遊戯王 GX ~転生者のロード~ (雨風)
しおりを挟む

プロローグ ~よくある転生パターンだが大丈夫か?~

 この回では、人が車にひかれます。交通事故にトラウマとかある人はご注意下さい。


side 主人公

 

「ありがとうございました~。」

 

 俺は天地 幸(あまち こう)、大学生(1年)だ。只今行き着けのカードショップでパックを購入した所。

 

「う~ん……お、《スクラップ・ドラゴン》か。」

 

 中身を確認して袋に戻す。

 

「よう、幸。」

 

「芯か。」

 

 こいつは緋崎 芯(ひざき しん)、俺の中学からの友達だ。

 

「見たぜさっきのデュエル、さすがはガチハンター天地だな♪」

 

「言うな。」

 

 さっきのデュエルとは、ショップで【水精鱗】使い二人を相手に【インヴェルズ】で勝利したデュエルだ。そしてガチハンター天地とは、一般のプレイヤーが「ファンデッキ」と呼ぶようなデッキでさっきのようなガチデッキを倒しまくった結果ついた俺のあだ名だ。中学生じゃあるまいし、勘弁してほしい。

 

「それにしてもまさか水精鱗まで倒すとは…これで現環境のガチデッキはほぼコンプリートですな~♪」

 

 上機嫌な様子でメモに書き記していく。俺が今まで倒してきたガチ軍勢カテゴリーを。ちなみに好きでやってるわけじゃない。さっきのデュエルだって、ぶっ倒した二人が『そんな雑魚カテゴリー捨てろや』とか『屑だなお前、ガスタなんて使うとか(笑)』とか言っててむかついたから叩き潰しただけだ。別にガチデッキもガチデッカーも嫌いじゃない。たださっきのように明らかにパワー差のあるデッキを相手に俺TUEEEEEしたりするような奴は大嫌いだ。

 

「いや~、本当すげーよな、お前。なんで大会に出ないんだ? その実力なら十分優勝狙えるのに…」

 

「選考会プレイヤーが苦手でな…」

 

 一度大会に出た事があるが、最初の対戦相手が些細な事でジャッジキル狙ったりしてうざかった。それ以来大会には出ていない。

 

「あ~……」

 

 思い当たる節があるのか、芯は苦笑い。

 

「それよりお前、時間は良いのか? 」

 

「へ?」

 

「今日は確か、お前の好きなアニメの放送日だろ?」

 

「あ…あ~!! やべえ! じゃあまたな。」

 

「おう。」

 

 腕時計を見ると、芯は慌てて走り出した。事故らないか心配だ。

 

 

side 三人称

 

 そして、幸は駅前の横断歩道に到着。全てはそこから始まった。

 

「アハハハ…」

 

 笑い声がした方向を見ると、数人の小学生がふざけながら歩いていた。信号が赤だったため、小学生達は横断歩道で止まる。そして、一台のトラックが横断歩道を通り抜けようとしたその時だった。

 

「ハハ…あっ」

 

「!」

 

 小学生達の中の一人が、歩道の前で躓き、道路に飛び出した。

 

キキーーーー……ドンッ

 

 トラックの運転手が慌てて急ブレーキを踏むが間に合わなかった。しかし、轢かれたのは子供ではなく…その子供を庇った幸だった。

 

(……あっけなかったな…………俺の人生…………)

 

 そう思いながら、幸は眼を閉じた。

 

 





 みなさんはじめまして、雨風です。この作品はよくある転生物ですが、シンクロ、エクシーズは主人公は序盤は使いません。ただし、他の転生者は序盤から使い放題です。あとOCGとテキストが違っているカードがあります。そのカードは登場時のカード名を〔〕で囲っています。(普通のカードやオリカのカード名は《》で囲っています。)

「現れろ! 〔E・HERO フレイム・ウィングマン〕!」

 こんな感じで。そういうカードとオリカは、後書きに詳細を載せますので、そちらをご覧下さい。

 また、原作をフォローする為にOCGとルールが違っている場合もあります。(具体的には禁止、制限や裁定など)

 最後にオリカに関する事です。殆どのオリカは元々その世界にあった物であり、主人公だけのカードという訳ではありません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1話 ~入試は少々目立つくらいのデッキが丁度良いと思う~

side 幸

 

 

 ……俺が死んで15年、何があったかと言うと転生した、遊戯王の世界に。ちなみにGXらしいが、問題が一つ……俺はGXを見ていないのだ。何故ならば俺はDMの途中で遊戯王やめて5Dsから復帰したからだ。かろうじてわかる事は、キャラの名前とシンクロ・エクシーズが無いという事なんだが、まあ原作知識が無くてもどうにかなるだろ。こちらに来てからは色々あったなあ…なんかモンスターの精霊が暴れてるのを止めたり(←!?)、親の都合で外国行って、車に轢かれそうな子供助けたり(←!!?)、そんなこんなで只今入学試験だ。ちなみに筆記試験は思ったより簡単だった。遊戯王…というよりデュエルモンスターズに関する問題が大半だったので前世の知識が役に立った。今は実技試験の順番待ちなわけだが……何人かシンクロ使ってる奴がいたな……まさか、俺と同じ転生者か? だとしたら、かなりマズ……

 

「《黒炎弾》を2枚発動!」

 

「……は?」

 

 会場から聞こえた声に思わず素っ頓狂な声を上げた。黒炎弾2枚……だと? たしかにLP4000のルールなら強力だ、試験官のLPが0になり、受験生の勝ちが決定、しかし……

 

「12番、禁止、制限違反で失格。」

 

「え? ちょ、ちょっと待って下さいよ、俺は違反してなんか…」

 

「馬鹿者! 黒炎弾は制限カードに指定されている! 禁止、制限も守れないような者はアカデミアに入る資格など無い!」

 

 ……あいつも転生者か、にしても阿呆かあいつ、ライフ4000のルールで黒炎弾なんぞ見過ごされる筈ないだろ……ちょっと考えればわかるはずなのに……あ、調べてみた結果だが、禁止、制限だけじゃなく、カードの効果や裁定にも向こうとの違いがあった。具体的な例はハネクリボー、向こうでは自身の戦闘によるダメージまでは0にできなかったが、こちらでは0にできる裁定になっている。

 

「次、受験番号7番。」

 

 おっと、俺の番か。

 

 

side 三人称

 

 

「天地 幸です。」

 

 デュエル場におりて挨拶をする幸。

 

「君の実技を担当する事になった、叢雲だ。実技試験で負けたとしても、不合格が確定する訳ではないので、リラックスして挑みなさい。」

 

 爽やかな風貌に黒髪の教師が来た。

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

 軽くお辞儀をする。

 

「うむ、では始めようか。」

 

 デュエルディスクを構える両名。

 

