デート・ア・ライブ~ご注文は精霊ですか?~ (ハセ)
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第一章 ご注文は異世界ですか?
第一羽 ラビットハウスでの出会い


謎の空間、そこで『それ』は何やら楽しげに微笑んだ。

そしてノイズががかったような声で言う。

 

【・・・今まで、いつだって彼は私が求めている以上の最高の結果を残してくれた】

 

十番の精霊に始まり、四番、五番、八番、九番、七番、一番・・・。

三番のあの子の力もいずれはその身に宿してくれるだろう。

そう確信しながら『それ』は動いた。

 

【今回は難易度が高いけど・・・君、いや、君たちなら大丈夫だよね。ふふふ・・・じゃあ・・・いってらっしゃい。私の可愛い子供たち】

 

【君たちの今までにない戦争(デート)を、見せてもらおうかな】

 

そして『それ』は二つの世界をつなげた。

 

 

 

 

 

 

****

 

 

ある昼下がり。

ここは木組みの家と石畳の街。

日本にありながらその情景はどことなく外国を思わせる。

そんな美しい街に喫茶店ラビットハウスはあった。

そこはどうも可愛らしい三姉妹が経営しているらしいが・・・。

 

 

「誰だ三姉妹って言ったのは!」

 

店内の掃除をしていた少女たちの1人が突然叫ぶ。

その叫び声にほかの二人の少女たちがびくりと肩を震わせてから言う。

 

「ふぇ!?突然どうしたのリゼちゃん!誰もそんなこと言ってないよ!?」

 

「ココアさんの言う通りです。…疲れているのなら少し休みますか?」

 

2人の反応にリゼと呼ばれたな紫髪の少女は赤面しながら言う。

 

「あ・・・い、いや、大丈夫だ。すまないな、チノ、ココア」

 

チノと呼ばれた少女は、はぁとため息をつく。

青の髪の左右に付いたヘアピン、そして何といっても頭の上に乗せた白いモフモフ、もといウサギが特徴的な可愛らしい少女だ。

 

「しっかりしてください…ココアさんのフォローで精一杯なんですから」

 

「む~。チノちゃん、私そんな迷惑かけてなくない?ここに来てからそれなりに時間もたったし私だってもう一人前だよ!」

 

ココアと呼ばれた少女は頬を膨らませながら反論する。

半分の花の髪飾りがトレードマークのピンク髪の少女だ。

 

「ほら、掃除だって私がいるからこんなに早く…」

 

そう言いながらココアは箒で床を勢いよく掃くが、勢いが良すぎたせいか、箒は手からすり抜け無情にもテーブルに置いてあった花瓶を破壊した。

 

「あ~あ…」

 

「ココアさん…」

 

その様子にリゼとチノが呆れた様子でココアを見た。

 

「…本当にごめんなさい。まだまだ半人前でした……」

 

チノはココアのそんな様子を見て苦笑してからから、でも今は店に人がいなかったのでよかったです、と言って塵取りをもって片づけを始めた。

リゼも、そうだなと言って雑巾をもってきて水浸しになった床をふき始めた。

 

「あ、私も手伝うよ…」

 

「「ココア(さん)はいい(です)。また何かやらかしそうだ(ですから)」」

 

「ええ〜!?」

 

二人の言葉にココアは膝から崩れ落ちた。

 

 

 

****

 

 

 

 

喫茶店ラビットハウスにてそんなことが起こっている丁度その頃、高校生、五河士道(いつかしどう)は自分の身に何が起こったのか、まだ理解できないでいた。

 

「・・・俺は確かにさっきまでは家にいて料理を作っていたはずなんだけど・・・」

 

そう先ほどまで士道は自宅にて来客が来たこともあり料理を作っていたのだ。

できたハンバーグを皿に盛りつけてテーブルに運び、ふと気が付くと前には木組みの家と石畳の街。

困惑するなというほうが無茶な話だ。

そして状況が呑み込めていないのは士道だけではなかった。

 

「ぬ!?シドー!ここはいったいどこなのだ!先ほどシドー作ってくれたハンバーグはどこだ!?」

 

膝まではあろうかという黒髪が特徴的な美少女、夜刀神十香(やとがみとおか)がハンバーグを探しながら聞いてくる。

彼女は昼食を食べに士道の家を訪れていたのだった。

そしてもう一人。(と一匹)

 

「見たことがない街ですね・・・確かにさっきまで士道さんのおうちにいたはずなのに・・・」

 

『だよね~!よしのんびっくりだよ!』

 

水色の髪に蒼玉の瞳を持つ少女、四糸乃(よしの)と、その左手にはめられたウサギのパペット、よしのんが言う。

彼女らも十香と一緒に士道の家を訪れていたのだ。

 

「・・・・とりあえずこの辺りを調べてみよう」

 

士道の言葉に二人はコクリと頷く。

そして士道は二人を連れて歩き出す。

普通の高校生なら士道のような冷静な判断、行動はまずできないだろう。

士道が冷静でいられるのは今までの経験の賜物である。

 

精霊。

発生原因、存在理由が共に不明な謎の生命体。

その出現により大災害、空間震が発生し、甚大な被害を及ぼす。

また、武力を以てしても戦闘能力が強大なためほぼ達成は困難。

しかし、そんな精霊にもう一つの対処法があった。

それは…デートをしてデレさせること!

正確に言うとデレさせてキスをすることで精霊の力、霊力を自分の中に封印してしまうのだ。

しかしそんな能力は誰もが持っているわけではない。

理由は不明だが、五河士道こそがその能力を持った、唯一の人間なのである。

士道は軍隊をもねじ伏せてしまうような精霊とデートを繰り返してきた。

それはまさに命がけのことだが強力なバックアップもあって士道はこれまで八人の精霊の力を封印してきた。

そして何を隠そう、十香と四糸乃も士道に力を封印された(もといキスをされた)精霊なのである。

このように士道は精霊にかかわることで多くの体験をしてきた。

時には死にかけるようなこともあったので、多少はこういうことに慣れているのだ。

今回も新たな精霊の仕業だろう、士道はそう考えていた。

精霊の仕業、というのは確かに当っていた。

しかし事態は思っているよりも深刻だということを彼らはまだ知らない…。

 

 

 

 

*****

 

 

「…なかなか人に出会えないな」

 

士道たち三人はしばらく辺りを歩いてみたものの特に情報も得られずにいた。

わかったことといえばここが日本であるということくらいだ。

しかし日本でこんなところは見たことがない。

街並みはそれこそ外国のものに似ていた。

 

「ぬう…シドー,お腹が空いたぞ…」

 

辺りを見回しながら歩いていると十香が早くも音を上げ始めた。

昼食を食べ損ねているので仕方のないことなのだが。

 

「そうだな、どこか空いている店を探すか。あ…でもお金ないぞ」

 

その言葉に十香がガーン!と衝撃を受けてその場に座り込んだ。

しかしそこで四糸乃が可愛らしいウサギの財布を十香に差し出してきた。

 

「あの…少ないですけど、これで何か食べましょう」

 

その瞬間、十香が顔を輝かせながら立ち上がった。

早い復活である。

 

「おお…!ありがとうなのだ四糸乃!」

 

「えへへ…」

 

『たまたま持ってきておいてよかったね~四糸乃!』

 

そんなやり取りを横目に見ながら士道はどこか入れそうな店を探す。

そして一つの店が目に留まった。

 

「喫茶店…ラビットハウス…」

 

他にもないかと見回すが閉まっていたりしてどうやらこの辺りでは入れるような店はそこだけのようだった。

 

(…ここにするか)

 

そう決めた士道は二人を呼ぶ。

 

「おーい、この店に入ってみよう」

 

「おお!よし、わかった!」

 

「わかり…ました」

 

そして三人はラビットハウスのドアを開けた・・・。

 

 

 

 

****

 

 

「私…いらない子なんだ…」

 

先ほど手伝うことを拒否されたココアはいまだ落ち込んでいた。

 

「だれもいらないなんて言ってないですよ…元気出してください。またこれから頑張ってくれればいいんです」

 

「チノの言うとおりだ。これからが大切だと思うぞ」

 

二人の励ましを受けた後、涙目になりながらココアはチノに言った。

 

「じゃあ…頑張ったらお姉ちゃんって言ってくれる?」

 

「か、考えておきます」

 

チノがそう言うとココアは満面の笑みを浮かべた。

 

「よし!これからさらにお仕事頑張るよぉ!」

 

(ちょろいな)

 

(ちょろいですね)

 

リゼとチノが呆れているとカランカラン、という音が鳴り扉が開いた。

どうやらお客が来たようだ。

そして入ってきた三人に声を合わせて言う。

 

「「「いらっしゃいませ!」」」

 

そして彼らは二つの世界を跨いだ、運命の出会いを果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
処女作ということもありわからないことだらけですががんばっていきたいと思います。
感想、評価、気軽にお願いします。


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第二羽 違う世界

チノが入ってきた三人のお客を見てまず感じたのは、なんというか、驚きだった。

というのも少年のほうはいたって普通だったのだが、ほか二人の女性が現実離れした美しさを持っていたからだ。

まず黒髪のほうの少女、モデルをやっているといわれても違和感がない体系だ。

街を歩いていたら間違いなくみんなが振り返ることだろう。

そしてもう一人の青髪の少女、とてもきれいな瞳と幼さゆえの愛くるしさを持ち合わせている。

そして何より……。

 

(ウサギのパペット……!可愛い!)

 

そう、その左手につけられたウサギのパペットも彼女の可愛さを引き立てていた。

ウサギ好きなチノにとってはそれが気になって仕方がなかった。

ちらりとチノがリゼのほうを見ると同じように驚いていた。

しかしそんな中ココアは……。

 

「よし!早速名誉挽回のチャンスだよ!」

 

……そんなに驚いていないようだ。

名誉を挽回することで頭がいっぱいらしい。

そんなことを考えていると。

 

「すいませーん、注文いいですかー?」

 

「あっ!はい、ただいま!」

 

席に座ってメニューを考えていた三人のうちの青髪の少年が声をかけてきた。

その言葉で我に返ったリゼが急いで注文を取りに向かおうとする。

しかしそこで。

 

「リゼちゃん、ここは私に行かせてくれないかな?」

 

「……大丈夫なのか?」

 

リゼが半眼で聞くがココアは自信満々に答える。

 

「大丈夫だよ!というか私、来た初日に注文取れてるよ!?」

 

「あ~それもそうだな……じゃあ、任せた」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

そう言ってココアは三人のお客のもとへと小走りで走って行った。

そして笑顔で注文を取る。

 

「お待たせいたしました!ご注文は何になさいますか?」

 

それに青髪の少年が応える。

 

「えーと、オリジナルブレンドを三つで、そのうち二つにミルクと砂糖をお願いします。パンの盛り合わせを」

 

「はい、ありがとうございます!ご注文は以上ですか?」

 

「はい……あ、あと少し聞きたいことがあるんですが」

 

「え、あ、はい。何でしょうか?」

 

注文をしっかり取れて内心ガッツポーズをしていたココアは少し困惑してしまう。

ぎこちないながらもココアが言うと少年はこんなことを聞いてきた。

 

「……天宮市、というところを知っていますか」

 

「テングウシ?」

 

「はい。天に宮って書いて天宮市なんですけど……」

 

その質問にココアはうーん、と考えるが自分が知っている限りではそんな名前のところは聞いたことがなかった。

 

「ねえ、チノちゃん、リゼちゃん。二人は天宮市って知ってる?」

 

ココアの質問に二人は顔を見合わせた後、同時に首を振ってきた。

どうやら二人も知らないようだ。

その反応を見て少年は肩を落とす。

 

「そうですか……すいません、わざわざ呼びとめたりして」

 

「いえ、大丈夫です。では、注文の品が来るまでしばらくお待ちくださいっ」

 

そう言ってココアはチノたちのもとに戻る。

 

「……うーん、注文はとれたけど質問に答えられなかったのは心残りだね」

 

ココアのそんな言葉にリゼは苦笑する。

 

「誰もわからなかったんだし、仕方ないさ。よし、早めに作って持っていこう」

 

ココアがそうだね、と言って準備を始める。

しかしチノは。

 

「……もしかしたら道に迷っているのかもしれないですし、困っているんだったら力になってあげたいです。私、もう少し詳しく 話を聞いてきます。準備、お二人にお願いしてもいいですか?」

 

チノの言葉に二人は顔を見合わせた後、チノに向かって笑顔で言う。

 

「ああ、行って来いよ」

 

「まっかせといてよ!」

 

そしてチノは二人にありがとうございます、と言ってから三人のもとに向かった。

 

 

 

****

 

 

 

 

「はあ……」

 

注文を終えた士道は頭を抱えながらため息をついた。

天宮市、自分たちのもといた場所のことを聞いてみたのだが、誰も知らないというのだ。

天宮市は世界的にも有名な、精霊の被害になった場所。

日本に住んでいれば知らないはずがなかった。

これで精霊の力で日本のどこかに移動した、という可能性はほぼ無くなってしまった。

というかこの状況、士道が中学生のころに見ていた漫画やら小説やらのものにとてもよく似ていた。

そう、これはまるで……。

 

(異世界に飛ばされたみたいじゃないか……)

 

そう、漫画などの主人公が自分とは違う世界、つまり異世界に飛ばされたような状況にそっくりなのだ。

その話を見ているときは特に何とも思わなかった、むしろ自分の身に起きてほしいとまで思ったが……実際に起きると笑えない。

……今回のこの状況、精霊が絡んできたとなると士道だけではどうにもならないだろう。

ラタトスク機関のバックアップがあったからこそ、士道は今までの精霊に対処ができたのだ。

そして新たな精霊の力で異世界に飛ばされたとなると、その精霊の力が今までの精霊たちのそれを大きく上回ることは想像に難くない。

そんなやつがもし敵意をもって襲ってきたら、自分を、そしてみんなを、守ることができるのか?

そしてみんなを守り抜き、無事に元の世界に帰ることができるのか?

 

「……士道さん、大丈夫ですか?」

 

「え?」

 

「顔色……悪いですけど……」

 

四糸乃に言われて士道がハッとなる。

どうやら顔に出てしまっていたようだ。

 

「む、シドー。何やら見知らぬところに飛ばされて不安なのはわかるがあまり思いつめるのはよくないぞ?きっと何とかなるはずだ。なあ四糸乃、よしのん、二人もそう思うだろう?」

 

「は、はい。このことは、ゆっくり……考えてみましょう。きっと、大丈夫だと思います……!」

 

『だね~。まあ気楽にいこうよ、士道君』

 

士道が守るべき存在である十香、四糸乃、よしのんに励まされてしまった。

 

(俺が励まされてるようじゃダメだな……はは、琴里に怒られそうだ……)

 

士道は今はここにいない妹の顔を思い浮かべながら苦笑する。

そして士道は頰をパンッ!と叩いて気合を入れた。

 

「ああ、そうだな。このことはゆっくり考えよう。励ましてくれてありがとな」

 

その言葉を聞いた十香も笑顔で頷く。

 

「うむ、それでいいのだ!腹ごしらえをしている間に何かひらめくかもしれんしな!ああ….…早く来ないものか……」

 

「あ、あはは……」

 

『んも~、十香ちゃんったら食いしん坊なんだから』

 

「はは、十香らしいな」

 

そうして士道も深く考えることをやめ、いつものような会話をしていた時だった。

 

「すみません、ちょっといいですか?」

 

「えっ、あ、店員さん?」

 

士道は後ろから声をかけられて振り向いた。

そこには青髪の少女が立っていた。

先ほど奥のほうにいた店員だった。

 

「急にすみません、少し困っているようでしたので……ご迷惑でなければ、少し事情を聞かせてもらえませんか?何か力になれすことがあるかもしれません」

 

「あ、えっと……」

 

店員の申し出に士道は少しくぐもってしまう。

かなりうれしい申し出なのだが、事情と言われても少し説明がしずらい……。

まさか違う世界から来ましたなんて言うわけには……。

と、そんなことを考えていると。

 

「シドー、一度、話してみたらどうだろうか?何かわかることがあるかもしれん」

 

「十香……」

 

そう言う十香の隣を見ると四糸乃もコクコクとうなずいている。

(確かに……このままでは何も進まないしな……」

そう思い店員に向き直る。

 

「あの……変な奴だと思われるかもしれないんですが、全て本当のことなので信じてもらえると嬉しいです……」

 

「な、何があったんですか……」

 

そうして士道は自分たちに何が起こったのかを店員に話した。

精霊のことだけを隠して……。

 

 

 

****

 

 

 

「ちょっと話が……凄すぎるというか……。ほ、本当のことなんですよね?からかってるわけではないんですよね?」

 

「本当なんです……信じてください……」

 

やはりというか反応は予想通りのものだった。

店員はいまだに信じられないといったような感じだったが三人と一匹の真剣な顔を見て、少し考えた後、こう言ってくれた。

 

「……わかりました、信じます。うそを言うような人には見えませんから」

 

その言葉に士道、そして十香と四糸乃の顔がパァっと明るくなる。

 

「! あ、ありがとうございます!」

 

「おお!信じてくれてありがとうなのだ!」

 

「あ、ありがとう……ございます……!」

 

「い、いえ、そんな……。というか本当に別の世界から来られたというのなら私ができることも限られますし……」

 

と、そんなことを話していると。

 

「お待たせしました、こちら、オリジナルブレンドと……」

 

「パンの盛り合わせになります!」

 

黒髪の店員と先ほど注文を取りに来た店員が食事を持ってきてくれた。

それを見て十香が目を輝かせる。

 

「おおおお……!どれもうまそうだな!いただきますなのだ!」

 

「いただき……ます」

 

『やっは~!おいしそうだねえ。ねえ四糸乃、あのパンとコーヒー、すごく合いそうだと思わない?』

 

そうして二人と一匹は運ばれてきたパンとコーヒーを食べ始めた。

 

「ここまでおいしそうに食べてもらえるとすごくうれしいね、リゼちゃん!」

 

「ああ、そうだな。……ところでチノ、何か私たちで役立てそうなことはあったのか?」

 

「あ、えっと……」

 

先ほど説明をした店員がくぐもっているのを見て士道は声をかける。

 

「あ…….やっぱり言いにくいと思うので、俺が説明します……」

 

「言いにくい?……よくわからないけど、よ、よろしく……」

 

そうして士道は先ほどの説明をもう一度行った。

途中、ピンク髪の少女は目を輝かせ、黒髪の少女は終始顔をしかめていたのが印象的だった・・・。

 

 

 




なかなか話が進まなくて申し訳ありません・・・。
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第三羽 ここでしばらく

士道が説明を終えた後、リゼはうーん、と唸りながら言った。

 

「……本当に別の世界から来たのか?流石に信じられないんだけど……」

 

しかしその言葉にココアが目を輝かせながら言い返す。

 

「リゼちゃん、この人が来たって言ってるんだから信じてあげようよ!人を疑うのはよくないよ!」

 

「ココアはなんでもすぐ信じすぎだ!人を疑うことを知れ!」

 

リゼは思わずツッコんでしまう。

そのやりとりを見て士道は苦笑いを浮かべる。

そこでチノがフォローを入れた。

 

「リゼさん、簡単に信じられないのは分かりますが、本気で困っているようですし、ココアさんと同じように信じてあげてくれませんか?」

 

チノの言葉にリゼは驚いたような顔をした後、少し考えてから笑顔で答えた。

 

