舞い戻りし悪魔 (小林輝昭)
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プロローグ
1話


初めて、ハイスクールD×Dを書きました。一週間に一回は、最低更新したいと思います。どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


〜???〜

さっきから、あの言葉が頭を離れない。

「生きなさい。どんなに辛くても、どんなに絶望的でもその二本の足で立って前へ歩きなさい。大丈夫、私達はあなたを見守っているわ」

「母様、父様、兄様、メスフィアさん、どうすればいい?僕は、何を目的に生きていけばいいんだ?なぁ、誰か答えくれよぉ・・・」

薄れていく意識の中で、僕の言った言葉に答えくれる人は誰もおらずザワザワと枝が揺れる音だけが聞こえた。

 

 

〜???〜

「うん?、誰かこの島に入ってきたな?」

「本当じゃの〜、かなり久しぶりじゃないかえ?」

「そうですね、私以来ですから、五百年ぶりくらいですかね?」

ログハウスの中で女性が三人、話していた。

「あたしが、見てくるよ」

「よろしく〜」

「お願いします」

そう言って、一人の女性の足元が光り始め光りが収まると、もう女性はいなかった。

 

 

「ここか・・、さてどんな奴かなぁ〜

あっ!いた!少年だな・・

でも、何でこんな少年がこんなところに?

まぁ、アグリッパとリリーに聞けばわかるだろう。

とりあえず、お持ち帰りだな」

女性は、少年を肩に担いで帰っていった。

 

 

〜???〜

目を開けて見ると知らない天井だった。

(僕は、どうしてたんだっけ?確か・・・そうだ‼︎

森の中で倒れたんだ、じゃあ、何で屋内に?)

そんなことを考えていると、俺の知らない女性が入ってきた。

「あっ、起きたのね。聞きたいこともあるのだろうけど

とりあえず、このスープを飲みなさい」

僕は、戸惑いながらもスープを貰った。

「ありがとう」

スープは、とても美味しかった。

 

 

そして、さっきの女性がもう二人の女性を連れて入ってきた。

「あの、助けていただいてありがとうございました」

と、僕はお礼を言った。

「いいのよ、気にしないで。

じゃあ、自己紹介するわね、私の名前はリリーっていうの」

「あたしの名前は、サラだ!よろしく」

「妾の名前は、アグリッパじゃあ、よろしくの若いの」

リリーという人は、ローブを着ている小柄な女性だ。

 

サラという人は、女性にしては筋肉質な体をしており鍛えているのは明らかな人だ。

 

アグリッパという人は、不思議な感じを醸し出しているが

出るとこは、出ているかなりスタイルのいい女性だ。

僕も、挨拶をした。

「シリウス・リーベルタースです。」

僕が、自己紹介を終えるとリリーさんが質問してきた。

「ねぇ、シリウスくん、何であんな所にいたの?」

僕は、深呼吸をして何故あそこにいたかを話し始めた。

 

ーーーーーーーーーー

 

その日は、僕の家にとって年に一度の大事な日だった。

父さんと兄さんは、大事な事があるらしくどこかへ、いっていた。

僕は、まだ何も知らされていないけどもう少し大きくなったら話してくれるらしい。

だから、僕は母様と一緒に勉強中だ。

勉強しっかりしないと遊ばしてくれないからちゃんとやらないと!

 

「あっ、もうこんな時間!シリウス一旦休憩しましょうね」

「はい、母様」

「ふふっ、お菓子持ってきてあげるから、少し待っててちょうだい」

と、言って母様は部屋を出て行った。

ちなみに、僕の家はリーベルタース家だ。昔からある由緒正しき家らしい。僕の家族は、両親と兄がいる。

兄様は、すでに結婚していてお嫁さんの名前は、メスフィアさんといいとても綺麗な女性だ。

( あ〜、僕もあんな綺麗な人と結婚したいなぁ)

なんてことを考えていると、突然、家が爆音と共に揺れた。

 

 

急いで、部屋の外を見ると家の敷地内にある建物が、大きく崩れていた。

そして、いきなり、瓦礫のしたからとても大きな生物が

飛び出してきた。

飛び出してきたのは、尻尾がある七体の獣だった。

だが、どれも魔獣とは違う感じだ。

(何だよあれ、何であんなのがこんなことに?

あれは・・・兄様と父様ッ⁉︎)

僕は、いてもたってもいられず部屋を飛び出した。

 

 

外に出ると、父様たちが血だらけで立っていた。庭には

黒いローブを着た人達が倒れていた。

「クソ、何で奴ら今日が儀式だと知っているだァ‼︎」

「アルベス言っても、仕方ない。尾獣たちをどうするか考えるんだ」

「そうね、起きた事を言っても仕方がないわ」

「アルベス冷静になって」

兄様、父様、母様、メスフィアさんが話していた。

「父様‼︎」

僕が呼びかけると、父様が始めは笑顔になったが、直ぐに悲しそうな顔をした。

そして、父様が目配せすると兄様たちは、驚いた顔をしたが何かを決意した顔をした。

「シリウス、良く聞くんだ。時間がないから、手短に言うぞ。これからシリウスに尾獣を封印する。だが、私達の体は持たないだろう。私達は、死んでしまう。だから、私達はいないが、頑張って生きていくんだ」

僕は、父様の言っている事がわからなかった。

「父様・・・何いってるの?

まだ、何も教えてもらってないよ。

まだ、父様たちと遊んでいたいよッ!

母様、もっとたくさん音楽聞かせてよッ!

兄様、いっぱい遊び教えてよッ!

メスフィアさん、色んなお話聞かせよッ!

何で、死んじゃうの?

ねぇ、僕いい子にするから一緒にいてよぉぉぉッッ!」

僕の言葉に、父様たちは泣いていた。

だが、尾獣達が鎖を壊し始めた。

すると父様が魔法陣を起動させ僕を魔法陣の中央へ移動させた。

それと同時に、鎖が僕の身体から出てきた。

そして、尾獣に絡み付き僕の中にどんどん引きづりこんでいった。

僕が、訳も分からず呆然としていると、前にいる父様たちが微笑みながら泣いていた。

「シリウス、これから辛いと思うがしっかりと生きるんだ。そして、幸せになれ、我が息子よ!」

「シリウス・・・ごめんな。お前の側には、おられへんけど一生懸命生きるんやぞ」

「シリウスくん、ごめんね。楽しかったわ、弟が出来たみたいで・・・忘れないで、私達はあなたの心にいるわ」

「生きなさい。どんなに辛くても、どんなに絶望的でもその二本の足で立って前へ歩きなさい。大丈夫、私達はあなたを見守っているわ」

母様の言葉が終わると同時に、全ての尾獣が僕の中に入った。

「今から、私の知っている人の所へ送るわ

このロケットをもっていれば、エフォンス家の息子だとわかるわ。安心しなさい、よくしてくれるわ」

その言葉と同時に、足元に魔法陣が出現し光り始めた。

「ッッ!、待ってよ、母様!まだ、離れたくないよぉぉぉ!!!!」

母様が、微笑みながら言った。

「愛しているわ、シ・リ ・ ウ ・ ス」

その言葉と同時に、目の前が真っ白になった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

〜リリー〜

目の前の少年は、泣きながら話してくれた。私達は、涙が止まらなかった。私は、彼を抱きしめずには、いられなかった。そして、しばらくすると私の腕の中で眠っていた。

また、寝かしつけた後、私達は部屋を出た。

 

「誰か、シリウスくんのお母さんの事知っています?」

「あたしは、知らないね」

「妾も、知らぬな」

やっぱり、でも何故ここに転移したのかしら?普通は、これないはずよ、う〜ん、わからないわね・・・

私の表情から、何を考えているか分かったのか、アグリッパさんが口を開いた。

「リリー、あまり深く考えるでない。この島そのものが、不思議なのだ。妾たちで、あの少年を育てれば良かろう?」

「そうだぜ、余り深く考えんなよ。あたし達が面倒みてやればいいさ」

私は、その言葉に大きく頷いた。

 

 




どうでしたか?
読んでいただきありがとうございました。


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2話

元ネタが、分かる人が多いと思います。
それでは、どうぞ‼︎


あの後、僕が起きると目に違和感を感じ鏡を見てみると、 両目全体が波紋模様になり中心に勾玉模様が、出来ていた。

三人に、見せると魔眼の一つだと言われた。

名称は、輪廻写輪眼、というそうだ。

アグリッパさんの話しでは、実物を初めて見たらしい。

一人は、確実にいたらしいけど、その後もそれらしき目を持った悪魔や堕天使やらがいたらしいけど全部本当かわからず、古の大戦少し前からは、誰一人として現れて、ないらしい。

現れる原因は、分かっておらず無闇に使うと失明の恐れがあるため使うな、と言われた。

そして、いずれ宿命が訪れるらしい・・・

今は、まだ大丈夫みたいだけど

 

そして、母様と知り合いの人は、誰もいないそうだ。原因は、不明だと言われた。その後、リリーさんたちが僕の事を育ててくれると言ってくれた。

その言葉を聞いて涙が、止まらなかった。

見ず知らずの僕を育ててくれるなんて、本当にいい人たちだ。だから、皆んなの事を、母さん、と呼んでいいか聞くと勢いよく頷いてくれた。よかった!

だから、その日は、リリーさんに抱きついて寝かしてもらった。

 

ーーーーーーーーーー

 

あれから、6年経った。そして、十一歳になった。とにかく充実した日々だった。

この島から、半年に一度出ることが可能で、帰りは転移魔法で何時でも帰ることが出来る。だが、一度もこの島に来たことがない者たちと転移しようとすると転移魔法が発動しないらしい。

ここで、この島について説明しておこうと思う。

中央付近に行くほど強くなり中心部は、五大龍王クラスのモンスターがいるらしい。

そして、俺たちの住んでいる所は安全地帯みたいだ。

家から100メートル程、中心側に行った所に木がありその木の半径500メートル程は大丈夫らしい。

そして、だいたい家のある位置は、上級悪魔クラスのモンスターと最上級悪魔クラスのモンスターの狭間に位置している。俺は、今、魔王クラスをやっとなんとか倒せるくらいの実力だ。

訓練内容は、サラ母さんに体術と剣術と覇気を教えてもらった。剣の適性は、刀だったので木刀で練習した。

体術と剣術は、直ぐにある程度のレベルに達したが覇気だけは、なかなか習得出来ず苦労した。

アグリッパ母さんには、礼儀作法と冥界の知識と輪廻写輪眼の使い方を教えてもらった。さすが、アグリッパ母さんは、吸血鬼の真祖だけに、礼儀作法は完璧で、冥界の事も載っていたい内容までかなり詳しく知っていた。

そして、何故か輪廻写輪眼を使い戦闘すると、かなり気分が高揚していつもより、力が出せる様になるんだ。

それをアグリッパ母さんに言うと、そうか、と言って黙りこんでしまった。

そして、最も驚きだったのが魔王だけでなく聖書の神も、古の大戦で死んでいたらしい。リリー母さんも知らなかったようで、洗っていた皿を落としていた。

リリー母さんには、家事と魔法を教わった。

リリー母さんの料理は、かなり美味しく、そこまでには達していないが中々美味しく作れるようになった。

サラ母さんに、いい「お嫁さん」になれると太鼓判を押された。嬉しさ半分、悲しさ半分だった。

そして、童貞は僅か十歳で卒業した。

十歳の誕生日に、酔ったサラ母さんに奪われた。

そして、それ以降たびたびするようになりその度に、技を仕込まれた。アグリッパ母さん曰く、もう少しで完成体、になるらしい。なんのことやら・・・

 

そして、リリー母さん達の経歴が凄かった。

まず、リリー母さん。

人間にも関わらず500年程生きているそうだ。

何故、500年も生きているかというと賢者の石のお陰だそうだ。

500年前、悪魔に襲われ仲間を逃がす為に大規模魔術を行使して、その後、転移魔法を使用しようとすると突然転移魔法が発動し気付くとここにいたらしい。当時は、最強の魔術師だったらしい。

 

次に、サラ母さん。

覚えてない位昔から生きている古龍だった。イルルヤンカシュという種類で、昔は良く神と戦いゴッドスレイヤーの異名を持っている。瀕死の重症の時に、命からがら逃げ込んだのがこの島だったようだ。

 

最後は、アグリッパ母さん。

何億年と生きており吸血鬼の真祖と言われる存在だった。

長く生き過ぎたせいで、生きる活力がなくなり何処でもいいから行きたくて、適当に転移したらついたそうだ。

 

皆んな、とんでもない人たちだ。下手したら、この人達だけで三大勢力に勝てるかもしれない・・・

ある日、自分だけで魔王クラスのモンスターを倒せるだろうと思い、森の奥に進み木に隠れながらモンスターを探していた。そして、探すこと数分目当てのモンスターを見つけた。ミノタウルスのようだが、手が四本生えており口から火を吐くモンスターだ。

(いた!まだ気づかれてない、よしッ!)