「「決闘!!」」

 

「先攻は受験生、君からだ。」

 

「では、俺のターン! 《闇の誘惑》を発動! デッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体をゲームから除外する。」

 

 ちなみにこの世界では卓上での普通のデュエルとデュエルディスクを使ってのデュエルではルールが違っており、具体的に言えばデュエルディスクを使うデュエルではフェイズの移行、カードの発動、このように闇の誘惑による除外やコストのカード等を相手に宣言する必要が無い。そういった物はデュエルディスクが処理をするからである、もしここで闇属性モンスター以外のカードを除外した場合、デュエルディスクが警告を発する。(遊戯王Rのキースvs城之内の時のように)

 

「《可変機獣 ガンナードラゴン》を守備表示で召喚!」

 

「これは…レベル7のモンスターを、生贄無しで召喚だと!?」

 

「ガンナードラゴンは、攻守を半分にする代わりに、生贄無しで召喚できます。カードを3枚セットして、ターンを終了。」

 

可変機獣 ガンナードラゴン

DEF 2000→1000

 

「私のターン、ドロー。」

 

「私は、《ブラッド・ヴォルス》を攻撃表示で召喚!」

 

ブラッド・ヴォルス

ATK1900

 

「(向こうには3枚もの伏せカードがあるが……ここは前進あるのみ!) ブラッド・ヴォルスで、ガンナードラゴンを攻撃!」

 

 ブラッド・ヴォルスはガンナードラゴンに向かって大斧を振りかぶる。

 

「リバースカード、オープン!」

 

「なに!?」

 

「罠カード、《アラート》!! 自分フィールド上にセットされている永続魔法を発動できる! 俺が発動するのは、《機甲部隊の最前線》!」

 

「そのカードは!」

 

 斧によって切り裂かれたガンナードラゴンは爆散する。

 

「この瞬間、《機甲部隊の最前線》の効果発動! 自分の機械族モンスターが戦闘で墓地へ送られた時、そのカードより攻撃力の低い、同じ属性の機械族モンスター1体を特殊召喚! 出よ、《リボルバー・ドラゴン》!」

 

リボルバー・ドラゴン

ATK2600

 

「……なるほど、墓地ではテキストに書かれた数値しか参照しない、それを利用したのか。私はカードを2枚伏せて、ターンを終了。」

 

「俺のターン。」

 

 ターンが始まると同時にカードをドローする幸。

 

「リボルバードラゴンのモンスター効果発動! 相手モンスター1体を選択し、コイントスを3回行う。2回以上表が出た場合、選択したモンスターを破壊する。 ブラッドヴォルスを選択し、コイントス!」

 

 ソリッドビジョンにコインが3枚映し出され、それが回りだす。その結果は…

 

1枚目 裏

2枚目 表

3枚目 表

 

「なにぃ!?」

 

「表が2つ、よってブラッドヴォルスは破壊!」

 

 リボルバードラゴンの砲撃によってブラッドヴォルスが破壊された。

 

「バトルフェイズ! リボルバードラゴンでダイレクトアタック!」

 

「甘いぞ!リバースカードオープン! 《聖なるバリア‐ミラーフォース‐》! リボルバードラゴンは破壊だ!」

 

「そうはさせない! チェーン発動! リバースカードオープン! 《闇次元の解放》! ゲームから除外されている闇属性モンスターを特殊召喚する!」

 

「除外されている闇属性モンスター…ハッ」

 

『デッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体をゲームから除外する。』

 

 叢雲は、闇の誘惑で闇属性モンスターが除外されていた事を思い出す。

 

「……だ、だがしかし、既にミラーフォースは発動している。どんなモンスターを出そうと無意味だ!」

 

「こいつを見てもそんな口が聞けますか? 出よ! 《人造人間サイコ・ショッカー》!!」

 

「なにぃ!? そ、そのカードは…」

 

人造人間サイコ・ショッカー

ATK2400

 

「サイコ・ショッカーの永続効果、罠の効果を無効にする!」

 

 サイコ・ショッカーの眼からレーザーが放たれ、ミラーフォースを破壊する。

 

「くっ…」

 

「攻撃続行! 銃砲撃(ガン・キャノン・ショット)!!」

 

「ぐぉ!!」

 

LP 1400

 

 リボルバードラゴンの砲撃が叢雲の腹を貫く。(もちろんソリッドビジョンなので多少の衝撃はありますが、実際に貫いたりはしていません。)

 

「サイコ・ショッカーで追撃、サイバー・エナジー・ショック!!」

 

 サイコ・ショッカーの掌から黒いエネルギー弾が叢雲に向けて放たれる。

 

「ヌオォォォ!!!」

 

LP 0

 

 叢雲のライフが無くなり、デュエルディスクからデュエル終了を告げるブザーが鳴る。

 

「試験は君の勝ちだ、おめでとう。合否の結果は後日郵送する。」

 

「ありがとうございました。」

 

 叢雲にお辞儀をする幸。

 

 

side 幸

 

 

 さてと、試験は勝てたが、この後どうするかな…

 

「見事だったな、7番くん。」

 

「ん?」

 

 話しかけられたのでそちらを向くと、黒い髪の男がいた。

 

「あんた誰?」

 

「失礼、俺の名は、三沢大地だ。」

 

「……天地 幸だ。」

 

 人に名乗られたんだから一応礼儀として名乗らんとな。

 

「ところで天地、この試験にチラホラ出ている、『シンクロモンスター』なんだが、何か知っているかい?」

 

「……何も。」

 

「そうか……あんなモンスターは聞いた事も無い……一体どこで手に入れたんだ?」

 

 小声で呟く三沢。まあ異世界のカードです。なんて言われても信じられんだろうし、黙っていた方が良いだろう。俺はシンクロやエクシーズも一応持ってはいる……が、使う気は無い。別にシンクロもエクシーズも嫌いじゃないが、そんな物を使ったらコピーカード云々とか言われる可能性があるし、最悪イリアステルに目を付けられてあぼんなんてのも有り得るからな、そんなのは御免だ。

 

「それよりお前、準備はいいのか?」

 

「ん?」

 

「お前、受験番号1番だろ? そろそろじゃないか?」

 

「おっと、そうだな。」

 

 観客席から降りてデュエル場へ向かう三沢。

 

「……帰って寝るか。」

 

 帰路につく俺。さてと、これから何が起こるか、楽しみだな。

 

 




 今回はシンクロ、エクシーズを使わずに済むデッキでそこそこ目立つようなデッキを選びました。

オリカ紹介

「アラート」
アニメGXオリカ
通常罠
効果
自分フィールド上にセットされている永続魔法カードを発動する。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 ~コピーデッキってだけで貶す人って現実でも結構いたりするんだよね~

side 幸

 

 

 合格が決まった俺は只今船に乗ってアカデミアに移動中、寮はイエローだった。まあノーダメで勝ったからな、納得だ。

 

「お~い!!」

 

「ん?」

 

 声が聞こえたので、そちらを向いた。……って、あいつは!

