蓮は泥より出でて泥に染まらず (時雨ちゃん)
しおりを挟む

第1話

こんにちは。那由多遥と言います。

今回が初めての作品です。小説自体書くのは初です。
手探りで書いていきますのでどうぞよろしくお願いします。

ある曲を聴いていてどうしても書きたくなってしまい、書いてしまいました。

至らぬ部分等多々あるとおもいますがどうぞ暇つぶし程度の感覚で気軽にお読みください。

原作は買ってありますが他のが溜まっており未読。
アニメは一期二期共に視聴済み。


蓮の花というのは綺麗な水の場所ではあまり大きく咲かず、

水が汚れているほど綺麗に大きく花を咲かせるという。

 

人に例えるならば苦く辛い経験をすればするほどに大きく成長するという事だ。仏教やヒンドゥー教、様々な宗教にも深く関わっているような不思議な花なんだそうだ。

この話を知ってから俺は少し考えるようになった。

俺は昔黒歴史やなんやら色々あって今ぼっちをやっている。

その黒歴史は所謂苦く辛い経験だと思う。ならば俺は蓮の花のようにそれを糧にして大きく成長出来ているんだろうか。

わからない。

奉仕部に入る前と入った直後よりも、確かに少しは自分でも変化してきているんじゃないかと感じる部分はある。

一体どうなんだろうか。誰も正解を教えてくれない。

 

 

その答えを俺は今探し続けている。

 

 

 

 

「………んっ……」

 

今日も今日とて学校がある。時計をみると俺は早めに目が覚めてしまったようだ。

まだあと50分は寝れるじゃねぇか。

よし、寝よう、そしてこのまま夕方まで寝て学校サボってしまいたいまである。

……やめておこう、そんなことしたら我が部の部長、雪の女王に氷漬けにされちまう。

クソ、起きるか。たまにはね、うん、早くてもいいじゃない。

てかこの時間なら親いんじゃねぇの?

 

のっそのっそと布団から出て冷えきった床に足をつける。

 

「っ冷たい……。」

 

まだ2月下旬だしな、仕方ないね。

扉を開けて廊下にでて階段を降りリビングへ向かう。

すると丁度リビングから出てきた母ちゃんと鉢合わせた。

 

「あら、おはよう、珍しいこともあるもんね。どしたの?。」

 

「おはよう。特に理由なんかねぇーよ。たまたま早く目ぇ冷めちゃったんだよ。」

 

「ほーん。」

 

特に興味なさげに母ちゃん返事してますけど聞いてきたのあなただからね?

てか実の母親が興味なさげとか八幡カナシイ。

まぁもう慣れてるけど。

 

「いつも通りだと思ってたから朝ごはん作ってないわよ?」

「いいよ別に、小町の分と俺の今から作っから。親父は?」

 

「お父さんならもう10分前ぐらいに行ったわ。

私ももう行くところなのよ。」

 

「んー、了解。」

 

この時間で親父もういないのか、素晴らしい社畜LIFEですね。

養っていただいてありがとうございます。

すると母ちゃんは鞄を掛け直し玄関へ向かう。

 

「それじゃ行ってきます。」

 

「うぃー」

 

玄関が開いた音がして、続いて閉まる音がする。

それ以降は時計の秒針の音だけがリビングに響いていた。

 

トイレに行き部屋に戻って着替えて洗面を済ませたあとリビングに戻り、棚からコップを取り出して机の上に出してあるミネラルウォーターを汲み、一気に飲み干す。

昨日の就寝前にコーヒーを飲んでから水分を補給していない体に少しぬるめの水が染み渡る。

 

朝飯は簡単でいいだろう。

コンロにフライパンを置き火をつける。

 

フライパンが十分にあったまった後、油を敷く。

冷蔵庫から取り出しておいた卵2つを割り、蓋をする。

本当はハムエッグにしたかったのだがハムがなかったんだよ。許せ小町。

 

だから今日は目玉焼きを食パンにのせて食おうと思っている。

朝飯なんてこんなもんだ。え、こんなもんだよね?

卵を焼いてる間に食パンを二枚トースターにぶち込んでおく。

 

 

「うし、完成。」

 

蓋を取り火を止める。そして焼きあがっていたパンにのせる。

あとは小町を起こし…ん?

 

「おー、カマクラおはよう。飯もらったかー?」

 

足に我が家の愛猫カマクラがすり寄ってきていた。

これは飯貰ってないな。いつも小町が起きてからあげてるしな、ちょっと早くてもいいだろう。

 

「よーし、ちょっと待ってろ。」

 

カマクラの飯を皿に入れてやると早速食べるのに夢中になっていた。

もうちょっとなんか構ってくれよ。なんてな。悲しくなんてないんだからな!ほんとだぞ!

 

「………小町起こしてくっか。」

 

本来小町は今はもう卒業を待つだけなのだが、今日はその卒業式の練習なんだそうだ。

あったなそういえばそんなのも。あれぼっちには辛いんだよ。

全校生徒とその保護者に見られながら名前呼ばれて返事すんの。

しかも練習では声が小さいとやり直しをさせられるという鬼畜っぷりだ。3回ぐらいやり直しさせられて、周りからの冷たい視線を受けたことは内緒な。

 

少し早いかなとも思ったがまぁいいだろう。

リビングを出て階段を上がって小町の部屋をノックする。

 

「小町ー、朝だぞー、今日学校だろー起きてるかー。」

 

…….。寝てるな。

 

「小町ー?入るぞー?。」

 

一応断りを入れて扉を開ける。

この前急に呼びながら入ったら

「もー!お兄ちゃんいきなり開けるとかびっくりするじゃん!それは小町的にポイント低い!」

とか言われてしまったのだ。

年頃の女の子って難しいね。

 

「小町ー、……あれ。」

 

部屋には小町の姿はなかった。

もう起きてんのか、洗面所かな?

 

すると後ろから

 

「お兄ちゃーん?もう起きてんの?珍しいねぇ」

 

と聞こえてきた。振り向いてみても姿はないから多分下から俺の声を聞いて声をかけてきたのだろう。

 

「おー、小町起きてたか。」

階段を下りながら声をかける。

 

「うん、ちょっと早めに目が覚めてね!おはようお兄ちゃん!」

 

と天使の笑顔で挨拶してくる。

うんかわいい。あざとい後輩の倍はかわいい。目に入れても大丈夫っ!

頭の中で何言ってんだ俺は。

 

「朝飯できてるから、早く食おうぜ。」

 

「え、お兄ちゃんが作ったの!?それ小町的にポイントたっかい!」

 

「うん、パン焼いて卵焼いてのせただけだけどな。はやく着替えてこい。」

 

「えー、無反応とかポイント低いよ。ま、いいや。オッケー♪」

 

っとタッタと階段を駆け上がっていく。

朝から元気だなー。

受験も終わり余裕が出てきているのだろう。

小町は無事に総武高に合格できた。

かなりギリギリだって自分で言ってたから正直ヒヤヒヤしていたが安心した。

兄としては受験前のデリケートな時期が終わって嬉しい限りである。

 

 

朝飯を食べ終えた俺達は今コーヒーを飲みながらソファに座りながら小町と一緒に朝のニュースを見ている。

 

「最近物騒だねー。」

 

今やっているのは東京で起きた殺人事件のニュースだ。

小町の言う通り最近確かにこの手の話題が多い気がする。

 

「確かに多いな、小町、気をつけるんだぞ。何かあったらすぐにお兄ちゃんに電話しなさい。」

 

「いやいや、まずは警察でしょ。」

 

ですよね、そうですよね。もし通り魔とかに小町が襲われて、電話掛かってきても俺勝てる気しないもん。

でも俺が盾になって何としても小町だけは逃すけどね。

 

「お兄ちゃんこそ気をつけてよね。」

 

「なんだ小町心配してくれてるのか?お兄ちゃん嬉しいぞ。」

 

「その目のせいで犯人に間違われないようにね。」

 

「……あー、そっちね。…うん、なんかわかってたよ。」

 

そこまで俺の目は腐ってるのか……。

 

「あ、小町どうする?ちょっと早いけどもう学校行くか?」

 

「うーん、そうだね、行こっか。」

 

「後ろ乗るだろ?」

 

小町は「うん!」とだけ言って鞄を取りに行った。

俺は持って降りていたのでテレビを消して小町が置いていった空のマグカップと自分のコップを軽く水洗いして中に水を溜めシンクに置いた後玄関へ向かい靴を履いて外に出た。

 

ビューーーーーー

 

「ーーーーーっ!さっむ!」

 

これは予想以上だ。マフラーとかしていったほうがいいかもしれない。

玄関を開けて叫ぶ。

 

「小町ーー!今日寒いからマフラーとかいるかもだぞ」

 

「んーオッケー!」

俺はー…いいや。取りに戻るのめんどい。

自転車に向かい鍵を開ける。

そして跨ろうとした時玄関が開き小町が出てくる。

 

「はいお兄ちゃんこれ。」

 

なんと小町が俺のマフラーを持ってきてくれていた。

なんてできた妹だろう。さすが小町だ。

小町に礼を言い鞄とマフラーを受け取りカゴに入れ小町が後ろに跨る。

 

俺がマフラーを巻いていると

「よーし!それじゃぁレッツゴー!!」

と、いつものように小町が元気よく宣言していた。

 

今週もあと2日だ。

今日も1日乗り切りますかね。

 

「しっかり掴まってろよ。」

 

「うん、事故らないでね?」

 

「大丈夫だ。今日は小町が乗ってるしな。」

 

「乗ってなかったら事故るんだね………。」

 

2月下旬の冷え切った風が顔を突き刺す。

この感覚はほぼ毎日味わっているのにいつになっても慣れない。

背中は小町がくっついているので暖かい。

その小町はというと「ひやーーーーっ!」とか言いながら寒がっている。

後ろでもやっぱり寒いみたいだ。スカートだしな。

俺いっつも思うんだけど女子ってあれ寒くないの?

タイツとか履いてるみたいだけどあんなのほとんど意味ないんじゃないの?

男の俺には一生解けないであろう疑問であった。

 

そうこうしているうちに小町の中学に着いた。

ヤダなぁ、背中あったかいのになぁ。

 

「小町ー、ついたぞ、降りろ。」

 

「うーん!ありがとお兄ちゃん!」

 

パッと飛び降りる小町

そこにほいっと鞄を差し出す。

 

小町は「ありがと。またねー!」と言って友達を見つけたのだろう。数人のグループめがけておはよー!と走っていった。

 

 

さて、俺も行きますかね。

 

……背中寒いなー。

 

「つっても俺ももうすぐで終業式か。」

 

そう、終業式。春休みを迎え入れる素晴らしい儀式なのだ。

はよ!春休みはよ!

あーでも由比ヶ浜とか

 

「ゆきのん!みんなで遊びにいかない!?」

 

とかいってうるさいんだろうな。

で、雪ノ下は由比ヶ浜に甘いから、一回二回断るけどそのあと絶対陥落させられるのは目に見えている。

ということは俺も強制的に行くことになるんだろう。

一色もどうせ

 

「せんぱぁーい♪。春休み暇ですよね?そうですよね。入学式の準備とか色々生徒会忙しいんですよぉ〜。手伝ってくれますよね??」

 

うっわ言いそう。超言いそう。

最近はちょっと収まったとは思うが春休みとか手伝わされんだろうなー。

まぁ別にいいんだけど。

春休み確かに予備校あるけどそれ以外は家にいるだろうしな。

………あれ、俺も一色に甘くなってる?

まぁいいか。最近奉仕部+αのあの場所は正直心地いいしな。

あいつらには絶対言わないけど。

 

近々始まる春休みに思考を巡らせていると校門が見えてきた。

そのまま進み駐輪場へ向かう。

 

「あ!せんぱいだ!せんぱーい!」

 

鍵をかけて鞄を取る。

今の時間はいつもより少し早い。

 

「あれ?せーんーぱーい!」

 

教室にはどれぐらい来ているんだろうか。

この時間に来るのははじめてだからな。

 

「せんぱいってば!」

 

早く暖房の効いた教室で突っ伏したい。

ていうかもう帰りたいまであ

「ぐぇ!」

後ろからマフラーを引っ張られた。

 

「なんで無視するんですか!」

 

振り向くとそこにはいつものあざとく頬を膨らました生徒会長がいた。

 

「………なんだよ一色、あとあざとい。」

 

「なんですかいきなりあざといって!ていうかなんだよって知り合いの人見つけたら声かけませんか普通?」

 

「お前らリア充達の普通を俺に押し付けんな。」

 

「む。そんなんだからせんぱいはぼっちなんですよ。」

 

「そんなの今に始まったことじゃないだろ。いいんだよ別に。」

 

「そんなことよりせんぱい。いつもこの時間なんですか?」

 

そんなことって…そんなことっていうならいちいち話題振らないでくれない?

泣いちゃうよ?