「ああ、わかった、信じるよ。それにココアの言う通り、勝手に決めつけて、人を疑うなんて悪いよな。悪かった。私にも何かできることがあったら協力するよ」

 

「もっちろん、私もね!」

 

リゼに続いてココアも笑顔で言った。

 

「よかった、信じてもらえて。ありがとう!」

 

そう言って士道は三人に頭を下げる。

それに続いて十香と四糸乃も頭を下げた。

 

「そんな・・・まだ何もしてないですし、頭を上げてください。・・・そういえば自己紹介がまだでしたね。私の名前は香風智乃(かふうちの)。チノと呼んでください」

 

「私は天々座理世(ててざりぜ)だ。リゼでいい」

 

「私は保登心愛(ほとここあ)!ココアでいいよ、よろしく~!あ、もうタメ口でいいからね!堅苦しいし!」

 

ラビットハウス組の三人が三者三様の自己紹介を終える。

それに士道達がよろしく、と返してから自己紹介を始めた。

 

「俺は五河士道、よろしく、チノ、リゼ、ココア」

 

「私は夜刀神十香だ!よろしく頼む!」

 

「わ、私は四糸乃・・・です。それと・・・」

 

『よしのんだよ〜!』

 

そしてラビットハウス組の三人もよろしく、と返すがリゼがん?と言ってから四糸乃に聞く。

 

「今の・・・もしかして腹話術なのか?」

 

「あ・・・えっと・・・」

 

『んん、それは乙女の秘密だよ~リゼちゃん』

 

「・・・・すごいな」

 

四糸乃は答えなかったもののリゼはよしのんがもう一度話したことで腹話術だと確信したようだ。

しかしここでココアが言った。

 

「でもうちのチノちゃんだって腹話術できるんだよ!主に頭の上に乗ってるアンゴラウサギのティッピーを使ってね!」

 

そしてみんなの目線がチノに向けられる。

 

「や、やらないとダメでしょうか・・・」

 

「い、いや。無理にやれとは言ってないからな?」

 

困っているチノに士道がつかさずフォローを入れる。

チノはホッと息をついた。

しかしここで十香と四糸乃がチノに言う。

 

「じゃあ代わりと言ってはなんだが・・・その頭のウサギ・・・てぃっぴーとやらを触らせてもらえないか?」

 

「わ、私も・・・触ってみたい、です・・・!」

 

そう言われたチノはテーブルを見てコーヒーカップが三つあることを確認する。

確認したのは前に初めてココアにあったときにコーヒー一杯で一回モフらせるという約束をしたからだった。

そしてチノは、はいどうぞ、と言って十香と四糸乃にティッピーを渡した。

 

「ありがとうなのだ!おお〜!モフモフだな!なあ、四糸乃!」

 

「はい・・・モフモフ・・・です・・・!」

 

二人は感触が気に入ったようでモフモフを続ける。

その間、ティッピーの顔がどんどん嫌悪に満ちたものに変わる。

そして・・・。

 

『ええい!はなさんか小娘どもが!』

 

「「!?」」

 

突然ティッピーがダンディーな声で拒絶した。

そして驚いた二人がモフる力を弱めたその隙にピョーン!と飛んでチノの頭に収まる。

突然のことにモフっていた二人はおろか士道までもが固まってしまう。

そこでチノが一言。

 

「・・・今のが私の腹話術です」

 

「あ、ああ、なるほど・・・。なんだかんだやってくれるんだな・・・」

 

「そ、そういうことなら納得だ・・・」

 

「お、男の人の声だったので、少し驚きました・・・」

 

何とかごまかし切れてチノはほっと息をつく。

実は先ほどの声、本当にティッピーが発した声だったのだ。

ティッピーが話すといことを知っているのはチノとその父、タカヒロのみである。

チノはよくティッピーのことをおじいちゃんと呼んでいるが・・・・それはまた別の話である。

 

「何だかんだ言っても結局は披露してくれるチノちゃん、素直じゃないけどかわいい自慢の妹です!」

 

「ココアさんうるさいです。それに妹じゃありません」

 

ココアの謎の妹自慢を一蹴した後、チノはあいている席から椅子を持ってきて指導たちの席の近くに座った。

それに続いてココアとリゼも同じようにして座る。

そしてチノが話を切り出した。

 

「それで、私たちが何をしてあげられるかということなんですが・・・あ、どうぞ、食べながら聞いてください」

 

そう言われた士道たち三人はまだ自分たちが食事にほとんど手をつけていないことを思い出し、再び食べ始めた。

士道はコーヒーを飲み、十香と四糸乃はパンを頬張る。

それを見ながらチノはさて、と言ってから話を戻す。

 

「で、士道さんの話によると、突然全く知らないこの町に来ていたんですよね」

 

「ああ、そうだ」

 

「・・・そうなると何の準備もない状態で来たわけですね。お金などもないですよね」

 

「う・・・ああ。あ、でもこの食事代を払うくらいはあるから・・・」

 

「でも払い終わったら無一文だろう?ここから出たら泊まる場所もなく三人とも野垂死ぬだけじゃないのか?」

 

リゼの冷静な一言に士道は何も言えなくなってしまう。

十香と四糸乃も不安そうな顔をする。

しかしそこでチノが一言。

 

「はい、確かにこのままではリゼさんの言うとおりになってしまいます。そこで提案なのですが・・・最近父が平日にもこの店を開けたい、と言っていたんです。案外、開けてほしいっていうお客さんが多いらしくて」

 

「・・・ということはつまり?」

 

「はい、平日は私たちは学校なので店は開けられない。父も夜のバーの仕事で手いっぱいなことが多いです。だからもしよかったら、三人でこの店の仕事をやってもらえませんか?仕事のことは一からお教えしますので。もちろん、受けていただけるならここに住んでいただいても構いません」

 

「なるほど、それはいい提案だね!実際私も同じような立場だし」

 

ココアもその意見に賛成のようだ。

 

(・・・料理関係の仕事は大体俺ができる。オーダーは十香に任せてうらかたのしごとを四糸乃に手伝ってもらえば・・・!)

 

士道はそう考えた後チノに言う。

 

「・・・本当にいいのか?」

 

「はい、もちろんです」

 

チノは二つ返事で返す。

それを聞いた士道は言う。

 

「じゃあ・・・その提案、ありがたく受けさせてもらう!十香、四糸乃、二人もいいよな?」

 

「おお、もちろんだ!改めてよろしく頼むぞ!」

 

「よ、よろしくお願いします・・・!チノさん、リゼさん、ココアさん!」

 

そう言った三人にチノたちも笑顔で返す。

 

「提案、受けてもらってよかったです。よろしくお願いします」

 

「やったー!三人ともよろしくね!」

 

「まあ私はここに住んでるわけではないけど、顔を合わせることは多いと思うから、よろしくな!」

 

「・・・じゃあ早速ですが軽く仕事の説明をしたいと思います。幸か不幸かお客さんもいませんし・・・」

 

そう言ってチノは椅子をもとあった場所に戻し、カウンターのほうに向かった。

他のみんなもそのあとに続く。

 

「ねーね~、今日の夜、親交を深めるってことでトランプでもしない?」

 

「そういう話は仕事が終わってからしてください」

 

「・・・そうだ、せっかく世話になるんだから夕食くらいは作らせてくれ」

 

「おお!シドーの作る料理は絶品だからな!」

 

「わ、私も手伝いますっ・・・!」

 

(楽しそう・・・。さ、寂しくない、寂しくないぞー!)

 

リゼが一人心の中でもだえる中、士道はふと思った。

 

(・・・やっぱりほかのみんなもこの世界に飛ばされてるのか?もしそうなら・・・みんな大丈夫だといいけど・・・)

 

そしてその士道の予想通りに、ほかの精霊たちもこの世界に飛ばされていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえずラビットハウスでの出会いはこれでひと段落です。
更新しないうちにご注文はうさぎですか?四巻の発売、そして二期が始まったりいろいろうれしいことがたくさんありましたね。
四巻で初登場しアニメにもOPでちらっと登場しているあの人もいずれ出すつもりです・・・かなり後になるでしょうが。
感想、評価、気軽にお願いします。


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第四羽 それぞれの出会い

士道たちがラビットハウスで働くことを条件に居候をさせてもらうことが決定した丁度その頃、和風喫茶甘兎庵(あまうさあん)に、三人の客が来ていた。

 

「くっくっくっ・・・海に映る月と星々、大変美味であったぞ。次は煌めく三宝珠をもらおうか・・・!」

 

橙色の髪を後頭部で結い上げた少女、八舞耶倶矢(やまいかぐや)が芝居がかった口調で注文をする。

当たり前だがこの口調は素ではなく、単なるキャラづくりの一環である。

痛い子なのである。

ちなみに海に映る月と星々、煌めく三宝珠というのはれっきとした商品名であり、わかりやすく言うと白玉栗ぜんざいと三食団子のことである。

 

「は~い!喜んでもらえて何よりだわ!」

 

そしてその注文を黒髪の長髪の和装をした店員、 宇治松千夜(うじまつちや)が笑顔で受ける。

先ほどのメニューの名前を考えたのはほかでもない千夜なのだがこれにはある話がかかわってくる。

奇しくもそれは士道たちがいるラビットハウスがかかわってくるのだが・・・それはまた別の話である。

 

「疑問、マスター折紙、なぜ耶倶矢はあの名前で何のメニューか分かったのですか」

 

独特なしゃべり方が特徴の少女、八舞夕弦(やまいゆずる)はあきれたように聞く。

名前からもわかる通り、耶倶矢とは双子の姉妹なのである。

双子なので本当に瓜二つだが見分け方は案外簡単で、スタイルがいいほうが夕弦だと認識しておけばオーケーだ。

 

「・・・耶倶矢は俗にいう中二病を患っている。だからこそ漫画の必殺技のようなメニューが解読できたと思われる」

 

そして夕弦の疑問に無表情で淡々と答えた少女は鳶一折紙(とびいちおりがみ)

白いショートカットの髪が特徴的な人形のような美少女だ。

士道のことになるとこの様子から想像できない行為をよくするのだが・・・。

ちなみに耶倶矢、夕弦、折紙。

この三人は特殊災害指定生命体、精霊である。(もちろん力は封印済みだが)

 

そう、この三人も天宮市からこの町に飛ばされていたのだった。

耶倶矢と夕弦は二人でゲームセンターで遊んでいたところ突然この世界に飛ばされ、飛ばされてすぐに近くを銃を持ち、警戒しながら歩いていた折紙と合流した。(もちろん銃はすぐにしまわせた)

そしてその後、情報収集を兼ねて近くにあった甘兎庵に入ったのだった。

耶倶矢がメニューの名前を気に入り、注文を取りに来た千夜とすぐ打ち解けたこともあり、スムーズに千夜から話を聞き、すぐに今自分たちが置かれている状況を理解することができた。

千夜が人を疑うような性格をしていなかったのも幸いだったといえよう。

 

「はい、耶倶矢ちゃん、煌めく三宝珠お待ちどおさま。・・・にしても大変だったのね、三人とも。本当にいきなりだったのでしょう?これからどうするの?」

 

「思案、考え中です。耶倶矢がいっぱい食べるのですぐにお金はなくなってしまいそうです」

 

「そ、そんないっぱい食べてないし!一品多いだけだし!」

 

夕弦の言葉に耶倶矢が顔を赤くしながら反論する。

団子を食べながらなのでまったく説得力がないが。

しかしそこで。

 

「そこでお願いが」

 

折紙が無表情のまま千夜に言う。

 

「なあに?」

 

「私たち三人をここで居候させてほしい。もちろんいる間はできるだけのことはする。どう?」

 

折紙の言葉に八舞姉妹は驚く。

それに対して千夜はさして驚く様子もなく笑顔で答えた。

 

「ええ、家事の他に店の手伝いもしてもらうことになるけど、それでいいなら!」

 

「ありがとう」

 

そして千夜と折紙が握手を交わす。

それから一拍遅れて八舞姉妹が驚きの声を上げる。

 

「ええっ!?いいの!?」

 

「驚愕、まさか即答でOKをもらえるとは思いませんでした」

 

そんな二人に千夜は何でもないように答える。

 

「これから夏に備えて人を増やそうと思っていたところだし、ちょうどよかったの。おばあちゃんと二人暮らしだから部屋もいっぱい空いているから。じゃあ、きょうからよろしくね」

 

「・・・よろしく」

 

「よ、よろしく頼む、千夜!」

 

「同調、よろしくお願いします」

 

三人に千夜も微笑みで返す。

 

「じゃあ・・・さっそくだけれど、制服に着替えてもらおうかしら。ついてきて」

 

そして千夜に三人が続く。

 

(・・・ふふ、今日の夜、シャロちゃんにも教えてあげなきゃ。新しい店員さんが増えたって)

 

そんなことを考えて千夜は小さく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

場所は変わって同じく木組みの町の喫茶店、フルール・ド・ラパン。

店員の制服がメイド服にウサ耳なので勘違いされやすいが普通にハーブティー専門の普通の喫茶店である。

そんな店にも、異世界から少女が二人やってきていた。

 

「はああああぁぁ・・・。ここはまさしくパラダイスですねぇ~!いっそ住みたいですもん」

 

そんなことを言いながら手元にあるハーブティーには一切手を付けず、恍惚な表情を浮かべて店員を凝視しているこの少女の名は誘宵美九(いざよいみく)

紫紺の髪に銀色の瞳を持つスタイル抜群の美少女だ。

 

「ちょ、ちょっと美九!お願いだからもっと普通にしてよ!店から叩き出されちゃうかもしれないでしょ!?」

 

そんな美九を見てもうひとりの少女がたまらず声を上げた。

美九とは対照的に小柄で細身、手入れが行き届いていない髪と不機嫌そうな顔が特徴の少女、七罪(なつみ)である。

 

「七罪さん、私は普通、いつも通りですよぉ?」

 

「い、いやその・・・可愛い女の子を見たら興奮しちゃうそれをどうにかして、もうちょっと普通になれないかってことなんだけど・・・」

 

「無理です」

 

キリッ。

きっぱりと言い切った美九を見て七罪はほろりと涙を流してしまいそうになる。

そもそもなぜこんなことになったのか。

そう、あれは美九に「七罪さんは可愛いんですからもっとおしゃれな服を着ないとだめですぅ。私が選んであげますから一緒に買い物に行きましょうー!」と言われて二人で買い物に出たときのことだった。(本当は行きたくなかったのでかなりの抵抗をしたが無駄であった)

そしていろいろなものを美九に試着させられ美九が気に入ったものを買って店から出た。

しかし二人の目に飛び込んできたのは見慣れた街並みなどではなく、全く知らない別の町だったのだ。

そしていったん落ち着くために近くにあった店に入ったものの店員の衣装を見た途端、美九はずっとこの調子である。

 

(士道、四糸乃・・・みんなどこに行っちゃったのよ・・・)

 

美九の暴走を七罪が一人で止められる自信はないし、そして美九以外他に誰もいないというのはかなり心細かった。

しかしここで七罪は思う。

こんなことになっているのはもしかして私だけではないのか?

きっといつも人をだますようなことをしていたから罰が当たったのではないか。

それに偶然近くにいた美九が巻き込まれてしまったのではないのか、と。

ああ、なんということだ、罰を受けてもなお罪を重ねるというのか。

 

「あのぉ、七罪さん。暗い顔してどうしたんですかぁ?」

 

「ああ、美九、ごめんなさい。しにます」

 

「ほんとにどうしたんですかぁ!?早まらないでください!」

 

美九は慌てて七罪のことを落ち着かせる。

しばらく七罪はぶつぶつ言っていたが何とか落ち着くことができた。

そしてため息をついてから美九に言う。

 

「でも・・・本当にこれからどうするの?このままじゃ最終的にはのたれ死んじゃわない?」

 

「そうですよねぇ・・・(カシャ)。いくら私がお金を持ってるとはいえ(カシャ)、上限がありますし(カシャ)、第一元の世界に(カシャ)、帰る(カシャ)、方法が(カシャ)・・・」

 

「店員さんの写真を撮りながら話をしないでよ!てかやめてよ、ほんとに叩き出されるって!」

 

スマホのカメラ機能で店員さんを撮りまくりながら話をする美九を見て七罪は悲鳴に似た叫び声をあげた。

そしてそれを見ていた一人の店員がついにテーブルに来てしまった。

 

「・・・お客様・・・店員の写真撮影はやめてくださいっ!」

 

ウェーブの掛かった金髪の店員さんが目をきゅっと瞑りながら恥ずかしそうに注意してきた。

しかしそれは逆効果だった。

 

「キャー!可愛いですねぇ、可愛いですねぇ、可愛いですねぇ!」

 

美九は黄色い声を上げながら連射で写真を撮る。

 

「話聞いてましたかっ!?」

 

金髪の店員さんが叫ぶ。

七罪はその間何もすることはできずおろおろするだけで、美九の暴走はしばらく続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キャラを一気に出しましたが大丈夫でしょうか・・・。
七罪はアニメに出ていないので最初はどうしようか悩んだのですがやっぱり出したいので出しました。
・・・となると最新刊の二亜も出したい、となるわけですが・・・・。
13巻すっごく面白かったです。早く次が見たい!
感想、評価、気軽にお願いします。


追記 
ご指摘を受けて原作名のところをご注文はうさぎですか?にしていましたが、取扱い説明書には「小説内で主体となっている作品」とあり、世界はごちうさですがこれからの話の中心がデート・ア・ライブのもので、キャラもデート・ア・ライブのほうが多いので予備知識のこともあり変更したいと思います。


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第五羽 天使の力

ちょっと今回から後書きをごちうさの予告風にして遊ぶことにします。
読み飛ばしてもらって全然かまいませんw



やっとのことで落ち着いた美九に金髪の店員が呆れたように言う。

 

「もう・・・なんなんですかいったい・・・・」

 

「ふふ、私のマイコレクションに天使追加ですね!」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!今すぐ黙らせますから命だけはぁ!」

 

落ち着きはしたが何も悪びれる様子がない美九を見て七罪は大げさに謝る。

その様子を見て店員は頭を抱える。

このままじゃ本当に店長から出禁を喰らってしまう。

そして今度は何とか七罪を落ち着かせようとしたその時、先ほどまでとは違う真面目な顔で美九があることを聞いてきた。

 

「あのー、散々いろいろなことをした後でなんなんですが一つ聞きたいことが。ここは日本ですよね?ならば天宮市というところをご存じで?」

 

その質問に七罪はハッとなり、店員は首をかしげる。

 

「・・・やはり、ですね。少しお話を聞いていただけませんか?」

 

「い、いいけど・・・・」

 

そして美九は今までの経緯をすべて話した。

自分たちがどうやら別の世界から来たこと、そして今行く当てがなく困っていることなどを簡潔に説明した。

話し終えると金髪の店員は信じられないといった顔をする。

それを見て美九は言う。

 

「・・・信じてもらえるとは思っていません。でも無理を承知で頼みます。ほんの少し、私たちに力を貸していただけませんか?」

 

「私からも・・・お願い」

 

横で座りながら美九の話を黙って聞いていた七罪も真剣な眼差しで見つめてくる。

そこで店員は少し考えて彼二人に言った。

 

「・・・・ごめんなさい、今はちょっと無理」

 

その言葉に美九と七罪が肩を落とす。

しかし・・・。

 

「・・・ん?」

 

「・・・今は、ですかぁ?」

 

何かを気が付いたような二人の言葉に店員が微笑む。

 

