異世界集結戦線 (玉城羽左右衛門)
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集結する猛者達
第零話 我、異世界ヘト向カワン


皆さん、どうもお初目に掛かる人も多いでしょう玉城羽左右衛門と申します。
私が投稿しているオリジナル作品のアイデアが浮かばなかったためもしかした同人作品書けばアイデアの一つは出るんジャマイカと思い投稿しました。なんせ同人作品は初めてなものでどんな感じに描けばいいんだろうと模索して書きました。
艦これの同人作品です。コレジャナイ感を感じましたら是非共どんどん感想をご寄越せ下さい。

          ※2016年2月11日改定しました!※


『次は……お出口は左側です……線お乗換えの方は…』

聞きなれた電車のアナウンスだ。

だがそんな物なんて気にしない。

いつも通りだ。

電車の振動で左右に揺れ、バランスが非常に取りにくいが慣れているためすぐに体制を立て直す。

席はまばらで同じく会社帰りの人々や学校帰りの学生が座り込んでいた。

ドアの前に立ち過ぎていく景色に大きく溜息を吐く。

電車が減速している事を体で感じ始めた頃、駅のホームが見えて来た。

見慣れたホームだ。

ゆっくり過ぎ行く景色が遅くなる。

そして電車が停まった。

入り口が開いた途端急ぎ出る。

改札を抜け駅前のロータリーに急いで出る。

人間の波は非常にまばらで下町であることを見せていた。

人間の出入りの少ない場所にておもむろに空を見上げる。

一日が終わった。

何の変哲もない、変わりない日常だ。

朝起き、出勤し、仕事をしそして帰って寝る。

そんなエンドレスな日常だ。

「はぁ…」

おもむろに溜息を着く。

特に意味はない。

ただ何となく出た。

直後、胸ポケットのスマートフォンが鳴る。

電話かなとやや鬱に成る。

もう一度、溜息を着くと一抹の不安と共にスマホのロックを解除する。

だがそれはメールであった。

急いで開いて見るとそれは同僚の残業に対する愚痴であった。

「ええっと何々『残業辛いお…手伝ってだお…(´・ω・`)』って『仕事をしっかりしないお前が悪いんだ(゚Д゚;) 自業自得だ、OK?』っと。」

メールを見てすぐに返信を書く。これは会社内の暗黙の了解で見ていたらすぐ返す…見て居なくとも確認できたらすぐ返答すると言う空気が出来ていた。そして再度確認し送り返す。

「これで良し!」

これまでにも幾度となくその同僚に対し残業を手伝った事があるが流石に何度も何度も繰り返していたので霹靂し、在る時を境に自分でやらせる様にした。

結果、今に至る。

「ともかく、駅前でこうしちゃ居られんし帰るか。」

自分が駅前のロータリーで止まってスマホをいじっていることに気が付き、自分が今成すべき行動を再選択する。

「まあ、いつも通りか。」

大きく一歩を踏みしめる。

自宅はやや駅から歩いた商店街の近くにあり、いつもは商店街を突っ切って帰っていた。

また今日も同じく商店街を抜ける。

流石に6時では人間は少なく歩いている人間もまた自分と同じサラリーマンばかりであった。

そのまま歩く。

商店街は首都近くの下町だけありシャッターの店は一、二軒ぐらいであった。

他は営業時間を終え片づけに入っていた。

だんだんと歩いているスーツ姿の人間が少なくなる。

個々に商店街の脇道に入っていく様子が伺えた。

そして自分も同じく脇道に入る。

脇道だけあって非常に道が狭くなっておりそれは車が一台、やっと通れる道幅であった。

誰かにぶつからない様に頭を上げて歩く。

狭い脇道故、頭を上げれば塀越しから家が見える時がある。

家族団らんで夕食を取っているで在る様に笑い声、話し声が耳に入ってくる。

ふと鼻に懐かしい香りがしてきた。

非常に懐かしかった。

誰もが嗅いだことのある臭い。

立ち止まり臭いの源を見やるとカーテン越しから家族が見えた。

その家族は皿に炊飯器と思しき物からご飯をよそっていた。

そしてそのよそったご飯に汁の様な物を掛けていた。

独特な香辛料の香り…そして汁もの…彼はそれがカレーで在る事を理解した。

すると唐突に腹が鳴った。

香辛料の香りから少しばかり食欲が出た。

「(今日の飯はカレーにしよう。)」

彼は心の中で細やかなる決心をした。

脇道を歩くと薄れゆく夕焼けの中煌々と光る物が見え始めた。

その方向へ進む。

其処に遭ったのはドラッグストアであった。

何故か安心感が湧く。

だが彼は安心感を抑制させる。

店に入り、買いたい物を一通り整理し望みの場所に足を進めた。

シャンプー…ポケットティッシュ…一通りの生活用品を籠に入れるとレトルト食品売り場に向かう。

レトルト食品売り場に付くなり端から端まで良く見る。

そしてすぐ、自分が欲しいと思っていた陳列棚に出会う。

「(どれにしよう…)」

彼は迷った。

ドラッグストアではあるが非常に種類が多く、どれもどれもがおいしそうに見えてくる。

だが己の経験から買う物は決まっていた。

「ボンカレーかな…」

小さい独り言を口ずさみボンカレーを取ろうとした時、ふとやたらとお勧めと書かれた吹き出しが目に入った。

「何だ、これ?」

パッケージには『海軍カレー』の代々的に描かれた文字と一緒に錨のマークが描かれていた。

すかさず手をそちらに向ける。

残り一個だったらしく後ろには同じような物がなかった。

商品の裏表を良く見る。

そして陳列棚にもう一度目を見やる。

海軍カレーのあった場所には大きく『限定入荷中!』や『店長のオススメ!』など手書き感溢れんばかりの吹き出しで宣伝してあった。

心の中では決まっていたがせっかくだしと思い海軍カレーを籠に入れた。

会計に向かう。

すると会計の店員は何を悟ったのか安心し顔少しながら崩す。

一応、彼はこの店において常連として認識されておりたまに店長とも話をしていた。

そのため店員も幾分彼を見ると何時も通りだと思って居るのだ。

因みに海軍カレーが置いてあった理由は彼が艦これ勧めたからであった。

店長は勧められて艦これを始めた。理由は定かではなかったが急にはまってしまった。その熱中度合いは測り知れない物で店頭に艦これグッズを並べたいと言うまでであった。

店員が止めなければ確実に艦これの商品棚が作られていたかもしれない。

「…ピッ…ピッ…」

例の如く女性アルバイト君が変わらずバーコードを流れる様にかざす。

その速さはパートのおば様方を超えるスピードで。

「…ピッ…ガサッ…」

海軍カレーを手に取った瞬間、硬直する。

多分、考えているんだろう。

そして頭を上げ、目線を合わす。

何処かの戦艦級の眼光を持つ顔立ちから放たれる眼力は一種の恐怖であった。

しかしすぐに自分の仕事に戻る。

絶対この商品買わないだろうなって思って居た人が意外に買っていたことへの驚きであろう。

まあ、無理もない。

実際、そういう人間なのだから。

「お会計は1956円になります。」

「はいっと。」

財布から二千円を出すとアルバイトが話しかけてきた。

「以外ですね。海軍カレーだなんて。」

「いやぁ、最後の一つだったからねぇ。つい買っちゃった。あとカレー食べたかったし。」

「そうですか。なんかこういう物あまり知らないし買わなそうな雰囲気だったんで。」

「そうかなぁ?」

和やかな気分になる。

仕事以外で話してくれる人は専らドラッグストアの皆さまぐらいしかあまりいない。

「んじゃ、そろそろ帰るわ。アルバイト頑張ってね。」

「はい! 夜道はお気をつけて帰って下さいね。」

レジのカウンター越しから手を振るアルバイト。

それに対し手を振り返す。

自動ドアを通り外に出ると辺りは真っ暗で家々の明かりが神々しく見えるくらいであった。

5月であるため風も丁度良く非常に快適であった。

そんな夜道を歩く。

まだ学校帰りの高校生や会社帰りのサラリーマン時折見える。

そんな感じで人間を観察しているといつの間にか自宅についていた。

何故、ドラッグストアとの人と仲がいいかは自宅との近さである。

徒歩で換算しても1分やそこらで在るほど近い。

その自宅は何処にでもあるアパートで月の支払いは4万8000円…とまあまあの値段であった。

鍵を取り出し自宅のドアを開ける。

「只今。」

誰もいない部屋に寂しく声が響く。

靴を脱ぎ、家の中に入る。

リビングに来てスーツを脱ぎ始める。

そしてさりげなくデスクトップパソコンを起動する。

起動は早く、パスワードを入力し終えると脱ぐのに戻る。

ここまでいつもと変わらないエンドレスだ。

全部脱ぐと自分がパンツ一枚で在る事に気が付いたが別に何にも考えなかった。いつものことである。

ドラッグストアで買ってきた商品をパンツ一枚のまま出す。

そして仕分けをし、早速夕食の準備に取り掛かった。

鍋に水をし、海軍カレーの袋を出し鍋に投入する。

幸い鍋に合っていてスムーズに入った。

カレーを温めている間に風呂場に向かった。

給湯器を着け、服を脱ぐ。

湯船はあるが正直、平日は風呂に入る気は起きなかった。

故に最近は専ら平日はシャワーであった。

ある程度の着替えを用意し風呂場に直行した。

風呂場に必要最低限のものしか置いていないため非常に広く感じれた。

一日の疲れをシャワーで洗い流す。

買い足してきた替えのシャンプーを手に持っていたことを思いだし、シャンプーの容器を取る。

容器に替えを入れて残っているシャンプーを絞り出し頭に乗せた。

替えのシャンプーの残った物を全部出した時はこう節約感が出て非常に好きであった。

髪を洗う。

丁寧とも雑とも評価し難い手つきで髪を洗い流した。

体も同じように流す。

一通り自分が何時も風呂場でやる事を終えると駆け足で体に付着した水をふき取り、寝服を着る。

そのスタイルは上はワイシャツ一枚、下はパンツとステテコの二枚。

今の時期大体こんぐらいが丁度良い。

リビングに戻るとまだカレーは沸騰していなかったため時間を費やすためパソコンの前に立つ。

インターネットを開きお気に入りからとあるゲームを開く。

最近、こんなエンドレスな生活でも一つ楽しみが出来た。

仕事の同僚から勧められた…いや、正確には強要されたって方が正しいだろう。

それはDMMのオンラインソーシャルゲーム…『艦隊これくしょん』成るものだ。

巷や公式においては『艦隊』の『艦』と『これくしょん』の『これ』を『艦これ』と呼ばれている。

第二次大戦時に活躍した戦艦等の艦船を擬人化した『艦娘』を指揮し艦隊を編成したり新しい艦娘を建造したりするゲームである。

このゲームはソーシャルゲーム特有の課金要素が非常に少なく課金なくとも十分楽しめるゲームでサーバーはいつも満員状態にある。

だがこのゲーム課金は少ないといえど資源と言う鬼門が存在する。

このゲームは自身が提督となり艦隊を運営していくため資源と言う物が存在する。

鉄鋼材、弾薬、燃料、ボーキサイトから成っている。

この建材は任務や遠征などで手に入るがそれでも時として足りない時も出る。

実際、彼もそうであった。

無理な建造や出撃を繰り返していたため資材が極端に少なくなってしまった。

だがこんな問題を解決してくれる人間が居た。

その人間こそ彼に艦これを強要した…同僚であった。

同僚は彼の現状を見抜くと代わりに行い資材を集めてくれた。

そして幾つかの知識を彼に教えた。

今、現時点彼がこのように艦これライフを送れているのは同僚のおかげと言っても過言ではない。

艦これの読み込みが始まった直後、お湯が完全に湧き、煙を出していた。

すぐさま炊飯器の飯を適当な器に盛り、ガス台の近くに置く。

安全に取る為、トングを使用する。

海軍カレーを取り、切り出し口から切る。

切った途端、香ばしいスパイスの臭いが鼻にくる。

独特な匂いだ。

白米にカレーを掛け、スプーンと缶ビールを冷蔵庫から取りパソコンの前に歩んでいく。

丁度、その時艦これが起動し秘書官の吹雪の声と共に画像が出る。

カレーをテーブルに置き、デスクトップの方に体を向け座る。

座った直後、建造の画面を開く。

画面に出ていたのは建造完了の文字と嬉しがる妖精達であった。

そして建造画面を開く。

聞き覚えの無い声が耳に響く。

長門型一番艦戦艦長門…

艦娘図鑑NO,1の長門であった。

胸が感喜する。

艦これで手に入れた事の無い艦を手に入れた時は非常に心が躍った。

これとは別な感情が胸を駆ける。

艦娘図鑑が全部揃ったと言う感喜である。

初めてこの方二か月…現状確認されている艦は全部入手した。

イベントでしか手に入らない艦ですら何故か手に入ってしまった。

バグかな?と思ったがバグではなかった。

通常、初めて二か月ちょっとじゃ既存のプレイヤーか運のいい人間程でしか出来ない事らしい…と同僚は言っていたが信じられなかった。あの同僚の人間性からして。

だが実際はなってしまった。

昔から運だけは良かった。そのせいか当たり付きの奴は大抵当てていたし、雑誌の応募の品も出せば当たっていた。

缶ビールを開けて一口飲む。

キンキンに冷えた液体が食道を通し胃に流れ込む。

生きている感覚が全身に響き渡った直後、ふと、思いつく。

「そうだ、アイツに自慢しよう。」

同僚に対して自慢のメールを送ろうと嫌味満載の考えが思いついた。

携帯を取る為に充電器に手を伸ばす。

直後、パソコンの画面が白くなる。

パソコンのフリーズに気づきすぐさまパソコンの方に戻る。

マウスを動かすが全然反応しなかった。

もう一度動かす。

またしても反応がなかった。

この手のフリーズは経験済みで大抵はプログラムが停止した時に発生していた。

そして大体は放置しとけば治る。

だが今回は違っていた。

プログラムが停止した時はウィンドウに【プログラムが停止しました】と出て画面が白く濁った色になる。

しかし、今回の場合はそのウィンドウが出なかった。

「新手のウィルスかな?」

パソコンの設定、修理は一人で出来ずこの手の事は友人や業者に頼んでやって貰っていた。

動かしても反応しないためおもむろにパソコンの電源ボタンに手を伸ばしボタンを押す。

が、パソコンは反応しなかった。

「元栓から抜いた方がいいのかな?」

そんな事が頭によぎり、考えた時には既に元栓コンセントの前に立っていた。

電源を抜こうとした直後…

『タスケテェ…』

パソコンから聞き覚えのある声が聞こえた。

パソコンの方に急いで戻る。

画面は白く濁ったものから一変、紺碧の大海に変わり波の揺れが細やかに表現されていた。

透き通った声が聞こえる。

『タスケテェ…』

「この声何処かで聞いた様な…」

直後、パソコンが発光を始める。

その閃光の強さから思わず手を目に当てる。

部屋が白く包まれ瞼が重く閉じると意識が遠のいていった。




いかかだったでしょうか?
もし感想などがありましたらどんどん下さいまし。
もし良ければ私が書いています『あさひ -旭日の再来-』なども是非読んで下さい。
最後まで鑑賞頂き誠に有難う御座います。


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第壱話 提督見ツケタリ

艦これ『異世界集結戦線』の第二話です。
何とか一日で書き上げられました。
多分、第弐話は今週の土日ぐらいになるかと思われますのでご了承の程を。
では楽しんで下さい


「…とく…!…てい…とく…!…提督!しっかりして下さい!!提督ぅッ!」

「ああ、美少女が見える…俺は死んだのか…という事は此処は死後の世界か…我が人生一片の悔いあり…」

「提督!何馬鹿な事言ってるんですか?!提督は生きていますよ!」

そう言われ頬をつねられた。

「痛い!痛い! 落ち着け! 引っ張るな!」

そう言うと美少女は「すいません…」と言い引っ張るのをやめ、顔を真っ赤にした。

此処は何処だ、と確認を開始する間もなく甲高い声と共に体を引っ張られた。

「提督ぅ~心配デース! てっきり提督が死んじゃったのかと思ったデース!」

そう言うと美少女が顔を俺の肩にスリスリと擦ってきた。そんな事をしている美少女に向かい、いかにも筋肉質の美人から怒号が飛んだ。

「おい!金剛ッ!貴様提督に向かい慣れ慣れしいぞ!」

「別にいいじゃないデスカ。もしかして長門は嫉妬してるんデスカ?そういうお堅い思考は長門の悪いところデース。」

そう言われて顔を真っ赤に染まった長門は言い捨てるかの如く

「ええい、うるさい!とにかく離れろ!」

と言い放った。

え、何これ。俗に言う修羅場って言う奴か。

だが、そんな事はどうでも良かった。それより自分が置かれている状況について知りたかった。

確かこの娘は金剛って言ってたな。

「金剛、すまないが離れてくれないか。」

「うう~提督ぅまでぇ~」

そういうと金剛は顔をしょんぼりさせ離れた。

金剛が離れると共に立ち上がり周囲を見回した。

周辺には『艦これ』で見たことのある艦娘や妖精さん達が自分を囲むかの様に立っていた。

俺の事を心配していた様で全員が泣き顔を浮かべ嬉しがっていた。

そんな中、背伸びを艦娘達より先を見渡すと青い海の欠片が見えた。

欠片をもっと近くで見るべく一歩を前に進み艦娘達に道を開かせ波打ち際の一歩手前まで足を伸ばした。

そこに広がっていたのは一面に広がる青い海がそこにあった。

美しい海に見とれていたが俺は艦娘の面々に向かい質問を飛ばした。

「すまいないが此処は何処だ?」

そう言うと筋肉質な美人…長門が俺の隣に来て話した。

「此処は日本帝国海軍硫黄島前線補給基地です。」

その言葉を聞くなり最初に浮かんだのが歴史の教科書に描いてあった硫黄島の戦いだ。

硫黄島の戦い…今も尚その傷跡は深く至る所に米軍の戦車や塹壕跡が残っている島だ。一番有名なのは硫黄島玉砕だろう。

沖縄等は第二次大戦以降アメリカの領地になっていたが返還されたがそれに対し硫黄島は不発弾やトーチカ、塹壕の多さ故現在は海上自衛隊の航空基地となり一般人は愚か元住人でさえも島への立ち入りは出来ない状況になっているはずなのだが。

「何故俺は此処に居るんだ?」

一番はそこである。何故俺が此処に? まして俺は提督でもなくば軍人でもない。単なる一リーマンにしか過ぎない。

だがその問いに対し今度は金剛が前に出て話をした。

「提督を呼んだのは私達デース。」

長門がそれに対し睨んだが一つ溜息をつくと淡々と話を進めた。

そして俺の顔を見るなり人に物を頼むかの様なお辞儀と共に衝撃的な一言を言い放った。

「提督、単刀直入に話をしましょう。我々を…我が日本帝国海軍をお助けて下さい!!」




いかがだったでしょうか?
今回は会話がメインで現状を確認するって感じですかね。
第参話ではジパングか旭日の艦隊を出そうかと検討しています。
ご感想の程宜しくお願い致します。


