旅の行く末 (仮面騎士)
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プロローグ

俺の名前は黒木昴。俺は今まで色々な世界に行ってきた。

最初はなんてことのない単純な話だった。事故で死にその後真っ白な空間に居た。そこにいた女神様に「あなたは、部下の手違いで死んでしまいました。お詫びと言っては何ですが、転生をしてみませんか?勿論特典は付けます。」俺はこの提案を受けた。そのとき頼んだことはたった一つ。転生した世界が終われば次の世界に転生する。これだけだ。今思えば、何故こんな願いをしたのだろうと思う。転生した世界は大変な世界ばかりだった。

最初に行った世界は聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話の世界だった。俺はこの世界で存在しないはずのフェニックスの青銅聖闘士(ブロンズセイント)として女神アテナと共に戦った。

次の世界は戦国BASARA4皇の世界だった。この世界で俺は多くの戦国武将と知り合い時には戦い、時には語り合い激動の時代を生き抜いた。

次の世界は真・三國無双7の世界だった。魏、蜀、呉、晋などの国を回りそれぞれの国の住民や武将、王と知り合い、戦いながら乱世の時代を生き抜いた。

この次の世界は、戦国無双4の世界だった。戦国BASARA4皇の世界とは違う武将達と諸国を放浪しながら知り合い見分を深め合った。

この世界の後、俺を転生させてくれた女神から連絡がきた。「転生を繰り返すのは、あなたにとって、辛いだけでしょう。良ければ、転生をするのでは無く、世界を旅するのはどうでしょう。」。転生を繰り返すことに嫌気を感じていた俺は、快く引き受けた。

神様は俺に世界を旅するための、足を用意してくれた。デスシャドウ級宇宙戦艦アルカディア号の改造艦である。世界を超えるジャンプ機能を兼ね備えており、この機能で様々な世界へ行くことが出来る。おまけに、一人でも操縦できるようにオート機能も備え付けられている。まさに至れり尽くせりだ。

その上他に特典をいくつかくれた。仮面ライダーの変身ツールに、専用のマシンなど多くのものを神様は送ってくれた。そして、何故か知らないが自分の娘である女神見習いの少女を俺のもとに寄越した。はっきり言って何故かは知らないが、この女神様は俺のことを気にかけてくれているらしい。ちなみに、俺のもとに居る少女は、聖闘士星矢 THE LOST CANVUS 冥王神話の世界の幼少期のアテナに似ている。名前は、サシャらしい。

ともかく、今俺は旅の連れを一人連れて、広大な宇宙を旅している。



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1話

軽い振動の後に船が新しい世界にたどり着く。ここは一体どんな世界だろうか?

「ここは、戦姫絶唱シンフォギアGXの世界です。昴さん。」

そう答えたのは、女神見習のサシャであった。修道女のような恰好をしており、どこか神聖な雰囲気を醸し出していた。

「サシャさん、俺はこの世界で何をすればいいのでしょうか?」

そう聞くとサシャがどことなく不満げな表情を見せた。

「昴さん、そんな他人行儀なしゃべり方じゃなくて、普段通り話して下さい。それとサシャでいいです。」

「しかし、見習いとはいえ女神様にそんな口の利き方は、、、。」

サシャは断固としてこれを譲らずとうとう俺も折れた。

「わかったよ、サシャこれでいいか?」

そういうと、サシャは嬉しそうにうなずいた。

「はい。それで昴さんがこの世界でやってもらうことですが。」

サシャは一つのアタッシュケースを取り出しそれを開けた。中には、ベルトが一つと、何枚かの色のついたメダルと銀色のメダルが入っていた。

「これが何か分かりますか?」

「オーズのベルトとメダルだろ?何枚かコアメダルが足りないけど。」

見たところ入っているコアメダルは、タカ一枚、トラ一枚、バッタ一枚、そしてティラノ、プテラ各二枚、トリケラ一枚だけだった。

「実はコアメダルとセルメダルの多くがこの世界に手違いでばらまかれてしまいました。その上コアメダルから何体ものヤミーが生まれてくる可能性があります。その回収をお願いしたいのです。」

「分かった。コアメダルの位置は分かるのか?」

「何枚かは。」

サシャがモニターに映像を映し出した。その中にいくつか光る点があった。おそらくこれらがコアメダルの位置だろう。

「ん?この点は何だ。ものすごい勢いで動いているぞ。」

そのうちの一つがものすごい勢いで動いていた。

「今、光学映像を出します。」

モニターに映ったのは一基のシャトルだった。機体から煙が上がっている。

「サシャひょっとして、、、。」

「はい、ヤミーによる被害かもしれません」

だとしたら大変だ、急いでベルトとメダルを掴む。

「サシャ、今すぐ俺をあのシャトルに送ってくれ!」

サシャは腰にバックルを巻き、指輪を一つ指にはめた。

「今から送ります。ご武運を。」

サシャが指輪をバックルにかざすと、[テレポートプリーズ]の音声と共に魔法陣が自分を包んだ。

 

シャトル内部

「よっと。」

無事にシャトルにたどり着くことが出来た。

あたりを見渡すと一体のヤミーがいた。

「グアー!」

そのヤミーは昆虫系のカマキリヤミーだった。

「早速使うとするか。」

腰にベルトを当てると自動的にベルトが伸長して装着され、オースキャナー・オーメダルネストが出現する。メダルを三枚装填して、斜めに傾けコアメダルを横一直線にスキャンする。[タカ・トラ・バッタ タ・ト・バ!タトバ、タ・ト・バ!]の音声コールと共に仮面ライダーオーズ、タトバコンボに変身する。

「行くぞ!」

仮面ライダーオーズとしての初めての戦闘が始まる。



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2話

「はっ!せいや!」

「グアー!」

カマキリヤミーは思っていたよりずっと強く苦戦していた。それもそうだろう。普通のヤミーはセルメダルで体を構築しているが、このヤミーにはコアメダルが含まれている。手ごわくて当然だ。カマキリヤミーは両手の鎌から複数の刃を飛ばして攻撃してくる。俺はその攻撃を必死にさばいているいる状態だった。このままじゃじり貧だと思っていたとき、衝撃と共に何かがシャトルに取りついた。それと同時に歌のようなものが聞こえてくる。ヤミーは歌のする方向に向けて、鎌の刃を飛ばしながら近づいていく。俺は慌ててその後を追った。