「そ。人があまりいないとはいえ今は仕事中だからそろそろ怒られちゃう。もう少しで終わるから外で待ってて。とりあえずさっきの話、信じるから」

 

その言葉に二人の顔がぱぁっと明るくなる。

 

「キャー!ありがとうございますぅ!」

 

「・・・見ず知らずで迷惑までかけた私たちの話を信じてくれるなんて・・・ありがとう・・・!あ、えっと・・・」

 

桐間紗路(きりましゃろ)、シャロって呼んでね」

 

そう言ってシャロは二人のいるテーブルを離れ、店の奥に駆けていった。

 

 

 

 

 

****

 

 

それからしばらくして、二人は店を出てシャロを待っていた。

ふとそのシャロを思い浮かべながら七罪がつぶやく。

 

「・・・どんな世界にも神はいるのね・・・私が目を合わせていい人物じゃないわ」

 

「な、七罪さーん。大げさすぎますよー」

 

何ともネガティブ思考な七罪に美九は苦笑いで返す。

と、そこに。

 

「お待たせ、バイト終わったから約束通り・・・なんであなたは頭を下げるの?」

 

「・・・目を合わせるのも恐れ多いから」

 

「普通にしていいからね!?」

 

「シャロ様がそう言うなら」

 

「様もつけなくていいからっ!」

 

「わ、わかったわよ。シャ、シャロ」

 

「そうそう、それでいいから・・・。ああ、そういえば二人の名前・・・」

 

「そういえばまだ言ってませんでしたね~。私は美九です。アイドルやってまーす!」

 

「え、ええ!?アイドルなの!?確かに声がきれいだと思ったけど・・・」

 

美九の発言にシャロは驚く。

美九はその反応が嬉しかったのかふふふ~、と笑った。

そして七罪は暗い顔で自己紹介する。

 

「私は七罪・・・声がきれいなわけじゃないし可愛いアイドルなわけでも無いけどよろしく・・・」

 

「な、なんでそんなにネガティブなのよ・・・」

 

「彼女にもいろいろあるみたいですよー。で、早速なんですがシャロさん」

 

美九の言葉にシャロが頷く。

 

「ええ。だけどあなたたちの話を聞く限り、私にできそうなことは少ないわ。別の世界への行き方なんて知らないし・・・」

 

「ですよねぇ・・・」

 

「でもみたところお金はあるみたいだしぼろ屋でいいなら仲間が見つかるまで泊めてあげるわよ?」

 

「「ええっ!?」」

 

「・・・そんなに驚くことかしら。でも本当にぼろ屋だからね・・・・と、着いたわ」

 

そう言ってシャロは足を止めた。

そこに建っていたのは風情のある喫茶店だった。

美九と七罪は首をかしげる。

 

「全然ぼろ屋じゃないですよねー?」

 

「そうよね、むしろ立派というか」

 

「・・・・そっちは友達の家。私はこっちだから・・・」

 

そう言ってシャロは一つため息をついてからその店の物置に・・・いや、そうにしか見えなかったがおそらくシャロの家と思われるものの扉を開いた。

その時、美九は図らずもシャロのことを傷つけてしまったのでは、と思い固まった。

その隣で七罪は・・・。

 

「・・・ねえ美九。こんなのあんまりじゃないかな?真面目に働いて見ず知らずの私たちを助けてくれるような人がこんな・・・こんな・・・」

 

「な、七罪さん〜?」

 

七罪の謎の気迫に押されて美九は思わずたじろいでしまう。

そして七罪は何かを決心したようで美九にこう言ってきた。

 

「・・・美九、これから天使使うわ」

 

「!?・・・七罪さんそれは」

 

「どうせいつかは明かさないといけないことだと思うし。私たちが精霊だってこと」

 

「・・・そう、ですね」

 

「二人ともどうしたの?」

 

扉を開けて待っていたシャロが何やら話し込んでいる二人に向かって聞いてくる。

 

「・・・これから少し、驚かせてしまうかもしれません」

 

「?」

 

美九の言葉にシャロは首をかしげる。

そして真剣な表情をしている美九の隣では七罪が目を閉じ無言で立ち尽くしていた。

と、その数秒後、何やら表情が苦しげなものに変わっていたかと思うと、急に目をカッと見開いて叫んだ。

 

「うるせえーこんちくしょぉぉぉぉぉッ!!」

 

「ええええ!?」

 

突然そんなことを叫んだ七罪にさすがにシャロも驚く。

しかしそれだけではなかった。

七罪の体が淡く輝いたかと思うとその頭に魔女のようなつば折れ帽子が現れ、手には一本の箒が出現した。

 

「・・・い、いったい」

 

シャロが呆然と呟くと七罪が申し訳なさそうに言った。

 

「え、えっと・・・実は黙ってたことがあって・・・私たち、実は人間じゃないの・・・」

 

「に、人間じゃない!?」

 

「お、落ち着いてください―。今からちゃんと説明しますからー」

 

状況が全く読み込めないシャロに美九と七罪が精霊だということをゆっくり丁寧に説明した。

(空間震の下りでシャロが涙目になってきたので急いで力が封印されていることも伝えた)

 

「・・・まだ微妙に信じられないけど帽子や箒が突然出てきたりしてるし信じるしかないわよね・・・。というか力は封印されてるって言ってたじゃない!」

 

「それはそうなんだけど・・・なんか嫌なことを考えると力が戻ってくるのよね・・・」

 

「嫌なこと?」

 

シャロが効いてくるので七罪はうなずく。

 

「・・・ええ。ちなみに今のは学校の体育の授業、一人だけ間違えて他校の兄妹の体操着を着てきちゃったシーンをイメージしたわ」

 

「うわ・・・それは恥ずかしい」

 

「・・・それで周りの子がこういってる気がするの。なんであの子だけ体操着が違うの?おい、他校の生徒がいるぞw」

 

「やめてえええ!」

 

何とも悲しいシーンにシャロは思わず耳をふさいでうずくまってしまう。

 

「・・・まあそういうわけで力の一部を戻したわけなのよ。で、これがその力。私からのちょっとしたプレゼントよ」

 

「あ、シャロさーん、お家から離れたほうがいいですよー!」

 

「わ、わかったわ」

 

美九に言われてシャロは家から離れる。

そして七罪が天使の名を叫ぶ。

 

「〈贋造魔女(ハニエル)〉!」

 

天使。

精霊一人に一つずつある最強の武装である。

精霊一人一人で形と能力が違い、七罪の〈贋造魔女(ハニエル)〉は箒型の天使である。

そしてその力は・・・。

 

「いくわよ」

 

そう言って七罪は箒をシャロの家に向かって振りかざす。

その瞬間、シャロの家が直視できないほど輝く。

しばらくして光が収まった後には先ほどとは違う、きれいな家が建っていた。

そう、七罪の天使〈贋造魔女(ハニエル)〉は発せられる光に当てた物を生物・非生物関係無しにあらゆる物体に変化させることができる力を持っているのだ。

 

「・・・な、ななななにこれえ!」

 

「これが精霊の力なの。なんだかんだ私たちのこと信じて助けてくれたしちょっとしたお礼というかなんというか・・・本当は二階建てくらいにしてあげたかったけど霊力が足りなくて・・・」

 

「ふふ、さすが七罪さんですねー」

 

「せ、精霊凄すぎでしょ・・・」

 

突然生まれ変わった我が家をしばらく呆然と見上げていたシャロだったがしばらくしてあることに気が付く。

 

「・・・でも突然家がきれいになったりしたら近所の人から不思議がられないかしら」

 

シャロの言葉を聞いた七罪は徐々に顔を青くし、顔を俯かせて言う。

 

「・・・考えなしに勝手なことしてごめん・・・もう私はいるだけで百害あって一利なし、ね・・・・・しにます」

 

「は、はやまらないでええええ!」

 

そんなやり取りを見ていた美九は、いろいろな不都合は自分の能力でできるだけフォローしようと決め、この先の苦労のことを想像しながらもつぶやく。

 

「まぁ、シャロさんや七罪さんと毎日過ごせるだけでどんな苦労も取るに足りないことなんですがね~ 」

 

そんな美九の笑顔は誰よりも輝いていて、少しアブナイ匂いを漂わせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




タカヒロ「・・・親父、今回からまさかの後書き担当だぞ」

ティッピー「なぜワシらなんじゃ・・・そして何をするんじゃ」

タカヒロ「それは予告やメタ発言だろう」

ティッピー「それはまた凄いの・・・」

タカヒロ「あとここは出番が少ないキャラやそもそも出ないキャラがゲストで出るらしい。そもそも俺はまだ本編に出ていないしな。今回は俺たちだけだが次回から騒がしくなると思うぞ、親父」

ティッピー「そうか・・・ワシはもっと隠れ家的な喫茶店を目指していたんじゃがの・・・」

タカヒロ「その結果、経営難になって俺がジャズをして店を救うことになったんじゃないのか?」

ティッピー「う、うるさいわい!」

タカヒロ「・・・まあ今回は初回だしこのくらいでいいだろ。次回第六羽、一日の終わり。お楽しみに」




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第六羽 一日の終わり

前回から少し間が空いてしまいました。
一応出会い編はこれで終了です。
後書きには本編に出る希望が限りなく薄いあの人の登場です。
アニメのごちうさで案外モカさんの話が短めだったのでびっくりしましたw
そして予告のタカヒロさんには笑わせてもらいましたw



「な、七罪・・・落ち着いた?もう簡単に死ぬとか言わないでね?ほら、パン食べて元気出して。おいしいわよ」

 

「あ、ありがと・・・。う、うう、おいしい・・・なんだか安心する味だわ・・・」

 

「本当、おいしいですねー!」

 

「それはよかったわ。これ、私の友達が作ったのよ。実家がパン屋さんなんですって」

 

「なるほどー。ちなみにシャロさん、そのお友達を紹介してもらうことって・・・」

 

「そ、それはいいけど・・・」

 

「美九、シャロの友達にも手を出すつもり?」

 

「ソ、ソンナコトハ・・・」

 

「そのつもりじゃない!」

 

七罪が家を変化させた後、三人はずっと外にいるわけにもいかないので中に入り、とりあえず夕食を食べることにした。

なお夕食のパンは以前ココアが作りすぎてみんなに配ったものである。

と、そんなこんなでワイワイ夕食を食べていると玄関のベルが鳴った。

 

「・・・?どなたですかねー」

 

「・・・まあ大体予想はつくわ。多分、お隣さんよ。あ、これから会う機会も多いだろうしこの際知り合っておいて損はない・・・どうしたの?七罪」

 

シャロはベルが鳴った瞬間美九の陰に隠れた七罪に問う。

 

「き、基本私は人見知りだからね・・・」

 

「・・・ああ、そうなのね。でも誰にでも優しい子だし、大丈夫よ」

 

と、そんなことを言っていると玄関のほうからシャロちゃーん、という声が聞こえてきた。

やはりお隣さんの千夜であったようだ。

 

「はーい、今開けるわー」

 

そう言ってドアを開けるためにシャロは玄関に向かうが、ドアの前に立つと違和感を覚える。

ドアの向こうにいる人が千夜一人ではない気がしたのである。

そう思いながらもドアを開けると・・・。

 

「シャロちゃん、遅くにごめんなさい~!どうしても紹介したい子たちがいて・・・」

 

「かか、おぬしが千夜の言っていたシャロか。しばらく千夜の家で世話になることになった、耶倶矢だ」

 

「請願、同じく夕弦です。よろしくお願いします」

 

「・・・私は折紙、よろしく」

 

そこには思った通り千夜とシャロの知らない三人がいた。

それも千夜と同じく甘兎庵の制服を着ていた。

突然のことにシャロが固まっていると後ろから声が上がった。

 

「耶倶矢さん、夕弦さん、折紙さん!皆さんもやはりここに来ていたんですねー!」

 

「驚愕、美九と七罪がいます」

 

「「え」」

 

 

 

****

 

 

その後、偶然の再会を果たした五人はシャロの家で話し合いをすることになった。

まずは美九が話を切りだす。

 

 

「いやー、まさかこんなに早く会えるとは思いませんでしたよー。で、さっそくなんですが耶倶矢さんたち三人はこうなったことについて何かご存じなんですかー?」

 

「いや、我らもそのことについては全く心当たりがないのだ・・・」

 

美九の質問に耶倶矢が申し訳なさそうに答える。

七罪がそれを聞いて表情を曇らせる。

 

「やっぱりそうなのね・・・」

 

「・・・この手の話はやはり精霊が関わっていると考えるのが妥当。まずは琴里に会ってラタトスク機関に協力してもらうしかない」

 

「同意、マスター折紙の言うとおりだと思います。しかし琴里はともかくラタトスク、というかフラクシナスはここに来ているのでしょうか?」

 

「・・・可能性はゼロではないと思う。とりあえず明日以降、美九と七罪は士道や琴里を探してほしい」

 

折紙の言葉に美九と七罪はコクリとうなずいた。

しかしここで美九が折紙ら三人に聞く。

 

「あ、でも折紙さんたちはどうするんですかー?」

 

「・・・私たちは居候させてもらう代わりに千夜の家でバイトをしなきゃだから」

 

そう言って折紙はシャロと話し込んでいる千夜のほうをちらりと見た。

 

「???シャロちゃん何を言っているの?そんなことあるわけないでしょ?」

 

「私だって最初は信じられなかったわよ・・・。だけどね、あそこにいる七罪って子が私の家を・・・」

 

千夜はシャロから聞いた精霊関係の話に絶賛混乱中のようだ。

その様子に耶倶矢が苦笑いしながら言う。

 

「我らが今着ている服は千夜の店の制服なのだ。まさか和服とは思わなかったがな」

 

「ああ、なるほど・・・」

 

七罪がそれを聞いて腑に落ちたというような顔をする。

そして一通りの話が終わり、夕弦が言う。

 

「提案、今日はもう遅いのでとりあえずこれで終わりにしませんか」

 

「そうですねー。隣ならすぐ会えますし、今ここでこれ以上話しても何かが変わるとは思えませんし」

 

「ふむ、じゃあそうするとしよう千夜、かえ・・」

 

「あ、あなたたち、世界を滅ぼすの!?」

 

「どんな説明聞いたらそーなるの!?」

 

その後取り乱す千夜を何とか落ち着かせて三人は千夜と甘兎庵へ帰って行った。

 

「・・・さて、今日はなんだか疲れたし、私たちもお風呂入って寝ましょ」

 

「質問なんですけどお風呂はご一緒しても?」

 

「何されるかわかったもんじゃないし却下よ!」

 

「・・・そうですかぁ、それは残念です。じゃあ代わりに七罪さんをモフモフしてましょうかねー」

 

「ひっ・・・」

 

美九のそんな言葉に七罪はビクッと肩を震わせてから立ち上がって逃げ出し、それを美九が追いかけ始めた。

シャロはそんな様子を見ながらこれからの苦労を思い、頭を抱える。

 

(・・・でもずっと一人だったし、こういうのも悪くない、かな)

 

そんなことを思い、シャロは小さく微笑んだ。

 

 

 

****

 

 

時刻は少しさかのぼり、ここはラビットハウス。

士道たちに軽く説明を終えた後、特に客がたくさん来ることもなく閉店の時間を迎えた。

そのあとリゼは自分の家に帰り、士道たちはチノの父、タカヒロに挨拶していた。

 

「君たちが新しく明日から働いてくれる士道君たちだね。チノから話は聞いた。よろしく頼むよ」

 

そう言ってチノの父、タカヒロが笑顔で士道達に言ってくる。

凄くダンディーな方だ。

 

「突然申し訳ありません・・・。五河士道です、しばらくお世話になります。こっちが十香と・・・」

 

「うむ!よろしくお願いするのだ!」

 

「もう一人が四糸乃です」

 

「よ、よろしくお願いします・・・」

 

「ああ、チノやココアくんと仲良くしてやってくれ」

 

タカヒロはそう言うと店の方に向かっていった。

ティッピーがチノの頭からぴょん、と飛びタカヒロの頭に乗る。

それを見てチノが言う。

 

「ラビットハウスは夜になるとバーになるんです。父はそのマスターです」

 

「へぇ、そうなのか・・・なんだか裏に通じてそうだな」

 

「ココアさんもそんなこと言ってましたがそんなことは全くありませんよ・・・」

 

士道の言葉にチノが半眼を作りながら呆れたように言う。

 

「いや、別にそれを期待したわけでは・・・と、これからどうするんだ?」

 

「うーん、お風呂もまだ沸いてないし夕食にしようよ、チノちゃん」

 

「夕餉か!賛成だぞ!」

 

士道の言葉を受けてココアが提案する。

十香もそれに大賛成のようだ。

 

「ではそうしましょう。・・・今日は何にしましょうか・・・」

 

チノが悩んでいると士道が言う。

 

「迷ってるなら今回の夕食、俺に任せてくれ。料理は結構得意なんだ。みんなは食器の用意だけしてくれればいいからさ」

 

この言葉で士道の料理に対する自信を感じ取ったのだろう、チノが少し遠慮がちに言う。

 

「・・・じゃあ、お言葉に甘えて、お願いしてもいいですか?」

 

「ああ、任せといてくれ!」

 

チノの言葉に士道は笑顔で答えた。

 

 

 

 

****

 

 

その後士道はキッチンへ向かい、手際よく料理を作っていった。

他の四人もできた料理を運んだりするなど手伝いをし、テーブルは士道の作った料理で埋められていった。

 

「・・・よし、こんなもんだろ。いつもの癖で残ったら翌日の弁当にも使いまわせるようなメニューにしちまったけどな・・・」

 

「いや、これは美味しそうだし絶対に残らないと思うよ!本当に凄い!」

 

「さすが士道さん・・・です・・・!」

 

できた料理を見てココアと四糸乃が賞賛の声を上げる。

士道は少し照れくさそうに頬をかいた。。

そして十香は待ちきれないといった様子で言う。

 

「も、もう食べてもいいか?」

 

「そうですね。冷めないうちに食べましょう。いただきます」

 

『いただきまーす!』

 

チノの声に続いてみんながそう言い、箸を手に取り食事を始めた。

まず卵焼きを口にしたココアが目を見開く。

 

「お、美味しい!なんでこんなフワッと作れるの!?」

 

「まぁコツがあるんだよ。今度暇があったら教えるよ」

 

「し、士道さん、この唐揚げ美味しすぎです・・・!ど、どんな味付けをしたんですか?」

 

と、隣からチノがそんなことを聞いてくる。

それに士道はニヤリと笑いながら言った。

 

「ふっふっふ、お目がたかいな。しかしそれは五河家秘伝。隠し味は教えるわけには・・・」

 

「そうなんですね・・・。うーん・・・もしかしてリンゴとタマネギですか?」

 

「速攻でバレた!?」

 

士道が悲鳴にも似た声を上げるが十香が笑っていう。

 

「まぁレシピなどはバレても良いではないか!美味しければいいのだ!今日も最高だぞ、シドー!」

 

「と、十香さん、皆さんの分も残るように食べなきゃ・・・」

 

などと言葉を交わしながら楽しく食事は進んでいった。

そして多めに作ったにもかかわらずココアの言った通り本当に完食して見せたのだった。

 

 

 

****

 

その後、五人は交代で風呂に入ったのち、ココアがやりたいというトランプをした。

十香と四糸乃は初めてだったのでルールを知るところから始まった。

ルールが比較的簡単ということでババ抜きをしたのだが、ポーカーフェイスが苦手な十香となぜか言い出しっぺのココアがとてもよく負けた。(なお、四糸乃はよしのんのサポートもあり負けは少なく、チノに至っては無敗だった)

