麦わらの鍛治師 (C2秒)
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1話

 

みんなは神様を信じているか?

 

 

 

突然こんなことを言われると頭のおかしい奴か狂信者の様に思われるだろうが俺は違う、俺は神に会ったことがある、そして俺はその時、神の能力の片鱗をこの身で体験した。

 

 

 

結論だけ言おう、俺は死んだと思ったら突然目の前に自分を神だと名乗る存在が現れ、かくかくしかじかと神の巧みな話術(もはや洗脳に近い)に誘導され気が着いた時にはここ、ONE PIECEの世界に転生させられていた。

 

 

 

俺は新たな生を授かったが、俺は素直に喜べなかった

 

 

結果として俺は神を恨むこととなった

 

なぜだ、

 

 

なぜ

 

 

なぜ転生先がウソップなんだ(涙目)

 

 

死亡フラグ満載パワーインフレ世界に連れてこられたことよりもウソップの中に入れられたことが俺にとっては問題だった。

 

 

しかし俺は自分が原作のウソップなのだということに気がついたのはつい最近だ、生まれてこの方6年間、確かに東の海(イーストブルー)のシロップ村に住んでるし母親の名前はバンキーナで鼻が長くて父親が海賊らしいけど全然気がつかなかった。

 

 

 

その原因は俺の鼻だ

 

 

実は、長くないんだ……俺の鼻。

 

何かで削った記憶もないし生まれつき普通サイズなんだぜ俺の鼻、ウソップの特徴と言ったらあの長鼻だろ?

 

だから俺は自分が原作のウソップだとは気がつかなかった。

 

 

そんな俺がなぜ原作のウソップだと気付いたのかと言うと。

 

 

「おい、おめぇらぁ!こいつが俺のせがれのウソップだぁぁああ!」

 

あそこで騒いでるバカ親父(ヤソップ)のおかげだ。

 

なぜかシロップ村に突如現れた海賊船、その正体はシャンクス率いる赤髪海賊団当然その船には俺の親父ことヤソップも乗り込んでおり子供の俺を連れ込み村の酒場で真昼間からいい大人たちが宴を開いている。

 

そしてその集団の中に連れ込まれた俺は乗組員全員にからかわれ散々な目にあっていた。

 

そして俺は鬱陶しい連中に酒を注ぎまくり酔い潰すことによってようやく一息つけたのだった。

 

「あぁー、疲れた。ジュースくれジュース。あと肉、代金は親父たちが払ってくれるから」

 

あと母さんの分のお土産も頼もう、これ位は仕返ししなけりゃやってられない(ゲス顏)。

 

「全く末恐ろしい奴だな、自分の父親を潰すとは」

 

声をかけられた方を見るとその人物を見て絶句した、特徴的な赤髪と片目の三本傷そして恐らくだが服の下は隻腕だろう、その正体はこの陽気な海賊団の船長赤髪のシャンクスだった。

 

どうやら既にルフィとは接触済みらしい、まあ正直原作だとこの村に寄った記録はないはずだが。

 

まあ、俺の存在が変わった時点で原作なんてあってないようなもんだよな。

 

一応奢ってもらってるのでお礼を言っておいた、それと俺の視線がどうやらない方の片腕に集中気味だったらしくそれに気付いたシャンクスは。

 

「ん?ああ、この片腕か、これはなぁ、新しい時代に賭けてきた」

 

へー、知ってる(棒)。

 

俺にルフィについてを熱く語ってくる、シャンスクから物凄いルフィ愛を感じた、そんなにルフィが好きなら海に連れてってやれよと思う、正直うざいけど一応奢ってもらってるんだからこれ位は甘んじて受けてやることにしよう、あとデザート追加で。

 

 

 

そして、船員の半分近くが脱落してきて俺もそろそろ家に帰ろうと思った頃事件が起きた。

 

「ない!敵船から奪った悪魔の実がない!」

 

小さな宝箱を持った肥満体型のルウが叫びだした。

 

ああ、この展開原作で見たことあるよ確かルフィが食っちまったんだよな。

 

 

へぇ、この村でもこんなイベントがあるのか、悪魔の実を食べるとか命知らずだな泳げなくなるんだろ、海賊でそれって致命的だと思うんだが……

 

「おい、ウソップてめぇこんな実を食わなかったか?」

 

俺の肩をかなり強い力で揺するシャンクス。

 

おいおい俺は見た目通りの年齢じゃねぇんだぜ、そんなルフィと同じ様なアホみたいなことする訳……

 

「あっ、やべ、食っちまったかもしれねぇ」

 

「「「えーーー!」」」

 

デザート頼んだ時にクソ不味い奴食わされた記憶がある、もしかしたらそれかもしれない。

 

「あー、まあ、やっちまったもんは仕方がない、それで俺が食ったのって何の実だ?」

 

俺のあっけらかんとした様子を見て毒気を抜かれたような一味。

 

「お前が食ったのは『カジカジの実』、多分バラミシアってことくらいしかわからねぇ。つっても本当に良いのかそれ食っちまったらもう二度と泳げねぇんだぞ?」

 

「いいのかって言ってももう食っちまったからなそれに金槌でも海に落ちなきゃいいんだよ」

 

「おめぇ、ルフィに似てるな」

 

最後のつぶやきは敢えてスルーした。

 

それにしてもやベーな、もう原作のウソップの面影が全くない、過ぎたことはもう良いとしてこれからは俺の修行パートが始まるんだな!

 

よし俺のことは『USOPPさん』と呼ぶが良い。

 

ちなみに親父は酔いつぶれて寝ていた。

 

 

 

 

それから一週間ほどで赤髪海賊団はこの村を出港しそれから間もなく俺の母親も息を引き取った。

 

母親はもともと体が弱く病気をしがちだったがここ最近特にヤソップがいる時は大分体調が良さそうに見えたがどうやら空元気らしかった。

 

それでも母親の死に顔は綺麗で満足そうだった。

 

 

俺は将来海賊になることを決めた、目標は父親のヤソップを全力で殴ること。

 

 

それが息子であるウソップとして出来ることで、やるべきことだと思ったから。

 

 



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2話

 あれから、十年以上の歳月が経った。

 

 俺は将来海に出るため修行を積んだ、それは当然悪魔の実の能力にも当てはまる。

 

 カジカジの実、その能力の真髄は物『物を鍛える』事である。

 

 特に優れているのは金属に対してで触れて心の中で鍛つ(うつ)だけで金属を鍛え物を作り出す事ができた。

 

 

 物であれば触るだけで形を変えられる、ぶっちゃけ簡単な錬金術みたいな物だった。

 

 

 だがしかしこの能力の真髄はこれだけではなかった。

 

 悪魔の実の力を限界まで引き出したカジカジの実の能力の真の力は『心を鍛つ(うつ)』事だった。

 

 簡単に言うと心に形を与える事だ。

 

 つまり俺は能力を使って心の中で

 

 

 創造の理念を鑑定し、

 

 基本となる骨子を想定し、

 

 構成された材質を複製し、

 

 製作に及ぶ技術を模倣し、

 

 成長に至る経験に共感し、

 

 蓄積された年月を再現し、

 

 あらゆる工程を凌駕し尽くし―――

 

 

 ここに、幻想を結び剣と成す!