 

「幸~~!!」

 

「十代!!」

 

 十代じゃないか!!

 

「幸、久しぶりだな。」

 

「ああ、子供の頃以来だな。」

 

 何故俺が十代と知り合いなのかと言うと、俺は子供の頃にたまたま十代の隣に引っ越した事があったからだ、そこで外国へ引っ越すまで十代と一緒に育ち、後は15まで外国で過ごした。

 

「なんだ、知り合いだったのか? 」

 

「お、三沢。」

 

 十代と一緒に来たのは三沢と……えっと……確か、丸藤翔…だっけ?

 

「小さい頃一緒に過ごしていてな、まあ、幼なじみって奴だ。」

 

 三沢に簡潔に説明する俺。

 

「なるほどな……」

 

「僕は、丸藤翔っす。」

 

 お、当たってたか。

 

「天地 幸だ、よろしく。」

 

「うん、よろしく。」

 

 あいつは……出てきてないのか?

 

『幸、久しぶり。』

 

 お、出て来たか、ユベル。

 

『あの時は本当にありがとう、君が止めてくれなければ、僕はとんでもない過ちを犯す所だった。』

 

「……まだ気にしてんのか、過ぎた事じゃねえか。」

 

「そうだぜユベル、俺だってもう気にしてねえよ。」

 

 十代は笑顔で言った。

 

『そうか・・・・』

 

 ユベルは微笑みを浮かべた。

 

「二人共、誰と話してるんだ?」

 

 三沢が訝しげな顔をしている。そう言えば普通の人には見えないんだったな……翔もちょっと引いた様子。

 

「……十代の仲間とな。」

 

「……?」

 

―面倒なので島までキングレムリ……じゃなかった、キングクリムゾン―

 

 入学式を終えて只今校内を散歩中。どこの世界でも校長の話は長いもんだな……ん?

 

「コピーデッキなんぞ使ってる奴が、俺達の前を歩いてんじゃねーよ!」

 

「隅っこでも歩いてろ!」

 

 オベリスクブルーの二人がイエロー生を壁に突き飛ばす……

 

「おい。」

 

「あ? なんだお前。」

 

「まさかこの外道の味方する気か?」

 

 そう言ってイエロー生をあざ笑うブルー二人。イエロー生は座ったまま俯いていた。

 

「なぜこいつが外道なんだ? 訳を聞こうか。」

 

「知りたけりゃ教えてやるよ。こいつのデッキはな、コピーデッキなんだよ!」

 

 ……は?

 

「コピーデッキなんぞ使う奴はな、ろくでなしって決まってんだよ! そんな奴がアカデミアにいる事自体が腹立たしいぜ!」

 

 そう言ってイエロー生を睨むブルー生。イエロー生はさっきより明らかに沈んでいた。しかし……

 

「だからなんだ?」

 

「なに?」

 

「なんだと?」

 

 今度は俺の方を睨むブルー生。

 

「なぜコピーデッキ使いは問答無用で外道なんだ? 俺の知ってる奴にもコピーデッキ使いはいたが、外道と呼ぶような奴は一部だけだったぞ?」

 

 別にコピーデッキは何の問題も無いと思う。ルールとマナーさえ守っていれば良いのだ、どんなデッキを使うかは人の自由であり、それを止めさせる権利など誰にも無い。イエロー生に目を向けると、驚いたような表情で俺を見ていた。ちなみに俺の知り合いのコピーデッキ使いは、「コピーデッキは自分の知らない戦術を知る機会にもなるから楽しい」という理由でコピーデッキを使っていた。

 

「貴様! さてはお前も外道だな?」

 

「は?」

 

 今度は俺を外道と言い出したぞこいつ。

 

「外道の味方をするような奴は、外道に決まっている! そんな奴は今ここで叩き潰してやるぜ!」

 

「デュエルだ! このオベリスクブルー、座庫位 摸部夫(ざこい もぶお)と!」

 

 黄色い髪のブルーに

 

「同じく、矢等例矢 管造(やられや くだぞう)様が、貴様に思い知らせてやる!」

 

 やけに唇の厚いブルーが言った。う~わ、何だこいつらの名前。しかもいつの間にかディスク構えてスタンバってるし……ま、歓迎会まで時間あるし……やるか。

 

「まずは俺から……」

 

「面倒だ、二人纏めてトライアングルで来い。」

 

「何だと!?」

 

「貴様! イエローの癖に生意気な!」

 

 俺の言葉に憤慨するブルー二人。一度やってみたかったんだよね、トライアングルデュエル。

 

「「「決闘!!!」」」

 

 

side 三人称

 

 

「俺のターン!」

 

 ドローしたのは摸部夫だった。

 

「俺は、《ゴブリン突撃部隊》を召喚!」

 

ゴブリン突撃部隊

ATK2300

 

「カードを2枚セットして、ターンを終了。」

 

「俺のターンだ!」

 

 次に管造のターン。

 

「《サファイアドラゴン》を召喚!」

 

サファイアドラゴン

ATK1900

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

「俺のターン。……ふむ……」

 

 ドローしたカードを見て考える幸。

 

「俺は手札よりレベル7、《真紅眼の黒竜》を捨て、《ダーク・グレファー》を守備表示で特殊召喚! このカードは、手札からレベル5以上の闇属性モンスターを捨てる事で、特殊召喚できる。」

 

ダーク・グレファー

DEF1600

 

「れ……真紅眼の黒竜!?」

 

「オークションでも数百万はする超レアカードじゃねえか! なんでお前が……」

 

「答える義理は無い。俺はダーク・グレファーの効果を発動。手札の闇属性モンスター1体を墓地へ捨て、デッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る。俺は手札の、《融合呪印生物―闇》を墓地へ捨て、デッキより、〔レッドアイズ・ダークネスマスタードラゴン〕を墓地へ送る!」

 

 今回幸が墓地へ送った〔レッドアイズ・ダークネスマスタードラゴン〕はオリカである。詳細は後ほど。

 

「ふ……ふん! 真紅眼には驚いたが、高レベルモンスターを2体も墓地へ送るなんて、馬鹿な奴だぜ!」

 

「口ほどにも無いようだな!」

 

「……ハア、モンスターを1体セット、カードを2枚伏せて、ターン終了。」

 

「俺のターン、ドロー! 」

 

 摸部夫のドロー。

 

「俺はゴブリン突撃部隊を生贄に捧げ、《偉大魔獣ガーゼット》を、攻撃表示で召喚!」

 

