熾凍龍のオーバーロード【更新凍結】 (冬月雪乃)
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始まり
——DMMO-RPG《YGGDRASIL》
超人気作と名高いこのネットゲームの、終焉の日。
シンプルな、しかし最高級品のみを使った贅の限りを尽くした円卓の間に、異形が座っていた。
粘体質な黒いスライム。翼を持つ人類。ピンク色の肉棒。魔導師のようなローブを着た骸骨。
ほんの数分前にはもっと大勢が——それこそ円卓の間がいっぱいになるほどいたのだが。
それぞれが自分の都合でログアウトしていった。
もう二度と会えないのか、それともどこかで《知ってる他人》として会えるのか。
それは分からないが。
そして今、翼持つ人類とピンク色の肉棒がログアウトし、円卓の間はついに二つの異形が残るのみである。
しばらくするとスライムが名残惜しそうにログアウトしていき、同じく名残惜しそうに見送った骸骨が諦めたような、寂しいような——あるいは怒りを耐えているかのような溜息を吐いて、そして机に拳を振り上げ——
「楽しかった日々は終わりを告げる——あぁ、そうとも。万象全てに終焉は宿るもの。それが形を持っていなくとも……そう。始まった瞬間から、全ては滅びに突き進んでいるのだ——」
唐突に現れた白と赤の龍によってその拳は振り下ろされる事なく宙をさまよった。
「……ディースさん。お久しぶりです。胡散臭いのは相変わらずのようですね」
しばらく宙をさまよった拳はやがて力が抜けたようにゆっくりと机の上に着地する。
「胡散臭いとは心外であるな、我らが盟主モモンガ」
尻尾から頭までを白い鱗と甲殻で覆い尽くし、足と胴体、胸を赤い鱗と甲殻で覆う龍の名は《熾凍龍》の二つ名を持つ上位に食い込むであろうプレイヤーの一人、ディース。
その巨体ゆえ、椅子には座れないがために床に直接腹をつけるように座っている。
龍という外見を猫か犬に変えてしまえばさぞ和む座り方だろう。
だが、ディースは龍であり、その物々しいまでに尖った鱗や胸を守るように存在する胸殻や、その眼光で相対するもの全てを畏怖させてしまっていた。
「えぇ、本当に。最後に会えて良かったです。研究の方は終わったんですか?」
「ふむ。どうやら心中荒れ狂っているご様子。リアルの詮索はご法度だと、そうルールを制定したのは盟主殿でありましょう」
咎めるような内容だが、その口調は軽い。
「……すいません。つい。でも、本当に会えて嬉しいですよ、ディースさん」
「構わないとも。我が友の事——もちろんあなたが私をまだ友だと認めてくれるならばだが。研究は終わり……そして私は晴れて自由の身、という訳だ」
——相変わらずだな、この人。
愉快そうに目を弓にして笑うディースにそんな感想をモモンガは抱く。
「ディースさんを友達じゃないなんて思った事はありませんよ。ギルドの仲間ですし」
「ふふ。ありがとう。さて、盟主殿? 提案があるのだが」
「どうぞ?」
「どうせ最後だ。どうせ悪役ロールのギルドであるならば——玉座の間で過ごすのも悪くはあるまい?」
もちろん、その杖も一緒に、な。
モモンガの隣にまで移動してきたディースは額から生えた角で指した。
そこにあるものは、モモンガで無くとも見ずに予測できる。
壁に埋め込むように安置してある黄金の杖。
頂上には九つの蛇が彫られていて、彼らはそれぞれ別の色合いの宝玉を咥えていた。
「スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。我らのギルドの象徴よ——」
「賛成二で可決ですね。では、行きましょうか」
「ふむ、ここに足を踏み入れるのはいつ振りか……」
「引退する寸前ですから……一年半ですかね」
「ふむ……やはりここはいいな……。研究など放ってここにこもっていれば良かったとすら思える」
あはは、とモモンガは軽く笑う。
それが社会人かつ、異形の姿を持ったプレイヤーであること、というギルド参加資格が頭をよぎったからだ。
そんなモモンガを尻目にディースはその強靭な四肢を使い、雄大に尻尾を振って歩く。
それはまさしくモンスター最強種たるドラゴンの風格だ。
「……どうした、盟主殿。盟主殿の席はあそこだぞ?」
「え? あ、はい」
見とれていたなどという訳にもいかず、表情の分かりにくい異形である事に感謝をしながらモモンガは玉座に座る。
連れていた従者——プレアデスという六人の戦闘メイドと一人の執事……そして玉座近くに控えていた階層守護者総括であるアルベドという白い清楚な服に黒い翼、同色の長い髪と黄金の瞳を持つ女性を平伏せさせる。
その姿はまさに魔王のそれであり、ディースはくすりと笑いをこぼした。