 

「いや、今日はたまたま早く起きてな。いつもはもう15分ぐらい遅いぞ。」

 

「へー、そうなんですか。………時間合わせようかな。(ボソッ)」

 

「ん?なんだよ?」

 

「え!なっ!なんでもないです!」

 

おかしいな。なんか言ったと思うんだけどな、聞こえなかったな。

難聴じゃないはずなんだけど……。

 

「それじゃぁせんぱい行きましょう。」

 

「え、なに、一緒に行くの?てか学年違うじゃねぇか。あとお前一人なの?」

 

「はい、今日は一人です。ていうかそんなことどうでもいいんです!一年の階のところまでは一緒なんですから!」

 

「ヤダ、断る。」

 

「えー!なんでですか!こんな可愛らしい後輩と一緒に校内歩けるんですよ!普通二つ返事ですよ!」

 

「だからヤダと断るで二つ返事したじゃねぇか。」

 

「屁理屈言わないでくださいっ!」

 

一色はまた頬を膨らましてプクッとしている。

……クッソ、正直かわいい。

 

「んだよ朝から元気だな。ホント。わぁーたよ、わかったからもう少し静かにしてくれる?目立って恥ずかしいから。」

 

「えっ!なんですかせんぱいっ!もしかして口説いてるんですか?朝から登校中の生徒にイチャイチャを見せつけて俺たちもうここまで言い合える関係なんだぜ?とか言っちゃって彼氏面するつもりですかそうですねちょっとだけちょーとだけいいなぁーって思いましたけどもう少しそういうのは雰囲気作ってからでお願いしますごめんなさいっ!」

 

「ちげぇよ!なんでいつもそうなるんだよ……。」

 

ホントよくそんな長いの言えるな。しかもまた振られたし。後半早口すぎてよくわからんことになってたぞ。

 

「ほら、わかったからもう行くぞ。」

 

「あ!ちょっと!待って下さいよ!」

 

この後結局逃げようとしたところを捕まり袖を引っ張られて連れて行かれた。チクショウ。

 

一色の学年の階で別れたあと俺は自分の教室に向かいステルスヒッキーを発動させて扉を開けた。

暖房がついてしばらく経っているのかものすごい暖気が体を撫でる

……超あったけぇー……。

 

教室にはいつもより少し少ない程度の人数がいた。

その中には由比ヶ浜の姿もある。

 

「あれ!ヒッキー今日早いね、やっはろー!」

 

朝一からおバカ全開の挨拶を交わしてくる。

チッ、見つかった。なんでこいついっつもステルス破ってくるんだよ。

それに俺は「うす。」とだけ返して席に座り、イヤフォンを耳にぶっさして音楽を再生し突っ伏す。

 

 

この後天使がきてすぐにイヤフォンを外したのは言うまでもないな。

 

end




いかがだったでしょうか。

短くて申し訳ありません。
少しでも面白いと思って頂けたなら幸いです。

気になる部分がありましたら教えて下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話

こんにちは。

閲覧ありがとうございます。
駄文ですが楽しんでもらえれば幸いです。


今日も1日放課後まで、特に何もなく終えることができた。

あとは部活だけだ。

 

席からスッと立ち上がり鞄を持ち教室を出て部室へと向かう。

教室を出るときに後ろで何か聞こえた気がしたが気のせいだろう。

あー、寒い、自販機でMAXコーヒー買っていこう。

すると後ろから結構な衝撃がきた。

 

「うぐっ!」

 

振り向くと頬を上気させ、少し肩を上下させた由比ヶ浜がリュックを持って立っていた。

リュックで殴りやがったなこいつ………。

 

「ヒッキーなんで先行くし!待ってって言ったのに。」

 

「い、いや約束してなかったろ?てかそんなこと言ってた?」

 

「言ったし!ヒッキーが教室出るときに結構大きな声で!」

 

出るときに聞こえたのは由比ヶ浜だったのか。

イヤーハチマンワカンナカッタヨ。

 

「それは悪かったな。だが俺は今から大事な用があって行けないんだ、先行ってろ。」

 

「え?用事ってなに?遅くなるの?」

 

「あいつを迎えに行かなきゃいけない。」

 

「え?あいつって誰!…小町ちゃん?…あ…またいろはちゃん?最近行かなくなったと思ってたのにまたいろはちゃんとこ行くの?」

 

「ちげぇよ、MAXコーヒー買いに行くんだよ…。」

 

なんだよ、なんで一色のとこ行くの?ってところちょっと悔しそうなんだよ。

そのちょっとした上目遣いやめろよ、勘違いしちゃうだろ。

 

「なら最初からそういえばいいじゃん……!」

 

あ、ちょっと怒ってる。

なんだよ、冗談だろ?

 

「私も喉乾いたから一緒に行く!」

 

「えー…。はぁ、わぁーたよ、早く行くぞ。」

 

「うんっ!」

 

ったく…なんでそんなに嬉しそうなんだよ。

かわいいじゃねぇか。

 

俺と由比ヶ浜は横に並んで自販機を目指す。

 

自販機で各々飲み物を購入したあと由比ヶ浜が

 

「あ、ゆきのん紅茶いれてくれるんじゃ……」

 

あ、完全に忘れてた、ごめんゆきのん。

 

「まぁもう買っちまったし、飲んでから行くか?」

 

「ううん、あんまり遅くなるとゆきのんかわいそうだよ。」

 

俺的には何がかわいそうなのかよくわからないが確かにこれ以上遅れてしまうと入ったときにどんな罵倒が飛んでくるかわからない。

仕方ない、紅茶は遠慮するか。

 

「ヒッキー早く行こ?」

 

由比ヶ浜が急に手を引っ張ってきた。

え、なにこいつ手ちっちゃいな。

こんなに小さかったのか。

しかもちょっとあったかくてスベスベし……

って、やめて!勘違いしちゃう!

このまま勘違いで告白して、2秒で振られるまである。振られんのかよ。しかも2秒で。

 

「お、おう、わかったから手ぇ離せ。」

 

「あ、ごめん!つい……」

 

ついって。こんなことをついやってしまうのかこの子は。

しかもなんか顔赤いし。

ホント無邪気というかなんというか。

そういう行動が世の男子を勘違いさせるんですよ?

 

「…いっいや、別にいいけど…。」

 

「うん、ありがと。……じゃあ行こっか。」

 

「おう。」

 

そうして俺たちは部室へと向かった。

 

 

部室の扉を由比ヶ浜が勢いよく開ける。

 

「やっはろー!ゆきのーん!」

 

「うっす。」

 

由比ヶ浜に続いて俺も挨拶をする。

すると雪ノ下が読んでいた文庫本から顔をあげてこちらを向き、机に肘を預けていた一色が体を起こした。

 

「こんにちは由比ヶ浜さん、比企谷くん。今日は遅かったのね。」

 

「せんぱい!おそーい!!」

 

ん?あれ?遅くなったから俺に対する罵倒が飛んでくると思ってたんだけど普通だ……。

え、なに逆に怖い。

あ、もしかして俺たちが一緒に来たからクラスのHRが長引いたと思ってる?

それなら仕方ないって思って罵倒しなかったのか?

しかもなんか一色もいるし。なんだよ準レギュラーなの?

 

「ごめんねゆきのん、ヒッキーと飲み物買いに行ってたの。」

 

ちょっと由比ヶ浜さん?なに早速自供してるんですか。せっかく罵倒されなかったのにこれじゃあ罵って下さいって言ってるようなもんじゃねぇか。

 

「あら?そうなの?拉致谷くん。」

 

「ちょっとせんぱいどういうことですか?結衣先輩と二人で自販機行くとか。」

 

「おいちょっと待て、なんで俺が由比ヶ浜を無理やり連れてったみたいになってんだよ。由比ヶ浜からついてくるって言ったんだ。俺は無実だ。あと雪ノ下お前最近谷付ければいいと思ってるだろ。」

 

「そんなこと考えているわけがないじゃない。」

「まあまぁゆきのん、いろはちゃん。今回は私からついて行ったんだ。」

 

おお!由比ヶ浜がフォローしてくれている。

 

「それなら仕方ないわね。」

 

「むぅ…しょうがないですね。」

 

なんでちょっと一色は不満そうなんだよ。

 

「それでは今日は紅茶はいいのかしら。」

 

「うん、ごめんねゆきのん。」

 

「ええ、かまわないわ。」

 

なんで俺の時とこんなに扱いが違うの?ねぇ?

あ、前からでしたね。そうでした。

 

「ていうかおい一色、お前今日はどうしたんだよ。」

 

俺はさっき買ったMAXコーヒーを取り出し、開けて一口飲んでから一色に質問する。

そう、最近は一人で頑張っていると思う。

ここ数週間は受験関係で忙しかったらしく部室に顔を出すのが週1.2回くらいで由比ヶ浜がちょっと寂しそうだった。

それでも普通に来すぎだとは思うが。

 

「あ、そうなんですよ!せんぱい!来週終業式したら春休みじゃないですか?その後すぐに入学式で使う備品を

 

「断る!」

 

「ちょっと!まだ最後まで言ってないじゃないですか!」

 

「どうせあれだろ?その備品買いに行くから付き合えっていうんだろ?荷物持ちだろ?そんなん無理だ。葉山んとこいけ葉山んとこに。」

 

「葉山先輩は部活が忙しくて無理なんですよ!ですからようするに戸部先輩もダメです。だからもう先輩しか頼れないんですよぉ」

 

 

いやいや、いろはす?君も一応サッカー部のマネじゃないのん?

しかも相変わらず戸部の扱い酷いな…。

 

「お前もサッカー部だろうが……。」

 

「私は生徒会があってそっち優先しろって先生に言われてるんですよ!ねぇーぇーせんぱぁい、お願いしますよぉー。」

 

そう言いながら上目遣いで袖を摘みながら揺らしてくる。

クッソ!なんだこれはあざとい!流石いろはすあざとい!…だがこれは…悪くない。くっ…!これは仕方ないな、小町も入学するし、手伝う意味はあるだろう。うん。小町のためだ小町の。

若干2名からの視線が突き刺さってますけど気にしない。

 

「わっわかった!わかったから離せ。」

 

「わー!ほんとですかぁ?ありがとうございまぁす!」

 

パッと一色が手を離す。クソ、こいつわかってても心臓に悪い。

 

「……比企谷くん?」

「……ヒッキー?」

 

俺は悪くない。うん、悪くないんだ。

 

「で、いつまでなんだそれ。」

 

一旦咳払いをしてから一色に質問する。

…さっきから由比ヶ浜が頬を膨らませながらこっちを見ている。なんだそれフグかよ。

雪ノ下はこめかみに手を当てている。

もう諦めたようだ。

 

「えーと、期限はなるべく早くって言われてます。」

 

「ん、了解。でも春休みは予備校とかあるから行けない日もある。」

 

「それじゃあ先輩、春休み連絡取りたいんで、連絡先交換しましょう!」

 

「えー………まぁしゃあねぇか。………ほら。」

 

確かに行くといってしまった以上、連絡を取れないのは面倒臭い。連絡を取らずにバックレる事もできるが別に断る理由もないし……。

俺はポケットからスマホを取り出し一色に渡す。

 

「え、わたしがやるんですか?」

 

「俺やり方わかんねぇもん。頼むわ。」

 

「よくそんな簡単に人に携帯渡しますね………。」

 

「別に見られても困るものなんて入ってないし。」

 

「うわ。せんぱい連絡帳1桁って。」

 

うるせぇ、ほっとけ余計なお世話だ。

だいたい戸塚か小町か由比ヶ浜か戸塚としかメールとかしないし。

 

「はい、せんぱい、登録しましたよ。」

 

「おう、サンキュな。」

 

携帯を見ると☆いろは☆で登録してあった。

由比ヶ浜然り最近の女子高生って☆とか付けるの流行ってんの?

 

「じゃあまた連絡入れますね!それでは私は仕事があるのでこれで失礼しますね。でわでわ〜!」

 

そう言って一色は満足気で部室を出て行った。

 

春休みのパシリは確定だな……。

嫌な予感的中だわ。こういう予感って無駄に当たんだよなぁ。

 

「………あなた、ずいぶん一色さんに甘くなっているんじゃない?」

 

いきなり雪ノ下がそんなことを言ってきた。

 

「いや、別に前からこんなんだろ。」

 

「いーや!ヒッキー前より甘くなってるよ。だって今の連絡先も前なら絶対変なこと言って何回も断ってるもん!」

 

そう言われると確かに……。

これも俺の一つの変化なのだろうか。

丁度いい機会だ。ちょっと考えてみるか。

 

 

俺は一色に甘くなった。

これは俺の変化だと思う。

朝自分でも思ったぐらいだしな。

一色に対しては最初、俺の都合で生徒会長をやらせたみたいなもんだから責任を感じて手伝っていた。それは間違いない。

 

でも最近はどうだろう。あいつは最近俺に頼ることが少なくなり一人で頑張っている。

まぁたまに部室には紅茶飲みに来たり簡単な仕事手伝わされたりしてるけど。

 

俺としては面倒が減っていいんだがやっぱりあいつに頼まれるとさっきのように断りづらい。

これは責任を感じているというのではないような気がする。

俺の中で一色を手伝うことが苦ではなく普通になりつつあるということなのだろか?

やはり一色の言う通り俺は年下には甘いのか?

