テンプレはH×Hの世界でも通用する (ディア)
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幼少編
第1話 トラック×気まぐれ×転生


またやってしまった…と思う自分がいますが今までの経験を生かしてみたいと思いこの作品を立ち上げました。そんな作者ですが応援よろしくお願いいたします。


「これからどうしようかな……」

3年前。俺は就職失敗して挫折し、それ以来自宅警備員となっていた。そこの環境は悪く三食の飯と風呂しか出さないところで給料は全くないブラック企業だ。まあ自宅警備員なんてそんなもんだけどむしろパソコンが使える環境な分マシだ。

俺はそのパソコンで就職先を探したり、少ない元手で稼いだがモチベーションの問題から長続きしなかった。精々稼いで月4万円という最底辺クラスの酷さだ。

 

そんな俺だが遂に自宅警備員解雇処分が言い渡され問答無用で追い出された。1ヶ月前に言っておけよと言ってやりたかったが自宅警備員という職場はそういうもんだし訴えたとしても相手にすらしてもらえない。俺はヒトラーに追われたユダヤ人が聖地エルサレムへと向かうようにネカフェに向かってネカフェに住むことに成功した。

 

ただモチベーションの問題から何もやる気が出なくなりぶらぶらと出歩き公園近くの横断歩道まで来ていた。そして冒頭に戻り、現在のように何をするか考えていた。

 

「う~ん……まあ明日決めるか。今日は今日で自分をゆっくり労ろう」

今日まで自宅警備員だったんだ明日頑張ろう。そう決めた俺は押しボタン式の信号機のスイッチを押して待っていた。いつもなら待たずに行ってしまうが今日は違う。気まぐれという奴だ。俺は気まぐれ屋であるが故にモチベーションが上がらないし、長続きしなかった。休む時は気まぐれを起こさないから尚更そうだった。多分だけど俺の自宅警備員解雇もそれが響いたんだろうな。俺の目の前の信号が青信号に変わり、俺は横断歩道を渡った。

 

その刹那、物凄い衝撃音が生々しく響く。

 

俺は宙に浮いていた。早い話が交通事故にあった。やたらとスローに感じ俺の血の痕から見ると右からやって来たトラックに轢かれたことが理解出来、走馬灯が流れた。

なあ神様よ……気まぐれとはいえ人間が作ったルールを守ったのにそりゃあんまりじゃないか?

そして俺は頭を打ち気を失った。これが死ぬ感覚なのか?

 

~~

 

「貴方!この子産声を上げていません!」

目が覚めるとそこには顔に包帯とゴーグルという変わった女がいた。ただそのデカさは俺の何倍もある体格の持ち主だ。にしてもどっかで見たことあるんだよな……? どこだ?

「落ち着けキキョウ産声を上げないならこうすればいい!」

 

男がそう言った瞬間、後ろからトラックに轢かれたかのような衝撃を受けて俺はたまらずむせた。

 

「オギャアァァ!」

なんだ今の声? 俺は確かにむせた筈だよな?なのに何でこんな赤ちゃんのような声が出るんだよ!?

「ああ息子よ。よく声を上げてくれました。貴方、名前は何にします?」

そういって俺は手元に抱えられると夫らしき人物が見えた。妻はキキョウ、夫らしい人物の髪の毛は白髪の長髪。嫌な予感しかしないんだけど。

「キルアだ。こいつの名前はキルア=ゾルディックだ!」

……どうやら俺、死亡フラグ満載のHUNTER×HUNTERの世界でも更に死亡フラグ満載のゾルディック家…それも原作に大きく関わるキルア君に転生しました。

「オギャ……ァ……」

そりゃあんまりだ……と俺は呟くように泣いた。




ラノベみたいなタイトルの作品ですが感想、評価よろしくお願いします。


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第2話 幼少×特訓×アルカ

かな~り短めです……これ以上書けませんでした。


俺がキルアとなってから三年が経った。それまでの間大変だった……ゾルディック家は赤ん坊の頃から毒物を仕込むのでミルクや離乳食に毒物は当たり前。そして去年から拷問や暗殺の訓練が始まり何度死にかけたことか!

 

だからといって逃げる訳には行かなかった。拷問によって雷の耐性を付けないと原作キルアの電気を使った念が使えなくなるし他の変化系の技が習得しにくくなる。念、特に発は頭の中でのイメージが強いほど理想の念に近づける。つまり想像するよりも体験した方が良いんだよ。

暗殺の訓練は生きる為だ。HUNTER×HUNTERの世界はただでさえ生存率が低い世界なんだよ。その世界の中で暗殺一家なんかやっていたらますます生存率は低くなる。それだけでなく化け物軍団のキメラアントがやって来る。そこで俺が生きる為には……

 

「キルア! よそ見をするな!」

修行のキツさのあまり軽い現実逃避をしていると後ろから親父ことシルバが俺を叱咤した。

「痛っ!? この野郎~……」

俺は現在進行形で蜂と格闘していた。片方に木を、もう片方には俺を縄で繋ぎ、「その縄の範囲内で蜂──キメラアントではない──から攻撃を避けて全滅させろ」とシルバから言われて木の上にある蜂の巣を叩いて当の本人は被害を受けないように高みの見物をしていた。

何もそこまでここまでやらなくても良いじゃないか。とは言えなかった。弱音を吐く程俺に余裕はない。そんなことを考えている暇があるなら……ぎゃーっ!?痛いっ!毒は効かないけど結構痛いんだぞ!!

「くそっ!!」

こうなればやけくそだ!

「だぁぁぁっ!!」

俺は蜂を数匹、叩き(殴り)落とし必死に抵抗するものの──

「~っ!!」

後ろから刺され、俺は痛みをこらえその蜂を叩き落とそうとするが無駄に終わり、リンチされ数時間後ようやく見かねたシルバに助けられた。

 

「キル今度から気を付けなよ」

その後シルバとイルミからお説教を受け、やる気を無くしてしまった俺はふて寝した。……ふて寝してもイルミの針で無理やりやらされるから機嫌を戻すくらいしか意味ないんだけどな。くそぅ、こんな理不尽なHUNTER×HUNTERの世界は嫌いだぁぁぁっ! よくよく考えて見るとHUNTER×HUNTERのテンプレってオリ主なのに何でテンプレートの欠片もない原作キャラのキルアに憑依なんだ!? これじゃ今までHUNTER×HUNTERの世界に移住したら念を鍛えて原作ヒャッハーしようなんて考えは無理なのか?!

 

「お兄ちゃん……?」

俺がふて寝していると救世主であり天使であり、そして妹でもあるアルカが俺のベッドに潜ってきた。ちなみにだがアルカは執事の連中からは坊っちゃんと呼ばれているけどれっきとした女だ。決して男の娘ではない。ちゃんと棒も玉もない事を確認したから間違いない。念とかナニカの力で誤魔化すことも出来なくはないけどわざわざそんな念を作って何のメリットがあるの? って話だ。

「アルカ……また本を読みたいのか?」

アルカを見ると俺の心が癒され、自然に抱き締めていた。

「うん、お兄ちゃん。これ読んで」

そしてアルカが差し出して来たのは…エロ漫画だ。正確に言えばミルキが夢中になっているアニメの18版の同人誌だ。…薄い本ともいう。

「これを読むには後15、6年経たないと駄目だ。他の本にしなさい」

アルカは少し不機嫌になりながらも次の本を取り出した。

「じゃあこれ!」

今度は釘とか針とかそんな資料集だった。イルミ、アルカの手の届かない所におけよ!

「頭痛え……」

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「もうちょっと分かりやすい本にしような」

「うん!」

今回の教育……子供は良くも悪くも純粋だということがわかった。はぁ……これから天空闘技場へ行かされるとなると憂鬱だ。



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第3話 闘技場1×ヒソカ×弟子入り

久しぶりに投稿しましたがどうにも文字数が少なくて悩んでいます。以上作者の愚痴でした。


「つぁーっ!! 良い場所だぜ」

俺はのんびり天空闘技場でベッドで寝転んでいた。え? 修行はどうしたかって? 当然逃げてきた。あんなものに参加するくらいなら逃げた方がマシなのでここにやって来た。それにここは念を間近で見れる唯一の場所だ。ここで念の存在を知ったということにすれば念の修行が出来る。それまでは少しでも楽をしようとして念について尋ねても惚けられたのでここで調べるしかなかったんだよ。

だが今は違う! 今なら念の修行が出来るし、間近で見ることが出来る!! 我ながらグッドアイデアだ……

「さて、それじゃ200階の連中はどんな念を使うのか見てみるか」

俺はベッドから降りて観客席へと移動した。今回は念を直に見るのが目的だ。なのでTVで見るよりも効率的だ。おっと、オレンジジュース買わないとな。あれがないと喉が渇いて集中出来ない。席はあそこでいいか。

 

「それではヒソカ選手の入場です!」

「ブゥーッ!!」

俺はオレンジジュースを噴いた。

「何だ汚ねえ!?」

「いやショタのか。それなら仕方ない」

「むしろご褒美だ。うほっ」

などという変態はさておき、何でヒソカがここにいるんだよ!? 幻影旅団とつるんでたんじゃないのかよ!? くそっ、アルカがブラコンなのは変わらない癖にこういうところが嫌いだ!

「試合開始!」

チッ仕方ない。むしろヒソカの念を間近で見られるチャンスだと思えばいい。幸いにも水見式で調べた結果俺はヒソカと同じ変化系だ。何か参考にでもなるだろう。

「ヒーット! ヒソカ選手お得意のバンジーガムで三点追加だーっ!」

流石ヒソカだな。あいつの弱点らしき弱点は油断くらいしかない。……念の師匠にでもなって貰おうか? いやいやそんなことになったら俺の穴が危ない。あいつなら言いかねないし、抵抗して見せてもすぐに突っ込まれそうだ。

「あっと!? 何と失神しています!ヒソカ選手の勝利~っ!!」

っといけねえ。考え事していてヒソカの試合見てなかった。……まあいいか。ヒソカほどの実力者の念が見れたし念はどんなものかってのは原作知識で知っている。

「フフ♥」

ぎゃぁぁぁっ!? こっち見んな!! help! ヘ~~ルプミー!!!

 

それからヒソカに見られ続け、うんざりして部屋に戻った。

「何なのあのピエロ……」

俺はヒソカに目をつけられることはしていないはずだ。目を閉じてこれまでのことを振り返り、考える。原作じゃゴンの方が旨そうとか言っていたけどキルアにも似たようなことを言っていた気がする。念が使えない時点でそう……!? あ~っ!! それだよそれ!! 纏でオーラを拡散してないから念が使えることがバレてヒソカに目をつけられたんだ。

 

「モーニン」

はっと目を開けるとそこにはヒソカがいた。転生者の俺じゃなく普通の子供が見たら泣くぞ!

「何でお前がここにいるんだよ!?」

「やだなぁ♣ だってドア開けっ放しにしてたから入っていいのかなって思って◆」

ヒソカは部屋のドアを閉めながらオーラを放出して数字の2を映した。

「良かねえよ! 一応ノックしてから入れよ!」

「それよりも僕に弟子入りしない?♥ 君はまだまだ若いのにその力を使える♠ 僕に師事すればもっと強くなるよ◆」

「お断りだ。お前みたいな変態は……ガッ!?」

なんか意識が……薄れていく……

「首を縦に振ったってことは僕に師事するんだね♣ それは良かった♠」

薄くなる意識の中、俺はそんな声が聞こえ気絶した…

 

その後、ヒソカに師事することになり俺は精神的にダメージを負いながらも強くなっていった。ど畜生がぁぁぁっ!



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第4話 修行×トランプ×発見

あけましておめでとうございます!
正月なのでいつもの二倍あります!
たくさんのお気に入り登録ありがとうございます!
そして更新遅れて申し訳ございませんでした!


ブスリ!

「アーッ!」

 

〜現実〜

 

「はっ!?」

夢か……そうだよな。もしもこれが夢でなかったらヤバかった。男だというのに何が悲しゅうて童貞よりも処女捨てなきゃあかんねん!

 

「おはようキルア♠︎ いい朝だね」

その夢を見ることになった元凶、ヒソカが俺の部屋に入り、椅子を出した。お前のせいでお前の意見に同調出来ないんだけど。

「ノックくらいしろよ。それと着替えるから出ろよ」

ヒソカは俺の師匠になり、その指導方法も間違っちゃいない。性格も面倒見が良く、しかも厳しいので師匠として向いているんだが時折見せる股間のアレと言動のせいで全て台無しにしてくれる。もしもヒソカがまともなら気持ち悪いと言えば気持ち悪いがそちらの方が良い。

「着替えなら手伝うよ♣︎ 服装というのは念に影響を与えるからね♦︎」

「もっともらしいことを言っているようだがヒソカの場合はやましいからやだ」

下手にこいつの前で着替えたらそれこそ夢の続きになりかねない。それだけは避けなければならない。元(自宅)警備員の誇りにかけてな!

 

さてとそれはともかく念の発をどうするかだよな。原作のキルアは電気を使った念使いでスピード戦に持ってこいの物だった。そこからどうするかだよな。

 

とりあえず頭の中にあるのは黒歴史と言っていい発の候補だ。

 

時間を操る時計(タイムコントロールウオッチ)

……言わなくてもわかるが時計を使って時間を操るようにした具現化系と変化系、操作系の発だ。当然諦めた。まず具現化で時計を出して効果を付加するのはいいとしても、時間を操作するのとそれを変化させるために使う念の量が膨大すぎる上に、俺は時間の概念がどんなものか理解していない。一度使ったら世界が滅ぶくらいの制約をしないと無理だ。…それはそれでとんでもない威力かもしれないが無理だというのはわかっている。

 

次の候補は……

 

レーヴァテイン

これはシンプルなものだ。炎の剣を取り出し、攻撃するだけだからな。ただイメージがし辛いため威力がカスみたいなもので威力を上げるには制約とかつけなきゃならないのでパス。

 

……何で紅の館の住民の技みたいな候補しか浮かばないんだ?それだけそっちの方が良かったのか?

それはともかく今の俺はビスケのように非戦闘用の発を作る方がいい。技が豊富でも威力がトゥースみたいな奴だと意味ないしな。

 

「それじゃ始めようか♦︎」

これから始めるのは特訓の一つ。通称、地獄のトランプ計算。

これはトランプを次々と上に乗せ、そのトランプの絵札に書かれている数をどんどん足していくという某竜桜に出てきたアレだ。

例えば絵札2の上に絵札4が乗せられたら6になる。さらにその上に絵札10を乗せると16、という風に足していく。それを少しでも間違えるようならヒソカにセクハラされるというお仕置きが待っており、必死だった。

 

それだけだったらまだ苦労はしないが大変なのはこの時に使うトランプの絵札は凝をしないと見えないようになっている。当然最初のうちはヒソカにセクハラされまくりで何度も貞操の危機が訪れたと思ったことか……!

 

徐々に慣れてくると今度は隠を使って絵札の数を見えなくさせる手段を取った。

そして一度もミスなしでクリアすると今度はスピードを上げ、計算ミスを誘わせるといった大人気ない手段を取った。

これも同じようにクリアすると今度は量を増やしてスタミナ切れを狙う手段を取ってきた。どんだけセクハラしたいんだよ!

「36400!」

そしてヒソカが用意したトランプ5200枚をクリアすると次の修行に入る。

 

「次はスピード♠︎」

ルールはスピードそのものだがその速さは尋常じゃない。凝だけではなく流や硬、堅が必要になってくる。

スピードは腕だけでなく手首や指、そして体力も使う為、絶を使って微妙なタイミングで体力消耗をおさえ、凝で速さを上げなきゃならない。

硬や堅は一見必要なさそうに見えるけど必要なんだよ。ヒソカはかなり大人気ない為、俺が絶好調だと妨害してくる。しかも対応出来ない場所に攻撃してくる場合があるので硬で間に合わない時は堅を使って全身を防御して対処しなきゃ無理だ。

 

「次、神経衰弱♡」

これは特訓の中で唯一jokerのあるゲームだがjokerなんか必要ねえと思いたくなるくらいいらないやつだ。

神経衰弱は普通は二つのカードをめくって揃えるゲームだが特殊なルールがある。それは1時間の時間制限と攻撃されたら失格というルールがあることだ……制限時間が長い? 冗談もほどほどにしてくれ、闘技場全てにばら撒かれているんだからな!

幸いなことにA〜Kのカードはそれぞれ微妙な違いをつけて念を込められているがjokerは念が込められていないのでその時間内に27組54枚のカード全てペアで見つけるのは過酷だ。さらに試合の舞台の真ん中に落ちていることもあるので試合が始まったら乱入して無傷でそれを回収しなきゃいけない…

本来の目的は円を使ってトランプを探す……ものだったんだが原作キルアが円を苦手としていたので俺も円が苦手で身体を使って探すことになった。

 

「キルア。ようやく見つけたよ」

そしてその最中にまさかイルミに見つかるとは思いもしませんでした(大汗)




次回!主人公大ピンチ!

それにしてもお気に入り登録が80件も来るとはこのディアの目を持ってしても見抜けなんだ…これからもよろしくお願いします。


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第5話 天敵×道化×デビュー

次から次へと思いつく自分の才能が恐ろしい…(笑)

冗談はさておき、本編をどうぞ!


天敵……それはそいつにとって一番遭遇してはいけない存在だ。その天敵、イルミが俺の目の前にいた。

「な、なんでイルミがここに?」

「もちろん。キルを連れ戻す為だよ」

やっぱりかよ。お決まりのセリフ本当にありがとうございました。

「絶対嫌だ! まだ200階で一回も戦っていないんだぞ! これからって時に邪魔すんなよ!」

ゾルディックに戻ったところであの地獄が始まるだけだ。ミルキほどじゃないがグータラゴロゴロしたい俺からしてみれば絶対に居たくない場所だ。

「その割にはキルの噂が流れているみたいだけど? なんでも途中で銀髪の子供が試合の最中に乱入して選手をボコボコにしたとか」

「あれは修行だ! 仕方なく乱入して、仕方なくボコボコにしただけだ!」

それにボコボコにしたのは新人潰しと新人の奴らだけだし。ヒソカの試合なんかは逃げるのに精一杯で何度死にかけたことか……!

「そう? じゃあ仕方なく俺もキルを取り戻すよ。父さんからの命令だしね」

イルミが針を取り出し、俺に向けて投げたが俺はそれを回避した。ヒソカの修行がこんな形で役立つとは思わなかった。あれに当たったらアルカの記憶とか消されるもんな。最悪、俺の前世の記憶なんかも……そう考えると改めて避けられて良かったと思う。

「よく避けたねキル。ゾルディックの敷地内から逃げだしたことといいお前はやっぱり暗殺者に向いているよ」

「俺よりも強い奴に言われても嫌味にしか聞こえねえよ!」

「少なくともその年でそこまでやれるのはゾルディック家でもいないよ。だからこそ手加減はしない。キルなら生き残れると確信しているから」

冗談でしょ? ダメだ。目が(元々)笑っていねえ。こうなったらヒソカ……はダメだ。今、試合しているし頼ったところでむしろ倒せとか言われそうだ。

 

「キルア♠︎ こいつを倒せたら今日の修行はなしでいいよ♣︎」

そうそうこんな感じで。……ん?

「やあ♡」

俺と目があうピエロ。目が合った瞬間、おぞましい寒気が俺を襲った。

「な、なんでこんなところにいるんだ!? ヒソカ!」

ヒソカは神経衰弱をやっている時は試合時間をダラダラと伸ばし、俺の乱入を待っている。トランプ、特にjokerを持っている時はそうだ。あいつの懐に潜り込んで無傷でトランプを回収しなきゃいけないってのがこの神経衰弱のタチの悪さだ。最近は2回に1回の確率で取れるようになったけどそれでもこいつが闘技場にいるときは相手にしたくない。

「ん〜今日はつまらないし、さっさと終わらせちゃった♦︎」

流石変化系最強の男、気まぐれも俺の比じゃねえな。

 

そしてさりげなくイルミが針を飛ばしたのを気づいたヒソカはバンジーガムでガードした。

「へえ…噂の針使いってのは君のことかい♡ まさかゾルディック家の人間だとは思わなかったよ♣︎」

「なるほどね。お前がキルを誑かしたのか」

あれ? こいつらまだ面識なかったのか? よくよく考えてみりゃそうか。ヒソカとイルミは仕事仲間でつるむ関係。年齢や友好的に考えればこのくらいの時期だよな。

「誑かしたんじゃなくてキルアが自主的に首を振ったのさ♠︎」

そうだっけ!? あの時のことよく覚えてねえからわかんねえ……気づいた時にはヒソカに師事することになっていたしな。

「横にだろ?」

上手い! そして針が危ない! 理屈屋の癖して人を巻き込むんじゃねえ!

「やれやれ♣︎ 人の話を聞かない以上やるしかないね♦︎ 全力で戦える相手も欲しかったしたまには師匠の貫禄を見せてあげよう♡」

よし、逃げよう! 某グランプリホースのように!

「♠︎」

そう思った矢先、ヒソカの放ったバンジーガムがエレベーターの扉にくっついて出られなくなった。

「まさか僕の本気を見ないわけじゃないよね♣︎ そんなのはもったいないよ♡」

「キルの師匠と自称するだけあって行動もお見通しか。だからといって俺に敵うわけないけど」

危ねえ! 顔色変えずにここまでやるか!? 針は投げるものではない!

