東方混沌記 (ヤマタケる)
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第1章
第0話 過去の悲劇


「おぉ、なんて可愛らしい子なんだ!」

 

時は16年前、忘れ去られた人達が訪れる場所、幻想郷。その中の人里ではある一組の夫婦に新たな命が誕生した。

 

「見ろ!僕達にも子供が出来たんだ。」

 

「オギャア、オギャア!」

 

「あぁ、なんて可愛い女の子なんでしょう!折角だからいい名前をつけてあげましょうよ。」

 

「僕が決めていいかい?」

 

「えぇ、構いませんよ。それで、名前は何と言うのですか?」

 

「ユニだ。とても女の子らしい名前だろう?」

 

「あなた、これからは私達がユニを大切にしていきましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがそんな幸せは崩れていった。10年後、夫が急死した。それが信じられなかったのか、妻はショックを受け、遂には部屋から出なくなった。10歳になったユニは母親の様子を見ようと部屋をノックした。

 

「お母さん、出てきてよ。」

 

「・・・・」

 

彼女が呼び掛けても返事はなかった。そしてユニは再び口を開いた。

 

「私だってお父さんが死んじゃったことは信じたくないよ。けど、これが現実だから仕方ないじゃない。だからこれからは私と一緒に生きよう。」

 

そう言うとユニは部屋の扉のノブに手をかけた。どういう訳か、鍵は開いていた。部屋の中を見た瞬間、彼女は思わず悲鳴を上げた。

 

「いっ、いやぁぁぁぁぁ!」

 

そこにあったのは・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無惨な姿をして息絶えた妻がいた。彼女の右手には血が付着しているナイフが握られていた。そして首元にはナイフで刺した傷跡が残っていた。

 

「お、おか、おかあさ・・・うぷっ!?」

 

部屋には死臭と血の臭いが漂っていたため、ユニはその臭いを嗅ぎ、耐えきれなくなりその場でげぇげぇと唸りながら吐いた。そして言った。

 

「どうしてみんな死ぬの?そんなに私のことが嫌いなの?それともお母さんはお父さんの死をそんなに受け入れたくなかったの?どうして、どうして・・・」

 

彼女の目からは大量の涙の粒が零れていた。と、その時だった。突如彼女の背後に目玉だらけの世界、スキマが現れた。そしてそこから美しい姿をした女性が姿を現した。そして泣くユニに言った。

 

「可哀想に、まだ幼いあなたが大切な家族を失ってしまうなんてね。」

 

突如背後から声がしたため、ユニは後ろを振り返る。そしてそこにいる女性に言った。

 

「・・・あなたは、誰?」

 

「私の名前は八雲紫、こう見えてもスキマ妖怪よ。」

 

「スキマ妖怪が私に何の用なの?」

 

「あなたにはやってもらうことがあるの。それは幻想郷の守護。」

 

「幻想郷の守護?私に出来るというの?」

 

「あなたにしか出来ないことよ。あなたは『あらゆるものを呼び寄せる程度の能力』の持ち主なんだから。」

 

「あらゆるものを呼び寄せる程度の能力?」

 

「そう、それがあなたの持つ能力。あなたは気がつかなかったようだけど、あなたは生まれつきその能力を持っていた。それこそ、幻想郷を守護するのに必要不可欠な存在なの。」

 

「私が、この世界を?」

 

「私についてきなさい。あなたの進むべき道を教えてあげるわ。」

 

そう言うと彼女は再びスキマを開いた。そしてユニに手招きするとそのままスキマの奥へ入っていった。ユニは少し不安だったが、それでもスキマの中へ入っていった。

 

 

 

そして、ユニの幻想郷での生活が幕を開けた。



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第1話 出会い

スキマ妖怪、八雲紫と共に過ごしてきたユニはもう16歳になっていた。そんなある日、紫がユニに言った。

 

「忘れてたけれど、あなたにはたくさんの人達に会ってもらうわよ。まずは色々な人達のことを覚えないとね。」

 

「紫の知り合いと?いいけど、まずは何処に行くの?」

 

「ついてきなさい、案内してあげる。」

 

そう言うと彼女はスキマを開いた。そしてユニと共にその中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキマから出た場所はごく普通の神社だった。そして二人は中へ進んでいく。と、紫がユニの肩を軽く叩きながら言った。

 

「賽銭箱にお金を入れてきなさい。」

 

「え?ちょっと待って。ここに来て急に!?」

 

「そうよ。そうしないとここの巫女が凄い形相でやって来るからね。」

 

「そ、そんなに怖い巫女なんだ。じゃあ入れてくるわね。」

 

そう言うとユニはゆっくりと賽銭箱の近くに寄った。そして賽銭箱の前に立った時だった。突如神社の中から気配を感じ、ユニは中を見る。そこにはじっと彼女を見つめる巫女がいた。少し怯んだものの、それでもユニは賽銭箱に小銭を入れた。

 

「ヨッシャアァァ!」

 

突然神社の中から巫女が現れ、賽銭箱の中にある小銭を手にした。この光景にユニは呆然と見ているしか出来なかった。そんな彼女の元へ笑いながら紫が寄ってきた。そして言った。

 

「フフフ、相変わらずお金には目がないのね、霊夢は。」

 

「れ、霊夢?」

 

「何、私がおかしいと言うの?」

 

「ねぇ、紫。お金に目がないってことはつまり・・・」

 

「そう、霊夢は貧乏人なのよ。堕落している性格じゃあ一生賽銭を入れてくれる人はいないでしょうね。」

 

「紫、それは失礼よ。それに、そこにいるあんた誰?」

 

「あぁ、自己紹介してなかったわね。私の名前はユニ。」

 

「ユニね、覚えとくわ。それよりもあんた、何か面白いこと出来ないの?」

 

「面白いこと?そうねぇ、こんなのはどうかしら?」

 

そう言うとユニはスペルカードを取り出した。そして発動した。

 

「呼符コールザエニー」

 

そう言った瞬間、彼女の左側に小さな渦が現れた。そしてその中から出てきたものに霊夢は思わず奪おうとした。

 

「それよこせぇぇっ!」

 

「えっ、ちょ、何!?」

 

だがユニの方が反応が速かったため、ユニはそれを上に上げた。空振りした霊夢はそのまま5m程勢い余って飛んだ。そんな彼女にユニは言う。

 

「ちょっと、急に飛んで来たらびっくりするじゃない!本当にあなたって人はお金に目がないのね。」

 

そんな彼女の左手にあったものは、万札の束である。束の厚さを見るとおそらくは200万円はあった。それを欲しがる霊夢はまだ札束に目を向けていた。そして再び奪おうとした。だがその瞬間、ユニは札束を紫に預けた。そしてそのまま紫は札束をスキマの中へ入れ、すぐに閉じた。

 

「ああっ!私のお金がぁ!」

 

突然札束が消えたため、霊夢はその場で崩れてしまった。そして立ち直ったのか、霊夢は突如として起き上がり、ユニの肩を掴みながら言った。

 

「あんたの能力、言ってもらおうかしら?」

 

「べっ、別にそんなに慌てなくてもいいでしょ?まあ、言うけど私の能力は『あらゆるものを呼び寄せる程度の能力』よ。つまり、物であろうと生物であろうと呼び寄せることが出来る。」

 

「へぇ、不思議な能力ね。でも、あんたに説得すればいつでも札束を出してくれるんでしょ?」

 

「いつでも札束を出せるけれど、堕落しているあなたには出さないわよ。」

 

「チッ、ケチな女ね。」

 

「さて、ここからは霊夢に案内してもらいなさい。私は眠くなったから寝るわね。おやすみ~♪」

 

「あっ、ちょっと紫!?」

 

ユニは紫を追おうとしたが既に彼女はスキマの中へ入っていった。そして深い溜め息を吐いた霊夢はユニの肩を軽く叩いて言った。

 

「魔法の森に行くわよ。そこに私の友達がいるから。」

 

「へぇ、どんな人なのか楽しみね。」

 

そして二人が魔法の森へ向かおうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい霊夢、お酒はまだかぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如背後から声がしたため、二人は後ろを振り返る。そこには猛スピードで霊夢に向かってくる鬼の少女がいた。そして少女は霊夢に飛び付いた。ユニはそれを唖然と見ていることしか出来なかった。

 

「ちょっと萃香、今日は我慢って言ったじゃない。」

 

「そう言って霊夢は1週間もお酒くれてないんだよ!?もう我慢出来ない!」

 

「ね、ねぇ霊夢。この子は?」

 

「あぁ、言ってなかったわね。こいつは伊吹萃香、お酒好きの鬼よ。」

 

「お酒好きねぇ。幻想郷には欲に満ちた人ばかりいるのね。」

 

「おいっ、そこの女!私にお酒を買え!」

 

「わっ、私!?めんどくさいわね。」

 

そう言いながらも彼女はスペルカードを取り出し、発動した。

 

「呼符コールザエニー。」

 

そして霊夢の時と同様、彼女の左側に渦が現れ、その中から焼酎の瓶が一本現れた。そしてユニはそれを萃香に渡した。

 

「わーい、ありがとう!あんた優しいね!誰かさんとは違って!」

 

「萃香、消し炭にされたいの?」

 

「わー、嘘だよ!そう言えばあんたの名前は?」

 

「私の名前はユニよ。ヨロシクね、萃香。」

 

そしてユニは萃香に笑顔を見せた。それに返事を返すかのように萃香も笑顔を見せた。そして萃香は博麗神社の中へ入っていった。

 

「・・・さ、行こっか。」

 

「そ、そうね。」

 

そして二人は魔法の森へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森に着くと霊夢はユニに語りかけた。

 

「ここには人形使いと魔法使いがいるの。まぁ、魔法使いの方はちょっと危なっかしいと思うけどね。」

 

「私も注意したほうがいい?」

 

「いい。」

 

そして話している内に一軒の家に辿り着いた。そして霊夢は家の扉をノックしながら言った。

 

「魔理沙、いるんでしょ?魔理沙~?」

 

霊夢が呼び掛けて2秒も経たない内に家の扉が勢いよく開いた。そして霊夢は6m程吹っ飛んだ。ユニはそれを目を見開きながら見ていた。そして彼女は霊夢の側に駆け寄った。そして混乱している霊夢に言った。

 

「大丈夫?」

 

「だ、大丈夫に決まってるじゃない!博麗の巫女がこんなので泣くと思ってるの!?」

 

「思いっきり涙目になってるけど?」

 

「あー悪いぜ、霊夢。久しぶりの客かと思って張り切っちゃったぜ。それで、隣にいる人は誰だ?」

 

「私の名前はユニ。あなたと同じ、人間よ。」

 

「へぇ、人間か。まっ、取り敢えず能力を見せてもらおうか。」

 

「能力ねぇ、じゃあこれを見せてあげる。」

 

そう言うとユニはスペルカードを取り出した。そして二人の前で発動した。

 

「宝符ゲートオブバビロン。」

 

そう言った瞬間、彼女の背後に金色の空間が現れた。そしてその中から数えきれない程の刀、槍、斧が出てきた。それには霊夢も魔理沙も驚きを隠せなかった。そんな中、ユニは驚く二人に言った。

 

「どう?凄いでしょ。」

 

「何よこれ、これを一斉に飛ばされたら絶対に防げないじゃない。」

 

「や、ヤバすぎるぜ。」

 

「さて、次の場所に案内してよ。あっそうだ、魔法使いさん。あなたの名前は?」

 

「あぁ、私の名前は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ!」

 

「まっ、何でもいいけどね。霊夢、次は誰に会わせてくれるの?」

 

「おいっ、私をスルーするなっ!」

 

「後でゆっくりと話を聞くから待ってて。」

 

「じゃあ次は人形使いのところに行くわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森の奥へ進むと魔理沙の家よりも少し豪華な家が姿を現した。そして魔理沙は家の扉をノックしながら言った。

 

「お~いアリス。会わせたい人がいるんだ~。」

 

魔理沙が言った瞬間、家の中から黄色の髪の少女が現れた。そして彼女はユニを見ながら言った。

 

「なんだか見ない人を連れてきたのね。初めまして、私はアリス・マーガトロイドよ。ヨロシクね。」

 

「私の名前はユニよ、こちらこそヨロシク。」

 

「ところで、彼女の能力は?」

 

「知りたいか?ならばこの私が教えてやるぜ!」

 

「魔理沙、それはあんたが言うんじゃなくてユニが言うことでしょ?」

 

「だって、さっきスルーされたから・・・」

 

「まぁ、気を取り直して改めて言うわね。私の能力は『あらゆるものを呼び寄せる程度の能力』よ。」

 

「何ですって!?それはびっくりね。」

 

「なぁ、アリス、そんなに驚くのか?」

 

「『あらゆるものを呼び寄せる』ということは下手すれば神をも呼ぶことの出来る能力。」

 

「神までも!?」

 

「そう♪私はあらゆるものを呼び寄せることが出来るの。凄いでしょ?」

 

「か、敵いそうな自信が無いぜ。」

 

「試さなきゃ分からないでしょ?試しにやってみなさいよ、魔理沙。」

 

「わっ、私がやるのか!?」

 

「当たり前でしょ?あなたがやらないで誰がやると言うの?」

 

「ならやってやるぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして魔理沙とユニの勝負が始まった。始めにユニが魔理沙に挑発するかのように言った。

 

「手加減は無用よ。本気でかかってきなさい!」

 

「上等。それじゃ、早速攻撃させてもらうぜ!」

 

そう言うと魔理沙はスペルカードを取り出した、そしてユニに見せながら発動した。

 

「恋符マスタースパーク!」

 

そのままレーザーはユニに向かっていく。そのままユニのところで爆発した。マスタースパークの衝撃で砂埃が舞う。魔理沙はじっと様子を伺った。

 

「なっ!?」

 

砂埃が晴れた光景を見て三人は驚きを隠せなかった。何故ならあの衝撃を受けてもユニは無傷だったからだ。そんな彼女の右手には見覚えのある日傘が握られていた。思わず魔理沙はユニに言う。

 

「お前、それは幽香の日傘だぞ!?勝手に持ち出していいのかよ!」

 

「フフフ、そう思うでしょう?でも違うの。これはクローン。本物そっくりのクローンなのよ。さっきの『剣符アームストライク』の金世界で出来る物は全てクローン。でも威力はこれを持っている本人と同じくらいか、あるいはそれを越える力を持っている。」

 

「なっ!?」

 

「じゃあ、試してあげる。」

 

そう言うと彼女はスペルカードを取り出した。そして驚きを隠せない魔理沙に放った。

 

「恋符マスタースパーク。」

 

彼女の放ったマスタースパークは明らかに魔理沙のマスタースパークの威力を遥かに越えていた。そして彼女の攻撃で先程よりも強い衝撃が三人を襲った。

 

「ありゃりゃ、やり過ぎたかな?」

 

心配になったユニは魔理沙の元へ向かう。彼女の体はボロボロだった、ユニはそんな彼女の元へ寄ると手を差し出した。そして言った。

 

「これからどんどん強くなって行きましょう。」

 

「・・・・・あぁ、勿論だぜっ!」

 

そう言うと彼女はユニの手を握った。そしてそのまま起き上がった。その様子を見ていた霊夢にユニが言う。

 

「さて、次は何処に案内してくれるの?」

 

「そうね、紅魔館にでも行こうかしら。そこには物凄く凄いヤツがいるから。」

 

「へぇ、それは楽しみね。」

 

「よしっ、そうと決まれば行こうぜ!なっ、アリス?」

 

「悪いけど、私は家にいるわ。三人で楽しんで行ってね。」

 

「ちぇっ、つまんないの。」

 

「さ、行くわよ。」

 

そう言うと霊夢は飛んだ。そらを見たユニは魔理沙の箒に乗った。そんな彼女に魔理沙が言った。

 

「しっかり掴まれよ!私は少しやり方が荒いからな!」

 

「分かったわ!」

 

そのまま三人は紅魔館へ飛び立って行った。




女の子を主人公にしてみました。残酷な描写ってタグにやったのにただの日常生活みたいになってしまった。
さて、次作は紅魔館へ向かいます。
次作もお楽しみに!


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第2話 守護者の誇りとして

紅魔館へ向かうユニ達。彼女達の幻想郷巡りはまだまだ終わらない。


しばらくしてユニ達は紅魔館の近くにある湖まで降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たな霊夢!今日こそアタイと勝負しろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として幼い子供の声が聞こえたため、三人はその方向に目を向ける。そこには青髪で背中に氷の翼を生やしていて威張る態度をとっている少女がいた。彼女を見たユニは呆然となり、霊夢と魔理沙は溜め息をはく。そんな三人に少女は再び声を上げる。

 

「な、なんだその反応は!!最強であるアタイの前にそんな態度をとるなぁ!」

 

しかし少女が何を言おうとも三人のリアクションは変わらない。そんな中、ユニが魔理沙に言う。

 

「ねぇ魔理沙。あの子は誰?」

 

「あぁ、あいつはチルノ。氷の妖精なんだけどあまり相手しないほうがいいぜ。」

 

「魔理沙!!それはどういうことだぁ!」

 

魔理沙の言葉に食らいつく氷の妖精、チルノはカーッとなる。そんな彼女とは別に霊夢がユニに言う。

 

「ユニ、申し訳ないけれどちょっとここで待ってて。すぐに終わるから。」

 

「え?う、うん。」

 

霊夢は魔理沙に対して何かもめているチルノの元へ近寄った。そんな彼女にチルノが口を開く。

 

「お、やっとアタイと勝負する気になったか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「歯ァ食い縛りなさい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、ユニと魔理沙は霊夢とチルノから10mほど離れた場所へ移動した。チルノは何も気にせずに霊夢を見る。そして次の瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢がチルノに殴りかかっていた。殴る度にゴキッ、グキッという鈍い音が辺りに響いた。それを見ていたユニと魔理沙は苦笑いしながら言った。

 

「霊夢が『鬼巫女』って呼ばれてる理由分かったかもしれないわ。」

 

「流石は霊夢、妖精であろうと容赦ないぜ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピチューンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その音が辺りに響いた瞬間、チルノの姿が消えた。そして何事も無かったかのように霊夢が満面の笑みを浮かべて二人の元へ近寄り、言った。

 

「さ、紅魔館へ行きましょう。」

 

(さっき起こったことは何も気にしないんだな・・・)

 

そう思いながら魔理沙はユニを見ながら霊夢の後を歩く。彼女も自分と同じ事を考えているのか、表情が全く同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガブリッ。そんな音が辺りに響いた。響いた音にユニは目を向ける。そこには霊夢の尻に噛みつく、黄色の髪に黒い服、頭には赤いリボンをつけている少女がいた。彼女を見た瞬間、ユニが口を開いた。

 

「あっ!この子ルーミアでしょ?紫から聞いたわ。」

 

「よく知ってるな!その通りだぜ!」

 

わいわい話している二人とは別に霊夢は右手に力を込めながら自分の尻に噛みつく少女、ルーミアに言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相当私に殺されたいようねぇ、このお尻かじり虫がぁっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、霊夢はルーミアの頬を引っ張り始めた。ルーミアはバタバタ暴れながら逃げようとする。それを見ていた二人はまた苦笑いした。観念したのか、ルーミアは抵抗するのをやめた。そして何処かへ飛んでいった。呆然となるユニに霊夢が再び口を開いた。

 

「ごめんなさいね、私の回りにはああいう奴しかいないから。我慢してね。」

 

「う、うん(こ、怖い)。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館の門の前につくと中国の服を着ていて寝ている少女がいた。それを見たユニは咄嗟にスペルカードを発動し、彼女の左側に現れた直径20cmほどの空間から一冊の本を取り出した。それを見た魔理沙が彼女に言う。

 

「ユニ、何してるんだぜ?」

 

「『人の優しい起こし方』よ。それが妖怪にも通用するかなぁって。」

 

そう言うと彼女は寝ている少女に近づいた。そして再びスペルカードを発動すると空間から懐中電灯を取り出した。そして寝ている少女の目を無理矢理開くとそこに向かって懐中電灯の光を照らした。

 

「ぎゃあああ!」

 

あまりの眩しさに少女は目を押さえながら地面に転がり始めた。それを見た霊夢と魔理沙は思わず失笑した。やり方を間違えたのか、ユニは再び本を見る。そして慌てる表情を浮かべながら声を上げた。

 

「しまった!これ『優しい起こし方』じゃなくて『絶対に起きる起こし方』だった!」

 

それを聞いた瞬間、霊夢と魔理沙は声を上げて笑い始めた。そんな彼女らとは別に門番の少女が言う。

 

「何するんですか!折角いい夢見れた・・・って霊夢さんに魔理沙さんじゃないですか!」

 

「美鈴、レミリアを呼びなさい。」

 

「お、お嬢様ですね。分かりました!」

 

そう言うと彼女は紅魔館の中へ入っていった。それを見ていたユニが霊夢に言う。

 

「ねぇ霊夢。さっきの人って?」

 

「あいつは紅美鈴。紅魔館の門番なんだけど、さっきの通りよ。」

 

「ま、まぁ察しておくわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ、悠岐がまた来たかと思えば見覚えのない人間の小娘ね。期待して損したわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として紅魔館の時計塔から少女の声が聞こえたため、三人はその方向に目を向ける。そこには紫の髪にコウモリのような翼を生やしている少女、レミリア・スカーレットがいた。そして辺りは突然として赤い雲に覆われた。そんな彼女の背後には妹のフランドール・スカーレット、パチュリー・ノーレッジ、十六夜咲夜、紅美鈴、小悪魔がいた。そしてレミリアはユニに言う。

 

「人間、お前の名前は?」

 

「私の名前はユニ。スキマ妖怪八雲紫から幻想郷の守護を任されている人間よ。」

 

「『幻想郷の守護』ですって?アハハ、馬鹿馬鹿しいことを言うのね。ならば私と戦ってそれ果たせるのかどうか証明して頂戴!」

 

そう言うとレミリアは飛び上がり、猛スピードでユニの方へ向かっていく。それを見たユニはレミリアの攻撃をかわし、スペルカードを発動した。

 

「剣府『アームストライク』」

 

その瞬間、彼女の右側から空間が現れ、彼女はその中から草薙の剣を取り出した。それを見たレミリアはグングニルを作り上げた。そしてそれを降り下ろす。ユニもそれに対抗すべく防ぐ。そんな彼女にレミリアがスペルカードを発動した。

 

「紅府『不夜城レッド』」

 

目の前で放たれては反応出来ず、ユニは彼女の攻撃を受けた。そのまま彼女はくの字になりながら吹き飛び、木に叩きつけられた。そして地面に崩れる。そんな彼女とは別にレミリアはユニの前髪を掴み、無理矢理自分の目線に合わせた。そして言う。

 

「所詮人間はこの程度か。『幻想郷の守護』って言ってたけれど無理があるんじゃない?ならば代わりに私がやってあげるけれど?」

 

そう言うとレミリアは声を上げて笑い始めた。そんな彼女とは別にユニはレミリアの心の中を見てあることに気づき、心の中で囁いていた。

 

(この人、因縁の相手が二人いる?一人は女の人でもう一人は男の人?どちらにせよ、戦いたい気持ちがあるようね・・・。試す価値はありそうだわ。さて、この人の名前は・・・)

 

そしてユニはレミリアの手を振り払った。突然の攻撃にレミリアは下がることしか出来なかった。そんな彼女とは別にユニはスペルカードを発動した。

 

「呼府『コールザエニー』」

 

それを見たレミリアは呆れた顔をしながらユニに言った。

 

「何をするのか知らないけれど、これ以上私と戦うのは止めておくと警告するわ。お前じゃ私に勝てないのは必定でしょ?」

 

ユニに語りかけるレミリアとは別にユニはまじないのような言葉を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私に力を貸して、月の民、綿月依姫!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言を聞いた瞬間、一同は驚きを隠せなかった。そんな中、レミリアが少し慌てながらも言葉を発した。

 

「な、何を言ってるのよお前は。綿月依姫?そんな奴がお前なんかに・・・」

 

彼女が続きを言おうとした時だった。ユニの右側に直径2mほどの空間が現れた。そしてそこから薄紫色の長い髪に黄色のリボンを用いて瞳の色は赤く、白くて半袖・襟の広いシャツを着ている少女が姿を現した。

 

「ふぅ・・・」

 

少女は息を吹いてユニの方を見た。そして彼女に口を開いた。

 

「私を呼んだのはあなたですね?」

 

「えぇ、あなたに力を貸してもらいたくて呼びましたわ。あの吸血鬼と戦うためにね。」

 

そう言うとユニはレミリアの方を指差した。それにつられて少女はその方向を見る。そして溜め息を吐き、ユニに言う。

 

「あれは私が以前倒した地上の吸血鬼ですよ。まぁ、また戦うのは悪くありませんけどね。」

 

そう言うと少女は腰にかけてあった刀に手をつけた。そして抜いた。その様子を上から見ていたフラン達は目を大きく見開いていた。そんな中、咲夜がパチュリーに言う。

 

「パチュリー様、あれは・・・」

 

「えぇ、間違いないわ。あれは月に行った時にレミィを一瞬で倒した月人、綿月依姫!」

 




次作、再び対峙するレミリアと依姫。果たして勝負の行方は!?
次作もお楽しみに!


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第3話 コールザエニー、綿月依姫

ユニとレミリアの戦闘の中、ユニは彼女の因縁の相手である綿月依姫を呼び寄せた。そして再びレミリアと依姫が対峙する。


「わ、綿月依姫?」

 

パチュリーの言葉を聞いてフランは首を傾げながらユニが呼び寄せた少女、綿月依姫の名前を言う。それを聞いた咲夜が彼女に言う。

 

「はい、そうです。あれはお嬢様に圧倒的な力を見せた月人です。」

 

「呑気に話してる場合じゃないわ。早く手助けしないと。」

 

そう言うとパチュリーはレミリアの元へ降り立った。彼女に続いてフラン、咲夜、美鈴、小悪魔も彼女の元へ降り立つ。それを見た依姫は溜め息を吐き、ユニに言葉を発する。

 

「やれやれ、次々と雑魚が・・・。私を呼び寄せし地上の民よ、残りの者達もやってよいのですね?」

 

「どうぞ。でも、殺すのと建築物の破壊は控えてもらいたいわ。」

 

「中々厳しいことを言いますね。」

 

「ごめんなさいね、いろいろあって。でも、あなたなら出来ると信じているわ。」

 

「ならその期待を叶えてみせましょう。」

 

そう言うと依姫は刀を構えてレミリア達を睨む。レミリア達も武器を取りだし、戦闘体制に入る。

 

「久しぶりですね、吸血鬼。」

 

「ええ、本当に久しぶりね。あなたを倒したくて毎日ウズウズしていたの!」

 

そう言うと彼女は早速スペルカードを取りだし、発動した。

 

「神槍スピア・ザ・グングニル!」

 

その瞬間、彼女の右手にグングニルが作られた。そして彼女はそのまま依姫に放った。それを見た依姫は素早く回避した。レミリアの放ったグングニルはユニ達の元へ飛んできていたのだ。

 

「げっ!」

 

「や、ヤバイ!」

 

それに気づいた霊夢と魔理沙はすぐさまその場から離れた。そんな中、ユニはグングニルを見ながらスペルカードを取りだし、発動した。

 

「現符シャドウルーム。」

 

彼女が言った瞬間、突如としてグングニルの前に黒い空間が現れ、グングニルはそのまま空間の中へ吸い込まれていった。それに気にせずに霊夢と魔理沙はレミリアと依姫の戦いを見つめる。

 

「はあっ!」

 

レミリアは依姫を切り裂こうとするが容易く避けられた。さらに依姫は刀を空へ向けた。その瞬間、激しい雷鳴と共に雷が依姫の刀に落ちた。

 

「行きますよ。」

 

そう言った瞬間、依姫は刀を縦に振った。

 

「っつ、みんな避けて!」

 

パチュリーの言葉を聞いて一同はその場から離れた。その瞬間、雷を纏った一撃が辺りを襲った。例え離れたとしても爆風の衝撃でレミリア達は吹っ飛び、壁に叩きつけられた。

 

「まだよ!」

 

まるで壁に叩きつけられた衝撃がなかったかのようにレミリアはグングニルを作り、依姫に振り下ろす。依姫も彼女の攻撃を祇園の剣で受け止める。そのままグングニルと祇園の剣がぶつかり合う音が辺りに響く。そんな中、パチュリーはあることを思っていた。

 

(何て力なの、綿月依姫。レミィを圧倒している・・・。悠岐、あなたは人間?それとも・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パチュリー様?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小悪魔の呼び掛けによりパチュリーは我に返った。そしてスペルカードを取りだし、発動した。

 

「日符ロイヤルフレア!」

 

彼女の放った攻撃は依姫の方へ向かう。それに気づいた依姫はレミリアの背後まで移動するとそのまま彼女を掴み、パチュリーの方へ投げ飛ばした。

 

「あっ・・・」

 

美鈴があることに気づいたが、遅かった。既にレミリアはロイヤルフレアを食らった。それを見て怒り狂った咲夜とフランはすかさずスペルカードを発動する。

 

「禁忌レヴァーテイン!」

 

「殺人ドール!」

 

二人は同時に攻撃を放ち、美鈴と小悪魔も後に続いて弾幕を放った。が依姫はそれらをかわすとスペルカードを発動した。

 

「終の神剣ヒノカグツチ!」

 

その瞬間、依姫の持つ祇園の剣が炎に包まれた。彼女はそのまま刀を振り下ろした。その瞬間、激しい爆発が起こり、パチュリー様はその爆風に巻き込まれた。爆風が収まり、依姫はゆっくりとレミリアの元へ歩み寄る。そして刀を構えて言った。

 

「あの時は逃がしてしまいましたが今回は逃がしません。ここで朽ちてもらいます。」

 

「お嬢様!」

 

すかさず咲夜がレミリアを助けようとするが間に合う距離ではなく、さらに時を止めることも忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが依姫はレミリアを斬りつけようともせず、そのまま刀をしまってしまった。そして再び口を開く。

 

「ですが私を呼び寄せし地上の民の願いであなたを朽ちさせるのは二の次とさせてもらいます。それではまた。」

 

そう言うと依姫はユニの元へ近寄った。そして彼女に笑みを浮かべ、言葉を発する。

 

「私はお役に立てましたか?」

 

「ありがとう、十分にたったわ。本当にありがとね。」

 

「いえいえ、これくらいは何ともありません。あの奥義を覚えるための第一歩と思えばいいのですから。」

 

「あの奥義?」

 

依姫の言葉に一同は思わず反応してしまう。そしてユニが再び口を開いた。

 

「ねぇ、依姫。あの奥義って?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、無間の扉です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、レミリア達はピクリとなった。何故ならこの技を使える人物が思い当たるからである。そんな6人とは別に依姫が話を続ける。

 

「あの奥義は月の民を守護する私が覚えなければならない奥義だと姉様から教えてもらいました。あの技さえ使えるようになれば私は強くなれるかもしれないんです。」

 

「そうだったの、色々と大変ね。」

 

「はい。ですが私は『無間の扉』を使えるように頑張ります。」

 

「頑張ってね、応援してるわ。」

 

そう言うとユニは彼女の前に空間を出現させた。それを見た依姫はユニに頭を下げながら言った。

 

「ありがとうございます。それではまた会いましょう。必要な時になったらいつでも呼んで下さい。」

 

「ありがとう、そうするわ。」

 

そのまま依姫は空間の中へ入っていった。依姫が行った後、ユニは空間を閉じた。そして、レミリア達の元へ行き、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と土下座しながら謝った。突然の彼女の行動を見てレミリア達は驚きを隠せなかった。そして少し慌てながらもレミリアは答えた。

 

「うん、まぁ紅魔館やフランが傷ついてないから・・・」

 

「こんなことやるつもりはなかったの!ほんの少しの私の欲求が目覚めてしまってあなたの心を覗いた挙げ句、あんなに強い人を呼んでしまって、本当にごめんなさい!」

 

「まあ、落ち着いて。顔を上げなさい。私達は許すから、そんなに言わなくていいの。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、ユニはすぐさま立ち上がり、レミリアの手をとり、言った。

 

「ありがとう!あなたは優しいのね。」

 

「え?うんまぁ、ね。あはは・・・」

 

そしてユニはレミリアから放れるとフラン達の元へ近づいた。そして一人ずつに言う。

 

「あなたがフランね。私はユニ、よろしくね。」

 

「ユニ姉ちゃんって呼ぶね。これからよろしく!」

 

「あなたが咲夜ね、敬語は使わなくていいからね。」

 

「最初からそのつもりだから。ユニって言うのね、よろしく。」

 

「あなたが引きこもりのパチュリーさんだったかしら?」

 

「引きこもりは余計よ。あなたがユニね。よろしく。」

 

「あなたが小悪魔ね、立派な翼が羨ましいわ。」

 

「あ、そうですか?褒められるとなんか嬉しくなっちゃいます!」

 

「えーっと、あなたは・・・中国さん?」

 

「ちょっ、違いますよ!私は紅美鈴ですよ。中国って呼ばないで下さい!」

 

「あはは、ごめんごめん。あ、そうだ!」

 

突然何かを思い出したかのようにユニが声を上げた。そして霊夢と魔理沙に近づき、言った。

 

「私、今行きたい場所があるんだけど、いいかしら?」

 

「私は別に構わないぜ!」

 

「魔理沙が言うなら私もOKよ。それで、何処へいきたいの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「太陽の花畑に行きたいの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、霊夢と魔理沙の頭の中にとてつもない衝撃が走った。無理もない、何故なら太陽の花畑には誰もが恐れる妖怪、風見幽香がいるからである。そんな彼女に霊夢が言う。

 

「ね、ねぇユニ。流石に太陽の花畑は辞めたほうがいいんじゃないかしら?私達もあまりあそこには行きたくないのよ。」

 

「あなた達が行きたくなくても私は行きたいの。だって幽香にまた会いたいんだから!!」

 

「幽香に会いたいって言う人、私初めて見たぜ。」

 

「さ、話してる暇はもうないわ。さっさと行きましょう!」

 

「はぁ、面倒臭いわね。」

 

そう言うと霊夢はレミリア達を後にして空へ舞い上がった。それに続いて魔理沙もユニを箒に乗せて空に舞い上がった。そのまま三人は太陽の花畑を目指して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の花畑に着いた時点で既に夕方だった。そんな中、霊夢達は花を踏まないように花畑へ降りた。と、ユニは花畑の奥へ歩いていった。そんな彼女に魔理沙が言う。

 

「お、おいユニ!そんなに早く行くと花を踏んじゃうぞ。」

 

「大丈夫よ、もう慣れてるから。おーい、幽香ぁー!」

 

歩きながらユニは幽香の名前を叫ぶ。その姿を見て呆れた二人は彼女の後を行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、誰かと思えばユニじゃない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然二人の背後から女性の声が響いた。思わず二人は腰を抜かしてしまう。そこには緑髪で赤い瞳に日傘をさしている女性、風見幽香がいた。彼女の存在に気がついたユニは幽香の元へ駆け寄る。その時には一輪も花を踏まなかった。そしてユニは幽香に言葉を発する。

 

「久しぶりね、幽香。ずっと会いたかったよ!」

 

「ええ、本当に久しぶりね、ユニ。私が見ない内にこんなに大きくなっちゃってね。昔は私の腰辺りしかなかったのに。」

 

そう言うと彼女はユニの赤紫色の髪を空いている左手で撫で始めた。続いてユニの頬にも触れる。そして笑みを浮かべ、言う。

 

「大きくなってもユニはユニのままね。変わったらところなんて、一つもないわ。」

 

「えへへ。」

 

二人の語り合いを黙って見ていた霊夢と魔理沙はどうすることも出来なかった。と、魔理沙が霊夢に言った。

 

「なぁ、霊夢。どうする?」

 

「どうするって、何もしようがないわよ。二人で話してるんだから。とゆうか本当に馴れ馴れしいわね、あの二人。」

 

「た、確かに。」

 

霊夢と魔理沙が話している内にユニは幽香との話を終えていた。そしてユニは霊夢と魔理沙に言う。

 

「さっき幽香に聞いたんだけど、夜の幻想郷は迷いの竹林がお薦めって言ってたわ。早速向かいましょう。」

 

「迷いの竹林ねぇ。またあの二人がやってるかも。」

 

「ああ、そうだな。」

 

「あの二人?あの二人って?」

 

「後から会うわよ。さ、行きましょう。」

 

そう言うと霊夢は空へ舞い上がった。それに続いて魔理沙もユニを箒に乗せて空へ舞い上がった。それを見ていた幽香はユニに言った。

 

「またいつでもいらっしゃい。紅茶を入れて待ってるわ。」

 

「ありがとう!また行くね!」

 

彼女が言った瞬間、霊夢と魔理沙は迷いの竹林へ向かった。ユニは幽香に手を振った。彼女も手を振りながら霊夢、魔理沙、ユニの様子を最後まで見届けた。

 




迷いの竹林に着いた霊夢達はそこである戦いに巻き込まれてしまう。果たして、その戦いとは!?
次作もお楽しみに!


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第4話 喧嘩を止めるエンダードラゴン

レミリアとの戦いで綿月依姫を呼び寄せたユニ。彼女が次に訪れる場所は迷いの竹林だった。


迷いの竹林に着いた時には既に日が暮れ、辺りは真っ暗になっていた。竹林の中へ降りた三人は辺りを警戒しながら奥へ進んでいった。と、魔理沙がユニに言った。

 

「なぁ、ユニ。なるべく早くここを出るようにしようぜ。ここは魔法の森より気味が悪いからな。」

 

「そうね、長居しては危険だよね。ちゃっちゃと済ませて博麗神社に戻りましょう。」

 

流石のユニも暗闇の薄気味悪さには敵わなかった。暗闇ではいつどこから何かが襲ってこないとは限らない。ここへ迷い混んだ妖怪が息を潜めて隠れてる可能性だってある。三人は肩を並べながら奥へ進んでいく。と、ユニが霊夢と魔理沙に言う。

 

「ねぇ、二人とも。確か2年前に物凄い異変があったんでしょ?」

 

「異変?ああ、確か地王と帝王異変と魔王異変、そして先代異変があったわね。」

 

「あの男のことはあまり話したくないぜ。」

 

「魔理沙?」

 

魔理沙の言葉にユニは思わず首を傾げながら彼女の名前を言う。そんな彼女とは別に魔理沙は話を続ける。

 

「あの男、私に覚えがないって言うんだぜ?あいつは私の家族を殺した張本人だって言うのに!!」

 

「・・・・・」

 

二人は何も言うことが出来なかった。彼女の過去にはある悲惨なことが起こったのだとユニは察した。霊夢は魔理沙の肩を軽く叩き、言う。

 

「私は彼には感謝してるわよ。彼は私をずっと見守ってくれたし、生きる道も教えてくれたからね。けど、魔理沙にとっては嫌な人かもね。」

 

「ねえ、その人って帝王梟雄?」

 

ユニの言葉を聞いて二人は驚きを隠せなかった。そして魔理沙は彼女の肩を掴みながら言った。

 

「ユニ!どうして奴を知ってるんだ!!」

 

「痛い痛い!私がどうして帝王梟雄を知ってるですって?彼は私の兄様の友達だからよ。」

 

彼女の言葉に霊夢と魔理沙は一瞬体がピクリと反応した。思いきって魔理沙は再び口を開いた。

 

「なぁ、ユニ。もう一回さっきの言葉を言ってくれないか?」

 

「え?だから彼は私の・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が続きを話そうとした瞬間、竹林の奥から激しい爆発音が辺りに響いた。

 

「なっ!?」

 

「何、今の?」

 

「グズグズしてる暇はないわ。急ぎましょう!」

 

霊夢の言葉を聞いて二人は彼女の後を追うように爆発音がした方向へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フジヤマボルケイノ!!」

 

「神宝ブリリアントドラゴンバレッタ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発音がした場所へ行くとそこには藤原妹紅と蓬莱山輝夜がいつものように殺し合いをしていたのである。それを見たユニは驚きを隠せず、逆に霊夢と魔理沙は溜め息を吐いた。そんな二人とは別にユニが二人に問う。

 

「ねぇ、霊夢に魔理沙。あの二人は弾幕ごっこをしているの?それとも本気の殺し合いをしているの?」

 

「妹紅と輝夜はいつも殺し合いをしているの。でもどちらも死なないからこれが永遠に続くのよ。」

 

「何でこんなことをやるのかしら。」

 

「妹紅が輝夜に恨みがあるらしいけど、それが何だかは分からないんだぜ。」

 

それから三人は黙って二人の戦いを見ていた。と、霊夢がユニを見て、彼女に言った。

 

「ねえ、ユニ。何かすごい奴を呼び寄せられない?」

 

「えっ、急にどうして?」

 

「いい加減あの二人の戦いを見ているのが飽きたのよ。そこで和解するためにあんたの力を借りたいの。協力してくれるかしら?」

 

「まあ、協力するけれど、何を呼ぼうか考えてないのよ。」

 

「それは参ったぜ。何か和解出来るような奴とかいないか?」

 

「う~ん・・・和解じゃないけれど、殺し合いを止められそうな奴なら呼べるわ。」

 

「じゃあそれを頼むぜ、ユニ。」

 

「分かった。」

 

そう言うとユニは草影から立ち上がり、妹紅と輝夜が戦っているところまで歩み寄った。彼女の存在に気がついた二人は彼女に目を向ける。そして言う。

 

「何よあんた、私達の邪魔をするつもり?」

 

「邪魔するならお前からやるが?」

 

妹紅と輝夜の言葉に気にせずにユニはスペルカードを取り出した。咄嗟に妹紅と輝夜は戦闘体制に入る。そしてユニはスペルカードを発動した。

 

「呼符コールザエニー。」

 

ユニがそう言った瞬間、彼女の持っていたスペルカードが黒く光だした。妹紅と輝夜はじっと彼女を見つめる。と、ユニがスペルカードを高く上げ、言葉を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終焉を呼べ、エンダードラゴン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニがそう言った瞬間、彼女の右側に直径5mほどの空間が現れた。そしてその中から黒曜石のような黒い大きな体と翼を持ち、薄紫色に輝く目を持っていて、大きさは8mほどあるドラゴン、エンダードラゴン現れた。エンダードラゴンは空間から出ると妹紅と輝夜の回りを一周回ってからユニの隣に降りた。エンダードラゴンはユニの元へ顔を寄せると彼女の顔を舐め始めた。

 

「あはは、くすぐったいよ。今はこんなことをしている場合じゃないでしょ?」

 

そう言うとユニはエンダードラゴンの頭を優しく撫で始めた。その瞬間、エンダードラゴンが急に大人しくなった。それを見た妹紅と輝夜はすかさずスペルカードを発動した。

 

「虚人ウー!」

 

「神宝サラマンダーシールド!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エンダードラゴン、防いで。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニの言葉に反応したエンダードラゴンは妹紅と輝夜が放った攻撃に向かって口から紫色の炎を吐いた。その瞬間、二人の放った攻撃が一瞬にして消滅してしまった。

 

「嘘っ!」

 

「そんな馬鹿な・・・」

 

それを見た二人は驚きを隠せなかった。そんな二人とは別にユニはエンダードラゴンに指示する。

 

「二人を懲らしめて。」

 

「グガァァァァァ!」

 

ユニが命令を下した瞬間、エンダードラゴンは雄叫びを上げながら宙に舞った。そして二人に猛烈な勢いで突進してきた。二人はすかさずエンダードラゴンの攻撃を回避する。エンダードラゴンが通っていった場所の竹は音もなく消滅していた。それを見ていた霊夢と魔理沙は思わず鳥肌がたった。と、魔理沙が霊夢に言った。

 

「なぁ、霊夢。今の内に永琳と慧音を呼んでこないか?」

 

「名案ね、そうしましょう!」

 

「じゃあ私は永琳を呼んでくるから霊夢は慧音を任せたぜ!」

 

「寄り道しないでちゃんと呼びなさいよ。」

 

そう言うと魔理沙は箒にまたがり、永遠亭へ向かい、霊夢は宙に舞い上がり、慧音の寺子屋へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠亭に到着した魔理沙は永遠亭の中へ入った。そして永琳の名前を叫ぶ。

 

「おーい、永琳!!いるんだろ?永琳!!」

 

彼女が叫んでいると永遠亭の奥から眠たそうな表情をしている鈴仙と永琳がやって来た。そして魔理沙は永琳に言う。

 

「輝夜のやつ、また妹紅と殺しあってるぜ。」

 

「やれやれ、何かいないなと思ったら、また妹紅と殺し合ってるのね。鈴仙、急ぎましょう。」

 

「はい、師匠!」

 

「それと今、ユニが黒いドラゴンを呼んであの二人に時間を稼いでるから今ならまだ間に合うから急ごうぜ!」

 

「ええ、そのつもりよ。」

 

そう言うと三人は飛び上がり、妹紅と輝夜のいるところへ急いで向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寺子屋に到着した霊夢は庭で一人白沢の姿で特訓をしている慧音に声をかけた。

 

「慧音、妹紅がまた輝夜と殺しあってるわよ。」

 

「はぁ?また輝夜と?全く、妹紅のやつはいい加減に辞めないかなぁ。」

 

「今ユニが黒いドラゴンと一緒に時間稼いでるから急ぎましょう。」

 

「ああ、そうだな。」

 

そう言うと二人は宙に舞い上がり、妹紅と輝夜のいるところまで向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァっ・・・」

 

「こ、こんなドラゴンが、存在してるなんて・・・」

 

霊夢と魔理沙が永琳と慧音を呼んでいる間に戦いは終わっていた。勝負はエンダードラゴンの圧倒的勝利だった。何故ならエンダードラゴンにいくら弾幕を放ってもスペルカードを発動しても紫色の炎で消滅されるため、無駄だった。もう妹紅と輝夜には戦えるほどの力は残されていなかった。そんな二人にユニはエンダードラゴンの頭を撫でながら言う。

 

「殺し合いはいい加減辞めたらどうかしら?こんなことやっても何の得も得られないのよ。」

 

「余計なお世話だ。」

 

すぐさま口を開いたのは妹紅だった。彼女に続いて輝夜も口を開く。

 

「妹紅の言う通りよ。あなたが言う筋合いなんて無いのよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か永遠亭が静かだと思ったら、こんなところで何をしているのでしょうねぇ、姫様?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜歩きは厳禁だとあれほど言ったのにどうして無視しているのかな?妹紅?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として妹紅と輝夜の背後から聞き覚えのある声が聞こえた。二人は恐る恐る後ろを振り返る。そこにはおぞましい形相をした永琳と慧音がいた。二人は一瞬にして背筋が凍った。そんな二人とは別に永琳と慧音が大声を上げた。

 

「このバカ者がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

その瞬間、永琳は輝夜の頭を掴み、拳をグリグリと押し付け始めた。対する慧音は妹紅の頭を掴み、頭突きを食らわした。

 

「痛い痛い痛い痛い痛い!!!やめて永琳!私が悪かったから本当にやめて!!」

 

輝夜は涙目になりながら必死に抵抗するが全く歯がたたなかった。対する妹紅は慧音の一撃で気絶していた。霊夢、魔理沙、ユニ、鈴仙の四人は苦笑いしながらその様子を見ていた。と、ユニの元へエンダードラゴンが顔を寄せた。それに気づいたユニはエンダードラゴンの頭を撫でながら言った。

 

「ありがとう、エンダードラゴン。今日は助かったわ。」

 

そう言うとユニはエンダードラゴンの前に空間を再び出現させた。それを見たエンダードラゴンはそのまま空間の中へ入っていった。と、永琳と慧音がユニの前までやって来て、言う。

 

「あなたがユニね。私は永遠亭で医師を務めている、八意永琳よ、よろしくね。」

 

「あっ、よろしくね。」

 

そう言うとユニは永琳の前に右手を差し出した。それを見た永琳は笑みを浮かべながらユニと握手した。続いて慧音がユニに言った。

 

「私は寺子屋で歴史を教えている、上白沢慧音だ。よろしく。」

 

「よろしく、慧音。」

 

そう言うとユニは永琳と同様、慧音の前に右手を差し出した。それを見た慧音も笑みを浮かべながら彼女と握手した。そんな中、永琳がユニ達に言う。

 

「まずは永遠亭へ行きましょう。ここにいる二人を治療するから。」

 

「分かったわ。」

 

納得した霊夢達は輝夜と妹紅を連れて永遠亭へ向かった。




永遠亭に着いたユニ達。そこでいたずらっ子のある少女と出会う。
次作もお楽しみに!


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第5話 ユニの兄

妹紅と輝夜の殺し合いを止めたユニ。彼女が次に訪れる場所は永遠亭だった。


永遠亭に着いたユニ達は中へ入っていった。そこは和風な様式の部屋がいくつかあった。ユニは呆然としながら部屋中を見ていた。そんな彼女に永琳が言う。

 

「今日はもう遅いからここで泊まっていきなさい。幻想郷巡りはいつだって出来るんだから。」

 

「うん、ありがとう永琳。」

 

永琳にお礼を言うとユニは霊夢と魔理沙が座ってるテーブルに腰をおろした。と、ユニは霊夢がある方向を見ているのに気づき、その方向を見る。そこには永琳の治療を受けている妹紅と輝夜がいた。それを見た彼女は苦笑いした。そんな彼女に魔理沙が口を開いた。

 

「なぁ、ユニ。さっきの話の続きなんだが、お前の兄様って誰なんだ?」

 

「ああ、言ってなかったわね。じゃあまず始めに聞くけど・・・」

 

魔理沙と霊夢は唾を飲み込み、彼女が言う言葉を待つ。二人が唾を飲み込んだ瞬間に慧音と鈴仙もやって来た。そしてユニは口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「闘王アイアルト・モルトって知ってるかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、四人はピクリと反応した。ユニが言った人物、アイアルト・モルトはかつて幻想郷へ訪れて異変解決を手伝ってくれた五大王の一人である。と、何かを察した魔理沙がユニに言った。

 

「なぁ、ユニ。まさかお前の兄様って・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、私の兄様はアイアルト・モルトなの。だから私の本名はアイアルト・ユニよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを聞いた一同は驚きを隠せなかった。ユニがモルトの妹だということを知った霊夢はユニに問う。

 

「じゃあどうしてあの人は幻想郷の人じゃないの?」

 

「紫から聞いた話なんだけど、兄様は私が生まれる前に家を出たのよ。そして現実世界へ行ったの。」

 

「モルトさんって元々は幻想郷のお方だったんですね。」

 

思わず鈴仙も声を発してしまう。ちょうど二人の治療を終えた永琳がユニに言った。

 

「ユニは帝王異変や魔王異変の時に彼に会おうと思わなかったの?」

 

「思ったわよ。でも、紫にあまり動かないでって言われてたから。」

 

「どうして行かなかったのですか?行って会いに行けば良かったのに・・・」

 

「私も会うことを断念したの。なんせ、『あれ』がやって来ちゃったからね。」

 

「ユニ、『あれ』って?」

 

終わります思わず霊夢が口を開いた。そんな彼女にユニが答えようとした時だった。突如ユニの背後から一人の少女がユニに乗っかってきたのである。

 

「わぁ、人間を見るのは久しぶりウサ。」

 

「え?誰?」

 

ユニは後ろを振り返る。そこには兎の少女、因幡てゐがいた。それを見た永琳は立ち上がり、てゐに近づきながら言った。

 

「お客さんに失礼でしょ?」

 

「ご、ごめんなさいウサ。」

 

謝るてゐとは別にユニは笑みを浮かべながら言った。

 

「別に大丈夫よ。あ、ところであなたの名前は?」

 

「私は因幡てゐって言うウサ。よろしく。」

 

そう言うとてゐはユニの隣に腰をおろした。そして霊夢の問いに答えた。

 

「ガイルゴールよ。ガイルゴールが来ては私もどうすることも出来なかったわ。」

 

ユニが言った瞬間、霊夢達の頭の中にある魔獣の姿が頭に浮かんだ。全てを作ったとされる神、ガイルゴールである。神の力は想像を絶するものだったのを霊夢達はしっかり覚えている。そんな中、永琳が口を開いた。

 

「さ、話はおしまいよ。今日はもう寝ましょう。」

 

「そ、そうね。」

 

そして霊夢達は布団を鈴仙に敷いてもらい、布団の中へ身を入れた。

 

「みんな、おやすみなさい。」

 

「おやすみ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、霊夢は突然として目が覚めてしまった。目が覚めるとそこは全く見覚えのない場所にいた。そして彼女の目線には身体中傷だらけの紫と右手に長い剣を持つ謎の大男がいた。

 

「ゆ、紫?」

 

霊夢は紫に話しかけるが彼女の耳には聞こえていなかった。そんな彼女とは別に大男は紫に歩み寄った。そして空いている左手で紫の首を掴み、宙吊りにした。片手で紫の体を持ち上げた大男は右手に持っていた剣を構えた。

 

「やめて!」

 

霊夢は止めようとするが大男には聞こえていなかった。むしろ、霊夢の言葉を無視しているように見えた。彼女は動こうとするが、思うように体が動かなかった。

 

「フフフフフ。」

 

突然として霊夢の目の前に左側に伸びる白髪に青白い肌、両耳に青いクリスタルのピアスをつけている謎の男が現れた。そしてその男は長い舌を出しながら霊夢に近づいた。

 

「いやっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアっ!!」

 

気がつくととそこは見覚えのない場所ではなく、永遠亭だった。状況が把握出来ない彼女は辺りを見回す。そこにはぐっすりと眠っている魔理沙達がいた。

 

「何なのよ、今の・・・」

 

霊夢は頭を抱えながら再び布団に潜った。だが紫が謎の大男にやられていたことが彼女に影響を与えたため、霊夢は寝ることが出来なかった。

 

「?」

 

と、霊夢はある方向を見てある人物がいることに気がついた。彼女が見つめる方向、そこには腰をおろして空を見上げているユニがいた。

 

「・・・ユニ?」

 

霊夢の声を聞いてユニは彼女の方を見る。ユニは笑みを浮かべながら霊夢に手招きをした。霊夢は布団から出るとユニの隣まで来て腰をおろした。そして彼女に話しかける。

 

「あんた、寝ないの?」

 

「生憎、眠れなくてね。」

 

「そ、そうなの。まあ、何だっていいけれど。」

 

「そう言う霊夢は眠らないの?」

 

「うん、まあね。」

 

霊夢はユニに紫が謎の大男に殺されかけたことを話さなかった。そのままユニは話を続けた。

 

「ねぇ、霊夢。あなたは現実世界の人達で出会って良かったって思ってる人いる?」

 

「ど、どうして急にそんなことを?」

 

「いや、何となく聞いてみたかっただけよ。誰かいるかなぁって。」

 

「私はね、帝王梟雄や悠岐に感謝してるわ。帝王梟雄は私を育ててくれたし、悠岐は一緒に異変解決を手伝ってくれたからね。」

 

「メルト・グランチ様と悠岐君にね。あの二人はいい人よね。」

 

「でも、帝王梟雄の方は一度幻想郷を壊そうとしてたわ。何とか止めたけれど、どうしてあの人は・・・」

 

「紫から聞いた話なんだけど、帝王梟雄は先代巫女のいない幻想郷が嫌いだったみたい。だから幻想郷を破壊しようとしてた。そして霊夢も魔理沙も殺そうとしていた。けど、彼は違ったみたい。聞いた話なんだけど、帝王梟雄は霊夢達を壊すつもりはなかったみたい。」

 

「・・・私も分かってたわ。メルト・グランチはそんなことをしない人だって。」

 

「私は阿求の書物を見たんだけど、先代異変で幻想郷で有名になった人がいたのを知ったわ。」

 

「有名になった人って?」

 

「悠岐君と麗夜君。」

 

霊夢は過去に起こったことを振り返ってみた。確かにこの二人は幻想郷のために力を出し尽くした。現在悠岐は現実世界で自分のありのままに過ごしており、麗夜は幻想郷のために別の世界へ足を踏み入れていった。と、霊夢がユニに言う。

 

「ユニはあの二人に会おうと思うの?」

 

「勿論、会ってみたいわよ。なんせ、幻想郷を救ったって言われてるんだから。」

 

「今ここに呼び寄せられる?」

 

「呼び寄せられるけれど、今はあの二人に用がないから呼ぶつもりはないわ。」

 

「そうなのね・・・」

 

二人が話している内に夜が明け、辺りは少しずつ明るくなっていた。そして永琳達が起きてきた。ユニは立ち上がり、永琳の元へ行った。そして言う。

 

「ありがとう永琳、お世話になったわ。」

 

「いやいや、これくらいどうってことないわ。」

 

二人が話している時に輝夜がドタドタと足音を立てながらユニの元へ寄った。そして言う。

 

「あんたの名前を聞いておくわ。あんたの名前は?」

 

「私の名前はユニよ。あなたは蓬莱山輝夜ね。覚えておくわ。」

 

ユニがそう言った瞬間、妹紅がドタドタと足音を立てながら走ってきて輝夜を蹴り飛ばした。そのまま輝夜は壁に衝突した。そしてユニを見ながら言った。

 

「私は藤原妹紅。お前はユニだよな、よろしく。」

 

「あ、よろしく妹紅!」

 

何故か妹紅とは馴れ馴れしくなった。そしてユニは右手を妹紅に差し出した。それを見た妹紅は笑みを浮かべながらユニと握手した。そんな彼女に魔理沙が言う。

 

「さて、そろそろ行こうぜ!」

 

「そ、そうだね。」

 

そして霊夢、魔理沙、ユニの三人は永遠亭の外へ出た。そのまま霊夢は宙に舞い上がった。ユニは魔理沙の箒にまたがった。そのままユニと魔理沙を乗せた箒は宙に舞い上がった。ユニは永琳達に手を振った。永琳達も霊夢達に手を振った。そのまま三人の姿は見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空を飛んでいる三人は次は何処へ行くかを話し合っていた。そんな中、魔理沙が口を開いた。

 

「なぁ、妖怪の山はどうだ?」

 

「いいね!そこへ行きましょう!!」

 

「めんどくさいやつもいるけど、まあいいわ。」

 

霊夢は少し拒絶したが魔理沙とユニのノリに乗った。そしめ三人は妖怪の山へ向かった。

 




妖怪の山へ向かったユニ達。だがそこではある出来事が起こっていた。
次作もお楽しみに!


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第6話 化身と気配

永遠亭で様々なことを話したユニ。彼女が次に訪れる場所は妖怪の山だった。


妖怪の山へ降り立ったユニ達は山の奥へと進んでいく。と、そんな中、一人の少女が三人の前に降り立った。霊夢達の前に降り立った少女は相当慌てていた。そんな彼女に魔理沙が言う。

 

「なぁ、文。一体どうしたんだぜ?」

 

「ああ、魔理沙さん、ちょうどいいところへ。実は困ったことがあるんです。急いで守矢神社に来て下さい。」

 

そう言うと文は霊夢達を置いて先に一人で守矢神社へ向かった。

 

「あ、ちょっと文!?」

 

彼女に続いて霊夢達も文が飛んで行った方向へ行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守矢神社に到着したユニ達はある光景を見て驚きを隠せなかった。そこには大きさ7mほどの巨大な岩が神社の目の前に置かれていたからである。そして守矢神社にはここの巫女である東風谷早苗に土壌神の洩矢諏訪子、八坂神奈子の他、地霊殿の古明地さとりや霊鳥路空、火焔猫燐がいた。彼女らの回りには妖怪の山に住んでいる犬走椛や河城にとりがおり、そしてどういうわけか岩の上には西行寺幽々子と魂魄妖夢がいた。そんな中、神奈子が口を開いた。

 

「参ったな、こんな岩を置かれては私達が困るね。」

 

「お空の核エネルギーでも壊れないなんてね、何の力が秘められてるのでしょうかね・・・」

 

神奈子に続いてさとりも言葉を発する。そんな中、ユニは一人岩に近づき、そして触れた。と、ユニが言葉を発した。

 

「これ、普通の岩じゃないわね。かなりの力の持ち主じゃないと壊れないわ。」

 

彼女の言葉を聞いて霊夢達は一斉にユニに目を向ける。それを見たユニは首を傾げる。そんな中、椛が言う。

 

「何故あなたのような人間がそんなことを言えるのですか?」

 

「私は八雲紫に『幻想郷の守護』を任された人間よ。だからこういうのはすぐに見分けがつくわ。」

 

「だったらこの岩をなんとかしてみてよ!」

 

諏訪子がユニを指差しながら言った。そんな中、ユニは首を傾げていた。と、ユニは何かを思いついたかのようにスペルカードを取りだし、発動した。

 

「呼符コールザエニー。」

 

彼女が言った瞬間、彼女の左側に直径3mほどの空間が現れた。そしてユニはスペルカードを上に上げて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狂い踊らせ、クレイジーハンド!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が叫んだ瞬間、空間から巨大な白い左手が姿を現した。

 

「アッハハハハハ!」

 

白い左手は空間から出ると大きく不気味な笑い声を上げた。それを見た神奈子、早苗、諏訪子は同時に左手の名前を言った。

 

「クレイジーハンド!!」

 

「クレイジーハンド?」

 

何も分からない魔理沙達は首を傾げるばかりだった。と、突如として霊夢の背後にスキマが現れてそこからスキマ妖怪八雲紫が現れた。そして霊夢と魔理沙に言う。

 

「あれはクレイジーハンド。現実世界と幻想郷に伝えらている化身の一つで『破壊心の化身』って呼ばれているわ。」

 

「化身なの?」

 

「そうよ。そして化身は現実世界か幻想郷の誰かと契約を結ばないといけないの。クレイジーハンドは既に契約を結んだのだけど誰だかは分かるわよね?」

 

「・・・フランなのか?」

 

「ええ、そうよ。そしてもう一体の化身は現実世界の人と契約を結んだわ。」

 

「もう一体の化身って?」

 

「通称『創造心の化身』と呼ばれている、マスターハンドよ。もう誰だかは分かるでしょ?」

 

「・・・ミクなのか?」

 

「その通りよ。フランとミクは化身の契約者って言うのに相応しいかもね。」

 

そう言うと紫はクレイジーハンドの方へ目を向ける。彼女に続いて霊夢と魔理沙も目を向ける。そこにはクレイジーハンドが岩に力を込めていた。そしてクレイジーハンドの全ての指が開いた時だった。一瞬にして岩が粉々に砕け散った。それを見た一同は驚きを隠せなかった。そんな中、クレイジーハンドがユニに言う。

 

「招来の小娘よ、我を呼んだからには褒美は用意してあるのだな?」

 

「褒美?それはあなたの主だけではありませんでしたか?」

 

「フン、せっかちな小娘よ。だがお前の言う通り、褒美を貰えるのは我が主のみだ。」

 

クレイジーハンドが言った瞬間、ユニはクレイジーハンドの傍らに空間を出現させた。そのままクレイジーハンドは空間の中へ入っていった。それを見た文がユニの写真を撮った。それに気づいたユニは文を見ながら言う。

 

「これくらい、幻想郷の守護者としては当然でしょ?」

 

「あやや、そうですか?」

 

それを見た神奈子らもユニの元へ近寄る。そして言った。

 

「君の先程のは見事だったね。名前を教えてくれないかな?」

 

「私はユニよ。みなさん、よろしくね。」

 

そう言うとユニは守矢神社にいた人達一人一人に挨拶をした。それを見ていた紫が口を開いた。

 

「あの子、霊夢よりしっかりしてるじゃない。あなたもユニに見習わないとね。」

 

「余計なお世話よ。」

 

「けど、紫が言ったことは間違ってないぜ。」

 

「魔理沙まで・・・はぁ。」

 

霊夢が溜め息を吐いている間にユニが戻ってきた。そしてユニは霊夢と魔理沙に言う。

 

「さて、これで終わりかしら?楽しかったわ、ありがとう。」

 

「アハハ、別に礼を言うことなんかないぜ。」

 

そのまま守矢神社からは魔理沙とユニの愉快な笑い声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、幻想郷のあらゆる人間、妖怪達が寝ている頃、紫は自身の武神である藍と共にスキマの中で水色に光る水晶玉をじっと見ていた。と、突然水晶玉の色が水色から黒に変わった。それを見た藍が思わず言葉を発する。

 

「紫様、水晶玉が・・・」

 

「何かしら・・・外の世界から何か入り込んできたわ。」

 

「なっ、外の世界から!?まさか、また奴ですか?」

 

「いいえ、今回はどうやら違うみたい。だけど、こんなことが起こるなんて有り得ないわ。」

 

「一体何が起こったのです?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「外の世界ともう一つの世界から侵略者が幻想郷に入り込んだの。」




果たして幻想郷に入り込んできた侵略者とは!?
次作もお楽しみに!


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第7話 微笑む男と蛇人間

守矢神社に置かれた岩をクレイジーハンドを呼び寄せて破壊したユニ。そんな中、ある侵略者が幻想郷に入り込んできていた。


「紫様、もう一つの世界とは一体何処なのです?幻想郷以外の世界と言ったら現実世界しか浮かばないのですが・・・」

 

「それが私にも分からないのよ。だから今橙に見に行って貰ってるわ。恐らくそろそろ戻ってくる筈よ。」

 

彼女がそう言った瞬間、スキマの中の目玉が一斉に怪しく光りだした。それを見た紫はすぐにスキマを展開する。そこから出てきたのは先程紫の命令を受けて偵察に行った橙だった。彼女は荒い息づかいをしていた。そんな彼女に藍が言う。

 

「大丈夫か、橙。今休ませるからな。」

 

「藍しゃま・・・私、疲れました・・・。」

 

橙は相当体力を使ったのか、かなり疲れきった表情をしていた。そんな彼女に紫が言った。

 

「橙、私が言った侵略者は見つかった?」

 

「はい・・・・白髪の男と、リーゼントの蛇男が、いました・・・」

 

「・・・紫様!!」

 

橙の言葉を聞いた瞬間、藍はあることを察し、紫の方を見ながら言った。そしてそれに答えるかのように紫も口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間違いないわ、これは新たな異変よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

満月が昇る夜、そんなことが今起こっているのに気がついていないユニは竹林で慧音、妹紅、霊夢と共に散策をしていた。ユニもまだ幻想郷について分からない点が数多くある。それを教えてもらうために彼女は三人と散策をしているのである。そんな中、慧音がユニに言う。

 

「いや、あの時はすまなかったな。妹紅がユニに迷惑をかけたみたいだから。」

 

「お、おい慧音。まだそんなこと言ってるのか?もう勘弁してくれよ。」

 

「いやいや、別に問題ないわよ。エンダードラゴンも満足してたしね。」

 

三人が話している中、何故か霊夢だけ話に入ろうとしなかった。そんな彼女にユニが言う。

 

「霊夢、どうしたの?さっきから何も話してないようだけど・・・」

 

「別に、何でもないわよ。ただ、悪夢のことが気になってぼんやりしてしまうだけなの。」

 

「悪夢?一体どんな悪夢を見たんだ?」

 

霊夢の言葉を聞いてすぐに首を突っ込んできたのは妹紅だった。そんな彼女に霊夢はすぐに答えた。

 

「その悪夢は、紫がなんかよく分からない男の人にやられてて、そこで私が助けようとしたら舌の長い男が目の前に現れて悪夢が終わったわ。」

 

「不思議な夢を見たんだな・・・」

 

「慧音だってそんな時もあるでしょ?」

 

「うーん、あまりないな。」

 

妹紅も悪夢があるか首を傾げながら考えていたが、何も浮かばなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンフンフフ~ン♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として何処からか男の鼻歌が聞こえた。それを聞いた瞬間、ユニ達は躊躇うことなく鼻歌の聞こえた方向へ走った。そして鼻歌を歌っていた人物へ目を向けた。そこには白髪に青白い素肌、耳に青いクリスタルのピアスをつけている男がいた。

 

「ん?君達は・・・」

 

四人の存在に気がついた男は四人の方へ顔を向ける。男の顔を見た瞬間、霊夢は言葉を失い、体が震え始めた。何故なら男の顔は悪夢に出てきた男と瓜二つだからである。震える霊夢とは別に男が口を開く。

 

「私の世界では中々見ない女の子達だね。まあ、しかしどうでもいいんだよ、君達なんぞは。私が用があるのはこの幻想郷に眠るもう一つのトライフォース、『召喚のトライフォース』に用があるんだよ。」

 

「召喚のトライフォース?あいつは何を言っているんだ?」

 

「ユニ!あれはお前が呼び寄せたのか?」

 

「違うわ、慧音。私はあんな人を呼んだ覚えはない。」

 

「ああ、自己紹介がまだだったね、失礼した。私は現魔族長ギラヒム。気さくに『ギラヒム様』と呼んでくれても構わないよ。」

 

「・・・なんだそりゃ。」

 

「そのギラヒム様がここへ何しに来たんだ?」

 

「そう呼んでくれれば光栄だよ、人間。」

 

ギラヒムが声を発した時には彼は妹紅の目の前まで来ていた。それに反応出来ず四人は驚くしか出来なかった。そんな彼女らとは別にギラヒムは妹紅から離れて話を続けた。

 

「実はね、私は主のためにあることをしようと思ったんだけど、邪魔が入ってしまってね・・・どうも私は先程から機嫌が悪いんだ。」

 

「邪魔する人?それは誰のことよ!」

 

「それは現実世界からやって来た覇王率いる軍勢だよ。我々はたったの三人だけだと言うのにあちらは大勢でやって来たんだよ?無慈悲だとは思わないかい?」

 

「お前が何か企んでるからその覇王らがお前達の計画を止めるためにやってるだけじゃないのか?」

 

「それは違う。」

 

慧音の言葉にギラヒムは即答だった。そして再びギラヒムは口を開いた。

 

「彼らの目的は私達を倒すことじゃない。幻想郷を完全に支配することが目的なんだ。」

 

「なんですって!?」

 

「まさか、そいつらも帝王の仲間なのか?」

 

「君達は一つ誤解をしていないかい?」

 

ギラヒムの言葉で辺りは静まり返った。そんな中、ギラヒムが言う。

 

「君達は覇王は帝王の仲間だと思っている。だけどそれは違う。覇王は帝王の味方ではなく敵、彼らの仲間も帝王に殺されてるからね。」

 

「帝王に殺された?それは一体どういうことだ!?」

 

「後は直接本人らに聞くといい。さて、私はここで失礼させてもらうよ。君達は女の子だから一回目は許してあげるけど、二回目はないからね。それじゃあね。」

 

そう言うとギラヒムは指を鳴らし、その場から消えた。ギラヒムが消えた瞬間、ユニは三人を見て言った。

 

「急いで紫に知らせましょう。これはマズイことになるわ。」

 

そのまま三人は紫らがいるマヨヒガへ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森でも同じようなことが起こっていた。今夜の満月はきれいだし、折角だから探検しようという気分で妖精のサニー・ミルク、ルナ・チャイルド、スター・サファイアの三人が探検していた。そんな中、ルナがサニーに言う。

 

「で、サニー。何を探すって言うの?」

 

「決まってるでしょ、この魔法の森に隠されているお宝よ!」

 

「全く、サニーはそんなのを信じてるの?」

 

「当たり前でしょ?見つけたら私達は一躍有名になれるのよ!」

 

そしてサニーが後ろ向きのまま前へ進んだ時だった。突然誰かにぶつかり、サニーはしりもちをついてしまう。

 

「いてて、何でこんなところに壁があるのよ!」

 

「サニー大丈夫?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、誰が壁だテメェら!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前から男の声がし、三人は同時に顔を前に向ける。そこには白い肌に細長い首、リーゼントの髪に青いコートに鋭利な刃を持つ刀を持っている長身の男がいた。そして男は三人を見ながら言った。

 

「テメェらのようなガキに用はねぇんだよ。とっとと俺の前から消えな。」

 

「ガキって何よガキって!!」

 

すかさず男に言い返すサニー。そんな彼女に男は笑みを浮かべながら言った。

 

「ほう、いい度胸じゃねぇか。この覇王である俺に歯向かうなんてな。」

 

「は、覇王!?」

 

その言葉を聞いた瞬間、三人は腰が抜けてしまった。そして逃げようとする。そんな三人を見て男は鼻で笑い、近づき始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然聞こえた少女の声に男はピクリと反応し、すぐに目を向ける。そこには人形使いの少女、アリスがいた。それを見た三人は同時に声を発した。

 

「アリスさん!」

 

「三人とも逃げなさい。こいつは私に任せて。」

 

「は、はい!」

 

そう言うとそのまま三人は走って逃げていった。それを呆然と見ていた男はアリスを見ながら言う。

 

「テメェ、何者だ?突然来て随分と余裕そうな表情じゃねぇか。」

 

「私は別にあなたを倒すことを考えてないわ。あなたを追い払うことだけを考えてる。」

 

「ほう、面白いじゃねぇか。おおっと、まずは自己紹介しないとな。俺の名前はクリーフル、現実世界の覇王だ。」

 

「覇王ね・・・帝王や魔王が来たりと・・・」

 

「ん?テメェ今何て言った?」

 

「はあ?一度言ったことなんて二度も言わないわ。」

 

「テメェ・・・」

 

完全に頭に来た。そう感じたクリーフルは刀から炎をアリスに噴射した。それに気づいたアリスはすぐに避け、スペルカードを発動する。

 

「魔符アーティフルサクリファイス。」

 

アリスの攻撃はクリーフルには命中せず、命中したのは彼の着ているコートの一部だった。立て続けにアリスは上海人形と蓬莱人形を操り、弾幕を放った。彼女が続けに放つ弾幕をクリーフルは意図も簡単に避ける。そんな中、クリーフルはあることを思っていた。

 

(人形を操り、攻撃してくるか。成程、奴と似通った能力か。ならその分、自分にも負担がかかるということか。)

 

そう考えたクリーフルはアリスが疲れるのを待って彼女が放つ弾幕を避け続けた。それを見ていたアリスはこう思っていた。

 

(まさかあの人は攻撃しないの?いや、もしかすると私を弄んでるのかもしれない。)

 

そう感じた彼女は再びスペルカードを発動した。

 

「魔光デヴィリーライトレイ!」

 

彼女が攻撃を放った時だった。最悪のタイミングで人形を操っていた負担が彼女の体に降り注いだ。

 

「くっ、・・・」

 

アリスはそのまま膝を地面につけた。そして再び立ち上がろうとするが負担が重いため、立ち上がれなかった。

 

(フフフ、作戦通り。)

 

そう思ったクリーフルは先程彼女が放った攻撃を全て避けるとアリスを心配する上海人形と蓬莱人形を真っ二つに斬った。そして空いている左手で地面に座り込むアリスの首を掴み上げた。片手でアリスの体を持ち上げたクリーフルは苦しみながら抵抗するアリスに言う。

 

「言え、黒田輝宗はどこだ?」

 

「なん・・・・の、こと・・・・・よ・・・」

 

「惚けるな!!一度この幻想郷を闇に覆おうとした大魔王黒田輝宗に覚えがないやつなんて、いない筈だ!」

 

「知ら、ない・・・・わよ・・・」

 

「チッ!」

 

激しく舌打ちするとそのままアリスの首を絞めている左手を放した。

 

「けほっ、けほっ。」

 

激しく咳き込むアリスとは別にクリーフルはアリスを睨みながら言った。

 

「俺達はガノンドロフの撃破に専念するからな。絶対に邪魔すんじゃねぇよ。これは俺達と奴らの戦だからな!」

 

そう言うとクリーフルは霧のように消えていった。彼が消えた後、アリスは彼が言った人物の名前を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガノンドロフ。」

 

 




幻想郷に現れた魔族長ギラヒムと覇王クリーフル。二人の目的とは!?
次作もお楽しみに!


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第8話 進む計画

幻想郷に現れた魔族長ギラヒムと覇王クリーフル。お互いは敵だと述べているが・・・。


マヨヒガにたどり着いたユニ達はすぐに紫の元へ向かった。

 

「紫!いるんでしょ、紫!!」

 

霊夢とユニの掛け声に駆けつけた紫は真剣な目付きをしていた。彼女の後ろには既に戦闘体制に入っている藍と橙がいる。そんな中、紫が霊夢達が言おうとしたことを口にした。

 

「さっき橙から聞いたわ。まさか魔族まで入ってくるなんてね。名前は何て言ってたかしら?」

 

「確か、ギラヒムだったな。」

 

紫の質問に答えたのは妹紅だった。と、その時、誰かが駆けてくる音が聞こえた。そしてすぐに彼女達はその方向に目を向ける。そこには上半身と下半身に分かれている上海人形と蓬莱人形を持つ、アリスだった。そして彼女は言った。

 

「覇王も入ってきたわ。」

 

「覇王?」

 

「やっぱりね・・・どうも現実世界の気配を感じていたのよ。予想的中ね。」

 

「紫、覇王って新しい五大王の一人なのか?」

 

「白沢さん、残念だけど現実世界の五大王は五大王のまま。増えることなんてないわ。前に小宝さんに聞いたのだけど、どうやらあれらは悠岐君達の敵みたい。」

 

「じゃあ私達にとっても敵ということね。」

 

「そうよ。」

 

「あの・・・みんなちょっといいかな?」

 

紫が話していた中、アリスが唐突に口を開いた。そして再び言う。

 

「実はそのギラヒムっていう男の主君の名前が分かったんだけど・・・」

 

「主君が分かった!?今すぐ教えて!」

 

彼女の言葉に咄嗟に食らいついたのはユニだった。そんな彼女とは別にアリスは言う。

 

「確か、ガノンドロフだったわね。」

 

「ガノンドロフ?」

 

ここにいる一同は聞いたことのない名前を言われ、首を傾げた。そんな中、ユニが口を開いた。

 

「確か、ガノンドロフってハイラル王国にいた、『悪の化身』と呼ばれた人じゃなかったかしら。」

 

「ユニ、知ってるなら私に教えてちょうだい。何か手掛かりが掴めるかもしれない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいギラヒム。計画はまだ始めないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もいない玄武の沢の奥地、そこには青白い素肌の男、ギラヒムと顔を謎の被り物で覆い隠している男の二人がいた。男の問いにギラヒムは答える。

 

「勿論、問題ないとも。つい先程竹林を散歩していたらハイラル王国では見かけない女の子達に会ったよ。見るからに弱そうだったよ。」

 

「女のことはどうでもいい、それよりもガノンドロフ様が求める、『召喚のトライフォース』の手掛かりは掴めたのか?」

 

「生憎、それが見つからなくてね。困ってるんだよ。何か情報はないかい?ザント。」

 

ギラヒムが言う男、ザント。彼は彼は影の王と呼ばれており、ハイラル王国の者達から恐れられている。ギラヒムの問いかけにザントはすぐに答えた。

 

「私の元にも特に何の情報も集まっていない。すまないが私は力になれない。」

 

と、唐突に二人の背後から大きな足音が響いた。それを聞いた瞬間、二人はその方向へ体を向け、膝を地面につけた。そして頭を下ろした。奥からやってきたのは身長2mを有に越えていて左手には忌まわしい剣を握っている大男が現れた。大男は二人を見て口を開いた。

 

「ザント、計画は順調なのか?」

 

「はい、順調でございます。ですがまだ『召喚のトライフォース』の持ち主が誰なのかは特定出来ていません。」

 

「そうか、まあゆっくり探せばよい。いずれこの世界も我が手中に置かれるのだからな。そして、ギラヒムよ、覇王どもはどうなっている?」

 

「はい、つい先程様子を見に行ったのですがやはり大勢の軍隊を率いております。」

 

「・・・奴らに先越されないようにすぐに行動する。よいか、あの覇王の小僧に我の計画を邪魔されてはならないのだ。それを承知の上でお前達には働いてもらっているからな。」

 

「はっ!」

 

「さて、我は先程の続きをするとしようか・・・」

 

そう言うと大男、ガノンドロフは奥へと進んでいった。二人はそれをただ黙って見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、今のところは問題ないな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって無縁塚。そこでは先程アリスとの戦闘を繰り広げた覇王の蛇人間、クリーフルと彼と同じ種類で緑のコートを着ている鰐人間がいた。

 

「随分とご機嫌だな、クリーフル。」

 

「ああ、これでこの世界がようやく俺達のものになるのだからな。」

 

「帝王によってやられたあいつらのために必ずこの世界を統一するぞ。」

 

「だがクリーフル、ガノンドロフらはどうするんだ?」

 

「フフフ、安堵しろドールク。あいつならカックン達に任せておけばいい。」

 

「だがガノンドロフも大魔王と呼ばれた強大な力を持つ男。簡単には倒れない筈だ。」

 

「だからそれを使うんだよ。カックン達で時間を稼いでその間に幻想郷を支配しようというわけさ。」

 

「成程、クリーフルとしては中々いいアイディアじゃないか。」

 

そして二人は無縁塚から見える幻想郷の人里を見て、笑みを浮かべた。




幻想郷に迫る、ガノンドロフらとクリーフルらの計画。果たして幻想郷はどうなってしまうのか!?
次作もお楽しみに!


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第9話 二つの脅威

どんどん計画を進めていくガノンドロフとクリーフル。霊夢達はそれを阻止することが出来るのか。


マヨヒガに入った霊夢達はユニにガノンドロフについて話を聞いていた。

 

「ガノンドロフはさっきも言った通り、『悪の化身』と呼ばれている男で彼は『力のトライフォース』の持ち主なの。」

 

「力のトライフォース?」

 

「まあ、霊夢達は初めて聞くから分からないのは無理もないわ。説明するけどトライフォースって言うのは世界に三つしかないと言われている聖なる三角形でそれぞれ勇気のトライフォース、知恵のトライフォース、そして力のトライフォースがあるの。だけど、どうやらギラヒムによるとその三角形が幻想郷にもう一つあるみたい。」

 

「それで、ギラヒム達はその召喚のトライフォースを狙っているってことなの?」

 

話しているユニに紫はすかさず言葉を発する。ユニもそれに答える。

 

「いいえ、どうやら彼らはついでに幻想郷を支配することもするみたいね。」

 

「それを阻止するかのようにいるのが現実世界から来た覇王クリーフルってことなの?」

 

「正確に言えばクリーフル達は幻想郷の完全なる支配が目的。トライフォースを狙うことなんかないわ。だって彼らは知らないもの。それに覇王クリーフルには他に5人の仲間がいたのよ。」

 

「いたってことはまさか、そいつらも来るのか?」

 

「実は違うのよ、妹紅。そのクリーフルの仲間の内、3人がある人によって命を落としたの。そして今回幻想郷に攻めてきたのはあの3人だけ。」

 

「あの3人って誰のことなの?」

 

気になった霊夢がユニに問いかける。その問いにユニはすぐに答えた。

 

「それがクリーフル、ドールク、そしてじ久よ。」

 

「ドールク?じ久?」

 

聞き覚えのない名前を聞いて一同は首を傾げた。そんな中、ユニが言う。

 

「ドールクは鰐人間で銃王と呼ばれている男でじ久は銃王の左腕。いずれ会うかもね。」

 

ユニが次のことを話そうとした時だった。突然激しい爆発音が辺りに響いた。

 

「な、何今の?」

 

霊夢達が戸惑っている間にユニと紫、藍と橙は既にマヨヒガの外へ出ていた。そしてある方向を見つめる。霊夢、妹紅、慧音、アリスも外に出てユニ達が見つめる方向を見る。ユニ達が見つめているもの、それは大勢の2本の角が生えていて手足がなく、大きな口に青い目を持っている妖怪が大勢の鬼と無縁塚で戦っていたのである。それを見た紫が言葉を発した。

 

「どうやら、戦いが始まったみたいね。」

 

「あれは鬼と何かの妖怪?」

 

「萃香と勇儀が戦っているみたいね。私達は今の内にガノンドロフらとクリーフル達を倒しましょう。」

 

「ええ、そうね。」

 

紫が言った瞬間、マヨヒガの外にいた人達全員が一斉に飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無縁塚では鬼と覇王クリーフル率いる覇王軍が激しく争っていた。そんな中、萃香が先陣を切りながら言った。

 

「さあ、私達の力を見せつけるわよ!」

 

彼女に続いて勇儀も鬼達に言う。

 

「アタシも負けてられないからな!ここで戦って幻想郷を死守するぞ!」

 

「オオー!」

 

鬼達はやる気満々で覇王軍をどんどん攻めた。それに対抗するために覇王軍も攻めていく。

 

「チッ、あの小娘、中々やりやがる。」

 

「まあ落ち着けクリーフル。俺達は別の場所へ攻めないとな。」

 

「そうだな。俺達は鬼と遊んでいる暇なんてないからな。」

 

「クリーフル様、ドールク様!」

 

鰐人間、ドールクとクリーフルが話している中、一人角が2本生えていて短い手足がある妖怪が二人の元へやってきた。それに気づいた二人は妖怪のほうを見る。そして言葉を発する。

 

「じ久か。どうした?」

 

「先程、博麗の巫女達も動き出したとのことです。急ぎましょう、すぐにやってくる筈です。」

 

「分かった。すぐに移動しよう。じ久、お前は紅魔館を攻めろ。レミリア・スカーレットを潰せ。」

 

「はっ、このじ久、ドールク様から与えられた使命を果たして見せます。」

 

そう言うとじ久は紅魔館へ走っていった。彼が行った後、ドールクがクリーフルに言う。

 

「俺は魔法の森を攻める。お前は適当に何処か攻めとけ。」

 

「分かったよ。ドールク、お前は死ぬな。お前は俺達にとって必要な逸材なんだ。」

 

「分かってるよ、お前も気をつけろよ、クリーフル。」

 

そのまま二人は深く頷き合い、それぞれの場所へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼と妖怪の争いを妖怪の森から見ていたのはハイラル王国からの侵略者、ガノンドロフ、ザント、ギラヒムだった。と、ギラヒムが言う。

 

「覇王軍め、あのまま滅んでしまえばいいものを。」

 

「クリーフルとドールクの姿が見当たりませんね、一体何処に・・・」

 

「そんなのはどうでもよい。我々はまずは召喚のトライフォースを手に入れることが先決よ。」

 

「そうですね、申し訳ありません。」

 

「さて、そろそろ移動する。ここには長居することは叶わないからな。」

 

そう言うと3人は何処かへ霧のように消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニは一人で魔法の森を散策していた。ここには妖精がいることは彼女は知っている。ユニは彼女達に危機が及ばないようにここへ訪れていた。

 

「大ちゃん?大ちゃん来てー!」

 

ユニが大声で呼ぶと森の奥から緑の髪の毛に背中に翼が生えている少女、大ちゃんこと大妖精が彼女の元へやってきた。そしてユニに言う。

 

「ユニさん、どうしたんですか?」

 

「急いで安全な場所へ他の妖精達を避難させて。危険な妖怪達がここへ来るかもしれないからね。」

 

「ひっ、よ、妖怪が!?そ、それで何処へ避難させればいいんですか?」

 

「一番安全といえるのは永遠亭だからそこへみんなを避難させて。」

 

「わ、分かりました。」

 

彼女が森の奥へ行こうとした時だった。突如として森の奥から氷の塊が飛んできたのだ。ユニはそれを容易くかわし、奥から来た少女に目を向ける。

 

「あたいと勝負しろ!!」

 

奥からやって来たのは毎度お馴染みの氷の妖精、チルノだった。そんな彼女とは別にユニは真剣な目付きでチルノに言った。

 

「いい?チルノ。これはお遊びじゃないのよ。下手すればあなたは死ぬかもしれないのよ。だからあなたは大人しく永遠亭にいてちょうだい。私はあなたに死んでもらいたくないから。」

 

彼女の言葉に納得がいったのか、チルノは黙り込んでしまった。そして言う。

 

「分かった、あたいは大ちゃん達を守りながら永遠亭に行くね。ユニも死んじゃ駄目だよ。」

 

「分かってるわよ、さあ、行きなさい。」

 

彼女の言葉を聞いたチルノと大ちゃんは黙って他の妖精達のところへ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中々説得力があるじゃない、ユニ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背後から声が聞こえたため、ユニはすぐに振り返る。そこには金髪の少女、アリスがいた。そんな彼女にユニは言う。

 

「よく紫にしっかりとした大人になるためには賢くならないといけないって言われてたからね。」

 

「あなたはこれからどうするつもり?」

 

「私はしばらくここにいて奴らを食い止めることにするわ。」

 

「そう、偶然ね。私も奴らが来た時のためにここに残っていることにするわ。」

 

「本当?じゃあ私は東側を見てるからアリスは西側を任せてもいいかしら?」

 

「分かったわ、死んじゃ駄目よ。」

 

「勿論だとも。」

 

そう言うと二人は笑みを見せ合うとそのままユニは東側へ、アリスは西側へ向かった。




幻想郷の侵略、そして彼女らに襲いかかる悲劇。果たして霊夢達の行方は!?
次作もお楽しみに!


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第10話 コールザエニー、青龍

ついに侵略を開始したガノンドロフらとクリーフル。霊夢達はそれを阻止することが出来るのか。


アリスと別れたユニは魔法の森の東側へ向かっている途中、あることに気がついた。それはチルノ達が何処かへ行った後、2、30体ほどのカックンがチルノ達を追いかけていったのである。

 

「まさか、カックン達はチルノ達を!?マズイわ、早く何とかしないと・・・。」

 

ユニは少し悩んだものの、咄嗟に思いつき、すぐにスペルカードを発動した。

 

「呼符コールザエニー、あいつらを倒して、四神青龍!」

 

ユニが叫んだ瞬間、彼女の右側に直径5mほどの空間が現れた。そしてその中から全身青い鱗で覆われた、体長10mほどの龍、青龍が現れた。青龍はユニの目の前で浮き、彼女を見つめる。そんな青龍にユニは言う。

 

「チルノ達を追いかけるカックン達を倒して。方角は南よ。」

 

「グガァァァァ!」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、青龍は雄叫びを上げながらチルノ達が逃げていった南へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ!何なのよあいつらはぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森の南地点ではユニの言葉通り、覇王軍の下僕の妖怪、カックン達が妖精達を追いかけていた。

 

「捕まえろ!絶対に逃がすな!」

 

チルノ、大妖精の他、ルナ、サニー、スターもカックン達に捕まらないように全速力で逃げ続けた。カックン達は足が無い分スタミナの消費が少なかった。それに対してチルノ達はスタミナの消費が激しかった。そんな中、チルノがあることを思いつき、言う。

 

「そうだ、あたいがこいつらを倒せばいいんだ、よぉし!」

 

そう言うと彼女は後ろを振り返り、スペルカードを使った。

 

「氷符アイシクルフォール!」

 

彼女の放った攻撃はカックン達に命中した。だがカックン達は何事も無かったかのようにチルノ達を追いかけてきた。

 

「き、効いてない!?」

 

「チルノちゃん、逃げよう!」

 

大妖精はすぐに彼女に呼び掛けた。だがチルノは足がすくんで動くことが出来なかった。それを見たルナ、サニー、スターがそれぞれスペルカードを使った。

 

「月符ルナサイクロン!」

 

「虹光プリズムフラッシュ!」

 

「流星プチコメット!」

 

三人の攻撃はカックン達に命中したものの、結果はチルノと同じだった。それを見たカックンの一体が口を開く。

 

「おいおい、まさか妖精ごときが俺達を倒そうなんて考えてないよな?」

 

「ひぃぃぃっ!」

 

五人は腰が抜けてしまい、地面に座り込んだ。それを見たカックン達はゆっくりと五人に近寄る。五人は逃げようとするが足がすくんで動くことが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グガァァァァァ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として空から雄叫びが辺りに響いた。それを聞いたカックン達は上を向くよりも先に雄叫びを上げた生物がチルノ達の周りに群がるカックン達を一体も残さずに焼き殺した。

 

「な、何?何が起こったの?」

 

戸惑う五人とは別に空からチルノ達の前に一体の龍、青龍が降りてきた。そしてじっとチルノ達を見つめる。

 

「わ、私達を食べるつもり!?」

 

思わずルナが頭を抱えながら叫ぶ。それを聞いた四人は逃げようとする。だが青龍はそんな彼女達を黙って見ていた。そして青龍は空を見ると、そのまま何処かへ飛んでいった。チルノ達はそれを呆然と見ていた。

 

「は、早く行こう。またあの妖怪達が来るかもしれないから。」

 

「そ、そうね。さぁ、行きましょう。」

 

大妖精の言葉に我に返った四人はゆっくり起き上がり、永遠亭へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青龍が空を飛んでいるのを見てユニは安堵の息を吐き、一言言った。

 

「ありがとう、青龍。」

 

そう言うと彼女は右手を上に上げた。その瞬間、上空に先程ユニの隣に現れた空間が再び現れた。それを見つけた青龍はそこへ躊躇うことなく入っていった。青龍が入りきった後にユニは空間を閉じた。そして再び辺りを見回した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アリスは魔法の森の西側を探索していた。今のところ、彼女のところでは何も異常は無かった。

 

「おかしいわね、さっきチルノ達に妖怪達が追いかけてたって言うのに・・・」

 

そして彼女が道を通ろうとした時だった。ひっそりと二人の男の話す声が聞こえたため、彼女はこっそりと草影に隠れてその様子を見つめる。そこには大きな椅子に座る大男、ガノンドロフと彼の前で膝をつく男、ザントがいた。

 

「ガノンドロフ様、ついに召喚のトライフォースの持ち主を特定出来ました。」

 

「ほう、それは興味深いな。それは一体誰なのだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、アイアルト・ユニという少女でございます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ!?」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、アリスは思わず声を上げてしまった。何故なら召喚のトライフォースの持ち主がユニだというのが信じられなかったからである。はっとなった彼女は咄嗟に口を塞ぐが既にザントとガノンドロフがアリスの隠れている草影を見ていた。

 

「何者だ、出てこい!!」

 

ザントの言葉を無視してアリスはその場からすぐに離れた。それに気づいたザントは一度ガノンドロフに頭を下げて言った。

 

「少しお待ちを願います。先程の者をすぐに排除しますので。」

 

そう言うと彼はアリスが逃げていった方向に向かって思いきり叫んだ。

 

「そっちに向かったぞ、ギラヒム!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザントの声を聞いたギラヒムはじゅるりと音を立てながら自分の唇を舐めた。そして言う。

 

「ほう、こちらにやって来るのは人形使いのアリスちゃんか・・・たっぷり遊んであげないとね。」

 

そう言った瞬間、ギラヒムの姿が一瞬にして消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度その頃、紅魔館でも異変が起こっていた。いつも通りにレミリア達は紅茶を飲むだの、くつろいでいた。そんな中、門から爆発音が響いた。それに気づいたレミリア達はすぐに美鈴のいる門へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお、やって来たか。レミリア・スカーレット。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのは大きさがユニと同じくらいあり、角が2本生えていて短い手足に大きな目に口の妖怪がいた。それを見たレミリアが言う。

 

「なんだか下僕って感じの妖怪ね。強そうとは思わないわ。」

 

「フン、そんなこと言ってられるのは今だけだぜ?いずれこのじ久様によって苦しむことになるからな。」

 

「その言葉、そのまま返してあげる。覚悟しなさい!」

 

そう言うとパチュリーはスペルカードを発動した。彼女に続いてフランも発動する。

 

「火符アグナシャイン!」

 

「禁忌カゴメカゴメ!」

 

二人の攻撃を見たじ久は容易くかわす。二人に続いて美鈴と咲夜もスペルカードを発動する。

 

「華符破山砲!」

 

「時符プライベートスクェア!」

 

じ久は二人の攻撃を見た左手に持っていた刀で彼女らの攻撃を全て弾いた。その間にレミリアが彼の背後に回り、そして殴り飛ばした。

 

「はあっ!」

 

「ぐほっ!?」

 

彼女の攻撃を食らったじ久はくの字の体制になりながら吹き飛び、木に衝突した。

 

「ゴフッ、やるじゃねぇか。」

 

吐血しながらも彼は笑みを浮かべたままレミリア達を睨む。そんな彼とは別にレミリアが言う。

 

「今の内よ、フラン、美鈴、小悪魔、やりなさい!」

 

彼女の言葉を聞いたフラン、美鈴、小悪魔は一斉に彼に攻撃を放とうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが三人はじ久に攻撃が当たるギリギリで手を止めていた。それを見たパチュリーが三人に言う。

 

「フラン、美鈴、こあ、何をしているの?さっさとそいつを倒しなさいよ。三人とも!!」

 

呆れたパチュリーが三人に近づき、体を揺らそうとした時だった。何かおかしいと感じたレミリアが咄嗟にパチュリーに言う。

 

「パチェ、三人から離れて!!」

 

「レミィ、どうしたの?急にそんなことを・・・」

 

パチュリーは首を傾げながらレミリアに言う。だがその瞬間、美鈴の右ストレートがパチュリーの腹部にクリーンヒットした。

 

「えっ、嘘・・・」

 

何も考えることが出来ず、パチュリーは壁に叩きつけられ、地面に崩れながらそのまま吐血した。

 

「ちょっと美鈴、パチュリー様になんてことを!!」

 

「待って咲夜、今は美鈴はいつもの美鈴じゃないわ。」

 

「いつもの美鈴じゃないってどういうことなんですか?」

 

「見れば分かるわよ。」

 

レミリアに言われたので咲夜は美鈴達を見る。彼女の目は赤く染まっており、明らかに普通ではなかった。共犯が誰なのかは分かっており、レミリアは共犯に言葉を発する。

 

「じ久、三人に何をしたの?」

 

「何をした、だって?簡単なことさ。俺の能力を使っただけだからな。俺の能力は『妖怪を操る程度の能力』。」

 

「それでフランと美鈴と小悪魔を操っているってことね。」

 

「納得してる暇なんかないぜ?なんせお前達はここで消えてもらうからな、アヒャヒャヒャ!」

 

 




じ久の能力に苦しむレミリア達。さらにアリスに悲劇が!
次作もお楽しみに!


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第11話 倒れるアリス 黒き刀再び

じ久の能力に苦しむレミリア達。青龍を呼び寄せてチルノ達を助けたユニ。


「ハァ、ハァ。」

 

ザントに見つかってしまい、全速力で逃げるアリスはユニのいる東側へ向かっていた。彼女に助けを求めるためである。2対1の状況では彼女は逃げることしか出来なかった。

 

「ユニ!助けてユニ!」

 

アリスは大声を出しながらユニに助けを呼んだ。だがまだ彼女との距離が離れているため、ユニが来そうになかった。そしてアリスが東側へ到着する瞬間だった。突如として白髪の男、ギラヒムが彼女の目の前に現れたのだ。

 

「なっ!?」

 

「こんにちは、アリスちゃん!」

 

彼女は突然自分の目の前に現れては何の対応もすることが出来なかった。そのままギラヒムは右手に魔族の剣を握り、アリスの右腕を切り落とした。

 

「!?」

 

切られた右腕からは鮮血が飛び散る。と、背後から突然銃声が響いたかと思うと何者かがアリスの腹部を撃ち抜いた。

 

「かはっ!?」

 

「何っ!?」

 

突然の何者かの奇襲を予期していなかったギラヒムはただ目を大きく見開くしか出来なかった。

 

「あ、あぁ・・・」

 

そんな彼とは別にアリスは吐血しながらそのまま地面に倒れた。右腕を切られ、急所を撃ち抜かれては彼女はもうどうしようも出来なかった。そんな彼女とは別にギラヒムは銃弾が飛んできた方向を見る。

 

「チッ、外したか。」

 

そこにいたのは体は人間と同じで鰐の頭をしていて緑のコートを着ていて左手には拳銃を、右手には刀を握っているドールクがいた。そんな彼にギラヒムは言う。

 

「これはこれはドールク君、また会ったね。こんなところで会うということはきっと私達は運命の赤い糸で結ばれているんだね。」

 

「ギラヒム、テメェ、何でこんなところにいるんだ。」

 

「ここにいる理由?決まってるじゃないか。マスターの命令で内密にしていたことをこのアリスちゃんにばれてしまったからね、彼女を細かく切り刻もうとしたんだけれども君が止めをさしてしまった。つまり君はいいところ取りをしたんだよ。」

 

「だからどうした?俺が狙ってたのはこの小娘じゃなくてテメェなんだよ。」

 

「ほう、それは意外な発想だな。君は幻想郷を支配するのが目的じゃないのかい?」

 

「俺はそのためにまず邪魔なテメェをぶっ殺すんだよ。覚悟しやがれ!」

 

そう言うとドールクは刀と拳銃を構えた。それを見たギラヒムはクスクスと笑いながら魔剣を構えた。

 

「いいだろう、相手してあげるよ。ちょっとだけならね。」

 

そう言うと彼はゆっくりと歩きながらドールクに近づいた。それを見たドールクは拳銃を発砲する。ギラヒムはそれを魔剣で弾いていく。

 

「くらいやがれ!」

 

その声が聞こえた瞬間、ドールクが上から刀を降り下ろしていた。ガキンッという音が辺りに響いた。

 

「フフフフフ。」

 

「なん・・・・だと・・・」

 

ドールクはギラヒムのとった行動に驚きを隠せなかった。何故ならギラヒムは空いている左手の中指と人差し指でドールクの刀を受け止めていたからである。驚く彼にギラヒムが言う。

 

「その刀、あまり私の好みではないな。まあ、それは別として君の構えを見れば私は何度でも君の攻撃を止められるよ。」

 

「そうか、だったらこいつはどうだ!」

 

そう言うとドールクは左手に握っていた拳銃をギラヒムに突きつけた。

 

「何っ!?」

 

目を大きく見開いたものの、ギラヒムは拳銃の銃弾が当たる前にドールクの刀を放し、魔剣で彼の攻撃を防いだ。

 

「フン、やるじゃねぇか。」

 

「君もね。」

 

二人は笑みを浮かべながら一歩も譲ることなく戦う。そんな中、アリスの声を聞きつけてユニがやって来た。

 

「あ、あれは!!」

 

ギラヒムとドールクが戦っているのを見てユニはすぐに気づかれないように草影に身を隠した。そしてあることに気づく。

 

「ア、アリス!!」

 

ユニは二人が戦っている中、地面に倒れるアリスの姿を確認した。右腕を切り落とされ、腹部を撃ち抜かれた後を見て二人にやられたのだと彼女は察した。

 

(今ギラヒムとドールクは交戦状態、あの状況でアリスを助けられるのは相当困難なこと。速い人と言えば・・・そうだ!あ、でも彼は・・・仕方ない、やむを得ないわね。)

 

心の中で決心したユニは二人に気づかれないようにスペルカードを発動した。

 

「呼符コールザエニー。」

 

そして彼女は呼び寄せる者を頭に思い浮かべ、そして呼び寄せる者の名前を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリスを助けて、西田悠岐!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が言った瞬間、ユニの右側に直径2mほどの空間が現れた。そしてその中から猛スピードで黒い髪に黒のコートを来ている青年が倒れているアリスを救出した。あまりにも彼の動きが速すぎるため、ギラヒムとドールクが気づく様子はなかった。そして青年はユニの隣に来た。そして彼女を見ながら言う。

 

「お前がモルトの妹のユニか。」

 

「えぇ、そうよ。初めまして、西田悠岐君。」

 

「おう、初めまして。さ、そんなことより永遠亭に行くぞ。二人の戦いに巻き込まれたら面倒だからな。」

 

そう言うと悠岐はアリスをお姫様抱っこしながら永遠亭に向かった。アリスを抱えているのにも関わらず彼の動きは素早かった。そんな彼の後にユニもついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァァァァァ!」

 

アリスがいなくなったことにも気がつかないギラヒムとドールクは戦闘を続けていた。ギラヒムは声を上げながらドールクの方へ走ってきた。そして彼の腹部を切りつけた。

 

「チッ!」

 

彼の不可解な動きをドールクは読むことが出来ず、腹部に切り傷を被う。そんな彼とは別にギラヒムは再び彼に向かって走ってきた。ドールクはそんな彼の動きを見切り、拳銃を発砲した。彼の攻撃はギラヒムの右肩に命中した。

 

「おおっと!」

 

肩を撃ち抜かれたため、ギラヒムは肩を抑えながら後退りした。だが彼は笑みを浮かべていた。そして二人同時に地面を蹴り、同時に攻撃しようとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として辺りに爆発音が響いた。それを聞いた二人は思わず手を止めてしまう。そして爆発音が響いた方向を見る。そこは人里だった。

 

「ほう、あれは君の仲間の・・・クリーフル君だったかな?恐らく彼の仕業のようだね。」

 

「クリーフルらしくないやり方だが、まあ技を見ていればあいつだってすぐに分かるな。」

 

「さて、時間だ。君との決着は二の次とさせてもらうよ。だからそれまでは死んじゃ駄目だよ。次戦う時は全治100年で済ませてあげる。それじゃあ、またね~。」

 

そう言うとギラヒムは何処かへ消えていった。それを呆然と見ていたドールクはある方向を向き、言う。

 

「古明地さとりを攻めるか。紅魔館はあいつに任せているからな。」

 

そう言うとドールクは地霊殿へゆっくりと歩いて行った。二人ともアリスのことをすっかり忘れて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森奥地ではガノンドロフとザントがまだいた。そんな中、ザントがガノンドロフに言う。

 

「ガノンドロフ様、先程草影にいた者をギラヒムが排除したようです。」

 

「後でギラヒムにご苦労と伝えておけ。さぁ、ザント。お前も行くがよい。全てを我が物とするために!!」

 

「はっ!」

 

そう言うとザントは何処かへ消えていった。それを見たガノンドロフは笑みを浮かべながら言った。

 

「覇王の小僧、お前には幻想郷は譲らぬ。故に召喚のトライフォースもな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああああああ!」

 

「助けてぇぇぇぇ!」

 

人里ではクリーフル率いる覇王軍の一部隊が人里を奇襲していた。

 

「一人も逃がすな、全員処罰しろ。」

 

逃げる人達をカックン達は一人も残さないように追いかけ回した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたわよ、覇王クリーフル!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然声が聞こえたため、彼は後ろを振り返る。そこには霊夢、紫、妹紅の三人がいた。それを見たクリーフルは眉を潜めて、言う。

 

「あのなぁ、俺が今何をしてるのか分からないのか?俺はテメェらの相手をするほど暇じゃねぇんだよ。カックン、こいつらの相手をしろ。」

 

そう言うと彼は周りに群がっていたカックン達を呼び寄せた。そして三人に奇襲するように命じた。

 

「じゃあな、博麗の巫女、不死鳥、そしてスキマ妖怪。」

 

そう言うと彼は霧のように消えていった。クリーフルが消えた瞬間、カックン達が一斉に三人に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、大勢の鬼が三人の前に現れ、カックン達に奇襲した。それを見た霊夢は一人の少女に言う。

 

「ありがとう、萃香。」

 

「これくらい大丈夫だよ!霊夢達は地霊殿か博麗神社に行ったほうがいいよ。さっきザントとドールクを見かけたんだよ。」

 

「博麗神社が!?私は博麗神社に行くわね。」

 

「分かった、私は地霊殿へ向かう。」

 

「私は適当に誰かを倒すわね。」

 

そう言うと三人はそれぞれの場所へ飛んでいった。




次々と集まる幻想郷の人達!そしてまた何かを企むガノンドロフ。
次作もお楽しみに!


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第12話 ザントとの戦い

何かを企み始めたガノンドロフ。その企みとは・・・。


永遠亭に到着したチルノ、大妖精、ルナ、サニー、スターは息が切れていた。恐る恐る大妖精は後ろを振り返る。もうカックン達は追いかけてこなかった。

 

「良かったぁ、もう追いかけてこないよ。」

 

「あれは一体何なの?私は今まであんな妖怪を見たことないわよ。」

 

「知らないわよ、ルナ。あんなやつ見たことも聞いたこともないし。」

 

「と、とりあえず中に入れてもらいましょう。」

 

スターの言葉で五人が中へ入ろうとした時だった。竹林の奥から何者かがこちらへやって来る音が聞こえた。五人は思わず足を止めてしまう。

 

「ま、まだ追いかけてたよ・・・」

 

「ど、どうしよう・・・」

 

五人は先程起こったことを思い出してしまい、足がすくんでしまった。そしてついに五人の元まで何者かがやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してるんだお前ら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やって来たのはここまでチルノ達を追いかけてきたカックンではなく、悠岐だった。五人の不可解な行為に彼は唖然となっていた。

 

「あら?あなた達まだこんなところだったの?さっき青龍を呼んで助けてあげたでしょ?」

 

「あ、あの龍を呼び寄せたのってユニちゃんだったの?」

 

「そうだけど・・・さ、ちょっと怪我人がいるからここを通させてもらえる?」

 

ユニに言われたため、五人は通り道をどいた。そして悠岐が抱える少女を見る。彼が抱えていたのは右腕を切り落とされ、腹部を撃ち抜かれたアリスだった。それを見たルナ、サニー、スターは同時に彼女の名前を言う。

 

「アリスさん!」

 

そのまま三人も悠岐とユニの後をついていく。それにつられてチルノ、大妖精も後をついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・これは酷い傷ね。私が治療しておくわ。」

 

「ありがとう、永琳。」

 

アリスの治療は無事終了したものの、彼女はまだ動ける状態ではなかった。そんな中、ユニは悠岐の方を見る。彼は刀をぐっと握りしめており、目は赤く染まっていた。そんな彼にユニは言う。

 

「悠岐君、やっぱり行くんだね。」

 

「当たり前だ。アリスをやられたままほっけるかよ。」

 

「・・・だよね。許せないよね。」

 

「ユニ、俺はこれからギラヒムとドールクの元へ向かう。絶対に邪魔はしないでくれよな?」

 

「勿論、邪魔なんかしないわよ。あなたの大切な使命を奪うつもりなんてないわ。」

 

「ユニ、お前は紅魔館に行くといい。確か、ドールクの部下のじ久がそこを奇襲しているって言ってたな。」

 

「レミィ達が危ないってことね、分かったわ。」

 

そう言うと二人はそれぞれの場所へ悠岐は走っていき、ユニは飛んでいった。チルノ達はそれを黙って見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ここが博麗神社か・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、ガノンドロフの部下のザントが博麗神社へやって来ていた。魔法の森を抜けた彼はすぐに博麗神社へ行き、そこにいる人を倒そうと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たわね。」

 

「待ってたぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前から声が聞こえたため、ザントは前を向く。そこには茶髪と黄色の髪の少女、霊夢と魔理沙がいた。それを見たザントは言葉を発する。

 

「ほう、まさか博麗の巫女と白黒の魔法使いがいきなり相手とはな・・・。私も少し気を引き締めねばならないな。」

 

「魔理沙、気をつけて。見た目からしてあいつはタダ者じゃないわ。」

 

「分かってる、だからいつも以上に注意しないとな。」

 

「さぁ、行くぞ!」

 

そう言うとザントは二人に向かって紫色の弾を飛ばしてきた。二人はそれを二方向に分かれて避ける。最初にザントが目をつけたのは魔理沙だった。彼は彼女に紫色の弾を連射する。魔理沙もそれを箒に乗りながらかわす。

 

「箒を使って私の攻撃を避けるとは・・・卑劣にも程がある。」

 

少し腹が立ってきたザントはさらに多く紫色の弾を連射する。魔理沙はそれに追いつかれないようにかわす。と、彼女がかわした先にザントが先回りして曲刀を構えた。

 

「げっ!」

 

だがザントの攻撃が魔理沙に命中するよりも先に霊夢の放った封魔針がザントに命中していた。

 

「くっ、博麗の巫女がいたか・・・」

 

「あんた、油断したようね。魔理沙に夢中になりすぎよ。」

 

「くっ、流石の私も2対1は辛いな。ならばお前達にとっておきのものを見せてやろう。」

 

そう言うとザントは宙に浮かび始めた。そして彼は何かをため、自分の背後に赤い旋盤を出現させた。その瞬間、辺りが水に覆われ、場所が博麗神社から湖の中に移動した。

 

「なっ、水!?」

 

「ま、マズイ。ここは・・・」

 

「苦しいか?これはガノンドロフ様から頂いた力だ。これでお前達を圧倒してやろう。」

 

そう言うとザントは水中の中で二人に向かって紫色の弾を連射してきた。霊夢と魔理沙は攻撃を避けようとするが水中にいるため、中々速く動くことが出来なかった。そのままザントの攻撃が二人に命中した。

 

「むぐぐ・・・(マズイ、息が・・・)」

 

「ゴポッ・・・(速く上がらないと・・・)」

 

息が出来なくなった二人は急いで水中から上がろうとするが、

 

「無駄だ。ここは私の世界、地上に上がることなど不可能だ。」

 

「!?」

 

嘘だと感じた二人は彼の言葉を無視して水中から上がろうとする。だが泳いでも泳いでも中々地上に辿り着くことが出来なかった。

 

「無駄だと言っているのが分からないか?」

 

そう言うとザントは上へ上がろうとする霊夢と魔理沙の足を掴み、上がるのを阻止した。

 

「ゴポッ・・・(も、もう無理・・・)」

 

霊夢と魔理沙は息が限界になり、意識が朦朧となった。それを見たザントは再び背中に赤い旋盤を出現させた。その瞬間、水が一瞬にして消え、先程三人がいた博麗神社に戻ってきた。そんな中、二人の服は水浸しになっていた。そんな中、ザントが二人に魔術をかけた。

 

「うっ!?」

 

「な、なんだこれ・・・」

 

その瞬間、霊夢と魔理沙の体が十字架の形になり、二人はその場から動くことが出来なくなった。そんな中、ザントが二人に近寄り、言う。

 

「これが私の力だ。お前達のような人間など私の眼中にない。お前達などガノンドロフ様の養分に成り果てればよいのだ。」

 

「そんなになってたまるか!」

 

魔理沙がザントに断言する。そんな彼女を見て彼は顔を彼女の耳元まで寄せると、顔を覆っていた被り物の口の部分を開き、言葉を発する。

 

「そんなお前はあの女によく似ている。私はそんな輩が欲しい。」

 

そう言うとザントは魔理沙から放れた。その瞬間、ザントの体がみるみる大きくなっていき、遂には神社よりも大きな体になった。それを見て二人は目を大きく見開く。そんな中、ザントが二人に言う。

 

「去らばだ、博麗の巫女と白黒の魔法使いよ。」

 

そう言うと彼は右足を上げ、そのまま二人に向かって叩きつけた。

 

「くっ、こんなところで負けるわけには・・・」

 




霊夢と魔理沙、絶体絶命のピンチ!果たしてどうなってしまうのか!?
次作もお楽しみに!


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第13話 ドールクの最後

ザントの不可解な攻撃により、ピンチに追い込まれる霊夢と魔理沙。


「この辺りを見て回ったほうがよさそうだな・・・」

 

迷いの竹林で一人、ガノンドロフやクリーフルの驚異を見回る少女、上白沢慧音がいた。彼女はギラヒムと初めて会った時のことを思いだし、周辺を散策していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「慧音さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然声が聞こえたため、彼女は後ろを振り返る。そこには白髪に二本の刀を持っている少女、魂魄妖夢がいた。それを見た慧音は妖夢に言う。

 

「妖夢、そっちにギラヒムや現実世界から来た奴らはいたか?」

 

「いえ、今のところは見かけていません。」

 

「それならいいんだが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフフフ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如男の笑い声が前から聞こえたため、二人は前を向く。そこにはあの時会った男、ギラヒムがいた。二人は咄嗟に戦闘体制に入る。そんな二人とは別にギラヒムは慧音に言う。

 

「やぁ、白沢さん。また会ったね。どうもこんなところでまた会うとはきっと私達は運命の赤い糸で結ばれているんだね。」

 

「何だと!?」

 

「まあそれはともかく、君達はどうせ私を倒しに来たんだろう?」

 

「その通りです!幻想郷を絶対に支配させません!」

 

「フフフフフ、怖いね、君は。でもそんな女の子も嫌いじゃない。たっぷり味合わせてあげる。」

 

そう言うと彼は右手を赤く光らせた。そして笑みを浮かべながら二人に言う。

 

「さあ、かかってきなよ。」

 

彼の言葉通り、妖夢と慧音は彼に向かってスペルカードを発動した。

 

「未来高天原!」

 

「人符現世斬!」

 

そんな慧音の姿は人間から緑の髪に二本の角が生えている白沢へと変化していた。そのまま二人の攻撃はギラヒムの元へ向かっていく。

 

「何っ!?」

 

「そんな・・・」

 

次の瞬間、二人は思わず目を大きく見開いてしまった。何故ならギラヒムは右手で妖夢の攻撃を受け止め、左手で慧音の攻撃を止めていたからである。

 

「君達の構えを見ていればこんなの簡単に受け止められるよ。」

 

そう言うと彼は二人を両方向に蹴り飛ばした。そのまま二人は木に叩きつけられる。そんな中、ギラヒムは上唇を舐めると指を鳴らした。その瞬間、彼の右手に魔族の剣が現れた。そして彼は二人に言う。

 

「もっと私を楽しませてね。君達には少しだけど期待してるから。」

 

そう言うと彼は声を上げながら二人に向かって走ってきた。それを見た二人は咄嗟に後退する。それを気にせず彼は走るのをやめない。そしてギラヒムは慧音と妖夢の前まで来た瞬間、二人の腹部を切りつけた。

 

「くっ・・・」

 

妖夢は刀で防ぎ、慧音は後退したものの、ギラヒムの攻撃力が高かったのか、妖夢の右手は痙攣しており、使い物にならなかった。対する慧音は避けきれなかったのか、腹部に少し深い切り傷を覆った。

 

「どうした?私はまだほんの一部しか力を使ってないよ?」

 

そう言うと彼は右手が痙攣している妖夢に向かって魔族の剣から黄色のクリスタル型の攻撃を放った。

 

「ぐふっ!?」

 

妖夢は左手を使って刀で防ごうとしたがギラヒムの放った攻撃の方が速かったため、腹部に彼の攻撃をくらい、そのまま吐血した。そんな彼女とは別にギラヒムは妖夢の目の前まで来ると彼女の顔に肘打ちした。

 

「ぐはぁっ!」

 

妖夢はそのまま吹き飛び、木に衝突し、そのまま気を失ってしまった。

 

「妖夢!」

 

思わず彼女の名前を叫ぶ慧音。そんな彼女とは別にギラヒムは彼女の目の前まで来ると彼女を笑みを浮かべながら見つめた。

 

「ひっ!」

 

それに怯んでしまった慧音は逃げようとするが、ギラヒムがそれを許すはずなかった。彼は空いている左手で慧音の顎を掴み、無理矢理立ち上がらせた。そしてまだ自分に怯えている慧音の耳元に顔を寄せて言う。

 

「君のその怖がる顔、実に愛しいよ。是非ともマスターの養分にしたい気分だ。それでは、ごきげんよう。」

 

そう言うと彼は魔族の剣を慧音の腹部に突きつけた。そんな中、慧音は彼にまだ怯えていてどうすることも出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然現れた黒い影が左手でギラヒムの顔を掴み、そのまま投げ飛ばした。突然の奇襲にギラヒムは思わず慧音を放してしまい、そのまま吹き飛び、砂埃をあげながら木に衝突する。そんな中、驚きを隠せない慧音に黒い影が寄り添い、言う。

 

「大丈夫だったか?慧音。」

 

そこにいたのはサラサラな髪に黒いコートに黒いジーパンを履いている青年がいた。そんな中、慧音が青年を見ながら彼の名前を言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悠岐!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、少しは楽しませてもらうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地霊殿付近では銃王ドールクが支配のために来ていた。そさて彼は地霊殿の中へと入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何者だお前は!!」

 

「この地霊殿に何の用かしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上から声が聞こえたため、ドールクは上を向く。そこには猫の火焔猫燐と烏の霊路鳥空がいた。そんな二人を見たドールクは笑みを浮かべながら言った。

 

「古明地さとりに用がある。悪いがテメェらに用はねぇんだ。」

 

「あなたの目的はさとり様を倒すことなのでしょう?だったら私達は何としてでもあなたを止める!」

 

そう言うと燐は空を見ながら戦闘体制に入った。空も燐を見ながら戦闘体制に入る。それを見たドールクは拳銃を発砲した。

 

「当たらないよっ!」

 

燐はそう言うと彼の攻撃を容易く避け、スペルカードを発動した。

 

「猫符キャッツウォーク!」

 

彼女に続いて空もスペルカードを取りだし、発動する。

 

「爆符プチフレア!」

 

二人の攻撃を見たドールクは彼女らの攻撃を容易く避けた。そして二人に再び発砲した。あまりの速さに二人は避けきれず、腹部に彼の攻撃を食らった。

 

「かはっ・・・」

 

「くそっ・・・」

 

そのまま二人は吐血しながら地面に倒れていく。そんな彼女らとは別にドールクは刀を構えながら二人に近づく。そして言った。

 

「相手にならねぇな、もっと楽しませてくれや。」

 

そう言うと彼はそのまま刀を降り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが彼の攻撃はギリギリのところで止まっていた。何故ならドールクと燐、空の目の前に突如として桃色の髪の少女、古明地さとりがいたからである。彼女はドールクの前に右手を出し、何かを思い出させていた。

 

「やめろ・・・もうやめろ!古明地さとり!!」

 

突如としてドールクの頭の中にある光景が浮かんだ。それは彼が一番思い出したくない、所謂トラウマである。燃え盛る町に一人自分の前に現れるあの不気味な男。

 

「ああああああ!やめろやめろ!」

 

しかし彼が何を言おうともさとりはトラウマを思い出させるのをやめなかった。遂にドールクは拳銃と刀を地面に落とし、頭を抱え始めた。それを見た燐、空は驚きを隠せなかった。トラウマを思い出させると今のドールクのようになってしまうのだと二人は自覚した。そんな中、さとりが言う。

 

「お燐、殺りなさい。」

 

「あっ、はい。」

 

さとりに言われたため、燐はすかさずスペルカードを取りだし、ドールクに向かって発動した。

 

「死符ゴーストタウン!」

 

その瞬間、ドールクは燐がスペルカードを発動したのに気づいた。だがその時にはもう遅かった。彼女の放った攻撃が油断したドールクの急所に命中していた。

 

「ガハッ・・・」

 

ドールクは吐血し、そのまま地面に倒れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・・悪いな、じ久。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は心の中で自身の部下であるじ久に謝った。聞こえていないのかもしれないが心の中でこう思った。

 

(俺はお前のために幻想郷を支配する。お前のために俺はお前を幸せにしたかった。なのに俺はお前を幸せにする

前に死んでしまう。ごめんな、じ久。俺はお前との約束を果たすことが出来ないようだ。俺はお前を元の姿にするって約束したのに、破っちまったな。本当にごめんな・・)

 

そんな彼の目からは涙が零れていた。その様子を三人は黙って見ていた。そんな中、ドールクがさとりに言う。

 

「古明地ィ、さとり・・・お前に、頼みがあるんだが、聞いてくれないか?」

 

「・・・・構いませんよ。さぁ、言って下さい。」

 

「じ久に、ごめんなって伝えておいてくれ・・・。」

 

「・・・・分かりました。お空、とどめをさしなさい。彼は死を望んでいます。」

 

「分かりました。殺ります。」

 

そう言うと彼女は右手にエネルギーを溜めた。そしてそのエネルギーをドールクに放った。そのままドールクは笑みを浮かべながら空のエネルギーの中に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の爆発音を聞いたクリーフルは眉を潜めながら言った。

 

「ドールク・・・・。」

 

そのまま彼は何処かへ歩いていった。




ドールクの撃破に成功したさとり。他の者達もこのまま倒すことが出来るのか!?
次作もお楽しみに!


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第14話 黒き刀vsギラヒム

銃王ドールクを倒したさとり率いる地霊殿勢。そんな中、様々な敵が動く。


迷いの竹林では急遽駆けつけた悠岐の手によって慧音はピンチを免れた。

 

「オイ小僧、この俺の顔に傷をつけたな!」

 

木々をどかしながらギラヒムが悠岐と慧音の方へやって来た。それを見た慧音は目を大きく見開いた。彼女に対して悠岐は眉を潜めた。そんな中、ギラヒムが悠岐に言う。

 

「テメェみたいな小僧は俺が成敗してくれる!俺のこの顔を傷つけたテメェを今ここでぶっ殺してやる、覚悟しろ、小僧!」

 

「その言葉、そのまま返すぜ、ギラヒム!!」

 

「何っ!?」

 

「俺は今ちょうどテメェを倒したくてウズウズしていた。そしてテメェがいた瞬間、俺は好機だと感じ、テメェを奇襲しにきた。」

 

「俺がテメェのような小僧に何をしたと言うのだ?俺には覚えがないな。」

 

「あるだろ?テメェ、アリスをあんなに傷つけやがって、絶対許さねぇからな!!」

 

そう言うと彼は漆黒の刃を構え、ギラヒムに向かって走り出した。それを見た慧音が彼に言う。

 

「無茶だ、悠岐!そいつは剣の構えを見ていれば攻撃を止められる!よせ悠岐!」

 

彼女の言葉通り、ギラヒムは右手を構え、受け止める体制に入った。そのまま悠岐はギラヒムに向かっていき、ギラヒムは受け止めようとした。

 

「なん・・・・だと・・・」

 

声を発したのはギラヒムの方だった。彼の右手に切り傷がつき、そこから少量だが鮮血が飛び散る。思わずギラヒムは後退してしまう。だが悠岐はそれを逃がす筈もなく、ギラヒムを蹴り飛ばした。そのまま彼は木に衝突し、吐血した。

 

「何故だ、何故この魔族長である俺が人間の小僧に負けなければならないのだ!」

 

そう言うと彼はゆっくりと立ち上がった。悠岐の強さに慧音はただ呆然と見ていることしか出来なかった。彼女は心の中でこう思っていた。

 

(・・・・怒ってる。悠岐の中から大量に出てくる憎悪。悠岐、お前はアリスのためにここまで果たすというのか。)

 

そんな中、ギラヒムが笑みを浮かべながら悠岐に言った。

 

「テメェみたいな小僧にはとっておきの処罰法で地獄に送ってやる。この俺が人間ごときに不覚なんてない!絶対にあり得ない!!」

 

そう言った瞬間、ギラヒムの回りにクリスタルの渦が漂い始め、地面が徐々に浮き始めた。悠岐はそれを黙って見ており、慧音は宙に浮かび、二人の戦いを見ることにした。そんな中、クリスタルの渦から全身金属のような姿になったギラヒムが現れた。そして言う。

 

「お前には『無限奈落』を味合わせてやる!俺に端に追い詰められ、地獄へと落ちていく。そしてこの俺を怒らせたことを後悔するがいい、小僧!!」

 

その瞬間、ギラヒムの姿が消えたかと思うと悠岐の背後に現れ、そのまま彼の左の脇腹を蹴った。

 

「ぐっ!?」

 

突然の攻撃に悠岐は反応出来ず、脇腹を抑えたまま吐血する。これを見たギラヒムは笑みを浮かべながら言った。

 

「どうした?テメェの力はこんなものか?俺はまだ力を出してないぞ。」

 

「ってぇ。考え事をしていたのに急に攻撃しやがって。だがそのお陰か、俺はこの『無限奈落』の対処法を思いついたんだ。」

 

「何だと!?」

 

「簡単なことさ。『無限』を『有限』に変えればいいこと。」

 

その瞬間、悠岐は漆黒の刃を取りだし、ギラヒムに向かって刀を降り下ろした。すぐさまギラヒムは彼の攻撃を両腕で防いだものの、あっという間に端に追い詰められていた。

 

「何て力だ・・・あの小僧に何の力が・・・」

 

彼が続きを言おうとした瞬間、悠岐が彼の目の前まで来ていた。そして彼はギラヒムに突きを食らわした。その瞬間、ギラヒムは自分が地獄に落ちないように新たな床を作った。そのままギラヒムは新しい床に背中から落ちた。それを上の床から見ていた悠岐が口を開いた。

 

「やっぱりな。自分が落ちそうな時にだけ床を作る。もう『無限』から『有限』になってるな。よし、このまま行けば・・・」

 

そう言うと彼は漆黒の刃を構え、そのままギラヒムが倒れている床へ降りた。そして起き上がろうとするギラヒムの胸に漆黒の刃を突き刺した。彼の威力は計り知れないもので、次々とギラヒムが床を作るがそれを意図も簡単に壊し、遂には地面にまで達した。彼が地面に落ちた瞬間、辺りに砂埃が舞った。そんな中、悠岐はギラヒムから漆黒の刃を抜き、彼に言う。

 

「おい、起きろよ。こんなもので魔族長は死なないだろ?」

 

彼が言った瞬間、腹が立ったギラヒムはすぐに起き上がり、指を鳴らした。その瞬間、彼の前に横幅が長い斧のような武器が現れた。それを見た悠岐はギラヒムに言う。

 

「でかい武器を持ってるねぇ、こいつは面倒だな。」

 

そんな彼とは別にギラヒムは声を上げながら悠岐に斧を降り下ろした。その瞬間を狙っていた悠岐は彼の斧を粉々に刻み、ギラヒムの左腕を切り落とした。

 

「な、にぃっ!?」

 

ギラヒムの左腕からは鮮血が飛び散る。そんな彼とは別に悠岐はギラヒムに言う。

 

「悪い、嘘憑いた。全然面倒じゃなかった。」

 

そう言うと彼は地面に落ちていた魔族の剣を上に投げ、そのまま斧と同様、細かく切り刻んだ。ギラヒムはそれを黙って見ていることしか出来なかった。そんな中、悠岐がギラヒムに言う。

 

「魔族長ギラヒム、お前は人間を舐めすぎた。俺はそんなお前を許さない。故に俺はアリスを怪我させたドールクも倒す。」

 

「・・・・あえて言おう、小僧。例え俺が死んだとしても我がマスターがいる限り、この世界はマスターのものだ。お前達のものではない。」

 

「だったら俺はお前のマスターをぶっ殺してやるよ。」

 

そう言うと彼は漆黒の刃をギラヒムの喉元に突きつけた。そして言う。

 

「じゃあな、魔族長。地獄で罪を償え。」

 

彼が言った瞬間、漆黒の刃が彼の喉を貫いた。その瞬間、彼の喉から血が飛び散り、そのままギラヒムは息絶えた。悠岐は自分の顔についたギラヒムの血を笑みを浮かべながら舐めた。そして悠岐は漆黒の刃をしまうと木の近くで気を失っている妖夢をお姫様抱っこした。そして慧音を見ながら言う。

 

「永遠亭に行こう。妖夢と慧音の傷を癒してもらわないとな。」

 

「そ、そうだな。」

 

そう言うと慧音は立ち上がり、悠岐と肩を並べながら歩き出した。そんな中、慧音が悠岐に言う。

 

「なぁ、悠岐。お前いつ来たんだ?」

 

「ギラヒムとドールクが戦っている時にユニに呼ばれてきたんだよ。それでついでにあいつらを倒そうかなぁって思っただけさ。」

 

「そ、そうか。」

 

二人が話している中、妖夢が目を覚ました。そして、彼女は悠岐にお姫様抱っこされてるのに気がつき、顔を赤くしながら言う。

 

「あ、あの悠岐さん!こ、これって・・・」

 

「あはは、久しぶり、妖夢。今怪我してるんだから無理すんなよ。」

 

彼が言った瞬間、妖夢は大人しくなった。と、悠岐が突然ある方向を見た。それにつられて慧音も彼の見る方向を見る。そして妖夢が悠岐に言う。

 

「悠岐さん、どうしたんですか?」

 

「・・・悪霊の気配がする。強い魔力を持った悪霊だ。」

 

彼が見つめている方向は博麗神社だった。そんな中、悠岐が二人に言う。

 

「だが今は二人の治療が先決。急いで永遠亭に行こう。」

 

彼が言った瞬間、慧音は深く頷いた。そのまま三人は永遠亭へ急いだ。




ギラヒムを見事倒した悠岐。果たしてこのまま敵を倒すことが出来るのか!?
次作もお楽しみに!


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第15話 コールザエニー、女王ビオラ

ギラヒムの撃破に成功した悠岐。残る敵はまだいる。


紅魔館ではレミリア、咲夜、パチュリーがドールクの死に気づいていないじ久との戦闘に入っていた。

 

「パチェ、咲夜、気をつけて。今フラン、美鈴、小悪魔はあのじ久って言う妖怪に操られているわ。私達が狙うとするならあのじ久よ。何があってもフラン、美鈴、小悪魔にダメージを与えては駄目よ。」

 

「難しいわね、でもそれしか方法が無さそうね。」

 

「やりましょう。」

 

咲夜が言った瞬間、じ久がフラン、美鈴、小悪魔に命令した。

 

「殺れ、お前ら!レミリア・スカーレットを潰せ!」

 

その瞬間、フラン、美鈴、小悪魔が一斉にレミリア、咲夜、パチュリーに向かって弾幕を放った。それを見た三人は同時に避けた。そのままレミリアはグングニルを作り上げた。そしてスペルカードを発動した。

 

「神槍スピア・ザ・グングニル!」

 

そのまま彼女はじ久に向かってグングニルを放った。それを見たじ久はグングニルを見たまま笑みを浮かべた。その瞬間、フランがじ久の前に現れたのである。そのままフランは自らグングニルを受けた。

 

「っ、フラン!」

 

「妹の心配をしている場合か?」

 

じ久の声でレミリアははっと我に返るがその時にはもう遅かった。彼女の後ろに現れた黒い美鈴の回し蹴りがレミリアの腹部を捉えたのである。

 

「ガハッ!」

 

レミリアはそのまま紅魔館の壁に叩きつけられ、吐血する。それを見た咲夜がじ久にスペルカードを発動した。

 

「時符プライベートスクエア!」

 

彼女の攻撃はじ久に向かっていく。だが先程レミリアのグングニルを食らったフランがまたしても彼の前に現れる。咲夜は咄嗟に攻撃を止めた。

 

「禁忌レヴァーテイン。」

 

フランの声が聞こえた瞬間、咲夜にフランの攻撃が命中した。そのまま咲夜は地面に落ちた。

 

「咲夜!くっ、・・・」

 

パチュリーは小悪魔の攻撃を避けながらスペルカードをじ久の目の前で放った。

 

「日符ロイヤルフレア!」

 

それを見たじ久は少し目を大きく見開いたが、彼は隠し持っていた刀を取りだし、パチュリーの右手に切り傷をつけた。彼女の手からは血が垂れる。

 

「ジャマスルナ。」

 

聞き覚えのある声が聞こえたため、彼女はその方向を見る。そこには小悪魔がいて、そのままパチュリーに向かって弾幕を放った。目の前で放たれては元も子もなく、パチュリーはそのまま咲夜のいるところまで吹き飛び、吐血した。それを見たじ久が三人に言う。

 

「無様だな、レミリア・スカーレット!自分の妹や部下に殺されていく、笑える話じゃねぇか!」

 

「くっ、そっ!」

 

「ほう、まだやるつもりなのか?これは驚いたな。もうお前達に勝ち目なんてこれっぽっちもないのにな。まあ、いいや。さあ、殺れ、お前ら!」

 

彼が言った瞬間、フラン、美鈴、小悪魔が三人同時に傷だらけの三人に弾幕を放った。咲夜は気を失っているため、時間を止めることが出来ず、二人は避けきれる体力が残っていないため、三人はどうしようも出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、ユニが紅魔館の近くまで駆けつけていた。そして彼女は躊躇うことなくスペルカードを発動した。

 

「呼符コールザエニー。」

 

彼女が発動した瞬間、ユニの持っているスペルカードが赤く光りだした。そして彼女はスペルカードを上に上げ、言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「力を貸して下さい、女王ビオラ様!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が叫んだ瞬間、レミリア達の前に直径2m ほどの空間が現れた。そしてその中から赤いリボンがついたヘッドフォンをつけ、紳士のような服に赤い縞模様のスカートを履いている女性がレミリア達の前に現れ、そのまま右手だけでフラン、美鈴、小悪魔の弾幕を止めた。

 

「何っ!?」

 

「・・・・・え?」

 

突然の出来事に一同は驚くことしか出来なかった。そんな中、少女が右手を下ろし、レミリア達を見ながら言う。

 

「危ないところでしたね、レミリア・スカーレット。」

 

「え?どうして私の名前を・・・」

 

「話は後でにしましょう。今は彼を倒すことが優先的です。」

 

そう言うと女性はじ久の方を向き、彼を睨む。それを見たじ久が口を開いた。

 

「何だ女。テメェに用はねぇんだよ。とっとと消えろ!」

 

そう言うとじ久は再びフラン、美鈴、小悪魔に命令した。それを聞いた三人は一斉に女性に向かっていく。それを見た女性は右手を上げた。そして手のひらを三人に向けた。

 

「Keep still。」

 

彼女が英語を三人に言った瞬間、三人の動きがピタリと止まった。それを見たじ久は三人に言う。

 

「おいお前達、何をしている!速くあの女を殺せ!」

 

しかしじ久がいくら言おうとも三人が彼の命令に従わなかった。そんな中、女性が再び口を開いた。

 

「Hear a story。」

 

その瞬間、三人は戦闘体制に入るのを止めた。そして三人はスペルカードをしまう。そして再び女性が言う。

 

「Return to sanity。」

 

彼女が言った瞬間、三人は頭を抱え始めた。何が起こっているのか理解出来ないじ久とレミリア、パチュリーは目を大きく見開くことしか出来なかった。

 

「I say once again、Return to sanity。」

 

そう言った瞬間、三人の目が赤から元の色に戻った。そしてそのまま三人は地面に倒れた。

 

「フラン、美鈴、小悪魔!」

 

レミリアは三人の名前を叫ぶ。そんな中、じ久が女性に言う。

 

「おのれ、この女め!俺が殺してやる!」

 

そう言うと彼は刀を女性に向かって降り下ろした。だが女性の回りには見えない結界が張られており、彼女に攻撃することが出来なかった。そんな中、女性がじ久に言う。

 

「あなたの力では私に傷をつけることなど出来ません。諦めなさい。」

 

「誰が諦めるかよ!」

 

そう言うとじ久は再び攻撃を続けた。だが結果は同じだった。その時、女性が右手を上げた。そしてじ久に言う。

 

「Leave hear。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、じ久の動きが止まった。そして再び動き出したかと思うとそのまま刀をしまった。そして女性を睨むと何処かへ走っていった。それを見た女性はレミリア達に近寄り、言った。

 

「これで大丈夫です。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、咲夜が目を覚ました。そして三人は倒れているフラン、美鈴、小悪魔の元へ駆け寄った。

 

「流石ですね、ビオラ女王陛下。」

 

女王陛下と呼ばれている女性、ビオラの後ろからやって来たのは先程彼女を呼び寄せたユニだった。ビオラは彼女を見ながら言う。

 

「ユニ、あなたは覇王を止めに行きなさい。奴が一番厄介だと思われるので。」

 

「はい、分かりました!私の願いに答えていただき、ありがとうございます。女王陛下。」

 

そう言うとユニはビオラの前で膝をついた。それを見たビオラは頭を下げる。レミリア達はそれを黙って見ていた。と、ビオラがレミリア達に言う。

 

「私の名前はビオラと申します。現実世界の女王陛下を務めています。」

 

「女王様!?」

 

「残りは覇王とガノンドロフのみです。無事を祈ります。」

 

そう言うとビオラはユニに顔を向けた。ユニは彼女の前に空間を作った。そのままビオラは空間の中へ入っていった。ビオラが入っていった後、ユニがレミリアに言う。

 

「紅魔館の中で待機してて。カックン達がまだいるかもしれないわ。」

 

「カックン?」

 

「クリーフル達が連れてきた妖怪のことよ。急いで!」

 

彼女の言葉を聞いてレミリア達は紅魔館の中へと入っていった。そしてユニは宙に浮かび、クリーフルのいるところへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なん・・・・だと・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社ではピンチになっていた霊夢と魔理沙の前に突如として腰まで延びる緑髪に魔法使いのような帽子、三日月の形をしている杖を持ち、足が幽霊のようになっている女性がザントの攻撃を杖で止めながら魔理沙に言う。

 

「やれやれ、あんたの中じゃ私の力はこんなものかい。」

 

「あ、あんたはどうして・・・」

 

「弟子のいる師匠は苦労するってものさ。忘れたなら見せてやる、これが私の魔法だっ!」

 

そう言った瞬間、女性の杖の先から七色の星が現れた。そのまま七つの星は全てザントに命中した。

 

「なんだと!?」

 

そのままザントはバランスを崩し、地面に倒れた。そんな彼とは別に魔理沙が女性に言う。

 

「嘘だろ・・・どうしてあんたがここへいるんだ・・・」

 

「久しぶりに顔を出してみたらこの有り様さ。それともただあんたらが敗れる場面を黙って見ていればよかったかい?」

 

「違う、それを言いたいんじゃない・・・だけど、今の今まで何処に行ってたんだ、魅魔様っ!」

 

「魅魔様?こいつが・・・」

 

魔理沙の言葉を聞いて霊夢は魔法使いと幽霊が合わさったような女性、魅魔を見る。魅魔も霊夢を見ながら言う。

 

「やぁ、霊夢じゃないか。私を覚えているかい?」

 

「覚えてるも何も、急にいなくなったから心配してたのよ。」

 

「悪いね、紫に異変だって言われて来ないといけなくなったからね。」

 

話しているうちにザントがヨロヨロとなりながら三人に寄ってきた。そして言う。

 

「何者だ、お前は・・・私の邪魔をするなど、身の程をわきまえろ!」

 

「フン、面倒な奴を相手にしたね。まさか影の王ザントを相手にするとは。まあ、すぐに終わるからいいや。二人とも下がってな。」

 

そう言うと魅魔は杖の先をザントに向けた。その瞬間、ザントの体が宙に浮かび始めた。

 

「ゆ、幽霊!私に何をするつもりだ!」

 

「決まってるだろ?あんたを殺すんだよ。覚悟しな!」

 

そう言うと魅魔は杖の先に力を込めた。そして次の瞬間、杖の先から眩い光が出たかと思うと杖から出てきた槍がザントの腹部を貫いた。

 

「ギャアアアアアアアアア!」

 

高い声を上げながらじたばたするも、そのままザントは光の中に包まれていき、遂には姿が無くなった。霊夢と魔理沙はそれを黙って見ていた。そんな中、魅魔が二人を見て、何かが入っている袋を渡し、言う。

 

「あんたらはクリーフルかガノンドロフの元へ向かいな。恐らく残ってるのはあの二人だけだからな。」

 

「魅魔様、この袋に入っているのって?」

 

「薬だよ、傷によく効く。さあ、行きな。私は後から行くから。」

 

「恩に限るぜ魅魔様!」

 

「ごめんなさいね。」

 

そう言うと二人は宙に浮かび、そのままクリーフルのいるところへ向かった。魅魔はそれを黙って見ていた。




遂にクリーフルとガノンドロフのみに追い詰めた霊夢達。だが、彼女らはクリーフルとガノンドロフの恐ろしさを知ることになる
次作もお楽しみに!


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第16話 コールザエニー、地王セコンド

突如現れた魅魔とユニが呼び寄せた女王ビオラによってじ久とザントの撃破に成功。そんな中、ユニはクリーフルの元へ向かう。


「さて、俺はこの辺りを回るか・・・」

 

じ久とザント、ギラヒムが敗れたことをまだ知らない覇王クリーフルは太陽の花畑の周辺をうろついていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけましたよ!」

 

「中々楽しめそうな人ね。」

 

「もう逃がすわけには行かないよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前から聞こえる三人の少女の声、そこにはそれぞれ鈴仙、幽香、妹紅がいた。そんな三人にクリーフルが言う。

 

「テメェらか・・・。相手もいねぇし、テメェらで相手してやるよ。」

 

「へぇ随分と余裕そうねぇ、覇王クリーフル。」

 

「当たり前だろ?何せ俺はテメェらに負ける気がしねぇからな。」

 

「そうやって余裕ぶってるとすぐにやられるのがお前の宿命ってやつだ。」

 

「成程、中々退かないその心、興味深い。流石はあの梟を倒した強さだ。期待しても悪くはなさそうだ。」

 

そう言うと彼は腰にかけてあった刀を握り、引いた。そして刀の先を三人に向け、言う。

 

「覇王クリーフルの強さ、思い知るがいい。」

 

そう言うと彼は物凄い勢いで三人に向かってきた。それを見た鈴仙、妹紅は下がり、幽香が一人で構える。そしてクリーフルと幽香の攻撃が同時にぶつかった。

 

「フッ、やるじゃねぇか。」

 

「そっちこそ。」

 

クリーフルの攻撃は幽香の左肩に命中しており、幽香の攻撃はクリーフルの右足を捉えていた。そんな中、妹紅と鈴仙が同時にスペルカードを発動する。

 

「虚人ウー!」

 

「狂符ビジョナリチューニング!」

 

二人が放った瞬間、幽香はクリーフルから距離を置く。妹紅と鈴仙の攻撃を見たクリーフルは刀から炎を噴射し、対抗する。その衝撃で爆発が生じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを空から見ていた霊夢と魔理沙は急いで太陽の花畑へと向かう。

 

「あれは幽香なのか?」

 

「恐らくね。早く行きましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊夢、魔理沙!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人を呼ぶ声がしたため二人はその方向に目を向ける。そこには先程ビオラを呼び寄せた少女、ユニがいた。そんな中、ユニが二人に言う。

 

「ザントとガノンドロフ、ドールクはどうなった?」

 

「ザントは魅魔様が倒してくれたぜ。」

 

「ガノンドロフとドールクはまだ倒してないわね。」

 

「そう、ザントを倒せたなら良かったわ。こっちはギラヒムを悠岐君が倒してじ久をビオラ様が倒したわ。」

 

「悠岐が来てくれたのか!?」

 

「勿論よ。でないと戦いは終わらないもの。」

 

「ねぇ、ユニ。ビオラ様って誰なの?」

 

「現実世界の女王陛下よ。権力は五大王の方々よりは下だけどね。さ、クリーフルの元へ向かいましょう。奴は現実世界ではかなり恐れられてる男って呼ばれてるから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フジヤマボルケイノ!」

 

妹紅の放った攻撃はクリーフルに向かっていく。だが彼はそれを刀で鈴仙の方へ弾いた。それを見た鈴仙はすぐに避け、弾幕を放つ。

 

「そんなものなのかよっ!」

 

そう言うとクリーフルは弾幕を一つずつ避け、鈴仙の前まで来るとそのまま彼女の腹にパンチした。

 

「かはっ!」

 

クリーフルの攻撃によって彼女は口の中から血を吐く。そんな彼女を見てクリーフルは彼女を蹴り飛ばした。そのまま鈴仙は20mほど飛ばされた。

 

「恋符マスタースパーク。」

 

クリーフルに向かって幽香が日傘の先を向け、そこからマスタースパークを放った。それを見たクリーフルは魔術を唱え、攻撃を放った。

 

「秘技レインボーレーザー!」

 

クリーフルは刀の先をマスタースパークに向け、そこから虹色に輝く光線を放った。その威力は恐ろしく、幽香の放つマスタースパークを遥かに越えるほどだった。

 

「っ!」

 

それを見た幽香はすぐに日傘をさし、防御体制に入る。そしてクリーフルの攻撃が幽香の日傘に当たる。なんとか攻撃を防ぎきれたものの、体に負担が大きくかかった。

 

「オイ、どこ見てやがるんだ?」

 

突如背後から声がしたため幽香は目を大きく見開いたまま後ろを振り返る。だがその瞬間にクリーフルの蹴りが幽香の顎に命中していた。

 

「かっはぁぁぁ!?」

 

そのまま幽香は体を回転したまま空へ飛ばされる。幽香が空に飛ばされている間にクリーフルは膝を曲げ、大きく飛び上がった。そして空に飛ばされる勢いが無くなった幽香の元まで飛び上がるとそのまま幽香の腹部に蹴りを入れた。

 

「がはっ!」

 

そのまま幽香は吐血しながら猛スピードで地面に叩き落とされた。彼女が地面に叩き落とされた衝撃で辺りに砂埃が舞う。

 

「幽香ぁ!!」

 

それを見ていた妹紅はすぐさま幽香の元へ駆け寄る。だがそれを阻止するかのように彼女の目の前にクリーフルが現れた。

 

「なっ!?」

 

「フン。」

 

そしてクリーフルは妹紅の腹にパンチを食らわした。妹紅はその場で崩れてしまう。そんな彼女とは別にクリーフルが言う。

 

「覇王の力はこんなもんだ。テメェらじゃ相手にならねぇ。安らかに冥界で眠りな!!」

 

そう言うとクリーフルは妹紅に刀を降り下ろした。彼女が不老不死であることは彼は気づいていないが、それでも降り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宝符ゲートオブバビロン。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな少女の声が聞こえた瞬間、クリーフルの前にいたはずの妹紅が一瞬にして消え、彼に向かって大漁の宝具が飛んできた。

 

「む?」

 

それを見たクリーフルは自身の刀で飛んでくる宝具を全て弾いた。

 

「幽香、しっかりして、幽香!」

 

首を傾げるクリーフルとは別に駆けつけたユニが幽香を抱え、霊夢と魔理沙がクリーフルと対峙する。幽香はゆっくりと瞼を開きながらユニを見る。そして言う。

 

「ごめんなさいね、ユニ・・・。私は今は駄目のようね。後は、任せた、わ・・・。」

 

力を振り絞って幽香は言葉を発し、そのまま彼女は意識を失った。それを見たユニは幽香を優しく地面に寝かせた。そして目を覚ました鈴仙に言う。

 

「鈴仙、幽香を見てて。」

 

「分かりました。」

 

そう言うと彼女は意識を失った幽香の元までやって来た。それとは別に霊夢、魔理沙、妹紅、ユニの四人がクリーフルと対峙する。と、クリーフルが笑みを浮かべながら四人に言った。

 

「知ってるか?ガノンドロフらが求めている、『召喚のトライフォース』なんだが、あれは本当はないんだぜ?」

 

「え?な、ないですって?」

 

「覇王、それはどういうことだ!」

 

「簡単な話だよ。ガノンドロフらは俺達の言葉を信じてここへやって来た。だが本当はこの世にそんなもんはねぇんだ。」

 

「じゃあどうしてここへ連れてきたって言うんだ!!」

 

「それは幻想郷を逸速く支配するために幻想郷のあらゆる場所を痛め付け、弱ったところを奪うのさ。そして完全な支配を成功させる。」

 

「つまり、ガノンドロフらは・・・」

 

「何の関係もない、ただの囮だ。」

 

「そんな計画的な行動をとるとは・・・・中々やるもんだぜ。」

 

「納得している場合じゃないだろ?さっさとあいつを倒すぞ。」

 

妹紅の言葉で魔理沙は我に返った。その時にはユニと霊夢はスペルカードを使っていた。

 

「夢想封印・瞬!」

 

「剣符アームストライク!」

 

霊夢の攻撃はクリーフルに向かっていく。その間にユニは空間から草薙の剣を取り出した。そしてクリーフルの元へ向かう。妹紅も背中に炎の翼を生やして彼に向かっていく。

 

「無駄なんだよ!」

 

そう言うと彼は夢想封印を刀で弾き、霊夢を左手で殴り飛ばした。

 

「ぐはぁっ!」

 

そのまま霊夢は腹を押さえながら地面にうずくまる。さらにクリーフルは妹紅の炎の翼の付け根に刀を刺し、そのまま貫通させた。

 

「がはっ!」

 

妹紅はその場で吐血し、地面に倒れていった。その間にユニがクリーフルを斬りつけようとする。だが彼は彼女の動きを見切り、草薙の剣を真っ二つに切った。そしてユニの右肩を斬りつけ、殴り飛ばした。

 

「かはっ・・・・」

 

ユニも腹を押さえながら地面にうずくまってしまった。そんな中、魔理沙が箒に乗りながらスペルカードを発動した。

 

「彗星ブレイジングスター!」

 

それに気づいたクリーフルは刀で弾幕を全て弾くと箒に乗っている魔理沙を無理矢理箒から下ろし、地面に落とした。そして地面に倒れた魔理沙の腹部を踏む。

 

「くはぁっ!」

 

「魔理沙!」

 

魔理沙を助けるため、霊夢とユニが向かう。それに気づいたクリーフルは魔理沙の頭を掴み、持ち上げるとそのまま二人に向かって投げ飛ばした。二人は支えることが出来ず、そのまま鈴仙の元まで吹っ飛んだ。

 

「つ、強い。これが覇王の力・・・」

 

吐血した血を手で拭いながらもユニはクリーフルを睨む。そんな彼女らとは別にクリーフルが言う。

 

「さてと、後はガノンドロフとガキを殺しに行くか。」

 

クリーフルの言葉に何か違和感を覚えたユニは何処かへ行こうとするクリーフルに言う。

 

「待ちなさいよっ!あなたの言うガキってまさか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、じ久だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・え?」

 

予想が大きく外れた。ユニはてっきり彼が悠岐を殺りに行くのかと思っていたがなんと彼が向かうのは悠岐ではなくじ久だった。そんな彼に魔理沙が言う。

 

「お前、どうして自分の部下を!!」

 

「どうしてだって?決まってんだろ、目障りだからだ。」

 

「め、目障りですって!?」

 

「そう、目障りなんだよ。俺にはドールク、じ久を含めた5人の仲間がいた。だがそいつらは自分勝手過ぎて俺は飽き飽きしていた。だがそんな中、あの男が自分勝手な俺の仲間を殺してくれた。残ったのは俺とドールクとじ久。俺は潮時だと思った。なんせ、自分の思うがままにやっていけるんだからな!」

 

「ふざけるな!」

 

話しているクリーフルに叫んだのは霊夢だった。そんな彼女をクリーフルは首を傾げながら見る。そんな彼とは別に霊夢が話を続ける。

 

「ドールクやじ久はあんたのために戦ってきたのよ?それなのにあんたは!!あの二人を理解する、他の誰でもないあんたは!それを無駄にするつもりなの?あんたは人として最低よ!」

 

「それがどうしたって言うんだ!謝ってほしいのか?反省してほしいのか?悪いがお断りだね、そんなことやってらんねぇよ。俺は俺の赴くままにやるだけだ。テメェらが指図すんじゃねぇよ!!」

 

「・・・・・ない。」

 

「あ?」

 

突然ユニが口を開いたため、クリーフルは眉を潜めながら彼女を見つめる。そしてユニは言う。

 

「許さない、仲間を大切に思わないあなたを、私は絶対に許さない!!」

 

「ハハハハハ!小娘風情がよく言ってくれるぜ。この俺に勝とうなんてな。笑わせてくれる。」

 

「あいつ、ふざけてるな。」

 

妹紅がヨロヨロとなりながら霊夢と魔理沙の元へやって来た。そんな中、ユニは突如として五枚の色のついたカードを取り出した。そしてクリーフルに言う。

 

「ここに、虹色、黄色、オレンジ色、黒色、茶色のカードがあるわ。この五枚の中からあなたの好きな色を選んで。」

 

「ほう、この俺様に選択肢を選べと言うのか。面白い、この覇王クリーフル様が選んでくれるんだ。光栄に思いやがれ。」

 

そう言うとクリーフルは少し首を傾げた。そして笑みを浮かべながらカードを指差しながら言った。

 

「茶色だ。」

 

「フ、フフフ、アハハハハハハハ!」

 

クリーフルが言った瞬間、ユニは声を上げながら笑い始めた。それを見た一同は驚きを隠せなかった。そんな中、クリーフルがユニに言う。

 

「オイ小娘、俺の選択の何が可笑しいって言うんだあぁん?」

 

「アハハ、あなたは自ら一番不幸な色を選んだみたいね。」

 

「何だと?」

 

「まあ、どれを選んでも結果は同じだと思うけどね。」

 

そう言うとユニは茶色以外のスペルカードをしまい、茶色のスペルカードを発動した。

 

「呼符コールザエニー。」

 

そして彼女はスペルカードを上に上げ、茶色に光るスペルカードを叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大地を揺るがせ、地王セコンド様!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニが叫んだ瞬間、彼女の右側に直径2mほどの空間が現れた。そしてその中から長身で後ろ髪を縛っていて笏を持っていて、明らかに姿が将軍の男、セコンドが現れた。これには誰も驚きを隠せなかった。そんな中、セコンドがユニに言う。

 

「余を呼び寄せたのは其の方だな、招来の友よ。」

 

「はい、私です。来てくれてありがとうございます、地王セコンド様。」

 

そう言うと彼女はセコンドの前で膝をついた。そんな中、クリーフルがセコンドを見ながら言う。

 

「帝セコンド!テメェをぶっ殺す時が訪れたぞぉ!」

 

「下がっているがいい、友よ。」

 

そう言うとセコンドはユニを霊夢達の元まで下がらせた。そしてクリーフルは刀をセコンドに降り下ろす。セコンドはそれを笏で防ぐ。そのまましばらく二人の刀の打ち合いが続いた。そんな中、クリーフルがセコンドの背後に回り、言う。

 

「隙有りだ、セコンド!」

 

それを見たセコンドはクリーフルに笑みを浮かべた。そして笏を回しながら言った。

 

「さぁ、見せてくれ。」

 

セコンドは笏を回しているだけで避けようとはしなかった。そしてクリーフルの攻撃が当たる瞬間、セコンドの姿が一瞬で消えたかと思うと彼はクリーフルの背後に移動していた。

 

「なっ、いつの間に後ろに!?」

 

クリーフルは反応することが出来ずに笏で10mほど殴り飛ばされた。それを見たユニが声を発した。

 

「カウンター攻撃ね。」

 

「カウンター攻撃?」

 

「そうよ、魔理沙。あれはセコンド様しか使えない技なの。あれがあるからセコンド様は帝と呼ぶのに相応しいのね。」

 

ユニが話している中、セコンドの笏によって殴り飛ばされたクリーフルは腰を押さえながら心で言った。

 

(マズイ、背骨をやられた。だがまだ動けるし、切り札も残っている。ここは様子見とするか。)

 

考え事をしている最中にセコンドが笏を槍の形にして赤いオーラを出しながら突っ込んできていた。すかさず避けるが槍の一部が彼の右頬を捉えていた。

 

「炎弾!」

 

クリーフルはセコンドに攻撃を放つものの、素早い動きで避けられてしまった。そんな中、クリーフルはポケットから大量の粒を取り出し、ばらまきながら言った。

 

「行けカックンども、帝を倒せ!」

 

その瞬間、粒がカックンの形となり、やがて100体近くのカックンが現れた。そしてカックン達はセコンドに向かっていく。

 

「マズイ、早く助けないと・・・」

 

霊夢はセコンドを援助しようとしたがその行く手をユニが止めた。

 

「ユニ!」

 

「大丈夫よ、私達が行けば足手まといになるだけだから。」

 

その言葉を聞いて霊夢はセコンドの方を向く。彼は笑みを浮かべながらカックン達に言った。

 

「割けてみよ。」

 

その瞬間、セコンドの持つ笏が弓矢の形となり、彼は弓を構えた。その瞬間、何かが描かれているルーレットが現れた。それに気にせずカックン達はセコンドの元へ向かっていく。そしてセコンドが矢を放した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グガァァァァァァァァァ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セコンドの放った矢が青龍の形となり、そのままカックン達に攻撃し始めた。カックン達は突然の攻撃にどうすることも出来ずに全員消滅した。

 

「そんな馬鹿な・・・」

 

これを見たクリーフルは目を大きく見開いていた。そんな彼とは別にセコンドは空に弓を構えて言う。

 

「熱き息吹よ!」

 

そして闇のオーラを纏いながら彼は空に矢を6発放った。その瞬間、矢が空中で分裂し、矢の雨を降らせた。それを見たクリーフルはそれを弾いたり、避けたりする。全て弾き、避けた瞬間、セコンドが彼の目の前に現れ、彼の顔を笏で殴った。

 

「ぐほっ!」

 

そのまま彼は10mほど殴り飛ばされた。その瞬間、何かを思い付いた彼は笑みを浮かべながら鈴仙の背後に回り、空いている左腕で彼女の首を絞めた。

 

「鈴仙!」

 

あまりの素早い動きに一同は反応することが出来なかった。鈴仙は抵抗するも、クリーフルの腕力には敵わなかった。クリーフルは抵抗する鈴仙の顔に刀を突きつけ、セコンドを見ながら言う。

 

「近寄るなよ?近寄るとこいつの命が無いぜ。」

 

その言葉を聞いた瞬間、霊夢、魔理沙、妹紅、ユニは動くことが出来なかった。そんな中、セコンドがクリーフルに言う。

 

「人質を用いて余を倒そうと考えるか。だがそれでは余には届かぬぞ、覇の友よ。」

 

「何だと!?」

 

目を大きく見開くクリーフルとは別にセコンドは笏を腰にしまい、両手を上げながらクリーフルに近づき、言葉を発する。

 

「示せ、定めの旋盤を。」

 

「こ、こっちに来るんじゃねぇ!」

 

しかしクリーフルが警告してもセコンドは近寄るのを止めなかった。そしてクリーフルが鈴仙に刀を刺そうとした瞬間、セコンドの姿が消えた。

 

「き、消え・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリーフルが『た』の言葉を発する前にセコンドが彼の背後に回り、そのままクリーフルの背中を刀の形に変えた笏で斬りつけた。そしてクリーフルの背中から鮮血が飛び散る。

 

「「「「なっ!?」」」」

 

「なん・・・だと・・・」

 

クリーフルはどうすることも出来ず、鈴仙を放してそのまま地面に倒れた。

 

「これも定めだ。」

 

そう言うとセコンドは刀の刃を笏の中に入れた。彼の技に一同は驚きを隠せなかった。何故ならセコンドが消えた瞬間、クリーフルがセコンドに背中を斬られて倒れたからである。倒れるクリーフルにセコンドが言う。

 

「覇の友よ、其の方はここまでだ。其の方は余が地獄へと送って見せよう。」

 

「フフフ、例え俺が死んだとしても俺達の主、カオス様が全てを終わらせてくれるさ。」

 

その言葉を聞いた瞬間、ユニ達は首を傾げた。そんな彼女達とは別にセコンドは笏を刀の形に変え、クリーフルの首を切り落とした。彼の首からは鮮血が吹き出る。そしてセコンドは倒れる幽香に近づき、額に左手を置き、言う。

 

「花園の友よ、幻想郷にとって其の方は必要不可欠だ。」

 

そして彼は幽香の額から左手をどけるとユニ達を見て言う。

 

「友よ、残るはガノンドロフだけだ。急ぐがよい!」




セコンドの活躍により、クリーフルの撃破に成功。果たしてこの調子でガノンドロフを倒すことが出来るのか!?
次作もお楽しみに!


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第17話 ガノンドロフとの戦い①

幽香達に圧倒的な強さを見せた覇王クリーフル。そこへユニ達が駆けつけ、ユニはクリーフルの態度に激怒し、現実世界最強の存在、地王セコンドを呼び寄せた。そしてクリーフルの撃破に成功する。残るはガノンドロフのみ。


「・・・どういうことだ。」

 

クリーフルがセコンドによって倒された中、ガノンドロフは一人で無縁塚を歩いていた。そんな彼はある異常を察し、独り言を言っていた。

 

「ギラヒムとザントの気配が消え、さらに先程まで派手に暴れていた覇王の小僧どもも今になっては大人しい。変だな、あやつらはそうは簡単に倒される者ではないはずなのだが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、お困りのようね。魔王ガノンドロフさん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の女性の声にガノンドロフは顔を向ける。そこには日傘をさしている美しい女性、八雲紫がいた。そんな彼女にガノンドロフが言う。

 

「スキマ妖怪、八雲紫・・・。ザントとギラヒムはどうした?」

 

「あら、あの二人なら私の知り合いが倒しましたわ。半悪魔と悪霊がね。」

 

「半悪魔と悪霊に敗れるとは・・・。やはり使えぬ者共だったか。」

 

「さらに驚くことにあなたが探している、『召喚のトライフォース』とやらはこの世界には存在しないのよ。」

 

「存在しないだと!?貴様、それを何者から聞いた!」

 

「覇王クリーフルが言っていたわ。」

 

「覇王の小僧め、我を騙しおって、許さんぞ!!」

 

「残念だけど、あなたが倒したい覇王クリーフルはもう何処にもいないわ。なんせ、この世界の守護者が帝を呼んでクリーフルを倒したみたいだし、銃王はさとり妖怪らによって倒されて彼の部下は行方不明のままのようね。」

 

「そうか・・・。ところでスキマ妖怪よ、お前は何故我の元へ来た?」

 

「私が来たのはあなたをここから追い払うためよ。私の幻想郷を闇に包もうとしたあなたを放置してはいられないわ。」

 

「覇王の小僧に騙された挙げ句、スキマ妖怪と戦わねばならないとはな。我はついていないようだ。」

 

そう言うと彼は左手に握っていた忌々しい剣を抜いた。そして紫を見ながら言う。

 

「今ここでこの我がお前を三途の川に送ってやろう。この世界がお前のものになるのか、我のものになるのか、決めようではないか。」

 

「うふふ、面白いことを言うのね。いいわ、受けてたとうじゃない。」

 

そう言うと紫はスキマを展開し、中から草薙の剣を取り出し、日傘を中に入れた。そしてガノンドロフを見ながら彼女はスペルカードを発動した。

 

「結界『光と闇の網目』」

 

彼女が発動した瞬間、多数の弾幕がガノンドロフ目掛けて飛んできたけどそれを見たガノンドロフは剣で全て弾いた。

 

「せあああっ!」

 

そして紫の前まで来ると彼女の腹部に肘打ちをした。

 

「くっ・・・」

 

紫は腹部を抑えながらも草薙の剣を降り下ろす。ガノンドロフもそれに反応し、防ぐ。そんな中、ガノンドロフが笑みを浮かべながら紫に言う。

 

「どうした?これが幻想郷を作り上げた賢者の力だと言うのか?」

 

「私は、まだ本気を・・・出してないだけよ!」

 

彼女が強がっているのはガノンドロフでも理解出来た。そんな彼女にガノンドロフは回し蹴りを入れた。

 

「きゃっ!」

 

可愛らしい悲鳴を上げながら紫は草薙の剣を落とし、地面に仰向けに倒れる。そのまま紫はガノンドロフが攻撃する前に再びスペルカードを発動した。

 

「廃線『ぶらり廃駅下車の旅』!」

 

その瞬間、彼女の背後からスキマが展開し、そこから電車が三両ガノンドロフに向かって行く。それにはガノンドロフは避けることしか出来なかった。それを狙って紫がスキマからナイフを取り出し、ガノンドロフ目掛けて投げつけた。それに反応出来ずにザクッという音と共にガノンドロフの右腕にナイフが刺さった。

 

「けっ。」

 

彼はかなり冷静だった。自分の右腕にナイフが刺さって血が流れていても彼は表情を一切変えなかった。彼は腕に刺さったナイフを抜くとそれを紫に投げつける。紫はそれをスキマの中へ入れた。その瞬間、ガノンドロフが紫の目の前までやって来ていた。

 

「なっ!?」

 

「フフフ、油断したな愚か者め。」

 

そう言うとガノンドロフの居合い斬りが紫の腹部に命中した。そのまま紫の腹部から血が流れる。

 

「うっ・・・」

 

その一撃を食らった彼女は腹部を抑えながら地面にうずくまる。そんな中、ガノンドロフは紫の腹部を蹴り飛ばした。

 

「ぐはっ!!」

 

声を上げながら紫は砂埃を上げながら10mほど蹴り飛ばされた。そして勢いが止まった瞬間、紫は口から血を吐いた。そんな彼女の元へガノンドロフが近づきながら言う。

 

「この世の定めは強き者によって決められること。ハイラルでも我は闇の強者として君臨していた。現実世界では帝が定めを決める。そして幻想郷はお前が定めを決める。だがそんなお前を我が倒せば我が定めを決められる。」

 

「何を・・・言っているの・・よ?」

 

「簡単なことよ。我がお前を殺す、それだけだ。」

 

そしてガノンドロフが紫の目の前まで来ると彼は紫を見下ろしながら再び口を開く。

 

「いや、別の選択もあるな。スキマ妖怪よ、選択肢を選ぶがよい。大人しく降参を認めて我に従うか、このまま我に殺されるか、好きな方を選べ。」

 

「あなたに従うですって?冗談じゃないわ。」

 

「・・・・選択は決まったようだな。」

 

そう言うとガノンドロフは紫に左手を伸ばす。彼の左手は紫の首を掴んだ。

 

「くっ・・・」

 

紫はガノンドロフの左手から逃れようとするが全く歯が立たなかった。さらにガノンドロフは彼女の首を掴んだまま彼女の体を空中に持ち上げた。これで紫は今宙吊りの状態になっている。そして首を絞め始めた。

 

「さあ、死んでいくがよい。」

 

「あぅ、うぅ・・・・」

 

紫は抵抗するが自分の体は今傷だらけのため、抵抗が無意味であった。そのまま彼女の意識が遠くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宝符ゲートオブバビロン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然少女の声が辺りに響いた瞬間、ガノンドロフ目掛けて沢山の宝具が飛んできた。それを見た彼は思わず紫を放し、宝具を避ける。その瞬間、影が紫が地面に落ちる前に紫を抱き抱え、救出した。

 

「紫、しっかりしなさいよ、紫!」

 

紫の元へある少女達、霊夢、魔理沙、ユニ、鈴仙、妹紅が駆けつけてきた。そして紫を抱えているのは先程クリーフルに圧倒的な力を見せつけた帝である地王セコンドである。彼は紫をそっと地面に寝かせた。そして霊夢達に言う。

 

「友よ、紫は余が守る。其の方らはガノンドロフを倒すがよい。」

 

「分かったぜ、おっさん。」

 

セコンドの言葉を聞いて魔理沙はガノンドロフと対峙する。彼女に続いて鈴仙、妹紅が彼と対峙する。そんな中、霊夢とユニは気絶している紫に言う。

 

「紫、死んじゃだめよ。」

 

「後は私達に任せて。」

 

「友よ、行くがよい。」

 

セコンドの言葉を聞いて霊夢とユニもガノンドロフと対峙する。そんな五人にガノンドロフが言う。

 

「お前達のような小娘などすぐに三途の川に送ってやろう。」

 

「上等だ。」

 

「受けてたちましょう。」

 

「やってやるぜ。」

 

「紫のためにも!」

 

「みんな行くわよ!」

 

五人の少女が幻想郷のために魔王に立ち向かっていった。




紫のためにガノンドロフと決着をつける霊夢達。果たして勝負の行方は!?
次作もお楽しみに!


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第18話 ガノンドロフとの戦い②

ガノンドロフによって傷を覆う紫。そんな中、ユニ達が駆けつけ、ガノンドロフとの決着をつける。


まず始めにユニがスペルカードを発動した。

 

「剣符アームストライク。」

 

その瞬間、彼女の右側に直径1mほどの空間が現れ、そこからユニは青い剣、ダイヤソードを取り出した。そしてユニはガノンドロフの元へ向かって行く。

 

「くらえ!」

 

始めに妹紅が弾幕を放つ。ガノンドロフはそれを容易く避ける。立て続けに魔理沙と鈴仙がスペルカードを発動する。

 

「魔符ミルキーウェイ!」

 

「波符幻の月!」

 

「!?」

 

二人の放った攻撃は妹紅の放った弾幕を避けたガノンドロフに命中した。その勢いで辺りに砂埃が舞う。その間に霊夢がガノンドロフに弾幕を放つ。さらにユニがスペルカードを発動した。

 

「現符シャドウルーム!」

 

ユニがスペルカードを発動した瞬間、舞い上がる砂埃を紫色のドームが包んだ。そしてユニは左手に握り拳を作った。その瞬間、紫色のドームと共に砂埃が消えた。

 

「なっ!?」

 

「嘘だろ・・・」

 

砂埃が消えた瞬間、そこにあった光景に一同は驚くことしか出来なかった。何故なら本来なら消滅するはずのガノンドロフが平然と立っていたからである。驚くユニ達とは別にガノンドロフが口を開く。

 

「フン、小娘の分際で中々やりおる。お前達になら本気を出しても問題ないな。」

 

そう言うとガノンドロフはユニ達に向かって走ってきた。ユニ達は咄嗟に後退するが、

 

「甘いな。」

 

そう言った瞬間、ガノンドロフの姿が一瞬にして消えた。ユニ達は思わず辺りを見回す。と、唐突としてガノンドロフが魔理沙の背後に現れた。

 

「魔理沙、後ろよ!」

 

「させない!」

 

ユニは咄嗟に魔理沙に言い、霊夢は彼女の背後にいるガノンドロフに向かってスペルカードを発動する。

 

「夢符『封魔陣』!」

 

魔理沙は反応出来ずに後ろを振り返る。その瞬間、霊夢の放った攻撃が飛んでくる。しかし、そこにガノンドロフはいなかった。

 

「なっ!?」

 

妹紅は思わず声を上げてしまう。その瞬間、ガノンドロフが妹紅の背後に現れた。そして妹紅の腰を蹴り飛ばした。

 

「ぐわっ!」

 

そのまま妹紅は10mほど蹴り飛ばされた。そして腹部を抑えながら吐血する。そんな彼女とは別に魔理沙と鈴仙が弾幕を放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セコンドがその様子を見ている中、紫が意識を取り戻した。それに気づいたセコンドは彼女に言う。

 

「目が覚めたか、紫。」

 

セコンドが話しかけると紫は目を大きく見開いた。だがすぐに安堵の息を吐き、セコンドに言う。

 

「来てたのね、セコンドさん。」

 

「余は招来の友に呼ばれたのでな、幻想郷に来てみれば魔王ガノンドロフがいるとはな。」

 

「ごめんなさいね、私はあまり戦えなかったわ・・・」

 

「いや、其の方の活躍は無駄ではない。ガノンドロフも先程其の方との仕合いで疲れている。彼女らが勝つ可能性だってあるのだぞ。」

 

「そうね、ユニ達を信じないとね。」

 

紫が言った瞬間、セコンドと紫は同時にガノンドロフと戦う霊夢達の方を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガノンドロフの圧倒的な力に五人が相手だろうと関係なく、苦戦していた。ユニはすかさずガノンドロフに青い剣を降り下ろす。ガノンドロフはそれを防ぎ、ユニの腹部を左手で殴り飛ばす。

 

「かふっ・・・」

 

そのままユニは殴り飛ばされ、勢いが止まった瞬間に吐血する。

 

「ユニ!」

 

「仲間の心配をしている場合か?」

 

魔理沙がユニの名前を叫んだ瞬間、ガノンドロフが魔理沙の背後に現れた。そして彼女の腹部に肘打ちをした。魔理沙はそのままセコンドと紫の方へ飛ばされた。セコンドは飛んでくる魔理沙を容易く受け止めた。

 

「す、すまないぜ、おっさん。」

 

「何のこれしき。」

 

セコンドが魔理沙をゆっくりと下ろした瞬間、魔理沙は地面にうずくまり、吐血する。そんな彼女とは別に霊夢と鈴仙、妹紅が同時に弾幕を放つ。ガノンドロフはそれを忌々しい剣で弾くと一瞬にして三人の目の前までやって来て三人を蹴り飛ばした。三人は吹き飛び、魔理沙のいるところで止まり、吐血する。そんな彼女らとは別にガノンドロフは言う。

 

「中々の者だったぞ、小娘どもよ。だが我の力には到底及ばぬ。さぁ、とどめだ!」

 

ガノンドロフが霊夢達に向かって忌々しい剣を降り下ろした。セコンドは紫の守護のため、どうすることも出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然ドスッっという音と共にガノンドロフの腹部を刀が貫いた。

 

「ガハッ・・・」

 

ガノンドロフはどうすることも出来ずに吐血する。そんな彼とは別に霊夢達は刀を飛ばした者が誰なのかを見る。

 

「これ以上みんなに怪我させたらただじゃおかないわよ。」

 

ユニだった。頭から血を流していてもユニは立っていた。彼女の左側には先程の空間が現れていた。そしてユニは再びスペルカードを発動した。

 

「剣符アームストライク。」

 

その瞬間、空間から黄色に輝く刃に青い持ち手の剣が出てきてユニはそれを手に取った。その剣を見た瞬間、ガノンドロフは目を大きく見開きながら言う。

 

「そ、それはマスターソード!!何故それを貴様が!?」

 

「簡単なことよ。本物と同じくらいの強度の偽者を取り出しただけ。けど、偽者だからと言って弱いとは限らない。私のアームストライクは本物と同じくらいの強度を持つ偽者を取り出すことの出来るスペルカード。」

 

「たかが小娘ごときがぁっ!葬ってくれるわ!!」

 

そう言うとガノンドロフは物凄い勢いでユニに向かって行く。そんな彼とは別にユニはスペルカードを取り出し、発動した。

 

「呼符コールザエニー。」

 

その瞬間、ユニの持つスペルカードが緑色に光だした。そしてユニはスペルカードを上に上げて叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奇跡を起こせ、東風谷早苗!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が叫んだ瞬間、ユニの右側に直径2mほどの空間が現れ、そこから緑色の髪に巫女の服、髪には蛇と蛙の飾りをつけている少女、東風谷早苗が現れた。その瞬間、ユニが早苗に言う。

 

「奇跡で奴に隙を作って。私がとどめをさす。」

 

「分かりました。」

 

そして二人は向かってくるガノンドロフを睨む。そして早苗がスペルカードを発動した。

 

「秘術グレイソーマタージ!!」

 

その瞬間、早苗の攻撃がガノンドロフに向かって行く。ガノンドロフはそれを容易く弾いた。そして早苗に向かって行く。そんな彼に早苗が言う。

 

「もう終わりです、魔王ガノンドロフ。」

 

「なんだと!?」

 

早苗が言った瞬間、ユニがガノンドロフの背後に移動していてスペルカードを発動していた。

 

「呪縛『地縛霊の嘆き』。」

 

彼女がスペルカードを発動した瞬間、ガノンドロフは身動きがとれなくなった。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「私のスペルカード、地縛霊の嘆き。少人数の地縛霊の力を借りてあなたの動きを封じる技よ。」

 

「封じるだと?面倒な技よ。」

 

「ありがとう、早苗。これで奴を倒せるわ。」

 

「いえいえ、これくらいはどうってことありません。」

 

早苗が言った瞬間、ユニは聖なる剣、マスターソードを構えた。そしてガノンドロフに言う。

 

「覚悟しなさい、魔王ガノンドロフ。」

 

ユニはそのままガノンドロフの元へ走っていく。そしてドスッっという音と共にマスターソードが身動きの取れないガノンドロフの胸を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウオォォォォォォアァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、無縁塚中にガノンドロフの声が響いた。




ガノンドロフとの決着をつけたユニ達。
次作、聖三覇銃編完結。


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第19話 聖三覇銃異変解決

ガノンドロフとの激戦の末、遂に勝利したユニ達。


マスターソードが刺さった瞬間、ユニは紫達の元へ向かう。ガノンドロフはマスターソードが刺さっていてもヨロヨロとなりながらユニ達の元へ向かう。マスターソードにはガノンドロフの血が垂れる。それに気にせずガノンドロフは口を開く。

 

「これで勝ったと思うなよ!ハァ、ハァ、これが光と闇の血塗られた歴史の始まりだと思え。」

 

ガノンドロフは左手に握り拳を作る。だが左手の甲に浮かんだ聖なる三角形、トライフォースが徐々に消えていき、遂には跡形もなく消えていった。

 

「!?」

 

その瞬間、ガノンドロフの体の中に漂っていた強大な力が消えた。そんな彼にセコンドが近づき、言う。

 

「其の方の負けだ、魔王ガノンドロフ。トライフォースの力を失った其の方に生きる資格など無かろう。」

 

「創世地王セコンド・・・いくら現実世界の頂点に君臨するとはいえ、貴様は上からの言葉が多すぎる。」

 

「それが余よ。余は神の次に強き存在、創世地王セコンドよ。」

 

「フン、まぁいい。いくら貴様であろうと神の力には値しない。」

 

「確かに今の余は神を越えられぬ。だがいずれ越えて見せる。」

 

その瞬間、ガノンドロフの体がみるみる粉になり始めた。それを見たユニ達は驚きを隠せなかった。そんな彼女らとは別にガノンドロフが言う。

 

「我の体はここまでか・・・悔いの残る人生ばかりだな。ギラヒムやザントのような使えぬ輩を雇い、覇王の小僧に騙された挙げ句、八つ当たりも出来ず、そして己の命を失う・・・。」

 

「・・・・・」

 

ユニ達は黙ったままだった。そんな中、ガノンドロフが霊夢達に言う。

 

「あらかじめ言っておこう。カオスという者がいずれここへやって来る。十分に警戒することだな。」

 

そう言うとガノンドロフは粉になっていき、遂には跡形もなく消えていった。粉となったガノンドロフはマスターソードの中へ入っていった。

 

「お、終わったわね・・・」

 

霊夢が言った瞬間、誰かがやって来る音が聞こえた。ユニ達はその方向へ目を向ける。そこには黒髪に黒いパーカー、黒いジーパンを履き、赤い目の少年、悠岐がやって来た。それを見た瞬間、妹紅が彼の元へ寄った。そして言う。

 

「悠岐、久しぶりだな!」

 

「おう、本当に久しぶりだな!、妹紅。」

 

二人は互いに見つめ合いながら互いに手を取り合った。彼女に続いて霊夢達も彼に寄り添う。そんな中、セコンドが紫を抱き抱えながら彼の元へやって来た。それに気づいた悠岐がセコンドに言う。

 

「お前も来ていたんだな、セコンド。」

 

「其の方も幻想郷に来ていたとは思わなかったよ、黒き友よ。」

 

「お前もユニに呼ばれたんだな?」

 

「無論、其の方も招来の友に呼ばれたのだろう?」

 

「ああ、そうさ。」

 

「さて、敵はこれで終わりか?ドールクとじ久は倒したのか?」

 

「ああ、ドールクならさとり達が倒してじ久はビオラ様が何処かに行かせたよ。」

 

彼の問いに答えるかのようにユニが答えた。それを聞いた瞬間、悠岐はユニを見ながら言う。

 

「じ久はどこだ?」

 

「え?どうして?」

 

「俺は今あいつに用があるんだ。連れていってくれないか?」

 

「紫、頼める?」

 

ユニが言った瞬間、紫は小さく頷いた。そしてユニの前にスキマを展開した。そのままユニと悠岐はスキマの中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ、なんでだ・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ビオラとの戦いで逃げてきたじ久は魔法の森をさ迷っていた。そして独り言を言う。

 

「どうして俺は逃げてしまったんだ?ドールク様に恥じゃないか。全く、俺ってやつはドールク様の左腕として失格だな。」

 

独り言を呟きながら歩いている時だった。突如彼の目の前にスキマが現れ、そこから少女と少年、ユニと悠岐が現れた。悠岐を見た瞬間、じ久は腰を抜かしながら声を発する。

 

「あ、悪魔の・・・西田・・悠岐・・・」

 

怯える彼とは別に悠岐は黙って彼を見ていた。そして言う。

 

「お前、いつまで俺にビビってやがる?悪魔がそんなに怖いか?いや、そんなことより俺はお前に用があってきた。」

 

「俺に、用?」

 

「お前今、どうしても会いたい輩がいるだろ?」

 

「会いたい輩?ドールク様だ、俺は今ドールク様に会いたい!」

 

「残念だけど、あなたの主のドールクはもうさとり達によって命をおとしたわ。」

 

「なっ!?」

 

「さらにクリーフルはセコンド様に倒され、ギラヒムは悠岐君に倒され、ザントは魅魔さんに倒され、ガノンドロフは私がとどめをさしたわ。もうあなたに勝ち目なんてないのよ。」

 

「それでも俺はドールク様に会いたい。」

 

「嘘つくなよテメェ。」

 

「嘘なんてついてない!!」

 

「ついてるだろ?お前はあいつのことも忘れたのか?」

 

「あいつ?」

 

「呼符コールザエニー。」

 

その瞬間、ユニの右側に直径2mほどの空間が現れた。そしてその中から緑色の髪に黄色い目、へそだしの服に緑色のスカートを履いた少女が現れた。彼女を見た瞬間、じ久は声を発する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・麻里。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じ久が言った瞬間、ユニが呼んだ少女、麻里はじ久に近づく。

 

「こ、こっち来るな!」

 

しかしじ久が何を言おうとも麻里は黙って彼に近づいていく。

 

「来るなって言ってるのが分からないのかテメェ!」

 

そう言うと彼は自分の手に持っていた刀で麻里の腹部を貫いた。その瞬間、麻里は吐血する。それを見たユニがじ久に攻撃しようとするが悠岐がそれを阻止した。

 

「安心しろ、大丈夫だ。」

 

彼が言った瞬間、麻里は腹部に刀が刺さったままじ久に抱きついた。そして言う。

 

「辛かったんでしょ?私よりも苦痛の日々、そして人間から妖怪に姿を変えられた絶望・・・辛かったんでしょ?でも、もう大丈夫よ。私がいるから・・・。」

 

そう言うと彼女は左手をじ久の額においた。その瞬間、じ久の体がみるみる人間に近い形になっていき、遂には人間の姿になった。

 

「ま、麻里・・・・。」

 

「おかえり、じ・・・・久・・・。」

 

そう言うと彼女は意識を失ってしまった。じ久はすぐさま麻里の腹部から刀を抜き、麻里を抱き締めながら言った。

 

「ごめん、麻里・・・俺ってやつは・・・」

 

じ久は涙を流しながら麻里をぎゅっと抱き締めた。それを見ていた悠岐とユニは笑みを浮かべた。そしてユニが悠岐に言う。

 

「麻里ちゃんは大丈夫なのかな?」

 

「問題ないよ。じ久も麻里の急所を外したようだしな。」

 

そう言うとユニは空間を作り上げた。それに気づいたじ久は麻里を抱き抱えながら二人を見る。そんな彼に悠岐が言う。

 

「麻里を支えてやれよ。」

 

悠岐の言葉にじ久は深く頷き、そのまま空間の中へ入っていった。彼が空間の中へ入っていった後、悠岐とユニは霊夢達の元へ向かった。

 




次作
平和な日常へある少女が登場、さらに玄武の沢に謎の物体が!果たしてその正体とは!?
次作もお楽しみに!


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第2章
第20話 二人の半人半悪魔


ガノンドロフの撃破に成功したユニ達。一人になったじ久に道を与えた悠岐。


ガノンドロフの撃破後、ユニ達は博麗神社に集まっていた。そんな中、ユニがセコンドに言う。

 

「セコンド様、本日はこちらへ来ていただき、本当にありがとうございます!」

 

そう言うと彼女は頭を下げた。それを見たセコンドは声を上げて笑いながら言う。

 

「ハハハ、何を言う。これしきのことなど余の定めとしては当然のことよ。」

 

その瞬間、ユニもセコンドにつられて声を上げて笑い始めた。辺りには二人の愉快な笑い声が響いた。霊夢達はそれを苦笑いで見ていた。そして笑い終わった後、セコンドがユニ達に言う。

 

「友よ!苦難の時があればいつでも余を呼ぶがよい。まぁ少しは黒き友にも協力してもらうといい。では、また会おう!」

 

そう言うとセコンドは自分から空間を作り上げ、そのまま現実世界へ帰って行った。セコンドの言葉を思い出した瞬間、魔理沙は後ろを振り返る。そこには彼の言う通り、悠岐がいた。魔理沙が彼に言う前にユニが彼に言う。

 

「悠岐君は帰らないの?」

 

「俺は少し幻想郷に残ってることにするよ。久しぶりにここを見回りたいからな。」

 

「そう言えば悠岐君、アリスの怪我はどうなったの?」

 

ユニの言葉を聞いた瞬間、魔理沙の体がピクリと反応した。そんな彼女とは別に悠岐が言う。

 

「ああ、アリスなら命に別状はないとさ。右腕は完全に回復したらしいしな。」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、魔理沙はほっと溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、突如として空から何者かが落ちてきた。その者は霊夢を踏みながら言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、すまん。人がいることに気づいてなかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢の上に乗っかってきたのは腰まで伸びる黒髪でノースリーブの黒い服、両手には黒のグローブがはめていて腰には冷気が漂う刀をかけていて赤い目の少女であった。彼女を見た瞬間、ユニと魔理沙は目を大きく見開くことしか出来なかった。そんな中、悠岐が少女に言う。

 

「オイ、どの面下げて現れやがったテメェ。」

 

悠岐の言葉を聞いても少女は笑みを浮かべたままだった。そして霊夢から降りると悠岐と対峙する。そんな中、踏まれたことに怒りを覚えた霊夢が少女にスペルカードを発動した。

 

「夢想封印・瞬!」

 

その瞬間、辺りは光に包まれた。光が消えた瞬間、霊夢は驚きを隠せなかった。

 

「何故驚いている?これを避けられるのは当然だろう?」

 

何故ならそこには間違いなく夢想封印・瞬が命中したはずの少女が無傷で平然と立っていたからである。そんな中、悠岐が霊夢の肩を軽く叩き、言う。

 

「俺に任せな。」

 

「待って、あいつは敵なの?」

 

「あいつか?あいつは敵じゃねぇよ。敵になると厄介だが。」

 

そう言うと彼は少女と対峙する。悠岐と対峙する少女は彼に言う。

 

「久しぶりだな、元気にしてたか?悠岐。」

 

少女が悠岐の名前を言った瞬間、三人の体がピクリと反応した。そして霊夢がユニに言う。

 

「なんであの女が悠岐の名前を知ってるのよ?」

 

「分からないわ。でも、過去に何かある人だってのは間違いないわね。」

 

ユニと霊夢が話している中、悠岐が口を開いた。

 

「お前も、随分勇ましくなったじゃねぇか、楓。」

 

三人は確かに少女の名前を聞いた。どうやら赤い目の少女の名前は『楓』と言うらしい。そんな中、楓が言う。

 

「久しぶりの剣の交え、やるか?」

 

「面白い。半人半悪魔同士の戦いも悪くないしな。」

 

悠岐の言葉を聞いて三人は驚きを隠せなかった。楓が悠岐と同じ半人半悪魔だと言うことが今だに信じられなかったからである。

 

「ねぇ、悠・・・」

 

霊夢が悠岐に言おうとした瞬間、二人の姿が一瞬にして消えた。二人は三人から少し離れた場所に移動し、同時に攻撃していた。

 

「ぐっ!」

 

「はっ!」

 

二人の攻撃は互いの右肩に命中していた。二人の肩からは血が飛び散る。

 

「イヒヒッ。」

 

「フフフ。」

 

互いに攻撃を受けても笑っていた。それを見た三人は鳥肌がたった。始めに悠岐が楓から漆黒の刃を抜き、彼女に降り下ろす。楓はすかさず攻撃をかわす。彼の攻撃で地面がへこんだ。続いて楓が左手で氷柱を作り上げ、そのまま悠岐に投げつける。

 

「おっと!」

 

声を上げるものの、悠岐は空いている左手で氷柱を弾いた。そして楓に向かって蹴りを入れる。彼女はそれを素早く見切り、避ける。と、悠岐の回し蹴りが楓の目の前まで来る。

 

「くらいな!」

 

彼の攻撃を楓は両腕をクロスさせて防ぐ。それでも彼女は5mほど地面を滑る。立て続けに悠岐が上から刀を降り下ろす。楓はそれもすかさず避ける。そして彼女が再び氷柱を左手に持った瞬間、悠岐の左手のパンチが彼女の腹部に命中した。

 

「ぐっ!」

 

そのまま彼女は木のある方へ飛ばされる。その間に悠岐が左手に青いオーラを溜めて技を放つ。

 

「波動弾!」

 

彼の放った攻撃は楓が木に衝突し、砂埃があがるのと同時に砂埃の中へ入っていく。その瞬間、楓が持っていた冷気が漂う刀が悠岐から見て左側に転がった。そんな中、魔理沙が独り言を呟いた。

 

「悠岐のやつ、相手が女であろうと容赦ないぜ。」

 

「悠岐君の因縁の相手かもしれないからね、手加減なんてないと思うよ。」

 

魔理沙の独り言にユニが自然に答える。砂埃が消えたところには木に寄り掛かりながら座りこむ楓がいた。彼女の頭からは血が垂れている。それに構わず楓が言葉を発する。

 

「ハハ、流石悠岐だな。容赦なくいくとはな。私も、負けてられないなっ!」

 

そう言うと彼女は咄嗟に転がっている刀に右手を伸ばす。その瞬間、彼女の右手の甲にナイフが刺さった。

 

「なっ!?」

 

「ヒヒッ。」

 

楓がナイフを抜く前に悠岐の右足が彼女に迫っていた。先程ナイフを投げたのは彼である。彼は笑みを浮かべながら座りこむ楓に蹴りを入れようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、楓は左手に隠し持っていた短刀を迫りくる悠岐の右足の甲に突き刺した。彼は反応することが出来ず、そのまま右足の甲を貫かれた。彼の右足の甲からは鮮血が飛び散った。

 

「えっ!?」

 

それを見た三人は目を大きく見開いた。悠岐も同様、目を大きく見開きながら心の中で呟く。

 

(あれ?こいつ、こんな短刀持ってたっけ?いいや、そんなことより・・・)

 

悠岐は楓の短刀から右足の甲を引き抜くとそのまま彼女との距離を置いた。そして再び心の中で呟く。

 

(波動弾の軌道を変えられた・・・。確かあいつは『道を操る程度の能力』の持ち主だったな。波動弾の軌道を変え、多少のダメージは避けたか。さっきの夢想封印・瞬も軌道を変えたという訳か。氷と炎なら相性は俺の方が有利。だが波動と道筋であればやつの方が有利か。)

 

彼と同じくして楓も息を荒くしながら心の中で呟いていた。

 

(流石悠岐だな、パンチの威力が伊達じゃない。波動弾は避けられたものの、ナイフは予想外だった。少し力を振り絞らないとな・・・)

 

その瞬間、悠岐からは赤い炎のオーラが、楓からは水色の氷のオーラが漂い始めた。それを見たユニが咄嗟に二人に言う。

 

「二人とも伏せて。恐らくあの二人の攻撃がぶつかった瞬間、物凄い衝撃が起こる筈だから。」

 

「ちょっ、冗談じゃないわ!私の神社壊されたら面倒だと言うのに!!」

 

そう言うと霊夢は急いで悠岐と楓の元へ向かう。彼女につられてユニも二人の元へ向かっていく。

 

「お、おい!霊夢、ユニ!」

 

魔理沙は手を伸ばしながらただ呆然とするしか出来なかった。その間に悠岐と楓が同時に攻撃を放った。

 

「波動の誓い、フレアバースト!!」

 

「氷電『凍りついた稲妻』!」

 

その瞬間、辺りは激しい爆風に襲われた。




ますます激しくなる悠岐と楓の戦い。果たして博麗神社の運命は!?
次作もお楽しみに!


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第21話 二人の過去

ますますエスカレートしていく半人半悪魔の悠岐と楓の戦い。


悠岐と楓の攻撃がぶつかった後に発生した砂埃が晴れるとそこには無傷で立っている博麗神社と悠岐の攻撃を払い棒で防ぐ霊夢、楓の攻撃をダイヤモンドの剣で防ぐユニの姿があった。

 

「れ、霊夢?」

 

「お前!」

 

悠岐と楓は同時に声を発する。そんな二人とは別に魔理沙が近寄りながら言う。

 

「そろそろ止めたらどうだ?お二人さん。お前らの力を考えれば、神社が壊れるのは頷けるしな。」

 

それを聞いた瞬間、悠岐と楓は刀を下ろし、そのまましまった。それを見たユニが笑みを浮かべ、二人に言う。

 

「さ、戦いは終わりにしてお茶でも飲みながらお話しましょうよ。」

 

そう言うとユニは楓の右手に出来た、ナイフがで刺された傷に水に浸したタオルを巻いた。

 

「お、お前・・・」

 

楓は呆然としながらユニにタオルを巻いてもらうのを抵抗しなかった。そして彼女が巻き終わった後、楓がユニに言う。

 

「これは申し訳ないな。ありがとう。」

 

「いえいえ、これくらいは当然のことだから。さ、行きましょう。あ!言い忘れたけど、私の名前はユニよ。よろしくね、楓ちゃん。」

 

「あ、あぁ。よろしくな、ユニ。」

 

二人は同時に笑みを浮かべ合った。すっかり二人は仲良くなり、二人は肩を並べたまま神社に向かう。それを見た悠岐はゆっくりと右足を引きずりながら歩き始める。それを見た霊夢が彼に言う。

 

「あんた、その足だったら歩くの面倒でしょ?私が肩貸してあげるわよ。」

 

「ああ、すまないな。」

 

悠岐は素直に霊夢に肩を借りながら神社へと向かう。魔理沙はそれを見ながら神社へと歩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社の中へ入ったユニ達は楓の右手、悠岐の右足を治療していた。まだ二人の傷は完全には回復しないものの、先程よりはマシになった。そして五人は右から霊夢、魔理沙、ユニ、楓、悠岐という順番で座り、お茶を飲み始めた。

 

「う、うまい!」

 

唐突に口を開いたのは楓だった。そんな彼女に魔理沙が言う。

 

「ユニの作るお茶は霊夢より美味しいからな!」

 

「魔理沙、消し炭にされたいの?」

 

「あわわ、冗談だぜ。」

 

そんな中、ユニが黙々とお茶を飲み干した悠岐に言う。

 

「ねぇ、悠岐君。楓ちゃんと過去のことを聞いてもいいかな?」

 

「別に構わないよ。じゃあ話すから全員こっち向きな。」

 

彼の言葉を聞いて四人は同時に彼に顔を向ける。そして悠岐が楓を指差しながら言う。

 

「こいつの名前は出野楓。俺と同じ道場に通っていて俺と同じ半人半悪魔さ。」

 

「楓ちゃんの能力とかは?」

 

「楓の能力は『道を操る程度の能力』。道を変える他、弾幕等の軌道も変えられるし、さらには六道の力も使える能力だ。」

 

「へぇ、面倒な能力だな。私のマスタースパークの軌道が変えられるなんて想像出来ないぜ。」

 

「それで私の夢想封印・瞬が当たらなかったのね。」

 

「ところで悠岐君、どうして二人はそんなに強ければなったの?」

 

「・・・・それは俺はあまり話したくない。楓、代わりに話してくれないか?」

 

彼の言葉を聞いて楓は黙って頷いた。そして彼が言いたくないことを話す。

 

「実はその件についてなんだが、道場であることが起こってしまったんだ。」

 

「あること?」

 

「その時はとても衝撃を受けたものだ。いつも通りに私と悠岐で道場で修行する時だった。やけに辺りが静かで、嗅ぎ馴れない異臭が辺りを漂い、それが人の血の臭いだと分かり、急いで道場の中へ入ったら・・・」

 

その瞬間、三人は口の中に溜まっていた唾を飲み込む。そして楓はそっと口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこには、10mほどの大きさの紫色の巨大ムカデが道場にいた先生と仲間達を喰っていた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、三人の体に鳥肌が立ち始めた。そんな三人とは別に楓が話を続ける。

 

「中に入ると骨が砕ける音、肉が引き裂かれる音が響いた。私達と一緒にいた男の人は怯えて私達をおいて逃げてしまった。私は怯んで動くことが出来なかった。巨大ムカデは私の存在に気がつくと私に顔を寄せ、長い舌で私の顔を舐め始めた。私はどうしようも出来なかった。そして巨大ムカデが私に口を開いた時だった。」

 

「何が起こったんだ?」

 

咄嗟に魔理沙が聞く。それに楓はすぐに答える。

 

「巨大ムカデが息を引き取った。」

 

「え?ちょっと待って、楓ちゃん。どうして巨大ムカデが急に死んだの?」

 

「今から話すから待て。私は巨大ムカデが死んだ理由を理解するのに1秒もかからなかった。悠岐が巨大ムカデの頭を漆黒の刃で貫いていたからだ。」

 

「え?」

 

「その時は私も驚いた。なんせ、悠岐も男の人と同じく逃げてしまったのだと思ったからな。悠岐の目はひどく赤く染まっていて普通ではなかった。そのまま私達は影舷隊に引き取られ、今に至る。」

 

「そうだったんだ・・・。」

 

「悠岐君にも楓ちゃんにも、いろいろあったんだね。」

 

「怖いことは忘れないって阿求が言ってたんだが、本当だったんだな・・・。」

 

「さて、次はあいつの話だ。セコンドに伝えてくれって頼まれてたからな。」

 

「あいつって?」

 

咄嗟に霊夢が悠岐に尋ねる。悠岐はそれにすぐに答えた。

 

「あいつって言うのは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、大変だよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠岐が言うその瞬間に神社に飛び込んできたのは酷く息が荒くなっている鬼の少女、萃香であった。そんな彼女にユニが言う。

 

「どうしたの?萃香。」

 

「玄武の沢の地下から見たこともない人の形をした大きい鉱石が見つかったんだよ!!それが不気味過ぎて誰も近寄ろうとしないんだよ!」

 

それを聞いた瞬間、五人は目を大きく見開いた。そして魔理沙が口を開いた。

 

「異変の予感がするぜ。私は向かうぞ!」

 

「俺も行くとするか。楓、行くぞ。」

 

「ああ、勿論だ。」

 

「私も行くわ。」

 

「はぁ、めんどくさいわね。」

 

めんどくさく思うものの、霊夢は萃香の後をついていった。ユニ達も急いで玄武の沢へと向かっていった。




玄武の沢の地下から現れたと噂が広がる人型の巨大な鉱石。果たしてその正体とは!?
次作もお楽しみに!


