百万大図書館 (凸凹セカンド)
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貸本屋、歓談する








 深い碧眼が文字を追いかける。

 あるときは上から下へ、あるときは右から左へ。

 その動きは止まることなく、眼球は常に運動を急かされる。

 ぱらりぱらり頁をめくる手が緩まることはなく、今日もまた、三冊の書物が読破され、まったく同じものが机の上に『複製』される。

「お疲れ様です、主」

「ああ、ありがとうディルムッド」

 手渡されるのは紅茶。

 薫りを楽しみ、口をつける。

 その間に、ディルムッドと呼ばれた黒髪の青年は、三冊の複製を手にとる。

「確か、予約が入っていたとムーディが言っていましたね」

「そ、じゃあいつも通りお願い」

 ディルムッドは軽く頭をさげ、部屋を辞する。

「ああ、主。一時間は休憩を取ってくださいね」

 扉を閉める直前に、にこり、と女性が黄色い悲鳴を上げそうな顔でそうお願いする従者。そんな従者の台詞に、主は顔を顰めた。

 

 彼女、シェスカ・ランブールにとって、読書は何事にも変えがたいものであるのだから。

 

 

 

 

 貸本屋、歓談する

 

 

 貸本屋『百万図書』。

 世界でも有数のレアな書物を取り扱う知る人ぞ知る穴場中の穴場。

 世界屈指の蔵書量を誇る大図書館でも取り扱いのないような書物が、さも当然のように本棚にそろえられている姿を見て、あまたのマニアが涙する姿が見られる、そんな本屋である。

 こじんまりとした店構えであるというのに、どこにそんな本を扱うことができるのかと疑いたくなるほどの蔵書量を誇るその場所で、一人の男がせっせと本を並べていた。

「ムーディ、予約の本だ」

「あ…ディルムッドさん」

 奥から声をかけられたムーディはびく、っと肩を強張らせ、こわごわと青年から書物を三冊受け取った。いい加減気配なく後方に立つのはやめてくれないだろうか、と思うが、怖くていえない。

「ありがとうございます」

「いや。シェスカ様がいつも通り扱えとのことだ」

「はい」

 ムーディは書物を片手に予約表を開き、電話をかける。

 その間、店番をするのはディルムッドの役目だ。

 店主であるシェスカは、従者の言うことを聞いているなら休憩をとっているはずだが、あの主が目の前に餌(本)があるのにだまって言うことを聞いているかは疑問の残るところではある。あるが、彼は従者として主を信じることにした。

 番台に腰掛、店内を睥睨する。

 店内にいる客は一般人と、そうでないもの。

 大図書館にもないようなレアな書物を取り扱う店に、善良な人間だけが出入りするとは限らない。

 その本を売却し、富を得ようと凶器を持って入店してくる愚か者も後をたたない。譲ってくれ、といいながら断れば凶行に走るマニアも中にはいる。

 とくに、「この世界」には凶悪な能力を持つ者もいるので注意が必要だ。

 本に被害が及ぶだけならまだいい。それは『どうにでもなる』。ディルムッドが危惧しているのは、彼の主に累が及ぶことだ。自分の守護する彼女に万が一でもあっては困る。それを事前に防ぐのも、彼の役目だった。そして、それを実行する実力も、彼はもっていた。

 

 つかつかと、一人の男が入店してくる。他の客が、熱心に本に視線を寄越しているなかで、それらに見向きもしないさまは、この店では特に異常に映る。

 手をポケットに入れ、ディルムッドに視線を寄越し――――。

 

「やあ、予約の本、受け取りにきたよ」

 

 ポケットから手を出す寸前、それを横合いから出てきた男によって防がれ神速の裏拳が決まり、男はその場で崩れ落ちた。

 

「うは…早いですね、ルシルフルさん…」

 ムーディが、今まさに電話をかけていた相手が、ニコニコと人好きする笑顔で、崩れ落ちた男を足で隅に寄せる。

「近くにたまたまいたんだ」

「そうですか…」

 ちらり、とディルムッドを見ると、小さく頷いたのを見て、ムーディは本を三冊、ルシルフルと呼んだ客に手渡し、代金を受け取る。

 客はその場でぱらぱらと頁をめくると、感嘆の息をつく。

「本当にアルセリア滅亡期のものだ…相変わらずどこから手に入れるんだか…」

「それは店主に聞いてくださいよぅ」

 ムーディは困ったように頬をかいた。本の入手手段については、彼はまったくノータッチだからだ。

「ねぇ、彼女いないの?」

 ルシルフルは、番台で相変わらず店内を見渡している美丈夫に声をかける。鋭い眼差しが、ゆっくり向く。

「今、休憩中だ。さっさと失せろ盗人」

「酷いな、今はちゃんと客なのに。自分でいうのもなんだけど、俺上客じゃない?」

「ほざけ」

 二人のやり取りを見て、ムーディはぶるりと身震いする。

 恐ろしいほどのブリザードだ。

 ムーディは彼らふたりがとても強いことを知っている。

 だからこそ、ルシルフルが(多分)強盗に攻撃しても、慣れてしまっているので驚かずに対応することができた。このやり取りは以前にもあった。

 そして、この二人が険悪なのも、よく知っている。

 ムーディはただのアルバイトで、詳しくは知らないが、シェスカとディルムッドは主従関係にあるのだという。ディルムッドは昔天空闘技場で二つ名がつくほど強い闘士で、二百階目前まで行ったが、開店資金が集まったからとすっぱりやめて天空闘技場を後にしたとか。そのまま二百階まで進んでフロアマスターになれば、その名を世に知らしめることができるというのに、そこまでして彼はただ彼女に尽くしていたらしい。らしい、というのは、昔ムーディが好奇心からシェスカに聞いた話だからだ。それがどこまで本当なのか、それは彼も知らない。シェスカは自分にはディルムッドは勿体無さ過ぎるといっていた。話をきくと、たしかに、それほどの闘士をたかが貸本屋の店主が従者にするなど驚き以外のなにものでもないのだが、ムーディは知っている。彼、ディルムッドは心の底から主人に仕えることだけを使命にしていることを。

 だからこそ、二人の仲は険悪なのだ。

 

 昔、この店舗に押し入り、店主を殺害して本を奪おうとした盗人のクロロ・ルシルフル。

 昔、その盗人に瀕死の重傷を負わせた従者。

 昔、それを、許してしまったこの店の店主。

 

「ああ、予約って君だったの」

「やあ、シェスカ」

 

 ひょっこりと、店の奥からこの店の店主である女が顔を覗かせる。

 

「ルシルフル。ディルムッド。他の客がびっくりするから店内で吹雪吹かせないで…ムーディそこの伸びてる男、適当に捨ててきて」

「は、はい!」

 

 ムーディは言われたとおり、気絶している男を引きずって店の外に捨てた。これはこの店の日常茶飯事だ。店内の誰も気にしない。

 番台のまわりでは、三人が会話を始めている。

 言いつけ通り、ふたりとも妙な威圧感は抜けている。

「アルセリア滅亡期って…たしか大図書館も三巻までしか取り揃えてなかったよね?」

「今更じゃない?」

「まあそうなんだけど…気になるんだよなぁ」

「しつこいぞ盗人」

「それやめてくれる?」

「ちなみに前に君が好きだといっていた、ルールブル著の秘蔵書が見つかったんだが…」

「是非お願いします。お金は払うよ」

「金を払うのは当然だ」

 

 うん、いつも通りだ。

 ムーディはお茶をいれようと、店の奥へ姿を消した。

 

 

 

 

 




************************************************
 補足な説明



 シェスカ・ランブール
 二十代の癖毛の女性。
 貸本屋『百万図書』の店主。
 無表情。巨乳。
 ありとあらゆる書物を取り扱うマニアよだれものの書店店主にして転生者。
 自分で戦う?ありえない。とりあえずいいから本寄越せ。という感じで転生を果たす。
 それゆえの護衛、それゆえの能力。
 シェスカは、極度のビブリオ・マニアであったのでありとあらゆる書物を手に入れる能力を手に入れる。それをコピーして書店に並べている。
 本が読めればそれでいい。


 念能力『百万大図書館』
 シェスカのすべてのメモリを使ってでも達成させたかった能力。
 彼女の感知できる世界のすべて(時空関係なし)の書物に触れることができ、それをコピーすることができる。
 彼女が書店に並べている本は全部これ。
 この能力によって作られた本は中身は本物であるがコピーであるため、彼女の手から離れると七日でその効力を失い、失効する。盗難防止にも一役買っている。ちなみに戦闘能力は皆無。



 ディルムッド・オディナ
 シェスカの護衛としてそばに仕える槍騎士。
 みんなご存知fate聖杯戦争四次のランサー。
 神速の騎士。魔性の騎士。びっくり美形。
 シェスカが自分で戦いをする人ではないので護衛として誰かを見繕ってと『カミ』が言われたときに名乗りを上げた。今度こそ主に仕えきりたいという願いゆえ。
 シェスカに従順に従う。彼女も自分のような人間に仕えてもらって悪いな・・・と思っているので、彼のために彼の望む『主』を演じている。関係は良好。
 この世界には神秘とかないので彼はチート。

 ちなみに、書店の開店資金は彼が天空闘技場で稼いだもの。当時は女性の黄色い声援が常に闘技場を包み、多くの男性たちからは妬まれている。しかし実力は折り紙つきなので純粋に戦いたいとかかっこいいとか思うものも多数いた。



 ムーディ
 『百万図書』のアルバイト。
 シェスカがまったく仕事しない(ずっと本読んでる)のでほとんど彼がこの店を切り盛りしている。
 一般書の買い付けは彼がしている。
 元は浮浪者でぼろぼろだったところ、店舗に盗みに入り、ディルムッドにつかまる。が、シェスカが丁度アルバイト欲しがっていたので餌を与えてちゃんと雇っている。彼女に恩義を感じちゃんと店番している。
 レア本欲しさに馬鹿が襲ってきても抵抗せずそのまま好きにさせるか、ディルムッドを呼ぶ。じゃないと死ぬくらいの一般人。そばかすに金髪。ディルムッドのそばにいるのは今でも怖い。クロロが旅団員とは知らない。


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貸本屋、襲撃を受ける

 

 

 

 

 女は自室ですでに就寝していた。

 引っ越してきてすぐ、近くの家具屋で購入した足の短い寝台の上で、規則正しい寝息をたてている。

 部屋をくまなく覆うのは、異常と呼べるほどの本の山。壁にびちりと沿うようにして重ねられた本や、本棚に入りきらず溢れている本や、寝具の上にまで侵攻してきている本もある。その部屋の、一部のスペースを除き、本で溢れかえるそこは、書庫と呼ばれたほうがまだいささかに納得のできる有様だった。

 寝台で眠るのは、ある界隈では有名な女で、世界有数の大図書館ですら取り扱いのない書物を提供する「百万図書」という店の店主として知られている。

 世界中に存在するビブリオマニアたちから尊敬と畏怖と嫉妬を一身に受ける彼女は、しかしあまり世界の書痴達と知り合いではない。

 昔はネットワークをもとうとした時期もあったのだが、それは度重なる障害により白紙となった。

 彼女は、世界中の同じ趣味を持つものたちに命を狙われ、その財産を奪わようとすることがたびたびあったのだ。

 それを体験した彼女は、冷めた目で彼らを見、それ以降彼らとの連絡を絶った。

 唯一面倒くさそうな知人とはいまだに交流はあるが、それとて最初は非常に血なまぐさい関係だったのだ。これ以上厄介ごとは嫌だし、それに当てる時間があるのならその間本を読んでいたい。どこまでも本基準。