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第弐話 みらい、現レン

どうも、前回から読んで頂き有難う御座います。玉城デス。
今回はなんとジパングを出して見ました。
正直、艦これの回想シーンが続くよりこんな感じで他作品をねじ込みながら進んだ方が面白いかと思い入れました。
誤字、脱字がありましたら是非教えて下さい。



同刻 北太平洋硫黄島近海

「うう、タイムスリップの次は何だよ…」

イージス艦みらいの甲板にて目覚めた角松洋介の第一声は怒り交じりの声であった。

無理もない。大嵐の中オーロラが出現したらすぐにオーロラが消えた直後大和級の戦艦を目撃し朝になったら目の前でミッドウェイ海戦を見た直後何処の国かすら解らないレシプロ機に閃光爆弾を落とされたら混乱のあまり、訳も分からない苛立ちを覚えるだろう。

「しかし、何でこんなにも異常事態が続いてんだ? 人類でも終わるのか?」

そんな独り言を言っていると走る足音と共に心配する声が飛んできた。

「副長!大丈夫ですか!?」

「俺は大丈夫だが…この今の現状を除けばだが…」

一回深呼吸をし、今現状起こっていることを頭の中で再整理した。

整理はしたが今も尚続くこの現状をどうにかするには動かなければいけない。

そう思い、足取りを船外から船内へと変えた。

中は艦内は騒然としており人員点呼や負傷者の確認の声、ときおり自分達がどうなっているんだろうと小声で話す者が居たが今はそれどころではなかった。

 

イージス艦『みらい』艦橋

 

「梅津艦長!」

ドアを開けた時の第一声だった。

周囲を見ると激しい頭痛にでも侵されたかの如くうなされて伏せていたが少数でほとんどの者はまだ起きていない人間の介抱にあたっていた。

「角松か…」

声の音源を見やるとそこには苦しそうに椅子に座って指示を出している梅津三郎の姿がそこにあった。

「艦長、これは一体どういった状況で?」

ド直球の質問であった。

「私にもわからん。だが今は現状の整理が優先だ。」

そう言うと艦橋にいる人間の介抱と負傷者の確認、現在地の確認を優先させた。

見ていた角松も伏せている人間の介抱に向かった。

30分後、何とか事態は沈静化し死者0名、負傷者5名となりまた現在地が硫黄島に極めて近いと判明した。

ちなみにこの負傷者は吐き気やめまい、頭痛を訴える等の外傷ではないため比較的軽度な症状であった。

「はあ、どうしようかねぇ…」

人数の点呼を終え報告を受けた梅津艦長の反応であった。

そんな中報告を続ける角松は現在位置についての説明をした。

「GPSは正常に作動し只今我が艦は硫黄島近海にいると判明しました。そのためもしかしましたら我々は現代に戻ったのかと思います。」

「あれは一時的な電波障害等ではないのか?」

「その可能性もありますが…ですが今現在位置を判明した分良いと思われます。」

「まあ、確かにそうだな。現在地が解れば任務を遂行が捗るしな。そういえば硫黄島近海にいるのなら本国への安全の連絡をしなければいけないな。連絡はしているのか?」

「今、現在しているところです。」

そういっていると大声で

「連絡取れました!」

と言う声が聞こえたと共に周囲から喜びの声が聞こえた。




いかかだったでしょうか?
次回は午前中に出せるよう努力します。
感想の程宜しくお願い致します。


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第参話 みらい、暁ニ進マン

どうも、皆さん。玉城デス。
昼の投稿といい夕方上げてしまい大変申し訳御座いません。
日中は溜まっていた仕事をしていたため書き上げられず午後急いで書き上げました。
今回はもう一度ジパングの話です。次回は艦娘の話に戻ります。
誤字、脱字等がありましたら是非ご指摘の程宜しくお願い致します。



「ですが、交信は出来たものの相手からの反応はなく、こちらが一方的に交信している状況にあります。」

「相手からの交信はなしか…」

「艦長、もしかしたら硫黄島にて何かあったのではないでしょうか?」

「ううん、確かにその可能性も一理あるな。」

その時彼らの頭に浮かんだのは硫黄島が何処かに占領されているのではないかと言う不安だった。

ありえない話ではない。

事実、我々が共同演習に行っている間にその期間を見計らい攻めてくる可能性だってある。

そして硫黄島は本国から結構離れてはいるがそこを足掛かりに攻めると言うことだってあり得る。

どっちにせよ、現在硫黄島は大変極めて危険な状態にあると言う事が先走った。

「艦長、提案ではありますが硫黄島に接近し硫黄島の状況を海鳥にて確認してはどうでしょう?」

副長、角松洋介は現状出来る打開策を提案した。

「そうだな。よし、よかろう。舵を硫黄島に。島の五キロまで接近し、海鳥を発艦させ島の偵察を行う。総員準備せよ。」

専守防衛を貫く梅津艦長だがもし日本の危機となれば致し方ないと思って提案を飲んだであった。

命令の発令を受け艦内の船員は目の色を変え任務に励むことにした。

機関室では機関の確認、点検を行いガスタービンに火を付けたり、格納庫では海鳥の発艦準備等をしたりと騒然としていた。

その騒然の中ただ一人左舷甲板に出ていた角松洋介二等海佐は果てしなく続く海を見ていた。

深いため息をついたそんな時だ、後ろから声が聞こえてきた。

「副長様が何故此処に居るんですかね?」

「そんな砲雷長様も何故いるのでありますかな?」

冗談を言い隣に来たのは菊池雅行三等海佐であった。

角松は隣にきた事を確認するなり菊池に向かいいきなり質問をした。

「俺ら、本当はどこに居るんだろうな...」

溜息交じりの質問に対し菊池も溜息交じりの質問で返した。

「さあな。俺にもわからんよ。ただ俺らがなすべきことは目の前の物に対し真剣に行うしかないんじゃないかと俺は思うぞ。」

「そうか。」

そうして二人は今現在自分達が持っている情報を交換し雑談を行っていたが角松が話を切り上げて各自の任務に戻ることにした。

艦橋に戻るとみらいが硫黄島の目標地点にもうすぐ着くことがわかった。

目標地点に到着したみらいは後部格納庫から海鳥を出すと早速発艦の準備に取り掛かっていた。

角松は艦橋から発艦を見守っていたがその先に大きな黒煙が見えた。

「なんだ、あれは…」

双眼鏡で覗くとそこにはあたご型と思しい艦が黒煙を立て航行しているのが見えた。

もしかしたらと思い一回双眼鏡から目を離しもう一度見て角松はとある事を確信すると通信機に向かい言い放った。

「我が日本国艦艇が正体不明の艦から攻撃を受けている!繰り返す!我が日本国艦艇が攻撃を受けている!」

その言葉を聞き艦内の人間は奮い立った。




いかかだったでしょうか?
とある感想の中にご要望があったため入れていこうと思っています。
今回も読んで頂き有難う御座います。
感想も是非書いて下さい。


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第肆話 我ガ提督、目覚メン

どうも皆さん玉城デス。
前回から読んで下さった方、前々回から読んで読んで下さった方大変有難う御座います。
今回はジパング編から戻り提督編です。
前回、誤字や勘違いが大変多くご指摘の程を沢山頂き不快感を持たしてしまい大変申し訳御座いませんでした。
以後この様なことが再発せず良い作品をお届けるよう尽力致しますので今後のご支援の程宜しくお願い致します。


時を遡り硫黄島海岸

長門の顔からは真剣さのあまり殺気を感じる程であった。

だが俺はあまりにも唐突すぎる発言のため終始困惑したが心を落ち着かせ口を開けた。

「ちょっと待って下さい。何がどうしてそうなったかっていう説明を頂けませんかね。」

まあ、これが一番妥当だろう。今現在自分が置かれている状況や今起きている現象について何も知らないんだったら早急の判断は大きな痛手を被る。

それを言うと長門は赤面したが話をした。

「申し訳御座いません提督。この長門、あまりにも興奮したあまり説明を疎かにしてしまい…」

そう詫びを言うと深々とまたお辞儀をした。

流石になんかこれ以上詫びさせたら可哀想だと思いフォローをした。

「長門さん、大丈夫ですよ。そんな深々とせず、私だって申し訳ないです。初対面の人に対しさんを付け忘れてしまい…」

「いいえ、提督そんな事は大丈夫です。今後共に我々艦娘一同は呼び捨てで結構です。」

 

【新着】フォローが全然フォローになっていない件について Patr1

 

そんな某掲示板の様なスレが一瞬頭をよぎったが本能の指示の元話を転換することにした。

「じゃあ…なが…長門、ここじゃあ…なんかここじゃ話しずらいし移動しないか?」

提案すると長門は頷き

「そうですね、では執務室まで案内しますのでついてきて下さい。」

そう言うと長門は他に集まっていた艦娘達に向け持ち場に戻るように言うと提督をエスコートした。

同行した艦娘は見た感じ約四名。大和、武蔵、長門、陸奥の四人だった。

金剛も連れて言って貰いたいと言っていたが長門の反対や任務があったため強制的に他の金剛型に連行されていった。

俺が起きた所は摺針山の近くでどうやら海上で遭難しどっかの無人島に漂着した遭難者の様に倒れていたらしい。

そのせいかやけに足がムズムズする。

多分、発見され砂浜のど真ん中に上げられるまで足が海水に浸かっていたんだと思う。

着替えが欲しいが今はそんな贅沢は言ってられない。

何故、俺が硫黄島に居るのかを聞かなければ。

だがまず、一体ここがどんな感じになっているか順々に聞こう、そう思い先行する長門に向かい質問を飛ばした。

「長門、確か此処は日本帝国海軍の前線基地っていったな?」

「はい、確かにそうです。」

「確か此処は海上自衛隊の航空基地になっていると聞いたのだがどうなんだ?」

そう言うと長門は歩調を合わせ俺の隣に来て話をした。

「確かにひと昔前まではそうでした。」

ひと昔前…?その言葉に多いな疑問を抱いた。

「ひと昔前?」

そう復唱すると淡々と話を続けた。




いかがだったでしょうか?
誤字、脱字や間違えがありましたら感想にてお願い致します。


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第伍話 我、情報入手セリ

どうも、皆さん。玉城デス。
今回も読んで頂き大変有難う御座います。
今回は長門による講義が中心となっています。


「提督は深海棲艦をご存じで?」

「まあ、存在は知っているが名前だけで後は知らない。」

そう答えると仕方ないなと心で思っていることが感情に出ていた。

「致し方ありませんか。この世界に深海棲艦について簡単に説明をしましょう。」

言われた途端此処は自分が前まで居た世界と確信した。まあ、二次元のキャラがまんまその恰好で出て来る時点で察してたけど。

「深海棲艦…それは段階を送りその存在を露わにしました。予兆はあったのですが、流石に気づくことは出来ませんでした。もし予兆の段階でわかっていれば防衛の一つや二つ出来ていたのですが…」

更に淡々と話していった。

「その予兆と言うのは太平洋ハワイ沖を航行中の大型タンカーが突如消息を絶った事から始まりました。十分後、同海域を航行中の新型遊覧船ローンメアリー号が何者かの攻撃を受けているとの通信が入った直後通信が切れました。遊覧船はVIPを多く乗せて居たため事態を重く見た合衆国政府は日本国政府に協力要請をし横須賀に訓練のため駐留中だった第七艦隊と海上自衛隊の護衛艦『あたご』『いせ』『いずも』の三隻を派遣しました。」

「現場海域に到着すると艦の形状が不明、所属も不明な正体が解らない小型の駆逐艦らしき艦が二隻、戦艦一隻がこちらに向かい砲撃したため迎撃を行い三隻を轟沈させました。その時はロシアが海賊に旧式の戦艦を売買したと言う見解に至りましたがそれに対しロシアが全否定をし情報を開示しました。各国の重要人物を乗せていたためもし自国がやったとなったと断定され集中砲火を喰らうって事を推測して判断したことでしょう。そのせいか緊急で作られた調査委員会もロシアの可能性は低いとの見解を出し結果調査は難航、この問題は闇に消えました。」

「以降、この様な事が内容護衛艦を一隻随伴させると言う事を条約で締結、何事もなく四か月が過ぎましたがとある攻撃でこの均衡が崩れました。」

「ミッドウェー島沖を航行中の大型タンカーが航空機の急降下爆撃に遭い撃沈、護衛をしていた合衆国第七艦隊のダイゴロデロンガ級ミサイル巡洋艦シャーレイは不意の攻撃に対しCIWSやハプーンなどで迎撃を行いましたがその反抗虚しく轟沈。最後に入った通信には戦艦一隻と重巡と思われる艦が一隻、大型の空母四隻そこから発艦される航空機を見たとの通信が入りその後行方不明になりました。」

「これは単なる前奏に過ぎませんでした。これに対し編成済みであった遊撃艦隊を派遣しようとした合衆国海軍でしたが別ルートのキス島を航行中の艦から正体不明の潜水艦から攻撃を受けているとの連絡を聞きつけ別編成した遊撃艦隊を派遣しようとした矢先これを引き金に一気に護衛中の艦からひっきりなしに来る救援要請を受け司令部は苦渋の決断した結果近海の艦隊群の支援のみにとどめました。そこからでしょう。人類の制海権を巡っての戦いを始めたのは。」

「その時ぐらいからですかね。我々艦娘達が姿を現したのは。」

そう説明を受けていると木々の間から発動機の音と共にプロペラ機が風を切って飛んでいった。その先を見ると硫黄島とは思えない軍港が広がっていた。説明を一回区切らせ軍港に向かい走っていると視界が開ける所に出た。

「すげぇ…」

そこに広がる海洋に面したあまりにも大きな港を見て絶句してしまった。だが間もなく長門が追いつき隣に来るなり息を荒立てつつも俺に向かい

「ようこそ提督。我が硫黄島基地へ。我々、艦娘一同着任を心待ちにしておりました。」




いかがだったでしょうか?
今回は誤字や手違いがない様にしたのですが。
もしその様なことがありましたら是非共感想に記載して下さい。


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第陸話 提督、疑問ニ思フタリ

どうも、皆さんタマキデス。
前作から間が空いてしまい大変申し訳御座いませんでした。
仕事が残っていたため遅れてしまいましたが極力この休みを利用し投稿出来る様に致します。
では、お楽しみの程を。


その広大に広がる軍港はどこかの第二次大戦を元にしたノンフィクション映画のワンシーンの如く多くの戦艦、駆逐艦、空母など多くの艦が停泊していた。

だがその中に如何にも場違いな近代的なフォルムをした艦が時折戦艦や空母から垣間見えることが出来た。

にわかの俺でもそれぐらいはわかる。武装、デザイン、大きさこのどれもが圧倒的に違う。

戦艦や空母なんかの第二次大戦中の艦はこう無骨なデザインの中に美しさがあるのに対しイージス艦等の近代的な艦は洗礼された美しさを放っている。

「長門、何故戦艦や空母の中に如何にも場違いなイージス艦が居るんだ?」

その疑問を長門に振りかけると深呼吸を一回し

「実はそれには前の話が関わっているんです。お話を続けてもよろしいでしょうか?」

「ああ、頼む。」

そう言うと後ろを振り向き大和達が付いて来ていることを確認すると歩き始めた。

今更ながら艦娘に足りないものを感じた。

何か足りない。

こう大きなものが…

「どうしました?提督。」

訝しげな顔をしている俺に対して長門が質問してきた。

「いや、何か足りないなぁ…こう背中に付ける何か無駄にこう…」

言葉に詰まっている俺に対して指摘するように長門が告げた。

「もしかして艤装のことですか?」

「あ、それだ!」

頭では浮かんでいてもその名前が思いつかないと言う事はよくあることだ。

実際日常生活でもにてもよくあることだ。

俺に艦これを勧めた元凶のオタククソ同僚に半ば強制的に見せられたアニメで終わった後の感想を聞かれた時なんかはどれも似たり寄ったりで判別できずキレられた記憶が思い出された。

「艤装でしたら一般時は外し、戦闘時になったら付けるという規定が定まっていまして。」

え。何。艤装って取り外し式なの?

「ちなみに艤装に関しては一括して格納庫に保管しております。」

艤装のイメージがどっかの魔法少女やアニメの様に手を振ったり叫んだりしたら出る方式じゃないという考えが一気崩壊したが話を軌道に戻さなければいけないと考え口を開いた、が先行を取って話したのは長門であった。

「提督、どうかなさいましたか?」

「いや、何でもないよ。」

どうやらあまりにも考え過ぎて心配させてしまったようだ。

「まあ、この事は長門。話の続きを聞かせてはくれないか?」

「そうでしたね。提督。」

長門が微かな笑みを浮かんでいた。何これ可愛い。ネットでは専らゴリラやナガト・ナガト何かでネタにされる長門だが実際近くで三次元体で見ると非常に可愛い。一瞬心が緩んだが今はそんな時ではない。情報をちゃんと聞こう。そんなことを心に言い聞かせた。




いかがだったでしょうか?
ちなみに主はこの作品を書き上げている時、HELLSINGの少佐の演説を聴きながら描いておりました。


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第漆話 大事ナ、一歩

すいません皆さん玉城デス。
仕事の都合で前回上げられず大変申し訳御座いません。
以後計画的に描くよう努力致しますのでご支援の程宜しくお願い致します。


長門の歩幅に合わせ歩く。当たり前だが非常に難しい。行き過ぎては駄目だしかと言って遅すぎても駄目だ。

彼女いない歴=年齢の彼にとってはその微調整が非常に難しい。なんか違和感がガンガン来るが気にせず行こう。

こんなことをしている俺を見た長門は何となく察した様で自ら歩幅を合わせてくれた。

心の中で感謝しつつ話をしてくれる様に頼んだ。

「では、話の続きですね。」

そう言うと話をし始めた。

「えっと、どこまで話しましたっけ?」

壮大なボケだ。あまりにも唐突過ぎて笑いを飛び越し盛大にズッコケた。如何にもcoolな話になるのにそのボケはないだろ!

