルも付いて来ていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

<あれだよー>

 

 美世と奏のコンソールに志希からメッセージが入ると、あまり目立たなそうな建物が3人の目前に現れた。

 

<駐車場はこっちだにゃ~>

 

 池袋線を降りて、更に少し走った所に346プロダクションの第8部署は存在していた。

 

「にゃっはー久しぶりーっ」

「着いたわね」

「・・・デルソルのドライバーは出ないつもりかな?」

 

 駐車スペースを4台が占めた。

 3人は各々クルマから降りたが、デルソルのドアは開く気配さえない。

 

 

「おっと、今夜は人が多いぞ?

 それに、見ない顔が居るな」

 

「「!!」」

 

 そこへ一人、少女がドコからともなく現れた。あまりに突然だった為、美世と奏は露骨に驚く事となった。

 

「しかし、どうやら私には顧客として来たワケでは無いらしいな。FCの方は兎も角、そっちのR33は明らかに機械としてのクルマの範疇を逸脱している・・・他人の手が入る余地は無いな」

 

 そして白衣を着こなしたその少女は、美世と奏のクルマをその場で分析した。

 ただ眺めただけとも言える程の時間で、それも、かなり的確な分析だった。

 

「あっアキハちゃーん!おひさー」

「アキハ!?」

「彼女が?」

「あ・・・自己紹介がまだだったか、つい、クセが出てしまったな」

 

 志希が彼女をアキハと呼んだ事で、2人はようやく彼女がお目当ての人物であると納得した。

 

「私は池袋晶葉。

 この部署に所属するアイドル候補生だが、研究として首都高レースのクルマを造っている者だ」

 

@

 

「志希は知っているが、君達の事はよく知らないな。

 情報として速水 奏の事は頭に入っているが、そちらのR33のドライバーは全くの初見だ」

 

 晶葉は自らの”研究所”に3人を連れる最中、紹介を求めてきた。

 ちなみに志希は、事務所の方へ行ってしまったらしい。

 

「第13部署の速水 奏。

 まぁ、私はデビュー済みだから貴女の様な人なら認知済みという訳ね」

「同じく13部署、原田美世です。

 私のRは誉めてくれた、と受け取って良いのかな?

 (なんか・・・どっかで見たコトあるんだよな、この人・・・)」

「構わんよ。

 言葉の受け取り方は人次第だからな。」

「・・・あのデルソルは、晶葉サンの製作だと私は考えたんですが」

 

 美世の質問に晶葉は頷いた。

 

「ああそうだ。

 尤も、前例を模倣しただけでは結果なぞたかが知れているがな。

 アレの目的はむしろ、ドライバーの方に重きを置いていて・・・着いたぞ。

 此処が私のラボラトリーだ」

 

 晶葉に連れられ、着いた先にあった”研究所”は中々の規模を持っていた。

 それこそ、表の事務所は仮の姿、とでも言えそうな位の規模だ。

 

「ククク・・・闇に飲まれよ!」

 

 すると4人の目の前に突然、銀の髪を持ち、漆黒の装束を纏った少女が声高に参上した。

 

「・・・我の名は神崎蘭子。

 偶像集いし美麗なる城よりその身を離し、Neuntensを掲げる処にその翼を預けている。

 そして、天(アマツ)に築かれしMETROPOLIS HIGHWAYにおいての我は

 「ダイ=アモン・ド・ルキフェル」を真名としている。

 先刻貴女達と狂乱の宴を共にしたのは他ならぬ我そのものよ・・・。

<<私、神崎蘭子っていいます。

 346プロダクションの第9部署所属です。

 そして首都高では「ダイ=アモン・ド・ルキフェル」と名乗っています。

 先程貴女達とバトルしたのは確かに私ですよっ>>」

 

 蘭子の自己紹介は独特・・・というより特殊だった。

 だが、それは周知の事実であった。

 

(・・・やっぱり解るのが逆にクるわね、私には)

(にゃはーっ!

 ホンモノの蘭子ちゃんだ、すごぉーい。

 この距離からでもイイ匂いが漂って来るゥ!)

(確かに、蘭子ちゃんならあのマシンを造る為の資金は用意出来るな・・・。

 テレビで見た事はあったけど、本当にゲームのセリフみたいな話し方をするんだ・・・あれは”ラグーン語”だったっけ?)

 

 神崎蘭子は現在、346プロダクションの主力とも言える程の人気を持つアイドルである。

 その影響力は、彼女の代名詞「闇に飲まれよ」に代表される独特かつ特殊な言い回しを”翻訳”した「蘭(子)學事始」なる本が売上100万部を記録してなおその数字を増やし続けているのが良い例であろう。

 

「蘭子、一体何処から先回りした?

 この間のは封鎖した筈だが・・・」

 

「このアタシが居るってのに、あれ以上秘密通路が増えないって考えたのはおバカだったわね!

 アァーハッハッハァ!」

「ピィッ!?」

 

 すると蘭子の背後から高笑いと共に少女がもう一人現れ、蘭子はその身を「ビクンッ!」という擬音が付きそうな程仰け反って驚いた。

 

「アンタ達も!

 このレイナ様に出会った限り、タダで帰れるとは思わない事ね!」

「ああっ!!

 もしかしてっ、「エクスキューションライダー」の!?」

「!!

 ・・・ふふんっ」

 

 美世の反応に自らを「レイナ様」と名乗った少女は興が乗って来た様だ。

 

「このレイナ様を知っているなら、アンタも「Full BOKKO」へ入団する事を勧m」

「ぽちっと」

「!!!!」

 

 その瞬間、「レイナ様」は下へとその姿を消した。

 要するに落ちたのである。足元に用意されていた落とし穴に。

 

「蘭子を落とすのはマズイからな。

 手動制御にしておいた私はエライぞ」

「夜に突然足元が無くなったら怖すぎるわよっ博士ッ!!」

「真のワルを目指している奴がこの程度で怖がってどうする?」

「悪の帝王でも怖い事位あるわッ!!!」

「私が自分のラボの現在の状態も判らないと思っていたのが運の尽きだったな。

 他の所のはセンサー式だから、精々落ちぬ事だな」

「えぇ分かったわ!

 分かったから、蘭子も博士もさっさと出しなさいよ!!」

「ひっ、ひゃい!」

 

@

 

「美世・・・いったいどういう状態なの?」

 

 少なくとも、奏は完全にこの場で状況から取り残されていた。

 何かわかっているらしい美世に訊いてみる。

 

「えと・・・。

 さっき落とし穴に落ちたのは多分、小関麗奈って名前の子。

 私が見ているドラマに「エクスキューションライダー」って役名で出演しているの。」

 

 すると美世は少し申し訳なさそうな表情になった。

 

「で晶葉サン・・・はそのドラマで「池袋博士」って名前だったな。

 なんか見た事あると思っていたんだけどすっかり忘れちゃっていたよ。

 あれはなんだっけ・・・「MAD COP/28」は早苗さんのだし・・・」

「もしかして・・・「レーシングナイトRX」?」

「それだ!

 そーいえばあれって製作346プロだったな~って、今更だね」

「にゃはにゃは。

 あの子たちも変わって無くて安心安心」

 

 いつの間にか隣に志希が戻っていたが、二人はあまり気にしなかった。

 志希の行動に逐一疑問を持っていては身が持たない。

 

「で、晶葉ちゃんと麗奈ちゃんがココに居るってコトは、光ちゃんも居るって事だよね?」

「「え?」」

 

 

 

「その通りだッ!」

「「「!!!」」」

 

 

 志希がその名を口にした瞬間、研究所の奥から叫び声と共にクルマのライトが光る。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「<<ヒカル、変身するのですか?>>」

「ああ!」

 

 姿を現したそれはリトラクタブルヘッドライトを持ち、低いボンネットの真ん中では赤いラインが点滅していた。

 

「私はレーシングナイト・・・」

「<<Mode Change -RACING KNIGHT- >>」

 

「アァールッ、エーッックス!!!!」




Main EPISODE story movie

「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章中盤のメインエピソード

「She met a ...」

 この回のストーリームービーでは多くのキャラクターが初登場となる。
 前回登場したデルソルを運転していたのは神崎蘭子。
 そのデルソル含め、346のアイドルのクルマを弄っている池袋晶葉。
 晶葉と同じ部署に所属し、ドラマで共演する悪役の小関麗奈。
 そしてドラマ、プライベート共に麗奈の宿敵(友)である南条 光。
 特に蘭子と晶葉は重要なキャラクターであり、後々まで登場する。

 会話で登場したドラマ「レーシングナイトRX」と「MAD COP/28」は共に346プロダクションが製作しており、どちらも人気からシリーズ化している。
 「レーシングナイトRX」は光と麗奈が主役のアクション特撮。
 「MAD COP/28」は片桐早苗が主役の刑事アクションとなっている。

 「蘭(子)學事始」は元々ゲーム内のオリジナルだったが、ゲームが完成する前に全く同じ名前で出版され、同じような売り上げを記録している。因みに現在では英語、ロシア語、中国語、ポルトガル語に翻訳された外国版も存在し、世界累計で400万部を突破した。
 更にドイツ語とイタリア語翻訳版が新たに製作されている。


 実は、このエピソードを含め第1章は製作された時点でノンチャプターエピソードと区別されていなかった(というよりノンチャプターからメインになったエピソード達である)為、エピソード間の時系列的繋がりが他より薄くなっている。


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She met a ...Ⅲ

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「レイナ!

 お前に悪事をさせる訳にはいかない!」

「ハッ!

 アンタに止められるンなら、止めてみなさいよぉ!!」

 

「・・・たしか麗奈ちゃんの方が落とし穴に落ちたと記憶しているのだけど」

「私もそう思いますケド・・・」

「このノリじゃもうどうでもいいンでしょ~」

 

 呆気にとられる美世と奏、志希に比べて晶葉は冷静だった。

 否、むしろこの状況は彼女が作り上げたといって正解だろう。

 

「蘭子、来い」

「この混沌の中、我を呼ぶとは余程の何事か。

 <<え、わっ私に何かあるのですか?>>」

「そうだ。

 折角だから、次のステップに進んでもらおうと思ってな」

「我の覚醒・・・Erweckungを促すのか?

 <<次の、ステップですか・・・?>>」

 

 すると晶葉は美世と奏、そして志希も呼び、改めて研究所内を案内する事にした。

 

「<<ヒカル、ハカセ達はラボに行きましたよ>>」

 

@

 

 

【挿絵表示】

 

 

「うぉっ」

「今夜は来客に備えていなかったから、少々雑然としていて済まない。

 それと、一応依頼者のクルマ達だから触らんでいてくれよ」

「そう言ってもアキハちゃんの部屋っていつもコウじゃん~」

「でも多分アナタ程じゃないと思うわ」

 

 晶葉の研究所内は様々なマシンが製作途中で放置されており、其々のパーツがあまり整えられる事無く置いてあった。幾つかのパーツは床に置いたままで、恐らく組み付けの最中だったであろう物まである。

 

「道中でも言ったが、これでは一般商売には通用しないだろう?

 だからあくまでも”研究”の一環という体裁を繕っている、と言う訳だ」

 

 奏が足元を見ると、エキゾーストマニホールドが無造作な姿を見せている。

 

「たしかに、これじゃ他の人には見せられないわね」

「そう言ってもらえると助かるよ・・・」

 

 その奥にはタービンまであったが、奏では自分の眼を一瞬疑う程の大きさだった。

 流石に理解が追い付かず、美世に話し掛ける。

 

「ねえ美世、見た?さっきのタービンだけど・・・」

「ん?あぁ見たよ。

 恐らく1000馬力級のヤツだね。あそこまでデカいのは私もネットでしか見た事無いよ。

 シャシーダイナモも見えたから、・・・1000行くんだろうね・・・」

「アイツはちょっと入手に苦労したんだが、お陰でイイのが出来そうなんだ」

「あ、聞こえていました?」

「ここは音響面で特殊な構造をしているからな。

 と、コイツだ・・・」

 

 そして、研究所の奥にそのクルマはあった。

 

「さて蘭子、これが次の、お前のマシンだ!」

「「「!!!」」」

 

 掛けてあるカバーを晶葉が勢い良く取り払うと、そこに居たマシンは・・・。

 

@

 

「勝負は池袋線1本。

 シンプルに行くわよ!」

「望むトコロだッ!」

 

 麗奈と光は晶葉達が研究所内に入った後、レースで決着を付ける事にした。

 2人は様々なPAで出会っては何かと喧嘩して、最後はレースをするのがお決まりである。

 お決まり過ぎて、一連の流れはファンから「即席ヒーローショー」とも呼ばれているが、本人達は至って大真面目だ。

 

「<<ヒカル>>」

「ん、何だいRX?」

「<<ラボから一台、クルマが来ます>>」

「ほぅ」

「<<私がこれまでのデータから考えるに、このバトルの邪魔をすると思われますが?>>」

 

 光の相棒、「FD3S ”KNIGHT RX”」にはドラマと同く晶葉謹製の人工知能が搭載されている。名前は「RX」、性別は女性だ。

 流石に劇中の性能にこそ及ばないが、クルマに搭載された人工知能としてキチンと機能している時点で、池袋晶葉の技術と才能の素質を感じるには余りに十分だろう。

 

「博士の事だ、邪魔と言ってもこのバトルそのものを阻止する様なモノじゃないんだろ?」

「<<ええ、恐らく>>」

「まぁ、あのハカセの事だからロクなモンじゃないのは確かでしょうね・・・」

 

 自分のクルマに人工知能は搭載されていない為、ちゃっかり麗奈も”二人”の会話に混ざる。

 まったくの余談だが、ドラマの中では麗奈の方がRXと仲が良い。

 

「さぁ、鬼でも蛇でも出てきなさい!

 このレイナ様が、コイツ共々ブッ飛ばしてあげるわ!」

「言ったな~~~~~~~~~ッ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「否。

 このmachineは”ARMORMAIL”、我の「鎧」なり!!

<<鬼でも蛇でもありません!

 このクルマは、私の「鎧」です!!>>」

 

 先程光が登場した時の様に、今度は蘭子のマシンがライトを光らせやって来た。

 

「なっ、何あれ・・・!?」

「後ろが長くなっている、だと・・・!」

 

 光の視線は鋭かった。

 蘭子のニューマシンは車種こそデルソルのままであり、カラーリングもほぼ変わっていない。

 だが、そのフォルムは既にEG1delの物ではなくなっていた。

 

@

 

「鎧、か・・・。

 V6を縦置きにした分の延長したホイールベースとフェンダーは、確かに鎧だな」

 

 蘭子に遅れて、晶葉達も研究所から出てきた。

 

「あの2台でテストする為にわざわざこのステージを繕ったわけ?

 だとしたらアナタは、中々に悪人なのね」

「褒め言葉、と受け取っておこうか。

 あの二人のマシンは私の中でも自信作だ。テスターとしては十二分だよ。」

「で、本当に私が蘭子ちゃんのトナリに乗るんですか?」

 

 美世は先程、晶葉から蘭子のマシンに同乗する様に言われていた。

 

「そうだ。

 蘭子の素質は本物だが、あのマシンに乗るのは初めてだからな。

 今回は試験投入で、後はこのテストで得たデータを基に詰めていくよ」

「ねぇ、私達はどうするの?

 ここで大人しくお茶するのも、私はいいけれど・・・」

 

 奏が晶葉の前方を見ると、志希が麗奈と絡んでいた。

 どうやら志希は麗奈のマシンに同乗するらしい話をしている。

 

「それを御望みなら生憎だが、私達も追うぞ。

 蘭子に頼んで、デルソルを貸して貰った」

 

 晶葉が見せたのは十字架、ではなくデルソルのイグニッションキーだった。

 

「・・・もしかして、私が運転するのかな?」

「先に言わなかった事は謝ろう。

 ライセンスは持っているが、私ではアレを操れん。

 一応、データ取りの為にモニターを見なければならないという言い訳付きだ」

「しょうがないわね。

 でも、もし何かあっても責任は取れないよ」

「当然」

 

@

 

「うぉ!?」

「何だあのマシンは!?」

「スゲェのが来たぞ!!」

 

 北池袋PAに4台のマシンが集う。全て池袋晶葉の作品だ。

 

【挿絵表示】

 

 

「さて確認よ。

 スタートはここを出てから、ゴールはC1外回り合流までのRSバトル。

 分かったわね光、蘭子!」

「当然だ!」

「既に心得ている

<<解っていますよ!>>」

「で!

 博士達のはバトルに参加しないのね」

「そうね。

 邪魔が来ない様に殿を務めさせてもらうわ」

 

 美世と晶葉はPAに止められた4台のマシンを眺めていた。

 

「それにしても言い表せない凄さを感じますね。この4台」

「まあどれもまだ試作だがな。

 だが、私としてもかなり気に入っているよ」

「テレビで見るのとほぼ同じだからな~。

 ”即席ヒーローショー”は見た事あったけど、マシンまで細かくは見れなかったもの。

 特にあれ、”The Wraith”!」

 

【挿絵表示】

 

 美世が指したのは麗奈のマシン、「SW20 ”The Wraith”」だった。

 

【挿絵表示】

 

「SWの外装が一切使われていないから何がベースなのかさっぱり判らなかったよ。

 SW20って聞いたから尚更ビックリでー」

「アレは中身も凄いぞ。

 4気筒からツインターボで600馬力だ。

 まぁ劇中の様に流体金属で銃弾も効かない、とまでは行かないがな」

 

 今度は晶葉が光の”KNIGHT RX”を指す。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あっちのナイトは自信作だ。

 人工知能もそうだが、エンジンも良いんだぞ」

「どれ位出ているんです?」

「2ローターをブリッジポート化して、ブースト1.4キロから700を超えるぞ。

 私の想定より出力が上でな」

「それはきょ、強力っすね・・・」

「アキハちゃん相変わらず機械系はホントに得意だね~。

 志希ちゃん見習いたい!」

 

 麗奈の”The Wraith”から降りた志希が2人に近づく。

 

「それじゃあ~。

 アノ新型蘭子ちゃんはどの位なのカナ?」

 

 志希が指したのは当然、蘭子が乗る新型のデルソルだ。

 

「気になりますね。

 いちおー私もコ・ドライバーをやるからにはビビっていられませんし・・・」

「ああそうだな。

 アイツのエンジンは以前のとほぼ同じだが、排気量とブーストの上限を上げている。

 ダイナモ上では900馬力出ていたがそうだな・・・890馬力は保障しようか」

「そんな数字保障されても・・・」

「そこの人達~~~~~~。

 始めるわよ!」




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「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章中盤のメインエピソード

「She met a ...」

 メインイベント前のムービーでようやく3台が披露される。
 南条 光はFD3Sがベースの”KNIGHT RX”。人工知能を搭載している。
 小関麗奈はSW20ベースの”The Wraith”。外装は全て晶葉のオリジナル。
 そして神崎蘭子はEG1delのニューバージョン。その名も”ARMORMAIL”。

346プロダクション第8、第9部署の所属アイドル(候補生)
詳しい紹介は「キャラクター&マシン」で行う。

第8部署
池袋晶葉:蘭子を始め、様々なアイドルのマシンを手掛ける。ライセンス所持。
南条 光:ドラマと同じマシンで首都高を走る。愛車はFD3S ”KNIGHT RX”。
小関麗奈:ドラマと同じ様に光と喧嘩している。愛車はSW20 ”The Wraith”。

第9部署
神崎蘭子:首都高最強を目指す傷付きし堕天ノ使い。愛車はEG1delのMRカスタム。


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She met a ...Ⅳ

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「さあ準備完了よ・・・。

 カウントスタート!!」

 

 麗奈の合図と共にコンソールのカウントが始まった。

 スタート時点では麗奈が先頭、次に光、そして蘭子が奏と並んでいる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「さて蘭子ちゃん、いよいよだよ!」

「うむ!<<はいっ!>>」

 

 蘭子のデルソルの助手席には美世が座っていた。

 因みに今更の話であるが、4台はいずれも左ハンドルのクルマであり、美世が座る助手席も当然右側に存在する。

 

「さっきも言った通りだけど、このクルマはあの2台よりスペックデータでは勝っている。

 けどまだセッティングも煮詰まっていないらしいし、何より蘭子ちゃんはこのマシンの運転は初めてだから、その、まぁ気楽に行こう、って事でいいんじゃないかな?」

「その事は解っておる。

 だが、前方に立ち塞がらんとするHeld(独:英雄)とRache(独:復讐)は、そう易々と我が”ARMORMAIL”の舞を許してくれるだろうか?

 <<解っていますよ。

 でも、それで前に居る光ちゃんとレイナ様に追い付けますかね?>>」

 

 蘭子の心配も正しかった。確かに美世の言うとおり、マシンスペックの数字だけで言えば蘭子のマシンが馬力、トルク、重量において光と麗奈のマシンより確実に良い。

 だが、ここは首都高。名前の上ではサーキットではあるが、あまりに公道的な不確定要素の多いこの場所は単純なマシンスペックで語れない魔法が掛けられてある。

 

「まぁそん時はその時で・・・。

 それよりスタートだよ!」

「いっ、いざ!狂乱の宴の始まりよ!!

 <<わわっ、もう始まっちゃうの!?>>」

 

 既にコンソールに表示されていたカウントは1。

 

<スタートッ!!>

 

「往くぞ、”ARMORMAIL”Showtime!

 <<行きますよーッ!>>」

「そんな思いっきりアクセル踏んだら!?」

 

 カウントのGOと、麗奈のメッセージに蘭子は焦った。いつもの感覚でアクセルを踏みつける。

 美世はその光景に恐怖した。とてもパワーの上がったターボ車のアクセルの踏み方では無いその足の動きに美世の脊椎は4点式シートベルトの肩帯を握らせた。

 

 だが、この蘭子のニューマシン、デルソル”ARMORMAIL”は二人の想像の上を行った。

 

「ぅっ!?<<ぅっ!?>>」

「うぉっ!?」

 

 偶然か否かは不明だが、巧くブースト圧のポイントとアクセルが同調したマシンはスムーズにも暴力的な加速を開始した。

 

「くっっ、これは、スゴィ・・・!」

 

 肩帯から手を離しつつ、美世の脳内にあるマシンが浮かんだ。

 

(この感じ・・・ッまさしく縦置きミッドシップの加速。

 私が15の時に駆った、ジュニアフォーミュラと同じ加速だッ!)

 

 美世が思い出したのは、15歳から3年間参戦していたフォーミュラカテゴリーのマシンだった。

 一応はジュニアクラスのマシンだったが、それでも純レーシングカーとしての尖鋭された動きに当時はよく翻弄された事を、彼女は今でも憶えていた。

 

 そして、今このデルソルは記憶の中のそれと同じ動きをした。

 

「蘭子ちゃん大丈夫!?」

「フッ、この動きは既に見切った!

 <<あ、危なかったぁ~>>」

 

 光と麗奈のマシンも中々に良い加速をしていたが、蘭子のデルソルはその背後に容易く追い付いて見せた。やはりスペックでは蘭子のデルソルが頭一つ抜けている。

 だが、追い付くのと追い抜くのでは意味がまるで違う。

 

@

 

「スッごぉ~い!

 ニュー蘭子ちゃんかなりヤバーだよ。どうするのレイナチャン?」

「確かに性能は良いみたいね・・・。

 でもここは首都高、やっているのはレース。

 抜かれなきゃ、アタシの勝ちよ!」

 

 麗奈はそう言いながら、ステアリングホイールに装着されたパドルシフトでギヤを上げた。

 

「抜かれなきゃって言うけどさレイナチャン。

 あっちはイイの?」

 

 志希が指したそこには左車線からオーバーテイクした光のRXがあった。

 

「ッ!!!

 良い訳、無いでしょーが!!」

 

@

 

「<<ヒカル、今夜はイケイケですね>>」

「あぁ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 光が駆るナイトRXは内装も晶葉謹製のオリジナルで、特にダッシュボードとインストルメントパネル、そしてステアリングには彼女の”執念”に近いモノさえ感じられる作り込みである。

 

「この勝負は、負けられないんだよ」

 

 光が握っているのはまさかのガングリップ型ステアリングである。晶葉のワンオフ製作だが、きちんと首都高の車両レギュレーションをクリアしているのは流石の一言だ。

 

「<<ビハインドはそれぞれ0.8秒、1.1秒。

   後ろのクルマも、中々に速いみたいですよ>>」

「そう来なくっちゃぁ!」

 

 トリガー部は麗奈のマシンと同じくパドルシフトとなっている。

 光のナイトRXは本来フルオートマチックであり、ギヤ操作は任意で行える仕様だ。

 

「<<7速>>」

 

 そして任意操作時のみ、7速目のギヤが解放されるのだ。

 

@

 

「あのセブン、中々に伸びるわね。

 もしかして7速かしら?」

「正解だ。

 SPバトルなら、最高速より加速を重視した方がFD3Sのエンジン特性にマッチしている」

 

 ようやく左ハンドルにも慣れてきた奏は、バトルには参加しない程度に前方の3台に追走する。その順応の速さに助手席でモニターを凝視しながらも、池袋晶葉は関心と興味を持っていた。

 

「やはり、あの2台相手のテストは正解だったな。

 実戦なら蘭子の”癖”もデータに入るから、それに沿った調整も可能にさせる」

「随分満足気のところだけど、蘭子ちゃん、随分苦戦している様ね。

 前のマシンは・・・志希が乗っている奴かしら」

「麗奈は褒め言葉として往生際が悪いからな。

 そう簡単には、後ろのクルマに前を譲らないタイプの首都高ランナーだ」

 

@

 

「やはり我が”ARMORMAIL”の舞は許されぬのか!!

