原初の機体と神才のインフィニット・ストラトス (赤目先生)
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第一部
プロローグ


皆様、はじめまして。赤目先生と言います。今回が初SSでなぜディバゲかというと、ディバゲが二周年を迎えて、以前からマキナと神才で書いてみたいと思っていたところに神才マクスウェルが実装されたのでせっかくだから書こう。と決意してこのSSを書きました。まだまだ書き方がなっていないでしょうが、これから頑張っていきます。

それではプロローグをどうぞ


 ここは統合世界《ユナイティリア》のとある場所にある、とある研究所。

 

「ご主人様、食事の用意ができました」

「分かった、今行くねマキナ」

 

 そう答えた少女は統合世界で神才と呼ばれている人物だ。

統合世界とは、精霊たちが住む天界《セレスティア》

       人間が住む常界《テラスティア》

       魔族が住む《ヘリスティア》

この3つの世界が聖なる扉《ディバインゲート》により交わってできた世界が統合世界である。

 

「今日の朝ごはんは何作ったの~?」

「今日はご主人様が夜遅くまで開発をしていらしたので疲れが取れるものをご用意しています」

「そんなに気を遣わなくてもいいのに。まぁ、マキナの作ったものならなんでも食べるけどね」

 

 そう言って神才はマキナに向け、明るい笑顔を見せた。

 

「ありがとうございます。マクスウェル様。それでは行きましょう」

 

 マキナは嬉しそうに少しだけ笑みを浮かべながら廊下を二人で歩く。

 

 マクスウェル。彼女はこの名前で呼ばれていた。この名前といっても彼女は、人間でありながら天界の書記官を務める男と違っていくつもの名前があるわけではない。正真正銘、彼女の本名である。

 

「それじゃ、さっさと食べて開発の続きでもしようかな」

「でしたら食器を片づけ次第お手伝いにまいります」

「ありがとう、そうと決まったらいそいで食べよう。マキナと一緒にやれば開発も進むかもしれないからね」

 

 そう言ってマクスウェルはドアノブに手を伸ばしてドアを開けようとするが――――――――――

 

「やあやあおはよう!一日のほとんどを機体の開発と研究に使っている神才ちゃんにその神才に作られた原初の機体ちゃん!気分はどうかな?」

 

 そんな他人をバカにしているような底抜けの明るい声によってその行動は遮られた

 

「何しに来たの?ロキ」

 

 眉間にしわを寄せてとてつもなく嫌そうな顔で神才は答える。

 

「そんなに嫌そうな顔しなくてもいいじゃん。せっかくこんな所にまで来てあげたんだからさぁ」

「お前なんかに来てほしいなどとご主人様は思っていないわよ。悪戯神」

 

 もう会話が面倒になった神才の代わりに原初の機体がいつでも追い出せるように戦闘態勢に入りながら会話を続ける。

 

「おお、怖い怖い。そんなに警戒しなくてもいいじゃん。今日はいい話を持ってきたんだからさ」

「いい話?」

「そうそういい話。機体の開発に行き詰ってるらしいね」

「それがどうしたの?」

 

 いい話と聞いてから神才は会話をするぐらいのやる気が回復したらしい。

 

「こことは違うけど同じ世界に面白いパワードスーツがあってね、新世代機の参考にもなればいいと思ってこの話を持って来たんだよ」

「違うけど同じ世界?」

 

 悪戯神の変な言い回しに疑問を浮かべる原初の機体

 

「そうだよ、平行世界って言った方がいいかな?」

「それで、その平行世界には何があるっていうの?」

 

 

 

 

 

「―――インフィニット・ストラトス」

 

 

 

 

 

「「インフィニット・ストラトス?」」

 

 二人が揃えて声をあげる。

 

「そう、インフィニット・ストラトス。通称ISって呼ばれてるよ。」

 

 言葉より映像の方がわかりやすいから見せてあげるね。そして悪戯神はどこからともなくタブレットを取り出し、

 

「いや~人間の作ったものは便利な物が多いからいいね」

 

 そう言った後に、これだよこれ。と言いながら映像を見せる。

 

「「!!」」

 

 そこには彼女たちが今まで一度も見たことがない光景が広がっていた。

 1人は、様々な種類の銃を瞬時に切り替えながら相手をかく乱しながら相手を追い詰めていく。

 1人は、浮遊しながらレーザーを放つ自律型のドライバのような物を使っている。

 1人は、見えない砲弾を360度全方位に向けての射撃を行っている。

 1人は、正面に飛来した弾丸などを目の前で止めている。

 1人は、ブレード一本のみで相手にまで近づき一振りするだけで戦闘不能に追い込んでいた。

 

「なに……これ……」

 

 驚きを隠せない様子の原初の機体が声を漏らす。神才の反応が気になり、ふと隣を見ると、

 

「何これ!何これ!面白い!ロキもっと見せて!」

 

 子供のようにはしゃぎながら目を輝かせている神才がいた。

 

「これ以上は見せられないよ。後は実物を自分の目で確かめてきてほしいからね」

「自分の目ぇ?どうやってこの世界に行けって言うの?まさか扉くぐったらその世界、とでも言うの?」

 

 バカバカしい。神才はそう一蹴したが、

 

「そうだよ、そのまさかだ」

「証拠はあるの?」

 

 悪戯神は頷いてから、朝ごはん食べたら表においで。と言って姿を消した。

 

「どうなさるのですか?」

 

 マクスウェルは一瞬、思考を巡らせ、

 

「とりあえず、ごはん食べちゃおっか」

 

 そう言ってようやくドアを開けることができた。余談だが、その日の朝食はいつにも増して早く終わったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

「案外早かったね。もうちょっとかかるかと思ったよ」

 

 おどけながら言う悪戯神の後ろには巨大な扉が鎮座していた。二人の荷物は何もないように見えるがロキからもらったタブレットに粒子化され収納されていた。神才はこのタブレットを分解して解析しようとしたが時間が無いからと原初の機体に止められていた。

 

「珍しいものを見せられてその世界に行ける。なんて言われたら誰だって興味持つでしょ?」

 

 バカじゃないの?とでも言いたげな顔で神才は言い返す。

 

「それで、この扉をくぐれば向こうの世界に着くのかしら?」

「そうだよ、それでどうする、行く?行か「行くに決まってるでしょ」…………最後まで言わせてほしかったなぁ……」

 

 がっくりと首を垂らせる悪戯神の顔は薄笑いを浮かべていた。

 

「マキナ、付いて来てくれる?」

 

 かわいらしく首を傾げる神才に原初の機体は、

 

「もちろんです。あなたの行くところにはどこにだって付いて行きます」

「ありがとね!」

 

 神才は満面の笑みを見せ、

 

「というわけでロキ、さっさと連れてって」

 

 その言葉を聞いた悪戯神は立ち直り

 

「よし、決まったようだね。それじゃこのタブレット渡しておくね」

「これは?」

「これはね、ISの基本的な構造やら性能やらが全て入ってる物だよ。これでオリジンにISを作ってあげなよ」

 

 なんでマキナに?言いたそうな顔をしている神才

 

「なんでって、オリジンが向こうの世界でドライバなんて使ったら面倒なことになるでしょ?だからだよ」

「あ、そっか。じゃあ元から撃てるビームに加えて何か追加したISを作ればいいか」

 

 と、そこである疑問が浮かぶ

 

「そういえば、こちらの世界と向こうの世界での時間の流れはどうなるのかしら?」

 

 マキナの質問にロキは、変わらず薄笑いを浮かべ答える。

 

「大丈夫だよ、あっちの一日はこっちだと三時間ぐらいしか経ってないから」

 

 心配せず、楽しんできなよ。と言うロキはさっさと行ってほしそうに話す

 

「分かった、行ってくるよ。扉開けて」

「はいは~い、それじゃ行ってらっしゃ~い」

 

 ロキが指を鳴らすと同時に扉が開く。そこには真っ白の空間が広がっていた。

 

「それと、もう1つ。あっちの時代はISの大会、モンド・グロッソの第二回目の開催日だから、その日にいろいろあるから人助けはした方がいいと思うから頑張ってね」

 

 あと、場所はドイツだよ。ロキが説明してる間に神才と原初の機体は扉の前にいる。

 

「それじゃあマキナ、行こうか」

「はい、行きましょう」

 

 そう言って二人は扉の中へ消えていく。そんな二人を眺めながら悪戯神は手を振って見送る。

 

 

 

 

 

 

 これから二人に何が起こり、どんなことに巻き込まれるかは予想はできるが誰一人として決めつけることはできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、君たち人間にはこれからあの二人にどんなことが起きるのかを見ていてほしいな。こっちはこっちでやることがあってあの二人を見てる暇がないからね。

 

「さて、邪魔者もいなくなったし、こっちも計画を進めようかな」

 

 楽しみだ。そう言うとロキは最初からそこにはいなかったかのように消えてしまった。

 

 

 




今回はどうでしたか?今回は三人称でしたが次回からは一人称に変えて書こうとおもっています。それでは皆様、またお会いしましょう。

感想もよろしければ書いていただけると幸いです。また次回!


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原作前:第一話

まずは謝罪させていただきます。全国のカゲロウ使い、ファンの皆様この度はカゲロウのことを忘れるという失態を犯してしまい大変申し訳ございませんでした。m(_ _)m 

それじゃあ謝罪はこのへんにして、前書きでございますですはい。前回は一人称にするとかほざいてましたが三人称より難しくて断念しました。というわけで今回も三人称です。

それでは、原作前:第一話です。どうぞ!


~マキナ、マクスウェルside~

 

 扉をくぐり光に包まれた先に待っていた光景はあまり人目につかない路地裏だった。あの悪戯神は一応こちらのことは考えているようだ。

 

「マクスウェル様、これからどうなさいますか?」

 

 マクスウェルは顎に手を置き考えるそぶりを見せ、

 

「う~ん、そうだね、とりあえずモンド・グロッソとかいう大会を見に行こうか。ISを生で見てみたいし」

「しかし、タダで入れるのでしょうか?」

「それもそうだね、あいつのことだから入れる手段ぐらいあると思うけど」

 

 そう言いながらタブレットを操作するマクスウェルは、あっ、と声を漏らし笑顔を向けながら

 

「あったよマキナ!モンド・グロッソの観戦チケット!」

 

 いや~たまにはあいつもいいことするね。と子供の様にはしゃぎ始めた。

 

「よかったですね、マクスウェル様」

「ほんとによかったよ。それじゃあ!さっそく見に行こう!」

 

 タブレットで周辺の地図を開き現在地を確認すると、

 

「ん?何この反応」

 

 そこには赤い点が複数あり、青い点が一つ存在していた。赤い点には危険だよ♪と書かれており、青い点には助けて~♪と書かれていた。

 

「なんだろう?この点。無性にイラつくけど」

「どうします?見に行きますか?」

 

 あいつの掌の上で踊らされてる感じがしますが。加えて言うマキナの顔は渋い顔をしていた。

 

「そうだねぇ、他人を見捨てるほど私も非情じゃないからね」

 

 もしかしたらISもあるかもしれないし。言うと同時にマクスウェルは歩き出す。その後ろにはマキナが数歩後ろを歩いている。

 

 そこには、一人の少年が車の中から運び出され、廃墟に連れて行かれているところだった。

 

 

 

 

 

 

 

~誘拐犯side~

 

 ドイツの裏路地の一角に存在する廃墟の入り口には二人の男が自動小銃を持って立っていた。

 

「はははっ!今回の仕事はガキ一人攫ってくるだけだったからかなり楽だったな!」

「確かに楽だったが問題はこれからだぞ。いつ世界最強が来るか分かったもんじゃないからな」

 

 そう、この男たちは第一回モンド・グロッド総合優勝を果たし世界最強と呼ばれている織斑千冬の弟である織斑一夏の誘拐を行い、今回の大会で千冬を棄権させようとしているのだろう。

 そのようなことをして利点があるのかは分からないが。

 

「お前は相変わらず心配性だな、世界最強が来たとしてもこっちには人質がいるんだから大丈夫だろ」

「そうだよな、こっちには人質がいるんだから大丈夫だよな」

 

「それで?人質はどこにいるのかしら?」

「「!!」」

 

 突如聞こえた女性の声が聞こえた方向に男たちは銃を向けるがそこには――――――

 

 胴、手、足にのみ装甲を付けた女性が立っていた。

 

「な、なんで――――――」

 

 ISが、続けて言おうとしたがそれは叶わない。

 

「情報提供者は一人でいいのよ」

 

 女性がそう言うと元気に騒いでいた男の首が骨を切断し、半分の太さになってしまった。

 もう一人の男はその光景に脳の処理が追いついていないのか呆然としている。だがある程度の修羅場を潜り抜けてきた男には一瞬で理解してしまった。

 

 

   次は俺の番だと――――――

 

「うわあああああ―――がっ!」

 

 男はぎりぎり喋れる程度に首を絞められ、壁に打ち付けられた

 

「あまり叫ばないでほしいわ、ばれちゃうじゃない」

 

 女性は男に冷徹な目を向け、人質の場所を聞いてきた。

 

「三階の……一番奥の……部屋だ……!だ、だから助け――――――」

 

 そこまで話すと男の首が横に九十度折れ曲がる。

 

「そこまで話してくれてありがとうね、お休みなさい」

 

 女性は三階付近の窓であろうものを見つけると、膝を曲げ垂直跳びをするだけで窓までたどりつく。すると、女性の周りには楕円形の円盤のようなものが漂っていた。

 円盤の中心に光が集まり一筋の閃光が放たれる。

 

「それじゃあ、かわいそうな少年を助けにいきましょうか」

 

 そう言って女性は、崩れた壁を越えて廃墟の中を進んでいった。

 

 

 

 

 

 

~一夏side~

 

「(あれ……?ここ、どこだろう?)」

 

 一夏が目を覚まし周りを見渡すと先ほどまでいたモンド・グロッソの会場でないことが分かる。

 

「(なんでこんなところに…?俺…たしか、千冬姉の応援のためにドイツに来て、決勝戦の前に千冬姉に会いにこうとしたら廊下で男たちに囲まれて、それで…)」

 

 そこまで考えたところで見張りの男に声をかけられる。

 

「おう、坊主ようやく目が覚めたか。気分はどうだ?」

 

 その男は一夏に対し気さくに話しかけてくる。一夏は現状を理解できていないのか呆然としている。

 

「何があったのか理解できてなさそうだな。仕方ない、説明してやるよ」

 

 男は一つため息をつくと、

 

「残念ながら、お前は誘拐されたんだよ」

「!!」

 

 一夏は驚きを隠せずに混乱しながら男に聞き返す。

 

「なんで俺が!」

「あぁ、それはな。お前が織斑千冬の弟だからだ」

 

 気怠そうに男は続ける。

 

「分かるか?今回、俺たちの目的は織斑千冬の決勝戦を棄権させることだ」

 

 詳しいことは知らんがな。そう言うと男は部屋の外へと出ていこうとしたとき、

 

 

 

 

   建物を揺るがす衝撃が襲った―――――

 

「なんだ!?今の揺れは!」

 

 揺れに耐えている男の元に一人の男が駆けつける、

 

「侵入者だ!今すぐ行くぞ!」

「ッ!?織斑千冬か!?」

 

「(千冬姉!?)」

 

 助けに来てくれたのか!?一夏はそう思うと嬉しくなるが、

 

「いや違う!金髪の女だ!ISを装備している!」

「ISだとっ!?クソッ、坊主!巻き込まれたくなかったらここを出るんじゃねえぞ!」

 

 そう言って二人の男は一夏の前から姿を消した。

 

「(な、何がどうなってるんだ)訳がわからねえよ」

 

 口に巻きつけられていた布が緩むと一夏はそう呟いた。

 

 

 

 

~マキナside~

 

「ふぅ、大体は片付いたようね」

 

 マキナは現在廊下の一番奥の部屋へ向かっている途中だ、その少し後方の広間には死人はいないが皆動けないように足を使えなくされている。

 まだ諦めていない一人の男がマキナに対し銃を向け、トリガーを引き弾丸装甲の無い足に放つ。しかし、弾丸は装甲の無い部分に当たったが綺麗に弾かれる。機械であるマキナにただの銃など無意味でしかない。

 

 マキナは何事も無かったかのように一番奥の部屋にたどり着く、幸い鍵は開いたままだった。

 

「彼ら、そうとう焦ってたのかしら、不用心ね」

 

 マキナは待ち伏せなどが無いと思っているのか、なんでもないように扉をあける。

 

「あなたが織斑一夏君かしら?」

 

 俯いていた一夏は声に反応して、勢いよく顔を上げる。助けが来たと思い、安心しきっている様子だ。

 

「そ、そうです」

「だったら、早く外に出るわよ、背中につかまりなさい」

 

 背を向け、姿勢を低くするマキナの背中に一夏はつかまる。その背中は異様に冷たかった。

 

「あ、あの、ありがとうございます」

「いいのよ別に、それより私がいいと言うまで目は開けない方がいいわよ」

 

 衝撃的な光景が広がっているからね。その言葉に従い一夏は目を閉じる。

 

「それじゃあ、行くわよ」

 

 そう言うとマキナは見張りのいた入り口まで歩き始める。

 

 

 

 

~千冬side~

 

 織斑千冬は今までに無いほど焦っていた、この世でたった一人の肉親である弟の一夏が誘拐された。とドイツ軍から情報提供があったのだ。それを聞いた千冬はモンド・グロッソ決勝戦を棄権して情報にあった廃墟まで愛機であるIS『暮桜』を駆り飛んでいる最中だ。

 

「一夏、無事でいてくれ…!」

 

 スピードをさらに上げる『暮桜』のハイパーセンサーに廃墟から出てくる二つの反応を捉えた。一つは一夏、もう一つはISを纏った金髪の女性である。

 

「一夏ァ!!」

 

 叫びながら千冬は女性の前に降り立つ。

 

「千冬姉ぇ!!」

 

 マキナの背中から降りた一夏は千冬の胸に飛び込む。千冬は腕を広げ飛び込んできた一夏を迎え入れる。

 

「良かった、一夏、無事で」

「俺も千冬姉に会えて良かった」

 

「良かったわね、お姉さんに会えて」

 

 微笑ましい光景を眺めながらマキナが声をかけてくる。

 

「はい!ありがとうございました!」

「一夏、この人が助けてくれたのか?」

「ああ、そうなんだよ!」

 

 一夏がそう言うと、千冬は一夏を降ろすと頭を下げる。

 

「一夏を助けていただき、ありがとうございます。何かお礼をさせてください」

「いえ、いいのよ。偶然見かけたのを助けただけだから」

「そうはいきません。なんでも言ってください」

 

 なんでも、という言葉に反応しマキナにとある考えが浮かんできた。

 

「だったらあなたのISのデータをすべてコピーさせてちょうだい」

 

 その言葉に千冬の目が鋭くなる。国家機密である専用機のISデータをコピーさせろなどと言う相手には恩人だろうと警戒せざるをえない。

 

「なぜ、ISのデータを?」

「私のご主人様が、どのISでもいいからデータをほしがっていてね、だからよ」

 

 なんでもするって言ったんだからいいわよね?マキナはそう続けて言う。

 

「分かりました。ですが、悪用しないことだけは守ってください」

「ええ、分かってるわよ。あの方もそんなことはしないでしょうし」

 

 そう言ってタブレットを取り出し、マキナが『暮桜』に手を当てると、凄まじい勢いでデータのコピーが始まった。

 

「なぜ…ISに触れるだけで…!?」

 

 彼女の着けているISの機能だろうか、そう思い千冬は声を漏らすが、集中しているのかマキナには届いていない。そして、待つこと数分。

 

「終わったわ、それじゃあもう帰ってもいいわよ」

 

 タブレットを粒子化させ表通りに向かって歩き出すマキナに千冬は声をかける。

 

「あの、あたなの名前は?」

 

 そういえば言ってなかったわね。そう言いながら振り返り、

 

「マキナ・オリジンと呼んでちょうだい」

 

 また、会えたらあいましょうね。そして、マキナは通りに向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

~マクスウェルside~

 

「やっぱりマキナすごいね、あれだけいた人間を数分で制圧しちゃったんだもん」

 

 ディスプレイでマキナの行動を見ていたマクスウェルは一瞬だがマキナの動きが鈍ったのが分かった。

 

「あれ?どうしたんだろう?」

 

 気になったマクスウェルはマキナにメディカルチェックを行う、するとマキナに対しハッキングをされていることが分かった。

 

「誰だろ?マキナにハッキングしてるやつは」

 

 表情に多少の怒りを浮かべているマクスウェルは神の作った物の邪魔をする愚か者に制裁を加えるべく、逆探知し、ウイルスを送り込む。そして、ハッキング元を探るとここからそう遠くない孤島から反応が検出された。

 

「へぇ、面白いことをする人間もいるんだね。マキナにハッキングを成功させるなんて只者じゃないね」

 

 新しい玩具を手に入れた子供の様に嬉しそうな顔をするマクスウェル。

 

「それじゃ、次はここに行ってみようかな」

 

 そう言って神才は大事にしている原初の機体の帰還を心待ちにしていた。




今回はどうでしたでしょうか?同じような言い回しが多くてうんざりしたかもしれませんが作者の国語力ではこの程度です。次回は天災に会いに行きますよ!次が終われば原作に入っていくと思います。あと次は短いかも…

感想、アドバイス、指摘があればいつでも言ってください。

それでは、待て次回


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原作前:第二話

今回はできるだけ一人称で書いてみました。うちの束さんはただのヘタレコミュ症です
原作と大分かけ離れています。ご注意ください。


それでは、原作前:第二話  どうぞ!


~束side~

 

 やっほー!画面の前のみんな!ISの生みの親こと、篠ノ乃束さんだよ!今私はすごく焦ってるんだよね。なんでかって言うとね、

 研究ラボ兼隠れ家兼助手兼移動手段である『吾輩は猫である~まだ名前は無い~』の制御が完全に奪われて防御用シェルターも全部閉まってて出られなくなっちゃたんだよね。しかも、ハッキング主がこっち向かって高速で飛んできてるんだよね。

 もう絶体絶命の大ピンチって訳なんだよね!あははははは、はぁ…どうしよ…ていうか何でこんなことに…

 

 

 

 

 

 

~no side~

 

 時間は数十分前に遡る。篠ノ乃束は大会に出場している愛しい織斑千冬の勇姿を見るべく、衛星にハッキングし一回戦から観戦していた。もちろん、千冬の観戦だけが目的ではない。自身の妹の篠ノ乃箒と親友である織斑千冬以外にも彼女に認知されている人物がいる。皆さんご存知の通り、千冬の弟である織斑一夏だ。

 束は有名人の弟である一夏が誘拐など危険な目に遭ったら千冬にいち早く知らせようと思い、監視をしていた。

そうしたら、案の定一夏が誘拐されたので映像による追跡を続けながら千冬に連絡をいれた。

 束がこっちでなんとかする、と言う前に千冬が飛び出して行ってしまった。仕方ないので一夏の監視に戻ると金髪の女性、マキナが壁に穴を開けている最中を目撃した。そして、複数の武装した男たちを相手に見たことの無いISを使い無双しているのを見て、ちょっとデータ取りも兼ねてハッキングしてやろう、と考えてしまった。

 

 しかし、ISの開発者がハッキングをしたのに少し動きが鈍るだけで終わってしまったのだ。それに加え逆にハッキングされてコントロールを完全に奪われるという篠ノ乃束にあるまじき失態を犯してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

~束side~

 

 回想終了。うん、完全に自業自得だね。とりあえず迎え入れる準備をしてできるだけ平静を保っている風に見せよう。うわ!今地上の方が揺れたよ。派手なノックだねぇ。え、ちょっと待って、もう来たの?早すぎない?やばい!お茶もお菓子も何も用意してない!どうしよう!あ、そうだ。カメラで位置を確認して…あぁ!制御奪われてたんだった!

 

 コンコン

 

 あ、ノックの音……詰んだ……

 

 

 

 

 

 

~マキナside~

 

 ハッキングのために発信されていた電波はドイツ上空から全速力で数十分かかった孤島から発見された。普通によくある島だから隠れるのには十分だろう。ご主人様に場所を確認した後、反応のあった島の中心部に降り立つ。

地面を十数cm腕で抉るといかにもなシェルターがあった。

 

「マキナ、破れるくらいの強さで撃って」

「分かりました」

 

 返事をしてから、円盤状のドライバにエネルギーを溜める。ある程度溜めてからビームを撃つ。

 

「申し訳ありません。強すぎました」

 

 生活圏らしきところまで届いてしまった。レーダーを見ると目標は生きているようで安心した。

 

「大丈夫だよ、生きてるっぽいし。それに丁度良いところまで貫通したしね」

 

 ほら。と指を指している所を見ると、目標の反応があるドアがあった。とりあえず、そのドアの前まで降りていく。

 

「じゃあ、入ろっか」

「そうですね」

 

 短い返事をし、ドアをノックしてから開けると、そこには『不思議の国のアリス』に出てくるアリスのようなエプロンドレスを身に着け、頭にはウサギのカチューシャを付け、涙目で震えて怯えている女性がいた。

 

 

 

 

 

 

~束side~

 

 どうしよう、来ちゃったよ……ま、まずは、本日はお日柄もよく?って違う違う!全く知らない人でお怒りの人にはなんて言えばいいんだろ……あっそうだ!謝罪だ謝罪!ジャパニーズ土下座だ!そうと決まったら!

 

「こ…このた…びは、ま、真に申し訳…ありましぇんでした!」

 

 か…噛んだ……恥ずかしい。しかもどもってるし……

 

「と、とりあえず。顔あげなよ」

 

 と、女性の声が聞こえたので顔を上げると、タンクトップの左半分に腰までのレースの付いた服とベルト付きのホットパンツ、長いマフラー、膝までのタイツ、ヒールスニーカーを身に着けた女性がいた。

 特に目を引くのが、髪の毛を左はテールにしているのだが、反対には花びらを重ね、縦に伸ばしたような装甲を付けている。

 

「この度の、ハッキングは、ちょっとした出来心だったんです……」

「いや、どんな人間か気になっただけで、怒ってないから。ねぇ?」

 

 そう言って銀髪の女性は金髪の女性に話しかける。

 

「えぇ、少々戸惑ったけれどね」

 

 ちなみに彼女の格好は、胸元の開いたレオタードの様な服を着て手の装甲は肘までのもので、足の装甲は下の方がハイヒールの形になっていて膝まで守っている。

 

「でも、何かお詫びを……」

 

 私はもう、どんなことでもする気でいる。すると、銀髪の女性はしばらく考えてから、

 

「じゃあ、ISの研究と開発もしたいから暫くここに住まわせてよ」

 

 そう言われて私は考える。私のラボにハッキングをして成功させたんだからISを作らせたら面白いものができるかも知れない。それに、もしかしたら二人の内どっちかは家事できそうだし!

 

「いい、ですよ。こちらこそ、お願いします。家には、二人しかいませんし」

「二人?」

「はい、私とクーちゃん、あ、クーちゃんはクロエ・クロニクルって言います」

 

 今は外出中のクーちゃんの紹介をする。そういえばクーちゃん遅いなぁ……

 

「それじゃあ、これからよろしくお願いね!」

「これから、よろしくね」

 

 もう住む準備してる。部屋とか紹介しなきゃ。あっ、名前聞いてない。

 

「私、篠ノ乃束って言います。お二人の名前は?」

 

「マクスウェルっていうよ、神才っても呼ばれてるよ、よろしくね」

「オリジン:マキナよ、オリジンは機械の型番みたいなものだから、マキナって呼んでちょうだい」

 

「マクスウェルにマキナ…じゃあ、スーちゃんに、マーちゃんだね!」

「それ、あだ名?」

「そうだよ!迷惑だった…?」

 

 もしかしたら、急だっただろうか

 

「全然迷惑じゃないよ!ね、マキナ」

「初めてつけられてうれしいです。気にせず呼んでちょうだい」

 

 良かった、迷惑じゃなさそうだ。それに、とても話しやすくて良い人たちだ。私が初対面なのにこんなにスムーズに話が進んだんだから、この人たちとなら楽しい生活ができそうだ。よし!さっさと部屋とか紹介してしまおう。いや~これからが楽しみだな~。




今回はどうだったでしょうか。次回からは時間が飛んで原作に行きますよ!マキナはもちろん入学させます。一人称についてはこんな感じでよろしいでしょうか?