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第22話 四角世界の破壊神

玄武の沢に謎の巨大な岩が現れたことを聞いたユニ達はすぐさま駆けつける。


玄武の沢に先に着いたのは空を飛んで来た霊夢達だった。玄武の沢には鈴仙やにとり、早苗が既に駆けつけてきていた。霊夢達が玄武の沢へ降りた瞬間、悠岐と楓も到着した。ユニ達に気づいたにとりが声を発する。

 

「あ、霊夢!良かった、早くこっち来て!」

 

にとりは霊夢達に手招きをしながら鈴仙と早苗と共に奥へ進んでいった。

 

「あ、ちょっと待ってよ!」

 

三人に声をかけながらもユニ達は奥へと進んでいく。そんな中、悠岐が口を開いた。

 

「変な岩、か。何か心当たりがある気がするな。」

 

「心当たりが?悠岐君、それって?」

 

「見てみないと分からない。とにかく、にとり達のところへ行ってみるか。」

 

そのままユニ達はにとり達がいるところに到着するまで一切言葉を発さなかった。

 

「あ、あれは・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢達の目線にあるもの、それは人型に四角形の何かの鉱物が出来ており、大きさは4mほどあり、右側と左側の鉱物の上には黒い顔のようなものが置かれていた。それを見て霊夢達は目を見開くばかりであった。そんな中、悠岐と楓が鉱物に近寄る。そしてじっくりと観察する。そんな中、鈴仙が二人に近寄り、言う。

 

「不思議ですよね、こんな大きくて人の形をした鉱物なんて、滅多にないですからね。」

 

彼女が話終わった瞬間、楓が口を開いた。

 

「これはソウルサンドだな。」

 

「ソウルサンド?」

 

霊夢達は聞き覚えのない名前にただ首を傾げるばかりであった。そんな中、悠岐が口を開く。

 

「お前ら、これを見ろ。」

 

悠岐が指差す方向に霊夢達は目を向ける。それはソウルサンドの左右に置いてある黒い顔のようなものであった。よく見ると、左右の目がキョロキョロと辺りを見回していた。

 

「ひっ!」

 

思わず悲鳴を上げてしまう萃香と鈴仙。そんな二人とは別にユニが悠岐に言う。

 

「目が動いてるけど悠岐君、これは一体?」

 

「お前らはこの世に世界が四つあることを知っているか?」

 

「四つ?」

 

首を傾げながら霊夢が言う。そんな彼女とは別に楓が口を開いた。

 

「八雲紫が創った幻想郷、小宝剛岐、ゴールド・マーグル、アイアルト・モルト、メルト・グランチ、セコンドの五大王が支える現実世界、ガイルゴールが作り上げた宇宙。そしてもう一つ、四角世界(マインクラフト)という場所がある。」

 

四角世界(マインクラフト)ですか?」

 

「その世界には旧世代に『全ての終わりを告げる破壊神』と呼ばれる怪物がいるという言い伝えがあるんだ。」

 

「破壊神と呼ばれる怪物?」

 

ユニが言った瞬間、楓は口の中に溜まっていた唾を飲み込み、声を発する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウィザーだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、鈴仙が鉱物を指差しながら咄嗟に口を開いた。

 

「ウ、ウィザー!?あの、たった一か月で四角世界を崩壊させたという、こいつが・・・」

 

鈴仙の言葉を聞いた瞬間、ユニ達は目を大きく見開いた。そんな中、悠岐が口を開いた。

 

「ウィザーはある英雄の手によって退治されたはずだった・・・。だが、何者かの手によって幻想郷に現れたとはな。」

 

「一体誰がこんなことを・・・」

 

「分からない。だが、四角世界(マインクラフト)と幻想郷に何かあったのは間違いない。」

 

彼が言った瞬間、楓が右手をウィザーに向けた。そして右手から冷気を出し、ウィザーを凍らせた。そして彼女は霊夢達を見ながら言う。

 

「万が一ウィザーを召喚することがあるかもしれないからこうしておく。」

 

「そうですね、そうしておけばウィザーが動く心配もありませんからね。」

 

彼女が言った後に早苗が言う。そしてユニ達が帰ろうとした時だった。突如魔理沙が足を止め、ウィザーを見つめる。

 

「どうしたの?魔理沙。」

 

霊夢が彼女に話しかける。しかし魔理沙はウィザーを見つめたまま声を発さなかった。ユニが駆けつけ、魔理沙の見つめるウィザーを見る。だが変わった様子は何もない。あるのは凍りついたウィザーしかない。それに呆れた楓が口を開く。

 

「何もないぞ。一体魔理沙には何が見えたって言うんだ?」

 

「いや、今ウィザーが動いた気がして・・・」

 

「さっき楓が凍らせたから動くわけないだろ?それにウィザーを動かすためにはウィザースケルトンという奴の頭を使わないといけないから動くことは絶対にないから。」

 

「そ、そうかな・・・」

 

悠岐と楓に言われて魔理沙は少し不安が残ってしまった。そんな彼女とは別にユニ達は玄武の沢を出ていった。魔理沙も彼女達の後についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社へ到着したユニ達はすぐさま神社の中へ入っていった。そして言う。

 

「私は霊夢のところで寝ることにするわ。」

 

「俺もそうするか。」

 

「じゃあ私は魔理沙のところで寝る。」

 

「勝手に決めないでよ!」

 

「まぁ、いいじゃないか。」

 

霊夢はユニ達の意見に反対するが魔理沙が彼女を説得した。霊夢は深い溜め息を吐いた。それを見た悠岐が口を開いた。

 

「まあまぁ、飯は俺が作っておくからいいだろ?」

 

「・・・しょうがないわね。」

 

「それじゃあ行くか、楓!」

 

「ああ魔理沙。」

 

彼女に言われて楓は魔理沙の箒にまたがった。そして二人は魔法の森へ飛んでいった。そして三人は神社の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、悠岐が料理を作り、ユニと霊夢があることを話していた。

 

「へぇ、月に人が住んでるんだ。知らなかった!」

 

「それでね、そいつらの技術が発達し過ぎて地上の者である私達がそいつらに勝てないってわけ。」

 

「私、面白半分でレミリアとの戦いで依姫呼び寄せたけど、彼女ってすごい力の持ち主なんだね。」

 

「だいぶ前に魔理沙や私も挑んだけど歯が立たなかったのよ。」

 

「流石月人ね。」

 

「おーい、お二人さん。晩飯が出来たぞ。」

 

月人のことを話していた二人の元へ青いエプロンを着た悠岐が両手に湯気が出ている食事を持ってきた。そして二人に言う。

 

「今日はオムライスを作ったんだ。たっぷり食べてくれよ。」

 

「ありがとう。」

 

そして悠岐はテーブルの上にオムライスの乗った皿を置くと再びキッチンへと向かい、自分の分のオムライスと三人分のスプーンを持ってきた。彼はユニの隣に腰をおろす。そして三人は手を合わせて同時に声を発する。

 

「いただきます。」

 

始めにユニがスプーンでオムライスの一部を掬い、口の中へ入れた。その瞬間、ユニは目を大きく見開きながら声を発する。

 

「美味しい!悠岐君の料理とっても美味しい!」

 

「趣味でよくじいちゃんと作ってたからな。喜んでもらえて嬉しいよ。」

 

あまりにも美味しかったのか、ユニはどんどん口の中へオムライスを入れていく。霊夢もスプーンでオムライスの一部を掬い、口の中へ入れる。

 

「・・・・美味しい。」

 

思わず声を発する霊夢。そんな彼女に悠岐が口の中に入っていたオムライスをゴクンという音を立てて飲み込み、言う。

 

「幻想郷にこんな旨いオムライスはないのか?」

 

「私が良く食べるのはミスティアの店のところと人里の店で買ってるやつばかりだからあまりこういうのは食べたことないわ。」

 

「やっぱり幻想郷と現実世界は違うんだな。」

 

そう話している内に三人は空っぽになった皿の上にスプーンを置き、手を合わせて同時に声を発した。

 

「ごちそうさまでした。」

 

その瞬間、悠岐が空っぽになった皿を重ね始めた。そして二人に言う。

 

「俺は後片付けしておくから二人はゆっくりしてな。」

 

「うん。ありがとう、悠岐君。」

 

「じゃあそうさせてもらうわ。」

 

霊夢が言った後に悠岐はキッチンへ向かった。そんな中、ユニが霊夢に言う。

 

「なんだか眠くなってきたわね。私はそろそろ寝かせてもらうわね。」

 

「別にいいけど、ちゃんと布団敷きなさいよ。」

 

「もう敷いた。」

 

ユニは綺麗に敷いてある布団を指差しながら言った。これを見た霊夢は驚きながら言う。

 

「ちょっと、あんた早すぎじゃない!?」

 

「寝るとき私は大体そうよ。それじゃ、おやすみなさ~い!」

 

「ちょっとユニ!?」

 

霊夢は咄嗟に声をかけるものの、ユニのは布団に入り、すぐに寝息を立てて眠ってしまった。その瞬間、皿を洗い終えた悠岐がやって来て言う。

 

「今日は疲れてたみたいだな。ゆっくり寝かせてやろうぜ。」

 

「そうね。」

 

「さて、俺もそろそろ寝かせてもらうよ。大丈夫、もう布団は隣の部屋に敷いておいたから。」

 

「あんたも随分と用意周到なヤツね。」

 

「まあな。」

 

「悠岐が寝るなら私も寝るとしようかしら。」

 

「じゃあ俺は寝てるからな。」

 

「えぇ、分かったわ。」

 

悠岐は隣の部屋に移動し布団に入った。霊夢も着替えて電気を消し、ユニと同じ部屋で布団に入り、悠岐に言う。

 

「おやすみなさい、悠岐。」

 

「あぁ、おやすみ。」

 

そして二人は布団に入り、ゆっくりと瞼を閉じ、眠りについた。




新たな異変が近づいているのにも関わらずユニ達はのんびりと、果たしてどうなる!?
次作もお楽しみに!


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第23話 謎の悪夢

玄武の沢に現れた鉱物の正体はウィザーだったことを知ったユニ達は驚きを隠せなかった。


「・・・あれ?」

 

気がつくと霊夢は見覚えのない場所にいた。薄暗く、自分の目線には王が座るような玉座が置いてある。そして右側にはうつ伏せで倒れている咲夜、左側には仰向けで倒れている魔理沙がいた。そんな中、自分はぽつんと座っている。そんな中、自分の目線に現れたのは身長4mほどで大きな翼をしていて太い腕が2本、細い腕が2本ある男、いわゆる悪魔が傷だらけの妖夢を片手で摘まみ上げている。そして男は信じられないくらい大きな口を開くとそのまま妖夢を口の中へ入れ、ゴクンという音を立てて彼女を丸のみした。

 

「ひっ!」

 

思わず声を発する霊夢。彼女に気づいたのか、悪魔の男はゆっくりと霊夢の元へ歩み寄る。

 

「いやっ!」

 

霊夢は声を上げ、逃げようとするが足が言うことを聞かず、動かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁっ!」

 

目を覚ますとそこはいつもの博麗神社の中でユニが寝息を立てながらすやすやと眠っていた。

 

「何なのよ、今の・・・」

 

霊夢は先程の出来事は夢だと気づき、安堵の溜め息を吐いた。そして襖を開け、隣の部屋で寝ている悠岐を確認する。彼はユニ達に背を向けるも、寝息を立てて寝ていた。そんな中、霊夢が独り言を呟いた。

 

「本当にさっきのは何だったのかしら・・・。夢ね、きっと疲れてるんだわ。もう一回寝よう。」

 

そう言うと彼女は布団に入る前に外を眺めた。空は星空が広がっており、辺りはしんとしている。まだ深夜であった。そして彼女は布団に潜り込み、眠りにつこうとした。だが、先程の夢が頭の中で思い出してしまった。が彼女はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づいた時には辺りは明るくなり、夜が明けていた。目を覚ますとユニが寝るときに使っていた布団は綺麗に畳んであった。そしてキッチンから誰かが何かを作る音が聞こえた。

 

「ふぁぁぁ、昨日のは何だったのかしら?」

 

背伸びをしながら霊夢は呟き、着替えてテーブルの方へ向かう。そこにはユニではなく悠岐が座っていた。だとすると今料理をしているのはユニである。と、霊夢が来たことに気づいた悠岐が彼女を見ながら言う。

 

「おはよう、霊夢。」

 

「おはよう、悠岐。」

 

霊夢は悠岐の隣に腰をおろした。その瞬間、悠岐があることに気づき、霊夢に言う。

 

「お前、少しクマ出来てるけど、大丈夫か?」

 

「えぇ、大丈夫よ。少し疲れてるだけなのよ。」

 

「そうか。ならいいんだがな。」

 

二人が話している内にユニがドーナッツを持ってきて二人の前に差し出した。そして言う。

 

「私が頑張って作ったんだ。たくさん食べてね!」

 

「ありがとう、いただきます。」

 

そう言うと二人は早速ユニの作ったドーナッツを食べる。ドーナッツの一部を口に入れた瞬間、二人の口の中にとてつもない辛さが襲った。二人は暴れながらユニに言う。

 

「お前、ドーナッツの中に何入れた!!」

 

「何って、赤い砂糖を入れただけだけど?」

 

「それはカラシだ!どうしてお前はカラシと砂糖の区別がつかなうぇぇぇぇぇ!」

 

悠岐は耐え切れなくなり、急いで外に出て草木の茂っている所へ吐いた。霊夢も同じく草木の茂っている所へ吐いた。それを見たユニがドーナッツを持ちながら言う。

 

「ちょっと、折角私が頑張って作ったのにも吐くなんてひどいよ!」

 

そう言うとユニもドーナッツを口の中へ入れた。結果は悠岐と霊夢と同じで草木の茂っている所へ吐いた。そして落ち着いた三人は神社の賽銭箱の前で腰をおろした。その際、ユニは悠岐の肩に頭を乗せて辺りの風景を見ていた。そんな中、霊夢が二人に言う。

 

「ねぇ、二人は昨日どんな夢を見た?」

 

「唐突な質問ね。私は沢山のドーナッツを食べる夢を見て最高だったわ。」

 

「俺は特に何も見てないな。夢を見ない日が時々あるもんでね。」

 

「そうなのね。私は何か知らないけど変な所で咲夜と魔理沙が倒れていて妖夢が悪魔のようなやつに丸のみにされた夢を見たわ。」

 

「怖い夢を見るのね。私はそんな夢は見たくないな。」

 

「でも昨日のことだけだし、大丈夫かなって思うわ。」

 

「それならいいんだがな。」

 

三人が話している内にいつものように魔理沙がやって来た。もちろん楓も一緒にやって来る。そして五人で集まった時、霊夢が二人に悠岐とユニに言ったことを聞く。

 

「ねぇ魔理沙に楓。あんた達は昨日どんな夢を見た?」

 

「私か?私は何も見てない。私は夢を見ることが少ないからな。」

 

「私も何も見てないぜ。夢を見て幸せな気分になりたいなぁ。」

 

「夢を見ない人もいるのね。」

 

「ところで霊夢、どうして私達にそんなことを聞いてきたんだぜ?」

 

「実は昨日ね、私は何か知らない所にいてそこで魔理沙と咲夜が倒れていて妖夢が悪魔のようなやつに丸のみにされた夢を見たのよ。」

 

「何だそりゃ?」

 

「でも昨日のことよ。あまり気にしてないわ。」

 

「だが霊夢、現実世界の常識では、それは危険な状態じゃないのか?」

 

「え、どうして?楓ちゃん。」

 

彼女の言葉に咄嗟に反応するユニ。そんな彼女の問いに答えるかのように楓が口を開いた。

 

「現実世界では予知夢を見る人が多い。それで夢が現実化し、幸せな人もいれば悪夢が現実化し、アンラッキーな人だっている。」

 

「そうかしら・・・」

 

「だから霊夢、今後は気をつけたほうがいい。その夢が毎日続くようであればすぐに誰かに相談することだ。」

 

「分かった、そうするわね。」

 

それから五人は様々なことを話続けた。そして気づけば夕方になっていたため、魔理沙と楓は魔法の森にある霧雨店へ帰っていった。そしてユニ達は昨日のように悠岐が料理をし、ユニと霊夢がそれを待つ間に話をする。

 

「現実世界ってどんなものがあるの?」

 

「現実世界には車っていう機械で出来た通行手段の乗り物があるの。多くの人々は毎日それに乗って色々な所へお出かけするの。」

「へぇ、興味深いわね。一度現実世界に行ってみたいわ。」

 

「現実世界では毎回決まりがあってね、必ず王宮へ謁見に行かなければならないの。」

 

「どうして?」

 

「王宮には現実世界最高権力者の地王セコンド様がいらっしゃるのよ。そんな彼に会いに行けるなんて滅多にない機会だからじっくり堪能しろってことよ。」

 

「幻想郷はまだテレビは復興してないし、技術は現実世界よりも発達はしていない。羨ましいわ。」

 

「私も一応幻想郷の人間だから現実世界のことは少ししか知らないの。」

 

二人が話している内に悠岐が料理が乗った皿を持ってきた。そして二人の前に差し出した。今日は炒飯である。そして悠岐がスプーンを二人の前に置き、霊夢の隣へ腰をおろした。そして三人は手を合わせて同時に声を発した。

 

「いただきます。」

 

三人は同時に口の中へ炒飯を入れる。その瞬間、ユニは手を頬に当てながら言う。

 

「美味しい!こんな料理初めてよ!」

 

「ハハハ、喜んでもらえて嬉しいよ。」

 

「本当に美味しいわね。悠岐、あんた料理人に向いてるんじゃない?」

 

「そ、そうか?」

 

そして20分もしない内に三人は皿の上にあった料理を食べ終え、スプーンを置き、手を合わせて同時に声を発する。

 

「ごちそうさまでした。」

 

そしてユニは誰よりも早く布団を敷き、すぐに布団の中へ入った。そんな中、悠岐は食器の片付けを行っていた。霊夢も同じく布団を敷き、布団の中へ入った。食器を洗い終えた悠岐は漆黒の刃を眺め始めた。そんな彼にユニが言う。

 

「それ、誰が作ったのかしら?」

 

「さあね。俺のじいちゃんから受け継がれてきた物だから、いつ誰が作ったなんて分からないよ。」

 

「だよね。私もこんな黒い刀があるんだなぁって実感したわ。」

 

「そうかい。それは何よりだな。」

 

そして彼は漆黒の刃をしまうと布団を敷き、布団に潜り込んだ。そして着替え終え、電気を消した霊夢と布団に潜り込むユニに言った。

 

「おやすみユニ、霊夢。」

 

「おやすみなさ~い。」

 

「えぇ、おやすみ。」

 

布団に潜り込んだ悠岐とユニはすぐに寝息を立てて眠ってしまった。そんな中、霊夢は寝ることが出来なかった。あの悪夢が頭に浮かんでしまう。だがそんな状態であるのにも関わらず霊夢はすやすやと眠ってしまった。




霊夢の悪夢に現れた巨大な悪魔。果たしてその正体とは!?
次作もお楽しみに!


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第24話 悪夢の正体

謎の悪夢を見た霊夢。そんな彼女に楓が警告する。


「そんな・・・」

 

霊夢は自分の目に映っている光景に絶望した。それは昨日見た夢と同じで目線に薄暗く、王が座るような玉座が置いてある。そして右側にはうつ伏せで倒れている咲夜、左側には仰向けで倒れている魔理沙がいた。そんな中、自分の目線に現れたのは身長4mほどで大きな翼を持っていて太い腕が2本、細い腕が2本ある男、いわゆる悪魔が傷だらけの妖夢を片手で摘まみ上げている。そして男は信じられないくらい大きな口を開くとそのまま妖夢を口の中へ入れ、ゴクンという音を立てて彼女を丸のみした。

 

「ひっ!」

 

思わず声を発する霊夢。彼女に気づいたのか、悪魔の男はゆっくりと霊夢の元へ歩み寄る。

 

「いやっ!」

 

霊夢は声を上げて逃げようとするが足が言うことを聞かず、動かなかった。そして悪魔の男は霊夢の目の前まで来るとニヤリと不気味な笑みを浮かべた。

 

「あぐっ!?」

 

その瞬間、男の右の細い手が霊夢の首を締め上げた。霊夢は男の右腕から逃れようと両手で男の手首を掴み、抵抗するが鉄のように硬く、放れなかった。

 

「フフフ。」

 

男は苦しむ霊夢の顔を見て笑うと彼女の体を軽々と持ち上げた。

 

「ぐ、あぁ・・・」

 

宙吊りの状態になっている霊夢は足をばたつかせるが何も起こらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁっ!」

 

気がつくと霊夢は自分の布団にいた。そして今自分は布団から勢いよく起き上がっていた。

 

「もう、嫌っ!」

 

霊夢はゆっくりと隣に目を傾ける。そこには寝息を立てて眠っているユニがいる。その後に彼女は隣の部屋で寝ている悠岐のいる部屋の襖を開けた。そこにはユニと同様、寝息を立てて寝ている悠岐がいた。

 

「はぁ、どうして私だけこんな夢を見るのよ・・・。もう普通に寝たいのにっ!」

 

そう言うと霊夢は再び布団に潜り込み、眠ろうと試みた。だが先程の悪夢がトラウマになったのか、結局霊夢は寝ることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠岐とユニが起き、食事の支度を始めると霊夢はゆっくりと布団から起き上がり、テーブルに腰をおろした。そして悠岐とユニが食事をテーブルに乗せた時、二人は霊夢の顔を見て目を大きく見開いた。何故なら彼女の目は虚ろな感じになっており、目の下にはクマが出来ている。そんな彼女にユニが言う。

 

「霊夢、大丈夫?少し寝てたほうがいいんじゃない?」

 

「俺もユニに賛成だな。霊夢、お前はもう少し寝てていいぞ。飯はここに置いておくからな。」

 

「えぇ、ありがとう。そうさせてもらうわ。」

 

そう言うと霊夢は再び布団に潜り込み、すぐに寝息を立てて眠ってしまった。その後、悠岐とユニは黙って朝食を済ませると外に出て神社の掃除を始めた。と、神社に腰をおろすユニが悠岐に言う。

 

「霊夢、どうしたんだろうね。」

 

「悪夢でも見たんじゃないのか?それなら俺は半分悪魔だから夢を消せるんだけどな。」

 

「楓ちゃんは『毎日続くようであればすぐに誰かに相談する方がいい』って言ってたけど、すぐに消してもらわないといけないよね?」

 

「予知夢になる可能性が高いからな。今夜確かめて悪夢だったらすぐに消すとするよ。」

 

「そうだね、それが一番最適ね。」

 

と、二人が話している内に一人の少女がやって来た。腰まで伸びる黒髪に赤い目を持つ少女、楓がやって来た。が、彼女の隣に魔理沙はいない。それに気づいたユニが楓に言う。

 

「楓ちゃん、魔理沙は?」

 

「魔理沙は昨日不可解な夢を見て夜中に目が覚め、そのまま眠れなくなったらしい。だから今日は寝込んでるよ。」

 

「奇遇ね、今霊夢も寝込んでるよ。昨日何があったのか分からないけれど。」

 

「楓、奴の仕業の可能性が高い。魔理沙にも伝えておけ。」

 

「あぁ、分かった。」

 

「ねぇ、二人とも。奴っていうのは?」

 

「あぁ、奴っていうのは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「れーいーむぅー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠岐が言おうとした瞬間、神社の鳥居の方から少女の声が響いた。それに気づいた三人は同時にその方向へ目を向ける。三人の目線に写ったのは桃が乗っている帽子を被り、青い髪をして腰に刀をかける少女がいた。少女は三人を見ると急に立ち止まり、三人を凝視しながら悠岐に言う。

 

「悠岐、この二人は?」

 

「こいつが俺と同じ半人半悪魔の出野楓、そしてこいつが八雲さんに幻想郷の守護を任された人間、ユニだ。」

 

「へぇ。それで、霊夢はどうしたの?」

 

「あいつは神社で寝てるよ。昨日は全然眠れなかったらしい。」

 

「霊夢らしくないわね、つまんない。」

 

悠岐と青い髪の少女が話してる中、楓が悠岐に言う。

 

「悠岐、あいつは誰だ?」

 

「あいつは比那名居天子。有頂天に住む総領娘さ。」

 

「つまり、天人か。」

 

「そうだ。」

 

悠岐と楓が話している中、天子が楓を指差しながら言う。

 

「あんた、私の遊び相手になりなさい。」

 

「・・・・は?」

 

「私、暇なの。有頂天にいても何もやることがない。だから私の遊び相手になってちょうだい。」

 

「『遊び相手』ということは、戦えって私に言っているのか?」

 

「それ以外考えられることはあるか?」

 

「・・・・ない。」

 

そう言うと楓は冷気が漂う刀、氷龍の剣を右手に持ち、戦う構えをした。天子も同様、非相の剣を両手で持ち、戦う構えをする。まず攻撃を仕掛けたのは天子だった。彼女はスペルカードを取りだし、発動する。

 

「霊想『大地を鎮める石』」

 

天子の放った攻撃が楓に向かっていく。だが楓はその場を動こうとしない。そして楓の目の前ま攻撃が来た瞬間、楓はスペルカードを取りだし、発動した。

 

「反射『自業自得』」

 

その瞬間、天子の放った攻撃が楓の目の前で止まった。そして攻撃は天子の元へ向かっていく。

 

「えっ、ちょ・・・・」

 

天子は咄嗟に反応することが出来ず、先程自分の放った攻撃を食らった。そんな中、楓が口を開いた。

 

「まさか弾幕を操れる私に弾幕を放ってくるとはな。少し驚いたぞ、比那名居天子。」

 

煙が上がっている中、天子はヨロヨロとなりながら楓に近づいた。そして笑みを浮かべながら言う。

 

「いいわね、もっとやりなさい。」

 

「へ?」

 

「どうしたの?躊躇わないでもっとやりなさいよ。」

 

「じ、じゃあ遠慮なくやらせてもらう。」

 

そう言うと楓は氷龍の剣を天子の尻に殴り付けた。その瞬間、彼女は微笑みながら叫ぶ。

 

「もっと、もっとよぉ!!もっとやってちょうだぁぁい!」

 

この瞬間、楓は錯覚した。

 

(こいつ・・・ドMだ・・・)

 

そして楓は氷龍の剣をしまうと天子に背を見せて言う。

 

「私は遠慮しておくよ。このままお前をやり続けるとお前を殺してしまうからな。」

 

そのまま楓は霊夢のいる神社の中へ入っていった。その姿を天子は黙って見ていた。そんな彼女に悠岐が言う。

 

「あいつは初対面のマゾは殺さないから安心しな。」

 

「つまんない人ね。もっとやってもらいたかったわ。でもいいや、十分満足したし。」

 

そう言うと天子は何処かへ飛んでいってしまった。二人は天子を見送ることなく、神社の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入ると霊夢は楓と何か話していた。そんな二人にユニが言う。

 

「霊夢、楓ちゃんと何話してたの?」

 

「昨日の夜のことだ。どうやら悪夢を見ているようだ。」

 

「今夜消すか?」

 

「悠岐お願い。速く消して。」

 

霊夢は悠岐の首襟を掴みながら言う。そんな彼女に悠岐は霊夢の両手首を掴み、言う。

 

「分かった。」

 

そして夜が訪れ、楓が魔理沙の元へ帰った後、悠岐とユニは霊夢の枕元で座り、霊夢を見守る。彼女は既に眠っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、いやだ・・・」

 

あの光景が再び目線に写る。薄暗く、王が座るような玉座が目線にあり、右側にはうつ伏せで倒れている咲夜、左側には仰向けで倒れている魔理沙がいる。そして自分の目線に現れる身長4mほどで細い腕と太い腕をそれぞれ二本ずつ持っている大男、悪魔が片手で傷だらけの妖夢を摘まみ上げている。そして信じられないくらい大きな口を開き、彼女を口の中へ入れるとゴクンという音を立てて彼女を丸のみした。

 

「ひっ!」

 

同じことを二度も見ているのに彼女は何故か声を上げてしまう、そして悪魔の男がゆっくりと近寄る。

 

「嫌っ!」

 

逃げようとするが足が言うことを聞かず、動かない。そして目の前まで来るとニヤリと不気味な笑みを浮かべる。

 

「あぐっ!?」

 

その瞬間に右の細い手で首を締め上げられる。抵抗するが鉄のように硬く、放れない。そして体を軽々と持ち上げられる。

 

「ぐ、あぁ・・・」

 

そのまま意識が遠くなりかけた時だった。突如悪魔が苦しみだし、霊夢の首を放してしまう。そして彼女はそのまま地面に落ちていく。

 

「いやっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊夢、霊夢!!」

 

ユニの叫び声に霊夢ははっと目を覚ます。彼女は身体中汗だくになっており、ユニの手をぎゅっと握っていた。

 

「ユ、ユニ。私・・・」

 

「やっぱり悪夢を見てるのね。ずっと魘されてたわよ。」

 

「ゲホッ、ゲホッ。」

 

と、奥から誰かが咳き込む声が響いたため、霊夢はその方向へ歩み寄る。そこには地面に血を吐きながら咳き込む悠岐がいた。そんな彼に霊夢が言う。

 

「悠岐大丈夫!?」

 

「あ、あぁ大丈夫だ。それよりも、こいつを見てくれ。」

 

そう言うと彼は右手に持っていたものを二人に見せる。それは直径20cmほどの黒い玉であり、所々に悠岐の吐いた血が付着する。そんな中、悠岐が言う。

 

「これが、霊夢に悪夢を見させていた元凶。そしてこいつを見させていたのはカオスだ。」

 

「カオス?」

 

霊夢とユニは同時に声を発する。そんな二人に悠岐が言う。

 

「話すと長くなるが、それでもいいか?」

 

「勿論。」

 

「いいわよ。」

 

「分かった。それじゃあ話すぞ。」




霊夢を苦しめていたカオスとは一体何者なのか!?
次作もお楽しみに!


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第25話 悪魔族の首領カオス

謎の悪夢はカオスが見させていたと悠岐は言う。そしてカオスのことを話される。


「カオスは2年前まで現実世界にいた悪魔族の首領の名前なんだ。」

 

「悪魔族ということは、黒田輝宗と同じ存在なの?」

 

「黒田輝宗?」

 

ユニから出た『黒田輝宗』という聞き覚えのない名前を聞いた霊夢は思わず声を発する。そんな彼女に悠岐が言う。

 

「大魔王のことさ。黒田輝宗は『大魔王』であって悪魔族ではないんだよ。似ているように感じるけど違う。そしてカオスは2年前にマーグルによって現実世界から追放され、何処かへ封印された・・・筈だったんだよ。」

 

「筈だった?というのは?」

 

「霊夢に悪夢を見させていたということはカオスが幻想郷に入り込んだ可能性が高いということだ。」

 

「何ですって!?」

 

霊夢とユニは同時に声を上げてしまう。そんな二人とは別に悠岐が話を続ける。

 

「恐らくだが、カオスが異変を起こすかもしれない。その時に備えて俺達は準備をしなければならない。」

 

「死者が出る確率は?」

 

「・・・あり得る。もしかしたらユニ、お前が死ぬかもしれないし、最悪、皆、命を落とすかもしれない。」

 

「そのために楓が来たってこと?」

 

「良く分かったな、その通りだよ。あいつはちょうど六道を制覇した後だったから好都合だったんだ。」

 

「カオスの能力って何なの?」

 

「霊夢、それはまだ分からない。奴と対峙してからなら分かるな。」

 

「悠岐君、カオスってどれくらい強いの?」

 

「五大王に挑もうとするくらいだから相当な力の持ち主なのは確かだ。気をつけないとな。」

 

「ねぇ、二人とも。そろそろ寝ない?」

 

霊夢の言葉を聞いて悠岐とユニははっとなり、外を見つめる。既に外は月が怪しく輝いており、辺りは暗くなっていた。そんな中、悠岐が言う。

 

「そ、そうだな。そろそろ寝ないと体に悪いしな。それじゃあ寝ますか。」

 

彼が言っている間にユニは自分の布団に潜り込み、寝息を立てて眠っていた。そんな彼女を見た二人が声を上げる。

 

「ちょっ、あんた寝るの早くない!?」

 

「疲れてたのか?いくら何でも寝るのに1秒もかかってないぞ!?」

 

彼が言った瞬間、辺りに沈黙が訪れた。その瞬間、悠岐の額から汗が流れ始める。そんな彼に霊夢が口を開いた。

 

「そろそろ寝ましょう。そしてさっきのことはもう忘れましょう。」

 

「・・・そうだな。」

 

そう言うと彼は自分が寝る部屋へ行き、布団を敷いて中に潜った。後に霊夢も着替え、ユニの隣に布団を敷くと電気を消して悠岐に言う。

 

「おやすみ、悠岐。」

 

「あぁ、おやすみ霊夢。」

 

そのまま悠岐は寝息を立てて眠ってしまった。霊夢もこのまま悪夢を見ることなく、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森の霧雨店でも楓が魔理沙に悠岐と同じことを行い、同じことを話していた。

 

「気をつけろ、カオスが来るからには死を覚悟した方がいい。」

 

「分かってるぜ。地王の時も魔王の時も同じ覚悟で望んでいたぜ。」

 

「そうか。それならいいんだが・・・。」

 

「ん?楓、何か不安なことでもあるのか?」

 

「・・・いや、ない。さ、もう今日は遅い。早く寝よう。」

 

「あ、そうだな。そろそろ寝ようぜ。」

 

そう言うと二人は布団を敷き、見つめ合いながら同時に言葉を発する。

 

「おやすみ。」

 

そのまま二人は寝息を立てて眠ってしまった。魔法の森にも沈黙が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、玄武の沢にある一体の悪魔がおり、その男は空を見上げると口を開いた。

 

「復活を遂げるとはなんて気分がよいのだ・・・。復活を遂げたからには我が軍を呼び戻し、五大王に復讐してやろう。その前にここを制圧してから現世を攻めるか。どんな輩がいるのか、楽しみにしているぞ。幻想郷。」

 

そう言うと悪魔は何処かへ飛んでいってしまった。それをある一人の男が悪魔に気づかれないように見ていた。




玄武の沢に現れた怪しい悪魔。果たしてその正体とは!?そして別の場所で異変の予感が!?
次作もお楽しみに!


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第26話 悠岐の悲しき過去 異変の前兆

霊夢が見ていた悪夢はカオスによる異変の前兆だと悠岐は推測する。


「ふぁぁ、良く寝た。」

 

体を布団から起こし、背伸びをして起きたのはユニだった。布団から起き上がったユニは外を見た瞬間、目を大きく見開き、言葉を発する。

 

「・・・まだ夜だ。」

 

外は月の光で薄暗いような明るいような光景だった。そんな中、彼女の目にあるものが入った。

 

「・・・悠岐君?」

 

彼女は言葉を発する。彼女の目線には神社に腰をおろし、満月を眺める悠岐がいた。ユニに気づいたのか、悠岐は彼女の方を見ると笑みを浮かべて言う。

 

「起きたのか、ならこっち来いよ。」

 

そう言うと彼はユニに隣に座るように手招きをした。それを見たユニは霊夢を起こさないように移動し、悠岐の隣に腰をおろした。と、悠岐が口を開いた。

 

「なぁ、ユニ。俺の話を聞いてもらってもいいかな?」

 

「悠岐君の話?」

 

「いや、無理して聞かなくてもいいんだ。」

 

「ううん、大丈夫よ。話してくれるかしら?」

 

「じゃあ改めて話すな。」

 

そう言うと彼は一呼吸して口の中に溜まっていた唾を飲み込み、口を開いた。

 

「実は俺と楓にはもう二人仲間がいたんだ。その二人も俺達と同じ、半人半悪魔だった。」

 

「半人半悪魔って四人もいたんだね。」

 

「まあな。それで俺が今話すのは男のほうだ。あいつの名前はマイン。あいつは優秀な能力を持っていてな、四人の中でも強い方だった。」

 

「マイン君の能力って?」

 

「『言葉を現実化させる程度の能力』」

 

「言葉を現実化させるってことは・・・。」

 

「つまり、具現化だよ。あいつは強かった。」

 

「へぇ、一度会ってみたいわ。」

 

「ユニ、それは二度と叶わない夢だ。もうあいつはこの世にいない。」

 

「えっ?」

 

「あいつは・・・あいつは俺達を守るために冥狼神アヌビスに一人立ち向かい、そして命を落とした。」

 

「・・・・・」

 

その瞬間、悠岐は部屋の方へ寝そべり、目を右腕で覆い隠した。彼の目から何かが零れていたのに気づいたユニはその場所を凝視する。流れていたのは涙は涙でも、血の涙だった。と、悠岐が言う。

 

「俺は・・・俺はあいつを守ってやれなかった。何故あそこで二人を連れて逃げてしまったんだ・・・。あの時俺もマインと共に奴と戦っていたなら、あいつは死なずに済んだのに・・・。」

 

彼は途切れにしゃっくりをしながら話した。そんな彼の右腕は血の涙でいっぱいだった。

 

「!?」

 

と、悠岐が左手に何か違和感を感じ、左手を見て目を見開く。彼の左手をユニが握っていたからである。そんな彼女に悠岐が口を開く。

 

「ユ、ユニ。お前・・・」

 

「分かるよ、悠岐君。あなたの手から伝わる彼に対する思い、温もりが・・・。」

 

「わ、分かってくれるのか?」

 

「えぇ、分かるわ。」

 

「・・・ありがとう、ユニ。少し気分が楽になったみたいだ。」

 

「それな何よりだわ。楽になってよかった。」

 

そう言うと彼女は悠岐にニコッと笑顔を見せた。その瞬間、悠岐の顔が赤くなり始めた。照れているのだとユニは察した。そして言う。

 

「悠岐君、顔を洗ってきたらどうかしら?血の涙であなたのお顔が汚れてるわよ。」

 

「え?あ、あぁそうだな。ちょっと洗ってくる。」

 

そう言うと彼は洗面台へ行き、顔を洗いにいった。そんな中、ユニが独り言を呟いた。

 

「・・・楓ちゃんにもう一人のこと聞こうかな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと自分は布団で寝ていた。そんな中、彼女を見ながら霊夢が言う。

 

「あんた、昨日何してたのよ。」

 

「いや、悠岐君がここに座って月を眺めてたから一緒に眺めて話してて悠岐君に顔を洗いに行かせて気づいたら寝てたって感じかな?」

 

「・・・何よそれ。」

 

「どうやら悠岐君、眠くなってそのまま寝ちゃったみたいね。」

 

「・・・・」

 

二人が話している中、呑気な笑顔で悠岐が起きてきた。そして二人に言う。

 

「おはよう!ってお前らなんか変な顔してるがどうした?」

 

「・・・いや、気にする必要もないわ。気にしないで。」

 

ユニの言葉を聞いて悠岐は少し躊躇いがあるものの、気にしないでおくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、ユニ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如鳥居の方から少女の声が響いたため、三人はその方向に目を向ける。そこには腰まで伸びる黒髪、赤く染まる目に冷気が漂う刀を腰にかける少女、楓がやって来た。そして言う。

 

「人里に妖怪が現れたらしい。急いで退治に向かおう。」

 

「何ですって!?急ぎましょう。」

 

「魔理沙は先に向かった。恐らくあの妖怪は一人で倒せる相手じゃない。」

 

そう言うと霊夢とユニは空に舞い上がり、人里へ向かった。悠岐と楓は走って人里へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

「くらいやがれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里では魔理沙と慧音が異変を駆けつけて突如現れた妖怪と戦っていた。二人が戦っているのは全身が黒い肌で覆われており、背丈は2mほどでジャッカルの頭をしていて青い目をしていて黒い杖を持っている妖怪である。妖怪は魔理沙と慧音を見て言う。

 

「愚かな・・・。たかが人間と半人半獣の分際でこの私を倒すと言うのか。」

 

「当たり前だ。貴様は人里の人達を襲った。そんな貴様を許しはしない!」

 

「舐めてると痛い目に会うぜ。なんせ私は妖怪退治専門の霧雨魔理沙だからな!」

 

「妖怪退治専門か・・・。くだらぬモノだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「慧音、魔理沙!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の元へやって来たのは先程楓から連絡を受けた霊夢とユニだった。そんな中、ユニが妖怪に言う。

 

「あなた、妖怪じゃなさそうね。」

 

「えっ!?」

 

ユニの言葉を聞いて三人は驚きを隠せなかった。そんな中、ジャッカル男が口を開いた。

 

「人間と半人半獣は気づいていなかったようだが、お前はよく気づいたな。私は冥狼神アヌビス、カオス様の命令により幻想郷をいただく。」

 

「なんだと!?」

 

「そのために、まず邪魔なお前達を排除するまでだ。」

 

「そんなことはさせない!幻想郷の守護者である私があなたを退治する!」

 

「さて、すぐに終わりに・・・!?」

 

アヌビスがユニ達に攻撃しようとした時だった。突如背後から気配を感じたアヌビスは後ろを振り返り、杖で攻撃を防ぐ。後ろから攻撃を仕掛けてきたのは悠岐だった。彼の目は既に赤く染まっていた。そんな彼とは別にアヌビスが口を開いた。

 

「久しぶりだな、小僧。」

 

「あぁ、久しぶりだなアヌビス。テメェに会いたくてウズウズしていた。テメェを殺したくてな!!」

 

悠岐が叫んだ瞬間、彼の後ろから楓が飛び上がり、刀を降り下ろす。

 

「何っ!?」

 

杖は悠岐の攻撃を防いでいるため、アヌビスはどうしようもなかったように見えた。だがアヌビスは空いている左手で楓の攻撃を受け止めた。

 

「なっ!?」

 

「甘いな、小娘。」

 

そう言うとアヌビスは悠岐と蹴り飛ばし、楓を殴り飛ばした。

 

「ぐっ!!」

 

「がはっ!」

 

二人は同時に霊夢達の元へ飛ばされ、三人の目の前で止まった。そんな中、アヌビスが口を開いた。

 

「その程度では私を倒すことなど出来まい。私はそろそろ失礼させてもらう。また暇があったら殺り合おう、小僧、小娘。」

 

その瞬間、アヌビスの姿が一瞬にして消えた。そのまま霊夢達は倒れ込む悠岐と楓の元へ行き、言う。

 

「大丈夫?悠岐。」

 

「楓、大丈夫か?」

 

「大したことはない。」

 

「問題ない。」

 

とは言うものの、二人が強がっていることは三人とも理解した。何故なら二人はまだ多少血を吐いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや?君達がここにいるなんて珍しいね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然声をかけられたため、五人は同時に声の方向を見る。そこには眼鏡をかけていて白髪に青い服を着ていて何冊か本を持っている青年がいた。そんな彼に魔理沙が言う。

 

「香霖じゃないか!」

 

「やぁ、魔理沙。ん?君は悠岐君だね?啓介君からある程度は聞いてるよ。」

 

香霖は悠岐の方を見て彼に言う。悠岐もそれに答えるために口を開いた。

 

「やぁ、霖之助さん。啓介が世話になったな。」

 

「それにしても血を吐いているけど、大丈夫かい?良かったら香霖堂まで運ぶけど?」

 

「ありがとう、そうさせてもらうよ。」

 

そう言うと悠岐は霊夢と慧音に肩を借りながら歩き、楓は霖之助に背負ってもらいながら香霖堂へ向かった。




人里に現れた冥狼神アヌビス。果たして目的とは!?
次作もお楽しみに!


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第27話 神子vs華扇①

冥狼神アヌビスの力に手も足も出なかった悠岐と楓。そんな中、霖之助がやって来てユニ達はそのまま香霖堂へ向かう。


香霖堂に到着した一同は中へ入ると悠岐と楓の治療を始めた。そんな中、霖之助が言う。

 

「僕は最近幻想郷の様子が変だと思って色々調べてみたんだ。そしたら、どうやら幻想入りを果たした者がいることが分かって急いで無縁塚へ向かったんだけど、生憎、姿は見当たらなかった。」

 

「カオスだ。アヌビスが自分で『カオス様』と言っていたからな。」

 

霖之助の言葉に楓が言う。彼女に続いて悠岐も口を開いた。

 

「奴は危険だ。急いで退治したほうがいい!」

 

「だが悠岐、お前は今傷を覆っているのだぞ!?そんな体で行けるというのか?」

 

「だったら慧音、このまま幻想郷がカオスによって支配されてもいいと言うのか!!」

 

「二人ともやめて!!」

 

二人に言い合いを止めに入ったのはユニだった。そんな中、霖之助が言う。

 

「ユニの言う通りだ。二人とも、この状況で仲間割れは良くない。」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、二人は黙り込んでしまった。

 

「・・・・?」

 

そんな中、突然魔理沙が何かに気づいたのか、窓の外を見始めた。そんな彼女に霖之助が言う。

 

「どうしたんだい?魔理沙。」

 

「今、音聞こえなかったか?」

 

「いや、僕には何も聞こえなかったけど・・・。」

 

魔理沙は必死で霖之助に説得するが彼は何も聞こえなかったという。そんな中、楓が窓を指差しながら魔理沙に言う。

 

「さっき、霖之助に背負ってもらってる時に神霊廟に誰か二人が対峙していたのが見えたんだ。」

 

楓の言葉を聞いた瞬間、何かを思い出したかのように霖之助が言う。

 

「確か、あの寺の仙人のやり方が間違っていると言ってもう一人の仙人が説得するって言ってたな。」

 

それを聞いた瞬間、悠岐が咄嗟に口を開いた。

 

「青餓が神子にやり方が違うって言い訳ないだろ!」

 

「いいや、彼女じゃない。」

 

「え?」

 

霖之助の言葉に誰も唖然となった。それに気にせず、霖之助が再び口を開いた。

 

「妖怪の山の仙人が彼女に説得しに言って、今二人で戦ってるのかもしれない。」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、ユニ達は顔を見つめ合い、同時に声を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「華扇!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは魔理沙と慧音がアヌビスの元へ向かう前のことだった。神霊廟の外でそらを眺めていた仙人、豊聡耳神子がいた。彼女は今、出掛けている布都と青餓、芳香と屠自古の帰りを待っていた。

 

「はぁ、早く帰って来てくれませんかね・・・?」

 

と、彼女は何者かの気配を感じ、後ろを振り返る。そこにはピンク色の髪に頭部にシニョンキャップ、包帯に包まれた右腕に鎖付きの枷がはめられている左腕、そして胸元の牡丹の花飾りと、そこから伸びる茨模様が外見の少女がいた。少女は神子を見つめながら口を開いた。

 

「こんにちは、欲に溺れた仙人。」

 

「・・・・なんですか貴女は。」

 

「私は茨木華扇。あなたのような人を騙して仙人になった者とは違う本物の仙人です。」

 

「鬼という欲望の塊が本物を名乗るとは・・・・。世も末ですね。」

 

「あなたがそれを言いますか?自身の欲を優先したあなたが。それは鬼と同意着では?」

 

「・・・・話が並行線ですね。」

 

「逃げるんですか?と、言いたいんですがその様ですね。」

 

「ここは幻想郷のルールに則って解決しませんか?」

 

「スペルカードルール・・・勝ったほうが正しい、と?」

 

「さぁ、行きますよ。鬼から成った邪仙。」

 

「来なさい、欲にまみれた邪仙。」

 

華扇が言った瞬間、少し辺りに沈黙が漂った。そして風が吹き、葉が舞った。その瞬間、二人は同時にスペルカードを取りだし、発動した。

 

「龍符『ドラゴンズグロウル』!!」

 

「光符『グセフラッシュ』!!」

 

二人が攻撃を放ち、同時に攻撃がぶつかった瞬間、力が互角なのか、すぐに爆発した。爆発の衝撃で辺りに砂埃が舞う。神子は目を細めて様子を見る。

 

「なっ!?」

 

神子は砂埃が消えた光景を見て目を見開いた。そこに華扇の姿が無かったからである。華扇は既に神子の背後に移動しており、スペルカードを発動していた。

 

「鷹符『ホークビコーン』」

 

その瞬間、神子は咄嗟に攻撃をかわした。華扇の放った四つの虹色の光は空中に止まり始めた。

 

「!?」

 

「あれに気をとられている場合ですか?」

 

華扇の声にはっとなった神子は彼女の方を見る。華扇は既に神子目掛けて大型の鷹を飛ばしていた。神子は咄嗟に避けようとするが反応するのが遅かったのか、鷹の翼によって頬に擦り傷を覆った。

 

「くっ・・・」

 

神子の頬から血が垂れ始める。それに気にせず神子は剣を取りだし、華扇に向かっていく。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

だが華扇は動こうとしない。ただ自分に向かって剣を振ろうとする神子を見るだけ。そして神子が目の前まで来た瞬間、華扇は冷静に口を開いた。

 

「あなたはあの光が何の意味もないと思っているようですが、それは間違いですよ。」

 

彼女が言った瞬間、神子は背後から飛んで来た弾幕をくらった。

 

「なっ、にぃっ!?」

 

神子はそのまま地面に倒れる。そんな彼女を華扇が見下ろしながら言う。

 

「ホークビコーンは多くの弾幕が凝縮された四つの虹色の光を空中に漂わせ、それに鷹を突進させることにより光から弾幕を放つという仕組みなのです。」

 

「茨木華扇っ、まさか貴女は・・・」

 

「そう。私はあなたを狙ったのではなく、あの光を狙っていたのです。ちょうどあなたの頬に傷が出来たのでまさに一石二鳥と言ったところですね。」

 

そう言うと彼女は再びスペルカードを取り出した。そして発動した。

 

「包符『義腕プロテウ・・・!?」

 

スペルカードを発動しようとした瞬間、華扇の持っているスペルカードが真っ二つに切れ、彼女の右肩に剣が刺さる。

 

「フッ、貴女もスペルカードがこのようなことになることを考えておいたほうが身のためですよ?」

 

「くっ・・・」

 

華扇の右肩から血が飛び散る。それに気にせず華扇は左腕にはめられている枷の鎖で神子の頭を殴りつけた。そのまま華扇は右肩を左手で抑えながら神子との距離をあけた。

 

「中々やりますね、茨木華扇。」

 

そう言うと神子はヨロヨロになりながらもゆっくりと立ち上がった。彼女の頭から血が垂れる。そんな中、華扇が口を開いた。

 

「私も驚きましたよ、豊聡耳神子。まさか私のスペルカードを切ってしまうなんて。新しい戦術を考えたようですね。」

 

「別に考えたわけではありません。恐らく私の咄嗟の判断だったのでしょうね。」

 

「咄嗟の判断でそんなことが出来るとは・・・。流石は太子と呼ばれた仙人。ただ者ではありませんね。」

 

「貴女も鬼から成っている仙人なので中々力があるようですね。先程の鎖の攻撃は痛かったです。」

 

「私もあなたにやられた肩の傷がひどく痛みますよ。」

 

「誉め合いをしている場合ではないですよね?」

 

「勿論ですとも。さ、続きを始めましょう。あなたのやり方は間違っていると、認めさせてもらいましょう。」




始まってしまった仙人同士の戦い。一体どうなる!?
次作もお楽しみに!


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第28話 神子vs華扇②

カオスで騒ぎになる中、神子と華扇が正しい道をかけて勝負を始める。


「眼光『十七条のレーザー』」

 

「務光。」

 

神子と華扇の戦いは互いに一歩も譲ることなく続く。そんな中、華扇が頭の中であることを考えていた。

 

(もし私がこの戦いに負ければ間違いなく多くの人間達は彼女のやり方が正しいと認識してしまう。そんなことがないように私が勝たなければ・・・・)

 

神子も華扇と同じく、頭の中であることを考えていた。

 

(鬼から成った仙人の言葉など、戯れ言に過ぎる。私の力で思い知らせなければ・・・!!)

 

神子がはっとなった瞬間、華扇は子龍を呼び寄せ、神子に攻撃させる。

 

「皇帝。」

 

咄嗟に気づいた神子は素早く華扇の攻撃をかわす。そして彼女は剣を降り、華扇を斬りつけようとする。華扇もそれに対抗すべく、鎖で剣による攻撃を防ぐ。そんな中、神子が華扇を攻めながら口を開く。

 

「さぁ、どうしました?鬼から成った仙人。先程の余裕は一体どこへいったと言うのです?」

 

「そういうあなたも少し疲れが見えているのではないですか?先程よりも動きが鈍くなってますよ。」

 

そう言った瞬間、華扇は虎を呼び寄せ、神子に攻撃させる。

 

「っ!」

 

神子再びは素早くかわそうとしたが間に合わず、虎の爪が彼女の左肩に命中した。神子の左肩から鮮血が垂れてくる。彼女は剣を持ちながら血が垂れる左肩を抑える。そんな彼女に華扇が言う。

 

「これが正しい道である私の戦い方です。戦いにはまず補佐してくれる者がいないといけませんよね?」

 

「茨木華扇、私はあなたを甘く見すぎていました。なるほど、補佐ですか。そんなものは・・・」

 

その瞬間、神子は猛烈な勢いで華扇に近付き、剣を降り下ろした。

 

「!?」

 

しかし神子が狙っていたのは華扇ではなく、華扇の補佐をしていた虎だった。そのまま彼女は虎を斬り殺した。

 

「補佐を先に倒せばあなたを倒すのもやりやすくなる。」

 

「なっ!?」

 

華扇は神子の突然の攻撃に目を大きく見開く。そんな彼女とは別に神子は油断した華扇の左腕を斬りつけた。華扇の左腕から鮮血が飛び散る。そんな彼女とは別に神子は華扇の腹を空いている左手で殴りつけた。

 

「ぐっ!?」

 

華扇はそのままバランスを崩し、地面に倒れる。そんな彼女に神子は先程斬りつけた左腕を踏みつけた。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」

 

あまりの痛さに華扇は奇声を上げる。そんな彼女とは別に神子が口を開いた。

 

「所詮は動物を操るだけの能力。そんなものは私には通用しませんよ。この勝負、私の勝ちみたいですね。」

 

そう言うと神子は剣の先を華扇に向けた。それを見た華扇は急に奇声を上げるのをやめ、震えた声で口を開く。

 

「い、嫌。やめて・・・・」

 

「おや?山の仙人であるあなたが嘆きを言うのですか?意外な一面を見れて面白かったです。それでは、終わりにしましょう。」

 

そう言うと神子は躊躇うことなく剣を華扇に向かって降り下ろした。華扇もどうすることも出来ず、ただ目を閉じることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「芳香、任せたわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如少女の声が聞こえた瞬間、神子の攻撃が止まった。いや、止められていたのだ。神子の攻撃は芳香が両手で剣を挟んでいた。それを隙に華扇は神子の足から脱出した。

 

「もうこんな醜い争いはお止めください、お二方。」

 

少女の声が聞こえたため、二人はその方向を見る。そこには青髪の少女、青餓がいた。

 

「そうですぞ、神子様。」

 

「そうだよ、山の仙人さん。」

 

彼女の後に続いて布都と屠自古もやって来た。そんな彼女らに神子が口を開いた。

 

「何のつもりなのです?青餓、芳香、布都、屠自古。私の邪魔をしないで下さい。」

 

「そんなことをしている場合ではありません!!あれを見て下さい。」

 

そう言うと屠自古はある方向に指を指した。その方向に神子と華扇は目を向ける。そして思わず目を大きく見開いてしまう。

 

「あ、あの方々は・・・」

 

「どうして・・・」

 

神子は思わず右手に握っていた剣を放し、地面に落としてしまう。二人が見つめる方向、そこには多くの人間達が二人を見て両手を握っていた。そして言う。

 

「神子様、私達を救ってください。お願いします。」

 

「華扇さん、どうか俺達に未来を・・・」

 

神子と華扇はただ茫然とその様子を見ることしか出来なかった。そんな二人に布都が口を開く。

 

「正しい道は、あなた方が決めるんじゃないのです。あなた方の宗教の信仰者が決めるんですよ。」

 

彼女に続いて芳香が神子に笑顔を見せながら口を開いた。

 

「だから二人で喧嘩する必要なんてないんですよー!あの人だって言ってましたよー、『この世の正しい道は信仰者が決める』って。」

 

「なるほど、あの方もそうおっしゃっていたのですか。確かにそれの意味が分かる気がします。」

 

「私はあの男を信用するつもりはありません。ですが、信仰者のためなら、分からなくもないですね。」

 

「すいません、華扇さん。」

 

「どうされました?神子さん。」

 

神子と華扇は共に向かい合い、笑みを見せ合った。そして神子が口を開く。

 

「これからは私達共同で宗教をやっていくことにしませんか?あなたとならなんだかやっていける気がします。」

 

「奇遇ですね、実は私も同じ事を考えていました。」

 

「なら一緒にやっていきましょうよ。」

 

「勿論ですとも。これからよろしくお願いいたしますよ。」

 

そう言うと二人は互いに手を取り合った。それを見た布都が青餓に言う。

 

「これからどうなるのか、楽しみですな、青餓殿。」

 

「えぇ、これからは何だか面白くなりそうな気がします。」

 




神子と華扇の戦いは青餓達によって静められた。だがカオスによる計画はまだ誰も静められていない。果たしてどうなる!?
次作もお楽しみに!


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第29話 カオスの計画 ネザーへ

神子と華扇の戦いは青餓達によって静められた。そんな中、ある影が動き始める。


場所は変わって香霖堂。冥狼神アヌビスとの戦いで傷をおおった悠岐と楓の傷を香霖こと霖之助が治療していた。そんな中、魔理沙が突然口を開いた。

 

「どうやら静まったようだぜ。」

 

「神子と華扇の戦いなのかしら?」

 

彼女に続いてユニも言う。そんな中、悠岐が口を開いた。

 

「あの二人の戦いはともかく、カオスは一体どうなったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん!大変ですよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠岐が言った瞬間、香霖堂の扉を勢いよく開けて入ってきたのは文々。新聞の射命丸文である。そんな彼女に慧音が言う。

 

「どうした?一体何があったんだ?」

 

「先程、大きな悪魔を発見し、今後の計画を聞いてきました。」

 

「なんだって!?」

 

香霖堂にいる全員が同時に声を発する。そんな中、文が言う。

 

「これからみなさんに計画のこと全てを話します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はつい先程の10分前、呑気に妖怪の森を歩いていた文が椛の元へ行こうとしていた時だった。ちょうどそこへある影が見えたのに気づいた彼女はすぐにそこへ向かい、気づかれないように身を潜めた。

 

「あやや、あれは・・・」

 

そんな彼女に気づかず、背丈が4mほどあり、背中には大きなコウモリのような翼を生やしてい全身黒く染まっている悪魔がいた。悪魔の前には鳥のような黒い翼を生やしている女性とジャッカルの頭をしている男もいた。そんな二人に悪魔が言う。

 

「これから我々はネザーへ行き、キングウィザースケルトンの頭を取っていく。理由は言うまでもない。お前達には期待している。この幻想郷の小娘どもに敗北など許さん。いいな?」

 

「はっ!どうぞご期待ください、カオス様。」

 

「はっ!このペルセポネ、必ずや成功させてみせます!」

 

文は確かに翼の生えた女性と悪魔の名前を耳にした。どうやら悪魔はカオスといい、女性はペルセポネというようだ。

 

(あやや、これは大変になりましたね。)

 

心の中で呟いた文は急いでその場から離れ、霊夢のいるところへ飛んでいった。カオス達はそれに気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのことを全て話した文に悠岐が口を開く。

 

「恐らくカオス、ペルセポネともう一人のやつはアヌビスだ。ウィザースケルトンの頭を使ってウィザーを復活させるつもりだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら、奴らが動き出した見たいね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如ユニ達の背後から女性の声が聞こえたため、ユニ達はすぐに後ろを振り返る。そこには目玉だらけの世界、スキマから体を出す女性、八雲紫が現れた。スキマから体を全部出した紫は一息吸ってから口を開いた。

 

「今からあなた達にはマインクラフトの地獄に行ってもらうわ。天狗の話じゃ、キングウィザースケルトンの頭を取りに行くみたいだし、先回りしたほうがいいわ。」

 

「でも紫、どうやってマインクラフトの地獄に行くって言うんだ?それに、マインクラフトの地獄って一体・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネザー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唐突に口を開いたのは楓だった。そして話を続けた。

 

「私が制覇した六道の一つ目の道、地獄道。それがネザーだ。そこでは水がすぐに蒸発してしまうほどの灼熱の世界。まさに地獄と言ってもいい。」

 

「そんな場所に本当にそのキングウィザースケルトンってやつがいると言うの?」

 

「いるに決まっているだろ?霊夢。なんせ奴らは灼熱の耐性がついているからな。俺らとは大違いだ。」

 

「だが紫、一体どうやってネザーに行くと言うのだ?」

 

楓が言った瞬間、彼女に続いて霖之助が声を発した。

 

「確か、ネザーへの行き方はネザーゲートっていう通称『地獄の門』を通らないといけないはずなんだよね。それに、それを作るためには黒曜石と火打ち石が必要になってくる。」

「それならこの私に任せて!」

 

そう言ったのはユニだった。彼女は突然香霖堂から外へ出るとスペルカードを取りだし、発動する。

 

「呼符コールザエニー。」

 

彼女に続いて霊夢達も香霖堂から外へ出てユニの様子を見る。そしてユニはスペルカードを高く上げ、叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「物を作れ、スティーブ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニが叫んだ瞬間、彼女の右側に直径3mほどの空間が現れ、そこから身長2mほどで全身が四角で出来ていて緑色の服に青紫色のズボンを履いていて真顔の男が姿を現した。その男を見てユニが口を開いた。

 

「突然呼んでしまって申し訳ないのだけど、ネザーゲートをここに作ってもらってもいいかしら?」

ユニが言った瞬間、男は深く頷き、手元から黒曜石を取り出した。そして縦、横、高さ1mほどの黒曜石を並べていき、高さ5m、幅4mの扉を作った。そして男は火打ち石を用意すると黒曜石の上に火をつけた。その瞬間、怪しい雰囲気を出しながら紫色のゲートが現れた。

 

「うわぁ・・・」

 

「これが、ネザーゲート・・・」

 

ユニ達は思わず驚愕してしまう。そんな中、紫が霊夢達に言う。

 

「ここからでもネザーには行けるわ。急いでちょうだい、奴らはそう簡単にネザーへ行かないはず無いのよ。」

 

「僕と慧音と文は残ってるよ。万が一幻想郷に何かが起こったら大変だからね。」

 

「私も残ってるわ。他の人達にこのことを伝えなきゃ。」

 

「分かったわ。紫、死なないでね。」

 

「ユニこそ、死んじゃ駄目よ。」

 

紫が言った瞬間、ユニは深く頷き、彼女に背を向けた。その後に魔理沙がユニに問う。

 

「なぁ、ユニ。ここにいる大男は誰なんだぜ?」

 

「ああ、この人はスティーブ。マインクラフトの住人よ。喋らないけど、色々やってくれるわ。」

 

「なんだか心配になってきたわ。」

 

「さ、疑っている暇は無いぞ。早く行こうぜ、ネザーに。」

 

「よし、一斉に飛び込みましょう!」

 

ユニの合図で霊夢、魔理沙はユニと共にネザーゲートに飛び込んだ。しかし、三人は紫色のゲートを通り抜けてしまった。それを見た悠岐と楓は思わず腹を抑えて笑ってしまう。そんな二人にユニが言う。

 

「ちょっと!なんでネザーに行けないのよ!」

 

「アハハハハ、当たり前だろ!なんせ、ネザーに行くにはその紫色のゲートに止まらなくては行けないからな。」

 

「まさかそれを知らずに飛び込むとはアッハッハッハ。」

 

悠岐と楓に笑われ、三人の顔が赤くなっていく。そんな三人とは別に悠岐が言う。

 

「さ、今度こそ行こうぜ。」

 

彼が言った瞬間、ユニ、霊夢、魔理沙、悠岐、楓、スティーブの6人は同時にゲートに止まった。その瞬間、6人の目線がぼやけ始めた。

 

「な、何これ・・・」

 

「安心しろ、ネザーに行くときや現世に帰る時は必ず視界がぼやけてから繋がるんだ。」

楓が言った瞬間、6人の姿がゲートから一瞬にして消えた。それを見届けた紫が空を見上げながら言った。

「気を付けてね、必ず生きて帰ってくるのよ。」




ついにネザーへ行くユニ達。そこで彼女達を待ち受ける者とは!?次作もお楽しみに!


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第30話 四角世界の地獄、ネザー 魔王vs先代巫女

カオスの計画を盗み聞きした文の言葉を聞いてユニ達はネザーへと足を踏み入れた。


「ここは・・・」

 

視界がはっきりしてくるとそこは赤いネザーラックがあり、天井からはマグマが流れている。まさに地獄と言うのにふさわしいだろう。そんな中、楓が口を開いた。

 

「ここが私が一番最初に制覇した六道の一つ目の道、地獄道ことネザーだ。」

 

「確かに楓の言った通り、暑いぜ。」

 

「みんな、これを飲んで。」

 

そう言ってユニが空間から取り出したのは青い液体が入ったビンだった。そして再びユニが口を開いた。

 

「それは火炎耐性のポーションよ。これを飲めば30分くらいならこの暑さに耐えられるわ。」

 

霊夢達はそれを見て少し躊躇ったが、それでもビンの中に入っている液体を飲み干した。その瞬間、先程の暑さが一瞬にして消えた。そんな中、楓が言う。

 

「ネザー要塞までの道は私が知っている。さぁ、行くぞ。なるべくガストやマグマキューブに見つからないように行くからな。」

 

「ガスト?マグマキューブ?」

 

聞き覚えのない名前に魔理沙は思わず声を発してしまう。そんな彼女に悠岐が答えた。

 

「ガストはネザーの番人見たいなものでマグマキューブはスライムのマグマ化だと思えばいい。いづれ会うからな。」

 

「よく想像がつかないぜ。」

 

「さ、話は後だ。先に進もう。」

 

楓が言った瞬間、スティーブが深く頷く。彼に続いて悠岐とユニも頷く。それを見て霊夢と魔理沙も頷く。それを見た楓が口を開く。

 

「さぁ、行くぞ!!」

 

そう言うと楓は全速力で走り出した。悠岐とスティーブも彼女の後を追うように走り出す。霊夢とユニは空中に飛び上がり、魔理沙は箒に股がり、楓達の後を追う。

 

「うわぁ、すごい所だね。」

 

空中に浮かびながらユニはネザーの様子を見る。そこは見たことがない鉱石ばかりで所々には豚の顔と肌に人の体、金の剣を持っている化物もいる。だがその化物は通りすぎる楓達を見ているだけで何もしてこない。と、悠岐が唐突に口を開いた。

 

「ユニ、霊夢、魔理沙!ゾンピピックマンには攻撃するなよ。こいつらは攻撃されたら集団で襲いかかってくるからな。」

 

「ひいぃ、恐い化物だぜ。」

 

彼の言葉を聞いて魔理沙達はゾンピピックマンには攻撃せず、様子を見て通りすぎていった。と、楓が唐突にユニ達に叫んだ。

 

「お前ら早くこっちに来い!ガストだ。」

 

楓の言葉を聞いてユニ達はすぐに楓達のいる岩影に身を潜めた。その瞬間、何処からか体が正四角形で足が9本あり、目を閉じていて大きさは10m近くある化物が現れた。霊夢は思わず声を上げようとしたが、悠岐が咄嗟に彼女の口を抑える。

 

「ウファ・・・」

 

化物は少し楓達の上を飛んだ後、すぐに何処かへ飛んで行ってしまった。化物が飛んで行った後、楓が言う。

 

「あれがガストだ。奴に見つかったら強力な炎を吐かれるからな。」

 

「あ、危なかったね。」

 

唖然としながらユニが口を開いた。スティーブはそんことがあったのにも関わらず真顔でいる。冷静なのか慌てているのかさっぱり分からない。そんな中、楓が言う。

 

「さ、先に進むぞ。」

 

そう言うと楓は再び走り出した。悠岐とスティーブも走り出し、霊夢、魔理沙、ユニは空中に浮かび、三人の後を追う。しばらく走っていると楓が足を止めた。

 

「どうしたの?楓ちゃん。」

 

「ユニ、あれを見ろ。」

 

楓が指差した方向にユニ達は目を向ける。そしてその光景に驚愕してしまう。そこには赤黒いレンガで出来た巨大な建物があった。ユニ達が驚愕している中、悠岐が口を開いた。

 

「あれがネザー要塞だ。随分とデカイやつを見つけたじゃないか。」

 

「ああ、そうだ悠岐。あそこにキングウィザースケルトンがいる。それに、あれを見ろ。」

 

楓が指差した方向を見るとそこにはスティーブが作ったのと同じネザーゲートがあった。それを見た霊夢が口を開く。

「カオスはあそこから入ってきているのね。」

 

「急ごう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「笑止!!何故貴様らがここにいる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然男の低い声が聞こえた瞬間、何処からか銃弾が飛んできた。霊夢達はその方向を見る。そこには悪魔が描かれている服に右手には刀を持ち、左手には拳銃を持っている男がいた。男を見た瞬間、悠岐が男の名前を言った。

 

「黒田輝宗!どうしてここに!?」

 

「悠岐、一応ここは地獄だ。恐らく映姫によってここに送られたのだろう。」

 

「フン、まぁ良い。これでまた貴様らに復讐が出来る。」

 

「今私達はあなたの相手をしている場合じゃないのよ!」

 

「問答無用!さっさと死ねい!」

 

そう言って大魔王こと黒田輝宗が霊夢達に拳銃を発砲した瞬間だった。突如ネザーラックの影から女性が現れて女性は片手で輝宗の発砲した拳銃の弾を誰もいない方向へ弾いた。

 

「貴様は・・・」

 

霊夢達は彼の拳銃の弾を弾いた女性の姿を見て目を大きく見開いた。そこには腰まで伸びる黒髪に霊夢と似た服装をしている女性、先代巫女がいた。

 

「お、お母さん?」

 

恐る恐る霊夢が口を開く。そんな彼女に先代巫女が言う。

 

「久し振りだな、霊夢。元気にしてたか?」

 

「元気にしてたってお母さんはどうしてここに?」

 

「なんだ霊夢。私が2年前に幻想郷で起こした異変のことをもう忘れたと言うのか?」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、悠岐の頭の中にあの光景が浮かび上がる。ガイルゴールまでも来てしまうほどの大異変。と、先代巫女が霊夢達に言う。

 

「魔王は私に任せて、お前達はネザー要塞に行きな。」

 

「で、でもお母さんは!?」

 

「なんだ?そんなに私のことが心配か?」

 

「・・・・いいや、そんなことは無いわ。」

 

「だったら早く行きな。紫から聞いたよ、カオスがやろうとしているらしいね。」

 

「霊夢、急ごう。」

 

悠岐が言った瞬間、悠岐、楓、スティーブがネザー要塞へと走っていった。そんな中、霊夢を見つめる魔理沙が言う。

 

「霊夢・・・」

 

「分かったわ。お母さん、死なないでね。」

 

ようやっと決意した霊夢は魔理沙、ユニと共にネザー要塞へと向かった。それを見届けた先代巫女は大魔王こと黒田輝宗と対峙し、口を開く。

 

「あんたにはあの子達に戦わせないよ。あの子達にはやらなければいけないことが山ほどあるからね。」

 

「・・・それで貴様が足止めと?」

 

「その通り、私はあんたをここで食い止めるだけさ。」

 

「貴様が如き女が我を倒せると思っているのか?」

 

「やらなければ分からないよ、そんなの。」

彼女がそう言った瞬間、突然2体のゾンピピックマンが現れ、二人の前を通ろうとした。その瞬間、二人の姿が一瞬にして消えたかと思うと間合いをつめていた。

 

「ムゥ・・・」

 

「チッ。」

 

そこには先代巫女の右足のキックを拳銃で防ぎ、刀を突く大魔王と大魔王の刀を両手で挟んで右足キックを入れる先代巫女だった。その瞬間にたまたまそこを通ろうとしたゾンピピックマンの頭2つがマグマの中に落ちる。

 

「貴様、なかなかやりおるわ。」

「あんたも充分やるじゃないか。」

 

二人は笑みを浮かべながら口を開く。先に攻撃を仕掛けたのは先代巫女だった。右足を引っ込め、刀を放した瞬間、大魔王にチョップを入れる。それに反応し、大魔王は避ける。そして拳銃を先代巫女に発砲する。

 

「おっと!」

そう声を上げた先代巫女は弾を避けきれず、頬にかすり傷を被う。それに気にせず先代巫女は立て続けに発砲してくる大魔王の攻撃を壁を走りながら避ける。そして壁を踏み切り台にし、大魔王に向かい、彼の顔を右足で蹴る。

 

「くっ・・・」

 

少しよろけた大魔王は先代巫女を見ながら再び発砲する。そんな中、彼の攻撃を避けながら先代巫女が言う。

「魔王さん、私の能力は知ってるかい?」

 

「笑止、興味などないわ。」

 

「そうかい、なら見せてやるよ。私の能力は・・・」

 

彼女が続きを言おうとした瞬間、大魔王が彼女に発砲する。その瞬間、先代巫女が口を開いた。

 

「常識破壊さ。」

 

そう言うと彼女は右手をデコピンの形にし、そのまま人差し指を弾いた。その瞬間、大魔王の発砲した弾が彼の拳銃と左腕を貫いた。そのまま大魔王の拳銃は壊れ、彼の左腕からは血が流れ始める。そんな中、先代巫女が言う。

「これが常識破壊だよ、魔王さん。」

 

「恐ろしき女よ。」

 




ネザーで始まる先代巫女と大魔王の戦い。その結末は!?次作もお楽しみに!


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第31話 他の場で起こる異変の予兆

迫ってくるカオスの脅威の中、大魔王と先代巫女が対峙し、ユニ達はネザー要塞へと向かう。


その頃、幻想郷では紫が多くの人達にカオスのことを伝えていた。まず始めに彼女が訪れたのは紅魔館だった。紅魔館へ訪れた紫は館の主、レミリア・スカーレットと会談をする。

 

「あなた達に言っておくわ。今後、カオスという嘗て現実世界から追放された悪魔族の王がここへやって来るわ。そのために少しでもいいから対策をしておくことを勧めるわ。」

 

「へぇ、悪魔族の王様ねぇ。面白そうね、ここへ来たらたっぷりと遊んであげようかしら。」

 

「奴はあの五大王に逆らった中々の実力者よ。少しでも気が緩んだら負ける。」

 

「スキマ妖怪、奴には何が適正なの?」

 

レミリアと紫の話に突っ込んできたのはパチュリーだった。そんな彼女に紫はレミリアと話しているように答える。

 

「さぁねぇ。私も戦ったことないから知らないわ。でも、光王のマーグルさんに聞けば分かるかもね。」

 

「あの男が自分から幻想郷に来ることなんてないと思うのだけれど?」

 

「それは仕方ないじゃない?あちらの都合もあるのだから。」

 

「パチェ、とりあえず奴は闇を司る筈だから闇に対応出来る魔法を作ってちょうだい。」

 

「・・・なるべく頑張るわ。」

 

「まぁ、せいぜい死なないようにしなさいね。」

 

そう言うと紫はスキマを展開し、そのまま目玉だらけの空間の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に彼女が訪れたのは白玉楼だった。そこには熱心に修行をする妖夢とそれを見つめる幽々子の姿があった。そんな中、幽々子の隣からスキマを展開し、彼女の隣に腰を下ろした紫は幽々子を見つめながら言う。

 

「どうして私がここに来たのか分かる?」

 

「紫のことだから、そうねぇ・・・。お茶会かしら?」

 

「残念、正解は異変のことを話に来たの。」

 

「異変、ですか?」

 

紫の言葉を聞いて修行をしていた妖夢が突っ込んできた。そんな彼女に気にせず紫が口を開く。

 

「いづれカオスという悪魔族の王がやって来るわ。そのために少しでもいいから対策した方がいいと思うの。」

 

「カオスねぇ。面倒な奴が来たものね。妖夢、気をつけなさいね。」

 

「はい!この妖夢、幽々子様のために全力を尽くします!!」

 

「フフフ、それじゃあ頑張ってね。」

 

そう言うと紫は再びスキマを展開し、そのまま目玉だらけの空間の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に彼女が訪れた場所は太陽の花畑だった。スキマを展開した紫はちょうど花達に水を与えていた幽香に近づき、口を開く。

 

「今後、カオスがやって来るわ。充分に警戒しなさいね。」

 

「カオスねぇ・・・」

 

「それじゃあ死なないように頑張りなさいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、紫。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキマの中へ入ろうとした紫を幽香が呼び止めた。呼び止められた紫は振り返り、言う。

 

「どうしたの?幽香。」

 

「私と勝負しない?」

 

「しっ、勝負!?」

 

「勘違いしないで欲しいわ。別に何もあなたと弾幕勝負するつもりじゃないのよ。ただね、あなたと競争で勝負したいの。」

 

「競争?」

 

「そう、どちらが多くのカオスの軍勢を倒せるかってね。」

「・・・・負けたら?」

 

「そんなの、決まってるでしょ?触手の刑よ。」

 

「・・・・い、いいわ。受けてたとうじゃない。」

 

「フフフ、楽しみだわ。早くカオスの軍勢は来ないかしらねぇ・・・。」

 

そう言うと幽香は背伸びをしながら花畑の中へと消えていった。それを見た紫は溜め息を吐き、口を開く。

 

「全く、こういうことには熱心なんだから、あの子。」

 

そう言うと紫は目玉だらけの空間、スキマの中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって月の都。この都を支配する陛下、月夜見に彼を補佐する都久親王、細愛親王、そして彼らの手下である綿月豊姫、綿月依姫、稀神サグメに守られているこの場所が崩壊することは一切ない。そんな平和が続く月の都でもカオスに関わることが起こっていた。それはある1通の手紙から始まった。

 

「失礼します、お二方に地上から手紙が届いております。」

 

呑気に茶を飲んでいる都久親王、細愛親王の元へやって来たのは依姫だった。彼女の右手には2通の手紙が握られていた。

 

「よこせ。」

 

都久親王はそれだけ言うと依姫から手紙を取った。そして彼はもう1通を細愛親王に渡した。二人は真っ先に宛先を確認した。

 

「我々に用がある地上の者と言えば五大王の方々以外では思い当たらないのだが・・・」

 

「とりあえず、見てみるとするか。」

 

「なっ!?」

 

「何故だ・・・」

 

二人は思わず声を発してしまう。そこに書かれていた宛先は八意思兼と書かれていた。そして都久親王が口を開く。

 

「何故八意思兼が我々に手紙などよこすのだ!?何故我々との関係を立ち切った八意思兼が?」

 

「都久殿、状況は把握出来ないが、とりあえず中身を読んでみるか。」

 

「そ、そうだな。細愛殿。」

 

そう言うと二人は同時に手紙の中身を開いた。その手紙にはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご無沙汰してます、都久親王、細愛親王。実はあなた方に知らせなければならないことがありましたのでレイセンに頼んでお届けしました。今、地上ではカオスという悪魔族の王が復活したのです。恐らく奴らは後に今あなた方がいる月の都をも乗っ取る可能性があります。月の都が乗っ取られないためにも私は地上に豊姫か依姫を送ることを推薦します。未熟者である彼女ら二人にとっては貴重な任務になるでしょう。故に月の都を守るための一歩にもなりうると考えたからです。豊姫か依姫を送るか送らないかはあなた方の自由です。それでは、あなた方のご健闘をお祈り申し上げます。 八意思兼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手紙を読み終えた瞬間、都久親王は手を震わせながら手紙をぐしゃぐしゃにし、依姫に言った。

 

「依姫、豊姫を連れて地上へ向かえ!!」

 

「都久親王!?」

 

「都久殿、どうしてこんなことを・・・」

 

「細愛殿、知らないのか?カオスは嘗てあの五大王の方々に逆らった者だぞ。そんな輩がここへ来てみろ、たちまちここはすぐにやられる。その前に豊姫と依姫を地上へ派遣させ、カオスの進行を妨げるのだ。」

 

「そ、そうだな。」

 

「それに月には綿月姉妹がいなくともサグメがいる。心配する必要はない。」

 

「都久親王、細愛親王、私達はこれより、地上へ向かいます。」

 

「気をつけろ、どんな輩がいるのか知ったことじゃない。」

「はっ!」

 

そう言うと依姫は二人のいる部屋から出ていった。二人は彼女を部屋から見守ることしかしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

豊姫の元へ向かった依姫は彼女に地上への派遣について語った。それを聞いた豊姫は目を大きく見開いた。そして言う。

 

「あら、地上に行けるなんて、いい機会じゃない。それに、またあの巫女とも会えるしね。」

 

「ですが油断は禁物ですよ。一度月にやって来たあの妖怪より優れた妖怪がいるのかもしれません。」

 

「大丈夫よ、私達に勝てる妖怪なんてそうはいないんだから。」

 

「そう、ですよね。」

 

「さ、地上へ行くわよ、依姫。」

 

「はい!」

 

そう言うと二人は満月の海へ飛び込み、地上へと向かっていった。その様子を遠くから月夜見、都久親王、細愛親王、サグメが見ていた。




月から豊姫と依姫が地上へ向かい、地上ではレミリアや幽香などがカオス撃波のため、動き始める。
次作もお楽しみに!


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第32話 ネザー要塞 コールザエニー、山下啓介

最近投稿速度が遅れて申し訳ありません。今度からなるべく投稿するのを早くしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。


「ここがネザー要塞かぁ・・・」

 

ぽかんと口を開けながらユニは辺りを見回す。そこは薄暗い雰囲気に覆われている建物の中はまさにお化け屋敷と言うのにふさわしい場所だった。そんな中、楓が口を開く。

 

「気をつけろ、急にブレイズが出てくる可能性がある。」

 

「ブレイズ?」

 

新たな名前を聞いて霊夢、魔理沙、ユニの三人は首を傾げる。そんな三人に悠岐が言う。

 

「スティーブのような顔をしている炎の化物だ。そいつも注意したほうがいい。」

 

「ガストと似ているのか?」

 

「攻撃パターンは似ている。だが形が違うからな。」

 

話していると急に楓が足を止めた。そして四人に見えるようにある方向を指差す。そこには鉄格子が張ってあり、中に誰かが入っていた。五人は恐る恐る中の様子を確認する。そこには全身黒く染まっていて右手に剣を持ち、こちらを見つめるガイコツがいた。それを見た悠岐が口を開いた。

 

「これがウィザースケルトンだ。」

 

「これが、ウィザースケルトン・・・」

 

初めて見る生物に興味が湧いたユニは鉄格子へと近づいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユニ、そいつに近寄るな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如楓に怒鳴りつけられたユニはびっくりし、腰を抜かしてしまった。そんな彼女に楓が再び口を開く。

 

「もしあのまま私が何も言わなかったらお前はウィザー状態となり、毒状態になるのと同じになっていたんだぞ!!」

 

「あ、そうだったんだ・・・。ごめんなさい。」

 

「分かればそれでいい、ユニ。落ち込むことなんてない。」

 

「それよりも楓、こいつはキングウィザースケルトンじゃないみたいだな。」

 

「えっ!?」

 

悠岐の言葉を聞いてユニ達は目を大きく見開いた。そんな中、スティーブもウィザースケルトンの様子を見る。そして彼も縦に頷いた。本物ではないらしい。そんな中、何かを感じ取った楓が言う。

 

「カオスらがこの要塞に入ってきたらしいな。」

 

「何ですって!?」

 

「マズイな、ここには番人もいるっていうのに・・・」

 

「番人?」

 

「すまない、ユニ。今はそれを話している余裕がないんだ。急ごう。」

 

「そっか・・・」

 

そのまま五人は別の場所にいるウィザースケルトンの元へ向かった。その途中、霊夢がある方向を見つめながら歩いている。そんな彼女に魔理沙が口を開く。

 

「どうした?霊夢。そんなにお母さんのことが心配か?」

 

「それは心配よ。だって、死ぬかもしれないじゃない!」

 

「霊夢、一応言っておくがここはマインクラフトの地獄だ。ここの住人となった者が死ぬなんてまず有り得ないからな?」

 

「そっ、そうなの!?楓!!」

 

「うん、そうだぞ。知らなかったのか?」

 

「し、知らなかったわ。」

 

「さ、急ぐぞ。先代巫女さんのことも心配だが、今俺達には幻想郷のためにやらなきゃいけないことがあるだろう?」

 

「・・・そうね、行きましょう。」

 

そう言うとユニ達はキングウィザースケルトンの元へ走って向かう。しばらく走っている内に建物の十字路に出た。

 

「なっ!!」

 

その時間、五人は足を止めてしまう。何故ならちょうど反対側から大きさ4mで全身黒く、コウモリのような翼を持っていて目は紫色をしている悪魔が現れた。悪魔の後ろにはアヌビスとペルセポネがいる。そんな中、楓が言う。

 

「カオス!まさかここでお前と会うことになるとはな。」

 

「小娘よ、久しぶりだな。・・・と言いたいところだが今はそうしている場合ではないようだな。」

 

「テメェらは地獄に帰りやがれ。どうせキングウィザースケルトンの頭を取りに来たんだろう?」

 

「何故だ、何故我々の計画が知らされていると言うのだ!?まさか我が軍の中に裏切り者がいるというのか!?」

 

「残念だがカオス、お前の計画は天狗が盗み聞きして私達に速攻で伝えてくれたぜ。」

 

「なんと!アヌビス、ペルセポネ!!どうしてくれる!」

 

そう言うとカオスは後ろを振り返り、アヌビスとペルセポネを睨みながら言う。慌てて二人は同時に膝をつき、頭を下げて言う。

 

「も、申し訳ありません。妾としたことが天狗風情の存在に気づかないなど、冥神の恥であります。」

 

「私もです、カオス様。どうか、この愚かな私共を許して下さい。」

 

「フン、今回のみ許してやる。ただし、今後はないからな?」

 

「はっ!!」

 

そして二人と話し終えたカオスは再びユニ達を見て笑みを浮かべながら言う。

 

「貴様らには消えてもらう。我の計画の邪魔する貴様らの存在が、非常に不愉快なのだ!!」

 

「こっちこそ不愉快よ!あなたという存在が幻想郷を汚していく・・・。私はそれが憎たらしくて仕方ないのよ!」

 

「ならば我を止めてみるがよい。貴様が如き小娘に何が出来る?」

 

余裕の笑みを浮かべるカオスとは別に腹が立ったユニは四人の前に行き、スペルカードを取り出した。そして発動する。

 

「呼符コールザエニー。」

 

その瞬間、彼女が持っていたスペルカードが紫色に光始めた。そしてユニは叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「闇には闇を、奴を食い止めて、山下啓介!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が叫んだ瞬間、ユニの頭上に直径2mほどの空間が現れた。そしてその中から紫色の渦が宙に浮かぶ。

 

「ん?」

 

カオスはその渦を目を細めてじっと見る。そして次の瞬間、渦が消え、中から長身で丸い髪型に黒の目の青年が現れた。そして青年はユニ達を見ながら言う。

 

「よお、呼んだか?」

 

青年を見た瞬間、霊夢達は目を大きく見開きながら青年の名前を口にした。

 

「啓介!!」

 

それを見たカオスは目を細めながら言う。

 

「また邪魔者が来たか・・・。」

 

そんなカオスとは別にユニは啓介に言う。

 

「山下君、カオスを食い止めて!私達はキングウィザースケルトンの頭を探してくるから。」

 

「了解だ、しっかりな。」

 

「うん!」

 

そう言うとユニ達はキングウィザースケルトンがいそうな場所へ向かっていった。

 

「っ、逃がすな!」

 

そう言うとカオスはアヌビス、ペルセポネを連れてユニ達の後を追う。

 

「おっと、ここから先は通す訳には行かないぜ。」

 

「ぬおっ!?」

 

その瞬間、啓介がカオスの腹に回し蹴りをする。それを食らったカオスは5mほど地面を滑り、後退する。それを見たアヌビスとペルセポネが口を開く。

 

「カオス様!!」

 

「我のことは気にするな、先へ行き、小娘共を追え!」

 

カオスに言われたため、二人はそのままユニ達の後を追った。それに気にせず啓介はカオスと対峙する。と、啓介が口を開く。

 

「テメェは確かマーグルによって現世から追放され、何処かに封印された筈だよな?何故蘇った?」

 

「我の闇は無限の力だ。封印されてもいずれ蘇るのだ。」

 

「ケッ、面倒な野郎だな。」

 

「それに我々は既にキングウィザースケルトンの場所を把握してあるからな、例え貴様らがいくら探そうと先に見つけるのは我らだ。」

 

「なんだと!?そんなことはさせねぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウゥゥゥゥゥ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

啓介がカオスにかかろうとした瞬間、何処からか不気味な声が響き渡った。




ユニ達とカオスらに忍び寄る謎の声。その正体とは!?
次作もお楽しみに!


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第33話 ネザーの番人、ウルガスト

現実世界から啓介を呼び寄せたユニ。啓介とカオスが対峙する中、何処からか不気味な声が・・・。


「な、何だ?今の声・・・。」

 

突如何処からか聞こえた不気味な声に啓介とカオスは動きを止めてしまう。そんな中、カオスが口を開く。

 

「成る程、番人が来たか・・・。」

 

「番人だと!?テメェ、番人を誘き寄せることが目的だったと言うのか!!」

 

「その通りなのだが、思ったより来るのが早すぎる。黒田輝宗と先代巫女が暴れすぎているからだな。」

 

「じゃあ、まさか番人は今・・・。」

 

「恐らく、暴れすぎている二人の元へ行き、捕食するつもりなのだろう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、大魔王こと黒田輝宗と先代巫女は番人が来ることに気がつかずに戦いを続ける。

 

「痛いか?魔王さん。水分のないこの世界で出血したら傷口が蒸発してその左手に激痛が走ってることだろうね。」

 

「貴様もその頬の傷が染みるだろう?互い様ぞ。」

 

「あんたとは一緒にしてもらいたくないね。私は掠り傷だけどあんたは手に穴が開いているだろう?」

 

「手に穴が開いている?ハッ、それがどうした?例え我が手に穴が開こうとも、我が戦えないという道理はなし。故に貴様は我が切り札を知らぬ。」

 

「切り札だって?知らないね、そんなの。」

 

「フッ、ならば見せてくれようぞ。貴様が我を侮辱したことを後悔させてくれるわ。」

 

そう言うと彼は自分の体に力を入れ始めた。その瞬間、彼の背後に徐々に黒い塊となり、最終的には上半身だけの魔神となった。それを見た先代巫女が口を開く。

 

「へぇ、それがあんたの切り札か。驚いたね、こんな力があんたの中に秘められていたなんてね。」

 

そう言うと先代巫女は魔神を召喚した大魔王の元へ走っていく。そして蹴りを入れた。しかし、彼が痛がるような感覚はない。よく見ると魔神の左腕が彼女の攻撃を防いでいた。

 

「なっ!?」

 

「フフフハハハ。」

 

そのまま魔神は先代巫女を掴み、地面に叩きつけた。

 

「ガハッ、なんて力なんだ・・・」

 

吐血しながら先代巫女は大魔王の様子を見る。そして、あることに気づいた。それは大魔王が笑うと魔神が笑い、大魔王が腕を動かすと魔神も腕を動かす。

 

(まさか、大魔王と魔神は一心同体なのか?ならば奴のみを責めるか・・・)

 

心の中で語った先代巫女は両手の間に青い光を溜め、大魔王に放つ。

 

「無駄ぞ。」

 

そう言うと大魔王は腕を動かす。それと同じように魔神も腕を動かし、先代巫女が放った攻撃を防ぐ。その瞬間、先代巫女が大魔王の背後に回り、スペルカードを発動する。

 

「夢想封印!!」

 

「チッ!」

 

すぐさま大魔王は攻撃を防ごうとした。しかし、先代巫女が狙ったのは大魔王ではなく彼の背後にいる魔神だった。彼女の攻撃が魔神の顔に当たった瞬間、大魔王は開いている左手で顔を抑え始めた。それを見た先代巫女が口を開く。

 

「ハハハ、やっぱりね。あんたとその魔神は一心同体。あんたを攻撃すれば魔神にもダメージが当たり、魔神を攻撃すればあんたにダメージが当たる。そんなことだと思ってたよ。」

 

「ま、まさか貴様!我が力を理解したと言うのか!!」

 

「そんなのすぐに理解出来るよ。著し過ぎるんだよ。」

 

「認めぬ・・・我が女如きに負けるなど、断じて認めぬ!!」

 

そう言うと大魔王は腕に力を溜め、先代巫女に向かって降り下ろした。

 

「そんなもの、私が常識破壊で・・・!?」

 

先代巫女が大魔王の攻撃を防ごうとした時、彼女はあることに気づき始める。

 

(まさか、あれは常識破壊を越えた常識?)

 

その瞬間、大魔王の攻撃が先代巫女を捉えていた。そのまま先代巫女は壁に衝突し、地面に崩れる。

 

「ハハハハハ!もはや貴様など我の相手に過ぎぬ!さっさと死ねい!」

 

大魔王がなんとか起き上がろうとする先代巫女に向かって腕を降り下ろそうとした。その瞬間、先代巫女は目を大きく見開いた。彼女が見ているのは大魔王ではなく彼の背後。そして口を開く。

 

「魔王さん、どうやら私とあんたの戦いは一旦お預けのようだね。番人が来てしまったよ。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、大魔王は後ろを振り返る。そこには大きさ20mほどあり、体の形は四角で両側と下の部分に触手が生えている化物がいた。それを見た瞬間、大魔王が目を大きく見開きながら言う。

 

「ウルガスト・・・・」

 

大魔王がそう言った瞬間、ウルガストが長い舌を出し、大魔王に巻きついた。

 

「なっ、何故我が!!」

 

「あんたは暴れすぎたんだよ。魔神も召喚しちゃってね。番人にとってあんたが一番目立っていたみたいだしね。」

 

ウルガストから逃れようと大魔王は必死に抵抗するが何も変わらなかった。そんな彼に再び先代巫女が言う。

 

「無駄だよ、ネザーの民となった私達に、番人に勝てることなんてないんだよ。」

 

「解せぬ、解せぬわぁぁぁぁぁっ!」

 

そう大声を上げた大魔王であったが、そのまま彼はウルガストに飲み込まれた。それを見た先代巫女が口を開く。

 

「霊夢、私の役目は終えたよ。カオスのことはあんたらに任せるよ。」

 

そう言った瞬間、ウルガストの舌が先代巫女に巻きつき、そのまま飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ユニ達はアヌビス、ペルセポネに追いつかれないようにキングウィザースケルトンの元へ走っていた。

 

「ねぇ、楓。キングウィザースケルトンが何処にいるか分かるの?」

 

「奥から気配を感じる。キングウィザースケルトンがそこにいるのは間違いない。急ごう!」

 

霊夢に言われたため、ユニ達は急いでキングウィザースケルトンの元へ向かう。と、突然楓が足を止めた。

 

「どうしたの?楓ちゃん。」

 

彼女の突然の行為を理解することが出来ず、ユニは思わず声を発する。そんな彼女に楓が言う。

 

「この壁の向こう側にキングウィザースケルトンの気配がする。だがこれ以上遠回りして見つけ出す暇はない。私の能力で手間を省こう。」

 

そう言うと楓は左手を前に差し出した。そして右回りに手首を回す。その瞬間、壁が動き始め、向こう側にある部屋が現れた。

 

「何っ!?」

 

部屋の中を見た瞬間、ユニ達は驚きを隠せなかった。何故ならそこには既にキングウィザースケルトンの頭を取ったアヌビスとペルセポネがいた。そんな二人にユニが口を開く。

 

「あなた達!一体どうやってここまで・・・」

 

「何、簡単なことだ。カオス様が私達にここまでのルートを示してくださったのだ。」

 

「カオスが?そんな馬鹿な!」

 

「これが現実だぞ小僧。妾の主の邪魔はさせぬ!」

 

「では私達はここで失礼させてもらう。」

 

「させないわ!呼符コールザエニー!」

 

彼女が言った瞬間、ユニ達の背後から直径2mほどの空間が現れ、そこから身長190cmほどで全身黄色でレスラーがはいているような赤いパンツ、頭は熊のような形で筋肉が著しくなっているものが現れた。それを見た魔理沙が思わず口を開く。

 

「・・・・なんだこれ・・・」

 

「分からないわ、アリスの家から持ってきたのだけど、これが何なのか全く分からなくて・・・」

 

二人が話している中、突如黄色いものが起き上がり、ユニを見ながら口を開いた。

 

「・・・チョーダイ。」

 

「え?なんて言ったの?」

 

「ハチミツ、チョーダイ。」

 

その瞬間、ここにいる一同が驚きを隠せなかった。なんせ、動きそうにないものに自分の意思があるからだ。と、楓が言う。

 

「成る程、これは土人形か。随分とリアルに出来ているな。」

 

「土人形?ということは楓ちゃん、これはゴーレムなの?」

 

「そう言うことになるな。取り敢えずゴーレムは望みを叶えてもらえれば言うことを聞くらしいな。」

 

「それなら任せて、アームストライク!」

 

そうしてユニは空間から甘い臭いを漂わせるハチミツの入ったビンを土人形に渡した。その瞬間、土人形は猛烈な勢いでそれを飲み始めた。

 

「す、すごい飲みっぷりね。」

 

思わずユニ達は唖然となってしまう。そんな彼女達とは別にハチミツを飲み干した土人形がユニに言う。

 

「ボク、キミノイウコトナンデモキク。ダカラドンドンボクヲタヨッテネ。」

 

「うん、ありがとう。そうさせてもらうわ。ところで、あなたの名前は?」

 

「ゴメン、ボクニナマエハナインダ。」

 

「そうなの?なら私が決めるわ。ピンでいいかしら?」

 

「ピン?イイヨ!ボクコレカラピン、ヨロシクネ!」

 

「えぇ、よろしくね、ピンさん!」

 

ユニ達とピンが話している中、アヌビスとペルセポネは気づかれないようにこの場から立ち去ろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニガサナイヨ、オマエラ。」

 

その声が聞こえた瞬間、二人の目の前にピンが現れた。

 

「何っ!?」

 

そのまま二人は対応することが出来ず、ピンによって殴り飛ばされた。

 

「流石ピンさん、やるじゃない!」

 

「エヘヘ、アリガトウ!」

 

「ゴフッ、何なのだあの土人形は!!」

 

「妾の体に傷をつけるとは・・・。やってくれるではないか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達、こんなところで何をしている?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の低い声が聞こえた瞬間、アヌビスとペルセポネは後ろを振り返り、膝をつく。そこには先程まで啓介と戦っていたカオスがいた。それを見た悠岐が口を開く。

 

「カオス、テメェ、啓介はどうした!!」

 

「我が逃げてきただけだ、死んではおらぬ。そんなことよりアヌビスとペルセポネよ、一体何をしていた?我が立てた計画を忘れたと言うのか?」

 

「いえ、そういうつもりではないのですが・・・。あの小娘と小僧達に手こずってしまいまして。」

 

「言い訳など通じぬと言いたいところだが本当のようだな。ならばここは一時撤退とし、幻想郷に戻ったら有頂天を攻めるぞ。」

 

「はっ!」

 

「待ちなさい、カオス!!あんた、有頂天を攻めるって・・・」

 

「さらばだ小娘と小僧達。幻想郷で再び会おう。」

 

そう言った瞬間、カオスはアヌビス、ペルセポネを連れて一瞬にして姿を消した。

 

「クソッ!」

 

そう言うと悠岐は壁を殴り付けた。そんな彼に楓が口を開く。

 

「幻想郷に戻ろう。」

 

「ああ、分かってる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウゥゥゥゥゥゥゥ・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、何処からか突如不気味な声が辺りに響いた。それを聞いた瞬間、楓と悠岐の顔が急変した。そして楓が口を開く。

 

「みんな、急いでネザーゲートに戻るぞ。番人が来た!」

 

「番人?番人って?」

 

首を傾げる霊夢に悠岐が答えた。

 

「ウルガストだ。通称ガストの突然変異種。そいつに喰われたら一生ネザーから出られなくなる!」

 

「それはマズイぜ!急いで戻らないと!」

 

そう決心した瞬間、楓達は来た道を全速力で戻り始める。と、魔理沙が走りながら楓に言う。

 

「ウルガストは倒せないのか?」

 

「倒せないことはないが倒している暇はない。ここは逃げたほうがましだ!」

 

そしてユニ達はやっとの思いでネザー要塞の外へ出た瞬間、悠岐が口を開いた。

 

「カオス達が入ってきたネザーゲートが壊されていやがる。」

 

悠岐が指を指す方向を見たユニ達は驚きを隠せなかった。何故ならネザーゲートが粉々に砕かれていたからだ。

 

「おーい、お前らー!」

 

突如声が・・・聞こえたため、ユニ達はその方向に目を向ける。そこには啓介がいてユニ達に手招きをしていた。それを見たユニ達は急いで彼のいる場所に向かう。啓介の元に辿り着いたユニ達は啓介の元へ来る。そして啓介が口を開く。

 

「お前らが入ってきたネザーゲートがまだ生きている。そこに急ごう!!」

 

啓介に言われたため、霊夢、魔理沙、ユニは宙に浮かび、悠岐、楓、啓介、ピンは走りながらネザーゲート目指す。

 

「ウゥゥゥゥゥゥゥ・・・・」

 

「チッ!もうここまで来たのか!」

 

声が辺りに響いたのと同時に啓介が声を発する。彼の見つめる先にはガストよりはるかに大きいウルガストがいた。それを見た魔理沙が叫び始める。

 

「なんだあれぇぇぇぇぇぇ!」

 

「あれがウルガストだ。」

 

パニックに陥る彼女に啓介が冷静に答えた。そんな中、悠岐が口を開いた。

 

「マズイな、このままじゃ追い付かれる。ネザーゲートまでもう少しだって言うのに!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボクガノコル。ミンナハサキニイッテ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言ったのはピンだった。そんな彼にユニが口を開く。

 

「大丈夫なの!?ピンさん。相手はネザーの番人なのよ!?まさかあなた一人で挑むつもり?」

 

「そうはさせないぜ、ピン。俺も残る。」

 

そう言ったのは啓介だった。彼に続いてスティーブも彼の隣に並ぶ。それを見た悠岐が言う。

 

「お前ら、大丈夫なのか!?」

 

「安心しな、俺達は必ず戻ってくる。お前らは先にカオスを止めろ。頼んだぜ。」

 

「・・・分かった。死ぬなよ。」

 

「アタリマエダヨ!」

 

ピンが言った瞬間、霊夢、魔理沙、ユニ、悠岐、楓はネザーゲートへと向かっていった。誤認が行った後、啓介とピンが言う。

 

「さ、始めようか。番人狩りの時間だ。」

 

「ボクノチカラガタメサレルトキダ。タノシミダナァ。」

 

そんな三人の顔には笑みが浮かんでいた。




啓介、ピン、スティーブがウルガストとの戦闘に入る。果たして三人は生きて帰れるのだろうか?
次作もお楽しみに!


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第34話 ウルガストとの戦い

キングウィザースケルトンの頭をアヌビス達に取られたユニ達は彼らの後を追おうとするがそこへウルガストが現れる。


最初に先陣を切ったのはスティーブだった。彼はウルガスト目掛けて取り出した弓を構え、矢を放つ。

 

「ギャァァァァァァァァ!」

 

スティーブが放った矢がウルガストの目に命中した瞬間、ウルガストは奇声を上げる。それに気にせずピンは高く飛び上がり、ウルガストの目の前で口を開く。

 

「ボクノチカラヲナメルナヨ、バケモノガ!」

 

そう言うとピンは右手に握り拳を作り、ウルガストの顔にパンチをする。土人形とは思えない力でそのままウルガストを50mほど離れた場所まで殴り飛ばした。

 

「や、やるじゃねぇかピン。」

 

「ケイスケクン、キミモコレクライハデキルヨ。」

 

「何言ってるんだお前は。悠岐じゃねぇんだから出来るわけないだろ。」

 

二人が話している内にウルガストが三人の前まで再びやって来る。そして火玉を口から放つ。

 

「そらよっ!」

 

そう言った瞬間、啓介はウルガストの放った火玉を刀で跳ね返した。それに反応することが出来ず、ウルガストに命中する。それを見たピンが心の中で語った。

 

(ナルホド、ケイスケクンノノウリョクハ、ハンシャカ。ダンマクナドヲハネカエセルナンテサスガダナ。)

 

少しよろけたものの、ウルガストは体勢を立て直し、スティーブ達に向かって突進する。それを見た啓介とスティーブは同時に横っ飛びをして避ける。起き上がったウルガストは立て続けに啓介を襲う。

 

「チッ、俺狙いか。」

 

そう言うと啓介はゾンビピックマン達がいる場所を走り抜けていく。何が起こったのか理解出来ないゾンビピックマンはそのままウルガストに飲み込まれる。それを見た啓介が言う。

 

「マジかよ!あいつ、ゾンビピックマンであろうと食うのかよ。」

 

「ケイスケクンキヲツケロ!ソイツノシタハカナリナガイカラユダンスレバスグニクワレルゾ!」

 

「分かってるよ!」

 

そう言うと彼は刀の先に紫の光を溜め、放つ。

 

「闇のレクテリア!」

 

しかし、彼が放った攻撃はウルガストに簡単に避けられた。だがその瞬間にピンがスペルカードを取りだし、発動する。

 

「黄熊プーノハニー!」

 

その瞬間、ピンは右手をウルガストに向けた。するとピンの右手から黄色いレーザーがウルガストに放たれた。レーザーによって動けないウルガストに隙ができたと感じたスティーブは矢に火をつけ、そのままウルガストに放った。

 

「アァァァァァァァ!」

 

その瞬間、ウルガストの体に火が付いた。そのままウルガストは暴れながら辺りに火玉を放つ。啓介達はそれをかわす。

 

「アッ!!」

 

と、ピンがある方向を指差して声を上げる。それを見た啓介とスティーブは目を大きく見開いた。そこにはウルガストが適当に放った火玉によって壊れたネザーゲートがあった。

 

「クソッ、これじゃあ帰れない!」

 

「ケイスケクン、イマハコイツヲタオスコトヲカンガエヨウ。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

そう言うと三人は同時にウルガストの方へ目を向ける。ウルガストはまだ適当に火玉を辺りに放っている。と、啓介が口を開く。

 

「いいか?俺が合図したらお前らは同時に攻撃を放て。俺もそれに合わせて攻撃を放つ。」

 

「ワカッタ。ケイスケ、タノムゾ。」

 

「当たり前だ!」

 

啓介が言った瞬間、スティーブも深く頷く。そして啓介は火玉が当たらないようにダッシュでウルガストの真下に移動した。そして二人に向かって叫ぶ。

 

「いくぞ!ピン、スティーブ!!」

 

彼が言った瞬間、ピンは再びスペルカードを取りだし、発動し、スティーブは弓を構えた。

 

「憤怒青アヒルノイカリ!」

 

下からは啓介が力を溜め、ウルガスト目掛けて攻撃を放つ。

 

「暗黒界の裁き!」

 

それと同時にスティーブは毒が先端についた矢をウルガストに放った。三人の攻撃がウルガストに命中した。

 

「ウゥゥゥゥゥ・・・・」

 

そのままウルガストは煙を上げながらマグマの中へ落ちていった。それを啓介、ピン、スティーブの三人は黙ってみていた。と、啓介が口を開いた。

「なぁ、二人とも。ウルガストを倒せたのはいいんだが、俺らこれからどうするんだ?ネザーゲートを壊されたから帰れないぞ。」

 

「ワッ、ワスレテター!」

 

ピンが頭を抱えて叫んだ瞬間、スティーブが右手に体積1立方メートルの黒曜石を取りだし、門の形を作った。そして中に火打ち石で火をつけ、ゲートを作った。

 

「すげえ、ネザーゲートが出来ちまった。」

 

「サ、カエロウカ。」

 

そのまま三人はネザーゲートに入り、地上へ戻っていった。




見事ウルガストの撃破に成功した啓介達。そんな中、幻想郷ではある場所が狙われていた。そな場所とは!?
次作もお楽しみに!


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第35話 カオスvs天子&衣玖

ウルガストを見事倒した啓介達。そんな中、カオスが動き始める。


ネザーゲートから幻想郷へ再び姿を現したカオスはアヌビス、ペルセポネを連れていた。彼らが出た場所は無縁塚であった。と、カオスが口を開く。

 

「さて、ウィザーはどこに眠っている?」

 

「カオス様、ウィザーに関してはまだ情報が集まっておりません。ですので妾達が探して参ります。」

 

「ペルセポネ、今は我らの拠点となる場所を探さなければならぬ。そのためには何処を占領すれば我らのためになるかな?」

 

「カオス様、それなら有頂天を推薦します。有頂天なら空を飛べる者しか来ませんし、大軍で襲われることもありません。」

 

「成る程、有頂天か・・・。アヌビス、そこには何者がいる?」

 

「はい、そこには総領娘の比那名居天子がいます。」

 

「比那名居天子か・・・。試してみる価値はありそうだ。アヌビス、ペルセポネよ、ウィザーを復活させる前に有頂天を占領するぞ。」

 

「はっ!」

 

そう言うとそのまま三人は有頂天へと飛んでいった。ある一人の男がその話を聞いていたことに気づかずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?ここどこだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネザーゲートを通って悠岐が出てきた場所は博麗神社ではなく、妖怪の山だった。彼は誰かいるか辺りを見回す。そこには霊夢も魔理沙もユニも楓の姿も見当たらない。

 

「どういうことだ?どうして俺だけここに移動されたんだ?」

 

疑問に思った彼は後ろを振り返る。そこには本来ある筈のネザーゲートが跡形もなく消えていた。

 

「もしかするとアヌビスかペルセポネ、あるいはカオスの能力で俺だけこっちに移動されたというのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如何処からか少女の叫び声が聞こえたため、悠岐はその方向に目を向ける。

 

「誰かが襲われているのか?早く行って助けないとな。」

 

そう言うと彼は少女の声がする方向へ走っていった。しばらく走っていると何かが見えてきた。それを見つけた悠岐は草影に隠れて、その様子を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、大人しく降参を認めろ。さもないとお前の命を頂くぜ。」

 

「この命は・・・この命は、お兄様やお姉様、そして映姫様のためにあるものよ!お前らなんかに渡しはしない!」

 

そこには男複数人が赤髪でおかっぱの髪形で右手には刀を持っていて半袖にロングスカートの着物を着ていて目は赤く、腰巻をしている少女を押さえつけていた。そんな中、リーダーのような男が少女に言う。

 

「お前のような調子に乗っているガキは生きていく資格なんかねぇんだよ。とっとと死ね!」

 

そう言うと男は少女に向かって刀を降り下ろす。それを見た少女は覚悟を決め、目を瞑った。しかし、いくら経っても男は刀を降り下ろそうとしなかった。

 

「な、なんでって・・・!!」

 

少女が瞼を開いた瞬間、彼女は目を大きく見開いた。何故なら男の腕を一人の青年、悠岐が掴んでいるからだ。と、男が口を開く。

 

「なんだテメェ、このガキの味方か?」

 

男が言った瞬間、悠岐は掴んでいた男の右腕をあらぬ方向に折り曲げた。

 

「ギャァァァァァァァァ!」

 

あまりの痛さに男は叫んでしまう。そんな中、他の男達が口を開く。

 

「リーダー!!テメェ、うちのリーダーに何しやがる!」

 

そう言うと男達は一斉に刀の先を悠岐に向ける。そのた瞬間、悠岐の目が不気味に赤く染まった。それを見た男達は一瞬にして怯んでしまった。そんな中、悠岐が口を開く。

 

「失せろ、下種野郎が。」

 

「こ、こいつは危険だ!逃げろー!」

 

あまりの恐怖に耐えられなくなったのか、男達はリーダーを連れて何処かへ走って逃げていった。それを見届けた悠岐は隣にいる少女に話しかける。

 

「大丈夫だったか?君。」

 

「あっ、はい、ありがとうございます。」

 

少女は素直に悠岐に頭を下げた。それを見た悠岐は少女に言う。

 

「君の名前は何て言うんだ?」

 

「私ですか?私は豊聡耳神子様の部下の小野塚妹子と申します。神子様達には少し散歩すると言いましたがそれは嘘で少し修行をしようとしたら先程のようになってしまったんです。」

 

「へぇ、神子の部下か・・・。それに、君は小野塚と言ったね。もしかして、小町の妹かい?」

 

「はい、察する通りです。私はお兄様やお姉様とは違ってまだ未熟者なので強くなろうと一旦映姫様達から離れ、強くなってから戻るつもりです。」

 

「ちょっと待ってくれ妹子。お兄様?お兄さんがいるのか?」

 

「はい、私のお兄様は小野塚篁と言います。」

 

「小野塚篁?聞いたことないな。」

 

「お兄様は最強の魂狩人(ソウルハンター)と言われていてお姉様とは違って主に悪の心を持った魂を映姫様の元へ運ぶ仕事を務めています。」

 

「相当強そうだな、君のお兄さんって。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、妹子。ここにいたのですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性の声が聞こえた瞬間、二人は後ろを振り返る。そこには妹子に手を振る神子がいた。それを見た妹子が彼女の元へ向かっていく。

 

「神子様!」

 

「妹子、何処へ行っていたのです?私達は心配してましたよ。」

 

「ごめんなさい、神子様。私は皆様の役に立てたらいいなと思っていてつい・・・。」

 

「大丈夫ですよ、この世の全ての者にはその人自身の欲があるのです。このような事が起こってしまうのは仕方ありません。」

 

「あっ、はい・・・。」

 

妹子が言った瞬間、神子が悠岐を見ながら笑みを浮かべて口を開く。

 

「あなたが妹子を助けてくれたのですね?ありがとうございます、悠岐さん。」

 

「礼はいいよ、神子さん。人を助けるのが俺の役目だしな。」

 

彼が言った瞬間、何処からか二人が走ってくる音が響いた。三人はその方向に目を向ける。そこには布都と屠自古がいた。そして妹子の方へ笑顔で向かいながら言う。

 

「おーいイモ!無事だったか?」

 

「イモ!心配したんだぞ。」

 

二人が言った瞬間、妹子の顔が赤くなり始める。それを見た悠岐が首を傾げる。そして妹子が二人に叫ぶ。

 

「イモじゃないです!妹子です!」

 

「あはは、すまぬイモ。」

 

「ごめんな、イモ。」

 

「だからイモじゃないですって何回言えば分かるんですか!!」

 

三人のやり取りを見た悠岐は苦笑いを浮かべ、逆に神子は汗を垂らしながら言う。

 

「布都や屠自古は何故か妹子のことをイモって呼ぶんですよ。そのほうが呼びやすいみたいで・・・。」

 

「逆に妹子は嫌がってるな。さて、神子さん。俺は大事な用があるからここで失礼させてもらうよ。」

 

「話は聞いています。カオスのことですよね?」

 

「・・・あぁ、そうだ。」

 

「あなたの無事を祈ります。」

 

「ありがとう。それじゃあ、行ってくる。」

 

そう言うと悠岐は何処かへ走っていった。神子はそれを彼の姿が見えなくなるまで見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有頂天へ辿り着いたカオス達は辺りを見回す。と、カオスが口を開く。

 

「ここで良いのだな?アヌビス、ペルセポネ。」

 

「はい、間違いありません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰よ、あんた達。」

 

「ここへ何の用があるのです?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如二人の少女の声が聞こえたため、カオス達はその方向に目を向ける。そこには有頂天に住む天人、比那名居天子と永江衣玖がいた。それを見たカオスが言う。

 

「成る程、あの小さいのが比那名居天子で大きいのがその部下の永江衣玖か・・・。」

 

「あんたのような勝手にここへ侵入してくる不届き者は私と衣玖が排除してやるわ。」

 

「総領娘様、無理はせぬようお願いしますね。」

 

「お前達は勇敢だな、正面から我に当たってこようとするとはな・・・。その勇気だけは褒めてやろう。だが・・・。」

 

その瞬間、カオスが天子の目の前に一瞬にして移動していた。そして右手に握り拳を作る。

 

「総領娘様!」

 

カオスの攻撃が天子に当たる前に衣玖が彼女のことをかばった。忽ちカオスの攻撃は天子には当たらず、衣玖の腹に命中した。

 

「がっ・・・」

 

その瞬間、衣玖の腹からバキバキという肋骨が折れる音が響き、そのまま衣玖は吐血しながら地面に倒れる。

 

「い、衣玖ー!」

 

はっと我に返った天子はすぐに衣玖の元へ向かう。しかし、それを邪魔するかのようにアヌビスが彼女の目の前に現れ、天子の顔を殴り付ける。

 

「ぐあっ!」

 

そのまま天子は5mほど飛ばされ、地面に倒れる。それを見たアヌビスが言う。

 

「少し力が足りなかったか。まぁ、このような小娘に最大倍率を出す必要もないか。」

 

「っ、そこをどけぇぇぇぇぇ!」

 

そう言うと天子は再び起き上がり、衣玖の元へ向かおうとする。それを見て呆れたアヌビスが口を開く。

 

「そこまで仲間の心配をする必要はないというのに・・・。お前はまず自分のことを優先したほうが良いのではないか?まぁ、今更言っても遅いか。ならば折角だ。私が少し倍率を上げてやる。」

 

そう言うとアヌビスは天子の方へ目を向ける。天子は緋相の剣を取りだし、アヌビスに向かってきていた。その瞬間、アヌビスは目を大きく開き、天子を殴り付ける。

 

「フン、二度も同じ手には掛からないわよ!」

 

「さて、それはどうかな?」

 

緋相の剣でアヌビスの攻撃を防ぐ体勢に入った天子だが、アヌビスの力が強いのか、彼のパンチは緋相の剣を砕き、天子の腹に命中した。

 

「ごはっ!」

 

その瞬間、衣玖の時と同様に天子の腹からバキバキという肋骨が折れる音が響いた。そして地面に吐血する。そんな中、アヌビスは天子には前髪を掴み、無理矢理自分の目線に合わせた。そして言う。

 

「今の私の倍率は16倍だ。普通でも強い私の力が16倍となって腹にくるのはどんな気分だ?」

 

「総領娘様・・・」

 

アヌビスによって体が傷ついていく天子を衣玖はなんとかして助けようとするが先程のカオスの攻撃によって肋骨が折られ、どうしようも出来なかった。そんな中、カオスが口を開く。

 

「もう良い、アヌビス。良くやった。後の処理は我に任せろ。お前達には働いてもらう。アヌビス、お前は紅魔館を。ペルセポネ、お前はウィザーを探し、復活させろ。今すぐ行け!」

 

「はっ!」

 

そう言うとアヌビス、ペルセポネは地上へ降りていった。それを見届けたカオスは傷ついた二人の元へ歩み寄る。そして言う。

 

「処理すると言ってもまだ我は貴様らの能力を知らぬ。殺すのは何やら勿体ないな。」

 

「殺すならとっとと殺しなさいよ!」

 

「ほう、死を覚悟するか。中々勇敢でよろしい。ならばこうしようか。」

 

そう言うとカオスの顔に笑みが浮かんだ。そしてカオスは二人を掴むと自分の目線に合わせた。そして言う。

 

「我が贄となるが良い、比那名居天子に永江衣玖よ。」

 

「な、何をするつもりですか・・・」

 

「何、察してくれれば問題ないよ。」

 

そう言った瞬間、カオスが信じられないくらい大きく口を開いた。それを見た瞬間、二人は逃げようと必死に抵抗するがピクリとも動かなかった。

 

「嫌だ、嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「止めて!」

 

しかし、二人の嘆きは誰かに届く筈もなく、そのまま天子と衣玖はカオスの体内に取り込まれていった。




カオスにやられた天子と衣玖。そして地上に近づくアヌビスとペルセポネ。幻想郷はどうなってしまうのか!?
次作もお楽しみに!


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東方混沌記 オリキャラ設定

クリーフル・・・現実世界の覇王と呼ばれた蛇人間。髪形はリーゼントで青いコートを着ていてズボンは赤く、剣を持っている。自分勝手な性格で気に入らないことは全て放棄する。

 

身長198cm

体重92kg

生年月日不明

年齢不明

 

 

ドールク・・・現実世界の銃王と呼ばれた鰐人間。緑色のコートを着ていて青いズボンを履いた姿をしていて、左手には刀を、右手には拳銃を備えている。仲間思いでクリーフルのために全てを尽くした。

 

身長196cm

体重90kg

生年月日不明

年齢不明

 

 

じ久・・・元人間であったが、過去に魔王軍の実験により、頭に角が生えていて目は赤くギラギラしていて短い手足を持つ。ドールクが全てだと供述するが、本当は魔王軍の元で共に行動してきた麻里のことを思っている。

 

体長160cm

体重60kg

生年月日不明

16歳

 

 

西田悠岐・・・東方王戦録から再び登場。イメージは『カゲロウデイズ』のシンタロー。ユニによって幻想郷へ呼び寄せられたため、一時幻想郷に止まることを決意し、再び霊夢達と敵を倒すことにした。楓とは幼少からの仲でお互いに家族を失っている半人半悪魔。

 

身長170cm

体重65kg

5月31日生まれ

17歳

 

 

出野楓・・・悠岐と同じ半人半悪魔。悠岐達が幻想郷にいた時、六道を制覇し、悠岐との再会の際に見せつけた。イメージは『アカメが斬る!』のアカメ。彼女の持つ刀は氷を自在に操ることの出来る氷龍剣。

 

身長158cm

体重49kg

6月30日生まれ

17歳

 

 

セコンド・・・現実世界の五大王の一人で地王、あるいは帝と呼ばれている現実世界最強の男。イメージは戦国BASARAの足利義輝。時代創世のために熱い伊吹を求めている。

 

身長196cm

体重95kg

11月27日生まれ

30歳

 

 

ビオラ・・・現実世界の女王陛下。権力は五大王の次に高い。『攻撃を受けない程度の能力』とチートな能力を持っている。イメージは『アカメが斬る!』のチェルシー。誰に対しても敬語を用いる。

 

身長164cm

体重52kg

9月16日生まれ

20歳

 

 

カオス・・・かつて光王ゴールド・マーグルによって現実世界から追放された悪魔族の首領。しかし、何者かの手によって幻想郷で復活を果たす。世界を手中に治めようと下部であるアヌビス、ペルセポネを率いて計画を実行していく。イメージはファイナルファンタジーのデスペラードカオスの姿。

 

身長4m

体重500kg

生年月日不明

年齢不明

 

 

アヌビス・・・冥狼神と呼ばれていて、かつては冥界を治めていたがカオスと共に行動していく。イメージはパズドラの覚醒アヌビス。

 

身長186cm

体重80kg

生年月日不明

年齢不明

 

 

ペルセポネ・・・冥界の女神と呼ばれている。アヌビス同様、カオスと共に行動していく。イメージはモンストの進化ハーレーXに杖を持たせた姿。

 

身長160cm

体重50kg

生年月日不明

年齢不明




最近投稿速度が遅くなってきているので、なるべく投稿するのを早くやりたいと思いますのでよろしくお願いいたします。


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第36話 紅魔館奇襲

支配される有頂天。次に支配されるのは・・・。


カオスによって支配された有頂天はあっという間に闇に包まれたカオスの領域となっていた。そこにはカオスの城が建っていた。中ではカオスが玉座に座っていた。そして独り言のように口を開く。

 

「アヌビス、ペルセポネよ。お前達ならすぐに我が指示した場を支配してくれることを期待している。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カオスの命令により、紅魔館へ向かっていたアヌビスは湖の近くまで辿り着く。そして、ある方向を見ながら言う。

 

「あれが紅魔館か・・・。成る程、噂していた通り、紅き月の気配を感じる。」

 

そう言うとアヌビスは湖を飛び越えて紅魔館の目の前に降り立つ。と、彼の目線にあるものが映った瞬間、アヌビスは目を細める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たわね、カオスの下僕。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのはレミリアに妹のフラン、さらにはパチュリー、咲夜、美鈴、小悪魔がいた。その瞬間、レミリアの力により、幻想郷の空が紅い雲で覆われた。それに気にせずアヌビスが口を開く。

 

「成る程、私が来ることを予期していたからこのようにいつでも対応出来たという訳か。そして吸血鬼が苦手な太陽をあの紅き雲で覆い、力を発揮するというわけだな。」

 

「その通りよ、冥狼神アヌビス。この紅魔館の主である私があなたのことを追い払ってやるわ。」

 

「力の差を見せてくれると言うのだな。面白い、是非とも見せてみろ。」

 

そう言うとアヌビスはトトの頭の形をした杖を取り出した。それと同時にレミリアはグングニルを、フランはレヴァーテインを、咲夜はナイフを構え、戦闘体勢に入る。

 

「行きますよ。」

 

先に先陣を切ったのは美鈴だった。彼女はアヌビスの方へ走って向かうと彼の腹にパンチを入れる。

 

「遅い。」

 

そう言うとアヌビスは美鈴の腕に手を乗せ、そのままレミリア達の背後に回る。その瞬間、パチュリーがスペルカードを発動する。

 

「日符ロイヤルフレア!」

 

それを見たアヌビスは杖を前に出し、バリアを作ってパチュリーの攻撃を防ぐ。その瞬間、彼の背後にフランがいて、口を開く。

 

「ギュッとして・・・」

 

「?」

 

「どかーん!」

 

「なっ!?」

 

そう言うとフランは右手に握り拳を作り、アヌビスの顔を殴り付ける。そのままアヌビスはレミリアの方へ飛ばされる。

 

「!?」

 

何かに気づいたアヌビスは目を大きく見開いた。いつの間にか彼の回りには大量のナイフが彼目掛けて放たれた。

 

「くっ・・・」

 

アヌビスはバリアを作ろうとしたがその瞬間に小悪魔が弾幕を放つ。

 

「ぐあっ!」

 

ナイフに夢中になりすぎた彼は弾幕を食らい、そのまま彼の体に大量のナイフが刺さった。さらにレミリアがスペルカードを発動する。

 

「神槍スピア・ザ・グングニル!」

 

彼女の攻撃がそのままアヌビスの方へ向かっていく。そして彼にぶつかった瞬間、激しい爆発が辺りを襲った。フラン達はそれに咄嗟に気づき、避ける。そんな中、レミリアが上がる煙の中にいるアヌビスに言う。

 

「呆気ないわね、冥狼神。あんなにあった自信は一体何処へ行ってしまったのかしらねぇ・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。危なかった、危なかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如背後から聞き覚えのある声が聞こえたため、レミリア達は後ろを振り返る。そこには所々体から血が垂れているものの、平然と立っているアヌビスがいた。それを見たパチュリーが口を開く。

 

「どうして!?さっき小悪魔と咲夜とレミィが殺った筈なのに・・・。」

 

「そこにいる悪魔と人間の攻撃にはやられたものだ。あの時は本当に死にかけたよ。もし吸血鬼の小娘が攻撃を放った瞬間に私が自分の能力を使用していなかったら、間違いなく私は死んでいただろう。」

 

そう言うと彼は自分の胸に手を置いた。その瞬間、彼の体が紫色に光だし、そのまま彼の体の傷が癒えた。それを見たレミリア達は驚きを隠せなかった。そんな彼女達とは別にアヌビスが再び口を開く。

 

「私の能力は『能力を倍にする程度の能力』。つまり、私は攻撃力や速度、防御力を倍にすることが出来る。」

 

「面倒な能力ね。」

 

「少し見てみるか?まずは4倍だ。」

 

そう言うとアヌビスは咲夜の持つものとは異なるナイフを取り出し、そのままレミリアに向かって投げつける。

 

「お嬢様!」

 

その瞬間、美鈴がレミリアの目の前に出て、左腕でアヌビスの投げたナイフを受け止める。その瞬間、美鈴の左腕から血が飛び散る。

 

「美鈴!!」

 

その様子を見たアヌビスが関心したような表情を浮かべ、言葉を発する。

 

「ほう、4倍の速度を見破れるとはな・・・。中々の腕前だ。ならば少し力を入れるとしよう。16倍でお前達に圧倒的な力を見せつけてやる。」




レミリア達に力を見せつけようとするアヌビス。果たしてその力とは!?
次作もお楽しみに!


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第37話 アヌビスの力 紅魔崩壊

紅魔館へ奇襲しに来たアヌビス。それに対抗するレミリア達。勝つのはどっちだ?



場所は変わって人里。ここでは特にカオスの軍勢は奇襲していないため、ここに住む人達にとっていつもの日常を送れているのである。そんな中、ある小屋に住む少女、稗田阿求は窓の外を眺めながら独り言を言っていた。

 

「平和ですね・・・。あの異変から2年が経ってるんですよね・・・。」

 

一人で呟いていた瞬間、彼女の小屋の近くにスキマのような空間が現れた。

 

「?」

 

阿求はてっきり紫が来たのだと思い、スキマに向かって口を開く。

 

「紫さんですか?どうしました?」

 

しかしスキマからは返事はない。聞こえるのは二人の話し声。阿求にとって空間から聞き覚えのない声が聞こえるのは初めてである。彼女は空間へ耳をよく傾けた。

 

「全く・・・お姉様ったら、地上にすぐに着くのに寄り道するから時間が掛かったじゃないですか。」

 

「うふふ、まぁいいじゃない。まだ地上はそこまであのカオスに支配されてる訳じゃないんだし。」

 

空間から出てきたのは紫ではなく、腰まで伸びる金髪に金色の目、襟の広い白い長袖のシャツに青いサロペットスカートを着ている少女と薄紫色の長い髪を黄色のポニーテールを用いて纏めていて赤い瞳に襟の広い白い半袖のシャツ、赤いサロペットスカートを着ている少女が現れた。それを見た阿求は目を細めて二人をじっと見る。阿求にとって二人は今まで見たことがない容姿をしている。そんな中、金髪の少女が口を開く。

 

「依姫、都久親王が言っていたカオスって一体何処にいるの?」

 

「分かりませんよ。都久親王からはカオスの軍勢達を倒せと言われただけであって何処にいるのかは知らされてません。」

 

「困ったわね、それにレイセンも探さないといけないわよね。」

 

「レイセンは私が探します。」

 

「あら、頼もしいわね。じゃあレイセンを探すのは依姫、あなたに任せます。私は地上にある『神社』って場所へ寄り道してるわ。」

 

「ちょっとお姉様!寄り道してる余裕なんて私達には無いんですよ!」

 

「大丈夫、大丈夫。そこへ行ったらすぐにお師匠様の元へ向かうとするわ。久しぶりにあの方に会いたいしね。」

 

「・・・私も、レイセンを見つけたらお師匠様の元へ行きます。」

 

「そうね、そうしましょう。私は神社へ行ってから行くとするわ。」

 

「全く、お姉様ったら・・・。」

 

依姫が言った瞬間、豊姫は先程から小屋から顔を出してこちらを見ていた阿求の方へ顔を向け、口を開く。

 

「すいませーん、そこの方。この地上でオススメの神社とかあるかしら?」

 

「ちょっとお姉様!」

 

豊姫に言う依姫だがそれに気にせずに阿求が豊姫に言う。

 

「そうですね、私がオススメするのはあちらの妖怪の山の麓にある神社でしょうか。」

 

「その神社は何という名前なの?」

 

「守谷神社というのですがそこは参拝客が多く、信仰されている神様、八坂神奈子と洩矢諏訪子は偉大な方でさので是非とも訪れたほうがいいですよ。」

 

「あら、確かその神は土壌神じゃなかったかしら?」

 

「よくご存知で。その通りです。」

 

豊姫と阿求が話している中、何かを思いついた依姫が阿求に言う。

 

「私も聞きたいことがあるのですが・・・。この近くに青い髪の兎を見ませんでしたか?」

 

「青い兎、ですか・・・」

 

兎という言葉を聞いた瞬間、阿求が真っ先に頭に浮かべたのは鈴仙とてゐである。しかし二人は兎ではあるが青い髪ではない。そう思った阿求は依姫に言う。

 

「すいません、私は見ていません。」

 

「そうですか・・・。」

 

「自力で見つけないといけないみたいね。」

 

「ご協力いただき、ありがとうございます。私達はここで失礼します。」

 

そう言うと豊姫と依姫は何処かへ歩いていってしまった。それを見届けた阿求は独り言を呟く。

「あの二方、幻想郷の人じゃない?じゃあ一体何処から・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

阿求と別れた豊姫、依姫は歩きながら話していた。

 

「私は先に神社に行っているから依姫はレイセンを探してから来なさい。」

 

「それは分かったのですがお姉様、お師匠様は何処におられるのか分かっているのですか?」

 

「勿論、分かってるわよ。なんせ、この扇子が教えてくれるのだから。」

 

「そうですか・・・。」

 

「さ、依姫。早く探して来なさい。じゃないとレイセンが危ないわよ。」

 

そう言うと豊姫は守谷神社のある妖怪の山へ歩いていってしまった。それを見た依姫は溜め息をはき、ある方向を見ながら口を開く。

 

「まずはあそこに行ってみようかな・・・。」

 

依姫が向かった場所。そこは幻想郷の多くの人達がある人物を恐れ、近づくことのない場所。それはあの花の妖怪、風見幽香のいる太陽の花畑である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって紅魔館。そこではレミリア達がカオスの下部のアヌビスと戦っていた。

 

「再開する前にお前達にはイメージしてもらいたい。16倍がどれほどの力の差があるということを。」

 

「16倍ね、容易いわ。4倍の4倍だと思えばいいのよ。」

 

「レミリア・スカーレットよ、16倍でもかなりの力の差が現れるぞ。油断していれば殺られる。お前達は今、その状況に陥っている。」

 

「フン、関係ないわ。16倍であろうと何であろうと私はお前を倒すことに集中する。」

 

「面白い、では見せてみるがいい。」

 

そう言うとアヌビスは右手を差し出し、そこに力を込めて槍を取り出した。それと同時にレミリアもグングニルを構える。そしてスペルカードを発動する。

 

「神槍スピア・ザ・グングニル!」

 

「はあっ!」

 

レミリアと同時にアヌビスは持っていた槍を投げる。二人の槍がぶつかった瞬間、レミリアの放ったグングニルが一瞬にして消え、代わりにアヌビスの投げた槍がレミリアの右翼に刺さる。

 

「な、にっ!?」

 

アヌビスの勢いが強すぎたのか、レミリアはそのまま紅魔館の門を破壊し、ロビーで倒れこむ。

 

「お嬢様!」

 

すぐさま咲夜がレミリアの元へと駆け寄る。そんな彼女にパチュリーが言う。

 

「駄目よ咲夜、行っては駄目!」

 

しかし、パチュリーの警告が遅かったのか、咲夜の目の前にアヌビスが急に現れ、そのまま彼女の頭を掴み、地面に叩きつける。その後にアヌビスは口を開く。

 

「愚かな女よ。主のためにすぐに隙を作ってしまうなんてな。」

 

アヌビスが咲夜の頭を押さえつけている中、パチュリーと小悪魔が同時に弾幕を放つ。それを見て呆れたアヌビスが言う。

 

「力の差がありすぎるのが分からぬのか、この愚かな妖怪共がぁっ!」

 

そう言うとアヌビスは再び右手に槍を作り上げるとそのまま二人の放った弾幕を弾いた。その弾かれた弾幕は真っ先にパチュリーと小悪魔に命中する。

 

「パチュリー、小悪魔!」

 

フランが二人の名前を叫ぶ。それを見たアヌビスは笑みを浮かべる。と、フランがスペルカードを発動する。

 

「禁忌レヴァーテイン!」

 

フランはそのままレヴァーテインをアヌビス目掛けて放つ。しかしアヌビスはそれを右手で作ったバリアで防いだ。それを見たフランは驚きを隠せなかった。そんな中、アヌビスが言う。

 

「あらゆるものを破壊するお前でも16倍には到底敵うまい。」

 

そう言うとアヌビスは猛スピードでフランの元へ向かう。

 

「させません!」

 

フランを守ろうと彼女の前に美鈴が立つ。だがアヌビスは彼女を左手で叩き、壁の外まで吹き飛ばした。そして油断したフランの腹を蹴りつけ、レミリアの元まで吹っ飛ばす。

 

「フラン!」

 

レミリアはすぐさまフランの名前を叫ぶ。対するフランは地面に血を吐きながらレミリアを見る。だがそれを邪魔するかのようにアヌビスが二人に弾幕を放つ。

 

「ぐあっ!」

 

「きゃあ!」

 

その瞬間、レミリアはフランとは別の方向に飛ばされた。対するフランはアヌビスの弾幕をくらい、動けなくなっていた。

「フラン!」

 

彼女の名前を叫ぶレミリアとは別にアヌビスがレミリアに言う。

 

「言ったであろう?これが力の差だと。所詮お前のような吸血鬼など私の相手にならぬ。」

 

レミリアは悔しくて何も言い返すことが出来なかった。と、アヌビスがフランの腕を乱暴に掴み、宙吊りにする。それを見たレミリアが口を開く。

「待って!フランに何するつもりなの!?」

 

「お前の妹は私が預かっておこう。いや、お前以外の者全員を預かっておく。返して欲しければ有頂天まで来るがいい。」

 

「う、有頂天、ですっ・・・・て・・・」

 

「私はそこでカオス様と共にお前達が来るのを待とう。では去らばだ。」

 

そう言うとアヌビスは追い討ちをかけるかのようにレミリアに弾幕を放った。その瞬間、レミリアは動かなくなった。それを見たアヌビスはポケットから黒い粒を取り出し、回りに撒く。その瞬間、粒が一瞬にして黒い人の形になった。アヌビスは黒い人形に言う。

「レミリア・スカーレットを閉じ込めろ。他は私の手伝いをしろ。」

 

そう言うとアヌビスは黒い人形を率いてフラン達をさらって何処かへ行ってしまった。その瞬間、幻想郷を覆っていた紅い雲が消えていき、晴天に戻った。




アヌビスの圧倒的な力に敗れたレミリア達。一体どうなる!?
次作もお楽しみに!


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第38話 vsペルセポネ①

アヌビスに敗れたレミリア達。幻想郷はどうなってしまうのか。


場所は変わって玄武の沢。そこにマインクラフトの地獄、ネザーへの扉、ネザーゲートが現れ、そこから霊夢、魔理沙、ユニ、楓の四人が現れた。四人が現世に到着した瞬間、ネザーゲートが粉々に砕け散った。それを見たユニが言う。

 

「ネザーゲートが破壊したということはネザーでネザーゲートが何者かに壊されたに違いないね。」

 

「おいユニ!ネザーゲートが壊されたということは啓介達は帰ってこれないってことじゃないのか!?」

 

「魔理沙、ネザーゲートはスティーブがすぐに作ってくれる。そんなことよりみんな、聞きたいことがあるんだが・・・。」

 

そう言うと楓は少し不安そうな表情で辺りを見回し始めた。それにつられてユニ達も辺りを見回し始める。そして楓が口を開く。

 

「悠岐は何処だ?それに、何故博麗神社じゃなくて玄武の沢へ出たんだ?」

 

その言葉を聞いた瞬間、霊夢、魔理沙は目を大きく見開いた。そんな二人とは別にユニが答える。

 

「恐らく、カオスかアヌビス、ペルセポネの能力で悠岐君は別の場所へ飛ばされたのだと思うよ。それと何故博麗神社じゃないのかは分からないわ。」

 

「別の場所って何処だ!!」

 

そう言うと楓はユニの首襟を掴み、彼女を揺すり始めた。そんな彼女にユニは言う。

 

「痛いよ・・・。それと、悠岐君は幻想郷の何処かにいるのは間違いないよ。さっきから何処かに悠岐君の気配がする。近くはなさそうみたいだけど。」

 

彼女が言った瞬間、楓は安心した表情を見せるとそのまま掴んでいたユニの首襟を放す。そして咳き込む彼女に言う。

 

「ごめん、ユニ。私は冷静じゃなくなっていた。」

 

「大丈夫だよ。人には冷静じゃなくなる時があるしね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達!!何故ここに来ると分かった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如女性の怒声が響いたため、ユニ達はその方向に目を向ける。そこには険しい顔をしてキングウィザースケルトンの頭を持つペルセポネがいた。そんな彼女に楓が言う。

 

「ペルセポネ!悠岐はどうした!!」

 

「悠岐?誰だそいつは。あぁ、お前達のところにいた男か。妾が知っているはずないであろう!!」

 

「なっ!?」

 

「ペルセポネがやったんじゃないってことは、一体誰がやったんだぜ?」

 

「分からない。だが今はとにかく、ペルセポネを倒すことに専念しろ。」

 

そう言うと楓は霊夢、魔理沙にペルセポネの方を向かせる。と、ペルセポネが口を開く。

 

「お前達がいるということは・・・。おい小娘ども、ウィザーの体を返せ!」

 

「ウィザーの体?何を言っているの?」

 

「惚けるな、巫女が!!この玄武の沢にあったはずのウィザーを何処へやったと聞いているのだ!!」

 

「ウィザーを?知らないわよ。私達が来たのはついさっきなんだから。」

 

「なんだと!?では一体誰がウィザーを奪ったと言うのだ!!」

 

「私達が知っていたらすぐに口にしていただろうな。だが、口にしないということは私達は知らない。」

 

「腹立たしい小娘め!もうウィザーなど、どうでもいい!お前達を妾の手で抹殺してやる!」

 

彼女が言った瞬間、突如として空が紅い雲に覆われた。それを見たユニが言う。

 

「レミリアが戦っているんだわ。」

 

「だったら、私達もやらないとなっ!」

 

そう言うと楓は左手に氷柱を作り上げ、そのままペルセポネ目掛けて投げつけた。ペルセポネはそれに対応出来ず、肩に氷柱が刺さった。

 

「ぐっ!?」

 

「どうした?冥界神であるお前が私の攻撃を受けるなど、愚の骨頂ではないのか?」

 

「黙れ小娘めが!!妾は今はわざと受けてやっただけだ!」

 

「本当にそうか?なら・・・」

 

そう言うと魔理沙はスペルカードを取り出し、発動した。

 

「恋符マスタースパーク!!」

 

魔理沙から放たれた攻撃は真っ直ぐペルセポネの方へ向かっていく。だが彼女は避けようとしない。と、ペルセポネが突如鏡のようなものを取り出し、そのまま巨大化させ、魔理沙の放ったマスタースパークを防いだ。

 

「なっ!?」

 

それを見たユニ達は驚きの声を上げてしまう。そんなユニ達とは別にペルセポネが口を開く。

 

「妾の能力は『弾幕を跳ね返す程度の能力』。つまり弾幕使いであるお前達は妾に勝てるはずないのだ!」

 

「そんな道理はないぞ、ペルセポネ。」

 

「なんだと!?」

 

楓の一言にペルセポネは思わず声を上げてしまう。そんな彼女に楓が再び言う。

 

「弾幕が聞かないのであれば物理的ダメージを与えるだけだ。さぁ、行くぞ!」

 

「おう!」

 




ペルセポネとユニ達の戦いが始まる。果たして勝つのはユニ達か、ペルセポネか。
次作もお楽しみに!





今回はこちらの事情で短めになってしまいました。
申し訳ありません。これからは長くします



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第39話 vsペルセポネ②

玄武の沢へ出たしまったユニ達はペルセポネと戦うことに。


自分の肩から氷柱を抜いたペルセポネは氷柱をユニ達目掛けて投げつけた。

 

「無駄だ。」

 

楓が言った瞬間、氷柱が四人とは全く別の方向へ飛んでいった。それを見たペルセポネが口を開く。

 

「小娘、それは一体何の能力だ?妾にとって弾幕の方向を変えられるものなど、聞いたことがあらぬ。」

 

「ペルセポネ、これは私自身の能力じゃない。これは私の身内がくれた能力だ。」

 

「フン、小娘の能力などもうどうでもよいわ。妾には到底及ばぬのだから。」

 

「なんだと!?」

 

そう言うとペルセポネは右手を上に上げた。彼女の右手には何やら紫色のオーラが漂っていた。そして指を鳴らした。

 

「ん?」

 

ユニ達はペルセポネのとった行動を理解することが出来ず、頭を傾げる。その瞬間、ユニ達のいた場所が突如として白爆発が起きた。突然の攻撃だったため、ユニ達は避けることが出来ず、ダメージを受ける。そんな四人にペルセポネが言う。

 

「どうだ?妾の力は。人間ごときが妾に勝てるはずなかろう。」

 

「クソッ、何て力だ・・・。」

 

魔理沙は必死に立ち上がろうとするが、中々立ち上がることが出来なかった。そんな中、よろよろになりながらもユニは立ち上がり、スペルカードを発動する。

 

「剣符アームストライク!」

 

ユニが発動した瞬間、彼女の右側に空間が現れ、その中から緑色のオーラが漂う槍が出てきた。それを見たペルセポネが口を開く。

 

「ゲイボルグの槍か・・・。」

 

「ゲイボルグの槍?」

 

聞いたことのない名前を聞いた霊夢達は首を傾げる。そんな二人に楓が言う。

 

「過去、現世にはクーフーリンという英雄がいた。その英雄が使っていた武器があの槍、ゲイボルグの槍だ。あれもかなりの力を誇っているのだが・・・。」

 

「だが?」

 

「ペルセポネはゲイボルグの槍の力を越えているかもしれないんだ。だから、ユニだけの力で倒せるか心配だ。」

 

そう言った瞬間、楓はユニのいる方向を見る。彼女につられて霊夢達もユニのいる方向を見る。ユニは一人でペルセポネを倒そうと槍を振り回していた。ペルセポネはそれを持っていた杖で防ぐ。そしてペルセポネは杖を思い切り槍に叩きつけた。その瞬間、ユニの持っていたゲイボルグの槍が真っ二つに折れてしまった。

 

「なっ!?」

 

「チッ、やはり無理だったか。」

 

楓が言った瞬間、ペルセポネは杖でユニを殴り飛ばした。そのまま彼女は霊夢達から少し離れた場所に叩きつけられる。

 

「ユニ!」

 

霊夢と魔理沙が彼女の元へと駆け寄ろうとした時だった。

 

「!?」

 

急に動こうとした瞬間、霊夢と魔理沙の体が痙攣し始めたのだ。それを見た楓が二人に言う。

 

「二人ともどうした!?」

 

「体が動かないのよ!」

 

「どういう訳か、体が痙攣してるぜ。」

 

「体が痙攣している?まさか!!」

 

何かを察した楓はすぐさまある方向を見る。彼女が見る方向。そこには不気味な笑みを浮かべるペルセポネがいた。そんな彼女に楓が言う。

 

「ペルセポネ・・・お前の仕業か!!」

 

「ハッハッハ、気がつくのが遅かったようだな、小娘どもよ。妾の白爆発は相手を痙攣させる力があるのだ。」

 

「でもどうして楓やユニには聞かないのよ?」

 

「白爆発にも当たり外れはある。一人、二人当たらないことは既に分かりきっている。」

 

「クソッ、奴を倒さなければ霊夢と魔理沙は動けないって訳か!」

 

彼女が言った瞬間、瓦礫の中からユニが姿を現した。彼女の体は瓦礫によって傷だらけだった。そんな中、ユニがペルセポネに言う。

 

「あなた、こんなことやっていいの?」

 

「・・・人間ごときが何を言う?」

 

「こんなことやってたらあなたのことを思っている冥界神ハデスが悲しむわよ。あなたはそれでもいいって言うの?」

 

彼女が言った瞬間、ペルセポネは思い切り歯に力を入れ、そして大声を発する。

 

「お前達に何が分かる!!」

 

「なっ!?」

 

突然怒鳴られたため、ユニ達は驚きを隠せなかった。そんな四人とは別にペルセポネは険しい顔をして再び言う。

 

「お前達に妾の何が分かると言うのだ!!妾は・・・妾は本来ならば平和な冥界で毎日を過ごしている筈だった。だが、あの女・・・あの女に会ってさえなければ妾はこんな不幸な者にならなかったのに!」

 

「ペルセポネ、まさかお前・・・。」

 

楓が言った瞬間、ペルセポネは冷静さを取り戻し、再び言う。

 

「元々妾は父であるゼウスと母であるヘラの間に産まれた存在だった。妾の他にもアレス、ヘルメス、アルテミス、アポロンがいた。妾を含むこの五人はいつも仲が良かった。だが、我が儘な冥界神ハデスによって妾は冥界に連れていかれ、冥界から出ることの出来ない実を飲まされた。」

 

「・・・・」

 

ユニ達は一言も話さなかった。それに気にせずペルセポネは話を続ける。

 

「妾は父上の元へ戻りたかった。だが、ハデスの元で暮らしている内に、冥界が妾本来のあるべき場所だと考えてしまった。だが、そんな中、あの男が突如として冥界にやって来た。」

 

「ある男、ですって・・・。」

 

「そう、ある男だ。その男は感情も無ければ心も無かった。奴は冥界にやって来ると妾にある薬を提供した。男曰く、この薬は一生幸せになれる薬、だと。妾はすぐに男の言葉を信じ、薬を飲んだ。妾の悲劇が始まったのは薬を飲んだ翌日だった。冥界の魔物が数百匹死んでいたのだ。全ての魔物は内臓をえぐりだされて死んでいた。犯人は分からなかった。だがハデスは犯人をすぐに特定したのだ。」

 

「その犯人ってまさか・・・。」

 

「そうだ、悪魔の小娘。ハデスは犯人は妾と言ったのだ!!妾は冥界魔物には興味がなく、殺す気も無かった。だがハデスは妾が犯人だと言った。妾は何とか殺していないと説得したが無駄だった。そのまま妾は実の効果を消され、冥界から追放された。」

 

「そんな過去があったなんて・・・。」

 

「冥界を追放された妾は何百年ぶりに父上の元へ訪れた。だがその時には父上はいなかった。妾は仲間のアレス、ヘルメス、アルテミス、アポロンを探した。だが彼らもいなかった。そして、母上のヘラも・・・。妾は絶望し、思わず声を上げた。もう妾の場所など無かったのだ。絶望した妾は何を考えたのか、再び冥界へ訪れ、ハデスを殺した。」

 

「なっ!?」

 

「ハデスを殺した、ですって!?」

 

「そうだ、妾にとってハデスは目障りな存在だった。だから妾はハデスの最後を見る前に父上達を何処へやったか聞いた。ハデスはこうこう答えたのだ。『我が全て滅した』と。怒り狂った妾はそのままハデスの息の根を止めてやった。そして妾はあの男を殺そうとした時に幸せが訪れた。ハデスを殺した妾を、カオス様が認めてくださったのだ。そして今の妾がいる。」

 

「・・・・。」

 

「後に妾は気づいたのだ。男が妾に提供した薬、それは不幸が訪れる薬だったのだ。」

 

「ちょ、ちょっと待てよペルセポネさん。あんたはその男に何かしたのか?それじゃなかったらあんたにあんなことをしないだろ!」

 

「そう、妾はハデスによって冥界に住んでいた。ほぼ数百年は冥界にいたから地上には何もしていない。妾に恨みを持つ者がいること自体おかしいことだったのだ。」

 

「じゃあ一体何故・・・。」

 

「分かる筈なかろう!!分かっていれば妾は真っ先にその男を殺しにいっているに違いない。」

 

「ペルセポネ、言いたいことがある。」

 

「何だ、小娘。」

ペルセポネに首を突っ込んだのは楓だった。彼女の右手は震えていた。そして楓は言う。

 

「いくらお前であろうと、こんなことをして誰のためになる!!何か利益はあるのか!?誰か得するとでも言うのか!!」

 

楓が言った瞬間、ペルセポネは彼女の目の前に降り立ち、彼女の腹を殴った。

 

「ぐっ!?」

 

あまりにも急だったため、楓は反応出来ずに腹を抑え、地面に膝をつく。そんな彼女にペルセポネが言う。

 

「余計なお世話だ、小娘。魔物を殺そうとハデスを殺そうと、カオス様に従おうと妾の勝手だろう。お前ごとき小娘が口出しするな。」

 

「・・・さない。」

 

「聞こえぬぞ。もっとはっきり言ってくれないと妾は聞き取れぬ。」

 

「絶対に、お前を許しはしない!ペルセポネ!!」

 

そう言うと楓は氷竜の剣を取り出し、ペルセポネに降り下ろす。それに反応したペルセポネは杖で防ぐ。楓は氷竜の剣を振りながらペルセポネに言う。

 

「お前のことを、思ってくれた人達を、何とも思わないお前を私は絶対に許さない!!」

 

「許す許さないなど、どうでもよい!!お前の好きにしろ!妾は気にせぬ。」

 

そう言うとペルセポネは空いている左手を縦に降り下ろした。その瞬間、楓の体に傷口ができ、鮮血が飛び散った。

 

「なにっ!?」

 

「これも妾の力よ。お前のような人間に力を思い知らせるには好都合なのかもな。」

 

ペルセポネが話している間に楓はスペルカードを取り出していた。そして発動する。

 

「氷界ブリザード!!」

 

その瞬間、楓の周りから吹雪が吹き始めた。それを見たペルセポネは鏡を巨大化させ、吹雪を防ぐ。そして言う。

 

「人間よ、お前は愚か者なのか?妾に特殊攻撃は通用しないと先程証明したではないか。」

 

そう言った瞬間、ペルセポネは楓の目の前に現れた。楓はすぐさま防御体勢に入った。だがペルセポネはそんな彼女の動きを見切り、目の前で弾幕を放った。

 

「ぐはっ!」

 

そのまま楓は10mほど飛ばされ、彼女は地面に倒れる。

 

「楓ちゃん!」

 

そう言うとユニは倒れる楓の元へと駆け寄り、優しく頭を起こした。そして彼女に話しかける。

 

「楓ちゃん、しっかり、大丈夫?」

 

「あぁ、大丈夫だ。」

 

そう言う楓だが、彼女の体は先程のペルセポネの攻撃により、傷だらけになっていた。そんな中、楓が言う。

 

「参ったな、このままじゃ負けてしまう。」

 

「楓ちゃん、一緒に戦おう。そうすれば勝てるかもしれないから!!」

 

「だがユニ、お前も瓦礫によって傷だらけで私は奴によって傷だらけだ。」

 

彼女が言った瞬間、ユニは自分の体を見つめ直す。彼女の体は先程の瓦礫によって傷だらけになっている。そんな中、ペルセポネが言う。

 

「所詮人間は何も出来ない生物なのだ。人間とは弱い存在。だがお前達は中々の腕前だったぞ。」

 

ペルセポネが言った瞬間、楓はゆっくりと立ち上がり、一言発する。

 

「やれやれ、少し私も力を入れていかなければ死んでしまうな。ならばペルセポネ、私はあまりこれを使いたくはなかったが、お前を倒すならば使わせてもらうぞ。」

 

そう言うと楓は自分の喉元に氷竜の剣を当てた。

 

「・・・何をしている?」

 

「楓、何するつもり?」

 

彼女がとった行動を見て霊夢達は全く理解することが出来ずにただ呆然と見ていた。その瞬間、楓は自分の喉元を斬りつけた。




楓がとった謎の行動。果たして何を意味するのか!?
次作もお楽しみに!


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第40話 覚醒、堕天楓

ペルセポネの力に圧倒されるユニ達。そんな中、楓が不可解な行動をとる。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

自らの首に切り傷をつけた楓はあまりの激痛に声を上げる。それを見たペルセポネが口を開く。

 

「お前は何を考えているのだ?人間よ。何故自らの体に傷をつける必要がある?」

 

ペルセポネが言った瞬間、楓は突然叫ぶのをやめ、何事もなかったかのように立ち上がった。

 

「か、楓ちゃん?」

 

ユニが楓に話しかけるが彼女は返事をしなかった。と、ユニが楓を見てあることに気がつく。

 

「楓ちゃん、まさか・・・。」

 

ユニが言おうとした瞬間、楓の腕、足、顔に赤い模様が浮かび上がり、彼女がゆっくりと目を開けると彼女の目は紫色に染まっていた。そんな彼女にペルセポネが驚いた表情で言う。

 

「なんだ、その姿は!?小娘、一体何をした?」

 

ペルセポネが言った瞬間、楓はゆっくりと口を開く。

 

「お前に我が力を教えるつもりなどない。」

 

彼女が言った瞬間、ペルセポネはある違和感を覚えた。そして、心の中で語る。

 

(あの小娘、声が変わった?いいや、変わったのではない。何者かの声と重なっている。それに、口調も変わっている。)

 

少し汗を流すも、笑みを浮かべながらペルセポネは楓に言う。

 

「フン、例えお前がそのような姿になろうとも妾が勝つことには変わりないのだ。」

 

「そうか。では、試してみるがいい。」

 

そう言うと楓はスペルカードを取り出し、発動した。

 

「氷電、凍りついた稲妻。」

 

その瞬間、楓は刀の先をペルセポネに向け、そこから電気を帯びた巨大な氷を飛ばした。それを見たペルセポネは再び鏡を巨大化させ、楓の攻撃を防ぐ。そして言う。

 

「フン、やはりお前は愚か者だな。何故先程から効かない弾幕等を妾に・・・!?」

 

ペルセポネが続きを話そうとした瞬間、ペルセポネの目の前に楓が現れ、そのまま鏡に氷竜の剣を突いた。その瞬間、鏡にヒビが入り、ついには割れた。

 

「なっ!?」

 

「まだだぞ。」

 

そう言うと楓はペルセポネに向かって氷竜の剣を降り下ろす。それを防ぐためにペルセポネは杖を構える。だがペルセポネの杖は楓の一撃により、真っ二つに斬られてしまった。そのまま楓はペルセポネの右翼を切り落とし、蹴り飛ばす。

 

「ゴフッ・・・。」

 

そのまま岩に衝突したペルセポネは地面に崩れるとその場で吐血する。楓はそれを怪しげな笑みを浮かべて見つめる。そんな中、ペルセポネが言う。

 

「おのれ、妾にこれほどの傷をつけるとは、身の程を弁えない者だな。そんなお前は妾が地獄へ葬ってくれるわ!」

 

そう言うとペルセポネは自身の体に力を入れ始める。そして楓の元へと向かっていく。そんな彼女とは別に楓は左手を高く上げ、ある一言を発する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我、堕天の右腕なり。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言った瞬間、彼女の足元に黒い煙のようなものが現れ、中から小さい悪魔から牛の頭をした化け物のようなものも現れた。それらは一斉にペルセポネを凝視した。

 

「な、なんだお前達。妾に何かあると言うのか!!」

 

しかし魔物達は何も言わない。唸り声すら上げない。と、楓がペルセポネに言う。

 

「我の能力は『掟を破る程度の能力』。本来の我は人間。だが時に悪魔にもなれば天使にもなれる。つまり我はこの戦いで1vs1という勝負の掟を破ることが出来る。」

 

そう言うと楓は上げていた左手をペルセポネの方へ向けた。そして言う。

 

「殺れ。」

 

彼女が言った瞬間、魔物達が一斉にペルセポネを襲い始めた。

 

「な、何をする!!」

 

ペルセポネは魔物達から逃れようとする。だが魔物は小さいものがいれば大きいものもいる。そのため、ペルセポネは大きいものに体を掴まれ、身動きが取れなくなる。そんな中、楓が言う。

 

「ペルセポネ、お前には見覚えがあるだろう?ここにいる全ての魔物達を。ここにいる魔物達は全てお前が冥界にいたときにお前が殺したものだ。お前が言ったいた、『殺された』というのは嘘であり、全ての黒幕はペルセポネ、お前だ!」

 

 

「!!」

 

「ど、どういうことなんだぜ?」

 

戸惑う霊夢と魔理沙にユニが冷静に推測したことを二人に話す。

 

「恐らくだけどさっきペルセポネが殺されたって言ってたけど実はそれは嘘らしいみたい。どうして知ってるのかは分からないけれど・・・。」

 

ユニが話している中、ペルセポネが険しい形相をして楓に言う。

 

「嘘だ!!妾は証明できる。殺したのは妾ではないということを!!」

 

「お前には気づいていないようだが魔物の中に我が主がいたのを気づいていなかったようだな。我の主がお前には気づかれないようにお前の行動を観察していてそれをハデスに伝えたのだ!!」

 

「なっ!!まさか、あいつがハデスに伝えたと言うのか!?」

 

「その通りだ。さぁ報いを受けるがよい。魔物を殺した報いをな!!」

 

そう言うと楓はスペルカードを取り出した。そして発動した。

 

「炎氷、燃え盛る氷竜!!」

 

氷と炎のオーラが纏った楓の攻撃が氷竜の剣から放たれ、そのままペルセポネに向かっていく。

 

「ク、くそがぁぁぁぁぁっ!」

 

そのままペルセポネは抵抗するも何も出来ず、そのまま楓の攻撃を食らった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙が無くなったのと同時に楓の目の色が紫色からいつもの赤色に変わり、そのまま楓は目を閉じた。

 

「楓ちゃん!」

 

楓が倒れてしまうことをなんとなく察していたユニはすぐさま彼女の元へと駆け寄り、抱き抱える。そして言う。

 

「楓ちゃん、大丈夫?」

 

「あぁ、少し疲れたな・・・。」

 

身動きが出来ることを確認した霊夢と魔理沙も楓の元へと駆け寄る。そんな中、ユニが楓に言う。

 

「楓ちゃん、さっきのは一体何?」

 

「あれか?あれは『堕天(モードオブサタン)』と言って堕天の王、ルシファーの力を使うことが出来る。」

 

「ということは悠岐も同じ堕天を使えるの?」

 

「使えないことはないと思うが悠岐はまだやり方を知らないんだ。だが、いつか理解してあいつも堕天を使えるかもしれないな。」

 

「すごいな、ルシファーの力を使えるなんて・・・。」

 

「だが魔理沙、使えるのは1日1回だけだ。これ以上はもう使えない。」

 

楓が言った瞬間、突如として幻想郷の空を覆っていた紅い雲が晴れてきたのだ。それを見たユニが口を開く。

 

「・・・レミリアが負けたみたいね。」

 

「そんな!!」

 

「ウソでしょ、あのレミリア達が・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハ、やはりアヌビスには勝てなかったか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然背後から聞き覚えのある声が聞こえたため、四人はすぐに後ろを振り向く。そこには傷だらけであるが立っているペルセポネがいた。

 

「どうして!?さっき楓ちゃんが倒した筈・・・。」

 

驚く四人とは別にペルセポネは再び言う。

 

「アヌビスは妾達にとって必要不可欠な存在。恐らく奴にとって妾など相手にならぬであろう。」

 

彼女が言った時だった。突如上空から何か黒いものがペルセポネの背後に落下したのだ。その勢いでユニ達とペルセポネが吹っ飛ぶ。そして煙の中から現れた者にユニ達は目を細めて口を開く。

 

「・・・カオス。」

 

それを見たペルセポネは安心した表情を浮かべるとカオスの元へ駆け寄り、言う。

 

「カオス様、来てくださったのですね、ありがとうございます。」

 

「・・・・・。」

 

しかしペルセポネが話しかけてもカオスは彼女を見つめるだけで何も言おうとはしない。それに気にせず、ペルセポネが再び言う。

 

「さぁ、共にあの小娘どもを殺してやりましょう。そうすれば妾達に勝機が訪れる筈です。」

 

ペルセポネが言った瞬間、カオスは右手でペルセポネを掴むとそのまま自分の顔の元まで寄せる。そんな彼にペルセポネが言う。

 

「カ、カオス様。これは一体・・・。」

 

「用済みだ、消えろ。」

 

そう言うのと同時にカオスは信じられないくらい大きく口を開いた。そしてその中にペルセポネを入れようとする。そんな中、ペルセポネは抵抗しながら叫ぶ。

 

「嫌だぁぁぁぁぁっ!妾は、妾は食われたくない!!まだ生きて、やるべきことを・・・。」

 

その瞬間、ペルセポネの下半身がカオスの口の中に収まり、そのままカオスは鋭い牙をペルセポネの腹部に刺す。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!痛い痛い痛い!小娘ども、妾を、妾を助けてくれぇっ!」

 

ペルセポネが必死にユニ達に助けを求めるがユニ達はカオスの行動にただ呆然としていて助けてくれる様子ではなかった。

 

「あぁ、やだ。食べられたくない・・・。」

 

最後の一言を発したペルセポネの顔には涙が零れていた。そのままペルセポネの上半身もカオスの口の中に収まった。カオスが顎を動かすごとに骨が砕ける音、肉がぐちゃぐちゃになる音が辺りに響く。そのままカオスはゴクンという音を立てて自分の下部であるペルセポネを食ってしまった。と、楓が言う。

 

「カオス、お前!!」

 

 

険しい形相をする楓とは別にカオスは四人に不気味な笑みを浮かべ、見下しながら言う。

 

「役に立たぬ者は我がどんどん食らう。そして我は今お前達とここで戦うつもりはない。有頂天へ来い。そこでお前達と戦えるのを楽しみにしている。」

 

そう言うとカオスは有頂天へと飛んでいってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさーん、大丈夫ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、カオスが飛んでいったのを見計らったかのように一人の少女が四人の元へと降り立つ。そんな少女に魔理沙が言う。

 

「今さら何の用なんだぜ?文。」

 

今頃と言ってもいいほどちょうど現れた少女、射命丸文は四人の前に降り、言う。

 

「大変です。先程妖怪の山方面でカオスの軍勢が目撃されました。」

 

「何ですって!?」

 

「クソッ、もう奴等が動き始めたのか。悠岐は一体何をしている!!」

 

「とりあえずまずは皆さんの傷の治療をしましょう。先程永遠亭から傷に効く薬を貰ってきましたので、カオスの軍勢を倒すのはそれからにしましょう。」

 

「用意周到ね。でも、文の意見には賛成だわ。」

 

そう言うとユニは楓の隣に腰を下ろした。それと同時に文が二人の前に寄り、傷を癒し始めた。




ペルセポネを食ったカオス。文から伝えられるカオス軍襲撃。果たしてどうなる!?
次作もお楽しみに!


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第41話 幽香vs依姫①

ペルセポネを食ったカオス。文から伝えられるカオス軍の目撃。幻想郷は崩壊の危機に責められる。


※オリジナルスペルカードが出てきますので注意して下さい。



場所は変わって太陽の花畑。そこでは花の妖怪である風見幽香が妖怪の山に襲撃しているカオス軍の様子を見る。そして独り言を呟く。

 

「やってる、やってる。凄いわね、カオスの軍勢は。数人出陣させただけで蹂躙しまくり。楽しそうね。」

 

「ゆ、幽香は何を言っているの?」

 

独り言を呟いた幽香の背後にはカオスの軍勢に怯える少女、リグル・ナイトバグがいた。彼女に気にせず、幽香は不気味な笑みを浮かべて再び口を開く。

 

「嬉しいわ、これだけ多くの雑魚達を殺せるなんてね。数稼ぎにはもってこいの話ね。」

 

「そ、そんなこと言わないでよ。幽香が死んじゃったら私はどうすれば良いのか分からないよ!」

 

「分かってるわよ。今回は紫と勝負をしているの。どっちが多くのカオスの軍勢を倒せるかってね。」

 

「そ、そんなことしないでいいよ。見てよ、あれ。」

 

そう言うとリグルはある方向を指差す。幽香も彼女の指差した方向を見る。そこは太陽の花畑のあまり花の無い場所で青い髪の兎が数人の刀を持った男達に追いかけられていた。兎はひまわりだらけの中に入っていく。彼女に続いて男達も中へ入っていく。そんな中、リグルが再び言う。

 

「あれって迷いの竹林の兎でしょ?私と同い年くらいの子を追いかけて殺そうとするんだから危険だよ。」

 

彼女が言った瞬間、ひまわりの中から斬られた何者かの腕が飛んできた。それを見たリグルが幽香の背後に回り、言う。

 

「ほら、言ったでしょ?やっぱり危険だから辞めようよ。」

 

リグルは幽香に言ったが彼女は先程腕が飛んできたひまわりの場所を目を細めて見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイセン、よく見なさい。死体が1つ、死体が2つ、死体が・・・。」

 

「うわぁぁぁぁ、もう辞めてください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまわりの中から出てきたのは薄紫色の長い髪を黄色のポニーテールを用いて纏めていて赤い瞳に襟の広い白い半袖のシャツ、赤いサロペットスカートを着ている少女が現れた。彼女の背後には先程男達に追いかけられていた兎、レイセンがいた。そして少女は言う。

 

「さて、合流出来たことだし、さっさと雑魚を倒さないとね。」

 

そう言うとレイセンを助けた少女、綿月依姫は祇園の剣を構える。

 

「せいやぁぁぁぁぁっ!」

 

依姫はまず声を上げながら襲いかかる三人の男を斬りつけた。立て続けに来る男達を何の躊躇いもなく斬りつけていく。

 

「す、すごい・・・。」

 

「やぁぁぁぁぁっ!」

 

依姫の戦いを唖然となりながら見ていたレイセンの背後から男4人ほどが同時に襲いかかる。

 

「きゃあ!」

 

その瞬間、依姫は祇園の剣を地面に刺した。その瞬間、地面から刀の刃の部分が現れ、そのままレイセンを襲おうとした男達を串刺しにした。串刺しにされた男達の血がレイセンに飛び散る。そんな中、依姫が口を開く。

 

「やれやれ、都久親王に出撃命令が出されたとはいえ、えらいことになっているわね。」

 

そう言うと依姫は地面に刺した祇園の剣を抜くと前を見て言う。

 

「光栄ね。月人である私が地上のために戦えるなんてね。敵の首も、主の首も、この剣1つで自在って訳ね。」

 

「・・・・・。」

 

依姫の後ろで震えているレイセンに依姫が口を開く。

 

「レイセン、そんな顔しないでほしいわね。一応私、仲間なんだから。」

 

「おりゃぁぁぁぁっ!」

 

そう言った瞬間、数十人の男が一斉に依姫に襲いかかる。

 

その時だった。突如上空から何かが降りてきてそのまま男達を下敷きにしてしまった。

 

「?」

 

煙が無くなった場所には緑の髪に赤い瞳、白のカッターシャツとチェックが入った赤のロングスカートを着ていて、その上にチェック柄のベストを羽織っていて日傘をさしている少女、風見幽香が現れた。幽香の足元には下敷きになった男達がいた。そんな中、幽香が依姫に言う。

 

「あら、ごめんなさいね。ゴミがあったから捨てようと思ったら、間違ってあなたの獲物も捨てちゃったわね。」

 

「・・・どこのうっかり屋さんですかあなたは。」

 

「フフッ、そんな顔しないでほしいわね。あなたの仲間よ。」

 

「・・・・。」

 

「さて、残ったゴミを掃除しなきゃね。」

 

そう言った瞬間、幽香は周りにいた男達を満面の笑みで見つめる。それに怯んだ男達はすぐさま逃げようとする。

 

「逃がさないわよ。さぁ、私のお花達。食事の時間よ。」

 

彼女が言った瞬間、突如として男達の地面から獣の口の形をした花が現れ、そのまま男達を食らっていく。

 

「し、食虫植物だ!!」

 

一人の男が辺りに叫んだものの、すぐに食虫植物に食われてしまう。依姫とレイセンはそれを呆然として見る。そして全員食べられた瞬間、幽香は足元に転がっていた死体の頭を踏みつけ、食虫植物に向けて左手を下ろすけどその瞬間、食虫植物もそれに合わせるように地面の中へ潜っていった。全て潜り終わった瞬間、幽香が再び言う。

 

「よし、掃除完了。これで心置き無く、殺り合えるって訳ね。あなたもそれ、片付けなさいよ。邪魔がいたんでは、あなただって派手に暴れられないでしょう?」

 

「ひぃぃぃぃぃ!」

 

幽香が言った瞬間、レイセンは彼女に怯えてしまい、思わず悲鳴を上げる。そんな彼女とは別に依姫が口を開く。

 

「能天気に人を殺していくとは・・・。随分と頭のイカれたお方のようですね。」

 

「あなただって同じでしょう?同じ存在の目は誤魔化せないってね。本当は、カオスのことなんてどうでもいいんでしょう?血の臭いを嗅ぎつけて、ここにかかってきた、私と同じ、人殺しの目よ。」

 

「・・・・・。」

 

「安心しなさい、どうしても排除出来ない場合は・・・私が排除しておくわよ。」

 

そう言った瞬間、幽香は日傘を閉じ、先をレイセンに向けてそのままレイセンに弾幕を放った。しかし彼女の攻撃は依姫の祇園の剣によって防がれていた。そんな中、依姫が幽香に言う。

 

「なら、当ててみて下さい。次は私のこの胸に。今度はよく狙ってください。外せばあなたの腹に穴が開きますよ。地上の妖怪さん。月の力を甘く見ないほうがいいですよ。」

 

「あら?」

 

「月の技術は地上を遥かに越えています。その力はスキマ妖怪達を追い払ったり、吸血鬼を瞬殺するほどの力なのですよ。そんな存在である私にあなたは勝てると思いますか?」

 

「紫とレミリアがねぇ。だからどうしたと言うの?」

 

「なんですって?」

 

「たかが堕落しているあの子達と戦って勝っても、何の達成感も得られないでしょう?あの子達より戦いを好む私と戦ったほうがあなたにとってもいいと思うのだけれど?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言った瞬間、突如太陽の花畑全体に赤い結界が張られたのだ。それを見た依姫が言う。

 

「こ、これは・・・。」

 

「あらら?これは私の因縁の気配ね。」

 

「奇遇ですね、実は私もこの気配の主に因縁があるのです。」

 

「じゃあこうしない?月人さん。私とあなた、この勝負で勝ったほうがこの結界を張った因縁の相手と戦えるって言うのは。」

 

「面白い、受けてたちましょう。」

 

「そうこなくっちゃ。」

 

そう言った瞬間、辺りに沈黙が漂う。沈黙が漂って数秒も立たない内に幽香と依姫の攻撃が同時に命中する。

 

「ぐっ!」

 

「フッ!」

 

依姫の左肩に幽香の日傘の先が突き刺さり、幽香の頬に依姫の祇園の剣が擦る。二人の命中した箇所から血が流れる。

 

「フフッ。」

 

「フフフ。」

 

しかしそんな状態でも幽香と依姫は笑っていた。それを見ていたレイセンとリグルの体に鳥肌がたち始める。それに眼中もない幽香は日傘を依姫に降り下ろす。依姫はそれを咄嗟にかわし、幽香の背後に移動する。

 

「はぁぁぁっ!」

 

依姫はそのまま幽香を斬りつけようと祇園の剣を振り下ろす。だが幽香は依姫の攻撃を後ろ向きのまま防ぎ、弾く。

 

「くっ・・・。」

 

依姫は後退しながら幽香に弾幕を放つ。幽香はそれを日傘をさして防ぐ。そして弾幕を防いだ後、少し走って依姫に弾幕を放つ。依姫は弾幕を弾いていき、幽香に再び祇園の剣を振り下ろす。

 

「今度こそ!」

 

「させないわよ。」

 

そう言うと幽香は日傘を構え、依姫が祇園の剣を振り下ろしたのと同時に日傘を振る。二人の一撃がぶつかった瞬間、二人は勢いで後ろに吹っ飛ぶ。その瞬間、二人は同時にスペルカードを発動する。

 

「終の神剣ヒノカグツチ!!」

 

「恋符マスタースパーク!!」

 

二人の攻撃がぶつかった瞬間、力が互角だったのか、その場で爆発し、煙が発生する。

 

(さぁ、どこに隠れているのです?)

 

依姫が辺りを見回して幽香を探していた時、突如彼女の背後に幽香が現れた。

 

「なっ!!」

 

目を見開く依姫とは別に幽香は依姫の顔を空いている左手で掴み、地面に叩きつける。

 

「フフッ。」

 

そしてそのまま日傘を依姫に振り下ろす。

 

「くっ!」

 

その瞬間、依姫は地面に祇園の剣を刺した。その瞬間、幽香の背後から刀の刄が現れ、日傘を振り下ろそうとした幽香の右腕に刺さる。

 

「フフッ、これが祇園様の剣の力ですよ。妖怪さん。」

 

しかし幽香は笑みを浮かべたままである。そして彼女は日傘を左腕に持ち替え、そのまま日傘を振り下ろす。

 

「っ!」

 

彼女の攻撃を受ける前に依姫は左腕を前に出す。その瞬間、ゴキッという音が辺りに響いた。

 

「ッ!」

 

その瞬間、依姫は幽香の腹を蹴り、幽香から距離を取った。そして彼女は右手の甲で左腕を抑える。そんな彼女に幽香が言う。

 

「あら、ごめんなさいね。少しやり過ぎたみたい。」

 

(あの妖怪、恐ろしいわね。たった一撃で私の左腕の骨が砕けた。当分私の左腕は使い物にならないわね。)

 

そう心の中で語った依姫は幽香に笑みを浮かべて口を開いた。

 

「中々やりますね、妖怪さん。」

 

「あなたも、かなりの実力ね。」

 

「あなたになら、私の本気を見せてもいいかもしれませんね。」

 

「ウフフ、来なさい。どんどんと相手してあげる。」

 

「さぁ、行きますよ!!」

 




幽香vs依姫。決して出会う筈の無い二人が出会い、そして戦う。二人の戦いの行方は!?
次作もお楽しみに!


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第42話 幽香vs依姫②

幽香vs依姫。結界が張られた太陽の花畑で始まる戦い。


場所は変わって妖怪の山。そこにも多くのカオスの軍勢が奇襲しに来ていた。そんな中、文のいない状態で一人で立ち向かう白狼天狗の少女、犬走椛は戦う。

 

「はぁ、はぁ。文さんはいつ戻ってくるんだろう?早く戻ってきてもらわないと私の体力が持ちません。」

 

そう言うものの、椛は次々と襲いかかってくるカオスの軍勢を斬り殺していく。そんな中、彼女の背後から3人ほどの男が一斉に椛に襲いかかってくる。

 

「なっ!」

 

そのまま椛は目をつぶってしまう。しかし男達は襲おうとしない。気になった椛が目を開けた時には男達は居なかった。

 

「・・・・え?」

 

それだけではない。椛の近くに残っていた他の男達も、彼女が殺していった死体も全て無くなっていた。

 

「ど、どういうこと?」

 

あまりにも突然すぎて彼女は唖然とするしかなかった。そんな彼女の目にある一人の少女が映る。その少女は腰まで伸びる金髪に金色の目、襟の広い白い長袖のシャツに青いサロペットスカートを着ていて右手には扇子が握られていた。

 

「あ、あれは・・・。」

 

椛が口を開いた瞬間、彼女に気づいたのか、扇子を持つ少女、綿月豊姫は彼女を見て言う。

 

「地上では中々見ない天狗さんね。折角だから私のペットにしてあげようかしら。」

 

「ぺ、ペット!?」

 

椛は思わず大声を上げてしまう。なんせ文にもはたてにも誰にも『ペット』と言われたことが無かったからだ。オロオロする椛とは別に豊姫は彼女に口を開く。

 

「まぁいいわ。そんなことより天狗さん、守谷神社に行きたいのだけれど・・・。」

 

「守谷神社ですか?山を少し登ってすぐですよ。」

 

「あら、ありがとう。それじゃあ、カオスの軍勢倒すの頑張ってね。」

 

そう言うと豊姫は呑気に鼻歌を歌いながら守谷神社の方へ歩いていってしまった。その瞬間、何かに気づいた椛が豊姫の後を追おうとしたが既に豊姫のの姿は無くなっていた。

 

「あの人、さっきカオスの軍勢って言ってた。まさか・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依姫は祇園の剣を高く上にあげると空を見上げて大きな声で言葉を発する。

 

「天明の神よ!今強き妖怪を倒すために、私の祇園の剣に力を与えたまえ、大国主命(おおくにぬしのみこと)!!」

 

そう言った瞬間、空に紫色の雲が渦巻き、その中心部から紫色の雷が依姫の持つ祇園の剣に纏った。それを見た幽香は笑みを浮かべて言う。

 

「大国主命、霊夢が使いやすいとか言ってよく呼び寄せて力を借りている神ね。」

 

「勿論、私にとっても使いやすいですよ。ですが、博麗の巫女より私のほうが威力は高め。さぁ、かかってきてください。」

 

「あら、いいのね。それじゃあ遠慮なく行くわよ!」

 

そう言うと幽香は猛スピードで依姫の元へ向かっていく。

 

(何もしない?)

 

一瞬躊躇った幽香だがそのまま日傘を依姫に振り下ろす。その瞬間、依姫はゆっくりと幽香の攻撃を防ぐ。

 

「なっ!?」

 

その瞬間、幽香は何か違和感を感じ、思わず声を上げてしまう。そんな中、依姫が笑みを浮かべながら彼女に言う。

 

「どうしました?私からすれば小さな虫がぶつかった感じしかしませんよ!」

 

そう言うと依姫は祇園の剣を地面に刺すと右手で幽香の腹に発勁を食らわす。

 

「ぐっ!!」

 

発勁を食らった幽香は10mほど地面を滑らせて止まる。

 

「ゲホッ、ゲホッ・・・。」

 

止まることが出来たものの、幽香はその場で吐血する。そんな彼女に依姫が口を開く。

 

「大国主命は私の切り札と言ってもいいほどの力を誇ります。しかし制限時間が10分しかありません。ですのであなたとの戦いも10分以内に終わらせます。」

 

そう言うと依姫は猛スピードで幽香に向かっていく。それを見た幽香は日傘でなんとか依姫の攻撃を防ぐ。

 

「フフッ。」

 

「なっ!?」

 

依姫が力を入れた瞬間、幽香の体が後ろへ大きく後退する。それを見ていたレイセンが口を開く。

 

「流石は依姫様。あんな妖怪にも圧倒的な力を誇ってらっしゃいます。依姫様ならあんな妖怪なんて余裕だわ!」

 

レイセンに対してリグルは不安そうな表情を浮かべて口を開く。

 

「どうしよう、幽香が死んじゃう。」

 

二人が言葉を発する中、依姫が祇園の剣を見ながら心の中で語った。

 

(もう4分も経過している。残りあと6分しかない。6分の内にあの花の妖怪との戦いを終わらせないと・・・)

 

その瞬間、幽香に向かってリグルが大声を上げた。

 

「幽香、頑張って!!死なないでよ!!」

 

彼女が言った瞬間、依姫が笑みを浮かべながら幽香に言う。

 

「良かったですね、あなたに応援してくれる方がいて。」

 

少し馬鹿にしている感じで言った依姫とは別に幽香は心の中で独り言を語る。

 

(リグル・・・。私も頑張らないといけない。なのに私の攻撃が奴には通らない。一体どうして・・・!!まさか・・・)

 

その瞬間、幽香はふらつくもゆっくりと体を起こし、依姫と対峙する。そして口を開く。

 

「さ、続けましょう。」

 

「そうこなくては面白くありません。さぁ、続けましょう。」

 

そう言うと依姫は先ほど同じように幽香に猛スピードで向かっていく。幽香も依姫に向かっていく。そして日傘と祇園の剣をぶつけ合う。互いに武器をぶつけながら依姫が口を開く。

 

「あなたの力はその程度でしたか?私には到底及びませんよ!」

 

「流石は月人さんね。地上の技術を大きく上回っている。」

 

その瞬間、依姫は幽香に突きを食らわそうとする。それを見た幽香が口を開く。

 

「ウフフッ、あなたがそれなら私はこれで行くわよ。」

 

そう言うと彼女は空いている左腕で依姫の攻撃を受け止めた。幽香の左腕からは鮮血が飛び散る。それに気にせず幽香は日傘で依姫の骨が砕けた左腕を殴りつける。

 

「ぐっ!?」

 

一瞬声を上げてしまう依姫だがそれでも幽香の左腕から祇園の剣を抜くとそのまま幽香の腹を斬りつけた。

 

「チッ・・・。」

 

幽香はすぐに日傘を振り下ろそうとしたがその瞬間、依姫の左足の蹴りが幽香の腹に命中していた。

 

「がはっ!」

 

そのまま幽香の体がくの字を描いて結界の端まで飛ばされ、結界にぶつかる。頭を強く打ったため、彼女の頭からは血が垂れ、そしてその場で吐血する。膝をつく彼女とは別に依姫が彼女の元へ行き、口を開く。

 

「呆気ないですね、地上の妖怪さん。あれほどの自信は一体何処へ消えたのです?」

 

「・・・・。」

 

「無言、ですか。まぁ、それも1つの答えですね。何も言い残すことはない。そう言っているのに値しますからね。」

 

そう言うと彼女は祇園の剣を高く上げた。そして幽香を見ながら言う。そして口を開く。

 

「さらばです、強き妖怪さん。あなたとの戦いは忘れません。」

 

そう言うと依姫は祇園の剣を振り下ろした。その瞬間だった。幽香の左手が依姫の祇園の剣を掴んだのだ。その瞬間、彼女の左手から血が垂れ始める。

 

「なっ!?」

 

それを見た依姫は思わず声を上げてしまう。そんな彼女に幽香が言う。

 

「あらあら、どうしたの月人さん。さっきよりも速度が落ちてるじゃない。」

 

「馬鹿な!大国主命の力を纏った祇園様の剣を受け止めるですって!?」

 

「あら、あなたさっき言ったわよね?10分しかないってね。」

 

「!!まさか!」

 

時間切れ(タイムオーバー)よ。」

 

その瞬間、幽香が顔を上げた。彼女の顔は不気味な笑みを浮かべていた。

 

「!!」

 

依姫がそれに怯んだ瞬間、幽香は依姫を日傘で殴り飛ばしていた。




幽香の一撃が依姫に炸裂。果たした勝負の結末は!?
次作もお楽しみに!


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第43話 幽香vs依姫③

大国主命の力を使う依姫だが、時間切れになってしまい、幽香に反撃を食らう。


場所は変わって玄武の沢。そこではペルセポネとの戦いで傷ついた体を癒していたユニ、霊夢、魔理沙、楓と彼女達の元へ情報を伝えに来た文がいた。傷を癒している中、魔理沙が口を開く。

 

「なぁ、楓。堕天(モードオブサタン)ってどこで覚えたんだ?」

 

「覚えるも何もあれはルシファーに教えてもらったものだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユニ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、馬に乗った青年、悠岐がユニ達の元へとやって来た。それを見た霊夢が言う。

 

「あんた、その馬どこで・・・」

 

「ついさっきこの辺り(妖怪の山)歩いていたら、いたからすぐに飼い慣らした。」

 

「つ、強い。」

 

「ところで悠岐、他の場所はどうなっているか分かるか?」

 

「今のところ、幽香と依姫が戦っている。」

 

「ど、どうして幽香と依姫が?いや、どうして依姫が地上に来ているの!?」

 

「分からない。だが、月で何か言われたのは違いないな。それに、レミィ達もやられたし、有頂天が本来の有頂天ではなくなった。」

 

「つまり、どういうこと何ですか?」

 

「カオスに占領されたんだよ。」

 

「悠岐君、これからどうするつもりなの?」

 

「生憎、俺は空を飛べないからな。紅魔館へ行き、レミィ達を助けにいく。」

 

「待て悠岐、私も行く。」

 

「楓ちゃん、堕天(モードオブサタン)を使った後なのに大丈夫なの?」

 

「戦えないことはない。」

 

「楓、無理するなよ。」

 

「分かってる。」

 

彼女が言った瞬間、悠岐は楓に右手を伸ばした。それを見た楓は彼の手を取り、馬に乗る。そして悠岐はユニ達を見て言う。

 

「カオスのことはお前達に託すぞ。必ず、倒してくれよ。」

 

「えぇ、分かったわ。」

 

「がってんだぜ!」

 

「任せて!!」

 

三人が言った瞬間、悠岐と楓は笑みを浮かべるとそのまま紅魔館へと馬を走らせていった。それを見た文が三人に言う。

 

「では私はここで失礼します。みなさんの無事を祈ります。」

 

そう言うと文は何処かへ飛んでいってしまった。ユニ達はそれを黙ってみていた。そんな中、魔理沙が二人に言う。

 

「もう少し傷を癒したら有頂天へ行こうぜ。」

 

「分かったわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の花畑では幽香の一撃を食らった依姫が結界にぶつかり、地面に崩れる。そんな彼女に幽香が笑い声を上げながら言う。

 

「アハハハハハ!あなたは私が何も考えずに戦ってたと思っていたの?甘いわねぇ、ちゃんと10分経つまで時間を稼いでいたのよ!気づかなかったでしょう?」

 

「くっ・・・。」

 

「それにあなたは気づいているのか知らないけれど地上の重力は月の重力の6倍。つまりあなたは月で戦う時より6倍体力を消費するのよ!!」

 

幽香が言った瞬間、依姫は心の中で語った。

 

(馬鹿な、あんな乱暴なやり方で計画的にされていたなんて・・・完全に油断していた。それに大国主命の力を使ってしまった今、私に切り札はない。力で押しきらないと。)

 

そう言うと依姫は幽香に対抗すべく祇園の剣を振る。しばらく辺りに幽香の日傘と依姫の祇園の剣がぶつかり合う音が響く。そして二人の攻撃が同時に当たる瞬間、二人の体が同時に後退する。二人は態勢を整えて地面に着地する。

 

「はぁ、はぁ、ウフフ。」

 

「はぁ、はぁ。」

 

息が荒くなり、頭から血が垂れるも笑みを浮かべる幽香と真剣な表情をして先程の幽香の攻撃により頭から血が垂れる依姫は互いに見つめ合っていた。そんな中、幽香が言う。

 

「中々決着がつかないわね、もうここで切り上げちゃおうかしら?」

 

「いいえ、まだ切り上げるつもりはありません。決着がつくまで戦います。」

 

「そう、ならさっさと殺りましょう。」

 

「・・・。」

 

そう言うと幽香は日傘を構える。それと同時に依姫も祇園の剣を構える。そして二人同時に駆け出す。

 

「はぁぁぁぁぁッ!」

 

「ウフフッ。」

 

結界の中であるのにも関わらず幽香と依姫は幻想郷を破壊するような勢いで武器をぶつけ合う。二人が武器をぶつけ合うのと同時に結界がピシピシと音を立て始める。

 

「アハッ!」

 

依姫の祇園の剣を下に弾いた幽香は彼女の頭を日傘で殴りつける。その衝撃で依姫の頭から鮮血が飛び散る。

 

「くっ!」

 

負けじと依姫も幽香の腹を横に斬りつける。しかし彼女は痛がる様子もなくただ笑って依姫に攻める。

 

「まだまだよ!勝負(ゲーム)はこれからが本番よ!」

 

「えぇ、勿論ですとも!!」

 

初めてだ。依姫にとって戦うことがこんなにも楽しいと感じることなんてなかった。月の都での修行、レミリア達の奇襲の時など、つまらないものだった。だが幽香との戦いにより、彼女にも戦うことの楽しさを理解した。彼女と戦っている時の依姫の顔には笑みが浮かんでいた。

 

「これで終わりよ!」

 

「行きます!!」

 

二人が言った瞬間、二人の攻撃がぶつかり、幽香と依姫がすれ違う。すれ違う時に幽香と依姫は互いに見つめ合う。

 

「くっ・・・。」

 

「フッ・・・。」

 

その瞬間、幽香の肩から鮮血が飛び散る。それと同時に依姫の背中から鮮血が飛び散る。その瞬間、幽香と依姫は互いに武器を地面に落とし、口を開く。

 

「中々強いじゃない、月人さん。」

 

「あなたこそ、私が今まで戦った中で一番強いですよ。」

 

「こ、この、戦いは・・・。」

 

「せ、二の次(セカンドラウンド)としま・・・。」

 

その瞬間、二人は同時に地面にうつ伏せで倒れ、力尽きた。それと同時に太陽の花畑を覆っていた結界が一瞬にして消えてしまった。その瞬間、幽香の元にスキマが展開し、依姫の元に一人の女性が寄る。幽香の元に来たのは妖怪の賢者、八雲紫で依姫の元に来たのは彼女の師匠ではる八意永琳だった。依姫を担いだ永琳が紫に言う。

 

「妖怪さん、これは一体どういうことなの?どうして地上に来る筈のない依姫が来ていてその子と戦っていたの?」

 

「さぁ、それは私にも分かりませんわ。けど、幽香からその子に戦いを申し込んだのは確かね。」

 

「月の力と相討ちなんて・・・。恐ろしいわね、風見幽香。それにしてもよく二人が戦っている時に結界が壊れなかったわね。」

 

「あら、あの結界は私が張ったものではないわ。」

 

「・・・え?」

 

「あれは恐らく私達の身内か、幻想郷以外の人が張ったものだと思うわ。」

 

「私達の身内?それって一体・・・?」

 

「調べておく必要があるけれど今はそんなことをしている暇は無いわ。さっさとこの二人を治療し、カオスの下僕達を倒してもらいましょう。」

 

「えぇ、そうね。」

 

そう言うと永琳は依姫を担いだまま永遠亭へと飛んでいってしまった。それを見た紫は幽香を抱き上げ、そのままスキマの中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人がいなくなった瞬間、太陽の花畑に残されたレイセンとリグルはある一人の男を見る。男は辺りを見回していて何もしない。その瞬間、男は一瞬にして消えてしまった。それを見たリグルが言う。

 

「い、今の男の人ってまさか・・・。」

 

何かを察したリグルはそのままミスティアのいる迷いの竹林へと飛んでいってしまった。それと同時にレイセンも言う。

 

「あの人は確か豊姫様と一緒にいらっしゃった筈の男の人・・・。」

 

何かに気づいたレイセンはそのまま豊姫が向かっている妖怪の山へと走っていった。




幽香と依姫の戦いは相討ちに終わった。しかしもう1つの場所で新たなる戦いが!?
次作もお楽しみに!


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第44話 諏訪子vs豊姫①

幽香と依姫の戦いは相討ちに終わった。しかし新たな戦いが幕を開ける。


場所は変わって守谷神社。そこではカオスの軍勢に備えて東風谷早苗、八坂神奈子、洩矢諏訪子が準備をしていた。そんな中、神奈子が諏訪子に言う。

 

「我と早苗は妖怪の山周辺に群がるカオスの軍勢達を殺ってくる。諏訪子はここに残って襲いかかるカオスの軍勢達を殺ってくれ。我はまだ未熟な早苗を鍛えるために付き添いで行く。」

 

「分かったわ。二人とも無茶しちゃだめよ。」

 

「はい、分かっています。諏訪子様も無茶はされないで下さいね。」

 

そう言うと早苗は神奈子と共に妖怪の山へと飛んでいってしまった。それを見届けた瞬間、タイミングを見計らったかのように次々とカオスの軍勢がやって来た。それを見た諏訪子は溜め息を吐き、言う。

 

「さて、雑魚を倒していくか・・・。早苗と加奈子は何処かへ行っちゃったし。」

 

そう言った瞬間、一斉にカオスの軍勢の男達が諏訪子に襲いかかる。

と、その時だった。突如男達の姿が一瞬にして消え、彼らの持っていた武器が地面に落ちる。

 

「!?」

 

それを見た諏訪子は驚きを隠せず、思わず声にならない声を上げてしまう。

 

「驚いた?まぁ、地上の者ならそうなるかもね。」

 

その瞬間、奥から扇子を持った少女が微笑ましい笑みを浮かべてやって来た。そんな彼女に諏訪子が言う。

 

「・・・あんた誰?幻想郷では随分見ない顔のようだけど・・・」

 

「地上外の者って言えばいいかしらね?」

 

「現世から来た人?」

 

「残念、正解は月の都よ。」

 

「月の都?あぁ、確かそこであの吸血鬼がやられたって言ってたわね。」

 

「あのスキマ妖怪もこの私に敗れたわよ?」

 

「自慢してるようにしか聞こえないけど・・・。で、あんたはどうしてここに来たのよ?」

 

「簡単な話よ。この幻想郷巡りってところかしらね。」

 

「嘘憑いてるわね?もし幻想郷巡りが目的ならどうしてカオスの雑魚達を倒したの?」

 

「嘘が通じないなんてね・・・。あら、よく見るとあなたは陛下である月夜見が言っていた土壌神じゃない。全く気づかなかったわ。」

 

扇子を持った少女、綿月豊姫の言葉に腹が立った諏訪子は表情を急変させて口を開く。

 

「遠回しにチビって言ってるの、腹立つんだけど。」

 

「あら、ごめんなさいね。地上のマナーとかよく分からなくて。」

 

「喧嘩売ってるつもりなの?」

 

「そういうつもりではないけれど、丁度いい機会ね。」

 

「?」

 

「折角久しぶりに地上に来たんだからスキマ妖怪や吸血鬼以外の人と戦いたいわね。」

 

「それは私に殺り合おうって言ってるの?」

 

「そう聞こえた?」

 

「いいわ、やってあげようじゃない。私を馬鹿にしたことを後悔するがいい。」

 

「ウフフ、期待してるわね。スキマ妖怪よりも楽しい戦いを。」

 

豊姫が言った瞬間、諏訪子は鉄の輪を取り出す。そんな彼女に関わらず豊姫は笑みを浮かべている。それを見た諏訪子は心の中で語る。

 

(奴は何を企んでいるというの?全く攻撃しようとしない。まずは様子見で攻撃してみるか。)

 

そう言うと諏訪子はスペルカードを取り出した。そして発動する。

 

「土着神手長足長さま!」

 

発動した瞬間、諏訪子の背後から身体中茶色で手足が長い巨人、手長足長が現れた。それを見た豊姫は少しびっくりしたような顔をして口を開く。

 

「あら、流石土着神ね。こんな大きな巨人を呼び寄せるなんてね。でも、こんなのじゃ物足りないわ。」

 

そう言うと豊姫は扇子を開き、彼女に向かってくる手長足長に向かって仰いだ。その瞬間、手長足長が先程のカオスの軍勢と同じように一瞬にして消えてしまった。

 

「何ッ!?」

 

それを見た諏訪子は思わず声を上げてしまう。そんな彼女とは別に豊姫は言う。

 

「月の兵器であるこの扇子は、物体を素粒子に変えることが出来るのよ。それが例えあなたがさっき召喚した巨人みたいにね。」

 

そう言うと豊姫は一瞬にして諏訪子の目の前に現れるとそのまま扇子で諏訪子を殴り飛ばした。

 

「ぐはっ!」

 

そのまま諏訪子は地面に転がりながら神社にぶつかる。そしてゆっくりと起き上がりながら吐血する。そんな彼女に豊姫が再び口を開く。

 

「残念ね、私はただ参拝に来ただけなのに勝負をしなきゃいけないなんてね。」

 

「じゃあなんで普通に戦ってるのよっ!」

 

「あなたが私に攻撃してくるからでしょ?」

 

豊姫が言った瞬間、彼女の言葉に再び腹が立った諏訪子は声を上げながら豊姫に向かっていく。

 

「調子に乗るなぁぁぁぁっ!」

 

諏訪子は鉄の輪を使って豊姫を殴ろうとするが豊姫は彼女の攻撃を扇子で容易く防ぐ。そんな彼女に豊姫が言う。

 

「そんなに激しく動きすぎると後に疲れていって体力無くすわよ?」

 

「そんなのどうでもいいっ!私はあんたを倒すことだけを考える!!」

 

「成程、それじゃあ私もガチにならないと。エリュシオンにまた殺られないようにね。」

 

豊姫が言った瞬間、彼女の言葉に何か疑問に思った諏訪子は心の中で語る。

 

(あいつ、今エリュシオンって・・・。奴は何者だ?あいつが話す限りでは味方ではなさそうね。でもどうして・・・)

 

心の中で語っていた時、豊姫が諏訪子の目の前に現れ、そのまま彼女の顔を扇子で叩く。その瞬間、彼女の被っていた帽子が吹っ飛ぶ。

 

「隙有りね。」

 

「?」

 

諏訪子が言った瞬間、突如として豊姫の足元から白い肌に赤い目をした蛇が現れ、そのまま彼女の足に噛みついた。

 

「・・・ッ!」

 

すぐに豊姫は蛇を振り払い、扇子で仰いで素粒子にする。それを見た諏訪子が彼女に言う。

 

「私の蛇を意図も簡単に素粒子にするなんて・・・。流石月人ね。」

 

「いやいや、あなたも十分強いと思うわよ土着神さん。まぁ、私の勝手な想像だけどね。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、諏訪子はスペルカードを取り出し、発動する。

 

「緑石ジェイドブレイク!」

 

彼女の放った攻撃は豊姫に向かっていく。彼女はそれを扇子で仰いで素粒子に変えると一瞬にして姿を消した。

 

「何処だ、どこにいる!!」

 

そう言った瞬間、彼女の背後からスキマのような空間が現れ、そこから豊姫が姿を現した。

 

「なっ!?」

 

「ウフフ。」

 

急な攻撃だったため、諏訪子は対応出来ずに豊姫の一撃を再び食らう。

 

「うっ!」

 

そのまま諏訪子は地面に崩れ、再び吐血する。そんな彼女に豊姫が笑みを浮かべて言う。

 

「残念ね、土着神さん。私はあなたに期待していたんだけれど、期待外れだったわ。まぁ、あの時の闇の青年よりは相手になったけれどね。」

 

「・・・・。」

 

豊姫が言っても諏訪子は無言のまま顔を下に俯いたままになる。そんな彼女とは別に豊姫が言う。

 

「・・・・どうやら、覚悟が出来たみたいね。それじゃあ、終わりにしましょう。」

 

そう言うと豊姫は空いている左手で諏訪子の頭を掴み、無理矢理宙に浮かせた。今彼女は豊姫によって頭を掴まれ、宙吊りの状態になっている。そんな彼女に豊姫が言う。

 

「じゃあね、土着神さん。」

そう言うと豊姫は扇子を開き、諏訪子に構える。そしてそのまま振り下ろした時だった。

 

「!?」

 

突如として豊姫の体に何かが生じた。その瞬間、諏訪子の顔には笑みが浮かんでいた。そんな彼女に気づかずに豊姫は彼女を放してしまう。

 

「うっ、ゲホッ、ゲホッ。」

 

その瞬間、豊姫は胸を押さえながら必死に咳き込み、その場で吐血する。そんな彼女に諏訪子が言う。

 

「あんた、呑気に戦いすぎなのよ。そんなんだから私の策略が読めないの。」

 

「あなたの、策略?」

 

「そう、あんたは気づいていないみたいだけれどね。少し待って少しは気づくかと思っていたんだけれど全く気がつかないんだもの。折角だからあんたに教えてあげようかしら?」

 

そんな彼女の表情は先程とは全く違う険しい顔ではなく、余裕の笑みが浮かんでいた。




突如苦しみだした豊姫。そして笑みを浮かべる諏訪子。一体彼女の身に何が!?
次作もお楽しみに!


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第45話 諏訪子vs豊姫②

始めは豊姫の攻撃に苦しむ諏訪子であったが途中である策略を立てて豊姫を驚愕させる。


「私が立てた策略、それはさっきあんたに噛みついた白蛇が源よ。」

 

「あの時に私に噛みついた白蛇が源?最初は何も感じなかったけれど、まさか!!」

 

「そう、あの蛇には噛みついた者の体力を徐々に削っていくという猛毒(スネークポイズン)があるの。あんたはそれに気づかずに戦い、気づかぬ間に体力が削られていたのよ。」

 

「そ、そんな・・・・そんなことが・・・。」

 

「出来るわよ。呑気に戦うあんたには到底出来ないと思うけれどね。」

「ち、調子に乗るんじゃないわよ!!」

 

「調子に乗ってたのはあんたのほうでしょ?」

 

「チッ!」

 

舌打ちした瞬間、豊姫は再び姿を消した。だが諏訪子は冷静に辺りを見つめる。

 

(捉えた。)

 

心の中で語った瞬間、豊姫は先程と同じように諏訪子の背後からスキマのような空間を展開させ、彼女に攻撃する。

 

「甘いわよ。」

そう言った瞬間、諏訪子は豊姫のいる後を振り返り、そのまま彼女の腹を蹴り飛ばした。

 

「ぐはっ!?」

 

そのまま豊姫は神社とは別の方向にある木々をなぎ倒していく。それを見た諏訪子は彼女に言う。

 

「私が二度も同じ手に引っ掛かるとでも思ってたの?」

 

そう言うと諏訪子は木々に倒れる豊姫の元へゆっくりと近づく。その瞬間に豊姫は諏訪子に弾幕を放つ。

「っと!」

 

それに咄嗟に気がついた諏訪子はバック転をして彼女の攻撃を回避する。豊姫は自分の帽子が落ちていることを気にせずに諏訪子に近づきながら言う。

 

「最高ね、土着神さん。私は今まであなたのような人と戦ったことは無いわ。たくさん楽しませてもらうわよ。」

 

そう言うと豊姫は扇子を閉じるとそのまま諏訪子の方へ向かっていく。諏訪子も鉄の輪を取り出して彼女に対抗する。二人で打ち合っている中、豊姫が言う。

 

「さっきよりも動きが鈍くなってるんじゃないかしら?」

 

「それはこっちの台詞よ。あんただってさっきよりも動きが鈍くなってるわよ。」

 

そう言うと諏訪子は空いている左足で豊姫の腹部を蹴りつけた。

 

「ぐっ!?」

 

一瞬声を上げるものの、豊姫はすぐさま諏訪子の右腕に向かって扇子で殴りつける。その瞬間、辺りにゴキッという音が響く。

 

「・・・ッ!」

 

その瞬間、諏訪子は声にならない声を上げ、豊姫を蹴った後に腕を抑える。それを見た豊姫が諏訪子に言う。

 

「そろそろ、互いに動きが鈍くなってるわね。もうそろそろ終わりにしましょうか。」

 

「良いわよ、月人を越えてやる!」

 

そう言うと諏訪子は鉄の輪を構える。それに対して豊姫は扇子を構える。

 

「行くわよ、土着神!!」

 

「来なさい、月人!!」

 

二人が同時に声を上げた瞬間、二人は同時に地面を蹴り、武器を打ち合う。力は少し豊姫が押していたが、先程の猛毒の効果により、途中で彼女の動きが乱れる時があった。

 

(よし、もらった!!)

 

そう確信した諏訪子はスペルカードを取り出し、発動した。豊姫との戦いを終わらせるために。

 

「蛙符血塗られた赤蛙塚!!」

 

彼女から放たれた攻撃は真っ直ぐ豊姫に向かっていく。その瞬間、豊姫はスキマのような空間を出現させ、空間の中へ入り、諏訪子の放った攻撃を避ける。

 

「何ッ!?」

 

突然自分の目の前から豊姫が姿を消したため、思わず声を上げてしまう。そんな彼女とは別に豊姫は諏訪子の頭上に空間を展開させ、そのまま諏訪子に向かっていく。

 

「し、しまった!!」

 

「終わりよ、土着神!」

 

そう言った瞬間、豊姫の扇子による一撃が諏訪子の頭を捉えていた。それを食らった諏訪子は頭から血を流し、そのまま倒れた。それを見た豊姫はフフフと笑い、言う。

 

「どうやらこの勝負、私の勝ちみたいね。やはり地上の力は月の力には及ばなかった。また出直してきなさい。」

 

そう言うと豊姫は足を引きずりながら神社を出ようとした。

 

「うっ!?カハッ、ゲホッ、ゲホッ。」

 

だがその瞬間、胸に再び何かが生じ、再び地面に吐血した。その瞬間、彼女は倒れている諏訪子の方を見る。僅かだが彼女の顔には笑みが浮かんでいた。

 

「なる、ほど・・・。この力、は・・・私のっ、力が、尽きるまで、続、くってわけ・・・ね・・・。」

 

そう言うと豊姫は猛毒に耐えきれなくなり、そのまま地面に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諏訪子!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるでタイミングを見計らったかのように妖怪の山に行っていた神奈子と早苗が戻ってきた。すぐさま二人は倒れている諏訪子の元へとやって来る。

 

「ひどい傷だね。至急手当てをしないと・・・?」

 

続きを言おうとした瞬間、神奈子の目線に倒れるもう一人の少女、豊姫が移った。それを見た早苗は神奈子に言う。

 

「彼女は綿月豊姫。海と山を繋ぐ月の都の姫様です。」

 

「そんな奴と諏訪子は互角の勝負だったと言うのかい?」

 

「そ、そうみたいですね。」

 

「早苗、諏訪子をよろしくね。」

 

そう言うと神奈子は抱えていた諏訪子を早苗に手渡し、倒れている豊姫の元へと歩み寄る。そんな彼女に早苗が言う。

 

「気をつけてください、神奈子様!何をやってくるか分かりきったことじゃありません。」

 

「諏訪子との戦いで奴は既に戦力を失っている。今の奴が私に敵うとは思えないけどね。」

 

そう言うと神奈子は豊姫の近くまで来ると彼女の側でしゃがみ、彼女を見つめる。その瞬間、豊姫の目がゆっくりと開き、神奈子を見つめる。そして彼女は笑みを浮かべると神奈子に言う。

 

「あなたが、八坂神奈子、ね・・・。」

 

「あまり喋らぬほうがいいよ、綿月豊姫。その傷はかなり深いのだから。それに、諏訪子が世話になったみたいだね。」

 

「中々楽しめる戦いだったわ・・・。地上には、私のっ、知らない力を持っている人が、何人もいるのね。」

 

「私にとっても君は知らない力を持っている人だよ。」

 

「フフ、そうみたい、ね。あ、そうだ、八坂さん、頼みがあるのだけれど・・・。」

 

「出来るだけ簡単に済ませなよ。君の傷がどんどん深くなっている。」

 

「じ、じゃあすぐ、に済ま、せ、る、わね・・・。お師匠様・・・八意様の元に連れていって下さる?私は・・・私は、今、お師匠様に、会いたいっ!」

 

そう言った瞬間、突然豊姫から力が抜け、そのまま彼女は意識を失ってしまった。それを見た神奈子は早苗を見つめて言う。

 

「早苗、私は綿月豊姫を八意永琳の元へと連れていく。お前は諏訪子を任せたよ。」

 

「え?ちょっと神奈子様!?」

 

早苗は咄嗟に口を開いたが既に神奈子は豊姫を抱えて永遠亭へと飛んでいってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって永遠亭。そこでは先程幽香との戦いにより力尽きた依姫を運んできた永琳が到着していた。

 

「お師匠様、一体どちらへ行ってたんですか?」

 

「太陽の花畑に行ってたわ。依姫がいたみたいで。」

 

「依姫様が!?一体どうして?」

 

「分からないわ。けど、幽香との戦いでかなり酷い傷を覆ってるからすぐに治療しないとね。」

 

そう言った瞬間、突然上から誰かが降りてきた。降りてきたのは豊姫を抱えた神奈子だった。それを見た永琳が神奈子に言う。

 

「豊姫は誰と戦ったの?」

 

「諏訪子と戦ってこの有り様だよ。諏訪子もこいつと同じ状態になっている。なんせ、あんたに会いたがっていたからね。」

 

「成程。依姫がいるから豊姫もいると何となく察していたわ。じゃあこの子は私が預かっておくわね。鈴仙、依姫をお願いね。」

 

「あっ、はい。」

 

そう言うと鈴仙は永琳に担がれていた依姫を背負った。続いて永琳は神奈子から豊姫を受け取る。と、神奈子が永琳に言う。

 

「・・・・何かの気配がしないかい?」

 

「何かの、気配?」

 

「あぁ、私は出会ったことがないのだが何やら感じたことのある気配なんだよ。」

 

「うーん、私には分からないわ。でも、何者なのかは気になるから見つけたら後で私に報告してくれるかしら?もしかしたらあの五人の誰かなのかもしれない。」

 

「分かった。見つけ次第報告しておくよ。」

 

そう言うと神奈子は気配のする方向へと飛んでいってしまった。永琳はそれを見つめて、神奈子の姿が見えなくなったのと同時に永遠亭の中へと入っていった。




諏訪子と豊姫の戦いも相討ちに終わる。
次なる戦いは一体何処で・・・。
次作もお楽しみに!