結局一番負けが多かったのはココアで、トランプをやけになってぶちまけてババ抜きは終了した。

そしてチノが時計を見て言う。

 

「もうこんな時間ですね・・・私とココアさんは明日学校ですし、今日はもう寝ましょう」

 

「ああ、そうだな。寝る部屋はどうすればいいんだ?」

 

士道が聞くとチノは付いてきてください、と言って部屋を出た。

みんながその後に続く。

そして一つのドアの前で止まった。

 

「この部屋が空いているので士道さんはここを使ってください。それと申し訳ありませんが空いている部屋はもうないので十香さんと四糸乃さんは私たちの部屋で・・・えっと・・・」

 

チノが自分が勝手に部屋割りを決めていいのかと思い、少しくぐもったところでココアが十香に言った。

 

「じゃあ十香ちゃんは私の部屋に来なよ〜!」

 

「うむ、わかった!よろしく頼むぞ、ココア!」

 

チノは空気を読んで助けてくれたココアに心で礼を言ってから四糸乃の方を向く。

 

「・・・じゃあ私の部屋には四糸乃さんですね。よろしくお願いします」

 

「は、はい!」

 

「じゃあまた明日!みんなおやすみ〜!」

 

ココアがそう言い、みんなもおやすみ、と返してそれぞれの部屋に向かった。

チノも四糸乃と一緒に自室に向かう。

そして部屋に入って明かりをつける。

 

「・・・ベッドが一つしかないんですがそれなりに広いので二人で寝れるとは思います。狭かったら言ってくださいね」

 

「は、はい、わかりました」

 

そして明かりを消し、二人は背中合わせでベッドに入る。

お互い、一言おやすみなさい、とだけ言って目を瞑る。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

普通、女子ならここで何か話したりもするのだろうが、お互い話すことがそこまで得意ではないため、すぐに沈黙が訪れる。

 

(こ、ココアさんならこんなことにはならないんでしょうね・・・私も見習わなきゃ。四糸乃さんとも仲良くなりたいですし・・・)

 

そう思い四糸乃に何か話をしてみようと話題を考えるが、特に思いつくことはない。

しかし。

 

「あ、あの、チノさん!」

 

「え、あっ、はい!」

 

突然四糸乃が話しかけてきたのでチノは驚いてしまう。

とりあえず返事をして四糸乃の方を向くと四糸乃もこちらの方に顔を向けていた。

 

「えっと・・・チノさんの好きな食べ物ってなんですか?」

 

「えっ、好きな食べ物・・・ですか?」

 

チノがキョトンとして四糸乃に問うと顔を真っ赤にして四糸乃が言う。

 

「えっと、私、もっとチノさんと仲良くなりたくて。それで何か話さなきゃって思って、えっと、その・・・あ、あうう・・・」

 

そんな四糸乃の話を聞いてチノは思う。

 

(そう考えていたのは私だけじゃなかったんだ・・・)

 

そしてチノは少し笑顔になって答える。

 

「私も何かお話ししたいと思ってました。そうですね・・・やっぱり好きな食べ物といったらコーヒー関係の物ですかね」

 

「! コーヒー・・・そうなんですね・・・!とっても素敵だと思います・・・!私は・・・士道さんに作ってもらった親子丼が好き・・・です!」

 

「士道さん、本当になんでも作れるんですね・・・今度是非作ってもらいたいです」

 

そんな感じで二人はその後も笑顔で話を続けた。

このこともあり、普段人と接することが得意ではない二人はとても仲の良い友達になる事が出来たのだった。

 

 

 

 




タカヒロ「さて、今回も後書き担当だな。出会い編はこれで終了らしい。・・・今回の士道くんの唐揚げの下り、デート・ア・ジャッジメントの小説ネタらしいんだが気付いてくれる読者はどのくらいいるのか・・・」

ティッピー「別にわかってもらえなくてもいいじゃろ・・・」

タカヒロ「・・・それと親父、何故か今回から次回のプロットが届かなくなったんだが・・・これじゃ予告ができない」

???「ふふ、困っているようだね!」

ティッピー「だ、誰じゃ!?」

二亜「私の名前は二亜!身に纏っているシスターっぽい霊装からわかると思うけど精霊でっす!二人と一緒に予告をするために参った!てかさ、話変わるけどさ、この霊装エロいと思わない?足の付け根んとこスリットずっばー入ってんの。全体的に不思議素材で半透明だからうっすら体のライン見えちゃうしさぁ。ねぇどう思うよティッピー」

ティッピー「い、いきなり出てきてなんじゃこの娘は!?」

タカヒロ「親父、顔が赤いぞ」

ティッピー「うっさいわい!」

二亜「はっはっはー!からかい甲斐があって楽しいねぇ。まぁ私を詳しく知りたい人はデート・ア・ライブ13巻を読んでくれればいいよ。全国の書店で絶賛発売中です」

ティッピー「ここでまさかの宣伝じゃと・・・」

タカヒロ「・・・で、君がここに来たということは次回に関して何か知っているからなのかい?」

二亜「あー、それは知らないけど多分これで調べろってことだと思うよ」

ティッピー「な、なんじゃ、急に本が出てきおった!」

二亜「これは私の天使、囁告篇帙〈ラジエル〉!私の知りたいことをなんでも教えてくれる優れもの!これで次回のタイトル調べろってことなんだろうねー」

タカヒロ「なるほど・・・じゃあさっそく頼むよ」

二亜「あいよー、では・・・囁告篇帙!」

タカヒロ「ああ、あと次回の話の内容まではいわなくていからな」

二亜「私はネタバレするの嫌いだからそんなことしないよ。と・・・出た出た。次回第七羽のタイトルはファントムの狙い。ちょっとは話が動くかもね。お楽しみに〜!」


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第七羽 ファントムの狙い

夜も更け、街の灯りもまばらになってきた頃、ノイズ、としか表現ができない姿をした者が高台から街を見下ろしていた。

この人物はかつて士道達の前にも何度か姿を見せてはいるがその目的を始め多くのことは分かっておらず便宣上〈ファントム〉と呼ばれていた。

ファントムはただの人間を精霊に変える力を持っているらしく現に精霊達の何人かはファントムとの接触によって精霊化していた。

そのファントムがノイズの中で微笑みながら満足そうに呟く。

【ふふ、無事にみんなヒトと接触してくれたようだね。候補は・・・4人、いや、5人かな?上手くいくといいけど】

 

そう言ったあとファントムは後ろの森の方を向いて誰かに話しかけるように言った。

 

【ねえ、君もそこに隠れてないで出ておいでよ。無理やりこの世界に連れて来ちゃったお詫びに少し目的を話してあげるから】

 

「あらあら、気づいておられましたの」

 

何もいないはずのところから突然声が響く。

そして影の中からゆっくりとその声の主が姿を現した。

黒と赤のドレスを身にまとった美しい少女だ。

そしてその左目は何故か時計となっておりカチカチと時を刻んでいる。

ニヤリ、と笑いながら少女は言った。

 

「ではお言葉に甘えてわたくしまで巻き込んで何をしようとしているのか、話していただきましょうか」

 

少女の言葉を受けてファントムは静かに話し始める。

 

【私の目的はね、〈ナイトメア〉時崎狂三(ときさきくるみ)。この世界で特殊な精霊を作ることさ。君たちに少し協力をしてもらってね。ほら、あっちだと邪魔が多いだろう?】

 

ファントムの言葉に狂三と呼ばれた少女が眉をひそめる。

 

「・・・自らの脅威を自ら作れとおっしゃいますの?わたくしはもとより他の精霊さん達もあなたに協力するとは思えませんわよ?」

 

【大丈夫、君たちはこの世界でただ霊力を使ってくれるだけでいい。それで私の目的は達成される】

 

「・・・それがこの結界と関係しているということですの?」

 

狂三の言葉にファントムは小さく驚く。

 

【へぇ・・・君は気がついていたんだね。ご名答だよ。この結界の中で霊力を使うとその一部が私の手元に来るようになってる。かつての凶禍楽園(エデン)を改造して使ってるんだけど・・・君たちは覚えてないか】

 

そう言ってからファントムは狂三に一つの宝石を見せた。

それこそまさに精霊の力の結晶、霊結晶(セフィラ)だった。

しかしその霊結晶は透明で一部がエメラルドになっているのみだった。

 

「その霊結晶(セフィラ)は・・・」

 

狂三の言葉にファントムが頷きながら答える。

 

【そう、空の霊結晶(セフィラ)さ。君らが霊力を使えばここに集まっていく・・・もう既にハニエルの力が溜まったよ。・・・君たち全員の力が溜まったらこれは完成する】

 

ファントムのその言葉を聞いて狂三はニヤリと微笑む。

 

【ではそれを知ったわたくしが霊力を使わなければいいのではありませんこと?このことを話したのは愚策でしたわね】

 

狂三が勝ち誇ったようにそう言うと今度はファントムが笑って言った。

 

【でも君たちは霊力を使うと思うよ】

 

「・・・どういうことですの?」

 

【今ここにいるのは本体の一部だけど、この世界の支配者は私。つまり私を倒さないと元の世界には帰れない。帰りたいんでしょ?元の世界へ】

 

ファントムがそう言った瞬間、狂三は動いた。

足元の影から古式の歩兵銃と短銃が飛び出し、狂三の手に収まる。

そしてそれをファントムに向けると何のためらいもなくその引き金を引いた。

狂三の攻撃はまさに一瞬だったがファントムはその場から跳躍して回避する。

そして地面に降り立ったファントムは狂三に笑いかける。

 

【ほら、やっぱり使った】

 

「・・・・わたくしはこんなところでモタモタしている暇はありませんの。ここであなたを倒して元の世界に帰らせていただきますわ。さぁ、おいでなさい。〈刻 々 帝(ザアアフキエエエル)〉!」

 

狂三が天使の名を呼ぶと、その背後に巨大な時計が現れた。

〈刻々帝〉、時間を操る能力を持った強力無比な天使である。

その羅針盤の数字の七から霊力が溢れ出て、狂三の持つ銃に込められる。

そしてファントムにそれを向けて放った。

 

「〈刻々帝(ザフキエル)〉、【七の弾(ザイン)】!」

 

【・・・・っ!】

 

ファントムはまたもその場から跳躍し、それを避ける。

狂三が放つ追撃も空を縦横無尽に飛び回ることで回避していた。

しかし、ただそれだけで終わる狂三ではなかった。

 

「わたくしたち!」

 

狂三がそう叫ぶと、なんと足元の影から何人もの狂三が現れた。

その数、十人。

ザフキエルの能力で生まれた過去の狂三たちだ。

本体の指示を受け、分身体が一斉にファントムに襲いかかる。

しかしファントムは飛びかかってくる狂三たちもギリギリのところでかわしていく。

そこで本体の狂三が新たな弾を放った。

 

「〈刻々帝(ザフキエル)〉、【一の弾(アレフ)】!」

 

放たれた弾はファントムではなく分身体の狂三に命中する。

その瞬間、分身体の狂三の姿がかき消え、次の瞬間にはファントムを捉えていた。

一の弾(アレフ)】は当てたものの時間を早め、高速移動を可能にするのだ。

 

【くっ・・・】

 

ファントムが分身体の狂三を引きはがそうとするが、もう遅い。

狂三はもう一度引き金を引いた。

 

「【七の弾(ザイン)】!」

 

ついにファントムにその弾が命中する。

その瞬間、ファントムは動きを止めたまま空中に静止する。

七の弾(ザイン)】は命中した相手の時間を止めるのだ。

そして狂三たちは両手の銃に霊力を込め、四方八方からファントムを撃った。

そしてしばらくして【七の弾(ザイン)】の効果が切れ、ファントムの時間が動き出す。

多数の霊力弾で撃たれたファントムは空中から真っ逆さまに地面に落ちた。

その衝撃で土煙があがる。

 

「・・・・・・」

 

狂三はジッと落ちたファントムの方を見つめる。

そして土煙の先に起き上がる人影を見た。

 

「さすがにやるね、しっかり刻々帝の力を使いこなしてくれてて嬉しいよ」

 

ファントムは先ほどまでのノイズがかかった声とは違う、しっかりとした少女の声でそう言った。

白い制服を身につけておりサイドテールの髪をしている少女だ。

狂三はその姿を見て言う。

 

「・・・あれだけやってノイズか剥がれただけですの。しかもその姿・・・」

 

そう、狂三は見たこともないファントムの姿に覚えがあったのだ。

まさにそれは。

 

「そう、万由里(まゆり)の姿を借りてる。本当の姿をわざわざ見せる必要はないと思ったからね」

 

「趣味が悪いですわね・・・士道さんが見たらなんとおっしゃいますことやら・・・」

 

狂三がため息をつくように言うがファントムは特に気にした様子もなく続ける。

 

「・・・さて、君の霊力は十分集まったし、今日のところはお別れだね」

 

そう言ってファントムは新たにエメラルドの他に一部が黒に染まった霊結晶を見せた。

 

「・・・わたくしが逃すとお思いですの?」

 

狂三がそう言うとファントムはニヤリと笑って言った。

 

「ただ逃げるだけじゃない。今度はこっちからも仕掛けるよ」

 

その瞬間、霊力が渦巻きファントムの体を包んだ。

そしてその霊力が精霊の最強の鎧、霊装を作り出す。

その霊装、それこそ普通の服にしか見えないが銃の弾丸程度なら簡単にはじいてしまうほどの強度を誇るのだ。

さらに霊力でファントムは純白の翼を形成し、天高く飛翔した。

そして天使(その名)を叫んだ。

 

雷霆聖堂(ケルビエル)!」

 

その瞬間、ファントムの背後に濃密な霊力が渦巻き、巨大な球体が出現する。

翼や歯車といった複数の構造物が付いており、球体部分の無数の恐ろしい眼球が狂三を睨み付ける。

 

「いくよ」

 

そう言ってファントムは手を掲げてから振り下ろす。

それが合図となり雷霆聖堂の眼球から無数の霊力弾が放たれた。

 

「・・・・っ!」

 

雨のように降り注ぐ霊力弾を狂三は何とかよけようとするがさすがに数が数である。

よけきれず分身体が何体か倒されてしまう。

このままでは全滅は時間の問題である。

 

「こうなったら・・・」

 

本体の狂三は近くにいた分身体を盾にし、一瞬の時間を作り出す。

そして自らをあの弾丸で打ち抜いた。

 

「【一の弾(アレフ)】」

 

その力で狂三は一気に霊力弾の範囲外に移動する。

それと時を同じくして狂三の分身体は全滅した。

そして・・・。

 

「逃げられましたわねぇ・・・・」

 

そう、その一瞬でファントムは姿を消していた。

狂三は悔しそうに歯噛みする。

そしてポツリとつぶやいた。

 

「正面から戦ったら勝ち目はない、ですわね・・・。さて、どうしたものでしょうか・・・」

 

そして狂三は影に飲み込まれ姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二亜「いろいろとこっちの方が都合がいいので移行しました予告コーナー!本日のゲストは映画限定キャラ万由里ちゃんです!」

 

万由里「ん・・・よろしく」

 

タカヒロ「万由里君か・・・確かこの前の人気投票で一位になった子だったね。おめでとう」

 

二亜「そういやそうだったね~。おめ~」

 

ティッピー「名誉なことじゃな」

 

万由里「なんていうか・・・その、ありがと」

 

二亜「あー・・・その頃は私は影も形もなかった・・・いや、別に嫉妬とかしてないよ?うん」

 

タカヒロ「ちなみにその人気投票、作者は四糸乃君に十万票入れていたようだ・・・」

 

二亜「頭大丈夫かなあの人」

 

万由里「もう手遅れなのかもね」

 

ティッピー「ひどい言われようじゃな・・・・」

 

二亜「・・・それはそうと今回の話、万由里ちゃんの登場が微妙過ぎない?もう本人が登場したとは言えないでしょこれ」

 

万由里「まあ私は消えちゃったわけだし・・・・それは仕方ないって割り切るわ。けど、そうだな・・・かなうなら何でもないような一日を士道たちと過ごしてみたかった、なんてね」

 

タカヒロ「・・・・・・・」

 

ティッピー「・・・・グスン」

 

二亜「・・・・うん、オッケー、任せといて」

 

万由里「え?」

 

二亜「私がその何でもないような一日を描いてあげるよ。囁告篇帙(ラジエル)があれば私が描いたことを現実にできる」

 

万由里「そ、そんな夢みたいなことが・・・・」

 

二亜「夢を作るのが漫画家の仕事だよ。っしゃできた!」

 

ティッピー「早くないかの!?」

 

二亜「細かいことは気にしない!じゃあ、行ってらっしゃい万由里ちゃん!」

 

 

***

 

タカヒロ「行ったな・・・・」

 

二亜「そうだね・・・んじゃ、こっちも仕事終わらせますか。次回のタイトルはっと・・・【始まる木組みの町の生活】・・・これはまた平和そうなタイトルだね。お楽しみに」

 

ティッピー「それはそうと二亜よ」

 

二亜「ん?」

 

ティッピー「万由里の話・・・なんというタイトルにしたのじゃ?」

 

二亜「・・・・【万由里アラウンド】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一か月ぶりの更新になってしまいました・・・。
モン〇ンの魔力恐るべし・・・。
次回はもっと早く更新できるようにがんばります。
予告が本文に入ったのは後書きのところで書いていたら誤って消してしまったからです・・・。
感想、評価、気軽にお願いします。


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第八羽 始まる木組みの町の生活

また間が空いてしまいました・・・今年もよろしくお願いします


人知れず戦いが終わり、木組みの街はいつも通りの朝を迎える。

暖かな太陽の光が窓から差し込み、少女を照らした。

 

「う・・・・ん・・・」

 

小さく呻いてから青髪の少女、チノは目を覚ました。

そして眠そうに目を擦ってから隣を見る。

そこには昨日から一緒に暮らすことになった少女、四糸乃が眠っていた。

歳か近いからだろうか、四糸乃とは破格のスピードで友達になることができた。

ココアが初めて来た時もこんなに早くは打ち解けなかった気がする。

・・・まぁそのココアの影響でチノが変わってきているだけなのかもしれないが。

そんなチノは四糸乃の寝顔を眺めながら昨日の夜に話したことを思い出して顔を綻ばせる。

と、そこでチノが起きた気配に気がついたのか、四糸乃も目を擦りながら起き、小さく伸びをした。

 

「ん・・・ふぁ・・・。・・・あ、チノさん、おはようございます」

 

『んん、気持ちがいい朝だね〜!チノちゃん、おっはよー!」

 

眠そうにあくびをしながら四糸乃がチノに挨拶をする。

それに比べてよしのんはかなりハイテンションだ。

その二人にチノも微笑みながら挨拶を返した。

 

「はい、おはようございます、四糸乃さん。眠いですよね、昨日いっぱいおしゃべりをしちゃいましたから」

 

「はい・・・でも、楽しかった・・・です・・・!」

 

「わ、私も楽しかったですよ」

 

笑顔で四糸乃に楽しかったと言われてチノは少し照れてしまう。

自分の気持ちも何とか伝えた後、チノはじゃあ早速ですが、と言い四糸乃に説明を始めた。

 

「今日からお店で働いてもらうということなので制服をお貸しします。お店の中では基本制服でお願いしますね」

 

「わ、わかりました」

 

「じゃあ取ってくるのでちょっと待っててください」

 