それか小町と少し被っているからなのかもしれない。

何にせよ俺の中であいつが、あざとい後輩からあざと可愛い後輩に変わっていっているのだろう。

そう思うくらいにはやっぱり俺は変わっていっているのかもしれない。

だがこれが大きく成長しているかと言われれば別だと思う。

蓮の花の話から得たこの疑問は、答えが出るまでまだしばらくかかりそうだ。

 

雪ノ下たちはなにやら楽しそうにしながら時折こちらを気にしているようだった。

 

俺は飲みかけのMAXコーヒーに手を伸ばす。

一体どれくらい考えていたんだろうか。

ホットだったMAXコーヒーはもうすっかり冷め切っていた。

 

 

 

 

end

 

 




更新は早かったり遅かったりすると思います。

今回も短くて申し訳ありません

気になる点ございましたら教えてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話

遅くなりました。続きです。

短くてすいません。


 

本日の部活も終了し、残すは愛しの小町の待つ我が家への帰宅のみになったのだが俺は一つ思い出してしまった。今読んでいるラノベがもうあと3ページで終わってしまうのだ。これはゆゆしき事態である。速やかに次巻を買いに行かなければなるまい。

 

「んじゃぁな。」

 

「うん、バイバイヒッキー!」

 

「さようなら。また明日。」

 

雪ノ下達と昇降口で別れて俺は駐輪場へ向かう。

2月の冷たい風が顔を凍てつかせる。

俺は目から下を全てマフラーに埋めて暖をとる。

うん、これで大分マシになったな。

 

少し歩いて自分の自転車にたどり着く。

ポケットから鍵を取り出して差し込み回す。

こんな一瞬の動作でさえ手がかじかみそうだ。

 

「今日マジで寒いな。」

 

誰に言うでもなくそう呟く。

もうすぐ三月なのが信じられないくらい今日は寒い。朝もやばかったし。

これからもっと寒くなるだろうし今日買いに行くのやめようかな……。

…いや、やっぱり気になる。

 

 

 

 

寒空の下自転車を走らせること20分程度。

俺はいつも来ている本屋に来ていた。

ここはショッピングモールの中にあり、そこそこ大きく大体の本は揃うだろう。

 

早速ラノベのコーナーへ向かい求めている物を探す。

確か…この辺に……あったあった。

レジへ向かう前に持っているラノベの新刊が出ていないかチェックする。

 

特に出てなかったのでレジへ向かい会計を済まし本屋を出る。

 

すると突然どこからか声が聞こえてきた。

 

「あれー!比企谷じゃーん!」

 

こ…この声は……。

少し寒気がして周りを見渡すが知り合いはいない。

 

「おーい!こっちこっち!」

 

声は上のフロアから聞こえてきた。

 

このショッピングモールはかなり大きく俺が今出てきた本屋は三階にある。

この本屋の前は円形状に吹き抜けになっており、各フロアごと交互になるようにエスカレーターが設置され上の階から下の階を見下ろせるようになっている。

この本屋の丁度上の四階フロアから中学の同級生であり、俺の黒歴史を作り上げたうちの一人である折本かおりが見下ろしながら手を振っていた。

 

 

思わず口から「げっ。」と漏れてしまったが折本とは少し離れているので聞こえてないだろう。

これは面倒なことになりそうだ。

早く退散しようとした時折本が

 

「ちょっと待っててー!」

 

とか叫んできた。

周りがちょっとこっち見てるだろ!

やめて恥ずかしいから!

 

俺としては待ってやる義理も理由も特に無いのでエスカレーターに乗り下へ向かう。

ニ階ほど降りたところで肩を掴まれる。

 

「ちょっと!待っててっていったじゃん!」

 

くそ、逃げきれなかったか。

 

「…俺じゃないと思って。」

 

俺は苦し紛れに訳の分からん言い訳をする。

こいつ思いっきり俺の名前呼んでたけどね。

 

「なにそれウケる。私ちゃんと比企谷じゃんっていったよ。」

 

デスよねー。ていうかウケねぇよ。

 

「うぐ…そ、それは悪かったな。」

 

「まぁいいけど。それはそうとこんなところで1人でなにしてんの??」

 

「あ、あぁ。読んでた本が読み終わりそうでな。次の本を買いに。」

 

「そうなんだ!私も漫画の新刊が出たから買いに来たついでにぶらついてたんだ。そろそろ帰ろうと思ってたら比企谷みたいな奴が見えてさ。声かけちゃった。」

 

「いや別に聞いてない。」

 

折本は、つれないなー。とかぼやいている。

俺みたいな奴ってなんだよ。俺みたいな腐った目のやつが他にもいるのか?

いるなら是非話してみたい。

ていうか俺じゃなかったどうしてたんだよ。

まぁ俺だったけどさ。

 

「んでさー比企谷ー。」

 

………この流れはマズイ。

絶対こいつはこの後どこかに誘ってくる。

俺のぼっちスキルがそう言ってる。

 

「せっかく会ったんだしどっかカフェとか軽く入……」

 

「断る。」

 

ほらきた。こいつらの様なトップカースト連中の言いそうなことぐらい予想できる。

 

「えー、別にいいじゃん。暇でしょ。奢るし。」

 

やだよ。なんで今丁度過去についてちょっと思うところがあるのにその一端である奴と茶など飲まなきゃならんのだ。

ここは意地でも断らねば。

 

「い、いやー…俺この後ほら…ア、アレだから。うん。」

 

 

こういう時咄嗟にしっかりした言い訳が思いつかないのはぼっちの嫌なところである。

いくら国語学年3位だろうが出ないものは出ないんだ。

 

「なにそれちょーウケる!アレってなに!アレって!」

 

折本はゲラゲラと腹を抑えて笑っている。

女の子がそんな笑い方するんじゃありません!

 

「いや、ウケねぇから…。」

 

「ふぅーお腹痛いw、ほら比企谷、暇なんでしょ、行くよ!ここにいいカフェあんの!」

 

「え、あっちょ。」

 

マフラーを引っ張られ引き摺られていく。

俺の意見は?拒否権は?

そんなものないんですよねー。わかってました。

 

 

折本に連れてこられたのはなかなか落ち着いた内装のカフェだった。

こいつの事だからもっとこうリア充御用達!みたいなところに連れてかれるのかと思ってた。

少し安心。

 

折本はミルクティー、俺はコーヒーを飲みながら今は折本の愚痴のような物を聞いている。

なんで俺がって?そんなこと知るかよ。

 

愚痴の内容は大体、担任が熱血すぎて流石にウザいとかクラスの事とか玉縄がまたなんか企画したらしく折本が執拗に誘われているとかそんなのだ。

あいつまたなんか考えたのか…。

頼むからウチには絶対持ち込むんじゃねぇぞ。

今度持ち込まれると流石に一色ブチ切れんじゃねぇのか。

 

「まさかこうして比企谷とお茶する時が来るなんてねー。超ウケるw」

 

「………無理やり連れて来といてよく言うな。」

 

こいつとは過去に色々あったとはいえ、葉山との一件やクリスマスイベント、バレンタインを経てそれなりに話せるようになってきている……とは思う。

これもあいつらのおかげなのかもしれない。

……いや、それを言うなら中学の時の黒歴史があったからこそ俺は平塚先生に奉仕部へ入れられあいつらと出会い、一色と出会うことが出来たのだ。

元を辿れば折本達にこそ感謝すべきなのかもしれないな。

 

「……どしたの比企谷?急にキモい笑顔になって。ウケるよw。」

 

「き、きも……。…俺今笑ってたか?」

 

「うん、なんか二ヘラって感じで。」

 

顔に出ていたらしい。

 

「いや、ちょっとな。」

 

「えー!なになに、教えてよ。」

 

「……えーと………いや、やっぱり言わねぇ。」

 

「えっ、ちょっとなにそれ!余計気になんじゃん!」

 

「言わねぇたら言わねぇんだよ。」

 

いきなり礼とか言ったら絶対『なに急にwwwいきなり比企谷から感謝されるとか超ウケるんですけどwwww』とか言われておしまいだ。

折本は、なにそれウケなーい。とか言いながらミルクティーを飲んでいる。

なんでもウケると思ったら大間違いだぞ。

 

するとポケットのスマホが振動する。

ん?誰だ一体。Am◯zonかな?

スマホを取り出して確認する。

ディスプレーには小町の文字。

 

「ん、メール?」

 

「ん?あぁ、妹からな。」

 

「そういや妹いるんだっけ?」

 

「あぁ、二つ下のな。」

 

「ふーん。」

 

適当に返事を返しながらメールを開く。

そこには

 

『お兄ちゃん今どこ?』

 

とだけかかれていた。

 

時間を確認するともう二十時を過ぎていた。

どんだけ話してたんだよ俺たち………。

 

「妹ちゃんなんて?」

 

「今どこだって聞かれたよ。」

 

「あー、結構話してたもんね。」

 

連れてきたのお前だけどな。

小町に軽く説明を書いたメールを返信しスマホをしまう。

 

「そろそろ帰ろっか。」

 

「おう。」

 

俺はすっかり冷えてしまったコーヒーを飲み干し、伝票を持ってレジへ向かう。

折本が奢るって!とかいってきたが奢られる気などない。

俺は養われる気はあるが、施しは受けない主義だ。

 

「いや、いいよ。俺が奢ってやる。クリスマスイベントの時奢ってもらったろ。そのお返しだ。気にすんな。」

 

「いやいや、値段とか全然違うじゃん。」

 

「俺がいいって言ってんだから気にすんなって。」

 

「なにそれ、比企谷のくせに。」

 

え、俺って奢っちゃいけないの?

なんかいわれのない罵倒くらったんだけど。

悲しい。

 

「でもありがと。」

 

………急に素直に礼してくんなよ。調子狂っちゃうだろうが。

 

「…おっ、おう。」

 

思いっきりキョドってしまった。

 

 

ショッピングモールを出て徒歩だというので折本と別れる。

送っていこうかといったが近いから大丈夫とのことらしい。

スマホを取り出し小町に、今から帰る。とだけ送り駐輪場へ歩く。

 

 

俺は自転車に乗り帰路に着く。

夜になり益々寒くなった風が頬を叩く。

自分の体温と相まって肌がヒリヒリする。

あーー、早くコタツに入りたい。

今日の晩飯あったまるものがいいな。鍋とか。

そんなことを考えながらペダルを踏みしめるのだった。

 

 

 

 

しばらくして帰宅した俺は夕食を取り、風呂を済ませて部屋で今日買ってきたラノベを読んでいる。

あ、夕食は鍋じゃなかったです。

 

来月に新刊が出るからそれまでには読み終えてしまいたい。

最初の4ページぐらいを読んだところですぐ横に置いてあるスマホが振動した。

 

画面を確認すると今日連絡先を交換した一色から電話が来ていた。

………無視だな。よし。

スマホをそのまま放置し読書に戻る。

 

無視していればそのうち諦めるだろう。

だがそんな思いも虚しくスマホは鳴り続ける。

……わーったよ、出りゃいいんだろ。

 

本に栞を挟んでスマホを手に取り通話ボタンを押す。

 

「もしも…」

 

『ちょっとせんぱい!なんですぐ出てくれないんですか!』

 

と俺の言葉を遮りいつも通りの元気なあざとい声が耳に響いたのだった。

 

end



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話

今回いろはす出過ぎ。笑




「もしも…」

 

『ちょっとせんぱい!なんですぐ出てくれないんですか!』

 

一色からかかってきた電話に嫌々出るとあざとさMAXのいつもの声で俺の声を遮ってくる。

 

「食い気味にくんな。気が付かなかったんだよ。ホントだよ?」

 

『……ホントだよ?とかなんですかそれキモいです。』

 

「……」

 

ピッ

 

ふん。切ってやった。

なんで俺は急にかかってきた後輩からの電話でのっけからキモがられなくちゃなんねぇんだよ。

自分でもキモかったけどね。キモいんかい。

 

 ♪〜〜。

 

画面には☆いろは☆の文字。

まぁすぐかかってくるよね。

俺はベットから体を起こし胡座で再び電話に出た。

 

『なんで切っちゃうんですか!』

 

「だっていきなり罵倒されたら誰だって切るだろ」

 

『せんぱいが悪いんです、急に変な声でホントだよ?とか言うから。』

 

変な声だと?やめろよそういうの。

リアルなトーンで言うとか傷つくじゃねぇか。

 

「あーはいはい、悪うございました。で、何の用だよ。こんな時間に。」

 

『まぁ、いいです。許してあげます。』

 

一色の言葉に軽く密かに傷ついた俺がさっさと本題に入れや感を全開にして言うと一色は渋々許してくれた。

俺は早く続きを読みたいんだ。

 

『ですねせんぱい。今時間大丈夫ですか?』

 

「……そういうのはかける前にメールとかで聞くものじゃないですかね一色さん。」

 

『だってメール送ってもせんぱい無視するでしょ?』

 

「……そんなことスルワケナイダロ。」

 

ごめん、無視する自信しかない。

くそ、最近の俺の周りはなんなんだ。

俺のこと詳しすぎだろ。小町に至っては俺よりも俺に詳しいまである。

 

『で、大丈夫ですか?』

 

「……あー、今ちょっと忙し

 

『で、大丈夫ですか?』

 

「だからいそ

 

『大丈夫ですか?』

 

「はい。大丈夫です。」

 

ダメだこいつ。何言っても無駄じゃねぇか。選択肢ハイ。かYes。しかねぇじゃん。

無理ゲー。

 

『本当ですかー!ありがとうございますぅー!……まぁせんぱいが暇なのは最初に少し黙ってから……あー、って言った時点でわかりましたしね。』

 

「なんだよそれ。俺のこと詳しすぎだろ。」

 

マジでちょっと恐怖を覚えるレベル。

 

『っ!なっなななんですかそれ口説いてるんですか!お前はもう俺のことなんでも知ってるもんな俺もお前のことなんでも知ってるぜ?的な感じですか!ちょっとやばいですけどまだちょっと早いっていうかもうちょいっていうかとりあえずごめんなさい!』

 

「いや、どう聞いても口説いてないだろ………。」

 

だからなんで告ってもないのに毎回振られんだよ。今日に関して言えば朝と今ので二回振られてるし。しかも今回も後半早口すぎてよくわかんなかったし。

 

「で、早く要件言えよ。」

 

まだなんかブツブツ言ってるが気にせずに言う。

マジで何の用だよ。買い出しか?