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第46話 vsアヌビス①

諏訪子と豊姫の戦いも相討ちに終わる。そんな中、別の場所でも起きようとしていた。


場所は変わって紅魔館の湖付近の森。霧が深くかかっているそこでは馬に乗って悠岐と楓が紅魔館へ急いでいた。と、楓が悠岐に言う。

 

「なぁ、悠岐。さっきからカオスの軍勢を見かけないんだがどういうことなんだ?」

 

「さぁな。カオスのことだ、何かしら考えている筈だ。そうでなきゃおかしい。」

 

「レミリアは今、何をされているのだろうな・・・。」

 

「あまり想像しないほうがいい。お前の身のためだ。」

 

「私達は、アヌビスに勝てると思うか?」

 

「勝てるかじゃない、勝つんだ。俺達には奴に対して恨みを持っている。それを果たすために勝たなきゃいけないんだ。」

 

「悠岐・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悠岐!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然二人の背後から声が聞こえたため、二人は後を振り返る。悠岐はそこにいた人物の名前を思わず口にする。

 

「妹紅、慧音!」

 

二人の後ろからやって来たのは飛んでいる妹紅と慧音だった。普段ここへ訪れることのない二人がいることに悠岐は少し驚いていた。そんな二人に悠岐が言う。

 

「二人とも、どうしてここに?」

 

「レミリア達が敗れたことをあの天狗から聞いて私達も行かなければと思ってな。」

 

「寺子屋の子供達はどうしたんだ?」

 

「安心しろ、霖之助に頼んでおいた!」

 

「香霖が大変そうだ。」

 

悠岐と慧音が話している中、妹紅は楓をじっと見つめ、言う。

 

「あんたは、悠岐の仲間か?」

 

「あぁ、すまない。自己紹介が遅れた。私の名前は出野楓、悠岐と同じ半人半悪魔だ。」

 

「へぇ、半人半悪魔って一人じゃないんだな。まぁ、とりあえずよろしくな、楓。私は藤原妹紅だ。」

 

「妹紅って呼ばせてもらうよ。よろしく。」

 

「私もやっておかないとな。私の名前は上白沢慧音だ。迷いの竹林の近くにある寺子屋の教師を務めている。」

 

「よろしく、慧音。」

 

「さ、自己紹介は済んだか?一刻も速く、レミィを助けないと・・・!!」

 

その時、何かに気づいた悠岐は急に馬を止めた。

 

「悠岐!?」

 

突然止まったので楓は思わず彼の名前を口にしてしまう。

 

「?」

 

止まったことに気づいた妹紅と慧音は二人の元へと戻る。そこでは楓が悠岐に何か言っていた。

 

「ど、どうしたんだ?悠岐。」

 

「・・・・目の前が湖だ。」

 

彼が言った瞬間、突如として霧が晴れ、四人の目線にあるものが写った。それは湖のど真ん中に建つ、紅く窓の少ない洋館、紅魔館が姿を現した。見た目はごく普通の紅魔館であり、変わったところはない。と、悠岐が突然馬から降り、馬に首輪をつけてそのまま太い木に縛った。それを見た楓は慌てて馬から降りる。そして悠岐は服の中から彼の家屋ぐらいの大きさの器を取り出すとそれを馬の前に置き、餌を置いた。

 

「大人しく待ってるんだぞ。」

 

そう言うと悠岐は馬の頭を優しく撫で始めた。それを受けた馬は頭で悠岐の身体に擦り付ける。それを見た妹紅が口を開く。

 

「悠岐は動物に対する愛が大きいんだな。」

 

「ま、それも悠岐らしいじゃないか。」

 

「お、おい妹紅に慧音、止めてくれよ。」

 

二人の話を聞いていた悠岐の顔は真っ赤になっていて照れていた。そんな中、楓が口を開く。

 

「さ、そろそろ行こう。」

 

楓が言った瞬間、三人は楓の後を追う。妹紅と慧音は飛び上がり、紅魔館へ向かい、悠岐と楓はただひたすら湖の上を走る。そして四人が館の前に立った時だった。四人は荒れた紅魔館の門を見ていた。と、悠岐が言う。

 

「・・・酷く荒らされたな。流石のレミィ達もこれには耐えられなかったか。」

 

そう言うと四人は紅魔館の中へと入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ紅魔館へ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の低い声が聞こえた瞬間、四人は声のする天井を咄嗟に見つめる。そこにはシャンデリアに腰を下ろして悠岐達を見つめるアヌビスがいた。彼の言葉を聞いた瞬間、楓はアヌビスに怒鳴りつけた。

 

「ふざけるな!!何が『ようこそ紅魔館へ』だッ!」

「ほほう、これは久しいな、小娘。また私にやられに来たか。」

 

「やられに来たんじゃない。テメェをぶっ殺しに来ただけだ!」

 

「成程、私をあの世に送ると?フフフ、それは面白い。」

 

悠岐と楓、アヌビスが話している中、妹紅が二人の前に出てアヌビスに言う。

 

「ちょっと冥狼神さん。あんたに1つお尋ねしたいことがあるんだが・・・。」

 

「・・・?」

 

「レミリア達を何処へやった?」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、悠岐、楓、慧音の体がピクリと反応する。そんな三人に関係なく妹紅は話を続ける。

 

「この館に入った瞬間からレミリア達の気配を感じなかった。言え、レミリア達を何処へやった!」

 

「・・・・お前達の知らぬ場とでも言っておこう。私はそう言うのはすぐに言わないのでな。」

 

「ならば、無理矢理言わせるまでだ。」

 

そう言うと悠岐は漆黒の刃を取り出し、戦闘体勢に入る。其を見た楓も氷竜の剣を取りだし、妹紅は両腕を構え、慧音は白沢の姿に変身し、身構える。

 

「フム、戦う覚悟は出来ているようだな。」

 

そう言うとアヌビスはシャンデリアから降り、悠岐達から少し離れた場所に着地する。そして右手に力を込め、そこから槍を作り出した。そして言う。

 

「・・・来い。」

 

そう彼が言う前に既に楓がアヌビスの目の前におり、そのまま彼の腹を斬りつけた。

 

「何ッ!?」

 

(速いっ!あれほどの距離を一瞬にして縮めるなんて・・・)

 

妹紅が心の中で語っている中、悠岐と慧音もアヌビスに向かっていく。それを見た妹紅も向かう。

 

「未来高天原!」

 

「虚人ウー!」

 

妹紅と慧音は同時にスペルカードを発動し、それをアヌビスに放つ。アヌビスはそれを槍で弾くと妹紅と慧音の元へと向かう。それを妨げるかのように悠岐は上からアヌビスの頭をかかとで蹴りつけた。

 

「ガッ!」

 

そのままアヌビスは猛烈な勢いで地面に叩きつけられる。四人は再び肩を並べ、アヌビスの様子を見る。と、よろよろとなりながら起き上がるアヌビスに悠岐が言う。

 

「俺は、テメェに二つの恨みがある。1つは盟友のマインを殺したこと。二つ目は、レミィ達を訳の分からない場所に拉致したことだ。俺はそんなテメェを許す訳にはいかないんだよ!!」

 

彼に続いて楓も口を開く。

 

「悠岐の言う通りだ!私達は多くのものを失い、多くのものを傷つけられた。アヌビス、それはお前には理解出来るか!!」

 

二人が言った中アヌビスはフラフラになりながらも悠岐達を見て言う。

 

「理解出来ぬとも。私はカオス様の教訓通りに生きてきた。そんなものが私に理解出来る筈ないのだ!!私はあらゆるものを殺す時、何の躊躇いもなく殺していった。あの小僧も同じだ。」

 

「くっ・・・テメェ!」

「だがお前達はあの小僧より強い。だから私はお前達にかなりの力を出してもいいということだ。」

 

そう言うとアヌビスは自分の体に力を入れ始めた。そんな中、妹紅が言う。

 

「や、奴は一体何をしているんだ!?」

 

「奴は今、自分の能力を使おうとしている。気をつけろ、少し厄介にやってくる。」

 

疑問に思ってつい口にした妹紅に楓が答える。そんな中、アヌビスが言う。

 

「私の能力、『能力を倍にする程度の能力』でお前達を地獄に葬ってやる。覚悟するがいい!!」




紅魔館で始まる悠岐達とアヌビスの戦い。どうなる!?
次作もお楽しみに!


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第47話 vsアヌビス②

紅魔館に現れたアヌビスと戦闘する悠岐達。失った仲間のために、拉致された仲間のために。


アヌビスは槍を構え、悠岐達に先を向ける。そして言う。

 

「まずは4倍で試してやる。そこでお前達がどれだけ耐えられるか・・・!?」

 

アヌビスが続きを言おうとした瞬間、彼の目の前に1本のナイフが飛んできた。アヌビスはそれを槍で弾く。と、彼の背後から突然として悠岐が現れ、彼に言う。

 

「話している暇があるならさっさと戦いやがれ!」

 

そう言うと彼はアヌビスの顔を蹴り飛ばした。そのままアヌビスは体を縦に回転しながら壁に打ちつけられる。

 

「ガハッ、ゲホッ、ゲホッ。」

 

地面に崩れたアヌビスはその場で吐血する。そんな彼に休む暇を与えないかのように妹紅と慧音が彼に攻撃を仕掛ける。

 

「くらぇぇぇぇぇ!」

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

妹紅と慧音がアヌビスに向かって攻撃しようとした瞬間、アヌビスは二人を睨み、口を開く。

 

「16倍だ、試しに受けてみろ。」

 

そう言った瞬間、アヌビスのパンチが妹紅と慧音の腹を命中し、そのまま二人は壁に打ちつけられる。アヌビスは二人が地面に崩れる前に鎖で二人の四肢を縛った。

 

「妹紅、慧音!!」

 

動けなくなった二人に楓が口を開く。そんな彼女に悠岐が言う。

 

「楓、今はアヌビスを倒すことを優先させろ。妹紅と慧音は後に救出する。」

 

「わ、分かった。」

 

「それに、あの二人はアヌビスの一撃で気を失っている。相当奴の力が強かったんだな。」

 

二人が話している中、アヌビスが槍を構え、二人に向かっていく。それに気づいた二人は同時に横に飛ぶ。そんな二人にアヌビスが口を開く。

 

「どうした?避けているだけでは私に傷などつけられぬぞ。」

 

「分かってるんだよそんなことぐらい!!」

 

そう言うと悠岐は漆黒の刃をアヌビスに振り下ろす。アヌビスもそれを槍で打ち合う。二人が打ち合っている中、楓はアヌビスの背後に移動し、彼の背中を斬りつけようとする。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

「見え見えだ、小娘。」

 

そう言うとアヌビスは漆黒の刃を槍で地面に叩きつけると空いている左手に握り拳を作り、そのまま楓の腹にパンチした。

 

「ガハッ!」

 

楓はそのまま地面を滑りながら倒れる。それを見た悠岐がアヌビスから離れ、楓の近くに寄る。

 

「ゲホッ、ゲホッ。」

 

「大丈夫か?楓。」

 

「仲間の心配をしている場合か?」

 

その言葉が聞こえた瞬間、二人の背後に突如としてアヌビスが現れた。

 

「なっ!?」

 

二人は思わず声を上げてしまう。そんな二人とは別にアヌビスは二人を蹴り飛ばした。

 

「くっ!」

 

悠岐は態勢を整え、何とか立ち上がる。一方楓は先程のアヌビスの攻撃により、動けなくなっていた。

 

「私も、やらないと・・・。」

 

何とか立ち上がろうとした楓の目の前にアヌビスが歩み寄り、言う。

 

「まずはお前を動けなくしてやる。」

 

そう言うとアヌビスは槍を構え、そのまま彼女の右足の脹ら脛に刺した。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「楓!!」

 

すぐさま悠岐が彼女の元に駆け寄ろうとする。だがその行く手を妨げるかのようにアヌビスが彼に言う。

 

「何度も言わせるな。仲間の心配をしている場合か!!」

 

そう言うと彼は悠岐の目の前に現れ、彼を殴ろうとする。だがその瞬間、悠岐は彼の動きを見切り、彼の腕に漆黒の刃を突き刺した。

 

「何ッ!?」

 

「テメェには決して屈しない。例えテメェが何倍の力を出そうともな!!」

 

そう言うと彼はアヌビスの腹を蹴り飛ばした。そのまま彼は再び壁に打ちつけられる。

 

「馬鹿な・・・たかが悪魔に似た人間ごときが私の倍率をも越えるとはな。だが、勝負はこれからだ。」

 

そう言うとアヌビスはゆっくりと立ち上がり、右手を上げる。その瞬間、彼の背後に金色の世界が現れ、そこから大量の槍、剣、刀などの武器が現れた。その瞬間、気を失っていた妹紅と慧音が目を覚ます。そして口を開く。

 

「な、なんだあれは!?」

 

「クソッ、どうして動けない!!」

 

妹紅と慧音は鎖から逃れようとするがしっかり縛られているため、動けなかった。そんな中、アヌビスの力を見た悠岐が言う。

 

「テメェ、どうしてユニの技を!!」

 

「この技は元々私の技だ。あの小娘は私の力をコピーしたのだ。」

 

「違う!コピーしたのはテメェのほうだろ!!」

 

「フン、まぁどうでもよい。さぁ、私の16倍を越えるのだろう?ならばその倍の32倍で試してやる。」

 

そう言った瞬間、アヌビスは背後の金色の世界から槍、剣、刀を一斉に悠岐に向かって放つ。

 

「うらぁっ!」

 

悠岐は次々と飛んで来る槍、剣、刀を漆黒の刃で弾いていく。アヌビスは彼が疲れてくるのを待つように槍、剣、刀を飛ばしていく。遂に疲れたのか、悠岐の肩に槍が刺さる。

 

「ぐっ!?」

 

彼の肩から鮮血が飛び散る。悠岐は肩に刺さった槍を無理矢理抜くとその辺りに投げ捨てる。そんな中、アヌビスが口を開く。

 

「驚いたな・・・。まさか32倍でやっている筈なのにそれを耐えてしまうとはな。流石私が見込んだ男だ。だが、今度こそ終わりにしよう。次は64倍だ。」

 

「!!」

 

そう言った瞬間、アヌビスの背後の金色の世界から先程よりも速い速度で悠岐に飛んで来る。彼が槍を弾いた瞬間、彼の右腕からゴキッという鈍い音が響いた。

 

「!?」

 

彼が声にならない声を上げてしまった瞬間、後から来た槍が彼の左腕に刺さった。その勢いが強すぎるのか、彼は壁まで吹っ飛ぶ。

 

「クソッ!」

 

彼が動こうとした瞬間、彼の右腕に剣が飛んで来てそのまま彼の右腕が漆黒の刃ごと吹っ飛んだ。

 

「何ッ!?」

 

彼は失った右腕の斬られた部分を空いている左手で抑える。そして彼の息が荒くなる。そんな彼にアヌビスが笑みを浮かべながら言う。

 

「どうやらお前はここまでのようだな。だがお前はよくやった。よくもまぁ32倍まで耐えたな。その点だけは認めよう。しかし、お前の命もここで尽きる。私の手によってな。さらばだ、小僧!!」

 

そう言った瞬間、アヌビスは右腕を上げた。しかし彼の背後の金色の世界が消えただけで何も起こらない。だが悠岐の背後では小さな金色の世界が現れていてそこから槍が出てきていた。それに気づいた楓が彼に言う。

 

「悠岐、後ろだ!!」

 

彼女が悠岐に言った瞬間、悠岐はすぐさま後を振り返ろうとしたが間に合わず、彼の胸に槍が貫いた。

 

「か、ハッ・・・。」

 

彼は目を大きく見開いたまま吐血し、そのまま地面に打つ伏せで倒れた。

 

「悠岐!!」

 

楓、妹紅、慧音が同時に声を上げる。そんな中、アヌビスが口を開く。

 

「これが力の差というものだ。あの男にはそれを教えてやった。」

 

そう言うとアヌビスはゆっくりと楓の元に近寄る。そんな中、楓がアヌビスに言う。

 

「ゆ、悠岐が死ぬはずがない!」

 

「残念ながら、私の槍は小僧の心臓を貫いている。助かる可能性は極めてない。」

 

その言葉を聞いた瞬間、楓の表情が急変した。そんな彼女とは別にアヌビスが彼女に言う。

 

「安心しろ、お前もあの小僧の後を追わせてやる。一人で残るのは嫌だろう?」

 

「うっ!?」

 

その瞬間、アヌビスは楓の首を掴んだ。楓は彼の左手から逃れようと必死に抵抗するが鉄のように堅く、放れなかった。さらにアヌビスは楓の首を掴んだまま彼女の体を空中に持ち上げた。楓は足をばたつかせながら必死に抵抗する。そんな彼女にアヌビスが言う。

 

「さぁ、ゆっくりと小僧の元へと向かうがいい。その方が小僧のためであり、ましてはお前のためだ。」

 

「うっ、ク・・・。」

 

徐々に楓の抵抗する力がなくなっていく。そんな中、かろうじて意識を保っていた悠岐が心の中で語る。

 

(呼んでいる・・・。(あいつ)が、俺の助けを求めている。立て・・・立てよ俺・・・。なんで立たないんだよ。どうして立てないんだよ、俺の体!!動いてくれ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしている?小僧。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、彼の心の中から女性の声が響く。それを聞いた悠岐がすぐさま心の中で言う。

 

(この声・・・まさかあなたは!!)

 

「我の名は言わなくてよい。さて、小僧よ。お前は今何をしている?」

 

(俺は、俺は今、楓を助けようとしている。だが体が言うことを聞かないんだ。)

 

「下らぬ言い訳だな。見よ、あれを。」

 

女性が言った瞬間、悠岐は自然と楓の方を見る。そこにはアヌビスによって首を掴み上げられ、絞められている楓の姿があった。そして遂にアヌビスの手首を掴んでいた彼女の両手がだらんと垂れる。そんな中、女性が悠岐に言う。

 

「いいのか?あのままではあの小娘は命が尽き、かつてのお前の仲間みたいになるぞ。」

 

(・・・・・けたい。)

 

「なんだ?聞こえぬぞ。もう少し我に聞こえるように申せ。」

 

(俺はあいつを助けたい!!)

 

彼が言った瞬間、女性がは溜め息を吐くと楓を助けたい思いがある悠岐に言う。

 

「小僧よ、お前は誰だ?一体何のために戦う?」

 

(俺は、西田悠岐。俺が戦う理由、それは大切な仲間を助けるためだ!!)

 

その瞬間、悠岐の回りに黒いオーラが漂い始める。それを見たアヌビスが言う。

 

「何だ次は・・・!?」

 

続きを言おうとした瞬間、アヌビスの右肩に先程悠岐に投げつけた槍が刺さった。




悠岐の身に起こる異変。一体彼の身に何が起こったのか!?
次作もお楽しみに!


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第48話 裏の力、堕天悠岐

アヌビスの手によってピンチに追い込まれる悠岐達。そんな中、悠岐が・・・。


突然として槍が刺さったため、アヌビスは思わず掴んでいた楓の首を放してしまう。

 

「あ、あ・・・。」

 

彼女が地面に落ちる前に黒い影が彼女を抱える。その瞬間、妹紅と慧音の腕を縛っていた鎖が一瞬にして切れる。

 

「え?」

 

二人は状況を掴めないまま、地面に落ちる。その瞬間、二人の目の前に楓を抱える悠岐が現れた。

 

「ゆ、悠岐?」

 

「お、お前・・・。」

 

彼の姿を見て二人は驚きを隠せなかった。何故なら先程のアヌビスの攻撃によって吹っ飛んだ筈の右腕が完全に治っているからだ。そんな二人とは別に悠岐は楓の喉に優しく触れ、口を開く。

 

「・・・まだ生きている。」

 

そう言うと彼は楓を抱えて妹紅、慧音の元へと寄る。そして二人に言う。

 

「妹紅、慧音。楓を頼む。」

 

「あ、あぁ。分かった。」

 

そう言うと妹紅は彼が抱えていた楓を優しく抱える。そのまま妹紅は彼女をそっと地面に寝かせる。そんな中、悠岐は槍を抜くアヌビスを見つめる。と、アヌビスが彼に言う。

 

「馬鹿な・・・。私はさっき、間違いなくお前の心臓を貫いたはず。何故生きている?そして、何故吹っ飛んだ筈の右腕が治っている?」

 

「お前には理解出来ぬ。我の力など、理解出来るはずあるまい。」

 

「なっ!?」

 

彼が言った瞬間、アヌビスは目を大きく見開いた。何故か彼が言葉を発するのと同時に女性の声も響くからだ。

 

「何をぼさっとしている?」

 

その瞬間、アヌビスの背後に突如として悠岐が現れた。彼の顔には何を考えているのか分からない笑みが浮かんでいた。

 

「クソッ!」

 

アヌビスは彼を斬りつけようと槍を振り回す。しかし悠岐は64倍出ているのにも関わらず意図も簡単に彼の攻撃を避け、妹紅達の前に降り立つ。と、彼が右腕を上げ、手を開いた。その瞬間、地面に刺さっていた漆黒の刃が彼の右手にやって来る。それを見たアヌビスが彼に言う。

 

「馬鹿な・・・。一体何者なんだお前は・・・!?」

 

「気がついたか?冥狼神。」

 

そう言う彼の口元には血が付着していて、余計に彼の表情が不気味になった。彼の口元を良く見ると彼は何かを食べていた。アヌビスはそれが何なのかすぐに理解した。何故なら彼の右耳の先の部分が悠岐によって食いちぎられていたからだ。そんな中、悠岐が口を開く。

 

「冥狼神と言えど、中々の味だな。」

 

「貴様ァ!この私の身に傷をつけるとは!!どうやら相当死にたいようだな。ならば私が最高倍率の128倍で貴様を地獄に落としてやる!!」

 

そう言うとアヌビスは右手に全ての力を込め始めた。それを見た慧音が悠岐に言う。

 

「よせ悠岐!!例えお前であろうと128倍は敵う筈がない!」

 

「フフフ・・・。」

 

彼に言う慧音だが悠岐は謎の笑い声を上げているばかりで逃げようとしない。そしてアヌビスは口を開く。

 

「覚悟するがいい、小僧!!」

 

そう言った瞬間、アヌビスの右手から邪悪なオーラを纏った攻撃が放たれた。それを見た悠岐は笑みを浮かべながらあの言葉を口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我、堕天の左腕なり。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言った瞬間、彼は空いている左手を前に出した。その瞬間、彼の回りに紫色のバリアが張られ、そのままアヌビスの攻撃を容易く防いだ。

 

「何ッ!?」

 

「そんな馬鹿な・・・。」

 

目の前で起こる光景に一同は目を見開くことしか出来なかった。と、そんな中、気を失っていた楓が目を覚ました。そして今悠岐の現状を見て口を開く。

 

「まさかあれは、悠岐の堕天(モードオブサタン)なのか!?」

 

堕天(モードオブサタン)って?」

 

初めて聞く言葉に妹紅は思わず首を突っ込む。そんな彼女に楓が答える。

 

「私と悠岐のような悪魔が使える、所謂『覚醒』と言ったところだ。」

 

「じゃあ今悠岐は覚醒しているって言うのか?」

 

「そう言っても過言ではないな。」

 

二人が話している中、悠岐は笑みを浮かべたままアヌビスに漆黒の刃を振る。そんな中、アヌビスは心の中で語る。

 

(128倍を越えている・・・。一体何者なのだあいつは!!)

 

「気になるのならば、教えてやろう。」

アヌビスの心の声を聞き取った悠岐がアヌビスにすぐさま言う。

 

「我の能力は『限界を越える程度の能力』。つまり、例えお前が最高倍率の128倍を出そうとも我はそれを越えた力を発揮出来るということだ。」

 

そう言うと彼はアヌビスに向かってパンチした。アヌビスはそれを右腕で防ぐ。だがその瞬間、彼の右腕が猛烈な勢いで吹っ飛んだ。

 

「何ッ!?」

 

目を大きく見開いているアヌビスとは別に悠岐は彼の腹を蹴りつけ、そのまま壁に打ちつける。

 

「ゲホッ、ゲホッ。」

 

その瞬間、アヌビスは大量の血を吐く。そんな彼とは別に悠岐が服の中からスペルカードを取りだし、アヌビスに言う。

 

「これで終わりだ、アヌビス!!」

 

「私は・・・私はまだ屈しない!!カオス様のお役に立てるまで!!」

 

そう言うとアヌビスは槍を持って立ち上がり、悠岐に向かっていく。そんな彼に気にせず悠岐はスペルカードを発動した。

 

「神槍ヤマトタケル・零。」

 

そう言った瞬間、彼の右手に青い炎におおわれた槍が現れた。それを手にした彼はそのままアヌビス目掛けて投げる。その瞬間、あまりにもスピードが速かったため、そのままアヌビスの腹を貫いた。

 

「ガハッ・・・。」

 

そのままアヌビスは腹を抑え、吐血しながら地面に倒れていった。彼が倒れたのと同時に悠岐は漆黒の刃を地面に刺し、膝をつく。

 

「悠岐!!」

 

その瞬間、楓、妹紅、慧音は彼の元に駆け寄る。そして言う。

 

「悠岐、大丈夫か?」

 

「あぁ、かなりの体力を消費した。」

 

「悠岐、一体どうやって堕天(モードオブサタン)を?」

 

「自分の意志を心の中で叫んだら使えた。」

 

彼が言った瞬間、倒れるアヌビスの背後に巨大な空間が現れた。その中から大きさ4mほどで黒い肌に悪魔の翼を生やしている、カオスが現れた。それを見た瞬間、楓がカオスに言う。

 

「カオス、まさかお前!!」

 

「その通りだ小娘。よく察したな。」

 

そう言った瞬間、カオスは倒れるアヌビスを掴み、自分の顔の前まで寄せる。そして大きな口を開き、その中にアヌビスを投入する。

 

「なっ、まさか!!」

 

悠岐が言った瞬間、カオスは顎を動かし始めた。彼が顎を動かす度にアヌビスの骨が砕ける音、肉がぐちゃぐちゃと嫌な音が鳴り響く。そしてカオスはゴクンという音を立ててアヌビスを飲み込んだ。そんな彼に悠岐が言う。

 

「部下に対しても慈悲が無いな。流石悪魔族の頂点に君臨する存在だ。」

 

「これでも我はまだ頂点までいっていない。あの女を越えるために我はこの全ての世界を統一する。」

 

「テメェは全ての世界を統一出来やしない。ユニ達がテメェを倒すからな!」

 

「なるほど、あの小娘がか。まぁよい。本来であれば我は貴様と戦いたかったが我は自分の場でしか戦わない主義でな、我の城に入ってくるあの小娘達に期待するまでだ。ではさらばだ。貴様といつか戦えることを楽しみにしている。」

 

そう言うとカオスは再び空間を出現させ、そのまま空間の中に入っていった。彼が消えた瞬間、悠岐が妹紅と慧音に言う。

 

「少し治療を頼む・・・。二人は俺と楓の治療が終わったら直ちに人里の人達を避難させてくれ。おそらくカオスはそこに多くの魔物達を送るつもりだ。」

 

「分かった、直ちに治療する。」

 

そう言うと妹紅は悠岐の元へ、慧音は楓の元へ寄り、二人の体の傷を治療し始めた。




アヌビスを倒した悠岐達。だがその瞬間にカオスが現れる。カオスの目的とは!?
次作もお楽しみに!


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第49話 変わり果てた有頂天

アヌビスとの戦いに勝利した悠岐達。


玄武の沢ではユニ、霊夢、魔理沙が有頂天に行くのに備えて準備をしていた。と、ユニが口を開く。

 

「他のみんなは、大丈夫かな?」

 

「きっと大丈夫だぜ。私も霊夢も悠岐がどれくらい強いのか理解しているしな。」

 

「確かにそうかもしれないけれど魔理沙、あんたは分かってないようだけど敵はそう甘くはない筈よ。」

 

「それに、月の人達もこの幻想郷に来ているみたいだからカオスの影響はかなりのものよ。」

 

「・・・。あ、そうだ!!」

 

突然何かをひらめいた霊夢がユニを見ながら口を開いた。

 

「ねぇ、ユニ。知恵のあるあの人を呼んでくれないかしら?」

 

「知恵のあるあの人って霊夢、お前まさか!!」

 

「あの人しか頼れないでしょ?魔理沙。」

 

「ま、まぁ確かにそうかもしれないが・・・。」

 

「う~ん、一応やってみるわね。」

 

そう言うとユニはスペルカードを取りだし、発動する。

 

「呼符コールザエニー。」

 

しかし何も起こらない。本来ならスペルカードが光るのだが今回は光らない。そんな中、魔理沙が言う。

 

「どうした?ユニ。呼べないのか?」

 

「おかしいわね、どうしても呼び寄せられないわ・・・。」

 

「まさかこれもカオスの影響だって言うの?」

 

「いいや、ネザーでカオスと対面した時に啓介君を呼びせられたからそんなことは無いと思うの。」

 

「じゃあ一体どういうことなんだぜ?」

 

「コールザエニーにも欠点(デメリット)があってまず近くにいる人は呼び寄せられないということよ。」

 

「近くにいる人?」

 

「そう、今の霊夢や魔理沙のように私の近くにいる人は呼び寄せられないのよ。ちなみにコールザエニーの範囲は私から100m範囲内だけよ。」

 

「つまり、奴はこの近くにいると言うのか?」

 

「そう言うのも過言ではないわ。」

 

「だったらすぐに探しましょうよ!」

 

「ダメよ霊夢。探している途中でカオスが何をやるのか分からないんだから。」

 

「そっか・・・・。」

 

「仕方がない、私達で行くしかないな。」

 

「・・・そうね、行きましょう!」

 

霊夢が言った瞬間、魔理沙は箒に股がり、宙に浮かび上がる。そしてユニと霊夢は普通に空を飛ぶ。そのまま三人は有頂天へと向かう。と、魔理沙が二人に言う。

 

「さっさと終わらせようぜ。天子と衣玖が危ない。」

 

「そうね、二人のことも心配だしね。」

 

「さっさとカオスをぶっ倒して、宴会でも開きましょう。」

 

「あ、あぁ!これが終われば楽しい宴会が私達を待っているぜ!」

 

「それまでに生き残れたらの話だけどね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘・・・。」

 

「何だよ、これ・・・。」

 

「これが、有頂天と言うの?」

 

有頂天に到着したユニ達は目の前に広がる光景を見て絶望する。そこにはユニ達が見ている有頂天ではなく、闇のオーラに包まれた巨大な城が立っている、ただの天空の闇の城だった。それを見た霊夢が口を開く。

 

「・・・天子と衣玖はどうなったのかしら?」

 

「カオスによって何処かに閉じ込められたかあるいは喰われたか・・・。」

 

「ユニ、そう言うのはあまり想像しない方がいいぜ。」

 

「そ、そうね。」

 

「さ、中に入りましょう。」

 

霊夢が言った瞬間、二人は深く頷いた。そしてそのまま三人は城の中へと入っていった。中に入ると早速広い通路が三人の目の前に広がる。そのまま三人は辺りを見回しながら奥へと歩く。と、ユニが口を開いた。

 

「変ね。これほど面積が広い城だと言うのに静か過ぎるわ。」

 

「・・・本当だ、話し声も化物の声も何一つ聞こえないぜ。」

 

「・・・カオスの手下は何処へ行ったの?」

 

「恐らく地上に行って侵略を開始しているかもしれないわ。なんせ、アヌビスもペルセポネもいたんだから。」

 

そんな中、魔理沙は城を見てあることに気がつく。城の所々には小さな蜘蛛の巣が張られていた。雰囲気を漂わせているのか、元々あったのか、彼女には理解出来なかった。そして三人が一番奥の部屋の前に着いた瞬間、ユニは扉のドアノブを掴み、二人に言う。

 

「い、行くわよ。」

 

「えぇ。」

「準備OKだぜ。」

 

その瞬間、ユニは猛烈な勢いで扉を開けた。扉はロックされておらず、そのまま開いた。部屋の中は円の形になっていて所々天井に穴が開いていて回りには右腕を上げている石像が置いてあった。三人は回りを見渡しながら部屋の真ん中へと歩いていく。と、その時だった。三人の前に照らされていた光が何かによって防がれた。

 

「?」

 

「霊夢、魔理沙、あれを見て!!」

 

そう言うとユニは霊夢と魔理沙が見えるように天井を指差す。天井を見た瞬間、二人は思わず目を大きく見開いてしまう。天井にいたのは体長6mほどで全身黒く、背中には赤い目がついている巨大蜘蛛がいた。それを見た魔理沙が口を開く。

 

「な、なんだあれは!!」

 

「あれはシェルドゴーマよ!」

 

「シェルドゴーマ?」

 

「元々ハイラル王国にいた悪の化身、ガノンドロフが育んでいた怪物の一つよ。まさかカオスがこんな奴を育んでいたなんて・・・。」

 

ユニが言った瞬間、シェルドゴーマはガサガサという大きな音を立てて天井を移動し始めた。それを見た霊夢と魔理沙が咄嗟に武器を構える。そんな二人にユニが本を見ながら言う。

 

「無駄よ、奴に弾幕は通用しないわ。」

 

「じゃあどうするって言うんだ!!」

 

「本によると、弓矢を使って倒すみたいなのだけど、私の知り合いには弓矢を使う人なんて居ないわ。」

 

「お!それなら私が知っているから教えようか?そいつはとびきり弓の実力が優れものなんだ!」




ユニ達の前に現れたシェルドゴーマ。魔理沙が思いついたある人物。果たしてその招待とは!?
次作もお楽しみに!


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第50話 コールザエニー 神子の弓使い

有頂天に到着したユニ達はそこで絶望的な光景を目の当たりする。そしてハイラル王国の怪物、シェルドゴーマと戦う。


「とびきり弓が優れている人って?」

 

「物部布都って言う奴だぜ。」

 

「物部布都・・・・。あぁ!!あの神子さんの所の人ね。分かったわ。」

 

そう言うとユニはスペルカードを取り出した。そして発動する。

 

「呼符コールザエニー。」

 

彼女が言った瞬間、彼女の右側に直径2mほどの空間が現れた。そしてユニは叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵を射れ、物部布都!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が叫んだ瞬間、空間の中から灰色の髪をポニーテールで纏め、グレーの瞳に烏帽子を被っていて白装束を着ていて紺のスカートを穿いている女性が現れた。

 

「な、なんじゃここは!!」

 

空間から現れた女性、物部布都が叫んだ瞬間、ユニは再びスペルカードを発動する。

 

「剣符アームストライク。」

 

その瞬間、ユニの右側から空間が現れ、その中から弓矢が出てきた。ユニはそれを布都に渡し、言う。

 

「これであの蜘蛛の背中にある目を射てくれないかしら?あの蜘蛛を倒すためにはあなたの力が必要なの。」

 

「あの蜘蛛・・・ってぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

布都がシェルドゴーマを見た瞬間、彼女は見たこともない巨大な蜘蛛を見て思わず叫んでしまう。そんな彼女に霊夢が言う。

 

「早くあいつをやりなさいよ。弾幕が効かないみたいなんだから。」

 

「わ、分かったぞぞぞ。」

 

布都がユニから弓矢を渡された瞬間、シェルドゴーマが背中の目からレーザーを発射してきた。

 

「あ、あわわわわ・・・。」

 

思わず慌ててしまう布都。そんな彼女に魔理沙が弓矢を押しつけながら言う。

 

「早く奴の目を射てくれ!」

 

「お、おお。そうじゃ!」

そう言うと布都は弓矢を構え、矢をシェルドゴーマの方へ向ける。そして放った。

 

「グガァ!」

 

その瞬間、布都の放った矢がシェルドゴーマの背中の目に命中し、そのままシェルドゴーマは背中から地面に落ちた。

 

「よし、今だっ!」

 

その時、シェルドゴーマの様子を見ていたユニが突如シェルドゴーマの元へスペルカードを発動しながら近づく。

 

「剣符アームストライク。」

 

その瞬間、ユニの右手に黒くて先が丸い杖が握られていた。そしてユニはシェルドゴーマの近くにあった石像に向かって杖から黄色い光を飛ばした。

 

「はあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

そのままユニは杖を振り下ろす。その瞬間、彼女の動きと同時に石像の右の握り拳がシェルドゴーマの腹を殴りつけた。

 

「グギャァ!」

 

拳がシェルドゴーマの腹に命中した瞬間、シェルドゴーマは足を丸め始めた。そしてそのまま爆発してしまった。

 

「あら、案外弱かったわね。」

 

「いいえ、まだよ。」

 

そう言うとユニは三人に見えるようにある方向を指差す。それに合わせて三人はユニが指差す方向を見る。そこにはシェルドゴーマの目ではなく赤くて太い体をした1mほどの蜘蛛に辺りには38cmほどの蜘蛛がいた。蜘蛛達が霊夢達を見た瞬間、逃げ始めた。

 

「あっ待て!」

 

その瞬間、霊夢と魔理沙が蜘蛛を追いかけ始めた。それを見た布都が弓を構える。そんな彼女にユニが言う。

 

「これをつければあの蜘蛛を一撃で倒せるわ。」

 

「これ・・・・ってえぇ!?」

 

ユニが取り出したものを見て布都は思わず声を上げてしまう。ユニが取り出したものはなんとTNTと書かれた箱だった。

 

「射れないなら代わりに私が射るけれど?」

 

「早くやっておくれ!我は出来ぬ!」

 

布都が弓矢をユニに渡した瞬間、彼女はすぐに後退する。そんな彼女とは別にユニは箱に矢を刺すとそのまま箱に火をつけ、シェルドゴーマの目となっていた蜘蛛に向ける。そして放った。

 

「ギャァァ!」

 

ユニの放った矢は赤い蜘蛛に命中する前に箱が爆発し、そのまま蜘蛛達は一斉に爆発していった。と、霊夢がユニに近寄り、言う。

 

「ユニ、さっきの杖は何だったの?」

 

「あれはコピーロッドといって本来動くはずのないものに命を与える道具よ。」

 

「命ってことはユニの命を提供するのか?」

 

「そんなことしたら私は生きていないわ。」

 

そう言うと魔理沙、霊夢、ユニの三人は布都を見ながら言う。

 

「ありがとう、布都。」

 

「いいんじゃよ。丁度我はイモと喧嘩をしていたからな!すっかり気分が良くなったぞ。」

 

「・・・イモ?」

 

「あぁ、イモじゃ!」

 

あり得ない。あんな食べ物のような名前をした人なんて幻想郷にいない。そう思ったユニは苦笑いしながら言う。

 

「そ、そうなのね。良かったじゃない。」

 

「そうじゃ!本当に良き出来事じゃった。それじゃあ我は帰るから早く空間を出しておくれ。」

 

布都が言った瞬間、ユニは彼女の前に空間を出現させた。そのまま布都は空間の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何者だ、お前達!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

布都が帰ったのと同時に奥の部屋からぞろぞろと拳銃を持った兵士達がユニ達の回りを囲んだ。それを見た魔理沙が口を開く。

 

「これはヤバイぜ!!」

 

魔理沙が思わず両手を上げようとした瞬間、ユニがスペルカードを発動した。

 

「呼符コールザエニー。」

 

その瞬間、ユニの右側に直径2mほどの空間のが現れた。そしてその中から青い髪に兎の耳、黒い瞳に赤いリボンをつけたスーツに灰色のジーンズを穿いていて背は魔理沙ぐらいの少年が現れた。

 

「な、なんだこいつは!!」

 

一人の兵士が思わず声を上げる。そんな彼とは別にユニは少年に言う。

 

「さぁニコ君、あいつらに力を見せつけちゃって!」

 

「うん、分かったよ。」

 

そう言うと兎の少年、ニコはユニ達の前に出た。そして両手を上げ、何かのおまじないを唱え始めた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「あぁ、あの驚異が蘇るぅぅぅぅぅ!」

 

その瞬間、兵士達が拳銃を落とし、頭を抱えて地面に崩れ始めた。その瞬間、ユニが霊夢、魔理沙に手招きしながらニコに言う。

 

「こいつらはあなたに任せるわ!霊夢、魔理沙、急いで!!」

 

「えぇ、分かったわ。」

 

そう言うと三人は兵士達の間をすり抜けて奥の部屋へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって紅魔館。そこではアヌビスとの戦いで傷ついた悠岐、楓を癒す慧音がいた。なお、妹紅はレミリア達を探して館内を歩き回る。と、慧音が悠岐に言う。

 

「悠岐、大丈夫なのか?堕天(モードオブサタン)を使った後は僅かしか動けないんじゃ・・・。」

 

「それでもいい。少しの力があれば俺はカオスと戦える。」

 

「駄目だ悠岐!今の状態じゃカオスには勝てない。」

 

楓が悠岐に言った瞬間、妹紅がある人物を抱えてやって来た。彼女の後ろには黄色い髪にクリスタルがついた翼を持つ少女がいた。

 

「フラン!」

 

「お兄ちゃん・・・。」

 

悠岐が言った瞬間、吸血鬼の少女、フランは悠岐に寄り添う。そんな二人とは別に妹紅が紫色の少女、パチュリーを地面に寝かせて言う。

 

「ここにはパチュリーにフラン、小悪魔に咲夜に美鈴がいたぞ。」

 

その瞬間、何かに気づいた楓が妹紅を見ながら口を開く。

 

「おい妹紅。肝心のレミィは?」

 

「・・・・すまない、見つけられなかった。」

 

妹紅が言った瞬間、悠岐は目を閉じた。しばらくたって目を開き、言う。

 

「紅魔館からレミィの気配を感じない。恐らく連れていかれたんだ。」

 

「クソッ!」

 

思わず地面を殴りつける楓。そんな彼女にフランが言う。

 

「あなたってお兄ちゃんと同じ悪魔だよね?」

 

「あぁ、私の名前は楓だ。フラン、頼み事があるんだが・・・。」

 

「何?お姉ちゃん。」

 

「お姉ちゃん!?まぁ、いいけれどパチュリー達を見守っててくれないか?」

 

「うん、分かったよ。」

 

「ありがとう、助かるよ。」

 

そう言うと楓はフランの頭を優しく撫でた。そうしている内に妹紅が紅魔館にいた人達を近くに寝かせた。と、悠岐がフランに言う。

 

「一人で辛いかもしれないが頼んだぞ。」

 

「うん、任せて!!」

 

フランが言った瞬間、悠岐と楓は馬を走らせ、妹紅と慧音は飛んでいってしまった。それを見届けたフランは館の中へと入っていった。




シェルドゴーマを倒したユニ達紅魔館から一人だけ見つからないレミリア。果たして彼女は何処に!?
そしてあの男が再び!?
次作もお楽しみに!


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第51話 玄武の沢からの気配

シェルドゴーマを見事倒したユニ達はカオスの元へと向かう。そんな中、地上ではあの男が再び!?


「こ、ここは・・・。」

 

目を覚ますとそこには木で作られた天井が広がっており、辺りには竹の香りが漂う。そんな中、布団で寝ていた少女、綿月依姫は辺りを見回す。

 

「あら、起きたのね。」

 

聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、依姫は咄嗟にある方向を見る。そこにいたのは長い銀髪を三つ編みにしていて特殊な配色の服を着ている女性がいた。彼女を見た瞬間、依姫は布団慌てて起き上がり、彼女の前に膝をついて言う。

 

「ごっ、ご無沙汰しておりました。お師匠様。」

 

「こちらこそ久し振りね、依姫。」

 

久し振りに自分の師匠である永琳に会えたことを依姫は非常に嬉しく思っている。と、依姫が永琳に言う。

 

「そういえばお師匠様、ここは一体・・・。それとお姉様は?」

 

「ここは永遠亭。地上の兎達に作ってもらった屋敷で豊姫は隣の部屋で気持ちよく寝てるわ。」

 

「そ、そうですか・・・。」

 

「まぁ、それはさておき。依姫、どうして地上に来たの?本来なら都久親王や細愛親王かサグメが行く筈なのに・・・。」

 

「え?ご存じないんですか?私とお姉様はお師匠様から手紙が届いたので都久親王達に地上への出撃命令が下されたのですよ。」

 

「おかしいわね、私は月の都に手紙なんて送ってないわ。」

 

「えっ!?」

 

彼女の口から放たれた言葉を聞いて依姫は思わず目を見開くことしか出来なかった。そんな中、永琳が再び口を開く。

 

「もしかしたら何者かが私に成りきって私の代わりに手紙を送ったのかもしれないわね。」

 

「でも、どうしてそんなことを・・・。」

 

「依姫や豊姫のようにあの妖怪と土着神と戦わせるつもりだったのだと思うわ。」

 

「!!」

 

「幽香や諏訪子は幻想郷の中でもかなりの力の持ち主よ。あなたや豊姫と互角の勝負で戦えるのも頷けるわ。」

 

「ですが、一体誰がそんなことを・・・。」

 

「調べていく必要がありそうね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって玄武の沢。そこではある気配を感じ、すぐさま駆けつけた八坂神奈子がいた。彼女は辺りにいる二人の兵士に気づかれないように身を潜めていた。と、一人の兵士が言う。

 

「なぁ、聞いたか?ペルセポネ様がやられてしまったらしいぞ。」

 

「マジかよ、それだったらアヌビス様に懸けるしかないか。」

 

「そのアヌビス様だけど紅魔館の連中を倒したらしいぜ!」

 

(!!)

 

その言葉を聞いて神奈子は目を見開いた。そんな彼女には気づかず、兵士が言う。

 

「それで、肝心のアヌビス様は今は一体何を?」

 

「だが、それ以降アヌビス様からの連絡が途絶えた。」

 

「まさか、アヌビス様まで奴らに・・・。」

 

「そんなことはねぇさ!アヌビス様はきっと奴らと戦っているだけだ。」

 

「そうだな。そう信じよう。」

 

「あ、それとさっきあった連絡なんだが・・・。2番隊の奴らが現世へ行くための道が何者かの結界によって幻想郷から現世へ行けなくなっているらしいぞ。」

 

「なんだそりゃ。」

 

「だから数分したら俺達もその場所に行かなければならない。」

 

「もう行ってもいいんじゃないか?」

 

「そうだな、行くとしよう。」

 

そう言うと兵士二人は何処かへ走って行ってしまった。それを見届けた神奈子は玄武の沢の奥へと足を踏み入れる。

 

「・・・?」

 

何か不思議に思った神奈子は思わず口を開く。

 

「何故だ・・・。間違いなくここから気配がする筈なのに。」

 

そう言うと神奈子は辺りを見回す。と、突然神奈子は普通のと何の変わりもない岩肌を見て違和感を覚える。

 

「この岩・・・。何か違和感が沸くね。」

 

そう言うと彼女は岩肌に手を伸ばした。その瞬間、彼女の手が岩の中へと入ってしまったのである。

 

「!?これは・・・。」

 

少し慌てたものの、神奈子は冷静を取り戻し、ゆっくりと岩の中へと入っていった。岩肌を抜けるとそこには洞窟のような穴があり、奥は暗くて何も見えない状態だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「客かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然洞窟の奥から声が聞こえた瞬間、神奈子は咄嗟にその方向を見つめる。徐々に足音が彼女に近づく。神奈子は緊張しながら奥を見つめる。と、再び声が響く。

 

「おやおや、これは・・・。」

 

奥からやって来たのは長身で後ろ髪を束ねていて悠々とした歩き方で両腕を背に回している男だった。男は神奈子を見て口を開く。

 

「こうやって卿と言葉を交えるのは初めてだな。八坂神奈子。」

 

「私も、あんたと話すのは初めてだ。メルト・グランチ。」

 

メルト・グランチ。嘗て幻想郷を支配しようと企んでいた帝王だが霊夢達の手によってそれを打ち砕かれた。と、メルト・グランチが神奈子に言う。

 

「正直驚いたよ。私の推測であればここへ始めに来るのは八雲紫だと思っていたがまさか卿だとはね。」

 

「何故あんたは再びここへ?まさか再び幻想郷を支配するつもりなの?」

 

「まさか。カオスがいる状況の中で私までも支配すると?」

 

「では何のために?」

 

「ただの物見遊山だとも。帝からの命令により幻想郷の監視を任されたのだが、この状況ではねぇ。」

 

「・・・。」

 

「本来会う筈のない者達の被害を減らすのも、カオスの軍勢達を現世へ浸入させなくするのも一苦労だよ。」

 

「まさか、現世への道を塞いだというのは!!」

 

「そう、この私だ。風見幽香と綿月依姫が戦う際に結界を張ったのも私だ。」

 

「何故幻想郷を支配しようとしたあんたがこのようなことを・・・。」

「単純な話だ。この世界を壊したくないからだ。」

 

「!?」

 

「何だね?私の発言がそんなにも奇想天外なことだったかな?」

 

「いや・・・。あんたらしくないと思ってな、ついつい驚いているよ。」

 

「まぁ、仕方あるまい。2年前を考えればそう思ってしまうのも無理もない。」

 

「帝王殿、私達に・・・いや、幻想郷に力を貸してくれないか?この世界を救うためには貴殿のような王の力が必要なんだ。」

 

「極力力は貸す。卿も少しは誰かの力になれるようにしたらどうかね?」

 

「・・・そうだね。私も他の者の力になれるようにせねばならないね。」

 

そう言うと彼女は洞窟を飛び出し、何処かへ飛んで行ってしまった。それを見たメルト・グランチは笑みを浮かべて言う。

 

「さて、私も準備しなければならないな。さぁ、忙しくなる。」

 

そう言うと彼は洞窟の奥へ行ってしまった。




幻想郷に再び現れた帝王梟雄メルト・グランチ。だが彼の目的は幻想郷の支配ではなかった。
ついにユニ達はカオスと対峙する。次作もお楽しみに!


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第52話 カオス

幻想郷に再び現れた帝王メルト・グランチ。神奈子は彼に幻想郷の援護を要請することに成功する。


カオスの下部をニコに任せたユニ達はどんどん奥の部屋へと足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ我が城へ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥から声が聞こえた瞬間、ユニ達は咄嗟に戦う体勢に入る。奥にいたのは巨大な玉座に座るカオスだった。彼はユニ達を見て笑みを浮かべている。そして言う。

 

「貴様らがここへ来ることを楽しみに待っていたぞ。」

 

「カオス!!ここであなたを倒して見せるわ!!」

 

ユニが言った瞬間、カオスはゆっくりと立ち上がり、三人に背を向けて言う。

 

「・・・我の生まれは砂漠だった。」

 

「・・・え?」

 

突然彼が発する言葉とは思えなかったユニ達は思わず呆然となる。そんな三人とは別にカオスは話を続ける。

 

「海がない、ただ砂が広がる大地・・・。その中にあった村で我は生まれた。」

 

「・・・海?」

 

「あぁ、そうか。貴様らは海を知らないんだったな。海というのは何億年も前に現在では考えられないほどの雨が地上に降り続き、広大なる水が溜まったものを現世の者は『海』と呼ぶ。」

 

「現世にはそんなものがあるのね。驚いたわ。」

 

「砂漠にも良き箇所はあった。オアシスと呼ばれる砂漠の中にある給水所のような場所で、そうだな・・・貴様らで言えば井戸と言ったところだな。」

 

「私的には住みやすい場所だとは思うけれど?」

 

「我はそう願っていた。だが現実はそう甘くはなかった。突然だった。いつものようにオアシスへ行こうとした時だった。耳慣れない地響きが辺りに響いて、それが何かの大群がやってくる音だと気づき、振り返ると・・・。」

 

「ふ、振り返ると?」

 

BEAT(ベータ)と呼ばれる地球外知的生命体が村を襲った。勿論村にいた者達は奴らに喰われ全滅。当時力がなかった我は喰われそうになった。だが我の中の力が解放され、我は地球に防御結界を貼り、BEAT(ベータ)の侵攻を防ぎ、村の近くにいた奴らも全滅させた。」

 

「・・・。」

 

BEAT(ベータ)を全滅させたまでは良かった。だがそれからというものの、我の中から憎悪や憤怒が消えなくなってしまったのだ。そのまま我は四角世界(マインクラフト)のモンスター達を連れて現世へ訪れた。」

 

「幻想郷だけでなく、現世までも・・・。」

 

「だが我は現世をなめていた。五大王の一人である光王ゴールド・マーグルの手によって我は現世から追放され、封印された。」

 

「流石マーグルさんだぜ。」

 

「だがしかし!我は何者かは知らぬが再びこの世に復活を遂げることが出来た。そして幻想郷へ訪れた時、我はこう思った。」

 

そう言うとカオスは深く息を吸い込んだ。そして口を開く。

 

「・・・心地よい。」

 

「・・・え?」

 

カオスが発する言葉と思えなかったユニ達は思わず目を見開いてしまう。そんな三人とは別にカオスは再び口を開く。

 

「この世界・・・幻想郷の風が心地よいのだ。現世よりも四角世界(マインクラフト)よりも。そして故郷よりも心地よいのだ。我はこの世に生まれて良かったと実感した。」

 

「・・・。」

 

黙り込むユニ達にカオスが指を指し、言う。

 

「貴様らはどうだ?この世界に生まれて幸せか?」

 

急に問われたため、霊夢と魔理沙は思わずはっとなる。そんな二人とは別にユニは笑みを浮かべ、胸に手を当てて言う。

 

「えぇ。勿論幸せですよ。だって、もしこの世に生まれていなかったら霊夢や魔理沙、悠岐君やビオラ様のように個性溢れる人達と出会ってなかったんだから。色んな人達と出会って色んな事を楽しむ。そんな今が私にとっての幸せよ。」

 

「ユ、ユニ・・・。」

 

「あら、言っちゃだめだったかしら?」

 

「い、いや。そんなことはないんだが・・・。」

 

魔理沙とユニが話している中、カオスは成程と言わんばかりの表情を浮かべ、言う。

 

「そうだな。この世の者達はやはり幸せを感じているのだな。では貴様らに問おう。貴様らは病んでいる者をどう思う?」

 

「・・・えっ?」

 

「『死にたい』だの、『この世に生きていく理由なんてない』などとほざいている者達を貴様らはどう思っている?」

 

「どう思っているって聞かれても私は別に・・・。」

 

「狂っているとは思わないのか!!」

 

急に怒鳴りつけられたため、三人は思わずビクッとなってしまう。そんな三人とは別にカオスは再び口を開く。

 

「折角この世に生まれることが出来たというのに、命を無駄にする者など、愚の骨頂だとは思わぬか?」

 

「・・・。」

 

「・・・・話は変わるが貴様らは悪魔の特徴を知っているか?」

 

「悪魔の特徴・・・・ですって?」

 

「そうだ、悪魔の特徴だ。分からぬならば教えてやる。悪魔は時に痛みを忘れて戦う。そのため、己がいつ力尽きるのですら判断することが出来なくなってしまう。」

 

「!?」

 

「おいカオス!!それは一体どういうことなんだ!」

 

カオスの言葉を理解することが出来ない魔理沙が思わず口を開く。そんな彼女にカオスはすぐに答える。

 

「端的に話せばあの悪魔達は・・・。」

 

彼が続きを言おうとした瞬間、彼の持っていた通信機が鳴った。

 

「なんだ?」

 

通信機からある連絡が入った瞬間、カオスは頭を抱えてしまう。それを見たユニはあることを推測する。

 

「きっと幻想郷に強い味方が来てくれたのよ!!それでカオスの下部達を倒してくれてるのよ。」

 

「おぉ!!それは誰なんだ?」

 

「・・・分からない。」

 

「分からなきゃ意味ないでしょ!!」

 

三人が話している内にカオスは下部との通信を終えていた。そして深い溜め息をはいて言う。

 

「貴様らの推測は外れている。だが我々にとって最悪な状況なのは変わりない。幻想郷から現世へ続く道が何者かの手によって塞がれているのだ・・・。」

 

「まさか、紫が!?」

 

「いいや、スキマ妖怪がやったという報告がない。さらに結界はスキマ妖怪を越えた力の持ち主らしいな。」

 

「紫を越える力の持ち主だと!?」

 

「一体誰がそんなことを・・・。」

 

「我も誰だかは理解しておらぬ。だが貴様らと戦い、勝利を勝ち取ってから知ることにしよう。」

 

そう言うとカオスは腰にあった巨大な剣を右手に持った。それを見たユニがスペルカードを発動する。

 

「呼符コールザエニー。力を貸して、咲夜、妖夢!」

 

ユニがスペルカードを発動した瞬間、彼女の両側から空間が現れ、その中から少し傷を覆っている咲夜と何が起こっているのか理解していない妖夢が現れた。そんな妖夢にユニが言う。

 

「妖夢、あなたに力を貸して欲しいの。カオスを倒すために私達に協力してくれるかしら?」

 

「急にここへ呼び寄せられたのでびっくりしましたよ。勿論幻想郷のために、そして幽々子様のために戦います!」

 

「私もアヌビスとの戦いで少し傷を覆っているけれどもまだ戦えるわ。やりましょう。」

 

「よし!そうと決まればやろうぜ!」

 

魔理沙が言い、ミニ八卦炉を取り出した瞬間、、他の四人もそれに合わせてそれぞれ払い棒、ダイヤの剣、ナイフ、楼観剣を取り出した。それを見たカオスが笑みを浮かべて言う。

 

「さぁ、始めるぞ。我らと幻想郷。この世の全てを懸けた戦いをな!!」

 




いよいよカオスとの交戦に入るユニ達。紫や悠岐、神奈子やセコンドといった強者がいない中、ユニ達はカオスを倒すことが出来るのか!?
次作もお楽しみに!


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第53話 vsカオス①

カオスの過去を話されたユニ達。幻想郷のために決着をつける。


「はぁぁぁぁぁっ!」

 

始めに先陣を切ったのはユニだった。彼女は飛び上がり、カオスに向かってダイヤの剣を振り下ろす。

 

「無駄だ。」

 

それ言ったカオスはユニを空いている左手で弾く。そのまま彼女は壁に打ちつけられる。

 

「彗星ブレイジングスター!」

 

彼女がやられたのと同時に魔理沙がスペルカードを発動する。カオスはそれも何の躊躇いもなく弾く。

 

「くっ!」

 

魔理沙は箒から落ち、地面を滑る。そんな中、霊夢、妖夢、咲夜の三人が彼の背後から同時に飛びかかる。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

「無駄だと言っているのが分からないのか!」

 

そう言うとカオスは三本の腕で三人を殴り飛ばした。

 

「かはっ!」

 

「ぐはっ!」

 

そのまま三人は壁に叩きつけられる。そんな中、その様子を見ていた魔理沙が心の中で語る。

 

(こいつ・・・今まで戦ってきた相手の中では厄介だぜ。たとえ体がでかくて動きが鈍くても四本の腕でやられてしまう。)

 

そんなことを思っている魔理沙とは別にカオスは呆れた顔をして言う。

 

「相手にならんぞ。これではすぐに決着がついてしまう。まぁ、それも良いかもな。すぐに貴様らを倒して幻想郷を支配し、奴との決着をつけるからな。」

 

「奴ってまさか・・・・。」

 

「そうだ、博麗の巫女。奴だ。」

 

「まさかお前、五大王を・・・。」

 

「違う。」

 

「じゃあ、あのガイルゴールを・・・。」

 

「魔法使いに半霊よ、ふざけているのか?何故我があのような者達と戦わなければならぬのだ!」

 

「じゃあ、誰を倒すって言うのよ・・・。」

 

咲夜が言った瞬間、カオスは大きく息を吸い込んだ。そして話すのと同時にはく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリュシオンだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガイルゴールじゃ、ないの?」

 

恐る恐るユニがカオスに言う。彼女の問いにカオスはすぐに答える。

 

「そうだ。我が決着をつけたいのは五大王でもガイルゴールでもない、エリュシオンだ。」

 

初めて聞く名前を聞いてユニ達は首を傾げるばかりだった。そんな彼女らとは別にカオスは再び口を開く。

 

「エリュシオン。裏の世界に存在し、ガイルゴールと共に生まれた存在。我は現世へ来る前に奴と何度も交戦を交わした。だがその行為こそが我が軍が消費されるだけだった。」

 

「そ、そんなに強い奴なのか!?」

 

「あぁ、奴は強い。本来の我が軍はもっといたのだが奴との交戦により約4割を失った。」

 

「よ、4割も!?」

 

「だから我は今こうして軍を集めている。だが、現世の者の援護により主戦力であるアヌビスとペルセポネが無力化した。」

 

「無力化したんじゃなくて、お前が喰ったんだろうが!!」

 

「フフフ、確かにそれは免れぬ事実。我はアヌビスとペルセポネを喰った。そして二人のエネルギーが我の中に詰まっている。」

 

「ねぇ、カオスさん。あなたに聞きたいことがあるのだけれど・・・。」

 

そう言ったのは咲夜だった。カオスはすぐに彼女の方を見る。そして咲夜は言う。

 

「天子と衣玖はどうしたの?」

 

その言葉を聞いた瞬間、霊夢は辺りを見回しながら心の中で語る。

 

(咲夜の言う通り、天子と衣玖の気配が感じられない。一体二人は・・・。)

 

咲夜の問いを聞いたカオスは笑みを浮かべながら言う。

 

「あぁ、あの天人どもか。あの者達ならば我の源力となってもらったぞ。」

 

「カオス!!天子と衣玖までも!」

 

「だが安心しろ。あの二人は我のある器官の中にいるため、死んではおらぬ。」

 

「安心出来ないから言ってるんだろうが!!」

 

そう言うと魔理沙はミニ八卦炉を取り出した。そしてスペルカードを発動する。

 

「恋符マスタースパーク!」

 

「魔理沙、いきなり撃つの!?」

 

ユニが慌てて止めようとしたが既に魔理沙はカオスにマスタースパークを放っていた。

 

「ぬおっ!?」

 

魔理沙の放ったマスタースパークはカオスに命中し、そのまま彼は壁に打ちつけられる。そんな中、妖夢が魔理沙に言う。

 

「あまり無茶はしないでください。後が面倒になりますから。」

 

「あぁ、分かってるぜ。」

 

「中々やるではないか。」

 

そう言うとカオスは何事もなかったかのようにゆっくりと上体を起こした。そして言う。

 

「貴様らには期待してもいいかもな。楽しませてもらうぞ、この戦いをな。」

 




何かを企むカオス。一体何を企んでいるのか!?
次作もお楽しみに!


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第54話 vsカオス②

何かを企むカオス。一体何を企んでいるのか。


と、カオスは両腕に力を入れ始めた。それを見た妖夢が口を開く。

 

「あの構え・・・。どこかで見覚えがあります!」

 

「何があるって言うんだ!?」

 

妖夢の言葉を聞いて魔理沙は咄嗟に口を開く。そんな彼女に妖夢は再び口を開く。

 

「あれは私がかつてとある悪魔と戦った時もあのようなポーズをとっていました。」

 

「じゃあ奴は何かをしてくるってことなんだな。」

 

「その通りだ。」

 

魔理沙の問いに答えたのは妖夢ではなくユニ達の背後へ突如として移動していたカオスである。その瞬間、ユニは反射的に振り返る。

 

「フン、甘いな。」

 

そう言うと彼は巨大な左手に拳を作り、そのままユニを殴り飛ばした。

 

「かひゅ・・・。」

 

カオスの突然の攻撃に反応しきれなかったユニはそのまま壁に打ちつけられ、吐血する。

 

「ユニ!」

 

すぐに霊夢が彼女の名前を叫ぶ。そんな彼女とは別に咲夜がスペルカードを発動していた。

 

「時符プライベートスクウェア!」

 

その瞬間、カオスの回りに何千本ものナイフが彼めがけて放たれた。だが、カオスは何もせず、ただ笑みを浮かべているままである。そんな彼に咲夜が言う。

 

「今の状況を見てあなたはかなり危険な状態に見えるのだけれど?」

 

「危険ではない。むしろ好都合だ。」

 

そう言った瞬間、カオスめがけて放たれた筈のナイフが咲夜達めがけて放たれていたのだ。

 

「なっ!?」

 

霊夢、魔理沙、咲夜はなんとか避けようとするが数本体に刺さり、逆に妖夢は楼観剣で自分めがけて放たれたナイフを全て弾く。

 

「い、一体何が起こったと言うのよ!」

 

「単純な話だ、博麗の巫女。我はただナイフの方向を変えただけだ。」

 

「ナイフの方向を変えたですって!?そんなこと出来るわけ・・・。」

 

「出来るから我はこのように無傷でいられたのだ。」

 

そう言うとカオスは左手に力を込め始めた。その瞬間、彼の手のひらに紫色の光が溜まった。それを見た魔理沙が言う。

 

「私がやる!」

 

そう言うと魔理沙はカオスが紫色の光を放つのと同時にスペルカードを発動した。

 

「恋符マスタースパーク!」

 

「ま、魔理沙さん。いきなりマスパを2回放つなんて・・・。」

 

「これしか方法がないんだよ!」

 

そう言った瞬間、魔理沙の渾身のマスタースパークとカオスの紫色の光の攻撃が衝突する。その瞬間、魔理沙の放ったマスタースパークを貫き、カオスの放った攻撃が魔理沙達を襲った。

 

「きゃあ!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

あまりにも衝撃が強かったのか、四人は壁に打ちつけられる。

 

「まだよ!」

 

まるで壁に打ちつけられなかったかのように霊夢が飛び上がり、スペルカードを発動する。

 

「夢想封印・瞬!」

 

彼女の放った攻撃は真っ直ぐカオスに向かっていく。それを見たカオスは左手を前に差し出し、受け止める体勢に入った。

 

「残念だったな、博麗の巫女。」

 

そう言うと彼は霊夢の放った夢想封印を素手で受け止めた。

 

「何ッ!?」

 

それを見た霊夢は思わず目を見開く。そんな彼女とは別にカオスは瞬時に霊夢の目の前に移動する。

 

「ひっ!」

 

突然目の前に現れたため、霊夢は思わず声をあげてしまう。そんな彼女とは別にカオスは彼女を蹴りつけた。

 

「ぐはっ!」

 

そのまま霊夢は天井に打ちつけられ、そのまま地面に落ちる。

 

「霊夢さん!」

 

すかさず妖夢が彼女の元へと駆け寄る。

 

「こ、これは・・・。」

 

霊夢の元へと来た瞬間、妖夢は思わず言葉を失ってしまう。何故なら先程のカオスの一撃により、霊夢の左足があらぬ方向に曲がっていたからだ。そんな中、カオスが笑みを浮かべて言う。

 

「理解したか?これが力の差というものだ。」

 

「酷い・・・足が折れてる。」

 

「ハッハッハッ、哀れだな。先程までの我を倒すという自信は一体何処へ消えたというのだ?」

 

「強い。今まで戦ってきた相手の中で一番面倒な相手だぜ。」

 

「あぁ、そうだな。少しハンデを貴様らに与えなくてはな。まぁまずは我の能力を紹介しよう。我の能力は『食らった者の力を使う程度の能力』だ。分かりやすいだろう。」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、何かに気づいた咲夜が彼に言う。

 

「カオス!まさかさっき私が放ったナイフは・・・。」

 

「そう、あれはペルセポネの能力を使わさてもらった。割とあやつの力も使えるな。」

 

「じ、じゃあ私のマスタースパークを止めたのは・・・。」

 

「あれはアヌビスの力を使わさせてもらった。」

 

「面倒になってきますね。こんな時に幽々子様がここへいらしてたら・・・。」

 

「たとえ誰であろうと我はその者達を打ち砕いていく。エリュシオンを越えられるまではな。」

 

その瞬間、妖夢と咲夜が同時にカオスに襲いかかる。

 

「見え見えだ。」

 

そう言うとカオスは背後から攻撃を仕掛けてきた妖夢と咲夜を殴り飛ばした。

 

「ぐはっ!」

 

「がはっ!」

 

そのまま咲夜と妖夢は壁に打ちつけられ、気を失ってしまう。

 

「咲夜、妖夢!くっ・・・。」

 

咄嗟に魔理沙が口を開くが、マスタースパークを2回放った反動で体が思うように動かすことが出来なかった。それを見たカオスはゆっくりと魔理沙に近づきながら言う。

 

「丁度良い。貴様に真相を教えてやろう。現世の大魔王と恐れられた黒田輝宗を復活させ、幻想郷に送ったのは我だ。」

 

「なん・・・だと!?」

 

衝撃的な発言をされた魔理沙と霊夢は思わず目を見開いてしまう。そんな二人とは別にカオスは魔理沙の目の前まで来ると再び口を開く。

 

「四季映姫の記憶を変えることは難しかったがそれ以外は容易いことだった。」

 

「あんた・・・映姫まで利用してまで!!」

 

「魂だけを動かすということは我にとって難所であったがそれにより復活を遂げることが出来たので満足だ。」

 

そう言うとカオスは座り込む魔理沙を掴み、自分の顔の前まで寄せる。

 

「くっ、放せ!」

 

「魔理沙!!」

 

「安心しろ、貴様らはこの世界を支配したあとの我の食事として後回しとしてやる。だから今は大人しく寝ていろ!!」

 

そう言った瞬間、カオスは魔理沙を地面に叩きつけた。その瞬間、彼女の体からは鮮血が飛び散り、ゴキッという鈍い音が辺りに響き、そのまま魔理沙は動かなくなった。

 

「魔理沙!!」

 

慌てて霊夢は魔理沙の元へと駆け寄ろうとするが先程のカオスの攻撃で足を折られたため、動けなかった。

 

「さぁ、後は博麗の巫女。貴様だ。」

 

そう言うとカオスは霊夢にゆっくりと近づく。

 

「え、これって・・・。」

 

その瞬間、霊夢はある光景を目の当たりにし、目を見開く。




霊夢が見た光景。果たしてそれは一体何なのか!?
次作もお楽しみに!


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第55話 3人の死神

圧倒的なカオスの力にユニ達は戦闘不能な状態になってしまう。


場所は変わって妖怪の山。そこではカオス軍の奇襲を察知した白狼天狗の犬走椛が一人で戦っていた。

 

「何をあんな小娘程度に苦戦している!!もっと集団で掛かれ!」

 

「しかし隊長!あの小娘は我々の隊の4割を削ったのですよ!」

 

「あの小娘程度などすぐに体力が尽きる。一斉に掛かれ!」

 

その言葉を聞いた瞬間、椛は目を見開き、心の中で言う。

 

(マズイ。あんな数で一斉に飛びかかれたらひとたまりもない。)

 

その瞬間、カオス軍の兵士10人が一斉に襲いかかる。

 

(これは・・・避けきれない!!)

 

そう確信した椛は思わず目をつぶってしまう。そして10人の兵士が彼女を襲う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天誅八螺旋・(かぜ)。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として辺りに響いた男の声が聞こえた瞬間、何もしていないのに椛を襲おうとした10人の兵士から一斉に鮮血が飛び散り、そのまま兵士達は息絶えた。

 

「・・・え?」

 

「な、何が起こったと言うのだ!?」

 

椛やカオス軍の兵士達が話している中、突如辺りに誰かが近づく音が響く。

 

「何者だ、姿を現せ!!」

 

兵士が言った瞬間、木の陰の茂みが動き始め、中から男が現れた。その男は長身で腰まで伸びる赤髪に目は赤く、左目には眼帯をつけていて袖の広い青い長袖に白い長ズボンを穿いていていた。何よりも目を引くのは彼の持つ武器である。彼が持っているのは長さ2mを越えていて先端には鎌の刃が二つあり、下の部分には2mを越えている長さの鎖がついていて鎖の先には小さな鎌がついている。それを片手で持ち上げているということはかなりの強者だと言える。

 

「よぉ、さっきやったのはこの俺だぜ。」

 

男はカオス軍達に言う。それを見たカオス軍の隊長が口を開く。

 

「な、なんなのだあいつは・・・。」

 

「隊長!気をつけてください。奴は危険です。」

 

「危険?そんなの見て分かるだろうが!!」

 

「見た目だけではありません。奴は・・・奴は・・・幻想郷最強の魂狩者(ソウルハンター)を呼ばれた死神の小野塚篁ですよ!」

 

「そんなの聞いていないぞ!」

 

「さらにですよ!冥界の死神にはそれぞれ段位があって奴はその最高段位の頂点に君臨するがはぁっ!」

 

兵士が続きを話そうとした瞬間、兵士の腹に最強の死神、篁の鎌が刺さっていた。そんな兵士に篁が言う。

 

「グチグチうるせぇな。そういうのは裏で言ってくれよなっ!」

 

そう言うと彼は兵士を刺したまま鎖を掴み、そのまま振り回し始めた。

 

「うわっ!」

 

危険を感じた椛は咄嗟に飛び上がる。それに気にせず篁はそのまま鎌から兵士を抜き、集団に向かって投げつける。

 

「オラァ!」

 

彼の勢いがあまりにも強すぎたのか、カオス軍の隊長含む兵士達がまるでドミノのように倒れていく。

 

「や、殺れ!」

 

隊長が言った瞬間、一斉に兵士が篁に向かっていく。それを見た彼は笑みを浮かべて叫ぶ。

 

「小町、妹子!!映姫様の説教をくらいたくなければ俺の手伝いをしろォ!」

 

そう言った瞬間、草陰から二人の死神、小野塚小町と小野塚妹子が現れた。

 

「四季様の説教は聞きたくないからね、協力するよ兄さん。」

 

「私も、未熟者から解放されるために兄様と戦います!」

 

妹子が言った瞬間、三人は同時に足を動かす。そのまま三人はカオス軍を倒していく。

 

「こんなんじゃっ!、あたいにも兄さんにも傷をつけられないよ!」

 

「兄様には絶対に傷を入れさせない!!」

 

二人はやる気満々でカオス軍の兵士を次々と倒していく。それを呆然と見ていた椛が口を開く。

 

「し、死神ってこんなに積極的なんですね。正直驚きました。」

 

椛が話している中、一人の兵士が篁に向かって刀を振り下ろす。

 

「やあぁぁぁぁっ!」

 

その瞬間、辺りにガキンッという音が響く。兵士の攻撃は間違いなく篁の右腕に命中している。だが斬れていない。彼の右腕には傷ひとつついていない。

 

「オイオイ、テメェ、やる気あんのかよ。」

 

そう言うと彼は右足で兵士の足を思いきり踏みつけた。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!痛いぃぃぃぃぃ!」

 

あまりの痛さに叫ぶ兵士とは別に篁は空いている左手に握り拳を作った。

 

「オラァッ!」

 

そう雄叫びを上げた篁はそのまま兵士の顔に渾身のパンチを打ち込んだ。そのまま兵士は残っている他の兵士達にぶつかり、遂には全員巻き込まれた。それを見た妹子が言う。

 

「流石兄様ですね、私達の常識を遥かに越えるパンチを打ち込むとは・・・。」

 

「妹子に小町。いずれお前らにもこれをやってもらうからな。」

 

「ちょっ、兄さん!?」

 

「無理がありますよ兄様。」

 

「ハハハ、冗談だよ。」

 

三人が話している中、椛は三人に近づき、倒れている兵士を指差しながら言う。

 

「あの・・・死神の方々。この兵士達はどうするつもりなんですか?」

 

「ん?あぁ、椛か。そいつらはこうするんだよ。」

 

そう言うと彼は倒れている兵士全員を1ヶ所に集めた。そして意図も簡単に隊長を含む兵士全員を1ヶ所の木に縛り付けた。それを見た椛が言う。

 

「無慈悲なお方ですね。」

 

「おっとそうだ。こいつらの武器を取り上げておかないとな。」

 

そう言うと彼は片っ端から兵士達の武器全てを没収した。そして拳銃を見た彼は一言言う。

 

「折角だから、こいつはあの野郎が戻ってきた時に渡すとするか。」

 

「篁さん。あの野郎って・・・。」

 

椛が続きを言おうとした瞬間、突如幻想郷に眩い青い光を発光しながら雷が落ち、雷鳴が鳴り響いた。




3人の死神に助けられた椛。突如落ちた雷とは一体!?
次作もお楽しみに!


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第56話 紅き悪魔と黒い梟

妖怪の山を守り抜いた死神達。そんな中、青き稲妻が走る。


「こ、ここは・・・。」

 

目を覚ますとレミリアは薄暗い部屋の中にいて壁には蝋燭が並べられている。

 

「・・・ここは一体・・・!?」

 

気になった彼女が動こうとしたが、ジャラという音が響き、動けなかった。

 

「・・・?」

 

よく見ると彼女の両腕は鎖で縛られている。それに気づいた彼女が口を開く。

 

「アヌビスめ・・・随分と派手にやってくれたわね。次会ったら絶対に殺してあげ・・・!!」

 

続きを言おうとした瞬間、彼女はある音を察知し、思わず声を止めてしまう。彼女が察知した音はコツン、コツンという足音を立ててこちらに向かってくる。と、レミリアは心の中で言う。

 

(ヤバイ、殺される。今ここに来る奴は私を殺すためにやって来ている。私には分かる。なんだろう・・・一度こんな経験をした気がする。)

 

足音は次第に彼女に近づいてくる。そんな中、レミリアは体を震わせながら言う。

 

「わ、私を・・・殺さないで。なな、何でもしますからぁ・・・。」

 

あまりの怖さに思わず彼女は涙を流してしまう。そんな中、遂に彼女の前で足音が止んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフフフ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・!?」

 

聞き覚えのある男の声を聞いて思わずレミリアは目を見開く。そんな彼女とは別に男は彼女の前までやって来る。その男は長身で後ろ髪を縛っていて悠々とした歩き方に両腕を背に回していて腰には刀を描けている男だった。

 

「あ、あなたは!!」

 

「まさか久しき再開がこんな風になるとはね、レミリア・スカーレット。」

 

「メ、メルト・グランチ!?」

 

メルト・グランチ。レミリアにとって宿命の敵でもあり、恐怖の対象の一つである。そんな彼がここにいることがあまりにも以外だったため、レミリアは驚くことしか出来なかった。そんな中、メルト・グランチが笑みを浮かべて言う。

 

「さて、どうしたものかな?私とは一度、いや二度戦っている筈なのだがまるで初対面のような反応だな。」

 

「どうしてあなたがここにいるの?いや、そんなことより・・・ここは何処なの?」

 

レミリアが言った瞬間、彼は不気味な笑みを浮かべる。そんな彼とは別にレミリアは再び口を開く。

 

「あなたがここにいるということはここは紅魔館ではないのは事実。故にカオスの場所でもない。まさかここは帝王城とは言わないでしょうね?」

 

「やれやれ、そこまで私を警戒するのかね?まぁ、嘗ての戦いを振り返ればそうなるのも無理もないな。」

 

そう言った瞬間、彼は右手をあげ、パチンと指を鳴らした。その瞬間、辺りの蝋燭が消え、変わりに電気が付いた。

 

「こ、これは!!」

 

部屋の中を見た瞬間、レミリアは思わず声を上げてしまう。何故なら部屋の中には壁や天井などが無惨に壊されていたからだ。そんな中、メルト・グランチが言う。

 

「ここは紅魔館。卿の父親が卿の妹を閉じ込めていた部屋だ。」

 

「た、確かここは・・・。」

 

「そう、ここは最も外からの気配を感じにくい場所だ。卿の仲間達も気がつかなかったようだがね。」

 

「私の仲間?まさかフラン達はここに!?」

 

「勿論いるとも。黒き刀や氷の悪魔、藤原妹紅に上白沢慧音が救出したよ。」

 

「良かった・・・。そう言えばアヌビスは!?」

 

「話によれば、黒き刀の堕天(モードオブサタン)に敗れ、カオスに喰われたらしいな。」

 

「フフッ、無様ね。」

 

「いやしかし、話が変わるのだがウロボロス・サーカリアスにはやられたものだな。」

 

「ウロボロスにやられた?何を言っているの?」

 

「2年前のことだよ。私の計画が彼の手によって全て水の泡となった。」

 

「彼はあなたによって一度殺されているわ。彼が何か出来る筈ないわ!」

 

「私も思っていたよ。だが私はうっかりしてしまったのか、彼の種族を忘れていたのだよ。」

 

「ウロボロスの種族?」

 

「言っておくが、彼は半獣ではないよ。彼は少数しか飲んだことがないモノを飲んでしまった者の一人だからねぇ。」

 

「飲んでしまった?まさか・・・。」

 

「そう、彼は蓬莱人。死ぬことも老いることもない存在だ。」

 

「そんな、彼が・・・。」

 

「彼は魂を人里の者に入り込み、私の計画を観察していた。非常に残念だよ。」

 

「・・・・。」

 

「さて、話が変わるのだが卿は博麗の巫女達がカオスに勝てるとは思うかね?」

 

そう言うと彼はレミリアの顎を左手でくいっと摘まみ上げ、自分の目線に合わさせる。そして口を開く。

 

「私の予想では、勝つと思う。いや、勝ってほしいのだよ。この幻想郷のために、全ての世界のために!!」

 

そう言うと彼は再び笑みを浮かべるとそのまま彼女の顎を放し、鎖を指で挟む。そして指に力を込める。その瞬間、レミリアの両腕を縛っていた鎖が砕ける。

 

「なっ!?」

 

それを見たレミリアは思わず驚いてしまう。そんな彼女とは別にメルト・グランチは言う。

 

「生きたまえ。今卿に死なれては私が困るのでね。」

 

「ど、どうしてあなたがこんなことを・・・。」

 

「言っただろう?幻想郷のために、全ての世界のためにとね。私は私が愛した世界を壊されるのは嫌いなのでね。」

 

「そ、そうだったんだ・・・。」

 

「さぁ行きたまえ。卿が今するべきことはここで縛られているのではない。仲間と合流し、カオス軍と戦うことだけだ。」

 

そう言うと彼はレミリアに背を向けて歩き出し、部屋から出ていった。

「あ、待って!!」

彼の後を追うようにレミリアも部屋から出る。しかしそこには彼の姿はなかった。




レミリアを助けた帝王メルト・グランチ。一体何故!?
次作もお楽しみに!


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第57話 6人の強者

紅魔館に来たのはメルト・グランチだった。しかし彼はレミリアを助けた。


「うわぁぁぁぁぁぁっ、助けてぇ!」

 

場所は変わって人里。そこではカオス軍である四角世界(マインクラフト)の敵mob達が人里の人達を襲っていた。

 

「みなさん!早くこちらに避難してください!」

 

そんな中、稗田阿求は人里の人達を子供を優先して避難させていた。

 

「ヴァー・・・。」

 

四角世界(マインクラフト)の敵mobは様々いるがその中でカオスが呼び寄せたのはゾンビ、スケルトン、エンダーマン、ウィッチである。

 

「そろそろ完了したかな・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けてぇ!」

 

阿求が人里の人達を全員避難させたと思った瞬間、村から一人の男の叫び声が聞こえたため、彼女はすぐさまその方向を振り返る。そこには数体のゾンビに囲まれている男がいた。

 

「なっ、あんなにたくさんのゾンビが!?」

 

それを見た阿求は思わず声を上げてしまう。そんな中、男が彼女に向かって叫ぶ。

 

「阿求さん、助けてください!!俺はまだ死にたくありません!」

 

「で、ですが・・・。」

 

阿求は何とかして男を助けようとしたが霊夢や魔理沙とは違ってあまり力のない彼女はどうすることも出来なかった。

 

「グォー。」

 

「ヴァー!」

 

「いやだぁぁぁぁぁぁ!」

 

男は叫んだがゾンビ達に言葉が通じる筈なかった。そのまま男ゾンビ達は男に食らいついた。

 

「あ、あぁ・・・。」

 

阿求はそれをただ頭を抱えて見ていた。

 

「グォー・・・。」

 

男を食い終えたゾンビ達は阿求の存在に気付き、ゆっくり近づく。

 

「ひっ!」

 

それに気づいた彼女はすぐさま逃げようとする。

 

「グガァ・・・。」

 

「フッフッフッ。」

 

「カランカラン。」

 

その行く手を遮るかのようにエンダーマン、ウィッチ、スケルトンが彼女の前に数体現れる。

 

「あ・・・。」

 

その瞬間、阿求は涙を流しながら地面に膝をつく。そんな彼女に敵mobが囲む。そんな中、彼女は心の中で言う。

 

(終わった・・・。こんな状況じゃ逃げられない。)

 

自分が逃げられないと悟った彼女は下を向きながら涙を流す。

 

「グォー!」

 

「カランカラン。」

 

そして敵mob達が一斉に彼女に飛びかかった。

 

「・・・ヴァ?」

 

その瞬間、ゾンビ達が首を傾げながら起き上がる。

 

「フウー?」

 

それを見てウィッチもその場所を見る。そこには先程までいた阿求の姿が無くなっていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ、テメェら。一人を数体で襲うのは卑怯じゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如屋根の上から声がしたため、敵mob達は一斉に上を向く。そこにいたのは黒い髪に紅い瞳、黒いコートに黒いズボンを履いていて右手には黒き刀を持っている青年、西田悠岐がいた。彼は左腕で阿求を担いでいた。と、悠岐が敵mob達に言う。

 

「まぁ、カオスの思うがままにしか動かないテメェらには言葉なんて理解できないんだろうな。人を襲う気持ちも理解出来なくもない。だがな・・・。」

 

その瞬間、悠岐は突如屋根から飛び降り、見えない速さで敵mob達を斬りつけ、敵mob達から少し離れた場所に降り立つ。その瞬間、敵mob達の体から鮮血が飛び散り、そのまま敵mob達が倒れた。それを見た悠岐が言う。

 

「少しは人の立場になってみろ。」

 

そう言うと彼は阿求を優しく下ろし、言う。

 

「大丈夫だったか?阿求。」

 

「はい、ありがとうございます。悠岐さん。」

 

「心配ねぇよ。それよりも敵mob達はこれだけか?」

 

「いえ、まだいると思いますが・・・。」

 

阿求が言った瞬間、悠岐の背後からゆっくりとゾンビが近づいてくる。それに気づいた阿求が彼に言う。

 

「悠岐さん、後ろ!!」

 

「後ろ?あぁ、分かってるよ。あいつが殺ってくれるから大丈夫だ。」

 

彼が言った瞬間、彼に近づこうとしたゾンビに腰まで伸びる黒髪に悠岐と同じ紅い瞳、氷のオーラを漂わせる刀を持つ少女がゾンビの頭を斬り落とした。

 

「よくやった、楓。」

 

悠岐が言った瞬間、ゾンビを倒した少女、楓が彼の隣に降りた。と、楓が悠岐に言う。

 

「まだたくさんいるみたいだな。」

 

「あぁ、さっさと倒さないとな。」

 

悠岐と楓が同じ方向を見た瞬間、爆発音が辺りに響く。そして敵mob達が吹っ飛んで来る。それを見た楓が口を開く。

 

「どうやら、手伝ってくれる人がもう二人いるみたいだな。」

 

「そのようだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?こんな程度じゃ面白くないわよ!」

 

「次々と雑魚が・・・。面倒ですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が見る方向には敵mob達の血が服に付着している幽香と依姫がいた。

 

「なんだか似合わない組合わせだな。」

 

悠岐達の存在に気がついた幽香と依姫は二人に近づいた。そして口を開く。

 

「お久しぶりです、黒き刀。」

 

「久しぶりだな、依姫。」

 

「あなたが悠岐の友達の楓ね。」

 

「初めまして幽香。私は出野楓だ。」

 

四人が話している中、突如空中にネザーゲートが出現したのかと思うとその中から啓介とピンが飛び出してきて一部の敵mob達を踏みつけた。

 

「ふぅ、やっと幻想郷に戻ってこれたぜ。」

 

「ナンカテキモブタチガイルヨ。」

 

「啓介、ピン!」

 

楓が二人の名前を叫ぶと二人は楓達の方を見る。と、何かを思い付いた悠岐が口を開く。

 

「どうだお前ら。この6人でどれだけ多くの敵mob達を倒せるか競ってみないか?」

 

「面白い。」

 

「大賛成よ。」

 

「乗ります。」

 

「殺ろうぜ、殺ろうぜ。」

 

「ボク、ゼッタイニマケナイ。」

 

6人が言った瞬間、敵mobの軍勢が一斉にやって来たのを阿求が見つけた。と、楓が言う。

 

競争(ゲーム)の始まりだな。」

 

「さぁ、行くわよ!!」

 

幽香が言った瞬間、6人同時に敵mobの軍勢に突っ込んでいく。阿求はそれを呆然と見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?阿求。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如女性に話しかけられたため、阿求は背後を振り返る。そこにいたのは腰まで伸びる赤い髪にヘッドフォンをかけていて紅い瞳の女性がいた。

 

「あ、あなたは?」

 

「私の名前はビオラ。現実世界の女王を勤めております。」

 

「女王様なんですか!?」

 

「話は後にしましょう。今は私と共に人里の方々の元へ行きましょう。あそこにいては危険です。」

 

「は、はい。」

 

そのまま阿求はビオラと共に人里の人達がいる博麗神社の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラオラどうしたぁ!テメェらの力はこんな程度かぁっ!」

 

悠岐達は楽しそうに敵mobの軍勢を倒していた。

 

「お、これ使えそうだな。」

 

そう言うと彼はエンダーマンから出てきた緑色の玉を楓に近づこうとするゾンビ目掛けて投げた。そしてゾンビに緑色の玉が触れた瞬間、悠岐がゾンビの背後に移動し、ゾンビの胸を貫く。それを見た楓が悠岐に言う。

 

「エンダーパールを使ったのか。」

 

「勿論さ。」

 

そんな中、幽香と依姫は互いに助け合うことなく敵mob達を倒していた。

 

「はいこれで20体目ェ!」

 

「私もです!」

 

啓介とピンは互いに協力しあいながら敵mob達を倒していた。

 

「クソッ、数が多すぎる。」

 

「マダダイジョウブダ!タエルンダケイスケクン!」

 

6人が敵mob達を倒すのに夢中になっている時だった。突如空を覆っていた黒い雲に渦が現れ、雷鳴が鳴り響く。と、幽香が言う。

 

「この感覚・・・まさか!!」

 

幽香と同様、雷鳴と渦巻く雲を見た啓介が口を開く。

 

 

「天明の雷・・・。2年前と同じだ。」

 




突如鳴り響く雷鳴。その正体とは!?
次作もお楽しみに!


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第58話 現実化する悪夢

悠岐、楓、幽香、依姫、啓介、ピンによって敵mob達が次々と倒される。そんな時に雷鳴が鳴り響く。


霊夢が見る光景。それはあの悪夢と同じで薄暗く、王が座るような玉座が目線にあり、右側にはうつ伏せで倒れている咲夜、左側には仰向けで倒れている魔理沙がいる。そして自分の目線にいる大男、カオスが片手で傷だらけの妖夢を摘まみ上げた。

 

「ま、まさか・・・。」

 

霊夢が察した瞬間、カオスは信じられないくらい大きな口を開き、彼女を口の中へ入れるとそのままゴクンという音を立てて彼女を丸飲みした。

 

「ひっ!」

 

現実化した悪夢の光景を見て思わず霊夢は声を上げてしまう。と、カオスが霊夢を見ながら言う。

 

「次は博麗の巫女、貴様だ。」

 

そう言うとカオスはゆっくりと霊夢の元へと歩み寄る。

 

「嫌っ!」

 

霊夢は逃げよとするがカオスの恐怖により足が言うことを聞かず、動けなかった。そしてカオスが目の前までやって来るとニヤリと不気味な笑みを浮かべる。

 

「あぐっ!?」

 

その瞬間、カオスの右の細い手で首を締め上げられる。抵抗するが鉄のように硬く、放れなかった。そしてカオスは軽々と霊夢の体を持ち上げる。

 

「ぐ、あぁ・・・。」

 

カオスの力が強すぎるため、徐々に霊夢の意識が遠くなっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宝符ゲートオブバビロン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かがスペルカードを発動する声が聞こえた瞬間、カオスの翼に4本ほどの剣が刺さる。

 

「何ッ!?」

 

突然の攻撃をくらったカオスはそのまま霊夢を放してしまう。

 

「ゲホッ、ゲホッ。」

 

慌てて空気を取り入れた霊夢は激しく咳き込む。そんな中、カオスは後ろを振り返る。そこにはヨロヨロになりながらスペルカードを発動していたユニがいた。と、ユニが言う。

 

「絶対に・・・仲間を、殺させ・・・ないわ。」

 

翼から剣を抜いたカオスはユニを鋭い眼差しで凝視する。そして口を開く。

 

「仲間が助かるならば自分の命など必要ない。それが我の勝手な解釈だがどうだ?」

 

「えぇ・・・7、8割正解ね。」

 

「フン、決まったな。」

 

そう言うとカオスはゆっくりとユニの元へと近づく。そして彼女の首を細い両手で締め上げる。そして持ち上げる。

 

「かはっ、ぐはぁ・・・。」

 

ユニは必死に抵抗するが霊夢と違って両手で締められているため、放れなかった。そんな中、カオスが言う。

 

「貴様はチェスでいう、チェックメイトに陥ったのだ。これで我は『幻想郷の守護者』を倒すことができるのだ!」

 

カオスが高笑いをしながら話している中、ユニはスペルカードを取りだした。

 

「極符コールザゴット・・・。」

 

ユニは最後まで言い切ることが出来たがそのまま瞼が閉じ、手に持っていたスペルカードを落とした。それを見た霊夢が目を見開きながら言う。

 

「そんな・・・ユニ!!」

 

「れ、霊夢・・・。」

 

「魔理沙!?」

 

カオスがユニを放した瞬間、気を失っていた魔理沙が目を覚ました。そんな二人とは別にカオスは口を開く。

 

「ハッハッハ!!これで幻想郷の守護者は消えた。我に歯向かったからこのような有り様になって当然なのだ!!」

 

カオスが叫んだ瞬間、辺りに突如として雷鳴が鳴り響いた。

 

「雷・・・なのか?」

 

「フフフ、遂に我は雷を発生させることまで力を得たようだな。素晴らしい、素晴らしいぞ!我は遂に世界を一つ制圧することが出来るのだ!幻想郷よ!!我が力の前に膝をつくがよい!!これでエリュシオンに再び対抗することができる!」

 

一人で言ったカオスは霊夢と魔理沙を見て口を開く。

 

「今なら降伏をしてもよいぞ?さぁ、どうする?」

 

「冗談じゃないぜ!お前なんかに従ってたまるか!」

 

「そうよ!絶対に従わない!!」

 

「ほほう、そうか。お前達は降伏しないのだな。では殺す。」

 

そう言うとカオスは巨大な右腕に巨大な剣を持った。そして二人の元へと歩み寄る。

 

「ひっ!」

 

「く、クソッ・・・。」

 

二人の前まで来た瞬間、カオスは笑みを浮かべて口を開く。

 

「死ねェ、博麗の巫女、魔法使い!!」

 

そのままカオスは巨大な剣を振り下ろした。思わず二人は目を瞑ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしカオスの剣は二人に中々当たらない。

 

「い、一体何が・・・!?」

 

「えっ!?」

 

「なん・・・だと・・・。」

 

二人が目を開けた瞬間、二人は驚きを隠せない光景を目の当たりにした。そしてカオスも驚いていた。三人の目に写る光景。それはあの巨大な剣によるカオスの攻撃を腰まで伸びる黄色髪に青い瞳、貴族の薄橙色の服を着ていて背丈は2mを越えている男が右手だけで受け止めていたからだ。驚く三人とは別に男は口を開く。

 

「混沌を象徴するお前の力がこの程度とはな。」

 

そう言うと男はカオスの腹を蹴りつけた。その瞬間、カオスは部屋の一番端まで吹っ飛んだ。男から一番端までの距離は約15mほどあった。




突如現れた長身の男。その正体とは!?
次作もお楽しみに!


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第59話 神再臨

霊夢と魔理沙がピンチの中、突如として現れた謎の長身の男。


カオスを軽々と蹴り飛ばした男は霊夢達を見て口を開く。

 

「久しき顔だ。あの日のことを思い出す。」

 

「わ、私はあんたと会ったことはないぜ?」

 

「あぁ、そうだったな。まだお前達は余のこの姿を見るのは初めてだったな。まぁ後に正体を明かそう。」

 

男が言った瞬間、カオスは起き上がり、男を見ながら言う。

 

「貴様、何者だ?幻想郷の者か?現世の者か?どちらでも構わぬ。我を邪魔する者は皆敵だ!」

 

そう言うとカオスは男に向かって走り出す。男はそれを黙ってみている。

 

「死ね!」

 

カオスが叫んだ瞬間、男は一瞬にして彼の下に移動し、左手を腹に刺した。

 

「ガハァッ!」

 

「・・・そこか。」

 

そう言うと男はカオスの腹から三人の少女を引きずり出した。それを見た魔理沙が言う。

 

「天子、衣玖、妖夢!!」

 

三人の少女を引きずり出した男は霊夢達に渡した。そして口を開く。

 

「お前達が何故あのような者に勝てないのか、教えてやろう。」

 

「・・・?」

 

「お前達がカオスに勝てない理由、それは正しい戦い方をしていないからだ。」

 

「正しい戦い方、ですって?」

 

「そうだ。余から見れば正しい戦い方をしているのはあの五大王だけだ。特別にお前達に見せてやろう。」

 

そう言うと男は右手をパーの形にした。その瞬間、男の手に刀が現れた。そして手に取る。と、カオスが男に言う。

 

「貴様ァ、余程我に殺されたいみたいだなぁ!まるであの時の五大王みたいになァ!」

 

「お前、今なんと言った?この余を五大王と同じ扱いをするな。ヘドが出る。」

 

そう言うと男は刀をカオスに向かって振り下ろす。カオスもそれに対抗すべく巨大な剣で撃ち合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊夢、魔理沙、ユニ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如女性の声が聞こえたかと思うと霊夢の背後に目玉だらけの世界、スキマが現れ、中から妖怪の賢者、八雲紫が現れた。それを見た魔理沙が彼女に言う。

 

「来るのが遅いぜ、紫。一体何をしていたんだ?」

 

「ごめんなさいね、ちょっと幽香と競争してて・・・。そうだ、ユニ!!」

 

そう言うと紫は倒れているユニの元へと駆け寄る。彼女に続いて二人も寄る。紫はユニの喉に優しく手を置く。

 

「・・・まだ生きてる。」

 

そう言うと彼女は安心した表情を見せた。彼女に続いて二人も笑みを浮かべる。そんな中、カオスと男が激しく争っていた。と、魔理沙が紫に言う。

 

「なぁ、紫。あの男の人は誰だ?なんか五大王よりも地位が高そうな人に見れるんだが・・・。」

 

「おかしいわねぇ、現世で王よりも地位が高い人なんていないわ。」

 

「じ、じゃああの男の人は何者だっていうんだ!」

 

二人が話している中、男はカオスに向かって言う。

 

「どうした?その程度で終わってはつまらぬではないか。」

 

「黙れ!貴様にはまだ我は本気を見せていないだけだ!!」

 

「愚かな・・・。自分の仲間を食らい、そして食らった仲間の能力を使っているというのに本気を見せていないというのはおかしな話ではないか?」

 

「黙れェ!」

 

そう言うとカオスは巨大な剣を男目掛けて振り下ろす。男はそれを素早く避け、空中に浮く。そんな彼にカオスが言う。

 

「避けているばかりでは我にダメージは与えられぬぞ!」

 

「もう与える準備は整っている。」

 

そう言った瞬間、カオスの足元に星の形をした光が描き出された。

 

「こ、これは!!」

 

「星激『(ほろび)』」

 

男はここにいる者達が気づかない間にスペルカードを発動していた。そして発動した瞬間、光の攻撃がカオスを襲う。

 

「ぐぁぁぁぁっ!」

 

男の攻撃をくらったカオスはヨロヨロになりながら壁に寄っ掛かる。それを見た男が口を開く。

 

「あれをくらって立っていられるとは、大した体の丈夫さだ。」

 

「何故だ・・・何故我の気づかぬ内に!」

 

「カオスよ、お前は余がお前の攻撃を避けている間に魔法陣を張っていることに気がつかなかったようだな。」

 

「魔法陣だと!?」

 

「こうしてお前と話している内に既にスペルカードを発動している。」

 

男が言った瞬間、突然天井に穴が開き、空いた穴の外から6つの隕石がカオス目掛けて落ちた。

 

「やられるか!」

 

そう言うとカオスは巨大な剣で隕石を全て切り刻んだ。

 

「爆暗『闇のフレア』」

 

その声が聞こえた瞬間、カオスの真下に男がスペルカードを発動しており、そのままカオスを吹っ飛ばした。と、魔理沙が言う。

 

「何なんだよあの人は。五大王を遥かに越えるような力を持っている。それに、戦術も今まで会ってきた奴とは違う。」

 

魔理沙が話している中、男は身体中傷だらけでヨロヨロとゆっくり歩くカオスに言う。

 

「さて、そろそろ終わりにさせてもらうとしよう。これ以上時間が掛かる作業は嫌いなのでな。」

 

そう言うと男は刀を右手から消すと左手を上に上げた。そして言う。

 

「受けるがいい、神に背きし者に与えることの出来る神の鉄槌を。」

 

そう言った瞬間、男の左手の上にメラメラと燃え盛る巨大な炎の玉が作られた。それを見たカオスが目を見開きながら言う。

 

「聖なる焔・・・まさか、貴様は!!」

 

そう言った瞬間、男の左手から巨大な炎の玉が放たれた。

 

「四重結界!」

 

その瞬間、紫は7人を守るためにスペルカードを発動した。そんな彼女に霊夢が言う。

 

「これで防げるの?」

 

「恐らく、四重結界じゃあ到底防ぎきれそうにないわ。」

 

紫が言った瞬間、辺りに激しい爆風が襲った。その威力はカオス城の一部を破壊するほどの威力だった。




突然現れた強き謎の男。その正体をとは!?
次作、東方混沌記カオス編完結。
お楽しみに!


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第60話 違和感

突如現れた長身男は霊夢達の前でカオスに圧倒的な強さを見せつけた。


「い、一体どうなった・・・。」

 

魔理沙が言った瞬間、視界が晴れる。そこには仰向けに倒れるカオスを見る男の姿があった。そんな中、紫が言う。

 

「どうやらなんとか四重結界が持ってくれたみたいね。」

 

「怖かったわよ。」

 

「・・・あれ、ここは・・・。」

 

「ユニ!!」

 

霊夢が言った瞬間、今まで気絶していたユニが目を覚ました。それにつられて咲夜、衣玖、天子、妖夢も目を覚ました。と、男が紫に言う。

 

「カオスを殺れば全ては終わる。そして新たな道へと誘われる。」

 

「えぇ、そのようね。一応休んでおきたいところですわ。」

 

「勿論そのつもりでいる。その日まではまだ程遠いのか近いのか分からぬ。」

 

男が言った瞬間、ガラガラと音を立てながらカオスが起き上がった。そんな彼に男が言う。

 

「神の炎を受けて立てるとはな。お前、さては不老不死の身を手に入れたな?」

 

「その、通りだ・・・。そのため、我は何度、で・・・も生きれるさ。」

 

「面倒だな。ではこれで終わらせる。」

 

そう言った瞬間、男はスペルカードを発動した。

 

「死符『地獄からの招待状』」

 

その瞬間、カオスの回りに鎖が現れた。その鎖はカオスの四肢や体に巻きついた。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「これは、いくら不老不死であるお前であろうと必ず地獄の底に落ちるのだ。」

 

そう言った瞬間、カオスは鎖に無理矢理外に出された。男はそれを呆然と見る。そんな彼にカオスが言う。

 

「我は地獄の底から再び這い上がって見せる!そして絶対に貴様を殺してやる!!」

 

「・・・。」

 

「貴様を殺して、必ずエリュシオンを・・・。」

 

続きを言おうとした瞬間、カオスは空中に浮いている地獄の門の中に引きずり込まれていった。それを見届けた男は紫達の前に行き、言う。

 

「名乗りが遅くて申し訳ない。余はガイルゴール、全てを司る神だ。」

 

「ガ、ガイルゴール!?」

 

ガイルゴールの言葉を聞いて霊夢達は思わず声を上げてしまう。そんな中、ガイルゴールが言う。

 

「カオスを倒したことにより、敵mob達が一斉に消滅した。これで幻想郷は平和になった。」

 

ガイルゴールが言った瞬間、突如ユニがガイルゴールを見て言う。

 

「私の思いが届いて良かったです。来てくれてありがとう、ガイルゴール。」

 

「百合・・・いや、アイアルト・ユニよ、お前は死んではならぬ。今後も幻想郷の守護者の誇りを持って生きていくがいい。」

 

「ん、あんた今百合って?」

 

「さて、余はそろそろ失礼させてもらう。」

 

「ちょっと待ちなさい、ガイルゴール。あんたに聞きたいことがあるの。」

 

「・・・なんだ?博麗の巫女。」

 

「カオスが言ってたのだけれど、エリュシオンって何者なの?」

 

「・・・聞いたか。」

 

「な、何か知っているのか!?」

 

「今ここで言いたいところだがまだお前達には言えない。後に言おう。」

 

そう言うとガイルゴールは空に飛んでいってしまった。霊夢達はただそれを呆然と見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里では突如敵mob達が消えたため、悠岐達は驚きを隠せなかった。と、ピンが言う。

 

「オ、オワッタノカ?」

 

「そのようね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「依姫~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幽香が言った瞬間、依姫を呼ぶ少女の声が聞こえた。その声を聞いた依姫はその方向を見て言う。

 

「お姉様ですか?」

 

依姫が言った瞬間、彼女の目の前に少し手当てしてある姿で現れた少女、綿月豊姫がいた。と、依姫が彼女に言う。

 

「お姉様!その傷大丈夫なんですか?」

 

「えぇ、お師匠様に手当てしてもらったから大丈夫よ。」

 

豊姫が言った瞬間、幽香が依姫に近づき、言う。

 

「へぇ、あなたお姉さんがいたのね。」

 

「えぇ、いますよ。」

 

依姫が幽香と話している中、豊姫の近くにいたレイセンが二人に言う。

 

「お二方、そろそろ月の都に帰りましょう。」

 

「えぇ、そうね。依姫、帰るとしましょう。」

 

「そ、そうですね。」

 

「月人さん。」

 

三人が帰ろうとした瞬間、幽香が依姫を呼び、口を開く。

 

「また戦いましょう。次は絶対に勝つ。」

 

「・・・えぇ、もちろん!次は絶対に負けませんよ。」

 

そう言うと彼女は幽香に笑みを浮かべる。それを見た幽香も笑みを浮かべる。そして三人は豊姫の空間で月の都に帰っていった。それを見ていた楓が言う。

 

「月の都か・・・是非とも行ってみたい場所だ。」

 

「そうだな。一度は行って、み・・たい・・・な。」

 

そう言った瞬間、悠岐は突然意識を失い、倒れてしまう。

 

「悠岐!?」

 

悠岐の異変に気がついた楓がすぐに彼の元へと駆け寄る。それを見た啓介、ピン、幽香も駆け寄る。と、啓介が口を開く。

 

「何があった?」

 

「分からない。急に倒れて・・・。」

 

「トリアエズエイエンテイニムカオウ。」

 

「そうしたほうがいいわね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって月の都。そこでは先程幻想郷から出た豊姫と姫、そしてレイセンが到着していた。三人が帰って来たことを知ったサグメはすぐに三人の元へ向かう。

 

「お疲れさま、三人とも。」

 

「ただいま戻りました、サグメ様。」

 

「・・・随分と手当てしてもらった箇所が多いがカオス軍と戦ったのか?」

 

「いいえサグメ様。これはカオス軍ではなく、幻想郷という世界の者にやられた傷ですわ。」

 

「幻想郷・・・そんなに強い者がいるのか!」

 

「えぇ、いらっしゃいます。」

 

それを聞いたサグメは何も言うことが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もいなくなったカオス城でユニ達は話していた。

 

「終わったのね。」

 

「あぁ、これでカオスとの戦いは終わったんだぜ!」

 

「もう当分異変が起こらないことを願うわ。」

 

そう言う霊夢だが今後、大いなる異変が起こることをまだ誰も知らない。




次作から3章に入ります。
次作もお楽しみに!


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第3章
第61話 堕天


カオスとの戦いに勝利し、喜びを分かち合う中、悠岐が突然として倒れてしまう。


場所は永遠亭。そこでは突然として倒れてしまった悠岐を診る永琳とそれをただ見つめる霊夢、魔理沙、ユニ、楓、啓介、ピンがいた。と、永琳が言う。

 

「変ね・・・。体のどこにも異常はないのに目を覚まさないわ。」

 

「マサカ、シンジャッタノ!?」

 

「いいえ、息があるから生きているわ。」

 

「でも、どうして・・・。」

 

「私にも分からないのよ、楓。私も今までこんな患者には出会ったことないわ。一応詳しそうな人を呼んでいるのだけれど・・・。」

 

「お師匠様、来ました。」

 

永琳が言った瞬間、外で詳しそうな人を待っていた鈴仙が彼女に言った。それを聞いた永琳が口を開く。

 

「分かったわ。すぐに中に入らせなさい。」

 

「は、はい!さぁ、こちらです。」

 

鈴仙が言うとその人は悠岐達がいる部屋の中へと足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、まさか黒き刀とはねぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あんたは!!」

 

男が言った瞬間、霊夢達は思わず声を上げてしまう。中に入ってきたのは長身で後ろ髪を縛っていて悠々とした歩き方に両腕を背に回している男だった。彼を見た瞬間、ユニは男の前に立ち、頭を下げて言う。

 

「お初にお目にかかります、メルト・グランチ・エンペラー様。私は闘王アイアルト・モルトの妹のアイアルト・ユニです。」

 

「おや?君がモルトの・・・。話は彼自身から聞いているよ。」

 

「お会いできて光栄です。」

 

ユニの行動を見た霊夢達は思わず唖然となってしまう。そんな中、啓介が言う。

 

「お前も来てたんだな、メルト・グランチ。」

 

「帝の命により来たのだよ。」

 

「そんなことはいい。早く悠岐を見てくれ、オッサン。」

 

「まぁ落ち着きなさい、氷の悪魔よ。」

 

彼が言った瞬間、霊夢はおそるおそる彼に話しかける。

 

「メ、メルト・グランチなの?」

 

「おや、久しいな。霊夢に白黒の魔法使いよ。」

 

「わ、私達のことを覚えていたのか?」

 

「ククク、この私が諸君らを忘れるとでも?」

 

そう言った瞬間、霊夢と魔理沙は言葉を失ってしまった。それに気にせず悠岐の元へと近づく。そして彼の側で腰を下ろすと彼の額に手を置く。それを見た霊夢が言う。

 

「あれは何をしているの?」

 

「アレハジョウタイイジョウヲタシカメルタメノヤリカタダヨ。」

 

「なんでピンさんが知っているの?」

 

「ナンデッテイワレテモ・・・ナンデダロ?」

 

二人が話している中、メルト・グランチが楓を見て言う。

 

「彼は堕天(モードオブサタン)を使えたのかね?」

 

「あ、あぁ。私がアヌビスによって殺されかけた時に急になったんだ。」

 

「恐らくそれが原因だ。」

 

「えっ!?」

 

彼の言葉を聞いて思わず霊夢達は思わず声を上げてしまう。と、楓が彼に言う。

 

「ど、どういうことなんだ?」

 

「初回の堕天(モードオブサタン)はかなり激しい動きをする。そのため、筋肉や骨が体に追い付かない時があるため、負担が多く掛かる。いわば彼は今昏睡状態になっている。」

 

「目を覚ますためには?」

 

「待つしか方法はない。待って恐らく1日だ。」

 

「やはり待たなきゃいけないのか・・・。」

 

楓が肩を落としてしまう中、メルト・グランチは自分の顔を右手で押さえて言う。

 

「それと、諸君らに伝えたいことがある。」

 

「伝えたいこと?」

 

「2年前のあの異変は分かるだろう?」

 

「えぇ、あんたが起こした異変ね。」

 

「あの時、私と帝は記憶を何者かに変えられていたのだよ。」

 

「記憶を変えられた!?」

 

「ドウイウコトダ!?」

 

「さぁ、私にも分からない。」

 

メルト・グランチが頭を抱える中、永琳が彼に問う。

 

「カオスがやったという考えは?」

 

「当時彼は封印されていた。」

 

「ガイルゴールは?」

 

「神は記憶を変えて幻想郷を襲撃させるようなことはしない。」

 

「じゃあ一体・・・。」

 

「考えられるのは、何か得たいの知れない別の存在だよ。」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、突然霊夢はカオスの言っていた言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリュシオン。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリュシオン。それが霊夢が思い出したカオスの言っていた言葉だった。と、メルト・グランチが口を開く。

 

「後にビオラとヴァンが諸君らの元へ来る。それでは失礼するよ。」

 

そう言うと彼は永遠亭を出ていってしまった。そんな中、霊夢が皆に言う。

 

「ねぇ、みんな。エリュシオンって知ってる?」

 

「いや、知らないわ。」

 

「シラナイ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は知っているわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が知らないと言う中、突然とした現れた蓬莱山輝夜が答えた。皆が彼女を見つめる中、輝夜が言う。

 

「私は一度エリュシオンに会っているわ。」

 

「アッタノ!?」

 

「い、いつ!?」

 

「数千年前、私がまだ月の都にいるとき、奴は突然として奇襲してきた。」

 

「一体どんなやつなんだ?」

 

「長い銀髪に青い瞳をしている奴だったわ・・・。その時、私は奴に恐怖してしまって性別を覚えていないの。」

 

「会う可能性としては?」

 

「あるかもしれないわ。」

 

「まぁ、今は来ないはずだ。」

 

啓介が言った瞬間、永琳は人指し指を唇に当てる。それを見た霊夢達は黙ってしまう。




堕天(モードオブサタン)の真実、エリュシオンの謎。カオスを撃破した瞬間に事態が変わってしまう。
次作もお楽しみに!


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第62話 女王と臣下

メルト・グランチによると悠岐の状態は堕天の影響だと言う。


メルト・グランチが帰り、静かになってしまった永遠亭。

 

「・・・あれ、ここは・・・。」

 

「悠岐!?」

 

悠岐がゆっくりと起き上がりながら言う。そんな彼とは別に楓がすぐさま彼に飛び付く。それを見た霊夢達は思わず目を見開いた。と、悠岐が彼女に言う。

 

「お、おい。楓?」

 

「良かった・・・・悠岐が目を覚まさないと考えてたら私どうしようとなってたんだ。本当に、良かった・・・・。」

 

そう言う彼女の目には大量の涙が流れていた。それを見た悠岐は彼女を優しく抱きしめ、言う。

 

「ごめんな、楓には迷惑をかけちまったな。」

 

それを見ていた啓介達は笑みを浮かべる。と、ピンが何かに気づき、外を見る。そして言う。

 

「ナニカクルヨ!」

 

彼が言った瞬間、霊夢達は咄嗟にピンが向いている方向を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カァ~、カァ~。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠亭に入ってきたのは1通の手紙をくわえたカラスであった。それを見た楓がピンに言う。

 

「おい。まさかこいつが何かの気配だとは言わないよな?」

 

「ゴ、ゴメン。コレナンダヨ。」

 

それを聞いた楓は肩を落としてしまう。そんな中、啓介はカラスから手紙を受けとる。そのままカラスは何処かへ飛んでいってしまった。その後、啓介は手紙の中身を見る。そして言う。

 

「『皆様にお会いしたいしお話がしたいのでマヨヒガまで来てもらってよろしいでしょうか?』だと。」

 

「マヨヒガまでって、あっちからここへ来ればいい話じゃない。」

 

「仕方ないぞ、霊夢。なんせこれは陛下からの手紙なんだからな。」

 

「陛下って?」

 

「行けば分かる。さぁ、行こう。」

 

そう言うと悠岐、楓、啓介、ピンの四人は立ち上がり、永遠亭から出ようとした。それを見た霊夢、魔理沙、ユニは永琳を見て言う。

 

「ありがとう、永琳。」

 

「フフ、また来なさい。」

 

そのまま三人は四人の後を追った。永琳、輝夜、鈴仙はその様子を黙って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マヨヒガへ向かっている中、ユニが楓に言う。

 

「ねぇ、楓ちゃん。輝夜が言っていた『エリュシオン』って何者なんだろうね。」

 

「さぁ。私も聞いたことがない名前だからな。ただ、輝夜が恐れる程の奴なのは分かるな。」

 

「私達と戦うことになるのかな・・・。」

 

「分からない。仮に戦うことになったら多くの犠牲者が出るな。」

 

ユニと楓が話している内にマヨヒガまでやって来た。と、ピンが口を開く。

 

「ア、アレハユカリサンカナ?」

 

ピンが指差す方向。そこには日傘をさしている美しい女性がいた。彼女を見たユニが首を傾げながら言う。

 

「おかしいわね、今のこの時期に紫は冬眠しているはずなんだけれど・・・。」

 

「おやおや、ばれてしまいましたか。」

 

紫が言った瞬間、彼女の体の回りから煙のようなものが舞い上がった。霊夢達はそこをじっと見つめる。

 

「紫さんにもっと聞いておけば良かったですね。これは参りました。」

 

紫とは別の声が聞こえたかと思うと煙の中から紫ではなく、腰まで伸びる赤髪に赤いリボンがついているヘッドホンをかけている女性がいた。彼女を見たユニが目を見開いて言う。

 

「ビオラ陛下じゃないですか!」

 

「ビオラ陛下?あの人が?」

 

魔理沙が言った瞬間、ビオラは頭を抱えながら箱を持って言う。

 

「いや~、久し振りに生まれ変わる前の私が使っていた帝具、『変幻自在ガイアファンデーション』を使ったのですが紫さんのことを詳しく聞かなかったのでユニに見破られましたね。」

 

「生まれ変わり?どういうことですか?陛下。」

 

ユニの言葉を聞いた瞬間、悠岐達はピクリと体が反応する。と、ビオラが口を開く。

 

「言い忘れていましたが、現世の方々の7割は一度死んで生まれ変わった人達なのですよ。私が会った中で既に10人以上は生まれ変わりですよ。」

 

「そ、そんなに・・・。」

 

霊夢が言った瞬間、ビオラは楓を見ながら言う。

 

「楓、あなたなら私の顔に見覚えがあるでしょう?」

 

「!!」

 

「私とあなたは嘗ては殺し屋の一員。あなたは一撃必殺村雨を持つ方だった。違いますか?」

 

「・・・はい、確かにその通りです。」

 

楓が言った瞬間、マヨヒガの屋根の上から何者かが降りてきた。霊夢達は降りてきた人物を見る。降りてきたのは白い肌に整った目鼻立ち、赤い瞳に長い銀髪を黒いリボンで束ねている男だった。男を見た魔理沙が言う。

 

「あ、あんたは吸血鬼か?」

 

「えっ!?」

 

魔理沙の言葉を聞いた瞬間、霊夢とユニは思わず声を上げてしまう。そんな中、男が言う。

 

「如何にも、私は吸血鬼でありながら陛下の臣下を務めます、ヴァン・グレイダーと申します。」

 

ヴァンが自己紹介をする中、啓介がヴァンの隣に近づき、言う。

 

「俺とヴァンは同期だったんだぜ。」

 

「そ、そうなんだ!!」

 

ユニが驚き、声を上げる中、ビオラがヴァンに言う。

 

「ヴァン、今回の私達の件を話して上げてください。」

 

「承知いたしました、陛下。」

 

そう言うとヴァンはユニ達の方を向き、言う。

 

「今回我々がここへ来たのは他でもないあなたは方を現世へ案内するためです。」

 

「げ、現世に!?」

 

ヴァンの言葉を聞いた霊夢、魔理沙、ユニは同時に声を発する。そんな三人とは別にヴァンは話を続ける。

 

「セコンド様から許可が得られたので是非案内してくれとの命令です。ですがみなさん、1つだけ約束していただきますか?」

 

「何?ヴァン。」

 

「現世ではスペルカードルールは禁止ですので決して使わないようにしてください。」

 

「スペルカードルールが禁止ですって!?それだったらどうやって身を守ればいいのよ?」

 

「簡単なことです、鋭利な刃物を持っていれば大丈夫です。」

 

「あんまり安心出来ないぜ・・・。」

 

霊夢と魔理沙が不安になっている中、ユニがヴァンを見て言う。

 

「もしかしてだけど兄様と会えることってある!?」

 

「えぇ、勿論ですよ。現世を案内する前にまず五大王の方々に会わせますから。」

 

「良かった・・・・。」

 

それを聞いたユニはほっとするような表情を浮かべた。と、ビオラが左手を上げた。その瞬間、ネザーゲートのような形をしたものが現れた。そしてビオラはユニ達に言う。

 

「この門を通れば現世へ行けます。さぁ、みなさん。行きましょう!!」

 

そう言うと彼女は門を通っていってしまった。彼女に続いてヴァン、悠岐、楓、啓介も入っていく。と、ユニが霊夢と魔理沙とピンに言う。

 

「楽しみね、現世は。」

 

「えぇ、何があるのか分からないしね。」

 

「きっと私が興味ありそうなものだかりだぜ。」

 

「タノシミタノシミ!!」

 

「フフ。さぁ、行きましょう。」

 

そう言うと四人は同時に門を通っていった。その瞬間、門が消えていった。




ユニ達はついに現世へ行くことを許可され、現世へ向かうことに。一体どんな世界が広がっているのか?
次作もお楽しみに!


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第63話 王の集い場 兄との再開

紫に化けていたビオラが来た目的は霊夢、魔理沙、ユニを現世へ案内するためだった。そして霊夢、魔理沙、ユニは現世へ!(ピンも含む)


門を通りすぎるとそこには虹色に輝く空間が現れた。それを見たユニが言う。

 

「ここが・・・現世?」

 

「いえいえ、ここは幻想郷から現世へ行くための通路です。ここを通り抜ければ現世へ行けます。」

 

そう言ったのはビオラだった。と、ヴァンが悠岐と楓を見て言う。

 

「そうだ、悠岐に楓。二人に言い忘れていたことがある。」

 

「何だ?ヴァン。」

 

「実はな、悠岐と楓が幻想郷でカオスと戦っていた時、現世では不可解な出来事が起こったんだ。」

 

「不可解な出来事?」

 

「現世では連続殺人が起こったんだ。」

 

「連続殺人だと!?」

 

「それも死体の多くは赤ん坊や小学生1年ほどだ。どれも変死体で見つかっている。」

 

「酷い・・・一体誰がそんなことをするの!?」

 

「それがユニ、まだ犯人は見つかってないんだ。」

 

「えっ!?」

 

「影舷隊やメルト・グランチ様に協力を依頼したのだが見つかりそうもない。手掛かりすら見つからないのだから。」

 

「手掛かりすら見つからないなんて・・・。そんな難事件があるんだな。」

 

啓介が言ったのと同時にビオラが下を向きながら言う。

 

「・・・犠牲になった子供達の中に、私の弟も含まれていました。」

 

「!?」

 

彼女の言葉を聞いたユニ達は思わず声を上げてしまう。そんな中、ヴァンがビオラの隣に並び、言う。

 

「陛下は弟様を大変愛していたのです。その愛しの弟様を殺された絶望は大きいのです。」

 

「陛下・・・。」

 

楓が言った瞬間、ビオラの目から涙が零れ始めた。と、ビオラがヴァンの腕に飛びつき、言う。

 

「私は、許しませんよ・・・。必ず弟を殺した犯人を見つけ出します!どんな手段を使ってでも。」

 

「陛下・・・。」

 

と、突然先程のことがなかったかのようにビオラが前を指差して言う。

 

「もうすぐ現世へ到着しますよ。」

 

「おぉ!楽しみだぜ。」

 

「あぁ、あの学園を出たきりだな。」

 

「?楓ちゃん、あの学園って?」

 

「後で話すよ。」

 

そのまま9人は奥に見える光の元へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、ここが・・・現世。」

 

通路を通り抜けるとそこには赤いカーペットがひかれた広くて長い空間が現れた。と、悠岐と楓と啓介とヴァンがビオラの隣に並ぶ。そしてビオラが霊夢、魔理沙、ユニ、ピンに言う。

 

「ようこそ、現世へ!ここでは幻想郷とは全く違う文化を味わうことができます。さぁ、みなさん。奥へ参りましょう。五大王の方々が待っています。」

 

彼女が言った瞬間、啓介がユニ達に手招きをする。それを見た霊夢がユニに言う。

 

「よかったじゃない、久し振りにお兄さんに会えるんだから。」

 

「うん!私はとても楽しみだよ。」

 

「ハヤクイコウヨ!」

 

ピンに言われたため、霊夢、魔理沙、ユニはビオラ達の後を追う。1分もしない内に9人は左から巨大なドラゴンや龍、王冠を被った謎の生物などの絵が描かれている扉の前に着いた。と、魔理沙が絵を指差しながら言う。

 

「なぁ、ヴァンさん。この絵は何なんだ?」

 

「これか?これらは全ての世界共通して信仰されている神の絵だ。それぞれ右からバベル、龍神様、ガイルゴールとなっている。」

 

ヴァンの言葉を聞いたユニは首を傾げながら彼に問う。

 

「ヴァンさん、龍神様とガイルゴールは分かるのだけれど『バベル』って何者の神なの?」

 

「バベルは四角世界(マインクラフト)で伝えられている神の名前でその世界の何処かにある、『覇者の塔』の最上階にいる。」

 

「覇者の塔ってまさか・・・。」

 

「そう、覇者の塔は強き力を持つ者しか挑むことの出来ない塔。私の知る中で覇者の塔を制覇出来た者は一人もいない。」

 

「へぇ、面白そうな神様だな。」

 

魔理沙が言ったのと同時にピンが絵を凝視する。それを見た悠岐がピンに言う。

 

「おいピン、何をそんなに絵を見ているんだ?」

 

「リュウジンサマノシタニイルオンナノヒトッテダレ?」

 

ピンの言葉を聞いたユニは再び絵を見る。ピンの言う通り、龍神の下には女性の絵が描かれている。それを見たビオラが口を開く。

 

「まだ私達も分かってないのですが仮説では原初の人間であるイヴと言われています。」

 

「イヴってあのエデンの果実を守る、アダムとイヴのイヴのことなんですか?」

 

「よく分かりましたね、ユニ。中々知識があるようで。みなさん、ここで待っていて下さい。私とヴァンはセコンド様に報告をしてきますので。」

 

そう言うとビオラとヴァンは扉の奥へ入っていってしまった。それと同時に霊夢は先程ピンが言っていた絵を見る。

 

「なっ!?これは・・・。」

 

その瞬間、彼女は現世へ行く前の輝夜の言葉を思い出す。

 

(長い銀髪に青い瞳をしている奴だったわ。)

 

霊夢が今見ている絵がまさに輝夜が言っていたのと一致していたのである。しかし顔は目の部分以外が崩れているため、顔を見ることは出来なかった。と、楓が彼女に言う。

 

「どうした?霊夢。そんなピン見たいに絵を見て。」

 

「この女の人、輝夜が言っていた、『エリュシオン』と一致するのよ。」

 

「何だって!?」

 

彼女の言葉を聞いたユニ達は思わず声を上げてしまう。そんな中、霊夢が再び口を開く。

 

「いやでも、イヴさんだって長い銀髪に青い瞳をしているかもしれないのよ?」

 

霊夢が話している中、セコンドの元へ報告に行っていたビオラとヴァンが戻ってきた。そしてヴァンがユニ達に言う。

 

「さ、中へお入り下さい。」

 

ヴァンに言われたため、霊夢、魔理沙、ユニ、ピンの四人は部屋の中へと入っていく。四人が入った後に悠岐達も入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッハッハッ、ようこそ友よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな声が部屋中に響いた。部屋の中に入ってきた瞬間、響いた。前を見るとそこには横幅が広い階段があり、その上に玉座に座る現世の王、セコンドが座っていた。ユニ達から見て左側には天然パーマの髪に黒い瞳、黄色のジャケットを着ていて青いジーパンを履いている男、小宝剛岐にカオス異変で突然現れたメルト・グランチがいる。そして右側には黒のハット帽に顔を包帯で隠していて目が赤い男、ゴールド・マーグルに黒い長髪に黒い瞳の男、アイアルト・モルトがいた。と、セコンドが楓に言う。

 

「久しいな、氷の友よ。」

 

「あぁ、本当に久し振りだな、セコンド。」

 

二人が話したのと同時にユニがモルトの方を見て言う。

 

「お久し振りです、兄様。私のことを覚えていますか?」

 

「あぁ、勿論覚えているさ。久しぶりだな、ユニ。」

 

それぞれ話している中、霊夢と魔理沙は唖然となりながら同時に口を開く。

 

「お、王が集まってる・・・。」

 

「当たり前じゃないですか。だってここは王の集い場、御所なんですから。」

 

「そ、そそ、そーなのかー。」

 

思わずルーミアがよく発する言葉を口にした霊夢と魔理沙だった。と、メルト・グランチがビオラとヴァンに言う。

 

「ビオラにヴァンよ、四人に現世を案内してあげたまえ。」

 

「承知しました。」

 

二人が彼にお辞儀をした瞬間、ピンが彼の方を見ながら言う。

 

「チョットマッテヨ!ボクノコトハナントモオモワナイノカイ!」

 

「ん?卿のことなら既に帝やマーグルに伝えたが?」

 

「オーノー!」

 

ピンが頭を抱えている中、モルトがユニを見ながら口を開く。

 

「ユニ、現世を十分に楽しんでこい。俺は用事があるんでな。」

 

「はい、楽しみます!」

 

「それではこの方々を案内して参りますね。」

 

「みなさん、着いてきて下さい。」

 

そう言うとヴァン、ビオラは霊夢達を連れて部屋から出ていった。ビオラ達が行ったのを見たセコンドは四人に言う。

 

「あの日が近い。準備を始めるぞ、友よ。」

 

「当たり前だ。」

 

「勿論さ。」

 

「まさかこんな時に来るとはな。」

 

「千年殃禍がねぇ。」

 




兄との再開、近づく千年殃禍。今後どうなるのか?
次作もお楽しみに!


P,S
最近投稿するペースがかなり遅くなってしまってすいません。これからなるべく早く投稿していきますので東方混沌記をよろしくお願いいたします。


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第64話 現実世界

兄のアイアルト・モルトとの再開を果たしたユニ。メルト・グランチの薦めにより、現世を回ることに。


御所を出たユニ達は外へ出る。

 

「うわぁ・・・。」

 

三人の前に広がる光景。そこには巨大な建物が建っていた。しかも建物は一つではなく20ほどだ。そして地面には灰色と白い線の道があった。そこにはタイヤのついた機械が道を走っている。と、楓がユニ達に言う。

 

「驚いたか?ユニ。幻想郷と現世の大きな違いを。」

 

「す、すごい。こんな大きな建物が現世にはあるんだ!!」

 

驚きのあまり声を上げてしまう中、ビオラが笑みを浮かべて三人に言う。

 

「さ、ユニに霊夢に魔理沙。現世をご案内しますよ。着いてきて下さい。」

 

そう言うとビオラは建物の下へと移動し始めた。それを見たユニ達も後に着いていく。歩いている中、ヴァンがユニの隣に並び、建物を指差して言う。

 

「あれはビルと言って、世界の様々な会社が貿易や交流、さらには商品の製作を行う場所なんだ。」

 

「ヴァンさん、ぼうえきって?」

 

「そうか、幻想郷の者は貿易を知らないんだな。貿易と言うのは国と国との商品の売買を行うことなんだ。」

 

「へぇ、初めて知ったわ。」

 

ユニとヴァンが話している中、魔理沙がヴァンを見て目を見開いていた。そんな彼女を見てヴァンが口を開く。

 

「次に魔理沙が言う台詞は、『ヴァンさん、どうして太陽の光が当たっているのに砂にならないんだ?』だ。」

 

「ヴァンさん、どうして太陽の光が当たっているのに砂にならないんだ?・・・なっ!?」

 

「ヴァンの十八番(おはこ)には参りましたよ。」

 

そう言ったのはビオラだった。と、霊夢がヴァンに言う。

 

「ヴァンさん、今度は私が何を言うか、当ててみなさい!!」

 

「う~ん、次に霊夢が言う台詞は、『私の考えなんて誰にも当てられないわ。』だな。」

 

「私の考えなんて誰にも当てられないわ。なっ!?」

 

それを見たユニは目をキラキラ輝かせて言う。

 

「すごい!これはヴァンさんの能力なんだね!」

 

「お、おいユニ。勘違いしないでくれ。私の能力はこれではないよ。」

 

「えっ、能力じゃないの!?」

 

それを聞いたユニ達は目を見開いた。そんな中、悠岐が口を開く。

 

「ヴァンの特技さ。こいつは人の心を読んでそれを利用して戦うのが好きなのさ。」

 

彼が言ったのと同時にヴァンが再び口を開いた。

 

「その通りだ。ちなみに何故私が太陽の光を浴びても死なないか、それはメルト・グランチ様に特殊な薬を飲まされたあらゆる吸血鬼の弱点を克服した。」

 

「す、すごいわ。」

 

と、ピンが突然前を指差して言う。

 

「ミテ!アソコニヒトガアツマッテルヨ!」

 

ピンの言葉を聞いたユニ達はその方向を見る。そこには金髪で青いマントをしていて右手には鳩の彫刻がついている斧を持つ少年がいた。それを見たビオラが口を開く。

 

「みなさんはここで待っていて下さい。行きますよ、ヴァン。」

 

「はい、陛下。」

そう言うと二人は少年の元へ行った。と、啓介が霊夢達に言う。

 

「おっと、言い忘れていたが現世には『獣神祭』といって毎年この時期になると英雄が一人来てくれるんだ。」

 

「それで、あの英雄さんは?」

 

魔理沙の問いには啓介ではなく楓が答えた。

 

「彼の名前はノア。方舟(はこぶね)を使って世界を旅する英雄だ。他にもアグナムートやストライク、ロビンフットやパンドラがいるんだ。」

 

「それで、今年はノアだっていうの?」

 

「その通り、今年はノアが来てくれたな。」

 

話している中、ノアと言葉を交わし終えたビオラとヴァンが戻ってきた。と、ビオラが口を開く。

 

「ノアの話なのですが・・・少々、他の英雄達に何か影響があるようです。」

 

「何か影響?」

 

「何の影響なのか分かりませんがきっと私達にも及ぶと思います。」

 

「そうですね・・・。」

 

辺りに沈黙が漂う中、ヴァンが口を開く。

 

「さ、行きましょう。」

 

そう言うとユニ達はビルの下へと移動する。ビルの下には小さいが店舗が並んでいた。と、啓介が口を開く。

 

「ここには俺の知り合いが多い。よく働いている奴がいるよ。」

 

「へぇ、啓介のご知り合いが?」

 

「そうなんです、陛下。」

 

「よう悠岐じゃねぇか。焼きそばでも喰ってくか?」

 

ビオラと啓介が話している中、焼きそば屋の店員が悠岐に話しかけてきた。それに答えて悠岐も答える。

 

「おう!焼きそば屋のおっちゃん。」

 

「それに、楓ちゃんやあまり見ない嬢ちゃんもいるじゃねぇか。」

 

「この町を案内していてな。」

 

「そうかいそうかい。そうだ、焼きそば喰ってくか?」

 

「そうだな、食べる人はいるか?」

 

「「「「食べる!!」」」」

 

即答したのはユニ、霊夢、魔理沙、楓だった。そんな四人とは別にビオラやヴァンも口を開く。

 

「私はご遠慮させていただきますわ。」

 

「俺も遠慮しておく。」

 

「私もだ。」

 

「食べるのは5人だな。おっちゃん、焼きそば5個頼む。」

 

「あいよ!1000円だぜ。」

 

「はいはい。」

 

そう言うと彼はポケットから財布を取りだし、5人分の料金を払った。しばらく移動して9人はベンチに腰を下ろすことにした。そして悠岐、ユニ、霊夢、魔理沙、楓の5人は同時に口を開く。

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

5人は速攻でも焼きそばを食べ始める。食べた瞬間、ユニ、霊夢、魔理沙は目を輝かせながら言う。

 

「お、美味しすぎるぅぅぅぅぅ!」

 

「このそばの味の漬け方がいい感じにフィットしているわ。」

 

「久しぶりにうまいもん食べれて嬉しいぜ!!」

5人の食べっぷりを見たビオラは笑みを浮かべて口を開く。

 

「アハハ、相変わらず食欲旺盛ですね。」

 

「私も若い時はあれほど食べていましたね。」

 

「私はまだヴァン、あなたの知らないことがたくさんあります。他にも色々教えてくださいね?」

 

「えぇ、勿論ですとも。」

 

二人が話している中、5人は既に焼きそばを食べ終えていた。それを見たビオラが目を見開きながら言う。

 

「め、目を離した隙に・・・。」

「す、すごい。最近の人間は男女関係なく食欲は凄まじいですね。」

 

二人が話した中、楓がビオラに言う。

 

「陛下、霊夢達に私作町(マイクラシティ)を案内するのはどうですか?」

 

「いいアイデアですね、楓。そうしましょうか。」

 

そう言うとビオラは立ち上がり、ユニ達を見ながら言う。

 

「みなさん、これからみなさんを私作町(マイクラシティ)にご案内します。ヴァン、あれを用意して下さい。」

 

「はい、陛下。」

 

そう言うとヴァンはポケットから青い長方形を取りだし、それを地面に置いた。その瞬間、1㎝程度しかなかった長方形が3mほどまで巨大化した。と、ビオラがユニ達に言う。

「さぁ、みなさん。行きましょう!」

 

そう言うとビオラとヴァンは長方形の中へと入っていいった。それに続いて悠岐、楓、啓介も中に入っていく。

 

「まっ、待ってくださいよ~!」

 

そう言いながらもユニ、霊夢、魔理沙も長方形の中へと入っていった。

 




現世を堪能出来たユニ達が次向かう場所は四角世界の私作町へ!
次作もお楽しみに!


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第65話 四角世界の中心都市 私作町

現世を堪能したユニ達は四角世界へ!


長方形から出たユニ達は目の前に広がる光景を見て呆然となる。そこには巨大な壁で囲まれた町があった。しかも全てのものが四角形で出来ている。と、楓が口を開いた。

 

「懐かしい風景だ。思い出したくないことばかりだ。」

 

「楓ちゃん?」

 

「ううん、気にしなくていいよ。」

 

二人が話している中、ビオラが口を開く。

 

「さ、行きましょう。」

 

そう言うとビオラはヴァンを連れて町の中へと入っていく。ユニ達もその後を追う。中に入るとそこには町が少し荒れている場所があり、見張り灯が隅々まである。さらには村人は全て同じ体、同じ表情をしていると、悠岐が口を開く。

 

「この町に何故見張り灯があるのか、知っているか?」

 

「一体どうして?」

 

「奇襲だよ。ある敵mob達の奇襲を受けないようにな。」

 

「ある敵mob達?」

 

「そう、そいつらを監視して臨機応変に対応するためさ。」

 

ユニと悠岐が話している中、ビオラがある建物を指差して言う。

 

「あちらの建物に市長様がいらっしゃいます。ご挨拶に行きましょう。」

 

ビオラが指さす方向。そこには回りにある建物とは別に広く、高い建物だった。ユニ達はそこに入っていく。中に入るとそこには村人とは別の服を着ていて背丈は2mほどある男がいた。彼を見たヴァンが口を開く。

 

「これは久しいな、スティーブ。」

 

彼が言った瞬間、スティーブはビオラ達に近づく。相変わらず彼は背の高い啓介やヴァンと比べても一目瞭然であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはこれは、ビオラ女王陛下ではありませんか。お久し振りです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

老人の声が響いたかと思うと奥から杖を使ってゆっくりビオラ達に近づく老人が現れた。彼を見たビオラが彼に近づき、言う。

 

「こちらこそお久し振りです、ジョブス様。」

 

そう言うとビオラはジョブスと手を取り合う。彼女に続いてヴァンも彼と手を取り合う。そしてビオラが口を開く。

 

「彼がこの私作町(マイクラシティ)の市長のジョブス様です。」

 

「お初にお目にかかります、ジョブス様。」

 

そう言うと悠岐、楓、啓介は膝をつき、頭を下げた。それを見たユニが口を開く。

 

「わ、私達もやったほうがいいですか?」

 

「無理してやらなくてもいいんじゃ。」

 

「そ、そうですか・・・。」

 

魔理沙と霊夢は思わず呆然となってしまう。と、ジョブスが口を開く。

 

「みなさん、少しお疲れじゃろう。今夜はここで泊まってくだされ。もう日も暮れますぞ。」

 

「そうですね、今夜はここで泊めてもらいましょう。」

 

「俺は啓介と同じ部屋で泊まるとするか。」

 

「あぁ、そうだな。ついでにピンも一緒にするか。」

 

「ヨロシク、ユウキクンニケイスケクン。」

 

「私はもちろん霊夢と同じ部屋にするぜ。」

 

「私は楓ちゃんと同じ部屋!!」

 

「・・・あぁ、いいさ。」

 

「私はヴァンと同じ部屋にします。」

 

「ヴァン、陛下に変なことするなよ!」

 

「私は啓介とは違う。」

「そうそう、この町は『ゴッドフェス』といって神を祭る行事があるんですよ。」

 

「今度行ってみるか!」

 

そう言うと9人はそれぞれの部屋に移動していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってユニ&楓の部屋。そこではユニは外の風景を見ていて楓はベッドに腰を下ろし、下を向いていた。それに気づいたユニが彼女の隣に腰を下ろし、口を開く。

 

「楓ちゃん大丈夫?さっきから元気がないよ。」

 

「私は大丈夫だよ。心配することなんてない。」

 

「そう言われるともっと心配になるのよねぇ。ね、楓ちゃん。私だけに教えてくれないかしら?」

 

「・・・分かった。」

そう言うと楓は立ち上がり、外を見ながら口を開く。

 

「悠岐から聞いているだろう?マインという男のことについて。」

 

「うん、聞いたよ。」

 

「半人半悪魔はもう一人いる。彼女の名はルーシー。」

 

「ルーシー?」

 

「そう、彼女も私や悠岐、マインと同じ半人半悪魔だ。彼女は・・・彼女は、殺された。」

 

「なんですって!?」

 

「突然だった。私と帰り道、別れた翌日に死んでいた。」

 

「そんな・・・。」

 

「さらにもう一つ聞いてくれ。私はガノンドロフやクリーフル達が幻想郷を襲撃する前、四角世界(マインクラフト)にいた。その時、私は和也という男と共に行動していた。だが彼は・・・。」

 

「彼は?」

 

「彼は・・・ゾンビに喰われて死んだ。」

 

「なっ!?」

 

「私は・・・私は・・・。」

 

すると、話していた彼女の声が涙ぐんできた。その状態になりながらも楓は話を続ける。

 

「私は・・・守れなかった。ルーシーも、和也も。私が側にいれば死なずにすんだのに!!」

 

その瞬間、彼女は声を上げながら泣き始めた。それを見たユニは立ち上がり、彼女に近づく。それに気づかず、楓は再び口を開く。

 

「私は・・・守るべき人を守れなかったんだ。私が臆病だから・・・私が・・・!?」

 

楓が話している途中にユニが彼女を後ろから抱きついた。それを見た楓が顔を赤くして口を開く。

 

「ユ、ユニ?」

 

「分かるよ、楓ちゃん。あなたの気持ち、理解出来るよ。」

 

「・・・どうして言い切れるんだ?」

 

「あなたから伝わってくるのよ、ルーシーや和也君に対する気持ちが。十分に私の体に伝わってくる。」

 

「・・・。」

 

「分からなかったら私はこんなことをしないわよ。」

 

ユニが言った瞬間、楓は再び涙を流し、彼女の腕を優しく掴み、言う。

 

「ユニッ、ありがとう・・・ありがとう。」

 

楓はユニに感謝をしながら言い続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゾンビだぁー!ゾンビ達が奇襲しに来たぞー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如辺りに男の声と鐘の音が鳴り響いた。それを聞いたユニと楓はすぐに窓の外を見る。そこには先程まで外で歩いていた人達が急いで建物の中に入っていった。それを見たユニが言う。

 

「楓ちゃん、これって・・・。」

 

「さっき悠岐が言っていたことがまさか今日に限って起こるなんて予想外だ。ゾンビ達が町を奇襲しに来たんだ。」

 

「楓ちゃん!!」

 

「分かってる!!」

 

そう言うと楓とユニは武器を手に取り、部屋を飛び出していった。




町に突然響き渡る鐘の音。ゾンビの奇襲。一体どうなる!?
次作もお楽しみに!


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第66話 ゾンビ奇襲

部屋で楓の悲惨な過去を聞いたユニは彼女を慰める。そんな時、町中に鐘の音が響く。


二人が外に出ると既にビオラ達が外に出ていた。と、ヴァンが口を開く。

 

「何故我々が来た時に奇襲して来るんだ!」

 

「ヴァン、もしかするとこれはあれの前兆かもしれません。」

 

「あれの前兆?」

 

「今は話す余裕がないので後で話します。悠岐、楓、啓介、ヴァンはゾンビの駆除を。ユニ、霊夢、魔理沙、ピン、ユニは私と共に町の人達の非難をお願いします。」

 

「了解!」

 

そう言うと悠岐、楓、啓介、ヴァンはゾンビの駆除へ向かい、ビオラ、ユニ、霊夢、魔理沙、ピンは町の人達の非難を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠岐、楓、啓介、ヴァンはそれぞれ武器を手に取り、門から町の中へと入ってくるゾンビ達の元へと到達した。と、ヴァンが門を見て口を開く。

 

「何故だ・・・。何故見張りが大砲を打って大抵は撃破出来る筈なのに・・・。」

 

「・・・おい!あれを見ろ!!」

 

そう言うと悠岐はある方向を指差した。それにつられて楓、啓介、ヴァンもその方向を見る。そこには見張り灯の見張りがゾンビに襲われそうになっていた。それを見た啓介が口を開く。

 

「なんてこった、見張りが襲われてちゃ、意味がねぇじゃねぇか。これは手分けして倒したほうがいいな。ヴァン、俺達は南をやるぞ。」

 

「分かった、悠岐と楓はここを頼んだ。」

 

「分かった。」

 

そう言った瞬間、啓介とヴァンは南へと行ってしまった。二人が行ったのを見た悠岐はゾンビ軍団を見て口を開く。

 

「さて、一仕事やりますか。」

 

「いくぞ、悠岐。」

 

そう言うと二人は同時に刀を取りだし、ゾンビ軍団の元へと走っていく。ゾンビ達は一斉に二人に襲いかかる。しかし二人はゾンビ達の攻撃を避け、次々とゾンビ達を斬っていく。途中で二人は背中を合わせて言葉を交わす。

 

「クソッ、数が多すぎる!」

 

「確かに奇襲としては数が多すぎるな。楓、踏ん張るぞ。」

 

「分かってる。」

 

そう言うと二人は再びゾンビ達を斬っていく。しばらく斬っていくとゾンビ達が二人に怯えたのか、一斉に逃げ出した。それを見た悠岐と楓は呆然と見る。と、楓が悠岐に言う。

 

「急いで門を閉じるぞ!!」

 

「おう!」

 

そう言うと二人は6mほどある門を軽々と閉じた。二人は荒い息づかいになりながら辺りを見回す。そんな二人の体はゾンビの返り血が付着していた。と、楓が悠岐に言う。

 

「これで、終わりか?」

 

「あぁ、町に侵入しようとするやつは・・・!?」

 

「ど、どうした悠岐!!」

 

「今、気配を感じた。ユニ達がいた方向に・・・ミュータントの気配だ。」

 

「まさか、ミュータントゾンビ!?」

 

「最悪だ・・・急いで向かうぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、啓介とヴァンは見張り灯の見張りを襲うゾンビを倒していた。

 

「ありがとうございます!!」

 

見張りの男は何度も二人に頭を下げた。と、啓介がヴァンに言う。

 

「見ろ、ヴァン。ゾンビ達が町の外へ逃げていく。」

 

二人が見る方向には町の外へ逃げていくゾンビ達の姿があった。それを見たヴァンが口を開く。

 

「悠岐と楓がやったんだな。」

 

「ヴァン、ユニ達の元に戻って合流しよう。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

二人がユニ達の元へ戻ろうとした瞬間、二人はある動く物体を目にした。大きさはゾンビの2倍くらいはあっり、建物の上を飛びながら移動していた。それを見た啓介が口を開く。

 

「おいヴァン、あいつまさか・・・。」

 

「陛下達の元へと向かっている!!急ぐぞ啓介!!」

 

そう言うと二人は急いでユニ達の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ユニ達は町の人達を非難させていた。と、ビオラがユニ達に言う。

 

「みなさん、あと一息です。頑張ってください!!」

 

彼女の言葉を聞いたユニ達は必死で町の人達を非難させた。その時だった。突如ユニ達の背後からドスンという鈍い音が響いた。その音を聞いたユニ達は恐る恐る後ろを振り向いた。そこにはゾンビの2倍くらいあり、体が太くなっているゾンビがいた。それを見たビオラが目を見開きながら言う。

 

「ミュータントゾンビ・・・どうしてこんな時に!!」

 

「ミュータントゾンビ?」

 

「ミュータントゾンビは、ゾンビが突然変異を起こして生まれたゾンビの覚醒というものでしょう。」

ビオラが言った瞬間、ミュータントゾンビは口から白い息を吐いてユニ達を見つめる。それを見た魔理沙が口を開く。

 

「み、見ていやがる・・・。あいつ、完全に私達に狙いを定めている!!」

 

「ユニ、魔理沙、ピンさん。やるわよ。」

 

そう言ったのは霊夢だった。それを見たビオラが四人に言う。

 

「待ってください!ここでスペルカードを使うつもりですか?お止めください!町に被害があたります!」

 

「じゃあどうしろって言うんだよ、女王さん!!」

 

魔理沙が言った瞬間、ピンが一人でミュータントゾンビの元へと走っていく。

 

「クラエェェ!」

 

ピンの拳はミュータントゾンビの腹に命中する。だがミュータントゾンビはピクリとも動かない。

 

「ナニッ!」

 

ピンが動揺した瞬間、ミュータントゾンビがピンにアッパーを食らわした。

 

「グハッ!」

 

そのままピンは上空に上げられる。さらにミュータントゾンビはピンの元まで飛び上がり、ピンの腹を両手で殴りつけた。

 

「グハアッ!」

 

そのままピンは地面に叩きつけられる。

 

「ピンさん!!」

 

三人は同時に声をあげる。そんな中、ミュータントゾンビは地面に倒れるピンの元へと降りる。その瞬間、ミュータントゾンビの顔にピンのパンチが炸裂する。ピンの拳をまともに受けたミュータントゾンビはそのまま吹っ飛ばされ、地面に倒れる。

 

「やった!」

 

思わず声を上げられるユニ達。しかしビオラは目を細めて口を開く。

 

「いいえ、まだです。」

 

彼女が言った瞬間、ミュータントゾンビが何事も起こらなかったかのように立ち上がった。それを見たユニ達は驚きを隠せなかった。と、ピンが口を開く。

 

「ユニチャン、カネンブツトカモッテナイ?」

 

「か、可燃物をどうして?」

 

「チョットツカイタクテ。」

 

そう言った瞬間、ユニは空間からライターを取り出した。それをピンに渡す。と、ピンはライターの火をつけてミュータントゾンビに近づく。それを見たミュータントゾンビはゆっくりとピンから距離を取る。それを見た魔理沙が口を開く。

 

「そうか!ミュータントゾンビは火に弱いんだ。だからピンさんに近づかないんだ。」

 

「そうだ、きっとピンさんはそれを理解して!!」

 

それに納得したユニはピンの戦いぶりを見る。と、突然ミュータントゾンビの頭が何者かによって撃ち抜かれた。

 

「今だピン、燃やせ!」

 

その声が聞こえた瞬間、ピンは倒れたミュータントゾンビにライターの火をつけた。その瞬間、ミュータントゾンビは跡形もなく消えてしまった。

 

「危なかったな、ピン。」

 

ピンを助けたのは右手に拳銃を持っているヴァンと彼の後を追ってきた啓介だった。

 

「ヴァンさん、啓介君!!」

 

思わずユニは二人の名前を叫ぶ。そんな中、身体中ゾンビの血で服が真っ赤に付着している悠岐と楓も戻ってきた。それを見た霊夢が二人に言う。

 

「ちょっとあんたら大丈夫なの!?」

 

「いや、大丈夫だが?」

 

「そもそも私達は傷一つもついてないぞ。」

 

「そ、そうなんだ・・・。」

 

「みなさん、話したいことがありますので講堂へお集まりください。」

そう言うとビオラは講堂へ行ってしまった。ユニ達も彼女の後を追っていった。




突然のゾンビの奇襲。普段現れる筈のないミュータントゾンビ。何か関係性があるのか!?
次作もお楽しみに!


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第67話 千年殃禍

ゾンビ軍団の奇襲を防いだユニ達。


講堂へ集まったユニ達はテーブルに座る。全員が座ったのを見たビオラが口を開く。

 

「実はみなさんに残念なお知らせがあります。」

 

「残念なお知らせですか?」

 

「えぇ。これは幻想郷だけでなく現世、四角世界(マインクラフト)、月の都にも関係することです。」

 

「全ての世界に関わること!?」

 

彼女の言葉にユニは思わず声を上げてしまう。そんな彼女とは別にビオラが再び言う。

 

「実は全ての世界には千年に一度起こる、『千年殃禍』というものがあります。」

 

「千年殃禍?」

 

「えぇ、全てを創造した神のガイルゴールが全ての世界に訪れては戦闘を仕掛けてきます。」

 

「どうして!?」

 

霊夢は声を上げてしまう。声を上げずにはいられなかった。そんな彼女にヴァンが答える。

 

「ガイルゴールは自分を超える力の持ち主を何千年も待ち続けている。だから千年に一度という期間をあけてやって来る。」

 

「ちなみにヴァンさん、今までガイルゴールに勝ったことがあるのか?昔の人達は。」

 

「残念ながら、まだ一度も奴を倒せていない。」

 

「そんな・・・。」

 

彼の言葉を聞いた魔理沙は思わず肩を落としてしまう。そんな彼女とは別にビオラは再び言葉を発する。

 

「ですが、私は必ずこの殃禍に終止符を打とうと思っています。今後、千年に一度多くの人達を犠牲にしたくない。」

 

「・・・。」

 

辺りに沈黙が漂う中、何か閃いたユニが立ち上がり、口を開く。

 

「勝てる可能性はあるよ!だって私達には五大王の方々がいらっしゃるし、何より悠岐君や楓ちゃん、霊夢や幽香がいるんだよ!」

 

「だがユニ、五大王や私達がいたとしても奴には幹部がいる筈だ。そいつらにも殺られる可能性はある。」

 

「・・・。」

 

黙り混むユニにヴァンが言う。

 

「嘗てガイルゴールはbeat(ベータ)と呼ばれる地球外知的生命体を何百体も連れてきた。人類の敗因はそれだと言われている。だが、今の科学では戦車やレーザー砲がある。beatを倒す手段としてはある。」

 

「だがヴァン、ガイルゴールの対策としてはどうするつもりだ?」

 

「・・・後程考えるつもりだ。ちなみに楓はどうするつもりなのだ?」

 

「私ならまず幹部を倒す。そしてガイルゴールを討つ。そんな感じだな。」

 

楓とヴァンが話す中、ビオラが二人に向かって口を開く。

 

「ガイルゴールの幹部には、まず創造心の化身、マスターハンドと破壊心の化身、クレイジーハンドがいます。」

 

「マスターハンド?」

 

「おや、霊夢はクレイジーハンドは知っているのですね。」

 

「えぇ、まぁ・・・。以前にユニが呼び寄せていましたからね。」

 

「成る程、それなら話が早い。マスターハンドはクレイジーハンドの逆の姿なのですよ。」

 

「クレイジーハンドの逆・・・右手か!!」

 

「そう、マスターハンドは右手、クレイジーハンドは左手の存在。」

 

「そ、そいつらの強さは一体どれくらいなんだ?女王さん。」

 

魔理沙が言った瞬間、ビオラは彼女を鋭い眼差しをして見ながら言う。

 

「魔理沙ったら、あなたは礼儀というものを知らないようですね。許可なしにタメ口で私に話しかけるなんて。身の程を弁えなさい。」

 

「ご、ごめんなさい。女王さ・・・陛下。」

 

「さて、改めて話しますがマスターハンドとクレイジーハンドの強さは恐らく、五大王の方々と互角になるかと思われます。」

 

「五大王と互角!?」

 

「そうです。ガイルゴールはそれより上の存在。勝つなんてことは不可能といっても過言ではないでしょう。」

 

「・・・・。」

 

「少し、疲れましたね。ゾンビ達を倒してすぐにこんな深刻な話をするなんて。今日はここで終わりとしましょう。みなさん、部屋に戻ってゆっくり体を休めて下さい。」

 

彼女が言った瞬間、ユニ達は黙って講堂から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は魔理沙と霊夢の部屋。魔理沙はベッドに寝転がりながら天井を見ていた。それを見た霊夢が彼女に言う。

 

「何よそんな真剣な顔になっちゃって。そんなに女王さんに注意されたことが気にくわないの?」

 

「当たり前だぜ。なんで礼儀を覚えなきゃいけないんだ。」

 

「現世の掟なのよ。まぁ、あんたは仕方ないわね。師匠の魅魔にもタメ口だったし。」

 

「魅魔様はタメ口を許してくれただけなんだぜ。私は正直礼儀なんて必要ないと思う。」

 

「はぁ。魔理沙、あんたは本当に幻想郷で生まれて良かったわね。」

 

「あぁ、本当に良かったぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて悠岐、啓介、ピンのいる部屋。三人はベッドに寝転がりながら話していた。

 

「悠岐、お前は千年殃禍を知っていたのか?ヴァンやユニが話していた時にお前だけ無口だったし、冷静な目をしていた。」

 

「1年前、爺さんの書庫にあった書物を読んだ。その内容に千年殃禍のことが書かれていた。」

 

「ドンナコトガカカレテタノ?」

 

「天から現れし大いなる脅威は全ての生物を滅ぼす。」

 

「そう、書かれていたのか?」

 

「あぁ。恐らくこれがガイルゴールのことだ。」

 

「ドウシテソンナコトガ・・・。」

 

「ガイルゴールの考えることなんて分かりきったことじゃない。しかも陛下はこの次期に訪れるとかなんとか言っていたし。」

 

「十分に警戒しろってことだな。」

 

「・・・。」

 

「あれ、ピン?」

 

突然ピンが無口になったため、二人はピンのいる方向を見る。ピンは既に布団に潜って寝ていた。それを見た二人は汗を流し、口を開く。

 

「相変わらず寝るのか早いな、土人形は。」

 

「人形でも睡眠はとるんだな。」

 

「さ、俺たちも寝よう。」

 

「あぁ、そうだな。おやすみ悠岐。」

 

「おやすみ啓介。」

 

そう言うと二人は布団に潜り、そのまま眠りについた。




ビオラのいう千年殃禍とは!?
次作もお楽しみに!


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第68話 神の計画

ユニ達が来たのと同時に突如奇襲に現れたゾンビの大軍。


場所は謎の場所。現世にもなく、幻想郷にもなく、四角世界(マインクラフト)にもない。巨大な柱と壁で覆われた宮殿がとある場所にポツンと建っていた。その宮殿の中に、奴はいた。背丈は2mを軽く超えていて髪は全体的に長く、日本貴族の衣装を着ていて青い瞳に男のような姿をしている存在、ガイルゴールである。ガイルゴールは堂々と自分の玉座に座っていた。

 

「ガイルゴール様、どうやら奴等はゾンビ奇襲が殃禍と関係しているのに気づいたようです。」

 

突如やって来た白いハット帽を被り、白のスーツに白いジーンズを履いている男がガイルゴールの前に膝をつき、頭を下げながら言う。

 

「そうか、奴等は余の仕業だと察したのか。フン、勘が良い者達だ。それで。マスターよ、余が選んだ刺客達は連れてきたのか?」

 

「はい、ただ今クレイジーが刺客達を連れてここへ到着します。」

 

白服の紳士の男が言った瞬間、彼の背後に銀髪でマスターと呼ばれる男と同じ服装をしている紳士とフードを深く被っていてショートパンツを履いている女性に青い髪に右手には鍵のようなものを持つ男がいた。彼らを見たガイルゴールは立ち上がり、口を開く。

 

「よくぞ来てくれた、余が選びし猛者(もさ)達よ。お前達を役立たず・・・とは言わぬ。お前達は余が選んだ誇り高き者達だ。余のために存分に働いてもらう。」

 

そう言うとガイルゴールは猛者達を通りすぎ、星しか見えない空を見上げながら口を開く。

 

「マスターとクレイジーは現世へ行き、ビオラ・ハイラルドの謁見へ向かう人間二人を拐い、一端この場の牢屋に閉じ込めておく。それが終わったら余と共に月の都の侵略を開始する。」

 

「「御意。」」

 

「○○○と○○は幻想郷を攻めろ。」

 

「「はっ!」」

 

「現世には余がbeat(ベータ)を数千体送っておく。」

 

後の二人の名前は風によって消されてしまったがそれでも男と女は応答の声を上げる。その瞬間、四人は何処かへ消えていってしまった。それを見届けたガイルゴールは空を見上げながら言う。

 

「楽しみにしているぞ、現世、月の都、四角世界(マインクラフト)、そして幻想郷よ。二千年前、千年前の屈辱を果たしてみるがいい。」

 

そう言うガイルゴールの顔には不気味な笑みが浮かんでいた。そう言うとガイルゴールは再び玉座に腰を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって私作町(マイクラシティ)。そこでは昨日起こったゾンビ奇襲がなかったかのように町の行事、ゴッドフェスが行われていた。ユニ達は町の人達の様子を見ていた。と、ビオラがユニに言う。

 

「ユニ、あれは何の神を祭っていると思いますか?」

 

四角世界(マインクラフト)の神だから・・・。エンダードラゴンかウィザーですか?」

 

「残念。正解は以前御所でお話しした覇者の塔の最上階にいる、バベルですよ。」

 

「バベル!!か、完全に忘れていました。」

 

「フフッ、無理もありませんよ。昨日のことは本当に突然だったんですから。」

 

笑みを浮かべて微笑むビオラとは別にユニは顔を赤くする。と、ヴァンがビオラの元へ来て言う。

 

「陛下、明日あなたに謁見をお願いしたいという者がいらっしゃいます。」

 

「謁見ですか、分かりました。早い内に戻りましょう。」

 

ビオラが言った瞬間、ヴァンは再び長方形を取りだし、また大きくした。それを見たユニ達はビオラとヴァンに続いて長方形の中へと入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長方形から出るとそこにはユニ達の見慣れた光景が広がっていた。と、ビオラが口を開く。

 

「博麗神社ですよ。先にみなさんを返そうと思いまして。」

 

「あ、ありがとうございます、陛下。」

 

「それではみなさん、またご会いしましょう!」

 

そう言うとビオラとヴァンは長方形の中へと入っていった。二人が入っていった瞬間、長方形が消えていった。それを見た悠岐が口を開く。

 

「千年殃禍のこと、みんなに知らせなくちゃな。」

 

「そう、ね。」

 

そう言うとユニ達はそれぞれの場所に別れて千年殃禍のことを話に行った。




遂に始まる千年殃禍。ガイルゴールは一体何を企むのか!?
次作もお楽しみに!


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第69話 謁見の邪魔をする者

計画を企み始めるガイルゴール。


場所は現世のとある都会。そこでは一人の大学生がある人物に謁見を許可されたのである。そして彼女は友達を待っていた。

 

午前8時5分。待ち合わせ場所へ来た友達を見て少女は言う。

 

「5分しか遅刻してないわね、進歩したじゃない。」

 

「ごめん、ごめん。女王さんに会えると考えてたら夜もぐっすり眠れなくて。」

 

「フフッ、でも女王様に会えるなんて嬉しいわよね。よく女王様が認めたわよね、私達が謁見に行くこと。」

 

「私とメリーが謁見に?まぁ、一般の市民が女王様や帝に会うっていうのはあり得ない話だし、そう考えるとこの時ってかなり貴重じゃない?」

 

「確かにね。とゆうか、女王様に会いたいって言ったのって私と蓮子、どっちだっけ?」

 

「私よ!メリー、まさか昨日お酒飲んだでしょ?」

 

「飲んでないよ!少し忘れてただけよ。」

 

「アハハッ、さぁて。行きましょう。」

 

そう言うと二人は肩を並べて御所へ歩き始めた。そんな二人の様子をビルの上から観察する二人の影があった。と、影の一人が口を開く。

 

「あれだな。マスター、目標は右の女か、左の女か、どっちなのだ?」

 

「両方の女の子だよ。見て分からないのかい?宇佐見蓮子も、マエリベリ・ハーンも不思議なオーラを感じる。」

 

「ガイルゴール様が言っていたのはマエリベリ・ハーンと宇佐見蓮子だと言うのか?」

 

「その通りだよ。でも、僕の推測だけれど恐らく宇佐見蓮子の方はマエリベリ・ハーンを拐われないように僕達に抗う気だ。」

 

「・・・そこをお前がなんとかするのか?」

 

「勿論、策はあるとも。まずは僕が彼女に近づき、油断したところを襲い、宇佐見蓮子を少し痛めつけてマエリベリ・ハーンを拐う。もしマエリベリ・ハーンの方が抗ってきたら君が彼女を押さえてくれ。クレイジー。」

 

「分かった。」

 

「なるべく、このことはセコンドやビオラに知られないようにしないといけないんだ。」

 

そう言うと二人は何処かへ移動してしまった。まるで物音に驚いて飛んでいくカラスのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって御所。そこでは普通に仕事をするセコンド、ビオラ、ヴァンの姿があった。そんな中、下っ端がビオラに紅茶を渡して言う。

 

「お仕事ご苦労様です。」

 

「フフ、ありがとうございます。」

 

下っ端は紅茶を彼女に渡すとセコンド、ヴァンに一礼をして部屋から出ていった。と、セコンドがビオラに言う。

 

「そう言えばビオラ、其の方は今日はある者に謁見を許したそうだな。」

 

「はい、ただ今こちらの御所へ向かっていると思います。」

 

「そうか。ヴァンはビオラの手伝いをするのかな?」

 

「えぇ、勿論ですとも。陛下のお側にいるのが臣下の役目なのですから。」

 

「ハッハッハッ、それはそれは熱心だな。」

 

声を上げながら笑うビオラとセコンド。と、ヴァンが何かを思い出したかのように二人に言う。

 

「ちょっとお待ち下さいお二方!!今日は確か、千年殃禍だった筈・・・。」

 

その言葉を聞いた瞬間、ビオラとセコンドはすぐに笑うのを止めた。と、ビオラが口を開く。

 

「もしかしてヴァン、あの二人が拐われると推測するのですか?」

 

「はい!先程二体の化身の気配を感じたので。」

 

彼が言った瞬間、セコンドは立ち上がり、大きな声で二人に言う。

 

「急いであの二人の元へ向かうんだ!!ビオラ、ヴァン!!」

 

彼が言った瞬間、ビオラとヴァンはすぐに外へと飛び出していった。それを見届けたセコンドは頭を抱えて言う。

 

「クソッ、なんてことだ・・・。まさかこの時に!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方蓮子とマエリベリ・ハーンことメリーは。何も知らないで御所へと向かっていた。

 

「それでね、啓介先輩ったら最近姿を見せないのよ。」

 

「え、あの啓介先輩が?どうして?」

 

「分からないわ。多分体調不良じゃない?」

 

「そうね、そう信じよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁやぁ、どうもお嬢さん達。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が話していた時だった。突如路地裏から長身で白のハット帽を被っていて白のスーツに白いジーンズを履いている紳士の男が現れた。彼を見た蓮子が口を開く。

 

「・・・何ですかあなたは。変態ですか?」

 

「違ぁう!私はただの風変わりな紳士さ。君達に手伝ってもらいたいことがあるのさ。」

 

「風変わりなんてただのとは言いませんよ。それに私達は女王様の元へ行くんです。邪魔しないで下さい。」

 

「ゲッ、細かいことを突っ込まれるとはね。まぁまぁ、すぐ終わることだから頼むよ。」

 

「嫌です!!しつこいと警察に通報するわよ。」

 

「・・・。」

 

メリーが言った瞬間、紳士は黙り混んでしまった。そんな中、蓮子が口を開く。

 

「今の内に行こう。」

 

「そうだね。」

 

そう言うと二人は路地裏を通る。と、紳士の男が笑みを浮かべて言葉を発する。

 

「やれやれ、君達は所詮警察にしか頼らないのか。考えが甘いよ。」

 

「な、何を言ってるの?」

 

メリーが言った瞬間、紳士の男はメリーの頬を叩いた。その衝撃でメリーが地面に倒れる。

 

「メリー!!あがっ!?」

 

メリーの元へと行こうとする蓮子だが紳士の男は左手で蓮子の首を掴み上げ、壁に叩きつける。蓮子はすぐに紳士の左手首を掴み、空中に浮いている足をばたつかせながら抵抗するも細い体とは裏腹に紳士の力は強く、蓮子の力では放れなかった。と、メリーが紳士の男を殴りつけながら言う。

 

「蓮子を放せっ!蓮子を放せ!!」

 

「フフフ、可愛いねぇ。女の子が必死に助けようとする姿、素晴らしいよ。でも、君じゃあ何も出来ないよ。クレイジー、出番だ。」

 

紳士が言った瞬間、上からもう一人の銀髪の紳士がメリーの背後に降りてきた。そして紳士の男は蓮子の首を絞める紳士を殴るメリーの首を腕で絞めた。

 

「かはっ!」

 

メリーは思わず紳士の腕を掴む。男の腕はメリーの首を絞めるほど強く絞めてはいなかったが逃げられないようにしているだけだった。つまり、押さえつけているだけである。と、帽子を被った紳士がメリーに言う。

 

「さぁどうする?マエリベリ・ハーン。彼女の生死は君がこのマスターハンドとクレイジーハンドに着いていくかいかないかにかかっているよ。」

 

「やめて!蓮子を放して!!」

 

「そんな選択肢はない。僕に言っても無駄だ。」

 

「メ、メリー・・・。」

 

「蓮子!?」

 

蓮子はマスターハンドに首を絞められているというのに言葉を発した。それを見たマスターとクレイジーは少し驚いたような表情を浮かべた。そんな二人とは別に蓮子が再び言う。

 

「わ、私のことはいい・・・から。一人で、逃げて・・・。」

 

「そんな!蓮子を放置して逃げることなんて出来ないよ!!」

 

「おね・・・がい・・。メ、リー・・・。」

 

「これは驚いたね、まさか人間ごときが僕に殺されそうになっているというのにそんな台詞を言えるなんてね。なら、もっと痛めつけるしかなさそうだ。」

 

そう言うと彼はさらに蓮子の首を絞める力を強くした。

 

「あがぁっ!かはっ・・・。」

 

「蓮子!!」

 

「さぁ、どうするマエリベリ・ハーン!!選択は君が選ぶと言っただろう!!」

 

「つ、着いていく!!あなた達に着いていくから!!蓮子を・・・助けて。」

 

メリーは涙声で言った。彼女の言葉を聞いたマスターとクレイジーは笑みを浮かべた。その瞬間、マスターは蓮子の首を絞める絞めていた手を放した。クレイジーも押さえつけていたメリーを放した。

 

「ゴホッ、ゴホッ。」

 

「蓮子!!」

 

メリーはすぐさま蓮子の元へと駆け寄る。そんな中、マスターは蓮子の背後に移動し、言う。

 

「実を言うと君も拐う対象なんだ、宇佐見蓮子。」

 

そう言った瞬間、マスターは蓮子のうなじにチョップをした。その瞬間、彼女は地面に倒れる。

 

「蓮子!!」

 

メリーに蓮子の元へと行かせる暇を与えず、クレイジーがメリーを右腕だけで抱える。

 

「ちょっと放しなさいよ!」

 

クレイジーに言うメリーだが両腕を押さえつけているため、何も出来なかった。そんな中、マスターは蓮子を右腕で抱えた。と、その時だった。突如誰かが路地裏に走り込む音が響いた。そしてマスターとクレイジーの前に白い肌に赤い瞳、銀髪を黒いリボンで束ねている男、ヴァンが現れた。マスターとヴァンの目が合った瞬間、マスターはヴァンに背を向ける。それを見たヴァンは言葉を発する。

 

「逃がすか!!マスターハンド!!」

 

そう言うとヴァンは右手に拳銃を生み出した。そしてマスターに発砲する。彼が撃った銃弾はマスターの肩を撃ち抜いた。

 

「ぬぐっ!?」

 

マスターの肩から鮮血が流れる。そんな彼にクレイジーが言う。

 

「大丈夫かマスター!!」

 

「あぁ、問題ないとも。撃ち抜かれたのは左肩だ。幸い右肩じゃなくて助かったよ。」

 

「しまった!!」

 

ヴァンが再び発砲しようとした瞬間、一瞬にしてマスターとクレイジー、そして蓮子とメリーの姿が消えた。

 

「ヴァン!!」

 

彼の後を追ってきたビオラが彼に言う。ヴァンは悔しい表情を浮かべて口を開く。

 

「申し訳ございません、陛下。あと一歩のところで逃げられてしまいました。」

 

「蓮子とハーンは!?」

 

「・・・拐われました。」

 

「・・・分かりました。すぐにセコンド様に連絡しましょう。」

 

そう言うとビオラはポケットからスマートフォンを取りだし、セコンドに電話をかけた。彼は2秒もせずに電話に出た。

 

「もしもし?ビオラか。謁見の者はどうなった?」

 

「申し訳ございません。拐われてしまいました。」

 

「そうか・・・。それで、誰が拐っていったのだ?」

 

「マスターハンドとクレイジーハンドです。」

 

「マスターハンドとクレイジーハンドか・・・。千年殃禍の始まりだなこれは。ビオラにヴァン、一時御所に戻ってくるがいい。余は五大王を呼ぶ。緊急会議を開講するぞ!!」

 

「「はっ!!」」

 

そう言うとビオラはセコンドが電話を切ったのを確認するとヴァンと共にそのまま御所へ走っていった。




拐われる蓮子とメリー。一体どうなってしまうのか!?
次作もお楽しみに!


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第70話 月の都へ侵略する神

マスターハンドとクレイジーハンドに拐われてしまった蓮子とメリー。


場所は月の都。そこでは月の都の親王である都久親王と細愛(ささらえ)親王が茶を飲みながら話していた。

 

「実に不思議だな・・・。」

「どうして溜め息をつくんだ?都久殿。」

 

「地上の者達の力が強くなっている気がした。まだ未熟者であろうと綿月姉妹は地上の妖怪程度に負ける筈はない。だが八意思兼から手紙が送られ、二人を地上へ送り、カオスとやらの下部を倒すように命じたのだが・・・。サグメの話によれば二人は妖怪や土壌神と互角だったと話していた。」

 

「地上は何故これほどまで強くなっているのだ?まさか五大王の方々が!?」

 

「あの方々は妖怪やら土壌神とは関わらぬ筈。だとしたら・・・。」

 

「・・・あまり深く考えないほうがいいな。」

 

「それと細愛殿、千年殃禍を知っているか?」

 

「あぁ。1000年前の全ての世界で起こった異変。」

 

「それがこの時期だというのを耳にした。」

 

「陛下は知っているのか?」

 

「それを願うだけだ。だが、月の都が初めに攻められることはない。過去2度はガイルゴールは全て地上から攻めている。月の都から襲撃されることは極めてない。」

 

「そうだな。一応敵の奇襲に備えて兵を召集しておかねば。」

 

「そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が話している中、月の都の外の防御結界付近では。千年殃禍の黒幕、ガイルゴールとマスターハンドとクレイジーハンドが月の都を見ていた。と、ガイルゴールが口を開く。

 

「気が利くな。クレイジー。気配を破壊しておくとはな。」

 

「月の都はここまでも気配を感じれますから。」

 

二人が話している中、マスターが防御結界を見つめながら言う。

 

「すごいですね、月の都は。都から距離はある筈なのに、ここまで結界を張るなんて。」

 

「月の都は現世の次に技術が発達した世界だからな。マスター。」

 

「はい。」

 

「余が月の都を破壊したのと同時に気配を作れ。作戦通りであれば奴らはすぐにこの場へ軍を送るつもりだ。」

 

「はっ!」

 

マスターが言った瞬間、ガイルゴールは結界の側まで近寄る。そしてガイルゴールは右手を上にあげ、そのまま振り下ろす。その瞬間、防御結界にヒビがはいっていき、遂にはガラスが割れるような音をたてて砕けた。その瞬間、月の都全体にサイレンの音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の都ではサイレンが鳴り響いて多くの月人がパニックになっていた。そんな中、都久親王と細愛親王の元へサグメがやって来て二人に言う。

 

「お二人にお伝えします。緊急事態です、月の防御結界が破壊されました!!」

 

「何っ!?」

 

「防御結界が破壊されただと!?」

 

「敵は何人だ!」

 

「報告によると、3人だけと。」

 

「3人だと!?たった3人だけで防御結界を壊せるわけ・・・ま、まさか!?」

 

「都久殿、何か分かったのか!?」

 

「千年殃禍だ・・・。今度は月の都を先に攻めたのか、ガイルゴールめ!!」

 

「何だって!?こうしてはいられない。サグメ、一番隊から五番隊を出撃させろ!状況次第で綿月姉妹も出撃させる。」

 

「はっ!!」

 

そう言うとサグメは二人の部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サグメの知らせにより、月の都から三人に向かって数百人の兵が向かっていく。それを見たマスターが口を開く。

 

「次々と兵が来ましたね。」

 

「うむ、作戦通りだ。結界を破壊して数分も立たずにゾロゾロと来ている。マスター。」

 

「はっ。」

 

「続きで悪いが、八岐大蛇とウルガストを召喚しろ。」

 

「御意。」

 

そう言うとマスターはスペルカードを取りだし、発動する。

 

「復活『タルタロスからの贈り物』」

 

その瞬間、マスターの両側から青と白の巨大な魔法陣が浮かび上がった。そしてマスターは再び口を開く。

 

「全てを喰らえ、ウルガスト。八つに轟け、八岐大蛇。」

 

その瞬間、青い魔法陣からは八つの谷を超えていて頭が八つあり、赤い目に青い体の八岐大蛇が現れた。白い魔法陣からは四角い体に両側には日本の腕がはえていて足は10本ほどあり、大きさは20mのウルガストが現れた。2体は魔法陣から現れるとそのまま月の都の兵に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の都ではサグメが再び都久親王と細愛親王の部屋へと入り、報告する。

「再び報告致します。八岐大蛇とウルガストが出現しました。」

「八岐大蛇にウルガストだと!?これでは・・・。」

 

「サグメ、綿月姉妹と全部隊を出撃させろ!都久殿、我々も出撃しましょう。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

そう言うと二人はすぐに月の都の外へと飛び出していった。月の都の外を見た瞬間、二人は目を見開いた。そこには八岐大蛇に喰われる兵士にウルガストに燃やされる兵士など、状況は絶望的だった。そんな中、豊姫と依姫は必死に戦っていた。と、都久親王が口を開く。

 

「我々も参戦せねばならんな。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

そう言った瞬間、都久親王は八岐大蛇と戦っている依姫の元へ、細愛親王はウルガストと戦っている豊姫の元へ向かう。

 

「都久親王!?何故ここに?」

 

「話す暇などない。戦え!」

 

「は、はっ!」

 

少し慌てながらも依姫は口を開く。二人は八岐大蛇の尾から避けながら体に傷をつけていく。

 

「ガァァァァァ!」

 

蛇でありながら八岐大蛇は雄叫びを上げながら二人を締め殺そうとするが二人は素早い動きで八岐大蛇の攻撃をかわしながら斬りつけていく。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

「くらえっ!」

 

二人は同時に弾幕を放つ。二人の弾幕が当たった瞬間、八岐大蛇はヨロヨロとなり、そのまま倒れてしまった。それを見たマスターが口を開く。

 

「う~む、復活させたばかりはやはり厳しいか。皮膚が薄くなってるし、体力も減少している。でも、ウルガストの方は完璧みたいだね。」

 

そう言うとマスターは細愛親王、豊姫と戦っているウルガストに目を向ける。ウルガストは細愛親王と豊姫に圧倒的な力を見せつけていた。そんな中、八岐大蛇との戦闘を終えた都久親王と依姫が二人の元へ向かう。

 

「クソッ、動きが奇怪すぎる。いつ攻撃してくるのか分からん!」

 

「細愛親王、後にサグメ様が来ます。依姫や都久親王も来たので持ちこたえましょう!」

 

「あぁ、そうだな豊姫!!」

 

二人が話していた時、都久親王と依姫がやって来た。と、依姫が豊姫に言う。

 

「加戦します、お姉様!!」

 

「助かるわ、依姫!」

 

その瞬間、ウルガストが四人に向かって火の玉をはいた。四人はそれを別れて避ける。そして四人は同時にウルガストに攻撃を放つ。

 

「ウウウァァァァァァ!!」

 

ウルガストに命中した瞬間、煙があがりその煙の中からウルガストが火の玉を連射してきた。それに反応出来ずに四人は軽い火傷をおおう。

 

「チッ。」

 

思わず舌打ちしてしまう都久親王。と、その時だった。突如ウルガストの背後に何者かが飛んで来たかと思うとそのままウルガストを真っ二つに斬ってしまった。そのままウルガストは粉になって消えていった。四人の前に降り立ったのは円柱帽を被っていて白い服に杖を持っている老人だった。彼を見た瞬間、四人は彼の前に膝をつき、口を開く。

 

「月余美陛下。」

 

そんな四人を見た月余美は眉間を細めながら四人に言う。

 

「全てはサグメから聞いた。千年殃禍、我々の場が先だったようだな。よくぞ耐えてくれた。月の都は汚染されずに済んだ。今後は・・・。」

 

月余美が続きを言おうとした瞬間、彼の背後に2mを超える長身に貴族の服、青い瞳に腰まで伸びる髪の存在、ガイルゴールが現れた。

 

「陛下、後ろ!!」

 

咄嗟に後からやって来たサグメが彼に言う。

 

「なんじゃ!?」

 

すぐに後ろを振り向こうとした月余美だがガイルゴールはそんな彼の顔を片手で掴み、彼の首を別の方向へ曲げる。その瞬間、ゴキッという鈍い音が辺りに響き、月余美の首があらぬ方向に折れ曲がった。

 

「なっ!?」

 

その瞬間、四人や近くにいた兵士は目を大きく見開き、月余美はその場で倒れる。そんな中、ガイルゴールが口を開く。

「一体誰が、敵は八岐大蛇とウルガストだけと言ったのだ?」

 

そんな彼の顔には笑みが浮かんでいた。それを見た都久親王が歯を食い縛りながらガイルゴールを指差して叫ぶ。

 

「殺れぇぇぇぇぇぇぇぇ!こいつを殺すんだァァァァ!」

 

その瞬間、サグメや綿月姉妹、他の兵士達が一斉にガイルゴールに向かっていく。それを見たガイルゴールが口を開く。

 

「月余美を殺されて怒り狂ったか。マスターにクレイジー、雑魚は任せる。余の邪魔は決してするな?」

 

「はっ。」

 




目の前で月余美を殺された都久親王達。千年殃禍が遂に始める。
次作もお楽しみに!


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第71話 続出する犠牲者

月の都へ侵略したガイルゴール。さらにガイルゴールは後にやって来た月余美を殺してしまう。


怒り狂った都久親王と細愛親王はガイルゴールの元へ向かう。彼らに続いて豊姫、依姫、サグメも向かっていく。それを見たガイルゴールが口を開く。

 

「愚かな・・・何故一斉に来るのだ?一斉に来るより別々に来たほうが良かったのだがな!!」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールは一瞬にしてその場から細愛親王の背後に移動した。

 

「何っ!?」

 

思わず声を上げる豊姫。そんな中、細愛親王はそのまま振り返り、ガイルゴールに拳を入れる。

 

「ほう、面白い選択だ。」

 

そう言うとガイルゴールは細愛親王の拳を片手で受け止めた。

 

「バカな!!殴ってくるのも読んでしまうなんて!!」

 

サグメは唖然となりながら口を開いた。そんな中、ガイルゴールが口を開く。

 

「余がこの程度の攻撃を避けられないと思っていたのか?」

 

そう言うとガイルゴールは掴む細愛親王の拳に力を入れ始めた。それを見たサグメがすぐに彼の元に向かう。それを見たガイルゴールは空いている左手に光の弾を作り、サグメに放った。

 

「ぐはっ!」

 

急な攻撃をくらった彼女はそのまま地面を転がり、豊姫の足元で倒れる。

 

「サグメ様!!」

 

すぐさま豊姫は倒れる彼女の元へ駆け寄る。そして彼女に言う。

 

「大丈夫ですか?サグメ様。」

 

「あぁ、問題・・・ない。」

 

二人が話している中、ガイルゴールは細愛親王を見ながら言う。

 

「細愛よ、お前は絶望を知っているか?希望を失った気分を味わったことがないお前には分からぬだろうな。」

 

「それが何だと言うのだ、ガイルゴール!!」

 

「お前に絶望を味あわせてやろうと思ってな。すぐにでもやってやろう。」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールは掴んでいた細愛親王の拳を片手で握りつぶした。その瞬間、彼の左手からは血が飛び散る。

 

「ぐあぁぁぁぁっ!」

 

「細愛殿!!」

細愛親王が激痛のあまりに叫んでいる中、ガイルゴールは左手に握り拳を作り、そのまま彼の腹を貫いた。

 

「かはっ・・・。」

 

彼の腹を貫いたガイルゴールの左手にはドクンドクンと振動しているものが握られていた。それを見た瞬間、サグメの表情が険しくなり、彼女はガイルゴールに向かいながら叫ぶ。

 

「貴様ァァァァ!よくも細愛親王を!!」

 

彼女が向かってくるのに気づいたガイルゴールは細愛親王の腹から左手を抜くとそのまま振動するものを捨て、口を開く。

 

「クレイジー、押さえろ。」

 

ガイルゴールが言った瞬間、向かってくるサグメの横からクレイジーが現れ、そのまま彼はサグメの顔を掴むと一瞬にして彼女を地面に組み伏せた。

 

「サグメ様!!」

 

彼女の元へすぐさま依姫が彼女の元へ向かう。それを見たクレイジーが彼女を見て言う。

 

「マスター、お前の番だ。」

 

彼が言った瞬間、依姫の目の前にマスターが現れた。突如目の前に出てこられては依姫は何もできず、後退してしまう。そんな彼女とは別にマスターは笑みを浮かべながら言う。

 

「君は今、動揺した。つまりそれは恐怖を覚えるのと同じことだよ。」

 

そう言った瞬間、マスターは依姫の腹を蹴りつけた。

 

「ぐはっ!」

 

そのまま依姫は地面を転がり、吐血する。その時、彼女はこう思っていた。

 

(たった一撃でこのダメージとは・・・。化身、恐ろしい存在だわ。)

 

そんな中、都久親王がクレイジーに向かって手を振りかざす。その瞬間、サグメを押さえていた左腕から鮮血が飛び散った。

 

「・・・?」

 

それを見たクレイジーは思わずサグメを放してしまう。そんな中、サグメは三人の元へ向かう。と、都久親王が口を開く。

 

「綿月姉妹、サグメよ。お前達は地上へ向かい、千年殃禍が始まったことを話すんだ。」

 

「で、ですが都久親王は!?」

 

「私のことなどいい!!早く行け!!」

 

彼が言った瞬間、サグメ、豊姫は負傷した依姫を抱えて月の海へ走っていった。それを見たガイルゴールが言う。

 

「追わなくてよい、マスターにクレイジー。」

 

「しかし・・・。」

 

「用があるのはあの3人ではない。月の都の主と言うのに相応しい存在、嫦娥だ。」

 

ガイルゴールが話している中、都久親王は武器を構えながらガイルゴールを見る。そんな彼を見たガイルゴールが口を開く。

 

「仲間を地上へ向かわせて自分は一人で余らと戦うか。面白い、見せてみよ。」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールは都久親王の目の前に現れ、そのまま彼を殴り飛ばす。間一髪でガイルゴールの攻撃を防いだ都久親王だが、彼の持っていた武器が壊れてしまった。それを見た都久親王はガイルゴールに向かって弾幕を放った。

 

「無駄だ。」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールは左手を前に出す。その瞬間、彼の放った弾幕が消えてしまった。

 

「何っ!?」

 

都久親王が驚く中、ガイルゴールは彼を見ながら口を開く。

 

「余の能力は『全てを制圧する程度の能力』。これはあらゆる特殊攻撃を制圧出来るということだ。」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールは都久親王の元へ向かっていく。

 

「チッ!」

 

舌打ちするも、彼はガイルゴールに弾幕を放ち続ける。しかし特殊攻撃を制圧するガイルゴールに彼の勝目などなかった。

 

「終わりだ。」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールの左手が都久親王の胸を貫いていた。

 

「がはっ・・・。」

 

都久親王はその場で吐血する。だが彼は自分の中の胸を貫いているガイルゴールの腕を掴む。

 

「?」

 

何を考えているのか理解出来ないガイルゴールは黙って彼の様子を見る。と、都久親王が口を開く。

 

「細愛、殿・・・。私とあな、たは・・・同じ運命を、辿るのだ、な・・・。」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールの腕を掴んでいた手が落ち、そのまま彼は息絶えてしまった。それを見たガイルゴールは死んだ彼の胸から腕を抜いて息絶えた彼に言う。

 

「違うぞ、都久よ。運命は同じとは限らぬ。」

 

彼が言った瞬間、マスターとクレイジーがガイルゴールの背後に移動する。それを見たガイルゴールが二人に言う。

 

「移動するぞ、嫦娥の元へ。」

 

「はっ。」

 

そのまま三人は息絶えた兵士達を避けながら嫦娥のいる建物の前まで辿り着いた。と、ガイルゴールが口を開く。

 

「随分と奇妙だな・・・。嫦娥の気配は感じるというのにまるで嫦娥が死んだような感覚だ。」

 

「・・・・。」

 

二人は黙ったままだった。それに気にせず、ガイルゴールは扉を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっ、これは!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人の目の前に広がる光景を見てガイルゴールは思わず目を見開いた。三人の目の前に広がる光景、そこには怪しく輝く紫色の鎖で嫦娥が縛られているのであった。と、マスターが口を開く。

 

「まさか、奴等はこれを予期して・・・。」

 

「いいや、そんな筈はない!!」

 

そう言うとガイルゴールは嫦娥を縛っている鎖に触れる。その瞬間、彼の手が何かのエネルギーによって弾かれた。

 

「なっ!?」

 

そんな彼の右手からは何故か血が垂れていた。

 

「ガイルゴール様、一体何が!?」

 

「・・・奴だ。既に奴に先越されたか。」

 

「奴に!?早すぎではありませんか?」

 

「あぁ、早すぎる。一体いつから・・・。いや、今はそんなことを気にしている暇はない。マスターにクレイジーよ、お前達二人はあの人間二人をネザーへ連れていき、ガストの涙を回収させろ。一粒でよい、任せたぞ。」

 

「御意。」

 

そう言った瞬間、マスターとクレイジーはその場から消えていった。二人が消えていった瞬間、ガイルゴールは星が広がる光景を見ながら口を開く。

 

「お前はまたしても余の邪魔をし、神の政権を奪うつもりか、エリュシオン!!」

 




ガイルゴール達によって崩壊した月の都。嫦娥封印の謎とは!?
次作もお楽しみに!


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第72話 化身の企み ネザーへ

月の都を崩壊させたガイルゴール達。だが嫦娥を復活させようとするが謎の鎖により復活を阻止される。


場所は最果ての星。星が見える空とは別に反対側には何もない、真の果ての星。そこの建物の中で二人の少女、宇佐見蓮子とマエリベリ・ハーンはいた。二人は牢屋に入れられて数時間が経っていて話す気にもなれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁやぁ、おまたせ。宇佐見蓮子にマエリベリ・ハーン。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如声が響いた瞬間、二人の目線に二人の白い服を着た紳士、マスターとクレイジーが現れた。二人を見た瞬間、蓮子は檻を掴み、揺らしながら言う。

 

「早くここから出しなさいよ!!」

 

「あぁ、出すさ。」

 

そう言うとクレイジーは二人を閉じ込めていた檻の鍵を開けた。その瞬間、二人は牢屋から出て建物から逃げようとする。そんな二人にマスターが言う。

 

「無駄だよ、ここは最果ての星。逃げることなんて出来ないさ。」

 

「なっ!?」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、蓮子とメリーは思わず足を止めてしまう。そんな二人にクレイジーが口を開く。

 

「お前達は今、地球から何億光年も離れた星にいる。逃げても逃げられる場所などない。」

 

「・・・どうやったら逃げられるの?」

「簡単なことだよ。僕達に着いてくればいいんだ。」

 

そう言った瞬間、マスターは蓮子とメリーの手を取る。その瞬間、その場からマスター、蓮子、メリーの姿が消えた。それを見たクレイジーも消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、着いたよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスターの言葉が聞こえた瞬間、蓮子とメリーの二人は目を覚ます。

 

「こ、ここは!?」

 

二人の目線に広がる光景。そこには辺りはネザーラックがあり、天井からマグマが流れている。そんな中、クレイジーが二人に言う。

 

「ここはネザー。現世や幻想郷、月の都とは違う世界、四角世界(マインクラフト)の地獄だ。」

 

二人が呆然となっている中、マスターが二人に近づき、言う。

 

「不思議だろう?本来ならマグマの熱さが伝わる筈なのに伝わっていないことが。これは僕の能力で君達にマグマ体勢のポーションを飲ませた。これで君達はマグマに落ちても服は燃えないし君達も燃えない。」

 

そう言った瞬間、クレイジーは辺りを見回す。そしてマスターに言う。

 

「マスター、近くにいるようだ。すぐに終わらせよう。」

 

「あぁ、そうだね。」

 

そう言った瞬間、四人から20mほど離れたマグマの中から体が正四角形で目を閉じていて足が9本あり、大きさは10mほどある化物が現れた。

 

「ひっ!!」

 

化物を見た瞬間、蓮子とメリーは思わず声を上げてしまう。そんな二人とは別にクレイジーが言う。

 

「あれはガスト。ネザーに来た者達を追い払おうとする番人だ。安心しろ、真の番人のウルガストは我々が月の都侵略の際に負傷したため、動けぬ。」

 

「月の都を・・・・侵略した?」

 

「その通り。我が主、ガイルゴール様と共に侵略に成功した。だが、嫦娥の復活は不可能だった。既に奴に先越されたのだ。」

 

「や、奴って?」

「お前達に言っても分からぬ。」

 

クレイジーと蓮子、メリーが話している中、マスターがガストを見ながら口を開く。

 

「クレイジー、二人は任せたよ。涙を回収してくる。」

 

そう言うとマスターは笑みを浮かべながら刀を剣を取り出す。

「ウガァァァァッ!」

 

と、ガストがマスター目掛けて火玉を放った。マスターはそれを片手で受け止めた。

 

「すごい・・・何なのあの人。」

 

「宇佐見蓮子にマエリベリ・ハーンよ。あれは人間ではない。人間の振りをした化身よ。私とマスターはガイルゴール様から生み出された化身なのだ。」

 

「・・・あっ、聞いたことがあるわ。」

 

「メリー、何か知ってるの?」

 

「えぇ、前一人で図書館へ行った時に化身のことが書かれている本を読んだわ。何億年も前、シヴァと呼ばれる神様がいたの。ガイルゴールはその神を2つに分けた。創造と破壊、それがマスターハンドとクレイジーハンドなのよ。」

 

「その通りだマエリベリ・ハーン。私とマスターは本来は二人で一つだった。」

 

三人が話している中、マスターは既にガストに止めをさそうとしていたところだった。マスターに怯えるガストとは別にマスターは表情を変えずにガストに言う。

 

「怖がる必要はないさ。僕が欲しいのは君の命じゃない。君の涙さ。僕は君の涙が欲しいだけだ。」

 

彼が言った瞬間、ガストは目から涙を流し始めた。それを見たマスターは笑みを浮かべながらポケットの中に入っていたビンを二つ取り出した。そして彼はガストの涙から流れる涙を回収する。そしてあっという間にビンの中はガストの涙で一杯になった。

 

「さ、もういいよ。」

 

彼が言った瞬間、ガストは何処かへ飛んでいってしまった。と、マスターは二人にガストの涙が入ったビンを渡した。

 

「え、これは?」

 

「飲んでみなよ。味は普通の水と変わらないから。」

 

彼が言った瞬間、蓮子とメリーは少し抵抗があるものの、ビンの中にある涙を飲んだ。

 

「!?」

 

その瞬間、蓮子とメリーは何かを感じ、思わずビンを落としてしまう。ビンが割れた瞬間、中に入っていた涙が一瞬にして蒸発してしまった。そんな中、クレイジーが笑みを浮かべながら言う。

 

「どうだ?涙の味は。」

 

「すごく・・・不味いわ・・・。」

 

「さて、僕らの役割はこれで終わりだ。」

 

そう言った瞬間、マスターは再び二人の手を取るとそのままクレイジーと共に消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が目を覚ますとそこにはマスターとクレイジーに出会った場所だった。と、マスターが二人に言う。

 

「君達の役目は終わりだ。ご苦労さん。」

 

そう言うとマスターは消えていってしまった。二人が目を合わせた瞬間、クレイジーが二人に言う。

 

「予め言っておこう。帝セコンドに協力を依頼しても無駄だ、何故なら我が主は神。誰にも負けぬ存在だ。」

 

そう言った瞬間、クレイジーもマスターと同じように消えていった。と、メリーが蓮子に言う。

 

「・・・蓮子、どうする?」

 

「奴は無駄だと言っていたけれど、依頼するしかないわ。急ぎましょう。」

 

「うん。」

 

そう言うと二人はセコンドのいる御所へと走っていった。




二人の化身が二人に涙を飲ませた理由とは?
次作もお楽しみに!


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第73話 謎の女と海の聖獣

化身達は何故か二人をネザーへ連れていった。そしてガストの涙を飲ませただけだった。


場所は変わって幻想郷の紅魔館。そこでは霊夢達から話を聞いたというのにのんびりしているレミリア・スカーレットがいた。その紅魔館の門番を務める少女、紅美鈴はいつものように門の前で眠っていた。

 

「・・・?」

 

と、美鈴は突然何かの気配を感じとり、閉じていた瞳を開ける。彼女の目線に写るのはフードを深く被っていてショートパンツをはいている女性がいた。彼女を見た瞬間、美鈴は口を開く。

 

「あ、あの~・・・どちら様ですか?」

 

「・・・。」

 

美鈴が話しかけても女性は言葉を出さない。そんな彼女とは別に美鈴は再び言う。

 

「何の用でここへいらしたのですか?まさか、泥棒するつもりですか?それともお嬢様の命を狙うつもりですか?」

 

「・・・・お前は、紅美鈴だな?」

 

美鈴は驚きを隠せなかった。女性が喋ったからではない。女性が自分の名を知っていたからだ。そんな彼女に口を開く。

 

「どっ、どうして私の名前を!?まさか、あなた私にストーカーしていましたね!!」

 

「・・・は?お前の言っている意味が分からない。何故名前を知っているだけでストーカーだと言うのだ?」

 

「あ、その・・・・すいません。」

 

「フン、まぁいい。それより紅美鈴よ、レミリア・スカーレットは何処にいる?」

 

女性の言葉を聞いた瞬間、美鈴の体がピクリと反応する。そんな彼女とは別に女性は口を開く。

 

「もう一度言う。レミリア・スカーレットは何処だ?」

 

彼女が言った瞬間、美鈴は女性に向かって弾幕を放った。

 

「!!」

 

それを見た女性は冷静に後退する。そんな彼女とは別に美鈴は戦う構えをして彼女に言う。

 

「お嬢様に会いたかったら私を倒してみなさい、この人間風情が!」

 

彼女が言った瞬間、女性は右手をレミリアのいる部屋に向けた。その瞬間、彼女の指先から青い光線が放たれた。彼女の放った光線はレミリアのいる部屋に命中する。

 

「お嬢様!!」

 

彼女がレミリアの名前を叫んだ瞬間、女性は突然紅くなる空を見て口を開く。

 

「流石だな。そう簡単にくたばる奴とは思ってなかったぞ。」

 

彼女が見つめる先、そこにはメイドの咲夜、パチュリー、小悪魔、妹のフランを率いる少女、レミリア・スカーレットがいた。と、レミリアが口を開く。

 

「あなたは何者?今は千年殃禍で忙しいのよ。」

 

「・・・フフフ」

 

「・・・何が可笑しいというの?」

 

「つい数時間前、月の都は我ら神の軍勢によって壊滅した。」

 

「なっ!?」

 

「月の都を崩壊させた?いい様じゃない。」

 

「そろそろ、我も姿を見せなきゃいけないな。」

 

そう言った瞬間、女性はレミリア達に背を向けた。その瞬間、彼女の前に階段が現れた。

 

「湖に、階段が!?」

 

パチュリーが驚いている中、女性はゆっくりと階段を上がっていく。そして一番上まで来た瞬間、彼女は上にあった玉座に腰を下ろす。その瞬間、彼女の背中から紫の羽が生えた。

 

「あ、あれは・・・。」

 

咲夜が言った中、女性の回りに紫色の渦が漂い始めた。

 

「な、何が起こってるの?お姉様。」

 

「分からないわよ。でも、何かヤバイかもしれないわ!」

 

レミリアがフランに言った女性の回りに漂っていた渦が消え、中から青い服を着ていて頭にはフードだけのようなものを被っていて薄紫の瞳の女性が姿を現した。そして女性はレミリア達に言う。

 

「我は堕天の王、ルシファーなり!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、悠岐と楓は無縁塚付近にいた。と、悠岐が紅くなる空を見ながら口を開く。

 

「この紅い雲・・・レミィじゃないぞ!!」

 

「この感覚・・・まさか、ルシファー!?」

 

「馬鹿な!!ルシファー!?」

 

「なんでだ・・・どうしてルシファーはガイルゴール側に回ってしまったんだ!!」

 

「こうなったら楓、ルシファーを倒しにいくぞ!!」

 

「あぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ち下さい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如悠岐と楓は誰かに呼び止められたため、動きを止めてしまう。二人の背後にいたのは白いシニョンをピンクの髪に着けていて紅い服を着ていて右腕を包帯で巻いている女性、茨木華扇だった。と、華扇は悠岐に手紙を差し出しながら言う。

 

「悠岐さん、お願いがあるのですがこれを黄泉に届けて欲しいのです。」

 

「黄泉だと!?黄泉って確か、黄泉軍(ヨモツイクサ)を率いる冥界の団長のことか?」

 

「はい、その黄泉です。」

 

「その黄泉は何処にいるんだ?」

 

「四季映姫のいる冥界の最下層にいます。無理であれば映姫さんに渡してもらってもいいですよ。」

 

「分かった、任せな。」

 

「悠岐!」

 

冥界へ向かおうとした悠岐の腕を楓が掴んだ。そして口を開く。

 

「・・・気をつけてな。いつガイルゴールの刺客が来るのか分からない。」

 

「あぁ、気をつけるさ。お前も気をつけろよ、楓。」

 

「勿論さ。」

 

二人が話している中、華扇が口を開いた。

 

「私は豊聡耳神子の元へ行きます。そこに神の軍勢の刺客の気配がするので。」

 

「あぁ、分かった。」

 

楓が言った瞬間、三人はそれぞれの場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は神霊廟。そこでは千年殃禍に備えて戦闘準備をしていた神子達の姿があった。

 

「神子様!信仰者の方が来ましたよ。」

 

と、布都が神子の叫んだ。それを聞いた彼女は布都のいる場所へと向かう。そこにいたのは青い髪に右手には鍵のようなものを持っている男がいた。彼を見た神子が頭を下げて言う。

 

「よくおいでになられました。私は豊聡耳神子と言います。」

 

「・・・お前のことは知っている。」

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ち下さい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如神子の元へ白いシニョンをピンクの髪につけていて右腕を包帯で巻いている女性、茨木華扇がやって来た。と、華扇が神子の隣に並び、口を開く。

 

「油断しないでください、神子。あれはあなたの信仰者ではありません。あれは、神の軍勢の一人に過ぎません!!」

 

彼女が言った瞬間、男の持っていた鍵が青く光始めた。そんな中、妹子、青娥、芳香、屠自古がやって来る。と、妹子が男を見ながら口を開く。

 

「あ、あなたは黄泉様の知り合いのニライカナイ!?」

 

「妹子?何か知っているのですか?」

 

神子が妹子に問う瞬間、男が宙に浮き始め、回りには青い渦が漂う。と、妹子が再び言う。

 

「幻想郷にはそれぞれアヴァロン、ニライカナイ、シャンバラ、エデン、黄泉の5体の鍵の守護者がいるんです。その一人があの、ニライカナイなんです!」

「そのニライカナイが神の軍勢に回っているのは何故・・・。」

 

華扇が言った瞬間、男の回りを漂っていた渦が消えて中から青く、巨大な魚のような生物の上に男が乗っていた。と、男が神子達を見ながら言う。

 

「絶対なる神、ガイルゴール様に認められた神聖なる力・・・。俺の名はニライカナイ、彼方の楽園を守る者だ!!」




ルシファーとニライカナイ。幻想郷に現れる神の軍勢の者。レミリア達と神子達はこの強敵に勝てるのか!?
次作もお楽しみに!