 

 

 

 このプロセスを心の中で経ると、自分の心を新たな形に鍛ち直す事ができるのである。

 

 ぶっちゃけ某正義の味方に似ている、というか俺の中の師匠はその人なのだ。

 

 とはいえそれに至る経緯と本質は全然違う。

 

 彼方は世界からこぼれ落ちた心の欠片

 

 それに対し此方は自分の心を悪魔の実の能力で鍛ち直している

 

 

 詰まりモデルの物が同じだとして完成した結果は同じだが過程は似て非なる物であるという事だ。

 

 

 宝具ができた時は正直驚いた

 

 おい、抑止力仕事しろ!

 

 

 

 まあぶっちゃけ世界を滅ぼす兵器が何個もあったり、軍人が空を歩いたり、物理法則完全無視な常識ナニソレオイシイノ、な世界だからしょうがないのかな?

 

 とは思ったけど……

 

 もしかしたらそんな力の均衡が傾いた世界に現れたバランサーとしての役割を持ったのが悪魔の実なんじゃ?

 

 それ単体として卓越した能力で抑止力として働き、物であるはずが意思が存在し(物に悪魔の実を食べさせる、等)、ある一定の容量を越える(実を二つ食べる)と自害したり…………

 

 

 うん、考えるのは止そう。

 

 つまり何が言いたいかと言うと、俺はこの村の鍛治師となった。

 

 まあ、悪魔の実の能力が能力だから仕方がないよね。

 

 能力を伸ばそうとしたらいつの間にかそうなってたんだよ、そのせいか村では半ば便利屋扱いされている。

 

 それに対する小さな復讐として毎朝『海賊が来たぞぉ〜〜』と可愛らしいモーニングコールを行っていた。

 

 

 

 そんな訳で俺の可愛らしい朝の挨拶と朝の鍛錬を終えて汗を流そうと思っていたら三人の子供が走ってきた。

 

「「「キャプテーン、海賊だぁぁああ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 うん、海賊だ。

 

 がけ下には海賊旗を掲げた小さい船が、確かあの旗は鼻がでかい某ピエロ海賊の奴だ。

 

 鼻がでかい……、俺の鼻は普通サイズで良かった。

 

「何だあいつら?」

 

 あっ、見つかった。

 

「「「見つかった〜〜〜!」」」

 

 そして逃げていく、俺の子分達。

 

 彼らはなぜか知らないが突然現れて子分にしてくれと頼んできた稀有な子たちだ、名前もピーマン、たまねぎ、にんじん、あまりに名前が先進的過ぎて子分にしてしまった位だ、親は何考えてたんだろうか。

 

 それはもう置いといて今は俺を見つけた海賊達だ。

 

 麦わら帽子をかぶった元気な青年、刀三本のマリモヘッド、オレンジの髪の小悪魔風美少女の三人組。

 

 

 ……これは原作麦わら海賊団ではないだろうか。

 

 

 ヤベェカッケェ、思い出補正ちょっとかかってるけどそれ抜きでもカッケーな!

 

「ちょっと、なんか言いなさいよ!」

 

 推定ナミが苛立っているのでここはなんか言ったほうがいいだろう。

 

 

「……おれはこの村に君臨する大海賊団を率いる、人呼んでキャプテン・USOPP!!

 この村には手を出さない方が身のためだ! おれには8000万の部下がいる!」

 

 原作では確かこんなことを言っていた気がする。

 

「嘘でしょ!」

 

「あ、バレた」

 

「やっぱり、嘘なんじゃない」

 

 ナミからツッコミと呆れ顔という珍しいコンボをもらった。

 

「お前面白いな!」

 

 ルフィからは賞賛をもらった。

 

 

 

 

 ルフィの度重なる、メシメシコールによって場所を村のメシ屋に変えて彼らの事情を説明してもらった。

 

「そうか、仲間と船探してるのか」

 

「この村で踏めを手に入れるのなら、あそこしかねぇな」

 

「おばさん肉」

 

「おい、ルフィ聞け」

 

「この村には一つだけ豪邸があってなそこに資産家の娘が住んでる」

 

「おれには酒持ってきてくれ」

 

「オメェも聞けよ」

 

 ルフィは肉、ゾロは酒に夢中で話を全く聞いてない。

 

「ねぇ、その船って私たちが手に入れられるの?」

 

 ナミの質問に少し考えて。

 

「オメェらって何ができる?」

 

「伸びる」

 

「斬る」

 

「盗む」

 

「ん、伸びる?」

 

「ああ、俺はゴムゴムの実を食べたゴム人間だからな」

 

 両頬を引っ張り伸ばしながら言うルフィ。

 

「へぇー、珍しいな。俺以外には初めて見た」

 

「あんたも変態人間なわけ?」

 

 ナミにそう言われてちょっと落ち込む俺、変態は海パン一丁の奴に言ってやれ喜ぶから。

 

「ああ、カジカジの実を食べた……鍛治人間?だ、一応な」

 

 なんだこの残念な職人みたいな名前は、いっそのこと火とか出せたら良かったのにな、いやここは家事ではなかったのを喜ぶべきではないだろうかあの正義の味方の場合『メシ使い』もあり得たからな、うん。

 

「どうかしたの?」

 

「いや、ちょっと自分の恵まれた状況に感謝してた」

 

「そ、そう」

 

「あーー!思い出したぁ!」

 

 突然叫び出すルフィ。

 

「お前の父ちゃん、ヤソップだろ、いやぁ〜〜お前ら似てんなぁ、なんか懐かしい感じがしてたけどやっと思い出した」

 