 <<お、追い抜けないっ>>」

 

 レースは中盤、未だ蘭子は3位に甘んじていた。

 勿論、その状態を認めても受け入れる訳にはいかない。まずは麗奈の攻略にかかる。

 

「此処までのこのクルマの動きを見ての事なんだけど・・・」

 

 助手席はあまり得意ではない美世だが、コ・ドライバーになった以上は蘭子をこのバトルで勝たせる手伝い位はしておきたかった。

 

「蘭子ちゃん、護国寺のS字なら麗奈を抜けると思うんだ」

 

 美世が示したオーバーテイクポイントは護国寺PAを通過するS字コーナーだった。

 

「っ、如何なる手段が・・・それを可能とするのだ?

 <<えっ、でもどうすれば・・・?>>」

 

 美世は蘭子のドライビングとデルソルの動き、そして前方の麗奈のマシンの動きを見て”ある事”が可能だと無責任にも確信していた。

 

「フェイントモーション、それの応用だよ」

 

@

 

「多分クルね、次は護国寺のコーナーで来る」

「何が来ようとアタシの前は走らせないわ!

 ヒカル!アンタもよ!!」

 

 麗奈は既に前方の光にしか目に入っていないが、後ろの事は志希が良く言ってくれていた。

 結果、志希の嗅覚は単に鼻が良いだけで無い事を、麗奈は知る事となった。

 

「で、志希ちゃん提案があるンにゃけど」

「なに、まさか後ろのを譲ろうなんて言わないでしょーね」

「オー、スゴイ!大正解だよ!」

「だからなんでそうなるのよ!」

 

 志希の提案、後ろのデルソルを譲る。

 一見、それが提案なのか考え込まないといけない程度には良くない案だ。

 そしてこの状況。

 バトルの当事者としてどうしても冷静になれない今では、到底受け入れられるモノではない。

 

 だが、当事者ではない視点からこの状況を見る事が出来れば?

 

「・・・足掻くだけ足掻いてみるわ。

 それで抜かれたら、聞いてやってもいいケド・・・」

「おけおけ。

 大分レイナチャンも柔らか~くなってきたね!」

「アンタがドロドロに溶かそうとするから、コッチは必死に原形を留めようとしてんのよ!」

 

@

 

「<<3位のマシンが攻勢に転じるようですね。

   万が一ですが気を付けましょう>>」

「ありがとう」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 1位をひた走る光はバックモニターを流し見る。相変わらず真っ先に移るのは余りにヘッドランプ位置の低い麗奈のマシンだが、その後ろからデルソルのヘッドライトが見えるペースが上がってきていると感じた。

 

「レイナもそろそろ限界か・・・?」

 

@

 

「恐らくは、フェイントを仕掛けるつもりだな。

 ・・・蘭子の策じゃないな。

 トナリの美世が吹き込んだか・・・」

 

 後方から蘭子のデルソルの動きに注目し、更にマシンに付けた各計測器から発信される情報を読んで、晶葉は次に蘭子のマシンがどういう動きを取るのかを予測した。

 

「ドライバーの蘭子より単純なマシンへの適応力は上、か・・・」

「美世が?」

 

 奏の疑問に、モニターから目を離さずに晶葉は答える。

 

「別な言い方をすれば、素直、と言ってもいいな。

 クルマが起こす事象に対して自分の解釈を持たず、すんなりと受け入れる。

 オカルトチックなら「自分がクルマの一部になる」とでも言うのだろうな」

「それは確か、本当に美世が言っていたわ」

「成程・・・(だが・・・)」

 

 晶葉はモニターの画面を変更した。

 その画面に映されているデータは、今奏が運転しているこのデルソルのデータだった。

 

(今の時点では、奏の方がこのデルソルを速く運転出来る、か・・・)

 

 決して蘭子が運転下手な訳では無い。

 確かに今はまだ経験値で不足しているが、最終的な成長の”伸び”に目を付けたのが晶葉だった。

 その眼に疑いは持っていない、だが・・・。

 

(より純粋なのは、コッチかもしれないな・・・)

 




Main EPISODE:She met a ...Ⅳ

played result:SUCCESS!

「ストーリーリプレイ」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章中盤のメインエピソード

「She met a ...」

メインイベントは蘭子、光、麗奈の池袋線三つ巴RSバトル。
護国寺PAまでが前半戦であり、クリア条件は
「奏に追い越されない」
である為、実質クリア条件なしのレースと言ってもいい。
 
この時点では最も馬力のある(890馬力)クルマを運転する事となる。
だがハイパワー車にありがちな挙動の繊細さ(どっかんターボ)等は無く、慣れれば光と麗奈をオーバーテイクする事も可能。

「ストーリーリプレイ」では光と麗奈視点でプレイが可能。
光は「1位をキープ」
麗奈は「蘭子に抜かれない」
がクリア条件となる。


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She met a ...Ⅴ

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「来るよ~蘭子ちゃん来るよ~!」

「わぁかったから!

 静かにしなさいよ集中出来ないッ!!」

 

 ”復讐者”の名前を持つそのクルマの中では、同乗者の志希と持ち主でありドライバーを務める麗奈がてんやわんやの状態になっていた。

 

 間もなく、護国寺PAが構えられているS字コーナーに進入する。

 後方の神崎蘭子と原田美世が乗るEG1del”ARMORMAIL”から発せられるオーバーテイクの意志が麗奈の背中に突き刺さる。だが、その程度では麗奈の心理は決して動かない。

 

「ぜっったいに抑えて!

 前のヒカルを捉えるんだからァ!!」

 

@

 

「ここだ!

 行くよ蘭子ちゃん!」

「我が”ARMORMAIL”の下に屈せよ!

 <<いっきますよぉ――っ!>>」

 

 S字の進入で麗奈のインを狙う。

 

「そんな動き見え見えよ!」

 

 流石に動きが綺麗過ぎたか、麗奈にあっさりとラインを防がれた。

 だが、今回の場合はそれで正解だ。

 

「返して!」

「その程度で屈すると思うか!

 <<まだまだぁ!>>」

 

 麗奈がインを締めた事で出来た、アウト側ラインへ蘭子は”飛んだ”。

 そしてそのまま、自慢の加速でオーバーテイク。

 

「ンな甘い話があるかァァア―――――!!」

「ナイトラス・オキサイドをぽちっとぉ!」

 

 なんと麗奈の”The Wraith”にはN₂Oシステムが搭載されていた。

 しかもそれだけではない、S字の中間点で噴射したのだ。

 

(志希ちゃんか!これは不味いぞ・・・!)

 

 一瞬のタイミングを非常識な大技で妨害された為に、助手席の美世はスイッチを押した犯人を当てると共に危機感を抱いた。ここで前に出なければ、麗奈を抜いても光に追い付けない。

 

「!!!」

 

 普通の首都高マシンであれば、この時点でオーバーテイクのチャンスは消滅していた。

 

「否!

 征くぞ”ARMORMAIL”ッ!

 <<まだ!

 まだ行ける!アーマーメイル!>>」

 

 S字を通過して、蘭子は麗奈のマシンの前に躍り出ていた。

 

「なっな、何よっそれぇ―――――――ッ!!!」

 

@

 

 

【挿絵表示】

 

 

「アレは本当に、クルマの動きなの?」

「一応、な。

 麗奈が勝手にN₂Oを搭載させていたお陰で、イイモノが見れたよ」

 

 少し後ろから一部始終の目撃者となった奏と晶葉でさえ、一連の光景に対してそのような事しか言えなかった。それ程に新鮮で、そして衝撃的なシーンだった。

 

 事実は、蘭子が麗奈をS字で追い抜いたというだけだ。

 それだけのハズだが、それだけで留めて置きたくない感情が二人を惑わす。

 

「3段フェイント、とでも言うべきか、なんというか・・・」

「”相手のクルマが止まっている様だ”って、こういう場面でも言うのかしら・・・?」

「我ながら凄いクルマを作っているかも知れんな・・・」

 

@

 

「<<2位と3位が入れ替わりましたよ>>」

「あぁ、見えていたよ。

 ありゃ相当スゴイな・・・燃えてきた!」

 

 蘭子との差はそれほどあるわけではない。

 この先は大曲の左コーナーまで2km、途中の緩い右カーブを挟んだストレートだ。

 

「<<引き離しますか?>>」

「いや、追い付かれるのは間違いないからエンジンに負担を掛けたくない。

 この距離なら、ブロックして見せるッ」

「<<ヒカルならそう言うと思っていました>>」

 

 中指でトリガーを引き、ギヤを上げる。

 1km弱の直線、それもS字を脱出してからという条件でも、悠々と300km/hまで加速する光の”ナイト”は確かに常識的ではない。だが後ろから迫ってきている蘭子のデルソルはそれ以上だ。

 

「早稲田で追い付くか!

 っ、曲がれぇ!」

 

 普段、僅かでも減速して進入するコーナーに加速しながら突入する。

 マシンのスペック上可能ではあったが、光が実行した事は無かった。

 

(曲がってくれ・・・!)

 

 ジワリと普段のラインからアウトへ流れる。だがアクセルは踏んだままだ。

 心の中では冷や汗が止まらない。

 

「よしっ」

 

 コーナーをクリアした事で光は安心したが、後ろの脅威は未だ健在。

 次のコーナーまで1km、防ぎきれるか。

 

「サポートカーは・・・」

 

 目の前に見えているサポートアザーカーは4台。右車線に1台、左に3台。

 処理の上手さとちょっとの運があれば、充分にイレギュラーを起こせる。

 

「<<2位との差、0.852>>」

 

@

 

(右に1台、左には3台。

 車幅が気になるから今回は路肩も使えない)

 

 基本的にサポートアザーカーは路肩を走らない様にされており、幅のある路肩を駆け抜ける走法も無い訳では無い。湾岸辺りではそこまで珍しくない光景だ。

 だが蘭子のデルソルは、幅のあるタイヤを履かせる為に大分車幅が増えている。

 GRP A1projectの車両レギュレーション上、純正で2m以上の車幅を持つクルマでない限りはオーバーフェンダーによる車幅の限界は2mまでとされている。

 EG1delは元からそこまで車幅のあるクルマではないからそこまで増やす必要は無いが、蘭子の”鎧”はかなり特殊なマシンである故にかなり攻めた車幅を持つ。1.8m以上は間違いない。

 

(ここはステイか・・・)

 

「蘭子ちゃん」

「何ぞ<<な、何ですか?>>」

「なるべく離されない様にFDに付いて行って」

「造作も無い<<わかりました>>」

「後ろは・・・今はまだ大丈夫か」

 

 美世は後方の麗奈と志希が乗るマシンを見たが、まだこれと言ったアクションは無い。

 

(N₂Oだけじゃなくて、何かまだ隠し玉を持っているかもしれない)

 

 特に、後ろのマシンの助手席に乗っているのが志希だという事を考えると、余計にそういう方向に考えてしまう。

 

@

 

「さて、落ち着いてきたとこだし抜かれた感想を、ドーゾ!」

「・・・抜かれた以上、やり返すだけよ。ヒカルもろともね。

 それに、さっきアンタ言っていたでしょ、”今は譲った方が良い”って」

「うんうん」

 

 志希はその首をタテに振った。

 

「じゃあ、どうすればここから一番最初にゴールラインを踏めるのか。

 このレイナ様に教えて見せなさいよ!」

「おっけ~。

 じゃまずここをね」

「待ってよアタシだってそこまで気持ちの整理は速くないわ!」

「こうして」

「人の話聞きなさいよ――――――ッ!!」

 

@

 

 早稲田のコーナーは防いだ。

 大曲は相手が攻めてこなかった。

 飯田橋先の神田川コーナーもこなかった。

 

「じゃあ此処ってワケかァ!」

 

 小石川橋を見やる右コーナーで、蘭子のデルソルが再び光のナイトに牙をむく。

 この先は緩く右に曲がる1kmの直線。

 コーナーの出口で並ばれたら勝ち目は無い。

 

「RX!」

「<<何でしょうか?>>」

「此処で引き離す」

「<<その言葉を待っていました>>」

 

 光は本来シフトノブのある場所にあった小さめのレバーを目一杯押し込んだ。

 

「”パースートモード”。

 今は追われる身だけどねっ」

 

 モニターに表示されるブースト圧が「1.8」を示した。

 一時的なブーストアップによって、光のナイトは更なる加速を得た。

 蘭子のデルソルに並ばせる隙さえ与えずにコーナーをクリアする。

 

「やっぱりあったか!”パースートモード”!!」

「禁断にして燃ゆる命の灯か!?

 <<もしかしてブーストアップ!?>>」

 

 普段から目の前のマシンが登場するドラマ「レーシングナイトRX」を観ていた美世は、マシンに搭載されている機能を全て覚えていた。その中でも最もシンプルだった「パースートモード」は恐らく実車にも何らかの形で実装されているだろうと予想していた。その予想は正解である。

 

(何が「ブースト1.4キロから700を超えるぞ」だか・・・。

 ・・・1.8キロで800位かな・・・数字より性能は上がっている)

 

「ドラフトには付けられると思うから、FDに当てる位の気持ちで行って!」

「御意に!<<わっわ、わかりましたぁ~>>」

 

 ここでデルソルはラインを替え、ナイトの真後ろに付いた。

 

(あっちも来たっ)

 

 美世が後ろを見ると、すぐそこまで麗奈の”The Wraith”が来ていた。

 

「にゃ~はっはっは!

 どうよレイナチャン。見事に追い付いたでしょ~」

「悔しいけどアンタのアタマは本物ねっ」

「後は任せるにゃ~」

「此処まで来れたらコッチのもんよ!」

 

 どういうトリックを使って追い付いたのかは分からない。

 言える事は、マシンの側面には無数の黄色い擦り傷の様な物があった。

 そして麗奈のマシンは、既にスリップストリーム効果を十分に受けられる距離まで接近した。

 

 3台が一本のラインで繋がり、西神田の先に在る左コーナーへ加速する。

 

@

 

「ゴールまでもう2キロと無いな。

 コーナーは3つ、どれもあの3台なら並んでクリアする事も出来る」

「目が離せないってワケ?」

「そうだな。データは後からでも見られる。

 離されるなよ?」

「おーけー」

 

@

 

「ラストチャンス!

 ここでキメるよ蘭子ちゃん!」

「最後に微笑むのは我々ぞ!

 <<絶対勝つんだからァ!>>」

 

 コーナーの少し手前、デルソルは光のラインから外れ、アウト側を取った。

 ゴールまでは緩いS字、蘭子と美世は最短距離のラインを選んだ。

 

「蘭子チャンはアッチを選んだね」

「アタシ達はどーすんのよ」

「コッチ!」

 

 麗奈と志希のマシンは、蘭子達と反対に光のイン側を狙った。

 最短ではないが、N₂Oを吹かせば相殺出来る差かもしれない。

 

「・・・”持つ”よね、RX?」

「<<私を何だと思っているんです?>>」

「へへっ、そう来なくっちゃぁ!!」

 

 挟まれる形となった光はこのラインで行くしかない。

 いかに減速させずゴールまで”ナイト”を運ぶかが勝利の条件だ。

 

「いっけぇ!」

「征くぞ、”ARMORMAIL”!!

 <<トップは私ですっ!>>」

「いっくよぉ~」

「絶対勝つんだからァ!」

「行くぞアールエックス!」

「<<ヒカルに勝利を!>>」

 

 

【挿絵表示】

 

 

@

 

 西神田先の左コーナーで遂に蘭子がトップに立った。

 

「やられっぱなしのレイナ様じゃないわよっ!!」

 

 麗奈がN₂Oを噴射し、アウトから強引にマシンを引っ張る。

 

「ラインの自由度が無いっ。

 でも、退けない!!」

 

 光は何とかして2台に当たらない様に、それでもアクセルは踏む。

 

 そして3つ目のコーナー。C1との合流地点。

 そこまでの僅かなストレートで3台は完全に横並びとなる。

 

「決まるわよ」

「勝つのは・・・」

 

 一ツ橋の左コーナー。このバトルのゴール地点まで60m。

 

「踏み込めぇ!

 フラットアウト――――――――ッ」

 

 蘭子のデルソルが僅かにアウトへ流れて行く。

 その僅かが、蘭子のデルソルに加速を許さなかった。

 そして麗奈のマシンは、無茶なN₂Oが祟った結果なのか、水温が110℃を超えてしまった。

 

「<<やりましたね、ヒカル!>>」

「・・・よしっ!」

 

 このバトルに勝ったのは光だった。

 

 

 




Main EPISODE:She met a ...Ⅴ

played result:SUCCESS!

「ストーリーリプレイ」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章中盤のメインエピソード

「She met a ...」

メインイベントは蘭子、光、麗奈の池袋線三つ巴RSバトル。
ゴールまでの後半戦、実は1位でゴールする必要は無い。
実質クリア条件なしのレースである。
(一応前回と同じく「奏に追い越されない」がクリア条件)

蘭子が1位でない時はほぼ必ず光が勝利する様に設定されている。
一部では麗奈をサポートして1位に押し上げる縛りプレイも有る様だ。

「ストーリーリプレイ」では光と麗奈視点でプレイが可能。
光は「1位でゴールする」
麗奈は「3位以上でゴールする」
がクリア条件となる。


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She met a ...Ⅵ

Main EPISODE story movie now loading...


「!

 この音は・・・」

 

 あのバトルから数日後。一仕事を終えた美世のところへ1台のマシンがやって来た。

 特徴的なV型6気筒ツインターボの爆音、神崎蘭子のEG1del”ARMORMAIL”の音だ。

 

(でも排気音が違う・・・。

 運転しているのは蘭子ちゃんじゃない?もしかして・・・)

 

 そう美世が考えている内に、デルソルは美世のガレージへと入った。

 デルソルの運転席から降り立ったのは、美世の予想通りに蘭子では無かった。

 

「全く、一般路を走るだけでも中々にてこずらせてくれる奴だ・・・。

 今更ながらに、これを平然と操る蘭子の凄さを思い知らされるよ」

「そりゃ、私だってこれは運転したくないですもの」

「まだ蘭子専用に煮詰めきっている訳では無いから、貴女ならある程度は乗りこなせると思うぞ。

 私が保障しよう」

 

 出てきたのは池袋晶葉だった。ご丁寧に、マシンをここまで自走で運んできたらしい。

 

「私にはミッドエンジンが合わないんです。FRメインの四駆が良いの」

「だがモータースポーツの経験があるだろう?

 調べてみたが、JF1.5でシリーズランキング2位まで行ったことがあるらしいじゃないか。

 当然だが、その成績ならトップカテゴリーのFWCも視野に入るだろう?」

 

 

【挿絵表示】

 

(2015年FWC第7戦の1シーン)

 

「あ、いや、あれはちょっと・・・ね?

 人には偶に言いたく無い事もあるんだよ」

「そうか、なら仕方ない」

 

 美世は何とか晶葉の追及を逃れた。

 

「いつもここで作業しているのか?」

 

 次に晶葉が興味を持ったのは美世のガレージだった。

 

「そう。

 まぁ作業もだし、食事とアイドル関係、あと首都高以外ならほぼ此処に居るよ」

「睡眠は?」

「此処だけど」

「そうも自然に出るとはな・・・少しは疑問に思えよ」

「そう言う晶葉ちゃんはどうなのさ?」

「私達は似た者同士だよ。

 この環境が良いんだろう?」

「そういうこと」

 

@

 

「提案がある。コイツを見てみないか?」

 

 晶葉が指したのは、間違いなく蘭子のデルソル”ARMORMAIL”だ。

 

「蘭子の許可はいらない。こいつはまだ私の所有物だからな。

 私の許可だけで十分だぞ」

「イイの?」

「代わりにだが、貴女の意見が聞きたいのだよ」

 

 

@

 

「わぁお・・・」

 

 リフトを使い、美世はデルソルの下へ潜った。

 

「どうだ?参考になるだろう?」

「参考も何も・・・凄いって言葉しか出ないかな・・・」

 

 美世の目の前に現れたのは”芸術”だった。

 

「アンダーパネルのフィンが可動式・・・。

 配置も造形も、パッと見ただけで”良い”って理解出来る・・・」

「ウイングはレギュレーション上可動出来ないからな。

 エアロダイナミクスの追求は、コッチでやらせてもらっているのさ」

「成程ね。

 コーナーでもアクセルを開けられるトリック・・・グラウンドエフェクトカー・・・」

 

 美世の口から出た単語、「グラウンドエフェクトカー」。

 分かり易く表現すれば(正しくは無いのだが)”クルマを一つのウイングにする”考え方によってサーキットでのタイムを短縮するタイプのクルマである。80年代のモータースポーツ・シーンでは必ず語る事となる要素の一つであり、形を変え、21世紀の今現在でさえもレーシングカーは基本的に「グラウンドエフェクトカー」と呼べる機構を有している。

 因みにグラウンドエフェクトカーの考え方に沿った一般的な空力パーツには「ディフューザー」等があり、これは美世のR33にも装着されている。

 

「トンネルの天井を走るだけがダウンフォースじゃないって事さ」

「私のRも空力は結構気にしているんだけどね~。

 これ見ちゃうと考えるなー」

「ほう?」

 

 一旦美世がデルソルの”腹”から脱出した。

 そのまま椅子に座ると、彼女の目線は相棒であるR33に向けられた。

 

@

 

「あのRはね、実は2代目なの。

 あ、勘違いしない様に言うとエンジンは初代そのままなんだけどね」

「シャシー、ボディは?」

「まだ健在、石川のウチに転がっているハズ・・・」

 

 美世は立ち上がり、事務所机の引き出しから一枚の写真を取り出した。

 晶葉が覗くと、そこに映っていたのはR33と美世のツーショットだった。

 晶葉程であれば、そこに写っていたR33が今この場所にある美世の相棒と違うという事には写真越しでも気が付いた。

 

「17ぐらいか?」

「うん。そしてこれに写っているのが、さっき言った初代のボディ」

「なぜ今のシャシーに替えたんだ?

 ”健在”と言ったんだ、クラッシュした訳でもないのだろう?」

 

 美世は無言で椅子に戻り、晶葉も座り直す。

 晶葉はこの時、美世の話が長くなることを確信した。

 

「10歳の時、実家の近所にあった解体屋に転がっていた一台のBCNR33・・・。

 色は純正色のダークグレーだけど、フロントフェンダーはブルーになっていた。

 ボンネットとフロントバンパーは無くて、RB26が一発で目に飛び込んできた」

「・・・」

「おとーさんに泣き付いて、何とかそのR33をゲットした私はその日から10年掛けてレストアとチューニング、そしてカスタマイズをしていく訳だけど、途中ちょっとした出来事があったの」

「予想はついている」

「当たるかな?

 私がジュニアフォーミュラに参戦する様になって、Rに関わる時間は減りつつあった。

 それでも、遂にエンジンが完全に動く様になるまではレストアし続けたの。

 さて次はボディだ!あのボディはヤレも無かったから綺麗に弄ろうとしていた正にその時」

「エンジンレスのR33が転がり込んだ・・・か・・・」

 

 晶葉は”しまったと思う”という事を理解した。

 場に僅かでも静寂が訪れる。

 

「お、み、ご、と。

 いやーね、ロールケージもスポット溶接もしっかりやっていてエンジンだけ無いっっていうRを見ちゃったらね、ねぇ?それに色も赤色していたし、外装も揃っていたりして・・・」

「悪かった、さっきの事は謝ろう」

「いやいや謝られる覚えはないヨ。

 まぁつまり、そのR33にエンジンを積んで、ナンバーを取っちゃったってワケ」

「それがその写真のR33か。

 確かにそれなりに出来ているとは思うな。写真越しだが」

「もうその頃には大分知識もあったからね。

 ”いいものは使っちゃおう”って思っていたの。実際このRも速かったよ」

「仕様は?」

「ブースト1キロで400馬力位だったかな?

 あの頃は首都高にも来ていなかったし、そこまでパワーは必要じゃなかった。

 まだエンジン本体の完成度が判らなかったってのもあるね」

 

 写真を持ち上げ、ひらひらと振る。

 

「でも違った。幾ら速く走っても、幾らバトルに勝っても違った。

 このRじゃなかった。

 私の波長に合うRは”あっち”だった。

 あのグレーでボンネットの無い、それでいてユガミもヤレも無いあのR33が、私のRだった。

 っていつの間にか気付いていたの」

「・・・」

「その頃からかな、私の中でクルマと言うモノの存在が変わったのは」

「どう、変わったんだ?」

 

 美世は写真を置いた。

 そして晶葉に視線を向けた。

 その視線に、晶葉は穿たれる様な錯覚を覚えた。

 

「器」

「うつわ・・・」

 

 

 

「クルマは単なる手足の延長線上じゃ無くて、自分の魂を入れる器なんだよね」

 

 

 

「ほぅ・・・面白いな」

「で、私はアッチのRをレストアする為に時間を作って、ついでに補強と軽量化もしっかりやって、そしてエンジンを積み直して・・・出来たのがあのBCNR33、私のRってこと」

 

@

 

「話を戻すが、私のデルソルを見て”考える”と言ったのは・・・」

「あぁ、それね」

 

 美世は写真を事務所机の引き出しに戻し、一枚の紙を晶葉に見せた。

 

「あっちのボディも出来そのものは良いからさ、復活させたいのよ。

 それもただ動かせる様にするんじゃない。もっと”とびっきり”のRにしたい!

 ・・・ってね」

「・・・案外、それは遠からずしてくるかもナ」

「?何か言った?」

 

 晶葉の呟きは、今度は美世に聞こえていなかった様だ。

 晶葉は、首を横に振った。

 

「いや、こっちの話だ。

 今日はありがとう。お陰でイロイロといい話が聞けたよ」

「いやーこっちこそだよ。

 またね晶葉ちゃん!」

 

 晶葉は照れ臭そうにデルソルに乗り込み、そのまま美世のガレージから去って行った。

 

「ふー。

 今日はもう依頼も無いし、ちょっと早いけど上がってみますか・・・」

 

 美世はもう一度、しっかりと相棒のRを眺めた。

 

(そういえば、私がジュニアフォーミュラを辞めたワケ、気付かれていないよね・・・?)