「……アルベド——どんな設定でしたっけ?」
「あの曲者が設定したNPCだ。色々と《アレ》な設定である事は間違いないな」
ですよねぇ、などと言いながらモモンガはアルベドの設定を開いた。
縦長のウインドウが出現し、そこに文字が羅列されていく。
「なっがっ……!」
「さすがは設定魔のタブラ……」
二人して呆れた声を出し——そして最後の一文を読む頃には引き気味なものへと変わっていく。
片やオーバーロードと呼ばれる最上級アンデット、片や棘や鱗、甲殻に覆われた頭部を持つ龍であり、表情は読めないが。
——ちなみに、ビッチである。
それが一大叙事とも言えるほど長大な設定の最後の一行だ。
あれほどまでに様々な設定を書いておいてそれはないだろうというのが二人の意見だった。
「……ディースさん」
「どうせ最後——あと数分後にはデータの破片となる存在だ。変えてしまってもタブラは何も言わんだろうよ」
「……そうですかね」
「そうとも。……ただ、一個人としては女は一人を愛する姿が在るべき姿だと思うのだ」
古臭いかね? とディースは苦く笑うとモモンガに背中を向けた。
ナザリック地下大墳墓を拠点とするギルド《アインズ・ウール・ゴウン》最強の龍はもはや何も見ないこととしたのだ。
どうせ最後——。その一言はひどく落ち着いていて、そして同時にこの場においての最大の免罪符となりえた。
「終わりました。もういいですよ」
「うん? なんの話かわからないなぁ」
そうですか、とモモンガは適当に相槌を打った。
「——モモンガさん」
あと数秒後にはお互いに回避できない別れが始まり、そして別の道を歩むことになる。
それから来る寂しさからか、ディースはロールプレイも忘れて口を開いていた。
23:59.55
「はい。なんでしょう」
「孤独だった私を、こんな素晴らしいギルドに参加させてくれてありがとうございます——」
23:59.56
なんて、キャラじゃないかな、と自虐して締め括る。
しかし、まだだ。
ディースは、あぁそうだ、と繋げ、
23:59.57
「なにか新しく始めたら教えて下さい。アインズ・ウール・ゴウン復活の時を、待っていますよ」
「良いですね……! みんな来てくれますかね」
23:59.58
「えぇ」
23:59.59
「なんせ、こんな素晴らしいギルド長ですから。人望は折り紙付きですよ」
0:00.00
「では、また」
「えぇ、また」
0:00.01
「……延期?」
「……ど、どういうことでしょう!?」
0:00.02
視界端の時間表示は既にサーバー停止時間を過ぎている。
明らかに異常事態だ。
「モモンガさん! 口! 口!」
ディースは普段の口調を忘れ、思わず素のままで反応した。
「え? あ、これは……」
「運営のサプライズ——な訳ないですよね」
口が動いている、身動きした時にわずかな大気の乱れを感じる。
どういうことかとNPCを見れば、その瞳は全てモモンガ、ディース両名に向いていた。
「なっ……」
「ど、どうかなさいましたか?」
「え? アルベド……あ、あぁ、いや、GMコールというのを知っているか?」
「いえ、わたくしどもは……その、GMコールというのが何か、存じません、申し訳ありません——」
さらに続けようと口を開こうとしたアルベドをディースが制した。
「構わない。GMコールとは、天上の意思と疎通する概念だと思ってくれるかね? ——失礼」
ディースは手近なところにいたプレアデスの一人の顔を覗き込む。
息をし、足は竦んでいるがしっかりと立っている。
何より、その瞳には明確な意思があった。
「盟主殿。……盟主殿?」
中々返事をしてくれないモモンガにディースは痺れを切らしたように振り向いた。
「あっ……は……あぅ……んっ……」
モモンガがアルベドの胸を揉んでいる。
なんとなく狙いは察したが、だからといって行動に移すだろうか。
アルベドの声は濡れ、モモンガの指の動きに合わせて嬌声をあげている。
「——盟主殿」
「……ハッ! あっ! あ! いや、その! これは!」
はぁ、とため息を吐いたディースは力を込めてゆっくりと呼んでみる。
どうやらモモンガは考え込んでいたらしくビクッとしてディースを見た。
「……アルベドは可愛らしいものな。劣情を抱くのも分からなくもないが、場を弁えてくれるだろうか」
「……ゴメンナサイ」
「あっ……」
モモンガの指がアルベドの胸から離れる。
名残惜しそうな声を出してアルベドは離れていったモモンガの指を見ていたが、やがておもむろに服に手をかけた。
「——ここで私は初めてを迎えるのですね……!」
「アルベド。……アルベド、ステイ。ハウス」
