黄金なる遺産 (数取団乱闘生)
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第1話「聖なる山に眠る宝」
イタリアで絶大な権力を持つギャング『パッショーネ』は元々は裏社会のみを牛耳っていたが、そこで得た収益で何と宇宙へと行ける技術を開発。
それが一大ムーブメントを巻き起こし、裏では未だに公に出来ないようなこともやつつも表向きは世界的大企業となっていた。
そこで幹部を務めるブローノ・ブチャラティはボスの命令を受け、直属の部下であるレオーネ・アバッキオ、グイード・ミスタ、ナランチャ・ギルガ、パンナコッタ・フーゴを連れてとある山奥まで来ていた。
途中までしか車で行けず、かれこれ2時間半も山道を歩いている。
「おいブチャラティ!いったいいつまで歩かせるんだよ!だいたいオレだって宇宙での仕事がしたいぜ!せっかく宇宙に行ける技術を開発したんだからさぁ!」
チーム最年少のナランチャがとうとう愚痴り始めた。
「仕方ない。これがボスの命令なんだ」
ブチャラティは冷静に返した。
「そうだぜナランチャ、だいたいブチャラティが幹部になったのだって元々幹部だった奴が死んで欠員が出たからなんだからよ。だいたい宇宙の仕事はボスとその親衛隊の奴らぐらいのもんだ。オレたちからしたらまさに天の上のことだぜ」
ミスタがナランチャの頭を叩きながら言った。
「だがブチャラティ、ナランチャのようにごねる気はないがそろそろ教えてくれよ。オレたちは何をしにこんな山奥まで来てんだ」
アバッキオがそう言うのも無理はない。
時を遡ること12時間前。
ボスからの指令を受けたブチャラティが戻ってくるなり
「今から出発する。ボス直々の命だ」と言い出した。
先ほどミスタが言った通りブチャラティが幹部になったのは元々幹部だったポルポという男が死亡し欠員が出た為である。
その為ブチャラティが幹部になってから初仕事だった。
「いきなりか?それで何の仕事なんだよ」
「来れば分かる。今すぐ出発しないと日が暮れてしまう。急ぐぞ」
ブチャラティは仕事内容を一切告げることなくここまで連れて来ていたのだ。
「ボスから極秘に受けた任務なんだ、他の人間に聞かれてはマズいと思い黙っていた。今オレたちがいるところは神秘の山と呼ばれている場所だ」
「「「「神秘の山?」」」」
四人がユニゾンで聞き返す。
「10数年前伝説になった一人の男、空条承太郎という男がこの山のある場所で死んだらしい。それ以来その場所に行った者には不思議な力が芽生えたと言われている。それを調査するのがオレたちの今回の仕事だ」
ブチャラティは大真面目な顔をして言った。
「おいおいブチャラティ、おまえ本気か?そんなお伽話みたいなのを調査しにわざわざこんな所まで来たってのかよ。バカバカしいぜ」
ミスタがため息をつきながら言った。
「オレもミスタと同意見だな、だいたい伝説になったというその空条承太郎という日本人の名前すらオレは聞いたことがないぞ」
アバッキオも呆れていた。
「勘弁してくれよブチャラティ!それ絶対ボスにディスられてるぜオレたち!」
理由を聞いてなおさらナランチャがごね始めた。
「でも10数年前というのが引っかかりますね。こういうお伽話はだいたい100年以上前が多いのに」
唯一フーゴだけは違う意見だった。
「フーゴ、おまえまさか信じるのか?」
「いえ。完璧に信じたわけじゃないが、少し不審に思っただけだ」
「おまえもそう思うか。確かにオレもミスタたちの言う通りこんな話を信用していなかった。だがフーゴの言った通り10数年前というのが引っかかった。だから調べたんだ、空条承太郎という男のことを」
そう言うとブチャラティは何枚の紙を一同に見せた。
そこには空条承太郎という男の情報が事細かに書かれていた。
「この男は22年前にエジプトでDIOという吸血鬼を倒したらしい。 それで伝説と言われていたようだ。それが10年前に消息を絶っている」
「吸血鬼?ますますお伽話っぽくなってきたな…」
ミスタやアバッキオは未だ信じ難い話だったが、今までブチャラティが自分たちに嘘をついたことは一度だってない。
ブチャラティは真剣に言っていることは分かっている。だから強く否定出来ないのだ。
「オレはボスの命令だけの為にここに来たのではない。自分の目で確かめて見たかったんだ。その伝説の空条承太郎という男を」
相変わらずブチャラティの目は真っ直ぐだった。
「分かったよブチャラティ、お伽話を信じたわけじゃねーがおまえにとことん着いて行くぜ」
ミスタがそう言うと
「右に同じだ」
「しゃねーなぁ!」
アバッキオとナランチャも賛同した。
「ぼくは最初から行くつもりでしたけどね」
「すまないなおまえたち」
そしてまた歩き続けること2時間。
頂上付近にある洞窟に辿り着いた。
「ここがその空条承太郎ってのがいる洞窟か?」
「正確には死体ですよ」
「細かいことにいちいちツッコむなよ」
薄暗い洞窟をブチャラティを先頭にして進んでいく。
すると黄金に光り輝いている場所を発見した。
「まさかあのお伽話は本当だったのかよ!」
一番に食い付いたナランチャが光る地面を掘っていく。
そして中から出てきたのは黄金に輝く矢だった。
「コレが空条承太郎の力を受け継ぐ物なのか…?」
第1話完。
またお会いしましょう
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第2話「もう一人の英雄」
「コレが空条承太郎の力を受け継ぐ物なのか…?」
ブチャラティが黄金に光る矢を見てボソっと呟いた。
「おい待てブチャラティ、これがその空条承太郎だってのか?オレはてっきり10年前に行方不明になったって言うから骨でもあるのかと思ってたが…」
「オレもミスタと同じ意見だ。ブチャラティ、おまえまだオレたちに何か隠しているんじゃないのか?」
アバッキオとミスタは矢を見て不審に思いブチャラティを問いただす。
「隠しているわけじゃない。正直オレにもよく分からない。だがその空条承太郎という男は普通の人間には奇妙な能力を持っていたらしい。それがこの矢と関係があるような気がしてオレはならないんだ」
「奇妙な能力?」
「なんでも背後に何かが表れるらしい」
「どういうことだそりゃ」
「悪霊のようなものが側に現れ立つということからその能力を″スタンド″と呼ぶ」
またしてもブチャラティが突拍子もない話を大真面目に話している。
でもそれは珍しいことじゃない。
第一ここに連れてきたのもその空条承太郎が吸血鬼のDIOを倒した後に失踪し、この山で死んだという話を信じてのことなのだから。
前にもこのようなことがあった……。
時を遡ること1か月前。
ブチャラティが幹部になる直前のこと。
突然ボスからの直々の連絡がブチャラティに入っていた。
「何だったんだボスからの連絡は、仕事の話か?」
「いや。幹部の一人であるポルポが死んだらしい。それで幹部候補を何人か集めてその中の一人を幹部に昇進させるとうことだ」
「マジかよブチャラティ!とうとう幹部にまでなるのか!そりゃブチャラティは街のみんなから支持を得てるからな。同然だろ?」
「それで他の候補は誰なんです?」
早くも浮かれるナランチャとは対照的に冷静なフーゴ。
「プロシュートとペッシだ」
「はぁ⁉︎ 奴ら暗殺チームだろ?しかも何でよりによってその二人なんだ?ブチャラティ、おまえ騙されてんじゃねーのか?」
暗殺チームとはボスからはあまり信頼されていないチームとして有名だった。
そんな中から幹部が選ばれることなどあり得ない。ミスタは当然その話を疑った。
「ならオレに行くなというのか?」
「あぁ。暗殺チームと違っておまえがボスから毛嫌いされる理由はないかもしれないが、そんな100%罠だと分かってる場所にわざわざ行く必要はないぜ」
「悪いなミスタ、おまえの命令はオレはきけない」
そう言うとブチャラティは出て行ってしまった。
「お、おいブチャラティ!」
「大丈夫だって、ブチャラティならプロシュートとペッシぐらい倒せんだろ?」
「そういう問題じゃなくてだな……まぁナランチャ、おまえに言っても無駄か」
「どういう意味だよそれ!」
「ブチャラティが幹部としてやっていけるかどうかは、直属の部下のぼくたちにも責任があると思いますけどね」
言い争うミスタとナランチャに向かって冷たい目で冷静に言ったフーゴ。
「……まぁそうだな…」
フーゴの一言で冷静になったミスタとナランチャはそれっきりしばらく口を開かなかった。
そして結局ブチャラティはその場所へ向かい無事に幹部となるのだが、プロシュートとペッシもその場には居なかったという。
ブチャラティはその場に行くだけで幹部になれたのだ。この突拍子もない話を信じられる者にだけ幹部にならせようというボスの魂胆なのかは分からないが。
あの時もブチャラティは間違っていなかった。だから今回もそうなのだろうか……。
と心の中で思うミスタだった。
「ボスの目論見はそのスタンドってことなんですか?」
相変わらず一人クールなフーゴが尋ねる。
「おそらくそうだろう。そのスタンド使いは12年前の日本を最後に目撃されていない。それも空条承太郎が失踪した時期と一致する。ボスはその消えたスタンド能力を得ることでさらにこのパッショーネを拡大させるつもりなのかもな」
話についていけないミスタやナランチャを放ったらかしにして話を進めるブチャラティとフーゴ。
「とにかくオレたちはその矢を回収するのが仕事なんだろ?お伽話はどうあれそれは変わりないことだろ」
今まで黙っていたアバッキオが口を開いた。
「そうだ、だから今から来た道を帰るぞ」
「マジかよ〜 またあの長い道を帰るのか?」
またぐずりだしたナランチャ。
「仕方ないだろう……待て、あそこに誰かいる」
ブチャラティが気付き、一同がその方向を見ると一人の老人が歩いていた。
「こんな山奥にあんなじいさん一人で来たのか?」
「アレはジョセフ・ジョースターだ、間違いない」
ブチャラティはそう言いながら写真を一同に見せた。確かにその写真には同じ老人が写っている。
「それでこの老人はなんなんだ?」
「ジョセフ・ジョースター。1920年9月27日生まれ。空条承太郎の祖父にあたる人物だ。かつて柱の男なるものから世界を救ったもう一人の英雄と言われている」
「1920年?てことはあのジジイ91歳なのか⁉︎」
英雄談より年齢に食い付いたナランチャ。
「またそんな話か……」
ミスタとアバッキオはもはやついていけなくなっていた。
「ここに来たということは…後を追うぞ」
そんなことはお構いなしにブチャラティはジョセフの後を追った。
一同もその後に続いた。
第2話完。
またお会いしましょう
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第3話「もう一本の矢」
突然山に現れた老人ジョセフ・ジョースターの後をブチャラティに言われて尾行する一同。
「やっぱりブチャラティ、オレたちにはまだ言っていない何かを知ってるじゃねーのか?」
「オレは空条承太郎のことを知ってからジョースター家のことを調べた」
「ジョースター家?」
「ジョースター家の人間は自分の死期を悟った時、必ずこの山にやって来るということも」
ミスタの問いに淡々と話し始めたブチャラティ。
「あの矢は間違いなく空条承太郎だ。とするとジョセフ・ジョースターがここへ来たということは死期を悟ったのかもしれない」
「ということは2本目の矢が出来上がるのも時間の問題だと?」
誰よりも飲み込みが早いフーゴ。
「あぁ。死後どのくらいで身体が矢に変わるのかも何故そうなるのかも分からないが、確かめてみる価値はある」
「なぁブチャラティ、そもそもその矢にはどんな力があるんだ?」
ナランチャがずっと思っていたことをぶつけた。
「オレにも分からない。だが仮説としてそのスタンドが身につくのではないかと考えている。ボスが組織拡大の為にそのスタンドを利用しようとしているのかもしれない」
「スタンドってそんなに凄いものなのか?オレも身につけてみたいなぁ」
「少なくともスタンドを使えていたとされるジョセフ・ジョースターや空条承太郎は英雄と言われている。強大な力であることは間違いないだろう」
「おぉっ!なら早くそのジョセフってじいさんを追いかけようぜ!」
凄い力と聞いてナランチャが食い付き、ブチャラティを追い越してジョセフの方へと走った。
「待てナランチャ!」
すると突然濃い霧が辺りを包み込んだ。
「この霧ではジョセフ・ジョースターを追跡するのは危険だ。戻って来られなくなるかもしれない」
「そうですね……ってナランチャがいませんよ!」
「おいおいアイツまさか一人でじいさんを追いかけたんじゃねーだろうなぁ?この霧ではぐれちまったか…」
「この霧…何か不自然だ……おまえたちはここで待っていてくれ。オレがナランチャを探して来る」
そう言うとブチャラティは霧の中へと走って行った。
「おいブチャラティ大丈夫か?下手すりゃアイツも迷っちまうぞ?」
「ブチャラティなら大丈夫でしょう」
相変わらずクールなフーゴだった。
一方ではぐれてしまったナランチャだったが、ジョセフのことは見失っていなかった。
やがてジョセフは洞窟へと入って行った。
行き止まりになっている奥に寝転び
「スージー…ホリィ……ワシももうすぐそっちに行くぞ……」と小声で言った。
そしてそのまま目を閉じてジョセフは動かなくなった。
「もしかして死んだのか?」
ナランチャがゆっくり近付こうとした瞬間、ジョセフの身体が光り始めた。
「な、何だ⁉︎」
光が止んだ頃にはジョセフの死体は何処にも無くなっており、代わりにその場所にさっき見たものと同じ矢が落ちていた。
「人間が矢になりやがった……てことはやっぱりさっき見つけたもう一本の矢はブチャラティが言ってた通り空条承太郎って奴なのか?」
「その矢に触れるなぁ!」
突然後ろから叫び声がしたので振り返ると、そこには一人の老婆の三人の屈強な男がいた。
しかし不気味だったのが、その三人の男は全員胸に風穴が空いていたからである。でもそこから血は一滴も出ていない。ドーナツのように空洞なだけだった。
「その矢はワシの物なのじゃ!貴様のような小僧には渡さん!」
「なんだよ!先に見つけたのはオレだぞ!」
「忌々しい小僧よ…本来ならジャスティスですぐにでも殺してやりたいが今は貴様には構っている暇などない!」
老婆がそう言うと胸に風穴の空いた男三人がナランチャを取り押さえた。
「なんだよ離しやがれ!」
その間に老婆はジョセフの矢を盗み取り外へと出て行った。
「だからその矢は俺のだって!」
老婆が去った後も男三人はナランチャを離そうとはしなかった。
すると「ナランチャ、大丈夫か!」という声が洞窟内に響いた。
「そ、その声はブチャラティ!」
ブチャラティは男三人を拳銃で射殺し、ナランチャを助け出した。
「ナランチャ、ここで何があったんだ」
「ブチャラティの言った通りだったんだよ!さっきのジョセフ・ジョースターってじいさんはここで死んで矢になったんだ!」
「やはりそうだったのか…それでこの男たちは誰なんだ」
「それが矢を取ろうとしたらいきなり知らない老婆に襲われてよ、そこの身体に穴の空いた男三人でオレを取り押さえているうちに矢を持って逃げやがったんだ!」
ブチャラティはその男三人を見た。たしかに身体には風穴が空いている。もはや空いているというよりはそこだけ削り取られたようだった。