感想、アドバイス、その他もろもろいつでも受け付けています!見てる人がいるかは分かりませんが(笑)

それでは、次回 入学IS学園 お楽しみに

※サブタイは変わるかも


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第一話:IS学園入学ついでに宣戦布告

はいさい!今回は一人称と三人称を混ぜて書いてみました。書きやすかったのでこれからは、この書き方で行きたいと思います。

それでは、第一話どうぞ!


 ここはアラスカ条約によって建造されたISの操縦、整備などを学ぶIS学園。その入学式が終わった後の一年一組の教室である。そこには男性がいた。名を織斑一夏という。

 ISは通常、女性にしか起動できないものである。それなのになぜ男がこのIS学園に居るのかというと、理由は一つしかないだろう。織斑一夏はISを起動してしまったのだ。どうして起動できたのかはまったく分からないが、この男はこれからいろんな意味で様々な困難に直面するだろう。だってこいつイケメンなんだもん。

 

 

 

 

 

 

~一夏side~

 

(これは……想像以上に……きつい)

 

 なんなんだよこの視線の数は……針のむしろ、いや視線が突き刺さってる。

 

視線が突き刺さる、そう感じている一夏だが視線の数はクラスの二十人程度である。残りの約十人の視線は一夏の隣の席に注がれている。

 

(でも、オリジンさんの方にも視線が行ってるけど、大丈夫なのか?)

 

そう、隣の席には第二回モンド・グロッソで誘拐されたときに助け出した、マキナが座っていた。ただ普通に入学してきただけなら注目はされないだろうが理由があった。それは、二週間前に遡る。

 

 

 

 

 

 

~マクスウェルside~

 

「ISコアの複製に成功したぁ!?」

 

 そうやって大きな声を上げるのは同居人の篠ノ乃束だ。まったく、もう少し声のボリュームを下げてほしいところだよ。

 

「そうだよ、あの程度なら普通に作れるよ。因みに三ヶ月前にはもう完成してたりするんだよね」

 

 束のコア作成スピードが少し遅かったから自分で作ってみた結果。案外簡単に作れた。少子抜けだよ、この世界の人間はあの程度の物も作れないのかって勝手に落胆していた。

 

「やっぱりスーちゃんは私よりよっぽど凄いね、純粋にそう思うよ」

「まぁ、私は人間じゃないからね。それとISコアの複製に成功したのは世間に発表するつもりだよ」

 

 束は私の言葉を聞いて呆然としている。何か変なことを言っただろうか?

 

「な、なんで公表するの!?黙っておいた方が安全なのに!」

 

 なんだそんなことか、その点は大丈夫だ。私自身が神で身体能力でも他のことでも人間相手に負けるつもりはないし、負けるとも思っていない。それに、

 

「マキナをIS学園に入学させるんだから、派手に入学させて勝負吹っかけられるようにしないと、データも取れないからね」

 

 そう、これも結局は自分自身のためである。そのためにマキナを道具の様に扱うのは心苦しいけどマキナも了承してくれている。

 

「まぁ、スーちゃんとマーちゃんは束さんより強いから大丈夫だろうけど、どんな風に発表するの?」

 

 ふっふっふ、それも抜かりなく考えてある。

 

「それはね、まず私がコアの複製に成功したって言うでしょ、それからマキナを倒せたら倒した国にISコアを5個作ってあげるって言うんだよ。マキナをIS学園に入学させるって言ってね」

 

 マキナなら負けないだろうから安心だよ。別に作ってあげてもいいんだけど世界のバランスが崩れるからね。

 

世界のバランスが崩れる、この言葉は間違いではない。ISコアは現在467個しかない今でもバランスを保つのがやっとだというのにそれを一国に集中されて作られたら堪ったものではない。

 

「でも、IS委員会とかめんどくさいのがあるけど、どうするの?」

 

 あっ、考えてなかった。でもいいか別に

 

「特に考えてないけど何か言ってきたら物理的に黙らせるから問題ないよ」

 

問題大有りである、この神才は何を考えているのか……いや、何も考えていないからこのような考えが浮かぶのか。

 

「それじゃあ、IS学園入学式の二週間前に発表でいいかな」

 

 あんまり遅すぎると学校側も大変だろうし。

 

そしてIS学園入学式の丁度二週間前にコア複製に成功したことの発表がされた。前述したのとほぼ同じ内容だったそうだ。

 

 

 

 

 

 

~一夏side~

 

時も場所も変わり一年一組教室。一夏はまだ視線の槍に慣れず、渋い顔をしている。

 

(まだ視線が痛い……どうしたら……良いんだ……)

「……君、織斑 一夏君っ」

「は、はい!?」

 

いつのまにか始まっていた自己紹介に自分の番だと気付かずに突然声をかけられたと思い大きな声をだして、目の前の緑髪の巨大な胸部装甲を付けた先生を怯えさせてしまう。

 

「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる?怒ってるかな?ゴメンね、ゴメンね!でもね、あのね、自己紹介、『あ』から始まって今『お』の織斑くんなんだよね。だからね、ご、ゴメンね?自己紹介してくれるかな?だ、ダメかな?」

 

ペコペコ頭を下げながら言う緑髪の先生。この人本当に教師か?などと失礼な考えが一夏の頭の中をよぎるが今は自己紹介をするべきだ。

 

「いや、あの、そんなに謝らなくても……っていうか自己紹介しますから、先生落ち着いてください」

「ほ、本当?本当ですか?本当ですね?や、約束ですよ。絶対ですよ!」

 

 か、顔が近い。それにこの人こんな感じで先生やれてるのか?とりあえず自己紹介だな。よしっ!

 

「えー……えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

 それから……えっと……なんだ?いきなり趣味とか言われても困るだろうし。ど、どうしよう

 

「以上です!」

 

 クラスのほとんどがずっこけるけどなんか、変なこと言ったか?

 

するとそこで、ドアの開いた音がした。そのドアから黒のスーツを着こなし、腰までの黒髪をなびかせ出席簿を持った鋭い吊り目の女性が一夏の前まで行き、

 

 スパァン!!

 

「いっ―――!?」

 

 なんだ今の!?何で殴られたんだ!?そう思って顔を前に向けると―――

 

「げえっ、関羽!?」

 

またしても乾いた音が響く。一夏の脳細胞が約一万は死んでしまっただろう。

 

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

 

頭から煙が上がっているように見える一夏を無視し、話を始める千冬。

 

 

誰も一夏視点をだらだら見続けるのは嫌だろうから移りますね。

 

 

 

 

 

 

~マキナside~

 

(あれが今の織斑千冬か……)

 

 束の言っていた生身でもISでも強いって話は本当の様ね。入試試験では訓練機同士で対決したけど、引き分けだったから今度は専用機同士で戦いたいわね。

 

そんなことを考えていると千冬が教壇に立ち、話を始める。

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五歳を十六歳までに鍛えぬくことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

 

 ……結構、理不尽なこと言うのね。こんな暴君丸出しの発言なんかする人間についてくるやつがいるのかしら。

 

「キャーーーーー!千冬様、本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした」

「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

 いたわ、こんなにたくさん。向こうの世界ではこんな人種、あまりいなかったから新鮮だわ。……私もこんなキャラでいった方が良いのかしら?

 

「……毎年、よくもこれだけの馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけこんな馬鹿共を集中させているのか?」

 

 千冬、本気であきれてるわね。世界最強が目の前にいるんだから興奮するのも仕方ないと思うけれど。

 

「きゃああああああっ!お姉様!もっと叱って!罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように躾して~!」

 

 何?この世界ではこれが普通なの?いくら束と一緒に暮らしてて世間に疎くてもこれは無いと断言できる。絶対に。

 

「で?挨拶も満足にできんのか、お前は」

 

 そう言って千冬は射るような目で一夏を睨んでいる。公私の区別は、はっきりつけているのだろうか。

 

「いや、千冬姉、俺は―――」

 

 また出席簿が襲い掛かってきたわね。ご愁傷様。

 

「織斑先生と呼べ」

「……はい、織斑先生」

「え……織斑くんって、あの千冬様の弟?」

「それじゃあ、男でISを使えるっていうのも、それが関係して……」

「あぁ、いいなぁ。代わってほしいなぁ」

 

 またしても教室がざわめき始める。織斑なんて珍しい名字なんだから、すぐに身内って連想できると思うけど。

 

さわぎ始めた教室を静めるため、千冬は手を叩き注目させる。

 

「では、最後に、オリジン。挨拶をしろ」

「分かったわ、千冬」

 

名前呼びに反応しすぐさま右手にある出席簿を叩きつけようとするが、

 

「危ないじゃない、何するのよ」

「織斑先生と呼べ」

 

頭をずらし、手で弾く。すると、出席簿はきれな放物線を描き千冬の左手に戻ってくる。

 

「分かったわ、織斑先生」

 

そう言ってマキナは振り返り、

 

「初めまして、マキナ・オリジンよ。趣味は特に無いわ。ニュースでも言った通り、私を倒せばISのコアを五個作ってもらえるから、精々頑張ってちょうだい。私は誰にも負けるつもりは無いし、負けるとも思ってないわ。この三年間で私を倒せるぐらいに成長することね。挑戦はいつでも受けるから気軽に声を掛けてもらってもいいわよ」

 

 とりあえず、言うことだけ言って、席に着く。今の話で反応したのはイギリスの代表候補性ぐらいかしら。どうせ国にでも命令されてきてるんでしょうね。

 

「さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

 

 無茶苦茶に聞こえるけど理にかなったことを言ってるわね。ちゃんと考えて言ったのかしら、いえ、きっと素ねあれは。それよりも……

 

(一夏はもう座らせてもいいんじゃないかしら……)

 

 自己紹介の時から、一夏は所在なさげに立っていた。

 

「席に着け、馬鹿者」

 

やっと気づいた千冬の号令により、一夏は座ることができた。

 

 さて、これから初めての学園生活が始まるわね。次からは授業か、授業ねぇ、ISの知識は全部インストールしてあるから暇なのよね。寝てようかしら……そう思った私はスリープ状態に移行する。

 

彼女が目を覚ましたのは一時間目が終わった後の休み時間だった。




今回はどうでしたでしょうか。原作も無いし、アニメも見て無いの、無い無いずくしで書いてみました。

アドバイス、感想、ご要望がございましたら。感想欄までお願いします。

それでは、また次回!


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第二話:英国貴族

今回の話はセシリアにアンチ要素が入ってると思います。オルコッ党の皆様はご注意ください。


~マキナside~

 

一限目終了のチャイムが鳴る。それと同時にマキナの目が覚める。

 

 あまり眠れなかったわね。そう思ってログを確認してみる。……結構な回数当てられてオートで答えたらしい。だからあまり眠れなかったのね。

 

「あの~、いいですか?」

 

 隣から声が聞こえる。ふと、隣を見ると一夏がこちらに話しかけてきていた。

 

「何かしら?」

「いや、隣の席だし仲良くしたいなって思ったので。改めてお礼もしたいし……」

「なんだ、そんなこと。いいわ、仲良くしましょう。それと、あの時助けたのは偶然よ、気にしないで」

 

 助けたことに関しては本当に偶然だ。あの時マクスウェル様が助けると言わなければ見捨てていたし、見捨てたとしても千冬が間に合っただろうから、偶然でしかない。

 

「あと、同い年だから敬語もいらないわ」

 

 同い年なのは、ただの設定だ。こうしないと面倒なことになる、マクスウェル様と束が言っていた。

 

「そっか、それじゃあ、一夏って呼んでくれ」

「私も、マキナでいいわ」

 

そこまで話したところで窓側の席からポニーテールの少女が近寄ってくる

 

「……ちょっといいか」

「え?」

 

突然話しかけられた一夏は呆けたような声を出す。その少女は不機嫌そうな顔をして、マキナを少しだけ睨みつけている

 

「箒……?」

(彼女が束の妹の箒ね……なんでこっちを睨んでるのかしら)

 

 大方、久しぶりに会った幼馴染と話をしたいってとこかしら。

 

「私は構わないから、二人で話してきなさいよ」

「いいのか?」

 

 そう聞かれて私は頷く。断る理由もない。

 

「一夏、屋上に行くぞ」

 

 そう言って箒は一夏を引っ張って行った、一夏は抗議の声を上げけど届いていないようね。

 

そして、今度は金髪を縦ロールにした少女がマキナの席まで近づいてくる。 あんな挨拶したのにマキナさん人気っすね

 

「少し、よろしいでしょうか?」

 

 私が振り返るとそこには、金髪縦ロールの貴族の様な雰囲気を醸し出している少女がいた。自己紹介の時に反応した人間か。

 

「何か用かしら?セシリア・オルコットさん」

「あら、知っていらしたのですね」

 

 国の代表やその候補生ぐらいの情報なら知っている。用件は、大方決闘の申し込みだろう。

 

「それなら話が早いですわ。……マキナ・オリジンさん、イギリス代表候補性として決闘を申し込みます」

 

 当たりね。それにしても、入学初日に言われるとは思って無かったわ。

 

「いいわよ、相手をしてあげる。日程はどうするの?」

「それでは―――」

 

言いかけたところで予鈴が鳴った。織斑先生の出席簿の餌食になりたくなかったらもう戻っていた方が身のためだろう

 

「また後で話しますわ」

「分かったわ、それじゃあまた後で」

 

 私がそう言うと、オルコットは自分の席に戻った。その後、一夏達が帰ってきた。思い出話はあまりできてなさそうね。

 

 

 

 

 

 その後、山田先生の授業が始まった。今回は起きていようと思う。授業が始まり私が退屈していると、隣で呻いている一夏の姿があった。

 

「織斑くん、何かわからないところがありますか?」

 

 そんな一夏の姿を見て、山田先生は不安げに聞いてきた。

 

「先生!」

「ハイ!!なんですか?」

「ほとんど全部分かりません」

「えっ……ぜ、全部……ですか……」

 

 全部分からないって、情報をインストールした私が言うのもなんだけど、あの参考書を読んでいればそれは無いだろう。

 

その後、他の生徒に分からない人はいるかどうかを聞いたら、誰もいない。流石は倍率一万を超えるIS学園に入学した者たちだ

 

「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」

「あの分厚いやつですか?」

「そうだ」

「古い電話帳と間違えて捨ててしまいました」

 

 またしても教室内に乾いた音が響く、一夏は今日中に何回叩かれるのかしら。

 

「ったく、何をやっているんだお前は。あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」

「一週間はちょっと……」

「良いな」

 

 千冬が目を鋭くして睨んでいる。あんな目をされたら従うしかないだろう。

 

「はい……」

 

 あらあら、あからさまに落ち込んでいるわね。そんなことを考えていると、千冬がこちらを見てから

 

「はぁ、仕方ない。オリジン、後で教えてやれ」

「なんで私なのかしら?織斑先生」

 

 まさか全部覚えているのがばれたのかしら。

 

「お前は入学主席だっただろう。それに、織斑とも面識があるんだから教えるのに丁度良いだろう」

 

 なんだ、そんな理由か。だったら良いだろう、別に負担になるわけではない。それに教えてやってくれって、目で訴えかけてきてるから無下にするわけにもいかないだろうし。

 

「分かったわ、その話、受けてあげる」

「すまないな、では、授業を続けてください、山田先生」

 

その後、特に問題もなく授業は進んでいった

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

現在、二時間目が終わり、休み時間に入った。そして、一夏の席の近くにセシリアが近づいていた

 

「ちょっとよろしくて?」

「へ?」

 

 何か別のことを考えていたのだろう、横からかけられた声に素っ頓狂な声を上げている。

 

「訊いていますの?お返事は?」

「あぁ、えっと……返事しなかったのは悪かった、だけど用件は?」

「まあ、なんですのそのお返事は?私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないのかしら?」

 

 あぁ、なるほどね。セシリアは今時の人間なのか、一応同じ女としてあんなやつと戦うのは嫌になってくる。

開始数秒で落としてやろうかしら。

 

「悪いな。俺、君が誰だか知らないし」

「なっ!わたくしを知らない!?セシリア・オルコットを!?イギリスの代表候補性にして、入試次席のこのわたくしを!?」

 

 あいつが入試次席だったのか。成績だけならいいんでしょうね、人としては落第でしょうけど。

 

「あっ、質問いいか?」

「ふん!下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしてよ」

 

 どこまであいつは私をイラつかせてくれるのかしら、もう声も聴きたくないわ。そう思って聴覚を遮断しようとしたとき

 

「代表候補性って……なに?」

 

その質問にマキナも含めクラスの生徒たちがずっこけた。例え今までISと関係の無い生活をしていたとしてもそのぐらいの情報は知っていてあたりまえだ。情報源が無いのなら仕方ないのだろうが、一夏はそんな生活はしていないだろう。

そんな一夏の質問にセシリアも茫然としている。

 

「あ……あ、ああ……」

「あ?」

「信じられませんわ!日本の男性というのは、皆これほどにも知識に乏しいものなのかしら!?常識ですわよ!!」

 

 確かに代表候補性すらしらないとは思わなかった。……教えるのが大変ね。仕方ないから教えてあげますか。

 

「一夏、代表候補性っていうのは、国家代表になるかもしれない人間のこと、つまりエリートよ。というか漢字で予想はつくでしょうに」

「あっ、言われてみればそうだな。ありがとなマキナ」

 

 そう言って一夏は屈託のない笑顔を向けてくる。なるほど、これでそこら中の女の子を落としてきたのね。私?私はマクスウェル様しか慕っていないわ。

 

するとセシリアが急に元気良くなって再度、声高々に話しかけてきた

 

「そう、わたくしはそのエリートなのですわ!!本来なら、わたくしの様な選ばれた人間とクラスを同じくするだけでも奇跡!幸運なのよ!その現実を少しは「いいかんげん黙れよ」っ!?」

 

急に発せられた殺気を込められた言葉に身を固まらせるセシリア。その声は一夏の後ろの席から聞こえてきた

 

「お前はさっきから聞いてれば偉そうなことばかり言って何様のつもりだ?たかが候補正如きが頭に乗るな」

 

そこまで言うとマキナは席を立ち、セシリアの眼前まで詰め寄る

 

「お前みたいな女尊男卑思考のやつの言葉を聞くだけでイラついてくるんだよ、そういうのは私の居ない所で勝手にやっていろ。分かったか?」

 

セシリアはその殺気に中てられ声が出せないようだ。代わりにマキナの言葉に頷き返す。

 

「そう、分かったのならいいのよ。賢い様でなにより」

 

そう言ってマキナは薄い笑みを浮かべ席に着いた。そこで休み時間が終わったらしく、予鈴が鳴る

 

「そろそろ、自分の席に着いた方がいいわよ」

 

そう言われてセシリアは呪縛から解放され青ざめた顔で自分の席に着いた。見渡すとクラス全員が冷や汗をかいている人間や、気分が悪そうな人間もいる。

 

(ちょっとやりすぎたかしら?)

 

程無くして入ってきた千冬と真耶が教室の異常な空気に気づく。千冬は眉間にしわを寄せ、真耶は涙目になってしまっている。最悪の空気の中、三限目が始まった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

三限目の授業は空気は多少直ったがまだ悪いままだった。特に問題は起きずに授業が進行していたが、千冬が何か思い出したかのような声を上げる

 

「ああ、そういえば、クラス代表を決めなくてはいかんな」

 

クラス代表とは、言葉通りクラスの代表だ。書類を提出したり、会議に出席したりするが一番大事な役目はそれぞれクラス代表となる生徒同士での対戦だろう

 

「自薦、他薦は問わない。誰かいないか」

 

その言葉を聞いて生徒たちは騒々しくなった。今までの空気が嘘の様である

 

「織斑君がいいと思います!」

「俺!?」

 

 その言葉を聞いた他の生徒たちが次々と一夏を推薦してくる。やっぱり話題性のある男性操縦者を代表にするのは女子がおしゃべり好きだからだろうか。

 

「ちふ……織斑先生、それって拒否権は?」

「自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権は無い。選ばれた以上覚悟しろ」

 

その言葉を聞き、一夏は項垂れる。今日だけで何度項垂れるのだろうか、しかし一夏が推薦されていく中セシリアが机を叩いて立ち上がった。

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

 なんなのあいつ。自分が推薦されるとでも思っていたのかしら。少なくともさっきの休み時間にあんな態度で推薦したいとは思わないでしょうね。

 

「そのような選出認められません!大体、男だからってクラス代表をされたら恥らさしですわ!このわたくし、セシリア・オルコットに一年間その様な屈辱を味わえというのですか!」

 

 まったく、この女は何なんだ一体。こいつは私をイラつかせることに関しては天才だな。

 

「実力からいえば、わたくしクラス代表になるのは必然ですわ!物珍しさを理由に極東の猿なんかに任せないでください!」

 

 極東の猿ねぇ……このクラスのほとんどが日本人だと分かって言っているのかあいつは。

 

「このような島国まで来たのはIS技術の修練のためであり、サーカスをする気は毛頭ありませんわ!大体、文化の後進的なこの国で暮らすこと自体苦痛であり―――「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」―――なんですって!?」

 

 あら、結構上手いこと返すじゃない。それよりも、あいつは自分の言ってることが分かってるのかしら。

 

「あっ、あなた!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

「先に侮辱したのはお前だろ」

 

 売り言葉に買い言葉……まるで子供の喧嘩ね。年齢からすればまだ子供だけどもう少し考えることはできないのかしら。

 

マキナがそう思っている最中にも二人の喧嘩はヒートアップしていく

 

「決闘ですわ!」

「いいぜそれならわかりやすい」

 

 決闘か、丁度いい。私も混ぜてもらおう。

 

「ちょっといいかしら」

 

 その言葉に二人とクラスメイトがこちらに注目してくる。

 

「なんですか?オリジンさん」

「いえ、さっきあなたが対戦を申し込んできたから、あなたたちの決闘に混ぜてもらおうと思っただけよ」

 

その言葉を聞き、セシリアは少し考えた後、口を開いた。

 

「わたくしはよろしいですわ、あなたは?」

 

セシリアは一夏に返事を促す

 

「俺もいいぜ」

 

二人の了承を得たマキナは微笑んだ。一夏には経験を積ませることができ、セシリアを負かすことができてうれしいのだろう

 

「話は纏まったか?対戦は一週間後に行う。勝ったやつが代表になるか決めろ。異論は無いな」

 

一夏とセシリアが頷く

 

「では授業を再開する」

 

 一週間後か、それまでに一夏にISの知識を基本だけでも教えてあげないとね。正直、あんな慢心してるやつに私が負けるとは思えない、どんな風に負かしてやろうかしら。一週間後が楽しみで仕方ないわ。




今回はどうでしたか?次回は初日のマキナの放課後とセシリア戦を書こうと思います。

感想、アドバイスなどがありましたら気軽にお書きください。


それでは、また次回!


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第三話:初戦闘

今回は対セシリア戦です。戦闘描写を初めて書いたのでちゃんと書けてるか分かりませんがとりあえずご注意ください。

それでは、どうぞ!


~マキナside~

 

放課後、マキナはあらかじめ知らされていた部屋に向かっていた

 

(ここね……)

 

目の前のドアには1030、と書かれていた。マキナは中に人がいるかを確認するためドアをノックする

 

「は~い、今開けま~す」

 

部屋からはどこか間延びした声が聞こえてきた、そして中から出てきたのは

 

「あ~マッキーだ~、この部屋なの~?」

 

―――――きつねの着ぐるみを着た、布仏本音だった

 

「どうしたの?」

 

 はっ!人じゃなくきつねが出てきたから一瞬思考が飛んでしまった。いけない、どんな事にも対応できるようにしなければご主人様を守れないじゃない。中々やるわねこの子。

 

「いえ、なんでもないのよ。それより、マッキーは私のことかしら?」

「そうだよ~マキナだからマッキーなのだ~」

 

 いやだった?と首を傾げ聞いてくる本音、何故かすごく癒される。今日は色々あったから余計に癒されている気がする。

 

「いえ、初めてあだ名なんて付けられたから嬉しいわ。ありがとうね本音」

「えへへ~どういたしまして~」

 

 つい本音の頭を撫でてしまった。でも、本音も満更じゃない様子だ。十分撫でたので部屋の中に入る。

 

「それじゃ、部屋について色々決めましょうか」

 

 その後、私が窓側になったりシャワーの順番を決めたりした。寝る前にお菓子を食べてしまったが、私はともかく本音は大丈夫だろうか。体系とか

 

 

~本音side~

 

 今日は入学式を終えてかんちゃんと一緒に入学して、今話題の男性操縦者……ではなく別の方向で話題のマキナ・オリジンちゃんと一緒の部屋になったんだよね~。なんでかって言うと……

 

『ねぇ本音ちゃん』

『なんですか~お嬢様~?』

『ちょっと頼みたいことがあるんだけど、頼んでもいい?』

 

 そう言ってお嬢様がマッキーの監視を頼んできたんだよね~。確かにISコアを作れる人と親しいから何があるか分からないから監視はした方がいいんだろうけどね~。

 ついついお菓子につられてOK出しちゃったんだよ~。教室でのあの威圧感は凄かったけど、話してみると良い人だって分かったから楽しくすごせそうだよ~。……でも、頭撫でてもらった時の手が異様に冷たかったのが気になるなぁ。過去もまったく分からないから、いつか聞いてみたいなぁ。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

~マキナside~

 

一週間後、マキナは一夏の居るピットにいた。この一週間の間、マキナは一夏にISについての基本的な知識を教えたり、本音と一緒にのんびりお菓子を食べたりしていた。一夏の物理的な指導は箒が剣道をして体力、昔の勘を完全ではないが取り戻させていた

後は、一夏の専用機の到着を待っている最中である

 

「なあ、箒」

「なんだ」

「ISについての知識はマキナから教わったんだけどさ」

「そうだな」

「もっと実践的な訓練もできたんじゃないか?」

 

実を言うとこの二人、一週間の間に剣道しかしていなかったのである

 

「一夏、それは私が箒に言って止めてもらっていたのよ」

「そうなのか?箒」

「ああ、私は訓練機を使ってもいいと思ったんだが……」

「せっかく専用機が与えられるのに、訓練機で変な癖がついたら元も子もないからね」

 

一夏は納得したようで、腕を組んで頷いている。その後、セシリアのIS『ブルーティアーズ』のスペックや武装について教えていたら真耶が駆け足でやってきた

 

「お、織斑くん織斑くん織斑くん!」

 

アリーナの使用時間もギリギリなので結構焦っているようだ

 

「山田先生、ちょっと落ち着いてください」

「そうですよ。はい、深呼吸」

「は、はいっ!スー……ハァ」

 

一夏に言われて深呼吸する真耶。時々、年齢を疑ってしまうことがあるのはこの学校の生徒なら一度はあるだろう

 

「来ました!織斑くんの専用機!」

「織斑、すぐに準備しろ。アリーナの使用時間は限られているからな。ぶっつけ本番でものにしろ」

 

本来ならフォーマットとフィッティングは試合前に済ませておくものだが、時間が無いためそれは叶わないようだ

 

「この程度の障害、男子たるもの軽く超えて見せろ。織斑」

 

 

ガコンッ

 

 

音が鳴りピットの搬入口が開く。上下の防壁扉の向こう側にいた一機のISが、自らの操縦者を待っているかのように待機していた

 

「これが……」

「はい!織斑くんの専用IS『白式』です!」

 

 これが一夏の専用機ね。このISのデータはあいつとの戦闘中に取らせてもらおうかしら。

 

「すぐに装着しろ。フォーマットとフィッティングは実戦でやれ」

 

一夏は千冬に言われた通り、白式を装着していく

 

「背中を預けるように、ああそうだ。座る感じでいい。後はシステムが最適化をする」

 

白式から空気を抜く音が聞こえる。ハイパーセンサーが無事、起動したようだ

 

「白式をリンク正常―――」

「無事起き上がったようだな。一夏、気分は悪くないか?」

 

 あら?今千冬が一夏のことを名前で呼んだわね。なんでかしら。

 

「大丈夫、千冬姉。いける」

「そうか」

 

 なんだ、そういうことね。今千冬は一夏のことを家族として心配して……って別に睨まなくてもいいじゃない。

 

「どうかした?織斑先生」

「オリジン。今何か思ったか?」

「いえ、特になにも」

「……そうか」

 

 千冬は読心術を身に着けているのかしら?というか人の枠からはみ出てないかしら?