偉大魔獣ガーゼット

ATK 0

 

「ガーゼットの攻撃力は、生贄モンスターの攻撃力の倍になる。よってその攻撃力は、4600だ!」

 

偉大魔獣ガーゼット

ATK 0→4600

 

「さらにリバースカードオープン! 《リビングデッドの呼び声》! ゴブリン突撃部隊を特殊召喚!」

 

ゴブリン突撃部隊

ATK 2300

 

「バトル! ガーゼットで、ダーク・グレファーに攻撃!」

 

 ガーゼットの口から強酸が放たれる。

 

「……守備表示のため、ダメージは無い。」

 

「ゴブリン突撃部隊で、セットモンスターに攻撃!」

 

「セットモンスターはメタモルポット、互いに手札を全て捨て、5枚ドロー。」

 

「ちっ、3枚捨てて、5枚ドローだ。ゴブリン突撃部隊は守備表示になる。」

 

ATK 2300→DEF 0

 

 3人は互いに5枚ドローする。

 

「カードを2枚セットして、ターン終了。」

 

「俺のターンだ!」

 

 管造のドロー。

 

「サファイアドラゴンに、《デーモンの斧》を装備! これにより、攻撃力1000ポイントアップだ!」

 

ATK 1900→2900

 

「さらに俺は、《デーモン・ソルジャー》を召喚!」

 

デーモン・ソルジャー

ATK 1900

 

「バトルだ! サファイアドラゴンでダイレクトアタック!」

 

 ブレスで攻撃するサファイアドラゴン。

 

「(おい、斧使えよ。)手札より《バトルフェーダー》のモンスター効果発動!」

 

「何ぃ!?」

 

「手札からモンスター効果だと!?」

 

「相手の直接攻撃宣言時、このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを強制終了!」

 

バトルフェーダー

DEF 0

 

「くそ……ターンエンドだ。」

 

「けっ……情けない奴め。」

 

 摸部夫が管造を貶す。

 

「何だと!?」

 

「5枚もドローしたにもかかわらず、ダメージどころか相手の魔法、罠すら割れてねえじゃねえか、下手くそめ!」

 

「お前こそ、攻撃力4000オーバーのモンスター従えておいて、傷一つ付けられてねえだろうが! このド下手くそ!」

 

「何だと!?」

 

 醜い口喧嘩を始める摸部夫と管造。

 

「俺のターン。」

 

 二人の口喧嘩を余所に、自分のターンを進める幸。

 

「手札より魔法カード、大嵐を発動!」

 

「んな!?」

 

 もの凄い風圧により、場の魔法、罠が全滅する。リビングデッドが破壊された事で、ゴブリン突撃部隊も破壊、ちなみに二人ともミラフォを伏せていた。幸の伏せは《威嚇する咆哮》と《リミット・リバース》。

 

「(ミラフォは仕事しない……か。)《強欲な壺》を発動、2枚ドローする。」

 

 強欲な壺はデッキに入れるかどうか迷っていたが、入れる事に決めたらしい。

 

「バトルフェーダーを生贄に捧げる。」

 

「なに!?」

 

「上級モンスターか!」

 

「《デーモンの召喚》を召喚!」

 

デーモンの召喚

ATK 2500

 

「デーモンの召喚だと!?」

 

「そんなレアカードまで!?」

 

「(そういやレアだったな、この世界では……) バトルフェーダーはフィールドから離れた場合、ゲームから除外される。バトルフェイズ! デーモンの召喚でサファイアドラゴンに攻撃! 魔降雷(まこうらい)!」

 

 デーモンの召喚は雷を放ち、サファイアドラゴンを攻撃。

 

「ぐっ!!」

 

LP 4000→3400

 

「カードを2枚伏せ、ターンを終了。」

 

「俺のターン! へっ、馬鹿な奴だぜ、俺の場には攻撃力4600のガーゼットがいるのを忘れたか? 俺は《ジャイアント・オーク》を召喚!」

 

ジャイアント・オーク

ATK 2200

 

「バトルフェイズだ! ガーゼットで、《デーモンの召喚》を攻撃!」

 

 デーモンの召喚に向かって強酸を吐くガーゼット、しかし……

 

「ダメージステップに入る。」

 

「なに!?」

 

「リバースカードオープン、速攻魔法、《禁じられた聖杯》! フィールドのモンスター1体の攻撃力を400ポイントアップし、その効果を無効にする! 俺はガーゼットを指定!」

 

「な!? という事は……」

 

ATK4600→400

 

「迎え撃て! 魔降雷(まこうらい)!」

 

 デーモンの雷がガーゼットを強酸ごと貫く。

 

「がああ……」

 

LP 4000→1900

 

「ぐ……くそ。」

 

「はっ、偉そうな事言っといてそれかよ! やっぱお前下手くそだぜ!」

 

 管造が摸部夫を鼻で笑う。

 

「なんだと!?」

 

「今の内に引っ込みな! てめえじゃブルーの恥曝しになるのが落ちだ!」

 

「てめえ……(もう我慢ならん!) ジャイアント・オーク! 管造のデーモン・ソルジャーに攻撃だ!」

 

「は?」

 

「なに!?」

 

 なんと、幸ではなく、管造の方に攻撃宣言する摸部夫。幸は素っ頓狂な声を出し、ジャイアント・オークは一瞬戸惑ったようだが、直ぐにデーモン・ソルジャーを棍棒で殴る。

 

LP 3400→3100

 

「がっ……てめえ、何しやがる!」

 

「るせえ!! さっきから我慢して聞いてりゃ、俺がブルーの恥曝しだと!?」

 

「本当の事だろうが! ガーゼットなんて強力なモンスター従えておいて、返り討ちにされやがって!」

 

「(何やってんだか……)おい。」

 

「何だよ!」

 

「さっさとターンを進めろよ、歓迎会も近いんだ。」

 

 幸はイラついた様子で言った。

 

「くっ……ジャイアント・オークは守備表示になる。」

 

ATK 2200→DEF 0

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」

 

「俺のターン! 《強欲な壺》を発動! カードを2枚ドロー。」

 

 管造は引いたカードを見てニヤリと笑う。

 

「俺は、《ジェネティック・ワーウルフ》を召喚!」

 

ジェネティック・ワーウルフ

ATK 2000

 

「そして俺は、魔法カード、《二重召喚》を発動! このターン、俺は二回の通常召喚を行える! 俺は手札より、《暗黒の狂犬》を攻撃表示で召喚!」

 

暗黒の狂犬

ATK 1900

 

「さらに俺は装備魔法、《ビッグバン・シュート》を発動! 装備モンスターの攻撃力を、800ポイントアップし、装備モンスターに貫通能力を与える!」

 

 ワーウルフが赤いオーラを纏う。

 