そして、俺は木の陰からいっきに

モンスターに肉薄し覇気を纏わせた刀を

スパッッ!

と振り下ろしたが直前に気がついたのか

若干、体を捻られ浅い傷しか負わせられなかった。

斬られたにも関わらず、怒ることも激昂することもなく赤い目が、静かにこちらを見ていた。

逆に、それが不気味で追撃することが出来なかった。

「ハァ〜、流石だな。あれを躱すとは。それでこそ、魔王クラスだ、ハァッッッ‼︎」

俺は、再び肉薄し斬りかかる

が、見切られ刀を掴まれ

直ぐに

刀を離したが、

左から思いっきり殴られた。

10メートルほど、飛ばされたが覇気を纏ったお陰で衝撃の割に怪我はしなかった。

「イってー、武装色の覇気纏ってなかったらヤバかった〜、やっぱ、使わんと勝てんか〜」

そう、思い輪廻写輪眼を使った。

そして、力を使おうとしたその時、何かに身体が乗っ取られたかのようになり意識が暗転した・・・

 

 

〜サラ〜

(シリウスの奴、約束破って一人で入りやがったな。

後で、お仕置きやな。オッ、見つけた。丁度戦い始めか

まぁ、修行の成果も見たいし見学するか)

そう、思いあたしは、シリウスの戦闘を見学した。

そして、シリウスが殴られ飛ばされた。

(これは、まだ早いな〜 そろそろ、止めよっか

ッッッ‼︎、何や今の⁉︎)

そう、思ってシリウスを見ると顔の半分が白い仮面に覆われていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

〜アグリッパ〜

サラが、シリウスを担いで帰ってきた。どうしたのか、と聞くとシリウスに起こった出来事を話してくれた。

すると、リリーが尋ねてきた。

「アグリッパさん何か知っているんですか?」

「知っているぞ。じゃが、シリウスが起きてから話すとするかの」

 

そして、シリウスが起きてきた。

皆が、リビングのテーブルに着いたのを確認して妾は、話し始めた。

「なら、話すぞ。シリウス、其方に起こったのは、虚化というものじゃ」

「虚化ですか?なんですか、それは?」

「原因は、その目じゃ。魔眼とは、そもそも石化さしたりとても遠くを見たりと、目そのものだけを使うのじゃが、輪廻写輪眼だけは、別じゃ。そして、普通の魔眼は代償がないが輪廻写輪眼にはそれがある。それが、自我じゃよ。

自我を奪い唯戦うことだけを目的とした怪物になるのじゃよ」

妾の言葉に誰も声を出す事が、出来なかった。

すると、リリーが突然大きな声を出した。

「なんで、アグリッパさんそんな大事な事黙ってたんですかッ‼︎、もっと早くに知らせていればこんなことには、ならなかったんじゃないですかッッッ⁉︎」

「いや、遅かれ早かれこうなっていたじゃろう。だからこそ妾は、出来るだけそうなる前に鍛えたかったのじゃ」

サラが、真剣な眼差しで聞いてきた。

「解決方法は、あるのかい?」

「あるぞ、それはシリウスが精神世界に入り虚化を制御する方法を学ぶしかない」

「危険はないんですか?シリウスが、死んでしまう可能性はないんですか?」

リリーは、シリウスを肩を震わせながら聞いてきた。

「精神世界での虚化の制御方法の取得に失敗すると、そのまま怪物になる」

妾の言葉に、リリーは目に溜めていた涙を落とした。

そして、シリウスの方を向き言った。

「シリウス、どうするかはお主が決めるのじゃ。ギリギリまで粘るのか。それとも、近日中に決着をつけるのか。

自分で決めるのじゃ。妾達は、どちらを選んでもシリウスの意見を尊重するぞ」

妾の言葉に、シリウスは決意した顔で頷いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

〜シリウス〜

僕は、アグリッパ母さんの話を聞き始めてから、決めていた。

「やってみせるよ俺。だから、虚化の制御方法を獲得してくる」

そして、その日は明日になった。

 

 

明日になった。

「じゃあ。お願いアグリッパ母さん。リリー母さん美味しいご飯作って、待っててよ」

「わかったわ。ご馳走作るから、絶対帰って来なさい」

「シリウス、あたし達が側にいるから心配するな。自信をもてよ」

「じゃあ、やるぞ」

アグリッパ母さんの言葉の後に意識が暗転した。

 

 

「ヨォ、初めましてだな、王よ」

「お前が、虚化の原因か?」

俺は、目の前のもう一人のオレに聞いた。

「それは、ないだろ?シリウス、テメェは、オレを必要としたんだ」

その言葉と同時に、

奴は白い刀で斬りかかってきた。

俺は、武装色の覇気を腕に纏って

刀を弾いた。

「俺は、お前なんか、必要としていない」

「ウソだねェ、テメェは、ミノタウルスと戦っているときもサラと戦っている時も、オレを必要とした。だから、オレを使ったんだ」

その言葉同時に、奴はあろうことか俺の技を使ってきた

「月牙天衝ッ‼︎」

覇気を纏った膨大な魔力の刃が俺を襲った。

「・・・ぐっ、いつ覚えたんだぁ⁉︎」

「テメェと同じ時に決まってんだろ!シリウス‼︎」

そして、俺は、壁に叩きつけられた。

「ガハッ」

そして、地面に倒れた。

「そんなものか?テメェは」

「うるせぇよ」

俺は、そう言いながら立った。

「そう、カリカリすんなよ。楽しくいこうぜェェ‼︎」

(一体何故、奴が使えるんだ?)

「クソッ、訳が分かんねぇ」

と、呟くと

すると、奴は呆れたように

「こんな時に、気抜いてんじゃねェェ‼︎」

「気なんて抜いてねぇよ!」

「そんな目して、何が気抜いてねェだ」

「ッッ、だから、キなんか抜いてねぇよ!

月牙天衝ッ‼︎」

だが、奴は鼻で笑うと片手で弾き飛ばした。

「なっ‼︎」

そして、奴はニタリと笑うとこう言った。

「戦いの真実を教えてやろう。戦いとは、永遠に続くんだ。一人破っても、次に強き者が現れその者を例え倒す事が出来ても、更に強き者が現れる。その永劫なる行為に耐える事が出来なければ、いつか自身が破れる。だが、それが終わりジャネェ。戦いは、別の者に繰り返される。「輪廻」なんだよォ!人の生き死にだけではない、人が魂があり続ける以上、其処に争いが生まれ、争いが始まる。そして、その戦いは永遠に繰り返されるんだ‼︎」

「そんな事はねぇ‼︎」

「だから、テメェは甘いんだ!力を持つ者は、いつか必ず戦いに巻き込まれる。その時、真っ先に命を落とすのは、テメェのような甘い奴だ‼︎、ハッァァァ‼︎」

奴の斬撃を何とか受けたが俺の刀は粉砕され

壁に激突した。

そして、奴が刀の鎖を掴み、刀を振り回しながら聞いてきた。

「シリウス、王とその牙の違いは何だ?」

「何だと?」

「ヒトとウマだとか、二本足とか四本足とかそういう事を聞いているんじねェ、そういうガキの謎かけをしてんジャネェゾ」

奴は、笑いながら言った。

「姿も能力もそして力も全く同じ二つの存在があったとして、そしてそのどちらかが王となって戦いを支配し、残りのどちらかが牙となって力を添える時、その違いは、なんだ、と聞いてんだ」

続けて奴は、得意気な顔で言った。

「答えは一つ・・・本能だッッッ‼︎‼︎

同じ力を持つ者がより大きな力を発揮するために必要な物、王となるために必要な物は、唯ひたすらに戦いを求め、力を求め、敵を容赦なく叩き潰して、粉々に蹂躙する、戦いに対する絶対的な渇望だァ!

オレ達の深い深い身体の奥底、原初の階層に刻まれた研ぎ澄まされた殺戮本能だァァァァ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

俺は、言葉を発することが出来なかった。

「テメェには、それがネェ!

剥き出しの本能ってやつがナァ

テメェは理性で戦い理性で敵を倒そうとしてやがる

剣の先に鞘つけたままで一体誰を切るっていうんダァ‼︎

だから、テメェはオレより弱いんだよ、シリウス‼︎」

いつの間にか、刀を投げられ俺の腹部に刺さっていた。

「オレは、ごめんだぜ、シリウス。

オレは自分より弱い王を背中に乗せて走り回って一緒に切られるのは、耐えられネェ。

テメェの方が、弱いなら、テメェを潰してオレが王になる」

俺は、腹部に刺さった白い刀を呆然と見ていた。

(・・・本能・・・、戦いを求める本能・・・・

・・・・・本能ッッッッッッ‼︎)

そう、思うと同時に無意識に刀を掴み刀を黒く染めあげた。

そして、俺は、その刀を使い奴を刺した。

「クソッ、どうやらテメェにも少しは残ってやがったみテェダナァ。戦いを求める本能ってやつが・・・

しょうがねぇなぁ、オレを倒しやがったんだ、とりあえずは、テメェを王と認めてやるぜ。

だが、忘れんなよォ、オレとテメェはどっちも王にも牙にもなるってことをな。

もし、テメェに少しでも隙があれば、テメェを落として

テメェをその場から引きずり落とすッ!

それから、これは警告だ。本当に、オレを支配したけりゃ、次にオレが現れるまで、せいぜい死なねェヨオ二キオツケロぉぉぉ‼︎」

そして、奴の言葉と同時に視界が真っ白になった。

 

 

目を開けると皆がいた。

「気分は、どうじゃ?シリウス」

アグリッパ母さんが、聞いてきた。

「悪くねぇな」

「そうか」

と、満足気にアグリッパ母さんは、頷いた。

「もぉ〜、シリウス‼︎、言うことあるんじゃないの?」

リリーが、拗ねた様にきいてきた。

俺は、苦笑いを浮かべつつ答えた。

「ただいま」

「「「おかえりッ!」」」

 

 

ーーーーーーーーーー

あれから、半年が経った。

俺は、かなり虚化の持続時間が延びた。

そのおかげもあってか最後まで和解出来なかった九尾と和解することが出来た。

九尾が何故、封印されていたかを七歳の時に聞き、何とか和解できないか、何度も何度も九尾の封印されている場所に潜った。そしてようやく、和解出来た。

本当に、良かった。

明日は、アグリッパ母さんと尾獣の力のコントロールをみっちりするつもりだ。そして、俺は眠りについた。

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。


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3話

プロローグ終了です。次回は、オリ主の紹介をします。
その次に、原作へ入ります。
それでは、どうぞ!