「確かに強いけど倒せないわけじゃない♠︎」

何にしてもこのまま暴れたら闘技場が偉いことになりかねない……二人の資産なら大丈夫だと思うけどそれでも俺に被害が来る。

「ストップ! ストップ! この勝負、せっかく闘技場まで来たんだから舞台の上で決着つけろ! イルミが負けたら俺は闘技場に残る!ヒソカが負けたら俺は帰る! それでどうだ!?」

我ながら名案だ……

 

「それは名案♦︎ ちょうどいい相手がいなかったしね♣︎」

「その必要はないよ。そこのピエロを殺せば全て解決する。それに無駄に時間をかけたくないしね」

ヒソカは賛成したがイルミはダメか。イルミは殺しに徹底した合理主義者。そんな程度で揺るがないのは分かりきっていた。

「イルミ……無理やり俺を連れ戻してもまた逃げるだけだ。ここは大人しく勝負しておけよ」

「……それもそうだね。俺が不在の時いちいち抜けられても面倒だしそうさせてもらうよ」

おおおっ!? イルミが言う事を聞いた!? 俺がまだ幼いから言う事を聞いたのか。よかったよかった。これでしばらくの間は時間稼ぎが出来る。その隙に俺は逃げてやる!

「それはそうとキルは逃げないよね?」

ギクッ!

「逃げる? 何の事やら……ハハハ」

俺は視線を泳がせそう答えた。絶対に逃げられないなこれ。

 

〜翌日〜

 

昨日の出来事の所為か、イルミは参加登録して下の階で階数を上げ続けている。そして肝心の俺はヒソカから出場許可を貰っていよいよ200階デビューとなった。

 

【さあ………そのいよいよこの少年がデビューした! 200階フロア同士の試合に突如現れる銀髪の乱入者! キルゥゥゥアァァァァッ!! これまでこの舞台で乱入してきた回数はなんと13回!のち選手を撃退したのは10回! 流石に気まずいと思ったのか今回は乱入者でなく選手として登場だ!彼がどのようにして戦うのか乞うご期待です!】

勝手なこと言いやがって…俺だって乱入したくてした訳じゃねんだ。しかし乱入してよく闘技場追放されなかったなと思ったら、スタッフ曰く「やるのとやらないのでは客の入りと売り上げが10倍違う」らしく選手達よりも俺を優先して追放しなかった。

 

【そしてその対戦者は期待のルーキー! ヘラクレスゥゥゥァァっ!】

俺の対戦相手の特徴は一言でいえば筋肉ダルマだ。ただし、纒をしていないことから奴は念能力者でないことが伺えるのでかませ犬としてふさわしい相手だ。むしろ奴以上にふさわしい奴はいねえ!

【役者が揃ったところで場内も大興奮だァァっ! これからの試合瞬きすらも許されない! 行くぞ! レディ〜〜…ファイっ!!】

カーンと音が鳴り、俺はヘラクレス…筋肉ダルマでいいか。筋肉ダルマのこめかみに念を込めた拳で一発殴ると脳震盪を起こし気絶した。

【なんと一撃! 一撃必殺! あのヘラクレスを一撃で倒してしまいました! 勝者は銀髪の乱入者キルアだァァァァッ!!】

やっぱりかませ犬はかませ犬だったか。これで後はイルミとヒソカの試合を見るだけだ。




キルアがイルミを説得できた理由について解説…

イルミが連れて行く

イルミ不在の時に抜け出されてしまう

また捕まえる

同様に抜け出す

以下ループが続いてしまうのでキルアを納得させてから帰らせたほうが有効的だと思った訳ですね。

ついでにキルアの対戦相手が新人にした理由は新人潰しが恐れをなしてキルアと試合を申し込まなかったことが原因ですね。

次回!ヒソカvsイルミ!天はどちらに微笑むのか!?

それでは感想、評価、誤字脱字報告お待ちしています。次回もお楽しみに!



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第6話 イルミ×ヒソカ×試合

 さて俺の試合も終わったことだし、ゲームセンターでもいこう。

 

 夜逃げの準備なんかしても無駄だ。夜逃げしようとした瞬間イルミに見つかってそのまま針で操作されて実家行きだ。そうなったらアルカと触れ合う時間がギャーギャーうるさい七三分けジャイアントパンダの面倒を見る時間になるので絶対に夜逃げはしない。帰る時は自分で決める。だからヒソカには絶対に勝ってほしい。

 

 

 

 そして自室の扉を開けるとヒソカがそこにいた。

 

「やあキルア♣︎ さっきはおめでとう♦︎」

 

 何故ここにいる! 

 

「どうも。それよりも何で俺の試合の相手がお前じゃなかったんだ?」

 

 しかしこいつにしては珍しく自重したのが気になり、俺はヒソカがそこにいる疑問は明後日の方向に投げ捨てて自重したことを尋ねると苦笑しながら答えた。

 

「流石に君を相手した後、イルミを仕留めるのは無謀だよ♠︎今回はイルミだけをターゲットにしているのさ♡」

 

 随分と俺の評価が高いな。

 

「まあ半分は冗談だけど♦︎」

 

 上げて下ろす! 流石ヒソカ、俺には出来ないことをやってのける! そこに痺れも憧れもしねえ! 

 

 

 

「それよりもどこに行くんだい♡」

 

「ゲーセン。どうせ溜まった金を使う機会なんてほとんどないし」

 

 グリードアイランドは値段が値段なので実質入手不可能だ。なので趣味に注ぐことにした。

 

「ゲーセンよりも面白いものがあるよ♣︎ ポーカーとかルーレットとかね♦︎」

 

 それってカジノだろ。前世で公共ギャンブル(パチンカスとかお馬さんのレースとか)で痛い目にあった俺はそんなものはやりたくない。

 

「トランプは見飽きたし、ルーレットはイカサマできそうだから止めておく」

 

 それ以前にカジノに行ったらトランプを見ることになるので気が滅入ってやる気がなくなる。トランプで毎日過ごしたら誰だってそうなる。むしろそうならないヒソカが異常なだけだ。

 

「残念♠︎ なら僕もゲーセンに行こう♣︎ 一人だけカジノに行ってもつまらないしね♡」

 

 こいつの言うつまらないはあれだ。イカサマして散々からかった挙句バレたら逆ギレして虐殺するパターンだ。あっさりと虐殺が簡単に出来そうなだけにヒソカも面白くないとおもっているんだろう。

 

「好きにしろ」

 

 止めたところでどうしようもないのは分かりきっているので俺はヒソカの行動を止めなかった。どうせイカサマなんて出来ないだろうし。

 

「てかヒソカ前歩け!」

 

 ケツがキュッと引き締まるような視線をお前から感じるんだよ! なんつーかねっとりというかバンジーガムをケツの穴の中につけられたような感じが!! 

 

 

 

 〜ゲーセン〜

 

 

 

「イカサマだ!」

 

 さっそくやらかした、俺が。仕方ねえじゃん! このスロット、777揃ったと思ったら動いて揃わなかったからやり返しただけだし! 

 

「イカサマの証拠は?」

 

「このスロットは絶対に出ないよう細工──あ」

 

 目の前で自爆するバカを初めて見た。天然記念物級のバカだな。

 

「てめえが細工してんじゃねえか! 細工しているのにこっちが細工しちゃいけねえなんて道理はねえだろ?」

 

「それは──」

 

「何々? 面白い事♡」

 

 ヒソカまで加わり店員は涙目だ。そりゃそうだろな。ヒソカは狂気の塊だし何されるかわかったもんじゃねえ。

 

「くっ……何でもございませんでした」

 

「何でもございませんでしたってことは無いでしょ♦︎」

 

 そういってヒソカが店員の腕に向かってトランプを投げた。危ない奴! 

 

「ぎゃぁぁぁーっ!?」

 

 トランプが店員の腕を切り落とし、腕の根元から血吹雪が舞った。

 

「言いがかりをしたならせめて腕一本くらいは覚悟しないとね♠︎」

 

 ヤクザかよ、いやそれ以上か。兎にも角にもやべえ! 逃げよう! 

 

「♣︎」

 

 その後、店員達は阿鼻叫喚の事態になったことは言うまでもない。

 

 

 

 〜数分後〜

 

 

 

「ヒソカ、自重しろ!」

 

 あの場から逃げた俺はゲーセン行けなくなった怒りをヒソカにぶつけ、説教していた。

 

「でもキルアがイカサマしなかったらあんな面白い展開にはならなかったよ♦︎おかげですっきりイルミとも戦えるよ♡」

 

 このヤロー。全力を出して貰えるのは有難いがぶっ殺してヤリテェ……

 

「そりゃ良かったな」

 

「まあ期待しててよ♠︎」

 

 期待ってか俺の人生がかかっているんだ! イルミはまだ若い所為か経験が浅いしヒソカの方が有利だ。気まぐれ起こしてイルミとの試合を放棄しないことだけが心配だ。

 

 

 

 〜試合当日〜

 

 

 

 モチベーションの上がったヒソカと俺を取り戻そうとするイルミ。俺からしてみればどっちも相手にしたくない奴らだ。

 

「イルミ、この時を待っていたよ♣︎」

 

 ヒソカの舐め回すような視線にイルミは動じることもなかった。そこだけは尊敬する。

 

「キルさえ無事なら俺としては文句はない。だけど傷つけたなら、殺す!」

 

 このセリフだけ聞けばいい兄貴何だけどな。殺し屋としての倫理と行きすぎた家族愛さえなければまともなのかもしれない。親父もそうだし。

 

「ククッ♡」

 

 イルミの殺気がヒソカの養分なのか笑って答え──って、テント張るなぁぁぁっ!! どんだけコーフンしてんの!? 周りみろよ、お前の下半身に全員ドン引きしているぞ!!! 

 

 

 

「試合開始!」

 

 蚊の鳴く声すらも聞き逃せないほど静まった険悪な雰囲気の中、試合が始まった。

 

「……」

 

「……」

 

 互いに無言。だがやっていることはハイレベルな戦いだ。イルミが針で攻撃すればヒソカがバンジーガムで防ぐ。ヒソカがトランプで攻撃すればイルミは針でトランプを貫き、ヒソカに反撃する。一見するとヒソカが押されているように見えるがイルミのセンスあってこそのことだ。長期戦になればヒソカの経験が生かされ、次第に状況が変わる。

 

「さて問題♦︎僕はいくつトランプを投げるでしょう♠︎」

 

「54枚」

 

 馬鹿正直に答えるなよ……しかも無表情。イルミらしいというか何というか。

 

「答えは自分の身体で確かめてね♣︎」

 

 相性悪い相手に当たっちゃったな、イルミ。ヒソカは中〜長距離攻撃を得意としている。逆にイルミは遠距離攻撃が針しかない。しかも強化系とは程遠い操作系の能力者。俺が操作系の能力者だったら空気あるいはベクトルを操作してヒソカの首を切って殺るけどな。

 

 イルミが針にしたのが理由がわからねえ……針の方がメモリとか制約とか少なそうだからそうしたのか? まあ今それを思いついても空気を操作するなんてことは出来る訳がない。

 

 

 

「ひいふうみい……面倒だからいいや」

 

 イルミは三針ほどトランプに向けて投げ、その後は全てタガーくらいの長さの針でトランプを刺した。どうやったらそんなグネグネと関節曲げられるんだ? 時々明後日の方向に曲がっているぞ? 拷問の成果があれか? ああはなりたくねえよ。

 

「勘定しているところ悪いけど、答えは教えない〜♠︎じゃあね♡」

 

 ヒソカは絶を使った上に気配を消してイルミに近づいてトランプで直接首元を攻撃した。

 

 あ〜あ……首が取れたな。

 

「やるね♦︎それでこそやりがいがあるよ♣︎」

 

 ……それが普通のプロハンターの奴らならな。

 

 俺やイルミは暗殺者としての訓練を受け、気配を消されて攻撃しようともそれを回避する術を持っている。ゾルディック家を脱走した時を思い出す。

 

 

 

 そう、あれは下山して間もない頃、幻影旅団の構成員が俺に向かって絶をして攻撃してきた。俺は条件反射で身体に刷り込まれた暗殺術を使い、そいつを始末した。

 

 知らない顔だったし、古参のメンバーだったのかもな……まあそんなことはどうでもいいや。いくら俺が3歳児とはいえ舐めすぎだろ。あのチート組織の旅団とはいえ偵察要員で倒せるほど俺は弱くねーし! 

 

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

 

 俺が3歳児の子供の時点でそれだけの暗殺術を植え付けられている。肉体年齢5倍のイルミが果たして身についていないのか? と言われれば否だ。間違いなく身についている。故に避けることも可能。やだねー、イルミとは暫く戦いたくない。

 

 

 

【ダウン!!】

 

 おっと、イルミは顎を、ヒソカは針を喰らってダウンか。

 

 ヒソカ立てーっ! そんな操作系のもんなんてお前なら気合でどうこうなるだろうが!! 

 

 

 

 ……待てよ。こいつらが引き分けたらどうなるんだ? 俺はどちらか負けたら条件をつけたが引き分けた場合のことは言っていない。つまり逃亡のチャンスあり!? 

 

 

 

 よし! 審判早くカウントしろ! 

 

【7! 8!】

 

 よし! イケる! イケるぞぉぉぉーっ!! 

 

【9!】

 

 イルミ立つんじゃあねえーっ!! お前が立ったら最悪の結果だろうが!! 

 

【10!!】

 

 

 

 ダブルノックダウンキタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!! 

 

 これで俺も自由だぁぁっ!! 

 

 

 

【天空闘技場に引き分けはありません! ですからどちらかが『優勝したもんねーっ』と先に笑顔で言った方が勝ちです!】

 

 はぁっ!? なんだそりゃ!! でもイルミにそんな真似はできない。あいつ無表情だし。もし笑顔になったら一生ネタにしてからかってやる。参考資料になると思ってビデオカメラ2台持参しておいてよかった。さあ言え! 笑顔で言った瞬間SNSで社会的に抹殺してやる! 言えぃっ!! 

 

 

 

「優勝したもんねーっ♠︎」

 

 こうしてヒソカの勝利に終わり、闘技場に残ることになった。イルミを弄る格好のネタを取り逃がしたのは大きいがそれでもアルカと前世の記憶を失わずに済んでよかった。




感想評価よろしくお願いします!


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第7話 帰還×デート×エピローグ

今回は短めです!


「それじゃキル。俺行くから」

そんな感じで俺の目の前からいなくなったイルミ。どこか哀愁を感じた。ヤンデレブラコンに需要はねえ!

 

「楽しかった♡ 今度は誰を相手にしようかな♦︎」

ヒソカは俺の方を見てプレッシャーをかける。

ヒソカ、あれだけやりあってまだ不満かよ……仕方ない。

「幻影旅団の団長なんかはどうだ?」

俺は幻影旅団を売った。喧嘩を買ったからその後始末ってことだ。……まあそれは冗談にしても後々クラピカがヒソカと接触して旅団を滅ぼす為の準備なんだけどな。

「それはいい♠︎ 彼なら僕の心を癒してくれそうだ♣︎」

案の定、ヒソカは俺の話しに興味を持った。

「でもやりあうなら旅団に入団したほうが良いぜ」

これ大切! ヒソカが旅団に入団しないとクラピーに情報入らず大変なことになる。主に俺の命が。

「どうしてだい♦︎」

「そりゃ旅団を敵に回しても他の奴らとは戦えても肝心の団長とは一対一の勝負が出来ないぜ。だけど入団したら団長と戦えるチャンスが来る」

「なるほど♡ 確かにヒラと戦っても良いけど本命逃したら意味無いしね♠︎ これあげる♣︎」

ヒソカが取り出したのはトランプだった……どんだけ思い入れあんだよ。トランプ。

「じゃ僕は旅団に入団してくるから♠︎」

……やったぜ! 再び平穏が戻ってきた!! これで邪魔者がいなくなった!!

 

その数日後、親父ことシルバがやってきてヒソカという後ろ盾を失った俺はなす術なくゾルディック家に戻されましたとさ。めでたく無いめでたく無い。

 

〜ゾルディック家〜

 

親父の長い話が終わり、俺はアルカのもとに来ていた。

「アルカ!」

俺はハイテンションになりアルカの後ろから声をかけた。

「お兄ちゃんーっ(*゚▽゚*)」

アルカが満面の笑みで俺に抱きついてきたのでなでなでしてあげた…可愛ええな! ドチクショウ!

「ただいま!」

「おかえり!お兄ちゃん!」

アルカの顔をみただけで癒される…ヒソカとイルミからの癒しはアルカで決まりだな!アルカがイルミルキ達の妹なんて信じられないよな本当。

「えへーっ……」

アルカはご満悦の様子。俺は少しちょっかい出してみた。

 

頬を指で軽く突くとアルカの柔らかい肌が指に伝わり俺は幸せになる。

「はむっ……」

その指をアルカは口で咥え、更に笑顔になると眠ってしまった。

「むふー……」

俺は指を取ろうとしたがアルカが可愛く、俺はそのままにしてアルカと一緒に寝た。

 

〜兄妹昼寝中、しばらくお待ちください〜

 

……アルカが俺を起こし、目を開けるとアルカは原作のような巫女服擬きに着替えていた。

「お兄ちゃん、デートしよっ!」

そしてアルカがそんな一言を放ち俺は固まった。

「どこからそんな言葉覚えたんだ?」

「こんな本から」

そう言ってアルカが取り出したのはミルキのゲームの攻略本だった。覚えてろ七三分けジャイアントパンダァァッ!

「そ、そうか。でもまだ早くないか?」

「? 男の人と女の人が一緒に歩くのに早いも遅いもないよ?」

純粋ぃぃっ! お兄ちゃん、アルカがピュア過ぎて目を開けてられないよ!

「でもな」

「そんなんだからお兄ちゃん、どーてーなんだよ。」

どーてー……?なんだそれは?どこかで聞いたことのある単語だな。どーてー、どうてい、童貞、まさかな?

「童貞なんて言葉、どこで覚えたんだ?」

「これ!」

ミルキィィィッ!!! アルカの部屋をエロ同人置き場にするんじゃねえェェェ!! 今日の晩御飯は豚の生姜焼きに決定!!!

「お、お兄ちゃん?」

「何でもないよ。何でもない。それよりデートだったよな?」

デートか。デートと言えばゴンが良くしてたよな。確か付き合った奴らは全員マニアとか呼ばれていたらしい…よし!その上を行こう!

「うん!お兄ちゃんと一緒に歩きたいな……? ダメ?」

半泣き上目遣いヤメロォォオ!汚きった俺が浄化されるぅぅぅ…!!ホテルまで行きたい俺がいなくなるぅぅぅ……!!

「いいに決まっているだろ!」

汚れきった俺がいなくなり澄んだ心の俺はアルカと一緒にデートという名前の散歩をすることになった。

 

「ねえ、お兄ちゃん」

散歩をして数分後、アルカが俺の袖を引っ張り、俺は立ち止まる。

「ん?」

アルカを見るとなぜかアルカは一呼吸おいた。どうしたんだ?

「お兄ちゃんは私の事ずっと守ってくれる?」

上目遣いキター!!

「もちろんだ。俺はアルカを守る」

俺はおもわずカッコつけようと親指を立てた。

「ホント!?」

「本当だ」

「やったーっ!!お兄ちゃん大好き!!」

アルカは俺のファーストキスを奪った。それからのこと?覚えている訳ねーだろ? 前世含めて俺のファーストキスを忘れないようにしていたんだからな!




次回からハンター試験編です!では次回もお楽しみに!


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ハンター試験編
第8話 ハンター試験×開始×原作キャラ


批評が多いので出来る限り編集し直しました。…物語としてはそんなに変わっていませんので安心してください。


 1999年1月、ゾルディック家でさらに修行をしてきた俺は親父の許可を得てハンター試験に行こうとした。しかし原作同様にキモオタとセンス最悪ババアが俺を止めようとしたので貧血で動けなくなるくらいぶっ刺して試験会場に来た。

 

 ここでゴン達に会えると思うと感動するな……うん。リアルにゴンに会えるなんて他の奴等に体験出来ないからな! キルアに転生してよかったーっ! そんな事を感じていると一人の中年男が俺に近づいてきた。

 

「君で99人目だ。ゾロ目と2桁ギリギリの記念にこれをあげよう」

 

 ああ、思い出した。こいつ確かトンパだ。確か下剤ジュースくれるんだっけ? まあ下剤如きで腹はくだらないし、素直に受け取っておいた。……結構美味いな。ベテラン達がニヤニヤしているけど、どーでもいいや。アルカとカルトのデレの姿を思い出せばそんなのは吹き飛ぶ!! 

 

 

 

 ちなみにカルトはアルカの妹──ここ重要! テストに出なくもない!! ──で表現こそ違えどアルカ同様に俺に懐いている。例えば「兄さん、背中届かないから洗って」という風にな!! 

 

 イルミの教育次第じゃすぐにヤンデレブラコンになりかねないので俺が世話をした結果懐いた。帰りが待ち遠しいぃぃっ! 

 

 

 

 閑話休題(それはともかく)、俺は缶を頭に乗せてバランスをとっていた。

 

「やあキルア♠︎」

 

 すると目の前に現れたのはみなさんご存知、ヒソカである。うげっ!? テント立ってる!? 