心の中で思って居ると後ろから陸奥による指摘が飛んだ。

「長門、私達の出現からよ。」

「ああ、そこからだったな。」

もしかしてこの長門、よく二次創作でネタ扱いされる脳筋長門と同等レベルかそれ以上なのか。

いや、しかし一時的な判断はいずれ何処かで自爆を招く。ましてや今、目の前にノーフィクション映画でも集められない程の軍艦が停泊していることに対する興奮が抑えられていない状況にあるからそんな判断をしてしまったのだ。

一時の判断を一回リセットすると長門に話してくれる様に頼んだ。

「長門、説明の続きを」

「はい、遅れてしまいましたね。」

「米国が戦闘をしている最中、日本国において謎の艦船が出現するようになりました。在りし日の戦艦の魂を持つ娘、そう我々艦娘の出現です。」

「その時の我々艦娘の特徴は共通して国内の建造されたドックやよく停泊していた鎮守府に出現しました。何故かは私達艦娘にもわかりません。何かの因果なのでしょうが今だ解っていません。」

何となく情勢は理解出来た。だが艦娘の有用性、俺が此処にいる理由、まして何故此処、硫黄島がこんなにも城塞化した島なのかかがいまいち解らない。

「長門、すまないがいいか?」

解らない事は質問をする、これは何処においても鉄則だ。

「何で、艦娘がこう敵に近くの前線にいるんだ? 戦艦か何かは時代遅れで使えなく無駄に高いから現代では基本的にイージス艦が海戦を指揮っているのに何故艦娘がいるんだ?」

とあるクソオタク同僚が前艦これの最中教えてくれたことがあった。戦艦は非常に強力であるが時代が時代でまた尚且つ無駄に金が掛かるから基本的今はイージス艦が現代を指揮っていると聞いた。

それに対し長門は否定するかの如く切り込みをいれた。

「提督、イージス艦の特徴をご存じで?」

「えーっと遠距離からでもミサイルを使って普通に攻撃出来る点?」

「他には?」

「無駄に装甲が薄い?」

「他には?」

「うーん、思い当たる節がない。」

興味のない俺に対し簡単に同僚が説明した内容をそのまま口にしただけであと他は知らない。

長門はどうやらないことを察すると現代戦闘に対し同僚よりも細やかな言葉で説明を開始した。




いかがだったでしょうか?
誤字、脱字、変な文章がありましたら感想にてご報告下さい。
あと、質問なんかも是非書いて下さい。


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第捌話 提督、学ンダリ

皆さま、ドーモ玉城デス。
私なりの簡単に理解している範囲です。



『なあ、知ってるか。今、現代では艦これの様に大きな砲を持った戦艦が最強!っじゃなくて駆逐艦が今の所最強って言われてるのを知っているか?』

「何でだ?」

『戦艦ってのはデカくてんでもって費用が高くて…』

同僚との会話だ。面倒で半分聞き流していたがこんなところで無駄な知識が役に立つとは…まあ、うろ覚えだが。

「まず、提督。イージス艦と戦艦の違いを簡単ではありますが説明致しましょう。戦艦とは基本的な設計理論は圧倒的防御力と脅威的な攻撃力を持つ大きな船を造ろうと言う物で後に大艦巨砲主義と呼ばれる物で代表的なのは私長門や後ろに居ります大和がわかり易い例でしょう。」

「ですが、戦艦は大きい故維持費やその他弾薬の費用が高くまた機動力が劣るため現代戦闘における機動力、艦砲は不向きになり今やイージス艦等の小型艦艇が基本となっております。」

「イージス艦…今や現代の海を航行する戦艦に代わる艦艇です。小型で機動力が高く、維持費もその為掛かりにくくなり、また最強の装備と言える『イージスシステム』やそれに伴い高度な情報処理を行える高度なシステム艦となり一般的な艦砲を使用せず遠距離からミサイルを使用し敵を撃退することが出来る艦…それがイージス艦です。」

「イージスシステムは簡単に説明すると多くの目標を瞬時に判断し、それに応じてどの様な行動をするかなどの指令を送るシステムっと言った方がいいですかね。」

「ちなみにイージスはギリシャ神話におけるアテナが装備していたと言われる胸盾で邪悪なものを打ち払う効果を持った神の盾から来ております。」

うん。それは知ってた。

だってイージスって防具とかであるし、んで持って何かと共通して後半で手に入ったりして付けるけど更に強い奴が出て結局置物になるとかって言う感じだから意外と頭に残り易い。

「うん、大体はわかった。つまりイージス艦は搭載しているすんごいPCによって敵を識別して敵さんの見えない距離からミサイル撃って撃退する艦ってことでしょ?」

「流石、提督!ご理解が早い!」

「う...うん。まあ、ね…」

長門の説明が同僚より解り易くまた呑み込み易かったが女性に対する対応方法知らない童貞が出せたのはこの様な返答しか出せなかった。

説明が解り何となくとある仮定が浮かんだ。

「じゃあ、つまり艦娘が必要ってことはそんぐらい深海棲艦が居るってこと?」

それに対し長門は

「それだけだったら国連で臨時艦隊を編成して各地を暴れ回って深海棲艦を駆逐していますよ。」

「だったら、一体何だってばよ。」

「提督。前の話を考慮点に入れて下さい。」

「うーん。」

そう言うと改めて考えてみた。

深海棲艦は突如として現れた…現代海戦にて最強とおけるイージス艦が負けた…イージス艦は遠距離から攻撃する…故に装甲が薄い…レーダーには反応していない?……あ!

何となく解った。つまりこういう事だろう。

「深海棲艦はレーダーには反応しない…言ってしまえば深海棲艦はステルス艦だから反応せず目標に近づけるためイージス艦に艦砲をぶっぱ出来る…装甲の薄いイージス艦は対応出来ず、艦娘の様な第二次大戦時の様な戦艦が必要になったから?」

今考えられることはこれぐらいしかなかった。




ご指摘などドゥンドゥン下さい


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第玖話 提督、訂正ニアワン

ドーモ、玉城デス。
特に書くことがないです。


「半分正解。半分不正解と言った所ですかね。」

この答えを聞いたときテストで丸ではなく三角を渡された気分だった。

「深海棲艦はステルス艦って事は正しいのか?」

その問いに対し長門は正答の説明を開始した。

「提督が言った通り深海棲艦はステルス艦であり、イージス艦等のレーダーでは感知が出来ず浮上して来るまでは目視でしか捜索出来ません。」

「え、浮上すんの?」

深海棲艦って深海って言ってるから潜水艦なのか?と思ってしまった。

「うーん…なんていったらいいんでしょうか。本当に深海棲艦についてはあまり解っていませんが奇跡的に帰還した艦やその他情報を合わせると深海棲艦は海に潜航している時は感知が出来ず、海に浮上してくるまでレーダーには映りませんが浮上と共にレーダーに映るらしくその時は既に敵艦は艦砲影響圏にありそれで攻撃された…等の報告は入っていますが…」

「が?」

「一部情報では、南海トラフ沖を移動中だった駆逐艦隊曰く急に現れた深海棲艦は距離を離し出現。その後、深海棲艦は行方を暗ますと言う事があり未だに解っておりません。」

「そうか…」

わからない事が多いか…と心の中に不安がよぎった。

深海棲艦の事や自分が此処に居る理由、人類の制海権争い…まるで漫画や小説の主人公になった気分だった。

だが今現在そうなってしまった。

だったら今自分が出来る全力の事をやってみたらどうだ?

そう心の言い聞かせ一抹の不安を振り払った。

心機一転、長門から聞いた事を考慮し新たに考え直してみた。

イージス艦は遠距離特化し故に近距離が弱い…だったら。

「長門、聞くが何故新規で戦艦を作らず艦娘を運用しているんだ?新型戦艦の建造が遅れているや旧式戦艦の数が足りず致し方なく使用しているんだったらわかるが…」

「提督、その質問ですが艦娘の特性が深く関わって来るんです。」

「提督が出したのも一つの要因ではありますが我々、艦娘には深海棲艦の位置を特定出来る能力が備わっている様なのです。」

そう言うと長門は自分の頭に指を指した。

「私も感じましたが潜航している深海棲艦が近ずくと距離や方位、艦隊の数ぐらいで艦種はわかりませんがその方向に必ずと言っていいほど現れたのです。」

「だったら、艦娘をイージス艦に乗せレーダーの代わりをしたらどうだ?」

「では、更に近距離で現れたらどう対処しますか? 生憎、敵も我々艦娘についても感知出来るようなので。」

「うっ…」

そういう事か。

艦娘の存在意義がようやくわかった。

つまりは神出鬼没な深海棲艦に対し、深海棲艦を感知出来、即応性、防御力がイージス艦よりもある艦娘の方が被害が最小で済み運用しやすいって事か。

成る程っと関心していると長門が大きく進み斜め右前に来ると手のひらを見せた。その手のひらに気が付き前を見ると自分が居る場所は何処だろうと考えさせる光景が広がっていた。

「此方が執務室兼作戦指令室です。」

それは横須賀の赤レンガ倉庫やハウステンボス、明治時代の写真でしか見たことが無いほどの赤レンガの建物があった。




いかがだったでしょうか?
ご感想の程どんどん下さい。


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第拾話 対面

ドーモ、玉城デス。
あさひの方の気晴らしに描いたつもりが半分こっちが主力になっていますが気にしないでください。


その赤レンガの建物には汚れ一つなく、また欠けてもいなかった。アクセントとして入れてあるツタがその赤レンガ特有の赤を強調していた。柱は白で塗られ屋根は...あまりにも大きいため見れないが横の建物を見て何となく察した。

そうこう話しているうちにどうやらついていたらしい。

てっきり現代風にコンクリートで固めた堅固な建物やプレハブ小屋かと思ったがそこにあったのは作りが込んだ彫刻の様な赤レンガの建物であった。

「提督、此方へ。」

そう言われ長門についていった。

中に入ると其処は歴史溢れる木の温もりある空間が広がっていた。

初めての場所で興味津々となる子供の如く見ていた。

内部も内部で外見の美しさに比例していた。

良く磨かれた柱、木目が光る廊下、窓から入る太陽の光により更に白く見える壁、まさに其処は明治時代にタイムスリップしたかの様に思える程であった。

時々行きかう自衛官や小さい小人、艦娘が此処を軍の施設と思わせてくれるものがあった。

「提督、此方が指令室になっております。」

あまりにも周囲を見ることに夢中になり過ぎていたらしい。

長門がドアを開けると其処には多くのディスプレイが並び海域ごとに分かれた海図がかけられていた。

まるで映画やアニメの世界の様な指令室の代名詞たる光景であった。

手前には大きな椅子が置いてあり、その雰囲気を更に醸し出していた。

長門が一歩出て右手で敬礼するなり。

「長官、提督閣下を連れて参りました。」

それに伴い椅子が下がり立ち上がる様な音がした。

…立ち上がった人影は白の軍服で肩からは映画で見たことのある記章を垂らし、海軍の紋章らしき物をあしらえた軍帽を被った如何にも軍人な面持…

 

 

 

如何やらそれは私ののみが見えた幻影だったようだ。

実際其処に居たのは大きな二頭身の小人であった。

「ようこそ、提督君。我が硫黄島基地へ。私が此処の代理司令官山本五十六だ。宜しく頼むよ。」

山本五十六? 

だがすぐに思い出した。

大日本帝國海軍聯合艦隊第二十六代司令長官山本五十六…真珠湾攻撃作戦を務め最後はブーゲンビル島にて米軍機の待ち伏せに遭い死亡、享年59歳。最終階級は…元帥だった覚えがある。

そんな御方が何でこんな姿になって居るんだ?

「えーっと、山本長官ご質問があるのですが…」

「ん? 何だね? 君は民間人だから長官なんて付けなくてもよいぞ。」

「何で長官ともう在ろう御方が何故こんな姿かと、思いまして…」

「ああ、これか。儂も知らん。」

そういうと自分の体を見始めた。

「え?」

拍子抜けした。てっきり説明を交えて解説してくれるのかと思ったがたった二言で切られた。

流石、連合艦隊司令長官…

って関係ないか。

そう思って居ると

「実はな儂が気が付くとこんな感じになっていたんだ。確かに私はブ島上空にて米軍機にやられたはずなのだが…」

どうやら死後の記憶はあるらしい。んなれば。

「つまり、山本閣下は一回死んでいると?」

「まあ、そういう事だ。」

転生か…でも転生先もまた海軍とは…

「だが、私はまたお国の為に働けるとは…何かのご縁かと思っているよ。」

如何やら当の本人は苦では無いようだ。

だが私は限界に来つつ者があった。

「山本長官、大変申し訳ありませんが宜しいでしょうか?」

「どうかしましたかね?」

「足が海水に浸かり大変気持ち悪いのでシャワーに浴びたいのですが…よろしいでしょうか?」




いかがだったでしょうか?
カロリーメイトはメープル派デス。


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第拾壱話 予兆

ドーモ、ミナサン。タマキデス。
次回に向け騒然となった内容にしました。
楽しんで下さい。


「ああ、良いぞ。環境が良くなければ持てる力の半分すら出せないからな。大淀は...ダメだし…明石、帰りついでに案内してくれないか?」

そういうと明石は反応し

「あ、はい。了解しました。」

これでこんな嫌な思いをしなくて済む…着替えられる事が出来喜びが込みあがって来た。

「大変、有難う御座います。」

明石が大淀に書類を渡すと自分の隣に寄って案内してくれる素振りを見せてくれた

「では、明石について行ってくれ。」

「提督、こちらです。」

「あ、はい。」

吊られるようにして明石に付いて行った。どうやら随伴してくれる艦娘は居ないようで現在、俺と明石の二人きりの状況だ。

明石に案内されて廊下を歩く。

この空気を見かねてか明石が切り込む。

「提督さんは驚いたりしてませんか?」

どうしよう。変に気を使い大丈夫だよって言うのも手だが此処は正直になろう。

「うーん、まあ、沢山ありますよ。いきなりPCから白い光に包まれたと思ったらいきなり提督になってくれって言われるし硫黄島は基地から鎮守府レベルになってるし。」

「そうですか。提督も大変ですねぇ。まあ、シャワーでも浴びてスッキリすれば落ち着きますよ。」

「そうだね。落ち着きも必要だし。」

落ち着かなければ見つかるものすら見つからないし。

一回深呼吸をして心を落ち着かさせると暖簾が架けられた所についた。暖簾を見ると『男』と『女』と別れていた。

「こちらです。提督。此方が風呂場になっております。」

あれ? シャワーって言ったけど…まあ、湯船に浸かるか否かのちがいだしいいか。

「では、ごゆっくり…」

見送られながら入り口で靴を脱ぎ、入っていた。

中身は昔ながらの風呂場…よく昭和のドラマなどで見られるタイプの脱衣室だ。桶に自分の服を入れ、そして入るっと言った感じだろう。

どうやら中には私一人らしく扇風機が独特な音を出しながら首を回していた。

そこでとある重要なことに気が付いてしまった。

タオルと着替えがない。

どうするべきか。

そんな悩みであったが目に留まった。入り口近くの据え置き用のタオルがそこにあった。どうやら、任務から帰ってきてすぐ風呂に入る人間がいるかもしれないと言う事を考慮しているのだろう。

一つ問題は解消された。しかしながらまだ問題が残っている。

そう着替えだ。

風呂から出て折角さっぱりしているのにもう一度同じ服を着る…あまり汗をかかないんだったら問題はないんだが流石に足が海水に浸かっているのは着たくない。

どうにもならないのかっと思った直後、タオルの近くに何かあるのを見つけた。

下着だ。勿論男物。Sから3Lまである。んでもって余裕のあるトランクスだ。

下着はいいんだ。

その上に着るもんが欲しいんだ。

だが、探せば大抵なんかあるもんだ。

もう一度見渡すと洗面台が並ぶなか受話器が見えた。

近づいて見てみる。『緊急時以外ノ使用ヲ禁止ス』と書かれていた。

まあ、緊急時だしいいよね?

受話器を取る。

電話がかかる音がする。

『プルルルプルルルル...こちら本部、また青葉か?また青葉が盗撮器具が見つかったのか?』

聞こえた声は半ば呆れた声であった。だが声の主は大抵判断出来た。

この声は大淀だ。

多分だがこういう事は一回大淀に回ってそして長官に回る感じになっているんだろう。

だがまた、青葉って…青葉何やってんだ…もしかしてガチムチ男の画像を取って売ってんのか?

「いいえ、そういう事ではなくて…あの着替えが無いもんでして…」

『着替えなら持って来て…もしかして提督ですが!?』

「まあ、あ、あ、そうです…ははは…」

あれ、提督になった気はないんだが…まあ、いいか。

『着替えでしたらそちらに妖精を派遣しときますので…』

「じゃ、お願いします。」

良かった…これでゆっくり入れる。

これで問題は消えた。

ゆっくり服を脱ぎ、タオルを巻き風呂の戸を開けた。

 

 

同刻司令部

「では、風呂場にお願いします…では」

大きく溜息をついた。

ゆっくり体を伸ばす。

「ふぅ~疲れた~」

提督が来てから仕事が大きく増えた。スケジュールの変更、艦隊の再編成、部下への指令などの仕事で机に貼り付けになってしまっていた。

「お疲れ大淀君。しばし休んでいいぞ。」

「長官、ではお言葉に甘えて…」

「長官、提督の着替えは頼んでおきましたので。」

「わかったよ。お疲れさん。」

張り付きになっていた成果、非常に喉が渇いた。だがそのことを感じたのか妖精さんが気を利かせお茶を持ってきてくれた。

会釈をし、お茶を取る。玉露の風味が口に広がる。疲れた体に染みる。

大きく溜息を付き、デスクトップの覗きお茶を片手に今後の予定を確認する。

「ええっと、本土からの提督歓迎艦の到着…か」

スケジュールを見て時間を確認する。

「到着が8:00ってなってるけど今8:00じゃ...」

時間的にはそろそろくるはずなんだけど…っと思って居ると上官から今自分が考えていることがが飛んだ。

「大淀君、そろそろ本土から歓迎艦が来るはずなんだが、どうなっている?」

「いえ、まだ反応ありません。もうそろそろレーダーの範囲内に入っても良い頃なんですが…」

それに呼応するかの如く『第一線海域』と呼ばれる地図に友軍の反応を捕らえる。

「あ、反応来ました。」

少し安堵した。

「友軍反応…ん?」

だがその安堵が束の間、違う反応が発見された。

「これって…」

別の反応が発見された直後、緊急入電が入った。

『こちら、歓迎特務艦あた…ご…救援を求む!』

指令室全員の目が一気に変わった。

「大淀、緊急第一号を発令する。基地全体を厳戒態勢に移行、現在行っている作業を一部を除き中断。友軍救出作戦を決行する!」

長官からの作戦発令を受け指令室はさっきまでの落ち着きが消えた。




いかがだったでしょうか?ご感想どんどん下さい。


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第拾弐話 ≪ 発令! 硫黄島沖救出作戦! ≫壱

どうも、玉城デス。
半日かけて書き上げました。



「うう~染みるぅ~」

体を流しゆっくり湯船に浸かる。

今までの疲れがお湯と共に外へ流れた。

「まさに至福。疲れた時の風呂はこう体に来るもんがあるな…」

改めてしみじみ思う。

提督?

深海棲艦?

艦娘?

全く夢だったら覚めてくれよ。

そう心の中で真摯に思う。

いきなり、見知らぬ世界に来て救って下さいってねぇ…流石に頭がパンパンになるわ。

そう考えながら風呂に浸かっていると隣からブクブクと泡が噴出してきた。

何だろう。

ゆっくり落ち着いて見る。

にしても湯気が凄い。隣ですら正確に見えない程だ。

じっくり目を凝らす。

ピンクが見える。それと共に何かが上がってきた。

人間だ。

「ふぅ…気持ち良くって寝てたでち。此処はどこでち?」

独り言と共に周囲を見渡している。

俺はコイツを知っている。

潜水艦伊58、ゴーヤだ。

しかし何で居るんだ?