訳のわからないことを口走りながら服を脱ごうとするアルベドを止め、必死に目を逸らして『僕は見てません』アピールをする盟主の姿をなんとも情けないと思いながらもディースは今後の事について話し合うべきだと提案する。
その後、アルベドがモモンガとどうなろうが知った事ではないが、とにかく今は状況把握に努めて貰わないと困るのだ。
モモンガは慌てたように——すぐに戻ったが——セバスに周辺の確認を指示し始める。
様にはなっていたが、先ほどの痴態を見た後だとなんとも言い難い気分に襲われ、しかし考えないようにしようとディースは最大限努力する事にする。
《ディースさん》
モモンガからのメッセージに思わず飛び上がる。
ビクッと近くのプレアデス達が震えた。
こんな巨体に踏みつぶされたらたまらないのだと無言の抗議が聞こえた気がしてディースは少しだけ離れた。
《今から第六階層の円形闘技場に行こうかと思います。ディースさんも来ますか?》
モモンガからの〈伝言/メッセージ〉だ。
是非もない、とディースは返事をして玉座の間を出て行く。
《そこで魔法がしっかり使えるかを試したいと思います。ディースさんは……》
《参加させていただこう。私も試したい》
#
第六階層円形闘技場。
中世のそれをそのまま再現したもので、かつて1500人ものプレイヤーを迎え撃ったのもこの場だ。
観客席にはゴーレム達が座り、貴賓席には四十一の椅子が置いてある。
《盟主殿。アルベドとセバス、プレアデス達の態度を見たからといえ、気を抜くのはやめたほうがいい》
《えぇ。分かっていますよ。アウラもマーレも、この後集まる各階層守護者達も、もしかしたら俺たちに敵意を持っているかもしれないってことですよね》
《それもあるが、もしかしたら盟主が気を抜いている——正確にはナザリック支配者としてダメだと思われてしまえば謀反の原因にもなりうる》
そうか……と納得したように気合を入れ直したモモンガは背筋を伸ばした。
「モモンガ様!と……ディース様!?」
「うん? なにかね?」
「い、いえ、その……おかえりなさいませ!!」
瞬間、ディースは硬直した。
《モモンガさんモモンガさん! 私アウラお持ち帰りしていいですか! 良いですよね! うひょぉ可愛いい!!!》
《え、ちょ、ま、ディースさん落ち着いて! 落ち着いて下さい! そんなに『おかえり』が効いたんですか!?》
《当たり前じゃないですか! アウラちゃん私の事お姉ちゃんって呼んで良いですからねー!》
《俺に言われても困りま……えっ、ディースさん女性だったんですか!?》
《え? ——あ》
メッセージ越しにディースが沈黙した。
「……あぁ、ただいま、アウラ。待たせたな」
ディースは背後から来る微妙な視線を努めて無視しながら出来るだけクールに見えるように振る舞う。
狙い通りに行ったようで、アウラは明るく表情を作った。
「いえ! 至高の方々の帰りをお待ちするのは苦ではないです!」
屈託のないアウラの笑顔にディースは浄化される気さえしてきた。
後から来たマーレも、製作者のカルマを感じるあざとさであり、さすが男の娘だとディースは再び浄化されかけた。
……煩悩で浄化とは変な話だが。
そのやりとりを見ていたモモンガはこう思う。
——逃げたな。と。
同時、いつもメンバーをからかう側にいたディースをからかえるチャンスだと追撃をかけることにした。
《ディースさん? あの……》
《私の性別が気になるなら……私のブレスと突進をばっちりしっかりクリティカルで受け止めてからにしてくださいね》
モモンガは詮索を止めた。
ブレスも突進も火力は全プレイヤーでも上から数えたほうが早いディースの必殺技的な立ち位置だ。
そんなものを受け止めた日にはモモンガも消し炭になってしまうだろう。
下手したらチリも残らないかもしれない。
「ゴホン。ここに来たのは試し撃ちのつもりでな」
「え? あ、それは……モモンガ様だけが使えるという伝説の……!」
「左様。早速だが、頼めるかな? 盟主殿」
「えぇ。数と質、どちらが良いですか?」
「ふむ……ではせっかくだ。質と行こう」
「分かりました」
モモンガの握る金色の大杖、その天辺にある赤い宝玉が瞬いた。
《サモン・プライマル・ファイヤーエレメンタル/根源の火精霊召喚》
まず現れたのは巨大な光球。それは炎で構成された渦にすぐさま飲み込まれる。
空気を飲み込み、燃え盛るそれは大気を大きく震わせ、そして煉獄と突風の世界を作り上げる。
これがたった一つの魔法の結果であり、しかも単なる召喚魔法とは違うとはいえ、直接攻撃するものですらない。
並大抵の存在ならば召喚された存在の姿さえ目視出来ずに消え去るであろうそれは、やがて姿を人型の上半身に圧縮するように変形していく。
「元素精霊の限りなく最上位に近い存在。プライマル・ファイヤーエレメンタル。レベルは……80位だったか?」