ATK 2000→2800

 

「よっしゃ、これであいつのデーモンともおさらばだぜ!」

 

 喜々とした様子で叫ぶ摸部夫。

 

「バトルフェイズ! ジェネティック・ワーウルフで、デーモンの召喚を攻撃!」

 

 5メートル近くジャンプして、空中からデーモンに襲いかかるワーウルフ。

 

「リバースカードオープン! 《ガード・ブロック》! 俺の戦闘ダメージを0にし、カードを1枚ドロー。」

 

 ワーウルフの爪によってデーモンは破壊されたが、幸はバリアのような物に包まれてノーダメージである。

 

「だが、まだマッドドッグが残ってるぜ! ダイレクトアタックを決めてやれ!」

 

 幸を指差して叫ぶ摸部夫、しかし……

 

ギランッ

 

 管造の視線は摸部夫を向いていた。

 

「マッドドッグよ! ジャイアント・オークを攻撃だ!」

 

「え?」

 

「んな!?」

 

 マッドドッグはジャイアント・オークに飛びかかる。

 

「リ……リバースカードオープン! 《攻撃の無力化》!」

 

 突如現れた竜巻のような渦によって、マッドドッグの攻撃は防がれた。

 

「ちっ……」

 

「てめえ! この野郎!」

 

「うるせえ! さっきのお返しだ!」

 

「なんだと!? 元はといえばてめえが俺をブルーの恥さらしなんて言わなきゃ……」

 

(何やってんだよホント……)

 

 そう考える幸の手札には、《冥府の使者ゴーズ》と《サイクロン》があった。

 

「ふん、俺はこれでターンエンドだ。」

 

「(ゴーズ出すはずだったが……予定が狂ったな……まあいいか。)俺のターン、ドロー。」

 

 幸はドローしたカードを見て考える。

 

「(ふ~む……ドローするか。)俺は手札より魔法カード、《闇の誘惑》を発動! デッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。」

 

 どうやらゴーズを除外するかどうかで悩んでいたようだ。

 

「ほう……(除外した甲斐はあったか。)自分の墓地に闇属性モンスターが5体以上存在し、自分の場にモンスターが存在しない時、《ダーク・クリエイター》は特殊召喚できる!」

 

ダーク・クリエイター

ATK 2300

 

「さらにダーク・クリエイターの効果発動! 自分の墓地の闇属性モンスター1体をゲームから除外して、墓地の闇属性モンスター1体を特殊召喚! 俺はダーク・グレファーを除外し、レッドアイズ・ダークネスマスタードラゴンを特殊召喚!」

 

レッドアイズ・ダークネスマスタードラゴン

ATK 2800

 

「さらに、レッドアイズ・ダークネスマスタードラゴンのモンスター効果発動!1ターンに1度、自分の墓地か手札より、ドラゴン族モンスター1体を特殊召喚! 俺は墓地より、真紅眼の黒竜を特殊召喚!」

 

真紅眼の黒竜ATK 2400

 

「さ……最上級モンスターが3体!?」

 

 管造が驚愕する。

 

「こ……このままじゃ……お、お前のせいだぞ!? お前が俺に攻撃なんてしなきゃ……」

 

 攻撃の無力化が残っていれば生き残れたと思っているらしく、喚いている摸部夫だが……

 

「残念だが……それは無関係だ。」

 

「へ?」

 

「手札から魔法カード、《黒炎弾》を発動! 自分フィールド上に真紅眼の黒竜がいる時、相手プレイヤーに2400ポイントのダメージを与える!」

 

 そう言いながら摸部夫を指さす幸。

 

「そ、そんな……ギャアアアア!!!」

LP 1900→0

 

「こんな馬鹿な……」

 

 落ち込んで膝をつく摸部夫。

 

「ザマーみやがれ、ブルーの恥曝しが!」

 

 そして落ち込んでいる摸部夫に追い討ちを掛けようとする管造だが……

 

「さらに魔法発動、《龍の鏡》! 自分のフィールドと墓地から融合素材を除外し、ドラゴン族モンスターを融合召喚!」

 

「……へ?」

 

「俺はフィールドの真紅眼と、墓地のデーモンの召喚を除外し、《ブラック・デーモンズ・ドラゴン》を融合召喚!」

 

ブラック・デーモンズ・ドラゴン

 

ATK 3200

 

「あ…ァ…」

 

 みるみるうちに管造の顔が青ざめていく。

 

「バトルフェイズだ! ブラック・デーモンズ・ドラゴンで、ジェネティック・ワーウルフに攻撃! メテオ・フレア!!」

 

 ブラック・デーモンズの口から巨大な火球が放たれ、ワーウルフを粉砕する。

 

「ぐあ……!!」

 

LP 3100→2700

 

「続いて、ダーク・クリエイターで、マッドドッグに攻撃! ブラック・クリエイト・サンダー!」

 

 ダーク・クリエイターの掌から放たれた黒い雷が、マッドドッグを焼き尽くす。

 

「ぐうぅ……!」

 

LP 2700→2300

 

「これで最後だ! ダイレクトアタック! マスター・ダーク・ブレイザー!」

 

 幸のかけ声と共に、ダークネスマスタードラゴンが口から赤黒い光線を放つ。

 

「馬鹿なああああぁーーー!!!!」

 

LP 2300→0

 

「こんな筈では……」

 

「この俺が……エリートのブルーである俺が……」

 

「くっ……てめーのせいだぞ! てめーが俺を攻撃したりするから……」

 

「てめーが先にやってきたんだろうが! 役立たず!!」

 

「役立たずはてめーだろ! このタラコ!!」

 

「な!? 言いやがったな! ションベン頭の分際で!」

 

「やるかコラア!!」

 

 子供じみた口喧嘩の果てに取っ組み合いを始める二人。

 

「(ガキかお前ら……ほっとこ。) おい、お前、今の内にここを離れようぜ、歓迎会も近い。」

 

「……あ、ああ。」

 

 先ほどブルー二人に責められてたイエロー生に声を掛けて一緒に走り出す幸。

 

 

side 幸

 

 

 そして、イエロー寮の歓迎会。好きな席に座って良しと言われたので俺は適当に空いてた席に座る。

 

「さっきは、ありがとう。」

 

「ん?」

 

 歓迎会が始まるのを待っていると、さっきの生徒が声をかけてきた。

 

「ああ、気にすんな、ただの気まぐれだ。」

 

「……お前は本当に何も思わないのか?」

 

「何がだ?」

 

「……いや、コピーデッキだよ。」

 

「……別に。」

 

 さっきも言った通り、別にデッキで人を外道だの言うつもりは無い。

 

「……そうか。」

 

 イエロー生は先程まで重い表情をしていたが、俺の言葉を聞いて少々気が楽になったようだ。

 