 

「久しぶりだね♦︎ こんな再開をするとは思わなかったよ♣︎」

 

 やめろォォオっ!! なんか周りがヒソカだけにヒソヒソ話しているし! 知らん顔しておこう。

 

「♡」

 

 トランプを投げて来たので俺はそれを掴んだ。

 

「それで思い出せた♠︎」

 

 ウワァ……俺が掴まなきゃトンパに直撃してたぞ!? そしたらジュース飲めなくなるじゃないか。

 

「思い出した。3年前と一緒に仕事したヒスォイ=ドカドンだったけ?」

 

「♠︎」

 

 俺がふざけているとヒソカが念を込めてトランプを5枚投げて来たのでそれを躱した。

 

「ぎゃーっ!!」

 

 あ、トンパの足にトランプが刺さって犠牲になった。哀れトンパ……その足じゃしばらく走れないな。忘れないぞお前のことは。一次試験中くらいはな。

 

「冗談も通じないなんて短気だな、ヒソカ。放出系にでもなったのか?」

 

 放出系=短気、大雑把の意味だ。要するにトランプもテキトーに投げたのかと遠回しにいってみる。

 

「そういうことやっていると冗談じゃ済まなくなるよ♣︎」

 

 殺気付きの笑顔でいうなよ。本当に冗談のきかない奴! 

 

「悪かったって。試験官ごっこなんて遊びは止めておけよ。じゃあな」

 

「またね♦︎」

 

 ヒソカと別れ、俺は纏、練、絶の三つを何回も繰り返して暇つぶしをすることにした。ゴン達を探そうにもまだ100人くらいしかいねぇし、寝ようと思っても周りがうるさくて寝れないからな……ボッチとかいうな! 

 

 

 

 おっとそんなことはどうでもいい。あれから発について考えてみた……せっかく変化系の系統なんだし、俺は発にNARUTOの要素を取り入れた。

 

 変化系はオーラの性質や形状を変えるのが特徴だ。NARUTOのチャクラも性質変化と形状変化というものがある。

 

 そこで俺はNARUTOの技パクれば良いと考えた。かなり似ているしな。しかし風遁と土遁は操作系、水遁は操作系に加えて具現化系の要素も加わる為全て再現するのは無理だった。

 

 

 

 何故その三つがそうなるのかというと色々な理由がある。

 

 風は空気が周りにあってそれを操って風を生み出しているにしか過ぎない。

 

 土は……もうそのまんまじゃん。土流槍とか。土を操って何かを作るイメージしか湧かない。

 

 水は某鮫男の口から水吐いてそれを操っているイメージしかしない。他にもいるだろうけどさ。

 

 

 

 なので完全に御門違いだ。風や水は変化系でも出来るけど操るってイメージが強いので諦めた。

 

 

 

 だが強力な火遁(炎)と雷遁(電気)は別だ。火は生み出して放つものが多く、具現化系か変化系に限りなく近い……と考えている。電気は言わずともわかるが原作キルアの念なのであっさりと使える。

 

 

 

 電気の念は原作とそれを付け加えたものをすれば開発は進むが炎の念についてはだいぶ難航した。

 

 身体に纏おうにも全身火傷してイルミが飛んで来て監禁させられるし、爺さんのようにオーラの形状を体外で維持するにはそれなりに才能が必要で俺にはその才能がない。キルアの身体に影響されているのかそういったことは特に苦手なんだよ! 欠点も影響を受けるって話が違うぞ! 

 

 

 

 ちなみに形状を維持すると言えばオーラで螺旋丸も作ったが爺さんや親父によると発でなく念の応用技っぽい何からしい。考える限りじゃ纏、凝、流を混ぜたものだと考えている。前世の俺の残念な頭じゃそんな程度だ。

 

 

 

 しかも親父が元々の発の技を昇華させて1日で真似しちゃうし、流石にショックだ。俺はそれを作るのに4日かかったんだぞ!! ゾルディック家で一番の才能とか言われているがその後ろに(笑)がついてもおかしくない。

 

 

 

 まあ螺旋丸も出来たので雷切とかそんな技も出来る訳だ。片手に電気を纏うだけだから燃費がかなり良く、燃費の割に威力もある。それに加えて凝と硬、俺の爪等の要素も加わると更にやばい。

 

 おそらくNARUTOの技をパクるという概念から雷切をやっている時の身体能力も上がるようになったんだろう。フランクリンが指の先端をちょん切ると威力が上がったって奴。あれと似た感じだ。リスクも覚悟も必要ないのに上がるって念も結構いい加減だよな。

 

 まぁそれでもゴンさんには通じないと思う。あれは例外。

 

 

 

 ……ふと思ったんだがまさかゴンがゴンさんになってないよな? 俺がキルアだけに不安だ。他の転生者がゴンに転生してゴンさんになっていたら嫌だぞ! 二次創作でハンター試験開始時でゴンさんになっていたら、というものがあるが全部が全部、ゾルディック家に隣の晩御飯することになる。イルミとミルキはそのまま死んでも問題ないどころか殺ってくれって言いたいが問題は我が妹達だ。ゾルディック家に来訪したら間違いなくアルカやカルトの可愛さに惹かれて○○○や○○○なことになるに違いないっ! 俺はゴンさんに逆らえる力を持っているはずもないので俺はこの場でゴンさんを見かけたらゾルディック家に即帰宅だ!! あんな人外に勝てるか!!! フラグさえ立てなきゃ問題なし!!!! 

 

 

 

「それではみなさん! これから移動しますので私についてきてください!」

 

 おっともう時間か、ゴンさんはいないよな? 俺は天井よりも少し下の方に目を向け探す。そこには俺が来た時と一緒の光景が映し出されていた。……うん! いない! 最初に幻影旅団と戦った時やヒソカの修行の時よりも緊張した……

 

 

 

 ゴンさんはいないとなればゴンはいるはず! 早速ゴン達に接触しよう。折りたたみ自転車持ってきておいてよかった……

 

「てめえ! 自転車なんか使ってんじゃねえ!」

 

 レオリオが俺の横で怒鳴る。まあそう思うよな。俺だってレオリオの立場だったらそうするし。

 

「別に自転車で付いて行ったらダメなんて言われてないけど?」

 

 クラピカが「確かに言ってないな」と少し意味ありげな笑みで、レオリオを挑発する。

 

「ヒキョーだぞテメー!」

 

「ルールには従っているのに卑怯も非常識もある? でも確かにこのままじゃ面白くなさそうだし、普通に走るよ」

 

 俺は折りたたみ自転車をしまい、その場に捨てた。……ポイ捨て禁止? なんのことやら。恵まれない子供達がどーたらとかいう奴はただのバカ。殺し屋に倫理もクソもねえよ。

 

「それと俺の名前はキルア。テメーなんて名前じゃねえからシクヨロ! おっさん!」

 

「俺はまだ10代だ!」

 

 うん知ってた。

 

「レオリオ、そんなバレバレの嘘はやめておけ」

 

 クラピカの言葉に周りの人間が頷いた。……ん、まさかな? 

 

「本当だってーの!!」

 

 いやいやそんなはずはない。そんなことがあってたまるか!! そんなことがあったら世界観めちゃくちゃになるぞ! ただでさえ俺がいてめちゃくちゃなのに! 

 

「だいたい男か女か曖昧な奴にそんなこと言われなくねーよ!! その私って一人称も女々しいし、見かけからしてややこしいんだよ!」

 

「失礼な! 私は男だ!」

 

 ふう〜やっぱり気のせいか。いやクラピカが一瞬女のように見えたんだ。俺は暗殺術の訓練を重ねたせいか、足を前に出しただけでその人物の骨格の特徴がわかる。つまり男か女かも見分けることも可能だ。

 

 だけどクラピカは男なのに女の動きも混ざっていた。原作ではクラピカは試験の中ではヒソカ、イルミ、キルアに次いで強い。当然そんな奴が素人のように男であるのに女の動きをするわけもない。男には男の、女には女の動きがある。決して男女差別ではなく区別だ。

 

 

 

「なぁお前名前は?」

 

 しかしクラピカの性別などどうでも良いので俺はゴンに名前を尋ねた。尚、諦めの悪いレオリオは「じゃあ、こいつが女に見える奴は挙手!」とかいって周りに聞いていた。

 

「ゴン。ゴン=フリークス」

 

「俺はキルア。ゴン、お前いくつだ?」

 

 流石に俺の家名を言う訳にもいかないのでゴンに年齢を聞いた。……ゴンは知らないだろうが念の為だ。

 

「12だよ」

 

「へえ、俺と同じ年じゃん。ゴンは何でハンターになろうとしてんだ?」

 

「親父に会う為だよ。親父は物心がつく前から俺と別れていつか俺は会いたいって思ったんだ」

 

 ファザコン乙。何でそんなにファザコンなんだよ。

 

「ふ〜ん。まあ人それぞれっていうし、俺は行動範囲を広げたいからかな」

 

 実際にはゴンと会う為なんだけど。ゴンさんには会いたくないけどな。あんなのにあったら逃げたくなる……ゴンさんからは逃げられない! とかそんな展開は嫌だぞ!! 

 

「じゃあお互い合格出来るといいね!」

 

「ああ」

 

 俺とゴンは手を組み、笑った。

 

 

 

 

 

 〜おまけ、ゴンがゴンさんだったら〜

 

 

 

 ん? なんだ? この馬鹿でかいオーラ……ってゴンさんんんんっ!? 何で何で!? 

 

 

 

 よし逃げよう! あんなのと戦ってられるか! 例えフラグであっても俺はここから去るぞ! 

 

「300点!!」

 

 ヒソカが逝ったーっ!! だが俺には関係ない! とにかくここを去るだけだ! 

 

「待てよ。ガキ。ここから去るのはまだ早いんじゃないか?」

 

 意地でも逃すまいとレオリオがありったけの力を込めて俺の肩を掴んだ。ちょっ!? なんでレオリオがこんなに力強いんだ!? 

 

「そうだぞ。旅は道づれ世は情けというじゃないか。君だけ楽をしようなんてそうはいかないぞ」

 

 クラピカ、いかないが逝かないに聞こえるんだけど! 

 

「いや急用思い出してさ。そっちを優先しなきゃいけないから!」

 

 そして後ろから何か刺さった……イルミの針かよ!? 

 

『キル、あそこにいる奴を死んでも止めろ』

 

 お前のいうセリフじゃねえよ! つーか誰だよ!? 強い奴と戦うなが方針のイルミはどこに逝った!?

 

「さあ逝こうか」

 

 一言だけ言える……俺の中の神は死んだっ!!




カルトは小説版に従って♀にしました。なぜか原作キャラの女体化が進んでいきますね…タグに追加しておきます。

編集後のおまけのイルミは完全に別人です。イルミ擬きのアレです。ギャグにしようとしたらあんな風になってしまいました…


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第9話 豚丼×寿司×豚トロ

投稿おくれました。申し訳こざいません。なにせネタが集まらなかったのと家の事情で一時的にハーメルンに繋がらない環境になったのと私の誕生日(7月4日つまり今日)に出すかどうか躊躇ってしまい投稿出来ずにいました。

亀更新及び不定期更新な小説ですがこれからもよろしくお願いします。


 一次試験はマラソン、二次試験は料理、三次試験はトリックタワー、四次試験はナンバープレートの奪い合い、そして最終試験が勝ち抜けトーナメント戦。

 

 

 

 俺ことキルアは原作では勝ち抜けトーナメントで一人殺して不合格になったんだよな。

 

 俺としては今回の試験で合格したい。合格したところでデメリットはほとんどない。むしろメリットの方が多い。G・I編の途中でハンター試験を受けなくても済むのが一番のメリットだ。

 

 

 

 合格するにはどうするかなんて考えるまでもない。原作に従うまでだ。流石にナンバープレートは運なので運任せしかない……もしその時点でヒソカやイルミがターゲットだったら他の奴らを狩る。あいつらに勝てる要素は……あると言えばあるがそれを使って次戦う時に対策されて打つ手なしとなりかねないので普通に狩りをするのがいい。

 

 問題はトリックタワーだ。外から直接降りても身体的には何一つ問題はない。しかしそれだとゴンやクラピカ、レオリオと仲良くなれない。それは原作補正が働かず俺がヒソカのように一人でトリックタワーを降りることになる等のクラピカとレオリオの二人組みが俺と一緒にならないことでも同じことだ。

 

 ゴンは同世代って事で仲良くしていけばいいがクラピカとレオリオに関してはハンター試験の後別れる為、友好度を上げられない。そうなればヨークシン編で色々と面倒だ。こればかりは原作補正で一緒になることを祈るしかない。

 

 

 

 しかし、そんなことを考えてどうにかなるわけでもない。俺は白いビッグレッドの如く早々と先頭に立ち、前走9馬身ぶっちぎりというものすごいレースを見せた芦毛の馬……とまでは行かなくともサトツの真横についていき、一次試験を通過した。

 

 

 

 そして目の前にはシャッターがあり、そこから男女二人が現れた。その二人が漫才をしながらも二次試験の説明をした。

 

「という訳で二次試験は料理よ! 私たちを満足させれば合格よ!」

 

 やっぱ料理か。

 

「最初の課題は豚の丸焼き!」

 

 豚の丸焼き。あのデカイ豚のことだな。もう一頭狩って俺も食べようかな。どうせこの後気球でゆっくり移動することになるし、それまでの間美味いもん食ってもバチは当たらねえだろ。

 

 

 

 そうと決まれば善は急げ。俺は試験用の豚と個人で楽しむ為の豚を狩った。

 

 試験用の豚と個人用の豚に共通して言えることだがどちらも血抜き作業は大切だ。しなければゲロマズ飯になる……つまりプレートの奪い合い程ではないにせよサバイバル能力も求められる。とは言えそんな能力はここにいる受験者が全員持っている。でなければここにいない。

 

 しかし奴らに料理センスはほとんどない。特にゴンやレオリオ、クラピカの料理センスは皆無と言っていいくらいだ。

 

 

 

 寿司と聞いてご飯に魚を突っ込むだけだぞ? あいつらどんなセンスしているんだ? 聞いたことないとはいえセンスなさすぎだろ? せめてマグロ丼とかネギトロ丼くらいにしておけよ。回転寿司でもあるんだし。

 

 

 

 閑話休題(それはともかく)、丸焼きを提出し、やることがなくなった俺が今作っているのは豚丼(とんどん)だ。豚丼(ぶたどん)と読む輩もいるようだが(豚だけに)とんでもない。豚丼(とんどん)と呼ぶ方が良いに決まっている。

 

 呼び方はどうあれ、俺は次の試験で混乱させる為に用意されたと思われる玉ねぎをフライパンで焼き、切り刻んだグレイトスタンプの肉を加え、そこにあった調味料を加える。そしていい匂いがしてきたところで寿司用に用意された酢飯、ではなく普通の白米に乗せ、玉ねぎ同様フェイク用のチーズとタバスコをかける。シンプルだがこれが美味い。

 

 

 

「頂きます!」

 

 そしてご飯と一緒にチーズとタバスコのかけられた豚肉を口の中に運ぶ。そして溢れ出す肉汁とチーズのトロみ、タバスコの辛味すべてがご飯に染み込みワイルドに俺の口の中を刺激する。こうしていると料理漫画の良さがよくわかる。

 

「……」

 

 俺が余程満足げに食べていたのを見ていたのか、人が集まりいかにも物欲しそうな目で見てきた。嫌な予感しかしない。

 

「俺もくれ!」

 

「材料は用意するから俺に寄越せ!」

 

「いや俺が食うんだ! 材料だけじゃなく金も払う!」

 

 何でこいつらはこんなに飢えてやがるんだ? ……さっき走ったからか。普通あんだけ走ったところに豚丼の匂いが来てそれをうまそうに食ってたら空腹にもなるか。原作トンパもこの作戦でいけば全員腹下すこともできたのにな。

 

「俺にそれを作ってくれればメンチが出す試験パスさせてもいいぞ!」

 

 おいコラ試験官。権力を使うな。

 

「作るのは構わないが作れるのは5人までだ。早いもの順に材料を持ってきた5人に食わせてやるよ」

 

「「「「「「うぉぉぉっ!!!」」」」」」

 

 受験者数十人と試験官一人がその場から消えた。どいつもこいつも馬鹿ばかりだ……

 

 

 

「さてバカも消えたことだし、私の課題を言うわよ!」

 

 メンチもそう思っていたらしくそこにいない受験者をほったらかしにして説明した。

 

「私の課題は寿司よ! ただし寿司は寿司でもチラシはダメ、握りの方ね!」

 

 やっぱり握り寿司か……まあ嫌がらせ目的なら温めたネタと冷たい酢飯を使って作った握り寿司を提出するのも悪くない。

 

「試験官さん、ちょっと良いか。巻きや軍艦はどうなる?」

 

 しかし嫌がらせても無意味だし、原作中誰もが合格できなかったものに挑戦するためにも質問してみた。

 

「私が認めるのは握りだけよ。それ以外は受け付けないわ」

 

 となれば河童巻き、干瓢巻きとかは出来ないのか……残念だ。

 

「へっへーん! 俺は寿司の材料を知っているぜ……」

 

 あれはお喋り忍者のハンゾーだったけか? 原作キルアやヒソカよりもゴンと同様に念の素質が高く評価されていた奴だ。余計なことを口にしたりと結構アホな面もあるが忍者らしい部分もある。

 

「寿司は魚を使った料理……」

 

「何ぃっ!? 魚だと!?」

 

「川だ! 川へ急げ!」

 

 やべっ!? 俺も急がねえと!! ヒソカが嫌がらせ目的で全部魚を狩りかねない……!!! 

 

「……待てよ」

 

 だが俺はふと思い出して足を止めた。別に巻物同様、寿司のネタは魚でなくともいい。寿司のネタはだいたい海水魚なわけで淡水魚のネタはほとんどない。ところがここら辺には川しかなく、ネタになりえない淡水魚しか手に入らない。よしんばその川の魚にネタがあったとしても俺はそれを覚えていない。故にメンチに提出しても不合格になる可能性が高い。

 

 

 

 どうせ寿司試験で不合格になるくらいなら合格する可能性の方に俺は賭ける。

 

 そう決意した俺は別の物にした。玉子は悪くない。しかし肝心の玉子がここにはなくそれを取りにいく間に試験が終わりかねない。なのでNoだ。俺の握りはアレしかない。その名も焼肉寿司だ。

 

 

 

 本当は玉子にしたかったんだが卵がないため断念した。ないものは仕方ないと割り切った。

 

 焼肉寿司は回らない寿司屋じゃ出ないが回る寿司屋なら出る。ジャポンじゃそういう店もあると言っておけばなんとかなる。カルフォルニアロールは流石にないけどな。いやカリフォルニアロールだっけか? ややこしすぎて混乱する。まあロールは名前の通り巻物だから回る寿司屋にあったとしても握りじゃないから拒否される。

 

 

 

 閑話休題

 

 

 

 とにかく焼肉寿司を作るしかない! そう決断した俺は先ほど余った脂のある部分をサーモンやマグロのように切って、それを焼いていく。牛肉なら生でも大丈夫なんだが豚肉だからしっかりと焼かなきゃいけない。中まで火を通し、出来上がったら握り寿司のサイズに握った酢飯にそれを乗せる。

 

 

 

「これが俺の寿司だ!」

 

 そしてそれを提出した。

 

「あんた寿司ってわかっている? 寿司は海鮮物をつかうものよ? それを豚肉でやるなんて言語道断よ。不合格!」

 

「ちょっと待った! 何で魚の代わりに肉を使っちゃいけないなんてそんなことが言えるんだ?」

 

 不合格を言い渡され、俺は即反論した。元ニートの俺とは思えないな。

 

「それがジャポンの民族料理だからよ」

 

「ジャポンには回転寿司っていう庶民でも食べられる寿司屋があるんだけど。そこにはこの寿司みたいに魚の代わりに肉を乗せる奴もある。それを見た事ないってことは……本場の寿司、食ったことないんでしょ?」

 

 

 

「食ったことないのか?」

 

「食ったことないのにどうやって審査するんだ?」

 

「食ったことないくせしてあんな偉そうだったのか?」

 

 周りがざわつき始めるとメンチが追い詰められ俺の思う展開になった。ヤフゥーっ! 行けるか? 行くんなら行ってしまえっ! 