Main EPISODE complete

「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章中盤のメインエピソード

「She met a ...」

このムービーでエピソード終了となる。
以降、晶葉、光、麗奈の所属する第8部署が部署選択時に選べる様になる。
また、第9部署選択時に蘭子がキャラクターの選択肢に加わる。

@

活動報告の欄では説明した事もあるが、ゲーム内の世界観(と「ドライブ ユア ゴーゴー!」や「紗南@GAMEwork」の世界観)では「F1」が消滅しており、代わりに「FWC Formula World Championship」というリーグがフォーミュラカーレースのトップカテゴリーとなっている。

マレーシアに本社を持つ総合石油系企業「クローバーフォース・ペトロリアム」のイメージキャラクターには346プロダクション第6部署に所属する「緒方智絵理」が採用されており、メインスポンサーを務めるチーム「CFP&KL AYracing」のカラーリングにも彼女が描かれている。ドライバーはベテランの小早川悟。
首都高バトルには「ローリング野郎1号」や「ローリングマスター」として長年登場している。

昨年、遂に765プロダクションのアイドルレーサー菊地 真は父、菊地真一が代表を務める「菊地真一レーシング」よりFWCに参戦。シーズン3勝を挙げる活躍で見事ルーキーオブザイヤーに輝いている。チームには「萩原建設」等日本の企業が多くスポンサーに加わっており、今後の活躍に期待が寄せられている。

これ以上の詳しい説明は「用語集」で行う。


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Do you know venus ? 1

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『これで・・・良かったのかな・・・?』

『良くなるか悪くなるかは、私達が決めることじゃないな』

『そう・・・。

 私達はまだ止まれない。止まる訳には、いかないから・・・!』

『何時になく気合入っているなリンは』

『あら、ナオだってこんなに髪の毛ぴょこぴょこさせて♪』

『やっ、やめろよカレン~!』

『ほら行くよ、ナオ、カレン。

 私達が作る、蒼穹の道をね・・・!』

 

 <<「Trancing Pulse」    The End>>

 

@

 

「はぁいカット~~~~~~~~~!

 以上でアガリになりまーす、おつかれさーん!」

「有り難うございましたー!」

「ふぅ――っ、終わったァ・・・」

「あとは製作スタッフ任せ、か・・・。

 やり切ったね、加蓮、奈緒」

 

 渋谷 凛、北条加蓮、神谷奈緒の3人で構成されるユニット、「トライアドプリムス」。

 第12部署、通称「シンデレラ・プロジェクト」から派生する他部署に所属するアイドルとの合同プロジェクトとして最初に結成されたのがこのユニットである。

 ただ、加蓮、奈緒の両名には所属している部署は無い。強いて言えば、346プロダクション本社に所属するアイドルである。

 

「これで私達も「シンデレラ・プロジェクト」のメンバーかな?」

「そうなるかもね。

 でも、プロデューサー、その辺の事は言わないから・・・」

「コッチのプロデューサーもだよ。

 ったく、そういう話がイチバン重要だってのになぁー」

 

 先程まで3人が収録を行っていたのは、このユニット「トライアドプリムス」を最大限に売り出せる346プロダクション製作のSFアニメーションである。たった今最終話の最後のセリフ部を撮り終えた所であり、これに映像が付けば現在平均視聴率30%越えとも言われている作品が完結する。

 この作品の成功はユニットの成功ともいえるモノであり、加蓮、奈緒の二人が正式に第12部署に配属されるという事になる可能性は十分にある。

 

「よぉー、お疲れサン!

 今のでクランクアップ(撮影終了)か?」

「そーだよプロデューサー。

 どうだった、私達3人は?」

 

 3人に駆け寄ってきた男は、凛の担当プロデューサーである弐内では無かった。

 

「良かったぞ。

 素人の俺が見ても絶対良いのが出来たって確信があるな!」

「なんだよそれー!」

 

 好青年、という言葉を人にしたらこうなる。とでも言えそうな、そんな男。

 強いて言えば、誰かさんを男にしてとても健康そうにした感じ・・・?

 

「もしかして見惚れちゃった?

 自慢のお嫁さんが、こんな普段絶対着ない様な格好してカッコ付けているのを見・て♪」

「加蓮!?

 ちょ、そういうのじゃないって!」

「マリノは分かり易いの、奈緒みたいにねっ」

「流れ弾ッ!?

 ていうかいい加減に話の流れから判れよあたし!?!?」

 

 加蓮と奈緒のプロデューサーを務めるその男の名は、北条真理乃(ホウジョウ マリノ)。

 旧姓は金沢と言い、加蓮の遠い親戚であり、幼馴染であり、Pであり、そして婿でもある。

 

 因みに彼のプロデューサーとアイドルと言う関係では、奈緒の方が長い。

 

「渋谷さんも、ウチの二人と組んでくれてありがとうな

 まだヒヨッコだからさ、わからない所もあっただろ?」

「いいよ、私が決めた事だし。

 それに、二人とはこれからも仲良く出来ると思うから・・・」

 

 この凛の発言にリアクションを示したのは奈緒だった。

 

「良いのか!」

「え、そんな驚かれる・・・??」

 

 予想外の驚かれ方に、凛も頭に疑問符が浮かぶ

 

「いやぁ~。

 だって最初見た時とかめっちゃ”私はアイドル、何か文句ある?”ってカンジでさ。

 なんか”仕事の切れ目が縁の切れ目”って~雰囲気あったんだよね・・・」

「私はそこまで思っていなかったけど、芸能界じゃやっぱり凛が一番先輩でしょ?

 コレが終わって今の関係でいられるか・・・とかは思っちゃった」

 

 二人の告白を聞いた凛には思い浮かぶ姿があった。

 

(私ってどうも”そういうカンジ”を放っている傾向があるのかな・・・)

 

 卯月と未央。

 「シンデレラ・プロジェクト」のスタートユニットであるニュージェネレーションズで、最後にメンバー入りした自分に対して、二人にこういう心境を抱かせていたのか・・・だから・・・?

 

(もう解決した、過去の話・・・”私達はまだ止まれない”)

 

 凛は、先程自分が演じる主人公が言い放ったセリフを、心の中で自分に向けて言い放つ。

 

「じゃあ、もう少し仲良くなってみよう」

「イイね~。

 まだ世間に放映されていない、私達のアニメの完結を祝して秘密裏に・・・へへ・・・」

 

 ひとり勝手に浮かれている奈緒を見た加蓮は冷静に、この間の彼女の発言を思い出す。

 

「奈緒、まだ映像が出来ていないから完成じゃないってこの間言ってなかったっけ?」

「・・・まぁそんなこと言ったなあたし」

 

「渋谷さん、遅れてしまいました」

「遅いよ、プロデューサー」

 

 絶妙な二人の掛け合いを見ていた凛の背後に、プロデューサーの弐内が現れる。

 真理乃と比べるとかなり強面な風体もあり、さながら凛の守護神の如き風格を見せる。

 

「撮影は無事終了。

 この後に予定は無かった筈だから、あの二人と付き合っても良いよね?」

「構いませんが、怪我等の無い様にお願いします」

「当然。アンタよりは自分のコンディションは解っているつもりだから」

 

 弐内は察していた。

 3人で繰り出す場所の事を。

 

 この撮影スタジオは、平和島PAを下りてすぐの場所にある。

 

@

 

「じゃちょおっと遊んで来るね、マリノっ」

「加蓮~気ィ付けろよ~、無茶すんなよ~、安全運転でな~」

「おーけ~おーけ~♪」

「行くぞ~加蓮~」

「分かった分かった~!」

 

 3人は若干急ぐ様にPAに消えて行った。

 

「体力あるよなァ・・・」

「えぇ、私もそう思います」

「・・・ヌッっと現れると心臓に悪いぜ・・・?」

「善処します・・・」

 

@

 

「さぁ~てやるぞー!

 今日はぜってー負けないからなぁ!」

「何度聞いたセリフだか」

「奈緒はフラグを立てるのがウマいからね」

「なんだよそれー!?」

 

 PAには3人が乗る愛車が綺麗に3台横並びで駐車されていた。

 

【挿絵表示】

 

 

「今回こそ加蓮にランチ、奢らせてやるからなー」

「お、今回もそれやるの?

 奈緒様ごちそー様でーす」

「てことは今回もあそこまで?」

「違う違う、ファスト・フードも良いけどさ。

 今回あたしらはパーッとやるんだよ、ホラ」

 

 奈緒がポケットから出したのは飲食店のクーポンチケットだった。

 流行の安い、多い、美味いの定食チェーン。名前を「高槻亭」と言う。

 オーナーは3人もよく知っている、765プロダクションの元トップアイドルである高槻やよい氏その人だ。

 

「なんだ「高槻亭」か」

「いつものバーガーと同じ値段で2倍は食えるんだぜ!?

 こういうので祝わないと」

「私は構わないケド・・・」

「普段はあんまり行く店じゃないけど、イイかもね。

 よしそこに行こう!」

 

 3人はそれぞれのクルマに乗り込む。

 

「一番近いのは芝公園の店舗だな。

 ・・・SPバトル2回位か?」

 

 奈緒のマシンはAW11。彼女がライセンスを取得するより前に購入したマシンだ。

 

「SPだと3回もあるんじゃない?」

 

 凛のHCR32は変わらず。この間美世に整備してもらったばかりで調子がいい。

 

「さぁさ、早く行こう行こう!」

 

 加蓮はZZT231だ。淡い水色のマシンにはスポコン仕様のエアロが組んである。

 

<二人ともシートベルトは締めた?>

<OK!>

<こっちもおっけ~>

<よし、じゃあ行くよ!>




Main EPISODE story movie

「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章最後のメインエピソード

「Do you know venus ?」

ストーリームービーから始まるメインエピソードであり、ユニット「トライアドプリムス」の3人がバトルを開始するまでのムービーである。
このムービーの後、連続して3回のSPバトルを行う事になる。操作キャラクターは選択可能で条件は「2回以上の勝利」である。

346プロダクション所属アイドルと担当P。
詳しい紹介は「キャラクター&マシン」で行う。

北条加蓮:かつて病弱だった少女は想い人にその命を託し、今アイドルとして此処に居る。
愛車はZZT231のスポコン仕様。
神谷奈緒:漫画に影響され、ライセンス取得より先に愛車を購入した過去がある。そのクルマこそAW11。
北条真理乃:加蓮をトップアイドルにする為にPになった男。気が付けば加蓮がハンコの押された婚姻届を握っていた。


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Do you know venus ? 2

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<だぁーーーーーッ!!

 もうちょっとだったのにぃーーーーーーーーッッ!!!>

 

「ふふっ、何選ぼうかなー」

 

 3勝。

 奈緒も凛も寄せ付けない走りで、見事「高槻亭」のメニューを奢ってもらう権利を獲得した加蓮は上機嫌だ。

 

<ん、後ろから来た・・・>

<速えーな、譲るか?>

 

 コンソールのナビに一台、かなりのペースで3台に迫るマシンがいる事を加蓮も確認する。

 

(減速した・・・)

 

 そしてそのマシンは、3台の少し後方で減速した。

 大きさは奈緒のAW11とほぼ同じか、少し大きい程度。

 

(丸目の・・・リトラクタブル?)

 

 バックミラーからでは確認し切れないが、数の限られるライト形状の様だ。

 

<付かず離れずで後ろに居るぞ・・・930か?>

<NA6Cか8Cかな・・・よく判らない>

 

 奈緒と凛も正体を掴めないまま。

 芝公園PAへの入り口は、既に通り越してしまった。

 

@

 

(3台・・・どれも速そうね・・・。

 でも今夜は走りたい・・・体が疼いて、止められないの!)

 

「私との勝負、お願いしますね・・・!」

 

@

 

<来たッ、向こうからSPバトルが来たァ!>

<こっちにも来たね。

 ネーム「レディアント・ヴィーナス」、名前は新田美波・・・>

<奈緒の知り合い?>

<いーや全然。

 しかしSA22Cだったとは・・・気付かなかったな・・・!>

 

 

【挿絵表示】

 

 

 車種、SA22C。FC3Sのひとつ前のモデルであるロータリースポーツだ。

 

(確か奈緒のより古いクルマだよね・・・)

 

 少なくとも、この場に居たマシンの中では最も古いマシン。

 極単純な素人考えではバトルは挑まないハズだ。しかも3対1のSPバトルなど。

 

<絶対速いヤツだぜ・・・?>

<いいよ、私は受ける>

<凛・・・!>

<C1(此処)ならある程度マシンスペックの差を消せる。

 だから向こうも仕掛けて来たんだろうけど・・・条件はほぼイーブンだと思う。

 それに私達、どの道1週するんでしょ?>

 

 目的地に近いPAを過ぎた以上、最短ルートはもう1週する事に他ならない。

 

<私も凛に賛成~。

 もう一周するなら楽しまないと、ってね!>

<加蓮もかよ~っ!

 ったく、あたしは注意したからなッ!!>

 

@

 

 3台全てがバトルを受領したのを画面で確認し、SA22Cのステアリングを握る女性、新田美波は”滾って”いた。これから始まるバトルへの高揚と緊張、そして何より”楽しさ”に。

 ギア2速へ入れた。シフトレバー捌きは確実で、かなり手慣れている。

 

「ミナミ、行きます・・・ッ」

 

 カウントが、GOを示す。

 

@

 

「っだっから、言ったん、だ!

 絶対、速い奴、だっ、て・・・っ!」

 

 そう言いながら奈緒はSA22Cに”追われて”いた。

 抜かず離れずのテールトゥーノーズで、SA22Cがミラーを左へ右へ。自分の限界を超えた走りを強制される恐怖が奈緒を襲っていた。

 

「こんのぉ!!」

 

 霞が関トンネルに入る前の右コーナーを、奈緒は派手に車体をヨコに向けてクリアした。

 

 

【挿絵表示】

 

 

(今のは決まった!)

 

 彼女は走りのスタイルを漫画に憧れた時からドリフトと決めている。

 必要最小限のブレーキングでキッカケを作り、後はアクセルとステアリングコントロールで文字通り道路を滑走する。漫画の1コマにはまだまだ遠いが、下手にラインを意識したグリップ走行よりも、スピードを乗せてコーナーを脱出出来る位には修練を重ねてきた。

 

(しかし後ろの・・・見事にグリップ派だな・・・)

 

 奈緒とは対照的に、SA22Cは見事なライントレースでAW11に肉薄している。

 その動きに感心していた時だった。

 

「しまッ!!」

 

 流石に無理が祟ったか、霞が関トンネルの出口で奈緒のマシンが暴れた。

 ミッドシップ&ショートホイールベースのAW11は、1度スピンしたら立て直す事は至難の業。

 

「~~~ッッッ!!!」

 

 しかし奈緒は凌ぎ切った。AW11でカニ走りをしてきた彼女にとっては日常茶飯事の事象。だがバトル中に起こったのは運が悪かったとしか言えない。

 既にSA22Cは、凛が駆るHCR32に襲いかかっていた。

 

@

 

(奈緒が撃墜(オト)された・・・)

 

 バックミラーにSA22Cが映った事で凛は察した。

 

(・・・来るッ)

 

 SA22Cがコーナーのインを取ったが、ここは凛のブロックで抑えた。

 

(卯月とは違う走り・・・手強い・・・!)

 

 あの一件以来、C1外回りは卯月、凛、未央にとってのホームコースとなっていた。

 特にこの場所は卯月と一緒に走っており、ランデブーは一層磨きが掛かっている。

 

(くっ・・・もう少し抑えられれば)

 

「加蓮が、勝つ・・・!」

 

 2台でブロックして1台がチギる、3対1のSPバトルではよくある戦法だ。

 図らずともそういう状況となった以上、普段は1対1のタイマンを好む凛も勝ちを狙う。

 

(アザーカーは2台・・・)

 

 どちらも左車線、車間は少し開いている位だ。

 凛が1台目のアザーカーをパス。SA22Cも続いた。

 

「嘘でしょ!?」

 

 そのままの勢いでSA22Cは凛のHCR32に並んだ。前方のアザーカーまでは100mと無い距離、ここで仕掛けて来るとは思っていなかった。

 

「速いッ!」

 

 加速には自信のあった凛のHCR32を退け、あと数センチという隙間をSA22Cは潜って見せた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

@

 

「今のは、ちょっと危なかったかな?」

 

 美波も先程のオーバーテイクはやり過ぎと感じた様だ。アザーカーと衝突するのは流石に避けたいが、ああいうスリルを一度経験してしまうと身体が求めてしまうのが悲しいサガだ。

 

「ん・・・さぁ、あと一人・・・♪」

 

 AW11のSPは既に0、HCR32も挽回する事は恐らく不可能。

 あとは正面に見えるZZT231のみ。こちらのSPはまだ6割残っている。

 

@

 

「来た来た来た~」

 

 後ろからのハイビームの光が加蓮の右足を刺激する。江戸橋右コーナーをクリアすると、C1ではかなりスピードが乗り、危険度が跳ね上がる宝町~京橋~銀座区間に突入する。

 

(付いて来れるかナ~?

 後ろのお方っ)

 

 加蓮はこの区間が好きだ。

 

(この感じがサイコウなんだよね・・・魂が躍る瞬間ってやつなのかな♪)

 

 宝町のストレートを、アザーカーやバトルをしていないライバル達を躱しつつ下り、270km/hオーバーのまま京橋の分岐を過ぎると、目の前には狭い2車線を更に引き裂く”壁”が現れる。

 昔からこの”壁”は走り屋達に牙をむいてきた。今でこそ車体技術の革新的向上によって320km/hで真正面から突っ込んでもマシンがバラバラになるだけで済むが、何人がココと次にもある”壁”でその命を散らしたか。

 

「そりゃっ!」

 

 そこを加蓮はハイスピードで潜るのが大好きで、得意だった。

 壁の後に待ち構える左コーナーをアザーカーとガードレールに掠る勢いでクリアすると、二つ目の”壁”に進入する。

 

「おっそっち行くんだ」

 

 SA22Cは加蓮が入った方と逆の方を通過、そのまま前に出た。

 

(でもそのままフィニッシュは無いからね!)

 

 前に出たSA22Cはアザーカーが居るアウト側へはらみ、ブレーキランプを光らせた。かなり素早いリカバリーを見せるが、加蓮にとってはブレーキランプを光らせた時点で”隙”なのだ。

 

(車間数ミリ、行けるッ)

 

 

【挿絵表示】

 

 

@

 

「嘘っ危ない!!」

 

 減速した自分のマシンに後ろから突っ込んでくるとあれば恐怖以外の何物でもない。しかもその後には2車線区間を3台で走るハメになった。

 

(シゲキ的な事してくれるじゃない・・・身体が覚えちゃったらどうするの・・・?)

 

 美波は自分が感じるスリルの水準が上がる事を気にしながらも、前のZZT231を追う。

 銀座区間を過ぎ、かつて「C1GP」のコースに選定されていた時にホームストレートに設定された区間を疾走する。相手のSPは7割、こっちは4割、まだ行ける。

 

(前のマシン・・・かなり危なっかしい動きだけど、壁には当たらないのね・・・)

 

 京橋の時点では気が付かなかったが、ZZT231の動きはかなりトリッキーだ。走行ラインを意識しない辺りは実戦派と言っていいかもしれないが、それでもここまでの動きをする相手と戦うのは初めてだった。

 

(残り3割、イケるよねっミナミ!)

 

@

 

(芝公園過ぎちゃったよ・・・!)

 

 バトルは遂に2週目に突入。既に凛と奈緒のSPは尽き、加蓮とSA22Cの一騎打ちの状態。

 こっちのSPは6割弱、対して相手は3割を切った。

 

「このままこのまま!」

 

 壁に擦り寄り、アザーカーを避けて前へ、前へ。

 加蓮はこの瞬間を、生と死の境目で生を勝ち取るこの一瞬を感じる為に首都高を走っている。

 

「あと1割・・・!」

 

 首都高を走る理由としてはとても危険な分類だ。

 

「行ける・・・行けぇ!」

 

 自分を愛してくれる真理乃が心配している事もキチンと理解している。

 彼が出来る事なら辞めさせたいと思っているのは雰囲気で判る。

 

「・・・勝ったッ」

 

 だが、それでも走るのだ。

 この場所は、自分にイノチを与えてくれる場所だから。

 

@

 

<とてもいい勝負を、有り難うございました>

 

 バトル相手のSA22Cからメッセージが来た。

 加蓮としても、ここまで充実したバトルは久々だった事から、相手も同じ様に感じていた事は嬉しかった。

 

<こちらこそ良いバトルでしたね!

 あの、良かったら1週して芝公園の「高槻亭」に来ませんか?

 他の2台も居ますよ>

 

 顔が見たくなった。奈緒には悪いが誘ってみる。

 「新田美波」と言う名前と今の声からして美人の風格が滲み出ている。

 

<お気持ちは有難いのですが・・・遠慮させて頂きますね・・・>

<そうですか、失礼しました>

<また、機会があれば>

<そうですね、また今度、機会があれば>

 

 新田美波が操るSA22Cは、3号渋谷線に行ってしまった。

 

<加蓮~席取っておいたからな~>

<安全運転で来てよ、加蓮>

 

@

 

 高槻亭に入店すると、流石に時間からか客入りは少ない。

 だが少し見回すと首都高ランナーと思しき人影が幾つか加蓮の瞳に入って来た。

 

「よ~お加蓮、どうだった~?」

「勝ったよーブイ!」

「やったじゃん、加蓮」

 

 奈緒と凛は既に注文をしていた様で、席には幾つか料理が並べられていた。

 

「おおっとメールだ・・・」

「コッチにも来たよ・・・マリノからじゃん」

「今夜は3人同時に何か来るね」

 

 奈緒と加蓮の携帯端末には真理乃から、凛には弐内からメールが入った。

 

「えーと、何何・・・SFアニメの次回作ゥ!?」

「みたいだね」

「タイトルは・・・」

 

「「「・・・女神症候群-ヴィーナスシンドローム-・・・」」」




Main EPISODE:Do you know venus ? 2

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「ストーリーリプレイ」が記録されました

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@

「ストーリーモード」第1章最後のメインエピソード

「Do you know venus ?」

3対1のSPバトル。ストーリープレイでは”謎の女性、新田美波”が駆るSA22Cを操作、トライアドプリムスに挑む。
ストーリー上は一回で全員とバトルしているが、ゲームでは3連戦と言った方が正しい。クリア条件は奈緒、凛に勝利し、加蓮とのバトルで芝公園を通過する事である。
減った分のSPが回復される事無く次のバトルになる為、SP残量への注意が必要。マシンスペックでは勝っている為さほど焦らなくてもOK。
加蓮とのバトルは勝っても負けてもほぼムービーに違いは無い。

「ストーリーリプレイ」ではトライアドプリムス側でのプレイが可能。
奈緒と凛が「一定区間で美波の前にいる事」
加蓮は美波と同じく「芝公園を通過する」事がクリア条件となる。
コチラはマシンスペックで劣る他、MR、FR、FFという駆動の違う3台を連続して操作する事になる為難易度でいえば美波の方より断然高い。


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Do you know venus ? 3

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「美波、みなみ~?」

「えっ、あ、はい?」

 

 後ろから声を掛けられている事に、美波は気付く事が出来なかった。

 

「どしたの~らしくないじゃん?」

「な、何でもないよ。

 ちょっとぼーっとしていただけだから」

「ふーん・・・だといいんだけど」

「大丈夫よ、大丈夫だから・・・」

 

 美波の学友は校舎の出入り口の方へ足を向けた。美波とは別の進路だった。

 

「じゃあ私は授業ここまでだからね」

「うん、じゃあまた明日ね」

「美波も疲れているんだったら授業抜けても良いんだからね~」

「だから、大丈夫だってばー」

 

@

 

「~そして・・・~11年に・・・~ヘンリー・T・~・・・」

 

「(なんか今日の新田ちゃんさ、なんかアンニュイくねぇか?)」

「(なんだよアンニュイくって・・・でもなんか違うな・・・)」

「(何時もよりオトナって感じだよな・・・ヤバイぜ・・・?)」

 

 講義の中身が頭に入ってこないのは、その姿に魅せられる男子達だけではなかった。

 

「~その・・・~38年・・・」

 

(はぁ・・・)

 

 同じ教室で受講中の、男子連中の視線を黒板から奪い去っていた美波も、この講義が頭に入って行く感じがしていなかった。だが他と違うのは、彼女は初めからこの授業の内容が一通り頭の中に入っている上で”アンニュイく”しているのだ。

 

(どうしよう・・・退屈で仕方がないなんて・・・何時以来・・・?)

 

「・・・~が・・・~に・・・」

 

(思い出す・・・あの日の走りを・・・。

 あれ以来、欠かさず首都高へ行く様になってしまった・・・けれど)

 

 キーン

 コーン

 カーン

 コーン

 

「えー、では本日の講義は~ここまで~」

 

(あの人達とは会えていない。

 それに・・・)

 

 講義が終わっても、美波は少しの間、物思いに耽っていた。

 教室はたった今、今日の使用日程を終えた為しばらくは誰も来ない。

 彼女が参加しているラクロスのサークルも、今日は活動日では無かった。

 

(私は・・・あれを楽しんで良いのだろうか・・・)

 

@

 

 教室を去り、帰宅しようと校舎を出た美波の耳に入ってきたのはエンジンの音だった。

 

(この音は・・・リーダーさんのクルマね)

 

 美波の通う大学には”首都高サークル”なるものが存在していた。敷地内にあるガレージでマシンを弄り、首都高ではチーム「GALAXY RACERS」名義で活動している。

 ある程度のメンバーが在籍し、学校側から活動費が出ている正式なサークルである。因みにだがサークルとしての歴史は意外に古く、設立はまだ首都高が公道として利用されていた時まで遡る。

 

(・・・ちょっと寄っちゃおうかな)

 

 美波はこのサークルには参加していないが、時々顔を出して居た事もありサークル内では知られた存在だった。首都高を走る”速い”SA22C乗りとして。

 

「やぁ美波ちゃん!何かあったかな?」

「あ、言う程の用事はありませんよ」

「あそう・・・。

 まぁ顔見れただけ良いかな!」

 

 美波の前に現れたのはサークルのリーダー、「堅実な4代目」波島貞治が駆るZ31ZRだった。V6モデルが有名となった今では珍しささえある、Z31の2L直列6気筒ターボエンジンモデルだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「―――少し、音がバラついています?」

「・・・見事、流石美波ちゃんだヨ。

 この間オーバーレブさせちゃってね、それ以来なんだ」

 

 このリーダー、通り名こそ「堅実な4代目」だが、意外とそこまで堅実では無いことをチームのメンバーと美波は知っていた。

 

「・・・そう言えば!