順調に、尾獣の力と虚化を使いこなせる様になった。

ある日、大きな黄色な竜が倒れていた。

「なぁ、あれ何だろ?」

と、言うと

「あれは、ラーの翼神竜ではないか?妾の記憶が正しければもう、死んだと考えられているはずじゃ。妾も文献でしか知らぬわ」

「とりあえず、治療しようよ」

 

 

結局ラーは、俺の使い魔になった。かなり、体力を消耗していて全快するまで、しばらくかかるらしい。

それから、ラーと模擬戦したり、サラ母さん達と訓練したりして過ごしていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

十二歳になって、そろそろ自分の進退を考え始めていた時に、かなり大きな魔力を持った生物が近づいてくるのがわかった。俺は、急いで母さん達と合流した。

そして、島に向かって巨大な蛇が向かって来ていた。

「・・あれは、何?」

「あれは、アペプじゃよ。ラーとは対極の存在じゃ。

ラーは太陽を司るのに対し、アペプは闇と混沌の象徴だからな。厄介な奴が来たもんじゃ」

「やるしかないんだろう?だったら、早急にやっちまおうぜ」

「そうですね。やってやりましょう‼︎」

リリー母さんの言葉に、皆が強く頷いた。

そして、アペプとの戦いが始まった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 

結果は、何とか勝った。だが、激闘だった。終わった後には、島の半分が消失し俺たちも深い傷を負った。

アグリッパ母さんは、自らの眷獣を使いながら戦い

サラ母さんは、竜化して戦い

リリー母さんは、賢者の石を使って大規模魔術を行使し続け、

俺は、尾獣化しラーと共に戦った。

だが、勝利の代償は大きすぎた。

サラ母さんとアグリッパ母さんは、生命エネルギーの使いすぎ、リリー母さんは賢者の石を使い過ぎて余命が一週間程になってしまったのだ。

「なぁ、本当なのか?母さん達は、死んでしまうのか?

もう、一人にしないでくれよぉぉぉ・・・」

「・・・シリウス、遅かれ早かれあたし達は、死ぬんだ。

それが、シリウスより早いだけの話さ。

でも、あたしは後悔してないよ。親になることが出来たんだからな。あたしは、ずっと親には、なれないと思っていたからな〜」

「妾もじゃ。息子のためたら何だってできるわい。最後に、母になれて本当に良かったわい。もうやりたい事など何も無いな」

「私もですよ。シリウス。私は、家庭を築くのが夢でした。七年間しか母になれなかったけど、うれしかったわ

本当にありがとう」

「・・・かあさん・・・・」

俺は、涙が止まらなかった。そして、母さん達が抱きしめてきた。母さん達も泣いていた。

そして、俺達のすすり泣く音だけが、島に響いていた。

 

 

それから、家に帰って母さん達と話をした。余命は、大体一週間ぐらいだそうだ。そして、丁度、一週間後に島から出られる日なので別れは一週間後に決まった。

その日には、同時に母さん達の力を譲渡してくれるらしい。

サラ母さんは、心臓を。ドラゴンフォースといい、ドラゴンと同等の力を発揮できる力を持つことが出来る。

アグリッパ母さんは、眷獣を渡してくれる。

リリー母さんは、賢者の石の力を使い高速再生を。

そして、俺はその後、人間界の日本という国の京都に、行くことになった。アグリッパ母さんの知り合いが、京都の妖怪のまとめ役をしているらしい。だから、後見人になって貰える様にして貰った。

色々な事をしている内に、当日になった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「遂に、来たか・・・」

「これ、シリウス。そんな悲しい顔をするでない!

笑って送り出してくれると約束したじゃろ」

「そうだぜ。あたし達は、死んでもシリウスの中であたし達の力は、生き続けるんだ。全然悲しくないさ!」

「そうよ、シリウス。私達は、あなたの中で生き続ける。だから、あなたは決して一人じゃないわ。

それに、ラーもいるじゃない」

「ごめん。分かったよ。辛気臭いのはなしだ」

俺の言葉に、母さん達は、笑顔を浮かべた。

すると、アグリッパ母さんが口を開いた。

「そろそろ、始めるぞ」

魔法陣が、光り始めた。

俺は、何とか笑おうとしたが思い出がフラッシュバックして、大粒の涙が溢れ始めた。

だが、母さん達は微笑んでいた。本当に、優しげな顔をしていた。

「シリウス、幸せになりなさい。あなたとの七年間は、本当に楽しかったありがとう。最後に、息子になってくれてありがとう」

「シリウス、達者でな!お前は、十分力をつけた。だから、大抵の困難は乗り越えていけるだろう。自身を持って堂々といきよ。息子よ!」

「シリウス、お前の体術と剣術に関してあたしから、何も言うことはない。後は、己自身で磨き上げるだけだ。

立ち止まったって、いいんだよ。また、歩き出せば。

後、ありがとな。息子になってくれて。本当に、充実した七年だった」

強く、光り始めた。

「おれも・・・・母さん達の息子になれて良かったぁ・・・

おれがぁ、忘れない限り皆おれの中で、生きてるから寂しくないよ。

だから、安心してくれ」

母さん達が、微笑みながら頷き

その後、直ぐに視界が光に覆われ

何かが、身体に入ってくる感触があった後に、光が収まり始め光が止んだ後には、母さん達は既に居なかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

そして、その後俺は家のあった場所に石碑をつくった。

俺は、母さん達の遺品を持って七年間過ごした島を後にした。

 

 

その後は、予定通り京都に行き。後見人になってもらった。そして、京都の中学校に入り、タダで住まわせて貰うのは嫌なので、冥界ではぐれ悪魔、堕天使や魔獣達をかる仕事をしてお金を納めていた。

その時は、顔を見られる訳にはいかなかったので、ずっと虚化していた。そのせいで、「仮面の狩人」なんていう二つ名なんてついた。結構恥ずかしかった。

そして、そのお陰?、か魔王様に呼ばれた。

 

 

〜魔王〜

今、目の前にいる少年は、二つ名持ちの悪魔だ。だが、性別が男と分かるだけで他は、何もわからない。

私の部下に、調べさせても何も出なかった。それが、逆に怪しい。追跡をしてもいつの間にかいないらしい。

敵であれば排除しなければならないが、こんな有力な戦力は、是非誰かの眷属にしたいところだ。それか、王の駒を与えたいところだ。

私は、隣にいる女性に目配せして話しだす。

「初めましてかな?知っていると思うけど、魔王をやってるサーゼクス・ルシファーだ。そして、後にいるのがグレイフィアだ」

「グレイフィアと申します。以後、お見知りおきを」

「こちらこそ、初めまして。悪魔の中で最強と名高い魔王様とグレイフィア様に、お会いできて光栄です」

礼儀作法が、完璧だった。

ますます、彼が何者なのかわからなかった。

その後も、何者なのか質問したが答えてくれなかった。

まだ、名前を出すのは早いと言っていた。

そして、また何も情報を得られないまま今日は、終了した。

「グレイフィア、彼をどう思う?」

「ハッキリ申し上げますと、彼は異常です。

戦闘力は最低でも最上級悪魔クラス。礼儀作法も完璧。

そして、何よりあの年齢で自分というものを確立できている。失礼ながら、とてもリアス様と同じ歳には見えません」

「私も、同じ意見だよ。結構、他人を見る目はあると思っているけど、彼の目は他の悪魔と全く違う。歴戦の悪魔の目をしていた。生きる覚悟が違うよ、彼のような目をした悪魔が増えれば、悪魔社会はもっと良くなると思うけどなぁ。あの年齢で、どんな生き方をすれば、あんな目が出来るのだろうか?これは、リーアたんの人間界行きを急いで、実行しなければ!」

「そうですね。リアス様には、外の厳しさを知ってもらはねばなりませんので」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

俺は、今日から高校生だ。学校の名前は、駒王学園。

高校では、流石に厄介になるわけにはいかなかったので一人暮らしを始めた。

なぜ、ここかというと、何処に転移しようか迷っていると強い力にひかれたんだ。だから、この町にしたんだ。

でも、あの力はなんだっんだろうか?

まぁ、おいおいわかるか。

とりあえず、高校生活楽しみだなぁ〜

 

そして 俺は、軽い足取りで入学式へと向かっていた。

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
ラーとアペプに関しては、神話の中で最大の敵のようです。
では、また次回‼︎


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主人公紹介。

白澤 玲 本名シリウス・リーベルタース

身長178㎝ 体重73キロ

容姿 茶髪の短髪である。顔が整っていて、イケメンの部類に入る。いかにも、好青年という感じで近所のオバ様方からの評判はいい。いつも、母の遺品であるロケットそして吸血鬼の遺品であるブレスレット、魔女の遺品である指輪を着けている。戦闘時には、古龍の遺品である手袋を着けている。服を着ていると分からないが脱ぐと鋼の肉体であり、一年の時の、水泳の授業では、かなり噂になった。

そのおかげ?か、そっち系の男たちに猛アピールを受けた。

 

生い立ち

リーベルタース家の次男として生まれた。五歳の時に、旧魔王派の襲撃にあい家族と死別。その後、古龍、吸血鬼、魔女に十二歳まで育てられる。その後は、京都の妖怪の所で中学卒業まで過ごす。現在は、駒王学園に通っている。一応

「仮面の狩人」という二つ名を持っている。だが、本人は嫌がっている。現在は、高校二年であり兵藤一誠と同じクラスである。

戦闘に関して。

基本的には、尾獣達の持つ膨大な魔力を使う。

その他には、眷獣達を用いたり、ドラゴンその物の力と同等の力を発揮できるドラゴンフォース。そして、最早伝説上の物と思われている輪廻写輪眼を用いた瞳術。

その実力は、悪魔社会で最強の夫婦である、魔王であるサーゼクス・ルシファーとその妻のグレイフィアに「最低でも、最上級悪魔クラスはある」言われるほど。

 

生活に関して。

一人暮らしの経費は、冥界で、はぐれ悪魔や魔獣達を狩って得た報酬で支払っている。家事スキルも高いので一人暮らしでも不自由なく暮らすことが出来る。学園生活は、楽しんでいる。成績も、優秀なため生徒会長であるソーナ・シトリーから生徒会に誘われていたが全て断っている。理由は、ただ単に面倒だから。

母から、ピアノを教わっていたためかなりうまい。家で、暇になるとよく弾いている。

 

性格

悪魔社会から早々に離れたため、悪魔社会に対して帰属意識は皆無に等しい。だが、別に悪魔が嫌いだとかそういう理由ではなくただ興味がないだけ。カフェなどで、本を読んで過ごすのが一番リラックス出来る。

興味のない事に関しては、本当に何も思わないが他人の気持ちに関しては、鈍感という訳ではない。

女性のエスコートは、散々しこまれたため文句の付けようがなく中学の時には、教師に「大人の男性と過ごしているみたい」と、言われたほど。貴族社会である悪魔社会では、女性悪魔は家柄だけを見られる事の方が多いがその事に関しては、かなり嫌悪している。

 



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旧校舎のディアボロス
NO.1


こんばんは。
体調管理は、大丈夫ですか?
朝かなり冷え込みますからね〜
気をつけていきましょう。

それでは、原作入ります。
どうぞ‼︎


あれから、時が流れ高校二年になった。

長期休暇の時は、必ず京都へ帰っている。

三年間お世話になった所だからな。

 

さて、学園に入学した後に分かった事だが、学園には悪魔がいたんだ。しかも、大物。

一方は、この学園の二大お姉様の一人、リアス・グレモリー。魔王サーゼクス・ルシファーの実の妹だ。グレモリー家の次期当主だ。

そして、彼女の実家は公爵だ。所謂、お嬢様だな。

 

もう一方は、生徒会長のソーナ・シトリーだ。魔王セラフォール・レヴィアタンの実の妹だ。シトリー家の次期当主である。こちらもお嬢様だ。

 

ハッキリ言うと学校選択を間違えた、と思ったがもう遅かった。だが、隠蔽を使っている為バレておらず平穏なスクールライフを送っている。これからもあの二人に関わらずに生活しようと思っていたのに、目の前には、

「私たちオカルト研究部は、貴方達を歓迎するわ。悪魔としてね」

リアス・グレモリーがいた。

 