 そんなに似てるだろうか、鼻がないから自覚はなかったが、まあヤソップも鼻ないか、原作でもあったけどルフィって時々鋭いよな。

 

「親父が今どこにいるのか知ってるか?」

 

 ルフィが知ってるかどうかは期待薄だがそれさえわかれば俺の目標はすぐに達成させられる。

 

「それは解んねぇ。でもきっと今も『赤髪』のシャンクスの船に乗ってるさ! ヤソップはおれの大好きな海賊団のクルーなんだ!」

 

「じゃあお前がルフィか、シャンクスがよく話してたよ」

 

「お前、シャンクスを知ってるのか!」

 

「ああ、小さい頃に一回会って悪魔の実を食わされた」

 

「それは、ご愁傷様」

 

 ナミ達に同情された。

 

 まあ、事実は違うが似たようなものだ。

 

 後ろで笑ってるルフィは見逃してやろう、同じ一杯食わされた仲間だからな。

 

「ちょっと待って、私達は船を手に入れる方法を探してるの。それに心当たりがあるんじゃないの?」

 

「ああ、その話か。だったら簡潔に説明しよう。」

 

 

 そして俺が彼らに説明した内容を簡単にまとめると、『三年ほど前この村唯一のお嬢様の新たに執事になった男が怪しいからちょっと調べたら襲われたので返り討ち、からの尋問』による所彼の計画が明らかに、それによるとそろそろ海賊が来るから退治手伝ってくれたらお礼に船あげるよ、である。

 

 

 

 因みに本当の所は原作を知っている俺が能力の実験目当てにキャプテンクロの周りをチョロチョロしてたら襲いかかってきたので実戦訓練と能力の検証をしようとしたのだがあまりに弱く的にしかならなかった、そして計画を履かせた後は海軍へ通報してことなきを得た。

 

 ちなみに、偽物のクロが騙されて処刑されていたらしく海軍の尊厳を保つために口止料込みの懸賞金を貰ったのは余談である。

 

 海軍もクロネコ海賊団を当時探したのだが見つからず三年後に来るという話になっていたのだが未だ来ていない、というかここら辺だと海軍本部はモーガンかネズミになるから来なかったのかな?

 

 汚職酷いな。

 

 それにルフィ達が来たって事は時期的にクロネコ海賊団が来るのはもう直ぐだ。

 

 

「つまり悪い奴らをぶっ飛ばせばいいんだな!」

 

「珍しくちゃんと話し聞いてたわねルフィ」

 

「じゃあ頼めるか?」

 

「任せとけ!」

 

 そして再び飯を食い始めるルフィ。

 

「ねぇ」

 

 ルフィには聞こえないように小声で話しかけてくるナミ。

 

「どうした?」

 

「あなたを疑うわけじゃないけどそれで本当に船を手に入れられるの?」

 

 その疑問も尤もだ、しかし多分大丈夫だ。

 

「問題ねぇよ、一応あの『家族』には貸しがある」

 

 三年前にクロをはめた都合上なぜかカヤの両親を助ける形となった。

 

 だから頼めば、最終土下座やお金を払えば船くらいなんとかなるだろう、と思ってる。

 

 

 



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3話

それなりに書き貯めはあったのだが、誤字と矛盾点の所為で直す気が起きない、クロを消したのが不味かったのか?

今回と次くらいは少々駆け足になるかも。


 所変わって坂の上、時間はもう少しで日の出の未だ暗い時間帯。

 

「本当にここから来るのか?」

 

「おいおい、疑うのか内のピーマンとたまねぎとにんじんの報告を?」

 

 あの後現れた野菜三人組の報告によると怪しげな催眠術師がここから海賊船を引き連れて来ると告げたらしい。

 

「本当に大丈夫なの、それ?」

 

「……まあ成るように成るさ」

 

 実は俺も半信半疑だ、まさか勝手にクロをぬっころして、原作をクラッシュした弊害がこんな所で来るとは。

 

 

「よし決めた!」

 

 さっきまでウンウン唸っていたルフィが突然叫び出した、驚く周りの連中を無視して俺の方を向いた。

 

「ウソップ、お前俺の仲間になれ!」

 

「「えぇ〜〜!」」

 

「あぁ、良いぞ」

 

「「えぇ〜〜!」」

 

 スルッと俺の麦わら海賊団の一員になる事が決まった。

 

「あんたら良いの、こんなに簡単に決めたりして」

 

「ああ、ウソップの事気に入ったんだ!」

 

 満面の笑みでそう言うルフィ。

 

「自分の目には自信がある、何か問題があったら俺自信が未熟だったって事さ」

 

 そして心境を告げる俺。

 

 まあ、内心麦わら海賊団に入る事は半分決定事項だった事だ、親父に、四皇に会える確率が一番高い船だからな。

 

 

 俺の海賊入りが決まった頃地平線の向こうにまだ豆粒ほどだが一隻の海賊船が見えた。

 

「どうやら海賊船が見えてきたな」

 

「海賊船?あんな小さいのによくわかるわね」

 

 俺の身体能力は修行でかなり上昇していった、というか俺は裏技を使った。

 

 武器もなく(能力は別)、師匠もない(心の中も別)俺が修行で参照にしたのは歴史に名を残した英雄達だ、俺が宝具を能力で製作できた事は前に話した。

 

 それは俺だけに使えた悪魔の実の裏技的用法だったのだろう、そしてもう一つ俺には悪魔の実の裏技がある。

 

 その名は『憑依経験』

 

 武器を作る時とそ武器の記憶や経験まで模倣して此の世界に鍛ち(うち)出す技法である、この技によって俺は数々の英雄の技を此の身で繰り出すことができる。

 

 つまりカジカジの実で武器と一緒に武器の記憶と担い手の筋肉まで作る、デメリットand副作用込みの俺の奥の手だ。

 

 

 ぶっちゃけコレも理想である正義の味方の模倣である、だから戦闘能力はウソップよりも自信があるし一般人や並みの海賊の技量は超えていると自負している、しかしこの世界には偶に人外の領域のIPPANZINが居るから気は抜けないが……

 

 

 

「これでも一応狙撃手でね、視力には自信がある」

 

「あんた自分の事、鍛治師だとか言ってなかった?」

 

「鍛治師兼狙撃手だ、あくまで本業は鍛治師、と言っても俺に狙撃以外の才能がなかっただけの話なんだけどね」

 

 