 美波ちゃんって、ここ2週間でAW11、ZZT231、HCR32の3台とバトルしていたりする?」

「えぇっ!?」

 

 思い出した様に、波島は美波に問い掛けた。

 その勢いに美波は一瞬驚いたものの、すぐに”あのバトル”が脳内に蘇った。確かにあの3台は、リーダーの言う車種と合致する。そしてこの2種間で彼女はそれしかバトルをしていない。

 

「えっと・・・していますね、その3台と。

 それが、どうかしたんですか?」

「やっぱり美波ちゃんだったのか!

 いやね、後輩がこんな写真送ってきたんだ」

 

 その写真に写っていたのは、紛れもなくこの間のバトルでの1シーンだった。美波のSA22Cだけピントがずれており判別が難しいが、他の3台はしっかりと収められていた。

 

「間違いないですね、これが私です」

「いやー、そうかー、そうなんだなー・・・。

 やっぱり美波ちゃん”持っている人”だと思っていたけど・・・」

「あの・・・話が見えてきませんが・・・。

 この間私と相手した人達が何かあったんですか?」

 

 波島は携帯端末を弄り、何かを探しつつ訊いた。

 

「・・・「トライアドプリムス」って、知っているかな?」

「たしか、アイドルユニット、でしたっけ?」

「そう」

「この間までアニメをやっていた・・・」

「そうそう」

「・・・もしかして?」

「この3台に乗っていた人達こそ、トライアドプリムスの3人なんだよ!」

 

 携帯端末に映されていたのは、PAに停めたクルマの前で談笑しているあの3人の姿だった。

 

@

 

「・・・む!?」

 

 時をほぼ同じくして、346プロダクション第13部署事務所兼黄間邸のリビングでくつろいでいた(本当はレッスンをしているハズの)一ノ瀬志希は、その異常な嗅覚で何か新しいモノが近付いて来た事を感じ取り仰向けの姿勢で飛び上がったが、近くにいた宮本フレデリカは眉ひとつ動かさず受け流した。

 

「もしかして来たかのかナ?」

「CFP(クローバーフォースペトロリアム)なんてウチでは使っていないからね~しかも新品」

「志希ちゃんのおかげでオイル交換しなくてよくなったからね~」

「してよ」

「オ~フレちゃんでも大発見の距離まで来ましたぞ~」

「キターーーー」

 

 事務所兼邸宅の窓越しに二人が見たのは、メタリックグレーの低く構えたマシンだった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「たっだいまー!」

「おかえりミヨちゃぁん!」

「んんんん~~~嗅ぎがいのあるフレグランス~新品のCFPと私謹製のハイブリッドにゃ~」

 

 グレーのクルマがガレージに入っていくタイミングで、美世が帰還して二人に逢った。

 

「シューコちゃんは下だね!」

「急げ急げーハリーハリーハリー!」

「ゆっくり行っても周子ちゃんは逃げないよー」

 

 階段を駆け下り、ガレージ前の喫茶コーナーに着くとそこには周子と先程のマシン、メタリックグレーとダークグレーによるツートンのZ31が横付けされていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「お、来たん~?」

 

 丁度ポットでコーヒーを淹れていた周子が3人の到来に気が付き、近くにあったカップを3つ取り出してコーヒーを注いだ。

 

「さぁ座っちゃってよ、ほれ、ブラック」

「気前イイねシューコちゃん」

「何時もと違う!?」

「大して変わらんよ~?

 まぁコイツを遂に私のモノに出来たってのはあるかもだけど~」

 

 周子のZ31は、V型6気筒エンジンを搭載する方のモデルであるZXだった。

 

「早速今夜出ちゃうからね!

 皆は付いて来るん?」

「私はトナリだね。まだ周子ちゃん危なっかしいからサ」

「そっちは?」

「えびだも~ん!(Evidemment!、フランス語で”当たり前だよ”)」

「にゃ~~~~~~」

 

 フレデリカと志希はヤル気満々の返事。美世は周子の助手席をリクエスト。

 残るは今この場に居ない奏と黄間Pだが、今夜は仕事が入っていてとても参加出来ないだろう。

 

「奏にはもうちょいウマくなってから見せたいん・・・。

 決まり!

 今夜はこのメンバーで繰り出すよ!」




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@

「ストーリーモード」第1章最後のメインエピソード

「Do you know venus ?」

美波の通う大学には首都高チーム「GALAXY RACERS」が存在しており、部長の「堅実な4代目」他所属メンバーは全員が今作品からの登場である。
かつてのメンバーは一部が「新環状の大御所」が立ち上げた「A.S.F」に移っている。

周子がついにクルマを購入する事となった。車種はZ31ZX。

11/07:挿絵追加しました


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Do you know venus ? 4

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「えぇ!?

 私が、アイドルに・・・!?」

「なれる素質はあると思うね。

 美波ちゃん、輝いているからサ・・・。

 実際うちのチームじゃ、もうアイドルみたいなものだからね」

「で、でも・・・」

「もう一度、首都高でアイドルに出会ってみるのはどうかな。

 多分だけど、美波ちゃんは遇えると思うんだ・・・」

 

@

 

(波長が同じ・・・とでも言いたいのかしら・・・)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 今、美波が立ち寄った霞が関PAに居たのは紛れもなくアイドル・・・と思われる4人だった。

 

「どぉだったーシューコちゃんの走りは~?」

「イイよ~」

「うんうん」

「私としてはもうちょい抑えてほしいんだけどねー」

 

(あの雰囲気・・・確かに他とは違うけれど・・・本当にアイドルなの・・・?)

 

 美波はまだ、リーダーの発言を信じ切れていなかった。

 自分がアイドルになれる・・・。

 

「じゃ出ますか!」

「今度は何処まで~?」

「アッチまでだにゃ~」

「それじゃ解らないよー」

 

 そうこうしていると、4人はそれぞれのマシンに乗り込んで霞が関PAを出る準備に入った。

 

「・・・追いかけてみましょうか」

 

 美波もイグニッションキーを握りなおし、愛車であるSA22Cへ向かった。

 

「・・・にゃ~・・・」

「ドしたの志希ちゃん、早く行こうよ~」

「にゃはにゃはおっけ~おっけ~」

 

@

 

「・・・寄りたい処があるって言っていたけれど、秋原さんのところじゃない」

「まぁな」

 

 仕事を終えた奏とプロデューサー、黄間長人は「秋原スピードファクトリー」と言う看板が掲げられたガレージに立ち寄っていた。首都高に「A.S.F」というチームを持つこのショップは、ここ数年で頭角を上げてきた新興だ。メンバーには「GALAXY RACERS」出身が多く在籍し、社長である「新環状の大御所」は何を隠そう「GALAXY RACERS」の初代リーダーでもある。

 

「よぉ!どおしたよオウマ~?」

「どうもっす、秋原先輩」

「こんばんは、社長さん」

「お、コッチは「チャーミングキス」ちゃんじゃねぇか~」

 

 そして長人は「GALAXY RACERS」のOBであり、秋原から見れば後輩である。

 奏にとっては愛車を見て貰っているショップであり、秋原はチーフメカニックと言ってもいい。

 

「あっちでナナマルの整備は終わってあるからなぁ、取っていけよ~?」

「有難うございます!」

「そっちのFCは調子良さそうだな」

「ふふ、おかげさまでね」

「さてはこれからバトルでもするのか~?

 ”どっち”でだかぁは知らねぇけれどよぉ~~~?」

「ど、どっちでって!?」

 

 先輩からの強襲に思わず長人はたじろぎ、あからさまな焦りを見せてしまった。

 

「私はどっちでもいいのよ?

 アナタ、私のコトを満たしてくれるものね・・・ふふっ」

「かっ、かなっ、かなぁ~~~~~っ」

「ふふっ、セミのシーズンはもう過ぎているわ?」

 

@

 

「・・・後ろから1台来たね。車種は何なんかな?」

「あれはSA22Cだね。

 ・・・もしかして凛ちゃんが言っていたクルマかな?」

 

 志希とフレデリカを追う形でPAを出たZ31ZXを駆る周子と美世は、いち早くSA22Cの存在に気が付けた。夜中バックミラー越しのライトから車種を言い当てる美世は流石だ。

 

「そういえば来ていたね~、そんな話していたんだ」

「トライアドプリムスが3台で挑んで辛勝した相手なら・・・来たッ」

<バトル受信いたしましたにゃっは~っ!>

<フレちゃんの方にも来たよ!

 これって3対1になるのかな?>

 

 志希とフレデリカにも、後方のSA22Cからバトルが送信された様だ。

 3対1のSPバトルという条件は、メンテナンス中に凛から聞いた話とほぼ同じ。

 

「確かめさせて頂戴・・・!」

 

 美波はそう呟きながら、左手をシフトレバーに添える。今は3速、スタートと同時に2速へギヤを落として加速する準備が完了した。

 カウントがGOを表示する。バトルスタート、その合図だ。

 

「いくわよっ、美波!」

 

 美波は極めて準備通りに、カウントが終了した瞬間ギヤを2速へ落とした。そこから8500rpmまでロスなく回るロータリーエンジンは、ロケットとも言うべき加速で周子のZ31とフレデリカのFDをいとも簡単に追い抜いてゆく。

 

「速っ!文句なしの速さってところだね~」

「まだ慣らしだから全力に出来ないけれど、間違いなくこのZ31より加速は良いね」

「流石にいきなり壊したくも無いからね、ゆる~くいくよん」

 

 あまりにも無抵抗に後方に下がった周子と美世だが、あくまでも今回がこのクルマにとって慣らしの段階であると言う事を美世が周子に言い聞かせていたのが要因だった。幾ら状態が良くても、中古のオンボロがいきなりバトルスピードに耐えられるという事は、ない。

 

「は~やいっ。流石にフレちゃんのFDだとアレは追えるかな?追えないよね!」

 

 SA22Cの次の次の代であるFD3Sに乗るフレデリカであったが、生憎彼女のマシンは外観こそ

それらしくしているがエンジンは純正そのもの、310ps出れば十二分といった代物である。

 美波のSA22Cとはチューニングの段階が違うのだ。

 

「ぅんにゃっはーっ!!

 良いねソノ匂いッ、車内からでもハッキリと判るキミの匂いだっ」

 

 必然的に、このバトルは志希と美波の一騎打ちの様相を呈する事となった。

 

@

 

「こんに時間に・・・はい、もしもし、お疲れ様です・・・」

 

 長人の端末に通信が入った。どうやら346プロダクションから直々の連絡らしい。

 

「・・・本当ですかっ!有難うございます!・・・ええ!」

 

「仕事、決まったみたいだなァ、嬢ちゃんよ?」

「そう、みたいね。今度は何かしら・・・?」

 

 通信が終わった長人は、奏に笑顔を見せて振り返った。

 

「奏、13部署全員での仕事が決まったぞ!」

「そう・・・!

 ・・・それってもしかして、アニメのお話?」

「そうだ、今度の346が制作するアニメへの出演が決まったんだ。

 さっそく周子達にも連絡を」

「待って、まだよ」

 

 登録していた番号から、周子へ連絡を入れようと画面をタッチしていた長人を奏は静止した。

 

「何故?」

「恐らくね・・・」

 

@

 

(巧い・・・今までとは全然違う!)

 

 SPが50%を切ってもなお、美波は志希の前に出られずにいた。

 後ろにはZ31が少し距離を開けて追ってきているが、すでにZ31のSPは尽きている。恐らくこのバトルの行く末が見たいだけだろう。

 

(この間の3人も確かに速くて、そして強かった・・・。

 でも前のエボは違う・・・マシンそのものの出来もいいのね)

「でもっ」

「おっ来た来た―――ッ!」

 

 志希がアザーカーを避ける時、わずか一瞬の隙を美波は捉えた。空間にマシンを滑り込ませる。

 

「並んだ!」

「加速はどっちだっ」

 

 志希のEVOⅣが搭載する2L直列4気筒ターボと美波のSA22Cに搭載された1.3L REターボ、共に加速性能には自信があるエンジン同士の加速勝負。

 制したのは美波のロータリーだった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「けっこー自信あったんだけどにゃ!」

「前には出られた・・・ここからよ、ミナミ!」

 

 美波は前に出られたものの、すぐ後ろに志希のEVOⅣが迫る。ミラー越しにハイビームが右へ左へ、この間AW11にやった事を今度は自分がされる形となった。

 

「やるわね・・・でも、簡単には抜かせないよ!」

 

 美波は、この状況を楽しむ自分に気付いていた。学校で授業をフイにしてまで悩んでいたのがウソの様に、この状況を楽しむ事に素直になっていた。

 

(今度は右から、でもアザーカーが居るから・・・!)

 

 相手はまだ8割以上SPを残している。こっちは4割と言ったところか。

 アザーカーに沿う様に相手の走行ラインを潰し、一旦引き離すことに成功した。

 

@

 

「やるね、前のSA」

「志希ちゃんは・・・まだやる気あるね」

 

 すこし後方から絶賛観戦中の周子と美世は志希を心配していた。

 が、どうやら杞憂に終わりそうだ。

 

@

 

「にゃは―――ッ!

 志希チャン楽しいよ、こんなにイイ匂いの相手はそう居ないって!自信あるね!」

 

 志希にとって、前を走るSA22C―を運転する美波―の”匂い”は自らを満足させるのに十分以上だったらしく、何時もより数段ハイになっている彼女の運転は更に冴えわたる。

 

「そりゃっ!」

「ほっ!」

「にゃ~~~~~~~~~~」

 

 ほんの数台アザーカーを捌いただけで美波との距離を帳消しにし、さらに並びかかる。この先のコーナーで志希はイン側のラインを取った。

 

(アウトにはアザーカーまでっ)

 

 美波は志希の後ろに付かざるを得ない。最小限の減速でEVOⅣのリアバンパーに擦る様に後ろへ付き、トレイン状態でコーナーをクリアする。そこから並び直して再度加速勝負。

 

「今度はそうウマく行くの、かにゃ?」

 

 志希はここで攻めた。エンジンへの高負荷を顧みない、レッドゾーンを超えたミッション固定。

 普段より500、いや300回転多くエンジンを回せられればいい。その時は来る、確実に。

 

(・・・ッッ!)

 

 その意図を理解した美波だったが、”ソレ”をやれるほど自分の心は屈強ではないし、第一、REと言うエンジンにはその戦法は危険過ぎる。堪らずギヤを上げれば、志希のEVOⅣが前に出た。

 

 

 そして美波のSPは遂に底をつき、勝敗は決した―――――

 

@

 

「にゃはにゃは。

 今回はちゃんとカオ、見せてくれるんだねぇ~。

 志希ちゃんの人徳カナ?」

「志希ちゃんに人徳があるんならこの世は聖人だらけやん?

 いや~にしても、こんなべっぴんさんが運転していたんだねー」

「フレちゃんよりフランス語話せそうだね!」

「いえ、そ、そんなことはありませんよ・・・?」

 

 バトルが決着し、美波はEVOⅣとZ31に挟まれる形でPAに連れて来られる事となった。そしてそのPAには、黄色のFD3Sとそのドライバーであろう金髪の女性が先回りしていた。

 

「ふぃー。

 とりあえずエンジンに問題は無さそうだね」

「キミの日頃の整備のオカゲ♪」

「ホント、無茶な事したもんだよ。確かにこのエンジンは鋳鉄ブロックだし、結構ムリは出来る。

 でもオーバーレブを意図的にやって、シフトポイントを相手からズラすなんてさ・・・。

 壊れても私は直さないからね?これっきりにしてよ?」

「ダイジョウブダイジョウブ、美世チャンご存知の通りなら志希ちゃんは学習する子だからね!」

「ホントにこれっきりにしてよ!?」

 

 先程までバトルしていたEVOⅣのドライバーと、Z31の助手席から現れては真っ先にEVOⅣのエンジンフードを開けた女性が話し合っているのを見ていた美波に、今度はZ31のドライバーである銀髪の女性が話しかけてきた。

 

「ねぇべっぴんさん?

 あたし塩見周子っていうんやけど、どこかの事務所に所属していたりするん?」

 

 事務所に、所属?突然の事に美波は戸惑った。

 

「え!?い、いえ、私はまだそういうのじゃ」

「ふーん・・・、てっきりどっかのアイドル事務所にでも入っていると思っていたけど違うんか~。

 まぁあたし達も研究生だから、正式にデビューしている訳じゃないけどね」

「そ、そうなんですか・・・」

「いやー本当にこんなべっぴん・・・ちょい失礼、もしもし?しゅーこだよ~」

 

 話の途中で女性には通信が入ったらしいので、美波は金髪の女性に声を掛けた。

 

「ん!?」

「私、用事を思い出してしまいましたので、帰ってもよろしいでしょうか?」

「あ、良いとは思うよー?

 シューコちゃんにはフレちゃんから言っておくから、うん、もう帰っちゃっていーよ」

「では今夜は失礼しますね」

 

 そして帰ろうとSA22Cへ足を向けた瞬間、女性から引き留められた。

 

「ちょい待って、ナマエ!聞いていない!」

「え・・・あっ、私はミナミと言います」

「おっけ♪、あたし宮本フレデリカ、フレちゃんって呼んでよ!」

「そ、そうですか、それでは」

「オーレヴォアー!(Au revoir:さようなら)」

 

「ホント!?うん、おけ、わかった~ん、じゃ」

 

 美波がPAから姿を消して数秒後、周子は通信を終えた。

 掛けてきた相手は奏だった。

 

「あの人帰っちゃったん?」

「うん。なんか名前はミナミって言っていたよ」

「ミナミね・・・。

 ねぇそれよりもさ、あたしたちの仕事が決まったよ!」

「マジ!?」

「にゃ!!!」

「おぉ―――っ」

「ほれこれ、「女神症候群-ヴィーナスシンドローム-」ってSFアニメらしいんよ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 周子は端末の画面を他の面々に見せた。送られてきた情報にはアニメのタイトルと、各々の配役が記されていた。どうやら第13部署から主人公は選ばれなかったらしい。

 

「じゃあ主人公役って誰なのかな?」




Main EPISODE:Do you know venus ? 4

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「ストーリーリプレイ」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章最後のメインエピソード

「Do you know venus ?」

最初に周子のZ31、フレデリカのFD、志希のEVOⅣASTIのどれかを操作して霞が関PAまで向かう。特に失敗するような要素は無い。

そしてまた3対1・・・と見せかけて志希vs美波のSPバトル。
(奏の「恐らくね・・・」まではムービー)
志希を操作してこのバトルに勝利するのがクリア条件となる。
志希のEVOⅣASTIはマシンバランスが良好である為、かなり素直に操作に応えてくれる。そして今回、AT操作の場合には美波のSPが残り2%を切るとレブ上限が+400rpm増える様に設定されている。MTではオーバーレブ時のエンジンへの負担が通常より若干軽減されている。

「ストーリーリプレイ」では美波側でのプレイが可能。ただし勝つ事は出来ない。
(志希の「にゃは―――ッ!」からはムービーとなる)


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Do you know venus ? 5

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「主人公役が」

「まだ決まって」

「いない・・・のですか?」

「はい・・・」

 

 後日、「女神症候群-ヴィーナスシンドローム-」の製作陣営によって招集された3人のプロデューサー、黄間長人、弐内雄輔、そして北条真理乃は、衝撃の事実を言い渡された。

 

 ―――主人公役が決まっていない―――

 

「トライアドプリムスの3人は続投、但し敵側のエース部隊」

「速水、塩見、宮本もトライアドプリムスとは別の敵陣営エース」

「一ノ瀬は流浪の天才科学者、主要勢力から追われていて主人公に助けられる」

「原田は主人公が所属する事になる勢力のチーフメカニック」

「作中でのヒロインは第2部署のアナスタシアさんですか」

「主人公の上司になるのはあの高垣 楓・・・」

「他の敵陣営役には4部署や9部署も採用されている、橘、神崎、二宮か。

 10部署からは鷺澤も採用決定、と・・・」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 其々が確認していくが、確かに3人が担当しているアイドル達は配役が決まってしまっていた。346が制作する映像作品は、アイドルに合ったキャラクター作りで演技を自然にさせる事が売りの一つ、決定した配役からずらす行為は、モロに作品へ影響が出てしまう。

 

「100人以上アイドルが所属していると言うのに・・・」

「キャラクターの設定変更は可能なのでしょうか?」

「脚本とストーリーが粗方出来上がっておりまして、今からキャラクターを変えると言うのも難しい話です・・・。何しろ主人公ですから・・・」

「それもそうだな・・・そうだよなぁ・・・」

 

 346直属とはいえ、アニメの制作陣もまた作品に対する熱意がある。たとえ100人以上アイドルが所属していようと、キャラクターに合わなければ配役欄は埋まらない。

 となれば、やる事は決まってくる。

 

「と、言う事は・・・」

「スカウト・・・でしょうか?」

「だな」

 

 ―――近年のアイドル業界においては、プロデューサーが直々に街へ出てコレと思った人をスカウトするのが常識となっていた。これは、”伝説のアイドル「日高 舞」”がプロデューサーによるスカウトで芸能界入りを果たした事に由来する―――

 

 しかし、集まっていた3人はスカウトが苦手だった。

 

「俺はどっちかっていうと他部署からの拾い物ばっかりで」

「俺は入って早々奈緒のプロデュースが始まったわけだし、加蓮は確かにスカウトだけどさ・・・あれは特殊と言うかナ・・・」

「それは奏も同じだ。他にもいたっけな・・・諸星ンとこのとか」

「私は・・・一応経験はあるのですが・・・」

「スカウト中警察に3度も捕まる人じゃあちょっと、なぁ・・・」

「「「う~~~ん」」」

 

@

 

 346のプロデューサー3人が頭を悩ませているその頃。

 

「それで、首都高は楽しめる様になったと」

「チームに入れない事は謝ります」

「その必要は無いよ。

 この学校、自動車部(ウチら)じゃなくてもライセンスを持っている奴は、何人もいるからね」

「し、知りませんでした・・・」

 

 美波は自動車サークルの部長、「堅実な4代目」波島と談笑していた。

 午前中に今日の講義は終わっており、そしてラクロスサークルは休みである。

 

「それに、アイドルに逢えたんでしょ?やっぱり美波ちゃんには素質があるんだよ」

「そう・・・なんでしょうか?」

「だから、ウチのチームの事は大丈夫だよ!

 むしろそうだね、こんな美人に心配されたらお釣りが来ちゃうね!」

「あ、あはは・・・」

 

 波島は談笑しながらも、自らの愛車、Z31ZRを整備し続けていた。

 オーバーレブからは立ち直ったものの、どうにも調子が完全に回復したワケではないらしい。

 

「よし、今夜はこれで行こうじゃないの」

「サークルの方、頑張ってくださいね。

 では私、そろそろ失礼しますね?」

「おうよ!」

 

@

 

「困ったものですね・・・主人公が決まっていないとは・・・」

 

 346プロダクション第2部署、通称「バステト・プロジェクト」事務所では、担当プロデューサーである神猫 晴(シンビョウ ハレル)もアニメの件で困っていた。

 

「みくなんて直談判した末にバッサリ落とされたにゃあ・・・当たり障りのない役を作って貰えたからマシかもしれにゃいけど」

「・・・みくの行動力には呆れる・・・私には出来ないわ・・・」

「のあにゃんは敵幹部の役貰っていたからいいでしょ。

 はぁ~、アーニャチャンが羨ましいにゃあ~」

 

 事務所で猫の様に丸くなっていた前川みくと高峯のあも、このアニメに参加する。そして、彼女達のユニット「にゃんにゃんにゃん」を構成するもう一人のアイドル、アナスタシアに至ってはメインヒロインの座を獲得しているのだ。

 

「しかし主人公が決まっていないとなると、アナスタシアにも負担が掛かる可能性がありますね・・・。初のメインヒロインですし、気心の知れた相手であると尚良いのですが・・・」

「そういえばアーニャチャン何処行ったの?」

「今日は撮影の仕事・・・」

「場所は・・・○○スタジオって書いてあるにゃ、銀座PAのすぐ近く」

「時間的にはそろそろね」

 

 みくが起き上がって時計とスケジュールを見てみると、確かにアナスタシアの仕事が始まる時間帯だった。因みにだがアナスタシアの240SXは事務所の駐車場に確認できる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「最近はアレで現場へ行く時が多かったから忘れていたにゃ」

「まぁでもあのクルマは過激に過ぎますからね」

「・・・でも大丈夫かしら・・・彼女、公共交通機関は得意じゃないわ」

「そうだっけ?」

 

@

 

「ニ、ニェーット・・・」

 

 ここは外苑PA。だがここにアナスタシアは居た。

 乗り過ごした。よりにもよってこんな時にやらかしてしまうとは痛恨極まりない。

 

(自分で運転して向かえば良かった・・・!)

 

 次のバスで向かっていては、撮影の時間には間に合わない。

 

「Мертвая батарея・・・電池切れで端末が・・・」

 

 更に、そこへ端末の電池切れというおまけ付きだ。これでは連絡も入れられない!