もしかしてコイツは男の娘だったのか?

周囲を見渡しているとどうやら俺を見つけたらしく軽く会釈をし

「あ、どうもでち。もしかして此処、男湯でちか?」

何の焦りも感じず聞いて来た。

「まあ、そうだけど…」

簡単に答える。

どうやら察した様で

「有難うでち。」

そう言うと潜っていった。

なんだったんだ…後味に残るものと共にゴーヤは消えていった。

だが自分はのぼせているのだと錯覚した。体の芯まで温まっていると言う体感からそろそろ出ることにした。

風呂場と脱衣所の入り口前でちゃんと体の水滴を取り脱衣所に入る。

自分の桶の所まで来ると白い服を持った妖精サンが居た。多分これが大淀の言っていた。服だろう。「ありがとう」と言い服を受け取った。

バスタオルで体を綿密に拭き、下着は洗面台に在ったものを履いた。そして妖精さんから受け取った服を着る。

ズボンとベルトは分けられており、ベルトをズボンに通し履く。とても白くしわがない。穢れ無き純白であった。

見た目はスーツの様な感じだが履いてみるとそうでもなかった。逆に動きやすい。非常に伸縮性があるものだった。太ももを上げてもキツイとは感じなかった。

上着を着る、これもまた白だ。だが何か黄色い紐が付いている。よくお偉いさんが付けている物としか認識がなかったため単なる手違いだろうと思い気にせず着た。これもまた脇を上げても不快感はない。

整えるため洗面台の前に来て自分の姿を見る。見た感じはまんま軍人さんって程様になっていた。

着た際のしわを伸ばし服を整える。

一通り大丈夫だと確信しまだ自分の温もりがある服を持ち外に出る。

だが外も外で騒然としていた。言うなれば問題が発生したか何かと思うぐらいであった。

書類を持ち走る自衛官。完全武装をした自衛官。艦娘と思しき人間と一緒に歩く妖精。

そんな緊張の高まる周りを見渡していると唐突に女の子がぶつかって来た。

「はわわわ、ごめんなさいなのです!」

ぶつかった反動で尻もちを着いたと共に書類が飛び散り廊下が白くなった。

「大丈夫かい?」

女の子へ手を差し伸べる。

この子も何処かで見た覚えがあった。

だがそんな事を考えているよりこの今の廊下をどうにかしなければ。そう思い右側を急いで集め書類を左に集約させた。

「申し訳ないなのです…」

謝りながら書類を集める。書類の一つを見ると赤文字で『艦娘近代化改修案』と書かれたリストらしきものを見つけた。それには金剛型、長門型、大和型など型で分類されていてそのリストの枠に兵器の種類が載っていたが彼には理解が出来なかった。

数秒でその書類を渡すと違う書類と同じく渡した。幸いにも書類は少なくすぐに集められた。

書類が片付くと女の子は深々とお辞儀をし去っていった。

遠くへ行く背中を見送っていると後ろから大きな足音と声が近付いて来た。

それに反応し後ろを向く。

「提督、此方に居られましたか。」

その姿は長門であった。しかも一部艤装を付けている。

「どうしたんだ、長門。艤装まで付けて。」

「緊急第一号が発令されました。長官からお呼びだしがありましたので提督には、同行して頂きます。」

緊急第一号? 何だそれ。だが長門の顔を見ると事の深刻さが解った。

「何があったんだ?」

「では、一緒に付いてきて下さい。歩きながら話します。」

そういうと長門は後ろを向き歩き出した。それを追う様にして歩く。

ある程度歩くと長門が説明を開始した。

「実は本土から歓迎として来たあたご型イージス艦、あたごが謎の勢力に攻撃を受け島に向け撤退中、敵勢力から深海棲艦の個体識別番号を参照したところ見事に深海棲艦と一致したため今、緊急第一号が発令されたのです。」

「緊急第一号とはなんだ?」

そう質問をすると嫌がらずに説明を開始した。

「緊急第一号とは我々が第一海域から第四海域までに張っている警戒網のうち第一海域と呼ばれる海域に撤退中の友軍と敵勢力が入った際に発令されるものです。基本的には敵勢力の殲滅や友軍の救出を目的にされており、その作戦時には当海域に駐留する第一艦隊や後方で待機中の第二海域駐留第二艦隊により行われます。この他にも敵が侵攻された際に発令される防衛第一号等があります。因みにこの一号、二号は敵がどれくらいの勢力かや敵の侵攻海域によって決められており、大規模艦隊だった場合やもしくは第三海域の侵攻が認められた場合、全海域駐留中の艦隊を出撃可能とする、第三号系統の命令が発令されると言う感じになっており最大四号まであります。」

ふーん、そんな感じになって居るのかと長門の説明を受け関心しているといつの間にか指令室前に到着していた。

指令室に入るととても薄暗くなりコンピューターの轟音と独特なひんやりした感じが覆っていた。

一礼し入ると早速勘付いた山本長官に呼ばれた。

「提督君、すまないね。風呂上りなのに。」

すぐさま長官の隣に付く。

「いいえ、大丈夫です。」

「そうか。では、早速君に頼みたい事があるんだ。」

何か不吉な予感がする。背筋に寒気を覚えた。

「ところで提督君は我が基地における命令の発動等を聞いているかな?」

「ええ、ついさっき長門から聞き及びました。」

「では話が早い。現在、我々は緊急第一号の発令に伴い現海域に駐留中の第一艦隊艦隊を救助兼殲滅に向かわせている。そこで君に頼みたいことがあってな。呼んだ訳だ。」

あ、やべ。寒気が身震いってレベルになった。

「君に特務迎撃用音速改修型局地戦闘機『桜花改』に乗って貰い第一艦隊の翔鶴に着艦、そのまま第一艦隊の指揮を行って貰いたい。」

え。

「ことがことでな。すまないが頼めないか。」

「ええっと今何と?」

「桜花改に乗って、第一艦隊の翔鶴に着艦、そしてそのまま指揮を執って貰いたいと…」

「桜花ッスカ?」

「ああ、桜花だよ。」

桜花って確か特攻機だよな? そんな考えを構わず山本長官は切り込んでいく。

「別に問題はなかろう?」

「桜花って元特攻機ですよね?」

その質問に対し冷静に長官は対応をする。

「確かに元特攻機ではあるが今は局地戦闘機だ。大丈夫。ちゃんと生きて帰れるから。」

「いや、そういう問題じゃなくてですね…」

終始困惑する。自分と長官の経験の差は明らかであった。

冷静な長官は困惑する自分に真意を問いて来た。

「大丈夫じょろ?」

「待って下さい!私にも心の準備と言う物が…」

「別に無理だったら降りても構わないがどうする?」

そんなことを言われやや考えに困った。

降りるか? 降りればそれはそれで自分はいいが味方を見捨てる同じような行動だ。

例え降りたとしたらそれは自分の心に不可解なものを植え付けるだけだ。

就職以来の混乱に言葉が浮かび上がらなかったが自分だったらどうするかと言う事を考えてみた。

道徳心が心の中で助けるべきと囁かれた、しかし欲から助けなくて良いと囁かれる。そうした混乱の中モニターからあたごからの通信が聞こえる。

激戦の音と声だ。明確に判断出来る。

それは救助を求める声であった。

もし自分が降りればこの人達はどうなる?

そう深く考えた。

一つ決心がついた。自分が今できると言う事の決心が。

「俺、受けます。」

「やってくれるのか?」

「困ってる味方が居るんだったら助けるのが当たり前でしょう!」

そういうと長官は悟ったの如く目を瞑った。その顔には嬉しさがあった。

「では、長門について行ってくれ。」

「はい!」

そういうと提督は長門と共に指令室を後にした。

ドアが閉まる。それを確認した大淀はデスクワークを行いながら長官に向かい言った。

「提督君、受けてくれましたね。」

「ああ、提督君にはみてもらわないとなぁ儂らの戦争を。」




いかがだったでしょうか?
因みに主は零戦は三二型が好きです。


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第拾参話 ≪ 発令! 硫黄島沖救出作戦! ≫弐

どうも、玉城デス。
以上です。


航空工廠棟外試験機滑走路

 

桜花の存在を知ったのはあのクソ同僚のしつこい布教作業のせいで覚えてしまった。

やたらと軍用機の本を見せつけて来てはああだこうだを言い放っていた。

その中の日本機について熱く語られる言葉の中に桜花があったのは確かだ。

「ええっと、これですか?」

「はい、これです、提督。」

そこにあったのはまさしく特攻機桜花…を思わせる戦闘機であった。

「これ?」

改めて聞き返す。

「ええ、これです。」

指を指してより正確に示した。

そこにはカタパルトらしきものにはめられた桜花を急ぎ整備する妖精達が居た。

見た目はまんま特攻機桜花だが戦闘機らしく機銃があった。

桜花に驚いていると長門から説明が飛ぶ。

「初期の桜花の制式名称はJ1Iy1対深海棲艦機臨時量産型局地戦闘機桜花でこの機体はその局地戦闘機桜花をベースに専用喝Ⅲ型噴式エンジンから喝Ⅵ型噴式エンジンに変更、備砲も45mmラ-14機関砲二門から80mmラー30機関砲一門と12.7mmラ-2機関砲に変更、同じく機体番号もMXIy6に変更された機体こそこの桜花改なのです。」

説明をしてくれているようだが全然わからん。

だがお構いなしに長門はイキイキした顔で話を続ける。

「元々桜花は敵深海棲艦機の大型機を迎撃するために特攻機桜花の機体設計をベースに高出力喝Ⅲ型噴式エンジンを搭載。因みにこの喝Ⅲ型噴式エンジンと呼ばれるエンジンは初速が非常に強く滑走路を必要としません。そしてまた尚且つマッハ2.3を出せると言う驚異の出力ですがそれ故燃料を離陸する際に結構使用してしまうため航続距離は非常に短いのが難点です。そして備砲45mmラ-14機関砲ですがこの硫黄島工廠内にて研究、開発、製造されたものです。研究の中で迎撃機たる砲口径は大型爆撃の装甲が厚いと見積もられた結果45mmと言う大きさになりました。ですがその大きさ故搭載弾薬も100発になってしまいました。」

「そしてこの他の結果を元に実験機として製作されたのが提督がこれから乗りますこの桜花改になっております。」

何言ってるかさっぱりわからんがマッハ2.3を出せることに背筋を凍らせた。

「まずこの桜花改は喝Ⅲ型噴式エンジンの改良エンジン喝Ⅵ型噴式エンジンに。この喝Ⅵ型は前作喝Ⅲ型の弱点であった航続距離の短さを克服し少しながら速度も上がりました。また備砲も試製80mm機関砲こと80mmラー30機関砲を試作として20発搭載。また非常時用の12.7mmラー2機関砲を200発搭載し試験の為に複座化やや大振りになりましたがあまり影響はありません。」

「え、もしかしてこの試験機に乗るの?」

思わず質問する。

「はい、そうです。」

即答であった。

そしてお構いなく説明に戻る

「今、行っている作業はこの複座化により後部座席の観測用コンピューター空き位置に提督の御席を設ける作業であともう少しで終わる予定です。」

その話の終わるタイミングと同時に妖精さんが手を上げ、天に親指を立てる。

それに反応し長門が手を振った。

何となく察した。

正直、今から自分に降りかかる悪夢を…

「では、此方へ。」

「まさか、本当に乗るのか?」

それに対し明るくはいっと答える長門。

「無理っす。いや、マッハ2.3超える空間で生きられる気配が起きません。」

心の声を言い放った。

だがそんな抵抗虚しく妖精さん達によって乗せられた。

ベルトを締められヘルメットを被る。

「じゃ、提督さん。行きますよ。」

如何にも頑丈そうな妖精さんが前の座席に座る。

「気を付けて下さいね。」

軽く魂が抜ける。

ああ、死ぬのか。俺。

そう思って外を見やると長門が手を振っていた。

その直後、背中が下に動く感触が来る。そして周りの見える世界が別の世界になった。

《此方、桜花改エンジンを点火する。どうぞ。》

《此方、管制塔、了解した。》

その声と共に後ろから轟音が鳴る。ブォォォォォオオオオオオオオオオンっと言う余りにも大きすぎる轟音がなった。

《此方、桜花。離陸を申請する。どうぞ。》

《此方、管制塔。いつでもどうぞ。》

よくドラマの管制のシーンで見る光景がそこにあったが今はそんなところではなかった。

《離陸まで3》

ああ、やばい。

《2》

ふぅ…

《1》

さらば、我が人生。

《0!》

今までに味わったことのないGに襲われる。

それに伴い提督は気を失った。




いかがだったでしょうか?
ご感想等どんどん下さい。
もし桜花のスペックをまとめて欲しいと言うご要望がありましたら別でまとめたいと思っております。


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第拾Ⅳ話 ≪ 発令! 硫黄島沖救出作戦! ≫ 着艦、翔鶴

どうも、皆さん。玉城デス。
当分、リアルが忙しく成る為投稿を停止させて頂きます。
皆さまのご理解の程宜しくお願い致します。


音速で飛来する桜花改。

喝Ⅵ型噴式エンジンの唸り声と共に出るソニックウェーブ。

喝Ⅵ型噴式エンジンは実質試作エンジンではあるが問題なく稼働する。試作機だが量産機である桜花を超えるマッハ2.5を出せためそのせいかパイロットにもその分負荷が掛かる為十分な訓練を受けて居なければ大抵は耐えられない。

事実、後部座席に乗る提督が良い例だ。

だがお構いなしに桜花改は飛翔する。

高度を二百メートルに保っている。

妖精は見計らったかの如く、ヘルメットに搭載してある通信機に電源を入れるとおもむろに自動チャンネルのボタンを押すと通話を開始した。

《こちら、桜花。翔鶴応答せよ。》

通信を入れるとともにエンジンの出力を少し落とす。

桜花はその飛行性能故いとも容易く通信影響下に入れるため最大域とされる範囲から通信を行わなければ通り過ぎてしまうので早めに通信を行ったのである。

その桜花の反応を見つけたのか翔鶴から入電が入る。

《こちら、翔鶴。通信を確認した。》

相手の反応を確認すると淡々と通信を続けた。

《こちら、桜花改。翔鶴への着艦を求む。》

《翔鶴、いつでもどうぞ。貴機の着艦の手筈は済んでおります。着艦予想進路に合わせて着艦して下さい。》

《了解。以後、非常時のため作戦規定に則り通信は繋げておく。》

その通信終わりと共にフラップとエアブレーキの確認を始める。

丁度その頃になると第一艦隊が目視の範囲で見え始めた。

更に接近し翔鶴の位置を確認する。

航空隊所属の人間は大抵が目が良いため空母か否かの確認は簡単で、すぐに判別が出来る。

予定航路に機体を安定させるとエンジンを切り滑空状態に突入する。

元々がロケットエンジンの推進力である程度飛行し特攻することを主眼に置いて設計された桜花にとって滑空することはいとも簡単に行える。

高度を保ちながら滑空をする桜花。

残り1000と目測をするとフラップとエアブレーキの展開、更にランディングギアと着陸用ソリも同時に展開する。

元々桜花は着陸に関してはソリでありそれは特攻機としての桜花や局地戦闘機として生まれ変わった桜花でもそうであった。

しかしその他の事を考慮し試作実験機として改修された桜花改はランディングギアとソリを併用している。

これにはちゃんとした事例があっての事だ。

事例は多数報告されているがその大部分が同じで初期の配備時がほとんどである。

初期の配備時、ソリだったためそれに適応すべく訓練が行われた。

そのためかソリはランディングギアと違っており、いつも通りランディングギアの要領で着陸をしてしまったためバランスを崩し事故を起こしてしまった。

今は改修や訓練等で収まっているがまだ難点が残っていた。

それは一般航空兵の緊急搭乗や滑走路が爆撃された際の着陸である。

前述述べた通りソリはランディングギアとは仕様が異なっており良く訓練を受けなければ大抵の場合は不時着をしてしまう。

もし迎撃隊のパイロットが出撃済みで取りこぼしが来た際の対応には空母航空隊も出撃することになっているためだ。例え航空隊であって錬度が凄いとしてもミスするときはするものだ。

それで不時着をしてしまった際のその分修理費や修理時間が掛かってしまうこと、そしてこれに対応すべく訓練を行えば航空隊の士気にも関わることがあるため難点に挙げられてしまう。

また、滑走路への爆撃が防げなかった際のことで配備後、物議をかもした。

桜花はソリ故に着陸の際その滑走路が真っ直ぐでなければいけない。

もし下手に爆撃で穴が空いていれば其処にはまり事故を起こす。

例え応急で鉄板などで作っていてもそれまで桜花が持つかわからない。

その難点を踏まえ桜花改ではソリとランディングギアの併用思想が生まれた。

桜花改は中心にソリ。翼部腹部付近の中間にライディングギアを搭載している。

そのため非常に安定性が高まりまた、難題とされた空母への着艦、滑走路からの離陸も可能となった。

エアブレーキとフラップの影響か速度がみるみる落ちていくそして空母に付くと着艦フックが着艦ケーブルに引っかかり止まった。

「ふう...疲れたぁ…」

そう言い体を伸ばす妖精さん。

自分が提督を乗せていることを思いだし後ろを向くと泡を吹きだしながら失神している姿があった。

「あちゃ~」

やべ。どうしようと迷っていると何かにうなされたのか急に提督は起きた。

「此処は…」

一瞬記憶が飛んだが目の前にいる妖精さんを見るなりすべてを思い出した。

「着いたのか…」

その声は非常に弱弱しかったが信念が伝わってきた。

「生きていて何よりだ。」(死んでたら困るが…)