そう言うとチノは可愛らしいうさぎのスリッパを履いて、部屋を出て行った。

そして数分後、昨日チノたちが着ていたものと色違いの緑色の制服を持ってやって来た。

そしてそれを四糸乃に手渡しながら言う。

 

「この制服は母が私が大きくなった時に友達と一緒に働けるようにと作ったものなんです。まさかこんなところで役に立つとは思いませんでした」

 

「そうだったんですか・・・大切に・・・着ます。ありがとうございます」

 

そう言って四糸乃は制服を受け取った。

昨日の話の中で、チノの母はもう亡くなってしまったことを四糸乃は聞いていた。

だからこそこの制服がどれほど大事な物かわかったのだ。

そしてチノは学校の制服に、四糸乃は今しがた貸してもらった制服に着替えると、二人で朝食を食べるためにキッチンに向かう。

そして階段を降りると、キッチンの方から話し声が聞こえてきた。

いつもはチノの父、タカヒロが一人で料理をしているだけなのだが・・・。

不思議に思いながらキッチンの方へ行くとタカヒロともう一人が朝食を作っていた。

 

「お、二人ともおはよう。よく眠れたか?」

 

青髪の少年、士道が入ってきた二人に気がついて話しかけてくる。

どうやら早起きをしてタカヒロの手伝いをしていたようだ。

 

「お、おはようございます、士道さん。ありがとうございます、朝食を作っていただいて」

 

「まぁこれからしばらくお世話になるんだし、これくらいはな。俺は弁当をメインで作ったから、今日のお昼を楽しみにしててくれ。・・・お、四糸乃は制服貸してもらったのか」

 

「あ、はいっ、チノさんが貸してくれました」

 

「緑の制服なんだな、似合ってる。可愛いと思うぞ、四糸乃」

 

士道にそう言われて四糸乃はボンッ!と顔を赤くする。

 

「あ、あうぅ・・・あ、ありがとう・・・ございます・・・」

 

「・・・そういう事をさらっと言えちゃうところがもうアレです・・・」

 

チノが少し呆れたように言う。

と、そんなことを話しているとドタドタと階段を下りる音が聞こえ、ドアが勢いよく開かれる。

 

「ヴェアアアア!チノちゃんが起こしてくれなかったぁ!遅刻しちゃ・・・・あ、あれ?みんなまだ居る・・・」

 

大慌てで現れたのは十香を背負ったココアだった。

二人ともパジャマのままである。

そして背中の十香はというと・・・。

 

「ぐぅ・・・つなこパン・・・・」

 

何やら美味しそうな夢を見ているようだがつなこパンとは一体。

 

 

 

 

****

 

その後、十香を何とか起こし、みんなで朝食を食べた。

チノによるとココアが一人で起きるのは奇跡らしい。

何故起きられたかはおそらく寝相が悪い十香がぶつかったからということで決着がついた。

ココアはしきりに自力で起きたと主張していたが・・・。

そんなこんなで朝食を食べ終わり、ココアと十香も着替え、登校する時間になった。

 

「じゃあ、行ってきます。お店、頑張ってください」

 

「行ってきまーす!」

 

「ああ、気をつけてな」

 

「行ってらっしゃい・・・です」

 

「うむ、行ってらっしゃいなのだ!」

 

こうして外でチノとココアを見送った後、三人は店を開ける準備を始める。

ちなみに十香と士道の制服はバータイムのものだ。

 

「ふああ・・・・ん・・・昨日の夜話しすぎたせいかまだちょっと眠いぞ・・・」

 

十香があくびをしながらそんなことを言ってくる。

 

「あ、十香さんもお話したんですか?実は私も・・・・」

 

「おお、四糸乃もか!」

 

そんな二人の会話を聞きながら士道はテキパキと準備を進めるが、そこでカウンターにポツンと置かれているものに気がつく。

それは・・・。

 

「あ・・・これココアの弁当だ!十香、四糸乃!今から追いかければ何とか渡せると思うし、行ってくる!」

 

二人にそう言って士道はココアの弁当をもって店を飛び出した。

そしてココアたちが向かった方向に駆け出すが、すぐに道が分かれ、どこに行ったかわからなくなる。

しかしその時。

 

「あ、あわわ・・・何ですかこの人!」

 

「ち、チノちゃんを離して!」

 

二人の声が聞こえてきた。

しかしその声は明らかに普通ではなかった。

何者かに襲われているのだろうか?

まさか精霊関係では・・・。

しかし考えていても仕方がない、士道は二人を助けるために声のした方に駆け出した!

そして。

 

「おい!今すぐチノから離れ・・・・ろ・・?」

 

勇ましく叫んだが思わず最後の方が疑問符になってしまう。

何故ならそこにいたのは見知った人物だったからだ。

 

「うふふ、モフモフですね〜!可愛いです可愛いです!・・・あれ、ダーリン?」

 

「し、士道ー!!」

 

そう、そこにいたのはチノもモフりまくる美九と涙目で助けを求めてくる七罪だった。

 

 

 

****

 

 

「全く・・・美九、その癖直せないのか?」

 

「無理です!」

 

キリッ!

 

「・・・・ブレないな。まぁ無事でよかった、七罪もな」

 

「う、うん・・・ごめん、美九の暴走を止められなくて・・・」

 

七罪が申し訳なさそうに謝ってくるが、こればかりはどうしようもないので大丈夫だ、と言って慰める。

と、そこでチノがずれた帽子を直しながら士道に聞いてくる。

 

「こ、この人たちは士道さんのお知り合いなんですか?あと士道さんは何故ここに・・・」

 

「ああ、元の世界のな。あとここに来た理由だか・・・・ココア、忘れ物だ」

 

そう言ってココアに持ってきた弁当を手渡す。

 

「あっ、忘れてた・・・ありがとう士道くん!」

 

「どういたしまして。この二人のことは帰ってきてから説明するよ。今話してたら学校やばいだろ?」

 

士道の言葉に二人はハッとして一言お礼を言ってから学校に向かって走り出した。

それを見送ったあと、美九がニヤニヤしながら、七罪はジト目で士道を見る。

 

「いや〜、さすがダーリンですね〜!もうあんな可愛い子を口説いてるとは!さすが恋愛マスター!」

 

「し、士道・・・最悪・・・」

 

「待ってくれ、話を聞いてくれ、お願いだから!」

 

 

 

 

****

 

 

「なるほど・・・後でその人たちにはお礼を言っとかなきゃな。あと、精霊のこと、話したって言ってたけど・・・」

 

何とか話を聞いてもらい、お互いの状況をある程度確認した後、士道は美九に言う。

 

「はい。変なところでばれて混乱を招くよりはあらかじめ言っておいたほうがいいかと思ったので〜」

 

「確かにそうだな・・・。わかった、俺たちも二人に正直に話すことにするよ。あと・・・」

 

そう言ってから士道はもう一つ気になっていることを二人に聞いた。

 

「そっちに琴里はいないのか?」

 

そう、二人の話に士道の妹、琴里の名前が全く出てこなかったのだ。

そして七罪が少しうつむきながら言った。

 

「うん・・・こっちにはいないわ。どこにいるんだろ・・・」

 

「そうか・・・琴里のことだから大丈夫だとは思うけど少し心配だな・・・」

 

「琴里さんのことですから[私の心配なんかしてる暇かあったら他にすべき事を考えなさいバカ兄貴!]・・・とか言いそうですけどね〜」

 

美九が琴里の声真似をして笑いながら言ってくる。

相変わらず楽観的だが今はそれに少し救われる。

士道は苦笑しながら。

 

「まぁそうかもしれないな。俺は今店を手伝わないとだし。あと、二人も店についてきてくれ、連絡手段もないし俺たちがどこに居るのか知っておいてほしい」

 

「はーい!久々に十香さん成分を補給させていただきます!キャー!興奮してきました〜!」

 

「四糸乃・・・・四糸乃おおおお!!」

 

「おい、二人とも本当に頼むぞ!?店の場所の確認だからな!?」

 

店の場所を知らないのに叫びながら走り出した二人を、士道もまた悲鳴にも似た声をあげて追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二亜「いやー、また間が空いた更新だったね〜。作者年末年始は忙しい!とか言い訳してたけどそろそろ囁告篇帙使って強制的に動かそうか」

 

タカヒロ「それもいいかもな・・・本編、キッチンに俺もいたはずだがいつの間にかフェードアウトしてるからな」

 

ティッピー「本筋から関係ないキャラはこうして消されていくのじゃろうな・・・」

 

二亜「そして来るんだろうね・・・なんか虚しいかもね」

 

モカ「じゃあ私が慰めてあげるわ!二亜ちゃんよしよし〜」

 

タカヒロ「ん?」

 

ティッピー「ほあ?」

 

二亜「も、モカねえええええええええ!」

 

モカ「はーい、ココアの姉、モカです。ごちうさ二期が終わりしばらく経ちました・・・みなさんいかがお過ごしでしょうか」

 

二亜「打ちひしがれてます」

 

モカ「やっぱりねぇ・・・私が慰めてあげよう、よしよし♪」

 

二亜「エッヘッヘ・・・これはダメになる・・・私の方が年上なのに・・・」

 

ティッピー「さすがは本物の姉、年上でも扱いはお手の物じゃな」

 

タカヒロ「というか二亜くんは難民だったのか」

 

二亜「でもモカねえと会えたからもう救われたよ・・・あ〜心がぴょんぴょんする〜」

 

モカ「ぴょんぴょんするのはいいけど二亜ちゃん、次回予告次回予告」

 

二亜「ああ、そうだった・・・囁告篇帙っと!んん、次回第九羽は・・・【日常の中の非日常】早速日常が終わりそうなタイトルなんだけど・・・お、お楽しみに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二亜「あと囁告篇帙の力で次回のこのコーナーのゲストもモカねえにしたから!」

 

モカ、ティッピー、タカヒロ「えっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第九羽 日常の中の非日常

今回で主要キャラは出揃いました。
相変わらずののんびり更新ですがご容赦ください。
それと私事ですがなんとごちうさキャスト七人のサイン色紙が当たりました。
本当に嬉しい&びっくりです。



士道と謎の二人組と別れ、何とか学校に間に合ったチノはホッと一息をつく。

 

(ココアさんは学校間に合ったでしょうか・・・)

 

自分の席に着き、窓の外を見ながらふとそんなことを考えていると、後ろから声をかけられる。

 

「チノ、おはよー!・・・どうしたの、なんか疲れてるっぽいけど」

 

そこにいたのはチノの友達の一人、条河麻耶(じょうがまや)通称マヤと・・・。

 

「ほ、本当だ〜。髪もボサボサだし、何かあったの?」

 

もう一人のチノの友達、奈津恵(なつめぐみ)、通称メグだ。

二人ともいつもと違う調子のチノの事を気にしているようだ。

 

「まあ来る途中いろいろと・・・大丈夫ですから、気にしないでください」

 

まさか見知らぬ人にモフモフされただなんて言えないし、士道のことを話すと絶対に二人が(特にマヤが)面白がって話を聞いてくるに違いない。

いろいろと面倒なことは避けたい。

そういう訳でチノはそう言ったのだが・・・。

 

「え〜、そう言われると・・・」

 

「気になっちゃうよね〜」

 

そんな簡単に引き下がる二人ではなかった。

そうして二人に質問攻めにされようかという時、ちょうど良くチャイムが鳴り、二人は慌てて席に着く。

いつもは少し憂鬱に感じる始業のチャイムに心の中で感謝するチノであった。

 

 

 

 

 

 

 

しかし伏兵は思わぬところに潜んでいた。

それは昼休みのこと。

三人でお弁当を食べようと机をくっつけ、一斉にふたを開けた。

チノ、そしてマヤ、メグは気がついた。

チノの弁当にあるご飯が珍しくうさぎ型ではないことに。

 

(そう言えば今日のお弁当は士道さんが作ったと言ってました・・・!)

 

「・・・なんかチノの親父さんが作ったっぽくないんだけど。ねぇチノ?」

 

「わ、わわわたしは何も知りません、父の気分なんじゃないですか?」

 

「チノちゃん動揺してることがバレバレだよ・・・」

 

その後なんだかんだ二人の勢いに押され、チノは仕方なく事情を説明した。

そしてやはり面白がられ、お弁当を食べることもそっちのけで聞いてくる二人に対応する事だけであっという間に昼休みは終わってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

ちょうどその頃、ココアは親友の千夜と一緒に士道に持ってきてもらった弁当を食べていた。

朝少し遅れてきたことや弁当の違いの事を千夜から聞かれたココアはチノと違い嬉々として士道たちの事を話した。

 

「でね、その士道くんがとっても料理が上手なんだ〜。十香ちゃんは元気いっぱいで、四糸乃ちゃんはちっちゃくてかわいいんだよ!」

 

「へぇ〜・・・その人たちってラビットハウスさんに住み込みで働いてるんでしょ?今度会いに行ってもいいかしら?」

 

千夜の言葉にココアは笑顔で頷きながら答える。

 

「うんっ!今度と言わず今日の放課後にでもおいでよ!」

 

「ん〜・・・今日の放課後はちょっと無理かしら。実は新しい店員さんが入ってきていろいろ教えなきゃいけないの」

 

千夜がそういうとココアはしょんぼりとする。

 

「そっかぁ・・・それなら仕方ないね。じゃあまた今度の休みにでも!」

 

「ええ、必ず!」

 

それから二人は雑談を交わしながら持ってきた弁当を食べ進める。

ふとココアが窓の外の木組みの街を見ていると見慣れないものが目に入った。

そして千夜にその事を尋ねた。

 

「ねぇ千夜ちゃん・・・あの時計台っていつからあったっけ」

 

「・・・時計台?あれはわたしが生まれる前からあるものらしいわ。この街のシンボルよ」

 

千夜の答えにココアは少し驚く。

ココアがこの街に来て三ヶ月以上が経っている。

最初の頃は道に迷ったりもしていたがもうそんな事もない。

ならばあの時計台を見逃す事などありえないと思うのだが・・・・。

 

「ココアちゃん?」

 

「えっ・・・あ、ごめん千夜ちゃん、ボーッとしてた?」

 

その時、頭が少し痛み、記憶が呼び起こされる。

ああそうだ、思い出した、なぜ忘れていたんだろう。

この街に来る時の電車の中で、あの時計台を見て最初にあそこに行ってみようと決めたではないか。

時計台の麓に着いた時に見上げてその大きさに圧倒されたではないか。

時計台に向かったがために道がわからなくなりラビットハウスに行くのが遅れたではないか・・・・。

 

「そうだった・・・千夜ちゃんごめん、やっぱり何でもない!」

 

「もう、ココアちゃんったら何だったの〜?」

 

そうして二人は笑いあってから再び弁当を食べ始めた。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

授業も終わり、放課後。

今日もバイトのシフトが入っているためリゼは急いで荷物をまとめて教室を後にする。

校舎を出て校門に向かうと、そこに見慣れた人物が待っている事が分かった。

 

「り、リゼ先輩!一緒に帰りませんかっ!」

 

そう声をかけてきたのは一つ下の後輩、シャロだ。

大体毎日こうやって待っていてくれるのだ。

 

「ああ、一緒に帰ろう。今日はバイトがあるから寄り道はできないけどな」

 

「わたしもバイトなんで大丈夫です。ちょっとおしゃべりできるだけでも嬉しいですから」

 

そう返してきたシャロにリゼは少し苦笑しながら、二人で帰り道を歩き始める。

学校でのこと、今度の休みの予定、今日の朝あったこと・・・。

そんな他愛もない会話をしているうちにあっという間に別れる所まできてしまった。

 

「それじゃあ・・・また明日、リゼ先輩」

 

「ああ、じゃあなシャロ」

 

そして二人は別れてそれぞれの帰路につく。

そんな日常の出来事。

明日も、明後日も続いていくだろう、そんな取るに足りない出来事。

それがどれほど素晴らしい事なのかは非日常が起こり日常が失われないと気がつけないのかもしれない・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・新入り達はちゃんと仕事できてたのかな〜」

 

昨日の三人の事を考えながら、リゼはラビットハウスへと急ぐ。

しかしシャロと別れてからいやに人通りが少ない・・・いや、むしろリゼ以外に誰もいない気がする。

ふとそんな事を考えた時。

 

 

ダンッ!

 

 

「・・・・ぇ」

 

 

非日常(それ)は空から舞い降りた。

 

 

 

 

****

 

 

時計台の上で、遠くのリゼの様子を見て、万由里の姿をしたファントムは静かに笑う。

 

「じゃあ始めようか・・・ガーディアンを使った、計画の第一段階を」

 

「・・・・・・」

 

そして隣に静かに浮遊していた少女が、静かに指を鳴らした。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

リゼはとっさに銃を構え、それに向ける。

銃は軍人の父の影響により毎日持ち歩いている護身用のものだが、当然弾は入っていない。

あくまで威嚇用のものだ。

 

「く、くるな・・・・」

 

突然現れたそいつは明らかに普通ではなかった。

夏に差し掛かろうとしているこんな時にもかかわらず頭から足までがスッポリ隠れる長さのローブを身にまとっている。

フードも深くかぶっているため顔は見えない。

そして何よりも背中に生えた六本の羽がそれの異常さを物語っていた。

 

「・・・・・・」

 

奴はその場から動く事はなかった。

しかし次の瞬間、顔と思わしき場所に光が集まったかと思うと、リゼに向かって光線が放たれた。

正確には、リゼの足元に。

 

「ッ!!」

 

石畳が消し飛び、リゼもその衝撃で吹き飛ばされる。

 

「あ、ああ・・・・」

 

これは冗談抜きでやばい。

この場にいたら殺される。

そしてリゼはそれに背を向けて走り出そうとするが・・・・。

 

「え・・・」

 

いつの間に来ていたのだろう。

後ろにも奴が待ち受けていた。

その数・・・五体。

そしてその全員が先ほどの光線を放つ準備をしていた。

そしてついにそれが放たれようとした時、突然奴らはそれを止めて上を見た。

そしてポツリと呟く。

 

「・・・ケイカクドオリダ」

 

「・・・え?」

 

「伏せてっ!」

 

上空からリゼに向けられた声が響く。

その声に従い、リゼが伏せると奴らと同じように空から赤髪の少女が地面に舞い降りた。

そして・・・。

 

「焦がせ、〈灼爛殲鬼(カマエル)〉!」

 

少女は炎の戦斧を振るい、奴らを両断した!

リゼの行く手を阻んでいた五体は炎に呑まれ、光の粒子となって消える。

そこで最初に現れた個体が少女に向かって先ほどの光線を放つ・・・が。

 

「ハァッ!」

 

少女はその巨大な戦斧を使って光線をいとも簡単に弾き飛ばしてしまった。

それを見た奴は分が悪いと感じたのか、その羽根を使い飛翔し、逃亡を図った。

しかし。

 

「逃がさないわよ!」

 

少女がそう言った瞬間、戦斧が形を変え、その右手を包み込むかのように着装された。

それはまるで巨大な大砲だった。

その銃口に炎が集まって行き、そして。

 

「〈灼爛殲鬼(カマエル)〉【(メギド)】!」

 

少女の掛け声とともに凄まじい炎の奔流が放たれた!