 

 それから、どんなにアプローチがあっても、答えてはいないのだが、一人、それに業を煮やした人物がいたらしい。

 

 それに気付いたのは、渦中の彼女ではなく、その護衛たる槍の騎士。

 

 ゆっくりと自分の愛槍を持ち立ち上がると、扉の手前で息を殺し、気配を探った。

 

 彼は、異世界にて英雄と、その名を挙げられる槍の名手、ディルムッド・オディナ。

 

 彼の主、シェスカ・ランブールを守る英霊と呼ばれる存在である。

 

 

 

 

 

 貸本屋、襲撃を受ける

 

 

 

 

 

 シルバ・ゾルディックは、その資料を手に取ると侵入経路さえ必要としない店舗の間取りや、ターゲットの顔を頭に叩き込んだ。

 店頭で客を対応しているのだろう所を隠し撮りしたものか、秀麗な顔をした青年が眉間に皺を寄せた姿の映る写真を手に取る。彼が今回の仕事で一番の障害だ。

 

 ディルムッド・オディナ。

 調べてみれば、数年前まで天空闘技場で猛威を振るっていた闘士ということがわかった。そのときの様子がネットに上がっていたが、それは蟻と巨象の戦闘だった。観客としてみる分には十分に満足のいく試合だろう。対戦相手が自分でなければ、の話だが。

 念能力の有無は確認されていない。彼の戦闘動画は百七十階でのものだ。二百階を越えるまで念能力者に遭遇しないこともままある。彼が念能力を保持しているにしろしていないにしろ、その階の闘士には念の補助など必要としなかったのだろう。彼の体さばきは、稀代の暗殺者たるシルバも納得しうるほどの勇猛さだったのだ。

 その百戦錬磨の闘士は、二百階に上がる前に惜しむ声をすべて切り捨てて、ある女とともにちいさな店舗を構えた。店の名は「百万図書」。店主の名はシェスカ・ランブール。今回のターゲットである。

 情報によれば、ディルムッドは彼女の世話を甲斐甲斐しくし、そして守護しているとのことだった。

 二百階の闘士でも、その登場を恐々として構えていた凄腕の闘士が、たかが貸本屋の店主の護衛とはどういうことなのだろうか。シルバは頭を傾げるが、それは彼の考えることではない。彼の仕事はあくまでこの店主を殺すことなのだ。

 

「面倒にならなければいいが」

 

 彼のシックスセンスがそう告げる。

 その結果は、後日彼の実体験として確認されることとなる。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

「百万図書」は小さな店だ。二十坪の店舗面積のうち、約七割が本、そして二割が通路、残りが店員のスペースになっている。店員の活動スペースの裏には直接併設されている住居に繋がっていて、細長いつくりになっている。

 シルバが侵入経路すら必要としないといったのは、直線だから、というわけだ。侵入するには、住居側の勝手口か、店舗側の入り口か、各部屋の窓しかない。シルバは、住居の外で円を展開する。その反応の中に、寝入った女性を発見すると、あたりをつけた。「百万図書」には、店主であるシェスカと、その護衛兼従業員のディルムッド、あとは住み込みアルバイトのムーディしかいない。女性は、滅多なことでなければ消去法でシェスカ本人となる。

 そっと気配を消して窓に近寄る。簡単な鉄格子は防犯のためだろうが、それは残念ながらシルバにはまったく障害にならない。ナイフよりも切れる爪で、撫でるようにそれを切ると、窓のうち鍵の周辺を円を描くように切り取る。小賢しく念を纏わせ室内に落ちたそれが音をたてないようにすると、するりと室内に入り込む。これでは暗殺者ではなくこそ泥だ、と胸中眉を顰めた。

 

 …足の踏み場もない。

 

 部屋に侵入して最初の感想がそれなのは、女性の部屋としてどうなのだろう。

 本本本。

 本本。

 本。

 本だらけだった。

 店舗も本だらけなら、私室も本だらけだった。

 なんでも店舗のほうはロフトの上にも本があり、さらに柱にも本がのっているとか。

 噂にたがわない書痴ぶりだった。

 

 静かな室内に、女の息遣いだけが響く。

 依頼主は、女の財産である本をすべて手に入れたいらしく、室内をできるだけ荒らさないようにという面倒な注文を受けている。この家の中には凄腕もいることだし、そうそうに仕事を終えようとターゲットへ体を向けた。

 

 ―――――――――――刹那。

 

 轟音とともに扉が破砕され鋭い切っ先が超速でもってシルバに肉薄する。

 かつてサーヴァントセイバーが保持していた強力なスキル直感がそなわっていたのではないかと、第三者が見れば感嘆の息をつくほど、ぎりぎりではあるが、英霊の槍を避けたシルバ。その槍が彼の後方の壁をまたも轟音を立てて突き破り、隣の空き地に小さなクレーターをつくった。ぶわりと、嫌な汗が噴出した。

 

 ゆらり、砂煙の向こうの影がゆらぐ。

 ゆらり、硬いブーツの先が細かな破片をつぶして室内に姿を現す。

 ゆらり、剣呑な光をたたえた双眸がけっしてそらされることなくシルバを捕らえる。

 

「……あ?」

 

 間抜けな声は細かな破片の降り積もった寝台から聞こえた。

 もぞり、と起き上がった女は、状況がわからずきょろきょろと暗い室内を見渡し、月明かりを背にした暗殺者の巨体と、入り口を作って侵入してきた信頼する騎士を見て、呆然とした。

 

「……主」

 

「ディルムッド、扉は出入りするためにあるんだよ?」

 

「…あ、はぁ。そう、ですね。申し訳ございません」

 

 どのような状況下でもマイペースな、毒気の抜かれる主の様子にどもる騎士。誰が彼を責められようか。寧ろ褒めるだろう。天然と付き合える人間は総じて気が長く、根は穏やかだ。そうに違いない。そうでないと可哀想だ。

 

 

 気を取り直した槍騎士は、気の抜ける会話をする主従を、しかし油断なく見据え、冷や汗をかきながらこちらを伺う侵入者に怒気をはらんだ視線を向けた。

 

 

 

 

 

 ***************

 

 

 

 

 男の手の中に納まる本は、かの、と慣用句のついてもおかしくない、ところによってはとても有名な「百万図書」でもまだ取り扱いのない書物だった。

 いや、もしかしたならば、と男は考える。

 あの女店主の私物としてなら蔵書されている可能性は極めて高い。ただ、まだ店頭に置いていないという可能性も否定できない。あの店主は働かないので、アルバイトが時間に追われながら作業をしていることがままある。あの店員が、店主から預かってはいてもまだ店頭に並べていないだけ、という可能性。

 ありうるな、と手に入れた後になってそれに思い至り、笑みをこぼす。

 といっても、これは欲しかったので別にそれ自体はよかった。

 あの店には確かに目を見張るほどレアな本が所狭しと並んでいるが、所詮それは貸本で、手に入れられるものではない。

 

「まあ、盗賊だしな」

 

 欲しいものは欲しい。だから奪ってでも手に入れる。それが男の基本スタンスで、仲間たちにも言えることだった。

 

「団長、こいつ殺さないんです?」

 

 かわいらしい容姿の、眼鏡をかけた女が、団長と男を呼ぶ。

 男はそこで、ようやく本から視線を寄越した。

 

 女の足元には、失禁で股間をぬらしている世界的にも有名なビブリオマニアの男が一人転がっている。意識はまだある、外傷も見当たらない。

 

「ああ、まだコレクションを見終わってないからな。この部屋だけじゃなく、違法に手に入れたものを置いてるところもあるんだろう?そこを案内してもらおうか」

 

 まだ、と団長は残酷に告げる。男は恐怖に震えをとめることができなかった。唇が戦慄き、目から涙がとめどなく溢れてくる。

 

「大の大人が情けねぇなあ」

 

 別の、目つきの鋭い金髪の大男がため息をつく。盗みに参加はしたものの、まったくつまらない警備体制にあくびをかみ殺している。酷く退屈そうだった。

 

「早くたって案内してよ」

 

 眼鏡の女が男をせっつく、その際「早くしないと殺しちゃうよ」となんでもないように口にされ男は慌てて起き上がり、自分の尿で滑って近くの机に崩れ落ちた。

 

「あーあー」

 

 誰ともなく呆れたような声が漏れる。

 男がうめき声を上げて起き上がると、机の上にあった書類がひらりと悪戯に舞い、団長の足元に落ちる。

 そこには、誰かのプロフィールが載っていた。

 より正確にいえば、誰かの身辺調査の報告書。

 

 団長は気まぐれにそれを見下ろし、次いで形眉を器用に跳ね上げると、その書類をかがんで手にとった。

 

「団長、どうかしました?なんか気になるものでもあったんです?」

 

 眼鏡の女が、団長の動きに首を傾げる。

 それを見た男は、何かに気付いたのか、立ち上がるように言われていたにもかかわらず、その場で正座をし、頭を深々と下げた。ジャポンで言う土下座である。

 

「た、頼む見逃してくれ!!もう少ししたら、ゾルディックがそいつを殺してくる。いや、もう殺してるかもしれない!わかるだろ!?あんたもその本の価値がわかるなら知ってるだろ!?そいつの―――――――その女の持ってる蔵書の価値を知ってるだろ!!それを譲るから!見逃してくれっっっ!!!!」

 

 数泊の沈黙の後、土下座している男は、何の反応もない団長に恐々としながらゆっくり視線を上げた。

 

 団長は笑っていた。

 それはそれは愉快そうに笑っていた。

 愉悦をこらえきれず、それは雰囲気にも感じ取れるほどだった。

 仲間だけではなく、男にもわかるほどのご機嫌さだった。

 

 男は、希望の光を見た気がした。

 

 

 

 

 

 ************

 

 

 

 

 ディルムッド・オディナの不機嫌さはとどまるところを知らないほどで、彼との付き合いの長いシェスカはその様子に人知れずため息をついた。

 

 ちらりと視線を寄越せば、ムーディがびくびくと怯えながら仕事をしている。あれでははかどらないだろう。

 

「…ねぇディルムッド」

 

「はい、シェスカ様」

 

「ちょっとそのぴりぴりするのやめないかい?客も逃げるムーディも逃げる」

 

「……あそこでムーディが起きてこなければ、あの侵入者を取り逃がすこともありませんでした」

 

 その台詞が聞こえたのか、ムーディが「ひぃ」と小さな悲鳴を上げる。シェスカは、子供のように不機嫌な面を隠しもしない従者に内心苦笑した。

 

「あの音で起きてこないほうがどうかしていると思うけどね、一般的に。いいじゃないか、あれから音沙汰ないし」

 

「まだ二日です。二日のうちに準備を整えているのかもしれません。俺が離れた隙に主に何かあってからでは遅いのです」

 

 そういわれてしまうと、シェスカは黙るしかない。彼は彼女を守るのに必死になってくれているのだ。いくら能天気というか、本以外に興味をいだかないシェスカでも、そのくらいは配慮できる。彼女とて死にたくはない。

 

 あの夜、侵入者の男と守護騎士との間でまさに戦いの火蓋が切って下ろされよとした瞬間。轟音を聞いて慌てて駆けつけたムーディに、侵入者は念を放った。それに気付いたディルムッドはムーディを庇ったが、時すでに遅く、侵入者はその隙に逃亡していた。シェスカに手を出そうとすれば、自分が逃げる時間がないと悟ったのだろう、潔い逃亡だった。自身と相手の実力を測れる、腕の立つ侵入者。

