ジョークが好きなアイツが幻想入り (ゴッサム)
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死そして目覚め

今回、バットマンの二次創作が少ないので思い切って自分が作ろうと投稿しました
処女作なので拙い部分やおかしい部分も多々あると思います。それでもご意見、ご感想、叱咤激励お待ちしております。


「面白いことを教えてやろうか?」

 

目の前にいる男は、そんなことを言った

もうすぐ死んでしまう俺への手向けの言葉かもしれない。

 

この俺に対してジョークだって?ハハッ、最高じゃないか

 

続けて男は言う。

 

「お前がどれだけの悪行を働こうと俺はお前を救う」

 

最初は聞き間違いだと思った

だが、コイツはジョークを言うような男じゃない

俺とお別れになるっていうのに、なんて素敵な事をいうのだろうか!

これだ!これこそ俺の求める男の姿だ!

 

「そいつはなかなか・・・笑えるね」

 

だから俺は賛辞を送ることにしよう

こいつが自らの矛盾に苦しむように、そしてその矛盾を抱えていけるように

その姿を拝むことが出来ないことが残念だ

まぁ、最高のジョークを聞けただけ満足しておこう

 

そうして俺は笑いながらこの世を去ることになった

 

 

 

―――はずだった

 

 

 

意識があるという自覚を持った時、死んだ男はニヤリと笑った

 

ここは地獄かな?地獄とはどんな混沌に満ちた世界なのだろうか!?

 

歓喜に似た感情を抱き、しかし瞬時に冷静になる

 

まぁアイツがいないんじゃ、面白くもないな・・・

 

男はゆっくりと目を覚まし、体を起こす。

辺りを見回してみると霧が濃く状況がハッキリしない。ただ小舟の上に乗って川を渡っていることが分かる

 

「おっ、やっと目を覚ましたかい」

 

突然声をかけられ、男は驚く。

霧でハッキリとしないが船頭にあるその姿は彼のパートナーに似ていたからだ。・・・もっともパートナーと見ていたのは向こう側であり、男は駒の一つにしか思っていなかったが

 

「ハーレイ?何してるんだ?そんなところで。もしかしてお前まで死んじまったのか?」

 

それでも長年連れ添った相方だ。自分を追って自殺したかも知れない、という考えがすぐに思いつく

 

「お前まで死んでしまってどうするんだ!?お前は俺様の名を広める役目があるだろう!そして俺様の偉大なる墓を立てて、奴を苦しめてその様子を墓に刻み込むんだ!それなのにお前は・・・」

 

長々と文句を言い続けるつもりだったが、自然と口を止める。やがてハッキリと見えてきたその姿は彼女とは別人だったからだ

 

「なぁ、そのはーれいって人がアンタにとってどういう人か知らないけどさ、自分を追って死んだ人間をそんな風に言うのもちょっとヒドイとアタイは思うよ」

 

大きな鎌を持った女は呆れた顔をしてこちらを見ていた

 

「こりゃ失礼。何分アンタによく似た女だったから間違えるのも無理はないってもんさ。そうだ!あんたもメイクするかい?そうすりゃ間違えないさ!」

 

男は小粋なシャレを効かせたところで、女を観察する

 

地獄の番人にしては迫力があまりにもないし、気軽に話しかけてくる点もマイナスだ

どうやら俺が想像していた地獄よりも現実の地獄はずっと退屈そうだ

 

その退屈を紛らわすため男はしゃべり続ける

 

「で、ここは地獄なのかい?地獄にしちゃ随分つまらない所だな。俺はもっとこう・・・火がドバッーと出たり、罪人どもの悲鳴で音楽を奏でてる連中がいたり、どこを見ても血で染まってるような場所を妄想してたんだが・・・、まぁ生きてる時でもそうだったがね」

 

身振り手振りで大げさに話し、ククッと笑う

その様子を見ていた女もため息を吐いた

 

「あのねぇ、アンタが思ってるほど地獄はそんなに優しくないし、ここは地獄でもない。ここはこの世とあの世の境目、三途の川だよ。アタイは仕事でアンタをあの世に連れていく最中なのさ」

 

「へぇ、境目ねぇ。そうすると貴方様は僕を連れて行こうとする死神様かい!鎌も持ってるし間違いない!頭が骸骨じゃないのはキュートじゃないが、その赤い髪は好みだ。」

 

矢継ぎ早に出る男の軽口に女は頭を抱える

 

「ヘイヘイ、どうしちまったんだ?まさか、お腹でも壊したのか?そんな時はこれだ!このコサージュから出る素敵なガスを吸い込むんだ。そうしたらあ~ら不思議!誰でもスマ~イル!問題があるとすれば笑いすぎて天に登っちゃうぐらいだな?そんな奴いなかった?いたら俺の殺した連中だ!」