事の発端は、変態三人組の一人兵藤一誠だ。

ある休日、買い物の帰りに人払いの結界が張っている公園を見つけた。もし、一般市民が人外に襲われていたら目覚めが悪いのでとりあえず見に行くことにした。

そして、案の定一人の少年が男の堕天使に襲われていた。

しかも、その少年は俺と同じクラスの兵藤一誠だった。

ちょうどまさに、光の槍で刺されたところだった。

すると、男が俺に気づいた。

「うん?人払いの結界を張ってあったはずなんだが・・・

まぁ、良い。人間、運が悪かったと思って死ね!」

そう言って、光の槍を投げてきた。

大した脅威でもなかったので手で叩くと

バシッ

と、音を鳴らして霧散した。

すると、堕天使の男は人間が素手で光の槍を防いだ事に一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに憤怒の表情に変わった。

「良い気になるなよォ!たかが、人間風情がァ!もう、消し飛ばして、ッッッ⁉︎」

奴の言葉が、最後まで言われる事はなかった、何故なら後ろから禍々しい魔力が飛んできて男の右腕を肩から下が消し飛んだからだ。右肩口からは、鮮血が溢れ出している。

「ご機嫌よう。堕ちた天使さん?」

その声の主は紅い髪の女だった。

「・・・紅い髪・・・グレモリー家の者か・・・」

堕天使の男は、肩口に左手をあて、止血をしながら憎々しげに睨みつけた。

「リアス・グレモリーよ。この町は、私の管轄なのだけど

好き勝手やらないでくれるかしら?今後、私の邪魔をする

をするようなら体を消し飛ばすわよ?」

「その台詞、そのままそっくりそちらへ返そう、グレモリー家の次期当主よ。我が名ドーナシーク。再び見えないことを願う」

男は黒い翼を羽ばたかせ空へ飛んでいった。

「貴方、駒王学園の生徒ね。聞きたい事があるのだけど、この子の治療が優先だから明日使いを寄越すわ」

リアス・グレモリーは、そう言って兵藤を横抱きに魔法陣で消えた。

俺は、これから起こる厄介事に深い深いため息をついた。

もちろん、さっきからこっちを見ている存在には気づいていたが知り合いだったのでとりあえず、スルーしておいた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

〜兵藤一誠〜

今日、朝起きるとなんと!隣で、学園のアイドルであるリアス・グレモリー先輩が裸で寝ていたんだ。驚いて声も出なかった。人って、驚きすぎると声が出ないんだとしみじみ思った。

どうして一緒に寝ていたんですか?と、聞くと、今日の放課後使いを寄越すからその時話すわ、と言われた。

 

そして、呼びにきたのは・・・

「リアス・グレモリー先輩の使いできたんだ」

よりにもよってイケメン木場だった・・・

「君も、一緒に来てくれないか?白澤くん」

何故か、白澤も呼ばれていた。奴もイケメンにはいる人種だ。神様なんで、こんなに不公平な世の中なんでしょうか?

 

そんなことがあり、現在俺達は旧校舎のある教室の前にいた。

戸にかけられたプレートには、

[オカルト研究部]

と、書かれていた。

「部長、連れてきました」

引き戸の前から木場が確認すると、「ええ、入ってちょうだい」と先輩の声が聞こえてくる。

先輩は中にいるみたいだ。

木場が戸を開け、後に続いて室内に入ると、俺は中の様子に驚いた。

室内、至る所に謎の文字が書き込まれていた。

床、壁、天井に至るまで見たこともない面妖な文字が記されている。

そして、一番特徴的なのは中央の円陣。

教室の大半を占める巨大な魔法陣らしきものだ。

何やら不気味さと異質さを最大級にまで感じるぞ。

後は、ソファーがいくつか。デスクも何台か存在する。

ん?ソファーに一人座っているじゃないか。小柄な女の子・・・・。

知ってる。あの子を知っているぞ!

一年生の塔城小猫ちゃんだ!

ロリ顏、小柄な体、一見では小学生にしか見えない我が高校の一年生だ!

一部の男子に人気が高い。女子の間でも「可愛い!」と

マスコット的な存在だ。

黙々と羊羹を食べている。いつ見ても眠たそうな表情だ。

そういや、超がつくほど無表情な女の子なんだっけ、この子。こちらに気づいたのか、視線が合う。

「こちら、兵藤一誠くんと白澤玲くん」

ペコリと頭を下げてくる塔城小猫ちゃん。

「あ、どうも」

「どうぞよろしく」

俺と白澤も頭を下げる。

すると、奥のカーテンが開く。

そこにいたのは、リアス先輩ともう一人の「お姉様」の姫島朱乃先輩だった!

男子女子問わず憧れの的!

「あらあら。はじめまして、私、姫島朱乃と申します。どうぞ、以後、お見知りおきを」

ニコニコ笑顔で丁寧な挨拶をされる。

「こ、これはどうも。兵藤一誠です。こ、こちらこそ、はじめまして!」

俺も緊張しながら、挨拶を交わす。

「はじめまして、姫島先輩。白澤玲です。よろしくお願いします」

白澤も挨拶をした。

それを「うん」と確認するリアス先輩。

「これで全員揃ったわね。兵藤一誠くん、白澤玲くん。

私たち、オカルト研究部は貴方たちを歓迎するわ。

悪魔としてね」

何がなんだかさっぱりだ・・・

 

 

〜白澤玲〜

兵藤は、鳩が豆鉄砲食らったような顏してやがる。

まぁ、普通はそういう反応になるわな。

突然「悪魔としてね」と、言われて「はいそうですか」と

言える奴はまずいないだろう。

リアス・グレモリーが口を開いた。

「レイは、驚かないのね?普通驚くと思うけど」

「まぁ、自分の場合は京都の妖怪の方にお世話になっていたのである程度は、知っています」

「そう。じゃあ、話が早くて助かるわ。問題はイッセーね」

そう言うと兵藤に対して話始めた。

内容はこうだ。

まず、天野夕麻という女について話し始めた。

その女は、堕天使だったそうだ。だから、兵藤に眠る神器が危険だと判断して兵藤を誘いだして殺したみたいだ。

まぁ、所謂ハニートラップって奴だな。

で、刺されて死にそうになっている所に偶然にも持っていたチラシを使ってリアス・グレモリーを呼び出したみたいだ。

そして、問題の神器を顕現させた。すると、奴の左腕には赤色の籠手があった。これは、間違いなく『赤龍帝の籠手』通称『ブーステッド・ギア』だな。京都から、こっちに転移する時に感じた強い力を感じる。

最初の方は、下僕悪魔になった事に気乗りしていなかったが「頑張ればモテモテになるかもしれない」と聞かされると、ドンドンやる気になっていった。仕舞いには、「ハーレム王になる」とか言っていた。本当に単純な奴だ。

 

兵藤への話が終わるとこっちを向いて話し始めた。

「さて、レイ。貴方も私の下僕にならない?」

「何故ですか?自分は、兵藤のように神器を持っていないので眷属にする価値はないと思いますが・・・」

「あるわよ。だって、貴方は堕天使の光を素手で弾いたのよ?そんな人間が、普通な筈ないじゃない」

「いえ、だから京都の妖怪から少しだけ習った程度ですよ。しかも、あの堕天使も手加減してたんじゃないですか?そうじゃないと、神器も持たない人間が堕天使の光の槍を弾くなんて無理でしょう」

と、俺が肩を竦めて答えると、リアス・グレモリーは、さも分からないかのように話した。

「そう、そこなのよね〜。あの槍は間違いなく中級悪魔程度なら滅せるぐらいの力はあったのよ。なのに、貴方は弾いた。何故かしら?」

意味ありげに微笑みながら質問してきた。俺は、これ以上の抵抗は無駄だと思い諦めた。

「ハァ〜、分かりました。但し失礼ですが、自分は簡単にはあなた方を信用することが出来ません。ですから、駒を預けるだけの仮の下僕としてなら構いません。

正式な下僕に、なるか否かは私が決めます。どうでしょうか」

俺は、無難な落とし所を提案した。相手は仮とはいえ俺が手に入る。そして、そのまま正式な下僕となる可能性も充分にある。こっちは、駄目な主だと思ったら駒を返却すれば良いだけだ。今の俺達の関係ならこの提案は、WIN・WINだろう。しかも、俺の方が実力が上だ。万が一無理矢理下僕にされそうになっても対処可能だ。

リアス・グレモリーも悪くないと思ったみたいだ。

「分かったわ。貴方には、戦車の駒を渡しておくわ」

と、俺は駒を渡された。

こうして俺と兵藤のオカルト研究部への入部が決まり、

兵藤は、腐った悪魔社会へ仲間入りし

俺は、再び舞い戻った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

家に帰りドアを開けるといつものように黒猫ちゃんがいた。

「ただいま」

と、言うと

「ニャー」

と、なく。そして、黒猫ちゃんは何かを調べるかのように俺の方をジロジロ見てきた。

「どうかしたか?」

そう聞いても何も答えず悲しそうな顏をして俯きながらリビングへと歩いていった。

 

その日の夜中突然、部屋の扉が開いた。

扉を開けた者は、俺に近づいてきた。

そして、話し掛けてきた。

「玲やっぱり、悪魔と関わるんだね。私がいると玲にも危害が及ぶかもしれないにゃ。だから、今日でお別れにゃ。

本当に玲は、優しかったにゃ。離れなきゃ、と何度思っても居心地が良すぎて出来なかったにゃ。でも、やっと決意できたにゃ。ありがとう、玲。また、会おうにゃ」

そう言って出て行こうとしたので俺は呼び止めた。

「おい、誰が出て行っていいといったよ?く・ろ・か?」

そう、言うとさっきの声の主は驚いたように

「な、なんで私の名前知ってるにゃ⁉︎」

言ってきた。

「リビングで話すとするか」

俺は、リビングへ黒歌を連れて行った。

 

 

そして、黒歌をテーブルに座らせ俺は話し出した。

「実はと言うと、俺は黒歌が最初から普通の猫じゃない事も気づいていた。名前が分かったのは一ヶ月くらい前だったけどな」

「そうかにゃ。でも、玲は普通の人間なのにどうして私の名前を知る事が出来たんだにゃ?」

と、不思議そうに聞いてきた。

「そりゃ、だって俺、悪魔だし」

「嘘にゃ!だって、玲からは悪魔の力が、全く感じられないにゃ」

「まぁ、そうだろうな。かなり強力な隠蔽使っているからな」

と言うと、黒歌は俯きながら聞いてきた。

「名前を知ってるという事は私が『はぐれ』だと知ってるでしょう?玲が悪魔なら余計に私と一緒にいるのは駄目。玲まで罪に問われるにゃ」

「俺は、黒歌が望んで『はぐれ』になったわけじゃないと思っている。一緒に生活して分かった。お前は、他者を傷つけてまで力を欲する奴じゃない。すると、残された可能性は一つ。我々、悪魔のせいだな?」

俺の言葉に黒歌は静かに頷いた。

そして、ぽつりぽつりと話し始めた。

全てを黒歌から聞いた後、俺は黒歌に謝罪した。

「本当にすまない。こんな月並みな言葉で許される筈はないと思う。だが、同じ悪魔として看過出来ないことだ。

俺の同族のせいで・・・本当に申し訳ない」

俺は、黒歌に謝ることしか出来ない。それ以外できる筈もない。勝手に眷属化しようとした挙句、大した裏付けもせずに上級悪魔を殺しただけで『はぐれ』扱い。こんなことが、許される筈もない。

悪魔の数が少なくなったからといって、他種族に頼っているのにも関わらず転生悪魔を差別する。しかも、女性に対しては、体目的もあり得る。どんな、種族だよ。ただの獣じゃねぇか・・・

だから、俺は受け入れよう。どんな、暴言も暴力も。

俺は、頭を下げ続けた。

「頭を上げてにゃ。玲は悪くないんだから」

そう言って、彼女はとても魅力的に微笑んだ。

「ありがとう。『はぐれ』扱いについては、安心してくれなんとかするから。俺かなり強いから襲撃されても大抵の奴は大丈夫さ。

しかも、俺達もう家族なんだから出て行くなんて言わないでくれ。これからも、一緒に暮らそう。なっ?」

と、言うと黒歌の目から大粒の涙が溢れ始めた。

「・・・ぐすっ・・・うん。・・・改めてよろしくにゃ」

「こちらこそよろしく」

そう言って、彼女を抱きしめた。

 

 

〜黒歌〜

今、私はとっても心地いいにゃ。玲と一緒のベッドで寝てるからにゃ。しかも、頭撫でて貰いながら・・・。

白音もとりあえず元気そうで安心したにゃ。

でも、謝らないと・・・、白音には色々苦労さしたはずだにゃ。

玲の生い立ちも聞いたけどかなりハードだにゃ。しかも、あの有名なリーベルタース家だったなんて・・・。

まぁ、玲が何処のどんな人でも玲は玲にゃ。

段々まぶたがおもくなってきた。

そろそろ、寝そう・・・にゃ

おやすみ、レイ。いや、シリウス。

 

 

 

 




どうでしたか?
原作では、あまり悪魔社会の負の部分に関しては触れていないので今回触れてみました。やはり、一誠くんが主役だとどうしても触れにくいのでしょうか?彼は、悪魔社会の政治には、触れていないですからね。
まぁ、ラブコメですからそれで良いのかもしれませんが笑

では、また次回!