「えぇ。如何ですか?」
「あぁ。だが、これはアウラとマーレに譲るとしよう」
ディースの声に、思わずギョッとした声をアウラが発した。
「な、な、な何をおっしゃるんですか!?」
「なぁに、私では踏み潰すだけで終わってしまうのでな。ならば、ここはアウラとマーレの戦闘力を見ようかと」
「あっ」
モモンガが思い出したかのように声を出した。
ディースには常時発動型スキルに第九位階以下の火属性吸収というスキルを持っている。氷もだ。
ただし、その代わりに水、雷、闇の三つが倍加ダメージとなっており、これはモデルとなった百年前のゲームの龍をオマージュしたもので、完成度は高いと以前ディースが自慢気に話しているのをモモンガは聞いていた。
つまり、どれだけ頑張っても第十位階に届かないプライマル・ファイヤーエレメンタルではダメージすら負わないということである。
「マーレ! 至高の方々の期待を外す訳にはいかないんだから、気ぃ引き締めてよね!」
「わ、分かったよぉ……」
ディースは半笑いでこう思う。
この双子はこう見えてもカルマ値-200で、結構な外道だったよなぁ、と。
見た目は完全に運動会にやる気を出してる姉と気弱で臆病なおとう……妹だ。
やがて二人は駆け出した。
それっ、と掛け声一つでアウラとマーレは挟み込むように陣形を整える。
身軽だ。
そしてあっという間に最上位精霊を討伐してしまった。
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戦闘とこれから
「ご苦労。なかなかのコンビネーションだ。これならば、第六階層は安泰であるな? 盟主殿」
「え? あ、はい。そうですね。もし侵入者が正面からここまでたどり着けるレベルであっても、あの連携ならば心配はいらないでしょう」
ディース、モモンガの手放しの称賛に、アウラとマーレは照れたように笑った。
モモンガは取り出した無限の水差しを二人に差し出す。
照れたように遠慮しようとする二人だったが、モモンガとしては隣でキリッとした表情のまま《伝言》で荒ぶるドラゴンを抑えるのに必死で気付かない。
何を言ったかは覚えてないが、それでも二人がコップを受け取って飲んでくれたので良かったとしようとモモンガは胸をなでおろす。
「さて、次は私の番ですな。どうしますかな?」
「うーん、どうしましょうかね。私が戦っても良いんですが……」
「それはなりませんな盟主殿。盟主殿には逆立ちしてもまともな勝負にはなりませんから」
それに。
《もし他の守護者が敵意を抱いていた場合、単騎ならば倒せるが、結託していた場合下手をすると負けてしまう可能性があります。未だ詳細がつかめない状況でモモンガさんが疲弊する手は避けたいです》
《即死魔法やアンデットの軍勢のことを言っていますかそれ》
《えぇ。心臓掌握ならばうまくいけば即死、行かなくても動きを止められます。直接的に真なる死でも構いませんし、多彩な召喚魔法もあります。守護者も大半は人型を取っています。基本的には二本の手で戦闘を行う以上、圧倒的な数のアンデットを召喚する事によって数秒でも足止めとなります。対して、私にはそれがありません》
《なるほど。ならこうしましょう》
——《サモン・モンスター・10th/第10位階怪物召喚》
闇の扉……をイメージしたらしい黒い穴から三頭を持った巨大な犬が現れる。
「……わー……」
闇属性全開な色合いだし、そもそも名前が地獄の番犬ケルベロスだ。
最初からある程度本気出さないと高確率で不利な戦いになりそうだなぁ、とディースは嘆息する。
「ならば……すこし飛ばして行こう」
巨大な翼を一振り。
二度三度と繰り返せばディースの身体は宙に浮く。
腹に力を込めて、吐き出す。
それは火の玉となり、地面にいるケルベロスを容赦なく襲う。
火炎の数は、おおよそ三十。
《出たー、ディースさんの開幕乱舞ー》
《本来なら飛び回りながら行い、さらに氷の柱も建てるのだ。これでも手加減しているのだからそんな呆れた声は出さないでほしい》
《あれ本当鬼畜ですよね。火球だけみたら下からくるし》
これで一度に三桁をキルした覚えがある技だが、まだまだ本気とは言えない。
もうもうと立ち込める砂煙からモモンガもアウラもマーレも無傷である事を確認し、ケルベロスを見やる。
こちらはすでにボロボロだ。
「ふむ」
闘技場の三ヶ所に氷の柱を建てる。
実は課金によってエフェクトを変えた第六位階魔法《リフレクター・ウォール/反射する壁》なのだが、それはいい。
そこにドラゴン種固有のスキルを放った。
「えっ!? 外した!?」
口から吐き出されたのは青と赤が混ざり合った光線——ブレス。