 

「ごちゃごちゃうるさい! 確かに私はジャポンの店に入ったことはないけれどジャポン一の料理人の寿司なら食べたことはあるわ。だから私の中で寿司っていうのは肉を使わず魚を使う料理で肉を使ったあんたは不合格!!」

 

「横暴だ! 頑固抗議する!」

 

 俺が抗議すると周りがメンチに味方し始めた。

 

「坊主! 不合格なんだからとっとと諦めな!」

 

「そうだ、そうだ! 俺たちが合格するから安心して帰りな!」

 

 こいつら……

 

「黙れ! 大体てめえらは寿司の形すらも知らないくせに偉そうなこと言ってんじゃねーよ! なんなら今すぐにでも人肉の寿司を作ってもいいんだぞ? 食べられるように処理してやるから安心して永遠の眠りにつきやがれ!」

 

 俺は念能力を発動するはずもなく、純粋に爪を伸ばして奴に向かって心臓を奪おうとした。

 

「落ち着けよキルア。第一、もう一度作らなきゃ話にならないよ?」

 

 ゴンが俺を止め、俺はそっちを振り向くと俺の寿司がなくなっていた。

 

「俺の寿司が……ない?」

 

 メンチが咀嚼した様子は全くなく、俺の事を認めたというわけでもない。じゃあ一体誰がやったんだ? そう思い、周りを見渡す。

 

「キルア♠︎」

 

 そんな中、俺の肩を叩いた猛者がいた。こんな独特的な声は絶対に忘れない。

 

「君の作品、美味しかったよ♥︎」

 

「お前かぁぁぁぁっ!!!」

 

 俺の声は限りなく遠くへと響き渡った。

 

 

 

 ちなみにその後、俺はヒソカに無謀にも挑んだがヒソカのバンジーガムによってあっけなくやられてしまい、寿司を作ることもできなくなった。そして寿司試験は終了して他の試験に切り替わってしまいましたとさ。めでたくなしめでたくなし。



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第10話 全力×会長×ボール取り

お待たせ致しました。

半年以上も放置した上に今後の更新はディープインパクトに挑むアドマイヤジャパンみたいな心境(ようするにこれ以上ない絶望)でお願いします。

いやマジで。


「へいチーズ豚丼お待ち」

 

「待ってました!」

 

 俺はブバラ達にチーズ豚丼を運び、そこに置くとブバラは箸を器用に使いバクバクとそれを食べ始めた。

 

 

 

 二次試験の後、ブバラ達が約束通り材料のグレードスタンプを持ってきたので俺はその約束を果たすことにした。なんで態々? と思うかもしれないがそのデカ豚を上手く捌いて塩干しにして保存食を作りたかったからだ。確かに俺の身体は毒に耐性があるから腐った肉程度じゃ身体は壊さないし、寄生虫がいたとしてもどうとでもなる。

 

 それでも作りたい理由はトリックタワーに持ち込めるからだ。食料がない時、仲間割れが起きる……そんな時俺の肉を分けてやれば仲直り必須、万事解決、いい感じーっ! って訳だ。本来であれば寄生虫のいない牛肉にしたかったんだが、ないもんは仕方ねえ。世の中にはポークジャーキーなんてものがあるから大丈夫だろ。

 

 

 

「ふーん、そこまで旨いのかしら?」

 

「何なら食ってみるか? 材料を持ってくれれば料理するぜ」

 

「いや遠慮しておくわ」

 

「じゃあ失礼するぜ。これからの試験に備えて俺も休みたいしな」

 

 実際には豚肉の保存食を作るんだけどな。

 

「ふむ……ならワシと一汗かいてから休憩せんか?」

 

 一汗ぇ〜? 

 

「あんたを相手にするとめちゃくちゃ疲れそうだしやだ」

 

「ボール取りゲームなんじゃがボールをお主が取ったら合格にしてやっても良いぞ」

 

 ほぼ原作通りやないか! しかしこの勧誘は魅力的なんだよな。もし合格出来たら少なくともイルミとかヒソカとかと一緒に試験やらないで済むという最大のメリットがある。あいつらと一緒にいると気が狂うし、何よりもストレスの元だ! 

 

「いいぜ、やろうよ」

 

 だから掌を返すかのようにあっさりとイエスと答えてしまった。

 

「決まりじゃな。それじゃ移動するから付いてこい」

 

 その邪悪なる笑みを浮かべ、早速自分の迂闊さと馬鹿さを呪い、後悔した。具体的には何であの時ゴンを呼ばなかったのかとか、この爺が本気を出したら絶対に取れないことを思い出しながら俺は廊下を歩く。

 

 

 

「なんじゃ、そんなに考えこんで」

 

「あんたからボールを取る作戦を考えているんだよ」

 

 俺が無言で歩いているとネテロが話しかけて来たので素直に答えておいた。

 

「そうかそうか、じゃが若者は深く考えるよりも短絡的に攻めた方が良い結果を生む。例えそれが望まぬ結果であってもな」

 

 絶対に取らせないくせして何言いやがる。くそっ、こうなったら油断している隙を突いてやるしかねえ。念の動きを見れば俺が念能力者だということはネテロでなくとも念能力者であれば誰でもわかる。

 

わからなかったらこの爺はとっくにくたばっているか、念能力者相手に能力なしで戦っていた化け物かのどちらだ。残念ながらこの爺はどっちでもないので俺が念能力者だということを理解している。

 

 だがその念の使い方は人それぞれであり、能力の中身を知るには俺みたいに元々知識のある人間か、特質系の発を使うしかない。

 

 ネテロは俺みたいに転生者ではない上に強化系の発の使い手であり特質系を使うには程遠い存在だ。だからまず俺の念能力の中身がバレることはない。カードゲームで例えると手札の枚数が念能力者であるかどうかの確認で、手札の内容が能力の中身だ。

 

 

 

「そんな挑発に乗るほど俺は馬鹿じゃねえよ」

 

「ほ、言うのう。流石はゾルディック家の後継者じゃな」

 

「俺のことを知っているのか?」

 

 もちろんネテロがゾルディック家を知っているということは知っているがこう言って置かないとネテロに怪しまれる。

 

「キルア・ゾルディック。12歳、男性。ゴン・フリークスとともに試験受験者最年少であり、一次試験ではトップでクリア。二次試験でハプニングを引き起こし、試験内容が変更になるがこれをクリアする。今のお主の経歴はそんなものかの」

 

 ハプニングってあれはメンチが原因だろうが。俺の経歴に加えるんじゃねえよ。

 

「そう言うことを言ってんじゃねえよ。何でゾルディック家を知ってんだ?」

 

「あの家と少し交流があるんじゃよ。もちろん銀髪のゾルディック家の子供は当主となることも知っているぞ」

 

「それだけ聞ければ十分だ」

 

「ふむ、この交流については聞かないのか?」

 

「大体察しがつくからいい」

 

「そうかそうか。それより着いたぞ」

 

 カラカラを笑いながらネテロがそこを開けると体育館のような風景がそこにあった。

 

 

 

「ルールは簡単。ワシがボールを持つからお主はそれを奪え。そうすればお主の勝ちじゃ」

 

 ネテロがそう言ってバスケットボールくらいの大きさのボールを持ち、回す。……やっぱり念能力者相手だと攻撃はしないとか言わないんだな。こんな子供相手でも容赦しないとか大人気ないぞ! 

 

「時間制限は?」

 

「ワシが止めというまで時間制限はなし。とは言っても最低でも8時間くらいは相手してやるから安心せい」

 

 逆に言えば原作キルアよりも強い俺相手に8時間も逃げ切れる自信があるってことかよ! 化け物め! 

 

 

 

「それじゃ行くぜっ!」

 

 とは言え、俺だってプライドがある。前世ニートとは言えこっちは前世の反省を生かして特訓して来たんだ。原作キルアがこの時点で使えなかった念能力もある。

 

 ゴンが居ないのは意表を突くという意味では少し惜しいがこの爺の前じゃ戦力にならねえ。なにせ俺が念能力を使える以上この爺も念能力を使ってくることは明らかだ。念能力を使えないゴンは置いてきぼりにされてしまうのがオチだ。

 

「速いのう。それだけに惜しい。素直過ぎるのう」

 

 ネテロは俺の攻撃を横に避け、逃げる。確かに今の攻撃はスピードを重視した直線攻撃だ。だがボールを当てることは重視しておらず別のところにある。

 

 それは緩急。

 

 緩急は攻撃のパンチ等のスピードを速めたり遅めたりすることで相手のペースを乱すことだ。ゾルディック家に伝わる暗殺術の中にも緩急を付けることを前提とした技があるからどれだけ緩急が重要かわかるだろ? 

 

「なるほどなるほど。そう来たか」

 

 もう気づくのかよ? いくら何でも対応早すぎじゃねえけぇ? ……いかんいかんこの爺のチート振りに訛ってしまった。

 

「ならこれはどうだ?」

 

 ネテロが僅かに宙に浮いたところを見計らって変化系と具現化系の発を使い、ネテロの足元に油とパチンコの玉のように小さい氷の玉を作る。

 

 これをすると摩擦力を極限に減らすことで体勢を崩させることが可能だ。料理と足を滑らせるということしか使えないが上手く行けば接近戦では無敵になり得る。地味でかつ使用用途も限られているがある意味では最強の切り札とも言える。

 

「ぬっ!?」

 

 流石のネテロと言えどもこれには反応出来ない。行けるっ! 

 

「惜しかったな。発想自体は間違いじゃなかったの」

 

 その瞬間轟音が鳴り響く

 

 ネテロがあの程度のことで反応出来ないなんてことはなく普通に床を踏み抜き、無理やり元の体勢に戻した。俺が特質系だったら摩擦係数を0にしてネテロを滑らせるような発を作ってやったのに惜しい。

 

「惜しいのはあんただよっ!」

 

 一気に加速し、ボールに迫る。ネテロは床を文字どおり踏み抜いたせいで足元がめちゃくちゃになり、反応が遅れる。その結果、俺はボールまで後数センチまで迫ることが出来た。

 

「♠︎」

 

 ボールがネテロの掌から離れ、後数センチまで迫った俺からも徐々に離れていく。

 

「何いっ!?」

 

 そしてある人物まで辿り着く。その人物は俺が一番知っている奴だった。

 

「キルア、僕抜きで面白そうなことやっているじゃない♣︎」

 

「ヒィィィソゥゥゥゥォォォォカァァァァァァッ!!!」

 

 俺は絶叫して、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 残念! キルアの地獄はここで始まってしまった! 

 

 

 

「今年は豊作じゃのう。ホッホッホッ」

 

 笑っている場合じゃねえよ、クソ爺! 目の前が暗くなっても聞こえるんだからな!




次回予告(嘘)

ヒソカ「やらないか?」
ネテロ「よかろう。」
二人に火花が飛び散り今にも激戦を繰り広げそうな雰囲気!

キルア「げえっ! ヒソカぁっ!」
ヒソカ「会長とやってきたけど消化不良だからやらないか❤︎」
こっそりと逃げ出すも無駄に終わるキルア!

次回、第11話 おホモだち×高め合い×絶叫
続くぅっ!









*嘘です


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第11話 本気×ボール取り×やりすぎ

なぜか筆が進み更新出来ました。

…前回の投稿でお気に入り登録数が80くらい増えてモチベーションが上がったからでしょうか?


 畜生、俺が何をしたっていうんだ! キルアになって原作の流れをちょっと変えただけじゃないか!? だと言うのに……何でヒソカにこんなに絡まれるんだよ!? ヒソカのエンカウントが仕事しすぎてブラックどころか黒墨汁企業だ! 白ペンキで塗りつぶすのは無理でも真っ白な紙に変えろよ! 

 

「キルア、僕も混ぜてよ♠︎」

 

「誰がてめえを混ぜるか!」

 

 黒墨汁のてめえが混ざったらせっかく渋く光る銀色も台無しだ! 

 

「ワシは構わんぞ。ただしルールを追加させて貰うが」

 

「決まりだね♣︎」

 

 もうヤダこいつら。誰か何とかして……

 

 

 

「ルールの追加。お主が持っているボールがキルアに奪われたら負け。或いはボールがワシの手元に渡った場合5分以内に奪い返すように行動しなかったり、ワシに意図的にボールを渡しても負けじゃ」

 

「良いね❤︎ その条件♢」

 

 ……確かに悪くない。捻くれ者のネテロが俺を妨害したりしてヒソカと手を組むなんてことはなく、むしろその逆。ヒソカのボールを取りに行ってその後ヒソカと俺を相手にする。強化系ならではの悲しき習性だ。俺がネテロの立場ならキルア()を気絶させた後、ヒソカと戦うだろうな。

 

 肝心なのはヒソカだ。ヒソカがどう動くかによって決まる。ヒソカの手元からボールが離れたらヒソカは俺ではなく、ネテロに向かっていく。ルールの関係上そうせざるを得ないが開始時点じゃボールはヒソカにあり、奴がどう動くかなんてのは予測が不可能だ。

 

 ネテロは捻くれているが決めたことは自分の動きを制限するものであってもやり遂げるがヒソカ場合はそうもいかない。ヒソカの性格上気まぐれを起こして予想の斜め上の行動を起こすなんてことはよくあることだから予測不可能。

 

 例えば散々荒らしておいて途中で止め、その場を去るとかな。もちろんそんな素敵過ぎる展開は妄想だけにしておく。そんなことがあったらとっくにヒソカの認識は俺の中で厄病神から台風レベルになっているよ。

 

 俺が予測出来るのはここまでだ。原作のキルアならもっと考えられるだろうが中身が元自宅警備員なだけあって思考力が足りない。その為これ以上考えてもどうしようもない。

 

 

 

「うむ、キルア。それで構わぬな?」

 

「構わねえよ」

 

 結局、俺はそのルールを受け入れることにした。

 

 

 

「では始めっ!」

 

 ネテロが俺をガン無視しボールを取りに行く。これは俺でも予測出来ることだ。ネテロはあくまで楽しむ為にこのゲームをやっているから俺を気絶させヒソカと戦うなんて真似はしないだろう。俺が気絶したらボールが奪われる心配なんてなくなるからスリルもなくなり、つまらなくなる。故にこのようにボールを取りにいく確率はほぼ100%だ。

 

 

 

 俺の作戦はそのネテロの影に隠れるように移動し、ネテロがボールを取った瞬間を見計らってボールを横取りすると言うものだ。俺が視界から消えればヒソカに頼りにするのは念能力による探知、言って見れば凝だ。

 

 見えなくなったからといって所詮それはネテロの影に隠れていたからにすぎない。故に念を探知する凝を使えば俺の念を感知し、どこにいるか丸わかりになる。

 

「♣︎」

 

 ヒソカはボールにバンジーガムを包み込み、天井に貼り付ける。確かにこれならばルール上、俺やネテロに関係なく両手で攻撃出来る。

 

 

 

 となれば問題はネテロ。奴の目的はヒソカを殴ることじゃなく俺にボールを触れさせないことだ。俺がボールを奪った時点でゲームが終了するから俺にボールを奪われる訳にはいかない。優先順位としては

 

 

 

 1. 俺にボールを触れさせない

 

 2. 自分ルール

 

 3. ヒソカと戦う

 

 

 

 とまあこんなもんじゃないのか? もちろん時と場合によっては順位が変わるだろうが基本的にはこのスタンスだ。

 

「ほ〜ぅ、そう来たか。面白いことをするのう」

 

 ネテロが感心したような溜息を吐く。

 

「こうしたほうが面白いかなって思ってさ♢」

 

 お前の面白いはただカオスな展開を楽しみたいだけだろう? あのバンジーガムを取り除くにはかなり苦労するし、片手じゃ取れないようにうまく貼り付けている。両手で取ったら取ったでネテロはその両手が使えなくなりヒソカを相手にするには無理がある。百式観音を繰り出す時も両手を使うために、ネテロの切り札を防いだとも言っていい。もっとも百式観音なんてこんな遊び程度じゃ絶対に使わないと思うが。

 

「この勝負貰った!」

 

 だが俺は別だ! 俺はあれを取れば勝ちだ。この戦闘バカ共は何をトチ狂ったのかは知らないが俺を無視して二人で戦闘することだけを考えていた。故にあのボールをどうするかなんて考えても……

 

「へぶっ!?」

 

 痛てえっ!? 足に何か引っかかった!? 

 

「残念だったねキルア❤︎ ルール説明の時に君の靴に細工させて貰ったのさ♠︎」

 

「なんだと!?」

 

 そんなご都合主義があってたまるか!! 

 

「時限式のバンジーガム。そうだねぇ、名付けるとしたらタイマーガムって感じかな♣︎」

 

 おいおい、そんなことも出来るのか!? いやヒソカも俺を弄ぶ為だけにそういうのを開発したのか……

 

 

 

 俺の馬鹿っ!! 何でそんなミスに気がつかないんだ!? 何でヒソカが大人しく待っていたのか疑問に思えば分かっていたはずだ! 

 

 

 

「だからといって凹む俺ではないっ!!」

 

 俺は靴を脱ぎ、天高く飛び天井に貼りついたボールのところまで辿り着く。しかし目の前にはネテロが居て邪魔だ。邪魔でも俺はネテロという障害をどうこうするほどの実力は持っていない。となればボールを叩き落として床に貼りつけさせたほうが俺としては都合がいい。

 

 

 

「水遁・水手裏剣の術!」

 

 俺は印を組み、掌から水で出来た手裏剣を放つ。前に水遁を再現するのは無理だと言ったがあれは全部は無理というだけで具現化を最小限に抑えかつ操作を一切抜きにすれば変化系の俺でも出来るようになる。後、発動する際に印を組み、口にするという制約をさせることで威力を上げることが出来る。……どうしてこういうことは出来るのに水龍弾の術とか出来ないんだろうな? あれは操作系と具現化系の管轄だからか。

 

 

 

「ぬっ!?」

 

 ネテロといえどもこれを対処するには難しいと判断したのかそれを躱し、バランスを崩す。そして俺の水手裏剣がヒソカのバンジーガムを切断し真下に落ち、ヒソカがそれをキャッチした。

 

「僕のバンジーガムを攻略するなんてやるじゃない♣︎」

 

「嘘つけ。わざと切らせたんだろうが」

 

「まあね❤︎」

 

 やっぱりかよ! ドチクショウ! ヒソカのバンジーガムは切れないようになっている。それこそヒソカが念を意図的に切らない限りは無理だ。

 

 

 

 しかしだ。何回やっても俺がヒソカに勝てる姿が想像出来ない。ネテロが力をセーブしないならともかく現時点ではネテロに協力して貰ってもイルミ以上の成果は期待出来ない。むしろルール上邪魔な存在だ。ヒソカにとって負けることが有意義だということを理解させた上で、勝たせてもらう。そしてネテロの足止めをさせる。これが一番ベストなパターンだ。

 

「よし、久しぶりに本気になるか」

 

 俺は暗殺モードに切り替え、変化系の能力で水を出す。

 

 

 

 暗殺モードは単純に俺の本気だ。俺は気まぐれで本気になる機会というか、何時でも本気出せばどうとでもなるという考え方があって本気を出せなかっただけだ。自宅警備員にありがちな言い訳のようにも聞こえるが気のせいだ! 

 

 

 

 話が逸れた。とにかく今の俺は暗殺モード、つまり本気も本気。これ以上ないまでに爆走させている。え? 操作系の能力じゃないのかだと? 全然違うな。俺は本気になっただけで念能力は変化系以外使っていない。

 

「!」

 

「♠︎」

 

 水浸しになった床を見た二人がそれに警戒し、壁に貼りついた。取り敢えず重力に喧嘩を売るのはやめましょう。

 

「という訳で喰らえや! 水遁・水手裏剣!」

 

 湿度100%のこの状況だと火遁は弱体化してしまうが水遁はより強力になる。具体的な数値はわからないがおおよそ2割くらいは違ってくる。

 

 

 

「流石キルア。僕の教えが良かったおかげだね♣︎」

 

 長年付き合っているヒソカにそう言われ、俺は気付く。奴は俺の考えを読んだという事に。

 

「ほっほー、さっきの動きとは大きく違うの」

 

 ネテロはとぼけているのか、本気で気づいていないのかわからないが感心したように頷きそれを躱した。

 

 

 

「その余裕いつまで保っていられるかな? 水遁・霧隠れの術」

 

 俺はオーラを放ち、そこから霧を発生させる。この発は具現化を一切使わない変化系の発。要するに俺のメインウェポンの一つである電気と同じくらいの効果があるってことだ。具現化系だとどうしても80%の力しか発揮出来ず、それでおしまいだからな。そういった意味ではこの発は有用な発だ。……じゃあそれで何が出来るのかだと? この霧を発生させることで視界を防ぐのは当然のことだ。だがそれ以上に電気を生み出しやすくなる。

 

 

 

 そもそもこの霧は定義で言えば雲だ。アホなことに俺は霧を発生させるには雲を作ればいいと思っていて雲の作り方を調べ、変化系の能力で雲を作り出しそれを霧隠れの術と名付けてしまい使うようになった。

 

 

 

 しかし霧は湿度が100%を超えたことで発生するだけで良く氷結核を作る必要はなかったことに気がついて後悔した。

 

 

 

 ただ幸運なことにそれが相手の油断を誘うだけでなく、電気を雷にしてより強力にする効果があったのでむしろ助かった。本当の霧だったならば円だの何だので対策を取られてしまうが今となってはその対策も怖くない。

 

 

 

 そして今、ネテロやヒソカを破る準備が整った。俺は電気を放つ。すると俺の放った電気が雲の氷結核とぶつかり合い摩擦によって静電気が発生し雷へと昇華し、ネテロやヒソカに襲いかかる。その瞬間ものすごい轟音が響き、床が竜巻に巻き込まれたかのように捲れ飛ぶ。もはやレールガンのような雷が二人に直撃した。

 

 

 

「……やったぜ!」

 

 二人がところどころ火傷──火傷で済ませるあたり化け物じみている──し、動けなくなるのを確認すると俺はボールを取りに行く。そしてあることに気がついた。

 

「オーマイガーッ!!」

 

 だがあんな雷を受けてボールが無事なはずもなく黒焦げになった炭となり、手に触れるとボロボロと崩れていく。

 

「試合に勝っても勝負で負けた? いや逆か? どっちにせよ負けじゃねえか……」

 