「俺の名は神楽坂 映自(かぐらざか えいじ)だ。」

 

「天地 幸だ。」

 

「やあ、幸。」

 

 今度は三沢が話しかけてきた。

 

「よう、三沢。」

 

「さっきのデュエル、見せてもらったよ。入学初日からやるじゃないか。」

 

「見てたのかよ……」

 

 見られたのは良いがなんとなく照れくさい気分だ……

 

「俺は三沢大地だ、君は?」

 

 三沢は神楽坂に対して言った。

 

「……神楽坂 映自だ。」

 

「そうか、よろしく。」

 

「ああ。」

 

 握手をする二人、こうして俺には二人の友人ができた。

 

 




 まず、投稿が遅れて申し訳ありません。色々あってモチベーションが下がってました。これからは出来るだけ更新スピードを早めようと思います。だけど他に投稿したい作品もあるからあまり早くできないかも……

今回のオリカ↓

レッドアイズ・ダークネスマスタードラゴン

星10 闇属性 ドラゴン族

ATK2800
DEF2400

このカードは自分フィールド上に表側表示で存在するドラゴン族モンスター1体をゲームから除外し、手札から特殊召喚できる。1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に手札または自分の墓地から「レッドアイズ・ダークネスマスタードラゴン」以外のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚できる。

 要するに、名前の変わったOCGのレダメです、個人的に原作効果のレダメも使いたいので作りました。見た目はレダメと普通のレッドアイズを足して2で割ったような感じです。ちなみに主人公は雑誌の懸賞でこのカードをゲットしました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 ~他の転生者とぶつかるのはよくある話~

 明けまして、おめでとうございます。そして、遅くなってごめんなさい。
m(_ _)m


side 幸

 

 

 歓迎会が終わってから、俺は自室に戻って寝転がっていた。そろそろ着替えて寝ようかと思っていたが、そこに一通のメールが。

 

『話したい事があります、港の橋まで来てください。』

 

 ……名前が無いのが気になるが……行くだけ行ってみるか。

 

 

side 三沢

 

 

 自室のパソコンでカードの情報を見ていると、寮を出て行く幸の姿が見えた。こんな時間にどこへ……?

 

「気になるな……」

 

 幸の跡をつけてみよう。

 

―目的地までキングクリムゾン―

 

 幸の跡をつけて港の橋まで来ると、肩までのばした藍色の髪の女子生徒が一人いた。とりあえず木に隠れて様子を見よう。

 

「お前か? 俺を呼び出したのは。」

 

「……そうだよ。」

 

 どうやら、あの女子生徒が幸をここへ呼んだようだな……!? あの子は確か、試験でシンクロモンスターを使っていた……

 

「私の名前は、篠崎 綾香(しのさき あやか)。」

 

 

side 三人称

 

 

「で、篠崎、俺と話したい事ってのは何だ?」

 

 単刀直入に聞く幸。対する綾香は、少々険しい表情をしていた。

 

「君は、転生者なの?」

 

「質問に質問で返すのかよ……まあ、そうだよ、その台詞からすると……」

 

「そう、私も同じ転生者よ。」

 

 

(転生者……何だ、それは?)

 

 三沢はその言葉を聞いて思った。

 

「そうか……で、その転生者が俺に何の用だ?」

 

 そう聞くと、綾香の表情がより険しくなった。

 

「彼に……遊城十代に何をしたの?」

 

「……どういう意味だ?」

 

「惚けないで! どうしてユベルがここにいるの!」

 

 綾香が声を張り上げる。

 

「……どうしてって、ユベルは十代のカードの精霊だぞ、持ち主について来るのは当然の事だと思うが?」

 

 幸の言葉を聞いた綾香は、驚いたような表情になった。

 

(ひょっとしてこの人……原作を知らない?)

 

 綾香は数秒考えた後……

 

「ねえ。」

 

「何だ?」

 

「君はGXを見た事あるの?」

 

「……いや。」

 

 その言葉を聞いた綾香は……

 

「……想像以上にまずいかも……」

 

「何がだ?」

 

 そして、綾香は幸に話した。本来のGXのストーリーを、本来ユベルは異世界での敵になる筈だった事を。

 

「本来ユベルは、このアカデミアにはいない筈……だけど、現にユベルはここにいる、だとしたら、あなたがここに来るまでに十代君に関わったとしか思えない。十代君に何をしたの?」

 

 

「……はあ、わかった、話してやるよ。」

 

 幸は話した。子供の頃に起きた出来事を、ユベルが十代の友を襲っていたので、それを止めた事も全て話した。

 

「……なんて事を……あなた、自分が何をしたかわかってるの!?」

 

「友達を助けて何が悪い。」

 

「あなたは、三期の重要なイベントのフラグを全部消したんだよ!?」

 

「重要なのか?」

 

「え?」

 

「聞くところによると、そのイベントは十代だけでなく、アカデミア全体を巻き込むような事件らしいが、巻き込まれる生徒にとってはたまったもんじゃないだろう、学園生活が平和に過ごせるなら、それに越した事はないんじゃないか?」

 

「うっ……」

 

「それともなんだ? あいつらは所詮モブキャラだから消えても問題ないとでも?」

 

「ちがう!!」

 

 綾香は大声で叫んだ。

 

「そうじゃないよ! そうじゃないけど……でも、やっぱり原作の流れを変えるのはまずいよ!」

 

「試験で堂々とシンクロ使っていたお前が言えた事か?」

 

「うっ……で、でも、私のデッキ、あれしか……」

 

「デッキなんざ、組もうと思えば組めるだろう、向こうと違ってカードショップなんかいくらでもあるし、カードの種類だって向こうより多いんだ。」

 

 向こうと違い、こちらではカードショップはかなり重要な店舗なのだ、そのため、どんな田舎の町でも一つは必ずある。カードの価格は向こうより幾分か高いが、向こうよりもカードの種類は多く、高価なカード(和睦など)の代わりになる安いカードはいくらでもあるのだ。そのため、子供の小遣いでもそれなりのデッキは組める。

 

「…………」

 

 綾香は完全に言い返せなくなったようだ。

 

「話は終わりか? なら俺は帰らせてもらうぞ。」

 

 イエロー寮に向かおうとする幸。

 

「待って。」

 

 呼び止める綾香。

 

「……なんだよ。」

 

 幸はうんざりした様子である。

 

「君は、これからどうするつもり? もしこれ以上原作の流れを変えるつもりなら……」

 

「別に原作の流れを変えるつもりはねえがな……友達の危機を見過ごすつもりはねえよ。」

 

「……なら、私とデュエルして。」

 

 突然デュエルディスクを構える綾香。

 

「……なに?」

 

「私が勝ったら、今後は私の指示に従って。」

 