 

「”ドタキャン”は絶対にダメ・・・でもっ」

 

 しかしこの状況では既に万事休すか、アナスタシアの脳内がマイナスのイメージで埋め尽くされようとしていた。顔を下げ、瞳には涙が貯まり始める。

 だが、その時。

 

「あの、どうかされましたか?」

 

 アナスタシアの目の前には、女神が現れた。

 

@

 

 ―――天使が泣いている―――

 

 そんな表現が似合うような光景に、美波は足を止めてなどいられなかった。

 考えるより先に目の前の少女に声を掛けていた。白銀の髪の毛、それに見合う透き通った白い肌、美波にはそれが現実とは思えなかった。

 

「も、もしかして外国の方ですか?

 English? French? Spanish?」

「アー、私、とりあえず日本人です。そんなに焦らないでクダサイ」

「え、えぇ!?」

 

 なんと天使は自らを日本人と言った。

 美波の脳内は益々混沌としていくが、先に困っていたのは間違いなく向こうだ。

 

「それより、何か困り事があるんですよね?

 私が解決出来ればお手伝いしますよ」

「Ты по-настоящему・・・アー、本当、ですか?」

(ロシア語・・・!)

「銀座PAの近くにある、○○ストジオまで送ってくれますか?」

「銀座・・・分かったわ、お姉さんに任せて!」

 

 外苑→銀座か、美波は彼女を愛車のSA22C、その助手席に乗せながらルートを整理する。

 

(撮影の開始時間は14:40と言った、今は31分・・・間に合わせるわよ、美波!)

 

 イグニッションキーを捻り、エンジンに火が入る。

 

「念のためだけどシートベルトはキツくしておいて頂戴」

「ダー。

 あっ、そういえば・・・」

「ん、何かしら?」

 

 助手席の天使はバックルに手を当てながら、美波に問うた。

 

「私、アナスタシアと言います・・・Как Вас зовут?」

「えっ、あっ」

「――アナタの、名前は?――」

 

 ・・・今度はロシア語も学んでおこうかな。

 そう思いながら、美波は名乗った。

 

「美波、私の名前は新田美波(ニッタ ミナミ)。

 短い間だけどよろしくね、アナスタシアちゃん」

「・・・アーニャ」

「えっ・・・」

「アーニャ、と呼んでクダサイ」

「そう、分かったわ。

 じゃあ行くわよ、アーニャちゃん!」

「ダー!!!」




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「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章最後のメインエピソード

「Do you know venus ?」

運命的な出会いを果たす事になったアナスタシアと美波。
このムービーの後、アナスタシアの仕事に間に合わせるべく外苑PAから銀座PAまでのタイムアタックとなる。

第2部署のPがストーリーではここで登場する。名前は神猫 晴(シンビョウ ハレル)


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Do you know venus ? 6

(挿絵は後々追加します)
03/04追記、挿絵追加しました。

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「あっ、ピーチャン電話来ているよ」

「こんな時間に・・・?」

「・・・イヤな予感・・・当たらないでほしいタイプの・・・」

 

 神猫が取った電話の内容は、正しくのあが感じた嫌な予感そのものだった。

 

「えっ、アナスタシアが・・・?」

<はい、この時間になっても・・・>

 

 神猫が時計を見る。時計は14:37を指していた。

 スケジュールにあるアナスタシアの撮影は「14:40~」とある。

 つまり・・・あと3分しか無いじゃないか!

 

「これはヘヴィーな事態だにゃ・・・」

「何故先方へ連絡を入れていない・・・こういう時に限って不幸は重なるもの・・・」

「アーニャチャンの端末は繋がらないにゃ・・・多分電池切れにゃぁ・・・」

 

<どうするんですか、こっちも余り待てませんよ?

 それに連絡が入っていないとなるとどうしようにも出来ない部分も・・・>

「此方からも彼女との連絡を取っています。もう少しだけ、もうすこし・・・」

 

 時間は無慈悲にも、38を指そうとその分針を動かしていた。

 

@

 

「アザーカーが少なくてっ、まだマシな方で良かった、わ、ねっ」

 

 美波は奮戦していた。

 

「ミナミ、エドバシ過ぎました、これなら行けますね!」

 

 アナスタシアは、美波のタイムアタックを助手席から応援し、そして感謝していた。美波のアタックは驚異的で、ゴールである銀座PAまではあと1kmもない。

 分針は未だ38。目的地までには30秒以上の余裕が出来る計算だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

(私、このмаршрут・・・るーとで彼女より速く走れるでしょうか・・・?)

 

 アナスタシアは、美波のドライブに魅せられていた。

 絶対の時間制限がついている首都高のタイムアタックという、圧倒的な緊張と危険がマシンとドライバーを襲う状況、普通は助手席に人を乗せる事など考えられない。

 だがその極限状態の助手席において、自分の走りとは全く違う・・・ドリフトとグリップという大きな違い等ではない、より直感的な走りの違いにアナスタシアは完全に魅了されていた。

 

 ある種の安心感にも似た、そんな感覚がアナスタシアの身体を包もうとしていたその時。

 

「さぁ銀座PAよっ、間に合ったわ!」

 

@

 

 ―――あぁ、これでこのドライブが終わるのか―――

 

@

 

「あっ、あぁっ、良かった!」

 

 一瞬、ある意味では彼女に対してとても失礼かもしれない思いがアナスタシアの身体を駆け巡った。美波は”時間が迫っていた自分の為に”あれ程の走りをしてくれたのであって、その走りをアナスタシアが彼女に求めるのは”違う”のだ。

 

(извините・・・失礼なコト、考えてしまいました・・・)

 

 そして銀座PAを降り、PAから徒歩数秒のところに構えていた撮影スタジオまでを(法定速度内で)全速で走り切った。現在の時刻は14:39:15。アナスタシアが美波のSA22Cから降りると、端末を片手に撮影スタッフが駆け寄って来た。

 タイムアタックは成功した。

 

「ミナミッ、Огромное спасибо! アッ」

「さぁアーニャちゃん!よく間に合ったねぇ!さもう入っちゃって頂戴!」

 

(ふぅ―――――っ、間に合ってくれたわね・・・よかったぁ・・・)

 

 その光景を見た美波はここで一気に緊張の糸が切れ、完全にやりきった状態だった。バケットシートに全身を預け、普段の彼女とはおよそ同一人物ではなくなろうとしていた。

 

「ちょっと宜しいでしょうか?」

「んぅっ!?」

 

 そんな状態だった為に、撮影所の玄関前を陣取っていた美波は撮影所のスタッフにウインドーをノックされた。慌てて立ち去ろうとしたが、どうやら事情が違うらしい。

 

「いえ、クルマはそちらに停めてもらって。

 アナスタシアさんのプロデューサーから電話が来ているんです」

「え、私に、ですか?」

「はい、お礼がしたいとのことで」

「・・・分かりました、その電話出ます」

 

 美波はスタッフの端末を借り、スピーカーに耳を、マイクに唇を近付けた。

 

<もしもし、こちら346プロダクション第2部署のシンビョウと言います>

 

@

 

「今回の件、本当にありがとうございました。

 おかげで彼女の仕事に支障が出なくて済みます」

 

 神猫は、撮影スタッフとの電話越しにアナスタシア到着の一件を知る事となった。その電話の中で、どうやらアナスタシアを送ってきたのが女性ではないかと言う見立てが出来ていたのだ。

 

<い、いえっ。

 私はその、ただ人助けをしただけで、アーニャちゃんの姿が放っておけなくて>

 

 端末の先に居たのはやはり女性だった。

 しかも、声だけではあるがアイドルのプロデューサーであればその声の主を想像するのは難しくなかった。間違いない、アナスタシアを救った女性は――――――!

 

「あの、今回の件は後日キチンとお礼がしたいのです。

 そこでなのですが・・・」

<はい?>

「私達の部署に来てみませんか?」

<・・・えぇっ!?>

「場所は箱崎PAの近くなのでよく分かるとは思います。日時に関してはそちらの都合で構いませんが、アナスタシアが事務所に居ない時はお断りせざるを得ないところをご了承願いいたします」

<あっ、は、はい。解りました>

「失礼ですがお名前は」

<えと、ニッタミナミと申します>

「ニッタさん。一先ず今回の件は有難うございました。

 事務所の方でお待ちしております」

<はい、後日確かに訪れさせていただきます?>

 

@

 

 電話を切り、端末を書類と地図が散乱するテーブルに置き、深呼吸を二度しっかりやって、本来は来客用のソファーに座り込み、もう一度深呼吸をしてから、神猫は己に気が付いて項垂れた。

 

「やってしまいました・・・」

 

 先程の電話を傍から見ていたみくとのあも流石に”引く”勢いで、モノ申すには必要十二分の行為であった。

 

「ピーチャン手が速過ぎるにゃ!

 いくらアーニャチャンを助けた人が女の人だったってだけで・・・」

「不審者となんら違いのない会話・・・プロデューサーであってもギリギリ・・・」

「止して下さい、私も普段は弁えているんですから・・・」

「普段じゃにゃい時に弁えていないからそうなるんにゃ」

 

@

 

 少しの時間をおいて、復活した神猫は据え置き型の端末で調べ物をしている。ソファーの方ではみくとのあもそれを手伝っていた。みくは自前の携帯端末で、そしてのあは自身がイメージキャラクターを務める最新の腕部装着式携帯端末を展開させていた。

 

「―――起動―――」

 

 新興の技術系企業、WON-TEC社が開発した腕部に装着する携帯端末は一見するとリストバンドの類に見えるが、あの音声に反応してフレームが開き、モニターが何もない空間にホログラフィック形成された。しかもモニターは指でタッチの動作をするとキチンと反応し、扱い方はみくの携帯端末と全く同じだ。

 のあが使用する事でさながらSFの世界観が目の前に現れる。彼女をイメージキャラクターに起用したのは正解であろう。

 

「のあチャンだけ世界観が違うにゃ」

「・・・何を調べるのだったかしら・・・」

「でも中身はポンコツそのものにゃぁ!?」

 

 切れ味鋭いボケとツッコミが、誰に見せるでもなく展開されている所に神猫の声が掛かる。

 

「二人とも、何か情報はありましたか?」

「確かニッタミナミって名前を探せばいいんだよねピーチャン?」

「そうですよ」

「たぶんだけど”新田美波”て名前があったにゃ」

 

 みくが神猫の端末にデータを送ると、ソレを元に神猫は更に検索を進める。

 

「最近では珍しいですね・・・ソーシャルネットワークサービスに手を出していない。

 しかし彼女、かなり情報が流通していますね・・・難関資格を次々と取得している」

「えと、ミスコン!?

 ピーチャンホントにこの人なの!?」

 

 みくが提示したのは大学ミス・コンテストの優勝者欄と詳細ページであった。

 その年の他の候補も何人か載せられているが、残念ながら彼女を相手にする事は到底敵わないと、神猫でなくとも理解出来る程の”差”がそこにあった。

 

「歴然たる差ね・・・本人が一番謙虚そうなのがトドメと言ったところかしら・・・」

「アナスタシアに訊かない限りは判りませんが・・・恐らく彼女でしょう」

「どしてにゃ?」

「ニッタミナミの同姓同名はかなり少ないみたいです。ほら、類似候補に津田が出てしまう」

 

 神猫が検索エンジンに「ニッタミナミ」と打ち込み検索に掛けると、”新田美波”の他には「ツダミナミ」等の明らかに違うワードが出てきていた。

 

「それなので恐らく彼女、新田美波がニッタミナミで間違いないかと思いますね」

 

@

 

(・・・どうしよう・・・!)

 

 流された。そう言ってしまう自分に負けた気がする為、あえてそう考えない事にする。

 美波はアナスタシアを撮影スタジオまで送り届けたお礼として、346プロダクション第2部署に訪問する事が決定した。いや、自分で「行きます」と事務所の担当者に言ったのだ。

 

 今、SA22Cを自分が借りているアパートへ走らせながら、美波は考えていた。

 

(思えば、借りたアパートが大学から遠かったのが全ての始まりだったのかもしれない。移動手段に困った私は、軽はずみで取っていたGRPのライセンスが全国で使えるのを良い事にSA22C(このクルマ)を手に入れて首都高を走り始めた・・・)

 

 回転計を見ずにシフトゾーンへ合わせ、クラッチも使わずにシフトアップ。現代の技術で作られた強化クラッチと、アフターパーツのクロスレシオ化されたミッションを搭載する美波のSA22Cではその行為自体にメリットらしいメリットは無いが、これは彼女流の自分の調子を確認する行為なのだ。

 

(決まった・・・いつもより、間違いなく良い・・・)

 

 今回は調子が良いらしい。

 

(思えば、これをやり始めた時はよく失敗していたっけ・・・。それでクラッチを壊しちゃったから今のに換えて、それに合わせてミッションも・・・その時に首都高サークルの皆さんと出会って、本格的に首都高を走り始めたのよね・・・)

 

 GRPの黄色いサポートアザーカーの合間を縫って、美波のSA22Cは帰路をひた走る―――

 




Main EPISODE:Do you know venus ? 4

played result:SUCCESS!

「ストーリーリプレイ」が記録されました

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@

「ストーリーモード」第1章最後のメインエピソード

「Do you know venus ?」

外苑PAから銀座PAまでのタイムアタック。時間制限があり、7分以内に辿り着かなくてはならない。残り3分になると第2部署の会話が音声と共に表示される様になっており、プレイヤーを緊張させる。
本編では美波がアザーカーが少ないと言っているが十分に多く、SA22Cのコーナリング能力をもってしても捌き切るのは難しい。実は時間には意外と余裕がある為、無理せずクリアしていくのが一番の近道かもしれない。
(因みにだが10回以上壁やアザーカーにヒットするとクリアは出来るが失敗扱いとなる)

第2部署の電話の様子は「ストーリームービー」で視聴出来る。

その後ムービーを挟み、今度は銀座PA横羽線を下り、浅田PAまでのフリーラン。
走行中に美波の回想が入る。
「GALAXY RACERS」は神田橋PAを本拠地にしている為、美波はかなり遠方から大学へ通っている事となる。


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Do you know venus ? 7

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「~それから・・・~58年ですね・・・」

 

 相変わらず、講義は退屈にも進行していた。

 

 暇だったある男子は、学校内では少し、いやかなり名の知れた女子学生の様子をさり気無く見ていたが、さり気無くしていられなくなった為に隣の仲のいい男子に声を掛けた。

 

「(・・・なぁ)」

「・・・」

 

 どうやら隣の男は耳を傾けたくないらしいが、それで退いては面白くない。相手がこちらに注意を向けていない事をいいことに目一杯接近し、その鼓膜に叩きつける様に声を掛けた。

 

「なぁ?」

「(ゥワッ!?

 ンだよ驚かすんじゃねぇ!)」

「(よし、お前の耳は大丈夫だな)」

「(はァァ?)」

「(ほれ、新田ちゃん見てさ)」

 

 男子達の視線の先に居たのは、左手で頬杖をつきながらも右手に握ったペンはしっかりと長ったらしい板書を丁寧にかつより分かり易くノートに書き込んでいる女子学生。

 

 名前を新田美波と言う、学校の女神という表現に男子の全員が賛成するであろう女性だった。

 

「(また新田ちゃんかよ・・・今日も”アンニュイ”いのか?)」

「(いや、むしろ逆だな)」

「(まぁそうだろうな、前回とは違う。俺だってわかる)」

 

@

 

「おぉ・・・」

「これは・・・」

「彼女、ですか・・・」

「ええ」

 

 346プロダクション本社の少人数用会議室、そこには数人のプロデューサーがおり、いかにも高級そうな会議用テーブルを囲んでいた。彼らの視線の先で会議を仕切っていたのは第2部署の主任プロデューサー、神猫 晴であった。

 

「新田美波。

 現在大学生、個人でのメディア出演の経歴はゼロ。

 現代には珍しくSNSの類は登録しておらず、恐らく本人は普通の一女子大生を取り繕っている」

 

 神猫がモニターの画面を操作すると、会議の主役となっていた女性、新田美波の画像が切り替わる。ミスコンの時の写真だ。

 

「大学生ミス・コンテストの優勝経験あり・・・物凄い逸材が埋もれていたもんだな・・・」

「アイドル全盛時代とはよく言ったものだぜ。

 咲いた花に気を取られて、黄金の芽を見逃していやがったな」

 

 第13部署主任プロデューサーの黄間長人と、先日遂に担当アイドル共々第12部署への配属が決定した北条真理乃は彼女を見て目の色が変わった。スカウトの経験乏しい両者だが、アイドルプロデューサーとしての”眼”は確かだ。

 

 それに加え、真理乃の表現も間違っていない。昔なら大学のミスコンと言えば芸能業界への登竜門とも言えるものであったが、今では既にデビューしているアイドル達に隠れてしまいニュースにもならないのだ。

 

「彼女は・・・とてもいい笑顔をしますね・・・・・・」

「お、出た雄輔の笑顔論」

「てことは相当イイんじゃないか?」

 

 第12部署主任プロデューサーの弐内雄輔には彼独自のアイドル論があり、それを端的に表す単語は「笑顔」だった。彼が笑顔について語ったアイドルが必ず”当たる”のはプロデューサーの間では有名であり、黄間と真理乃も何時もの事と言わんばかりの反応である。

 

「では彼女の詳細なプロフィールですが、先程の説明に有った通りSNSに参加しておらず・・・」

 

@

 

<んで・・・新田ちゃんが助けた女の子はアイドルで、お礼にそのアイドルが居る事務所に訪問する事になった・・・だったなぁ?>

「はい、ほぼそうですヨ、秋原社長」

 

 大学のガレージに一人、「堅実な四代目」波島貞治は自らが率いる首都高チーム「GALAXY RACERS」の創設者と電話をしていた。ガレージ内では彼の相棒であるZ31ZRが、ドライバーを急かす様にアイドリングを続けている。オーバーレブから完全に直ったのだ。

 

「新田ちゃんはどうなのさナミシマよぉ?」

<どうなのさって社長・・・彼女はやる気でしたよ。

 今日もガレージに来たんです。

 「もしかしたらアイドルにスカウトされるかもしれない」って>

「ほぉ~ぅ」

 

 そして波島の電話の先、秋原賢二は作業を続けながら後輩の電話に耳を傾けていた。今日分の客のクルマは既に仕上げており、今は自らの愛車であるJZA80RZを弄っている。長年の経験によって、電話をしながらでも整備技術に陰が落ちる事は無い。

 

<「じゃあもしホントにスカウトされたら?」って、訊いてみたんです。

「・・・やってみたい、アイドルになってみたい」

 そう彼女は答えました>

「そこまで彼女ン中で決まっているなら俺達の出る幕はねぇだろうよ」

<彼女が助けたアイドルは346プロのアイドルなんです。

 たしか346って、黄間先輩が行ったトコでしたよね>

「あぁそうだな、先日も来たし、アイツのツレは俺が造ったクルマに乗っているんだぜ」

 

 ボンネットを閉めつつ、秋原の口調は少し自慢げだ。

 

<恐らく黄間先輩も新田ちゃんの事は耳に入っている筈ですし、話とか聞けないのか―――>

「ははぁん。

 おまえ心配しているんだナ、新田ちゃんのコトをよ。

 いや気にしているっつった方がイイんだったか・・・」

<そっそりゃ、心配ぐらいしたって良いじゃないですか・・・後輩なんですから・・・>

 

(アオいなぁ・・・堅実て言うより堅物のほうが似合っているんじゃないか?)

 

 秋原は愛車の運転席に腰を下ろしつつ、まだ自分の感情に素直になれない若者に一つ尋ねてみた。ここまでの話で、秋原には一つの確信と呼べるものが頭の中に浮かんでいたのだった。

 

<なぁナミシマよ。その新田ちゃんは今何処に居るんだ?>

「・・・はぇ?」

<んだがら新田ちゃんは何処に居るか見当はついているのか?

 ってぇ話だよ、ガレージに顔、出したんだろう?>

「あっ、たっ、多分首都高に上っていると思います。

 彼女の場合、首都高を通らないと家に帰れない筈ですし・・・」

 

 大先輩の突然の質問に波島は戸惑ったが、なんとかかんとかで答える事が出来た。

 

<じゃあ大丈夫だ。メンバー集めておまえも上がって来い。

 心配なんだろ新田ちゃんがよ。もう始まっているかも知れねぇぜ?>

 

 首都高に上がる、という昔ながらの表現を抜きにしても、先の質問へ対する答えから突然大先輩にそうまくし立てられては理解が追い付かない。

 失礼かもしれないが、波島は聞き返さざるを得なかった。

 

「もう始まっている、って、何がですか?」

<何っておめぇ、新田ちゃんとオウマが”遇っている”かもしれねぇってコトだよ。

 モチロン、首都高でな>

「はぁァッ!?」

<細かい話は今ちょっと出来ねぇケドな、首都高ってぇのはそういう場所なんだよ。

 俺も出るぜ、可愛い後輩の姿が見たくなっちまった>

 

 そのまま秋原は電話を切ってしまった。一瞬呆然としてしまった波島だったが、物は試しにとメンバーのNo2に連絡を入れる事にした。

 

「・・・もしもし、瓦田か」

<そうだがリーダー、何だ突然>

 

 繋がった。波島は簡潔に意思を伝える。

 

「今日は俺も首都高に上がる。

 合流するから・・・今何処だ」

<今高槻亭だ、他のメンツもいる。

 それに・・・>

「それに?」

 

<今俺らな、新田ちゃんと居るんだヨ>

 

@

 

「会議どうでした、プロデューサー?」

 

 黄間が会議室を出て、346プロダクション本社の1階エントランスホールまで降りると美世が待っていた。346プロ本社のエントランスホールは正しく「城の玄関」という趣であり、僅か5年前に建造されたとは思えない程の内装だがそれでもキチンと事務所の機能が成立しているのは流石だ。

 

「あぁ、やっと主人公になれそうな人が見つかったよ。

 美世達の方はどうだい?」

「私は主人公陣営の整備長役!

 楓サンと共演するシーンが多いんですよ~」

 

 二人で346の正面玄関を出ると今度は奏、周子、フレデリカ、志希がお出迎え。

 近付いて来た奏が、慣れた手つきで黄間の右腕を取った。

 

「私は主人公から見れば敵役、組織内で暗躍するの。

 こうやって・・・ね?」

「奏はソウイウの似合よね~。

 あ、シューコちゃんは奏の部下なんよ」

「フレちゃんもね!」

「志希は?」

「逃亡中の天才科学者!

 今から役作りするんにゃ~!」

(((((それもう完成しているんじゃ・・・)))))

 

 駐車場まで来ると、トライアドプリムスの3人とも遭遇する事となった。

 

「お、13部署の人達じゃないか」

「どもども~」

「私達はこれから首都高だけど、そっちはどう?」

「ほぼ同じ、ね。ランデヴーの相手が増えるのは良い事よ」

「奏のトコのプロデューサーはクルマ持っていていいよね~。

 私のマリノは止めようとばっかりでさー」

「偶には彼を心配させないのも務めよ?」

「スンスン・・・キミもついに病院の香りが無くなってきたね」

「あ、判る!?」

 

 奏達と加蓮達の会話を、美世と志希、そして黄間は一歩離れて見ている。

 

「姦しい、てこういう事を言うんですよね」

「で、どうするんだ?

 トライアドの3人は其々のクルマだとして・・・」

「えーと、プロデューサーのとダチャーンのとシューコちゃんのだね」

 

 3人の目線は駐車場に停められた3台のクルマ、黄間のMA70、美世のR33、周子のZ31ZXに移る。誰がどれに乗るか・・・。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「奏は俺のナナマルでいいよな?」

「ええ、そうね」

「ダチャーンのクルマの匂い、嗅いでみたかったんだよね~」

「変なとこ触らないでよね?」

「てことはフレちゃんはあたしのゼットだねー」

「フンフン~フレちゃんシューコちゃんの隣、任されたー!」

 

 それぞれが選んだクルマへ乗ってゆく。エンジンに灯が入り、ヘッドランプが点灯する。―――そして一列を成し駐車場を出て、一様に首都高を目指す。




Main EPISODE story movie

「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

@


「ストーリーモード」第1章最後のメインエピソード

「Do you know venus ?」

このムービーの後、美世のR33、黄間のMA70、周子のZ31ZXからマシンを選択して6台で目的地まで向かう事となる。クリア条件は「他5台から±500m以上離れない」。

因みに「ストーリーリプレイ」では「堅実な4代目」波島のZ31ZRを駆る事も出来る。この場合クリア条件は存在せず、目的地までのフリーランとなる。


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Do you know venus ? 8

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※挿絵は後日追加します


 急いだ先に有ったモノは、混沌(カオス)と言う言葉に相応しいモノであった。

 

「あ、リーダー」

「待っていましたよー」

 

 「高槻亭」神田橋PA店は、チーム「GALAXY RACERS」の面々と、346プロダクションのアイドル達が占めていた。しかも、かなり騒がしい状態だ。

 

「あれがソッチのリーダーさんかにゃ?」

「ですヨー」

「ん~なんかあんましリーダーぽくはないんね」

「言ってくれるぜ」

 

 元より首都高ランナーをメインの客層にしているだけに”一般客”と呼べる者は店内におらず、店員を含めてこの雰囲気は良しとしている。しかしそれにも限度があるのではないだろうか?