 正義の味方の能力を参照にし過ぎた俺は何の因果か能力値は彼に似たり寄ったりの形となった、視力や弓の才能は有れど剣の才能は無かった、結果俺はそれを努力と裏技でカバーした形になる。

 

「じゃあ船長今回の一番槍は任せて貰えるか?」

 

「よし、わかった」

 

 そうこうしている内に、船は島に到着しそこからわらわらと海賊達が乗り込んできた。

 

「おい誰かいるぞ!」「話が違うじゃねぇか」「ガキばっかりだ!」「殺っちまうぞおめぇーら!」

 

 叫び出す海賊達を前に俺は一歩前に出る。

 

 俺が目標とした正義の味方は俺とは過程こそ違うが結果は酷似している、それ故参考にできる事は沢山ある。

 

 文字通り、悪魔の実によって俺の体は剣できている。

 

 イメージをするのは最強の自分。

 

 己の敵は目の前にいる有象無象ではなく、乗り越えるべきは常に自分自身。

 

 心を鍛ち(うち)形を作る。

 

 それは命を持ってこの世界へと顕現する。

 

「I am the born of my sword(体は剣で出来ている)」

 

 俺にとっては意味は成さぬが、剣製における骨子を世界に告げる。

 

 一瞬のうちその手の中に現れたのは二刀一対である陰と陽の中華刀。

 

 最もなれ親しみ俺の技量を最大限に発揮させられる武器である。

 

「スッゲー、手品か?今の?」

 

「…………」

 

 俺の能力にルフィは目を星にしゾロは眉間にしわを寄せる。

 

「さて、いくぞ海賊共、この島を襲おうと画策したのだろう?ならば抵抗を受けるのも道理、少々手痛い反撃を受けてもらおう」

 

「何言ってやがr」

 

 一瞬のうちに距離を詰めて手近な一人を斬りつける。

 

 突然目の前に現れた俺に動揺しながらも斬りかかってくる連中を避け、反らし、いなしながらも次々と斬り伏せていく。

 

「死ねぇ!」

 

 突きつけられて発射された銃弾をあえて避けることなくその身で受ける。

 

 触れたものを鍛える俺が常に触れており最も得意な金属と非常に近くそして能力への適応性が高い血液、それを一瞬の内に鋼鉄以上の硬度に性質を変え薄皮一枚で銃弾を容易くはじき返した。

 

「な、なんだと、ばけもn…グエェ!」

 

 そしてもはや流れ作業のごとく敵を斬り伏せる、俺の能力を行使すれば自分の体の性質をゴムにすることも……でき無いことはないだろうが無事では済まなそうなので止めておく。

 

 斬る、受け流す、斬る、逸らす、斬る、単純作業の繰り返しで戦闘はあっという間に終盤に移り変わる。

 

 いつの間にか現れた二人組のなんとかブラザーズはゾロが手傷を負いながらも勝利。

 

 ルフィは催眠術師に催眠をかけられたかと思ったら暴走、目の前の催眠術師と雑魚数名をぶっ飛ばして船首の下敷きに。

 

 なんだそれ。

 

 ナミは敵船からの金目のものの確保。

 

 俺は雑魚の一掃とナミのピンチを一回中華刀を投擲して救ったのだが……

 

 

 もしかして俺今回雑魚狩りしかしていない?

 

 

 

 いや、確かに俺tueeeできて満足だけど、ちょっと戦い前に雰囲気を盛り上げすぎたために少々いたたまれ無い。

 

 この衝動は目の前に残った雑魚数名にぶつけるとしよう。

 

 

「よし、終わったな」

 

「あんたも大概化け物ね」

 

「まあな、それにしても入る海賊団間違えたかなぁ?」

 

 船首の下敷きになってるルフィを見て呟く、それでもまあルフィにはほっとけないっていうある種のカリスマが備わっているんだよな。

 

「言っとくけど私はあいつらの一味とは違うからね、手を組んでるだけ」

 

「ふーん、でもあいつらは仲間だと思ってるんだろ?」

 

「だったら何だって言うのよ」

 

 俺の言葉に疑問符を浮かべるナミ。

 

「いや、海賊は仲間入りも仲間抜けも船長が決めることだ、あれでも一応うちの船長だからなあいつが仲間だって決めたんならお前も仲間だよ」

 

「……そう」

 

 俺の言葉に少しだけ辛そうに返事をするナミ、彼女には少々複雑な事象があったはずだ、がそれもすぐに解決されるだろう。

 

 

 全てが終わった時、空にはちょうど太陽がその体を浮かべようとしていた頃だった。

 

 

 

 

 

 




なんかもう、エミヤ呼んでくればよかったと常々思う。


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4話

 海に浮かぶ。羊の頭を象った船首飾りのキャラヴェル。

 

 「カーヴェル造り三角帆使用の船尾中央舵方式キャラヴェル、ゴーイング・メリー号でございます!」

 

羊のメリーに説明され俺たちの目の前に用意された船メリー号。

 

無事ルフィに、否。

 

俺たちに譲渡された、これからいくつもの海を乗り越えていく船だ。

 

 「いい船だなっ!」

 

無邪気な笑顔で喜ぶルフィ。

 

 「動作の説明を致しますが、まずクルーガーネットによるヤード調節に関しましては」

 

メリーから動作説明を受けるルフィだが目を点にして首を傾げている、あの様子では全く分かっていないのだろう。

 

 「あー、ダメダメ。船の説明なら私が聞くわ」

 

ルフィの対応を心得たナミが代わりに申し出た。

 

そんななか俺はというと。

 

「あ、あのウソップさん。これ受け取ってください」

 

カヤに風呂敷に包まれた箱を手渡される。

 

「こ、これお弁当ですよければみんなで食べてください」

 

「あ、ありがとなカヤ」

 

顔を真っ赤にして言うカヤとその後ろで微笑ましそうに見つめるカヤの両親。

 

どうやらいつの間にかカヤのフラグが建築されていたらしい。

 

鈍感って言うな、鈍感じゃないからこんな中途半端な状況で気付いて戸惑ってるんだよ、カヤとは三年前のきっかけから偶に邸に行って有る事無い事吹き込んだり家庭教師擬きとして勉強を教えていたくらいだ。

 

カヤの両親から給料貰えたし一応便利屋やってたからな。

 

 

 「今度帰ってきたら、ウソよりずっとウソみたいな冒険譚を聞かせてやる!」

 

「はい!」

 

 