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第74話 レミリアvsルシファー

幻想郷に現れたガイルゴールの軍勢のルシファーとニライカナイ。


「堕天の王、ルシファーですって?」

 

そう言うとレミリアは宙に浮き、彼女を見ながら言った。そんな彼女にルシファーが口を開く。

 

「レミリア・スカーレット、お前は我が主ガイルゴール様の命により、始末させてもらう。」

 

「何処の妖怪かは知らないけれど、あなたはこの私、レミリア・スカーレットを倒すことは不可能よ。」

 

「可能だとも。何故ならお前の戦いの全てを見てきたのだから。」

 

「何っ!?」

 

彼女の言葉を聞いたレミリアは思わず声を上げてしまう。そんな彼女とは別にパチュリーがルシファーに言う。

 

「堕天の王、ルシファー。それは一体どういうことなの?」

 

「考えてみろ、お前達の周りに悪魔はいないか?」

 

彼女が言った瞬間、レミリア達は一斉に小悪魔の方を見る。と、小悪魔が慌てながら口を開く。

 

「わ、私じゃないですよ!!だって私はルシファーを知らないんですから!!」

 

「怪しいわね。小悪魔、正直に・・・。」

 

「その通りだ、小悪魔の小娘。」

 

咲夜が責めようとした瞬間、口を開いたのはルシファーだった。と、彼女は右手を上にあげ、赤い光と青い光を出した。それを見たレミリアが口を開く。

 

「ルシファー・・・一体それは何なの?」

 

「お前達の周りには、悪魔というより半人半悪魔がいるのを知っているか?」

 

「ま、まさか・・・。」

 

「そう、よく気づいたな魔法使い。何故我がお前達と戦うことになっても負けないか。それはあの二人の半悪魔、西田悠岐と出野楓の視界からお前達の戦いぶりを見ていたからだ。」

 

「そっ、それじゃあ悠岐と楓に悪魔の力を与えたというのは!!」

 

「そう、この我だ。本来ならもう二人いたが冥狼神とエリュシオンの手により命を落とした。最も、エリュシオンに至っては助ける術が無かった。」

 

「フン、アヌビスやエリュシオンのことなんてどうでもいいわ。あなたは私達を倒すためにここへ来たんでしょう?なら始めましょうよ!」

 

「準備は出来ているか?では、来い!」

 

ルシファーが言った瞬間、レミリアはすぐにスペルカードを発動した。

 

「神槍スピア・ザ・グングニル!」

 

彼女の放った攻撃は真っ直ぐルシファーの元へ向かう。しかしルシファーはそれを黙って見ている。そして彼女にグングニルが彼女に命中し、煙が発生した。

 

「フン、大した相手ではなかったわね。」

 

「いいえ、まだよレミィ。」

 

煙が晴れた場所をパチュリーは汗を流しながら見つめる。それを見たレミリアもその場所を見る。そこにはレミリアの攻撃をくらっても無傷でいるルシファーがいた。

 

「そんな!お嬢様が放ったグングニルを受けても平然としていられるなんて!!」

 

「みんな見て!なんか紫色の何かが見える!」

 

フランの言葉を聞いた瞬間、レミリア達は一斉に彼女の方を見る。ルシファーの回りにはフランの言うとおり、紫色の何かがあった。と、ルシファーが笑みを浮かべながら言う。

 

「お前達にはこのバリアを壊すことは出来ない。お前達はこのバリアの法則を知らないのだから。」

 

「ならば、私達が壊して見せるわ。咲夜!!」

 

レミリアが叫んだ瞬間、咲夜が彼女の元まで飛び上がり、スペルカードを発動した。

 

「幻世ザ・ワールド!時よ止まれっ!」

 

その瞬間、辺りの時空が歪み、そのまま時間が止まった。と、咲夜はナイフを数本取りだし、そのままルシファーの回りに投げつける。数十本のナイフがルシファーの回りで止まる。と、咲夜が口を開いた。

 

「こうすれば、例え堕天の王のルシファーであろうと一溜まりもないはず。時は動き出す。」

 

その瞬間、止まっていた時間が再び動きだし、ルシファーの回りに止まっていたナイフが一斉に彼女に向かって飛んで来る。しかしナイフは全てルシファーのバリアによって弾かれてしまった。

 

「隙ありぃぃぃぃ!」

 

「!?」

 

声が辺りに響いたかと思うとフランがルシファーの上から飛んできていてスペルカードを発動していた。

 

「禁忌レヴァーテイン!」

 

それを見たルシファーは右手を上げ、指を鳴らした。

 

「みんな伏せてっ!」

 

パチュリーがすぐさま他の五人に言う。しかし五人は状況が把握出来ないまま、その場でとどまる。そしてルシファーの回りに紫色の輪の光線が放たれた。

 

「ぐはっ!」

 

彼女の攻撃をくらったレミリア達は地面に倒れてしまう。そんな中、ルシファーが彼女達を見ながら言う。

 

「これはエナジーサークル。我が最も得意とする技だ。しかし、この程度でやられるのはまだ早い。」

 

そう言うと彼女は立ち上がり、手をあげて再び口を開く。

 

「これで終わりにしてやる。大号令を受けるがよい!」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、美鈴は目を見開きながら言う。

 

「大号令!?まさか・・・」

 

「美鈴、何か知っているの?」

 

「危険です、パチュリー様。最悪の場合、全滅します!」

 

「ま、マズイ!」

 

慌てるレミリア達とは別にルシファーは上げた右手に紫色のオーラを漂わせながら口を開く。

 

「我、堕天の・・・!?」

 

彼女が続きを言おうとした時だった。突如彼女の目の前に腰まで伸びる黒髪に赤い瞳、袖のない黒い服を着ていて氷のオーラが漂う刀を持っている少女が現れた。その瞬間、彼女は刀をルシファーの回りにあるバリアに突き刺した。その瞬間、バリアにヒビが入り、対にはガラスが割れるような音を立てて壊れた。

 

「何っ!?」

 

これを見たルシファーは思わず目を見開く。そんな彼女とは別に少女はレミリア達の前に降り立つ。と、少女がレミリア達に言う。

 

「ルシファーはお前達だけじゃ勝てる相手じゃない。私も混ぜさせてもらう。」

 

「あなたは・・・楓!!」




ルシファーの攻撃によりピンチになったレミリア達を助けた楓。悪魔vs悪魔の戦いが始まる。
次作もお楽しみに!


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第75話 迫り来るbeat 謎の死

ルシファーの圧倒的な力の前にピンチになるレミリア達。そこへ楓が現れる。


場所は現世。そこでは海辺に数百台の戦車が並んでいた。そんな中、海辺から数百メートル離れている拠点に地王セコンドに女王ビオラ、彼女の補佐のヴァンがいた。と、ビオラがセコンドに言う。

 

「セコンド様、本当に海からやって来るのですか?」

 

「あぁ。グランチ率いる帝王軍のレーダーによれば海から大群が押し寄せているようだ。」

 

「幻想郷や四角世界(マインクラフト)が少々気になりますが・・・月の都が崩壊したと聞いては今後は犠牲を覚悟しないといけません。」

 

「セコンド様、来ます。」

 

ヴァンが言った瞬間、セコンドとビオラは彼の元へと向かう。海を見ながらセコンドは口を開く。

 

「嘗て人類はbeat(ベータ)によってほぼ絶滅した。しかし、もうそんなことを起こしてはならぬ。よいか、ビオラにヴァン。」

 

「「はっ!」」

 

二人が言った瞬間、海上に赤い頭部のようなものが浮かんできた。それを見たヴァンがレーダーの画面を見ながら言う。

 

「レーダーによると兵士(ソルジャー)級はいないものの、戦車(タンク)級と要撃(グラップラー)級は数百体を越え、突撃(デストロイヤー)級と要塞(フォート)級は数十体は確認されます。」

 

「成る程、ガイルゴールはそう来たか・・・。ヴァン、グランチとの通信を繋げてくれ。」

 

「はっ!」

 

そう言うと彼はパソコンのキーボードをカタカタた打ち始めた。そしてエンターキーを押した瞬間、声が響く。

 

「ごきげんよう、帝よ。どうかしたか?」

 

「グランチ、そちらの準備は出来ているか?」

 

「勿論だとも。街の者達は皆難攻不落の小宝城に避難させ、兵士(ソルジャー)級は帝王蜘蛛(エンペラースパイダー)や剛岐、マーグル、モルト、現世に残っている影舷隊に任せてあるよ。それに、光線(レーザー)級の対応は私の娘と部下であるリナと小太郎に任せてある。」

 

「そうか。それならよいのだが・・・。」

 

「何か悩み事でもあるのかね?ククク、帝よ。今は悩み時ではない。神の軍勢を撃破することに頭を集中させたまえ。」

 

「・・・あぁ、其の方の言うとおりだな。」

 

「それでは、ご武運を祈るよ。」

 

メルト・グランチとの通信がそのまま切れてしまう。と、セコンドは座って作業を行う兵士達に言う。

 

「余の合図とともにミサイルを発射せよ。」

 

「はっ!」

 

その瞬間、セコンド率いる地王軍がミサイル発射の準備を開始した。そんな中、ビオラが口を開く。

 

「幻想郷にも刺客が現れたようです。一刻も早くbeat達を撃破し、私達も幻想郷に向かいましょう。」

 

「そうだな。生き残れればの話だがな。」

 

「セコンド様、ミサイル装填完了しました。いつでも発射出来ます。」

 

「よし、余の合図とともに発射せよ。」

 

待っている内に次々と海面上にbeatの頭部が浮かんでくる。ビオラとヴァンはそれを黙って見る。と、ヴァンが口を開く。

 

「ち、ちょっと待ってくださいセコンド様。海面に浮いているのはbeatはbeatでも、あれはbeatの死体です!」

彼の言葉を聞いた瞬間、セコンドは目を見開きながら海を見る。彼の目には海面にプカプカと血を大量に流しながら死んでいるbeatの姿があった。それを呆然と見ている時だった。突如通信の通知が辺りに鳴り響いた。

 

「何をしている、早く繋げよ!」

 

「は、はっ!」

 

そのままヴァンはキーボードをカタカタと打ち、通信を繋げる。

 

「よぉ、セコンド。どうやらbeatが全滅していたらしいな。」

 

「・・・剛岐か。何故城にいる筈の其の方が知っている?」

 

「城からバリバリ見えてるよ。今メルト・グランチにも聞いてみたけど、どの個体も喰われて死んでいやがる。」

 

「・・・喰われた?」

 

「あぁ、メルト・グランチの娘のリナと部下の村山が見に行った結果、喰われた箇所が著しくなっていたらしいぞ。」

 

「まさか・・・奴が?」

 

「奴がいるのかもしれないが今は奴と戦っている場合じゃあねぇ。もう現世を襲われることはねぇ。」

 

「剛岐よ、モルトとマーグルを城に残し、其の方は余らと共に幻想郷へ行くのだ。」

 

「・・・念には念をか。分かった、マーグルとモルトに知らせたら俺も向かう。」

 

「頼んだぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は小宝城内。そこでは何が起こっているのか分からずパニックになる街の人達と彼らを見守るゴールド・マーグル、アイアルト・モルト、小宝剛岐に現世に残っている影舷隊の隼人、ミク、ウロボロス、麻里がいた。と、剛岐が口を開く。

 

「お前ら!よく聞いてくれ。これから俺は世界のために戦ってくる。皆はここに残っていてくれ。」

 

それを聞いた街の人達、影舷隊、マーグル、モルトは目を見開く。そんな中、モルトが剛岐の近くに寄り、言う。

 

「剛岐、幻想郷に行くのか?」

 

「あぁ、ガイルゴールの野郎が月の都を崩壊させ、次は幻想郷を狙っている。だが、油断は出来ない。モルト、お前はマーグル達とここに残っていて欲しいんだ。」

 

「・・・分かった。行きたい気持ちはあるが、我慢する。」

 

「・・・そうか。」

 

「それと剛岐、1つお前に頼みがある。」

 

「頼みだと?」

 

剛岐が言った瞬間、モルトは彼の肩を軽く叩き、口を開く。

 

「俺の妹を・・・ユニを、守ってやってくれ。あいつは紫に幻想郷の守護者を任されているが・・・不安なんだ。」

 

「・・・あぁ、任せてくれ。ユニは必ず俺が守ってやるよ。」

 

そう言うと彼はモルトに背を向けて外に向かって歩いていった。と、剛岐の様子を見ていたモルトの元へミクがやって来て、口を開く。

 

「いいんですか?モルトさん。兄であるあなたが幻想郷へ行かなくて。」

 

「・・・正直不安さ。だが、俺は信じているさ。剛岐だけじゃない。幻想郷にいる悠岐や啓介、楓のこともな。」

 

「・・・無事であるといいんですが・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって帝の御所。そこへ小宝城を出た剛岐が到着していて既にセコンド、ビオラ、ヴァン、メルト・グランチが幻想郷へ向かう準備を終わらせていた。と、セコンドが口を開く。

 

「遂に余らは神へ挑む。千年殃禍に終止符を打つためにな。」

 

「しかし、相手は神だ。私が死ぬこともあれば、帝よ、卿も死ぬリスクが考えられる。」

 

「もしくは私がヴァンか・・・。」

 

「・・・・。」

 

「あまり考えない方がいいな。さぁ、行くぜ。2年ぶりの幻想郷へ。」

 

剛岐が言ったのと同時に5人は幻想郷への門の中へと入っていった。その様子を見ていた女の姿にも気がつかずに。




beatの謎の全体死。一体何が起こったというのか!?
次作もお楽しみに!


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第76話 悠岐vs篁①

突然のbeatの大量死。一体何が起こったのか。


場所は幻想郷の無縁塚。そこでは映姫に手紙を届けるために彼女の元へと向かう悠岐の姿があった。彼はあることを思いながら向かっていた。

 

(ルシファーがどうしてガイルゴール側に・・・。いいや、今は華扇に頼まれたことをしないとな。)

 

そう言うと彼は冥界の方へと向かっていく。しばらく走っている内に彼は川の前までやって来た。と、悠岐が口を開く。

 

「三途の川だ・・・この辺りに小町か妹子がいればいいんだが・・・。」

 

そう言うと彼は妹子か小町がいないか辺りを見回し始めた。

 

「ん?あいつは・・・。」

 

彼が見つめる方向には長身で腰まで伸びる赤髪に目は赤く、左目には眼帯をつけていて袖の広い青い長袖に白い長ズボンを履いていて右手には先端に鎌の刃が二つあり、下の部分には2mを越えている長さの鎖がついていて鎖の先には小さな鎌がついている、所謂『鎖鎌』を持っている男が悠岐の元へとやって来たのだ。それを見た悠岐が男に言う。

 

「お前は・・・。」

 

「お初にお目にかかる。(やつがれ)は小野塚篁。お前は、西田悠岐だな?」

 

(やつがれ)?随分と変わった一人称だな。」

 

「あぁ、すまん。(やつがれ)というのは小野塚家の男が初対面の者の対して自己紹介をする時に用いる一人称だ。」

 

「そうなのか。あ、忘れてたな。俺は西田悠岐だ。」

 

「テメェ、まだ生きてるじゃねぇか。三途の川を渡ったら死んじまうぞ。」

 

「そう、だな。あ、そうだ篁。お前に頼みたいことがある。」

 

「なんだ?」

 

篁が言った瞬間、悠岐はポケットの中から手紙を取りだし、篁に渡した。それを見た篁が言う。

 

「こいつは?」

 

「華扇が黄泉に送って欲しい手紙だ。もしお前が黄泉の元へ行けなかったら映姫に渡して欲しい。」

 

「あの仙人が黄泉に?こりゃ、とんでもねぇことになりそうだ。」

 

「それじゃあ俺はここで失礼させてもらうよ。」

 

そう言うと彼は無縁塚の外へと向かっていく。

 

「待ちな。」

 

外へ行こうとする悠岐を篁が呼び止めた。彼に呼ばれたため、足を止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと俺と遊ばねぇか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠岐が振り返った瞬間、突如篁が鎖鎌を彼目掛けて振り下ろした。

 

「!!?」

 

突然の攻撃だがなんとか悠岐は彼の攻撃を漆黒の刃で防ぎ、後退する。そして口を開く。

 

「てっ、テメェ何しやがる!!」

 

「何しやがる?決まってんだろ?俺と遊んでもらうんだよ。」

 

「お前、今の状況を分かってないのか?今幻想郷は、ガイルゴールの軍勢が押し寄せていて奴らと戦わなければならないんだぞ!!」

 

「ガイルゴールの軍勢が押し寄せている?どうでもいいな。俺は生きている野郎と戦うのが好きなのさ。」

 

「テメェ・・・。」

 

「俺は悪の魂を狩る仕事を務めている。時に抗う者も多くいた。そのため、俺はこの左目を失った。だから俺は、亡者達には絶対に負けない。妹達を必ず守る。」

 

「・・・だからって俺と戦う必要なんてねぇだろ。」

 

「俺がお前と戦う理由、それは俺は一人の男に出会ったからだ。」

 

「一人の、男?」

 

「伊吹百々という野郎だ。あいつには戦いの意味を教えてもらった。だからそれをテメェに教えてやるぜ、西田悠岐!!」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、悠岐は持っている刀に力を入れた。そして口を開く。

 

「いいだろう。テメェの相手をしてやる、小野塚篁。」

 

「ほう、やる気になったか。それだ、それでいい。」

 

そう言うと篁は鎖鎌を構え、後ろを見ながら口を開く。

 

「妹子、小町。いるんだろ?手出しは許さねぇからな。」

 

篁の背後の岩影に隠れていたのは彼の妹である妹子と小町であった。篁の言葉を聞いた二人は黙って頷く。それを見た篁は悠岐を見る。

 

「遅いぜ、死神。」

 

その声が響いたかと思うと悠岐は既に篁の背後に移動していた。

 

「なっ!?」

 

それを見た篁は声を上げることしか出来なかった。そのまま悠岐は篁の頭を蹴り、彼を吹っ飛ばした。そのまま篁は地面を転がり、うつ伏せになって倒れる。それを見た妹子が思わず言葉を発する。

 

「すごい、あの百々さんでもお兄様には先にダメージを与えられなかったのに!」

 

「知ってるかい妹子。悠岐の武器、兄さんと違って軽いから兄さんの数倍速くは動けるんだよ。」

 

「で、ですがお姉様。百々さんの場合でも同じはずなんじゃあ・・・。」

 

「さぁ。その点に関しては分からないけれど、悠岐は明らかに百々とは全く違う戦法で兄さんと戦うだろうね。」

 

二人が話している中、篁がゆっくりと起き上がり、悠岐はそれを見ていた。と、篁が笑みを浮かべながら口を開く。

 

「やるじゃねぇか、人間。」

 

「テメェ、そこまでダメージを受けていないな?俺の7割程の蹴りを受けて平然と立てるなんて。」

 

「確かに、俺はあまりダメージを受けてねぇ。テメェが蹴る瞬間に魔力を高めてダメージを軽減したからな。」

 

「魔力とか、テメェは魔法使いか。」

 

「俺は見ての通り、立派な死神だ。魔力を扱うことの出来るな!」

 

(魔力を使うとすれば、恐らく奴は弾幕系の攻撃を得意とするパターンか。しかし、何故あの時弾幕ではなく鎖鎌を振り下ろした?謎が深まるばかりだ。少し攻めよう。)

 

そう思った瞬間、悠岐は篁に向かって刀を振り下ろす。それを見た彼も鎖鎌で対抗する。辺りには二人の打ち合う音が辺りに響く。そんな中、篁は思った。

 

(こいつ、あんな細い刀で俺のこの太くて固い鎖鎌と互角のパワーを持っている!?なんてパワーだ、一体そんな力がどこから・・・)

 

(こいつ、見た目とは違って鎖鎌の威力はさほどない。このまま攻め続ければいずれ奴は体力を使い切る。それをチャンスを踏めば!!)

 

そう思った瞬間、悠岐は篁に向かって刀を突く。その瞬間、篁の持っていた鎖鎌の鎖の先の鎌が悠岐の背後に移動し、そのまま彼の肩を貫いた。

 

「!!」

 

「フフフ、鎖鎌を使う者との戦いは初めてか?俺はこんな使い方をするのさ。」

 

少し馬鹿にするような表情を浮かべる篁。そんな彼とは別に悠岐は突如肩に刺さる鎌を無理矢理抜いた。

 

「バカな!?鎌を無理矢理抜いただと!?」

 

思わず言葉を発する彼とは別に悠岐は隙を狙って篁の左肩を斬りつけた。

 

「何ッ!?」

 

彼の攻撃をくらった彼は思わず後退してしまう。そんな中、悠岐が口を開く。

 

「肩に鎌が刺さる程度で俺が動揺してしまうと思ったか?相手が技を披露出来た時が最も油断する時だということを俺は知っているんだぜ、篁!!」

 

(こいつ、今まで戦ってきた相手の中で一番相性の悪い相手だぜ。百々とは全く違う戦法を繰り出している。百々(あいつ)の場合は俺の鎖鎌の攻撃を避けたものの、悠岐(あいつ)は堂々と受けた。)

 

そんな中、悠岐が再び口を開く。

 

「俺に負けるようじゃあ、死神の特別部隊隊長として恥じゃないのかい?」

 

(あいつ、挑発していやがる。しかし、鎌のダメージは絶大的。奴の肩から出血が治まってない。あのまま多量出血で体力が尽きる筈だ。)

 

と、悠岐が空いている左手で貫かれた肩を押さえながら口を開く。

 

「しかし何気に痛いな、この傷。まぁ、数分経てば止血するか。悪魔って便利だな。」

 

「オイ、ちょっと待てテメェ。テメェ、今自分のこと悪魔って言ったよな。」

 

「あぁ、そうだが?」

 

「・・・驚いたよ。まさかテメェ、人間と悪魔よハーフだったんだな。」

 

「気がつくと思っていたが、案外気づかないもんなんだな。」

 

「悪魔と戦えるなんて、俺はなんて幸運なんだろうな。俺には昔からの夢があった。それは悪魔と戦うことだ。というわけで、テメェを倒させてもらうぜ、西田悠岐!」

 

「挑むところだぜ、篁。最強の魂狩人(ソウルハンター)の力、見させてもらうぜ!」

 

傷が深い筈の二人の顔には人の体に鳥肌をたたせるような不気味な笑みが浮かんでいた。




悠岐と篁。現世と幻想郷を代表する隊長同士が争う。二人の戦いの結末とは!?
次作もお楽しみに!


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第77話 悠岐vs篁②

悪魔と死神。現世と幻想郷を代表する隊長同士がぶつかり合う。


息を整えた二人は再び刀と鎖鎌で打ち合う。それを見ていた妹子が口を開く。

 

「お兄様、勝てますかね・・・。」

 

「さぁね。兄さんも強いけれど、悠岐も強いからね。」

 

妹子の疑問に自然と小町が答えた。そんな中、悠岐と篁の二人は互いの武器を打ち合う。無縁塚付近で二人の武器の打ち合う音が響く。と、篁が口を開く。

 

「テメェ、中々やるじゃねぇか。流石映姫様が見込んだ男だ。」

 

「それはどうも。別に俺は映姫に見込まれなくていいんだけどな。」

 

「ハッ、まぁどうでもいいけどな。」

 

「テメェ、随分と余裕そうだな。何か秘策でも隠しているな?」

 

「勿論。俺が切り札を残さない訳がない。今ここでテメェに使ってやるぜ。」

 

そう言った瞬間、篁の回りに黒いオーラが漂い始めた。それを見た小町が言う。

 

「あらら、久しぶりに兄さんの本気を見れる。」

 

「あれを使われて無事だった者は一人もいないと言われていますよね。」

 

二人が話している中、悠岐は黙ってその様子を見つめる。と、篁が悠岐を笑みを浮かべながら見て言う。

 

「さぁ、その身に刻むがいい。俺の本気をな!!」

 

そう言った瞬間、篁は彼の方へ走り出した。

 

(速いッ!!)

 

彼がそう思った時に既に篁は悠岐の目の前にいた。そして鎌を振り下ろす。悠岐はそれを避ける。それを見た篁が口を開く。

 

「防ぐより避けるを選択したか・・・。いい判断だな、悪魔!」

 

彼の攻撃を避けた悠岐は汗を流しながら心の中で言った。

 

(あの野郎、なんて一撃だ・・・。もしあれを防いでいたら俺の腕は反動によって折れてただろうな。)

 

悠岐は刀を構えて篁を睨む。それを見た彼は笑みを浮かべて言う。

 

「ほう、まだやるのか?あの一撃を見て自分自身で分かってるんだろ?」

 

「確かに俺はあの一撃を見てヤバイと思った。だが、ここで逃げるのは男のすることじゃねぇ。」

 

「ほう、よくそんな事を言えるもんだ。さてはテメェ、守りたい奴がいるな?」

 

「当たり前だ。(あいつ)だけは、絶対に守ると約束したんだ。絶対に死なせはしない!!」

 

「フン、奇遇だな。俺も守りたい人がいるから、こうやって死を恐れずに戦える。男ってのは、守りたい人人のために戦う馬鹿な生き物だ。無論、それはお前も、俺も当てはまる。」

 

「・・・。」

 

「さて、余興が過ぎたな。続きを始めようか。」

 

そう言うと悠岐と篁は戦う姿勢を取る。その瞬間、篁が悠岐の背後に一瞬にして移動した。

 

「なっ!?」

 

「くらえ!!」

 

そのまま篁は悠岐の腹を蹴りつけた。その瞬間、悠岐はその場で吐血する。そんな彼とは別に篁は鎖鎌を振り上げる。それを見た悠岐は不意打ちのように彼の太股を斬りつけた。

 

「ぐっ!?」

 

その隙を見て悠岐は彼との距離をあける。そして息を整える。

 

「させねぇ!!」

 

その声変わり聞こえた瞬間、篁の鎖鎌の鎖が伸び、鎖の先端についている鎌が悠岐の左腕に刺さった。

 

「!?」

 

咄嗟に悠岐が鎌を抜こうとした瞬間、篁が彼の目の前に左手に拳を作った状態で現れた。それを見た悠岐は目を見開くことしか出来なかった。

 

「オラアッ!!」

 

そのまま篁は彼の顔を殴りつけた。そのまま悠岐は物凄い勢いで吹っ飛ばされ、岩壁に衝突する。彼が衝突した場所からは砂埃が舞う。それを見た妹子が思わず口を開く。

 

「凄い、お兄様のパンチ。悠岐さんをあんなに吹っ飛ばすなんて・・・。」

 

「いくら悠岐でも、流石にあれを食らったら無事じゃ済まないよ。」

 

二人が話している中、砂埃が治まった場所から悠岐がゆっくりと体を起こした。そんな彼の頭からは血が垂れていて額に流れる。それに気づいた彼は空いている左手で額の血を触り、見る。と、篁が口を開く。

 

「その出血の量を見ると相当ヤバイ状況のようだな、悪魔さんよぉ。どうだ?この勝負、素直に降参するか?」

 

「・・・やれやれ、少々ヤバくなってきたな。このままじゃ本当に死んでしまう。俺も切り札を使わないとな。」

 

そう言った瞬間、悠岐の回りから赤黒いオーラが漂い始めた。それを見た篁は眉を潜める。と、悠岐が彼に言う。

 

「お前に使うのは少々勿体ないが、俺の命に関わることならばやむを得ない。」

 

そう言うと彼は刀を空に向ける。そして大声である一言を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我、堕天の左腕なり!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼がその一言を言った瞬間、赤黒いオーラが彼を包んだ。そしてその中から紫色に染まった瞳、顔には赤い模様が描かれている悠岐が姿を現した。それを見た篁が汗を流しながら口を開く。

 

「な、なんだその姿は。さっきのとは全く違う雰囲気だな。だが、俺がそんな程度でビビると思っていたのか!!」

 

そう言った瞬間、篁は先程と同じように一瞬にして悠岐の背後に移動した。そして鎖鎌を振り下ろす。と、悠岐は篁のほうを見て笑みを浮かべてその場から消えた。

 

「なっ!?」

 

急に消えたため、篁は慌てて体勢を立て直す。その瞬間、彼の背後に悠岐が現れた。

 

「なにッ!?」

 

声を上げる彼とは別に悠岐は篁の腹を殴りつけた。それを食らった彼は吐血しながら吹っ飛ぶ。

 

「えっ!?」

 

それを見た二人は思わず声を上げてしまう。そんな中、悠岐が篁を見ながら言う。

 

「これぞ、左腕に認められし我が力、堕天(モードオブサタン)ぞ。」




本気を出す悠岐と篁。二人の戦いの結末はいかに!?
次作もお楽しみに!


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第78話 悠岐vs篁③

本気を出し始めた悠岐と篁。


「やるじゃねぇか、悪魔!!」

 

そう言うと彼は起き上がった。そんな彼の体の所々に出血が見られる。それを見た悠岐が口を開く。

 

「あの一撃をくらってもまだ立っていられるとはな・・・。大した体の硬さだ。」

 

「ハッ、褒め言葉として受けていれるさ。俺は今、最高に楽しいぜ、西田悠岐!!こんなに楽しめる戦いをしたのはお前が初めてだ!!」

 

「・・・。」

 

「さぁ、もっと俺を楽しませてくれ。もっと楽しい戦いにしようぜ!!」

 

「お前と戦うのもそろそろ終いとさせてもらおう、小野塚篁。」

 

そう言った瞬間、二人は再び刀と鎖鎌を打ち合う。打ち合う衝撃で辺りの岩盤や木々が吹っ飛ぶ。それを気にせず打ち合う。そして二人が距離を取った瞬間、二人は笑みを浮かべて同時に走り出す。そして二人がすれ違った。その瞬間、悠岐の肩から鮮血が飛び散る。

 

「チッ・・・。」

 

「ハハハ、やっと傷をつけることが出来た。俺は、それだけで・・・満、足、さ・・・。」

 

そう言った瞬間、篁の体から鮮血が飛び散った。そのまま彼は地面に倒れた。それを見た悠岐の体は元の姿に戻った。そして悠岐は篁に言う。

 

「お前との戦い、存分に楽しめたぜ。悪いが俺はここで失礼させてもらう。ガイルゴール達を倒さないといけないんでな。」

 

そう言うと彼は自分の傷を気にせずに無縁塚を去っていった。

 

「兄さん!!」

 

「お兄様!!」

 

彼が去っていったのと同時に妹子と小町が倒れる彼の元へと駆け寄る。それに気づいた彼はある方向を見て言う。

 

「妖華、いるのか?」

 

篁が言った瞬間、草陰から腰まで伸びる銀髪に黒いリボンをつけていて白いシャツに青緑色のベストを着ている少女が現れた。姿は妖夢に似ているものの、背丈は彼女より高く、髪も長い。そんな中、篁は妖夢に似ている少女、妖華を呼んだ。彼に呼ばれた妖華は篁の側へ寄る。そして言う。

 

「篁、また戦ったの?そんな傷だらけになっちゃって。」

 

「あぁ。久し振りに負けちまったよ。」

 

「負けちまったよじゃないわよ!!なんで傷つくまで戦うの?私はそこまで望んでないよ!!」

 

「・・・妖華。俺が戦う理由、それはお前を守れるようにするためさ。」

 

「!?」

 

「妹子、小町、映姫様にこれを届けにいってくれ。」

 

そう言うと彼は妹子に1通の手紙を渡した。彼から手紙を貰った妹子は小町と共に映姫の元へと走っていった。それを見た篁は上体を起こした。そして言う。

 

「俺は、悠岐(あいつ)と一緒なのさ。守りたい人がいれば強くなれる。だから俺は戦っているのさ。」

 

そう言うと篁は隣に座る妖華を抱き寄せた。赤面する彼女とは別に篁が彼女に言う。

 

「許してくれ、妖華。これは俺のためでもあり、ましてはお前のためなんだ。」

 

「篁・・・。」

 

「妖華、俺の傷を治してくれないか?俺はこれからガイルゴールとかいう奴らと戦う。」

 

「分かったわ。でも、私も連れていって。」

 

「あぁ、勿論さ。」

 

そう言った瞬間、篁の傷がどんどん治っていく。と、妖華が篁に言う。

 

「一応、さっきの男の人の傷も治しておいたから。」

 

「あぁ、ありがとな。」

 

そう言うと篁は体を起こした。それにつられて彼女も立ち上がる。そして篁は妖怪の山を見て言う。

 

「さぁ、行こうか妖華。神をぶっ倒しにな。」

 

「えぇ、行きましょう!」

 

そう言うと二人は互いに手を取って飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、何処かへ行こうとした悠岐は自分の体を見て異変に気がつく。

 

「・・・傷が、治っている?」

 

首を傾げながらも彼は再び走り出した。守るべき人を守るために。




悠岐と篁の戦いに終焉がついた。しかし他の場所はどうなっているのか!?
次作もお楽しみに!


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第79話 堕天使vs悪魔

悠岐と篁の戦いの末、悠岐が勝利を掴んだ。


場所は紅魔館。そこでは突然現れてレミリア達を圧倒したルシファーと彼女に立ち向かう一人の少女、楓がいた。と、ルシファーのバリアを壊した楓が彼女に言う。

 

「私の主、ルシファー。何故だ!」

 

「楓か・・・。何故お前が?」

 

「私から聞きたい。何故ガイルゴールと手を組んだんだ!!」

 

「我の意志だ。神と手を組むことによって我に得を得られる。」

 

「そんな理由で神と組んだのか、ルシファー!!」

 

「然り。それでは我も問おう。楓よ、何故我の元へと来た?そして、あの小僧はいないのか?」

 

「悠岐は別の場所でこの世界のために戦っている。私がここへ来た理由、それはお前を倒すためだ!!」

 

「成る程、他の場所でか。まぁ、よい。我にとっては気にすることのない事だ。」

 

「ルシファー、私はこの場でお前を葬る。本来なら尊敬するべき存在だが、ガイルゴールと手を組むと言うのならば、今のお前は敵に過ぎない。」

 

「我を裏切るか・・・。面白い。」

 

そう言った瞬間、ルシファーは玉座から立ち上がるとそのまま楓を見つめる。

 

「くらえ!!」

 

そう言うとルシファーは楓目掛けて青い光線を放った。それを見た楓は咄嗟に攻撃を避ける。再びルシファーは光線を放つ。楓もそれを避け続ける。それを見ていたパチュリーが心の中で言う。

 

(あの堕天使の攻撃を完璧に避けている。体が咄嗟に反応しているの?いいや、違う。知っているのかしら?あの攻撃を。かつてこの攻撃を見ていたかのように、体が動いているわ。楓、あなたは一体どんな過去を・・・。)

 

パチュリーが心の中で言う中、楓はスペルカードを発動していた。

 

「氷界ブリザード!!」

 

彼女の攻撃を見たルシファーはそれを容易く避ける。その瞬間、楓はルシファーの目の前に現れた。

 

「なにッ!?」

 

「葬る!!」

 

そのまま楓はルシファーの腹を斬りつけた。

 

「ぐっ!?」

 

腹を斬りつけられたルシファーは思わず後退してしまう。それを見たレミリアが言う。

 

「流石悠岐と同じ存在、楓ね。例え相手が主であろうと躊躇なくやっていく。」

 

レミリアが言った瞬間、ルシファーが出血する腹を押さえながら楓に言う。

 

「貴様・・・主によくもこのような傷をつけたな!!」

 

「フフッ、ただ傷つけただけじゃない。」

 

そう言うと楓は先程斬りつけたルシファーの腹を指差す。それを見たルシファーは腹を見る。それを見た瞬間、美鈴が口を開く。

 

「傷口が凍っている!?いつのまに凍らせたんですか?」

 

「気化冷凍法。奴の腹を切った瞬間に刀の先から放っておいた。傷口が凍ってしまえば自由には動けないだろう。」

 

「くっ・・・。フフ、流石我が見込んだ小娘だ、楓。だが、次はうまくいくとは思うなよ。奴を撃破した後に、いつか相手してやる。」

 

「奴を撃破?ルシファー、それって・・・。」

 

「お前には、関係のないことだ。それではまた会おう。」

 

そう言うとルシファーは楓達に背を向けてそのまま消えていってしまった。それを見た楓はレミリア達を見て言う。

 

「これから私は残っているガイルゴールの僕達を倒しにいく。レミリア達は少し休んで後から来てくれ。」

 

「分かったよ、楓姉ちゃん。」

 

「・・・中々馴れないな。フランから『姉ちゃん』って呼ばれるのは。」

 

赤面しながら言う楓を見てフランは微笑む。そんな彼女とは別にレミリアが彼女に言う。

 

「ねぇ、楓。ルシファーの言っていた、『奴』って一体誰なの?」

 

「・・・私も詳しくは分からないが、恐らくはあの神だろう。」

 

「そう・・・。」

 

そのまま楓は何処かへ走っていってしまった。それを見ていたパチュリーが口を開く。

 

「彼女が言っていたのは恐らく、ガイルゴールじゃない気がするわ。」

 

「ガイルゴールじゃない?じゃあ一体何だって言うの?パチェ。」

 

「楓とルシファーが言っていた、奴って言うのは恐らく・・・。」

 

パチュリーが続きを言おうとした瞬間、何処からか爆発音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ガイルゴールは無縁塚から幻想郷を見ていた唐突に言葉を発する。

 

「ルシファー・・・。お前の敗北は決して無駄ではない。後は余やマスター、クレイジー、ニライカナイに任せろ。神の絶対権力は決して覆させぬ。」

 

そんな彼の後ろには二人の紳士がいた。と、ガイルゴールが二人に言う。

 

「マスター、クレイジー。行動を開始せよ。」

 

「はっ!」

 

そう言うと二人は何処かへ飛んでいってしまった。ガイルゴールはそれを見た後、無縁塚の奥へ歩いていった。




撤退するルシファー。何か目的があるというのか!?
次作もお楽しみに!


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第80話 守護者の誇り

ルシファーを撤退させることに成功した楓。


場所は無縁塚。そこでは小町、妹子から手紙を受け取った映姫がある場所へと向かっていた。そしてその場所に着いた瞬間、映姫は口を開く。

 

「黄泉殿、黄泉殿はおられますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その声、映姫か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

低い男の声が聞こえたかと思うと暗闇からかつての日本軍が着ていた軍服に黒い帽子を被っていて紫色の髪に赤い目、後ろには異形な生物を連れてくる男、黄泉が現れた。と、黄泉が映姫を見て言う。

 

「お前が(やつがれ)に何用だ?」

 

「はい、実は妖怪の山の仙人からあなた様へと手紙が届いております。」

 

そう言うと彼女は黄泉に1通の手紙を渡した。それを受け取った彼は手紙を開いて内容を見る。それを見た黄泉は口を開く。

 

「事情は把握した。つまりガイルゴールという輩を倒すために力を借りたいというのか?あの仙人は。」

 

「そのようですね。一体黄泉殿に何を協力してもらうのか・・・。」

 

「聖獣を説得させるつもりか?」

 

「聖獣を説得させる?」

 

「この世界には(やつがれ)と聖獣の他にも聖杯、時輪金剛、パライゾがいるのを忘れたか?(やつがれ)はそれらの頂点に立つ者。説得させることなど容易い話だ。」

 

「まさか、今から行かれるのですか!?」

 

「すぐに戻る。なんせ奴は(やつがれ)には勝てぬからな。」

 

そう言うと黄泉は何処かへ歩いていってしまった。映姫はそれを黙って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は神霊廟。そこでは突然として現れた聖獣ニライカナイが神子達の前に立ちはだかっていた。と、華扇が口を開く。

 

「何故なのです!ニライカナイ。何故海の守護者であるあなたが神と手を組んだのです?」

 

「俺は・・・俺には神に仮を返さなければならないんだ。」

 

「神に仮を返す?」

 

「そう、それは数ヶ月前のことだった。俺の楽園が、ある者の手によって崩壊させられた挙げ句、仲間達を殺された。」

 

「ある者?」

 

「分かるか?カオスだ!カオスさえいなければ・・・俺がすぐに戻ってきていたら・・・仲間達が死なずに済んだというのに!!」

 

「ニライカナイ・・・。」

 

「怒った俺はすぐさまカオスの元へ行き、奴を倒そうとした。だが、その時にはもうカオスはいなかった。何故なら俺が来たときには既にガイルゴール様に倒されていたからだ。」

 

「・・・・。」

 

神子や妹子、華扇達は何も言葉を発さなかった。そんな中、ニライカナイが再び口を開く。

 

「カオスを倒してくれたガイルゴール様のために俺は!!神に仮を返す!!」

 

彼が言った瞬間、華扇が溜め息をつき、言う。

 

「やれやれ、私達ではどうにもなりませんね。救世主が来てくれるのを待ちましょう。」

 

「救世主?誰を呼んだというのです?茨木華扇。」

 

「見ていれば分かりますよ。」

 

二人が話している中、ニライカナイが口を開く。

 

「さぁ、行くぞ!!」

 

そう言うとニライカナイは持っている槍を構えた。

 

「ぐっ!?」

 

その瞬間、突如としてニライカナイが頭を抱え始めた。それを見た瞬間、神子達は目を見開いた。と、華扇が口を開く。

 

「お早いお出ましですね。」

 

華扇が言った中、ニライカナイの頭の中で何かが話しかけていた。

 

「久しいな、ニライカナイ。(やつがれ)を覚えているか?」

 

「その声・・・まさか、黄泉か?」

 

「いかにも。ニライカナイよ、貴様は(やつがれ)との契約に反し、神と手を組むとはな。」

 

「違う、黄泉!!俺はただ、仮を返そうとして・・・。」

 

「惚けるな!!もう貴様にはうんざりだ。元の地へ戻してやろう。」

 

そう言った瞬間、ニライカナイの体が徐々に消え始めた。それを見た妹子が華扇に言う。

 

「まさか、黄泉様に協力を依頼したのですか?華扇さん。」

 

「ええ、その通りですよ。守護者を止められるのは守護者だけですから。」

 

華扇が話した瞬間、ニライカナイの姿が一瞬にして消えてしまった。それを見た神子が口を開く。

 

「・・・呆気ないですね。まさか同じ守護者にやられるなんて・・・。」

 

「でも、これで神撃破には大きく近づきましたよ。感謝します、黄泉殿。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって妖怪の山。そこでは今回の異変の黒幕、ガイルゴールが様子を見ていた。と、不意に口を開く。

 

「ニライカナイが倒されたか・・・。今回は運が悪いな。ベータもやられ、ルシファーもニライカナイもすぐに倒された。やはり余が行くべきなのだな。」

 

そう言うとガイルゴールは何処かへ歩いていってしまった。




ニライカナイを倒した黄泉。遂に動き始めるガイルゴール。次作もお楽しみに!


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第81話 破壊の化身

黄泉とニライカナイ。出会った守護者は黄泉が圧倒的な強さを見せつけた。そしてガイルゴールが動き始める。


場所は魔法の森。そこではユニ、啓介、ピン、魔理沙の四人がガイルゴールとの戦いに備えて待機していた。と、ユニが啓介に言う。

 

「ねぇ、啓介君。他の人達ってどうしていると思う?」

 

「どうしているってか?安心しろ、悠岐や楓、霊夢達は大丈夫だ。なんせ、セコンド、メルト・グランチらの異変も解決していったんだからな。」

 

「デモ、コンカイノアイテハカミサマダヨ?ボクタチニショウキハアルノカイ?」

 

「さぁな。それはやってみなければ分からない。だが、言えることはいつ誰が死んでもおかしくないという状況は変わらないことだ。もしかしたら魔理沙が死ぬかもしれないしユニが死ぬかもしれない。結果なんて誰にも分からないのさ。」

 

「私は最後まで諦めないぜ。例え相手が神だろうと何であろうとな。」

 

「そうね、魔理沙の言う通りだわ。負けを認めない限りはまだ負けてない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の始めの相手はお前達か。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如四人の背後から男の声が響いた。その瞬間、四人は一斉に後ろを振り返る。そこには腰まで伸びる銀髪に紅い瞳、白いスーツを着た紳士の男がいた。と、男が四人に言う。

 

「お前達の相手は私が務めさせてもらおう。」

 

男が言った瞬間、啓介が目を細めながら言う。

 

「テメェは・・・マスターハンド!!」

 

その瞬間、紳士の男は『ドテッ』と地面に倒れてしまう。そして男はすぐに起き上がり、口を開く。

 

「違ーう!!私はマスターハンドではない、クレイジーハンドだ!!」

 

「クレイジーハンド?ウソヲツクナ。ソンナクチョウハマスターハンドイガイアリエナイ!!」

 

「だからクレイジーハンドだって言ってんだろ!!ガイルゴール様の力で化身の時の私とマスターの口調が入れ替わってしまったんだ!!」

 

「ヘヘッ、笑えるぜ。」

 

「笑うな、魔法使いの小娘め!!」

 

そう言うとマスター・・・いや、クレイジーハンドは全身に力を込め始めた。そして口を開く。

 

「私の機嫌を悪くさせたことを後悔させてやる。覚悟するがいい!!」

 

そう言った瞬間、クレイジーハンドの姿が一瞬にして消えた。

 

「消えた!?」

 

啓介が言った瞬間、ピンの真横に紳士の男が現れた。そのままクレイジーハンドはピンを吹っ飛ばした。

 

「ピンさん!!」

 

「テメェ!!」

 

咄嗟に魔理沙とユニは戦闘体勢に入る。と、ユニがスペルカードを発動する。

 

「宝符ゲートオブバビロン!!」

 

その瞬間、彼女の背後に金色の空間が現れ、中から無数の武器がクレイジーハンド目掛けて飛んでくる。

 

「無駄だ。」

 

そう言った瞬間、クレイジーハンドは右手を前に突き出した。その瞬間、武器が全て吹っ飛んだ。

 

「闇のレクテリア!!」

 

その隙に啓介が背後から攻撃を仕掛ける。それに気づいていたのか、クレイジーハンドは彼の攻撃を容易く避けた。

 

「何ッ!?」

 

「見え見えだ。」

 

そう言うとクレイジーハンドは啓介の腹を殴りつけた。

 

「ガハッ!!」

 

吐血しながら啓介は木に叩きつけられる。

 

「ケイスケクン!!」

 

咄嗟にピンが彼の元へと急ぐ。そんな中、魔理沙がスペルカードを発動した。

 

「いきなりいくぜ、恋符マスタースパーク!!」

 

彼女の攻撃は一直線にクレイジーハンドに向かっていく。と、クレイジーハンドが左手を出した。そしてそのまま魔理沙のマスタースパークを片手で押さえた。

 

「なっ!?」

 

「これが、人間と化身の力の差だ。」

 

そう言った瞬間、クレイジーハンドはユニと魔理沙の元へ一瞬にして移動し、そのまま二人を殴り飛ばした。

 

「グハッ!」

 

「ぐっ!」

 

そのまま二人は木に叩きつけられる。それを見たクレイジーハンドが口を開く。

 

「相手にもならんぞ。もっと私を満足させてくれ!」

 

そう言った瞬間、クレイジーハンドは左手に剣を出現させ、そのままユニ目掛けて振り下ろす。彼女に当たる寸前で啓介がクレイジーハンドの攻撃を止める。そしてクレイジーハンドの腹を蹴った。

 

「ぬおっ!?」

 

「舐めてもらっちゃ困るぜ、クレイジーハンド。いくら俺達が弱いからといって一人でやるとは限らないぜ!」

 

「なるほど、絆の力とやらか。なら私はその絆の力を壊してやろう。」

 

そう言うとクレイジーハンドは右手に力を込め始めた。すると彼の手から赤い玉が出現した。

 

「くらえ!!」

 

そのままクレイジーハンドは赤い玉をユニ達に向かって放った。だが、その時だった。クレイジーハンドの放った赤い玉がユニ達とは全く別の方向に飛んでいってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の相手はこの私だ、化身。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声のした方向を一同は一斉に見る。そこには腰まで伸びる黒髪に赤い目、黒いスカートに氷のオーラを纏っている刀を持つ少女がいた。彼女を見た瞬間、ユニは目を見開きながら彼女の名前を言う。

 

「楓ちゃん!!」

 

「待たせたな、ユニ。ルシファーとの戦いで少し苦戦してしまった。」

 

「遅いぞ、楓。そのせいで俺達の体はボロボロさ。」

 

「すまない、啓介。少し待っていてくれ。こいつは私が倒す。」

 

そう言うと楓はクレイジーハンドに刀を向ける。それを見たクレイジーハンドが溜め息をつき、言う。

 

「これは参ったな。出野楓が来るとは予想外な展開だ。」

 

「さぁ、始めるぞ。化身!!」




ピンチになったユニ達の元へ駆けつけた楓。化身と悪魔の戦いが始まる!!
次作もお楽しみに!


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第82話 創造の化身

クレイジーハンドとの戦闘に入ったユニ達。ピンチの所へ楓が駆けつける。


場所は博麗神社。そこではガイルゴールとの戦いに備えて霊夢、ルーミア、妖夢がいた。と、霊夢が口を開く。

 

「一応聞くけど、あんた達は大丈夫なの?帰るなら今の内よ。」

 

「いいえ、私は戦いますよ霊夢さん。幻想郷がガイルゴールの手によって危機に迫られているのですから。」

 

「私も同じなのだー。」

 

「ならいいんだけれどね・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごきげんよう、君達の相手は僕が務めよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声がした方向を三人は一斉に振り返る。そこには長身で白い帽子を被っていて青い瞳に白いスーツを着た紳士の男がいた。彼を見た妖夢が言う。

 

「あなたは・・・クレイジーハンドですね?」

 

「はぁ、言うと思ったよ。化身では僕とクレイジーは全く逆の性格だからね。ガイルゴール様の凡ミスだ。」

 

「ということはあなたはマスターハンドなのかー?」

 

「いかにも、僕は創造心の化身、マスターハンドさ。ガイルゴール様の命により君達を始末させてもらうよ。」

 

そう言うとマスターハンドは武器を構える。それを見た三人も戦闘体勢に入る。と、マスターハンドが口を開く。

 

「あらかじめご紹介しておこう。僕の能力は創造する程度の能力。そのままさ。」

 

「自分の能力を明かすとは。愚かな考え方ね。」

 

「いいや、これも僕の作戦の内さ。」

 

その瞬間、マスターハンドは空いている左手を上に上げた。すると彼の手から青い光が現れた。その時、青い光から数本のレーザーが放たれた。

 

「なっ!?」

 

声を上げるものの、三人は彼の攻撃を避ける。

 

「引っ掛かったね。」

 

マスターハンドの声が聞こえた瞬間、三人の着地した場所からカチッという音がなった。その瞬間、三人の地面が爆発した。

 

「ぐはっ!!」

 

そのまま三人は傷を覆い、地面に倒れてしまう。それを見たマスターハンドが言う。

 

「地雷をこっそり仕掛けておいて正解だったね。でも、少し外れたね、体の一部が吹っ飛んでいない。まぁ、いいか。もう君達は満身創痍なんだからね。」

 

そう言うと彼はゆっくりと三人の元へやってくる。と、妖夢が口を開く。

 

「私は、諦めませんよ!!」

 

そう言うと彼女は再び起き上がり、マスターハンドに向かっていく。

 

「妖夢!!」

 

二人が同時に彼女の名前を叫ぶ。そんな中、マスターハンドは溜め息をつき、言う。

 

「やれやれ、諦めればいいものを・・・。」

 

そう言った瞬間、マスターハンドは向かってくる妖夢の腹を斬りつけた。

 

「ぐっ!?」

 

「妖夢!!」

 

腹を斬りつけられた妖夢は地面にうずくまる。そんな彼女とは別にマスターハンドが刀を構えて言う。

 

「最初の犠牲者は君だね、魂魄妖夢!!」

 

そう言った瞬間、マスターハンドは妖夢に向かって刀を振り下ろした。その時だった。マスターハンドに斬られそうになった妖夢を助けた。

 

「ん、君は・・・。」

その人物を見た瞬間、霊夢は目を見開きながら言う。

 

「あんたは・・・綿月依姫!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私もいるわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢が叫んだ瞬間、妖夢を助けた人物、依姫の背後から声の主、綿月豊姫が現れた。それを見たマスターハンドが口を開く。

 

「君達綿月姉妹がくるとは・・・月の都を蹂躙された恨みかい?」

 

「えぇ、その通りです。存分に返してもらいますよ。化身!!」

 

依姫が言った瞬間、豊姫が膝をついている霊夢に手を差し出した。そして言う。

 

「共に戦いましょう、博麗の巫女さん。」

 

「・・・えぇ、勿論よ!」

 

そう言うと彼女は豊姫の手を握り、立ち上がる。そんな中、何かに気づいたマスターハンドが口を開く。

 

「なるほど、ニライカナイがやられたか。ルシファーもやられたし、面倒な展開だな・・・。」

 

「聞きました?私達が有利ですよ、霊夢さん!」

 

妖夢が言った瞬間、マスターハンドが突如指を鳴らした。そして口を開く。

 

「いやぁ、すまないね。クレイジーが僕の力を借りたいらしくてさっき貸したんだ。さぁ、続きを始めよう。」




マスターハンドとの戦いにやってきた綿月姉妹。
次作もお楽しみに!


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第83話 過去

マスターハンドとの戦いにやって来た綿月姉妹。


場所は魔法の森。そこでは突然駆けつけた楓とクレイジーハンドが睨みあっていた。と、ユニが言う。

 

「啓介君、楓ちゃんは勝てると思う?相手は神の手下の化身だよ。」

 

「なんだユニ。お前、楓の実力を疑うのか?あいつの強さなら俺達よりはやれるさ。」

 

二人が話している中、クレイジーハンドが楓に言う。

 

「私はこの殃禍であまり戦いたくない者達がいた。それは出野楓、お前と西田悠岐だ。最もあの五大王に近いお前達は非常に厄介だ。」

 

「お前の言葉、褒め言葉として受け入れよう。」

 

そう言うと彼女は刀を構える。それと同時にクレイジーハンドも剣を構える。そして楓に言う。

 

「来い、小娘。」

 

その瞬間、楓とクレイジーハンドの攻撃が同時に衝突した。その勢いで二人が吹っ飛ぶ。そのまま楓は着地し、クレイジーハンドは木に叩きつけられる。それを見た魔理沙が呆然となりながら口を開く。

 

「す、すげぇ。あの化身と力が互角だぜ・・・」

 

「流石楓だ。最も王に近い野郎だ。」

 

「ドウヤッタラアンナニタタカエルンダロウ?」

 

「楓ちゃん・・・。」

 

四人が話している中、楓とクレイジーハンドは刀と剣を打ち合う。と、クレイジーハンドが言う。

 

「流石だな、出野楓。やはりお前は厄介だ!!」

 

「それはどうも!!」

 

そう言った瞬間、楓はクレイジーハンドの腹を蹴りつけた。

 

「ぐっ・・・。」

 

空いている右手で腹を押さえながらクレイジーハンドは後退する。そんな彼とは別に楓は休む暇を与えずに攻める。クレイジーハンドは攻撃を防ぎながら心の中で語る。

 

(マズイ、このままでは私の体力が持たない。まさかこの私が悪魔に似た小娘に押されるとはな。仕方ない、マスターの力を借りよう。)

 

その瞬間、クレイジーハンドはマスターハンドのいる博麗神社の方へ腕を伸ばした。そして指を鳴らした。その瞬間、楓が彼の右腕を斬りつけた。

 

「ぬぐっ!?」

 

声を上げる彼とは別にさらに楓はクレイジーハンドの腹を斬りつけた。

 

「何ッ!?」

 

連続攻撃を食らった彼はヨロヨロになりながら後退する。それを見たユニが声を上げる。

 

「すごい、すごいよ楓ちゃん!!私達でダメージを与えられなかったあのクレイジーハンドに無傷でダメージを与えるなんて。」

 

「フッ、流石だな楓。」

 

「お前のお陰だな、啓介。」

 

そう言うと楓は傷を押さえるクレイジーハンドの元へ歩み寄る。それに気づいた彼は黙って彼女を見る。と、楓がクレイジーハンドに刀の先を向けて口を開く。

 

「これで終わりだ、クレイジーハンド!!」

 

そう言った瞬間、彼女は刀を振り下ろす。しかし彼女の攻撃はクレイジーハンドには当たらなかった。いや、当てられないのだ。クレイジーハンドに当たる寸前で彼女の動きが止まっていたのだ。それを見た啓介が楓に言う。

 

「おい楓、何してるんだ!!速く止めを刺せ!!」

 

しかし彼が言っても楓は言葉を発さなかった。そんな中、クレイジーハンドが笑みを浮かべながら言う。

 

「感謝しているぞ、マスター。お前のお陰で助かった。」

 

クレイジーハンドが言った瞬間、楓は刀を地面に落とし、頭を抱えながら膝をついた。

 

「あぁ、やめろ・・・やめろ!!」

 

突如楓は何かに怯えるかのように叫び始めた。彼女の頭の中には両親が自分の目の前で殺される様子、謎の組織に目の手術を受けられる、自分を馬鹿にする同級生達の姿・・・。どれも楓にとってはトラウマだった。と、クレイジーハンドが楓を見て言う。

 

「マスターに頼んだこと、それはお前の過去のトラウマを思い出させることだ、出野楓。」

 

そう言うと彼はゆっくりと楓の元へ歩み寄る。それを見ていたピンが楓に叫ぶ。

 

「カエデチャン、ショウキニモドルンダ!!」

 

「・・・ハッ!!」

 

ピンの言葉を聞いた瞬間、楓が正気に戻った。だがその瞬間、クレイジーハンドの刀が彼女の両目を捉えていた。

 

「あああああああ!!」

斬られた目を押さえながら楓は地面にうずくまる。そんな彼女とは別にクレイジーハンドは楓の腹を踏みつけた。

 

「ガハッ・・・。」

 

視界が見えない彼女はそのまま吐血する。と、クレイジーハンドが楓に言う。

 

「お前は私に散々やってくれたな。次は私がやる番だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるかよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、啓介が楓を斬ろうとしたクレイジーハンドの腹を蹴りつけた。

 

「ぬおっ!?クソッ、邪魔をするな!!」

 

そう言うと彼は啓介に向かって刀を振り下ろす。それに対抗して啓介はクレイジーハンドの攻撃を弾き、言う。

 

「こいつはおまけだ!!」

 

そう言った瞬間、啓介は服の内側のポケットの中に入っていた拳銃を取り出した。それを見たクレイジーハンドが目を見開きながら言う。

 

「拳銃を、いつのまに!?」

 

声を上げるクレイジーハンドとは別に啓介は彼の胸部を3発撃ち抜いた。

 

「ガハッ・・・。」

 

撃たれたクレイジーハンドはそのまま地面に倒れる。それを見た啓介が口を開く。

 

「俺の仲間に手出ししてんじゃねーよ、クソ野郎が。」

 

「啓介君、こっちよ!!」

 

「イソゲ、ケイスケクン!!」

 

「急げ!」

 

「あいよっと。」

 

ユニとピン、魔理沙に呼ばれた彼は倒れる楓を背負い始めた。と、楓が弱々しい声を出す。

 

「け、啓す・・・け?」

 

「喋んな、お前は怪我人なんだ。」

 

そう言うと彼はゆっくりと歩き始めた。歩く度に彼の腹部から血が垂れる。それを見たユニが心の中で語る。

 

(啓介君の出血量が酷いわ。早く手当てしてあげないと。無理にでも楓ちゃんを助けようとしているんだから。私だって他人を助けないと!)

 

そんな中、啓介も心の中で語っていた。

 

(さっき奴にやられた箇所からの出血がマズイな。このまま歩き続ければ多量出血で死んでしまうな。急がねぇと。だが何でだ・・・。何故あの時のことを今思い出してしまうんだ・・・。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は13年前の現世。大雨の降る夜、二人の少年が傘をさしながら街中を歩いていた。

 

「こんなに雨が降るなんて珍しいね、啓介。」

 

「本当だな、悠岐。この国で豪雨なんてな。」

 

二人が路地裏に入った時だった。突然悠岐が足を止めた。それを見た啓介が彼に言う。

 

「どうした悠岐?」

 

「いや、そこに女の子がいるからどうしたのかなって思って。」

 

そう言うと彼は路地裏の奥を指差した。啓介はその場所を見る。そこには背丈は悠岐ほどで腰まで伸びる黒髪、赤い目の少女がいた。彼女を見た啓介が悠岐に言う。

 

「こんな豪雨でこんな夜でこんな所に一人でいるなんておかしいな。」

 

啓介が言った瞬間、悠岐が少女に近寄り、口を開く。

 

「君の名前は?家族は?」

 

「・・・。」

 

彼女を見てあることに気づいた悠岐は啓介を見ながら言う。

 

「この子、何かに怯えてるみたい。体が凄く震えてるよ。」

 

「余程怖いことにでも起こったんだな。」

 

「・・・私は、出野楓。お母さんとお父さんは・・・殺された。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戻って現在。負傷した楓を血を垂らしながら運ぶ啓介は我に返る。そして心の中で語る。

 

(よし、もう少しだ。)

 

啓介がそう思った時だった。突如グサッという鈍い音が辺りに響いた。その瞬間、ユニとピンは目を見開いてしまう。そんな中、胸に痛みを感じた啓介が自分の胸を見る。自分の胸を見覚えのある刀が貫いていた。

 

「ガハッ!!」

 

吐血した啓介は楓を放してしまい、倒れる。

 

「楓ちゃん、啓介君!!」

 

そんな啓介の後ろには先程拳銃で撃たれた筈のクレイジーハンドが立っていた。そして口を開く。

 

「拳銃程度で私を倒せると思うな。」

 

「オマエ!!」

 

それを見たユニとピン、魔理沙がクレイジーハンドの元へ向かっていった。そんな中、楓はゆっくりと体を起こし、口を開く。

 

「啓介・・・啓介!!」

 

目の見えない彼女は地面を這いながら彼を探す。そんな彼女とは別に啓介は木に寄りかかり、煙草を吸う。

 

「啓介・・・。」

 

煙草の臭いを頼りに彼女は啓介を探し当てた。そして彼女は彼の膝のズボンを握る。その時、啓介は彼女の頭を抱え、抱き締めた。

 

「!!?」

 

突然の啓介の行為に楓は声を上げる。そんな中、啓介はすぐに彼女を放し、口を開く。

 

「ハ、ハハハ。ボケッとしてんのが悪いんだぜ、楓。やっとお前を抱き締められた。」

 

「啓、介・・・。」

 

「俺がお前と出会った時からの夢が叶えられた。俺はそれで嬉しいさ。」

 

「啓介・・・。」

 

「あぁ、分かってるさ。こいつを飲みな。飲んで、奴をやっつけてくれよ。」

 

そう言うと彼は目の見えない彼女に薬のようなものを飲ませた。それを飲んだ瞬間、楓の目が、体の傷が回復していった。目が見えるようになった瞬間、啓介は地面に倒れていった。

 

「啓介?」

 

それを見た楓の声が涙ぐんだ。そんな中、啓介は心の中で言う。

 

(泣いてんじゃねぇよ、悠岐みたいに強く生きるんだろ?)

 

倒れていく中、彼は楓の涙ぐむ目を見て再び心の中で語る。

 

(あぁ、綺麗な瞳だな。最後にお前の瞳を見れて嬉しいぜ、楓。本当にこいつはいい奴だな。こいつの為に死ねるなら、それでいい。)

 

その瞬間、啓介の意識が途切れた。

 

「啓介!!」

 

そんな中、楓は彼の頭を抱え、声を上げながら泣き始めた。




悠岐、楓、啓介の過去。啓介の死。
次作もお楽しみに!


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第84話 逆鱗

クレイジーハンドとの戦いで命を落としてしまった啓介。


「啓介君・・・。」

 

「嘘だろ、啓介が・・・。」

 

「ケイスケクン・・・。」

 

泣き続ける楓を見て三人も感傷的になる。そんな中、クレイジーハンドが口を開く。

 

「感動の場面のところ申し訳ないが、今は私との戦いだろう?そんなカスは後にしろ。」

 

彼が言って瞬間、楓はクレイジーハンドを睨む。そして口を開く。

 

「お前、今こいつを『カス』と言ったな?」

 

「言ったが何だ?」

 

「許さない・・・許さない!!」

 

そう言った瞬間、楓の周りから青いオーラが漂い始めた。それを見たユニが口を開く。

 

堕天(モードオブサタン)!?しかも何かいつも以上にヤバイ気が・・・。」

 

ユニが言った瞬間、楓の腕、足、顔に模様が浮かび上がった。それを見たクレイジーハンドが目を見開きながら言う。

 

「馬鹿な、堕天(モードオブサタン)だと!?てっきりルシファーとの戦いに使ったと思っていたが、まだ使用していなかったというのか!!」

 

「その通り。我が怒りと掟破りの力はお前を超越する。」

 

そう言った瞬間、楓はクレイジーハンドに向かっていく。それを見た彼も彼女に向かっていく。そのまま二人の武器が打ち合う音が響く。そんな中、クレイジーハンドは心の中で言う。

 

(マズイ、奴の力が私を越えている。恐らくマスターに二度の助けは来ないだろう。)

 

クレイジーハンドが思った時だった。楓が急に速度を上げ、そのまま彼の腹を斬りつけた。

 

「ぐっ!?」

 

「ぼさっとしすぎだ。」

 

そう言うと彼女は立て続けにクレイジーハンドの顔を蹴った。そのまま彼は体を回転させながら木に叩きつけられる。そんな中、魔理沙が口を開く。

 

「どうなったんだよ楓は。さっきのとは違いすぎる。」

 

「チガウヨ、マリサ。」

 

唐突にピンが口を開いた。そのままピンは話続ける。

 

「サッキノモホンライハカエデチャンガカテテタンダヨ。デモキュウニトラウマヲオモイダサレテサッキミタイニナッタンダ。」

 

「じ、じゃあ楓は本来はクレイジーハンドより強いってことなのか?」

 

「ソウイッテモカゴンジャナイネ。」

 

二人が話している中、楓はクレイジーハンドを圧倒していた。と、楓がクレイジーハンドに言う。

 

「どうした?先程のようになってないぞ。」

 

「クソッ、流石は強いな。私の力があってもお前には追いつきそうにないな。」

 

「ではいっそのこと止めを刺すか?」

 

「フフフ、生憎だが私はまだやられるわけにはいなかい。ガイルゴール様のお役に立てるまでな!!」

 

そう言った瞬間、彼は声を上げながら楓に向かっていく。それを見た彼女は冷静にスペルカードを発動した。

 

「終幕『死の宣告(デスリミット)』」

 

そう言った瞬間、何処からか時計の針が動く音が辺りに響き始めた。と、楓が口を開く。

 

「3、」

 

クレイジーハンドはそれを気にせずに楓と武器を打ち合う。そんな中、楓は再び口を開く。

 

「2、」

 

と、ユニがあることに気づき、言う。

 

「まさか、楓ちゃんのあのスペルカードは死のカウントダウン!?」

 

「死のカウントダウン!?そんなの食らったら例え化身でも人たまりもないぜ。」

 

二人が話している中、楓は再び口を開いた。

 

「1、」

 

「お前ごとき存在に私が負けるか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「0」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓の0という言葉が響いた瞬間、クレイジーハンドの身体中から鮮血が飛び散った。そのまま彼は倒れる。それを見た楓が口を開く。

 

「これが、我が怒りの力、死の宣告(デスリミット)だ。」




啓介の恨みを果たすことが出来た楓。しかし・・・。
次作もお楽しみに!


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第85話 蘇生

怒りの堕天(モードオブサタン)でクレイジーハンドを倒すことが出来た楓。


場所は変わって博麗神社。そこではマスターハンドとの戦いで突然現れた綿月姉妹に驚く霊夢、妖夢、ルーミアがいた。と、マスターハンドが口を開く。

 

「君達がいるということは何処かに稀神サグメが潜んでいるな?まぁ、どうでもいいけれどね。」

 

「マスターハンド、私達がここへ来た理由は分かりますか?」

 

「崩壊された月の都の恨みを果たすためだろう?」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、霊夢は目を見開いた。そんな中、マスターハンドは再び言う。

 

「君達との戦いはすぐに終わらせなければならない。殃禍の最中にエリュシオンが来たら人溜まりもないからね。」

 

「・・・やはり、化身であるあなたも奴を恐れているのね。」

 

綿月姉妹とマスターハンドが話している中、霊夢が依姫を見ながら言う。

 

「ちょっと、エリュシオンって一体何者なのよ!!」

 

「・・・申し訳ありません、霊夢。エリュシオンのことはこの殃禍を終わらせてからでよろしいでしょうか?今私達には奴のことを話している暇なんてないのです。」

 

「・・・分かったわよ。その代わり、殃禍を終わらせたら必ず言うのよ。」

 

「えぇ、勿論ですとも。」

 

そう言うと二人はマスターハンドを睨む。それを見た彼は笑みを浮かべながら言う。

 

「さぁ、始めよう。」

 

そう言った瞬間、マスターハンドは空いている左手を前に出した。その瞬間、彼の指先から青いレーザーが放たれた。

 

「くっ!!」

 

豊姫と依姫はそれを避けながらマスターハンドの元へやっていく。と、マスターハンドの姿が一瞬にして消えた。

 

「なっ!?」

 

すぐさま五人はマスターハンドを探す。彼は博麗神社の屋根の上にいた。と、マスターハンドが口を開く。

 

「残念なお知らせだよ。僕のもう一人の存在であるクレイジーハンドがやられたようだ。」

 

「つまり、クレイジーハンドを倒したということですね?」

 

「その通りさ、半霊。どうやら彼は半悪魔の怒りをかってしまってやられたようだ。」

 

「ということは楓か悠岐がやったのね。」

 

「彼がやられても僕がいる。」

 

彼がそう言った時だった。突如彼の背後から黒い空間のようなものが彼を包んだ。それを見た霊夢が言う。

 

「ルーミア!!」

 

空間の中ではルーミアがマスターハンドを攻撃していた。と、依姫がルーミアに向かって言う。

 

「妖怪さん!ギリギリまでその状態にしておいてください。私との御姉様で止めを刺します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待って、二人とも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、四人の上から片翼で赤い目をしている銀髪の少女が現れた。彼女を見た豊姫が言う。

 

「サグメ様!」

 

「止めを刺すなら複数人いたほうが効率的だろう?ここは五人でやるんだ。」

 

「はい!!」

 

「ちょっと片翼の天使!私の神社はどうなるのよ!!」

 

「誰が片翼の天使だ!!」

 

二人のボケを見た妖夢と綿月姉妹は思わず溜め息をはいてしまう。と、豊姫が口を開く。

 

「あの妖怪の力なら神社は壊れない筈よ。ほら、ご覧なさい。」

 

彼女が言った瞬間、マスターハンドを包んでいる黒い空間が宙に浮かび始めた。それを見たサグメが唐突に口を開く。

 

「今だ!!」

 

彼女が言った瞬間、五人が同時にスペルカードを放った。直撃する直前でルーミアはマスターハンドから放れる。と、マスターハンドは五人の一斉攻撃を見て言う。

 

「あぁ、僕も彼と同じ運命を辿るのか・・・。」

 

そう言った瞬間、五人の一斉攻撃がマスターハンドに直撃した。そしてそのまま彼は地面に倒れていった。それを見た依姫が言う。

 

「・・・終わり、ましたね。」

 

「そうなのかー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな筈ない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、マスターハンドがヨロヨロになりながら立ち上がった。それを見た霊夢が口を開く。

 

「なっ、まだ立っていられるの!?」

 

「僕は・・・まだやれる、さ・・・。ガイルゴール様の、お役に立てるまでっ!?」

 

その瞬間、マスターハンドが背後から何者かに斬られ、地面に倒れた。彼の背後にいたのは黒髪に赤い目、黒い刀を持っている青年だった。彼を見た瞬間、妖夢が口を開く。

 

「悠岐さん、来てくれたんですね!!」

 

「あぁ、少し遅れてしまったがなんとか着いたぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、君が来るとはね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、悠岐はマスターハンドを見る。そして口を開く。

 

「テメェ、まだくたばらないのか。随分と体の硬い野郎だな。」

 

「フフフ、残念ながら僕はここまでだ。僕の力の全てを君の大切な者と戦っている彼に送るよ。さぁ受け取ってくれ、クレイジー。あとは、任せたよ。」

 

そう言った瞬間、マスターハンドの体が光となって消えていった。と、悠岐が霊夢達に言う。

 

「お前ら、すまない。俺はもう移動しなくては。」

 

「どうしたのです?西田悠岐。」

 

「マスターハンドが・・・クレイジーハンドを蘇らせやがった!」

 

「!?」

 

 




自らを贄として力の全てをクレイジーハンドに捧げたマスターハンド。
次作もお楽しみに!


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第86話 化身再び 女王の臣下

マスターハンドを倒すことに成功した霊夢達。しかしマスターハンドは自らを贄にしてクレイジーハンドを蘇らせる。


場所は魔法の森。そこではクレイジーハンドを倒して力を出しきった楓がいた。と、楓が倒れる。それを察したユニが駆けつける。

 

「楓ちゃん!!」

 

地面に触れる前にユニが彼女を抱えた。彼女を見て魔理沙とピンも駆けつける。と、楓がユニに言う。

 

「・・・ユニ、奴は倒せたのか?」

 

「うん・・・楓ちゃんが止めを刺したよ。」

 

「アトハマスターハンドダケダネ。」

 

ピンが言った時だった。突如空からやってきた青い光が倒れているクレイジーハンドを包み込んだ。それを見た魔理沙が口を開く。

 

「おい、おいおいおいおいおい冗談だろ?」

 

魔理沙が目を見開きながら言った。彼女の言葉を聞いた三人もクレイジーハンドの方へ顔を向ける。そこには傷をおおった筈のクレイジーハンドが無傷で立っていた。

 

「そんな!!」

 

「マスター、お前の贄は決して無駄にしない。」

 

そう言うとクレイジーハンドは左手に剣を握った。

 

「楓ちゃん!!」

 

「くっ・・・。」

 

楓はなんとか立ち上がろうとするが体が震えていて立ち上がれなかった。それを見た魔理沙が口を開く。

 

「クソッ、堕天(モードオブサタン)の影響で力をあまり発揮出来ないのか。」

 

「ボクタチモサッキノキズデアマリチカラヲダセナイヨ。」

 

そんな中、クレイジーハンドがユニ達を笑みを浮かべながら見て言う。

 

「今のお前達に私を倒すことなど不可能!!この場で私は・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の次の台詞は・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、声が重なる。

 

「『お前達全員まとめて始末してやる』だ。」

 

「なっ!?」

 

「え?」

 

その瞬間、クレイジーハンドは目を見開きながら声のする方向を見る。ユニ達もその方向を見る。そこには白い肌に整った目鼻立ち、赤い瞳に長い銀髪を黒いリボンで束ねている男が木にぶら下がりながらユニ達を見ていた。と、再び口を開く。

 

「更にお前は、『こいつ、いつから私の戦いぶりを見ていたんだ?』と言う。」

 

「こいつ、いつから私の戦いぶりを見ていたんだ?・・・ハッ!!」

 

「私はつい先程陛下達と共にここへ来たのさ。お前達を止めるためにな。」

 

「ヴ、ヴァンさん!!」

 

銀髪の男、ヴァンの名前をユニが呼ぶ。と、ヴァンが木から降り、口を開く。

 

「お前の相手は私がさせてもらおう、化身よ。ユニ、お前達はそこらで休んでくれ。」

 

「うん!」

 

そう言うとユニ達はヴァンから離れた場所へ移動する。その途中、ヴァンは死んだ啓介を見て少し目を細める。と、クレイジーハンドが口を開く。

 

「おい何処を見ている吸血鬼よ。お前の相手はこっちだ。」

 

「知っているとも、化身よ。」

 

そう言った瞬間、クレイジーハンドはヴァンの目の前に現れる。

 

「危ない!」

 

ユニが咄嗟にヴァンに叫ぶ。しかし彼はクレイジーハンドが突然現れたことに恐れず、そのまま彼を爪で斬りつけた。

 

「何っ!?」

 

「フッ。」

 

腹にダメージを覆った彼は後退する。そんな彼とは別にヴァンがスペルカードを発動する。

 

「連射『ニードルスパイラル』」

 

その瞬間、彼の左手から無数の針が放たれた。それを見たクレイジーハンドは避け続ける。と、ヴァンが拳銃を手に持ち、そのまま発砲した。

 

「ぐっ!?」

 

彼の攻撃は走りながら避けるクレイジーハンドの左足を捉え、そのまま彼は地面に倒れる。そんな中、魔理沙が口を開く。

 

「す、すごい。ヴァンってあんなに強いんだな。」

 

「あいつはあまり戦わないイメージを出しているが、元帝王軍の手下だったからな。ヴァンが弱い訳がない。」

 

「すごい、あれがヴァンさんの力。」

 

ユニ、楓が話している中、ヴァンがスペルカードを再び発動した。

 

「爆撃『フレイムランチャー』」

 

「まだだ・・・私はまだ倒れるつもりはない!!」

 

そう言ったのもつかの間、クレイジーハンドはヴァンの攻撃をまともに食らった。




破壊の化身クレイジーハンドに圧倒的な強さを見せたヴァン。
次作もお楽しみに!


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第87話 啓介の思い 神との決戦

マスターハンドによって復活したクレイジーハンドに圧倒的な強さを見せたヴァン。


ヴァンの攻撃を食らったクレイジーハンドは何も言わずに地面に倒れる。それを見たユニが思わず口を開く。

 

「凄いよヴァンさん!あの化身を容易に倒すことが出来るなんて。」

 

「一応私は元帝王軍でメルト・グランチ様の配下だった。後に私の努力が認められて今はセコンド様や陛下の元で働けている。」

 

「流石だぜ、ヴァンさん・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、ユニ達は声がした方向を見る。そこにはヨロヨロになりながら立っているクレイジーハンドがいた。彼を見た魔理沙が口を開く。

 

「しつこいぞ!!何度立ち上がるつもりだ!!」

 

「私は、ガイルゴール様のお役に立てるまでだ。それまで私は何度だって・・・。」

 

続きを言おうとした時だった。突如クレイジーハンドが背後から頭を撃ち抜かれた。

 

「なっ!?」

 

クレイジーハンドの頭を撃ち抜いたものがユニと楓の間を通りすぎ、後ろにあった木がメキメキという音を立てながら倒れた。

 

「クレイジーハンド!」

 

思わずユニは彼の名前を叫ぶ。そんな中、ヴァンが木が倒れた場所へ行く。そして何かを拾う。

 

「こ、これは・・・。」

 

彼の言葉を聞いたユニ達はヴァンの元へ行き、言う。

 

「どうしたんだ?ヴァン。」

 

「先程クレイジーハンドの頭を撃ち抜いたのは・・・厚さ15mmの特殊徹甲弾だ。」

 

「徹甲弾?それは何なんだぜ?」

 

「鉄といったものを貫くための銃弾だ。だが、こんなに大きい弾は見たことがない。」

 

「魔理沙、何処かで銃声は聞こえたか?」

 

「いいや、私のの耳には聞こえなかったぜ。楓はどうだ?」

 

「私も聞こえなかった。」

 

「一体誰が・・・。」

 

一同が話している中、何者かに頭を撃ち抜かれたクレイジーハンドが光となって消えていった。それを見たユニが口を開く。

 

「クレイジーハンドが、消えていったわ。」

 

「化身は不死身と言われているからな。恐らく逃げたのだろう。」

 

「・・・ドウシタノ?カエデチャン。」

 

唐突にピンが楓に言う。そんな中、楓は死んだ啓介を見て過去を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつはお前にやる。グローブでも何でも呼べ。」

 

時は数年前。影舷隊の敷地内の狭い部屋で啓介が楓にグローブのようなものを渡した。それを見た楓が口を開く。

 

「え、いいのか?啓介。これはお前が大事にしてきたものじゃないのか?」

 

「いいんだ。今の俺にとってこれは小さいし必要ないのさ。それにお前、悠岐達には内緒で手にマメ出来てるの俺知っているからな。」

 

「なっ、啓介!!」

 

彼の言葉を聞いた楓は赤面しながら彼の名前を言う。そんな彼女に啓介は笑いながら言う。

 

「ハハハ。さて、本題だがお前にはもう1つ渡すものがあるんだ。」

 

そう言うと彼は立ち上がり、部屋の隅に置いてあった刀を手に取り、楓の前に持ってくる。そして刀を抜いて彼女の前で見せる。

 

「これは・・・。」

 

「嘗ての影舷隊団長が使っていた二刀流の1つ、氷竜の剣だ。もう1つは悠岐の漆黒の刃。これは今日からお前のものだ。」

 

そう言うと彼は刀をしまい、それを楓に渡す。それを受け取った楓は呆然となりながら刀を見る。そして啓介に言う。

 

「わ、私でいいのか?私は女だし、これは啓介が受け取るべきじゃ・・・。」

 

「いいや、お前だ。何故なら俺はお前に強くなってほしいんだ。」

 

「えっ?」

 

「俺はな、楓。お前に悠岐みたいに強い人になってほしいんだ。そしてこの世界を守ってほしい。」

 

「啓介・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい啓介との思い出を思い出している中、悠岐が楓の肩を軽く叩き、言う。

 

「ヴァンから聞いたよ。啓介は、死んだんだな。」

 

「・・・ああ、そうだ。」

 

二人が話している中、ヴァンが何かに気づき、啓介に近付く。そして胸ポケットの中に入っていたものを取り出した。それを見た瞬間、悠岐がヴァンに言う。

 

「おいヴァン。それは何だ?」

 

「すまない、二人にはずっと黙っていたことなのだが、実は啓介は密かにルーシーに思いを寄せていたんだ。これは啓介とルーシーの写真が入っているペンダントだ。」

 

「啓介がルーシーに!?」

 

「有り得ない、啓介が・・・。」

 

「あいつはずっとルーシーと共に生きてきた。二人は腐れ縁だったんだ。だが、あの事件によってルーシーの死後、啓介は絶望に陥った。そんな中、啓介は私にこう言った。」

 

そう言うと彼は口の中に貯まっていた唾を飲み込み、再び口を開く。

 

「『俺はあいつらを守る。ルーシーを守れなかった分あいつらを守って見せる。』と言った。」

 

彼の話を聞いていたユニや魔理沙の瞳に涙が流れ始めた。そんな中、悠岐が握り拳を作り、言う。

 

「啓介、俺は恥ずかしい。影舷隊団長としてお前を守る筈なのに俺はお前を守れなかった。こんな俺を許してくれ。だがな、俺はお前を殺したクレイジーハンドだけでなくこの異変を起こしたガイルゴールにとっては鬼になってやるぜ。啓介、お前の思い、俺が受け取った!!」

 

と、ヴァンがユニ達を見て言う。

 

「さぁ、行こう。残すはガイルゴールのみだ。奴を倒せば全てが終わる。」

 

「ああ、行こうぜ。」

 

そう言うと魔理沙、ピン、ユニはヴァンの後を追う。と、ユニはあることに気づき、後ろを振り返る。悠岐と楓がまだ移動していないのである。と、楓が悠岐に言う。

 

「どうしてなんだ・・・どうしてそんな平然としてられるんだ、悠岐!!」

 

「平然と?何を言っているんだ楓。」

 

「分からないのか?啓介が死んだんだぞ!!悲しいとも思わないのか!!」

 

「・・・思わないわけ、ねぇだろ・・・。」

 

彼が言った瞬間、楓はあることに気づく。悠岐の両手には握り拳が作られていて体が震えていた。と、悠岐が後ろを振り返る。そんな彼の瞳には血の涙が流れていた。そして彼は言う。

 

「この異変で、誰が死んでもおかしくないとは思っていた。だが・・・だが、何で啓介が死ななくちゃいけなかったんだ!!」

そう言った瞬間楓の目から大量の涙が流れ始めた。それを見たユニも涙を流す。そんな中、楓が悠岐に飛びつき、声を上げながら泣き始めた。彼女に便乗したのか、悠岐も泣き始めた。魔法の森では二人の悪魔の泣く声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター、クレイジー・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無縁塚から幻想郷の様子を見ていたガイルゴールが一言呟いた。そして再び口を開く。

 

「お前達がこんなに早く負けてしまうとはな・・・。一度目と二度目とは大違いだな。」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールは後ろを振り返る。そこには長身の男二人がいた。二人を見たガイルゴールが口を開く。

 

「そうとは思わぬか?地王セコンドに帝王メルト・グランチ。」

 

「この異変もこれで幕を閉じて見せよう、神よ!!」

 

「卿を倒せば、全てが終わる。容赦なく行かせてもらうよ、ガイルゴール。」

 

メルト・グランチが言った瞬間、草影から二人の少女と一人の女性が現れた。三人を見たガイルゴールは目を細めて口を開く。

 

「東風谷早苗、洩矢諏訪子、八坂神奈子・・・。面倒な者を集めたものだ。まぁ、いい。お前達の力、鑑みさせてもらうぞ。」




何者かに奇襲されて力尽きたクレイジーハンド。遂に幻想郷と現世は神ガイルゴールとの戦いに挑む。
次作もお楽しみに!


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第88話 対敵ガイルゴール

二体の化身を倒すことに成功したユニ達は遂にガイルゴールとの戦闘に入る。


ガイルゴールは右手に長い刀を持つとゆっくりと五人に近付いていく。と、セコンドが勺を構えてガイルゴールに向かっていく。それを見た四人もガイルゴールに向かっていく。と、早苗がスペルカードを発動した。

 

「秘術クレイゾーマタージ!!」

 

彼女の放った攻撃はガイルゴールに向かっていく。それを見たガイルゴールは左手を前に出す。その瞬間、早苗の放った攻撃が彼の前で消えてしまった。

 

「早苗の攻撃が!」

 

諏訪子が思わず声を上げる中、メルト・グランチは冷静に口を開く。

 

「恐ろしいな、神よ。恐らくだが卿の能力は『特殊攻撃を制圧する程度の能力』だな?」

 

「いかにも、余の能力は『特殊攻撃を制圧する程度の能力』。そのため、余はお前達の弾幕やスペルカード攻撃を制圧することが出来る。」

 

「なるほど、であれば私のスペルカードは無効。直接攻撃を仕掛ける他方法がないという訳か。」

 

そう言うと神奈子はガイルゴールを殴りつけようとする。だがガイルゴールはそれを避けながら笑みを浮かべる。そして口を開く。

 

「ほう、この余に拳を入れようとするか。面白い。」

 

そう言うとガイルゴールは神奈子の拳を片手で受け止めた。

 

「なっ!?」

 

驚く彼女とは別にガイルゴールはそのまま彼女を地面に叩きつける。

 

「神奈子!!」

 

それを見た諏訪子がすぐさま駆けつけようとする。と、メルト・グランチが諏訪子に言う。

 

「洩矢諏訪子、行ってはならぬ!!」

 

メルト・グランチが言った瞬間、ガイルゴールは諏訪子目掛けて神奈子を投げつけた。

 

「なっ!!」

 

諏訪子はそれを見て声を上げる。そんな彼女とは別にセコンドが諏訪子に神奈子がぶつかる前に彼女を受け止めた。そして言う。

 

「無事か?友よ。」

 

「あぁ、すまない。」

 

そんな中、メルト・グランチがスペルカードを発動していた。

 

「爆暗『闇のフレア』。」

 

彼の放った紫色の炎がガイルゴールに向かっていく。それを見たガイルゴールは早苗の時と同様に左手を前に出し、彼の攻撃を制圧した。それを見た早苗が口を開く。

 

「やっぱり五大王の力でも神にはダメージを与えられない!!」

 

「当然だ。余はあらゆる特殊攻撃を制圧することが出来るのだからな。口説く言うが。」

 

「ならば同時攻撃ならどうだ!!」

 

そう言った瞬間、神奈子と諏訪子が同時にスペルカードを発動する。

 

「マウンテン・オブ・フェイス!!」

 

「マグマの両生類!!」

 

二人の攻撃はガイルゴールに向かっていく。それを見たガイルゴールは慌てることもなく、驚くこともなく先程のように左手を前に出し、二人の攻撃を制圧した。そして口を開く。

 

「何度やろうとどれだけ合わせても無駄だ。何故なら余は・・・!?」

 

何かを感じたガイルゴールは咄嗟に飛んできた攻撃を避ける。それを見た早苗が口を開く。

 

「い、一体何が・・・。」

 

彼女が言った瞬間、ガイルゴールは攻撃が飛んできた方向を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達もいることを。」

 

「忘れられては困るぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイルゴール見る方向には黒髪に赤い瞳、黒い服を着ていて黒い刀を持つ少年と腰まで伸びる黒髪に赤い瞳に氷のオーラが漂っている刀を持つ少女がいた。二人を見た諏訪子が叫ぶ。

 

「悠岐、楓!!」

 

と、ガイルゴールが二人を見ながら口を開く。

 

「西田悠岐、出野楓・・・。五大王も厄介だがさらに厄介な者が来るとはな。」

 

「ガイルゴール、俺はこの殃禍に終止符を打ってみせる!!」

 

「私も悠岐に同感だ。」

 

「余の起こす殃禍に終止符を打つだと?面白い、過去2度起こして一度も敗北のない殃禍を終わらせるとは。ではその意思、余に見せてみよ。」




ガイルゴールとの戦闘に入る中、悠岐と楓がやって来る。
次作もお楽しみに!


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第89話 女王の作戦

ガイルゴールとの交戦に入った悠岐と楓。


場所は博麗神社。そこではマスターハンドを倒して体を休める霊夢、妖夢、ルーミア、綿月姉妹、サグメがいた。と、霊夢が豊姫に言う。

 

「ねぇ、聞きたいことがあるのだけれど、あんた達はどうして地上に降りてきたの?」

 

「話すと長くなるから端的に話すわね。実は先に奇襲を受けたのが月の都なのよ。」

 

「ガイルゴールに?」

 

「それで私達は二人の親王に地上へ行くように命じられていてここへ来たというわけなの。」

 

二人が話している中、サグメが口を開く。

 

「親王達は私達に任せろと言っていたが、正直勝ったとは思ってない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然女性の声が響いたため、霊夢達はその方向を見る。そこには腰まで伸びる赤髪に赤いリボンがついているヘッドフォンをつけている女性がいた。彼女を見た瞬間、サグメが立ち上がり、口を開く。

 

「これはこれは・・・お初にお目にかかります。ビオラ女王陛下。」

 

そう言った瞬間、依姫と豊姫も立ち上がり、胸元に手をあてて頭を下げる。それを見たビオラがサグメを見て言う。

 

「・・・やはり、親王達も月余美も負けたのですね、ガイルゴールに。」

 

「仕方ありませんよ、女王陛下。相手は全てを全うする神。勝てる者なんて奴以外考えられませんよ。」

 

「そう、ですね。」

 

と、妖夢がビオラに言う。

 

「あ、あの・・・現世の女王陛下でいいんですよね?」

 

「ん?えぇ、そうですよ。私が現世の女王、ビオラ・ハイラルドです。」

 

「あ、初めまして!!私は魂魄妖夢と言います。」

 

「よろしくお願いします、妖夢。」

 

ビオラは優しい笑みを浮かべながら言う。彼女を見て妖夢の顔にも笑みが浮かぶ。と、サグメがビオラに言う。

 

「しかし、あなた一人でここへ来るとは・・・臣下の者は何処へ行ったのです?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はここにいる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、ビオラの隣に白い肌に整った目鼻立ち、赤い瞳に長い銀髪を黒いリボンで束ねている男が現れた。彼を見た瞬間、霊夢が口を開く。

 

「ヴァンさん!」

 

「私だけではないぞ。」

 

彼が言った瞬間、箒を使って空からやって来る少女と飛び跳ねながら博麗神社に来る黄色い土人形もやって来た。彼らを見た瞬間、妖夢が言う。

 

「魔理沙さん、ピンさん、ユニ!」

 

二人が霊夢達の元へ降りた瞬間、何処からか爆発音が響いた。それを聞いたユニ達はその方向に目を向ける。と、サグメが口を開く。

 

「あそこに、ガイルゴールがいるのだな。」

 

「ガイルゴールが!?」

 

魔理沙が声を上げる中、ビオラがヴァンを見ながら口を開く。

 

「ヴァン、マスターハンドとクレイジーハンドはどうなったのです?」

 

「マスターハンドは彼女らが倒し、クレイジーハンドは私の手で倒そうとしましたが何者かの奇襲によって倒されました。」

 

「そうですか・・・。」

 

と、依姫が立ち上がり、爆発音のした方向を見て口を開く。

 

「私はガイルゴールの元へ向かいます。奴を倒して、親王達の敵討ちをします。」

 

「正気なのか依姫。奴は全てを全うする神だぞ。お前が行っても倒せるか・・・。」

 

「私も行きます、サグメ様。」

 

彼女が続きを言おうとした時に口を開いたのは豊姫だった。と、ビオラがサグメを見て言う。

 

「稀神サグメ、あなたにお願いがあります。」

 

「・・・何でしょう?」

 

「月の都へ戻り、親王達に神を倒すように伝えてほしいのです。彼らは恐らく蓬莱の薬を服用していますので死んではいません。」

 

「・・・依姫と豊姫はどうするのです?」

 

「安心してください。私は彼女らを死なせません。責任は取ります。」

「・・・分かりました、二人はあなたに任せます。依姫、豊姫、決して死なないように。」

 

「分かりました。」

 

二人が声を合わせて言った瞬間、サグメは何処かへ飛んでいってしまった。それを見届けたヴァンが辺りを見回しながら口を開く。

 

「陛下、そういえば小宝様の姿が見られないのですが、どちらへ?」

 

「小宝!?小宝って小宝剛岐様のことですか!?」

 

「ユニ、あなたは見てませんか?」

 

「いいえ、見てません。」

 

「あのニート王が来てるの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰がニート王だ馬鹿者ォォォォォ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の声が響いた瞬間、空から降ってきた男が霊夢の頭を掴み、そのまま地面に叩きつけた。それを見た瞬間、一同は目を見開く。と、霊夢が額から血を垂らしながら言う。

 

「何すんのよ!!痛いじゃない!!」

 

「痛いじゃねぇー!何俺の悪口言っとるんじゃー!」

 

二人の言い合いを見てユニ達は唖然となる。そんな中、ビオラが二人に言う。

 

「お、落ち着いて下さいお二方!!今はそんなことをしている場合ではありません。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、二人は言い合いを辞め、ビオラを見ながら言う。

 

「すいません、女王陛下。」

 

「悪い、ビオラ。」

 

二人がビオラに謝っている中、依姫が豊姫を見て言う。

 

「私達は先に行きましょう、お姉様。」

 

「えぇ、そうね。」

 

そう言うと二人は爆発音のした方へ飛んでいってしまった。と、ヴァンがビオラに言う。

 

「陛下、そろそろ話されてはどうでしょう?」

 

「えぇ、そうですね。」

 

そう言うと彼女は霊夢、魔理沙、ユニ、妖夢を見て口を開く。

 

「今回私達が来たのは他でもない、あなた達に協力してもらいたいのです。」

 

「協力してもらいたいこと?」

 

「ガイルゴールを倒すための作戦ってやつだ。そのために俺もここへ来た。」

 

「し、しかし小宝様。私の兄様はどちらへ?」

 

「モルトとマーグルは現世が襲われぬように現世へ残った。ユニ、俺はモルトにあることを任されているんだ。」

 

「あること、ですか?」

 

「あぁ、『ユニを守ってほしい』ってな。だから俺はモルトの代わりにお前を守るぜ、ユニ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

二人が話している中、ビオラが再び口を開く。

 

「本題に戻りますが私達がガイルゴールを倒すための方法、それはガイルゴールの能力を誰かのと入れ換えることです。」

 

「能力を入れ換える!?」

 

「そうさ、ガイルゴールの能力を誰かのと入れ換えることによって奴に特殊攻撃を制圧させなくするんだ。」

 

「で、でもそれが本当に出来るのか?私達だけじゃ不安な気がするぜ。」

 

「だからこその悠岐と楓だ。あの二人が時間を稼いでくれる。俺達はその間に奴を倒す。いいな?」

 

「わ、分かったぜ。」

 

「さぁ、行きましょう。」

 

ビオラが言った瞬間、ユニ達はガイルゴールがいる場所へと向かっていった。




ビオラのガイルゴール撃破作戦。果たして成功するのか!?
次作もお楽しみに!


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第90話 神の力

女王ビオラの作戦を聞いたユニ達はガイルゴールを倒すために戦いの場へ。


場所は変わって無縁塚。そこでは悠岐達がガイルゴールと激しい戦いをしていた。

 

「爆暗『闇のフレア』」

 

メルト・グランチが言った瞬間、彼の手のひらから紫色の炎が灯り、そのままガイルゴールの元へと向かっていく。

 

「無駄だ。」

 

そう言うとガイルゴールは左手を前に出し、メルト・グランチの放った攻撃を制圧した。それを見た諏訪子が言う。

 

「五大王の力までも制圧するなんて!!」

 

「余の能力はあらゆる特殊攻撃を制圧することが出来る能力。相手が誰であろうと関係のないことだ。」

 

と、その様子を見ていた楓が刀を構えながら口を開く。

 

「成程、あれが全てを全うする神の能力か。特殊攻撃が効かないならば物理攻撃で攻めるまでだ!」

 

そう言うと彼女はガイルゴールの元へ走っていく。それを見た悠岐もガイルゴールの元へ向かっていく。そして刀を振る。それを見たガイルゴールは二人の攻撃を刀で防ぐ。そして口を開く。

 

「面白い考えだな、二人の悪魔よ。やはり余にとって厄介なのはお前達だ。」

 

「はっ、そうかよ!」

 

そう言うと悠岐は後退し、ガイルゴールとの距離をあける。彼に続いて楓もガイルゴールとの距離をあける。その瞬間、ガイルゴールが二人に向かって黄色の光の玉を放った。

 

「くっ!」

 

「チッ!」

 

二人はガイルゴールの放った攻撃を弾こうとするがあまりの力により二人は吹っ飛ばされる。

 

「悠岐!!楓!!」

 

その様子を見ていた神奈子が二人の名前を叫ぶ。と、メルト・グランチが突如ガイルゴールの元へ向かい、刀を振り下ろす。それを見たガイルゴールは慌てて攻撃を防ぐ。それを見たメルト・グランチが笑みを浮かべながら言う。

 

「ほう、今卿は慌てたな?それは私の攻撃が予想外だったことに値するとは思わないかね?」

 

「驚いた、帝王メルト・グランチ。急にお前の攻撃が来るとは思わなくてな、つい油断してしまった。だが、今度は油断しない。」

 

そう言うとガイルゴールは力を溜め始めた。それを見たメルト・グランチは少し目を見開いて後退する。その瞬間、何かを感じたセコンドが口を開く。

 

「待て、後退するな、グランチ!!」

 

セコンドがメルト・グランチに叫んだ瞬間、彼の足元からカチッという音が響いた。その瞬間、彼のいた場所が爆発した。

 

「グランチ!!」

 

セコンドが思わず彼の名前を叫ぶ。そんな中、ガイルゴールは爆発した場所を見ながら言う。

 

「ほう、地雷の爆発を自らの爆発でダメージを押さえたか。大した考え方だな、帝王メルト・グランチよ。」

 

そう言った瞬間、爆発した場所から火傷した左腕を押さえるメルト・グランチがいた。それを見た楓が心の中で言う。

 

(マズイな・・・。爆破するための左腕が封じられたことはメルト・グランチにとってかなりの損害。神奈子や諏訪子、セコンドも同じことを考えているだろうな。)

 

楓が思っている中、ガイルゴールが辺りを見回しながら口を開く。

 

「ここへ数人・・・いや、数十人向かってきている。」

 

それを聞いた瞬間、諏訪子はガイルゴールを見ながら言う。

 

「どうやらあんたを倒すために他の人達が救援に来てくれているみたいね。」

 

諏訪子が言った瞬間、メルト・グランチの背後から二人の影が飛んできた。それを見たガイルゴールが二人を見ながら言う。

 

「主への復讐か?綿月姉妹よ。」

 

「えぇ、その通りですわ。」

 

「私達は月余美様と親王達の仇を打つためにあなたを倒させていただきます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達もいますよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、一同は声のする方を見る。そこにいた人物達を見てガイルゴールが口を開く。

 

「聖白蓮・・・。お前達が先に来たか。」

 

「この殃禍に幕を閉じさせていただきます。私達の今後の未来のために!」

 

「八意・・・アイアルト・ユニらがこちらへ向かってきているな。フン、どうでもいいがな。さて、地上の者達よ。この人数で余に相手するか?」

 

「勿論だ。私は、ユニ達が来る前にお前を倒して見せる!!」

 

「楓の言うとおりだ。テメェをここでぶっ倒させてもらう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勘違いしないでほしいわね、私だっているのよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、ガイルゴールの元へマスタースパークが放たれた。それを見たガイルゴールは左手を前に出し、マスタースパークを制圧した。

 

「私も殃禍に幕を閉じるのに協力するわよ。幻想郷のためじゃない、私の花達のためね。」

 

「ほう、卿は風見幽香。」

 

メルト・グランチが幽香の名前を言った瞬間、幽香は彼を見ながら言う。

 

「また会えて嬉しいわ、帝王さん。またあなたと戦える。」

 

「私への復讐かね?それはまた後にしてくれないか?今は殃禍を終わらせたいのでね。」

 

「フフッ。」

 

笑った瞬間、幽香は依姫を見ながら口を開く。

 

「また会えたわね、月人さん。」

 

「これはこれは。お久しぶりですね、花の妖怪さん。」

 

「あなたとの決着は後にするわ。今はあの神を倒すことにしましょう。」

 

「えぇ、勿論です。」

 

「フフフ、面白い。面白くなってきた。良かろう、お前達との戦い、じっくりと楽しませてもらうぞ。」




ガイルゴールとの戦いの元へやって来た綿月姉妹と聖達、そして幽香。
次作もお楽しみに!


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第91話 過去の真実

ガイルゴールの元へやって来た綿月姉妹、幽香、そして聖達。


場所は変わって無縁塚周辺。そこでは急いでガイルゴールの元へ向かうユニ達がいた。と、魔理沙が口を開く。

 

「全く、面倒な状況だぜ。ガイルゴールの遠くからの射撃を避けるために走らなきゃならないなんて。」

 

「仕方ないよ。ビオラ女王陛下の作戦を実行するために私達の協力が必用なんだから。」

 

ユニ達はガイルゴールの遠くからの奇襲に合わぬように走って移動していた。と、ビオラが口を開く。

 

「私と小宝様、ヴァンは途中で離脱します。ガイルゴールの隙を見計らって作戦を行います!」

 

「マジデスカヘイカ!!ボクタチハソノアイダニジカンヲカセグノデスカ!?」

 

「悠岐や楓達が大分時間を稼いでくれました。ですので少しの間で大丈夫です!」

 

と、ユニが突然走るのを辞めた。それを見た魔理沙達は慌てて足を止める。そんな中、剛岐がユニに言う。

 

「おいどうしたユニ!」

 

「あ、あれ・・・。」

 

ユニが指差す方向、そこには大きさ6mほどの巨大な牛の妖怪が横になっていた。それを見たヴァンがユニ達の前に出て言う。

 

「下がっていてください!」

 

そう言うと彼は武器を構える。と、何かを感じたビオラが口を開く。

 

「ち、ちょっと待ってください。あの妖怪、何か変です。私達がここにいるならすぐに気づく筈、ですが全くこちらを見向きもしません。」

 

「いいや、油断するなビオラ。もしかしたら急に俺達を襲ってくるかもしれねぇ。」

 

「で、ですが何か異臭が漂いませんか?」

 

「た、確かに陛下の言うとおり、何か変な臭いがするわね。」

 

そう言った瞬間、ヴァンが妖怪を見ながら指さし、口を開く。

 

「あ、あれは!!」

 

彼が言った瞬間、一同は一斉に彼の指差す方向を見る。そこには全身が青と白の模様で目は赤く、口元に血が付着している狼が横たわる妖怪の上にいた。それを見た霊夢が口を開く。

 

「あ、あれは狼?」

 

「で、ですが霊夢さん。あの狼は地面から肩までの高さが2mくらいありますよ。それに体長は5mほどだし、狼としては大きすぎませんか?」

 

霊夢と妖夢が話している中、ユニは狼を見ながら思わず言う。

 

「綺麗・・・こんな綺麗な狼が幻想郷にいたなんて知らなかった!」

 

ユニが叫んだ瞬間、彼女をじっと凝視していた狼が妖怪から降りて何処かへ行ってしまった。と、裏に行っていた剛岐がユニ達の元へ行き、言う。

 

「妖怪は腹の中を喰われてて死んでいた。この妖怪が死んだのはあの狼のせいなんだな。」

 

「ソウダッタンダ・・・。」

 

ピンと剛岐が話している中、ビオラがユニを見て言う。

 

「ユニ、これからあなた達と私達は別行動です。決して挫けないように。」

 

「えぇ、勿論です。女王陛下。」

 

そう言った瞬間、ビオラは剛岐、ヴァンと共に何処かへ行ってしまった。それを見た魔理沙が口を開く。

 

「さ、行こうぜ。ガイルゴールの元へ。」

 

「うん、行こう。」

 

そう言った瞬間、ユニ達はガイルゴールのいる場所へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニ達が走っている途中、ユニが何かを見つけ、その場へ走っていく。彼女に続いて霊夢達も走る。その場所へ着いた彼女はすぐさま倒れていた者の頭を優しく抱えて口を開く。

 

「楓ちゃん・・・。」

 

ユニが見つけたのは戦いで力尽き、気絶していた楓だった。彼女に続いて魔理沙もある人物を見つけて思わず言う。

 

「依姫・・・。」

 

魔理沙の見つめる先には戦いで力尽きた依姫の姿があった。ユニ達はさらに奥を見る。そこには戦いで力尽きたメルト・グランチや悠岐、神奈子や白蓮達の姿があった。と、倒れる悠岐達を通りすぎてユニ達の元に何者かがやって来た。その人物は2mを背丈に全体的に長い髪、日本貴族の服を着ていて青い瞳をしている男だった。男を見た瞬間、ピンが口を開く。

 

「ガイルゴール・・・。」

 

ピンの言葉を聞いた瞬間、ユニ達もガイルゴールを見つめる。と、ガイルゴールが口を開く。

 

「久しぶりだな、アイアルト・ユニよ。幻想郷を守りし者。」

 

「ガイルゴール・・・。」

 

ガイルゴールの名前を呼ぶとユニは気絶している楓を優しく地面に寝かせるとガイルゴールの前に立つ。そして言う。

 

「殃禍はまだ続けるつもりなの?皆がこんなに傷だらけになったというのに・・・。」

 

「お前の仲間が傷つこうがつかまいが余には関係ない。これは余が決めたことだ。余が負ければ余もそれなりの罰・・・いいや、何と言うのだろうな?報いと言うべきか?報いを受ける。」

 

二人が話している中、魔理沙が口を開く。

 

「やっと聞けるぜ、神さんよぉ。ガイルゴール、あんたあの時なんでユニのことを百合って言いかけたんだ?」

 

「お前達には関係のないことだ。」

 

「チッ!」

 

「・・・と、言いたいところだが、黙っているのもいい加減飽きた。そろそろ話そうと思っていたところだ。」

 

そう言うとガイルゴールは目線を魔理沙からユニに変えて再び口を開く。

 

「アイアルト・ユニ、お前の本名はアイアルト・ユニではない。」

 

「・・・え?」

 

「お前は現世の闘王アイアルト・モルトの妹などではない。お前は八意永琳の娘。お前の本当の名前は、八意百合姫。次期月の都の姫になるはずの存在だった。」

 

ガイルゴールの言葉を聞いた瞬間、ユニは唖然となりながら地面に膝をついた。そんな彼女とは別にガイルゴールが再び口を開く。

 

「お前は八意永琳や蓬莱山輝夜、綿月姉妹と出会った時にこう思わなかったか?『見覚えがある』とな。」

 

そう言った瞬間、ユニの目から徐々に涙が溢れ始めた。それを見たガイルゴールが笑みを浮かべながら言う。

 

「フフフ、どうやらその通りのようだな。まぁそれはさておき、改めて八意百合姫よ、何故お前の記憶ではアイアルト家で産まれたか知っているか?それは八意永琳が月の都で罪を犯した蓬莱山輝夜を連れていくのと同時にお前を地上へ連れていき、千年間封印した。その千年間の間に何者かにお前は記憶を屠られたのだ。」

 

ガイルゴールの話を聞いていた妖夢が思わず口を開く。

 

「ユニさんに、あんな過去があったなんて・・・。」

 

「それに、衝撃的だったのはユニが月人だったことよ。まさか永琳の娘だなんて。」

 

妖夢と霊夢が話している中、ガイルゴールがユニに近付きながら言う。

 

「真実を知ったか?八意百合姫よ。これがお前の過去の出来事だ。」

 

そう言うとガイルゴールは右手に刀を持ち、ユニに向けた。刀を向けられているのにも関わらず、ユニは唖然となっているままだった。そんな彼女を見て魔理沙とピンが叫ぶ。

 

「ユニ、しっかりしろ!!」

 

「ユニチャンアブナイヨ!!」

 

「無駄だ。今のお前達の言葉は百合姫には届かぬ。あまりのショックな真実であったからな、お前達が何を言おうと無駄だ。」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールは刀を振り上げた。と、その時だった。突如ガイルゴールの目の前に男が現れた。

 

「何ッ!?」

 

声を上げるガイルゴールとは別に男はガイルゴールを殴り飛ばした。




ガイルゴールから告げられるユニの真実。突如現れた男。一体どうなる!?
次作もお楽しみに!


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第92話 決着の時

過去の出来事を語られたユニ。そんな中、一人の男がガイルゴールを殴り飛ばす。


「ユニ、大丈夫ですか?」

 

女性の声が聞こえたのと同時にユニの意識が戻った。彼女に話しかけたのは赤いリボンがついたヘッドフォンをつけていて紳士のような服に赤いスカートを履いている女性がいた。彼女を見た瞬間、ユニは目を見開きながら言う。

 

「陛下!!」

 

「良かった、無事ですね。」

 

ビオラが言った瞬間、二人の隣にガイルゴールを殴り飛ばした男、剛岐がやって来る。そんな中、剛岐によって吹っ飛ばされたガイルゴールがゆっくりと起き上がった。ガイルゴールの頭からは剛岐に殴られた衝撃によって血が垂れていた。と、魔理沙が口を開く。

 

「あ、あのメルト・グランチやセコンドでも傷を与えられなかったのに、小宝さんは普通にダメージを与えた。すごいぜ、私はあんたを見直したぜ。」

 

「ドウシテアンナキュウニコウゲキデキタンダロウ?」

 

魔理沙とピンが話している中、ガイルゴールがビオラ達を見ながら言う。

 

「お前達もいたのか・・・。余の隙を見計らって攻撃してくるとは大した作戦だ。だが、この程度で余を倒せると思うなよ!!」

 

「・・・いいえ、あなたはもう私達の作戦の中にいます。」

 

「・・・なんだと?」

 

「先程、あなたが小宝様に殴り飛ばされた瞬間、私の能力を使わせていただきました。私のもう一つの能力は、『能力を入れ換える程度の能力』。つまり私はある人物とあなたの能力を入れ換えさせていただきました。」

 

「何ッ!?」

 

「あなたと能力を入れ換えさせたのは西田悠岐の波動を操る程度の能力です。」

 

「じ、じゃあ今のガイルゴールには!!」

 

「えぇ、今のガイルゴールに弾幕等の攻撃は有効です。」

 

ビオラの言葉を聞いた瞬間、ユニ達の顔に笑みが浮かんだ。そんな中、ガイルゴールが口を開く。

 

「能力が入れ換わったからなんだ?余が弾幕等を制圧出来なくなったからなんだ?余には関係ないのない話だ。余は能力が変わったとしても、お前達には絶対に負けたりなどしない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ私達もいるのですよ、ガイルゴール。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性の声が聞こえた瞬間、ガイルゴールはその方向を見る。そこにはガイルゴールとの戦いで気絶していた白蓮達が立っていた。それを見たビオラがユニを見て言う。

 

「良いですかユニ。私が魔力を溜めます。その間にあなた方は時間を稼いでください。止めを指すのはあなたに選んでいただきます。これは殃禍を終わらせる絶好のチャンスです。これを逃す訳にはいきません。」

 

「・・・分かりました。」

 

そう言うとユニは立ち上がり、霊夢の元へと歩み寄る。そして言う。

 

「霊夢、全てはあなたに任せるわ。」

 

「ち、ちょっとユニ!?唐突に言われてもそんなこと出来るわけ・・・。」

 

「出来ないじゃない、やるのよ!!私達はなんとしてでも殃禍に幕を閉じさせなければならないの。それが守護者である私の役目。私に力を貸して!」

 

「ユニ・・・。分かったわ、やってみる。」

 

「ありがとう霊夢。」

 

そう言った瞬間、ユニと霊夢はガイルゴールの方を見る。ガイルゴールからはただならぬオーラが漂っていた。と、ユニの隣にある人物がやって来て口を開く。

 

「少々やられたが、今の状況でなら反撃出来るな。守護者よ、私も君に全力を注ごうではないか。」

 

「メルト・グランチ様!!」

 

ユニの隣にやって来たのは先程まで気絶していたメルト・グランチだった。と、ビオラが言う。

 

「皆さん、私が魔力を溜めます。その間に皆さんは出来るだけ時間を稼いでください!」

 

「分かりました!」

 

ユニが言ったのを合図にユニ達はガイルゴールの元へと向かっていく。

 

「魔法『マジックバタフライ』!」

 

始めに白蓮がガイルゴールに向かってスペルカードによる攻撃を放つ。それを避けたるイルゴールに魔理沙が追い討ちのようにスペルカードを発動した。

 

「彗星『ブレイジングスター』。」

 

「何ッ!?」

 

魔理沙の放った攻撃はガイルゴールに見事命中する。それを見たビオラがユニ達に言う。

 

「その調子です!それで時間を稼いで下さい!」

 

彼女が言葉を発した瞬間、ガイルゴールは目線をビオラに向け、口を開く。

 

「そうか、ビオラ。お前が指揮しているのだな。ならばまずはお前から処理すべきだな!」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールはゆっくりとビオラの元へと向かっていく。それを見た白蓮達がガイルゴールの前に立つ。

 

「邪魔だ!お前達に用などない!」

 

そう言うとガイルゴールは右手で空気を払った。その瞬間、ビオラの前に立った白蓮達が吹っ飛ばされる。

 

「みなさん!」

 

彼女が言葉を発した瞬間、ガイルゴールがビオラの目の前にやって来て腕を振り上げた。

 

「し、しまった!!」

 

魔力を溜めている状況では能力を使うことの出来ないビオラにとって絶体絶命のピンチに陥っていた。

 

「覚悟しろ、ビオラ!!」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールは右手をビオラに振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイルゴールの攻撃がビオラに当たろうとした瞬間、近くで倒れていた二人の少女が起き上がり、ガイルゴールの振り下ろそうとする右腕に両方向から刀を刺した。それとは反対に左腕には何処からか飛んできた鎖鎌が巻きついていた。

 

「待たせたなお前ら!冥界の特別死神部隊隊長のおでましだ!」

 

「あ、あんたは篁!!」

 

霊夢が急にやってきた篁の名前を呼ぶと篁は鎖鎌を自分の方へ引っ張る。その瞬間、ガイルゴールの目の前に一人の少女が現れた。

 

「フフッ。」

 

笑い声を上げると少女は持っていた日傘でガイルゴールを殴り飛ばした。その瞬間、魔理沙が三人の少女の名前を叫ぶ。

 

「幽香、依姫、楓!!」

 

「ここまで来たのよ。」

 

「負けるわけにはいきません。」

 

「この世界のために。」

 

三人が言葉を発した瞬間、三人の後ろから剛岐が飛び上がり、口を開く。

 

「メルト・グランチ、セコンド。行くぜ!」

 

そう言った瞬間、倒れていたセコンドが起き上がり、ガイルゴールの方へと向かう。メルト・グランチも二人の後についていく。そして三人は起き上がろうとするガイルゴールに向かって攻撃を放つ。

 

「爆暗『闇のフレア』」

 

「動震『大地の刃』」

 

「根源『シャドークリスタル』」

 

「ウアァッ!」

 

五大王の三人の攻撃をまともに食らったガイルゴールは起き上がれず、また倒れてしまう。そんな中、一人の青年と一人の少女がガイルゴールの真上に飛び上がる。

 

「くらえ、龍の波動!」

 

「私の弾幕を受けなさい、ガイルゴール!」

 

「悠岐、豊姫!」

 

霊夢が二人の名前を言ったのと同時にガイルゴールに二人の攻撃が命中する。と、ビオラがユニに言う。

 

「ユニ、今です!!」

 

「は、はい!」

 

そう言うとユニは咄嗟にスペルカードを発動する。

 

「剣符『アームストライク』」

 

彼女がスペルカードを発動した瞬間、小さな黄色の空間の入口が現れた。その中から一本の剣が出てくる。それを見た霊夢は咄嗟にそれを手に取り、ガイルゴールの元へと向かいながらビオラに言う。

 

「女王陛下、お願いします!」

 

「分かりました。私の力、受け取ってください!!」

 

そう言った瞬間、ビオラは溜めていた魔力の全てを霊夢の持つ剣に放った。その瞬間、霊夢の持つ剣が金色に輝き始めた。それと同時に力を出し尽くしたビオラがゆっくりと倒れていく。倒れそうになった彼女をヴァンが抱え、口を開く。

 

「無茶しましたね、陛下。」

 

「えぇ、殃禍に幕を閉じるのならばこれくらいは何ともありません。さぁ、霊夢!ガイルゴールに止めを指すのです!!」

 

そう言った瞬間、霊夢はガイルゴールに向けて刀を向ける。そして倒れているガイルゴールの場所に降りながら叫ぶ。

 

「これで終わりよ、ガイルゴール!!」

 

霊夢の攻撃がガイルゴールの元へ来た瞬間、激しい砂埃が辺りに飛び散った。




ビオラの作戦によりガイルゴールを追い詰めることに成功したユニ達。果たして結末は!?
次作もお楽しみに!





※最近、体長不良やこちらの都合で投稿するペースが遅くなってきています。
待っている方々、申し訳ありません。これから早くしていきますので何卒よろしくお願いいたします。


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第93話 終焉ラグナロク

ガイルゴールを追い詰めることに成功したユニ達。


一同は砂埃の立つ場所を恐る恐る見る。と、突然ユニの目の前に何かが飛んできた。それを見た瞬間、ユニは思わず口を開く。

 

「霊夢!」

 

飛んできたのは少し傷を被った霊夢だった。彼女を見た瞬間、魔理沙も駆け寄り、頭を優しく抱える。その瞬間、ピンがある方向を見て言う。

 

「ミ、ミンナ!アレミテ!!」

 

ピンが指差す方向を一同は一斉に見る。そこには身体中血だらけであるものの、立っているガイルゴールがいた。

 

「駄目だ、奴を倒せてない!」

 

悠岐が叫んだ瞬間、ガイルゴールが消えたかと思うと一瞬にしてライオンのような黄色い胴体に悪魔のような青い両腕、龍のような赤い首と顔の巨大な魔物へと姿を変えた。それを見た瞬間、ヴァンが口を開く。

 

「ガイルゴールが魔物へと姿を変えた!!もうなす(すべ)はない。我々の力をもってしても今のガイルゴールには何も通用しない!!」

 

「嘘だろ、こんなことってあるかよ・・・。」

 

魔理沙が呆然となりながら言った瞬間、ガイルゴールが口を開く。

 

「フフフ、これを待っていたぞ。余がこの姿へと変貌することの出来るこの時をな。殃禍に終止符が打たれないのはこれがあるからだ。能力を入れ換えようともこの姿さえあれば何のことはない。今からこれでお前達、いや全てを滅ぼして・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいや、まだ終わっていないわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続きを言おうとしたガイルゴールに割り込んできたのはユニだった。ユニは魔物へと姿を変えたガイルゴールに近づく。それを見た神奈子が彼女に言う。

 

「よせユニ!!今の力ではガイルゴールには・・・。」

 

「分かってるわ。私の力じゃどうしようもない。でも、私はまだ力を全て出し尽くした訳ではないわ。」

 

そう言った瞬間、ユニは剛岐を見て言う。

 

「小宝様、ガイルゴールに通用しないのはガイルゴールが見たことのある攻撃ですよね?」

 

「あ。あぁ、そうさ。」

 

「ならば私は、ガイルゴールが見たことのない攻撃を放つ。」

 

そう言った瞬間、ユニはスペルカードを取りだし、発動する。

 

「現符『シャドウルーム』」

 

ユニがスペルカードを発動した瞬間、辺りが黒い空間に包まれた。そして空間が消えた瞬間、周りの風景が一変して草木の繁る場所ではなく、ただ白い砂と夜の空に覆われた場所だった。これを見た豊姫が言う。

 

「ここは・・・。」

 

「初めて見る場所だな。」

 

豊姫や剛岐が話している中、ガイルゴールは少し辺りを見回し、口を開く。

 

「ほう、余の世界へと場所を移したか。」

 

「そうよ!これは私のラストスペルを使うためにやったのよ。幻想郷では規模が大きすぎるからここにした。ここなら誰にも影響されることなく私の切り札を使える。私が、永琳によって封印されていた時に作った、今まで一度も使ったことのないスペルカードよ。」

 

そう言った瞬間、ユニは一呼吸置き、そして大きい声を上げる。

 

「行くわよ、覚悟しなさいガイルゴール!!スペルカード、終焉『ラグナロク』」

 

「何ッ!?」

 

ユニの言葉を聞いた瞬間、ガイルゴールは思わず声を上げる。そんなガイルゴールとは別にセコンド達が首を傾げながら言う。

 

「終焉ラグナロクだと?」

 

「初めて聞くスペルカードだ。」

 

メルト・グランチも言葉を発する中、ユニがガイルゴールを見ながら言う。

 

「このスペルカードは今日一日私のスペルカードが全て使えなくなる。その代わりに私の今まで出会った人達全てのクローンを出現させ、そのクローンの攻撃全てをガイルゴール、あなたに放つ!」

 

「なんだと!?」

 

「だから私は場所を幻想郷からこの世界へ移したのよ。あなたを倒すために!!」

 

そう言った瞬間、辺りに様々な色の珠が浮かび始めた。そしてその珠が霊夢や魔理沙、悠岐やピンのように数百を越えるような人達がガイルゴールの回りに集まる。

 

「すげぇ、ユニにこんなスペルカードがあっただなんて・・・。」

 

魔理沙が言う中、悠岐、楓は黙ってその様子を見ていた。

 

「な、なんだこれは!!」

 

驚くガイルゴールに突然、一本の鎖がガイルゴールの腕に巻きついた。さらに首、片方の腕、四本の足、尻尾にも鎖が巻きつく。これを見た瞬間、ガイルゴールはある方向を見て言う。

 

「これは、神縛りの塚!八本あるということは今いる小宝剛岐、セコンド、メルト・グランチとそのクローン達のものか!!」

 

ガイルゴールが見る方向には先程まで戦っていた剛岐、セコンド、メルト・グランチと彼らのクローンが鎖を持っていた。そんな中、ユニがガイルゴールから離れた場所で浮かび、ガイルゴールを指差し、大声を上げる。

 

「全てのクローン達よ!!殃禍を起こし神に怒りの一撃を与えよ!!」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールの回りに集まるクローンがガイルゴール目掛けて一斉に攻撃を放った。それを見た悠岐が一同に言う。

 

「みんな伏せろ!!」

 

彼の言葉で近くにいる人達全員が身を伏せた。その瞬間、ガイルゴールが大声を上げる。

 

「あり得ぬ・・・この全てを完全に超越した余が、この余がぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

その瞬間、ガイルゴールに全てのクローンの攻撃が命中し、辺りに先程の霊夢の一撃とは比べ物にならならいほどの衝撃が辺りを襲った。




ラストスペルをガイルゴールにぶつけるユニ!!
果たして勝敗は!?
次作もお楽しみに!


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第94話 神の過去

なんだ、この感覚は・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭に、何かが浮かんでくる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは・・・屋敷?そしてその奥にいるのは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、これか。だが、何故今になって、これを思い出すのだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分からない・・・。何故なんだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は数千年前、まだコンクリート、機械などといった現代のものが無かった頃の時代。突如屋敷に火がつき、貴族達は慌てていた。

 

「何故だ!何故火が屋敷に引火したんだ!」

 

「そんなことはどうでもいい、急いで上様や娘様を外へ避難させるんだ!!」

 

「分かった、お前はそっちを頼んだぞ!」

 

多くの貴族が慌てている中、火が燃え広がる屋敷の中で一人、冷静で屋敷内を歩く一人の貴族・・・いや、貴族の服を着た男がいた。男はしばらく歩いていると途中で足を止めた。そして目の入った部屋に入る。

 

「オギャア、オギャア。」

 

そこには泣き叫んでいる赤子を優しく抱く女性がいた。彼女の肩には焼けて落ちた天井の破片が刺さっていた。そんな彼女を見て男はゆっくり近づく。男に気づいた女性は男に笑みを浮かべ、口を開く。

 

「あぁ、神様。どうか・・・。」

 

「お前、何故余が普通の人間ではないことに気づいた?」

 

「この子から、教えてもらっているのです。この子は、人間と人間でない存在を、区別出来るゴホッ!」

 

続きを言おうとした瞬間、女性は赤子にかからないように吐血した。そんな彼女とは別にガイルゴールは言う。

 

「言うのならば言え。お前の望みはなんだ?」

 

「はい、私の望みは・・・この子を・・・この子を我が当主である夫に渡してほしいのです。私の体はこのようになっておりまして、もう生きる道などないのです。」

 

女性が言った瞬間、ガイルゴールは女性の体を再び見る。女性の足には木片がのし掛かっていて身動きが取れない状況にあった。そんな中、ガイルゴールは言う。

 

「・・・何故だ?お前は今生死の狭間をさ迷っている。なのにお前は何故、自分の命よりもその赤子を優先する?」

 

「それは・・・我が当主である夫との約束なのです。たとえ私めが死のうとも、愛しきこの娘を亡くす訳にはいかないのです。」

 

「・・・。」

 

彼女の言葉を聞いてガイルゴールは黙ってしまう。そんな中、女性が赤子をガイルゴールに差し出し、言う。

 

「ですから・・・どうか、この子を夫に届けてください。」

 

それを見たガイルゴールは微笑を浮かべ、口を開く。

 

「自らの子のために命を捨てるとは。面白い、気に入ったぞ人間。名を聞いておこう。お前とこの赤子の名は?」

 

「私は、藤原(ふじわらの)不比等の妻である蘇我(そがの)娼子と申します。そしてその私の娘は妹紅と言います・・・。」

 

「ふむ、娼子に妹紅か。覚えておくぞ、余が気に入りし人間よ。」

 

そう言うとガイルゴールは赤子の妹紅を受けとると部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、外では藤原不比等達が慌てながら話していた。

 

「おい、娼子と妹紅はどうなったんだ!!」

 

「分かりません!!屋敷内を探しても見当たらないんです。」

 

「ええい、とにかく二人を探し出せ!」

 

不比等が言った時だった。突如焼け落ちていく屋敷の中から一人の長身の男が赤子を抱いてやってきたのだ。そして口を開く。

 

「娼子から子を授かってきた。」

 

そう言うと男、ガイルゴールは泣く赤子、妹紅を不比等に渡した。彼女を受け取った不比等はガイルゴールを見て言う。

 

「娼子は・・・私の妻の、娼子は?」

 

「残念ながら、助けられる状況ではなかった。」

 

その言葉を聞いた瞬間、不比等は涙を流しながら膝をついた。それを見たガイルゴールは心の中で語る。

 

(何故人が死んで泣いているのだ?あぁ、そうか。大切な存在を失ったからか。)

 

そう語った瞬間、ガイルゴールは不比等達に背を向けて歩き始めた。ガイルゴールを見た瞬間、不比等が言う。

 

「ま、待ってくれ!!1つ聞かせてくれ。お前の名前は何と言うのだ?」

 

「・・・余の名を聞いてもいずれお前達は後に余の名を忘れるだろう。」

 

そう言うとガイルゴールは名前を名乗らずに何処かへ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戻って現在。過去の出来事を不意に思い出したガイルゴールはユニのスペルカードをくらって倒れていた。そんな中、力を出し尽くしたユニがフラッとなり、そのまま地面に落ちていく。

 

「ユニ!?」

 

落ちている彼女の名前を霊夢が叫ぶ。その間に悠岐が落ちていくユニを助けた。彼女を抱えた悠岐は様子を見て言う。

 

「寝てる。力を出し尽くしたんだな。」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、霊夢達の顔に笑みが浮かんだ。そんな中、ガイルゴールがゆっくりと立ち上がる。それを見た早苗が言う。

 

「ま、まだ立ち上がれるのですか!?」

 

「・・・見事だ、幻想郷に現世の者達よ。まさか余を倒すとはな。実に見事だ。殃禍に終止符が打たれたな。定めは定めだ。これから余は2万年の眠りにつく。」

 

「に、2万年!?」

 

「殃禍に終止符が打たれた場合、ガイルゴールは眠らなければならないのですよ、ヴァン。」

 

驚くヴァンにビオラが言う。そんな中、ガイルゴールが笑みを浮かべて口を開く。

 

「お前達と戦えて本当に良かった。こんなに楽しめる戦いは初めてだ。」

 

ガイルゴールが言った瞬間、魔理沙が被っている帽子を整えて言う。

 

「これで、終わりだな。」

 

「えぇ、そうね。遂に殃禍に終止符が打たれたのね。」

 

霊夢と魔理沙が話している中、剛岐、メルト・グランチ、セコンドの三人は笑みを浮かべる。そんな中、楓が口を開く。

 

「辛い戦いだったな。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

彼女の言葉に返事をする神奈子。と、悠岐が突然霊夢達を見て言う。

 

「なぁ、お前ら。ガイルゴールを倒せたのはいいんだがよ・・・。俺達これからどうやって帰ればいいんだ?」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、霊夢達ははっとなり、頭を抱え始めた。そんな中、魔理沙が大声を上げる。

 

「しまったぁぁぁぁぁ!ユニ気絶してるからどうやって帰ればいいんだー!!」

 

みんなが慌てている中、ガイルゴールが溜め息を吐いて言う。

 

「余が戻そう。さらばだ、強き者達。」

 

そう言った瞬間、ガイルゴールは左手を上げて指を鳴らした。その瞬間、霊夢達の体が宙に浮かび始めた。そのまま霊夢達の姿が消えていった。それを見たガイルゴールが再び言う。

 

「また会おう、いつかの時を。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって幻想郷。そこではガイルゴールによって飛ばされた霊夢達がいた。と、依姫と豊姫が霊夢の元へやって来て言う。

 

「私達はここでお別れです。さよならは言いません。またあなた方に会える気がするのですから。それではまた。」

 

そう言うと二人は空へ飛んでいってしまった。二人を見送った後、魔理沙が笑みを浮かべて言う。

 

「さぁ、異変解決の後は、みんなお待ちかねの宴会だぜ!」

 

「はぁ、また私の神社でやるの?」

 

「今回は私が提供しよう。」

 

そう言ったのはメルト・グランチだった。それを聞いた瞬間、魔理沙が目を見開きながら言う。

 

「本当か!?」

 

「今回だけだとも。我々帝王軍が料理等を用意しよう。場所は帝の御所だ。」

 

「グランチ!!」

 

「ハハハ、まぁ良いではないか。今まで打たれなかった殃禍に終止符を打つことができたのだからね。今回限りは構わないだろう?」

 

「・・・あぁ、そうだな!」

 

セコンドが言った瞬間、悠岐、楓、剛岐、メルト・グランチ、ヴァン、ビオラの顔に笑みが浮かんだ。と、ビオラが口を開く。

 

「宴会の準備は私やヴァン、剛岐様やメルト・グランチ様が準備いたしますのでみなさんは休んだいて下さい。」

 

「なっ、俺も手伝うのかよ!?悠岐と楓は!?」

 

「悠岐と楓はあなたの倍頑張ったのであなたは手伝うべきなんですよ、剛岐様。」

 

「そんなぁ。」

 

「宴会の準備が出来ましたら私とヴァンが呼びにいきますのでよろしくお願いします。」

 

そう言った瞬間、ヴァンが右腕を上げる。その瞬間、ネザーゲートのような形をしたものが現れ、ビオラ達はその中に入っていった。それを見届けた悠岐は楓を見て言う。

 

「楽しみだな、久しぶりにあいつらに会えるんだぜ。」

 

「あぁ、楽しみで待ちきれないよ。」

 




ガイルゴールを倒し、長きに渡った千年殃禍に終止符を打つことができたユニ達。次回は異変解決の後の楽しみの宴会が!!
次作もお楽しみに!


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第95話 再会の喜びと異変の予感

ガイルゴールを倒したユニ達。いよいよ宴会が始まる。


「あれ、ここは・・・。」

 

目を覚ますとユニは見覚えのある場所で寝ていた。そんな彼女を楓が笑みを浮かべながら見ていた。と、楓が口を開く。

 

「おはよう、ユニ。随分と寝ていたな。」

 

「お、おはよう楓ちゃん。私、確かガイルゴールの世界にいた気が・・・。」

 

「もうガイルゴールが幻想郷にみんな戻してくれたよ。さ、起きるんだ。宴会が始まってしまうぞ。」

 

「宴会!?こ、こうしてはいられないわ。急いで準備しなくちゃ!!」

 

そう言うとユニは速攻で起き上がった。その瞬間、ユニは辺りを見回しながら楓に言う。

 

「ねぇ、楓ちゃん。みんなは?」

 

「あそこで待ってるよ。」

 

そう言うと楓はある方向を指差す。そこには霊夢、魔理沙、悠岐、ピンの姿があった。と、悠岐がユニに言う。

 

「ようやっと起きたか!恐らくだがもう少しで陛下がいらっしゃるぞー。」

 

彼の言葉を聞いたユニは笑みを浮かべて楓を見て言う。

 

「行こう、楓ちゃん。」

 

「あぁ、行こう。」

 

その時、霊夢達の前にネザーゲートのような形をしたものが現れ、その中からビオラとヴァンが現れた。そして言う。

 

「みなさん、お待たせいたしました。宴会の準備で出来ましたのでどうぞ御所へ。」

 

そう言うと二人はゲートの中に入って行った。二人に続いて霊夢達もその後に行く。そしてユニと楓がゲートの中に入った瞬間、ゲートが消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ・・・。」

 

ゲートを抜けた光景を見てユニ達は思わず声を上げてしまう。そこには豪華な料理がたくさん並んでいて5、6人ほど座れるテーブルが数十台用意してある部屋が広がっていた。と、セコンドがユニ達に言う。

 

「ようこそ幻想郷の友達よ!今夜は宴だ。そこにある器に好きな食べ物をよそり、好きな場所で好きなだけ食べ飲みするがよい!!」

 

「ヨッシャアアアアア!」

 

そう言った瞬間、ユニ、霊夢、魔理沙、ピンの四人は一斉に食べ物をよそり始めた。それを見た悠岐と楓は少し唖然となるものの、ユニ達同様に食べ物をよそり始めた。食べ物をよそった悠岐はユニの肩を軽く叩いた。それに気づいたユニは悠岐と楓の後についていく。悠岐は男二人、女二人が座っているテーブルに向かっていく。そして黄色の髪の少年の肩を叩き、言う。

 

「よぉ、久しぶりだな隼人。」

 

「ゆ、悠岐!!お前いつまで幻想郷にいるつもりだよ。」

 

「ハハハ、悪い悪い。セコンドの命令でな、もうしばらく幻想郷にいなきゃならなくなったんだ。」

 

「そうか・・・って!!」

 

「?」

 

そう言った瞬間、黄色の髪の少年、隼人は楓を凝視する。そして言う。

 

「お前、まさか楓か?」

 

「あぁ、そうだ。私は出野楓だ!そしてお前は隼人、鈴木隼人なんだな!」

 

「そうさ。俺は隼人、鈴木隼人だ!」

 

そう言った瞬間、二人は目を輝かせながら見つめ合う。と、隼人が笑みを浮かべて言う。

 

「久しぶりだな!見ない内にでかくなりやがって。」

 

「お前も前よりは男らしくなってるじゃないか。」

 

二人が話している中、一人の少女が楓の元に寄る。彼女を見た楓は笑みを浮かべて口を開く。

 

「久しぶりだな、ミク。」

 

「あなたとまた会えて嬉しいわ。」

 

緑色の髪に青い瞳の少女、ミクは笑みを浮かべて言葉を発した。そんな中、一人の少女が楓に飛びついた。

 

「なっ!?」

 

突然だったため、楓は驚くしか出来なかった。楓に飛びついたのは緑色の髪を後ろに縛っていて黒い瞳の少女だった。少女は楓を見ながら言う。

 

「楓、久しぶり!全く、私が見ない内に私より大きくなるなんて!!」

 

「フッ、人とは成長する生き物なんだぞ、麻里。」

 

楓に飛びついた少女、麻里は楓を見ながら溜め息を吐いた。そんな彼女とは別に麻里の後ろから長身で黒い瞳に銀髪の男が現れた。男は楓を見て言う。

 

「久しぶりだな、随分と成長したらしいな、楓。」

 

「あぁ、成長したさ。悠岐と同じくらい強くなって見せたぞ、ウロボロス。」

 

楓に言われて長身の男、ウロボロスは笑みを浮かべる。と、ウロボロスが暗い表情になり、口を開く。

 

「お前と久しぶりに会えたのは嬉しいが、悲しいこともあったな。」

 

ウロボロスが言った瞬間、悠岐はよそった食べ物を置き、隼人達を見る。ユニはそれを唖然となりながら見る。そして悠岐は口を開いた。

 

「あいつが死んでしまったのは俺の責任だ。影舷隊団長としての恥だ。どうかこの場で謝らさせて欲しい。」

 

「よせ悠岐。」

 

そう唐突に口を開いたのはウロボロスだった。そのまま彼は話を続ける。

 

「啓介が死んだのはおまえのせいじゃない。あれは啓介が俺達へ意思を受け継いだだけだ。」

 

「・・・すまねぇ、ウロボロス。」

 

そう言った瞬間、ウロボロスは笑みを浮かべて口を開く。

 

「さ、今はそんなことを忘れて宴を楽しもうぜ。それと悠岐、聞きたいことがあるんだが・・・。」

 

「なんだ?」

 

「悠岐の後ろにいる女の子は誰だ?」

 

そう言うと彼は悠岐と楓の後ろにいたユニを指差して言う。それをみた悠岐が口を開く。

 

「あぁ、紹介し忘れてたな。こいつはモルトの妹のユニだ。幻想郷の守護者やってる。」

 

「あ、初めまして影舷隊のみなさん。私はアイアルト・ユニと言います。」

 

「モルトさんと違って礼儀正しいわね。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

照れるユニとは別に悠岐は麻里を見ながら言う。

 

「麻里、じ久の奴はどうした?」

 

「あぁ、じ久のことなんだけれど・・・彼、ドールクが死んだことがあまりにもショックだったからずっと引きこもってる。」

 

「ドールクはじ久にとってかけがえのない存在だったからな。無理もないだろう。」

 

影舷隊が話している中、楓が口を開く。

 

「私達は少し話したいことがあるからまた後でな、みんな。」

 

「あぁ、分かった。」

 

そう言うと悠岐、楓、ユニの三人は別のテーブルに移動し、席に座る。と、ユニが辺りを見ながら言う。

 

「ちょっと、なんで呼んだ覚えのない紅魔組が宴会に来てるのよ!それに、今回の異変で紫は現れるどころか姿を見かけないのよ。一体どうしたのかしら?」

 

「仕方ねぇさユニ。今八雲さんは冬眠中だからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隣いいかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ。別に構わ、なっ!?」

 

「なっ!!」

 

言葉を発しようとした瞬間、二人の言葉が詰まってしまう。

 

「どうしたの?悠岐君に楓ちゃん。」

 

そう言うと彼女は二人が呆然と見ている方向を見る。そこには長身で後ろ髪を束ねていて片腕を背に回している男、メルト・グランチ・・・だけではなかった。彼の隣には悠岐と同じくらいの身長に腰まで伸びる鮮やかな黒髪、そして青い瞳の美しい女性がいた。その姿を見たユニは言葉を失った。と、メルト・グランチがユニに言う。

 

「そうだな、君にはまだ話していなかったな。優理花、自己紹介してはどうかね?」

 

「そうですね、初対面ですし、しておきましょう。」

 

そう言うと優理花という女性はユニを見つめ、言う。

 

「初めまして、ユニちゃん。私は帝王メルト・グランチ・エンペラーの妻の上山優理花と言います。」

 

「あ、初めまして!!私は、闘王アイアルト・モルトお兄様の妹、アイアルト・ユニです。」

 

「フフ、よろしくねユニちゃん。」

 

その時、『優理花』という名前を聞いた霊夢と魔理沙は思わず持っていたスプーンを落としてしまう。そして霊夢が言う。

 

「あ、あれがメルト・グランチの妻!?」

 

「間近で見ると美人だぜ・・・。」

 

あまりの美しさに呆然となってしまう二人。そんな中、メルト・グランチと優理花の二人がユニ達の座っているテーブルに腰を下ろした。と、優理花がユニを見て言う。

 

「私は普段、グランチさんの手伝いをしたり指紋検証を行っているんです。」

 

「へぇ、帝王軍ってそんなことをするんですね。」

 

「昔は野蛮な方々がたくさんいらっしゃいましたからね。今では警備は厳重ですよ。」

 

「昔の現世は恐ろしいものだよ。性欲を満たせない野蛮な男共がそこらにいる女を拐っては・・・。」

 

「さ、拐っては?」

 

「女の意志に反し、子作りを行った。」

 

そう言った瞬間、楓の顔色が一瞬にして青くなった。それを見た悠岐が口を開く。

 

「おいおい、大丈夫かよ楓。少し話が過激過ぎたか?」

 

「あぁ、少々過激過ぎた。食欲が失せてしまった。」

 

「これはすまないな、出野楓。宴会の時に話すべきではなかった。忘れてくれたまえ。」

 

「忘れろと言われてもそう簡単には忘れられん。」

 

「そ、そんな怖いことがあったんだ・・・。」

 

ユニが言った瞬間、メルト・グランチの隣から酒の入ったコップを持った剛岐、マーグル、モルトが現れた。そして優理花を見て言う。

 

「優理花さ~ん、俺と酒飲もうぜ~。」

 

「優理花さ~ん、俺も~。」

 

「優理花さ~ん。」

 

「剛岐、マーグル、モルト、いつの間に!?てゆうか酒くさっ!!」

 

悠岐とユニは鼻を押さえながら言う。それと同時に楓も鼻を押さえる。と、優理花が汗をかきながら口を開く。

 

「全く、仕方ありませんね。ほら、あそこでみんなで飲みましょうよ。」

 

そう言うと優理花は席を立ち上がり、誰も使ってない席へ移動した。彼女に続いて剛岐、マーグル、モルトもついていく。と、ユニが唖然となりながら言う。

 

「お、お兄様のあんな姿初めて見たわ・・・。」

 

「君には言っていなかったかな?幻想郷の守護者よ。優理花とあの三人は昔からの幼馴染みなのだよ。」

 

「幼馴染みなんですか!?」

 

「6歳の頃から関わってきているからねぇ、私よりも付き合いは長いよ。」

 

「でもどうしてメルト・グランチ様と結婚したんですか?あの三人の誰も選ばず。」

 

「人には合うものと合わないものがあるのだよ。恐らく優理花にとって三人は合わなかったのだろう。ただ、友達としては楽しそうだかね。」

 

そう言うと彼は優理花達の方を見る。それにつられてユニ達もその方向を見る。そこには四人で楽しそうに酒を飲んでいる姿があった。そんな中、メルト・グランチがコップを手に持ち、言う。

 

「さて、私も混ざるとするか。宴会は楽しまねばならぬもの。さぁ、盛り上がろうではないか。」

 

そう言うと彼は四人の元へ歩いていった。それを見たユニが悠岐と楓に言う。

 

「なんだか楽しそうだね、お兄様も他の五大王の方々も。」

 

「セコンドは途中で会ったらしい、今の俺らの時に。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、随分と楽しそうに宴会を満喫しているじゃない、ユニ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、ユニの隣にスキマが現れ、その中から一人の女性が現れた。

 

「スパーキーング!!」

 

そう叫んだ瞬間、ユニは近くにあったパイを女性の顔に投げつけた。

 

「なっ!!」

 

「ちょっ、ユニ!?」

 

突然の彼女の行動に思わず声を上げてしまう悠岐と楓。そんな中、女性がパイを払いながら言う。

 

「ちょっ、何するのよ!!久しぶりの登場でいきなり顔にパイをスパーキーングなんて酷すぎにもほどがあるわ!」

 

「そんなことより紫、あなた何してたの?」

 

突然の質問にパイを顔にスパーキーングされた女性、八雲紫はきょとんとなりながら言う。

 

「え?いや、普通にマヨヒガに籠ってたけれど?」

 

「何が起こっていたか覚えてる?」

 

「千年殃禍だけれど?」

 

「・・・あーもう!!腹が立つからもう一回スパーキーング!!」

 

そう言うと彼女は近くにあったパイを再び紫の顔に投げつけた。そして言う。

 

「一体何してたのよ!!私達があんなに苦労してガイルゴール達と戦っていたというのにあなたは一体何をしていたのよ!!」

 

(そう言えば今回の異変に八雲さんいなかったな。)

 

怒るユニと記憶を振り返る悠岐。そんな中、紫は顔についたパイを拭きながら口を開く。

 

「私が悪かったわ。何も言わずにマヨヒガに籠ってたことは謝るわ。でもパイを2度投げつけるほどではないじゃない。」

 

「投げつけるほどよ!!それに今回の異変で大して活躍していない紅魔組もこの宴会に来てるし!!」

 

「ごめんなさいね、実は彼女達とあることを調べていたの。」

 

「あること、ですって。」

 

「そう、今後異変を起こすかもしれない奴のことをね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフ、神が負けた。アハハハハハハ!あの神が!絶対なる権力を持つ神が!三度目の殃禍で遂に負けた。アハハハハハハハ!」

 

とある場所で一人の女性が巨大なモニターを見て腹を抱えて笑っていた。と、突然女性は笑うのをやめると立ち上がり、口を開く。

 

「次は、私の番ね。まずはあんたからよ、蓬莱山輝夜。」

 

そんな彼女の顔には不気味な笑みが浮かんでいた。




紫から告げられる異変の予感、ガイルゴールの敗北を嘲笑う謎の女。その正体とは!?
次作もお楽しみに!


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第4章
第96話 知識の妖精と二人の鬼


紫から告げられた異変の予感。


場所は永遠亭付近。そこではある一人の青年が永遠亭へ向かっていた。青年を見た一人の少女、鈴仙は彼を見ると笑みを浮かべて中へ案内した。中に案内された少年はある女性の元へ行く。少年を見た女性が口を開く。

 

「あら、悠岐君じゃない。」

 

「どうも、ちょっと来てみました。」

 

「ユニや楓とは一緒ではないの?」

 

「生憎、楓はユニや魔理沙と一緒に人里へ行ってしまったので、今日は一人です。」

 

「あら、そうだったの。まぁ輝夜と話をしてゆっくりしていきなさい。」

 

そう言うと永琳は悠岐を輝夜のいる部屋の前まで案内した。輝夜の部屋の前まで来た瞬間、あることを思い出した永琳が口を開く。

 

「そういあば、今日は琥珀が来てるわ。少し話でもしたらどうかしら?」

 

「琥珀?」

 

「私の昔馴染みよ。話半分で会話するのを勧めるわ。」

 

「そうか、だったら少し話をするかな。輝夜ー、入るぞー」

 

ガラガラガラ

 

「ちょっと琥珀それハメ技でしょ!ふざけてるの!?」

 

「ハマる方が悪いって。・・・誰?」

 

そこには見知らぬ子どもとテレビゲームをして遊ぶ輝夜の姿があった。恐らく彼が「琥珀」なのだろう。

 

ガラガラガラ

 

襖を閉めると悠岐は汗をかきながら永琳を見て言う。

 

「ちょっと、今見ちゃいけないものを見た気がするんだが・・・」

 

「き、きき気のせいよ。ほら、見てみなさい。」

 

少し不安があるものの、悠岐は再び襖を開けた。

 

「死になさい琥珀!」

 

「そっちもハメ技決めてるじゃないか!!」

 

「勝てばいいよの!勝てば!!」

 

今度は輝夜がハメ技を決め、少年のキャラに抵抗すらさせずにHPを削っていた

 

ガラガラガラ

 

再び襖を閉めると悠岐はさらに汗をかきながら言う。

 

「気のせいじゃねぇ、間違いなく気のせいじゃねぇ!あいつら話してるんじゃなくてゲームやってんじゃねぇか!!」

 

「おおお殃禍で疲れているのよ。ほら、見てみなさい。」

 

「余計に不安なんですけど、またゲームやってそうで不安なんですけど!」

 

そう言いながらも悠岐は恐る恐る襖を開けた。

 

「E・HEROネオ〇で攻撃!」

 

「トラップ発動、魔〇の筒」

 

「またそれ!?ふざけんじゃないわよ!!」

 

扉を3度開けると、今度は日本では有名なカードゲームに興じている二人の姿があった。

 

「もういいや、入るよ。」

 

そう言うと悠岐は二人の元へ寄り、言う。

 

「よぉ、二人とも。ゲームの最中悪いんだが、俺は今日琥珀って奴と話がしたくて来たんだが・・・」

 

「悪いと思ってるなら少し待っててくれない?」

 

「そうよ。待ってなさい。そろそろ私が大☆逆☆転をするから。」

 

「はいはい、ワロスワロス。じゃあ古代の機械〇人で止め。」

 

「あぁぁぁ!?」

 

話しながら手を動かすことも忘れず、少年の勝利でゲームが終わった。

FXで有り金を全部溶かしたような顔をした輝夜を放置し、少年は顔を向けた。

 

「はじめまして、僕が琥珀だよ。一応『知識の妖精』をやってます。八意や輝夜とは昔からの馴染みだよ。」

 

最低でも永琳と同じ年齢であるはずの彼は少年のように無邪気な笑顔を向けた。

 

「お、おうはじめまして。俺は悠岐だ。ちなみに今やってたゲームは遊○王か?」

 

「そうだよ。やっぱり現代には面白いものが多いね。僕がいた頃のもなくなってないみたいだし。」

 

「俺もよく友達とやってたな。おっ、これはE・HEROバ○ルマンだな!」

 

「あぁ、そのカードね。ヴェー〇ー握ってない方が悪いよね。……で、僕に何のようなの?」

 

「実は宴会の時に八雲さんに言われたんだが、今後起こる異変の黒幕を知りたい。」

 

その言葉を聞いた途端、琥珀は先程まで浮かべていた笑みを消し、長年を生きた風格を辺りに漂わせた。

 

「それが僕で無ければならない理由は?生憎だけど、僕は『知識の妖精』だ。未来を見通すことなんて出来ないよ。」

 

突然の琥珀の風格に少し焦る悠岐だが口を開く。

 

「そうだな、すまねぇ。知識があるからっていって未来を見通すことは出来ないよな。」

 

悠岐が言った瞬間、何かを思い出したのか、輝夜が突然言う。

 

「私、一人だけ思い当たる奴がいるの。それは琥珀、あなたも知っている筈よ。」

 

そう言うと輝夜は右手に握りこぶしを作り、再び言う。

 

「あいつが・・・あいつがいなければ私は今頃月の都にいれたっていうのに!!」

 

悠岐の言葉に一瞬顔を曇らせた琥珀だが、気づかれる前に顔を戻し輝夜の言葉にツッコミを入れた。

 

「輝夜がここにいるのは君が蓬莱の薬を飲んだからでしょ?勝手に因縁の相手みたいにしないの。アレでも迷惑でしょーに。」

 

ゴホン。と彼はワザとらしい咳をして悠岐に顔を向けた。

 

「さて、ビジネスの話をしようか。」

 

「・・・結局輝夜の因縁みたいな奴って誰なんだ?」

 

「あれ。君は輝夜が一方的に因縁の相手と見ているアレの事を知りたいのかな?それともこれから起こる異変の黒幕について知りたいのかな?」

 

「・・・両方とも知りたい。」

 

「生憎、お前に払える対価はないんでな、1つにしよう。黒幕を知りたい。」

 

「そ。なら黒幕について教える対価だけど―――」

 

琥珀は口を三日月のように歪ませて、言った。

 

「―――フランドール・スカーレットを連れてきてくれ」

 

「・・・は?フラン!?」

 

「そう、フランドール・スカーレットさ。君なら彼女に信用されてるし、簡単だろう?」

 

「本当に呼んできていいんだな?」

 

「もちろん。彼女を縛り付ける手立てはあるし、あと3時間ほどで日の出だ。彼女で実験するには事足りる」

 

「どうしてフランで実験するんだ?」

 

そう言った瞬間、穏やかだった悠岐の黒い瞳が一瞬にしておぞましい赤い瞳に急変した。

 

「おお怖い怖い。それにしてもどうしてねぇ、で彼女が1番言いくるめやすいから。かな?」

 

「俺は嘘をつく奴が苦手でな、そういうパターンはもうお見通しなのさ!」

 

琥珀は頭に手を当てて、ため息をついた。

 

「……君には分からないだろうね。知識の妖精は自分が体験したことの無い事でも知識として知っている。つまりは事象Aを行えば事象Bが起こるということを理解している。そんな僕を満たすのは知識では知りえないその過程なんだ。AからBが起こる間に湧き出てくる感情、僕はこれが知りたい。だから僕は―――

 

彼は悪気のない、そんな雰囲気で次の言葉を紡いだ。

 

「―――吸血鬼であるフランドール・スカーレットを太陽の光で焼き殺した時に起こる感情が知りたいだけだよ」

 

それを聞いた瞬間、悠岐は瞳を赤くしながら言う。

 

「お前の言うとおりにしなくて良かったぜ。お前の言うとおりにしていればフランが死ぬところだった。知識を得たいならガイルゴールにでも聞けばいい話だろう。それともお前はなんだ?人の怒りの感情や絶望の感情を知りたいっていう・・・!?」

 

その瞬間、悠岐の脳裏に突如ある名前が浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリュシオン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっと送れた。やれやれ、君は随分とガードが硬いね。アレは僕を毛嫌いしてるみたいだから名前を呼ぶだけで呪われるんだよ。それが異変の黒幕さ」

 

「聞いたことがあるぞ。ユニや霊夢、そして輝夜も言っていた奴だ。」

 

「私が言っていた奴?まさか!!」

 

「大正解。流石は輝夜、いい頭してるね」

 

琥珀はゴホンとまたワザとらしい咳をした。

 

「名前は分かるんだが、結局奴って何者だ?」

 

「さて、対価も頂いたしそろそろお(いとま)させてもらうよ」

 

窓から外へ出ようと足を窓枠へかけた時、彼は悠岐の質問にこう答えた。

 

「それを言うのもダメなんだ。ただ一つだけアドバイスをしよう」

 

輝夜と悠岐に背を向けたまま指を一本立てた。

 

「妖怪の山にある何でも屋に行くといい。アレをよく知ってるのがいるからね」

 

「・・・あぁ、そうさせてもらう。」

 

「毎度有り。次の利用をお待ちしているよ」

 

琥珀は背中から漆黒の羽を生み出し、飛び立った。

 

「行っちゃった・・・まだラストデュエル終わってないのに。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって妖怪の山。そこでは琥珀のアドバイスで何でも屋の元へ悠岐と輝夜が向かっていた。

 

「そろそろ例の何でも屋につく頃ね」

 

「あぁ、そうだな。」

 

そう言うと二人は目の前にある建物を見て足を止める。

 

「だか――前は――ってんだろ!!」

 

「はぁ!?そ――て―ぇ――だろうが!!」

 

建物の外からも聞こえる二つの怒号に輝夜は顔をしかめた。

 

「・・・中で何してんだ?」

 

「……考えたくもないわ」

 

「そもそも考えようとしてねぇだろお前。」

 

「本当に考えたくもないのよ……。声からして私の恩人かも知れないの……」

 

頬を少しだけ赤く染めた輝夜は大きなため息を付いた。

 

「輝夜の恩人?へぇ、そいつがこの中にいるのか。」

 

そう言うと悠岐は扉をノックし、言う。

 

「すいませーん!」

 

しかし聞こえるのは相変わらずの怒号のみ。恐らく聞こえて無いのだろうか……。

 

「・・・開けてもいいかな?」

 

「……すきにして」

 

「分かった、開ける。」

 

即答すると悠岐はそっと扉を開けた。

 

扉を開けた瞬間、ナニカがすごい勢いで飛んできた。それは悠岐の額へ吸い込まれるようにクリンヒットした。

それを食らった悠岐は気絶もせず、叫びもしなかった。ただ流れてくる自分の血と飛んできたものに驚いていた。飛んできたもの、それはこけしだった。こけしを見た悠岐は額から流れてくる血を見て輝夜に言う。

 

「こけしを投げただけで額から血が流れるってあるか?」

 

「ま、まぁ鬼の全力なら有り得るんじゃない?」

 

「じゃああそこにいるのは鬼・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「お客さんか?もうし訳ない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店から出てきた2人は悠岐の傷をみるとそう声をかけた。その2人は頭に角を生やした男女だった。1人は左右に生える小さな二本角が特徴の羽織袴を着た男で、もう1人は額の中心から生える小さな一本角が特徴の浴衣を着た女だった。

 

「俺が半分悪魔で良かったな。もし人間だったら確実に即死だぞ。」

 

「死んでもワタシが蘇生は出来るから大丈夫だよ」

 

女が間髪入れずにそう言った。

 

「アホか」

 

その言葉に対して男の方がゲンコツを1発女の頭に叩き込んだ。

 

「あの~、名前聞いてもいいか?」

 

「ん、あぁ、悪かったな。名乗らないで」

 

男の方は悠岐にそう言葉をかけた後にしっかりと立ち直し名乗った。

 

「俺は百々。伊吹百々だ。宜しくな。んでこっちは―――」

 

「九十九。星熊九十九だよ。宜しくな、お客さん」

 

百々の言葉を切るように九十九は悠岐へ名乗った。

 

「百々に九十九か。俺は悠岐だ。よろしく」

 

「おう、宜しく。……んで、アンタは一体俺らに何を頼みに来たんだ?」

 

「あんまり名前を出したくはないんだが・・・」

 

「エリュシオンについて聞きたいの。」

 

『エリュシオン』の名を聞いた時、百々は頭に?を浮かべたがそれと反対に九十九は顔をしかめ、唇を強く噛み締めた。

 

「アンタら、何処でそいつの名を知ったんだい?」

 

「なぁ、エリュシオンって誰だ?」

 

「エリュシオンの名前はユニや霊夢、そして輝夜(こいつ)から聞いた。」

 

「……そう、か」

 

「なぁ、だからエリュシオンって―――」

 

「百々、アンタ確か人里の鈴木さんに頼まれごとしてたよな」

 

「確かに……されてたが」

 

「納期が明日までの事忘れてない?」

 

「…………やっべぇ!」

 

「二人の話はワタシがやるからアンタは行ってきな」

 

「悪い九十九、任せた!」

 

百々はそう言って人里へ向かった。

 

「……中に入りな、2人とも。茶くらいは出してやる」

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪かったな、アイツを追い払うまで待ってもらって」

 

店の応接室に2人を案内し、緑茶と羊羹を出し終えた九十九は椅子に座りながらそう言った。

 

「あぁ、大丈夫だ。」

 

「アイツには……、百々にはこの話は絶対に聞かせらんないからな……」

 

「それなりのことがあったのか?」

 

「あるよ。とんでもないくらい大きな理由がね……」

 

九十九は力を入れすぎたのか。その両手からは血が垂れていた。

 

「お、おい九十九?」

 

「……悪い。力の加減が効かなかった」

 

それでも彼女は手を拭こうとせず、そのままポツリポツリと百々の話を始めた。

 

「百々はさ、アタシのこと腹違いのキョウダイだと思ってるんだ。でも、違うんだよ。ワタシとアイツは―――」

 

九十九は1度言葉を切り、息を整えるように深呼吸をしてから言葉を紡いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――同じ存在なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、同じ存在だと!?」

 

「正確には別世界における同存在ってとこ。元々ワタシはここの住人じゃない。ここによく似たべつの幻想郷出身なんだ。でも、今はその世界は無い。アンタたちが言ってたエリュシオンに滅ぼされたんだ」

 

自身の世界が滅ぼされた光景を思い出しながら彼女は口を開く。

 

「世界を滅ぼされた!?」

 

「そう。何故か知らないけどエリュシオンはさ、百々の事をすごく気に入ってるみたいで、百々と似た存在であるワタシの事が気に食わなかったんだろうね。ワタシのいた世界ごと一緒に滅ぼそうとしたよ」

 

「そんな、酷い・・・」

 

「でも滅ぼされる寸前にワタシはあっちの紫がここまで送ってくれて難を逃れたんだ。全ては、エリュシオンに復讐するため、にね」

 

そう言う九十九の目は先ほどとは違い、闇に染まっていた。




輝夜と九十九と何かしらの関係があるエリュシオン。その秘密とは!?
次作もお楽しみに!


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第97話 人里の悲劇

九十九から話された過去の出来事。


場所は変わって人里。そこでは阿求と共にユニ、魔理沙、楓が歩いていた。と、楓がユニに言う。

 

「なんだか懐かしいな。同姓と一緒に歩くのは。」

 

「楓ちゃん、今まで女の子と関わったことないの?」

 

「あんまりないな。影舷隊はほとんど男達だったし、女はミクや麻里だけだったし。」

 

二人が話している中、魔理沙が二人を見て言う。

 

「お前ら仲良いよなー。カオスの異変の前から出会ってそんな経たないのに。」

 

「そうかしら?」

 

「人には合う人と合わない人がいるからな。」

 

三人が話している中、阿求が指を指して言う。

 

「みなさん、そろそろ着きますよ。私は先に行ってお茶を用意しておきますね。」

 

そう言うと阿求はお茶がある二階へ上がっていった。そんな中、魔理沙が楓に言う。

 

「なぁ楓。私達と出会うまで何処にいたんだ?」

 

四角世界(マインクラフト)にいた。セコンドからの命令で行っていた。思い出したくないことばかりの旅だった。」

 

「そうか・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「阿求!?」

 

突如二階から阿求の悲鳴が響く。それを聞いた三人は急いで彼女の元へと向かう。

 

「阿求、大丈夫!?」

 

「おい阿求、大丈夫か?」

 

二階に行くと阿求は部屋の中を見て腰を抜かしていた。

 

「阿求、一体何があったんだ?」

 

楓が阿求に言った瞬間、魔理沙とユニは部屋の中の様子を見て目を見開いた。部屋の中にあったのは壁、床、天井に散らばった血に内臓をえぐり出されて息絶えた男の姿があった。

 

「これは・・・。」

 

「ごめん、みんな。私ダメかも!!」

 

そう言うとユニは口を押さえて下に降りていってしまった。そんな彼女とは別に楓は死体に近付き、辺りの様子を見る。そして口を開く。

 

「死体慣れしていないユニにとって、これを見るのは過激過ぎたな。」

 

そう言いながらも彼女は辺りを見回す。と、魔理沙が異変に気付く。

 

「おい楓、何か変だぜ。全く阿求のものが荒らされていない。それに窓の鍵が閉まっている。」

 

「確かに変だな。この死体、殺されたのは数分前だ。」

 

「なんだって!!」

 

「魔理沙、ここに着く前に誰かがここから慌てて逃げだしたのを見たか?」

 

「いいや、私は見てないぜ。」

 

「考えられるのは二つだ。一つは念力を使って物を動かせる奴、あるいは自殺の二つだ。」

 

「自殺はないと思うぜ。なんせ、ここらに内蔵をえぐり出した刃物が見当たらないぜ。」

 

「確かに、辺りを見ても刃物らしき物は見当たらない。自殺は消えたな。」

 

そう言うと楓はユニがいる下に降りていった。しばらくして楓が何かを持って上がってきた。それを見た魔理沙が言う。

 

「楓、それは?」

 

「ブラックライト。これでこの部屋に残っている指紋を探すことが出来る。」

 

「へぇ、楓って探偵みたいなこと出来るんだな。」

 

「以前悠岐のおじいさんに教えてもらっていたからな。」

 

そう言うと楓は青紫色の光を部屋に照らしていく。と、何かを見つけた楓が魔理沙に手招きをする。それを見た彼女は楓の元へ寄る。楓が指差す場所には少し丸みを帯びている模様があった。それを見た魔理沙は楓に言う。

 

「これが・・・。」

 

「恐らくな。これがこの男性を殺した犯人だ。」

 

そう言うと楓は指紋を持っていたハンカチに取った。そして言う。

 

「魔理沙は阿求にこのことを幻想郷の人に伝えてくれ。私はユニと共に優理花さんの所に行って犯人の正体を暴いてくる。」

 

「あぁ、分かったぜ。」

 

そう言うと二人はそれぞれの役割を果たすために何処かへ行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって現世。そこではユニと楓が優理花の所へ訪れていた。中では既に楓が幻想郷の状況を話していた。それを聞いた優理花が口を開く。

 

「大変でしたね。まさか幻想郷でそんなことが起こってしまっただなんて。」

 

「はい・・・。」

 

「まぁ、それは後にして二人とも疲れているでしょう?そこに座っていなさい。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

そう言うと二人は優理花の言われた通りに少し豪華な黒い座椅子に座った。そして優理花も自分の机に腰を下ろし、カタカタと音を出しながら作業を始めた。それを見たユニが優理花に言う。

 

「優理花さん、その機械は?」

 

「これ?これはパーソナルコンピューターと言って通称パソコンと呼ばれる機械です。これで指紋の主を見つけることが出来るのですよ。」

 

「すごい!」

 

興奮するユニとは別に優理花は一度ユニに笑みを浮かべると再び作業に入った。と、ユニが楓に言う。

 

「楓ちゃんは、犯人が誰だと思う?」

 

「犯人?さぁ、それは分からない。」

 

しばらくすると優理花が頭を押さえながら口を開いた。

 

「そんな、どうして・・・。」

 

「どうかしたんですか?優理花さん。」

 

「えぇ、これを見てください。」

 

そう言うと優理花は二人を呼んでパソコンの画面を見させた。画面には『一致する人物が見つかりません』と表示されていた。それを見たユニが驚きながら言う。

 

「優理花さん、これって一体・・・。」

 

「とても不可思議なことです。このパソコンは現世、幻想郷、四角世界(マインクラフト)、月の都の人々全ての指紋のデータが入っている最先端の機械の筈なのですが・・・。」

 

「誰とも一致しないなんて・・・。」

 

「可能性として考えられるのはこの4つの世界の外の方の指紋です。」

 

「4つの世界外ってことはガイルゴール達とかしか考えられませんが?」

 

「違うのよ楓ちゃん。この指紋、ガイルゴールやマスターハンド、クレイジーハンドと比べると小さいんですよ。」

 

そう言うと優理花はパソコンをカタカタと打ち始めた。そして誰とも一致しなかった指紋の隣にさらに大きい指紋を並べた。そして再び言う。

 

「この大きい指紋はグランチさんの指紋です。これと比べるとガイルゴール達とはとても思えないのは分かりますよね?」

 

「確かに、メルト・グランチと比べると小さい。」

 

「これを見て私は仮説ですがこの指紋の主は女性だと考えています。」

 

「女性!?」

 

彼女の言葉を聞いた二人は驚きのあまりに思わず声を上げてしまう。そんな二人とは別に優理花が口を開く。

 

「しかもこの指紋からただならぬオーラが漂っている感じがするんです。もしかしたらガイルゴールの時の殃禍よりも酷い戦いになると思います。」

 

「そうですか・・・。」

 

二人の声が少し暗くなったのを見て優理花は笑みを浮かべて言う。

 

「大丈夫よ、あなた達ならきっとこの戦いを終わらせてくれると信じています。なんせあの千年殃禍に終止符を打ったのだから。」

 

「ですが優理花さん。相手はガイルゴールの時よりも酷くなるんですよね?私達勝てますか?」

 

「心配ありませんよ。以前グランチさんがおっしゃっていたんです。『彼女達ならきっと数々の困難を乗り越えていける』とね。だから、私もあなた方を信じているんです。」

 

「優理花さん・・・。」

 

楓が言った瞬間、何かを思い出した優理花がちょっと待っててくださいと言うと何処かへ行ってしまった。それを見た二人は首を傾げる。しばらくすると優理花が何かを抱えて戻ってきた。

 

「優理花さん、これは!!?」

 

思わず声を上げてしまうユニ。彼女が抱えていたのは全身黒い鱗で覆われていて小さな翼に青い瞳で、大きさは30cmほどのドラゴンだった。

 

「この子はつい最近生まれた帝王龍(エンペラードラゴン)の子供です。とても可愛らしいでしょう?」

 

「た、確かに可愛い・・・。」

 

「おっと、迂闊に触ると危険ですよ。この子は帝王軍以外の人を初めて見たら噛みつく習性があるんですから。」

 

「あ、危なかったぁ。」

 

そう言うとユニは手を引っ込めてホッと溜め息をついた。そんな中、優理花が笑みを浮かべて言う。

 

「私はあなた方を信じています。相手が誰であろうと挫けずに頑張って下さい。」

 

「ありがとうございます、優理花さん!!」

 

そう言うと二人は彼女にお辞儀をして部屋を出ていった。それを見た優理花は窓の外を見ながら口を開く。

 

「・・・本当に、頑張って下さい。今回の相手は、相当危険な方です。」




正体不明の指紋の主。一体誰なのか!?
次作もお楽しみに!


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第98話 怪しい影

優理花の場所へ行っても分からなかった指紋の主。


「エリュシオンに復讐、ねぇ。」

 

場所は変わって妖怪の山の何でも屋。そこでは悠岐と輝夜が九十九からエリュシオンについて話を聞いていた。

 

「悪いか!アイツはワタシからすベてを奪ったんだ!家族も、友人も、星も、世界もすべて!!」

 

強く怒鳴る九十九の目からは涙がこぼれ、手からは再び血が垂れていた。そんな中、悠岐が冷静に答える。

 

「別に輝夜はお前の復讐を悪いとは思っていねぇ。」

 

「……悪い、少し熱くなったみたいだ」

 

頭を冷やしてくる。そう言って九十九は応接室から出ていった。そんな彼女を見て輝夜が言う。

 

「九十九、大丈夫かしら・・・」

 

「相当奴の思い通りにされたのが悔しくて仕方がなかったんだな。」

 

2人がそう話していると、応接室の扉が開いた。

 

「ただいま〜っと、お客さんでしたか。あの、九十九はどこに行ったか分かりませんか?」

 

帰って来た少年、百々の言葉を聞いた悠岐が返事をする。

 

「いや、分からん。応接室を出たっきりだ。」

 

「……厠か?」

 

「頭を冷やしてくるって言っていたわ。」

 

「なら風呂か。もう少しすれば戻ってくると思いますよ。依頼でしたら、こちらの紙に詳細を書いて頂けますか?」

 

二人が紙を受け取ろうとした瞬間、突如応接室の扉が勢いおく開いた。

 

「ハァ、ハァ・・・。百々はいますか?」

 

「華扇!?どうしてここに?」

 

勢いおく扉を開けてきたのは汗だくの華扇だった。彼女を見て百々が言う。

 

「華扇じゃん。どうした、そんなに急いで?依頼の話か?」

 

「えぇ、緊急事態ですよ。人里で殺人が起こりました。」

 

「殺人!?」

 

彼女の言葉を聞いて驚く悠岐とは別に百々は冷静に華扇に言う。

 

「・・・そうか。慧音先生と妹紅には言ったのか?」

 

「これから言いますが今楓さんと魔理沙、ユニがその現場にいます。」

 

「あの三人がか?楓はともかく、死体慣れしていない二人は大丈夫なのか?」

 

「その『ゆに』って奴がどんなんだか知らないが魔理沙なら大丈夫だ」

 

悠岐の言葉に、百々は華扇の代わりに答えた。

 

「そうか。ならあいつらに任せよう。だが、何か不吉な予感がする。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう思うなら百々を連れて行ってきな。依頼は蓬莱山がいれば大丈夫だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭を冷やせたのか、九十九が応接室の扉の前に立つ華扇の後ろから声をかけた。

 

「そうだな。そうさせてもらうよ。」

 

「ちょっ、悠岐!?」

 

「アンタはこっちだよ」

 

九十九は輝夜に停止の声をかける。そんな中、悠岐が百々を見ながら口を開く。

 

「んじゃあ行くか百々。」

 

「あぁ。宜しくな、悠岐」

 

そのまま二人は人里へと向かっていった。その時、木の影から何者かが二人を見て笑みを浮かべていた。

 

「予測通りってな。クックックッ・・・。」

 

「このままいけば計画通りね。」

 

「あぁ、こっちの手のひらで踊ってやがるゼ。……なぁ、このキャラ崩していいか?」

 

「まだダメよ。後からやったほうが面白いのだから。フフフ。」

 

「俺は部下じゃなくて協力者だっての・・・」

 

「なら、以前壊した幻想郷の住人の星熊九十九にやりなさい。」

 

「それならこっち側の男に使うさ。あっちにはスキがないからな。」

 

「彼は・・・そうね。いいわよ。」

 

「なら行ってくるわ―――

 

ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、男は話し相手に振り向いた。

 

―――エリュシオンさん。」

 

「何かしら?」

 

「あの、その、頭に、栗が……」

 

「栗?」

 

そう言うと彼女は頭にあるものを手に取る。

 

『私だ。』

 

「・・・おや?栗が喋った。」

 

『・・ホントは分かってるんでしょ?エリュシオン。』

 

栗から女の声が聞こえた。それを聞いた女性、エリュシオンは呆れた表情をして言う。

 

「あぁ、そうだったわね。」

 

そう言うとエリュシオンは頭にある栗を掴み、地面に叩きつけた。

 

『無駄よ。これは声を届けるスピーカーのようなもの。あなたの攻撃は通じないわ。』

 

「……もしかして、妖怪賢者の八雲紫か?」

 

「八雲紫、ねぇ。何の用?」

 

『警告よ』

 

先程までの優しい声とは違い、冷酷な声で紫は言い放った。

 

「警告?」

 

『この幻想郷を星熊九十九の幻想郷のように滅ぼすなら私は、容赦しないわよ。』

 

彼女の言葉を聞いてエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「ほう、この神を越えた私に歯向かうと?」

 

『神?だから何よ。私はこの世界を守るわ。それが無謀な戦いだとしても、ね。』

 

じゃあね。そう言って紫の妖力が栗から離れ、そこにはただの栗が残った。栗を見たエリュシオンはそれを再び手に取り、言う。

 

「八雲紫の処理は後にするわ。後は琥珀・イーグナーウスをいかに早く殺せるかにかかってくる。」

 

そう言うとエリュシオンは手に持っていた栗を握り潰した。彼女の手からは血が垂れる。

 

「そろそろ俺は人里に向かう。アンタもしっかり動いてくれよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピロリ、ピロリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如辺りに謎の音が響いた。それを聞いたエリュシオンは手に持っていたスライムを肩に乗せる。その瞬間、スライムが彼女の顔にくっつき、そのまま通信機になった。と、何か嬉しい知らせを聞いたのか、エリュシオンは笑みを浮かべて口を開く。

 

「・・・フフフ。いい知らせが入ったわ、寳。」

 

「・・・なんだ?(また出鼻くじかれた・・・)」

 

「どうやら月の都に神霊達が奇襲しているとカルマから連絡が入ったわ。だから私は月の都に行ってくるから幻想郷はあんたに任せるわ。やばいと思ったらすぐに撤退すること、いいね?」

 

「了解。・・・まぁ、問題無いと思うが、気をつけろよ。」

 

「ありがとう、じゃあまたね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって人里。そこでは殺人事件の起こった場所には悠岐と百々がいた。

 

「・・・なんか、この死体変じゃないか?」

 

「変って、何が?」

 

「こんな内臓をえぐり出す奴が幻想郷にいるか?少なくとも俺の知っている範囲ではいない。」

 

「殺人に快楽を感じてしまった妖怪が現れたのかもしれねぇ。結構前にそんな鬼を殺したことがある。」

 

「そんな奴がいたのか?」

 

「あぁ。……あんまり思い出したくないんだ。同族を殺したことにかわりはないからな……」

 

両手を強く握りしめ、地面に赤い液体が滴る。

 

「……たがいまは関係ないんだ。」

 

「お前、なんか九十九に似ているな。」

 

「そりゃあそうだ。九十九は俺だからな。」

 

「そうか・・・(九十九も百々も互いに同じだってこと知っていたのか?)」

 

その時だった。突如一人の少女が百々に向かって突進してきた。

 

「なっ!?」

 

「ゲヴァ!?」

 

「よぉ百々!こんなところで何してるんだ?」

 

「魔理沙!?」

 

魔理沙の突撃により、地面に倒れ込んだ百々が魔理沙を見上げながら答えた。

 

「い、依頼だ、よ……。コフッ」

 

「へぇ、久しぶりにお前の顔見たぜ。」

 

「き、基本は九十九に任せてるからな。俺はお前を除く努力の人たちに嫌われてるからな。」

 

魔理沙が上からどき、起き上がりながら百々は答えた。

 

「そういや、百々の能力って何なんだ?」

 

「『天命を全うする程度の能力』と、『すべてを再現する程度の能力』だよ……」

 

「なんだその能力は!?五大王と戦って勝てるかもしれなさそうな能力じゃねぇか!!」

 

悠岐の言葉に、百々はため息をついた。

 

「そんな便利な能力でもねぇよ。『再現する』には『再現できる』元の誰かが必要だからな。」

 

「素材が必要ってことか。」

 

悠岐が言った瞬間、魔理沙が百々の肩に腕を乗せて言う。

 

「本当に面倒な能力だよなー、私がすごく努力して作った魔法もすぐにマネされるんだぜ?」

 

「悪かったっての……。それに、『天命を全うする程度』の方で俺は寿命以外で死ぬことなんて無いからな。どんな無理なことでも出来るんだよ」

 

その瞬間、悠岐は一つの可能性を見いだした。そしてそれを百々に言う。

 

「なぁ、百々。お前は寿命以外では死なないんだろ?」

 

「……?あ、あぁ」

 

「もしかしたらだが・・・お前ならエリュシオンを倒せるのかもしれない!!」

 

「え、エリュシオン?誰だ、それ?」

 

「そうか、お前は知らないんだったな・・・。」

 

「あれ?百々って確か昔に腐れ縁っぽい人いたよな?」

 

「そんな奴いた……か?……ん?なぁ、悠岐、魔理沙。あの人集りはなんだ?」

 

百々の指差す先には鈴奈庵に集まる人混みがあった。

 

「行ってみるか?」

 

「そうだな。」

 

「なにがあるんだろうな」

 

「さぁ、見てみなきゃ分からない。」

 

 




鈴奈庵に集まる民衆。一体何があるのか!?
次作もお楽しみに!


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第99話 九十九の異変

幻想郷で起こった殺人事件。真相を暴くために悠岐、百々、魔理沙がゆく。


「なぁ、ここでなにしてるんだ?」

 

悠岐が鈴奈庵に集まる民衆の一人に話しかけた。

 

「なにって、あれ見てみろよ兄ちゃんたち……」

 

男の指さした先には本居小鈴が貼り付けられており、彼女の後ろには赤い文字で『天誅』と書かれていた。

 

「誰だか知らねぇが、ひでぇ事するよな……。あんないい子によ。」

 

それを見た魔理沙が口を開く。

 

「天誅?」

 

「誰があいつにあんなことを・・・。」

 

「っ!お、おい、あれ見てみろ!」

 

百々が指さした所には『天誅』と同じように赤い文字で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『伊吹百々、次はお前だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう書かれていた。それを見た瞬間、悠岐が少し焦ったような口調で口を開く。

 

「あれって、お前に予告されてるってことじゃないのか!?」

 

「気をつけろ百々。敵がどこから来るか分からない!」

 

魔理沙の言葉を受け取った百々は顔を歪ませた。

 

「……俺だけに来るなら何も言わねぇよ。だけどよ、関係ない誰かを巻き込むってのは許せねぇ。」

 

「安心しな百々。俺は人を傷つけるような奴は昔から嫌いでな、そういう奴は懲らしめたくなるんだ。」

 

そう言った悠岐の目は赤く染まっており、既に刀を抜く準備をしていた。

 

「そう思うのはいいけどよ、こんな人の多い場所で刀なんて抜くなよ。」

 

そう言う百々も、両手に妖力を纏わせていた。それを見た悠岐は笑みを浮かべて言う。

 

「抜くつもりはないが、お前も妖力を漂わせてるじゃねぇか。お互い様だ。」

 

「はっ!違いねぇ。」

 

「・・・?」

 

突然何かの気配を感じた魔理沙がある方向を見つめる。それに気づいた悠岐が彼女に言う。

 

「どうした魔理沙?何かいるのか?」

 

「あいつ、いつからいたんだ?」

 

そう言うと魔理沙は民衆のいる場所とは逆の方向を指差した。それを見た百々が口を開く。

 

「……九十九、か?にしても、なんかいつもと違うような……。それに、輝夜は?」

 

「・・・!?百々、あいつに気をつけろ!!」

 

「は?何言って―――っ!?」

 

彼の言葉を止めるように九十九が百々へ向けて、弓を放った。それを見た百々が言う。

 

「九十九、まだ冗談で済ませられるぞ……」

 

「いいや、百々。あいつはお前の知るいつもの九十九じゃない。あいつ、まるで何かに操られているような感じがする。」

 

悠岐が言った瞬間、彼女は新たな矢を弓に番えた。

 

「……『祈りの弓(イー・バウ)』」

 

「っ!ぜ、全員逃げろ!!」

 

「ゲッ!」

 

百々の台詞と同時に悠岐と魔理沙は別方向に逃げた。放たれた矢は彼らの立っていた場所に着弾した。すると、その場からナニカが吹き出た。

 

「絶対に吸うなよ!イチイの毒だ!!」

 

百々の言葉を耳にした二人は毒の広がる空間から素早く離脱した。

 

「チッ、毒系の攻撃を使う奴は苦手なんだよなぁ。」

 

そう言うと悠岐は矢を放った九十九を睨む。

 

「毒だけじゃ無い。」

 

悠岐の言葉に百々は否定を示した。彼の言葉に魔理沙がすぐにくらいつく。

 

「何かまた面倒な効果があるのか!?」

 

「アイツの能力は千変万化だ。引き出しはあれだけじゃない。」

 

「なるほど、様々な効果の矢を打ってくるってことか!!」

 

そう言った瞬間、悠岐の頭の中に一つの疑問が浮かんだ。

 

(そういえば九十九は誰に操られているんだ?近くにそいつがいる筈!)

 

何かを閃いた悠岐が魔理沙と百々に言う。

 

「百々!お前は俺と九十九を惹き付けてくれ。魔理沙は近くに怪しい奴がいないか見てくれ!」

 

「なっ、わ、分かったぜ!」

 

「了解したが九十九の能力はそうじゃない!アイツの能力は『fateを使う程度の能力』だ!」

 

「fate?なら話は早い。俺はfate知っているからな!!」

 

「fateを使う程度の能力!?」

 

「あぁ。」

 

「どんな能力なんだ?」

 

チラリ、と百々は九十九に視線を送った。彼女は何もせずにただこちらを眺めるだけだった。彼女を見ながら百々は魔理沙に言う。

 

「九十九の世界には様々な英雄を記録する『座』ってのがあるらしい。あいつはその『座』にアクセスして英雄の力をその身に宿す。そんな能力だ。」

 

「なんだそりゃ・・・」

 

「英雄の力を使える奴だ。これはかなりめんどくせぇ。」

 

「でもアイツは鬼としての誇りを持ってる。普段は能力を使おうとしねぇ。だから俺もどんな能力があるか分からねぇ。」

 

「注意していくぞ百々。その間に魔理沙は頼むぜ。」

 

「あぁ、分かったぜ!」

 

九十九の瞳は光を宿さず、ただ百々を写していた。

 

「……こい」

 

「いくぞ!」

 

百々の台詞と同時に悠岐は刀を抜き、九十九に振り下ろす。

 

「甘い……」

 

悠岐の振り下ろした刀を九十九は軽やかに躱し、代わりに矢を1発悠岐に向けて放った。

 

「それはお互い様だぜ。」

 

九十九の放った矢は悠岐の顔の横を過ぎていった。そんな彼の顔には笑みが浮かんでいた。

 

「かすりも、しない。」

 

「俺のこの目が避けるタイミングを教えてくれるんだぜ!」

 

そう言うと彼は九十九の腹を蹴りつけた。

 

「……『静謐』」

 

九十九の言葉に、百々は驚いたように声を上げた。

 

「悠岐ぃ!その足を退けろ!!」

 

「ッ!!」

 

百々の言葉を聞いた悠岐がはすぐさま足を退けた。しかし、遅かったのだろうか。彼女に触れていた彼の靴は毒によって溶けていた。

 

「大丈夫か!?」

 

「クソッ!二万円もした靴が毒で溶けちまった。魔理沙の奴、まだ見つからないのか?」

 

「気をつけろ。今のアイツは『静謐のハサン』になってる。アイツの身体はすべて毒だ。触れたら死ぬぞ。」

 

「本来なら燃やし尽くしたいところだが仲間だ。そんなことは出来ない。」

 

そんな中、箒に乗って空から敵を探していた魔理沙があるものを見つける。

 

「な、なんだあいつは。屋根の上で百々達を見てやがるぜ。」

 

そう言うと魔理沙はスペルカードを発動した。

 

「彗星ブレイジングスター!」

 

「うおっと!?きゅ、急に何をするんだ!?最近の女の子は暴力的ってか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこかぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言った瞬間、悠岐は屋根の上にいた者の足を掴んだ。

 

「おっと、不味った!!」

 

「感謝するぜ魔理沙!!」

 

そう言うと彼は男を無理矢理屋根から降ろし、そのまま地面に叩きつけた。




遂に九十九を操っていた正体を見つけた悠岐。一体誰なのか!?
次作もお楽しみに!


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第100話 指紋の正体

遂に九十九を操っていた者を見つけた悠岐達。


「いてて・・・」

 

屋根の上から無理矢理地面に叩きつけられた男はゆっくりと起き上がろうとする。その瞬間、彼の前に二人の影が現れる。それに気づいた男はゆっくりと顔を上げる。そこには男に刀を向けている青年とミニ八卦炉を向ける少女がいた。と、刀を向ける青年、悠岐が口を開く。

 

「よぉ、テメェが九十九を操っていた奴か。」

 

「な、なななななんだ君達は!?」

 

「惚けるんじゃないぜ。お前が九十九を操っていたんだろ?」

 

魔理沙が男を睨みながら言う。それに続けて悠岐が口を開く。

 

「テメェ何者だ?それに輝夜の奴はどうした?」

 

「ここまで追い込まれたなら仕方ねぇ。俺の名は寳、飽星寳だ。蓬莱山の奴は知らねぇよ。俺があの店にいった時は星熊九十九しかいなかったからな。」

 

「九十九しかいなかった!?じゃあ輝夜は何処にいったって言うんだ!」

 

「エリュシオンって奴に連れ去られたか・・・。」

 

「クックック、恐らくそうだろうな。エリュシオンさんならやりそうだ。」

 

「輝夜は後で探すとするか。まずはテメェをぶっ殺すことに専念してやる。行くぞ魔理沙!!」

 

「あぁ!!」

 

そう言った瞬間、悠岐は寳に刀を振り下ろした。咄嗟に反応した彼は悠岐の攻撃を避ける。寳の避けた場所には悠岐の攻撃によってへこんだ地面があった。それを見た魔理沙が驚きながら言う。

 

「あ、危ないだろ悠岐!!私まで真っ二つに斬られるところだったじゃないか。」

 

「すまねぇ、確実に奴を殺すつもりで刀を振ったからな。加減が出来なかった。だが、次は仕留める。」

 

「おぉ、怖い怖い。随分と乱暴だな君は。だが、お前らじゃ俺のこの能力には勝てっこないな!」

 

そう言った瞬間、寳は宙に浮かび始めた。それを見た魔理沙が箒に股がり、宙に浮かぶ。

 

「掛かったな。」

 

その一言を発した寳は魔理沙の目の前にいた。

 

「魔理沙避けろぉ!!」

 

「ッ!?」

 

咄嗟に悠岐が魔理沙に言う。だが遅かったのか、魔理沙は目の前で寳の攻撃を食らった。

 

「魔理沙!」

 

ヨロヨロと落ちていく魔理沙を見て悠岐は彼女の元へ走った。そして彼女を受け止めた。それを見た寳が笑い声を上げて口を開く。

 

「アハハハハ!滑稽だな、滑稽過ぎて思わず笑っちまったよ。」

 

「テメェ、ふざけるのも大概にしろよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クッ!」

 

悠岐と魔理沙が寳と戦っている中、百々は寳に操られている九十九と戦っていた。

 

「正気に戻るんだ、九十九!!」

 

「・・・・。」

 

しかし百々が何を言おうとも九十九は彼の言葉を無視して攻撃を仕掛ける。

 

「・・・そうかよ、俺を殺るまで攻撃し続けるか!」

 

そう言うと百々はチラリと悠岐と魔理沙を見る。そして心の中で語る。

 

(負けるんじゃねぇぞ、悠岐に魔理沙。)

 

そして百々は九十九を睨み、言う。

 

「必ずお前を元に戻してやるからな、待っていろ九十九。」

 

そう言った瞬間、悠岐と魔理沙のいる方向から爆発音が響いた。

 

「!?」

 

その瞬間、百々と九十九は同時にその方向を見る。そこには刀を地面に刺し、右腕からは血が垂れている悠岐の姿があった。

 

「悠岐!!大丈夫か!」

 

「バカ百々!!俺に構うな!!」

 

悠岐が言った瞬間、百々の背後から宝具を持った九十九が彼に向かって振り下ろす。

 

「クッ!」

 

咄嗟に反応した百々は九十九の攻撃を避ける。そんな中、悠岐はゆっくりと立ち上がり、寳を見て心の中で語る。

 

(奴の武器は銃。奴は俺の利き腕ばかりを狙っていやがる。さて、どうしようか・・・。)

 

「何か策でも浮かんだのかい?」

 

「さぁ、それはテメェの想像に任せるぜ。それよりテメェ、本当に人間か?」

 

「・・・それは一体どういうことだ?」

 

「テメェは間違いなく霊夢や魔理沙と同じ、人間の筈。なんだがテメェからは人間らしさを感じねぇ。」

 

「・・・それは、俺が人間じゃないって言ってるのか?」

 

「人間じゃないとは言っていない。人間らしさがないと言っただけだ。」

 

「ハッ、知ったこっちゃねぇなそんなこと。」

 

「ま、どうでも良かったことかもな。」

 

そう言った瞬間、悠岐は持っている刀に力を込め始めた。その瞬間、悠岐の肩を銃弾が貫いた。

 

「ぐっ!?」

 

声を上げる悠岐とは別に寳は笑みを浮かべて続けて発砲し、彼の左足を貫いた。

 

「ッ!!」

 

その瞬間、悠岐は自然と膝をついてしまう。それを見た寳がゆっくりと彼の元へ近寄る。そして言う。

 

「残念だったな、剣と銃じゃあ銃のほうが強いのさ。いやしかし君は強かったよ。まさか屋根の上にいた俺を地面に叩きつけるなんて、それは素晴らしかった。」

 

「チッ・・・。」

 

「クックック、そんな顔するなよ。安心しな、こいつらは君の後をすぐに追わせるからさ。」

 

「テ、テメェ!!」

 

「それじゃあね、悪魔のなりかけ。」

 

「悠岐!!」

 

思わず彼の名前を叫ぶ百々。そんな中、悠岐は密かに笑みを浮かべて小声で口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我、堕天の左腕なり。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。発砲しようとした寳の銃に悠岐が刀で貫き、そのまま彼の肩を貫いていた。

 

「なっ!?」

 

寳は一瞬の出来事を理解出来なかった。そんな中、寳の攻撃で気を失っていた魔理沙が目を覚まし、悠岐を見て言う。

 

「ん?ここは・・・。って、あれはまさか悠岐の堕天(モードオブサタン)なのか!?」

 

「堕天化ね。…………は?え、ちょ、マジ?人間がやっていい事だっけそれ!!?」

 

「……は、ハァァァ!?堕天化なんてふざ!ふざけん!ふざけんなよ!!」

 

驚く百々と思わず声を上げる寳とは別に悠岐は笑みを浮かべて口を開く。

 

「随分と喧しい野郎がいるもんだな~。」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、魔理沙の頭の中に疑惑が浮かんだ。

 

(なんだ、あいつの堕天(モードオブサタン)、なんか楓のとは違うぞ。)

 

そんな中、悠岐は刀を手に取ると闇のオーラを漂わせ始めた。それを見た寳が口を開く。

 

「クソッ。九十九!!こいつを始末しろ!!」

 

彼の言葉を聞いた九十九は百々から離れ、悠岐に向かって宝具を投げつけた。

 

「フッ。」

 

鼻で笑った悠岐は九十九が投げた宝具を刀で弾いた。

 

「何ッ!?」

 

思わず声を上げてしまう寳。そんな彼とは別に悠岐が口を開いた。

 

「届けるぜ。地獄を支配した、極上の音をな!!」

 

そう言った瞬間、悠岐の刀に闇のオーラが漂い、そのまま彼は寳に向かって走り出した。

 

「クソッ!!」

 

それを見た寳は彼に向かって何発も発砲する。しかし彼の発砲した弾は闇のオーラによって消えてしまう。そして寳の目の前に来た瞬間、悠岐がスペルカードを発動する。

 

「不覚『ロッキンオン・ヘブンズドア』」

 

その瞬間、悠岐の刀が寳の腹をとらえた。そのまま寳はヨロヨロになりながら倒れた。それを見た悠岐が目を閉じ、口を開く。

 

「ありがとう、サタン。」

 

そう言った瞬間、悠岐はゆっくりと目を開ける。そんな彼の目はいつもの穏やかな黒い目だった。それと同時に呪縛から解放された九十九が辺りを見回しながら言う。

 

「ここは、何処だ?ワタシは確か何でも屋で蓬莱山といた筈・・・。」

 

「九十九!元に戻ったか。」

 

九十九が元に戻ったのを確認した百々が口を開いた。それを見た魔理沙と悠岐が二人の元へ駆け寄る。と、魔理沙が口を開いた。

 

「なぁ九十九、悠岐と百々が人里へ行った後は何も覚えていないのか?」

 

「あぁ、覚えていない。覚えていないというより、思い出せないんだ。一体何があったのか、どうしても思い出せない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クックック、思い出せないようにしたのさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、四人は一斉に後ろを振り返る。そこには出血の量が多いのにも関わらず四人を見る寳がいた。それを見た百々が口を開いた。

 

「テメェ、まだやるつもりか?」

 

「いいや、こいつにはもう戦う力は残っていない筈。」

 

「クックック、その通りさ西田悠岐。」

 

笑みを浮かべて話す寳とは別に九十九が寳を見て言う。

 

「話してもらおうか、お前達の企みを。」

 

「!!」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、三人の体がピクリと反応する。そんな中、寳は口を開く。

 

「俺達の企み。それは星熊九十九、お前の世界を壊したようにこの表の世界全てを破壊するのさ!!」

 

「破壊する、だと?」

 

「そう。俺やエリュシオンさん、闘神や幻獣達が幻想郷だけでなく現世、四角世界(マインクラフト)を壊していくのさ!!」

 

「現世、だと?テメェ、分かってないようだな。現世には五大王という最強の存在がいる。」

 

「分かってないのは君達だ。君達はエリュシオンさんの恐ろしさを知らない。」

 

「おい、エリュシオンって誰だ!?」

 

「エリュシオン・・・パチュリーのところで読んだ本に書いてあって神話の中の奴だと思っていたが実在していたとな驚きだぜ。」

 

「話は変わるがどうせ君達のことだから俺を殺すんだろう?ならば一つ忠告してやるよ。君達じゃあ絶対にエリュシオンさんには勝てない。諦めたほうが身のためだぞ。」

 

「諦めたほうが身のため?そんな訳にはいかない。世界も仲間も家族もみんな失わされたんだ。諦める訳がない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悠岐くーん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如魔理沙達の背後から声が聞こえたため、四人はその方向を見る。そこには黒い髪で赤い瞳の少女と白い帽子をかぶっていて横縞のニーソックスをしている少女がやって来た。二人を見た悠岐が口を開く。

 

「ユニ、楓!」

 

「悠岐、そこにいる二人の鬼は?」

 

「こいつが伊吹百々でこっちが星熊九十九だ。」

 

悠岐が言うと楓は百々と九十九の前にやって来る。彼女に続いてユニも二人の前にやって来る。そして口を開く。

 

「私は楓、出野楓だ。」

 

「私はユニ、アイアルト・ユニよ。」

 

「初めまして、ユニに楓。ワタシは星熊九十九だ。」

 

「俺は百々、伊吹百々だ。」

 

自己紹介を終えた四人は倒れている寳を凝視する。と、楓が口を開いた。

 

「魔理沙、先程の指紋検証の結果なんだが・・・一致する人物は見つからなかった。」

 

「なんだって!?」

 

「そりゃあそうさ。なんせ、エリュシオンさんの仕業だからな。」

 

「エリュシオン・・・。輝夜から聞いた名前だな。お前は奴と何か関わりのあるのか?」

 

「俺はただの協力者だ。」

 

そんな中、何かを思い出した百々が寳に言う。

 

「もう少しで慧音先生と妹紅が此処へ来る筈だな。こいつの管理は二人に任せよう。」

 

「なら尚更だ。こいつを気絶させておこう。」

 

そう言った瞬間、楓は寳の体を起こし、首の後ろをチョップした。その瞬間、寳は気絶してしまった。それを見た九十九が楓に言う。

 

「容赦ないな、お前。」

 

「私は相手が誰であろうと容赦しない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにいたのね、あなた達。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然声がしたかと思うと背後に銀髪を三つ編みにしていて左右で色の分かれる特殊な服を女性とその後ろにおかっぱの赤髪の少女に全身黄色で頭が熊の形をしていて著しい人形がいた。三人を見た魔理沙が口を開く。

 

「永琳、妹子、ピンさんじゃないか。」

 

「どうやら、輝夜は拐われたようね。」

 

「拐われた!?」

 

九十九が驚きを隠せない声を上げる。そんな中、妹子が口を開く。

 

「皆さん、聞いてください。まず始めに私の能力なのですが、私は『世界の出来事を見る程度の能力』なんです。それで私が世界を見たところ、現在月の都で戦が起こっています。」

 

「戦だと?」

 

悠岐が首を傾げる中、ユニが妹子を見ながら口を開く。

 

「戦!?一体何があったの?」

 

「えぇ、実は神霊である純狐がヘカーティア達を連れて嬢娥と決着をつけるみたいです。」

 

「決着をつける、ですって?」

 

「その通りよ、ユニ。」

 

そう言ったのは永琳だった。そして永琳は再び口を開いた。

 

「神霊達は月の都を破壊できるほどの力の持ち主よ。恐らく豊姫や依姫達じゃ勝てる相手じゃないわ。」

 

「月の都って確か紫が母さんと協力して攻めて失敗したんだよな?そんな強い奴等を越える奴がいるのか。」

 

「俺は一度、依姫を刀を交えたことがある。恐らく、油断すればすぐに負ける奴だ。」

 

「大変なのは戦だけではありません。」

 

そう言ったのは妹子だった。そして彼女は再び口を開く。

 

「その月の都に神霊達ではなくまた別の存在がやって来ているんです。」

 

「べつの、存在?」

 

「えぇ、その存在は神霊達や月の都の人達の力を遥かに上回る力を有しています。」

 

「まさか・・・。」

 

「お察しの通りよ九十九。今すぐ幻想郷全土にエリュシオンが来ることを伝えるわよ。」




寳を倒すことに成功した魔理沙達。そんな中、史上最悪の存在が・・・。
次作もお楽しみに!


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第101話 エリュシオン襲来

寳を倒した魔理沙達。そんな中、月の都で戦が起こっていた。


場所は変わって月の都。そこでは幻想郷の死神、小野塚妹子の言葉通り純狐率いる神霊達がヘカーティア達と共に月の都を攻めていた。そんな中、純狐が月の都を指差し、叫ぶ。

 

「やれ!嬢娥を打ち倒すのだぁ!!」

 

彼女の言葉と同時に神霊達が一斉に月の都に向かって走り出す。それに対抗すべく二人の親王、都久(つく)親王と細愛(ささらえ)親王が兵士に指示を出していた。

 

「死守せよ、奴等に嬢娥の元まで行かせるな!!」

 

「何としても食い止める。殃禍の時のようにはさせない。」

 

二人が話している中、綿月姉妹の豊姫と依姫は襲いかかってくる神霊達を次々と倒していった。と、依姫が豊姫に言う。

 

「お姉様!奴らはまだまだ来ます。」

 

「そうね、余美様からの指示が出るまでの辛抱よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嬢娥ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな叫び声と共に純狐が二人の前にいた月の都の兵士二人を吹っ飛ばした。それを見た依姫がため息を吐いて言う。

 

「はぁ、まだ懲りないのですか?博麗の巫女によってあなたは退治されたというのに。」

 

「懲りるわけない!!嬢娥は私にとっての不倶戴天の敵。倒すまで懲りないわ。」

 

「お姉様。」

 

「えぇ、分かっているわ依姫。こいつを嬢娥の元へは行かせないとね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神霊達と月の都の兵士達が戦っている中、都周辺で空間が黒く歪み、そこから一人の女性が姿を現した。女性は戦っている兵士や神霊達を見て笑みを浮かべ、そのままゆっくりと歩いていく。

 

「な、何者だ!?」

 

歩いている最中、一対一を繰り広げていた兵士と神霊の二人が女性を見て叫ぶ。その瞬間、女性は指を鳴らした。

 

「ぐはっ!!」

 

指を鳴らしたのと同時に二人の身体中から鮮血が飛び散り、そのまま二人は息絶えてしまった。それに関係なく女性は再び足を動かし始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことに気づかずに都久親王や細愛親王、サグメはヘカーティア達と戦いを繰り広げる。と、都久親王が口を開いた。

 

「ヘカーティア・ラピスラズリ、これまでの力を有しているとは。」

 

「フッフッフッ、所詮月の都の者達では私には勝てないのよ。勿論、純狐にもね。」

 

「それと地獄の妖精であるあたいにもあんた達は勝てないのよねー。」

 

「クッ、腹が立つ言い方ですが実力は本物。油断出来ませんね、都久親王に細愛親王。」

 

と、話している時に都久親王と細愛親王の前に少し傷を覆った二人の少女がやって来た。

 

「綿月姉妹!!」

 

細愛親王が思わず声を上げたのと同時にヘカーティアとクラウン前に一人の女性が降り立つ。そして言う。

 

「もう諦めるのだな、月人どもよ!!」

 

「私達は、諦める訳にはいかない。」

 

純狐の台詞に首を突っ込んだのはサグメだった。それを見たクラウンがサグメを指差して言う。

 

「あいつ、純狐様に対して無礼な態度をとっています。」

 

「フフフ、それほど私に都を破壊してもらいたいのね。いいだろう、一人残らず始末してやる!!」

 

そう言って純狐は右の手のひらに光を溜め始めた。その時だった。突如都久親王が何かを感じ、辺りを見回す。そして口を開く。

 

「変だ・・・先程まで騒いでいた兵士達と神霊達が急に静かになった?」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、ヘカーティアが辺りを見回す。そして言う。

 

「確かに、あれほど騒いでいたのに静かになっているわね。」

 

と、細愛親王が何かの気配を感じ、剣を構えて辺りを見回しながら言う。

 

「気をつけろ、何かがこちらに来ている。」

 

「フン、何者であろうと私の邪魔をするのならば排除するまでよ。」

 

純狐は溜めていた光を消すと辺りを見回し始めた。と、クラウンがある方向を指差して言う。

 

「へ、ヘカーティア様。あれ!!」

 

彼女が言った瞬間、ヘカーティア達は一斉にその方向を見る。それと同時に豊姫達もその方向を見る。指差した方向を見た瞬間、一同は目を見開く。そこには青い瞳に腰まで伸びる銀髪、白いスーツにスカートを着ていて純狐やヘカーティアより少し背の高い女性が不気味な笑みを浮かべて一同を見ていた。と、サグメとヘカーティアが同時に女性の元へ向かっていく。

 

「ヘカーティア!?」

 

「サグメ様!!」

 

純狐と豊姫が二人の名前を呼んだ中、二人はあることを考えていた。

 

(最悪だ・・・よりによって奴が此処へ来るなんて。)

 

(早く倒さないとマズイことになる。そんなことは絶対にさせないわ!)