 

大声で笑う男に対して逆に女は顔しかめる。その顔を見た男は更に笑みを深めた

 

「アンタ、生前じゃ物凄い悪党だったんだね。でも安心しなよ。アンタは今から裁判にかけられるんだ。そこで天国と地獄に行くか判決が下されるんだ。ま、アンタみたいな悪党は全員地獄にいったから、きっとアンタもそのお仲間入りさ」

 

女はそう言って背中の鎌をこちらに向けてきた。どうやら男の発言が女の気に触ったらしい

しかし、男はまったく物怖じせず女をまっすぐ見て笑う。

やがて男は笑みの中から想像もつかないような低い声を発した

 

 

 

「Why so serious?」

 

 

 

これは幻想郷に現れた狂人―ジョーカーの冗談に満ち溢れた物語である。





はい、ということでバットマンのジョーカーを幻想郷にぶちこんでみました。
元々バットマンが大好きでそのジョーカーの魅力に当てられた内の1人です。
ジョーカーという人物は存在自体が難しく。性格、出自も出典ごとに異なるので
「こんなのジョーカーじゃない」
という人もいると思います。ジャック・ニコルソンやヒース・レジャー、マーク・ハミルのジョーカーはどの作品も素晴らしく狂気の魅力が出ていました。
この作品のジョーカーもベクトルは違えど「こんなジョーカーもいるんだな」という気持ちで見ていただけたら幸いです。
そんなこと書きながら冒頭はゲーム「アーカム・シティ」から引用してるのは許してください


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ジョーカーと死神

という訳で第二話です。思いっきり見切り発車&ど素人なので文章がメチャクチャかもしれませんが、ジョーカーの魅力を皆さんに届けられればと思います。


死神・小野塚小町は困惑と驚愕の中にいた

その理由は目の前にいる緑の髪と紫のスーツを着た狂気の男・ジョーカーの存在

鎌を目の前に突きつけられてなお、その目に恐怖を浮かべず、逆にこちらを挑発するかのようにおどける

この男は死神をまったく恐れていないのだ

 

厄介な客を乗せちまったねぇ・・・

 

小町は表情一つ変えず狼狽していた

 

映姫様に見つかって働こうと思って仕事を始めたらこれだよ。

やっぱアタイはサボってた方が世の中平和なんじゃないかい?

 

自分の上司に頭の中で愚痴を漏らし、改めて男を観察する

男は未だに此方を笑った顔で見つめていた

 

コイツ・・・自分が死んだっていうのになんでこんなに嬉しいそうなんだい?

死ぬ事が目的?いや、コイツはそんなタマじゃない。

死後の世界を見れたから?そんな奴いるのかい?

アタイが死神だから?・・・考えたくない

 

小町にはジョーカーという男が考えれば考えるほど不気味に見えた。

「汗一つ流したら負け」そんな考えが浮かんでくる。

しかし、そんな小町見透かしているのか、ジョーカーは笑った口を大きく開けた

 

「ヘイ、死神ガール!いまからこのデッカイ鎌で俺に何しようってんだい?脅しのつもりならちょっと切るくらいが丁度いい。こんな風にな!」

 

瞬間、ジョーカーは己のスーツの内ポケットに手を入れ小町に迫った。

死神の鎌の大きさゆえ小回りが効かない小町はジョーカーの接近を許してしまう

 

しまった!

 

小町は油断しているつもりは無かったし、するつもりも無かった。

ただ何が起こったのか理解できなかった

ジョーカーはただの人間である。空を飛ぶこともできないし、手から光線を撃つこともできない。正真正銘の『人間』なのだ

その人間が死神である小町に『反撃』を行った

人間が神に挑んだのだ

小町は無意識にジョーカーを人間の枠に嵌めてしまっていた

それがこの状況を許したのである

無論小町に普通の人間の武器は効かない

しかし、この男の出した殺気に怯んでしまった

 

やられる!