その言葉を最後にして俺は生まれ育った島を後にした、あの島でのことは野菜三人組に任せといた、あれでも俺がトレーニングをつけたからそこらのモブキャラよりは強いはずだ。

 

 

 

よし!これでこの島には世界を一周してくる程度には心残りはない。

 

 

「いくぞ野郎ども、ゴーイングメリー号出航だぁーーーー!」

 

 

 

新たな船出と新入り(俺)の祝いの宴を終え平和に船旅を進める俺たち一行。

 

そんななかルフィが布とペンキを取り出し俺たち麦わら海賊団の海賊旗をさらさらと描き始めた、みんなが興味を持って覗き込む……が。

 

 

「どうだ!」

 

自信満々に掲げられたのは、正しく死と恐怖がごちゃ混ぜになって……

 

もはやどうリアクションをすればいいのかわからないような代物であった。

 

 

 「ルフィ、これは何の落書きだ?」

 

 「失敬だな、お前」

 

 「こんな旗を掲げた海賊船には、乗りたくねェな」

 

 「ここまで下手に描けるのも、ある意味才能よね」

 

 「海賊旗ってのは、『死の象徴』だろ……? これで誰が恐怖を感じるってんだよ」

 

 「いや、ある意味恐怖だろ、これは」

 

周りの面々のこの反応に流石のルフィも少し落ち込んでしまっていた。

 

しょうがないので俺が代わりに書くことになった、職業柄手先は器用なので俺が書いた海賊旗もみんなが納得してくれたためそれに決まり、二枚の旗と帆に大きく麦わら帽子をかぶったドクロを描いた。

 

原作を知っている人にはお馴染みの『あのマーク』である。

 

 

 「これで『海賊船』ゴーイング・メリー号の完成だ!!」

 

そして再び始まる宴、海賊ってのは自由でいいねもっと早くに始めれば良かったかもしれないと思った今日この頃。

 

 

 

一発で大砲を岩に当て狙撃手を任命された俺、ただ原作のことを忘れていてヨサクとジョーニのことがすっかり抜け落ちてしまっていたことは些事であろう。

 

 

壊血病怖い、ビタミンC不足で陥るそれは数多くの船乗り達の命を奪ってきた。

 

海賊は死と隣り合わせと言っても好き好んでそんなことで命を落としたいわけではない。

 

 

そんな訳で麦わら海賊団一行+2人はは海のコックを捜すべく『海上レストラン・バラティエ』へと進路を取った。

 

 「アニキが探してた、『鷹の目』の男もそこに現れたことがあるって噂ですぜ」

 

 説明の後に放ったジョニーの一言に1人、ゾロはその雰囲気を荒々しい物へと変えるのだった。

 

 

 

 

ジョニーの案内通りに順調に航海を進めること3日、無事海上レストラン・バラティエへと到着した。

 

 

いや、無事では無かったな。

 

船長の予想以上の食欲により食料はほぼ尽きかけ、俺の釣りの腕ととヨサクとジョニーがいなければ危うかった。

 

更に某三刀流はことあるごとに突っかかってきてウザかった、だから俺は剣士じゃなくて鍛治師なの。

 

斬り合い?しねーよボケ!

 

怪我人相手にする訳ないだろ!

 

寝たら治るとの事で結局次の島に着いたら手合わせすることになった、ゾロはバラティエで鷹の目にやられて大怪我するから当分大丈夫だよね(ゲス顔)。

 

ただ自分でフラグを作っている気がしないでもないんだ……

 

 

 

考え事に集中し過ぎて気がつくのが遅れたらしく、気がついたら海軍の船にから打ち込まれる砲弾、ルフィのゴムゴムの風船に弾き返され砲弾は見事に命中した。

 

魚の形を象った見事な船、バラティエへと……

 

 

どうやら世界の修正力が働いて俺には原作の流れを捻じ曲げる事はできない見たいだ(震え声)

 

世界の修正力って凄い(棒)

 

キャプテンクロ?

 

そんなの原作にいましたっけ?

 

 

 

 

 

ーーしっとりとした舌触りに肉厚な食感、更に芳醇な香りにピリッとしたスパイスがアクセントになりーー

 

ヤバいね海上レストラン・バラティエ此処だけ世界観が違う、王道バトル漫画とグルメ漫画くらい違う。

 

ルフィが連行され、アルバイトに強制就労。

 

俺たちはそんな船長の観察兼腹ごしらえに訪れていた。

 

このレストランは内装も落ち着いていて雰囲気も良く、まるで海の上の別世界のようだった。

 

これだけなら三ツ星評価間違いなしだったのだが、所々に諍いの傷跡が見受けられるのと机や椅子などの家具が荒事用なのか統一性よりも丈夫さを追求して造られていたのが減点対象だろう。

 

 

そして繰り広げられる、フルボディと金髪黒服の漫才、どうやら此処はお高く止まるよりもみんなに愛される方が似合ってるみたいだな。

 

実際俺もフルボディさんには笑わせて貰ったキメ顔で恥をかき、逆上からの体を張った渾身のボケ。

 

 「海でコックに逆らうってのは、自殺に等しい行為だってことをよく覚えておけ」

 

ぐるぐる眉毛、サンジのセリフはかっこ良くフルボディさんの惨めさが余計に際立っていた。

 

 

 

 



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海上のレストラン

HDに途中まで書き上げてあった昔の作品に気がつきまとめて投稿、何分かなり昔なのと整理中なので少しこんがらがっているかもしれません。



 

哀れフルボディさん、店から叩き出される事になった。

 

海軍の大尉なのにね!

 

俺フルボディさんの事好きになれそうだよ。

 

それとほぼ同時に彼の部下が訪れ捕まえた海賊に逃げられたと大声で報告した。

 

海軍ェ……

 

何大声で不祥事漏らしてんだよ、日本だとバッシングの嵐だぞ。

 

まあこの世界世紀末だから仕方ないよね。

 

逃げ出したのは東の海(自称)最強のクリーク一味。

 

報告に来た海兵が後ろから拳銃で撃たれレストラン内に静寂が満ちる。

 

現れたのは先ほどまで話題に上がっていた脱走した海賊、彼はどっかりと席に着き、食事を要求する。

 

武器を持った海賊にオーダーを聞いた人物は物怖じする事もなく質問する。

 

「お客様、代金はお持ちで?」

 

「悪りぃが持ち合わせがねぇんだ、鉛玉でいいか?」

 

拳銃を相手の眉間に押し当てるも次の瞬間にはその相手に拳で潰され見るも無残な姿に。

 

信じられるか?あいつコックなんだぜ?