 俺はブツブツと呟きながら、手にした炭のようにボロボロと崩れていくのであった。




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第12話 最終試験前×面接×推測

遅れました。


 あれからしばらく経過して最終試験。ボールが灰になってしまい試験を続けることになった俺は一部変更点はあったもののほぼ原作通り三次試験のトリックタワーを攻略し、四次もイルミやヒソカに会うことなく合格した。……つまらないとか言うんじゃねえぞ! 物足りないとか絶対にないからな! 難易度がベリーイージーモードからヘルモードに変わるのはゴメンだ。

 

 

 

「気を楽にして座って良いぞ」

 

 そして最終試験の面接。すれ違いにピエロのねっとりとした視線を感じながらもその部屋に入り、座る。

 

「どうも。しかし会長さん、身体の方は大丈夫なのか?」

 

「ふぉふぉふぉ。念を入れて気合いでガードしたからの。あれくらいのことは軽傷で済む」

 

 いや軽傷って。あんた大火傷していたじゃないか。それを数日間で治すって念云々関係なく人外だよ。ヒソカもだけど。

 

「とはいえちーっとばかしムチャしたせいか、まだ完治しておらん。こんなことワシの人生でも滅多にない」

 

 滅多にって……100歳以上生きているくらいだから一度くらいはそんな事はあるのか? つーか、どこが完治していないんだよ? 治療が出来ないヒソカですら無事なんだぞ。少なくとも二人は三次試験の時にはピンピンしていたしな。

 

「間違いなくお主、いやお前は」

 

 ネテロが手を広げ前に付き出すと笑みを浮かべながら告げた。

 

「ワシが見てきた中でも5本の指に入れるほど強くなると確信しているぜ」

 

 5本の指、つまりあのインセクトキングには勝てねえってことか。いやネテロが全盛期だったらそのインセクトキングに勝っていたのかもしれないが、それでも俺は強キャラ止まりだろうな。

 

「そいつはどうも。会長さん、あんたを快く思わない連中が俺に依頼してあんたを殺すことになったら、殺す依頼があった事だけ伝えるぜ」

 

「何故じゃ?」

 

「あんたを暗殺するのは無理だ。殺したとしてもよくて相討ち、俺だって死ぬのはゴメンだ。可愛い妹達のために死ぬわけにはいかねえしな」

 

「なるほどのう。ところでお主、ハンター試験を受けた理由は何じゃ?」

 

 ここで、原作を変える為に来ました。なんて言っても通じないだろうし、信じて貰ったとしても面倒だ。

 

「ハンターの資格を取れば変われると思ったからだ」

 

 だからギリギリスレスレのところで言葉を濁し、そう志望動機を語る。嘘は言ってない。変わるのは自分よりも原作の方だ。

 

「今年の受験者で気になる者と戦いたい者は誰だか教えてくれんか?」

 

「気になるのは特になし。逆に戦いたくないのは三人いる。44番、301番、405番だ」

 

「何故?」

 

「気にならないのは単純にそいつらがどんな奴らかってのをわかっているからだ。戦いたくない前者二人は手札を見せたくないし、405番は同世代だからだよ」

 

「そうかわかった。では行って良いぞ」

 

 これでいいよな? この面接って最終試験の対戦相手を決める為にやるんだよな。俺のセリフが変わったことでどう対戦相手が変わるか半分期待半分不安に思う。もっとも最終試験を筆記試験だと思い込んでいる奴らはのんびりと余裕綽々に待っている俺を見て恨めしそうな顔をしていた。

 

 

 

 しかしアルカとカルトは何をしているんだろうか? 俺が帰ったら「お兄ちゃんお帰りー!」って言って飛び付いてくれたら感激のあまり昇天してしまいそうだ。

 

 

 

 そんなことを考えているとゴンが目の前に現れた。……いや気配で察していたけど、ドラクエ的な? まあとにかくゴンが俺に近寄って右手を上げる。

 

「あ、キルア。面接はどんな質問だったの?」

 

「別にどうしたもこうしたもねえよ。ふつーも普通! 普通過ぎて拍子抜けしちまったぜ」

 

 これまでの行動も原作通りで拍子抜けしてしまう……訳ねえだろ! そんな考え方していたらとっくに原作崩壊させる為に行動起こしているよ。既に壊れているけど。

 

「やっぱり志望動機とか?」

 

「ま、そんなところだな。肩の力抜いていけよゴン」

 

「うん。ありがとキルア」

 

「おう。ゴン、一緒に出来れば合格しような」

 

 俺がそう呟き、ゴンを見守る。……まあゴンは原作通りにいけば真っ先に合格出来ると思うから心配はしていない。問題は俺の方だ。俺の頭の中に針仕込まれていねえだろうな? 仕込まれた記憶はないが一応念の為だ。円を使い、もう一度確認するがそこには何にもない。円が苦手なだけなのか、あるいは円にそんな能力がないのかはともかく、俺なりに頭を探る。イルミの針は洒落にならん。

 

 

 

「どうしたの? そんなに頭を掻いて♣️」

 

「ヒソカか。てめえに話すことじゃねえよ」

 

「そうかい♠️ でも気になるよなぁ……その頭◇」

 

「近寄るなって。お前はただでさえ気味悪いんだからドアップしたら尚更だ」

 

 この後の展開、腐女子ならヒソカが俺にキスをしてイチャイチャするんだろうがそこまでヒソカも腐ってなかったらしく大人しく引き下がる。

 

「ところでキルア♥️ この後の試験の前に神経衰弱やらない? あれ楽しいんだよね♣️」

 

「やらねえよ。何が悲しゅうて試験前にそんなに疲れることをやらなきゃいけねえんだよ。兄貴と殺ってこいよ」

 

「いつイルミが来ていること気がついたの?」

 

最初(ハナ)っから。イルミが来ていることくらいわかるさ」

 

 これは嘘ではない。産まれたときから既にイルミが来ることは知っていた。原作知識を使うってのはこういうことを言うんだよ! 

 

「まあ、そう言うことだからイルミに下手くそな変装止めろって言っといてくれないか?」

 

「キルアからは言わないのかい?」

 

 面と向かって言えるか! アホったれ! 

 

「俺から言うよりもヒソカから告げた方が互いに良い展開になるから言わねえよ」

 

 よし! 我ながら見事な言い訳だ! 

 

「ふ~ん♥️ もし面と向かって言えないなんて理由だったら殺してあげようかと思ったのに♠️」

 

 その言葉に俺は絶句した。俺を殺したらイルミは当然、シルバが飛んで来る……こいつにとってメリットしかねえじゃねえか!? デメリットを強いていうなら熟さずに殺したことを後悔するくらいじゃないのか? もっともヒソカにとってはそれが重要な要素なんだがな。

 

「お前の口から殺すなんて言葉が出てくるなんて珍しいこともあるもんだな」

 

「会長さんと真剣でやり合えなかったからね♣️」

 

 あらら不機嫌だなこりゃ。とっとと逃げるか。だらだらと話さずすぐに終わる会話にしよう。

 

「ところでヒソカ、最終試験はどんなものが出るか予測出来るのか?」

 

「一対一のデスマッチだと良いよね◇」

 

「んな訳あるか!」

 

 しまった。ヒソカのぶっ飛んだ発想に思わず突っ込んでしまったよ。

 

「あれ♣️ 試験内容をキルアは知っているの?」

 

「この面子で一対一のデスマッチをしたら半分くらい死ぬってことだぞ。そんなことをすると思うか?」

 

「でも5年くらい前から合格者って平均二、三人くらいで6人以上いなかったと思うけど♠️ それってデスマッチが原因なんじゃないかな♥️」

 

「少なくとも去年はてめえが原因なんじゃないのか? 試験官ぶっ殺したって話聞いたぜ」

 

「なんにせよ今年こそは合格者を増やしたいから受験者は一回戦って勝ったら合格なんじゃないかな?」

 

 ……! 鋭いな。デスマッチ以外ほとんど核心突いてやがる。

 

「それにしたってデスマッチはねえだろ。半分の奴らが死ぬんだぜ」

 

 大事な事だから何回も言わせてもらうぞ! 

 

「この中で半分ハンターになれば十分多いくらいだと思うけどね♣️」

 

 世の中には理不尽なことがあるように不可思議なこともある。かっこよく言ってみたが前者はヒソカの存在や性格。後者は今のヒソカの発言の感想だ。それだけ複雑な感情があるんだよ。こいつには。

 

「まあ、どちらにせよ。最終試験までのお楽しみだねキルア♥️」

 

 ケツの穴が閉まってしまうほど背筋に悪寒を感じ、とっとと逃げた。やべえ。言っていることがめちゃくちゃ過ぎて訳わかんねえ。アルカ、カルト……マジで帰ったら俺を癒してくれ!




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第13話 最終試験×キルア×ごーかっく♥️

「それでは最終試験の発表をする」

 

 と言うわけでくそったれなハンター試験もよーやく終わりを迎えている。

 

「最終試験は一対一のトーナメント形式で行う。そして、その組み合わせはこれじゃ」

 

 そしてトーナメント表が顕になると原作とは異なり、(キルア)の番号が一番左にあった。……どういうことだ? 確か原作のキルアはレオリオ並みの評価だった筈だ。だが目の前の現実は俺がゴンすらも凌いで尤もこの中で素質があるということになる。いやゴンさんを超えるなんてあり得ないから。

 

「さて肝心のクリア条件だが、至って明確。たった一勝で合格である」

 

「つまり通常の負け抜けトーナメントじゃなく、勝ち抜けトーナメントってことか?」

 

 

 

 だいたいこの辺は一緒だから聞くまでもないな。分かりやすくまとめるとこうだな。

 

 

 

 原作の相違点

 

 ・念の素質が最終試験のメンバーで尤も高いのは忍者ではなく俺ことキルア

 

 ・ゴンは忍者ではなく原作でのヒソカの対戦相手だったクラピカと戦う

 

 ・ヒソカは最初にネテロもどきと戦う

 

 

 

 原作との共通点

 

 ・キルア、忍者、ゴン、ヒソカ、クラピカ、ネテロもどき以外は全て対戦相手が同じ

 

 ・ルールは時間制限無限。降参したら負け。殺したら即不合格の一対一のノーデスマッチ

 

 ・念の素質が高いほどチャンス(試合数)が多くなる

 

 

 

 ……そんな程度だな。原作で聞く筈だった点数評価の詳細とかも話が終わったし、そろそろやるか。

 

 

 

「で、どうすんの? ハゲオジサン」

 

「俺はオジサンじゃねえ!」

 

 ハゲは否定しないんだな。じゃあ逆の言葉でいってみるか。

 

「じゃあハゲガキ」

 

「てめえにガキって言われたくねえよ!」

 

「わがままだな。何が良いんだ?」

 

「お兄さんと呼べ」

 

「嫌だね。本当の兄貴に殺されるから」

 

 実際そこにいるしな。

 

「ちっ、それで何がどうするんだ? 後俺のことはハンゾーさんって呼べよ」

 

「さん付けさせられるようなことをしたらそう呼んでやるよ。それとあのままのルールでやったらキリないぜ。お互い殺しが付きまとう職業だし」

 

「俺は一言もそんなことは言ってないぞ」

 

「あんたの動きだよ。暗殺者特有の動きをしてるから分かりやすい」

 

 

 

「で、それがわかったらどうするんだ?」

 

「別に。それよりもルールを自分達で設けた方が良いんじゃないか? このまま、降参させるまで続けるなんてルールだと泥仕合で体力を大きく消耗する」

 

 このままのルールだと気絶しようが何しようが試合は終わらず、相手の心を折る為に何をしでかすかわからない。そんな手段を俺は選びたくないのでローカルルールを提案した。

 

「それもそうか……」

 

「四方の壁に自分の身体が当たったら負けというのはどうだ?」

 

 ちなみにこのルールは俺が考えたものではなく、どこかの二次小説で出たアイデアだ。この方法なら比較的平和に行えるしな。

 

「それが良さそうだな。それなら気絶させても壁にぶつければ負けを認めさせられるしな」

 

 ハゲ忍者が笑みを浮かべ、提案したルールを受け入れた。

 

「よし、とっとと試合やろうか」

 

「そうだな」

 

 

 

 忍者が俺の後ろに回り込んで首を叩いて気絶させようとしたが俺は忍者の玉という玉を蹴っ飛ばした。

 

「ーっ!!」

 

 忍者が悶絶するのをみてこの場にいた受験生のほとんどが股間を抑え、同じように悶絶した。

 

「大方、足に自信ありってとこだが、ミケ相手に戦ってきた俺の敵じゃねえ」

 

 ミケ。名前こそ猫っぽい感じだが、見た目は何千年も生きてきたような巨大狼でゾルディック家のペット。俺はこいつ相手に絶をして最小限の動きで避けるように練習してきた。執事の連中は俺相手だと萎縮して手加減してしまい、練習にもならない。ミケなら餌を持てば容赦なく襲いかかってくるので実に練習になった。

 

「ミケって誰だよ……」

 

「で? まだやるの?」

 

 レオリオのツッコミを無視して、忍者にそう聞く。このまま蹴っ飛ばして壁に接触させるのも考えたが、えげつなさ過ぎて後で恨まれそうだ。

 

「やる……に決まっている!」

 

 あの悶絶から立ち直り、拳で殴りかかろうと腕を振るい、俺はそれを避ける。

 

「ご丁寧に仕込み刀まで用意したのはいいけど、俺やヒソカや兄貴クラスの相手だと通用しないぜ? わざわざ手の内を披露するのと同じことだからやめておきな。ハゲ」

 

 しかしとことん甘いよな。俺だったらあの仕込み刀に痒くなる毒塗って悶絶させたところで降参させるな。俺には毒効かないけど。

 

「……そうだな。俺は次の試合で勝てば良いし、何も敵わない相手にムキになって手の内を披露する必要もない」

 

 そう言って忍者が壁まで歩き、壁に手をつかせて口を開いた。

 

「審判、降参だ。そしててめえの土俵で降参してやったんだから感謝してお兄さんと呼べよ?」

 

「やだ」

 

 俺が否定し微妙な空気が流れたのをスルーし、合格したことに歓喜した。

 

 

 

 ……って次の試合、ゴンVSクラピカじゃねか!? 原作キャラ二人組が戦うのか。複雑な気分だ。

 

「審判、私は棄権する」

 

 早速、クラピカが棄権宣言を立てた。あり得ない訳じゃない。クラピカは自己犠牲が強く、友と認めるゴンの為に自分が棄権することによってゴンを合格させたいと考えている。

 

「ええっ? どうして!?」

 

「ゴン、私とお前が戦えば決着こそするがお互いに満身創痍の状態になる。そんな状態で挑むよりもどちらか片方、棄権して次の試合に勝てばいい」

 

 満身創痍はねえだろ。俺はクラピカを評価している。ゴンは確かに強い。しかし攻撃に特定のパターンがあり、頭脳明晰なクラピカがそれに気づくのは容易く、ハメ技だって出来るからだ。

 

「だったらキルアが提案したルールを使うのはどう?」

 

「あのルールは悪くない。しかしそれでも傷つくことに変わりない。ならばいっそのこと、万全の状態で次の試合に出る方が良い。それに色々と聞きたい相手がいる」

 

 クラピカがヒソカを見て、奴はそれを笑みで答えた。……ヒソカの野郎旅団のことを話したのか? あんまり奴に近づきたくないが近づこう。俺はこっそりとヒソカに近づき、それを尋ねた。

 

 

 

「ヒソカ、クラピカに何を吹き込んだ?」

 

「君が知ることじゃないさ♥️」

 

「幻影旅団か?」

 

「君が何で……ああ、彼の目か♦️」

 

 俺がカマかけるとヒソカが珍しく驚いた顔をしたかと思えば、すぐに元に戻り納得した声を出した。

 

「クラピカは旅団に敵対心を抱いている。それがわかったのは三次試験の時だ。その時に遭遇した旅団を偽った男に対して向けた目はクルタ族特有の緋の目だった。緋の目、いや同胞達の命を奪った旅団に対してクラピカは許せないんだろう。それに気づいたお前はあることを条件にその旅団の情報を与えた……違うか?」

 

「ビンゴ♣️」

 

 ヒソカが俺の推理に正解を唱え、指差した。

 

「だとしたら解せねえな。お前らしくもない」

 

「僕らしくないだって? 冗談を言わないで欲しいな♠️」

 

「冗談じゃねえよ。ゴンの成長を見たいはずのお前ならクラピカにゴンを叩きのめすように指示するはずだ。しかし今やっていることは逆。ゴン相手に戦うどころか棄権しようとした」

 

「あれでいいのさ♦️」

 

 あれで良いだと? 俺はヒソカから目を離しゴン達を見るとまだ言い争っていた。

 

 

 

「……ではどうしても戦うというのか? ゴン」

 

「そうでもしないとクラピカに悪いよ!」

 

「では先ほどキルアが設定したルールで勝敗を決めよう」

 

 ……どうなってやがる? 逆に戦おうとしてやがる。

 

 

 

「驚いたかい? ゴンの性格上、ああすることで戦おうとするのさ♥️」

 

 本当、そう言うところは父親に似てやがって……バカじゃねえか? 

 

「ゴンの性格を計算して、クラピカにそうさせたのか?」

 

「それだけじゃない。ああ言わすことでゴンの力を最大限に引き出すことが出来るのさ♠️」

 

 やっぱりこいつは極悪だ。そして趣味も悪い。どうせ惚れるなら女顔のクラピカにしておけよ。かなり昔のBLものならありそうだけどな。




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第14話 試験後×悪夢×弁当

お久しぶりです。お待たせしました!


 クラピカVSゴン。まさか俺がキルアになったことでこれが実現するなんて思っていなかった。

 

「ヒソカ、この勝負どっちが勝つと思う?」

 

「決まっているよゴンだね♠️」

 

「クラピカに八百長するように言ったのか?」

 

「かもしれないし、そうでもないかもしれない♥️」

 

 どっちだよ。くそっ、こいつに聞いた俺が間違っていた。そもそもこいつが教える理由がほぼ全部が気まぐれだ。僅かな可能性もビジネスによるもの。そんな奴相手に聞く方が間違えている。

 

 俺が何故クラピカに八百長するようにヒソカが仕組んだと考えたのかというクラピカの実力にある。現時点でクラピカは念を使えない受験者の中でトップクラスに強い。

 

 まあクラピカのスペックを考えると忍者くらいの実力はあると見ていい。特に緋の目になるとそのくらいは覚醒するしな。

 

「お前のことだ。八百長させるように言ったんだろ?」

 

「ところでキルア、再就職先で面白いことがあったんだ♣️」

 

「面白い事だと?」

 

 ヒソカの言う面白い事と言えば、殺戮か逸材を見つけたかのどちらかだ。再就職先である幻影旅団に何かそう言うことがあったんだろう。

 

「うん。退屈凌ぎに少し遊んでいたら君の妹と遭遇してね◇ 少しイジメちゃったよ♠️」

 

「お前を殺す、今ココで」

 

 殺気をヒソカに当て、マジ切れモードに移る。殺気を出しすぎたせいで試合をしているゴンやクラピカが硬直し、他のやつらも似たような反応を示す。例外的にヒソカと兄貴は歓喜、ネテロは動じてもいなかった。

 

 ……落ち着け、ヒソカが手ぇ出したのは恐らくカルト。確かにカルトならヒソカに突っかかってもおかしくないが、それでも末っ子カルトに手を出したのは重罪だ。あいつは幻影旅団の情報を仕入れる為にわざわざ入団したんだよな。

 

「怖い怖い♣️ 後、カルト経由じゃないけど緋の目の情報についてたどり着いたんだよね♥️」

 

「何ぃっ!?」

 

 緋の目と言う単語に反応したクラピカが首を180度回転させヒソカの方に振り向く。はっきりいってキモい。

 

 

 

「緋の目関連で八百長するように言わなかったのか?」

 

「僕が言ったのは幻影旅団のことだよ。彼、物凄く拘っているしね♠️」

 

 この野郎……

 

「だが普通に教えたところでクラピカが幻影旅団を殺せる訳がない。ということは幻影旅団の殺し方だな?」

 

「ビンゴ◆ 大当たり♣️」

 

「念のため言っておくが、これを教える気なのか?」

 

 オーラで『変な事を教えたら俺がお前を殺す』と形にしてヒソカに伝える。

 

「それも悪くないね♥️ だけどそんな時間はないから無理だよ♠️」

 

 だがこいつには通じない。相手が悪いが意志だけでも伝えたので上出来だろうな。

 

「嘘つけ。お前の場合気まぐれでどうとでもなるだろうが」

 

 

 

 俺はヒソカとの話を切り、弁当を取り出し食事をすることにした。

 

 この弁当は念能力によって生み出されたものだ。この弁当は日替わりで中身が変化するが中身を食べると効果が現れ、その弁当の内容によって効果が変わる。

 

 メリットが高い効果が多いがごく一部ハズレがある。効果を得られなかったり、身体が小さくなったり、性別が変化したりなどのデメリットもある。メリットデメリットに関わらず食べ終わってから5分程度で戻るので問題ない。

 

 デメリットが存在してしまった理由はやっぱり生粋の変化系の人間だから具現化が得意ではない──それでも80%あるはずなんだが──のかもしれない。あるいは俺がロマンを求めて弁当を想像したのが原因か? 