提督の安否を確認するなりキャノピーを開ける。

外界の空気を取り込み復活する提督。だが妖精達の手により桜花改後部座席から降ろされた。

精巧な作りの人形から魂を吹き込まれ人間に戻った提督は周りを見渡す。

何か準備をしている妖精たちが見える世界から鉄の柱…艦橋を見ると歩いてくる人影が見えた。

非常に美しい。

髪が白でその美しさを際立たせている。

服は…弓道を思わせる格好であった。

ゆっくり近づいてくる。

非常に意識が朦朧とする中やっと頭が起動した。まるでWindous10が起動するかの如く。

「大丈夫ですか提督!」

美人が駆け寄り目線を合わせる。

この時初めてその美人が何者なのか判別出来た。

翔鶴。

艦これに登場する翔鶴と判断出来た。

「此処は空母なのか?」

駆け寄った翔鶴顔を上げ問う。

「はい。そうです。提督は今、この翔鶴型一番艦航空母艦翔鶴に到着したのです。」

「そうか。」

生き残れた…と思い大きく瞼を閉じた。




ご感想でも何でもドゥンドゥン下さい。


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第拾伍話 ≪発令! 硫黄島沖救出作戦!≫ 提督、懇談ス

新年あけましておめでとう御座います。

どうも皆さん玉城デス。

大変申し訳御座いませんが多分次話更新が非常に遅くなると思います。

何故かと言いますとためておきました16,17,18のデータが消えた事にあります。

楽しみにしていた皆さま大変申し訳御座いません。

次話の投稿を早める様善処致します。



『オニイチャン…オニイ…テイ…トク…テイトク…』

波のさざめきと共に拙い女声が聞こえる。

瞼の奥からその声は聞こえた。

聞き覚えのある声。

今にも事切れそうな声からは懐かしさと悲しさを思い出させる。

重い瞼を開ける。

慣れない光のにより終始周りが閃光に包まれる。だがその閃光は一秒も経たず消えた。

瞳が最初に捉えたのは其処は果てしなく続く大海であった。

海は濃い紺で染まっている。

浅瀬や海岸では見れない程の紺…確実に陸から離れていると確信できる。

水面を見ると波は非常に穏やかで自分の姿がぼんやりとだが視認出来る。

そして自分が仁王立ちしている事に気が付く。

驚き後ろに下がり自分の置かれている状況を整理するが流石に処理が出来なかった。

『オニイチャン…』

その声に反応し周りを見渡す。

前方を見渡し後ろを振り向き確認すると紺碧の海に白い点が見えた。

その白い物は昇って来た朝日を受けその純白を非常に際立たせていた。

圧倒的な純白を良く見ればそれは人であった。

ひらひらと風に吹かれ純白が舞う。

遠方のからだがその人が着ている服は辛うじてワンピースだと判断出来た。

麦わら帽子を深く被り表情を見せない。

私の方を見ていた様で体が此方に向いていた。

だが確認した直後後ろを向き歩き出す。

微かだがその顔には笑みが浮かんでいた。

「待ってくれ!」

大きく一歩を踏み出しワンピースの少女に向け走る。

理由は解らない。

だが何故かそこに行かなければならない気がした。

 

走る。

 

走る。

 

走る。

 

其処に向かわなけばいかないと言う使命感が胸を襲う。

 

もっと。

 

もっと。

 

もっと。

 

届きそうで届かない。

あともう少し。

 

あと一歩。

 

あと…

 

直後視界が暗転する。

瞼は閉じていない。

大きく瞳を閉じ瞬きをする。

すると背中から水に入るような感覚が支配する。

そう、それはまさに海やプールなどの水の中に沈むような感覚だ。

目を見開き見ると其処は海の中であった。

淡い紺から海だと感じられる。

波の狭間から太陽の日が流れ込む。

沈んでいるようで海面からの日が薄くなり紺が強くなる。

「ああ、また失敗しちまった…」

自分の無力さを思わず口にする。

「多分、俺このまま沈むんだな…」

どうにもならない絶望に襲われ考えることを辞めた。

ゆっくりゆっくりと沈む。

『テイ…トク…テイト…ク…テイトク…提督ッ!』

 

 

 

 

 

「はッ!」

上半身を上げ飛び起きる。

やや意識が朦朧とし周りがおかしく見える。

周りが回転している。そう感じれた。

だが心の中で頭を落ち着かさせる。

落ち着きが効きやや意識が安定する。

周りを見渡し自分の置かれている状況を確認する。

意識が曖昧としていて近い物しか見えない。

純白のシーツ…座っている状態…自分が今、ベットにいて今まで寝ていたと確信が出来た。

そして其処が医務室だと理解できた。

「ッ!?」

直後、雷が落ちたかの如く激しい頭痛が頭を走る。

かなり痛い。

今までにない頭痛だ。

それは彼が一番頭痛の中で酷かったと言える勤務中の偏頭痛よりも強かった。

例のない痛みに思考が薄れる。

痛みを表現するのであればそれは頭を掻き回される様な痛みであった。

それも手ではなく更に硬く丈夫な物…バールの様な物で頭を抉られる様な感覚であった。

いや、それ以上の痛みであった。

余りの頭痛にまた意識が朦朧とする。

思考がまた停止しかけた時前方から

「提督ッ!」

女性の声が聞こえる。

聞き覚えのある声であった。

その声を聴いた途端、おぞましいほど辛かった頭痛が消え心に安心感を覚えた。

感じた事のない安心感で考え様とした時また前方から

「提督ッ! 大丈夫ですかッ!」

あまりの必死さに声の方向を向く。

其処に居たのは純白の髪をした見覚えのある顔…それはまさに翔鶴であった。

眼のピントがあった途端、感じた事の無い様な安心感が広がる。

恐怖からの急激な安心感に不思議な違和感を感じる。

彼自身この様な感覚に覚えがあった。

記憶を巻き戻しその時の感情を思い出す。

彼が高等学校の学生一年目だった頃、帰り際コンビニから出ようとした時名も知らない他校生徒の不良に絡まれた事があった。

そんな困って居る所にその他校生徒の教師が来た時、彼自身底知れない感謝の気持ちに包まれた。

今、そんな事が起こったのであった。

安心感の余韻に浸っているのも束の間、翔鶴が心配する。

「提督ッ!提督ッ!」

さりげなく接近する翔鶴。

女性の急接近に戸惑うが落ち着き言葉で返す。

「大丈夫だ。翔鶴。何か近くないか?」

指摘するが気にせず言葉を返す。

「だっていきなり提督が頭を抱えたから心配したんですよ! てっきり私、提督の身に何かあったかと…」

その目は半分泣き目で目じりには水滴が少し溜まり瞳は潤っていた。

翔鶴の姿に困惑した。

どうしたら良いか?

どう対応するべきか?

自身の経験を頼りに考えるが自分がそれ程までに持てる包容力はないと確信する。

そして更に考えた。

思考開始一秒後、結果彼が見出したのは臨機応変に対応すると言う事に辿り着いた。

「大丈夫、安心してくれ。」

「でも…」

ついに涙が零れた。

心の中であたふためく。

ふと、唐突に思い出したものがあった。

そう、クソ同僚こと、あのオタク野郎の事だ。

同僚が少し前仕事場で必死に女子向け漫画布教したことがあった。

試しに読んでみろと貸されパラパラながらだが読んでみた。

その中で主人公がクラスの人気一番の男子から励まされる描写が脳裏に現る。

台詞は見てなかったがその男の大胆な行動に驚き頭に鮮明に残ってしまった。

大胆な行動は自分自身やったことがなく、初めてやることに対し体が拒否反応を起こす。

まして相手は女子である。

ネタとしてやるのはともかく余りにも似た漫画のシチュエーションにいささか心身共に拒否し始めた。

現に手が震えている。

翔鶴は接近し過ぎているせいで見えないが指が細かく震えていた。

そんな体の拒否衝動を抑え行動に出る。

 

第一行動『頭を撫でる。』

 

これはその少女漫画にあった描写だ。

主人公と思われる少女が泣いている所に一人の男が来て慰めているシーンからだ。

この中で男が頭を撫で始めると少女が泣き止むと言う物だ。

勿論のことであるが台詞は読んでおらず見ても居ない。

故に此処で自分の対応力が必要となってくる。

自分の羞恥心を抑え込み行動に出る。

「翔鶴…」

名前呼ばれ此方に振り向く。

「?」

そっと右手を翔鶴に添え撫で始める。

「ッ!?」

彼女自身も唐突な事に戸惑う。

瞳から反射する光が大きくなる。

「大丈夫だ。翔鶴。安心してくれ。」

「提督…?」

翔鶴も混乱して居る様で体が静止している。

成功に近い。

おし!っと心の中でガッツポーズをする。

そして第二段階に移行した。

 

第二行動『抱きしめる』

 

流石にこれはし難い。

漫画の描写上確かに撫でた後、抱きしめると言うシーンがある。

だが実質これは漫画内の描写であり、実際こんなことをしたら女垂らしか変態でしかない。

まして現実世界でこんなシチュでやること自体滅多にはない。

この現状を打開するにはこれぐらいしかなかった…いや、考え付かなかった。

行動に移そうとするがどう抱きしめるべきかと悩む。

自然にハグっぽくやればいいのだろうか。

はてはどっかのドラマの様に抱きながら撫でてやればいいのかと迷うが現時点では後者の方が良いと判断した。

昔見たドラマを思い出し行動に出る。

頭を撫でていた手とは違う方の手…左手を大きく回し翔鶴を引き寄せる。

「えぇッ…?」

困惑する翔鶴。

直後彼女が目を見開くと其処は提督の胸の部分であった。

何が起こったか理解できなかったが男性独特の臭いを嗅いだ途端、思考がフル回転しそして…振り切れた。

此処で一瞬迷う。

この後どうすれば良いかと今更ながら考える。

だがこんな時に限って頭は非常に回った。

「翔鶴、一回落ち着け…俺はこんな翔鶴を見ていたらこっちが悲しくなってしまうだろう。」

何だよコンチクショー、人生の中でこんなにも恥ずかしい事はないぞ。あぁ…なんだろ。今すぐにでも死にたい気分になってきた…

人間、誰しも自分が今までにやったことが無いことを人前ですると非常に恥ずかしくなる。今まさに彼自身が起こっていることがそうだ。

多分この現状を他人が見たらまず『これなんてエロゲ?』と言いそうな空気であった。

いや、それほどまでの空気が出来ていた。

「ええっと…ええっと…」

顔を赤面させた翔鶴は二次元に憧れを抱いたものの絶対にないだろうと思った矢先好みのイケメンに急に告られると言うシンデレラストーリーを手にした少女の様であった。

彼がやった言動は慰めるを軽くワープし告白するに近かったが彼自身気づいていなかった。

両者が沈黙し、30秒…双方は冷静さを取り戻し抱きしめていた状態を解除する。そして翔鶴はベットの空き部分に腰を掛ける。

「どうだ、落ち着いたか?」

自身も言えた義理ではないが聞く。

「ええ、少し落ち着きました。」

翔鶴の声には落ち着きがあった。

「そうか…」

冷静さを取り戻し自分がやった行いにやや赤面する。

すると翔鶴がおもむろに口を開く。

「提督がいきなり起きたと思ったら頭を抱えたんですよ。心配せずにいられませんよ。」

「大袈裟だなぁ…人はそんな事でぽっくり死んじまったりしないよ。」

「何を言いますか提督! 人は簡単に死んじゃうんですよ!二階から飛び降りたら下手したら死ぬし、三階から十円玉落とされて頭に当たったら死ぬし、まして第一次大戦中、飛行機が人を最初に殺した物は何だと思います? スイカですよ!ス・イ・カ!」

余りの熱弁に正直引く、だが今此処では引いてはいけない気がし応対する。

「悪かった翔鶴…お前の言いたい事は充分解った。」

返された言葉に気づきはっと我に返る。

そして申し訳なさそうな顔をし蹲る。

「翔鶴、俺も本当にすまなかった…お前の事を考えて上げられなくて…」

「いいですよ、提督。気にしなくて…」

「何で翔鶴はそんなに気にしているんだ?」

「私達の提督は只一人、貴方しかいませんから…貴方の代わり何て居ない。提督はいつもみんなの事を思って下さっていましたから。」

「思っていた?」

「いえいえ、気にしないで下さい。私の個人の意見ですので…そんな事より早く艦橋に行きましょう!」

「そうだった!こんな事はしていられない!」

今更だが自分の置かれている状況に気が付き急いでベットから跳ね起きた。




いかがだったでしょうか?

正直これ書いてるとき、壁をガチ殴りして痛めましたw

マジです(真顔)

一瞬、栃木県日光華厳の滝で滝行やってやろか?って程書くのが結構辛かったデス・・・

まあ、急いで書いたし多少はね?


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第拾陸話 ≪発令! 硫黄島沖救出作戦!≫ 翔鶴、艦橋にて。

どうも、皆さん。

玉城です。

イヤァァァァァァァァァフゥゥゥゥゥゥッゥゥゥゥゥ書けたぁぁぁぁぁぁぁぁ

と心の中で非常に思って居ます。

疲れた…以上です。


ベットから起きると翔鶴がハンガーに掛けてあった上着を取ってくれた。

上着を受け取り袖に腕を通す。

それはさながら夫婦の様であった。

両腕を袖に通し切ると肩を動かし微調整を行う。

ある程度の微調整が終わるとボタンを付け始めた。

下からボタンを締めていく中、ボタンの模様が目に入った。

「これは…」

良く見てみる。

見ればそれは『艦隊これくしょん』のロゴマークと言える『艦これ』の文字が刻まれていた。

そして一歩後ろにて着付けをサポートする翔鶴に質問する。

「翔鶴、このボタン何だが…」

「あ…はいぃ!何でしょう!」

唐突な事に非常に驚いた様で瞼が一瞬ながら大きくなる。

「このボタンなのだが…」

「ああ、そのマークですか。」

思い出した様で翔鶴が語り始める。

「実はその制服、提督専用の特務制服ですから。」

「そうなの!?」

思わず声を出す。

翔鶴は知らなかったことを悟り説明を始める。

「ええ、なんせ山本長官直接で…」

「ふんふん。」

「理由は結構強情で『別世界の人間を呼ぶんだから此方の人間とは違うって事をはっきりさせなければ!』って被服廠の妖精さんに言ってましたから。」

「そうなのか…で、だがボタン以外にどんな違いがあるんだ?」

「ええっとまず、全身が防刃、防火仕様になっていて更に水中においても少しではありますが救命体になっています。デザイン上その服は一般的な佐官服にやや手を加えただけなのでさ程変りはありませんが強いて言うなれば見た目そのままにエンジンが凄い零戦五二型乙っと思って頂ければ幸いです。」

「いや、俺零戦あんまり知らんのだが…」

「え…いや、何でもないです!」

翔鶴の現状を言うなれば、一般人の友人に伝わりもしないエルシャダインネタをやるネットユーザーになんら変わりなかった。

赤面しながらも話を続ける。

「あ…あと! 提督には特佐モールが付けられているんです、よ!」

やや震え声ではあるものの理解できた。

「もしかしてこれのことか?」

見せる様に肩を前に出しいじる。

「そうそ…ってあれ? おかしいな…」

「どうしたんだ?」

「いえ、実はですね。提督のモールは水色と決まっていたんですよ。本土からの参謀と被らない様にとのことからなんですが…」

「明らかに黄色だな。」

「ですねぇ…基地に戻りましたら手直しして貰いましょう!」

「そんなことよりいいか?」

「何でしょう、提督。」

「俺の階級って佐官クラスなのか?」

唐突に思った。

あまり軍事系統は知らないが某東映怪獣映画、ゴジラは好きで見ていた。

ビームの描写、緊迫する日本、必死に防衛を行う自衛隊などの特撮らしさが好きであった。

提督こと彼はその中でかっこ良く味方に指示を出す防衛庁特殊戦略作戦室室長、黒木翔特佐が好きであった。

黒木特佐はゴジラ作品においては『ゴジラVSビオランテ』『ゴジラVSデストロイ』の二作のみであるがそのどちらにおいてもゴジラの迎撃に成功した人物であり、上杉謙信と同様に軍神と言っても過言ではないほどの能力の持ち主なのである。

余談ではあるがゴジラ作品の特佐とは陸海空のどこにも所属しない軍人と思われている。因みに黒木は三等特佐となっているため階級上、少佐である。何かと少佐階級の人間がナチの指揮官代行してたり、格闘家してたり、はたは全身が義体の捜査官してたり、または赤いモビルスーツに乗ったりして活躍しているのは彼らが少佐と言う名誉ある階級なのだからかも知れない。

彼は子供の時に見た際、親から黒木特佐の階級は少佐と言われた事で佐官のみが記憶に残っていた。

「うーん、あながち間違ってはいませんね。提督は別世界から来た特別な人間ですので特佐と言う階級に当てはまりますから…まあ、佐官ですね。」

「特佐? ゴジラに出てきたあの黒木特佐ぐらい?」

「ゴジラはいまいち知りませんが提督が理解し易い様に解釈頂ければ幸いです。」

「佐官クラスで…階級はどの部類なんだ? 例えば少佐とか…」

「提督はいまいち判断しかねますが准将の下…言うなれば大佐ですかね。」

「大佐!?」

大佐…少佐の二段階上の役職である。

その役職は准将や少将の下ではあるが軍人にしては相当な役職である。

「いえいえ、あくまでですよ! そのぐらいの権限があるだけですから!」

「はぁ…なんでこんな事になったんだろう…」

思わず溜息が出る。

そんな事を察したのか翔鶴が話を切り替える。

「て、提督こんな事より早く艦橋にいきましょう!」

そう言われ自分の本当の目的を思い出す。

「そうだった! 翔鶴、案内してくれ!」

提督が明るくなったことを見て安心する翔鶴。

(おし、提督を励ましたぞ!)

提督の気分を変えた事により幸福感で気分が高揚した。

「はい!」

その声には嬉しさがあった。

 

医務室の強固な扉を開く。

それと同時に白髪の凛とした少女が部屋から出る。

その後ろを行くように若さが残る顔立ちをしながらも海上自衛官幹部夏仕様の白制服を身に纏った人物が一歩出る。

だがその服の右肩から胸に掛けて参謀モールと思しき物が付いていた。

「提督、此方へ。」

「ああ、わかった。」

二人は歩き出した。

 

「翔鶴、聞きたい事があるんだがいいか?」

そう言われ翔鶴は提督の方向に回り返事をする。

「この艦って翔鶴そのものなのか?」

「一部、異なっていますが大体は第二次大戦時の翔鶴ですね。」

「ほうほう。あと翔鶴。止まって話すのもなんだ。歩きながら話そうじゃないか。」

「ですが提督…」

拒否反応を示す翔鶴。

「今は有事だ。致し方ない。」(時間無駄に出来ないし…)

「わかりました…致し方ありませんよね…」

翔鶴、無礼と感じながらも後ろを向いた。

「勿論、空母だからパイロットもいるよな?」

「ええ、勿論ですとも。ちゃんといますよ。」

そう言うなり翔鶴が片側に寄ると敬礼をした妖精二名が居た。

敬礼に対し翔鶴も敬礼で返す。

それに対し自分も見よう見まねで敬礼をする。

直後、妖精達は急ぎ足で行ってしまった。

過ぎ、見えなくなると共に翔鶴が口を開く。

「提督、あれが我が空母のパイロット達です。」

「あれが!?」

「もっと沢山いますよ!? あの方たちは本の一部に過ぎません。」

「へぇー。んじゃあの方達が主力?」

「まあ、そうです。五航線とは言われてはいますがその実力は一航線に引けを劣ろいません。それ以上です!」

「あの人達によって艦が委ねられているのか…」

何かしら人達と言う言い方に違和感を覚えるが気にしない様にした。

それからも奥から他のパイロットと思える妖精さん達が続々に来る、其の度立ち止まり敬礼を行いながら進む。

そんな事もあった疲れていたが翔鶴が突如として立ち停まった。

自分も同じく立ち止まると其処は階段の踊り場であった。

「此方の階段で上がって下さい。」

そう言いうと翔鶴は階段を上り始めた。

後を追う様に付いて行く。

大体、階段を13段ぐらい上り終えるとそこにも扉があった。

翔鶴が開き此方に顔を向けた。

その顔は何も言って居なかったが此方に来てくださいと言われている様な気がした。

翔鶴について行くと其処は正に艦橋その物であった。

初めて来た子供の如く舐め回すように見る。

通信手、操舵手の配置はしかりそれは言うなれば『太平洋の嵐』等の第二次大戦中の艦橋とイージス艦の艦橋を足して二で割った様な感じであった。

簡単に言えばイージス艦の装備の配置を広く取った感じと言えばよかろう。

そして艦長席に目を見やると其処には誰も居なかった。

艦長席の後ろの壁には謎の装置が置かれていてそこには『鶴翔』と右文字で書かれていた。

入り口手前に居た翔鶴が横に来て話す。

「此処が翔鶴艦橋です。」

其処の艦橋にあったのはまさに戦場であった。




いかがだったでしょうか?