 

このレストランはおかしいよ……

 

 

まあ、相手は当て馬だからしょうがないね、きっと彼はルフィがサンジを気に入るための引き立て役なのさ、まあその当人は自分の事を愛の奴隷と名乗り内の航海士に上手くあしらわれてるけど。

 

楽しそうだからいいよね。

 

ぶっちゃけ、他のもっとまともな料理人が欲しいとは考えてはいけない。

 

世界の修正力と彼の料理の腕は本物なのだから……

 

主人公の船に乗るキャラクターはまともなわけがないという現実も存在する、知らしそうだと仮定すると俺の事もまともではないこt……

 

この話は止そう。

 

 

ルフィのウェイトレス姿と目の前の恋の奴隷の姿を見て癒されよう。

 

(現実逃避とも言う)

 

 

 

 

ルフィのアルバイト期間はまだまだ続く、正直給料よりも減給の方が多いような気がするが確認するのが怖いので聞いてない、当人が理解しているのかは激しく疑問だが。

 

そして俺たちがバラティエに到着してから2日後そこに現れたのは両脇に砂時計を抱えたドクロを掲げた巨大な船を持つ海賊船、クリーク一味のガレオン船だ。

 

ただその姿に東の海の王者(笑)の風格などどこにもなくまるで天災にでも襲われたかの様にボロボロになっていた。

 

やはり、バラティエはと言うよりサンジは彼らに水と食料を与えるつもりらしい。

 

ルフィはアルバイト、俺とゾロはレストランで酒盛り、ナミは………あっ、やべぇナミの事忘れてた、まぁ成るように成るかヨサクとジョニーがいるし。

 

 

「さてじゃあ俺はそろそろ行くかな」

 

「何処にだ?」

 

椅子から立ち上がった俺にゾロが質問してくる。

 

「いや、目の前に死にかけの獲物が用意されたんだぜ、此処からはお仕事のじかんだろ?」

 

「あぁ、成る程」

 

その説明にゾロは納得したらしかった。

 

「一緒に行くか?」

 

「……いや、いい。どうせ死にかけの連中しかいねぇだろうし、それよりそろそろ殺ろうぜ」

 

ゾロが言ってるのは手合わせの事だ、だが俺はこれから起こる事を思い出し口元に笑みを浮かべた。

 

「こえーよ、だがそうだなぁそろそろ俺もやろうと思ってたんだよ、このゴタゴタが片付いたらな」

 

「忘れんなよ!」

 

ゾロと手合わせの約束をして俺はボロボロの船へと向かう。

 

何気に俺の海賊行為はこれが初めてだったりする。

 

初めての略☆奪、はっじまるよぉ〜

 

 

 

えっ、猫船長?なにそれかわいい。

 

 

 

 

 

 

 

 



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鉄の心、おっとここはガラスだぞ。見せ筋へのあつい風評被害。

大量大量、肩に背負った金目の物の感触を確かめながら今回の成果を実感する。

 

「ギュッ」「グエッ」

 

自称東の海最強なだけあってなかなかの量の金品と人員を蓄えてくれていた。

 

「ヒギョッ」「ガッ」

 

そのお陰で金目の物はたくさん見つかったが、死にかけの連中がそこらじゅうに転がりかなり邪魔な障害物となっている。

 

因みにさっきから煩いのは足を引っ掛けているだけなので悪しからず。

 

海賊同士の戦闘じゃ無かったのが大きいかもしれない、そのお陰で金目のものには全く手がつけられていなかったか……ら、だ…

 

 

今思い出した事がある、原作でクリーク一味がこんな目にあったのは天災でも他の海賊団の所為ではなく、たった一人の人間、鷹の目の所為だった。

 

そして鷹の目は登場早々クリーク一味のガレオン船をぶった切った様な気がするのは俺の気のせいだろうか?

 

ちなみに現在の俺はクリーク一味のガレオン船の中であり、乗り込んでからそれなりに時間が経過している……

 

俺=能力者=カナヅチ=『死』

 

その時轟音が聞こえた、まるで海を切り裂いている様な音、それがだんだんと此方に近ずいてきている。

 

俺は絶望と確信を同時に持ち、覚悟を決めた。

 

海賊になったからには死は覚悟の上。

 

USSOPさんを甘く見るなよ!

 

右手を音源の方向に向け悪魔の実の能力を発動させる。

 

今回鍛つのは剣ではなく、盾。

 

ただの盾では防御不可能だろう、ならばそれが可能な盾を呼び出せばいい。

 

心を鍛ち(うち)形を作る。

 

それは命を持ってこの世界へと顕現する。

 

俺とカジカジの実に不可能はない。

 

 

「I am born of my swordーー|燐天覆う7つの円環【ロー・アイアス】」

 

俺が創り出したのは4つの花弁を持った光の盾。

 

本来のこの盾は7つの花弁を持つのだがこれを作るのが非常に難しく完璧に作るのにはかなりの集中が必要だ、今回はとっさの展開の所為で不完全だったようだ。

 

それでもこの盾は元々トロイア戦争に置いて英雄アイアスが使用したとされる盾である。

 

一枚一枚が古の城壁と同等の防御力を持ちこれ自体が「投擲武器や飛び道具に対して無敵」という概念を持つ。

 

まあ、形だけ似せた限りなくそれに近い劣化品なんですけどね。

 

その強度は巨大なガレオン船をまるで紙屑のように散らした斬撃を受けてなお無傷を誇る様を見ればわかるだろう。

 

しかし半分近く切り裂かれた船へのダメージは深刻らしく自重でミシミシと音がし今にも崩壊思想になっている。

 

俺は荷物を背負い直し、急いで崩れ始めたガレオン船を後にした。

 

倒壊するガレオン船を抜け、丁度良い足場に着地する、近くにゾロ達の姿が見受けられた。

 

「ふむ、気まぐれに海を漂っていれば興味深い物を見つけたな」

 

目があった、感じたのは恐怖、まるで全てを見透かす鷹のような目つきに羽飾り付きの帽子に騎士風の格好。

 

相手はこの船を木っ端微塵にした人物にして危うく俺が殺されかけた当人、王下七武海の一人世界最強の剣士ジュラキュール・ミホーク。

 

どうやってかは知らないが船への斬撃を防いだのが俺だと気付かれたようだ、向けられた視線に殺気はないが興味の色を持った彼の視線は並大抵のそれを凌駕する。

 