 ディルムッドが警戒しないわけがない。

 

「あの人って強かったのかい?」

 

「おそらく、盗人と同等ほどでしょうか」

 

「ああ、だから警戒してるのか」

 

「主が一人では決して立ち向かってはならない相手です」

 

 立ち向かわないよ…シェスカは自分の実力を重々承知しているのでため息をつくように呟いた。

 ディルムッドは規格外で、既存の人間ではまず倒すことの不可能な相手だ。だからこそ、安心して命を預けている。

 だが、シェスカは念を覚えているというだけで一般人に毛の生えた程度の人間だ。人類としては規格外と呼んでも差し障りない男達と正面からやり合おうとは端から思ってなどいない。

 

 

「やあ、不景気そうな顔をしているね」

 

「今なら不機嫌さで貴様を殺せるぞ、失せろ」

 

 

 噂をすれば、なんとやら。

 盗人こと、全身黒ずくめの常連クロロ・ルシルフルが現れた。ムーディはこれ幸いと奥に逃げる。お茶を入れにいったのだ。

 きっと凄く茶をいれるのに時間がかかるんだろうな、とシェスカは逃げるように奥へ走っていった哀れなアルバイトの背を見送った。気分的には濃い珈琲が飲みたいのだが。

 

「眠れない夜を過ごしてるかい?」

 

 クロロは意味ありげに微笑んだ。

 ディルムッドの秀麗な眉が盛大な皺を作る。

 

「何が言いたい」

 

「単刀直入に言おうか、殺されたくないし。――――襲撃はもうないよ。誓っていい」

 

 ディルムッドの刃のような殺気を前に、おどけたようにクロロが両手を挙げてそう答えた。

 

「へぇ、根拠は?」

 

 局地的大寒波の中心にいるというのに、もう慣れたもんだという風情で、シェスカが視線を寄越す。

 クロロは微笑んだ。

 女性がいたら十人中九人くらい惚れそうな笑みだった。残念ながら十人中の一人だったシェスカには胡散臭い笑みにしか見えないけれど。

 

「君を襲ったのはゾル家だ。ゾル家は知ってるよね?あそこの人間は殺人狂じゃない、ビジネスで暗殺を請け負っている。――――――君を殺せと依頼した男は死んだ。金にならない殺しは、彼らはしないよ」

 

 頬杖をついて、シェスカはクロロを見る。深い碧眼には、稀代の暗殺一家に狙われたという恐怖や焦りは伺えない。凪いだ瞳だった。

 

「なんで知ってるのーとかは聞かないほうがいいかねぇ。君が実はハンターでした!とかいう都合のいい解釈をしとくとするよ。それでいけいけ強欲盗人ルシルフルくんには何か得でもあった?」

 

「なにその名前、頭悪そう」といってクロロが笑うと、表情筋があまり動かないとご近所で噂のシェスカも微かに頬を緩めた。ディルムッドは主の表情にほんの少し目を見開いた。ちなみに、近所といってもしょっちゅう危ない人や、轟音のする「百万図書」の周辺五十メートルは空き地である。

 

「まあ……ゾルディックに多少融通が利くようになった、かな。悪くない」

 

「素敵ねー。是非これからうちに今後一切くんな!って連絡いれて欲しいわー」

 

「それは…多分大丈夫じゃない?」

 

 そういって肩をすくめたクロロに何か言う前に、空気を読まないムーディがお茶を運んできたことでその話はそこで切れた。

 

 

 以後、襲撃はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ***********

 

 

 

「やあ、イルミ久しぶり」

 

『何かよう?ちょっと俺忙しくなるから用件は手早く言って』

 

「つれないな、折角いいこと教えようと思ったのに。………本屋の護衛は強いだろ?」

 

『……何知ってるの?』

 

「その様子だと君が行ってはいないな?父親のほうか…逃げた?」

 

『……』

 

「彼、まともに相手をするものじゃない。あれは俺達と次元の違うところにいるやつだよ。どうやったらあんなのが彼女に従うのか理解できないけど、ともかくまともにやりあうもんじゃない。俺も軽く彼岸を見たしね」

 

『……それで?』

 

「クライアントは死んだ。さっき襲ったのがそいつだったんだ。もう依頼は白紙だろ?」

 

『…………借りいち、ね』

 

「イルミは話が早くて助かるよ」

 

 

 

 ある盗賊と暗殺者の会話。

 

 

 

 

 

 



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貸本屋、嫉妬を受ける

ヤンデレ注意


 

 

 

 

 ディルムッド・オディナは絶世の美男子である。

 緑がかった黒髪に、琥珀の瞳、百八十センチを超える長身、そしてなにより、彼にとっては忌むべきものであるが右目の泣き黒子が実に魅力的な「魔貌」のディルムッド。

 

 彼は忠義に生きる男である。

 生前の彼は愛に走り忠義を貫けず、二度目の生は忠義を貫こうとしたが相互理解が及ばず、その望みは潰えた。

 故に、今生の彼は今一度忠義を尽くせる主を求めていた。

 

 シェスカ・ランブール。

 諸々の事情があり、異界にて生を受けた彼女を主とし、その身をいかなる障害からも守り通す。その誓いを胸に出会った彼女は、その言葉を受け入れ、魔貌に惑わされることなく彼の望む限りの主従関係を築き上げた。

 彼女は彼を信頼し、彼は彼女の信頼に応えた。

 

 そこにあるのは純然で清廉な主従の信頼関係。双方がそれぞれを理解し、その忠義を捧げ、その忠義に応える主と騎士の、まことの姿。

 そこには、信頼関係以外の何物もなく、まして男女の色恋などまったくといっていいほどに含有されてはいない。

 

 しかし、彼は「魔貌」の英雄であり、その能力を抑制し制御するすべをもたなかった。

 彼の魔法の黒子は「相手に見られる」ことで発動する受動的なものであり、そこに彼の意思は一ミリたりとも含まれてはいない。

 

 

「…ああ、運命の人…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 貸本屋、嫉妬を受ける

 

 

 

 

 

 

 

「……店長、なんか気合の入った凄いの来ましたよ」

「……何?」

 朝、貸本屋「百万図書」の郵便受けを確認するのは住み込みアルバイトのムーディの仕事だ。というか、この店で一番仕事量の多いのは彼だ。だいたいのことは彼に任されている。主に雑用とか何でも係りといった感じで。

 ムーディは実に気味悪そうに顔を歪め、手狭のダイニングに顔を出した。珍しく朝から起きていた店主シェスカは、朝から不景気そうなアルバイトの顔に見てため息をついた。これだから珍妙なことをするものではない。

 ムーディの手には、朝刊と幾らかのDM、そしてはがきが一枚。

 それを、若干ためらった後シェスカに手渡す。

 キッチンで珈琲を淹れていたディルムッドも、盆を手に近寄ってくる。シェスカははがきの内容に目を向け、シニカルに口の端を歪めた。

 ディルムッドが目の前に置いたマグカップを手に取ると、興味をなくしたようにはがきをテーブルに放り投げる。

 

 

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

 

 

「…なんです、これは」

 ディルムッドははがきを手に取ると不快そうに眉根を寄せた。

「さあ、不幸の手紙とかじゃない?幼稚だなぁ」

 宛てられた本人は珈琲に口をつけ、器用に肩を竦める。本当に興味がないようだ。

「ええ~気持ち悪くないですか?なんか執念感じません、この字」

「いや別に興味ないし。というかよくこんなびっしり書くよね。時間の無駄、労力の無駄、非生産的…そんな時間あるなら本の一冊でも読むね」

「いや、それ店長だけですから」

 あまりのシェスカの無関心ぶりに、ムーディは幾分か気分が落ち着いたようだ。しっかり突っ込みを入れてくる。流石に荒事にある程度慣れた彼でも、朝から気味の悪い手紙を読めば気も滅入る。

「何者でしょう、シェスカ様にこのような…」

「さあ、筆跡からして女みたいだけど?心当たりなんていくらでも考え付くから困るよね」

 そういって意味ありげに従者に目配せすると、その瞬間に彼は顔を歪ませた。苛めるのはあまりよくないな、と反省する。

「…えーっと…なんと言えばいいやら…」

「君の気にすることはないよ、別に珍しくもないし」

「そうですけど…」

 そう、「百万図書」ではこういった出来事が頻繁に起こる。

 それはだいたいが一方通行で、一方的な好意と、勘違いの敵愾心によるものだ。

 

 シェスカはあまり気にはしないが、彼女は大変魅力的な女性である。

 地味な色彩ではあるが、癖のある茶髪はゆるく波打って肩をすべり、ふわりと広がる様は豪奢に見え、そこにリボンのひとつでも結べば華やぐ。顔の造形もどちらかといえばきつめの美形。基本的に無表情なのでミステリアスに見え、ちょっと他人の目を引く。

 そしてなにより、世の男性陣が目を向けるのが、女性の象徴である二つの頂。

 動くと重量を感じさせるそれが揺れる揺れる。ちなみに、ムーディはそれに視線の行かない男は紳士という名の変態か幼児趣味か不能だろう、と思っている。だってあのルシルフルさんだってたまに見てるもん。

 そんな彼女だが実態は重度の書痴。その魅力も底辺である。

 

 しかし実態を知らない者から見れば、果たしてそのように魅力的な女性が、ひとつ屋根の下、絶世の美男子と一緒に住んでいたら…。本人達にその気がなくとも、勘違いを起こすのは寧ろ仕方のないことかもしれない。

 

「ほっときなさい、時間の無駄よ。どうせこんなことするのは構ってちゃんなんだから」

「はぁ…まぁでも店長しばらく気をつけたほうが…」

「何に?私基本的に家からでないわよ?」

「……」

 ムーディは半眼でシェスカを見た。悪びれる様子もなく、寧ろ堂々としている。そして思い直した。ああ、いつものことだ、と。

 

 

 

 翌日。シェスカは今日はぐぅぐぅと私室で惰眠を貪っている。彼女が朝起きることは本当に稀だ。「あれ、珍しいですね」と同居人に言われるほどに。

 そんな店主とは別に、この店で一番忙しいであろうムーディと、基本的に睡眠を必要としないディルムッドはいつもの時間に起きてきた。

「おはようございます、ディルムッドさん」

「ああ、おはよう」

 ムーディは過去の出来事でディルムッドに苦手意識をもっているが、だからといって二人の仲が不和かというとそういうわけでもないので、彼らは普通に朝の挨拶をする。受肉したわけではなく、主の願いで実体化をしているディルムッドは、ムーディに気取られないように珈琲だけは淹れて付き合っている。受肉したいか?と過去に聞かれたことがあるが、彼はそれを断った。霊体化できたほうが、何かと便利がいいからだ。ムーディがいつものように郵便受けに足を向けている間、サイフォンで珈琲を淹れる。窓から差し込む陽の光に当たって琥珀の瞳が煌いた。ここに画家がいれば、筆をとって是非にと請うてでもキャンバスを取っただろう、まるで一枚の絵画のような風景。

 

「…ディ、ディルムッドさぁん」

 

 なんとも情けない声で、その風景は瓦解した。

 

 