「その老婆はスタンドを使ったのかもしれないな。とりあえずおまえが無事で良かった。とりあえず空条承太郎の矢は回収出来たんだ。帰るぞ」
ブチャラティとナランチャが洞窟を出る頃には霧はすっかり晴れていた。
ますますブチャラティの疑いは強まるばかりだった。
ナランチャの出会った老婆がスタンド使いであの霧もスタンドの能力だったのではないか…と。
とりあえず一同は矢を持ち帰る為に山を降りた。
第3話完。
またお会いしましょう
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第4話「新入りの名はジョルノ・ジョバァーナ」
聖なる山から矢を回収したブチャラティたちはまた数時間かけて自分たちのアジトへと戻って来た。
すぐに矢をボスに届けるのかと思いきや、ボスは宇宙の方に行っているらしく帰ってくるのは2日後とのことなのでそれまでは矢を預かっておくことになっていた。
「そういえば今日は朝からブチャラティがいないが、また新しい仕事か何かなのか?」
朝から誰もブチャラティの姿は見ていなかった。
「さぁ知らないですけど、何でも新しいメンバーを迎えに行ったみたいですよ」
「「「はぁ⁉︎」」」
ミスタ、ナランチャ、アバッキオの三人がユニゾンでツッコんだ。
「おい聞いてねーぞ、そんな話。オレたちの中に新入りが来るのか?」
「逆に何でフーゴ、おまえだけが聞いているんだ?」
「朝早くからブチャラティが出かけていくのが見えたんで、どこへ行くのか聞いてみたらそう言ってただけですよ」
「新入りだと?いったいどんな奴を連れて来る気なんだ……」
「オレはどんな奴を連れて来ようと認める気はないぞ」
そう言ったのはアバッキオだった。
「どうしてです?ブチャラティが言ったのであれば従うしかないでしょう」
相変わらず冷静なフーゴ。
「オレもあんまり好かないな、その新入りってのは」
「だいたいオレより歳下なのか?歳上だったら気使うだろ」
「ナランチャ、おまえが人に気を使っているところなんて見たことねーぞ」
「うるせー!オレだって人に気を使うことぐらいあらぁ!」
ミスタとナランチャも賛成は出来ない様子だった。
「おいフーゴ、おまえの本音はどうなんだ?」
冷静に物事を判断するフーゴの本音を聞こうとミスタが尋ねる。
「ぼくも新入りが来ると聞いた時は戸惑いましたよ。でもさっきも言いましたがブチャラティがそう言ったんですから仕方ないでしょう」
やはりフーゴは冷静だった。物事に私情は挟んではいない。
「まぁとりあえずその新入りがどんな奴なのか見てみるとしようぜ」
2時間後。ブチャラティが戻って来た。
「おいブチャラティ!新入りが来るとはどういうことだ?オレたち何も聞いてねーぞ?」
ミスタが戻って来るなり抗議した。
「これは既に決定事項だ。反論は認めない。これはオレからの命令と思ってもらっていい」
いつになくブチャラティの口調が強かった。いつもなら自分の部下とはいえここまで強くは命令はしない。
「入って来て良いぞ」
ブチャラティが呼び込むと一人の男が入ってきた。
顔立ちは整っていて金髪の男で服の胸の部分がハートマーク型に空いている服を着ている。
「ジョルノ・ジョバァーナといいます。よろしくお願いします」
「今日からジョルノがオレたちのチームに入る。分かったな」
ブチャラティがそう言っても返事をする者はいなかった。
「良いかおまえら、よく聞け。今のパッショーネはオレたちが入った頃とは違い表向きは一大企業になっている。だからポルポが生きていた頃のような入団試験のは今はやってはいない。だがこのジョルノ・ジョバァーナは自ら入団試験を望んで受け、それを突破して来たんだ」
「へぇーアレを突破したんですか。ただのギャングに憧れるバカではないってことですね」
ブチャラティの言葉に唯一フーゴがそう反応した。
他の三人は相変わらずの様子である。
「おまえらがどんなに不満を言おうがこれは決定したことだ。それ以上そんな態度を続けるのなら半逆を見なすぞ」
ブチャラティが真顔でそう言った。それを見て三人は思った。これは脅しではなく本気だと。
「本当に良いのかいブチャラティ、ぼくが入ることでチームの輪が乱れたりしたら…」
「おまえはそんなことを考えなくていい。おまえには夢があるんだろう、そしてそれを叶える為にギャングになった。オレにそう言ったのはジョルノ、おまえじゃないか」
「そうだった…このジョルノ・ジョバァーナには夢がある!確かにぼくはキミにそう言った。そしてその気持ちは今も変わっていない」
「だったらそのままでいろ。アイツらのことはオレがなんとかする」
ブチャラティは改めて三人に言った。
「オレはこれから用があってしばらく留守にするが、もう一度言っておく。ジョルノを仲間として接しなければオレに対する半逆を見なす。分かったな」
そしてそのままアジトを出て行った。
現場を仕切っていたブチャラティがいなくなったことで何となく重い空気が流れる中、ミスタが沈黙を破った。
「ブチャラティはあぁ言っているがなオレたちとしてまだジョルノ・ジョバァーナ、おまえを認めていない。それはおまえ自身も分かってるだろう?」
「あぁ…分かっていますよ」
「だからだ、ブチャラティのことだからあんなことを言うと分かってたからさっき三人で考えんだがよ。ブチャラティが帰ってくるまでにオレたち三人からの試練に合格出来ればおまえさんを認めてやるよ。そこのフーゴはブチャラティの言いなりらしいからオレたち三人だけだ。どうだ?」
それに対しフーゴは何も言わなかったが、少しイラっとした顔をしていた。
「分かりました。それを突破しないと認められないというのならぼくは受けますよ」
「へっ、決まりだな」
第4話完。
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第5話「ミスタの試練」
ブチャラティチームに新入りジョルノ・ジョバァーナがやってきた。しかしアバッキオ、ミスタ、ナランチャの三人は突然の新入りを認めていない様子で……。
「ブチャラティが帰ってくるまでにオレたち三人からの試練に合格出来ればおまえさんを認めてやるよ」
「分かりました。それを突破しないと認められないというのならぼくは受けますよ」
「へっ、決まりだな」
「それで?どうするんですかミスタ」
フーゴが少しつまらなそうに尋ねた。
「ジョルノ、おまえサバイバルゲームは知ってるか?」
「えぇ…名前くらいは」
「オレは銃の腕前はチームの中じゃ一番でな。さすがに実弾でやるわけにもいかねーからサバイバルゲームってわけだ」
「分かりました」
「じゃあこっちへ来な」
ミスタが連れて行った先はアジトの横にある林だった。
「この辺じゃ大きなフィールドもねーからな、こんなのしかないがこれでも充分だろ」
そう言ってミスタはジョルノにも拳銃を一丁渡した。
「ルールは一つ、弾がヒットしたら負けだ。おまえは初心者だから白兵戦はなしにしてやるぜ」
「初心者だから白兵戦はなしって、ミスタが白兵戦に弱いだけだろ」
ナランチャが横からガヤをいれる。
「うるせーよ、今はオレの時間なんだからおまえらは黙って見てろ!」
そしてジョルノとミスタはフィールドインして、両端のスタート位置についた。
「はーいスタート」
フーゴのやる気のない声でサバイバルゲームのゴングとなった。
「さっきのナランチャの言い方から察するにミスタはこのサバイバルゲームをやり慣れている…不用意に動くのは逆にぼくが危ないか」
サバイバルゲーム初挑戦のジョルノだったが、意外と冷静だった。
しかし武闘派のジョルノは銃をまともに撃ったことなど今までない。
そしてゲームを眺めていた残りのメンツは。
「ありゃミスタの圧勝だな、オレだってアイツに勝てたのは白兵戦に持ち込んだ時だけだしよ。銃撃戦でアイツに勝てる奴なんかいないぜ」
「オレたちの試練まであのジョルノは辿り着けないだろうな」
ナランチャとアバッキオはミスタの圧勝を予想していた。
「どうでしょうね」
だがただ一人フーゴだけは違った。
「フーゴ、おまえまさかあのジョルノが勝つと思ってんのか⁉︎」
「分かりませんよ。ただブチャラティがあそこまで肩入れする男なんですから、只者ではないと思っただけです」
そしてミスタも自分が負ける筈ないと余裕だった。
「サバゲー初心者は必ず下手に動こうとはしねー筈だ。だがそれが命とりだぜジョルノ・ジョバァーナ、オレはここのフィールドは知り尽くしているからよ!タイマンで戦った時の相手側のスタート位置も当然ながら頭に入っている。オレの狙撃の腕なら遠くからも狙える。奴の弾が絶対にとどかない位置からな」
ミスタはジョルノのスタート位置が近くなると、木の上に登りジョルノの探し始めた。
「絶対この辺にまだいる筈だ…どこに行った?」
ミスタの銃はライフルではなくピストル型なのでスコープはないが、肉眼でも充分に探せる視力と経験を持っている。
「見つけた、やはりまだスタート位置にいるな。そしてオレが攻めに来るのを待っている。だがこの距離ならオレでも射程距離内ギリギリなんだ、アイツが撃つのは不可能だ」
ミスタは冷静にジョルノに銃口を向け、引き金に手をかけた。
すると突然ジョルノが視界から消えた。何故ならミスタの登っていた木が突然成長したかのように伸び始めたからである。
「な、何だコレは⁉︎ 何故いきなりこの木が伸びたんだ……まさかジョルノの仕業なのか…だがこんなことが出来る筈がない!」
その瞬間ミスタの脳裏に聖なる山でのことが蘇った。
ブチャラティの言っていた空条承太郎のこと。ナランチャが襲われたという霧と死んだ人間を操る老婆のこと。
「まさか…ブチャラティとナランチャの言っていたことは本当だったってのか……そしてあのジョルノ・ジョバァーナこそがスタンド使い……」
「そうですよ。このぼくは生まれついてからの特殊能力がある。ブチャラティが言うにはコレこそがスタンドというらしいです」
「ジョ、ジョルノ!」
いつの間にかその木の真下にジョルノが立っていた。
「このサバイバルゲームというのをやり慣れているミスタ、あなたとまともに戦っても勝ち目はないと思ったので少し卑怯な気もするがスタンドを使わせてもらいました。このサバイバルゲームにスタンドの使用を禁ずるというルールは無かったので」
「くっ…だがジョルノ・ジョバァーナ、まだ勝負は終わってねーぞ!どちらもまだ撃たれてないからな!」
「いえ。勝負は既に決まっています」
「何だと……ハッ!」
冷静になったミスタは気付いた。自分の手に銃が握られていないことに。
「木が成長した時に銃を持って行かれていたのか…おまえのスタンド能力に気を取られて気が付かなかったぜ……スナイパー失格だな。オレの完敗だジョルノ、撃ちやがれ」
パァァン……フィールドにジョルノの銃声が鳴り響き決着はついた。
第5話完。
またお会いしましょう
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第6話「ナランチャの試練」
一発だけ鳴り響いた銃声。
「早くも決着がついたか。ミスタの奴、全く手加減なしか」
ミスタの勝ちを確信していたアバッキオは軽く笑いながら言った。
「こんなことならオレが一番最初にやっとくんだったぜ、オレだってちゃんと考えてたんだからよ〜」
同じくミスタの勝ちを確信していたナランチャ。
するとミスタがフィールドから戻ってきた。
「よぉミスタ!全くオレたちの出番も残しておいてくれよ!」
「安心しろナランチャ、おまえの出番はすぐにやってくるぜ」
「えっ?」
その後ろからジョルノも戻ってきた。
「ジョルノ・ジョバァーナはこのオレ、グイード・ミスタの試練を突破した!よってオレはジョルノのチームの一員として認める」
「ミスタにサバゲーって勝ったってのか⁉︎」
「あぁ。オレの完敗だったぜ」
「信じられねぇ……」
驚きで口を開けたままのナランチャに対して
「何やってるんですか、次はナランチャの番ですよ」とフーゴが冷静にツッコんだ。
「うるせー!分かってるよ!ジョルノ・ジョバァーナ!オレの試練はそう簡単には突破させないからな!」
そう言ってナランチャが取り出しのは2台のラジコンヘリだった。
「試練ってコレですか?」
「あ?もしかしてただラジコンヘリで遊ぶだけとでも思ってんのか?そんな甘いもんじゃないぜコレは!」
するとナランチャはラジコンヘリにカメラを取り付けた。
「コレを取り付けてミスタの時と同じフィールドに行くんだ、どういうことか分かるか?」
「肉眼でラジコンヘリを見ることは出来ない…ということですか?」
「そうだ!この大して画質の良くないカメラだけを頼りに相手のラジコンヘリを撃ち落とす!それがオレの試練だ!」
どやぁぁという顔でジョルノを睨むナランチャ。
しかしジョルノはそれに対してどうすれば良いか分からず、沈黙が数秒続いた。
「……なんか言えよ!なんかオレがスベッたみたいだろ!」
「今のはジョルノが悪いとは思えませんけどね、ナランチャがスベッただけでしょう」
「フーゴてめぇ!」
ナランチャがフーゴにキレるも、これに対してもジョルノはどうして良いか分からなかった。
「あれは好きなだけやらしとけば良いんだよ、見て見ぬふりしとけ」
ミスタがそう言うのでジョルノは何も言わないことにした。
数分後。ジョルノとナランチャはようやくフィールドに入った。
だがジョルノはミスタのサバゲーと同様にラジコンヘリなど操作したことはない。
「基本操作だけでも聞いておくべきだった。どうすれば良いんだ?」
案の定操作方法すら分かっていなかった。
「ミスタが何で負けたのかは知らないけど、オレは絶対油断しないからな!アイツがラジコンヘリ初心者だろうと容赦なくぶっ倒すぜ!」
対するナランチャはさすがに慣れた様子でラジコンヘリを操縦し、さほど画質の良くないカメラでジョルノのラジコンヘリを探していた。
「コレホントに画質悪りぃな、低空の木ギリギリを飛ばれたら見分けがつかないぞ」
しばらく飛行しているとラジコンヘリではなく、カメラにジョルノ本人が映った。
「あれはジョルノだ、てことは近くにアイツのラジコンヘリもある筈だな……」
しかし周りを飛んでいてもジョルノのラジコンヘリは見当たらない。
「何処行ったんだ⁉︎ ていうかアイツ、今コントローラー持ってなかったよな」
画質の悪いカメラでもジョルノが手ぶらであることぐらいは確認出来る。
それどころかカメラのモニターを見ている様子もない。
「まさかアイツ、まだラジコンヘリを飛ばしてもいないのか?操縦の仕方知らなそうだったから」
すると突然ナランチャのラジコンヘリが死角からの攻撃を受けた。
「な、なんだ⁉︎ まさかジョルノのラジコンヘリか⁉︎ でもアイツは操縦してなかったのに……」
急いで巡回させると襲っていたのは一羽の鳥だった。
「と、鳥だぁぁぁ!!ラジコンヘリを敵だと思って襲って来やがったのか!離れやがれこの野郎!」
ナランチャは装備されている武器で鳥を撃ち落とそうとして乱射した。
しかし画質が悪い上カメラと鳥の目では勝負になる筈がなく、ナランチャの弾は一発も当たらず逆にモーターを破壊されて墜落してしまった。
「くそっ!あの鳥公め!おかげで勝負がむちゃくちゃだぜ!」
墜落したナランチャのラジコンヘリはたまたま下にいたジョルノの目の前に。
カメラはまだ生きておりジョルノの映し出していた。
すると先程襲いかかってきた鳥がジョルノの腕に止まり、ラジコンヘリへと姿を変えるところをバッチリ撮っていた。