 

シャトル外部

シャトル外部には三人の少女がいた。それもただの少女ではない。聖遺物、シンフォギアを纏った少女達である。彼女たちはシャトルを止めようと必死になって作業をしていた。そのうちの一人、ガングニールを纏っている少女もシャトルを止めようと頑張っていた。(ナスターシャ教授、必ず連れて帰りますから。)その時、突然船内から何かが飛び出してきた。それは、人型のカマキリのような生物だった。突然のことに呆然となるが、カマキリヤミーはそんなことにかまいもせず、鎌の刃を響に飛ばしてきた。慌ててガードしようとするが、時すでに遅く、響は跳ね飛ばされた。

「「響!」」

翼とクリスが叫ぶがもう間に合わない。誰もが無理だと思ったその時、

再び船内から何かが飛び出し、響の手を掴んだ。

「へっ?いったい何?」

響は突然いろいろなことが起こりすぎて、パニック状態になっていた。

「よかった無事で。」

無事を確かめると、改めてカマキリヤミーに向き直る。

「ちょっと待てよ、お前一体何なんだよ。」

「その怪物と何か関係があるのか?」

クリスがこちらに銃口を向けて、翼が刀をこちらに向け訪ねてきた。こんな状態だから仕方ないとは思うが、銃や刀を向けられるのはいい気持じゃ無い。これ以上ややこしくなる前に、カマキリヤミーを倒して帰ろうと思った。

メダルをオースキャナーで再スキャンする。[スキャニングチャージ!]の電子音と共に、バッタ足に変化したバッタレッグで跳躍し、落下しながら空中に発生した赤・黄色・緑の3つのオーリングを潜り抜け「セイヤー!」という掛け声とともに両足蹴りを叩き込む。カマキリヤミーに赤・黄色・緑の3色のOOOの文字が浮かび上がり、爆発した。その際、セルメダルと一緒にコアメダルが1枚飛び出してきた。俺は、すかさずそれをキャッチする。カマキリのコアメダルだった。メダルの回収も終わったので、俺はシャトルから飛び降りようとした。

「ま、待って。」

何故か響に呼び止められた。

「助けてくれてありがとう。」

そうお礼を言った。俺はその言葉を聞き、今度こそシャトルから飛び降りた。



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3話

国連直轄超常災害対策機動タスクフォース『S.O.N.G』潜水艦

 

ここで、男性オペレーターの藤尭朔也が、女性オペレーター友里あおいと、モニターを見ながら、話しこんでいた。

「シャトルの救出任務からもう一か月になるのね。」

「あの事件の後、二課は国連直轄のS.O.N.Gとして再編成され、今は世界各国の災害救助がおもだった任務。こののまま大きな事件もなく定年まで給料もらえたら万々歳なんだけど。あのシャトルの時に現れた、謎の生命体と仮面の人物。今も各国で目撃されている。安心は出来ない。」

「そうね。」

あのシャトルの事件の後、仮面の人物の捜索がいち早く始まったが、収穫はゼロ。世界各地に現れては、謎の生命体と戦い、倒していく。時には、人々を謎の生命体から守り、人命救助などもしている。しかし、現場に調査部隊が行くとすでに姿は消えている。こんなことが何度も起こった。

「仮面の戦士か。響君が言うには、人間らしいけど。」

響たちは謎の生命体と遭遇した最初の人物であり、司令官の風鳴弦十郎にその時のことを話した。響が言うには、仮面の人物は自分を助けてくれた、命の恩人だという。このことから、より一層捜索が強化されたが、未だ発見できていない。

「一体、どんな人なんでしょうか。」

 

横浜とある公園

「ハックシュン!あぁー風邪かな?」

当の本人である昴は、公園で寝泊まりしていた。最初のメダル回収から一か月、今もサシャからの連絡で、現場にテレポートしメダルの回収をしているが、それ以外の時はこの公園で過ごしている。理由としては、ここ最近日本でのヤミー発生率が異様に高いからだ。この一か月で多くのコアメダルを回収した。そのほとんどが、日本である。メダル集めも、ようやく半分といったところだ。

「さて、今日はどの曲にするかな?」

この公園で寝泊まり初めて、数週間になるが、必要最低限の資金集めはしている。野外コンサートで、歌を歌うのだ。観客も日に日に増えてくる。ちなみにギターやドラムは、俺の分身体にやらせている。これは、今までに行った世界で覚えた技だ。顔の形も変えられるので非常に便利である。

「今日はこれにするか。」

選んだ曲は、生前に好きだった曲で、オーズにも関係する曲。Regret nothing~Tighten Up~

「じゃあ行くぞ!」

歌い始めると、見に来た見物客が大いに盛り上がっていた。今日のコンサートも大盛況だった。

 

コンサート後

今日も多くの資金が手に入った。それ使い、何を買おうかと考えていると、サシャから連絡がきた。

「昴さん反応がありました。場所はロンドンです。」

「ロンドンか。久しぶりの海外だな。」

「今送ります。」

魔法陣に包まれ、次の瞬間ロンドンの街に居た。

 



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4話

ロンドンの街についた俺は、早速ヤミーを探した。しかしなかなか見つからない。捜索を続けていると、近くの橋のほうから物凄い轟音が聞こえてきた。

「ヤミーか!?」

急いで現場付近に向かう。近くのビルに上り、橋の様子を見る。しかし、そこにいたのは、シャトルの事件の時に居た人気歌手の風鳴翼と、翼と同じく人気歌手のマリア・カデンツァヴナ・イヴと緑の服を着た執事風の女性だった。この世界のことは一か月の間にあらかた調べておいたが、どうやらこの世界は超常現象がよく起こる世界のようだ。現に今も、風鳴翼がノイズと思われる敵と交戦している。さすがに見たからにはほっとけないが、今はヤミーの捜索中である。ヤミーがこの町に大きな被害を出すのは間違いない。しかし、目の前のことも放っておけない。悩んでいると、ノイズの攻撃で風鳴翼の鎧が分解された。しかし、敵は追い打ちをかけることなく撤退した。とりあえずは一安心だと思った次の瞬間、このビルの壁から大量のピラニアヤミーが飛び出してきた。どうやら擬態機能で姿を隠していたようだ。こんなにも近くにいたのかと、悔しく思う。ピラニアヤミーたちは、橋のほうに向かっていく。