見当違いの方向——氷の柱に放たれた光線にアウラがびっくりした声を出しているが、モモンガは知っている。
あれに当たると凍傷と火傷という訳のわからない組み合わせのバステが付与される事を。
そして、ディースの得意技は氷の柱で乱反射させてブレスを直撃させるというものである事を。
ケルベロスは伊達に最高ランクの魔法を使って呼び出せるモンスターではない。
それを示すように軽やかに背後から迫るブレスを避け——そしてさらに反射したブレスに直撃した。
着地したディースは《ローズロード/荊の道》を使って——もちろんエフェクトは氷に改造してある——ケルベロスへのレッドカーペット染みた道を作り出す。
そこにさらに《エンチャントフレア/火炎の接触》を自らに付与し、その巨体で突進する。
凍りついたケルベロスに回避の手段はなく、なんの抵抗もなく角に串刺にされて霧散した。
「ふう……。問題なし、か」
「久しぶりであっても問題なさそうですね!」
「あぁ。《エレメンタルブレイカー/耐性貫通》もしっかり機能している故——この世界の住人があまりに規格外な火力を有していない限り問題はあるまい」
百年前のレトロゲーム、MHシリーズに登場する熾凍龍ディスフィロアというモンスターのロールプレイをするディースは最初、単なる雑魚だった。
なんせ、その攻撃は属性を主としているのだ。中堅から耐性をガチガチに固め始めるユグドラシルにおいて、それは悪手でしかなかった。
しかしディースは諦めなかった。
偶然手に入れた運営にお願いする事ができるアイテム《永劫の蛇の腕輪》を使い、耐性を貫通するスキルを作ってほしいと願ったのだ。
本来ならディスフィロアの炎と氷の混ざった熾凍属性の追加を願いたかったのだが、辺境の地たる自身の拠点《最果ての島》の防衛が先だと優先順位をつけた結果だった。
結果として防衛はならず、その辺をNPCたちと共に飛行していた際にアインズ・ウール・ゴウンに出会って仲間となるわけだがともあれ。
耐性貫通スキル《エレメンタルブレイカー/耐性貫通》
その効果は0.1%でも耐性より属性値が高ければ耐性を貫通するというだけのものだ。
保有しているのはディースただ一人だけだったが。
しかし、そのおかげで《ナザリックの理不尽爆撃龍》とあだ名される位には強くなれた。
耐性面に関しても、とあるスキルのおかげでとりあえず人並み位には引き上げる事ができたため、対立ギルドからはトカゲのごとく嫌われたものだ。……龍だが。
「——おや、私が一番であり……ん……す……か……?」
「んん?」
闇の扉が開かれ、中からドレスを着た可憐な少女が現れる。
第一から第三階層までを守護する階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン。
《ここで挨拶代わりに闇に飲まれよ! って言ったらどんな反応してくれますかね》
《下手なこと言わないで下さいねディースさん。言ったらモモンガ玉です》
《Wenn es meines Gottes Wille!》
《どこでそれ知ったァッ!》
ディースを見て固まるシャルティアを見る二人の間でそんな小さな戦いがあったのだがさておき。
「ディ、ディース様で……ありんしょうか……?」
「あぁ、そうだともシャルティア・ブラットフォールン。詳しくは後ほど話すが、帰還を果たした」
「あ、あぁ……! ああ……!」
《ぃえっ!? な、なんで泣いてんのこの娘!? そんなに私嫌われてたっけ!?》
《どうでしょう。でも、嫌い過ぎて泣いてるようには見えませんね》
ディースは無言でシャルティアに寄る。
しかし、そのままだ。
「申し訳ないが、私には君の涙を拭うに足る腕がない。しかして……胸を貸すことはできる」
「そ、そんな! 至高の御方の胸を借りるなんて……!」
「構わんよ。盟主殿にも何も言わせん。君が私を嫌っていないならば……私の胸で泣くがいい」
シャルティアは悩んだ。
ディースのことは嫌いじゃない。大規模な戦闘の際、一番に助けてくれるのは己の造物主を除けばいつもディースか、たっち・みーだった。
嫌いになれるわけがなかった。
けれど、
——し、至高の御方の胸で泣く……栄誉でありんすが……少しばかり恥ずかしいでありんすね……。
もちろんそれだけじゃない。
自分のような下々の涙で至高の方々を汚すわけにはいかないというものもある。
「——可愛い妹分のため、我が身を貸し出せるならばこれほど栄誉の事はない」
「……あ……」
とん、とシャルティアは押し出された。
ぴと、と暖かくも冷たいディースの甲殻に頬がつく。
《モモンガさん》
《はい。あ、アウラを仕掛けたのは私ですからね》