そしてそれは正確に奴を撃ち抜き、光の粒子に変えた。

 

「ふう・・・こんなものね」

 

「い、一体何が・・・・」

 

リゼが呆然と呟くと、少女はくるりとこちらを向いて

 

「正直私もわからないことだらけなんだけどね・・・自分に関することならできるだけ説明させてもらうわ。私は五河琴里(いつかことり)。あなたは?」

 

座り込むリゼに笑顔で手を差し伸べつつ言った。

世界が混ざり合い、確かに非日常(それ)は始まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二亜「今回は琴里ちゃんがついに登場。これでキャラが出揃った感じかね〜。ちなみに今回出てきたガーディアンってのはゲームで出た量産型の敵っぽいね」

 

タカヒロ「ガーディアンという割には今回は自分からガッツリ攻撃を仕掛けているがな・・・」

 

ティッピー「まぁご愛嬌ということなんじゃろうな」

 

モカ「うーん、琴里ちゃんもモフモフしがいがありそうね!全員私の妹にしてあげたい!」

 

二亜「あ、そう言えばモカねえは本編出られるの?ここは大体が本編の出番が少ないor出られない人が来るところなんだけど・・・」

 

モカ「私は本編出られるみたい!もっとも、私が初登場するのが二年目の春で、本編は今一年目の夏だからもっとあとだろうけど」

 

ティッピー「まぁワシらは」

 

タカヒロ「もう既に出ているけどな」

 

二亜「ちっくしょー!私だけ仲間はずれかよ!」

 

モカ「まぁまぁ、落ち着いて。私でよければまた会いに来てあげるから。そしたらまた一緒にこのコーナーやろ?」

 

二亜「ほ、ほんと?」

 

モカ「うん!おねーちゃんに任せなさい!」

 

二亜「モカねええええ!」

 

モカ「よしよし」

 

タカヒロ「本当にどちらが年上なのかわからないな」

 

ティッピー「モカの姉オーラが凄まじいからじゃろうな」

 

モカ「よし、じゃあ予告行こうか、二亜ちゃん!」

 

二亜「オッケー!〈囁告篇帙(ラジエル)〉っと!次回第十羽は・・・【精霊奮闘】!」

 

モカ「他の精霊のみんなもついに戦うみたい・・・お楽しみに!」

 

 

 




感想、評価、気軽にお願い致します。


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第十羽 精霊奮闘

またちょっと間が空いてしまいました。
今回はバトルメインです。
日常編はあともう少しでやってきます・・・!


「ハァァ〜・・・今日も先輩と一緒に帰れた・・・これだけでまた明日も頑張れる・・・!」

 

リゼと別れたあと、シャロはご機嫌で家への帰路を歩く。

そして家の近くに来たあたりで、ある人に声をかけられた。

 

「あら、シャロちゃんおかえりなさい。すっごく幸せそうだけど何かいいことあったの?」

 

シャロの幼なじみ、千夜である。

どうやら店の前を掃除している最中だったようだ。

 

「り、リゼ先輩と一緒に帰れたってだけで別にそんな特別なことじゃないけど・・・。あ、そういえば新しく来た子達はしっかり店番できてるの?」

 

「ええ、三人ともしっかりやってくれていたみたい。シャロちゃん、時間あるなら中で冷たいお茶でも飲んでいかない?今日は何だか人通りも少なくて、今はお客さんがいないから」

 

「そうなの?じゃあお言葉に甘えようかしら」

 

そう言った後、シャロは店の扉を開けて中に入る。

そしてそれに合わせて中の三人が出迎える。

 

「いらっしゃいませ〜!・・・ん、なんだ、シャロではないか」

 

「慰労、学校お疲れ様でした」

 

「・・・・外での会話は全て聞いていた。お茶はもうそこに用意してある。どうぞ」

 

「ありがと・・・・ん?他の二人には外での会話は聞こえてなかったみたいだけど。私たちもそんなに大きな声で話してないし」

 

シャロの疑問に、折紙は何ということはないといった風に答える。

 

「防犯のため、店の周りには小型カメラや盗聴器を設置してある。それらはのデータは全てこの携帯に・・・・」

 

「驚愕、そこまで既に終えていたとは、さすがはマスター折紙です」

 

「くっくっくっ・・・・よくやってくれているな。さすがは我が眷属よ。これからも励むがよい」

 

「友達の家に何してくれてるの!?今すぐ外してきなさいっ!」

 

そんなやり取りを外で聞きながら千夜はクスクスと笑う。

と、そんな時、千夜は遠くにまっすぐこちらに向かってくる人影を見つけた。

こんなに暑い夏の日にローブを纏っている。

千夜は不思議に思うが、そこはやはり接客業ということで、踏み込んでローブの事を聞いて失礼を働くわけにもいかない。

そして千夜は笑顔でそのお客を迎える。

 

「いらっしゃいま・・・」

 

しかしその言葉の続きは轟音に遮られた。

千夜の背後から放たれた光がローブの客の頭部を吹き飛ばす。

ローブの客は光の粒子になって消えてしまった。

 

「〈絶滅天使(メタトロン)〉」

 

ウェディングドレスのような衣装を纏った折紙が静かに千夜の背後から現れる。

さらに折紙は細い羽根状のものを周囲に従えていた。

どうやら先ほどの光は折紙が放ったものらしかった。

 

「今のやつは確かラタトスクのデータに残っていた・・・確か、識別名はガーディアン。千夜、下がって。ここは・・・・私たちの出番」

 

「くく、そうだな。千夜、あとは我らに任せてお主は中でシャロとゆっくり茶でも飲んでいるといい。・・・それにしても、予想以上の団体客よの」

 

「疑問、いったい何が狙いなのでしょうか」

 

千夜の背後から、折紙に続き耶倶矢と夕弦が現れる。

現れた二人の姿は黒を基調とした服にベルトのようなものと鎖が巻きついており、その首元には南京錠らしきものが付いている。

一言で言うとかなりアブナイ格好だった。

そして耶倶矢は身の丈ほどもある巨大な突撃槍を、夕弦は黒い鎖の先に菱形の刃がついたペンデュラムのような武器を持っていた。

千夜は言われた通り店に戻りながら、三人が見上げる先を見る。

そこにいたのは、空を覆い尽くさんばかりに浮遊するおびただしい数のガーディアンだった。

 

「提案、耶倶矢。どちらが多く倒せるか勝負しましょう。負けた方は今夜のおかずを勝った方に献上、という事で」

 

「な、何気に辛いやつだ・・・・何よ、その【負けるのが怖いのですか?】みたいな顔。いーわよ、受けてやるわよ!」

 

「・・・おそらく100体以上はいる。二人とも、気をつけて」

 

そして折紙が言い終わるか終わらないかといったうちに、ガーディアンは無数の霊力弾を放ってきた。

折紙は冷静に〈絶滅天使(メタトロン)〉を構えると、霊力弾を的確に撃ち落としていく。

それと同時に耶倶矢と夕弦が空へと舞い上がり、各々の武器でガーディアンに攻撃を始める。

 

「折紙、援護は任せるぞ!」

 

「宣言、メインウエポンは私たちが務めます」

 

三人の激しい攻撃に対して、ガーディアンたちはなす術もなく倒されてゆく。

しかし・・・数があまりにも多すぎた。

何体かは攻撃をすり抜け・・・・。

 

「・・・・!まさか、狙いは」

 

「千夜たちであったか!」

 

店の入り口付近にいた千夜とシャロに襲いかかった!

そして攻撃が届こうとしたその時、ガーディアンの体は謎の衝撃波を受け、そのまま光の粒子になって消えてしまった。

 

「安心、二人は無事なようですね」

 

「・・・何だかすっごく格好いい登場ね。あれ、ズルくない?」

 

そう、二人をガーディアンから守ったのは光のドレスを纏った美九だった。

美九の操る音の力で衝撃波を生み出し攻撃したのだ。

二人を守るようにして立つ美九のもとに少し遅れて七罪も駆けつける。

 

「美九・・・七罪も!来てくれたのね!」

 

「遅れて申し訳ありません〜。でも、もう大丈夫ですよ〜」

 

「・・・私だけ大したことしてない分、これから頑張るから」

 

「七罪・・・どんな時もネガティブ思考なのね」

 

「・・・さ、さぁ!気を取り直してフィナーレと行きましょう!〈破軍歌姫(ガブリエル)〉【行進曲(マーチ )】!」

 

と、美九が天使の名前を呼ぶと、それに呼応し巨大なパイプオルガンが現れた。

そして美九が演奏を始める。

行進曲(マーチ )】、対象の力を増幅させる強化の旋律である。

そして七罪が素早く〈贋造魔女(ハニエル)〉を構える。

 

「〈贋造魔女(ハニエル)〉【千変万化鏡(カリドスクーペ)】!」

 

その瞬間、七罪の持つ〈贋造魔女(ハニエル)〉の姿が歪み、巨大な炎の戦斧に形を変えた。

 

「・・・・行くわよ、三人とも。私だってやればできるんだから!・・・・多分、そう多分。もしかしたら失敗するかもだけど。ああ、そんな感じなのにさっき行くわよとか調子乗っちゃいました、ごめんなさい死にますね」

 

「「「・・・・・・」」」

 

「・・・何よ」

 

「い、いやぁ、七罪はもうちょっと自分に自信を持ってもいいと思うぞ?」

 

「肯定、耶倶矢の言う通りです」

 

「・・・七罪はできる子」

 

「え・・・そ、そうかな・・・・」

 

「・・・何でこんなに緊張感がないのかしら〜」

 

「本当にね」

 

戦いの場ではあるのだが、この緊張感の無さにさすが千夜とシャロも呆れ顔だ。

しびれを切らした美九が叫ぶ。

 

「み、皆さん早く決めちゃってください〜!」

 

「そ、そうよね・・・もたもたしてごめんなさい。私のせいです。・・・・〈灼爛殲鬼(カマエル)〉【(メギド)】っ」

 

「よ、よし、行くよ夕弦!〈颶風騎士(ラファエル)〉」

 

「呼応、【天を駆ける者(エル・カナフ) 】!」

 

「〈絶滅天使(メタトロン)〉【砲冠(アーティリフ)】」

 

四人の精霊の攻撃が大量のガーディアンたちを一瞬にして消し飛ばした!

 

 

 

****

 

 

戦いを終えた精霊たちが静かに地面へと降り立つ。

 

「・・・確認、終わりましたか?」

 

「うむ、一匹残らず倒せたようだな」

 

「しかしこんな大規模な攻撃を仕掛けてくるなんて・・・・ここに他の精霊たち、そして士道が来ているなら早く探して合流しないと。士道も私との再会を望んでいるはず」

 

折紙の言葉に七罪と美九がハッとなる。

 

「そ、そうだった!今日士道を見つけたのよ!」

 

「十香さんと四糸乃さんも一緒でした〜。千夜さんが許していただけるなら、今から行きませんか〜?折紙さんの言う通り、この件の事は早めにお話ししておいた方がいいと思いますから〜」

 

 

 

 

 

****

 

 

 

千夜たちがガーディアンに襲撃される少し前、千夜と別れたココアは少し急ぎ足でラビットハウスへと向かっていた。

と、その途中で見知った顔を見つけ、声をかける。

 

「チノちゃーん!」

 

突然声をかけられたチノはビクリと肩を震わせる。

あたりを見て駆け寄ってくるココアの姿を見つけると、むーっと頬を膨らませながら言った。

 

「もう・・・街の中では恥ずかしいですからあまり大声は出さないでください。今は珍しく周りに誰もいなかったから良かったですが・・・」

 

「ご、ごめんごめん。ん、じゃあ気を取り直して一緒に帰ろ、チノちゃん!」

 

「全く・・・ココアさんは本当にしょうがないココアさんです」

 

口ではそう言いつつも声をかけてもらえて嬉しかったりするのだが。

そうして二人は再びラビットハウスを目指して歩き出す・・・・しかしその時。

 

「「えっ・・・」」

 

突如として二人の前に10体のガーディアンが現れた。

そして現れると同時にその中の1体が威嚇として二人にギリギリ当たらないように数発の光弾を放つ。

放たれた光弾は民家の扉や窓をたやすく貫く。

突然の恐ろしい出来事に思わずチノはその場に座り込んでしまう。

そしてガーディアンは再び攻撃態勢に入る。

おそらく次は・・・・二人に当てるために。

そして再び光弾が放たれようとしたその時、ココアはとっさに座り込むチノをかばった。

恐怖に震えるチノをぎゅっと抱きしめる。

そしてついに放たれた光弾は・・・・二人とガーディアンの間に割って入った士道に炸裂した。

あたりに鮮血が飛び散る。

 

「し・・・」

 

「士道くんっ!!」

 

チノとココア、二人の悲鳴にも似た声。

しかし士道は叫ぶ。

 

「俺なら大丈夫だ!」

 

その直後、士道の傷が炎に包まれ、その炎が消える頃には傷は何事も無かったかのように塞がっていた。

 

「十香!四糸乃、よしのん!任せたぞ!」

 

「ああ、任された!・・・・二人を傷つけようとしたこと、許さんぞ」

 

「許しま・・・せんっ!」

 

『さー、派手にやってやろー!』

 

名前を呼ばれた二人と一匹は三人の背後から現れるとガーディアンに飛び掛った!

方や美しいドレスを身に纏い大剣を掲げて。

方や可愛らしいウサ耳付きのレインコートを身に纏い巨大な怪物に乗って。

当然ガーディアンもそんな十香と四糸乃に霊力弾で応戦する・・・が、それらは全て四糸乃が操る怪物から放たれた光線で凍らされ、十香が大剣で切り落としてしまった。

 

「次は・・・お前たちの番だ!〈鏖殺公(サンダルフォン)〉【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】!」

 

「〈氷結傀儡(ザドキエル) 〉【吹雪(ブリザード)】!」

 

全てを破壊する斬撃と凍てつく冷気の光線がガーディアンを殲滅した。

 

 

 

 

****

 

 

「・・・これは・・・一体どういうことなんですか?」

 

戦いが終わったあと、チノが士道たち三人に問う。

これ、とはまず間違いなく先ほどの十香や四糸乃のことだろう。

 

「・・・すまん、やっぱり初めから全てを話しておくべきだった」

 

士道はそう言うとチノとココアには伏せていた精霊関係の話を全て話した。

 

「・・・では十香さんと四糸乃さんは正確には人間では無かったんですね・・・異世界から来たってだけで信じられないのに・・・」

 

「もう、本当にびっくりしたよ〜。士道くんも謎の炎で怪我治っちゃったけど、あの時本当にびっくりしたんだからね!」

 

『あの時』、ココアのその言葉でチノの脳裏にあの衝撃的な光景がフラッシュバックする。

ガーディアンから二人をかばって傷つく士道、精霊の力で戦う十香と四糸乃、そして・・・チノを守るように抱きしめていたココア。

 

「・・・なん・・・で・・・すか」

 

チノがポツリと呟く。

 

「え、チノちゃん今・・・」

 

なんて言ったの?

そう言いかけたココアだがチノを見て口をつぐんでしまう。

チノがポロポロと涙を流していたからだ。

 

「何で・・・何で私を守ろうとしたんですか!?もし士道さんが来てくれていなかったらココアさんは死んじゃってましたよ!?・・・本当に・・・何でっ・・・!」

 

珍しく感情を荒げるチノ。

こんなことは初めてなように思う。

そんなチノにココアは静かに答える。

 

「・・・あの時・・・思ったんだ。チノちゃんだけは助けたいって。たとえ死んじゃったとしても、チノちゃんが無事なら、それでいいかなって」

 

「・・・ココアさんは本当に馬鹿な人です・・・ココアさんが死んで私が助かっても、私は全然嬉しくありません・・・。お願いですからもうあんなことはしないでください・・・守ろうとするものに、自分の命も入れてくださいっ・・・!」

 

ココアの答えにチノは消えるような声でそういった。

ココアは一言、ごめんね、と言ってからチノを優しく抱きしめた。

 

「・・・シドー、今回は完全に私たちの落ち度だ」

 

「ああ・・・十香の言う通りだ。チノたちには悪いことをしちまった」

 

「二人には・・・もう二度とこんな思いをさせないように・・・頑張らないと、ですね」

 

四糸乃の言葉に士道と十香は頷き、決意を固める。

そしてその後、士道は先ほどのチノの言葉を思い出す。

 

『守ろうとするものに、自分の命も・・・・』

 

「・・・・・・」

 

士道は涙を流すチノと抱きしめるココアの姿にいつしかの自分と琴里の姿を重ねるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二亜「いや〜今回は完全にデアラ勢にごちうさ勢が巻き込まれたかんじだね・・・平和な木組みの街が・・・」

 

ティッピー「あと一羽挟んだらついに日常編に突入だそうじゃ・・・やっとじゃのお」

 

タカヒロ「それはそうと今回、精霊たちの技が出たと思うんだが一つだけ四糸乃くんの技がオリジナルらしいな。何でも冷気の光線に特に技名が無かったのが原因だとか・・・」

 

二亜「まぁ技名はそのまんまな感じだけどご容赦くださいってことだね・・・。あとチノちゃん泣かしたけど、これ大丈夫なのかね?」

 

タカヒロ「読者の受け取り次第じゃないか?まぁなるようになるだろう」

 

二亜「ん〜まぁそうか。というか実の娘が泣かされたのに凄い落ち着いてるね」

 

タカヒロ「そうじゃないのが一羽いるからその話は止めて予告へ行こうか二亜くん」

 

二亜「ああ・・・なるほど・・・じゃ、じゃあ気を取り直して!〈囁告篇帙(ラジエル)〉!

・・・ん〜次回第十一羽は【フラクシナスへ】!というかこの世界にフラクシナス来てたんだ。そして今回はいなかったけど予告へのゲストも復活らしいよ!・・・詳細が現時点だと全くわからないのが不思議だけど。お楽しみに!」

 

 

 

 



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第十一羽 フラクシナスへ!

今回で第一章が終わりました。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
第二章日常編も引き続きよろしくお願いします!