「まずい。」

俺は急いでベルトにコアメダルを装填し、斜めに傾けオースキャナーでスキャンする。[タカ・トラ・バッタ タ・ト・バ!タトバ、タ・ト・バ!]の音声コールと共に仮面ライダーオーズ、タトバコンボに変身する。

「行くぞヤミー共!」

昴は急ぎ橋に向かった。

 

橋の上

「くそっ!なんだこいつらは!」

橋の上では翼とマリアが大量のピラニアヤミーに襲われていた。ちなみに翼は裸ではないが、布一枚という格好である。

「以前シャトルの時に現れた、謎の生命体と似ている。おそらくその仲間だろう。」

ピラニアヤミーの噛みつきをかわしながら翼が答えた。しかし、いくら訓練を受けたシンフォギアの装者とはいえ、この数は多すぎる。

「翼、危ない!」

気を抜いた一瞬の隙に、背後からピラニアヤミーが翼の顔めがけてとびかかった。

(くっ、ここまでなのか。)

脳裏に仲間たちの顔が浮かぶ。その時、だった。

「ハッ!」

何かが翼に迫るピラニアヤミーを切り落とした。それは、メダジャリバーを構えたオーズだった。

「大丈夫ですか。」

昴は急いで翼の容体を確かめる。

「あ、ああ大丈夫だ。」

翼は突然現れたオーズに驚くが何とか返事をした。

「ハー、良かった。」

昴は安堵の息をつくと、再びピラニアヤミーの集団に向き直った。

「二人とも俺の後ろに居てください。絶対に守りますから。」

「待って。あなたは一体何者なの。それにあの生物は何。きちんと説明してちょうだい。」

マリアはオーズのことをまだ警戒していた。突然現れた正体不明の仮面の男を信用しろというのも無理な話だろう。

「マリア、今は言うとおりにしよう。もとより私たちに選択肢はないのだから。」

翼の言葉に、しぶしぶ従うマリア。

「それじゃあ、やりますか。」

コアメダルを変えて、再スキャンする。

[タカ・カマキリ・バッタ]

カマキリにメダルを変え、カマキリソードを構える。

「腕が変わった!?」

オーズの形態変化に驚いている翼たちをよそに、カマキリソードでピラニアヤミーを斬りまくる。しかし、敵は一向に減らない。

「やはり形成は不利か。」

翼がそうつぶやく。それが聞こえたかのように、オーズはメダルを交換する。

「数には数で勝負だ!」

ベルトを傾けオースキャナーでスキャンする。[クワガタ・カマキリ・バッタ ガータガタガタキリバ、ガタキリバ!]の音声コールと共に緑を基調とした昆虫系コンボ、仮面ライダーオーズ、ガタキリバコンボに変身した。

「今度は全身が変わった。一体どうなっているのだ。」

翼たちが混乱する中、ピラニアヤミーの集団に突っ込んでいった。

「無茶よ、無謀すぎるわ。」

そんなマリアの目に信じられないものが映った。オーズがいきなり何十体にも増えて各自に戦い始めたのだ。これこそガタキリバコンボの固有能力、分身生成だ。最大五十体まで自身の分身体・ブレンチシェイドを作り出すことが出来るのだ。その能力を使い、ピラニアヤミーを圧倒していく。ピラニアヤミーは最後のあがきで集結して巨大なヤミーとなった。

「でかい!なんて大きさだ。」

「いくらなんでもこれは。」

翼とマリアははその大きさに絶望したような顔になるが、オーズが近づいてこう言った。

「大丈夫、俺に任せてくれ。」

そう言って頭を優しくなでる。オーズの手のひらから伝わってくる温かさに、何故かその言葉で二人は安心できた。

「さあ、決めるぞ!」

大量のオーズが一斉にメダルを再スキャンする。[スキャニングチャージ!]の電子音声と共に必殺技のガタキリバキックが発動する。ピラニアヤミーが口から巨大なビームを放つが、かわされる。

「セイヤー!」

無数のブレンチシェイドと共に一斉に飛び蹴りを畳み込み、巨大ピラニアヤミーの内部に侵入する。そして、内部から斬りまっくった。たまらず、巨大ピラニアヤミーは爆散した。大量のセルメダルが飛び散る。その中に目当てのコアメダルアあった。

「よっと。」

掴んだコアメダルアはウナギとタコのコアメダルだった。

「回収完了。」

するとサシャから連絡がきた。

「サシャか、メダルの回収は無事に済んだぞ。」

「昴さんすみません。新しい反応が出ました。連戦ですがお願いできますか。」

「分かった、転送してくれ。」

「分かりました、今度は日本の横浜です。」

魔法陣が足元に浮かぶ。

「ま、待ってくれ。聞きたいことがまだ沢山ある。お前は一体何なんだ。」

俺は振り返ると持っていたタカとクジャクのカンドロイドの缶を二人に投げ渡した。

「俺はオーズ、仮面ライダーオーズだ。また危ないことがあれば、その缶を使え。力になってくれるはずだ。」

そういうと魔法陣が俺を包み、転移した。

 



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5話

横浜の沿岸部

着いた場所は横浜の沿岸部だった。早速ヤミーの捜索を開始する。捜索をしている途中で置いてあったライドベンダーにセルメダルを投入し、マシンバイクモードに変形させ乗る。実は、サシャの計らいにより、ライドベンダーを町中に配置しているのだ。怪しい自販機が町中にあるのに、誰も気に留めない。ある意味これはすごいと事だと思う。沿岸部を捜索していると、いつの間にか明け方近くになっていた。その時、前方でヤミーに襲われている、少女達が目に入った。そのうち二人は、風鳴翼が装着いていたのと似たような鎧を身にまとっている。俺は急いで腰にベルトを装着し、コアメダルを装填する。

「変身!」

[タカ・トラ・バッタ タ・ト・バ!タトバ、タ・ト・バ!]仮面ライダーオーズ、タトバコンボに変身し、前の敵に向かっていく。相手は、サメヤミーだ。

 