《知ってます。バッチリ聞こえてましたからね。ってそうじゃなくて。私ね、今ほど腕がなくて後悔したことはないんです。こんなに泣いてるのを我慢してる妹を抱き寄せることもできない。——だから、私は誓います。他の誰でもない、貴方に》
《おっと、それはみんな集まってから表明してあげてください》
《分かりました》
「シャルティア。私は大丈夫だぞ?」
「し、しかし……」
「ふむ。そうか、私が嫌いか。ならば仕方ないな」
「あぁああ! ちが、違う! そうじゃないです!」
「なら胸を貸そう」
「ああぁああ、あうー!」
やけくそだろうか。
けれどもシャルティアは抱き付いてくれた。
アウラとマーレを見ると、羨ましそうな表情をしていた。
「サワガシイナ」
と、そこに無機質な声が響く。
甲冑のような重音が響く中、現れたのは蒼銀の武人然とした昆虫種。
「……コキュートス、か」
やはり彼もディースを見て一度動きを止めた。
その後も次々と現れる守護者達は一様に同じ反応をした。すなわち、ディースを見て、一瞬固まる。
あのデミウルゴスですら固まった。
「——我が主君。守護者達は全員揃いました。ご下命を」
うむ、と一度大仰に頷いたモモンガは、いつの間にかやや後ろに戻ったディースを一回見やる。
「——うむ。しかし、その前に、だ。どうやら皆気になって仕方ないようだから先に報告をしておこう」
「はっ」
「ディースさんが、帰還した」
にわかに騒めいた守護者達にディースは歩み寄る。
「——諸君。長らく留守にしていて済まなかった」
「ディースさんは別次元に私たちの知らぬ超位魔法《インターイ/幻想封印術式》という封印術によって封印されていた」
《えっ、ちょ、聞いてない》
《話を合わせてください》
有無を言わせぬギルド長の声に、あっはい、と思わず返事をしてしまったディース。
吐いた唾は戻らないように、こぼした水は戻らないように。気づいた時には遅いのだ。
「しかし! ディースさんは成し遂げた。封印術を打ち砕き、術者を下し、ここに帰還した!」
《嫌な予感しかしない》
《姉ポジなんか取らせませんよ……! 俺と一緒に支配者ポジに置かせてもらいます!》
《うわ私怨かよ!》
「流石は至高の御方……!」
《うわー! デミウルゴスの視線がヤバい!》
《ふーははははは! 計 画 通 り !》
「ディースさん。一言お願いします」
「ん!? う、あ、あぁ……」
ディースはモモンガに並んだ。
超位魔法を一人で打ち砕き、さらには報復まで済ませたことにされた至高の一人を見る視線は余りに熱く、余りに重い。
「色々言いたいけどはあったが……まずはこれだけ。諸君——ただいま」
デミウルゴスが崩れ落ちた。
肩を震わせるその姿は泣いているようにも、歓喜しているようにも、その両方にも見えた。
ディースは悪い事したなぁと今更ながらに罪悪感を感じる。
あまり関わりがなかったデミウルゴスですらこれなのだ。
アインズ・ウール・ゴウン加入前からの付き合いである自分のNPCたちがどんな様子になるか、少しだけ強く感じた。
——特に、あの処理落ちする程のスリップダメージの嵐はなぁ……。
ディースの脳裏に黄金色に輝く龍の姿が浮き出る。
いきなり攻撃はしてこないと思うが……。
ちょっと怖くなっていた。
「そうだな、あとは……。うん。私は君たちの味方だ。例え何があってもな。今まで不安や迷惑をかけた贖罪……という訳では無いが、何かあったら、もし良ければ私を頼って欲しい。力を貸そう」
「あぁ、なんと、慈悲深き方……!」
多分思わず漏れ出たのだろう。アルベドが口元を抑えていた。
《——モモンガさん》
《……あー、アルベドは妹ってキャラじゃあ……》
《ナザリックの諸君は全て私の妹、弟分です。じゃなくて、アルベド超可愛いんですけど!》
そうきたかぁ、っていうか性別隠す気無いよなぁ、とモモンガは肩の力が抜ける。
しかし、それでは自身の『二人は支配者MAXはーと作戦』が無駄となる。
軌道修正のため、ディースを下がらせた。
絶対に道連れにしてやるという気炎すら見える気がした。
まずモモンガが行ったのは各階層の異常確認だ。第四階層の確認もさせることにした。
次に外の確認。こちらはセバス待ちだが、ちょうど良く帰ってきた。
どうやら外は草原らしい。プレーリードッグがウロウロしているとか。可愛いじゃないか。
しかし、ならばとやることは決まった。
テキパキと守護者に役割と仕事を振っていく。
「で、ディースさんですが、空をお願いできますか?」
「シャンやガルバを出せば超上空からの警戒網を張れる。任せてくれ」
仕事を振って応えてくれればな、とディースは思うが、おそらくは大丈夫だろう。根拠はないが、やっぱり自分の作った子を疑いたくない。
ディースは早速自身の領域と割り当てられた第六階層『ロストワールド』に転移した。
次回は守護者視点くるかな?