 

「箒!」

「な、なんだっ?」

「言ってくる」

「あ、ああ。勝ってこい」

 

一夏は箒にそう告げると、マキナの方を向く

 

「マキナもありがとな」

「感謝してるなら勝ってきなさいよ」

「ああ!」

 

 一夏はそう言ってアリーナへ飛び立った。さて、私があいつのISについて教えたとはいえ、IS戦は初めてだ、どこまでやれるか見ものね。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 結果から言うと、一夏は負けた。ブルーティアーズのスペックやら武装データやらを教えたのに負けたのだ。でも、初心者にしては善戦した方だったらしいわ。らしいっていうのは公平に対決するために私は試合が始まってから更衣室で待機していた。

 

最初は一方的な展開だった。そもそも起動時間が少ない一夏が、これまで訓練を積んできたセシリアとは明確な差がある。さらに、ブルーティアーズはレーザーライフルやBT兵器の得意距離が遠距離、対する白式は近接ブレード一本という初心者が使うようなものではなかった

 

そして、試合開始から30分近くが経過したとき、接近した一夏にセシリアのミサイルが直撃した瞬間にファースト・シフトが完了したのだ。さらに、ブレードの銘は『雪片弐型』は自分のシールドエネルギーを攻撃用に変換して使用する諸刃の剣だ。つまり、一夏が負けたのは、自分の武器のこともよく知らずに使ったら負けた、というなんともダサい負け方である

 

「なにが、千冬姉の名前を守る。だ、武器の特性も知らずに使うからこうなる」

「ぐっ!」

「負け犬」

「うぐっ!」

 

 一夏は今、千冬と箒から言葉責めされている。

 

「マキナも悪い、負けちまった」

「いいのよ、そんなに期待してなかったから」

 

 その言葉を聞いて一夏はさらに落ち込んでしまった。

 

「さてと、次は私の番ね」

 

そう言うとマキナはISの手と足の装甲だけ展開しカタパルトに乗る

 

『あれ?オリジンさん、ISの展開はそれだけですか?』

「ええ、残りはアリーナで展開するから大丈夫よ」

『そうですか、分かりました。では射出します』

 

 射出までのカウントダウンが始まる。ここは名前を叫んだ方がいいのかしら。

 

「 『デウス・エクス』マキナ。出撃する!」

 

カウントダウン終了と同時にマキナがアリーナに飛び立つ。そこにはスターライトMK―Ⅲを構え、ビットを左右に待機させているセシリアがいた。セシリアはマキナを確認すると口を開いた

 

「オリジンさん、まずは先日の無礼な発言について謝罪いたしますわ」

 

マキナは意外そうな顔をする。この手の人間は中々治らないはずだからだ

 

「私が勝手にイラつてただけだから謝らなくてもいいわよ。でも、考え方が変わるなんて何かあったのかしら?」

 

 大方、一夏のまっすぐな瞳にやられたとか、信念にやられたとかでしょうけど。

 

「い、いえ、それは……」

 

 顔を赤らめて言ったら丸分かりだ。やっぱり、惚れたのか。これで二人目だ、どこまで増えるの意外と楽しみなのよね。

 

「まあいいわ、それじゃあ始めましょうか」

 

セシリアは赤い顔を切り替えるがマキナが何も持っていないことに疑問を浮かべる

 

「あの、あなたの武装は?」

「そんなに焦らなくても今展開するわよ」

 

そう言うと、マキナの周りに粒子が集まっていき武装が展開される

 

「な、なんであなたもビットを使えるんですの!?」

 

セシリアはマキナが展開した武装に驚きを隠せない様子だ。なぜならマキナが展開した物は、楕円形の円盤が四つだ。それぞれが薔薇の花のような装甲に守られている。さらに特徴的なのは、その四つすべてがマキナの周りを浮いており、誰がどう見てもビットにしか見えないのだ

 

「誰も、私がビットを使えないなんて言ってないでしょ?」

「確かにそうですけれど……」

「それじゃあ、おしゃべりはこのぐらいにして、始めましょうか」

「そうですわね」

 

マキナはビットを、セシリアはスターライトMK―Ⅲをすぐさま撃てるように構える。そして試合開始を告げるブザーがアリーナに鳴り響く

 

「踊ってもらいますわ!わたくしとブルーティアーズの奏でるワルツで!」

「それは楽しみね、でも機械仕掛けの舞台に未熟な演奏者はいらないわ」

 

先に攻撃はセシリアだ。スターライトMK―Ⅲを撃つ、しかしマキナは避けようともせず、ビットの装甲部で受け止める。装甲を見ると、あまり傷がついていないようだ

 

「なるほど、その武器の威力はその程度なのね」

「ビットにしては硬すぎませんこと!?」

「何勘違いしているのかしら?そこはただの装甲よ」

 

そう言うとマキナは、楕円状のビットにエネルギーを溜める

 

「ビットは中央にある部分よ!」

 

マキナは四つのビットから特大のビームが発射される。それを見たセシリアは上に逃げるが、並走していたビットが二つ巻き込まれる。マキナは元からセシリアを狙っておらず、相手の手数を減らす目的でビームを放ったのだ

 

「いきなりこちらの手を封じてくるとは、やりますわね―――っ!?」

 

続けて放たれるビームを躱し切れずに右足を掠める

 

「しゃべってる暇なんて無いわよ、ほら頑張りなさい」

 

次々と向かってくるビームをセシリアは躱しているがビットのことまで考えてる余裕がないようだ。その証拠にすでに残りのビットが撃墜されている。だがセシリアも一方的にやられているわけでは無い、チャージ中の隙にスターライトMK―Ⅲを撃っている。しかしその射撃はすべてビットの装甲部で受け止められている

 

「次のは躱し切れるかしら?」

 

セシリアは変化を感じ取ったらしく、やられる前にスターライトMK―Ⅲを撃とうとしたがマキナの方が早かった。ビットから放たれたビームは先ほどのような大きなものでは無い。一つのビットから放たれたビームの数

 

およそ三十―――それが四つのビットから同時に飛んでくるのだ、躱せるようなものではない

 

「なんですのこの数!?」

 

セシリアは必死に回避を試みるが、数が多すぎて躱し切れずに被弾する。一度被弾するとビーム自体は小型だが衝撃が強かったのだろう、体に当たり上体が後ろに仰け反る。その間にも光の壁は迫ってきている。セシリアはとっさにスターライトMK―Ⅲを盾代わりに前にかざす。

 

「くっ!キャアアアアアア!!」

 

が、タダの武器が攻撃に耐えられる訳が無く、スターライトMK―Ⅲが爆散する。セシリアが光の壁に呑みこまれていくの見てを、観戦していた生徒たちは呆然としていた。中にはセシリアの立場を自分に置き換えて想像してしまい顔が青褪めている生徒もいる

 

「あら、意外と頑丈なようね」

 

煙の中から現れたブルーティアーズは装甲が所々無くなっており、あったとしてもヒビが入っている。そして、マキナのビットがセシリアの周りを囲む

 

「どうする?まだ続けるかしら」

 

セシリアは周りを見る。現状を理解したのだろう、両手を上げて

 

「こ、降参いたしますわ」

 

そう宣言した

 

『勝者 マキナ・オリジン』

 

 まあ、ざっとこんなものかしらね。それよりセシリア、ちゃんと動けるかしら。運んであげましょうかね。

 

 

 

 

 

 

~一夏side~

 

『勝者 マキナ・オリジン』

 

「す、すげぇ……」

 

 マキナのやつ一発も被弾せずにセシリアに勝っちまった。……俺もあんな風に強くなりてえな。そんなことを考えているとマキナがセシリアを送ってISを解除してこっちのピットに帰ってきた。

 

「おめでとう、凄かったぜマキナ!」

「ありがとう」

 

 そう言ってマキナは笑顔を向けてくる。その笑顔に少しドキッとしてしまう。

 

「そ、それでさマキナ。これからISの訓練をしてくれないか?」

「なっ!一夏!それは私が「なぜかしら?」―――ああもう!」

 

 箒が拗ねちまった。後で謝っておかなきゃな。

 

「だって、マキナって強いから教わったら俺も誰かを守れるぐらい強くなれると思って」

 

 マキナは少し考える様子を見せるとこう言ってきた。

 

「私の強さを目標にするのは間違いよ、だって私のはそう在るべくして在る作られた強さなのよ」

 

 目標にするなら織斑先生を目標にしなさい。そう言ってマキナはピットから出て行った。

 

翌日、一夏はマキナの言っていた、『作られた強さ』について考えており寝不足になった一夏は昨日の鬱憤が溜まっている箒に叩き起こされたそうだ




今回はどうでしたでしょうか、マキナのISについての設定は後日投稿します。次回は中華が来ますよ

感想、アドバイス、その他諸々があったら気軽に書いてください。


それでは、また次回ィ!


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第四話:良いサブタイが思い付かない

皆さん今回の投稿がいつもより遅れてしまい、すいませんでした。理由はテスト2割、友達と一緒にゲームをしていたのが8割です。もっと早く投稿できたはずなんですけどね。あ、あと鈴まで行けませんでした。それではどうぞぉ!


~マキナside~

 

「では、一年一組代表は織斑一夏くんで決定です。あ、一つながりでいい感じですね」

 

クラス代表決定戦の翌日のSHR。教壇に立つ真耶の言葉に周りからは拍手が起きた。対象の一夏はどうしてこうなった、と言わんばかりに頭を抱えていた

 

「先生、質問です」

「はい、織斑くん」

「俺、昨日の試合に負けたんですが、どうして俺が?」

「それは―――」

「それはわたくしが辞退したからですわ!」

 

セシリアが立ち上がり妙に高いテンションで宣言した。

 

「確かにわたくしは勝ちました。しかしそれは考えてみれば当然の事。なにせわたくしが相手だったのですから。それでまあわたくしにしても、大人げなく怒ったことを反省しまして。『一夏さん』にクラス代表を譲ることにしましたわ。何せIS操縦には実戦が何よりの糧。クラス代表となれば戦いには事欠きませんもの」

 

セシリアの言葉に他の生徒たちも賛同する。

 

「だ、だったらマキナはどうなんだ?セシリアに勝ったじゃないか」

「あら、私はクラス代表には推薦どころか立候補すらしてないわよ」

 

 何を言ってるのかしらね一夏は、さてと今日の一時間目は……

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、オリジン、見本として実際に飛んで見せろ」

 

一組の専用機持ちが前に呼び出される

 

「まずはISの展開からだ。やれ」

 

 千冬の指示に従い、ISを展開する。

 

 私のISの待機形態は右手の薬指にある指輪だ。薬指には神への神聖な誓いをする指といわれてるらしい。神に仕えている私に丁度良い待機形態だ。

 

「織斑、集中しろ」

 

 千冬の叱咤が飛ぶ。横と見ると一夏はまだ展開できていなかった。セシリアは伊達に代表候補生を名乗ってないだけあって結構早いわね。少しして一夏も展開を終える。

 

「よし、飛べ」

 

 千冬の合図で飛び立つ。一気に上昇していく、ある程度の所まで来て、私、セシリア、遅れて一夏の順で停止する。

 

「何をやっている織斑。スペック上の出力はデウス・エクスはともかく、ブルーティアーズより白式の方が上だぞ」

 

 一夏は本日二回目のお叱りを受けた。今日は何回かしらね~

 

「と言われても、『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』って言うのがまだ感覚を掴めていないんだよなぁ」

「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を探す方が建設的でしてよ」

「なるほどな、参考までに聞きたいんだけど。マキナはどんなイメージなんだ?」

 

 イメージか……なんて答えればいいのかしら。とりあえずありのままを伝えましょうかね。

 

「イメージなんてしてないわよ。飛べるから飛んでる、それだけよ」

「な、なんか格というか、そんなものが違うな」

「とりあえず練習すれば自然に飛べるようになるわよ」

 

 少なくとも私は、人間にとって練習は嘘をつかないと思ってるわ。

 

「とにかく練習あるのみって事か」

 

 そこまで話したところで千冬が次の指示を出してきた。

 

「次は急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ」

「了解です。でお二人ともお先に」

 

 一番最初にセシリアが急降下していく。そして……停止。やっぱり上手いわね。伊達に代表候補生やってないって訳ね。

 

「次は私が行くわね」

 

そう言って、瞬時加速《イグニッションブースト》を使用して地表に近づいていくマキナ。地表十センチ近くで下に向いていた体をPIC《パッシブイナーシャルキャンセラー》と体を振った際の勢いで一瞬にして上に向ける。

それを見ていた他の生徒たちから拍手が起こる

 

「はぁ……技術は認めるがあまりその様な無茶をするなよ」

「大丈夫よ、織斑先生。私、頑丈だし」

「織斑先生、今の危ないんですか?」

 

 私と千冬の会話に疑問を持った生徒が質問してくる。

 

「ああ、今のは最悪、内臓が潰れる。お前らは真似するなよ」

 

 皆の顔が青褪めちゃったじゃない。千冬もそんなこと言わなくても……ああ、教師だから言わないといけないのか。

 

「マッキー、大丈夫~?」

 

 本音が心配そうな顔をしながら声を掛けてくる。

 

「心配しなくても大丈夫よ、さっきも言ったけど体は頑丈だから」

 

 心配させないように笑顔を作り、頭を撫でると本音は気持ちよさそうに目を細めている。やっぱりこの娘は癒されるわぁ……

 

「でも、後でちゃんと検査受けてね」

「ええ、分かってるわ」

 

 叶うはずのない約束をした所で一夏が降下を始める。あれ降りるっていうより……そこまで思ったところで一夏が落ちてきて、グランドにクレーターを作った。

 

「誰がグランドにクレーターを作れと言った」

「いや……その……」

「後で埋めておけよ」

「は、はい……」

 

 一夏が穴から出てきた。次で最後かしら。

 

「さて、次に行くか。次は武器の展開をしてもらう。まずは織斑」

 

 千冬に言われて雪片弐型を展開する一夏。その間、約一秒。

 

「まだ遅いな。まずは0.5秒を目指せ」

 

 千冬は厳しいわね。一週間でこれなら良い方だとおもんだけれど。

 

「次はオルコット」

「はい!」

 

 返事と共に腕を横に向け、武器を呼び出すセシリア。ポーズはよく分からないけど一夏よりは早いわね。

 

「流石、代表候補生と言ったところか。しかし、そのポーズは直せ。誰に向かって撃つ気だ、正面で展開できるようにしろ」

「で、ですが、これはわたくしのイメージを纏めるために必要な―――」

「直せ。いいな」

 

 千冬からしたら隙だらけな呼び出し方は早い内に直した方がいいと思ったのでしょうね。

 

「オルコット、次は近接武器をてんかいしろ」

「えっ、はっ、はい」

 

 レーザーライフルを収納して、近接武器を展開しようとするが、中々出てこない。

 

「まだか?」

「も、もうすぐです。―――ああ、もうっ!インターセプター!」

 

 やけくそになって武器の名前を呼んで展開するセシリア。教科書に書かれてる初心者用のやり方で展開したけど近接武器には慣れてないのでしょうね。

 

「……何秒かかっている。実戦でも待ってもらうつもりか」

「じ、実戦では近接武器の間合いに入らせませんわ!だから、問題ありません!」

「ほう、織斑との対戦で初心者に懐に入られていたようだが?」

 

 射撃特化でも、近接武器の展開速度は早くないといけないわね。まあ、私は近接武器自体を持ってないけれど。

 

「最後はオリジンだ」

「分かったわ」

 

 そう言われてビットを展開する。

 

「0.1秒。早いな」

「このぐらい普通にできるわよ」

 

 さっきから皆の顔が面白いわ。青くなったり驚いたり。

 

「他の武器は無いのか?」

「一応、掌にビームの発射口があるわ。撃ってみる?」

 

 千冬は少し考えてから今日はやらなくてもいいと言ってきた。

 

「それじゃあ近接武器はあるのか?」

 

 そう聞かれた私はビットを撫でながら答えた。

 

「このビットが自分に向かって飛んできたら痛いと思わない?」

「なるほど、大体は分かった」

 

千冬は生徒たちの方に向き直り

 

「当たり前だが、ISも反復練習が重要だ。基本的な技術が今出来なくても、何度も繰り返して練習しろ。目標はオリジン……とは言わんが目標は高ければ高いほど良いからな、精進しろ。良いな」

「「「「「はい!」」」」」

 

締めの言葉を言って授業は終わった

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 昼休み、私は本音と他の生徒―――鏡ナギと夜竹さやか―――と一緒に昼食を食べている。そういえば―――

 

「本音、貴女たまに夜遅く帰ってくるけど、どうしたの?」

 

 本音がゲテモノお茶漬けを飲み込んでから答える。

 

「えっとね~かんちゃんの所にいるよ~」

「かんちゃん?」

 

 かんちゃんとは誰だろう。本音の友達ということは分かるのだけど……

 

「かんちゃんっていうのはね、本音の幼馴染の更識簪さんのことだよ」

 

 なるほど更識か……姉とは関係無いのでしょうけど会ってみたいわね。

 

「本音、その簪に会ってみてもいいかしら?」

「いいと思うよ~かんちゃんは第三整備室にいるよ~」

「分かったわ、ありがとうね本音」

 

 そう言って本音の頭を撫でる。なんだか最近、本音の頭を撫でるのが癖になってきてる気がするわ……

 

 

 

 

そして放課後になりマキナは本音と一緒に第三整備室に来ていた。本音は今回も簪を手伝おうと思い、整備室に来ていた。否、今回も、というより今回こそと言うべきだろう。本音は何度も手伝おうとしているのだが、簪が一人でやると言って言って聞かないのだ。説明してる内に整備室に着いたようだ

 

「かんちゃ~ん、手伝いに来たよ~」

 

 その声に気付いていないのか、水色の髪の少女はキーボードを弾いて何か打っているようだ。彼女が本音の言っていた簪ね。

 

「かんちゃ~ん気づいてよ~」

 

 そう言って本音が簪の肩を揺さぶる。

 

「本音…止めて…」

 

 本当に止めてほしそうな目で簪は本音を見ている。すると、こっちと目が合った。挨拶ぐらいはしておこう。

 

「初めまして、更識簪さん。マキナ・オリジンよ」

「ど、どうして名前を?」

「えへへ~私が教えたんだよ~」

「なんで?」

 

 本音がそう聞かれると少し赤くして嬉しそうな顔をした。

 

「マッキーがね、私の帰りが遅いのを心配してくれたんだ~」

「そういうことよ。私が心配して、貴女の所にいるって教えてくれたからここに来たのよ」

 

マキナがそう言うと簪は遅くまで残らせたことを怒られるのかと思い身構えてしまう

 

「別に怒りに来たわけじゃないわよ、更識楯無の妹がどんな人か知りたかっただけよ」

「あ、あなたも……」

「ん?」

「あなたも私のことをあの人の付属品だって思ってるの?」

 

 簪が目を鋭くしてそう言ってくる。……なるほど、大方、姉と比べられてきたからそれがコンプレックスになってるってとこかしらね。

 

「そんなこと考えてないわよ。貴女は貴女。姉は姉じゃない」

 

 簪が驚いた様に目を丸くしてこちらを見てくる。人間なんだからそれぞれが違うのは当たり前だと思うのだけれど。

 

「あ…ありがとう…」

「どういたしまして?」

 

 それじゃあ、そろそろ部屋に帰ろうかしら。……ああそうだ。

 

「そこのプログラムの数値、一部間違ってるわよ」

 

 そう言って間違っている所に指を指す。簪がそこを見て驚いている。

 

「偶には周りに頼ることもしなさいよ。一人じゃ出来ることなんて限られているのだから」

 

 ご主人様だって私に頼ることもあるのだから、人間一人に出来ることなんて高が知れている。

 

そしてマキナは、簪に背を向け手を振りながら去って行く。

 

 

本音と簪以外の誰かの視線を感じながら……

 

 

 

 

 

 

~簪side~

 

 あんなこと言ってくれた人、初めてだ。初めてあの人を知っている人から私を私と扱ってくれる人に出会えた。

……周りを頼れ、か……まだ一人でやろうと思うけど、本当に行き詰ったらまずは本音に頼ってみようかな。あと、オリジンさんとも、もっと話してみたいな。……本音と一緒の部屋だったはず。……今度行ってみよう。




あれ?本音と簪の様子が…… 当初はこんなはずじゃ無かったのに、どうしてこうなった…… どんどん百合に向かって走っている気が

次回は鈴登場です。どこまで書けるんでしょうね。

それでは、また次回。


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第五話:生徒会長と書いてシスコンと読む

~マキナside~

 

「「「織斑君クラス代表おめでとう!!」」」

 

マキナが簪と会った翌日の放課後、食堂の一部を貸切でパーティーが行われていた。パーティーの主催は一年一組の生徒たちであり、そこには『織斑 一夏君 クラス代表おめでとう』の垂れ幕が下げられていた

そう、これは一夏のクラス代表決定を祝うパーティーだ。そしてその主賓である一夏は、会場の真ん中で苦笑しながらジュースを啜っていた。一夏としては代表決定戦ではセシリアに負けているのに、皆から祝ってもらえるのは、嬉しいがそれとは話が別である……何ともしがたいものがあるのだろう

しかも、よく見れば一組以外の生徒もいた。いつもはあまり見れない一夏をよく見る機会だからだろう、注目度が高くなっている。そのせいで一夏の気まずさに拍車をかけた

 

「これでクラス対抗戦も盛り上がるねぇ」

「うんうん」

「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」

「そうそう」

 

一夏がものすごく気まずく感じている中、クラスの女子たちは口々にそうはしゃいでいた。彼女たちは楽しめれば何だって良いらしい

 

「頑張ってね、織斑君」

「私たちの食券フリーパスのために!」

「織斑君が勝てばみんなが嬉しいから」

 

そう女子たちに応援される一夏は苦笑しながら応じる。殆ど私欲だが、応援されているから一夏は有り難いと思っているのだろう。そこに箒が近づいていく

 

「……人気者だな、一夏」

「本当にそう見えるか?」

 

ふんっ、と言って箒はそっぽを向いてしまう。一夏が周りからちやほやされて拗ねているのだろう

 

「あ、いたいた。織斑く~ん!」

 

そう一夏に声をかけてきたのは、眼鏡をかけた女子生徒だった。胸元には黄色のリボンが付いており、二年生のようだ

 

「えっと、あなたは?」

「私は新聞部副部長の黛薫子です。話題の新入生のインタビューに来ました」

 

世界初の男性操縦者がクラス代表になった。これ以上話題性のあるものは少ないだろう。そして、一夏が前時代的なことを言ったり、薫子が捏造を宣言した所でこの物語の主人公であるマキナが遅れて到着した

 

「遅れてごめんなさいね」

 

 簪と話してたら遅れちゃったわ、意外と話せるのよねあの娘。アニメとか特撮とか。そう考えていると二年生であろう人物と本音が近付いてきた。

 

「こんばんは。私は黛薫子、新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」

「あら、ありがとう。それで何か用かしら?」

「男性操縦者の次に話題性のある人にインタビューしようと思って。ちなみに残すはオリジンさんだけだよ」

 

 なるほど、ご主人様は何か質問されたら体の事以外は話して良いと言っていたから、受けても大丈夫ね。

 

「いいわよ。それで何が聞きたいのかしら?」

 

「んーそうねぇ……それじゃあ、マクスウェル博士との関係は?」

 

そう聞かれてマキナの目が否、目だけではなく纏っている雰囲気そのものが変わった

 

「私とご主人様との関係は、切っても切れぬ縁で結ばれていると思っているわ。ご主人様がいなければ、今の私はいないもの。あの方の命令ならなんでも聞くことができるわ。それに―――」

「す、ストップ!そこまでで十分だから」

 

まだまだ話したいことはあるのに。そう言って少し拗ねるマキナ。今のセリフを息継ぎなしで言ったのだ、止めなかったらさらに時間が掛かり、パーティーが終わってしまうだろう

 

「それじゃあ、専用機持ち三人で写真撮影しようか」

 

その後はセシリアが一夏の隣になって顔を赤くしたり、一組の謎の団結力が三人の写真を集合写真に変えたりしていた。ちなみにマキナの隣はしっかりと本音が確保していた

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 次の日の朝。一組はあるひとつの話題で持ちきりだった。どうやら二組に転校生が来るらしい。IS学園に編入してくるとなると入試以上に厳しい試験と国の推薦が必要だ。つまりは―――

 

「中国の代表候補生が来るんだってさー」

 

 ということらしい。代表候補生ということは一夏のデータ取りもしくは、私が狙いだろう。そして我がクラスの代表候補生と言えば、

 

「あら、今更わたくしの存在を危ぶんでの転入かしら」

 

 今日もいつも通りのセシリアである。

 

「ねえねえマッキー」

「どうしたの本音」

「今回も勝負しろって言われたら戦うの?」

「ええそうよ。それがどうかしたの?」

 

 すると心配そうな顔をしてこちらを覗き込んでいる本音の顔を見えた。まったくこの娘は

 

「心配しなくても大丈夫よ。負けもしないし、怪我もしないわ」

 

 そう言って本音の頭を撫でる。この娘は優しすぎるわね、私が元の世界に戻る時、大丈夫なのかしら。

 

余談だが、本音を撫でてている時のマキナの表情は慈愛に満ちた表情らしい。そのおかげかマキナは本音の保護者と呼ばれている

そして生徒たちがフリーパスがどうたら専用機持ちは一組と四組だけだから楽勝だとか言っていると

 

「―――その情報、古いよ」

 

 声のした方、教室の入り口にみんなの視線が集中する。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないわ」

 

 腕を組み、片膝を立てて、全体的な部分が小柄な少女がドアにもたれ掛かっている。

 

「鈴……?お前、鈴か?」

「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

「何かっこつけてるんだ?すげえ似合わないぞ」

 

 一夏の知り合いみたいね。中国の代表候補生と知り合いなんて、意外と顔が広いのね。

 

「んなっ……!?なんてこと言うのよ、アンタは!」

 

 こっちの口調が素らしい。ツインテールを振り乱して憤慨する鈴音の後ろに黒の鬼が見えた。

 

「おい」

「何よ!今こっ…ち…は…」

 

 鈴音は黒の鬼―――千冬が腕を組んで睨んでいる―――を見ると徐々に声が小さくなる。蛇に睨まれた蛙のようだ。

 

「邪魔だ、凰。もうHRの時間だ、早く帰れ」

「ち、千冬さん……」

「織斑先生だ。一発くらいたいか?」

「い、いえ……失礼しました」

 

 そう言って自分のクラスに向かって行く途中振り返って一夏に、

 

「また来るからね!逃げないでよ一夏!」

 

 と言い残して帰って行った。その後は一夏と鈴音の関係が気になった箒とセシリア、他の生徒たちが一夏に詰め寄ったがすべて千冬の出席簿の餌食となった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

昼休み。マキナは一夏に誘われて、箒、セシリア、本音と一緒に学食に来ていた。久しぶりに一夏達と食べるわね。などと考えていると学食についた。そこには

 

「待ってたわよ、一夏!」

 

バーン!!と彼女らの前に鈴が立ちふさがった。その手にはラーメンが鎮座しているトレイがあった

 

「鈴、そこだと他の人の邪魔になるぞ。あとラーメンがのびる」

「わ、分かってるわよ!だいたい、アンタを待ってたのになんでもっと早く来ないのよ!」

 

とは言っても、鈴は昼休みに会う約束をしていたわけでもないのに、どうやって待っているのを知れと言うのだろう

そしてマキナ達全員が食事を取り席に座る。箒とセシリアは急に現れた一夏と親しい鈴を威嚇している

 

「鈴、いつ日本に帰ってきたんだ?おばさん元気か?いつの間に代表候補生になったんだ?」

「質問ばっかしないでよ」

 

一夏が鈴にばかりかまっているせいか、箒とセシリアが凄い顔をしている。その顔が凄すぎて周りの生徒たちが、若干引いてしまっている

 

「一夏、そろそろどういう関係か説明しろ」

「そうですわ!一夏さん、ま、まさかこちらの片と付き合ってらっしゃるの!?」

 

二人は既に我慢の限界らしい

 

「べ、べべ、別にあたしたちは付き合ってるわけじゃ……」

「そうだぞ、なんでそうなるんだ。鈴はただの幼馴染だよ」

「…………」

「鈴?何睨んでるんだ?」

「なんでもないわよ!」

 

またしてもこの朴念仁は悲しみを一つ生み出してしまった。そこで鈴が何か思い出したような声を上げた

 

「そういえばアンタのクラスにオリジンって人いるのよね。紹介してくれないかしら」

「あぁ、それなら」

「それなら私よ」

 

隣から聞こえてきた声に鈴が驚く。しかしすぐに気を取り直しマキナを品定めするかのように見つめる

 

「それで、鈴音は国からの命令で私と勝負したいのかしら?」

「ええ、最初はそれだけだったけど……アンタと純粋に勝負してみたいわ」

 

マキナはクスッと笑い、満足そうな笑みを浮かべた

 

「いいわよ、いつにする?私はいつでもいいわ」

「だったら、クラス対抗戦が終わってからやるわよ」

「わかったわ、それじゃあアリーナの申請よろしくね」

 

そう言ってマキナは既に昼食を食べ終わっていたらしく、食器を片づけに行った

 

その後は、一夏の訓練について言い争いがあったのだがそれはまた別の話である

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

放課後、本音と一緒に夕食を摂り部屋に戻る途中、マキナが用事を思い出したと言って本音を先に帰した

 

「そろそろ出てきなさい、生徒会長さん?」

 

 廊下の角から青い髪をしたどこか簪と似ている人間が出てきた。

 

「あらあら、いつからばれていたのかしら」

「入学式の日からずっとよ」

 

 正直言うと、初日から目をつけられてうんざりしていた所だ。

 

「そんなに早くからばれていたなんて、お姉さん自身無くしちゃうわ~」

 

 シクシク、と言いながら手に持った扇子で口元を隠す。誰かに似ている気がする……

 

「それで、更識家の当主が何の用かしら」

「……そんな所までばれていたのね」

 

 楯無が口元を隠しながら目を鋭くしてきた。大方、学校に何かしでかさないか釘を刺しに来たのだろう。

 

「それで用っていうのはね」

 

 この空間に静寂が広がる。その静寂を打ち破った言葉は

 

「簪ちゃんにあまり近づかないでちょうだい」

 

 

 

 

 

 

~楯無side~

 

 私の言葉を聞いたマキナちゃんが呆れたような目をしてこちらを見ている。姉が妹を心配するのがそんなに不思議かしら?