 

二人が女性の目の前まで来た時だった。女性は一瞬の動きでヘカーティアの腹を蹴りつけ、サグメの頭を掴み、地面に叩きつけた。

 

「ぐはっ!!」

 

「ぐっ!?」

 

そのままヘカーティアは純狐とクラウンのいる場所まで飛ばされる。そんな彼女とは別にサグメはゆっくり起き上がろうとする。

 

「がっ!?」

 

唐突に女性は起き上がろうとしたサグメの首を片手で掴み、軽々と空中に持ち上げた。サグメは女性の手から逃れようと抵抗するも歯が立たなかった。と、女性はサグメの首を絞めながら口を開く。

 

「仲間とは、良いものなのかしら?」

 

「な、何を言って・・・。」

 

続きを言おうとした瞬間、女性はサグメを豊姫達のいる場所に投げた。そのまま彼女は豊姫達の前で倒れる。

 

「サグメ様!!」

 

すぐさま豊姫が彼女の元へ駆け寄る。そんな中、依姫は二人の前に出てスペルカードを発動する。

 

「終の神剣ヒノカグツチ!!」

 

依姫の攻撃を見た女性は服の中から一丁の銃を取りだした。そして発砲する。発砲した弾は依姫の攻撃を貫き、そのまま彼女の肩に命中した。

 

「なっ!?」

 

依姫の肩から鮮血が飛び散る。そんな彼女とは別にクラウンが女性の頭上に飛び上がった。

 

(この場所なら気づかれない。確実に仕留められる!)

 

クラウンがそう思った時だった。突如女性がクラウンの視界から消えた。

 

「き、消え・・・。」

 

続きを言おうとした彼女であったが既に手遅れだった。女性がクラウンの頭上におり、そのまま彼女を地面に蹴りつけた。そのままクラウンは叫ぶ暇を与えられずに地面に叩きつけられた。彼女が叩きつけられた場所からは砂埃があがる。それを見た都久親王が目を見開きながら口を開く。

 

「我々の兵士で手も足も出ないあの妖精を一瞬で倒すとは・・・!!」

 

驚きだ。その言葉を言おうとした瞬間、クラウンを蹴りつけた女性が都久親王に銃を向けていた。そのまま女性は発砲し、都久親王は肩を撃ち抜かれた。

 

「ッ!!」

 

「都久殿!!」

 

咄嗟に細愛親王が彼の前に出て女性に立ち向かう。細愛親王は太い剣を女性に何度も振りつけるが容易く避けられてしまう。と、女性が再び発砲する構えをとった。

 

「クッ!」

 

声を上げながら細愛親王は防御体制に入る。それを見た女性は不気味な笑みを浮かべてそのまま発砲した。発砲した弾は細愛親王の持っていた剣と着ていた鎧を貫き、そのまま体も貫いた。貫かれた場所からは鮮血が飛び散る。

 

「がっ・・・」

 

腹を貫かれた細愛親王はその場で吐血する。と、その間に純狐が女性の背後に現れ、口を開く。

 

「覚悟しろッ、凶神!!」

 

そう言った時だった。後ろを向いていた筈の女性が一瞬にして純狐の目の前に現れた。

 

「なっ!?(バ、バカな。あの距離で一瞬にして移動してくるなんて!)」

 

そんなことを考えている間に女性は純狐の腹に発勁をした。

 

「ぐはっ!!」

 

腹への衝撃が強かったせいか、純狐はその場でうずくまり、吐血する。その隙に豊姫が扇子を持ち出し、女性の背後に現れる。

 

「サグメ様を傷つけた罰を与えてあげるわ。」

 

彼女が言ったのと同時に女性は銃を構えながら豊姫の元へ向かっていく。あまりの速さに女性はすぐに豊姫の目の前までやってきた。

 

「フフフ。いくら速いといえど、銃では私のこの兵器には勝てないわよ。」

 

そう言った瞬間、女性は彼女に不気味な笑みを浮かべた。その瞬間、女性の持っていた銃が光を出しながらスライム状の形になり、そのまま刀へと変化した。それを見た豊姫は目を見開きながら言う。

 

「そんな!!銃から刀へと変化するなんて!!」

 

驚き叫ぶ彼女とは別に女性は扇子ごと豊姫の胸部を斬りつけた。斬られた場所からは鮮血が飛び散る。そのまま豊姫は何も言わずに倒れた。

 

「お姉様!!」

 

依姫が声を上げる中、都久親王が細愛親王を見ながら口を開く。

 

「細愛殿、奴はまさか・・・。」

 

「あぁ、きっとそのまさかだ。奴は、エデンの楽園から追放され、破壊をもたらす凶神と化した存在、エリュシオン!!」

 

二人が同時にエリュシオンを見た瞬間、彼女は不気味な笑みを浮かべていた。




神霊達と月の都との戦いに乱入してきたエリュシオン。果たして純狐達の運命は!?
次作もお楽しみに!


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第102話 戦いの予感

神霊達と月の都との戦いに乱入してきたエリュシオン。その力は神霊達と月の都の者達を圧倒するほどだった。


エリュシオンの圧倒的な力を受けた純狐達、そして月の都の者達は皆膝をついていた。と、エリュシオンは膝をつく純狐達を素通りして都へと歩いていった。

 

「ま、待て・・・。都には・・・。」

 

サグメが彼女を止めようとするが先程の攻撃により立ち上がることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の都の中へと侵入したエリュシオンはとある部屋を目指していた。と、彼女は独り言を呟く。

 

「さぁ、貰っていくわよ。数千年前にちゃんと予告しておいたのだからねぇ、蓬莱山輝夜。」

 

そして目指していた部屋の前にたどり着いたエリュシオンは鍵がかかっているような硬い扉を容易く開けた。そして中に入る。

 

「さぁ~て、蓬莱の薬はどこにあるのかしらね~?」

 

呑気にエリュシオンは部屋の中を見て回る。と、何かに気づいたのか、突如彼女の高かったテンションが一気に下がった。と、エリュシオンは口を開いた。

 

「・・・ない。何処にもない!!おかしい、確かに数千年前まではここにあった筈・・・。」

 

エリュシオンは部屋にあったテーブルを叩き割った。叩き割った彼女の拳からは血が垂れる。と、エリュシオンは何かを思いついたのか、口を開く。

 

「月の都なら月の都の者が知っている筈。聞き出すしか方法はないようね。」

 

そう言うと彼女は部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、純狐達はようやく体力が回復したのか、立ち上がることが出来た。と、純狐がヘカーティアに言う。

 

「一体あれはどういうこと?まさかエリュシオンが此処へ来るなんて・・・。」

 

「分からないわ。まさかこのタイミングで来るなんて思わないわよ。」

 

二人が話している中、再びエリュシオンが純狐達の前に現れた。それを見た純狐が彼女に言う。

 

「エリュシオン!!覚悟しろ!!」

 

「停止ザ・ワールド」

 

エリュシオンがスペルカードを発動した瞬間、純狐とヘカーティアの体から大量の血が飛び散った。

 

「なっにっ?」

 

「うそ・・・。」

 

そのまま二人は再び倒れてしまった。それを見た月の都者達は目を見開くことしか出来なかった。そんな中、エリュシオンはサグメの元へ歩み寄る。そして彼女の前に立つとそのままエリュシオンはサグメの胸ぐらを掴み、無理矢理立ち上がらせた。そしてエリュシオンは口を開いた。

 

「蓬莱の薬はどこにあるのかしら?数千年前まではあった筈だけれど?」

 

「何の、ことだ・・・。」

 

「惚けるんじゃないわよ。八意永琳と関わりのあるアンタなら知っている筈よ。」

 

「薬は・・・薬は、八意様と輝夜様、嬢娥様が食べ、他は地上へ消えた。」

 

「・・・なるほど、やはりあの子は薬を食べたのね。まぁ食べちゃったり消えちゃったならいいわ。コレクションに出来なかったのは残念だけれどね。嬢娥は数百年前に封印しておいたからもうあの子は驚異じゃない。」

 

そう言うと彼女は軽くサグメを突き倒した。と、エリュシオンの言葉を聞いた純狐が口を開く。

 

「嬢娥を封印、だと?エリュシオン、それはどういうことよ?」

 

「そのままの通りよ?私にとって面倒な子だったから封印しておいたのよ。」

 

「貴様ァ!!」

 

「私を恨むのはよしなさいよ。不倶戴天の敵がもう出てこなくなるのよ?嬉しいことじゃない。」

 

「嬢娥を倒すのは私だ。なのにお前はその嬢娥を封印した!!」

 

「ま、あんたの恨みとかはどうでもいいけれどね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピロリ、ピロリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然エリュシオンの服の中から何かの音が響いた。それを聞いた彼女は服の中から通信機のようなものを取りだした。それを耳につけると彼女は話始めた。

 

「もしもし?あら、ドゥームじゃない。どうかしたの?え、寳が・・・。そう、分かったわ。じゃあまた後でね。」

 

そう言うと彼女は頭を掻きながら通信機を外し、それを服の中にしまった。そしてエリュシオンは純狐を見ながら口を開いた。

 

「これから私は可愛い子供達である闘神達を連れて地上を攻めるわ。」

 

「闘神だと!?」

 

「フフフ、どうやら知っているようね純狐。彼らが一度世界を滅したことをね。」

 

「エリュシオン、まさかお前・・・。」

 

「そう、いずれこの月の都も滅ぼす。私の望む世界を作り上げるわ。じゃあね、純狐。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは霧のように消えていった。純狐達はそれをただ黙って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって幻想郷の無縁塚。そこでは多くの死神達がパニックに陥っていた。それを見た幻想郷最強の魂狩者(ソウルハンター)の小野塚篁は辺りに声をかける。

 

「お前ら落ち着け!!一体何があったんだ!?」

 

と、彼の元へ一人の少女がやって来た。彼女を見た篁はすぐに彼女に声をかける。

 

「小町か、これは一体どういうことだ?」

 

「聞いてくれ兄さん。さっき映姫様から聞いたんだけれどどうやら罪人が一人脱走したみたいなんだよ!」

 

「罪人が脱走だと!?小町、その罪人はどの場所から脱走したんだ?」

 

「北方向だよ。」

 

「北方向?確かそこは俺が唯一担当しない場所じゃなかったか?まさか、その脱走した罪人はそれを狙ったというのか!?」

 

「恐らくね。他の罪人達は北方向担当の死神達が食い止めてる。」

 

「ということは俺達も行かなきゃならないな。妹子がいねぇが俺達も食い止めるぞ小町!!」

 

「勿論だよ兄さん!」

 

そう言うと二人は無縁塚の北方向へと走っていった。




エリュシオンの驚異に無縁塚から脱走する罪人。今後どうなるのか!?
次作もお楽しみに!


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第103話 現世での戦い

月の都を後にした凶神エリュシオンは地上へと向かう。


場所は変わって現世。そこは幻想郷とは違い、辺りが暗くなっていた。そんな夜の中、帝の御所では現世を支配する帝のセコンドがいつものように仕事をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します、セコンド様。中に入ってもよろしいでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉のノックがなったのと同時に男の声が聞こえた。それを聞いたセコンドは扉の反対側にいる男に声をかける。

 

「入るがよい。」

 

「失礼します。」

 

部屋に入ってきたのは白い肌に整った目鼻立ち、赤い瞳に長い銀髪を黒いリボンで束ねている男だった。男を見たセコンドが彼に言う。

 

「ヴァンか、何の用だ?」

 

「先程連絡があったのですが、月の都が神霊達から奇襲を受けたようです。」

 

「神霊達?つまりは純狐達のことか。戦いは起こったのか?」

 

「起こったのですがすぐに終わりました。いいえ、言い方を間違えました。強制的に終わらされたのです。」

 

「終わらされた?どういうことだ?」

 

「エリュシオンが戦いに乱入し、神霊達も月の都の者達も全員その力には敵わなかったようです。」

 

「エリュシオン?グランチやアラヤ殿が危機意識を持っていたあの存在か?」

 

「はい。影舷隊のウロボロス・サーカリアスによるとここへ侵入している可能性があるとのことです。」

 

「エリュシオンがか?ならばすぐに行かなければならんな。ヴァン、ビオラにこのことを伝え、奴を捜索そして撃破するぞ。」

 

「はっ!」

 

そう言うと彼は部屋を出ていった。それを見たセコンドは電話機を使い、番号を打った。そして受話器を耳にあてる。プルルルという音が聞こえた瞬間、ガチャという音が響いた。

 

「もしもし?グランチか?」

 

「・・・もしもし?」

 

受話器から聞こえたのは女性の優しげな声だった。それを聞いたセコンドはすぐに口を開く。

 

「その声は、優理花か?優理花、グランチはいるか?」

 

「はい、いらっしゃいます。」

 

「彼に変わって貰えるか?」

 

「申し訳ございません。グランチさんは今来客の方と会談をしておりますのでそちらへいけないのよ。」

 

「そうか。ならば伝言を残して欲しい。グランチに兵を出兵させることを伝えてくれ。世界を滅ぼす者が現世にやって来た。」

 

「世界を滅ぼす者!?・・・分かりました、伝えておきます。」

 

「ありがとう、優理花。」

 

「それでは失礼します。」

 

そう言った瞬間、優理花は電話を切った。その瞬間、ビオラとヴァンがセコンドの部屋に入ってきた。そしてビオラが口を開く。

 

「セコンド様、ヴァンから話は聞いています。先程準備を終わらせてきたので行きましょう!」

 

「あぁ、行こう。」

 

そう言うと三人は部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって帝王城。そこでは先程セコンドと電話をしていた女性、優理花がある部屋へと向かっていた。そして部屋の前に着いた彼女は扉をノックし、中へと入った。中では現世では帝王と呼ばれた男、メルト・グランチがとある人物と会談をしていた。

 

「失礼します、グランチさん。」

 

「優理花かね?どうかしたのかな?」

 

「セコンドさんからあなたへ伝えたいことがあって先程電話がかかってきました。」

 

「帝から?こんな時間に何用かね?」

 

「世界を滅ぼす者、エリュシオンがここへ侵入している可能性があるので兵の出兵を依頼してきました。」

 

「兵の出兵か。分かった、この会談が終わり次第出兵命令を下す。すまないが優理花、リナと小太郎にこのことを小宝軍やモルト、マーグルに伝えてくれないか?」

 

「分かりました。伝えておきます。」

 

そう言うと彼女は部屋を出ていった。その瞬間、メルト・グランチは前に座っている男を見ながら口を開く。

 

「・・・ということだそうだが、卿の予想が当たったそうだなアラヤ殿。」

 

彼の目の前にいるのは黒いコートを羽織っている男、アラヤだった。彼はメルト・グランチを見て笑みを浮かべながら言う。

 

「私の言った通りだ。やはりここへ攻めてきた。」

 

「卿が両儀式との戦いで奇跡的に生き延び、ここへ来る途中にこの出来事を予言していたのだからねぇ。」

 

「奴が来ることは世界の終わりを示す。故にグランチ殿、一体何をしているのだ?」

 

アラヤが話している中、メルト・グランチはスマートフォンの画面を上下左右に指で動かしていた。彼の言葉を聞いたメルト・グランチは口を開く。

 

「優理花から教えてもらったパ○ドラというパズルゲームなのだが私には難しくてね・・・あ、1コンボしか出来なかった。」

 

そう言った瞬間、彼のスマホの画面にはGAMEOVERという文字が浮かび上がった。そんな中、アラヤが口を開く。

 

「パ○ドラをやっている場合ではないだろうグランチ殿。今は奴に対する対策を考えなければならない。」

 

「基本的に対策法などない。突拍子に現れる者をどうやって対策するのだね?」

 

「それを対策するのも王の役目だろう?」

 

「そうだな。我々五大王で務めなければならぬな。」

 

メルト・グランチが言った瞬間、アラヤは立ち上がり、口を開いた。

 

抑止力(カウンターガーディアン)が発動する要因は間違いなく奴と言っても過言ではないだろう。私の身内が後にやって来る。だが、1つ問題がある。」

 

「ほう、問題とは?」

 

「一応あいつも守護者だ、他の守護者と力比べをしようとしてしまう癖がある。」

 

「他の守護者。というとモルトの妹君(いもうとぎみ)のことかな?」

 

「直接出会ったことはないが、恐らくそうだろうな。それでは私は失礼させてもらおう。」

 

そう言うとアラヤは部屋を出ていった。彼が出ていったのを見たメルト・グランチはあるスイッチを押した。その瞬間、帝王城全体にサイレンの音が響いた。そして彼は口を開く。

 

「帝王城に告ぐ。帝の命令により諸君らに出兵命令が下された。医療班と突撃班は早急に出兵準備を行いたまえ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって現世の街中心部。そこでは一人の女性、エリュシオンが一般人に紛れて街中を歩いていた。と、彼女はあるものを見つけ、口を開く。

 

「自動車ねぇ。中々いいタイプのヤツね。私がいた時代は鉱物すら無かった。」

 

と、突然エリュシオンの右肩を明らかに野蛮な男が掴んだ。そして男は口を開く。

 

「おい姉ちゃん、何触ってんだよ。宇在伍吏羅さんの車だぞ。目ん玉からゲロ吐きてぇのか!!」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは男の手首を掴んだ。

 

「?」

 

男が首を傾げた瞬間、エリュシオンは男の腕をあらぬ方向に折れ曲げた。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

声を上げる男とは別にエリュシオンは笑みを浮かべて口を開く。

 

「ごめんなさいね、お兄さん。アンタの言っている意味がちっとも分からなかったわ。」

 

そう言うと彼女は車、男を放置して何処かへ歩いていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、セコンド達はビオラの運転のもと、車に乗ってエリュシオンを探していた。助手席にはセコンドが、後部座席にはヴァンが乗っている。と、セコンドがヴァンに言う。

 

「ヴァン、一度外を見回してみてくれ。奴が何処かにいるのかもしれない。」

 

「はい、分かりました。」

 

「ハハハ、そう不安な顔をするな。この車のガラスはマジックガラス、外側から見ればただの鏡で内側からは窓になっている。奴に気づかれることはないだろう。」

 

それを聞いたヴァンは外を眺め始めた。その時だった。窓の外から一人の女性が車に向かって光線を放ってきたのだ。

 

「!?」

 

それに気づいたヴァンは咄嗟に身を屈める。その瞬間、ガラスが割れ、光線が彼の上を通りすぎていった。

 

「ヴァン、何があったのです!?」

 

ガラスが割れた音を聞いたビオラが口を開いた。彼女に続いてセコンドが口を開く。

 

「大丈夫かヴァン!其の方はまさか、エリュシオンを見たのか?」

 

「えぇ、信じがたいことですが私は間違いなく奴だと断言出来る者を見ました。エリュシオンは恐らく、我々の想像を絶する能力を持っています。ですが、いくつか分かったことがあります。」

 

一旦一呼吸置き、再びヴァンは口を開く。

 

「エリュシオンは女性で背丈は優理花様よりやや高め、光線を放ってきたことや服の膨らみ具合により銃や剣などといった武器は持っていない。恐らく、弾幕等を得意とする攻撃を仕掛けてくると考えられます。」

 

「なるほど、幻想郷の者達と似たような戦法を持つ方ですか。ですが油断は出来ませんよヴァン。何かしらの方法で武器を生み出すかもしれません。」

 

「ビオラにヴァン、一度車から降りよ。直接奴と戦うぞ。」

 

「はっ!!」




遂に現世にやって来たエリュシオン。セコンド達はエリュシオンの計画を阻止出来るのか!?
次作もお楽しみに!


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第104話 桁外れの能力

現世にやって来たエリュシオンはセコンド達の乗る車に攻撃を仕掛けた。


場所は建物の屋上。そこではエリュシオンが隣の建物へ飛び移りながら移動していた。と、何かを見つけた彼女が口を開く。

 

「フフフ、前方にはセコンドとビオラ・ハイラルド二人しかいない。ヴァン・グレイダーは何処かに隠れているわね。」

 

そう言うとエリュシオンはビオラとセコンドの方を見て言う。

 

「ごきげんよう、地王セコンドに女王ビオラ・ハイラルド。アンタ達に会うのはこれが初めてかしらね?」

 

「其の方がエリュシオンか。」

 

「いかにも、私がエリュシオン。エデンから追放された者よ。」

 

「エリュシオン、あなたは何故この世界を滅ぼすつもりなのですか?」

 

「何故?理由はただ1つよ。この世に生きる人間達全てが気にくわないから。私は昔、ココ・ヘクマティアルという偽名を使って武器商人のふりをして表の世界を生きてきた。」

 

「ココ・ヘクマティアル?聞いたことのある人名です。確か、武器商人の方で突然の敵軍の奇襲攻撃によって命を絶った筈の・・・。」

 

「そう、それが私。しかもその敵軍が知り合いだったのを聞いて身体中の憎悪、憤怒が沸き上がったのよ。そうして数年後、私は敵軍の基地に侵入し彼らを一人も残らずに始末したわ。」

 

「あの事件のことか。その黒幕が其の方だというのだな、エリュシオン。」

 

「然り。私はこの世が嫌い。故に人間も嫌い。そして私のお気に入りと同じ存在も嫌い。だから私は子供達と共に裏の世界の幻想郷を滅ぼしたわ。」

 

「なっ、裏の世界の幻想郷を!?」

 

「そこに私のお気に入りと同じ存在がいたからね。けれども、表の八雲紫がそいつを助けた。」

 

「それは一体・・・。」

 

「それは会ってからのお楽しみよ。なんなら幻想郷にでも行ってみなさい。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは後ろに目を向ける。彼女の背後にはヴァンが戦闘体制に入っていた。それを見たセコンドが心の中で言う。

 

(ヴァンの存在に気づいていたか・・・。)

 

セコンドを気にせずエリュシオンは後ろを振り返り、ヴァンに言う。

 

「アンタが最初に殺されたいの?」

 

「私はセコンド様や陛下、亡き友のために戦う。死ぬわけにはいかない!」

 

「亡き友?あぁ、仲間を庇ってクレイジーハンドに殺された山下啓介のことね。下らない。」

 

彼女が言った瞬間、ヴァンは銃を構える。それを見たエリュシオンが口を開く。

 

「さぁ、始めましょうか。」

 

そう言った瞬間、ヴァンはエリュシオンに向かって発砲した。それを見た彼女は笑みを浮かべながら攻撃を避けていく。

 

「ヴァンの攻撃が当たらない!?」

 

二人の戦いを見て驚愕しながらビオラが口を開く。そんな中、セコンドが口を開く。

 

「あの様子を見る限り、奴は侮れぬ相手だな。」

 

話す二人とは別にエリュシオンはヴァンの攻撃を避けながら口を開く。

 

「どうした?その程度の攻撃では私にダメージなんて与えられやしないわよ。」

 

「クソッ!!」

 

思わず悔しさの声を上げるヴァン。そんな彼とは別にエリュシオンは笑みを浮かべながら言う。

 

「さぁ、もっと私との戦いを楽しませてちょうだい。ヴァン・グレイダー!!」

 

そう言った時だった。突如エリュシオンに向かって大量の針が飛んできた。

 

「!?」

 

それを見たエリュシオンは少し慌てるも冷静さを取り戻して針を避ける。

 

「これは、ヴァン・グレイダーのニードルスパイラル!!」

 

口を開きながらも彼女は攻撃を避け続ける。そんな彼女とは別にヴァンは攻撃し続ける。と、ビオラが口を開く。

 

「セコンド様。今のところ、どちらが勝っていると思いますか?」

 

「余が見る限りではヴァンが奴を押している。だが油断大敵。形勢逆転されるかもしれぬ。」

 

二人が話している中、エリュシオンは攻撃を避けながら口を開く。

 

「随分と面白い戦いを見せてくれるわね、ヴァン・グレイダー。アンタになら見せていいかもね。」

 

「ようやく出すか、お前の能力を!!」

 

「さぁ、知るといいわ。私の能力はまさに全ての世界を支配するのに相応しい能力だということを!!」

 

「出してみろ、エリュシオン!!」

 

ヴァンが言った瞬間、エリュシオンは服の中から一枚のカードを取り出した。

 

「抹消『努力の消滅』」

 

そう言った瞬間、彼女の持っていたカードが光だした。しかし何も起こらない。それを見たセコンドが口を開く。

 

「そうか、ヴァンは吸血鬼だから奴の攻撃が効かないのだ!!」

 

「なっ!?」

 

思わず声を上げるエリュシオン。そんな彼女とは別にビオラがヴァンに言う。

 

「今ですヴァン。奴を倒すんです!!」

 

「くらえ、ニードル・スパイラル!!」

 

そう言った瞬間、ヴァンは目を見開くエリュシオンに攻撃を放・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とうとしたが異変が起こった。ヴァンは攻撃が放てなかった。それを見たビオラが彼に言う。

 

「何をしているのですヴァン。早く奴に攻撃を!」

 

「ヴァン、何を躊躇っているのだ!!」

 

二人がヴァンに言う中、彼は目を見開いたまま動かなかった。そんな中、エリュシオンが笑みを浮かべながらヴァンに言う。

 

「どうやら、技を放てないようね。ヴァン・グレイダー。」

 

そう言うと彼女は服の中から一冊の本を取り出し、開いた。開いた本の中から銀色の光る石が現れた。それを手に取ったエリュシオンは石に唇をつけた。その瞬間、石が銀色の杭へと変化した。

 

「ヴァン、逃げて!!」

 

「・・・はっ!!」

 

ビオラの言葉にヴァンは我に返る。だが既に遅かった。エリュシオンの投げた銀の杭が彼の心臓を貫いた。そのまま彼は勢いで吹っ飛んだ。

 

「ヴァン!!」

 

二人が同時に彼の名前を呼ぶ。そんな二人とは別にエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「フフフ。さぁ、次はアンタ達よ。」

 

彼女が話している中、建物の屋上でヴァンは心の中で一人語っていた。

 

(何故攻撃を放てなかったんだ・・・。待て、考えろヴァン・グレイダー。奴のスペルカードを思い出すんだ。努力の消滅・・・力が消える・・・能力の抹消・・・能力、削除・・・!!)

 

と、何かを思いついたヴァンが目を見開きながら再び心の中で語る。

 

(わ、分かったぞ。何てことだ、これ以外考えられない。は、早く、陛下やセコンド様に伝えなくては・・・皆が、負けてしまう!!)

 

と、ビオラがエリュシオンに向かって言う。

 

「よくもヴァンを!!許しません!!」

 

「許す許さないはアンタ達の自由。好きになさい。」

 

そう言うとエリュシオンは右手にスライムを持ち、スライムを銃へ変化させた。と、セコンドが口を開く。

 

「其の方のその笑み、すぐに消し去ってやろう!!」

 

「ククク、出来るものならやってみなさい。所詮アンタ達には無理なことよ。」

 

三人が話している中、ヴァンは心臓部分に負担を掛けないようにゆっくりと体を起こす。

 

「ガハッ!!」

 

だが彼の心臓に負担が掛かってしまい、その場で吐血する。

 

「ハァ、ハァ。」

 

息が荒くなりながらもヴァンは無理矢理でも体を起こす。そんな中、エリュシオンがビオラとセコンドに向かって言う。

 

「ビオラ・ハイラルド、セコンド。死ね!!」

 

そう言うと彼女は銃を二人に向け、発砲しようとした。その瞬間、無理矢理体を起こしたヴァンはエリュシオンに向かってナイフを投げつけた。

 

「なっ!!」

 

ナイフに対応出来なかったエリュシオンは声を上げる。そのまま彼女の左目にナイフが刺さり、血が飛び散る。そのままエリュシオンは倒れる。そんな彼女とは別にビオラとセコンドはヴァンの元へ向かう。彼は力尽きたように地面に仰向けに倒れていた。

 

「陛下、セコ・・・ンド様・・・。」

 

彼の言葉は弱々しくなっていた。ビオラはそんな彼の手を優しく握る。と、セコンドが口を開く。

 

「ヴァン、無茶したな。」

 

「私は・・・もう、な・・・長く、は・・・持ちません。」

 

「ヴァン、あなたは十分活躍しました。ですがお願いです。私の元から、離れないでください!!」

 

そう言うと彼女は強く冷たくなる彼の手を涙を流しながら握った。そんな彼女にヴァンは微笑みを浮かべ、言う。

 

「陛、下・・・。あなたに、伝えた、いこと・・・が、あります・・・。」

 

「なんです?ヴァン。言ってください。」

 

「や、奴は、危険です・・・。奴の、能力は・・・・です。」

 

ヴァンの声が途切れ途切れになってしまうため、二人はその部分を聞き取ることが出来なかった。そんな彼にビオラが口を開く。

 

「ヴァン、今なんと言ったのです!?」

 

「気を、つけ・・て・・・下さい。生き残って下さぃ・・・。」

 

その瞬間、ビオラの手を握っていたヴァンの手の力が緩み、そのまま彼は目を閉じてしまった。

 

「・・・ヴァン?何をしているのです?目を開けてください。ヴァン!!」

 

ビオラの目から溜まっていた涙が一斉に流れ始めた。それを見たセコンドが口を開く。

 

「ヴァン・・・すまない。」

そんな彼の目にはビオラ同様、涙が流れていた。




エリュシオンとの戦いで命を落としてしまったヴァン。
次作もお楽しみに!


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第105話 能力削除

エリュシオンとの戦いにより命を落としてしまったヴァン。


悲しむ二人とは別にエリュシオンはナイフの刺さる左目を押さえながら言う。

 

「よくも私の目をやってくれたわねヴァン・グレイダー。まぁ、いい。始末できただけマシだわ。」

 

と、ビオラが握っていたヴァンの手を放し、エリュシオンを見て言う。

 

「あなたは私とセコンド様で始末します。ヴァンを殺された恨みは大きいですよ。」

 

「覚悟するがいい、異形の者よ。」

 

そう言うと二人は戦闘体勢に入った。それを見たエリュシオンは笑みを浮かべながら言う。

 

「フフフ、正義を気取るのねセコンド。アンタはかつて帝王メルト・グランチと共に幻想郷を破壊しようとした存在。」

 

「そんな過去などもう余には必要ない!!」

 

そう言うとセコンドは勺をエリュシオンに振り下ろす。

 

「フフッ。」

 

エリュシオンはそれを笑みを浮かべながら容易く避けた。そんな中、ビオラが息絶えたヴァンに言う。

 

「ヴァン、あなたの仇は必ずとって見せます。ですので今はゆっくりと休んでいてください。」

 

そう言うとビオラはセコンドとエリュシオンが戦っている場へ向かう。

 

「動震『大地の刃』」

 

スペルカードを発動するとセコンドは勺に溜めていたエネルギーをエリュシオンに放つ。それを見たエリュシオンはスペルカードを取りだし、発動する。

 

「完防『イージス』」

 

その瞬間、エリュシオンの回りに紫色の結界が現れ、そのままセコンドの放った攻撃を防いだ。

 

「そんな、セコンド様の攻撃を防ぐなんて!!」

 

思わず声を上げるビオラ。そんな彼女とは別にエリュシオンは再びスペルカードを発動する。

 

「貫通『ゲイボルグ』」

 

その瞬間、エリュシオンの空いている左手に緑色の槍が現れた。そして口を開く。

 

「さぁ現世の絶対なる支配者セコンド。アンタはこの攻撃に耐えられるかしら?」

 

そう言うと彼女は槍をセコンド目掛けて投げつけた。それを見たセコンドはエリュシオンに言う。

 

「良かろう、其の方の攻撃、見事耐えて見せようぞ!」

 

そう言うとセコンドは勺を構え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セコンド様は私がお守りします!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、セコンドの前にビオラがやって来てエリュシオンの攻撃を防いだ。それを見たセコンドが彼女に言う。

 

「ビオラ!!」

 

「ご無事ですか?セコンド様。」

 

「ビオラ、無茶はするな。例え其の方の能力であろうと油断は禁物だ。」

 

「申し訳ありません、セコンド様。」

 

二人が話している中、エリュシオンは目を細めて言う。

 

「そっか、確かアンタの能力は『攻撃を受けない程度の能力』だったわね。だからどんな強大な力を持った攻撃であろうと回りに被害をもたらすことなく防げる。ガイルゴールもよくそんな能力与えたわね。」

 

「・・・何が言いたいのです?」

 

「簡単なことよ。アンタを始末する、それだけよ。」

 

その言葉を聞いたセコンドはエリュシオンに言う。

 

「そう容易くはやらせぬぞ。ビオラにヴァンと同じ運命を辿らせる訳には行かぬ!!」

 

「無理無理、私の能力を分かってない以上はそんなこと出来ないわ。」

 

「やってみなければ分かりません!!」

 

そう言うとビオラは光の玉をエリュシオンに向けて放った。それを弾いたエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「さっきのヴァン・グレイダーとの戦いを見てなかったの?」

 

「・・・いいえ、見てましたとも!!」

 

そう言った瞬間、ビオラの顔に笑みが浮かんだ。それを見たエリュシオンは首を傾げる。そんな彼女とは別にビオラが急に叫んだ。

 

「今ですセコンド様!!」

 

「なっ!?」

 

その言葉を聞いた瞬間、エリュシオンは咄嗟に後ろを振り返る。それと同時に彼女の背後にいたセコンドが彼女の左腕を斬り落とした。

 

「ッッ!!?」

 

斬り落とされた場所からは鮮血が垂れる。その激痛に思わず声を上げるエリュシオン。そんな彼女とは別にビオラはスペルカードを発動する。

 

「雷鳴『天命の雷』」

 

そう言った瞬間、空から一つの雷がエリュシオンに向かって落ちてくる。それを見たセコンドは咄嗟に避ける。

 

「ぐわぁぁぁ!!」

 

雷を受けたエリュシオンは声を上げる。そして雷が落ちた場所が爆発した。間一髪で雷を避けたセコンドはビオラの元へ行き、口を開く。

 

「危ない行為だったが、よくやったビオラ。」

 

「いえ、これもセコンド様の配下の役目です。」

 

ビオラが話している中、セコンドは爆発した場所を凝視し、言う。

 

「・・・奴は、倒せたのか?」

 

「分かりません。倒せればいいのですが・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「倒せるわけないでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!!」

 

後ろから声が聞こえたため、二人は咄嗟に後ろを振り返る。

 

「ぐはっ!!」

 

その瞬間、セコンドが背後にいた者に蹴り飛ばされた。

 

「セコンド様!!」

 

蹴り飛ばされたセコンドの元へビオラが向かおうとした時だった。グサッという音と共にビオラの左目に何かが刺さった。

 

「ぐっ!?」

 

突然の出来事に頭が混乱するビオラは空いている右目で左目に刺さっているものを見る。彼女の左目に刺さっていたのは人の右手の親指だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや、この程度で私を倒せるとでも思っていたのかしら?ビオラ・ハイラルド。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえたのと同時にエリュシオンが笑みを浮かべてビオラの側に現れた。右手の正体はエリュシオンだったのだ。

 

「くっ、なんで・・・。」

 

ビオラは刺さるエリュシオンの手を掴み、放そうとするが固く、放れなかった。それと同時に驚きの声を上げる。無理もない、先程セコンドによって斬り落とした筈の右腕とヴァンによって刺された筈の目が何事もなかったかのように元に戻っているからだ。と、エリュシオンが笑みを浮かべて言う。

 

「この程度で死ぬくらいなら誰だって苦労しないわよ。そして、折角だから教えてあげる。私の能力は『能力を削除する程度の能力』。つまり相手が保持している能力をこの世から抹消することが出来る。」

 

「ま、まさ、か・・・。」

 

「そう♪私はビオラ・ハイラルド、アンタの能力を削除させてもらったわ。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、ビオラの頭の中が空っぽになった。そんな彼女とは別にエリュシオンが再び口を開く。

 

「そうだ、おまけにもうひとつやってあげる。アンタのそのヘッドフォンを壊して耳の真実を暴いてあげる。」

 

「エリュシオン、止めろ!!」

 

咄嗟にエリュシオンに言うセコンド。そんな彼を見て彼女は見下すような目をして言う。

 

「残念だけど、止めるつもりはないわ。人間に恨みのある私が人間の言葉を聞くと思う?」

 

「止めろ!!」

 

「答えは、NOよ。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンはビオラがつけているヘッドフォンを指で弾いた。その瞬間、ヘッドフォンが粉々に砕け、中から血が飛び散った。そのままビオラは倒れてしまう。

 

「ビオラ!!」

 

すぐに彼女の元へセコンドが駆け寄る。そんな中、エリュシオンがセコンドに背を向けて言う。

 

「これから私は幻想郷へ向かう。現世は少し来るのが早すぎた。じゃあ、また会いましょう。」

 

そう言うとエリュシオンは霧のように消えていった。それと同時に屋上の扉が開き、白い服を着た男達がやって来た。そしてセコンドに言う。

 

「帝王軍の救護部隊です。怪我人は!?」

 

「・・・余はいい。ビオラとヴァンを頼む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビオラとヴァンが救護部隊に救護されている中、セコンドはその様子を黙って見ていた。と、そんな彼の元へ一人の人物がやって来た。それに気づいたセコンドが人物に言う。

 

「・・・グランチか?」

 

「然り。」

 

やって来たのは長身で後ろ髪を束ねていて両腕を背に回している男、メルト・グランチだった。と、メルト・グランチが口を開く。

 

「残念だな、まさかヴァンが死ぬとはね・・・。」

 

言葉を発する彼の声は少し震えていた。そんな彼にセコンドが言う。

 

「奴との戦いに犠牲はつきものだ。だが、何故ヴァンが死ななければならなかったのだ・・・。それに、ビオラに至っては聴力、片方の視力、そして能力を失った。」

 

「帝の優秀な者がこの有り様になるのだから奴は相当侮れぬ相手だな。」

 

「あぁ、そうだな。故にグランチ、何故救護部隊が来るのが遅くなったのだ?」

 

「あぁ、それはだな。卿は分からないがこちらに巨大不明生物が出現したのだよ。」

 

「なんだと!?」

 

「死傷者は確認されていないのだが、建物による被害が多かった。」

 

「その巨大不明生物とは?」

 

「身長約15m、推定体重10トン、そして人間に近い動きをしたゴリラだった。」

 

「・・・ゴリラだと?」

 

「動物園から脱走の報告もなければ飼育している住人もいない。恐らくエリュシオンとやらが送ったのだろう。」

 

「そいつはどうした?」

 

「帝王軍で始末し、今は研究部隊に研究させている。」

 

「・・・グランチ、1つ頼みがある。」

 

「なんだね?」

 

「・・・。」

 

セコンドは手に握りこぶしを作り始めた。そんな彼の手から血が垂れる。そして口を開く。

 

「・・・幻想郷へ向かってくれ。エリュシオンは今そちらに行っている。」

 

「幻想郷にか。分かった、マーグルを連れて行こう。ビオラは優理花に任せておく。」

 

「分かった、頼んだぞ。」

 

「承知した。」

 

そう言うとメルト・グランチは何処かへ行ってしまった。それを見届けたセコンドは空を見ながら言う。

 

「頼んだぞ。黒き友、氷の友、そして招来の友達よ。」




エリュシオンによって様々なものを失ったビオラ。幻想郷へ向かうメルト・グランチ。
次作もお楽しみに!


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第106話 回顧

エリュシオンによって様々なものを失ったビオラ。そして幻想郷に向かうメルト・グランチとマーグル。


場所は変わって幻想郷の玄武の沢。そこではユニ、霊夢、魔理沙の三人が歩いていた。と、ユニが口を開く。

 

「みんな大丈夫かなぁ。少し不安になってきたわ。」

 

「大丈夫だぜユニ。みんなお前のことを信じている。」

 

「そうね、そんな心配することないわよ。」

 

「不安なのよ。私の判断が本当に正しいのか。悠岐君には地霊殿を頼み、楓ちゃんには魔法の森を任せて、百々と九十九には無縁塚をお願いしたんだけれど・・・。」

 

「楓は少し不安そうな表情をしていたけれど大丈夫よ。楓を信じなさいユニ。」

 

「・・・うん、そうね。」

 

「なんだユニ。他に何か心配なことがあるのか?」

 

「うん。実は私、少し気に入っている人がいてね、その人が大丈夫かなぁって心配しているの。」

 

「へぇ、ユニに好きな人が出来たなんて以外だぜ。それで、その人は誰なんだ?」

 

「それは・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフフフフ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

突然玄武の沢に響く笑い声にユニ達は声にならない声を上げる。と、魔理沙が口を開く。

 

「何者だ!隠れてないで正体を見せるんだぜ!!」

 

「フフフフフフ。」

 

再び笑い声が聞こえたかと思うとユニ達の前の空間が突如歪みだした。そして歪みが治まったのと同時にユニ達の前に青い瞳に腰まで伸びる銀髪、白いスーツに白いスカートを履いている背の高い女性が姿を現した。

 

「あ、あんたは・・・。」

 

呆然となりながら口を開く霊夢。そんな彼女とは別に女性が口を開く。

 

「初めまして、幻想郷の守護者達。私の名前はエリュシオンよ。」

 

エリュシオン、という言葉を聞いた瞬間、ユニ、霊夢、魔理沙は同時に戦闘体勢に入る。そんな三人を見たエリュシオンが口を開く。

 

「まぁまぁ少しは落ち着きなさいよ。どうせ世界は私の手によってゆっくりと壊れるのだからそう焦ることはないでしょう?」

 

「落ち着けるわけないぜ。お前がエリュシオンと聞いたからにはただじゃおかないぜ。」

 

「ただじゃおかない、ねぇ。私はただ、アンタ達と話がしたかっただけよ。」

 

「話、ですって?」

 

ユニ、魔理沙、エリュシオンが話している中、霊夢はエリュシオンを見て何かを感じていた。と、エリュシオンが霊夢を見て言う。

 

「ほう。博麗霊夢、アンタ私のことを知っているような目をしているわね。」

 

「えっ?」

 

「霊夢お前、あいつを知っているのか?」

 

「知らないわよ。ただ、あいつと同じような感覚を持った奴と出会ったことがあるなって思っただけよ。」

 

「ん~?それは二年前の異変を起こしたあの子達のことかしら?」

 

「二年前の異変を起こしたって・・・まさか、セコンドやメルト・グランチのことか!?」

 

「そう、アンタ達は違和感なく戦ってたけれどね。」

 

「違和感、ですって?」

 

「アイアルト・ユニこと八意百合姫には分からない話よ。博麗霊夢に霧雨魔理沙、アンタ達、おかしいとは思わなかったの?」

 

「・・・・。」

 

「現世を攻める理由のないセコンドとメルト・グランチが唐突に幻想郷を攻め込んできたこと。現世で滅んだ筈の大魔王こと黒田輝宗が幻想郷へ攻め込んだこと。決して出会う筈のない覇王クリーフルとハイラル王国の悪の化身ガノンドロフが幻想郷へ現れたこと。そしてカオスが幻想郷へやって来たことも、一度もおかしいとは思わなかったの?」

 

「・・・それはどういうことなの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これらは全て、私の策略よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですって!?」

 

思わず同時に声を上げるユニ達。そんな彼女達とは別にエリュシオンは再び口を開く。

 

「勿論。そしてメルト・グランチが博麗霊夢、アンタに言っていた博霧合戦も私の仕業。博麗家と霧雨家を滅ぼしたのは私よ。」

 

「・・・なんだと。」

 

歯を食い縛りながらエリュシオンを睨む魔理沙。彼女に気にせずエリュシオンは話を続ける。

 

「しかし操りやすいわね、表の者達は。」

 

「操りやすい?」

 

「そ、裏の世界の者達と比べれば断然操りやすいわ。」

 

「じ、じゃあセコンド様やメルト・グランチ様を操っていたのは!!」

 

「そう、私よ。セコンドもメルト・グランチもクリーフルもガノンドロフもカオスも、術を掛ければ思うがままに動くただの道具(おにんぎょう)よ。でもカオスの時は失敗したわね。あの子、無の存在だから操ってもすぐに術を解くこと出来るのよねぇ。」

 

「一人で話しているところ申し訳ないのだけれどエリュシオン。あなたは何の目的で世界を壊すの?」

 

唐突に話しているエリュシオンに首を突っ込んだのはユニだった。そんな彼女にエリュシオンは言う。

 

「良いわ、お答えしましょう。私が世界を壊す目的、それは私の望む世界を作るため。そのためならば表の世界など私には必要ない。」

 

「何ですって!!」

 

「だから私は片っ端から世界を壊していく。月の都を最初に攻めたけど純狐達がいたからちょっと面倒だし次に現世を攻めたけど五大王が厄介だったわね、後回しにした。」

 

「フフッ、流石五大王ね。」

 

「けども地王セコンドの部下であるヴァン・グレイダーとビオラ・ハイラルドを始末したわ。」

 

「えっ!?」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、ユニは目を大きく見開く。そんな彼女とは別にエリュシオンは再び言う。

 

「ビオラ・ハイラルドの場合は視力、聴力、そして能力を不自由にしたわ。少しは後に楽になれるよ。」

 

「お前・・・。」

 

「許さない!!」

 

何かを言おうとした魔理沙より先にユニが涙を流しながら空間から剣を取りだし、エリュシオンに向かっていく。

 

「待てユニ!!」

 

魔理沙がユニを止めようと声をかける。しかし彼女の耳に魔理沙の声は届かなかったのか、ユニは彼女の言葉を無視し、エリュシオンに剣を振り下ろした。

 

「滑稽ね。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンはユニの手首を掴み、そのまま地面に叩きつけた。

 

「ぐっ!?」

 

「ユニ!!」

 

ユニの名前を呼ぶ霊夢と魔理沙。そんな彼女とは別にエリュシオンはユニを地面に組み伏せ、言う。

 

「誰かを呼び寄せることしか出来ないアンタに私を倒せるとでも思ったのかしら?」

 

そう言うと彼女は組み伏せていたユニの腕を放し、そのまま彼女の頭を掴み、持ち上げた。そして言う。

 

「今のアンタじゃ私には勝てないわ。勿論、西田悠岐や出野楓、星熊九十九、伊吹百々でもね。それにアンタ、ヴァン・グレイダーという名を言った瞬間、顔色が変わったけどそんなに彼が大事だったのね。ごめんね~、殺しちゃって。」

 

そう言うと彼女はユニを霊夢と魔理沙のいる場所へ投げた。

 

「くっ!!」

 

「ユニ!」

 

倒れるユニの元へ霊夢が駆け寄る。と、魔理沙がエリュシオンに言う。

 

「なぁエリュシオンさんよ。1つ聞きたいことがあるんだが、輝夜は何処だ?」

 

「輝夜?それは蓬莱山輝夜のことかしら?」

 

そう言った瞬間、ドゥンという音と共にエリュシオンの足元に倒れる輝夜が現れた。

 

「輝夜!!」

 

三人が揃えて声を上げる。と、エリュシオンは輝夜の胸ぐらを掴み、持ち上げた。そして空いている右手で彼女の首を指差す。彼女の首には噛まれたような傷痕が残っていた。それを見たユニがエリュシオンに言う。

 

「エリュシオン!!輝夜に何をしたのよ!!」

 

「ちょいと血をもらっただけよ。安心しなさい、気絶しているだけよ。」

 

そう言うと彼女は輝夜をユニ達の方へ投げた。

 

「輝夜!!」

 

それを見た霊夢が輝夜を受け止める。そんな中、エリュシオンが口を開く。

 

「さぁて、お喋りも過ぎたし、私はそろそろ・・・。」

 

と、彼女が続きを言おうとした時だった。突如エリュシオンの背後に何かが落ちてきた。その衝撃で地響きがなる。そんな中、エリュシオンはゆっくりと後ろを振り返る。

 

「エェェェェリュシオォォォォォォン!!」

 

上から落ちてきたのは背丈は4mほどで四つの腕に大きな翼を持っている悪魔のような姿をした異形なものだった。異形のものはエリュシオンの名前を叫ぶとそのまま彼女に拳を叩きつけた。それを見たユニ達が同時に声を上げる。

 

「カオス!!」




突如現れたカオス。一体何故・・・。
次作もお楽しみに!


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第107話 カオス再臨

エリュシオンから告げられる過去の異変の真実。そんな中、ガイルゴールによって地獄へ送られた筈のカオスが姿を現す。


カオスの攻撃を間一髪避けたエリュシオンは目を細めた言う。

 

「あれ?アンタガイルゴールによって地獄の奥底に送られた筈なのに・・・。まさか、私への未練が果たせないからって地獄の奥底から舞い上がってきたというの?」

 

「そうだエリュシオン。我は貴様への恨みを果たすためにわざわざ地獄の奥底から舞い上がってきたのだ!!」

 

「あのまま地獄にいればよかったのに。そのほうが私にとってやりやすかったのにね。」

 

「黙れ!!我が軍の4割を殺戮した貴様を我は許しはしない!!」

 

「・・・自分の幹部的な存在であるアヌビスとペルセポネを食ったというのに、よくそんなことが言えるわね。」

 

「なっ!!」

 

彼女の言葉を聞いてカオスは言葉を詰まらせてしまう。そんな中、エリュシオンが再び口を開く。

 

「アンタ、仲間を大切にしているいい奴を気取っているつもりね?正直なところ、アンタには部下に対しても他人に対しても慈悲はない。所詮アンタはただのクズ野郎よ。」

 

「黙れェェェェェェェェェ!!」

 

そう言うとカオスは再びエリュシオンに拳を叩き込む。その瞬間、エリュシオンも右手に握り拳を作り、カオスの拳を殴る。その瞬間、拳を叩き込もうとしたカオスの腕がユニ達の背後に飛んでいき、落ちた。

 

「何ッ!?」

 

思わず声を上げるカオス。そんな中、エリュシオンが笑みを浮かべて言う。

 

「バァァァァァァカ。アンタより私のほうが強いのは当然だってのによく挑んできたわね。」

 

目を見開くカオスと不気味な笑みを浮かべるエリュシオンとは別にユニが口を開く。

 

「私達があんなに苦戦したあのカオスの攻撃を意図も簡単に弾くなんて!!」

 

「あいつ、相当ヤバイぜ。下手すれば全ての世界の崩壊も考えられる。」

 

ユニと魔理沙が話している中、カオスがエリュシオンに言う。

 

「我は、貴様を倒すまで戦い続けるぞエリュシオン。」

 

「今の攻撃を食らってもよくそんなことが言えるわね。ならいいわ。琥珀・イーグナウスや星熊九十九を処理する前にまずアンタを始末してあげる。」

 

そう言うとエリュシオンは服の中からスライムを取り出した。その瞬間、スライムが銃の形へと変化し、そのまま銃になった。それを見たカオスが口を開く。

 

「ぬ、面倒な・・・。」

 

カオスが言った瞬間、エリュシオンはカオスに向かって発砲する。あまりの速さにカオスは避けられず、翼を撃ち抜かれた。

 

「何ッ!?」

 

と、ユニが目を大きく見開きながら言う。

 

「なんて強さなの?あのカオスが容易く怪我をする強さの銃なんて聞いたことがないわ!!」

 

ユニの言葉に反応したエリュシオンが銃を見ながら言う。

 

(これ)?これはね、チェスター大聖堂という場所の銀十字を溶かして作った15mm爆裂徹甲弾を装填した454カスール改造弾。これを食らって平気で立っていられる奴なんて存在しないわ。」

 

「!?」

 

「ちなみに昔、ヘルシング卿の人間に雇われていた吸血鬼、アーカードという男がこれと似た銃を使っていたけれども私のはあの子のよりも優れている。」

 

15mmという言葉を聞いた瞬間、ユニと魔理沙の体がピクリと反応する。そんな中、エリュシオンはカオスに銃を打ち続ける。カオスはそれをなんとか避けようとするが体が大きいのと銃弾の速さが速いため、避けるにも避けられなかった。と、エリュシオンがカオスに言う。

 

「あらあら?どうしたの~カオス。私を倒すって言った割には全然戦えてないじゃない。」

 

「黙れ!我はまだ本当の力を見せてない!!」

 

「アンタが本当の力を出す?アハハ、笑わせないでよ。アンタは本当の力を出す前に私に倒されるのだから見せる必要なんてないわ。」

 

「貴様ァァ!」

 

そう言うとカオスは身体中傷だらけなのに関わらずエリュシオンに襲いかかる。そんな中、エリュシオンはスペルカードを取りだし、発動する。

 

「雷鎚『ミョルニル』」

 

スペルカードを発動した瞬間、幻想郷に雷雲が突如漂い

始めた。そして雲の中から巨大なハンマーのようなものが現れた。それを見たカオスが目を見開きながら言う。

 

「こ、これは・・・。」

 

「アンタには圧倒的という言葉の意味を教えてあげるわ。」

 

そう言うと彼女は右腕を上げ、振り下ろす。その瞬間、空中を浮遊していたハンマーが雷を纏いながらカオス目掛けて振り下ろされた。

 

「伏せて!!」

 

ユニの言葉を聞いて霊夢と魔理沙は輝夜を抱えて草影に身を縮めた。その瞬間、激しい爆風が当たりを襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆風の勢いが治まると草影に隠れていたユニ達はそっと顔をだし、身を乗り出す。と、霊夢が口を開く。

 

「カオスの奴、一体どうなったの?」

 

「分からないぜ。回り砂埃だらけで何も見えない。」

 

「しばらくしたら晴れると思うよ。」

 

そう言った瞬間、砂埃がゆっくりと晴れていき、砂埃の中にいた者が姿を現した。

 

「なっ!?」

 

中の様子を見てユニ達は思わず声を上げる。中には倒れるカオスをじっと見つめるエリュシオンの姿があった。と、エリュシオンが突然指を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グガァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の雄叫びと同時にエリュシオンの隣に巨大な紫色の空間が現れた。そしてその中から全身鱗に覆われていて四本の足に長い口を持つ巨大な生物が現れた。

 

 

「な、なんて大きさなの!!」

 

その大きさはユニ達の想像を絶するほどの大きさだった。と、巨大生物は倒れるカオスをくわえるとそのまま口の中へカオスを運んだ。

 

「ま、まさか・・・。」

 

ユニが一言言ったのと同時に巨大生物はそのまま鈍い音をたててカオスをあっという間に捕食してしまった。カオスを食らいつくした巨大生物は再び空間の中へ入っていった。それと同時に空間が一瞬にして消えた。と、エリュシオンが自分が着ているスーツをを見て口を開く。

 

「あーあ、14万円したスーツに汚れがついちゃった。後で洗わなきゃ。それに、随分と呆気なかったわね、カオスの奴。それとさっき現れたのは私のペットの幻獣よ。その中であれはワニという現世の生き物を私が作った遺伝子によって巨大化させた奴なの。」

 

「あ、あんな巨大な化け物がこの世にいるなんて信じられないわ・・・。」

 

あまりの恐ろしさに足がすくんでしまうユニ達。そんな彼女達とは別にエリュシオンが言う。

 

「待たせたわね、さぁ始めましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリュシオンさん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえたのと同時にエリュシオンの元にに一人の男がやって来た。男を見た瞬間、魔理沙が口を開く。

 

「飽星寳!!お前逃げ出したな!!」

 

そう言った瞬間、寳は笑みを浮かべて魔理沙に言う。

 

「バァァァァカ、俺がそんな程度で捕まるかっつの。」

 

そう言うと寳はエリュシオンの方を見て言う。

 

「エリュシオンさん、月の都を攻め終わったんだな!」

 

「・・・。」

 

「いやぁ流石だな。あの綿月姉妹や親王達を倒すとはな。」

 

「・・・。」

 

寳が何を言おうともエリュシオンは真剣な顔をして何も言わない。と、寳の言葉を聞いた霊夢が口を開く。

 

「なっ、月の都を!?」

 

「そうさ!!エリュシオンさんなら月の都を攻めるのは容易いことだ。」

 

そう言うと彼はエリュシオンの前に立つ。そして口を開く。

 

「さぁ、エリュシオンさん。とっととこいつらをやっつけようぜ。二人なら何のこともねぇ。」

 

ペラペラと寳が話している中、エリュシオンは銃を構えるとそのまま寳の方へ向けた。

 

「えっ!?」

 

思わず声を上げてしまうユニ。そんな彼女とは別に何も気にしない寳が再び口を開く。

 

「幻想郷の連中なら月の都より攻めやすい。さぁ、俺と一緒にッ!?」

 

続きを言おうとした瞬間、銃声音が鳴り響いたのと同時に寳の腹に小さな穴が空き、そこから血が飛び散った。




カオスに圧倒的な強さを見せつけ、更に仲間である筈の寳を撃ったエリュシオン。一体何故寳を撃ったのか!?
次作もお楽しみに!


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第108話 水の闘神ドゥーム

カオスに圧倒的な強さを見せつけ、仲間である筈の寳を撃ったエリュシオン。


「ガハッ!!」

 

腹を撃ち抜かれた寳はその場で吐血し、地面に倒れる。そんな中、霊夢がエリュシオンに言う。

 

「どうして!?どうして仲間である筈の寳を!!」

 

「仲間?それは間違いよ、博麗霊夢。私に仲間なんていない。いるのは、大切な子供達とペット。つまり寳は私の家族でもなければ仲間でもない、ただの協力者よ。」

 

「お、おい。エリュ、シオン・・・さんよ・・・。」

 

「?」

 

エリュシオンが言ったのと同時に倒れていた寳が彼女に言った。それを見た彼女は見下すような目をして言う。

 

「へぇ、あのクレイジーハンドでも一撃で倒れたという爆裂徹甲弾を食らっても喋っていられるなんてね。」

 

「よく、聞きやがれ・・・エリュシオン・・・。」

 

「私を呼び捨てに?」

 

「そうやって・・・誰も殺すか、ら・・・結局あんた1人なん・・・だ、ぜ・・・。」

 

「・・・フフッ。」

 

寳の言葉を聞いたエリュシオンは不気味な笑みを浮かべる。そして再び口を開く。

 

「アンタ、よくそんなことが言えるわね。私の過去の辛い出来事を知らないくせに!!私はずっと1人だった。エデンから追放されてから数億年も、ヨナやレーム達が死んでからも数年間ずっと・・・。私の頼りになるのはあの子達だけ。」

 

「・・・。」

 

ユニ達は何も言わなかった。世界の破壊者とはいえ、辛い過去を持つ彼女の言葉に共感出来たからだ。と、エリュシオンが寳を見て言う。

 

「もう、アンタに用はないわ。」

 

そう言うと彼女は空いている左手に青い光を漂わせた。そして口を開く。

 

「おいでなさい、(ほろび)の審判を下せし水の闘神ドゥーム。」

 

そう言った瞬間、彼女の背後から紫色の扉のようなものが現れた。

 

「な、なんだあれは!!」

 

思わず声を上げる魔理沙。そんな彼女とは別に扉の中から巨大な手が出てきたかと思うと筋骨隆々で右半身が透明化していて胸に青い勾玉がついている巨大な男が姿を現した。そして男はゆっくりと寳に近づく。

 

「だ、誰だ……?」

 

寳の問い掛けに男は答えず、ゆっくりと近づいていく。それを見た瞬間、寳は地面を這いながら言う。

 

「や、やめろ。来るな、来るな!助けてくれエリュシオンさん!頼む!頼む!」

 

助けを求める寳とは別にエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「・・・あら、今更命乞い?豚や牛の命乞いに耳を傾けたことのないアンタ達人間の命乞いなんて何の意味もない。」

 

そう言った瞬間、男の手が寳の胴をがっしりと掴み、そのまま宙に浮かせた。そして口へと彼を運んでいく。そんな中、涙目になりながらも寳はエリュシオンに言う。

 

「助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死になさい、飽星寳君♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリュシオンが言った瞬間、男は寳の下半身と上半身の境目の部分に噛みついた。噛みつかれた箇所からは鮮血が飛び散る。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!痛い痛い痛い!!助けて助けて助けて助けて助けて。」

 

命乞いをする寳とは別にユニ達はただ唖然となって彼を見つめるだけだった。それに対してエリュシオンは顔に飛び散る血を舐めていた。

 

「助けて助けて助けて助けて・・・。」

 

徐々に寳の声が小さくなっていくかと思うとそのまま彼は男に呑み込まれてしまった。と、エリュシオンは男の肩に乗り、布で顔に付いた血を拭きながら言う。

 

「ちょっと、食べ方が汚いわよ。アンタのお顔に血が付いてるわよ。ちゃんと舐めておかないと。」

 

「・・・すまない、母上。」

 

「いいのよ、これくらい。」

 

男の顔を吹き終わると彼女は男の足元へ降りる。と、霊夢がエリュシオンに言う。

 

「あんた、さっきそのデカ男に子供のような扱いしたわよね?」

 

「ん?したわよ。だってこの子は私の息子だもの。」

 

「え、えぇぇぇぇぇぇ!?」

 

彼女から告げられる衝撃な一言に三人は思わず声を上げる。そんな彼女達とは別にエリュシオンは男の腰に手を当て、言う。

 

「知らないなら教えてあげるわ。この子の名前はドゥーム。世界に仇なす闘神の1人で水の闘神よ。こう見えてもドゥームは真面目で私の頼み事は大抵やってくれる。」

 

と、ユニが何かを思い出したのか、口を開く。

 

「私、こいつ知ってるわ!」

 

「なっ、ユニ知ってるのか!?」

 

「・・・けど、思い出せない。思い出そうとしても思い出せない・・・。」

 

「なんじゃそりゃ~。」

 

ユニと魔理沙が話している中、大男のドゥームが口を開いた。

 

「当然だ。貴様らの記憶は我々闘神が消したのだ。」

 

「えっ!?」

 

思わず声を上げる三人。そんな三人にエリュシオンが口を開く。

 

「性格には、表の世界から消して裏の世界へ記録したと言うべきね。表の者達の記憶を奪い、私の望む世界を作る。そのために邪魔なアンタ達や星熊九十九、琥珀・イーグナウスや悪魔のガキと小娘には消えてもらうわ。」

 

そう言うと彼女はドゥームの後ろへ行き、ユニ達に背を向けて言う。と、ユニが霊夢と魔理沙の前へ行き、言う。

 

「待って、エリュシオン。あなたに1つ聞きたいことがあるの。」

 

「?」

 

「・・・あなたは、これから何をするつもり?」

 

「私は闘神とは違って記憶を奪うことは出来ないから力を知らしめるだけね。もし行くのならば、レミリア・スカーレットか八坂神奈子かもね。」

 

そう言うとエリュシオンはドゥームを見ながら言う。

 

「私にはやることが沢山あるからアンタ達の相手はまた今度ね。まぁ、生きていればの話だけれど。ドゥーム、任せたわよ。」

 

「承知した、母上。」

 

ドゥームが言った瞬間、エリュシオンは霧のように消えていった。エリュシオンが消えたのと同時にユニ達はドゥームを見て言う。

 

「エリュシオンを倒す前にまず息子を倒さないとね。」

 

「勘違いするでないぞ人間達よ。闘神はこのドゥームだけでない。」

 

「何ですって!?」

 

「まだいるの?面倒ね・・・。」

 

「まぁ、まずはこいつを倒そうぜ。でなきゃ話にならない。」

 

「貴様らごときに負けるほど闘神は甘くないぞ!」

 

そう言った瞬間、ドゥームの前に空間が現れたかと思うと彼はその中に拳を入れた。その瞬間、三人の背後に空間が現れ、中からドゥームの拳が飛んできてユニ達に命中する。

 

「ぐはっ!」

 

「きゃぁ!」

 

声を上げながら吹っ飛ぶユニ達。と、ユニが顔を上げるとドゥームの回りには沢山の紫色の空間が漂っていた。

 

「な、何よあれ・・・。」

 

「気をつけて二人とも。あれはワープよ。私達へのダメージはないけれど動きにくくなるわ。」

 

「ワープなぁ、そんなもんは適当に入ればなんとかなる筈だぜ!!」

 

そう言うと魔理沙は箒に股がり、ワープの中へと入っていく。

 

「あれれ?」

 

魔理沙がワープから飛び出したのはドゥームの近くではなくユニのいる場所だった。それを見たユニが汗をかきながら言う。

 

「ランダムワープね。魔理沙が突っ込んだ方向とは別の方向へ向きを変えられてる。」

 

ユニの言葉を聞いたドゥームが彼女を見て言う。

 

「理解が早いな小娘。だが対応出来なければ意味はない!!」

 

そう言うと彼は再びワープの中に拳を入れた。

 

「気をつけて霊夢に魔理沙。またあの攻撃がくるわ。何処から来るかも分からない!」

 

ユニが言った瞬間、霊夢と魔理沙は避けられる体勢を取る。その瞬間、霊夢の背後にワープが現れた。それを見た魔理沙が霊夢に言う。

 

「気をつけろ霊夢、後ろだ!!」

 

「くっ!」

 

魔理沙の言葉を聞いて霊夢は上に飛び上がった。ドゥームの攻撃を避けることが出来た。と、魔理沙とユニの背後に突然として2つのワープが現れた。

 

「ユニ、魔理沙!!後ろよ!!」

 

「なっ!?」

 

霊夢がユニ達に言った瞬間、ワープの中からドゥームの両腕が出てきたかと思うとユニと魔理沙を掴み、ワープの中へ引きずり込んだ。

 

「ユニ!魔理沙!」

 

二人の名前を呼ぶ霊夢。そんな彼女とは別にワープの中にいる二人にドゥームが拳を構えた。

 

「受けるがよいわ!!」

 

そう言った瞬間、ドゥームはワープの中へ連続でパンチを叩き込んだ。

 

「きゃぁ!」

 

「うわぁっ!」

 

ドゥームの攻撃を食らった二人はワープから出て来て霊夢の近くで倒れる。

 

「ユニ、魔理沙!大丈夫?」

 

二人に駆け寄る霊夢。そんな二人の体は既にドゥームに殴られた傷でいっぱいだった。と、ドゥームが霊夢達に近寄りながら言う。

 

「貴様ら人間にこのドゥームを倒すことは出来ぬ。母上から生まれた我々は貴様ら人間に負ける筈ないのだ。」

 

「クソッ、たまげた力だぜ・・・。」

 

「早く貴様らとの戦いを終わらせてやる。」

 

その時だった。ドゥームが台詞を言ったのと同時に彼に何処からか飛んできた弾幕が命中した。

 

「えっ!?」

 

思わず声を上げる三人。と、ユニが咄嗟に後ろを振り返る。そこには息を切らしながら一人の少女が立っていた。彼女を見たユニが嬉しそうな表情をして言う。

 

「輝夜!!目が覚めたのね。」

 

「当たり前よ。エリュシオンのババァに散々やられたんだから。すぐにやり返してやるわ。」

 

そう言うと輝夜はドゥームを見る。彼は輝夜の攻撃を巨大な右腕で防いでいた。それを見た輝夜が口を開く。

 

「そう容易く倒せる筈はない。けどさっさとあのデカ物を倒すわよ。エリュシオンに復讐を果たしたいんだから。」




ドゥームとの戦いで苦戦するユニ達。そこへ輝夜が目を覚め、反撃を開始する。
次作もお楽しみに!


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第109話 木の闘神メメントモリ

ドゥームとの戦いに入ったユニ達。苦戦する中、輝夜が目を覚まし、反撃に出る。


場所は変わって無縁塚。そこではユニ達とかくかくしかじか話し合って見回ることになった百々と九十九がいた

 

「……かくかくしかじか?」

 

「メメタァ。」

 

と、二人の目線に何かを行う人の影が見えた。

 

「……森近?」

 

「あ、ほんとだ。香霖じゃん」

 

「ん、百々に九十九かい?」

 

「ったく……。またガラクタ漁りか。」

 

「アンタは今の状況知ってんのかよ……」

 

百々と九十九は揃ってため息をついた。二人に気づいた彼は行っていたことをやめ、二人を見て言う。

 

「いいや、今回は違うよ。ここら、少しの間に彼岸花が増えたなって思って。」

 

「……言われてみれば、そうだな。」

 

「……本当に増えてんのか?」

 

小さなことにも気づく百々と細かなことには目も向けない九十九。2人は全く反対の反応を示した。

 

「それに、どうやら一部の人には今の状況のことが伝わってないらしい。」

 

「……それマジか?」

 

森近の言葉に九十九は驚きの声を上げる。あれだけ派手にドンパチやっているのにこの状況が伝わってないのだ。

 

「……情報の撹乱か?」

 

「僕が聞く限り、撹乱はなかった。予想だけれど、何者かの妨害だと思うよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼岸の世界へようこそ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

「ッ!?その声は……!」

 

「……やっぱ誰かいたのか。」

 

思わず声を上げる九十九と霖之助とは別に百々は冷静だった。二人が言った瞬間、彼岸花の中から巨大な彼岸花が姿を現した。

 

「な、なんだあれは!?」

 

「デカい……彼岸花!?」

 

驚愕する二人に対し、九十九は憎しみの視線でその彼岸花を睨みつけた。

 

「やっぱりアンタかメメントモリ!!!」

 

突然現れた巨大な蕾の彼岸花が咲いたかと思うと中から緑色の肌を持ち骨が透けて見える背丈の高い女性が姿を現した。

 

「伊吹百々、星熊九十九。あなた達って本当に邪魔。」

 

「俺たちが邪魔?……そんなことした覚えはないが……」

 

「香霖、アンタは今すぐ逃げろ。」

 

九十九が『メメントモリ』と呼んだ女性の言葉に百々は首を傾げ、九十九は彼女を睨みつけたまま森近にそういった。

 

「わ、分かった。気をつけて。」

 

そう言うと彼は何処かへ走り去ってしまった。彼が去ったのを見たメメントモリは百々を見て言う。

 

「久しぶりね、伊吹百々。私を覚えているかしら?」

 

そう言う彼女の後ろには妹紅と慧音が彼岸花に巻きつかれていた。

 

「藤原!?上白沢!?てめぇが誰だか知らねぇが、二人を離しやがれ!」

 

怒鳴る百々とは別にメメントモリはクスクス笑いをして口を開く。

 

「別に、理由があって狙った訳ではないわ。お母さんのことをこれ以上知られないようにしただけよ。」

 

「……メメントモリ、コイツはアンタの事も、アンタ以外の闘神の事も、ましてやアンタの母の事も覚えちゃ無いよ。」

 

メメント・モリから視線を外すことなく、九十九は百々の前に彼を庇うように立った。それを見たメメントモリが表情を変えずに言う。

 

「フフフ。昔と大分変わったのね、星熊九十九。あの時のあなたは私達闘神に怯える子だったのに。」

 

「あの時からあんなに時間が経ってるんだ。誰だって変わるよ。私だって変わるさ。」

 

「九十九、お前……」

 

百々は知っていた。彼女、星熊九十九は普段男言葉で会話をするがそれは自分を強いと見せるための虚偽だということ。彼女が自分を『私』と呼ぶ時、彼女が女言葉で会話をする時、それは彼女が起こっている印だと。そんな彼女とは別にメメントモリが言う。

 

「お母さんの優先目的はあなたと琥珀・イーグナーウスの始末。だから、すぐに始末させてもらうわ。それに伊吹百々。」

 

「な、なんだよ……」

 

「敵ではあるけど忠告しておくわ。あなたに嫉妬しているのは私だけではないわ。」

 

「……嫉妬?」

 

「百々、アンタは気にしないで。メメントモリ、アンタの嫉妬はそろそろ打ち止めになるのよ。私があなたを殺すから。」

 

「そううまくいくかしら?私の他にもドゥームやニルヴァーナがいるのよ?」

 

メメントモリは微笑みを浮かべる。微笑みのはずなのに、百々と九十九は言い様のない恐怖を感じ取った。死神がすぐそこまで近づいているような恐怖を。

 

「だからどうしたの!無理なんて決めつけないで!!」

 

「なら、やって見せなさい。」

 

そう言うとメメントモリは二人に向かって緑色の弾みたいなものを飛ばし始めた。

 

「「舐めるなッ!!」」

 

2人は鬼としての全力で地面を全力で殴った。それにより起こった風圧が飛ばされてきた弾幕のようなものを吹き飛ばした。

 

「フフフ。」

 

そう言った瞬間、メメントモリは緑色のレーザーを八方向に放った。

 

「嘘、レーザー!?」

 

「どいてろ九十九!!」

 

自身の前に立つ九十九を引っ張り、自分の後ろに立たせた。

 

「ちょっと、百々!!」

 

「目には目を、ビームにはビームを!!」

 

百々の手には、森近に無理を言って作らせたミニ八卦炉(レプリカ)が握られていた。

 

「これでも食らっとけ!威力制限無しマスタァァスパァァァク!!」

 

ミニ八卦炉から放たれたマスタースパークはメメントモリの放ったレーザーを見事打ち消し、そのままメメント・モリを襲った。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

「……ふざけてるの?メメント・モリ」

 

「あら、ばれちゃったの?」

 

わざとらしく言うメメントモリの前には縛られ、傷ついた妹紅と慧音の姿があった。

 

「てめぇ、そいつ等を身代わりにしやがったな!!」

 

「……性格の悪そうなアンタがやりそうな事ね。」

 

「私のレーザーを制限なしで打ち破ったのはあなたでしょう?伊吹百々。私は近くにあったものを使った、ただそれだけよ。」

 

クスクスと笑うメメント・モリに百々は何も言えなくなっていた。反論しようにも、彼女が言うことは正論なのだ。

 

「百々、アイツの言葉に耳を傾けないで。大丈夫、2人は絶対に救うから。」

 

そういう九十九の手には1本の日本刀が握られていた。

その日本刀はとても長く、約1mはあると思われる。それを見たメメントモリは何かを思い出しながら言う。

 

「見覚えのある刀ね、星熊九十九。一体どこで手に入れたのかしら?」

 

「この刀は英雄の一人から借り受けたものよ。銘を備前長船長光(びぜんおさふねながみつ)。又の名を『物干し竿』」

 

そう言って九十九はメメントモリに向けてその刀を向けた。

 

「さぁ、メメントモリ。貴方は並行世界から呼び出される3つの剣撃を避けられるかしら?」

 

「・・・フフッ。」

 

九十九の言葉を聞いてもメメントモリは笑みを浮かべるままだった。

 

「その笑顔を崩してみせる!『英霊憑依:佐々木小次郎』!!」

 

刀を構え、九十九は走り出した。そんな彼女とは別にメメントモリは二人に見えるように見覚えのあるカードを取り出した。

 

「ッ!スペルカード!!」

 

「毒光『死苦の凱旋』」

 

「マズっ!能力再現『時間停止』!!」

 

百々の言葉が聞こえたと同時に九十九の姿が消えた。彼女に放ったハズのスペルカードは当たること無く虚空を紫に侵食した。

 

「あら、消えた?」

 

そう言いながらメメントモリは百々のいる方向へ顔を向ける。本来そこいるはずの百々もその場から煙のように消えていた。

 

「・・・近くに隠れているわね?」

 

百々と九十九を探そうとしたメメントモリはようやく藤原と上白沢を捕えていたツタの違和感に気づいた。

 

「!?」

 

捕えていたハズの2人は消え、そこには切断されたツタが転がっていた。

 

「・・・逃げたわね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰が逃げたって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上から声がした。

 

「なっ!?」

 

メメントモリの先程の浮かべていた笑みが一瞬にして消えた。空には鴉天狗の翼を生やした百々が藤原と上白沢を抱え飛んでいた。

 

「・・・逃がさないわよ。」

 

そう言うと彼女は百々に再び緑の弾みたいなものを飛ばした。

 

「おっと!」

 

その翼をはばたかせて風を生み出しその弾幕をまた吹き飛ばした。

 

「おいメメントモリさんよ」

 

「?」

 

ニヤリと百々は笑いながら言葉を続けた。

 

「俺にかまけといていいのか?」

 

「気配遮断解除。」

 

九十九の声が己の間近から聞こえた。

 

「しまった!!」

 

「倒せるとは思ってない。でも、これで一矢報いる!喰らえ、『燕返し』!!」

 

メメントモリを3つの斬撃が襲った。並行世界から呼び出されたその斬撃3つは同時に放たれ、回避不能の一撃となって彼女を襲った。

 

「ぐっ!?」

 

メメントモリの体から紫色の血が飛び散る。そのまま彼女は地面にうずくまる。

 

「ナイスだ九十九!さっさと逃げるぞ、能力再現『時間停止』!!」

 

また百々の言葉と同時に彼らは煙のように姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時は動き出す。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動かされた時を一人の女性がメメント・モリに向かって歩いてくる。周りを見渡すも、彼女たち以外には誰もいない様だった。

 

「・・・逃がしたわね、メメ」

 

「ごめんなさい、お母さん」

 

メメントモリを責めるようにその女性は言った。しかし、メメントモリはそれが責めている訳では無いことを知っている。

 

「いいわ、次殺ればいい。さ、行くわよ。」

 

そう言うと女性はメメントモリを連れて何処かへ消えようとした時、空から1枚の羽根がゆっくりと落ちてきた。恐らく百々が能力再現で使った翼が抜けたのだろう。それを見た女性が羽を拾い、不気味な笑みを浮かべて口を開く。

 

「待っててね、百々。私があなたの望む世界を作ってあげるから。」




メメントモリとの戦いで力を見せつけた百々と九十九。そこへ一人の女性がやって来る。その人物とは・・・。
次作もお楽しみに!


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第110話 炎の闘神ニルヴァーナ

メメントモリの交戦に入り、一旦退いた百々と九十九。そこへ一人の女性が現れた。


場所は変わって魔法の森。そこではユニ達とかくかくしかじか話し合って見回すことにした楓がいた。

 

「・・・全く、私一人で行動させるとはな。」

 

一人でぶつぶつ愚痴を言っている中、彼女は突然足を止めてしまう。彼女の目線に映っていたのはキノコをせっせと集めている少年がいた。少年を見た楓が彼に話しかける。

 

「お前、こんなところで何しているんだ?危険だから安全な所へ避難するんだ。」

 

「これは、毒キノコか・・・。」

 

そう言って目の前の少年は手に持ったキノコを口に運んだ。

 

 

「なっ!?」

 

楓は思わず声を上げる。無理もない、今少年は自分で毒キノコと言っておきながらそれを口に運んだのだから。それを見た楓が少年に言う。

 

「お、おい。大丈夫なのか?」

 

「ん?……あぁ、大丈夫だよ。えーと……。」

 

「?」

 

「名前、なんだっけ君」

 

「私か?私は出野楓。お前の名前は?」

 

「……あぁ、そうだった。楓、カエデちゃんだったね。僕は琥珀。どこの誰でもない、ただの琥珀だよ。」

 

「・・・私を知っているのか?」

 

「知ってるもなにも、僕はなんでも知ってドベェ」

 

目の前の少年『琥珀』は言葉の途中で口から血を吐き出した。

 

「なっ!?おい大丈夫か?さっきのキノコが原因じゃないのか?」

 

そう言うと彼女は血を吐く琥珀の背中を優しく擦った。

 

「だ、大丈夫だよ。ありがとうね。それにしても……なるほどね。あのキノコを食べるとこんな感覚になるのか……。」

 

「しかしお前、どうしてあれが毒キノコだと知って食べたんだ?」

 

「知ってたから食べたんだ。知識としてあのキノコを食べると何が起こるのか、それを知ってるのならあとは体験してみるしかないだろう?」

 

「体験を求める、か。何処かの誰かさんが嫌うタイプだな。」

 

「はは、人類最強には絶対会いたくないね……。」

 

まだ毒が残っているのか、顔色が悪いまま琥珀はそう返事をした。

 

「顔色が悪いぞ。少しここらで休んだらどうだ?今起こってる状況は良くないが・・・。」

 

「いや、それは遠慮しておこうかな」

 

座り込んでいた彼は立ち上がり目の前の空間を睨みつけながら言った。

 

「向こうさんもそうしてはくれないみたいだしね。」

 

「さっき人里で少し異変があったらしくてな、今や幻想郷は大騒ぎだ。」

 

「あれ、いま目の前から殺気を感じたんだけど気のせい?……まぁ、いいや。それにしても、人里で異変ね。まぁあそこにはワーハクタクと蓬莱人がいるから大丈夫じゃない?」

 

勘違いをしていた彼は欠伸をしながらそう言う。まるで、自分は関係ないと言っているかのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく分かったわね、琥珀イーグナーウス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、楓は咄嗟に辺りを見回し、琥珀はため息を吐いた。

 

「!?誰だ!」

 

「勿論だとも。」

 

琥珀が言った瞬間、二人の前に女性としては長身で腰まで伸びる銀髪に青い瞳の女性が姿を現した。

 

「!?」

 

「やぁ、神となった元人間さん。いったいなんの御用かな?」

 

「おや、私の名前は呼ばないのかしら?」

 

女性の問い掛けに琥珀は両手を上げてやれやれのポーズを取った。

 

「分かってるくせに。呪いを掛けたのは君なんだから。」

 

「琥珀、こいつは一体!?」

 

「悪いけど呪いのせいで名前は言えないよ。それでも説明できる範囲でならしてあげられるけど、どうするカエデちゃん?」

 

「代わりに私がしてあげる。」

 

二人の話に女性が首を突っ込んだ。琥珀はため息をつき言った。

 

「君もなかなかバッサリくるよねぇ……。」

 

「ククク、じゃあ話すわよ。一回しか言わないからちゃんと聞くようにね。私の名前はエリュシオン。星熊九十九のいた幻想郷を破壊した張本人。そしてその子、琥珀イーグナーウスが私の名前を言えないのは私が呪いをかけたからよ。その呪いとは、名を言えば記憶が消える呪い。」

 

「名を言えば記憶が消える呪いだと?」

 

「そう♪だから私の名前を言えないのよ。」

 

「人の名前を言えないというのはなかなか辛くてね。君を表した言葉がそろそろ100を超えそうだよ。」

 

「ククク、いい様ね。アンタが辛くしている様子を見るのは好きよ。」

 

「例えばだけど『手入れをしてない人のような長さ髪と女とは思えない位のバカでかい身長に見るだけで吐き気がする顔』とかだね。」

 

終始ニヤニヤとしながら彼は言った。

 

「アンタ、それは私のことを言っているの?」

 

琥珀を睨みながら言う彼女の目は鋭く、楓は少し怯んでしまった。琥珀は楓を自身の後ろに下がらせながらも、煽りを続ける。

 

「どうかな?結構上手く表現出来てると自負してるんだけど」

 

「別にアンタと戦うつもりなんてないわ。なんせ、アンタは知識では油断ならぬ相手だけれど力では眼中にないわ。」

 

「別にぃー戦うつもりでぇー煽ってた訳じゃぁーないんですよぉー?」

 

(・・・なんだコイツ、うざい。)

 

心の中で言う楓とは別にエリュシオンは手に握り拳を作り、怒りを我慢するような表情を浮かべて言う。

 

「煽りとは思ってない。中々表現出来ていていいと思っていただけよ。」

 

「……意外と高評価で驚きの琥珀さんですよ。」

 

言葉が出ないようだ。恐らくそこまで言われるとは思ってなかったのだろう。と、彼の後ろにいた楓が言う。

 

「おい琥珀、あんなに煽って大丈夫なのか?奴が何かしてくるかもしれないぞ。」

 

「大丈夫さ。彼女は1度言葉にしたことは曲げないしっかりした性格をしてるから。戦いにはならないよ。……多分。」

 

「多分!?」

 

二人が話している中、エリュシオンが口を開いた。

 

「随分と面白いわね、琥珀イーグナーウス。星熊九十九のいた幻想郷のようにまた幻想郷を壊したくなった。」

 

「壊すことに関しては何も言う気は無いよ。というか止める力も実力も無いし。」

 

「下がってろ琥珀。こいつの相手は私がやる。」

 

そう言うと楓は琥珀の前に立ち、刀を構える。

 

「ならサポートくらいはしようかな。この幻想郷は居心地がいいからね、ひいきさせてもらうよ。」

 

楓に続くように琥珀は黒い翼を出現させ、自身の周りに『文字』を浮かばせた。そんな二人を見たエリュシオンが笑みを浮かべながら口を開く。

 

「アンタ達、私と戦うつもり?アハハ、笑わせないで。今のアンタ達が私と戦ったところでアンタに勝ち目はない。」

 

「やったこともないくせに勝手に決めつけるな!!」

 

「勝てるとは思ってないさ。ただ派手にやれば誰かが気付いてくれるでしょ。」

 

「誰かが気づく、ねぇ。私そういうの嫌いなのよね。だからアンタ達との戦いはお預けにしてあげる。」

 

「逃げるつもりか?」

 

「そうしてくれるとありがたいね。」

 

「逃げはしないわ。代わりを呼ぶだけよ。アンタ達の相手にはちょうどいいかもね。」

 

「私達にとってちょうどいい相手?そんなの関係ない。戦いに相性なんて関係ない!!」

 

「戦いは感情論じゃあ無いんだよ、カエデちゃん。君だってゲームで魔王を倒す時にレベル1で挑まないでしょ?それと同じさ。」

 

「・・・そう、だな。」

 

話す二人を無視するかのようにエリュシオンが右手に赤い光を宿し、口を開く。

 

「さぁおいでなさい。頽廃に爛れし炎の闘神、ニルヴァーナ!!」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの背後に突如として長身で赤い髪、骨が透けている左腕を持つ男が現れた。

 

「やぁ、ニルヴァーナ。髑髏の調子はどうだい?」

 

「おいおいどうした母さん。テンション低いじゃないか。」

 

「フフッ、そうね。」

 

琥珀を無視するかのようにニルヴァーナがエリュシオンに言った。

 

「・・・無視されてるぞ、お前。」

 

「いやまぁ、嫌われる事や憎まれる事はいっぱいしたから納得だけどさ」

 

「琥珀、ニルヴァーナはエリュシオンの下僕なのか?」

 

自身の翼をいじって遊んでいた琥珀は楓からの質問に遅れながらも答えた。

 

「彼は彼女の息子だよ」

 

「息子!?」

 

驚く楓にニルヴァーナが口を開く。

 

「フフッ、分かってないぜgirl。俺はただの母さんの息子。そして俺は母さんのように可愛い人間ちゃんを解放してやるのよ。」

 

「解放だと!?」

 

「へー。それの一人が伊吹百々かい?」

 

琥珀の言葉と同時にニルヴァーナはエリュシオンの肩に触れ、言う。

 

「そうさ。なぁお前ら、悩んだりしたって楽しくないだろ?苦しんだり悲しんだりしたって、つまらないだろ?」

 

「・・・?」

 

「それは人それぞれさ。中にはその過程が大好きな困った人もいるみたいだよ……。」

 

「人里で異変起こしたあいつも楽しそうだったけどな。自分の欲望に忠実で。」

 

「あー、彼はほら、あれだから……。」

 

「何勝手なこと言っているんだ!!」

 

「お前達だって、余計なことを考えないで済んでるのは昔の記憶を無くしたからだぜ?」

 

「昔の記憶だと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと話している所いいかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「?」

 

琥珀の言葉を聞いてエリュシオンとニルヴァーナは同時に声を上げる。そんな二人とは別に琥珀が口を開いた。

 

「ニルヴァーナ、君は何のために出てきたの?ただカエデちゃんと話すためなのかい?」

 

「そんなわけあるか。俺は母さんの頼み事で、お前らを処理しに来たのさ。まぁ少しくらい話したって構わないだろ?」

 

「まぁ、構わないけどさ……」

 

琥珀はそう言って右手を上げる。

 

「僕は待つ必要無いよね?」

 

上げた右手を振り下ろすと、ニルヴァーナに気づかれないように配置していた『爆』の文字が彼を囲むように爆発した。

 

「おっと!」

 

それに咄嗟に反応した二人は攻撃を避ける。そんな中、琥珀が楓に言う。

 

「カエデちゃん、知るべき事と知らないほうがいい事があるのを覚えた方がいいよ。君の性格じゃあ後々痛い目をみるからね。」

 

「あぁ、分かった。」

 

二人が話している中、エリュシオンはニルヴァーナに背を向けて言う。

 

「んじゃ、アンタに任せるわよ。」

 

「任せな、母さん。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは霧のように消えていった。

 

「なら良し。さぁ炎の闘神ニルヴァーナ。こんなものじゃあないでしょう?」

 

「さぁ、最高にクールでドープなショーといこうじゃないの。」

 

そう言った瞬間、彼の周りに目の光ったドクロが現れた。

 

「ロケンローだぜぇー!」

 

ニルヴァーナが叫んだ瞬間、ドクロが一斉に二人の前を浮遊し始めた。

 

「なんだこれは!?」

 

琥珀が言った時だった。二人の周りを浮遊していたドクロが一斉に爆発した。

 

「くっ!」

 

「あ、足持ってかれた」

 

そういう琥珀は右足が吹っ飛んでいた。

 

「琥珀!!」

 

「仲間を気にしないで、弾けていこうぜぇー!!」

 

そう言うとニルヴァーナは再びドクロを二人の方へ飛ばした。

 

「この身体はもうダメかな。」

 

琥珀は楓の前に翼を使って移動した。そして言う。

 

「さて、少しでもダメージを抑えておこうか」

 

そう言って飛ばしてきたドクロを右手で殴り飛ばした。

 

「すまない琥珀!!」

 

そう言うと彼女はニルヴァーナの元へ走っていく。

 

「くらえ!!」

 

そう言うと彼女はニルヴァーナの肩を斬りつけた。

 

「狙うべきはお腹だからね!あ待って待ってドクロ多いから多っ・・・。」

 

琥珀は言葉を最後まで繋げられず爆発に巻き込まれた。そんな中、楓は違和感を感じていた。肩を斬りつけた筈なのに手応えがない。恐る恐る彼女はニルヴァーナの肩を見る。

 

「効いてないぜ、可愛い子ちゃん!!」

 

そう言うとニルヴァーナは楓の腹を蹴った。

 

「ガハッ!!」

 

腹を蹴られた彼女は木にぶつかり、その場で吐血する。

 

「カエデちゃん、大丈夫?」

 

爆発に巻き込まれたハズの琥珀が楓の前に現れ、彼女の体を起こした。

 

「うっ、く・・・。」

 

相当なダメージを受けたのか、楓は腹を抱えたままだった。

 

「ありゃりゃ。『治癒』の文字を当てておこうか。……それにしてもニルヴァーナ、女の子相手にずいぶん酷いことするね。」

 

「母さんの頼み事は断れなくてな、お前達を容赦なく始末するのが俺のやり方よ。」

 

「まぁ、君たち闘神らしい考え方だ。……さて、ニルヴァーナ。」

 

ニヤリと琥珀が笑った。

 

「足元にご注意を。」

 

「なんだ?」

 

そう言うとニルヴァーナはゆっくりと下を見る。そこには『一撃失神』の文字があり、ニルヴァーナはそれを踏んでしまっていた。

 

「しばらくは固まってなさいな。」

 

「うおぉ!いてぇよ!」

 

「さ、カエデちゃん逃げるよ。」

 

「あ、あぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃がしはしないぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その叫び声が聞こえた瞬間、琥珀に向かって酒のビンが投げつけられた。

 

琥珀「『爆炎』」

 

酒ビンが当たる前に突如して起こったそれによりビンは溶けてなくなってしまった。

 

「つーかまえた。」

その声が聞こえた瞬間、ニルヴァーナは楓を抱えていた琥珀を蹴りつけた。

 

「チッ。『転移』」

 

琥珀は『転』と『移』の文字を楓に付け、人里へ飛ばした。そしてニルヴァーナの方を向き、言う。

 

「まったく、しつこい男は嫌われるよ?」

 

「母さんに失神無効のスキルつけてもらって正解だったぜ。それに、お前が飛ばしたあのdevilgirlの元にはドクロを飛ばしてやったぜ。到着しても怪我するのに変わりはない。」

 

「……ドクロって、これの事?」

 

彼の右手には飛ばしたはずのドクロが握られていた。

 

「なっ、お前いつのまに!?」

 

「ちょちょいと自分に『速』を打ち込んでね。……それよりもさ、これ止めてくれない?さっき適当に『拡』と『大』を打ち込んだら剥がれなくなってさ……」

 

琥珀の額に汗が浮き出る。

 

「このまま爆発したら僕らヤバいんだけど……」

 

「誰が止めるかよ。」

 

「いや、知ってたけどさ。とりあえず『停』と『止』を2度書きしておこうかな。……で、これからどうするの?」

 

ドクロを握ったまま琥珀はニルヴァーナへ問いかける。

 

「僕個人としてはみのがしてほしいんだけど」

 

「あの可愛い子ちゃんは仕方なく見逃すが、お前は逃す訳にはいかないぜ。」

 

そう言った瞬間、ニルヴァーナはスイッチを押すかのように右手の親指を閉じた。

 

「え、ちょ、」

 

「……あ。」

 

琥珀の能力により範囲が『拡大』し、威力も『拡大』したドクロが彼らを襲った。

 

「ペェェェェェイィィィィィン!!」

 

魔法の森にニルヴァーナの叫ぶ声が響いた。爆発が治まった後、ニルヴァーナは一人立ち上がり、口を開く。

 

「あいつがいるかもしれねぇから声を上げたが、いないようだな。さて、俺は用事を済ませたし、母さんの言われた通りにするか。自分のやりたいことをやるってな。ヒヒヒ、待ってな、百々!」

 




楓の負傷、琥珀の消失。そんな中、ニルヴァーナは百々の名を言う。一体何故・・・。
次作もお楽しみに!


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第111話 守矢神社での戦い

ニルヴァーナとの戦いで負傷した楓と消失した琥珀。


場所は変わって守矢神社。そこでは早苗と諏訪子が敵襲に備えて戦闘準備をしていた。と、早苗が不安そうな表情を浮かべて言う。

 

「諏訪子様。この異変、終われますか?」

 

「・・・それはどういうこと?」

 

「無事敵を倒せるかということです。帝王やガイルゴールなどといったスキマ妖怪さんや神奈子様でも敵わなかった相手がよく幻想郷を攻め込んでくるので・・・。」

 

「何?早苗ってば神奈子の力がそんなに期待出来ないの?」

 

「いえ、そういうつもりで言ったわけじゃ・・・。」

 

「フフッ、神奈子や私が死なないか心配してるんでしょ?早苗のことだから分かるよ。 大丈夫よ、神奈子なら問題ない。」

 

「そうですか・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごきげんよう、守矢神社の方々。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、二人は咄嗟に戦闘体制に入った。

 

「私が来たからってそんな焦る必要ないじゃない。失礼しちゃうわね。」

 

二人の前にいたのは長身で腰まで伸びる後ろ髪に青い瞳、白いスーツとスカートをはいた女性がいた。彼女を見た瞬間、早苗が言う。

 

「あ、あれは!!」

 

「気をつけな早苗。あれは私や神奈子で倒せるか分からない。」

 

「二人が話している中、女性が諏訪子に言う。

 

「久しぶりね、洩矢諏訪子。」

 

「あんたには絶対再会したくなかったんだけれどね、エリュシオン。」

 

「会いたくないとはどういうことよ洩矢諏訪子?」

 

「うるさいわよクソババァ。」

 

諏訪子の言葉を聞いた瞬間、早苗は目を見開き、諏訪子は口元に笑みを浮かべた。そんな中、エリュシオンは怒りを我慢するような表情を浮かべて言う。

 

「あら?今なんて言ったのかしら?私には聞こえなかったのだけれどもう一度・・・。」

 

「クソババァって言ったのよクソババァ。わざと聞こえないふりするのはなんか腹立つよ。」

 

諏訪子が言った瞬間、エリュシオンの先程まで浮かべていた笑みが一瞬にして消えたのと同時に怒りの表情になった。

 

「ひっ!?」

 

思わず声を上げて怯んでしまう早苗。そんな彼女とは別にエリュシオンが諏訪子に言う。

 

「ずいぶんとなめた口を言うわね、洩矢諏訪子ォ!!私が考えていたアンタとはかなり変わった。かつて八坂神奈子と敵対していなのにそれが今は何よ、仲良くなっちゃって・・・。なんとも愚かな話よ!!」

 

そう言った瞬間、辺りに謎の圧力が降り注いだ。

 

「うっ!?」

 

早苗は思わず声を上げ、膝をついてしまう。

 

「・・・ちょっと煽り過ぎたかな・・・。」

 

諏訪子が額に汗を垂らしながら言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリュシオンの放った謎の圧力はドゥームと戦うユニ達の元までも響いていた。

 

「な、何これ!?」

 

「お、重い・・・。」

 

「うまく飛び上がれないぜ!」

 

「何が起こっているの?」

 

ユニ、霊夢、魔理沙、輝夜の順番で言った瞬間、ドゥームが出したワープが圧力によって消えてしまった。と、ドゥームがある方向を見て言う。

 

「・・・まさか、母上がお怒りに?」

 

「エリュシオンが!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他にも百々を探すニルヴァーナの元にも響いていた。

 

「おいおいマジかよ母さん。まだ表の幻想郷を破壊し終えてないぜ?怒るのは早すぎるんじゃね~のか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の謎の圧力は幻想郷の賢者、八雲紫の元にも響いていた。

 

「紫様!」

 

外を眺める彼女の元へ式神の藍がやって来る。そんな中、紫がある方向を見て言う。

 

「この霊力・・・五大王やガイルゴールとは比べ物にならないほど強いわね。もしかしたら史上最悪の異変になるかもしれない。」

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他の場所でも響く中、エリュシオンは諏訪子をじっと睨みつけながら言う。

 

「アンタは私の逆鱗に触れた。よってアンタには・・そうねぇ、6割ほどの力を出して戦ってあげましょう。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは指を鳴らした。その瞬間、彼女の姿が一瞬にして消えた。

 

「!!?」

 

「諏訪子様上です!!」

 

早苗の言葉を聞いた瞬間、諏訪子は上に目を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念、あれは残像よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、早苗の背後からゆっくりとエリュシオンが姿を現した。と、諏訪子が早苗を見て言う。

 

「早苗私じゃないよ!!あんたの後ろ!!」

 

諏訪子が言った瞬間、エリュシオンは早苗の腕を掴み、そのまま空中に持ち上げ、地面に叩きつける。

 

「グハッ!」

 

声を上げる早苗。そんな彼女とは別にエリュシオンは諏訪子を見て言う。

 

「さぁ、次はアンタよ。覚悟しなさい。」

 

「何言ってるの?まだ早苗がいるでしょ?」

 

「早苗?さて、何のことかしら?東風谷早苗は既に戦闘不能になっているじゃない。」

 

そう言うと彼女は叩きつけた早苗の方へ目を向ける。

 

「あ、あぁ・・・。」

 

彼女の目線には右腕を空いている左手で押さえる早苗の姿があった。無理もない、彼女の腕はあらぬ方向に折れているのだから。痛い、という言葉では言い表せない激痛が早苗に襲った。

 

「エリュシオン!!アンタねぇ、加減というものを知らないわけ?」

 

「加減?あら、ごめんなさいね。私ねぇ、闘神達にもよく言われてて直せないことがあってね・・・。加減がねぇ、どうしても出来ないの。だからやり過ぎる時はやり過ぎる人よ。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの右手からスライムが現れ、そのままスライムが銃の形になり、そのまま銃へと変化した。

 

「銃?にしても何か違和感の湧く銃ね。」

 

「これ?ちょいと改造した対全ての者に対抗出来る銃よ。これを食らって平気でいられる奴はいない。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは銃口を諏訪子に向ける。それを見た瞬間、諏訪子は鉄輪を取り出す。それを見たエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「ほう、それはあの八坂神奈子と戦った際に壊されたモノ。かつて争ったアンタをあの子の関係は今や仲良し。一体何があったのかしらねぇ。」

 

「あんたには関係のないことだよ。私と神奈子のことなんだから気にすることはないよ。」

 

「フフフ、違いないわ。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは諏訪子に発砲した。

 

「くっ!」

 

咄嗟に反応した諏訪子は素早い動きで避ける。それでもエリュシオンは撃つのをやめない。

 

「これでも食らいなっ!」

 

そう言うと諏訪子は銃弾を避けながらエリュシオンに弾幕を放った。

 

「無駄よ。」

 

そう言うと彼女は諏訪子の放った弾幕を空いている左手で弾いた。その間に諏訪子はスペルカードを発動した。

 

「祟符ミシャグジ様!」

 

スペルカードを発動した瞬間、彼女の足元から全身茶色の巨大な蛙が姿を現した。それを見たエリュシオンは笑みを浮かべたまま口を開く。

 

「ミシャグジねぇ。ならば私も対抗出来る生物を呼ぶとしましょう。」

 

そう言うと彼女の持っていた銃が再びスライム状になり、そのまま笛になった。エリュシオンは笛を口元に近づけると曲を奏で始めた。

 

「・・・?」

 

その瞬間、エリュシオンの隣に巨大な空間が現れたかと思うと中から全身茶色で大きさは10m近くはある鷹が姿を現した。

 

「た、鷹!?」

 

その姿に声を上げる早苗。そんな彼女とは別にエリュシオンは笛を銃へ戻し、口を開く。

 

「この子は幻獣。私が作った遺伝子によって巨大な姿へと変貌した生物。鷹の細胞を持ちなおかつ私の作った遺伝子も含まれる、私はそれを幻獣と名付けた。」

 

そう言った瞬間、鷹が諏訪子の隣にいるミシャグジを見る。そしてそのまま急降下し始めた。

 

「避けてミシャグジ様!」

 

諏訪子の言葉を聞いたミシャグジは咄嗟に反応する。

 

「逃がさないわよ。」

 

その声が聞こえた瞬間、エリュシオンはミシャグジに銃口を向け、発砲した。発砲した弾はミシャグジの足に命中し、そのままミシャグジは地面な倒れる。

 

 

「ミシャグジ様!」

 

咄嗟にミシャグジを守ろうとする諏訪子。そんな彼女をエリュシオンは横から蹴り飛ばした。

 

「諏訪子様!!」

 

彼女の名前を呼ぶ早苗。そんな中、鷹はミシャグジを巨大な足で掴んだ。

 

「フフッ。」

 

不気味な笑い声を上げたエリュシオンは鷹を見て指を鳴らした。その瞬間、鷹の近くに巨大な空間が現れた。それを見た鷹はミシャグジを掴んだまま空間の中へ入っていった。

 

「ミシャグジ様!!」

 

諏訪子が叫んだ瞬間、空間があっという間に閉じてしまった。と、エリュシオンが突如諏訪子の前に現れたかと思うと彼女の顔を銃で殴りつけた。

 

「がっ!」

 

力がありすぎるのか、諏訪子は鳥居付近まで飛ばされる。

 

「諏訪子様!!」

 

倒れている諏訪子にエリュシオンがゆっくりと歩み寄りながら言う。

 

「あらら?どうしちゃったのかしらねぇ、土着神さん。アンタの力はこんなものだっけぇ?月の都の姫と互角に戦えるなら私に苦戦ないてしない筈よね?」

 

「くっ、ふざけがっ!?」

 

ふざけやがって。その言葉を言おうとした瞬間、エリュシオンの履いているハイヒールが倒れる諏訪子の腹を踏みつけた。

 

「ぐっ!?」

 

エリュシオンは苦痛に歪む諏訪子の顔を不気味な笑みを浮かべながら言う。

 

「まぁ所詮アンタは弱い。弱いのに強いと信仰者に見せつける、ただのクソガキ。勿論、八雲紫も八意永琳も私からすればガキ。」

 

「くっ、舐めんじゃ・・・ないよ・・・。」

 

「?」

 

「あんたのような・・・あんたのような楽園から追放された奴に言われたくない!!」

 

 

諏訪子の言葉を聞いた瞬間、エリュシオンの表情が急変した。余裕の笑みから怒りの顔へと変化した。そしてエリュシオンは口を開く。

 

「・・・あぁそう。アンタはこんな状況に陥っても強がるつもりね。ならば結構、」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは諏訪子の右腕に銃口を向け、発砲した。

 

「ああああああ!!」

 

撃ち抜かれた場所からは血が流れ、諏訪子は声を上げる。そんな彼女とは別にエリュシオンは再び言う。

 

「痛い?ねぇ痛いわよねぇ?でも、アンタにはこんな程度じゃ足りない。人間や妖怪、闘神とは違うからね。」

 

「私を、闘神と同じようにするんじゃ・・・。」

 

「同じようにするんじゃないって?」

 

そう言った瞬間、エリュシオンはハイヒールのかかとの部分を諏訪子の腹に押しつけた。

 

「ぐっ!?」

 

「フフフ、さっき踏まれた時より痛いでしょう?ハイヒールって見た目おしゃれな靴に見えるけど実際は恐ろしく、相手を傷つけることが出来るのよ。」

 

そう言った瞬間、ハイヒールのかかとの部分が諏訪子の腹に突き刺さった。

 

「ああああああああああ!!!」

 

先程よりも声を上げる諏訪子。そんな彼女を見てエリュシオンは笑いながら持っていた銃を刀に変化させた。そして再び口を開く。

 

「どう?嫌いな奴に拷問されている気分はどう?アハハハハハ、笑える。」

 

そう言うと彼女は声を上げる諏訪子の左肩に刀を差した。

 

「ッ!?」

 

「諏訪子様!!やめてください!!」

 

「やめてください?フフッ、人間ごときが私に仲間の救済を?無理ね。私が耳を傾けるのはあの子の言葉と闘神達だけ。」

 

そう言うとエリュシオンは刀を諏訪子に顔を向け、刀を振り上げて言う。

 

「さようなら、洩矢諏訪子。」

 

そう言うとエリュシオンは刀を振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「御柱ライジングオンバシラ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然声が辺りに響いたのと同時にエリュシオンの右腕に何か太いものが当たり、そのまま彼女の右腕が吹っ飛んだ。

 

「なっ!?」

 

「・・・?」

 

声を上げる早苗と首を傾げるエリュシオン。と、エリュシオンが足元を見て言う。

 

「洩矢諏訪子がいない。ということは・・・。」

 

そう言うと彼女は神社のある方を見る。そこには諏訪子を抱える一人の女性がいた。その女性は青い髪に赤い瞳、背中には注連縄を輪にしているものを装着していた。と、女性がエリュシオンに言う。

 

「私がいない間に派手にやってくれたね、エリュシオン。」

 

女性を見た瞬間、早苗が女性の名前を言う。

 

「神奈子様!!」




絶体絶命のピンチに追い込まれた諏訪子をエリュシオンから救った神奈子。神奈子とエリュシオン、対立する二人の戦いが始まる。
次作もお楽しみに!


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第112話 神奈子vsエリュシオン①

諏訪子をエリュシオンから救った神奈子はエリュシオンとの交戦に入る。


「あーあ、また腕が吹っ飛んだ。」

 

そう言いながらエリュシオンは諏訪子を抱える神奈子に目を向ける。

 

「久しぶり、というべきかな?エリュシオン。」

 

「守谷神社の主というのに相応しい存在、八坂神奈子。何が久しぶりよ、再会の挨拶に私の腕を吹っ飛すのはどうかと思うのだけれど?」

 

「本来なら普通に話すつもりだが諏訪子や早苗をやられたのを見たらねぇ。」

 

そう言う神奈子とは別にエリュシオンは吹っ飛んだ自分の腕を拾う。その瞬間、吹っ飛んだ彼女の腕が塵となって空に舞っていった。

 

「・・・?」

 

「何そんなぼさっと見てるのよ。」

 

首を傾げる神奈子とは別にエリュシオンは笑みを浮かべたままだった。そんな彼女にエリュシオンが口を開く。

 

「まぁ見てなさいって。」

 

そう言うと彼女は自分の腕を見せる。その瞬間、メキメキという音を立てながらエリュシオンの腕が再生し始めた。

 

「なっ!?」

 

思わず声を上げる諏訪子と早苗。そんな二人とは別に神奈子は冷静な目でエリュシオンの再生する腕を見る。見ている内に彼女の腕はあっという間に元通りになった。と、エリュシオンは右手を開いたり閉じたりし、神奈子を見て言う。

 

「私が敗れない要因の一つはこれ。私が元々住んでいた楽園、エデンで決して口にしてはいけない果実を私は食べた。果実の効果は不老不死、そして体の再生。でも体の再生には条件があってねぇ。それは臓器の破裂、骨折では全く効果を発揮しない。その代わり、今みたいに腕が斬り落とされたり、耳を千切られた時に発揮するの。斬り落とされたらその部分は再生し、更に自分が受けた臓器へのダメージや出血した箇所も一斉に治る。」

 

「何それ・・・。」

 

「完全にチートじゃないですか・・・。」

 

エリュシオンの言葉を聞いて呆然となる諏訪子と早苗。そんな中、神奈子がエリュシオンに言う。

 

「例えそんなチート能力があろうと関係ないよ、エリュシオン。」

 

「・・・なんですって?」

 

「この世に弱点のないやつなんていないよ。無論、私もあんたもね。」

 

「ほう、つまりアンタは私の弱点を探り当て、私を倒すつもりね。」

 

「その通り。」

 

「なるほどねぇ。ならば私は弱点を探られないように対策せねばならないわね。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの肩にスライムが乗る。肩に乗ったスライムをエリュシオンは手のひらに乗せた。その瞬間、スライムが光だし、二つに分裂した。

 

「ぶ、分裂した!?」

 

驚く早苗とは別にエリュシオンは笑みを浮かべたままスライムを見る。そして光が消えたかと思うと彼女の右手には刀が、左手には拳銃が握られていた。それを見た神奈子は口を開く。

 

「・・・相当やる気みたいだね、エリュシオン。」

 

「勿論だとも。アンタに弱点を見つけられ、幻想郷中に拡散させられれば私にとっては迷惑なんでね。」

 

そう言うと彼女は銃口を神奈子へ向ける。それと同時に神奈子は数本の柱を漂わせる。それを見たエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「・・・来なさい。」

 

「それじゃあ遠慮なく。」

 

そう言った瞬間、神奈子は数本の柱を一斉にエリュシオンへ飛ばした。

 

「アハッ!」

 

笑い声を上げると彼女は持っていた銃で全ての柱を撃ち抜いた。

 

「全く、面倒な銃だね。」

 

そう言うと神奈子はエリュシオンの前に立ち、握り拳を作り、彼女の腹にパンチを食らわせる。

 

「ぐっ!?」

 

声を上げるのと同時に吐血するエリュシオン。と、彼女の顔に笑みが浮かび、エリュシオンは銃口を神奈子に向ける。

 

「しまった!!」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは神奈子に発砲した。発砲した弾は神奈子の肩を捉える。その瞬間、神奈子は銃を持つエリュシオンの左腕を掴む。

 

「?」

 

不思議そうに声を上げる彼女とは別に神奈子はそのまま彼女の腕を引っ張り、膝で腕を蹴りつけた。その瞬間、ゴキッという鈍い音と同時にエリュシオンの左腕の関節から先があらぬ方向に折れ曲がった。

 

「ッ!?」

 

目を見開きながら声を上げるエリュシオン。神奈子の攻撃を食らった瞬間、エリュシオンは神奈子の腹を蹴りつけた。蹴られた神奈子は早苗と諏訪子の元まで地面を引きずった。

 

「中々やるわね、八坂神奈子。」

 

笑みを浮かべながら言うエリュシオンであるが彼女の左腕は神奈子の蹴りによってだらんと垂れたいた。だが銃は持ったままである。そんな彼女に神奈子が撃ち抜かれた肩を押さえながら言う。

 

「片腕が使えなくなる気分ってのはどうだい?凶神さん。」

 

「何度も経験しているけれど、やっぱり不便ねぇ。折れてしまったのなら仕方ない。刀だけで戦うとしましょう。」

 

そう言った瞬間、左手に握られていた銃が緑色の光を発し、スライム状の液体になるとそのまま液体はエリュシオンの体を通り、刀に吸収されていった。と、諏訪子が神奈子に言う。

 

「神奈子、勝てそうなの?」

 

「分からないよ。奴の話を聞く限り、弱点はありそうだから頑張ってみる。」

 

そう言うと神奈子はエリュシオンと向き合い、再び柱を漂わせる。それを見たエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「ククク、面白くなってきたわね。お互いに負傷している箇所がある中でどっちが有利になっていくのか。」

 

「あんたが楽しめるならそれでいいけれど、私は早くあんたとの戦いを終わらせたいよ。」

 

「フフフ、そんな余裕こいちゃって。本当は焦っているくせに。」

 

そう言うと彼女はスペルカードを取りだした。それを見た神奈子は咄嗟にスペルカードを取りだし、発動した。

 

「神秘ヤマトトーラス。」

 

「貫通ゲイボルグ。」

 

二人の攻撃が同時に放たれた瞬間、激しい勢いが辺りを襲う。そんな中、エリュシオンは神奈子に刀を振り下ろす。それを防ぐために彼女は柱で防ぐ。と、エリュシオンが刀を振りながら言う。

 

「アハハハハハ!やっぱり最高ねぇ、八坂神奈子!恐らくアンタは私を追い詰めることの出来る唯一の存在!」

 

「そうかいっ!」

 

そう言うと神奈子は左手で彼女の顎を殴りつけた。そのまま彼女は空に舞うエリュシオンの足を掴み、地面に叩きつけた。

 

「神奈子様!!」

 

彼女の攻撃に笑みが浮かび、声を上げる早苗と諏訪子。そんな中、神奈子は地面に叩きつけたエリュシオンに拳を構える。

 

「そんな容易くはやらせない。」

 

エリュシオンが言った瞬間、彼女の左足が神奈子の顎を捉えた。彼女の蹴りを食らった彼女はよろけながら後退する。その間にエリュシオンはバク転して立つ。と、エリュシオンは自分の額から流れる液体に触れる。彼女の額の上から流れていたのは血だった。自分の血を見たエリュシオンは神奈子を見て言う。

 

「蹴ることを予想してやったか、あるいはさっき叩きつけたダメージね。あぁ痛い。」

 

そう言いながら彼女は自分の手に付いた血を舐めた。それを見て神奈子は口を開く。

 

「あんたも随分やってくれるね。」

 

「さぁ、戦いはこれからよ。私をもっと楽しませなさい。」




ぶつかる神奈子とエリュシオン。二人の戦いの行方は!?
次作もお楽しみに!


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第113話 神奈子vsエリュシオン②

神奈子とエリュシオンの戦いはますますエスカレートしていく。


神奈子とエリュシオンの戦いはますますエスカレートしていった。二人の攻撃が打ち合う度に勢いの風が辺りの草木を揺らす。

 

「諏訪子様、神奈子様は勝てるでしょうか?」

 

「早苗、神奈子を信じなって。あいつはあのクソババァと対等に戦えるんだから。」

 

二人が話している中、エリュシオンは神奈子の腕を掴み、地面に叩きつけた。

 

「ガッ・・・。」

 

叩きつけられた影響で神奈子は吐血する。そんな彼女にエリュシオンが言う。

 

「クククククク、まさかそんな程度でくたばるアンタじゃないわよね?」

 

「勿論だとも。」

 

そう言うと彼女はエリュシオンの腕を掴み、目の前で弾幕を放った。彼女の放った攻撃はエリュシオンに命中し、砂埃を上げる。

 

「くっ、奴が私の姿が見えてない状態で体勢を整えないと・・・。」

 

神奈子が言った瞬間、彼女の背後にエリュシオンが現れたかと思うと刀を彼女に振る。

 

「チッ!」

 

舌打ちすると彼女は柱を一本出現させ、防ぐ。しかし少し防ぎきれなかったのか、腹に刀の先が掠り、鮮血が飛び散る。それに気にせず彼女はエリュシオンの顔を蹴りつける。神奈子に蹴られた彼女は体を縦に回転させながら吹っ飛び、木に衝突する。その勢いで辺りに砂埃が舞う。

 

「今のはやっただろう・・・。」

 

舞う砂埃をじっと見ながら神奈子は口を開く。そんな中、砂埃の中から声がする。

 

「あーあ、痛い痛い。まさか顔を蹴るなんて、レディらしくないわね。」

 

そう言いながらエリュシオンは首をコキコキと音を鳴らしながら歩み寄る。それを見て神奈子は心の中で語る。

 

(なんてことだい、あの一撃を受けても平気でいられるなんて。)

 

そんな中、エリュシオンは神奈子の元へ走って来る。と、何かを思いついた神奈子はエリュシオンに向かっていく。再び二人は攻撃を打ち合わせる。そんな中、早苗が諏訪子に言う。

 

「諏訪子様、今の状況はどちらが有利でしょうか?」

 

「正直なところ、神奈子が押されているわね。このままだとヤバイかも。」

 

二人が話している中、神奈子がエリュシオンの攻撃により後退する。その瞬間、神奈子の前に唐突としてエリュシオンが現れる。

 

「なっ!?」

 

「終わりよ。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの持つ刀が神奈子の腹を貫いた。

 

「ガハッ・・・。」

 

吐血した神奈子はそのままだらんとなる。そんな彼女とは別にエリュシオンが口を開く。

 

「楽しかったわ、八坂神奈子。アンタとの戦い、存分に堪能させてもらった。さぁて、これからアンタをどうしてやろッ!?」

 

続きを言おうとした瞬間、神奈子の右腕がエリュシオンの胸に突き刺さった。

 

「え・・・。」

 

「神奈子様!!」

 

「神奈子!」

 

驚きを隠せない表情をしながらエリュシオンは吐血する。そんな彼女とは別に諏訪子と早苗は笑みを浮かべて神奈子の名前を呼ぶ。

 

「私と同じ神のくせに、随分と隙だらけじゃないか。凶神さん。」

 

「ガハッ!ハハ、まさかアンタに隙を作ってしまうなんてね。」

 

吐血しながらもエリュシオンは笑みを浮かべたまま口を開く。そんな彼女とは別に神奈子が口を開く。

 

「自らもダメージを負い、相手の急所を捉える。悠岐が牛鬼を倒す際にやった戦法だよ。」

 

「フフフフ。今の攻撃は中々やるわね。褒めてあげましょう。でも残念ね、心臓を潰そうとも私は倒せないわよ。」

 

「心臓?何を言っているんだい?私が狙っているのは心臓じゃないよ。」

 

そう言う彼女の顔には笑みが浮かんでいた。それを見たエリュシオンは眉を細める。そんな彼女とは別に神奈子は再び口を開いた。

 

「私が幼い時にガイルゴールから教えてもらっていてねぇ、神には心臓に等しい場所がある。あんたなら知っているでしょ?」

 

「・・・はっ!!まさか・・・。」

 

「そう、『核』さ。神の弱点である場所は心臓付近にある、核という場所だよ。私が今掴んでいるのはその核さ。」

 

「!!」

 

「核をやられればガイルゴールやあんたでも致命傷にはなるだろうね。」

 

「ぐっ・・・。」

 

彼女の言葉を聞いたエリュシオンは逃げようとする。そんな彼女を見て神奈子は彼女の腕を掴み、言う。

 

「さ、朽ちてもらうよ。これ以上異変を起こされると困るんでね。」

 

そう言うと彼女はスペルカードを取りだし、発動する。

 

「風神様の神徳。」

 

その瞬間、エリュシオンの胸部から光が漏れだしたかと思うと一瞬にして光が消え、彼女の胸部から大量の血が飛び散った。エリュシオンの胸から腕を抜いた瞬間、エリュシオンは地面に倒れた。それを見た神奈子は腹に刺さっていた刀を抜き、地面に捨てる。その瞬間、神奈子は地面に膝をつける。

 

「くっ、刀のダメージが来たか・・・。だがこれで奴を倒せたって訳だね。悠岐、あんたの戦法を使わせて貰ったよ。」

 

そう言うと神奈子はゆっくりと立ち上がり、諏訪子と早苗の方へ歩み寄る。

 

「随分と呆気ない死に様だったわね、あのクソババァ。」

 

「ガイルゴールから核のことを教えてもらったのと悠岐の戦法がなきゃ、勝てなかったよ。」

 

「でも勝ててよかったですね、神奈子様。」

 

「そうだね。さて、残りを片付け・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ終わってないわよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、三人は辺りを見回す。

 

「まずは一人目ェ。」

 

再び声が聞こえた瞬間、早苗の背後に一人の女性が姿を現した。

 

「早苗後ろだ!!」

 

「ッ!!?」

 

神奈子が早苗に言うも手遅れだった。既に彼女はエリュシオンに(うなじ)を叩かれ、気絶していた。

 

「早苗、大丈ッ!?」

 

神奈子が続きを言おうとした瞬間、ドスッという音が辺りに響く。腹に痛みを感じた神奈子はゆっくりと自分の腹を見る。そこには一本の刀が彼女の腹を貫いていた。それを見た神奈子はゆっくりと後ろを振り返る。

 

「この程度で死ぬくらいなら誰も苦労せずに倒せるわ。アンタなら楽しく戦えそうだと思ったのに、残念ね。」

 

そう言うと彼女は刀を抜く。その瞬間、神奈子は目を見開いたまま地面に倒れた。

 

「神奈子!早苗!」

 

二人の名前を諏訪子が呼ぶ。そんな彼女とは別にエリュシオンが口を開く。

 

「あー危なかった。もう少しでやられるところだったわ。」

 

「あんた、どうして生きていられるの!?ガイルゴールと同じ存在なら・・・。」

 

「勘違いしないでくれる?ガイルゴールは完全なる神、それに対して私は半分神の器を手にいれた人間。核による攻撃は私には効かない。」

 

「そんな・・・。」

 

と、エリュシオンは諏訪子に背を向けて言う。

 

「さて、私は他の場所へ行こうかしら。他の場所は闘神(あのこ)達がやっているから、レミリア・スカーレットのところに行こう。そして星熊九十九をこの手で殺す。じゃあね、洩矢諏訪子。」

 

そう言うと彼女は霧のように消えていった。それを見た諏訪子は倒れる神奈子と早苗を見て言う。

 

「治療しないと。急がないと九十九のいた幻想郷みたいになる!」




エリュシオンとの戦いに敗れた神奈子。エリュシオンを止めることが出来るのか!?
次作もお楽しみに!


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第114話 地霊殿を襲う怪物

激戦でエリュシオンに敗れた神奈子。諏訪子一人を残してエリュシオンはまた何処かへ行き、邪魔者を排除していく。


場所は変わって地霊殿付近。そこではユニ達とかくかくしかじか話し合って見回ることになった悠岐が一人で独り言を言いながら歩いていた。

 

「ったく、ユニの奴、俺と楓を一人で行かせるなんて。まぁ考えは悪くないが・・・。だが、これで良かったのか?少し不安だな。」

 

ぶつぶつ言いながら彼は地霊殿の中へ入っていく。中に入った彼は大声で口を開く。

 

「おーいさとり!さとりはいるかー?」

 

彼が叫んだ瞬間、鳥が羽ばたくような音が辺りに響いたかと思うと彼の前に一人の少女がやって来た。背中にカラスのような翼を生やし、胸には赤い目が飛び出ている少女だった。と、少女が悠岐に言う。

 

「悠岐さん、お久しぶり!急にどうしてここへ?」

 

「よぉ空。さとりに用がある。さとりを呼んできてくれないか?」

 

「さとり様?さとり様は今悪夢で魘されているこいし様を見てるよ。」

 

「悪夢?こいしが悪夢を見るとは珍しいな。」

 

「それが数週間続いててさとり様が何とかしようとしてるんだけれどどうしようもならなくて・・・。」

 

「そうか・・・。分かった、悪夢なら俺が何とかしよう。」

 

「うにゅ!?そんなこと出来るの!?」

 

「出来るさ。お前達は知らないかもしれないが、カオスが霊夢に悪夢を見させてた時にも悪夢を取り除いたのは俺なんだ。」

 

「そ、そうだったんだ。じゃあちょっと待っててね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モオォォォォォォォォォ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如辺りに響く牛の鳴き声を聞いて二人は動きを止めてしまう。

 

「な、何!?」

 

「牛?」

 

その時だった。突如外から二人に向かって突進してくる巨大な生物が現れた。

 

「ゲッ!!」

 

「デカっ!?」

 

声を上げるものの、二人は咄嗟に避ける。突進を避けられた生物は急ブレーキし、二人を見る。と、空が生物を見て言う。

 

「あ、あれは幻獣!?」

 

「知ってるのか?空。」

 

「さとり様が言ってたんだよ。幻獣は様々な種類がいて全て人や妖怪を捕食する恐ろしい生物だって。」

 

「エリュシオンが送ってきたかもしれねぇ。さとりの元へ行く前にこいつを討伐するぞ空!」

 

「分かった!」

 

そう言うと彼は刀を構え、空は制御棒を構える。と、悠岐が幻獣を見て言う。

 

「あの幻獣の種類はバッファローか。ならば赤いものに反応して突進してくる筈だ。空!あいつは俺が引き付ける。その間にお前がやれ。」

 

「分かったよ悠岐さん!」

 

その瞬間、幻獣が悠岐を見て唸り始めた。それに気づいた悠岐は服の中から赤いハンカチを取りだし、言う。

 

「オラ来いよデカブツ。ここにお前が好きなのか嫌いなのか分からねぇが赤いものがあるぞ~。」

 

そう言いながら彼はハンカチを上に上げ、左右に揺らす。

 

「モオォォォォォォォォォ!!」

 

それを見た幻獣は悠岐に向かって走り出す。

 

「今だ空!!」

 

彼の言葉と同時に空はスペルカードを発動する。

 

「爆符メガフレア!」

 

彼女の制御棒から放たれた攻撃は一直線に幻獣の元へ向かう。

 

「モ!?」

 

それに気づいた幻獣は後退しようとするがブレーキが効かずに空の攻撃を食らう。

 

「でかした空!!」

 

そう言うと悠岐は攻撃を食らった幻獣の元へ向かっていく。

 

「モオォォォォォォォォォ!!」

 

再び雄叫びを上げるバッファロー型の幻獣。そんな中、悠岐は幻獣の頭の上に乗り、刀を構えて言う。

 

「八雲クシナダの踊狂。」

 

その瞬間、彼の持つ刀から緑色の光が放たれたかと思うとそのまま幻獣の頭に刀を刺した。

 

「モオォォォォォォォォォ!!」

 

その瞬間、幻獣は悠岐を振り下ろそうと頭を振るが徐々に体がよろけ始め、遂には倒れてしまった。と、空が悠岐に言う。

 

「こいつは死んだの?」

 

「脳天を仕留めたから死んだと思うぞ。」

 

「そっかぁ。そんじゃあさとり様のところに行こう。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年少女移動中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さとりの場所に着いた悠岐と空は先程起こったことをさとりに話した。それを聞いたさとりは頷きながら言う。

 

「なるほど、先程の上が騒がしかったのはこれの影響だったのですね。」

 

「あぁ、そうさ。勝手に暴れて悪かったな。」

 

「いえ、守ってもらえれば大丈夫なので。」

 

「さとり様、こいし様のことを話したほうがいいんじゃないですか?」

 

「そうね、話そうかしら。」

 

燐に言われたため、さとりは悠岐に話し始めた。

 

「実は数週間前からこいしが謎の悪夢を見るようになって毎晩魘されているんです。」

 

「どんな内容の悪夢なんだ?」

 

「こいしは怖い女の人が自分をじっと見て不気味な笑みを浮かべて『食べてあげる』と言うらしいです。」

 

「食べる?」

 

「えぇ、こいしや私の周りには夢の中で見た女性はいないらしいです。」

 

「う~む、エリュシオンの可能性があるな。」

 

「エリュシオン?聞いたことがあります。昔、琥珀という妖精から彼女のことを聞いたことがあります。ですが彼は名前を教えてくれませんでした。」

 

「琥珀は確かエリュシオンに呪いを掛けられて名前を言えば記憶を消されるらしいな。」

 

「あと、確かですがパルシィや勇儀さんも彼女の名前を出していました。」

 

「さて、こいしの様子を見ようか。」

 

「そ、そうですね。こいし!来なさい。」

 

彼女の声を聞いてこいしが扉を開けてやって来た。彼女を見た悠岐は目を細めて言う。

 

「震えてるな。それほど怖かったのか。それに、悪夢を取り除く時は寝てなきゃ出来ないのに今回は起きていても出来そうだ。」

 

「本当ですか?ではお願いしてもよろしいですか?」

 

「任せな。」

 

そう言った瞬間、さとりは席を立ち、その場所にこいしを座らせた。

 

「さぁ、やるぞこいし。」

 

「・・・痛い?」

 

「痛くはない。少し長いかもしれないが。」

 

そう言うと彼はこいしの額に手を置く。と、何かを感じたのか、悠岐が口を開く。

 

「あれ?すぐに取れたぞ。」

 

そう言うと彼はこいしの額から手を離し、持っていたものを見せる。それを見たさとりが口を開く。

 

「これが、悪夢の正体ですか。」

 

「霊夢の時よりも楽に取れたな。」

 

「これで安心して眠れる?」

 

「多分な。」

 

「わーい!」

 

そう言うと彼女は手を上げながらはしゃぎ始めた。それを見たさとりは笑みを浮かべて悠岐に言う。

 

「ありがとうございます。これで安心して眠れます。」

 

「礼はいいさ。」

 

と、部屋の中に誰かが入ってきた。部屋に入ってきた人物を見てさとりが口を開く。

 

「どうしたの?燐。」

 

「悠岐さん、いますか?」

 

「燐?俺はいるが。」

 

「ハァ、ハァ・・・。急いで人里に行って下さい。」

 

「人里?どうして?」

 

「あなたの大切な方が負傷して運ばれたらしいです。」

 

「・・・!!まさか。」

 

そう言うと彼は席を立ち、外へ向かう。そんな彼にさとりが言う。

 

「どうしてのですか?」

 

「すまないさとり。少し用を思い出した。また後で話そうぜ。」

 

そう言うと彼は人里へ走っていった。




幻獣の驚異、こいしの悪夢。エリュシオンの企みとは・・・。
次作もお楽しみに!


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お正月特別編

ユニ「みなさん、新年明けましておめでとうございます!」

 

楓「東方混沌記始まってなんやかんやで約3年経つんだな。」

 

悠岐「あっという間だな。」

 

百々「元々は友人間での小さな物語だったんだよな。」

 

九十九「それがよくここまで成長したものだ。」

 

悠岐「あぁ、色んなことがあったり色んな人と出会ったりだな。」

 

ユニ「そこで私はあることを思いついたの!」

 

悠岐「あること?」

 

楓「何か面白いことやるのか?」

 

九十九「なんかやばそうな雰囲気……。」

 

ユニ「私がやりたいこと、それは物語恒例の人気投票!!」

 

楓「デタァ。」

 

百々「やめておけ、死人が出るぞ。」

 

ユニ「えぇーっ、そんなぁ。」

 

楓「東方キャラは多いがオリキャラ達だけならいいかもな。」

 

悠岐「エリュシオンとかピンさんか。」

 

九十九「……ちなみに誰が死ぬんだ?」

 

百々「作者。」

 

ユニ「ヤマタケるさんなら大丈夫!あの人常に死んでるからww」

 

悠岐「ヘラヘラするなよ、作者が可哀想だろうが。」

 

百々「投票結果の集計が辛いらしいからな。やめておいた方がいいと思うぞ。」

 

九十九「あー(察し)。」

 

楓「もしやったら作者病んで一人でグラブってると思うぞ。」

 

百々「グラブってんのか……。」

 

悠岐「あるいはヤムチャみたいになる。」

 

九十九「もうやめて!作者のライフはとっくにゼロよ!もう勝負はついたのよ!」

 

作者「学校なんか行きたくぁねぇ・・・」

 

悠岐「オイコイツ変なこと言ってるぞ。」

 

友人「おいバカやめろ。」

 

九十九「うわなんか来た。」

 

楓「乱入者が多いな。」

 

ユニ「なんかグタりそう・・・。」

 

暁「とりあえず結界貼っときますねー。」

 

ユニ「あっ、暁君!?まだ登場してないのに!?」

 

悠岐「出るの早いな。」

 

ラピス「わ、私が連れてきたんです。失礼でしたか?」

 

楓「お前もまだ出てない・・・。」

 

悠岐「もうグタってるぞ。」

 

琥珀「まぁ、いいやんお祭り的なやつなんだし。」

 

ユニ「琥珀君も!?全員集合してるじゃない。」

 

九十九「おっさんとかはいねぇけどな。」

 

エリュ「はーい、みんな静粛に~。」

 

ユニ「えぇ!?」

 

楓「なっ!?」

 

悠岐「最悪な野郎が来たぞ・・・。」

 

百々「チャっす。」

 

九十九「どうも。」

 

暁「今日は。」

 

琥珀「やぁ、エリュシオン。君も来たんだね。」

 

エリュ「アンタ達グタってるから私が代わりにやってあげる。人気投票は残念ながら作者の都合上行わないけど今後とも私達の活躍を見てくれると嬉しいわ。」

 

ラピス「そうね。……というか早く私と暁君を出しなさい。」

 

ユニ「そうね。見てくれるのが嬉しいもの♪」

 

悠岐「作者に言えよ・・・。」

 

楓「あと、感想とかくれると嬉しいんだ。作者のやる気が上がるぞ。」

 

九十九「やる気は上がっても時間は増えないがな。」

 

エリュ「全ての人々に時間は平等に与えられている。不定期になるけど待ってくれる人に感謝するわ。」

 

琥珀「大丈夫だと思うよ。私達の生みの親は数年放置している作品もあるみたいだからね。」

 

ユニ「そんじゃあ、シメと行きましょうか!」

 

エリュ「そうね。」

 

楓「あぁ。」

 

悠岐「やりますか。」

 

百々「シメか。……ラーメンでも食うのか?」

 

暁「それなら僕がお作りしますよ。」

 

悠岐「そっちのシメじゃねぇ!!」

 

九十九「こんっの、天然共は……。」

 

琥珀「九十九ちゃん、殴るのは行けないよ。」

 

エリュ「そうよ星熊九十九。怒ると肌によくないってお母さんに言われなかったのぉ~?」

 

九十九「おあいにく様、鬼の肌は強いんでね。それでも地獄で獄卒してる種族だからな。」

 

エリュ「チッ。」

 

ユニ「そ、それじゃあみんなで終わらせましょう!」

 

ラピス「賛成。」

 

ユニ「よし、せーのっ・・・。」

 

全員「これからも東方混沌記をよろしくお願いします!」

 

ラピス「あまり喋ることが出来なかったわ……。」

 

暁「まだ出てないんだから仕方ないでしょう。」

 

ユニ「いつでるのかな・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影裏「あれ、俺は?」




未登場キャラばかりですいません。
エリュシオンの言うとおり、不定期ですが投稿にしていきますのでこれからも東方混沌記をよろしくお願いします!
では良いお年を!!


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第115話 逃れられぬ破滅

幻獣の驚異にこいしの悪夢。エリュシオンの計画は進んでいくばかり。


場所は変わって玄武の沢。そこではユニ、霊夢、魔理沙、輝夜がエリュシオンの息子である水の闘神ドゥームと戦っていた。と、ユニが口を開く。

 

「こいつ、かなり面倒な相手ね。紫と戦法が似てるけれどパワーがある。」

 

「どうした?貴様らの力では相手にならぬぞ。」

 

「こいつ、今まで戦ってきた奴とは力の差が違う。メルト・グランチやカオスとはパワーの差があるぜ。」

 

息を切らしながら魔理沙は口を開く。そんな中、霊夢がドゥームの背後に回る。

 

「食らいなさい!」

 

そう言うと彼女はドゥーム目掛けて弾幕を放った。

 

「無駄だ。」

 

そう言うとドゥームはワープを展開させ、霊夢の放った弾幕をワープに入れた。

 

「くっ、またワープね。どうも対応出来ないわ。」

 

そう言うと霊夢はユニ、魔理沙、輝夜のいる場所まで戻る。と、ユニがドゥームに言う。

 

「1つ、聞きたいことがあるのだけれどいい?」

 

「・・・なんだ?」

 

「あなたは・・・いや、あなた達はどうしてこの世界を破壊しようとするの?別に私達や私達の先祖はあなた達に何もしてないでしょう?」

 

「この世界を破壊する理由はただ1つ。我が母上であるエリュシオンの望む世界を作る。別に母上は幻想郷に恨みを持っている訳ではない。過去に人間に裏切られた恨みを晴らすためにやっている。そのためには邪魔な貴様らを排除し、世界を破壊するのだ。」

 

「エリュシオンが、人に裏切られた?」

 

「そうだ、魔法使いの小娘よ。母上は一度現世に行き、人間として生活していた。だが愚かで身勝手な人間達に母上は裏切られた。それを気に母上は表への怨恨のため、世界を破壊する。そのためには邪魔な貴様らを排除し、世界を破壊するのだ。」

 

「なるほど、なんとなく分かった気がするわ。」

 

「輝夜!?」

 

「ユニは少し黙ってて。つまりエリュシオンは、恨みを裏では晴らすことが出来ないから表へ手を出した。そういうことね。」

 

「その通りだ。」

 

ドゥームの話を聞いたユニ達は何も言うことが出来なかった。と、ドゥームが口を開いた。

 

「余興が過ぎたな。続きを始めよう。」

 

そう言うと彼は辺りにワープを展開させた。と、何かを閃いたユニが口を開く。

 

「魔理沙!あのワープに試しに弾幕を放って。」

 

「あのワープってどれだ!?」

 

「あのワープよ。あのワープ。」

 

そう言うと彼女はドゥームの頭上にあるワープを指差したそれを見た魔理沙は笑みを浮かべて言う。

 

「よし、試しにやってみるぜ。」

 

そう言うと彼女はスペルカードを取りだし、発動する。

 

「魔符ミルキーウェイ。」

 

魔理沙の放った弾幕は一直線にドゥームのワープの中に入っていった。

 

「・・・?」

 

首を傾げるドゥームとは別に彼の背後にあるワープから先程魔理沙の放った弾幕が飛んできた。

 

「ムッ!」

 

それに反応したドゥームは攻撃を避ける。それを見た輝夜がユニに言う。

 

「ユニ、まさかあなた・・・。」

 

「そうよ。ワープを展開してくるなら、逆にワープを利用してやればいいのよ。そうすれば私達は手こずることもないし、相手を混乱させることが出来るの。」

 

「なるほど、よく考えたなユニ!まぁ私も同じ事を考えてたんだけどな。」

 

「嘘っぱちね、魔理沙。」

 

「うっ、うるさいぜ!」

 

四人が話している中、ドゥームは冷静な目で四人を見ていた。と、ユニがスペルカードを発動する。

 

「剣符アームストライク。」

 

その瞬間、彼女の隣に小さな空間が現れ、中から鉄砲のようなものを取り出した。巽南中、魔理沙がユニに言う。

 

「ユニ、それは?」

 

「火縄銃。撃つのに時間が掛かるけれど命中すれば大きいダメージとなるわ。」

 

そう言うとユニは火縄銃を構えてワープの中へ入った。

 

「ム?」

 

それを見たドゥームは辺りを見回し始める。

 

「私はここよ!!」

 

その声が聞こえた時間、ドゥームの背後にあるワープからユニが現れ、そのまま彼女は発砲する。

 

「何ッ!?」

 

連続で背後から来ることを予想出来なかったドゥームは銃弾を腕に受ける。それを見た霊夢がユニに言う。

 

「やるじゃないユニ!見直したわ。」

 

「えへへ。」

 

ユニが照れている時だった。ドゥームがポケットの中から見覚えのあるカードを取り出した。それを見た魔理沙が口を開く。

 

「すっ、スペルカード!?」

 

「審判ドゥームズディー・ジャッジメント。」

 

ドゥームがスペルカードを発動した瞬間、彼は四人を見て叫びながら走っていく。

 

「逃れられぬ破滅を与えてくれるわァッ!!」

 

そう叫んだ瞬間、ドゥームはユニと輝夜の横を通りすぎていた。その瞬間、二人を突然発生したフレアが襲った。

 

「きゃぁっ!」

 

「ユニ、輝夜!!」

 

二人の名前を呼ぶ霊夢とは別にドゥームは進行方向を変え、霊夢の元へと走っていく。

 

「霊夢気をつけろ!!」

 

ドゥームを見て魔理沙は咄嗟に霊夢に言う魔理沙。そんな彼女とは別に霊夢は目を見開きながら言う。

 

「は、速い!!避けきれない!!」

 

その時だった。霊夢へと襲いかかろうとしていたフレアの前にひとつの影が現れた。

 

「まったく、大事なところで抜けているんですね、貴方は。」

 

少年の声が聞こえた瞬間、霊夢の姿が消え、その場からフレアが起こった。

 

「な、何があったんだぜ?」

 

そう言うと魔理沙はフレアによって起こった砂埃を凝視する。砂埃が消えるとそこには霊夢と一人の少年が立っていた。

 

「!?」




ドゥームとの戦いに突然現れた少年。一体何者なのか!?
次作もお楽しみに!


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第116話 博麗の弟

ドゥームの攻撃に苦しむユニ達。そんな中、一人の少年が現れる。


突然現れた少年に一同は驚くしかなかった。と、ドゥームが少年を見て言う。

 

「貴様、何者だ?」

 

「僕が誰かなんて、どうでもいいんですよ。水の闘神ドゥーム。」

 

「なんだと?それに貴様、このドゥームのことを知っているようだな。」

 

ドゥームにそう言われると、少年は肩を竦めた。

 

「えぇ。あなたは知らないかも知れませんが、他の闘神のことも、あなた達の母のことも知ってはいます。」

 

「ほう。貴様、中々面白い小僧だ。」

 

ドゥームが笑みを浮かべる中、ユニが少年を見て言う。

 

「あ、あなたは!?」

 

「暁!?」

 

霊夢の声に反応し、少年は顔をそちらに向ける。

 

「久しぶりですね、姉さん。知ってる人によく似た外見の人もいるみたいですが、今は無視します。苦戦してるみたいですね。僕も手を貸しますよ。」

 

「え、姉さん?」

 

「そう、暁は私の弟よ。」

 

「ええええええええ!!」

 

思わず声を上げてしまうユニ。

 

「驚くのも言いですが、今はドゥームをどうにかしましょう。『我が瞳は死を見る』。」

 

魄霊暁。彼の能力は『虚を実にする程度の能力』。彼がついた嘘を真実へと捻じ曲げるものだ。嘘(能力)をついた彼の瞳は青く光っていた。と、ドゥームが口を開く。

 

「昔、母上から聞いたことがある。貴様のような小僧は見た目によらず、面倒なことをしてくるとな。」

 

「面倒なことをするのはあなたも同じでしょう?展開されたワープを用いたランダム移動による奇襲戦法。二個以上もあるから僕は使えません。」

 

「それだけではない。」

 

そう言うとドゥームは左手を上に上げる。その瞬間、ユニ達やドゥームを囲むように青い炎のようなものが現れた。

 

「こ、これは・・・。」

 

炎を見た輝夜は目を見開く。そんな彼女とは暁は青い炎を見て難色を見せた。

 

「……ダメージウォール、ですか。まさかこのように展開されるとは思いもしませんでした。……ですが、こちらにも『点』はあるはずです。」

 

展開されたダメージウォール、その中の1つに彼は近づく。

 

「……ここですね!」

 

そして、その手をある1点に突き立てる。その瞬間、ドゥーム彼の触れたそれは消え去った。しかし彼の手は焼けていた。それを見たユニが口を開く。

 

「い、一体何をしたの!?」

 

「ダメージウォールの『点』を突きました。この世界に存在する全てのものはどこかに『綻び』を持っています。今の僕はその『点』が見える状態となっていますので、ダメージウォールの『綻び』を突いて一面だけ崩させていただきました。……その分、手を負傷しましたが。」

 

右手をプラプラさせながら彼はユニの疑問に答える。それを見た霊夢が暁に言う。

 

「少し無理したわね、暁。」

 

「ナイフを作ることを忘れましたからね。必要経費ということにします。」

 

「けど感謝するぜ。お陰で戦いやすくなった。」

 

「所詮一面だけです!少しでも触るとこのようになるのでお気を付けてください!」

 

魔理沙にアドバイスを送り、彼もまたドゥームに向かっていった。

 

「ムゥ、無駄なことを。」

 

そう言うと彼はワープを再び展開し、ユニ達に向かっていく。

 

「分かっていると思いますが出口を操作出来るのはドゥームだけです!皆さん集まって死角を作らないようにしてください!『我が右手は破壊の腕』。」

 

「了解!」

 

「任せて!」

 

彼の言葉に返事をする輝夜とユニ。そんな彼女達に笑みを浮かべた暁は再びドゥームを見て言う。

 

「さぁ、どこから来ますか……?」

 

と、ドゥームが服の中から再び見覚えのあるカードを取り出した。それを見た霊夢がユニ達に言う。

 

「気をつけて!またあれが来る!」

 

「逃れられぬ破滅を与えてくれるわっ!」

 

「ドゥームズディー・ジャッジメント!!」

 

「す、ストライクショット!?」

 

声を上げる魔理沙と暁とは別にドゥームは走りながらユニ達に向かっていく。それを見たユニがみんなに言う。

 

「避けて!!」

 

「っ!に、逃げ道がほとんど潰されてます!ワープを展開したのはこの為ですかッ!!」

 

「今日が貴様らにとっての、審判の日だ!」

 

そう言った瞬間、ユニ達の元でフレアが放たれた。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

「うわあああっ!」

 

「ぐぅうっっ!!?」

 

ユニ達の元を過ぎたドゥームは背を向けたままユニ達の様子を見る。と、ユニが口を開いた。

 

「な、なんて力なの。さっきよりもずっと強い!」

 

「じょ、上方修正……」

 

暁の呟きは誰にも聞こえなかった。と、ドゥームが口を開く。

 

「貴様らがこのドゥームを倒すことなど不可能。我はあいつとの約束を破る訳にはいかぬ。」

 

「約束?」

 

ドゥームが発した『約束』という言葉にユニは反応する。そんな彼女とは別に暁が口を開く。

 

「『我は雷切を振るう者』。今はそんなの気にしていられませんよ。」

 

右手を負傷し、フレアを受けた暁がまた嘘(能力)を重ね、雷を迸らせる刀を左手に持ち、ドゥームの前に立つ。

 

「まぁ、貴様らに話すまでもないがな。」

 

そう言うとドゥームは体に巻きつけていた鎖を外す。それを見た霊夢が目を細めて言う。

 

「ドゥームの奴、本気を出すつもりね。」

 

「こちらも時間がありませんから丁度いいかもしれません。素早く行きましょう、姉さん。」

 

「ユニ、魔理沙と輝夜を少し離れた場所に移動させて。こいつは私と暁でやるから。」

 

「い、いいの?霊夢に暁君。」

 

「私は平気よ。」

 

「僕も大丈夫です。……と言うよりもここに人を来ないように誘導してもらえますか?こんなに騒いでたら誰かが来ると思うので。」

 

「分かったわ。輝夜、魔理沙、行くよ!」

 

「分かったわ。」

 

「がってんだ!」

 

そう言うと三人は何処かへ行ってしまった。それを見たドゥームが二人に言う。

 

「良いのか?貴様らはこのドゥームにハンデをやっているのだぞ?」

 

ドゥームのその言葉に暁は笑って見せた。

 

「それは随分と自信があるみたいですね。あなたの攻略法なんてサイトを見ればそこら中に上がってるのですよ、闘神中最弱のドゥームさん?」

 

「なっ!?」

 

「暁、それはどういうこと?まさか、現実のこと?」

 

「その事は後で話します姉さん。……覚悟してくださいドゥーム。この刀は平行世界であなたを倒した存在、『神威』が使用していた名刀『雷切』です。さぁ、2つに切断してあげましょう!」

 

そう言って暁は雷切を振るい、ドゥームに襲いかかる。

 

「調子に乗るな小僧!」

 

それに対抗すべくドゥームは近くにあった岩を投げつける。

「破壊の右手!」

 

嘘を吐きっぱなしだった『破壊の右手』により、投げつけられた岩はその右手に触れた瞬間崩れ去る。

 

「ええい腹立たしい!!」

 

そう言うとドゥームは持っていた鎖を暁に向かって投げる。

 

「封魔針!」

 

その瞬間に霊夢の放った攻撃がドゥームの投げつけた鎖を捉えた。

 

「ありがとう姉さん!」

 

視線をドゥームへ固定したまま暁は霊夢に対し礼を言う。

 

「どういたしまして。暁、一気に決めるわよ!」

 

そう言うと霊夢は浮いたままスペルカードを取り出す。

 

「直死、発動……。」

 

「ならばこちらも切り札を使おう。ウオォォォォォォォ!」

 

声を上げながらドゥームは全身に力を入れる。それを見た暁が口を開いた。

 

「あなたの『線』は……そこですか。姉さん、スキを作れますか?」

 

「・・・頑張ってみるわ。その代わり、ちゃんと倒すのよ。」

 

そう言うと霊夢はドゥームの方へ顔を向ける。

 

「もちろんです。絶対に倒してみせます」

 

暁もまた、左手の雷切を強く握り直す。

 

「受けるが・・・。」

 

「夢想封印!!」

 

続きを言おうとしたドゥームに霊夢がすかさず攻撃する。

 

「暁今よ!」

 

「行きます、ストライクショット!!」

 

暁はドゥームへと素早く近づき、彼を空へと打ち上げその目でみえる『線』に合わせて斬り裂いた。

 

「ヌァァァァァァァァ!!」

 

ドゥームの叫び声が辺りに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだ?この感覚は・・・。何か、懐かしい感覚だ。目の前にいるのは誰だ?あぁ、そうだ。あれは我が母上、エリュシオンだ。だが、何故今になって母上との思い出を思い出すのだ・・・。

 

「アンタは頼もしいわ。闘神の中で一番真面目な子。だからアカシャや私がいない時はアンタがみんなを纏めなさい。なんせアンタは、私にとっめ大切な家族なんだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニルヴァーナ、母上、百々・・・すまぬ。」

 

涙を流しながら小さく呟いた彼の声は霊夢にだけ聞こえていた。

 

「今、あんた百々って・・・。」

 

その瞬間、ドゥームの体が爆発し、そのままドゥームは消えてしまった。

 

「……実際の所、神威はドゥームに適正もってないんです……が……ね……。」

 

言葉を続けながら暁はその場に倒れ込んだ。

 

「暁!?」

 

彼を見た霊夢はすぐさま彼の元へ駆け寄り、優しく頭を抱える。

 

「暁あんた大丈夫?!」

 

「の、能力を同時使用しすぎました……。傷の男スカーの『破壊の右腕』、遠野志貴と両儀式の『直死の魔眼』、神威の『雷切』……。流石に4つは辛いです。姉さん、あとお願いします。」

 

暁はそう言って意識を失った。呼吸はあるようなので、生きてはいるようだ。

 

「ちょっと暁!?全く、聞きたいことがあったのに。あーあ面倒臭いわね、運ぶの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、博麗のお二人さん。そんな場所で寝る風邪をひくよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声が聞こえたかと思うと唐突に現れた少年を見て霊夢は少し驚いた表情を浮かべて言う。

 

「あら、琥珀じゃない。あんた、生きてたのね。楓の霊力が弱まったのと同時にあんたの気配も消えたから一回休みになったのかと思ったわ。」

 

「はは、回数は1回だったけど時間的には3回くらい休んでるよ。チルノや大妖精に修復を手伝ってもらうべきだったなか?」

 

「そう。それで、楓はどうしたの?楓はそう簡単には倒される奴じゃない筈だけれど?」

 

「僕らも闘神にやられてね。ニルヴァーナという火の闘神さ。」

 

「ニルヴァーナ?さっき、ドゥームが百々と一緒に言っていた奴のことね。そんなに強いの?」

 

「強くは……ないかな。聖さんが相手取っていたらすぐに終わるくらいには弱いけど僕も楓も戦闘スタイルに合わなくて苦戦しただけさ。」

 

「相性が悪かったって訳ね。あ、そうだ琥珀。ちょっと暁運ぶの手伝ってくれいないかしら?私一人じゃ運ぶの大変なのよ。」

 

「これ見た目だけしか再生出来てないんだよね。中身カスカスだから彼を持ったら折れるから無理。」

 

「あー面倒臭い。ならユニ達呼んできなさいよ。」

 

ふむ。と手を顎に当てて少し考え込む琥珀。

 

「それなら僕が手伝うよ。チルノサイズになればどうにかなるから。」

 

「なら早くしなさいよ。全く、今頃悠岐や百々は何してるのよ!」

 

シュルシュルと音が聞こえるような勢いで琥珀はチルノよりも小さいサイズまで縮んだ。

 

「じゃあ博麗は彼の肩側を。僕は足を持つから。」

 

「分かったわよ。」

 

そう言うと彼は暁の肩を持った。

 

「よいしょっと。あ、重……。」

 

「何か言った?」

 

「いやなんでも。」

 

そのまま暁は人里まで連行されて行った。




ドゥームを倒すことに成功した霊夢達。ドゥームが言っていたことに疑問を抱く霊夢。その真相とは!?
次作もお楽しみに!


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第117話 傷ついた仲間

霊夢の弟、暁の活躍により闘神ドゥームを倒すことに成功したユニ達。


場所は変わって人里。そこでは一人の少年がとある人物の元へと向かっていた。

 

「ハァ、ハァ・・・。あいつは何処へ・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悠岐君!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然彼の名を呼ぶ声が聞こえたため、悠岐は足を止め、声がした方向を見る。そこには悠岐に手を振りながらやって来る二人の少女と息を切らしながら走っていく少女、そして少年を運ぶ二人の少女と少年がいた。彼女達を見た悠岐は口を開く。

 

「ユニ、霊夢、魔理沙、輝夜、琥珀!」

 

五人の名前を呼んだ悠岐は五人の元へ寄る。と、ユニが口を開く。

 

「無事だったんだね、良かったぁ。」

 

「お前らも無事で良かったよ。それと、霊夢と琥珀が運んでいるそいつは誰だ?」

 

そう言うと彼は霊夢と琥珀が協力して運ぶ少年を指差す。それを見た輝夜が口を開く。

 

「彼の名前は魄霊暁。私達がエリュシオンの息子、闘神ドゥームとの戦いで駆けつけてくれた霊夢の弟よ。」

 

「霊夢の弟か。なんだか、二人とも運ぶの大変そうだな。俺がやろうか?」

 

「それはありがたいわね。あんたに任せるわ。」

 

そう言うと霊夢は持っていた暁の肩をゆっくりと地面に下ろす。それと同時に霊夢も暁の足を地面に下ろす。その後に悠岐が彼を背負った。と、琥珀がある小屋を指差して言う。

 

「あの小屋で休ませよう。君の大切な人もそこにいるよ。」

 

「そうなのか!?なら急がないとな。」

 

そう言うと彼は暁を背負っているとは思えない速さで琥珀の指差した小屋に走っていった。それを見た輝夜が目を見開いて言う。

 

「な、なんて速さなの。あんな元気あるなら私を背負いなさいよね、あの男。」

 

「ところで琥珀君、あの小屋には誰がいるの?」

 

ユニの言葉を聞いた琥珀は少し遅れて返事をした。何かをしていたのだろう。

 

「あそこにはカエデちゃんがいるよ。」

 

「え・・・楓ちゃん?」

 

「あ、ちょっとユニ!?」

 

琥珀の言葉を聞いた瞬間、ユニは悠岐と同様小屋に走っていった。それを見た輝夜は声を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年少年移動中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小屋に入るとそこには息が荒くなりながら唸り声を上げて寝ている一人の少女がいた。少女を見た悠岐は目を見開きながら言う。

 

「楓!!」

 

彼女の名前を呼ぶと彼は暁をそっと布団に寝かせ、楓の側まで寄る。

 

「楓ちゃん!」

 

小屋に着いたユニは悠岐と同じように楓の側まで寄る。

 

「楓、しっかりしろ。楓!!」

 

「楓ちゃん、しっかり!!」

 

ユニが言った時だった。突然楓が左手で悠岐の左手をぎゅっと握りしめた。それを見た悠岐は楓に声を掛け続ける。

 

「楓、どうしたんだ?楓!!」

 

「やめろ・・・やめろ!!」

 

何かをされそうになっているような声を上げながら楓は力強く悠岐の左手を握る。それを見たユニが口を開く。

 

「すごい力ね。そんなにトラウマになるような夢を見ているのかしら・・・。」

 

「多分そうかもしれねぇ。暴力で起こすのは危険だ。とりあえず声を掛け続けるぞ。」

 

そう言うと彼は再び声を掛け続ける。後に着いた霊夢、魔理沙、輝夜、琥珀は二人を見ると二人同様楓の側まで寄る。と、ユニが楓の耳元で叫ぶ。

 

「楓ちゃんしっかりして!!」

 

「・・・はっ!」

 

ユニの言葉を聞いて楓はようやく目を覚ました。息を荒くしながら楓は口を開く。

 

「・・・私は、一体をしていた?」

 

「魘されてたぞ。悪夢を見てたのか?」

 

「あぁ、過去のトラウマが蘇っていた。もう思い出したくもない・・・。」

 

「はぁ、良かったぁ。」

 

悠岐と楓、ユニが話している中、輝夜が口を開いた。

 

「楓、あんた随分と強く悠岐の手を握ってたじゃない。血が出てるわよ。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、楓は握ってた悠岐の手を見る。彼の左手は楓が強く握りすぎた影響で指があらぬ方向に折れ曲がり、血が垂れていた。それを見た楓は目を見開き、咄嗟に手を離して言う。

 

「悠岐、私は・・・。」

 

「相当おぞましい夢でも見てたんだろうな。見ての通りだ。骨は砕けてるし、出血も酷い。」

 

それを見た楓は優しく悠岐の左手を両手で握り、言う。

 

「・・・すまない、悠岐。私は気づかない内に怪我をさせてしまった。」

 

「気にすることはねぇ。包帯で固定していれば大丈夫だ。それよりも楓、怪我は大丈夫なのか?」

 

彼の言葉を聞いた楓は自分の腹に手を当て、言う。

 

「変だな。炎の闘神ニルヴァーナに蹴られた時には肋骨数本折れた痛みがあったのに今はほとんどない。」

 

「ほとんどないですって!?」

 

彼女の言葉を聞いたユニ、輝夜、魔理沙、霊夢の四人は思わず声を上げる。そんな彼女達とは別に悠岐は琥珀を見て言う。

 

「琥珀、お前は楓がニルヴァーナと戦っていた時、何処にいた?」

 

「カエデちゃんと共に戦っていたさ。けど、戦闘スタイルが合わなくて苦戦したんだ。それでカエデちゃんが負傷した時に治癒の文字を当てておいたからだいぶ治ってる筈だよ。」

 

「なるほど、お前がやってくれたのな。ありがとうな、琥珀。」

 

「いえいえ。こういう異変の時は助け合うのが普通でしょ?」

 

「・・・あぁ、そうだな。」

 

そう言うと悠岐は服の中から包帯を取りだした。そして楓に言う。

 

「お前が折ったんだ。巻くのを手伝ってくれ。」

 

「あぁ、勿論だ。」

 

そう言うと楓は悠岐から包帯を受けとると彼の手に巻き始めた。と、輝夜が口を開く。

 

「エリュシオンの刺客は相当手強いようね。」

 

「あぁ、そうだな。私達が今まで戦ってきた奴らの中でもダントツで強いぜ。」

 

「あんな奴、倒せるのかしら・・・。」

 

「僕が思うに今のままでは無理だね。彼女の能力に対応できる人がいないし、息子達も結構厄介なんだから。」

 

「よし、こんなものでいいか?悠岐。」

 

「あぁ、そうだ。ありがとうな。」

 

ユニ、輝夜、魔理沙、琥珀が話している内に楓は悠岐の左手に包帯を巻き終えていた。と、楓は自分の刀を持つと立ち上がり、悠岐と外を見る。それを見たユニが口を開く。

 

「悠岐君、楓ちゃん。どこ行くの?」

 

「闘神の気配がしてな。俺と楓はそいつを倒しに行く。」

 

「無茶よ!悠岐君は左手を怪我してるし楓ちゃんは病み上がりなのよ?」

 

「心配してくれてありがとう、ユニ。でも行かなきゃ行けないんだ。行かせてくれ。」

 

「でも・・・。」

 

ユニが続きを言おうとした瞬間、琥珀が口を開いた。

 

「じゃあこうしよう。僕達は後から君達二人の後を追う。それでいいでしょ?」

 

「琥珀君?」

 

「いい提案だな琥珀。そうしよう。」

 

そう言うと悠岐は再び外を見て言う。

 

「んじゃ、また会おうぜ。」

 

そう言った瞬間、二人は何処かへ走っていった。ユニ達はそれをただ黙って見ていた。




傷が治ったばかりだが幻想郷に残る闘神を倒すべく戦いに向かった楓。大丈夫なのだろうか・・・。
次作もお楽しみに!


追記 最近ヴァイオレット・エヴァーガーデンというアニメにはまっています。皆さんはどんなアニメが好きですか?


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第118話 合流

体の傷が治ったばかりの楓は悠岐と共に残る闘神と戦うことに。


二人が行ったのを見たユニは小屋に戻る。

 

「二人は行ったのね、ユニ。」

 

「う、うん。行ったわ。」

 

小屋に入って最初に話しかけてきたのは霊夢だった。彼女は布団で寝る暁の様子を見ていた。それを見たユニが霊夢に言う。

 

「霊夢、弟君の暁君の容態は?」

 

「ちょっと力を使いすぎて疲れているみたい。少しすればすぐ目を覚ますわよ。」

 

「そっかぁ・・・。」

 

「・・・どうかしたの?ユニ。」

 

「えぇ、楓ちゃんが心配で・・・。傷が治ったばかりで戦えるのか心配なのよ。千年殃禍の時もルシファーと戦って傷が治ってない状態でクレイジーハンドと戦ったのだから。」

 

「つまり君は、カエデちゃんは無理しすぎているって言いたいのかい?」

 

「まぁ、そうなるわね。」

 

琥珀からの質問にユニは少し躊躇いがあるものの、答えた。そんな彼女に魔理沙が笑みを浮かべて言う。

 

「楓なら大丈夫だぜ。あいつは心が折れなければ戦えるからな。」

 

「そうかしら・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然響いた悲鳴を聞いてユニ達は咄嗟にその声に反応する。と、先程まで寝ていた筈の暁が起き上がり、口を開く。

 

「い、今のは一体!?」

 

「あ、暁君!?大丈夫なの?」

 

「えぇ、なんとか。それよりも早く外に行きましょう。人里の人が心配です。」

 

「えぇ、そうね。」

 

そう言うとユニ達は急いで外に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガァァァァァァァ!」

 

「助けてくれぇっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何これ・・・。」

 

「やはり、数体送っていたみたいだね。」

 

外の光景を見て一人冷静に口を開く琥珀とあまりの衝撃に言葉が出ないユニ達。彼女達が見た光景、それは次々と人里の人々を襲う巨大生物の姿だった。と、ユニが口を開く。

 

「何なの?あれは・・・。」

 

「あれは幻獣。奴が作った遺伝子によって作られた改造生物さ。」

 

「改造生物!?」

 

琥珀の言葉を聞いて思わず声を上げる魔理沙。そんな彼女とは別に輝夜が口を開く。

 

「改造生物ってことは元々は普通の生物だったってこと?」

 

「良く分かってるね輝夜。その通り、あれはもっとサイズが小さかったんだけれど奴の遺伝子によって大きくなり、さらに凶暴化したんだ。」

 

「それで、人里の人達を襲っているのですね。」

 

暁が言った時だった。突如ユニ達の目の前に体長7mほどある巨大なコウモリと身長約15mほどあるゴリラが現れた。それを見た霊夢が2体の獣を見ながら言う。

 

「どうやらそう容易くは通してくれないようね。」

 

「戦うしかないのね!!」

 

そう言うとユニはスペルカードを取りだした。彼女に続いて霊夢、魔理沙、輝夜、暁、琥珀も戦闘態勢に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「光弾!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然響く男の声と同時に2体の獣に光の玉が命中し、そのまま吹っ飛ぶ。それを見た霊夢が口を開く。

 

「な、何よ今の・・・。」

 

「悠岐君や楓ちゃんを越える力よ。一体・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨォ、元気にしてたか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえたのと同時に上から一人の男が降りてくる。その男は長身でハット帽子を被っていて顔に包帯を巻いている男だった。男を見た瞬間、ユニが笑みを浮かべて言う。

 

「マーグルさん!!」

 

彼女の言葉を聞いたマーグルはユニ達を見て言う。

 

「久しぶりだな、ユニ。お前と話したい気持ちは山々だが後でだ。お前らは悠岐と楓の後を追え。」

 

「でっ、でもよ。あんた一人で大丈夫なのか?」

 

「俺だけじゃない。」

 

そう言った瞬間、他の場所でズシンという音が響いた。その音に反応したユニ達は一斉にその方向を見る。そしてユニ達は思わず口を開く。

 

「永琳、鈴仙、妹紅、慧音!!」

 

声を上げるユニ達とは別にマーグルは笑みを浮かべて再び言う。

 

「俺が協力を要請しておいた。それに、来るのはあいつらだけじゃない。」

 

そう言った瞬間、別の場所で再びズシンという音が響いた。ユニ達は音が響いた方向に目を向ける。そしてユニは再び口を開く。

 

「幽々子、妖夢、白蓮達!!」

 

彼女の言葉を聞いた白蓮達は笑みを浮かべる。と、マーグルがユニ達を見て言う。

 

「人里の幻獣達のことは俺達に任せな。お前らは悠岐と楓の後を追い、手助けしろ。あいつら多分無縁塚に行っている筈だ。頼んだぞ。」

 

「ち、ちょっと待ちなさいよ!!まさか、私は妹紅と一緒に戦わなければならないの?」

 

「そうだが?」

 

「文句があるのなら言ってみなさい輝夜。私が聞いてあげるから。」

 

不安を言う輝夜に永琳がおぞましい表情を浮かべて言う。それを見た輝夜は白目になり、言う。

 

「いいえ、ありません・・・。」

 

「ならいいわ♪」

 

そう言うと永琳は輝夜を引っ張りながら妹紅達の元へ歩いていった。

 

「いぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

叫び声を上げる輝夜。そんな彼女とは別にマーグルの言葉を思い出したユニが口を開く。

 

「私達は無縁塚へ行きます!!行くわよ、霊夢、魔理沙、暁君、琥珀君!!」

 

そう言うとユニはマーグルに一礼すると無縁塚の方へ走っていった。

 

「ちょっ、待ちなさいユニ!!」

 

「待ってください、アイアルトさん!!」

 

「やれやれ、血気盛んだね。」

 

「私を置いていくなぁ!!」

 

そう言うと霊夢、魔理沙、暁、琥珀はユニの後を追った。ユニ達の姿を見届けたマーグルは人里を見て言う。

 

「お前の妹は無事だぜ、モルト。安心しろ。さて、俺も仕事に戻るか!!」

 

そう言うと彼は幻獣達の元へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって無縁塚。そこでは先程人里から離れ、そこで起こっていることを全く知らない悠岐と楓が歩いていた。と、悠岐が楓に言う

 

「楓、本当に大丈夫か?」

 

「あぁ、私は大丈夫だ。心配しなくていいさ。」

 

「無理するなよ、お前を啓介のような運命を辿らせたくないんだ。」

 

「そうか。ありがとう悠岐。」

 

と、二人が話している時だった。突如草影からガサッと物音がした。それを聞いた二人は咄嗟に刀に手を掛ける。

 

「油断すんなよ、悠岐。」

 

「分かってるさ。」

 

そして草影から二つの影が姿を現した。現れたのは頭に角を生やした男女だった。二人の内、女の方を見た楓は口を開く。

 

「九十九じゃないか。」

 

「楓。どうしてこんなところに?」

 

二人が話す中、悠岐ともう一人の鬼、百々の目が合った。そのまま二人は驚愕した表情を浮かべ、

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

叫び声をあげた。

 

「百々!?」

 

「ゆ、悠岐大丈夫か?」

 

突如叫び出す二人を見て楓と九十九は不安の表情を浮かべる。そんな二人とは別に、

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

二人は叫び声をあげる。まるでコントをやっているかのように。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

「いい加減にしろッ!」

 

そう言うと楓は百々の頭を、九十九は悠岐の頭を殴りつけた。頭を殴られた二人は頭を押さえる。




人里へやって来たマーグル。無縁塚で会う悠岐、楓と百々、九十九。
次作もお楽しみに!


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第119話 メメントモリ再び

無縁塚で出会う悠岐、楓と百々、九十九。不安で仕方ないが・・・。


頭を押さえながら悠岐はある方向を見る。そして百々と九十九に言う。

 

「さぁてどうするお二人さん。紅魔館とこの周辺から嫌な気配がする。」

 

「どう分かれる?」

 

楓が言った瞬間、百々と九十九が不安そうな表情を浮かべて言う。

 

「楓、アンタ大丈夫か?」

 

「霊力がほとんど感じられないな。……怪我でもしかのか?」

 

二人に言われた楓は胸に手を当てて言う。

 

「あぁ、琥珀に少し怪我を癒してもらった。完全に治った訳ではないが動けるくらいまでなら。」

 

「あまり無茶するなよ。ニルヴァーナにやられたダメージはでかい。」

 

「そ。……ニルヴァーナ、ね。」

 

そう呟く九十九の顔は晴れなかった。そんな彼女に悠岐が言う。

 

「九十九、お前ニルヴァーナを知っているのか?」

 

「……いや、名前だけだ。名前だけ……。」

 

「名前だけ、か・・・。」

 

「話は後にしよう。今はどちらに行くかだ。悠岐はどちらにいく?」

 

「そうだな、俺達は紅魔館に行こう。無縁塚は二人に任せていいか?」

 

「無縁塚ってと、またあの彼岸花女とやり合うことになるのか……。」

 

そう言う百々の声色は少し暗かった。

 

「もうあのババアと殺り合うのは勘弁だが……。」

 

「ババア?それは闘神のことか?それとも・・・。」

 

「二人には申し訳ないがいいか?」

 

「あの闘神……ん、何だ?」

 

「どした?」

 

二人は顔を上げて楓に視線を向ける。

 

「二人にまた無縁塚を任せて。」

 

「ん、なんじゃありゃ。」

 

そう言うと悠岐はある方向を指差した。

 

「え?」

 

声を上げた二人は悠岐が指差す方向を見る。そこには長身で腰まで伸びる銀髪、青い瞳の女性が立っていた。

 

「なんだあいつは!?」

 

「気をつけろ、エリュシオンだ!!」

 

楓の言葉をを聞いた瞬間、悠岐、九十九は咄嗟に身構える。そして九十九は口を開く。

 

「とうとう来やがったな!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずいぶんと身長の高い女性だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十人十色とは言うものの、百々の反応だけがズレており彼以外がズッコケた。

 

「言うことが違うだろうが!!」

 

そう言うと彼は百々に一発チョップをいれた。

 

「イテッ!」

 

「いまそんな場面じゃないから!!」

 

九十九も続けて拳を腹に叩き込んだ。

 

「ゲブォ!?」

 

「馬鹿者!!」

 

二人に続いて楓も百々の頭を叩いた。

 

「いでぇ!!」

 

四人のやり取りを見たエリュシオンは少し掻いていた汗をハンカチで拭き、言う。

 

「やれやれ、まさかあなたがこんなボケキャラとはねぇ、百々。」

 

「……えっと、どなたですか?」

 

涙目になりながらも問いかけに答える。

 

「あぁ、そうだったわね。アカシャに記憶を奪われたから私のこと覚えてないのね。」

 

「アカシャ?」

 

「……記憶を奪うことの出来る闇の闘神の事だ。」

 

九十九が楓の疑問に答えるように解説を入れる。

 

「闇の闘神!?闘神は3体じゃないのか?」

 

「違うわよ悪魔。闘神は5体いるの。」

 

驚く悠岐とは別にエリュシオンは冷静に答える。と、九十九が口を開く。

 

「炎の闘神ニルヴァーナ、水の闘神ドゥーム、木の闘神メメント・モリ、光の闘神カルマ、闇の闘神アカシャの5体だ。全員なかなかにめんどくさい能力を持ってるぞ。」

 

「その内の一人がニルヴァーナか。」

 

「そうよ、悪魔の小娘。あの子達は私の可愛い子供達。故に、星熊九十九のいた幻想郷を滅ぼした元凶よ。」

 

「なんだと!?」

 

その言葉に悠岐と楓が九十九に視線を向ける。

 

「……もう過去の事だ。だからそんな目で見るな。私は大丈夫だ。」

 

そう答える九十九とは別にエリュシオンは不気味な笑みを浮かべて言うなれば

 

「本当に大丈夫なのかしら星熊九十九。アンタは心を深く傷つけられている筈よ。なんせ、目の前でアンタの家族や大切な仲間、そして世界が滅ぼされたのだから!!」

 

始終九十九に不気味な笑みを浮かべながらエリュシオンは言った。

 

「九十九・・・」

 

彼女の名前を言う楓。そんな彼女とは別に九十九は冷静に口を開く。

 

「……何言ってんだ?鬼も生きてんだ、いつかは死ぬもんだろ。ただ死期が早まっただけなのに何を怒るんだ?」

 

彼女、星熊九十九は人と鬼の間に生まれた半鬼半人という存在だ。百々がヒトを主軸としているのなら彼女は鬼を主軸としている。彼女の死生観は鬼のそれそのものだったのだろう。と、エリュシオンが口を開く。

 

「別に私は怒ってはいない。アンタを煽りたい、ただそれだけよ。」

 

「テメェ!!」

 

そう言うと悠岐はエリュシオンに刀を向ける。それを見た九十九は悠岐に言う。

 

「やめときな。アンタじゃソイツには勝てないよ。」

 

「なっ!?」

 

「やってもないのにか!?」

 

「……や、やめた方、がいいと、思うぞ。」

 

今まで黙っていた百々が口を開いた。彼は顔に汗を浮かべ、身体を震わせていた。

 

「まぁ、私は今アンタ達と戦うつもりはないけれどね。戦ったとしても私が勝つのは必然。」

 

「・・・なんだとテメェ。」

 

悠岐は楓の一言に反応する。そう、彼は知っていたのだ。出野楓、彼女が「テメェ」という言葉を発した時、彼女は怒っているのだと。

 

「楓、待てって言ってるでしょ」

 

 

呼び止めるように九十九が楓に言う。そんな彼女とは別にエリュシオンは口を開く。

 

「そんなに私と遊びたいの?フフフ、まだダメ。私の子と戦ってからじゃないと。おいでなさい、魂の牢獄を愛でし木の闘神、メメントモリ。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの背後から巨大な彼岸花の蕾が現れ、中から彼女より背丈の高い女性が姿を現した。女性を見た悠岐は声を上げる。

 

「あいつは!!」

 

「うっわ、また出たよあのババア。」

 

そう言って九十九はまた『物干し竿』を手に持つ。

 

「彼岸花の人ならどうにか……!」

 

百々も九十九をサポートする様に背中に翼を出現させる。と、エリュシオンが口を開く。

 

「さっきはやられたけど今回のメメはそうはうまくいかないわよ。なんせ、私が少し力を貸したのだから。ね、メメ。」

 

「えぇ、お母さん。」

 

二人で話すエリュシオンとメメントモリとは別に九十九は物干し竿を構えながら言う。

 

「だからどうしたってんだ。今回は4人もいるんだぞこっちは。」

 

「フフフ、さぁメメ。話は後でよ。あの四人を始末しなさい。」

 

「分かったわ、お母さん。」

 

その瞬間、エリュシオンは霧のように消えていった。それを見た楓はチッと舌打ちをし、言う。

 

「・・・逃げたか。」

 

「・・・さぁ、始めましょう。」

 

そう言った瞬間、メメントモリの回りに白い巨大な円球が現れた。

 

「で、デカ!?」

 

「全員、俺の後ろに来い!!」

 

「フフフ、恐れなくていいのよ。これは攻撃ではなくただの妨害のもの、重力バリアよ。」

 

「重力バリアだと?」

 

その言葉に楓は反応する。そんな彼女とは別に九十九が言う。

 

「全員アレに触れんなよ!動けなくなるかんな!!」

 

九十九の言葉に全員が頷く。……一人を除いては。

 

「ごめん……。既に遅いんだけど……」

 

「このバカァァァ!!!」

 

あまりの愚かさに思わず声を上げてしまう九十九。そんな彼女とは別に悠岐はやれやれのポーズをとり、言う。

 

「やれやれ。」

 

そう言うと彼は重力バリアに触れないように百々を引っ張り出した。

 

「そらよっと!」

「アベ!?」

 

引っ張り出された百々はそのまま地面に叩きつけられた。……いやまぁ、仕方の無い事だが。

 

「さ、さんきゅ。っと、捕まってみて分かったが素早く動ける奴ならどうにか動けそうだったぞ!!」

 

「確か、俺の知り合いに一人重力バリアに対応出来る奴がいた・・・。」

 

「話は後だ悠岐。まずは重力バリアを突破するぞ!!」

 

そう言うと楓はメメントモリの元へ向かっていく。




再びメメントモリと戦う百々、九十九と初めて対立する悠岐と楓。四人に勝機はあるのか!?
次作もお楽しみに!


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第120話 兄妹

無縁塚に突如現れたエリュシオン。彼女の娘であるメメントモリと対立する悠岐、楓、百々、九十九。


「フフフ。」

向かってくる楓を見てメメントモリは笑みを浮かべたままだった。その様子はエリュシオンとよく似ていた。

 

「その笑みを消してやる!!」

 

「待て楓!」

 

「重力にハマらないといいけどよ」

 

「いや無理だろ。さっさと助けに行くぞ!」

 

呼び止める悠岐とは別に楓は重力バリアの中へ入った。

 

「くっ!」

 

その瞬間、彼女の体に重力がかかった。しかし、彼女はグググと体をゆっくりと動かしながら言う。

 

「こんなの・・・効かないぞ!!」

 

そう言うと彼女は重力バリアの中であるのに関わらずメメントモリの元へ走っていく。それを見た百々が言う。

 

「おーおー、すげぇじゃん。あれの中で動けてるよ!」

 

「やだ、もう一人の私弱すぎ……?」

 

「コフッ」

 

「っと、漫才してる場合じゃ無かった。楓を助けに行かないとな!」

 

「ほう、中々しぶといわね。」

 

そう言うとメメントモリは彼岸花の茎を大量に出現させ、一斉に楓に向けた。

 

「手助けするぜ楓!」

 

そこへ悠岐が加戦し、刀の先に黒い光を溜めてスペルカードを発動した。

 

「悪の波動!」

 

彼の放った攻撃は楓を攻撃しようとした彼岸花の茎に命中する。悠岐よりも遅れて走り出した九十九と百々は彼岸花の攻撃に間に合いそうもなかった。

 

「まっず!おら百々―――」

 

ガシ。と九十九は後ろを付いてくる百々の腕を掴んだ。

 

「ん?」

 

「―――行ってこい!!」

 

そして、鬼の全力で百々を彼岸花の前に放り投げた。

 

「え、ちょまっどぅぉおおおぉおお!!??」

 

「なっ、仲間を投げた!?」

九十九の取った行動にメメントモリは思わず動揺してしまう。そんな彼女とは別に悠岐が九十九に投げられた百々を掴み、メメントモリへ向けて言う。

 

「俺もやるぜぇ!!」

 

そう言うと彼は百々を悪魔の力で放り投げた。

 

「またかァァァあぁ!!!?」

 

今度は悠岐に投げられ物凄い速さでメメントモリへと(彼の意思とは関係なく)向かう百々。

 

「あー、もうここまで来たらやるしかないか。能力再現『剣術』!」

 

どこからか取り出した日本刀を使いメメントモリを切りつけにかかる。

 

「なんてこと!お母さんは私達闘神にこんなことしたことないのに表の者達は普通にやるというの!?」

 

驚きの声を上げながらもメメントモリは再び彼岸花を向ける。と、楓が百々に言う。

 

「気をつけろ百々。あの彼岸花、何か嫌な予感がする。」

 

「ごめんいま何つった!!風の音で聞こえねぇえんだよ!!」

 

楓の声に反応し、顔を彼女の方に向ける。ちょうどその時にメメントモリが向けた彼岸花にすっぽりと収まった。

 

「……あ。」

 

「バカァァァァァァ!」

 

九十九と同様、声を上げる楓。そんな彼女とは別に悠岐は口を開く。

 

「やれやれ、スペルカード。」

 

ため息を吐いた悠岐はスペルカードを発動する。

 

「不覚ロッキンオン・ヘブンズドア!」

 

その瞬間、悠岐は勢いをつけて百々が収まる彼岸花へ向かっていく。そんな彼に楓が口を開く。

 

「悠岐無茶だ!重力バリアのある状態で百々を助けるなんて!」

 

「あー、なんか身体がジュージューいってる気がする」

 

「……それ、溶けてない?」

 

追いついた九十九が百々の呟きに反応した。

 

「……すいません今すぐ助けて下さいお願いします!!」

 

「フフフ、溶けているのよ。」

 

「なっ!?」

 

声を上げる楓とは別に悠岐は重力バリアを無視して百々が収まる彼岸花をバラバラに斬った。

 

「なっ!?」

「すいません悠岐さん、マジ感謝っす。」

 

「良かったな、このスペルカードがオールアンチスキル持ってて。」

 

そんな彼の目は赤く染まっていた。堕天(モードオブサタン)ではないものの、動きは速かった。

 

「お、おーるあんち?」

 

「……何それ?」

 

初めて聞く言葉に百々と九十九は首を傾げる。そんな二人に悠岐が再び言う。

 

「お前らサタンとルシファー知ってるか?」

 

「いや全く。」

 

「ルシファーとサタンは別々の存在でルシファーはバリアや悪魔達を呼び寄せることが出来てサタンはあらゆる妨害効果を無視する力を持っている。」

 

「へぇー。」

 

納得したように二人は手を打った。そして百々が口を開く。

 

「つまりこの重力ばりあは妨害なのか?」

 

「あぁ、そうさ。だがこのスペルカードは1日2回だからもう使えないな。」

 

「ダメじゃないか・・・。」

 

「なんだ、ならコイツが輝くじゃねぇか。」

 

そう言って九十九は百々を指さす。

 

「そうだな。妨害に引っかかる事実から『浮けば』いい話だからな」

 

「?」

 

「お話は後でにしましょう。今は私と戦いなさい。」

 

そう言うとメメントモリは四人を睨む。と、百々が口を開いた。

 

「能力再現『主に空を飛ぶ程度の能力』」

 

「霊夢の力!?」

 

「再現か・・・。」

 

彼を見て驚く楓と冷静に見る悠岐。そんな二人に百々が口を開く。

 

「さて、これで俺はあの妨害を無視できる。攻撃は任せておけ」

 

今1度日本刀をメメントモリに向けて構える。と、九十九が口を開いた。

 

「ならこっちはサポートしてやろう。あまり使いたくは無いが仕方ない。英霊憑依『マーリン』」

 

そう言うと、九十九の足元から花が咲いては消えることを繰り返し始めた。

 

「『この辺り、弄った方がいいんじゃないか?』」

 

「そろそろ私もいくとしようかしら。」

 

そう言った瞬間、メメントモリは緑色の目玉のついた機械のようなものを四人に飛ばした。

 

「!?」

 

「なんだあれは!!」

 

思わず声を上げる二人。そんな二人とは別に九十九が口を開く。

 

「いまメメントモリは幻術にかかっている。この内に彼女を倒す方法を考え無くてはいけないね」

 

「百々と九十九で奴を引き付けてくれ。その間に俺と楓は奴に忍び寄り攻撃する。」

 

「忍び寄るのに時間は掛かるが二人がなんとかしてくれればいけるな。」

 

「了解、任せときな。」

 

「ならまずは全員に加護を与えておこうか。」

 

九十九はそう言うと呪文詠唱の準備を始めた。

 

「少し時間がかかるから守ってくれるとありがたいね。『王の話をするとしよう―――』」

 

「?」

 

「星の内海。物見の台。楽園の端から君に聞かせよう。君たちの物語は祝福に満ちていると……

「――“罪無き者のみ通るがいい”――

永久に閉ざされた理想郷(ガーデン・オブ・アヴァロン)』!」

 

詠唱が終わり、そこには花に包まれた楽園が広がっていた。 それを見た楓が言う。

 

「これは?」

 

「この結界は君たちを保護し、傷を癒して活力を与えてくれるだろう。さぁ、行っておいで。私はこれの維持をする必要があるからね。」

 

「分かった。頼むぜ九十九。」

 

悠岐の言葉を聞いて笑うように九十九が口を開いた。

 

「任されたよ。」

 

「確実に狙われそうだな。なら警護もつけた方が良さそうだな。スペルカード再現『フォーオブアカインド』」

 

4人に増えた百々のうち、二人はメメントモリの引きつけ役として、もう二人は九十九の護衛として配置に付いた。

 

「そろそろ幻術の維持を解くよ」

 

「準備は出来てるさ。な?悠岐。」

 

「あぁ、勿論だ楓。いつでもいいぜ。」

 

「どうなっているの!?」

 

突然の出来事にメメントモリは声を上げることしか出来なかった。

 

「お前の相手は。」

 

「俺たちだよ!」

 

百々1と百々2が驚きで固まっているメメントモリに斬りかかる。

 

「くっ!」

 

メメントモリは彼岸花で攻撃を防ぐ。そして二人の百々に茎で叩きつける。

 

「甘い甘い。」

 

「栗羊羹よりも甘いな。」

 

人がやってはいけない角度まで身体を曲げてその茎を避ける彼ら。

 

「何これ気持ち悪いわ。」

そう言いながらもメメントモリは百々の攻撃を防ぎ続ける。

 

「正直言って」

 

「吐きそう……」

 

わざと不完全にしたフォーオブアカインドから生まれた二人は見た目のみを写し取られた鏡のようなものであるためにこのような動きができるのだ。

 

「ユニが見たら吐きそうだな。」

 

「あぁ、言えるな。」

 

「オロロロロ」

 

「お前は吐いてるんかいぃぃぃぃぃぃ!」

 

本体が吐いているのを見て思わず突っ込んでしまう悠岐と楓。そんな二人とは別に百々が口を開く。

 

「じゅ、準備は終わったか……?オロロ」

 

「あぁ。」

 

「とっくにな。」

 

「!?」

 

「あとは。」

 

「任せたぜ。」

 

そう言うと分身の百々二人は消えてしまった。

 

「食らいやがれ!!」

 

「覚悟しろ!!」

 

そう言うと悠岐と楓はメメントモリの背後に現れて彼女の背を斬りつけた。

 

「ぐっ!?」

 

「ついでに拾ったこれも食らっとけ!」

 

メメントモリが幻術により明後日の方向にばらまいていた機械のようなものを最後の分身が拾い、メメントモリへ叩きつけた。

 

「きやぁぁぁぁぁぁ!」

 

機械のようなものはメメントモリに当たるとそのまま爆発した。それを見た百々が口を開いた。

 

「……爆弾?いや、地雷か?」

 

「地雷のようだな。」

 

「すごく効いてるね。」

 

「・・・終わったのか?」

 

「……いや、まだっぽいな。まだ殺気が残ってる」

 

「何をしてくるか」

 

そう言うと悠岐、楓、百々、九十九の四人は煙の上がる場所をじっと見つめる。

 

「風を起こして煙を晴らそうか。」

 

呪文を唱え、風を起こして煙を晴らす。

 

「がっ!?」

 

と、突如として地面から出てきた彼岸花の茎が楓の首に巻きついた。

 

「!?」

 

「っ、大丈夫か!」

 

すぐにその茎を掴み、引き裂こうとする。

 

「待て百々!!お前の足元にもっ!?」

 

悠岐が続きを言おうとした瞬間、彼の口に彼岸花の茎が巻きついた。

 

「っ!しまった!!」

 

茎を引き裂く寸前に彼も二人のように動きを封じられた。その様子を見た九十九が言う。

 

「おっと、これは不味いかな?」

 

「結構やってくれたわね、あなた達。煙が上がったのは私にとって都合が良かった。」

 

その声が聞こえた瞬間、メメントモリが煙の中から現れた。

 

「……もう少し早く煙を晴らしておけばよかったのかな?」

 

「さぁ、次はあなたの番よ。星熊九十九!」

 

そう言った瞬間、九十九に彼岸花が大量に近づいていく。それを見た九十九は冷静に言う。

 

「はは、何を期待してるかは分からないけど今の私はただ花を咲かせるだけのお姉さんさ。戦いなんて、柄では無いんだけどね?」

 

そう言って百々の日本刀を引ったくり、彼岸花を数本斬った。それを見たメメントモリは首を傾げながら言う。

 

「面倒ね。えっと、お母さんはこの時はどうすればいいって言ってたかしら・・・。」

 

考えながらメメントモリは彼岸花を九十九に打ち込む。

 

「だから言っているだろう?柄では無いんだって。」

 

そうは言うものの、彼岸花を斬る九十九動きは下手な人間よりも動けているように思える。

 

「そうだわ!あれを使えば良かったのよ!!」

 

そう言うとメメントモリは見覚えのあるカードを取り出した。

 

「す、スペルカード……。」

 

「毒光死苦の凱旋門」

 

「っ!」

 

回避をしようと九十九は足に力を入れる。

 

「狙いは、あなたじゃないわ。」

 

そう言うとメメントモリは指先を九十九から百々に向けた。

 

「・・・俺?」

 

「当たり♪」

 

「百々!」

 

彼女は百々を庇うように彼の前に飛び出した。

 

「九十、九・・・。」

 

「フフフ。」

 

微笑むと彼女は毒レーザーを百々のいる方向へ放った。

 

「んんん!(九十九!)」

 

毒レーザーが九十九にあたるその寸前、百々が彼女を全力で後ろに放り投げた。そのまま百々はメメントモリの放った毒レーザーをまともにくらった。まともにくらったのにも関わらず百々は口を開く。

 

「妹を守るのは、兄の務め……だろ?」

 

「んん!(百々!)」

 

「あら?動きを封じた筈なのによく動けたわね伊吹百々。流石お母さんのお気に入りの存在。」

 

「に、兄……さん。」

 

「き、兄だ・・・い?」

 

「あら、あなた達二人は兄弟だったのね。私はお母さんからそんな話は聞いてないけど驚いたわ。」

 

「せ、正確に、は違、うけど、な?」

 

「けど兄のように妹を救うあなたはまさにお母さんの性格にそっくりね。」

 

「はは……。褒めこ、とばとし、て受け取、っとく。」

 

「も、も・・・。」

 

徐々に楓の声が弱々しくなっていく中、メメントモリはクスクスと笑いながら言う。

 

「さて、三人も動けないんだし、まずはあなたを終わらせましょうかね、星熊九十九。」

 

「……英霊憑依『新宿のアヴェンジャー』」

 

「諦めなさい。」

 

そう言った瞬間、九十九の足元に彼岸花が次々と生い茂っていく。小さく九十九が呟くと、彼女を縛り付けようとした彼岸花が全てバラバラに寸断された。

 

「?」

 

彼女の隣には巨大な白狼がいつの間にか出現していた。

 

「…………。」

 

白狼に乗る九十九。乗った彼女は首から上が無くなっていた。それを見たメメントモリは驚かず、ただ彼女を見て言う。

 

「諦めの悪い子ね。まるでニルヴァーナ見たい。」

 

九十九は文字を空中に魔力で書いた。

『殺す』

と。

 

すると、彼女から多数の鎌が伸びメメントモリを突き刺し捕らえる。

 

「ぐっ!?」

 

そして、白狼がくわえていた巨大な鎌刀を使い彼女の首を刈った。

 

遙かなる者への斬罪(フリーレン・シャルフリヒター)』と呼ばれるそれは白狼、ロボと九十九に憑依するへシアンのみに許された復讐の宝具。宝具を打ち終え、白狼ロボはどこかへ消え、九十九はその場に倒れ込んだ。もちろん、首は戻ってきている。メメントモリの首は地面に落ち・・・なかった。首と体を繋いでいた糸が切れていなかった。

 

「!?」

 

「し、なない、の・・・か・・・。」

 

驚きを隠せない悠岐と楓。そんな二人にメメントモリが口を開いた。

 

「えぇ、そうよ。お母さんは私達が首を斬られたり心臓を潰されたりされたぐらいでは死なないようにしたのだから。」

 

「な、なんて・・・こと・・・だ・・・。」

 

「あなたじゃ私は殺せないのよ星熊九十九。だから言ったでしょう?諦めなさいって。」

クスクス笑いながらメメントモリは九十九に言った。しかし彼女は気絶していた。と、メメントモリは弱っている百々を見ながら言う。

 

「見ていなさい伊吹百々。あなたの大切な人が消える瞬間を見せてあげるわ。」

そう言うと彼女は百々の目の前で指先を九十九に向けた。

 

「や、めろ……。」

 

絞り出すように声を上げる。

 

「ヤメロォォォオオォ!!!」

 

「フフフ。」

 

笑みを浮かべたままメメントモリは指先に紫色の光を溜めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指が鳴る音が辺りに響いたのと同時にメメントモリを中心として爆発が起こった。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

「なっ!?」

 

「!?」

 

「つ、九十九……」

 

と、突如悠岐と楓に巻きついていた彼岸花が粉々に斬れた。

 

「ゲホッ、ゲホッ。」

 

楓は慌てて空気を取り込みながら悠岐と共に百々の元へ向かう。

 

「百々、大丈夫か?」

 

「あ、あぁ。……さ、触ら、ない方、が、いい……。毒が、うつ、るぞ?」

 

「あぁ、私はお前に触るつもりははなからない。」

 

「死に、は、しない、から、ほって、置いてく、れ」

 

「あぁ。」

 

楓が言った瞬間、三人の元へ九十九を抱えた一人の男がやって来た。

 

「お前は!!」

 

「どうして・・・。」

 

「九十九は、無事、か……?」

 

百々の言葉を聞いた男は三人の近くに九十九を優しく下ろした。男は長身で悠岐と比べて20cmほど高く、後ろ髪を縛っていた。

「無事のようだな。」

 

「良かっ、た……。」

 

九十九の無事を確認して安心したのか、百々はそのまま気を失った。その様子を見た男は口を開く。

「気を失ったか。いくら鬼といえど毒は危険だ。」

 

「うぅ、痛い。痛いわ、お母さん。」

 

痛みを訴えながらメメントモリはゆっくりと起き上がり、男を見ながら言う。

 

「あなたは何者?」

 

彼女の言葉を聞いた男は左手を背に回し、右手に刀を持って言う。

 

「裏の者達が表へ侮辱したもの。それは仲間、命、絆、そして誇りだ。ならば私は、それらにどれほどの価値ある力があるのか、知らぬ者に知らしめるとしよう。」

 

「メルト、グランチ!」

 

「オッサン・・・。」




メメントモリとの戦いでピンチになった時にやって来たメルト・グランチ。一体何故!?
次作もお楽しみに!


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第121話 メルト・グランチvsメメントモリ

ピンチになった百々達を救ったのはなんとあの五大王の一人であるメルト・グランチだった。


メルト・グランチの登場に悠岐と楓は驚くことしか出来なかった。そんな中、メメントモリが口を開く。

 

「メルト・グランチ?聞いたことがあるわ。確か二年前だったかしら?この幻想郷に帝セコンドと共にやって来て破壊を目論んでいた男。それがあなたね、帝王梟雄メルト・グランチ・エンペラー。」

「如何にも、私は嘗て幻想郷を破壊せんと目論んだ者だ。」

 

メメントモリの言葉に冷静に笑みを浮かべて答えたメルト・グランチ。それを見た楓は少し汗をかきながら言う。

 

「オッサン、気をつけろ。奴は私や悠岐、百々と九十九でも歯が立たなかった奴だ。」

 

「ククク、知っているとも。君は黒き刀と共にそこの鬼二人を見てあげたまえ。」

 

「あぁ、分かった。」

 

三人が話している中、メメントモリが唐突に口を開く。

 

「私に気にしていいのかしら?伊吹百々が私の攻撃を食らって毒状態なのよ?」

 

「毒状態?さてなんのことやら。彼の体に回っていた毒は既に消毒したが?」

 

「!?」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、悠岐と楓は同時に気絶している百々を見る。先程まで彼の体に充満していた筈の毒の部分が跡形もなく無くなっていた。それを見たメメントモリは目を見開きながら言う。

 

「毒を治した!?」

 

「私の能力は攻撃系ではない、回復だ。私の能力は主に傷の治療、毒などの治癒を専門としている。」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、悠岐は汗をかきながら心の中で語る。

 

(なんて野郎だ。メルト・グランチの奴、二年前戦ってたのはほんの一部に過ぎなかったというのか。)

 

そんな彼を気にすることなくメルト・グランチはメメントモリと対立しながら言う。

 

「そして私は、帝の(めい)によりこの幻想郷へ来た。破壊を防ぐためにね。」

 

「あなた一人でやるつもりなの?随分と立派なお仕事ですこと。」

 

「一人ではやらないとも。もう一人いるさ。」

 

「!?」

 

「もう一人、ですって?」

 

「あぁ、そうだとも。既に人里に光王ゴールド・マーグルがやって来ている。」

 

「マ、マーグルが!?」

 

声を合わせて驚く悠岐と楓。そんな二人とは別にメメントモリはクスクスと笑いながら言う。

 

「そう、お仲間がいたのね。ならば私と集中して戦えるわね、帝王梟雄さん。」

 

「フフフ、そうだな。今の状況ならば誰にも邪魔されることなく戦える。」

 

「さて、様子見させてもらおうかしら?」

 

「ほう、この四人とは力の格差のある私を相手に様子見とは、余裕だな?」

 

「余裕ではないわ。様子を見てどのような攻撃パターンをしてくるのかを見たいだけよ。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、メルト・グランチはフッと鼻笑い、悠岐と楓を見て言う。

 

「黒き刀、氷の悪魔よ。二人の鬼を下がらせて私の戦いぶりを見ていたまえ。」

 

「チッ、偉そうにしやがって!!」

 

「・・・分かった。」

 

舌打ちする悠岐とは別に楓は冷静に頷き、答えた。そのまま悠岐は百々を、楓は九十九を担いで少し離れた場所へ移動させた。それを見たメルト・グランチはメメントモリを見て言う。

 

「さて、私から先で良いのかな?」

 

「えぇ、いいわ。掛かってきなさい。」

 

「では遠慮なく。」

 

そう言った瞬間、メルト・グランチの姿が消えたかと思うと一瞬にしてメメントモリの背後に移動していた。

 

「!?」

 

「速い!!」

 

驚く悠岐、楓、メメントモリとは別にメルト・グランチはメメントモリの背中を斬りつけた。

 

「くっ!!」

 

背中にダメージを受けたメメントモリは彼岸花の茎で攻撃しようとする。だが彼女の攻撃は容易く避けられてしまう。と、メメントモリから少し離れた場所に移動したメルト・グランチは笑みを浮かべて言う。

 

「鈍いな。今の攻撃は私の力のほんの少しも満たない程だ。」

 

「ほんの少しも満たない程ですって?なんて力なの。これが五大王の力。」

 

驚くメメントモリとは別にメルト・グランチは眉間に皺を寄せて言う。

 

「なんだね?まさか卿は王の力はさほど強くないと思っていたのかね?やれやれ、エリュシオンの話に影響され過ぎだな。」

 

そう言うと彼は背に回したままだった左手を前に出す。そして言う。

 

「卿には王の力の一部を見せてあげよう。」

 

そう言った瞬間、再びメルト・グランチの姿が一瞬にして消え、メメントモリの左側に移動する。

 

「2度目は受けないわよ。」

 

そう言うと彼女は彼岸花の茎でメルト・グランチを攻撃しようとする。

 

「ククク、知っているとも。」

 

笑みを浮かべながら彼は左手に持っていたものをメメントモリに投げつける。

 

「!?」

 

彼が投げたものは大量の黒い粉だった。それを頭から被ったメメントモリは咳き込みながら言う。

 

「くっ、目眩ましね。そんなもので私を倒せると思っているの?」

 

「思っているからやっているのだよ?」

 

そう言いながらメルト・グランチはメメントモリの回りを素早い動きで走り回る。

 

「動くだけじゃ私は倒せないわよ!!」

 

そう言うと彼女は彼岸花の茎でメルト・グランチを叩こうと彼を追う。それを見た楓が口を開く。

 

「オッサン、何をしているんだ。ただ動き回ってるだけじゃ全然ダメージを与えられないぞ。」

 

「・・・。」

 

落ち着けない楓とは別に悠岐は冷静にメルト・グランチの戦いを見る。と、メルト・グランチが突然動き回るのを辞め、メメントモリと対峙した。それを見たメメントモリはクスクスを笑いながら言う。

 

「体力の限界かしら?私に攻撃せずに動き回っていたのだから体力は限界よねぇ。」

 

「・・・。」

 

彼女の言葉に何も言わずに黙るメルト・グランチ。そんな彼に追い討ちをかけるようにメメントモリが口を開く。

 

「あなたはこの四人とは比べ物にならないほど意味のないことをしていたわ。最初の攻撃でかなりの強者だと思っていたのだけれど、がっかりね。」

 

そう言うと彼女は彼岸花の茎をメルト・グランチに向ける。そして再び口を開く。

 

「終わりよ、帝王梟雄!!」

 

「・・・ククク、これで終わりだと?」

 

「!?」

 

「え?」

 

彼の唐突な発言に楓とメメントモリは思わず声を上げてしまう。そんな二人とは別に悠岐は笑みを浮かべる。と、メルト・グランチが口を開く。

 

「がっかりしたのは私の方だよ、闘神メメントモリ。私は始めに爆破攻撃をした時、そして卿を斬りつけた時に気づいたよ。刀による殺傷法は無効。変わりに爆破攻撃を続ければ倒せるとね。だからこそ私は卿の回りを走り回っていた時に火薬を撒いておいたのだよ。回りをよく見てみたまえ。」

 

彼の言葉を聞いてメメントモリは咄嗟に辺りを見回す。彼女の回りには星の形を描くように黒い粉が撒き散っていた。そんな中、メルト・グランチは左手を上に上げ、指をならす構えをして言う。

 

「回りをよく警戒したまえ。卿に足りなかったのは警戒心だ。」

 

そう言った瞬間、彼は上げた左手をパチンッと鳴らした。その瞬間、火薬に火が着き、辺りを爆風が襲った。




メメントモリを圧倒するメルト・グランチ!勝負の行方は!?
次作もお楽しみに!

余談:先日からマギレコでさやかイベントが始まったのでさやか狙いで10連引いたらまさかの杏子が出ましたww
ほむらイベントまでまた石を貯めます!