「……いいだろう、ただし、俺が勝ったら二度と俺に口出しするな。」

 

 幸もデュエルディスクを構える。

 

「……わかった。(大丈夫、彼のデッキは入試でわかっている。私のデッキがあんなデッキに負けるはずはないわ。)」

 

「「決闘!!」」

 

「私の先攻、ドロー! 手札から魔法カード、《調律》を発動! デッキから「シンクロン」と名のついたチューナー1体を手札に加えてシャッフルし、デッキの上から1枚を墓地へ送る、私は《ジャンク・シンクロン》を手札に加える。さらに私は、墓地の調律を除外し、《マジック・ストライカー》を特殊召喚! このカードは、墓地の魔法カード1枚を除外して、特殊召喚できる!」

 

マジック・ストライカー

ATK 600

 

「さらに私は、《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 

ジャンク・シンクロン

ATK 1300

 

「レベル3のマジック・ストライカーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」

 

☆3+☆3=☆6

 

「疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは鉄壁の盾となる! 光さす道となれ! シンクロ召喚! 現れよ、《ジャンク・ガードナー》!!」

 

ジャンク・ガードナー

DEF 2600

 

(出たか、シンクロモンスター……)

 

 三沢はジャンク・ガードナーを見ていた。

 

「カードを一枚伏せて、ターン終了。」

 

「俺のターン。」

 

 ドローする幸。

 

「手札から《バイス・ドラゴン》を特殊召喚、こいつは相手の場にのみモンスターが存在する時、攻守を半分にして特殊召喚できる。」

 

バイス・ドラゴン

DEF 2400→1200

 

「さらに俺は魔法カード、《スター・ブラスト》を発動! 500の倍数のライフを払う事により、払った500につき1つ、手札かフィールドのモンスター1体のレベルを下げる、俺は、1000ポイントのライフを払う。」

 

LP 4000→3000

 

「そして俺は、バイス・ドラゴンを生贄に、レベルが2つ下がったこいつを召喚、いでよ、《タイラント・ドラゴン》!」

 

タイラント・ドラゴン

ATK 2900

 

「……!?」

 

 綾香には予想外のモンスターだったらしく、目を丸くしていた。

 

「タイラント・ドラゴンの攻撃、ドラゴン・フレイム・ブラスト!」

 

 強烈な炎がジャンク・ガードナーを襲う。

 

「ジャンク・ガードナーのモンスター効果、1ターンに1度、モンスターの表示形式を変更できる!」

 

タイラント・ドラゴン

ATK 2900→DEF 2500

 

「……2枚セット、ターン終了。」

 

「私のターン、魔法発動、《おろかな埋葬》! デッキから《ドッペル・ウォリアー》を墓地へ!」

 

(なるほど……どうやら【ジャンク・ドッペル】とみて間違いなさそうだな。)

 

 幸は綾香のデッキを予想していた。

 

「さらに魔法カード、《戦士の生還》を発動! 墓地のジャンク・シンクロンを手札へ、そしてジャンク・シンクロンを召喚!」

 

ジャンク・シンクロン

ATK 1300

 

「ジャンク・シンクロンのモンスター効果、墓地のレベル2以下のモンスター、ドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー

ATK 800

 

「レベル2のドッペル・ウォリアーに、レベル3ジャンク・シンクロンをチューニング!」

 

☆3+☆2=☆5

 

「集いし星が新たな力を呼び起こす。 光さす道となれ! シンクロ召喚! いでよ、《ジャンク・ウォリアー》!」

 

ジャンク・ウォリアー

ATK 2300

 

「この瞬間、ジャンク・ウォリアーの効果にチェーンしてドッペル・ウォリアーの効果が発動! 自分のフィールドにドッペル・トークン2体を特殊召喚!」

 

ドッペル・トークン×2

ATK 400

 

「さらにジャンク・ウォリアーは、シンクロ召喚成功時に自分フィールド上のレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分、その攻撃力をアップする、パワー・オブ・フェローズ!」

 

ATK 2300→3100

 

「(……よし、いける) ジャンク・ウォリアー! タイラント・ドラゴンに攻撃! スクラップ・フィスト!!」

 

 ジャンク・ウォリアーは大きな右手を振りかぶる。

 

「リバースカードオープン、《最終突撃命令》!! 場の表側モンスターは全て攻撃表示になる。」

 

タイラント・ドラゴン

DEF2500→ATK2900

 

「けどそれでも、ジャンク・ウォリアーの方が攻撃力は上だよ!」

 

「……一つ言っておく。」

 

「え?」

 

「そんな差はな、どうとでも出来るんだよ、罠発動、《プライドの咆哮》! 攻撃力の差分ライフを払い、その数値に300ポイント加えて攻撃力をアップする!」

 

LP 3000→2800

 

タイラント・ドラゴン

ATK 2900→3400

 

「しまった!」

 

 勢いを増した暴竜の炎によって、ジャンク・ウォリアーが焼き尽くされた。

 

「……ッ」

 

LP 4000→3700

 

(……しまった……完全に油断していた。)

 

「どうした、随分と自信満々だったが、この程度なのか?」

 

「……今のはファンデッキ相手だからちょっと油断しただけだよ。」

 

「……ファンデッキ?」

 

「だって、そんな時代遅れのパワーカード使ったデッキなんて、十中八九ファンデッキでしょ?」

 

 綾香はタイラント・ドラゴンを見てそう言った。

 

「そんなデッキの強さなんてたかが知れてるよ、そんなデッキ使ってる人の実力もね。」

 

 それを聞いた幸の眉がピクリと動いた。

 

「カードを1枚伏せて、ターン終了。」

 

「俺のターン、ドロー。」

 

LP 2800

 

「……俺は仮面竜を召喚。」

 

仮面竜

ATK 1400

 

「バトルフェイズ! タイラント・ドラゴンで、ジャンク・ガードナーに攻撃!」

 

 再びタイラント・ドラゴンが猛烈な炎を吐く。

 

「かかったね、リバースカードオープン、《次元幽閉》! 攻撃モンスター1体をゲームから除外する!」

 

 タイラント・ドラゴンの目の前に次元の裂け目が生まれる……が。

 

「フン、馬鹿が。」

 

「え?」

 

 タイラント・ドラゴンの炎は、次元の裂け目ごとジャンク・ガードナーを飲み込む。

 

LP 3700→2400

 

「うぁ! な……何で!?」

 

「タイラント・ドラゴンは、自身を対象とした罠の効果を無効にし、破壊する効果を持つ。」

 

「……そんな。」

 

「大方、昔のカードだから耐性なんぞ無いだろうと思っていたんだろうが、デュエルはそんなに簡単じゃねえんだよ。」

 

「……クッ」

 

 綾香はくやしそうな表情をしている。

 