 

「何?学校に手を出すなって釘を刺しに来たんじゃないの?」

「それは別に大丈夫よ。あなたはマクスウェル博士の命令じゃないと動かないんでしょ?博士がここを襲撃するメリットが無いから心配ないわ。そんなことより」

 

 私にとっては学校の心配より簪ちゃんの心配の方が重要だ。

 

「なんで近づいたら駄目なのかしら?」

「それはね……

 

 

 

 

簪ちゃんと楽しそうに話してて羨ましいからよ!!」

 

 またしても場が静寂に包まれる。……私変なこと言ったかしら。

 

 

 

 

 

 

~マキナside~

 

 急に何を言ってるのかしらこの人……俗に言うシスコンって呼ばれる人種なのね。この学校、特殊な人種が多すぎないかしら……

 

「そんなに羨ましいなら直接話せばいいじゃない」

 

 すると何か苦い顔をして目を伏せる。

 

「何?何か話せない理由でもあるのかしら?」

 

 暫くして楯無が重そうな口を開いて言ってきた。

 

「実は、簪ちゃんにね―――」

 

 そして楯無が簪になにをしたのかを聞いた。要約すると、更識家の跡取りとして楯無と簪の二人はいつも比べられ続けていた。簪は楯無に比べいつも劣っていたらしい。楯無は当主に、簪は更識家の出来損ない。と呼ばれていたらしい。そんな簪を見た楯無は、『あなたは無能なままでいなさい』と言ってしまったらしい。

 楯無は簪を守るために行ったらしいが、無能なままでいろ、というのはどうかと思うがまだ子供だったからという言い訳をしてくれた。これで要約できたかしら?

 

「そんなの、さっさと仲直りしなさいよ」

「これ以上嫌われたらどうしようかと思ったら怖くて……」

「ヘタレね。それ以上嫌われるわけないじゃない」

 

 楯無がうぅ、と呻き声を上げてさらに落ち込む。

 

「というか簪は貴女を完璧な人間だと思っているから敬遠してるんじゃないのかしら。もっと弱い所を見せたら何とかなるんじゃないの?」

「そんな簡単に言われても……」

 

 折角仲直りが出来るかも知れないというのにいつまでもこのままじゃ埒が明かない。

 

「だったら私が二人の関係を修復してあげるわ」

 

 その言葉を聞き、楯無が勢いよく顔を上げる。そして、さっさと教えろと言わんばかりに近づいてくる。

 

「方法はまだ言わないわ、その時を楽しみして待っていなさい。それじゃあね」

 

 意外と時間が掛かってしまった。本音が待っているだろうから楯無に背を向け少し早足で自分の部屋へと向かう。ふふっ、いつ二人を引き合わせようかしら。短い時間しか生きれない人間にはあまり悔いを残さずに最期を迎えてほしいからね。




今回の話はどうでしたでしょうか?ちゃんと書けてればいいのですが。
次回の投稿は遅れると思います。理由は明日から三泊四日の修学旅行に行くからです。

また次回! そいぎんたー


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第六話:無人機襲来

お待たせしましたぁ!!修学旅行は一日目のホテルが一番楽しかった赤目です!今回は無人機襲撃ですがセシリア戦と同じ様に戦闘と言う名の蹂躙です。タグにディバゲ組チートのタグを付けた方がいいかもしれませんね。

それではどうぞ!


~NOTside~

 

五月、クラス対抗戦当日

 

第二アリーナ第一試合。組み合わせは、世界初の貴重な男性操縦者である一夏 対、一年で中国の代表候補生まで上り詰めた鈴。話題性は十分なようで、観客席は全て埋まっており、立ち見の生徒までいる始末だ

そんな、人でごった返す観客席にマキナの姿もあった。隣には本音が座っていて、そのさらに隣にはさゆかとナギが座っている

一夏と鈴はアリーナ中央にて既にISを展開して向かい合っている。二人は何か話しているようだ

 

「あの二人、何話してるんだろうね~」

 

先程、マキナの隣と言ったが訂正しよう。いつのまにやらマキナの足の上にちょこんと座っている本音から疑問の声が上がる

 

「最近あの二人は喧嘩してたみたいだからそれの続きでしょうね」

 

そう言いながらマキナは本音の頭を撫でる。マキナ曰く、本音は癒しの塊らしい。そんな二人を見ているさゆかとナギを含めた周りの生徒たちも癒されているらしく、顔をだらしなく歪ませている

 

 

 

マキナが本音の頭を撫でていると試合開始のブザーが鳴った。ブザーが鳴り終わった直後、二人は真正面から激突した。斬りかかった一夏の雪片弐型を鈴は二本の青竜刀《双天牙月》で受け止め、押し返す。体勢を崩した一夏は立て直す暇もなく追撃をもらってしまう。鈴は両手の青竜刀を器用に回転させ、あらゆる角度から切り込んでいく

 

相手に反撃の隙を与えず、一方的に攻撃を続けている所を見ると、鈴は代表候補生の名に恥じぬ技量があるようだで、一夏は試合開始時に踏み込んだ以外、防戦一方だ

 

このままでは埒が明かない。そう判断した一夏は一度距離を取った。鈴はそれを追わず―――

 

「甘いわよ一夏!」

 

鈴のIS『甲龍(シェンロン)』の二つの非固定浮遊部位(アンロックユニット)の装甲が開いた。その内部が一瞬光って―――一夏が見えない何かに吹き飛ばされた

 

「へぇ、あれが衝撃砲なのね」

 

一夏が吹っ飛ばされたのを見て、観客席のマキナが本音を撫でる手を止め興味深そうに呟いた

 

「衝撃砲?」

「なにそれ?」

 

マキナは本音を元の席に戻し、二人の問いに答えた

 

「空間に圧力をかけて砲身を作り、そこから余分な衝撃波を砲弾として撃つ兵器よ。砲弾が見えないから避けにくいわね」

 

へー、と二人が納得したような声を上げる。アリーナではいまだに試合は続いている。鈴が撃つ衝撃砲を一夏がかろうじて避けているが、被弾が無くなったわけでは無い。

鈴は中々当たらなくなってきた衝撃砲の出力を下げ、連射に特化させる。それをチャンスを思い一夏は被弾覚悟で鈴に瞬時加速を使い一気に接近し零落白夜を発動し斬りかかろうとしたとき

 

 

―――ズドオオオオオオオオンッ!!!

 

 

「!?」

 

アリーナ全体に轟音と衝撃が走った。アリーナ中央には煙が上がっており何かが落ちてきたことしか分からない。しかし、そこに落下するためにはアリーナのシールドを突き破ってこなければならない

 

状況が分からず混乱する一夏に鈴からのプライベート・チャンネルで通信が飛んできた

 

『一夏!試合は中止よ!今すぐピットに戻って!』

 

一体何が起こっているんだ、と一夏が思った瞬間、白式のハイパーセンサーが緊急警告を発した

 

〈【警告】熱源確認/所属不明のISと断定/ロックされています〉

 

「なっ―――」

 

それはつまり、煙の中にはアリーナのシールドを突き破れるほどの攻撃力を持つISが居るということであり、アリーナのものと同一であるISのシールドをも敵は貫通できる、ということを証明していた

 

 

 

 

 

 

~マキナside~

 

 緊急事態。これほど現状を表現するのに的確な言葉は他には無いでしょうね。

 正体不明のISがアリーナのシールドを破って乱入してきた。しかもそのISがアリーナ全体をハッキングしているらしく、出口がロックされ、非難が全く進まない。しかもアリーナのシールドレベルも上げられているようで、ステージで交戦中の二人の援護に教師部隊が出てこれていない。仕方ないわね―――

 

そしてマキナは携帯電話を取り出し、どこかに電話を掛けた。しばらくすると繋がったようだ

 

『やっほーマキナ、久しぶりだね』

「はい、お久しぶりです。ご主人様」

 

出てきた人物はマクスウェルだった

 

「ご主人様、急に電話を掛けて言うのもなんですが、折り入って頼みがあります」

『アリーナの扉のロックの解除でしょ?いいよーやってあげる」

 

なぜここに居ないマクスウェルがアリーナのことを知っているのかと言うと、何かイベントがある時はマキナの見ている光景を向こうでも見ているのだ

 

『それじゃあマキナは扉に今送った端末を接続してきて』

「かしこまりました。それではまた」

 

 そう言って電話を切る。アリーナの扉は間隔が空いてはいるがそこまで多いわけでは無い。そんなことより千冬への説明の方が面倒くさいわ。

 

千冬への説明を考えながらマキナは観客席を離れ、パニック状態の生徒たちを押し退けながら扉に近付き扉付近のパネルに送られてきた端末を接続する

 

「しばらくすれば扉が開くから落ち着いて避難しなさいよ」

 

 さっさと全部の扉に端末を挿してきましょうかね

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

全ての扉のロックを解除してマキナは逃げ遅れた生徒がいないか探していた。どこにもいないと思いマキナはISを展開し、正体不明機をスキャンした

 

(へえ、あれ束の所にあった無人機とほぼ一緒ね。そういえば設計図が一つ盗まれたって言っていたわね)

 

一夏と鈴が苦戦しているのでマキナも援護に向かおうとしたとき―――

 

『一夏ぁっ!!』

 

アリーナのスピーカーから聞いたことがある声が響いた。キーン……とハウリングが尾を引くその声は箒が中継室のマイクを使って発したものだった

 

『男なら……男なら、そのくらいの敵に勝てずしてなんとする!』

 

 信じられない……なんなのあの娘、戦闘中にそんなことしたら自分から撃ってくれって言ってるようなものじゃない。

 

案の定、敵ISは箒に反応した。一夏と鈴そっちのけで、巨大な腕を箒に向ける。その腕には大口径のレーザー砲が付いており、生身で受けたら塵も残さずに消えてしまうだろう

そう考えたマキナの行動は速かった。アリーナのシールドをビットを使って突き破り、敵ISのレーザーが放たれると同時に箒の前にビット四つを全て盾の様に広げて守る。

 

マキナ自身は両の掌についている発射口《アウェイク:マキナ》から発射されたビームで敵ISの両腕を吹き飛ばす。その後、敵ISに接近し頭部を掴むとアウェイク:マキナで消し飛ばした。

 

「三人とも、無事かしら?」

 

 箒の首根っこを掴み一夏に手渡す。今回の様な事は二度としてほしくないわね。

 

「あ、あぁ、こっちは無事だ。ありがとな箒を守ってくれて」

「いいのよあれぐらい、その代わりに後で何故あんなことをしたのか聞かせてもらうわね」

 

そう言いながらマキナ達はピットに向かって移動していく

 

―――――しかし、戦闘はまだ終わっていない

 

(ロックオン警告!?)

 

警告を受けたマキナは一夏と鈴、箒をピットに投げ飛ばしアリーナ中央に向かって瞬時加速を行う。その直後、マキナ達の居た場所にクレーターが作られた

マキナが上を見上げると、そのこには先ほど倒した無人機と同じ外見をしたISが一機、佇んでいた

 

「あなたたちはピットに避難していなさい!」

 

 出てこようとする一夏と鈴を制止させる。

 

「でも!一人だけじゃ!」

「シールドエネルギーがほぼ尽きてるお荷物を抱えて戦うより一人の方が楽に倒せるわ。だから下がってなさい」

 

二人に言い聞かせてマキナは無人機にビットによる射撃をしながら一気に近づいていく。無人機もその攻撃を受けるわけにもいかず、機体を捻らせ最小限の動きで避け反撃する。が、その時には既に回避時の隙を突いたマキナが目の前にいた

 

「消えろ鉄屑……」

 

振り抜いた右の拳が無人機の顔面を粉々にし吹き飛ばす。無人機は吹き飛ばされながら腕からレーザーを撃ち反撃する、しかしそんな攻撃も軽々と避けられてしまう。マキナはお返しに全てのビットから最大出力でビームを撃つ。アリーナのシールドに打ち付けられた無人機が避けられる筈もなく四肢が捥がれる

 

(後始末は教師部隊に任せればいいわよね)

 

そしてマキナは完全に沈黙した無人機を一瞥し一夏たちが待っているピットに戻って行く。その途中、教師たちがアリーナに入ってくるのが見えた

 

「あら、三人とも固まっちゃってどうしたのかしら?」

「いや、ただ俺たちがあれだけ苦戦したのをあんなに簡単に倒したから驚いてな」

「当たり前じゃない、あの程度の敵に苦戦してるようならあの方を守れないわ」

 

 そういえば最近はあまり強い敵もいなくて退屈してるのよね。

 

「それじゃあ、さっさと帰るわよ」

 

そう言ってマキナはISを解除し、一足先にアリーナを出て行く

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

放課後、マキナは事情聴取のために応接室に来ていた。千冬、真耶、楯無がそこには既に来ていた

 

「それで、私に聞きたいことは何かしら?」

「いわずとも分かっているだろう、アリーナの扉をハッキングしたことについてだ」

 

 予想通りね。だったらこっちも予定通りに進めましょうか。

 

そしてマキナは何も言わずに粒子化させていたパソコンを取り出し、マクスウェルにカメラ通話を繋げた。真耶が何か言おうとするが千冬に止められていた。暫くするとパソコンの画面にマクスウェルの顔が映し出された

 

『やっほーマキナ、さっきぶりだね』

「先程ぶりです、ご主人様」

 

千冬たち三人は普通に有名人が出てきたことに驚愕している様だ

 

『じゃあハッキングについては私が話すね。と言ってもマキナの頼みを聞いてあげただけなんだけどね』

「頼みと言うのは?」

 

千冬が疑問を呈する

 

『周りの人間がピンチだから助けてくれ、っていう簡単なものだよ。いや~私はマキナが人間らしくなってきてくれて感無量だよ』

「人間らしくというは?オリジンさんは人間なのでは?」

 

今度は、マクスウェルの言い方に疑問を持った真耶が質問する

 

『マキナは生まれがちょっと変わっててね。数年前までは私にすら感情を見せなかったからね』

「それで、ハッキングの方法は?」

 

生まれについては聞かない方がいいと思った楯無が質問する

 

『ああ、言うの忘れてたよ。それは簡単だよ、マキナに扉のセキュリティを読み取る端末を取り付けてもらって、そこからハッキングしてロックを解除しただけだよ』

 

意外と簡単だったよ。と続けて言う。すると後ろから千冬にとって聞きなれた声が聞こえてくる

 

『スーちゃん、そろそろこっち手伝って~』

『分かったよ~それじゃあ話はこの辺で。マキナ、今度はゆっくり話そうね』

「かしこまりました、楽しみにしております」

 

プツンッと音を立てて通話が終了する。そしてマキナが千冬たちにようやく口を開く

 

「それじゃあ私はもう帰っていいかしら」

 

いつもの口調に戻ったマキナに千冬が聞いてくる

 

「一つ、個人的なことを聞いてもいいか?」

「いいわよ」

「束はマクスウェル博士と一緒にいるのか?そして束は元気か?」

「それじゃ二つじゃない。まあいいわ、束はご主人様と一緒に暮らしていて元気だと思うわよ」

 

 そうか。と一言だけ言い千冬は安心した様に息をつく。やっぱり親友のことは大切にしているのね。私がご主人様以外に大切にするとしたら、本音と簪あたりかしらね。

 

「じゃあ私は部屋に帰ってもいいわよね」

「ああいいぞ、面倒を掛けてしまってすまないな」

「いいのよこのぐらい」

 

そう言ってマキナは応接室を出て自分の部屋に帰って行く

 

 

……そういえば余談ではあるが事情聴取の後マキナは箒の所に行き、翌日の日が昇る時間まで説教されたそうだ。箒は軽くトラウマになり数日の間マキナを見ると体が震えてしまっていたらしい




今回はどうでしたでしょうか?文字数が原作で言う一巻の内容が終わりましたね。原作持ってませんがね!次回からはシャルとラウラですね。シャルはどうしましょうかねぇ

感想、アドバイスなどがあればドンドン言ってください。

それではまた次回ィ!    


あ、因みに旅行先は九州でした


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第七話:告白

前回の投稿から間が空いてしまい申し訳ないです。今回はVS鈴、サブタイにもあるように告白となっております。

それではどうぞ


無人機襲撃から数日経った土曜日。マキナは鈴との勝負の約束を果たすため、第一アリーナに来ていた。マキナは既にアリーナ中央に出ているが鈴はまだピットにいるようだ。いったい何があったのだろうか―――――

 

 

 

 

~鈴side~

 

 私は今マキナと勝負の約束を取り付けたことを軽く後悔している。なんでかって言うと先日の無人機襲来で彼女があっさりと倒してしまったからだ。あんな風に倒したってことは少なくとも私よりは強いということだ。政府も事前にマキナの強さとか教えときなさいよ!あんなに強いなんて聞いてないわよ!今から止めるって言っても許してくれるかしら。いえ、きっとマキナは許しても国が許さないでしょうね……とりあえずやれるだけやりましょうか……とそこで聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「お~い鈴。ってどうしたんだそんな暗い顔して」

「あ、一夏。そりゃ実力が違うんだから暗くもなるわよ」

 

 参考ついでにセシリアとの試合も見たけど、手も足もださせずに勝利している。しかもマキナの厄介な所は全ての武装だ。遠距離ではビーム、近距離ではおそらくISの機能で強化しているであろう格闘だ。私のISなら遠距離で戦うのは論外、近距離でも勝てるかどうか分からない。近距離の武装もきっとあるのだろう。

 

「あー、何で悩んでるか分からないけど、近距離でなら勝てる可能性はあると思うぞ」

「え?なんで?」

「だってマキナは近接武器一個も無いって言ってたからな」

「その話本当!?」

「お、おう。本当だ。本人が言ってたからな」

 

 よし!これなら勝てるかもしれない。近接武器が無いなら開幕、一気に近づけば勝機はある!そうと決まればさっさとアリーナに行ってこよう。

 

「ありがとね!一夏!」

「ああ!頑張れよ!鈴ならできるって信じてるからな!」

 

 なっ、なんてこと言うのよあのバカ!一夏の声援を受けて私はアリーナに飛び立つ。そこには黄金の色をしたISを装着したマキナが佇んでいた。

 

 ……顔赤いのばれてないかしら。

 

 

 

 

~マキナside~

 

「遅かったわね。勝算は付いたのかしら?」

「遅れて悪かったわね。おかげでいい作戦が思い付いたわ」

「それは良かったわ。じゃあ始めましょうか」

 

 顔が赤いのには突っ込まない方がいいでしょうね。

 

     3

 

マキナがロサ:マキナを展開する

 

 

     2

 

鈴が双天牙月を両手で握りしめる

 

 

     1

 

両者ともに構える

 

 

     0

 

「っ!?」

 

 カウントダウンが終わると同時に私は鈴音と同じ様に瞬時加速を使い一気に接近する。鈴音は前に突っ込んで来るとは思っていなかったらしく体を一瞬硬直させ瞬時加速をしようとしていた体を止める。そしてすぐに思考を切り替え衝撃砲による反撃に移ろうとする。

 

「そうはさせないわ」

 

 右にブースターを吹かしながらアウェイク:マキナで非固定浮遊部位めがけてビームを撃つ。それに当たるわけにもいかず、鈴音は避ける。避けた際の勢いをそのまま利用し、瞬時加速で飛び込んでくる。

 

「くらえええ!」

「おっと。なかなかやるわね」

 

 鈴音の双天牙月を最小限の動きで避ける。全て紙一重で避けられているせいか、彼女の表情が険しくなってきた。

 

(攻撃の手を休めたら一瞬で負ける!)

 

 鈴音が双天牙月を連結させバトンの様に振り回してくる。さっきより攻撃が激しくなってきたわね。でも……

 

「側面不注意よ」

「っ!?」

 

 私を攻撃するのに夢中になっていた鈴音の脇に加速させたビットをぶつける。バランスを崩した鈴音に向けてアウェイク:マキナで射撃する。彼女は避けられるはずもなく光の奔流に飲み込まれる。今の一撃では削り切れていないだろうからビットで囲み一斉射撃。

 

『鳳鈴音 シールドエネルギー エンプティ 勝者 マキナ・オリジン』

 

 攻撃をくらい地面に落ちたところで甲龍が解除された鈴音の手を取り起き上がらせる。

 

「大丈夫?やりすぎたかしら」

「いえ、大丈夫よ」

 

 手を離した鈴音が自分のピットに向かい歩を進めていく。私もデウス・エクスを解除しピットへ歩いて行く。

 

「マキナ!次は負けないからね!」

 

 振り返ると鈴音が笑顔をこちらに向け言い放つ。

 

「いつでも待ってるわ。早く追いついてきなさい」

 

 鈴音は一度負けた程度では挫けない人間だろう。私自身、挑戦はいつでも受け付けていることを笑顔で返す。

 

 ピットに戻ってくると扇子で口元を隠した楯無が待っていた。

 

「今の試合すごかったわね~」

「そう。ありがとう」

 

 楯無との約束はいつ果たしましょうかねー。明日でいいわよね。はい、決定。さっさと終わらせましょ。

 

「楯無。明日の午前十時に私の部屋に来てくれるかしら」

「ええ。いいけど。何かあったかしら?」

 

 何の話か分かっていないようで首を傾げて聞いてくる。

 

「明日になればわかるわよ。それじゃあね」

 

 私は楯無に手を振りながらピットを出て行く。簪は本音に連れてきてもらおうかしらね。あぁ、明日が楽しみだわ。

 

 

 

 

 

 

~簪side~

 

翌日の日曜日。マキナの言っていた作戦の決行日である。しかし作戦と言っても簪と楯無をマキナの部屋で話し合わせるだけという簡単なものなのだが。楯無は既にマキナの部屋に来ている。そして簪はというと―――

 

「かんちゃ~ん早く開けてよ~」

「待って本音、あと少し……」

 

自室で専用機作成に勤しんでいた。いつまでも出てこない理由には本音がどこに行くかを伝えていないからのもあるのだが

 

「かんちゃん早く行こうよ~」

「行くって……どこに?」

「マッキーの部屋だよ~」

 

マキナの部屋。本音がそう言った途端に部屋の中から物が倒れたような音が聞こえてくる。さらに、髪ボサボサ!服も着替えないと! などと言った声が聞こえてくる。まさに恋する乙女のそれである

暫くすると簪が部屋から出てくる。オシャレな服が無かったようで制服を着ている。入学してからは専用機開発にばかりかまけていて服など買う時間が無かったのだろう

 

「はぁはぁ……お待たせ、本音……」

 

 いそいで準備したからかなり疲れた……本音もマキナの所にいるって早く言ってくれればいいのに……

 

「それじゃ~れっつご~」

「お、おー」

 

 本音に手を取られ引っ張られるようにしてマキナの部屋まであるいて行く。最近マキナと話せてなかったから楽しみだな……

 

 

 

 

 

 

~マキナside~

 

「ねえ、私に話ってなんなの?」

 

 今私の部屋には約束の時間より少し早めに来ていた楯無がいる。呼んだ理由が、話がしたい。だったからさっきから聞いてくる。その度に

 

「もう少し待ちなさい」

 

 こう言っているのだがいい加減聞き飽きたのか、もう待てない。などと言ってくる。早く来て本音…… 

 

コンコン

 

「今出るわ」

 

 ようやく本音が来てくれた。やっと楯無から解放されるわ。……これで本音じゃなかったら絶望するしかないわ。

 

「やっほーマッキー」

「いらっしゃい本音。待ってたわよ」

「お、お邪魔します」

 

 本音が部屋に入りながら抱きついてくる。そしてそれを受け止め、頭を撫でる。ここまでがテンプレだ。少し間を開け簪が入ってくる。

 

「マキナーやっと話―――」

 

 とそこまで言った楯無の表情が固まる。

 

「お、おねえちゃん!?どうしてここに!?」

 

 簪もなぜ楯無がここにいるのか分からないようだ。その間に本音が扉を閉め、どちらとも逃げられないようにする。

 

「それはね簪。二人の仲を元通りにするためよ。ちなみに二人の仲が戻ってほしいのは私の意志よ」

「マキナ!騙したわね!」

「騙したなんて心外ね。私は話があるから来てくれって言っただけよ。誰の話までは言ってないわ」

 

 嘘は吐いてないはずだ。固まってしまっている簪を楯無の前に持ってきて軽く頬を叩いて再起動させる。

 

「それじゃあ二人とも後はゆっくり話し合ってちょうだい。過去の蟠りを無くすまでこの部屋からは出さないから。そのつもりで」

 

 そう言って鍵を持って部屋から出ようとすると

 

「どうしてマキナは……そこまでして……?」

「どうしてって、簡単なことよ」

 

 一旦言葉を区切り、次の言葉を放つ。

 

「短い時間しか生きれない人間が、家族と喧嘩したままで一生を終えるなんて悲しすぎるじゃない」

 

 そうだ。世界にたった一つしかない自分の家族と仲違いをしているなんて悲しすぎる。

 

「マキナ、それってどういう―――」

「それはあなた達がちゃんと仲直りできたら話してあげるわ」

 

 どういうこと。と言い終わる前に一言残して本音を連れて部屋を出て行く。後は貴女たち次第よ。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 部屋から聞こえる話し合い、というより言い合いが終わったみたいだ。最終的に簪は楯無のことを、超えるべき目標に決めたようだ。しかし目標だからといって一緒に出掛けないわけではないらしい。来週にさっそくには二人で買い物に行くらしい。