 

『あ、はい、すいません。でですねせんぱい!やばいんですよ!』

 

「なにが?」

 

『イベント関係のメールが来たんです海浜の先輩から!』

 

ピッ

 

おっと悪寒がしてつい切ってしまった。

んー、今あいつ誰からって言った?

何浜からって言ったっけ。

よくキコエナカッタナ。

またかかってきたので電話に出る。

 

『もうほんと何なんですか。』

 

「いやすまんすまん。悪寒がしてつい切っちまったんだ。」

 

一色に海浜から連絡が来る。それすなわち生徒会関係。要するに奴と関係するということだ。

 

『せんぱいよりわたしの方が寒気しましたよ!』

 

「だよな、すまん。…で、なんて来たんだ。」

 

『なんかゴールデンウィークを使ってまた何かしないかって玉縄会長が言ってるって。全体の会議は入学式の準備が落ち着いたらでいいから春休みに何人かで集まって話し合おうって言ってる。とも書いてありました。』

 

やはり玉縄か……。

ていうか

 

「ゴールデンウィークって5月じゃねぇか。早すぎだろ。まだ3月にもなってねぇぞ。」

 

『なんかこのあいだのクリスマスイベントの時にせんぱいと雪ノ下先輩にボコボコにされたので今回は時間を十分に取ってリベンジしたいっぽいです。』

 

んだよそれ、もうほんと意識高い系って嫌になる。リベンジとかやめて!俺はともかく雪ノ下には多分またボコボコにされるぞ。クリスマスから時間そんなに空いてないからそんなに変わってないだろうし。

 

ていうか確か今日折本が玉縄がなんかまた企画してしつこく誘われてるとか言ってたな。

で俺、一色今度こそキレんじゃねぇか。とか思ったよな。

 

……フラグだったかぁーー。

 

ここは断らせよう。

 

「いいか一色。」

 

『はい?』

 

「今すぐ断れ。いいな、今すぐだ。」

 

『そりゃあ断りますよ!でも平塚先生に話いってるみたいなんで先生がなんて言うか……』

 

「あの人なら今回は大丈夫だと思うぞ。」

 

『ふぇ?なんでですか?』

 

ふぇ?とかいちいち言うなよあざといな。

え?でいいだろえ?で。

でも電話だとあざとさ半減だな。うん。

なぜかはわからんが。

 

「平塚先生だってクリスマスのことは知ってるだろうし流石に強制はさせないはずだ。クリスマスはあの仏の由比ヶ浜でさえ頭痛そうにしてたからな。」

 

『なるほど。納得です。では明日先生にも断りましたって言っておきます。』

 

「おし、この件は解決だな。もう終わりだな、切るぞ。」

 

『あ!ちょちょ!ちょっと待って下さい!』

 

「なんだよまだあんのか。」

 

『まだというかこっちが本題なんですけど……。』

 

なん……だと…。

今から本題だと!?

くそ、早く続き読みたいのに。

 

「…わかったから早くしろ。」

 

『はい…あ、あのですねせんぱい、今週の日曜空いてますか?空いてますよね?』

 

その比企谷八幡は日曜暇前提なんなの?

まぁ暇なんだけどさ、アニメ見たりラノベ読むだけだし。

 

「いや、その日は溜まってるアニメ見たりとか色々……」

 

『そういうの以外で予定ありませんよね!』

 

「……まぁ、それといって予定はないが。」

 

『本当ですか!やった!』

 

なにがやった!なんですかね。

そういうの勘違いしちゃうからやめてね。

ていうか、こいつ最近葉山のことどうしてんだよ。

 

『じゃあじゃあせんぱい!遊びに……備品の買い出し行きましょうよ!』

 

こいつ今遊びに行こうっていいかけたな。

……はぁーー、しゃーねぇ。ちょっと俺らしくないが。

 

「そんな建前いらねぇよ。買い出しはまだ早いし。遊びに行きたいんだろ?別に構わんぞ。」

 

『……えっ』

 

「なんだよ。」

 

『いや、ちょっと意外だったので……本当にいいんですか?』

 

「あぁ。どうせ雪ノ下達もいるんだろ?」

 

それなら俺に断る権利はない。そう、理由じゃなくて権利。ほんと、なんであいつらには俺の拒否権ないんでしょうかね。

 

『…………ハァーー、どうせそんなことだろうと思ってました。』

 

すると一色は急にテンションが下がったような声になった。

 

『ふ、二人でですよ二人で!私とせんぱいの二人で遊びに。』

 

すると今度は照れたような慌てたような声になった。忙しいやつだな。

ていうか………え?は?二人?

 

「……え?は?二人?」

 

思った言葉がそのまま出てしまった。

 

『はい。』

 

「いや。なんで?」

 

『……せんぱいと遊びいきたいなぁーって思ったからです。…ダメ…ですか?」

 

いやいや、そんな泣きそうな声で言われたら断りづらいじゃねぇか。

こいつは多分狙ってやってる。それはわかってる。でも断りづらい。だって俺も男だもの。

 

「いっいや、ダメとかではないが……お前そういうのは葉山にだな……」

 

そうこいつには葉山がいるはずなのだ。

いくら最近葉山の話をせず奉仕部の方へばかり顔を出していたとしてもそれだけは変わらない……はずだ。

 

 

『 …この際ですから言っておきます。葉山先輩はもう正直どうでもいいです。』

 

……は?え?嘘マジで?

 

「え、マジで?」

 

『はい、マジです。なんか最近は葉山先輩を見てるとイライラするというか…本音で話してくれてる気がしなくてですね。なーんか冷めちゃいました。』

 

なーんかって。

…まぁでもついに一色もわかってしまったか。

 

あいつの生き方は疲れるし、あんな仮面だらけの生活なんかわかる奴にはわかってしまう。

そしてわかってしまったらきっと二択に別れるだろう。一色のように冷めてしまったり嫌いになったりするか、それでもいいからこれまでの関係を続けていくかの二択。

まず気付くやつが少ないみたいだが。

これは葉山の生き方にとってはどうしても付いて回ってくるだろう。

俺と一色はそのうちの前者だったということだ。

 

『ですからせんぱい、もう葉山先輩はいいので気にしないで下さい。』

 

「……おう、わかった。」

 

いつになく真剣な声色。

俺にはわかる。こいつは本当に冷めてしまったのだろう。

葉山のことを話す一色の声からはいつものあざとさは消えていた。

 

だがそれとこれとは別なようで

 

『だからせんぱい!二人で遊びに行きましょう!』

 

すぐにあざとさは戻っていた。

 

「え、いやでも

 

『せんぱい構わんって言ったじゃないですか!」

 

「それはあいつらもいると思ったからでだな…」

 

『そんなのせんぱいが勝手に思ってただけじゃないですか。だからもう取り消せませーん!」

 

「いやおま

 

『異論反論抗議質問口ごたえ言い訳は一切聞きません!』

 

「…………はい、わかりました、もうそれでいいです。」

 

なんで俺年下に敬語なんだろ。

なんかよし!勝った!とか聞こえてるんですが。

いろはす聞こえてますよ。

 

『詳しくはまたメールしますね!ちゃんと見て返してくださいね!』

 

「わかったわかった。終わりか?終わりだな?てか終われ。」

 

『言われなくてもおわりですぅ。でわ!』

 

なんか敬礼してそうな「では!」だな。

流石。こんな小さなところまであざとい。

 

「おう、おやすみ。」

 

『はい、おやすみなさい。また明日ですせんぱい。』

 

一色が切るのを確認して俺もスマホを置く。

あー、長かった。誰かとこんなに長い間電話したのなんか初めてじゃないか?

さて、続きだ。

俺は少し伸びをしつつ胡座の態勢からうつ伏せになりラノベを開く。そして栞を挟んでいたページを開いた。

 

 

 

ラノベにキリのいいところで栞を挟み直し、時計を見るともう日付が変わってからしばらく経ったころだった。

もう寝よう、明日も学校だし。

 

ラノベを鞄にしまい電気を消す。

そのまま布団に入り目を瞑る。

 

俺の耳には置き時計の秒針の音だけが届いているはずなのに、あざとい後輩の声が残っているような気がした。

 

 

 

「はぁーーー、言っちゃったなぁー」

 

わたしは今ベッドの上で枕をこれでもかと抱きしめている。

 

さっきまでずっと耳に当てていた自分のスマホを眺める。

わたしは言ってしまった。葉山先輩にもう興味がないこと。なんの建前もなくせんぱいと遊びたいという純粋な気持ちを。

奉仕部の二人には悪いけどちょっとだけ抜け駆け。だってあの二人全然動かないんだもん。

 

でもほんと、断られそうになった時は泣きそうになった。声震えてたし。

どうせせんぱいはわざととか思ってるんだろうけど。

あの時はせんぱいを言い負かすので必死で訳わかんなかったけど冷静になるとこれって……。

 

「あーーーー!ヤバいヤバいヤバい!恥ずかしいよぉ!!」

 

多分あたし今顔真っ赤だぁ…。

今までどんな男子相手にもこんなに恥ずかしくなったことはない。

電話だってかけるのに一時間くらい悩んじゃったし、お風呂でも最初どんなこと言おうとか考えてたのにせんぱい全然でてくれないんだもん。でも声聞いたらどうでもよくなった。

ほんとあたし、どうなっちゃったんだろ……。

こんなのせんぱいのせいだ。

責任取ってもらわないとね!

 

わたしはベッドでドタバタと悶えた。

結果お母さんに怒られました。

 

寝よう。

日曜楽しみすぎて眠れないとかないよね?

 

 

 

end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

海浜とのイベント回も考えたんですが自分に玉縄の扱いは無理です。笑

今回いろはす視点加えるか悩みました。
別視点は初めてなので不安です。

読んでくださりありがとうございました。
なにかありましたら教えて下さい。

ではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話

今回もいろはす回です。



無事に平日を終えた後の土曜日。

午前中にやるべき勉強を一通り終わらせ、俺はリビングでこの一週間で溜まったアニメを消化中である。

ほんと、心がぴょんぴょんしたりだとか、どんな敵も一発で倒したりだとか、憧れの先輩に姉妹契約申し込んだりだとか、アニメって色々あるよなー。

……あと妙に聞き覚えのある声のするキャラがいる気がするがまぁそれはいいとしよう。

 

あーー、土曜日って最高だな。

なんたって家から出なくていい。小町も今日は午前中から友達と遊びに行ってるし。カラオケに行くんだそうだ。

だから今日は夕方まで一人でゆっくりできる。

 

♪〜〜

 

すると俺のスマホからメッセージを受信した電子音が鳴る。

誰だ一体。俺の休日を邪魔する奴は。

 

 

☆いろは☆

 

 

……お前か。そういや一昨日メールするだのどうのこうのいってやがったな。

んーと

 

『せんぱいこんにちは!わたしですよー!明日のこと忘れてませんよねー?

明日の九時三十分に駅でお願いします!』

 

日曜日の午前中に俺を呼び出すとか遊びたいとかじゃなくて単なる嫌がらせかよ。

……まぁそんなに嫌ではないんだがなんせ二人だ。そう、二人きり。

今までの二人きりとは少し違う。なんたって聞いてしまったから。

今まではこいつに限っては葉山がいるから勘違いはないだろうと言う保険があったのだがそれがなくなってしまった。

まぁかといってこのプロぼっちたる俺がそんな事で勘違いなどするはずもないのだが……。

 

俺は了解。とだけ返してアニメの消化を再開する。

 

するとまたスマホが鳴る。

 

はやっ!早すぎだろ!由比ヶ浜もそうだが最近の女子高生は文字打つの早すぎやしませんかね?机に置いたスマホをもう一度開く。

 

『せんぱい短すぎやしませんかね(´・ω・`)まあいいですけど。それじゃぁ明日!忘れないでくださいねー!ではー(^ー゜)!』

 

え、この長さのを今の早さで打ったの?やばいな……。指どうなってるんだ。

 

一色はこれ以上続ける気は無いようでメールを終わらせる文面だった。気を使ってくれたのだろうか。ありがたい。いちいち返さなくていいからな。

さて続き続き。

 

 

 

その日の夜、晩飯の時に小町が

 

「明日デートなんでしょ?」

 

と真顔で聞いてきた為、飲んでいた味噌汁を少し吹いてしまった。

小町に汚い!って怒られた。

いやいや、お前のせいだからね?