 

 何でそんな弁当を今食っているのかというと、この後で戦うヒソカが原因だ。あいつのことだから戦いながら俺を巻き添えにすることくらい容易い。むしろ巻き添えにしない方がおかしい。

 

 だからといってヒソカの試合を見ずこの場から離れれば間違いなく隣の晩御飯してくるだろう。いくら素質があると言われても現時点でヒソカと一対一でやり合う程の実力はない。ボール取りゲームの時はネテロに意識が行ってたからヒソカを気絶させることが出来たのであって邪魔をする相手がネテロでなければ無理だ。

 

 イルミとタッグを組んで倒すと言う手段も無くはないが、今度はイルミを倒す奴がいなくなるから面倒なんだよな。一対一ならゾルティック家の暗殺術を心得ているイルミよりもヒソカの方がやり易い。やり易いが本音を言うと相討ちしてくれないかな? 素敵すぎる妄想に思わずマジレスしてしまう。

 

 閑話休題(それはともかく)。ヒソカの隣の晩御飯を防ぐには今、ここでヒソカの相手をするしかない。回避重視のヒットアンドウェイでダメージを少しでも減らすか、ドーピングでパワーアップしてヒソカを俺の掌の上で踊らせるしかない。デメリットが来たとしてもイルミを利用して妨害するだけだ。

 

 

 

 そして唐揚げを食べようとした瞬間、伸びてきた手がそれを摘まんで口の中に流れていく。

 

「うん旨い♠️」

 

「ヒソカぁぁぁっ!!」

 

 またこいつかよ!? 今回の試験だけで二回も妨害されたよ! 

 

「てめえ、覚悟は出来ているんだろうな?」

 

「そうケチケチしない♣️ 弟子が師匠の為に尽くすのは当たり前でしょ♥️」

 

「てめえを師匠にした覚えはねえ!」

 

 よくよく考えたら、こいつを師匠にした記憶がないから無理やり弟子にさせられたと言っても過言ではなく、こいつを師匠と呼ぶ理由はない。むしろこいつを殺す理由は有りすぎるくらいだ。

 

「おっ……♠️ なんかみなぎってくるよぉ◆」

 

 ヒソカの股間にテントが張られ、試合中のクラピカやゴンを含めほぼ全員がドン引きしている。動じていないのはネテロくらいでイルミですら若干顔をひきつらせている。

 

「さあキルア、僕と愛の営みをしようじゃないか♣️」

 

「誰がするか!」

 

 電気を纏いヒソカをぶん殴る。しかしヒソカの野郎、今までは悪ふざけで俺をからかうだけだったがあれを食ってから愛だのなんだのとほざくようになった。やっぱり副作用を抑えた方が良さそうだな。

 

「ふふふ、そう言う照れ屋なところも良いね♥️」

 

「照れてねえ! つーかその股間のテントを張るなよ!」

 

「君が気持ち良くさせたら自然に戻るよ」

 

 だ、駄目だこりゃ。これ以上こいつと関わりたくない。こいつと関わったらエラいことになりそうだ。

 

「だったらこの弁当を食っておけ。俺は食欲が失せたからもういらん」

 

「それじゃ頂こう、僕の為に作ってくれたキルアの愛妻弁当をね♥️」

 

 背筋を凍らせる程のとてつもない寒気が俺を襲う。

 

「んん~♣️ キルアと間接キスも出来たし最高のお弁当だよ♠️」

 

「いちいち感想言ってないでさっさと食えよ!」

 

「やだよ◆」

 

 あまりの悪寒に我慢しきれずにそう突っ込むとヒソカが否定してむしろさっきよりも遅く、深く味わって食べるようになった。

 

 ……しばらくの間、こいつの顔すら見たくねえ。別の部屋で待機して結果を待つことにした。




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第15話 試験終了×拉致×エピローグ

前回のあらすじ

キルア「弁当( ゚Д゚)ウマー」
ヒソカ「やらないか?」カラアゲヒョイパクー
キルア「冗談じゃない! こんなところに居られるか! 俺はここから逃げるぞ!」


 ゴンVSクラピカの試合を見ることなく、別室で待機することに決めた俺は弁当で現れた副作用を確かめていた。

 

 

 

 性転換……股間に棒と玉二つあり、穴は尻の穴と棒の穴だけだ。問題ない。

 媚薬効果……ヒソカに現れた副作用だが、俺は何一つ異常がない。女の顔や身体を思い浮かべてもいつも通りの反応だ。男? 調べるまでもないだろ。

 筋肉膨張……どこからどうみても少年。ゴンさん体型じゃない。

 

 結論。副作用は現れなかった。

 

 

 

「俺じゃなくヒソカが副作用を引き受けたのか」

 

 だとすれば納得出来る。天敵とも言えるあいつに副作用を引き受けたのであれば俺に副作用が及ぶことはない。その代わり本来の作用もなさそうだけど。

 

「でもマズイよな?」

 

 ヒソカをあのままにしておくと何かしら問題を起こす。絶対に起こす。俺が脳をフル回転させて考えに考え抜いた最悪の状況を予想したものよりも更に最悪な状況を作り出す。そういったことに関してはヒソカを信頼している。非常に嫌な信頼関係だよ。

 

「あー、スッキリした♥️」

 

 ……ちょっと待て。何故こいつがここにいる? 

 

「ヒソカ、試合は?」

 

「もう終わったよ。僕の試合もね◆」

 

「そっちじゃない。クラピカとゴンの試合を見なくてもいいのか?」

 

「キルアが出ていった後、クラピカが棄権したからすぐに僕の試合になったよ♣️」

 

 こいつの対戦相手って……ああ。ネテロもどきか。原作じゃ俺ことキルアに殺されてしまったアイツだ。御愁傷様としか言い様がない。

 

「それですぐに終わらせたのか?」

 

「いいや、二度とハンター試験を受けられない身体にしておいた。僕の機嫌悪かったしね♠️」

 

 二度と……それは、原作通り殺された方がまだマシだったかもしれない。流石ヒソカ。俺には予想出来ないことを普通にしでかす。

 

「それより、さっきの弁当って興奮剤だよね◆ そうでなきゃ僕があんなに積極的にアピールするわけないもん♣️」

 

 アピールってことは好意を持っていること自体は否定していない。つまりゲイなのか? クソっ、こんな奴と会わなきゃよかった! 

 

「これだけは言える……ノーだ!」

 

「♠️」

 

 その質問に答えるとトランプの嵐が舞う。

 

「危ねえじゃねえか! いい加減放出系になれよ!」

 

 何度もいうが、放出系=短気でありこれは原作でもヒソカが言っていることだ。俺が言ったことじゃない。

 

「僕のトランプは他人を黙らせる為にあるんだよ♥️」

 

 遂に開き直ったヒソカ。まだ副作用があるようだ。しかしヒソカの言うとおり興奮剤の効果でもあるのか? いや他人に食わせたのはこれが初めてだ。他人が食うと副作用がいくつも出てくると考えていいだろう。

 

「やるしかなさそうだな……」

 

 そしてヒソカと睨み合い、空気の密度が上昇して火花が飛び散る。万全な今のヒソカなら勝てないこともない。

 

「はいそこまでじゃ」

 

 そんな一触即発の雰囲気の最中、入って来たのはネテロ。ヒソカとネテロの二人相手に勝つにはどちらも集中を反らした上で全力を出さないと勝てない以上、俺は黙って殺気を納めた。

 

「会長さん、助かったぜ」

 

「うむ助かって何より。何せお主は儂の好敵手になる存在じゃからな」

 

 ……わぉ。結構評価高いな。そこまで評価されるようなことしたっけか? 純粋な戦闘ならまだヒソカやイルミ達の方が上でネテロに勝てる要素がまるでないんだが。

 

「そういえばゴンは?」

 

「ゴン……ああ、お主と同い年のツンツン頭か。あやつはトイレに行ったぞい」

 

「となれば大きい方か」

 

 何故今になってゴンのことを話しているのだろうか俺にはさっぱりだが、フラグ臭く感じていた。

 

 いや、推理物だとゴンの行動が被害者か加害者のそれっぽい感じがするんだよ。HUNTER×HUNTERは推理物っぽいがそうではないバトル漫画だからそう言うことはないと思うが、それでも不安になる。俺の世界は現実で推理物にもなるしバトル漫画にもなり得るからな。

 

 

 

「あーすっきりした」

 

 そんな心配をなくすかの如く、ゴンが普通に入ってきた。原作に比べてほぼ無傷で済んだか。ちなみに原作だとゴンは三日間眠りにつくハメになる怪我を負う。死亡キャラ以外で俺がいたことによる原作改変の影響を一番受けたのはゴンかもしれない。ヒソカ? あんな禁則事項(き○○○)は原作レイプの塊だろ。あいつは例えるなら爆弾の周りでもお構い無しに花火をして喜ぶような奴だから。

 

「よっ、合格おめゴン」

 

「あはは……内容に不満あるけど合格は合格だもんね」

 

 ゴンはヒソカ程ではないにしても目的の為なら手段を選ばないんだよな。見かけの割に結構エグい手を使ってくるし。

 

「それじゃ合格記念にこれやるよ」

 

 俺はそう言って手元にあったチケットをゴンに渡す。

 

「このチケットって……」

 

「俺の家、観光地なんだよね。そのチケットがあれば無料でそこまで行けるぜ」

 

「ありがとうキルア!」

 

 その瞬間おぞましく粘着質なオーラが俺を襲い、鳥肌を立たせた。

 

「へえ◆ 僕にはないの♥️」

 

「ヒソカ、俺の後ろに立つなよ! さぶイボが立つじゃねえか!」

 

 どんなに気を抜いてもその事を克服すれば平気になるが、どんな拷問や訓練を受けてもこいつ独特の寒気は克服出来ない。ヒソカマジで疫病神か何かだろ。

 

「てめえは兄貴から貰っておけよ。そのくらいなら出来るだろ?」

 

「奪えってことだね♣️ イルミに言っておくよ、キルアにイルミのアレ奪うように依頼されたって♠️」

 

「誤解を招くような言い方を止めろ! それに依頼をしてすらねえ!」

 

「ふふっ、照れない照れない◆」

 

 うがぁっ! どうしてこいつはこうなんだよ! マジで邪魔でしかないから貯めた金を使ってイルミとヒソカを殺すようにしてもらおうか? 

 

 

 数時間後、そこにはネテロもどき以外の最終受験者全員がそこに揃った。

 

「ふむ。誰かさんのせいで予定よりもちと早く終わってしまったがハンター試験はこれで終わりじゃ」

 

 ネテロがそう言って俺のことを見るが、無視しておいた。……ひょっとしてあのローカルルール皆使ったのか? そうだとしたら結構えげつないな。あのローカルルールのおかげで受験者は無限ループから助かったとも言えるけど。

 

 しかしヒソカをどうやって置き去りにしてやろうか。最善の手段、と言うよりも理想としてはイルミとヒソカが互いにガチ勝負をして相討ちになってくれると非常にありがたい。思わず実行したくなるくらいだが、果たしてイルミがヒソカと相討ちしてくれるだろうか? いやない。あいつはそんなタマではなく生粋の暗殺者だ。相討ちなんて真似はせず確実に逃げるか仕留めるかの二択だろうな。

 

 そうなってくると俺が取れる手段としては天空闘技場にヒソカを滞在させ続けるしかない。原作通りの展開とも言えるがそれはやむを得ない。やむを得ないったらやむを得ない。あいつを原作通りの動きに従わせるには予め俺がそこにいくことを知らせるのが一番だ。それでも原作通りに従うかは話は別だがしないよりかマシ。

 

 となればゾルディック家に帰る用事は報告だけだ。無駄に長居する必要はない。……待てよ? そう言えば今気づいたんだが俺が無事ならクラピカとレオリオが来る動機ないよな? あいつらは原作のキルアが無事じゃないから安否確認をしに来ただけだ。そのキルアが無事なら来る動機も薄くなる。やっちまったか? 

 

 などと考えているとネテロの話が終わり豆秘書がハンターライセンスについての講話をしていた。

 

「という訳ですので再発行は出来ませんので紛失にはお気をつけて下さい」

 

 紛失か。紛失したら確かに面倒だよな。どのくらい面倒かというと野生のヒソカと遭遇するくらいには面倒だ。

 

 でだ……これからどうするかだよな。イルミの奴は、奴はぁぁぁっ!? 

 

「ギタラクルって言ったか? 何の用だ?」

 

「キル、実の兄にそれはないんじゃない?」

 

 ギタラクルが針を外し、イルミの顔に戻る。

 

「イルミ……」

 

「さて帰るよ、もう用事は済んだでしょ?」

 

「えっ?」

 

 イルミがすかさず俺の手首を握り、ぐいぐい引っ張っていく。

 

「おいこらイルミ、勝手なことを言うんじゃねえ!」

 

「父さんとの約束でしょ。それを守らなきゃ」

 

 イルミが針を突き出し俺の頭を刺す……あっ、やべえ。くそったれ! アルカのことを忘れないようにしねえと! アルカは可愛いアルカは可愛いアルカは可愛いアルカは可愛い……

 

 

 

 こうして俺は原作通り、ゾルディック家に帰宅することになった。原作と違うのはイルミに拉致されたこととアルカのことを覚えていたこと、そしてハンター試験に合格したことだ。




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第16話 実家×帰宅×送迎

遅れました!色々と言い訳がありますが、とりあえずウマ娘とポケモンが面白かったとだけ言おう!作者は元々競馬民だからウマ娘にもハマるんだよ……

前回のあらすじ

キルア「ハンター試験合格したけど帰りたくないでこざるぅぅぅ!」
イルミ「うるさい」ハリブスー


 はいはい。というわけで戻って七三分けパンダ君にいびられていまーす! 

 

「どうして、てめえは! そんなに余裕なんだっ!」

 

「慣れたから。何年お前の弟やっていると思っているんだ?」

 

 余りにも涼しい顔で罰を受けるのを見てミルキは言葉を荒げて鞭を振るう。

 

「くそっ! くそっ!」

 

 まあこの罰のほとんどが七三分けパンダの八つ当たりだがそれを甘んじて受けるのは、こうしないとヤンデレなアイツが出てきて余計なトラブルになりかねないからな。

 

 

 

「もう良い?」

 

「まあ、そうじゃな。その辺が妥当なところじゃ」

 

 この世界の祖父であるゼノの許可を得たので手錠を無理やり外して振り下ろしてきた鞭を掴むと七三分けパンダが顔を歪ませ、舌打ちするとその場を去った。

 

「さてキルア、お主の友と名乗る少年達が来ているぞ」

 

「どんな奴だ?」

 

「ツンツン頭の少年、金髪の美少年、それと老けた顔の青年じゃな」

 

「マジか」

 

 流石ゾルディック家先代当主ゼノ・ゾルディック。レオリオが青年だと見破るとは……

 

「その少年達と会う前にシルバが呼んでいるから会いにいくようにな」

 

「了解」

 

 言い付けを守り、ゴン達と会う前に親父の元に向かうと一言俺に尋ねる。

 

「キル、お前の話を聞きたい。試験で何があったのか、そしてそこで誰と出会い、何を思ったのか……些細なことでも話してくれ」

 

 

 

 このセリフを聞いている限りだと不器用な父親がそれまで蔑ろにしていた息子に歩み寄ったように感じる。

 

 しかし俺は知っているんだぞ? シルバは俺をなんだかんだ言いつつも暗殺者として育てようとしていることを。だが俺はこのゾルディック家の家督を継ぐつもりは一切なく、寄生虫の如く親のすねを齧り続けるニートになるんだ。前世は自宅を警備する警備員だったが今回もその手で生きるんだ! しかし俺が力をつけるのはキメラアントの脅威から逃れる為であり──(以下略)

 

 

 

 それから俺は試験であったことをベラベラと話す。特にゴンとは親しい仲でチケットまで渡したことを告げる。

 

 

 

「思えばお前と父子として話したことはなかったな。俺が暗殺者として育てられたように強要してしまった。だがお前はキルア(俺の子)であって俺自身ではない。好きに生きろ」

 

「良いのか?」

 

「もちろんだ。この家から出ていけとも言わん。疲れたら帰って来てもいい」

 

「その時はそうさせて貰うよ親父」

 

「ただ一つ誓え」

 

「何をだ?」

 

「絶対に仲間は裏切るな」

 

 シルバがそう言い、親指を噛んで血を流して俺にそれを見せる。

 

「誓うよ。裏切ねえ、絶対にだ」

 

 俺もシルバと同じように親指を噛んで血を流しシルバの親指と重ねる。

 

「行ってこい」

 

 シルバから解放され、そして廊下にて包帯巻き巻きモンスターペアレントが現れた。

 

 

 

「キル!」

 

 包帯巻き巻きモンスターペアレント──ようはキルアの母親のキキョウのことだ。今世の俺の母親でありそのモンスターペアレントさはH×H読者諸君ならご存知だろう。表面上とはいえシルバは俺を自由にしたのに対してこいつは所謂教育ママであり、束縛してくる。そういう意味でも包帯巻き巻きモンスターペアレントと心の中で呼んでいる。

 

「無駄よ3人は帰ったわ。独房に戻りなさい……って言いたげだが、断る。あの3人のことを抜きにしても外に出る理由があるから退いてもらう」

 

「ああっ、成長したわね、キル! 私の考えをそこまで読むなんて……でも尚更ここは──」

 

「退け邪魔だ」

 

「は……ぁぁぁっ……♥️」

 

 うわっ、漏らしやがった汚ねえっ! 原作で包帯巻き巻きモンスターペアレントが変人なのは知っていたが変態ではなかったぞ! 変態はヒソカだけで充分だっての! 

 

 シルバとの誓いは守るとしてこいつがいる限り絶対戻りたくない。そう思わせてしまう程度にはドン引きしていた。

 

 

 

 

 

 それから俺はアルカの部屋に来ていた。

 

「お兄ちゃんーっ!」

 

「アルカ、久しぶりだな」

 

 アルカと別れてから何日だろうか。原作とは違い俺はアルカのことをしっかりと覚えている。俺の想いがあいつの針に勝ったとしか思えない。想いだけに。

 

「アルカ、これからお兄ちゃんは友達の所にいくんだ。でもアルカを連れていくことは出来ない」

 

「えーっ!?」

 

「まあ聞けアルカ。意地悪でそんなことを言っている訳じゃないんだ。お前にはやってもらいたいことがある」

 

「それってお願い?」

 

「俺が出掛けている間にゾルディック家の情報を集めろ。それだけだ」

 

「あい」

 

 

 

 さて今のやり取りでご理解頂けただろうか? アルカではなくお前と呼んだのはナニカに変わり、このナニカになると願い事を叶えてくれるようになる。ただし代償もあり、それ相応の物と引き換えになるという条件がある。

 

 しかしその代償を0にするのが命令。唯一俺だけが命令出来、どんな事でも実現してしまうが多用するとイルミに嗅ぎ付けられ利用されてしまうので注意しながら使わなければならない。

 

 故にこんな面倒なやり取りをしなければならないが、それをしてでも今回命令したのは理由がある。イルミが危険だからだ。イルミの動きさえわかっていれば後は味方になり得る奴らでイルミに牽制することが出来る。上手くいけばイルミvsゾルディック家なんて展開も出来る。

 

 そういう望みを少しでも増やす為の策──それがゾルディック家の情報収集だ。

 

 

 

「いい子だ」

 

 アルカを撫で、その場を去りアルカと別れると俺はゴン達と再会する。

 

 

 

 

 

「キルア、傷だらけだけど大丈夫なの?」

 

「まあな。それよりもゴトーの用意したゲームは楽しめたか?」

 

「あはは……まあそれなりにね」

 

「こうして無事に会えたってことは楽しめた証拠だよ。ゴトーもお疲れさん」

 

「キルア様……」

 

「ゴトー、俺はこの家をまた離れるよ。しばらくしたら戻る上に御当主様の許可も頂いているから心配するな。もしあのマミーもといおふくろが何言っても着いてくるなよ?」

 

「畏まりました。いってらっしゃいませ」

 

「さてゴン、クラピカ、レオリオ。麓まで行こうか。案内するよ」

 

「おっ、いいのか?」

 

「問題ないよ。むしろここまで来るのに大変だっただろ?」

 

「そうなんだよ。特にあの重い扉とか、ミケとか──」

 

 会話を弾ませながら麓に下りていく。

 

 

 

 

 

 そして麓を下り、街に着くとクラピカがヒソカの居場所を教えてくれた。

 

「9月1日、ヨークシンシティで待っている。1日から10日の間に世界最大のオークションが開かれる。つまり旅団はそのオークションの最中に何かをするつもりなのだろう。ヒソカもヨークシンのどこかにいるはずだ。見つけたら連絡するよ」

 

「ありがとう」

 

「さて、私はここらで失礼するよ。キルアとも再会出来たし一区切りついた。オークションに参加するにも金が必要だからこれからハンターとして雇い主を探すとしよう」

 

「んじゃ俺も故郷に帰って勉強に専念させて貰うぜ。国立医大に入ればバカ高い授業料も免除されるしな」

 

「そっか。二人とも頑張ってね」

 

「本当のハンターになる為の裏試験もあるけどそっちに専念してくれよ?」

 

 ここで爆弾を投下すると二人が固まる。そして二人が俺に詰め寄って来た。

 

 

 

「どういう意味だ!?」

 

「こんな時にそれを言うなんて鬼かお前は!?」

 

 特にレオリオが鬼を宿したと言わんばかりに詰め寄り捲し立てる。まあそうなる気持ちはわかる。いきなり抜き打ちテストが出されたようなものだからな。

 

「そう焦るなって。主に心源流って武術の流派がそれについて詳しいから縁があったら腕を磨くついでに裏試験について聞いてみるといい」

 

「私はともかくレオリオ、お前は落ち着けるか?」

 

「落ち着けられるかよ」

 

 えっ!? それはちょっとマズイな。クラピカのこの後の動きはまだ改変しても大丈夫だがレオリオはそうじゃない。レオリオが医大生になって貰わないと困るんだよな。

 

「レオリオ、少しテストをする。このテストで俺の問題に答えられなかったら勉強に専念して欲しい。逆に答えられたら裏試験に必要な物を教える」

 

「わかった」

 

「なら私もいいか?」

 

「俺も!」

 

「いいぜ。これから俺はある生き物の形をした物体を出す。その物体を全て答えられなかったら不合格とする。制限時間は10秒。さあいくぞ!」

 

 頭の上で念のオーラを形作り、龍と虎の形状にするが3人は俺の手のひらを見つめており、答えられないのは明らかだった。

 

「さあ10秒経過だ! 答えてみろ!」

 

 そんなこんなで時間が経ち、3人が答えた形状はいずれも違う物ばかりだった。

 

「全員外れだ!」

 

「ええっ……」

 

「まあこのテストは余程の天才か、裏試験に必要な技術を習熟している奴にしか答えられないようになっている。お前達が答えられないのは当たり前だよ」

 

「キルアてめえーっ!」

 

「よせレオリオ。これは私達の負けだ。それにこんなテストを出したということは何か理由があるのだろうキルア?」

 

 クラピカがレオリオを抑え宥め俺に説明を求める。

 

「この技術は余程の天才でもない限り試験勉強しながら習得するのは無理ってことだ。これを測る為のテストがさっきの奴だ」

 

「そういうことか。なら仕方ないか。ここにいる私達では実力が足りないということだ」

 

「くそ、絶対その技術習得してやるからな!」

 

「じゃあ9月1日ヨークシンでまた会おうか」

 

「おう!」

 

 全員の掛け声がその場に響き二人が立ち去ると残されたのはゴンと俺のみになった。

 

 

 

「キルア、さっきの答えってなんなの?」

 

「龍と虎。正確には龍虎相見える図式だよ」

 

「ええっ? キルアそんなの出していたの?」

 

「出していたよ。妄想でもないし、それのやり方をこれからお前に教える」

 

「本当!?」

 

「その為には天空闘技場に行って貰う。もちろん俺もいくぞ」

 

「天空闘技場、確か腕に覚えのある人達が集まるところだっけ?」

 

「……まあそんなところだ。とりあえず200階まで戦ってその後そいつについて教えてやるよ」

 

「本当!?」

 

「本当だ。ゴンがヒソカに追い付きたいならこの技術は必須だからな」

 

「よーし、頑張るぞ!」

 

 ゴンの気合いの入った声がどこか懐かしさを感じさせ、俺は笑顔になる。ヒソカ対策はゴンに任せておけば俺はイルミに専念出来るからかもな。




最後にアンケートのご協力お願いします!これによって使う念能力に違いが出てきます

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天空闘技場編
第17話 闘技場×念能力者×遭遇


アンケートご協力ありがとうございました!まあこれで遠慮なく出来ます!