「なっ……あの鳥はラジコンヘリが姿を変えていた?それをやったのはジョルノ…まさかブチャラティが言ってた洞窟でオレを襲ったばぁさんと一緒でスタンド使いなのかアイツは!」
そしてジョルノはカメラに向かって言った。
「まともに戦っても勝てないと思ったのでスタンドを使わせてもらいました。でもぼくは試練をクリアしないといけないんです」
しかし実はこのカメラには音声を拾う機能はついていないので、ジョルノの声は何一つ伝わっていないのだが
「オレの負けだぜちくしょう!」
ナランチャは己の敗北を認めた。
第6話完。
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第7話「アバッキオの試練」
「ナランチャの奴、どうなったかね?」
「さぁな。ミスタの時は100%おまえが勝ったと思っていたが、今はどうだろうな」
ミスタの時と違い、ナランチャが勝ったという確信は持てない二人。
相手がナランチャで勝負がラジコンヘリというのもあるが、ミスタはジョルノのスタンドを目の当たりにしているせいでもあった。
するとボロボロのラジコンヘリを持って俯いたナランチャがフィールドから戻って来た。
「ナランチャ、やられたのか?」
「くそっ!負けだぜ!ジョルノ・ジョバァーナをこのナランチャ・ギルガはチームの一員として認めるよ!」
そしてその後ろからジョルノもフィールドから戻って来た。
「やはりただ者ではないみたいですね、ジョルノ・ジョバァーナ…」
今までほとんど無関心だったフーゴもミスタとナランチャを破ったジョルノに興味を示していた。
「最後はオレか。ジョルノ・ジョバァーナ、どうやらおまえは森での戦いは得意らしいな。だったらオレの試練はコレだ」
そう言うとアバッキオは近辺の地図を取り出した。
「アバッキオ、おまえ何をするつもりなんだ?」
「今からジョルノ、おまえがこの街中を逃げ回れ。おまえが出て行った15分後にオレはそれを追いかける。日没まで逃げ切れたらおまえの勝ちだ」
「ちょっと待てアバッキオ、おまえブチャラティが帰って来るまでにコレを終わらせねーといけないんだぞ?」
ブチャラティにはジョルノを認めろと命令されているので、この試練自体を秘密にして来たのだが
アバッキオのやり方ではブチャラティが帰って来てしまい、バレてしまう危険性があるとミスタが指摘した。
「オレはこの試練でないとジョルノ、おまえを認める気はないぞ。どうだ?やるのか?」
しかしアバッキオはミスタを完全に無視し、ジョルノを睨んでいる。
「やります。その試練でないと認められないというのならぼくはやる」
「決まりだな。さっさと出て行け」
ジョルノはすぐさま飛び出していった。
「おいアバッキオ!おまえもしかして最悪ブチャラティにバレても良いとか思ってんじゃねーだろうな?」
「あぁ」
アバッキオは小さく頷いた。
「マジかよ…そこまでするか?」
「オレは確かめたいだけだぜ、ブチャラティにあそこまで言わせ、ミスタやナランチャをいとも簡単に倒して認めさせたジョルノ・ジョバァーナという男をな!」
15分後。アバッキオも出て行った。
「ミスタ、ナランチャ、戦いの最中にジョルノは何か特殊能力…ブチャラティの言うところのスタンドを使ったんじゃないですか?」
するとフーゴがいきなりそう言い出した。
「おまえなのかナランチャ…」
「てことはミスタもか?」
「もしかしたらアバッキオもジョルノがスタンド使いかもしれないと思ったのかもしれないですね」
街中を走っていたジョルノは路地に入った。
「おそらくアバッキオはぼくよりもこの辺りを知り尽くしている筈…何処かに身を潜めていても見つかるだけだ。ここは逃げるしかないな」
そう考えたジョルノはあえて人気の多い道を選んだ。
これはかくれんぼではない。捕まらなけば良いのだから。
その時人混みの奥に見つけた。
「あっあれはアバッキオ!もうこんなところまでぼくを追いかけて来たのか、やはり人混みを選んだぼくの作戦は既に読まれていた…」
しかし人が多いのが幸いしアバッキオの方はまだジョルノに気付いてはいなかった。
するとアバッキオのいる後ろばかり気にして走っていたジョルノは通行人と肩がぶつかった。
「す、すいません!ぼくの不注意でした…」
「ジョルノ、おまえこんなところで何をしているんだ?」
「キミの方こそ…用事はもうすんだのかい?ブチャラティ」
何とジョルノが偶然ぶつかったのはブチャラティだった。今一番アバッキオ以上に出会ってはいけない相手である。
「あぁオレの用事はあらかた済んだからな。それよりおまえこそどうしたんだ?」
「いや…その…」
言葉に詰まるジョルノを怪しんだブチャラティはさらにその奥にいたアバッキオを発見した。
「おいジョルノ、おまえはアバッキオと二人でここに来たのか?」
「……」
「ジョルノ・ジョバァーナ!見つけたぜ……」
人混みで目立つジョルノの金髪を見つけたアバッキオは意気揚々とやって来たが、すぐそばにいたブチャラティにも当然気付いた。
「アバッキオ、おまえとジョルノはここで何をしていたんだ?」
「見つかっちまったから仕方ねぇ。正直に言うぜブチャラティ、オレはソイツを認められなかった。だからおまえがいない間に試練を与えたんだ。日没までオレから逃げ切れたのなら認めてやるとな」
言い淀んだジョルノとは対照的にハッキリと言ったアバッキオ。
「ジョルノに試練を与えたのはおまえだけか?他の三人はやってないのか」
さすがに鋭いブチャラティ。
「いいや、やってねーよ。ジョルノに試練を出したのはオレだけだ」
「アバッキオ……」
「分かった、おまえは先に戻っていろ。オレはジョルノの後から戻る」
「わ、分かった…」
アバッキオはそのまま戻っていった。
ブチャラティは問い詰める間、表情一つ変えなかった。
それがさらにジョルノやアバッキオを恐怖を煽っていた。
第7話完。
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第8話「ブチャラティの思惑」
アバッキオの試練中にブチャラティに全てがバレてしまった……。
「ジョルノ、正直に答えてくれ。試練を出したのはアバッキオだけじゃない筈だ。おそらくミスタとナランチャもおまえに試練をしていただろう」
アバッキオを帰った後、ブチャラティはジョルノに尋ねた。
「ぼくからは何も言えない……」
ジョルノは何も言えなかった。ここで正直に言えばミスタやナランチャを売ることになる。しかし逆にアバッキオの言葉に乗っかればアバッキオを売ることになる。
そして何よりブチャラティに嘘はつきたくはなかった。
「そうか、分かった」
ブチャラティはそれだけを言うと後は何も言わなかった。
一方アバッキオはアジトへと戻ってきた。
「ずいぶん早かったなアバッキオ、ということは試練はおまえの勝ちか?」
「ジョルノならなんとかしちまうと思ったけど、さすがにあのルールじゃ無理か〜」
ミスタとナランチャが声をかけるもアバッキオは反応しない。
「どうしたアバッキオ?」
「もしかして…ブチャラティにバレたんですか」
フーゴの一言にアバッキオは黙って頷いた。
「ま、マジかよ…だから言ったじゃねーかよアバッキオ!外に出るなって!」
「安心しろ、おまえとミスタも試練をしたってことは言っていない。オレだけがアイツにやったと言っておいた」
「「はぁ⁉︎」」
ミスタとナランチャがユニゾンにツッコミ、ミスタが胸ぐらを掴んだ。
「おまえ何のつもりだ?オレたちを庇ったりなんかしやがって…」
「別におまえらを庇ったわけじゃねぇ。おまえらはもうジョルノを認めたんだろう。後認めていないのはオレだけだ」
「アバッキオ……」
するとジョルノとブチャラティも戻ってきた。
「ジョルノ、フーゴ、おまえたちは出て行ってくれ」
戻ってくるなりブチャラティは言った。
「分かりました」
フーゴはすんなり聞き入れ、ジョルノの腕を引っ張って外へと出て行った。
「ミスタ、ナランチャ、おまえたちに聞く。アバッキオと同じようにジョルノに試練を与えたのか?」
「おいブチャラティ!さっきも言っただろう、オレ一人だと」
「黙れアバッキオ、おまえには聞いていない」
ブチャラティの迫力にアバッキオは黙るしかなかった。
「オレはやったぜ!得意のラジコンヘリでジョルノに挑んだ!負けちまったがよ…」
「オレもだ、サバイバルゲームでジョルノに挑んだが勝てなかった」
ミスタとナランチャは正直に全てを話した。
「だがブチャラティ、オレは試練をやったことは良かったと思ってるぜ。何故ならオレとナランチャはジョルノのスタンド能力の片鱗を体験した。オレの時は木を急成長させ、ナランチャの時はラジコンヘリを鳥に変化させていたんだよ」
「そうだぜ!だからアバッキオに罰を与えるつもりならオレたち三人は同罪だ!」
「ミスタ…ナランチャ……」
ブチャラティはしばらく黙っていた。思い沈黙が数秒流れた。
そしてそのまま何も言わずにジョルノとフーゴを中に入れた。
「良いがおまえら、明日ボスが地球へと帰って来る。だからオレたちは昨日手に入れた矢を持っていかなくてはならない。ここに残るチームとオレと共にボスの元へといくチームの二つに分けようと思う」
さらに全く違う話をし始めた。これには三人は戸惑う。
だがそんなことはお構いなしにブチャラティは続けた。
「ということは三人ずつってことですね」
「あぁそうだ。ボスの元へと行くのはオレとジョルノと…アバッキオ、ミスタ、ナランチャ、おまえたちから誰か一人選んでくれ」
「オレたちから?」
まだ話について行けていない三人。
「明日の朝一番に出発する。それまでに誰が行くのかを決めておけよ」
そう言うとブチャラティは二階へと上がって行った。ジョルノも後を追って二階へと行った。
「どういうことなんだ?てっきり怒られると思ってたんだが、オレたち三人の中から一人着いて行く奴を決めろだと?」
「ブチャラティが何を考えてんのオレ全く分かんねーよ」
「ジョルノを認めないと反逆罪じゃなかったのか…」
突然話を変えたブチャラティが何を考えているのか三人には分からなかった。
「作戦が失敗したらクビだとか今までもそんなことがありましたけど、実際にブチャラティがそうしたことはありましたか?」
それを見ていたフーゴが口を挟んだ。
「ない…オレ結構失敗したことあるけどねーぞ?」
「オレはそもそも失敗してねーよ」
「ブチャラティがそんなことをする男でないことはオレたちだって分かっている。だが今回のアイツの目は本気だった、だからオレはそこまであのジョルノを信用する理由が分からなかったんだ」
「もしかしたらブチャラティはあなたたちがこういうことをするのを分かっていたのかも知れないですね」
そう言うとフーゴも二階へと上がって行った。
「試されていたのはジョルノじゃなくてオレたちの方だったってーののか?」
「最初にジョルノを紹介した時の反応でブチャラティは全て分かっていたのかもしれねーな」
「朝から夕方までわざわざ留守にしたのもその為か……まんまとやられたのかオレたちはよ」
「あぁ。そしてジョルノがオレたちの試練を乗り越えるという確証もブチャラティには有ったんだよ」
第8話完。
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第9話「目覚める存在」
街のずっと地下深く。怪しげな研究室がそこに有った。
一人の老婆と一人の神父が小指の骨が入ってこれまた怪しげな機械の前にいた。
「エンヤ婆、これで本当に彼は甦るのか」
「安心せぇエンリコ・プッチ、わしが20年かけて作り上げたのじゃ。必ずやあの方を復活させることが出来る!それにわしは聖なる山でコイツを手に入れた!」
老婆ことエンヤ婆は懐から一本の矢を取り出した。
「それがジョースター家の矢なのか」
「そうじゃ。そしてコレはあの方を倒した憎き男の祖父、ジョセフ・ジョースターのもの。孫には劣るとはいえ奴もスタンド使いだった男、あの方を甦らせるのには充分な力はある!」
そう言うとエンヤ婆はジョセフの矢を機械の中にある小指の骨に突き刺した。
すると骨が矢を取り込み、みるみるうちに小指だけだった骨が人型の全身になって行き筋肉や皮膚もつき始めた。
やがて一人の男の身体へとなっていた。髪色は金髪で左肩に星形のアザがある。
「完璧じゃ!ついにあの方が甦ったのじゃ!」
すると中の男が動き出した。
「これは…本当に動くとは……」
しかし甦ったその男はエンヤ婆とプッチの頭を掴むと、身体から血液を全て抜き取って殺してしまった。
「わたしは誰だ……何も思い出せない………」
ジョセフの矢だけでは足りなかったのか甦ったその男は記憶がなかった。
「この神父…誰だか知らんが何故が殺したことを残念に思っている……いったい何故なんだ」
男の背後には何やら影があった。人ではない何かが。
「自分の名前も何も思い出せないがこれだけは分かる……わたしが完全な状態になるにはもっと人間の生き血が必要だということ……そしてわたしの背後にいるのはスタンド…世界(ザ・ワールド)だということが」
次の日。パッショーネのボスは地球に帰還し、本部へと戻ってきた。
「ぷるるるる、ボスがお戻りになられた道を開けろ」
そう言ったのはボスの側近のヴィネガー・トッピオ。
部下の前にも一切姿を現さないボスと唯一会ったことがあると自称しており、ボスの命令を聞いて部下に伝える役割を成している。
だがその正体はボスの二重人格の別人格であり、トッピオ本人は気付いてはいない。
今日はブチャラティと会う予定が入っているが、ボスとして会うのではなくトッピオとして会うのだ。
「ボスからの連絡を待つか」
するといきなり背後に男が現れた。
「い、いつの間に!おまえは誰だ!」
「わたしにも分からない。それを知る為に行動している」
男はトッピオの頭を掴むと血を吸い取って殺害した。
「この男…パッショーネというギャングのボスなのか……この立場を利用すればわたしが誰なのかを知る機会が来るのかも知れない」
男はトッピオの抜け殻を窓から捨てた後、隣の書庫へと入った。
そして何故か引き寄せられるように一冊の本を手に取った。
そこには[ジョースター家の家系図]と書かれていた。
「何故だ…ジョースター……懐かしい名のような気がする……わたしと関係がある人物なのか」
その頃ブチャラティたちはボスに矢を届けるために出発しようとしていた。
アバッキオ、ミスタ、ナランチャの三人は誰がついていくのかをじゃんけんで決めて勝ったナランチャがついていくことに。
そして三人はボスからの使いが運転する車に乗り込んだ。
「ボスとの取引場所は本部だ。だがボス本人と直接会えるわけじゃないぞジョルノ」
「そうなのかい?」
「そんなこと知らねーのか?オレだってブチャラティだってボス親衛隊だって素顔どころか名前も知らねーんだぜ?」
どやぁぁ感を出しながらナランチャが言った。
「ボスの素性を知っているのは側近のヴィネガー・トッピオだけだ。オレもそいつにしか会ったことがない。そしておそらく今日矢を渡すのもそいつにだ」
「何か公に現れられない理由でもあるのか…」
「さぁな。ジョルノ、そこは深く考えない方が良い。間違ってもボスのことを調べようとするなよ」
ブチャラティが結構マジな顔で言った。
「どうして?」
「過去にボスのことを調べた者は全員が行方不明になっている」
「それって……」
「確証があるわけではないがおそらくな。よほど素性を知られたくないらしい」