 

「よっ、現部長!」

「彼がそうなの?」

「あぁそうだ。「堅実な四代目」波島貞治。

 因みにだがヤツの実家が料亭でな、そこの四代目だからそんな通り名なんだぜ」

「てっきり時々部が消滅しているのかと思ったわ」

「おいおい・・・」

 

 奥の方には直接の先輩に当たる黄間長人先代副部長と、彼が担当しているのであろうアイドル、速水 奏、そして部の創始者たる秋原賢二が席を並べていた。

 

 そして。

 

「どうも、初めまして」

「ど、どうも」

「346プロダクション第2部署、プロデューサーの新猫 晴と申します」

 

 先輩方が陣取る更に奥、この店の最奥の席に彼等は居た。猫耳を付けた少女前川みくとサイバーチックな趣を漂わせる女性高峯のあの間に席を取り、黒のスーツを着こなし、黄間先輩とは違った雰囲気を持つ”アイドルプロデューサー”と言う言葉に相応しい男が立ち上がって、名刺を差し出してきた。

 

「えと・・・波島貞治です」

 

 思わず名乗って受け取ってしまう波島。

 受け取ってから、改めて当然の疑問を新猫にぶつける事となった。

 

「・・・何故僕に?」

「・・・まぁ成り行きみたいなものです」

「は、はぁ」

「ただ彼女がSNS等のネットワークに登録していなかったので、通学する学校内で最も交友の多い人物に第3者として立ち会ってもらう必要があったのですよ。

 今回この場で会えたのは正しく偶然です」

 

 新猫の視線が動き、波島もそれに釣られる。

 

「!

 ミナミ、カレがРуководитель группы・・・チームリーダーなのですね」

「えぇそうよ。

 私が通っている大学にある、首都高サークルのリーダーさん」

 

 白銀のショートヘアーに宝石という言葉が相応しい青色の瞳、それに合わせたかのような肌の色はまるで異世界の住人。そんな女性がロシア語を含めて会話する相手は新田美波だ。

 そのツーショットは、表現するなら”天使と女神”と言えるだろう。

 

「新田ちゃん・・・」

「もしかして私・・・チームを巻き込んじゃいました?」

 

 この場に居るメンバーは、偶然とは言え彼女が居なければただの首都高のライバルであったかもしれない。しかも美波は「GALAXY RACERS」の正規部員でさえないのだが、ここまで聞いた話の限りでは波島が入店するまでに彼女が”チームのメンバーに非常に近しい人物として”認知された様だ。

 

「いや、君にそう言われる程のモノじゃないよ。

 ウチのメンバーは基本的に騒がしいの大好きだし」

「そうですか・・・でも」

「とにかく君が責任とかそういうのを感じる必要は無いよ。

 ・・・ところで・・・」

 

 波島は己の背後に人の気配を察知した。

 人数は二人、男ではない。

 

「キミ達は何?」

「にゃはにゃは、マァマァお気になさらず」

「あえて言うなら言質取った、って感じかな?」

「言質・・・!?」

「まあ聞いてほしいん。

 シューコちゃん達はみくにゃん達のグループより後に来たんやけど、その時には既に話が決まっていてな」

「よーするにバトルしちゃうのだよ。

 私達346プロと、キミがリーダーシップを執るチームでね!」

 

 突然そんな事を言われれば、内容がどういうものであれどまず理解が追い付かない。

 

「・・・えぇ!?」

 

 波島がその発言を理解するまでにはたっぷり3秒を必要とした。

 

@

 

「チーム戦の時間だッ!」

「わーい!」

「まぁっていましたぁぁっ!」

 

 神田橋PAに場所を移した面々は、既にチームごとの陣営に別れて出走車両の準備に取りかかっていた。暇な面々は、早々チャンスの無いであろうアイドル達との交流を楽しんでいる。

 

「どうしてこうなったんだ・・・」

「いや、まぁな・・・はは・・・」

 

 波島と黄間は丁度各陣営の中間の場所で、各々の行動を見ながらその経緯に呆れていた。

 

「最初に入店したのが新田ちゃんで、そのほぼ直後にチームの面々が、波島が電話したのがここでこの後に2部署が入ってきた。秋原先輩が入った時には結構険悪なムードだったらしくて、そこに俺らが入ったら・・・なんだな」

「もういいですよ。

 なってしまった以上は、全力でやります。

 ところで・・・」

「ん?」

 

 波島は話題を変える事にした。主に、後方の騒音(エンジン音)に対しての話である。

 

「秋原社長はどうしたんですか?

 エンジン温めていますけど・・・」

 

 そう、どちらのチームでもない秋原賢二が、自慢の愛車であるJZA80RZの暖気を行っているのだ。正確には暖気は既に終えており、今行っているのは徐々に集まりつつあるギャラリーへのパフォーマンスだ。

 

「社長はウチの美世とタイマンだとよ。

 チューナー同士気が合ったんだろうさ」

「あの女の人・・・33Rなんですね」

「スペック的には社長といい勝負のハズだぜ」

 

 美世もBCNR33のエンジン暖気に余念がない。

 BCNR33とJZA80RZ、共に直列6気筒ツインターボエンジンを搭載する同時期のライバル同士。そんな因果を持つ2台がバトルを行うというのならギャラリーが集まる理由としては十二分であろう。

 

@

 

「むむむっ、こっちのチーム戦がメインのハズなのにこのままだと前座扱いにゃ!」

「じゃあこっちもナニかパフォーマンスして盛り上げちゃうかにゃ~?」

「志希チャングッドアイディア」

「で何するん?」

「「「あ・・・・・・」」」

 

@

 

「なんというか・・・ごめんなさいね、完全に巻き込んじゃったカタチで」

「いえ、全然。

 いいですよ、私も賑やかなのは好きですから」

「かなで~と美波サン?」

 

 賑やか組を一歩置いた距離から眺めていた奏と美波の元にやってきたのは加蓮だった。この間のバトルでは最後まで美波と走り、デバイス上ではあるが会話したこともある加蓮だが、先のファミレスでは事情が重なって対面とは至っていなかった。

 因みに奏と美波はこれが初対面であるが、あまりにもそのツーショットが自然としている。

 

「美波サンとはこれで2度目かな?1度目はナビ越しだったけれど。

 あの時の、憶えています?」

「最後まで残っていた人ですよね?ZZT231の」

「そうですそれでーす!

 あの時言い忘れちゃったけど私、北条加蓮て言いますんで!

 ヨロシクね美波サン!」

「よろしくお願いしますね、加蓮・・・」

「ちゃんでいいですよ~、私美波サンより年下だから。

 それと奏も私の1コ上だから美波サンより年下だね」

「えぇっ!?そうだったんですか・・・!」

「私のコト、オトナとして見てくれるのね。

 ・・・なんてね?」

 

 加蓮との自己紹介や(美波にとっては)衝撃の事実の暴露が行われているところに、1台のクルマが爆音を掻き鳴らして近付いて来た。色は薄めの水色、リトラクタブルのヘッドライトは所謂”半目”になっており、かなり攻撃的な印象を漂わせている。更に車が近付くとそのシルエットはRPS13系統と判別出来る程鮮明になった。そしてドライバーは左側、つまり左ハンドル車のRPS13と言う事は

 

「トゥーフォーティエスエックス!」

 

 240SX。

 それを駆る者は「GALAXY RACERS」には居ない。

 そして、346プロダクションには一人だけ居る。240SXを愛車とするのは白銀のショートヘアーに青色の瞳を持ち、異世界から迷い込んだ”天使”とも表現出来る様な少女。

 

「アーニャちゃんのクルマだったんだ・・・!」

「そうです、ミナミ。

 これが私のпартнер・・・相棒です!」

 

 3人の目の前でアナスタシアが左側にある運転席から降り、美波と視線を交わす。そう、美波は「GALAXY RACERS」側の5thドライバーとして346即興チームの5thドライバーとなったアナスタシアとバトルするのだ。

 

「あの時、ミナミに助けて貰った事、ミナミのクルマのместо пассажира・・・助手席に座らせてくれた事、とってもカンシャしています。

 そして私、着くときにチョットだけ思ってしまいました。「終わってほしくない」って。

 私、ミナミのドライブ、もっと見てみたい、です。

 あの時の走り、今度は私とのсоревнование・・・勝負で見せてください!」

「・・・実は私、アーニャちゃんとバトルするって決まって胸が躍ったの。

 バトル出来る事が嬉しいと思っている私なんて、普段の自分が見たらなんて思うか・・・。でもこのキモチは間違いなく本物で、もう抑え込まないって決めたから。

 いいわよ、アーニャちゃん、見せてあげる!」

「ミナミ・・・!」

 

「(すっかり二人の空間だね~)」

「(これじゃ、私達に出る幕は無いわね)」

 

 青白い”オーラ”の様なモノが見えそうな程静かにも燃え上っている二人から加蓮と奏は離れる事しか出来なかった。あの空間、触れれば間違いなく火傷してしまう。

 

@

 

 いよいよ準備が整った神田橋PAは、既に今回のチーム戦を観る為にギャラリーで埋め尽くされている。

 

「流石にヒトが多いねー!」

「まぁ私達候補生って言ってもアイドルやし、大学チームとバトるっていうなら集まるんでしょ」

「そういうモノなのかねー」

「目の前の光景を見る限りどうやらそうなんねー」

 

 志希と周子の視線の先に居るギャラリーは正に大勢。GRPによって整備される前では完全にパンク状態に陥ったであろう程の人数が集まったのだ。

 

「じゃあ「346プロダクション即席チーム」vs「GALAXY RACERS」、各代表前へ!」

 

 5台づつ2列、向かい合ってマシンが並ぶ光景はギャラリーを沸かせるには良いパフォーマンスだ。そして愛車の前に立っていた各々が奈緒と凛のコールによって歩み寄り、握手を交わす。

 

「1stドライバー!」

 

「ロータリーロキャット」前川みくFC3S

 vs

「永遠のエクラノプラン」馬平秀平(マダイラ シュウヘイ)GC35

 

「よろしくにゃ!」

「みくにゃんと握手できるなんて俺走り屋やってて良かったよ・・・!」

 

「2ndドライバー!」

 

「グレー・フォックス」塩見周子Z31ZX

 vs

「ライディングビリー」東供有人(ヒガシトモ アリヒト)SW20GT

 

「よろしく」

「こちらこそ」

 

「3rdドライバー!」

 

「ROSESareBLUE」北条加蓮ZZT231

 vs

「福部長瓦田」瓦田道人A187A

 

「この間のイベント行きましたよ!」

「あっそうなんだ!じゃあ私とは2度目って事!?」

 

「4thドライバー!」

 

「No.A」高峯のあcobra'64R

 vs

「堅実な4代目」波島貞治Z31ZR

 

「よろしくお願いします」

「・・・いい走りを・・・」

 

「5thドライバー!」

 

「ライカ・ナスターシャ」アナスタシア240SX

 vs

「レディアント・ヴィーナス」新田美波SA22C

 

「よろしくねアーニャちゃん!」

「ハイ!」

 

「そしてエキストラバトルの二人!」

 

「レッドシャイン」原田美世BCNR33

 vs

「新環状の大御所」萩原賢二JZA80RZ

 

「オウマから話は聞いているぜ、期待しているよ!」

「こちらこそ、全力でやらせていただきます!」

 

 全員の紹介と握手が終わり、1stドライバーを務める2台がPAの出口へ向かってゆく。346はみくの派手な赤いFC3S、「GALAXY RACERS」の馬平も派手さでは負けない緑のC35だ。




Main EPISODE story movie

「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

@


「ストーリーモード」第1章最後のメインエピソード

「Do you know venus ?」

このムービーの後、5対5のチーム戦となる。
次話でも説明するが、バトル形式はSPバトルであり、1stドライバーが決着すると2ndドライバーが神田橋PAを出てバトル開始、2ndドライバーが決着するとetc...という進行である。


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another world web radio「DRIVE YOUR GOGO! 」special
#1(Revised version)


※346プロが実在し、彼女達がゲームに「出演」する世界観です。
※かなり挿絵が多いです


原田美世:美世「原田美世のwebラジオ。

 「ドライブ ユア ゴーゴー!」

 今回からしばらくスペシャルです!」

美世「そりゃもうね、ネタがありますからね。

 やらないと

「モナコで日本人が優勝したのに一切ニュースにならない」

 みたいな空気になりますからね!ね?」

 

(ケースから取り出す音)

 

美世「じゃーんっ!

 ついに発売ですよ~。

「CINDERELLA GIRLS×GRP

      TOKYO Highway

        XTREME RACER's M@STER」!!」

 

【挿絵表示】

 

 

(2画面でラジオとpvが流れる)

 

美世「つまり首都高バトルm@sterシリーズ最新作!

 いやー、ありがとうございました元気サン!」

美世「まさか最新作で346プロがメインになるとは思っていませんでしたよ。

 更にメイン級で参加させてもらえるなんてもぅほんと夢みたいでした~」

美世「というか私は製作側に近かった感じでなんですけどね。

 他の娘のクルマ選びにアドバイス入れたりとか、スタッフさんもやり易いって言ってくれて嬉しかったぁ~」

 

(おもむろに部屋を移動する美世)

 

美世「さて、今回からはスペシャルですからね、あるワケですよこちらの部屋に」

 

<ニャハーッ!マケターッ!

 

美世「ゲーム機本体にモニターとハンコンを用意して貰いました!

 更に本作に登場するアイドルにもゲストとして来てますよ~」

 

(部屋に入る美世)

 

美世「どうも~」

速水奏:奏「こんにちは」

塩見周子:周子「おはよ~ん」

宮本フレデリカ:フレ「ぼんそわ~(仏:こんばんは)」

一ノ瀬志希:志希「にゃっはーっ!」

 

美世「早速やってますネ皆さん!」

周子「まぁね~」

志希「周子ちゃん強いよ~」

奏「5回で4勝1敗だったかしら?」

フレ「ごっめんフレちゃん見てなかった♪」

美世「じゃまず紹介するんで一旦並んで下さーい」

 

美世「今回のゲストは346プロ13部署所属アイドル通称「クロフネ」の4人でーす」

周子「シューコちゃんよ~」

志希「志希にゃん!」

フレ「フレちゃんだよ~」

奏「速水奏です」

美世「私も13部署なんで、この4人は先輩です。

 歳は私が一番上なんですけどネっ!」

 

*

 

(席に座り直す4人と美世)

 

美世「それはさておき、まずは率直な感想から。

 皆はこのゲームに出演してどうだった?」

志希「楽しかった~!

 なんかこう、この辺が刺激される感じだった!」

周子「良かったよ♪

 スタッフも良心的でええ感じだったん」

フレ「フランス語いっぱい出てきたよ~。

 例えば~、ん~、なんだっけ?」

奏「普段通り、て言うのが良いのかな?

 ステージとかの私じゃなくて、事務所とか、家とかのナチュラルな私を出した感じ」

美世「奏さん流石に鋭いですね。

 このシリーズの売りはストーリーの現実感とも言われているんですよ!

 かく言う私は765プロの人達が本当に首都高でチームを作っていると思っていた位ですから!?」

周子「確かに、ドラマとかの撮影とは全く違う空気だったね」

志希「うんうん」

 

*

 

(話は出演とクルマに移る)

 

美世「さて作品内のクルマを見ていきますか~」

周子「最初の時点だとまだあたしのは決まってないんよね」

奏「決める時も時間掛かっていたからね、周子は」

美世「そしてまずは私、原田美世のR33ですよ!」

 

(ゲーム画面がマシン選択画面へ変わる、最初に映るのは美世のBCNR33)

 

【挿絵表示】

 

 

フレ「本物も持っているんだっけ?」

美世「はい!と言ってもGTS-tなんですよね」

 

(美世が持っていたスマホに実際の愛車であるR33GTSの写真が映る)

 

【挿絵表示】

 

 

美世「ゲームで言っているのはほぼ実話ですよ!」

志希「ホントに10年来の相棒にゃの!?」

美世「うん!解体屋で見付けたとこまでね♪」

志希「にゃはーっ!スゴい!」

美世「でもやっぱ首都高ならGT-Rの方かなって。」

奏「そう言えば、スタッフの方で美世に一押ししてたクルマがあったわね。」

 

(奏が机に置いてあったコントローラーでクルマを変える)

 

奏「これだったかしら?」

 

(画面に映ったのはZ31 300ZX)

【挿絵表示】

 

 

美世「ですね。

同じ名字のキャラクターがZ31に乗っている漫画がありましての繋がりで・・・。

 悪くはないんですけどね、やっぱ自分のクルマじゃないっていうか・・・」

 

*

 

(次に画面に映し出されたのは奏のFC3S)

【挿絵表示】

 

 

美世「奏さんのFC3Sですね。

 90年代現役風の渋い見た目が大人っぽい奏さんを引き立ててますよ」

奏「美世よりは年下なんだけどね」

フレ「いいんじゃない?」

美世「外観とかはスタッフと私がやりましたけど、奏さんはどうしてFCを?」

奏「そうね・・・眼が留まったのよ、これにね。

 単純な理由、一目惚れよ」

美世「おぉ~」

周子「”らしい”理由だね~。

 ところでさ奏~」

奏「何?」

周子「ゲームだとプロデューサーとイイ感じしているけど、現実だとどうなん?」

志希「む!?」

フレ「ぬ!?」

美世「周子ちゃんそこ行きます!?」

周子「シューコちゃん気になる~ん」

奏「どうかしら?

 女の子は秘密の一つや二つ、持っている方が面白いでしょう?」

 

美周志フ「「「「お、おぉ~」」」」

 

*

 

(次に画面に映し出されたのはフレデリカのFD3S)

【挿絵表示】

 

 

美世「フレちゃんのFD3Sですね。

 後期型に前期型のフロントバンパー、悪くないです」

フレ「めるしーぽーく♪」

志希「微妙に違う気がするのは目を瞑るにゃ」

美世「確かフレちゃんはデザイナー系だったよね」

フレ「そだよー。

 大学で習っているんだよ」

美世「FDは日本車で唯一「世界的に美しいクルマ」に選出された事もあるんですよ」

フレ「フレちゃんの目に狂いは無かった!」

周子「確かに他とは違う雰囲気だよね」

志希「海のむこーでも乗っている人居たにゃ」

 

*

 

(最後は志希のEVOⅣ ASTIが画面に映し出される)

【挿絵表示】

 

 

美世「これがすごいですね、ゲームオリジナルのカスタムカーですよ」

志希「オンリーワンてヤツにゃ」

美世「今作だとエボⅣ、Ⅴ、Ⅵに其々クーペバージョンのASTIがあるんですよね」

奏「その”アスティ”っていうのは何なの?」

美世「ランサーエボリューションというクルマには兄弟車のミラージュが居たんです。

 そのクーペバージョンが「ASTI」で、丁度顔のパネルをランエボと交換出来るんですよ」

周子「ほぉーん」

美世「ランエボには2ドアクーペモデルが無かったので、意外と夢のクルマとも言えますね」

フレ「よく判んないけど凄いんだ」

志希「ランエボなら友達が「アレはスゴイ」って言っていた奴にゃ!」

美世「え?もしかしてランエボって判って無かったの!?」

志希「だってランエボってアレでしょ、「4ドアのスーパーカー」だよね。

 志希にゃん知らぬ間にスーパーカーに乗っていたんにゃ!にゃはーっ!!」

美世「あぁ、志希ちゃんアメリカの大学に行ってたんだもんね。

 なら・・・納得かも」

 

*

 

美世「今日の「ドライブ ユア ゴーゴー!」スペシャルゲストはー」

周子「塩見周子~」

志希「一之瀬志希!」

フレ「宮本フレデリカ!」

奏「速水奏」

美世「の4人でしたー!ありが」

奏「待って、まだよ」

美世「・・・あ、そうだった。

 次回のゲストは第12部署所属の3人!

 本田未央、渋谷 凛、島村卯月ちゃん達です」

周子「ニュージェネレーションズじゃん。

 3人だと久々じゃないん?」

志希「にゃっはー面白そー!」

美世「ではこの辺で、また次回会いましょー!

 原田美世の「ドライブ ユア ゴーゴー!」でしたー!」




(収録後のトーク、話は志希の留学していた大学クルマ事情へ)

志希「むこーだと授業が終わった男子は部活か遊び、それかクルマだった。
 スクールの敷地内にガレージがあったからそこに入れておくの」
美世「日本だと早々無いですね。
 設備が足りないか、敷地が無いか、両方あっても許可されていないって事も・・・」

(志希がスマホを弄り、何かを見付ける)

志希「たしか・・・あったにゃ」
周子「なにこれ」
フレ「真っ直ぐな道」
奏「と、信号機?」
美世「1/4マイルとクリスマスツリー常備っすか・・・」

(志希の見せた写真は大学の敷地内に設備されたドラッグレーンだった)
【挿絵表示】


志希「あと月1で駐車場にコーン立てて競争してたにゃ。
 そのコースレコードが2年先輩のランエボで、これが写真にゃ」

(スマホ越しにそのランエボが映る)
【挿絵表示】


美世「すっごぉ・・!」
周子「どの位凄いん?
 例えが無いと解らんよ」
奏「アイドル的には・・・。
 学校内にレッスンスタジオとコンサートホールがあるって感じかしら?」
フレ「なにそれすごーい」

*


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#2

※346プロが実在し、彼女達がゲームに「出演」する世界観です。
※かなり挿絵が多いです


原田美世:美世「原田美世が贈るwebラジオ!

 「ドライブ ユア ゴーゴー!」

 今回はスペシャル版の方だからゲームに登場するアイドル達を紹介するよ!

 じゃ早速、ゲストがいる部屋へゴー!!」

 

(部屋を移動する美世)

 

美世「お邪魔しまーす!

 って、やっぱりやっているねー!」

 

(部屋に居たのは島村卯月、渋谷 凛、本田未央の3人だった。

 凛と未央は部屋に設置された本作をプレイ中であった)

 

卯月「あ!

 おはようございます美世さん」

未央「おはようございまーすっ

 こっちはもうやっていたよーダチャーン」

凛「おはよう。

 ほら未央、よそ見していると抜くよ」

未央「あわっっと待ってってタンマタンマ!!」

 

(結局このバトルには凛が勝利した)

 

*

 

美世「今回のゲストは第12部署「シンデレラ・プロジェクト」から!

 「ニュージェネレーションズ」の3人でーす」

卯月「よろしくお願いしますっ!」

凛「よろしく」

未央「お願いしまーす!」

美世「コチラこそよろしくね!」

 

(席に戻り、改めて自己紹介が始まる)

 

卯月「島村卯月です!

 今回の出演は頑張りました!」

凛「渋谷 凛。

 クルマはよく判んなかったけど、撮影は素直に楽しめたよ」

未央「本田未央ですっ!

 撮影で私の名前が付いたクルマを運転するの楽しかったよー!」

 

*

 

美世「確か3人ってニュージェネとしては久々だよね?」

未央「そーなんだよ!

 これの収録中にそれぞれで仕事が入る様になってさー大変だったよ」

凛「ストーリーとは違うけど、確かにトライアドプリムスでの活動の方が多くなっていたかな」

卯月「また3人で集まれたのは嬉しいです!」

美世「このシリーズって765と876が無名時代に出演してブレークした前例があるけど、今作の346(ウチ)も大分それっぽくなってきているんだよねー」

未央「でもそれでユニットで活動できなくなるのは面白くないかも?

 いやさ、まるで予言の様にこの収録の間どんどんニュージェネが離れていくんだよ?」

凛「でもニュージェネが解散しないで済んだのもこれのおかげなんだよね」

卯月「この作品にはすっごく感謝しています」

未央「まあ私もありがとうってキモチの方が大きいかな?」

美世「うんうん。

 私はユニットを組んでいる訳じゃないけど、このゲームの収録中にこのラジオのオファーが来たからやっぱり少しは関係あると思うんだよね~」

凛(いや、それちょっと違うような・・・)

 

*

 

(話題はクルマの紹介へ)

 

美世「じゃ、クルマの紹介行っちゃいましょう!」

未央「わーわーぱちぱちー」

美世「ネタバレかもしんないけどニュージェネの3人はストーリー中に乗り換えイベントあるから、今回紹介するのは最初に乗っているクルマだけだね。

 ま~ず~は~卯月ちゃんのST202!」

 

(美世がハンコンを操作し、画面には卯月のクルマであるST202が映る)

 

【挿絵表示】

 

 

美世「コレ自分で選んだんだよね」

卯月「丸い目をしていて可愛いって思いました」

美世「まあスタイリングにどういうものを感じるのかは人それぞれとは思うけど、少なくともこのチョイスは卯月ちゃん的に正解と思うな、似合っているよ」

卯月「えへへ、ありがとうございます!」

美世(ベターなのはST205の方なのだろうけど、202というNAのFFグレードを選ぶ辺りが卯月ちゃんの”らしさ”なんだろうなー)

 

*

 

(次に映し出されたのは凛のHCR32)

 

【挿絵表示】

 

 

美世「最初は黒のPS13(2L)だったんだけど、直前でこっちになったんだよね」

凛「ウチの近所に居たんだよ。

 10年は昔かな、今はもう居ないけど」

未央「エピソードがあったんだね。

 突然これを用意した時のしぶりんはなんか別人だったよ」

美世「それを聞く前だったもので、「こんな渋いチョイス絶対クルマ好きだろ!!」と思わず駆け寄っちゃったよ、あの時はゴメンね」

凛「15分で済んだから今はもういいよ。

 それに美世の”こだわり”は伝わったから」

美世「ありがとう凛ちゃん!」

凛(ただ・・・話は何一つ解らなかったんだけどね・・・)

 

*

 

(そして未央のEK9Rが映し出される)

 

【挿絵表示】

 

 

美世「ホンダァ!」

未央「ホンダァ!」

美世「名前にぴったりなチョイス、だけど似合っているね!」

未央「えっへへ、ありがとっ。

 ゲームで知っていたからさ、乗ってみたかったんだよねっ!」

美世「現実のEK9Rって実は白系色が圧倒的に多いんだけど、某車漫画の影響なのかオレンジ系のボディカラーも馴染みはあるんだよね」

未央「たしか家にあるよその漫画!

 そうそう読んでいた憶えがあるよ。

 男2人仲良くゲームしているからそこに割って入ってみたり懐かしいな」

卯月「やっぱり仲が良いんですね」

凛「道理でさっき対戦したけど強かったんだ・・・。

 教えてくれないのはずるいよ、未央」

未央「でも4回やって私が勝ったの1回だけじゃん!