 

「っ、急に何を言ってるのかな?」

 

「昨日聞こうと思ってたんだけど忘れてて。小町一昨日の夜お兄ちゃんがずっと電話してたの知ってるよ?どっか遊びに行くんでしょ?ねぇねぇ誰と?てかどっち!?」

 

ぬぅ。一色との電話を聞かれていたみたいだ。まぁそりゃそうか、隣の部屋でずっと電話してりゃあ嫌でも聞こえるか。それにうち結構壁薄いし。

 

「どっちってなんだよ。」

 

「もー、分かってるくせにー!結衣さんと雪乃さんでしょー?」

 

なんでその二人なんでしょうかね。由比ヶ浜はまぁ…ありえるかもしれんが雪ノ下はあり得ないだろう。

 

「どっちでもねぇよ。それにデートでもねぇ。ちょっと出かけるだけだ。」

 

「えー、じゃあ誰なの?あ、戸塚さん?」

 

いいねぇ戸塚!戸塚とならどこへでも行くまである。

 

「戸塚でもない。お前の知らない奴だよ。」

 

「えー!嘘嘘、あの二人以外に女の子が!?お兄ちゃんいつの間にそんなお義姉ちゃん候補を!?」

 

「待て待て待て。なんで女子ってわかるんだよ。」

 

「え、違うの?」

 

「………いやそうだけど。あとお義姉ちゃん候補ってなんだ。」

 

「あ、それは気にしないでー。」

 

急にガチトーンになんじゃねぇよ、ゾワってしただろ。

 

「で、誰なの?」

 

まぁ別に隠すようなことでもないしいいだろう。

 

「うちの生徒会長だよ。ほら、前にお前達に協力してもらった時の。」

 

「あー、お兄ちゃんに騙されて会長になった人ね。」

 

「いや別に騙しては……。」

 

「じゃあじゃあお兄ちゃん!明日朝チェックするからね!」

 

あぁダメだ聞いちゃいねぇ。こうなると小町は止まらない。

 

「チェックって何を?」

 

「服装だよ!ふ・く・そ・う!」

 

え、俺ってそんなに絶望的なフッションセンスしてる?別に普通でいいんじゃねぇーの?

 

「え、別に普通でいいんじゃないの?」

 

「お兄ちゃんの普通はちょっとおかしいから。」

 

………嘘だろ。

実の妹にそれを言われるのは予想以上にショックだな。

まぁでも確かに選んでもらえるんならそっちの方がいいか。

相手は一色だし、中途半端だと何言われるかわからん。

 

「……んじゃ頼むわ。」

 

「んー!おっけー!まっかせてー!でさでさお兄ちゃん。その人ってなんていうの?」

 

「ん、あぁ一色っつうんだ。」

 

「ほー。可愛い?」

 

「え、ぁあまぁ可愛いほうじゃねぇの?」

 

あいつは確かに可愛いほうだ。ほうというか可愛いと思う。

あのあざとい性格も相まって男共に人気があるのは分からなくもない。

女は……まぁ、うん。触れないでおこう。

 

「へー!可愛いんだ!今度つれてきてね!」

 

「え、嫌だよ。」

 

一色と小町を会わせてしまったら絶対とんでもないことになるし。

あざといのとあざといので超あざとくなるのは目に見えてる。そうなってしまったらもう俺には扱いきれない。

 

小町は俺の発言に特に興味を示さなかったのか、何やら携帯でカチカチ打っていた。

 

「小町、飯の途中だぞ。」

 

「あーうん、ごめんごめん。」

 

ご飯の時に携帯触っちゃいけません!

友達との外食は可。あ、俺友達居ないんだった。

小町はそう言うと用は済んだのかケータイをしまい、俺と小町は食事を再開した。

 

 

 

そして夜が明けて日曜日。

俺は今待ち合わせ場所にいる。

 

小町にチェックしてもらった服は黒いニット?の中に白いシャツを着て、下は白いジーパン?いや、パンツ?っていうのか?俺にはわからないがまぁそれなりだと俺も思う。てかこんな服俺持ってたか?いつ買ったんだよ。

まぁ、何はともあれ流石小町だ。

その小町は俺の服を選んだ後すぐに何処かへ出かけていった。

昨日もカラオケ行ってたのに……。まぁ中学生活最後を満喫しているんだろう。

 

今は音楽を聴きながら一色を待っているのだが……現在の時刻は九時四十分。

待ち合わせは三十分。

…………来ない。

一度電話してみたが繋がらなかった。

 

これはまさか実はどっかから見てて

「うわ、あいつ本当に来たよwwwwキモwww」っていうやつなんじゃ……

…いやまぁそれはないか。俺のこと誘う時あいつ最初建前使ってたし、多分寝坊かなんかだろ。

もう一回かけてみるか。

 

スマホを取り出し一色を呼び出す。

数回コール音がした後電話が繋がった。

 

『あーい、もしもしぃ…せんぱいですかぁ〜、どうしたんですかこんな朝から…ふぁ〜。』

 

……こいつ、今起きやがったな。完全寝起きの声だし。あくびしてるし。

 

「おいおいこんな朝からってな……。一色さん、今は何時ですか。」

 

『…え?何時って……え!うそ!ちょっと!え、え、え、ご、ごごめんなさいせんぱい!!寝坊しちゃいました!せんぱいもう駅ですか!?」

 

めっちゃ慌ててる。慌てる一色は新鮮でちょっと面白い。

 

「俺はもう駅についてるしお前が寝坊してることもわかってる。」

 

『あーもう!ちゃんと目覚ましかけといたのに!こんな事ならお母さんに起こしてって言っとくんだった!』

 

……聞こえてないな。

 

『ほんとに最悪…。目の下クマとかないよねぇ…?。せんぱい…すいません。急いで行くんでもうちょっと待っててもらえますか……?」

 

いやなんでそんなに泣きそうなの?めっちゃ涙声なんだけど。

目の下クマって眠れなかったのか?

 

「わかったわかった、俺は大丈夫だからゆっくり落ち着いて来い。俺はどっか喫茶店でも入ってるから。」

 

『うぅ……ごめんなさい。』

 

「わかったわかった、大丈夫だから。気をつけて来いよ。」

 

『はいぃ。」

 

俺は通話を終了させ、スマホをポケットにしまい歩き出す。

やっぱ寝坊だったか。ドッキリじゃなくて安心した。

さて、適当に店探しますかね。

 

 

 

 

俺は駅の近くの喫茶店を見つけそこに入る。店員に気持ちよく挨拶をされ、お好きな席にと通されたので店内を見渡す。

すると窓際でいい場所があいていたのでそこに腰を下ろす。ここにした理由はここからは駅が見え、一色が来るとすぐにわかるからな。

一色に店の大体の場所と名前をメールで伝える。

 

 

朝飯は食べてきたのでコーヒーだけを頼み、こういう時のために持ってきていたラノベを読みながら一色を待つことにする。

 

 

 

一時間ほど経った頃そろそろかと思いラノベを閉じる。伸びをしながら窓から外を見ているとそこには息を切らして肩を上下させキョロキョロと辺りを見渡している一色がいた。

…と、店を見つけたのかこっちに寄ってくる。

 

すると一色は窓を見ながら立ち止まり髪の毛を整え始めた。しかも俺の目の前で。

な、何してんのこの子……。

え、俺がいることに気付いてない?

こんなに近いのに?

 

一色は手櫛で髪を整え前髪を弄ったり、服装を整えて息を落ち着かせたり、急に、キラキラ〜〜っていう効果音がつきそうなぐらいの笑顔になったりとそれはもうかわい…おもしろい。

 

俺がその変な光景を眺めていると髪を整え終え、笑顔の練習らしきことをしていた一色と目が合った。合ってしまった。

 

そこからの一色は、みるみるうちに顔を真っ赤に染め上げ、口をパクパクさせて後ずさりながら俺を見ていた。

そういう俺もなぜか釣られて恥ずかしくなってしまった。俺はとっさに一色から目をそらして冷たいコーヒーを啜る。

一色も開いた口を閉じ、真っ赤な顔のまま入り口に向かい店に入ってくる。

店員も見ていたのかちょっと笑っているように見える。

……まぁ、あれはちょっと恥ずかしいわ。てかあいつ鏡とか持ってなかったのか?

 

店員さんに案内され俺のいる席まで歩いてくる。

一色は真っ赤な顔で席に座りすごい勢いで机に突っ伏した。

 

「……………お、おはようございます。せんぱい。」

 

「……あ、ああ、おはよう。」

 

一色は突っ伏したまま消え入りそうな声で挨拶をしてきた。

……これ、今日大丈夫かよ。

 

 

end




デート回は長くなってしまうと思います。

いろはす率高くてごめんなさい。笑
窓を鏡代わりにして身だしなみを直すのはニセ◯イを真似てみました。すいません。笑
反省はしてますが後悔はしてません笑

今回もお読みいただきありがとうございます。

お気づきの事がありましたら教えてください。

ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話

デート回だと思った?残念!ガハマさんでした!

いやもう本当にすいませんでした。

次回はいろはちゃん出てきますのでいろはすファンの方怒らないでください。


「いやー、雪乃さんは残念でしたね。用事で来れないなんて。」

 

「え、あぁうん、そうだね。結構急だったしね。」

 

「あぁーぁ、絶対面白いことになると思ったのに。」

 

「………ねぇ小町ちゃん。」

 

「何ですか結衣さん。」

 

「本音が出てるよ……。」

 

「あ、すいません。」

 

「もう…。」

 

「あ、お兄ちゃんはっけーん!まだ会長さんは来てないのかな?」

 

「え、……うん…いろはちゃんはまだみたいだね。」

 

あたし、由比ヶ浜結衣は今ヒッキーの妹の小町ちゃんと駅前のマックの二階、窓際の席に座っている。

小町ちゃんはあたしの指摘など無かったことのように入る時に買ったオレンジジュースのSサイズを持ちながら窓の外のヒッキーを眺めている。

つられてあたしも自分のジュースを飲む。

 

いろはちゃんとヒッキーが二人でその…デ、デートとか嫌だけどなんだかいけないことしてる気分になってきちゃった。

そもそもこんなことになってるのは昨日の夜に小町ちゃんからLineが来たからなんだよね。

 

 

「ふふんふんふんふ〜ん。」

 

「結衣どうしたの、随分とご機嫌じゃない。」

 

晩御飯を食べ終わって後片付けをしながら、あたしがこの間発売された好きなアーティストの新曲を鼻歌で歌っているとママが話しかけてきた。

 

「え、うん、好きな歌手の新曲がすっごいよくて!頭に残っちゃってるんだ。」

 

「へー、どんな感じの曲なの?」

 

「えっと、簡単に言うとなかなか好きな人が気持ちに気付いてくれなくて結局想いを伝えられずにいると最終的には違う女の子と好きな人がくっついちゃうって言う失恋の歌だよ。」

 

「あらー、それはまた重たいわね……しかも……。」

 

ママは何やらうーんって唸ってる。そんなに重たい曲かなぁこの曲。優美子にも重いって言われたんだよね。

あたしは妙に共感できるんだけど……。

 

「結衣。」

 

「ん?なに?」

 

ママがふっと顔を上げたと思ったら何やらちょっと真剣な雰囲気。

 

「その曲今の結衣にピッタリね!その曲の通り早くヒッキー君落とさないと他の子に取られちゃうぞ〜?」

 

…え?…

 

「……え?」

 

な!?

 

「な!?、なななななんで今ヒッキーの話になんの!?」

 

「だって結衣ヒッキー君のこと好きなんでしょー?」

 

「す!好きじゃないし!全っっっ然ヒッキーの事なんか好きじゃないし!」

 

あたしは全力で手を前でブンブンしながら否定する。

 

「あーはいはい、わかったわかった。もーほんとに結衣ったら素直じゃないんだからぁ。」

 

「だ!だから違うってばぁ!」

 

「ふふ。でも本当に、いつまでも動かないと他の子に取られちゃうよ。あんたも変なところで奥手なんだから。一発ガツンといっちゃいなさい!」

 

ママはすごい笑顔でさむずあっぷ?グッドポーズ?しながらリビングを出て行った。

 

もうほんとに恥ずかしい。

………やっぱバレてるし。私がヒッキー好きなこと。

でもなんであたしの好きな歌からこんな話になんの?

この曲は気持ちに気付いてくれない男の子への失恋ソングで……。ん?

…しかも想いを伝えられずに最後には他の子と付き合っちゃう……。……あ。

 

ああああぁぁぁぁ!!!!!!

そういうことか!

うーーー、わかったら余計恥ずかしくなって来ちゃった。これってあたしとヒッキーの状況にそっくりじゃん!だから変に共感できたんだ!

 

じゃあこのままじゃヒッキーは……。

あぁモヤモヤする!

もう!早くお風呂入っちゃお!

 

なんかソファに座ってテレビを見てるパパがプルプルしてるけどどうしたのかな?

 

……てかいたんだね。部屋だと思ってたよ。

 

 

 

お風呂からあがったあたしは今部屋のベッドでファッション誌を読んでる。

ヒッキーがいうところの偏差値の低そうな雑誌。

あたし偏差値ってよくわかんないんだけどなんなのかな?頭の良さ?

でもなんかバカにされてるってことだけはわかるんだよね。

あたし的にはヒッキーも男子用のこういうの読んで勉強したほうがいいと思うんだ!

………絶対やんないだろうけど。

 

部屋の時計を確認するともう二十三時。

明日お休みだけど今日はもう寝ちゃおう…することもなくなったし。

あたしは雑誌を閉じて立ち上がり、本棚にしまう。そのまま机の上に置いてある帰ってきてから放置しっぱなしだったスマホのスイッチを押して画面をつける。

するとLineが何件か来ていた。

 

大体は優美子達とのグループトークで、あとはクラスの女子数人と小町ちゃん?なんだろう?