するとその時車が急ブレーキをかけた。
「どうした?何かあったのか」
「道の真ん中で二人組が大の字に立っていたもので……」
運転手は申し訳なさそうにしている。
そして運転手の言う通り道の真ん中に二人立っていた。
「おいブチャラティ!てめぇボスに届け物があるらしいな?それをオレたちに寄越せ」
「し、死にたくないなら兄貴の言う通りにしろ!」
「ブチャラティ、知り合いかい?あれは」
「パッショーネの暗殺部隊のプロシュートとペッシだ」
「暗殺部隊が何でここにいるんだよ?オレたちボスの命令で来てんだぞ?」
プロシュート兄貴の方は拳銃を構え、ペッシの方は何故か釣り竿を持っている。
「暗殺部隊は一番危険な仕事をしているが、ボスからの信頼は最も少ないと言われている奴らだ。ここでオレたちから矢を奪ってボスに届けることが目的だろう」
「向こうがやる気なら返り討ちにしてやろうぜブチャラティ!」
妙にやる気満々とナランチャだった。
第9話完。
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第10話「ジョルノとジョースター」
ジョルノ、ブチャラティ、ナランチャの三人は矢をボスへ届けようとしていた。
だがそこで暗殺部隊のプロシュートとペッシの二人に襲われる。
「どうしますブチャラティ、ナランチャの言う通り戦いますか?」
「オレの本音は戦って構わないと思っている。だがボスとの取引時刻まで時間がない、だからここで足止めを食らうわけにはいかない」
「だったらブチャラティ、ここは俺一人に任せてくれよ!」
「ナランチャ…」
「ちょっと待って、何故キミ一人なんだ?ブチャラティ一人を行かせた方が良いのに」
ジョルノがそう思うのも当然である。ボスに矢を渡すだけならブチャラティ一人でも出来ることなのに。
「ジョルノよく考えてみろ!暗殺部隊はコイツら二人だけじゃないんだぜ?他にも来たらおまえが戦わないでどうすんだよ!」
そう言うとナランチャは車を降りた。
「……分かった。ここはナランチャ、おまえに任せる。車を出してくれ」
「ブチャラティ!」
「ミスタたちにはもう連絡を入れた。加勢にやってきてくれるだろう。オレたちは急がないといけないんだ」
「あぁ…分かったよ」
ナランチャが二人を引きつけている間に車は猛スピードで走り去った。
「兄貴!行っちゃいましたよブチャラティ…」
「くそっ!ナランチャ!それもてめぇのせいだ、死ぬ覚悟は出来てんだろうな?」
「それはオレのセリフだぜ!」
その頃ジョルノとブチャラティは本部に到着。
結局プロシュートとペッシ以外は誰も襲ってはこなかった。
そしてボスの部屋に通された。
そこには奥の椅子に上半身裸の男が座っていた。
「アレがトッピオなのかい?」
「いや違う…まさかボスなのか?でもそうなら何故姿を……しかもトッピオが出てこない…」
何度かここには来たことがあるブチャラティは今の現状に違和感だらけだった。
いつもなら少年のような男トッピオしかここにはいない。なのに今は一人の男が座っている。髪色は金髪で左肩に星型のアザがあった。
「あのアザはまさか…ジョースター家の人間にあるアザだ、ならアイツはジョースター家の者なのか?」
「わたしに矢を渡せ。おまえたちが持っているんだろう」
心に直接話しかけているような不気味な雰囲気だった。
「コレです…」
ブチャラティは矢をボス(?)に渡した。
「もう帰って良いぞ」
「は、はい」
ジョルノとブチャラティは部屋を出た。
「あの男はボスでないにしても相当な男だ。少なくともオレはそう感じた」
「ぼくもだよブチャラティ、声を聞いただけで翻弄されそうになったぐらいだ……」
「何者なんだあの男は……」
ジョルノとブチャラティが帰った後、男は矢を自らの腕に刺した。
するとみるみるうちに体内へと吸収されていった。
「矢を集めればわたしの記憶は戻る……」
すると男の頭に一人の人間の名前がいきなり思い浮かんだ。
「ジョナサン・ジョースター…ジョジョ……やはりわたしはこの名前の男を知っている。そして理由は思い出せないがわたしの首から下はジョナサン・ジョースターの身体であることも分かる。そしてジョジョの首が何処にあるのかもわたしは知っている。わたしは聖なる山と呼ばれる場所にジョジョの首を埋めた…三本目の矢はジョジョのものを使おう。ジョジョの矢ならわたしを完全にしてくれるだろう」
一方ジョルノとブチャラティは一人残して来たナランチャを心配し、いち早くあの場所に戻ろうとしていた。
「うっ…くっ……」
するといきなりジョルノが左肩を押さえ始めた。
「どうしたジョルノ?」
「い、いやなんでもない…」
ジョルノの態度を不審に思ったブチャラティは行こうとするジョルノの肩を掴み
「待て。さっき左肩をおさえていたな。見せてみろ」と詰め寄った。
「本当に何でもないんだブチャラティ、ちょっとフラッと来ただけだ」
するといきなりブチャラティはジョルノの顔をペロリと舐めだした。
「この味は嘘をついてる味だぜジョルノ・ジョバァーナ」
「なっ……」
それでも渋るジョルノを押さえつけて無理矢理服を引っ張って左肩を見た。
すると星形のアザがあったのだ。先ほど会った男と同じように。
「……ジョルノ、おまえはジョースター家の人間なのか?オレの調査ではジョースター家の人間は代々そのままアザがあるらしい。だからジョルノ、おまえがジョースターの血を継いでいるということだ」
「ジョースター?ブチャラティ、キミは何を言っているんだ?」
「えっ…」
先ほどまでのジョルノの態度とは違い、本当にジョースター家を知らない様子だった。
しかし星形のアザはジョースターの血を継いでいる証なのも事実。
「なら質問を変えよう。さっき会った男とおまえとの関係はなんだ?」
先ほどの男にも星形のアザがあった。しかしジョースター家を調べ尽くしたブチャラティも知らない人物だった。
なのでジョルノとの繋がりはそこかと考えたのだ。
「ブチャラティ…どうやらキミには隠し事は出来ないようだから全て話すよ。ぼくはさっき会った男のことは知っている。一目見た時から分かった、アレはぼくの父親だと」
「やはりか…それで、奴は誰なんだ?」
「奴の名はDIO……ディオ・ブランドーだ」
第10話完。
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第11話「3本目の矢と蘇りし記憶」
どうやらキミには隠し事は出来ないようだから全て話すよ。ぼくはさっき会った男のことは知っている。一目見た時から分かった、アレはぼくの父親だと」
「やはりか…それで、奴は誰なんだ?」
「奴の名はDIO……ディオ・ブランドーだ」
「なんだと……」
ブチャラティはDIOの名を知っている。何故ならジョースター家を調べるにあたってDIOという男は切っても切り離せない存在なのだから。
ジョナサンの義兄弟で石仮面で吸血鬼となり100年後に承太郎やジョセフとも戦った相手である。
「ジョルノ・ジョバァーナ……おまえの父親はDIOなのか。だが何故DIOに星形のアザがあるんだ、奴はジョナサンと義兄弟とはいえジョースター家の人間ではない筈だ」
「詳しいことはぼくにも分からない。だが一度だけ母親がDIOの話をしたことがあった。首から上と下が別人のようだ…と」
「まさか……記録では首だけになったディオがジョナサンと船で死んだと思われたが生きていて100年後に目覚めると書かれていたが、奴はジョナサンの身体を奪って100年間生き延びたというのか。だから奴の身体には星形のアザがあり、息子であるジョルノにも受け継がれたということか…」
この時ブチャラティは思った。ジョルノがジョースター家の人間なら、死ぬ時はあの聖なる山に行くのかと。
そしてジョセフや承太郎のように矢になっていくのかと。
「ブチャラティ、それより今はナランチャが心配だ。早く行こう」
「あ、あぁ…そうだな」
ジョルノとブチャラティは現場に急行した。
しかし二人が着いた頃にはナランチャがプロシュートとメッシをボコボコにしており、全てが終わっていた。
「よぉブチャラティにジョルノ、仕事は済んだのか?」
「どうやら心配する必要はなかったようだな」
「そうみたいだ」
その頃イタリアにフランスから一人の男がやって来ていた。
名をジャン=ピエール・ポルナレフ。独自で聖なる山のことを調べ、それを確かめる為にやって来たのだ。
そして22年前に承太郎やジョセフと共にDIOと戦った仲間であり、10年前にイタリアで最後に目撃されて以来行方不明の承太郎と最近突然消息を絶ったジョセフのことも確かめる為でもあった。
「イタリアか…20年前の旅でもイタリアは来なかったからな。来るのは初めてだぜ」
すると空港から降りてくるなり一人の男に話しかけられた。
「よぉポルナレフ、20年ぶりだな」
「てめぇはホルホース…よくもぬけぬけとオレの前に現れられたもんだぜ」
ホルホースとはかつてDIOの配下で承太郎やポルナレフの敵だった男である。
「待て待て!今のオレはDIOの部下でも何でもねーんだぜ?おまえとやり合う気はねーよ。むしろ協力し合おうぜポルナレフ」
「あ?てめぇと協力?どういうことだ」
「ポルナレフ、おまえがここに来たのは聖なる山のことだろ?」
「てめぇ何か知ってんのか」
「あぁ、あそこに俺は行ったことがあるしな。そしてDIOが復活しようとしてんだ」
「な、何ィ⁉︎」
まさかの展開に驚くポルナレフ。
「エンヤ婆が生きてやがったんだ。そしてDIOを慕う神父と結託していろいろと作戦を練ってるようだぜ。だがオレはDIOという男に出会ったせいでおまえらに会うことになりあんな目に合ってきたんだ。二度と奴の顔なんざ見たくねぇ。だからポルナレフ、おまえを手を組む為にここに来たんだぜオレはよ」
その日の夜、微かな記憶とスタンドの導きにより、DIOは聖なる山へとやって来た。
「私はジョジョの頭の骨をここへ埋めた…それだけは覚えている」
記憶が無いのでこの山のことなど知らない筈だが、DIOは迷うことなく一つの洞窟へ。
「この下か…」
土を掘り返すと一本の矢が出てきた。そしてそれに触れた瞬間に膨大な量の記憶がフラッシュバックした。
1889年。ジョナサンと共に船で死ぬかと思われたが、首から下を乗っ取りシェルターに逃れることで生存。
しかしその時シェルターにいたのはDIOだけではなかった。ジョナサンの首もまたシェルターに入っていたのだ。
そしておよそ100年後にシェルターから出るのだが、エジプトに向かうより先に幼馴染みを想う気持ちなのか首から下のジョナサンの意思なのかは分からないが、DIOはジョナサンの首の骨をここへ埋めにやって来た。
それが矢へと姿を変えていたのだ。ジョセフや承太郎と同様に。
そしてジョナサンの矢もDIOの体内へと吸収されていく。
「URYYYYYYYYY!! 全て思い出したぞ!さすがはジョジョの矢だ、このDIOがこの世で唯一認めた男よ。それに力が漲ってくるのを感じる!」
そんなDIOに応えるかのようにザ・ワールドも様子が変わっていた。
今までの黄色い見た目とは異なり真っ黒になっていたのだ。
「ザ・ワールドの様子が変わった…だが何が起こったのかこのDIOには全て分かる。時を止めるだけではない…新たな能力に目覚めたのだ!その名もザ・ワールド レクイエム!」
その頃アジトで寝ていたジョルノを再び肩の痛みが襲っていた。
「これはまさか…またDIOが矢を手に入れたのか……」
第11話完。
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第12話「ボスの娘 トリッシュ・ウナ」
パッショーネの本部で一人の少女がやって来た。
名をトリッシュ・ウナ。何を隠そうボスの一人娘である。
組織で唯一ボスの正体を知り、トッピオが二重人格の産物であるものということも知っている。
ボスは自分の正体を知られない為に遠くへ飛ばしていた(殺しては周りに不信感を抱かれると思った為)。
だが数年かけてトリッシュはパッショーネの本部を突き止めてやって来たのだ。
「あんな奴が父親だなんて認めない。一発ぶん殴らないと気が済まない!」
だがパッショーネの本部にはもうボスはいない。
いるのは不死身の吸血鬼DIOだけである。
「ジョースターの血を継ぐものはまだいる。東方仗助、次はコイツを矢にするか。だがその前に生まれ変わったザ・ワールドの能力を確かめてみるとしよう」
そう言うとDIOは自らの血を床に円を描くように垂らした。
すると円の中心から人がヌルッと出てきた。
「久しぶりだな。わたしのザ・ワールドレクイエムは死者の魂を呼び出し、わたしの血を与えることで吸血鬼として甦らせることが出来る。しかし条件があるのだ、一つはこのDIOを知っていること。そしてもう一つはわたしに敵意が一切ないことだ。その二つを満たしているのはおまえぐらいだった、ヴァニラ・アイスよ」
「有り難き幸せ。このヴァニラ・アイス、必ずやDIO様のご期待に添えてみせます。
「ならさっそくだがヴァニラ・アイス、東方仗助を聖なる山で殺して矢にしてここへ持って来い。吸血鬼のおまえはわたしと同じく日中は外に出ることは出来ない。だがわたしはこの命令を取り下げるつもりない」
「例え地中を掘り進めてでもその命、必ず守らせていただきます」
早くもヴァニラ・アイスは部屋を出て行った。
「やはりヴァニラ・アイスを復活させたのは正解だったか。奴は誰よりも扱いやすい」
「……」
実はそのやりとりを盗み聴きしていたトリッシュ。
そして理解した。自分の父親はすでにあの男に殺されているのだと。
ボスはもうあの男になっている。しかし元々ボスを知らない連中はそれに気付かない。それを利用してあの男はここにいる…ということを。
「誰かに…伝えないと……」
何故がそう思ったトリッシュは入った時と同じくこっそり本部を出ると、組織で一番信用出来る人のところへ向かっていた。
「ブチャラティ、実は昨夜にまた同じ痛みに襲われた。しかも今まで一番強い痛みだった。もしかしたらまたDIOが矢を手に入れたのかもしれない」
他の四人に聴かれないようにひっそりとジョルノが言った。
「だとしたらジョナサン・ジョースターかもしれない、DIOが手にした矢は」
「ジョナサン?でもそれはDIOに身体を乗っ取られたんじゃ……」
「ジョセフや承太郎の時よりも強い痛みだったというのなら間違いないだろう。身体がDIOになったのなら残された頭が矢になった可能性が高いな。そして奴はジョナサンの矢で強大な力を手に入れた…と考えるのが自然だろう」
「……」
ジョルノが考え込む中、今度は全員に聞こえるようにブチャラティが言った。
「オレたちは今から4本目の矢を回収に向かう」
「なんだいきなり?またボスからの命令か?」
「いや、オレの独断だ。オレが調べたところによればジョースターの血を継ぐ人間である東方仗助が先日突然失踪したらしい。もしかしたら聖なる山に行ったのかもしれない」
残りの四人にはジョルノやDIOのことは話していないが、ジョースターと矢のことはある程度説明はしていた。
「てことはブチャラティ、まさかオレたちもその矢の力を使おうってことか!」
かなり嬉しそうにナランチャが言った。
「まぁそうなるな。おまえたちも既に知っていると思うがジョルノにはスタンド能力がある。だからオレたちも共に戦う為にスタンド能力を身につけようと思う」
「その言い方じゃ矢を使えばスタンド使いになれるのか?」