 これ終わったらリベンジするんだから!」

美世「今は収録中だよ~。

 その話には後で私も混ぜてもらうからね~」

 

*

 

美世「今日の「ドライブ ユア ゴーゴー!」スペシャルゲストはー」

卯月「島村卯月」

凛「渋谷 凛」

未央「本田未央!」

美世「の3人でしたーありがとうございましたー」

卯月「ありがとうございましたー!」

美世「因みに次回のゲストですがまだ決まっておりません!!!」

未央「え」

凛「それ不味くない?」

美世「いーのいーのダイジョブダイジョブ。

 ではこの辺で、また次回会いましょー!

 原田美世の「ドライブ ユア ゴーゴー!」でしたー」

 




(収録後、凛と未央のリベンジバトルが始まろうとしていた)

【挿絵表示】


美世「どうせならイコールコンディションでやろうぜ兄弟・・・。
 と言う訳でイロイロ設定させてもらったよ!」
卯月「面白そうです!
 頑張ってねっ、凛ちゃん未央ちゃん!」

凛「まあここまで用意してもらってやらない選択は無いよね」
未央「よーし未央ちゃん張り切っちゃうぞー!」

美世「ルールはC1内回り1週のRSバトル。アザーカーなし。
 車種はS15のターボだよ!」
卯月「凛ちゃんが蒼で未央ちゃんがオレンジですね」
美世「因みに私が走らせると1週5分位になるチューニングだよ。
 さぁて、用意は良い?」

凛「いつでもいけるよ」
未央「いっくよー!」

美世「じゃカウントスタート!」
卯月「5!
   4!
   3!
   2!
   いーち!」

卯月「ごー!!」


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#3

※346プロが実在し、彼女達がゲームに「出演」する世界観です。
※かなり挿絵が多いです


原田美世:美世「原田美世が贈るwebラジオ!

 「ドライブ ユア ゴーゴー!」

 スペシャル版の今回はゲームに登場するアイドル達を紹介するよ!

 じゃ早速、ゲストがいる部屋へゴーゴー!!」

 

(部屋を移動する美世)

 

美世「お邪魔しまーす!

 やっていますねー!」

 

(部屋に居たのは川島瑞樹と片桐早苗だった。

 早苗は部屋に設置された本作をプレイ中である)

 

川島瑞樹:瑞樹「おはよう美世ちゃん。

 これ、見ていても面白いわね」

片桐早苗:早苗「こういうシゲキがあるのは判っていたけど、やってみると確かにハマるわね」

美世「そう言えば早苗さんは追う側でしたね」

早苗「交通機動課じゃなくてよかったわー。

 こんなの相手に出来ないもの」

 

*

 

美世「今回のゲストは私よりお姉さんの二人!

 川島瑞樹サンと片桐早苗サンでーすっ!」

瑞樹「はぁいこんにちは。川島瑞樹よ~!」

早苗「いぇー見ているかー!

 1カメ、2カメ、3カメ、カモーン!

 片桐早苗の登場よ!」

美世「おぉっとこれは派手な登場ですね二人共。

 あとこのラジオはカメラ2つでやっているので3カメはありませんよ」

早苗「ありゃ、それはうっかり」

 

*

 

美世「まずは作品に出演してのご感想から、瑞樹サン!」

瑞樹「撮影に関してはとても気分良く行えたわね。

 って言っても

 「普段の光景で撮っておきますので~」

 て言われた時はどういう事か判らなかったわよ」

早苗「台本が多少の差はあれど結構みんな厚かったのよね~。

 でもセリフが自然に出る感じになってさ、あそこのスタッフはデキるわって思っちゃった」

 

(ここで美世、ある事を思い出す)

 

美世「二人の年齢から考えると」

早苗「ウッ!」

瑞樹「結構バッサリ行くわね」

美世「い、いや~。

 まぁ改めて、765プロの頃を見てきたワケですよね?」

瑞樹「そうね。もう10年位になるのかしら?

 始めは分からなかったわよ?

 「レースゲームとコラボしたらアイドルが売れ始めた」

 なんて。その頃はもうアナウンサーの道に入っちゃっていたから尚更ね」

早苗「あたしも特殊訓練に入っちゃっていたからそっち系のニュースは耳に入っていなかったわ。現場に出る様になった頃にはもう日高 愛ちゃんが出ていたもの」

瑞樹「そう言えば愛サン達876プロもこのシリーズに出演していたわよね?」

美世「ですね。題名「レーシングバトルマスター Dearly stars」。

 876サンも国内じゃ346(ウチ)の次を保っていますものね。765を除いて・・・」

早苗「でもこっちはタマ数(所属アイドルの人数)が違うもん。

 個人で勝っているのは蘭子ちゃんと楓ちゃんぐらいでしょ?」

瑞樹「タマ数ってアナタねぇ・・・。

 ともかく、端折って言えば人生何があるかはわからないわって事よ」

美世「それは随分端折っているよーな気がするんですが・・・」

瑞樹「いえ、これは結構ガチよ。

 10年前、同世代の女の子がレースゲームに出て、アイドルとして大成功の道を歩み始めたそれを私はアナウンサーの養成学校から見て心底不思議に思った。

 それが10年後。

 女子アナからアイドルに転向していた私に、”あの”レースゲームの続編の仕事が舞い込んできたのよ?こんな話がフィクションにあると思う?私はおもわないわ」

早苗「あたしだって婦警からアイドルになっただけでも大騒ぎモノなのに”元”非合法なモノを扱うゲームに出演する事になった。それも”やる側”でね。

 中々イケている人生歩んでいる気がするわ!」

美世「それはまぁ・・・ははは・・・」

 

*

 

美世「さてさて、本番行きますよーマシン紹介です!」

 

(美世がステアリングコントローラを操作し、瑞樹のマシンが画面に登場する)

 

【挿絵表示】

 

 

美世「川島瑞樹サンのSN95'00RSM!」

瑞樹「生憎クルマは詳しくないからスタッフさんに選んでもらったわ。

 アメリカン・マッスルカーって言うのだったかしら?」

美世「そうですよ~。

 1965年誕生の初代から続く大排気量アメ車の筆頭マシン!

 そしてこのクルマは2000年のモデルをベースにしたレーシングスペシャルとなっていますね」

早苗「”チームリーダーに相応しいマシン”だってよ~」

瑞樹「まぁリーダーを任された以上、メンバーの前を征く様なクルマじゃないといけない。

 っていう世界である事は十分に判ったわ。

 ・・・だってこんなの乗れる気がしないもの・・・」

 

*

 

美世「続いてはコチラっ」

 

(画面には早苗のマシン、S900"MADCOP"が映し出される)

 

【挿絵表示】

 

 

美世「S900"MADCOP"!!

 ドライバーは言うまでも無くこの方、片桐早苗サンですっ!」

早苗「イエーーー!」

美世「いやぁ派手ですねこのマシンは」

早苗「やるからにはこんぐらいしないとねっ。

 ゲームなんだし、細かいトコは気にしない気にしない」

瑞樹「これは自分で選んだのよね?」

早苗「そうよ~。

 ちょっち昔に読んだ雑誌に載ってあったクルマを思い出してみたわ!」

 

瑞樹(何時のハナシよそれ・・・)

美世(S900はけっこー前のエアロだよね・・・。

 いや、かっこいいけどさ、ホントにいつ知ったの?)

 

美世「中身も凄いんですよねコレは」

早苗「中身はあたしもよく分かんないからさ、スタッフに

 「もっとドーンと行っちゃって頂戴~~!」

 て言ったらこれが出来ていたね。

 いやぁ~いい仕事するわ!」

瑞樹「数字だけならこのマシンの方が良いのよねぇ・・・」

美世「3.4L、ビッグシングルターボから発生する990馬力はとてつもないでしょうねぇ~」

 

*

 

美世「今日の「ドライブ ユア ゴーゴー!」スペシャルゲストはー」

瑞樹「川島瑞樹と」

早苗「片桐早苗っ」

美世「の二人でしたー有り難うございましたー!」

早苗「こっちこそ出演させてもらってありがとねー」

美世「えー次回のゲストで、す、が・・・」

瑞樹「まさか」

美世「まだ決まっておりませんねーまたですねー」

早苗「ホントに大丈夫なのこのラジオ・・・」

美世「まぁスペシャル版は不定期ですからね、大丈夫ですよたぶん!

 ではこの辺で、また次回会いましょー!

 原田美世の「ドライブ ユア ゴーゴー!」でしたー」



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another world web radio「紗南@GAMEwork 」special
#1「ストーリーモード編」


※346プロが実在し、彼女達がゲームに「出演」する世界観です。
※かなり挿絵が多いです



三好紗南:紗南「三好紗南のwebラジオ

 「紗南@GAMEwork」

 今回も始まり始まり~」

紗南「今回から紹介するのはXPS720の先日発売された新作!

 あたし達346プロのアイドルが大勢登場するレースゲーム

「CINDERELLA GIRLS×GRP

      TOKYO Highway

        XTREME RACER's M@STER」

 でーす!

 あたしも出演してまーす!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

紗南「でもあたしレースゲームはどっちかって言うとリ○ジとかマ○カとかメインなので、実在のクルマを走らせるゲームはちょっと慣れてないねー。

 グラ○ツとかN○Sは手が出なくて、あっでもアケのイ○Dとマ○シはちょっと経験あります」

紗南「と、あたし1人じゃこのゲームは説明し切れなさそうなので助っ人を用意しましたー!

 どうぞー入ってー!」

 

(部屋にやって来たのは原田美世である)

 

原田美世:美世「どうもー」

紗南「どもども~。

 はい、今回からのゲストはこの方。

 346プロ第13部署所属アイドルの原田美世さんでーす」

美世「はーいっ」

紗南「美世さんと言えばアイドル界随一のクルマ好きとして、そのファン層の偏りは「姫川友紀」や「上条春菜」に勝るとも劣らない「パラメータガン振り系アイドル」です!」

美世「いや~照れるな~」

紗南(多分褒めていない気ィするんだけどな・・・)

 

@

 

紗南「首都高バトルのシリーズも興味はあったけど手は出せてなかったんだよね」

美世「首都高バトルはレースゲームの中でも特殊だからね」

紗南「そう!

 「SPバトル」だっけ?

 あの格闘ゲームみたいなシステム気になっててさー」

美世「収録そっちのけで「首都高バトルm@ster」の歴代シリーズやってたもんね」

紗南「と思ったら撮影されてて本編の映像に使われていたのはビックリしたよ」

美世「現実感のあるストーリーが売りですから!」

紗南「ダテに「”金属の歯車”賞」を受賞しているシリーズではない、と。

 まぁ”あの”765や876のアイドルがこのシリーズから有名になったとも言われる位だし、

 「アイドルの日常を切り取った」って言っちゃえばそれでも良いのかな・・・?」

 

@

 

 

【挿絵表示】

 

 

紗南「さて画面もう起動してあるよー」

美世「これは「ストーリーモード」で、今の時間帯は昼だね

 まだチャプター1?」

紗南「うん。

 プロローグはもう終わらせているから、データをロードした次は行動選択、と・・・」

 

<部署を選択してください>

 

美世「この世界の346の各部署は東京、千葉、神奈川に点在しています」

紗南「コマンドには部署選択ってあるけど公園とか屋上・・・?

 まぁアイドルが居る場所を選択しろって事でしょ」

美世「ですね!

 前作までは事務所内だけだったから、この画面そのものが新要素の一つだよ」

紗南「カーソルを置いている間は左上に誰が居るか表示されるね」

美世「まぁやっている事は「クエストモード」のPA選択と同じだから・・・」

紗南「じゃ今回は第12部署を選びまーす」

 

<アイドルを選択してください>

 

美世「第12部署「シンデレラ・プロジェクト」、主なメンバーはニュージェネの3人!」

紗南「まずは王道からってね」

美世「あ、でもエピソード完了してあるね。

紗南「頭上のアイコンに

 <現在進行可能なエピソードはありません>

 と出るのは優しいな」

美世「ニュージェネはメイン以外にもエピソードがあるからね」

紗南「今いるのは未央と卯月だけか・・・よし。

 未央!

 君に決めたッ!」

 

<未央「今日はクルマの気分かな~?」>

 

<首都高へ←>

<ショップへ>

<やっぱりやめる>

 

紗南「あ、キャラ選択取り消しコマンドが付いた」

美世「今までだと操作キャラクターを選択したら取り消せなかったもんね」

紗南「今作からショップへ行ってもターン消費だっけ?」

美世「そう!

 前作まであやふやなままだったんだけど製作スタッフが

 「やっぱ弄ったクルマを即コースインは不味くねぇか?」

 という事でショップへ行けば、そのターンでのバトルが出来なくなりました」

紗南「まぁでもセッティングで首都高を走る事は出来るんだよね」

美世「一応はシミュレータ上と言う設定だから・・・」

 

<now loading...>

 

@

 

<未央「よーし、未央ちゃん走っちゃうぞー!」>

 

 

【挿絵表示】

 

 

紗南「フリーバトルの時間だーッ!」

美世「エピソードを進めるのも良いんですけど、フリーのバトルをしてキャッシュポイント(CP)を獲得する事でアイドルのクルマもある程度までチューニング可能!

 これも「首都高バトルm@ster」シリーズ共通要素だよ!」

紗南「エピソードそっちのけでフルカスタムしたな~。

 でもストーリーと噛み合わなくなっちゃうのが残念だった」

美世「当時のやよいサンのNA8Cを800馬力にしちゃったらそうなるよ」

紗南「それもそっか~。

 って、早速獲物発見!」

美世「ローリング野郎さん毎度お疲れ様です!」

 

@

 

紗南「フリーバトルを数回やると、そのキャラに関係するエピソードがプレイ出来る様になるね。

 「ストーリーモード」の基本的な1ターンの進め方はこうかな?

 で、チャプターの進め方はこう・・・!」

 

(紗南が画面に映したのは1日の進行を簡潔に記したボードと、それに合わせたチャプターの経過だった)

 

 

【挿絵表示】

 

 

紗南「まぁ事務所選ぶ前にライバルの情報とかの確認もあるんだけれどね」

美世「シリーズ通しての要素だけど、今回は特にアイドルが多いからちょっと大変かな?」

紗南「346ってさ、どんなジャンルにも提供出来るアイドルの振れ幅が事務所としての売りだよね。

 じゃなきゃフツーあたしとか美世さんみたいなのスカウトするぅ?」

美世「いやいや分からないよそこは~。」

 

@

 

紗南「今作の「ストーリーモード」は順当進化している感じだね。

 完全新作だと10年ぶりだっけ?」

美世「7年前の「首都高バトルm@ster Zer 0 ne」はリメイクですからね。

 完全新作だと「レーシングバトルマスター Dearly stars」以来約10年ぶり。

 気合の入り方が違いますよ!」

紗南「みたいだね。

 XPS720は旧世代機の「330」と「630」の互換性があるからこの作品から入ってもシリーズは十分追えると思うし、10年前のソフトは中古でも探し易いからあたし的にはアリだね」

 

@

 

紗南「あ、そろそろ時間じゃん。

 まだまだ紹介する事はあるけど今回はここまで。

 三好紗南のwebラジオ「紗南@GAMEwork」、次回もお楽しみにー!」

美世「次回のゲストも私?」

紗南「もう一人ぐらい欲しいかな?」




紗南「そういえば美世さん。
 噂で聞いたんですけれど・・・」
美世「ん?
 私のなんの噂?」

紗南「「このゲームの過去シリーズが実際の出来事だと思っていた時期がある」」

美世「!!!!!!!!!!!!!!!!」
紗南「その反応・・・当たりなんですね?」
美世「当たりで御座いますハイ・・・」

紗南「このゲームはフィクションです」
美世「車を運転する際は交通ルールを守り、安全運転に心がけてくださいね!」


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World Supplemental Words 「世界観補足用語」
説明付き用語集


より詳しく、個別に作る予定。


50音順非対応

 

@

 

「用語」:分類

:説明

 

@

 

「B³モンデンキント」:政治組織

:90年代の終わりに、統一された思想を持つ一派が各政治組織から分裂し、新たに組織された派閥「トゥリアビータ」が政治クーデター「夜明けの紫月」で政権を握り、それに合わせて名称を変更した。

実は組織の内情があまり知られておらず、設立の経緯からも秘密結社的な趣がある為有る事無い事何かと噂が絶えない。

(都市伝説や陰謀論レベルでは”宇宙人の侵略部隊”とまで言われる程)

だが、その政治手腕は間違いなく歴史に残る”剛腕”を持つ組織であり、しばらく対抗出来る政党は現れないと言われている。

 

「夜明けの紫月」:政治事件

:1997年3月9日に発生した歴史的な政治クーデター事件。

政治派閥「トゥリアビータ」が国内の主要政治的施設を掌握し、政権を奪取。

翌10日より旧体制派との交渉を開始し、3月26日、正式に政治全権を獲得した。

無血によるクーデターの成功例としては、世界的にも最大規模の事件である。

 

「センチュリオン・レボリューション・プロジェクト」:政策

:来る21世紀に向けての”革命”として1999年5月27日にモンデンキントが発表した。

その中でも目玉となったのが首都遷都であり、2001年4月2日をもって国内の6都市が同等の配分で首都扱いとなる事が決定された。

 

「新都市循環高速道路」:交通

:モンデンキント発案の「センチュリオン・レボリューション・プロジェクト」の一案である。

これまでの「首都高」を代表とする都市高速道路の置き換えとして建設され、2001年に最初のルートが開通した。現在ではセンチュリオンを除く5首都がこの道路で繋がっており、約10時間で1週する。

 

「ノン・ドライバー・ビークル:N-D-V」:車両

:2000年に完成した「完全自動運転自動車」を進化させ、2004年に市販化した車両形態。

政府が政策として普及を支持・支援した事によって、販売開始から5年を待たずして旧来の

「自分で運転する自動車」から一般公道での役割を勝ち取った。

現在、「車」と呼ばれるのはコチラであり、旧来の自動車は「クルマ」と呼ばれている。

 

「海上都市・センチュリオン21」:都市

:1996年に領海内で出土した油田を基点に定めた海上産油都市。

「センチュリオン・レボリューション・プロジェクト」によって首都の一つに選定された。

1997年に建設が始まり、2001年に完成。

翌02年から入植が開始され、同年のみで50万人が完全入植を完了した。

現在は170万人が定住している「首都」の一つである。

 

「GRP A1project」:組織

:「自動車運転文化の存続、及び後世へのモータースポーツの継承」

を提唱する組織であり、実質の運営はモンデンキント政府が行っている。

「C1GP」や「首都高サーキット」、「街道プロジェクト」等のモータースポーツイベントを開催しており、そのいずれもが一定以上の成果を上げている。

さらに、既に生産の終了した各自動車メーカーのクルマに関する設計資料等を各社から買い取り、オーストラリアの工場で最新の技術を用いて”新車”として”生産”している。

全て受注で生産しており、当時モノなら億単位の価値が付くあの名車も”新車”で購入可能。

最近では海外メーカーとも商談を進めており、海外のヒストリックカーファンを興奮させている。

 

「C1GP」:モータースポーツ

:全国からアマ・プロ問わず様々な「クルマ好き」が一堂に腕を競う、

「全国規模の統一走行会選手権」として2005年から開催されている。

2006年から有料の専門チャンネルでTV放送も行っている。

 

「首都高サーキット」:競技場

:「新都市循環高速道路」の完成によって破棄される事となった、旧都市高速道路の権利をGRPが買い取って巨大な公道サーキットに生まれ変わらせた。

2004年末から本格的な改修工事に入り、2008年に改修が完了。

改修中は既に改修が完了していた「C1外・内回り」が「C1GP」のコースに選出された。

2009年からは「C1GP」から独立、「首都高サーキット」として独自路線を歩む事となった。

 

「街道プロジェクト」:モータースポーツ

:2002年に発足したモータースポーツイベント。

廃止された各地の「峠」をレーシングサーキット”街道”に進化させ、タイムアタックやドリフトコンテスト等のイベントを開催している。

国外でも「KAIDO BATTLE」として知名度があり、海外の腕自慢もマシンを持ち込んでいる。

 

「Formula World Championship」:モータースポーツ

:2005年にトップフォーミュラレース「F1」がシーズン開幕前に消滅するという事件が発生。

通称「F1崩壊」によって、新たなトップフォーミュラを名乗るリーグが4つも誕生した。

その4つ、

「WFGC(World Formula Grand Championship)」

「FCWC(Formula Championship World Circuit)」

「FCWR(Formula Car World Raceing)」

「CFWS(Championship Formula World Siries)」

が最終的に合流して誕生したのが「FWC」である。

2012年、安全性向上等の理由から見た目に配慮しつつもマシンがクローズドホイール化した。

 

「Junior Formula 1.5」:モータースポーツ

:「FWC」のアンダーカテゴリーとして2009年から開始されたフォーミュラカテゴリー。

名前にこそジュニアとあるが、マシンのポジション的には旧来のF3000に近い。

欧州、日本、北米、南米では独自にリーグ化もされている。リーグの行き来は可能。

 

「CINDERELLA SHOE'S」:企業

:21世紀の初めに起業した新しいタイヤメーカー。

 0時を回ったらグリップ力が無くなる訳では無い。むしろ強くなるというウワサが。

 スポーツタイヤ市場に安価で幅広い商品展開をしており、ほぼワンオフの特殊なサイズにも対応している為主に走り屋からの信頼を得ている。

 「C1GP」のスポンサーにも名を連ねる他、2010年からは欧米のモータースポーツにも本格的に進出し成果を上げている。

 

「スターライト・ドリンクス」:企業

:「全ての栄養ドリンクを過去の物にした」とまで言われる程の効き目を持つ画期的商品、

「スタミナドリンク」と「エナジードリンク」を主軸にシリーズ展開をしている、2010年代の今最も波に乗っている栄養飲料メーカー。

 モータースポーツにも精力的な宣伝活動をしている。「C1GP」では初期からメインスポンサーとして名を連ねており、観客への飲料サービス等手厚い支援を行っている。

また、346プロダクションのスポンサーでもあり、新商品のイメージキャラクターには必ず346のアイドルを起用している。

 

「クローバーフォース・ペトロリアム」:企業

:マレーシアに本社を持つ石油系企業。領土内での油田の発見に貢献しており、センチュリオンでの産油権利を取得している数少ない企業である。

自動車用のガソリン部門においても最近は老舗ブランドを脅かす存在となりつつある。

モータースポーツにはイメージガールである緒方智絵里が描かれたマシンを参戦させている。

(第6部署のPがこの企業の広報担当、しかもそのトップと友人であり、その人も大の智絵里ファンであった事が大きい)

 

 「蘭(子)學事始」:書物

:神崎蘭子の話す特殊な言語を、日本語に大変解り易く翻訳した解読本。

 今井加奈が蘭子と会話する為に自分用に制作したメモ集が346内に広まり、やがて出版物として正式な形をとって完成した。この本が広まった事によって神崎蘭子の人気は右肩上がりになり、シンデレラの道を歩み始めたとも言っていい。国内で100万部を超える売上を記録しており、なおもその数字を伸ばし続けている。

 因みに現在では英語、ロシア語、中国語、ポルトガル語に翻訳された外国版も存在し、世界累計で400万部を突破した。

 更にドイツ語とイタリア語翻訳版が新たに製作されている。

(元々ゲーム内のオリジナルだったが、ゲームが完成する前に全く同じ名前で出版され、同じような売り上げを記録している。)

 

「水瀬財閥」:財閥

:その影響力は既に「国家」として成立するとまで言われている国内有数の有力財閥。

グループ企業は多岐に渡り、人々の生活のどこかに必ず関わっている。

モンデンキントともコネクションがあり、「GRP A1project」とも関係は深い。

 

「萩原建設」:企業

:昔ながらのコワモテで確実な仕事をする職人肌の会社。

ちょっと怖過ぎて「その道の人」と思われがちなのは愛嬌。

「GRP A1project」の運営に関わった事が切っ掛けで右肩上がりの成長を見せ、今では国内5指に入る超有力企業でもある。

「新都市循環高速道路」と「海上都市・センチュリオン21」はこの会社が無ければ成立しなかったとも言える。

 

「四条コンツェルン」:複合企業

:詳細は不明だが、かなり歴史のある複合企業であるのは間違いない。

水瀬財閥とは良好な関係を築いており、傘下企業では無いという姿勢を取れる立場。

 

「WON-TEC」:企業

:新興の技術系企業。国内では四条コンツェルンのグループとして扱われている。

かなり野心的な企業であり、先進技術を躊躇いなく製品に採用している。主力製品である携帯端末は若年層を中心にシェアを拡大しており、他にも様々な製品が競合メーカーとしのぎを削っている。まさに「これからの企業」という言葉に相応しい企業である。

 「C1GP」にも参戦しており、有力ドライバーのメインスポンサーとなっている。

 

「西園寺グループ」:複合企業

:主に海外を主戦場とする複合企業であり、最近では空御寺財閥の協力を得て国内市場にも参戦しようとしている。ある球団のオーナー企業でもあり、あるアイドルが友好関係を築こうとアイドル仲間である御令嬢を狙っている。

 

「空御寺財閥」:財閥

:国内有数の有力財閥として、水瀬の次には名前が上がる。

最近では西園寺グループを味方に付けたが、流石に「国家」と呼ばれる日は遠い。

 

「櫻井家」:名家

:かなりの歴史を持つ国内有数の名家であり、財閥とも複合企業とも違う視点に居る。

水瀬財閥とも空御寺財閥とも良好な関係を持っていたりと懐の違いが垣間見える。

 