「これは…鳥か」

「ぐ、ぐちゃぐちゃですよぅ。グロイグロイ~」

 郵便受けのある勝手口。そこになんとも怪しげな段ボール箱が置いてあった。ムーディは嫌な予感がしつつも好奇心に負け、それに手をかけた。

 目に飛び込んできたのは、四肢を切断され羽をぐちゃぐちゃに混ぜっ返された、鳥の死骸。思わず小さく悲鳴を上げ、周辺を確認するとすぐにディルムッドの元へ走った。

 ディルムッドは段ボール箱を持ち上げると、とりあえず勝手口の脇に寄せた。

「わぁ…俺わりと暴力沙汰には慣れてますけど、グロイってか気持ち悪いってか…こういうのって精神的に来ますよね…何回遭遇しても慣れないなぁ」

「……誰か近くにいたか?」

「ええっと、一応確認したんですけど、人影らしいのはいませんでしたね」

 ムーディも伊達に危険人物がちょくちょく涌いて出る貸本屋に勤めてはいない。暴力沙汰にも慣れているので、言いようのない気味悪さを覚えながらも、一応は周囲の確認を怠らない。この辺は慣れである。

「……埋めてくる」

「……はい。………店長には?」

「俺から伝えておこう」

 ディルムッドは、哀れな鳥の死骸を冷たい目で見下ろした。

 

 スコップを片手に、隣の空き地に移動する。

 百万図書の周辺五十メートルは空き地であるので、埋める場所には困らない。

 改めて段ボール箱を開くと、そこにはかわらず凄惨な姿を晒す死骸が収められている。それをじっと観察し、納得したのか微かに頷くと視線をスコップへと移した。

 

 さくり。

 

 地面を掘る。まるで柔らかな菓子に匙を通すかのように、それは滑らかに進む。

 

 さくり。

 さくり。さくり。

 さくり。さくり。さくり。

 

 周辺の野良に掘り起こされることのないだろう深さまで掘った墓穴に、鳥の死骸をそっと埋める。

 

「……一般人か」

 

 呟くと、土を盛った。

 

 

「一般人と思われます」

「じゃあ危険度は低いかなぁ」

「だからといって危険視しないのもいかがなものかと」

「わかっているよ。真に恐ろしきは生きた人、ってね」

 太陽が真上にくるころ起きだした店主に、今朝の出来事と考察を報告する。店主はあいも変わらずのんびりと珈琲を啜ったが、その目はすこしだけ煩わしそうである。

「生きた人間が残す生霊も、死んだ人間が残す残留思念も、この世界という補正なのか更にそこに「念」とか加わるから…面倒ね」

 ディルムッドに念能力は備わっていない。彼にそれは必要ないし、彼は生きた人ではないので生命エネルギーというものが基本的にない。

 故に、この「世界」でごく一部の限られた人間や、彼の主であるシェスカが身につけている「念能力」を視認する「凝」と呼ばれる技法は体得していない。しかし、一流の武人としての勘と、サーヴァントとしての補正から違和感に感づくことができる。

 鳥の死骸を観察した限り、悪質な「念」が仕掛けられた形跡は見つからなかった。

「しばらく俺が様子を見たほうがいいのでは?」

「君がそうしたほうがいいと思うならそうしたらいい、まかせるよ。目的が私なら下手に動かないほうがいいでしょう?」

 ディルムッドはその言葉に頭を下げると、一人店に残しているムーディの手伝いをしに足を向けた。

 

「彼も難儀だよねぇ、あの黒子…いや、黒子なくてもイケメンだからあんまりかわらないか」

 

 

 

「…今度は猫か…」

 ディルムッドは眉根を寄せた。

 次の日、彼はムーディの変わりに郵便受けを確認に行き、またもや不審な段ボール箱を発見した。

 中身は、その対象を猫に変えただけの昨日と変わらない無残な死骸。

「…シェスカ様は猫がお好きなのだが…」

 ディルムッドは思案した。

 シェスカは動物の中で特に猫を可愛がっていた。幼少期、両親が健在の彼女に自由に本を読む時間は少なく、変わりに飼い猫を可愛がることでその病気のような読書欲を抑えていた。今では逆に可愛がる暇がないと飼育していないが、たまにふらりと現れる野良に餌を与え、その報酬として柔らかな肉球をぷにぷにしている。

「……埋めるか」

 対象が変わったことは報告しない方針で。

 

 

 

「今度は、犬…どんどん大きくなっているな…」

 さらに翌日。

 今度は犬が入っていた。

 ディルムッドはいい加減に飽きてきた。大変不謹慎だがそんなに暇でもないので(もし埋葬している間にたとえばこの犯人とか盗人が主に接触したり…と考えると…)いい加減にして欲しいというのが本音である。

 かわいそうな死骸を量産する気力があるなら、直接言いにくればいい。勿論きたからといってシェスカに会わせるわけもなく警察に通報する気でいるが。別に彼自身が直接手を出してもいいのだが、犯人がまだ彼女自身に手を出していない以上、彼女は店舗での殺生を許していない。例外は、シェスカかムーディという非戦闘員に対して危害を加えようとしたかどうか。この時点では、まだ直接的ではないため警察にお願いする形になる。

「……埋めるか」

 やはり対象が変わったことは報告しない方針で。

 

 

 

「……ええとぉ…あのぉ…こちら貸本屋『百万図書』ですが……あの…聞こえていま……ぁ切れた」

「なに、悪戯?」

「はい、どうも無言電話みたいですね」

 番台のようになっている店員スペースに腰掛、本から視線もあげず、シェスカは問いかける。ムーディは面倒くさそうにため息をついた。

「暇じゃないんだから、用がないならかけるなよな!」

 いささか棘の含む言い方であったが、それは仕様がない。彼の手には予約名簿の青いバインダー。その分厚さはバインダーの要領を越えそうである。彼はこれからこの予約名簿の貸し出しのあわせと、入荷の連絡を一人でしなければならないからだ。もちろんシェスカは手伝う気ゼロである。

「無言という用があったんじゃない?」

「寧ろ店長に用があったんじゃないですか?」

「まだ今回のアレの犯人と決まったわけじゃないじゃない」

「それとは別件の人の用事かもしれませんよ?最高何人にモテモテでしたっけ」

「うっさいバーカ、仕事しろ」

 ゴッ、といい音。「か…角は酷い」とうめくアルバイトは無視である。横暴ここに極めり。

 最高何人という話は、シェスカにとってもあまり思い出したくもない記憶だった。

「だいたいなんだその最高何股?みたいな言い方は。人を尻軽みたいにいうのではない」

「もののたとえじゃないですかー!」

それはまだ彼女の従者ディルムッドが天空闘技場を去ったばかりのころ、熱烈なファンは彼の所在を大枚はたいて購入し、その先に憧れの騎士が甲斐甲斐しく世話をするシェスカを見て殺意を抱いたのだ。その数は一人や二人の話ではない。流石に全貌が知れたときは顔が引きつった。ちょっとしたトラウマである。魔法の黒子半端ない。彼に目立つことをさせては駄目だ。シェスカは学習した。

 ともかく、そんな荒波も超えてきた彼女にとっては今現在の嫌がらせはまだ軽口で対応できる可愛いレベルである。ただしアルバイトの気力は削られているが。

「もー…じゃあ、俺電話しますから、店長はディルムッドさんが来るまで店番してくださいね!」

「わかってるよ」

「わかってるなら本から目線あげてくださいよ、もー!」

 りりりりりん。

 現在ではアンティークとなりつつある店の黒電話が受信を告げる。

 りりりりりん。

 ムーディはすねた様な顔でシェスカを一瞥した後、受話器をとった。

「お電話ありがとうございます、貸本屋『百万図書』です」

『………』

「……もしもし?百万図書ですが」

『………』

「…」

 またか、といった顔で受話器を握るムーディに、ちらりと視線をやると、こちらをやる気のない目で見返してきた。その視線に頷き返すと、彼はいい笑顔で「御用の方は出向いてきてください」と早口で告げ電話を乱暴に切った。

「あー、もう。あー、もう」

 客商売の対応としてははっきりいってよろしくはないが、残念ながら百万図書の顧客は上客が多い。そして取り扱いの難しいレアな古書などを扱っていることから売り上げは高い。貸本屋というか書物媒体を扱う業界でもトップクラスなのだ。客でもない電話の対応ごときでは揺るがない。

「来てくれるといいですね、そしたら早く終わるのに」

 

 主に、人生的な意味で。

 

 

 

「外の気配でも探りますか?それとも明け方に勝手口付近を見張りましょうか」

「このくらいで君が動く必要もないと思うけど?」

 営業終了後、私室で相変わらず本を読みふけるシェスカの元へディルムッドが訪れた。内容は、ここ最近の不審者の対応だ。

 過去にもうちょっとどぎついのを体験しているシェスカには、彼がわざわざ張り込みまでする必要はないのではないかと考える。被害はまだ小動物殺害で、実質精神的被害を受けているのはムーディだけだからだ。

「動物の死骸を悟らせずに勝手口に置くことが三回も可能で、なおかつその人物を誰も見たことがない、というのが問題です」

「なるほど、もしかしたら一般人というのは外れるかもしれないってこと?」

「フェイクか、デコイか、まだはっきりとはしませんが」

「まぁ、君のしたいようにしたらいいよ」

 主人の許可がでた。

 ディルムッドは軽く頭を下げて退出する。

 不審物に念の気配がないからと一般人に決め付けたのは早計だったなと反省をしながら、私室として宛がわれた隣室に移動する。

 三度も死骸を寄越し、その度に姿を見せない。

 この手の人間は、どこかでこちらを伺っていることが多いが、その気配も薄い。もともとが「百万図書」に訪れる人間のうち半分があまり人様にいえないような背景をもっていたりと特殊な雰囲気をもつものが多いが、そういった手合いは、わかりずらいが独特の雰囲気をもつことが多い。今のところ接触はないように思える。

 出会ったら出会ったで、あの手の人物はたいていその場で口頭弁論が開始される。

 そのほとんどはシェスカに対するお門違いの恨み言と、一方的かつ的を得ない好意である。

 自分自身の防ぎようもない体質の所為で主に迷惑をこうむっていることが、ディルムッドには耐え難い。早々に解決するべく、彼は愛槍を手にもった。

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 最初は鳥だった。次は猫にした。その次はもっと大きいものがいけるかもと思い犬にした。今度は何にしようか迷い、三番目の犬よりもっと大きい犬にした。あの女に似た茶色。ああ、鬱陶しい。ああ、煩わしい。運命の人にあんなに大事にされているなんておかしい。何もしていないじゃないか。ずっとこもっているじゃないか。ずっと本を読んでいるじゃないか。電話にも出ないじゃないか。あんな女、あんな阿婆擦れ、あんな売女!ふさわしくない。ふさわしくない!あんなに素敵な人にあんな×××はふさわしくない!はやく気付いてください、私の運命の人。気付いてくれたら私、貴方に『好きになってもらう』ことなんて簡単にできるんです!ああ、早く、早く!

 

「迷惑行為を即刻やめてもらおう」

 

 ああ、ああ、ああああああああああああああああああ。運命の人!見つけてくれた。私を見つけてくれた。もうこんなものはいらない。こんな小汚い、あの女みたいな色の犬なんていらない。ああ、いらない?そうねいらないから、彼と私が結ばれたあと、あの女にはこれと同じようになってもらいましょう。そうしましょう。それがいいわ。素敵!とっても素敵!あなたのその槍で、あの女を惨たらしく殺して!私のために殺して!