トークが来てたのは十九時過ぎ。結構前だなぁーとか思いながら優美子達のグループトークと友達のトークを軽く見て返した後、小町ちゃんからのトークが気になり画面を開く。そこには

 

『結衣さーん!やっはろーです!突然なんですけど明日暇ですかー??』

 

と書いてあった。

うーん、遊びの誘いかな?小町ちゃん受験終わって今が一番遊べる時期だもんね。

明日は別に何もないし暇だよね。

そのままあたしはメッセージを打つ。

 

『暇だよー^ ^どしたの?遊びに行くの( `・∀・)?』

 

とだけ送り、Lineを閉じようとしたらすぐに既読の文字がついた。

はやっ!小町ちゃん流石に早すぎるよ!

どんなだけ返事待ってたの。

 

するとほんの二十秒もしないうちにこう返ってきた。

 

『遊びにというかですね!明日お兄ちゃんが総武高校の生徒会長さんとデートに行くそうなんです!これは大事件です。一緒に尾行しましょう!』

 

え?ヒ、ヒッキーがいろはちゃんとデート?……あー、ヒッキーのことだからまたいろはちゃんに手伝わされてるんだ。昨日も部室で言ってたもんね。もう、ヒッキーいろはちゃんに甘すぎだよ!

 

『それは多分デートというかいろはちゃんのお手伝いだよ!うん!きっとそう!』

 

そうメッセージを送る。

なんであたしはちょっと焦ってるんだろう。

ヒッキーがいろはちゃんを手伝うなんて別にいつものことなのに。

 

……あ、さっきのママとのやりとりがそうさせてるのかも……。

うん、だっていろはちゃんもヒッキーの事多分…す、好き…だよね。

いろはちゃんだけじゃなくてきっとゆきのんも…。

 

頭にはママに言われた言葉がよぎる。

 

《早くヒッキー君落とさないと他の子に取られちゃうぞ〜?》

 

……確かにこのままじゃ、ダメだよね……。あの三人の空間…いや四人の空間を壊したくないのも確かだけど。

やっぱりこのままはダメ。

 

うん、あたしも気になるし行こう!

あたしだってまだディスティニーの時の約束とかはたしてもらってないし!

Lineを開いて小町ちゃんに一緒に行くことを伝える。

 

すると待ってましたとばかりに小町ちゃんから集合時間や場所が送られてきた。

たはは……。小町ちゃんには敵わないなぁ。

 

 

と、まぁこんな感じで今に至るのだ。

 

あの時は結構乗り気だったんだけど、今はヒッキーといろはちゃんが楽しそうにしているところを想像しただけで胸が締め付けられる。

 

あ、でもヒッキーは嫌々かも。

ふふっ、その方がヒッキーっぽい。

 

「あ、お兄ちゃん電話してますよ。会長さん遅れてるのかな?」

 

「何時に駅とか聞いてる?」

 

「九時半って言ってました。」

 

「えっと、今九時四十分だからいろはちゃん遅れてるね。」

 

あたしはスマホの時計を確認しながら言う。

 

「ほーー。これはもしや……。」

 

小町ちゃんは腕を組んで考え始めた。

 

「もしや…?」

 

あたしはその後に続く言葉を待つ。

 

「会長さんはお兄ちゃんとのデートが楽しみで昨日眠れなくて寝坊したに違いないです!!!」

 

……。なんか深刻そうに考えてた割には意外とあっさりした言葉が出てきた。

 

「え、あ、うん、そうかもね……。」

 

「絶対そうですよ!お兄ちゃんみたいな人と二人で出かけるなんてお兄ちゃんの事が好きか相当な物好きか妹のどれかですから!」

 

小町ちゃんは腕を組んだままえっへん!っと胸を張っている。

あ、あたしはそれ何て言えばいいのかな…。

たまに小町ちゃんヒッキーの事軽くディスるよね。でもちゃっかり妹って入ってるし、やっぱりヒッキーの妹なんだなぁ。

悪口みたいな言葉の中にも兄妹の絆みたいなのが見えてちょっと羨ましいな。

 

「あ!お兄ちゃん動き出しましたよ!」

 

あたしも外を見てみるといつのまに電話を終えていたのかヒッキーが背を預けていた壁から離れ、どこかへ行こうとしているところだった。

 

「結衣さん!行きましょう!」

 

「あ!うん!」

 

あたしと小町ちゃんはジュースを大急ぎで飲み干し、荷物を持ってゴミを片付け、ヒッキーを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って、そこの喫茶店入っただけじゃん!!

ヒッキーは店内の窓際の席に座った。

いろはちゃんが来るまで時間潰す感じなのかな?

 

「なんだ、カフェに入っただけか。本読み始めちゃったし。どうします?戻りますか?」

 

小町ちゃんがそう提案してきた。

うーん、確かにヒッキーが動かない以上あたし達はどこにも行けないし。

でも確かさっきのマックからじゃあそこの喫茶店は見えなかったはず。

あたしは辺りを見渡して丁度いい場所を探す。

すると喫茶店が見えるであろうギリギリのところにコンビニを見つけた。

 

「あ。小町ちゃん、あそこのコンビニで立ち読みでもしてよっか?」

 

「いいですね、そうしましょうか。」

 

そうしてあたしたちはそのコンビニへ向かい歩き始めた。

 

 

 

 

あたしたちが立ち読みを始めて一時間も経たない頃、やっといろはちゃんが息を切らして現れた。

かなり急いで来たみたいだね…。でも本当に大寝坊したんだね。

おかげであたしと小町ちゃんはかなり店員さんに見られちゃってるけど。

まあ今深めに帽子被ってるし、しかも小町ちゃんはガチガチのサングラス。そんなのよく持ってたね……。

かくいうあたしも薄い色付きの伊達眼鏡をお母さんから借りてきている。しかも雑誌を読みながらコソコソしてるしもう二人とも完全変だよ。ごめんなさい。怪しいものじゃないんです店員さん。

 

あ、いつものお団子は解いてるよ?バレるかもだし、帽子かぶる時も邪魔だしね。

あれ、誰に言ってるんだろ。

 

「小町ちゃん小町ちゃん、いろはちゃん来たみたいだよ。」

 

「え、ほんとですか、どの人ですか?」

 

「あの周りをキョロキョロしてる亜麻色の髪の子だよ。」

 

「……え!あの人ですか!?遠めですけどめっちゃかわいいじゃないですか!!」

 

「ちょっと!小町ちゃん声大きいよ!」

 

ここ一応コンビニだから!

一層店員さんに睨まれちゃってるから!

 

「あ、ごめんなさい。それにしてもあのごみぃちゃん、何が可愛い方だよ。全然方じゃないじゃん。ガチじゃん。」

 

まぁ確かにいろはちゃんは同性から見てもかなり可愛い。

男子にもすごく人気があるってこともわかる。

 

ヒッキーはどうなんだろう。

どう思ってるんだろう。

 

そんなことを考えていると窓際のヒッキーを見つけたのかヒッキーのいる喫茶店に向かってトテトテと歩き始めた。

 

すると窓の前まで来たいろはちゃんは窓を鏡代わりにして身だしなみを整え出した…?

え、え、いろはちゃん気づいてないの!?目の前にヒッキーいるよ!いろはちゃんで隠れて見えないけど絶対ヒッキーガン見してるよ!

 

「ゆ、結衣さん。あれって……。」

 

隣で同じ光景を見ている小町ちゃんも固まっている。

いろはちゃん、流石にそれはシュールすぎるんじゃないかな……。

 

あ、いろはちゃん気づいたのかな?

めっちゃ後ずさってる。

 

あたしと小町ちゃんは声を揃えて言った。

 

「「…あれは恥ずかしいよ。」」と。

 

 

end





今回もお読みいただきありがとうございました。

女の子視点難しすぎて泣きそうでした。
もう二度とやらないかもしれない。(やらないとは言ってない)

お気付きな点がありましたら言ってください。

ではまた次回



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話

遅くなってしまい大変申し訳ありません。
あとなんかいきなりお気に入りが200件を超えて困惑している、どうも作者です。ありがとうございますほんとに。

それでは続きをどうぞ。

あ、最後に茶番があります。読まなくても問題はないです。


「………。」

 

「………。」

 

………うーん、気不味い。

俺が一色のキッラキラでニコッな笑顔を目撃し、一色が机に突っ伏してからしばらく経ったが未だにこいつは顔を上げない。

俺は男だしあんな経験は無いしでわからないが多分相当恥ずかしいのだろう。

でも他人ならまだしも知り合いの俺なだけマシだとは思うんだが……。あ、そういや店員さんにも見られてたっけ。

 

まぁ何かきっかけがあればこいつも顔を上げるだろうと思ったので俺から声をかけることにした。

 

「…おい一色。何か飲むか。」

 

「………………………………ミルクティー、お願いします。」

 

しばらくの沈黙の後一色はそう答えた。

遅っ!俺頭んなかで勝手に、……Now Loading。って遊んじゃうくらい遅かった。

返事までにすごい間があったから俺無視されたかと思った。良かった。

 

俺は、すいません。と店員さんを呼ぶ。

するとさっきの一色と俺を見ており、一色が入ってきたときに少し笑っていた店員さん(可愛い)がはーい!と返事をして近寄ってきた。

 

「あの、ミルクティー一つ追加お願いします。」

 

「アイスとホットがございますがどちらにいたしましょう。」

 

「一色どっちがいい。」

 

「……………。」

 

「あー……、じゃあホットで。」

 

「かしこまりました。」

 

要件を済ませると店員さんはサッとペンを走らせた伝票を机に置いて去っていった。

その時突っ伏したままの一色をチラ見したのを俺は見逃さなかった。

あぁ、あれはもうあの人友達とか他の店員さんに『今日物凄いカップルのお客がいたの!ww』とか言いふらすんだろうな。あの人明らかにリアル充実型だもん。まずカップルじゃないし。

……いろはす、南無三。

 

さて、今後のためにも一色には立ち直ってもらわなねばなるまい。

 

「い、一色。その……なんだ、気にすんなよ。あれはまぁ仕方ねぇよ。お前も人間だしこういうこともあるって。」

 

「…………。」

 

無言。無反応。スルー。ピクリとも動かない。

うーん、女の子って難しいのね。

 

「それにほら、まだ間近で見られたのが赤の他人じゃなくて俺で良かっただろ。」

 

そう、あんなのを他人に見られてみろ。きっと黒歴史間違いない。

 

「………ぱいだから………しいんですよ……。」

 

お、ちょっとなんか喋ったっぽいが声が小さすぎてよく聞こえなかった。

 

「ほら、なんなら好きなもん奢ってやるから。そろそろ顔あげろって。」

 

「………。」

 

「ふぅ。」

 

また黙った。

あぁーーもう、どうすりゃいいん……お。

 

俺がどうすればいいのかと次の慰めの言葉を考えていると一色はムクッとゆっくり体を起こした。

顔を見てみるとまだ少し恥ずかしいのかちょっとだけ顔が赤い。

 

「……忘れてください。」

 

「………え?」

 

急に起きてしゃべったかと思ったらなにいきなり。

すると一色はこれでもかと顔を近づけて

 

「わ!す!れ!て!く!だ!さ!い!」

 

「ちょっ、え、…は、はい。」

 

あまりの近さと剣幕に体を引き、訳も分からずYesマンになってしまった。しかもちょっといい匂いし……ゴホッ。

これはぼっちの悪い癖ですね。いきなり命令されたりすると勢いのあまり、え。あ、はい!ってなっちゃうやつ。ほんとやめてほしい。

 

ていうかいろはす。もう開き直って、俺には見たことを忘れさせようということなのね。

 

 

すると一色は俺の返答に満足したのか、上に着ていたムートンのダッフルコートを脱いで椅子の背もたれにかけた。

コートを脱いでも一色のファッションはそれはもう一色らしく、しっかりとした可愛らしさの中になにか大人びた雰囲気を感じた。コートもかなりすらっとしたシルエットだった。

タートルネックのセーターに明るい色のミニスカート。顔も少し薄めだが化粧をしている。

今は見えないが確か足は白ストッキングにコートに合わせた素材のブーツだったはずだ。

我ながらよくもまあそんなところまで見ているものだ。一歩間違えれば俺、超気持ち悪い。

 

でもなるほど、よく考えられていると思う。

まぁ、かなり可愛い。

 

これは小町に服選んでもらってなかったらやばかっただろうな……。

『え。せんぱいなんですかそのカッコ。ちょっとマジで隣にというか近くにもいて欲しくないレベルなんでほんともうごめんなさい。』とか余裕で言われてたに違いない。

 

そうこうしているうちに注文していたミルクティーを持ってさっきとは別の店員さん(イケメン)がやってきた。

 

「お待たせいたしました、こちらホットミルクティーでございます。」

 

「あ!ありがとうございますぅ。」

 

うっわ。いろはす早速営業あざとスマイル全開ですか。キラッキラッですね。

さっきの落ち込みようが嘘のようだ。

ほんと、イケメンだからってもう…ぬかりないんだからっ!

おっと、裏声になってしまった。

 

「ごゆっくりどうぞ。」

 

そう言い残してイケメン店員は去っていった。

今度はさっきの店員さんとは違い一色ではなく俺をチラ見してきた。

んだよ。その『え、こんな目の腐ったアホ毛の奴がこの子の彼氏なの?』みたいな目は。

言っときますが彼氏じゃないですからね。

あとアホ毛は仕方ないでしょ?