「調、これはかなりまずいデス。」

「うんキリちゃん。二人を守りながらだときつい。」

月読調と暁切歌の二人は今、サメヤミー達の襲撃を受けていた。サメヤミー達は撤退中にいきなり襲ってきた。複数のサメヤミーは、地面に潜り凄い速さで移動し、攻撃してくる。吐き出してくる、高圧で圧縮された水弾の威力も馬鹿にならない。着弾した瞬間、小規模な爆発が起こるこの水弾に二人は確実に追い詰められていった。そんな二人を見守るのは、布で体を隠した雪音クリスだ。シンフォギアを破壊された彼女はただ、二人の戦いを見ていることしか出来ない。

(くそっ!守らなきゃいけない後輩に守られるなんて。本当は私が二人を守らないといけないのに。)

悔しい思いをするクリスだが、シンフォギアがない以上どうしようもない。今はただ、戦いの経過を見つめていた。

一体のサメヤミーが地面から飛び出し、飛び掛かった。相手は切歌だ。

「キリちゃん、危ない!」

叫ぶ調だがもう遅い。襲い掛かったサメヤミーに切歌は吹き飛ばされた。

元々適合係数が低い二人は満足に動けていなかった。その隙を突かれたのだ。切歌を心配するあまり、意識がそれた調に水弾が命中する。切歌と同じく、調も大きく吹き飛ばされてしまった。

「二人とも!」

慌ててクリスが駆け寄るが、そんな彼女たちにサメヤミーがゆっくり近づいてくる。未だに意識を失っている、保護対象の子にもヤミーが迫る。

(ここまでなのか。)

諦めかけたその時、一台のバイクが彼女たちの間に割って入ってきた。サメヤミー達は警戒して後ろに下がる。クリスはバイクに乗っているのが、シャトルの事件の時の仮面の人物だとすぐにわかった。

「もう、好きにはさせない。」

そう言い、オーズはメダジャリバーを構え、サメヤミー達に向かっていった。



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6話

クリスは突然現れたオーズに驚くが、自分たちを助けてくれたのだと分かると、切歌と調のもとに駆け寄った。

「おいっ!しっかりしろ、大丈夫かお前ら!」

二人のダメージは大したことはなく、すぐに起き上がった。

「うん、なんとか。」

「かなり危なかったデス。」

二人の無事な様子に安堵し、振り返る。そこでは、オーズが多数のサメヤミーに対して奮戦していた。

「今はあいつが勝つのをを信じるしかない。頼むぞ。」

クリスはオーズとサメヤミーとの戦いを、見つめながらそう呟いた。

 

「ハッ!ヤッ!セイヤッ!」

海辺でサメヤミーをメダジャリバーで次々と斬り伏せるオーズ。しかし、水生系のヤミーは、とにかく数が多い。斬っても、斬っても次々と現れる。

「クソッ!これじゃきりがない。」

おまけにスピードが半端なく早く、段々と追い詰められていく。

「速さには速さだ。」

バッタのコアメダルをチーターに変えて、再びスキャンする。

[タカ・トラ・チーター]

スピードに優れたチーターレッグを使い、サメヤミーを翻弄するオーズ。サメヤミーのスピードに負けていない。しかし、数はまだまだ多い。このままでは、じり貧だ。

「水生系のヤミーには、これだ!」

タカのコアメダルを抜き取り、ライオンのコアメダルに交換しスキャンする。

[ライオン・トラ・チーター ラタラター!ラトラーター!]

全身が黄色く輝き、仮面ライダーオーズ、ラトラーターコンボに変身する。変身した際のものすごい熱量で、海辺の水が一瞬干上がる。その光を受けて、サメヤミー達もダメージを受ける。メダルを再スキャンし、必殺技を発動させる。

[スキャニングチャージ!]

全身を輝かせつつ、前方に出現した黄色の3つのオーリングを潜り抜けながら、サメヤミー達に急接近する。トラクローで複数のサメヤミーを斬り裂くガッシュクロスが決まり、サメヤミーはセルメダルをまき散らしながら、爆散した。その様子を見、残ったサメヤミー達は一斉に逃げ出す。

「逃がすか。」

携帯していたトラカンドロイドをトラメカモードに変形させる。そして、巨大化したトラカンドロイドがライドベンダーと合体する。ライドベンダーの前輪が左右に展開し、後輪部を構成し、スペースの空いたフロント部にトラカンが合体して前輪となり、左右に分割したフロントカウルの間にカンドロイドの前足部分がはめ込まれ、虎の顔を模した形状となって、完成する。その瞬間、トライドべンダーが大きく吠える。

「ガァー!」

トライドベンダーにまたがりサメヤミーの追跡を開始する。絶対に逃しはしない。



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7話

俺はライドベンダーに乗って、サメヤミーを追跡していた。サメヤミー達は水弾を放ちながら、逃げ続ける。その水弾をトライドベンダーを操り、右に左に避けながらサメヤミーに接近していく。トライドベンダーの上でメダジャリバーを構え、セルメダルを三枚投入してオースキャナーでスキャンする。[トリプルスキャニングチャージ!]の電子音と共にオーズバッシュを発動する。

「ハッ!オリャ!セイヤッ!」

サメヤミーを次々に両断しセルメダルに還元していく。そして、トライドベンダーでサメヤミーの群れを追い越し、向かい合う。その時、トライドベンダーが大きく吠えた。

「ガァー!」

その衝撃で、サメヤミーが全て地中から飛び出す。それに向かって、メダル状のエネルギー弾を発射し全てのヤミーは爆発した。降ってくるセルメダルの中に、一枚コアメダルが混ざっていた。それを飛び上がってキャッチする。シャチのコアメダルだった。

「回収完了。」

俺は再びトライドベンダーを操りその場を去った。

 

『S.O.N.G』潜水艦

数日後、司令部でブリーフィングが行われていた。

「錬金術師キャロルについての報告は以上だ。次の議題に入る。モニターを見てくれ。」

モニターにはロンドンと横浜の沿岸部で撮影された、オーズの映像が映し出された。

「これは、先日ロンドンと横浜で撮影された映像だ。二人の報告によると、この仮面の人物は自らをオーズと名乗ったらしい。」

奏者達ははモニターを複雑な表情で見つめていた。ここにいる奏者全員がオーズに助けられている。自分達を助けてくれた恩人ではあるが、まだ正体がほとんど分かっていない。しかも、未確認生物とどういった関係なのかもまだ不明だ。そんな皆をよそに議題は進んでいく。