あと今回のおまけはデート・ア・ライブ14巻のネタバレを多少含みますのでお気をつけて。


ガーディアン襲撃の後、士道たちは急いでラビットハウスへと戻り、仕事を再開していた。

十香たちが霊力を感じ、すぐに店を飛び出してしまったが、その間全く客は現れなかったようだ。

街を走っているときも全く人の気配を感じなかった。

このことはガーディアン襲撃と何か関係があるのだろうか・・・・。

士道はそんなことを考えながらやりっぱなしだった皿洗いをしていると、やたらテンションが高い声が聞こえてくる。

 

「ねえねえ四糸乃ちゃん、さっきの可愛い服にまたなれないの!?」

 

「あ、あれは少し特別で・・・滅多なことではならないようにしてるん・・・です。ご・・・ごめんなさい・・・」

 

「ココアさん、四糸乃さんが困ってますよ。・・・そのキラキラした目をやめてください」

 

「え〜、残念・・・チノちゃんに着て欲しかったのに・・・」

 

「それが目的でしたか」

 

ココアの企みを知り、チノがため息を漏らす。

もうすっかり落ち着いたようでチノはいつもの装いに戻っていた。

 

「というかさっきの十香ちゃん、まるで別人みたいだったよね!キリッとしてて!」

 

「確かに・・・何だか大人の女性って感じがしました」

 

「む、むう、そうか?・・・・その、なんだ。そっちのほうがよかったか?」

 

十香が少し不安そうに言うとココアは首を横に振って否定する。

 

「ううん、そんな事ないよ?私はいつもののほほん、とした十香ちゃんが大好きだよ!・・・あ、だからと言ってキリッとした方が嫌いってわけでもないけどね!」

 

「ですね・・・。わ、私はどちらかというといつもの十香さんの方が接しやすいので好き・・・です」

 

「そ、そうか・・・うむ!ならよかったのだ!」

 

そんな彼女らを横目で見ながら士道は皿洗いを続ける。

その後、十香が「霊装は出せないが」といったのち、昔やったように霊力で服を作っていた。

リゼのものと同じラビットハウスの制服だ。

チノとココアから歓声が上がるが、その直後バーテンダーの制服はどこへ行ったのかと大騒ぎになっていた。

 

「・・・・と、そういえばリゼ、遅くないか?」

 

「確かに・・・さっきあんな事もあったばかりですし少し心配ですね」

 

「わ、私が見てきます・・・」

 

四糸乃がそう言って店を出ようとした時、店のドアが開きカランカランと音を立てた。

 

「おっ、噂をすれば何とやらか?・・・って」

 

ドアから入ってきた人物は確かにリゼだったのだがその後ろにもう一人・・・。

 

「ハロウ、士道。それに十香と四糸乃も。無事で何よりだわ」

 

五河琴里は笑みを浮かべながらそう言った。

 

****

 

その後士道たちは現れた琴里に一通りの経緯を話し、チノたちの紹介を終える。

そして琴里は頼んだコーヒーを一口飲んだ後、神妙な面持ちをしながら言う。

 

「じゃあそっちにもガーディアンが現れたってわけね・・・しばらくは警戒をした方が良さそうね。士道たちはチノとココアをできるだけ守ってあげられるようにして」

 

「ああ、分かってる」

 

「じゃあ私は単独でリゼを守るわ。だからリゼ、良かったら何だけど・・・」

 

「私の家に泊めて欲しいってことだよな!もちろんいいぞ、むしろ来てくれ!」

 

琴里が言い終わる前にリゼが嬉々として言う。

 

「え、ええ。ありがと・・・けど私は厄介者みたいなものじゃない?何でそんなに家に呼ぶことに乗り気なのよ」

 

琴里がそう言うとリゼは「えっ」と言ったのちゴニョゴニョと小さな声で喋り出す。

 

「じ、実はいつも家に話し相手がいるチノとココアのことが昔から少し羨ましくて・・・私は一人っ子だから家に歳の近い話し相手ができるのは大歓迎って感じで・・・」

 

そんなリゼを見て琴里は少し苦笑しつつ言う。

 

「なるほどね・・・そう言うことなら喜んでお邪魔させてもらうわ」

 

「でも・・・少し意外です。リゼさんがそんな風に思ってただなんて」

 

「リゼちゃんって案外寂しがり屋だったんだね!」

 

「・・・ッ〜!う、うるさいぞココア〜!!」

 

リゼが顔を真っ赤にしながらココアをポカポカと叩く。

・・・というかポカポカの威力を超えてボカボカな気がしなくもない・・・ココアが本気で痛そうにしている。

そんなやり取りを苦笑しながら見ていた四糸乃が何か気がついたように「あ」と呟く。

 

「そういえば・・・琴里さんは1日前どうしていたんですか?」

 

「うむ、確かにそうだな。食べ物も寝床もなかったろう?」

 

「ああ、そのことね・・・実は・・・」

 

と、琴里が言いかけたその時、店の扉がバン!と勢いよく開き、二つの影がバッと士道たち目掛けて飛びかかってきた!

 

「チ〜ノ〜ちゃああああん!朝のモフモフの続きをしましょおおお!」

 

「士道士道士道士道士道士道士道士道士道」

 

そう、その二つの影は・・・。

 

「み、美九に折紙!?ちょっ・・・・」

 

「ヒッ・・・あ、あの時の人!」

 

そして美九の手がチノ、折紙の手が士道に届こうとした時。

二人は何かに足を捕まえられたかのようにバランスを崩し、そのまま地面に落下した・・・。

よく見ると二人の足には鎖のようなものが巻きついていることが分かる。

そして店の入り口の方を見るとそこには耶倶矢、千夜、〈颶風騎士(ラファエル)を顕現させた夕弦、そしてもう二人。

 

「「何やってるのよあなたたちは」」

 

シャロと夕弦と同じく〈颶風騎士(ラファエル)を顕現させた七罪が呆れた顔でそう言った。

 

 

 

****

 

 

 

「じゃあ話をまとめましょう」

 

現れた七人から話を聞いた琴里が、チュッパチャプスの棒をピコピコさせながら言う。

 

「まずガーディアンたちは私たちと接触した五人を狙って現れたと考えて間違いないでしょうね。そして、これから同じことが起こらないとは限らない」

 

その言葉にチノ、ココア、リゼ、シャロ、千夜がゴクリと息を飲む。

そんな彼女たちを見て琴里は安心させるようにニッと笑いかける。

 

「大丈夫、さっきリゼたちには言ったけど私たちがいる以上あいつらの好き勝手にはさせないわ」

 

「ああ、俺たちが絶対に守りきる」

 

士道が力強く宣言するとそれに同調して他の精霊たちも力強く頷く。

 

「・・・でもむしろ厄介なのは私たちの方よ。今のこの状況を解決する策が何もない上にこの先のことに何の見通しも立ってないんだもの・・・と、この話は上でしましょうか」

 

「う、上?」

 

リゼが不思議そうに言うが、その間琴里は端末を取り出し何者かとコンタクトを取る。

そしてそこにいた全員が不思議な浮遊間に包まれたかと思うと次の瞬間、今までとは違う景色が視界に飛び込んでくる。

チノたちは訳も分からず目を白黒させているが士道たちはこれが何なのか知っていた。

そう、ここは・・・。

 

「驚かせてごめんね。ここは天宮市・・・いえ、木組みの街の上空約一万五千メートル空中艦〈フラクシナス〉の艦内よ」

 

『く、空中艦!?』

 

チノたちが驚くのも無理はない。

普通に考えたら空中艦などSFか何かでしか見ないはずなのにそれが実在し、あまつさえ自分たちがそれに乗っているのだから。

士道も始めて連れて来られた時はかなり驚いたことを覚えている。

と、そこで士道たちが入ってきたことに気がついた長身で金髪の男性が声をかけてきた。

 

「これはこれは、士道くんたち!司令、みんな無事に見つかったんですね。・・・おや、そちらの麗しいお嬢さん方は?」

 

「この子達はちょっといろいろあって巻き込んじゃってね・・・。私たちの事情を知っていろいろ協力してくれてるわ」

 

「なるほど、そういうことでしたか。申し遅れました、私、ここで副艦長をやって居ります、神無月恭平(かんなづききょうへい)と申します。以後お見知り置きを」

 

神無月はそう言うと恭しく礼をした。

・・・普段からこんな感じで真面目にやってくれれば良いのだが。

と、そんな事を考えているとチノやココアたちから自己紹介をしてもらった神無月が。

 

「リゼさんとおっしゃいましたか?まだ出会ったばっかりなのでアレなんですが出来れば罵倒しながら踏みつけて・・・」

 

「真面目にやってればいいものをあんたはアホか!そうやってすぐに性癖を出す!」

 

鋭いツッコミと共に琴里が神無月の腹に飛び蹴りを喰らわせる。

神無月はガハァ!?という叫び声と共に床に倒れ伏す。

しかしその顔は幸せに満ちていた。

 

「ハァ・・・ごめんねリゼ」

 

「い、いや、驚いたけど大丈夫だ・・・」

 

リゼが何か悲しいものを見るように床の神無月に視線を投げる。

そんな視線も快感なのか神無月はブルリと身震いする。

そんなやり取りをチノに見せないようにココアが手で目隠しをしていた。

そこで琴里はコホンと一つ咳払いをして。

 

「じゃあ気を取り直して、今の現状を説明するわ。みんな、お願い」

 

琴里がそう言うと艦橋の奥の方で作業をしていたフラクシナスのクルーがハッ!と返事をし、説明を始める。

 

「先日、何者かによってこの世界に飛ばされた時、その衝撃でフラクシナスの機能のほとんどを失いました。現状使用可能な機能は浮遊能力、不可視迷彩(インビジブル)自動回避(アヴォイド)、転送装置だけです」

 

愛の深さゆえに法律で愛する彼の半径五百メートル以内に近づけなくなった女、〈保護観察処分(ディープラヴ)〉箕輪が淡々と告げる。

それを聞いて士道は小さく唸る。

 

「じゃあ今のフラクシナスは浮いてるだけで精一杯ってことか・・・」

 

「その通りでござりますぞ、士道くん。実は転送装置はここに来た時点では壊れており我々で何とか直してようやく使えるようになったのですぞ」

 

「司令が士道くんたちの元へ行くのが遅れたのはそういうわけです。私たちは専門の機関員では無いので転送装置一つでも修理にかなりの時間がかかりましたよ・・・」

 

百人の嫁を持つ男(ただしZ軸は無い)、〈次元を超える者(ディメンジョンブレイカー)〉中津川、そして夜のお店のフィリピーナに絶大な人気を誇る男、〈社長(サチョサン)〉幹本が箕輪に続いて説明する。

 

「そもそもこちらの世界に飛ばされた時に副司令が顕現装置(リアライザ)のコントロールを上手くしてくれていなければ間違いなく落ちていましたからね・・・あの時は流石に肝を冷やしました・・・」

 

五度もの結婚を経験した恋愛マスター、〈早過ぎた倦怠期(バッドマリッジ)〉川越がため息まじりに話す。

と、それに続いて。

 

「相も変わらず顕現装置(リアライザ)の操作に関しては凄いですよね副司令。ひょっとしたらエレンメイザースにも迫るレベルじゃないですか?・・・・中身がアレなのが本当に残念ですけど」

 

リゼと同じように悲しいものを見る目で言葉を紡いだのは、恋のライバルを次々不幸にしていくという〈藁人形(ネイルノッカー)〉椎崎だ。

箕輪、中津川、幹本、川越、椎崎。

二つ名からそれぞれ色々とダメな感じが漂ってくるが彼らはラタトスク機関の中でも優秀な人材なのである。

士道も彼らのサポートを無しにしては精霊と和解など出来なかっただろう。

 

「・・・・もしこのまま帰れなかったら彼の部屋に仕掛けたカメラや盗聴器を回収出来ないじゃない・・・誰がこんなことしたかは分からないけど絶対に許さないィィィィ!」

 

「ああ!そういえば明後日にミスティのフィギュアが発売でござりましたぁ!アニメも溜まっていく一方・・・何ですかこの生き地獄は!」

 

「私も夜の店の予約が・・・」

 

「私は別れた三番目の女房の娘に久々に会う機会があったのですがね・・・司令、一刻も早くサーチ&デストロイをすべきです」

 

「私も川越さんに賛成です。久々に思いっきり藁人形を使いたい気分ですよ」

 

・・・何度も言うが優秀な人材なのである、本当に。

チノやココアが若干引いている気がしたが気のせいではあるまい。

みんなのそんな様子を見て、苦笑いを浮かべながら琴里は話す。

 

「・・・ま、私も川越や椎崎と同意見だけどね。さっき説明した通り今のフラクシナスはサーチ&デストロイのサーチができない状況にあるわけ。それこそおとーさんやおかーさんみたいな専門の機関員がいれば修理なんてあっという間でしょうけど私たちだけじゃそうもいかない。フラクシナスを完璧に直すまでにかかる時間は・・・そうね・・・」

 

「急ピッチで作業を進めて半年。それくらいはかかると思っていい」

 

扉を開き士道たちの後ろから艦橋に入ってきた人物がそう告げる。

無造作に纏められた髪に分厚い隈が特徴の女性、村雨令音(むらさめれいね)だ。

 

「令音さん・・・半年、ですか。かなりかかりますね」

 

顕現装置(リアライザ)に詳しい神無月が居なかったらもっとかかっているところだったよ。我々も最善を尽くすが・・・半年より期限が早まることは無いと思っておいてくれ」

 

令音の言葉に士道は静かに分かりました、と一言いったのち、チノ、ココア、リゼ、千夜、シャロの方を向いて、こう聞いた。

 

「俺たち、もうちょっと世話になっても大丈夫か?」

 

その言葉に五人は顔を見合わせたのち、笑顔で頷いてくれた。

 

 

****

 

 

街の時計台の上、虹色に輝く霊結晶(セフィラ)を見ながら。

万由里の姿をしたファントムは楽しそうに笑った。

 

「計画の第一段階、精霊九人分の霊力が入った特別な霊結晶(セフィラ)の生成・・・無事完了だね。君のガーディアン、とても役に立ったよ。ありがとう」

 

「・・・・・・」

 

しかし話かけられた淡いピンク色の髪の少女は何も応えない。

一拍置いた後ファントムが「ああ、そっか」と言ったのち。

 

「今は感情を消しているんだったね・・・すっかり忘れてたよ。それと、時崎狂三・・・の分身か、君は。何やら君は探りを入れてるみたいだね」

 

「うっ・・・ぐっ・・・」

 

ファントムに見つかり捕らえられた狂三の分身が苦しそうに呻く。

それを見ながらファントムは言う。

 

「・・・やっぱり昨日話したことが全部だとは思っていなかったんだね。じゃあ昨日言ってなかったことも全部話してあげるよ。・・・これから一年くらい、私はここを離れるよ。その間は〈ルーラー〉に凶禍楽園(エデン)の維持は任せるけど・・・何も考えなしにここを離れる訳じゃない」

 

虹色に輝く霊結晶(セフィラ)を掲げ、ファントムは言葉を続けた。

 

「この霊結晶(セフィラ)は間違いなく今までで一番強力なものだ。これを人間に渡したら・・・間違いなく強大な霊力に耐えられず死んでしまうだろう。そこで・・・五人選んだ候補者には霊力に慣れてもらう。凶禍楽園(エデン)のおかげで封印が不安定になり、微弱な霊力を発している精霊たちと生活してもらうことでね。・・・これが私の計画の全て。じゃあまたね時崎狂三。次会うときは一年後に本体とね」

 

そう言うとファントムは狂三の分身の首をはねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二亜「最後の方が御都合主義な感じがしなくもないけど第一章無事に終了っ!14巻が出てだんだんとキャラが立ってきた二亜ちゃんだよ。今回はその14巻からのゲスト、宇宙キター!な精霊、六喰(むくろ)!」

 

六喰「・・・ふむん?」

 

二亜「ちょ、リアクション薄っ・・・満を持して登場した最後の精霊だってのに・・・まぁ今巻でデレなかったからかもしんないけどさ」

 

六喰「うるさい奴じゃの・・・うぬの巡り、むくの〈封印主(ミカエル)〉で止めてくれようか?」

 

二亜「おっとやっちゃいますか?えっへっへ、ここではウェスコットに奪われてないから完全な状態の〈囁告篇帙(ラジエル)〉があるんだかんね!チート能力を使えるのはそっちだけじゃないってことを教えてあげ・・・」

 

タカヒロ「頼むから星を滅せる精霊が店で暴れないでくれ・・・・代わりと言っては何だが何だが吹き矢で勝負でもしたらどうだ。これなら安全に勝敗を決められる。

 

二亜「んー?何でまた吹き矢・・・あ、よく見たらこのバーにあったんね・・・」

 

六喰「・・・ふむん?むくとそれで勝負するというのか。良かろう」

 

タカヒロ「決まりだな。じゃあ三人で一番点数が低い人が一番高い人言ったことに何でも一つ従う、ということで」

 

二亜「え、何そのエロいこと要求されそうな展開。てかタカヒロさんもやるの?」

 

結果、一位タカヒロ、二位二亜、三位六喰

 

二亜「ふへぇ・・・タカヒロさん何者?百発百中・・・」

 

タカヒロ「まぁ昔少しあってな。では六喰くんに一つ要求を」

 

二亜「やばい・・・いたいけな少女に好きな要求をするおっさん・・・この絵面はやばい」

 

六喰「・・・・・・」

 

タカヒロ「じゃあ・・・また今度、気が向いたときにこの店に来てくれ」

 

六喰「・・・ふむん?・・・何を要求するかと思えば、そんなことでいいのか」

 

タカヒロ「ああ。今日は時間も短かったし、何より君は全く楽しそうじゃなかったからね。次来る時は、俺たちに心を開いて楽しく会話できると信じているよ」

 

六喰「心を開く・・・か。そんなことがあれば良いがの・・・まあ約束は約束じゃ。では気が向くことがあれば、また来よう」

 

タカヒロ「ああ。待っているよ。私と二亜くんもね」

 

二亜「・・・・そうだった、タカヒロさんはこんな人だったわ。カッケェ・・・」

 

タカヒロ「では二亜くん、予告をよろしく頼むよ」

 

二亜「うんにゃ、了解!ラジえもーん、と!次回、第二章日常編開始。タイトルは・・・『毛玉占いと劇場版うさぎになったバリスタ』お楽しみに!」

 

ティッピー「今回出ていなかったわしも活躍じゃ!」

 

二亜「あ、完全に忘れてた・・・」

 

 

 

 



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第二章 ラタトスクが観測したとある日常ver.木組みの街
第十三羽 毛玉占いと劇場版うさぎになったバリスタ


今回から日常編が始まります。
書いてみると案外難しかったです・・・ダメなところがあったら教えていただけると嬉しいです!