 

『私の愛は貴方を縛る』

 

 私の素敵な愛は、貴方の心を決して逃がさない!!ああ、私の運命の人っ!早く私をだきしめ……

 

「操作系とやらか…まったく忌々しい」

 

 ああ、ああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああ。どうして、どうして私を抱きしめてくれないの!?どうして私の『愛/念』が伝わらないの?!おかしい、おかしい、おかしい、私達は愛し合っているのに!あの女?あの女がいるから!?それが真実の愛だというの!?そんなのおかしい。そんなのありえない。

 

「私が貴方にふさわしいのよぉ!」

 

「……あの方を貶める貴様を許してはおけん」

 

 

 

 ああ。

 

 

 

 

 

 *******

 

 

 

「殺しちゃった?」

「いいえ、殺してはいませんが、軽く『お願い』しておきました。茫然としていましたから、もう来ないでしょう。自分の念能力に妙に自信もあるようでしたし」

「どんな能力だったのかな?」

「さあ、わかりません。自分の能力を喋るものもそうはいませんし、俺には基本的に効きませんので」

「神性とかマジチートだな」

「チートってなんですか?」

 シェスカはもそもそと寝床から出てくると、待ち構えていたディルムッドから早朝に出会った不審者の報告を受けた。

 操作系と思われる念能力保持者で、ディルムッドに惚れ込んでいるためストーカー化した女性。どうにも死骸ではなく、別の条件を満たすことで発動する念能力を保持していたようだ。残念ながら人の姿をした人ではないものであり、神性のある攻撃でしか傷つくことのないディルムッドには、たとえ強力な能力保持者でも相手にはならなかったが。

「そうかぁ、ディルムッドの『お願い』かぁ…まあもうこないことを祈るね」

『お願い』がどんなものであるか、深くは聞かない。なんだかあまりいい予感がしないのである。

「とはいえ、当分は店にでていただきます。ムーディと一緒の方が警護も効率がいいですし」

 ムーディに店番をやらせて、対応できない相手にはディルムッドが間に入るようになっている。一緒の空間にいてもらうほうが、やりやすい。

 盾として考えているとか、そんなことはない。きっとない。

「わかってるよ…」

 ため息をつきつつ、店舗と家を繋ぐ扉を開ける。

 本本本。

 本本。

 本。

 いっせいに視界を覆う本の山。

『百万図書』は今日も本に塗れている。

「やあ、シェスカ」

「あらルシルフル」

 番台に腰を下ろそうとする彼女に、常連が声をかける。ディルムッドの目が微かに険しさを増した。

「この前のルールブル、とても良かったよ。続きはあるの?」

「今のところあれしか確認してないわ、またあったらまわしてあげるわよ」

「楽しみにしてるよ」

 そういって常連客、盗人ことクロロ・ルシルフルは微笑んだ。

 さらりと流れる黒髪に、甘いマスクの童顔美形。

 こういう男をストーカーしてくれたら楽だったのに、とシェスカは半眼になる。

「盗人…血の匂いがするぞ」

「あら」

 クロロは困ったように眉を下げた。

 ムーディにはどちらかというと「盗人」として認識されているクロロは、自身が「殺人」に対して何も感慨を抱かない人間だということを伏せている。そのほうが面倒がなくていいと思っているからだ。なんせ店の対応のほとんどは彼がやっている。クロロの職業を知られて距離を置かれると、とっても面倒。

 故に、あまり血臭を纏うようなことをして店に来ることはないのだが、今日はディルムッドにすぐに看破されてしまった。

「ルシルフルさん、怪我ですか?」

 お茶を入れに離れようとしたムーディが思わず足を止める。

「いや、なんでもないよ」

 クロロはそういって笑う。

「ムーディ、お茶」

 シェスカの一言に、ムーディは眉を下げて辞した。

「いや、さっきね。そこで女が刃物もってウロウロしてなんとも物騒なことを言っててさ。気付いてこっちに振りかざしてきたから、少し『お話』をしてたんだ」

「……ふぅん」

「もう…こないと思うよ」

「そう」

 

 シェスカとディルムッドは同時にため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 



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貸本屋、過去を顧みる

短い


 

 

 

 

 シェスカは狂いそうだった。

 どうしようもないほどの強い欲求。

 喉がからからに渇き、意味もなく自傷行為を起こしそうだった。

 

「シェスカちゃん、駄目よこんなに遅くまでご本読んじゃ」

 

 母親が本を奪い、明かりを奪う。

 

 ああ、ああ、ああああああああああああ。それは私の本だ、私の!私の本!!

 

「お母さん、嫌だ最後まで読ませて」

「明日ね」

 

 なんと残酷な。死刑宣告にも等しい言葉。

 母親は、自分がどれほど酷な言葉を吐いたか知らない。

 

 

 ああ、ただ―――――――――本が読みたい。

 

 

 

 

 

 

 貸本屋、過去を顧みる

 

 

 

 

 

 しとしとと雨が降っている。

 いつもはマニアで賑わう貸本屋「百万図書」も、雨の日は客足が遠のく。レアな古書や歴史書が多くの割合を占めるこの店に、客が慮って扉を開けなくなるのだ。湿気は大敵。ただしこの店の大抵の書籍が念能力による複製ということを知っている人間だけは別だった。今日この店の扉をくぐった人間の半分は、念能力者だった。

 

 番台に腰掛、本を捲る店主シェスカの元に、淹れたアールグレイのカップを置くと、ディルムッドは真面目に働くムーディと客の動きに注意する。

 シェスカは、本の頁をぱらぱらと捲ると、深い碧眼を瞬かせ、気だるげに雨粒の撥ねる窓ガラスに視線を寄越した。

 

 そういえば、彼に出会ったのもこんな天気の日だった。

 

 ヨルビアン大陸のある程度発達した国のごく平凡な町に生まれたシェスカは、自分がこの世界とは違う異界に生きていた人間だったことを八歳の誕生日に思い出した。

 それは、混乱を避けるために施された封印であり、最初の激痛が治まるとすんなりとその事実を受け入れた。

 そして、行動にでた――――――――本が読みたい。

 ただただ本が読みたい。何でもいい、絵本でも、児童書でも、教科書でも、漫画でも、小説でも、古書でも。なんでもいい。なんでもいいから本という本が読みたい。

 人間のもつ三大欲求のうち、食欲、睡眠欲、そして性欲を跳ね飛ばし「読書欲」を持った彼女は、家中の本を読み漁った。

 しかし民家においてある本の数など高が知れている。彼女は次なる本を求めた。

 最初のうちは、両親も意欲的に彼女に本を与えたが、睡眠も忘れ、食事も一食しかとらず、ただ本にのみのめりこむ娘のその異常さに気付き、本を取り上げた。

 たかだか八歳にしかならない小娘の力では限界があり、両親に抗うことはできなかった。むくむくと生まれる欲求を飼い猫や念能力の開発に回すことでなんとか落ち着かせようと努力をした。

 念能力は比較的簡単に習得できた。十歳になる頃だった。それはそうなるような「契約」だったのだから当然である。彼女はそのことには一切疑問を抱かなかった。

 念能力を得た彼女は歓喜した。

 何故ならそれは両親に知られずに本を自分のものにすることができる能力であるからだ。両親に奪われた本も、彼女の知らない本も、今は失われて久しい本も。そのすべてが彼女の意のままに幼い手に収まるのだ。

 両親に隠れて本を読みふける毎日が続いた。

 学校に登校しても、そのままサボって本を読みふけった。

 学校の授業など受けなくても、彼女は十分に本で知識を得ていたのだ。必要のないものに時間をかけるより、彼女は本を読むことに時間を費やした。

 けれども、勿論そんなことが何日にも続くわけがない。

 両親は学校に呼び出され、シェスカ自身も注意を受けた。しかし、勿論シェスカはそんなことで真面目に学校に通うわけがなかった。寧ろ抑圧されていたからこそ反動のように貪るように本を読み続けた。

 両親は、買い与えてもいない本をどうやって手に入れたのか、どうして自分達の子供がここまで本にのめりこんでいるのかが気になった。いや、恐れていた。何か別の生き物のようにさえ感じてきたのだ。

 ある日、いつものようにシェスカは家を出て学校を目指した。勿論サボる気でいる。

 向かうのは小高い丘にある木。木陰は涼しいし人のこない絶好の場所は、彼女のお気に入りの場所だった。

 そこに付くと、ハンカチを広げそこに座り、念能力を発現させる。現れたのは、一冊の古書。

 テレビで最近話題になっている古代文明時代の思想家の書いた指南書。普通に美術館レベルのそれを無造作に素手で捲る。

 そのとき、彼女は気付かなかった。

 彼女を監視する二対の目に。

 

 帰宅した彼女を待っていたのは、荒縄を持った父と、背後で気配を消して潜んでいた母。母親に後ろから拘束されたシェスカは、縄をもった父に拘束され、荷物を取り上げられ地下室に放り込まれた。

 呆然と地下の扉を見つめるシェスカ。何が起きたか、彼女には理解できなかった。

 数分か、或いは数時間か、時計のない部屋で彼女は薄暗い闇の中蹲っていた。かすかに明かり窓から漏れる月の光で、今がもう夜も更けた時間だということがわかる。

 なぜ、両親がこのような暴挙にでたのか、検討が付かなかった。

 自分はいつも通りすごしたはずだ、前日も両親に特に変わったところは見当たらなかった。

 何かしただろうか、それとも薄々は気付いていたが、気味が悪くなって軟禁することにしたのか。たしかに、外聞は非常に悪いと思う。

 拘束され動けないでいる間、ぐるぐると考えを巡らせる。流石にこんなときには本を読みたいとは思わなかった。ただ、こんなことをされるのなら、この家を出たいと思った。

 

 しばらく蹲って亡羊としていると、地下室の扉が開いた。かすかに差し込む明かり。降りてきたのは、両親、そして見知らぬ男。

 見知らぬ男はパリッと糊の利いたグレーのスーツを着こなした神経質そうな男で、こんな田舎町には似合わない垢抜けた感があり、すぐによそ者だと知れた。

 よそ者はニコニコと笑顔を貼り付けてシェスカの前に跪いた。

 その笑顔が作り笑いであると、すぐにしれた。なんだか嫌な気配がする。念能力者たる彼女のシックスセンスがそう告げる。

 

「こんにちは、シェスカちゃん。オジサンの質問にお答えできるかな?」

 男の目に宿る酷薄な気配に、シェスカはただ従順に頷いた。それから両親をちらりと見ると、両親はすぐに目を背けた。悲しくなった。

「シェスカちゃん、このご本はどうやって手に入れたか、オジサンに説明してくれる?」

 念能力を話すのは、自分の弱点を話すのと同義であり、普通はそうそうと話はしない。しかし、シェスカの持つ念能力「百万大図書館」は、攻撃性もなければ、凡庸性もない趣味のための能力だ。話したからといってそれが利になるとは思いもしない。

 だが、たかだか十年と八ヶ月ほどしか生きていない少女が流暢に自分の習ってもいない能力を話すのは、いくらなんでもおかしい。そのくらいは転機のきいた彼女は、「八歳くらいからずっと本が欲しいって思ってました。思って思って神様にお願いしてたら手の中に出てきたんです」とファンタジーな、まるで魔法のような、子供の夢物語にでてくるような答えをかえした。

 男は、それを聞いて口を弓なりに歪ませ喜んだ。

 両親は、自分の子供を今度こそ明確に気味が悪いと表情に表した。

「そうか、そうか。お願いしたら出てきたんだ」

 男は確認のためにそう聞いてきたので、シェスカはがくがくと震えながら頷いた。

 男から発せられる圧倒的なまでの気配に気圧されたのだ。

 

 男は、念能力者だった。

 

 くるりと背を向け、両親に向き直った男は口を開いた。それをきいたシェスカはあまりのことに絶望した。

 

「いいでしょう、ランブールさん。貴方のお子さんはすばらしい恩恵をもつ宝子です。彼女をいただきます。報酬は、貴方の借金の全額取り消しです」

 

 小額の父の借金取り消しなど、のちにシェスカのもたらす莫大な利益を思えばマイナスにしかならない。しかし、事業を失敗し徐々に生活が苦しくなってきた父には願ってもいない申し出だった。父はその申し出に飛びついた。気味の悪い子供を、愛せなくなって久しい穀潰しを与える代わりの代金としてはあまりにもできた話だと思ったのだろう。

 

「い、嫌!嫌だ!お母さん、お父さん!」

 シェスカは喚いた。そんなことは嫌だった。男が何者かわからない、そんな男に自分を売るといっているのだ。売られるということは「人権」を無視されるということだ。道具と同じだ。シェスカには人格がある。道具など、そんなことは許せるはずもない。

 しかし、男は無慈悲に肩越しにシェスカをみて、ため息をつくように口にした。

 

「子供に、親は選べないものね?」

 

 薄ら寒ささえ感じるその声音に、シェスカは凍りついた。この男は絶対にまともな人間じゃない。こんな男に連れていかれたら、何をされるかわかったものじゃない。

 

 両親は呆然と男の背中を凝視する娘を置いて早々に地下室から出て行った。流石に居たたまれなかったのだろう。ただ単に興味がなかっただけかもしれない。

 

「明日、用意ができたら迎えにくるから、おとなしくしているんだよ」

 

 男は、そういって絶望にぬれるシェスカを置いて地下室を出て行った。

 

 シェスカは身動ぎひとつせず、じっと地下室の扉を眺めた。

 

「このままじゃ、終わる。……私の人生終わる」

 

 口に出すと、じわりとその言葉が染みてきた。

 どうにかしなければならない。どうにか逃げ出さねば。しかし、どうやって?