「ロンドンの映像の数時間後にこの横浜での映像が記録された。たった数時間でこの距離を移動することは不可能だ。そして、今までになかったオーズの形状の変化。何らかの異端技術が使われているのは間違いないだろう。」

そして、モニターが別の映像に切り替わる。そこには、今までに確認されたヤミーとセルメダルが映し出されていた。

「この未確認生物については、現在調査中だ。現れる場所や時間の特定もまだできていない。そして、このメダルについて判明していることも少ない。分かっているのは、あの未確認生物の体を構成しているということだけだ。」

メダルは多くの研究者が解析しようと試みたが、成果はほとんど出なかった。錬金術で作られたこのメダルを解析することが出来る者は、誰もいなかったのだ。

「この未確認生物やメダルの事を知るためには、何としてもオーズの事を知らなくてはならない。今後オーズと接触した場合は、何としても奴の身柄を確保するんだ。」

こうして、ブリーフィングは終了した。

奏者達の心に様々な感情を残して。

 



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8話

横浜とある公園

俺は、昨日稼いだお金を公園でホームレスや失業者達に配っていた。少しのお金との明日のパンツさえあれば、生きていける。何故か最近そういった思考になってきた。それに服の趣味も変わった気がする。ちなみに、俺が今着ているのはエスニック調の服だ。お金を配り終わると、一人の少女が近づいてきた。

「ごめん、今日はもうお終いなんだ。また明日来てくれるかな。」

俺はお金を受け取りに来た子だと思い、優しくそう言った。

「嫌ですね、違いますよ。私が欲しいのは…。」

言い終わる前に彼女は、自分の目の前まで来ていた。そして、

「チュッ。」

キスをしてきた。その瞬間、頭から何かが抜けていくのを感じた。しかも凄いスピードで。彼女がキスを終えた瞬間その場に倒れ込んだ。

「思い出ですよ。まあ、もう聞こえてないでしょうけど。それにしても、凄い思い出の量ですね。この分だとミカの分の思い出はすぐにたまるでしょう。」

そう言って、次の相手を探しにガリィはその場を去っていった。

数時間後、昴は起き上がった。

「何だったんだ、あの子は。痛っ。頭が痛い。」

昴は最初に転生する前の記憶をほとんど持っていかれていた。しかし、昴は何度も転生を繰り返してきた。そのおかげで、普通の人の何倍もの思い出を有している。そのおかげで助かったのだ。ちなみに女神に会う以前の記憶は完全に無くなっている。

「あー頭痛っ。くそっ。」

昴は頭を押さえながら、寝泊まりしているテントに戻っていった。

 

深夜の公園

昴は夜まで全然動けなかった。しかし、もうすぐ野外コンサートの時間だ。

「休む訳にはいかないよな。」

すでに観客は沢山来ていた。昴は重たい体を引きずりながら、ステージに向かった。

今日、歌うのはGot to keep it realとRide on Right timeだ。

 

そのころ、公園の近くには立花響と小日向未来がいた。

「ごめんね、気晴らしの散歩に付き合ってくれて。」

「気にしなくていいよ響。」

眠れない響は気晴らしに近くの公園に散歩に来ていた。

(この手で人を傷つけるのが怖い。だけど、私の弱さがみんなを危険に巻き込んだ。どうしたらいいんだろう。)

響は今日の出来事で悩んでいた。未来はそんな響のことを心配している。そんな時、二人の耳に誰かが歌う声が聞こえてきた。

「一体何だろう響。」

「行ってみよう。」

二人は歌声が聞こえてくる場所に向かった。するとそこのは多くの人が一人の歌う歌に熱狂していた。

(凄いこの人。)

響はステージで歌う男の歌声に聞きほれていた。

(特別な力がなくても、歌でこんなに多くの人を幸せにできるんだ。)

二人はその歌声に聞き入っていた。コンサートが終わっても二人はしばらく熱が冷めぬ様子でその場に居た。

「おい、どうしたんだ。コンサートはもう終わったぞ。」

そんな二人に話しかけてくる人がいた。それは、ステージで歌っていた男の昴だった。

「今日のコンサート本当に最高でした。」

「ちょ、ちょっと響落ち着いて。」

響はものすごい勢いでまくしたててきた。そんな響を未来がなだめる。

「ありがとう、そう言われると嬉しいよ。」

そう言い微笑む。その笑顔を見て、二人は赤くなっていた。

(うわー、とってもかっこいい人だ。)

(その笑顔は反則ですよ。)

そんな二人の様子に気づかず再び話しかける。

「俺の名前は黒木昴、それで君達の名前は?」

「私は立花響です。」

「小日向未来です。」

「響ちゃんに未来ちゃんか。それで、二人は何でこんな所に居るんだ。君達みたいな子が出歩く時間じゃないと思うけど。」

その言葉に二人の顔が暗くなる。

「えーっとそれは…。」

口ごもる彼女に昴は優しく問いかける。

「何か悩みがあるなら言ってみて。人に聞いてもらうのともらわないとでは、随分違うよ。」

響は今日あったことの一部を隠し昴に話した。勿論シンフォギアやオートスコアラーの事は内緒にしてだ。

「私、怖いんです。この手で人を傷つけてしまうのが。戦う力があるのに。」

そう言う響に昴は真剣な表情でこう答えた。

「響ちゃん、君は人助けが出来る時に出来なかったら後悔する?」

「当たり前ですよ。」

「手が届くのに手を伸ばさなかったら一生後悔する。それが嫌だから人は手を伸ばすんだ。響ちゃんは、後悔したままでいいの。」

「それは嫌です。」

「だったら自分が後悔しないようにしないと。君の力は誰かを傷つける力じゃない、誰かを守ることのできる優しい力だと思うよ。それに、君には支えてくれる友達もいるんだから。」

昴は未来の方を見てそういった。響はどことなく吹っ切れた顔をしていた。

「ありがとうございます。すいません、急にこんな話をしてしまって。」

「いいよ別に。またコンサート見に来てね。毎週ここでやってるから。」

「それと、良かったら呼び捨てで呼んでください。」

「私もお願いします。」

「分かったよ。気を付けて帰るんだよ。」

そう言い、昴は寝床のテントに帰っていった。

 