8月3日追記。
最近リアルの方が忙しく執筆ができない状態になっているので一時的に更新を停止させていただきます。具体的な再開時期は来年の2〜3月になってしまうと思います・・・。ですが必ず再開、完結させるので待っていてもらえると嬉しいです。

2018年10月23日追記
まだ待っていただけている人はいらっしゃるのでしょうか…リアルの方が想像以上に多忙になり、活動報告さえできませんでした。
責任を持って完結させますので、どうか生暖かい目で見守っていただけますと幸いです。


「士道くんおはよう!ついに・・・ついに今日から夏休みだよ〜!」

 

早起きをして朝食を作っていた士道の元に、そんな事を言いながらやたらハイテンションなココアが現れた。

ガーディアンの襲撃から一週間以上が経ったが、それからは特に大きな出来事はなく、全員が木組みの街で平和な日常を過ごしていた。

士道たちもここでの生活に慣れ、ラビットハウスでの仕事を淡々とこなしている。

 

「ああ、おはようココア。いつもはこんな時間に起きてこないのに、余程夏休みが楽しみだったんだな」

 

いつになく元気なココアを見て士道は苦笑しながら言った。

 

「だって、今日は夏休み初日にしてみんなで映画を見に行くんだよ!?楽しみせずにはいられないよ!」

 

そう、ココアの言う通り、実は今日士道たちはココアたちが夏休みに入ったのに合わせて映画を見に行くことになっていたのだ。

何でもこの店の常連の青山ブルーマウンテンという作家さんが自分の作品が映画化するにあたって貰ったチケットが余っており、それをココアが貰ったのだという。

そしてそのチケットの数が思ったよりも多く、千夜やシャロ、そしてそこに住まわせてもらっている精霊たちも一緒にみんなで見にいこうということになったのだ。

 

「まあ俺もみんなで映画に行くのは楽しみだけど・・・映画は夜だろ?今日も店を開けないとだし、とりあえず朝食にするからチノや十香たちを起こしてきてくれないか?」

 

「それが十香ちゃんが全く起きてくれないの・・・ほっぺたつねったりしたんだけど全然」

 

ココアのそんな言葉を聞いて士道は「ああ・・・」と呟いたのち、テーブルの上にあった朝食を盛り付けた皿を持って手渡した。

ちなみに皿にはスクランブルエッグとソーセージが乗っていた

 

「その匂いを嗅がせれば十香は簡単に起きるはずだ。今までの経験上、間違いない」

 

「な、なるほど、逆転の発想・・・!早速試してみるよ!」

 

何が逆転なのかは全く分からなかったがココアは渡された皿を持つと、ドタバタと寝室の方に走って行った。

と、その途中で起きてきたチノと四糸乃に出会ったようでこんな会話が聞こえてきた。

 

『あっ、チノちゃん、四糸乃ちゃん、おはよう!』

 

『こ、ココアさん!?私たちより早く起きてるなんて・・・今日は槍でも降るんですか?』

 

『あ、あはは・・・チノさん、それは流石に・・・』

 

『まあそんなことは置いておいて!二人とも。さっき士道くんから聞いたんだけど、十香ちゃんはどんなに熟睡してても食べ物の匂いを嗅がせれば起きるんだって!』

 

『『・・・知ってますけど・・・・』』

 

『あれっ、あれっ!?もしかして知らなかったの私だけ!?どういうこと、士道くん!』

 

それはお前がいつも一緒に寝坊してるからチノたちみたいにその方法で起こす機会が無いだけだ、と心の中で思いつつ、士道は朝食の準備を再開した。

 

 

 

 

****

 

 

 

みんなで朝食を食べ終わった後、リゼが来たのに合わせて店を開けた。

休日ということもあって客の入りは上々だ。

と、リゼと一緒に店を訪れて、ミルクと砂糖たっぷりのコーヒーを飲んでいた琴里が、その視線でチノを捉えながら士道にふとこんな事を尋ねてきた。

 

「ねえ士道、チノはお客さんの飲んだコーヒーカップを見ながら何をしているの?」

 

「ん?ああ。あれはカフェ・ド・マンシー、いわゆるコーヒー占いってやつらしいぞ。何でも、チノはカプチーノなら物凄い確率で当たるらしいからお客さんからも人気なんだよ。何なら占ってもらえばいいんじゃないか?」

 

「私のはカプチーノじゃないから別にいいわよ・・・」

 

と、琴里がそう言った時。

会話を聞いていたらしいリゼがこんなことを言ってきた。

 

「だったらティッピーに占ってもらったらどうだ?カプチーノ以外でもできるし的中率も抜群だ」

 

「「ティッピーに?」」

 

二人がリゼに聞き返すがそこでココアも思い出したかのようにポン、と手を打つ。

 

「思い出した!前一度みんなで占ってもらった時があったんだけど・・・本当に当たったんだよ!」

 

「ま、まさか、そんな事が・・・ティッピーはウサギだぞ・・・ん?」

 

そこで士道に一つの疑問が浮かぶ。

そもそもティッピーは喋れないはずで声はチノが出しているのではなかっただろうか・・・。

しかしそんな疑問を掻き消すように十香元気のいい声が聞こえてきた。

 

「うむ?何やら面白そうな話ではないか!シドー、私もティッピーにそのかふぇ・ど・てんしーというのをやってみたい!」

 

「 カフェ・ド・マンシーな・・・。うん、いいんじゃないか?四糸乃、お前もやってもらうか?」

 

「あ・・・じゃあ、私もお願い・・・します」

 

士道の問いに四糸乃がおずおずと答える。

そこでおもむろに財布を取り出しながら琴里が言う。

 

「じゃあそれで決まりね。お金は私が払うからお客さんが居なくなったタイミングを見計らって飲ませてもらいなさいな」

 

 

****

 

 

ティッピーの眼前には飲み終わった4つのカップが置いてある。

これからついにティッピーの占いが始まるのだ。

まずティッピーは一番右の、琴里のカップを覗き込んだ。

 

「ふむ・・・琴里。お主はこの先兄に関することである重要な決断を迫られることになる、と出ておるな」

 

ティッピーの言葉に琴里は眉をひそめる。

 

「・・・士道に関することで?」

 

「うむ。だが仲間を信じればその先の悲しい運命を変えることができる、とも出ておる。まあ、何が起こるのかまではわしにもわからぬ」

 

「ふうん・・・運命、ね。ま、占いは占い。話半分に聞いておくわ。ありがと」

 

琴里がそう言うとティッピーはうむ、とだけ言って次のカップの占いへと移った。

十香のカップである。

 

「次は十香じゃな。ふむ・・・イヌ、サル、キジ。それにきび団子。これは・・・桃太郎かの?」

 

「モモタロウ?」

 

十香が桃太郎という単語に不思議そうに首を傾げる。

そこで士道が桃太郎について簡単に説明をする。

 

「桃太郎ってのは日本の有名な昔話だな。きび団子でイヌ、サル、キジを仲間にして一緒に鬼退治に行く話だ。もっとも太郎って言うくらいだから男だし、何でまた・・・」

 

「わしにもそれは分からん。占ったら出てきたからそれを言ったまでじゃ」

 

「むう・・・誰かにそのモモタロウとやらのコスプレでもさせられるのだろうか・・・」

 

十香の脳裏にはやたらハイテンションな精霊兼アイドルが浮かんでいた。

 

「ま、まあ今それを考えても仕方ないよ!ティッピー、次の人のを占って!」

 

ココアを促されるままにティッピーは次のカップの占いへと移る。

次は四糸乃のものだ。

 

「ふむ・・・四糸乃は・・・お婆さん、オオカミ、道草・・・」

 

「赤ずきんだろ」

 

「赤ずきんね。というかお婆さん、オオカミと来たら普通に赤ずきんが見えてもいいんじゃないかしら。何よ道草って」

 

琴里がティッピーの占いにツッコミを入れる。

確かに道草が見える、というのはいささかおかしい気がしなくもない・・・いや、おかしい。

そして当の四糸乃はというと。

 

「赤ずきんって・・・確かお婆さんと一緒に食べられちゃうんですよね。・・・怖い、です・・・」

 

「大丈夫だ四糸乃。その後猟師が来て助けてくれるだろ?というか四糸乃がそんなシチュエーションに陥ることなんてないだろうし」

 

「ねえ知ってた?変更を加えられる前のストーリーでは猟師は登場しないのよ?赤ずきんが食べられたままで話が終わるの」

 

「おい琴里、余計なこと言うなよ!」

 

士道は琴里の誰得豆知識がこれ以上炸裂する前に止めさせる。

と、そこでずっと静かに占いを聞いていたリゼが一言。

 

「・・・さっきから現実味のない占いばかり・・・。ティッピー、もしかして占いの精度落ちてないか?」

 

「な、何じゃと!?そんな訳があるものか!わしの占いは昔から百発百中で・・・」

 

「・・・ティッピー、熱くならないで最後のカップを占ってください」

 

チノに諭されティッピーは渋々最後のカップの占いへと移る。

ついに士道のカップだ。

 

「士道は・・・ふむ、料理が趣味の来禅高校二年生。幼い頃親に捨てられて琴里の家に引き取られた・・・中々ハードな人生を歩んでおるのお」

 

「まぁそうだな・・・。ってか何で俺だけ過去のこと?しかもぴったり合ってるんですけど・・・」

 

次々と言い当てるティッピーに士道は少し戦慄する。

 

「リゼさんに煽られて遂にティッピーが本気を・・・!これから士道さんの過去が次々暴かれていきますよ!」

 

チノが珍しく少し興奮気味に言う。

そんなに士道の過去が気になるのだろうか・・・。

まぁ精霊関係の事は既にここにいる人は全員知っているし特に知られて困るような過去は・・・。

 

「ふむ、これは面白いの。どうやら士道は中二病をこじらせた時期があったようじゃな。ポエム・『腐食した世界に捧ぐエチュード』、オリジナルキャラを作ったり、終いには必殺技の練習・・・」

 

「っぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?ちょっと待ってえぇぇぇぇぇ!?」

 

あった、普通にあった。

十香や四糸乃さえも知らない暗黒の歴史が・・・!

 

「・・・え、士道くん。さすがに違うよね?」

 

「本当だったらちょっと引くな」

 

ココアとリゼが真顔で聞いてくる。

・・・辛い・・・先ほどまで笑顔で占いの結果を聞いていたココアが引き気味になっているのが本当に辛い・・・。

そしてこのことを全て知っている琴里は先ほどから必死で笑いをこらえていた。

 

「高校の頃には女装に目覚めたようじゃな。五河士織(いつかしおり)などと名乗って・・・」

 

「っいやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

「え・・・まさか士道さん、そ、そんな訳ないですよね?無いと言ってください!」

 

チノが不安そうに問う。

そんなチノに士道は精一杯の笑みを浮かべて。

 

「あ、ああ。そそそそんな訳ないだろ!?な、なあ琴里!」

 

「え、ええ。そんな訳・・・ぷっ、な、無いわよ」

 

「何で笑いながらなんだよ琴里ぃぃぃぃ!」

 

その後士道は疑われながらもなんとか嘘を貫き通し、社会的に死亡せずに済んだ。

ティッピーの占いは士道の心に確実に恐怖を刻み込んだのだった。

琴里、十香、四糸乃の占いものちに当たることになるのだがそれはまた別のお話である。

 

 

 

****

 

 

夕方になり店を閉め、ラビットハウス一同は劇場版うさぎになったバリスタを見るため映画館へ向かっていた。

千夜たちもラビットハウスに合わせて店を閉め、映画館に向かっているはずである。

シャロもバイトが終わり次第合流する事になっていた。

 

「うさぎになったバリスタ、本当に面白い作品だからみんなも期待してていいよ!」

 

原作を読破済みのココアが歩くみんなに笑顔でそう言ってくる。

 

「ココアから聞いたけど、この街が舞台なんだろ?ひょっとしたら身近な人がモデルになってたりするかもしれないな!」

 

「確かに・・・楽しみですね・・・!」

 

リゼとチノの期待も高まっているようだ。

と、映画映画の話題で盛り上がっているとあっという間に映画館に着く。

そしてそこに見知った集団を見つけた。

 

「・・・あ、みんな来たみたいよ。おーい!」

 

どうやら向こうも七罪が気づいたようでブンブンと手を振ってくる。

しかし途中でハッとして手を振るのをやめ、膝を抱えて地面に座り込み何やらブツブツ言い始める。

・・・どうやらガラでもないことをしてしまったと後悔しているのだろう・・・。

別に誰も気にしないし、恥ずかしい事でもないと思うのだが・・・。

そして士道たちが千夜の方へ向かうと、折紙が相変わらず無表情で。

 

「士道、提案が。私と士道、二人きりでこの映画を観るべき」

 

などとパンフレットを指差しながらそう言ってきた。

・・・どうやら恋愛モノらしいがどうも狂気的な何かを感じる映画だ。

と、その後しばらくしてからシャロがバイトを終えて到着した。

みんな揃ったということでついに映画館に入る。

 

「「わぁ・・・!」」

 

映画館の中は案外大きく、四糸乃とチノが思わず感嘆の声を漏らす。

それに続いて十香、ココア、耶倶矢、夕弦が興奮し、辺りを散策し始めた。

 

「あ、おいちょっと・・・」

 

「映画までまだ少し時間もあるし、行かせてあげましょう。四人なら問題ないでしょ」

 

「・・・ん、まぁそうか」

 

「ええ、ガーディアンもまさかこんなところにまで来ないでしょ・・・って」

 

と、そこで士道を制した琴里が公開中の映画を見てあるタイトルに目が留まった。

それは琴里がよく知るライトノベルシリーズのタイトルで・・・。

 

「・・・まさかこっちの世界でも私の世界と同じ作品があるなんて・・・。案外ここは私たちの世界に近いところなのかもしれないわね」

 

琴里が興味深そうに話す。

そこで士道は何となく気になった事を聞いてみる。

 

「なぁ琴里、お前の読んでるシリーズのタイトル、なんて言ったっけ?」

 

「帝都アライブ。ちなみに映画は万由花ジャッジメントってタイトルよ」

 

「・・・・・・・」

 

とてもギリギリな感じがした。

というかギリギリアウトな気がしなくもなかった。

士道と琴里がそんなことを話している横では。

 

「ねぇ美九、さっきから七罪はどうしたのよ。またネガティブが発動してるけど・・・」

 

「・・・あれはそっとしておいてあげましょう〜。そ・れ・よ・り・も、今日のクレープ屋バイト中のシャロさんはフルールとはまた違った可愛らしさがあって最高でした〜!週何であそこのバイトに行くんですか?」

 

「クレープ屋のバイトは週二かな・・・って何処から見てたのよ!?」

 

などと美九とシャロがそんな話をしていたりする。

と、そこにチノ、四糸乃、リゼ、千夜が飲み物、ポップコーンを持って現れた。

どうやら全員分を買ってきてくれたようだ。

・・・他のみんなと比べると彼女らは気がきくし、しっかり常識を持ち合わせいるように思う。

まぁリゼはミリタリー系のことが絡むと暴走するし、千夜はココアとボケだけの漫才を繰り広げたりどこか抜けている気がするが。

そしてシャロは・・・カフェイン酔いさえしなければ、と言ったところか。

そんな事を考えていて、ふと時計を見るとそろそろ上映の時間が近づいていた。

士道はみんなに声をかけ、映画を見るべくシアターへ向かった。

 

 

 

 

 

****

 

 

満を持して『うさぎになったバリスタ』上映。

士道もベストセラー小説ということで期待していたのだが・・・。

 

(うっ・・・やばい、涙腺がっ!?)

 

さすがはココアが太鼓判を押していただけはある。

終わりまで涙をこらえるのは難しいかもしれない。

そして士道以外のみんなはというと・・・。

 

(泣いてるのばれたくない・・・絶対からかわれる・・・)

 

(感動、素晴らしいです・・・涙が出ます・・・)

 

(うわあああああ!やっぱりこのシーンは泣けるよおお!)

 

涙を我慢するチノとその横で静かに涙を流す夕弦。

さらにその横ではココアが号泣していた。

 

(なーんか見たことあるような気がするのよねー。主人公とその息子のやり取り・・・気のせいかしら?)

 

(も、もしかして息子さんのモデルはタカヒロさん・・・でしょうか。どこか似ている気がします・・・)

 

映画を見て何となく登場人物のモデルを察する琴里と四糸乃。

 

(君の瞳はまるで月明かりの湖畔・・・メニュー名に使えそうね)

 

(くく、最近技名を考える時にドイツ語を使うことが多かったが・・・やはり原点回帰で日本語も良さそうではないか)

 

劇中の言葉に影響を受ける千夜と耶倶矢。

 

(スクリーンって大きいな〜。うちのテレビより大きいんじゃないかな)

 

初めての映画館で少し的はずれな事を言うリゼに・・・。

 

(・・・うむ、やはりポップコーンはキャラメルに限るな!)

 

映画そっちのけでポップコーンを貪る十香。

 

(・・・ま、まさか十香にポップコーンを分けてあげたらあんなに持っていかれるなんて・・・お腹静まれっ!)

 

(・・・シャロがお腹をすかせてる・・・。私のポップコーンを分けて・・・いや、余計な御世話とか言われそうだし、止めとこう。私が善意で行動したってどうせろくな事にはならないわよね。・・・というか私ごときがみんなと映画なんて来て良かったのかな、場違いじゃない? や、やっぱりそうよね。だ、だとしたらry)

 

シャロは必死にお腹を押さえ、その横で七罪は悶々と考え込んでいた。

そして美九と折紙はというと。

 

「・・・最初の方に出てきた可愛らしい女の人、もう出てこないんですかね〜?」

 

「・・・・・・・・」

 

・・・ただただ、暇そうにしていた。

 

 

 

****

 

 

映画も終わり千夜たちとも別れてラビットハウスへの帰り道。

映画の興奮冷めやらぬチノがココアに信じられないといった様子で言う。

 

「えっ、ココアさん後半寝てたんですか!? それじゃあみんなと語り合えないじゃないですか!」

 

「しょ、小説は読んだから、許して〜」

 

そんなチノにココアは苦笑いをしながらそう返す。

そのあとも士道と十香、四糸乃も含めてみんなで映画の話をした(十香はほとんどポップコーンの感想だったが)。

と、そんな時。

突如謎の違和感を感じたチノが足を止め、少し不思議そうに街の一角を見る。

そしてある場所を指差しながらココアに聞いた。

 

「ココアさん、あそこにあるお店っていつできましたっけ?」

 

「え?・・・うーん、私がこの街に来た時にはもうあった気がするけど・・・流行の文房具のお店だった気が・・・」

 

「そ、そうですっけ。この街にもまだ私の知らないところがあったとは意外でした」

 

「なら今度暇な時行ってみるか。流行の文房具ってちょっと気になるしな」

 

士道がニッと笑いながらチノに言う。

チノはそうですね、と言うと再び歩くのを再開した。

もうあの時感じた違和感は無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな平和な木組みの街で。

 

「首尾はどうだ?」

 

「へい、順調です。お嬢」

 

「そうか。・・・じゃあ予定通り、明後日までによろしく頼む」

 

「へい、了解です!」

 

「ふふ、楽しみだな・・・!」

 

とある計画が動き出そうとしていた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二亜「始まりました日常編、本日のゲストは・・・」

 

マヤ「どうもー!マヤと・・・」

 

メグ「メ、メグでーす!こ、このコーナーに出る事ができてとっても嬉しいでーす!」

 

二亜「えっへっへ、ここがどんな場所かも知らないで・・・ご苦労様です・・・」

 

メグ「えっ、そ、それはどういう・・・」

 

二亜「じゃあとりあえず〈囁告篇帙(ラジエル)〉で調べた十三羽のタイトルを発表します。【アウトドア計画、発動!前編】!」

 

マヤ「・・・これってもしかしてみんなでキャンプ行った時の話?だったら私たちも大活躍じゃん!やったねメグ!」

 

メグ「う、うん!・・・あれ、でもみんなでキャンプへ行ったのってコミックス四巻、つまり二年目の夏なんじゃ・・・」

 

二亜「そう、いいところに気がついたね。この話はごちうさ本編とは違うパラレルワールド。デアラ勢が来た時点で本編とは違う話が進んでいる!つまり・・・」

 

マヤ&メグ「つ、つまり?」

 

二亜「・・・次の話、二人は一切登場しません」

 

マヤ&メグ「ええええええええええ!?」

 

二亜「君らがここに来たのはこれ以降本編にあまり関わってこないから・・・えっへっへ、君らも私と同じというわけだよ」

 

マヤ「そ、そんなの酷くね!?私たちが居なかったら、誰がチマメのマメを補うのさ!」

 

二亜「っはは!見苦しいぞマヤ!本編に少しでも出ただけありがたいと思って・・・いや、ほんとに、私は影も形もないから」

 

マヤ「え、あ、うん。なんかごめん・・・」

 

メグ「・・・で、でもこのまま何の音沙汰もなくフェードアウトは嫌だよ・・・どうすれば・・・」

 

タカヒロ「・・・じゃあ君たちはしばらくここのゲストとして出ればいいさ。作者も特に出すあてもないみたいだしね」

 

二亜「た、タカヒロさん・・・突然の登場・・・あ、ティッピーは?」

 

タカヒロ「本編で忙しいらしい」

 

メグ「わ、私たちがしばらく出ても大丈夫なんですか?」

 

タカヒロ「ああ・・・。作者を助けるという意味でも大歓迎だよ」

 

メグ「あ、ありがとうございます!」

 

マヤ「やったあ!これで一安心!・・・じゃあ改めて次回予告っ!第十三羽【アウトドア計画、発動!前編】!」

 

メグ「お楽しみにね〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マヤ「ってか合計すると本編、ティッピーの方が出番多くね?なんか屈辱・・・」

 

メグ「あ、あはは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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