前回のあらすじ
キルア「何があったかって?まあゾルディック家初訪問編完、とだけいおうか」


「む、君は一度200階まで来ているね。180階に進みなさい」

 

「いや50階でいいよ。ブランクもあるしね」

 

「そうかね? 確かに泥試合だったが……まあそういうことならそうしよう」

 

「やり!」

 

 ゴンと俺の試合が終わった後、そう告げられたので50階に進むことになる。原作と違うのは俺が元々天空闘技場で200階以上の階層で戦っていた為にそれ以上の階層で戦うことになりかねない。そこで俺が泥試合をやったことにより如何にもブランクがあるように見せかけた。何せここのファイトマネーはかなり稼げる。わざと負けることで200階以上にならないように階層を進ませず金を稼ぐ裏技のようなことも出来るからな。

 

 

 

「押忍、自分ズシと言います。御二人は?」

 

 そんなことを考えているとズシと名乗る少年が現れる。このズシは原作にも登場したキャラで原作のゴン達の念能力の修行を共に学ぶことになる……要するに兄弟子となる人物だ。実際に修行をつけてくれる師匠はこいつの師匠ウイングだ。

 

「どうもキルアだ」

 

「ゴンだよ」

 

「自分は心源流拳法なんですが御二人はどちらの流派っスか?」

 

「独流だよ。俺もゴンもな」

 

「そうだね」

 

「ええっ!? いやーっ、御二人方誰の指導もなしにあの強さっスか……自分ショックっス」

 

「ズシ、よくやった! ちゃんと教えを守っていたね」

 

「師範代!」

 

 師範代と呼ばれた男の特徴はメガネをかけ、髪は半分に分け、そして何よりもシャツを出していた。この男こそ心源流の師範代にして原作のゴン達に念能力の修行をつけたウイングだ。

 

 

 

「師範代、シャツがまた出ています」

 

「これはウッカリ。しまわないとね。ところでズシ、そちらのお二人は?」

 

「キルアさんとゴンさんです」

 

 ウイングがシャツをしまいながらそう尋ねるとズシがそれに答える。

 

「どうもはじめましてウイングです」

 

「どうもキルアだ」

 

「ゴンです」

 

 

 

「君はどこで修行をつけたんだい?」

 

「独流らしいですよ!」

 

「まあそういうことだ。師匠らしい奴はいたがそいつの流派が何なのかわからないからそう答えただけだよ」

 

「その師匠の名前は?」

 

「ヒソカ」

 

「……! なるほど通りで」

 

 ヒソカの一声で通じてしまうあたりどれだけ有名人かよく分かる。

 

「それでこの階には不相応だとでも言う気か?」

 

「出来ることならそうしてもらえると有難いのですが、そうしない理由があるのでしょう?」

 

「あるよ。だけどまあ頼み事を聞いてくれたらさっさと上の方に上がって金稼ぎに専念することにするから」

 

「頼み事?」

 

「ズシと一緒にゴンに修行をつけて欲しい。元々ここに来た理由はゴンに修行をつけるのが目的だからな」

 

「ほう……君の指導では駄目だと?」

 

「心源流ってのはネンの概念が確立されている。俺の指導だと曖昧な部分があるんだよ。そういう意味でも裏試験の試験官もお願いしたい」

 

「なるほどそういうことですか」

 

「頼めるか?」

 

「まあ、いいでしょう。その代わりと言っては何ですが──」

 

 ウイングが出した交換条件を呑み込み、それを受け入れる。

 

 

 

 その交換条件とはズシとの試合だった。

 

「よろしくお願いします、キルアさん」

 

「どうも」

 

 相手が念を極めようとしている相手とはいえこの試合に念は使えない。理由は衆人がいるから等という理由ではなく、ズシを鍛える為だ。念が一切使えないという訳ではないがオーラを消す絶のみ使用が認められている。つまり純粋に戦って来て欲しいということだな。

 

「本気でかかってこい。本当の本気でな」

 

「いきます!」

 

 俺は絶を使い、気配を消すとズシが一瞬だけ俺を見失ったかのように目が泳ぎ同時に冷や汗をかいていた。無理もないか。原作でも言われているがキルアは暗殺者としてのスキルが高く、ゾルディック家歴代最高とまで絶賛されている。中身が俺とはいえその素質は間違いなく本物で素質任せでもズシ程度なら見失ってしまう。あのハゲ忍者とかのレベルだと見失わないがな。

 

 

 

「はァっ!」

 

 ズシの正拳突きをジャンプで交わし、ズシの頭に乗り一言。

 

「遅いな」

 

「くっ!」

 

 ズシが頭上にいる俺を捕まえようとするがそこに俺はおらず既に懐に入っていた。

 

「はい次」

 

「ぐはっ!?」

 

 リバーブローを炸裂させるとズシが悶絶し倒れる。原作のキルアは後ろに回って首トンだが俺がそうしなかったのはそうしてしまうと本当にダウンしてしまう為だ。首トンでズシが倒れなかった理由はキルアがまだ弱かったからであり今の俺の方が強い。その為首トンなんてやろうものならズシが倒れてしまうのは明らかだった。

 

「まだやれるだろう?」

 

「……もちろんです!」

 

 ズシが立ち上がり、俺を視界に捉えようとするがそこに俺はいない。後ろに回って背後から蹴り飛ばすとズシが蛙が潰れたような悲鳴を上げながら倒れる。

 

「ほらどうした?」

 

 声を上げた時に絶を解除し、ズシが俺を視界に捉えようとした時に絶をする。この緩急を取り入れるだけでズシは俺の姿を捉えることが出来なくなり見失ってしまう。

 

 そんなことを続けながらウイングに止めを刺すかアイコンタクトを送り続けるとその時が来た。

 

「これでおしまい」

 

 ズシの顎に拳を入れ、脳を揺らす。ボクシングで攻撃が顔を食らった際に人が立ち上がれない理由の一つに脳震盪があり、この脳震盪が起きると身体が思うように動かず倒れてしまう。原作のキルアはこれを応用してズシを倒そうとしていたがズシはそれに耐えてしまったこともあり念能力の存在に気がついてしまう。

 

 しかし俺は既に念能力について知っており、裏試験もネテロから合格を貰っている。そんな俺が念能力者として未熟なズシを仕留められないだろうか? 

 

 否、違う。ズシの丈夫さは確かにキルアの本気の攻撃を耐えるくらい強いがあれは念能力ありきの物でそれがなければ一般人より少し丈夫な程度だ。ズシのオーラを探りそのムラをついて脳を揺らせば手加減、しかも絶状態の俺と言えども倒せてしまうということだ。

 

 

 

「……絶状態でズシを倒してしまうとは素晴らしい」

 

「そこにいるゴンも鍛えればこのくらいは出来るようになるよ。俺も天才だがあいつもかなりの素質の持ち主だ」

 

「貴方が天才なのはそうですが彼もですか……」

 

「一を知って十を知るなんてレベルじゃないぜ。おそらく念に関してのゴン以上の素質の持ち主は世界でも数人レベルだ。だからこそ俺じゃなくちゃんとしたところで修行を積ませたい」

 

「なるほど……わかりました。約束もありますしゴン君には伝えておきましょう」

 

「頼む」

 

 

 

 ゴンがウイングに弟子入りし、師事している間に俺はヒソカを探す。

 

「やあ♥️ 待っていたよ◇」

 

「試験以来だなヒスォイ=ドカドン」

 

「♠️」

 

 ヒソカが無言で俺にトランプを投げ、俺はそれを掴みとる。

 

「だから放出系かお前は?」

 

「僕のトランプは口を閉ざす為にある♣︎」

 

 どこの理不尽教師だそれは。

 

「トランプ云々はともかく、ゴンがお前の事を探していたぜ? お前を倒したいって言ってな」

 

「そりゃ楽しみ◇」

 

「……俺にやったように無理やり弟子入りさせないのか?」

 

「君だからやったんだよ♥️」

 

「キメェ」

 

「♠️」

 

「だから放出系か!」

 

 再び投げてきたのでそれを手に持っていたトランプで相殺する。全く短気は損気と言うのに。

 

 

 

「やだな♣️︎ 僕なりの挨拶だよ◇」

 

「そうかい。それでヒソカ、兄貴とはまた仕事で縁があるのか?」

 

「ないよ◇ でもどうしてそんなことを聞くのさ♣︎」

 

「ウチの兄貴達に俺の監視を頼まれている可能性があるんじゃねえかと思ってな」

 

「確かにあり得るね♥️ でも残念ながら外れ◇」

 

「そうかい。それじゃ俺と闘いに来たって訳か?」

 

「勿論それもあるよ♠️ でもその前に前菜を食べたくてね♥️」

 

「前菜ってゴンのことか?」

 

「その通りさ♣︎ 勿論君はメイン料理だよ♥️」

 

「なら何故あいつに口を挟んだり手を加えたりしない?」

 

「普段僕は相手がどんなに素質があろうも手を加えず熟成するのを待つ主義でね◇ でも君は例外♥️ 生涯でただ一人君は僕が手を加えて熟成させたいと思えてしまう程に素質があった♣️︎ それだけのことさ♠️」

 

 

 

 ネテロといい、こいつといい、俺の素質を高く買っているな。確かに俺は元自宅警備員分だけ人生経験があるとはいえ、あくまでプラスされたのは自宅警備員でしかないはずなんだがな。

 

 もしかして前世で念とかに目覚めていたら世界最高峰の使い手になっていたのか? あるいは前世の分だけ掛け算になっているとか……それはそれでショックだがゴンさんを見ているとそうとしか考えられないんだよな。あの強さに届く念能力ってどうしろってんだ。少なくともキルアとしての人生12年間で出した答えは未解決だ。

 

 相性の良さでねじ伏せることと強さは等しくない。念の運用次第では勝利するかもしれないが、ハメ技に近く汎用性がなくなる可能性が高く汎用性のない念能力などクソでしかない。

 

 

 

「なるほどな。確かに言えている。しかしあのハゲ忍者は無視してよかったのか? ゴン以上の素質の持ち主だろうが」

 

 

 

 ハゲ忍者──ハンゾーは原作でもこの世界でもゴン以上の念の素質を秘めている。事実試験では俺がダントツ抜けていたのかあるいは接戦だったのかはわからないが念の素質に関してはトップクラスで、奴が原作の主人公だったら間違いなくゴンが噛ませキャラになっていたであろう強さを秘めている……というか強さ自体も原作初期のキルアよりも上だし。選挙編あたりだと念とかを考慮したらもっと差をつけられたと予測出来、下手したらイルミやヒソカを超えていた可能性も否定出来ない。

 

 だからそれだけに謎だ。そんな逸材を逃すほどヒソカがバカとは思えない。もしかしたらヒソカが手がつけられないほど強いのか、それとも熟成する(成長が限界まで迎える)まで我慢しているだけなのか……後者だな。

 

 

 

「彼とも約束しているのさ♣️︎ 君が自分自身の全盛期を迎えたと思った時、殺しに来るようにってね♥️」

 

「なんだそりゃ」

 

 確かに成人していないからまだ成長するとは思うがそんな約束を果たすだろうか? 俺は少なくとも真正面からやりたくない。むしろ毒で弱った所で──それだ。

 

「ヒソカ、ところで腹減ってないか? こいつをやろう」

 

 俺が取り出したのは念能力で作り出した弁当だ。ただし前回のとは違って毒入りの弁当だ。変化系の念能力はこういった既存している物に毒とか属性を付与することも得意だ。水見式で水に味が出来るのと同じようなものだな。

 

「うん♠️ いらない♥️」

 

「ああっ、なんてことをしやがる!?」

 

 それを受けとるとともに投げ捨てて弁当を台無しにするヒソカに俺は抗議した。

 

「だってそれ、毒でしょ♣︎」

 

「確かに毒だが、時と場合によっては薬にもなるんだぜ」

 

「でも毒でしょ♣️︎ 露骨過ぎるね◇ でもそこが可愛いんだけどね♥️」

 

 そう言ってヒソカが俺の背後に回り込み後ろに立つ。某13な殺し屋なら「俺の後ろに立つな!」と言って暴力に走るだろうが! 

 

「離れろっ鬱陶しい!」

 

「連れないな♥️ それはそうといつ200階に勝ち上がってくるんだい♣︎」

 

「ゴンが念能力の発を開発するまでだ」

 

「そんなに待てないよ♠️」

 

 ヒソカがそういうとトランプを取り出し俺に投げつける。

 

「ったく、本当に放出系じゃないだろうな? それにゴンの素質を甘く見すぎだ。奴なら一週間もあれば発の開発も終わる」

 

「それもそうだね◇ じゃあ一週間後にまた会おう♣︎」

 

 そういってヒソカが立ち去り、原作でゴンやキルアが無理やり念能力を開花したことを思い出した俺は早くも後悔した。まじでどーしよ。




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第18話 修行×ハイペース×覚醒

前回のあらすじ
ヒソカ「ゴンを1週間で発までいかせないと掘るゾ♥️」


「さてと、どうするかね」

 

 あれからゴンの念能力覚醒について考えていた。無理やり覚醒させてやるべきかどうか。

 

 俺は気まぐれな方だがそれでもやるべきことは考えている。ゴンの為ならゆっくりじっくりと念能力を育てていけばいいんだがそれだと間に合わない。かといって無理やり覚醒しても原作のゴンさんを超えるとも思えない。

 

 俺としては原作のゴンさんモードを常に維持出来るくらい強くなってくれれば無双してくれて楽でいい。

 

 しかしそれをするにはあまりにも時間がない。

 

 

 

 

 

「……いや待てよ?」

 

 逆に俺は考えた。俺がゴンを覚醒させることによるメリットはあるんじゃないのか? 

 

 ふとそう思いつき、体から発せられるオーラを電気に変化させ、それをヒソカの十八番であるゴム&ガムに変えると次に片手に炎と氷を作り出し、最後は毒を出す。

 

 ……これだ。俺は原作キルアと同じく円が苦手でどうしても暗殺者としての技術を磨いて気配を感じとるしかなかった。その気配を感じとるのが苦手なら逆に近接戦で無敵を誇ればいい。

 

 かといって身体の強化をするのは強化系であり変化系の俺とは相性が良くない。どうせ使うなら相手に触れることで相手の体内にあるオーラを別のものに変化させて使えなくさせてしまおう。

 

 その練習相手にゴンに無理やり念能力を覚醒させるのが適切だ。

 

 

 

 ……いやいやいや待て待て待て! 俺は何を考えた? ゴンを自分の力の為に売り飛ばそうとしたのか? 原作キルアだったらそんなことは考えない。それをしてしまうあたり俺は原作キルアと違いとんだゲス野郎だと認識してしまい、ブルーになる。

 

 とにかくゴンに会っておこう。そんなことを考えたからじゃなく、せめて5日様子見て念能力が扱えなかったらそれで無理やり覚醒させる。そういう方針を取ろう。その為にはウイングに筋を通さないとな。

 

 

 

「あ、おはよーキルア」

 

「よう」

 

 翌日、180階まで順調に勝ち上がりウイングのもとに向かうとゴンもそこにおり、話をするには丁度良いタイミングだった。

 

「ウイング、ゴン。ちょっと話があるけどいいか?」

 

「はてなんでしょうか?」

 

「つい昨日、俺はヒソカと会った」

 

「ええぇぇっ!?」

 

 ゴンはヒソカがいたことに驚き声をあげていたがウイングはそこまで驚いていない。

 

「ふむ、ということは彼から何かアクションを起こしてきたんですか?」

 

「ああ、一週間後、つまり今日から数えれば6日後に200階フロアにて待っている。俺にそう告げてきた」

 

「何故それを私達に?」

 

「ここからはゴンに関係する話になる。ゴン、お前はヒソカとただならぬ因縁がある。そこで、念能力を発まで扱えるようになってある程度実力があると認めたら俺はヒソカと戦わずにヒソカとの戦いを譲ってもいいと思っている」

 

「え! いいの!?」

 

「もちろんだ。そういう訳だからウイングには申し訳ないが早送りでゴンの念能力の修行をして貰えないか? 借り一つでいいからさ」

 

「……はっきり言って無理です。私の手に余ります」

 

「だろうな」

 

「念を覚醒させるまではほぼ一瞬で出来るでしょうが発までとなると一年あっても足りるかどうか……」

 

「ねぇ、キルア。そんなに念能力の発までいくのって難しいの?」

 

「ムズいな」

 

「無理です」

 

 俺とウイングがそう声を重ねる。確かに難しいとは思うがぶっちゃけ色々段階を飛ばせば出来なくはない。大人になると難しいは無理を意味するが、今回は裏技を使えば無理ではないということだ。

 

「だけど出来なくはない」

 

「……やれるんですか?」

 

「確かに俺は念能力のオーラの操作は余り得意じゃない。特に円なんかはクソザコで今でも1m*1しか出来ないんだからな」

 

 それでもマシといえるがな。近接戦において1mというのはデカく、円の特性である感知能力を特化させ、予測能力をあげることには成功している。え? それならなんで今までやらなかったのかだと? その予測能力に特化させすぎたせいで制限時間も出来てしまったんだよ。だからここぞという時にしか使えない。

 

「しかしそれでも出来る可能性があるんでしょう?」

 

「その為にはウイング、ゴンに念能力を覚醒してやってくれ。それから一気に発まで修行をつけさせる」

 

「まさかその為に私と接触を?」

 

「心源流の師範代であるあんたと出会ったのは偶然だ。いくら念能力の修行に適しているとはいえな……どうする? 修行を見たくないのか?」

 

「……」

 

 それからウイングが硬直する。そりゃそうだろうな、念能力の発の開発まで通常なら年単位だ。それを僅か数日で出来てしまう修行があるというのだから迷うに決まっている。

 

 

 

 数分後、ようやく決心したウイングが口を開いた。

 

「わかりました。それではゴン君、こちらに来て下さい」

 

「はい」

 

 ここから先は暫く原作通りなので割愛するが、何にせよゴンが念能力に目覚め纏を習得した。

 

「どうだ? あの一言だけで纏を習得するほどゴンは天才なんだ。これなら通常でも1ヶ月で習得出来るぜ」

 

「かもしれませんがそれでもまだ時間が足りません。これから数日まで縮めるにはどうするんですか?」

 

「そこから先は俺の仕事だ。ゴン、お前の出しているオーラを体内に留めろ。留めることが出来ないならオーラを出すのを止めろ。オーラを出す器官が身体に存在するからそれの元栓を閉めるイメージだ!」

 

「うん!」

 

 ゴンがオーラを体内に留め、さらにオーラを出すのを止める。これで絶まで完了だ。

 

 

 

「今の元栓を閉めるイメージが絶だ。それにしても流石だなゴン」

 

「えへへまあね!」

 

「じゃあその逆、その元栓を一気に開けてオーラを解放するのが練だ。やってみろ」

 

「わかった!」

 

 これまでゴンの体内で発せられていなかったオーラが膨大に膨れ上がり、雪崩のように流れる。

 

「よし、そこまで。とりあえず基礎については3つ教えたから俺がいいというまでその練度を高めることだな。とりあえず今日は今の姿勢でやってみろ。次のレッスンは身体を動かすからしっかり身につけておくことだ」

 

「うん、頑張ってみる」

 

 ゴンがそう頷くとウイングが口を開いた。

 

 

 

「意外と普通ですね」

 

「そう思うだろうが纏、練、絶に関してはしっかりと習得させないと次の修行がより一層厳しくなる。だがゴンは見ての通り1000万人に一人の大逸材といっても過言じゃないほどの天才だ」

 

 ちなみにハゲ忍者ことハンゾーはゴンと同じくらいの素質の持ち主であることが明らかで習得速度もおそらく最速クラスだと思われる……本当になんでこいつが主人公にならなかったんだろうな? 