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NO.2

秋も深まってきましたね。
では、どうぞ。


 「行ってきます」

 と、俺が言うと前までは「にゃ~」だったが、今日からは

 「いってらっしゃい、シリウス」

 になっている。なんか夫婦みたいでちょっと照れる。黒歌も若干顔が赤い。

 

 今日の朝に八坂さんに電話をした。黒歌を保護してもらえるかの確認の電話だ。

 八坂さんというのは、京都を取り仕切っている妖怪の統領だ。九尾の狐で、本当の姿はかなり大きいらしい。

 三年間本当に良くしてもっらた。八坂さんの娘の九重ちゃんには、本当の兄妹のように接してもらった。

 よく、「絶対シリウスの嫁になるのじゃ!!」と言ってくれていた。あれぐらいの年の女の子にそう言われると可愛くて仕方がない。

 八坂さんは、本当に良い女性だった。俺が京都に初めてきた時に、「お主・・いや、謙吾がどういう風に生きてきたかは、アグリッパから聞いておる。何も心配することはない。神々には、既に話を通してある。これからは、ここが謙吾の家じゃ!」そう笑って言ってくれた。

 俺も最初は、本当に不安だった。妖怪は、許してくれたとしても、京都で祀られている神々が許してくれるかは分からないからだ。なぜなら、悪魔、堕天使、天使は人間界で好き勝手しすぎたからだ。三大勢力のせいで、信仰する者がいなくなり忘れられた神だって大勢いるのだ。でも、京都で祀られている神々は許してくれた。八坂さんの人徳なのだろう。

 悪魔は、気に入った者は力ずくでも下僕にしようとするため他種族からの評判はすこぶる悪い。だから、最初は挨拶をしてもあまり挨拶してくれなかった。時には、物を投げられたりもした。

 だから、俺は掃除をしたり、妖怪の子供たちの面倒をみたりしてとにかく積極的に行動した。そのおかげか、京都に移住して一年程経つとかなりの妖怪が好意的ではないにしろ、受け入れてくれたように感じた。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

完全に受け入れて貰ったのは、幸か不幸かあの事件おかげだろう。俺が、中学三年の春先だった。突然、北欧の神ロキが訪ねてきたのだ。八坂さんに会わせろと言ってきたみたいだ。理由を聞いても八坂さんにしか話せないの一点張りで渋々八坂さんに会わせたみたいだ。

そして、ロキが来てから小一時間経ったぐらいだろうか。

九重ちゃんと戯れていると背筋が

ゾクッ!?

とするような力が八坂さんとロキのいる部屋から感知できた。俺は、九重ちゃんを屋敷にいる女性に預け急いで部屋へ向かった。

そこには、魔力が殆どない八坂さんがいた。

「八坂さんッ!」

「謙吾ッ、来てはならぬ!!」

八坂さんに駆け寄ると部屋の中には、薄ら笑いを浮かべているロキがいた。

「こいつが悪いんだよ。ここの神々を殺すから邪魔をするなと言いに来ただけなのにあろうことか断りやがったんだ。神の言うことが聞けないなら罰を受けるのは、当然だろ?」

さも当然かのように言った。

奴を殴ってやりたかったが八坂さんの方が優先なので治療を続行していた。

「もう興醒めだ。今日は、帰るとするか。あぁ、土産は残していく。じゃあな、妖怪」

そう言って奴は、いなくなった。

その後外から

「オオオオオオオオオォォォ!」

と獣の雄叫びのような声が聞こえて来た。

慌てて外に出てみると20メートル程の巨人がいた。

 

「・・・あれは・・・ヘカトンケイルじゃな」

八坂さんが肩を貸してもらいながら歩いてきた。

「龍王クラスでないと倒すのは、難しいじゃろ。

わらわが万全であれば・・・」

と悔しそうに呟いた。

「俺が行くよ八坂さん」

「駄目じゃ!死ぬ可能性もあるんじゃぞ!まだ、百年も生きていない若僧はそんなことせんでいい」

殺気混じりのち強い口調で言ってきた。

だが、俺は引き下がるわけにはいかなかった。

「もう、ウンザリなんだ。見送る側は。後悔ばかりだ、

俺の人生は。でもあの頃とは違う。力も付けた。だから、俺は俺の出来ることをする」

八坂さんは、複雑そうな顔を浮かべていた。

俺は、ヘカントケイルの方へ走って行こうとすると

「謙吾ッ!必ず帰ってこい」

と、八坂さんが言ってくれた。

俺は、振り返り頷いた。

 

とりあえず、周囲の被害を抑える事が最優先しなければならないことだ。

疾く在れ(きやがれ)!、四番目の眷獣 甲殻の銀霧(ナトラ・シネレウス)

その言葉と同時に、霧が現れ建物を覆っていく。

 世界の輪郭を不明瞭に変えていった。

 建物も植物も、大気も全てが銀色の混沌に塗り潰されていく。

 銀色の濃霧にの中に浮かび上がったのは、巨大な眷獣の影だった。眷獣の全身を包むのは灰色の甲殻。

 禍々しくも分厚いその装甲は、動く要塞と呼ぶに相応しい。

 亡霊の霧に覆われた世界に、眷獣の咆哮が響き渡る。

 

 これで、魔力が尽きるまでは被害はない。

 「オオオオオオッッッッ!!!!!!」

 ヘカトンケイルは、俺によって周囲が霧になっていることに気がついたのかこちらを睨みつけて、邪魔するなと言わんばかりに咆哮してきた。

 八坂さんから優れた再生能力を持つと言われていたので、様子見はなしだ。

 「疾く在れ(きやがれ)!、三番目の眷獣 龍蛇の水銀(アル・メイサ・メルクーリ)

 出現したのは、前後に頭を持つ一体の巨龍だった。

 緩やかに流動してうねる蛇身と、鉤爪を持つ四肢。すなわち『双頭龍』。

 龍に向かってヘカトンケイルが魔力を纏わせた拳を振りかざす。魔力を纏わせているので大きな拳が迫ってくる圧力だ。まともに受ければ、五大龍王といえどただでは済まない威力を持っている。

 だが、その力が奮われることはなかった。

 龍達が、それぞれ巨大な(あぎと)を開き、その奥の底知れぬ深淵へと呑みこんだ。

 龍達は、次元喰らい(ディメンジョン・イーター)だ。

 見た目の派手さも、騒々しさもない。

 だが、凶悪さでいえば群を抜く。

 彼らの顎に喰われた空間は、この世界から消失する。

 いわばこの世界そのものに、回復不能のダメージを与える眷獣なのだ。

 だが、既に再生しつつある。右側全ての腕を喰ったのだが殆ど元通りだ。

 龍達は今度は後ろから体を喰らおうとしたが、ヘカトンケイルは先ほどの攻撃から学んだのか体を捻ってかわしボディーブローを叩き込んだ。

 拳がめり込み双頭龍は、飛ばされていく。

 俺は、須佐能乎で身を守りながら戦闘を見ていた。

 「ッッッッ!?、なんていう身のこなしだ。あの体格であの速度・・・さすが神話の怪物だ」

 「GYAAAAAAAA」

 双頭龍は、怒りの咆哮を上げてヘカトンケイルに襲いかかる。

 だが、また避けられる。

 

 (奴の動きを押さえない限り勝てないか・・・。魔力もかなり消費した。そろそろ決めないと、こちらがやばい。

  三体同時にスサノオなんてやったことないが・・・やらなきゃ負けるッ!)

 俺は、覚悟を決めて三体目の眷獣を出現させた。

 「疾く在れ(きやがれ)!、二番目の眷獣 牛頭王の琥珀(コルタウリ・スキヌム)

 溶岩の肉体を持つ巨大な牛頭神(ミノタウロス)だった。

 大地から無限に湧き上がる溶岩自体が眷獣の本体だ。琥珀色(アンバー)の輝きを放つ全身は身長十メートルを超えている。

 俺も須佐能乎を完成体にした。

ヘカトンケイルの足下から溶岩の杭を打ち込む。

「オオオオォォォ!!」

「クソッ!、何つう力だ!」

何十本もの高熱の溶岩の杭を打たれながらも、こちらに歩こうとしてきており徐々にだが、こっちに進んできてい

る。

すぐさまヘカトンケイルをコルタウリ・スキヌムに押さえつけさせる。高熱の杭が効いているのか、動きが鈍ってきていた。

須佐能乎迦具土命(すさのおかぐつち)ッ!」

俺は、須佐能乎の矢に天照を付与させ心臓に向かって放った。黒炎がヘカトンケイルの身を焼いていくが膨大な魔力によって相殺されていく。俺の魔力もかなり消費された天照は燃費が非常に悪く連発は出来ない。しかも、眷獣も同時に出現させているため結構キツイ。

迦具土命は、相殺されてしまったが上手く分厚い胸板を燃やし、心臓を露出できた。だが、早くも再生し始めている。

「やれ!双頭龍!」

龍達が、大顎をあけてヘカトンケイルの胸に喰らいつき大きな風穴を開けた。

そして、再生する事もなく腕先、足先から灰になったように崩れていった。

俺は、須佐能乎を解除し眷獣を消した。

霧が晴れるとそこには、見慣れた風景が広がっていた。

 

 

 

  




ヘカトンケイルは、本来ギリシャ神話ですがお気になさらず。

連絡事項
諸事情により最大で十一月末まで更新が遅れます。
楽しみにして頂いている方申し訳ありません。


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NO.3

皆様お久しぶりです。更新が遅れて申し訳ありません。

変更した点があります。
主人公の出自をエフォンス家からリーベルタース家へ変更。
尾獣の数を9体から7体へ変更。
以上です。

それでは本編をどうぞ!