ご要望などドゥンドゥン下さい。


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第拾柒話 ≪発令! 硫黄島沖救出作戦!≫ 会合

書いたああああああああああああああああああああああああああ

ドーモ、皆さん玉城デス。

いやぁ...疲れましたわ。

設定の再思案してたら遅れてしまいました。

大変申し訳ない。



艦橋は多くの妖精さんがおり各員自分の仕事に励んでいた。

「提督、此方へ…」

翔鶴が艦長席に誘導する。

その言葉に甘え座った。

艦長席に座る。

座り心地は非常によく違和感が全くと言っていいほどなかった。

そしてよく艦橋全体を見渡す。

自分が今、此処に座っている理由、艦長の責任の重さ…変に心から今までになかった責任感と言う感情が滲み出るように湧き出た。

「提督、大丈夫ですか?」

その声に呼応して後ろを振り向いた。

すると完全に艤装を装備した翔鶴がいた。

「提督、どうです? 私の艤装?」

さながらデートで彼氏に服を聞く彼女の様に見せびらかす。

「うん、いいんじゃないか。」

「それだけですか?」

そして何をとち狂ったのか訳もわからない衝動に狩られ変な事を言ってしまった。

「いや、元々翔鶴は美しいからさ…翔鶴の方しか見てなかったよ。」

言った直後、自分のやってしまった事に気付く。

適当に返そうと思って無意識になっていたせいか自分の発言一つ一つの確認を疎かになってしまっていた。

ましてさっきの事があったためだ。

自分の心が有頂天のイケメンになっていたことを後悔するが時既におすし。

翔鶴を見やると顔を赤らめながらも手で隠し興奮状態に入ってしまった。

 

【翔鶴の好感度が+10された! やったね! 提督! 家族が出来るかもよ!】

 

んな、励ましいらねぇよ。

心の中で自問自答する。

半々やっちまった感があるがまた半々嬉しい気持ちになる。

双方沈黙に陥るがすぐに戻る。

妖精さんから謎の目線が送られていることに気が付く。

その目は正に『随分、大胆だねぇ』『おう、もう少し近づけや』等の冷やかしの眼であった。

だが目線を気にせず翔鶴に話しかける。

「翔鶴、目的地まであとどれぐらいだ?」

何か此処に来て仕事らしい仕事をしたのを初めて感じる。

「はい、あと二キロ程度と言った具合ですかね。」

赤らめている顔が残りつつも答える。

そして話を続けた。

「我が艦隊は現在、空母、及び戦艦から攻撃機、水上機の発艦を行っております。」

これを聞き頭に唐突に疑問が浮かんだ。

「そういや、この第一艦隊の編成ってどんな感じなんだ?」

一番気になっていた。

第一海域と呼ばれる最初の海域だし哨戒に適した…言うなれば小型艦船だと提督曰く思っていた。

だがそんな考えはすぐに壊された。

「我が第一艦隊は戦艦2隻、重巡6隻、軽巡7隻、駆逐艦10隻、護衛艦1隻、空母一隻の役27隻からなります。あと現在、瑞鶴が改装中です。」

「え?」

「どうかなさいましたか?」

「いや、どうもこうも、艦の数多くない?」

「まあ、みんな出撃していませんし…やる事といったら専ら哨戒ぐらいで…」

「燃料とかもったいなくない?」

よくよく考えたらもったいないだろう。哨戒ぐらいでこんなにも大規模な艦隊を使っているのでその分の消費もその分大きくなる。

第二艦隊が硫黄島基地において待機しているんだったら多少は節約できるかもしれない。

だが戦艦2隻に重巡6隻である。

燃費が良い艦でもあろうと流石にキツイ。

すると頷きながら翔鶴が話す。

「うんうん、提督が言いたいことは解りました…確かに戦艦2隻に重巡6隻だったらお財布がマッハですもんね…」

そして良く推理小説や小学生探偵の様に閃いたかの如く大きく指を立てる。

「ですが、安心して下さい。一応、対策はとれております。」

「ふぉーん。で、その対策って?」

一応、聞いてみた。

何となく予想が付くが聞いた。

硫黄島や日本の位置、海洋国家と言う事を考慮すればどのように供給しているかは何となく察せる。

ましてこんなにも大規模な艦隊を運用しているのだから必ずしもその施設の周辺海域を守らなければならない。

そう言うなれば海上プラントだ。

日本は採掘を行って居ないだけで実際のとこ天然資源は沢山ある。

事実、尖閣諸島に石油が眠っていると検証で言われている。そう言われたもんだから中華や台湾が狙っているのだ。

だったら何故こんなにも大規模な艦隊を運用しているのか合点がいく。

この様なプラントを護衛するよう周辺海域に駐留させ護衛する。

まして戦艦が二隻に重巡6隻だ。

その警備の堅固さは聞いただけでも想像が付く。

燃料がなくなれば採掘プラントに直行し、補給を行えばいい。

そう考えれば自然だ。

そんな事を思っていると翔鶴が口を開く。

「実は私達が使用しているのはバイオオイルなんですよ。」

「え」

予想斜め上の答えに終始驚く。

バイオオイル?

なにそれ、おいしいの?

バイオって事は某ゾンビゲームのようなやつなん?

そして頭に自分の記憶がフラッシュバックする。

そう、それは残業がなく、家に早めに帰っていた時の事だ。

≪次世代資源!≫

と大体的な見出しで始まったニュース番組の話題。

それは石油や石炭に代わる次世代の再生可能エネルギーで近畿大学を中心に開発が進んでいるらしい。

適当に見ていた故、そんぐらいしか思い出せなかった。

「翔鶴、バイオオイルって何だ?」

「え…まあ簡単に説明しますと藻から生成できるオイルで非常に安いんですよ!」

あ、この娘絶対解ってない奴だ、これ。

基地に戻ったら調べようと密かに心の中で思う。

バイオオイル…それは現代において画期的とも言える技術である。

それは簡単に申せば二種類の藻をハイブリット、高速増殖させ圧縮する。

通常、何億年も掛かる工程をたった数十秒で作ると言う物である。

実際、これは研究がなされており近畿大学主導の元行われている。

もしこれが世に出れば日本はかなりの産油国になると言われているがいい話だけではない。

この研究は実際に出来ているがまだ研究がなされている。

理由はコストだ。

何にとってもコストとは問題となる。

この方法で精製する場合1リットル精製するのに約500円必要になる。

そして採掘した場合は…言うなればレギュラーガソリン1リットルの価格は160円…

この数字から明らかな通り対価に見合っていない。

対価に見合っていなければ大抵のものは実用化されない。

実際、第二次大戦中独国は石炭から石油を作る炭化水素液成るものがあったがそれは大戦時であったことから代替えとして作られていたためコストは度外視であった。

勿論のことこれは画期的ではなかった。

注目されていなければ大抵のものは歴史の表舞台には出ない。

この技術は石油や高騰した際や不足した際に注目されたが非常に一時的な物ですぐに消えてしまった。

オイルショック時これは研究されたがオイルショックが改善されると歴史の中へ消えていった。

何故、消えたかは言わずともやはりコストだ。

現にこの技術を研究しているのは石炭が多く取れる国家…インドや中国は現在この技術の研究に勤しんでいる。

言わずともコストの研究だ。

今までのことを視野に入れ考えてみると硫黄島基地の技術の進歩は恐ろしいの一言である。

翔鶴曰く『非常に安い』と言っている。

これは前大戦時のコストを度外視した者ではないと言う事である。

言うなればバイオオイルの弱点たるコストを大幅に削減出来たと言っても過言ではない。

この技術はアメリカも同様に研究をしているが専ら実用化は10~20年後との事。

しかし、硫黄島基地は2,3ヶ月で完成させた。

もしこの事が表向きに出れば世界が構築してきたアドバンテージは崩壊しかねない。

深海棲艦の出現により混乱しているのが功を相したというべきだろう。

翔鶴がアレな娘と解り向ける眼差しがやや温かみを帯びる。

だが俺の目に対し「どうしたんですか?提督?」と言う目が此方に向けられる。

翔鶴、お前大物だよ…

そんな空気を放置し艦橋前方を見やると目の前に『トネ』と書かれた艦が先行しカタパルトを横に回転させ何やら水上機と思しき物の発艦をしようとしていた。

「今、発艦しようとしている機体は何だ?」

思わず質問する。

すると『待ってました!』と言わんばかりの目をし顔も同じく比例していた。

「その機体はですね、硫黄島基地開発、高速水上偵察機乱雲です!」

そう言うと利根の左舷カタパルトから喜びが感じられる翼を広げ機体が一機、固定用カタパルトを海面に落とし青天の空へ飛翔する。

眼で飛翔物を追いかける提督。

彼には飛行機はどれも同じに見えていた。

形状はやや太めでずんぐりとまでは行っていない。

胴体だけ見れば飛行機に精通する者だったら確実にアメリカ海軍採用マグドネル社開発、全天候型双発艦上戦闘機F-4ファントムⅡに似ていると言っただろう。

ジェットエンジンだがファントムとは違い機体上方に配置されている。

エンジンもやや一回り大きく、ミグ設計局開発、ソヴィエト連邦軍防空軍採用迎撃戦闘機MIG-31…NATOコードネーム『フォックスハウンド(FOX Hound)』ぐらいであった。

翼はデルタ翼で、尾翼は後方から見た際主翼よりやや上に付けられまた水平尾翼は約90度の角度で付けられていた。

キャノピーこと操縦席は流れる様な流線型で水上機らしく360度見渡せそうな程開けていた。強いて言うなれば米陸軍航空隊運用重戦闘機P-47の様なドーサルフィンであった。また先端は丸く、F-4Eファントムの先端を丸くした感じである。

胴体下部にはフロートと思しき物が収納されておりしっかり機体と合わさっていた。

「どう言う機体なんだ?」

機体が飛ぶや否や機体について聞く。

すると目をくりくりさせ説明する。

「あの機体は我が硫黄島基地開発、新型高速水上偵察機乱雲…桜吹雪計画の一環でその中期計画にあたる機体です。搭載発動機は喝Ⅳ型噴式発動機から派生した類Ⅱ型噴式発動機を搭載しております。」

聞き覚えのある単語に反応する。そして聞き覚えのない単語に疑問を覚える。

「喝Ⅳ型発動機…どっかで聞き覚えがあるが…それより桜吹雪計画とは何だ?」

「提督は喝型発動機をしっているのですか?」

「うーん、ある程度はだが…」

それを聞くなり目が『やったぜ。』と言うオーラを出す。

「乱雲に搭載している類型は長距離航行を視野に入れて作られた発動機であります。元はと言えば燃費の悪い喝Ⅲ型は偵察機などに向いておらず至急改善が必要でありました。そこで燃費の悪い喝Ⅲ型を改良し製作されたのが喝Ⅳ型…ですが燃費の向上を図ったせいかその内部構造はまるっきり異なって居たため『類』という名が付けられました。そしてこの喝Ⅳ型は類Ⅰ型とも言われております。」

「乱雲に搭載されているのはⅡ型だがどんな違いがあるんだ?」

「類Ⅰ型は燃費の向上を図ったせいか犠牲として巡航速度が低下してしまいました。そして改善を図り作られたのが類Ⅱ型…燃費の良さを抑えつつ巡航速度の向上に寄与しているのです。まあ、班を分けたのが正解でしたね。」

「班分け?」

「ああっ提督知りませんでしたね。桜吹雪計画は発動機部門や武装部門など部門ごとに分かれていてその中で発動機部門は二つのチームに分かれたんです。一つは速度の向上、初速の向上を図る喝開発班、もう一つは燃費や航続距離の向上を図る類開発班なんですよ。」

「ところで何だが…さっきから話している桜吹雪計画とはなんだ?」

すると額にやや汗が滲み出る。

「えっと…」

「もしかして知らないの?」

「違います! 例えそうだとしても違います! 全部、あの書類が悪いんです!」

赤面し逆切れされた。

でも、なぜか可愛く思えた。

桜吹雪計画…それはまたの機会で説明する…

話を変えるべく一つ思い出す。

「そういや、翔鶴。あの機体の武装ってラ-なんちゃらなのか?」

「そうですよ!」

やや怒り気味であったが返す。

一回深呼吸しまだ赤みのある顔を此方に向け説明をする。

「あの機体に搭載しているのは20mmラ‐20機関砲四門で搭載量は全部で900発になります。あとですが多分対艦噴式誘導弾も必要とあれば羽根に付けられた様な…」

「ふぅん…」

そういうと段々と翔鶴から赤みが抜けて言った。

「乱雲、敵艦隊発見! 尚もあたごを追撃中とのこと!」

突然の情報だった。

翔鶴と共に通信妖精の方向を向く。

続けて来る。

「乱雲、ハ号一型対艦噴式誘導弾の許可を求めておりますがどう致しましょう?」

もしこれで攻撃しなかったら…と脳裏に過る。

確実にあたごは沈むだろう。

だが打てばどうなる?

あたごの救出できる確率は格段と上がるだろう。

それを呑み込み決意する。

「許可する! 尚責任は私が取る!」

「提督?!」

いきなりの事に翔鶴が困惑するが妖精さんは無口に反応しすぐさま返信を出す。

利根が前方を退くと地平線の彼方から黒煙が見えた。

翔鶴が静かに双眼鏡渡す。

あたごだ。

攻撃を受けていると明確にわかる。

そして後方に大きな艦影が多数見える。

その艦影はあたごに向かい砲撃を行っていた。

水面に当たり大きな水柱が立つ。

あたごにぎりぎりだ。

どうしたものか。

「対艦ミサイルはどうなっている?!」

「敵水上機の妨害を受けてるとのこと!」

通信の妖精さんが大声で返す。

敵艦には戦艦が居るらしく前に出ている。

そしてあたごの足が止まる。

だめだ。確実に当たる。

戦艦が前に出ると他の艦は砲撃を辞めた。

それはまさにいじめっ子のリーダーが登場したかの如く。

戦艦が砲塔と方針を悠長に微調整している。

何も抵抗出来ないあたごに向かう。

爆炎と共に戦艦から砲弾が飛翔する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、空中にて砲弾が爆発する。

直後護衛艦から通信がリンクされた。

『こちら、日本国海上自衛隊所属ゆきなみ型護衛艦三番艦DDH-182みらい艦長梅津三郎である。貴艦の所属を言われたし。』

「どうします?」

翔鶴が心配そうに顔を向けるがもう決まっている。

通信機を借り返答する。

「こちら大日本帝国海軍所属ではないか…硫黄島基地第一艦隊臨時司令高野義昭である。我が国所属、あたごが謎の武装艦隊からの攻撃を受けていると確認されたため反撃を開始する。貴艦の支援を欲する。」

通信を受けやや返答に困って居たようだが返答がきた。

正直心配であった。

あくまで臨時の指令…

本職ではないのだ。

そんな中みらいとか言う海上自衛隊を名乗る艦と遭遇し勝手に支援を求めてしまった。

もし本物の軍人だったら下手をしでかしたら国際問題もんだ。

『我が艦は貴艦を支援す。あたごの救出を急がれたし。』

「支援感謝する。」

何とか成功した。

溜息を着くが意識を切り替える。

「さあ、ここからが本番だ。」

義昭は大きく目を広げた。




いかがだったでしょうか?

感想などどんどんくだざい。


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第拾Ⅷ話 ≪発令! 硫黄島沖救出作戦!≫  漢達の戦い

「被弾! CIWS機能停止! これ以上は持ちません!」

艦橋に悲鳴が上がる。

だが彼らは狼狽えない。

流石は兵士と言うべきであろう。

そして彼らは目を見開き、自分たちが出来る最善の行動を模索していた。

現に彼らは戦っている。

だが先ほどの報告により艦橋内の人間が振り向く。

彼らが此処まで戦え来た頼りの綱たるCIWSが破壊されてしまったのだ。

一同暗くなる。

絶望が艦橋内を襲う中、ただ一人屈しない男がいた。

それはまさに不屈を体現化した人間っと言っても過言ではないだろう。。

そしてその男は艦橋内の全員に向かい声をかける。

「臆するな! いいか?まだ機関が動いている。つまりまだこの艦は生きている。生きていると言う事はまだ我々は死んでいない! 故に全員生きて帰るぞ! この島原艦長の名において!」

その言葉を聞き艦橋全員の顔が安堵の表情で満ちる。

彼らが此処まで戦えたのはこの艦長とあたご、そして全員の力量によって戦えていたのだ。

実際の所、艦長はそう言いつつも焦りを隠せずにいた。

あたごは深海棲艦の追撃を受けつつも難を逃れていた。

この様にあたごが生きているのは深海棲艦との戦いから得られた情報を元に緊急の対応策で開発された新型護衛艦用爆発反応装甲、通称対艦用リアクティブ・アーマーと石川島播磨重工業[IHI]開発、ゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジン改良型新型機関JDM-1(J:Japan〔日本〕 D:domestic〔国産〕 M:Movers〔発動機〕)ガスタービンエンジンのおかげである。

護衛艦用爆発反応装甲こと対艦用リアクティブアーマーとは旧世代兵器を多用する深海棲艦向けに開発されたものである。

構造上、現代戦車ことMBT(M:Maine,B:Battle,T:Tank)が使用するものと何ら変わりはなく、正直な話74式戦車の改修案で出た爆発反応装甲をそのまま設計に流用。

艦砲からの威力を想定しその分爆発反応装甲を盛ったのが現状のあたごである。

しかしこの結果、重量が非常に重くなったため新たな発動機の開発が急務となった。

そして発動機に関してLM-2500のライセンス生産の実績を持つ石川島播磨重工業ことIHIに開発が委任された。

前作よりもより効率的である発動機の開発が国内で行われたのにはちゃんとした理由があるからだ。

海外の企業に発注したとしても開発に時間がかかりまた尚且つ大型になるかもしれないと踏んだ上層部は短期間でまた小型に建造できるやも知れないIHIに委任した。

実際発動機部門においてIHIの実績は名が知れており現状、自衛隊艦船のほとんどの発動機がIHIこと石川島播磨重工製が使われているほどである。

また、現状世界は深海棲艦との戦いの中にある。

自国の事で手一杯なのに他国の事など気にしてはなれない。

それが技術であれば尚更である。

まして戦いの最中である故自分で兵器を作ならなければいけない状況下にあるのである。

その事からIHIに発動機の開発が委任されたのだ。

敵艦艇からの攻撃開始から約1時間半今やその命運尽きかけようとしていた。

(もう少し頑張ってくれよ…あたご…もう少しで第一艦隊との会合点だからな…)

心の中で願う。

いや、祈ると言った方が正しいだろう。

だがしかし、そんな祈りも儚く崩れる。

突如、轟音と共に大きな揺れが艦を襲う、そして直後機関部から連絡が入る。

「艦長! 艦尾に被弾! 機関が停止してしまいました!」

「何ッ!?」

そして反復する様に質問する。

「復旧のめどは?!」

「機関部が大きく損傷し、消火活動を急いでいるため現状、たっておりません…」

「クソッ!」

艦長が叫びに近い声で話す。

「どうにかならんのかッ?!」

「消火はなんとかめどは立っていますが…駄目です! タービンが今までの回避運動の負荷と重なり先ほどの攻撃を受け…タービンが焼き切れてしまったとのこと…」

「新型なのに…無茶をさせ過ぎたか…」

此処に来るまであたごは全速力を維持し追撃を免れた来た。

故にあたごはタービンに非常に負荷を掛けてしまっていたのだ。

(駄目か…)

島原艦長が心の中でふと思う。

その時敵の砲撃が止んだ。

突如、襲った静寂に一同困惑する。

(終わったの…か…?)