それにわかってますよ?一色と俺じゃ全然釣り合わないことぐらいは。

プロぼっちたる俺はこんなことでは自惚れのうの字もないですからね。

 

「せんぱい、なんか急に目の腐り具合が増してませんか?」

 

一色はミルクティーをスプーンでかき混ぜながらそんなことを言ってきた。

 

「……そんなことないだろ。俺の目はいつだって死んだ魚みたいな目だし。どんなに櫛でといてもアホ毛ははねるし。」

 

「なんでいきなりアホ毛の話なんですか。せんぱいなんか拗ねてます?」

 

「いや、別に拗ねてないし気にしないでくれ。」

 

クソ。さっきのイケメン店員のせいだ。俺のことあんな目で見るから。

……まあ完全なる自意識過剰ですね。

自意識高い系も考え物だな。

 

「そうですか……。」

 

一色はこれ以上俺の目について触れたくないのか話を打ち切りミルクティーに口をつける。

あ、なんか熱っ!とか言って口離した。

そら熱いだろホットなんだし。

するとスプーンでかき混ぜながらふーふーしている。

……素でやってるんだろうがなんかあざといな。

もう素であざとさが出るとか訓練されすぎだろ。

 

「あ、あとせんぱい、遅れてすいませんでした。私から誘ったのに。」

 

ふーふーしたあと一口ミルクティーを飲みカップを置いた一色は俺に向き直し謝罪してきた。

あぁ、そういや遅れてきたんだったな。

色々あって忘れてたわ。

 

「あぁ、別に気にしてない。むしろちゃんと来てくれてよかったよ。」

 

ほんと、ドッキリとかじゃなくて良かった良かった。

 

「??なにが良かったのかわかりませんが、まぁ、はい、ありがとうございます。」

 

一色は頭に疑問符が浮かんでいるような顔で少しずつミルクティーを飲んでいる。

 

「それはそうと一色、どっか行きたいとかあるのか?」

 

「え、あ、そうですね……。特に考えてなかったです。」

 

マジか。誘ったのお前なのに?

でもまぁ普通は男がこういうのを考えるって聞くしな。

だがそういうのを俺に期待されても困るわけで。

 

「どうすんだ?」

 

「えっと、とりあえずららぽにでも行きますか。」

 

ららぽーとね。うん、まああそこなら本屋とか映画館とかもあるしなんとかなるか。

 

「そうだな。了解。とりあえず冷める前にそれ飲んじまえよ。」

 

「はい。」

 

俺が促すと、もうさほど熱くないのかすぐ飲み干してしまった。

 

「じゃあ行きますか。」

 

「もう行くのか?」

 

「はい、私、遅れちゃいましたし。」

 

そういうもんかと思いながら俺は席を立つ。

一色がコートを着ている間に俺は伝票を持って歩き出す。

途中一色があっ。となにか言いかけたが俺は奢ってやるから気にすんなと言ってレジへ向かった。

 

 

 

 

レジで会計を済ませ一色と外へ出る。レジの店員はあのイケメン店員だった。またあの目してやがった。クソッ。

店内が暖かかったからか余計に寒さが際立つ。

 

「せ、せんぱい。」

 

「ん?どした?」

 

「その……どうですかね。…今日のかっこ。」

 

「え、あ、あぁ、服ね。」

 

一色は寒さからなのか恥ずかしさからなのか、ほんのり顔を上気させ上目遣いでモジモジしながら聞いてくる。

いつもの一色らしからぬ雰囲気に一瞬ドキッとしてしまった。

な、なんだよそれ、恋する乙女みたいで勘違いしちゃうだろうが。

お前には葉山が……。あぁそれはもう違うんだっけか。

 

とにかく、感想を求められてしまった。

小町によるとここはなにか気の利いたことを言えばいいらしいのだが………。

 

「お、おう、似合ってんじゃねぇーか?」

 

この有様である。

小町に聞かれていれば

『は?ゴミぃちゃんなにそれ。まだまだ全然ダメだよ。やり直し。』とか。

 

由比ヶ浜なら

『ヒッキーまじないよねぇー。ヒッキーまじヒッキーだよねぇー。』とか。

 

雪ノ下なら

『あら比企谷君、あなた国語学年三位のくせしてボキャブラリーが貧困すぎやしないかしら。もっと言葉の引き出しを増やしてから出直して来なさい。そうすれば幾分かマシになるはずよ。マイナスからのスタートだけれどね。』とか。

 

なにこれ。脳内再生余裕なんだが。

 

「ふふっ、もー。まぁせんぱいですからね。それぐらいだとは思ってました。」

 

……あれ、なんか許してもらえたようで一色は呆れたように微笑んでいた。

……いっつもそれぐらい素の笑顔ならいいのによ。

 

「さて、じゃあ行きましょうか!」

 

「おう。」

 

「あ、せんぱいの服も、似合ってますよ!」

 

「お、おう、サンキュ。」

 

確か小町に選んでもらったって言っちゃダメなんだったな。

そんなことを考えながら俺と一色は横に並んで駅へと向かい歩き出した。

 

 

これはとある休憩室の一場面である。

 

 

 

「お疲れ様でーす。」

 

「店長ぉ、交代です。」

 

休憩室に休憩時間となった二人の人間が挨拶と共に扉を開け入ってくる。

 

「はーい、お疲れ様。ほい、高城君秋ちゃん休憩終わり。行くよー。そろそろお昼時なんだから。」

 

「えー、もう終わりっすか店長ー。」

 

「もう一服させて下さいよ。」

 

「もう充分一服してたしオセロにも付き合ってあげたでしょ。文句言わない。」

 

この店の店長である人物が休憩室を出た後、高城と呼ばれた青年と秋と呼ばれた女性は渋々といった感じで休憩室を後にした。高城の方はなにやらブツブツと小声で「喫茶店の昼時なんかたかが知れてるでしょう。」などと文句を垂れていた。

 

 

「やっと休憩っすね。」

 

「だねー。」

 

今しがた休憩室へ入ってきた二人は先ほどの三人と入れ替わりで席に座る。

 

休憩室といっても席はパイプ椅子、机はよく学校の会議室等で使われる木の長机が二つあり、端っこには流し台、冷蔵庫があるだけの質素なものだ。

 

机の上には先ほどのメンバーが残していった白が負けたままのオセロ、飲みかけのお茶、灰皿、タバコの箱、ライター、お茶請けのお菓子やらが散乱していた。

 

「また高城のやつ店長に挑んだみたいっすよ。懲りないっすねあいつも。」

 

「関西人だし負けず嫌いなんじゃない?でもほんと店長ボードゲーム最強よね。」

 

「オセロ、囲碁、将棋、チェス、トランプ、どのゲームでも負けたところ見たことないっす。あとなんすかその関西人へのイメージ。他の関西人は完全に風評被害っすよ。」

 

二人は机の上に広げられたままのオセロを見ながら話す。

本来なら盤上を見ただけではどちらの人物が勝ったかなどわかるわけもないのだが、この二人は見ただけで勝敗がわかってしまっている。それほどにこの店では頻繁に行われているのだろう。

 

「昔一回だけバイトの大学生に負けたことあるみたいよ。」

 

「え、まじっすか。いいなー、なんせ店長にボードゲームで勝ったら時給150円アップっすもんね。あ、先輩なんか飲みます?」

 

「ほんと。店長も突飛な事考えるわよね。私オレンジジュース。」

 

「うっす。マジで俺も勝ちたいっすよー。」

 

少年は椅子から立ち上がり歩いていく。

先輩と呼ばれた人物は大人の女性と呼ぶにはいささか若く、少女と呼ぶには少し大人びているような見た目だがかなりの美少女である。

彼女は休憩室の隅に置いてある冷蔵庫を開けている少年に、目撃してからずっと誰かに話したかったある客の話をする。

 

「そういえばさぁいしっちー!」

 

「何ですかぁー。あといしっちはやめてくださいとあれほど。」

 

冷蔵庫を漁っているいしっちとあだ名で呼ばれた少年は自分は何を飲もうか迷いながら返事をした。

 

「あのカップルおもしろかったね!」

 

「あのカップル……?あぁー、あの窓際に居た。」

 

「そうそう!彼女の方がもうそれは可愛くってさぁーー!」

 

彼女が言っているのは彼女達の接客中に店に来ていた目が腐っていた少年と入ってそうそう机に突っ伏した少女のことだろう。

 

「確かにすごく可愛いかったですね。」

 

彼は純粋な外見の話をしていた。

そう、少女の方は超がつくほどの美少女だったのだ。彼女ならばもっといい男性を捕まえられるだろうと彼氏を見て心中で思ったし、10分程度机に伏していたのでよく覚えている。

 

「いしちゃんが言ってるのは見た目の話でしょー。違うんだよ!店の窓鏡代わりにしてたの!しかもそれを目の前の彼氏に見られて顔真っ赤にしてたのよ!んはぁー!あの子なにー!ほしぃー!!妹にしたい!連れて帰りたぁーーい!!!」

 

「ちょっと先輩また!落ち着いてください!向こうに聞こえちゃいますって!ほら、ジュース!あといしちゃんもやめてください!」

 

彼は例のやつが始まってしまった彼女へ持ってきたオレンジジュースを渡す。

 

「おおー、ごめんありがと。」

 

それを受け取った彼女はプルタブを開けて一気にあおった。

 

「ぷはぁーー。」

 

「落ち着きました?」

 

「ふぅー、うん、落ち着いた。」

 

「ほんとにもう、可愛い子見つけたらすぐこれなんすから。店に出てる間我慢できるなら家まで我慢してください。」

 

「それは無理な相談ですなぁ。がんちゃん。」

 

「がんちゃんもダメです。……はぁ。」

 

彼は、まぁいつものことか。と自分を納得させる。あのカップルがまたこの店来たらめんどくさい事になるだろうと彼は自信を持って言えた。

 

「いんやーー!でもほんとに可愛かったなぁー。あの子モデルかなにかなのかな。…いや、モデルにしては胸と身長が……。」

 

「ちょっと先輩、いくらもう居ないとはいえ失礼ですよ。」

 

「また来てくれるかな!来てくれたら話しかけちゃお!ねぇアニキ!」

 

「……聞いちゃいないよ。あともはや誰ですかレベルなんですが。キャラ定まらないっすよ。普通に石田でいいでしょう。」

 

彼は名もわからぬ少年と少女に、先輩がシフトの時には来ちゃダメ!と心の中で祈りながら結局何を飲むか決まらず適当に取ってきたコーラを喉に流し込むのだった。

 

 

 




オリキャラ二度とかかないと今決めました。
むずすぎ。
この子たちは今回限りだと思うので何卒御容赦を。

ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話

遅くなってごめんなさい。
シリアスとか考えてたら遅くなりました。

ていうか全然まだまだ先だと思います。
いろはすターン終わらぬ。


「うっ…ぐすっ、うぅ。」

 

「おいおい、いつまで泣いてんだ。もう映画終わったぞ。」

 

「うぅ、せんぱい、だってぇ。ぐず。」

 

「確かに感動はしたが俺にはわからん………。」

 

俺と一色は今ららぽの映画館内備え付けのソファに座っている。

ららぽに向かう途中一色が

 

『そうそう!せんぱい!今みたい映画があったんです!』

 

というので観にきていたのだ。

 

恋愛映画だと言うから俺は速攻拒否したのだが当然の如く拒否するのを拒否され、せめて後ろの方でという抵抗虚しく真ん中より少し上の列の中央というど真ん中あたりに勝手に決められ連行された挙句、ラストあたりの主人公(女)が昏睡状態から目を覚ましてなんやかんやした所から一色が泣き出してしまって今の状況に至る。

 

一色は軽く化粧をしていたようでもうくっちゃくちゃになっており

 

『このままでは歩けません。落ち着くまで待って下さい。後でお化粧直してきますから。あ、こっちみないでください。見たら殺します。』

 

とのことらしい。

 

見たら殺されるとか、最初にぐずっって聞こえた時に見ちまってるしもう殺されるじゃないですかやだー。

 

まぁ見るなとのことなので俺は座ってからずっと一色とは逆方向と正面しか見ていない。

 

「……せんぱい、今からメイク落としでお化粧落とすので背中で隠してください。」

 

一色はやっと泣き止んだようでそう言ってくる。

 

「わかったから早く落として。そしてさっさと化粧直して。さっきから周りが『え?あいつ女の子泣かしてんじゃん。ありえねぇー、引くわ。』みたいな目で見ててかなり辛いから早く。ぼっちはこういうのに敏感だから。」

 

「もう、そういうこと言わずにスッと隠してくれればいいのに。」

 

俺が文句を垂れながら少し背中と背もたれの間隔を空け、前にズレてやると一色は不満そうに言ってきた。

なにやら鞄をゴソゴソと漁っている。

するとあった。という声とともに一色の気配が俺の後ろに移動する。

 

「もう少し待ってくださいね。」

 

「はいはい。」

 

「………。」

 

「………。」

 

まぁ沈黙だわな。

何も喋ることないし。

なんだ?さっきの映画の感想でも言えばいいのか?あんまり覚えてねぇよ。

 