万感に浸っていると不意に声をかけられた。

「シリウス」

八坂さんの声だった。後ろを振り返ろうとすると抱き締められた。

「えっ、八坂さん?」

彼女は、泣いていた。いつも、

「よかった・・・本当によかった。死んだらどうしようかと」

俺は、八坂さんを抱き締め返した。今の彼女は、いつもの京都の妖怪達を束ねている大妖怪ではなく守ってあげたくなるような存在だった。

「ありがとうございます、八坂さん。此処は、俺の居場所ですから。後、八坂さんもいますし」

そう言うと、顔を赤くして目を逸らした。

「からかうでない。ほんに口だけは、達者じゃな」

「からかってないんですけど。本心ですよ」

そんな感じで話していると

「母上〜。シリウス〜」

九重ちゃんが、走ってきた。

その後ろには、他の妖怪達もいる。みんな笑顔だ。

「帰ろうかの?」

「そうしますか」

俺達は、共に歩き出した。

夕陽が俺達を照らし、新たな門出を祝うかのように春の暖かな風が吹いていた。

 

 

その日の夜は宴が開かれ、てんやわんやの大騒ぎだった。俺は京都を救った英雄と担ぎあげられた。沢山の妖怪達が「ありがとう」と言ってくれて本当に嬉しかった。改めて此処が今の自分の帰るべき所なんだと実感した。

そろそろお開きにしようかとなり妖怪達が帰り始め俺も帰ろかと思った時だった。

「シリウス、ちょっといいかえ?」

八坂さんに呼ばれた。

「改めて、ありがとうシリウス。お主のおかげで此処は救われた。妾達の居場所を失わずにすんだ」

「面と向かって言われると恥ずかしいけど、そう言ってもらえると己の力を使ったかいがあります。ここは、俺にとっての居場所でもありますから」

八坂さんは、満足そうに頷いていた。

「これは、わらわからの褒美じゃ」

八坂さんは口づけをしてきた。唇はとても柔らかかった。

顔は真っ赤になっており、いつもの妖艶な姿からは絶対見られない初々しい反応に『ドキッ』としてしまった。

すると不意に

「母上〜、どこにいるの〜」

と九重ちゃんが半分寝ている状態でふらふら歩いていた。

「で、ではのシリウス」

八坂さんは、九重ちゃんを抱き抱え足ばやに去っていった。

その後は大きな出来事はなく平穏な日々を過ごした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

オカルト研究部の部員であるが部長の眷属でない俺にこれといって仕事があるわけではない。何もしないのは退屈なので、夜中に兵藤と共にチラシ配りをしている。そして、今日はいよいよ兵藤の初仕事だ。もちろん悪魔としてだが。

部室の窓には暗幕がかけられていて、完全に光をシャットアウトしている。床に点々としているロウソクの灯りだけしかない。

「来たわね」

俺達を確認するなり部長が姫島先輩に指示を送る。

「はい、部長。イッセーくん、魔法陣の中央へ来てください」

そして兵藤が中央に立った。

「イッセー、あなたのチラシ配りも終わり。よく頑張ったわね。レイも手伝ってくれてありがとう」

俺は、部長の労いに会釈で返した。

「改めて、イッセーにも悪魔としての仕事を本格的に始動してもらうわ」

「おおっ!俺も契約取りですか!」

「ええ、そうよ。もちろん、初めてだから、レベルの低い契約内容からだけれど。小猫に予約契約が二件入ってしまったの。両方行くのは難しいから、片方はあなたに任せるわ。レイに関しては、あまり言うことがないわ。何かしたいことある?」

「うーん、自分も特にしたいことはないのですが・・

では、冥界の書物を読ませていただけないですか?」

「ええ、そんなことでいいなら。部室の本棚にあるのは構わないわ。全て読み終えたなら言ってちょうだい」

「わかりました。ありがとうございます」

部長と話している間に転移する準備が整ったみたいだ。

「朱乃、準備いい?」

「はい、部長」

兵藤が魔法陣の中央に立った。

すると、いっそう強く魔法陣が光り始めた。

「魔法陣が依頼者に反応しているわ。これからその場所へ飛ぶの。イッセー、到着後のマニュアルも大丈夫よね?」

「はい!」

「いい返事ね。じゃあ、行ってきなさい」

部長が言ったと同時にさらに魔法陣は光り始め兵藤の体を包んだ。

だんだんと光が収まり、兵藤は・・・・・まだいた。

部長は額に手をあて、困り顏をしていた。

姫島先輩は「あらあら」と残念そうな表情。

木馬はため息をついていた。

兵藤は何が起きたのかわからずオロオロしている。

「兵藤、お前は転移に失敗したんだ。恐らく魔力が足らなかったんだろう」

周りから失笑が漏れた。

「ちなみにどのくらいなんだ?」

「はっきり言うとわからん」

兵藤の顏には、困惑の表情が浮かんでいる。

「魔法陣を介して行う転移は、悪魔であるならば誰でも出来る。転生悪魔も例外ではないんだ。悪魔として生きているならば誰でも持っているであろう魔力で可能なんだ。もちろん、子供でも。つまり、お前は魔力が低すぎるんだ。魔法陣が反応しないくらいにな。

まぁ人間の場合としておきかえるなら、握力を測る時に握力計を握ったが握力が低すぎて測定不能の状態だな」

「な、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ⁉︎」

兵藤は、絶句していた。まぁ、自分が悪魔である事を否定されたわけだから仕方ない。

「・・・・・無様」

塔城は心底呆れたと言わんばかりの表情でぼそりと言った。塔城もあんな顔するんだな。いつも無表情だから新鮮な感じがする。

「あらあら。困りましたわねぇ。どうします、部長」

姫島先輩が困り顏で部長に尋ねている。

しばし考えこんだ部長はハッキリと兵藤に言い渡した。

「依頼者がいる以上、待たせるわけにはいかないわ。イッセー」

「はい!」

「前代未聞だけれど、足で直接現場へ行ってちょうだい」

「足⁉︎」

兵藤は、部長の言葉に驚愕している。

「ええ、チラシ配りと同様に移動して、依頼者宅へ赴くのよ。仕方ないわ。魔力がないんだもの。足りないものは他の部分で補いなさい」

チャリで依頼者へ行く悪魔ってなんだよ。

依頼者、信用してくれるのか?

まぁ、どうする事もできないから仕方ないか。

頑張れ、兵藤!!

 

 

兵藤が泣きながら部室を出ていった後、木場と塔城は契約を取りにいった。部長と姫島先輩は、何やら書類の整理があるらしく奥の部屋へ入っていった。

一人残された俺は早速、冥界の書物を読むことにした。

色々な本がある。

『転生悪魔のための悪魔の常識』『冥界の歴史』『元七十二柱の遺産』『初心者のためのレーティングゲーム』

『レーティングゲームが百倍楽しくなる本』『異性を落とすテクニック』『人気悪魔ランキング』 etc......

何冊か明らかに冥界と関係のない本もあったが気にしないでおこう。その中からふと目についた本を手に取った。

『冥界の生物について』

その本の目次には、かなり興味深い項目があった。

 

[尾獣について]

尾獣つまりその名の通り尾のついた獣の事だが厳密には獣ではない。それぞれが火・水・地・木・風・闇・光をつかさどっている。それぞれが膨大な魔力の塊であり、それがただ形を成しただけのようだ。しかもただ単なる魔力の塊に過ぎないため捕まえるのが非常に困難で、ある特定の方法でなければ捕らえることはできない。その魔力を手にした者は、山を吹き飛ばし海を切り裂く力を得るとされている。だが、かなりの危険を伴う。尾獣の力を使用するたびに、自分自身の魔力が尾獣に取り込まれ、自身の魔力がなくなった時に自我が崩壊してしまう。危険を回避する方法がないわけでは無い。だが、その方法が何なのかは分からない。

何故なら記録によれば尾獣の存在自体が確認されていたのは、古の大戦より遥か前だからだ。古の大戦以前には様々な資料も保存されていたようだが、殆ど消失してしまっている。そして、古の大戦以降も目撃情報が無いので今や尾獣はもう既に存在していないのでは無いかと思われている。

 

 

まぁ、違う所もあったが概ねあっていた。もし、俺が尾獣を持っていると公表すればどうなるだろうか。たぶん、提供しろだの何だの言われるんだろうな。いや、それ以前に尾獣の秘密を知っている俺を消すかもしれんな。今の魔王体制がひっくり返りかねない事だがらな。考えても仕方ないし違うのを読むとするか。

 

 




いかがだったでしょうか?
誤字、脱字等ありましたらご報告ください。
次回もお楽しみに。


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NO.4

こんばんは。
早速ですが本編をどうぞ。


あくる日の夜部室へ行くと兵藤が説教中だった。

「二度と教会に近づいちゃダメよ!」

どうやら教会に近づいたみたいだ。

悪魔が教会関係者に関わるなど自殺行為だ。

彼らは、悪魔を殲滅することを至上としているからだ。

まぁ、悪魔になって最近だから仕方ないといえば仕方ない。いまいち実感がわかないのだろう。本能的には忌避感を覚えているだろうが。

「教会の関係者にも関わってはダメよ。特に悪魔祓い(エクソシスト)は我々の仇敵。神の祝福を受けた彼らの力は私たちを滅せるほどよ。神器(セイクリッド・ギア)所有者が悪魔祓いなら尚更。もう、それは死と隣り合わせるのと同義だわ。イッセー」

何時にも無く真剣な表情だ。

流石、情愛の深いグレモリー家の御息女だ。眷属を大切にしているのが良くわかる。

全ての悪魔がこうであれば、と思わずにはいられない。

だが、希望的観測だ。

上級悪魔は、下級悪魔や転生悪魔を自分がのし上がるための道具としか考えていない方が圧倒的に多い。

『駒集め』と称して、優秀な人間を自分の手駒にするのも流行っている。優秀な下僕はステータスになるからだ。

下級悪魔や転生悪魔の立場改善は幾度となく考えられていたが過去、現在、そして未来永劫そんな日はないし、来ないだろう。

成り上りも増加しているが、それは圧倒的な力を持つごく少数だけだ。

成り上った者もその立場は不安定なものだ。

血筋という後ろ盾が存在しないためによる弊害だ。

協力な力を持つ転生悪魔が主の不当な扱いに業を燃やし殺すことも少なくない。下級悪魔の中では常に上級悪魔に対する不満が渦巻いている。

そのような不安定なコミュニティを維持できたのかは(ひとえ)に栄華を誇った魔王と七十二家の存在だ。彼らのおかげで上級悪魔や純血悪魔の立場は保証されていた。彼らは、強大な力を持っていたため他の神話勢力より勝っていたのは強ち間違いではない。だが、大戦を機に繁栄は終わりを告げた。魔王が死に多数の七十二家が、断絶したからだ。

現在は、魔王が四人選出され統治しているが上手くいっているとは言いがたい。

彼らは、力もしくは知性は優秀であるが若い。

若いがゆえに、統治に関しては他の悪魔とさほど変わらない。

したがって、彼らより何倍も生きている名家産まれの最上級悪魔の意見を無下にすることはできない。魔王の意見が否定されることも多々あり、老君が政治をしていると言っても過言ではない。ここでも、血筋が影を落とす。

悪魔社会の中枢が大戦以前の思想を反映しているのだから方向性はもちろんそちら側になる。だが当然、現在の悪魔社会には当てはまらないことは明白だろう。この状態が続いているのだから綻びが生じていてもおかしくない。その綻びが自らを脅かしているとしてもそれほど気にも留めない。彼らの中には、上級悪魔、純血悪魔は絶対的な存在だという確固とした思いがあるのだから。

 

どうやら考えごとをしている間に終わったようだ。

姫島先輩が部長に何やら耳打ちした。その直後に、部長の顔が曇る。

「討伐の依頼が大公からきたわ。はぐれ悪魔の討伐は、私達の義務だから玲は今回遠慮してもらうわ。いいわね」

「わかりました。お気をつけて」

今以上に興味を持たれると困るので、部長が言い出さなければ俺から言っていたのでこの申し出は好都合だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「ただいま〜」