 

「マキナ、次はあなたの番よ♪」

 

 どうやらさっきの言葉を覚えていたらしい。……彼女たちになら話してもいいわよね。

 

「わかったわ。本音、先に入っててくれるかしら」

「は~い」

 

 私は三人に話す旨をご主人様に連絡する。

 

『やっほー数日ぶりだねマキナー』

「数日ぶりですねご主人様」

『それで?何か用かな?」

「実は―――」

 

 ご主人様に、本音・簪・楯無に私たちのことを話したいと思っていることを伝えた。作られた真実ではなく、本当の真実についてだ。今までばれないようにしてきた私たちだから許可はもらえないかと思ったが

 

『マキナにとってその三人は大切な人間なんだよね?』

「はい。これからも大切にしていきたいと思っています」

『だったらいいよ!娘と言ってもいいマキナが初めて私以外に大事にしたいものができたんだから、止めるわけないよ。思う存分話しておいで』

 

 以外にもすんなりと許可が出た。

 

「ありがとうございます」

『いいんだよ。娘の成長を祝わない親がいったいどこにいるのさ』

 

 嬉しい。こんなにも嬉しく思ったのはご主人様に作られて感情が出てきたとき以来だ。

 

「それでは失礼いたします」

『じゃあね。いい報告待ってるよ』

 

 そう言ってご主人様は電話を切る。さて、次は信じてもらえるかどうかだ。正直不安でしょうがないが、彼女たちを信じないと、私も信じてもらえないだろう。そんなことを考えながら部屋の扉を開ける。

 

「おそかったわね。何してたの?」

「マクスウェル様にこれから話すことを喋っていいか、確認を取ってたのよ」

「それじゃ、聞かせてくれるかしら?」

「ええ。あらかじめ言っておくけどこれから話すことは嘘偽り無い真実よ」

 

 三人が黙り込んで私が話し出すのをじっと待っている。そして言う。

 

「私たち二人はこの世界の人間ではないわ」

 

 

……………………………………………………………………

 

 

 静寂が空間を支配する。やはり信じられないか。そう思ったとき

 

「マッキー、続けて」

 

 本音がいつになく真面目な声で続きを促してきた。

 

「わかったわ。私たちは―――――」

 

 まずは私たちの世界について話をした。統合世界について、統合世界の中のセレスティア・テラスティア・ヘリスティアの三つの世界について。そしてロキの出した扉からこの世界に来たことも。

 

「ねえマッキー、それ本当の話なんだよね」

「そうよ。信じられないでしょうけど真実よ」

 

 そんなことを言うと本音が首を横に振りながら

 

「マッキーの言うことなら信じるよ」

 

 なんて、こっちが信じられないことを言ってきた。

 

「どうして信じられるの?」

「そんなの簡単だよ。マッキーは今まで嘘なんてついたことないもん。ねっ?二人とも」

 

 簪と楯無の二人が同時に頷く。呆けている私に本音が続けて言う。

 

「皆マッキーのこと信じてるから。続き、聞かせて?」

「貴女たち……わかったわ」

 

 次に話すことを考えるため、一呼吸置く。

 

「次は私たちのことについて話すわね。私とマクスウェル様は……人間じゃないわ」

 

 私の人外である発言は信じられないようだ。

 

「ど、どこが人間じゃないの?二人とも見た目は私たちと同じじゃない」

「尤もな疑問ね。ちょっと待ってて、今証明してあげるから」

 

 立ち上がりキッチンへ向かう。包丁を持ち、三人のところへ向かう。

 

「マキナ、それで何する気なの?」

「大丈夫よ簪。三人とも少し離れていて」

 

 そう言いながら制服の左の袖を捲る。そして左腕に勢いよく突き刺す。が、腕には刺さらず逆に包丁の刃先が折れてしまう。

 

「これでわかったでしょう。私は人間じゃなくて機械よ」

 

 本音が何かに気付いたようで、逸らしていた目線を戻して聞いてくる。

 

「だからマッキーの手はいつも冷たかったの?」

「そうよ。そんな手であなたを撫でていたのよ。嫌だったかしら?」

「そんなことないよ。マッキーの手、気持ち良かったよ」

 

 ああ、良かった。嫌がられてたら立ち直れなかったわ。

 

「マキナが機械でも……そんなの関係ない……」

「簪ちゃんの言うとおりよ。あなたは私たちの為に頑張ってくれた事実は変わらないのよ」

 

 二人とも……

 

「ありがとう……」

 

 嬉しい。こんなにも私のことを思ってくれてると考えると嬉しさが込み上げてくる。

 

「それじゃあ、次はマクスウェル様についてね。あの方は私を作った人、否私を作った神よ」

 

 またしても三人が信じられないといった顔をする。

 

「信じられないでしょうけど、たかが人間に私のような物が作れるかしら?」

「確かに感情がある機械なんて、人が作れるような物じゃないけれど……」

「まあこの際、ご主人様に関しては別にいいのよ。それにしても私の話が、受け入れられて良かったわ」

 

 本当に、良かった……彼女たちから見捨てられたら、ご主人様のところに帰ろうかと思っていたわ。

 

「この話はもう終わりでいいかしら?」

「ええ、いいわよ」

「だったら四人でお昼ご飯食べようよ~」

 

 そういえば食べてなかったわね。時間も丁度いい時間になっている。

 

「じゃあ三人とも、一緒に行きましょう」

 

 そう言って本音・簪・楯無と一緒に食堂に向かう。ご主人様、貴女以外にも護りたいものができました―――――




今回はどうだったでしょうか?更識姉妹のところは作者の頭では良いものが書けませんでした。鈴戦も短いですし、もっと戦闘描写を頑張らないといけませんね。

感想・アドバイス・駄目だしなどあったら気軽に書いていってください。

それではまた次回!


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第八話:貴公子と冷水

そろそろCODBO3が発売されるので楽しみな赤目です。今回から原作二巻の無いように入っていきます。上手く書けるとは思いませんが精一杯頑張りますです。

それでは第八話 どうぞ!


~NOside~

 

鈴との決闘と、本音・簪・楯無たちへの説明を終え、それからは特に何事も無く時が進んでいき六月。今月からISの本格的な実習が始まる。実習と同時に生徒たちへのISスーツの注文の始まるらしく、教室ではISスーツについて話している

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなあ」

「え、そう?ハヅキってデザインだけって感じしない?」

「そのデザインがいいのー」

「私はミューレイのがいいなあ」

「アレ、モノはいいけどお高いじゃん」

 

クラスメイトたちが手にカタログを持って、わいわいと意見を交わし合っている

 

「そういえば、織斑君のISスーツってどこのやつなの?見たことない型だけど」

「あー、特注品だって。男のスーツが無いからどっかのラボが作ったらしいよ。もとはイングリット社のストレートアームモデルだってさ」

 

ISスーツとは文字通りIS展開時に着る特殊なフィットスーツのことだ。マキナにとっては無用の物であるが、一応着ているといった感じである

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の弾程度なら完全に受け止めることができます。でも衝撃は消えませんよ。撃たれたら普通に痛いです」

 

すらすらと説明しながら現れたのは真耶だ。流石はIS学園教師といったところだろう

 

「山ちゃん詳しい!」

「一応先生ですから―――って、山ちゃん?」

「山ぴー見直した!」

「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです、えへん―――って、山ぴー?」

 

入学から二ヶ月ほどたった今、真耶にはいくつもの愛称がついていた。慕われている証拠なのだろうが、日頃から立派な教師であろうと頑張っている真耶にはあまり嬉しくないだろう。

 

そしてこの作品の主人公であるマキナはというと。背を向けた本音を足に乗せ頭を撫でつつ昨日楯無に言われたことを考えていた

 

 

 

 

~マキナside~

 

「明日に転校生が来る?」

「そうなのよ。フランスとドイツから一人ずつ来るっていう話よ」

 

 生徒会室で書類の整理を手伝っている中、急にそんな話をしてきた。ちなみに、なぜ生徒会役員でもない私が手伝っているのかというと、楯無に泣き付かれたからだ。

 

閑話休題(それはさておき)

 

「それで、どんな娘たちが来るの?」

「それがね、ドイツの方は軍人であること以外普通の子なんだけど……」

「だけど?」

「フランスの子が男の子なのよ」

 

 男。そう言われて作業をしていた手が止まる。

 

「それで?それを私に教えてどうしろと?」

「もしかしたらスパイかもしれないから、注意しておいてほしいのよ」

 

 なるほど。一夏に危害が加えられないように監視をしろ、ということね。

 

「わかったわ。害が無いって分かったら連絡するわ」

「ありがとう。よろしくね♪」

 

 

 と、昨日言われたので一応は注意しておこうと思う。十中八九、女だろう。そんなことを考えていると

 

「諸君、おはよう」

 

 千冬が教室に入ってきた。ざわついていた教室が一瞬で静まり、全員が席に着く。本音の暖かさが無くなるのは惜しいが、痛い思いをさせないために本音を席に帰す。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。お前たちのISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れた者は代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それも忘れたら―――まあ、下着で構わんだろう」

 

 今までならそれでもいいかも知れないが、今年は一夏という男性もいるのだから下着はまずいだろう。

 

「では山田先生、HRを」

「はい。えーと、今日は皆さんに転校生を紹介します。それも、なんと二人です!」

 

 さて、どんな娘たちが来るのかしら。そういえば片方は男の子だったのよね。

 

「失礼します」

「…………」

 

 楯無の言っていた通り二人来たわね。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

「お、男……?」

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方が居ると聞いて本国より転入を――」

 

 シャルルといった子は、人懐っこそうな顔と声は中性的。金髪を背中あたりまで伸ばして首の後ろで束ねている。背も男性としては男性としては低い方だ。―――とそこまで考えたところで嫌な予感がし、聴覚を切って備える。

 

「「「「「きゃああああああ!!」」」」」

 

 ソニックウェーブと呼んでも差し支えないような歓声が沸き起こった。聴覚を切ってなかったら危なかっただろう。

 

「男子!二人目の男子!」

「しかもうちのクラス!」

「美形!守ってあげたくなる系の!」

 

 クラス中が歓喜に揺れ、一夏が耳を塞ぎ、千冬が溜息を吐き、真耶がおろおろしていた。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

「み、皆さーん!まだ自己紹介は終わってませんよー!」

 

 さすがに教師二人に言われたからだろう、他の生徒たちは一旦静かになった。

 

「…………」

「…挨拶をしろ、ラウラ」

「はっ、教官」

 

 ラウラと呼ばれた少女が姿勢を正し、千冬に敬礼する。その様子を見た千冬は面倒くさいという風に

 

「その呼び方はやめろ。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。織斑先生と呼べ」

「了解しました」

 

 あれはわかっていないわね。教官って呼んでいるということは、千冬がドイツにいた時の教え子かしら。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「…………」

「あ、あの、以上……ですか?」

「以上だ」

「そうですか……」

 

 と真耶が言い終わるとラウラが一夏の前まで歩み寄ってきた。

 

「貴様が織斑一夏か?」

「ああ、そうだけど―――」

 

 一夏が答えた瞬間、ラウラが一夏に向かって思い切り手を振るうが―――

 

「いきなり何しようとしてるのよ」

 

 流石に目の前で友人が叩かれるのを黙って見過ごすほど、薄情ではない。

 

「貴様!何をする!」

「何って。友人を守っただけよ」

 

 そう言うとラウラは私の手を振り払い、こちらを睨み一夏に向き直る。

 

「私はお前を教官の弟とは認めない!教官の栄誉を傷つけたお前なんかを!」

 

 これは一波乱、否シャルルも含めて二波乱ありそうね。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 本日最初の授業は、ISの実戦訓練だ。基本的な動作と格闘及び射撃の訓練らしい。私は時間には普通に間に合ったが、一夏とシャルルは時間ギリギリだった。

 

「まずは、戦闘の実演をしてもらう……凰、オルコット前に出ろ!」

「わ、わたくしもですか!?」

 

 近接機対射撃機の実演かしら?鈴音とセシリアの戦いは見たこと無かったから気になるわね。しかし、呼ばれた二人はやる気がなさそうだ。

 

「……やれやれ、お前たち耳を貸せ」

 

 千冬が二人に何かを吹き込むと急にやる気が出たようだ。どうせ一夏をダシにしたんでしょうけど。

 

「それで、わたくしのお相手は鈴さんでよろしいのですか?」

「セシリアが相手?望むところよ!」

「まぁ、待て……相手はアレだ」

 

 千冬が見ている方を見ると、ラファールリヴァイブを装着した真耶が一夏に向かって落ちてきていた。

 

「どいてくださいーーー!!」

「へ?」

 

 気の抜けた声を上げた一夏に真耶が激突。派手に土煙を上げながらゴロゴロと地面を転がって行く。

 煙の晴れた後、そこにあったのは真耶を押し倒し胸を揉みしだく一夏の姿があった。

 

「い、いえ、その…困ります…こんなみんなが見ている目の前でなんて……あぁでもこのまま結ばれれば織斑先生が義姉ということにっ……それはそれで……」

 

 少々トリップしたことを口走っている真耶である。とそこへ

 

「うわぁ!」

「あら一夏さん、避けないでくださいませんこと?」

 

 セシリアが恐い笑顔を向けながら一夏にスターライトMKⅢで顔面に向かって撃つ。

 

「一夏ァ!」

 

 次は鈴音が甲龍を展開し双天牙月を連結させる。

 

「死ネェッ!!」

 

 そして一夏目掛けて投擲する。さすがにそれは止めようと思い、デウス・エクスを展開し瞬時加速を使おうとした時、二発の銃声がグラウンドに鳴り響き鈴音の足元に双天牙月が突き刺さる。

 

 山田先生が仰向けのまま双天牙月の刃をアサルトライフルの弾丸で弾き飛ばし、正確に鈴音の足元まで戻した。伊達に、元代表候補生ではないということね。

 

「山田先生は元代表候補生だからな。今くらいの射撃は造作もない」

「む、昔の話です。それに候補生止まりでしたし……」

 

 謙遜しているがあれだけの射撃の腕があるのだから、実際はかなりイイ勝負をしていたのだろう。

 

「さて、時間が勿体ないからな…さっさと始めろ」

「二対一ですが、よろしいのですか?」

「流石にそれは…」

 

 セシリアと鈴音が困惑した表情で千冬を見つめている。

 

「安心しろ。今のお前たちではすぐに負ける」

 

 千冬が涼しい顔で挑発する様に言う。その言葉に二人は

 

「わたくしの勇姿を見せてさしあげますわ!」

「やってやろうじゃん!」

 

 まだ若いからだろう、案の定挑発に乗ってきた。三人が宙に浮き、戦闘準備が整う。そして戦闘が始まった。それと同時にシャルルによるラファールリヴァイヴの説明も始める。

 シャルルはデュノア社の一人息子ということもあり、説明もお手の物だ。

 

(でも、デュノア社に息子なんていたかしら?娘なら知ってるけど……)

 

 それは今は置いておこう。上空では真耶が二人をじわじわと追い詰めている。鈴音の衝撃砲を回避しつつ、セシリアのビットをアサルトライフルで撃ち射線を鈴、あるいはセシリア自身に向けている。

 普通の人間が同じことをやろうとしても難しいだろう。私?私はできるわよ。とそこで真耶がアサルトライフルでセシリアと鈴音をぶつけて、グレネードランチャーを発射する。

 

 仲良く爆発した二人は煙から落ちてきて地面に激突する。

 

「鈴さんが突っ込みすぎるからですわ!」

「あんたが立ち止りすぎなのよ!」

 

 その後も仲良く言い合っている二人。冷静に連携していたら良い所までいけたかもしれないわね。

 

「これで連携の重要さと、IS学園所属教師の強さが分かったな?以後、教師には敬意を払うように!」

「「「「「ハイッ!」」」」」

「よし。専用機持ちの織斑、オリジン、オルコット、ボーデヴィッヒ、デュノア、凰の六班に別れろ」

「織斑君、手取り足取りよろしくね!」

「うへぇ…セシリアかぁ…負けたのになぁ…」

「やった、シャルル君とだ!」

「凰さん凰さん……後で織斑君のこと教えてね」

 

 各々が各班に別れていく。私のところには誰が来ているのかしら?

 

「えへへ~マッキーだー。よろしく~」

「あら、本音がいたのね。よろしくね」

 

 本音の他にはナギとさゆか、二組の生徒がいる。他の班は穏やかな雰囲気だが、ラウラの班だけは非常に重苦しい雰囲気だった。

 

「訓練に使用する機体は打鉄三機にラファールが三機ですよー。早い者勝ちですからねー」

「らしいけど。皆はどっちがいいかしら?」

「どっちでも大丈夫だよ~」

「私たちも大丈夫」

「それじゃあ、ラファールを借りてくるわ」

 

 私はデウス・エクスの武装以外を展開して、真耶からラファールを受領してくる。

 

「今回は全員にやってもらいますから、フィッティングとパーソナライズは行いません。午前中は、歩行などを行って操作の感覚を掴んでくださいね」

「というわけで、早速装着を始めるわよ」

「はーい」

 

 どうやら本音が一人目のようだ。ラファールを座らせ、装着させる。ラファールの手を取り、立つときの補助をしながら説明していく。

 

「ISっていうのは、要はパワードスーツよ。視点がいつもより高くなるけど、落ち着いて動かせばバランスを崩す事もないわ。それにISに乗るって思うんじゃなくて、ISを着ていると思った方がいいわ。何が言いたいかっていうと、あまり気負わなくて良いってことよ。それじゃ、手は持っててあげるから歩いてみましょうか」

「は~い」

 

 少しフラフラしているが練習を重ねれば問題なくなるだろう。次第に慣れていたのか歩きが自然になっていく。

 

「それじゃあ、手を離すわよ」

「おっとっと」

 

 手を離しても少しバランスを崩しただけですぐに立て直した。

 

「結構上手いわね」

「ありがと~。―――わぁ!」

 

 油断した本音が足を縺れさせて前のめりに倒れてきたのでそれを優しく抱き止める。

 

「本音、大丈夫…?」

「う、うん。ありがと~」

 

 本音は顔を少し赤らめて、抱き着いたままこちらを見上げてくる。

 

「落ち着いて歩くのよ」

「わかった~」

 

 その後、一通り歩き終わった本音と交代し、私の班が一番早く終わった。途中、一夏の班がお姫様抱っこで運んだりしていたが、気にする程のことでもない。そんなことより、ラウラの班が一応訓練はしていたが、海軍ばりのスパルタだったらしく、班のメンバーの顔が青褪めていた。

 

 誰かが怪我しそうだから、ラウラをどうにかしないといけないわね……シャルルも何かしそうだから、はぁ。今月は面倒なことになりそうね。




………………書くことないです……………………

というわけで、感想・アドバイス・不満などがありましたら気軽にお書きください!

それではまた次回!


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第九話:早すぎる発覚

どうもBO3がおもしろくて色々やばい赤目です。今回はシャルル回です。前書きに書くことないですはい。

それではどうぞ


~マキナside~

 

 昼休み、私は一夏に誘われて屋上に来ていた。一緒に昼食を食べようとのことだったから、本音も誘ったけれど生徒会の用事があるそうだ。

 

「どういうことだ……」

 

 一夏に誘われたであろう箒が不満そうな顔で不満気な声を上げる

 

「大勢で食った方がうまいだろ」

「確かにそうだが……」

 

 以前までなら一夏の言葉を否定していただろう。大勢で食べても味など変わらない、と。でも最近は生徒会メンバーで食べることも多くなり、大勢で楽しく食べる方が美味しく感じるような気がしてきた。

 まあ私の変化は兎も角、集められた箒、セシリア、鈴音がそれぞれの顔を睨みながら火花を散らしている。

 

「僕ここにいてもいいのかな…?」

「気にしなくていいわよ。いつもあんな感じだから」

 

 気まずそうに同席しているシャルルが聞いてきたので不安にさせないように返事する。

 

「おお!酢豚だ!」

「そ、今朝作ったのよ。あんた食べたいって言ってたでしょ」

 

 いつの間にかタッパーの蓋を開けていた鈴音の先制攻撃。乙女の戦いは既に始まっていたようだ。

 

「ゴホン!一夏さんわたくしも今朝は偶然、そう偶然早く目が覚めまして、こういうものを作ってみましたの」

 

 見た目は美味しそうなサンドイッチがバスケットから顔を出す。見た目は完璧ね。

 

「それじゃあこっちから」

 

 そう言って一夏はサンドイッチに手を伸ばし口に運ぶ。少し咀嚼すると一夏の顔が急に青くなる。何が入っていたのか気になったからサンドイッチにスキャンを掛ける。これは……

 

「セシリア、貴女何を入れたのかしら?」

「ええっと、もう少し彩りがほしいと思ったので、とりあえず赤い液体を……」

 

 頭を抑え溜息を吐く。とりあえず赤い液体って……ちなみに入っていたのは卵、ケチャップ、タバスコ、砂糖、塩、胡椒である。タバスコと砂糖以外はまだいいだろう。いや、ケチャップが入っているのに塩と胡椒もどうかと思う。入れた順番が分からないからなんとも言えないが。

 

「貴女も食べてみなさい」

「ですが……」

「い い か ら」

 

 有無を言わせずに食べさせる。するとセシリアの顔も青くなってきた。

 

「これからは人に出す前に味見をすることね」

 

 無言で頷くセシリア。他人に出すものなら味を確認するのは当然だと思うのだけれど。

 

「そ、それじゃあ次は箒の」

「私のはこれだ」

 

 弁当箱の蓋を開けるとそこには美味しそうな唐揚げがあった。

 

「すごいな!どれも手が込んでそうだ」

「ついでだ、ついで。あくまで私が食べるために時間を掛けただけだ」

 

 素直じゃないわね箒は。もっと素直になれば一夏なんてすぐに落とせそうなもの―――でもないか。

 

「そうだとしても嬉しいぜ。箒、ありがとう」

「ふ、ふん」

 

 嬉しそうな顔をしながらその顔を逸らす箒。そして一夏が食べている最中は不安そうな顔で見ている。

 

「おお!うまい!これって結構手間が掛かってないか?」

 

 箒は一夏からの好評をもらい嬉しそうな顔をして、唐揚げの説明に入る。

 

「それじゃあ次は私でいいかしら?」

「お、マキナも作ってきたのか?」

「ええ。本当は生徒会メンバーで食べようと思っていたけれど、仕事があるみたいだったからこっちに持ってきたわ」

 

 そう言いながら重箱を広げる。今日のメニューは、だし巻き卵、牛肉のタレ焼き、コロッケ、サバの味噌煮、後は生野菜をある程度入れている。

 

「うまそうだな!」

「確かにこれは美味しそうだな」

 

 一夏の箒が料理を褒めてくる。まあ、悪い気はしない。

 

「好きに食べていいわよ」

「じゃあいただきます!」

 

 一夏の言葉を皮切りにみんなが箸を伸ばす。

 

「うまい!」

「とても美味しいですわ!」

「私はこんなに美味しく作れないぞ」

「なんでこんなに上手なのよ……」

 

 上から一夏、セシリア、箒、鈴音の順で半分は褒め、半分は悔しがっている。

 

「ほら、シャ……デュノアも食べなさいよ」

「あ、うん。それと、慣れてないならシャルルでいいよ」

「だったら私もマキナでいいわ」

 

 万人受けするであろう笑顔で返事をしてくる。笑顔にどこか影が見えるのは気のせいかしら。

 

「わぁ!すっごくおいしいよこれ!」

 

 コロッケを食べながら幸せそうな顔をするシャルル。さっきのは気のせいだといいけど。

 

「そう。それなら良かったわ」

 

 その後、平和な昼休みは無事、過ぎて行った。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 放課後、またしても一夏に誘われ、専用機持ちと箒が一緒にやっているという訓練を見に来ていた。

 

「つまりね。一夏が勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握してないからだよ」

「うーん…一応分かってたつもりなんだが……」

 

 とまあ懇切丁寧に教えているシャルルだ。他の三人は……まあ分かりにくいとだけ言っておこう。その後は一夏が自身のワンオフアビリティーの解説を受けて、現在、射撃の練習中だ。とそこで、デウス・エクスのレーダーにもう一機のIS反応が表示される。

 

「ねえ、あれ!」

「ドイツの第三世代じゃない!」

「まだ本国でトライアル段階だって聞いたけど?」

 

 あれがドイツの第三世代機『シュバルツェアレーゲン』か。スキャン開始…………なるほど。おもしろいもの積んでるわね。とそこまで終わったところでラウラが一夏を睨みつけている。

 

「織斑一夏、貴様も専用機持ちのようだな」

「……だったらなんだ?」

「丁度良い、私と戦え」

「嫌だ、理由がねえよ」

「貴様に無くても私にはある」

 

 理由としては千冬の大会二連覇が無くなってしまったことかしらね。

 

「今じゃなくてもいいだろ。もうすぐクラスリーグマッチがあるんだから。その時で」

「ならば、戦わざるおえなくしてやる!」

 

 そう言ってラウラがレールカノンを構えてこちらに射撃してくる。もちろん攻撃をくらう訳にもいかず、一夏の前に立ち拳で弾丸を弾く。見ていた全員が驚いた表情を見せる。

 

「マキナ・オリジン……!一度ならず二度までも邪魔をするか!」

「邪魔だなんて心外ね。友人を守っただけじゃない」

「ならばまずは貴様から……!」

『そこの生徒たち!何をしている!クラスと出席番号を言え!』

 

 襲ってくるかと思いビットを展開させたが、監督の教師に止められた。

 

「ふん、興が削がれた。今日のところは引いてやる」

 

 そしてラウラはシュバルツェアレーゲンを解除し、こちらを一瞥してピットへ戻って行った。その後は、訓練を続けるという空気でもなかったため、一足先に自室へ戻ることにした。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「あの転校生の子たちはどんな様子かしら?」

 

 夕食も食べ終わった夜の自室。部屋に来ていた楯無からこんなことを聞かれた。

 

「シャルルは今のところ何かしそうな気配じゃないわね。ラウラの方は一夏を目の敵にしているだけよ」

「それで、マキナから見てデュノア君はどうなの?」

 

 どうとは、まあどう見えるかということだろう。

 

「あの子は女ね。まず男とは骨格が違うし、歩き方とかもよく見ると違うわ」

「なるほどね。わかったわ、ありがとう」

「ありがとうなんて言っても、既に情報は手にしてるんでしょ?」

 

 裏に詳しい更識家なら個人の情報程度、すぐに手に入れることができるだろう。

 

「まあそうなんだけどね。ちょっと聞いてみただけよ♪」

 

 その手に持つ扇子には『お見事!』と書いてある。試されたってことかしらね。

 

ドンドンドン!