 彼女の念能力は、攻撃性がまったくない。彼女の体は、同年代よりちょっとだけ強いだけ。そんなことで、あの男から逃げ出せるわけがない。

 彼女は懸命に考えを巡らせた。

 そして、「契約」を思い出した。

 

 息を深く吸い込み、そして吐く。

 何度も深呼吸を繰り返し、意を決したように自分の唇に歯を立てた。

 

 幼くまだ丸い顎を鮮血が流れる。

 

 ぽたぽたと地下の無機質な床に血液が滴る。

 

「……魔法陣とか…ないけど…略式でも、大丈夫か?」

 

 一抹の、いやとてつもない不安を抱えるが、彼女にはそのくらいしか方法がなかった。

 

 ゆっくりと息を吸い込み、痛む唇に舌を這わせ、血を舐める。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。始まりの言葉による契約の元。

 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する

 ――――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷く者。

 されど汝は我との契約を担う者。されど汝は契約の言霊に導かれし者。

 汝三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

 垂れた血液に淡い光が宿り、ゆっくりと円を描くように蠢く。その円は直径にして五センチほどの小さなものであったが、効力を発揮した。

 

 彼は、呼ばれるのを待っていた。

 契約はとうの昔に済まされている。

 呼ぶのは主の声ひとつ。

 

 

「サーヴァントランサー、ディルムッド・オディナ」

 

 埃だらけの地下室に似合わない、酷く神聖な気配の青年が一人、そこに立っていた。

 

 シェスカは、自分の頬を涙が伝うのに、気付かなかった。

 

 

 

「マスター!」

 ディルムッドは拘束され涙を流す幼い主人を見て血相を変えてその体を起こした。

 サーヴァントの持つ膂力で荒縄を引きちぎり、涙を掌でぬぐう。

 少女の体は長い拘束の所為で筋肉が硬直しており、上手く動かせずにいたが、震える手を自分の頬を撫でている手に寄せ、しっかりと握った。

「助けて…」

 か細い少女のうめき声に、ランサーはしかと頷いた。

 少女の体を断りをいれ抱き上げると、二槍を片手にまとめて地下室の扉を目指す。

「上には両親がいるの…」

「どうされますか?いえ、マスターは誰からこのような…」

「拘束したのは両親よ」

 少女の意外な言葉にディルムッドは硬直した。

 年端も行かない少女を、拘束し地下室に放置した。状況から鑑みるに、どうみても躾の一環とは思いにくい。

「私、明日になったら売られるの。買い付けにきた男は能力者…ええと念能力者といって、なんか超常的な力をもっている人たち……逃げないと、明日…」

「理解しています。主を危険な目には合わせません」

「……勝てる?」

「人間では俺を殺すことはできません」

 断言する青年に、シェスカは脱力して体を預けた。

 彼は彼女が新たに人生を歩むに当たり「契約」のもと使わされた彼女の従者。強さに関しては問題ないと、彼女の知識が告げる。

 ああ、もう大丈夫。

「しかし、放っておくと狙われる可能性もあります」

「この国には、人権はちゃんと存在するわ…両親がもし、男と契約を結んでいれば…」

「その契約書を破棄し、この家をでます」

「それがいい…」

 ディルムッドは地下室の扉に手をかける。鍵など存在していなかったかのように扉を力でぶち破ると、悠々と廊下を歩く。

 窓の外では、しとしとと雨が降っていた。

 扉の破壊される音は、大きくはなかったが、一応警戒していたのか父親が飛び出してきた。

「シェ、シェスカ…!お前何者だ!?娘をどうする気だ!」

「人に売りつけるような男が軽々しく『娘』などと呼ぶな、虫唾が走る」

 ディルムッドが怒気を隠しもせずに言葉に乗せる。それだけで、常人には耐え難いほどのサーヴァントの殺気が押しかかる。

 数秒もしないうちに、父親は泡を吹いて倒れた。シェスカは、倒れた父をじっと見下ろす。

「もう父親だとも思えなくなったな…」

 徐々に感覚を取り戻してきた少女に、もう歳相応の子供らしさは見当たらなかった。

「……ま、一応遺伝子の提供者だしね。放っておこう」

 青年に担がれたまま、廊下を進み、居間へと進むと、椅子に座っていた母親が立ち上がって二人を見た。その手には、何かの紙の束。

「ディルムッド、あれを…」

 ディルムッドは是と頷くとシェスカを降ろし、ゆっくりと母親に近づく。

「シェ、シェスカちゃん…」

「お母さん、それをください。それが貴女との縁を切ったもので、私の人格を無視する非道なものだということはわかっています」

「しぇす…か…」

 母の表情がとろりと蕩け、頬が紅潮し、涙目でディルムッドを見上げる。

 ディルムッドは、顔を顰めた。

「そちらを手渡しなさい」

 母親は抵抗もせずにそれをディルムッドに手渡し、縋ろうとその手をさらに伸ばしてきた。ディルムッドはその手を掴み自分のほうに引き、期待に目を輝かせた母親の首に手刀を落とした。

 がくりと膝が折れ、ゆっくりと床に倒れこむ。

「……え、何?」

「申し訳ございません、俺の呪いです」

「何それ怖い」

「……申し訳ございません」

 

 

 朝、家を訪れた男を、ディルムッドはあっけなく拘束した。

 男も、能力者であるが故に、遥かに自分より格上の相手であるディルムッドに反抗せず、契約書を取り出すと手渡してきた。

「貴女は借金のかたです、なくなったとなれば彼等が返すだけですから。営利企業なんです。当然でしょう」

 男は残念そうであったが、シェスカを相手にするにはディルムッドという強大な敵を倒さなければならない。割りにあわないと思ったのだろう。

 自由を得たシェスカは、ディルムッドと共に家を出た。

 自分自身を守るために、両親の側にいることはもうできない。

 

「天空闘技場というところがあるんだって」

「戦いならお任せください」

 

 

 

 

 **********

 

 

 

「こんな天気だったねぇ」

「は?」

「家を捨てた日」

「え、吃驚したいきなりだね」

「そういうルシルフルもいきなりね」

 視線を正面に戻すと、人好きする笑みを浮かべた常連が立っていた。まったく気付かなかった。表情には出ていないが、実はとても驚いている。

「独り言よ」

「気になるな、シェスカの昔って」

 番台に近づき、頬杖をつくと、彼女の顔を覗き込む。

 ディルムッドが近づいてきたので、ぱっと身を離す。

「面白くもないわよ……で、今日はなに?」

「あ、今日はねぇ…」

 

 

 新たな茶葉の匂いが鼻腔を擽った。ムーディだろう。

 

 彼女は、「人間」として生きていることに今日も感謝をした。

 

 

 

 

 

 




なみに、このあとはすぐには天空闘技場には行かず、数年間ふらふらしてシェスカが15・6歳くらいになってから闘技場にいきました。その間に「貸し本屋やろう」とか、数人の知己を得たりとします。本関係じゃない知人ならそこそこできたかな?って感じですかね。

詠唱はディルムッドを呼ぶためにちょっと違う感じです。語彙能力のなさが露呈しましたね。


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貸本屋、従者の戦闘を観戦する

戦闘描写などない


 

 

 

 

 それは仕事の後、男達が気分よく酒を流し込んでいたときのこと。

 今日の仕事はなかなか大きく、近年会うことのなかった手応えのある敵にも出会い、それを討ち取った彼等は、酷く上機嫌だった。

全員気分が高揚しハイペースに酒の蓋を次々に開けていく。空になる酒瓶やビール缶がひとつの山を作り上げていく。

 戦利品を眺めつつ、手に好きな銘柄の酒を持っている彼等の頭は、はたと手を止め苦笑した。

「どうした、団長」

「いや、この本。……そういえば、これを見て欲しくなって襲撃して、ボコボコにされたのを思い出した」

 団長と呼ばれた男はとんでもないことを口にした。

 普段は理性的で冷静な男だ。そうそう妙なことを口走ることもない。しかし今は、格好こそ仕事着のままだが、オフのスタイルに着崩している。酒が入り、思わず口走ったのだろう。

 仲間達が呆気にとられていると、団長もはっと、自分の不用意な発言に気付き口を開く前に、仲間達による質問攻めに埋もれた。

 

 

 

 

 

 貸本屋、従者の戦闘を観戦する

 

 

 

 

 

 太陽は空の真上にあり、燦燦とその光を注いでいる。高層ビル群が太陽光を反射してきらきらと輝いている中を、一人の青年が鬱屈とした表情で歩いていた。

 人工林の木陰が涼しげな公園のベンチに座り込むと、深いため息。

 青年、クロロ・ルシルフルは頭を抱えいていた。

 昨夜の飲み会の所為で二日酔いが酷いという情けない理由で、ではない。そちらのほうが、心情的にまだましだっただろう。

 クロロは、人にあまり知られてはいけない職業を生業にしている。

 

 幻影旅団――――通称、蜘蛛。

 

 史上最凶と悪名高いA級首の盗賊団。彼等は全員が凄腕の念能力者で、熟練のハンターでもうかつに手が出せないと世界中で恐れられている。

 

 旅団団長、それがクロロの職業。

 

 彼は職業柄、非常に慎重で用心深く、理知的な性格をしている。それは自他ともに認められていることで、蜘蛛の中でも「頭脳」役として働いている。

 しかし、彼は飲み会の席で思わず過去の出来事を口走ってしまった。

 当時飲み会に参加していたメンバーが、全員旅団結成当時の気安いメンバーであったことが、何よりも彼の口を緩ませたのだろう。

 

「しまった……」

 

 心底困り果て、がっくりとうな垂れるその姿は、誰がどう見ても後悔の念に苛まれているようにしか見えない。事実、彼は後悔していた。

 蜘蛛は、全員がこの世でいう強者の集いである。

 残忍な性格のものもいれば、天然なものもいるし、中庸な意見をするものも中にはいる。しかし、その全員が等しく息をするように人を殺し、狙った獲物を強奪する。それが、幻影旅団。