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第122話 ニルヴァーナの思い

メメントモリに知恵と力で押すメルト・グランチの強さは四人の力を凌駕していた。


突如として爆発音が辺りを包む。その音に気絶していた百々は目を覚ました。

 

「っ!ば、爆発……?おい九十九、起きろ!」

 

自身の隣で同じように気絶している九十九に声をかける。

 

「んぁ!?……百々か。なんだ?」

 

「どっからか爆発音が聞こえるんだよ。」

 

その声に九十九も目を覚まし、続く百々の言葉に警戒心を強めた。

 

「お、百々に九十九。」

 

「起きたのか。」

 

二人が起きたのに気づき、冷静に言う二人の前にはメラメラと炎が燃え盛っていた。それを見た百々と九十九はぽかんとなりながら口を開く。

 

「ほ、炎?」

 

「どうりで暑いわけだ……。」

 

と、楓が笑みを浮かべながら言う。

 

「よろこべ二人とも。最強の助っ人がメメントモリと戦っている。」

 

「最強の・・・。」

 

「助っ人?」

 

「あいつだ。」

 

そう言うと悠岐はある方向を指を指す。指を指す先には長身で後ろ髪を束ねていて左手を背に回していて右手に刀を持っている男がいた。と、楓が言う。

 

「あのオッサン、敵になれば厄介だが仲間になると凄く心強い。」

 

「あぁ、グランチさんか。」

 

「あぁ、グランチのおっさんね。」

 

二人とも助っ人の姿を確認し、納得したように手を打った。それを聞いた悠岐と楓は少し驚いたような表情をして口を開く。

 

「お前ら、あいつを知っているのか?」

 

「お前達とは初対面の筈なのだが・・・。」

 

「なんでも知ってる妖精さんから聞いたんだよ。」

 

「ご丁寧に対処法付きでな。もう忘れちまったけどよ。」

 

「そうか・・・。」

 

四人が話している中、メルト・グランチが四人を見て言う。

 

「諸君、下がっていたまえ。闘神との戦いのフィナーレとする。」

 

「わ、分かった。」

 

「分かってると思うけどあの女はそう簡単に死なないからな。絶対に殺せよ。」

 

「あいあい、雑魚兵は後ろに逃げますよー。」

 

「ククク。」

 

笑い声を上げるとメルト・グランチは背に回していた左手を前に出した。と、彼の左手に紫色のオーラが漂い始めた。

 

「・・・?」

 

「やべっ!!」

 

「もっと離れろ!!あれを食らったら人溜まりもない!」

 

それを見たメメントモリは首を傾げ、逆に悠岐と楓は目を見開きながら言う。

 

「ほら、後ろに下がってな。『いまは遙か理想の城』」

 

どこからか取り出した盾を構える九十九。すると、彼女の背後に白亜の城が現れ、百々、楓、悠岐を包んだ。そんな中、メメントモリがメルト・グランチに言う。

 

「あなたが何をしようが、私はお母さんのためならばまだ戦う!」

 

「終いだ、闘神。」

 

そう言った瞬間、辺りに謎の威圧が響く。それを感じた楓が口を開いた。

 

「来るぞ、かつて私も悠岐も食らったあの技が!!」

 

「これでも食らいな・・・。」

 

「爆暗闇のフレア。」

 

そう言った瞬間、メメントモリを中心に紫色の炎の一撃が辺りを襲った。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

爆破の勢いは無縁塚全体を多い尽くすほどの威力を引き起こし、九十九がみんなを包んでいた盾にはヒビが入る。それを見た百々が口を開く。

 

「爆破がやべぇ……。この城が無かったらヤバかったな。」

 

「あいつは現世を支える王の一人だ。あれくらいは容易く出る。」

 

百々と楓が話している中、メルト・グランチは眉間に皺を寄せて言う。

 

「ふむ、参ったな。本来の力の3分の1も出せていない。やはり扱いが難しい。」

 

「あの、な!少しはてか、手加減し、ろ!!」

 

元気な百々たちとは違い、九十九だけは爆破をもろに受けたかのようにボロボロだった。そんな彼女にメルト・グランチは笑みを浮かべて言う。

 

「ククク、だが3分の1であろうともう闘神は戦えぬようだな。」

 

そう言うと彼はある方向へ顔を向ける。

 

「うぅ、痛い。痛いわお母さん・・・。」

 

彼が目を向けた先には爆発で大怪我を覆ったメメントモリの姿があった。

 

「鬼でよかったホント!」

 

メメントモリに一度目をやった九十九はそう言葉を漏らした。

 

「た、助けて・・・。お母さん・・・。」

 

「生憎だが、卿の母親は取り込み中でね、助けることは出来ない。故に卿はもうきえそうではないか。」

 

彼の言うとおり、メメントモリの体が徐々に消えかかっていた。それを見た九十九がメメントモリに言う。

 

「メメントモリ、アンタの罪を閻魔様に精算してもらうんだな。……アイツらを殺した罪を!」

 

 

「・・・ククク、それはどうかしらね?閻魔様は罪を精算してくれるかしらね?」

 

そう言う彼女の頭の中には百々のことでもなく九十九のことも浮かんでいなかった。浮かんでいたのは一つの思い出だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり、あなたのことしか浮かばないわ。あなたは私にとって一番大切な人であり愛しいお母さんよ。

 

「メメ、アンタは美しい。私が見た中で一番ね。その美しさ故にアンタは色んな相手を魅了することが出来る。その性格を維持していきなさい。私はそんなアンタが好きだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過去の思い出を振り返ったメメントモリは上に手を伸ばし、涙を流しながら口を開いた。

 

「大好きよ、お母さん。」

 

そう言った瞬間、メメントモリは光の塵となって消えていった。それを見たメルト・グランチは四人を見て言う。

 

「大丈夫だったかね?」

 

「あぁ、俺らは大丈夫だけども、九十九が巻きこまれたな。」

 

百々の言葉を聞いたメルト・グランチは九十九を見て言う。

 

「星熊九十九だったかな?すまないな。力を抜いたつもりだったのだが・・・。」

 

「いやあの技、『いまは遙か理想の城(ロード・キャメロッド)』は私が守ると認識したものには絶対の守りを与えるがその分自分に対しての加護がほとんど無いからな。自業自得さ。」

 

「そう、か。故に伊吹百々と星熊九十九よ。」

 

「ん?」

 

「あ?」

 

「私は君達と以前何処かで会ったことがあったかな?」

 

彼の言葉にピクリと反応する悠岐と首を傾げる楓。そんな二人とは別に百々が口を開く。

 

「どうしてそう思うんだ?」

 

「以前君達と似たような者と会ったのだよ。過去に私と八雲紫で起こした先代異変。その中で君達とよく似た者を雇っていた記憶があるのだ。」

 

「ふーん。でも私はグランチのおっさんは知らねぇぞ?」

 

「上に同じく。琥珀なら何か知ってそうではあるがな。」

 

「恐らくそれはない。闇の闘神アカシャの影響で全ての者達が一部の記憶を奪われているらしいからね。」

 

「アカシャか。あいつは何考えてるか分からないから嫌いなんだよな。」

 

遥か過去、滅ぼされていく幻想郷で動こうとせずに突っ立ていたアカシャを思い出しながら九十九はそう言う。

 

「無論、私も琥珀という妖精も例外ではない。」

 

「そうなのか・・・。」

 

悠岐が言った瞬間、楓がメルト・グランチに言う。

 

「オッサン、話変わるがオッサンはこれからどうするんだ?」

 

「人里へ向かい、里を襲うエリュシオンの傀儡を処理する。」

 

「あと残ってる闘神?は何人なんだ?」

 

「私の受けた報告ではドゥームは倒されたと聞いた。メメントモリは私が倒した。ということは残り3体か。」

 

「ってことは、『ニルヴァーナ』と『カルマ』に『アカシャ』か。めんどくさいのが残ったなぁ……。」

 

残った3人の能力をある程度知る九十九はため息をつく。そんな彼女にメルト・グランチは背を向けて言う。

 

「諸君なら倒せると優理花も言っていた。彼女の言葉を信じたまえ。では私は失礼するよ。」

 

そう言うと彼は霧のように消えていった。

 

「行ってしまった。」

 

「聞いてた通り嵐のような人だな。」

 

「あぁ、あいつはよく分からない男なんだ。」

 

百々と楓が話している時だった。突如四人の背後から地面に着地する音が響いた。

 

「!?」

 

「何奴!?」

 

「……うっわぁ。」

 

他のメンバーが驚く中、九十九だけが気の抜けた感想を漏らした。つまり、その人物は彼女だけが知っているわけで―――

 

「ヨォ、ボーイズ&ガールズ。」

 

「だ、誰だ?」

 

「また会えたな、闘神ニルヴァーナ!!」

 

「随分とファンキーな人だな……。」

 

やはり場違いな感想を抱く百々であった。

 

「ヨォ、デビルガ・・・ん?お前は・・・。」

 

そう言うと闘神ニルヴァーナは視線を悠岐、楓から百々、九十九へ向ける。それに気づいた九十九が言う。

 

「はぁ……。久しぶり、ニルヴァーナ。」

 

「何をしてるんだ九十九!!そいつから離れろ!!」

 

九十九は楓の言葉に手をヒラヒラとさせるだけだった。

 

「アンタ何してんだ?」

 

「何してるって私の・・・。」

 

「私の台詞だ!ってか?」

 

「なっ!?」

 

心を読まれて驚く楓とは別にニルヴァーナは九十九の背後へ移動する。それを見た悠岐が言う。

 

「テメェ、九十九に何するつもりだ!」

 

「ニルヴァーナ、次のお前のセリフは『セクハラに決まってるだろ!』だッ!」

 

「セクハラに決まってるだろ!・・・はっ!?」

 

「!?」

 

(九十九の奴、ヴァンの十八番を?)

 

驚く悠岐とは別に楓は目を細めて心の中で語る。

 

「分かっててやらせると思うのか!?」

 

そう言って九十九は背後にいるニルヴァーナの大事な場所に向けて蹴りを放った。

 

「ペェェェェェェェェイン!!」

 

そう叫ぶとニルヴァーナは大事な場所を押さえながら膝をつく。

 

(うーわ、容赦ないなこいつ。)

 

(見てて○ャン玉痛くなる……。)

 

その様子を見て悠岐と百々は苦笑いをして心の中で語る。そんな二人とは別にニルヴァーナは悶えながら言う。

 

「いてぇよ!俺に痛みはいらねぇ!」

 

「遺言は、それでいいんだな?」

 

手をパキポキと鳴らしながらニルヴァーナへと向かう九十九。それを見たニルヴァーナは彼女に言う。

 

「ちょ、ちょっと待て九十九!別に俺はお前らと戦うために来た訳じゃない!」

 

ピタリと、九十九が歩みを止める。

 

「戦いをしに―――」

 

「―――来たわけじゃない?」

 

九十九の言葉を百々が引き継ぐ。そんな二人に再びニルヴァーナが言う。

 

「あぁ、そうさ。俺はお前らに母さんの計画を話に来ただけだ。」

 

その言葉を聞いた九十九は拳を下ろした。そして言う。

 

「アンタ、自分の親を、アレを裏切るの?」

 

「俺は裏切るつもりはない。母さんにばれないようにお前らに話すだけだ。」

 

「それを裏切りって言うんじゃ……。」

 

幸運にも、百々の呟きがニルヴァーナに届くことはなかった。そんな彼に気にせずニルヴァーナは再び口を開く。

 

「母さんは一番俺を信用している。俺の嘘とかはバレない筈だ。」

 

「……ま、こっちとしてもそれが知れるのは助かるか。殺されなきゃ今度飯でも奢ってやるよ。」

 

「感謝するぜ九十九。んじゃあこっちに来な。」

 

そう言うと彼は無縁塚の岩の方へ向かっていく。

 

「あいよ。……セクハラしたら切り落とすから。」

 

「しねぇって。」

 

九十九とニルヴァーナが話している中、楓が百々に言う。

 

「いいのか百々?あいつを信頼して。」

 

「分かんない……けど。」

 

一度言い淀んでから百々は言葉を続ける。

 

「なんか、アイツは信用していいってどっかで思えるんだ。なんでかわかんないけど。」

 

「今は信じよう。そして後に殺す。」

 

悠岐の言葉が聞こえなかったのか、ニルヴァーナは後ろを見て百々に言う。

 

「あ、そうだ。お前にも用があるぜ。記憶を無くしたデビルボーイよ。」

 

そう言うとニルヴァーナは服の中から赤い光を取り出した。

 

「赤い、光?なにこれ、弾幕か何かか?」

 

「記憶さ、お前の奪われた記憶だ。」

 

「記憶、だって?」

 

ニルヴァーナの言葉に百々は信じられないような顔になる。そんな彼にニルヴァーナは言う。

 

「あぁ、俺とお前との日々の記憶だけだがな。」

 

「……ちょっと待ってくれ。俺は、お前を知ってるの……か?」

 

「今は知らねぇ。だが、これをお前に返せば知っている。」

 

「……そう、か。だから俺はお前を信じてみようと思えたのか。」

 

「ま、とりあえずこれはお前に返すぜ。」

 

そう言うと彼は無理矢理百々の口を開けさせた。

 

「……ふぁ!?」

 

そのまま彼は赤い光を入れ、飲み込ませた。

 

「ふぁふぇふぁ……んぐっ。……あんまり美味くないなこれ。」

 

「旨い訳ないだろ百々!!」

 

そう言うと彼は百々の頭を叩いた。

 

「痛っ!いきなり何すんだよニル!」

 

「え?」

 

百々が発した、『ニル』という言葉に悠岐と楓が反応する。そんな二人とは別にニルヴァーナが言う。

 

「クヒヒヒヒ、思い出したようだな百々。」

 

ニルヴァーナに言われ、百々は頷いた。

 

「あぁ、なんで忘れてたのか悩むほどな」

 

「にしてもニルヴァーナ、よくアカシャから取り返せたなこの記憶。」

 

先程まで何かをしていた九十九が戻ってきた。そんな彼女にニルヴァーナが真剣な顔をして言う。

 

「奪ってきたのはアカシャからじゃない、カルマからだ。」

 

「カルマね。ならワンチャンあるか。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

そう言うとニルヴァーナは岩の麓の穴を見て言う。

 

「ここの穴なら全員入れそうだ。ここで話そう。」

 

「感謝しろよな。広げてやったんだからよ。」

 

「あぁ、感謝するぜ九十九。」

 

そう言うと彼は悠岐達を先に入れさせた。

 

「あー、肩やばい。」

 

九十九もそんなことを口走りながら悠岐達に続いてく。

 

「ほら、俺らもさっさと行こうぜ?」

 

「そうだな。」

 

そう言うとニルヴァーナは中へ入り、自分の来ていたマントで外を隠した。




メメントモリを倒したメルト・グランチ。百々達にエリュシオンのことを話そうとするニルヴァーナ。一体何故なのか・・・。
次作もお楽しみに!

余談:今朝モンストでモンコレやっていたので気分で引いたら5体目のベートーヴェンが出ました(´・ω・`)
2月(くらい?)からFINAL FANTASYコラボが来るのでユウナ当てるためにオーブ貯めます!


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第123話 紅魔館を襲う凶神

メメントモリを倒したメルト・グランチ。百々達にエリュシオンのことを話そうとするニルヴァーナ。


場所は変わって紅魔館。そこでは門番を務めている筈の美玲がいつものように居眠りをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、これが紅魔館。随分と門番が呑気なもんじゃない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!?」

 

突然聞こえた女性の声に美鈴ははっと目を覚ます。彼女の前にいたのは美鈴よりも背が少し高く、腰まで伸びる後ろ髪に青い瞳、白いスーツと白いスカートを着ている女性だった。女性を見た美鈴が口を開く。

 

「あ、あの・・・どちら様ですか?」

 

「どちら様?異変の黒幕よ。」

 

「ッッッッ!?」

 

女性が言った瞬間、美鈴は突然の勢いに吹っ飛ばされ、紅魔館内のヴワル図書館の中まで吹っ飛ばされる。彼女が吹っ飛んだのを見た一人の少女、パチュリーが美鈴を見て言う。

 

「何しているのよ美鈴。咲夜にでもやられた?」

 

「いいえ、咲夜さんではありません。」

 

美鈴が言った瞬間、吹っ飛んだ勢いで空いた壁から一人の女性がやって来る。女性を見た瞬間、美鈴は再び戦闘体制に入る。女性を見た瞬間、パチュリーは目を見開きながら言う。

 

「エ、エリュシオン!!」

 

「エリュシオン?」

 

パチュリーの発した『エリュシオン』という言葉に美鈴は思わず反応する。そんな彼女達とは別にエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「ごきげんよう、パチュリー・ノーレッジ。レミリア・スカーレットは何処かしら?」

 

「・・・紅魔館の中に居るけれど、あなたには会わせないわ。」

 

「会わせない、ねぇ。まぁそれも一つの答えね。アンタ達を倒してゆっくり探すのも悪くはない。どうせこの世界は私に壊されるのだから。」

 

エリュシオンが話している中、小悪魔がパチュリーと美鈴の元へ降り、言う。

 

「パチュリー様、あれは・・・。」

 

「エリュシオンよ。奴はメルト・グランチやアヌビスなどといった相手とは比べ物にならないほど強いわ。」

 

「メルト・グランチよりも!?」

 

「だからマズイのよ。今の状況、一番マズイ。」

 

三人が話しているとエリュシオンは一人持っている銃に弾を装填していた。装填し終えた彼女は銃口を三人に向け、言う。

 

「さぁ、まずは誰が私の相手をしてくれるのかしら?」

 

「火符アグニシャイン!!」

 

エリュシオンが言った瞬間、パチュリーはスペルカードを発動し、攻撃を彼女に放っていた。彼女にパチュリーの攻撃が当たる瞬間、エリュシオンは空いている左手でパチュリーの攻撃を弾いた。弾かれた攻撃はそのまま天井に当たる。

 

「パ、パチュリー様の攻撃を弾いた!?」

 

思わず声を上げる小悪魔。そんな彼女とは別にエリュシオンは笑みを浮かべながら言う。

 

「これが魔法使いの実力?弱いわねぇ、私の想像よりも遥かにね。」

 

「くっ・・・。」

 

「メメやカルマに魔法使いには注意したほうがいいと聞いていたのだけれど、残念ね。まさかこの程度だなんてね。あの八坂神奈子なら私が満足するような力を発揮したというのに。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、パチュリーは目を細めて言う。

 

「エリュシオン、守谷の連中に何をしたの?」

 

「守谷の連中?力の差を見せつけただけ。死んではいないから案じないといいわ。」

 

「あの八坂神奈子や洩矢諏訪子を倒してしまうなんて・・・。」

 

「後に八意永琳、西行寺幽々子などといった連中も捻り潰す。」

 

「そんなことはさせませんよ、エリュシオン。」

 

そう言ったのは美鈴だった。そんな彼女にエリュシオンは笑みを浮かべたまま言う。

 

「なら、掛かってきなさい。」

 

そう言うと彼女は挑発するように左手を前にクイクイを動かした。

 

「舐めるなぁっ!!」

 

そう言うと彼女はエリュシオンに走っていき、殴ったり蹴ったりしようと攻撃を仕掛ける。

 

「フフフ。」

 

しかしエリュシオンは美鈴の攻撃を容易くかわしていく。そんな中、美鈴は心の中で語っていた。

 

(おかしい、どうして当たらないの?これほど速いパンチやキックをしているのに・・・。)

 

その瞬間、エリュシオンは空いている左手で美鈴のパンチを受け止めた。

 

「なっ!?」

 

「まだまだね。そんな程度じゃ私には攻撃出来ないわよっ!」

 

そう言うと彼女は美鈴の腹をキックした。キックされた美鈴はパチュリーと小悪魔の元まで吹っ飛ぶ。

 

「美鈴!!」

 

「美鈴さん!!」

 

すぐさま彼女の元へ駆け寄るパチュリーと小悪魔。そんな中、エリュシオンが笑いながら言う。

 

「フフフ、今の私の蹴りでその呑気な門番は肋骨を数本折っているわ。動くのは無理かもね。」

 

そう言った時だった。突如エリュシオンの回りに数百本のナイフが浮かび、そのまま彼女の体に刺さった。

 

「ヌッ!?」

 

先程まで浮かんでいたエリュシオンの笑みが一瞬にして消え、彼女の体から血が飛び散る。

 

「大丈夫ですか?パチュリー様。」

 

その声が聞こえたのと同時にパチュリーの後ろに三編みの銀髪に青と白のメイド服、頭にカチューシャをつけている少女が立っていた。少女を見た瞬間、美鈴と小悪魔が同時に声を上げる。

 

「咲夜さん!!」

 

「二人とも大丈夫そうね。それよりあれは何なの?」

 

「咲夜、気をつけて。奴は今まで戦ってかた相手の中で一番ヤバい奴よ。」

 

「一番ヤバい奴?」

 

パチュリーの言葉に首を傾げる咲夜。そんな中、エリュシオンがゆっくりと体を起こし、言う。

 

「フフフフフフ。中々やるじゃない、紅魔館のメイド。時を止めて数百本のナイフを私に刺すとは。いい考えね。」

 

そう言いながら彼女は自分に刺さっているナイフを一本一本丁寧に抜いていた。抜いた箇所からは鮮血が垂れる。そして銃口を左腕に向け、発砲した。その瞬間、エリュシオンの左腕がパチュリー達の前に落ちる。

 

「!!?」

 

彼女の行動に思わず声を上げてしまう四人。そんな彼女達とは別にエリュシオンは口を開く。

 

「あ~痛い痛い。全身怪我した時これやるの嫌なのよねぇ。」

 

そう言った瞬間、彼女の体についた刺し傷がみるみる縮まっていき、ついには傷が治ってしまった。

 

「そんな!!」

 

驚きの声を上げるパチュリー。そんな彼女にエリュシオンが言う。

 

「私が過去にエデンの楽園で食べた禁断の果実の効果、それは切り傷、掠り傷などといった傷では何も起こらないけれど、腕の切断、耳が契られたなどといった身体の一部が離れてしまった傷を覆った場合、他の傷も一緒に治る。」

 

「なんて効果なの!?」

 

「チートね・・・。」

 

「そう、このチートのような存在こそ私、エリュシオン。星熊九十九のいた幻想郷破壊計画を目論んだ張本人よ。そして成功させた。」

 

「何てことをするの!!人の命を何だと思っているの?」

 

咲夜の言葉を聞いた瞬間、エリュシオンは不気味な笑みを浮かべて言う。

 

「よくぞ聞いてくれました紅魔館のメイド。私は人の命に興味なんてない。私が興味あるもの、それは愛しきあの子のことよ。私とあの子が一緒に過ごせる世界が出来るならば、他人の命だなんてどうでもいい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紅魔館に何の用かしら?エリュシオン。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、エリュシオン目掛けて紫色の槍が飛んで来た。

 

「ん~?」

 

それに気づいたエリュシオンは目を細めながらその槍を避ける。そこには翼を生やした二人の少女がいた。二人を見た瞬間、エリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「レミリア・スカーレット、それにその妹・・・。遂に来たわね。」

 

「お姉様、あれが今回の敵?」

 

「永遠亭のあの医者によればね。」

 

そう言った瞬間、レミリアとフランはパチュリー達の元へ降りる。と、エリュシオンがクスクスと笑いながら言う。

 

「いいわねぇ、どんどん人が集まってくる。そうよ、こうでなければ戦いは面白くない!さぁ、私を楽しませなさい、吸血鬼の小娘。」

 

そう言うと彼女は銃から一部の光を取りだし、それを刀に変形させた。それを見たレミリアが目を細めて言う。

 

「みんな、気をつけなさい。相当手強いらしいから。」




エリュシオンとの交戦に入るレミリア達。彼女達とエリュシオンの戦いの結末はいかに!?
次作もお楽しみに!


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第124話 超絶した力

エリュシオンとの交戦に入ったレミリア達。


不気味な笑みを浮かべるエリュシオンとは別にレミリアは落ち着いて口を開く。

 

「あら、あなたから来ないの?今までの奴と同じね。私達から攻撃する。それは面白くないわ。あなたから来てくれるかしら?」

 

「レミィ!?」

 

レミリアの言葉に反応するパチュリー。そんな彼女とは別に笑みを浮かべていたエリュシオンが少しきょとんとした表情を浮かべ、言う。

 

「別にいいけれど?それをアンタ達全員が望んでいるならやってもいいけど、どうする?」

 

「勿論良いわよ。」

 

「あ、そう。ならお言葉通り、先に攻撃させてもらうわ。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの姿が消えたかと思うと一瞬にしてレミリアの背後に移動し、刀を構えていた。

 

「お嬢様!!」

 

レミリアを守るべく咲夜がナイフでエリュシオンの刀の攻撃を防ぐ。その瞬間、彼女の持っていたナイフにヒビが入り、そのまま砕け散った。

 

「隙あり!!」

 

その声を発して美鈴はエリュシオンの背後から回し蹴りをする。

 

「え~そんな程度なの?弱いわね。それに、肋骨を折ったというのに動けるとは、随分と体つきいいんじゃない?」

 

そう言う彼女の左手は美鈴の足首に銃を持ったまま拳を叩き込んでいた。拳を叩き込まれた美鈴の足首から鮮血が飛び散る。

 

「なっ!?」

 

思わず声を上げる美鈴。そんな彼女にエリュシオンは 腹に蹴りを入れる。

 

「ぐっ!!」

 

エリュシオンに蹴られた美鈴は破壊された図書館の壁まで吹っ飛ぶ。

 

「禁忌レーヴァテイン!!」

 

スペルカードを発動したフランは上からエリュシオンに向かって炎の剣を振り下ろす。エリュシオンはそれを上を見ずに刀で弾いた。

 

「くっ・・・。」

 

炎の剣を弾かれたフランは上に再び飛び上がる。そんな中、小悪魔と咲夜がエリュシオンの背後に移動し、言う。

 

「私の弾幕を食らいなさい!」

 

「お嬢様に牙を向けたこと、後悔させてやるわ!!」

 

そう言った瞬間、小悪魔は力を溜め、咲夜はスペルカードを取り出した。

 

「停止ザ・ワールド!!」

 

小悪魔と咲夜が攻撃しようとした瞬間、エリュシオンが辺りに響くような声でスペルカードを発動した。その瞬間、時空が歪み、そして時が止まった。それを見た瞬間、咲夜は目を見開きながら言う。

 

「こ、これは私と同じッ!?」

 

続きを言おうとした瞬間、ドスッという音が響く。腹に痛みを感じた咲夜は恐る恐る腹を見る。彼女の腹には見覚えのある刀が刺さっていた。そして、彼女の肩に何者かの手が置かれた瞬間、声が響く。

 

「これねぇ、アンタと似ていて違うの。アンタは自由に動けるようだけれど、私はたったの10秒しか動かせないの。」

 

「エ、エリュシオン・・・。」

 

彼女の肩に顎を乗せてエリュシオンが顔を寄せる。そして銃を腰に掛け、彼女の顎を触れ、言う。

 

「邪魔者は大人しく寝てなさい。」

 

その瞬間、ゴキッという音と共に咲夜の首が曲がった。それと同時にエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「時は動き出す。」

 

その瞬間、止まっていた時が再び動き出したかと思うと咲夜が地面に倒れた。

 

「咲夜さん!?」

 

突然の出来事に小悪魔は彼女の名前を呼び、溜めていた力を解いてしまい、咲夜の元まで寄る。そんな中、パチュリーが口を開く。

 

「エリュシオン!!咲夜に何をしたの?」

 

「フフフ、簡単なことよ。ちょっと眠ってもらっただけ。でも、放置していればその子、死ぬかもね。」

 

彼女が言った時だった。後ろからエリュシオンに向かってフランが拳を構えて口を開く。

 

「ぎゅっとして、ドカーン!!」

 

その瞬間、フランの拳がエリュシオンに叩き込まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら~、あらゆるものを破壊する程度の力がこの程度?残念ねぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叩き込まれていなかった。ギリギリのところでエリュシオンはフランの拳を受け止めていた。

 

「えっ!?」

 

「そんな、フランの拳を!?」

 

驚くフランとパチュリー。そんな中、エリュシオンが笑みを浮かべて言う。

 

「なら私が、本当のぎゅっとして、ドカーンを教えてあげる。」

 

「ッ!フラン逃げて!!」

 

「・・・はっ!」

 

レミリアの言葉にフランははっとなる。しかしその時には既にーーー。

 

「ぎゅっとして、ドカーン♪」

 

エリュシオンの左手の拳が、フランの拳を捉えていた。その瞬間、レミリアの目の前に細い右腕が落ちる。

 

「あ、ああああああああ!!」

 

エリュシオンの拳によってフランの右腕は関節から先が無くなっていた。痛みに叫ぶフランとは別にエリュシオンは一瞬にして彼女の足を払い、背中を踏みつけた。そして言う。

 

「痛い?自分の体の一部が取れちゃうのって痛いわよねぇ?私はね、これを何度も受けているの。それと比べれば全然平気よね?」

 

彼女が話している中、パチュリーがスペルカードを発動しようとしていた。

 

「あーら危ない。」

 

そう言うとエリュシオンはスペルカードを発動しようとするパチュリーの右手を狙って発砲した。

 

「ウッ!?」

 

唐突の攻撃に声を上げるパチュリー。そんな彼女とは別にエリュシオンは立て続けに左腕にも発砲する。撃ち抜かれたパチュリーの左腕と右手からは血が垂れる。

 

「くっ、スペルカードを使わせないつもりね・・・。」

 

「当たり前でしょ~。そんなことやんなかったら面倒だし、そうでしょ?」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの背後にレミリアが移動し、言う。

 

「よくも、よくも私の仲間達を・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな目に会わせたわねって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

彼女に心を読まれて一瞬、動揺してしまったレミリア。その瞬間にエリュシオンは彼女にかかと落としを頭に食らわす。

 

「ぐっ!?」

 

頭をかかとで蹴られた彼女は地面に叩きつけられる。起き上がろうとするレミリアはエリュシオンは追い打ちをかけるようにフラン同様、背中を踏みつけた。

 

「ぐはっ!!」

 

その影響でレミリアは吐血する。そんな彼女にエリュシオンが不気味な笑みを浮かべて言う。

 

「やれやれ、500年程度しか生きてない奴の実力は所詮こんなものか。アンタ、相手にならないわよ。いずれ人間に負けるんじゃないの?いいや、戦わずとももう負けてるか。例えば、あの悪魔の二人とかねぇ。」

 

「ふっ、ふざけないで!!私は、あの二人よりも強いのよ!!私はかつて異変を起こした。琥珀に意見をもらって幻想郷を私の物にしようとした。そんな私があの二人に負けるわけないわ!!」

 

「へぇ、よく言えるわねぇ。アンタ達で倒せなかったあのメルト・グランチやルシファーを倒したのはあの二人よ?それなのによくそんな威張れるわねぇ。」

 

「うるさい!!」

 

「ま、アンタの戦績なんてどうでもいいんだけどね。それに、私は幻想郷を破壊する他に星熊九十九と琥珀・イーグナーウスを殺し、現世と四角世界(マインクラフト)を破壊すると忙しいの。だからアンタ達との戦いも終わらせてもらうわ。」

 

そう言うと彼女は右手に持っていた刀をレミリアに向ける。そして口を開く。

 

「バイバイ、レミリア・スカーレット。」

 

「お、お嬢様・・・。」

 

美鈴はなんとかレミリアを助けようとするがエリュシオンに肋骨を数本折られ、さらに蹴りを食らったため、動くことが出来なかった。小悪魔も咲夜の傷を治すため、身動きが取れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幻巣発光虫ネスト!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如女性の声が聞こえた瞬間、エリュシオン目掛けて段幕が飛んで来た。

 

「!?」

 

それを見たエリュシオンは咄嗟にレミリアから離れ、彼女達から離れた場所に降りる。

 

「お嬢様!!」

 

エリュシオンが離れたのを見た美鈴はヨロヨロになりながらレミリアを抱え、小悪魔の前で彼女を優しく下ろし、そのまま倒れた。

 

「美鈴さん!?」

 

思わず彼女の名前を言う小悪魔。そんな彼女とは別にパチュリーがフランを抱え、小悪魔の元までやって来てある方向を見ながら言う。

 

「こあ、レミィ達の治療をしましょう。それに、奴の相手はあちらがやってくれるみたいだから。」

 

「あちら?」

 

そう言うと彼女はパチュリーが向いている方向を見る。そこには金髪のロングヘアーに毛先をいくつか束にしてリボンで結んでいて紫色の瞳で日傘をさしている女性がエリュシオンの元へ歩み寄っていた。彼女を見た瞬間、エリュシオンは笑いながら言う。

 

「ようやっと会えたわね、八雲紫。」

 

エリュシオンが言った瞬間、八雲紫はいつも以上に真剣な顔で口を開く。

 

「警告した筈よ、これ以上星熊九十九のいた幻想郷のように滅ぼすならば私は容赦しないって。」

 

「警告など私には無意味。生物の理から外れた私に敵う者なんていないのだから。」

 

「そんなの関係ないって言っているでしょう?無謀な戦いだとしても私はこの世界を守るわ。」

 

「なんか、アンタ八意百合姫みたいねぇ。賢者のクセに守護者を気取るとは。まぁいいや。ちょうどアンタとの戦いも考えていたし、異論はないから安心しなさい。」

 

そう言うと彼女は刀と銃を構える。それを見た紫はパチュリーを見て言う。

 

「規模が大きくなるかもしれないからそのことは了承して欲しいわ。」

 

「・・・外でやりなさいよ。」

 

「奴がそれを受け入れてくれると思うの?」

 

「・・・分かったわ。無理しないで。」

 

パチュリーが言った瞬間、紫は微笑む。そして再び真剣な顔を浮かべる。そんな彼女にエリュシオンが言う。

 

「さぁ掛かってきなさい、琥珀・イーグナーウスの弟子。師匠に鍛えられた力を私に見せてみなさい。」




ピンチになったレミリア達の前に突如現れた紫。対立する紫とエリュシオン。どうなってしまうのか!?
次作もお楽しみに!


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第125話 紫vsエリュシオン①

ピンチになったレミリア達の元へ駆けつけた紫。そして対峙する紫とエリュシオン。


クスクスと笑い続けるエリュシオンに紫は日傘の先に光を溜め、弾幕を放つ。

 

「貫通ゲイボルグ。」

 

その瞬間、スペルカードを発動したエリュシオンは銃を腰に掛け、左手に緑色の槍を出現させるとそのまま紫の放った弾幕目掛けて投げつける。槍は弾幕を貫き、そのまま紫の元へと向かっていく。

 

「境符四重結界!!」

 

咄嗟に紫はスペルカードを発動し、間一髪でエリュシオンの攻撃を防ぐ。だが槍は結界を突き破り、そのまま紫の肩を貫いた。

 

「ぐっ!?」

 

貫かれた肩からは血が飛び散る。と、エリュシオンが口を開いた。

 

「貫通ゲイボルグの効果、それはありとあらゆる防御技を貫く攻撃。アンタの結界なんて無意味よ。」

 

「くっ、ならば弾くしか方法はないって訳ね。」

 

そう言うと紫は再びスペルカードを発動した。

 

「人間と妖怪の境界!」

 

彼女の放った弾幕は真っ直ぐにエリュシオンに向かっていく。それを見た彼女は再びスペルカードを発動する。

 

「完防イージス。」

 

その瞬間、エリュシオンの回りに紫色の半円球が現れたかと思うとそのまま紫の放った攻撃を防いだ。そしてエリュシオンは再び言う。

 

「完防イージス。これはありとあらゆる攻撃技を防ぐ力。勿論、五大王の力でもガイルゴールの力でもね。」

 

そう言った時だった。突如エリュシオンの肩にナイフが突き刺さった。

 

「いたっ!?」

 

唐突の攻撃にエリュシオンは声を上げる。そんな彼女とは別に紫は笑みを浮かべながら言う。

 

「攻撃を防ぐというのならば、あなたがそれを解除した瞬間に攻撃すればいい話じゃないかしら?」

 

「あらあら、ちょいとマズイかも。完防イージスの弱いところに気づかれては私はこれを出しにくくなるわね。あ~あ、面倒くさい。」

 

そう言うと彼女は肩に刺さったナイフを抜き、放り捨てる。そんな彼女に紫が言う。

 

「フフフ、弱点をついたわ。これであなたとの戦いも楽になれる。」

 

「それはどうかしらねぇ、八雲紫。この程度で私との戦いが楽になれると思う?」

 

そう言うとエリュシオンは腰に掛けていた銃を左手に持つ。それを見た紫は目を細めて言う。

 

「その銃、何か違和感が湧くわね。私が師匠や霖之助さんから教えてもらったのとは大分違う。」

 

「フフフ、勿論だとも。だってこの銃は表の世界にはないのだから。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは発砲した。それを見た紫はスキマを展開させた。彼女の放った銃弾はそのままスキマの中へ入っていった。

 

「銃弾なんて怖くないわ。スキマがあればあなたに返すことが出来るし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら、アンタに当たるようにすればいい話ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耳元から声が聞こえた瞬間、紫は目を見開いて後ろを振り返る。そこにはエリュシオンが不気味な笑みを浮かべていた。それを見た紫は恐怖のあまりに震えてしまう。そんな彼女とは別にエリュシオンは刀を構える。

 

「はっ!」

 

それに気づいた紫は咄嗟にスキマの中に入り、エリュシオンの攻撃を間一髪で避ける。彼女から少し離れた場所に移動した紫はスキマから出る。と、エリュシオンが口を開く。

 

「間一髪で避けられたと思ったけれど、少しは傷を与えられてちょっとほっとしてるわ。」

 

そう言うエリュシオンとは別に紫は先程避けきれず、傷を覆った左腕を右手で押さえながら立っていた。そんな彼女にエリュシオンが再び言う。

 

「どうした?その程度で終わりとは言わないわよねぇ?この程度の力で私から世界を守るなんて言わせないわよ。」

 

「私の話を聞いてなかったのかしら?私は無謀な戦いになろうと容赦しないって言ったでしょう?」

 

そう言った瞬間、紫の目の前にエリュシオンが一瞬にして移動してきたかと思うとそのまま彼女の腹にキックした。

 

「ぐはっ!!」

 

キックされた紫はそのまま紅魔館の外に追い出された。外はいつの間にか薄暗い灰色の雲に覆われていた。

 

「ゲホッ、ゲホッ。」

 

外に出され、地面に倒れ込んだ紫はその場で吐血する。そんな彼女とは別にエリュシオンは紅魔館から出て紫に近付きながら言う。

 

「無謀な戦い?こんなの全然無謀そうには見えないわ。まぁ、アンタからしたら無謀なんだろうけど私からすればただのお遊びに過ぎない。」

 

そう言うと彼女は歩くのをやめると銃口を紫に向けた。そして口を開く。

 

「じゃあね、幻想郷の賢者。」

 

そう言った時だった。紫はスペルカードを発動した。

 

「廃線ぶらり廃駅下車の旅!!」

 

その瞬間、エリュシオンの回りに複数のスキマが現れた。そしてスキマが展開し、中から列車が一斉にエリュシオン目掛けて走ってくる。

 

「ありゃりゃ、これはヤバイかも・・・。」

 

エリュシオンが言った瞬間、複数台の列車が同時にエリュシオンの元で爆発を起こした。その様子を傷を癒しながら小悪魔とパチュリーが見ていた。そんな中、紫はゆっくりと起き上がり、爆発した場所を凝視する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、危なかった危なかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、爆発した場所の火が一瞬にして消え、中からエリュシオンが笑みを浮かべて現れた。

 

「こ、この攻撃も効かないなんて・・・。」

 

その光景を見て紫は思わず声を上げてしまう。そんな中、エリュシオンが自分の左腕を見せながら言う。

 

「先程のアンタの攻撃、私は間一髪で完防イージスを使ったんだけれど少し間に合わなかったみたいでね、ちょっと火傷したのよここ。多分列車との摩擦ね。あ~痛いし熱い。」

 

そういう彼女の左腕は少し黒くなっている箇所があった。それを見た紫は笑みを浮かべて言う。

 

「フフフ、無様ね。あなたがやられている様は。」

 

「それと八雲紫、アンタに1つ聞きたいことがあるのだけれど。どうしてあの2体の式神がいないの?」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、パチュリーは咄嗟に藍と橙のことを頭に浮かべた。そんな中、紫は自分の胸に手を当てて言う。

 

「今あの子達には私とは別のことをしてもらっているの。あの子達はあの子達、私は私のやるべきことを果たすためにね。」

 

「使命感ってヤツね。なるほど、それでアンタは私に一人で挑んできたというわけ。面白い、アンタ面白いわねぇ、八雲紫。」

 

エリュシオンは笑みを浮かべて言う。そんな彼女とは別に紫は口を開く。

 

「私は、負けるわけにはいかないのよ。メルト・グランチの時やガノンドロフの時は私が守る筈なのに守れなかった。そんなことはもう繰り返したくないの。」

 

「ほう、もう後悔するようなことはしたくないと?フフフ、アンタらしい。さぁ、まだまだ戦いはこれからよ。もっと私を楽しませなさい。フフフフフフ。」




不適な笑みを浮かべるエリュシオン。紫は太刀打ち出来るのか!?
次作もお楽しみに!


余談:僕はアニメが好きなのですがその中で好きなキャラクターランキングベスト5をご紹介しようと思います。
1位・・・アカメ(アカメが斬る!)
2位・・・ココ(ヨルムンガンド)
3位・・・エミリア(RE.ゼロから始める異世界生活)
4位・・・アルタイル(RE:creater)
5位・・・式(空の境界)

こんな感じです。みなさんなどんなアニメのキャラクターが好きですか?良ければ感想欄にて教えて下さい!


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第126話 紫vsエリュシオン②

あらゆる攻撃を仕掛けてエリュシオンを倒そうとする紫。


と、紫は手を前に出す。その瞬間、ありとあらゆる場所からスキマが展開させると中から大量の弾幕がエリュシオンを襲う。

 

「へぇ、面白い。」

 

そう言うと彼女は飛び上がり、紫の弾幕を避け続ける。それを見た紫は歯を食い縛りながら言う。

 

「くっ、どうして当たらないの?あれは結構本気でいってる筈なのに・・・。」

 

と、エリュシオンは弾幕を避けながら言う。

 

「アンタ、中々考えたじゃない。これほどの数の弾幕を放ってくるなんて。完防イージスを確実に攻略した戦法ってところね。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは弾幕を刀で弾きながら言う。

 

「さらに左腕を負傷した私にとってこれは結構ヤバい状況。銃も使えないしスペルカードも使えない。刀で太刀打ちしろって言われてる感じね。」

 

(これが有効だってなんて!運がいいわ、私。これなら奴を倒せる!)

 

思わず心の中で言う紫。そんな彼女とは別にエリュシオンは口を開く。

 

「今アンタ、この調子なら私を倒せるって思ったでしょ?」

 

「なっ!?」

 

「何故分かったって?表情を見ればすぐ分かるわよそんなこと!」

 

そう言った瞬間、紫の目の前に一瞬にして移動したエリュシオンはそのまま彼女の顔を掴み、地面に叩きつける。

 

「くっ・・・。」

 

地面に叩きつけた紫はエリュシオンの手から逃れようと彼女の背後にスキマを展開させる。

 

「さぁ、この状況をどう打破するのかしらねぇ、幻想郷の賢者さん?」

 

「これでも食らいなさい!!」

 

そう言った瞬間、スキマの中から数発の弾幕がエリュシオン目掛けて飛んでくる。

 

「ん~?」

 

呑気にエリュシオンは背後を振り返る。その瞬間、彼女に弾幕が命中する。その隙に紫はエリュシオンの手から逃れる。そして口を開く。

 

「良かった、もし奴が気づいていたら逆に私が受けていたかもしれないわ。」

 

そんなこと中、沸き上がる煙の中からエリュシオンが服についたゴミを払いなが歩み寄り、言う。

 

「あ~あ、また14万円するスーツに汚れが付いちゃった。これ結構気に入っているのにぃ、酷いわねぇ。」

 

「服を汚すことより他人の命を奪うほうが酷いと思うのだけれど?」

 

「まぁそれは常識よ。命を奪う以上の悪質的なものはないわ。」

 

そう言った瞬間、紫は再びエリュシオンの背後にスキマを展開させる。それに気づかずにエリュシオンは再び口を開く。

 

「さぁて、あと何分でアンタを片付けようかしらねぇ。アンタならどうする?八雲紫。」

 

「何分も掛からないわ。何故なら、私があなたを倒すのだから。」

 

「へぇ、一体どうやって倒すのかしら?」

 

やれやれのポーズをとりながらエリュシオンが言った瞬間、紫は彼女の背後に展開させておいたスキマの中から一本の刀を彼女に放った。その瞬間、エリュシオンの左腕が吹っ飛んだ。

 

「ッ!?」

 

目を見開きながら彼女は体から離れた左腕を押さえる。そんな彼女とは別に紫が口を開く。

 

「だから言ったでしょう?私はあなたが神であろうと容赦しないって。これが幻想郷を守る妖怪賢者、八雲紫の力よ。思い知ったかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメよ!!それでは奴には逆効果だわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

紅魔館から聞こえた声に紫は反応する。彼女に言ったのはパチュリーだった。

 

「ピンポーン、大正解♪」

 

その声が聞こえた瞬間、紫は目を見開き、後ろを振り返る。その瞬間、彼女は腹にパンチを食らった。

 

「がはっ!!」

 

腹を殴られた影響で紫はその場で吐血する。そんな中、彼女を見下ろしながらパンチをした存在が口を開く。

 

「アンタ知らなかったのね、エデンの果実の効果。」

 

「エ、エリュシオン・・・どうして・・・。」

 

「どうしてですって?エデンの果実の効果だからよ。エデンの果実の効果、それは切り傷、内臓の損傷などでは効果を発揮しない。その代わりに手足の切断などといった体から離れるような傷を覆った場合のみ傷が自動的に治る。これが果実の効果よ。」

 

「そ、そんな・・・。」

 

「その効果があるから私はアンタが私の後ろにスキマを展開させて刀で腕を斬り落とそうとしていたことをあえて黙っていたわ。」

 

「・・最初から狙っていたって訳ね。」

 

「その通り。アンタが私の腕を斬り落としたのは私にとって好都合だったわ。残念でした。」

 

そう言うと彼女は紫の腹を蹴りつけた。

 

「ぐはっ!!」

 

そのまま彼女は吹っ飛び、木に叩きつけられて地面に崩れる。と、エリュシオンが言う。

 

「あ、ちょっと力を抜きすぎた。本来なら博麗神社辺りまで吹っ飛ばそうと思ったのにぃ。」

 

そう言うと彼女はゆっくりと紫の元へと歩み寄る。紫はなんとか起き上がろうとするが力が入らなかった。そんな彼女とは別にエリュシオンが口を開く。

 

「八坂神奈子より残念な結果になったわね。あの子は私をギリギリまで追い詰めたって言うのに。期待はずれだわ、八雲紫。」

 

「くっ、それは関係ないでしょ・・・。」

 

「アンタとなら面白い戦いが出来ると思ったのに。」

 

そう言うと彼女は左手に銃を持ち、そのまま銃口を紫に向ける。と、紫が唐突に口を開く。

 

「エリュシオン。あなた、こんなことやっていいのかしら?」

 

「・・・急に言うと思えば、一体何を言い出すのかしら?」

 

紫の言葉をエリュシオンは目を細めて言った。そんな彼女に紫は話を続ける。

 

「あなたには大切な人がいるんでしょう?絶対に失いたくない存在が・・・。守りたい存在が・・・。なのにあなたは何をしているの?世界を壊そうとしてる。それは大切な存在にショックを与えるんじゃないかしら?」

 

「・・・。」

 

「敵である私が言うのはあれだけれど、あなたは今自分がやるべきことを見直したほうがいいと思うのよ。あなたにはあなたにしかない魅力があるんだから・・・。」

 

彼女の言葉を聞いたエリュシオンは黙ったまま銃を腰に掛けた。それを見た紫が安堵の息を吐いて言う。

 

「フフッ、それでいいのよ。それが一番ッ!?」

 

続きを言おうとした瞬間、エリュシオンの蹴りが紫の右腕を捉えた。その瞬間、ゴキッという音と共に紫は数十メートル吹っ飛ぶ。そんな彼女にエリュシオンがイラついた表情を浮かべながら言う。

 

「アンタなんかに、何が分かるのよッ!!自分を守れない奴が、知ったような口を聞くんじゃないわよ!!」

 

そう言うと彼女ははや歩きで紫に近付く。

 

「そ、そんな・・・。この戦法が効かないなんて。」

 

へこむ紫とは別にエリュシオンは再び言う。

 

「エデンから追放されてからずっと一人だった私の何が分かる!!たかが数千年しか生きていないアンタに私の何が分かるッ!!」

 

「がっ!?」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは片手で紫の首を掴むと軽々と彼女の体を空中に持ち上げた。紫を持ち上げたままエリュシオンは再び口を開く。

 

「私の理解者なんて家族と百々だけ・・・。それ以外にはいないわ。・・・いいや、いてはいけないのよ!!私の理解者はあの子達だけで充分!!それ以外の理解者など求めない!!」

 

「うぐっ!?」

 

エリュシオンが叫んだ瞬間、彼女は紫の首を強く絞め始めた。急に絞められたため、紫は足を激しくばたつかせ、両手で彼女の手首を掴む。そんな彼女とは別にエリュシオンは空いている右手に拳を作り、言う。

 

「家族でも何でもないアンタが、理解者ぶったような感じで気安く話すんじゃないわ!!」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは紫の腹にパンチをした。その威力は先程よりも凄まじいもので、紫の体は紅魔館まで吹っ飛び、パチュリー達の前まで飛ぶ。

 

「ち、ちょっと!?」

 

思わず声を上げるパチュリー。紫はエリュシオンの攻撃で気絶していた。そんな彼女とは別にエリュシオンは息を切らしながら言う。

 

「ハァ、ハァ・・・。少し喚きすぎたわね。ちゃんと冷静にならなきゃ。八雲紫を倒したのよ?落ち着きなさい自分。」

 

そう言うと彼女は紅魔館にゆっくりと歩み寄る。そして口を開く。

 

「さぁてと、止めとさせてもらうわ。」

 

そう言うと彼女は左手に銃を再び構える。その時だった。突如エリュシオンの隣に一人の女性が現れたかと思うとそのままエリュシオンを蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた彼女はそのまま木々のところまで吹っ飛んだ。

 

「え?」

 

それを見たパチュリーと小悪魔は思わず声を上げる。そんな二人とは別に女性が口を開いた。

 

「ようやっと追いついたぞ、エリュシオン!!」

 

彼女を見た瞬間、小悪魔がきょとんとなりながら言う。

 

「パ、パチュリー様。あれは一体・・・。」

 

「本で読んだことがあるわ。あれは、月の都をも支配することが出来る力を持つと言われている、神霊純孤!」




エリュシオンに圧倒的な力を見せつけられた紫。
突如現れた純孤。その目的とはいかに!?
次作もお楽しみに!


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第127話 純狐vsエリュシオン①

ピンチに追い込まれる紫。そんな時に純狐が現れ、エリュシオンに強烈な一撃を与える。


木々をどけながらエリュシオンはゆっくりと歩く。そして口を開く。

 

「いたたた、まさかアンタが急に来て蹴りを入れてくるとはねぇ、純狐。」

 

「やっとお前を見つけた、エリュシオン。お前と戦いたかった。」

 

二人が話しているのを見た小悪魔がパチュリーに言う。

 

「あ、あの二人は何か関係があるのでしょうか?」

 

「分からないわ。でも、何かしらあったに違いないわね。」

 

二人が話している中、エリュシオンがやれやれのポーズをとり、言う。

 

「やれやれ、これじゃあ時間が掛かるわね。」

 

そう言うと彼女は左手に黄色の光を宿し、言う。

 

「おいでなさい、因果の理を握せし光の闘神カルマ。」

 

そう言った瞬間、彼女の隣に茶髪に赤い瞳、背丈は彼女くらいの少年が現れた。と、少年はエリュシオンを見て言う。

 

「やぁ母さん。僕を呼んだかい?」

 

「えぇ、呼んだわ。カルマ、先に星熊九十九と琥珀・イーグナーウスの処理をお願いね。私はここらにいるじゃじゃ馬を片付けるから。」

 

「分かったよ。気をつけてね、母さん。」

 

「フフッ、ありがとねカルマ。アンタこそ気をつけなさいよ。メメがやられてそんな経っていないから多分無縁塚にいる筈よ。」

 

「うん。それじゃあまた会おう。」

 

そう言うとカルマは無縁塚へと向かっていった。それを見届けたエリュシオンは純狐を見て言う。

 

「その様子だと、ヘカーティアとあの妖精は置いていったようね。そんなにも私に会いたかったの?嬉しいわねぇ。」

 

「お前に会いたかったわけじゃないわ!!」

 

「ん~?じゃあ何で?」

 

「私には嬢娥という不倶戴天の敵がいた。私はそいつに恨みを晴らそうとしたのにお前のせいでそれが果たせなくなったのよ。そんな訳で今の私にとっての不倶戴天の敵は嬢娥などではないわ。エリュシオン、お前だ!!」

 

「フフフ、この私を不倶戴天の敵と?面白いこと言うわねぇ、純狐。」

 

そう言うと彼女は左手に銃を構え始めた。そして心の中で語る。

 

(月の都であれほどダメージを与えたのに嘘みたいに回復してる。一体どんな術を・・・。いいや、今はこんなこと気にしてる暇はないか。でも、微かではあるけどまだ治っていない傷があるみたいね。そこを重点的に狙えばすぐに終わる。)

 

そう語ったエリュシオンは純狐に不気味な笑みを浮かべて言う。

 

「なんなら、私と戦ってアンタが強いって思ったら不倶戴天の敵としていいわよ!」

 

そう言うと彼女は純狐に向かって発砲した。その瞬間、エリュシオンと純狐の間で金属音が響いたかと思うと発砲した銃弾が地面に落ちた。

 

「!?」

 

それを見たエリュシオンは思わず声を上げる。そんな彼女とは別に純狐は彼女に向かっていく。

 

「チッ!」

 

舌打ちしながらもエリュシオンは純狐に発砲し続ける。距離が近くてもまた純狐とエリュシオンの間で金属音が響き、銃弾が地面に落ちる。と、エリュシオンは純狐が投げてくるモノに目を向けて心の中で語る。

 

(針?針でこの爆裂徹甲弾を弾き落としているというの!?恐ろしい女ね、純狐。月の都で戦ってたのとは違う。)

 

そう思いながらエリュシオンは発砲を続ける。純狐が疲れて果てるまで。しかし純狐は疲れる様子もなくエリュシオンに針を投げ続ける。

 

「いつまで投げるつもりなのよっ!!」

 

そう言うとエリュシオンは一瞬の隙を見て純狐の腹を蹴りつけた。

 

「ぐっ!?」

 

腹を蹴られた純狐は思わず後退する。そんな彼女とは別にエリュシオンは立て続けに彼女の頭に踵落としと食らわす。踵落としを食らった純狐は地面に叩きつけられる。

 

「フフッ、やっぱりまだ傷が癒えてないみたいね。月の都よりも隙が多いわ。」

 

そう言いながら彼女は純狐のいる場所にゆっくりと降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうお前も、随分と隙だらけじゃない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、砂埃の中から右手が出てきたかと思うとその右手はエリュシオンの足を掴んだ。

 

「なっ!?」

 

「余裕ぶっているとこうなる!!」

 

そう言うと純狐はエリュシオンの足を引っ張った。

 

「うわっ!」

 

そのままエリュシオンは地面に倒れる。その隙に純狐がエリュシオンに馬乗りになり、右手に握り拳を作る。

 

「ちょっ、ふざけんじゃ!?」

 

エリュシオンが起き上がりながら言おうとした瞬間、純狐が空いている左手で彼女の顔を押さえ、地面に叩きつける。

 

「これでも食らえ!!」

 

そう言うと純狐は右手の握り拳をエリュシオンに向かって放った。放った場所からは砂埃が舞う。

 

「なっ!?」

 

と、純狐は思わず声を上げてしまう。無理もない、何故ならエリュシオンが空いている左手で顔を押さえていた左手をどかし、彼女のパンチをかすり傷程度で済ませたのだ。

 

「随分と危ないわね。」

 

そう言うとエリュシオンは純狐の顎にパンチを食らわした。

 

「ぐっ!!」

 

立て続けに彼女はバク転と同時に純狐の顎を蹴る。

 

「チッ・・・。」

 

舌打ちをした純狐は口元に付いた自分の血を拭く。そんな彼女とは別にエリュシオンは自分の頭から垂れる血を見て言う。

 

「チッ、地面に叩きつけられた衝撃で出血したみたいね。起き上がるまで気づかなかったわ。」

 

「顎を狙って攻撃するなんて、顎になんか恨みでもあるの?」

 

「別に、顎に恨みがあるわけではないわ。ただ攻撃する場所がたまたま顎だっただけ。」

 

「そんなことより、どうよエリュシオン。私はお前に対抗出来るくらい強いのよ?」

 

「それじゃあ、あの時は力が出せなかっただけって言うの?」

 

「その通りだ。」

 

「はぁ、面倒ねぇ。アンタを倒す他にも星熊九十九や琥珀・イーグナーウスを処理しないといけないのにぃ。」

 

「星熊九十九?琥珀・イーグナーウス?そんなの知らないわ。お前の勝手でしょ?」

 

「フフフ、面白いこと言うのね純狐。」

 

「まぁね。取り敢えず今私はお前を倒したい。ただそれだけよ。」

 

「フフッ。頑固者ねぇ純狐。そんな人、嫌いじゃないわよ。さぁ私を楽しませて。八坂神奈子や八雲紫よりもねぇ。」

 

そんな彼女の顔には不気味な笑みが浮かんでいた。




エスカレートしていく純狐とエリュシオンの戦い。二人の戦いの勝敗はいかに!?
次作もお楽しみに!


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第128話 純狐vsエリュシオン②

突如姿を現した純狐。純狐とエリュシオンの戦いはお互いに譲らないほどの激戦になる。


不気味な笑みが浮かべるエリュシオンに怯むことなく逆に純狐はクスクスと笑いながら言う。

 

「エリュシオン、そんな不細工な顔で私を怯ませられるとでも思っているのか?ププッ。」

 

「んん~?今なんて言ったのかしら?純狐。」

 

少しイラついた表情を浮かべながらエリュシオンは言う。そんな彼女に純狐が追い討ちをかけるように言う。

 

「不細工って言ったのよ不細工。そんな不細工な顔で見られると笑いを堪えられないわよアーッハッハッハ!」

 

怒りの表情を我慢しながらエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「へぇ、この私を不細工って言うのね純狐。闘神(あのこ)達にも言われたことないのに・・・。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの姿が一瞬にして消えたかと思うと純狐の背後に移動していた。

 

「フフッ、そんなのが私に通用しないと思っていたのか?」

 

「!?」

 

「見えているのよ!!」

 

そう言った瞬間、純狐は振り向き様にエリュシオンに向かって針を投げた。彼女が投げた針はそのままエリュシオンの右目に命中する。

 

「!!?」

 

針が刺さった右目からは鮮血が飛び散る。

 

「ッ!!」

 

思わずエリュシオンは右目を押さえる。そして左手に銃を持ち純狐に発砲しようとする。

 

「殺意の百合!」

 

純狐がスペルカードを発動した瞬間、彼女の手から弾幕が放たれ、そのまま銃を持っているエリュシオンよ左腕に命中する。弾幕を食らった左腕はそのまま吹っ飛ぶ。

 

「くっ!!」

 

「これで終わりよ!!」

 

そう言った瞬間、ドスッという鈍い音と共に純狐の右腕がエリュシオンの胸を貫いていた。

 

「ゴフッ・・・。」

 

エリュシオンは思わず吐血する。そんな彼女とは別に純狐の右手にはドクンドクンと動くモノが握られていた。と、純狐が口を開く。

 

「これが私の力よ。思い知ったかしら?不倶戴天の敵、嬢娥を封印した報いだ。」

 

そう言うと彼女は手に持っていたモノを握り潰した。そして胸から腕を引き抜く。その瞬間、エリュシオンの胸から鮮血が飛び散り、そのまま彼女は倒れた。それを見た純狐は笑みを浮かべて言う。

 

「フ、フフッ。フフフハハハハ、アッハッハッハ!!遂に、遂にやったわ!!私はあの凶神を倒すことが出来たんだ!!アーッハッハッハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・だと思うじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーッハッハッハ、ハッ!?」

 

突如耳元から聞こえた声に純狐は笑うのを止める。

 

「ま、まさかっ!?」

 

続きを言いながら振り返ろうとした瞬間、純狐は腹に痛みを感じた。見ると彼女の腹には刀が貫いていた。

 

「ガハッ!!」

 

腹を貫かれた純狐はその場で吐血する。そんな彼女とは別に背後にいた者が彼女の顔の横から顔を出し、言う。

 

「惜しかったねぇ、純狐。私の心臓を潰すという方法は悪くなかった。けれどね、1つやっちゃいけないことをしたわね。」

 

「エリュ、シオン!?・・・何故・・・。」

 

「アンタねぇ、私の心臓を潰す前に腕を吹っ飛ばしたじゃない?私ねぇ、エデンの果実の効果で体のどこかしら斬り落とされるとその部分は回復するし他の傷も治っちゃうのよ♪」

 

「な、なん・・・だと・・・?」

 

「フフッ。」

 

クスッと笑うとエリュシオンは空いている左手で純狐の左腕を掴んだ。そして言う。

 

左腕(これ)、邪魔だからへし折っちゃいましょう♪」

 

そう言った瞬間、辺りにゴキッという鈍い音が響いたのと同時に純狐の左腕があらぬ方向に折れ曲がった。

 

「ッ!?」

 

腕を折られた純狐は声にならない声を上げる。そんな彼女とは別にエリュシオンは純狐の背中を蹴る。そしてうつ伏せになっている彼女を仰向けにし、腹を踏みつける。

 

「ぐっ!?」

 

「アンタねぇ、少し調子のり過ぎなのよ。アンタが私より強い?そんなわけないじゃない。私は神の器を持つ者。そんな私がアンタのような神霊に負けるわけない。勿論、他の奴らもね。」

 

そう言うと彼女は持っていた銃を一旦スライム状に戻すとそのまま刀へと変化させた。そして口を開く。

 

「さぁて、散々やられたんだし、何かアンタから貰いましょうかねぇ。例えば・・・。」

 

その時だった。突如エリュシオンの背後に何者かが現れたかと思うといきなり彼女の首に鎖を巻きつけた。

 

「がっ!?」

 

「食らいなさい、エリュシオン!!」

 

彼女の背後にいたのは肩まで伸びる赤髪に『WelcomeHell』と書かれた黒いTシャツを着た女性だった。彼女を見た純狐、純狐が弱々しい声で言う。

 

「ヘカー、ティア・・・。」

 

純狐が言った時だった。突如時空が歪みだし、そのまま皆の動きが止まってしまう。そんな中、一人エリュシオンだけが口を開いた。

 

「停止ザ・ワールド。時は止まった。」

 

そう言うと彼女は首に巻きついている鎖を空いている左手で掴むと軽々と千切った。そして後ろを見て言う。

 

「アンタが来るとは予想できてたけれど、このタイミングで来るとはねぇ、ヘカーティア。」

 

そう言うと彼女は左手でヘカーティアの腹を殴った。そして再び言う。

 

「時は動き出す。」

 

そう言った瞬間、止まっていた時が動き出した。

 

「ぐはあっ!!」

 

腹を殴られたヘカーティアはそのまま純狐とは別の方向へ吹っ飛ぶ。そんな中、エリュシオンは足を純狐の腹からどけるとヘカーティアに近付きながら言う。

 

「残念だったわねぇ、ヘカーティア。私の首を絞める程度じゃ私は死なないのよ。」

 

「そ、そんな馬鹿、な・・・。」

 

「それに、クラウンピースの姿が見当たらないけれども一体何処にいるのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたいならここにいるよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、エリュシオンの真上から金髪のロングヘアーに赤がかかった紫色の目、青地に白い星マークと赤白のストライプを服を着ている少女が現れた。

 

「やっぱりいたのね、クラウンピース。」

 

そう言ったエリュシオンは一瞬にしてクラウンの目の前に現れた。

 

「なっ!?」

 

突然現れたため、彼女は声を上げてしまう。そんな彼女とは別にエリュシオンはクラウンの足を掴み、そのまま地面に叩きつける。

 

「ぐはっ!!」

 

地面に叩きつけられた彼女はその衝撃で吐血する。そんな中、エリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「クラウンピース、私がどんな性格しているか分かるかしら?まぁ分からないわよね。」

 

「な、何を言って・・・。」

 

弱々しい声を上げるクラウンとは別にエリュシオンは空いている左手で彼女の左腕を掴み、肘部分に銃口を向けた。

 

「な、なな何をする気!?」

 

怯えながら言うクラウンとは別にエリュシオンはにっこり笑って言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ねぇ、アンタみたいな妖精は嫌いなの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言った瞬間、辺りに銃声音が響いたかと思うとクラウンの左腕の肘から先が体から離れた。

 

「いっ、いぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

あまりの激痛にクラウンは左腕を押さえながら地面にうずくまる。そんな彼女とは別にエリュシオンは体から離れたクラウンの肘の部分から垂れる血を舐め、言う。

 

「私が妖精嫌いになったのは1億年前でね、琥珀・イーグナーウスという目障りな妖精の影響を受けて嫌いになったわけ。だから恨むなら私じゃなくてあの子を恨みなさい。」

 

「痛い、痛いよぉ・・・。」

 

「痛い?でしょうね。でも、私が過去に受けた痛みよりはマシよ。」

 

そう言うと彼女はクラウンの腕を投げ捨てるとヘカーティアの元へ再び近付く。それに気づいたヘカーティアはゆっくりと起き上がろうとしていた。それを見てエリュシオンは言う。

 

「へぇ、一部の臓器を破裂させ、さらに肋骨数本折ったというのにまだ立ち上がろうとするとはね、ヘカーティア。」

 

「まだ、立てるわよ・・・。その程度で、この私が倒せると思ってるの?」

 

「人間や一部の妖怪なら容易くこの程度で倒せるんだけれどねぇ。アンタは少し体が強いようだ。なら、いいこと思い付いた♪」

 

そう言うと彼女はヘカーティアの体を後ろから抱き上げた。

 

「えっちょ!?」

 

抱き上げたヘカーティアは足をばたつかせながら言う。そんな彼女とは別にエリュシオンはヘカーティアの耳元で口を開く。

 

「ちょっと喉が渇いたから貰うわよ、アンタの血。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンはヘカーティアの喉元に噛みついた。そして彼女は血を吸い始める。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!痛い痛い!!」

 

叫びながら必死に逃げようとするヘカーティアだがエリュシオンにがっちり抱かれ、さらに体が浮いているため、なす(すべ)も無かった。

 

「ヘカー、ティア・・・。」

 

弱々しく純狐が彼女の名前を呼ぶ。と、ヘカーティアが暴れるのを辞めたかと思うとエリュシオンは抱いていたヘカーティアを放した。そのまま彼女は何も言わずに地面に倒れる。エリュシオンに噛みつかれた場所からは血が垂れる。そんな中、エリュシオンが口の中に残っていた少量の血を啜ると純狐を見て言う。

 

「結局、私を倒せなかったわねぇ純狐。まぁいつでも挑んで来なさい。私はいつでも相手してあげるから。」

 

そう言った瞬間、突如何かを感じたのか、エリュシオンがある方向を見る。彼女に続いて純狐もその方向を見る。と、エリュシオンが目を見開いて言う。

 

「・・・・カルマ?」

 

そう言うと彼女は純狐を無視して先程彼女が呼んだカルマが向かっていった方へ飛んでいった。

 

「ま、待て・・・。エリュ、シオン・・・。」

 

這いながら彼女の後を追おうとするが純狐にそんな力も残っておらず、そのまま彼女は意識を失った。




後から駆けつけたヘカーティア、クラウンピースをも圧倒したエリュシオン。そして彼女はカルマの元へ。
一体何があったのか!?
次作もお楽しみに!


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第129話 エリュシオンの計画

純狐、ヘカーティア、クラウンピースに圧倒的な強さを見せたエリュシオンはカルマの元へ。


場所は変わって無縁塚。そこでは九十九の掘った穴に入る悠岐、楓、百々、九十九、そして闘神ニルヴァーナがきた。穴の中に入った瞬間、ニルヴァーナは自分が身につけていたマントを外し、穴を塞ぐように広げた。その瞬間、マントが岩と同化したかのように岩にくっついた。それを見た悠岐と百々が口を開く。

 

「これは・・・。」

 

「そんなの持ってたけ、お前。」

 

「クヒヒヒ、母さんに内緒で作ったのさ。こうするとここが外から気づかれることはねぇのさ。」

 

「便利だな。」

 

「……あのババアに怒られても知んないからな。」

 

蝋燭に火を灯したニルヴァーナは真ん中に置き、九十九と楓に言う。

 

「怒られるんじゃねぇ。殺されるんだ。」

 

「お前ッ、そこまでして百々にエリュシオンのことを!?」

 

「覚悟は……出来てんのか。俺たちに接触した時点でもう。」

 

楓と百々の言葉に耳を傾けることなくニルヴァーナは穴の岩を殴り、言う。

 

「本当はしたくねぇよ!!俺が言うには違和感を感じるかもしれねぇが怖いんだ!!」

 

「エリュシオンが怖い?」

 

「当たり前だよ、悠岐。あのババアだと特にな。」

 

「過去に母さんを裏切ろうとして無惨に殺されたジジィがいた。俺はそいつが殺される様子を見てしまった。あれからだ!!俺が母さんを怖いと感じるのは!!ドゥームやカルマはその様子を見てねぇから母さんの怖さを知らねぇんだ!!」

 

「……ドゥームはもしかしたら気づいてるかもしれない。ただ、認めたくないだけで。」

 

ポツリと、ニルヴァーナの言葉に反応して九十九が口を開いた。彼女の言葉に反応してニルヴァーナが口を開く。

 

「・・・アイツならそうかもな。」

 

「お前、何が目的で私達に手を貸すんだ?」

 

楓の言葉にニルヴァーナは平常心を取り戻して言う。

 

「俺の目的は俺や母さん、そして百々や九十九が望む世界を作るだけさ。」

 

「俺と……」

 

「私の望む世界?」

 

百々と九十九が呟いた瞬間、悠岐が口を開いた。

 

「ニルヴァーナ、それは無理があるんじゃないか?エリュシオンは百々が大好きで九十九が大嫌いなんだろ?平行してやっていける世界を作るなんて・・・。」

 

「……平行する世界を作るつもりなんてないよ、あのババアは。」

 

「そもそもの話、エリュシオンは倒せるのか?」

 

「・・・今のお前らの力では勝てない。」

 

「今の私達の力では、か・・・。」

 

肩を落とす楓とは別にニルヴァーナの言葉のある部分が気になった百々は彼へ問いかけた。

 

「……『今の』?」

 

「すまねぇ、間違いだ。今のお前らじゃなくて今の百々なら勝てない。」

 

「どういう事だ、ニル。」

 

「百々、俺以外の闘神全員の名前を言ってみろ。」

 

ニルヴァーナに言われた百々は首を傾げながら考え、口を開いた。

 

「……すまん、まだドゥームとメメント・モリしか思い出せてないんだ。」

 

「これがヒントだぜ。」

 

彼の言葉に首を傾げる一同。そんな中、何かを閃いた楓が口を開く。

 

「・・・まさか、記憶?」

 

「その通りだぜgirl。母さんを倒す唯一の方法、それは百々の記憶全てを戻すことだ。」

 

ニルヴァーナの言葉に九十九だけが驚愕の色を示した。

 

「ニルヴァーナ……、アンタどれだけの記憶をアカシャから持ってきたの?」

 

「言ったろ?九十九。俺が奪えたのはカルマの図書館からだけだぜ。アカシャからは奪えない。」

 

「……あぁ、そうだったね。カルマの奴、気づいてないといいが……。」

 

「それを願いたいぜ。さて、話がだいぶずれちまったな。」

 

そう言うと彼は四人を見ながら口を開く。

 

「母さんの計画はお前らの察しの通り、百々と母さんの望む世界を作ることだ。」

 

「あぁ、それは分かってる。」

 

「そのためには母さんにとって邪魔な奴ら、九十九や現世の王達を抹殺するはずだ。」

 

「あぁ、それで?」

 

「最終的にはあの創造神ガイルゴールを倒し、表を全て破壊するつもりだ。」

 

「表をすべて!?」

 

思わず驚愕の声を上げる百々と悠岐。そんな中、楓も驚きの声を上げる。

 

「なんて計画だ・・・。」

 

「あぁ、下手すればそれが成功するぜ。」

 

「アイツはこっちでも私の幻想郷と同じことをしようとしてんのか……。」

 

「それをこっそり俺とドゥームともう一体で止めようとしてるんだが・・・ドゥームはもういない。」

 

「……どうして?」

 

少し悲しげな声で聞く九十九にニルヴァーナは落ち着いて口を開く。

 

「話によると、博麗の巫女と何かしらの関係がある小僧に殺されたのさ。」

 

「霊夢と関係のある奴か……。もしかして、暁か?」

 

「そう、そいつさ百々。そいつに殺されたから俺とアイツでやるしかないのさ。」

 

「そうか……。仕方ないと言えば仕方ないのかもな。暁にとってドゥームは侵略者でしかないからな。」

 

九十九の言葉に少し耳を傾けたニルヴァーナは返事をすることなく話し続ける。

 

「少しやりずらくなった。俺とアイツでやり過ごすのは難しい。」

 

「ニルヴァーナ、気になったんだがアイツって何者だ?」

 

「……そう言えばその『アイツ』は記憶に無いな。ニル、アイツって誰なんだ?」

 

楓と百々の問いにニルヴァーナはすぐに答えた。

 

「テルヒ。テルヒさ。」

 

「テルヒ?」

 

初めて聞く名前に悠岐と楓は首を傾げてしまう。

 

「テルヒ……テルヒ……。ダメだ、思い出せねぇ。」

 

百々は頭を抱えるが、九十九はニルヴァーナの襟を殴りかかりそうな勢いで掴んだ。

 

「ニルヴァーナ、テメェふざけてんのか……?」

 

「九十九!?」

 

九十九の行動を見て思わず声を上げる楓。

 

「おいおい落ち着けよ九十九。俺がふざけてるように見えんのか?」

 

やれやれというポーズをとりながらニルヴァーナは言う。

 

「テルヒは私の友を食いちぎった張本人だぞッ!!」

 

岩の中に九十九の慟哭が響く。それを聞いたニルヴァーナは少し目を見開くものの、すぐに口を開いた。

 

「確かにあいつらを食いちぎったのはテルヒ。だがよ、母さんの驚異からお前を守り、八雲のババァに届けたのはテルヒだぜ?」

 

「ッ!それは、そうだけど……。」

 

「九十九。お前は家族を殺した母さんとあいつらを食いちぎったテルヒ、どっちが憎い?」

 

ニルヴァーナの言葉を聞いた楓は心の中で言う。

 

(これは選びづらい選択だな。もし私が九十九だったらどちらも選ぶだろうな。)

 

ニルヴァーナのその言葉に九十九は顔を歪めた。

 

「それは…………―――」

 

彼女は言葉を切り、一度深呼吸をしてから続きを紡いだ。

 

「―――どっちもよ。確かに母さんを殺したあのババアは憎い。でも、はじめて出来た友を殺したテルヒも憎いことに代わりはないわ。……だけどこれは私のエゴ。今大切なのは百々たちの幻想郷よね。私はもう過去の存在なんだから。」

 

彼女の言葉を聞いた楓は少し目を見開く。そんな彼女とは別にニルヴァーナは自分の襟を掴む九十九の手首を掴み、言う。

 

「なるほど、それがお前の答えか。お前らしいな。」

 

そう言いながらニルヴァーナはちゃっかりと九十九の胸を揉んでいた。

 

「ゲッ・・・。」

 

「なっ!?」

 

『コイツ何してんだよ!!』と言わんばかりの表情を浮かべて悠岐と楓が声を上げる。

 

「……悪☆即☆斬!」

 

顔を赤らめながら九十九はニルヴァーナの、と言うよりは男の急所を残っている左手で殴りつけた。

 

「……変態。」

 

そして、冷めた目でビクビクしているニルヴァーナを見下した。そんな中、ニルヴァーナは急所を押さえながら言う。

 

「クヒヒヒ、冗談だってさ。」

 

そう言いながら彼は服の中に入っていた酒を取りだし、一気飲みした。

 

「……( ˇωˇ )」

 

四人で色々やりとりしている中、百々一人だけいつの間にか眠っていた。それを見た九十九が口を開く。

 

「……ねぇ、百々寝てるんだけど。」

 

「起きろ百々。」

 

そう言うと楓は九十九と同様、寝ている百々の急所を狙って蹴りつけた。

 

「コフッ!」

 

急所を蹴られた彼は口から泡を吹いて動くことは無かった。それを見たニルヴァーナが笑いながら言う。

 

「おいおい百々、この程度で気絶するのか?男らしくないぜ。」

 

「お前が頑丈なだけだろ・・・。」

 

悠岐の言葉はニルヴァーナに届くことはなかった。そんな中、九十九が口を開く。

 

「言っとくけど百々は死なないだけで耐久は人間並みだからね?筋力に鬼の力を全部注いだ感じね。」

 

「分かってはいたがまさかこんなあっさり気絶するとは・・・。」

 

少し驚きながら楓は言う。

 

「まぁ、話が進まないから起こしましょう」

 

そう言って九十九は百々の元へ近づいていく。

 

「起きろ百々!!」

 

そう言うと彼は百々に馬乗りになり、往復ビンタをする。それを見たニルヴァーナと楓は苦笑いを浮かべる。

 

「悠岐、それじゃ起きないわ。」

 

「ん、そうか?結構強くビンタしたつもりだったんだななぁ。」

 

九十九は悠岐を百々の目の前から移動させた。

 

「起きろクソ兄貴!」

 

九十九は膝を気絶している百々の腹へと叩き込んだ。

 

「ゲブラゴフェ!?」

 

モロに膝蹴りを受けた百々は口から出してはいけないものを出した。それを見ていたニルヴァーナと楓は再び苦笑いを浮かべて言う。

 

「ウヒョォ、きったねぇ。」

 

「すごい乱暴だな。啓介を思い出すよ。」

 

さすがに目の覚めた百々は自分の現状を確認すると、

 

「ね、ねぇ……、俺、何か気に触る様な事した?」

 

そう言った。それに答えるように悠岐が言う。

 

「楓に股間蹴られて俺に往復ビンタされて九十九に膝蹴りされてゲロ吐いた。」

 

「ただのフルボッコじゃねぇか。……いや、寝てた俺も悪いとは思うけどよ。」

 

「さ、考えようか。母さんを倒す方法をな。」

 

続きを話そうとしたニルヴァーナに百々が口を開いた。

 

「あー、その前にひとついいか?」

 

「なんだ?」

 

「さっき俺は意識をより深い深層まで飛ばすために目を瞑っていたんだ。……それで寝たけどさ。んでまぁ、それでテルヒについて思い出したことがあるんだが、あってるか確認したくてな。」

 

それを聞いたニルヴァーナは驚いた表情をし、口を開く。

 

「お、おおそうか。なら言ってみな。」

 

「とは言っても容姿くらいだがな。……テルヒってさ、デカい狼じゃなかったか?」

 

「あぁ、そうさ。4mくらいあるデカイヤツだ。だが、他の奴らと比べればスゲー小さいがな。」

 

「他の奴ら?」

 

楓の台詞を無視して百々は話を続ける。

 

「……確か俺、そいつに乗せてもらった気がするんだ。」

 

「あぁ、よく母さんと一緒に乗ってたな。あの頃が懐かしいぜ。」

 

「やっぱりか……。確認したいことはそんだけだ。話の腰を折って悪かったな。」

 

「んじゃ、話戻すか。一応言っておくか?母さんの能力を。」

 

「是非とも教えていただきたいッ!」

 

ニルヴァーナの言葉を聞いた悠岐と楓は声を合わせ、同じ表情をして言った。

 

「是非とも。対策をたてるには必須と言っていいものだからね、あのババアも他の奴らも同じだけれど。」

 

「決まりだな。んじゃ言うぜ。母さんの能力、それは『能力を削除する程度の能力』だ。」

 

「能力を削除する程度の能力!?」

 

またしても悠岐と楓は声を合わせ、同じ表情をして口を開いた。それを聞いた百々は目を細めて言う。

 

「それは……何ともめんどくさい能力だな。」

 

「母さんに能力を消された奴は一生無力で力になれない奴になってしまうのさ。現世の女王さんもその内の一人だ。」

 

「女王陛下が能力を消された!?」

 

ネタでもやってんのかと言わんばかりに悠岐と楓はまたまた声を合わせ、同じ表情をした。

 

「……どなた?」

 

女王のことを知らない百々と九十九は首を傾げる。そんな二人に楓が言う。

 

「現世の女王でさっき会ったメルト・グランチのオッサン次に権力のあるお方だ。まさか能力を削除されるなんて・・・。」

 

「でもよ、能力が無くなるだけで死ぬわけじゃないんだろ。ならいいじゃねぇか。」

 

「良くねぇよ百々。現世で能力のある奴にとって能力を消されることは絶望的なんだぜ。あー言い忘れていたが、女王さんは視力を失い、さらには臣下も殺されたぜ。」

 

「ヴァンが!?それに陛下の視力も・・・。」

 

悠岐と楓の息はピッタリだった。言葉を発するタイミングも表情も全く同じだった。

 

「能力を失ったうえに片方の光と仲間を失ったのかその女王さんは……。あんのクソババアめ!」

 

歯を食い縛りながら九十九は言う。そんな彼女とは別にニルヴァーナは再び言う。

 

「さらに近くに居合わせた帝のオッサンもやられたらしいぜ。軽傷程度で済んだらしいがな。」

 

「エリュシオンめ・・・。一体何処まで人を殺せば気が済むんだ!!」

 

そう言う楓の目からは赤い液体、血の涙が流れていた。と、百々が口を開いた。

 

「……でもよ、能力を消すのに対策出来るやつなんているのか?俺が死なないのも能力の力だからよ、消された瞬間俺はただの人間になるんだが?」

 

「だから困ってんだよ。母さんに対抗出来る奴が誰一人としていねぇんだよ。」

 

「確かに、五大王もガイルゴールも能力を削除されれば完全に無力化されてしまう。私も悠岐も九十九も同じだな。」

 

「って事は、クレッチのおっさんみたいな自身の身体能力に自信のあるやつしか戦えないのか。」

 

「そういうことさ。・・・てゆうかクレッチのおっさんって誰だ?」

 

初めて聞く名前にニルヴァーナは戸惑ってしまう。そんな彼に悠岐が口を開く。

 

「現世では人類最強と言われていて能力を持たない男さ。」

 

「恐らくお前なんて相手にならないんだろうな、ニルヴァーナ。私や悠岐も同じだが。」

 

「ん?そんなに強いのか?そのクレッチって奴は。」

 

「強いな、とんでもなく。」

 

九十九の言葉にニルヴァーナは速攻で言葉を発する。

 

「母さんとでは?」

 

 

「・・・分からんな。」

 

少し悩んだ悠岐は答えを出した。そんな中、百々が口を開いた。

 

「まず俺はエリュシオンがどのくらい強いのか知らねぇからなぁ……。」

 

「まぁ、クレッチの話は後だ。これからやることを考えよう。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

「そうだな。」

 

ニルヴァーナの言葉に賛成するように楓と九十九が口を開いた。再びニルヴァーナは話を始めた。

 

「正直言って何も対応出来ねぇんだよなぁ。母さんの能力。」

 

「そんなに強いのか?」

 

「見て分からなかったか?百々。奴を見た瞬間、私は微かではあるが震えが止まらなかった。」

 

「・・・俺もだ。」

 

楓に共感するように悠岐が口を開いた。そんな二人百々が口を開く。

 

「……いや、俺は震えなんて感じなかった。それよりも……なんか、懐しさを感じたな。」

 

「記憶がねぇからどんな人なんて知らねぇだろうな。ならばこれは分かるか?百々、エリュっていう名前は覚えてるか?」

 

「……いや、なにも思いつかねぇ」

 

「ニルヴァーナ、あんまりコイツに負担をかけさせんなよ。」

 

「あぁ、ワリィな九十九。それと、少し話しすぎて喉が渇いた。少し休憩しよう。」

 

そう言うとニルヴァーナは服の中から酒の入ったビンを取りだし、飲み始めた。四人はそれを黙ってみていた。と、悠岐は心の中で語る。

 

(こいつ、何本酒隠し持ってるんだ?)




ニルヴァーナから告げられるエリュシオンの計画。悠岐達はただ驚愕の言葉を漏らすばかり・・・。
次作もお楽しみに!


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第130話 光の闘神カルマ

ニルヴァーナから告げられるエリュシオンの計画はどれも恐ろしいものばかりであった。


酒を飲み干したニルヴァーナは唐突に四人に問い掛ける。

 

「なぁ、話変わるんだが幻想郷の守護者って今何処にいるんだ?」

 

「ユニのことか?」

 

「ユニなら今人里の小屋で暁を見ていたような・・・見ていないような・・・。」

 

「急にどうした、ニル。」

 

彼の言葉に反応する悠岐、楓、百々。そんな三人とは別にニルヴァーナは再び口を開く。

 

「あいつなら母さんを何とか出来そうだなって思ってな。」

 

「……それデジマ?」

 

それを聞いた九十九は目を見開いて言った。そんな中、楓が首を傾げながら言う。

 

「そうか?ユニの切り札を考えても終焉ラグナロクしか浮かばないぞ。」

 

「違ったかな~。確か現世の奴に選ばれた奴だったんだよなぁ。」

 

「現世の奴?」

 

「現世の奴か。……暁が何か知ってるかもな。」

 

再び考え始める悠岐と百々。そんな二人とは別に楓が口を開いた。

 

「・・・アラヤのことか?」

 

「そう!ソイツだ。ソイツと契約した奴なら止められるかもな。」

 

「アラヤ……?」

 

「アラヤ?……私のとこの現世にはいなかったように思えたが。」

 

「お前らは知らないだろう。俺達の現世にいる奴なんだから。」

 

「クレッチが人類最強ならばアラヤは人類代表ってところかな。」

 

「なる……」

 

「ほど?」

 

悠岐と楓の説明に首を傾げながらも納得したように口を開く百々と九十九。それを見たニルヴァーナが目を細めて言う。

 

「あんまり理解して・・・!?」

 

突然何かの気配を感じたのか、ニルヴァーナはマントの方に目を向ける。

 

「ニルヴァーナ?」

 

「どしたニル?」

 

彼の行動に不思議に思った楓と百々が口を開く。そんな中、ニルヴァーナが口を開く。

 

「・・・集団がこの近くに来ている。」

 

「は?」

 

思わず声を上げる九十九。そんな中、悠岐がニルヴァーナに言う。

 

「・・・敵か?」

 

「敵では無さそうだ。男二人、女三人だ。」

 

「女三人と男二人ということは・・・。」

 

「この感じ……。人が4人に妖精が1人ってとこか。」

 

ニルヴァーナの言葉を聞いて楓と九十九はおおよその推測を立てる。そんな中、ニルヴァーナが笑みを浮かべて言う。

 

「クヒヒヒヒ、揉みごたえのありそうな胸だぜ。」

 

「変態は黙ってろ。」

 

「(´・ω・`)」

 

楓の言葉にニルヴァーナは先程までのテンションががた落ちしてしまう。そんな中、悠岐と九十九が話をしていた。

 

「ユニ達か?」

 

「……恐らくな。足音が4つしかない。」

 

しばらく沈黙が続く中、楓が口を開いた。

 

「会うか。」

 

「そうだな。」

 

「俺は遠慮しとくぜ。」

 

悠岐と楓の言葉にニルヴァーナは拒否した。と、百々が口を開いた。

 

「……でもよ、このマントはどうすんだ?」

 

「そうだな・・・とりあえず俺も会うか。」

 

「少しは助けてやるよ。」

 

「サンキュな九十九。」

 

そう言った瞬間、悠岐は百々を前に立たせ、背後から押した。そのタイミングを合わせて楓はマントを取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……僕らの後ろに立たないで貰えるかな?」

 

「ごめんなさい、結構不安なのよ。」

 

場面は変わって外。そこではニルヴァーナの言うとおり、2人の男、琥珀と暁に3人の女、ユニ、霊夢、魔理沙が無縁塚付近を歩いていた。と、霊夢が辺りを見ながら言う。

 

「全く、悠岐達は何処へ行ったのよ?」

 

「まぁ地道に探そうぜ。しばらくすれば出てくるんだろう。」

 

そう魔理沙が言った時だった。突如岩の中から一人の少年が飛び出してきたかと思うとそのままユニの足下に仰向けで倒れた。

 

「えぇ……。」

 

「なんだぁ!?」

 

思わず声を上げる魔理沙と少し驚く琥珀。そんな彼女とは別にユニは顔を真っ赤にしていた。無理もない、少年が倒れている場所はユニのスカートの中が見える場所なのだから。と、岩のほうから声が聞こえた。

 

「あ。」

 

「ちょっと吹き飛ばしすぎた。百々~、大丈夫か?」

 

「前が見えねぇ……。」

 

「ッ~・・・。この変態ッ!!」

 

そう言うと彼女は倒れる百々の顔にビンタを食らわした。ビンタを食らった彼の顔にはユニの手形がつく。

 

「ヒデビッ!?……ま、またこんな役周り……。」

 

「おいおい大丈夫かよ百々。」

 

そう言うと岩から出てきた一人の背の高い男は倒れる百々の服の腰の部分を摘まみ、ネズミの尻尾を持つようにして彼を持ち上げた。

 

「肉体よりも心が痛い……。」

 

涙目になる百々とは別にユニが九十九に言う。

 

「九十九ちゃんに悠岐君、楓ちゃん!どうしてこんなところに・・・。そういえば九十九ちゃん、この人は?」

 

「まぁ、色々あってな・・・。えーと……、こいつは私の知り合いのタマちゃんだ。」

 

「タマちゃん!?」

 

同時に声を上げるユニ、霊夢、魔理沙。そんな中、勝手に名前を変えられてしまった大男のニルヴァーナが少し慌てながら口を開く。

 

「なっ!?・・・あぁ、そうだ。俺の名前はタマだ。」

 

「タマちゃん……ブブッ。」

 

ヘンテコな名前に思わず笑ってしまう百々の頭の中に、言葉が響いた。

 

(百々テメェ後で覚えておけよ。)

 

声の主はタマちゃんと呼ばれてしまったニルヴァーナだった。言葉を聞いた百々はすぐに言葉を返す。

 

(まじスマーん。)

 

それに気づかずにユニは興味津々でニル・・・タマちゃんを見ながら言う。

 

「しかし名前にしては随分といい体してるわね、タマちゃん。」

 

「タマちゃんはな、名前の通り可愛かったんだよ昔は。でも男だからな。それが嫌で鍛えたんだと。」

 

九十九の言葉を聞いたユニは再びタマちゃんを見て言う。

 

「へぇ、そうなの?タマちゃん。」

 

「あぁ、そうだ。モテねぇ乙女チックな男は嫌でな、かっこよくなりたいって思って鍛えたのさ。」

 

「へぇ、すごいわね!!」

 

「こんなにゴツくなれるのね・・・。」

 

話を聞いた霊夢は唖然となりながら言う。

 

「努力ってすげぇな、楓。」

 

「だろ?百々。どう思う?琥珀。」

 

「……タマちゃん、ね。うん、すごい努力したんだと思うよ。」

 

琥珀はそう言ってニルヴァーナへと近づき彼の耳元で、

 

「今は黙っててあげるよ、炎の闘神ニルヴァーナ。」

 

そう言った。それを聞いたニルヴァーナも小声で言う。

 

「あぁ、頼むぜ。あの四人が気づかないようにな。」

 

「任せといて」

 

琥珀がタマちゃんから離れた瞬間、タマちゃんがユニ達を見て言う。

 

「そう言えば、お前らの名前は?」

 

「私?私はユニよ。」

 

「私は霊夢。こっちは弟の暁よ。」

 

「魔理沙だぜ。」

 

「私は暁と言います。」

 

「僕は琥珀。しがない妖精さ。」

 

皆の自己紹介が終わった瞬間、タマちゃんは胸に手を当てて言う。

 

「安心しな、俺はお前達の仲間だぜ。」

 

「本当!?」

 

彼の言葉に反応するユニ。そんな彼女とは別に九十九が口を開く。

 

「さっきまでそれのコトについて話してたんだ。」

 

「いい加減下ろして……。」

 

「あ、悪いな。」

 

そう言うとタマちゃんは百々の摘まんでいた服を放す。

 

「ゴフっ!」

 

百々はそのまま重力に従い、落下した。それに気にせずタマは話す。

 

「俺達はお前達も知っている敵、エリュシオンを倒すための作戦を考えている!」

 

「エリュシオンを倒す作戦……?」

 

彼の言葉に反応を示したのは暁だった。しかし彼に目を向けることなくタマちゃんは話を続ける。

 

「そうさ。奴は九十九のいた幻想郷のようにこの幻想郷を壊すつもりだ。それを阻止するために俺達がエリュシオンを倒さなきゃならないんだ!(こんなこと言ってごめんな、母さん。)」

 

思わずニルヴァーナは心の中で本音を語ってしまう。それを聞いていたのか、九十九が心の中で言う。

 

(ニルヴァーナ、辛いのか。)

 

(そりゃ辛いぜ。母さんがこんなこと聞いてたら俺は死ぬぞ。)

 

(少しは守ってやる。だからそのまま頼む。)

 

(頼むぜ。)

 

「そうね!私達はこの世界を守らなきゃいけないのに!!私もタマちゃんを見習わないと!!」

 

ニルヴァーナと九十九が心の中で話している中、目をキラキラさせながらユニは言う。

 

「そ、そうだな。」

 

「あ、あぁ。」

 

(心が痛い。)

 

ユニに共感する振りをする百々と九十九にとってこれは辛いことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しそうだね、ニルヴァーナ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

突然の声に悠岐と楓は辺りを見回す。

 

「誰だ!?」

 

続けて魔理沙が声の主を探すように叫ぶ。と、九十九がタマちゃんを見て言う。

 

「ニルヴァーナ?タマちゃんアンタ、ニルヴァーナって知ってる?」

 

「九十九、そのノリはもう終わりだ。ちょいと面倒な奴が来たな。」

 

そう言う彼の目はある方向をじっと見ながら睨んでいた。

 

「面倒な奴?」

 

九十九はそう行ってニルヴァーナへ向けていた視線を声の主に向けた。

 

「っ!か、カルマ……。」

 

九十九が彼の名前を言った瞬間、カルマは百々と九十九に向かって言う。

 

「久しぶりだね、伊吹百々、星熊九十九。」

 

「……あー、また記憶にない奴か。」

 

「母さんに言われて来てみれば・・・ニルヴァーナ、どうして君がそちら側へ行っているんだ?まさか、母さんを裏切るつもりかい?」

 

「・・・か、勘違いするんじゃないぜカルマ。俺はこいつらが油断したところを皆殺しにするためにここにいるだけだ。」

 

そんな残酷なことを言うニルヴァーナだが心の中では必死に九十九と百々に訴えていた。

 

(九十九、百々、これは嘘だ。他の奴にも嘘だと伝えてくれ!)

 

それに気づいた九十九と百々はニルヴァーナに合わせるように口を開く。

 

「ニルヴァーナ、アンタ!(もう琥珀が行ってる)」

 

「お前が渡してきた記憶は嘘だったのか……?(さすがは知識の妖精)」

 

「そんな!!タマちゃんは私達の仲間だと思ってたのに!!」

 

「裏切ったな!!(よく考えたな。だが、霊夢、魔理沙、ユニ、暁には伝わってないようだな。)」

 

「……ふぅん。」

 

ユニ達のやりとりを見たカルマはきょとんとしながら言う。

 

「なんだ、僕の気のせいだったか。」

 

「んじゃ、俺は木の上でお前の戦いぶりを見てるとするか。」

 

そう言うとニルヴァーナは高く飛び上がり、木の上に乗った。そんな中、百々は必死に何かを思い出そうとしていた。

 

「カルマ……カルマ……。ダメだ、思い出せねぇ。」

 

それを見たカルマは百々に向かって言う。

 

「そりゃそうさ。君の記憶はアカシャによって奪われたんだからね。僕の事を思い出せるわけがない。」

 

「そうか。ま、でもよ―――」

 

百々はそう言って構えの姿勢を取った。

 

「―――倒すのに記憶なんか、要らねぇよな。」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、九十九の頭の中にニルヴァーナの声が響く。

 

(九十九、奴との戦いで俺が助言を送る。その指示に従いながら戦え。)

 

(サンキュー、ニルヴァーナ。)

 

「さぁ、始めようか。ニルヴァーナがいなくとも、僕一人でこいつらを始末するよ。」

 

ニルヴァーナが手助けしているのに気づかずにカルマは戦闘体制に入った。




ユニ達との合流、突如現れるカルマと裏切る振りをするニルヴァーナ。この先に待ち受けているのは!?
次作もお楽しみに!


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第131話 因果の法則

無縁塚に現れたカルマを迎え撃つことになったユニ達。


と、カルマを黙ってじっと見ていた悠岐が唐突に口を開く。

 

「ようやく会えたな、カルマ!!」

 

「ゆっ、悠岐君!?」

 

彼を見て少し驚いた表情を浮かべるユニ。そんな中、カルマが笑みを浮かべて言う。

 

「あぁ、君か。成長した君を見れるなんて嬉しいねぇ。」

 

「黙れクソ野郎。テメェ、俺に何をしたか忘れちゃいないよなぁ?」

 

「え?」

 

「……何をしたのですか?」

 

再び驚くユニと悠岐に問い掛ける暁。そんな彼の問いに答えたのは悠岐ではなく楓だった。

 

「悠岐は幼い頃に車という現世の移動手段に轢かれたんだが、轢いた奴がカルマだったんだ。」

 

「なんですって!?」

 

 

驚く霊夢とは別に百々と九十九は鼻をほじるような感覚で口を開く。

 

「……そんな事でそんなに怒るか?」

 

「普通は怒んないよなぁ……」

 

「彼は貴方たちみたいに耐久がぶっ飛んでませんからね?」

 

「せやった。」

 

暁の台詞を聞いて悠岐に共感した百々。そんな中、カルマが再び口を開く。

 

「勿論忘れないとも。母さんの命令でやったのに殺し損ねて母さんに怒られたからね。」

 

「母さんの命令だと?」

 

「またエリュシオンか……」

 

カルマの言葉に魔理沙と九十九が反応する。そんな二人とは別に悠岐が口を開いた。

 

「なるほど、エリュシオンの命令か・・・。よし分かった。テメェをぶっ殺したらエリュシオンの野郎もぶっ殺す!!」

 

「あぁ、その通りだ悠岐!!私も奴にやられたことを忘れちゃいない!!」

 

「私もやってやるよ。こいつらへの恨みなら誰にも負ける気がしねぇ!」

 

「うーん、この場違い感……」

 

悠岐に続いて楓、九十九が殺気を溢れさせる中、その間に挟まれていた琥珀がボソリと呟いた。

 

「私も戦うよ!!」

 

「仕方ないわね。」

 

「やってやるぜ!」

 

そんな3人につられてユニ、霊夢、魔理沙も殺気を溢れさせる。みんながやる気になる中、ニルヴァーナが心の中で百々に語る。

 

(おいおい百々、流れに合わせろよ。男らしくないじゃねぇか。)

 

(いや、なんかやる気がな……。)

 

(あの腹出してる可愛い子ちゃんも乗ってるんだぜ?まけていいのか?)

 

(ユニに負けるも何も、そんな勝負はしてないからな)

 

それに。とニルヴァーナへ心の言葉を続けた。

 

(九十九と過ごす内に勝負事があんまり好きじゃなくなったんだよ。あいつが色々とめんどうな事を持ってくるからな。)

 

少し首を傾げたニルヴァーナは再び語る。

 

(九十九の影響を受けたか。なるほどな。まっ、取り敢えず乗りにはのっとけ。雰囲気漂わせるといい感じになるかもしれねぇからな。)

 

(ま、それは言えてるわな。)

 

そう言って百々は自身の後ろにスキマを開き、そこから大量のナイフを取り出した。

 

「俺もやってやるよ。久々のナイフ術だ。手加減は難しいぞ。」

 

「みんなやる気みたいだね。では始めようか。」

 

そう言った瞬間、カルマの目が光だしたかと思うと彼は高く飛び上がり、光を辺りに放った。その瞬間、先程まではなかった筈の図書館が現れた。それを見た百々が口を開いた。

 

「うーん、紅魔館の大図書館?」

 

「記憶の図書館、オブリビオン!」

 

そう言うと彼はゆっくりと図書館へ降りた。

 

(あ、紫の記憶だ。……黙っとこ。)

 

「ここに私らの記憶も保存されてんのか?」

 

「その通りさ、星熊九十九。表の者達の記憶や情報は全てここに保管されている。僕のとっておきの場所さ。」

 

「・・・そこに俺の記憶もあるのか。」

 

「どうかな?君のような悪魔の記憶はあったかな?」

 

笑みを浮かべてながら話すカルマとは別に九十九が口を開く。

 

「コイツをボコボコにしてゆっくり探せば分かるだろうよ。この空間の維持は百々がやってくれるだろ。」

 

「んぇ?あ、おう。任せとけ!」

 

(彼、話聞いてなかっただろうなぁ……。)

 

暁のため息が誰にも気づかれることなく図書館に溶けていった。

 

「ここには僕やドゥーム、メメントモリが集めた記憶がある。どの記憶も生み出す輝きは美しい。」

 

「記憶が美しいと言うのは同意しかねるかな。」

 

今まで沈黙を貫いてきた琥珀がカルマの言葉に反応した。

 

「中でも愛情や友情が混ざりあった記憶が美しい。僕はそんな君達の記憶が欲しいよ。」

 

「なんですって?」

 

カルマの言葉に反応する霊夢とは別に琥珀は目を細めて言う。

 

「……どうして闘神は僕の話を無視するのかな。」

 

(お前が俺達闘神に無視されるのは母さんの影響だろうな。母さんがお前を嫌ってるから俺達も母さんに共感したんだろう。)

 

琥珀の言葉にニルヴァーナは心の中で語った。

 

(確かに嫌われるようなことはいっぱいしたけどもそれで子供にも嫌われるなんて教育の仕方間違ってない?)

 

珍しく琥珀本心の言葉だった。そんな彼にニルヴァーナはきっぱりと言う。

 

(そういうのは俺じゃなくて母さんに言ってくれ。)

 

(ごもっとも)

 

ニルヴァーナからカルマへ目線を変えると琥珀は再び口を開いた。

 

「無視されたんだ。大人として子供は叱ってあげなくちゃね。」

 

珍しくやる気の琥珀である。彼にとってカルマからの言葉など気にならないのだろうか。それを見た百々が口を開く。

 

「珍しくやる気に溢れてんな……。いや、それよりもそんな記憶を奪ってどうする気だ。鑑賞か?」

 

「簡単さ。母さんの計画の糧となるんだよ。」

 

「エリュシオンの計画の糧だと?」

 

「記憶を糧に?」

 

彼の言葉にピクリと反応する楓と九十九。そんな二人にカルマは言う。

 

「そうさ。何のためかは分からないけれど母さんは計画の糧とするから集めてこいって言ったんだ。」

 

「何も聞かされてないのね。操り人形と変わらないんだ、君たちは。」

 

「操り人形だと?」

 

琥珀の言葉に反応したカルマは少しイラついた表情を浮かべた。そして再び言う。

 

「母さんが僕を人形扱いするだと?そんなのは有り得ない。母さんは僕達闘神を心から愛してる。そんな母さんが僕達を人形扱いするものか!!」

 

「操り人形じゃないならただの駒かな?困ったら簡単に捨てられる捨て駒ね」

 

「おぉう、煽りよる……。」

 

「何がこいつをこんなに動かすんだよ……。」

 

琥珀とカルマの言い合いを見て驚いた表情を浮かべる百々と九十九。そんな中、カルマがまた言う。

 

「調子に乗るな!!随分と君は僕を苛立たせるね。母さんが嫌う理由もよく分かるよ。」

 

「嫌われて結構。君たちを見てるとどうしてもムカついてきてね。家族ごっこは楽しいかい?」

 

これでも琥珀は聞き上手として人里では通っている。人里の人間が今の琥珀を見たら度肝を抜かすだろう。

 

「私もカルマには少なからずムカついています。」

 

そんな琥珀に乗るように暁も声を上げた。

 

「なんですかあのクエスト超めんどくさいんですよ。しかも適正当たらないし苦労してクリアしてもパッとしないスペックしやがって。お前なんて素材で十分だよ。」

 

「……暁?」

 

「何でもないです。」

 

霊夢の言葉に我に返る暁。

 

((暁の闇を見た気がした……))

 

百々と九十九の心が一致した。そんな中、カルマが口を開いた。

 

 

「チッ、君達と話していたら時間が過ぎてしまった。それじゃあ始めるよ。」

 

そう言った順調、カルマの着ていたブレザーが消え、彼の体の一部が紫色になり、胸部には大きな目が現れた。そして彼の手元に一冊の本が飛んでくる。と、ユニが口を開く。

 

「なんだろう・・・。私、彼を知っている気がするわ。」

 

「それは中々に同情するな。でもアカシャとかでない分マシだろうな。」

 

「九十九ちゃん、手を貸そう。今回だけは僕も全力だ。」

 

文字の翼を呼び出し、臨戦態勢を取る琥珀に話をしながらもカルマへ警戒を緩めない九十九であった。

 

「なら私は少し気を抜かせてもらいましょう。まだ前回の戦いの疲れが抜けてませんからね。」

 

「こっちもサポートに回るぞ。このままニルヴァーナ戦とかになったら目もあてらんねぇし。」

 

自身の背後に巨大な笛を呼び出し、指揮棒を持った暁とナイフを先程取り出した大量のナイフを自身の周囲に浮遊させる百々はそう言った。

 

「先に攻撃させてもらうぜ!!」

 

そう言うと彼は刀をカルマに振り下ろす。

 

「彼の場合はこれが良さそうだね。」

 

そう言った瞬間、彼は左手に青い石を取るとその石にキスをした。その瞬間、彼の体が青い光に包まれた。

 

「食らいやがれ!!」

 

そのまま彼は刀を振り下ろす。しかし彼の攻撃は光の中から現れた大男の鎖によって防がれていた。

 

「なっ、でけぇ男!?」

 

「フン!」

 

「うおっ!?」

 

力で押し負けた彼はユニ達の元まで吹っ飛んだ。それを見た暁がボソッと呟く。

 

「……やはりドゥームですか。雷切で斬る必要ありますか?」

 

「チッ!やっぱやって来やがったか!皆、気をつけろ!コイツはニルヴァーナ、メメントモリ、ドゥームのような何かを召喚出来っからな!!」

 

はじめから知っていた九十九はその情報をその場にいる全員へと伝えた。巨大な笛を操る暁は自身の右側にドゥームを斬り裂いた刀、雷切を呼び出しながら言った。

 

「私がやってやるぜ!!」

 

そう言うと魔理沙はスペルカードを発動する。

 

「彗星ブレイジングスター!」

 

彼女の攻撃を見たドゥ・・・カルマは左手に緑色の石を取るとその石にキスする。その瞬間、彼の体が緑色の光に包まれ、中から出てきた彼岸花が魔理沙を攻撃した。

 

「ぐっ!!」

 

攻撃された魔理沙は地面に崩れる。それを見た百々が言う。

 

「彼岸花のババアか!花なんてこれで切れてろ!」

 

そう言って手に持ったナイフを彼岸花へ投げつける。何本かは彼岸花のツタを切り裂いたが、また別の何本は明後日の方向へ飛んでいった。

 

「面倒ねぇ。」

 

そう言った瞬間、メメントモリの体が赤い光に包まれた。その中から銃弾が飛んできてユニ達を襲った。

 

「きゃあ!!」

 

「この銃弾・・・まさか!!」

 

叫び声を上げるユニと攻撃のパターンを振り返る楓。そんな中、暁が口を開いた。

 

「ニルヴァーナが2人?来るぞ遊馬!」

 

「遊馬ってどなた?」

 

そんなことを言いながらも暁は百々の言葉を無視してニルヴァーナへ向けて笛を向ける。その中から飛び出した複数のホーミング弾がニルヴァーナ(本体含む)へ襲いかかった。

 

「ちょっ待てよ!!俺は戦いに参加しないぜ!?」

 

そう言いながらニルヴァーナ(本体)はホーミングを骸骨を犠牲にして避ける。そんな彼とは別にもう一人のニルヴァーナ(カルマ)はホーミングを銃弾で打ち続ける。それを見た暁は再び口を開く。

 

「やはり撃ち落とされますか。ですが今回はあまり能力を使いたくはないのでこれ以上は難しいですね。百々さんは?」

 

「こっちもそうだな。もしカルマを打倒したとしてもニルヴァーナが襲ってくる可能性も考えないといけねぇからな。」

 

「喋ってないで手を動かせサポーター!!!」

 

会話をする2人へ九十九の怒号が響く。

 

「覚悟しろっ!!」

 

そう言うと楓はニルヴァーナに変身したカルマに斬りかかる。ニルヴァーナ(カルマ)は楓の攻撃を避けながら撃ち続ける。彼女も銃弾を避けながら攻撃する。

 

「いいねぇ。」

 

そう言うとカルマは後退すると同時に体から緑色の光を発光させた。それを見た九十九が百々に言う。

 

「メメントモリか、百々!」

 

「おうさ了解!」

 

カルマがメメントモリへ変身するタイミングに合わせて百々はナイフをまた投げた。

 

「くっ、読んでいたのね。」

 

そう言うと彼女は彼岸花の蕾を出し、ナイフを防いだ。

 

「暁いくわよ!!」

 

「もちろんです。『魔笛を鳴らせ!』……気持ち多めですので、お気を付けて。」

 

「わかってるわよ!!」

 

そう言うと霊夢はメメントモリに変身したカルマ目掛けて弾幕を放った。

 

「色々と面倒ね。」

 

そう言うと彼は青い光を発光させた。それを見た九十九が口を開いた。

 

「今度はドゥームか!さっきからポンポン変わりやがって!」

 

「何か変だな。何か企んでいるのか?」

 

と、何かをいい忘れていたのか、九十九の頭の中にニルヴァーナの声が響く。

 

(やっべ、戦いに気をとられて言い忘れてた!!気をつけろ九十九!カルマがやってるのはただの時間稼ぎだ!!)

 

(こんっのバカ!そういうのは先に言いやがれ!)

 

ニルヴァーナからの念話を聞いた九十九はニルヴァーナへ怒鳴りながらも反撃の手を考えていた。

 

(クッソ!弱点が違いすぎて決定打が与えられねぇ!)

 

「な、何これ!?」

 

そう叫んだのはユニだった。見ると彼女の足が徐々に黒くなっていた。

 

「お、俺もだ!」

 

「何なんだこれは!!」

 

黒くなっていたのはユニだけではなく悠岐と楓も同じだった。と、九十九が口を開く。

 

「……やられた。因果の法則か。」

 

「1人で納得してないで説明しろ!」

 

全員の足が黒に染まっていく中、ポツリと1人の妖精が呟いた。

 

「……え?僕はハブ?」

 

「まんまと引っ掛かったね、人間達。これが因果の法則。自分の行った報いを自分自信で受けるんだ。けれどもこれは人間にしか通用しないから妖精の君には効かなかったんだね。」

 

「あー、良かった。流石に戦闘中もハブられたら琥珀さんは泣いてしまいますよ。」

 

オヨヨヨと泣いた振りをする琥珀。

 

「人以外?なら!!」

 

そう言うとユニは鈍い動きでもスペルカードを発動した。

 

「呼符コールザエニー。力を貸して、ピンさん!!」

 

彼女がスペルカードを発動した瞬間、彼女の隣に直径2mほどの空間が現れたかと思うと中から身長2mほどで全身黄色でマッチョの体に熊のような耳をしたものが現れた。

 

「再現『主に空を飛ぶ程度』。手札だけなら誰にも負けねぇぞ。」

 

霊夢の能力を再現し、百々は因果から逃れた。

 

「クライヤガレ!」

 

そう言うと中から出てきた土人形、ピンはカルマに一発パンチを食らわした。

 

「何っ!?」

 

唐突に殴られたカルマはそのまま図書館の本棚まで吹っ飛ぶ。それを見たユニと悠岐が言う。

 

「流石ピンさんね♪」

 

「あぁ、便りになるぜ。」

 

「プニキ?……いや、流石に違いますよね」

 

そんな世迷言を言いながらも暁は吹っ飛ばされたカルマを視線で追ってみるとカルマの目の前に琥珀が浮いていた。

 

「休んでる暇は無いよ。」

 

本棚に倒れるカルマへ琥珀は『傷』と『痛』の漢字を打ち込んだ。

 

「ぐっ!?」

 

思わず声を上げるカルマ。そんな彼とは別に楓が口を開く。

 

「琥珀はカルマに何をしたんだ?」

 

「文字を打ち込んだんです。言葉を操る力を持っている彼が操る文字は、文字通りの意味を打ち込んだ存在に与えるんです。」

 

「さっきアイツは『痛』の漢字と『傷』の漢字を打ち込んでたな。」

 

楓の疑問に暁が解説し、九十九が鬼の身体能力で琥珀が打ち込んだ文字の説明をした。そんな中、カルマが口を開いた。

 

「くっ、・・・よくもやってくれるね。母さんが処理しようとする理由も分かるよ。」

 

「怪我をさせる訳でもなく、ただ『痛み』というものを存在に割り込ませる。効くでしょ?」

 

カルマの言葉に対し、煽るように琥珀は答えた。

 

「頭上注意ってな!」

 

霊夢の能力を再現し、カルマの認識から逃れ真上まで飛んできた百々がカルマへとナイフを投げつけた。

 

「しばらくそこから動くな。」

 

それらはカルマの服を貫通し、本棚へ突き刺さった。

 

「なっ!?」

 

思わず声を上げるカルマ。そんな彼とは別にピンが図書館の奥にある柱に向かってパンチをした。

 

「コワレロォォォォォ!!」

 

その瞬間、ピシピシという音と共に柱が砕け散った。それを見た九十九が口を開く。

 

「……あれ、これヤバくない?」

 

「みんな下がれ!!」

 

「あいよっと、琥珀は俺が回収しておく!」

 

楓の言葉と共に悠岐はカルマの近くにいた琥珀を抱えて柱が倒れないような場所まで運ぶ。

 

「動けなかった奴らが動けてるところを見るにあの柱が能力の源ってわけか。ピン!その柱でここにいるカルマを潰しちまえ!!」

 

逃げながら百々はピンへとえぐい司令を出した。

 

「ワカッタヨ!!」

 

そう言うと彼は柱を持ち上げるとそのままカルマに叩きつけた。それを見た楓と悠岐は呆然となりながら言う。

 

「な、なんて馬鹿力なんだ・・・。」

 

「・・・えぐい。」

 

「やっぱあれプニキだ。でもなんでプニキが……。」

 

「……暁?」

 

「あ、いえ、なんでもないですよ姉さん。」

 

霊夢の言葉に再び我に返る暁。そんな彼に悠岐が言う。

 

「暁、現世のことは幻想郷の人には分からんぞ。」

 

「そうですね。どうしても知っていることとなると気になってしまいまして」

 

「……てかニルヴァーナは?」

 

「それよりもカルマを倒せてんのか確認した方がいいんじゃねぇか?」

 

(馬鹿お前ら!!そんなんでカルマを倒せると思ってんのか!!)

 

呑気に話している九十九、暁、百々、悠岐にニルヴァーナが九十九一人に心の中で語る。それを聞いた九十九は返事を返す。

 

(分かってるよ。ただ動きが無いからな。こっちも下手に動けねぇんだ。……てかお前、無事だったんだな。)

 

(思いっきりホーミングの餌食になったぞ。まぁ大して効かなかったけどさ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい力だね、君達。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱり倒せてないよね。」

 

なんとなく予想していた九十九はこの一言を呟く。そんな中、カルマが口を開く。

 

「それに、僕が欲しいのは勝利じゃない。記憶なんだ。」

 

そう言った瞬間、ユニ達の体から血が飛び散った。

 

「えっ!?」

 

「君の力、使わせてもらったよ、琥珀・イーグナーウス。」

 

「別に構わないけど、まだまだ甘いね。薄皮1枚しか裂けてないよ。」

 

ユニへ『回』と『復』を打ち込みながら琥珀は言う。自分の体が回復したのに気づいたユニが琥珀に言う。

 

「あ、ありがとう琥珀君。」

 

「ヤバイ、ユニチャン。」

 

「どうしたの?ピンさん。」

 

「サッキハシラヲモッタトキニアイツニヤラレチャイケナイトコロヤラレチャッタ。」

 

「まさか、こか……」

 

「やめろ、もぐぞ。」

 

「はい……。」

 

あるNGワードを言おうとした百々に九十九が驚愕の言葉を発する。そんな中、ピンが二人に言う。

 

「ボクニソンナノナイヨ。ニンギョウダカラ。」

 

「うーん、この緊張感の無さ。待ってくれるなんて、優しいねカルマくん。」

 

「勿論だとも。もう準備は整ってるからね。」

 

そう言った瞬間、ユニ達の背後には謎の機械が浮いていた。それを見たニルヴァーナが九十九に言う。

 

(気をつけろ!!記憶を奪われるぞ!!)

 

「……やっぱそうするよなお前は。」

 

ニヤリと九十九は笑った。

 

「・・・?」

 

「ここまでで、ある時からずっと会話に参加せず攻撃もあまりしなかったやつが1人だけいるよな?」

 

首を傾げ続けるカルマ。そんな彼とは別に九十九はその1人に叫ぶ。

 

「さぁ、全力でやっちまえ魔理沙!!」

 

「任せとけ!!恋符『マスタースパーク』ッ!!!」

 

カルマの後方から巨大な光がカルマやユニ、機械の全てを巻き込まんとして撃ち込まれた。

 

「ぐはあっ!!」

 

「うわぁっ!」

 

危機一髪で避けたユニとは別にカルマはもろ魔理沙のマスパを食らった。

 

「え、ちょ……。」

 

「あ、避けるの忘れて……。」

 

逃げることを忘れていた百々と琥珀はそのまま巻き添えを食らった。

 

「アホタレ!!」

 

思わず叫ぶ楓とは別にニルヴァーナが心の中で百々に言う。

 

(クヒヒヒヒ、俺の仮の名前を笑ったからバチが当たったんだな。)

 

「まぁ、死なないからいっか。」

 

マスタースパークが消えた後、そこには食らう前と変わらない姿の百々が立っていた。と、魔理沙が辺りを見ながら言う。

 

「あれ、琥珀は?」

 

「さっき溶けてたぞ。」

 

ほら。と言って百々は先程まで琥珀の立っていた場所を指さす。

そこには一言、『少ししたら戻ります』と書かれていた。

 

「やることが琥珀らしいわね。」

 

「……PSがありますね。」

 

暁の言葉を聞いて感心していた霊夢はその場所を見る。

 

『PS。念の為カルマには一撃失神を沢山打ち込んでおきました。数で言うと50くらい』

 

「・・・どんだけ失神させるつもりだよ。」

 

思わず突っ込む悠岐。そんな中、カルマの様子を見ながら百々が言う。

 

「だからあっちでビクンビクンしてるのか……。てかあれ生きてんの?」

 

「あー、やりすぎたか?」

 

頭をポリポリとかきながら言う魔理沙。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見事な戦術だったわねぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その声、まさか!!」

 

突如辺りに響く声に反応する楓。そんな彼女とは別に九十九が言う。

 

「エリュシオン!」

 

突如現れた女性、エリュシオンに一同は目を向ける。と、エリュシオンが口を開く。

 

「やれやれ、純狐らを倒してカルマの様子を見に来てみればこの有り様なんて・・・。」

 

「……ビクンビクンしてますね。」

 

「・・・ごめんね、カルマ。アンタの苦しむ姿は見たくないの。」

 

そう言った瞬間、辺りに銃声音が響いた。それを聞いた百々は目を見開きながら言う。

 

「自分の子供を……殺した?」

 

「・・・本当に、ごめんね・・・。」

 

そう言うエリュシオンの目には涙がポロポロと零れていた。

 

「……やりすぎた?」

 

コッソリと戻ってきた琥珀が涙を流すエリュシオンを見てそう呟いた。と、エリュシオンが唐突に口を開いた。

 

「・・・よくも私の大切な息子であるカルマをあんな目にあわせたわね。絶対に許さないわよ。残りの子で終わらせてやるわ。」

 

「そうはさせるか!!」

 

そう言うと楓は刀を構え、エリュシオンに向かっていく。

 

「友の復讐だ!死ねエリュシオン!」

 

彼女に続いて九十九もエリュシオンに向かっていく。

 

「ププッ。何その攻撃、そんなので私を倒せると思っているのかしら?」

 

そう言うとエリュシオンは右手に持っていたスライムを取り出すとそれを刀に変化させて二人の攻撃を防いだ。

 

「なっ!?」

 

「ウザってぇなそれ……。」

 

「お黙り。」

 

そう言うと彼女は左手に握り拳を作り、楓の腹を殴り、立て続けに右足で九十九の腹を回し蹴りした。

 

「ぐっ!?」

 

「ゲホッ!」

 

そのまま2人はユニや百々たちのいる方へ吹き飛ばされた。

 

「九十九!!」

 

「楓ちゃん!!」

 

直ぐ様二人の元へ悠岐とユニが駆け寄る。そんな中、エリュシオンが笑みを浮かべて言う。

 

「互いに友達も守れない奴に私を倒すことなんて出来ないわよ。絶対にね。」

 

「くっ、なんて力だ・・・。」

 

歯を食い縛りながら言う楓ではあるが力の差を体感し、少し震えていた。

 

「……エリュシオンさん今回はここら辺で見逃してくれませんか?」

 

暁の言葉に反応したエリュシオンはクスクスと笑い、言う。

 

「私に頼み?生憎だけど無理ね。アンタ達はカルマをあんな目にあわせた。見逃すわけにはいかないわ。」

 

「そのカルマを復活できるとしてもですか?」

 

「そんな程度で私が見逃すと思う?」

 

「えぇ、思っています。貴方はとても子供思いです。それは先程、彼へ流した涙と苦しめられる彼を楽にするため己の手で殺したことで証明されていることです。」

 

「確かに私はカルマやメメ、ドゥームを愛しているわ。あの子達の死を考えると心が痛くなる。」

 

「それでも、子供を殺した私たちに対する憎しみが勝っている……と?」

 

「だからこそ・・・だからこそ私はあの子達のためにも計画を成功させる。そのためならば復活なんて必要ないわ。」

 

「……そうですか、残念です。貴方ならば私が考える裏のことも分かっていたと勝手に思っていたのですが……。仕方ありませんね。『因果の闘神は永久の眠りにつく。黄金郷を消せ。さもなくば彼の者が戻ることはありえない』。」

 

暁がそう言うと、そこにあったカルマの死体が消えていった。

 

「・・・。アンタ達、一人忘れてないわよねぇ?」

 

唐突にエリュシオンがユニ達に言う。彼女の問いに楓が答える。

 

「・・・ニルヴァーナか?」

 

「ぶっぶー、違いまーす。」

 

「……アカシャだろう。」

 

「せーいかーい♪」

 

(まさか母さん、あいつを!?)

 

九十九からよ答えを楽しそうに言った瞬間、エリュシオンは左手に紫色の光を宿し、再び言う。

 

「おいでなさい、記憶を屠りし闇の闘神アカシャ。」




カルマの撃破に成功したユニ達。しかしそこへエリュシオンが現れて最後の闘神を繰り出す。果たしてユニ達の運命は!?
次作もお楽しみに!


p,s,
今回かなり長く書いてしまいました。少々読みづらい箇所があるかもしれません。ありましたら後程教えてもらえると幸いです。これからも東方混沌記をよろしくお願いいたします。


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第132話 闇の闘神アカシャ

カルマを倒したのも束の間、エリュシオンの登場でユニ達はまた新たなる敵と戦うことに。


エリュシオンが言った瞬間、彼女の頭上から巨大な紫色の空間が現れたかと思うと中から全身紫色で4足の馬の足、所々に目があり、背中から生える翼に青い顔と赤い腕を持ち禍々しい姿をした何かが現れた。

 

「な、なんだ。あいつ・・・。」

 

あまりの禍々しい姿に思わず震え声を上げる悠岐。と、巨大な何かがエリュシオンの背後に降りた瞬間、地響きが辺りを伝う中、エリュシオンが笑みを浮かべて言う。

 

「この子はアカシャ。記憶を(ほふ)る闇の闘神で私が最初に生み出した、闘神達の産みの親よ。」

 

クスクスと笑いながら言うエリュシオン。と、ユニがアカシャを見て言う。

 

「こいつ、私会ったことあるわ。過去に幻想郷の空を飛んでた・・・。」

 

「確かにいたね。僕も一部始終を見ていたよ。」

 

ユニの言葉に反応して言う琥珀。と、九十九がアカシャを見て言う。

 

「久しぶりだな、アカシャ。私を覚えているか?」

 

「・・・お前は、誰だ?」

 

「なっ!?」

 

アカシャの一言に目を見開く九十九。と、エリュシオンが口を開く。

 

「フフフ、アンタみたいな友を守れない子のことなんて覚えてる暇なんてないのよ星熊九十九。」

 

「チッ・・・。」

 

思わず舌打ちする九十九。と、エリュシオンがユニ達に背を向けて言う。

 

「私はここで失礼させてもらうわ。まだやることがあるからね。任せたわよ、アカシャ。」

 

そう言ったエリュシオンはただ呆然としていた百々を見て言う。

 

「楽しみに待っててね、百々。私とあなたが一緒に過ごせる日々をね。」

 

フフッ。そう笑みを浮かべて笑うエリュシオンとは別に百々は呆然としたままだった。そのままエリュシオンは霧のように消えていった。その瞬間、アカシャがユニ達を見て言う。

 

「我はお前達人間の記憶を奪う存在。この戦いでお前達の記憶を奪わせてもらおう。」

 

「僕は人間じゃないんだけれどね。」

 

「・・・そこは言うところではない。」

 

「あ、反応してくれた。他の闘神と違って。」

 

琥珀の言葉に思わず突っ込んでしまうアカシャに百々が呟く。

 

「では改めて言おう。この戦いでお前達の・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはもう言っただろうがポンコツがぁーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、アカシャの顔に一人の大男が飛び蹴りの一撃を食らわす。

 

「ヌオッ!?」

 

飛び蹴りを食らったアカシャはそのままバランスを崩してしまい、倒れる。それを呆然と見るユニ達の元へアカシャの顔に飛び蹴りをした大男が降り立つ。男を見た瞬間、九十九が言う。

 

「ニ・・・いや、タマちゃ・・・。」

 

「そんな下りは飽きたぜ、九十九。」

 

そう言うとニルヴァーナはゆっくりと起き上がるアカシャを睨む。と、アカシャが言う。

 

「何の真似だ?ニルヴァーナ。まさか、お前は母を裏切るつもりか?」

 

「母さんを裏切るつもり?それはこっちの台詞だぜアカシャ!!」

 

そう言うと彼は二丁の銃を取りだし、アカシャに向かって発砲する。

 

「タ、タマちゃんは何をしているの!?」

 

「わ、分からないぜ。どうしてエリュシオンの奴を攻撃しているんだ?」

 

ユニと魔理沙が戸惑っている中、ニルヴァーナがユニ達の前まで後退し、言う。

 

「知ってるんだぜ、アカシャ。テメェが母さんを裏切ることをナァ!!」

 

「!!?」

 

ニルヴァーナの発した一言にユニ達は目を見開きながら驚愕の声を上げることしか出来なかった。

 

「な、何を言うか。この我が母を裏切るだと?そんなのあり得るわけ・・・。」

 

「あり得るんだよ!!俺が母さんと話をしてドゥームと暇潰ししようとした時に、テメェがドゥーム、メメントモリ、カルマに母さんを裏切る計画を話していたことをナァ。」

 

少し慌てながら話すアカシャにニルヴァーナがすかさず口を開いた。

 

「ニル、どういうことなんだ?」

 

「百々、今のお前は記憶を奪われて分からねぇがあいつは昔っから母さんに反抗的な奴でな、俺はその母さんに対する態度が気にくわなかった。そして、いずれ母さんを倒す計画も立てるんじゃないかって思ったのさ。そしたら案の定、こいつは計画を立てていやがった。しかもそれをドゥーム達に話したんだぜ。」

 

「それってただの馬鹿じゃ・・・。」

 

「黙れ!!」

 

ニルヴァーナ、百々、九十九が話していると機嫌を悪くしたアカシャが怒鳴った。そんなアカシャに怯むことなくニルヴァーナは再び銃を構えて言う。

 

「百々、可愛い子ちゃん達を連れて遠くに逃げな。こいつの相手は俺がやる。」

 

「正気かニル!?あいつは闘神の産みの親なんだぞ?」

 

「それが何だってんだ?産みの親だからといって俺がアイツに勝てない道理でもあんのか?」

 

「でも・・・。」

 

「ホラ、分かったならさっさと逃げろ。」

 

「ダメだニル、俺はお前を見捨てられない!!」

 

「私もだニルヴァーナ。お前を見捨るわけには行かない!!」

 

百々と九十九の言葉を聞いた瞬間、ニルヴァーナは大きく溜め息を吐いた。そしてユニを見て言う。

 

「可愛い子ちゃん、頼みがあるんだ。」

 

「わ、私?」

 

「あぁ、そうさ。百々と九十九を連れて遠くに逃げてくれないか?二人がいるとどうも戦いに集中出来なくてな。」

 

「でも、タマちゃんは大丈夫なの?あなたはアカシャと戦って死なない?」

 

「俺を誰だと思ってるんだ。俺はお前達の助っ人だぜ?死ぬわけねぇだろ。」

 

「・・・分かったわ。また後で会いましょう、タマちゃん。」

 

そう言うとユニは百々と九十九の方へ目を向ける。と、ニルヴァーナがユニに向かって再び口を開く。

 

「最後に1つ。可愛い子ちゃん、お前って優しい心の持ち主なんだな。本来敵である筈の俺に対しても百々や九十九と同じように接する。お前ならきっといい男に出会えるぜ。」

 

「・・・タマちゃん?」

 

「さぁ行きな。」

 

そう言った瞬間、ニルヴァーナはアカシャに向かって走りながら発砲していく。それを見た瞬間、悠岐と魔理沙と暁は目を合わせて頷いた。

 

「魔理沙、楓を頼むぞ!」

 

「任せるんだぜ!」

 

そう言った瞬間、魔理沙は楓を自信の箒に乗せ、飛び上がった。そんな彼女とは別に暁は百々を肩に担ぎ、悠岐は九十九を肩に担いで走り出した。

 

「なっ、暁!?」

 

「悠岐!!何をするんだ!」

 

百々と九十九は必死に暴れるも、悠岐と暁は黙って逃げるユニ達の後を追う。

 

「待てよ悠岐!!まだニルヴァーナが!!」

 

「暁止まってくれ!ニルを見捨てるわけには・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつまでもクヨクヨしてんじゃねぇぞ百々に九十九!さっさと逃げやがれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニルヴァーナの怒鳴り声に百々と九十九は目を見開く。そんな二人とは別に悠岐がニルヴァーナに言う。

 

「・・・生きて、帰ってこいよ。」

 

「・・・出来たらな。」

 

そう言った瞬間、悠岐と暁はそのまま走っていってしまった。それを見たニルヴァーナは再び銃を構え、アカシャを睨みながら言う。

 

「さぁ、さっさと終わらせてやるぜ。このクソアカシャめ!!テメェを倒して百々達の元へ帰ってやる!」

 

ニルヴァーナがアカシャと戦っている中、百々と九十九は黙ってその様子を遠くなりながらも見ていた。掴まれて地面に叩きつけられようと、光線を食らっても彼は何度も立ち上がり、アカシャに勇敢に挑んでいた。そして彼の戦いが見えなくなくなった瞬間、百々はポツリと呟く。

 

「ニル・・・すまねぇ。俺が・・・俺が一緒に戦わなきゃなりねぇのに・・・。」

 

そんな彼の目には涙が零れていた。それに気づくのは九十九彼女一人だけであった。と、突然辺りに今まで聞いたことのないような大きな銃声音が響き渡った。




ユニ達を逃し、一人勇敢にアカシャに挑むニルヴァーナ。彼の運命は!?
次作もお楽しみに!


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第133話 思い出

エリュシオンを裏切る計画を立てていたアカシャに一人立ち向かうニルヴァーナ。


・・・懐かしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この子が百々よ、伊吹百々。みんな仲良くしてあげなさいよ。」

 

「・・・興味ないな。」

 

「・・・。」

 

「何故人間を?」

 

「お母さんが言うなら・・・。」

 

いつからだったかなぁ。あいつが俺達の元へ来たのは。忘れちまった。ドゥームとアカシャは興味を持ちそうにねぇし、メメントモリとカルマに至っては仕方なくやってるみてぇだし。なんなら俺はあいつと親しくなってみるか。

 

「ヨォ、俺の名はニルヴァーナ。よろしくな、百々。」

 

「あ、あぁ。よろしくな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・懐かしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ププッ、お前何してんだよ。七並べは1が置かれたらもう13しか置けないんだぜ。」

 

「なっ、そうなのか!?初めて知った・・・。」

 

「嘘つくんじゃねーよ、百々。わざとだろ?」

 

「そんなわけあるか!」

 

「クヒヒヒヒ、おもしれぇ奴だな。」

 

昨日言ったことをすぐに忘れるようなあいつとトランプで遊んでいたのが懐かしいな・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニル、何か美味しい飲み物とかないのか?」

 

「あるぜ、ここに最高にうまい酒がな!!」

 

「コラァ、ニルヴァーナ!!」

 

「やべっ、母さんだ!逃げるぞ百々!!」

 

「えっちょ、ニル!?」

 

百々に酒を飲ませようとして母さんによく怒られたな。懐かしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、百々が急にいなくなりやがった。俺は部屋の隅々まであいつを探した。だが見つからなかった。母さんに聞くと、

 

「・・・ごめんね、ニルヴァーナ。彼はずっと私達と一緒にいられる訳じゃないから、親元へ返してきたの。」

 

本当にごめんね。そういう母さんの悲しげな顔は今でも忘れない。その時は何故か俺も悲しい顔になっちまった。俺が言うのもあれだが恥ずかしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見ろよドゥーム。コイツ、百々に似てねぇか?」

 

「言われてみれば・・・。似ていなくはないな。」

 

「俺は思うんだ、ドゥーム。もしかしたら、こいつを殺せば百々も死ぬんじゃねぇかってな。」

 

「なぬ!?俺は危険だな。このドゥームにそんなことは出来ない。」

 

「だろ~、なんなら俺達でこっそり生かしてやろうぜ。オイ可愛い子ちゃん、名前なんて言うんだ?」

 

「えぐっ、ひぐっ・・・。」

 

「泣いているぞ。お前が泣かせたのではないか?」

 

「んなわけねぇだろ?なぁ、可愛い子ちゃん。」

 

「私、九十九。星熊九十九。」

 

「・・・聞いたか?ドゥーム。」

 

「無論。さぁ、我々と来るがよい星熊九十九。貴様を現世へ逃がす。」

 

あの世界を襲撃した時も懐かしかったな。ドゥームと九十九に出会って表の世界へ逃がしたこと。幸い、母さんやメメントモリ、カルマに気づかれなくて助かったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを思い出すニルヴァーナの腹には光線によって空いた穴が空いていた。

 

「ガハッ・・・。」

 

その影響で吐血したニルヴァーナはゆっくりと倒れていく。そんな中、彼は再び過去を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニル、相談があるんだ。実は俺、メメントモリやカルマに嫌われてる気がするんだ・・・。」

 

「メメントモリやカルマに嫌われてる気がする?んなもん気にしてくていいだろぉ~。」

 

「で、でも・・・。」

 

「たとえメメントモリがお前を嫌おうとカルマが嫌おうと俺はお前の永遠の友だぜ、百々。」

 

「ニル・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・え?アカシャが私を裏切る?」

 

「そうなんだ母さん。俺が便所から帰って来て部屋に入ろうとしたらアカシャがドゥーム、メメントモリ、カルマに話していやがったんだ!!」

 

「なるほど、アカシャがねぇ。なんとなく予想出来てたけれどまさか異変の時にとは・・・。伝えてくれてありがとう、ニルヴァーナ。」

 

「これくらい当然さ、母さん。大事なことを伝えるのが息子の務めだろ?」

 

「フフッ、そうね。それとニルヴァーナ、アンタ黙ってることあるでしょ?」

 

「黙ってること?んなもんあるわけ・・・。」

 

「どうせアンタのことだから百々に少し手を貸すんでしょ?」

 

「そ、そそそんなわけないぜ母さん。(やべぇ、なんでバレてるんだ・・・。)」

 

「別に構わないけれど、メメやカルマにバレないようにね。」

 

「え?今母さんなんて・・・。」

 

「そんじゃあアンタに極秘任務よ。アカシャを討伐しなさい。それだけよ。」

 

「クヒヒヒヒ、任せてくれよ母さん。」

 

「期待しているわ。百々を支えてあげられるのはアンタしかいないんだから。アンタは私が知らない百々のことを知ってる、多分。アンタは私の自慢の息子。胸張ってやっていきなさい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今に戻り、倒れながら空を見て心の中で語る。

 

(俺って馬鹿な野郎だなァ。あんなに自信満々で言ったのに関わらず完敗。自分が情けなく感じるぜ。あ~あ、もっとアカシャの対策していればよかった。)

 

そう語りながらニルヴァーナはゆっくりと銃口を空に向け、笑みを浮かべながら再び語る。

 

(ドゥーム、母さん、九十九、そして百々。あばよ、次会う時は来世でな・・・。)

 

そう語る彼の目には微少に涙が零れていた。そして辺りに大きな銃声音が響いた。その瞬間、ニルヴァーナの体がみるみる消えていき、そのまま彼は光の塵と化していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、一人身を潜めていたエリュシオンがある方向を見て言う。

 

「・・・ニルヴァーナ?ダメ、ダメよニルヴァーナ。まだ、行っちゃダメ。まだ死んじゃダメよ。私を一人にしないで・・・ニルヴァーナ!!」

 

彼女は涙を流しながら地面に膝をつき、泣き崩れてしまった。しかしそんな彼女を慰める者もいなければ出会う者もいなかった。




アカシャとの戦いに敗れたニルヴァーナはそのまま天国へ・・・。
次作もお楽しみに!


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第134話 人は弱くなんかない

アカシャとの戦いに敗れたニルヴァーナ。


「おい暁ッ!もう降ろせ!!」

 

しばらく百々を肩に担いでいた暁に百々が暴れ、遂に降ろした。それを見たユニ達は足を止めてしまう。と、霊夢が百々に言う。

 

「何してるよ百々。まさかあんた、タマちゃんの元に戻るつもりじゃないでしょうね?」

 

「戻るに決まってんだろ!ニルを置いていっちまったんだ。助けに行かねぇと!」

 

「正気なの百々君!タマちゃんは私達を逃がすためにアカシャと一人で戦ってるのよ。そんなあの人の努力を無駄にする気?」

 

「それは・・・。」

 

ユニの言葉に口を淀ませる百々。そんな中、楓が口を開いた。

 

「百々、タマちゃんを信じるんだ。タマちゃんなら私達の元へ必ず帰ってくる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえたかと思うと空から羽音が響き、ユニ達の前に異形な形をした化物が現れた。

 

「ア、アカシャ!!ニルヴァーナと戦っていた筈なのでは・・・。」

 

「フン、ニルヴァーナなど我の相手にもならぬ。すぐに消滅してやった。」

 

「そんな・・・。」

 

アカシャの言葉に目を見開く暁、百々、九十九、ユニ。と、悠岐が漆黒の刃を取りだし、言う。

 

「アカシャよ、テメェはエリュシオンを裏切るそうだが本当なのか?」

 

「如何にも。は・・・エリュシオンのやり方は間違っている。それを直すべく我が立ち上がらなければならない。無論、エリュシオンを裏切るからといってお前達と組むつもりはない。」

 

「ケッ、テメェがやりそうなことだぜ。」

 

「フッフッフ。さぁ、お前達の記憶を我の糧としてもらおう。エリュシオンを倒すためにな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「炎弾。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の声が聞こえたのと同時にアカシャに火の玉が命中した。

 

「ヌオッ!?」

 

火の玉を食らったアカシャの体が宙に浮かび、そのまま地面に倒れる。

 

「な、なんだ!?」

 

「あの火の玉・・・まさか!!」

 

魔理沙と悠岐が声を上げる中、ユニ達の背後から声が響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また私の手助けなしでは闘神は倒せぬか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声がした方向をユニ達は一斉に見る。そこには長身で後ろ髪を束ねていて右手には刀を持ち、左腕を背に回している男がいた。男を見た瞬間、楓とユニが目を見開いて言う。

 

「オ、オッサン!?」

 

「メルト・グランチ様!?何故ここへ?」

 

「マーグルにあいつらを見に行ってくれと言われて来たのだよ。彼の言うとおりにして正解だった。」

 

そう言うと彼はゆっくりと起き上がるアカシャを見る。

 

「人間、何者だ?先程の攻撃からするとただ者ではないな?」

 

「私は人間だとも。ユニ(かのじょ)達の手助けをする、ただの人を少し越えた超人だ。」

 

「超人だと?」

 

「ククク。どうかね?人間に攻撃を食らい、膝をつく気分は。」

 

「気に食わぬ・・・。そしてその態度も気に食わぬ!」

 

そう言うとアカシャはメルト・グランチに向かって紫色のレーザーを放った。

 

「危ないです!!」

 

「オッサン避けろ!いくらオッサンでもアイツの攻撃は・・・。」

 

メルト・グランチに声を掛ける暁と九十九。そんな二人の言葉を耳にした彼は溜め息を吐いて言う。

 

「やれやれ、私の実力を舐めてもらっては困るよ。私は現世を支える王の一人。」

 

そう言うと彼は背に回していた左手を前に出し、指先をアカシャに向ける。その瞬間、紫色と赤の混ざった炎が漂い始める。

 

「爆暗闇のフレア。」

 

そう言った瞬間、彼の指先に漂っていた炎が一気に巨大化したかと思うとアカシャに向かって放たれた。彼の放った攻撃はアカシャのレーザーを撃ち破り、アカシャに命中する。

 

「ヌオォォォォォォォォッ!?」

 

彼の放つ炎は存在を維持しながらアカシャを数十メートル離れた場所まで吹っ飛ばした。

 

「す、すごいぜオッサン。」

 

「あれが五大王の力か・・・。いつ見ても恐ろしく強いね。」

 

魔理沙と琥珀が呟く中、メルト・グランチがユニ達を見て言う。

 

「さぁ、何しているのだね?闘神と戦わないのか?」

 

「戦わないのかって、メルト・グランチ様、あれは私達人間の記憶を屠るんですよ。私達が戦ったら・・・。」

 

「何だね?モルトの妹よ。君はそんなに臆病な守護者だったのか?彼が今の君をみれば落胆するだろうね。」

 

「い、いえ。そういうつもりで言った訳では・・・。」

 

「人は弱い。一体誰がそんなことを決めたのだね?」

 

「え?」

 

「我々は見返すべきなのだよ。今まで散々人を見下してきた愚かな者共を見返してやる。それが我々が、君達がなすべきことなのではないかね?」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、ユニは黙り込んでしまう。そんな彼女とは別に悠岐が口を開いた。

 

「・・・そうだな。俺達人間はずっと妖怪や色んな奴等に弱い生き物だと思われてきた。だがいい加減巻き返さないとな。俺達人間は弱くないんだってな!!」

 

「僕は妖精だけどね。」

 

「なら尚更です。アカシャに立ち向かいましょう。」

 

「え、無視?」

 

琥珀の言葉に突っ込むことなく暁はアカシャを睨む。彼に続いてユニ、霊夢、魔理沙、百々も睨む。そんな中、悠岐がピンと琥珀と話していた。

 

「ピン、琥珀。二人に頼みがあるんだ。楓と九十九を見ていてくれないか?」

 

「マカセテヨ。」

 

「僕でよければお守りするよ。」

 

「ありがとう、頼んだぜ。」

 

そう言うと彼はユニ達の元へ歩み寄る。そんな中、アカシャがユニ達を見て言う。

 

「人間など所詮は弱い。おぞましき驚異が強者を前にしては怯えて逃げてしまうのだからな。」

 

「いいえ、それは違うわ。」

 

「何?」

 

アカシャの言葉にユニが言葉を突っ込んだ。そして再び言う。

 

「人は弱くなんかないわ。弱いのは逃げようとする心なのよ。私達人間が本当は強いってことをあなたに証明して見せるわ!!」

 

そう言った瞬間、霊夢、魔理沙、悠岐、百々、暁がユニのいる場所から一斉にアカシャのいる方へ向かう。遅れてユニもアカシャの元へ向かう。

 

「魔弾テストスレイブ!」

 

先陣を切った魔理沙がスペルカードを発動し、その攻撃をアカシャに放った。

 

「フン、無駄なことを・・・!?」

 

アカシャが続きを言おうとした瞬間、ユニが背後からスペルカードを発動していた。

 

「現符シャドウルーム!」

 

彼女のスペルカードが発動した瞬間、アカシャの回りに青いドームのようなものがアカシャを包んだ。

 

「な、なんだこれは!?」

 

驚くアカシャとは別に悠岐と暁はアカシャの左右から走りながら攻撃を放っていた。

 

「神槍ヤマトタケル!」

 

「『我は運命の扉を開く者』爆破拡散弾!!」

 

悠岐の場所からは青い槍が放たれ、暁の場所からは赤い爆弾のようなものが放たれ、魔理沙の攻撃と共にそれらはアカシャに触れた瞬間、爆発を起こした。

 

「ヌオッ!?」

 

撒き上がった煙の中からアカシャの声が響く。そんな中、魔理沙の隣へ霊夢がやって来てスペルカードを発動した。

 

「霊符陰陽印!」

 

霊夢の放った攻撃はアカシャの体に引っ付き、そのまま爆発した。その間に百々がアカシャの顔の元まで飛び上がり、拳を構えた。

 

「ニルの仇だァァ!!」

 

そう言うと彼はアカシャの顔にパンチを繰り出した。百々のパンチを食らったアカシャはヨロヨロとよろけてしまう。そんな中、メルト・グランチが指先をアカシャに向けて言う。

 

「ガイルバースト。」

 

そう言った瞬間、指先に虹色の光が漂い始め、光線となってアカシャに放たれた。光線が放たれた瞬間、辺りに眩い光が放たれた。




メルト・グランチの活躍によりアカシャを圧倒したユニ達。しかし何か異変が・・・。
次作もお楽しみに!

余談:僕はバンドリやっているのですが限定の友希那が欲しくてガチャ50連引いてモカと蘭を迎えられましたが肝心の友希那は出ませんでした(´・ω・`)
また友希那イベントまで石溜めします!


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第135話 アカシャゲノム

ピンチのところへやって来たメルト・グランチと共闘し、アカシャを圧倒したユニ達。


煙が晴れた場所には力尽きて倒れているアカシャの姿があった。

 

「や、やっぱりすごいなオッサンは。」

 

「これでも本気は出してないよ。」

 

「本気じゃない!?」

 

メルト・グランチに問いかけ、驚く九十九。そんな中、楓がゆっくりと起き上がりながら言う。

 

「ア、アカシャは倒せたのか?」

 

「ガイルゴールの技を使わせてもらったからね、起き上がる確率は低いだろう。」

 

「ガイルゴール?グランチ君、君はガイルゴールな力を使えるのかい?」

 

「ある程度はね。全て使えると言うわけではないよ。」

 

琥珀の言葉に冷静に答えるメルト・グランチ。そんな彼の顔は何を考えているのか分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ククク、素晴らしい力合わせだったわねぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が辺りに響いた瞬間、倒れるアカシャの元に一人の女性が姿を現した。女性を見た瞬間、九十九が口を開く。

 

「エリュシオン!!テメェ、正々堂々と勝負しろ!!」

 

「私がアンタと正々堂々と勝負?フフッ、笑わせないでよ。アンタさっき私に返り討ちにされたのに勝負しろだなんて・・・。私が勝つに決まってるでしょ。返り討ちをされなくてもね。」

 

「なるほど、あれが異変の黒幕のエリュシオンか。ビオラの報告通りの女だな。」

 

唐突に口を開いたのはメルト・グランチだった。彼の言葉を聞いた瞬間、エリュシオンはメルト・グランチを見て言う。

 

「ほう、アンタが現世の五大王の一人である男、帝王梟雄メルト・グランチ・エンペラーね。」

 

そう言った瞬間、メルト・グランチとエリュシオンが睨み合う。

 

「オ、オッサンとババアが対峙!?」

 

驚きの声を上げる九十九。そんな中、エリュシオンがクスッと笑い、言う。

 

「五大王と戦うのならば手応えがありそうね。アンタとなら戦っても悪くはない。」

 

「私と戦うよりも卿は気にするべきものを忘れてはいないかね?」

 

「気にするべきもの?そんなのないわ。」

 

「そこにある闘神はなんだと言うのだね?」

 

「ここにいる闘神?アハハ、生憎だけどコイツは裏切り者よ。全てニルヴァーナから聞いたのだからね。」

 

そう言う彼女の顔は今までにない不気味な笑みを浮かべていた。それを見た悠岐が暁に言う。

 

「お、おい暁。エリュシオンは息子を愛してるんだよな?でもアイツ、息子の死を笑ってるぞ。どういうことなんだ?」

 

「わ、分かりません。よほどアカシャのことが気にくわなかったのかも・・・。」

 

震えながら話す悠岐と暁。そんな二人とは別にエリュシオンはメルト・グランチに言う。

 

「私はアンタと戦いたいの。けど少し待ってくれるかしら?このバカにチャンスを与えるから。」

 

「ククク、己を裏切った息子に好機を与えるとはねぇ、埒外、埒外。」

 

「どうせ私とアンタが戦ってたらあの子達が邪魔するでしょ?そうならないようにするのよ。」

 

そう言うと彼女は倒れるアカシャの近くまでくるとユニ達を見て言う。

 

「これ知ってる?」

 

そう言うと彼女は服ポケットの中から紫色の液体が入った瓶を取り出した。

 

「・・・ナニソレ?」

 

先に答えたのは霊夢だった。そんな彼女とは別にエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「これはゲノムの遺伝子。これをアカシャに注ぐことでアカシャはアカシャゲノムとして再び君臨するわ。」

 

「ア、アカシャゲノムだと!?」

 

何かを察した九十九が口を開く。そんな中、エリュシオンは口を開く。

 

「アカシャをアカシャゲノムへと姿を変えたら戦いましょう♪メルト・グランチ・エンペラー。」

 

「黒き刀よ。エリュシオンとの戦いは私に任せてくれたまえ。卿はアカシャゲノムを任せる。」

 

「・・・あぁ、分かった。」

 

悠岐とメルト・グランチが話している中、エリュシオンは瓶の蓋を開け、その中身の液体をアカシャにかけた。

 

「さぁ目覚めなさい、アカシャゲノム。目覚めて人間達の記憶を貪るのよ。」

 

そう言った瞬間、アカシャの体が紫色に輝き始めた。それに気にせずにエリュシオンはメルト・グランチに言った。

 

「さぁ、私達はあちらで戦いましょう。」

 

「ククク、上等。」

 

メルト・グランチが言った瞬間、二人の姿が一瞬にして消えた。と、楓が口を開いた。

 

「珍しくやる気だったな、オッサン。」

 

「あんなにやる気に満ち溢れたメルト・グランチを見るのは初めてだな。」

 

悠岐が言った時だった。紫色に輝いていたアカシャの体がみるみる大きくなっていき、遂には人間の上半身だけの姿へと変化した。下の部分は紫色のもやのようなものに包まれている。

 

「アカシャ・・・ゲノム!!」

 

震えながら言うユニと九十九。と、アカシャがユニ達を見て言う。

 

「この世界にある魂の痕跡、全て食らいつくしてやろう。」

 

そう言うとアカシャはユニ達に少しずつ近付いていき、再び言う。

 

「お前達に絶望を見せてやろう。」

 

「チッ、下がってろ!!」

 

「ここは俺達が!!」

 

そう言ってユニ達の前に出たのは悠岐と百々だった。そんな二人を見てアカシャゲノムは笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「呪縛五稜星。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、アカシャゲノムの回りに五ツ星の形をした結界が現れた。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「驚いているね、闇の闘神アカシャゲノム。」

 

「当たり前だ。これはガイルゴール様が我々に伝授したものなのだから。」

 

再び声が聞こえたかと思うと結界中にいるアカシャゲノムの元に二人の長身の男が空から降り立った。男を見た瞬間、ユニが目を見開きながら言う。

 

「あ、あなた方は・・・。」

 

「ん?おや、久し振りだね、幻想郷の守護者。」

 

「どうしてここへ来たの?マスターハンド、クレイジーハンド!!」




アカシャゲノムの前に現れたのはなんとマスターハンドとクレイジーハンドだった。一体何故・・・。
次作もお楽しみに!

余談:モンストで超獣神祭が来ていたので引いてみたらなんと四体目のガブ!モンストでガブが一番好きなので嬉しかったです!


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第136話 アカシャゲノムvs化身

メルト・グランチがエリュシオンと戦うのと同時にユニ達の前に立ちはだかるアカシャゲノムの前に現れるマスターハンドとクレイジーハンド。


「マスターハンドにクレイジーハンド?スマブラXとは全然姿が違うじゃないですか!!性格も真逆だし、がっかりだよ。」

 

「・・・暁?」

 

「いいえ、何でもありません。」

 

暁の言葉に突っ込んだ霊夢を見て彼は興奮を抑えて言った。そんな中、楓がクレイジーハンドに言う。

 

「一体何の目的でここへ来たんだ?」

 

「何のためだと?決まっているではないか。ガイルゴール様の命により我々にとって害となるエリュシオンとその下部達を排除するためだ。」

 

「へぇ、あのガイルゴールの下部であるマスターハンドとクレイジーハンドが僕達の前に現れるなんてね。」

 

「君は琥珀君だね?体験を求める妖精、僕とは趣味が合わないね。」

 

フッと鼻で笑いながらマスターハンドは琥珀に言った。そんな中、暁が二人に言う。

 

「化身の皆さんはアカシャゲノムと戦うのですか?」

 

「勿論だ。お前達は別の場所でも行ってろ。どうせエリュシオンはそう遠くへは行ってはいないのだろう?」

 

「・・・あぁ、そうだ。」

 

「ならばアカシャゲノムは僕達に任せてくれ。」

 

「分かった。頼んだぜ、マスターハンド、クレイジーハンド。」

 

そう言うと悠岐は楓を抱え、暁は九十九を抱えた。そしてユニ達と共に無縁塚を離れていった。と、クレイジーハンドが口を開いた。

 

「・・・何故お前は残るのだ?土人形よ。」

 

クレイジーハンドが見つめる先、そこには戦う姿勢をとるピンがいた。クレイジーハンドの言葉を聞いたピンが口を開く。

 

「ソンナノ、キマッテルジャナイカ。ボクハヒトジャナイ、ダカラアイツトタタカウ。」

 

「フフッ、君らしいね土人形。せいぜい足を引っ張らぬようにするんだよ。」

 

「ワカッテルサ!」

 

そう言った瞬間、ピン、マスターハンド、クレイジーハンドは同時にアカシャゲノムを見る。と、マスターハンドが口を開いた。

 

「君には表から去ってもらうよ。僕達にとって君は害虫以外何者でもないんでね。」

 

「フン、例えお前達のような化身であろうと我は計画を果たすまでは何度でもやってみせよう。」

 

「ソノヤボウ、ウチキッテヤル!!」

 

そう言った瞬間、ピンはアカシャゲノムの顔元まで飛び上がるとそのままアカシャゲノムの顔にパンチをぶちこんだ。

 

「ヌオッ!?」

 

パンチを食らったアカシャゲノムは少し後退する。そんな中、クレイジーハンドが上に飛び上がり、言う。

 

「味わうといい、アカシャゲノム。絶望を!!」

 

そう言った瞬間、クレイジーハンドは右手を上げた。そして言う。

 

「新たな力を備えた英雄達よ、愚かな闘神を殲滅せよ!いでよ、獣神化達!!」

 

その瞬間、クレイジーハンドの上げた右手の上に紫色の空間が現れた。そしてその中から赤、青、緑、黄色、紫色の光が飛んだ。と、マスターハンドが左手を上げて言う。

 

「赤き龍よ、獣神化達と共に闘神を撃滅せよ!現れよ、オルタナティブドラゴン!」

 

そう言った瞬間、クレイジーハンド同様、紫色の空間が現れ、その中から赤い体に覆われ、翼が生え、頭には角が生えているドラゴンが現れた。ドラゴンを見た瞬間、アカシャゲノムが目を見開いて言う。

 

「オ、オルタナティブドラゴン!!」

 

驚くアカシャゲノムとは別にマスターハンドは笑みを浮かべて言う。

 

「さぁ、オルタナティブドラゴン。闘神を撃滅するんだ。」

 

そう言った瞬間、オルタナティブドラゴンの体が炎に包まれ始めた。そしてオルタナティブドラゴンが口を開いた。

 

「私の力の全てを放つ。」

 

そう言った瞬間、オルタナティブドラゴンの回りに先程の5色の光が漂い始めた。と、光から五つの声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「炎の聖剣よ、その力を我が前に示せ。」

 

「荒ぶる魂よ!海をも割り、大地を砕け!!」

 

「狩りの王と呼ばれし故、その身で知るがよい!!」

 

「極を越えし我が力、世界に轟け!!」

 

「世界よ、我が前にひざまづけ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、五つの光は炎に包まれるオルタナティブドラゴンの回りに移動した。そしてアカシャゲノムに向かって一気にオルタナティブドラゴンと共に突進した。

 

「ヌオ、オォォォォォォォォォォ・・・。」

 

突進されたアカシャゲノムはうめき声を上げる。そんな中、マスターハンドが口を開く。

 

「さぁ、味わうといいよ。君が人間達に送った、絶望をね。」

 

そう言った瞬間、オルタナティブドラゴンと五つの光がアカシャゲノムの体を貫いた。そのままアカシャゲノムは液体状のものへと変化した。それをオルタナティブドラゴンはクレイジーハンドの出現させた空間の中へと自分ごと引きずり込んでいった。それを見たピンが口を開く。

 

「ナンカ、アッケナイネ。」

 

「呆気なくて当然。我々にとって害虫なものはすぐに排除せねばならないからな。」

 

「さぁて、どうする?クレイジー。」

 

「そんなもの、決まっている。私がガイルゴール様に表の世界の状況を報告する。マスターは守護者達と共にエリュシオンに応戦しろ。」

 

「了解っと。くれぐれも邪魔されないようにね。」

 

「分かっている。」

 

そう言った瞬間、クレイジーハンドの体が光だしたかと思うと一瞬にして消えていった。それを見たマスターハンドはピンを見て言う。

 

「さぁ行こうか土人形、害虫駆除だ。」

 

「ハヤクイカナイトユニチャンタチガアブナイカモシレナイ。」

 

そう言うと二人はユニ達の元へと走っていった。




オルタナティブドラゴンや獣神化した英雄達を呼び寄せてアカシャゲノムを倒すことに成功したマスターハンドとクレイジーハンド、そしてピン。
次作もお楽しみに!


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第137話 メルト・グランチvsエリュシオン

英雄達やオルタナティブドラゴンを呼び寄せてアカシャゲノムを倒したピンと化身達はユニ達の元へ。


場面は変わってユニ達。アカシャゲノムから逃げてきたユニ達はある人物を探しながら走っていた。と、悠岐に抱き抱えられていた楓がある方向を指差しながら口を開く。

 

「悠岐、あそこに行ってくれ。あの辺りから強い衝撃を感じる。おそらくあそこにオッサンがいる。」

 

「了解。ユニ、霊夢、魔理沙、百々、暁、琥珀。あちらに向かうぞ。」

 

「あいよっと。」

 

悠岐の言葉でユニ達は楓が指差す場所へ向かう。その時だった。突如激しい空気の勢いがユニ達を襲った。

 

「ッ!?」

 

「きゃあ!!」

 

突然の衝撃にユニ達は少しバランスを崩してしまう。そんな中、百々がある方向を指差して言う。

 

「お、おい。あれを見ろよ!!」

 

彼の言葉を聞いてユニ達は指差す方向を見る。そこには刀と剣を打ち合うメルト・グランチとエリュシオンの姿があった。それを見た悠岐は楓をそっと降ろし、草影に隠れて言う。

 

「あの二人の戦い、すごいな。俺達が入っちゃ、すぐに吹っ飛びそうだ。」

 

「私達は影で見ていよう。」

 

「ちょ、待てよ二人とも。まさか、オッサンを見捨てるつもりなのか!?」

 

九十九の言葉に楓が答える。

 

「オッサンを見捨てたりはしない。だが、近付けないんだ。あの二人の戦いに。オッサンが命の危機に陥ったら私達もオッサンと戦う。それだけだ。」

 

「出野さんの言うとおりです、星熊さん。気持ちは分かりますが今は大人しくしていましょう。」

 

「・・・あぁ、分かった。」

 

暁の言葉を聞いて九十九は悠岐達の近くの草影に隠れた。ユニ達に気づかずにエリュシオンはメルト・グランチとの距離を置き、言う。

 

「へぇ、これが五大王の力。やっぱり私の思った通り、強いわね。あのメメが惨敗してしまったのも頷ける。」

 

「ククク、褒め言葉として受け入れよう。」

 

「アンタとなら、私の満足する戦いができるかもしれないわね。」

 

「そうかな?私はあまり満足出来ないがね。」

 

「んん?」

 

メルト・グランチの言葉に首を傾げるエリュシオン。そんな中、九十九が小声で言う。

 

「オッサンのやつ、何を企んでんだ?」

 

「不思議な感じがしますね。本来なら相手は世界を破壊する程の力を持つ存在なので怯えてしまう筈。そんな相手に笑みを浮かべているなんて・・・。五大王の持つ、誇りか何かなのでしょうか?」

 

二人が話している中、メルト・グランチがエリュシオンに挑発するかのように言う。

 

「千年殃禍のガイルゴールとの戦いに比べれば卿との戦いなど楽なものだ。」

 

「ほう、私の力はガイルゴールよりも劣っていると?そう言っているのかしら?」

 

「卿がそう思っているのならばそうなのだろう。」

 

「フフフ、面白いことを言うわねぇ、メルト・グランチ。私はあの純狐も圧倒し、セコンドをも圧倒する。そんな私がガイルゴールより劣るわけないでしょう?」

 

「純狐?さて、誰のことだったかな?」

 

(完全に煽ってるぞ、オッサンのやつ。)

 

メルト・グランチの言葉を聞いて楓は心の中で呟く。と、エリュシオンは剣を見ながら言う。

 

「よく私相手にそんな余裕を見せられるわねぇアンタ。それなりの作戦があるというのかしら?」

 

「見てみれば分かるのではないかね?」

 

そう言った瞬間、メルト・グランチは背に回していた左手を前に出し、指を鳴らす構えをする。

 

(あの爆発をまたやるのかオッサンは!!俺達も巻き込まれそうで不安しかねぇな。)

 

心の中で語る百々とは別にエリュシオンはただ笑みを浮かべてメルト・グランチを見る。そして口を開く。

 

「さぁて、一体私との打ち合いでどれくらいの火薬を撒いたのかしっ!?」

 

続きを言おうとしたエリュシオンの目の前にメルト・グランチは瞬時に移動し、腹を蹴りつけた。

 

「がっ!?」

 

蹴り飛ばされた彼女はくの字を作って木に叩きつけられる。そんな彼女にメルト・グランチが言う。

 

「さて、私がいつ火薬を撒き散らしたというのだね?」

 

彼の行動を見たユニは思わず声を上げてしまう。

 

「すごい、すごいですよメルト・グランチ様!!」

 

「おいバカ!!」

 

「ん?」

 

ユニと百々の声に気づいたメルト・グランチは彼女達のいる方向へ目を向ける。そんな彼にエリュシオンが口を開いた。

 

「どこ見てるのよ。最初からいるのは分かっていたでしょう?」

 

「なっ、気づいていたのですね。」

 

彼女の言葉を聞いて暁は声を上げ、メルト・グランチの元へ行く。彼に続いてユニ達も彼の隣に移動する。と、メルト・グランチが笑みを浮かべて言う。

 

「さぁ凶神よ、何をしているのだね?攻撃する隙は大分あった筈だというのに。」

 

「フフフ、それはねぇ、様子をみていたのよ。少し様子を見なきゃ戦えないでしょ?」

 

と、悠岐があることに気づき、首を傾げる。

 

(君は気づいたみたいだね、黒き刀君。)

 

(その声は琥珀か?なんで俺の心に語りかけてるんだ?)

 

(君が気づいたように見えたからね。なんとなく声を掛けてみたんだ。)

 

(そうかい。まぁ、とりあえずアイツが俺達に攻撃しようとせずにいるのは・・・。)

 

(分かってるならいいね。言う必要はないよ。)

 

(最後まで言わせてくれよ・・・。)

 

と、メルト・グランチがエリュシオンに言う。

 

「様子を見るほど余裕ということか卿は。ククク、その余裕はどこまで持つかな?」

 

そう言った瞬間、メルト・グランチは再び指を鳴らした。

 

「ッ!!」

 

それを聞いたエリュシオンは咄嗟に身構える。それを見たメルト・グランチはクスクスと笑いながら言う。

 

「かなり敏感になっているようだな、エリュシオン。私が爆破するのかしないのかでね。だが今回はフェイクでも爆破でもないよ。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの右手の腱の部分から血が飛び散った。

 

「ッ!?」

 

声を上げた瞬間、エリュシオンは持っていた剣を落としてしまう。そんな彼女とは別にユニ達は目を見開く。そんなユニ達にメルト・グランチが口を開く。

 

「何、そう驚くことはしていないよ。彼女の腕を見てみたまえ。」

 

彼の言葉を聞いたユニ達は一斉にエリュシオンの腕を見る。彼女の腕には大きさ30cmほどの巨大なクモが彼女の腱の部分に噛みついていた。それを見た霊夢が口を開く。

 

「あれは、帝王蜘蛛(エンペラースパイダー)!?」

 

「い、いつの間に!?」

 

驚く霊夢と魔理沙。そんな中、エリュシオンは空いている左手で帝王蜘蛛を掴み、ユニ達の方へ投げつけた。それを見たメルト・グランチは彼女の目の前に再び移動し、口を開く。

 

「周りをよく注意すべきだったな、凶神よ。」

 

そう言うと彼はエリュシオンの腹を斬りつけた。それを見た瞬間、ユニは笑みを浮かべて言う。

 

「さ、流石です。メルト・グランチ様!!」




エリュシオンをフェイクなどを使って圧倒するメルト・グランチ。
次作もお楽しみに!


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第138話 恐ろしい真実

純狐や神奈子相手に圧倒的な強さを見せつけたエリュシオンを圧倒するメルト・グランチ。


メルト・グランチに腹を斬りつけられたエリュシオンは空いている左手で斬られた部分を抑えながら後退する。

 

「ざまぁみやがれ、クソババァ!!」

 

思わず罵声を上げる九十九。その言葉に耳を傾けることなくエリュシオンはペッと血の塊を地面に吐き、口を開く。

 

「フフフ。やるじゃない、メルト・グランチ。これがガイルゴールに認められた五大王の力。幻想郷(ここ)では勝ち目はないわね。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの背後から二つの巨大な影がメルト・グランチに向かって飛んできた。

 

「魔理沙!!」

 

「分かってるぜ!」

 

霊夢の合図と共に魔理沙は箒にまたがり、空を飛んで飛んできた影に向かってスペルカードを発動した。

 

「封魔針!」

 

「魔符ミルキーウェイ!」

 

二人の放った攻撃は飛んできた巨大な影に命中する。攻撃を食らった二つの影はエリュシオンの近くに落ちる。

 

「ナイスよ魔理沙!」

 

「霊夢もな!」

 

二人が声を掛け合う中、ドスンドスンという足音と共にエリュシオンの前に一匹の巨大な牛が現れ、ユニ達を見て唸り声を上げる。それに続いて二つの巨大な影の一匹のコウモリと鷹もユニ達に唸り声を上げる。それに怯むことなく悠岐が口を開いた。

 

「幻獣・・・。バッファローの他にも鷹やコウモリもいるとはな。」

 

「私が見た中ではゴリラもいたよ。」

 

「悠岐君もメルト・グランチ様も!?私はワニを見ました。」

 

彼の言葉に反応するメルト・グランチとユニ。そんな中、エリュシオンが口を開いた。

 

「今日のところはここで失礼させてもらうわ。」

 

「逃がさないよ。」

 

そう言った瞬間、琥珀がエリュシオンに文字を打ち込んだ。

 

「君には息子と同じことを受けてもらおうか。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの体から血が飛び散る。さらに彼女の左腕からゴキッという鈍い音が辺りに響いた。

 

「『傷』の文字と『折』の文字を打ち込んだのか。」

 

「よくわかったね、そのと・・・。」

 

「!?」

 

琥珀が九十九へ言おうとした瞬間、銃声が辺りに響いたのと同時に彼の頬に何かが通りすぎ、頬にかすり傷が出来た。それを見た九十九は目を見開く。

 

「・・・え、今腕折った筈なのに?」

 

戸惑う琥珀とは裏腹にエリュシオンは不気味な笑みを浮かべ、銃口から煙があがる銃を折られた筈の左腕で持ちながら言う。

 

「フフフ、何を戸惑うの?琥珀・イーグナーウス。私が痛み慣れしていないとでも思ってた?私は何億年も生きているのよ?痛い出来事なんて何度も経験したわ。腕を折られたくらいならまだ動かせる。」

 

「・・・たまげたね。」

 

流石の琥珀も予想外のことに驚きの声を上げる。そんな彼とは別にエリュシオンはユニ達を腕を震わせながら指を差して言う。

 

「今日の残りの時間と明日丸一日、アンタ達に猶予を与えてあげる。それまでに大切な家族や仲間に最後の挨拶をしてくるといいわ。」

 

「ククク、敵である筈の卿が随分と余裕なことを言うのだな。」

 

「フフフ、勿論だとも。私の計画は必ず成功する。私はアンタ達表の者達と決着をつけたいの。明後日、裏の世界で会いましょう。それまでに傷を癒し、仲間に最後を伝えなさい。それじゃあまたね~。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンとバッファロー、鷹、コウモリの周りに黒い渦が現れたかと思うとそのまま彼女と幻獣達は渦と共に消えていった。それを見た瞬間、ユニがメルト・グランチを見て言う。

 

「流石です、メルト・グランチ様!まさかあの私達でも歯が立たなかったエリュシオンを圧倒するなんて!」

 

「・・・。」

 

「やっぱオッサンすげぇよな。どうやったらそんなこと出来るんだよ。」

 

「いや、正直に言うと、恐ろしかったよ。」

 

「・・・え?」

 

彼の以外な言葉にきょとんとするユニと百々。そんな中、悠岐に背負われながら楓が口を開く。

 

「どういうことなんだ?オッサン。」

 

「彼女、君達から見れば私と五分五分の勝負をしていたと思うが、実際は違うよ。」

 

「実際はどうなんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女、全く本気を出していなかったよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!?」

 

メルト・グランチの衝撃的な言葉にユニ達は声にならない声を上げてしまう。そんな中、メルト・グランチは話を続ける。

 

「私は彼女と剣を交えた時に実感したよ。私相手に本気を出していない。恐らくだが彼女の言った純狐とやらとの戦いも本気を出していない。何故本気を出さないのか不明だが、恐らく彼女にはガイルゴールをも越える特殊な何かを隠し持っている。」

 

「特殊な何か?」

 

「仮に彼女がガイルゴールと同じ遺伝子を持っているとするならば・・・。完全体、と言っておこうか。」

 

「完・・・。」

 

「全体?」

 

百々の言葉に続けて言う暁。そんな二人とは別にメルト・グランチは再び言う。

 

「まだ確信した訳ではない。だが、なんとなく予測出来るのだよ。完全に彼女がガイルゴールも同じ遺伝子を持っているとも限らない。」

 

「まだ分からないってことか・・・。」

 

楓が溜め息を吐いた瞬間、プルルルという音が辺りに響いた。

 

「・・・?」

 

「何の音だ?」

 

首を傾げるユニ、霊夢、魔理沙、百々。そんな中、メルト・グランチは服の中からスマートフォンを取りだし、スライドして耳に当てる。

 

「私だ。優理花かね?・・・そうか、分かった。全く、無責任な帝だな。では現世で会おう。」

 

そう言った瞬間、ツーツーと音が響いた。その瞬間、彼はスマホを服の中にしまい、言う。

 

「帝からだ。皆現世の私の城、帝王城に来てほしいようだ。話はそこでするらしい。私は先に行かせてもらう。後程会おう。」

 

そう言った瞬間、メルト・グランチの姿が一瞬にして消えていった。それを見た瞬間、ユニが口を開く。

 

「消えた!?」

 

「当たり前よ。メルト・グランチはこういう移動を好むんだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨォ、お前らここで何してんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然後ろから声を掛けられたため、ユニ達は背後を見る。そこにいたのは長身で腰まで伸びる赤髪に赤い目、左目には眼帯をつけていて袖の広い青い長袖に白い長ズボンをはいている男がいた。男を見た瞬間、九十九が口を開いた。

 

「篁じゃないか。こんなところで何してんだ?」

 

「多分、お前らと同じだ。現世の帝王城ってところへ向かう。紫に言われてな、小町と妹子も後程来るだろうよ。皆収集されているらしいな。」

 

「皆が収集されているの?ということはそれほど重要なことを言うのね。」

 

ユニが言うと『おう』と篁は言う。と、悠岐が口を開く。

 

「なら、尚更行くしかねぇな。」

 

そう言うとユニ達は現世へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年少女移動中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって現世の帝王城。そこではメルト・グランチと紫に収集されたユニ達と他の者達が集まっていた。他にも五大王も集まっている。と、一人の男が皆の前に立ち、言う。

 

「諸君、余の話を聞いてほしい。我々は今、エリュシオンという史上最悪の存在から表の破滅を強いられている。その為には其の方らの力が必要だ。」

 

そう言うと皆の前で話した男、セコンドは一息つくと再び言う。

 

「改めて皆に問う。表の存続のために余に命を捧げる覚悟があるものはいるか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セコンドが言った瞬間、皆の集まる中で一人手を上げて立つ一人の青年が口を開いた。彼を見た瞬間、セコンドは笑みを浮かべて言う。

 

「良く言ってくれた、黒き友よ。」

 

「だが、勘違いするんじゃねぇセコンド。」

 

「ん?」

 

「別に俺はお前のために命を捧げるつもりはない。だがよ、エリュシオンに狙われている表の世界、それを守るためならば俺はこの表の世界に命を捧げる覚悟なら、誰にも負けはしねぇ。」

 

「私もだ。」

 

悠岐に続いて楓が言い、再び口を開く。

 

「私もお前みたいなロリコンに命を捧げるつもりはないが表の全ての世界のためならば私も悠岐と同様、命を捧げることができる。」

 

二人が言った瞬間、続々と声を上げる者達が後を絶えなかった。それを見たセコンドは再び笑みを浮かべて言う。

 

「皆、やる気のようだな。皆戦う覚悟は出来ているようだ。傷のほうはグランチ率いる帝王軍の医療班が行う。」

 

「勝手に決めないでくれたまえ。」

 

「ではこれからビオラの話に入る。」

 

そう言った瞬間、セコンドの後ろから左目に眼帯をつけていて赤いリボンがついたヘッドフォンをつけ、紳士のような服に赤い縞模様のスカートを履いている女性が現れた。彼女を見た瞬間、ユニが目を見開きながら言う。

 

「女王陛下・・・!!」

 

「女王陛下?あの人がか?」

 

「気を付けな、九十九。あの方は礼儀とかに厳しいから気安く話しかけると注意されるからな。」

 

ぼそぼそ声で楓は九十九に言う。そんな中、ビオラが口を開く。

 

「みなさん、もうお気づきかもしれませんが私の左目ですがエリュシオンによって失ってしまいました。さらに彼女の能力で私自身の能力も失い、私は全くの無力な存在になってしまいました。こんな私が言うことは1つだけです。十分に気をつけてください。私は裏の世界へは行きませんのでみなさんの武運を祈るだけしか出来ませんが。」

 

「良く言ってくれた、ビオラ。ではこれから剛岐から明後日の作戦を伝える。」

 

セコンドが言った瞬間、皆の後ろに座っていた小宝剛岐が紙を見ながら言う。

 

「明後日のことだが、朝早く行動する。紫と今はここにいねぇ月の都の姉妹の姉の力を使って裏の世界へ行く。そこでは鋼鉄城と言われる、別名『奈落のラビリンス』と呼ばれる場所に行く。そこで兵力を尽くしてまでも奴を討つ。」

 

「1つ質問があるんだけど、いいかな?」

 

唐突に口を開いたのは琥珀だった。彼を見た剛岐は冷静に言う。

 

「なんだ?言ってみろ。」

 

「その鋼鉄城って城がどうしてあるって分かったんだい?」

 

「今は治療中だが紫が密かに偵察用の前鬼を裏の世界へ解き放っておいたのさ。それで把握したという感じだ。」

 

「紫がねぇ。納得、説明してくれてありがとう。」

 

「他に聞きたいことがあるやつはいるか?いねぇな。一応言っておくがエリュシオンの所には幻獣っていう暴食な化物がたくさんいるらしい。恐らくそいつらと交戦する可能性だってある。身を引き締めていけ。俺が言うことはそれだけだ。」

 

「ありがとう、剛岐。今日は集まってもらって感謝するぞ、輩よ。それではこれにて解散!!」

 

そう言った瞬間、様々な人達が幻想郷へと帰っていった。そんな中、メルト・グランチが口を開いた。

 

「諸君らは残ってくれないか?」

 

「誰のことだ?」

 

「君にモルトの妹、博麗姉弟と白黒の魔法使い、黒き刀と二人の半人半鬼と知恵の妖精だ。」

 

「え?」

 

「俺達?」

 

メルト・グランチに呼ばれたユニ達はそのまま彼に呼ばれたまま城の奥へ行った。




メルト・グランチに呼ばれたユニ達。彼は何を伝えたいのか!?
次作もお楽しみに!


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第139話 極秘任務

メルト・グランチに呼ばれたユニ達は城の奥へと向かっていく。


メルト・グランチに呼ばれたユニ達は彼の案内のもと、ある部屋の前まで来させられた。と、楓が口を開く。

 

「オッサン、ここって・・・。」

 

「私の極秘の部屋だ。今は優理花もいる。」

 

そう言うと彼はゆっくりと扉を開ける。中に入るとそこには地下へ繋がる長い階段が続いていた。それを見た瞬間、暁が口を開く。

 

「驚きですね、この城には地下もあるんですね。」

 

「私と優理花、そしてリナや小太郎以外には教えてないよ。私と諸君らの秘密だ。」

 

そう言うと彼はゆっくりと階段を降りていく。彼に続いてユニ達も階段を降りる。薄暗い階段は降りる度にコツン、コツンと辺りに音が響く。しばらく階段を降りていると扉がユニ達の前に現れた。メルト・グランチはゆっくりとドアノブを掴み、扉を開ける。中に入ると正面に一人用の机と椅子があり、その隣に一人の女性がもう1つの椅子に座っていた。女性を見た瞬間、霊夢と魔理沙が口を開く。

 

「優理花さん、お久しぶりです。」

 

「久し振りだぜ、優理花さん。」

 

「お久しぶりです、霊夢に魔理沙。」

 

優しい笑みを浮かべた優理花を見て百々は思わず口を開く。

 

「美人な人だなぁ。」

 

彼の言葉を聞き逃さなかった優理花は百々を見ながら言う。

 

「うふふ、ありがとうございます。」

 

そう言って彼女はニッコリと微笑んだ。彼女の顔を見た瞬間、百々はドキッとしたのか、顔が赤くなり始めた。彼を見た楓がニヤニヤしながら口を開く。

 

「何顔赤くしてるんだ?百々。」

 

「べっ、別に、照れてるわけじゃねぇからな!!」

 

「嘘をつくなよ~。お前の顔がそう語っているぞ。」

 

「照れてねぇって言ってんだろ!」

 

「うふふ、素直に言うべきですよ。自分に素直になるのが一番です。」

 

「うっ・・・。」

 

優理花に言われた百々は再び顔を赤くして黙り込んでしまった。そんな中、メルト・グランチが口を開いた。

 

「さぁ、本題に入ろうか。私が諸君らを呼んだのは他でもない、極秘任務を頼もうと思ってね。」

 

「極秘・・・。」

 

「任務?」

 

悠岐の後に九十九が言葉を付け足す。そんな二人とは別にメルト・グランチは再び言った。

 

「我々が幻獣達と交戦している中で諸君ら9人は私の合図と共にエリュシオンのいる鋼鉄城へ行く。そこで彼女と交戦してもらう。」

 

「ですがメルト・グランチ様、私達には危険な気がします。」

 

「大丈夫だ、倒せとは言わない。時間を稼いでほしい。ただそれだけだよ。」

 

「エリュシオンは恐らく城から幻獣達に指示を出すと思われます。そこでみなさんが行くことによって幻獣達へ指示を出せなくするような作戦です。」

 

「私達でうまくいくのか?」

 

「うまくいくと信じているからこそ諸君らに任せたいのだよ。9人の中には彼女に恨みを持っている者が一人はいるだろう。」

 

彼の言葉を聞いた瞬間、九十九と悠岐の体がピクリと反応する。その二人の反応を見た優理花が口を開く。

 

「・・・やる気になれました?」

 

「あぁ、十分にな。あのクソババァを懲らしめるには絶好の機会だ。」

 

「俺も少しやる気になれました。ありがとうございます、優理花さん。」

 

「いいえ、いいのよ。」

 

「・・・これを提案したのは私なのだがね。」

 

ボソッと呟くメルト・グランチの言葉は誰の耳にも聞こえることはなかった。そんな中、一人だけ落ち着かない人物がいた。その人物を見た優理花が笑みを浮かべて言う。

 

「まだビオラのことで頭がいっぱいなのですね?魔理沙。」

 

「なっ、優理花さん!?どうして分かったんだぜ?」

 

「あなたの険しい表情と貧乏揺すりを見ればすぐに分かりますよ。私は礼儀とかは気にしない者なので私との会話では敬語でも構わないしため口でも結構ですよ。」

 

うふふと笑う優理花の顔を見て魔理沙は顔を赤くしてしまう。同姓だとえはいえ、彼女の美しさは桁外れだ。と、メルト・グランチが自分の腕時計を見て言う。

 

「おやおや、もうこんな時間だ。今夜は私の城で泊まってくれたまえ。」

 

「そうですね、少し長く話しましたし。では女性の皆さんの部屋は私がご案内します。」

 

「男諸君は私に着いてきたまえ。」

 

「・・・変な部屋にするなよ。」

 

「私が信用ならないかね?伊吹百々。」

 

「・・・いいや、そんなことはないさ。」

 

「ならよいのだが。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年少女移動中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優理花に案内された女性チームは1つの扉の前までやって来た。と、優理花がユニ達を見て言う。

 

「見て驚きますよ、きっと。」

 

そう言ってニコッと微笑むと優理花はゆっくりと扉を開ける。中に入るとそこにはまるで現世でいう高級ホテルのような構造をしていてベッドは5つあり、窓も大きく広い部屋があった。それを見た瞬間、ユニは思わず口を開く。

 

「す、すごいわ!!これが今夜私達が泊まる部屋!?豪華すぎる!!」

 

「あぁ、すごすぎるぜ!これが帝王城の寝室!!幻想郷とは大違いだぜ!!」

 

あまりの興奮にユニと魔理沙はベッドにダイブする。それを見た優理花が口を開く。

 

「うふふ、やっぱり喜んでくれましたね。私が友人を呼ぶときに友人達を泊める部屋なんです。この部屋を見た瞬間みんな興奮して喜んでいましたから。」

 

「す、すごいとしか言葉が浮かびませんよ、優理花さん。」

 

呆然となりながら楓が言う。そんな彼女とは別に魔理沙とユニほどではないが少し興奮しながら霊夢と九十九が口を開く。

 

「ほ、本当にここに泊まっていいの?|

 

「本当にいいのか?」

 

「ご自由に使ってください♪派手に暴れなければ問題ないですよ。」

 

「やったー!!」

 

ユニ達は興奮する以外のことは考えていない様子でベッドの上ではしゃいでいた。そんな彼女達を見た優理花が口を開く。

 

「では私はここで失礼します。お休みなさい♪」

 

そう言うと彼女はユニ達の部屋からゆっくりと出ていった。それを見た瞬間、ユニが布団に潜り込み、言う。

 

「私はもう寝るわね、お休み!!」

 

そう言うと彼女は寝息を立てて寝てしまった。そんな彼女を見た瞬間、楓がユニの隣のベッドに潜り込み、言う。

 

「それじゃあ私も寝る。お休み。」

 

「んじゃあ私はここだ!!」

 

「私はここよ!!」

 

「私は余った場所にするぜ!!」

 

楓に続いて九十九、霊夢、魔理沙の順番でベッドに潜り込んだ。と、霊夢が口を開いた。

 

「ねぇ、じゃんけんで負けた人が電気を消すっていうやつしない?」

 

「いいぜ!そう言うのは好きだぜ。」

 

「乗った。」

 

「やってやるわ!」

 

「はぁ、仕方ねぇなぁ。」

 

そう言うと5人は手を出し、

 

「じゃーんけーんポン!!」

 

同時に出す。結果はユニを除く四人がチョキ、ユニのみがパーになった。九十九は思わず喜びの声を上げる。

 

「ヨッシャア!!」

 

「そ、そんな、私一人で負けるなんて・・・。」

 

「んじゃあ電気を消してもらおうか、ユニ。電気はあそこだ。」

 

そう言うと楓はある方向を指差す。彼女の指差す場所は扉の近くにあるスイッチでユニから一番遠い場所にある。それを見たユニがはぁ、と溜め息を吐き、言う。

 

「一番近い魔理沙がやればいいのに・・・。」

 

ブツブツ言いながらユニは電気を消す。その瞬間、部屋が真っ暗になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ、ちょっと誰だ私のことをくすぐるのは!!アハハ、やめてくれだぜ~。」

 

「ちょっと楓!!私の体を触らないでくれ~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、魔理沙と九十九の声が辺りに響く。それを聞いた瞬間、ユニは電気を付ける。明るくなった部屋には魔理沙と九十九にこちょこちょをする霊夢と楓がいた。四人を見た瞬間、ユニが口を開いた。

 

「ちょっと、もう寝なさいよ!!」

 

「ほーい。」

 

「消すわよ。」

 

そう言って彼女は再び電気を消す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと魔理沙!!それはやめて~!!」

 

「待て待て九十九!!それは痛い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて霊夢と楓の叫び声が部屋に響く。それを聞いた瞬間、ユニは再び電気を付ける。明るくなった部屋には魔理沙に足つぼマッサージを受ける霊夢と九十九に4の字固めを受ける楓がいた。

 

「・・・あのねぇ、修学旅行に来た訳じゃないんだから早く寝なさいよ!!」

 

「以外だな。ユニが修学旅行という言葉を知っているなんて。」

 

「馬鹿にしないでよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、このやり取りが3度続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって男組。メルト・グランチに案内された悠岐達は部屋に入る。内容は大体女達と同じだったので省略。

 

「・・・なんか俺達の様子カットされたんだけど作者に。」

 

「作者め・・・俺達になんの恨みがあるって言うんだよォ!!」

 

騒ぐ悠岐と百々に暁が口を開く。

 

「まぁいいじゃないですか。」

 

「よくねぇよ!!」

 

「(´・ω・`)」

 

二人の突っ込みにしょんぼりとなってしまう暁。そんな中、琥珀がやれやれというポーズをして言う。

 

「君達は細かいことを気にするんだね。僕だったらしないけど。」

 

「なんだお前、自分は大人だからそういうこと気にしませんよアピールでもしてんのか?」

 

「勿論。」

 

「あーもう色々今日は疲れたな。とにかく俺は寝る!」

 

そう言うと百々は布団に潜り込み、眠る体勢に入る。それを見て悠岐と暁も布団に潜り込む。と、布団へ潜り込もうとした琥珀に悠岐が口を開く。

 

「おい琥珀、電気消しておいてくれ。」

 

「何故僕なんだい?」

 

「お前が一番電気のスイッチに近いから。」

 

「はぁ、仕方ないなぁ。」

 

そう言いながら彼はスイッチを押した。男チームは女チームとは違い、電気を消して数分で皆寝入ってしまった。




はしゃぐ女チームとすぐに寝入る男チーム。本当に最終決戦大丈夫なのか?
次作もお楽しみに!


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第140話 真夜中の女子会

メルト・グランチから極秘作戦を告げられたユニ達。


「おい、起きろ。起きろよ楓。」

 

「んぁ・・・なんだ九十九。」

 

「ちょっと頼みたいことあんだけど、いいか?」

 

「別に構わないが・・・何の用なんだ?」

 

目を擦りながら楓は言う。そして彼女は枕元にあったスマホの電源を付ける。スマホの画面には2時30分を示されている。そして彼女は九十九の方を見る。

 

「……と、トイレに付いてきてくれ。」

 

少し恥ずかしそうに九十九は言う。それを聞いた楓は目を見開いて言う。

 

「と、トイレ!?まぁ、確かに帝王城は広いし夜になると暗くなるからな。仕方ないな、行くか。」

 

「わ、悪い。どうしても幽霊が苦手でさ。」

 

「幽霊が苦手とかお前は妖夢か。」

 

そう言いながら彼女は枕元にあった自分のスマートフォンを手に取り立ち上がる。

 

「ほら、行くぞ。」

 

「だって殴れないだろ……って、待て!置いてくな!」

 

「早く来いよ。」

 

そう言いながら楓はスマホの明かりを便りに薄暗い廊下を歩く。

 

「……やっぱスマホって便利なもんだなぁ。」

 

楓のスマホを見て九十九はそんなことを言った。それを聞いた楓はすぐに言う。

 

「本来なら懐中電灯とか使いたかったんだけどな。ないから仕方ない。あーあ、充電が40%切っちゃった。」

 

「……スマホいぞんしょー。」

 

「悠岐よりはマシだ。あいつなんて異変とか仕事がない時は四六時中いじってるからな。」

 

「ふーん。っと、着いた着いた。絶対に待ってろよ!」

 

念を押すように九十九は言う。その声はほんの少しだけ震えている。

 

「あっちょっと待て!そこは・・・。」

 

楓が呼び止めようとしたがその時は既に遅かった。九十九がトイレだと思って開けた扉の奥には寝息を立てながら寝ている巨大な黒いドラゴンがいた。それを見た九十九は少し驚いたものの、冷静さを取り戻し、口を開く。

 

「……なんだ、ただのドラゴンか。驚かせやがって。起こさないようにっと。」

 

ドラゴンを起こさないようにゆっくりと扉を閉めた。そんな彼女に楓が口を開いた。

 

「起こしたら食われると思うんだ。こいつは慣れていない奴には容赦なく襲うらしい。」

 

「ふーん。……てかトイレどこ?」

 

「もう少し先の場所の筈だが、暗くて良く分からんな。」

 

「光は出せなくもないんだが……。」

 

その時だった。突如二人の背後からコツコツと何かがこちらへ向かってくる足音が響いた。それを聞いた楓は背後を振り返り、言う。

 

「・・・誰か来る?」

 

「足音からして、戦うような人じゃないな。」

 

「・・・んじゃあ幽霊か?」

 

「……((((;゜Д゜))))」

 

「行ってみるか。」

 

そう言うと彼女は足音のする方向へ歩み始めた。

 

「ま、待ってくれ!私も行くから!?」

 

へっぴり腰のまま九十九は楓を追う。

そんなふたりを見つめる1人の人物がいたりした。

 

「……何してんだあいつら。まぁ、いいか。」

 

足音が聞こえた方へ少しずつ進んでいく楓と九十九。と、楓が辺りを見回しながら言う。

 

「・・・あれ、誰もいないぞ。」

 

「……え、マジで幽霊?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?お二人は・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッッッ!?」

 

背後から突然女性の声が響いた。

 

「キャァァァ!?」

 

思わず叫び声を上げる九十九。そんな彼女とは別に楓は咄嗟に背後にスマホを向ける。背後にいた存在を見た楓は手を震わせながら言う。

 

「あ、ゆ、優理花さん!?」

 

二人の背後にいたのはとし背が高く、黒い鮮やかな髪の女性だった。彼女は電気等を何も持っていなかった。彼女の足元には体長1mほどの蜘蛛もいる。

 

「……お化けじゃ、ない?」

 

「優理花さん!!びっくりするじゃないですか!!」

 

「ごめんなさいね、私は夜の見回りは電気等を持ち歩かないんです。代わりに帝王蜘蛛(エンペラースパイダー)を連れて行うの。」

 

「……く、蜘蛛かぁ。びっくりさせないでくれよ。」

 

「うふふ、ごめんなさいね。ところで二人はどうしてこんなところに?」

 

「九十九がトイレ行きたいって言うので付き添いで来たんです。」

 

楓の言葉に、九十九は思い出したように言った。

 

「あ、あの……トイレ教えて、下さい。そろそろ、げ、限界で……。」

 

「トイレですか?トイレならあそこにありますよ。」

 

そう言う彼女の指差す先には『ぶっ殺す、いつか!!』と書いてある扉があった。

 

「……とい、れ?」

 

「えぇ、ユニちゃんのお兄さんのモルトさんが貼って行ったんです。私と交際しているグランチさんに嫉妬しているみたいで。」

 

「えぇ……。」

 

九十九が困惑してる中、トイレ(?)の扉が開かれた。

 

「ふぅ。スッキリした。……ん、楓さんに九十九さん。こんばんわ。あ、優理花さんトイレの場所を教えていただきありがとうございました。」

 

「うふふ、いいのですよ暁君。助け合うのが当たり前ですから。」

 

そう言うと彼女は優しさに満ち溢れた笑みを浮かべた。

 

「では、失礼します。おやすみなさい。」

 

「おやすみなさい。」

 

部屋へ戻る暁に手を振る優理花。と、楓が口を開いた。

 

「・・・まさか、男女混合、ですか?」

 

「ここは男女混合で嫌な人のためのトイレなのですが私が教え間違えてしまいましたね。」

 

「そんなのいいから!私はこのトイレを使わせてもらう!」

 

「あー入っちゃった。」

 

「よっぽど我慢していたのですね。」

 

数分後、スッキリした顔の九十九が出てきた。

 

「スッキリしたぜェ……。」

 

「落ち着きましたか?」

 

そう言った瞬間、辺りにギュロロロという音が響いた。

 

「……雷?」

 

「・・・。」

 

雷と言う九十九とは別に楓は顔を赤くしていた。

 

「お腹が空いたのですか?」

 

「ッ!?」

 

優理花の言葉を聞いた瞬間、楓は声にならない声を上げる。そんな彼女とは別に九十九が口を開く。

 

「あー、そう言えば百々も空腹の時そんな音だしてたな。」

 

「・・・お腹、空きました。」

 

「素直でよろしい。夜食はあまりよくありませんが何かお作りしましょうか?」

 

「いいんですか!?」

 

「私もご一緒していいのか?」

 

「構いませんよ。」

 

「やったー!!」

 

「ヨッシャア!!」

 

優理花の言葉を聞いた瞬間、二人は喜びの声を上げる。そんな二人に優理花が口を開く。

 

「では私の部屋に行きましょうか♪」

 

「そういえば部屋ってここから近いのか?」

 

「少し歩けばすぐ着きますよ。」

 

「それは安心した。」

 

「うわっ、ゴキブリ!?」

 

突然彼女は九十九の足元から聞こえたガサガサという音のする場所を指差して叫んだ。

 

「んだよ、ゴキブリ程度で情ねぇ。」

 

そう言って九十九はその手でゴキブリを潰した。

 

「ちょっと手、洗ってくるわ。」

 

「あ、このゴキブリ、最近帝王竜(エンペラードラゴン)のウンコから出たものですね。ここへ逃げていたのね。」

 

「うっわ、汚ぇ……。」

 

優理花の言葉を聞き、ブンブンと自分の腕を振りながらトイレに戻る九十九。その瞬間、カタカタと九十九のズボンから何かが落ちた。

 

「あ、ちょっと九十九ちゃん!ズボンから何か落としましたよ。」

 

そう言うと優理花は九十九のズボンから落ちたものを拾う。

 

「手洗うまで持っててくれー。」

 

「分かった~。」

 

「楓ちゃん、彼女は幻想郷の方なのですよね?」

 

「えぇ、そうですが?」

 

「どうしてスマホをこんなにもっているのかしら?」

 

そう言う彼女の手にはそれぞれ赤、青、紫色のスマホがあった。

 

「これは?」

 

「何故3つもスマホを?」

 

「九十九~、なんでお前スマホ持ってるんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、悩める少女たち。ボクが答えてあげようか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓の外から、そんな声が聞こえた。

 

「・・・琥珀・イーグナーウス。知恵の妖精さん、教えてくださいな。」

 

彼女の対応は冷静だった。

 

「……うーん、その冷静対応は初めてだね。で、君は聞きたいのかな。楓ちゃん?」

 

「・・・聞きたい。」

 

「いいよ。なら教えてあげる。……と、言いたいんだけどそろそろ彼女が帰ってくるね。明日のこの時間、城の東塔で待ってるよ」

 

琥珀はそう言って窓から消えた。それと入れ替わるように九十九が戻ってきた。

 

「ただいま。っと、どうした二人とも?」

 

「九十九ちゃん、このスマホは一体どこで手にいれたの?」

 

そう言うと優理花は3つのスマホを九十九に見せる。

 

「ん、あぁそれな。それは……友人の遺品だよ。」

 

「友の、遺品?」

 

「とりあえず私の部屋に行きましょう。」

 

「ん、そうだな。腹減ったしな。」

 

そう言って笑う九十九の顔は、少しだけ寂しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女移動中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に行くと優理花は冷蔵庫を漁り始め、楓は椅子に座る。そして九十九に言う。

 

「友の遺品と言ったが、お前は現世にいたのか?」

 

「あぁ。私は幻想郷に行かず、ずっと現世に住んでたんだ。」

 

「そこで出会った友の物なのか。友はどうなったんだ?」

 

「……死んだ。エリュシオンに全員殺されてな。」

 

「エリュシオン・・・アイツ、なんでお前の周りに酷いことばかりするんだ?」

 

「人を恨んでいるからですよ。」

 

そう言ったのは優理花だった。そして再び言う。

 

「過去にエリュシオンは人に裏切られたことをきっかけに人を酷く恨むようになってしまったらしいです。まさか表の世界まで及ぶなんて・・・。」

 

「それと、私の存在かな。アイツにとって百々は特別なんだ。だけど、そんなアイツは百々と鏡合わせの私という存在を許せなかった。半人半鬼という存在は百々だけで十分だったんだろうな。」

 

「だが、仲間を殺してまでも・・・。」

 

「なんでか知らんがアイツはそこまで百々にこだわってる。ま、それが弱点とも言えるんだけどな。」

 

「ですが、それだけで戦えると思いますか?彼女は能力も身体能力も桁外れだとグランチさんから聞きました。百々君だけでなんとかなる相手だとは思いません。」

 

「なんとかなるんだよ、これが。エリュシオンという存在へのJOKER。それが伊吹百々という存在だからな。」

 

ま、今までの累計からみた予想だけどな。九十九はそう言って締めくくった。そんな中、楓は口を開く。

 

「本当にうまくいくのか?私からすれば百々を気にしているようには思えない。その根拠に私達に容赦なくメメントモリやカルマを送りつけたじゃないか。」

 

「メメント・モリもカルマも恐らく百々を捕獲するために送られてきたはずだ。だけど、エリュシオンは2人の『感情』を度外視していた。だからあの二人はあんな風になったんだろうな。」

 

「出来ましたよ♪」

 

話す二人に優理花は肉丼持ってきた。

 

「いただきます!!」

 

そう言うと彼女は速攻で肉丼に食らいつく。と、九十九が優理花に言う。

 

「……これなんの肉?」

 

「牛肉ですよ。」

 

「牛丼か。……なんか、食べたことある味と違うんだよなぁ。」

 

「鬼なら人肉を食べるというのは聞いたことありますが、あなたは人肉を食べたことあるの?」

 

「あ、そういう訳じゃなくてだな。」

 

ほんの少し、言いにくそうにしながらも九十九は言葉を続けた。

 

「さっき話した友人……赤いスマホ本来の持ち主と食った牛丼よりも暖かいなって思ってよ。」

 

「私、あなたの友人のこと分かる気がします。」

 

唐突に何かを言い出す優理花。そんな彼女に九十九が口を開く。

 

「……そうか?あのゲーマーのことを?」

 

「恐らくですが、あの神ガイルゴールに力を与えられた高校生達のことですよね?」

 

その言葉を聞いた時、九十九の顔が少しだけ鋭くなった。

 

「……なんでそう思った。」

 

「私、こう見えてある守護者と契約を結んだ者なんですよ。彼が言っていたのですが特別な力を得た高校生にはそれぞれスマホが与えられていると。そのスマホの色の意味は火、水、木、光、闇を意味しているとね。」

 

「……なるほどな。それなら知ってておかしくないか。」

 

「話についてこれん・・・。」

 

「その友人達を殺すエリュシオンは侮れぬ相手ですね。恐らくですがセコンドさんやグランチさんといった五大王の方々でも相手にならないほどの力を持っています。」

 

「だろうな。アイツらは周りのヤツらから『爆絶なる者達』として恐れられていたからな。」

 

「爆絶なる者達?」

 

「あなたはまだ知ることはないですよ、楓ちゃん。」

 

「ま、今度な。」

 

「そう言えば、幻獣達のデータが分析されましたよ。」

 

そう言うと優理花はパソコンを二人の元へ持ってきた。

 

「……この屋敷パソコン回線まで通ってんのかよ。」

 

「通りますよ。私達の部下の調査によりますとエリュシオンのところの幻獣はワニ、ピラニア、ゴリラ、鷹、コウモリ、バッファロー、ユニコーンの7種類がいます。」

 

「……狼はいないのか?」

 

「狼?何のことですか?」

 

「・・・?」

 

「……いや、なんでもない。忘れてくれ。」

 

「そうですか。まぁともかく、これらが分かったのでそれぞれの動物の習性を理解すれば幻獣達は敵ではないですよ。」

 

「そうだといいが……。アイツのことだ。変な芸仕込んでても違和感ねぇよ。」

 

「そうですね、何してもおかしくありません。」

 

そう言うと彼女は時計を見て再び言う。

 

「あら、もうこんな時間・・・。二人とも、今日はもう眠りなさい。決戦の時に体が動きませんよ。」

 

「結構話し込んだみたいだな。ならサクッと寝るかぁ……。」

 

「明日昼寝しよ。」

 

そう言うと二人は優理花の部屋を出る。




九十九の友人、エリュシオンの幻獣。夜の女子会は楽しくもなく、盛り上がることもなかった。
次作もお楽しみに!


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第141話 凶神の不安

九十九の過去、エリュシオンの幻獣のことを話した三人。


「・・・・。」

 

場所は大きく変わる。そこは幻想郷でもなく、現世でもなく、四角世界(マインクラフト)でもない。強いていえば表の世界ではない、裏の世界である。そこにある巨大な城、鋼鉄城にてエリュシオンが一人部屋でぼーっとしていた。

 

「・・・・はぁ。」

 

一人溜め息を吐く彼女の頭の中には6人の存在が浮かんでいた。自分の大切な家族の闘神達のこと、そして心から愛している一人の少年、伊吹百々のことだった。と、彼女は頭を抱え始めた。そして口を開く。

 

「他に方法は無かったのかしら・・・。もっといい策があればドゥームとニルヴァーナもメメもカルマも死なずに済んだと言うのに。そしてアカシャも裏切る計画を立ててはいなかった筈。私の教育が至らなかったから?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を一人で嘆いているのだ?エリュ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、彼女の部屋の奥から男の声が響く。それを聞いたエリュシオンは後ろを振り返り、言う。

 

「あら、テルヒじゃない。今日は眠れないの?」

 

「眠れるも何もエリュの嘆きを聞いたからには側に居てやらねばと思ってな、ついつい来てしまった。」

 

「フフ、いいわ。おいで。」

 

彼女が言った瞬間、部屋の奥にいた存在、テルヒが姿を現した。その姿は青と白の毛の模様に赤い目、地面から肩までの高さは2mほどあり、体長は4m越えの狼だった。テルヒはエリュシオンの座っている椅子の隣に座る。エリュシオンはテルヒの頭を撫でながら言う。

 

「テルヒ、私はどこか間違っているのかしら?私の計画も教育もあらゆること全てが・・・。」

 

「私はエリュを心から信じている。エリュに間違いないなどない。」

 

「そうよね・・・。」

 

「・・・何か不安なのか?」

 

「えぇ、まぁね。」

 

そう言うと彼女は座っている椅子の前にあるキーボードを打ち込み始める。しばらく打ち込んでいると二人(二人って良いのかな?)の前に宙に浮かぶ画面が映し出された。それを見たテルヒは目を細めて言う。

 

「エリュ、これは?」

 

「表の者達が何を企んでいるのか見てみるの。あの子達には絶対に気づかれないから。」

 

そう言った瞬間、画面にたくさんの人が集まっていてその人の前に立って話す女性の姿が表示されていた。それを見たテルヒが口を開いた。

 

「ビオラ・ハイラルド。失明したとは聞いていないがエリュがやったのか?」

 

「えぇ、そうよ。あの子の能力は正直に言うと厄介なの。私のあの貫通ゲイボルグを唯一防ぐことの出来る能力だから削除させてもらったし、片方の視力も失わさせてもらった。そして、部下も失わさせてもらったわ。」

 

「確かにビオラ・ハイラルドの能力は厄介だ。だが、他にも面倒な奴はいるのではないか?」

 

「五大王も私が本気を出せば何の問題はないわ。」

 

「だがエリュ、五大王だけとは限らぬぞ。あのガイルゴールや龍神、バベルが来ないとも限らぬ。そして百々が記憶を取り戻さないとも限らぬ。」

 

「私もそれなりの対策はするつもりよ。」

 

「それで奴等の話によるとどうやら早朝に我々の城へ攻め込むようだな。」

 

「早起きする私達には何の問題もないわ。それに城から半径6kmの範囲には空間移動出来ないようにしてあるからあの子達がすぐにやって来ることはないわ。」

 

「城へ侵入された時の対処は?」

 

「城をある程度改造しておいたの。私はね、分かるの。ここへ来るのは一部の子だけ。」

 

「というと?」

 

「幻想郷の守護者のアイアルト・ユニこと八意百合姫、博麗霊夢に霧雨魔理沙、西田悠岐に出野楓、星熊九十九に琥珀・イーグナーウス、博麗暁、そして百々。」

 

「何故そう思うのだ?」

 

「あの子達は私が大人数専用の罠を仕掛けると思っているわ。そこであの子達を先に行かせて私の討伐に向かうと思う。そこで少し改造して簡単には行かせないようにしたの。」

 

「なるほど。それで、どのような改造をしたのだ?」

 

「うふふ、最終決戦でのお楽しみよ。あの子達が苦戦するようなものを用意したわ。」

 

「それを越えられたら私も戦うようなのか。」

 

「当たり前じゃない。私の計画は必ず成功させて見せるわ。例えどんな奴が来ようともね。」

 

「フッ、エリュらしいな。私はその根性が好きだ。」

 

「ありがとう、テルヒ。」

 

そう言うと彼女は立ち上がった。彼女と同時にテルヒも立ち上がる。そして二人は部屋を出ると城の展望台のような場所に出て夜空を眺める。と、エリュシオンが口を開く。

 

「幻獣達の準備は大丈夫?」

 

「問題ない。アイツらも表の者達を倒したくてウズウズしているのだから。」

 

「そう、それなら良かったわ。とりあえず何が起こるのか分からないから厳重に警戒することね。」

 

「エリュ、1つ聞きたいことがあるのだが。」

 

「ん?何?」

 

「エリュにとって最も厄介だと思われる相手は誰だ?」

 

「私にとって面倒な存在?結構いるのよねぇ。星熊九十九や琥珀・イーグナーウス、博麗暁以外にもね。」

 

「他に?」

 

「五大王の一人で、奥の手を持っている存在よ。」

 

「・・・ゴールド・マーグルではないな。では小宝剛岐か?いや、違うな。ではメルト・グランチ・エンペラー?それともセコンド?」

 

「ぶっぶー、全員違いまーす。」

 

「全員違う?では厄介だと言うのは?」

 

「そう、唯一残っている五大王の一人、アイアルト・モルトよ。」

 

そう言う彼女の額には少量ではあるが汗が垂れていた。




エリュシオンとテルヒ。何食わぬ会話をしている二人は何を企んでいるのか。
次作もお楽しみに!