俺は、部長達に別れを告げ一足先に帰宅した。

リビングに入ると黒歌が雑誌を読んでいた。

「おかえりにゃ〜。頼まれていたお使い済ませておいたにゃ」

黒歌には、家事を任せている。料理は、俺担当だが。

「ありがとう。今から作るから少し待ってて」

「今日は、手伝いにゃ」

「OK。じゃあ、肉の下ごしらえをしてもらおうか。まず、筋を切って.....」

「ごちそうさまでした。美味しかったにゃ」

「お粗末さま。黒歌今日何してたんだ」

黒歌には、隠蔽効果のあるペンダントを上げているからそう簡単には妖怪だとわからない。

「今日は、ウィンドウショッピングを楽しんだにゃ。掘り出し物の着物を見つけたから今度買ってにゃ」

住み始めた頃は遠慮していたのだが、今は遠慮することはなくなった。その事がなんだが受け入れてもらった様に思えて嬉しかった。

「あぁ、いいぞ。因みにいくら位するんだ?」

「四十万くらいだったかにゃ?でも、本当は二倍くらいついてもおかしくないものだったにゃ。お買い得にゃ」

俺には、着物の価値がいまいちわからないが着物愛好家の黒歌が言うのだから間違いないだろう。

「了解。今度デートする時に買いに行こう!」

黒歌は、満面の笑みになり抱きついてきた。

「楽しみにゃ。今日の夜はサービスしちゃうにゃ」

耳元で色っぽく囁かれた。気を抜くと理性が飛びそうだったが何とか我慢できた。

「そ、そうか。でも、まず風呂へ入らないと」

「私も一緒に入るにゃ」

今日の風呂は、とんでもない事になりそうだ。

 

ーーーーーーーーーー

 

 

黒歌との熱い夜を過ごして幾日か経った。

俺は、相変わらず本を読んでいた。

兵藤の悪魔稼業は前途多難のようだ。転移失敗事件以降、一つも契約を取れていないようだ。でも、評価は悪くないみたいだ。依頼者が満足しているため部長も怒るに怒れないようだ。単純だが真っ直ぐな人間性に惚れる人が多いのだろう。

流石にこの現状に見かねた部長が俺に「イッセーについていってほしい」と言ってきた。特に断る理由もなかったので二つ返事で返した。

そして今依頼者宅に来ているわけだが、どうやら殺されている。無惨な姿で壁に貼り付けられている。兵藤は、死体を見たのが初めてだったのだろう。隣で吐いている

此れをした犯人は

「おい、いるんだろう?さっさと出てこい、悪魔祓い(エクソシスト)

「あららー、バレちゃいましたかー。お兄さんただの人間っぽいのにすごーい。そっちの悪魔はぁ、ゲボゲボしているだけなのにぃ」

悪魔祓い(エクソシスト)だ。

「この人を殺したのはお前か」

兵藤が、吐き終えたのか何とか立ち上がった。

「イエスイエス。俺が殺っちゃいました。だってー、悪魔を呼び出す常習犯だったみたいだしぃ、殺すしかないっしょ」

「それで、俺たちのことはどうするつもりだ?」

「そりゃあ、もちろん。し・け・いでしょ。悪魔と悪魔に絡んでる奴なんてクズですヨォ」

想定通りの結果だった。やはり、交渉の余地は無さそうだ。兵藤は完全に足がすくんでいる。初めて自分に向けられる殺気を感じているのだろう。

奴は、懐から刀身のない剣の柄と、拳銃を取り出した。

ブィン。

空気を振動させる音。

柄だけの剣が、光の刀身を作りだす。

「もう、俺っちはガマンできませーん。じゃあ、死刑しっこーう。ぶちこんでやりますヨ〜」

ダッ!

光の刀身が俺に向かって横薙ぎに放たれる。

〔武装色硬化〕

ガギィィン!

手刀で弾き返す。

まさか弾かれると思ってなかったのか余裕の表情が消えていた。完全な無表情だ。

「何すかそれ?ありえんでしょ、手刀とか。しかも真っ黒になってるし。お兄さん何者ですかぁ?人造人間?まぁ、誰でもいいけどぉ、死んで下さ〜い」

「やめてください!」

金髪のシスターらしき少女が割り込んできた。

「アーシア」

兵藤と知り合いなのか、兵藤がその少女の名前を呟いた。

「おんや、助手のアーシアちゃんじゃあーりませんか。どうしたの?結界は張り終わったのかな?」

「!い、いやぁぁぁぁぁぁっ!」

シスターの少女は、壁に打ちつけられているこの家の者の遺体を見て、悲鳴をあげた。

「かわいい悲鳴ありがとうございます。そっか、アーシアちゃんはこの手の死体は初めてですかねぇ。ならなら、よーく、とくとご覧なさいな。悪魔くんに魅入られたダメ人間さんはそうやって死んでもらうのですよぉ」

「・・・・そ、そんな・・・」

不意に少女の目線がこちらに向く。目を見開いて驚く彼女。

「・・・フリード神父・・・その人達は・・・」

少女の視線が俺達を捉えている。

「人?違う違う。こいつらはクソの悪魔とカスの人間だよ。ハハハ、何を勘違いしているのかな」

「ーーつ。イッセーさんが・・・悪魔・・・・?」

その事実がショックだったのか、言葉を詰まらせていた。

「なになに?キミら知り合い?わーお。これは驚き大革命。悪魔とシスターの許されざる恋とかそういうの?マジ?マジ?」

面白おかしくフリードと呼ばれる神父は、はやしたてる。

少女は、兵藤が悪魔であることがよっぽどショックだったのか固まっている。

それはそうだろう。教会関係者にとって悪魔は何者より嫌悪される存在だ。それが、自分といたなんて知ったら憤りを感じるだろう。

「あははは!悪魔と人間は相容れません!特に教会関係者と悪魔ってのは天敵さ!それに俺らは神にすら見放された異端の集まりですぜ?俺もアーシアたんも堕天使さまからのご加護がないと生きていけないハンパもののですぞぉ?」

堕天使?

なるほどこいつら『はぐれ』だな。シスターは置いておいても神父のこの残虐性は、行き過ぎているからな。教会としても扱いきれなかったんだろう。

それにしても部長は、何をしていたんだ?自分の治めている地域に堕天使入りこまれているぞ。何か考えあってそのままにしているかもしれないが。

それよりもこっちが先決か・・・

さて、どうしようか。

 

 




いかがだったでしょうか。

もう朝方はかなり冷え込んできているので皆様お体にはお気をつけください。
では次回もお楽しみに。


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NO.5

こんばんは。
 
先日、友人にギルティクラウンのblu-rayを借りて改めて見たのですがハレの死ぬシーンがつらかった。
ハレには生きてて欲しかった。
脚本を恨んでいるのは私だけでしょうか...

それではどうぞ。


〜兵藤一誠〜

 

俺たちと神父の間に金髪の少女が入りこんだ。

庇うように両手を広げた。

それをみた神父の表情が険しくなる。

「・・・おいおい。マジですかー。アーシアたん、キミ、自分が何をしているのかわかっているのでしょうかぁ?」

「・・・はい。フリード神父、お願いです。この方々を許してください。見逃してください」

彼女は、涙を流しながら懇願している。

「もう嫌です・・・。悪魔に魅入られたといって、人間を裁いたり、悪魔を殺したりなんて、そんなの間違ってます!」

「はぁぁぁぁぁぁぁああああああああっ⁉︎ ハガこいてんじゃねぇよ、クソアマが!悪魔はクソだって、教会で習っただろうがぁ!おまえ、マジで頭にウジでも湧いてんじゃねぇのな⁉︎」

 

フリードの表情は憤怒の表情に包まれていた。

「悪魔にだって、いい人はいます!」

「いねぇよ、バァァァァァカ!」

「わ、私もこの前までそう思ってました・・・。でも、イッセーさんはいい人です。悪魔だってわかってもそれは変わりません!人を殺すなんて許されません!こんなの!こんなの主が許すわけがありません!」

 

死体を見かけ、俺が悪魔だと知り、ショックであろうはずなのにアーシアは意志を崩すことなく、神父に物言いしていた。アーシアの言葉にキレた神父が拳銃を持った手でアーシアを殴ろうとした

「危ない!」

ドゴッ!

「グハァッ」

殴られたのは神父だった。神父は壁に打ち付けられ意識を失っていた。先程まで俺の隣にいた玲が向こうにいてアーシアが隣にいた。まるで、玲とアーシアの位置が入れ替わったかのように。

「このままにしてても死ぬが、顔を見るだけで不愉快になるからさっさと殺してしまおう」

 

なんでそんな簡単に『殺す』なんて言えるんだよ。確かに最低な奴だが・・・。

玲を止めないと。でも、俺の足は完全に竦み、声を出すこともできない。玲から見るだけで意識がもっていかれそうな禍々しい魔力が漏れだしている。しかも眼に不気味な模様が浮かんでいる。とてもいつもの玲とは思えない。

「待ってください」

 

アーシアが水を吸いこんだ笛のような震える声で玲を呼び止めた。

 

〜シリウス〜

兵藤が咄嗟に叫ぶ。

「危ない!」

神父は、シスターの言葉が気に障ったのか拳銃を持つ手で殴りかかる。

【輪廻写輪眼・天手力!】

俺とシスターの位置を入れ替える。

突然の事に眼を見開き驚く神父。

何か言おうとしていたがお構いなく覇気を纏った拳を奴の鳩尾に少し下から上に向かってねじ込む。

「グハァッ」

神父が壁に激突しそのまま崩れ落ちる。

下から打ち込んだため体が持ち上がり、衝撃を地面に逃がす事が出来ずに受けてしまい神父の内蔵はほぼ完治不可能なレベルまで傷ついているだろう。

このまましててもどうせ死ぬのだが、顔を見ているだけで不愉快な気分になる。

「このままにしてても死ぬが、顔を見るだけで不愉快になるからさっさと殺してしまおう」

「待ってください」

シスターが俺を呼び止めた。顔は血の気が引いていて今にも倒れそうだ。

「何故止める?君にも分かっているはずだ。こいつがどんな奴か。今ここで始末しておかなければさらなる死人がでるぞ」

 

俺の言葉にシスターは顔を伏せる。

シスターは、弱々しいが意を決した表情で告げる

「・・・分かっています。ですが、フリードさんも神父です。我が主を尊敬しているはずです!ですから、私は信じています。きっと改心してくれると」

「君に聞きたいことがある。君のその優しさは美徳だ。だがその優しさが誰かを傷つけることもある。それでも君は他人に優しさを分け与えるのか?」

 

俺の言葉に戸惑いを見せるシスター。

「それは・・・。私にはわかりません。ですが、我が主が私に与えてくださった沢山の事をみなさんと分かち合っていきたいのです」

彼女の笑顔はとても眩しかった。人はこんなに純粋な笑顔ができるのか。そこまで強い思いを持っているのなら俺から言うことはない。

「そうか。じゃあな」

「はい!お元気で。イッセーさんも」

「えっ⁉︎アーシアも一緒に行こう」

 

兵藤の言葉にシスターは静かに首を横にふる。

「ごめんなさい、イッセーさんそれは出来ません。私はシスター、イッセーさんは悪魔。私がイッセーさんについていけば必ず迷惑がかかります」

「だ、大丈夫だよ。部長ならきっと分かってくれる。うん、絶対そうだよ」

 

兵藤は、シスターをなんとか引きとめようとする。

「ありがとうございます、イッセーさん。そのお気持ちだけで充分です」

 

彼女は、目に涙を溜めて微笑む。

「で、でも「いい加減にしろ」ッッ⁉︎」

「悪魔側に教会関係者を引き込むなんて外交問題だ。いち悪魔でしかないしかも転生悪魔のお前の手に負える問題ではない。そして、それは必然的に主である部長に非難の目が向く。それでもいいのか?  いや、そうではないな。お前はその責任を負うという覚悟はあるか?」

「それは・・・」

「分かったか兵藤?