 

「確かに……」

 

「ズシでやるなら次の修行の方が参考になる。明日になったら面白いものがみられるぞ」

 

「楽しみにしてますよ」

 

「じゃあな」

 

 そんなこんなで別れ、次のレッスンの準備を始める。

 

 

 

 翌日

 

「これは何というか……ええ……はい、確かに修行らしい修行ですねはい」

 

 ウイングがドン引きしながらもメモを片手に取っている。

 

 

 

 というのも、俺が以前行ったトランプによる修行方法*2をさらにパワーアップしたものだ。

 

 まず神経衰弱でトランプを集め、そのあと集めたトランプを使ってトランプ計算で計算、そして最後にスピードで締めくくるというものだ。

 

 これを時間制限を設けることの他に妨害をトランプ計算にも適用している。具体的には隠で見えなくさせたり、直接殴ったりして妨害している。それを90分間延々と続けさせ15分休憩させて何度も繰り返す。

 

 もちろん始めに対処方法を教えているがそれを実践でやるのがどれだけ難しいかわかるはずもない。

 

 更に対処したとしても相手が俺なのでその錬度はゴンの比ではなく、ゴンが打ち負かされることの方が多い。

 

 俺が打ち負けたとしてもゴンが対処出来るくらいに手加減している場合だ。何一つ問題ない。

 

 

 

「どうだ? 結構キツイもんだろ?」

 

「た、確かにキツイけどこれが効率のいい練習なんでしょ?」

 

「まあな。纏、練、絶の他に応用の周、隠、凝、堅、円、硬、流……全ての特訓ともいえるものだ」

 

「時々判断が追い付かない時があるけどそれはどうしたらいいの?」

 

「脳にオーラを送って活発化させることだな。身体能力の向上だけじゃなく判断力や推理力、ありとあらゆる脳で使われる能力が向上する。アスリート達が成功する理由としてゾーンと呼ばれる状態を作り出すが奴らが無意識の状態でオーラを脳に送っているからだ」

 

「脳にオーラを……なるほど、それはいいことを聞きました」

 

「最も適切な量以上は受容出来ないから無駄なく送ることだ。それが出来るようになればありとあらゆる能力が向上するよ……よし休憩終わり。もう一度やるぞ」

 

「うん!」

 

 そんなことをやり続けること数時間が経過し、ついにヒソカに見つかる。

 

 

 

「やあ♥️ 僕のつけた修行方を使っているね◇」

 

「まあな。お前の修行方はかなり効率がいいからな。とはいえ、まだ発の段階まで達していない」

 

「……あれで達していないのかい♠️ そりゃ勿体ないね◇」

 

「相変わらず短気な奴だ。だから放出系なんて言われるんだよ」

 

「♠️」

 

「トランプを投げるなっての。ゴンの才能も大したもんだろう? 発を習得する頃にはもうお前の命も危ういぜ?」

 

「それはどうかな♣️︎ 僕は不死身さ♥️」

 

「まあいい、その余裕済ました顔闘技場で潰してやる」

 

「そりゃ楽しみだ♠️ じゃあまた会おう♣️︎」

 

 そう言ってヒソカが去るとゴンが神経衰弱を終えてしまったので腹いせゴンの修行の効率を取り戻す為にスピードとトランプ計算で徹底的にしごき上げた。

 

「なんか強くない?」

 

「気のせい気のせい!」

 

「なんかありましたね師匠」

 

「ありましたね」

 

 ズシとウイングが何か言っているが無視! 

 

 

 

 そんなこんなで3日経過し、ようやく発の開発段階まで成長させた。ちなみにその間暇だったので何度も賞金を稼がせて貰った。

 

「さてお待ちかねの発に取りかかる」

 

「待ってました!」

 

「ノリがいいな! よし、発についての説明だがまず始めに心源流で使われる水見式という方法でどんな系統を得意とするか判明させる」

 

「水見式?」

 

「ここに水を注いでその上に葉っぱを浮かせたグラスがある。試しにこいつに練をしてみろ」

 

「うん」

 

 ゴンが練をするとコップの中の水が勢い良く溢れだすと師匠の面子を保つ為かウイングが口を開いた。

 

「ゴン君は強化系ですね。身体能力だけでなく治癒能力も向上し、身体に関するありとあらゆるスペシャリストになります」

 

「へぇ……」

 

「ちなみに葉っぱが動くと操作系、味が変わると変化系、不純物が出来ると具現化系、色が変わると放出系、そしてそれ以外が特質系になりますよ」

 

 

 

「とまあ、ウイングが解説したように心源流は自分の得意とする系統を水見式で明らかにする」

 

「へえ……それじゃウイングさんとキルアは?」

 

「私は強化系ですよ」

 

「変化系だ」

 

「まだやっていないのでわからないっス」

 

「それじゃどんな風になるのか皆も試しに見せてよ!」

 

「いいですよ。まずはズシ、やってみなさい」

 

「はいっ!」

 

 ズシが練をすると葉っぱが僅かに動き操作系だと判明する。

 

「ズシは操作系のようですね。私の番ですね」

 

 ウイングがそういってグラスに練をすると水がゴンと同じくらいの勢いで零れ出す。……うん? 妙な違和感があるが気のせいか? 

 

「へえ、やっぱりそうなるんだ……」

 

「ちなみに言っておきますと水見式は練の熟練度によってより強くその傾向が出てきます。通常であれば半年間鍛えてもズシのように僅かに出るだけでここまで露骨に出ることはありませんよ。しかしゴン君は練に関しては既に私並みと言えるでしょうね」

 

 ああそういうことか。もうすでにゴンはそこまでの領域に達したってことか。

 

「へへっ、やった!」

 

「うらやましいッス……」

 

「ズシ、落ち込むことはありませんよ。ゴン君が異常なだけで貴方も十分天才ですよ」

 

「うっす……」

 

「では俺の番だな」

 

 気合い入れて練をすると水柱が生まれるとともに水柱の形が大きく変化し東洋の竜のような形状が出来上がり、額の部分にちょこんと葉っぱが乗せられていた。

 

おお、我が父

 

「させるかぁっ!」

 

 なんか水で出来た竜略して水竜が語り始めたので練を止めると水竜が崩れ、周囲は水浸しになった。

 

「な、なんだったの今の?」

 

「俺が知るか! 俺は断じて特質系じゃないぞ。3歳くらいにやったことがあるけどちゃんと変化系だったのになんであんな結果になるのかわからん」

 

「そう思うなら試しにもう一度やってみたらどうですか?」

 

「……それもそうだな」

 

 そして気合いを入れ練をすると再び水竜が現れ、語り始める。

 

我が父ヒカリいやキルア・ゾルディックよ。我が父に眠りし特質の力の源たる我が覚醒し、その力をまんべんなく使い賜らん! 

 

 いやいやいや待て待て待て! いろいろ突っ込み処あるけどなんで俺の前世の名前を知っているんだよ? 俺だけの秘密なのになんでこいつが知っているんだよ!

 

「ねえ、ウイングさん今の言葉聞き取れた?」

 

「いえ、全然。ズシは?」

 

「全くわからないっス……」

 

「何にせよ、もう一度やるぞ」

 

 げっそりとしながら練をすると今度は変化系特有の特徴が現れ、俺が変化系だということを認識して貰った。いや全く意味がわからんって……これもテンプレートって奴なのか?

*1
通常の念能力者は2m、原作のキルアは50cm

*2
第4話参照




再びアンケートです
とりあえず主人公が特質系に目覚めてしまったのでそれについてのアンケートを取ります。特質系だろうがなんだろうが物語に影響はほぼ出ません。東京から大阪にいく過程が新幹線か電車か飛行機かの違いくらいです。どうしても受け入れられない場合は書き直せに投稿してそれ以外はよかったに投稿お願いします。アンケートの結果次第では書き直します

感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると作者のモチベーションが上がります


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第19話 取引×開発×破壊

投稿おくれました。申し訳こざいません。なにせネタが集まらなかったのと、ウマ娘の小説を書いていたのと、テンプレについて考えていたのと、私の誕生日(7月4日つまり今日)に出すかどうか躊躇ってしまい投稿出来ずにいました。ちなみに一部この文章もコピペしています(オイ)

亀更新及び不定期更新な小説ですがこれからもよろしくお願いします。

前回のあらすじ
キルア「はいはーいこれから水見式するから練してね!俺もやるから!」
ゴン「せんせー強化系でした!」



 まあなんやかんやとあったがどうにかゴンの修行を継続させると俺の方にも影響があった。

 

 それはゴンやウイング、あるいは200階の念能力者達のオーラの性質を感じ取れるようになった。オーラを感じ取れるのは凝を使えば誰でも出来るが今回はそうじゃない。オーラの性質、つまり系統が水見式を使わなくてもわかるようになった。

 

 これがどれだけ重要かわからない諸君は大馬鹿者(トムフール)だ。水見式いらずの系統測定器だと思っちゃいないか? ところがその認識は甘い。

 

 確かにこれ単体ではただ相手がどんな技を繰り出すか予測出来る程度しか使えないが次の発によってそれは最大限活かされる。

 

 

 

 それは【オーラ変化】。俺が独自に開発した唯一無二の念能力であり、触れた相手のオーラを変化させるというものだ。

 

 例えば俺が相手に触れた瞬間、相手のオーラを電気に変え感電させることも可能だ。

 

 ただしこれには欠点があり一度俺のオーラに変えなければならないというデメリットが存在し、触れる時間が長い程また熟練する程にオーラの変化量は大きくなる。逆にいえば熟練もしてなければ触れる時間が短いと何も出来ないってことだな。

 

 だがこの発は理論上最強かつ汎用性が高い能力だ。相手のオーラを俺のオーラに変化させるということはその一部だけがオーラで守られていないということでもあり防御が薄くなる。それだけなら相手はオーラをすぐに流しこめばいいが、相手のオーラを奪うということでもあり、つまりほぼデメリットなしで相手を弱体化させることでもあるということだ。

 

 

 

 その【オーラ変化】を200階の念能力者──サダソに試していた。

 

 このサダソという念能力者は200階にたどり着いたばかりの非念能力者達を狩る所謂新人狩りと呼ばれる連中の一人だ。原作ではズシを人質に取る卑劣なやり口を取りキルアを怒らせた。

 

 何故こいつをターゲットにしたかというと原作でボコボコにされたからこいつがどうなろうが知ったことではない……という訳ではない。他の初心者狩りに比べて【オーラ変化】がしやすいからだ。

 

 サダソの念能力は俺と同じ変化系だ。変化系の対極の位置に存在する操作系のオーラを俺のオーラに変化させるのはしんどいが変化系のオーラを俺のオーラに変化させるのは容易い。

 

 そんな訳で無理やり拐って人体実験をしていた。

 

 

 

「お前らさ、どうしても止めない?」

 

「当たり前、だ!」

 

 サダソ達を拐ってみたはいいものの表向きの理由は特に思い付かず、とりあえず縛って新人潰しを止めさせるように言う。

 

「あっそう?」

 

「ぎゃぁぁぁぁっ!?」

 

 しかし即答され、サダソの身体から発せられるオーラを俺のオーラに変化させ電気に変えるとサダソが痺れ他二人が脅える。おいおいこれじゃまるで無理やり新人狩りを止めさせようとする悪い奴ら(原作ブレイカー)みたいじゃないか。いや半分はそうだけど。

 

「まあまあまあ……別に俺は新人狩りを止めに来たのが本当の目的じゃない」

 

 新人狩りを止めるのはあくまでついででしかないからな。

 

「じゃなんでこんなことを!」

 

「それが本当の目的だからだ」

 

「は?」

 

「後ろめたいことがある奴らを捕まえて適当な口実をつけて実験体にする……最高じゃないか」

 

「鬼かお前は!?」

 

 どうやら理解したらしい。どう返事をしようがこいつらを実験体にすることに変わりない。

 

「良い返事を貰えたら電気を麻酔にして痛みを感じなくさせるから安心しろよ?」

 

「麻酔ってそんな戯言を信じられ──」

 

「はい電気追加ね」

 

「みぎゃぁぁぁぁっ!?」

 

 独楽男ことギドにサタゾと同じ要領で電気を流すがギドが強化系だからかサタゾ程うまくいかず悲鳴を上げるだけに留まる。

 

「ぐう……」

 

「麻酔を下さいお願いします!」

 

「え~? どうしようかな~?」

 

 麻酔を要望した車椅子の男リールベルトにニヤニヤとゲスな笑みを浮かべながらそう言うとリールベルトが口を滑らす。

 

「何でもします、何でも言うことを聞きますからお願いします! なんなら八百長だってする!」

 

「あっ、バカ!」

 

「はいゴミね」

 

「うぎゃーっ!?」

 

 リールベルトが電気によって倒れる。こいつの流れる電気も弱いはずなんだがそれで気絶するあたり余程電気が苦手らしい。いや慣れてきたから電気の威力も上がったのか? それはともかく残されたのは独楽男ギドだけだ。

 

 

 

「それで独楽男、あんたはどうする?」

 

「……逆に聞くが俺達に何を要望する? 無理なもの以外は言うことを聞く。去れと言われたら去るしな」

 

「そんなことは頼まねえよ。新人狩りを止めろと言った直後にいうのもあれだがお前達3人には今度入る新人のゴン・フリークスっていう俺と同じ年くらいの少年と戦ってもらいたい」

 

「それだけか?」

 

「ああ、人質を取って八百長を持ちかけたりしたら勿論お仕置きするからな。正々堂々と戦え。勿論勝てるものなら勝ってよし」

 

「勝ってもいいのか?」

 

「勝てるものならな」

 

 大事な事は二回言う。これは基本だ。

 

「わかった。こいつらにも言っておく」

 

「それじゃ依頼料としてこいつを渡しておこう」

 

 俺が取り出したのは三食分のカツ丼弁当だった。

 

「こ、こんなふざけた依頼──すみませんなんでもないです」

 

 カツ丼弁当が依頼料と知り激怒するが俺の殺気に屈し抗議を取り下げる。

 

「そのカツ丼弁当は俺の念能力によって産み出されたものだ。食うと10分間念能力の威力が向上される効果がある。賞味期限はあっても消費期限はないから食うならゴンとの試合前に食うことだな」

 

「わかった」

 

 人質とかゴンに影響のあることは認めなくてもドーピングは認める。自分を高め勝つことの執念なら俺は認めるということだ。俺が立ち去り三人の姿が見えなくなる……そう言えば伝え忘れていたが、あのカツ丼弁当には制約がある。時間切れになると胃もたれと言った体調不良を引き起こし、更に誰かを絶対に倒す等と言った意志が強いほど能力は高まるがその分副作用も強くなる。

 

 まあどちらにせよ10分以内で仕留めなければ勝てる要素などありはしないし、健康上に被害はないから大した問題ではないのでそのままにしておいた。

 

 

 

 その数時間後、ゴンと再び会うもその肝心の本人はどんな念にするか未だに迷っていた。

 

「ねえキルア、強化系ってどんな例があるかな?」

 

「例えば俺の弁当とかだな」

 

「弁当?」

 

「俺は趣味に弁当を作っているんだがそれに身体能力向上とかそういう効果を付与している」

 

「へー、そういうのも強化系なんだ」

 

「まあ強化系の基本は○○したら△△が強化されるってのがほとんどだ。基礎能力を上げるものばかりだからシンプルに強いし、安定感もある」

 

「なるほど」

 

「RPGで例えるなら強化系は自分でステータスを上げられる武道家か戦士で、変化系は賢者、具現化系は武器屋、放出系は魔法使い、操作系は道具使いってところか?」

 

「え、なにその例え、逆にわからなくなってきたんだけど」

 

 こいつそういえばゲームなんてやったことないから知らないのか。

 

 

 

「RPGがわからないなら、この前脳にオーラを送って脳を活性化させただろ?」

 

「うん。おかげでかなり冴えたよ」

 

「あれはまだ脳にオーラを送っただけで発じゃないんだが、あれを発展させることが出来るのが強化系だ。つまり今よりも頭は冴えるようになるし、力だって強くなる……ここまではいいか?」

 

「何となく」

 

「強化系の発は基本的に自分の身体を使うものが望ましいってことだ」

 

「なるほど……」

 

 八門遁甲でリミッターを外してガイ先生のように体術だけでラスボス級を追い詰めることも出来る訳だが、それは教えないでおこう。その結果が原作のゴンさんな訳で一時的に死にかけ復活してもオーラが見えなくなる有り様となったんだ。デメリットなしで常にゴンさんモードになるようにしてもらわないと困る。

 

「まあアドバイス出来ることは爆発力があっても負担の少ないものにしておけってことだ。負担が大きいとそれだけ自分の首を絞めることになる」

 

 原作でもカストロはダブルという強力な念能力があったにも関わらずヒソカに弱点を見抜かれただけで惨敗しており、万全じゃなくても常に念能力を発動出来るのが理想とされている。

 

「そうだね。ところでキルア、そのRPGってどんなゲームなの?」

 

「あん? ロールプレイングゲームの略で──」

 

 RPGについて答えるとゴンは何故か納得したように頷く。

 

「……それならこれが出来そうだ」

 

「いい案じゃないのか?」

 

 それを見た俺の感想がそれだった。上から目線で偉そうに呟く。まだまだ改善の余地が残っているからそう言えるのであって、もし完璧なら「完璧だ」の一言くらいは出てくる。

 

「でしょ?」

 

「ならやることは決まっているな?」

 

「え?」

 

 トランプを取り出すとゴンが青ざめる。何故ゴンが青ざめるかというとゴンは暗算が苦手で何度もトランプ計算でミスをする。その度に鉄拳制裁ならぬオーラ制裁しており間違えが酷くなるほどダメージが大きくなるのだから強くなる修行とはいえ嫌がるのも無理はなかった。

 

「さあ最終試練だ。実際に実践してみせろゴン」

 

 ゴンにそう告げ、オーラが付与されたトランプがばら蒔かれゴンが大慌てで探しにいくとウイングとズシが入ってきた。

 

 

 

「やあ、キルア君。また基礎応用の修行ですか?」

 

「またとは失礼な、あれはハチャメチャに見えるがかなり効果がある。それに妨害者が多いほどあれは効果が高まるんだ。それで何のようだ?」

 

「おっとそうでした。貴方の修行にうちのズシも混ぜてもらえませんか?」

 

 そう来たか……受けるメリットはほとんどない……いやあるか。よしこうしよう。

 

「わかった。その代わり俺の指示に従ってもらうぞ」

 

「それはもちろんです。ズシ構いませんね?」

 

「はいっス!」

 

「早速だがズシ、俺に代わってトランプの回収係をしてもらう。つまり地面等に落ちているトランプを回収したりゴンから奪い取ったりしてもらう」

 

「あの、それじゃキルアさんのトランプは奪わなくても大丈夫なんでしょうか?」

 

「大丈夫だ。俺が持っているトランプは別に奪い取る必要はない。しかしどうしても負荷を強くしたいなら相手になるぞ?」

 

「いえ流石にそこまで自惚れていないっス!」

 

 俺が隠で偽装したトランプを見せるとズシがぶんぶんと首を横に振るう。

 

「逆にトランプを持っているとゴンが襲ってくるから注意することだ。さあ行けっ!」

 

「了解っス!」

 

 ズシを行かせると二人きりとなりウイングに声をかける。

 

「それでウイング、俺にほかに用事があるんだろ?」

 

「ええ。もしよろしければ私の師匠──心源流師範、ビスケット・クルーガーと会ってみませんか?」

 

 おいおい。キルアこと俺とそいつとの接触*1はもっと先なんだが、やはり原作ブレイクするとバタフライ効果でこんなことも起きるのか? 目の前にいる眼鏡青年がそう言うならおそらくこの天空闘技場に来ているってことだろ? 俺の答えはもちろん決まっていた。

*1
正確にはゴンとキルアとの接触




アンケートのご協力ありがとうございました!この投票結果を参考に主人公の系統を定めていきたいと思います

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