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第142話 篁vs九十九

エリュシオンとテルヒは最終決戦に向けて策を考えていた。


「九十九ちゃん、起きて九十九ちゃん。」

 

「……んあ?」

 

一人の少女に揺らされた九十九は目を擦りながら起きる。そんな彼女を起こしたのは優しく、明るい少女、ユニだった。と、ユニが九十九に言う。

 

「あ、やっと起きた。随分と寝てたわね。まぁ昨日いろいろあったし仕方ない、かなぁ。」

 

「今、何時……?」

 

「今?10時よ。」

 

「10時……10時!?」

 

ユニの言葉を聞いた九十九は驚くようにユニに問いかける。

 

「え、えぇそうよ。」

 

「やっべぇ!悠岐たちに呼ばれてんの忘れてた!」

 

「悠岐君達なら今庭にいるわ。早く行きましょう!」

 

二人が庭へ向かう音が城の中に響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女移動中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、来た来た。随分と寝てたな、九十九。」

 

庭に着くとそこには庭のベンチに腰を降ろす悠岐と彼に耳掻きをしてもらっている楓、そして彼の隣には霊夢、魔理沙がいた。

 

「夜中に少しな……。っと、それよりも残りの男衆はどうした?」

 

「暁と琥珀は飯食いにいった。百々は多分もう少ししたら来るんじゃないか?」

 

「まだ時間はかかりそうだよ、彼。」

 

「琥珀じゃないか。暁はどうした?」

 

後ろから聞こえた琥珀の声に、楓はすぐに返答し、悠岐はそっちの方へと顔を向ける。そこにはなぜかぷちキャラ化された琥珀がいた。

 

「彼は本体と一緒に食事中さ。」

 

ぷち琥珀を見た悠岐は驚きながらも彼に言う。

 

「お前ちっさ!!ところで、百々は知らないか?」

 

「仕方ないだろう?『ケーキ爆食いして動けなくなったからもう少し時間がかかる』とかいうアホみたいな伝言を伝えるためだけにリソースは使えないからね。百々は誰かと一緒にここへ向かってるのを見たよ。」

 

「誰かと?」

 

「ひょっとしてアイツか?」

 

首を傾げる楓とは別に悠岐は冷静に言う。と、琥珀が再び口を開く。

 

「君の中での『アイツ』が誰だかわからないけど、男性だったとは報告しておくよ。じゃあね。」

 

ぷち琥珀はそう言って消えた。彼のいた場所には『式』の文字が刻まれた紙が落ちていた。それを見た魔理沙が口を開いた。

 

「式?」

 

「確か百々ってあの人と仲良いわよね、私あんまり関わったことないけど。」

 

「式神のことだろーよ。ほんっとに器用だなアイツ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「庭ってこの辺だよな?百々。」

 

「おうよ。っと、ほらいたいた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九十九が言った瞬間、ユニ達の所へ二人の男がやって来た。男の一人を見た瞬間、魔理沙が口を開く。

 

「あ、あいつは!!」

 

「よォ、お前確か霧雨魔理沙だよな?そしてお前が博麗霊夢。」

 

「は、初めましてって言うべきかしらね?小野塚篁さん。」

 

「お待たせ―。」

 

「おせぇぞ百々。お前篁と何してたんだ?」

 

「髪、赤くて長い・・・。」

 

楓の呟きは誰も聞こえることはなかった。そんな彼女とは別に百々が悠岐に言う。

 

「何もしてねぇよ。厠の帰り道で会ったから連れてきたんだ。」

 

「そんなとこかな。そんじゃ百々、やるか。」

 

「何やるの?」

 

「篁のことだから1つしかないだろ。」

 

ユニの疑問に悠岐が答える。そんな中、百々が口を開く。

 

「おうとも。サクッとやって休もうぜ。」

 

「そんじゃあ始めようか!!」

 

そう言うと篁は巨大な鎖鎌を取りだし、構える。篁の行動に合わせて、百々も同じように拳を構える。と、何かを思い出した霊夢が口を開いた。

 

「篁さんって確か幻想郷最強の魂狩人(ソウルハンター)よね?そんな彼に百々が勝ち目あるの?」

 

「勝ち目はないけど負けることもないッ!!」

 

彼は霊夢の言葉に対し、そんなことを堂々と言った。

 

「それは堂々と言えることじゃないわよ・・・。」

 

「鎖鎌?でかいな。」

 

「キラー鎖鎌。」

 

楓が鎖鎌の大きさに呆然としていた時、ボソッと腹をさすりながら歩いてきた暁が言った。

 

(流石に意味不明なんだけど……。)

 

そんな彼の後ろにが何とも言えない顔の琥珀がいた。と、楓が暁に言う。

 

「なんか言ったか?暁。」

 

「いえ、何でもありません。それよりこれ、どういう状況なのですか?」

 

「まぁ、色々とあってな。」

 

「あっ……(察し)。まぁ、なにも聞かないよ。」

 

「今にも九十九ちゃんが飛び出して行きそうだけど、あれはいいのかい?」

 

と、篁がじっとしている百々を見て目を細めて言う。

 

「どうした?来ないのか?百々。」

 

「……いや、背後から視線を感じてな。」

 

「誰だ?」

 

「私だ。」

 

「九十九?」

 

百々の背後にいた九十九を見た篁は目を細める。そんな彼に九十九が言う。

 

「いや、場違いなのは分かってるんだがな。どうしても鬼の血と喧嘩屋としての血がな……。」

 

「そういやお前、何でも屋やる前は喧嘩屋だったけな。」

 

九十九の言葉に一人納得する百々。そんな中、篁が口を開く。

 

「ほう、俺とやるつもりか?」

 

「楽しそうだからな。」

 

「お前とやるのは初めてだな。」

 

「おっ、乗り気じゃん。百々との邪魔したから断られると思ってたんだけどな。」

 

「戦うなら誰とでもいいさ。それに、俺はお前の実力も見ておきたいところだしな。」

 

「そーかい。なら付き合ってもらうか。」

 

チラリと百々を見る九十九。彼はどこからか取り出したのか、酒を手にしていた。と、楓が二人を見て言う。

 

「楽しみだな、死神と鬼の戦いは。」

 

「酒……は飲めないのか。水でも飲むか?楓。」

 

「飲む。」

 

「妖怪の山にあった湧き水だ。うめぇぞ。……ちゃんと妖力は抜いてあるから安心しろよ。」

 

「俺は九十九と篁の様子でも見ようかな。」

 

「巻き込まれないようになー。」

 

「別れるのか。ならそっちに行きますか。」

 

悠岐、楓、百々、暁がやりとりしている中、篁が口を開いた。

 

「俺は見ての通り鎖鎌を使うがお前は素手でいいのか?」

 

「まずはね。下手に武器使っても絡み取られるだけだろうしな。」

 

「ほんじゃ、来いよ。」

 

そう言うと彼は空いている左手首をクイクイと動かして挑発した。

 

「んじゃあまぁさっそく―――」

 

九十九は己の拳を地面に叩きつけ、その反動で隆起した地面で篁へ攻撃を仕掛けた。それを見た魔理沙が言う。

 

「やっぱり鬼はあんなこと出来るからすげーよな。」

 

「おもしレェ。」

 

そう言うと彼は鎖鎌を地面に刺した。その瞬間、隆起した地面を止めた。と、百々が唐突に口を開いた。

 

「というかアイツはここが他人の家だと覚えているのか?」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

百々は一度深呼吸をして、

 

「死んだな、アイツ。」

 

そう言った。

「当たり前だ。メルト・グランチの敷地荒らした奴は優理花さんに殺されるんだから。」

 

楓の体は何かに怯えているように震えていた。百々の言葉に気にせずに九十九が口を開く。

 

「やるじゃねぇか。なら今度のはどうだ?」

 

右手に弾幕を展開し、九十九はそれを鬼の力で投げた。それを見た暁は思わず呟く。

 

「……野球のおねーちゃんかな?」

 

「ほう。」

 

そう言うと彼は今度は鎖鎌を地面に刺したまま左手を構え、

 

「オラァッ!!」

 

九十九の投げた弾幕を殴り、別の方向へ飛ばした。それを見た暁が再び口を開く。

 

「ホームラン?」

 

「野球だったらな。だがこれは野球じゃねぇ。喧嘩なんだ。」

 

「優理花さんに怒られても私は知らないぞ。」

 

「……あ、弾幕が花畑に。」

 

「花畑!?これはマズイ、あのオバサンがカンカンになって来る!!楓逃げるぞ!!」

 

「あぁ、ってえぇ!?」

 

そう言うと彼は楓を抱えて何処かへ走り去ってしまった。

 

「ちょっと悠岐君に楓ちゃん!?」

 

二人の名を言うユニはただ呆然と見ることしかしなかった。

 

「ちょいと直してくるかぁ……。」

 

「手伝うよ。」

 

「サンキュ。」

 

百々と琥珀はそう言って飛んで行った弾幕を追った。そんな中、霊夢が口を開いた。

 

「なんか私達取り残されたんだけど。」

 

「まっ、いいじゃないか。私達は大人しくして二人の戦いでも見てようぜ。」

 

「……もうこれ以上被害が出ないように結界でも張るべきなのでしょうか?」

 

霊夢に対して暁はそう問いかけた。

 

「お願い、暁。」

 

「分かりましたよ、姉さん。」

 

そう言って暁もその場を離れていく。そんな中、篁と九十九の戦いはエスカレートしていた。

 

「おもしレェぞ九十九!お前なら百々より楽しませてくれるのかもな!」

 

そう言いながら篁は鎖鎌を九十九に何度も振り下ろす。

 

「そう言いながら全く近づいてこねぇのな。」

 

おろされた鎖鎌を回避しながら九十九は呆れ気味にそう言う。

 

「果たしてそうかな?」

 

そう言った瞬間、九十九の足に篁の持つ鎖鎌の鎖が絡まった。

 

「っと、やられた!」

 

「油断したな、九十九!」

 

そう言うと篁は鎖鎌を引っ張る。引っ張られた影響で九十九は転ぶ。

 

「ただでは転ばねぇぞ!!」

 

足にある鎖鎌を引っ掴み、九十九はそれを思いっきり自分の方へと引いた。

 

「ぬおっ!?力比べか。」

 

そう言うと篁も鎖鎌を思いっきり引っ張る。鬼と霊。本来であれば勝つ方など火を見るよりも明らかなのだが、鬼は転んで力が入らず、霊は両足で地面に立っており、力比べの行方が分からないものとなっていた。と、魔理沙が口を開いた。

 

「二人って戦うイメージが強いからここで見れて良かったぜ。」

 

「結界張ってる身としましては、二人のパワーが強すぎまして維持大変なんですよね。」

 

「もう終わらせる?メルト・グランチか優理花さん呼んでくるわよ。」

 

「あ、それに関しては大丈夫です。おそらくどちらかがそろそろ来る頃だと思うので。」

 

暁の言葉を聞いた二人は同時に九十九と篁の方を見る。九十九も篁も正座をして、優理花に叱られていた。

 

「全く、あなた達は明日が最終決戦だと言うのに何ですか?勝手に私達の敷地内で暴れて、花畑荒らして。どうするつもりですか?」

 

静かに言うのが逆に恐ろしいのか、二人は震えていた。

 

「とりあえず花畑は元の姿を取り戻しましたよ。」

 

そんな優理花に琥珀がそう報告してきた。

 

「ありがとうございます、琥珀。それで、九十九に篁、どう責任を取るのですか?」

 

「……ここに、ナイフが一本あります。」

 

百々の言葉を聞いた優理花は彼からナイフを取り上げ、言う。

 

「いいですね、これを使って二人の腱でも斬ってしまいましょうか。」

 

「腱を斬る!?」

 

「……切腹じゃなくていいんですか?」

 

反応の違い過ぎる二人であった。

 

「切腹ならこれを使いましょう。」

 

そう言うと彼女は鋭利な刃をした刀を取り出した。

 

「不肖九十九、腱を切って切腹させていただきます。」

 

「オイ九十九!!本当にやるつもりなのか!?」

 

「先に行かせてもらいます。篁さんはよく考えてくださいね。」

 

九十九は百々からナイフを受け取り、それで自身の腱を切り裂いた。その後、刀を手に取り、切腹した。それを見た霊夢は目を見開いて言う。

 

「うわぁ、本当に切腹したわよ。」

 

「根性あるぜ九十九。」

 

「・・・そんじゃあ俺も行かせていただきます。」

 

そう言うと彼も彼女同様、腱を斬り、切腹した。と、百々が優理花に言う。

 

「……とりあえず血ふき取って布団に投げてきますね。この怪我なら九十九は夕方前には回復すると思いますので。」

 

「お願いしますね。」

 

そう言うと彼女は城の中へと入っていった。と、魔理沙が篁を見て言う。

 

「篁は大丈夫なのかよ?」

 

「……こまっちゃんに連絡しとくか?」

 

そんなことを言いながら九十九を引きずって行った。

 

「任せたわよ。死神なら切腹ぐらいなら死なないから。」

 

「あいよー。」

 

霊夢の言葉に了解の旨を示すためか、九十九の足を持っていない方の手を上げた。と、魔理沙が呟いた。

 

「オッサン、怒るだろうなぁ。」

 

「琥珀、そこにいるんでしょ?悠岐と楓は何処に行ったの?」

 

そう言うと霊夢は魔理沙の後ろにいる琥珀を見ながら言った。彼女の言葉を聞いた琥珀はすぐに返答する。

 

「さあね。今回は本当に知らないよ?なんでったって花畑の様子を見に行ってたんだから。」

 

「悠岐君が言ってた、あのオバサンのこと気になるわね。」

 

「誰のことなの?」

 

「え、BBA?」

 

「知ってるの?」

 

「それとも知らない?」

 

「あるいはどっちでもないとか!?」

 

ユニの言葉に思わず三人はずっこけた。突っ込むことなく琥珀が口を開く。

 

「さて、どっちでしょうか?」

 

クスクスと笑いながら琥珀は3人に問いかけた。

 

「知っている!!」

 

「即答ね・・・。」

 

即答したユニと魔理沙に思わず呆れた表情を見せる霊夢。そんな中、琥珀が再び口を開いた。

 

「君が知ってると思えば知ってるし、知らないと思えば知らないよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのジャガイモ畑の老婆のことだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

琥珀の後ろから唐突にメルト・グランチが現れ、話に首を突っ込んだ。

 

「メルト・グランチ様!」

 

「後ろに立つのやめえもらえませんかねぇ……。」

 

「そうだぜ、辞めてやれよオッサン。あんたが後ろに立つと琥珀がチビに見えてしまうだろ。」

 

「ほう、これは失礼した。」

 

魔理沙に言われたメルト・グランチはゆっくりと琥珀の隣に移動する。と、琥珀が魔理沙を見て言う。

 

「魔理沙もけっこうなチビだよね。」

 

「わっ、私はお前ほどチビじゃないぜ!!」

 

「私ってユニと同じくらいよね?」

 

「えぇ、そうよ。」

 

「魔理沙って楓より大きいの?」

 

「お、大きいに決まってるぜ!!」

 

「帽子脱いでも同じこと言えるのかな?」

 

「うっ・・・。」

 

琥珀に図星を突かれた魔理沙は言葉を詰まらせてしまう。そんな中、メルト・グランチが口を開いた。

 

「そういえば優理花を見なかったかね?」

 

メルト・グランチの言葉に琥珀は無言で例の惨状を指さした。それを見た彼は顔に手を当て、言う。

 

「・・・何となく察したよ。さ、もう中に入って寝たまえ。」

 

「まだ昼なんですけど!?」

 

ユニ、魔理沙、霊夢の三人が同時に突っ込む。そんな三人とは別に琥珀が言う。

 

「神となった人間さんは確かに明日最終決戦と言った。でもそれが明日になった瞬間かもしれないからね。」

 

「はぁ、んじゃあ部屋に戻るわよ魔理沙、ユニ。」

 

「分かったぜ。」

 

「うん。」

 

そう言うと三人は部屋に戻っていった。と、琥珀はメルト・グランチを見て言う。

 

「さて、僕も戻ろうかな。また明日、戦場で会いましょう、メルト・グランチ。」

 

「極秘任務、期待しているよ。琥珀・イーグナーウス。」

 

「はいはい。」

 

そう言うと二人それぞれの部屋へと向かっていった。




帝王城の敷地内で勝手に暴れてしまった九十九と篁。最終決戦は大丈夫なのか!?
次作もお楽しみに!


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特別編

ユニ「私達二人でいいのかしら?」

 

エリュ「別にいいんじゃないの?他の人がいたらまた正月の時みたいになっちゃうかもしれないし。」

 

ユニ「そ、そうね。それじゃあ始めましょうか。」

 

エリュ「東方混沌記を読んでくれるみんな、ごきげんよう、エリュシオンよ。」

 

ユニ「みなさん、どうも!ユニよ。今日は正月とは少し違う特別編ということで私とエリュシオンで進めていくわ。」

 

エリュ「単刀直入に言わせてもらうけれど、今日は私達の生みの親である作者、ヤマタケるの誕生日よ。」

 

ユニ「ヤマタケるさん、今日は誕生日おめでとうございます!」

 

エリュ「ヤマタケるったらね、知ってる?話を作ってる中でネタが浮かばずに頭を抱えて叫んでいたことあるらしいのよ。」

 

ユニ「ダメよエリュシオン!!それは禁句!!」

 

エリュ「フフフ、まぁいいじゃないの。どうせ今日はあの子の誕生日なんだし。」

 

ユニ「やり過ぎにも気をつけなさいよ・・・。」

 

エリュ「分かってるわよ。そんじゃあ本題に入りましょうか。」

 

ユニ「実は私達、ヤマタケるさんの誕生日を祝って何かをしてあげたいのよ。」

 

エリュ「私達とこの東方混沌記を読んでくれているみんなであの子が喜ぶような企画を考えているのだけれど中々浮かばなくてね、悩んでいるところよ。」

 

ユニ「そこでみなさんに提案を頂きたいんです!」

 

エリュ「あの子も喜び、尚且読んでくれるみんなも喜べる、そんな企画を今回は読んでくれるみんなに提案してもらいたいわ。」

 

ユニ「ゲームデータ売るって言ったら彼発狂するし、Goggle playカードプレゼントとかも出来ないし、どうしたらいいのかしら・・・。」

 

エリュ「新キャラ追加もいいと思うんだけれど、そうするとあの子のメンタルが持つかどうかなのよねぇ。」

 

ユニ「こうなったら人気投票をやるしかないわ!」

 

エリュ「やめておきなさい、あの子病んで屋上でグラブると思うから。」

 

ユニ「今思ったのだけれどどうしてグラブることにこだわるの!?そんなにグラブるの好きなの?ヤマタケるさんは!!」

 

エリュ「どちらかと言うとあの子からしたら悪口ね。別に私はグ◯◯ブルファンタジーを馬鹿にしている訳ではないからね。」

 

ユニ「うーん、やっぱりここは読んでくれるみなさんに意見を聞くしかないわね。」

 

エリュ「方法が思いつかないのであればそうするしかないわね。それじゃあ今日から2週間、企画を募集するわ。」

 

ユニ「採用された人も採用されなかった人も何もあげられるものは無いのは申し訳ないわ。」

 

エリュ・ユニ「それではみなさんの意見、お待ちしています!」



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第143話 神からの告げ

帝王城を荒し、優理花に説教を受けた篁と九十九。


夜、女チームにて。

まだ寝ようとは思っていなかったユニ達が布団に座り、話をしていた。

 

「それにしても優理花さん、怖かったわ。」

 

「大人しい女性ほど怖いものはないぜ。」

 

「……思い出させないでくれ。」

 

「すまん、二人のバカが失礼した。テレビでも見て気分を変えよう。恐らく決戦のことを報道しているんじゃないか?」

 

「バカとはなんだ!」

 

叫ぶユニと魔理沙とは別に楓はテレビの電源を入れる。

 

「もうこれ現代なのか幻想郷なのか分かんねぇな……」

 

九十九が言った時だった。テレビを付けた瞬間にザーという音と共に画面に砂嵐が写された。

 

「・・・あれ、繋がらない?」

 

「どうなってるのよ、幻想郷と同じく復旧してないんじゃないの?」

 

「いや、そんな筈はないんだが・・・。」

 

そう言うと楓はテレビのリモコンのボタンをいくつか押す。しかしいくら押しても何も起こらない。ボタンを押す楓にユニが口を開く。

 

「故障してたの?」

 

「分からない・・・。」

 

「あー、こういうのはやっぱ―――。」

 

九十九は布団から起き上がり、テレビへと近づいた。

テレビの目の前に立つと、彼女はその手を振り上げた。

 

「―――斜め45度!!」

 

「何してんだお前は!!」

 

思わず突っ込む魔理沙。そんな中、楓がスマホをいじり始め、耳元にあてる。それを見た霊夢が楓に言う。

 

「誰に電話しているの?」

 

「悠岐にだ。テレビ写るのか聞く。」

 

「……やっべ、変な煙出たきた。」

 

「また優理花さんに怒られるわよ!」

 

すかさず九十九に言うユニ。そんな中、楓が悠岐に電話して数分もしないうちにガチャという音が聞こえる。

 

「もしもし、なんだ楓。」

 

「悠岐、聞きたいことがあるんだが、そっちのテレビは付くか?」

 

「テレビ?あぁ、付くさ。そして今百々達と鉄◯DASH見てる。」

 

「あれ、まだやってたのか。」

 

「話に着いていけないぜ・・・。」

 

「・・・そうか。実は私達のほうは繋がらなくてな、今九十九が壊したと思われる。」

 

「さっきまでは付いたのか?」

 

「いいや、付かなかった。九十九がやったから多分付かない。」

 

「そうか。なんならメルト・グランチにでも・・・あれ、テレビが砂嵐に・・・。」

 

「お、おい悠岐!電波が遠いぞ。」

 

そう言った瞬間、ツーツーという音が響いた。それを聞いたユニが口を開く。

 

「電話が切れた?」

 

「変だな。電波の状況が悪い訳でもないのに。」

 

カチャカチャとテレビを弄りながら九十九は言う。

 

「電波が悪い?」

 

「そうみたい・・・って、え?」

 

「どうしたんだ、霊夢。」

 

「私達のテレビ、画面が砂嵐になってないわよ。」

 

彼女の言葉を聞いたユニ達は一斉にテレビの画面を見る。そこには砂嵐になっておらず、何処か見知らぬ場所が写し出されていた。それを見たユニが言う。

 

「これって、ホラー映画であるようなやつ?」

 

「やめれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフフ、ごきげんよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

ユニが言った瞬間、突如辺りに女性の笑い声が響く。

 

「ひゃぁ!?」

 

「プププ、その反応面白いわねぇ、星熊九十九。」

 

「こ、この声・・・。まさか!?」

 

「そう、そのまさかよ。出野楓。」

 

その声が聞こえた瞬間、テレビの画面に腰まで伸びる銀髪に青い瞳、白いスーツを着た女性が写し出された。

 

「……なんだ、お化けじゃ無いなら怖がる必要もねぇな。」

 

「あなたは、エリュシオン!」

 

「ごきげんよう、気分はいかがかしら?」

 

「いまさっき悪くなったよ。」

 

「何のようだ?敵がこちらに繋げてくるとは私達の策を聞き出しにきたな?」

 

「なーに、決戦の前夜だからどんな気分なのか聞きにきただけよ。」

 

「不快な気分だぜ。」

 

「私も同じね。」

 

「気分は最悪だよ。ただ、ぶっちゃけると眠い。」

 

「まぁまぁ、そう言わずに。折角だからアンタ達にある子と会わせようと思っただけよ。」

 

「ある子?」

 

「……どいつだ?」

 

「おいでなさーい、テルヒ。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの隣に大きく、青い毛に覆われていて赤い目をした狼が現れた。それを見た楓と九十九が思わず口を開く。

 

「こいつは!?」

 

「テル、ヒ?……てめぇ、分かっててそいつを出しやがったな!」

 

「久しぶりだな、星熊九十九。そして若き幻想郷の守護者よ。」

 

「お、狼が喋った!?」

 

驚く霊夢と魔理沙とは別にユニは冷静に言う。

 

「私、あなたを知っているわ。あなたは、ガイルゴールとの戦いで巨大妖怪のところにいた・・・。」

 

「ほう、覚えてくれていたとはありがたい。」

 

「……あぁ、久しぶりだな犬っころ。」

 

「今でも脳裏に浮かぶぞ、九十九。アルカディア、蓬莱、マグ、メル、エルドラドの死に様がな。」

 

クスクスと笑いながらテルヒは口を開いた。

 

「アルカディア?蓬莱?」

 

「……友人だよ、あっちにいた頃のな。」

 

始めて聞く言葉に首を傾げるユニに九十九が簡潔に説明する。そんな二人とは別にテルヒが再び口を開く。

 

「いやしかしあの小娘はよく私に対抗したものだ。私では手に負えなかったよ。」

 

「なら生きている筈じゃ・・・。」

 

生きている筈じゃないのか?と言おうとした楓に九十九が口を開いた。

 

「殺せないなら、殺せる奴が殺せばいい。カナンはエリュシオンに殺されたんだよ……。」

 

「えっ!?」

 

思わず声を上げる霊夢。そんな中、エリュシオンが笑みを浮かべて言う。

 

「そう♪私があの小娘の首の骨を折って殺してあげた。出来ればアンタの見ているところでやりたかったけれどね。」

 

ギリッという音が九十九の口から聞こえた。

 

「これが分かるか、エリュシオン。」

 

テレビの前へ、『赤』『青』『緑』『黄』『紫』の計5色、6つのスマホを掲げた。それを見て先に口を開いたのはユニだった。

 

「すまーとふぉん?」

 

彼女に続いてスマホを見たエリュシオンは目を細めて言う。

 

「なるほど・・・。あの時アンタに遺品を残していったのね。よほどアンタとの信頼関係があったようだ。」

 

「あぁ、カナンが最後の力を振り絞ってな。アイツの描いたキャラが私に持ってきてくれたんだ。」

 

「即座に殺しておくべきだったな、エリュ。」

 

「・・・。」

 

テルヒの言葉にエリュシオンは何も言わなかった。そんな二人に九十九が口を開く。

 

「この遺品に誓ってエリュシオン、テルヒ、お前らは私がこの手で殺す。」

 

「ほう、私を殺すと。テルヒなら可能なのかもしれないけれど私はどうかしらねぇ。五大王の力を越えなきゃ私には勝てないわよ。それに、アンタは百々が私を倒すための切り札だと思っているようだけれど、今の百々に私は愛着がないからね。」

 

「なっ!?」

 

衝撃的な言葉を聞いて声を上げる楓と魔理沙。そんな二人とは別に九十九は冷静に言う。

 

「……自分ではそう思ってても、極限状態で同じことが言えるといいな。」

 

「そうねぇ、フフフ。」

 

と、ユニが唐突に口を開いた。

 

「エリュシオン!このテレビの画面を写しているのはあなたなんでしょ?悠岐君や百々達はどうなってるのよ!」

 

「そのついでにあのテレビ直してくれよ。」

 

九十九は後ろにあるテレビだったものへと視線を一瞬だけ向けた。ユニの言葉を聞いたエリュシオンは何故かふてくされたような顔をして言う。

 

「男共は知らないわよ。繋げようとしたら誰かが先に繋げてるみたいだし。それじゃあ私はここら辺で失礼させてもらいましょうかね。明日、楽しみにしているわよ。」

 

「期待している。」

 

そう言った瞬間、プツンという音と共にテレビの画面が切れた。

 

「切れちゃったぜ。」

 

「エリュシオンのやつ、挑発しに来たのか?暇人だな。」

 

「暇人かもな。テレビ直ってるし。」

 

「そう言えば、悠岐君達のほうは誰かが先に繋げてるって言ってたわよね?それって一体?」

 

「さぁな。とりあえず私は明日に備えて寝る。まだ仲間に言葉を言ってないしな。」

 

そう言うと楓は布団に潜り込んでしまった。

 

「私も寝る。……この直ったテレビ、使うのも恐ろしいな。」

 

九十九も同じく布団へと潜り込んでしまった。

 

「それじゃあ私達も寝ましょう。」

 

「そうね。」

 

「おやすみ~。」

 

そう言うと三人は布団に潜り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変わって男チーム。そこでは唐突に電話が切れ、テレビが砂嵐になったのを見てパニックになる百々達がいた。

 

「オイオイどういうことだ?テレビが切れるわ電話切れるわで何が起こっているんだ?」

 

「こっちに聞くな!俺は『てれび』すら分かってないんだぞ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・フム、どうやら繋がったようだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りに男の低い声が聞こえた。

 

「……誰かな?」

 

琥珀の言葉を聞いた瞬間、悠岐はテレビに目を向ける。そこには貴族の服を着ていて腰まで伸びる金髪の大男が画面に写されていた。

 

「もしや、DIO!?」

 

「ええ加減にせぇや?」

 

「はい。」

 

琥珀の言葉を聞いて黙ってしまう暁。そんな中、悠岐がテレビに写る男を見て口を開いた。

 

「ガイルゴールじゃねぇか。お前確か2万年の眠りについた筈なんじゃ・・・。」

 

「クレイジーからお前達が極秘任務をすると聞いて繋げた。すまなかったな。生憎、女達の所には繋がらない。恐らくエリュシオンに先越されたな。」

 

そう言うとガイルゴールは大きく息を吸い込み、口を開いた。

 

「お前達には少し昔の話をするのと健闘を祈る言葉を告げにきた。」

 

「お前らしくないな。」

 

「昔話か、それは僕も知ってるものかな?」

 

「琥珀、それはお前も知らない遥か昔のことだ。」

 

「琥珀も知らないとは随分昔だな。」

 

「そうだね、恐らく先代なら知ってるかもしれないけどさ。」

 

「とりあえず話そう。昔、表の世界には余も含む4体の神がいた。」

 

「4体の神?」

 

「……どの神話?」

 

悠岐と暁の言葉に耳を傾けずにガイルゴールは話し続ける。

 

「それぞれ余、龍神、バベル、ドラゴンカオスがいた。我々は話し合い、余は宇宙を支える神。バベルは四角世界を支える神。龍神は幻想郷を支える神。そしてドラゴンカオスは現世を支える神となった。」

 

「……名前しか聞いたこと無いね。」

 

「このまま表を4体で支えられる。そう願っていた。だが、ある出来事が起こった。」

 

「出来事?」

 

同時に声を上げる悠岐と百々。

 

「突如としてドラゴンカオスが姿を消した。」

 

「消えた!?何故だ?」

 

少し驚いた声を上げる悠岐だがすぐに冷静さを保った。

 

「理由は簡単だ。お前達が明日戦う者に殺された。」

 

「ですが、どうやって?」

 

「奴の能力、覚えているか?」

 

「・・・能力を削除する能力!」

 

すぐに声を発したのは悠岐だった。

 

「そうだ。ドラゴンカオスはエリュシオンの能力によって力を失い、そのまま殺された。」

 

「……現世に住み博麗大結界を見守る『魄霊』の日記にはいつも通りの平和な日々が綴られていました。そのドラゴンカオスが現世を支えるとしたら、何かが起こるはずでは?」

 

「だが起きなかった。エリュシオンがドラゴンカオスを信仰とする者達全てを殺した他、何らかの方法を使ったのだ。」

 

「何らかの方法?」

 

「それは余にも分からぬ。余が気づかぬ内にやられたのだから。」

 

「確かにそういった魔術や魔法は存在する。……と、言うよりも存在しすぎて特定できないね。」

 

「百々なら何か知ってるんじゃないか?」

 

「お前達はエリュシオンに記憶を奪われている。知っていることはなかろう。」

 

そんな百々はというと、頭から煙を吹き出させていた。

 

「す、すまん。頭脳労働は九十九の仕事だったからな……。俺に聞かれても答えらんねぇよ。」

 

「・・・すまんな。」

 

「可能性があったのだがな。ドラゴンカオスが死なずにいられる唯一の方法が。お前達はアラヤを知っているな?」

 

「あぁ、知ってるさ。」

 

「?」

 

「……Fate、か」

 

首を傾げる百々とすぐに理解する悠岐と暁。そんな中、ガイルゴールは再び口を開く。

 

「アラヤがいち早くドラゴンカオスの元へ行けばドラゴンカオスは死なずに済んだ。遅れたのは何かしらの理由があるからなのだろう。」

 

「理由なんて、ないと思うよ。」

 

ガイルゴールの言葉に、琥珀が自身の考察を投げた。

 

「ドラゴンカオスを殺したのがあの年増ババァなら、アラヤなんて簡単に騙せると思う。そもそも地球の知識と繋がる僕に、地球への悪影響を一切与えずに僕個人へ呪いを付けられるからね。多分だけど、ドラゴンカオスが生きてる確率はほぼないと思うよ。」

 

「なるほどな。よく考えたな、琥珀。」

 

「所詮、ただの考察。事実は小説よりも奇なりって言うし、ホントにそうとは限らないけどね。」

 

「では昔話はここまでとしよう。ここからは余がお前達に言う言葉だ。」

 

そう言うとガイルゴールは再び大きく息を吸い込み、言う。

 

「心して行くのだ。エリュシオンは余が分からぬ恐ろしい何かを隠し持っているに違いない。もしかすると余や龍神、バベルまでも来る可能性が高い。だがそれでも、お前達には期待している。」

 

「・・・あぁ、期待しててくれよな。」

 

「期待しないで舞っててください。」

 

「文字がおかしいよ、暁君。」

 

「すいません。」

 

「よく分かんねぇけど、殴ってぶっ飛ばせばいいんだろ?この何でも屋に任せな!」

 

やる気に満ちた四人を見たガイルゴールは笑みを浮かべ、言う。

 

「ふむ、どうやらやる気のようだな。期待しても問題なさそうだ。女衆にこの言葉を送れないのは残念だが、お前達が代わりに伝えてくれ。ではさらばだ。」

 

そう言った瞬間、プツンという音と共にテレビの画面が切れた。

 

「……あ、電話。はいもしもし。」

 

と、突然暁が誰かと電話をし始めた。

 

「うん、うん、……ふぁ?本当のことなんですか?……はい、はい。分かりました。おやすみなさい、姉さん」

 

電話を終わらせた瞬間、百々と悠岐が彼に言う。

 

「……霊夢か?」

 

「何があった?」

 

「そうですね。先程エリュシオンからテレビ電話みたいな物があったらしく……。」

 

「女達に繋がらないのはエリュシオンの影響か。」

 

「なので少し情報交換をしたいとの事でした。誰か代表者を1人、食堂に送ってくれとの事です。」

 

「俺が行こう。」

 

率直に口を開いたのは悠岐だった。そんな彼に暁が言う。

 

「お願いします。私は明日のためにも御札を作っておきます。」

 

「よろしく。僕はそうだね……百々君がいい加減処理落ちしそうだから助けてくるよ。」

 

「分かった。」

 

そう言うと悠岐は部屋を出ていった。

 

「あ、もうダメ……。」

 

部屋の扉を閉めると同時に中からそんな声が聞こえた。

 

「・・・眠かったんだなきっと。さて、食堂に行くか。」

 

そう言うと彼は食堂へとへと向かっていった。




エリュシオンの挑発にガイルゴールの祈願。事態は大きく変わってしまうのか!?
次作もお楽しみに!


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第144話 情報交換

テレビを繋げてユニ達の前に現れたエリュシオンとガイルゴール。ガイルゴールはともかく、エリュシオンは何を企んでいるのか。


「さぁて、女達からは誰が来るんだ?」

 

そんなことを言いながら悠岐は集合場所である食堂へと向かっていた。

 

「霊夢はめんどくさがりだから来ないし魔理沙はすぐに寝そうだし。九十九か楓がユニの誰かが来るのかな?」

 

そう言うと彼は食堂の扉をゆっくりと開ける。中には一人の少女が1つの椅子に座っていた。

 

「あ、悠岐君!」

 

悠岐の存在に気づいた少女は彼を見るなり、椅子から立ち上がり、駆け寄る。彼女を見た悠岐は口を開いた。

 

「ユニじゃねぇか、お前が頼まれたのか。」

 

「うん、霊夢はめんどくさがってやらないで魔理沙と楓ちゃんと九十九ちゃんはすぐ寝ちゃったから私が行くことになったの。」

 

「そうか。そんじゃ、始めようか。」

 

そう言うと二人は誰もいない食堂に座り、話を始めた。

 

「私のところはエリュシオンから挑発のようなテレビ電話みたいなのが来たの。明日が決戦だからって私達の調子を聞きにきたわ。でも、策は聞かれることはなかったよ。」

 

「策が知られないなら問題ない。俺達はガイルゴールからテレビ電話が来た。」

 

「ガイルゴールが!?・・・そっか、悠岐君達の所へエリュシオンのテレビ電話が繋がらなかったのはガイルゴールが繋げていたからなのね。」

 

「あぁ、そうさ。昔のことを話されたよ。他にも龍神やバベルが来るかもしれない戦いになるとさ。」

 

「龍神様やバベルも来る戦い?かなり危険じゃない。」

 

「だが、ガイルゴールは俺達に期待してくれるようだ。俺達は奴の期待に答えなきゃな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「徹夜かね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、悠岐とユニは声のする方向を見る。そこには長身で後ろ髪を縛っていて両腕を背に回している男がいた。男を見たユニが口を開く。

 

「メルト・グランチ様。いえ、徹夜ではありません。少し情報交換です。」

 

「情報交換?何のだね?」

 

何も状況を把握していないメルト・グランチに悠岐が口を開いた。

 

「実はさっきユニ達のところにエリュシオンがテレビ電話で話してきたんだ。そして俺らはガイルゴールからテレビ電話が来た。」

 

「エリュシオンとガイルゴールが?一体どうやって?」

 

「それが分からないんです。それで、何か挑発のようなことを言ってきたんですが全く挑発にならなかったです。」

 

「エリュシオンからあまり情報は得られないか。それでガイルゴールの方は?」

 

「ドラゴンカオスっていう現世にいた神のことを話された。ソイツはエリュシオンに殺されたらしい。」

 

「神を殺すのは神か・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、起きていたんですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえたのと同時に食堂に一人の女性が入ってきた。彼女を見たユニが言う。

 

「優理花さん、こんばんは。」

 

「はい、こんばんは。悠岐君に楓ちゃん。ちょっとグランチさんに用事があって来たの。」

 

そう言うと優理花は二つの古い紙切れを出した。

 

「優理花、これは何だね?」

 

「先程管理部隊の永崎さんが見つけたものです。いつからあるのか分からなくて・・・。」

 

「見せたまえ。」

 

そう言うと彼は優理花から紙切れを取り、じっくりと眺め始める。少ししてメルト・グランチは眉間を細めて言う。

 

「・・・何か、あるんですか?」

 

唐突にユニが口を開く。

 

「ふむ、これは見た方が早いのかもしれないな。」

 

そう言うとメルト・グランチは悠岐と楓に紙切れを渡した。紙切れを見た悠岐は紙に書かれた文字を読み上げる。

 

「『いざや惑え、修羅が咎罪。哀れ、死せる。運命(さだめ)、逃れ得じ。御身の咎にて地獄と定め。奈落の底にぞ、落ちにける』・・・なんじゃこりゃ?何かの暗号なのか?」

 

首を傾げながら言う悠岐とは別にユニはもう1つの紙切れに書かれた文字を読む。

 

「『煉獄炎ニ、其ノ身焦ガセバ、肝胆砕キテ、唯祈ルベシ。恨ミ悲シミ、澱固マリテ、我ヲ喪イ、業深キ身ノ。映ル鬼神ノ、眼ノ光。刹那ニ命火、消ユルトゾ聞ク。アナ恐ロシヤ、御事ハ誰ゾ。夢々彼ト眼合ワセルナカレ』何でしょうか?これは。」

 

「私の思うにこれは古代から伝わる言い伝えだと思います。ですが、これが何を意味しているのかは分からないんです。」

 

「俺らにもさっぱり分かりません。恐らく、百々か暁なら何かしら知っているかもしれません。」

 

「なるほど、百々君と琥珀君ですか。彼らなら分かるかもしれませんが明日が決戦なので控えましょう。」

 

「そうだな。では黒き刀にユニよ、今日はもう寝なさい。明日の決戦に備えるのだ。」

 

「分かりました。それでは失礼します。」

 

そう言うと悠岐とユニは食堂を出ていった。それを見た優理花はメルト・グランチを見て言う。

 

「いよいよ、明日ですね。」

 

「・・・あぁ、そうだな。我々は明日、この世界の命運を掛けた戦いに挑む。恐らくは多くの犠牲が生まれることだろう。彼らには世界のためならば命を捧げる覚悟を持たなくてはならない。」

 

「・・・グランチさん、本当に行くのですか?」

 

「・・・そうだとも。私は卿のために戦わなくてはならない。そして世界のためにも戦わなくてはならないのだよ。優理花、卿は現世に残ってほしい。卿の悲しむ顔を見せたくないのでね。」

 

「・・・分かりました。行きたい気持ちは山々ですがあなたを信じます。絶対に、帰って来てくださいね。」

 

「あぁ、勿論だとも。」

 

そう言うと二人は食堂から出ていった。




エリュシオンとガイルゴールのテレビ電話の情報交換。紙切れに書かれた謎の暗号。一体何を示すのか?
次作もお楽しみに!


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第145話 古き友との明晰夢

エリュシオンとガイルゴールのテレビ電話の情報交換をした悠岐とユニ。謎の暗号のようなものが書かれた紙切れを渡した優理花。


「……ここはどこだ?確か、アレとの決戦が明日に控えているから眠りについたはずだったかが……。」

 

翌日がエリュシオンとの最終決戦という事もあり、いつもり早く眠りについた九十九は見覚えのない場所に立っていた。

そんな中彼女は1つだけ、覚えのあるものを見つけ、彼女はそれを拾い上げた。

 

「これは……。」

 

それは現代で言うところのスマートフォン、つまりはスマホであった。

今は亡き友人達との思い出を記録したそれは彼女にとっての、己の証明。エリュシオンへの憎しみや復讐心で呑まれないための。復讐者(アヴェンジャー)へ落ちないための。

 

「……懐かしいな。アイツらが生きてたら、どんな話をしてくれるのか……。」

 

チクリ。と心に小さな棘が刺さった感覚を彼女は味わった。

 

「まっ、恨み言だろうな。私はアイツらを見捨てて生き延びたんだからな。」

 

そんな事を言っていると、彼女が手に持つスマホが震えだした。

 

「……電話?でも、ここは私の夢だよな?一体誰が……。」

 

スマホの画面にはただ数字の羅列が表示されるのみで、その人物が誰なのかは出てみないと分からないようだ。

 

(まぁ、出てみれば分かんだろ。変なやつだったら切っちまえばいいし。)

 

そう結論づけ、九十九はその電話を受けた。

 

「はい、もしもし。こちら星熊九十九ですが。」

 

『………………』

 

「……ん?もしもーし、聞こえてますかー?」

 

通話になっているはずなのに、相手は言葉を何も発しない。

 

「あー、間違い電話でしたら切ってもらって結構ですが?」

 

『……図書館のいつもの場所で。待っていますわよ、九十九。』

 

「っ!ちょっと!アンタってもしかして!?」

 

九十九の問いに答えることなく、スマホからはツーツーという音が聞こえてきた。

 

「クッソ!切りやがった!……にしても、あの声は。……いや、ありえねぇか。とりあえずは、図書館に行ってみるか……。」

 

握りしめていたスマホを1度服のポケットにしまい、そして気付く。何も無い、真っ白い空間だったはずのここが、自身の記憶通りの図書館となっていることに。

 

「……まぁ、夢だもんな。何でもありか。」

 

1人で納得し、彼女は約束の場所へと向かうため、人気のない図書館へと向かった。

 

「もし電話の主がアイツなら、あそこにいるはずだ……。」

 

『いつもの場所』とは図書館の中庭にある大きな木の下、そこにある長い椅子。九十九はいつもそこで『アイツ』と話をしていたのだ。

 

(他愛もない話だったけど、それがとても楽しかった。アイツが死んでから、私は本を読まなくなったっけ……。)

 

そんなことを考えながら九十九は『いつもの場所』へとたどり着く。

青いブレザーと薄いこげ茶色のスカートを履き、黄色いリボンをつけたオッドアイの少女が『いつもの場所』に座っていた。そう、彼女ことが九十九が『アイツ』と呼ぶ人間の正体である。

 

「やっと来ましたわ。遅いお着きですね、九十九。」

 

「いや、仕方ないだろ。こっちとら何が何だか分かってねぇんだからよ。」

 

九十九の言葉を聞き、少女は少し顔をしかめた。

 

「……口調、随分と変わりましたのね。」

 

「あー、まぁな。アンタが死んでから随分と経ってるからな。私だって変わるさ。」

 

「……どのくらい経ちました?私達が亡くなって。」

 

「……忘れちまったよ。」

 

そう答える九十九は苦痛に耐えるような、悲しい顔をしていた。

その顔を少女に見せないようにか、九十九は自身の顔を下へと向けた。その時、九十九は少女の持つ一冊の本に興味を引かれた。

 

「……その本、なんだ?」

 

「これですか?これは『ラブクラフト全集』の第6巻ですわ。前々から気になっていましたのよ?」

 

「あ、あんたもそんな本を読むんだな……。」

 

「えぇ。……九十九、貴方はエリュシオンと本当に戦うのですか?」

 

少女は手に持っていた全集を横に置き、先程までとは打って変わって真面目な顔付きでそう問いかけた。

 

「……私の夢だもんな、知ってて当然か。あぁ、私はアイツと戦う。身体能力が劣ってるのは分かってる。能力が劣ってるのも分かってる。それでも私はアイツと戦う。私の友の、アンタ達の仇をとるためにな。そのためなら私はこの命だって捨ててやる。」

 

九十九はそう言って入口へ向けて踵を返した。

 

「じゃあな、戦う前に夢だとしても会えて嬉しかったよ。今度は来世で会おう。」

 

ヒラヒラと手を振る九十九へ少女は1つ、助言をした。

 

「あの方達の書斎へ向かいなさい九十九。それが貴方の道となりますわよ。」

 

聞こえているか分からないが、少女は姿の小さくなる九十九を姿が見えなくなるまで見送った。

九十九の姿が完全に消えた頃、少女は背後へ振り向き、自身のブレザーに付くポケットからスマホを取り出した。

 

「あの子の真の力を解放するため、私に倒されてください。アラヤの送りし枷。抑止力さん?」

 

少女の目の前には赤い外套を身に纏い、手に小さいナイフと銃を持った1人の男が現れ、ナイフを少女へと向けた。

それに対抗するように、少女の持つスマホが眩い光を放ち始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――おいたをする方には、お仕置きして差し上げますわ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男と少女を光が包み、その場にいた2人は何処かへと消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって古びた住宅街。九十九はとある建物を探していた。その建物はとある2人組の本拠地。先程いた図書館を『新図書館』とするのであれば、それは『旧図書館』と言えるだろう。

 

「確かここら辺だったはずなんだが……。」

 

視線を右へ左へと忙しなく動かす九十九。そんな彼女に誰かが声をかけた。

 

「ここにいたのか、九十九。」

 

それは1人の青年だった。

緑のブレザーを羽織った緑色の瞳を持つ彼は九十九の返事を待たずに言葉を続けた。

 

「『彼女』が待っている。付いてこい、案内する。」

 

「りょーかい。……にしても、図書館の位置変わったか?」

 

「いや、1ミリも動いてないぞ。相変わらずの記憶力だな。」

 

フッと小さく笑う緑の青年。その仕草に九十九は小さく文句を垂れた。

 

「……バカにしてるだろ。」

 

「いや、バカになどしていない。ただ、懐かしくてな。……着いたぞ、ここだ。」

 

そう言って緑の青年は目的地を指さす。そこは九十九が探していた路地と1本ズレた場所だった。

 

「……路地間違えてた。」

 

そんな九十九の呟きにツッコむことなく緑の青年は目的地の中へ入っていく。それに続き、九十九も遅れながら入っていく。

しばらく埃のかぶった廊下を歩き、緑の青年はひとつの扉の前で止まり、そこを開けた。

その中は文章の山だった。古びた図書館の呼び名に恥じぬ古びた本からファイリングされたなにかの資料に、観察日記までもあった。

その山の中に、1人の少女が座っていた。赤い瞳を持つ、緑の青年と同じような緑のブレザーを来た少女だ。

 

「……相変わらずの仕事バカだな、お前は。逆に安心したよ。」

 

「貴方は随分と変わったみたいね、九十九。特にその口調。昔は女の子口調だったのに今は男の子口調になって、彼に影響されたのかしら?」

 

「彼っていうと、百々か?違ぇよ。私が自分で決めて変えたんだ。アイツは関係ねぇぞ。」

 

そう。緑の少女はそう言って緑の青年がいつの間にか持ってきた紅茶に口をつけた。

 

「口調を変えたのは本心を隠すため。1人友を見捨てて逃げ延びたという事実から目を背けるため。『私たちと共にいた星熊九十九』と『伊吹百々たちと共に生きる星熊九十九』という存在を過去のもの、1度切れた別のものと考えるためね。怒りの感情によってその『演技』は無くなるみたいだけど。」

 

紅茶から口を離した緑の少女は口早に自身の推理を言って見せた。

それを聞いた九十九は1度言い淀み、その言葉全てを肯定した。

 

「……さすがは天才女子高校生探偵。えぇ、その通りよ。私は怖かったの。貴方たちが私にスマホを託した理由が、復讐のためじゃあ無いのかって。私はだけがのうのうと生きていいのかって。私だけがこれからの生を楽しみながら生きていいのかって。」

 

「いいに決まっている。俺たちがそんな理由で友であるお前に自身のチカラを託すと思うのか?」

 

今まで黙っていた緑の青年が九十九の言葉を食う様に声を上げた。それは緑の少女も同じことを思っていたようで。

 

「その通りね。九十九、1つアドバイスを上げるわ。『過去の自分を肯定しなさい』。私たちと過ごした貴方も、今を生きる貴方も同じ『星熊九十九』という存在なのだから。……そろそろ時間ね。外まで送るわ。」

 

そう言って緑の少女は座っていた本の山から降り、横に控えていた緑の青年は立ち上がった。

外へ出て、九十九が古びた図書館から離れようとした時、緑の少女が突然口を開いた。

 

「九十九。私は優しいから『死ぬな』なんて言わないわ。『勝ちなさい』。ただそれだけよ。」

 

緑の少女はそう言って緑の青年の後ろに隠れてしまった。

 

「……誰に言ってると思ってるの?貴方の親友、星熊九十九よ。言われなくても勝つっての!」

 

九十九は笑顔でそう言って2人に手を振り、そこから離れ始めた。緑の青年はそれに返すよう手を振り返し、緑の少女も青年に隠れながらも手を振りづけた。

九十九が見えなくなった頃、少女は青年の横へ並びながらポケットに入れていたスマホを取り出した。青年もそれに合わせるようにスマホを自身のズボンから取り出した。

 

「かの探偵と戦えるとは、私にとっては名誉以外の何ものでもないわ。それが例え黒化によってねじ曲げられた存在だとしても。貴方はどう?」

 

「……どちらと言えば、そうだな。医者でありながら助手である彼が出てきてくれればよかったのだが……。」

 

そんなことを言い合う2人の前には黒いモヤを撒き散らす人型のナニカが立っていた。それはステッキを手に持ち、背中から巨大なレンズの付いた機械を伸ばしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――死せる魂よ、来たりて語れ。

 

―――其は真実か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑の少女のスマホから放たれた光が2人を飲み込み、2人とその人型のナニカは何処かへと跳んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九十九は2人のいた古びた図書館から離れ、街を歩いていた。

行く宛もなく、ただフラフラとそこら辺を歩いているだけだ。

 

「まだ夢から覚めないのね。……どうしようかな。確か、夢で死ぬと目が覚めるって聞いたけども。」

 

とんでもない事を呟く九十九の元へ1枚の紙が空からとヒラヒラ舞い降りてきた。

 

「……紙?なんで空から?」

 

舞い降りてきた紙を拾いながら上を見上げると、数ある電線の1本の上に黄金のカラスがいた。恐らくはそのカラスが運んできたのだろう。なぜならその2つ折りの紙には金粉がちょうどカラスのくちばしに合うように付着していたからだ。

九十九はそれを広げ、中身を読み始めた。

 

「えーと……『科学部部室にて待つ。黄金の怪盗より』か。……あぁ、彼ね。じゃあ、学校に行ってみようかな。」

 

今まで向かっていた方から別の方向へ体の向きを変え、鬼の全力で九十九は走り始めた。

走り始めて10分ほどだろうか。彼女の通った道はくっきりと足跡の形に凹み、周囲の家は土埃をガッツリと被っていた。

そして、彼女は学校に到着し、正門から見える窓の1つに黒と白たまにというとても特徴のある癖毛を見つけた。

 

「見っけ!どっっせぇぇぇい!!!」

 

足に力をいれ、その窓の隣に向けて大きく跳躍した。

 

「ダイナミックお邪魔します!」

 

「うっわ!!え、ちょ、え!?」

 

その窓の隣にいた1人の青年が読んでいた本から視線をあげ、驚きの声を上げた。

 

「久しぶり、元気してた?」

 

「う、うん。君も元気みたい……だね。まさかそこから来るとは思わなかったよ。」

 

額に汗を浮かべながら少年は九十九へそう返す。

 

「まぁね。私もこんなことが思いつくとは思わなかったわ。まるで百々にでもなった気分。」

 

「百々っていうと、僕たちのいた世界じゃない世界の君かい?」

 

『百々』という聞きなれない単語に反応した少年は九十九へ確認を取った。

 

「そう。基本はバカなんだけどやる時はやるんだ。兄みたいに私に接してくれてね、今はもう兄さん以外にアイツの立場が考えられないよ。」

 

「なるほど。とても優しいんだね、この世界の君は。」

 

君のようにね。少年はそんな浮ついたセリフを九十九へと投げかけた。

 

「……そんなセリフいつも言ってるけど、恥ずかしくないの?」

 

「君にだけだよ。僕には誰構わずあんなセリフを言う度胸も無いしね。」

 

「よくそんなことが言えるね、黄金の怪盗さん。侵入するため女の人にいつも言ってたんじゃないの?」

 

「い、痛いところを付いてくるね……。」

 

九十九の言葉に少年は苦笑いしか返せなかった。

それが本心からの言葉では無いとしても、言ってることに変わりはないのだから。

 

「挨拶はここまでにしようか。さて九十九、君は自身の能力をどう思ってる?」

 

「私の能力?それはもちろん嫌いに決まってるわ。」

 

九十九の能力『Fateを使う程度の能力』は英霊の座と呼ばれる英雄たちのデータベースへ直接アクセスし、その英雄たちの情報を己にインポートする能力なのだ。しかもこの能力、たとえ正規の座に登録されていない、それこそ人理の危機に瀕したからこそ呼び出せたような限定英霊ですらインポートすることが出来るヤバい能力なのだが、『鬼』としての誇りを持つ九十九はこの能力をなかなか使いたがらない。鬼である自分が人間の力を借りるのが気に食わないとの事である。それこそ、兄的な存在であり同族である百々の危機など以外では。

 

「あんまり使わ無いことに変わりはないのかい?」

 

「えぇ、これからもあまり使う気はないわ。」

 

「今度の決戦の時でも、かい?」

 

「……痛いところを付いてくるじゃない。」

 

意趣返しさ。少年は九十九にそう言葉を返した。

発言通り九十九はエリュシオンとの戦いでも自身の能力を使う気はあまり無かった。使うとしても、自分と同じ鬼である『酒呑童子』や『茨木童子』、そもそも人ですらない『メデューサ』や『メルトリリス』に『パッションリップ』など 、自身と同じ半分人間の『マーリン』などを使うつもりでいた。

 

「本当に今回の戦いはそんなことを言ってられるのかい?君が能力を出し渋ったせいで僕たちの世界と同じ末路を辿ることになるのかもしれなくてもかい?」

 

「そ、それは……。」

 

彼女は一目見ても悩んでいると分かる状況だった。

『鬼』の誇りをとるか、それとも同族とその友のために誇りを捨てるか。それは他人から見れば一瞬で答えの出るものだが、彼女にとってはどちらも大切な、捨てがたいモノなのだ。

 

「受け入れるんだ、九十九。」

 

そんな彼女へのアドバイスなのか、少年が口を開いた。

 

「……受け、入れる?」

 

「そうさ。その能力も『星熊九十九』を構成するピースの1つに過ぎない。それを含めて君という存在なんだ。」

 

「能力を含めて、私という存在……。」

 

小さく呟いた九十九が顔を上げた時、その顔からは悩みは吹き飛んでいた。

 

「ありがと。ついさっきあの二人にも同じこと言われたのに、もう忘れてた。」

 

「トラウマとコンプレックスは違うからね。仕方ないよ。」

 

少年は椅子から立ち上がり、部室のドアまで歩きながらそう言った。

 

「さぁ、そろそろ行くといい。次は彼女が君を待っているからね。早く行かないとドヤされるんじゃないかな?」

 

ドアを開け、少年は道を九十九へ譲った。

 

「それは、困るなぁ。なら私は早く行かなきゃ。きっと仕事場にいるよね?」

 

「恐らくね。っと、これをあげるよ。お守り替わりにね。」

 

少年はそう言って九十九に1枚のカードのような何かを渡した。

 

「ありがと。じゃあ、またね。」

 

そう言って九十九は部室から駆け足で離れていった。

残された少年は1人、部室にある机の中から自身のスマホを取り出した。

 

「……怪盗である僕にも盗めないものはある。それは人の心さ。貴方はそんな心を盗む達人。僕に彼女の心は盗めないと言いたいのかな?」

 

そんな彼の前には長い金髪を持った男が立っていた。その手には1本の槍が握られている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――さあ、行こうか!仕事の時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金の輝きを放つスマホと合わせるように彼の身体を黄金が覆っていき、彼と槍の男は静かに、されど力強く戦いを始めた。



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第146話 High School Student's Ego

学校から(普通に)出た九十九はある場所を目指して歩いていた。それはある人物の仕事場。世界中の人間に夢と希望を与える『約束の地の大冒険』が描かれる場所。

誰に止められることも無く目的の部屋の前についた九十九はドアノブへ手をかけ、それを回した。

 

「おじゃましま〜す……。」

 

「おっそい!」

 

ドアの前には1人の少女が立っていた。

その少女は紫のノースリーブセーターを着て頭にベレー帽を被っていた。

 

「ごめんね?学校からここまで結構な距離があって……。」

 

「あ、やっぱ鬼でも遠いと思うの?」

 

大発見じゃん。その少女はそう言って九十九へ背中を向けた。

 

「ま、上がりなよ。」

 

「うん、そうさせてもらうね。」

 

この部屋の主である彼女こそ、『約束の地の大冒険』を描く超有名JK漫画家である。

九十九はそのまま客間へ案内された。客間は綺麗に片付いていて、彼女のマメさが伺える。

 

「結構綺麗じゃん。いつもはあんなに汚いのにね。」

 

「ま、さすがのあたしでも誰か来る時は片付けるって」

 

「……ふーん。」

 

漫画家の少女の言葉に、九十九は客間を出て彼女の仕事場へと足を進めた。

 

「あっちょっ、仕事場はダメだって!」

 

仕事場の扉を開けると、そこには栄養ドリンク、カップラーメン、カロリー〇イト、ハンバーガーの袋、没案になったと思われるネームが所狭しと散乱していた。

 

「……ねぇ」

 

「はいっ!」

 

滝のような汗をかく漫画家の少女に九十九は小さくも、しっかりと通る声で言った。

 

「掃除、しよっか?」

 

「イエスマムッ!」

 

漫画家の少女はとてつもない速さで掃除用具を取りに行った。

 

「まったく……、いつも掃除は私任せなんだから。」

 

呆れる九十九だか、彼女は心からの笑顔を抑えることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女掃除中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、合格。」

 

「お、おつかれー……。」

 

漫画家の少女が掃除用具を持ってきてから約30分。汚部屋となっていた彼女の仕事場は入居した時の美しさを取り戻していた。

 

「なんであたしは苦労して掃除してんの……?」

 

「汚部屋は絶対許早苗。」

 

「……はい?」

 

「なんでもないよ。」

 

そんなことをしてじゃれ合ったりしながら漫画家の少女と九十九はティータイムを楽しむ。

 

「……んで、今度は何?」

 

ある程度の時間がすぎた頃、九十九がそう切り出した。

 

「あ、やっぱ気付いてる感じ?」

 

「当たり前。こんなにやられたら流石に気付くって。」

 

九十九の言葉にニシシと漫画家の少女は笑った。

 

「まぁそうだよね。……じゃあ本題に行こっか。」

 

先程とはうって変わり、漫画家の少女はチカラ持つもの(爆絶なる者)へと表情を変えた。

 

「九十九はさ、どうして不思議だと思わないの?」

 

「不思議って、なにが?」

 

「スマホのこと。九十九の持ってる白いスマホ。」

 

彼女の言葉に九十九は服のポケットから件のスマホを取り出した。

 

「確か……みんながくれたんだよね。連絡つかないと困るからって。」

 

「そう。」

 

「なんでそれを不思議に思わなきゃいけないの?」

 

「……そっか。九十九はあたしらの常識を知らないんだ。」

 

ガシガシと少女は軽く頭をかき、深呼吸をしてから口を開いた。

 

「……そもそもあたしら『爆絶なる者達』は真の力を使ってる時は一般人との接触を禁止されてるの。影響が強すぎるから。」

 

「影響が……強い?」

 

「そ。カリスマっていえばいいのかな。」

 

少しだけ遠い目をして少女は語る。自身の、仲間たち(爆絶なる者達)の代償を。

 

「『この人の下にいたい』『この人のためなら命すら惜しくない』そんな気持ちをあたしらは強くしちゃうんだよね。たった一言話をしただけでも、ね。」

 

漫画家の少女は複数の存在を思い出していた。

ある名門校に通うオッドアイの少女(爆絶なる者)と会話をしたが故、彼女に付き従い婚約者との約束すらも破棄した1人の少年を。

頭脳明晰な白衣の少年(爆絶なる者)に従い怪盗行為を続ける左腕が注射器である異型の女性を。

ゲームセンターを根城とするゲーマーの少年(爆絶なる者)と対戦し、その圧倒的な強さに惚れ込んだ神や魔人たちを。

 

「だからさ、あたしらにとって九十九はビックリする存在だった訳。真の力を解放してたあたしらと会話しても狂わずに自分を保てるってだけで。」

 

「だから、スマホをくれたのね。」

 

「うん。『爆絶なる者たち』以外で出来た初めての友達だもん。……それ以外の理由もあるけどね。」

 

「それ以外の、理由……?」

 

「……九十九、アンタは利用されてるの。」

 

そこから漫画家の少女は語る。星熊九十九の真実を。

 

「アンタが使ってる能力『Fateを使う程度の能力』は本来のチカラじゃない。本来のチカラの名前は『夢を支配する程度の能力』。眠りの中で見る夢と将来の夢、双方を支配できるチカラ。アンタはそのチカラを逆手に取られた。エリュシオンに負けて圧倒的な強さを求めた。強くなることを『夢』とした。その思いに干渉されて『Fateを使う程度の能力』を押し付けられたってこと」

 

「『夢を支配する程度の能力』……。私の本当のチカラ……」

 

漫画家の少女が放った言葉を繰り返し、己の中にゆっくりと九十九は落とし込んでいく。

今まで能力を使ってきて、感じていた違和感。当たり前の事なのに何故か感じ続けていたそれ。

「極まるのがあまりにも簡単すぎる」

彼女の兄的存在である百々は己のチカラ『全てを完全に再現する程度の能力』を極めるのに10年以上の月日を費やした。それなのに自分はどうだ。

 

たった1度使うだけで全てを把握したではないか。

 

漫画家の少女に指摘され、九十九はその事実に気付く。

 

「押し付けられたってことは、押し付けた相手は誰?」

 

九十九の疑問に、漫画家の少女は手に持っていたティーカップを置き、真面目な雰囲気を醸し出す。

その雰囲気に、軽い気持ちで疑問を投げた九十九も固まる。

じっと九十九を見つめる漫画家の少女はゆっくりと口を開きその答えを出した。

 

「分かんない。」

 

「えっ」

 

空気が壊れ、九十九はギャグ漫画よろしく椅子から転げ落ちた。

漫画家の少女は九十九のその様子をどこから生えてきたのか分からないスケッチブックにスケッチしていた。

 

「そこまで引っ張ってそれ言う?」

 

「いや、分かんないものは分かんないだから。当たり前じゃん。」

 

「いやまぁそうだけど……。」

 

漫画の世界でもラノベの世界でもないんだから、都合のいい事ばっか知ってるはずも無いよね。

九十九はそう自分の中で結論づけた。

 

「色々言ったけどさ、結局あたしは九十九に死んで欲しくない訳よ。それこそ今すぐにでも逃げてもらいたい。でもそれはヤなんでしょ?」

 

九十九はその質問に無言で頷く。

逃げるという選択肢は鬼としても、人としても彼女の中に存在しなかった。1度体験したからこそエリュシオンの恐ろしさを理解している彼女だが、それ故にエリュシオンの能力を知り、対策を取れる唯一の存在でもあったからだ。

 

「だからあたしは何も言わない。その代わりにコレを貸したげる。」

 

漫画家の少女はそう言って自身のスマホに付けているキーホルダーを九十九へ渡した。

 

「後で返してよね。」

 

それは彼女なりの激励なのだろう。そのキーホルダーは彼女の描く漫画の登場人物であり、己の能力が

込められたスマホに付けているのを見るにお気に入りなのだろう。

 

「それって、暗に『生きろ』って言ってるよね?」

 

「あたしはなにも言ってないし?九十九がそう思ってるだけじゃん。」

 

九十九の疑問に取り合わない漫画家の少女。彼女の頑固さゆえに諦める九十九。彼女たちの『普段の光景』がそこには広がっていた。

 

「まだ話してたいけど、もう時間なんだよね。次行く場所は分かってる?」

 

「もちろん。彼の事だからゲームセンター以外無いって。」

 

「ま、アイツとは九十九が1番付き合い長いもんね。」

 

そんなことを言って客間から出ていった漫画家の少女に習い、九十九もまた立ち上がって彼女を追った。

 

「じゃあね九十九。しっかりね。」

 

「コラ。」

 

コツン。と九十九は漫画家の少女の頭を軽く叩いた。

 

「コレ、返すんだから『じゃあね』じゃ無いよ。」

 

「……そっか、そうだね。『またね』、九十九。」

 

「うん、またね。」

 

漫画家の少女は九十九の姿が見えなくなるまでずっと手を振り続けた。

見えなくなると、彼女は部屋に戻らずそのまま屋上へと向かった。

屋上には2つの影があった。

1つは大きな筆を持った少女。もう1つは小さな筆を持ったタコのような存在。

 

「神絵師降臨とかマジ?……ま、あたしも九十九の為に負けてなんかいらんないっしょ!!」

 

彼女は懐から漫画を書くためのGペンとスマホ取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――見てなさい!あたしのGペンが世界を変えるわ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Gペンにより描き出した世界に彼女と大小の筆を持つ少女とタコは吸い込まれ、そこには誰もいなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漫画家の少女と別れた九十九が向かうのは、とあるゲームセンター。『彼』と出会った場所にして、『爆絶なる者たち』と出会うきっかけにもなった彼女にとっての『始まりの大地』。

 

「……変わんないなぁ、ここも。」

 

たどり着いたゲームセンターは彼女の記憶通り、変わらぬ姿のままそこに存在していた。

 

「さて、行きますか。」

 

自動ドアを通り抜け、彼女はあるゲームの元へと向かう。そのゲームのタイトルは『メガロポリス』。アーケード型のSFシューティングゲームである。このゲームにおいて彼女は『彼』を打ち負かし続けていた。

 

「……久しぶり。相変わらずのゲーマーっぷりね。」

 

「そういうお前は結構変わったな、九十九。」

 

椅子に座り、ゲームを続ける少年は振り返ることなく、ゲームに視線を向けたまま言葉を続けた。

 

「座れよ九十九。リベンジマッチの時間だ。」

 

「……私に、勝てると思ってるの?」

 

「おう。今度こそ勝ってやるよ。」

 

少年の向かいに座り、九十九もまた『メガロポリス』を始めた。

 

 

 

 

 

「九十九、1つ聞いていいか。」

 

ゲームのプレイ中、少年がそう切り出した。

 

「何?」

 

少年の操る機体を圧倒しながら、九十九は軽く言葉を返す。

 

「なんでオレたちを名前で呼ばないんだ。」

 

九十九の操る機体がぶれ、少年に反撃の余地を許し始めた。

 

「……別に、理由なんて無いけど。」

 

「いや、あるな。オレたちに悪気があるんだろ。」

 

九十九の機体に、少年の攻撃が当たるようになった。

 

「自分だけ逃げ出し、生き残ったことへの罪悪感。……九十九、お前死ぬ気だな。」

 

九十九の機体が落とされ、少年のゲーム画面に『You Win』の文字が現れた。

 

「……悪い?エリュシオンさえ殺せればもう私に生きる理由なんて無いもの。」

 

「ああ悪い。」

 

少年は九十九の前に立ち、椅子に座ったままの九十九の服を掴み、思いっきり自身の前へ引っ張った。

 

「オレたちはな!お前に死んで欲しくなんてないから能力を、スマホを預けたんだ!!お前に生きていて欲しいから!お前を守るために!」

 

少年たち(爆絶なる者たち)の思いが、九十九へぶつかる。

1人は成績優秀・容姿端美であったがゆえ、いなかった自分に初めて出来た、バカ騒ぎできる友の為に。

1人は仕事バカでつまはじき者の自分にも縁を切ることなく付き合って、偶に捜査の協力もしてくれる友の為に。

1人は殺人鬼の魂を宿したが故に血で染まってしまった己の両手を取り、嫌な顔一つせず接してくれた友の為に。

1人は自身の正体を怪盗と知っても、誰にも言わず変わらぬ態度で日々を過ごしてくれる友であり、自分の好きな相手の為に。

1人は世界的に有名な漫画家だからといって特別扱いせず、どこにでも居る少女として己を扱って遊んで、偶にアシスタントとしても協力してくれる友の為に。

 

「蓬莱の所で『覚悟』を決めたな。マグとメルの所で『過去』を受け入れたな。エルドラドの所で『能力』を認めたな。カナンの所で『真の能力』を自覚したな。アイツらはお前に生きてほしいからこんなお節介を焼いてんだぞ!死んでもなおお前を見守ってんだ!……オレだってそうだ。お前が心配なんだよ、九十九。」

 

1人は初めて生まれた『理想郷の高校生』である己の力に悩み、その力が恐ろしくなりゲームセンターへ篭っていた自分を打ち負かし、『人』であることを認めてくれた友であり、自分がゲームで1度も勝ったことの無い『目標』の為に。

 

「あぁ、そうさ。コレ(・・)はオレたちによるただのお節介だ。そうだろ、みんな。」

 

自身の後ろへ向けられた少年の言葉に、九十九は勢いよく振り返る。

 

「えぇ、その通りですわ」

 

「そうね、悔しいけどその通りよ」

 

「あぁ、お前の言う通りだ」

 

「君の仰る通りさ」

 

「まぁね、アンタの言う通りっしょ」

 

そこには戦闘をしたのか、ボロボロの姿で真の力を解放した友の姿があった。

蓬莱(青の少女)はその手にもつ蓬莱の玉の枝が折れ、髪飾りは片方が無くなり纏まっていた髪の毛はストレートに変わっていた。

メル(緑の少女)は探偵としての証とも言えるマントが無くなり、魂を操ることの出来るルーペにヒビが入っていた。また、動けないのか彼女はマグに抱えられていた。

マグ(緑の少年)もメルと同じくマントを無くし、武器であるナイフが数本自身の腕に刺さっており、ズボンが破れそこから青く染まった肌が見えた。

エルドラド(黄金の少年)は己の半身以上を赤く染った黄金で包み、血を無理やり止めていた。また、顔を隠す仮面が半分ほど欠けていた。

カナン(漫画家の少女)は体の所々が黒く染っており、上手く動けないのか自身の能力により生み出したキャラクターに肩を借りていた。

 

「みんなッ!何をして……?」

 

5人の前に移動し、九十九の目の前に現れた少年によって九十九は言葉を失った。

ニヤリ。と目の前の少年は、アルカディアは笑う。

 

(抑止)は外れた。あとは九十九、お前次第だぜ?」

 

(爆絶なる者たち)の手から六つのスマートフォンが九十九の元へと集い、彼女の周囲を浮遊する。

 

(抑止)?アルカディア、何を言ってるの?」

 

「やっと名前を呼んでくれたな、九十九。簡単なことだ。お前の真の能力を潰し偽りの能力を押し付けてたヤツらをぶっ飛ばしたんだよ。」

 

アルカディアの説明と共に、全てのスマートフォンから力が九十九へと流れる。

 

「お前に本来の力を目覚めさせるため必要なことだ。辛いかもしれないが耐えてくれ。」

 

九十九の身体中に痛みが走る。耐えきれなくもないギリギリのラインを攻めてくるような痛みだ。

 

「九十九、お前は『夢』を支配するもの。地球(ほし)の神々の理想郷だ」

 

アルカディアの声がギリギリ超える中九十九の意識が薄れていく。

 

「またな、九十九。今度はゆっくり話でもしようぜ。」

 

九十九はその場から溶けるように消えた。

 

「目覚めたか。……じゃあみんな、最後の仕事だ。大丈夫か?」

 

アルカディアの言葉に爆絶なる者たちは頷く。それを確認したアルカディアは手に戻ってきたスマホを掲げる。

 

「コイツを倒せば九十九は解放される。行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――電脳世界で勝負と行こうか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として現れた一人の男に、爆絶なる者たちは襲いかかっていく。

その男は、正義の味方から反転した悪の敵。腐り落ちた鉄の心を持つ『霊長の抑止力』の奴隷。

アルカディアは、爆絶なる者たちは友のため残りカスの力を使い、戦いに挑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中、九十九は目を覚ました。周囲を見渡すと、情報共有に出ていたユニが眠っていた。

恐らく結構な時間が経っているのだろう。

そう結論づけ、彼女は顔に違和感を覚えた。涙の後があったのだ。

懐かしい友との会合を夢に見た彼女。心のどこかで彼らとの話を求めていたのだろうか。考え方の変わった今となっては分からない。それでも、この涙が証拠にはなるのでは無いか。

九十九は来たる決戦のため、もう一度眠りについた。その顔はとても満足そうな、見た目に即した少女の顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九十九が眠りについたあと、彼女の持つ白いスマートフォンが勝手に起動した。

その画面には文字が浮かんでいた。

『Dream Land』と。



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第147話 裏の世界へ

時は最終決戦の朝。今日の戦いに備えてユニ達は準備をしていた。

 

「いよいよ、今日ね。」

 

「あぁ、ワクワクするぜ。」

 

ユニと魔理沙がやる気を見せる中、九十九だけはまだ寝息を立てていた。それを見た霊夢が口を開いた。

 

「ねぇ、まだ九十九寝てるわよ。」

 

「起こすか。」

 

そう言うと楓はゆさゆさと九十九の体を揺すり始めた。

 

「ん……。」

 

「あ、おはよう九十九ちゃん。」

 

「うん、おはよ……。」

 

「あんた随分と気持ち良さそうな寝息を立てていたけれど、何かいい夢でも見たの?」

 

「……うん、友達の夢を見てたの。凄く大切な友達の夢をね。」

 

「そうか・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん、おはようございます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン、とノックの音がした瞬間にユニ達の部屋に一人の女性、優理花が入ってきた。彼女を見てすぐに口を開いたのはユニだった。

 

「優理花さん、おはようございます!」

 

「おはようございます。」

 

彼女に続いて九十九も挨拶をする。

 

「朝食は既に準備されています。食堂へ必ず足を運んでください。今日が世界の存続に関係する決戦の日なのですから。」

 

「えぇ、分かっているわ。」

 

「当たり前です。」

 

「……男のみんなはもう行ってるんですか?」

 

霊夢と楓が言った瞬間、九十九が優理花に聞いた。

 

「えぇ、皆来ていますよ。後はみなさん女性達だけですね。」

 

「ならすぐに行かないとだな。早く行こうぜ!」

 

「ご飯のメニュー、何かしらね。」

 

「白米は勿論、パン、うどん、蕎麦、ラーメンなど朝食としては少し多いかもしれませんが今日は特別です。早くしないと無くなるかもしれませんよ?」

 

「それは嫌ですね。早く行こう。」

 

そう言うとユニ達は食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂に入ると既に多くの幻想郷の人達や帝王軍の兵が朝食をとっていた。そんな中、一際うるさい場所があった。男衆が集まっている場所だ。それを見て楓が口を開く。

 

「・・・なんかあそこだけうるさいな。」

 

「今日決戦だっていうのによく騒げるわね。」

 

ユニと楓が呆れている中、声が響いた。

 

「テメコラ悠岐!その蕎麦は俺んだぞ!!」

 

「うるせぇ!!お前のもんは俺のもんだ百々!!」

 

「大人しく食べましょうよ……。あ、次は味噌ラーメンをお願いします。」

 

「暁君に同意だね。あ、僕はコーンフレークで。」

 

「大人しく出来るか!あっ百々!!それは俺のパンだぞ!!」

 

「蕎麦の仇だ!」

 

「朝から元気ですね、男性方は。」

 

男達の様子を見てニコニコと笑みを浮かべながら感心する優理花に魔理沙が口を開いた。

 

「感心している場合じゃないぜ優理花さん。うるさいから早く止めないと。」

 

「私行ってきますわ。すこし試したいこともあるので。」

 

「あぁ、頼むぞ九十九。」

 

(九十九ちゃんの口調、変わったかな?)

 

九十九の口調を気にするユニと全く気にしない楓。そんな中、九十九はそう言って自身の白いスマホを取り出し、何かを起動した。

 

「『さぁ、行きましょう。喧嘩の時間よ』」

 

その言葉と共に、スマホから黄金のカラスが飛び出し、彼女の周囲を飛び回り始めた。

黄金のカラスを伴い、九十九は騒ぐ2人にの間に割って入った。

 

「なっ、九十九!?」

 

「げぇ、九十九!?……雰囲気変わった?」

 

「『ラウンドフラッシュ』」

 

その瞬間、悠岐と百々、というよりは男衆の回りが光り始めた。

 

「……逃げよ。」

 

「あ、これ間に合わないわ。」

 

光った瞬間、男達に強烈な一撃が炸裂した。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ダァァァァア!?」

 

「うーん、またこんなy」

 

騒いでいた2人はその一撃をモロにくらい、巻き込まれた琥珀は死んだ。

 

「な、なんて一撃なの・・・」

 

「あれは一体・・・。」

 

「ラウンドフラッシュですよ。爆絶なる者の一人であるエルドラドが使う力です。かなりのパワーですね。」

 

疑問を抱くユニと楓に優理花がすかさず答えた。

 

「あれを見て感心できる優理花さん、あんたすごいぜ・・・。」

 

魔理沙の言葉は優理花には聞こえなかった。

 

「なんで九十九さんがエルドラドのラウンドフラッシュを? あ、次はとんこつラーメン下さい。」

 

「あいよ!とんこつラーメンいっちょ!」

 

暁がとんこつラーメンを貰う中、悠岐がヨロヨロになりながら起き上がった。

 

「な、なんで九十九がラウンドフラッシュを・・・。」

 

「俺が、知るか、よ……。」

 

「さて、なんでだと思う?当てられたら御褒美をあげてもいいわよ?ちなみに琥珀は参加禁止ね。」

 

首を少しだけ傾げた悠岐はすぐに答えを導きだした。

 

「お前、エルドラドの力を使えるのか?」

 

「エルドラドだけじゃないの。ほかのみんなのも使えるわ。」

 

「お、恐ろしい奴だ・・・。」

 

そう言うと彼はヨロヨロになりながら百々の元へ行き、言う。

 

「もう飯を取り合うのはやめようぜ。」

 

「セ、セヤナ-」

 

二人が話している中、食堂に一人の男が入ってきた。

 

「あの人はまさか?」

 

「えぇ、セコンドさんですよ。現世の帝、強いて言えば現世で一番のお偉いさんと言ったほうがいいですね。」

 

ユニの疑問に次々と答えていく優理花。そんな中、生き返った琥珀が口を開く。

 

「ただいまー。っと、ギリギリ間に合ったかな?」

 

「間に合ったようだな。ちょうどセコンドが来た。」

 

「それは良かった。……あ、おにぎり貰うよ。」

 

「あぁ、いいさ。」

 

悠岐と琥珀かを話している中、セコンドが口を開いた。

 

「諸君、遂にこの時がやって来たな。我々は現世の・・・いいや、表の世界の存続を掛けた戦いに挑む。諸君らは人それぞれ覚悟を決めている筈。我々の世界のため、絶対に勝つ。それだけだ!」

 

そう言った瞬間、兵達がウォーと声を上げ始めた。

 

ypaaaa(ウラー)!……なんてね。」

 

「・・・暁?」

 

「なんでもないよ姉さん。ただふざけただけですから。」

 

「そう・・・。」

 

「それでは皆の衆、すぐに準備に取りかかれ!」

 

セコンドが言った瞬間、兵達が食器等を片付け、皆食堂から出ていった。そんな中、百々が口を開いた。

 

「……俺達も、行くか?」

 

「そう、ですね。急いだほうがいいですね。」

 

彼女の言葉を聞いたユニ達は食堂を急いで出ていった。一人を除いては。

 

「あ、待って、まだ食べ終わって……。あー、アルミ何処にあるかな。」

 

「これをお使いください。」

 

どこから取り出したのか、優理花は琥珀にアルミを渡した。

 

「どうも。さて、行きますか。」

 

残っていたおにぎりと唐揚げを数個ずつ、アルミホイルに包み、簡易的なお弁当を10個作って琥珀は後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、帝王軍の兵や幻想郷の人達が集まる御所にユニ達も到着した。と、ユニが馬に乗る悠岐と楓を見て言う。

 

「そう言えば悠岐君と楓ちゃんは馬に乗るんだね。」

 

「そういやそうだな。」

 

彼女に続いて百々も言う。

 

「俺達は空を飛べないからな。」

 

「移動手段は馬なんだ。」

 

そう言いながら楓は辺りを見回す。辺りを見ると戦車や銃を持つ兵が多くいた。と、唐突に百々が口を開いた。

 

「……九十九も飛べなくないか?」

 

「確かに・・・。暁は飛べる?」

 

「僕は『飛べます』よ姉さん。まぁ、嘘ですけどね。」

 

「大丈夫。飛べるようになったから。蓬莱、チカラ借りるね。」

 

ふわり。と九十九がその場から空へ浮いた。それを見た楓が納得した表情をする。

 

「なら心配ないな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「九十九ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唐突に優理花の声が響いた。後ろを見ると走ってきたのか、息を切らした優理花がいた。

 

「何かしら、優理花さん。」

 

「・・・いいえ、ドリームランド。」

 

その言葉を聞き、九十九の柔らかかった表情が変わった。

 

「何処で気付いたの?」

 

「あなたと今日会った時から気づいていました。実は私は閉ざされた扉の鍵を持つ者との契約者なんです。あなたにあるものを託そうと思って。」

 

そう言うと彼女は首に着けていたネックレスを外し始めた。

 

「そのネックレスは……?」

 

「アヴァロン、ニライカナイ、シャンバラ、エデン、黄泉の鍵を伸縮化したものです。取り外せば元の大きさに戻ります。私と同じ存在であるあなたなら使いこなせる筈です。」

 

そう言うと彼女は5つの鍵の付いたネックレスを九十九に渡した。

 

「『伝説の理想郷』たちね……。」

 

受け取ったネックレスを九十九は首につけた。

 

「では私はこの辺りで。みなさん、気を付けてくださいね。」

 

そう言うと優理花は何処かへ行ってしまった。それと同時に一人の女性がユニ達の元へやって来た。

 

「……1周目の持つ『鍵』。3周目の持つ『錠』。これは、酷いことになりそうですね。」

 

そのやり取りを見ていた暁が、ポツリと言葉を漏らした。

 

「あなたが百々さんね。」

 

そう言いながら一人の女性が百々の前にやって来た。彼女を見た悠岐が少し目を見開いて言う。

 

「ミクじゃねぇか。どうしてここに?」

 

「百々さんやその他の人達に言いたいことが会ってきたのよ。」

 

「なんの用でしょうか、私はあなたを知りませんが。」

 

「あなたが私を知らないのは知っているわ。初めて会うもの。私はミク。悠岐達の仲間よ。あなた達に言いたいことがあるの。」

 

そう言うと彼女は大きく息を吸い込み、口を開いた。

 

「悠岐と楓を、よろしくお願いするわ。」

 

「ミク!?」

 

驚きの声を上げてしまう楓。

 

「……みっくみっくにしーてやんよー♪」

 

暁の言葉を聞いた瞬間、ミクは暁に銃口を向け、

 

「禁句よ?」

 

満面の笑みでそう言った。

 

「アッハイ」

 

「勿論、任せて!私達が悠岐君や楓ちゃんを守って見せる!」

 

「ありがとう、ユニ。」

 

「……なぜ彼はああも地雷を踏み抜いていくのか。」

 

ミクが去っていった瞬間、ユニ達の元へ二人の男と少女がやって来た。二人を見た瞬間、霊夢が口を開く。

 

「篁に妹子じゃない。二人も行くの?」

 

「勿論です。世界の存続のためにエリュシオンを倒します!」

 

「よぉ、篁。死ぬんじゃねぇぞ。」

 

「フン、当たり前だ。お前こそな、百々。」

 

2人は握り拳を作り、それを軽くぶつけ合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅れました、セコンドさん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声がユニ達の後ろから聞こえた。その声を聞いたメルト・グランチが後ろを見て言う。

 

「待っていたよ、月人達よ。」

 

「兵も集めておきましたわ。これで少しは楽に戦える筈よ。」

 

「油断は出来ませんよ、お姉様。相手は世界を滅ぼすことの出来る神。」

 

そう言うと二人はメルト・グランチの乗る馬の後ろに立つ。それを見た琥珀が口を開いた。

 

「……月人も来てるなんて、ホントに総力戦だね。」

 

「あぁ、驚いたよ。まさか月人にも出撃要請を出すとはな。」

 

悠岐が言った瞬間、馬に乗るセコンドの前に巨大な空間が開いた。

 

「あれが裏の世界への入り口か・・・。」

 

「いよいよね。」

 

「あぁ。」

 

「みんな、気を付けてね。向こうも攻めてくることなんて分かってるから出待ちされてる可能性もある。」

 

「そうですね。そうしますよ。……逆に踏み抜いて挑発でもするか?」

 

「それもいいかもしれねぇな。」

 

「皆、余に続け!!」

 

そう言った瞬間、セコンドは自分の武器である勺を上げ、空間の中に入っていった。それに続いて紅魔組や守矢組、月人組、帝王軍が空間の中へ入っていく。それを見た悠岐は少し笑みを浮かべて言う。

 

「俺達も行かねぇとな。」

 

「半人半鬼伊吹百々、出る!」

 

「あ、そうやっていく感じ?」

 

琥珀が言った瞬間、百々に続けて暁が口を開いた。

 

「現代の博麗魄霊暁、出陣します。」

 

「堕天の右腕出野楓、参る!」

 

悠「堕天の左腕西田悠岐、参ります!」

 

「えっと・・・幻想郷の守護者アイアルト・ユニ、行きます!」

 

地球(ほし)の神々の理想郷ドームランドこと星熊九十九、出ます!」

 

「二代目知識の妖精琥珀・イーグナウス、死なない程度に頑張るよ。」

 

「行くわよ!」

 

そう言うとユニ達も空間の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

移動中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空間から出るとそこは草木に覆われた、夜の草原だった。それを見た楓が口を開いた。

 

「ここが、裏の世界・・・。」

 

「……思ったよりも普通ですね。」

 

暁が言った瞬間、セコンドが辺りにいる者全てに聞こえるくらいの声で口を開いた。

 

「皆、よく聞け!ここから東南へ約8km先にあるエリュシオンの城へと向かう。その途中に帝都に辿り着くだろう。恐らくそこで幻獣達との交戦に入る。心するがよい!」

 

はっ!と兵士達が声を上げた。

 

「幻獣……ね。テルヒ、悪いけど会ったら容赦はしないからね。」

 

空に向かって、九十九はそんな言葉を送った。

 

「行くぞ!余に着いてこい!」

 

そう言うと彼は馬を走らせた。それに続いて兵士達や幻想郷の人達も移動を始める。

 

「頼むぜ、ケイ。」

 

そう馬に言った悠岐は馬を走らせた。

 

「じゃあ、私たちも遅れないように行きましょう姉さん。」

 

「えぇ、そうね。」

 

「行くぜ!」

 

そう言うと魔理沙は箒に又借り、宙に浮かんだ。そして悠岐と楓の乗る馬と同じスピードで飛んだ。

 

「みんな、やる気MAXだねぇ。」

 

チラリ。と琥珀は自分たちの背後へ視線を向けた。

 

「まだ大丈夫かな。」

 

「琥珀君?」

 

彼の様子を見ていたユニが口を開いた。

 

「いや、なんでもないよ。知識と体験を合わせてただけさ。」

 

「そっか。さ、早く行きましょう。」

 

「そうだね、行こうか。みんな結構先に行ってるみたいだし。」

 

そう言うと二人は悠岐達のあとを追った。




裏の世界へやって来たユニ達はいよいよエリュシオンとの最終決戦へ!!
次作もお楽しみに!


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第148話 廃帝都と幻獣

裏の世界へやって来たユニ達はエリュシオンとの決戦に挑む。


エリュシオンの元へと進軍を開始したセコンド率いる表の世界の者達。と、悠岐と楓の乗る馬の辺りを飛んでいたユニが口を開いた。

 

「変ね・・・。エリュシオンのことだから最初から私達に何か仕向けてくるのかと思ったけれど、何もしてこない。」

 

「彼女らしくないね。僕の知ってるあのババアなら最初から僕達に何か向けてくる筈なのにね。」

 

彼女に続いて琥珀も口を開く。そんな中、九十九が口を開いた。

 

「油断はしないで。急に幻獣達を出現させて私達に襲いかかってくるかもしれないわ。」

 

「そうですね、それなら油断出来ませんね。」

 

九十九に続いて暁も言う。と、楓が悠岐を見て言う。

 

「悠岐、確かお前の能力で敵の居場所を把握出来たよな?」

 

「あぁ、出来るさ。けど、馬に乗っている状態じゃ出来そうにない。セコンドの言う、帝都に着いたらやってみよう。それで幻獣達の居場所を把握する。」

 

悠岐が言った瞬間、百々はセコンドの所まで飛び、彼に言う。

 

「なぁ、セコンドのオッサン。あとどれくらいで帝都って場所に着くんだ?」

 

「うむ、約数分で帝都に着く。恐らく裏の世界の人もいるだろう。」

 

「そうか、分かった。ありがとな、オッサン。」

 

「おや、君が来るとは以外だな、伊吹百々よ。」

 

ユニ達の元へ戻ろうとした彼を引き留めたのはセコンドの近くで馬に乗っているメルト・グランチだった。

 

「そうか?俺は自分から来たんだけどよ。」

 

「私はてっきり博麗の巫女かモルトの妹君が来ると思っていたのだがね。まぁ、君にだから少し話そうと思ってね。」

 

そう言うと彼はクスクスと笑いながら再び口を開く。

 

「君は確か、星熊九十九の兄的な存在だったのかな?」

 

「あ、あぁ。そうだ。それがどうかしたのか?」

 

「ククク、君を見ていると彼を思い出すよ。」

 

「彼?」

 

「黒き刀と出野楓の兄のような存在だった彼のことだよ。彼は妹のような存在の彼女のために全力を尽くしていたよ。もう彼はいないがね。」

 

「そうか・・・。」

 

「君には彼と同じ素質があるようだな。この戦いでも妹を死ぬまで守る覚悟を感じられるよ。」

 

「俺は死なねぇけどな。」

 

「・・・それを言わなければ素晴らしい少年だったのだがね、少々落胆したよ。」

 

「がっかりするなよ・・・。」

 

「まぁ、精々頑張ることだな。調子に乗った口調で申し訳ないがね。ハッハッハッ。」

 

「・・・。」

 

何も言わずに百々はユニ達の元へと戻る。ユニ達の戻ってきた百々に魔理沙が言う。

 

「百々、あとどれくらいで着くってセコンドは言っていたんだ?」

 

「あと数分で着くらしい。人もいるってさ。」

 

「人もいるのか・・・。帝都で幻獣に出会ったらどうするってんだ。」

 

思わず口を開く悠岐。そんな彼に霊夢が言う。

 

「建物とかが壊れているのはセコンドも分かってる筈よ。人のことも大事だけれど今はエリュシオンを倒すことに集中するわよ。」

 

「・・・あぁ、そうだな。」

 

しばらくすると明かりのない街が唐突に現れた。その瞬間、セコンドが辺りに響くような声で口を開いた。

 

「皆の衆!これより帝都に突入する。ある程度は身を引き締めよ!!」

 

彼の言葉を聞いてはっ!と兵士が声を上げる。帝都に入るとそこには多くの建物が壊れており、とても人が住んでいるようには感じられなかった。そんな中、多くの兵士が馬や戦車から降り始める。それに続いて悠岐と楓も馬から降りる。

 

「これ、本当に人がいるのか?まるで廃帝都じゃないか。」

 

「変だね・・・。何かがいる気配はするんだけれど人の気配が感じられない。」

 

辺りを見回して口を開いた楓に続けて口を開く琥珀。そんな中、ユニが悠岐に言う。

 

「悠岐君、敵の居場所を把握出来る?」

 

「あぁ、そうだな。とりあえずやってみる。」

 

そう言うと彼は刀を地面に二回つついた。

 

「・・・?」

 

悠岐は刀を見回し、首を傾げ始めた。それを見たユニは彼に言う。

 

「どうしたの?悠岐君。」

 

「何も反応しねぇぞ。もしかしたら息を潜めてじっとしているのかもしれない。俺のこの力じゃ無理だな。」

 

「動いているもの全てに反応する小さな波動を感じ取るなんてね。エリュシオンは一体幻獣に何を入れたのかしらね。」

 

悠岐の言葉を聞いて多少エリュシオンの計画を推測する九十九。

 

「慎重にいかないと不意を衝かれて殺られる。エリュシオンはそれを狙ってやっているみたいなのかしら?」

 

「さぁな。少なくとと私達を確実に殺すつもりでいる。奴の所に行くまでは死ぬわけにはいかない。」

 

そう言うと彼女は辺りに広がる光景を再び見る。と、悠岐が口を開く。

 

「ここからは手分けして行動しよう。百々は俺と行動。楓は九十九と行動して暁は霊夢と行動し、ユニは琥珀、魔理沙と行動してくれ。」

 

「了解だぜ!」

 

「よっしゃ、やるか!」

 

気合い十分な魔理沙と百々。そんな二人とは別に琥珀が悠岐に言う。

 

「文句は言うつもりはないけれど、どうしてこんな組合せになったんだい?」

 

「何故こんな組合せかって?何となくに決まってんだろ。」

 

「・・・何となく察してたよ悠岐。お前のことだから何となく以外の理由なんて考えられない。」

 

溜め息を吐きながら言う楓。そのままユニ達は悠岐が(適当に)選んだメンバーで行動をすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは悠岐&百々ペア。二人な壊れた建物の中の様子を見ていた。

 

「静かすぎるな。兵士達のひそひそ話しか聞こえやしねぇ。」

 

「しかしここは何もねぇな。悠岐、そっちに何かあったか?」

 

「何もねぇな。何か手掛かりになりそうなのは・・・ん?なんじゃこりゃ。」

 

「なんかあったのか?」

 

何かを見つけた悠岐の元へと寄る百々。悠岐が見つけたもの、それは30cmほどある何かの巨大な生物の牙のようなものだった。それを見た百々は鳥肌を立たせながら言う。

 

「お、おい悠岐。それは何だ?」

 

「形的には狼の牙だな。けど、大きすぎるな。推定だが体長4m以上あるぞ。」

 

「てことはテルヒのか?」

 

「かもしれねぇな。こんなところで人を襲っていたんだな。」

 

その時だった。突然辺りにズシン、ズシンと大きな足音が響いた。

 

「百々、隠れるぞ。」

 

「ああ!」

 

二人は咄嗟に近くにあった家具に身を潜める。ズシン、ズシンと足音が窓の外から響く。それを聞いた悠岐はそっと顔を出し、様子を伺う。窓には巨大な目がギョロギョロと獲物を探すように動いていた。

 

「・・・!!」

 

なるべく声を出さないように悠岐は再び家具に身を潜めた。しばらくじっとしていると足音がピタリと止んだ。それを確認した悠岐は再び慎重に様子を伺う。そこにはもう巨大な目はなかった。

 

「なぁ、悠岐。外に何がいたんだ?」

 

「かなりデカかったな。20mくらいあるやつだった。多分あの目はワニだ。エリュシオンの幻獣の一体か?」

 

「多分な。まさかここまで巡回しているとはな。」

 

「けどおかしくないか?あそこまででかい足音を立てていたのにも関わらず帝王軍の兵士や月の都の奴ら誰も気がつかない。」

 

「まさか・・・。」

 

「急いで知らせに行くぞ!!」

 

「あぁ!」

 

そう言うと二人は勢いよく建物から飛び出し、帝王軍や月の都の者達のいる場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変わって楓&九十九ペア。二人は多くの椅子が並んでいて天井が一部落ちている建物を見回っていた。

 

「ここは教会だったのか?かなり荒れてしまっているな。」

 

「恐らくそうでしょうね。テルヒ率いる幻獣達に襲撃された。」

 

と、何かを感じた楓がある方向を見る。それを見た九十九が口を開いた。

 

「楓、どうしたの?」

 

「今微かにだが何かの雄叫びが聞こえた。多分幻獣だな。方向的にセコンド達のところだ。」

 

「セコンドのおじさまのところ?それじゃあ・・・。」

 

「悠岐達も近い。急いで向かおう。」

 

そう言った瞬間、二人はセコンド達のいる場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変わってユニ&琥珀&魔理沙。三人は空から廃帝都の様子を見ていた。と、ユニが口を開いた。

 

「妙に静かね・・・。本当に幻獣なんているのかしら?」

 

「セコンドのオッサンが言うんだ。いるに違いないぜ!」

 

彼女の言葉に即答する魔理沙。と、琥珀がある方向を見て言う。

 

「・・・あそこ、何か見えるね。」

 

「え、どこなんだぜ!?」

 

そう言うと魔理沙は辺りをキョロキョロし始めた。そんな彼女とは別に琥珀がある方向を指差し口を開いた。

 

「あそこだよ。なんか赤い光が沢山見える。」

 

彼の言葉を聞いた二人は指差す方向を見る。そこには無数の赤い光が徐々に近づいているのが見えた。

 

「な、なんだありゃ!?」

 

「・・・幻獣の群れ。」

 

ボソッと呟くユニ。彼女の言葉を聞いた魔理沙は目を見開き、言う。

 

「ヤバくないか?こっちに近づいてきてる。」

 

「みんなに知らせなきゃ行けないね。急ごう。」

 

琥珀が言った瞬間、三人は帝都へと降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変わって霊夢、暁ペア。二人は既に幻獣達の存在に気づき、これをメルト・グランチに知らせていた。

 

「成る程・・・。もうやって来ていたのか。分かった、知らせてくれてありがとう、博麗の巫女にその弟よ。二人は黒き刀やモルトの妹達と合流し、エリュシオンの城まで先に向かってくれたまえ。」

 

「分かりました。グランチさんも気をつけてください。」

 

「うむ。我々は幻獣達の相手をする。卿らだけで倒せる相手だとは思わぬが・・・。十分に気をつけたまえ。」

 

「えぇ、分かってるわ。」

 

そう言った時だった。突如辺りにズシン、ズシンと地響きが鳴り響いた。それを聞いた瞬間、辺りに男の声が響いた。

 

「総員、攻撃開始!!」

 

その声が聞こえた瞬間、兵士達がウォーと声を上げながらある方向へ走っていった。

 

「今の声は!?」

 

「剛岐が指示を出したのだな。さ、行きたまえ。」

 

「分かったわ。あんたも気をつけてね。行くわよ、暁。」

 

「はい、姉さん。」

 

そう言うと二人はメルト・グランチの指差した方向へと向かっていった。それを見た彼は剛岐の声のした方声を見て言う。

 

「さぁ、始めようか。狩りの時間だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢と暁がエリュシオンの元へ向かっている中、様々な方向から声が聞こえた。

 

「霊夢!!」

 

「暁!!」

 

二人が振り向くと後ろから馬に乗ってくる男とその隣で飛ぶ男二人に上から飛んでくる二人の少女と一人の少年、走ってくる一人の少女と飛ぶ一人の少女がやってきた。

 

「ユニ、魔理沙、九十九、楓!」

 

「悠岐さん、百々さん、琥珀さん!」

 

それぞれの少年少女の名前を叫ぶ霊夢と魔理沙。と、馬に乗る悠岐が楓に近づき、言う。

 

「楓、乗れ!」

 

「あぁ!!」

 

そう言うと彼女は悠岐の手を握り、そのまま彼の後ろに乗った。と、百々が口を開いた。

 

「幻獣達が来たらしいな。グランチのオッサンらは大丈夫なのか?」

 

「メルト・グランチの軍事力なら問題ないだろう。少し不安なところもあるが。」

 

「今は私たちはエリュシオンの元へ向かいましょう。おじさま達も心配だけど私たちはおじさま達から命令を受けたのよ?やるしかないじゃない。」

 

「・・・あぁ、そうだな。」

 

楓、九十九の言葉を聞いた百々は納得した声を上げる。そんな彼に琥珀が口を開いた。

 

「心配性なのは君らしいね。けど大丈夫だろう。グランチ君の軍事力は現世最強の軍隊と言われているくらいだからね。なんとかなるんじゃないかな。」

 

「今はアイツらを信じるしかない。俺たちは先を急ごう。」

 

悠岐が言った瞬間、ユニ達は急いでエリュシオンの元へと向かった。




メルト・グランチの言葉を信じ、鋼鉄城へと向かうユニ達。その頃、エリュシオンはあることを企てていた・・・。
次作もお楽しみに!


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お正月特別編2

作者「みなさん、明けましておめでとうございます!」

 

全員「・・・。」

 

作者「ん?みんなどうしたの?」

 

悠岐「8月12日、これが何を意味するか分かるか?」

 

作者「えっと、君が代記念日?」

 

ユニ「なんであなたがそれを知ってるのよ!!そんなわけないでしょ!!」

 

百々「昨日投稿された小説の前に投稿された小説の日付だよ!!」

 

暁「4ヶ月も投稿サボってて何していたんですか!!」

 

影裏「作者よ、テメェ俺が正月特別編で初登場したの覚えてるよな?」

 

作者「え、あうん。覚えてるよ。」

 

影裏「それから俺は一回も登場せずに遂にはここまで来ちまったじゃねぇか!!どうしてくれるんだ!!」

 

作者「ひぃぃぃぃぃ!!ごめんなさぁぁぁぁい!!学校のサークルで忙しかったりバイトで忙しかったりモンストやバンドリのイベント走ってて全然投稿する暇がありませんでした!!」

 

霊夢「サークルやバイトはまだ分かるけれどモンストやバンドリってどう言うことよ!!」

 

魔理沙「しかもお前もう1つの小説も投稿サボってるよな?あれに関してはほとんど手をつけてないよな?」

 

作者「ぎくっ!そ、そんなことないですよ?」

 

琥珀「でも投稿ペースはかなり低いよね?7月1日以降から何も起こってないよ?」

 

作者「・・・大変申し訳ございませんでした。今年こそは絶対に投稿ペースを上げていきたいと思います。」

 

九十九「思いますじゃなくて行きます、の間違いじゃなくて?」

 

作者「投稿ペースを上げますのでみなさん今後ともヤマタケるをよろしくお願いします!!」

 

楓「こんな作者だが応援してくれるとありがたい。」

 

ラピス「いい加減私も登場させなさいね。」

 

作者「あれ、君は次の話まで登場させるつもりなかったんだけれどね。」

 

ラピス「え?」

 

作者「え?」

 

全員「え?」

 

ラピス「次の話って、どういうことですか?」

 

作者「君は混沌記には出ないってことだよ。」

 

暁「そうなんですか?」

 

楓「・・・。」

 

悠岐「・・・。」

 

魔理沙「あー・・・。」

 

霊夢「言っちゃったわね、あんた。」

 

影裏「俺はどうなっても知らないからな。」

 

琥珀「僕は失礼するよ。」

 

九十九「私もお暇させていただきますわ。」

 

百々「俺も知ーらない♪」

 

ユニ「またこんな下りになっちゃうのね・・・。」

 

ラピス「ふざけないでください、このバンドリーマーがっ!!」ゴキっ!!

 

作者「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

楓「・・・こんなので申し訳ないが読者のみんな。」

 

影裏「これからも東方混沌記をよろしく頼むよ。」




皆さま、本当に投稿ペースが遅すぎて大変申し訳ございませんでした。もっと早く投稿できるよう全力を尽くしますので皆様、何卒ヤマタケるをよろしくお願いします。


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第149話 エリュシオンvsルシファー①

幻獣達の相手をメルト・グランチ達に任せ、ユニ達はエリュシオンのいる鋼鉄城を目指す。


「ククククク、予想通りねぇ。」

 

場所は変わって鋼鉄城。そこでは巨大なモニターでユニ達の様子を観察するエリュシオンとテルヒがいた。

 

「確かにエリュの言う通り、幻想郷の守護者に博麗の巫女、白黒の魔法使いに二人の悪魔、百々に九十九、知識の妖精に博麗の巫女の弟。皆全ての世界に選ばれた者達だ。しかし本当に来るとは・・・。」

 

「だから言ったでしょう?あの子達は絶対に来るって。」

 

そう言った時だった。突如辺りにキィキィという音が響いた。その瞬間、エリュシオンは少し目を細めて服の中に入ってるものを取り出す。彼女が中から取り出したのは緑色のスライムだった。キィキィと鳴くスライムをエリュシオンは耳元まで運んだ。その瞬間、スライムが彼女の耳元で姿を変え、小さなモニター付きの通信機に変化した。それを見たテルヒが口を開く。

 

「何かあったか?」

 

「東からこの城へ向かってくるやつが一人、西からこの城へやって来る奴が一人来てる。」

 

「・・・敵か?」

 

「多分ね。でも東から来る奴は百々達と合流するわよ?この子はどうするつもりなのかしらね?」

 

と、エリュシオンが機械をカタカタといじり始めた。その瞬間、二人が見ていた巨大なモニターに緑色の画面が写しだされ、そこに赤い点が二ヶ所映し出されている。

 

「・・・西側の方は鋼鉄城(ここ)に近いな。誰だかは分かっているのか?」

 

「当たり前でしょう?テルヒ。私が分からないわけないじゃない。」

 

「そうだな。では誰が来るんだ?」

 

「百々達と合流するのは理の破壊者でここに近いのはあの堕天使。何故来たのかは知らないけれど、相手しないといけないわね。」

 

そう言うとエリュシオンはテルヒに寄り、優しくその体を抱き締めた。そして言う。

 

「テルヒ、言いたいことは分かっているわね?」

 

「あぁ、勿論だ。私に任せてくれ。エリュは奴を任せたぞ。決して油断してはならんぞ。私が言うことではないが・・・。」

 

「ありがとう、テルヒ。アンタは心優しいわね。そんなアンタが好きよ。」

 

そう言うと彼女はテルヒから離れ、共に部屋を出た。そして二手に別れ、テルヒの方を向き、

 

「また会いましょう、テルヒ。」

 

そう言った。

 

「あぁ、また会おう。」

 

そのまま二人は背を向けて別れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面はエリュシオン。彼女は一人城の広いベランダに出て空を見上げていた。

 

「ごきげんよう、ルシファー。」

 

そう言う彼女の目線には背中に紫色の翼を生やした女性、ルシファーが空を飛んでエリュシオンを睨んでいた。そんな彼女にエリュシオンはクスクスと笑いながら口を開いた。

 

「おー、怖い怖い。そんな顔しないで欲しいわね。」

 

「エリュシオン、貴様は私の手で葬る。異論は認めない。」

 

「私を葬る?アハハ、面白いことを言うわね。表の連中達には禁忌の存在として恐れられた私を葬るって。悪魔が神に逆らえるとでも?」

 

「確かに、前の私ではお前には勝てない。だが、神に近づいた今の私にはこれがある。」

 

そう言うとルシファーは右手に足の生えた紫色の杯のようなものを持ち始めた。その瞬間、彼女の体が宙に浮かんだかと思うと紫色の光が彼女を覆った。それを見たエリュシオンは目を細め、

 

「獣神化、か・・・。」

 

そう呟いた。その瞬間、ルシファーの周りが紫色に光り出したかと思うと服装が変わり、赤、青、緑、黄色、紫色の玉座に腰を下ろし、服装の変わったルシファーが姿を現した。

 

「それがアンタの獣神化ねぇ。他の天使達の力も使えるのかしら?それは。」

 

「フン、さぁな。試してみればわかる。」

 

そう言うと彼女は辺りに無数の紫色の光を漂わせ始めた。そしてそれをエリュシオンに向かって一斉に放った。彼女の放った光はエリュシオンの前で爆発を起こす。

 

「・・・やはりその程度では倒れないか。」

 

ルシファーの放った光によって沸いた煙の中には左手を前に差し出し、紫色の結界を作って攻撃を防いでいたエリュシオンだった。

 

「この程度で倒せるなら誰だって苦労しないわよ、ルシファー。」

 

そう言うと彼女は服の中からスライムを取り出した。その瞬間、スライムが一瞬にして拳銃へと変化した。そしてその銃口をルシファーに向ける。

 

「フン、たかがその程度の銃弾で私に勝てると?」

 

「やってみる?」

 

そう言った瞬間、エリュシオンはなんの突拍子もなく銃弾を発砲した。それを見たルシファーは急いでバリアを張る。ギリギリバリアを貼れたものの、彼女の貼ったバリアは銃弾によってヒビが入っていた。

 

「ヒビ!?そんなバカな!!」

 

拳銃(これ)ね、結構強力な銃弾で高層ビルとかにあるコンクリートも貫くことが出来るのよ。アンタのようなそのバリアではギリギリだったか。でも、二発目はないわよ?」

 

そう言うと彼女は再び銃口をルシファーに向ける。

 

「くっ!」

 

それを見た彼女は勢いよく飛び上がる。

 

「へぇ。」

 

彼女に続いてエリュシオンも飛び上がった。そしてルシファー目掛けて何発も発砲する。彼女はそれを避けつつエリュシオンの様子を伺う。と、エリュシオンが発砲しながら口を開いた。

 

「どうしました〜、獣神化したルシファーちゃーん。避けてばかりでは私は倒せないわよ〜。」

 

完全に煽っている。そう感じたルシファーはチッと舌打ちをして体勢を整える。それを見たエリュシオンはきょとんとして発砲を辞める。

 

「貴様、そこまで煽るとは余程の余裕があるようだな。」

 

「勿論、アリアリだとも。私は誰にも負けたりはしないからね。この能力と新たな兵器がある限りね。」

 

「新たな兵器だと?」

 

ルシファーが言った瞬間、エリュシオンの持っていた拳銃がスライム状になったかと思うと一瞬にしてベルトのようなものに変身した。

 

「・・・ベルト?」

 

「そう!しかもこれはただのベルトじゃないのよ。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの周りに突如9枚のカードが漂い始めた。カードにはそれぞれ人の顔や仮面を被った者、人でないものや悪魔の絵が描かれている。

 

「このベルトやカードはある世界に存在した、『世界の破壊者』って呼ばれていた奴のデータを分析して作ったものなの。そう、このカードに描かれた奴に変身してその力を臨機応変に使い、あらゆる奴に対応できる優れものなのよ。けれどこれはまだ制作途中、完成するにはまだまだ時間がかかる。けれどいずれ多くの奴の力がこのベルトに記憶されるでしょうね。」

 

「変身だと?そんなので世界を支配できるとでも?」

 

「私がやりたいのはあくまで世界の支配ではなく破壊。私を追放したあの表の世界を私はまだ憎んでいるのだから。支配なんてそんな古臭いことなんかしないわよ。」

 

「フン、まぁ支配しようが支配しなかろうが私にとって貴様は目障りな存在だ。今すぐにでも消え失せてもらいたいところだ。」

 

「そんなこも言わないで欲しいわね。どうせ世界は私の手によって壊れるんだし。あの世界もね。」

 

「・・・爆絶級の高校生の世界か。」

 

「ピンポーン、大正解!」

 

「それはともかく、エリュシオン、貴様はいつまで喋っているつもりだ?」

 

そう言うルシファーはエリュシオンの背後に移動していた。

 

「ゲッ、いつの間に移動してたの?」

 

「目を閉じて話してたから密かに移動してみた。案外気がつかないものなんだな。」

 

そう言うとルシファーは至近距離でエリュシオンに紫色のレーザーを放った。

 

「ッ!!」

 

レーザーをまともに受けた彼女はバク転しながら後退する。そんな彼女に御構い無しにルシファーは右手を上げ、

 

「我、堕天の王なり!!」

 

そう叫んだ。その瞬間、ルシファーの周りに紫色の異形の形をした怪物達が数多く現れた。そしてその怪物達は一斉にエリュシオンに向かって飛びかかった。その瞬間、辺りに爆風が響き渡った。ルシファーは爆風が治った場所を凝視する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な!?ば、馬鹿な!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思わず声を上げてしまうルシファー。無理もない、そこにはあの怪物達の攻撃を受けたのにも関わらず平然と立っているエリュシオンの姿があったからだ。エリュシオンは肩をパンパンと叩き、

ルシファーを見て言う。

 

「はぁ、14万円して買ったお気に入りのスーツがまた汚れた。また洗い直しじゃない!どうしてくれるの?」

 

「・・・。」

 

彼女は無言だった。エリュシオンのスーツが汚れたことよりも攻撃を受けて平気でいられるほうが驚いたことだからだ。そんな彼女にエリュシオンは再び口を開く。

 

「まぁ、いいか。この程度の汚れなら後でコロコロやれば落ちるだろうし。さてルシファー、これがアンタの本気とならば私は2割の実力だけでアンタを倒して見せてあげる。」

 

「2割だと!?貴様、戦いを舐めているのか!!」

 

「別に、舐めてるつもりはないわ。けれど、アンタ程度の力の持ち主ならこれくらいでいいかなって思ったの。獣神化しても所詮この程度かって思っちゃった。さぁ、すぐに終わらせるわよ。私にはあの子との戦いが待っているんだから!!」

 

そう言う彼女の顔には今まで見たことのないほど不気味な笑みが浮かんでいた。




ルシファーの攻撃を受けて平然としているエリュシオン。ルシファーに勝ち目はあるのか!?
次作もお楽しみに!


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第150話 エリュシオンvsルシファー②

対峙する凶神エリュシオンと堕天使ルシファー。獣神化を遂げ、更なる力を見せつけるもののエリュシオンには通用せず・・・。



エリュシオンの不気味な笑みに臆することなくルシファーは彼女と対峙する。と、エリュシオンが拳銃をスライム状の形に戻し、それをスーツの懐にしまい、変わりに一枚のカードを取り出した。そして口を開いた。

 

「これでアンタに神と悪魔の格の違いって奴を教えてあげる。」

 

「フ、フン。やれるものならやってみろ!!」

 

「フフフ、それじゃあお言葉に甘えてさせてもらうわね。スペルカード、模擬『ゴールド・マーグル』」

 

そう言った瞬間、彼女の姿が一瞬にして消えたかと思うとルシファーの真横に移動しており、更に彼女の頭を掴んでいた。余りの速さにルシファーは対抗することは出来ず、言葉をあげることすら出来ずにそのままエリュシオンに投げ飛ばされる。投げ飛ばされたルシファーは不気味に建っている柱をなぎ倒して最後の一本まで飛ばされる。

 

「かはっ!」

 

柱に叩きつけられたルシファーはズルズルと地面に落ち、その場で吐血する。そんな彼女にエリュシオンはゆっくりと歩み寄る。そして歩きながら口を開いた。

 

「今のスペルカードは他人の能力を一定時間だけ使うことのできるスペルカード、模擬。使える範囲は神を除く全ての能力者。勿論、アンタの下僕のあの2人の力も使える。」

 

「そ、そんなこと・・・出来る、わけ・・・。」

 

「そんなことが出来るからこのスペルカードが存在するのよ。このカードに容易く対応できる奴なんていないわ。」

 

そう言うと彼女は飛び上がり、銃口をルシファーに向ける。

 

「くっ!」

 

ヨロヨロになりながらルシファーはエリュシオンが放った銃弾を避けた。銃弾を撃ちながらエリュシオンは口を開いた。

 

「どうしたの?ルシファー。そんな避けるだけじゃ私にダメージなんて与えられないわよ〜。」

 

彼女の口調はまるで挑発するかのような感覚だった。挑発に乗らないようにルシファーは落ち着きながらエリュシオンの攻撃をかわしていく。

 

「くらえっ!」

 

そう言うと彼女は左手を上にあげ、指をパチンと鳴らした。その瞬間、辺りに2つの巨大なサークルが出現し、エリュシオンを囲んだ。それを見た彼女はクスクスと笑いながら言う。

 

「ダブルエナジーサークル。多くの敵を殲滅するにはもってこいの技だけれども私一人にやるには効果は薄いようねぇ。隙間があって簡単に避けられるわよ。」

 

そう言う彼女はルシファーの放ったダブルエナジーサークルの隙間に移動していた。そんな彼女の手にはまた新たにスペルカードが握られていた。

 

「くっ!」

 

それに気づいたルシファーはすかさずバリアを展開する。それを見たエリュシオンはクスクスと笑いながら言う。

 

「貫通ゲイボルグ。その程度のバリアでこの攻撃を防げるとでも?」

 

そう言うと彼女は右手に緑色の輝くオーラを放つ槍を持ち、それをルシファー目掛けて一直線に投げた。彼女の放った槍は一直線にルシファーに飛んでいく。槍はルシファーの展開したバリアを貫き、彼女の左肩を捉えた。バリアに穴が空いた瞬間、ピシピシとバリアにヒビが入り、そのまま割れてしまった。それと同時にルシファーの肩から鮮血が飛び散る。

 

「ッ!?」

 

バリアを破壊され、驚くルシファーとは別にエリュシオンは指の上で器用にスペルカードを回しながら言う。

 

「貫通ゲイボルグ。このスペルカードはありとあらゆる防御技を貫き、破壊するカード。アンタのバリアなんてこの槍にかかればなんの意味もないのよ。」

 

ルシファーは右手で抑えるがだらだらと血が垂れ続ける。それを見たエリュシオンはクスッと笑い、言う。

 

「その様子だと、結構なダメージを受けたようね。もはや獣神化を果たしたアンタは私の相手ではない。すぐに終わらせてあげる。」

 

「くっ、させるか!」

 

そう言いながらルシファーは右手を上げ、紫色の光を溜める。

 

「ククッ、よく粘るわね。私より下だというのに。」

 

そう言うと彼女は銃を上に向け、発砲した。銃から飛び出したのは銃弾ではなく無数の地雷とワープだった。

 

「地雷にワープ・・・。」

 

「確かアンタの能力(アビリティ)ってバリアと超アンタダメージウォールよね?ならこのギミックには対抗出来ないでしょうね!」

 

ギリッとルシファーの口から歯を食い縛る音が響く。ルシファーは再びバリアを展開するとそのままエリュシオンに向かって行った。それを見た彼女は少し目を見開いて言う。

 

「へぇ、ギミック対応してないのによく行こうと思うわね。流石モンスト界最強と言われる存在。ギミックに対応していなくてもストライクショットや友情コンボによる強さで何処にでも行ける。けれども私相手では辛いわよね。」

 

そう言うと彼女はルシファーの目の前にワープを展開した。

 

「なっ!?」

 

唐突だったため、反応できずに彼女はワープの中に吸い込まれてしまう。ワープから出た先には先程エリュシオンが展開した地雷が無数に散らばっていた。

 

「クソッ!」

 

何とか避けようとするも間に合わず、彼女は複数の地雷を踏み、バリアを消滅させてしまった。そして残った地雷の爆発が彼女を襲った。

 

「ぐあっ!」

 

地雷を複数食らったルシファーは吹っ飛び、倒れる。そんな彼女の元へエリュシオンが残ったワープを回収しながら近づく。そしてルシファーの目の前に立ち、言う。

 

「よくここまで抗ったわね、ルシファー。そのアンタの努力は褒めてあげる。けれども、私の前では手も足も出なかったようね♪」

 

「そんな呑気にしている場合か!」

 

そう言うとルシファーは右手の指に瞬時に光を溜め、そのまま光線をエリュシオンの目の前で放った。目の前で光線を受けたエリュシオンは仰向け反る。

 

「ククククク・・・。」

 

「!?」

 

だが彼女は笑いながらゆっくりと体を起こす。彼女の顔の左側の二分の一はルシファーの放った光線で吹っ飛んでいる。だが彼女は平然としていた。と、エリュシオンが唐突にルシファーの首を掴んだ。

 

「がっ!?」

 

そのままエリュシオンはルシファーを無理やり立ち上がらせる。ルシファーは彼女の左手から逃れようと抵抗するが力が強すぎて離れない。と、エリュシオンが口を開いた。

 

「今の攻撃は良かったわよ、ルシファー。私をギリギリまで引き寄せて攻撃するの。けれども頭の一部を吹っ飛ばしちゃ意味ないのよねぇ。エデンの果実の能力でこういうのを食らうとすぐに再生できるの。」

 

そう言うとエリュシオンの吹っ飛んだ頭がみるみる回復していき、遂には元の状態に戻った。

 

「そ、そんな・・・。」

 

「残念でした♪」

 

そう言うとエリュシオンはルシファーの首を掴んだまま彼女を軽々と空中に持ち上げた。ルシファーは足をバタつかせながら再び抵抗を試みるが先程と変わらなかった。ルシファーを持ち上げたままエリュシオンは右手にスペルカードを取り出した。そして口を開く。

 

「今度こそトドメね、ルシファー。」

 

そう言うと彼女は手に持っているスペルカードを発動した。

 

「模擬『アイアルト・モルト』」

 

その瞬間、ゴキッという音と共に空に血が飛び散った。




獣神化を果たしたルシファーであったがエリュシオンの前では手も足も出ず、どうなる!?
次作もお楽しみに!

p.s
大変遅れてしまい、申し訳ありませんでした。学校のレポートやバイト等などで忙しくて中々投稿する暇がありませんでした(第五人格やってたなんて口が裂けても言えない・・・)。今後はすぐに投稿出来るように努力いたしますので何卒よろしくお願いします!


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第151話 邪魔をする幻獣

エリュシオンに果敢に挑んだルシファー。しかし彼女の前では手も足も出ず・・・。


場面は変わってユニ達。彼女達はメルト・グランチの指示のもと、エリュシオンの拠点である鋼鉄城へと向かっていた。と、悠岐が突然辺りを見回し始めた。それに気づいた琥珀が彼に話し掛ける。

 

「どうしたんだい?悠岐君。辺りを見渡して。」

 

「いや、何か変だなと思ってな。」

 

「変?特に変わった様子はないと思うけれど・・・。」

 

辺りを見回しながらユニが口を開く。そんな彼女に悠岐が言う。

 

「さっきの廃帝都と比べて何故かこの辺りが静かすぎる。エリュシオンのことだ、俺達へ幻獣を向かわせてもおかしくない。なのに帝都を出てから1匹も遭遇しない。エリュシオンの奴、何か企んでるのか?」

 

「もしかすると主戦力である五大王の軍を潰すために幻獣全てを向かわせているのかもしれない。となると奴は私達を一人で倒すかあるいは他の協力人と倒すかだ。」

 

悠岐の言葉を聞いて楓が自分の推理を言い放った。そんな彼女に百々が言う。

 

「アイツがどう攻めるのかは知らねぇけどよ、俺達の目的はただ1つだろ?」

 

「えぇ、そうですね。エリュシオンの討伐。それが僕らに与えられた使命です。」

 

「使命ってほどではないけれど五大王達が来るまでの時間稼ぎね。」

 

「・・・そうですね、姉さん。」

 

「どうしたの?暁。何か不安なことでもあるの?」

 

「・・・いえ、何でもありません。先を急ぎましょう。」

 

「そう・・・。」

 

霊夢と暁が話している中、何かを見つけたユニがある方向を指差して言う。

 

「みんな見て!あんなところに何かあるわ。」

 

ユニの指差す場所を一同は同時に見る。そこには赤い液体が流れている紫と白の大きなものがあった。それを見た魔理沙が目を細めて言う。

 

「・・・なんだありゃ?」

 

「何かしら・・・うっ!?」

 

突如ユニが地面に降り、その場で嘔吐してしまった。

 

「おいユニ!?」

 

それに気づいた百々が彼女の側に寄り、背中を摩る。

 

「あ、ありがとう百々君。」

 

彼に続いて霊夢達もユニの元へ寄る。と、楓が大きなものを見て口を開く。

 

「あのデカいものから腐敗臭が漂ってるな。きっと何処かに死体が転がってるんだろう。」

 

「死体か・・・。にしてもあのサイズの生物なんていました?」

 

「少なくとも現世にはいねぇな。・・・っておい、あれってもしかして!」

 

そう言うと悠岐は恐る恐る大きなものに近づいた。

 

「ちょっと悠岐!急に動き出したらどうするのよ!」

 

唐突に動いた悠岐に霊夢が言う。そんな彼女とは別に悠岐は大きなものをじっくり眺め、口を開いた。

 

「間違いない、コイツはBEATだ!」

 

「べ、ベータ?」

 

聞き覚えのない言葉にユニ達は首を傾げる。そんな彼女達に楓が口を開く。

 

「ガイルゴールが生み出したのかどうかは知らないが現世では人類に敵対的な地球外起源種とされている。しかし驚いたな、大きさ的には要塞(フォート)級だな。本でしか見たことがないから実物を見るのは初めてだ。」

 

「大きいほうなの?」

 

「観測されている中ではな。実際はもっとデカい奴がいるのかもしれないが私達人類の知る限界はここまでなんだ。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

ユニと楓が話している中、暁がBEATの死体をじっくり観察していた。それに気づいた九十九が彼に言う。

 

「どうした?暁。」

 

「いや、どうも気になったことがありまして・・・。先程からこのBEATとやらの死体の中から何かを食べる音がしません?」

 

「音?確かに少ししたかもね。」

 

暁と琥珀の言葉を聞いてユニ達は要塞級の近くで耳を澄ませる。すると中からクチャ、クチャと何かを食べているような音が響いた。

 

「・・・これ、中に何かいない?」

 

何かを察したユニがいち早く口を開いた。

 

「でもBEATを捕食する奴なんて聞いたことがないぞ。」

 

「表ではな。でも裏は違うかもしれないぞ、楓。」

 

百々が楓に言った時だった。突如BEATの死体の中から身体中に血が付着した大きさ8mほどのある巨大なコウモリが姿を現した。

 

「ひっ!」

 

「げ、幻獣だ!!」

 

腰を抜かしてしまうユニと思わず声を上げる魔理沙。と、巨大なコウモリが空を見上げて耳をピクピクと動かし始めた。それを見た琥珀がユニ達に言う。

 

「みんな急いでここから離れよう!今あのコウモリが仲間を呼んでるよ!」

 

「仲間って他の幻獣をか!?」

 

百々が琥珀に言った時だった。突如辺りがズシン、ズシンと揺れ始めたかと思うとユニ達が通ってきた廃帝都の方から大量の巨大な生物が迫っていた。その種類はワニやゴリラ、ユニコーンやバッファローなど様々である。

 

「ひっ!」

 

「マジかよ・・・。あんな数相手に出来るわけがねぇ、急いで逃げるぞ!!」

 

悠岐の言葉を聞いてユニ達は急いで飛び上がり、百々は魔理沙の箒にまたがった。

 

「ちょっ、百々!?」

 

「悪いな、魔理沙。乗せてもらうぜ!」

 

「仕方ないぜ!」

 

そう言うと魔理沙は百々を乗せて空に飛び上がり、幻獣の大群から逃げ出す。馬に乗ったまま楓が口を開く。

 

「マズイな・・・。いくら馬が持久力があるとはいえ、あのスピードで追いかけられればすぐに捕まってしまう。」

 

「馬で追いつかれるって結構ヤバイな・・・。」

 

「それに、上を見てみろ。コウモリやタカだって追いかけてきてる。もしあの走ってきてる奴らの体力がなくなったとしても空から追いつかれる。」

 

「どうしろって言うのよ!」

 

ユニ、九十九、楓が話している中、百々が後ろを見ながら言う。

 

「こうなったら少しでも対抗するしかねぇ!」

 

「ちょっと百々君!?」

 

百々を琥珀が止めようとするが遅く、既に百々は弾幕をゴリラの幻獣に放っていた。だがゴリラは百々の弾幕をまるで何もなかったかのように受け、ユニ達を追い続ける。

 

「オイ嘘だろ?弾幕が効かねぇぞ!?」

 

「幻獣に弾幕が通用しないとは、幻想郷の連中に対策してきているのか!」

 

そうこう話している内に幻獣の大群はユニ達のすぐ後ろまで迫っていた。それを見た悠岐が口を開いた。

 

「オイオイ、これはマジでヤバイぞ。下手したら全員奴らのエサになっちまう!」

 

「嫌ダァァァ!!私は食べられたくありませぇぇえん!!」

 

「暁、しっかりして!!」

 

発狂してしまう暁を見て気を戻させる霊夢。無理もない、すぐ近くに死が迫っているのだから。全員(百々、琥珀を除く)が死を覚悟した時だった。突如空からヒュルルルルという音が聞こえたかと思うと大群の中心目掛けて何かが飛んできた。そして大群の中心に落ちた瞬間、強大な爆発が起こった。

 

「!?」

 

「な、何が起こってるんだ?」

 

あまりの突然の出来事に困惑するユニ達。そんな中、大群に次から次へと大量に何かが落ち、爆発する。と、楓が口を開いた。

 

「これは小型ミサイルか!?」

 

「ミ、ミサイル?」

 

聞いたことのない言葉を聞いて首を傾げる幻想郷組。そんな彼女達に琥珀が言う。

 

「現世にある、所謂現代兵器ってやつだよ。どうやら幻獣達には有効のようだね。」

 

「で、でもこれは一体誰が飛ばしているの?」

 

ユニが言った瞬間、九十九が廃帝都の方向を見て言った。

 

「派手にやってくれるけれど頼りになるな、あのオッサン。」

 

「・・・メルト・グランチか!」

 

九十九の言葉を聞いて楓がすぐに推測した。そんな中、霊夢が後ろを見ながら言う。

 

「どうやら幻獣達はそのミサイルってヤツに驚いて混乱してるみたいね。今の内に先を急ぎましょう。」

 

「うん、そうだね。」

 

琥珀が言った時だった。突然悠岐が何かに気づいてある方向を見る。

 

「どうなさいました?悠岐さん。」

 

「あれ、鋼鉄城じゃないか?」

 

そう言うと彼は正面を指差す。そこには堂々と建つ巨大な城が姿を現した。それを見た百々が口を開く。

 

「鋼鉄城だ、間違いない。」

 

「なんで確信できるんだ?」

 

百々の言葉に魔理沙が食いつく。

 

「昔、エリュシオンといた時、ここに来たのを覚えてる。」

 

「なるほど、なら話は早い。すぐにあそこへ向かおう。」

 

悠岐が言うとユニ達は目の前にある城へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、ユニ達は城の前に到着した。悠岐と楓は馬から降りる。

 

「お前は剛岐の所へ行くんだ。決して戻ってくるんじゃないぞ。」

 

そう言うと悠岐は馬を軽く抱きしめた。彼は続いて楓も馬を抱きしめる。そのまま馬はユニ達の辿っていった道を戻っていった。と、百々が悠岐に言う。

 

「いいのか悠岐。もしかしたら幻獣に食われちまうかもしれねぇぞ?」

 

「ケイは剛岐が育てた利口な馬だ。そう容易く危険な場所に行くヤツじゃない。」

 

「そうか。」

 

「よし、中に入りましょうか。」

 

暁が城の門を開けようとした時だった。突如楓が何かの気配を感じ、暁の首襟を掴んで引っ張った。

 

「ぐえっ!?何するんですか楓さん!」

 

暁が言った瞬間、先程まで彼のいた場所に槍が降ってきた。それを見た彼は小刻みに震えた。そんな彼に楓が溜め息をつき、言う。

 

「危なかったな、暁。もし私が一歩遅かったらあの世に行ってたぞ。」

 

彼女が言った時だった。突如ユニ達の目の前に何かが降りてきた。それを見たユニ達は同時に戦闘の準備に入る。降りてきたのは黒いフードのついたコートを着ていて黒い目、腰にはホルスターをつけている男だった。男を見た百々が口を開く。

 

「テメェ、誰だ?エリュシオンの手下か?」

 

すると男はフッと笑うと顔を上げ、口を開いた。

 

「誰ねぇ・・・。とりあえず復讐者(アヴェンジャー)、とでも名乗っておくか。」

 

「何、ア◯ンジャーズ?お前あの有名なヒーローの仲間だったのか!?」

 

悠岐の突然の言葉に一同はずっこける。そんな中、同時にずっこけた男が口を開く。

 

「ちげぇよ!!復讐者だ!!」

 

「え、ア◯ンティーズ?お前ヒーローじゃなくて有名youtuberの一員だったのか!?だったらサインくれよ!」

 

「そっちでもねぇよ!復讐者だ!お前は耳がジジババか!」

 

ぜぇ、ぜぇと息を切らしてしまう男。と、息が整った瞬間、ユニを見て一言言った。

 

「お前を探していたぜ、アイアルト・ユニ!」

 

「え、私・・・?」




幻獣の大群から逃れたユニ達の前に現れた謎の男。彼の企みとは一体・・・。
次作もお楽しみに!


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第152話 ユニvs影裏①

幻獣の大群をくぐり抜けたユニ達の前に現れる謎の男。


唐突に自分の名前を呼ばれたことと同時に自分を探していたということに驚くユニ。と、百々が男を見て言う。

 

「なんでユニを探していたんだ?」

 

「俺がソイツを探していた理由?決まってんだろ、お前の存在が気にくわないからだ。」

 

「気に、くわない?一体どういうことなの?私はあなたに何かした覚えはないんだけれど・・・。」

 

「そうだろうな。お前は俺に何もしていない。」

 

「じゃあどうして?」

 

ユニの言葉を聞いて男は大きく息を吸い込み、ニヤッと笑みを浮かべる。その瞬間に悠岐が彼の腹にドスッとパンチをぶち込んだ。

 

「ゴブァ!?」

 

唐突にパンチを食らった彼は地面に座り込んで咳き込む。そして悠岐を見て言う。

 

「何しやがる!!俺が今から話そうとしたときに!!」

 

「いや、ちょうど腹膨らませたしウザい顔してたからパンチしたらふっ飛ぶのかと思って・・・。」

 

「飛ぶわけないだろ!!俺は風船か!!しかもウザいって何だよ!俺の笑みに一体何の恨みがあるんだよ!」

 

そう叫ぶと彼はユニを見て口を開く。

 

「気を改めて言う、俺は影裏破紡、アラヤの守護者だ。そしてお前は幻想郷?とかいう世界の守護者。そんな訳で同じ守護者同士、どちらが上なのかを確かめたくてな。俺が皆に知られていないのに対してお前はどうだ?世界を救った守護者とか皆ほざいていやがる。俺はそれがどうも気にくわねぇ!!」

 

「・・・。」

 

ユニは何も言わなかった。何も言う気がなかったのだ。と、悠岐がユニの前に出て刀を構えて言う。

 

「テメェがユニと戦うのならばまずこの俺と戦ってもらおうか。」

 

彼に続いて百々、九十九、魔理沙、霊夢も戦闘の体制に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待って。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言ってユニは唐突に五人の前に出た。そして口を開いた。

 

「彼は私でなんとかするわ。みんなは先にエリュシオンの元へ向かってて。」

 

「何言ってんだよユニ。こういうのは大人数で戦ったほうがすぐに終わるだろ?」

 

「いや、私一人でやりたいの。あんなこと言われてじっとなんかしてられないよ。」

 

「・・・確かにあんなこと言われたら私でもじっとしていられないな。」

 

百々、九十九、悠岐、楓は納得するように武器を下ろした。同時に霊夢と魔理沙も下がる。と、ユニは悠岐を見て言う。

 

「悠岐君、ここは私に任せてくれないかしら?私の力で彼と真正面から向き合いたいの。」

 

「俺に言う必要はないと思うが・・・。お前がそう言うのなら仕方ない。みんな、ユニに任せて大丈夫か?」

 

「えぇ、分かったわ。」

 

「任せるぜ!」

 

「気をつけるんだぞ。」

 

「無理すんなよ。」

 

「頑張れよ。」

 

「信じてるよ、ユニちゃん。」

 

悠岐の言葉を聞いて霊夢、魔理沙、楓、百々、九十九、琥珀がそれぞれの言葉を言う。と、霊夢がただ影裏をじっと見つめる暁に気づき、声をかける。

 

「・・・暁?」

 

「・・・はっ、すいません姉さん。私今何してました?」

 

影裏(アイツ)をじっと見ていたわ。何かあるの?」

 

「もしかしたら私と何かあるのかも・・・。」

 

二人が話している中、ユニが影裏に言う。

 

「私は自分の持つ全ての力をエリュシオンとの戦いで使いたいの。だからあなたとの戦いは5割くらいで行かせてもらうわ。」

 

「5割だと?ほぉ、随分と舐めた口じゃねぇか。その口、益々塞ぎたくなるぜ!!」

 

そう言うと彼は腰にかけていた銃を取り出し、銃口をユニに向けた。しかしユニは1歩も引くことなく影裏と睨み合う。と、影裏が口を開いた。

 

「お前、武器何も持ってないじゃねぇか。そんなんで俺に勝てると思ってるのか?」

 

「勝とうだなんて思ってないわ。あなたのその間違った思考を正しくしたいだけよ。」

 

そう言うと彼女はスペルカードを取り出し、発動する。

 

「剣符アームストライク!」

 

そう言った瞬間、彼女の右側に紫色のワープが出てきたかと思うと中から黒い刀が出てきてユニはそれを手に取る。それを見た楓が口を開く。

 

「漆黒の刃・・・。お前の刀も出せるとは驚きだな、悠岐。」

 

「あぁ、その通りだ。まさか俺のこの刀をも出せるとはな。」

 

2人が話している中、ユニは刀を構えて口を開いた。

 

「行くわよ、影裏君!!」

 

「望むところだ、アイアルト・ユニ!!」

 

そう言った瞬間、二人は同時に走り出した。影裏は最初にユニに向かって発砲する。それを防ぐためにユニは発砲された弾を弾いていく。と、魔理沙が悠岐達に言う。

 

「エリュシオンのところに行かないのか?ユニがここで時間を稼いでくれてるんだぞ。」

 

「・・・いや、先に行くわけにはいかない。ユニも一緒に連れて行く。万が一私達が先に行ってユニがアイツに負けてしまったらどうする?」

 

楓の言葉を聞いて魔理沙は黙り込んでしまった。何か言おうとも楓の言うことは間違っていない。と、暁が口を開いた。

 

「私達はユニさんがアイツに勝つことを一番に望んでいます。ですが彼女が勝てる保証はないので残っています。」

 

「そう言うことだ魔理沙、俺達は残る。」

 

「・・・みんなが残るなら私だって残るぜ。」

 

百々の言葉を聞いて魔理沙はユニと影裏の戦いを見る。そんな中、二人は一歩も引かずに戦っていた。

 

「ケッ、中々やるじゃねぇか。流石は幻想郷の守護者だ。」

 

「あなたもアラヤの守護者と言われるだけあるわね、中々手強い。」

 

「だが、こんなのはまだウォーミングアップ。俺をもっと楽しませてくれよな!」

 

そう言う彼の顔には楽しそうな笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・仲間割れか?」

 

その頃、鋼鉄城内ではテルヒがモニターでユニと影裏の戦いを見ていた。

 

「随分と呑気だな、エリュとの決戦の日だというのに。だがあれは仲間割れではないか。(ことわり)の破壊者は元々アラヤの守護者の者。西田悠岐や出野楓とも関わりないただの敵か。」

 

そう言いながら彼は別の方向に顔を向けて口を開いた。

 

「エリュ、お前の計画は成功へと行きそうだ。あの様子だと百々達はお前を超えることは出来ぬ。全てはエリュの手の中だ。」

 

そう言うと彼はゆっくりと立ち上がり、モニターの電源を切り、扉に向かいながら口を開いた。

 

「私も行くとしよう。これ以上エリュの計画を邪魔させるわけにはいかない。必ずや成功させよう。」




勃発するユニと影裏の戦い、エリュシオンとの決戦の前に起こってしまった2人の戦いはどうなるのか!?
次作もお楽しみに!


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第153話 ユニvs影裏②

鋼鉄城の前に辿り着いたユニ達の前に現れた影裏破紡。対峙するユニ。


影裏は銃を腰にしまうと両手を前に出し、力を込め始めた。その瞬間、一本の槍が彼の手元に現れた。そしてそれを手に取り、口を開いた。

 

「コイツはロンギヌスの槍、お前との戦いならコイツが丁度いいかもな!」

 

そう言うと彼は槍を持ってユニの方へ向かい始めた。

 

「ッ、アームストライク!!」

 

そう言いながらユニはスペルカードを発動して影裏の方へ向かう。向かう途中に空から一本の刀が落ちてきてユニはそれを手に取った。そして2人は槍と刀をぶつけ合う。

 

「ッ、さっきより力が強い!!」

 

影裏の攻撃に押され、後退しつつ撃ち合うユニ。と、二人の戦いを見ていた暁が悠岐の隣に立ち、言う。

 

「悠岐さん、お願いがあるのですが・・・。」

 

「どうした?暁。」

 

「今の状況を見ているとユニさんが不利のように感じます。彼女が危なくなったら私にあいつを任せていただけませんか?」

 

「・・・どうして俺に聞いた?」

 

「あなたがこのメンバーの中で最も責任感があると感じたからです。」

 

「俺が責任感ある?マジかよ。だがここにはこのメンバーを指揮する者はいない。ユニが危険な目に遭ったら、アイツの相手はお前に任せるぞ、暁。」

 

「そうだな。しかも相手はアラヤの守護者でお前はガイアの守護者。いい戦いにはなりそうだぞ。」

 

悠岐に続いて楓も口を開く。彼女が言った瞬間、暁は笑みを浮かべて言う。

 

「ありがとうございます、悠岐さん。」

 

そう言うと暁はユニと影裏の戦いを見る。ユニは影裏の槍の撃ちに押されてしまい、吹っ飛ぶ。そんな彼女に影裏が言う。

 

「どうした?そんなもんで俺に勝てると思うな!」

 

「くっ・・・。」

 

と、魔理沙が口を開いた。

 

「なんだアイツ。急に力が強くなったんだ?」

 

「分からないわよ。あんな奴初めてなんだから。」

 

霊夢と魔理沙が話している中、琥珀が言う。

 

「うーん、何か感じるんだよね。彼の戦法。」

 

「何か感じるって、何?」

 

「なんかね、誰かに似てるような感じがするって言えばいいかな?彼の戦法を見るとそう感じるのさ。」

 

「誰と同じなのよ・・・。」

 

「君に言っても分からないだろうね、霊夢。なんせ、幻想郷の人物じゃないからね。」

 

「そう・・・。」

 

二人が話している中、ユニと影裏の戦いはエスカレートしていく。

 

「どうした、アイアルト・ユニ!お前の実力はこんなもんか!」

 

「別に、私はあなたを倒すつもりで戦ってるわけじゃないわ。」

 

「・・・んだと?」

 

「私は・・・いいや、私達は本来エリュシオンを倒すためにこの裏の世界へ来たのよ?あなたと戦うために来たんじゃない。あなただってそうでしょ?本当は私と戦うためにここへ来たんじゃないんでしょ?」

 

「・・・。」

 

「だから影裏君、こんな戦いはやめましょう。私達は今戦うべきじゃないわ・・・。」

 

「・・・あぁ、そうだな。」

 

「分かってくれるなら最初から・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うとでも思ってんのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

その声が聞こえた瞬間、影裏はユニに向かって強烈な蹴りをくらわせた。無防備な状態で食らったユニはそのまま吹っ飛ぶ。

 

「ゲホッ、ゲホッ!」

 

地面に蹲りながら吐血するユニに影裏が近づきながら言う。

 

「さっきまで戦っておいて今更辞めるダァ?舐めたこと言ってんじゃねぇ!!俺はお前が気にくわねぇんだよ、アイアルト・ユニ!だからお前をぶっ飛ばすためにお前らの進路を予測して裏世界まで来たんだよ!」

 

「テメェ、卑怯だぞ!!」

 

ユニに向かって言う影裏に魔理沙が口を開いた。と、悠岐が暁の元へ行き、彼の肩を軽く叩いて言った。

 

「頼んだぞ、今はお前が頼りだ。」

 

「えぇ、分かっています。」

 

と、影裏が拳銃をユニに向けて言葉を発した。

 

「死ね、アイアルト・ユニ!!」

 

そう言った時だった。突如影裏の足元に紫色の槍が刺さった。それを見た彼は咄嗟に後退する。そして槍が飛んできた方向を見る。

 

「『我はブリューナクを操る者』」

 

そこには右手を前に出して影裏を睨む暁がいた。そんな中、九十九が倒れるユニを抱えて霊夢たちの元へ戻る。

 

「よくやったユニ、今はゆっくり休め。」

 

そう言うと九十九はユニを地面にそっと寝かせた。と、暁が影裏を見て言う。

 

「あなたはアラヤから寵愛を受けているようですね。でも、それは見過ごせないな。君の力は、世界を滅ぼしそうだ。悪いけれどガイアの守護者の名において君を殺す。」

 

そう言うと彼は右手に再び槍を構えた。それを聞いた影裏は目を細めて言う。

 

「そうか、お前ガイアのところの奴なのか。生憎だが俺はあのクソ上司から寵愛を受けてなんかいねぇよ、こき使われてるだけだ。それにお前、俺を殺すと言ったな?いいだろう、やってやろうじゃねぇか。ガイアの守護者とアラヤの守護者、どっちのほうが強いのかをな!!」

 

そう言うと彼は拳銃を構え、暁に向けた。




対立する二人の守護者。その戦いの結末は!?
次作もお楽しみに!


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第154話 二人の守護者

ユニと影裏の戦いに乱入した暁。そして二人の守護者が対立する。


二人の戦いが始まろうとする中、楓がユニを見守りつつ琥珀に言う。

 

「琥珀、私が言いたいことは分かるな?」

 

「勿論だとも、任せておいて。文字よ。」

 

そう言うと琥珀はユニの上に『治癒』の文字を浮かべた。その瞬間、呼吸が乱れていたユニが落ち着きを取り戻し、目を覚ました。それを見た魔理沙が彼女を見て言う。

 

「大丈夫か?ユニ。」

 

「えぇ、なんとか・・・。」

 

「あんまり喋らないほうがいいわよ。あんた結構負傷してるんだから。」

 

「うん。ごめんなさい、私・・・。」

 

「謝る必要なんかねぇ。お前は悪くない。」

 

落ち込むユニを慰める百々。そんな中、楓が影裏と暁の戦いを見ながら言う。

 

「今は、暁に託そう。」

 

そう言って彼女は戦う二人の様子を見つめる。暁と影裏は互いに剣を打ち合い、時には拳銃を使って撃ち合っていた。

 

「ほう、中々やるな。流石はガイアの守護者ってところか。」

 

「あなたも結構やりますね。アラヤの守護者の力故か。」

 

「フン、お互い様って感じだな。だが、俺の力はこんなもんじゃねぇよ。」

 

「それはある程度分かっています。ですので私も奥の手を隠しています。」

 

そう言うと二人はじっと構えて睨み合う。と、暁が霊夢を見て言う。

 

「姉さん!少し力お借りしますよ!」

 

「え?」

 

唐突の暁の台詞に霊夢は思わず声を上げる。そんな彼女とは別に暁は一枚のスペルカードを手にして言う。

 

「これでも受けなさい!夢想転生!!」

 

そう言うと彼は右手に刀を持ち、光を集めてそのまま夢想転生を影裏に放った。

 

「ちょっと暁!いつの間に私のスペルカード取ったの!?」

 

「だから言ったじゃないですか。お借りしますって。」

 

「勝手に取ることないでしょ!」

 

二人が言い合う中、影裏は自分に向かって飛んでくる夢想転生を見て笑みを浮かべて言う。

 

「夢想転生か、他の妖怪が食らったら一溜りもないんだろうが俺には関係ない。」

 

そう言うと彼は変わった刀を取り出し、振った。その瞬間、暁の放った夢想転生は影裏の前で消滅していった。

 

「なっ!?」

 

「夢想転生が消滅した!?」

 

突然の出来事に霊夢と魔理沙は思わず声を上げる。そんな中、影裏は刀を見ながら口を開いた。

 

「こいつは幻魔刀。次元や空間に干渉し、切り裂くことのできるものだ。だからお前の放った夢想転生は俺には無意味だ。」

 

「マジかよ、夢想転生が無力化されちまうなんて!」

 

声を上げる悠岐とは別に影裏は暁を見ながら言う。

 

「んじゃ次は俺の番だな。」

 

そう言うと彼は幻魔刀を構えて口を開く。

 

「これでも・・・。」

 

「そうはさせませんよッ!マスタースパーク!!」

 

影裏が攻撃しようとした瞬間には暁は瞬時にマスタースパークを彼に目掛けて放った。

 

「うおっ、おいマジかよ!対魔力!」

 

唐突の攻撃に驚きながらも影裏は咄嗟に口を開いた。その瞬間、マスタースパークが影裏の前で消滅した。

 

「マスタースパークも効かないの!?」

 

驚くユニとは別に影裏は笑みを浮かべて言う。

 

「対魔力は魔法による力を無効にする。お前の放ったそのマスタースパークも俺には無意味だ!」

 

そう言うと彼は一丁のハンドガンを取り出し、暁目掛けて放った。

 

「くっ!」

 

咄嗟に暁は側にあった岩場に身を隠す。

 

「無駄だ。」

 

影裏が言った瞬間、岩場を貫いて銃弾が暁の左肩を貫いた。

 

「!?」

 

「銃弾が岩を貫いた!?」

 

驚く百々とは別に影裏が言う。

 

「徹甲弾。こいつは装甲に穴を開けるためにあんもんだ。岩なんて容易く貫けるさ。」

 

「ぐっ・・・。」

 

肩から流れる流血を右手で抑えながら暁は岩場から身を乗り出して影裏を見る。そんな彼に影裏が銃口を向けて言う。

 

「どうした?ガイアの守護者。お前の力はその程度か。」

 

「・・・我は光の速さを伝える者。」

 

そう暁がボソッと呟いた瞬間、彼の姿が一瞬にして消えたかと思うと影裏の背後に移動していた。

 

「ナニッ!?」

 

慌てて銃口を向けようとするが暁はそれを阻止するかのように右手で彼のハンドガンを持つ左手を殴った。

 

「ぐあっ!」

 

殴られた勢いで影裏はハンドガンを落としてしまう。その間に暁は再び口を開いた。

 

「我はラッシュをする者。」

 

そう言うと暁は右手に握り拳を作り、それを影裏の顔にぶつける。

 

「ぶっ!?」

 

殴られた勢いでよろける影裏に容赦なく暁は目に止まらぬ速さでパンチを影裏にぶつける。

 

「す、すごい。モンストのヒカリの力とジョ◯ョの承◯郎の力を使って影裏を押してる!」

 

驚く楓とは別に暁は殴りながら影裏に言う。

 

「どうやらあなたは魔力に対しては耐性はあるようですが肉弾戦には慣れていないようですねッ!」

 

そう言うと彼は強烈な一撃を彼にぶつける。殴られた勢いで彼は数十メートルほど吹っ飛んで地面に倒れる。その瞬間、暁はハァハァと息を切らし始めた。それを見た九十九が口を開いた。

 

「暁の奴、かなり無茶しているな。ルーの力にヒカリの力、そして承◯郎の力を一気に使ったせいでかなり体に負担がかかってる。」

 

「・・・。」

 

九十九の言葉に霊夢達は無言で反応する。と、倒れていた影裏がゆっくりと起き上がり、口を開いた。

 

「やるじゃねぇかガイアの守護者!まさかこんな能力だとはな!」

 

そう言う彼の体は殴られた衝撃で体のあちこちから血が流れ、右足は引きずっている状態だった。そんな彼に暁は目を細めて言う。

 

「・・・まだ立っていられるんですか?私は限界に近いのですが。」

 

「俺だってしんどいさ・・・。お前に殴られまくったせいで・・・オデノカダダハボドボドダ!!」

 

「・・・なんて?」

 

影裏の後の台詞がよくわからずに首を傾げる魔理沙。そんな彼女とは別に暁が口を開いた。

 

「オンドゥル語・・・懐かしいものを持ってきますね。」

 

「フン、言ってみたかっただけさ。」

 

そう言うと彼は落ちたハンドガンを左手に取り、右手に幻魔刀を持った。彼に対抗して暁もブリューダクを手に取る。そして二人は同時に走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間、二人の間に悠岐と百々が入り込み、悠岐が暁の槍を抑え、百々は影裏の額にパンチを叩き込んだ。その瞬間、影裏は勢いよく吹っ飛んで倒れた。

 

「悠岐さん!?」

 

「よく頑張った暁。琥珀の治療を受けに行きな。」

 

そう言った瞬間、琥珀、霊夢、魔理沙、九十九が暁の元へ寄り添った。そんな中、ユニに肩を貸しながら寄る楓が悠岐に言う。

 

「悠岐、アイツはどうするんだ?」

 

「ん?あぁ、影裏か。まぁ任せろ。」

 

そう言うと彼は倒れる影裏の元へ歩み寄る。悠岐の存在に気づいた影裏はゆっくりと顔を起こし、口を開いた。

 

「ぐっ・・・殺せよ。」

 

「・・・。」

 

「何もやってねぇお前にやられるのは少しくるものがあるが、俺は罪を犯した。やるなら煮るなり焼くなり好きにしやがれ・・・。」

 

覚悟を決めて言葉を発する影裏に悠岐は黙って見る。と、悠岐は唐突に影裏の頭を両手で掴むとその頭にゴスン!と頭突きをした。

 

「なっ!?」

 

「悠岐君!?」

 

「いってぇぇぇぇぇ!!!」

 

驚くユニ達と頭を抱えてうずくまる影裏。そんな中、悠岐は影裏の胸倉を掴んで自分の元に寄せて言う。

 

「オイテメェ、年下のくせに生意気なんだよ。それにアラヤの守護者?とか言ってたな。なんなら目的は俺達と同じなんじゃないのか?」

 

「なんのことだ?」

 

「エリュシオン討伐。それがお前のところのクソ上司に出された仕事じゃないのか?」

 

「!!?」

 

悠岐の言葉を聞いた瞬間、ユニ達は驚きの声を上げた。そんな彼女達とは別に影裏が悠岐に言う。

 

「・・・なんでお前が知ってんだ。お前には関係ないだろ。」

 

「いいや、関係あるね。お前のところの上司は俺のところの義父が知り合いなんでな、色々教えてもらってる。だから今回のことも多分同じことなんじゃないかと思ったのさ。どうなんだ?影裏。」

 

「・・・認めたくはないがその通りだ。俺はあのクソ上司にエリュシオンを倒すように命じられた。そうしたら偶然お前らに会ったんだ。」

 

「フン、なら話が早い。」

 

そう言うと彼は琥珀の方を見て言う。

 

「すまない琥珀、こいつの傷も治してやってくれ。」

 

「悠岐さん!?」

 

「正気か悠岐!コイツはユニと暁をあんなに傷つけたんだぞ!?そんな奴の傷を治したらまたいつコイツがユニと暁を狙ってもおかしくないだろ!!」

 

彼の言葉に驚く暁と考え直させようとする百々。そんな中、悠岐はゆっくりと口を開いた。

 

「大丈夫だ。さっきの暁との戦いを見ててコイツが肉弾戦に弱いのは分かった。なんならそこを攻めればコイツが俺達に襲いかかる心配はない。そうだろ?影裏。」

 

彼の言葉を聞いて影裏は黙ってコクリと頷いた。それを見た九十九が口を開く。

 

「そんならコイツの管理は悠岐や百々に任せたほうが良さそうだな。」

 

「そう言う訳だ。エリュシオンを倒すためだ、俺達に協力してくれないか?影裏。」

 

「・・・いいだろう、乗ってやる。お前は西田悠岐とか言ったな?アイツの知り合いか。」

 

「どちらかと言えば俺はアイツの義弟だ。」

 

「アイツ?」

 

悠岐と影裏が話す『アイツ』という言葉に耳を傾ける魔理沙。そんな彼女に悠岐が言う。

 

「きっといつか会うさ。さ、行くぞ。」

 

そう言うと彼は鋼鉄城へ目を向ける。彼に続いてユニ達もゆっくりと鋼鉄城へ顔を向けた。すぐそこにいるであろう、敵の本拠地へ。




暁と影裏の戦いを止め、影裏を仲間にした悠岐。敵はもうすぐ近くだ!
次作もお楽しみに!


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第155話 突入

ぶつかる暁と影裏の戦い。そこに悠岐と百々が入り、守護者同士の戦いが幕を閉じた。


ユニ、暁、影裏の治療を終え、一同は鋼鉄城を見る。鋼鉄城の入り口は数十メートルはあるであろう巨大な鋼鉄の門が聳え立っていた。これを見たユニが口を開いた。

 

「随分と大きな門ね。」

 

「恐らく幻獣やアカシャも通れるようにとこれくらいのサイズにしたんだろうな。」

 

彼女の言葉に続いて九十九がある程度の推測をする。そんな中、魔理沙が門を見ながら言う。

 

「なぁ、この門って開けられるのか?この人数でも開けるのは困難だと思うぜ。」

 

「何言ってんだよ魔理沙。こういうのは力尽くでこじ開けるんだよ!」

 

そう言うと百々は1人先に走って鋼鉄の門を押し始めた。

 

「一人でいけるわけないだろ!俺達も手伝うぞ!」

 

影裏の言葉に続いて霊夢、魔理沙、悠岐、楓、九十九、暁も続けて門を押す。しかし10人の中でも力のある8人が頑張って押してた門はピクリとも動く様子はなかった。

 

「ハァハァ、こりゃあ俺たちだけじゃ開けられるようなものじゃねぇぞ。」

 

息切れしながら言う悠岐とは別に楓は扉を軽くコンコンと叩き、口を開いた。

 

「殴ろうとしたり斬ろうとするものではないな、硬すぎる。」

 

「んじゃあ俺たちの力だけで押し上げるしかねぇのか。」

 

楓の言葉を聞いて影裏はそう言う。そして8人が再び門を押し開けようとした時だった。

 

「みんな見て!」

 

というユニの声が聞こえ、8人は一斉にその方向を見る。

 

「ここに人が通れるくらいの扉があるよ!」

 

琥珀の言葉を聞いた瞬間、8人はズッコけた。

 

「・・・私達が頑張って押し上げようとしたのにこんなところに普通の扉があるなんて聞いてないわよ!」

 

「見つけてしまったのであれば仕方ありません。怒りを抑えましょう、姉さん。」

 

「・・・えぇ、そうね。」

 

暁の言葉を聞いて仕方がなさそうに答える霊夢。そんな中、ユニは扉のドアレバーに手を掛け、レバーを下に下ろす。

 

「・・・開いてるわ。普通なら閉めてる筈なのに・・・。」

 

「まるで僕達がエ・・・彼女に迎え入れられてるような感じだね。」

 

「・・・よし、行くわよ!」

 

そう言うと彼女は扉を押し開ける。扉の奥に広がっていたのは真っ暗な空間だった。

 

「なんだこれ・・・。真っ暗じゃないか!」

 

「とりあえず中に入ってみるか。」

 

魔理沙の言葉に続いて百々が城内へズカズカ入っていく。彼に続いてユニ達も中へ入っていく。全員が中へ入った瞬間、一人でに扉が閉まった。

 

「扉が閉まった!?」

 

「・・・琥珀の言う通り、迎え入れられてるようだな。」

 

九十九と影裏が言った後に楓が口を開いた。

 

「しかし扉が閉まると本当に真っ暗だな。悠岐、明かりをつけられるか?」

 

「一応懐中電灯は持ってきてるからつけてみるか。」

 

「なんで持ってるんだよ・・・。」

 

百々の言葉を気にすることなく悠岐は懐中電灯の電気を付ける。そこに広がるのはただっ広い空間が広がっていた。

 

「ここは・・・ロビーか?」

 

「にしてはおかしいですね。こんな暗い場所を用意して何になるのですか?」

 

「さぁな。エリュシオンのことだ、変な趣味なんだろう。」

 

楓、暁、九十九が話している中、一人ユニがある方向を見て腰を抜かしていた。そんな彼女を見て百々が口を開く。

 

「ユニ、どうした・・・!?」

 

ユニの見ている方向を見た瞬間、百々は言葉を失った。彼を見て悠岐は二人が見る方向へ懐中電灯の光を照らす。そこには多くの棚があり、棚の上には無数の頭蓋骨が順序良く並べられていた。それを見た霊夢が目を見開きながら口を開いた。

 

「な、何よこれ・・・。頭蓋骨?」

 

驚く霊夢とは別に楓は頭蓋骨に近づき、凝視する。そんな彼女に影裏が声を掛ける。

 

「お、おい楓!なんかやばい気がする!戻ってこい!」

 

影裏の言葉に気にせず楓は頭蓋骨を見ながら言う。

 

「これらは全て本物の頭蓋骨だ。恐らくエリュシオンを倒そうと試みた兵士達の死体から取ったものなんだろう。何故ここに並べてあるのかは知らないが・・・。」

 

「ここをパッと見る限り数千はある。こんなに沢山の人が犠牲になってしまったのか・・・。」

 

楓の言葉に続いて魔理沙が口を開いた。と、琥珀が辺りを見回しながら口を開いた。

 

「しかし不思議だね。これだけの人が死んだというのに怨念が感じられない。」

 

「怨念?」

 

「ここで亡くなった兵士達の彼女への怨念だよ。彼女か幻獣、あるいは闘神に殺されたんだ、怨念が残ってここで霊が出てもおかしくないのに全く気配を感じない。」

 

問いかける百々にすぐに答える琥珀。彼の言葉を聞いて楓が辺りを見回し、口を開く。

 

「確かに気配が感じられない。成仏したとは思えない。」

 

と、悠岐がある方向を照らして言う。

 

「おい、あれ見ろよ!扉があるぞ。」

 

そう言う彼が照らす場所には一つの鉄の扉があった。それを見て影裏はズカズカと近づきながら言う。

 

「この奥に奴がいるかもしれない。みんな心して行くぞ。」

 

そう言うと彼はドアノブに手を取った。その瞬間、ジューっという音と共に影裏の手が赤くなった。

 

「あっちィィィィィィ!!」

 

そのまま彼は手を押さえたまま辺りをゴロゴロ転がり始めた。それを見たユニが溜め息をついて言う。

 

「全く、何やってんのよ影裏君。しょうがないわね。」

 

そう言ってユニがドアノブを触ろうとした瞬間、楓が咄嗟に彼女の手首を掴んでドアノブに触るのを阻止した。

 

「ど、どうしたの楓ちゃん!」

 

ユニが言うと楓は黙って首を横に振った。そして悠岐を見て言う。

 

「悠岐、ここは任せる。」

 

「あぁ、任せな。」

 

そう言うと彼はドアノブを掴んだ。その瞬間、彼は少し驚いたような表情を浮かべ、口を開いた。

 

「こりゃ熱いな。まるで内側から熱されてるような感じだ。」

 

そう言いながら彼はゆっくりとドアノブをひねり、扉を開けた。扉の向こうに広がっていたのはだだっ広い空間で正面には4つの絵が描かれた木の大扉があり、右側、左側それぞれに2つの吊り橋があり、その先にそれぞれ形の異なる扉があった。そして下には灼熱のマグマが音を立てていた。

 

「な、なんだこれ・・・。」

 

「城の中にマグマ!?」

 

辺りの情景を見て驚きの声を上げる百々と魔理沙。二人に続いて楓も辺りを見回しながら言う。

 

「これは予想外だな。まさか城の中にマグマを入れてくるなんてな。」

 

「あのマグマの影響であのドアノブが熱されていたのね。」

 

彼女に続いて霊夢も言う。そんな中、琥珀が正面の扉を指差し、空いている手で自分の額から流れる汗を拭って言う。

 

「多分行先はあそこだろうね。ここの空間は暑苦しいから早く先へ進もう。」

 

「そうですね。いつまでもここにいると脱水症状を起こしてしまいます。」

 

暁が言うとユニ達は木の大扉の前まで歩いて行った。そして目の前に着くと悠岐が絵を見ながら言う。

 

「なんじゃこの絵は。銅像みたいなものにドラゴンにタコみたいなもの、そして女の人が逆さまになったような感じだが、何を意味してるんだ?」

 

「全く分からないな。」

 

悠岐に続いて九十九も言う。そんな中、ユニは必死に大扉を押して開けようとするがピクリとも動かない。

 

「んもう、何よこれ!全く動かないじゃない。見た感じ、さっきみたいに小さな扉とかはないみたい。」

 

彼女が言う中、大扉を殴る百々と刀で扉を斬ろうとする影裏。しかし二人が何をしても大扉は傷一つつかない。

 

「どうなってんだよ・・・。斬れないし壊れもしないぞ。」

 

「こりゃいくらやっても無駄だな。」

 

影裏と百々が話している中、暁が扉を凝視しながら口を開いた。

 

「これは一種の結界でしょうかね?」

 

「結界?どう言うことなの?」

 

「ある特定の条件を満たさなければこの扉が開くことは無さそうです姉さん。となるとその条件を満たすためには・・・。」

 

そう言うと彼は左右の4つの扉を見た。暁に続いてユニ達も扉を見る。と、何かを察した琥珀が口を開く。

 

「なるほど、あの扉達の先にこの結界を解除するための仕掛けがあるって訳ね。」

 

「可能性としてはそれが1番だと思います。ここはみんなで手分けして扉の先に向かいましょう。」

 

暁が言った瞬間、ユニ達はコクリと頷いた。

 

「俺はユニ、楓と行動する。」

 

「任せた。私は影裏と琥珀と行くぜ。」

 

「分かったわ。それじゃあ私は暁と共に行動するわ。」

 

「んじゃ俺は九十九と行動する。みんな、気を付けろよ!」

 

「おう!」

 

そう言うと一同はそれぞれの扉へ走っていき、扉の奥へと進んでいった。




手分けして大扉の結界を解除する仕掛けを解除しに行くユニ達。そこへ待ち受けるものは果たして・・・。
次作もお楽しみに!


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第156話 幻龍王の試練

ユニ達は大扉の結界を解除すべくそれぞれの扉の先へ向かった。


場面は暁、霊夢ペア。二人が扉の奥へと進むとそこには裏の世界とは全く異なる情景が広がっており、辺りは真っ白な荒れた神殿だった。それを見た霊夢が口を開く。

 

「な、何よこれ・・・。マグマの次は真っ白な神殿みたいな場所に来たわよ!?」

 

「なんでしょうかこれ・・・。まるでどこかにワープされたような感じです。しかもここの場所、何処か見覚えがあります。」

 

「暁、何か知っているの?」

 

「直接ここへ来たことはありませんが、ゲームでこういう場所があったんです。何のゲームだったかな・・・。」

 

「とにかく、ゲームならあなたにしか頼れないわ暁。ここはあなたに任せるわよ。」

 

「はい、ここは私に任せてください。もしこれが本当に私のイメージしているゲームと同じなら能力を使う必要がありませんから。」

 

そういうと2人は神殿の奥へと進んでいく。と、霊夢が何かを指差して言う。

 

「ねぇ、暁。あれは何?」

 

彼女が指差す方向を暁も見る。そこには魔法陣のようなものが地面に描かれていた。その魔法陣も本来は色があるのかもしれないが真っ白になっており、分からなかった。

 

「魔法陣・・・まさか!?」

 

「暁、何か分かったの?」

 

霊夢が言った時だった。突如魔法陣が白く光り出したかと思うとそこから1匹のドラゴンのようなものが姿を現した。その瞬間、2人の前に赤、青、緑、黄色、紫、そしてハートの形をした盤面が5✖️6のマス目でまるでパズルを連想させるようなものが出現した。それを見た暁が口を開いた。

 

「5✖️6盤面・・・。そして5色と回復ドロップ、間違いないですね。」

 

そう言った瞬間、真っ白なドラゴンが口を開いた。

 

「さぁ、戦いましょう。6コンボしないと地獄行きですよ。」

 

そう言った瞬間、ドラゴンの体に5つの光が吸収されていった。と、霊夢が暁を見て言う。

 

「暁、これは・・・?」

 

「現世のゲームですね。ここは私に任せてください姉さん。」

 

そう言うと彼は5✖️6の盤面を見つつ、描かれている6つの絵を見る。そして口を開いた。

 

「なるほど、覚醒サクヤパですか・・・。そしてサブにインドラ、光カーリー、イシス、闇カーリー。陣変換枠もいますし軽減スキル持ちもいるのでなんとか安定して倒せそうですね。」

 

そう言うと彼は1つの赤い玉のようなものを指で押さえ、カタカタと音を立ててパズルをし始めた。

 

「よし、まずはこれで安心ですね。」

 

そう言うと彼は指を離した。その瞬間、ポンポンと音を立てて3個ずつ並んだ玉が消えていき、最後に消えた玉から6comboと表示された。その瞬間、絵から数字のようなものが現れてそれはドラゴンに放たれた。

 

「これは、効いているの?」

 

「えぇ、一応効いてます。ただ今回はコンボするためにやったので倍率は出てません。」

 

「倍率・・・?」

 

「後でちゃんと説明します。」

 

霊夢が暁に聞き、彼が答えた時だった。ドラゴンは少し笑みを浮かべて口を開いた。

 

「なるほど、ではもう一度。」

 

そう言った瞬間、ドラゴンの体に再び5つの光が吸収されていった。

 

「先程のようには行きませんよ。」

 

ドラゴンが言った瞬間、カチカチと辺りに音が鳴り響いた。それを聞いた暁が口を開いた。

 

「操作時間短縮・・・。まぁ私の知ってるあなたならたかが1秒しか・・・!?」

 

暁が続きを言おうとした瞬間、彼は言葉を詰まらせた。それを見た霊夢は彼に問いかける。

 

「ど、どうしたの暁?」

 

「そんな・・・ゲームとは違う!?本来操作時間は1秒しか短縮されないのに4秒も!?こうなると操作時間は5秒!?」

 

「言ったはずですよ、先程のようには行きませんよってね。」

 

ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべてドラゴンは言う。と、暁が口を開いた。

 

「本来とは違いますがやるしかありません。」

 

そう言うと彼は再び玉に触れ、カタカタを動かし始めた。

 

「くっ、操作時間が短い!」

 

そう言いながら彼は必死に玉を動かす。その時だった。ビッと音がしたかと思うと暁が動かしていた玉が動きを止めてしまった。

 

「なっ、もう5秒経ったのか!?」

 

本来9秒ある筈の操作時間が4秒も短縮されれ、尚且つ6コンボしなければならないのは普通の人間でも困難である。彼が操作した盤面は5comboの表示をした。

 

「くっ、すいません姉さん。」

 

「いいえ、大丈夫よ暁・・・。」

 

霊夢が言った瞬間、ポンと再び玉が消える音が聞こえた。それに気づいた2人は画面を見る。そこには6comboの表示と✖️100.00の数字が表示されていた。

 

「これは・・・?」

 

「落ちコンボ・・・。どうやら運が私達に味方してくれたようです姉さん。」

 

そう言った瞬間、絵に表示された数字がドラゴンに放たれた。

 

「ナニッ!?」

 

強力な攻撃と化した光を受けてドラゴンは倒れる。

 

「やったわ暁!」

 

「いいえ、まだです姉さん。」

 

安心する霊夢に言う暁はドラゴンの方は目を向けていた。

 

「やりますね、本気で行きましょう。」

 

その声が聞こえた瞬間、倒れるドラゴンの体が光り始めた。

 

「ま、まだあるの!?」

 

「第二形態です。」

 

暁が言った瞬間、ドラゴンの体に纏っていた光が消えたかと思うと翼が増え、両手に青いオーラを溜める姿の変わったドラゴンが現れた。

 

「ガ、グラァ!!!ツヅケルゾ。」

 

そう言った瞬間、ドラゴンの体の前に一瞬盾のような光が現れた。

 

「キング・オブ・ゼロ。」

 

そう言った瞬間、75と書かれた盾が先程のように一瞬現れた。

 

「75%軽減・・・。本作通りなら攻略出来ます!」

 

そう言うと彼は絵に触れて言う。

 

「まずはサクヤ2体のスキルを使ってHPを減らします!」

 

そう言い、絵に触れた瞬間、ドラゴンの体がゴゴゴと揺れ、数字が浮かび上がった。

 

「ダメージが通ってるのね!」

 

「これで終わりではありません!削りきれなかった時のためにインドラのスキルでダメージを激減!更に光カーリーのスキルで5色陣に変換!」

 

そう言った瞬間、盤面がピンクのハートの形の玉が消えたかと思うと赤、青、黄色、緑、紫の5色のみになった。

 

「これで決めます。覚悟してください!」

 

そう言うと彼はカタカタと玉を動かして再びパズルをし始めた。

 

「よし、これで完璧だ!」

 

「行きなさい暁!!」

 

そう言った瞬間、ポンポンと音を立てて玉が消えていき、最終的には盤面の玉が全て消えて無くなり、10comboという文字が表示された。その瞬間、先程よりも多い数字が表示され、それはドラゴンに放たれていった。その瞬間だった。突如暁と霊夢の視界が歪み始めた。

 

「なっ!?」

 

「これは、何ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界の歪みが治まったかと思うと2人は先程のマグマの部屋の真ん中に戻っていた。

 

「あれ、ここは・・・?」

 

「さっきの場所のようです。一体何が・・・。」

 

2人が話している時だった。影裏の剣捌きでも百々のパンチでも壊れなかった木の扉の右上に描かれたドラゴンのような絵が光り始めた。それを見た霊夢が口を開いた。

 

「あれは・・・どうなったの?」

 

「どうやらあの4つの扉の先にいる奴らの絵のようですね。先程あのドラゴンを倒したのであの絵に光が灯ったようです。」

 

「それじゃあ、他の絵のところは・・・。」

 

「他のみんなを待つしかありません。少し待ちましょう、姉さん。」

 

「えぇ、そうね。」

 

2人は他の場所で戦っているみんなを待つことにした。




2人が部屋で見たドラゴンとは一体何だったのか!?何故白かったのか、謎が深まるばかり・・・!!
次作もお楽しみに!


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第157話 巨大なる魔物

パズルをうまく駆使してドラゴンを倒すことに成功した暁と霊夢。


場面は変わって百々と九十九ペア。2人が扉から出た場所はこれまた辺りは自分達以外真っ白な空間が広がっており、何かの建物の中に2人はいた。

 

「な、なんじゃこりゃ・・・。」

 

「辺りが真っ白だな、さっきと打って変わって静かだ。」

 

そう言いながら二人は真っ白な空間を進んでいく。と、百々が辺りを見回しながら口を開く。

 

「それにしてもこの空間、全部四角のブロックで出来てんな。一体どうなってんだここの部屋は。」

 

「あのクソババァのことだからどこかに干渉したんだろ。にしてもどこの世界から・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウゥゥゥゥ・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九十九が続きを言おうとした時だった。突如辺りに不気味な声が響いた。その声を聞いた二人はビクッと体を反応させ、辺りを見回した。

 

「お、おい百々。今の声って・・・。」

 

「俺が知るかよ!にしても不気味な声だなぁ。」

 

百々が言った時だった。突如天井からドカンと音が響いたかと思うと天井のブロックが崩れ落ち、そこから巨大な顔が姿を現した。

 

「な、なんじゃありゃ!!」

 

「あれはガスト!?どうして四角世界(マインクラフト)の世界の奴がアイツの城にいるんだ!?」

 

九十九が言った瞬間に顔を現した白くて4本の足を生やした魔物、ガストは突然険しい表情を浮かべたかと思うと二人には向かって火の玉を放った。

 

「やばっ!!」

 

声を上げながら二人は咄嗟にガストの攻撃をかわす。と、百々が九十九に言う。

 

「なぁ九十九!ガストって何なんだ!」

 

「後でちゃんと説明する!今はコイツとの戦いに集中しろ!」

 

二人が話しているとガストは唸り声を上げながら再び火の玉を放った。それを見た二人はまた避ける。

 

「これでもくらえ!拡大貫通ロックオン衝撃波!」

 

そう言うと九十九は扇形の衝撃波をガスト目掛けて放った。

 

「ウガァァァァ・・・。」

 

衝撃波を受けてうめき声を上げたガストは身体全身が赤くなり、そのまま消滅した。

 

「なんだ、随分と呆気ないな。」

 

「油断しないで百々。まだこれで終わりだとは限らない。」

 

「あぁ、分かってるさ。」

 

百々が言った時だった。突如辺りがゴゴゴと音を鳴らして揺れ始めた。

 

「な、今度は何だ!?」

 

九十九が言った時だった。突如天井が何者かによって破壊され、崩れ落ち始めた。

 

「九十九!」

 

「分かってる!」

 

百々の言葉を聞いて九十九は咄嗟に崩れゆく天井の瓦礫を避ける。崩れた天井の瓦礫からは砂埃が舞う。

 

「ったく、一体何が・・・!?」

 

「百々?な、あれは!!」

 

百々が唖然と見つめる方向を見て九十九も言葉を失う。二人が見る先には砂埃が消えていくのと同時に先程のガストより遥かに巨大で足が8本もある魔物が白い空を背にして姿を現した。魔物が姿を見せると突如雨が降り始めた。魔物を見た百々が口を開く。

 

「な、なんじゃコイツは!!さっきよりもめっちゃデカイ!!」

 

「なんだコイツは!!こんなにデカイガストがいるだなんて!!」

 

二人が言っている中、巨大なガストの周りに先程二人が倒したサイズのガストがウヨウヨと漂い始めた。それを見た九十九は一つの仮説を唱える。

 

「・・・どうやらアイツがガストらの親玉のようだな。アイツを倒せばなんとかなるのかもしれない。百々、分かってるな?」

 

「あぁ、勿論だ。」

 

そう言うと二人は巨大なガストに目を向け、戦闘態勢に入る。その瞬間、巨大なガストの周りにいたガストが二人に向かって火の玉を放った。

 

「一斉かよ!でも飛ぶ場所は全部同じ!」

 

そう言うと二人は同時にガストらの攻撃を避ける。攻撃を避け、体勢を整えた九十九が口を開く。

 

「これでも喰らえ!マーキングレーザー!!」

 

そう言うと彼女は巨大なガストに群がるガストにマーキングし、そこに向けて紫色のレーザーを放った。その瞬間、レーザーを食らったガスト達が消滅していった。

 

「よし!6割くらいは消滅したぞ。残りは任せるよ兄貴!」

 

「任せろ九十九!このナイフをくらえ!」

 

そう言うと百々は残ったガスト達に大量のナイフを投げつけた。ナイフが体全身に刺さったガストはそのまま声を上げて消滅していった。

 

「ウゥゥゥゥ・・・。」

 

自分を守っていたガスト達が全て消滅しても巨大なガストは怯えることなく二人を睨みつける。そんなウルガストに九十九が口を開く。

 

「よし、後はお前だけだ。覚悟しやがれ!!」

 

「ウガァァァァ!!」

 

再び唸り声をあげる巨大ガスト。その瞬間、空から二人目掛けて雷が落ちた。

 

「雷!?やべっ!!」

 

「ウギャッ!!」

 

咄嗟に避けることができた九十九とは別に百々は避けきれずに雷をモロ食らってしまい、一瞬だけ骸骨が丸見えになった。

 

「ったく、あのバカは・・・。」

 

全身真っ黒になった百々を見て呆れる九十九は巨大ガストを見て口を開いた。

 

「よくも百々に手を出してくれたな。倍返しにしてやる!」

 

そう言うと彼女は自身の身体に力を蓄え、攻撃を放った。

 

「くらいやがれ!反射分裂弾!!!」

 

九十九の手から放たれたオレンジ色の弾が空中で反射しながら分裂していき、そのまま全て巨大ガストに命中した。その瞬間に九十九が百々に言う。

 

「今だ百々、やっちまえ!!」

 

「おうよ任せな!これでもくらえ化け物!!」

 

彼女の言葉に反応した百々が勢いよく飛び上がり、巨大なガストの顔の前まで飛び上がった。そして右手に握り拳を作り、そのまま巨大なガストの顔面を殴りつけた。その瞬間、二人の視界が歪み始めた。

 

「うぉっ!?」

 

「なんだこれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界の歪みが治ったかと思うと二人は先程みんなで分かれたマグマの部屋の真ん中に立っていた。

 

「ここは・・・さっきの場所か?」

 

九十九がある程度の推測をしている時だった。百々がある方向を見てぼーっとしていた。

 

「オイ百々、何見てるんだ?」

 

彼の見る方向を見る九十九。そこには手で顔を仰ぐ霊夢と彼女の肩を揉む暁の姿があった。

 

「霊夢、暁!?」

 

「あ、九十九に百々、戻ってきたのね。」

 

「お疲れ様です。」

 

二人がいることに気づいて口を開く霊夢と暁。その瞬間、木の扉の左上に描かれたタコのような絵が光り始めた。

 

「あれは・・・。」

 

「恐らく結界の一部がまた一つ解放されたみたいですね。私と姉さんが倒したのはあの右上の絵のドラゴンです。」

 

「ということはユニ達や琥珀達を待つしかないのか。」

 

「そう言うことになりますね。暑さに耐えるのもキツいですがみんなが戻ってくるのを待ちましょう。」

 

暁の言葉を聞いて百々、九十九も待つことにした。




百々と九十九が出会った巨大なガストの正体とは!?そして何故霊夢、暁の時と同様真っ白な世界だったのか!?
次作もお楽しみに!


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第158話 魔蝕神器

暁、霊夢同様に白い場所で巨大なガストと対峙し、倒すことに成功した百々と九十九。


場面は変わってユニ、悠岐、楓組。3人が扉の奥へ入るとそこには真っ白く、広い空間が広がっていた。

 

「な、何よこれ・・・。」

 

「辺り一帯真っ白だな。これはどうなっているんだ?」

 

「なんか俺これ見たことあるんだよなぁ。なんだっけ?」

 

悠岐が言った時だった。ユニがある方向を突如指差し始めた。彼女を見た悠岐と楓はその方向を見る。そこには6本の腕に胸には檻の中に赤い光を宿したの白い神像が6本の巨大な剣を持ってユニ達を見ていた。それを見た悠岐が目を見開いて口を開いた。

 

「あ、あれはダイルオーマ!?」

 

「だいるおーま?何それ?」

 

「スカイウォードソードっていうゲームに出てくるボスの名前だ。エリュシオンの奴め、こんなのを用意しているなんてな。」

 

ユニの疑問に答える楓。と、悠岐がユニの方を見て言う。

 

「ユニ、アームストライクでムチを出してくれないか?」

 

「え、ムチ?何に使うのよ?」

 

「いいから出してくれ。アイツを倒すためにはムチが必要なんだ。」

 

「わ、分かったわ。剣符アームストライク!」

 

悠岐の言われる通りにユニはアームストライクを発動して何もない空間からムチを取り出し、悠岐に渡した。ムチを受け取った悠岐はダイルオーマを見て二人に言う。

 

「コイツは俺に任せな、二人は援護をしてくれ。」

 

「分かった、頼んだぞ悠岐。」

 

「悠岐君、無茶しないでね。」

 

そう言うと彼はダイルオーマの方は歩み寄る。歩きながら彼はダイルオーマを見て言う。

 

「しかしいきなり後半戦か。まぁ悪くねぇ、存分に戦おうじゃねぇか!」

 

悠岐が言った時だった。ダイルオーマは3本の右腕を大きく上げて剣を振り下ろした。

 

「おっと、思ってた以上に速いな!」

 

そう言いながらも彼は容易くダイルオーマの攻撃を避ける。あまりにも勢いが強かったのか、ダイルオーマの剣が地面に埋まってしまい、抜けなくなっていた。

 

「おっしゃ今のうちだ!」

 

そう言うと悠岐はムチをダイルオーマの腕に絡み付け、そのまま腕を引きちぎった。立て続けに他の2本の腕も引きちぎる。

 

「いいわよ悠岐君!」

 

ユニが声を上げる中、悠岐はダイルオーマの引きちぎった腕の持っていた大剣を肩に背負って持ち、ダイルオーマから距離を取った。その瞬間、ダイルオーマは残った左腕3本を使って大剣を振り回しながら歩き始めた。

 

「気をつけろ二人共。あんなの食らったらひとたまりもないぞ!」

 

「分かってる!」

 

「言われなくても!」

 

そう言うと二人もダイルオーマから距離を取った。ダイルオーマが大剣を振るとブォンと音を出しながら辺りに建っていた柱が崩れて倒れる。と、楓が大剣を持つ悠岐を見て言う。

 

「おい悠岐!そんなの持って何するつもりだ?」

 

「まぁ見てろって。こう使うんだよ!」

 

そう言うと彼は大剣をダイルオーマの足目掛けて投げた。その瞬間、大剣の威力が凄まじいのか、ダイルオーマの足が切断され、バランスを崩したダイルオーマは仰向けになって倒れる。

 

「よし今だ!」

 

そう言うと彼は投げた大剣を再び拾うとダイルオーマの胸目掛けて大剣を振った。

 

「オラっ!くらいやがれ!!」

 

悠岐の攻撃が命中する度にダイルオーマは激しく体を動かし、苦しむ。5発ほど薙ぎ払った瞬間、ダイルオーマの切断された部分が宙に浮かび始めた。

 

「ま、まだ終わりじゃないの!?」

 

「こんなので終わったら苦労しねぇって。」

 

そう言った瞬間、ダイルオーマの体が再び接続された。接続した瞬間、ダイルオーマは両腕の持つ大剣を振り回し始めた。

 

「またこれね!」

 

そう言いながらユニは楓と共にダイルオーマから距離を取る。しばらくするとダイルオーマは大剣を振るのをやめ、悠岐を見る。と、ダイルオーマが体に力を込め始める。その瞬間、悠岐の周りに白い木の棒を持ったゴブリンのような生物が5、6体ほど出現した。それを見た悠岐は二人に言う。

 

「楓、ユニ!このゴブリン達を倒してくれ!」

 

「任せろ悠岐!」

 

「私達がやっちゃうわよ!」

 

悠岐の言葉を聞いて楓とユニはお互いに武器を持ってゴブリン達と戦い始める。その間に悠岐は再びダイルオーマと対峙する。と、ダイルオーマが今度は左腕3本を振り上げてそのまま悠岐に向かって大剣を振り下ろした。

 

「そんな手は通用しねぇって!」

 

そう言うと悠岐はバク転をしてダイルオーマの攻撃を避ける。そして再びムチをダイルオーマの腕に絡め、引きちぎる。そして大剣を再び拾うとダイルオーマから距離を取る。

 

「気をつけろ楓、ユニ!また振り回してくるぞ!」

 

「分かったわ!」

 

悠岐の言葉を聞いて二人はゴブリンを倒しながらダイルオーマから距離を取る。

 

「これでもくらいやがれ!!」

 

そう言うと彼は再び大剣をダイルオーマの足目掛けて投げつけた。だがダイルオーマは彼が投げた大剣をジャンプして避けた。

 

「なっ、こいつ避けんのかよ!!原作じゃ普通にバランス崩して倒すって感じなのに!!」

 

喚く悠岐に溜め息を吐き、呆れながら楓が口を開いた。

 

「いいか悠岐、ここはエリュシオンの拠点だ。そう原作通りに行くとは限らない。」

 

「まぁそうだよなぁ。ならもう一回だ!」

 

悠岐が言った瞬間、ダイルオーマは右腕の大剣を振り上げ、ジャンプして悠岐目掛けて大剣を振り下ろした。

 

「うおっ、なんじゃそりゃ!!」

 

声を上げながらではあるが悠岐は咄嗟に反応してダイルオーマの攻撃を間一髪で避ける。

 

「何今の!?あの銅像はあんな攻撃をするの!?」

 

「あんなのやってこなかったぞ!エリュシオンの野郎め、絶対にぶっ倒してやるからな!だがこの攻撃も相当凄まじいようだな、大剣がさっきより地面に埋まってる。」

 

ユニの言葉に答えた悠岐はすぐに冷静になり、ムチをダイルオーマの腕に絡めて引きちぎった。そして悠岐は再び大剣を拾う。両腕を失ったダイルオーマは悠岐を踏み潰そうと足を上げる。

 

「オラそこだ!!」

 

そう言うと彼は大剣を振り、ダイルオーマの足を切断した。ダイルオーマは再びバランスを崩し、地面に崩れる。その隙に悠岐は胸の赤い部分に歩み寄り、口を開いた。

 

「これで終わりだ!」

 

そう言うと彼は大剣を振り上げ、5発ほど斬りつけた。その時だった。突如3人の視界が歪み始めた。

 

「きゃっ!」

 

「うおっ!?」

 

「なんだこれ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界の歪みが治まり始めるとそこは先程みんなで分かれたマグマの部屋の真ん中だった。

 

「ここは、さっきの場所?」

 

「一体、どうなってるんだ・・・?」

 

ユニと悠岐が言った時、楓がある方向を見始めた。彼女に続いて二人もその方向を見る。そこには4人の少年少女が腰を下ろしながら何かを話していた。それを見たユニが彼らの名前を言う。

 

「百々君、九十九ちゃん、暁君、霊夢!」

 

「お、ユニに楓に悠岐。戻ってきたか。」

 

ユニの声を聞いた九十九が3人を見ながら言った。と、楓が口を開いた。

 

「お前達も私たちと同じ感じだったのか?」

 

「まぁそうね。扉の向こう側にいた奴を倒したら視界が歪んでここに戻されたって感じね。」

 

楓と霊夢が話している中、正面の絵が描かれた木の扉の左下の絵が光り始めた。それを見た暁が口を開いた。

 

「これで残るはあと一つですね。」

 

「となると残りは魔理沙、琥珀、影裏か。」

 

「魔理沙と琥珀が心配だな、影裏に何をされるか・・・。」

 

「心配すんな楓。魔理沙はあんな奴に負けるような奴じゃない。琥珀もいるし、大丈夫だ。」

 

「・・・あぁ、そうだな九十九。」

 

暁、百々、楓、九十九が話している中、ユニは木の扉を見ながら言う。

 

「待ってなさい、エリュシオンにテルヒ!あなた達は私達が絶対に倒してみせるんだから!!」




ダイルオーマを倒すことに成功したユニ、楓、悠岐。
残るは魔理沙、琥珀、影裏の3人。
果たして3人は無事に戻ってこれるのか!?
次作もお楽しみに!


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第159話 舞台装置の魔女

ダイルオーマを倒すことに成功したユニ、楓、悠岐は再びマグマの部屋へと戻される。


場面は変わって魔理沙、琥珀、影裏組。3人が扉を開けるとそこには辺り一面が真っ白な世界に覆われた街が広がっており、3人はどこかの建物の屋上に立っていた。

 

「な、なんだここは・・・現世?」

 

「にしても変な雰囲気だね。街のみならず周りの景色も空も全て真っ白だ。それに僕たちはさっきまで城の中にいたんだよ?」

 

「エリュシオンの野郎が城に何か施したのかもしれない。それにこの街、なんか見覚えがある・・・!」

 

影裏が話している中、魔理沙が何かに気づき、辺りを見回し始めた。そして口を開く。

 

「気をつけろ二人とも。近くに何かがいる。」

 

魔理沙がそう言った時だった。突如辺りに霧が漂い始めた。それを見た影裏が何かにはっと反応し、言う。

 

「・・・これはかなりやばいかもしれねぇ。」

 

「影裏、どうしたんだ?」

 

「あれを見てごらん魔理沙。」

 

そう言うと琥珀はある方向を指差した。そこには絵で描いたようなサーカスの服を着たような象が何頭か姿を見せた。と、影裏が口を開いた。

 

「まどかから聞いたことがある。名前は忘れたがあの象が現れた時にとんでもねぇことが起こるってな・・・。」

 

「どうやらそのようだね。二人とも、あそこを見なよ。」

 

そう言うと琥珀は霧が持っても濃い場所を指差した。その瞬間、濃くて先の景色も見えないほどの霧が消えたかと思うとその霧の中からスカートを履いた女性が逆さまになっていて足の部分は歯車となっており、大きさは周りの建物を遥かに上回る巨体をしている存在が姿を現した。

 

「な、なんじゃありゃ!?」

 

あまりの巨大さと異形な姿に魔理沙は思わず声を上げてしまう。そんな彼女とは別に影裏は頭を抱えて言う。

 

「まどからに聞いたことがあるのに・・・名前がどうしても思い出せねぇ!!クソッ、あいつの名前は・・・。」

 

「彼女の名前を思い出すのは後にしよう影裏君。僕達はまず彼女を倒すのが先決だよ。」

 

「・・・あぁ、そうだな。けど俺達3人で倒せんのか?」

 

「倒せる倒せないじゃねぇ、倒すんだぜ!!」

 

そう言うと魔理沙は箒に跨り、巨大な存在へと向かっていった。

 

「オイオイ待てよ魔理沙!」

 

彼女に続いて影裏も巨大な存在へと向かっていく。二人に続いて琥珀も巨大な存在へと向かっていった。と、魔理沙がスペルカードを発動する。

 

「先手必勝だぜ!恋風スターライトタイフーン!!」

 

魔理沙の放った攻撃はそのまま巨大な存在の顔らしき場所に命中し、砂埃を舞い上がらせる。彼女の後を追ってきた琥珀が魔理沙の横まで飛び上がる。影裏はビルの屋上で二人を見る。と、影裏が目を細めて口を開いた。

 

「・・・どうやらあの1発では物足りないらしいぜ。」

 

そう言った瞬間、砂埃が消えていっかと思うと巨大な存在が不気味な笑い声を上げながら再び姿を現した。

 

「なっ、あの攻撃が効かないのかよ!!」

 

「そりゃそうさ。彼女は五大王の兵士達の持つ現代兵器を使っても倒すことのできない存在なんだ、君の霊力だけで倒せる敵ではないよ。」

 

驚く彼女に琥珀が冷静に答える。そんな彼に魔理沙が聞き返す。

 

「んじゃあ、私達3人で倒せるのか!?」

 

「うーん、どうだろうね。正直に言うと僕らも含めた10人でも彼女を倒せるとは思わない。五大王の誰かしら一人でもいれば変わるかもしれないけれどね。でもこの世界はあの年層ババァが作り出した世界、実際の彼女とは少し違うのかもしれない。」

 

二人が話している時だった。巨大な存在が再び不気味な笑い声を上げたかと思うと3人を見つめ始めた。

 

「何見てやがるんだ!!ミョルニル!!」

 

「これでも喰らえ!!マスタースパーク!!」

 

笑われたことに腹が立ったのか、魔理沙と影裏は巨大な存在の顔へと攻撃を放った。攻撃をくらった巨大な存在は少しだけよろけるもすぐに体制を整えて再び笑い声を上げる。そんな彼女を見た魔理沙が目を見開きながら口を開いた。

 

「オイ、何も効かないぜ・・・?こいつは、どうやって倒したらいいんだ?」

 

「俺の攻撃も大して効いてねぇみたいだな。こうなったら俺の切り札を・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待つんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怯える魔理沙とまだ戦おうとする影裏に琥珀が声をかける。そんな彼に影裏が口を開く。

 

「オイ琥珀、お前何か出来るのか?見てわかるだろ?あいつには何をしても効果がないんだって。」

 

「そんなの分かってるさ。けれど、1つの可能性が浮かんだのさ。」

 

「「1つの可能性??」」

 

魔理沙と影裏が声を合わせて言う。それに気にせずに琥珀が話し続ける。

 

「二人の攻撃を食らったのを見て思ったんだ。彼女は僕の知っている本来の彼女じゃない、別の彼女なんだ。」

 

「別の彼女って・・・。」

 

「どうしてそれが分かる?」

 

二人の問いに琥珀はすぐに答える。

 

「簡単さ、本来の彼女はロケットランチャーみたいな大型兵器や大量の爆弾による攻撃ですら傷一つつかず、よろけない。それに比べてあの彼女はどうだい?魔理沙のマスタースパークと影裏君のミョルニルの一撃を食らった程度でふらついたじゃないか。これはつまりどういうことを意味するか分かるかい?」

 

琥珀から問いかけられた問いに答えたのは影裏だった。

 

「つまりエリュシオンは完全に次元に干渉出来てないってことか?」

 

「そう言うことさ。それなら本来の彼女の力は発揮されないだろうから結構楽に彼女を倒せる筈さ。」

 

琥珀が言った瞬間、巨大な存在が布切れのような細長いものを3人目掛けて飛ばしてきた。

 

「おっと!!」

 

咄嗟に反応した3人は彼女の攻撃を避ける。と、影裏が口を開いた。

 

「ならさっさとケリつけるしかないな。二人とも準備はいいか?」

 

「勿論だぜ!」

 

「僕も出来てるよ、サポートは任せて。」

 

「おっしゃ!行くぞ!!」

 

そう言うと3人はそれぞれ別れる。魔理沙は箒に跨り、巨大な存在へと近づき、琥珀は飛び上がり巨大な存在に近づく。一方の影裏は走って巨大な存在へと近づく。3人が近づいてるのを見て巨大な存在は体からウフフと笑う人形のような赤い影を召喚し、3人へと向ける。それを見た琥珀が口を開く。

 

「文字よ。」

 

そう言った瞬間、彼の前に『消』の文字が浮かんだかと思うとその文字が3つに分かれ、赤い影へと向かっていった。文字を受けた影はクススと笑いながら消滅していった。

 

「これだけじゃ終わらないさ。」

 

そう言うと彼は次に『封』の文字を浮かべ、それを巨大な存在へと放った。巨大な存在に文字が触れた瞬間、文字が長い鎖に変化し、巨大な存在を縛り上げて身動きが取れない状態にした。そして琥珀は二人に言う。

 

「今だよ二人とも!」

 

彼の言葉と同時に影裏と魔理沙が同時に攻撃の準備をする。

 

「よっしゃ、これでもくらいやがれ!!『全能神の稲妻(ゼウスのイカヅチ)!!」

 

「私も行くぜ!!魔符ミルキーウェイ!!」

 

二人から放たれた攻撃は一直線に巨大な存在の顔に向かっていき、命中した。命中した時、突如3人の視界が歪み始めた。

 

「うわっ!!」

 

「な、なんだ!?」

 

「これは!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界の歪みが治るとそこは最初にやってきたマグマの部屋の真ん中だった。と、魔理沙が口を開いた。

 

「こ、ここは・・・?」

 

「最初の場所だな・・・って!?」

 

影裏が続きを言おうとした瞬間、言葉を詰まらせた。その理由は簡単である。3人が見つめる先にはあまりの暑さで言葉を失うユニ達の姿があったからだ。

 

「霊夢!」

 

思わず声を上げる魔理沙。と、そんな彼女に霊夢ははっと気がつくとそのまま彼女に近寄り、

 

「遅い!!」

 

そう言って拳を魔理沙の顔に叩き込んだ。

 

「ぐべっ!?何するんだぜ!!」

 

「遅いわよあんたら!一体いつまで待たせるつもりなのやら!」

 

「姉さん落ち着いてください!イライラする気持ちも分かりますけれども・・・。」

 

怒りに暴れる霊夢を暁が必死に止める。そんな中、悠岐と楓が3人に近づき、言う。

 

「よく戻ってきたな、お前らが1番最後だぞ。」

 

「もう暑さは勘弁だ悠岐〜。」

 

「あぁ、待たせてすまないね。僕らにも色々あったもんでね。」

 

琥珀が言った時だった。ユニ達から見て正面の絵が描かれている木の扉の右下の絵が突然光り始めた。そして光った瞬間、ゴゴゴと音を立てながら木の扉が壊れていった。




巨大な存在を倒すことに成功した魔理沙、琥珀、影裏。
そして開かれる木の扉。その先に待ち受けているのは果たして!?
次作もお楽しみに!