でも泣いてる一色は……こう…守ってや…って何を考えてんだ俺は。

一色はこういう恋愛(笑)映画で泣ける私可愛い!みたいにしか考えてないだろ。

 

……そうなんだよなぁ、かわいいんだよな、こいつ。撫でたくな……ってだから俺はなんつうことを考えてるんだ。

 

俺は頭をぶんぶん振り回す。

あぁーダメだ、一色から葉山への気持ちの事を聞いてからなんか変だ。

絶対勘違いはない。うん、絶対。

 

「せんぱい背中ありがとうございま、って何をブンブンしてるんですか?」

 

「え、なんでもない、気にするな。……ていうか、お前化粧必要か?なくても全然いつもと変わらねぇし、かわいいじゃねぇか。」

 

「……………な!え!なななんですかいきなり!もしかして口説いてるんですか!?ていうか見ないでください!えっと、あぁーと!そのぉー、…と!とりあえずとにかくごめんなさい!お化粧なおしてきまぁーす!!」

 

一色は少しぽかんとした後、物凄い勢いで走り去ってトイレに駆け込んでった。ていうかまた振られた。なんだよとりあえずとにかくって。

 

でもやっぱ女子っていうのは化粧必要なのか。あんなに急いで化粧しに行くなんて。

 

ま、しばらくは戻ってこないだろうし本でも読むか。

 

 

 

 

「すいませんせんぱい。お待たせしました。少し混んでまして。」

 

俺がラノベを読み始めて十五分ほど経った頃化粧を終えた一色が戻ってきた。なんか顔が赤い気がする。

 

「おう、どうした?なんか顔赤いぞ。」

 

「え!な、なんでもないんで気にしないでください。」

 

「?そ、そうか。じゃあとりあえず出るか?」

 

「………。」

 

「一色?」

 

「え?あ、はい!なんですか?」

 

「もう映画館出るか?て聞いたんだけど。」

 

「あ、はい、そうしましょう。」

 

なんか今ボーとしてたな。

ま、特に体調悪そうってわけでもないし大丈夫だろ。

 

そうして俺と一色は映画館を後にした。

 

 

 

 

「あ!結衣さん結衣さん!やっと出てきましたよ!」

 

「……すぅー。……ん。」

 

「ちょっと結衣さん!結衣さんってば!」

 

「!……は、はれ。小町ちゃん、どうしたの?」

 

あたしは小町ちゃんにゆさゆさされて目を覚ました。

あれ、あたしいつの間に。

 

「もう!何寝ぼけてるんですか!ほら、お兄ちゃんと一色さんが映画館から出てきましたよ。」

 

「え、やっと出てきたの?」

 

かれこれ三時間は出てこなかった。そんなに映画長かったのかな?

でも他の人たち映画終わったって感じじゃないし……。

まぁいいや。

 

「あ、下に向かうみたいです、行きましょう。」

 

「あ、うん。」

 

見てみるといろはちゃんとヒッキーはエスカレーターを降りていた。

見失わないようにしないと。

 

 

 

 

映画館を出た俺たちは下の階に降りてぶらついていた。

 

「あ!せんぱい!あの小物かわいくないですか?ちょっと見てもいいですか?」

 

「ああ、別に構わん。」

 

一色は一つの店のショーウィンドウを前屈みになりながら中に展示してある置物やらを見ている。

 

こいつのこういうところをみると、やっぱり女の子なんだなって思う。

いつもはあざといあざとい言ってるけどこういう時は純粋に女の子してるというかなんというか。

やっぱりこういう一面を見れば見る程もっと素直にしてればいいのにと思ってしまう。

 

「せんぱいせんぱい!」

 

「んあ?」

 

そんなことを考えていると一色が俺の袖をつかんで引っ張ってきた。

 

「あのこれ、多分ヘアピンなんですけどどっちがあたしに似合いそうですか?」

 

一色はショーウィンドウの中にある2つ並んで置いてあるヘアピンを指差す。

 

そのヘアピンは見た目はシンプルで花の形をした装飾がついてあるヘアピンだ。

色違いが2つ置いてありそのどちらが似合うかということだろう。

一つは花の色が黒でもう一つは薄い感じのピンク色。

正直一色ならどっちでも似合うと思うが聞かれているのはどちらが似合うかだ。

まったく、そういうのを俺に求めるなっての。

てか一色めっちゃ見てくるんだけど。なに。そんなキラキラした目で見ないで。

 

「うーん、強いて言うならば………。」

 

「強いて言うなら……?」

 

「……どっちも。」

 

「ちょっとー!」

 

とまぁこんな感じである。

だってどっちも純粋に似合うと思ったし。

そう正直に言えば多分許してくれるはず。

 

「もー、わたしはどっちが似合いますか?って聞いたんですよ。」

 

「お前ならどっちでも似合うと思ってな。」

 

「そう言えばゆるしてもらえると思ってませんか?」

 

そんなことはありませんでした。

 

「ヤ、ヤダナァ。ソンナコトアルワケナイダロ?」

 

「バレバレです。あーでもちょっと高いなぁ。もうちょい考えてからにしようっと。」

 

「チラチラ俺を見るな。買う金なんて俺もねぇぞ。」

 

「ちぇー。」

 

ほんと、ブレないなこいつ。

 

「というかせんぱい、そろそろお腹空きませんか?」

 

「そういや昼飯まだだっけか。」

 

俺と一色はまだ昼を食べてなかったなそういえば。

現在十四時五十六分。もう三時になる。まぁ食うより先に映画観ちまったしな。

 

「どうする?すぐそこにフードコートあるけど。」

 

「ですね、もうそこにしちゃいましょう。」

 

「いいのか?もっとリア充御用達!みたいなとこじゃなくて。」

 

てっきり却下されるかと思ったのに。

 

「せんぱいはわたしをどんな子だと思ってるんですかね。」

 

「あざとい子。」

 

「はいはい、そう言うとおもいましたぁー。ほら、行きますよ、お腹すきました。」

 

一色は俺の回答に適当に返し、本当に腹が減ってるようで席を探しにフードコートへ向かっていった。

 

「ま……、あざと可愛い後輩に変えといてやるよ。」

 

俺は周りに聞こえないようにそう呟く。

 

「ちょっとーせんぱーい、早く来てくださいよー!こっち空いてますから!」

 

「はいはい。」

 

俺は今もあざと可愛く手招きする一色のところに向かうのだった。

 

 

 




今回は少し短いですね。駄文で申し訳ないです。

お読みいただきありがとうございます。

何かあれば教えてください。

ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話

エタったと思った!?残念!生きてましたぁ!
まさに外道ぅ!!


…いや、あの、わたしをぶん殴る前に聞いて欲しいんですが
書き溜めていた分がですね、全部消えてしまったんですよ。
それでですね…戦意喪失といいますか。。。
とりあえずですね。

お待たせして申し訳ありませんでした!
今回はリハビリというわけで軽めにしました。
自分勝手で申し訳ないです。
あと久しぶりで文の書き方変わってるかもしれませんが大目に見てください('・_・`)
あ、それと安定で駄文なので許してね?(´・ω・`)


映画を観た後少しぶらつき、俺たちは今昼飯を食べてないということでフードコートにいる。

 

いるのだが……。

 

「だめ!辛い!辛すぎますコレ!ぜんばいっ!無理ですむり!助けてください。」

 

「え、やだよ。お前が激辛ラーメン挑戦したいです!なんて言うからだな。しかもお前二口しか食ってない…」

 

そう、フードコート内でなにやら激辛キャンペーン的な何かを開催しているらしく、どこの店も激辛やきそばだの激辛カレーだの激辛パスタだの激辛アイス(これに関しては全く訳がわからん。)だのを販売しており、一色がラーメン屋の激辛ラーメンを見ていきなり、

 

『私ぃ、激辛系とか食べたことないんで食べてみたいんですよねー。だって激辛とか超怖くないですかぁー?』

 

とかあざとく言ってきたので奢ってやるから食うか?と聞いたらえ?いいんですか?奢りなら食べます!ってキタから奢ってやったのだ。

出てきたこの世の物とは思えない真っ赤に染まったスープ等を見た一色はそれはもうちょっと…いや、すごく後悔した顔をしてた。

スゲェ面白かったです(小並感)

一色は一口はなんとか耐えたみたいだがダメだったみたいだ。

 

ちなみに俺は普通のとんこつラーメン。

うまいよね、とんこつ。

 

「せんぱい今そんなことどうでもいいですっ、水!牛乳!乳製品!さけたチーズ美味しいですよね!」

 

「なんでいきなりチーズ……。てかそれを言うならさけるチーズだろ。なんで最初からさけてんだよ。誰が買うんだよそんなの。お前テンパりすぎ。水そこにあるだろ」

 

さけたチーズとかスライスチーズでいいじゃねえか。あとチーズでは辛さはマシにはならんぞ一色よ。

 

「んぐ…んっんっ…」

 

「あ!ちょ!」

 

一色はすごい勢いで水の入ったコップを取り口に流し込む。

だがその水は俺のだ一色………。

後で新しいのいれてこよう。

 

「ぷはぁ!あーーー!ダメダメ。全然取れないですよぉ」

 

「はぁ…ちょっと待ってろ。」

 

俺は周りを見渡しながら立ち上がって、口を開けてヒーヒー手で仰ぎながら耐えてる一色を尻目にこのフードコート内に展開しているアイスクリーム屋へと足を向けた。

 

 

幸いその店は空いていて並ばずに買えたので

なるべく急いで席に戻る。

 

「あ、せんぱいアイス買ってきてくれたんですか?」

 

「おう、何がいいかわからんかったからチョコレートにしといたぞ。自分で言うのもなんだがチョコレートは辛さを紛らわすには最善のーーーー」

 

「すいませんいまそういうのいりません。ありがとうございます。」

 

「………。」

 

一色は俺の手からアイスクリームを奪い取る。

なんだよ、せっかく俺の体験談を交えてチョコレートアイスの良さを伝えてやろうとしたのに。

全く。最近の若い奴は人の話を聞かんのぅ。

……俺も最近の若い奴でしたね。俺も嫌な教師とかの小言は全く聞かないまである。

 

「んん〜!あまーい。ふぅ、だいぶ落ち着いてきました。」

 

「そうか、良かったな。てかそれどうすんだよ。」

 

俺はまだほとんど残っている一色の激辛ラーメンを見る。

ほんと、食いもんの色じゃないぐらい赤いな……。

普通こういうのって激辛!って言っててもある程度の辛さで辛いけど食べれるって物じゃないの?違うの?

 

「んー、私はもう無理です。食欲も無くなっちゃいましたし。せんぱいにあげます。はい。」

 

とか言いながらラーメンをこっちに寄せてきた。

え?二口しか食べてないのに?は?辛さ怖すぎだろ。

 

「は、いや、俺もう自分の分あるし。」

 

「せんぱい男の子なんだから余裕でしょ?よーゆーう。」

 

「お前男がみんな大食いだと思ってんじゃねぇだろうな。」

 

「やだなー、そんなことないですよぉ」

 

キャピキャピしてんなーこいつ。さっきまでの余裕の無さが嘘みたいだ。

 

まぁでも、ちょっと興味あるのも事実……。

 

「わかった。食ってやるから箸かせ。」

 

俺はいつの間にか激辛ラーメンと位置交換させられていた自分の器に置いてある箸を指す。

 

「えー?お箸ならそこにあるじゃないですかぁー?それで食べればよくないですかー?」

 

一色は激辛ラーメンの器に置いてある箸を指差す。いや、だってこれ……。

 

「いや、これお前が使った箸だろ?ほら、うん……アレだ、アレ……。」

 

我ながらすごくダサい。童貞丸出しもいいところだ。

だって仕方ないじゃん。童貞なんだもの。

え?キモい?サーセン。

 

「あっれー?せんぱいもしかして間接キスとか意識しちゃってますー?顔と耳真っ赤ですよー?」

 

一色はいつものあざとさ全開甘ったるい声で俺を見ながらアイスを頬張る。

 

「う、うるせぇ。お前こそ嫌だろ。俺となんか。」

 

「別に気にしませんて!せんぱいが気にしすぎなだけですよ!ほらほらぁー早く。冷める前に食べちゃってくださいよ!」

 

少し身を乗り出した一色が一色の箸をとって俺に押し付けてくる。

近い近い!なんかいい匂いする!やめて!勘違いしちゃう。

 

「わかった!わかったから近い!食うから離れろって。」

 

俺は一色から箸を受け取り一色の額を押しのける。

 

「むぐっ………ふぅ、最初からそうすればいいんですぅ♩」

 

満開の笑顔ありがとうございます。

さっきのテンパり具合はどこへいったんですか?

すっげえうれしそうなのは気のせいですかね一色さん。

俺が辛さに悶えるのがそんなに楽しみかこんにゃろう。

 

わかったよ、そうくるんなら絶対耐えてやる。

 

この後俺は激辛ラーメンを普通に四口ほど食べた。

辛いの得意でもないのになんでかって?

………色々あって味がわかんなかったんだよ。

 

 

でもまぁこの後俺が水とアイスクリームにお世話になるのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

P.S.ラーメンは全て美味しくいただきました。

 

 

 

end

 

 

 

 

 

 




何かあれば教えてくだされば幸いです。

あと亀更新になるかもですが更新はしていきたいと思っとります。

今回は誠にさーせんした。(ノ∀;`)


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。