 

 その後楯無と雑談をしていたら乱暴にドアを叩く音が聞こえてきた。

 

「マキナ!開けてくれ!」

 

 この声は一夏ね、何かあったのかしら。ドアに近付き顔を出すと焦っているような顔をした一夏が見えた。

 

「どうしたの一夏」

「実はシャルルが、その、えーっと……」

「とりあえずそっちに行けばいいのかしら?」

「来てくれるのか?ありがとう!助かるぜ!」

 

 一夏にすぐに行くからと言って、先に帰らせる。

 

「楯無はもう戻ってもいいし、ここにいてもいいわよ」

 

 そう言って自室を出て行く。その時に楯無がどこか不満気な顔をしていたが気にしないでおこう。そして自室を出て一夏の部屋の前に着く。

 

「一夏、入っていいかしら?」

 

 少し遅れて、入ってきてくれ。と言われたから周りに人がいないことを確認してから部屋に入る。

 

「こ、こんばんわ……マキナ……」

「こんばんわ、シャルル。初日でばれちゃうなんて運がなかったわね」

 

 そう言うとシャルルは体をビクッと跳ね上がらせて驚いた顔でこっちを見てくる。

 

「わかってたのか?マキナ」

「ある程度はね。それで?なんで男装なんかして来たのかしら?」

 

 シャルルの言ったことによると、シャルルはデュノア社長の愛人の子で、母と暮らしていたがその母が病死し父親に引き取られた。その後IS適正が高いと分かったので、社のテストパイロットとして道具のように扱われてきたらしい。社長夫人からは度々、暴力を振るわれてきたらしい。

 そして、第三世代型ISの開発が遅れ会社の経営が傾き、打開策を求めて男性操縦者のデータを欲したらしい。だから一夏に接触しやすいように男装させられ、IS学園に派遣されたそうだ。

 

 どれも問題有りなことしてるわね。IS学園へのスパイ行為なんてしたら退学どころじゃ済まされないでしょうね。そしてシャルルがばれてもトカゲの尻尾切りとして捨てる気でいるんでしょうね。

 

「ところでなんで一夏は私を呼んだのかしら?」

「いや、マキナならシャルルを助けるのに協力してくれるだろうなって思って」

 

 まったくこの子は……どうして助けてくれるなんて思えるのかしらね。

 

「で、協力してくれるよな?」

「なんで私が協力しないといけないのかしら?」

 

 そう言うと一夏は呆然とし、シャルルは絶望しているのか顔を俯かせており、その表情は読み取れない。

 

「ど、どうして」

「犯罪者に然るべき対処をすることが間違ってるのかしら?」

 

 シャルルを犯罪者と言うと、一夏は顔を怒りで歪ませこちらに掴みかかってくるような勢いで捲し立てる

 

「シャルルは犯罪者じゃねぇ!」

「そうね。でも未遂でも犯罪は犯罪よ」

「でも!友達が困ってたら助けるのが普通だろ!」

「それには同意するわ」

「だったら―――「でもね」?」

 

 一夏の言葉を一旦遮る。

 

「助けてなんて言ってない人間を助けるほど、私はお人好しじゃないわ」

 

 今にも殴りかかってきそうな一夏は拳を握りしめて耐えている。

 

「それでシャルル。貴女はどうしたいのかしら?」

「どうしたいって?」

「だから、ここに居たいのか、一人寂しく独房で暮らしていくのか、はっきりしなさいよ」

「どうせ無理だよ。僕はもう……」

 

 シャルルがさらに顔を抱えていた膝に埋めてきた。

 

「そんなことは聞いてないわよ。ここに居たいのか居たくないのか、それを聞いてるのよ」

「僕だってここに居たいよ!女として、皆と、一夏と一緒にここで暮らしたいよ!皆を騙しながらここに居たくないよ!誰か……助けてよ……」

 

 涙を流しながら必死に学園に居たいと言ってきて、さらに助けも求められたら助けないわけにはいかない。

 

「わかったわシャルル。後は私たちに任せなさい」

「それって……」

「どういう……?」

 

 一夏とシャルルが状況を飲み込めていない様子で聞いてくる。

 

「だから、助けてあげるっていうことよ」

「なんで急に。さっきまでは見捨てる気だったじゃねえか」

 

 さっきまで言っていたことを覚えていないのだろうか。まあ頭に血が昇って覚えていないのだろう。

 

「私は友達から助けを求められたから助けるのよ」

「どうやって助けるんだ?」

「それは、じきに分かるわ。貴方たちは、今はシャルルの素性をしばらく隠すことを考えていなさい」

 

 そう言って部屋を出る。そして携帯電話を取り出し、掛けたところはもちろんご主人様のところだ。

 

「もしもし。ご主人様、いきなりで申し訳ないんですが頼みたいことが―――――」




今回はどうだったでしょうか。デュノア社については2、3話後ぐらいに出せると思います。

感想、アドバイス、不満などあればどんどん書いていってください!

それではまた次回


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第十話:霜の巨人

お待たせしました!第十話です!2、3話後って言ったやつ誰だ。私ですね。今回はシャルの問題を解決する回です。正直こんなものでいいのかは分かりませんが、私の頭じゃこんなのが限界です。

ソレデハドウゾ


~マキナside~

 

 シャルル、否、シャルロットを自身のことを打ち明けてから数日たった日曜日。私はIS学園の食堂で、一夏、シャルロットと一緒に朝食を摂っていた。今食堂のテレビにはニュースが流れている最中だ。

 

「そういえば。前言ってたなんとかするってのは、どうなったんだ?」

 

 と、和食定食を食べている一夏が聞いてきた。

 

「それなら昨日終わったみたいよ」

「え!?そんなに早くに!?」

 

 と、パンにジャムを塗りながら驚くシャルロット。

 

『続いてのニュースです』

 

 と、さっきまでやっていたニュースが終わり、次にのニュースに移り変わった。普通のニュースなら誰も見向きもしないだろうが、今回は違っていた。なぜなら―――

 

『昨日未明、デュノア社が謎のISに襲撃された事件についてです』

 

 大手IS企業の襲撃事件なのだから。

 

「「「「「えええええええええええええええ!!!」」」」」

 

 食堂にいた生徒と教師、調理師たちも驚いていた。あの千冬ですらこの事は予想外だったらしく、席を立ち上がり口を開けて呆然としている。

 

「お、おいマキナ。何したんだよ」

「そ、そうだよ。いったい何したの?」

 

 周りに聞こえないように小声で話しかけてくる二人。

 

「私は何もしてないわよ。何をしたかは知ってるけど」

「何したの?」

「ここでは喋れないから、後で私の部屋に来てちょうだい」

 

 そうこうしていると、ニュースの続きが始まった。

 

『デュノア社の被害は、職員、12名と、社長のアドルフ・デュノア氏、社長夫人のアニエス・デュノア夫人両名が遺体として発見され、重軽傷者も多数発見されました』

 

 食堂に衝撃が走った。今のニュースを聞いて、生徒たちがざわめく。ある者はなんでこんなことが起こったのかと、ある者はどこの誰がやったんだろうと、そしてある者はシャルル君大丈夫かな、と。

 その言葉を聞き他の生徒たちもシャルロットの方を見てくる。

 

『それと同時にデュノア社が賄賂、横領、その他の数々の不正行為も発見されました』

 

 それを聞いて周りの生徒たちがさらに騒ぎ出す。

 

「それじゃあ、私の部屋でまた」

 

 周りに聞こえないようにシャルロットと一夏に耳打ちし、私は部屋に戻った。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 朝食を摂り部屋に戻ってからしばらくすると、一夏とシャルロットが部屋にやってきた

 

「よく来たわね二人とも」

「マキナ、デュノア社に何したの?」

 

 部屋に入り誰も入ってこないように鍵を閉めた途端に、シャルロットが聞いてくる。

 

「私は何もしてないわ。ただ、ご主人様に助けてもらっただけよ」

「それじゃあその人は何をしたんだ?」

「それを今から話すのよ」

 

そう言うとマキナは昨日の夕方に聞いたことを、二人に話し始めた。

 

 

 

 

 

 

~マクスウェルside~

 

 やっほー!画面の前の読者諸君。久しぶりだね、マクスウェルだよ!タイトルが『原初の機体と神才』ってついてるのに私の出番がほとんど無いのはなんでだろうねー?

 

 まあいいや!今回はマキナから頼まれてシャルロットとかいう子を助ける為に、デュノア社に対してあんなことやこんなことをしようと思ってるよ。

 

「さあ!今回の襲撃で使うのはこの子だああああああ!!」

 

そう言ってマクスウェルが近くにあった、布を被った何かの姿が現れる。

 

そこにはメインカラーに青、水色を基調とした全身装甲の機体が佇んでいた。両手の指先には、敵を切り裂く、というより無理やり引き裂く為の爪が付けられており、首の付け根からは、鞭の様なものが伸びている

 

鞭には突起が付いており殴るための武器となっている。この機体はマクスウェルがISとしてではなく、ドライバとして作った物である為、移動手段は足に付いているローラーを使っての移動となっている。ちなみにただのドライバではなく、自立型ドライバである

 

今回は閉所での戦闘を想定しており、元のサイズとは大きさが違うが、それでも生身の人間からすれば、十分脅威に成り得る大きさである

 

「名前は何にしようかなー?」

 

 うーん……どうしようかなー…………そうだ!北欧神話の巨人から取って

 

「今日から君の名前はヨトゥンだ!」

 

 うんうん。我ながら良い名前が付けれたよ。それじゃあ早速、機体テストも兼ねて、デュノア社に行きましょうかね~

 

マクスウェルはヨトゥンを粒子化させ、いつも持っている巨大なスパナに収納させた。そして移動用のISを身に纏い、フランスのデュノア社へ向かって飛んで行った

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ここがデュノア社か~」

 

 ISのステルスモードでフランスに来た私は今、デュノア社の正面玄関の前のビルの屋上にいる。現在の時刻は、午後一時。襲うなら確実に社員もいる時間帯で襲う。今日は社長も、その夫人も会社にいることは事前に調べがついている。

 

「性能テストも兼ねてるから、すぐに警備が来てくれる正面から行かせますかー」

 

 そう言ってスパナを一振りすると、どこからともなくヨトゥンが現れる。

 

「それじゃあ行ってらっしゃ~い!」

 

 その言葉を聞いたヨトゥンは前傾姿勢になり、正面玄関をぶち抜いて突入していく。

 

「ミッションスタート」

 

無機質なマシンボイスが玄関に響くと同時に、侵入者に対するサイレンが鳴り響く

 

「さて、どんなものかな」

 

デュノア社を見ながら舌なめずりをする。その顔は、面白いものでも見ているかの様に、歪ませ、嗤っていた

 

 

 

 

 

 

~NOside~

 

今回のミッション内容は、社長と社長夫人に加え、シャルロットに危害を加えた職員12名の殺害だ

 

「データ照合開始」

 

ピピッという機械音が鳴ると、職員の顔を見回し目標を探している

 

「目標発見。撃破シマス」

 

ホールにいた40代と思われる人物を発見する。その途端、ローラーダッシュで一気に近づきながら右手を引き、力を溜める。そして射程圏内に入ると速度を乗せた右が振り抜かれる

 

「撃破完了。ターゲット残リ13」

 

ヨトゥンの右腕が職員の胸を貫く。腕を引き抜いた後には大きな丸が開いていた

 

「コノ場デノ目標ノ反応無シ。移動開始」

 

ヨトゥンが移動を開始する。移動しながら部屋内部へスキャンを掛ける。五つ目あたりで目標の反応を検知したヨトゥンは、ドアを吹き飛ばしながら部屋に突入する。中にはまだ若い女性がいた

 

「目標発見。撃破シマス」

 

同じセリフを吐いたヨトゥンは、上半身を振り回し、首にある鞭を振るう。振るわれた鞭は、女性の首に襲い掛かり、巻きついてきた。ヨトゥンは右手で鞭を引っ張り、その力に抗うこともできず、女性の体は宙に浮く

 

次の瞬間には、女性の首と胴体が別れていた。ヨトゥンの横に振り抜いた左手には女性の頭があった

 

「撃破完了。ターゲット残リ12」

 

その後、一階に目標はいないことを確認した後、ヨトゥンは二階に昇り、廊下に出る

 

「いたぞ!侵入者だ!」

「撃て!撃ちまくれ!」

 

そこにはサブマシンガンを持った警備員と職員合わせて五名、待ち伏せていた

 

「目標2ツ発見。撃破シマス」

 

ヨトゥンは職員二名に全速力で近づき、頭を鷲掴みにして廊下の突き当たりの壁に激突させる。もちろん生身の人間が耐えきれる訳も無く、無残にも頭が潰れて原型を留めていない

 

その後、目標を次々を殺していったヨトゥンは、社長室の扉の前にいる。ちなみに、部屋のロックはマクスウェルがハッキングして、出られないようになっているので、二人がこの部屋にいるのは確定している。

 

ヨトゥンが部屋に突入しようとした時、レーダーに一つのIS反応が現れる。それを確認して反応のあった方を向くと、ラファールリヴァイブを纏った女性がいた

 

「大人しく投降しろ。さもなくば撃つぞ」

「障害ヲ発見。無力化シマス」

 

その言葉を聞いた操縦者は右手にショットガン、左手には近接ブレードを展開する。現在地は社長室前の廊下だ。地上戦用に作られたヨトゥンに利があると思われる

 

先に動いたのはヨトゥンの方だった。前傾姿勢になり、突進しながら両手を構える。もちろん近づいてくるのをただ待ってくれる敵ではない。近づいてくるのと同時にショットガンで迎撃する。しかし、今は防御力のあるIS『打鉄』の装甲より厚いヨトゥンに、その程度の銃弾では傷一つ付けることができない

 

その間に操縦者に肉薄したヨトゥンは、切り裂くように右手を振るう。操縦者はショットガンを盾代わりに前に翳したが、それを貫いてきた腕を避けられず、シールドエネルギーが削られる。ヨトゥンは追撃を仕掛けるが紙一重で避けられる

 

「掠めただけでこんなに!?」

 

シールドエネルギーの数値を見ると、50以上は減っていた。掠めるだけでこの威力なのだ、直撃したら絶対防御の発動は免れない。そう思った操縦者は右手に新しく物理シールドを展開する

 

シールドの展開を確認したヨトゥンは、先にシールドから潰そうとし、鞭を振るう。操縦者も当たるまいとして、シールドで防御するが、鞭が当たった所が拉げてしまい、後数回しか使えないようになってしまった

 

操縦者は盾を拡張領域に収納すると、もう一本、新たにブレードを展開する。守るより攻めた方が良いと考えたのだろう

 

同時に動き出した一人と一機は自身の獲物を扱い、高速で打ち合っていく。ヨトゥンの装甲は徐々に傷ついていき、操縦者の方はシールドエネルギーが削れていく。先に限界がきたのは操縦者の振るうブレードだった。ヨトゥンの苛烈な攻撃に耐えきれなかったブレードは、刃の部分が粉々に砕ける

 

次の武器の展開も間に合わずヨトゥンの攻撃をまともに受けてしまう。吹き飛ばされたISのシールドエネルギーは残り二桁しかなかった。止めを刺そうとしたヨトゥンに対し、名も知らぬ操縦者はヨトゥンの振るう右手に合わせて拳を振るう。ヨトゥンの拳と打ち付けあった操縦者の右肩が外れる。しかしISのパワーアシストを借りた拳は、ヨトゥンの拳に皹を入れ、火花を散らせていた

 

ISが解除された女性は死を覚悟したが、一向に何もしてこないヨトゥンに疑問を浮かべる。次の瞬間、ヨトゥンは―――――

 

「無力化ヲ確認。任務ヲ続行シマス」

 

社長室に歩を進める。女性は悔しそうに唇を噛み締め、血を流していた

 

社長室のドアを突き破り部屋に突入したヨトゥンは、部屋の隅で怯えて縮こまっている二人を発見した。データを照合してみると、社長と夫人で間違いないようだ

 

「最終目標ヲ発見。撃破シマス」

 

ヨトゥンは二人に向かってゆっくり歩き始めた

 

「頼む助けてくれ!何が望みだ!金か?権力か?なんでもくれてやるから助けてくれ!」

「アンタこんなことしてタダで済むと思ってるの!?今なら見逃してあげるから助けてよ!」

 

二人は自分の命惜しさに命乞いをしてくるが、自立兵器であるヨトゥンにはそんなものは意味が無い。二人の眼の前まで来たヨトゥンは、両手を振り上げ―――――

 

そのまま二人に向けて振り下ろす。指先に付けられている爪により、二人の体には深く抉れた爪痕が五本ずつ残る。そこに見える景色は、まだ微かに動いている心臓と真っ二つに折られた数々の骨、その他の内臓が見える

 

『ヨトゥンお疲れ様~それじゃあそこの窓から飛び降りてきてー』

 

マクスウェルからの通信を受けたヨトゥンは、そのまま窓を破り地上に落ちる。地面に着地する前にその場にいたマクスウェルがスパナを振ると、ヨトゥンの体は粒子化され、収納される

 

「さてと今回の戦闘データを纏めて、おっと、その前にデュノア社の不正を報道陣にリークしないと。その後にマキナに報告かな」

 

そう言ってマクスウェルは、来るときに使ったISを身に纏い、自分の家に向かって飛ぶ。数十分後、フランス特殊部隊がデュノア社に突入し生存者を保護し、死体を処理したそうだ

 

 

 

 

 

 

~マキナside~

 

「と、いうのが昨日ご主人様から聞いた話よ」

 

 話が終わった後の二人の様子は深い闇の様に暗かった。もちろん殺され方までは正確には話していない。一夏は、自分の友人の大切な人が殺人者だということに驚き、シャルロットは、嫌い、嫌われていたとはいえ、身内が死んだから落ち込んでいるのだろう。

 

「それじゃあシャルロットは、今後の身の振り方でも考えていなさい」

「身の振り方?」

 

 落ち込んで暗い声のまま、シャルロットが聞いてくる。

 

「そうよ。明日には自分のことを打ち明けた方がいいと思うから、何かそれらしい言い訳を考えておきなさい」

 

 顔を俯かせたまま何も言わないシャルロット。まあいいわ。

 

「後、教師と生徒会長は味方につけておきなさいよ。楯無の方は私から言っておいてあげるわ」

「…………わかった」

 

 今にも消えそうな声で返事をしてくる。部屋を出た私は、楯無に会うために生徒会室へ向かう。明日からどうなるのかしらね。




今回はいかがでしたでしょうか?うまく書けてたらいいんですけど……
次回からはラウラのなんやかんやを書いていきます。
ヨトゥンの武器とかは作者が勝手に想像したものです。
マクスウェルのISは名前も無い、移動用の物です。

それではまた次回!


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第十一話:原初の機体の兎との戯れ

今回は繋ぎの回の様なものなので、今までよりちょっと短いはずです。

なので前書きで書くことも無いです。それではどうぞ


~マキナside~

 

 デュノア社のニュースが放送された翌日の月曜日。今は朝のSHRがあと少しで始まる時間だ。ほとんどの生徒が教室に入って友人と喋ったりして、各々が自由なことをしているが、未だにシャルロットが教室に来ていない。

 

「お前達!いつまで喋っている!早く席に着け!」

 

 千冬が教室に入ってきて一喝すると、訓練でもされているかの様な速さで席に着くクラスメイト。千冬の後に続き、真耶がやつれた顔で教室に入ってきた。

 

「今日は転校生を紹介します……いえ、紹介は既に済んでいるというか……とりあえず、入ってきてください」

「はい」

 

 真耶の言葉に返ってきた声は、聞いたことのある声だった。

 

「シャルロット・デュノアです。改めて、よろしくお願いします」

「えーと……デュノア君は、デュノアさん、ということでした」

 

 クラスの事情を知っている者以外は、驚いた顔をしている。

 

「え?デュノア君って女だったの?」

「おかしいと思った。美少年じゃなくて、美少女だったわけね!」

 

 クラスが騒然とするが、

 

「もしかして、昨日のニュースと関係してるの?」

 

 この一言でクラスが皆黙ってしまった。腕を組んだままで、千冬が説明を始める。

 

「デュノアは、自身の親の会社に利用されていたが、それも昨日で終わった。今日からは普通の生徒として過ごすことになった。不要な詮索はしないように!」

 

 言いたいことは言い終わった千冬は、残りを真耶に任せて静かにしている。さてと、次に問題を起こすとしたらドイツの軍人ね。一応、注意はしておこうかしらね。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 今日の授業が終わり、放課後。今日は特にやることも無いから、部屋に戻ろうとすると。

 

「マキナ、一緒にアリーナで特訓しようぜ」

 

 と、一夏が声を掛けてきた。少し考える。今日は暇だから別にいいだろう。

 

「いいわよ。暇だから付き合ってあげる」

「サンキュー助かるぜ」

 

 一夏が笑顔で返事をしてくる。

 

「それで、今日使えるアリーナって、どこだったっけ?」

「それなら確か―――「第三アリーナだ」

「「うわぁ!!」」

 

 一夏が場所を聞き、シャルロットが答えようとした所で、急に会話に入ってきた箒に驚く二人。

 

「そんなに驚かなくてもいいだろ……」

「ご、ごめん箒」

 

 あまりにも驚かれたせいか、落ち込んでしまっている。とそこで、

 

「なんか今、第三アリーナで専用機持ちが、模擬戦してるらしいよ」

「本当!?見に行こ見に行こ!」

 

 専用機持ちの模擬戦ねぇ……なんか嫌な予感がするわね。

 

「一夏、私は先に行ってるわね」

「おう。わかった」

 

 一夏に先に行くことを伝えて、早足で第三アリーナに向かう。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 アリーナの観客席に到着したとき、既にそこには鈴音とセシリアが、ラウラに一方的に攻撃を受けている所だった。見たところ、ラウラのISには傷が付いていない。逆に鈴音とセシリアのISは傷だらけだ。これ以上攻撃を受けたら、命に係わるだろう。

 

(仕方ないわね)

 

 そう思い、ISを展開し、四つのビットにエネルギーを溜める。アリーナのシールド越しに、ラウラに狙いを付ける。そして、撃つ―――――

 

「!!」

 

 放たれたビームは、アリーナのシールドを突き破り、ラウラ目掛けて近づいていくが、途中で気付かれ避けられてしまう。突き破ったシールドからアリーナに入り、ラウラと二人の間に入る。

 

「大丈夫かしら二人とも」

「マキナさん……」

「アンタ……何しに来たのよ……」

「助けに来てあげたのよ」

 

 後ろから余計なお世話だのなんだの聞こえてくるが、今は無視。それよりも

 

「オリジン!貴様はまたしても邪魔をするか!!」

「あら、ごめんなさいね。邪魔になってるなんて思わなかったわ」

「貴様ぁ……!」

 

 矛先をこちらに向けさせるためにわざと薄笑いを浮かべながら挑発する。ビットを二つ、鈴音とセシリアを庇う様に装甲を広げて配置する。

 

「さて子兎さん、ハンデを付けてあげるから、かかって来なさい」

「馬鹿にして!後悔させてやる!」

 

 ラウラがプラズマ手刀を展開し、こちらに突っ込んで来る。今回は遊ぶだけだからこちらも突っ込む。

 

「ハァッ!」

 

 ラウラはプラズマ手刀を振るってくるが、その全てを避けつつ、拳や脚で反撃を喰らわせていく。逆上して冷静さを失っているのか、AICを使ってこない。……本当に軍人なのかしら?

 

 と考えたところで大振りの攻撃が来る。

 

「がら空きよ」

 

 振り終わりの大きく開いた脇目掛けて蹴りを喰らわせ、大きく後退させる。

 

「くっ!」

「もう少し冷静になったらどうなの?」

「うるさい!」

 

 聞く耳持ってないわね。まだ突っ込んでくるのでこちらも突進して迎撃に出るが―――

 

「捕まえたぞ!」

「あらら。捕まちゃったわ」

 

 ようやく冷静になったのか、AICを使い、こちらを拘束してくる。ラウラが得意気な顔になっているが、まだ詰めが甘い。

 

「側面不注意よ」

「何を言って―――!!」

 

 ラウラの視界から外していたビットを左右から押し潰すように打ち付けるが、既の所で避ける。ラウラが私から離れたおかげでAICが解除される。

 

「次こそは!」

「そこまでだ!!」

 

 再度、プラズマ手刀を構えるラウラだが急に構えを解いた。声のした方を見ると、千冬がいつもの黒スーツ姿で立っていた。その少し後ろには、ISスーツ姿の一夏とシャルロットもいた。

 

「模擬戦をするのは構わんが、アリーナのシールドを破壊するのは感心しかねる。どうしても戦いたいなら、学年別トーナメントで決着を付けろ」

「……教官がそう仰るなら」

 

 ラウラがしぶしぶといった感じだが、ISを解除する。

 

「織斑先生と……まあ今はいい。オリジンもそれでいいな?」

「ええ。いいわよ」

「では、学年別トーナメントまでの死闘を一切禁ずる。解散!」

 

 私がそう答えると、千冬はアリーナにいる生徒たち全員に向けて言った。ラウラが去って行くのを確認し、一夏とシャルロットにセシリアを、私は鈴音を担ぎ、医務室に向かった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 ラウラとのお遊びから数日経ったある日。学年別トーナメントは、前回の襲撃を考慮し、より実戦的な戦闘を想定して、タッグトーナメントになった。そして今日は、そのタッグの発表の日だ。本音が一緒にやろうと言ってきたが、今回は簪と一緒に出てもらうことにした。

 

 ちなみに簪は今回、訓練機での出場になっている。専用機である打鉄弐式は、トーナメント明けには完成するようだ。なんともタイミングが悪いことだろう。

 

 閑話休題、本音を断った理由は、私がこのまま誰とも組まずにいたら、面白いことが起きそうな予感がしたからだ。私は機械のくせに、よく勘が当たる。

 

 そしてタッグ発表とトーナメントの各一回戦の発表会場に、私は居る。しばらくすると一夏とシャルロットが来た。この二人は鈴音とセシリアを運んだ後に組んだようだ。鈴音とセシリアはというと、ISのダメージレベルCのため、今回のトーナメントには不参加になっている。

 

 ようやく発表の時間だ。電光掲示板には―――

 

『第一回戦、織斑 一夏&シャルロット・デュノア VS ラウラ・ボーテヴィッヒ&マキナ・オリジン』

 

 これは面白いことになったわね。本当に勘が当たったわ。隣を見ると二人が口を開けて呆けている。

 

「それじゃあ二人とも、試合では全力で戦いましょう」

「ちょ、ちょっと待てよ!なんでマキナがボーデヴィッヒと」

「私は誰とも組まなかったから、抽選でこうなったのよ」

 

 一夏が納得がいかないような顔をしている。シャルロットは勝てるかどうか不安ってところかしらね。

 

「二人とも自信が無いようだから、勝てるヒントを教えてあげるわ」

 

 そう言うと二人が顔を近づけてくる。そんなに聞きたいのね……

 

「二人がかりでこられると私も厳しいかもしれないわよ」

 

 それじゃあね。と言ってその場から手を振りながら去る。トーナメントまでまだ時間はあるから、それまでに対抗策を練って、勝てるぐらいになってもらわないと、困るのよね。すぐに片が付いてしまうから。ふふっ、楽しみね。

 

 

 

 

 

 

~ラウラside~

 

来週行われるタッグトーナメントで、まさか一回戦からアイツと対戦とはな。私には運も味方しているようだ。まっていろよ織斑一夏!

 

 しかし、ペアがオリジンとだとは思いもしなかったな。同じペアでは奴を倒すことはできないが、まあいい―――いや待てよ…………くくく……この方法があったな。その為には、まずは相手の出方を伺うことにしよう。

 

 これで二人纏めて八つ裂きしてくれる!

 

「ふふふ……あはははは……あーはっはっは!!」

 

この時ラウラは何を考えたのだろうか。それは誰にも分からない―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにこの時の高笑いを一年一組の生徒である、布仏本音に面白いものを見た、といった様子で見られていたことを、ラウラは知らない




今回はどうでしたでしょうか?次回はトーナメントですよ!トーナメント!

今回は一人称でプチ戦闘描写を書いてみましたが、難しいですね。次回は三人称に戻したいと思います。

誰かの視点でも三人称になるのでご注意ください。

それではまた次回!


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第十二話:暴れ子兎

今回はタッグトーナメント戦です。今回はオリジン好きには、ちょっときついものがあるかもしれません。ご注意ください。

それではどうぞ!