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クズの楽園
第六階層『ロストワールド』
此処にはディースの手掛けたモンスターNPCが全て揃っている。
かなり広大なフィールドで、ここだけナザリックじゃないと言われても全く違和感がなかった。
尚、広さに見合っただけのリアルマネーが掛かっているのは内緒だ。具体的には八桁かそこらあった貯金全てかけてNPCとロストワールドを作り上げた。
老後なんかしらねぇ! と思い切ったのは今にしてみれば正解だった。
まぁ、半分は親の遺産とかなのでクズ具合はかなり高いが。
「——帰ったぞ」
ロストワールドの入り口の一つ、塔に降り立ったディースはゆっくりと言の葉を紡いだ。
それに反応したかのように天空から水銀が降り立つ。
「……主。帰還。歓喜」
それはドラゴンとしては異形だ。
なんせ、翼は骨格だけで、翼膜が水銀のような液体金属からなっているのだから。
結果として多数の翼を持っているように見える。
色彩はいぶし銀を基調とし、尾の先端、胸部、頭部茜色を帯びて一際輝いている。
骨格としてはディースと同じく四つ脚にプラス翼。
液体金属を自在に操り、身にまとう姿は全体として刃物を思わせる。
彼は司銀龍ハルドメルグ。液体金属を司る古龍である。個体名はメルクリア。
最も若い、ディースがナザリックに拠点を移してからの子となる。
メルクリアは全身から液体金属で巨大な腕を作ると、躊躇いなく抱きついてきた。
「主、不在。悲哀」
「あーっ! メルクリアずっるーい!」
バカァンとメルクリアを弾き飛ばしたのは金色のゴリラ。
金獅子ラージャンのカナリアである。
明るい、可愛らしい女の子の声が厳ついゴリラから当然のように奏でられる姿は中々に衝撃だ。
「メルも、カナも落ち着いて。シャンとガルバはいるかな?」
「もちろんです! 呼びますか?」
「頼む」
すぅ、とカナリアは息を大きく吸った。
そして目をカッと見開くと、口を大きく開けて叫ぶ。
「シャン様! ガルバ様! マスターがお帰りです!」
鼓膜が張り裂けそうな程の大声(ドラミング付き)に、思わずディースは身をすくませる。
普通にメッセージ使えば良いんじゃないかと思う。
「おそらく、すぐ来ると思われます」
「あ、うん、ありがとう」
少しすると、天空から天馬のような黄金の龍と、うねる様に空を泳ぐ龍の姿が現れた。
黄金の龍は金塵龍ガルバダオラのガルバ、空を泳ぐ龍は天翔龍シャンティエンのシャン。
どちらも『最果ての島』時代からの付き合いで、ガルバに至っては一番最初に作った龍である。
「ご帰還の事、お喜び申し上げ、同時にお祝い申し上げます」
地に足を着き、ところどころ水晶が飛び出す身をうまく屈ませてガルバが口を開いた。
付き従うかの様にシャンも平伏する。
「ありがとう。それとご苦労様、ガルバ。シャン。ナザリックの異変は感知しているかね?」
「ルーシェが感知しておりました」
「ふむ。さすがはボレアス種。ならば、話は早い。君たちの航空能力を見込んで頼みがある」
「はっ」
「超高度より、ナザリック周辺の警戒網を張ってほしい」
「敵性と見られる存在の処遇はいかがなさいましょう」
ふむ、とディースは考える。
なにも考えずにガルバに光ってもらう——烈光という二十秒程度の超高速スリップダメージの嵐——のもいいが、一番良いのはそれよりも生け捕りにして貰うこと……。
しかしそれによって自分の子供とも言える龍達が傷付くのは見たくない——。
「今回の警戒網に関しては非常に高度な柔軟性を必要とする案件だ。敵性と思われる存在を感知した際には、接敵より前に私に連絡してもらいたい」
「は。かしこまりました」
ここでディースは気付いた。
まだ一度もシャンが口を開いていない。
「どうした、シャン」
「——ッ、ディース様! お許し下さいませ!」
ガルバがシャンをかばう様に前に出た。
その目には恐怖の色合いが浮かんでいる。
「んぅ? どうした?」
「その……シャンは……人語を解する事は出来ても話す事はできないのです……」
なるほど。とディースは納得した。
しかし、まだ納得出来ないことがある。
それはガルバの恐怖だ。
「なるほど——その可能性は失念していたな。別に何かしようというわけではない。ガルバ。シャンのように人語を解する、もしくは解さない仲間はどれほどいる」