無意識に体に力が入る、俺は理解した、彼は英雄では無いが正しく人外の領域に足を踏み入れた人物なのだと。

 

いつでも武器を創り出せるように準備して、

 

「待て、そいつは俺の獲物だ」

 

後ろから肩に手を置かれ平静を取り戻す、置かれた手の方を見るとそこには今までにない程の野獣の気配を纏ったゾロの姿があった。

 

そこにはゾロの剣士としての野望と信念、そして矜持があった

 

世界最強を目指すゾロにとって正しく今目の前にいる者はその目標に他ならないのだろう

 

何人たりとも彼の野望への横槍は許されない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー三刀流奥義『三・千・世・界』」

 

ゾロが繰り出した奥義をミホークは一太刀でその刀ごと粉砕した。

 

最後に斬りかかるミホークにゾロは残った一本の刀を鞘にしまい体の向きを変え正面を向いた。

 

「背中の傷は戦士の恥だ」

 

「見事!」

 

ミホークから見惚れるような一線が振るわれゾロがその場に崩れ落ちた。

 

 

世界最強の剣士の名は本物だった、剣士としてそれなり以上の実力を持つゾロをおもちゃの剣でまるで子供をあやすかのようにあしらい背負っている刀は最後の一回しか抜くことはなかった。

 

 

 

「おれはもう! 2度と負けねぇから! あいつに勝って大剣豪になるその時まで! おれは負けねぇ! 文句あるか、海賊王!!」

 

 「ない!!」

 

ゾロのまるで魂の叫びのような宣告はここら一帯に響き渡り、未来を知らぬ者でさえ彼が今回一皮向けこの先強くなるであろうことを確信させた。

 

「では次は貴様の相手をするか」

 

世界最強の剣士、ジュラキュール・ミホークが次に指名したのは俺だった。

 

 

……やっぱり?

 

体が強張る、奴の実力は本物だ、俺よりも圧倒的に勝っているだろう。

 

だが仲間に剣士としてあれだけの覚悟を見せられ、何より鍛治師としてあれほどの剣を見せられたら反応しないわけにはいかないだろう。

 

ほぼ無意識のうちに体が反応し悪魔の実の能力を発動させていた。

 

心を鍛ち(うち)形を作る。

 

それは命を持ってこの世界へと顕現する。

 

 

現れたのは最も慣れ親しんだ白と黒の夫婦剣。

 

その刀を見てミホークの目つきが変わる。

 

「残念ながら私は剣士ではなく鍛治師だ、だがそれほどの剣と剣技を見せられのなら黙っている訳にもいくまい、何そこらの|剣士【セイバー】には負けないことを証明しよう」

 

油断はできない、今回創り出したのは剣だけにあらず、剣の記憶も担い手の技術や戦闘経験すら自分の体に焼き付け打ち付ける。

 

『憑依経験』

 

副作用として一人称と口調が一変しどこか皮肉気に移り変わる。

 

間違いなくこれが俺の全力全開、本気の戦闘だ。

 

「成る程、確かに貴様は剣士としての体を取っていない、まるで借り物であるかのようにどこか歪ですらある」

 

背中から漆黒の刀を抜き構えながらミホークが言う。

 

黒刀「夜」この世界で最高の刀剣に分類される最上大技物12工の一つ。

 

だが俺の持つ夫婦剣も負けていない、名を干将・莫耶(かんしょう・ばくや)中国における名剣の一つであり、黒い方が陽剣・干将、白い方が陰剣・莫耶、その堅強さは俺の創り出せる剣の中でも上位に食い込む。

 

武器のレベルは恐らく互角。

 

だが技量も才能も経験すら相手が上

 

覚悟を決めろ、気をぬくことも油断することも、瞬きすら許されない

 

 

ここに世界最強の剣士と無限の鍛治師(ウソップ)の戦いの幕が上がった。

 

 

 

ふぅ、USOPPさんもずいぶん偉くなったもんだ。



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最強の重み。

この作品が途切れた原因、鷹の目さんとの戦闘シーン。

ていうか戦闘シーンめんどくさすぎんよ。

鷹の目さん原作でも描写少ないし、描写少ないし。

主人公の設定ふわふわだし。

それでも楽しんでくれたら幸いです。


振るわれるのは漆黒の長刀と白と黒の夫婦剣、鳴り響く剣戟の音は辺りの人々を飲み込み剣舞のような戦場に飲み込んでいった。

 

戦況はミホークが圧倒的に有利、長刀から繰り広げられる剣技で絶えずミホークが押していたからだ、ウソップは防御に長けた双剣でその攻撃を受けながらも時々鋭い反撃を見せていた、それでも少しずつウソップには傷が増えていたからだ。

 

 

しかし疑問に思ったのはミホークの方だった、何故なら終始押していたというのにウソップには致命傷たり得る物は何一つなかったからだ、ウソップに刻まれた傷はそのどれもがウソップにとってはかすり傷、危険な一撃は全て防御し負傷を必要最低限に抑えた結果だった。

 

ウソップがミホークから繰り出された刀の一撃を回避する、それでもウソップの肩は裂けそのから血が流れる。だがそれは想定の範囲内ウソップは肩の傷を無視し双剣でカウンターの一撃を繰り放った。

 

しかしミホークは余裕を持ってその一撃を黒刀で弾き飛ばす、ウソップはその力も利用してミホークから距離をとった。

 

 

やばいな。

 

そう漏らしたのはウソップだ。

 

剣を打ち合った衝撃は腕に響き力が抜けかける、唯でさえ無理をしている筋力の限界が近づいてくる。

 

他人の能力を自分に埋め込むなどという愚行がそういつまでも続くはずがない。

 

時間制限がある分不利なのはウソップの方だ、それ以前にミホークはまだ本気を出してすらいない。

 

それは俺がまだ二本の足で立っていることが証明している。

 

「いい剣だな」

 

戦闘の最中に関わらずそう言ってきたのは驚くべきことにミホークの方だった。

 

「そう言ってもらえると鍛治師冥利に尽きるが、世界最強の剣士から言われると凄い複雑なんだが」

 

自分が造った剣は最強という自負がある寧ろそうでなければならない、なぜならそこに疑問が入り込んだ時それは最強ではなくなるのだから。

だが相対するはそれに負けず劣らずの最上級大技物、しかも今回は戦闘だ、剣のレベルが同等だろうと担い手が片方は世界最強の剣士にもう片方は剣士擬きではどうやっても嫌味にしか聞こえなかった。