「確証はない。だが12年前に日本で矢を貫かれた者がスタンド使いになったという事例がある」
「マジかよ!やったぜ!」
誰よりもジョルノのスタンド能力に憧れがあったナランチャはかなり嬉しそうだった。
「はしゃぎ過ぎですよ。ガキですね」
「あぁ⁉︎」
フーゴがボソッと言った一言だったが、当然ナランチャが引っかからないわけがなかった。
「誰がガキだとォ?てめぇの方が歳下だろうが!」
「そういうところも含めてガキだって言っただけですよ」
「やめろおまえら。ボスも東方仗助の矢は狙っているに違いない、ボスに取られたら二度とオレたちが触れることは出来ない。だからボスよりも早く見つけ出す必要があるんだ、んな揉めてる暇があったら出発準備でもしておけ」
「チッ、分かったよ。ブチャラティが言うから今日は許してやるぜ」
「ならブチャラティに感謝ですね」
するといきなりアジトのドアが勢いよく開けられて一人の女が飛び入ってきた。
「ぼ、ボスが知らない男に変わってるのよ!これからパッショーネがどうなるか分からないわ!助けて!」
第11話完。
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第13話「4本目の矢」
4本目の矢である東方仗助を探しに行こうとしていたブチャラティたちの下にいきなり女が現れた。
「ぼ、ボスが知らない男に変わってるのよ!これからパッショーネがどうなるか分からないわ!助けて!」
「いきなり何だ?ていうかおまえ誰だ?」
新入りのジョルノはもちろん、ミスタやナランチャやアバッキオやフーゴまでもが知らない様子だった。
ただ一人ブチャラティを除いては。
「トリッシュ、よくここが分かったな」
「おいブチャラティ、この女知り合いか?」
「あぁ。トリッシュ・ウナ、ボスの一人娘だ」
「ボスの娘なんていたのかよ!」
全く知らなかった一同は当然驚く。
「それよりボスが知らない男に変わってるってなんですか」
やはり冷静な男フーゴはそこが気になった。
「言った通りよ!その男はDIOと呼ばれていたわ!でもあたしのクソ親父はディアボロっていうのよ。それに側近のトッピオは二重人格のもう一人の人格にすぎないの。それなのにそのDIOという男はヴァニラ・アイスという側近がいた…ボスはいつの間にか成り代わられていたのよ!誰も正体を知らないのを良いことに!」
「それを何故ぼくたちに?」
同じく冷静な男ジョルノはそこが気になった。
「ブチャラティ、あんたが一番組織の中で信用出来ると思ったからよ」
「おまえたちに言っておくことがある。オレはトリッシュに聞く前からボスがDIOという男に成り代わられているということを知っていた。だからこそ対抗する為にスタンド能力が必要と考えんだ」
「そのDIOって確か…」
事情を知らないとはいえDIOという名を聞いたことがないわけではなかった。
空条承太郎の時に聞いた名だったからである。
承太郎に22年前に倒された吸血鬼だと。
「その吸血鬼が生き返ってパッショーネを乗っ取ったってのか?」
「オレがボスに矢を届けてしまったからだ。その矢を自分に使ったことで元々ジョースター家と親密な関係であったDIOに矢の存在とその力を教えてしまったのかもしれない」
「ブチャラティ、あんたを信じてあたしはここに来たんだから何とかしてよ!」
割と自分勝手なトリッシュ。
「だから一刻も早く出発する。あの聖なる山へ」
トリッシュは無視してブチャラティたちはすぐに聖なる山へ向けて出発した。
車で数時間ほど走った後に山道をこれまた数時間歩かなければならない。
「またこの道かよ〜 ヘリコプターとかないのか?」
前と同じようにナランチャがごね始めた。
「またそれかナランチャ、ヘリコプターをチャーターするのにいくらかかると思ってんだ?マイヘリがあるならまだしも」
「んだよミスタ、言ってみただけだっつーの。ガチツッコミすんなよ」
そんなこんな言いながら前回承太郎とジョセフの矢を見つけた辺りまでやって来た。
「あなたたち、東方仗助の矢を探しに来たの?」
いきなりそう言う声が聞こえた。
「誰だ?」
「ならこっちへいらっしゃい」
謎の声は一つの洞窟から聞こえていた。
警戒しながらそこへ入ると一人の女性が一本の矢を持っていた。
「それは…仗助の矢!」
「そう。これは東方仗助の矢。一昨日ここで殺された」
「殺された?DIOの部下にか」
「東方仗助は一昨日ここに空条承太郎の名を使って呼び出された。そしてDIOの為に矢を回収しようとしたジョンガリAとエンペラーに殺された」
「なら矢は何故アンタが持ってんだ?ていうかアンタ誰だよ」
「わたしは静・ジョースター。そして矢を守れたのはわたしのスタンド、アクトン・ベイビーの能力のおかげ」
まるでニュースキャスターのようにすらすら喋る静。
「アンタもジョースター家の人間なのか」
「違うわ。わたしはジョセフおじいちゃんが拾って育ててくれた言わば養子なだけ。わたしがここで死んでも矢にはならないわ」
「オレたちがその矢を求めてここへやって来たことを知っているのか?」
静と同じようなテンションのブチャラティ。
「えぇ。ジョナサン、ジョセフおじいちゃん、承太郎の矢がDIOに奪われた今、残る矢はこの一本だけだもの」
「そこまで知っていたのか、なら話が早い。今からその矢でオレたちを貫いてくれ。時間がないんだ、トリッシュの話ではまもなくDIOの部下のヴァニラ・アイスがここへやって来る。奴はおそらくスタンド使いだ、今のオレたちでは到底敵わないからな」
「矢で貫くのか⁉︎」
今までスタンドが身につくとテンションの上がっていたナランチャだったが、そこはさすがに引っかかった。
「言ってなかったか?矢でスタンド能力を得るには本来弓で射抜かれるもの、だがそれが出来ないから貫くんだよ」
「全然一言も言ってねーよ!何ブチャラティ、おまえここに来て天然爆発か⁉︎」
普段はどちらかといえばツッコまれる方のナランチャが珍しくビシッとツッコんだ。
「そんなに不安ならまずオレがやろう。見ていれば分かる」
「今日はこんなのも用意したわ」
静はそう言ってタロットカードを取り出した。
「これは?」
「スタンド能力が生まれた後にこのタロットカードを引けば自分に目覚めたスタンドがどんなものなのかが分かるようになっているの。ジョセフおじいちゃんがハーミットパープルの念写力を使って開発したものよ」
「それはありがたいものだ。それじゃあ改めて言おう。オレの身体を矢で貫いてくれ」
第13話完。
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第14話「スタンド能力」
東方仗助の矢を持っていた静・ジョースターに頼み、スタンド能力を得るために自分たちの身体を貫くようにと言ったブチャラティ。
ナランチャたちが不安気に見守る中、一番最初に貫いてくれと言った。
「それじゃあ改めて言おう。オレの身体を矢で貫いてくれ」
そして静がブチャラティの身体を矢で貫いた。軽く刺しただけなのに矢はスラリと貫通した。
「………何か不思議な力を感じる。これがスタンドなのか…」
その時ジョルノには見えていた。ブチャラティの背後のスタンドが。
「それじゃあこのタロットカードを引いて頂戴」
ブチャラティが引いたカードには何も書かれておらず白紙だった。
しかし脳内に情報が流れ込んできた。
スタンド名はスティッキィ・フィンガーズ。
【破壊力 - A / スピード - A / 射程距離 - E / 持続力 - D / 精密動作性 - C / 成長性 - D】
(ジッパーが体に付いた人型のスタンドで殴った物体にジッパーを取り付けて物体を切断・接着したり、開いたジッパーの中に空間を作ることができる。他人の体にジッパーを付けて内部に隠れたり腕の途中をジッパーで開いてパンチの飛距離を伸ばしたり地面をジッパーで開いて相手と距離を取ったり傷をジッパーで閉めて出血を止めるなどの応用も可能)
「ここまで詳しく教えてくれるのか。スティッキィ・フィンガーズ…コレがオレのスタンド……」
「さぁ次は誰?」
「お、オレが行くぜ!」
誰よりもスタンド能力を欲してナランチャ。
少しビビっている様子だが静に矢で貫かれた。
そしてブチャラティと同じように矢が身体を貫通した。
「おぉっ!何だか分からねーけどパワーアップした気がするぜ!」
「タロットカードを引いて」
ナランチャが引いたカードにも何も書かれていなかったが、脳内に情報が流れ込んできた。
スタンド名はエアロスミス。
【破壊力 - B / スピード - B / 射程距離 - B / 持続力 - C / 精密動作性 - E / 成長性 - C】
「おぉっ!この戦闘機みたいなデザイン!まさしくオレ好みだぜ!」
「お次は誰?」
「じゃあ4番目は嫌だからオレが行かせてもらうかな」
4をとにかく嫌う男ミスタ。
同じように静に矢で貫かれて貫通した。
「さっきブチャラティもナランチャも何言ってんだと思ってたが、今なら分かる!この感覚か!」
「タロットカードを引いて」
ミスタが引いたタロットカードにも当然何も書かれてはいないが、脳内に情報が流れ込んできた。
スタンド名はセックス・ピストルズ。
【破壊力 - E / スピード - C / 射程距離 - 弾丸の距離次第 / 持続力 - A / 精密動作性 - A / 成長性 - B】
「弾丸にとりついて軌道を操れるスタンドか。まさしくオレ好みだな。それにNo.4がいないってところも完璧だ」
「さぁお次はだぁれ?」
「オレが行こう」
未だにジョルノの完全には認めていない男アバッキオ。
同じように静に矢で貫かれて貫通。
「タロットカードを引いて」
もちろんタロットカードには何も書かれていないが、脳内に情報が流れ込んでくる。
スタンド名はムーディー・ブルース。
【破壊力 - C / スピード - C / 射程距離 - A(再生中のみ) / 持続力 - A / 精密動作性 - C / 成長性 - C】
「戦闘向きとは言えないが中々のスタンドだ。悪くない」
「最後はあなたね」
「そうなりますね」
チーム一冷静な男フーゴ。
同じように静に矢で貫かれて貫通。
さすがに冷静に対処し黙ってタロットカードを引く。
もちろん何も書いていないが、脳内に情報が流れ込んでくる。
スタンド名はパープル・ヘイズ。
破壊力 - A / スピード - B / 射程距離 - C / 持続力 - E / 精密動作性 - E / 成長性 - B】
「実にぼくらしいスタンドだ。協調性がまるでありませんね」
「これで全員にスタンド能力が身についたな」
「でもその矢はどうするんだいブチャラティ」
「私が持っているわ」
ブチャラティはどうこう言う前に静が言った。
「えっ?なんでだ?オレたちはこの矢を回収する為に来たんだろ?」
「私のスタンドアクトン・ベイビーならこの矢を透明にすることが出来る。そして私自身も。だから矢が敵に奪われることは決してないわ」
「良いんですかブチャラティ」
「オレたちの目的は矢を回収することではない」
いきなりブチャラティはそう言い出した。
「はぁ?違うのか?」
「正確にはDIOに矢を手に入れさせないということ、その為にオレたちが持っているより安全だと言うのならばそっちにするべきだ」
ブチャラティのその言葉を聞いて納得したのか誰も反論はしなかった。
「決まりね。この矢は必ずDIOには渡さないわ。安心して」
「だったらオレたちがここに長居しない方が良い。行くぞ」
「また何時間も歩くのかよ〜」
ナランチャはまたごねていたが、ブチャラティたちは早々に山を降りて行った。また何時間もかけて。
「これで大丈夫。矢が悪しき者の手に渡ることはない」
静が念のために透明になろうとした瞬間、背後に何かの気配を感じた。
しかし振り返っても何もいない。
「気のせいだったのかしら……」
「気のせいではない。わたしがおまえから矢を奪いに来たのだ」
第14話完。
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第15話「ジャン=ピエール・ポルナレフとホル・ホース」
「気のせいだったのかしら……」
「気のせいではない。わたしがおまえから矢を奪いに来たのだ」
すると何もなかった場所に突如闇の空間が現れて、そこから化け物のようなスタンドと一人の男が現れた。
「こ、これは…早く透明にならなければ……」
しかし時既に遅く、次の瞬間には静の右腕だけが残され、他は全て亜空間へと消えてしまっていた。
そしてその右腕には東方仗助の矢が握られている。
「DIO様、4本目の矢を手に入れました。すぐに戻ります」
その頃イタリアのとある喫茶店では。
未だ進展のないポルナレフとホル・ホースが情報交換をする為に集まっていた。
「ポルナレフ、オレの方には良い情報が入ってるぜ」
「本当か?イタリアに来て数日経つが未だ進展がねーからな」
「とうとうDIOが蘇ったらしい」
「何だと⁉︎」
ポルナレフが周りの客に睨まれるぐらいのボリュームで叫んだ。
「あぁマジだ。DIOの居場所までは分からねーが、奴の部下なら見つけたぜ。コイツらだ」
そう言ってホル・ホースは写真を数枚見せた。
「奴らもスタンド使いだが、おめぇのシルバー・チャリオッツの敵ではないだろうぜ」
「コイツがDIOの手下……レギーネ・アバッキオとグイード・ミスタ……ぶっ殺してDIOの居場所を吐かせてやらねーとな」
数時間かけてブチャラティたちはようやくアジトへと戻ってきた。
「なぁブチャラティ!さっそくスタンドを試してみようぜ!」
山ではあれほどごねていたナランチャだが、実のところ誰よりもスタンドにテンションが上がっている。
「試すなら外でやれよナランチャ。オレもついでに試すかな。セックス・ピストルズとやらを」
「だったらミスタのサバゲーフィールドに行こうぜ!あそこなら暴れても大丈夫だしな!」
そうは言っているナランチャだが、既にスタンドを出していた。
「うわっ凄ぇ!ホントに目で見えない位置で二酸化炭素で位置が分かる!あのタロットカードで言ってた通りだぜ!」
ハイテンションのナランチャと、やれやれと言いながらも実はテンション上がっているミスタはサバゲーフィールドへと走って行った。
「アバッキオとフーゴ、おまえたちもスタンドを試してこいよ」
ブチャラティがそう言うとアバッキオは二人についていったが、フーゴは行こうとはしなかった。
「どうしたフーゴ、行かないのか?」
「ぼくのスタンドは練習なんか出来ませんよ。みんな死んでしまいますから」
タロットカードでスタンド能力を知れるのは本人だけなので、他のみんなは自分以外がどんなスタンドなのかは分からないのである。
「そうか。なら仕方ないな」
それが分かっているブチャラティはそれ以上何も追求しなかった。
「ブチャラティ…肩に痛みが来たよ……もしかしてこれは……」
「⁉︎……あぁ。静・ジョースターが敵に襲われたみたいだな……完全にオレの判断ミスだった…」
「どうかしたんですか?二人とも。静・ジョースターが敵に襲われたとどうして分かるんですか」
何も知らないフーゴに三人には言わないようにと念を押した上で話した。
ジョルノがDIOの息子であることと、ジョースター家の血を受け継いでいることを。
「だから分かるんだ、DIOが矢を手に入れて体内に吸収した時に肩のアザに痛みが走る。既にDIOは4本の矢を手に入れている」