「さらにタイラント・ドラゴンは、相手の場にモンスターが存在する時、追加攻撃ができる!」

 

 今度はドッペル・トークンに炎を吐くタイラント・ドラゴン。

 

「……ッ! リバースカードオープン、ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にして1枚ドロー!」

 

 見えない壁が綾香を囲う。

 

「仮面竜! ドッペル・トークンへ攻撃だ!」

 

 仮面竜は口から小さめの火を吐き、ドッペル・トークンを焼く。

 

「うう……」

 

LP 2400→1400

 

「1枚伏せて、ターン終了。」

 

「……私のターン、ドロー!」

 

LP 1400

 

「魔法発動! 《強欲な壺》、デッキから2枚ドロー! ……!」

 

 綾香は引いたカードを見て笑った。

 

「(いける、これなら!)私は手札の《ボルト・ヘッジホッグ》を墓地へ送り、《クイック・シンクロン》を特殊召喚!」

 

クイック・シンクロン

ATK 700

 

「そして自分のフィールドにチューナーモンスターがいる時、墓地のボルト・ヘッジホッグを、特殊召喚できる。」

 

ボルト・ヘッジホッグ

ATK 800

 

「さらに私は、《チューニング・サポーター》を召喚。」

 

チューニング・サポーター

ATK 100

 

「そしてクイック・シンクロンは、他の「シンクロン」と名の付くチューナーの代わりに使える。私はレベル1のチューニング・サポーターと、レベル2のボルト・ヘッジホッグに、レベル5のクイック・シンクロンを、ジャンク・シンクロンの代わりに使いチューニング!」

 

☆1+☆2+☆5=☆8

 

「集いし闘志が怒号の魔神を呼び覚ます。光さす道となれ! シンクロ召喚! 粉砕せよ、《ジャンク・デストロイヤー》!」

 

ジャンク・デストロイヤー

ATK 2600

 

「ジャンク・デストロイヤーのモンスター効果、シンクロ召喚成功時、自身のシンクロ素材となったチューナー以外のモンスターの数まで、フィールド上のカードを破壊できる! タイダル・エナジー!」

 

 ジャンク・デストロイヤーの胸部から津波のようなエネルギー波が放たれる。

 

「……甘いんだよ。」

 

「え?」

 

「リバースカードオープン! 《我が身を盾に》! ライフを1500ポイント払い、モンスター破壊効果を無効にする!」

 

LP 2800→1300

 

 《我が身を盾に》のカードがエネルギー波をジャンク・デストロイヤーに跳ね返す。

 

「うぁ!……そんな……だ、だけど、チューニング・サポーターの効果、シンクロ素材になった時、デッキから1枚ドロー! ……!」

 

 ドローした綾香の表情は先ほどとは違い、まるで絶望したような表情だった。なぜなら引いたカードは……神の宣告だったから。

 

「……ターン……終了。」

 

「俺のターン。」

 

LP 1300

 

「終わりだ、タイラント・ドラゴンで、ダイレクトアタック。」

 

綾香

LP 1300→0

 

「……そんな……」

 

 綾香は膝をついた。

 

「ファンデッキがなんだって? ガチ使いさんよお。」

 

「……ッ」

 

 綾香は悔しそうな表情をしていたが……何も言えなかった、一方的に負けたのは事実なのだから。

 

「フン……」

 

 幸は港から立ち去る。

 

 

side 幸

 

 

 ……ったく、胸くそ悪い女だったぜ、まあしばらくは大人しくしてるだろ

 

「……ん?」

 

 あれは十代じゃねえか、何人かと言い合いしてるようだが……こんな時間に何やってんだ?

 

 

「何やってんだ? 十代。」

 

「あ、幸。」

 

~十代説明中~

 

 ……なるほど、要約すると……

 

十代がオベリスクブルーの万丈目という奴に呼び出されデュエル。

デュエルしに向かったら何故か何人か十代について来た。

万丈目とデュエルしてたが、警備員が来たため中断。

 

その時はピンチだったが、死者蘇生でフレイムウィングマンを出せば勝ててた。

しかしついて来た奴らは死者蘇生でフレイムウィングマンは出せないと言って十代に難癖をつけてきた。

 

……と、いう事か。

 

「HEROの融合モンスターはな、融合召喚じゃなきゃ特殊召喚できないんだよ!」

 

「お前、自分のカードのテキストも理解してねーのか?」

 

「そんなんでよく1番だなんて言えたもんだな!」

 

 ……なるほどな、こいつらの正体はおおよそ見当がついた。

 

「だから違うって! 同じHEROでもフレイムウィングマンは蘇生できるんだよ!」

 

「なら説明しろよ! なんで蘇生できるのかよお!」

 

「それは……えっと、あれだ、その……」

 

 どうやら十代、理屈はわかっているが言葉にできないらしいな、しょうがない。

 

「十代、フレイムウィングマンを貸してくれないか?」

 

「え? ……わかった。」

 

 十代からフレイムウィングマンを受け取る。そして転生者(多分)の方に向ける。

 

「さて、お前ら、こいつをよく見な。」

 

「フレイムウィングマン?」

 

「そのカードがどうし……!?」

 

 フレイムウィングマンを見た転生者達は驚いた。まあ当然だろうな。フレイムウィングマンのテキストに書かれていたのは……

 

『このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。』

 

ではなく、

 

『このカードは融合召喚でのみ融合デッキから特殊召喚できる。』

 

なのだから。

 

「フレイムウィングマンのテキストで制約されているのは、融合デッキからの特殊召喚方法だけで、それ以外での特殊召喚の制約は無い、つまり、幻想召喚師や突然変異での特殊召喚は不可能だが、一度融合召喚に成功すれば、墓地に行こうが除外されようが蘇生も帰還もできるんだよ。」

 

「……そう! つまりはそういう事だな!」

 

 得意気に言う十代、お前も説明できるようになりな。

 

「え……そんな馬鹿な……」

 

「確かに向こうでは……」

 

 戸惑いを隠せない様子の転生者達。そんな転生者達に近づき、俺は言う。

 

「何でもかんでも向こうと同じだと思わない事だな、転生者諸君。」

 

『!!!?』

 

 『転生者』という言葉に反応した、これで確定だな。

 

「お前……まさか……」

 

「……」

 

 こちらを睨む転生者に対し、俺は何も言わずに去る。

 

 これが、俺と他の転生者達とのファーストコンタクトだった。

 




 今回は他の転生者と関わりを作りました。しかし、他の転生者全てがこんなではありませんのであしからず。

 最後のフレイムウィングマンに関しては、融合解除などで特殊召喚されてましたが、1話で三沢が「融合召喚でしか特殊召喚できない」とはっきり言ってましたので、こういう事なのかなと自分は思いました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。