 

 

「そっちじゃない、それもあるが俺が言っているのはお前の技量の方だ、才能は感じられんが努力と実直さを感じられるいい剣だった」

 

達人同士は剣を打ち合わせただけで心を通い合わせるという、世界一の剣士はほんの数度剣を打ち合っただけでウソップの剣士としての本質を読み取ったらしかった。

 

「はぁ……、これだから天才というモノは嫌なんだ、その通り俺には剣の才能などない努力とズルをしてこの程度だ、つくづく自分の非才が憎くなる」

 

「口ではそう言っても勝負は諦めていまい、その目は勝利を狙う狩人の目だ、奥の手があるのだろう?この私を相手に出し惜しみとは感心せんな」

 

 

どこまでも見透かしているような鷹の目を向けられて俺も覚悟を決めた。

 

「……そうか、仕方ない、なら俺も『俺』であることを捨てよう。

 

ーーI am born of my sword(体は剣で出来ている)」

 

戦場の雰囲気が変わる、ウソップが今まで放っていたのとは段違いの気迫を放ちそれに辺り一帯のすべての人物が気圧された、そしてその気迫に一瞬だがミホークすら固まった。

 

「さて大剣豪、君が相手をするのは確かに紛い物だが、その実その手に握るのは無限の剣、これからは先ほどまでのようにはいかんぞ?」

 

今回ウソップが悪魔の実で創り出したのは剣に非ず、剣の記憶も担い手の技術や戦闘経験すら悪魔の実の能力をして自分の体に焼き付け打ち付ける、正真正銘ウソップの奥の手

 

間違いなくこれが全力全開、本気の戦闘だ。

 

ウソップが一段とその腕に力を込める、気配も雰囲気も今までとは段違いだそしてそれはウソップがここで決着をつけることを決めたことを意味し、

 

 

 

 

ウソップの能力の限界が近い事を意味する。

 

 

ウソップの体は既に限界に近い、持って次の一撃、ならばその一撃に全力を込める。

 

 

「行くぞ大剣豪!最低でも手傷の一つは貰っていく!」

 

「来るがいい小僧!この海の広さを教えてやる!」

 

 

さっきまでとは戦況が一変し攻めの体勢をとるウソップ、対するミホークはウソップの様子を観察しながら守りの体勢をとる。

 

 

「―――鶴翼(しんぎ)、欠落ヲ不ラズ(むけつにしてばんじゃく)」

 

投げる。

 

次の瞬間ウソップはいきなり手にした双剣をそれぞれ真横に投擲した。

 

「なに!」

 

それに驚いたのはミホークの方だ、何故なら手にしていた武器を投げウソップは現在無手なのだから、だが次の瞬間ミホークは先ほど以上に驚愕に見舞われる。

 

別々の方向にウソップが投擲した武器、黒と白の夫婦剣がまるで引き合うようにして戻ってきた、そしてその軌道上にあるのはミホークの首。

 

 

干将・莫耶は二刀一対の夫婦剣その特性は磁石のように互いを引き寄せ合う。

 

 

その特性を利用したウソップの奇襲。

 

だが相手は大剣豪、ミホークはその奇襲すらたやすく打ち破り黒刀の一閃で二本の中華剣の軌道をたやすくズラした。

 

大剣豪が扱うのは剛の剣だけでなく柔の剣、卓越した技量を前にウソップはすでに次の攻撃へと移っていた。

 

「――――心技(ちから) 泰山ニ至(やまをぬき)リ」

 

その手に握られていたのは白と黒の夫婦剣、一瞬の内に悪魔の実で創り出された名剣を再びミホークに向け投擲する。

 

ミホークは飛来してきた双剣に黒刀を叩きつけようとして、予想外の反撃を知覚した。

 

それは先ほど逸らしたはずの最初に投擲された二刀、同時に4つの武器に囲まれたミホークは驚くべきことにただの一振りでその全ての斬撃をた叩き潰した。

 

だがしかし、この必殺の一撃はその程度では終わらない。

 

「ーーー心技、黄河ヲ渡ル (つるぎ みずをわかつ)」

 

ミホークが飛来する刀を叩き落とした時にはすでに新たに武器を投擲し終え、

 

「ーーー唯名、別天ニ納メ (せいめいりきゅうにとどき)」

 

投影(トレース)、オーバーエッジ。

何度目かの創成した武器に異形な改造を繰り出す、悪魔の実の能力によって空想の世界から複製した双剣をより強固に、強靭で長大な双剣へ。

 

「ーーー両雄 共ニ命ヲ別ツ(われらともにてんをいだかず)」

 

そして最後に全力の加速を込め必殺の一撃を繰り出す、飛来する6つの双剣に二つの長大な斬撃。

これぞ決して天災とは呼べない正義の味方が英雄達を打ち倒すために編み出した必殺技、襲いくる計算され尽くした連続攻撃によって回避も防御もできない状態を作り出す正しく必殺の技、鶴翼三連。

 

だがしかし、俺という個人が完璧に模倣するにはその壁はあまりにも長大だった、能力に任せて強引に作り出した隙は確かに全ての攻撃を回避も防御もできない状態だっただろう、だが相手はあの世界最強の大剣豪である。相手がとった行動は強引な迎撃、ウソップが見たのはミホークの刀を持った両手が黒色に染まったことと、ただでさえ真夜中のように黒い刀が漆黒に染まるのとそれから繰り出された死神のごとき黒い斬撃だった。

 

 

 

 

 

「強きモノよ、名を、聴いておこう」

 

「東の海出身ウソップ。覚えておけ、いずれ世界最強の剣を作る者の名だ」

 

 

 

残ったのは勝者と敗者、

 

 

 

それがどちらなのかは語るに及ばす

 

 

 

 

ただ剣豪は時代の潮流を感じ

 

鍛治師は新たな世界を感じ取った

 

 

 

 

 

 




正直自分で見ても矛盾点が多々あります、色々と思うところはあるでしょうがそれでも二次作品なりに自分で補完して楽しんでくれたら幸いです。

正直プロットだけならある程度ありますが、だいぶ昔で文脈自体変わってるのと、新しい作品書きたい病に侵されこれ以上の続行は不可能だと思われます。

ですのでこの作品はこれで凍結とさせていただきたいと思います。

要望があるようでしたらリメイク的な何かがあるかもしれません(あるとは言っていない)。


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