「ゴア、ゴグマゴグ、エスピナ、シャン、ラオ、あとはアクラを除く甲殻種全般……でしょうか。詳しくは各種のリーダーに聞いてみなければ分かりませんが」
「なるほど。エスピナ、ラオに至っては単純に覚える気がない……といったところだろうか。アレらは自分中心だからな」
たしかそんな設定だった気がする。とディースは記憶を掘り起こす。
「……恥ずかしながら……」
「構わん。ユグドラシルでは見れなかった姿だ。とても嬉しいよ。ではメルクリア。各種のリーダーと相談し、人語を最低でも理解できるようにしてくれ」
「拝命。……自分主導?」
「そうだ。メルクリアは数値上、もっとも高い知性を持っている事になっている。頼むぞ」
「……了承。感謝。狂喜」
「メルクリアったら、あんなにはしゃいではしたないわねぇ……。あ、ちょっと! 待ちなさいよ!」
メルクリアが飛び降りるように塔から飛び去った。
それを追うようにジャンプで『ゔぉ"お"お"お"お"お"』と雄たけびをあげて飛び乗るカナリア。
そんな二頭の姿を見て、ガルバが怒りを露わにしていた。
「若いといえ……ディース様の御前で……しかも指示もないのに飛び去るとは……」
「まぁまぁ、良いよ。あれ位やる気があれば上手くいくでしょう」
「……ディース様がそうおっしゃるなら……」
しかしまだ納得はしていないようだ。
時折『烈光』とか『竜巻』とか聞こえるがディースは努めて聞こえないフリをした。ごめんねメルクリア。
「じゃあ、頼むよ。使えそうな仲間は使って良いから」
「はっ、畏まりました」
「じゃあ……いってらっしゃい」
二頭の古龍はゆっくりと浮遊すると、優雅に空へ消えていく。
《ディースさん。こっちは終わりました。NPCの忠誠心がガチ過ぎる事が判明しましたよ……》
姿が見えなくなる程度の頃にモモンガの声がディースの頭に響いた。
メッセージだ。
《マジですか……。じゃあモモンガさん支配者プレイだ》
《なんですかそのアブノーマルなプレイ。じゃなくて、ディースさんにもやってもらいますよ!》
《了解しました。暫定副ギルド長ってとこですかね》
《そうですよねぇ、ディースさんそういうの嫌そうですもんねぇ……でも………………えっ?》
《やりますよって。私も、ナザリックを守るの、混ぜてください》
メッセージの向こうでモモンガが息を呑んだのが聞こえた。
そんな変なことを言っただろうか、とディースはよく考えるが、言ってない。
《いえ、分かりました。ではとりあえず色々打ち合わせしようと思いますので、円卓の間……だと狭いか。玉座の間に集合しましょう》
《了解しました》
#
玉座の間には既にモモンガが座っていた。
「盟主を待たせたようで申し訳ない」
「いえ、俺——私も今来たところだ」
お、とディースはモモンガの変化に気づいた。
隣にアルベドがいるからかと思ったが、どうやら『そう』あろうとしてやっているようだ。
「その前にご報告が。ガルバとシャンを上空へ上げました。彼らの感知能力は地表まで届きます。上空からの監視網は既に完成されたと見て良いでしょう」
「ご苦労。さて、アルベド。私はディースと調整があるから、職務に戻って良いぞ」
「はっ。かしこまりました」
アルベドが部屋から出て行く。
それを見送り、足音が遠くなったあたりでモモンガが急に肩の力を抜いた。
「ふっはぁ……。すいませんディースさん」
「謝る事はない。支配者足らんとし、部下に幻滅されぬように振舞う姿は中々見ごたえがあった」
「ディースさんもディースさんでキャラ濃いですよね……」
ともあれ、とモモンガは息を整えた。
駄弁るのも良いが、今は大事な時期なのだ。
「ディースさん。ディースさんって、人型になれましたっけ」
「人型ですかー……。なぜ?」
「外に出る際に龍だと目立ちますからね」
あぁ、なるほど。とディースは納得したように声を出した。
そしてどうだったかと自身のスキルを思い出すために記憶を掘り起こす。
「多分無いかと。純ドラゴン系の種族と職でまとめてますからね」
「ふむ……。ロストワールドには居ますか?」
これには即答が出来た。
何と言っても自分の子だ。
「えぇ。確か五頭程。ただ——どれにしろ目立ちに目立ちます」
「えぇっと、どういう風に?」
「モモンガさん的に分かりやすくするなら——パンドラズ・アクター」
「分かりました次に行きましょう」
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