意志つなぐF/その風がもたらすもの (ぬこライダー)
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意志つなぐF/その風がもたらすもの

人里離れた山中に、その廃屋はあった。

元は何かの研究施設だったのだろうか、複雑な機械が埃を被り静かに佇み、所々に資料が散乱している。

 

その中に二人の人影があった。

一人はアタッシュケースを持ったラフな格好の青年で、もう一人はスーツを着た中年といった感じ。

 

「あったぜドクター。お目当の物はこれだろ?」

 

青年の方がケースを掲げて中年に話しかける。

ドクターと呼ばれた中年は満足そうに頷き、アタッシュケースを受け取ると中を確認し始めた。

 

中にはUSBメモリをふた回り程大きくしたような形をした、手の平サイズの端末が十数本程入っていて、それぞれにアルファベットが一文字刻印されていた。

 

「『T3メモり』だっけか?ホントにそんな出来損ないが役に立つのかよ?」

 

ケースの中を覗きながら青年が問いかける。

 

青年の言う通り、そのメモリは側から見れば出来損ないに見えた。

緑色の端子をしたそのメモリは一部の基盤が剥き出しになっており、とてもマトモに動きそうには見えなかったのだ。

 

「ああ、問題無いさ…」

 

ドクターと呼ばれた中年は自身のスーツの内側に手を入れ、ケースのメモリとは違う一本のメモリを取り出す。

 

禍々しい形をした、金色に塗装された『G』のメモリ。

 

「私のメモリとT3メモリがあれば…私は無敵の存在となる!」

 

そして彼は自身のメモリを起動しようと、メモリのスイッチに指を掛けた。

 

 

「そこまでだ!」

 

 

次の瞬間、二人の物とは違う別の声が辺りに響いた。

二人は気配に気づきその方向へ目をやると、そこに声の主は立っていた。

 

「こんな所で何企んでるか知らねえが…観念しな、ドクター総悟(そうご)!」

 

ソフト帽を被り、ハードボイルドに決めるその男の名は。

 

「誰だ!?」

 

「鳴海探偵事務所の探偵、左翔太郎だ!」

 

「探偵だと?ふん!排除しろ狩間(かりま)!」

 

「はいよ」

 

ドクター総悟が仲間の青年、狩間に命令すると、狩間はニヤニヤと笑いながら翔太郎に向き合った。

 

「よお探偵さん。誰に頼まれたかなんざどうでも良いがな、刑事の真似事して首突っ込んでると…痛い目みるぜっ!!」

 

狩間は勢いよく翔太郎に殴りかかるが、翔太郎はそれをかわし蹴りで反撃、その蹴りは狩間の腹に見事に直撃した。

 

「ぐぁっ!」

「悪いがその刑事から頼まれたんだ。それにお前等が『ミュージアム』の残党となりゃ、俺も見過ごす訳にはいかないんでな!」

 

ミュージアム。

星の記憶を有した『ガイアメモリ』と呼ばれるUSBメモリ型の端末を研究、開発していた組織で、今はもう無い。

 

「へぇ、あんた知ってんのかい。だったら当然こいつも…知ってるよなぁ!?」

 

『ハンター』

 

狩間は余裕の笑みを浮かべ、服のポケットから『H』と刻印されたドーパントメモリなるガイアメモリを取り出し起動させると、端子を自身の喉元に差し込んだ。



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