安堵しているのも束の間CICの電測員から思わぬ通信が入る。

「艦後方より大型艦接近! これは…戦艦級です!」

「何!」

驚くのも無理はない。

敵艦隊と接敵した際は重巡ばかりで戦艦級と思しき艦艇は居なかったのだ。

まして今までの砲撃は重巡クラスの砲撃がほとんどであった。

だからこそあたごは耐えることが出来たのである。

リアクティブ・アーマーは想定内においては重巡クラスの25cm砲55口径が最大でそれ以上の口径は艦に影響を与えかねないと言われている。

艦長はそのことを熟知していた。

そして観測に向かい問う。

「相手はどうしている?」

「はい、あの新手の戦艦野郎は悠長に微調整してやがります…」

「クッ…相手が無力だって知りやがって…」

現状、あたごの発射管は先の戦闘でほとんどの弾を消費してしまった。

残って居る者と言えば機銃ぐらいしかない。

機銃と言えど外部に運用員が露出する物ではなくドーム型の機銃砲塔である。

何故、この様な砲塔型で在るかは爆発反応装甲の特徴を知って居る者だったら理解が出来るだろう。

良い例が一つある。

74式戦車にはこの爆発反応装甲を装備する計画モジュールがあった。

しかしこれはとある問題により廃止された。

74式戦車が何故、爆発反応装甲ことリアクティブ・アーマーを装備しなかったのには第一に歩兵と言う単語が絡んでくる。

ではまず、爆発反応装甲ことリアクティブ・アーマーはどのようなものかと言うと戦車などの補助装甲として使用される装甲板で、2枚の鋼板の間に爆発性の物質を挟んだ構造をしており、簡単に言えば、装甲が内部から爆発する力によって、攻撃をはじき飛ばすことで防御するものである。

更にぶっちゃけて言えば爆発反応装甲とは戦車に装甲として爆薬を積み、飛んできた弾頭をその爆薬が爆発し『相殺』する。

『何だ、すごくいいじゃないか』と思う方も居ると思われるが爆発を相殺する際が問題なのである。

戦車と言う物には随伴歩兵成る物が大抵付く。

それは何故かと言うと戦車特有の弱点を補う為にある。

戦車は言うなれば重装甲と重武装を装備した車両である。

例えるならよくゲームに登場する大型のモンスターが良い例であろう。

攻撃力が非常に高く、もしその攻撃にあったったら只では済まない。

しかしながらその様なモンスターは共通して懐にに潜り込むと非常に弱い。そこで生まれるのが俗に言う必勝法と言う物だ。

だがゲーム制作者はその様な事も勿論想定内に入れている。

そして出すのが子分や小さな雑魚敵…言うなればこれこそが歩兵である。

大抵その様な敵は大型モンスターの懐に入れない様に防衛をする。

雑魚を相手にしていると大型モンスターの攻撃を喰らう…

この上記からも解る通り随伴歩兵とは戦車を守ることにおいて非常に重要なのである。

よく「戦車なんてハッチに上がって手榴弾入れれば倒せるし」とかいう阿呆が居るがそれが通づるのは第二次大戦時までか或いは高低差があるゲリラ戦でしかない。

日本兵の戦車戦闘は手榴弾を持って玉砕で勝てると言われているが日本人が異例過ぎるだけで他国は出来ない。いや出来る訳がない。

随伴歩兵は味方戦車の周りに配置されている。

もしそんな中で敵の攻撃が来てみたらどうだろう。

爆発反応装甲がたちまち起動するのは目に見える。

そして装甲が爆発する…

爆発すると言う事はつまり破片が飛び散ると言う訳である。

そうこれこそが提示された問題なのである。

実際破片の問題は大きく爆発反応装甲を持つ戦車の周りにいた歩兵が死傷すると言う事例が報告されている。

74式が爆発反応装甲を装備しないのはこの様な案件があったからなのだ。

まして日本の場合は戦車との併用運用が主として考えられているため兵士が負傷してしまっては元も子もない。

以下の物を考慮点に入れられた結果出来たのがドーム型機銃砲塔なのである。

ドーム型とは言えど流石に大艦の砲ではすぐにやられてしまう。

此方も結果的に微量ながら爆発反応装甲を装備した。

だが結果としては専ら対空戦闘にしか使えない代物になってしまった。

(防御は強化しても…物量戦では無理か…)

あたごは現状ドーム型機銃しか現状ない。

(127mmがあれば…少しは変わったかもしれんな…)

艦長が心の中でそんな事を思うが首を振り拒否する。

(だめだだめだ…アイツらには効かないし逆に俺らが狙われる…)

あたごに装備されていたMk.45 Mod4 62口径5インチ単装砲であるがこれはとある都合により廃止された。

勿論、これも深海棲艦との戦いによりだ。

深海棲艦にはどうやら学習能力があるようで敵の弱点を的確についてくる。

(米海軍の様にあっけなく死んでたまるか!)

これは地域的な海戦が各地で行われた際の米海軍戦訓から来ている。

たまたま飛んできた流れ弾が米海軍のイージス艦に被弾。

被弾箇所は単装砲部分を見事に直撃。

弾頭は遅延信管式の徹甲榴弾であったらしい…あとは言うまでもないだろう。

貫通直後、大きく爆発し弾薬庫に誘爆…そして連鎖的な爆発を繰り返し艦は轟沈した。

外部が大丈夫であろうと内部は大抵脆い。

長門型戦艦二番艦陸奥をご存じであろうか?

陸奥の轟沈原因は多々流れているが一番有力なのが弾薬庫の誘爆による轟沈である。

長門型戦艦の頑丈さたるやは皆さんも知っているだろう。

長門型一番艦長門は終戦後アメリカに引き渡され、核実験の標的艦にされた。

俗に言う、クロスロード作戦だ。

本作戦は言うなれば核兵器の実験である。

多くの旧式艦艇や戦章艦がこの作戦で沈んでいった。

長門はこの中において二度も核兵器に耐えてかつ、ダメコンさえ行っていればまだ沈んで居なかったとまで言われている。

この様な堅固さたる長門型の姉妹艦。

そんな長門型ですらですら内部の爆発に耐えられなかったのである。

+α遅延信管式と言う曲者がいた。

遅延信管式と言うのは砲弾の徹甲弾の中身が時限爆弾になっていると考えてくれればいいだろう。

この遠延信管式は80㎝列車砲ドーラの砲弾にも使われた物である。

ドーラの運用方法は敵陣地に砲撃を行いその区画を破壊すると言う…言わば攻城兵器である。

実際、マジノ要塞攻略時使用し多大なる戦果を挙げた。

遅延信管式はその特性上、貫通を行ったのち爆発する。

これにより強固たる要塞は破壊出来たのである。

堅いコンクリートの壁を貫通…敵要塞内部までに弾が侵攻した直後爆発が起こる…

遅延信管式の特徴は貫通した後爆発するので例え堅い装甲で在ろうと徹甲弾が許す限りではある種最強である。

遅延信管式と成形炸薬弾は良く間違われたりする。

爆発すると言う点においては同じではあるが基本的な理論が異なってくるので非常に全くの別物である。

この事からあたごは回収時において単装砲は取り払われその部分は弾薬庫の増設や装甲強化に当てられたのであった…



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第拾玖話 ≪発令! 硫黄島沖救出作戦!≫  漢達の戦いⅡ

「もう…だめか…」

思わず声に出す。

艦橋内の他の搭乗員はなにか悟ったような顔をしていた。

ここで死ぬ。

死と言う物からは逃れられない。

現状、これは彼らにとって変わりえない状況である。

しかし、彼らは泣いたり叫んだりしなかった。

確実なる死と死ぬかもしれないは別物である。

彼らが今対峙しているのは確実なる死…

彼らはそれと向き合い受け止めようとしていた。

艦長も然り、その一人であった。

「ははははははははっははははっは!」

だが彼は一人笑った。

どうせ死ぬのであったら悔いなく死にたかった。

だから笑った。

彼の中で死んだら笑えないと言う変な感情が先走った。

「ふっ…ははははははははっははは」

そんな中艦橋内の一人がつられて笑う。

それに反応し、また一人乗員が笑い始める。

一人…また一人と笑っていくうちにいつの間にか艦橋内の全員が笑っていた。

笑い声が艦橋内に響く。

笑い声が艦に響く。

笑い声が外に響く。

笑い声が艦全体を覆うとしばらくして艦長が艦橋内の人間に向け言い放つ。

「最後まで付き合ってくれて有難う。頼りない艦長ですまなかった…」

最後の一文を聞き一人が立ち上がって発言する。

「いいえ…最後の一文はいりませんよ…艦長…」

やや間を開け続ける。

「艦長の様な方が居なければ私たちは此処まで来れませんでしたし、皆もこうして戦えませんでした。私は貴方の様な艦長と戦えて非常に光栄でありました!」

そう言い終えると一人がまた立つ。

「私もです!」

それに吊られまた一人が立つ。

「俺もです。」

「私もであります。」

「俺も。」

「私も。」

「みんな…」

艦橋全体を見渡すといつの間にか全員が立ち上がっていた。

「こんなにも俺を信頼してくれていたのか…」

こんなにも自分を思ってくれていたんだと思わず涙を流す。

がすぐに涙を拭うと皆に向かい右手で敬礼をする。

敬礼の方式は勿論のこと海軍式。

言わずとも知れた伝統の敬礼だ。

脇を締め、手の平を見せないようにし逆に手の甲を向けるように敬礼をする。

この海軍式の敬礼は通路の狭い艦内において邪魔にならないようにするために脇を締めて行うようになっている。

また手の平を見せないようにしているのは艦艇の整備などで起こる手についた油や煤を見せないようにしているためである。

艦長の敬礼に艦橋内の人間すべてが反応し敬礼を返す。

「今まで有難う…」

その一言を言うと手を下した。

比例し艦橋内の人間全てが手を下す。

全員の顔を改めてみると皆の顔には笑みが零れていた。

見渡し終えると大きく椅子に座る。

艦長が座り終えるのを見ると各自の持ち場に戻っていった。

島原は大きくため息を付くと思い瞼を閉じた。

瞼の中で古き自分…懐かしき友の顔…愛すべき我が子…在りし日の思い出が逆行し、美しき光に変わっていった。

(そうか…これが走馬灯という奴か…)

心の中でふと思う。

そして先ほどからの緊張から一変、何か抜けた様に心が軽くなる。

それに呼応するかのように心臓の心拍数が下がる感覚が起こった。

(俺たちは戦ったんだ…ただそれだけだ…)

懐から昔撮った家族写真を出す。

最愛の妻と二人の娘…

その懐かしさを思い出し目を閉じる。

一句心の中で唄う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我ガ人生悔イアレド、

      今、思エバ悔イモ良キテ懐カシキ思イ出カナ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰れなくてごめんな…

 

みんな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おっと、そう思うのはいささか早いぜ? みなさんよぉ?』

 

ノイズ交じりの通信が静寂たる艦橋内に響く。

瞬間、放たれし一本の矢が雲なびかせ艦と交差する。

その矢たるや正に対象を射抜かんとす『サジタリウスの矢』の如く…

艦、後方より爆音が響く。

それに伴い艦が大きく揺れる。

勿論あたごの艦艇全体にである。

上下左右に大きく揺れる。

だが数秒すると艦の揺れが収まった。

観測から歓喜交じりの報告が飛ぶ。

「第一艦隊、艦影を確認!」

その報告を聞いた直後、全員が口を開け何が起こったか理解できずに呆然をしたがレシプロエンジンとは違う…ジェットエンジンの音を聞くと目が覚めた感覚が覆い直後、現状を確認し始めた。

そして艦橋内に歓声があがる。

艦長は顔には出さなかったが心の中で喜ぶ。

「やったぞ!」

「来てくれたんだ!」

「俺ら生きてる!」

「第一艦隊だ!」

「本物だ!」

「死んでない!」

艦橋内に歓声に包まれる。

直後通信士が艦橋全体に向け通信を開く。

『こちら、第一艦隊所属利根旗下第一乱雲水上機戦隊隊長の木原だ。現在そちらに向かっているところある。一つ頼みたいことがあるんだが…俺らの周囲に飛び回っているハエを墜としてくれねぇか? この機体、確かに速えが流石に敵さんに降下されると非常に厄介だ。もし落としてくれたら周囲に展開しているドでかい重巡共のどでっ腹にこのハ号を余裕こいてぶち込めて沈められるが…出来そうか?』

その通信に対し艦長が通信機を借り自ら応答する。

「勿論。我が艦の機銃手の腕前は世界一だからな…確実に墜としてやる。そんでもって今までのつけ払ってくれ!」

返答に笑いながら返す。

『ははははははは! そうか、了解した! ではその世界一たる機銃手の皆さんが撃ち落としやすい様誘導する。確実に仕留めてくれよ…』

「誘導感謝する。そちらも頼むぞ。」

そんな和やかな会話を終えると艦長は自分の席の前に戻り後ろを振り向く。

座らず自分を見る艦橋内の人間に向け言い放つ。

「諸君、我々は生きている! しかし、安全ではない! だが今我々には出来ることがある! 私たちはそれを行おうじゃないか!」

そう言い放つと艦橋内の全員に闘志が現れる。

直後、一斉に『了解!』と腹から声を出すと各員の持ち場に戻っていった。

(頼むぞ…第一艦隊…我々が出来るのはこんくらいだからな…)

そう心の中で念じると懐から家族写真を出し、顔を見るとすぐに元の場所に戻した。




余談ですが
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第弐拾話 ≪発令! 硫黄島沖救出作戦!≫ 我、発艦セリⅠ

来ましたぞい!何とかスランプを超えられました!


ドッドッドッドドドドドボボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン

翔鶴甲板にて出された艦載機に火が入る。

動かれたのは先頭の一機のみで他は動いていなかった。

ただその一機たるやその発動機から上げしたる轟音は並みの音ではなかった。

見た目はプラート翼のプロペラ機であり、機体の塗装から旧日本帝国海軍の艦載機と判断できるものであった。

しかしながら先頭の四機の配色は他の機体とは異なっていた。

どの機体よりも先頭を立つ機は曇りなき桜の如きピンク…

後ろに続く残りの三機は白虎を連想させる白銀…

この四機は他の後方に鎮座す、通常機とは違うオーラを纏っていた。

機体は前進翼かつまた前方に発動機がある点において、確実にレシプロ機とわかった。

ただ、装備されたプロペラは二枚の反転プロペラでターボブロップと推測できるノズルが機体下に向け伸びていた。

発動機の音たるやそのすさまじさはWWⅡ機体とは比べ物にすらならないものであり、強いて言うばそれはジェット機に近かった。

そんな甲板上の二頭身の運用員がせわしなく動き確認し終えた直後艦橋横の扉から続々と現れる。

一人二人などの少数ではなく、かなりの大多数。

そしてその先頭を歩く者が一人。

服装は近代的ながらもやや古臭さを漂わせながら耐Gスーツと思える加工がなされていた。しかし、年季が入り所々に痛みが見え長期間解れと補修を繰り返してきたせいであろう。。胸に付けられた記章はその死地をどれぐらい掻い潜っているかを物語っており、一部の古い記章に関しては汚れが掛かり黒ずすらあった。

顔には歴戦の猛者故か傷が目立ち酷いものに関していえば本当に治っているのか心配になる傷も多々存在した。

先頭の者たるや歩き方は普通であったが周辺から感じられるオーラから威圧が出されていた。

そのオーラたるや、凡人に非ず。

表したくとも何とも表せなきそれは一言では言えなかった。

大抵の人間は戦場を経験する。

それは人により変わる。

戰場は一つにして非ず。

時として高地や太平広がりし大海、果てや蒼穹の彼方や紺碧の空、机上、そして無限に広がりしインターネットの世界でもある。

また、その他状況もそれぞれである。

追い立てに追い立てられた背水の陣の如く危機的状況や相手を一方的に嬲り蹂躙せしワンサイドゲーム…公正公平たるの名のもと整われし場などなど多種多様な戦場が存在し故に戦いとはその性質を常に変化させる。

ある人曰く戦争は生物であると唱えた者がいた。

そしてまた、それに立ち向かう人々…軍人などを狩人に例えた。

戦争がいかにどう生物であるかと仮定した際、どこがどのように生物であるか聞く人が多いであろう。その要素は不規則的な変化性にあると言われている。

戦いとは一分一秒常に変化し続ける。

それは大きくもあれば小さくもある。

戦争と言う生物は死なない。

如何にどう戦争が終ろうともだ。

戦争が死なないとあれば戦争はどうしているか。

生物が死ななければどう表現するか。

冬眠を知っているだろうか。

季節上、生存に不備のある冬の期間中を穴の中や石の下など比較的生存し易い場で睡眠…実際は呼吸を少なくし、あまり体力を使わない仮眠状態に入ると言ったほうが正しい。

戦争とは紛争と言う形で常に息をし続ける。

戦争の栄養は人の不。

戦争は絶えず生き続け死なない。

そしていつ来るか知れぬ活動期まで眠るのである。

人は戦争の中で手駒として生き、時とし戦争に仇名す。

それが兵士なのである。

その彼らの眼は幾へどの戰場を超え鍛えられし眼光たるや言うなればそれは死への暖かき眼差しでもあり、それは強者の絶対的恐怖であった。

故に恐ろしく、また何か惹かれるものがそこにはあった。

一歩ずつ静かにかつ威厳を持って歩く。

その眼差しからかもしくは優先順位を守ったのか整備士たちは邪魔にならぬよう道をあける。

先頭を行きし者やパイロットたちはそれに応じ会釈を行いつつ、目標の場所まで歩を進めた。

彼らの足取りはまばらでありつつも、なにか共通的な何かを出していた。

甲板上に軍靴が木霊する。

多くの軍靴から放たれたし音は幾重にも重なり、大きさを増す。

それはバラバラながらであるものの確実に一つの大きな『物』であった。

ことを一刻も争っていたかもしれないせいかその群衆は静寂に帰し、誰一人としても喋ろうとしなかった。静寂に包まれしその『物』は軍靴以外の物を閉ざし、殺気を溜め込み今にもそれを放出せんとしていたが先頭を行きし者の後ろに鎮座せし、男がそれを破壊した。