今のお前では彼女を救うことなんて出来ない。

何の力も覚悟もなく、ただハーレム王になるなんていう単純な理由で悪魔として生きることに価値を見出だしているお前ならな」

 

残酷な事を兵藤に言ったが遅かれ早かれ思い知ることだ。

今のままでは、間違いなく兵藤は悪魔社会では生きられない。

この世界、理不尽な事だらけだ。それに素直に従うのか抗うのかどちらを選択するのだろうか。

「気にしないでくださいイッセーさん。私は大丈夫です。

では、そろそろ行きますね」

 

倒れている神父の横に立った。

ポケットからマジックアイテムなのだろうか水晶を取り出した。そして耳慣れない言葉を言うと光り始めた。

「お元気で、イッセーさん。友達って言ってくれて嬉しかったです」

 

兵藤はかける言葉がないのか只々見つめているだけだ。

そのまま光に包まれて二人は姿を消した。

外はもうすぐ夜が明けそうになっていた。

 

 

 

***************

 

 

 

悪魔祓い(エクソシスト)は二通りあるわ」

 

俺と兵藤は部室に戻った後に部長に依頼者宅で起こった事を説明した。

「一つは神の祝福を受けた者たちが行う正規の悪魔祓い。こちらは神や天使の力を借りて、悪魔を滅するの。そして、もう一つ。ーー『はぐれ悪魔祓い』よ」

「はぐれですか・・・」

「悪魔祓いは神の名のもとに魔を滅する聖なる儀式。だけれど、悪魔を殺すこと自体を楽しむようになるエクソシストがたまに現れるわ。悪魔を倒すことに生き甲斐や悦楽を覚えてしまった輩のこと。彼らは例外なく神側の教会から追放されるわ。もしくは、有害と見なされて裏で始末される」

「始末・・・殺されるのか」

「でも、生き延びる者もいる。そういう輩はどうなると思う? 簡単よ。堕天使のもとへ走るの」

「堕天使・・・」

 

兵藤にとっては因縁の相手だろう。悪魔として生きるきっかけであり、自分をトンデモナイ世界に引き込んだ元凶でもあるのだから。

「ええ。堕天使も天から追放されたといえ、光の力ーー悪魔を滅する力を有しているわ。堕天使も先の戦争で仲間や部下の大半を失った。そこで彼らも私たちと同じように下僕を集めることにしたの」

 

兵藤は部長の言葉に納得した表情を見せる。

「悪魔を殺したいエクソシストと悪魔が邪魔な堕天使は利害が一致したってことですね?」

「そうよ。『はぐれ悪魔祓い』とはそういうこと。悪魔狩りにハマりこんだ危険なエクソシストたちが堕天使の加護を受けて悪魔と悪魔を召喚する人間へ牙をむいたのよ。

さっきイッセー達が出会った少年神父はそれ。背後に堕天使がいる組織に属する『はぐれ悪魔祓い』の者。正規の悪魔祓いではなくても危険極まりないわ。いえ、リミッターが外れている分、普通の悪魔祓いよりも相当危ないね。関わり合いになるのは私たちにとって得策ではなわ。イッセーが以前行った教会は神側ではなく、堕天使が支配しているもののようね」

 

 兵藤は、部長の言葉に納得しきれていない表情を見せる。あいつとしてはほっとけないないのだろう。

 部長の言う通りなのだがあのシスターが教会を追放になった理由が分からない。あれほど神を信仰しているのだから不真面目だったという事はないだろう。『はぐれ』ならさっさと始末すればすむ話しだ。だが、彼女にそれほどの攻撃性があるかと聞かれたら「否」だ。彼女は、それとは対極の存在だ。それとも彼女の存在自体が殺すことが出来ない程厄介なのか・・・・・・。

 

 

 

 

 



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NO.6

こんばんは。

ちょっと投稿時間をずらしてみました。

それではどうぞ。


 いつものように夕食を二人で食べて、黒歌はソファで雑誌を読んでいる。

 最近、彼女は洋装に興味が出てきたらしく熱心に勉強している。余裕が出てきたからこそ、新しいことに関心を持つのだろう。

 「シリウス、何見てるにゃ?」

 

 体をこちら側にひねり聞いてくる。

 「うん? 『依頼』だよ」

 

 パソコンの画面を黒歌に見せる。

 冥界には正規の「依頼」と裏の『依頼』がある。

 正規の「依頼」は、悪魔なら悪魔領内で起こることに関することだけだ。他の種族に関わるものは一切存在しない。

 だが、裏の『依頼』は別だ。『依頼』を受ける者は二通りいる。仲介者に登録しておいて仕事を斡旋(あっせん)してもらう者と直接依頼を受ける者だ。俺の場合は前者だ。

 『依頼』の仕組みはこうだ。

 まず、依頼者は仲介者に報酬の金額を言う。この報酬の金額で難易度が決まる。全て金額で決まるわけだ。報酬の受け取りに関しては前金として半額はらう。達成後に残りをもらう。もちろん『ハズレ』も存在する。依頼内容と異なっていたり報酬に合わない難易度だったなんて日常茶飯事。だが依頼を見分ける力も必要なことだから文句はいえない。こんな滅茶苦茶な仕事だが報酬も法外な値段なため増えることはあっても減ることはない。仲介者は仲介料さえもらえば依頼者や被依頼者間で起こる揉め事に関しては不干渉だ。だから、仲介者は良く選ぶ必要がある。腕のいい仲介者についてもらえば煩わしいもめごとも減る。

 そして今回の依頼は、 

 『この場所にある禍の団(カオス・ブリゲード)の本拠地と思われる施設への潜入および情報を持ち帰ること」

 禍の団(カオス・ブリゲード)。トップが無限の龍神と噂されているが存在しているかもわからない組織だ。裏社会でも稀に耳にすることもあるが誰も本気にしていない。

 「ふ~ん。で、どうするにゃ?」 

 「どうしようかな」

 

 罠ということも十分ありえる。禍の団(カオス・ブリゲード)などという胡散臭い組織を同じ胡散臭い奴に任せるなど金をドブに捨てるのと同義だ。しかも悪魔領内にあるのだから正規の依頼でも十分にこなせるはずだ。相手が魔王クラスでなければ遅れをとることはないから余程のことがない限り心配ないとは思うが......。

 

 

 

*************** 

 

 

 

 バン!

 部室に乾いた音がこだました。音の発生源は兵藤の頬だ。

 思いっきり平手打ちされていた。

 部長の顔もかなり険しい。

 「何度言ったらわかるの? ダメなものはダメよ。あのシスターの救出は認められないわ」

 

 シスターにまた会った兵藤は今度こそ助け出そうとしたみたいだが堕天使に邪魔され叶わなかった。

 シスターを助けるために教会へ殴りこみにいくことを提案した。もちろん、却下。その決定に不満がある兵藤は部長に詰め寄り叩かれた。

 それでも奴の目は諦めていない。

 「なら、俺一人でもいきます。やっぱり、儀式ってのが気になります。堕天使が裏で何かするに決まってます。アーシアの身に危険が及ばない保障なんてどこにもありませんから」

 「あなたは本当にバカなの? 行けば確実に殺されるわ。もう生き返ることはできないのよ? それがわかっているの?」

 

 部長は冷静さを振る舞いながら、諭すように兵藤へ言う。

 「あなたの行動が私や他の部員にも多大な影響を及ぼすのよ! あなたはグレモリー眷属の悪魔なの! 玲とはわけが違うのよ。それを自覚しなさい!」

 「では、俺を眷属から外してください。俺個人であの教会へ乗り込みます」

 「そんなことできるはずないでしょう! あなたはどうして分かってくれないの!?」

 

 これは平行線だろう。

 正しいのは部長だ。悪魔としてなら。でも、転生悪魔である兵藤にとって悪魔としてのアイデンティティなど皆無に等しい。だから、人間としての価値観が働く。兵藤は割り切って二者択一できる器用な性格をしていない。

 「俺はアーシア・アルジェントと友達になりました。アーシアは大事な友達です。俺は友達を見捨てられません!」

 「・・・・・・それはご立派ね。そういうことを面と向かって言えることはすごいことだと思うわ。それでもこれとそれは別よ。あなたが考えている以上に悪魔と堕天使の関係は簡単じゃないの。何百年、何千年と睨み合ってきたのよ。隙をみせれば殺されるわ。彼らは敵なのだから」

 「敵を吹き飛ばすのがグレモリー眷属じゃなかったんですか?」

 「・・・・・・・・・」

 

 睨み合う二人。

 「あの子は元々神側の人間。私たちとは根底から相容れない存在なの。いくら堕天使のもとへ降ったとしても私たち悪魔と敵同士であることは変わらないわ」

 「アーシアは敵じゃないです!」

 

 兵藤は強く断言する。

 「だとしても私にとっては関係のない存在だわ。イッセー、彼女のことは忘れなさい」

 

 姫島先輩が部長に近づき、耳打ちする。

 部長の顔がどんどん険しいものになっていく。

 何か不足の事態が起こったのだろう。

 兵藤をちらりと見たあと、今度は部室にいる全員を見渡すようにいった。

 「大事な用事ができたわ。私と朱乃はこれから少し外へ出るわね」

 

 その言葉に慌てる兵藤。

 「ちょ、ちょっと待ってください! まだ話は終わってーー」

 

 言葉を遮るように、部長は人差し指を俺の口元へ。

 「イッセー、あなたにいくつか話しておくことがあるわ。まず、ひとつ。あなたは『兵士(ポーン)』を弱い駒だと思っているわね? どうなの?」

 

 兵藤は部長の問いを静かに肯定し、頷いた。

 「それは大きな間違いよ。『兵士』には他の駒にはない特殊な力があるの。それが『プロモーション』よ」

 

 俺も詳しくは分からないが確か『(キング)』以外の駒になれることだったはずだ。

 兵藤もそれを聞いて目が輝いている。

 緩んでいる兵藤の頬に手を添える部長。

 「もうひとつ神器(セイクリッド・ギア)について。

  --想いなさい。神器(セイクリッド・ギア)は想いの力で動き出すの。そして、その力も決定するわ。あなたが悪魔でも、その想いの力は消えない。その力が強ければ強いほど、神器(セイクリッド・ギア)は応えてくれるわ」

 

 それだけ言い残すと部長は姫島先輩と共に魔方陣からどこかへジャンプした。

 

 

 

 兵藤は、じっと自分の腕を見つめている。

 大きく息を吐き、意を決した表情で部屋を出て行こうとする。

 「待って」

 

 木場が兵藤を呼び止める。

 「僕も行くよ」

 「なっ・・・・・・」

 

 木場の言葉が予想外だったのか固まる兵藤。

 「僕はアーシアさんをよく知らないけれど、キミは僕の仲間だ。部長はああおっしゃったけど、僕はキミの意志を尊重したいと思う部分もある。それに個人的に堕天使や神父は好きじゃないんだ。憎いほどにね」

 

 普段の『王子』などと呼ばれている木場からは考えられない憎悪に染まった顔をしている。

 よく見てきた『復讐者』の顔。 

 今はまだ対象が見つかっていないから何もないがいざとなったら、なりふりかまわず復讐に走るだろう。グレモリー眷属は、闇を抱えている奴が多過ぎる。

 「でもいいのか? 部長はダメだって言ってたじゃないか」

 

 兵藤の問いに「やれやれ」と表情を浮かべる。

 「部長もおっしゃっていただろう? 『私が敵の陣地と認めた場所の一番重要なところへ足を踏み入れたとき、王以外の駒に変ずることができるの』って。これって、遠まわしに『その教会をリアス・グレモリーの敵がいる陣地と認めた』ってことだよね」

 「あっ」

 

 兵藤はやっと気付いたようだ。

 「部長はキミに行ってもいいって遠まわしに認めてくれたんだよ。もちろん、それは僕にフォローをしろって意味合いだと思うけど。部長に何か考えがあるのだろうね。じゃなければ、キミを閉じ込めてでも止めると思うよ」

 

 木場は苦笑する。

 立場上「助けに行きなさい」とは言えないからな。

 搭城が兵藤の裾を引っ張る。

 「......私も行きます」

 「なっ、小猫ちゃん?」

 「・・・・・・二人だけでは不安です」

 

 普段は無表情で誤解されやすいが彼女はとても他者思いの出来た子だ。ただ兵藤のように率直な感情表現が出来ないのだ。

 「で、お前はどうするんだ? 白澤」

 「今回はパスだ。俺が行っても足手まといになりかねん」

 「ま、まぁお前なら足手まといになるなんて思わないが......。無理にというわけでもないし。分かった、じゃあ行こう小猫ちゃん」

 「えっ、僕は?」

 

 慌しく三人は出て行った。

 

 

 

 

 



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