 その団長であるクロロもまた、人を殺すことに躊躇いのない男であり、世界でいうなれば絶対強者の中の一人である。

 

「つい…ディルムッドのことを…」

 

 彼は、貸本屋「百万図書」の常連である前に、一度「百万図書」を襲った盗人としての来歴がある。

 そこで、その店の最強の守護騎士により瀕死に追い込まれた経験がある。

 それに関して彼はもう気にしていない。

 普通はここで、絶対強者の矜持として彼に一矢報いるために行動するべきなのだろうが、クロロはそうはしなかった。

 その店の守護騎士が、明らかに異常で異端であることに気付いたのだ。

 もし店主にその旨を伝えたならば、彼女はクロロの勘の鋭さに舌を巻いたことだろう。間違いなくかの守護騎士、ディルムッド・オディナは人ではない。英霊と呼ばれる人間の枠を超えた神聖なる存在であるからだ。

 本能的に、人間では決して勝つことのできない相手と認識したクロロは、ディルムッド相手に生き残った自分の命を粗末にはしなかった。

 厚かましくも一度襲った店に笑顔で来店、着々と店員と店主の距離を縮め、常連という地位を手に入れるに至った。

 彼は、ディルムッドが「人を超えるほどの何か」に気付いたが故に、彼の逆鱗たる店主にも手を出さず客として友人として接してきた。

 

 けれど、彼が身をおく幻影旅団の団員は、勿論貸し本屋一行のことなど何もしらない。

 

 彼等の信頼する団長を『ボコボコ』したこことのある人物がいるとしたらどうするか。

 

 

 ――――――喧嘩を売りにいくに決まっている。

 

 

 旅団員は「戦闘狂」の気がある人間が多い。

 もし、そんな人物がいるとしたら、団長の『敵討ち』の前に、まず喧嘩を売る。間違いなく売る。

 これがもし、クロロが殺害されていたならば話は別だが、クロロは彼等に『ボコボコにされた』といってしまった。

 戦いが大好きで、強い人間と見えるのが好きな彼等は、クロロに詰め寄った。

 

 団長を追い込むほどの人物とは誰なのかと。

 

 適当にゾルディックあたりの名前を出してもよかったのだが、彼等とて馬鹿ではない、それが嘘だと見抜くだろう。

 もし仮にゾルディックに被害が出たら、それはそれでことだ。クロロには懸命に口を閉ざす以外方法がなかった。

 しかし、その程度で彼等が納まるわけがない。執拗な質問攻めに耐えたクロロの精神は、自己嫌悪と後悔で珍しいことに一杯一杯であった。

 

 もし、このことがディルムッドに知れたら。

 そう思うと気が気ではない。

 彼は死ぬことを常に日常として享受している狂人だが、自分から命を粗末にするほど阿呆ではない。

 もしディルムッドに知れたら。間違いなくディルムッドはもう一度クロロの息の根を止める寸前位まで彼を追い込む。

 

 殺しはしないだろう、と彼は考える。

 

 店主、シェスカ・ランブールも従者の気質と似て中庸な言動や態度をとることが多い。殺生を勧めていることもないし、彼女は意外とお人よしの部分があり、いうなれば非常に甘い。そんな彼女が、知り合って長いクロロを殺せと従者に命ずるとは考えにくい。

 

 では、なにが彼を苦しめているか。

それは、あの店に面倒ごとを持っていくことで―――――入店禁止になることを恐れているからだ。

 

 生き残ったとして、目の前にある獲物を前に手も出せずただその存在を認知するだけ。

 

 そんなことを、クロロは耐えられそうになかった。今まで金さえ払えば手に入っていたのだから、余計にそう思う。

 

「厄介なのは…」

 

 真実にいち早く気付きそうな旅団員は、情報処理の得意なシャルナーク。そして、直感の冴えるマチ。

 

「……拙い…」

 

 

 

 

 

 

 

 番台に腰掛けたシェスカ・ランブールは、眉を顰めた。もともと表情筋の動かない彼女が眉を顰めると、些細なことであるがすぐに気付くことができる。従者ディルムッドは、彼女のその変化に首を傾げた。

 本当に珍事といって差し障りないことに、手にもった本を開かず、じっと考え事をしているようで、指先を睨み付けている。眉を顰め、指先を睨み付ける主人に、声をかけようか従者は迷った。

 指先に何かあるというわけではなく、たまたま睨み付けたのが指先だったのかもしれない。たまに、本当にごくごく稀に、虚空を睨みつけて考えに耽るときがある。その内容はてんでばらばらで、とりとめのないことに妙に拘って思考を停止させていたり、どうしても食べたいものがあるときに行動するべきかしないべきか延々考えていたり、たまたまディルムッドが声をかけたときは間の悪いことに両親のことを考えていたときで、非常に気まずい思いをしたりと統一性はない。

 

「…紅茶のお代わりでもいれましょうか?」

 

 無難なところから攻めてみる。シェスカは、ピクリと指を動かし、のろのろと視線を従者にあわせた。

 

「……もらおうかな」

 

 自分に話す内容ではない、と判断したディルムッドは笑顔で頷くと彼女の目の前に置かれた、手のつけられず冷めてしまったカップを手に取った。

 彼女は、必要ならば必ず従者にその内容を話す。話さないということは、自身で解決できる内容ということだろう。それか、まだ先延ばしにする内容か。

 

「いらっしゃいませー」

 

 新刊の整理に屈んでいたムーディが、来客に顔を上げると、ぎょっと目を見開いた。

 そこには、屈んでいる体勢にしても見上げなければいけないほど、一般人を遥かに超える巨漢がいた。筋骨隆々、獣の毛皮でできた服を着たその男は、失礼な話だが本屋に用があるとはとても思えなかった。しかし客は客である、ムーディは根性で笑顔を作った。男はムーディをちらりと見て興味をなくしたのか、狭い店内を睥睨する。

 客たちは良くも悪くもこの店で起きるごたごたに慣れてしまっているので大げさに騒ぎはしないが、男の所作に何か悪いものを感じ始めていた。

 男が脇に本の積み重なっている入り口を超え、入店。二メートル四十センチを超え、天井をぶち抜いてロフトや柱で支えている天井空間はわりと広い「百万図書」であっても窮屈さを覚えるほどの巨漢である。その巨漢の後ろから、特に比較すると余計にそう思える小柄な黒髪の男と、携帯を弄る金髪の男、丈の短い胴着を着た女が入店してくる。ムーディの視界を遮るものがいなくなり、店外をみると、また何人かいるようだ。ムーディはとても嫌な予感がして、さっと番台に駆け寄った。

 駆け寄ると、ディルムッドが険しい目をして立っていた。彼の琥珀の目は、酷く警戒しており、後ろでマグカップに口をつけ本を脇に寄せたいつも通りの店主がいなければ、軽くトラウマになるほどの雰囲気である。

 

「ディルムッドさん…」

「シェスカ様といろ」

 

 ムーディに目もくれず、視線を巨漢一行に向けるディルムッドに気付いた男が、野生的ににやりと笑う。

 ずんずんと進んでくる男の体は横幅だけでも軽くムーディ二人分はある。所狭しと本が山積みされている店内で気にも留めず歩かれると、それだけで本が雪崩を起こす。

 それに、ぴくりと眉を顰めたのは店主であるシェスカ。

 ここにある本の半数以上が彼女の念能力によって作り出されたものであるが、それでも一般の客はそれを読みたくて借りていく。「百万図書」に訪れる客のほとんどが、本の虫、重度の本マニアなのだ。基本的に本の扱いは丁寧である。

 雪崩を起こすのはいい。店内が狭すぎて山積みするしかないのだから、そうなることは考慮している。しかし、それが起きたのに気にも留めずに歩くというのは、彼女には許せなかった。

そこは本好きとして慌てて片付けるだろう!

 ひとつ絶対零度の声音でお帰りいただこうかと、口を開きかけ、従者の様子に口を閉じた。

 

「用件を聞こう」

「いっちょ俺と戦えよ、色男」

 

 ディルムッドは睨む視線に険をこめた。

 ディルムッド・オディナはフィアナ騎士団に所属する根っからの騎士であり、現在はただ一人の主であるシェスカを守る忠義の騎士である。

 正々堂々とした騎士の戦を誇りとし、勝利を主に捧げる彼に、戦うという選択は吝かではない。それが騎士道にのっとった戦いであればあるほど、彼はそれに応じる。

 

 しかし、目の前の巨漢と戦う意味がない。

 

 巨漢が害をなすためにこの店に訪れたというのなら、それは勿論排除すべき害悪であろう。しかし、特に手を出すでなく、「戦え」というのはどういった思惑のあってのことだろう。

ディルムッドは、目の前の男を図りかねた。

 

「……何故?」

「ん~?何故って俺が戦いたいからだよ」

 

 ディルムッドの名声は、途中退場だとしても轟いている。見る人間が見れば、底を感じさせない技量を感じ取り、本気をだしていないことも簡単にわかる。克己心溢れる挑戦者がいてもおかしくはない。

 目の前の男がバトルマニアだとするならば、では連れはなんだというのか。

 ディルムッドの視線に気付いた巨漢の連れのうち、金髪の青年が人好きする笑顔を浮かべた。

 それを見て貸本屋主従は常連の男を思い出し、なにやら嫌な予感を感じた。

 

「ギャラリーだから気にしないで」

「いいからとととするね、やる気がでないならそこの女ちょと痛めつけてやろうか?」

 

 

 轟!

 

 

「っっ!」

 

 見えない圧力。それを気迫というのなら、そうなのだろう。

 ディルムッドから向けられるそれは、幾多の戦闘を経験し、世界で言う絶対強者的立場にあるものを一瞬でも竦みあがらせるにたる力をもっていた。

 

「……いいねぇ、信憑性あがってきたじゃねぇか」

 冷や汗をかきながら、巨漢の男が舌なめずりをする。

「フェイタン、余計なこというなよ!あー、寿命縮むっ!」

 金髪の男は一歩引いて、独特の口調の男を怒鳴った。

 フェイタンと呼ばれた小柄な男は、隠すつもりもない圧倒的な殺気を当てられ、それに一瞬でも怯んだことに憤慨した様子で、眦を吊り上げて傘に手をかけている。

 

 

「いやさ、他所でやってよ」

 

 

 空気を読まない店主の一言は、満場一致で可決された。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 とりあえず、思いっきり平手を食らわせてみた。

 クロロ・ルシルフルは、それを甘んじて受け入れ、右頬にいいのが一発はいる。はいるが、勿論それはダメージには直結せず、赤くなってすらいない。むしろ、殴ったほうが痛い。

 

「………理不尽すぎる」

「いや、ディルムッドを連れてる時点で君もたいがい理不尽だから」

 

 右手の掌をひらひらと動かし、なんとか痛みを誤魔化そうとするシェスカに、クロロは苦笑した。

 

「……彼等は仲間か?」

「そう…遅かったか…」

「ということは、やっぱりあの男が団長をボコボコにしたやつなんだ」

 

 貸本屋「百万図書」から離れ、町を出ると広がるアメリカンな荒野に全員が移動することになると、いつの間にかクロロが現れ、シェスカの隣にいた。

 貸本屋主従の冷たい目に晒されて頬をひく付かせたクロロは、巨漢の男とディルムッドが戦っている間、シェスカを責任もって護衛する旨を伝え、彼等と合流した。

 