「でもDIOが矢を手に入れてようとしているのならジョルノ、キミを殺しに来るんじゃないのか?」
「オレもそれは考えた。だがDIOが先に殺しに行くとしたら恐らくこっちだろう」
ブチャラティはそう言うと一枚の写真を見せた。そこには一人の女の子が写っている。
「この子は?」
「空条徐倫。空条承太郎の一人娘だ」
その頃サバゲーフィールドでスタンドを試していたアバッキオの前に一人の男が突然現れた。
「誰だおまえ、オレに何か用か?」
「オレの名はジャン=ピエール・ポルナレフ。レギーネ・アバッキオだな、貴様を殺しに来たぜ」
「おまえまさかブチャラティの言ってた…良いだろう。受けて立つ」
アバッキオはポルナレフがDIOの部下だと思い、逆に始末してやろうとしていた。
「てめぇもスタンド使いらしいが、オレのシルバー・チャリオッツの敵じゃねーぜ」
「⁉︎……コイツもスタンド使いか。だが予想の範囲内だ」
だがこの時アバッキオは気付いていなかった。いくら自身の腕っぷしが強いからと言って自身のスタンドは戦闘タイプではないことを。そして対するポルナレフのチャリオッツはバリバリの戦闘タイプだということも。
スタンドはスタンドでしか倒せない……このルールをスタンド初心者のアバッキオは知らなかった。
気がつくとムーディー・ブルースがチャリオッツの剣に腹を貫かれていた。
無論スタンドがそんな状態では本体も同じ状態になる。
「ば、バカな……このオレがこんなにあっさりと……」
「20年前にDIOの部下とは山ほど戦ってきたが、ここまで自分のスタンドの扱い方が下手な奴は見たことがねーぜ。てめぇ生まれついてのスタンド使いではないみたいだな」
そんなポルナレフの声が徐々に遠くなっていくのを感じていた。
「すまんブチャラティ……どうやらオレはここまでのようだ……」
第15話完。
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第16話「シルバー・チャリオッツとエンペラー」
時を少し遡りアバッキオがポルナレフと出会っていた時。
同じくサバゲーフィールドでスタンドの練習をしていたミスタの前にも一人の男が現れていた。
「おまえ誰だ?まさかDIOの手下か!」
「待て待て、その逆だぜ。オレはDIOを討つ為に同志を探しているのさ。そしてアンタと同じスタンド使いだ」
その男は手に拳銃を突然出してみせた。どうやらこの銃自体がスタンドらしい。
「それで、名前は?」
「オレはホル・ホースってんだ。さっき変な生き物を5、6体出していただろ。アレを見てアンタをスタンド使いだと思って近付いたってわけだ」
「銃のスタンドか……」
ミスタはホル・ホースよりもそのスタンドに興味津々だった。自分のスタンドセックス・ピストルズは大まかに言えばピストルズに銃の弾を操らせるものだが、ホル・ホースのスタンドは銃自体がスタンドなのだ。
するとその時大きな物音が辺りに響いた。
「な、なんだ⁉︎ あの方向はアバッキオが練習していた場所…まさか敵襲か!」
急いでミスタはアバッキオの下へと向かった。
丁度その頃チャリオッツにムーディー・ブルースが突き刺さたところだった。
「あ、アバッキオ!」
「待て、奴のスタンドシルバー・チャリオッツは素早い。間合いに入られたらオレたちのスタンドでは勝ち目はねぇ」
「アバッキオが殺られてんだぞ!黙って見てろってのか!」
「だったらアンタと組む土産に奴の命をくれてやるぜ。暗殺こそオレのスタンドの独壇場よ」
アバッキオが血を流してその場に倒れ、ポルナレフが
「20年前にDIOの部下とは山ほど戦ってきたが、ここまで自分のスタンドの扱い方が下手な奴は見たことがねーぜ。てめぇ生まれついてのスタンド使いではないみたいだな」と言った直後に腰辺りを何発も撃たれた。
「なっ…誰だ⁉︎」
薄れゆく意識の中、ポルナレフには一瞬見えた。ホル・ホースがこちらに銃口を向けていたのを。
「ホル・ホース…やはりてめぇDIOの……」
「アバッキオ!しっかりしろ!」
ミスタがアバッキオに駆け寄る。しかしチャリオッツの剣は心臓を突き刺していた。
「ちくしょう!もっと早くオレが駆けつけていれば……」
「それは無理だぜ?何故ならポルナレフにアバッキオを殺させる為にアンタをオレが引き寄せていたんだからよ」
「なっおまえ!」
ホル・ホースが銃口をミスタにこめかみにつけた。
「DIOを討とうしていたポルナレフをけしかけてアバッキオを殺されたのはオレだ。アバッキオのスタンド能力はいろいろと厄介だったからな。No.1よりNo.2! それがオレのモットーでな。しんどい仕事はNo.1の奴がやればいいのさ、オレはそのサポートに回るだけだ」
「この野郎……おまえはDIOの部下か!」
「どうだろうな。冥土の土産に教えてやるぜ、静・ジョースターの言っていた東方仗助の殺したエンペラーってのはオレのことだ。このオレのスタンドがエンペラーってんだ。そして共に暗殺したジョンガリAはオレが殺した、奴はオレがサポートするNo.1の器じゃなかった。そしてミスタ、アンタもな」
「セックス・ピストルズ!」
「遅いぜ!言っただろう、近距離の暗殺こそエンペラーの独壇場だとな!」
ホル・ホースはエンペラーでミスタの頭を撃ち抜いた。
「後ここにいるのはナランチャ・ギルガか…だが奴は生かしておくか。ポルナレフはこの二人と同士討ちになったと衝撃する奴が必要だからな。 No.1よりNo.2! やっぱりこういうことは楽しいねぇ!」
そして一人まだサバゲーフィールドで練習していたナランチャ。
「そろそろ日が暮れて来たな、そろそろ帰るか。おーい!ミスタ!アバッキオ!」
二人の名を呼ぶも返事はない。
「アイツらオレを置いて先に帰りやがったのか?それともまだやってんのかよ。ったく、おーい帰るぞ!」
軽い気持ちでやってきたナランチャの目に飛び込んで来たのは腹から血を流して倒れているアバッキオと、頭から血を流して倒れているミスタの二人だった。
「うわっあぁぁぁぁ!!」
ナランチャは頭がパニックになった。自分の前で今何が起こっているのかが全く理解出来なかったのだ。
自分たちはスタンドの練習の為にここへ来たはず……それなのに……必死に冷静に考えようとはしたが無理だった。
こんな状況で冷静になれる筈もない。
「ブ、ブチャラティを呼ばないと!ブチャラティー!」
考えるのが嫌になったナランチャはアジトへと走った。助けを求めに。
一方そんなことなど知る由もないアジトに残る三人は、ジョースター家の最後の人物空条徐倫に接触する為に作戦を練っていた。
「空条徐倫がどこにいるかは分からないのかい?」
「あぁ、そこまではな。オレは矢のことを調べる為にジョースター家の家系図を調べていただけに過ぎない」
「ならコレからどうしたら……」
すると血相を変えたナランチャが飛び込んで来た。
「どうしたんだナランチャ、練習はもう終わったのか」
「ち、違うんだ!アバッキオとミスタが……誰かに殺されたんだよ!」
第16話完。
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第17話「仲間の屍を乗り越えて」
行方不明の空条徐倫に接触する方法を考えていたジョルノとブチャラティのところにナランチャが血相を変えで現れ
「アバッキオとミスタが……誰かに殺されたんだよ!」と突然言い出した。
「なっ……」
ジョルノとフーゴは言葉に詰まった。
「落ち着けナランチャ、何があったんだ」
ただ一人ブチャラティだけは冷静だった。心の中では動揺している筈だが、それを押し隠していた。
「とにかく来てくれよ!」
ナランチャについていくとそこには無惨な姿で倒れるアバッキオとミスタが。
「まさかDIOの部下に……」
「空条徐倫の前にジョルノを始末しに来たということでしょうか……」
「敵は二人いる。アバッキオを殺した奴とミスタを殺した奴は別の人間だ」
ここでも一人冷静なブチャラティが言った。
「どういうことだブチャラティ」
「アバッキオは剣のようなものでひと突きされているが、ミスタはおそらく銃殺だ。脳を一発で撃ち抜かれている」
「ど、どうすんだよブチャラティ!」
「とにかく今は二人を埋蔵してやろう。話はそれからだ」
そう言うとブチャラティはその場を去った。
ジョルノは思っていた。冷静に振舞っているが、心は誰よりも穏やかではない筈だ。
だがチームを率いるリーダーとして冷静でいなければならないと思っていると。
「ブチャラティ……」
その日は二人を埋蔵し、誰も口を利かないまま終わった。
次の日。
アジトのパソコンに一通のメールが入っていた。
[キミたちに教えたいことがある。しかし私は動くことが出来ない。ローマのコロッセオに来てくれ。そこで待つ。我が名はJPP」
「誰なんですかコレは?JPPとは」
「コロッセオに行くぞ。おそらくメールの差出人はアバッキオとミスタの死の真相を知っている」
「ホントかいブチャラティ、何故そう言える?」
「このJPPという人物に心当たりがあるからだ」
そうは言ったものの、結局ブチャラティはそれが誰かを言わなかった。
ジョルノ、ナランチャ、フーゴの三人は黙ってついて行った。
電車を乗り継ぐこと数時間。
コロッセオへと辿り着いた。
「ここに誰がいるってんだブチャラティ、いい加減教えてくれよ」
「オレも会うのは初めてだ。だが前から知っている」
すると向こうから車椅子の男がこちらへ向かってきた。
「よく来たなてめぇら。わざわざここまで来させて悪いが、あいにくオレは下半身不全の身でな。SPW財団の医師に治療してもらって一命は取り止めたが足はもう動かない。今もおまえらに会う為に病院を抜け出して来たぐらいだからな」
「それでアンタは誰なんだよ!ブチャラティは知ってるみたいだけどオレは全く分からねーぞ?」
「オレはジャン=ピエール・ポルナレフ。おまえらと同じくDIOを追う者だ」
何とそこにいたのはホル・ホースに殺された筈のポルナレフだったのだ。
「さっそくだが時間がない。オレがSPW財団の追っ手に見つかる前に用件は全て伝える。矢を追っているのはDIOだけじゃねぇ」
「なんだって?」
「エンペラーの暗示のスタンド使いホル・ホース。奴の目的は不明だが、奴もどうやら矢を探しているらしい」
ホル・ホースの名に聞き覚えがなかったが、エンペラーの方にはあった。
静・ジョースターの話していた東方仗助を暗殺した男である。
「オレが聞きたいのはそんなことじゃない」
今まで黙っていたブチャラティが突然口を開いた。
「アバッキオを殺したのはアンタだな」
「「「えっ?……」」」
三人が揃って驚いた。病院を抜け出してまで自分たちに情報を与えてくれた人がアバッキオを殺した?……と。
「おそらくミスタの殺した銃使いがそのエンペラーのホル・ホースで、アバッキオを殺した剣使いがアンタなんだろう」
「あぁ…アバッキオはオレが殺した……」
ポルナレフはあっさりと認めた。
「ちょっと待てよ!じゃあアンタは何でオレたちの前にのこのこ現れてんだよ!」
「オレはホル・ホースにまんまと騙されのさ…情けない話だがな」
「どういうことですか?」
「ホル・ホースが共にDIOを討とうと言い出しオレはそれを承諾した。人数が多いに越したことはないからな。そして奴が手に入れた情報というのが、アバッキオとミスタがDIOの部下……というものだった。だからオレはアバッキオを殺した。それは事実だ」
ジョルノやナランチャは何も言えなかった。ポルナレフ個人を攻めるのは見当違いだが、かといって親しく話すのも違う気がする。
「なるほどな。パッショーネのボスに成り代わったDIOの部下か…あながち間違っていないのかもしれない。アンタにオレたちの素性を調べられたとしても言い訳は出来ないわけだ。トリッシュ以外の人間は前のボスの顔を知らない。だから前からボスがDIOだと言っても不信に思う者はいないだろう……はっ!」
ブチャラティが何か思い出したかのようなリアクションをした。
「どうしたんだいブチャラティ?」
「そうだ…前のボスの顔を知っているただ一人の人物……トリッシュをDIOもホル・ホースも生かしておく理由はない、むしろ始末したい対象の筈だ」
「そ、そんな……」
第17話完。
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第18話「ポルナレフとヴァニラ・アイス 因縁の戦い」
トリッシュがDIOやホル・ホースの標的になる可能性が高いと考えたブチャラティは急いでアジトに残して来たトリッシュに連絡をとった。
「トリッシュか、何も変わったことは起きていないか?」
『どうしたの突然。別に何もないわよ?』
「分かった。なら良いんだ」
「ブチャラティ、でもいつDIOの部下がやって来るか…」
「分かっている。すぐに戻るぞ」
ブチャラティたちはトリッシュを守る為にアジトへと戻った。
「奴ら仲間を殺したオレを放置とは…甘ちゃんだぜ。昔のオレなら仲間を殺した相手には例え刺しちがえてでも殺そうと向かって行ったがな……」
ポルナレフはしばらくコロッセオの前にいたが、日が暮れると車椅子でその場を離れようとした。
すると「ポルナレフ…久しぶりだな。DIO様には貴様を殺すようには言われていないが、私が一番殺したかったのは貴様だポルナレフ」といきなり背後から声が聞こえた。
急いで振り返ると黒い空間から飛び出したスタンドとその口の中にいる男だった。
「て、てめぇは…何故ここに居る……まさかてめぇもDIOと同じように蘇ったとでも言うのかよ……ヴァニラ・アイス!」
「DIO様が私をもう一度生き返らせてくださったのだ。DIO様は誰よりも私を信頼してくださっている。邪魔になるゴミは片付けなければならん!そしてポルナレフ、貴様は私個人が一番殺してやりたかったのだ!」
「20年も前のことをいつまでもダラダラ言ってんじゃねーぜ。てめぇら吸血鬼には短い時でも人間にしたら長いんだよ」
余裕の態度とるポルナレフだったが、内心はかなり焦っていた。
確かに22年前のDIOとの戦いでポルナレフはヴァニラ・アイスを倒した。
それは太陽の下に出られない吸血鬼で、それを本人が自覚していなかったという自体だったからである。
だが今は本人が吸血鬼の弱点を理解し、夜になってから現れた。さらにホル・ホースに下半身不全にされたこの身体で勝てるのか…と。
「ポルナレフよ、私もバカではない。20年前に何故貴様に敗北したのかが分かる。それはDIO様の砂を攻撃させたあの犬のせいで冷静さを失っていたからだ。だが今の私は違う。冷静に貴様を殺すことだけを考えている」
「チッ、だったらやってみやがれ!またオレのシルバー・チャリオッツをしゃぶらせてやるぜ!」
するとヴァニラ・アイスは本体とスタンドの暗黒空間に引っ込めてそのまま突撃してきた。
ポルナレフは間一髪避けたのだが、すぐに気付いた。ヴァニラ・アイスの狙いに。
そう。その狙いは車椅子を潰すことだったのだ。車椅子の右輪を亜空間に飲み込み、ポルナレフを転倒させた。
「ちくしょう…このままじゃやられる!」
「ポルナレフ、これで貴様も暗黒空間に飲み込んでくれる!」
「このドグサレがァァ!シルバー・チャリオッツ!!」
次の瞬間ポルナレフの姿はなかった。肩輪が無くなった車椅子だけが倒れているだけだった。
「早く夜が明ける前にDIO様の言っていた奴を殺しに行かねば……」
「ヴァニラ・アイス…トリッシュ・ウナという女を殺して来い」
DIOは突然ヴァニラ・アイスを呼ぶとその一言だけを告げた?