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9話

数日後、コアメダルの反応が複数確認されたというサシャからの連絡がきた。昴は思い出を奪われた際のダメージが抜け切れていなかったが、重たい体を持ち上げた。。

「確認されたコアは全部で五枚です。もう、ヤミーが産まれている可能性もあります。行けそうですか?」

「行くしかないだろ。放っておいたら大変な被害が出てしまう。それだけは絶対に阻止するんだ。」

昴はライドベンダーにセルメダルを投入し、マシンバイクモードに変形させまたがった。

「反応はどこからだサシャ。」

「近くの発電施設からです。」

「了解。」

バイクを操り、現場に急行していった。

 

発電施設

この発電施設では今まさに、オートスコアラーとシンフォギア奏者との戦いが行われていた。そしてその場から去る二つの影があった。暁切歌と月読調だ。オートスコアラーとアルカノイズにシンフォギアを破壊されてしまった二人は現在戦闘宙域から離脱中だった。

「ここは二人に任せるデス。」

服を羽織り、調の手を引く切歌。一刻も早くここから離脱したいようだ。

(私たちが足手まといだから。)

「くっ!」

調は悔しそうに自分の力が足りないことを悔やんでいた。その時、二人の上を巨大な影が遮った。上を見上げると巨大な羽を羽ばたかせながらこちらに突っ込んでくるコンドルヤミーの姿があった。二人は慌ててその場から飛びのく。次の瞬間、コンドルヤミーの鉤づめがその場を斬り裂いた。深くえぐられた地面を見て二人の顔が青ざめる。

「調、早く逃げるデスよ。」

急ぎ調の手を引き逃げる切歌。しかし、非情にもコンドルヤミーは二度目の突撃を仕掛けてくる。しかも今度は狙いすましたかのように切歌だけを追ってくる。

「キリちゃん危ない。」

とっさに切歌を突き飛ばす調。しかし、今度は調がコンドルヤミーの目の前にいる状態になる。

「調!」

コンドルヤミーの爪が調を引き裂こうとした時、一台のバイクが突っ込んできた。そのバイクはコンドルヤミーを弾き飛ばすとその場で停止する。

「ここは危ない、早く逃げて。」

ヘルメット越しにそういわれる。顔は分からないが男の声だった。

「貴方こそ早く逃げてください。ここは危険デス。」

「大丈夫。むしろ、あいつに用があってここに来たんだ。」

その人物は腰にベルトを装着し、メダルを三枚挿入する。

「まさか貴方は。」

驚く彼女たちをよそに、ベルトを斜めに傾け腰にあるスキャナーを使ってスキャンする。

「変身!」

[タカ・トラ・バッタ タ・ト・バ!タトバ、タ・ト・バ!]

軽快な音楽が流れ、目の前で彼がオーズに変身する。

「早く逃げて。」

そう言い、コンドルヤミーに向かっていった。残された二人はその言葉に従い、潜水艦に離脱していった。



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10話

コンドルヤミーは自在に空を舞い、隙を見て鋭い鉤爪で攻撃してくる。相手が空中にいる限り、攻撃が届かない。

「だったら、このメダルで。」

コアメダルを交換し、再びスキャンする。

[クワガタ・ウナギ・チーター]

ウナギウィップを使い、コンドルヤミーを捕獲する。そしてカマキリヘッドの雷撃とウナギウィップの電撃を同時に浴びせる。

「グアァァァ!」

たまらず、コンドルヤミーは墜落してきた。そこにチーターレッグで移動し羽に連続蹴りを叩き込む。コンドルヤミーの翼はぼろぼろになり、飛べなくなった。

「よし、一気に決めるぞ。」

「タカ・トラ・バッタ タ・ト・バ!タトバ、タ・ト・バ!」

再びタトバコンボに変身し、メダルを再スキャンする。

[スキャニングチャージ!]

必殺技のタトバキックを叩き込むと、コンドルヤミーは爆発し、セルメダルが辺りに散らばった。その中に、コンドルのコアメダルがあった。それを回収する。

「このメダルはもしかして。」

取り出したのはクジャクのコアメダルだ。

「これでコンボが出来る。どんなコンボになるんだろう。」

そう呟き、次のコアメダルを探しに足を動かした。

 

発電施設

現在、オートスコアラーのミカは撤退し、シンフォギア奏者の響、翼、クリスの三人は、錬金術師キャロルと交戦中だ。ファウストローブを纏い思い出を燃焼させて戦うキャロルに押され気味だったが、合流した響の呼びかけでイグナイトモジュールを制御した三人は、三千体ものアルカノイズを倒し、優勢に立っていた。

「飛べよ」

「この奇跡に」

「「「光あれ」」」

響の渾身の一撃がキャロルに炸裂し、戦いは終わった。キャロルは響に

「その呪われた旋律で誰かを救えるなどど思いあがるな。」

と言い残し、自らを燃やした。悲しむ響。しかし、そこへ乱入者が現れる。

「フッ!」

突然現れたバッタヤミーが響を蹴り飛ばしたのだ。しかも、現れたヤミーは一体ではない。

「アーッハッハハッハ!」

「ウォォオオォ!」

クロアゲハヤミー、ライオンクラゲヤミーも翼とクリスに襲い掛かる。

「くそっ、こんな時に。」

ライオンクラゲヤミーに銃を乱射するクリス。しかし、攻撃の当たった所から、大量のクラゲが現れた。

「なんだこいつら。」

振り払おうとクラゲに触れた瞬間、

「ぐあぁぁぁ!」

電流が流れ込んできた。思わず膝をつく。

「ちっくしょー!」

クラゲに向かって銃を放つが相手は攻撃が当たると分裂し数を増やしていく。

「ウォォォ!」

さらに、ライオンクラゲヤミーは口から熱戦を吐きクリスを追い詰めていく。

翼の方も苦戦していた。クロアゲハヤミーは空を飛びながら、鱗粉を吹き付けてくる。その鱗粉に当たった場所からは火花が散り、ダメージが溜まっていく。何とか相手を地上に引きずり落とそうとする翼だが、クロアゲハヤミーはひらひらと上手く躱していく。