「隊長、岩本隊長殿!」

「なんだ。坂井。」

此処にきて初めての会話が行われた。

これには一同驚き、会話の方向を向く。

坂井はそれに目もくれず会話を再開する。

「今回の敵、どうやら揃いも揃ってフロート付きの水戦でしかも数が少ないのになんで私らが出るんすかね。」

その一言を聞き呆れながらも返答する。

「はぁ…例え水上機と言えど航空機には変わりない。着陸場所が甲板か水上だけの違いだ。そして何よりも制空権を取られたら元もこもなかろう?」

「ですが、隊長。もうすでに我々は利根直属乱雲攻撃戦隊を放っているのに何で俺らが出なきゃいけないんすか。乱雲だって機銃の一、二門標準装備で巴戦にゃぁちと難があるかもしれないが一撃離脱戦法やるのには充分な速力すら出せる。のに何で俺らが出なきゃぁいけないんですか?」

岩本の顔は何一つ変わらなかったが少し間を置き大きくため息を放ち少しばかりの静けさが覆うがすぐに終わりを告げる。

その岩本の顔には諦めているかの如く口はにやけ、目は諦めていた。

「実はな、翔鶴さん曰くなんだかこの周辺に隠れてやがる空母と思しき艦艇がいるそうなんだ。」

その言葉を言い放つと呆れ顔をしていた後続の者たちの顔色が変わり、先ほどまでの柔らかな顔から全員が殺気を放たたせる鬼に変貌した。

岩本はこれを周知の上でかまたさらに大きくため息を付くと話を再度続けた。

「まあ、先ほども言った通り実の所、今回の我々の任務は敵水上機戦隊の殲滅と他に受託した任務があったんだ。それこそが我々の第一目標であり最優先事項なんだ。翔鶴さん達艦娘の能力上、深海棲艦を唯一感知できるってことはみんなも周知の上だと思う。それでなんだが本海域では敵主力と思われる戦艦及び重巡と他に敵航空機動艦隊が潜んでいるとの連絡が入ったんだ。数はわからないがかなりの大艦隊らしい。故に我々制空権確保を主眼に置いた我々が出ることになった。一つ言っておくが我々の任務はあくまで制空権の確保とそれの維持である。無駄に戦域拡張して被害を拡大させないように。」

言葉を終えると一同が騒然とする。

岩本は目に見えた結果であると悟っていた。

なんせ、下の会議室でこれを話さなかったのだから。

隣同士で話し合っている中一人が手を挙げる。

想定の範囲内であったが故に冷静に対応する。

「質問いいぞ。」

その言葉に甘え立ち上がり質問をする。

「では、何で黙っていたんですか?」

「混乱を起こさないためさ。」

それを聞き瞬時に返答を返す。

「黙っているほうがよっぽど混乱を起こすのでは?」

「そうかい?」

「そうですよ。」

「じゃあ、なんで黙っていたと思う?」

「はて?検討が…」

「お前ら…自分のことを客観的に見てみろよ…」

「客観的?」

「ふぅ…」

大きく息を吸い胸の隅まで空気を入れた後、それを大きな息として吐くと眼光に何かを宿すと大きく口を開けた。

「お前ら、絶対戦闘に集中し過ぎて絶対護衛疎かになるだろ!!! だからそんなこと侵さないよう黙っていたんだよ! どうせ、お前らとかの失態とかなんやら回り回って隊長責任になってシワ寄せ俺に来るんだから! たまにはこっちの身にもなってみろ!!!」

その一言で全員が一気に自分達を客観的に見始めそして全員が全員、岩本からの言葉を聞き察した顔になった。あるものは困惑を隠しきれず顔に出す者、黙り込み下を向く者など全員が各々反応を見せた。

そんな中、坂井は一人ニヤけながらただ一人頷き何かに浸っていた。

勿論、その姿は岩本の目にも入っていった。

それが岩本の気に障ってしまった。

終始無言のまま坂井に静かに近づく。

歩き方は一般人と変わらないが出す殺気は先ほどからの物を超えそれはまさに怪物…まさに人外其の物であった。

周囲の者たちは何かを悟ると後退りし大人しく坂井のその後を見届けていた。

周りに味方はいないと知れず、にやける坂井。

哀れにも坂井の目の前に岩本が立つ。

「おい!坂井!お前は何にやけてんだ!!!」

ストレスからだろう。

岩本は怒号を上げた。

その声は誰も聞いたことがなかった声であった。

普段、温厚な岩本は普通のことでは怒らない。

いつも笑顔を絶やさないようにし更にはその皮脂に秘める殺気を隠す様に努力をしている程の岩本であるが今回ばかりは違っていた。

近しい者からですら空気が読めないと揶揄される坂井はやっと岩本の怒号を聞き、初めて気が付いた。

「は、はい?なんでしょたいちょ。」

「『なんでしょたいちょ』じゃねーよ!!!この確信犯!!!」

「なんですかぁいきなり確信犯って…ギンバイなんかしてないっすよ?」

「そうじゃねぇよ!一々うるせぇわ!!!お前のせいでどれくらい苦労が掛かってると思ってんだよ!!!」

「そんなぁ俺は隊長殿には一切ご負担を掛けた覚えはござえませんぜ。むしろ、ご負担を減らしているんですよ?」

「あのな…無駄な親切程要らないもんはないんだよ…」

「またぁほんとは感謝してるんじゃないんですか?」

「お前な…感謝してたら俺はなんかお前に声なんかかけるわ…俺が言ってんのはお前の犯した行動規定違反ギリギリの行為を言ってんだよ…」

「え?私なんかそういうことしましたっけ?」

「いつもやってるだろ…戦闘空域ぎりぎりかと思ったら臨時戦域拡張権を使い、無駄に広くさせんでもって無駄に機体を損耗させるは弾薬は使うはそのツケを俺に回してんどぞ。おぉん?」

「それは…こう、敵をせん滅しなきゃいけないと言う使命に駆られてですねぇ…」

「は?」

その一言の威力はどの言葉よりも簡単かつどの言葉よりも効果的であった。

『は?』…受け取り方次第では相手を恐怖のどん底や怒りの臨界点を超えさせることのできる言葉はその威力の高さ故に使い方に困る代物である。

現状、坂井はこの攻撃を貰ってしまった。

流石の坂井ですら言い返せないのか黙り込む。

坂井も必死に考えたのだろうがその考え虚しく。

「すいませんでした!!!」

「謝りゃ済むと思ってんのか!!!このドアホ!!!」

岩本の怒号直後、艦橋からアナウンスが甲板に向け発せられた。

『艦内の全運用員に告ぐ。本艦は今時刻をもち特務本土送迎護衛艦あたご救出作戦「明智越え」作戦を敢行す。本作戦は我々の重要性を足らしめる絶好の機会である。各員、自分が持てる力量を全身全霊を込め祖国の為に尽くせり。第一次攻撃戦隊は直ちに発艦を開始せよ。繰り返す、本艦は今時刻をもち特務本土送迎護衛艦あたご救出作戦「明智越え」作戦を敢行す。我々の重要性を知らしめる絶好の機会である。各員、全身全霊を込め行われたし。第一次制空戦隊は直ちに発艦を開始せよ。』

艦内放送により艦全体にアナウンスが響き渡る。

その後、艦内にブザーが鳴り始める。

ほとんどの者は戦闘態勢に入っていた。高射砲運用員たる鉄の武士たちは第三種戦闘態勢に入り、何時ぞや来たり敵に向け体制を取り、整備兵は鉄の羽を持ちし戦闘機を癒すため最適化な道具の置き場所を選んでいた。

さることながら甲板上の岩本達航空兵の耳にもその言葉が入った。

その時岩本は坂井の顔面間近で怒りを露わにしていたが放送源に顔を向ける。

「チッ…出撃か…坂井!!お前覚えとけよ!!!」

やや怒り足りないのか幾分行動やオーラに怒りが残る。

坂井は内心安堵していたが戦闘時背中を撃たれるのではないかと言う恐怖に駆られていた。

その後も岩本は怒りか指示を出さなかったが隊員達は悟り自分の機に走っていった。

 

 

この第一艦隊所属翔鶴型航空母艦一番艦翔鶴に配備されている航空機はほとんどが制空向きの戦闘機ばかりである。艦爆は居らず、艦攻が10機程度配備されている。

配備機としては硫黄島基地主力噴式併用艦上戦闘機「仙風」が 三二型58機、四一型2機それらの各型合わせ60機、同じく硫黄島基地中島系設計班開発、最新鋭次世代噴式艦上重攻撃機「青天」(一三型)が10機。噴式高速水上偵察機「乱雲」艦上運用型が一機整備品の枠として一機分空かした総勢、71機が配備されている。

翔鶴は運用上、制空権の確保が優先事項に成っているため艦上戦闘機の「仙風」が脅威の60機搭載と成っている。

しかしながらこれでは幾分数が足りないのはわかるであろう。

元々は翔鶴型二番艦航空母艦「瑞鶴」とペア運用であったが改修の為瑞鶴が離脱、その瑞鶴の穴埋め要員が軽空母、正規空母共に改修に入り居なかった結果、現状の翔鶴一隻の状態を招いているのである。

だがこれでいいのである。

要は制空権を確保できるだけでいいのだ。

制空さえ確保できればあとは戦艦や重巡の出番である。

それは何故か。

答えは深海棲艦の特性にある。

深海棲艦は本能的なのかイージス艦など人類が制作した艦艇と自然発生した艦娘を判断出来る能力が備わっているのであるかと議論が展開されている。

これはあくまでも過去の事例を集計した結果の産物であるだけであり、断定は出来ないものの参考としては非常に充分である情報であった。

そして硫黄島基地はそれを独自に研究、実験をし対深海棲艦戦術を確立した。

深海棲艦は前述言った様に人類艦艇と艦娘の判別が可能である。

人類側の電探は潜航中の発見は出来ず、探知は実質無理とされた。

故にそれは旧式兵器ながら奇想天外な戦い方を成功させたのである。

近年のイージス艦は遠距離に特化し防御では限界を感じた為軽量化、回避力を上げられた。また、近接への対策を疎かにした為戦訓として対水上装備装備が付与され、人類の海軍史はある一種の頂点に達したと思われたが深海棲艦の登場がその海軍史は書き換えられた。

近接の小太刀は恐怖と死を恐れぬ衣を纏いし狂戦士の前では意味を果たさず、遠に特化した神の盾を持ちし弓兵は盾を構えし前に蹂躙され、鉄の鳥巣窟たる母なりし巨艦は手が出せぬまま次の番を待つ…

まさにこれが全てを変えたのである。更にいえば大国ですら恐れおののく圧倒的物量がそれを助力させた。

確立された概念は消し飛び。

知識の結晶は破壊され。

原初に戻された。

今や過去の平穏な海軍史は終わりを告げ、世界の海軍は米国の敗北により世紀末と化していた。

この新生大日本帝國海軍を除いて。

艦娘は唯一無二、深海棲艦を潜航中の発見が出来るとされている。

更に艦娘曰く深海棲艦の場所が把握出来ると本人談として語られている。

このことから一つの言葉が出され、そして全員を納得させた。

 

『深淵を覗くとき、深淵もこちらを覗く。』

 

深淵を覗きし者を艦娘とするならば深淵とはまさに深海棲艦である。

艦娘とはまさにこれである。

何故かは今はわからない。

だがこれが意味するのは…



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第弐拾壱話 ≪発令! 硫黄島沖救出作戦!≫ 我、発艦セリⅡ


















空は快晴。

ただ一つ足りとない雲はその快晴ぶりを物語っていた。

翔鶴甲板上、第一次制空戦隊こと岩本隊が今まさに飛び立とうとしていた。

 

彼ら駆るA1ly1噴式併用艦上戦闘機「仙風」は零式艦上戦闘機や烈風に代わる新たな艦上主力機体なのである。

本機体の最大の特徴はジェット機が主力として使われる現代戦においてまずありえないWW2の戦闘機特有たる機体形状のレシプロ機で、内情二枚の反転プロペラとターボブロップを装備していることにある。

ある種轟音響く現代戦場においてはある種時代遅れかもしれない。

ましてターボブロップの単発の戦闘機だ。

戦車で言うなれば現代戦場においてⅥ号ティーガー重戦車が戦闘に参加しているものである。

だがそれでいいのである。

彼らの状態鑑みれば…

 

 

「計器の異常は…ないな…」

一通り前方に並んだ矢印たちが狂っていないか確認をする。見る限り、いつも通りとわかると大きく溜息を付いた。眼を瞑り今から起こりうる戦いを頭の中で想像する。彼は恐れていた。

目の前の敵水上機隊の数は手で数えられる程度で別に気を抜かず護衛する限りは恐るるに足らない。だがしかしこれだけではないのだ。彼の恐怖根源は不特定多数の敵空母機動艦隊なのである。幾ら翔鶴のパイロットたちが一人5機以上撃墜させた経験のある者猛者揃いの選りすぐられた精鋭であろうと流石に物量には勝てない。岩本こと彼も前大戦において米国との戦いで経験していた。明くる日も明くる日も来襲する終わりなき米軍機の来襲に対して疲弊した。故に彼は今回の不特定多数の空母艦隊に対して大きな不安と恐怖を抱いていた。

だが今回は何故か異様なほど安心感があった。

その安心感が何かはわからない。いや、というよりは表現し難いのだ。

なぜならその安心感の根源は突如現れた謎のイージス艦だ。

岩本はその艦艇が今まで見てきた自衛隊の艦艇とは何か別の物を感じたからだ。

「実に不思議なものを感じるな…あの艦は…私たちと同じような…」

そう一笑すると大きく深呼吸をすると通信機のチャンネルを合わせると艦橋に向け告げた。

「艦橋へ。こちら岩本、発艦の是非を問う。」

岩本の通信を聞き待っていたかの如く艦橋から返答が飛ぶ。

『こちら艦橋、発艦を許可する。無事帰還すること祈る。』

「了解した。岩本隊発艦する。」

返答を返すとすぐさま発動機のスロットルを限界に上げる。

発動機は先ほどまでの呼吸から一変、咆哮に変わる。その咆哮はただ物ではなかった。二枚のプロペラは徐々に速度を上げ風を切り始める。そしてターボブロップ故に機体後部に設けられたノズルより噴煙巻き上がると爆音と共に機体が少しばかり浮き上がる。

轟音轟かせ機体は甲板上より大きく戦場たる空へと舞い上がった。

すぐさま後続も飛んでいく。

岩本駆る本気は現時点で配備されている三二型とは根本から異なる。

どこがどう違うかというとそれは機体設計からだ。

まず第一にノズルの位置からだ全型三二型は機体下部に搭載されていたが本機四一型では機体後部付けられている。

と言うよりかはノズルが延長されていると言ったほうが正しいであろう。

その為に後部に設けられているかの如く風貌を見せていたのだ。

さることながら翼部も前型とは異なっている。

搭載備砲の大口径化に伴い燃料タンクは撤廃、翼部は拡張された。前型より0.5倍延長を施され弾倉は横長になった。また羽の大型化に伴い、折り畳み口と弾倉が接している。

勿論のことながら本機体の発動機もまた異なっている。

本機が搭載する発動機は類系発動機の序列4番目にあたるものである。

この発動機は類Ⅳ噴式併用発動機は前型とみれば完全にターボブロップ機の皮を被った噴式発動機と言っても過言ではない。

本発動機を使った仙風四一型は第二世代型のジェット機と変わらない961km/tを全武装搭載済みのまま叩き出している。これには仙風の設計が影響している要素もあるがそれでも尚、こんな数値を上げている。

そして防御面である。

この仙風全型を通し日本軍機とは思えないほどの頑丈さを誇る。形状的な頑丈性な他、機体全体に張った鉄板がその硬さを顕示させた。12.7mm機関砲を何十発食らっても尚耐えるその装甲は試験時山本五十六長官他多くの官僚を驚かせた。その時それを見た山口多聞中将は「戦車を飛ばせとは一言も言っておらんぞ。」と言葉を漏らしたほどである。

それ故に本機体の格闘能力は若干ながら下がってしまった。しかしながらそれでも尚、衰えは感じられないほどである。その下がった分を補てんすべくかの如く本機は上昇性がぐーんと上がった。これにはP-51や三式戦闘機飛燕、Bf109などの上昇力が高い機体を総合し設計の組み込んでいる。

一見、本機は非常に良好な機体と思われるだろうが内情問題が山積していた。まず第一に機体の航続距離の低下である。武装強化や発動機の新調により燃料タンクが減少結果、前三二型より航続距離が三分の一となった。そしてまた新規格や設計の見直しにより前型より一部部品が流用できなくなったため整備性が非常に悪くなってしまった。信頼性もまた落ちてしまった。前型とは別設計故に今までの操作が出来なくなったのが大きいだろう。故に本機を扱う際は訓練を行わなくなってしまった。試作時においては本機は大口径ラ-49 70口径45㎜機関砲二門とラ-50 50口径機関砲を積んだため非常に劣悪な操作性になってしまったのだ。その後改修を加えられ前線へと送られた。

 

「にしても、コイツは相も変わらず凄いな…」

機首を上げ晴天に突き上げ、上昇する仙風操縦席でただ一人呟く。

「三二型も凄かったがコイツもコイツだ…同系列の機体とは大抵思えん。」

彼の手は震えていた。彼は恐怖を感じているのではないか?と心の中で疑問に思ったが彼自身恐怖のようなものは感じていなかった。

これは言うなれば武者ぶるいであったのだ。未だかつてないほどの未知数の本機体を使うことに対しての好奇心だ。本機体で実戦に臨むのは今回が初であった。

訓練はしてきたものの実際に当てていたのは実物がない的。それも動きが単調ですぐにあてられるようなものであった。

そんな中今回の出撃である。

彼は一種に敵に飢えていたのだ。本機体を試すものを。今の彼は新しい玩具を与えられた子供のようなものなのだ。

彼の口は笑いたいという感情と笑いを抑える自我により彼の顔は引きつっていた。その時である。

『隊長、一体どこまで上がるつもりなんです?』

無線通信だ。

その声は先ほど聞いた声であった。それにより彼は我に戻った計器を見やれば速度は落ちていることに気が付いた。そしてすぐさま機首を下げる。

「お、すまない。考え事していた。」

その言葉を聞いて何か察したのか坂井はトーンを下げ

『隊長、一回落ち着いて下さい。確かに本機を試したいのはわかりますが部隊の指示は忘れないでくださいよ。貴方は隊長なのですから。』

意外な一言が彼の思考を呼び戻した。

「ああ、わかっているさ。」

そう返答すると彼は大きく頭を上げ、そして戻した。

「岩本隊…行くぞ…」

通信機越しで言う

「「「了解!!!」」」

大きく返答を返すと岩本隊は更に上昇していった。

 




C91出すことになりました


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