「高槻亭」:飲食チェーン

:2010年にオープンした「安い、多い、美味い」の定食屋。その辺の定食チェーンの2/3の値段で1.6倍の量を食べられると言う事で人気に火が付き、5年の内に全国展開のチェーン店となった。

オーナーを務めるのは765プロダクションの元トップアイドルである高槻やよい。水瀬財閥が全面的に営業に携わっており、自社の大規模な有機農場で生産する最高品質の食物を提供してもらっている。

 

「XPSシリーズ」:ゲーム機器

:汎用性の高さで世界中に普及しているゲームハード。水瀬財閥のグループ企業である

「ミナセゲームコーポレーション(MGC)」が製造、販売している。

2003年に初代の「XPS330」、06年には改良型である「XPS630」が発売され、現行型である「XPS720」は2012年から発売されている。

「720」は「330」と「630」のソフトに対応しており、シリーズの決定版とも言われている。

そして「330」と「630」も、後付けのキットで「720」ソフトに対応出来る様になっている。

 

「レーシングナイトRX」:TVドラマ

:346プロダクションに所属する南条 光と小関麗奈が主演を務めるアクションヒーロードラマ。

実際の首都高でもゲリラ的にイベント活動をしている。現在3シーズン目。

 

「MAD COP/28」:TVドラマ

:346プロダクションに所属する片桐早苗が主演を務めるポリスアクションドラマ。

派手なスタントを早苗自身がやっている事は有名。現在5シーズン目。

 

@

 

「NEXT OIL:NEXOIL(ネクソイル)」:新発見

:2015年、アメリカの総合大学の研究室にて発明された「海水から石油を精製する結晶体」。

次世代のエネルギーとして関心が集まっている。

発明したのはジョゼフ・ノイエ・イェンコ教授とされているが、ウワサでは氏の授業を選択していた学生の一人が発明し、彼はその生徒から発明を”買った”のでは?という話もある。

 




質問や感想、アドバイス等受け付けております。頂けますと有難い限りです。


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「FWC」

原田美世:美世「ぇえーと、なるべく分かり易く説明して下さい・・・と」



@1:リーグ設立までの経緯

@2:現在

@3:競技規定

@4:車両規定

@5:今年の参戦チーム紹介

 

@1:リーグ設立までの経緯

 

美世「2005年2月、当時の国際カーレース協会(ICRA)の内部でゴタゴタがあり、大規模な人事異動が行われました。その中でもF1に関わっていた多くが辞任、左遷、その他諸々で立場を追われ、トップが総崩れになったF1は開催が困難になり、事実上のリーグ消滅にまで発展しました。

 これが俗にいう「F1崩壊」と呼ばれる事件です」

 

美世「しかし、既にニューマシンの開発を終えていたチームを中心に、これに反発。スポンサーとサーキット運営を味方に付けた幾つかのチームを軸に、独自のリーグが立ち上がったのです」

 

美世「一番早く設立されたのは、米国のチーム「エイミング・モアリッチ」を中心にした「WFGC(World Formula Grand Championship)」で、「F1崩壊」後僅か3週間でリーグの初戦を開催した運営はそれなりの集客にも成功。現在のFWCに最も強い影響を及ぼしたのもこのリーグです」

 

美世「WFGC初戦の1週間後、次に立ち上がったのはマレーシアの「AYformula byKL」が中心になって立ち上げた「FCWC(Formula Championship World Circuit)」でした。日本のチームも幾つかがこのリーグで走っていたので、今でも覚えている方はいるかもしれませんね」

 

美世「この二つが立ち上がった時点でICRAの内部確変も落ち着き始め、先陣を切ってWFGCがICRAの管理に収まり、程なくしてFCWCも管理下に置かれました。ただこの時点では管轄が別々で、同じ車両規定で作られたマシンを使う、トップカテゴリーのリーグが二つある状態でした」

 

美世「この状態に待ったをかけたのは、ヨーロッパのチーム「スクーデリア・ロッソF」が立ち上げた「FCWR(Formula Car World Raceing)」と、「ジョークグランプリ」が立ち上げた「CFWS(Championship Formula World Siries)」でした。

 共にヨーロッパを本拠地にするチームが立ち上げたリーグであり、開催地もマル被りという傍から見ればずさんな体制を敷いた両リーグは、その問題をシンプルに解決しました」

 

美世「共同開催です」

 

美世「同じ既定の、それどころか元は同じ競技で使う為に用意したマシンですから当然同じレースが出来る訳で、ヨーロッパはいとも簡単にファンの下へ2005年のF1を提供しました」

 

美世「その光景を目の当たりにした他陣営も元の鞘に収めようと共同開催が増え、オーストラリアで行われる事となった全リーグの最終戦は総勢28台によるレースとなりました。

 レース後に共同会見が開かれ、4つのリーグが合流して翌2006年から新リーグ

 

「FWC(Formula World Championship)」

 

 として運営される事となりました。めでたしめでたし・・・なのかな?」

 

@2:現在

 

 

【挿絵表示】

 

 

(2015年FWC第7戦の1シーン)

 

美世「2006年、初年度の開催では当初8チーム15台で出走していましたが、ラウンドが進むと新規に参戦するチームやドライバーもあり、最終戦には11チーム25台となっていました。

 それから年々チームやドライバーは増減を繰り返し、昨年はシーズンを通して13チーム29台が出走、スポット参戦を含めるとなんと17チーム38台が参戦しました」

 

美世「そして今年は既に11チーム28台が参戦を決定しています」

 

@3:競技規定

 

美世「FWCは基本的に「耐久レース」です。既定の周回では無く、時間内での走行距離を争う形式を取っている点はこれまでのフォーミュラカーレースとの差別化が見受けられますね」

 

美世「1レースの時間は基本的に2時間と設定されていますが、シーズン中には幾つか4時間設定のレースがあり、その場合はレース中に必ず15分の休憩時間を消化する義務があります。

 ドライバーの安全を考慮しつつ、戦略的にも重要な要素が組み込まれているのも特徴ですね」

 

美世「チームは1レースに最大3台まで出走させる事が出来ます。主流は2台体制ですが、2009年にはエイミング・モアリッチが第2チームまで組んで5台体制を築いた事もありました」

 

美世「サーキットに対する規定は余り決まっておらず、F1時代からのサーキット、市街地コース、空港を利用した特設サーキット、更にはアメリカンモータースポーツ由来のオーバルトラックまで多種多様です。

 レース毎に適応させる車両セッティングはチームのウデの見せ所ですよ!」

 

@4:車両規定

 

美世「2006年時点ではチームごとに自作したシャシーを走らせていましたが、価格高騰等様々な理由から2008年、統一シャシーの供給を決定しました」

 

美世「更に2012年、安全性の向上を目的にマシンをクローズドホイール化しました。ただタイヤの上にフレームが通っているだけで、色も黒で統一されているので見た目の影響は最小限で済んでいるとは思いますね」

 

 

【挿絵表示】

 

 

(イタルGPD、F-x13RS)

 

美世「現在使われているのはイタルGPD社製「F-x13RS」で、2013年から供給されています。

 全長約5m、全幅は約2m、全高は通常1mとなっており、乾燥重量はエンジンを含め約600kg。

 燃料タンクは160Lまで入りますが、これではレースを走り切れません」

 

美世「エンジンは5社から3L、V型8気筒のシングルターボを供給されています。

 出力はほぼ1200馬力をコンスタントに出せるモノとなっており、サーキットに応じて出力傾向を変更します。総重量800キロ弱で1200馬力かぁ・・・凄いな・・・」

 

@5:今年の参戦チーム(参戦を決定したチームのみ)

 

「チーム名」/本拠地

美世の簡単解説

 

「スクーデリア・ロッソF」/イタリア

美世「伝統あるイタリアのレーシングチームです。

 近年不調と言われてはいますが、毎年必ずタイトル争いに加わるのは流石です」

 

「エイミング・モアリッチ」/アメリカ

美世「アメリカンフォーミュラで成功を収めているチームのFWC版です。

 資金力があり、かつては第2チームまで参戦させていました」

 

「菊地真一レーシング」/日本

美世「日本が誇るレーサー、菊地真一氏が立ち上げたレーシングチームです。

 ドライバーは自身の愛娘である菊地 真さんが勤めています」

 

「CFP&KL AYracing」/マレーシア

美世「マレーシアに本拠地を置くチームです。

 08年からCHP(クローバーフォース・ペトロリアム)がメインスポンサーとなっており、マシンにはイメージキャラクターを務める346プロの緒方智絵里ちゃんが描かれています」

 

「B.H.R ジョークグランプリ」/イギリス

美世「イギリスに本拠地を置く歴史の長いチームです。

 昨年から日本のB.H.R(Blood Hound Racing)とタッグを組んでいます。

 ジョークと言うと冗談な名前ですが、れっきとしたチームオーナーの名字です」

 

「バイエルン・ウィル・E・レーシング」/イギリス・ドイツ

美世「歴史あるイギリスの「ウィル・E・レーシング」。

 そしてドイツの「バイエルン・モーター・ワークス」がタッグを組んだチームです」

 

「スクーデリア・ユーロ・ファウェンティア」/イタリア

美世「歴史あるイタリアのチームです。

 アットホームな雰囲気を持つチームで、食事がとても美味しい事で有名です」

 

「クリスティーヌ・M-BチームFWC」/スイス

美世「スイス発祥のチームでシャシー開発の名門です。

 新人発掘に定評があり、ドライバーの平均年齢が低いのが特徴です」

 

「ロングビーチLR」/アメリカ

美世「アメリカンモータースポーツの伝説的レーサー達が共同で立ち上げたチームです。

 エイミング・モアリッチ第2チームの現在の姿でもあります」

 

「ウォルサム・フォレスト・ホームGP」/イギリス

美世「本拠地はイギリスにありますが、日本のレーシングチームです。

 パーソナルカラーである「マイアミ・ブルー」を纏ったマシンがコースを彩ります」

 

「B A & G J RACING」/イギリス・アメリカ&ドイツ・日本

美世「正式名称は「British American & German Japanese RACING」。

 4国いいとこどりのドリームチームですが、3人のドライバーは全員イタリア人です」




美世「これで以上ですね。
 っと、まだあったあった・・・」

美世「質問や感想、アドバイス等受け付けております。
 頂けますと有難い限りです。
 だそうですよー!」


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character & machine
346プロのキャラクター&マシン


チームに所属していないアイドルはコチラ

まだまだ増えます


 

【挿絵表示】

 

 

名前:原田美世(ハラダ ミヨ)

通名:「レッドシャイン」

車種:BCNR33

所属:ワンダラー

条件:走行距離400km未満でチューンされたクルマに乗っている

職業:アイドル

紹介:

愛車のメンテもチューニングも、当然走りも全て自らやっている今時珍しい”走り屋”。

走行距離が少ないのにハイチューンが施されたクルマが気になり、つい話し掛けてしまう。

詳細:

346プロダクションに所属するアイドル候補生。

スカウトされ、正式の書類を作成して以降1度も事務所に来なかった超問題児。

部署移転によってクビを免れ、アイドルとして本格的に活動が始まるのはまだ先。

実家は石川県なので以前は貸しガレージ、現在は所属部署の事務所で寝泊まりしている。

整備士免許を取得しており、ガレージにはエンジンクレーンまで設備されていた。

現在は346所属アイドル限定でチューナー活動をしており、定期メンテには定評がある。

チューナーとしての腕前は総合では上の中。R32、33、34なら5本の指に入るレベル。

愛車のR33は、幼少期に解体屋に転がっていたのを10年懸けて直した逸品。

もう一つの原田美世そのものと言っても良い程知り尽くしている。

 

15歳から3年間「JF1.5」に参戦していた。所属チームは「Blood Hound Racing」。

優勝経験もあり、年間ポイントランキング2位まで上り詰めた過去を持つ。

国際レーシングライセンスを所持しており、「FWC」にも参戦出来る。

 

@

名前:速水 奏(ハヤミ カナデ)

通名:「チャーミングキス」

車種:FC3S

所属:なし

職業:アイドル

紹介:

ワンダラー登録もチーム所属もしていないが、腕利きのFC乗りとして認知度は高い。

新環状・湾岸線に強く、逆にC1はあまり得意ではないらしい。

詳細:

346プロダクションに所属するアイドル。

まだ経歴は浅いが、既に4万人弱の一定ファンを獲得している。

担当プロデューサーとは幼馴染であり、恋仲を公言している。

因みにPが直接スカウトして346に所属する事となった。

普段は親公認で所属部署の事務所に寝泊まりをしているらしい。

FCは1年前に購入した中古車両を、Pの知るチューニングショップで仕上げて貰った。

 

@

名前:一ノ瀬志希(イチノセ シキ)

通名:「イコライズギフト」

車種:EVOⅣ "ASTI"

所属:ワンダラー

条件:2週間に1度どこかのPAに居る

職業:アイドル?

紹介:海外の某有名大学を飛び級で卒業し、やる事が無く帰国した時首都高に出会う。

彼女曰く首都高は”何者も平等にしてくれる贈り物”だという。

詳細:

346プロダクションに居候するアイドル候補生。

書類はあるので所属しているのだが、イロイロあってまだアイドル活動をしていない。

その為この部署に放り込まれたが、彼女曰くこの部署に来る為の行為だったとか。

実家が岩手で、親に黙って帰国した為、彼女も所属部署の事務所に寝泊まりしている。

紹介の通り現在は首都高に興味があり、独自の”首都高観”を持っている。

愛車はEVOⅣのクーペカスタムモデル”ASTI”。フィーリング重視でオイルに拘る。

 

@

名前:塩見周子(シオミ シュウコ)

車種:なし

所属:なし

職業:アイドル

詳細:

346プロダクションに所属するアイドル。

デビューしたばかりでファンらしいファンも居ないが、大物になる素質はある。

彼女は京都の実家を勘当され、まともな寝床が無かった為13部署に配属された。

理由が理由なので彼女も所属部署の事務所で寝泊まりをしている。

夜遊び好きなので当然首都高にも興味があり、つい先日ライセンスを取得した。

現在はクルマ選びの最中であり、時々奏のFCを借りて走っている。

クルマが無い限り正式な加入にはならない為、まだ通り名も持っていない。

 

@

名前:宮本フレデリカ(フレデリカ ミヤモト)

通名:「フレちゃん」

車種:FD3S

所属:ワンダラー

条件:PAで話し掛ける。

職業:デザイナー

紹介:

フランス系のハーフである稀代のテキトー娘。デザイナーとして少し知名度がある。

決まった時に決まった場所に居ない為、PAで見かけたらラッキーかもしれない。

詳細:

346プロダクションに所属するアイドル候補生。

現時点ではデザイナーの仕事を貰っているので、職業欄には「デザイナー」と入る。

フランスの血が混ざっているハーフだが、フランス語は数える程しか話せない。

実家が遠く、なんやかんや有耶無耶なまま事務所に寝泊まりしている。

テキトーな雰囲気だが中身は結構真面目なのかもしれないと、仲のいい奏は言っている。

愛車のFDは前期型のFバンパーを装着した後期型、中身はほぼノーマル。

 

@

名前:南条 光(ナンジョウ ヒカル)

通名:「レーシングナイトRX」

車種:FD3S "KNIGHT RX"

所属:ワンダラー

条件:「エクスキューションライダー」を倒す

職業:アイドル、レーシングナイトRX

紹介:

首都高の平和を守る正義の騎士。神出鬼没のドリーム・マシン。

その正体は謎に包まれているが、14歳の女の子という噂が広まっている。

詳細:

346プロダクションに所属する正義のヒーロー。

「レーシングレンジャー」の後継番組で主人公を務め、実際に同じ形のマシンで活動している。

最近はすっかり平和な首都高に「正義のヒーロー」という自分の存在が不安になっている。

愛車は池袋晶葉博士謹製のスーパーマシン。人工知能を搭載し、REで700馬力を叩き出す。

十三分に満足できる性能だが、個人的に黒一色のカラーリングが気に入っていない。

 

@

名前:小関麗奈(コセキ レイナ)

通名:「エクスキューションライダー」

車種:SW20 "The Wraith"

所属:ワンダラー

条件:PAで話し掛ける

職業:アイドル、「Full BOKKO」団長レイナ様

紹介:

復讐の為に現世へ舞い戻った怨霊だが、既に目的は達成している。

普段はあまり姿を見せないらしく、見つけたら声を掛けてみるのもいいかもしれない。

詳細:

346プロダクションに所属する悪の大王(駆け出し)。

ドラマ内では「復讐の為に蘇った怨霊」という怖い役を見事に演じている。

普段でもPAで光と会えば喧嘩もどきの掛け合いを見せる「即席ヒーローショー」は人気だが、本人達(特に光)は気が付いていない。

麗奈は薄々気が付いているが、「悪が居なければ正義もヒーローも存在しない」という自らの信念に沿って光と対峙している。

愛車のSW20カスタムは池袋晶葉博士の横流し品。直4ターボながら600馬力は出ている。

 

 

@

名前:アナスタシア(アーニャ)

通名:「ライカ・ナスターシャ」

車種:240sx

所属:なし

職業:アイドル

紹介:

その動きには畏ろしささえ覚える、大胆かつ完全無比なドリフトが特徴。

主に環状線を走り、環状線以外ではあまりその実力を発揮できない。

詳細:

346プロダクションに所属するオロシャの女神。

日本生まれのロシア育ち、ハーフで家庭内の公用語はロシア語だった。

その為未だに日本語に慣れていないが、話す事は出来る。そして”走り”は万国共通。

愛車はロシアから持ってきたRPS13の海外版。海外で流行しているカスタムスタイル。

 

@

名前:前川みくにゃん(みくにゃん)

通名:「ロータリーロキャット」

車種:FC3S

所属:ワンダラー

条件:REエンジン搭載車以外のクルマに乗っている

職業:アイドル

紹介:

猫キャラで売る新人アイドル。典型的なFC乗りで環状線は強い。

始めは男性人気獲得の為の首都高だったが、現在はすっかりはまってしまっている。

詳細:

346プロダクションに所属する猫キャラ。

地道なドサ周りで新人ながら固定ファンが相当数いる努力派アイドル。

首都高はそのドサ周りの一環として参加したのが始まりだった。

だが、仕事とプライベートでは別人の彼女も、首都高だけはそうもいかないらしい。

中古のFCを派手にカスタムした環状仕様は、あくまで仕事として来ている証明だとか。

 

@

名前:神谷奈緒(カミヤ ナオ)

通名:「レブリミットサプライズ」

車種:AW11

所属:ワンダラー

条件:PAで話し掛ける。

職業:アイドル

紹介:

PAでよくクルマ漫画の花を咲かせている少女。愛車もその影響から購入したらしい。

実車の知識もそれなりにあり、AW11を扱いこなすテクニックも持ち合わせている。

詳細:

346プロダクションに所属する太眉ツンデレ。

ある時読んだ走り屋漫画に惹かれてクルマの購入を決意し、ライセンス取得より早くAW11を購入してしまった。ライセンス取得に合わせて愛車を自らレストアしていった事もあり、AW11に関してはかなり詳しいが、漫画と現実の違いを教え込まれる事となったのは言うまでもない。

 

@

名前:北条加蓮(ホウジョウ カレン)

通名:「ROSESareBLUE」

車種:ZZT231

所属:なし

職業:アイドル

紹介:

病弱で、人生に対し諦めている所があった。だがアイドルとしてスカウトされ一転。

本末転倒だが、今では逆に、生死の境目の世界を求めて首都高を爆走する程元気である。

詳細:

346プロダクションに所属する元病弱少女。

元、ではあるが今でもそこまで体力があるわけではないので無茶は厳禁。

超能力を疑われる程かなり先まで状況を読む事が出来る。曰く生死の境目は見えているらしい。

それを利用してアザーカーや壁にスレスレまで迫る走りをするが、クルマをぶつけた事は一度も無い。

愛車は往年のスポコンスタイル。ターボ化されていない代わり、排気量がアップしている。

 

プロデューサーは彼女の婿であり、遠い親戚であり、幼馴染でもある。

数年前、大きな手術の前に加蓮は「手術が成功してからの人生」を彼に託す事にした。

そして彼は、加蓮が幼い時に言っていた夢である「アイドル」を叶えさせる為に346プロに就職し、晴れて「プロデューサー」として彼女をアイドルにスカウトした。

ついでに婿入りさせた。

 

@

名前:高峯のあ(タカミネ ノア)

通名:「No.A」(ナンバーエース)

車種:cobra'64R

所属:ワンダラー

条件:PAで話し掛ける

職業:アイドル

紹介:

一部では「未来から召喚されたサイボーグ」とまで言われているアイドル。

荒々しいマシンを手足の様に完璧に操る様は、確かに普通の人では無いかもしれない。

詳細:

346プロダクションに所属するアイドル。

ミステリアスな雰囲気を持ち、ある種の近寄りがたい存在感を持つ。

一部では「サイボーグ」や「アンドロイド」とまで言われるのも頷ける。

意外とお茶目系なヒトであり、みく、アーニャとユニットを組んでいる。

愛車のcobra'64Rはほぼノーマルのままではあるが、空力が良い為湾岸では300km/hも記録する。

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A NEW GENERATION'S 「新世代達」

TEAM NAME:A NEW GENERATION'S

HOME PitArea:芝公園PA

MAIN COURSE:C1内回り

新進気鋭のアイドルユニット「ニュージェネレーションズ」の3人が立ち上げたチーム。

マシンは3人とも違う車種であり、腕にも多少の差はあるが団結力は強い。

リーダーの本田未央はこのチームをもっと影響力のあるチームにしたいらしく、メンバー集め中。

 

名前:島村卯月(シマムラ ウヅキ)

通名:「スマイルイング」→「SmileING・pink」

車種:ST202

所属:なし→A NEW GENERATION`S

職業:アイドル

紹介:

そのひたむきな姿勢は、アイドルでも首都高でも変わらない。

マシンとテクニックがいい塩梅で拮抗しており、ハマると予想外の速さを見せる。

↓(チーム入りから)

そのひたむきな姿勢は、チームを結成してからも変わらない。

マシンとテクニックがいい塩梅で拮抗しており、ハマると予想外の速さを見せる。

詳細:

346プロダクションに所属する笑顔の眩しい頑張り屋。

ひたすらにアイドルを目指してレッスンをする傍ら、暇があれば首都高にも来ている。

愛車のST202はライトチューン。C1辺りなら結構イイ線行けるクルマに仕上がっている。

↓(チーム入りから)

346プロダクションに所属する笑顔の眩しい頑張り屋。

ひたすらにアイドルを目指してレッスンをする傍ら、暇があれば首都高にも来ていた。

同期のアイドル候補生も、首都高に誘った友人も去っていく中只一人どちらもやり続けた。

その結果346プロのオーディションに受かり、首都高でも新たなチームに加わった。

愛車のST202はライトチューン。C1辺りなら結構イイ線行けるクルマに仕上がっている。

 

@

名前:渋谷 凛(シブヤ リン)

通名:「アイオライト・ブルー」→「IOLITE・BLUE」

車種:HCR32

所属:ワンダラー→A NEW GENERATION`S

(条件:純正色に青系色があるクルマに乗っている)

職業:アイドル

紹介:

真夜中の蒼を纏い、首都高を駆ける。まだまだ経験は少ないが、素質は十分。

自車は黒だが、青系色のカラーリングを純正で持つクルマに興味があるらしい。

↓(チーム入りから)

真夜中の蒼を纏い、首都高を駆ける。まだ経験は少ないが十分な素質を持つ。

チームではエースとして活躍が期待されているが、本人は少し不満がある様だ。

詳細:

346プロダクションに所属する蒼の騎士。

学校には退屈を覚え、首都高のライセンスは学友に半ば騙されて取得した。

結果的に首都高はハマったが、学友はいつの間にか首都高から消えていた。

これからも独りで走るのかと悩みながら、彼女は首都高をひた走る。

愛車であるHCR32は環状仕様のチューンナップが施されている。

↓(チーム入りから)

346プロダクションに所属する蒼の騎士。

学校には退屈を覚え、首都高のライセンスは学友に半ば騙されて取得した。

結果的に首都高はハマったが、学友はいつの間にか首都高から消えていた。

これからも独りなのかと悩んでいる中、ある意味”同じ”だった卯月と走る事になる。

その最中で何か見つけたらしく、その走りは一層キレのあるものとなった。

愛車であるHCR32は環状仕様のチューンナップが施されている。

 

@

名前:本田未央(ホンダ ミオ)

通名:「オレンジスター」→「#STER・ORANGE」

車種:EK9R

所属:なし→A NEW GENERATION`S リーダー

職業:アイドル

紹介:

駆け出しのアイドルであり、一緒に走れる仲間を探して今日も首都高を走る。

ワンダラーではないが、同じEK9Rが相手の時は気合が入るらしい。

↓(チーム入りから)

C1をメインとする新興チーム「A NEW GENERATION`S」のリーダー。

同じ3人のアイドルユニット「ニュージェネレーションズ」のリーダーでもある。

詳細:

346プロダクションに所属するパッションリーダー。

12部署に最初に配属されたアイドルであり、後に加入した卯月と凛と共にユニットを組む。

対立しているユニットメンバーの仲を取り繕うとしているがウマくいっていない。

ユニットメンバーはどちらも首都高を走っているらしく、この場所がカギだと思っている。

愛車はEK9R。環状限定ならヘタなRやA80もチギれるマシンになっている。

↓(チーム入りから)

346プロダクションに所属するパッションリーダー。

12部署に最初に配属されたアイドルであり、後に加入した卯月と凛と共にユニットを組む。

対立してしまった卯月と凛の間を取り繕うとしたが叶わず、半ば諦めかけていた。

紆余曲折を経て、自らのプランと違うカタチながら仲直りを果たした卯月と凛を誘い首都高のチームとして新たに「A NEW GENERATION`S」を結成、チームリーダーを務める事となった。

愛車はEK9R。環状限定ならヘタなRやA80もチギれるマシンになっている。

 

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