「このままではまずい。」

焦る翼は意を決して大きく跳び上がり、クロアゲハヤミーの翅を切り裂こうとする。しかし、相手は翅を羽ばたかせ、翼を地面に吹き飛ばしてしまう。

「くっ!」

この時、持っていた缶型の何かが転がり落ちたが、翼は気づかなかった。落とした拍子に開いた缶は変形して何処かに飛んで行った。

刀を杖に立ち上がるが、着実にダメージは溜まっていた。

響はバッタヤミーの素早い動きに翻弄されていた。

「フッ!」

並外れた跳躍力で響の攻撃を躱し、緑色の電撃を放出して反撃してくる。

「このー!」

バーニアで加速し、エネルギーを拳に乗せて正拳を放つが、バッタヤミーは跳躍し拳を躱して逆に飛び蹴りを放ってくる。

「トゥ!」

その飛び蹴りに、響は大きくふっ飛ばされた。

「うわぁぁぁ!」

飛ばされた響の元に、翼とクリスが合流する。

「大丈夫か立花!」

「くそっ!何か手はないのかよ。」

強化型シンフォギアでも、相手には通用しない。そんな最悪な現状にある今、どうすればいのか全く分からなかった。

「大丈夫、へいきへっちゃらだよ。」

そう言い、立ち上がる響、しかし立っているのがやっとという状態だ。

「ここであきらめたら絶対に後悔する。そんなの絶対に嫌だよ。」

公園で昴に言われた言葉を思い出す響。そんな響にヤミー達は一斉に攻撃をしてくる。バッタヤミーは電撃を、クロアゲハヤミーは鱗粉を、ライオンクラゲヤミーは熱戦をそれぞれ放った。攻撃はもう目の前だ。誰もがもう駄目だと思ったとき、一つの影がその間に割り込んできた。その影はオーズだった。

[トリプルスキャニングチャージ!]

「セイヤー!」

その攻撃をオーズバッシュで相殺した。

「オーズ。」

「何でお前がここにいるんだよ。」

驚く響たちだったが、オーズはなんてこともないように手に持った缶をこちらに見せてきた。

「こいつが教えてくれたんだよ。」

「それは!」

翼は慌てて缶を探すが何処にもない。この時初めて戦闘時に缶が落ちていたことに気が付いた。

缶を開けると、クジャクのようなフォルムのロボットになった。

「不幸中の幸いってやつかな。まあ、間に合ってよかった。」

そしてヤミー達を見据える。

「こいつらを倒すのは俺の役割だ。それに、新しいコンボを試すいい機会だ。」

トラとバッタのコアメダルを外し、赤いコアメダルに交換する。

「行くぞヤミー共!」

オースキャナーでメダルをスキャンする。

「タカ・クジャク・コンドル タージャードルー!」

全身が赤く輝き炎が上がる。その熱風に、思わず後ずさるヤミー達。光が収まると、そこにはタカヘッドがタカヘッド・ブレイブに強化され腕はクジャクアームに足はコンドルレッグとなったオーズ、タジャドルコンボが立っていた。その他のコンボと一線を画す姿に、響たちは声も出なかった。今、タジャドルコンボとなったオーズと三体のヤミーとの戦いが始まる。

 

 



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11話

「ハーッ!」

オーズは背後にクジャクの羽を模した虹色の翼を出現させ、腕の合図で羽手裏剣、クジャクフェザーを射出する。

クジャクフェザーの攻撃に大量のクラゲヤミーは全て破壊された。

「凄い。」

響が呟く。

背後に折り畳まれた三対の翼、クジャクウイングを展開し、空へ飛び上がる。そして、オーラングサークルから専用武器、タジャスピナーを左腕に出現させる。

「ウォォオオ!」

ライオンクラゲヤミーが熱線を放ってくるが、タジャスピナーで弾き飛ばす。逆に、タジャスピナーからメダル状の火炎弾を相手に向かって放った。

「ハッ!」

その攻撃で、相手のセルメダルが散らばる。しかし、相手のヤミーは一体ではない。

「フッ!」

バッタヤミーがそのジャンプ力を生かして、蹴りを放ってくる。しかし、空を自由に動ける俺には届かない。クロアゲハヤミーもこちらに近づいてくるが、機動力はこちらの方が上だ。メダル状の火炎弾を放ち相手を寄せ付けない。素早い動きで相手を翻弄する。

「一体ずつ、仕留めるか。」

俺は、タジャスピナーに装填されているセルメダル七枚をオースキャナーでテーブルを回転させながらスキャンする。

[ギン!ギン!ギン!ギガスキャン!]

七枚のセルメダルを模したエネルギー弾を回転させながら、クロアゲハヤミーに放つ。クロアゲハヤミーは爆散しながら落下していった。

ライオンクラゲヤミーは口から熱線を撃つが、タジャスピナーで弾き火炎弾を放つ。火炎弾に当たったライオンクラゲヤミーは攻撃で少し後ずさる。続けてオースキャナーでメダルを再スキャンする。

[スキャニングチャージ!]

前方に発生した赤の三つのオーリングを潜り抜け、クロー状に変化して炎を纏ったコンドルレッグで両足蹴りをライオンクラゲヤミーに放った。

「ハー!セイヤー!」

「ウゴァァァ!」

ライオンクラゲヤミーは爆発し、大量のセルメダルが辺りに散らばった。

散らばったセルメダルを四枚タジャスピナーの窪みにはめ込み飛翔する。そして、空中でコアメダルを三枚ベルトから抜き取り、同じくタジャスピナーにセットする。オースキャナーでテーブルを回転させながらスキャンする。

「タカ・クジャク・コンドル ギン!ギン!ギン!ギガスキャン!」

不死鳥を模した炎を纏いタジャスピナーを前に構えバッタヤミーに突撃する。

「セイヤーッ!」

バッタヤミーもオーズに対し跳び蹴りを放って応戦する。

「トゥー!」

オーズとバッタヤミーが空中で交差する。結果はオーズの勝利でバッタヤミーは体を燃やしながら落下、爆散し大量のセルメダルが散らばった。地面に降り立ち、コアメダルを回収する。クワガタとライオン、そしてウナギのコアメダルを回収する。最後のバッタのコアメダルを回収しようとするが、響が駆け寄り、コアメダルを拾い上げてしまった。