~NOside~

 

タッグトーナメントにおけるペア発表から数日が経ち、トーナメント当日。第一試合、一夏・デュノアペアはここ数日で、対戦相手であるオリジン・ボーデヴィッヒペアに対する作戦を練り、現在、ピットにて作戦の最終確認をしていた

 

「それじゃあ最初は予定通りに、マキナから狙うぞ」

「うん、わかった。その時に気をつけなきゃいけないのが―――」

「ボーデヴィッヒだな……」

 

と、この会話を聞く限り、マキナに対する作戦はだいたい予想がつくだろう。この二人は真面目に作戦会議をしているが、マキナの方はというと―――――

 

「ラウラ、何か作戦とかあるのかしら」

「そんなものいらんだろう。後、気安く名前で呼ぶな」

 

取りつく島もないといった様子である。二人とも実力があるので、作戦など無くとも大丈夫かも知れないが、同じペアだというのに、このコミュニケーションである。この場合はラウラが悪いのだが、マキナも元より、どうしようもない人間には何もしない、この場合、同じペアだから話しかけているだけである

 

この後、二人は一言も話すことなく試合開始まで待機していたのだった

 

 

 

 

 

 

~マキナside~

 

 ラウラと話すことも無くなり、試合開始まで暫く待っていると

 

『間も無く、第一試合を開始します。ピットにいる選手はアリーナに入場してください』

 

 ようやく始まるのね。何も喋らないでいると時間の進みが遅く感じるのよねぇ。ラウラを先にアリーナ中央に向かわせ、少し後ろを付いて行く。

 

 アリーナには既に、大勢の観客、国や企業、軍の首脳陣、中央には、一夏とシャルロットがやる気十分な顔で佇んでいた。

 

「二人とも、今日は全力で掛かって来なさいよ」

「マキナ相手に手を抜いて勝てるなんて思ってねえよ」

「それもそうね」

 

 そうこうしている内に、カウントが鳴り始める。

 

5―――――4―――――3―――――2―――――1―――――試合開始

 

先に仕掛けたのは一夏とシャルロットだった。一夏は雪片を構えマキナの正面に、シャルロットはラウラへの牽制をしつつ、マキナに近付いていく。対するマキナは、距離を取りながら二人にビットとアウェイク:マキナを使い、近付けさせないように射撃をしていく

 

シャルロットの牽制をAICで止め終わったラウラは、一切動かないでいた

 

「(ラウラが動かない……私が落とされるのを待ってるのかしら?)」

「(ボーデヴィッヒさんが動いていない?なんで?こっちとしてはありがたいけど)」

 

ラウラが動かないのを好機と見て、シャルロットが両手のアサルトライフルをマキナに向け乱射。マキナはそれをビットで防ぐ。銃弾を弾く音が消えた後、マキナを守っていたビットが、中程までに亀裂が入る

 

「まずは一つ!」

 

いつの間にか上昇していた一夏が、ビットを零落白夜で切り裂いたのだ。もちろん、マキナもただでくらう訳にもいかないので、他のビットでの射撃はしていたが、全て避けられるか、零落白夜で無効化されていたのだ

 

「腕を上げたわね一夏」

 

壊されたビットを粒子化させながらマキナは言う。ちなみに壊されたビットだが、射撃こそできないが盾としては十分に機能する。だとしたらなぜ仕舞ったのか、この場にいる他の人たちには分からないが、マキナは後にこう語る―――――修理が面倒だったから、と

 

話を戻そう。戦況は、一夏が零落白夜の弊害でシールドエネルギーが少し減っている。シャルロットはビームがなんどか掠っただけで、シールドエネルギーはあまり減っていない。マキナは未だに、被弾が0である

 

シャルロットが少し接近し、右手にアサルトライフル、左手にショットガンを持ち、マキナの動きを制限させながらアサルトライフルで削りにくる。そこでマキナは、2つのビットを一夏とシャルロット目掛けて突進させる。

二人は咄嗟に横に回避。そこを残り1つのビットとマキナ自身が狙い撃ちにする

 

一夏は零落白夜の発動を余儀なくされ、シャルロットは体を捻って避けるが、避けきれずに体を掠める。幸い、あまり溜めていない攻撃だったので、ダメージは少ない。

 

一夏はビームを無効化した後、瞬時加速でビットへ一気に近づき、斬る

 

「二つ目ぇ!」

 

一夏は二つ目を破壊した直後、シャルロットと共に一気に攻勢に出る。シャルロットが両手にショットガンを展開し制圧射撃をしながら接近。一夏はそれに当たらないように近づく

 

「ここまでやれるなんて思って無かったわよ」

「マキナが褒めるなんて、珍しい……なっ!」

 

一夏が雪片で斬りかかってくる。それを紙一重で避け、反撃にでようとするが―――

 

「こっちにもいるよ!マキナ!」

 

今度は、反対側から近接ブレードとパイルバンカーを持ったシャルロットがブレードを振るってくる

 

「(恐ろしいもの持ってるわね)」

 

恐ろしいものとは、言わずもがなパイルバンカーである。あんなもの当たったら、一溜りも無いだろう。流石のマキナも、シャルロットの攻撃を避けきれない

 

シャルロットと交互に一夏も雪片で斬りかかる。斬撃の嵐の中にいるマキナはというと、何故かビットによる反撃をしないでいた。何かを待っている様にも見える

 

「(何かおかしい。なんでマキナは避けてるだけなの……?)」

 

そう考えてマキナのもう一つの武装がある、掌を注視してみると、握り拳から僅かだが、光が漏れ出していた

 

「!? 一夏!離れて!」

「もう遅いわよ!」

 

そう叫んだマキナは、手を振り上げ、勢いよく二人の足元に向け振り下ろす。すると、マキナの掌から、巨大な光の球が放たれる。着弾と同時に光球は派手な爆発を引き起こす

 

「名付けて、そうね。『ユナイティリィ・ラフ』のお味はどうかしら?」

 

爆発による煙が晴れると、二人のISの装甲はボロボロになって倒れていた。シールドエネルギーも、残り僅かである

 

「ゲホッゲホッ、ああ、大した威力だよ」

 

先に立ち上がった一夏が言う。その直後、すぐにシャルロットも立ち上がる

 

「それは良かったわ」

 

飄々とした態度で話すマキナだが、デウス・エクスのシールドエネルギーも、残り少なかった。

 

「おい。私も手伝ってやろう」

 

三人のシールドエネルギーが僅かになったタイミングで、ラウラが参戦する。マキナにとっては有り難いだろうが、一夏たちにとっては、無傷のラウラの参戦は、絶望的とも言えるだろう

 

「あら?今のタイミングで?兎じゃなくてハイエナね貴女」

「そうだな。確かにハイエナだ」

 

マキナはラウラを少し煽ると、前に出ようとするが、体が動かない

 

「自身の敵を、また別の敵の手を借りて、止めを刺すんだからな」

 

その言葉の直後、ラウラはマキナにレールカノンを撃つ。まだシールドエネルギーが残っている。それを確認したラウラは、続けて二発目を撃つ。今度こそシールドエネルギーが無くなり、デウス・エクスが解除される

 

そして、ラウラはマキナの腕を掴み、アリーナの端に放り投げる。地面に顔から打ち付け、うつ伏せになったマキナは、ピクリとも動かない

 

「ボーデヴィッヒいいいいいい!!」

 

その光景を見た一夏は、怒りを爆発させ、ラウラに向かって突撃する。それを冷静にAICで拘束するラウラ

 

「ふん、単純だな貴様は。やはり教官の弟には、相応しくない」

「うるせえ!どうしてマキナを!同じペアで、仲間じゃねえか!」

「仲間だと?笑わせるな。ヤツを仲間だと思ったことなど一度も無い!逆に、私の邪魔をする敵だ!」

 

拘束されている一夏にレールカノンを向ける

 

「死ねぇ!織斑一夏!!」

 

そう叫んだラウラはレールカノンを撃つ―――――が、弾丸が一夏に届くことは無かった。なぜなら

 

「いい加減にしなさいよ、人間」

 

ISを解除させられ、気絶していた筈のマキナが、シュバルツェア・レーゲンのレールカノンを素手で、拉げさせていたのだ

 

「折角同じペアになったから話しかけても無視。挙句の果てには裏切り」

 

今までのマキナからは考えもつかない程の冷たい声。観客には聞こえていないが、周りにいる一夏たちは、言い表せない恐怖を感じていた

 

「何様のつもりかしら?」

 

無表情―――――いつも何かしらの表情を浮かべているマキナと同一人物とは思えない。そんなことを感じさせる表情だった

 

「覚悟はいいかしら?」

 

そう言ったマキナは、次の瞬間にはラウラを右腕で吹き飛ばしていた。もちろん、ISなどは付けていない。生身の状態だ。掴んでいたレールカノンの砲身は、半ばから引きちぎられ、ISの保護機能が無ければ意識は飛んでいただろう。それほど威力のある攻撃だったのだ

 

「(なんなんだアイツは!?)」

 

恐怖で身が竦んでいたラウラは、殴り飛ばされたことによって、現実に引き戻されていた。レールカノンを失ったラウラは、一夏以外を殺すわけにもいかないので、ワイヤーブレード、またはAICでの拘束に移ろうとする

 

が、衝撃で顰めていた顔を上げたラウラの眼の前には、既にマキナの拳が近付いていた。無論、それを避けられる訳も無く、無防備な状態でマキナの右ストレートをくらってしまう

 

今度は右と左の連撃、時折脚での攻撃も織り交ぜていく。その連撃に対応できずにサンドバック状態になっている。シュバルツェア・レーゲンも装甲がボロボロになってきている。シールドエネルギーも残り100しかない

 

「(こんなところで、こんな負け方をするのか?嫌だ!力が欲しい!)」

『願うか……?汝、自らの変革の為に、力を欲するか?』

「(寄越せ……力を……!)」

 

ラウラが力を願った瞬間、シュバルツェア・レーゲンに紫電が走る。その変化にいち早く気付いたマキナは、即座に一夏たちの所まで退避する

 

「ああああああああああああ!!!」

 

ラウラが悲鳴を上げる。その最中に、シュバルツェア・レーゲンの形が変わっていき、紫色のドロドロとした何かが、ラウラを包み込んでいく。形状を完全に変えたその姿は、第一回モンド・グロッソ優勝者、織斑千冬の専用機、『暮桜』によく似ていた。というよりも、暮桜そっくりそのままの姿だった

 

「俺がやる……」

「何言ってるの?見たところあれは、千冬の真似をしてるのよ。貴方が勝てる訳無いでしょう」

「だから俺がやるんだよ!あれは千冬姉だけの物なんだ!だったら俺が止めないと!」

 

 呆れた、この程度のことでここまで怒れることができるのね。やっぱり人間ってよく分からないわ。

 

「だったら好きにしなさい。私はアイツが死のうが、貴方が死のうが、関係ないわ」

「? なんでボーデヴィッヒが死ぬんだ?」

「あれは、ヴァルキリートレースシステムって言って、大会優勝者の動きを無理やりさせるのよ。脳にも負担が掛かるから、放っておいたら勝手に死ぬのよ」

 

 それを聞いた一夏は歯を食い縛っている―――なんなんでしょうね。アイツを助けようとでも思ってるのかしら。どうして今も敵の人間を助けようとするのかしら。

 

「助けるならそれでもいいけど、シャルロットからエネルギー貸してもらってからにしなさい。今の状態じゃ、すぐに負けるわよ」

「わかった。頼む、シャルロット」

「うん」

 

 エネルギーを補給し始めた途端に、VTSが接近してくる。狙いは二人の様だ。死なせるわけにもいかないので、相手の懐に潜り込み、掌底で弾き飛ばす。

 

「時間稼ぎはしてあげるから、早く補給しなさいよ」

 

 そう言ってからVTSに近付く。補給自体はすぐに済むだろから、攻撃を避けるだけでいい。袈裟斬り、上段からの振り下ろし、横薙ぎに斬りつけてくるが、どれも回避する。

 

 やはり偽物だからだろう、本物と比べると、どこか微妙なところが違う。ここが違う、とはっきり言えないことが少し悔しい。

 

「マキナ!終わったぞ!」

 

 ようやくね。準備完了の知らせを聞いて、VTSを蹴り飛ばし、一夏と交代する。

 

「遅かったわよ」

「悪いな。後は任せてくれ」

 

 さっきと違い、一夏の表情は落ち着いていた。これなら大丈夫そうね。

 

「それじゃあ、頑張ってちょうだい」

 

 一夏に手を振りながらアリーナの端に避難する。振り返ったと同時に、VTSが一夏に斬りかかるが、それを弾き、千冬の技である大上段からの振り下ろしでVTSに止めを刺した。切り裂いた所から亀裂が入り、その中からラウラが出てくる。

 

 それを確認した私は、アリーナを出て、自室に向かう。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 今私は、両隣を本音と簪、正面を楯無に囲まれて医務室にいる。皆が睨んできて少し怖いわね。

 

「どうしてあんな無茶したの?」

 

 簪が怒っている様な、それでいて心配している様な顔で聞いてくる。

 

「生身で戦ったことを言ってるなら、見当違いの心配はしなくていいわよ。私は機械だもの」

 

 三人がさらに睨みを効かせてきた。何か間違えたかしら?

 

「そういうことを言ってるんじゃないのよ。マキナに何かあったら私たち……」

 

 なるほど、そういうことか。優しいわね、この娘たちは。

 

「心配してくれてありがとう。そうね、貴女たちを心配させないためにも、これからは危険なことは避けるわ」

「そうしてくれると安心だよ~」

 

 この娘たちも、私の大切な、護りたいと思った人なのよね。それなら、いつか別れるその時がくるまでは―――――




今回はどうでしたでしょうか? 毎回うまく書けてるか心配な赤目です。
次は臨海学校前の、準備編ですかね?
ちなみにISで他の作品も書きたいと思ってるので、これが一区切りついたら書こうと思ってます。

それではみなさん、また次回!


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第十三話:繋ぎの話

今回はサブタイにもあるように、繋ぎの話です。今までの中で、一番短いと思います。

短いくせにちょっと遅いんですよね。

それではどうぞ!


~マキナside~

 

 タッグトーナメントが終わり、いつも通りの学校生活に戻った今日。しかし、今日は休日だ。最近、休みになると予定が無く、暇な日が続いている。そんな時は本音たちとだらけているのだが

 

「マッキー水着買いに行こ~」

 

 一緒にベットで寝転がっていた本音が、そんなことを言ってくる。

 

「水着?海に行く予定なんてあったかしら?」

「そろそろ臨海学校があるんだよ~」

 

 そういえばそうだった。私としたことが、すっかり忘れていたわ。

 

「そうだったわね。水着も持ってないから、一緒に行きましょうか」

「わ~い。マッキーとお出かけだ~」

 

 両手を振り上げて喜ぶ本音。まるで小さい子供みたいね。

 

「えへへ~マッキーの手気持ちいい~」

 

 無意識に本音の頭を撫でていたわ。やっぱり本音は癒しの塊ね。

 

 その後、暫く頭を撫でてから、私服に着替えて、本音と一緒に部屋を出た。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

マキナたちは自室を出た後、本音に加え、簪、楯無を引き連れて、ショッピングモール『レゾナンス』へ来ていた。ちなみにマキナたちの服装だが…………作者のセンスじゃ、上手く書けるわけがないので、皆さんでマキナたちに似合う服装を想像してもらえると助かります。申し訳ないです……!

 

 

「何か情けない声が聞こえたわ」

「どうしたのマッキー?」

「なんでもないわよ」

 

 そう言って本音の頭を撫でる。うん、癖になっちゃってるわね。と、本音の頭を撫でながら四人で目的地まで歩いていると、怪しげな集団を発見した。黒、茶、金、銀、とカラフルな髪の色をした集団だ。

 

 その集団は、少し前方にいる一組の男女を尾行している様だ。

 

「あの娘たち何してるのかしらね」

「巻き込まれたくないから、無視」

「そうね、それの方がいいわね」

 

 簪の提案に乗り、少し迂回する。そろそろ水着売り場のはずだ。と、今度は先程の男女を発見した。一夏とシャルロットだ。どうやら二人も水着を買いに来たのだろう。

 

「それじゃあ、自分の水着を選んだらレジ前に集合でいいかしら?」

「わかったわ♪マキナ」

 

 最初に返事をした楯無は、嬉しそうに鼻歌を歌いながら

 

「またね、マキナ」

 

 次に静かに返事をした簪は、少しだけ口調を弾ませながら

 

「マッキーまたね~」

 

 最後に返事をした本音は、ゆったりとしたいつも通りの口調で、それぞれ別れて行った。さて、私も探しましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 水着を買い終わった私は、レジの少し隣で三人の帰りを待っていた。

 

「よっ、マキナ」

「一夏じゃない、どうしたの」

 

 更衣室の前から一夏がこちらに歩いてきた。シャルロットの着替え待ちかしら?

 

「シャルロットが着替えてる間、暇だったから」

 

 思った通りね。その後、それぞれの待ち人が来るまで、他愛のない会話をしていたのだが―――

 

「ちょっと、そこの男」

 

 何か高圧的な声が聞こえて、そちらを見てみると、普通の女性がいた。一夏も気付いたようで、女性の方を向いている。

 

「そう、貴方よ。ちょっとここの水着、片付けてちょうだい」

 

 ああ、この手合いの女か。確かにISは女性にしか乗れないが、全員が乗れる訳じゃないのに、どうしてこうも威張り散らす女が出てくるのか。

 

「残念だけど、自分で片付けてもらえるかしら?」

「はあ?女の私が、男を使うのが駄目なの?あなたも、そこの男を使ってるんでしょ?」

 

 どうしてこうも酷い勘違いができるのか、訳が分からないわ。

 

「お前、女が全員偉いと思ってるらしいけど、それは違うわよ」

「なんで?ISに乗れる女が偉いのは、世界の常識よ」

 

 鼻で笑いながら、したり顔で話してくる。もの凄くイラついてきた……

 

「だったら、お前はいつでもISに乗れるのかしら?」

「の、乗れないけれど……」

「だったら偉そうにしないでちょうだい。お前はさっき、ISに乗れる奴が偉いって言ってたわね。それに従うなら、お前は偉くないってことになるわ」

 

 徐々に、苦々しい顔になってきた。もうそろそろね。

 

「だったらあなたはどうなのよ!」

「私服だから分からないかしら?ちゃんと思い出してみたら?」

 

 女が私の顔をまじまじと見つめてくる。私は、ご主人様と一緒にテレビに出た時の微笑みを作る。

 

「あ、あ、あなたは!」

 

 ようやく気付いたようだ。

 

「そうよ、マクスウェル様の従者、その従者に盾突いたら、お前も、その家族もどうなるかわからないわよ」

 

 顔を真っ青にした後、水着を片づけ、料金を払い、一目散に逃げて行った。ふぅ……ちょっとすっきりしたわ。

 

「ありがとうな、マキナ」

「いいのよ。でも、あんな撃退方法は納得できないけれどね」

 

 本当だったらちゃんと言い負かしたいけど、面倒だったからさっさと終わらせたにすぎない。

 

「お待たせマキナー」

 

 三人がそれぞれの水着を持って戻ってきた。

 

「そんなに待ってないわよ。それより、何か多くないかしら?」

「それはね~マッキーのもあるからだよ~」

 

 そういう本音は、他の二人と違い、……着ぐるみかしら? まあ、寝る時も着ぐるみだったから不思議ではないけれど。

 

 その後は、尾行していた四人が出てきたり、千冬と真耶が来たり、真耶が千冬と一夏を二人っきりにしたりと、いろいろあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 買い物を終えて、部屋に戻ってきた私は、久しぶりにパソコンを開いた。某ニコニコした動画や、お金の稼げる動画サイトを見ていると、一通のメールが来た。ご主人様のアドレスじゃない。ただの迷惑メールかと思ったが、なぜか無視することができなかった。

 

「そんな…………」

 

 メールに書かれていたこと、それは――――――――――




今回はいかがでしたでしょうか? マキナの服装については申し訳ないです。また勉強してきます。ラウラのなんやかんやは省いてますが、原作と変わりありません。マキナへの呼び方は、名前呼びになっただけです。

最後に届いたメールとは! 次回は臨海学校! そこでいったい何が起こるのか!

次回! サブタイはまだ無い!

お楽しみにー


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第十四話:臨海学校 一日目

どうも皆様、Blood BorneのDLCが楽しくてしょうがない、赤目です。

今回から臨海学校です。この話書いてる途中で、一夏にちょっとだけ殺意が湧きました

それではどうぞ!


~マキナside~

 

「海っ!見えたぁ!」

 

 臨海学校中の宿泊地、花月荘に向かう途中のバスの中。長いトンネルを抜けた先には、広大な海が広がっていた。私の隣の席には本音がいる。が、当の本音は私の肩に頭を乗せて気持ちよさそうに寝ている。その頭を起こさないように、丁寧に撫でる。

 

 なんだか、私まで眠くなってきたわ。さっきまで……なんとも……なかったのに………………

 

 

マキナと本音が、互いに頭を寄せ合い寝ていたのを、一組の生徒に写真を撮られたのは、言うまでもあるまい

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の皆さんの仕事を増やさないように注意しろ」

『よろしくお願いしまーす!』

 

 千冬の言葉に続いて全員で挨拶する。私はご主人様以外に敬語は使わないから、口パクになってしまうけど。その代わりにお辞儀は丁寧にしている。

 

「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね」

 

 と、着物姿の女将さんが丁寧にお辞儀を返してきた。挨拶が終わったので、旅館に入ろうとしていると、一夏が

千冬に頭を押さえられている。まあ、関係ないか。

 

「マッキー、一緒に部屋行こー」

「ええ、いいわよ」

 

 本音とは同じ部屋になったから、一緒に部屋まで行くことにした。ちなみに四人部屋で、残り二人は、ナギとさゆかだ。

 

「そういえば、マッキーの水着ってどんなやつー?」

「それは、後からのお楽しみにしておいてちょうだい」

 

 はーい、と袖の余った右手を振り上げながら返事をする本音。暫く歩いていると、目的の部屋の前に着いた。中に入ってみると、結構広い部屋だ。床は畳で、中央にはテーブルがあり、ふすまや障子などが使われており、純和風といった部屋だ。

 

 部屋に荷物を置き、必要な物だけを持って更衣室に向かう途中。ぼーっと突っ立ている一夏と箒がいた。何か見ているようだけど……

 

「どうしたの二人とも?」

「あ、ああ、マキナか。これなんだけど……」

 

 一夏がこちらに振り向き、見ていたものを指差す。そこには、

 

「ウサミミと、スパナ?」

 

 道端に生えたウサミミとスパナがあった。しかも「どっちか引き抜いてください」という張り紙がしてある。

 

「ウサミミの方は予想が付くのだが、スパナの方が分からないんだ」

 

 まあウサミミは十中八九、束でしょうね。スパナの方も分かっているので、そのことを伝えると、

 

「じゃあ、いったい誰なんだ?」

「私のご主人様でしょうね」

 

 もったいぶる必要もないから、早速ネタ晴らし。すると、スパナが埋まっていた方の地面が盛り上がってきて、

 

「ひどいよマキナ!そんなすぐに晴らしちゃうなんて!」

 

 地面の中からご主人様が出てきた。服や髪には、まったく砂がついていない。

 

「ですが、引き伸ばしても面倒なだけだと思いますが」

「確かにここで紹介した方が、いいだろうけどさー」

「な、なあ、その人は?」

 

 私がご主人様と話していると、一夏が聞いてきた。あまり邪魔しないでほしいわね。

 

「マキナ、あまり不機嫌そうな顔しないの。それじゃあ私自ら教えてあげよう!」

 

 拡張領域からクラッカーを一つ取り出し、紐を引っ張って鳴らす。私の急な行動に二人が驚いている。

 

「私の名前はマクスウェル。知っての通り、篠ノ乃束以外でISコアが複製できる天才だよ。マキナとは、家族の関係だよ。趣味とか別にいいよね。はい、自己紹介お終い」

 

 少し早口で自己紹介をしたご主人様。二人の反応は、意外とフランクな話し方だったからか、驚いているようだ。

 

「それじゃあ、私はやることあるから、また後でねー」

「それでは、また後程」

 

 そう言ってご主人様を見送る。見えなくなったので、更衣室に向かおうと振り返ると、二人がさらに驚いた顔をしている。

 

「どうしたのよ、二人とも」

「いや、マキナって敬語使えたんだなって思って」

「しかも、急にいつもの話し方に変わったから、さらに驚いたぞ」

「私が敬語を使うのは、ご主人様に対してだけよ。ほら、さっさと行くわよ」

 

 二人を置いて先に歩を進める。暫くして更衣室にたどり着くが、中には誰もいない。少し遅かったかしら。まあ、今日一日は自由行動だから、いいのだけれど。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「マッキーこっちだよー!」

 

 水着に着替えて浜辺に出た私は、簪と一緒にパラソルの下にいた本音に呼ばれ、二人の間が空いていたので、そこに座る。

 

「マキナ、その水着似合ってるね」

「そう?ありがとう」

 

 私の水着は、黄色の様な金色をした首や腰の辺りで紐を結ぶビキニタイプの水着だ。ちなみに簪は泳ぐ気は無いのか、白い薄手のワンピースを着て、脇には麦わら帽子が置いてある。本音は……黄色のネズミだ。ネズミの着ぐるみだ。まあ予想通りである。

 

「おーい、マキナー!」

 

 声のした方を見ると、一夏が近付いて来ていた。

 

「一緒にビーチバレーでもしないか?」

 

 そう言われて少し考える。二人から離れてもいいかしら?

 

「私たちなら別にいいよ」

「そうだよ~マッキーも遊んできなよ~」

「二人がそう言うなら行ってこようかしら」

 

 二人から許可も下りたので、一夏に付いて行く為に立ち上がる。

 

「………………」

 

 一夏がこっちを見ながら固まっている。

 

「おりむー、あんまり見てちゃ駄目だよー」

「織斑君、女性の体を見つめたら駄目」

「わ、悪い!」

 

 二人が凄く恐い顔をしながら一夏を睨むと、すぐさま目を逸らす。なんだ、見惚れてたのね。

 

「ほら、さっさと行くわよ」

「お、おう」

 

 一夏の腕を引っ張りながら進む、一夏の監視目的なのかは分からないが、本音と簪の二人も付いて来ている。

 

 

「遅いぞ一夏」

「な、なんで織斑先生が相手に」

 

 コートの中には黒いビキニを着た千冬がいた。千冬チームは、清香、癒子で、私のチームは一夏、シャルロットと組んだ。

 

「七月のサマーデビルと呼ばれたこの私の実力を見よ!」

 

 まずは清香のサーブから始まった。コート際を狙ったサーブをシャルロットが、ネット際に帰す。

 

「一夏」

「任せ……ろっ!」

 

 一夏のスパイクが空いていた場所に入る。

 

「よっし!」

「ナイス一夏!」

 

 まずはこっちの点だ。このままいけるといいけれど、

 

「行くぞぉ!」

 

 一夏のサーブが相手コートの中央に入る。それを癒子が取り、清香が上げ、そして、

 

「ふんっ!」

 

 千冬の殺人スパイクが私目掛けて飛んでくる。それをレシーブしようとするが、後ろに押されて後退する。最後は受け切れずに、見当違いの方向に弾き、私も弾かれて、そのせいで転がってしまう。

 

「なかなかやるわね千冬」

 

 少し転がった後に受け身を取って起き上がる。一夏が顔を赤らめて逸らしてるけど、何かあったのかしら。

 

「マキナ前、前隠して!」

 

 簪に言われて視線を落とすと

 

「!?」

 

 な、なんで上の水着が外れてるのよ。胸を腕で隠して周りを見渡すが、無い。水着が無い。

 

「マッキーこれ早く付けてー」

「あ、ありがとう本音」

 

 本音が拾ってくれた水着を急いで付ける。流石にこれは恥ずかしいわ……

 

「ごめん、私、ちょっと落ち着いてくるわ」

 

 本音と簪が付いてこようとするが、それを手で制す。こんないつも見せないような姿、誰にも見られたくないわ。……もう見られてるけど。

 

 千冬が私の痴態を見れたからか、笑いを堪えてるわね。後で、覚えてなさいよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ビーチがよく見える崖の上に

 

「うおおおおおおおおお!!!マキナのレア顔キターーーーーーーーーー!!!」

 

超高性能カメラで、写真を撮っている神がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時が過ぎ、夜。大広間をいくつか繋げた大宴会場で、IS学園の生徒は夕食を摂っていた。この旅館は、臨海学校中のIS学園が貸し切りにしているので、他の客に迷惑が掛かる心配はない

 

「昼も夜も刺身が出るなんて、豪勢ね」

「しかもおいしいよね~」

 

 本音が私の隣に座り、一緒に食べている。純国産の魚に加え、山葵が練り山葵じゃなくて、本山葵なのも随分と気前のいいことだ。

 

 少し周りを見渡してみると、一夏の隣に座っているセシリアが、足を痺れてさせて小刻みに震えている。さらに、シャルロットが山葵をそのまま食べて涙目になっている。

 

「マッキー食べさせてー」

 

 とそこで、本音が和服の袖を引っ張り、食べさせてほしいと言ってきた。

 

「ほら、口開けなさい」

「あーん、ん~!おいしい~!」

 

 頬に手を当て、ほにゃ、っとした顔をして嬉しそうにしている。それを見ると、無意識に本音の頭に手が伸びて、撫でてしまう。本音はさらに嬉しそうな顔をして、私に擦り寄ってきた。

 

 なんだか一夏のところが騒がしくなってきたわね。あ、千冬が怒鳴り込んできたわ。今までの喧騒が少し止んだわね。もう少し、この騒がしくても楽しい空間が、続いてほしかったけれど、残念ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~NOside~

 

皆が寝静まった頃。誰も起きている者がいない中、マキナは旅館の裏にある、林の中に来ていた。なぜこんな時間に、こんな場所にいるのかというと

 

「ちょっと遅かったね、マキナ」

「申し訳ありません。本音たちと話していたので」

「いいよいいよ。マキナも成長してる、っていう実感が湧くからね」

 

今の会話を聞く限り、マクスウェルがマキナを呼び出したようだ

 

「話、というのは、やはり……」

「うん。あのメールのことだよ」

 

あのメール、とは数日前に届いた、誰が出した物か分からないメールのことだろう

 

「あの話、本当なのかな」

「アイツがあの様な真面目な文面で送ってきた、ということは事実だと思います」

「やっぱりそうだよね~、残念だな、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう帰らないといけないなんて」

 

もう帰る。どこに、と聞きたくなるが、この二人が帰るとなると、元の世界の事だろう

 

「ええ、私も、ようやく大切な人間を見つけたというのに。もう、帰らないといけないなんて……」

 

マキナは悲しげな顔をしている。が、涙は出ない。機械であるマキナは、感情こそあれど、涙なんかは出ないのだろう

 

「アイツが来るのは、明日か明後日だから、それまでマキナは楽しんできなよ」

「そうさせていただきます……」

「それじゃあね」

「………………」

 

マキナが返事をしないなんて珍しいな、そう思いながらマクスウェルは軽い足取りで暗闇に消える。マキナは、マクスウェルとは違い、かなり重い足取りで旅館に戻る。

 

 

皆との別れの時間は、すぐそこまで迫ってきている――――――――――――――――




今回はいかがでしたでしょうか? そろそろ第一部最終回が近いです。 後もう少しですが、最後までお付き合いいただけると、幸いです。


感想・意見・その他諸々があれば、感想欄に書いていただけると嬉しいです。


それではまた次回


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第十五話:自律の悲鳴

光の聖石がなかなか落ちない赤目です。聖石が落ちないせいでカルネの進化ができません!(血涙)

今回は福音、かと思いきやサブタイの人です。人じゃありませんけどね。

ちなみに前後編になりました

それでは第十五話、どうぞ!