「その女はいったいどのような女なのでしょう…」
この夜にポルナレフを殺しに行こうと決めていたヴァニラ・アイスはそこまで警戒すべき相手なのかを確かめたかった。
「この女は前のボスの娘だ。だからこのDIOがここのボスでないことを知っていて、私とおまえのことを誰かに教えている。これ以上いらぬことを言いふらされる前に殺しておきたいのだ。出来るな?ヴァニラ・アイス」
「当然でございます」
「トリッシュ・ウナ…ブローノ・ブチャラティという幹部のところにいるということは分かっている。だとすればDIO様のおっしゃっていた情報を漏らした相手はそのブチャラティ一味か。まとめて殺さねばならんな」
ヴァニラ・アイスは日が昇る前に終わらせる為に急いでブチャラティのアジトを目指した。
一方そのブチャラティたちはアジトへと戻ってきていた。
「ねぇブチャラティ、どうしたの?昼間の電話は。何かあったの?」
「あぁ…この際だからハッキリ言うが、おそらくDIOは自分と前のボスの状態を知っているキミを殺すつもりだろう」
「やっぱり…そうなのね……」
「だがオレたちがキミを守る。その為に戻って来たんだ」
「ブチャラティ……」
とはいえ敵がいつ来るかどんな奴なのかブチャラティたちには分からない。名前がヴァニラ・アイスということだけはトリッシュの証言から分かっているが、どんなスタンドを持っているのかは全く分からない。
アジトの上空にナランチャのエアロスミスを飛ばして、外から来る敵を探知している。
「どっからでも来やがれ!オレのエアロスミスは二酸化炭素を探知する!例え相手がDIOのような吸血鬼だろうと呼吸はする!二酸化炭素からは逃げられないぜ!」
すると突然アジトの壁に丸い穴が開き、何かが中へと入ってきた。
「ば、バカな!エアロスミスには何の反応もなかったぜ⁉︎」
そして突如化け物のようなスタンドとその口の中に男が現れた。
第18話完。
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第19話「ヴァニラ・アイスの脅威」
突然アジトの壁に丸い穴が開き、何かが中へと入ってきた。
「ば、バカな!エアロスミスには何の反応もなかったぜ⁉︎」
そして突如化け物のようなスタンドとその口の中に男が現れた。
「ブローノ・ブチャラティ、ジョルノ・ジョバァーナ、ナランチャ・ギルガ、パンナコッタ・フーゴ……ということはそこの女がトリッシュ・ウナか。DIO様の命により貴様らを殺す」
「コイツがヴァニラ・アイス…でもどうしてナランチャのエアロスミスに反応させずにここまで来たんだ」
ジョルノの疑問に余裕があるからかヴァニラ・アイスはあっさりと答えた。
「私のスタンドは暗黒空間に繋がっている。私と私のスタンド以外の物が触れれば命はない。そして私自身が暗黒空間に入っていれば誰にも探知されることは決してない」
「なるほど、その能力で静・ジョースターを殺して矢を奪ったわけか」
「私はDIO様のご命令通りに動く!DIO様がそうしろとおっしゃるのなら何でもやるのが私の生きる目的!」
「イカれた忠誠心ですね……」
冷静な男フーゴは思わずツッコんでいた。
「だがこのヴァニラ・アイスのスタンド…厄介であることには変わらないぞブチャラティ」
「あぁ、それに昼間トリッシュが一人の時ではなく今やって来たこと考えるとおそらく奴もDIOと同じ吸血鬼だ。吸血鬼を倒すには頭を粉々にするか太陽光を浴びせるしかない。だが奴を攻撃出来るのは今のように暗黒空間から顔を出している時だけだ」
さすがはもう一人の冷静男ブチャラティ。この短期間でヴァニラ・アイスのことを見抜いていた。
「フーゴ、おまえは下がっていろ。おまえの毒では奴は殺せない。それ以外の人間が死ぬだけだ」
「ちょっと待ってくださいブチャラティ、何故ぼくのスタンドのことを知っているんですか?」
静のタロットカードからスタンドのことを聞いたのは自分一人の筈。そしてナランチャたちとは違い、スタンドをまだ出したこともない。
なのに何故ブチャラティは自分のスタンドのことを知っているのか。
フーゴは不思議でならなかったが、ブチャラティはその問いには答えなかった。
「一人ずつ順番に消してやろう。誰から消されるのか…それを知る術は貴様らにはない」
「だったらこっちに来い!オレが相手してやるぜ!」
そう言ったのはナランチャだった。アジトから出てすぐ前の外に立っていた。
「待てナランチャ!」
「大丈夫だぜブチャラティ、例え暗黒空間だろうとオレのエアロスミスからは逃げられはしねーぜ!それにオレはおまえのスタンドの弱点も分かったからな!」
そう言うとナランチャはエアロスミスを自分の上空に飛ばした。
「良いだろう。まずは貴様から消してやろう!」
ヴァニラ・アイスはスタンドごと暗黒空間に入った。すると姿は全く見えなくなった。
それを確認してナランチャはエアロスミスの弾丸を乱射し、自分はひたすら猛ダッシュした。
ヴァニラ・アイスの姿は見えないが、ナランチャが飲み込まれる様子もない。
しばらくするとヴァニラ・アイスがスタンドと共に暗黒空間から顔を出した。
その一瞬を狙い、エアロスミスの弾丸が発射され全弾がヴァニラ・アイスを直撃した。
「なっ何ィ⁉︎」
「おまえの弱点は暗黒空間に潜ったら周りが見えねーってことだ!それにちょっとでも顔を暗黒空間から出しちまえばオレのエアロスミスは探知出来るんだぜ!だからわざわざ広い屋外にやって来たんだ!オレの作戦勝ちだな!」
「フッ…この程度でこのヴァニラ・アイスに勝ったつもりかァ!」
そう言ったヴァニラ・アイスは弾丸が何発も貫通し血だらけだったが、ピンピンしていた。
「やはり奴は吸血鬼だったか」
「吸血鬼だろがなんだろうがオレのエアロスミスには勝てねーぜ!」
ヴァニラ・アイスが再び暗黒空間に入った。対するナランチャも再びエアロスミスを飛ばして弾丸を撃ちまくり、自身は走り回った。
「ほらほらほらほら!今オレがどこにいるか分かんねーだろ!暗黒空間から顔出して確認してみろ!」
だがいつまでたってもヴァニラ・アイスは顔を出さない。そしてナランチャも飲み込まれてはいない。
「気をつけろナランチャ!ヴァニラ・アイスは何か企んでいるぞ!」
「大丈夫だってブチャラティ、心配すんな!エアロスミス、奴をよーく探すんだ」
エアロスミスは飛び回るのをやめて弾丸を撃ちまくっていた。
「待てよ…まさか奴はコレを狙って……ナランチャ!エアロスミスを動かせ!奴はおまえを狙っているんじゃない、スタンドの方を飲み込もうしているんだ!」
「えっ?エアロスミスを?」
しかしブチャラティが気付くのが一歩遅く、次の瞬間エアロスミスが暗黒空間に飲み込まれた。
そしてナランチャは魂が抜けたように白眼になってその場に倒れた。
「ナランチャ!」
「ダメだ…スタンドを暗黒空間に飲み込まれたら本体が飲み込まれたのと同じ……」
「まずは一人。中々に頭の良い奴だったがこのヴァニラ・アイスの前では無力。私に勝てる者はこの世にDIO様ただ一人だ!貴様らなんぞには負けん」
第19話完。
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第20話「ブローノ・ブチャラティ VS ヴァニラ・アイス」
突如現れたヴァニラ・アイスはエアロスミスを暗黒空間に飲み込み、ナランチャを殺害してしまった。
「次に私の暗黒空間に飲み込まれるのは誰だ?」
「自分のチームがここまでやられて黙っているわけにはいかないな」
とうとうブチャラティが戦線に出た。
「ブチャラティ、大丈夫なのか?」
「この男を倒せばおそらく敵はDIOだけだ。おまえはそれまで温存しておけ」
「ブローノ・ブチャラティか。ならば次は貴様を暗黒空間に飲み込んでやろう」
「やれるものならやってみろ」
するとブチャラティはスタンドを出した。そして地面にジッパーを出してその中へと消えた。
「コレが奴のスタンド能力か。だがこのヴァニラ・アイスの前では無力だ!」
そしてまた暗黒空間へと消えてそのジッパーの穴の中へと飛び込んだ。
しばらくすると地面に丸い形の穴がいくつも空いた。ヴァニラ・アイスが通った後である。
そして暗黒空間から顔を出した。
「バカな…奴は何処へ消えたのだ……あのジッパーは空間を捻じ曲げられるとでも言うのか?」
するとヴァニラ・アイスの身体に突如ジッパーが現れ、そこから手が出てきて頭を殴り飛ばした。
「な、なんだ……吐き気がする…身体がフラつく……何が起こっているのだ……」
今の一撃で脳を破壊され、苦しむヴァニラ・アイス。それよりも何が起こったのかが分からなかった。
するとさっきのジッパーから出てきたのはブチャラティだった。
「貴様…まさか私の身体の中にいたのか……」
「あぁそうだ。最初のジッパーはおまえの気をひくための囮、実際はそのスキにおまえの身体へと潜り込んだ。暗黒空間に唯一入ることを許されているおまえの体内なら避けられると思っていたが、どうやら当たっていたようだな」
「ぐっ……」
ヴァニラ・アイスはすぐに反撃に出ようとしたが、思うように身体が動かない。
「いくら不死身の吸血鬼でも頭を砕かれたら苦しいようだな。だがこの程度で済ませるつもりはない。日の出までおまえを殺せずとも再起不能にさせることぐらいはオレにも出来る」
「何だと……」
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリーベェデルチ!」
ブチャラティのラッシュを受けてヴァニラ・アイスの頭は粉々になり、やがて動かなくなった。
「やった…のか?」
「まだコイツは生きている。脳を破壊されて再起不能になっただけだ。日の光を浴びせて消滅させるまで油断は出来ない」
数時間後。太陽が昇りヴァニラ・アイスの身体は灰となった。
そしてナランチャもアバッキオやミスタと同じく供養した。
「ジョルノ、フーゴ、もうオレは後手に回るつもりはない。今からDIOを討ちに行くつもりだ。おまえたちはどうだ」
「当然だブチャラティ!ぼくもDIOを討つ!その覚悟は出来ている!」
「ぼくもですよブチャラティ。ぼくのスタンドではDIOを倒すことは出来ない。でもここで指をくわえて見ているのは嫌ですからね」
ブチャラティにジョルノとフーゴも付いて行った。そして必ずDIOを討つと誓った。ここに眠る三人の為にも。
そしてその頃……。
「ヴァニラ・アイスが死んだか……。このDIOを二度も失望させてくれるとはな。だが私の為に馬車馬のように動いてくれるのは奴ぐらいしかいなかった。そして我が息子ジョルノ・ジョバァーナはここへやって来る。私を殺す為に。良いだろう、私に刃向かった褒美にこのDIOが自らを手を下してやろう」
ブチャラティたちはトリッシュをアジトへ残し、DIOのいるパッショーネの本部へと向かっていた。
「本当にDIOの部下はヴァニラ・アイス以外いないのかいブチャラティ」
「あぁおそらくな。DIOはヴァニラ・アイスは昼間動けないのを知っている筈だ。もし他に部下がいるのならその誰かにトリッシュを始末しに行かせるのが普通だろう」
「確かに……」
「おい待ちな。おまえらDIOと戦いに行くつもりか?」
するとそこにホル・ホースが立ち塞がった。
「おまえがエンペラーのホル・ホースか。オレたちと戦うつもりか?」
「冗談。オレはおまえらの仲間を殺したポルナレフの仇をとってやったんだぜ?まぁ奴は下半身不全になっただけであの場を生きてやがったがよ。結局ヴァニラ・アイスに殺されてやがったがな」
ここで三人は気付く。ホル・ホースの言い分がポルナレフの言っていたことと食い違っていることを。
「ポルナレフがおまえたちに何て吹き込んだのかは知らねーが、アイツの言っていたことは全部ウソだぜ。奴はDIOを倒す為におまえらを利用しようとしていただけだ」
「だったら真実はどうなんだ?」
「ポルナレフの方から組もうと言って来たんだ、そしてそれを承諾した。おまえらの仲間のミスタをエンペラーを射殺しろと命じたのも奴だ。自分はアバッキオを殺るからおまえはそっちを殺れってな」
「それを信じろという根拠は?」
冷静な男ブチャラティはホル・ホースの口車にも冷静に対処している。
「おまえらにDIOのスタンド、ザ・ワールドの能力を教えてやるぜ」
第20話完。
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第21話「ジョースターの血とブランドーの血」
DIOのところへ向かおうとするブチャラティたちの前に現れたホル・ホース。その目的とは。
「おまえらにDIOのスタンド、ザ・ワールドの能力を教えてやるぜ」
「し、知っているのか!」
これにはブチャラティよりジョルノが食いついた。
「当然だ。オレはDIOのことは20年前から知っている。実際に奴の時を止めるスタンドの片鱗を見たことがあるが、オレのエンペラーじゃ到底敵わなかった。おまえらのスタンドでも敵うかどうかは分からねーぜ。まぁこの話も信じねーと言われたらオレにもう打つ手はねーがな」
ホル・ホースはそう言いながらタバコに火をつけた。
「最後に一つだけ聞きたい、何故それをオレたちに教えたんだ。アンタはDIOの部下と共に東方仗助を暗殺したと聞いた、それにDIOを倒そうとしていたポルナレフを逆に襲った。アンタは何がしたいんだ」
「オレのモットーはNo.1よりNo.2でな。より強い奴の下につくんだ。それはポルナレフでもDIOでもねぇ。ただそれだけの話だぜ」
ブチャラティたちはホル・ホースと分かれて改めて本部を目指す。
「ブチャラティ、アイツの言ったことを信じるのか?」
「ポルナレフとホル・ホース、どちらが本当のことを言っているのかはこの際どうでも良い。だがオレはホル・ホースがDIOのスタンドのことだけは嘘を言っているとは思えない。おそらく奴は自分が勝てないからオレたちにDIOを倒させようとしているのだろう。だとしたら嘘を教えるメリットはない」
「アイツかDIOの部下という可能性は?」
「さっきも言っただろう。仮にホル・ホースがDIOの手下ならトリッシュを殺しに行かせる筈だ。ヴァニラ・アイスのスタンドより奴のエンペラーの方が遥かに暗殺に向いているだろうしな」