「今日こそ教えてください。このメダルは、あの怪物は一体何なんですか。」

絶対に答えてもらうという強い意志を感じた。残りの二人も同様だった。

「そのメダルを詳しく調べてみるといい。今までとは違うことが分かるはずだ。」

バッタのコアメダルは次の機会に取り返せばいいと思い、この場は立ち去ることにした。クジャクウイングを展開し猛スピードでその場を去っていった。

 



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12話

『S.O.N.G』潜水艦

「それで、エルフナインちゃん話って?」

現在、響達シンフォギア奏者はブリーフィングルームに集合していた。

「はい、先日響さんが達が回収してくれたメダルについていくつか判明したことがあります。」

それを聞いて皆に緊張が走る。今まで分からなかった、メダルついてようやく手がかりを掴んだのだ。これで少しは敵について知ることが出来る。エルフナインは続けた。

「まず、このメダルは錬金術により作られていることが分かりました。残念ながら、僕が知っている知識ではほとんど解析できませんでしたが。」

「錬金術!もしかして、キャロルちゃんと関係が?」

「いいえ、僕が知っているキャロルの計画にこれは必要のないものです。他にも、錬金術を扱える人物がいるのかもしれません。」

その言葉に響は少し安心したようだった。

「今までに見つかった銀色のメダルと比べて、内包されているエネルギーは桁違いです。もう少し詳しく調べればもっと何か分かるかもしれません。」

「そうか、引き続き調査を頼む。」

弦十郎の言葉で、会議は終了した。

 

「みんな、この後予定ある?」

響がみんなに呼びかけた。

「特には無いが」

「私も」

「私もデス」

皆予定は無いようだった。

「それじゃあこれからみんなで知り合いのコンサートに行きませんか?この前知り合った人なんですけど、とっても歌が上手いんですよ。」

「ほぉー、立花がそこまで言うならよほどの人なんだな。」

「付き合ってやってもいいぜ、この馬鹿が言う奴がどんだけ歌が上手いかこの目で確かめてやる。」

他の皆も乗り気だった。

「あのー、僕はこのメダルの調査が、、、、。」

「たまには息抜きも必要だよエルフナインちゃん。」

結局響に押し切られ、エルフナインも同行することになった。

 

横浜の公園

今ライブの準備を進めている。見に来る客は日に日に増えていき、今では数え切れないほどになっている。

「ただの資金集めのつもりだったのに、どうしてこうなったんだ?」

本人には自覚はないが、彼の歌はとても素晴らしくネットでちょっとした話題になっていた。電子機器を持っていない昴がその事実を知ることは無いだろう。

「今日も沢山来たな。」

ステージの脇から外を見る。ものすごい数の人がコンサートが始まるのを今か今かと待っている。

「それじゃ、今日も頑張りますか。よろしくな。」

昴は自分の分身に声を掛ける。

「ちっ!。仕方ねえな。」

少し口の悪いこの分身と今日は二人で歌う。曲名は Time judged allだ。

 



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13話

分身と歌い始めた。

「「Time judged all」」

二人の歌に会場中の人が盛り上がる。物凄い熱気だ。歌っている途中で響と未来がいるのが見えた。辺りには友達らしき女の子が何人か居た。

(楽しんでくれてるかな。)

そんなことを考えながら、コンサートを続けていった。

 

「やっぱりすごいね昴さんは。」

「うん、そうだね響。」

響と未来はコンサートを存分に楽しんでいた。それはほかの奏者達も一緒である。有名人の翼とマリアは変装しており、サングラス越しから歌う昴達を見つめている。

「凄い、想像以上だ。ここまでの者を今まで知らなかったとは不甲斐無い。」

「ええ、私たちの歌とは、また違った力強さがあるわね。」

世界で活躍する二人から見ても、昴の歌声は素晴らしかった。

「スゲーな、この歌。何ていうか、自然と盛り上がってくる感じだな。」

「歌がとっても上手デス。」

「うん、私もそう思う。」

クリス、切歌と調もそれぞれコンサートを楽しんでいた。

「どうエルフナインちゃん。コンサート楽しんでる?」

響がエルフナインに話しかけた。

「知識としては知っていましたが、実際に体験するのとは全然違うんですね。凄く楽しいです。」

そしてコンサートはいよいよクライマックスを迎える。

「「Time judged all」」

コンサートは大成功に終わった。

 

「昴さーん!」

コンサートの後、昴のところに響達がやってきた。

「ん?響に未来じゃないか。それと、、、。」

「あぁすみません。今日は友達と一緒に来ました。」

「風鳴翼だ、よろしく頼む。」

「雪音クリスだ、よろしくな。」

「マリア・カデンツァヴナ・イヴよ。」

「暁切歌デス。」

「月読調。」

「エルフナインです。よろしくお願いします。」

全員が自己紹介を済ませた。

「黒木昴だ。今日はコンサートに来てくれてありがとうな。」

「嫌、こちらこそ素晴らしい歌が聞けて良かった。」

「えぇ、素晴らしい歌声だったわ。」

「有名な歌手にそう言ってもらえて光栄です。」

昴は最初に奏者に会った時から、全員の情報を集めており、二人が有名な歌手であることも知っていた。

「とっても楽しかったデス。」

「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ。」

他の少女達と仲良くしゃべる昴を見て、響と未来は少し機嫌が悪くなっていた。そんな時、悲鳴が上がった。

「キャーーーー!」

突然の叫び声に驚き急いでそちらに目を向ける。そこには巨大な亀のヤミー、リクガメヤミーがコンサートに来ていた人たちを襲っていた。

「まずい、みんな早くここから逃げるんだ。」

人目があるところではシンフォギアを纏えないので、響達も非難するふりをして人目がないところに行くことにした。

「昴さんも早く逃げてください。」

響はそう言い残し、その場から遠ざかって行った。

「サシャ、反応は無かったのか?」

急いでサシャに連絡する。

「すみません、突然現れたのでこちらも反応を掴み切れませんでした。そのヤミーからはコアメダルの反応が複数あります。気を付けてください。」

「分かった。」

腰にオーズドライバーを装着しメダルを三枚装填し、オースキャナーでスキャンする。

「変身!」

[タカ・トラ・バッタ タ・ト・バ!タトバ、タ・ト・バ!]

タトバコンボに変身し、リクガメヤミーに向かっていった。



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