 

そんなことは小町も分かっている。分かっているが相手はジョーカーである。この男なら『何をしても不思議ではない』そう思わせる何かがこの

男にはあった

その結果ジョーカーの攻撃が当たる瞬間、小町は目を瞑ってしまった

 

・・・・・・

 

しかし、いつまで経っても痛みはやってこなかった

恐る恐る小町は目を開けると、まっすぐジョーカーの腕は自分の頬に伸びていた

小町はその腕を辿るように視線を動かす。やがて手の部分まで見てみると、そこには一枚のカードが差し出されていた。

それは外界の絵札だった

 

「これは・・・」

 

小町はゆっくりカードを手に取り、笑顔を絶やさないジョーカーに尋ねる

 

「俺の名刺だ。こんなキュートな女の子に相手してもらえるんだ、社交辞令って奴さ。それに死神が俺の名前を覚えるってのもなかなか気分が良い。それとも何かい?こんな虫けらの様な男の名前を知らないほうがいいかい?そいつぁ、人生損してるぜ!」

 

ククッと笑うジョーカーとは対称的に小町は言いようのない気分になっていた

 

アタイにはこの男を測りかねない

 

小町のジョーカーに下した人物像が決定された瞬間だった。おどけた態度からさっきの攻撃まがいまで、小町はこの男の考えている事が理解できない

いや、理解しようとすればするほど遠ざかっていく。

しかし、これだけはハッキリ分かる。

 

コイツはこの状況を楽しんでいる

 

常人ではありえない思考、まさに狂気の体現とも呼べる

小町の警戒度は上昇を続けていた

 

「どうした?殺さないのか?アンタなら俺を殺すの簡単だろう?ん?俺はもう死んでるから殺せないのか?んん?」

 

相変わらずジョーカーはフザケる事を止めない

小町は覚悟を決めるように話す

 

「アンタは厄介だね」

 

「よく言われる。耳タコだ」

 

「やっぱりアンタは地獄行きだよ・・・」

 

やがて二人を乗せた小舟は岸へと辿り着いた

 




はい、以上が第二話です。
ちなみに外界の絵札はトランプのジョーカーです。
次回は映姫さまのドキドキジョーカー裁判を出せたら・・・いいなぁ
なにかと超人的なジョーカーですが、原作でも余程のことがないかぎり本作同様人間です。ただ恐ろしいまでの精神力や知能を持っています。バットマンと表裏一体と呼ばれる所以の一つですね。
ジョーカーの性格は「あらゆる多重人格を超越した超自我」という訳の分からんことになっています。あらゆる過去がありそれぞれがジョーカーを形作ってる
そんなところもジョーカーの魅力の一つです


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裁かれる者。そして・・・前編

初めて感想を頂きましたが、予想以上に嬉しく自分でも驚いています。これからも皆さんのご期待に添えるよう頑張ります

今回は前後編となります


目的地に着いたであろう二人を出迎えたのは、小町にとっては見慣れた職場、ジョーカーにとっては初めて見る建物だった

 

「フム・・・、これぞジャパニーズジンジャだな。俺以上にうるさい女記者の書いてる雑誌でみたことがる。あの建物にはきっと大量のニンジャがいるに違いない!」

 

「へぇ、アンタ以上にお喋りな奴がいるのかい?」

 

「いるさ、あいつらに比べたら俺は謙虚なほうだ」

 

シュシュッと手裏剣を飛ばすフリをするジョーカーとそれを見つめる小町。

一見和やかな風景に見えるが、小町の胸中には複雑な思いを抱いていた

 

果たしてこの男を映姫様に会わせてよいのだろうか?

 

当然の疑問であった。彼女の上司である四季映姫・ヤマザナドゥは閻魔であり、幻想郷の死者の魂の全ての行き先を決定する裁判官なのだ。

彼女がこの男を一目見れば「白黒をはっきりつける程度の能力」によってジョーカーを地獄行きにすることは非常に簡単だ。

問題はその過程、ジョーカーがタダで地獄行きに納得する訳が無い。何かしらの危害を加えてくる可能性がある。

次に映姫がジョーカーを視た影響も視野に入れなければならない。能力によって映姫も常人とは違う目線で人間を視る。通常の感性でもこの男が偽りない狂気だと分かるが、彼女が視てしまったら違うモノが視えるかもしれない。もしそれが彼女に悪影響を及ぼしてしまったら・・・

小町は考えに考える

しかし、その考えを見透かしたように道化師は宣言する

 

「さぁ!いよいよこのジョーカー様が裁かれる瞬間だ!もし俺が天国に行こうもんなら最高のジョークだよなぁ・・・、おっと、裁判においてもっとも重要なのは裁判官の心象だ。これはいけない、忘れるところだった。なぁ!」

 

何を言ってるんだコイツは。

本当に裁判を受けるつもりなのかい?まさか・・・逃げるつもりなのかも

 

有り得なくはない、今までのジョーカーの言動から何をしでかしても可笑しくはない。

ここで小町は間違った選択をしてしまった。この男はきっと逃げるだろうと判断したのだ。

ジョーカーをよく知っている人間はこう言うだろう

 

「奴は我々が考えうる最悪の・・・その一歩先を行くだろう」

 

と。

 

「挨拶をしなくちゃぁな」

 

「え?」

 

小町は聞き間違いだと思った

 

「なぁに、きっとお堅い奴なんだ!頭にデカイ穴でも開ければ風通しが良くなって俺様の声もよく聞こえるだろう!」

 

ジョーカーは映姫を殺すつもりだったのだ

小町がそう解釈し、急いでジョーカーを止めようとすると既に閻魔庁に入っていく奴の姿が見えた

 

「喜べよ死神ガール。お堅い頭の上司が消えるんだ!明日からノビノビと仕事に励むこったな!」

 

別れの挨拶と言わんばかりに扉を閉めるジョーカー

 

「・・・っ!」

 

油断した!どうしてアタイはまた油断したんだ!?