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第160話 家畜

巨大な存在を倒すことに成功した3人は元の部屋へと戻り、ユニ達と合流する。


「すごい仕掛けね。」

 

「恐らく一種の結界だと思います。しかしこんな規模の結界を作り上げるとは・・・。」

 

ユニの言葉に暁が言葉を投げつける。そんな中、他の人達がそれぞれの部屋であったことを話し始めた。

 

「私とユニと悠岐は大仏みたいなもの、名前は忘れたがそいつと戦った。そいつは悠岐が倒してくれた。けど、不思議なことに部屋もその大仏も全部白かった。」

 

「奇遇だな、俺達が倒した奴も周りの風景も全て真っ白だった。」

 

「俺達も同じだな。変な四角い建物も化け物も、全部真っ白だった。」

 

「私と暁も同じよ。神殿みたいなところもドラゴンみたいなのも全部白かったわ。」

 

楓、影裏、百々、霊夢が話している中、琥珀が影裏に言う。

 

「そういや君が言ってたさっきのやつの名前、言ってなかったね。」

 

「ん?あぁ、そういや言ってなかったな。アイツはなんて言うんだ?」

 

「ワルプルギスの夜。彼女はそう呼ばれている。」

 

「ワルプルギスの夜か、確かに聞いたことがある名前だったな。ようやく思い出したよ。けど、アイツのことはあまり深く考えないほうが良さそうだ。」

 

「ワルプルギスの夜って言うのか?アイツは。あれは結構悍ましく、恐ろしかったぜ。」

 

「魔法少女の成れの果て、さ。魔理沙、君もああなりたくなければ気をつけることだね。」

 

「き、気をつけるぜ・・・。」

 

3人が話している中、霊夢が暁を見て言う。

 

「そういえば暁、私達が戦ったあのドラゴンはなんでいうの?」

 

「あれはゼローグって言います。奴を打ち倒すのは私たちではなく、同じドラゴン。私は彼らの力を借りたにすぎませんよ姉さん。」

 

「そう・・・。」

 

と、霊夢と暁が話しているのとは別にユニが百々と九十九に問いかける。

 

「ところで、百々君と九十九ちゃんは何と戦ったの?」

 

「なんか、白くて四角い奴としかいえねぇ。」

 

「四角い奴?ガストのことか?」

 

百々の言葉に悠岐が推理する。そんな彼に九十九が口を開く。

 

「ガストは前に見たことがあるけれど・・・それとは少し違ったかな。他のガストより大きかったし足の数も多かったし。」

 

「それじゃあウルガストか。」

 

九十九の言葉を聞いてすぐに楓が推測した。彼女の推測に魔理沙が言う。

 

「ウルガストってネザーでカオスと戦ってた時にいたあのバカでかいやつのことか?」

 

「あぁ、そうだ。」

 

「あぁ、あれがウルガストか。変な奇声ばかりあげるやつだった。」

 

二人の言葉に百々が口を開く。そんな中、悠岐は一人壊れた木の扉の先を見つめる。それを見た霊夢が彼に言う。

 

「どうしたの悠岐?そんなに真剣に見つめて。」

 

「なんかあの奥から異様な雰囲気を感じてな・・・。幻獣と言うより別の何かを感じる。」

 

「どっちにしろ、気をつけるに越した事はないですね。」

 

彼の言葉に暁が口を開いた。その後にユニ、魔理沙、楓、百々、九十九、琥珀、影裏も立ち上がり、奥の空間を見つめる。と、百々が口を開いた。

 

「さぁ、行こうぜ。」

 

「あぁ。」

 

「えぇ。」

 

「・・・。」

 

百々の後に続いてユニ達は壊れた木の扉の奥へと足を運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥に進むとそこは先程のマグマの部屋とは全く異なり、静かさが漂う空間となっていた。その中でユニ達は恐る恐る辺りを見回しながら進んでいく。と、ユニが唐突に口を開いた。

 

「ここの空間、一体なんの意味があるんだろう?幻獣が入るにしては狭すぎるし、寝たりするのにも広すぎるし・・・。」

 

「それは僕も思ってたよ。あの年層ババァが何のためにこの空間を作ったのかってね。」

 

「周りに何もないからなぁ。本当にここは何のためにあるんだぜ?」

 

ユニに続いて琥珀、魔理沙も口を開く。と、先頭を歩っていた百々が何かを見つけて足を止める。

 

「?どうした百々。」

 

彼に声をかける悠岐。そんな彼に百々は無言である方向を指差す。そこにはポツンと少し錆びている緑色の扉があった。それを見た悠岐が口を開く。

 

「・・・なんだこれ?手入れしてなさそうな扉だな。」

 

「でも周りにはここ以外行ける場所がありません。」

 

「ならここに行くしかないのか。」

 

悠岐、暁、楓の3人が言う中、ユニが扉を開けて中に入った。

 

「なっ、おい待てよユニ!」

 

慌てる九十九に続いて霊夢達も扉の中に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ何してんだ!!早くここから出せ!!」

 

「私達をここから出しなさいよこのガキども!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入った途端に部屋中に男と女の怒声が響く。部屋の中は真ん中の通路を挟み、右側に上半身裸の男達が牢屋に閉じ込められており、反対側の左側には水着を着ている女達が同様に牢屋に閉じ込められていた。その光景を見た霊夢が唖然としながら言う。

 

「な、何よここ・・・。」

 

「牢屋、なのか・・・。にしてもすごい数の人が捕まってるな。」

 

霊夢の言葉に影裏が口を開く。と、その時だった。突如男の牢屋から長い物が伸びてきたかと思うとそれはユニの首襟に引っかかった。

 

「うっ!」

 

「ユニちゃん!?」

 

咄嗟に気づいた琥珀が引っ張られたユニの方を見る。そこには4人の男達に牢屋越しに四肢を掴まれ、身動きが取れなくなるユニの姿があった。男の一人がユニの顔に顔を近づけ、言う。

 

「なぁ、嬢ちゃん。俺達をここから出してくれやしないか?でないと痛い目に会うぜ?」

 

そう言った瞬間、男はユニの首元を舐める。首元を舐められたユニはビクッと体を震えさせる。その瞬間、悠岐、暁、百々、影裏がそれぞれユニの四肢を掴む手に蹴りを入れる。

 

「いってぇ!!」

 

蹴りを食らった男達は手を押さえて後退する。その瞬間にユニに声をかけた男に琥珀が文字を浮かべる。

 

「こんなところでは使いたくないんだけれどね、文字よ。」

 

そう言った瞬間、『眩』の文字を浮かべた彼はそのまま文字を男の目に放った。目に放たれた文字は男の前で眩い光を発した。

 

「うおっ、眩しい!!」

 

思わず目を押さえてうずくまる男。その間にユニは咄嗟に牢屋から離れ、九十九に飛びついた。

 

「っと、大丈夫かユニ!」

 

ユニを優しく抱きしめて九十九が声をかける。

 

「うっ、ひっぐ・・・九十九ちゃん。怖かったぉ・・・。」

 

そう言うユニはガタガタと体を震わせ、涙も流してひどく怯えていた。そんな彼女を見て九十九は再び優しく抱きしめる。そんな中、悠岐が男達の牢屋に刀の先を向けて言う。

 

「オイ、お前ら俺達の仲間に何手を出そうとしてやがる。もう一度そんなことしてみろ?今度はお前らの四肢を斬り落としてやるからな。」

 

そう言う彼の目は赤く染まっており、男達に恐怖を覚えさせた。

 

「あの〜、すいません。」

 

その声が聞こえ、悠岐達はその方向を見る。そこは左側の牢屋で先程騒いでいた女達とは異なり、とても静かな牢屋だった。その声を聞いた悠岐達はそこへ向かう。そこにはまるで全て終わったかのように落ち込む女性と少し緊張しているのか、おずっとしている少女達の姿があった。と、1人の少女がユニ達の前まで近づき、頭を下げてから口を開いた。

 

「ごめんなさい、あの連中はいつもそうなんです。誰か知らない方々がくるとああやって脅してくるんです。話を聞かない者には酷いことをするんです。」

 

「ということはさっき騒いでたあの女達もか?」

 

彼女の言葉に魔理沙が口を開く。魔理沙の問いに少女はすぐに答える。

 

「えぇ、同じです。みんな欲求不満なんです。結局自分が死ぬことに変わらないのに・・・。」

 

「・・・どういうことか、説明してもらってもいいかな?」

 

彼女の言葉に琥珀が口を開く。少女は一呼吸置いてから口を開いた。

 

「ここに捕まってる人達は元々帝都に住んでいた住民や兵士の方々だったんです。けれど突如強大な霊力を持ったあの存在がこの城を乗っ取ったことにより、帝都が崩壊してしまいました。多くの住人や兵士の方々が彼女に挑みました。けれども、勇ましく戦った人達は二度と戻ってくる事はありませんでした。そして私達は彼女に降伏してしまい、今に至るんです。」

 

「そんなことがあったのか・・・。にしてもどうしてお前達はここに捕らえられているんだ?」

 

「あれを見れば分かります。」

 

楓の問いかけに少女は天井付近を指差して言った。彼女が指差す方向をユニ達も見る。そこには赤い文字で『養人場』と書かれていた。それを見た影裏が目を見開きながら言った。

 

「な、養人場(ようじんじょう)だって・・・?」

 

「じ、じゃあつまりあなた方は・・・。」

 

暁の問いに少女は落ち着いて口を開いた。

 

「私達は、エリュシオンにとって家畜なんです。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、ユニ達は目を見開く。そんな彼女達とは別に少女は話を続ける。

 

「ここへ捕らえられた人達は皆、ある程度大人になった瞬間に死ぬことが確定してるんです。先程怒声を上げてたあの方々が頃合いでしょう。」

 

「どういうことなんだ?」

 

百々の問いに少女は少し怯えながら口を開く。

 

「ある程度大人になった瞬間、エリュシオンのペットである幻獣達の餌にされるんです。」

 

「餌!?」

 

餌という言葉を聞いてユニ達は思わず声を上げる。そんな中、琥珀が先程の牢屋を見て言う。

 

「なるほど、それであんなに牢屋に閉じ込められているんだね。」

 

と、ある疑問を抱いたユニが少女に問いかけた。

 

「でも、あんなに一気に幻獣の餌にしたらいずれ底が尽きるんじゃないかしら?エリュシオンはそれを分かって・・・。」

 

「いいかいユニちゃん。彼女達はあの年層ババァの家畜なんだ。豚や牛で例えてみよう、家畜を増やすためには何をする?」

 

琥珀からの問いにユニは普通に答える。

 

「何をするってそりゃ家畜を増やすためには・・・!!!」

 

と、何かに気がついたユニは顔を青くして口を押さえた。そんな彼女に少女が言う。

 

「そうです、エリュシオンは私達餌を増やすために子作りをさせるんです。無理矢理妊娠させ、出産させる。しかも1人ではなく3人も子供を作らせるんです。私には姉がいましたが先日3人目を産んでしまい、幻獣達の餌となりました・・・。」

 

そう言う少女の目からは涙が溢れ始める。それを見たユニ達も同情し、目を下に向ける。と、影裏が頭を押さえて口を開く。

 

「クソだな、クソほど胸糞悪い。俺みたいな復讐者(アベンジャー)でも分かるくらい胸糞悪い。エリュシオンの野郎、本当に許せない存在だな!!」

 

彼に続いて悠岐も口を開く。

 

「胸糞悪いのは当たり前だ。そんな胸糞悪いことを平気でやるエリュシオンを俺は許せない。絶対にぶっ殺してやる。」

 

「私も2人に同感だ。大切な人の命を何とも思わず、ゴミのような扱いをするあのババァは私も許さない。友の仇と一緒に倒す。」

 

影裏、悠岐、九十九が意思を話す中、ユニが少女の前まで行き、口を開いた。

 

「待ってて、私達が絶対にエリュシオンをやっつけてみんなを助けてあげる。約束するわ。」

 

「ほっ、本当ですか!?」

 

彼女の言葉を聞いた少女は目を見開いて口を開いた。彼女に続いて落ち込んでいた女性や他の少女達も目を輝かせてユニ達を見る。そんな彼女達にユニが再び言う。

 

「あの人達を助けることに抵抗があるし、無茶な戦いにはなると思う。けれど私達は諦めずにエリュシオンと戦う。そして自由を束縛されてるあなた達を必ず救って見せる。そうでしょみんな?」

 

そう言うとユニ達は笑みを浮かべて霊夢達を見る。霊夢達は皆同じ意見のようで頷いた。そんな彼女達に少女が口を開く。

 

「気をつけてください、エリュシオンはとんでもない存在です。非常に危険な戦いになるかもしれません・・・。けれど私達はあなた方を信じます!どうかご武運を!!」

 

そう言うと少女とその後ろにいる人達が頭を下げた。と、百々が少女に言った。

 

「そんじゃあエリュシオンは俺達に任せな。それと聞きたいことがあるんだか、ここからエリュシオンの所までどうやって行くんだ?」

 

「あっはい、私はエリュシオンのところは分からないですが、テルヒの場所なら分かります。」

 

『テルヒ』という言葉を聞いた瞬間、九十九の体がピクリと反応する。そんな彼女とら別に少女は話を続ける。

 

「まずあの扉に行ってください。その奥にオスカーの部屋があります。オスカーの部屋を抜けると巨大なホールのような空間があります。そこがこの城の中心となっている場所です。そこに着いたら長い階段を1番上まで登ってください。そこにテルヒのいる部屋があります。」

 

「おっしゃ、そうと決まれば行くぞ!」

 

そう言ったのは九十九だった。そんな彼女に少女が再び口を開いく。

 

「気をつけてください!オスカーの部屋に行って帰ってきた人は誰もいないです!もしかしたらあなた方もその帰らぬ人達と同じ運命を辿るかもしれません!!」

 

「大丈夫ですよ、私達はそれらを覚悟してここへきていますので。」

 

そう少女に暁が言った。暁に続いて霊夢が少女に言った。

 

「ありがとう、色々話してくれて。ここから先は私達に任せなさい。」

 

「はい、ありがとうございます!きっと、きっとみなさんなら越えられない存在を超えられる気がします!どうか、頑張って・・・。」

 

少女の言葉を聞いたユニ達は笑みを浮かべて頷いた。そしてユニ達は牢屋を後にしてオスカーの部屋と呼ばれる場所は向かった。




少女の話を聞いてますます打倒エリュシオンのことを頭をするユニ達。ユニ達の向かうオスカーの部屋で待ち受けるものとは!?
次作もお楽しみに!


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第161話 オスカーの部屋

牢屋で少女から様々な話を聞いたユニ達はオスカーの部屋と呼ばれる場所は向かった。


部屋の中に入るとそこには広々とした空間が広がっており、四方にはそれぞれ絵が一つ描かれていた。それを見た楓が口を開いた。

 

「これは、さっきの部屋の大仏の絵?どうしてこんなところに・・・。」

 

他の絵を見て霊夢も口を開く。

 

「となるとこのドラゴンの絵はゼローグってことね。」

 

2人が話している中、暁が四方の絵を見て口を開いた。

 

「・・・ウルガストにワルプルギスの夜、ゼローグ。あの大仏はダ・イルオーマ?全部アニメやゲームの存在・・・。エリュシオンは次元に干渉できる?」

 

「こんな能力、私の世界を侵略した時には使わなかった。」

 

「エリュシオンの力は未知なところが多すぎるぜ。これはメルト・グランチのオッサンの言う通り、厄介な戦いになりそうだぜ。」

 

彼に続いて九十九、魔理沙が口を開く。と、影裏が何かを思い出して口を開いた。

 

「それにあの女の子が言ってた、『オスカー』って存在も気になるな。もしかしたらこの部屋の何処かにいるかもしれねぇ。」

 

「確かにな。急に私達に襲いかかってきてもおかしくはないな。」

 

影裏と楓が話している中、ユニが辺りを見回しながら言う。

 

「それよりみんな、1つ聞きたいことがあるんだけれど・・・。」

 

「何だ?」

 

「どうかしたのか?」

 

「どした?」

 

彼女の言葉に悠岐、影裏、百々が反応する。3人の後にユニが再び口を開く。

 

「扉がないの。この先へ続く道も扉もこの部屋のどこにもないのよ!」

 

「なんだって!!」

 

彼女の言葉に驚きの声を上げる、1人を除いては。

 

「押してダメなら引いてみろ。上がダメなら下を見ろ。ってね。」

 

そう言うと琥珀は地面を指差した。それを見たユニ達は地面を見て何かないか探し始める。

 

「ちょっとみんな、これを見て。」

 

そう言って霊夢はある場所を指差した。彼女が指差す場所へユニ達も歩み寄る。そこには人5人ほど入れるくらいの水溜りがあった。水の中は少し暗くて分かりづらいが相当の深さがあるようだ。それを見た楓が言う。

 

「水溜り?にしては深いな。」

 

「ほら、道があったじゃないか。」

 

「まさか、水の中から行くって言うのか!?」

 

「大正解。花丸とあげようかな・・・っと!!」

 

魔理沙の疑問に答えながら琥珀は魔理沙を水溜りへ叩き落とした。

 

「うわっ!?」

 

ポチャン、という音と共に魔理沙は水溜りに落ちた。

 

「あ。」

 

「落ちた。」

 

「いや誰か助けにいけよ!」

 

呆然と見る悠岐と霊夢とは別に百々は魔理沙を追うように水の中に飛び込んでいった。と、楓が首を傾げて言う。

 

「そういえばアイツら、泳げるのか?」

 

「少なくとも俺の知る限りでは俺と楓以外泳げない気がするんだが。」

 

「あ、百々は泳げるよ。百々"は"。」

 

いつの間にか、水溜りへと入っていた九十九がそんなことを言った。と、彼女の様子がおかしいことに気がついた悠岐が彼女に言う。

 

「お前、溺れてる?」

 

「うん。正直助け・・・。」

 

トプン。という効果音と共に九十九は水溜りの中に沈んだ。

 

「あっ九十九ちゃん!!」

 

沈んだ九十九の名前を言うユニ。そんな中、悠岐と楓がため息を吐いていた。そして楓が言う。

 

「はぁ、仕方ないな。悠岐、息は持ちそうか?」

 

「なんとかな。まずは百々、九十九魔理沙の救出だ。ユニ、霊夢、暁、琥珀、影裏はそこで待ってろ。」

 

「分かったわ。」

 

「早く帰ってこいよ。」

 

「お気をつけて。」

 

霊夢、影裏、暁の言葉を聞いて悠岐と楓は水溜りの中に飛び込んでいった。と、琥珀が水溜りを見ながら言う。

 

「その必要はないんじゃないかな?」

 

「どうして?」

 

琥珀の言葉にユニが問いかける。彼女の問いに琥珀はすぐに答える。

 

「僕はさっき言ったはずだよ。ここが、次の道だって。」

 

「確かにそうかもしれないけれど泳げるのは悠岐と楓二人よ?どうやって行くっていうのよ。」

 

「想像力が足りないね、ユニに霊夢は。ここはあの年層ババァの居城。何が起こるか分からないんだ。沈んだ先に道があっても不思議じゃないはずだよ。」

 

琥珀が話している中、魔理沙を担いだ楓が、百々、九十九を担いだ悠岐が水溜りから出てきた。

 

「悠岐君、楓ちゃん!」

 

ユニが2人の名を言う。水溜りに沈んだ3人を先に上がらせ、2人は後に続いて水溜りから上がる。と、九十九が咳き込みながら言う。

 

「し、下から光が・・・。」

 

「光?」

 

「なんて言えばいいんだ?沈んでたらうっすら光が見えたんだ。確認する前に息が危なくなって分からずじまいだけどな。」

 

息を整えた百々が影裏の疑問に答える。その言葉を聞いたユニが首を傾げて言う。

 

「うーん、何の光かしら?全く想像できないわ。」

 

悩むユニとは別に悠岐が皆を見ながら口を開く。

 

「一応聞くが、この中で泳げる奴は手を上げてくれ。」

 

彼の言葉を聞いて真っ先に手を挙げたのは楓で他の皆は手を挙げなかった。と、暁が霊夢を見て言う。

 

「姉さんは泳げないんですか?」

 

「幻想郷には海ってのがないから泳げないわよ。」

 

「まぁ博麗ちゃんは水の常識から浮けばいいもんね。」

 

3人が話している中、影裏が水溜りを見ながら口を開く。

 

「けどよ、これ浮くスペースないぞ?結局は潜るしかないのか?」

 

「見た感じ、潜るしかなさそうね・・・。」

 

ユニと影裏が話している中、楓が琥珀と暁に言う。

 

「そういう二人は泳げるのか?」

 

「僕は知識の妖精だよ?もちろん泳ぎ方なんて知ってるさ。」

 

「現代人舐めないでください。」

 

「なら問題ねぇな。」

 

悠岐がほっとしている時だった。

 

「まぁ、泳げないけれどね。」

 

「泳げるとでも?」

 

二人の言葉を聞いた瞬間、楓は二人の頭に拳を叩きつけた。叩きつけられた場所からはぽっこりと大きなコブが出来てしまう。涙目になりなぎら琥珀と暁が口を開く。

 

「本体が紙な妖精に何を期待しろと?水は天敵さ!!」

 

「現代人、泳げなくてもやっていけます。」

 

二人の言い訳を聞いた悠岐は顔に手を当て、がっかりしたテンションで言った。

 

「はぁ、二人に期待した俺がバカだったようだな。ユニわロープを出してくれないか?これでみんなを繋いで水の中を通っていくぞ。」

 

「う、うん。分かったわ。」

 

「あの、私がどうにかしようか?」

 

話す二人に声をかけたのは九十九だった。彼女の言葉を聞いて悠岐が口を開いた。

 

「どうにかするって、どんな手段を使うんだ?」

 

「うん、蓬莱になったら泳げるようになるしアクアドラゴンたちに任せればみんなを引っ張っていけるよ。」

 

「そうなのか?んじゃあ任せる。」

 

「任せて。」

 

楓の頼みを聞いた九十九は懐から青いスマホを取り出し、それを掲げた。

 

「模倣開始『蓬莱』」

 

スマホから溢れた光が九十九を包み、それがなくなるとそこには学生服を身に着け、オッドアイとなった九十九がいた。

 

「いらっしゃい、アクアドラゴン!」

 

その号令を合図に彼女の持つスマホから青き竜が数体飛び出した。

 

「ほー、それが蓬莱の力でこいつらがアクアドラゴンってやつか。」

 

それを見て一人感心する影裏。そんな彼とは別に琥珀が口を開いた。

 

「学生服なのは突っ込まないであげるよ。・・・まぁ少しお腹の丈が少し足りないみたいだけれどね。」

 

琥珀の言葉に、暁が察したかのように呟いた。

 

「蓬莱・・・九十九・・・胸部装甲・・・なるほど。」

 

「・・・暁?」

 

呟く暁に霊夢が反応する。

 

「いえ、なんでもありませんよ姉さん。」

 

「そう・・・。」

 

と、九十九がみんなを見て言う。

 

「みなさん、アクアドラゴンに乗ってください!」

 

彼女の言葉を聞いてユニ達はアクアドラゴンに乗る。と、九十九が皆を見て再び口を開く。

 

「みなさん、掴まりましたか?では、いきますよ!」

 

「うん!」

 

「いつでもいいぜ!」

 

「僕だけ両腕をガッチリとロックされているのは嫌がらせかい!?」

 

ユニ、魔理沙とは別に琥珀はいつの間にかアクアドラゴンの体に両腕をロックされていた。そんな彼に九十九が言う。

 

「女の敵ですので。では、アクアドラゴン、行きなさい!」

 

彼女の合図と共にユニ達を乗せたアクアドラゴン達は雄叫びをあげて水溜りに潜っていく。

 

「うわっ、結構勢いよく行くな!」

 

多少驚く影裏とは別に琥珀は涙目にはなりながら口を開いた。

 

「待って腕がイク腕が。」

 

そう言った瞬間、ぶちり。という音と共に琥珀の右腕が引きちぎれた。

 

「僕の腕ぇぇぇ!!」

 

そんな彼を無視してアクアドラゴン達は水溜りの奥へと進んでいった。1匹の巨大な影にも気がつかずに。




オスカーの部屋と呼ばれる場所で見つけた絵と謎の水溜り。その先に待ち受けるのは一体!?
次作もお楽しみに!


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第162話 水中の幻獣

蓬莱の力を借りて九十九はアクアドラゴンを召喚し、水溜りの奥へと進んでいく。


水溜りの中に入るとそこは多少の光しか当たらない、薄暗い空間だった。アクアドラゴン達はその少しの光を頼りに奥へと進んでいく。と、悠岐が突然辺りを見回し始めた。

 

「どうしまして?悠岐さん。」

 

そんな彼の様子を見て九十九が声を掛ける。声をかけられた悠岐は辺りを指差す。それを見た九十九は皆に聞こえるように言葉を発した。

 

「皆さん!周りに何かがいます!警戒を!!」

 

彼女の言葉を聞いたユニ達は慎重に辺りをは見回し始めた。その時だった。突如アクアドラゴンが奇妙な動きをし始めた。まるで何かに襲われてもがいているような動きになった。

 

「これは一体・・・。浦島!周辺の様子を探ってください!」

 

スマホから飛び出した少年と亀が九十九の指示に従い、アクアドラゴンの元へと向かっていった。少年と亀がアクアドラゴンを見た瞬間、目を見開いた。そこにはアクアドラゴンの体に噛みつく無数の巨大な魚の姿があった。

 

「がぽ!がぽぽぽ!がっぽ!」

 

アクアドラゴンが暴れてしまったせいで百々はアクアドラゴンの体から離れてしまう。

 

「百々!こんなにたくさんのピラニアが・・・これは全て幻獣?はっ、浦島、お願いします!」

 

彼女の指示を聞いた少年は離脱してしまった百々を抱えて九十九の元へと泳ぎ寄る。

 

(うーん、これはマズイかな。やれやれ。「私は水中の中でも地上のように動ける。」)

 

能力を使用し、暁は一人歩きながら巨大魚の元へ向かった。暁が歩いてくるのを見た瞬間、巨大な魚はアクアドラゴンからすぐに離れていき、どこかへ泳いでいった。

 

「アクアドラゴンから離れた?どういうことなのでしょう?」

 

「うーん、何もしてないんですけれどね。」

 

と、辺りを見渡していた霊夢がある方向を指差す。そこには百々と九十九が見たであろう、光が差し込む場所があった。それを見た九十九が口を開く。

 

「光を見つけました。突入します!」

 

九十九がそう言った瞬間、ユニ達の目の前に先程の巨大なピラニアよりも巨大な影が通った。

 

「大きい!!」

 

そう言うと暁は下を見る。その瞬間、彼は目を見開く。そこには先程の巨大ピラニアに加えて巨大なワニのような影が数十体泳いでいた。

 

「ア、アクアドラゴン!全速力でここを抜けますよ!!」

 

九十九の言葉を聞いて光のある場所へと急ぐアクアドラゴン。しかし、巨大な存在達が黙っているわけにはいかない。巨大なワニがアクアドラゴンの尾に噛みつき、水中の更に深い場所に引き摺り込もうとしていた。

 

「処理班頑張りますよ。来い、『雷切』。」

 

過去にも使用した神威の刀『雷切』をまた嘘によって創り出す暁。しかし幻獣達は暁を無視しながらアクアドラゴン達に群がっていく。

 

「嘘つきを舐めないでください。『超強次元斬』!!」

 

彼の放った超強次元斬をくらってアクアドラゴンに噛みついていたのと群がっていた幻獣達の目が一斉に暁の方へ向いた。その瞬間に暁が九十九に言う。

 

「九十九さん行ってください!!」

 

「アクアドラゴン!ここを抜けてください!最大速度!!」

 

アクアドラゴン達はヨロヨロになりながらも九十九の指示を聞いて全速力で光の場所へと向かった。

 

(暁、必ず戻ってくるのよ・・・。)

 

そう願い、霊夢は光のある方向を見る。幻獣達に囲まれた暁は落ち着いて口を開く。

 

「さぁかかってきなさい、ワニもどきとピラニアもどき。」

 

ワニに続いてピラニア達も暁を睨みつける。その数は30匹は軽く越している。そんな状況の中、暁は冷静になって言う。

 

「・・・あの光の場所に結界術を使いました。言葉が理解できるとは思いませんが、私を倒さない限りこの結界は開きませんよ。」

 

彼の言葉を理解していないのか、幻獣達が一斉に暁に襲いかかる。まさにその時だった。突如辺りに何かの雄叫びが響いた。それを聞いた幻獣達は下を見始めた、そのまま逃げるかのように何処かへ泳ぎ去ってしまった。

 

「・・・何の声でしょうか。」

 

幻獣達が泳ぎ去った後、暁の背後に突如巨大な影が通った。その影は先程のワニを超える、見たことのない影だった。

 

「さ、三十六計逃げるに如かず!」

 

暁は急いで結界を解除し、急いで光の元へ走り出した。

 

「マテ。」

 

まるで暁に話しかけるかのように辺りにその声が響いた。

 

「誰だか知りませんけど、今私は巨大な影から逃げてる最中でして!」

 

「チガウ。」

 

よく聞くとその声は巨大な影から発せられていたのに暁は気がついた。

 

「・・・その影でしたか。何の御用で?」

 

「・・・ツイテコイ。」

 

そう言うと巨大は影はアクアドラゴン達が向かっていった光の場所へと暁を案内するかのように泳ぎ始めた。その影に暁が口を開く。

 

「まぁ、向かいますよ。私もそこを目指していましたし。」

 

「・・・。」

 

暁の言葉に何も言わずに影は光のある場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、水から上がったユニ達は何かの部屋の入り口付近のところで息を整えていた。

 

「はぁ、酷い目に遭ったぜ・・・。」

 

「( ˘ω˘ )」

 

魔理沙が感想(?)を述べている中、百々は一人目を閉じていた。それを見た悠岐は呆れながら言う。

 

「ったく、こんな時に百々は呑気な奴だな。」

 

「・・・あれ、息してない?」

 

「え?」

 

「死んだ?」

 

琥珀の言葉を聞いて楓と影裏が反応する。そんな二人に琥珀は百々の腹に手を当てながら言う。

 

「ほら、腹部が上下してない。」

 

「百々は死んだの?」

 

少し慌てながら話す霊夢に琥珀が冷静に言う。

 

「水が詰まってるだけかも。誰か彼のお腹に衝撃を。僕は腕の再生があるからね。」

 

「こんな時こその九十九じゃないのか?」

 

そう言って悠岐は九十九を見る。彼の言葉を聞いた九十九は自分の体を見ながら言う。

 

「蓬莱となっている今はいつもより火力が低くて・・・。」

 

「なら仕方ねぇ、俺がやるか。」

 

そう言うと悠岐は百々の前に立つ。そして右手に握り拳をは作ると、

 

「ファ○コン、パーンチ!!」

 

渾身の一撃を百々の腹にくらわした。

 

「げふぅぅぅ!!!」

 

悠岐の渾身の一撃を食らった百々は体の中に詰まっていた体力の水を噴水のように吐き出す。

 

「・・・あれ、死んだはずの父さんは?」

 

突如訳の分からないことを言い出す百々に影裏が言う。

 

「父さん?何言ってやがんだお前は。目を覚ませよ、今はエリュシオンの城の中にいるんだろ?」

 

「そーだった。変な川の向こう側に父さんがいてよ。手を振ってたんだ。あれは三途の川だったんだな。」

 

「・・・それは夢か?」

 

「多分な。んで、道はあったのか?」

 

「さっき抜けてきたのよ。今は暁を待っているの。」

 

「ふぅん。なら、一休みか。」

 

影裏、楓、百々、霊夢の3人が話している時だった。突如水溜りから暁が勢いよく飛び上がった。

 

「暁君!」

 

「お待たせしました。暁、帰還しました。」

 

「随分と派手な登場だな・・・。」

 

悠岐が言った瞬間、水の中から巨大な生き物が姿を現した。それはワニでもなくピラニアでもなかった。

 

「な、なんじゃありゃ!!」

 

「で、デカイ!!」

 

「飯にちょうどいいな。」

 

魔理沙、楓の反応とは全く違う反応をした百々を見て一同はずっこける。そんな中、巨大な生物は百々を見て言う。

 

「ホウ、スイブントナマイキナコトヲイエルヨウニナッタノダナ。」

 

「しかも喋った!?」

 

驚くユニとは別に百々は巨大な生物に言う。

 

「うるせーや。こっちとら臨死体験してきたんだ。そんくらいの冗談言わせろっての。」

 

「フフフ、ソレモマタオマエラシイ。」

 

二人が話している中、悠岐が百々に言う。

 

「百々、コイツは何なんだ?」

 

「ん、ああ自己紹介しろよ。仲間が混乱してっから。」

 

「そうだな。では話そう。俺の名前はオスカー。見ての通り、幻獣だ。」

 

「コイツ、普通に話せるのかよ・・・。」

 

「え、お前普通に話せたの・・・?」

 

オスカーという巨大な生物が普通に話しているのを見て驚きを隠せない百々と影裏。そんな二人とは別にオスカーは話を続ける。

 

「我が主のおかげでな。ワニやピラニア達がすまなかったな。アイツらはお前達を侵入者と認識していてな、そこを俺が客と誤魔化しておいた。」

 

オスカーはどうやらユニ達に手を貸すつもりらしい。それを聞いた九十九がオスカーに言う。

 

「い、いいの?エリュシオンにばれたらあなたが・・・。」

 

「我が主は今堕落した天使と交戦している。気づくのはおそらくお前達がテルヒと戦っている時であろう。」

 

「ルシファーですか?」

 

「ルシファーが!?」

 

オスカーに問いかける暁と驚きの声を上げる楓。そんな二人とは別にオスカーは話を続ける。

 

「そうだ。ルシファーに勝ち目はないと思うがな。」

 

「ルシファーってやつに勝ち目がなかろうが関係ねぇ。アイツは一人だ。たった一人じゃ勝てる戦いなんてないことを教えてやるよ。」

 

「・・・頑張るといいさ。しかし、よくここまで来れたものだな。」

 

「当たり前よ!私達は強いんだから!」

 

オスカーの言葉に反応するユニ。そんな彼女にオスカーは話を続ける。

 

「これまで多くの人間達がこの城へ潜り込み、我が主を討とうとしていた。だが、主の元へ辿り着いた者は誰一人いなかった。皆この俺の部屋で命を落としていった。初めてだ、ここを抜ける者が現れるのは。」

 

「つまりそれは俺達が今までこの城に乗り込んできた奴の中で1番すごいってことだよな?」

 

「勿論だ百々。さ、俺のことは後にして先に行くといい。テルヒがお前達を待っているぞ。」

 

その言葉を聞いた瞬間、九十九はすぐに先へ進み始めた。そんな彼女を止めるかのようにオスカーは再び口を開く。

 

「まぁ少し待て、爆絶なる者よ。」

 

「・・・それをどこで聞いたの?」

 

いつの間にか元の九十九に戻った彼女がそう言う。九十九の問いにオスカーはすぐに答える。

 

「我が主からお前達のことはある程度聞いている。一応警告しておくぞ、この先に長い螺旋階段が続いている。その階段の途中に扉があるのだがその扉には決して触れるな。扉の中には異様な生物が入れられているらしいからな。そして階段は1番上まで登り、すぐにある扉に入るんだ。そこにテルヒの部屋がある。」

 

「助言ありがとう、オスカーさん。」

 

オスカーの助言を聞いたユニは隣の部屋の入り口へと体を向ける。彼女に続いて霊夢達も部屋の入り口に体を向ける。と、悠岐がオスカーに言う。

 

「ところでオスカー、お前は他の幻獣とは全く異なる生物みたいだが・・・お前は一体何の種族の生物なんだ?」

 

「・・・俺はモササウルスという恐竜だ。」

 

「恐竜!?」

 

オスカーの言葉に魔理沙と霊夢が声を上げる。そんな彼女達とは別に楓がオスカーに言う。

 

「そんな昔からいたんだな・・・。」

 

「まぁな。さ、行け。」

 

その言葉を聞いてユニ達は隣の部屋へと走っていった。それを見届けたオスカーは水の中に潜っていった。




水中の幻獣達をオスカーの助けによって抜けることに成功したユニ達は先の部屋へと向かう。そこで待ち受けるのは果たして!?
次作もお楽しみに!


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第163話 近づく死

オスカーの助けを借りてユニ達は次の部屋へと急ぐ。


オスカーの部屋と後にし、隣の部屋に入るとそこは巨大な空間で天井が100メートル以上の高さがあり、オスカーの言う通り、螺旋階段の所々に扉がある。そして床には7、8メートルのほどの大きな穴に細い網が敷いてある。部屋に入ってすぐに魔理沙が辺りを見回して言う。

 

「ここが、城の中心・・・。」

 

「それにしても広いし天井まで高すぎるだろ。一体何のために作ったんだ?」

 

「恐らくだけどここを作ることによって迷わないようにするためだと思うよ。ほら見てよ、所々大きさの違う扉があるでしょ?」

 

指を指して悠岐と魔理沙に色々と教える琥珀。と、九十九が天井を凝視する。彼女に気づいた楓が声をかける。

 

「九十九、何かいるのか?」

 

「・・・一番上から、テルヒの気配がする。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、ユニ達は一斉に天井の方を見る。しかしあまりにも高すぎるため、何があるのかははっきり見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッハッハッ、よくぞここまで来たな表の世界の選ばれし者達よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が空間全体に響き渡る。そのまま瞬間、ユニ達は戦闘態勢に入りって辺りを警戒する。そんな中、九十九が叫ぶ。

 

「テルヒ!!どこにいる!!」

 

「今の声がテルヒか!!」

 

彼女に続いて影裏が口を開いた。そんな中、姿を表さずにテルヒが再び言う。

 

「よくぞオスカー達率いる水の幻獣達の巣を乗り越えここまで辿り着いた。その無謀な勇気だけは褒めてやろう。だがお前達はここで終わりだ。エリュに会うこともなく、挙げ句の果ては私にも会うことも出来ない。」

 

「何故そんなことが言える!」

 

どこにいるのか分からない声に百々が言う。彼の言葉を聞いてテルヒは言った。

 

「何故なら、お前達はここで溺死するのだからな!!」

 

その声が響いた時だった。突如ユニ達の通ってきた通路の扉が閉まったのだ。

 

「なっ!?」

 

「閉められた!?」

 

咄嗟に閉まった扉へ向かい、開けようとする霊夢と暁。しかし扉は頑丈な上、シャッターのような構造になっているため開けられなかった。

 

「クソッ、開かないわよ!?」

 

「クッ、何故でしょう・・・。これもエリュシオンの力だと言うのですか・・・!!」

 

二人に続いて魔理沙、悠岐、楓、百々、九十九、影裏も扉を開けようとする。しかし8人がかりでやっても扉はピクリとも動かない。と、そんなユニ達にテルヒが言う。

 

「まぁせいぜい抗ってみせてみろ。ハッハッハッ!」

 

その時だった。突如城がゴゴゴと音を鳴らし始めた。それを聞いたユニが口を開く。

 

「ち、ちょっと!城が揺れ始めたわよ!!?」

 

慌てるユニとは別に悠岐は耳を澄まして音をよく聞く。と、その瞬間、悠岐の顔が青くなり始めた。そんな彼を見た魔理沙が口を開く。

 

「どうしたんたぜ?悠岐。」

 

「水だ・・・。下から大量の水が押し寄せてきてるぞ!!」

 

「「「「!!!??」」」」

 

彼の言葉を聞いてユニ達は目を見開いた。そんなユニ達に悠岐が大きな螺旋階段を指差して言う。

 

「みんな上に上がるぞ!!大量の水がここに押し寄せてきてる!!もしかしたらこの部屋が浸水するぐらいの量だ・・・。」

 

「何ですって!?」

 

「あの年層ババァはこの城を沈めるつもりかい!!?」

 

「とにかく悠岐の言う通り、上がるぞ!!」

 

悠岐の言葉を聞いて慌てる霊夢と琥珀にすぐに声をかける魔理沙。ユニ達は長い長い階段を全速力で上がり始める。すると、大きな穴の網の隙間からボコボコと音を立てながら大量の水が入り込み始めた。

 

「マジかよ・・・。本気で自分の城を浸水させるつもりだ!!」

 

「とにかく、上を目指すぞ!」

 

驚く影裏に楓が言う。水の溜まるスピードは早く、ユニ達が先程いた地面をすぐに埋め尽くすほどにまで浸水した。それを見た暁が下を見て走りながら言う。

 

「もうあんなに浸水するなんて・・・!かなり浸水するスピードが速いですね。」

 

「とにかく今は走り続けるしかないわね。」

 

彼の一言にユニが口を開く。と、楓が上を見ながら言う。

 

「・・・上に行けばテルヒの元へ行ける、だがそう簡単には行かせてはくれない筈だ。」

 

そう言うと彼女は後ろを見て走りながら言った。

 

「ユニ、霊夢、魔理沙、琥珀!お前達は先に上に行ってくれないか?そして扉を開けてほしい。」

 

「え、私達が?」

 

「いい案だね、楓ちゃん。それじゃあ僕らは先に上に行こうか。」

 

そう言うと琥珀はフワッと飛び上がり、上へと目指し始めた。

 

「んじゃ私達も行くしかないぜ!」

 

彼に続いて魔理沙も箒に跨り、上を目指す。彼女に続いて霊夢とユニも飛び上がった。その瞬間に影裏が言った。

 

「俺達は頑張って上に向かって階段を登っていくしかないな。」

 

「あぁ、そうだな。残りの力はエリュシオンやテルヒとの戦いにとっておかないとな。」

 

彼に続いて悠岐が言う。そして6人は上へと目指して再び走り始める。と、下を見て何かに気づいた九十九が顔を青ざめて言った。

 

「・・・ヤバい、幻獣が来たぞ。」

 

彼女の言葉を聞いて5人は走りながら下を覗く。浸水し続ける水の中からゆっくりと巨大なワニが姿を現し、階段を登り始めた。

 

「マジかよ・・・こりゃ急がないとやべぇぞ!」

 

百々の言葉を聞いた5人はペースを少し上げて階段を登り始める。その時、浸水する水から何が飛び出す音が聞こえたかと思うと階段を登る百々達に向かって巨大なピラニアが口を大きく開けて飛び上がってきていたのだ。

 

「みんな飛べ!!」

 

楓の一言で6人は一斉に飛び上がり、ピラニアのダイブを間一髪で避けた。6人を捕まえられなかったピラニアは階段の一部を破壊し、再び水の中へと潜っていった。

 

「あ、危ねぇ。あのババァ、本気で私達を殺しにきてる!!」

 

「こりゃあマズイな。早く上まで行ってテルヒの元へ行かなきゃ俺達全員死ぬぞ!」

 

九十九と悠岐が話している中、影裏が後ろを見て言う。

 

「ここで立ち話をしている暇は無さそうだな。一刻も早く上に行かねぇと。」

 

彼が言った瞬間、上から爆発音が辺りに響いたかと思うと何かが上から落ちてきて水の中に落ちた。

 

「な、なんだ急に!?」

 

「上で何か起こってるかもしれません。影裏の言う通り、急ぎましょう。」

 

驚く楓の後に暁が冷静に言う。彼の一言を聞いて6人は再び階段を登る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、なんて数だ!」

 

場面は変わってユニ、霊夢、魔理沙、琥珀組。4人は最上階へ目指している途中で無数の巨大なコウモリと鷹と戦っていた。

 

「どうやら下にもいるみたいね。私達を先に行かせない気満々ね。」

 

そう言いながらユニはコウモリや鷹の攻撃を避けながら上へと向かっていく。霊夢と魔理沙はある程度無駄な霊力を消費せずにコウモリや鷹を倒していく。と、琥珀が上を指差して言う。

 

「見て!最上階だ。」

 

彼の言葉を聞いて3人は目を合わせる。そして琥珀の進む最上階へと降り立つ。そこには少し広々とした空間が広がっており、正面には大きな扉があった。それを見た霊夢が口を開く。

 

「あそこを開けるわよ!」

 

そう言って4人は扉の前まで行き、扉を開けようとする。しかし4人がいくら頑張っても扉は開きそうになかった。と、琥珀があるものを見つけて言う。

 

「どうやらこの扉はパスワードを打たないと開かないらしいね。」

 

「パスワード!?めんどくさいなぁ。」

 

魔理沙がそう言った時だった。後ろからバサバサと音がしたかと思うと無数のコウモリと鷹が4人を睨みつけていた。それを見たユニが口を開く。

 

「・・・どうやら簡単には行かせてくれなさそうね。」

 

「やるしかないわね。魔理沙、ユニ、準備はいい?」

 

「勿論!」

 

「準備万端だぜ!」

 

「よし、琥珀はパスワードを解くのをお願いするわ。」

 

「いいよ、任せて。」

 

そう言ってユニ、霊夢、魔理沙は幻獣達と対峙し、琥珀はパスワードを解き始める。

 

「えぇっと、3桁か。1000通りのパターンがあるから面倒だね。まずは000でやってみよっと。」

 

そう言って彼は数字を000と表記してみる。その瞬間、ブブーと音が鳴る。

 

「あ、違うか。流石にこれはシンプルすぎたね。それじゃあもう少し考えながらやってみるか。」

 

琥珀がパスワードを解く中、3人は必死にコウモリと鷹の幻獣と戦っていた。

 

「封魔陣!」

 

「魔符ミルキーウェイ!」

 

「アームストライク!」

 

霊夢、魔理沙は幻獣達に自身の弾幕を放ち、ユニはアームストライクで取り出した拳銃を用いて幻獣達に応戦する。と、魔理沙が弾幕を放ちながら口を開く。

 

「あぁもう、キリがないぜ!」

 

「本当ね、何頭いるのよ!」

 

彼女に続いて霊夢も言う。と、ユニが幻獣達に発泡しながら言う。

 

「九十九ちゃん達が来るまでの辛抱って言いたいけれどこれじゃあ流石にキツいわね。こうなったら!」

 

そう言うとユニは懐からスペルカードを取り出して発動する。

 

「呼符コールザエニー。力を貸して、巨人さん!」

 

そう言った瞬間、ユニの隣に巨大な空間が現れたかと思うとその中から全身黒で顔には大きな一つの目の巨人が姿を現した。それを見た霊夢が驚きの声を上げる。

 

「なっ、巨人!?」

 

「キュクロプスよ、私の力で呼び寄せたの。お願い、私達に力を貸して!」

 

ユニの言葉を聞いた巨人、キュクロプスはコクリと頷くと部屋全体に響き渡るような雄叫びをあげるとそのまま幻獣達の元へ走っていき、殴りかかった。それを見た琥珀が口を開く。

 

「うわぁ、あれがキュクロプスかぁ。ユニちゃんはすごいのを呼び寄せるなぁ。でも、あれなら時間を稼げそうだね。」

 

そう言うと琥珀は再び作業に取り掛かる。ユニ、霊夢、魔理沙、そしてキュクロプスで幻獣達を相手にするが一向に数が減らない。それどころか数が増えてきていると3人は察するが口にはしない。そんな中、霊夢が琥珀に言う。

 

「琥珀!まだ開かないの!?」

 

「ちょっと待ってくれ!1000通りあるんだからそんな早くは開かないよ。」

 

「クソッ、数が増え続けてて面倒だぜ!一体エリュシオンは何体の幻獣を飼ってるんだ!!これじゃあ百々達が来る前に私達がやられちゃうぜ!」

 

「ん、魔理沙今なんて言った?」

 

突如琥珀が魔理沙に言う。

 

「なんてって、百々達が来る前にやられるって言ったんだぜ!」

 

「それだよ魔理沙!ナイス!」

 

「え、私なんかやったっけ?」

 

戸惑いながら戦う魔理沙とは別に琥珀は3桁の数字を1、0、0に揃えた。その瞬間、カチッという音と共に大扉の扉が開いた。その瞬間、琥珀が口を開いた。

 

「開いたよ!」

 

「本当!?」

 

「でかしたぜ琥珀!」

 

ユニと魔理沙が言った時だった。ユニ達と夢中で戦っていた幻獣達の目線が一斉に琥珀へと向いた。その瞬間、霊夢が彼に言う。

 

「琥珀、急いで!!」

 

彼女の言葉を聞いた琥珀は咄嗟に扉の奥へと入る。そんな彼を見た幻獣達は一斉に扉の方へと向かい、扉を覆い隠すかのように固まり始めた。それを見たユニが口を開いた。

 

「おかしいわ・・・。扉が開いたってのに幻獣達が琥珀君を襲おうとしない。」

 

「え?」

 

彼女の言葉を聞いた霊夢が反応する。そんな彼女に何かを察したユニが目を見開きながら再び口を開いた。

 

「もしかしてこの幻獣達、琥珀君は先へ行かせても私達を先へ行かせないつもり!?」

 

「何ですって!?」

 

「マジかよ!それじゃあアイツだけ行けても私達が行けなくなるってのか!」

 

「琥珀君一人で行かせるなんて出来ないわ。どうにかして私達も行かなきゃ!」

 

彼女がそう言った時だった。突如3人の背後から紫色のレーザーが放たれ、纏まる幻獣達に命中した。それを見たユニ達は背後を見る。そこには九十九を先頭に楓達が立っていた。

 

「なんとか来れましたね。」

 

「みんな!無事に来れたのね!」

 

「事情はなんとなく把握した。アイツらをどかすぞ!」

 

暁とユニが話す中、影裏が纏まる幻獣達に銃口を向けて言った。彼の言葉に続いてユニ達は弾幕を放ったり幻獣達の体の一部を斬り落としながら纏まる幻獣達を退けていく。そしてついに纏まっていた数体の幻獣達をどけることに成功した。

 

「よし、行くぞ!」

 

楓が言った時だった。突如空からやってきたコウモリの幻獣の1匹がキュクロプスの背中に飛び掛かった。飛びかかられた勢いでキュクロプスは体勢を崩し、倒れてしまう。それに続いて後からやってきたワニやピラニア、鷹の幻獣達が一斉にキュクロプスに襲いかかる。それを見たユニが思わず声を上げる。

 

「あっ、キュクロプスが!!」

 

「待てユニ!アイツが今幻獣達を惹きつけてくれてるんだ。俺達は先に行かなきゃならねぇ。アイツの死を無駄にするな。」

 

「・・・うん、分かった。ごめんなさい、助けられなくて・・・。」

 

そう言ったユニは喰われていくキュクロプスを後に扉の奥へと走って行った。




迫り来る水と幻獣達の妨害を避けて先へ進むことができたユニ達。その先に待ち受けているのは果たして!?
次作もお楽しみに!


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第164話 幻獣の王

キュクロプスを犠牲にしてしまったものの、先へ進むことに成功したユニ達。


扉の中には長い通路があり、一直線上にはまた一つの扉があった。ユニ達は通路を無言で歩く。と、魔理沙が口を開いた。

 

「この先に、エリュシオンがいるのか・・・。」

 

「いいや、まだだ。奴の前にテルヒがいる。いるとするならエリュシオンより先にアイツだ。」

 

彼女の言葉に九十九が言う。と、暁がユニを見て唐突に口を開いた。

 

「ユニさん、大丈夫ですか?」

 

「う、うん。大丈夫よ・・・。」

 

「キュクロプスを犠牲にしてしまったこと、まだ心残りあるのか?」

 

影裏の言葉にユニは黙って頷く。そんな彼女に楓が口を開いた。

 

「戦いに犠牲はつきものなんだ。私だってそうだ。いつも誰かが犠牲になってしまう・・・。」

 

そう言う彼女の刀を持つ右手には力が込められていた。それを見た百々は無言で彼女を見る。と、霊夢が口を開いた。

 

「ここにテルヒかエリュシオンのどちらかがいるのね。みんな、気を引き締めていくわよ。」

 

「うん。」

 

「分かってるさ。」

 

彼女に続いて九十九と悠岐が言った。そして霊夢がゆっくりと扉を開ける。扉を開けるとそこには広々とした何もない空間が広がっていた。真ん中にいる者以外は。

 

「ククク、よくぞここまで辿り着いたな。待っていたぞ。」

 

その声がする真ん中をユニ達は同時に見つめる。そこには体長6m、体高2mの全身青い毛で覆われた巨大な狼が立っていた。それを見た悠岐が口を開く。

 

「アイツがテルヒか・・・。」

 

「よぉテルヒ。久しぶりだな。」

 

悠岐に続いて百々がテルヒに言う。それを聞いたテルヒがニヤリと笑みを浮かべて再び言う。

 

「久しぶりだな、百々に九十九、そして幻想郷の守護者よ。」

 

「いざ見てみると大きいわね。」

 

「えぇ、久しぶり。まぁ、大きいのは仕方ない。だって幻獣だもの。」

 

九十九が言った後、霊夢が目を細めてテルヒを見ながら言う。

 

「それにしてもあのワニやオスカー、コウモリ達と比べたらだいぶ小さいわね。」

 

「姉さん、小さいものは決まって速いものです。気をつけましょう。」

 

「えぇ、分かってるわ。」

 

彼女に軽く忠告する暁。そんな中、テルヒがユニ達に言う。

 

「お前達の目的は分かっている。エリュの計画の阻止、だ。エリュは今ルシファーと交戦している。アイツの邪魔はこの幻獣の王である私が許さぬ。」

 

「ルシファーと?・・・多分ルシファーでも勝てないだろうな。」

 

「ルシファーの実力がどれくらいなのかは私が分かってる。エリュシオンに勝てないってことぐらいもな。コイツは多分、時間稼ぎのつもりだ。」

 

「まぁさっきアイツが言った通り、そのようらしいな。」

 

「ボク達とルシファーが合流しないようにのだね。」

 

「早くルシファーと合流するためにもコイツをさっさとやっつけようぜ!」

 

「あぁ、勿論だ。」

 

九十九、楓、影裏、琥珀、魔理沙、悠岐が色々と話し、戦闘態勢に入った時だった。5人を遮るかのように百々が目の前に立った。そして言う。

 

「悪い、みんな。ここは俺にやらせてくれ。」

 

「百々、どういうことだ?」

 

「ここはみんなでやったほうが効率がいい。」

 

「もっ、百々!!ここは私に任せてくれ!・・・みんなの仇を、討ちたいんだ。」

 

「サンキューな、悠岐に楓。九十九、お前の能力はここで使うべきじゃない。皆のためにも、ここは耐えてくれ。」

 

「・・・ヤバくなったら、私も参加するからね。」

 

悠岐、楓、九十九の言葉を聞いて百々は納得させ、1人テルヒの元へ向かう。と、ユニが魔理沙に言う。

 

「百々君、大丈夫かなぁ。相手は幻獣の中でも特にずば抜けた力の持ち主よ?勝ち目あるのかしら・・・。」

 

「なーに心配してるんだ?百々なら大丈夫だぜ!なんせアイツだからな!」

 

「・・・ちょっとよく分からないわね。」

 

そう話す2人とは別に百々はテルヒの元へ行き、言う。

 

「待たせたな、テルヒ。」

 

「仲間に遺言を残してきたのか?いいや、死なぬお前に遺言など必要ないか。では始めよう。」

 

そう言うとテルヒは百々との距離を取りながら彼の周りを歩き始めた。

 

「様子見か?」

 

「どうした?来ないのか?この距離なら私はお前を仕留められるぞ。」

 

「俺の能力を忘れたのか?何をやっても仕留めることなんて、できねぇよ。」

 

「仕留められるさ。」

 

そう言うとテルヒは突然壁に向かって走り出したかと思うとそのまま壁を登って壁を走り始めた。

 

「あの巨大で壁を走れるの!?」

 

「嘘でしょ!?」

 

「まるでシフですね。」

 

「それに中々速いな。他の幻獣達が鈍く感じるぜ。」

 

驚くユニと霊夢とは別に暁と悠岐は落ち着いてテルヒの行動を見る。そんな中、百々が口を開いた。

 

「壁走りか?甘い甘い!再現、いでよ御柱!!」

 

そう言った瞬間、百々の隣に大きな柱が現れ、そのままテルヒ目掛けて投げつけた。。それを見たテルヒが少し驚いたような顔をして言った。

 

「ほう、八坂神奈子の能力か。既にエリュから情報は得ている。」

 

そう言うとテルヒは柱の間を器用に避けた。それを見た楓が驚きながら言う。

 

「あの巨大で避けた!?」

 

「チィッ!本人にもっと使い方学んどくべきだったか!」

 

柱を擦り向けたテルヒは一瞬にして百々の前に移動し、爪を向ける。それを見た影裏が声を上げる。

 

「早い!あのでかい体でなんてスピードだ!!」

 

「再現、硬質化!」

 

「能力だけでなく物質も再現出来るとは・・・。まるで、トランス能力ですね。」

 

暁が呟く中、テルヒは笑みを浮かべて百々に言った。

 

「切り裂くと思ったか?」

 

そう言うと彼はペッと百々の顔に唾を吐いた。

 

「だぁっ!?くっせぇ!!」

 

「バカ百々!!唾くらいで硬質化を解いちゃだめよ!」

 

「っ!しまっ・・・。」

 

霊夢が警告した時には手遅れだった。気づいた時には既にテルヒの爪は百々の右腕をとらえた。」

 

「グッ、ガァああぁ!!」

 

勢いよく振り下ろされた爪は、百々の右手をそのまま彼から切り離した。切り離された右腕を開いている左手で押さえながら百々は口を開く。

 

「ど、どうにか右手だけに出来たか・・・。」

 

「叫び声を上げている場合か?」

 

そう言うとテルヒは尻尾で百々の足をかけ、転ばせた。

 

「うおっ、危ねぇ!」

 

転んだ彼にテルヒが再び口を開いた。

 

「折角だ。アルカディアと同じ運命を歩ませてやろう。」

 

そう言うとテルヒは転んだ百々の頭を押さえつけ、立てないようにした。そんな状態にされた百々が言った。

 

「おいおいおい!このまま頭を潰すつもりか!?」

 

「頭を潰すのではない。」

 

そう言うと彼は大きな口を開け、彼の左肩に近付ける。それを見て何かを察したユニが口を開く。

 

「まっ、まさか!?」

 

「待て待て待て!それはまずいって!!」

 

百々の言葉に耳を傾けることなくテルヒは彼の左肩に噛みついた。その瞬間、ゴキッという音と共に血が飛び散った。

 

「・・・テルヒ、どうだ?ヒヒイロカネは美味いか?美味いよなぁ、なんせ血が飛び散るほどだからなぁ!」

 

「チッ、やはりそうであったか。まぁ良い。別の策も考えている。」

 

少し悔しそうに言うテルヒは百々の左肩に噛みついたまま彼の肩を捻り始めた。それを見た楓が口を開いた。

 

「ヤバくないか!?右腕をやられたってのに今度は左腕が!!」

 

「デスロールはヤメロォ!再現、ハリネズミ!!」

 

ヒヒイロカネに変化している百々の左腕が鋭く伸び、テルヒへと向かった。

 

「チッ。」

 

咄嗟に下がったテルヒだが避けきれなかった針が顔の数カ所に刺さり、そこから血が垂れ始める。と、影裏が言う。

 

「危ないところだったな。もし遅かったら間違いなく左腕もやられてたぞ。」

 

「あー、死ぬかと思った・・・。こっちとら物質再現は慣れてないんだよ。」

 

ヒヒイロカネの棘を戻しながら百々はボヤく。そんな彼とは別にテルヒは垂れる自分の血を舐めながら言う。

 

「ハリネズミの針を使うのは大した考えだ、私も油断したよ。だが、今のお前の状態は中々危険なものだな。」

 

ニヤリと笑みを浮かべて言うテルヒだが彼も棘が刺さった箇所を気にしており、少し痛そうな表情を浮かべている。そんな彼に百々が再び口を開く。

 

「おうよ、右腕の損傷が右手だけになったのはマシだがドバドバ血が出てるからな。長引けば出血死だ。」

 

「お前の能力は面倒だ。だからそれに対策せねばならん。さぁ百々よ、この程度まだ序の口だろう?もっと私を楽しませてくれ!」




お互いに傷を覆ってもなお引かない百々とテルヒの戦い。
百々に勝ち目はあるのか!?
次作もお楽しみに!


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第165話 弱点

テルヒの部屋へと入ったユニ達はテルヒと対峙し、百々は彼との戦いに挑む。


まるで棘が刺さっていないかのようにテルヒは平然と百々に近付いていく。そんなテルヒに驚く表情も見せずに百々が口を開く。

 

「面倒だし、ぶっちゃけ使いにくいぞこの能力。どうせならもっとシンプルな能力が欲しかったな。」

 

そう言いながら百々もまた、テルヒへと近づいていく。と、テルヒが百々を見たまま言う。

 

「さぁ、百々よ。次は何を再現してくれる?」

 

「うーん、そうだなぁ・・・。なら、こんなのはどうだ?再現、白狼天狗。」

 

「白狼天狗か。裏の世界で一体何匹狩ったことやら。」

 

「まだまだ重ねるぜ?追加再現、鴉天狗。」

 

「ほう、重ねられるのか。それは初耳だな。だが、それで私に勝てると思ったらそうでもないぞ?」

 

2人が話している中、霊夢と楓が冷や汗をかきながら言う。

 

「アイツ、初耳って言ってるのになんで笑顔でいられるのよ!?あの狼は何を考えているの?」

 

「私もそれは思う。アイツほど何を考えてるのか分からないヤツは初めてだ。これはきっと厳しい戦いになる。」

 

二人が話している中、百々が急に走り出し、テルヒに言った。

 

「行くぜ、準備はいいか?」

 

「ククク、来い。」

 

そう言って自分に向かって走ってくる百々を見てテルヒは歩くのをやめ、止まった。

 

「ドラァッ!」

 

無事であり、ヒヒイロカネへと変化している左腕を大きく振りかぶり、テルヒへと向けて放った。彼の放った攻撃はテルヒ顔に命中し、折れたテルヒの歯が一本血と共に吹っ飛ぶ。それを見た魔理沙が驚きながら言った。

 

「なっ、アイツ、どうして百々の攻撃を避けなかったんだ!?」

 

驚く彼女とは別に百々はテルヒに向かって言う。

 

「さぁ、来いよ。首輪付けて飼い慣らしてりゃる!!」

 

「・・・噛んだ?」

 

「噛みましたね。」

 

「締まらないねぇ・・・。」

 

噛んでしまった百々を見て呆れてしまう九十九と暁と琥珀。と、テルヒが不気味な笑い声をあげて言う。

 

「クククククク、それは一体何割の力を使った?」

 

「何割、か・・・。なぁ、何割って何だ?」

 

言葉の意味を理解できない彼を見てテルヒの顔に浮かんでいた不気味な表情から呆れた表情に変わり、ため息をついた。その後に口を開く。

 

「やれやれ、聞いた私が愚かだったようだ。エリュからあらかじめ聞いておいたのだが、案外弱くなったな、百々。その程度で私に勝つつもりか?」

 

そう言うとテルヒは頑張って考える百々に背を向け、後ろ足で百々に蹴りを入れた。

 

「あだっ!てめぇ、せっかく人が頭捻ってる時に攻撃しやがって!」

 

「・・・ごめん、多分割合のことが分かってないんだと思うの。」

 

九十九がテルヒにそっと言った。それを聞いたテルヒは少し残念そうに言った。

 

「エリュの言う通り、お前は知能不足のようだな。ただ力任せに私に勝とうなど、勝負を甘く見ているな?」

 

「あぁそうだよ!頭脳労働は九十九担当だからな!俺はお前をぶっ飛ばすだけだ!」

 

「やれやれ、困ったものだ。」

 

そう言うとテルヒは飛び上がり、百々の背後に移動する。

 

「っと、背後は取らせないぞ。」

 

背後を取られないように鴉天狗の翼を使い、空へと逃げる百々。

 

「天狗狩りは得意だ!」

 

そう言うとテルヒは逃げようとする百々に向かって飛び上がり、彼の足に噛みついた。

 

「こちとら、天狗じゃなくて鬼なんだよ!再現、ビックフット!」

 

噛みつかれた足が突如として大きくなった。

 

「ゴリラか!ならこうすればよい!」

 

そう言うとテルヒは体を大きく揺すり始め、その勢いでさらに飛び上がって百々の小さな背中に飛び乗った。

 

「ビックフットはゴリラじゃなくて雪男だよ〜。・・・まぁ聞こえないか。」

 

「あんなデカい図体して百々の背中に飛び乗れるのかよ!!?」

 

ボソッと呟く琥珀とは別にテルヒの行動を見て驚く悠岐。そんな中、百々がテルヒに言う。

 

「翼を引きちぎりに来たか!させるかよ、再現解除!」

 

「・・・待て百々!狙いは翼じゃない!!」

 

「え、まじ?」

 

「その通りだ。わざわざ解除してくれるとはありがたい。」

 

影裏が急いで言うも一歩遅く、テルヒは落ちていく百々の首元に噛みつき、地面に叩きつけた。

 

「百々君!!」

 

「狙いは、首か・・・。だい、じょうぶだユニ。俺は死なねぇからな。」

 

彼を心配するユニに安心させるように言う百々。そんな中、テルヒが彼に近付きながら言う。

 

「愚かだな、百々。昔のお前ならこれくらいは分かっていたはずだ。」

 

そう言うとテルヒは百々の傷口である左肩を右脚で踏みつけた。

 

「グッ・・・。」

 

「今のお前の実力を知ればエリュはさぞかしがっかりするだろうな。この程度でやられるお前を、エリュならば目をつけないだろう。」

 

そう話しながらテルヒは傷口を踏む力を徐々に強くしていく。そんな彼に百々が言う。

 

「テ、テルヒ・・・。お前は一つ忘れてる・・・。」

 

「・・・?」

 

「俺は、あん時とは知識量が違うんだよ!!再現、天邪鬼『鬼人正邪』」

 

「ぬ、させぬぞ!!」

 

百々が力を発揮しようとする前にテルヒは咄嗟にもう片方の足で彼の顔を踏みつけた。踏みつけてテルヒはふとした、違和感を覚えた。先程まであった右脚の感覚が無くなっているのだ。

 

「これは・・・?」

 

「悪いな、テルヒ。お前のケガと俺のケガ、『ひっくり返し』たぜ?」

 

顔から何か細いものに突き刺されたような怪我をした百々がそう言いながら笑った。そんな彼とは別にテルヒは後退し、冷静に口を開いた。

 

「面倒だな。これでは私が不利になるではないか。」

 

そう言うとテルヒは頭をグルグルと回転させ始めた。すると、頭の中からコロンと音を立てて地面に何か落ちた。

 

「な、なんじゃありゃ・・・?」

 

「・・・よく、分からない。」

 

落ちたものを見て首を傾げる魔理沙と九十九。そんな二人とは別にテルヒがクスクスと笑いながら言った。

 

「エリュが予備に、とくれたのだ。」

 

そう言うとテルヒは地面に落ちた何かを食べ始めた。

 

「・・・もしかして回復薬か?」

 

「あれはまさか!!?」

 

「知っているのか雷電!!」

 

百々、楓、暁が言った後にテルヒがゆっくりと口を開く。

 

「即時回復の薬。これを服用すればどんな重傷を負ってもすぐに完治することが出来る。」

 

「・・・啓介がくれたのと同じだ。確かあれは少しだが服用した者を強化させる作用もあったはず・・・。」

 

「何ですって!?」

 

「おいおいおい、せっかく『ひっくり返した』のにやり直しか!?もういっそのこと戦いへのやる気を『ひっくり返す』か?」

 

楓の一言を聞いて驚く霊夢とは別にテルヒは足を構えて言う。

 

「生憎だが我々幻獣達の意思は全てエリュによって管理されている。エリュを倒さねばその能力は通用せんぞ!」

 

そう言うとテルヒは百々に向かって走り出した。

 

「さっきより速いぜ!?」

 

「『ひっくり返・・・っと、ヤベェ間に合わない!」

 

先程より速くなったテルヒを見て驚く魔理沙。ひっくり返そうとした百々であるが既にテルヒは彼の目の前まで迫っており、そのままテルヒは百々に突進を食らわした。突進を食らった百々は勢いよく壁に叩きつけられる。

 

「グホッ・・・。さっ、きよりも威力が、上がってる。」

 

「休んでいる暇はないぞ!」

 

再びテルヒは百々の元へ走っていく。

 

「ちっ!居場所を『ひっくり返す』!!」

 

「チッ。」

 

急ブレーキをかけ、テルヒは百々のいる方へと顔を向ける。

 

「・・・再現解除。」

 

「少しだけだが強化された私から逃れるとは大したものだ。」

 

「事前に、お前の話を聞いておいてよかった。」

 

「・・・何を言っている?」

 

突然不可解なことを言い出した百々にテルヒは目を細めて言った。そんな彼に百々が再び言う。

 

「九十九から話は聞いていたんだよ。・・・本当は使いたくなかったんだが、仕方ないか。」

 

百々はそう言って懐から1本のペンを取り出した。それは、一般的に『Gペン』と呼ばれるものだ。」

 

「まさか・・・!!?」

 

そのGペンを見た瞬間、テルヒの表情が変わった。

 

「付喪再現は、道具に宿った記憶を再現する。九十九からお前がこのじーぺんの持ち主に手も足も出なかったことは聞いてんだよ!」

 

「チッ・・・。」

 

舌打ちをするテルヒの顔に汗が流れており、どこか焦っているような感じになっていた。それを見た影裏が口を開いた。

 

「あの野郎、さっきまであんなに威勢を張っていたのに急に焦り始めたぞ?一体どういことなんだ?」

 

「事情は後で説明するぜ影裏。さぁ、行くぞテルヒ。反撃開始だ!」

 

そう言うと百々の持つGペンが宿った記憶を頼りに動き、どんどん仲間を描いていく。

 

「・・・こんな時のエリュだったな。」

 

そう言ってテルヒは一呼吸置くと百々に向かって走り始めた。

 

「ブロック展開!」

 

「チッ!」

 

目の前に展開されたブロックをテルヒはすかさずに避ける。

 

「そこだ!いけ重力バリア!」

 

「ぐっ!?」

 

百々によって展開された重力バリアに引っ掛かり、テルヒの動きが鈍くなった。

 

「これがGペンの持ち主の力・・・。」

 

「君ならやれると思ったよ、百々君。」

 

ユニと琥珀が彼の戦いを見て言葉を発する中、百々は立て続けに攻撃を仕掛ける。

 

「落雷よ!」

 

「ぐあっ!!」

 

重力バリアの中では思うように身動きが取れずにテルヒは百々の放った落雷を食らう。

 

「かっちょいいぜ百々!」

 

「本当ですね!」

 

魔理沙と暁も思わず笑顔を浮かべる。

 

「追撃だ、いけターバンズ!!」

 

Gペンより描き出された少年達がテルヒへ向かい、攻撃を仕掛ける。

 

「・・・。」

 

何も言葉を発さずにテルヒは彼の放った攻撃を受ける。

 

「・・・テルヒ、が何もしない?」

 

「今がチャンスだ!いけ、百々!!」

 

少し警戒して様子を伺う九十九と百々に言葉を投げかける楓。彼女の言葉を聞いて百々が口を開いた。

 

「・・・あぁ。籠よ、あの者を捕らえろ!」

 

少年達から放たれた籠はテルヒを捕らえ、そのままテルヒは籠に閉じ込められた。

 

「・・・諦めたのか?」

 

「随分とすんなりだねぇ、テルヒくん。」

 

これまた様子を伺う悠岐とテルヒを捕らえた籠の目の前に移動した琥珀がそう声をかける。それをスルーしてテルヒが口を開いた。

 

「フフフ、見事なものよ百々。」

 

そう言うとテルヒは籠の中で寝る体勢に入った。その瞬間、ガチャリと何処からか音がした。

 

「誰!」

 

「今の音は?」

 

咄嗟に音のしたほうを警戒する九十九と霊夢。そんな中、テルヒがある方向へ顔を向けて言った。

 

「行け、もう私に戦う理由などない。」

 

「先に行くための扉が空いたのか!」

 

「そうみたいですね。」

 

「そうか、テルヒを倒したから先へ行けるようになったのか。」

 

悠岐、暁、影裏が話している中、百々がテルヒのいる籠の前に行き、言う。

 

「・・・テルヒ、そこで待ってろよ。エリュシオンを倒して、お前に首輪をつけてやるからな。」

 

「フフフ、少しの気遣い感謝するぞ。だが一つ警告しておこう。」

 

「・・・何?」

 

彼の言葉を聞いて目を細める九十九。そんな彼女含め、部屋にいる全員にテルヒが言った。

 

「エリュは強いぞ、お前達の想像する何百倍もな。」

 

「何百も、か・・・。」

 

テルヒの一言でエリュシオンの底知れぬ強さを察する楓。そんな彼女とは別に百々と九十九が言う。

 

「分かってる。それでも、やらなきゃいけないんだ。世話になった俺がな。」

 

「その通り。私も親友が世話になったんだ。お礼参りくらいはしないとね。」

 

「覚悟はできているようだな、ならばこの先の道は行け。それと百々、お前に頼みがある。」

 

「なんだ?」

 

そう言ったものの、テルヒは百々に何かを言いたそうにしているが少し躊躇っている。そしてテルヒは決心したかのように表情を切り替えて言った。

 

「あの子に・・・あの子に会ってやってはくれないか?お前ならあの子が何処にいるか微かに覚えているはずだ。あの子は、お前のことを何十年、いや何百年も待っている。」

 

「・・・下、だよな。」

 

「あぁ、そうだ。あの子ならお前達をエリュの部屋まで案内してくれるはずだ。」

 

「あの子?」

 

「昔の知り合いだよ。分かった、任せろ。ただーーー」

 

ユニに軽く説明した百々はテルヒを捕らえていた籠を消した。

 

「!?」

 

「ちょ、何してるんだ百々!」

 

彼の行動に驚きの声を上げる悠岐と魔理沙。そんな二人を気にせず百々は再び口を開く。

 

「ーーーお前も一緒にこい。そんなアイツもその方が喜ぶ。」

 

「・・・私を助けるか。ククク、お前は昔から変わらないな、百々。」

 

「知らんな。敗者の命は勝者のもんだ。」

 

「まぁいいだろう。私もあの子のところまでなら同行しよう。ついて来い、あの子はこっちにいる。」

 

そう言うとテルヒは大きな身体を起こし、扉の空いた方向へゆっくりと歩き始めた。テルヒに続いてユニ達もその後を追う。

 

「・・・さて、パンドラボックスに希望は残っているかな?」

 

最後に残った琥珀がそう呟き、先行したみんなを追って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わって鋼鉄城の外。そこにはエリュシオンとの戦いで力尽きたルシファーの翼を掴み、引きずるエリュシオンが鋼鉄城を見ていた。そして口を開く。

 

「ありゃ、もうこんなところまで来ているのね。テルヒ、ゆっくり休んでいなさい。後は私が全てを終わらせるから。亡き息子達のために、そして私と百々が暮らせる世界に。」

 

そう言って彼女はルシファーの翼を掴んだまま飛び上がり、鋼鉄城へと戻っていった。




テルヒを倒すことに成功した百々はテルヒに連れられ、『あの子』のいる場所へ。
あの子の正体は一体・・・。
次作もお楽しみに!


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第166話 希望の少女

テルヒを倒し、下の階へ行きあの子の待つ場所へと向かうユニ達。


薄暗い空間で下へ続く階段を降りるテルヒとユニ達。と、魔理沙が霊夢に小さい声で言った。

 

「なぁ霊夢、私達はめられてないか?」

 

「はめられてる?どういうことなの?」

 

「なんか、そんな予感がするぜ。百々もアイツとの戦いで洗脳されたかもしれないだろ?」

 

「そうかもしれないけれど、私はそうは思わないわよ?なんとなくだけれど表情で分かるわ。」

 

「そうか〜?私はちょっと不安だぜ。」

 

「まぁいざって時こそよね。もしテルヒの言っている、『あの子』がやばい子だったら咄嗟に戦う。それでいいでしょ?」

 

「そうだな。そうしようぜ!」

 

そう言って二人はみんなの後を追う。そんな二人に部屋を最後に出た琥珀が言う。

 

「二人とも何かコソコソ話してたみたいだけれどどうかしたの?」

 

「魔理沙が嫌な予感がするって言ってるの。まぁエリュシオンの城だし、何かあってもおかしくないって。」

 

「なるほどね。あながち間違いではないと思うよ。けれどこれから行く場所に関しては問題ないよ。」

 

「どうしてそう言い切れるんだ?」

 

「何故かって?そんなの決まってるじゃないか。あの部屋にいる子は、『希望の少女』って言われてるからね。」

 

「決まってるじゃないかって言われても私達には分からないわよ。それに希望の少女?」

 

「行けば分かるよ。」

 

琥珀に言われるまま二人は下へと降りる。しばらくしてテルヒが扉の前で足を止め、ユニ達の方を見て言う。

 

「ここだ。」

 

扉はテルヒがギリギリ入れるサイズの高さで扉の上には何か文字が記されている。と、楓が口を開いた。

 

「なんだこの文字は・・・見たことがないぞ。」

 

「お前達には分からぬよ。」

 

そう彼女に言ったテルヒは扉をノックし、言った。

 

「私だ、お前に会わせたい奴を連れてきた。入るぞ。」

 

「はーい!」

 

テルヒの声を聞いて部屋の中から聞こえたのは幼い少女の声だった。その声が聞こえた瞬間、テルヒは扉をゆっくりと開ける。

 

「気をつけろよ、霊夢。」

 

「分かってるわ。」

 

霊夢と魔理沙は警戒してユニ達の後に続いて部屋の中に入る。

 

「な、ここは・・・。」

 

部屋に入った瞬間、ユニ達は驚きを隠さなかった。部屋の中には様々な形や色をした積み木に多くの本が本棚に収納されていたり、紫色のカーテンのあるベッドがある部屋、いわゆる子供部屋がそこにはあった。その真ん中で紫色の袖の長い服に金髪で頭には紫色のリボンのようなものをつけた一人の幼い少女が積み木を積みながらユニ達を見ていた。と、少女が突然声を発した。

 

「ち、ちょっとテルヒ!!その怪我どうしたんだドラ!?」

 

「ん?あぁ、これか?これはさっき気を緩めて階段から転んでしまったんだ。私としたことが情けないものだ、ハッハッハッ。」

 

「笑い事じゃないドラ!!全く、しょうがないドラね〜。」

 

そう言うと少女は部屋の隅にあった箱を持って行くと中から布のようなものを取り出すとそこに消毒液と書かれたビンの中身を染み込ませ、それをテルヒの傷口に塗り始めた。

 

(絶対転んであんな傷にはならないだろ・・・。)

 

ユニ達全員が心の中でそう思った。その間に少女はテルヒの傷口に優しく包帯を巻き終えていた。そして言う。

 

「よし、これで大丈夫ドラ。傷口にばいきんが入ってないみたいだったからとりあえず一安心ドラ。これからは気をつけるドラよ?」

 

「いつも悪いな。あ、そうだそうだ。お前に会わせたい奴がいるんだ、私の後ろを見てくれ。」

 

そう言うとテルヒは部屋の中に入り、部屋の前に立つユニ達の姿を見せた。それに続いてユニ達も部屋の中に入る。

 

「あ、どうもこんにちは〜。」

 

そう軽く挨拶するユニ。そんな彼女とは別に少女は目を輝かせていた。

 

「ほ、ほぉ・・・。こいつが、あの凶神の、城にいる、子かぁ・・。」

 

「・・・影裏?」

 

そう言う影裏の様子に九十九は何か異変を感じた。彼の顔はどこか嬉しそうな表情をしており、鼻息も荒くなっていた。と、少女がユニ達の元へ走って来た。

 

「さぁ、おいで!」

 

先頭にいたユニと悠岐を跳ね除けて影裏は走ってくる少女に手を差し伸べた。が少女は彼をスルーして後ろにいた百々に向かって、

 

「ドラ!!」

 

そう言って彼に飛びついた。

 

「うおっ!?」

 

「ノォォォォォォ!」

 

スルーされたショックで影裏は地面に膝をついた。そんな彼とは別に少女が百々にくっつきながら言った。

 

「久しぶりドラ百々!さぁ、私と遊ぶドラ。」

 

「え、ちょ、ちょっと待てパンドラ。俺達は今日は用事があって来たんだよ。」

 

「え、パンドラ?」

 

彼が少女の名前を言った瞬間、悠岐と楓が呆然となりながら言う。そんな二人にテルヒが少女パンドラを見ながら言う。

 

「あぁ、そういやお前達は知らないんだったな。コイツの名はパンドラ、エリュの娘だ。」

 

「そうなのか・・・ってちょっと待てテルヒ。お前今なんて言った?」

 

「ん?エリュの娘だって言ったが?」

 

「えええええええ!?」

 

九十九の言葉に再び言ったテルヒの一言を聞いてユニ達は驚きを隠さずに大きな声を上げた。そんな一同に百々が口を開いた。

 

「うん、まぁ色々事情があって娘になったんだ。」

 

「そうドラよ、お母さんは強くて優しいお母さんドラ!たまに厳しいこと言うけれど・・・。」

 

「エリュは家族が1番と言うからな。」

 

「そ、そうなのか・・・。」

 

3人が話しているのを見てユニ達は唖然となる。そんな中、暁が影裏に言った。

 

「そういえば影裏、どうしてパンドラを見て鼻息が荒くなってしまったんですか?」

 

「え?そ、そんな訳ないだろ!!俺がそんな風になるわけ・・・。」

 

「表情もどこか嬉しそうになってたな。もしかしてお前、ロリコンなのか・・・?」

 

「な、な、な、んな訳ねぇだろ!!」

 

暁、楓に問い詰められる影裏はどこか焦っていた。そんな彼を見てパンドラは百々から降りてテルヒの後ろに隠れ、小刻みに震え始めた。それを見たテルヒが口を開いた。

 

「お前、パンドラを狙っていたのか?そうとあれば私は容赦せぬぞ?」

 

「だからちげぇって言ってんだろ!!」

 

慌てて言う影裏とは別に霊夢は本棚を眺めながら言う。

 

「それにしてもすごい数の本ね。これらには何が書かれていたりするの?」

 

「それドラか?それらには無くなっちゃった世界のことについて書かれてるドラよ。」

 

霊夢の質問に答えるパンドラ。その瞬間、九十九が本棚に近寄り、パンドラに言う。

 

「な、なぁパンドラ。これ一冊読んでもいいか?」

 

「いいドラよ?どうかしたドラか?」

 

「い、いや。ちょっと気になることがあってな・・・。」

 

そう言うと九十九は『幻の終焉』と『(うつつ)の終末』という題名の本2冊を取り出し、本を開いた。それを見たユニ達は後ろから本の中身を見る。そこに書かれていたのは里のような場所が多くの巨大な生物によって燃やされたり、人や妖怪が食い殺されていてる描写だった。中には拳銃と剣を持つ一人の女性に勇敢に挑む3人の少女の姿も描かれている。それを見た魔理沙が口を開く。

 

「これって・・・私と霊夢とアリス?」

 

「どういうことなの?どうして私と魔理沙とアリスが?」

 

「・・・これは、私のいた幻想郷の出来事だ。」

 

「九十九のいた幻想郷?」

 

九十九の一言に悠岐、楓、暁、影裏が声を発する。そんな4人とは別に九十九はページを一枚めくる。そこに描かれていたのは館や山、多くの神社や寺が燃えてしまっている描写だった。そしてそこに書かれていた言葉は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生存者は誰一人としていない。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を見た瞬間、九十九は歯をギリッと噛み締めた。対する霊夢と魔理沙は驚きの表情を浮かべていた。そんな中、暁が絵を見て言う。

 

「これは紅魔館でこれは妖怪の山。そしてこれは命蓮寺でこれは博麗神社・・・。」

 

「エリュシオンは九十九の育ちの世界、つまり裏の世界の幻想郷を滅ぼしたってことか・・・。」

 

楓の一言を気にせずに九十九はもう一冊の本を取り出して開いた。そこには遊園地のような場所に6人の男女が青い巨大な腕を持つ巨人や紫色の化け物、巨大な生物や狼と戦っている姿が描かれていた。それを見た影裏が口を開く。

 

「これは、裏の世界の現世?」

 

彼の言葉をスルーして九十九はまたページをめくる。そこには体の一部が欠けて倒れている男女達が描かれており、その近くに銀髪の女性が描かれている。そしてその隣に『生存者は2人』と書かれている。それを見たユニが口を開いた。

 

「生存者の1人は九十九ちゃん、もう1人は誰だろう?」

 

「私の他に1人生き残ったのか・・・。一体誰なんだ?」

 

「この絵はエリュシオンと幻獣達、そして闘神達によって滅ぼされた現世か・・・。」

 

悠岐がそう言った瞬間、百々が部屋の隅を見つめ始める。そして口を開いた。

 

「そういやこの部屋にあの箱あったっけ?」

 

そう言うと百々は部屋の隅に置いてある11個の箱に近寄る。その瞬間、パンドラが百々の前に立ち、言う。

 

「ダメドラ!!この箱を開けちゃダメ!!」

 

「・・・え?」

 

パンドラが慌てたように言い、百々は唖然となる。そんな中、魔理沙がパンドラに言う。

 

「どうして開けちゃダメなんだ?」

 

「お母さんはこの箱を開けると世界に絶望が降り注ぐって言ってたドラ。そんなこと絶対にさせない!みんなを不幸にしたくないドラ!」

 

それを聞いた瞬間、百々は箱から離れた。と、しばらく黙っていたテルヒが唐突に口を開いた。

 

「おっと、パンドラを見ていたらすっかり忘れていた。百々、お前達の目的はこの城の1番上だろう?」

 

テルヒの言葉を聞いた瞬間、ユニ達はピクリと体を反応させる。そんなユニ達とは別にパンドラがテルヒに言った。

 

「1番上って、お母さんのこと?」

 

「そうだぞパンドラ。今日百々達がここへ来たのはエリュに会うためだ。エリュに用事があるみたいでな。」

 

「そうだったんドラね。なら遊ぶのはまた今度ドラね。」

 

そう言うとパンドラは部屋の真ん中にポツンとあるスイッチを押した。その瞬間、本棚がガタガタと動き始めたかと思うと壁に埋まっていき、本棚がなくなった場所に扉のようなものが現れた。

 

「すごい仕掛けだな・・・。」

 

そう呟く魔理沙と影裏。そんな2人を気にせずパンドラは壁にあるスイッチを押した。その瞬間、扉がゆっくりと左右にスライドした。そして口を開く。

 

「この隠しエレベーターでお母さんの部屋の前まですぐに行けるドラ。みんなこれに乗って行くドラ!」

 

「・・・いいの?アンタこんなことして・・・。」

 

「勿論ドラ。なんせみんなはお母さんのお客さんだからドラ!」

 

問う霊夢にパンドラは元気よく言った。と、テルヒがエレベーターに入り、言う。

 

「さぁ、来るのだ。パンドラ、お前はここで待っていなさい、私はすぐに戻る。」

 

「うん、分かったドラ。百々、用事が済んだら私と遊ぶドラよ?」

 

「あぁ、分かってるさ。」

 

そう言うと百々はテルヒに続いてエレベーターに乗る。彼に続いてユニ達もエレベーターに乗る。全員が乗ったのを確認したパンドラはスイッチを再び押した。そして言う。

 

「みんな、頑張るドラよ。」

 

そう言った瞬間、エレベーターの扉がゆっくりと閉まった。扉が閉まったエレベーターの中で楓が口を開く。

 

「いい子だったな、パンドラ。」

 

「あぁ、どこかの闘神とは大違いだ。」

 

彼女の言葉を聞き、言葉を発する魔理沙。と、テルヒが口を開く。

 

「パンドラはいい子だ。私も闘神達も、エリュも気に入っている。敵であるはずのお前達のことも思うことができるからな。」

 

軽く話している内にエレベーターはピンポーンと音を立てて止まった。

 

「案外速く着くもんだな。」

 

そう悠岐が言うとエレベーターはゆっくりと開く。開いた場所に広がっていたのは薄暗い空間に巨大で様々な絵が彫られている扉があった。それを見たユニが口を開く。

 

「いよいよね。」

 

「ここに奴がいるのね・・・。」

 

「よく分からないけど、少し緊張してきたぜ。」

 

「最初から覚悟はできてるさ。」

 

「必ず倒す。」

 

「世話になったんだ、やらなきゃいけないんだ。」

 

「私も同じさ。」

 

「僕も早くこの呪いを解いてもらわないとね。」

 

「油断は出来ませんね。」

 

「世界の除け者は排除しねぇとな。」

 

ユニに続いて霊夢、魔理沙、悠岐、楓、百々、九十九、琥珀、暁、影裏が一言発する。そんな彼らにテルヒが言う。

 

「私が同行するのはここまでだ、後はお前達で行くんだ。お前達だけでエリュを倒せるとは思わないが・・・だが抗い続けるのだ。諦めは敗北の証、抗いは勝利への一歩。お前達の戦いに希望あることを願っている。」

 

そう言うとテルヒは壁にあるスイッチを押した。その瞬間、ゴゴゴという音と共に巨大な扉がゆっくりと開き始めた。それを見た百々はテルヒに言う。

 

「待ってろよ、必ず首輪をつけてやるからな!」

 

そう言うと彼は扉の奥へ走っていった。彼に続いてユニ達も部屋の奥へと入っていく。ユニ達が入っていった瞬間、ゴゴゴと再び音を立てて扉がゆっくりと閉まった。それを見届けたテルヒは背を向けて一言発した。

 

「・・・生きて帰ってくるのだぞ。」




パンドラとの再会を話した百々。そしていよいよユニ達はエリュシオンのいる部屋へ!!
そこで待ち構えているものとは!?
次作もお楽しみに!


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第167話 凶神との戦い

パンドラとの再会を果たした百々、そしてユニ達はエリュシオンのいる部屋へ。


部屋に入るとそこは薄暗く、部屋の周りにはモニターが並んでいてそこには緑色の文字が流れるように打ち込まれている。それを見た楓、百々、魔理沙、琥珀、暁が口を開いた。

 

「なんだこの部屋は・・・。」

 

「監視室・・・か?」

 

「ここがエリュシオンの部屋らしいから奴がどこかにいるはずだぜ。」

 

「アレがそんなに簡単に出てくるといいけども。」

 

「開幕即死は勘弁です。」

 

その瞬間、モニターの画面が消え、パッという音と共に部屋に明かりがついた。部屋はアカシャが容易く入れるような広さをしており、その奥には1人の女性が椅子に腰を下ろしてユニ達を見ていた。女性を見た瞬間、ユニと九十九が声を上げる。

 

「あれは!!」

 

「エリュシオン!!」

 

ユニ達を見たエリュシオンはクスクスと笑い、口を開いた。

 

「ごきげんよう、表の者達。そしてようこそ私の城へ、よく私の仕掛けた試練を乗り越えた。その努力だけは褒めてあげるわ。」

 

「手厚い歓迎、感謝しますよ。そのままついでに歓迎会でも開いてくれないかな?」

 

琥珀の言葉を聞いてもなお笑みを浮かべたままのエリュシオンは再び口を開く。

 

「歓迎会を開くつもりは一切ございません。さて、ここでクエスチョン。」

 

「?」

 

「アンタ達の身の回りに起こった異変は何故起こったのでしょうか?」

 

「・・・どういうことだ?」

 

彼女の唐突の問題に首を傾げる影裏。そんな中、九十九が琥珀に言う。

 

「琥珀知ってる?」

 

「・・・僕からは何も。」

 

そんな中、何かを察した霊夢がエリュシオンに言った。

 

「・・・一体いつから?」

 

「地王セコンドと帝王メルト・グランチの起こした異変から飽星寶の人里異変まで、ね。」

 

その言葉を聞いた瞬間、百々がゆっくりと口を開く。

 

「・・・幻想郷の、侵略か?」

 

「ご明察!・・・と言いたいところだけれど少し違うわ。あの子達の目的は侵略ではなく破壊。私の手によっての異変よ。」

 

「何っ!?」

 

「なんでそんなことを・・・なんて、聞く理由も無駄かしら。」

 

驚く悠岐とは別に九十九は落ち着いた様子で言う。と、エリュシオンが悠岐、霊夢、魔理沙を順に指差して言う。

 

「そして西田悠岐、博麗霊夢、霧雨魔理沙。アンタ達は百々に会った瞬間、あることを思ったはずよ。」

 

「あること?何も思わなかったけれど?」

 

苗沙麗夜(みょうずやれいや)、この名前に覚えは?」

 

「!!?」

 

その名前を聞いた瞬間、3人の表情が変わった。そんな中、楓と百々、ユニが首を傾げながら言う。

 

「・・・誰だ苗沙夜って。」

 

「誰だ?その、苗沙ってのは。」

 

「聞いたことないわ・・・。」

 

と、琥珀が少し引いた様子で口を開いた。

 

「あー・・・うん。なるほど。今そのことを話題に出すなんて、性格が悪いね。」

 

「ただ言ってみただけよ、詳しくは言わない。」

 

そう言うとエリュシオンは暁と影裏の方は顔を向け、笑みを浮かべて言う。

 

「それに、アラヤの守護者とガイア守護者が揃うなんて光栄じゃない?魄霊暁に理の破壊者。」

 

「お前が俺をどう思おうが俺にとってお前は排除の対象だ。」

 

「この星からしたら貴方はただの害虫ですけどね。」

 

「ククク、まぁそんなことどうでもいいのよ。アンタ達がここへ来た理由、それは私をいち早く倒すためでしょ?なら、こちらへ来なさい。」

 

そう言うと彼女は立ち上がり、ベランダへと歩み始めた。そんな中、暁が皆に向かって言う。

 

「最終決戦ですね。皆さん、獲物の様子をチェックしておけよ、です。」

 

「あぁ、分かってる。」

 

「相手は今まで戦ってきた中で1番ヤバいかもしれないわ。気を引き締めないと。」

 

「呪いは解いてほしいからね。そこそこに頑張るさ。」

 

楓、ユニ、琥珀が話している中、エリュシオンが口を開いた。

 

「フィールドはこっちよ。」

 

そう言うと彼女はベランダから飛び降りた。

 

「え、飛び降りんの?まじ?」

 

彼女の行動に驚きを隠せない百々。そんな彼に影裏が言う。

 

「お前は飛べるだろ。」

 

「飛べっけど、あんまり消費したくねぇんだよ。」

 

2人が話す中、ベランダの下を覗いた悠岐があることに気づき、言う。

 

「降りられる足場があるな。俺と楓と影裏はそこから行こう。」

 

「私達は飛んで降りるぜ!」

 

「おう、ならタダ乗りさせてくれよ魔理沙。」

 

「チッ、仕方ないな!」

 

百々の言葉に舌打ちするも了承する魔理沙。そんな2人とは別に悠岐、楓、影裏は足場を使って降り始めた。

 

「私達も行くわよ。」

 

「うん、分かってるわ。」

 

3人に続いて霊夢、ユニも飛んでゆっくりと下に降りていく。

 

「私達も急がなきゃ。」

 

「私は足場を使うとしましょう。」

 

「僕はフワフワ浮いていくよ。」

 

残った九十九、暁、琥珀もそれぞれの行き方で霊夢達の後を追って降り始める。3人に続いて魔理沙は百々を箒に乗せてゆっくりと降り始める。

 

「うわっ、百々が乗ると落ちるのが早くなるぜ!」

 

「重くて悪かったな!」

 

全員が降り終わると一同はあることに気がついた。城の上では雲一つとしてない空から雨が降っているかのように水が降っているのだ。

 

「これは・・・?」

 

「天気雨ってやつですかね・・・。」

 

ユニと暁が話す中、エリュシオンがユニ達に背を向け、空を見上げながら口を開いた。

 

「・・・私の生まれは空の上にある楽園だった。」

 

「・・・?」

 

唐突に落ち着いた口調で話すエリュシオンにユニ達は首を傾げる。そんな彼女達とは別にエリュシオンは話し続ける。

 

「白い大地と神殿が広がるだけの世界。そこで私は口にすることも近付くことも禁じられている禁断の果実を食べ、追放された。そしてこの世界へと流れ着いた。ここはあの腐った楽園とは打って変わって緑が広がっていて心地よい風が吹いてくれる。私は・・・こういう世界が欲しかったのかもしれない。」

 

「でも、人は要らないんだろう?」

 

琥珀が彼女に一言言った。それを聞いてエリュシオンは再び口を開く。

 

「勿論、私の望む世界に人間など必要ない。私に必要なのは私という存在を構成する家族、それさえいればいいのよ。」

 

「僕らの、表の世界に空の楽園を再び作ろうとしている。それを享受できるのは家族のみ。ただの自己満足じゃないか。」

 

「そうよ、これは私のただの自己満足。私の満足を阻止する者は誰であろうと殺す。だからアンタ達も対象の一つ。そしてアンタ達は何かの手違いなのか知らないけど選ばれた。そんなアンタ達に私が滅多に使わない言葉を送ってあげる。正々堂々と勝負してあげる。少しは私を楽しませなさいよ?」

 

エリュシオンがそう言った瞬間、九十九、楓が戦闘態勢に入り、口を開いた。

 

「私の幻想郷のようにはさせないわ。ここで止めてみせる!」

 

「上等、必ずお前を止める!」

 

「フフッ、覚悟は出来ているようね。ならば始めましょうか。」

 

そう言った瞬間、彼女の服の中から紫色のスライムが現れ、2つに割れたかと思うと彼女の手元までいき、そのまま拳銃と赤紫色の刀に変化した。

 

「スライム・・・・服・・・・うっ、頭が。」

 

「・・・暁?」

 

「はい、なんでもありません姉さん。」

 

「なら、さっさとやるわよ!」

 

霊夢と暁が話している中、百々と九十九が自分の姿を変化させていた。

 

「再現『鴉天狗の翼』!」

 

「力を貸して、アルカディア!」

 

「おらっ!」

 

「くらえ!」

 

始めに悠岐と楓が刀を抜き出し、エリュシオンに斬りかかる。

 

「フフッ。」

 

そう笑ったエリュシオンは刀を持つ右手の甲で悠岐の刀を振りかざすタイミングに合わせて弾き、楓の刀を避けて後ろへ受け流した。

 

「チッ!」

 

攻撃をかわされた2人は思わず舌打ちをする。

 

「そこです!『我は雷切の持ち主神威なり』。いでよ、雷切!」

 

雷切を手に暁は背を向けるエリュシオンに斬りかかる。だが彼女は暁の方に顔を振り向くことなく彼の攻撃を防ぐ。

 

「なにっ!?」

 

そのまま彼の攻撃を弾く。

 

「後ろがガラ空き!」

 

その一言と同時に琥珀は弾幕をエリュシオンの背に向けて放った。彼の言葉を聞いたエリュシオンは一枚のスペルカードを取り出し、発動した。

 

「スペルカード、完防イージス。」

 

彼女がスペルカードを発動した瞬間、彼女の周りに紫色の結界が現れた。

 

「やっば。忘れてた!みんな気をつけて!!」

 

琥珀の攻撃が結界に触れた瞬間、辺りに爆発の衝撃が襲った。

 

「うおっ!」

 

「きゃぁ!!」

 

爆発の衝撃を喰らった悠岐とユニは勢いよく吹っ飛ばされる。

 

「大丈夫かユニ!!」

 

鴉天狗の翼により得た素早さを最大限に活かし、百々は爆風に飛ばされたユニを受け止めた。

 

「あ、ありがとう百々君。」

 

「俺はぁぁぁぁぁ!!?」

 

そう叫びながら悠岐な誰にも受け止めてもらうことなく数十メートル吹っ飛び、数メートル転がった。

 

「わりぃ悠岐。ユニくらいなら大丈夫だがお前だとちょっと・・・。」

 

そう話している内にエリュシオンは目を青く光らせてユニ達を見ていた。そんな彼女に九十九が口を開いた。

 

「よそ見を、するな!『エト・イン・アルカディア・エゴ』!!」

 

4人に分裂した九十九が、それぞれ別方向からエリュシオンへ襲いかかる。

 

「よそ見?してないけれど?」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの背後から薄暗い赤いモヤのようなものがユニ達を包み始めたかと思うと周りの風景がまるで苦しんでいる人達がこちらを見ているかのような感覚に包まれた空間へと変化した。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「結界?幻術?どちらにしても、良いものではありません。」

 

魔理沙、暁が話している中、悠岐が辺りを見回しながら口を開いた。

 

「この空間・・・見覚えがあるぞ!確かゲームにあった気がするような・・・。」

 

悠岐が続きを言おうとした瞬間、エリュシオンの背後から大量の謎のロボットと大量のコブラ、そして青い鳥が姿を現した。

 

「まさかのモンストかぁ・・・。」

 

「となるとこれはドゥームの空間か!!」

 

「闘神の生みの親だから息子達の力を使えるのは当たり前って感じなのかなぁ。」

 

暁、楓、ユニが話している中、青い鳥やロボット達が一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 

「雷切よ!」

 

暁が雷切へ霊力を送ることで、その刀身が電気を迸始める。

 

「くらえ、雷撃!」

 

「はあっ!」

 

暁に続いて楓が地雷ロボットを確実に倒していく。

 

「封魔針!!」

 

霊夢は1匹ずつコブラを倒していく。

 

「次はあなたよ!!」

 

そう言うとユニはエリュシオンに向かって至近距離で弾幕を放とうとする。その瞬間、エリュシオンはユニの目の前で紫色の渦巻くものを出した。その瞬間、ユニは渦巻く紫色のモノの中に入っていったかと思うと琥珀の背後まで移動された。

 

「な、何よこれ!!」

 

「ワープゲートみたいなものです!」

 

「気をつけないと変な場所に飛ばされるよ。」

 

「ワープですって!?めんどくさいわね。」

 

暁、琥珀がユニに言う中、影裏が刀を持ってエリュシオンに向かっていき、打ち合いを始めた。そんな彼にエリュシオンが笑みを浮かべながら言う。

 

「なるほど、アンタはワープに対抗できる力があるのね?面白い。」

 

そう言うと彼女は一瞬の隙を狙って影裏を蹴り飛ばした。

 

「グッ・・・。」

 

影裏が吹っ飛ばされたのと同時にエリュシオンの目が紫色に光り始める。その瞬間、空間がまた変わり、惑星のような丸いものが宙に浮かんでいる空間に変化した。それを見た暁が咄嗟に口を開く。

 

「この感覚は・・・アカシャです!!」

 

「クソッ、これじゃあ私や悠岐は思うように攻撃ができない!!」

 

歯を食いしばり、口を開く楓に霊夢が言う。

 

「ここは私達に任せて悠岐、楓、影裏は援護攻撃をやって!」

 

「任せろ!」

 

「あぁいいぜ。」

 

悠岐と影裏が言った瞬間、ユニ、霊夢、魔理沙は浮かぶ球体を避けながらエリュシオンに向かっていく。向かっている途中、床の針のようなものを見つける。そんな彼女達に琥珀が口を開いた。

 

「床の魔法陣にはふれないように!じゃないとーーー」

 

それに触れた琥珀は人からヒヨコへと姿が変わってしまった。

 

「こうなっちゃうよ!!」

 

ピヨピヨと本人は発していないのにも関わらずヒヨコの声を上げた琥珀がそう言った。それを見たユニが口を開く。

 

「琥珀君がヒヨコになっちゃった!?」

 

「魔法陣か?とりあえず触れなきゃいいって話だぜ!」

 

そう言うと魔理沙は浮くエリュシオンにミニ八卦路を向けてスペルカードを発動する。

 

「くらえ!マスタースパーク!!」

 

「ちょっ、いきなり!?」

 

驚く霊夢とは別に魔理沙はマスタースパークをエリュシオン向けて放った。そんな中、九十九が口を開く。

 

「カナン、借りるよ!」

 

紫のスマホを掲げ、Gペンを握った九十九は魔法陣へと向かって走り出した。それを見た影裏が言った。

 

「九十九のやつ、なんで自分から魔法陣に?」

 

「アイツの力だからだ。」

 

そう言った瞬間、魔法陣を通った九十九はヒヨコにはならずにコッコーという声を上げてニワトリへと姿を変えた。それを見た楓が言う。

 

「魔法陣ブースト。必殺技が使えなくなる代わりに自身の攻撃力が上がる能力だ。」

 

「そんな能力があったとはな・・・。」

 

楓と影裏が話している中、エリュシオンは魔理沙から放たれたマスタースパークを容易く避けていた。と、百々が魔理沙に言った。

 

「助太刀するぞ魔理沙!鬼の怪力を、受けてみろ!」

 

そう声をあげるがエリュシオンの目線は魔理沙に向いたままだった。しかし、彼女の持つ銃の銃口は百々へと向けられていた。それを見た彼は心の中で言う。

 

(この前、暁が言ってた。『銃弾は食べてしまえばノーダメージ』と!)

 

「銃から放たれるのは銃弾だけと誰が錯覚したのかしら?」

 

彼の心を読み取ったエリュシオンは銃口から銃弾ではなく紫色のレーザーを放った。

 

「俺が錯覚した!」

 

レーザーをその身に受けてもなお、百々はその足を止めなかった。

 

「へぇ。」

 

それを見たエリュシオンはただ感心してレーザーを放つのをやめ、彼の様子を伺う。

 

「なめんなよ。こちとらビームなんざ魔理沙から何度もくらってんだよ!」

 

「へぇ、なら。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの姿が一瞬にして消えたかと思うと百々の背後に移動した。

 

「はや・・・。」

 

後ろへ振り向く瞬間を狙ってエリュシオンは百々の首元を勢いよく掴む。

 

「ぐ、が・・・。」

 

そのままエリュシオンは彼を九十九の方へと勢いよく投げた。

 

「ちょ、待って。こっち今ニワトリ・・・。」

 

力はあれども、その圧倒的なサイズ差によって飛ばされた百々を受け止めることができなかった九十九はそのまま巻き込まれて吹っ飛んだ。

 

「百々君!九十九ちゃん!!」

 

二人に声をかけるユニとは別にエリュシオンはスペルカードを指の上で回しながら口を開いた。

 

「うーん、やっぱりあの子の力は飽きるわねぇ。だったらこれにしようかしらね。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの目が緑色に光り始めた。その瞬間、辺りが彼岸花が咲き乱れる赤い空間へと変化した。それを見た霊夢が言う。

 

「今度はメメントモリってやつね!」

 

「そうよ。さぁ、どんどん私を楽しませなさい。まだ戦いは序章に過ぎないんだから。」

 

そう言うエリュシオンの顔には不気味な笑みが浮かんでいた。




遂に始まるエリュシオンとの決戦。彼女が仕掛ける猛攻にユニ達は耐えることが出来るのか!?
次作もお楽しみに!


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第168話 闘神の力

エリュシオンの場所へと辿り着いたユニ達は彼女との決戦に挑む。


「うーん、地雷は少し辛いかもね。」

 

メメントモリのステージが展開されたのを見て琥珀はそうボヤく。基本的に走って戦う人間が多いのだ。空を飛ぶ彼は問題なくても他が問題なのである。彼のボヤきを聞いたようにエリュシオンが口を開いた。

 

「メメの場合の地雷は特別なのよ?」

 

そう言った瞬間、彼女は銃口をユニ達に向け、発泡した。銃から放たれたのは目玉のようなものがついていて3という数字が浮かびあがっているものでそれは10個に分裂するとユニ達に絡みついた。

 

「何これ!?」

 

「くっつく地雷だと!?聞いてねぇぞ!!」

 

ユニと影裏が言う中、暁が一言言う。

 

「『神に呪われし者。鮮血の咎。我が名はカイン。』」

 

暁がまた一つ、嘘を重ねた。すると、彼の髪が獣のように変化し、全員へついた地雷を捕食していった。それを見た悠岐が彼に言う。

 

「サンキュー暁、助かったよ。」

 

「地雷は私が何とかします。皆さんは攻撃をお願いします!」

 

「任せて!」

 

そう言って霊夢がエリュシオンの方へ目を向ける。と、エリュシオンが銃口を空に向けて口を開いた。

 

「ならこれを受けてみなさい。」

 

そう言った瞬間、彼女の持つ銃の銃口から8方向に今度は緑色のレーザーが放たれた。

 

「うわっ!」

 

「またレーザーか!!」

 

声を上げながらもユニと楓はレーザーを避ける。

 

「行ってきてバカ兄貴!」

 

「急いでるからって投げんなぁぁぁ!!」

 

そのレーザーのうち、2本を九十九が投げた百々によって防ぐことができた。しかし、所詮は2本。残りの6本が全員を襲う。

 

「チッ!」

 

舌打ちをしながらも悠岐は刀で2本のレーザーを凌いだ。

 

「くっ!」

 

「ちくしょー!」

 

「くそっ!」

 

霊夢、魔理沙、影裏は間一髪のところでレーザーをかわす。

 

「え、僕まだヒヨーーー」

 

ヒヨコの姿から治ってなかった琥珀は足が短かった為に回避が間に合わずレーザーに飲み込まれた。

 

「スターレーザー!!」

 

暁はスターレーザーを展開し、エリュシオンからのレーザーをどうにか打ち消した。それを見たエリュシオンは感心して言う。

 

「へぇ、中々やるじゃない。ならこれはどうかしら?」

 

そう言った瞬間、彼女の背後から手足が生え、目玉が1つある1メートルほどの大きさのタマネギが5匹現れた。それを見た悠岐が大きい声を上げる。

 

「タマネギヘッドだ!こいつらを同時に倒さないと蘇生ループを食らっちまうぞ!暁、頼んだ。」

 

「任せておいて。タマネギ三四郎なんて何度も倒してるから!何匹になろうが関係はない!!」

 

バラバラに動く5匹のタマネギヘッドを見て暁は集中力を上げ、じっとタイミングを待つ。

 

「・・・ここだ!行け、わが髪の毛!!」

 

そう言って彼から放たれた地雷付きの髪の毛は5匹のタマネギヘッド全員に命中した。地雷付きの髪の毛の攻撃を食らったタマネギヘッドはそのまま消滅する。その様子を気にすることなくエリュシオンは目を赤く光らせていた。その瞬間、辺りがロック会場のような場所に変わり、ユニ達の周りにはドクロが数多く浮いている。それを見たユニが口を開く。

 

「今度はニルヴァーナね!」

 

「あぁ死ぬかと思った!いや死んでたけれども!」

 

レーザーによって焼かれていた琥珀が妖精特有の不死性により地面からゾンビのように復活した。その時、頭上にあったドクロをちょうど1つ破壊した。それを見たエリュシオンは鼻で笑い、言う。

 

「じゃあこうしようかしらね。」

 

そう言って彼女はパチンと指を鳴らした。その瞬間、ドクロの周りに重力バリアが展開された。

 

「あれは!?」

 

「動きにくくなるやつか・・・。」

 

霊夢が言った後に地面に倒れていた百々が起き上がり、重力バリアを目にして小さくつぶやく。そんな中、暁が口を開いた。

 

「一気に全てを破壊します!『天に掲げるは王者の剣。世界を守る鞘とならん!』」

 

そう言った瞬間、何処からともなく現れた無数の剣が重力バリアを纏っているドクロに刺さったかと思うとそのまま爆発し、ドクロを全て破壊した。

 

「エリュシオン、ついでにこのレーザーをどうぞ!」

 

そう言って暁は黄色に輝くレーザーをエリュシオンに向かって放った。

 

「フン、無駄な真似を。」

 

暁から放たれたレーザーを見てそう言うとエリュシオンは右手を広げて前に出す。その瞬間、彼女の周りに紫色の結界が現れたかと思うと暁の放ったレーザーを遮断し、消滅させた。それを見た楓が口を開く。

 

「・・・レーザーバリアか!」

 

「小癪な!」

 

「口調口調。」

 

「・・・コホン。嫌らしい手を使いますね!」

 

暁と九十九が話す中、エリュシオンはクススと笑い、言う。

 

「あら、そうかしら?」

 

そう言ってる間にエリュシオンは銃口を暁に向けて発砲していた。

 

「そうはさせないわ!『現符シャドウルーム!』」

 

ユニが咄嗟にスペルカードを発動した。その瞬間、暁の前に小さなワープホールが現れ、その中に放たれた銃弾が吸い込まれていった。

 

「感謝します、ユニさん。」

 

「いえ!仲間ならこれくらい当然よ!」

 

「フン、仲間なんてなんてくだらない・・・。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの目が黄色に光り始めた。その瞬間、辺りが大量の本が敷き詰められている図書館のような空間へと変化した。

 

「これは・・・。」

 

「光の闘神・・・。」

 

影裏と琥珀が一言呟く中、エリュシオンは一冊の本を棚から取り出し、開く。そして言う。

 

「私、結構他人の力を使うのが好きでね、この力を気に入っているのよ。だからアンタ達を倒すのにカルマの力が一番いいかなって思ったの。」

 

「それは奪った力だろ。そんなので俺達を倒せるとでも?」

 

「奪った?それは違うわねぇ百々。あなたはこの仕組みを理解できているはずよ。奪ったのは力ではなく記憶。記憶に記された力を具現化させるのがカルマの力なのだから。」

 

そう言うと彼女は本の中から灰色に輝く宝石を取り出し、眺め始める。

 

「なーに眺めてんのよ!」

 

「隙だらけだぜ!」

 

そう言うと霊夢と魔理沙は同時にエリュシオンに向かって弾幕を放った。

 

「ロックオンレーザー!」

 

それに習うように九十九もエリュシオンに向けて紫色のレーザーを放った。

 

「フフフ。」

 

それを見たエリュシオンは笑い、その場から動かずに宝石に口付けをした。3人の放った攻撃はエリュシオンに命中し、そこから煙が上がる。その瞬間、煙の中から衝撃波のような波が飛んできて霊夢と魔理沙に命中した。

 

「ぐっ!」

 

「がっ!」

 

衝撃波を食らった二人はユニ達の元まで吹っ飛ばされる。

 

「姉さん!」

 

「魔理沙!」

 

霊夢を暁が、魔理沙を百々がそれぞれ受け止め、ダメージを抑えることができた。

 

「あ、ありがとう暁。」

 

「た、助かったぜ百々。」

 

話している内に煙が晴れる。そこにいたのはエリュシオンではなく白髪に青白い素肌、耳に青いピアスをつけま男が立っていた。

 

「男・・・?」

 

「身代わり・・・なのか?」

 

九十九と百々が目を細めて男を見る中、悠岐が目を大きく見開いて口を開いた。

 

「お、お前はギラヒム!!?なんで生きてるんだ・・・?」




突如ユニ達の前に現れる倒されたはずのギラヒム、一体何故・・・?
次作もお楽しみに!


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第169話 歴戦

闘神達の力を乗り越えて戦うユニ達の前に現れた倒されたはずのギラヒム。


「生きている?」

 

「どう言うことなんだ?悠岐。」

 

暁が声を発し、影裏が悠岐に言う。

 

「アイツは一度首領と幻想郷に攻め込んできて俺と戦って間違いなくこの手で殺した筈なのに・・・!!」

 

悠岐が頭を抱えて驚愕する中、ユニが口を開いた。

 

「・・・いいや、違うわ悠岐君。あれはギラヒムじゃない、ギラヒムに変身したエリュシオンよ!!」

 

「その通り、よく見破ったね、八意百合姫。」

 

その口調と声、そして話し方はギラヒムそのものだった。それを見た百々が言う。

 

「味方に変身しないでよかったと思うべきかもな・・・。」

 

「面倒な力だな・・・。」

 

「カルマの力だ。仲間に変身してもおかしくない。」

 

「これなら、合言葉でなにかも決めておけばよかったですね。」

 

影裏、楓、暁が言う中、ギラヒムに変身したエリュシオンが口を開く。

 

「さぁ、次は誰が来るかな?」

 

そう言うと彼女は左手を前に出し、二本の指をクイクイと動かして挑発した。

 

「僕が行こうかな。文字よ。」

 

琥珀がエリュシオンへ向けて『散』の文字を複数飛ばす。ソレは当たれば魔力や霊力、妖力といった力の源を散らす効果を持つものだ。『当たれば』のはなしだが。

 

「私もサポートします。先程の力で行きます。『天に掲げるは王者の剣。世界を守る鞘とならん!』」

 

琥珀に続いて暁もアーサーの力を用いて複数の剣を彼女に向けて放つ。

 

「これはちょっと多いねぇ。」

 

そう言うと彼女は本棚から再び一冊の本を取り出し。中から緑色に輝く宝石を取り出し、再び口付けをした。その瞬間、彼女の周りに緑色の結界が渦巻き始める。渦巻いた瞬間、結界の中から銃声が響いたかと思うと無数の弾丸が琥珀の放った文字と暁の放った剣を撃ち抜いた。

 

「銃弾!?」

 

「元の姿に戻ったんですかね・・・?」

 

琥珀と暁は銃弾の流れ弾を避け、ユニ達の元へ戻る。渦が消えた場所にいたのは頭部がワニで緑色のコートを着た男が立っていた。それを見た魔理沙が口を開く。

 

「また変わったぜ!?」

 

「今度はドールクか!」

 

「ドールク?」

 

「現世では銃王と呼ばれている奴だ。奴の銃捌きは並外れているって言われていて厄介な奴だ。」

 

悠岐、九十九が話している中、ドールクに変身したエリュシオンが口を開く。

 

「どうした?文字や剣が銃弾に弾かれてしまうようじゃ俺には勝てないぜ?」

 

話し方や声のトーンはドールクそのもの、完璧な変身をしている。と、ユニと影裏が同時に動いた。

 

「これでも喰らいなさい!」

 

「見た目が変わったくらいでビビることなんかねぇ!」

 

そう言うと二人は同時に弾幕を放った。それを見たエリュシオンは本棚から再び本を取り出すと中から紫色に輝く宝石を取り出し、口付けをした。その瞬間、彼女の体が紫色の渦に囲まれた。それと同時に渦の中から巨大な鏡が出現し、ユニと影裏の放った攻撃をそのまま跳ね返した。

 

「きゃあ!」

 

「ぐおっ!!」

 

跳ね返された攻撃を受けたユニと影裏は霊夢達の元へ飛ばされる。

 

「ユニ!」

 

そう言って悠岐は吹っ飛ぶユニを受け止めてダメージを抑えた。

 

「あ、ありがとう悠岐君。」

 

「俺はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そう言って影裏は誰にも受け止めてもらえずにゴロゴロと転がっていった。鏡が出た場所を見るとそこには黒い翼を生やして杖を持ち、紫色の瞳を持つ女性が立っていた。

 

「今度は女ですか・・・。」

 

「ペルセポネに変身したか・・・。」

 

一言呟く暁の後に楓が口を開く。そんな中、百々と九十九がペルセポネに変身したエリュシアンの元へと向かう。

 

「弾幕を跳ね返すなら!」

 

「殴って鏡を割ってやる!」

 

そう言って百々は自身の力で先程の暁の放っていた剣を再現し、九十九は緑色のスマホをかざして緑色のルーペを手にエリュシオンに向かっていった。それを見た彼女は杖を放り投げると懐に持っていた本を取り出して中にあった黒い宝石を取り出し、口付けをした。今度は黒い渦が彼女を囲んだ。

 

「変身する前に!」

 

「攻撃すれば問題ない!!」

 

そう言って二人は渦巻いる間に攻撃を仕掛ける。二人の攻撃が命中する寸前だった。渦の中から金色の刀が現れたかと思うと二人の攻撃を容易く防いだ。

 

「なっ!?」

 

「はや・・・。」

 

その瞬間、彼女を囲んでいた渦が消えた。そこには長身で後ろ髪を縛っていて左腕を背に回している男が立っていた。

 

「フフフ。」

 

男は笑うとそのまま至近距離で軽い爆発を起こして百々と九十九を吹っ飛ばした。

 

「ぐあっ!」

 

「ぐっ!!」

 

ユニ達の元へ吹っ飛ばされた二人は無事着地し、体制を整えた。男を見た琥珀が口を開いた。

 

「メルト・グランチ・エンペラーかぁ・・・厄介な人に変身してきたね。」

 

「奴に変身したなら!」

 

「俺らでやる!!」

 

そう言って悠岐と楓は勢いよくメルト・グランチに変身したエリュシオンの元へと向かっていく。その瞬間、エリュシオンの周りに橙色の渦が渦巻き始める。

 

(宝石を取っていないのに・・・?)

 

心の中で思った楓はあまり気にすることなく彼女に向かっていく。その時だった。渦の中から強力な弾幕が放たれ、悠岐と楓に命中した。

 

「ぬぐっ!?」

 

「ぐはっ!!」

 

弾幕を受けて吹っ飛ばされた二人は先程の百々と九十九同様、着地し、体制を整えた。渦が消えた場所にいたのは金髪でウェーブのかかった長髪、満州族のような服に黒のロングスカートを穿き、頭に冕冠を被っている女性がいた。彼女を見た霊夢が口を開いた。

 

「そんな・・・純狐にも変身するなんて!!」

 

と、純狐に変身したエリュシオンが元の姿に戻り、口を開いた。

 

「フフフ、どう?カルマの力は。記憶に記された力があればどんな奴にだって変身することが可能なのよ!」

 

「クソッ、ふざけたマネしやがって!!」

 

腹が立った九十九はエリュシオンに向かっていく。そんな彼女を見たエリュシオンは手に持っていた青く輝く宝石に口付けをしながら言う。

 

「いいのかしら?アンタは・・・。」

 

そう言っている途中に彼女の周りに青い渦が渦巻き始める。

 

「当たり前だろ!!お前なんか・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたに私を、殴れるのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渦が消えたそこには青いブレザーと薄いこげ茶色のスカートを穿き、黄色いリボンをつけたオッドアイの少女が現れた。彼女を見た瞬間、九十九は彼女の目の前で拳を止め、一言発した。

 

「ほう・・・らい・・・?」

 

その一瞬の隙を狙って少女に変身したエリュシオンは彼女の目の前でレーザーを放った。間一髪で暁が彼女を抱えてレーザーを止めていた。

 

「私に、幻想は届きませんよ。」

 

そう言って暁はユニ達の元へと戻る。そんな彼を見て少女蓬莱に変身したエリュシオンがゆっくりと元に戻りながら口を開く。

 

「惜しかったですわ。もう少しであなたの命を奪えそうだったのですが・・・。邪魔が入っちゃ、しょうがないわね。さっきと同じ子らでアンタ達を葬ってあげる。」

 

と、何かに気がついた悠岐が口を開いた。

 

「みんな!俺の話を聞いてほしい。奴がさっき変身した5人は俺達のいずれかが戦ったことのある奴らだ。それなら変身した奴に応じて俺達も戦う人を決めよう。」

 

「そうか!ペルセポネにドールク、メルト・グランチやギラヒムは私達が戦ったことのある奴ら。それなら分かる奴が戦えばなんとかなりそうだぜ!」

 

「ですが、一度も戦ったことのない私や百々君とかはどうしましょう?」

 

「手分けしてやればいいわ。メルト・グランチに変身したら私と暁で対応するわ。暁、私の指示通りに動きなさいよ。」

 

「分かりました、姉さん。」

 

「ペルセポネに変身したら私と九十九で対応する。」

 

「指示は頼んだよ、楓。」

 

「さとりから話は少し聞いたぜ。ドールクに変身したら私と影裏でなんとかするぜ!」

 

「おっしゃやるか!」

 

「純狐に変身したらユニちゃんと対応するよ。僕の言葉通りにね、ユニちゃん。」

 

「えぇ、分かったわ。」

 

「ギラヒムが出たら俺と百々で戦おう。」

 

「よっしゃ、やるぜ!」

 

ユニ達が話している中、エリュシオンが口を開く。

 

「作戦会議は終わったのかしら?それじゃあ行くわよ!!」

 

 




作戦を立てたユニ達はエリュシオンへと向かう。果たして作戦は成功するのか!?
次作もお楽しみに!


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第170話 対応

ギラヒム、ドールク、ペルセポネ、メルト・グランチ、純狐に変身してユニ達の前に立ちはだかるエリュシオン。


そう言った瞬間、エリュシオンの体に緑色の結界が渦巻いたかと思うと鰐の頭に二丁の拳銃を持つ男に変身した。

 

「ドールクだ!行くぜ影裏!!」

 

魔理沙がそう言うと箒に跨り、飛び上がる。

 

「了解だ魔理沙!」

 

魔理沙の合図で影裏がエリュシオンに向けて銃口を向け、発砲する。それと同時に魔理沙がエリュシオンの背後に回り、スペルカードを発動する。

 

「魔符『ミルキーウェイ』!!」

 

「ほう、やるな。」

 

そう言いながらエリュシオンは高く飛び上がり、二人の攻撃を避ける。高く飛び上がった瞬間、彼女の周りに紫色の渦が漂い始める。それを見た魔理沙が声を上げる。

 

「ペルセポネだ!楓、九十九頼むぜ!!」

 

彼女が言った瞬間、楓と九十九が同時に飛び出す。魔理沙の言った通り、紫色の渦が消えた場所からはペルセポネに変身したエリュシオンが姿を現した。

 

「九十九、弾幕攻撃を頼む!」

 

「任せな楓、おらよっと!!」

 

楓の指示で九十九は複数の弾幕をエリュシオンに向けて放つ。それを見た彼女は巨大な鏡を出現させる。彼女の放った弾幕は鏡に反射され、そのまま九十九目掛けて飛んでくる。

 

「チッ、そういやあの姿の奴は鏡を使って弾幕を反射させるんだったな。」

 

「だが、その瞬間がチャンスだ!」

 

そう言いながら楓は反射された弾幕を潜り抜け、鏡に向かって氷龍剣を突き刺す。その瞬間、鏡にヒビが入っていったと思うとそのまま粉々に割れていった。それを見たエリュシオンは軽く舌打ちをし、後退する。その瞬間、彼女の周りに橙色の渦が漂う。

 

「純狐だ!!ユニ琥珀、任せた!!」

 

「さぁさぁ、僕にお任せあれ。」

 

「行くわよ琥珀君!」

 

九十九の合図でユニと琥珀が飛び出し、ユニがスペルカード

発動する。

 

「剣符『アームストライク』!」

 

スペルカードを発動したユニは走りながら右手に剣を持ち、エリュシオンへ向かう。九十九の言う通り、エリュシオンはペルセポネから純狐へと変身した。

 

「これでも喰らいなさいっ!」

 

そう言いながらユニはエリュシオンに向かって剣を振り下ろす。なんの工夫もない、そう思っていたエリュシオンとは別に琥珀が文字を浮かべる。

 

「文字よ、『砕』」

 

その文字を見た瞬間、エリュシオンは咄嗟に後退する。砕の文字がユニの持つ剣に宿り、振り下ろされた場所は地面が大きく抉られるほどの破壊力を持っていた。

 

「こんなんじゃ終わらない!咄嗟の弾幕攻撃!!」

 

そう言うとユニは剣を手放し、後退するエリュシオンに弾幕を放った。

 

「へぇ、いい戦法じゃない。」

 

そう言うと彼女はユニの放った弾幕を後退しながら灰色の渦を漂わせる。それを見た琥珀が言う。

 

「バトンタッチだ、悠岐君に百々君!」

 

「ギラヒムだな!」

 

「おっしゃ任せろ!!」

 

続いて悠岐と百々がギラヒムに変身したエリュシオンに向かっていく。

 

「これでも喰らいやがれ!漆黒斬!!」

 

「真似させてもらうぜ悠岐!再現『漆黒斬』!!」

 

悠岐の技を再現し、百々は攻撃をエリュシオンに放つ。ギラヒムに変身したエリュシオンは放たれた二つの漆黒の月牙を容易く躱す。

 

「そっちに行くと思ったんだよ!1発貰っとけぇ!!」

 

そう言いながら百々はエリュシオンの躱した場所へと向かい、拳を叩き込む。それを見た彼女は腕を交差し、攻撃をかろうじて防ぐ。

 

「チッ・・・。」

 

舌打ちをしたエリュシオンは指を鳴らす。その瞬間、彼女の周りに黒い渦が漂う。

 

「やっちまえ!霊夢に暁!」

 

「一気に叩き込むわよ暁!!」

 

「了解!姉さんに合わせます!!」

 

そう言って今度は霊夢と暁がエリュシオンに向かっていく。黒い渦が消えた場所にはメルト・グランチに変身したエリュシオンがいた。

 

「封魔針!!」

 

スペルカードを発動した霊夢はエリュシオンに向けて攻撃を放つ。れいむの攻撃を見たエリュシオンは刀で弾き、指を鳴らそうとする。

 

「暁、指を狙って!!」

 

霊夢の合図で暁がエリュシオンの真上に飛び上がり、言う。

 

「分かりました姉さん!『我はの王ロキなり』。ロックオンレーザー!!」

 

そう言うと彼はエリュシオンの真上から紫色の極太レーザーを放った。真上から放たれたレーザーはエリュシオンに直撃する。レーザーと放った暁はユニ達の元へ後退する。と、ユニがスペルカードを発動した。

 

「もう2回も同じ手は御免よ!剣符『アームストライク』!!スピアザグングニル!!」

 

そう言った瞬間、ユニの手元に紫色の槍、グングニルが現れたかと思うと彼女はそのまま柱に向かって投げた。彼女の投げたグングニルは柱に命中し、ヒビが入った瞬間、ガラガラと音を立てて崩れ始めた。それを見た九十九が彼女に言う。

 

「なるほど、因果の法則を使われないように柱を壊したのか。」

 

「そうよ、あれやられたら私達どうしようも出来ないからね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、意外とやるじゃない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言が聞こえたかと思うと崩れた柱によって起こった砂埃の中からエリュシオンがゆっくりと歩み寄る。それを見た楓が言う。

 

「まぁ、これで倒せたら誰も苦労しないか・・・。」

 

「奴は世界を破壊してる存在です。最後まで油断出来ません。」

 

暁が言うとエリュシオンはニヤリと不気味な笑みを浮かべて口を開く。

 

「闘神《あの子》達の力は対策されてしまってるようね。なら私の力で相手してあげる。今のはほんのウォーミングアップの一部に過ぎない。」

 

「随分と強がってんな?何かあるって言うのか?」

 

影裏が話す中、九十九が口を開いた。

 

「ここからは洒落にならないレベルになるから気をつけろ。それとエリュシオン、アンタに質問なんかしたくないが聞きたいことがある。」

 

「・・・?」

 

「アイツらはどこだ?まさか役に立たなくて捨てた、あるいは食い殺したなんて言わねぇよな?」

 

「九十九、どういうこと?アイツらってのは?」

 

「僕が代わりに答えよう。」

 

霊夢の問いに答えたのは琥珀だった。そして言う。

 

「奴に仕えている連中さ。彼らはとんでもない霊力を携えていてこの戦いにいたら厄介だと思っていたんだけど見当たらないね・・・。」

 

と、エリュシオンが口を開いた。

 

「あの子達はねぇ、あの子達の果たすべき使命の為に別のことを任せてるの。あの子達も私の大切な家族、見捨てたり食い殺したりなんてするわけない。」

 

そう言うと彼女はすっと一呼吸置き、手のひらにスライムを乗せて言う。

 

「ここからは私の戦いよ。闘神達を攻略出来たなら今度は私を攻略してみなさい?」

 

 




闘神達の力を攻略することができたユニ達。しかし、戦いはこれから苛烈さを増していく・・・。
次作もお楽しみに!


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第171話 驚愕する力

闘神達の力を攻略したユニ達はエリュシオンの力に立ち向かう。


図書館の空間が消え、雨が明けた世界でエリュシオンは表情変えることなくユニ達を見る。と、エリュシオンがスペルカードを何枚か取り出して言う。

 

「私にはいくつかのスペルカードがある。その中からアンタ達に好きなカードを選ばせてあげる。」

 

「・・・ハンデをくれるのかい?随分とお優しいじゃないか。」

 

彼女の言葉に琥珀が言う。そんな彼にエリュシオンが言った。

 

「どうせ表の奴らは総力戦で(ここ)にきてるんでしょ?全てスペルカードを使うのは勿体無いからね、最低限で使わせてもらうわ。」

 

そう言った瞬間、九十九が口を開いた。

 

「お前、何を企んでいる?スペルカードを最低限だと?何か切り札があるってのか?」

 

「ククク、さぁそれはどうでしょうね?」

 

そう言うと彼女は一枚のスペルカードを取り出し、発動しながら言う。

 

「倍速『クロックアップ』、まずはこれで小手調べよ。」

 

そう言った瞬間、彼女の姿が一瞬にして消えた。

 

「き、消え・・ぐあっ!!」

 

続きを言おうとした瞬間、楓は目に見えない速さの何かによって殴り飛ばされた。

 

「楓ちゃん!?きゃあ!!」

 

「大丈夫か楓・・ぐっ!!?」

 

「ぐはっ!」

 

「ゲホッ!!」

 

立て続けにユニ、九十九、琥珀、魔理沙がとてつもない速さの何かによって攻撃を受け、軽く吹っ飛ぶ。

 

「くそっ、目で追えねぇ!!ぐあっ!」

 

「速すぎる、どうなってんだ。ぐはっ!!」

 

「クロックアップ・・・これはかの仮面ライダーの・・ぐぅぅっ!」

 

「弾幕じゃ当たらないわ!きゃあ!!」

 

「おっと危ねぇ!!」

 

続いて悠岐、影裏、暁、霊夢が攻撃を喰らう中、百々のみその速さに対応することができ、攻撃を防いだ。とてつもない速さで動いていたのはエリュシオンであり、彼女はユニ達の数メートル前に背を向けて止まる。

 

「おい百々、今のどうやって防いだんだよ。見えなかっただろ!」

 

「いや俺もわかんねぇよ。けど、なんとなくこのタイミングで防がなきゃって思ったんだ。」

 

「やっぱり、体は覚えているみたいね?」

 

魔理沙と百々が話しているところへエリュシオンが笑みを浮かべて言った。と、霊夢が口を開く。

 

「記憶を奪われても体は戦い方を覚えている。これは百々に頼りながら戦うしかないわね。」

 

「百々君だけに頼ってると逆にそれを狙われる可能性があります姉さん。気をつけて行動しましょう。」

 

「えぇ、そうするしかないわね。」

 

霊夢と暁が話している中、悠岐と楓が刀を構え、エリュシオンに向かっていく。

 

「これでも!」

 

「くらえ!!」

 

そう言って二人は刀を横に向けてエリュシオンを薙ぎ払おうとする。二人の剣捌きを見て彼女はふわっと飛び上がり、なんと二人の刀の隙間を掻い潜って攻撃を避けたのだ。

 

「何っ!?」

 

「マジかよオイ!」

 

悠岐と楓が驚きの声を上げる中、霊夢と魔理沙とユニがエリュシオンに向かってスペルカードを発動する。

 

「こんなんじゃ終わらないわよ、霊符『夢想封印』!」

 

「私だって!彗星『ブレイジングスター』!!」

 

「私はシンプルな弾幕攻撃で!!」

 

3人が同時に放った攻撃はエリュシオンの元へと向かっていく。それを見た彼女は咄嗟に飛び上がり、攻撃を避ける。

 

「そこだ。文字よ!」

 

「姉さん力お借りします!『封魔針』!」

 

「俺も借りるぞ!再現『封魔針』!」

 

「逃げ道ねぇように銃弾で閉じ込めてやる!」

 

「影裏に協力する!ラウンドフラッシュ!!」

 

エリュシオンの避けた方向へ琥珀、暁、百々、影裏、九十九が一斉に攻撃を放った。

 

「同時攻撃かぁ、いいわね。」

 

そう言いながらエリュシオンは5人の放たれた攻撃を見続ける。5人の放たれた攻撃はそのままエリュシオンに命中する。命中した場所からは爆風がユニ達に飛んでくる。

 

「やってはないけどまぁまぁダメージは与えられたんじゃないかな?」

 

「・・・そうだと嬉しいけどな。」

 

琥珀と影裏が話している中、爆風によって起こった砂埃の中からゆっくりと無傷のエリュシオンが姿を現した。

 

「やっぱり無理だよなぁ。」

 

「あれだけの攻撃を喰らって無傷とは、何かスペルカードを使ったのか?」

 

「いいや、使ったようには見えなかったわ。普通に耐えただけなのかしら・・・。」

 

九十九、楓、霊夢が話している中、エリュシオンが服をパタパタと軽く叩いて埃を落とす。そして口を開いた。

 

「正直アンタ達との戦いにスペルカードなんて使う必要ないって私は思っているわ。」

 

「なんだと!?」

 

「けれど、私自身が正々堂々と勝負するって言ったのだから使うしかないのよ。」

 

そう言うとエリュシオンは声を上げる悠岐達に向かって3枚のスペルカードを取り出し、再び言う。

 

「この3枚のスペルカードを使ってアンタ達全員を再起不能まで追い込んであげる。覚悟しなさい?」

 

そう言って彼女は3枚ある内の1枚を取り出す。

 

「気をつけろ、何か来るぞ。」

 

百々の掛け声と共にユニ達は身構える。そんな彼女達とは別にエリュシオンはスペルカードを発動する。

 

「絞首『土蜘蛛の糸』」

 

スペルカードを発動するとエリュシオンは左手を広げ、指先をユニ達に向ける。その瞬間、彼女の指先から2本ずつ蜘蛛の糸のようが伸びてきたかと思うとそれは勢いよくユニ達の元へ行き、彼女達の首に絡みついた。

 

「がっ!!?」

 

「な、何よっ、これっ!!」

 

「と、取れないぜ!!」

 

「クソッ、燃えない!?」

 

「斬れないだと!?ぐっ・・・。」

 

「こうなったら無理矢理・・・と、とれねぇ!?」

 

「く、苦しい・・・。」

 

「くっ、早く解かないと・・・。」

 

「文字・・・ぐっ、苦しくて、思うように力が、入らないね・・・。」

 

「クソッ、なんだよこれ!!」

 

ユニ達が各々の方法で糸を解こうとするが解ける様子はない。そんなユニ達にエリュシオンが口を開く。

 

「土蜘蛛は人間の首を狙う習性がある。それを元に私が作ったスペルカードよ。ちなみに、これだけじゃ終わらないわよ。」

 

そう言うと彼女は左手を上に上げる。それと並行してユニ達の体が宙に浮かび始め、宙吊りの状態にされる。宙吊りにされ、苦しむユニ達とは別にエリュシオンは左手の指を軽く動かす。それと同時にユニ達の体がぶつかり合う。

 

「ぐあっ!!」

 

「うおっ!!」

 

最初に霊夢と魔理沙の体がぶつかり、糸から解放される。

 

「うあっ!」

 

「ぐはっ!」

 

続いて悠岐と百々の体がぶつかり、解放される。

 

「ぐっ!!」

 

「ゲホッ!!」

 

次に楓と九十九。

 

「うわぁ!!」

 

「グハッ!!」

 

二人に続いて暁と影裏。

 

「きゃあ!!」

 

「ぐあっ!!」

 

最後にユニと琥珀の体がぶつかり合い、糸から解放されて地面に落ちる。ゆっくりと起き上がるユニ達とは別にエリュシオンはクスクスと笑いながら口を開く。

 

「ちょっとちょっと、こんなのでくたばってたら私なんて倒せる訳ないじゃない。もっと楽しませなさいよ〜。」

 

挑発するかのように言うエリュシオンの右手の人差し指の先からは紫色の光が集まりつつあった。そんな彼女に魔理沙が言う。

 

「ふざけるんじゃねぇ!!私達は、こんな程度で負ける訳ないぜ!!勝負はここからだ、覚悟しろエリュシオン!!」

 

「アハハハハ、笑わせてくれるわねぇ。その態度だけは本物のようね。けど、実力がなってないわよ!!」

 

そう言ってエリュシオンは指先に溜めていた光を魔理沙に向ける。それを見た瞬間、霊夢が声を上げる。

 

「魔理沙危ない!!」

 

そう言うと彼女は魔理沙を突き飛ばして防御体制に入る。

 

「霊夢!!」

 

彼女の名を言う魔理沙。そんは二人とは別にエリュシオンはニヤリと笑みを浮かべて言う。

 

「最初から狙いはアンタだったのよ、博麗霊夢。アンタのことだから友人は見捨てられる訳ないわよねぇ?」

 

そう言って彼女は紫色の毒々しいレーザーを霊夢に向けて放った。

 

「え、私?」

 

エリュシオンの言葉を聞いて霊夢は思わず目を見開き、呆然としてしまう。

 

「姉さん!!!」

 

呆然としてしまった霊夢を見て暁は彼女に覆い被さるようにレーザーに背を向けて彼女を抱き寄せる。そしてそのまま暁は毒々しいレーザーを背中で受けてしまう。

 

「ぐぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「暁!!!」

 

はっと我に返った霊夢は彼の名を言う。

 

「暁君!!」

 

「おい暁!!」

 

彼女に続いてユニ、百々が彼の名前を言う。そんな中、暁は霊夢を抱きながら言う。

 

「ぐぅぅぅ・・・問題ない、ですよ姉さ、ん。私に、幻想は通じませんので。」

 

そう言っている間に毒々しいレーザーが消えた。レーザーを受け切った暁は霊夢を放した。それを見た琥珀が感心しながら言う。

 

「毒レーザーをまともに喰らって毒状態にもならず平然としてるなんてね、彼の能力は本当に凄いね。」

 

「助かったわ暁。怪我はない?」

 

「えぇ、大丈夫ですよ。姉さんこそ、怪我はありませんか?」

 

「私は大丈夫よ。暁がいなかったらわた、!!?」

 

話の最中で霊夢は言葉を詰まらせ、目を見開く。

 

「どうしました、姉さ・・!?」

 

彼女を心配した暁が声をかけようとした時、既に彼の背後にエリュシオンが背を向けて立っていた。そんな彼女の右手にはスライムが変形したであろう刀が握られていた。と、エリュシオンが言う。

 

「そんな呑気に話している暇があるなら、自分が狙われてるかもっていうことを考えたほうがいいわよ?魄霊暁。」

 

そう言った瞬間、暁の喉元から勢いよく血が飛び散る。

 

「ガ、ハッ・・・」

 

喉元から飛び散る鮮血が霊夢の顔に飛び散る。

 

「・・・え?」

 

何が起こったのか分からず唖然とする霊夢とは別に暁はそのまま地面に倒れる。

 




突如喉元から血が飛び散り、倒れる暁。一体何が・・・?
次作もお楽しみに!


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第172話 絶望

エリュシオンとの交戦の中、霊夢を庇った暁が突如喉元から血を流し、倒れてしまう・・・。


「暁!!!」

 

倒れた彼の名前を叫ぶ魔理沙。と、影裏が汗を流しながら言う。

 

「何が起こったんだ?何故アイツの首から・・・まさか、土蜘蛛の糸の力か!?」

 

「生憎と、私の土蜘蛛の糸にそんな効果はない。」

 

考察する影裏にエリュシオンが言う。そして喉元から血を流して必死に空気を取り込もうとする暁に目を向けて口を開く。

 

「アンタはどうせ姉思いだから庇うことは読めていたわ。そして他の子を狙ってはすぐに動かないのも分かっていた。だから霧雨魔理沙を狙うフリして博麗霊夢を狙う、これもフェイクにしてアンタを狙ったのよ?確かアンタは嘘を現実にする的な感じの能力なんだっけ?なら嘘がつけないよう喉を斬らせてもらったわ。あえてすぐに死なないように、長く苦しむように調整したけどね。」

 

そんな中、琥珀が彼に近づき、言う。

 

「こりゃ酷いね。すぐに治してあげないと。」

 

暁の傷を治そうと琥珀が文字を浮かべようとした時だった。突如銃声が響いたかと思うと文字を浮かべようとした琥珀の本の翼と右腕に銃弾が貫いた。

 

「・・・え?」

 

あまりの速さに状況を把握できない琥珀。そんな彼の撃ち抜かれた右腕から血が垂れ始める。そんな彼にエリュシオンが勢いよく近づき、頭を掴んで地面に叩きつける。

 

「ぐあっ!!き、君もがっ!!?」

 

彼女に言おうとした琥珀であったが突如口の中に何かを詰められて言葉を遮られてしまう。すぐに吐き出そうとする琥珀であったがエリュシオンは頭を地面に抑えたまま何処からか取り出した鎖を彼の口、手足に縛りつけ、話せず身動きも取れない状態にした。

 

「ン〜!!」

 

暴れて振り解こうとする琥珀だがキツく縛られているのか、自力で解くことはできなかった。そんな彼にエリュシオンが離れ、言う。

 

「文字を操る、それがアンタの能力。下手に殺せばアンタは妖精だからすぐに蘇る。だから敢えてアンタを殺さず、文字を操れないようにしたわ。頼れる二人がいなくて大変ねぇ。」

 

そう言う彼女はユニ達を見下すような目で笑みを浮かべる。そんな彼女を見た百々が握り拳を作り、言う。

 

「・・・ふざけんじゃねえ!!!」

 

そう言うと彼は勢いよくエリュシオンに向かっていく。それを見た霊夢が口を開きながら彼の後を追う。

 

「奴は任せたわ百々!私は暁と琥珀を助ける!!」

 

彼女の言葉を聞いた百々はコクリと頷き、エリュシオンに拳を向ける。

 

「これでも食いやがれ!!鬼の全力の拳じゃぁぁぁぁい!!!」

 

そう言って彼は渾身のパンチをエリュシオンにぶつける。しかし彼女はそんな彼の渾身の一撃をなんと右手の指一本で受け止めてしまった。

 

「な、にっ!!?」

 

「百々、数千年前にも言った筈よ。怒りに身を任せてぶつける拳は大した力にならないって。それにね、」

 

そう言いながらエリュシオンは彼女を横切ろうとする霊夢に軽く目を向ける。そして再び言う。

 

「私は何億年と色んな奴らを見てきたけど、こんなのでどうにか戦況を覆せると思ってるの?」

 

そう言う彼女の左手には銃が握られており、銃口からは紫色の毒々しい光が漂っていた。そしてその銃口は霊夢に向けられていた。

 

「え?」

 

「マズイ、霊夢!!」

 

咄嗟に霊夢の名を叫ぶ百々であったが遅く、銃口に漂っていた毒々しい光はレーザーとなり、そのまま霊夢に直撃した。

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

レーザーをまともに食い、叫び声を上げた彼女はそのまま数メートル転がり、地面に倒れた。

 

「霊夢!!!」

 

思わず彼女の方を見て叫んでしまう百々。

 

「バカ百々、油断すんな!!」

 

咄嗟に叫ぶ楓。それを聞いてはっとなった百々はすぐにエリュシオンの方を見るがその時、既にエリュシオンの足の甲が彼の目の前にあり、そのまま彼女は百々の頭を蹴り飛ばした。あまりの強さに百々の首は胴体から吹き飛んでしまう。頭が無くなった百々の体はヨロヨロと地面に崩れる。

 

「博麗霊夢、幻想郷でその名を知らない者はいない。アンタは大した修行をしてないみたいね?かつての先代が見たらさぞ呆れるでしょうね。」

 

「お前、百々に対して色々思ってるんじゃなかったのかよ!!」

 

思わず声を上げる魔理沙。そんな彼女にエリュシオンが口を開く。

 

「お生憎、今の百々は好きになれない。だから頭を吹っ飛ばしても何も心は傷つかない。」

 

そう言うと彼女はニヤリと不気味な笑みを浮かべる。

 

「そんなの、ただの自分勝手じゃねぇかよ!!」

 

そう言いながら影裏はブツブツと詠唱を唱え始める。と、詠唱を唱えようとした彼の背後へエリュシオンが瞬時に移動したかと思うとそのまま彼の首に腕を回し、そのまま首を締め上げる。

 

「ガッ・・・。」

 

彼女の拘束から逃れようと影裏は必死に抵抗するが鉄のように固く、放すことができない。と、エリュシオンが彼の耳元で囁く。

 

「倒すべき相手に何も抵抗できずにやられていくのはどんな気持ち?」

 

そう言った瞬間、辺りにゴキっという鈍い音が響いたかと思うと影裏のエリュシオンの腕を掴む両手がだらんと垂れる。

 

「影裏!!」

 

彼の名を叫ぶ悠岐。そのまま影裏は地面に倒れる。そんな彼とは別にユニと楓がエリュシオンに向かっていく。

 

「いい加減にしなさいよ!!」

 

「仲間をこんな目に遭わせるなんて、絶対に許さない!!」

 

そう言う二人の目には怒りが宿る。そんな二人に彼女が笑いながら口を開いた。

 

「アッハハハハ!!何が仲間ですって?自分のことも守ることのできないアンタ達が言えることなのかしらねっ!!」

 

そう言うと彼女は左手に持っていた拳銃を刀に変化させるとそれを二人に振り下ろす。

 

「ユニ、楓、危ないッ!!!」

 

何か危険なことを察知した悠岐は咄嗟に二人を突き飛ばし、刀を構える。刀を振り下ろそうとしていたエリュシオンは既に彼の背後におり、刀を下ろしていた。そして言う。

 

「アンタが1番いい例ね、西田悠岐。アンタは他人は守れても自分を守ることが出来ないみたいだから。」

 

そう言った瞬間、悠岐の体のあらゆる場所から血が飛び散り始めた。そのまま悠岐はゆっくりと地面に倒れる。倒れゆく彼にエリュシオンは再び口を開く。

 

「これが嘗て幻想郷を破滅の危機から救った英雄とは、聞いて呆れる。アンタは誰かを庇い、自らを捨てことしか頭が無かった。だから防御面が疎かになってこんな目に遭うのよ。敵にアドバイスしてあげる私に感謝するといいわ。」

 

ニヤニヤしながら言うエリュシオンとは別に楓とユニが勢いよく向かう。

 

「何が感謝よ!!」

 

「粉々に斬り刻んでやる!!」

 

二人の猛攻を見たエリュシオンはまず楓の振りかざす刀の太刀を右手の指2本で受け止めると、勢いの止まらないユニの腹に回し蹴りを叩き込む。

 

「ガッ!!」

 

腹を蹴られた勢いでユニは吐血し、勢いよく吹き飛んだ。

 

「ユニ!!ぐっ!?」

 

彼女の名を叫ぶ楓にエリュシオンは頭を掴み、口を開く。

 

「アンタの力、どんなものなのか見せてみなさい。」

 

そう言うと彼女は懐からリンゴのようなものを取り出すとそれを楓の頭に押し付けた。

 

「がぁぁぁぁぁ!!?」

 

その瞬間、リンゴに吸い寄せられるかのように楓の体に宿る霊力が吸われていく。彼女はリンゴから離れようとするがエリュシオンが彼女の足を踏みつけ、逃げられないようにする。

 

「あ、あぁ・・・。」

 

逃げることのできなくなった彼女はそのまま脱力し、倒れてしまう。リンゴを見ながらエリュシオンは再び口を開く。

 

「うーん、まだまだ解放するには程遠い霊力ね。悪くはなけど。」

 

そう言う彼女に向かって数多の星々が放たれた。それを見たエリュシオンは容易くかわし、放たれた方向を見て言う。

 

「ちょっと、鑑賞の邪魔をしないでよ。」

 

そう言う彼女の見つめる方向には息を切らし、カタカタと震えながら箒に跨り、宙に浮く魔理沙がいた。と、魔理沙が言う。

 

「よくも・・・よくも私の大切な仲間達をこんな酷い目に遭わせてくれたな!!お前だけは、何がなんでも絶対に許さない!!!」

 

「アッハハハハ!!何を強がっているの?自分に正直になりなさい、本当は私が怖くて仕方ないんだって。」

 

エリュシオンが言った瞬間、魔理沙はギリッと歯を食いしばり。目を見開かせて叫んだ。

 

「調子に乗るな!!彗星『ブレイジングスター』!!」

 

スペルカードを発動した彼女は勢いよくエリュシオンに向かっていく。放たれる弾幕を避けながらエリュシオンが言う。

 

「頑張っているのは認めてあげる。けど実力の差がありすぎる。そんなの、私に当たったところで大したダメージにはならないわ。」

 

そう言うと彼女は弾幕を避けながら黒いスペルカードを取り出し、再び言う。

 

「折角だからアンタにもう一枚のスペルカードを使ってあげる。」

 

そう言った瞬間、彼女の持つ黒いスペルカードが黒く禍々しく光り始めた。

 

「黒渦『ギャラクシー・フィニッシュ』」

 

その瞬間、彼女の前に黒い渦が現れたかと思うとエリュシオンはその中に入り、一瞬にして渦と共に姿を消した。

 

「なっ、何処だ!?ええっと、こういう時は・・・。」

 

そう言って魔理沙は後ろを振り返り、そこれミニ八卦路を向けて再び言う。

 

「大体後ろから出てくるのが定番だぜ!!」

 

そう言った瞬間、後ろを見る彼女とは別に正面から黒い渦が現れたかと思うとそこからエリュシオンが姿を現した。そして言う。

 

「残念、正面でした。」

 

「げっ、そっちかよ!!」

 

咄嗟に彼女から距離を取ろうとするが急にエリュシオンに引き寄せられてしまい、逃げられなかった。そんな彼女にエリュシオンが言う。

 

「誰もこの黒渦(ブラックホール)からは逃れられない。」

 

そう言いながら彼女は紫色の光を右手の握り拳に漂わせる。そしねそのまま拳を彼女にぶつける。強力な一撃を食らった魔理沙は勢いよく地面に叩きつけられ、大量の砂埃が舞う。ゆっくりと地面に降りたエリュシオンは一人の少女を見て言う。

 

「さぁ、残るはアンタだけよ。星熊九十九。」

 

そう言う彼女よ目線には一人スマホを持って立ち尽くす九十九の姿があった。そんな彼女にエリュシオンが再び口を開く。

 

「アンタはゆっくり私の手で殺してあげる。無謀な爆絶級の高校生達と同じようにしてあげるわ。」

 

「・・・掛かってこいよ、今の私は昔とは違うってことを見せてやる。」

 

 




絶望的な力で一瞬にして戦闘不能にされてしまったユニ達。九十九に勝機はあるのか!?
次作もお楽しみに!


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第173話 エリュシオンvs九十九

圧倒的な力で戦闘不能にされたユニ達。残ったのは九十九ただ一人・・・。


九十九とエリュシオンが対峙する中、よろよろと体を起こして辺りを見つめるユニが呟く。

 

「そんな・・・一瞬で、こうなるなんて・・・ウッ!!?」

 

そう言うと彼女はその場で咳き込みながら血を吐いてしまう。そんな彼女とは別に九十九はスマホを掲げて言う。

 

「見せてやるよ、あの時とは違うことをな!!」

 

そう言った瞬間、彼女の周りに赤、青、緑、黄色、そして紫色のスマホが辺りを漂い始めた。それを見たエリュシオンは目を細めて言う。

 

「愚かな、アンタの為にわざわざ力を解放するために必要な道具を託すなんてね。これだから仲間ってのは嫌いなのよ。」

 

「嫌いなら見せてやるよ。仲間ってのがいかに大切な存在だってこともな!」

 

そう言うと水色のスマホが九十九の手元に届くと彼女の姿がかの爆絶級の高校生、『蓬莱』の力を解放したような姿へと変化した。そして再び口を開く。

 

「蓬莱より借り受けたこの力でお仕置きよ。」

 

そう言った瞬間、彼女は辺りにレーザーを放ったと同時に扇型の弾幕をエリュシオンに向けて放つ。

 

「蓬莱の力か。そんな小細工では私には程遠いわね。」

 

「いいや、そんなものじゃないわ。」

 

そう言うと九十九の放ったレーザーが地面や付近になった大きな岩に反射してエリュシオンに再び向かっていく。

 

「・・・反射クロスレーザー、まさかこんな地面や岩で反射させてくるなんてね。」

 

そう言いながらエリュシオンは反射するレーザーを容易く避けてみせる。その避けた背後に九十九が瞬時に移動する。

 

「え、はや・・・。」

 

そう言うエリュシオンだが既に九十九は緑色のスマホを手にしていてかの天才女子高校生探偵、メルを模した姿へと変化していて口を開く。

 

「スピードなら自信があるわ。この距離でこれを受けたら一溜まりもないでしょ?」

 

そう言うと彼女はエリュシオンの目の前で緑色の玉のようなものを9方向に放つ。

 

「うわっ、これは無理よ!!」

 

そう言いながら後退してダメージを軽減しようとするエリュシオンであったが避けきれなかった攻撃が右腕に命中し、緑色の跡が点々と残ってしまっていた。そんな彼女とは別に九十九が口を開く。

 

「まだまだ行くわよ!カナン!!」

 

そう言うと彼女は紫色のスマホを手に取るとかの有名JK漫画家を摸した姿へと変化した。そして叫ぶ。

 

「カナンだけは唯一アンタに殺された!だからこの力でアンタを殺す!!」

 

そう言って九十九は距離を取るエリュシオンの周りにマーキングを飛ばす。そしてマーキングされた場所はレーザーを放った。

 

「ちょちょちょ!随分と立て続けにくるわね!」

 

慌てるふりをしているのか不明だがエリュシオンの表情が少し焦っているように九十九は見えた。そのまま立て続けに九十九は攻撃を続ける。

 

「まだまだいくわよ、次元斬!!」

 

何もない場所から斬撃が現れたかと思うとそれはエリュシオンの左肩を切り裂いた。

 

「チッ・・・。」

 

思わず舌打ちをするエリュシオン。そんな彼女に九十九が口を開いた。

 

「どうしたの?さっきまでの威勢は何処に行ったの?」

 

「フン、随分とやってくれるじゃない。」

 

そう言いながら彼女は笑みを浮かべる。そんな彼女に九十九が黄色いスマホを取り出して言う。

 

「まあいいわ、あなたを追い詰めることができてるし。次行くわよ!」

 

そう言った瞬間、着くとは仮面を被って怪盗を模したような姿へと変身した。そして左手に鉤爪のようなものを取り付け、エリュシオンに向かっていく。

 

「黄金の怪盗、か・・・。」

 

そう言うと彼女は右手に持っていた銃を剣へと変化させて九十九に向かっていく。そのまま二人は鉤爪と剣を打ち合う。

 

「くっ、(一撃一撃の斬撃が速いし重い!このままじゃ・・・。)」

 

「フン、そんなちっぽけな鉤爪で剣に勝とうなんて思わないでちょうだい!!」

 

若干九十九が押され、体の所々から防ぎきれず避けきれなかった斬撃により血が流れ始める。だがそんな中でも九十九は集中力を切らさずにいた。

 

「ここだ、もらったぁ!!」

 

そう言うと彼女は鉤爪を思い切り振り翳した。その瞬間、エリュシオンの左腕が肩の付け根からそのまま吹っ飛んだ。左腕を失った箇所から血が飛び散る。

 

「ぐっ!!?」

 

思わず後退してしまうエリュシオン。そんな彼女とは別に九十九は赤いスマホを手に取り、言う。

 

「勝負あったわね、これで終わりよ!!」

 

そう言うと彼女の体に赤いパワードスーツのようなものが装着されたかと思うと彼女が4人に分身した。そしね叫ぶ。

 

「くらえ、『エト・イン・アルカディア・エゴ』!!」

 

そのまま負傷したエリュシオンに向かって4人の九十九が向かっていく。と、その時だった。突如辺りの時空が歪み始めたかと思うと九十九の動きが完全に停止してしまった。動きが止まったのは九十九のみならず負傷して戦闘不能状態になっているユニ達も同じだった。そんな中、1人動くことのできる存在、エリュシオンはゆっくりと口を開いた。

 

「停止『ザ・ワールド』。時は停止した。」

 

そう言うと彼女は持っていた剣を再び銃に変化させると停止している4人の九十九に向かって2発ずつ発砲した。発砲された銃弾は九十九の体に直撃する寸前で止まる。

 

「時は動き始めた。」

 

そう言った瞬間、止まっていた時間が動き始めたかと思うと時間を停止している間に発砲していた銃弾2発が九十九の左足、右肩を捉えていた。

 

「ぐうっ!!?」

 

何が起こったのか分からない九十九は勢いを止め、その場に崩れる。残りの3人は分身であったためか、銃弾を浴びた瞬間、消えてしまった。

 

(い、一体何が起きたの?奴は負傷していて無防備だった筈・・・。)

 

色々考える九十九とは別にエリュシオンは落ちている左腕を拾って言う。

 

「私さっき言わなかったっけ?アンタら全員は3枚のスペルカードで全員終わらせるって。だから3枚目のスペルカードを使わせてもらった、ただそれだけよ。」

 

そう言うと彼女はなんと自分の千切れた左腕に食いついたかと思うとそのまま食べ始めたのだ。

 

「!!?」

 

それを見た九十九、及びユニは思わず目を見開いた。自分の腕を食べるエリュシオンの服や口周りには自分自身の血が付着する。そしてあっという間に左腕を食べ終えてしまった。

 

「そ、そんな・・・。自分を食べるなんて・・・。」

 

「こんなの、聞いてないわ・・・。」

 

「あら、これだけじゃないわよ。」

 

驚くユニ、九十九とは別にエリュシオンは口を開いた。その瞬間、彼女の左肩辺りから紫色の光が漂い始めたかと思うとどんどん左腕を形成していき、そのまま左腕が再生したのだ。

 

「なっ、そ、そんな・・・。」

 

衝撃の展開に唖然とする九十九。そんな彼女とは別に左手を開いたら閉じたりして動きを確認したエリュシオンは九十九を見て不気味な笑みを浮かべて言う。

 

「これが禁断の果実の力。たかが腕一本無くなったところでどうといえことはないわ。それに、他の傷まで癒えてしまうからね。」

 

そう言うと彼女は右肩を左手でトントンと軽く叩く。先程次元斬で切り裂いた彼女の右肩の傷はいつの間にか癒えていた。

 

「腕を吹っ飛ばしてしまったことが誤算だったようね。」

 

そう言った瞬間、彼女の姿が一瞬にして消えたかと思うと九十九の目の前に瞬時に移動しており、そのまま呆然とする彼女を蹴り飛ばした。

 

「ガハァ!!」

 

腹を勢いよく蹴り飛ばされた九十九は体をくの字にして吹っ飛び、数メートルのところで地面に倒れる。そんな彼女にエリュシオンがゆっくり近寄りながら言う。

 

「これで私を倒す?笑わせんじゃないわよ。その程度で私が負けてたら裏の世界の現世や幻想郷なんて滅んでないわ。」

 

そう言って地面に蹲る九十九を見たエリュシオンは彼女に馬乗りになったかと思うと、

 

「ガッ!?」

 

そのまま空いている左手で彼女の首を掴み、締め上げる。そのまま彼女は首を絞めながら口を開いた。

 

「アンタは弱い。弱いが故に何も守れやしない。だからあの高校生達を見捨てて逃げることしか出来なかったのよ。」

 

「ググ・・・。」

 

彼女の腕から解放しようと九十九は抵抗するが馬乗りになっているのと絞める力が強く離れない。そんな中、ヨロヨロとなりながらユニは辺りを見回し始める。

 

「れ、霊夢・・・。」

 

霊夢は先程受けた毒レーザーの影響でうまく立ち上がることが出来ず、到底戦える状況ではなかった。

 

「魔理沙・・・。」

 

魔理沙はギャラクシー・フィニッシュの影響で体全体にダメージを覆ってしまい、立ち上がることすら出来ない。

 

「ゆ、悠岐君・・・。」

 

悠岐は楓とユニを庇った影響で体から血が流れ、起き上がる様子がなかった。

 

「楓ちゃん・・・。」

 

楓は霊力を吸収されたせいか、力を振り絞ることが出来ずにいた。

 

「百々君・・・。」

 

百々は頭を吹っ飛ばされ、完全に戦闘不能。もう戦えるようではない。

 

「琥珀、君・・・。」

 

琥珀は手足を縛られ尚且つ口の中に何かを詰められ、彼自身ではどうしようもない状況にあった。

 

「暁、君、えい、ら、君・・・。」

 

暁はエリュシオンによって喉元を切られ、必死に空気を取り込もうと必死に呼吸しており、影裏も同様で必死に呼吸を行っていた。

 

「九十九、ちゃん・・・。」

 

そして九十九。彼女はエリュシオンの拘束から逃れられず、遂には彼女の手首を掴む手がだらんと落ちてしまう。

 

「こんな・・・こんなこと、って・・・。」

 

そう言いながらなんとかスペルカードを取り出し、発動しようとするユニ。だが、

 

「うっ、ゴホッ!?」

 

内臓へのダメージの蓄積か、彼女は再び血をその場で吐いてしまう。仲間が殺されそうな状況で何もすることのできない屈辱感に、ユニの目から涙が溢れ始める。そんな彼女とは別にエリュシオンは右手に持っていた銃をスライムに戻すと握り拳を作り、振り上げる。

 

「終わりよ、星熊九十九。」

 

そう言うとそのまま彼女の右拳が九十九に振り下ろされる。九十九はそのまま目を閉じて死を覚悟した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・筈だった。しかし九十九にはエリュシオンの拳は振り下ろされない。恐る恐る九十九は目を開くとそこには右拳を振り下ろそうとするエリュシオンの右手首を1人の女性が掴んでいたからだ。ゆっくりと後ろを振り返りながらエリュシオンが口を開く。

 

「・・・何、今度はッ!!?」

 

話そうとした瞬間、エリュシオンの顔に強烈なパンチが叩き込まれ、そのまま彼女は勢いよく吹っ飛び、近くの岩に衝突し、砂埃を舞い散らせる。

 

「ゴホッ、ゴホッ・・・ユニ、なの?」

 

「え、私じゃ、ない・・・?」

 

空気を取り入れながら九十九はユニに問うが彼女は否定する。そんな2人とは別に女性が口を開く。

 

「情けないねぇ、本当に。」

 

その女性は長身で金髪の長い髪、赤い目に両腕に鎖をつけていて頭には一本の角を生やしていた。女性は九十九を見てニコッと笑うと吹っ飛んだエリュシオンの方向を見て真剣な表情に変え、再び言う。

 

「アタシの大切な娘に何手を出してくれるんだい?凶神(エリュシオン)さんよ?」

 

「か・・・母さん!!」

 

九十九を命の危機から救ったのは1人の鬼、星熊勇儀であった。




九十九のピンチに突如姿を現した勇儀。ユニの能力で呼び寄せていないのに一体・・・。
次作もお楽しみに!


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第174話 仲間と大軍

九十九の危機を救った勇儀。


「か、母さん!どうして・・・。」

 

突如現れた勇儀を見て九十九は思わず声を上げる。そんな彼女とは別に勇儀は九十九の頭に手を置いて言う。

 

「何言ってるんだい、娘の命を守るのが親の役目だろう?世界は違えどアンタはアタシの大切な娘なんだよ。」

 

その言葉を聞いた瞬間、九十九の目からポロポロと涙が溢れ始め、遂には泣いてしまう。そんな彼女を見て勇儀が口を開く。

 

「泣いてるんじゃないよ、アタシの娘だろ?アタシの娘なら強くならないと。」

 

そう言っている中、舞う砂埃の中から頭から血を流しているエリュシオンが笑いながら姿を現した。そして言う。

 

「やってくれるじゃない、星熊勇儀。親子揃って腹立たしい。」

 

「おやおや、あの一撃喰らってまだ余裕そうじゃないか。こりゃ恐ろしい存在だねぇ。」

 

「私の邪魔すんならすぐに捻り潰すわ。さぁ、掛かってきなさい。」

 

そう言うと彼女はスライムを剣に変化させるとその刃先を勇儀に向ける。それを見た勇儀は突如笑い出し、言う。

 

「アッハハハハ!!」

 

「・・・何がおかしいの?」

 

笑い出す勇儀を見てエリュシオンは眉を潜める。そして勇儀が再び口を開く。

 

「アハハハ、勘弁してくれよ凶神さん。お生憎だけどアタシはアンタと1vs1でやり合う気なんてさらさらないよ?なんせ、アンタが強すぎてアタシじゃ相手にならないからさ。」

 

「ふぅん、じゃあ降参するってことでいいの?」

 

「そういう訳じゃないさ。」

 

「じゃあどうするの?」

 

「すぐに分かるさ。」

 

勇儀がエリュシオンにそう言った時だった。突如スペルカードを発動する音が聞こえたかと思うと紫色の槍のようなものと炎で形成された剣、紫色の弾幕に大きな柱がエリュシオン目掛けて放たれたのだ。それを見たエリュシオンは咄嗟に後退して攻撃を避ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたわね。」

 

「お姉様、私も行くよ!」

 

「遅くなってごめんなさいね。」

 

「私達が来たならもう大丈夫だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声のする方向を見て九十九は彼女達の名前を叫ぶ。

 

「レミリア!フラン!紫!加奈子!」

 

彼女達の姿を見て思わず微笑む九十九。そんな彼女とは別にエリュシオンは4人を見て心の中で思った。

 

(傷がほとんど癒えている。恐らく八意永琳とゴールド・マーグルの治療によるもの。となると星熊九十九達もすぐに復帰してくる可能性が高い。速くて1時間、か・・・。)

 

そんなことを考えている彼女とは別に紫がユニの元へ降りる。そして彼女を優しく抱えて言う。

 

「よく頑張ったわね、ユニ。」

 

「ゆ、紫・・・。他の、人達、は・・・?」

 

「何心配してるのよ。あの現世の帝の策略よ?計画通りに決まってるじゃない。」

 

そう言うと彼女はある方向を見る。彼女に続いてユニも紫の見る方向を見る。そこには多少ボロボロになっている五大王、月の都の兵士達、そしてこの戦いに協力してくれた妖怪達が集まっていた。それを見て呆然となるユニとは別に兵士達の中からゆっくりと歩いてくる将軍、帝のセコンドがエリュシオンに笏を向けて口を開く。

 

「余の策略により幻獣達は壊滅だ。残りはエリュシオン、貴様だけだ!!」

 

そう言った瞬間、エリュシオンを囲むかのようにレミリア・スカーレット率いる紅魔館の妖精メイドやフラン達、白玉楼の西行寺幽々子や魂魄妖夢、迷いの竹林の藤原妹紅や上白沢慧音、月の都からの使者の綿月姉妹、そして五大王のゴールド・マーグル、メルト・グランチといった猛者達が集う。そんな中、1人の王、小宝剛岐が辺りに響くように叫んだ。

 

「医療班は怪我人の治療を最優先!!」

 

そう言った瞬間、ユニ達の元へそれぞれの人達が駆け寄る。霊夢の側に寄ってきたのは早苗だった。

 

「霊夢さん大丈夫ですか!?すぐに安全な場所へお連れします!」

 

「は、速く早苗・・・毒が・・・。」

 

霊夢は早苗の肩を借りながら兵士達のいる方へと向かっていった。魔理沙の元にはアリスが寄る。

 

「魔理沙大丈夫なの!?すぐに治療場に連れて行くわ!」

 

「ア、アリス・・・。」

 

そう呟くと魔理沙はゆっくりと目を閉じ、そのまま気を失ってしまった。それを見たアリスはすぐに人形達を使って魔理沙を運んで行った。悠岐、楓の元にはメルト・グランチが寄る。そして口を開く。

 

「随分と彼の状態が酷いな。息はあるのかね?」

 

「あるに決まってる、さ。」

 

「それと出野楓よ、あの少年は?」

 

そう言うとメルト・グランチは1人の少年を指差す。少年を見た楓はすぐに口を開く。

 

「影裏破紡。アラヤに雇われていてエリュシオンをたおすために来たらしい。」

 

「成程、アラヤ殿の使いか。なれば生かさねばならないようだな。」

 

そう言うと彼は指をパチンと鳴らす。その瞬間、彼の背後に1人の男が膝をついて現れた。その男にメルト・グランチが言う。

 

「彼を医療場に運びたまえ。」

 

「御意。」

 

そう言うと男は影裏を担いで医療場へと走っていった。それを見た楓はヨロヨロになりながらメルト・グランチの背に乗る。楓を背負ったメルト・グランチはそのまま倒れる悠岐を片腕で担いでそのまま医療場へと向かっていった。続いて琥珀。彼の元には太陽の畑の妖怪、風見幽香が近づいて彼に纏わりついている鎖の拘束を解いた。

 

「はぁぁ、やっと抜け出せた。ありがとう。」

 

「別に、これくらいどうってことないわ。私はすぐにでも奴と戦いたいのだから。」

 

そう言うと彼女は琥珀を後にしてエリュシオンの方へと向かっていった。

 

「僕は運んでくれないのかい!?」

 

「あなた大した傷を覆っていないじゃない。それくらい包帯巻けば十分よ。」

 

「お、おっしゃる通りで・・・。」

 

そう言うと琥珀は医療場へと向かっていった。最後に百々と暁。彼らの元にやってきたのは帽子を被った1人の男と1人の鬼だった。帽子を被った男、マーグルは暁を担ぐと頭のない百々を見つめる鬼の少女、萃香を見て言う。

 

「・・・悲惨な目に遭わされたな。」

 

「勿論、あいつは絶対に許さない。大切な息子をこんな目に遭わされたんだから。悪いけど光王さん、百々を頼んでいい?」

 

「任せな。そして行ってこい。」

 

そう言うとマーグルは百々をも担ぐとそのまま医療場へと向かっていった。それを見届けた萃香は紫の隣まで歩み寄る。そして口を開く。

 

「行くよ、あんな奴を生かしちゃおけない。」

 

「えぇ、そうね。」

 

そう言うと紫はスキマを展開させ、そこにユニを入れ込んだ。そのまスキマを閉じるとエリュシオンの方を見る。大勢の現世の者達に囲まれてもなおエリュシオンは笑みを浮かべたままでいた。そんな彼女にセコンドが口を開いた。

 

「諦めよ、もう貴様に味方する者はいない。」

 

「お生憎、私は幻獣達が突破されてしまうことも想定済み。だからこんなに囲まれても何とも思わないわ。」

 

そう言うと彼女は右手を上げて指をパチンと鳴らした。その瞬間、ゴゴゴと大きな音が辺りに響いたかと思うと鋼鉄城の巨大な扉がゆっくりと開き始めた。そしてその中から数多くの幻獣達が姿を現した。

 

「なっ、幻獣達はまだいるのか!!?」

 

「いいや、幻獣達だけじゃない!!」

 

妹紅が驚きの声を上げる中、慧音が扉の奥を指さして言う。奥からは幻獣達のみならず、様々な姿のドラゴン達や赤い髪を自在に変化させる少女達、リザードマンやオーク、ゴーレムを摸したような異形な怪物達が次々と姿を現す。それを見たセコンドが口を開く。

 

「奴め、ストライクワールドのモンスターやナイトメア達をも配下につかせたと言うのか!!」

 

「そう、私が与えた条件を呑んでくれてね。」

 

そう言うエリュシオンはニヤニヤと笑みを浮かべる。と、萃香が妖怪達の前に出て言う。

 

「あんな奴らすぐにやっちまえ!!」

 

彼女の掛け声と共に妖怪達が声を上げて大軍へと向かって行く。

 

「月の都の誇りにかけて、兵士達よ、出陣なさい!!」

 

「行くが良い、誇り高き余の兵士達よ!!」

 

萃香に続いて豊姫、セコンドが声を上げて兵士達を出撃させる。と、エリュシオンが笑いながら言う。

 

「ククク、さぁアンタ達は私が存分に相手してあげる。たっぷりと楽しみなさいな?」




ユニ達の危機を救ったセコンド達。現れるエリュシオンの増援。
次作もお楽しみに!


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第175話 異質な攻撃

鋼鉄城から解き放たれたモンスターやナイトメア達を相手しながら救援にきたセコンド達はエリュシオンに立ち向かう。



「久しぶりね、こんな大人数を相手するのは。」

 

そう言うと彼女はスライムを二つに分裂させるとそのまま銃と剣に変化させた。それを見た紫が口を開く。

 

「あら、もう本気で行くつもり?」

 

「なんの、アンタら如きに本気を出すまでもない。これらさえあれば十分よ。」

 

そう言うと彼女は銃口から紫色の光を漂わせるとそれを空へ向ける。そして彼女が口を開く。

 

「凶なる流星を受けてみなさい。」

 

そう言った瞬間、銃口の紫色の光が音を立てて空高く放たれた。ある程度の高さまでいくと光は数多の光へと分裂し、セコンド達はと降り注ぎ始めた。

 

「皆、避けよ!!」

 

セコンドの掛け声と共に紫達は咄嗟に流星群のような光を避けていく。

 

「うわぁ、危ないっ!!」

 

「こんなの当たったら一溜まりもないわ!!」

 

そう言いいながら避ける紫や萃香達。そんな中、エリュシオンの放った攻撃を避けれずにダメージを受ける兵士やナイトメア、ストライクワールドのモンスターがいるのをレミリアは見た。

 

「ぐぅぅぅぅ苦しいよぉ・・・。」

 

「グガガガガ・・・。」

 

流星群のような弾幕を受けた兵士やナイトメア達はその場にうずくまり、苦しみ始める。それを見た妹紅が慧音を見て言う。

 

「慧音気をつけろ。奴の放ったあの無数の弾幕、何かがおかしい。」

 

「あぁ、分かってる。奴から放たれる弾幕の一つ一つが他の人らとは違う。」

 

2人が話している中、エリュシオンは剣と銃を構えてゆっくりとセコンド達に近寄りながら言う。

 

「この状況は何度も経験してるし何度も乗り越えた。私の息子達がやられた?幻獣達も全員やられた?なら私が全てを破壊すればいい。私は全てを超越する存在、誰にも負けはしない。」

 

そう言った瞬間、彼女の青い瞳が紫色に変色し、不気味に光り始めたかと思うと体の至る所から紫色に輝く粒子のような物が消えたり光ったりを繰り返す。

 

(奴の体から漏れるあの光、何かがおかしいわ。嫌な予感がする。)

 

そう心の中で呟く紫。それを考えていたのは彼女の他にも多数いた。

 

「なんじゃありゃ。なんか気味が悪いな。」

 

「あの紫色の光、何か妙だ。霊力か何かか?」

 

「どちらにせよ、気をつけなければならないわね。」

 

勇儀と萃香、幽々子が話している中、エリュシオンが突如飛び上がり、紫達を見下ろすと銃口に緑色の光を溜め始める。

 

「レーザーか!!」

 

「皆、気をつけよ!!」

 

加奈子が声を発したと同時にセコンドが辺りに叫ぶ。と、エリュシオンがニヤリと笑みを浮かべて言う。

 

「ただのレーザーだと思ってる?」

 

そう言った瞬間、緑色に光るレーザーに紫色の光が集まり始めたかと思うとグレー色の光へと変色した。それを見た諏訪子が目を見開き、叫ぶ。

 

「みんな待って!!何かおかしい!!」

 

「!!?」

 

彼女の声を聞いて紫達は目を見開く。その瞬間、エリュシオンは一才の躊躇もなくグレー色の光のレーザーを辺りへと放った。それは8方向へと分かれて幻獣達や妖怪、ドラゴン達や兵士達だろうとお構いなく命中し、薙ぎ払っていく。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「グガァォァ!!」

 

「うわっ!!」

 

咄嗟に避ける紫達。中には避けきれずレーザーを喰らってしまう月の都の兵士や妖怪達もいる。

 

「みんな大丈夫!?」

 

「お嬢様もご無事で・・・!?」

 

みんなに声をかけるレミリアに返事をしようとした瞬間、咲夜は言葉を詰まらせてしまう。彼女の見つめる先には身体の血管が紫色に浮かび上がり、息を引き取っている兵士や妖怪達の姿が目に映ったからだ。

 

「これは!!」

 

すぐに月の都の兵士に近付く豊姫。と、何かを察した妖夢が彼女に叫ぶ。

 

「待ってください月の都の方!!その方に触ってはダメです!!」

 

「え、何を・・・!?」

 

続きを言おうとした瞬間、豊姫は目を見開き、兵士から離れる。そんな中、セカンドが1人の兵士を見つめ、口を開く。

 

「これは・・・何か体に侵食している?」

 

そう推測する中、エリュシオンはゆっくりと地面に降り立ち、口を開く。

 

「さぁて、何があるでしょうね。」

 

そう言う彼女の顔にはただ不気味な笑みしか浮かばず、まるで感情がない。それを見たメルト・グランチが口を開く。

 

「恐ろしいな、卿には感情がなく敗北への恐怖もない。私が今まで見てきた中で最も悍ましい狂気を醸し出しているよ、卿は。」

 

「フフフ、何やら悪口を言われているんだろうけど、褒め言葉として受け入れるとするわ。」

 

そう言う彼女は剣を地面に刺し、銃を優しく手入れしていた。そんな彼女の姿を見た依姫と萃香が彼女に向かう。

 

「ふざけたことしてる余裕などありますか!!」

 

「殴ってやる!!」

 

そう言って2人は刀と拳を振り下ろす。しかしその瞬間、2人の目の前からエリュシオンの姿が消えた。

 

「なっ」

 

「にっ・・?」

 

思わず声を上げる2人。2人はあまりにもギリギリで避けられたためか、避けられたことに気付くのに遅れてしまう。そんな2人の背後にエリュシオンが突如として姿を現した。

 

「余裕ならいくらでも。たかがアンタら如きに遅れを取る私ではないわ。」

 

「ぐっ!?」

 

「がっ!?」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは依姫の腹を剣で裂き、萃香の鳩尾に発勁を叩き込んだ。

 

「ぐっ、速すぎる。」

 

「ゲホッ、ゲホッ。」

 

依姫は裂かれた箇所を空いている左手で抑えて後退し、萃香はその場に崩れて血を吐く。そんなことをしている内にエリュシオンの持つ銃口は2人へと向けられていた。

 

「させるかよ!!」

 

それを見た剛岐は咄嗟に動き出し、桜色の刀を取り出してエリュシオンに向かっていく。

 

「乱れ、桜吹雪!!」

 

そう言った瞬間、彼は刀に桜を漂させるとそれをそのままエリュシオンに振り下ろした。だが、エリュシオンは目線と銃口を萃香や依姫に向けたまま剛岐の振り下ろす刀を剣で防いだのだ。

 

「何ッ!?」

 

目を見開き、驚く彼とは別にエリュシオンは瞬時に彼の背後に移動したかと思うと銃と剣を上空に放り投げ、そのまま両腕ごと彼に抱きついた。

 

「ぐっ!?」

 

咄嗟に彼女の拘束から離れようとする剛岐だが細身の体とは思えないパワーでガッチリ抱きつかれている為、引き剥がすことが出来なかった。そんな中、エリュシオンが口を開いた。

 

「小宝剛岐。アンタは面倒な男よ、特に五大王の中ではね。だから、」

 

そう言った瞬間、ゴキャッという鈍い音が響いたと同時に剛岐が少し海老反りになり、血を空に向かって吐く。

 

「少し、眠ってもらうわね!」

 

そう言ったと同時にエリュシオンは剛岐の体を抱き上げるとそのまま体を後ろに反らし、彼を頭から地面に叩きつけた。彼を叩きつけた衝撃で辺りに突風が吹き、依姫と萃香はその場から吹き飛ばされてしまう。

 

「あっと、萃香!」

 

「依姫!!」

 

咄嗟に勇儀と豊姫が吹き飛ぶ2人の体を受け止める。砂埃が舞い、治るとそこには吐血したまま倒れる剛岐と彼を見つめるエリュシオンの姿があった。そのまま彼女は落ちてくる銃と剣を手にキャッチする。と、レミリアが紫色の槍、グングニルを手にすると彼女へと向かい、突き刺す。だがエリュシオンはそれを容易くかわし、レミリアから距離を取る。

 

「今よ、帝王さん。」

 

そうレミリアが一言言うと倒れる剛岐をメルト・グランチが抱える。彼を抱えた瞬間、メルト・グランチの表情が変わる。

 

「・・・すまない、私は彼を医療場へと連れて行く。このままでは危険だ。」

 

そう言うと彼は剛岐を抱えて飛び立つ。それを許すはずもなく彼女は飛び立つメルト・グランチ向けて銃を構えており、緑色の光が漂っていた。

 

「誰も逃さないわよ?」

 

そう言った時だった。突如辺りにスペルカードを発動する音が響いたかと思うと眩い光の柱がエリュシオン向けて放たれていたのだ。それを見たエリュシオンは銃の光を消し、咄嗟にかわす。

 

「うわぁぁ!?」

 

近くにいたレミリアもすぐに避ける。

 

「流石、よく分かってくれた。」

 

「私まで巻き込むつもり!?冗談じゃないわよ!!」

 

そうクスクス笑いながらレミリアに口を開く2人の男。彼女を見たエリュシオンは目を細めて言う。

 

「・・・マスターハンドにクレイジーハンド。まさかアンタらも来てるなんてね。」

 

「おっと、来てるのは僕達だけじゃないよ?」

 

エリュシオンに奇襲を仕掛けた男、マスターハンドがそう言った瞬間、紫色の弾幕がエリュシオンに向かって放たれていた。

 

「完防『イージス』。」

 

咄嗟にスペルカードを発動した彼女は弾幕による攻撃を防ぐ。

 

「やはり防がれるか。」

 

そう言う声が聞こえたかと思うと2人の女性が姿を現す。1人はウェーブのかかった金髪、もう1人は肩まで伸ばしたセミロングの赤髪の女性だった。それを見た紫が口を開いた。

 

「マスターハンドにクレイジーハンドだけじゃなくて純狐にヘカーティアも来るなんて・・・。」

 

「創造神の配下2人から裏の世界に侵攻したと話を聞いたから行かずにはいられなかった。」

 

「ガイルガール様からのご命令だ。」

 

「エリュシオン、この前はよくもやってくれたわね。倍にして返してあげるわ。」

 

純狐、クレイジーハンド、ヘカーティアが話している中、エリュシオンが笑みを崩すことなく口を開く。

 

「あの妖精はどうしたの?私が怖くて逃げちゃったかしら?」

 

「・・・クラウンのことか?クラウンは治療に励んでいる。貴様と戦わせるつもりはない。」

 

「ククク、連れてくれば少しは戦況が変わったかもしれないのにね。」

 

2人が話す中、豊姫が依姫に肩を貸しながら純狐に向かって声を上げる。

 

「純狐、どうして!!」

 

「元より月人の民、お前達とは嫦娥のことがあるから味方になった訳ではない。だが今は世界にとって破滅的存在である奴を倒さねば不倶戴天の敵は討てない。」

 

「・・・。」

 

2人が話している中、エリュシオンが口を開いた。

 

「いいわねぇ、人数が増えれば増えるほど私にとってありがたい。さぁまだまだ殺り合いましょう?戦いはまだ始まったばかりよ。」




エリュシオンによって危機的状況に陥る剛岐、援護にやってきた純狐、ヘカーティア、マスターハンド、クレイジーハンドの4人。しかしエリュシオンは一切焦りを見せず・・・。
次作もお楽しみに!


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第176話 エリュシオンの企み

命の危機に陥る剛岐、駆けつけるマスターハンド、クレイジーハンド、純狐、ヘカーティアの4人。しかしエリュシオンは焦る様子を見せない。


「何余裕見せてんだよっ!」

 

「燃やしてやる!!」

 

そう言いながら慧音、妹紅がエリュシオンに向かって行く。まず慧音が拳を構えてエリュシオンに振り下ろす。彼女は容易く慧音の攻撃をかわす。

 

「そこだ!!」

 

彼女のかわした方向へ妹紅が炎を放つ。それを見た彼女は剣で炎を払う。そんな彼女の真上に幽香が傘の先に光を漂わせていた。

 

「保険をかけておかないとね。」

 

そう言うと彼女は真上からエリュシオンにマスタースパークを放った。瞬時にエリュシオンは攻撃を避け、地面に降り立つ。そこへ鎌を持った2人の男女が彼女ひ向かっていた。

 

「タイミング考えろよ小町!」

 

「兄さんこそね!!」

 

そう言うと死神の兄妹、小野塚篁と小野塚小町が同時に鎌を振り下ろす。なんとエリュシオンはそれを剣一本で防ぐと剣を振り、2人の距離を離させた。と、後ろから3人の少女が彼女に向かって弾幕を放とうとしていた。

 

「お姉様やお兄様には負けていられません!」

 

「やってあげる!」

 

「妖夢にいいところ見せなきゃ。」

 

そう言うと3人の少女、小野塚妹子、フラン、妖華の3人が一斉に攻撃を放つ。

 

(流石にこの距離なら避けられないわねぇ。)

 

そう心の中で呟いたエリュシオンは銃口に青い光を漂わせるとそれをレーザーとして放った。3人の攻撃とエリュシオンのレーザーがぶつかり合い、空中で爆発を起こす。と、戦いを見ていたパチュリーがエリュシオンと必死に戦う表の人達を見つめるセコンド、紫に向かって言う。

 

「あなた達、どうして戦いに加入しないの?みんなを見捨てるつもり?」

 

「見捨てる?そんな訳ないでしょ。」

 

「仲間を殺されているのだ、加入しないと言う選択はない。ただ余と紫は奴の動きを見ているのだ。」

 

「奴の、動き?」

 

「ええ、エリュシオンの戦いをね。何か隙が生まれるようなタイミングを見計らってるんだけれど・・・。」

 

「奴は一つ一つの動きを最小限に抑えている。攻撃を避ける時も、攻撃を弾く時も、攻撃を相打ちに持って行く時も、全てな。」

 

「最小限に・・・?」

 

「あんな異常なほど動けるのに奴は半人半神って話を聞いたことがあるわ。一体何が奴を・・・。」

 

「パチュリー、其の方も共に奴を分析してはくれまいか?余らだけでは恐らく掴みきれぬ。」

 

「分かったわ、何かあったら私を守りなさいね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、了解しました♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その陽気な声がパチュリーの背後から聞こえた瞬間、セコンドと紫が目を見開きながら咄嗟に背後を振り返る。そこには右手に紫色の不気味な光を漂わせてパチュリーを攻撃しようとするエリュシオンがいた。

 

「何っ!?(い、いつの間に余らの背後に!?)」

 

「くっ!!(嘘、私話しながら奴の様子を観察していたのになんで背後に移動していたのを気付けなかったの!?)」

 

「パチュリー様!!」

 

すぐに咲夜がエリュシオンに向けてナイフを放つ。しかしエリュシオンは銃弾を放ち、ナイフを弾く。しかしエリュシオンはパチュリーから距離を取ってしまう。

 

「な、何が起こったの・・・?」

 

「い、今私達と目の前で・・・。」

 

「俺達と交戦してきた奴が一瞬にして帝のオッサンの背後に・・・?」

 

「エリュシオン、どんな手を使った!!」

 

驚きの声を上げるレミリア、ヘカーティア、篁の3人。そんな中、純狐がエリュシオンを指差し、言った。そんな彼女にエリュシオンが口を開く。

 

「さぁ、どうやったんでしょうね〜。」

 

そう言うと彼女はチラリとパチュリーの方を見る。彼女に続いて紫達もパチュリーの方を見る。

 

「うぐぐ、くる、しい・・・。」

 

そこには何かに苦しめられているのか、パチュリーが首を抑えてだらしなく涎を垂らしながら苦しんでいた。そんな彼女の顔は紫色に変色してしまっている。

 

「大丈夫ですかパチュリー様!!」

 

すぐに近くにいた妖精メイドが彼女に近寄る。と、何かを察した勇儀が妖精メイドに言う。

 

「待て!その子に触っちゃダメだ!!」

 

「え?」

 

そう言ったのも束の間、妖精メイドはパチュリーの体に触れていた。その瞬間、妖精メイドの手がどんどん紫色に変色していったからと思うとあっという間に体全身紫色に変色した。

 

「あががが・・・。」

 

その瞬間、パチュリー同様妖精メイドが苦しみ始めた。しかしパチュリーとは違い、妖精メイドはそのまま白目をむいて地面に仰向けに倒れてしまった。

 

「おいおい、だから触るなって言ったのに・・・!?」

 

妖精メイドに近づき、声をかけようとした瞬間、勇儀は言葉を失う。そしてエリュシオンへ向けて殺意のある目線を向けて口を開いた。

 

「オイアンタ、何をした。このメイド、死んでるぞ。」

 

その言葉を聞いた瞬間、その場にいた一同は驚きの表情を見せる。そんな中、エリュシオンは気味の悪い笑みを浮かべて言う。

 

「私はただ感染させただけよ、私だけの凶悪な兵器でね。」

 

「・・・凶悪な兵器だと?」

 

「全ての生命に影響を与えることのできるもの。この世で最も恐ろしい兵器は戦車でも弾幕でも力でもない、それはウイルスよ。戦車は破壊すればどうにでもなる、弾幕も防げればどうにでもなるし力なんて超えてしまえばどうにでもなる。でもね、ウイルスはどうワクチンや抗体を作り出してもまた新たなウイルスが誕生して手のつけようがないの。」

 

「ウイルス、ですって・・・?」

 

「まさか、奴の体から滲み出ていたあの紫色の光は霊力が溢れ出ているのではなく、ウイルス!?」

 

勇儀、紫、諏訪子が話している中、エリュシオンは右手に紫色の光、ウイルスの集合体を乗せて言う。

 

「私は最終的に表の世界を破壊し、私が頂点として君臨する裏の世界だけを作りたいの。だからね、」

 

そう言うと彼女はウイルスを体に取り込むとそのままパチンと指を鳴らした。その瞬間、彼女の体から紫色の光、ウイルスが辺りに解き放たれたかと思うと周りの風景が紫色に変色し始めた。

 

「こ、これは・・・。」

 

思わず声を上げる美玲。そんな彼女とは別にエリュシオンは剣と銃を持ちながら両手を背に回し、言う。

 

「表の世界の奴らはこの、『凶神ウイルス』を使って死滅させ、生きとし生ける全ての者達を1人残らず殺す。」

 

 




パチュリーを苦しませ、妖精メイドを死に陥れる凶神ウイルス。紫達はこのウイルスの真の恐ろしさを知ることになる・・・。
次作もお楽しみに!


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第177話 凶神ウイルス

エリュシオンの動きを掴むことができず、更にはパチュリーが謎のウイルス、凶神ウイルスによって苦しめられてしまう。


「凶神ウイルス、ですって・・・?」

 

彼女の発したウイルスの名前に声を上げる妖華。そんな彼女にエリュシオンが辺りを見ながら口を開く。

 

「これはね、私が人間達を滅ぼすために私の体内で作り出した超危険なウイルスよ。感染した時の主な症状は・・・そうね、周りの奴らを見ればすぐに分かるわ。」

 

彼女の言葉を聞いて紫達は辺りを見回す。そこには先程の妖精メイドのように体全身が紫色に染まり、息を引き取った兵士やその場に蹲り、苦しむ妖怪や月の都の兵士、中には仲間に攻撃するモンスターやナイトメア、ドラゴン達の姿も見られる。

 

「な、なんだこれ・・・。」

 

「まるで地獄だ。」

 

萃香と妹紅が目を見開いて口を開く。そんな中、エリュシオンが銃を眺めながら言う。

 

「更にこのウイルスには特殊な力を持つ子の力を大きく抑制することができる。そうね、簡単に言うなら別の姿に変身できる奴の変身する力を強制的に使用不可能にしたり不老不死の力を抹消したりすることができるわ。」

 

「・・・なるほど、そう言うことだったのですね。」

 

彼女の言葉を聞いて依姫が口を開いた。そのまま話す。

 

「月の都の兵士の1人が蓬莱の薬に手を出した。それによって永久刑を執行する筈だったんですが、突如として命を落とした。その元凶はあなただったのですねエリュシオン!!」

 

彼女の怒声が響くと同時にエリュシオンの顔に不適な笑みが浮かぶ。そして口を開く。

 

「その通り、私は裏の世界の存在。表の世界の均衡を乱し、全てを滅ぼすのが私の狙い。幻想郷を先に滅ぼそうと現世との境の結界を壊したのに中々食らいついてくるから骨が折れたわ。でももうそんなことを気にしなくていい、全ては私が終わらせる。この愚かで身勝手な『人類』という愚生物を滅ぼすためにね。」

 

「・・・そのためならば人類に手を貸す者は誰であろうと殺す。そう言うのね?」

 

彼女の言葉に紫が眉を細めて言う。そんな彼女にエリュシオンが指を鳴らして指を差し、言う。

 

「イエス。そしてここに集う者達は皆人類存続、あるいは世界の崩壊を防ぐために私と戦う者達。私と戦い、死を恐れることのない勇敢なる者達。」

 

そう言って一呼吸おくとエリュシオンは体から更に紫色のウイルスを辺りに放ち、周辺の景色を紫色に染め上げた。そして口を開く。

 

「私は一度だって負けたことはないわ。だからここにいるアンタら全員1人残らず殺してあげる。どこからでもかかってきなさい。」

 

そう言うと彼女は銃と剣を構える。それを見て紫達は一斉に構える。と、マスターハンドが口を開いた。

 

「気をつけて、奴のこの空間内は一変何の影響もないように見えるけどこれは微々たる量のウイルスだ、長時間奴と戦っていると僕らの体に影響が出始めて不利になる。」

 

「その前に奴を倒すのだ。我々が奴から勝利を掴み取るにはそれしかない。」

 

2人がそう言うとエリュシオンが銃口を彼らに向けて言う。

 

「それはそれは言うは易し、行うは難しよね?今まで打ち砕かれることのなかった千年殃禍に終止符を打たれたんだからねぇ。」

 

「・・・。」

 

彼女の言葉に黙る2人。そんな2人とは別にエリュシオンは話し続ける。

 

「アンタらは所詮はただの別のモノに染まった人間なら妖怪なりに倒された化身。そんなアンタらに私を倒すことなんて出来ない。勿論、アンタらの主人様もね?」

 

「我々が敗北したのは我々が弱かったからではない、今を生きる者たちが強かっただけの話。ガイルゴール様もそれを認知しておられる。」

 

「・・・ねえ化身さん。あなた達の主人は今どうなの?」

 

エリュシオンと話している化身達に紫が口を開いた。そんな彼女にマスターハンドが言う。

 

「ガイルゴール様は、千年殃禍での傷がほとんど癒えておられない。奴と戦うにはかなりきつい状態だね。」

 

「・・・アタシ達でなんとかするしかないって感じか。」

 

「世界を破滅へ導く凶神、その力は底知れない。我々でなんとかするしかあるまい。」

 

勇儀、メルト・グランチが話している中、エリュシオンが片手に拳銃を、もう片方の手に剣を構えて口を開いた。

 

「さぁ再開しましょう♪私が1人1人アンタ達を可愛がってあげるから。」

 

「上等よ!!」

 

「ここで食い止めて見せるわ。」

 

彼女の言葉に反応して向かっていくのは諏訪子と豊姫。諏訪子は地面に手を当て、蛇や化身を召喚してエリュシオンに向けて放ち、豊姫は化身に合わせて弾幕を放つ。それを見た彼女は銃口に緑色の光を漂わせるとそのままレーザーとして放った。彼女から放たれたレーザーは化身と弾幕を一気に消し飛ばし、そのまま2人目掛けて放たれる。

 

「紅符『スカーレットシュート』!」

 

「禁忌『カゴメカゴメ』!」

 

「人符『現世斬』!」

 

「華霊『ゴーストバタフライ』!」

 

「地獄『無限の狭間』!」

 

エリュシオンの放ったレーザーに対抗するためにレミリア、フラン、妖夢、幽々子、小町の5人の少女が一斉にスペルカードを使用して攻撃を放つ。5人の放った攻撃はレーザーと衝突してその場で爆発を起こす。

 

「ここで近距離詰めるとするかねぇ!」

 

「私も行く!」

 

「んじゃ俺もやるぜ!」

 

煙で視界が悪い状況の中、勇儀といつの間にか白沢に姿を変えた慧音、篁が一気にエリュシオンとの距離を詰める。煙が少し消えてきたかと思うとその中から剣の先端が姿を見せる。

 

「そこか!!」

 

そう言うと篁は鎖鎌の先端の小さい鎌をエリュシオンがいるであろう方向へと投げる。剣を避けて勇儀と慧音が彼女がいるであろう場所に拳と頭突きを構える。その瞬間、煙が完全に消えたかと思うとそこにはエリュシオンの姿はなく、鎖鎌は空を切っており、剣はゆっくりと地面に落ちた。

 

「なっ、にっ!?」

 

「消えた!?」

 

「つい1秒前まではね。」

 

驚く慧音、勇儀とは別に篁の背後から声が聞こえたかと思うとそこにはエリュシオンが1枚のスペルカードを取り出しており、右手には雷を纏う大槌が握られていた。

 

「うぉっ!?」

 

咄嗟に背後を振り向く篁ではあるがそれよりも早くエリュシオンがスペルカードを発動してしまった。

 

「雷槌『ミョルニル』」

 

雷を纏った大槌の一撃は篁の鳩尾を捉えてしまう。

 

「ぐがぁぁぁ!!!」

 

その一撃を喰らった篁は勢いよく吹き飛ばされる。

 

「篁!!」

 

「お兄様!!」

 

すぐさま彼の元へ妖華と妹子が駆け寄る。そんな中、紫とメルト・グランチがエリュシオンの前に立ち、スペルカードを使用した。

 

「堺符『四重結界』!」

 

「炎防『聖炎なる盾』」

 

その瞬間、エリュシオンを囲むように紫色の結界と炎が現れた。

 

「こんなの、ちっぽけな小細工に過ぎないのに・・・。」

 

そう言うとエリュシオンは片手で結界を殴りつけ、手を大槌を一本の剣に変化させて振る。その瞬間、結界が粉々に砕け、炎が辺りから消えてしまう。

 

「ここだ。」

 

「くらいな!」

 

その一声と共にマスターハンドとクレイジーハンドが青いレーザーをエリュシオンに向けて放った。

 

「次から次へと・・・。」

 

そう言いながらエリュシオンは瞬時に2人の放ったレーザーを避ける。

 

「そこだ!!」

 

そう言いながら妹紅が背中に火の翼を生やしてスペルカードを発動していた。

 

「『虚人』ウー!」

 

(体勢が悪い、流石にこれは避けられないか。)

 

そう心の中で呟いたエリュシオンは彼女の放った攻撃を左手の甲で弾き飛ばした。弾かれた攻撃は地面に着弾してそのまま爆発する。エリュシオンの弾いた左手の甲は音を立てて赤く腫れ上がっていた。

 

「チッ、軽く火傷しちゃったか・・・。」

 

そう言いながらも表情を変えないエリュシオンは口角を上げたまま口を開く。

 

「さぁ、楽しみはまだまだこれからよ。世界の終末、必ずこの目で見届けてこの手で終わらせるんだから。」




エリュシオンを追い詰めていく紫達。だが彼女はまだ余裕を見せている。隠された恐ろしい能力とは!?
次作もお楽しみに!


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第178話 現状

ユニ達を救ったセコンド達はエリュシオンの増援と共に彼女に挑み、追い詰めていく。


「こ、ここは・・・。」

 

場所は変わって医療場。そこでゆっくりと目を覚ましたユニは辺りを自分を見る。自分の体のあちこちに包帯が巻かれていて何人かの兵士達が護衛についていた。

 

「起きたか、ユニ。」

 

その声が聞こえてユニはその方向を見る。そこには後ろ髪を縛っていて青い瞳の男が優しい表情を浮かべて彼女を見ていた。

 

「おっ、お兄様!!」

 

「そう動くなよ、お前臓器に折れた骨が刺さって危険な状態だったんだからよ。」

 

無理に動こうとするユニをモルトは止める。そんな彼にユニが再び口を開く。

 

「ごめんなさい、お兄様。私・・・。」

 

「そう言うなよ、みんなはよく頑張った。生きてて良かったよ。」

 

そう言うと彼は泣きそうになるユニの頭を撫でてある方向を見る。彼に続いてユニもその方向を見る。そこには軽く包帯を巻いて戦いの準備をする霊夢、楓、琥珀の姿があった。

 

「霊夢、楓ちゃん、琥珀君、大丈夫なの!?」

 

思わず声を上げてしまうユニ。そんな彼女に3人が口を開く。

 

「私は毒を受けたけど幸いにも解毒剤があったからすぐに治ったわ。もう少し休んだらまた戦線復帰できる。」

 

「私は霊力を少し奪われたからあの時は思うように動けなかったが医療班のおかげですぐに立ち直ることができた。」

 

「僕は右腕と翼を撃ち抜かれてたから帝王さんに僕を燃やすようにお願いしたらすぐにやってくれてね、お陰で僕は元通りさ。」

 

「ただ他のメンツが危険な状態でな・・・。」

 

霊夢、楓、琥珀が話すとモルトが口を開いた。

 

「ユニ、お前は折れた骨が臓器に届いてしまって非常に危険な状態だ。無理に動く必要はない。少しでも遅れれば命に関わっていた。」

 

「そう、なんですね・・・。」

 

「魔理沙は全身の骨という骨が複雑骨折していてとても動ける状態じゃない。悠岐は全身から大量の血を流してたせいで一歩遅れれば死んでいた。百々は死なないらしいが・・・頭を飛ばされてあの様だ。暁と影裏だっけか?アイツらは今永琳と協力して集中治療している。生きるか死ぬかはアイツら次第だ。」

 

「・・・。」

 

「おいおい、何うつむいてんだよユニ。」

 

俯くユニに声を掛けたのは隣の布団で上半身だけ起こしている九十九だった。そして再び九十九が口を開く。

 

「アタシは身体中痛いさ。足撃ち抜かれたし、肩も撃たれた。ユニ達よりはマシだけどすぐに戻ってみせる。」

 

「・・・九十九ちゃんも、無事で良かった・・・。」

 

そう言った瞬間、ユニの目からポロポロと涙が溢れ始める。そんな彼女に琥珀が声を掛ける。

 

「どうしたんだい、ユニちゃん。」

 

「私、何も出来なかった・・・。幻想郷の守護者として、みんなを守らなきゃいけないのに、何も出来なくて悔しいの・・・。」

 

話しながら泣く彼女に楓が寄り添い、優しく抱きしめて言う。

 

「大丈夫だユニ、お前が悪いわけじゃない。自分を責める必要はないんだ。」

 

「そうよユニ。少し責任持ち過ぎよ。」

 

「・・・そうかな・・・、ごめん、ありがとう2人とも。」

 

そう言うとユニは涙を拭いとる。その時、奥から兵士達の声が響く。

 

「君、何をしているんだ!!」

 

「そんな状態で動いちゃダメだ!!」

 

その声が響き、ユニ達はその方向を見る。そこには身体中に包帯を巻いているが所々から血が垂れながらも黒い刀を持って戦おうとする1人の青年が兵士達をどかしながら外へ出ようとしていた。

 

「悠岐君!?」

 

「オイオイなんて執念だよ悠岐。」

 

ユニと九十九が口を開く中、楓が悠岐の元へ寄り、彼の体を止めて言う。

 

「よすんだ悠岐、そんな状態で戦ったら本当に死ぬぞ!!」

 

「・・・知ったことかよ、俺は奴を斬り刻まねぇと気が済まねぇんだよ。」

 

兵士達の声を聞いて駆けつけたモルトが悠岐と楓の元に寄り、口を開く。

 

「悠岐、やめておけ。」

 

「・・・。」

 

「お前の気持ちはよく分かる。だが、今の自分の状況を見ろ、その傷でなくとも手も足も出せなかった相手に挑むのは危険だ。少し休んでから行くんだ。その執念は後にお前にとって必要となってくる。」

 

そう言うとモルトは悠岐の肩に優しく手を乗せた。そしてそのまま彼は医療場の外へと行ってしまった。彼が行った後、悠岐が突然地面に膝をついた。

 

「悠岐!?」

 

すぐに楓が彼に寄り添う。と、悠岐が楓に言う。

 

「無茶しちまって、悪いな楓・・・。モルトの言う通り、俺はまだまだ休んでいたほうがいいらしいな。」

 

そう言うと彼は持っていた黒い刀を彼女に差し出す。それを楓は受け取ると悠岐の手を優しく握りしめて言う。

 

「待っていてくれ、少しの間私達でなんとかしてみせる。それまでゆっくり休むんだ。」

 

「・・・あぁ、ありがとう楓。」

 

そう言うと悠岐は兵士達と共に奥の部屋へと入っていった。と、九十九が布団から飛び起き、言う。

 

「っしゃぁー復活!!」

 

「九十九アンタ大丈夫なの!?」

 

「鬼だしなんとかなるんじゃない。」

 

驚く霊夢とは別に冷静に口を開く琥珀。そんな彼女達にモルトが口を開く。

 

「奴の元へ行くのか、気をつけろよ。いくら沢山の仲間達がいるからといって戦いが楽になるなんてことはないからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない、どいてくれ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が辺りに響き渡ったかと思うと医療班数名が1人の男を担架に乗せて慌てて入ってきたのだ。

 

「ご、剛岐!?」

 

「嘘、だろ・・・。」

 

その人物を見て楓と九十九は唖然となる。担架に運ばれてきたのは全身ボロボロの状態になっている小宝剛岐だった。

 

「すぐに治療だ!!」

 

「なんだって!?今暁と影裏の治療が終わったばっかりなのに・・・。すぐに緊急治療するんだ!!」

 

兎達数名が声を発し、すぐに剛岐は運ばれていった。そのまま1人の兎が霊夢達のところへ行き、言う。

 

「暁さんと影裏さんは無事一命を取り留めました。今は安静に寝かせてあります。」

 

「・・・良かったわ。」

 

ほっと息を吐いた霊夢は楓、琥珀、九十九を見て言った。

 

「凶神エリュシオン、絶対に許さないわ。必ずここで倒して見せる。みんな、行くわよ!!」

 

霊夢の言葉を聞いた楓、琥珀、九十九は頷くと医療場を出てエリュシオンの元へと走っていった。それを見たユニが口を開く。

 

「みんな、大丈夫でしょうか・・・。」

 

「不安であるな。けど信じるしかない。」

 

彼女の言葉に悠岐がそう言った。




傷から復帰した霊夢、楓、琥珀、九十九はエリュシオンの元へと向かい、再び戦うことに!
次作もお楽しみに!


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