~マキナside~

 

 臨海学校二日目。今日一日は、ISの各種装備試験運用とデータ取りだ。遊ぶ時間なんてものは皆無だ。しかも、専用機持ちたちは各国から大量の装備があるので忙しいだろう。

 

「全員集まったな。それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速にな」

 

 一同が返事をする。一年生全員が集まっているので、かなりの人数になっている。

 

「それから篠ノ之。ちょっとこっちに来い」

「はい」

 

 打鉄の装備を運んでいた箒が、千冬に呼ばれてそちらに向かう。

 

「お前には今日から―――」

「ちいぃぃぃぃぃぃぃちゃあぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 遠くから砂煙を上げながら何かが走ってくる。千冬の方を見ると、頭を手で押さえながら溜息を吐いている。

 

「会いたかったよ、ちぃちゃ―――へぶぅ!」

「もう少しまともに登場しろ、束」

 

 走ってきたのは、機械で出来たウサミミに、いつものエプロンドレスを着た束だった。千冬からアイアンクローをくらって、宙に浮いている。

 

「生徒たちが困惑している。自己紹介しろ、束」

 

 千冬がそう言うと束は、千冬の後ろに隠れる。その様子を見た千冬が、また溜息を吐いた。

 

「はぁ……まだ治ってなかったのか」

「だ、だって仕方ないじゃん。他人と喋るの怖いんだもん……」

「いいから、さっさと紹介しろ」

 

 そう言って束を引っぺがし、生徒たちの前に突き出す。皆は興味津々といった様子で、束を見つめている。

 

「え…えっと……ISを作った…篠ノ之束です……」

 

 皆が、それだけ? もっと何か言って。 という様な視線を束に浴びせる。

 

「……以上です!」

 

 ズコッ! と音を立てて皆はずっこける。一夏の自己紹介を思い出したわ。

 

「姉さん」

「あっ!久しぶりだね箒ちゃん!」

 

 周りの空気を無視して、箒が束に近付いて行った。そういえば、何で最初に箒も呼ばれたのかしら?

 

「頼んでいた物は?」

「大丈夫! ちゃんと持ってきたよ! さあ、空をご覧あれ!」

 

 束がそう言うと、空からひし形の箱の様なものが降ってきた。それが開くと、中には

 

「これが束さんお手製の第四世代型IS『赤椿』だよ!」

 

 『赤』がいた。どうやら束の新作らしいが、第四世代とは、少しやり過ぎじゃないかしら。まあ、私には関係ないことだけれど。

 

 束が箒に武器の使い方を教えていると、真耶が慌てた様子で千冬の下に駆けつける。話してる内容からして、何か起こったようね。

 

「全員、注目!」

 

 真耶が走り去った後、千冬は声を張り上げて生徒全員を注目させた。

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動に移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機。許可無く室外に出た者は我々で身柄を拘束する。いいな!」

 

 皆が返事をして、何が起こっているか分かっていないが、千冬がそう言ったので、全員が慌ててISに接続していた装備を外し、ISをカートに乗せて片付け始める。

 

「専用機持ちは全員集合しろ! 織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、更識、オリジン! ―――それと篠ノ之もだ」

「はいっ!」

 

 嬉しそうな表情をしながら返事をする箒。新しいものを手にして浮かれているのかしらね。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「では、現状を説明する」

 

 専用機持ちと職員は旅館の一番奥の大座敷に集められていた。室内には大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいる。

 

「いまから二時間程前、米国本土からハワイに向けて試験飛行中だったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった」

 

 その説明に、全員が声こそ出さないが狼狽えてるのがわかった。ISの暴走、しかも軍用だ。これを止めるなら量産機などでは無理なことだろう。だから専用機持ちが集められたのだろう。

 

「その後、衛星による追跡の結果、福音はここの上空を通過することが分かった。時間にしておよそ五十分後。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することとなった。

教員は学園の訓練機を用いて空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう。

それでは作戦会議を始める。意見のある者は挙手するように」

 

「はい」

 

 まずセシリアが手を挙げた。

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

「よかろう。ただし、これらは二カ国の最重要軍事機密だ。決して口外するな。情報漏洩が認められた場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二年の監視がつけられる」

「了解しました」

 

 開示されたデータを元に皆が相談を始めた。一夏は、こうした状況が初めてだからか、話に付いて行くのが精一杯といった様子だ。

 

「マキナ、大丈夫?」

「どうしたの簪」

「ううん、朝から元気無いように見えたから……それに、話してるときもぼーっとしてから」

 

 昨日の話が本当だということがわかり、少し傷心ぎみだったから、簪に心配を掛けちゃったわね。

 

「大丈夫だから心配しないで」

 

 これ以上心配させないように、笑顔で語り掛ける。

 

「うん、わかった……」

 

 ちゃんと笑顔は作れたか不安だったが、簪の様子を見ると、作れていたみたいだ。

 

 いつのまにか、一通り作戦会議が終わり、皆が一夏の方をジッと見ている。

 

「作戦は織斑、お前の零落白夜の一撃で決めるのが確実だ。これが現在考えられている作戦で一番成功率が高い」

「お、俺の……」

「織斑、これは訓練ではなく実戦だ。覚悟がないのなら無理強いはしない」

 

 少し困惑した表情を浮かべている一夏だが、覚悟を決めた様だ。

 

「織斑先生、俺……行きます!」

「……わかった。では作戦をまとめるぞ。この作戦は織斑の零落白夜の最大出力で攻撃する必要がある。そこで、オリジン。お前のISは素の状態でどのぐらいのスピードが出る?」

「そうね、全力を出せば福音よりは早いけど、人を運ぶことはできないわ」

 

 そういうと千冬は、当てが外れたのだろう。少し落胆した様子だ。

 

「ならばオルコット。お前の高速戦闘時間はどのくらいだ?」

「20時間です」

「よし、それならばこの作戦の参加者は―――「ちょっと待ってちーちゃん!」……束、何の用だ」

 

 天井から束が降りてくる。会議が始まる前から待機していたようだ。

 

「ここは断然! 赤椿の出番なんだよ!」

「ほう、どういうことだ」

「それはね~」

 

 そう言って赤椿のスペックと、第四世代とくゆうの機能『展開装甲』を使えば、福音にとっても脅威に成り得るので、その方が一夏が零落白夜を決めやすい、とのことだ。

 

「束、その調整はどのくらいで出来る」

「7分あれば十分だよ」

「そうか……やれるか篠ノ之?」

「はい!やります!」

 

 なんか、今の箒を見てると不安になってくるわね。

 

「それでは、織斑、篠ノ之、オリジンは出撃準備をしろ。準備が終わり次第、作戦を開始する!」

 

「マキナ、頑張って」

「ええ、まかせなさい」

 

 簪の激励を受け、出撃地点まで移動する。最後ぐらい、楽しい時間を過ごしたかったけど、仕方ないわね。福音とやらには悪いけど、ストレス発散に付き合ってもらうわよ……

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 作戦が始まって目標である福音に向かって、移動していると

 

『あーあー、マキナー聞こえてるー?』

「ご主人様、どうかしたのですか?」

『なんか今、そっちに福音とは違うIS反応が近付いてるんだよ。しかもそれが、向こうの世界にいるらしい無の天才とかいうヤツが作ったらしいんだよ』

 

 向こうの世界の……しかも天才だと。天才はご主人様がいるのに、それ以外が天才を騙るなどと、さらにイラついてきたわ。

 

『しかもマキナの模造品らしいんだよね。マキナと同じ様に私もムカついてるから』

 

 ご主人様が一息つく、次に聞こえてきた声は―――

 

『ぶっ潰してきてよ』

 

 いつもの明るい口調とは真逆の、絶対零度の様な声で命令を下す。

 

「仰せの通りに!」

 

 その命令を快く承諾する。ここで逆らう様な私じゃない。その模造品―――レプリカとでも呼ぼう―――までの道のりは、ISのミニマップに映っている。その場所に全力で移動する。

 

「マキナ! どこに行くんだ!」

 

 オープンチャンネルで一夏が聞いてきた。

 

「他のISの反応が見つかったから、そっちに行くだけよ。貴方たちは福音を倒しなさい」

 

 そう言ってレプリカの居場所までは、福音とはまったく違う方向になる。一夏たちが、まだ何か言ってくるが、それを無視して一気に移動する。

 

 しばらくすると、黒と白の私とよく似たスーツを着ており、黒色の短いツインテールの髪形をした少女が、顔にバイザーを付け、宙に佇んでいた。

 

 特徴的なのは、二本の浮いている巨大な拳と、肩に付いている球体だろう。

 

「敵機発見 戦闘行動 開始」

「いいわ、戦ってあげる。かかって来なさい」

 

先に動き出したのはレプリカだ。瞬時加速にも劣らない速度で、マキナに掴み掛る。それを後ろに避けて、お返しとばかりに、両手のアウェイク:マキナを、レプリカの左右に放つ。動きを制限されたレプリカに、すぐさま二つのビットで上下からビームを撃つ

 

レプリカは、拳の形をしたビットで上下からのビームを防ぎ、距離を取る。離れた後、すぐにビットを近くに引き寄せるが、指が数本無くなっていたり、装甲が溶けていたりして、ボロボロの状態だ。次に攻撃を受けたら壊れてしまうだろう

 

マキナは左手でユナイティリィ・ラフの準備をし、右手と二つのビットで牽制、残りのビットで攻撃を仕掛ける。牽制に使うビットは、拡散射撃をさせており、牽制というよりは、面制圧になっている。そのせいか、先程からレプリカの被弾が多くなっている

 

「私の模造品って聞いたけど、案外弱いわね。期待外れだわ」

 

そろそろ終わらせてやろう。そう思ったマキナは、右手の射撃をしつつ、全てのビットで面制圧を仕掛けながら、急接近する。レプリカは動くことが出来ず、磔状態だ

 

「これで、終わりよ!」

 

零距離まで近づいたマキナは、レプリカの腹部に、ユナイティリィ・ラフの爆発をくらわせる。それに耐えることが出来ずエネルギーの尽きたレプリカは、海面に真っ逆さまに落ちていく。

 

「……あぁそうだ、福音のこと忘れてたわ。仕方ないから、様子でも見に行こうかしらね」

 

 落ちていくレプリカに目もくれず、福音の所に向かおうとする―――――が、そのとき。

 

「リミッター解除 バーストモード起動」

 

 破壊したはずのレプリカから、そんな声が後ろから聞こえてきた。

 

 声の方を見ると、目を隠していたバイザーが外れ、赤い瞳がこちらを見ている。髪留めと足の装甲の一部が、赤と緑に変わっている。

 

 さらには、肩の球体が四角に変わっており、ビットの数が四つに増えている。それぞれのビットからは、炎、水、風、闇のオーラが、湧き出ている。

 

「なんだ、また戦えたのね。いいわ、どっちかが壊れるまで、()り続けましょうか!」

 

今ここに、オリジン:マキナとレプリカ:バーストの、聖なる扉の為の闘いではなく、自身の為の闘いが、幕を開ける―――――




今回はいかがでしたでしょうか? 次回はレプリカ決着です。え?福音?あれは一夏たちに任せておきます。

感想・指摘・その他諸々がありましたら、気軽に感想欄にお書きください。

それでは、また次回!


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最終話:それぞれの未来へ

戦闘開始時と違い、先に仕掛けたのはオリジンだった。まずは自身の弱点である闇の拳の破壊を狙い、アウェイク:マキナで攻撃する。しかし、リミッターを解除したレプリカは、先程とは反応速度が段違いだ。そのせいで、避けられるが、闇以外の拳で守られてしまう。防御に使った拳には、傷一つ付いていない

 

マキナが、ビットを再展開し、ビームを撃とうとする、が

 

「(予想以上に早いわね……)」

 

ビット展開時の隙を突き、一瞬で拳の範囲内まで近づいてくる。四つの拳を自在に操り、攻撃してくる。オリジンは近距離は自分の得意距離ではない。といっても、武器が近距離に適していないだけで、オリジン自身は近接戦闘もこなせる。しかし、自分の腕で止めようとしたら、一瞬で粉々に壊されてしまうだろう

 

オリジンはレプリカの攻撃を避けながら、ユナイティリィ・ラフの準備をしながら、ビットによる射撃を行う。レプリカは、ビームを避ける為にオリジンから距離を取り、ビットまで距離を詰める。ビットを回避させる隙が無く、呆気なく壊されてしまう

 

「攻撃力も私並みか……」

 

オリジンは内心、舌打ちしていた。バーストモードとなったレプリカは、オリジンの模造品と呼ぶのに相応しい性能になっていた。攻撃力、スピード、どれを取ってもオリジンと同レベルだ。このレプリカを作った、無の天才とやらは、本物の天才なのだろう

 

一つのビットに集中したレプリカにビットによる集中攻撃を仕掛ける。破壊した直後は、避けきれず被弾するが、二発目からは縦横無尽に動き回り、被弾を最小限に抑える。攻撃中に一つを拡散射撃に切り替え、攻撃する。それを見たレプリカは、闇の拳以外で防御しながら、二度目の接近を仕掛ける

 

「フェアウェル・ゼロ 発射」

 

接近中のレプリカが、そんな声を発する。その声の直後、四つの拳が、無のオーラを纏い、掌からミサイルを発射する。ミサイルを堕とす為に拡散射撃を行う。ビームに当たったミサイルは、大爆発を起こす。その爆発は、レプリカの体を隠すのには、十分すぎる爆炎を引き起こした

 

しかも、その爆炎にはECMの効果があるらしく、ISのレーダーすら欺けるほどの性能だ。オリジンは、そのECMを払う為に、二つのビットで拡散射撃と、両手のアウェイク:マキナを撃つ。暫く射撃をしていると、ようやく煙が晴れる

 

そこには、ビットを二つ失ったレプリカがさらに傷が増えた状態で浮いていた。オリジンの射撃を避けきれず、かと言って、ECMから出るとそこを狙われるので、止むを得ず、防御に徹していたのだろう

 

「ディザスター・クライ 発射準備開始」

 

レプリカがそう言うと、肩に付いていた立方体が開く。開いた所に大量の粒子が集まり始める。オリジンはそれを止めようとするが、残り二つの拳がレプリカを守る。どの角度から撃っても全て防がれてしまう。粒子はやがて球体となり―――――

 

 

 

オリジンが無の渦の中に飲み込まれる

 

 

 

ディザスター・クライを放った後は、冷却しなければならないので、再度撃つのに時間が掛かる。レプリカのビットは四つ全て破壊されている。レーダーでISの反応を探してもどこにも無い。自立の心は歓喜に満ち溢れていた

 

オリジナルを倒した! 私の方が強いんだ! と、しかし、その幻想は早くも崩れ去る

 

「まだ……終わってないわよ……」

 

レプリカは、すぐ後ろから聞こえてきた声に反応し振り向こうとするが―――次の瞬間には、少し前に蹴り飛ばされていた。蹴り飛ばされた後、レプリカは何か異変を感じた

 

今まで在った筈の両腕が、肩から先の部分から引き千切られていたのだ。オリジンを見ると、髪を留めていた髪留めが壊れ、ロングの状態になっていた。その両手には先ほどまで付いていた腕が握られていた。だが、そこで力尽きたのだろう。海に向かって真っ逆さまに落下して行く

 

「マあああああキいいいいいナあああああ!!」

 

遠くから近づいてくる声は、マクスウェルのものだ。マキナのIS反応が無くなった時点で、こちらに向かって来ていた。マキナの元まで辿り着いたマクスウェルは、マキナを抱きかかえて、レプリカにスパナ《エクスペリメント》を構える

 

互いに睨み合う一柱と一機だが、レプリカが身を翻し、どこか遠くへと飛び去って行く。それを確認したマクスウェルは、近くの島に着地し、涙を流しながら、マキナ用の修理器具を取り出す

 

「待っててねマキナ、今直してあげるからね」

 

マキナは、修理を受けている最中、微笑みを浮かべていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 修理が終わったのは、既に月の光が差し込んできていた。旅館まで自分で行けると言ったのだが、心配だからだと言って、マクスウェル様に抱えられながら移動していた。

 

 旅館の浜辺に近付くと、千冬が腕を組んで立っているのが見えた。ご主人様が浜辺に着地し、これ以上お手を煩わせる訳にもいかないから、自分の足で立ち、千冬の所まで歩いて行く。

 

「途中で道を外したと思ったら、IS反応が消えたぞ。いったい何をしていた?」

「もう一機敵がいたから倒してきたわ」

「そうか。動いていた反応が消えたのは、ジャミングか何かのせいか。分かった、もう休んでいいぞ」

 

 意外だ。千冬のことだからすぐにでも事情聴取に取り掛かるかと思った。

 

「お前には返し切れない恩があるからな。まあ、それを抜きにしても、こんな時間に帰ってきた生徒を酷使するような事はしないさ」

 

 さらっと心を読まないでほしいわね。

 

「それじゃあ、その言葉に甘えて、私はもう休むわね」

「マキナ! また明日ね!」

 

 ご主人様の方を振り向き、笑顔で手を振ってから、自室に向かい歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

~簪side~

 

 私たち専用機持ちが、『銀の福音』を倒したのに、別の敵を発見した、と言っていたマキナが、まだ戻ってきていない。しかも、織斑先生によると、途中でISの反応が消えたらしい。それを聞いたとき、私はマキナを探しに行こうとしたが、もし、敵がまだ健在だったらどうする気だ。と言われ、思い留まった。

 

 シールドエネルギーの尽きたISで向かっても逆に負けるだけだ。篠ノ之さんのワンオフアビリティー『絢爛舞踏』を使えば何とかなるが、マキナが負けた相手に、私が勝てる訳も無い。

 

 もしかして死んじゃったんじゃ。そう思ってしまって、眠ることができないでいた。本音も同じな様で、布団に入っているだけだった。

 

 そこで、襖を開ける音が聞こえた。

 

「皆寝ちゃったのかしら?」

 

 この声は!

 

「マキナぁ!」

 

 今まで聞いてきた声が聞こえて、思わず飛びついてしまい、後ろに倒れこんでしまった。

 

「いたた……って簪じゃない、泣いてるけど、どうしたの?」

「だって! マキナが帰ってきてなかったから! 私、死んじゃったかと思って……」

 

 今まで心配させといて、どうしたの? は、無いと思う。でも、無事でよかった……

 

「そうね。心配掛けてごめんなさい」

「そうだよ。無茶しないって、約束してくれたのに」

「あ、そうだ。本音は?」

 

 そう言われて本音の方を見ると、眠ってしまっていた。その顔には、涙を流しながら、苦しそうにしていた。

その様子を見たマキナが、本音に近付いて、頭を撫で始めた。

 

「えへへぇ~マッキー」

 

 気持ちよさそうな顔と声をしながら、安心した様な顔を見せる本音。……別に羨ましくなんてないし。

 

「ほら、簪もこっち来なさい」

 

 マキナに呼ばれて、近づいて頭を撫でてもらう。うん、本音が病みつきになるのも頷ける。

 

「心配してくれてありがとう。もう寝た方がいいわよ」

「うん、そうする」

 

 マキナに言われたから、布団に入って目を閉じると、すぐに眠気がやってくる。意識がだんだんと遠のいてくると

 

「ごめんなさい」

 

 よく分からないことを言ってきた。すでに意識が朦朧としている頭では、よく考えられない。なんだか悲しそうな顔してたけど、どうしたのかな?

 

その後、簪が眠ったのを確認してから、マキナも眠りについた

 

 

 

 

 

 

~マキナside~

 

「全員乗りましたかー?」

 

 臨海学校が終わり、帰りのバスに一組全員が乗り込む。後ろには、他のクラスのバスが待機している。後は出発を待つだけ、とそこで金髪の女性が、バスに乗り込んできた。

 

「あなたが織斑一夏君ね?」

「はい。そうですが……」

 

 どうやら一夏に用があるみたいだ。一夏だということを確認したと思ったら、いきなり頬にキスをした。その様子を見た箒、セシリア、シャルロット、ラウラは驚きと怒りが湧き上がったらしく、一夏に詰め寄りだした。

 

「なんだかいつも通りの光景を見たのが、久しぶりな気がするわ」

 

 一夏の周りの娘たちが一夏を取り合う、それを尻目に本音たちとのんびりと暮らす。ここ数日、それが出来なくいことが不満だったわ。

 

 暫くしてバスが発車した。少し離れた後ろには、四組のバスが走っていた。そして、帰り道を進んでいると

 

「!?」

 

 バスが急ブレーキを踏み、バランスが崩れる。

 

「何があった!」

「そ、それが、突然目の前に巨大な扉が……!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、運転席まで行き、

 

「バスのドアを開けなさい!」

「えっ、な、なぜ」

「いいから早く!」

 

 運転手にドアを開けさせ、扉の元まで近付く。

 

「やぁ、マキナ」

「ご主人様。来てたんですね」

「うん。バスの近くを飛んでたんだけどね」

 

 扉の近くには、既にご主人様が立っていた。

 

「マッキー!」

「マキナ!」

 

 いつの間にかバスを降りていた本音と簪が走り寄ってくる。それと同時に、扉が開いた。そこからは

 

「少し遅れちゃったけど、迎えに来たよぉ! 神才ちゃんと原初の機体ちゃん!」

 

 ニタニタとした変わらない笑みを浮かべ、顔の左半分を、ピエロの仮面で隠した、いけ好かない悪戯神が出てきた。

 

「マキナ、どういうこと?」

「簪……本音……」

 

 迎えに来た、という言葉を聞いて、信じられないといった表情を浮かべている。一緒にいる本音もだ。それを見た私は、申し訳ない声しか出せない。

 

「二人とも……ごめんなさい」

「どうして、どうして言ってくれなかったの?」

「それは……知らせが来たのが、急で、時間も取れなかったから……」

 

 これは嘘だ。伝える時間もあった。でも、伝えたせいで帰るのを止められて、いつも通りの生活が出来なくなるのが、嫌だったからだ。

 

「でも、少しでも教えてくれたって良かった筈だよ。私たちはその程度の関係なの?」

「そんなわけ……! そんなわけ無いじゃない!」

 

 本音のその言葉を皮切りに、私の中に溜まっていた感情が溢れ出してきた。

 

「私だって貴女たちと一緒に居たいわよ! もっともっと一緒に暮らしたいわよ! 一緒にお喋りして、お菓子食べて、楽しく暮らしたいわよ! もっと……一緒に……」

 

 吐き出した感情と共に、頬に何か冷たいものが伝ってくる。

 

「ごめんねマキナ。そんなに思ってくれていたなんて……」

「ぐすっ……ひっく……お別れなんて、嫌だよぉ……」

 

 二人が泣き初めてしまった。どうやら私も泣いてしまっているみたいだ。

 

「うーん。感動するねぇ。まさかあのオリジンが、ここまで成長するなんて。スゴイよスゴイよ!」

 

 後ろでロキが泣き真似をしながら、拍手をしている。……今だけでもいいから、黙ってくれないかしら。

 

「じゃあ、もういいよね」

 

 その声が聞こえたと思ったら、後ろから引っ張られる。簪たちが手を伸ばすが、何か、見えない壁があるようだ。

 

「最後にお別れの言葉でも言ったらどうだい?」

 

 ロキがニヤニヤした笑みを浮かべながら、問いかける。私が言うのは、別れの言葉じゃない。

 

「二人とも、また会いましょう。楯無にも、伝えておいてもらえる?」

 

 こちらの声は聞こえているらしく、二人が勢いよく頷いて答える。

 

「マキナ、行こっか」

「はい、行きましょう」

 

 ご主人様に手を取られ、繋ぎ、歩き出す。途中でロキの方に振り返ったかと思うと、

 

「おいクソ神。もう一度この世界に連れて来いよ。まだ集めてない技術もあるし、それに」

 

 ご主人様は、そこで言葉を一旦区切ると

 

「マキナに悲しい思いをさせたままには、したくないからな」

 

 とても嬉しいことを仰ってくれた。

 

「はいはい、わかったよ。いつになるかは分からないけど」

 

 不承不承といった様子で答えるロキ。この約束だけは、守ってもらうわよ。

 

「マキナ! また会おうね!」

「いつでもお菓子準備して待ってるからね~!」

 

 二人からの声が聞こえてきた。それに振り向くことなく扉に向かって歩み始める。振り向いてしまうと、決心が鈍ってしまいそうだから。その代わりに、後ろを向きながら、手を振って別れを告げる。

 

 

マキナとマクスウェル、二人が扉の光に包まれると、そこには最初から何も無かったかのように扉が消え去る。先程まで居たロキも、いつのまにか消えていた

 

簪と本音、二人は、否、二人と一機は再開を胸に、それぞれの未来を生きていく

 

 

彼女たちの未来に、幸あれ―――――




最終話はいかがでしたでしょうか? 二ヶ月ほど続いた作品ですが、第一部完結でございます。第一部、ということは……

まあそれはそれとして、感想を付けてくれた皆様、お気に入りに入れてくれた皆様、ありがとうございました。お気に入り数も32という、予想よりも多くなりました。本当にありがとうございます。

次もまたISで他の作品を書こうと思っております。因みに内容は、転生+クロスものとなる予定です。クロス先は、7の付く作品です。

いつものいきますよー

感想・指摘・その他諸々がありましたら、気軽に感想欄にお書き下さい。

それではまた次回!or次作! また会いましょうねー!


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