 

駆け出す小町だったが、その頭は憔悴と後悔に支配されていた。舟の上といい小町はジョーカーに対する危機感を持っているつもりだった。だが、これほどまでとは思いもしなかった。

小町ここで愕然とした。

 

これがアイツのやり方って訳かい?

 

気づかぬ内に他人の心の隙間に入り込み、愚者を装い狡猾さや残忍さをひた隠す。

まさに邪悪な道化師のような男

小町はこの瞬間、正しくジョーカーの一端を理解した

 

だったら出し惜しみは無しさ!

 

小町は己の「距離を操る程度の能力」を発現させ、ジョーカーとの距離を一気に詰めようとする!

 

しかし

 

小町の眼前に男は無く、ただ闇が広がった。

どこからともなく声が聴こえてくる

 

「ウフフ、駄目よ。彼にはやってもらわなくちゃいけないことがあるの」

 

その声は聞き覚えのある声だった

小町は唸るように声を搾り出す

 

「八雲・・・紫・・・」

 

~~~~~~~~~~~~

 

てっきり追ってくると思ったんだがな

 

ジョーカーは背後の気配に注意しつつ、閻魔庁の廊下を駆ける

 

さぁて、裁判官様ってのはどの部屋にいるのかな?

 

一見、ジョーカーという男は行き当たりばったりの犯罪者かのように思えるが、実際はそうでない。綿密な計画を立て、準備を万全に整えた後に犯罪を行うのだ。

「犯罪界の道化王子」

の異名は伊達ではない。

そのジョーカーが行き当たりバッタリで行動を起こしたのは理由がある

第一に、彼は自分が死んでいると知覚しているので半ば自暴自棄になっている節がある

第二に、非現実的な場所であるために十分な物資が調達できない

第三に、使える駒がいない

そして最後に、張り合う相手がいない

もし、これらの問題が解消されるのであれば、彼はどんな地であろうと大手を振って犯罪を起こすだろう

だが、現実はそうではない

現在の彼は己の本能の赴くままに動いているのだ。

やがて、彼はとある少女を見つけた。見る限り10歳前後、帽子とスカートの裾から人間ではない耳やら尻尾が見えるが些細な問題だ

 

こいつは運がいい

 

「そこのスウィートベイビー、実はおじさん道に迷っちゃったんだけど、ここの一番偉い人がどこか教えてくれるかい?Jおじさんの一生のお願いだよ。ほら教えてくれたらキャンディーも上げよう」

 

甘い声を出し、ナイフを後ろ手に隠しながら目的地を聞き出す

 

「え、偉い人ならそこにいるよ」

 

困惑した様子の少女が震えながら声を出し近くにあった扉を指差す。

どうやら知らず知らずの内に近づいていたらしい

 

「そうかい、そいつはありがとよ。おっと約束のキャンディーを上げなきゃな!キャンディーもいいけど・・・スペクタクルなショーはもっといいぜ!」

 

そう言ってジョーカーは少女の首を引っ掴み隠していたナイフを突きつける

 

「おっと勘違いするんじゃないぞ。いわゆる人質って奴で別におじさんはロリコンって訳じゃないんだ。ただこれから偉い人と話すんだけど、お嬢ちゃんがいてくれたら会話が弾みそうだから、さ!」

 

言い終わると同時に扉を蹴破る。中に入るとそこには人質と同い年くらいの少女が裁判席に座っていた

 

「何なんですか貴方?部屋に入る時はノックをしてから入りなさい」

 

「ああ?こりゃ何の冗談だ?」

 

かくして、四季映姫・ヤマザナドゥによるジョーカーの裁判が歪な形で始まった




今回は本作と今までのジョーカーの説明を少し入れてみました
しかしこの小町は油断しまくりだなと書いてて思います
でもジョーカーが相手だと殺したいほど憎いのに、その憎悪をベクトルを別の相手にズラされるんですよね(映画『ダークナイト』のハービー・デントとか)
本作のジョーカーは私が未熟なのでまだまだですが、回を重ねるごとに進化させていきたいと思ってもいます


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