そんな話をしながら本部に辿り着いた。
ブチャラティたちもパッショーネの人間なので本部に入るのは容易い。
後はボスがDIOになったことすら知らない無能な親衛隊の目を掻い潜り、ボスの部屋へ。
しかし中には誰もいなかった。
「DIOは何処に言ったんだ?」
「……DIOは自らオレたちと戦おうとしている。だとしたら……おそらくあそこだ」
「分かったんですか?居場所が」
「DIOはジョルノをあの場所で殺す気なんだ。5本目の矢を手に入れる為に」
「てことはまさか…」
「あぁそのまさかだ。ジョースターの魂が眠る聖なる山。DIOは必ずそこにいる」
ブチャラティたちはDIOを追って三度聖なる山へと向かった。
車で数時間。さらにそこから徒歩で数時間。ただし今回は誰もごねる者はいない。全員黙々と登って行く。
そして日が暮れたころ洞窟がいっぱいあるエリアまで辿り着いた。
「夜になってしまったか…DIOはコレも狙っていたのだろうな」
「やっと来たか。5本目よ」
声がした方向を見ると、山の上だというのに何故か椅子に座っている男…DIOがいた。
「このDIOの身体はジョナサン・ジョースターのもの。そしてそこから産まれしおまえにもジョースターの血が受け継がれている。すなわちおまえをここで殺せば矢になる筈だ」
「それはぼくも同じだDIO! ぼくはおまえを倒す為にここに来た!」
ジョルノとDIO…奇妙な親子の戦いが今始まる。
するとDIOがいきなりその場から消えた。
「き、消えた!何処に行ったんだ?」
「おまえたちのスタンドがどんなものなのかは全て知っている。おまえたちのスタンドではこのDIOに勝つのは不可能だ」
「なに⁉︎」
何とDIOは三人の真後ろにいたのだ。誰もDIOが移動するところなど見てはいない。
「こ、これがDIOのザ・ワールド……時を止められる能力……」
「ほぉ、知っているのか。このDIOのスタンドを。だが知っているからと言って何になるというのだ。おまえたちがこのDIOの時の止まった世界に入門することは出来ん」
「くっ…どうしたら……」
「ジョルノ、オレに考えがある」
焦るジョルノとは対照的に冷静な男ブチャラティはDIOに対抗する策を思いついていた。
「本当なのかブチャラティ」
「あぁ。ザ・ワールドの世界に入れるの奴だけだというのなら、いけるかもしれない」
「分かった、君を信じよう。それでぼくは何をしたら良いんだ?」
「DIOの気を引いてくれれば良い。オレを奴の視界から外してくれ」
「それぐらいならぼくにでも出来ますよね」
今まで黙っていたフーゴだが、戦わずにはいられなかった。
「フーゴ、おまえも頼む」
ブチャラティの合図でジョルノとフーゴが共にスタンドで殴りかかった。
「何をするつもりだ、無駄無駄無駄無駄ァ!」
すると次の瞬間ジョルノがDIOのスタンド、ザ・ワールドに殴り飛ばされていた。
「何をしたかったのか知らんがこのDIOに攻撃出来ると思ったか……ん?」
ここでDIOは気付いた。殴り飛ばしたジョルノの他にはフーゴ一人しかいないことを。
「フッ…ブローノ・ブチャラティ…このDIOの体内に隠れたな?無駄無駄無駄無駄ァ!!」
するとDIOは自らのスタンドで何と自分の身体に大穴を空けた。
そしてそのザ・ワールドの拳はDIOの体内に潜んでいたブチャラティをも貫いていた。
第21話完。
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第22話「ジョルノ・ジョバァーナ VS DIO」
「フッ…ブローノ・ブチャラティ…このDIOの体内に隠れたな?無駄無駄無駄無駄ァ!!」
するとDIOは自らのスタンドで何と自分の身体に大穴を空けた。
そしてそのザ・ワールドの拳はDIOの体内に潜んでいたブチャラティをも貫いていた。
「なっなに………」
「このDIOの体内に入ればザ・ワールドの間でも動けると考えたのか。だがこのDIOは不死身!身体を壊しても何ともないのだよ!死ぬのはおまえだけだブチャラティ!」
そしてさらにDIOは傷を回復させる為にブチャラティから血を抜き取った。
「ブチャラティ!」
殴り飛ばされていたジョルノが駆け寄った時には既にブチャラティは身体に穴が開けられた上に血が吸い取られていた。
「ブチャラティ……」
「ジョルノ……自分を信じろ。おまえはDIOの息子だ…おまえなら必ずあの止まった時の世界に入門出来る筈だ……ジョースターの血を…ジョルノ・ジョバァーナを信じろ……」
既にブチャラティの肉体は死んでいる筈だが、ジョルノにはブチャラティの声が聞こえていた。
「ブチャラティ……キミの思い受け取った」
その瞬間ジョルノの目つきが変わった。
「フーゴ、キミは離れていてくれ。DIOはぼくがこの手で倒す」
「分かった……」
ジョルノのこれまでに無い迫力にフーゴが何も言えなかった。
「URYYYYYYYYY!!!」
夜空に向かって突然ジョルノが叫んだ。それを見てフーゴは思う。
ブチャラティの死に直面し、それに対する怒りと悲しみがジョルノという人間を変えてしまったのだと。
ジョースターという誇り高き血を受け継いでいたジョルノ・ジョバァーナはもうそこにはいない。
そこにいるのは邪悪な吸血鬼DIOの血を受け継いだジョルノ・ジョバァーナだった。
「URYYYYY!! DIO、必ずおまえはぼくがこの手で殺す!」
「フッ…仲間を殺された怒りでこのDIOに向かって来るのか……こざかしい!オレを怒らせただの…そんな戯言は聞き飽きたのだ!URYYYY!!
ジョルノとDIOは互いにURYYYという雄叫びをあげる。
「ジョルノ・ジョバァーナ、おまえには手加減などせん。このDIOのスタンド能力をもってたった一度の時間停止で殺すと予言しよう」
「やってみろ。だったらぼくは何度おまえが時を止めようとぼくを殺すことは出来ないと予言しよう。ぼくのスタンドゴールド・エクスペリエンスがおまえを脳を破壊すると!」
「無駄無駄無駄ァ!おまえのスタンドがこのDIOに触れることはない!ザ・ワールド!時を止まれぇい!」
そしてDIO以外のもの全ての時が止まった。
「20年前はジョセフの血を吸っても止められる時間は9秒が限界だった…だが4本の矢を手に入れたことで今では15秒も止めていられる。そしてジョルノ・ジョバァーナ、おまえも殺して5本目の矢を手に入れるぞ!」
DIOは15秒という時間をたっぷりと使い、ゆっくりジョルノに近付いてザ・ワールドでブチャラティのように身体に風穴を開けてやろうとした。
しかし次の瞬間ジョルノのスタンドであるゴールド・エクスペリエンスが突然DIOに殴りかかって来たのだ。
「な、何ィ⁉︎」
ザ・ワールドの方が瞬発力は優れていた為、間一髪避けることは出来たがDIOはそれよりもジョルノが動けたこと自体に驚いていた。
「バ、バカなっ……承太郎の時とは違いジョルノのスタンドは時を司るものではない筈だ……このDIOの世界に入って来られる筈がない……」
そうこう考えている間に15秒が経過してしまった。
「チッ、時は動き出す」
ザ・ワールドの時止めが終了し、時が動き出した。
「どうしたDIO、ぼくを殺すんじゃなかったのか?」
「ジョルノ…何故我が止まった時の中で動けるのだ!」
「さぁ?ぼくがおまえの息子だからじゃないのか?」
なんとあのDIOを空気で圧倒しているジョルノ。やはりただ者ではなかったと改めてフーゴは思っていた。
「くっ……だがそれでこのDIOに勝ったとおもうな!」
DIOは時を止めずにザ・ワールドで攻撃してきた。
対するジョルノもゴールド・エクスペリエンスで対抗する。
「「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!」」
両者の強烈な無駄無駄ラッシュの打ち合いに。
しかしスタンド自体のスピードやパワーは僅かにザ・ワールドが上回っており、DIOがジョルノを殴り飛ばした。
「くっ……」
「これで分かったぞジョルノ!例えおまえがザ・ワールドで時の止まった世界で動けたとしてもこのDIOに勝つことは不可能!何も迷うことはない!今度こそ予言しよう、次にこのDIOが時を止めて動き出した時にはすでにおまえは屍になっていると!」
ここで再びDIOに形勢が逆転したかと思いきや
「だったらDIO、ぼくもまた予言しよう。次におまえが時を止めて動き出した時には既にぼくに敗北していると」
ジョルノもまだ余裕たっぷりの態度を崩してはいない。
「URYYYYYYYYYYYYYYY!! ならば始末してやろう。ザ・ワールド!時よ止まれぇい!」
第22話完。
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最終話「黄金の遺産」
「URYYYYYYYYYYYYYYY!! ならば始末してやろう。ザ・ワールド!時よ止まれぇい!」
DIOがそう叫んで時を止めた。ジョルノが動けるのはほんの2秒のみ。
現在DIOは15秒時を止めていられるので13秒はDIOの独断場ということになる。
「ジョルノ、今おまえは動くタイミングを伺っているな。だがそんな考えなど貧弱貧弱ゥ!このDIOが自分のスタンドの射程距離の短さを考えていないとでも思ったのか!」
そういったDIOが取り出したのは無数のナイフだった。
「青褪めたな…おまえはもう 詰み(チェックメイト) にハマったのだ!死ねぇいジョルノ!」
しかし次の瞬間、ジョルノに投げた筈の無数のナイフが消え去り何故か自分の手元に戻って来ていた。
「な、何だ……確かにジョルノにナイフを投げた筈だ……」
その後何度投げてもナイフは元に戻っている。
「ジョルノ…まさかおまえのスタンド能力なのか……だがジョルノのスタンドは生命を産み出すだけのスタンドの筈だ…こんなことが出来るわけがない!」
そうこうしている間に時を止めてから13秒が経過しようとしていた。
「ハッ!しまった……」
ジョルノはこの時を待っていた。最初の1秒でDIOに接近すると、残りの1秒でゴールド・エクスペリエンスを叩き込んだ。
そして15秒が経過し時は動き出した。
するとジョルノがラッシュでDIOを殴っている絵がフーゴに飛び込んできた。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄etc…」
ジョルノはこの程度のラッシュでDIOが死なないことは分かっている。
DIOを倒すには太陽光を浴びせるか脳を粉々にするしかない。
ジョルノは後者で倒すために、そして反撃のチャンスすらを与えない為にひたすらDIOを殴り続けた。
そして…陽が昇り始めた。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」
ジョルノが太陽に向かってDIOを殴り飛ばした。
「な、何ィ⁉︎ このDIOがまたしてもジョースターの血を継ぐ者にィィ!!」
DIOは太陽光を浴びて消滅する……筈だった。
しかし身体が溶けるような感覚こそ味わえどDIOの身体が消えることはなかった。
そしてまだ気が確かなうちにDIOは気付いた。ジョルノのスタンド、ゴールド・エクスペリエンスの容姿が大きく変わっていることに。
「まさか…奴のスタンドもレクイエム化したのか……」
そう。ジョルノ本人は全くの無自覚だったが、ゴールド・エクスペリエンスはレクイエム化していたのだ。
自身の心に眠る5本目の矢がそうさせたのかどうか不明だが、ゴールド・E・レクイエムによってDIOは敗れたのだ。
ジョルノに対する攻撃は『ゼロ』に戻されDIO自身が死ぬということもまた戻されてしまう為、DIOは不死身と言わんばかりに死ぬことすら出来なくなってしまったのだ。
永 例え陽が沈もうとも永遠に太陽光の苦しみを味わい続けることになる。
やがてDIOは気が遠くなり、二度と我に帰ることはなかった。
やっとDIOを倒したジョルノだったが、心は晴れやかではない。
「すまないブチャラティ…ぼくがもっと早くDIOを倒せていれば……」
失ったものが多すぎた。チームで生き残れたのはジョルノとフーゴの二人だけなのだから。
「ぼくがパッショーネのボスになる…」
ブチャラティの遺体を埋蔵した直後にジョルノはフーゴに言った。
「本気なんですか?」
「ブチャラティの意思をぼくは継ぐ。彼はパッショーネという組織が好きだった。だから気に入らないボスなら反抗したんだと思う。だからぼくはブチャラティの為にパッショーネを良くしていく」
ジョルノの決意にフーゴはそれ以上何も言わなかった。黙って見ていることにした。
ジョルノがボスになって半年。
DIOは死ぬことすら出来ない定めだが、やがて聖なる山に5本の矢が出現した。
その報せを受けてジョルノとフーゴはまた聖なる山に向かった。
そこには報せ通り5本の矢があった。
ジョナサン・ジョースター、ジョセフ・ジョースター、空条承太郎、東方仗助の4人を入れても1本余る。
「コレは一体誰の矢なんですか…」
「たぶんDIO自身のものだ」
「DIOの?」
「あぁ。DIOの首から下はジョナサン・ジョースターのものだ。そして奴は首と身体が馴染んだと言っていた。だからここで死んだ奴から矢が生まれたのかもしれない」
「それて矢はどうするんですか?」
「この矢が全ての引き金だった。フーゴたちがスタンド能力を身につけたのも、そしてそもそもDIOが蘇ったのもこの矢のせいだった……だから矢は封印した方が良い、誰も手の届かない場所に永遠に。そしてぼくは二度とここへは来ない」
「どうしてですか?」
「ジョースター家の者が死を覚悟した時にこの山を訪れる。そのせいで矢が生まれてしまった。だがぼくはジョースターの血が流れていようとDIOの息子だ。そんな運命には従わない。だからもう二度と新しい矢は生まれることはなくなる……」
ジョルノとフーゴは矢を持って山を降りた。
そしてパッショーネの本部の中の地下深くにあるシェルターの中に隠した。
矢のことを知っているのはパッショーネの中ではジョルノとフーゴだけ。
つまり矢が取り出されることはないであろう……。
最終話完。
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