「団長?」

 シェスカが、クロロの姿を認めると集まってきた巨漢一行の言葉に首を傾げる。

「あだ名だ、あだ名」

「ふぅん」

「あ、俺シャルナーク。よろしくね本屋さん」

 男はシャルナークと挨拶したが、他のメンバーは特に自己紹介らしきものはしなかった。シェスカに興味がないらしい。シェスカも興味がないので別段気にしていない。

 

「…よくディルムッドが移動を許可したな」

「私に手を出さないというのを約束させていたわ。どこまで本気か知らないけど、約束はしてくれたし、ただ単に戦いたいだけのようだから、私が許可した。店で暴れられると嫌だもの」

 

 視線の先に、巨漢の男とディルムッド。

 巨漢はぐるぐると手を回して準備運動をし、ディルムッドは槍を構えている。

 

「……あとで洗いざらい話して貰うわよ」

「わかっているよ」

 

 轟音が荒野に響き渡る。

 従者の勝利を確信しているシェスカは、腕を組んで完全な観客となった。

 

 

 

「いやいやいや、何さあれ」

「早いね、目で追うのがやっと」

「ウボォーの拳受けてどうして平気な面してんだ、あいつ!」

 

 眼前で繰り広げられる戦闘に、自身もまた高い戦闘技術を持つ幻影旅団のメンバーは戦慄した。

 貸本屋の護衛と戦っているのはウボォーギン。誰よりも戦闘を愛し、ガチンコを好む彼は、団長クロロを退けた男との戦闘を楽しみにしていた。

 彼等は世界に強い人間がいることを理解しているが、そんな中でも生きていけている自分達の戦闘能力を信頼していた。

 そんな中、団長クロロをボコボコにしただろう男。

 途中、クロロが合流したことで、それは確信に変わり、皆が男の戦いに注視していた。

 鍛え抜かれた体や、その身から発せられる気迫は本物で、確かに期待はしていた。

 

 ――――――――――しかし。

 

「ここまで来るといっそ化け物なんじゃとか思うんだけど!?」

「だからなんでそう…!ああ、ウボォー!」

「………おいおいおい」

 

 彼等は知らない。

 今、彼等の仲間であるウボォーギンが戦っている男の本性を。その力を。

 

 人の身で到達することのできない、英霊の力を。

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

「お疲れ様」

 シェスカがそう声をかけると、ディルムッドは頭を下げた。そうして、隣のクロロを蹴り、彼女の隣に立つ。

「扱いが酷くはないか?いつもか」

 クロロは、あいたたた、と半ば本気で痛がりながら、視線を上げ、半死半生のウボォーギンに念糸縫合をかけているマチと、それを見守るメンバーの下へ足を進める。

「団長」

「強かっただろ?アレ本当に存在自体が反則だから」

「何アレ、あんなのあり?ほとんど攻撃が効いて無いみたいなんだけど」

 シャルナークが顔を顰める。大半のメンバーが同じような顔をしていた。

「俺は彼等との付き合いのメリットデメリットを考えて、距離感を掴んで相手をしている。今回は俺が不用意な発言をしたからこうなってしまったわけだが…」

「団長」

 クロロの言葉を遮り、右腕がくっ付いたウボォーギンが上体をあげる。

 にやり、と笑った顔は野生の獣のようで、負けたというのに悲壮感は感じられない。

「面白かったぜ!あんなやつがいるとは、世の中広ぇもんだなぁ!」

 クロロは、微かに目を開いたあと「そうだな」といって笑った。

 

 

 

「――――――…というわけで、俺の不用意な発言に、仲間が暴走してしまったんだ」

「つまり全部君の所為か」

 

 絶対零度の双眸がクロロを射抜いた。

 あ、これは拙い。

 

「主、いい機会です。出禁などいかがでしょう」

 

 ここぞとばかりにいい笑顔のディルムッドが追い討ちをかける。

 

 やはり、そうくるよな。と半ば覚悟していたクロロはがっくりとうな垂れた。

 幻影旅団一の肉体を誇るウボォーギン相手にしても、ディルムッドの矛先にぶれはなく、圧倒的な実力差を見せ付けて勝敗を決した。

 ウボォーギン自身が戦闘を楽しみ、戦闘後に相手を貶めるようなことを言わなかったディルムッドを認めた。

 他のメンバーも戦闘を見て「あ、これはやばい」と思ったらしく、戦闘狂の気のある者は戦いたそうにしながらも、特に遺恨を残す様子も無かった。

 

「……そうだね…ディルムッド」

「はい」

 

 

 

「君は、今期のハンター試験を受けてきて」

 

 

 

 

 

 

 




クロロは何故か、ぽろっと言っちゃうような気がすると勝手に妄想してます。だって太公望だってぽろっとしちゃうくらいだもの。

戦闘描写苦手なのでさくさく終わらせてしまいました。脳内補完をよろしくお願いします。

ディルムッドクロロの息の根止める寸前までいけませんでしたね。残念でしたー。


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槍騎士、悲嘆にくれる

試験編はっじまるよー


 

 

 

「ルシルフルさんって何か食べれないものあります?」

「いや、ないよ。割となんでも食べる」

 

 ムーディはその返事に安堵したようで、包丁を握ると野菜を刻み始めた。トントントンとまな板に当たる規則的な音が聞こえる。

 

「私的なお客さんでも泊まったりしなかったから、いろいろ足りないものもあるかもしれません。何かあったら言って下さいねー」

 

 そういって手際よく家事をこなしていく男を、クロロは器用だなと思いつつ眺める。

 

 クロロの知る中で、貸本屋一行以外で「百万図書」の住居スペースに招待客が泊まるのは彼が初めてではないだろうか。少なくとも、よく目にする常連客では見かけたことはない。彼は、店主はパーソナルスペースに他人が入るのを嫌がる性質かと思っていたが、ただずぼらなだけなのか、或いは、危機管理の欠落している主に代わって従者が立ち入りを禁じていたのかもしれないと結論付けた。

 その危機管理を行う従者は、今この空間にいない。

 

「……なんでこうなった」

「君の今回の件の借りにしては軽いと思うけど」

 

 ぽつりと、思わず呟くクロロに、隣で古い文献を読んでいる店主が視線も上げずに応えた。

 クロロはそちらに視線を寄越して「まぁ…道理はわかるよ」と嘆息する。その際その文献に非常に心惹かれたので、読み終わったら貸してくれるようにお願いした。この文献に金はかからない。

 

「ディルムッドが試験から帰ってくるまで、君は私の護衛だよ。その間は店と家にある本は好きに見ていい。寧ろ好条件だと思ったけどね。まあ、私なら勘弁かな。時間もそうだし自分の行動を縛られるの嫌いだし」

 

 つまり、そういうことだ。

 

 

 

 

 

 

 槍騎士、悲嘆にくれる

 

 

 

 

「幸運値か、幸運値なのか!?」

 

 両手で壁に寄りかかり、頭をがっくりと垂れる青年は、苦痛に喘ぐかのように慟哭に近い声を漏らした。

 これを近くで聞くものがいれば理解不能な青年の言動に首をかしげたことだろう。この世界でもその意味を正しく理解できる人間は残念ながら一人だけだ。

 

 ディルムッド・オディナは薄暗くじめじめとした地下で試験の開始を待ちながら、何故自分はここにいるのかと悲嘆にくれていた。

 

 いや、主の言い分はわかるのだ。

 彼女の命令が、今このときでないと実行できないということも理解できるのだ。

 

 だが、だがしかし、彼は理屈ではわかっていても感情ではそのことに反発を覚えずにはいられなかった。

 

 何故、貴様が主の護衛なのだああああああああ!!!!!

 

 帰ったらクロロ殺す。と言わんばかりの八つ当たり以外の何物でもない気迫に、ここから遠く離れた貸本屋で、状況に慣れたクロロが優雅に珈琲を飲んでいると、壮絶な悪寒に苛まれたのは蛇足である。

 

 みしみしと、彼が両手を付いた壁が不穏な音を鳴らす。あまりの気迫に、試験常連で新人を陥れるのが何よりの楽しみである男も、彼に近づくことができずにすごすごと踵を返す。

 あるものは口の端をいやらしく吊り上げて「ああ、なんて素晴らしいのだろう」と彼を好色な目線で眺めている。

 あるものは「なんでここにいるのだろう」と内心首をかしげ、なんとか自分の正体を悟らせないように擬態に余念なく努めている。

 

 

 ディルムッド・オディナには当たり前だが戸籍が存在しない。彼はこことはまるで違う異世界の英雄であり、サーヴァントという形をとった英霊と呼ばれる人間を超越した存在である。

 この世界で戸籍がないということは、約半数以上の人間が『流星街』と呼ばれる場所の出身と考える。それほどに、戸籍管理のしっかりとなされた世界なのだ。

 シェスカには勿論、ムーディにも戸籍が存在し、しっかりと国からの保証などが受けられるようになっている。

 しかし、これが戸籍のない人間だと、とたんに不審なものをみるよな目つきになり、酷いときには言われもない侮蔑を受けることもある。

 

 貸本屋「百万図書」には、純粋に本を借りに来る人間だけが訪れるわけではない。

 

 時には殺害という手段をもってしてでも富を得ようとする輩が次々と現れるのだ。店主はそれに実は辟易としているし、表情に出ないだけでどうにかしないといけないと思ってもいた。いたが、いかんせん彼女の脳内の約七割以上が本に傾向していた。なおかつ悪いことに、そのすべてを武力でもって押さえつけることのできる従者がいるものだから、彼女はそれを優先事項からことごとく排除していた。

 

 しかし、あの日。

 鋭い視線で指先を睨みつけていたのは、そのとき読んでいた本に書かれていた主人公の境遇が、彼女にほんの少し似ており、優先事項から外していたその懸案に思い至ったのが原因だった。どうでもいいことにぐだぐだと時間をかけることが、本当にごく稀だがある彼女はそれに陥り、まるでタイミングを狙っていたかのように常連の仲間に従者が喧嘩を売られたことから、これを逃がすとこんな機会はないだろうと、彼女は決意した。

 

 ハンターライセンスを従者が得ることで、彼の素性は誰にも文句の言われない不動のものとなる。店に来る遠慮したい輩を警察に突き出すときに、そのライセンスひとつで不審から一転笑顔になる。店にプロハンターを雇っていると知れれば、金しか頭にない馬鹿を一気に減らすことができる。

 

 

「俺が試験を受けている間、誰が主をお守りするのですか!」

「ここにいる厄介ごとを運んできた張本人が。貸し借りが嫌だと思うならルシルフルは勿論命がけで私を守るよね?守れよこの野郎」

 

 

 クロロに拒否権など最初から存在しなかった。

 彼女の護衛を疎かにするという選択肢もなかった。

 まだ殺されたくはない。

 

 提示された条件もはっきり言えば好条件である。

 現に、実際彼女の護衛についたクロロはその日のうちに「条件飲んでよかった」と思ったのである。本読み放題、三食寝床つきなんて、ここに住もうかと思ったほどである。

 

 

 こうして、槍の騎士は試験会場へと見送られ、今に至る。

 

 

 ジリリリリリリリ。

 

 

 さまざまな受験生がひしめき合う、第287期ハンター試験が開始されようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「ハンター試験?そうだなぁ、長いときには一ヶ月以上かかるときもあるし、短いときは二、三日で終わるときもあるそうだよ」

 茶請けのマドレーヌを口にしながら、シャルナークはシェスカに答えた。

「ふぅん、決められた試験ではないのね」

「うん、毎回試験官によってころころ代わるみたいだね。俺のときも結構面倒だったし」

「難しい?」

「世間じゃ難関とか言われてるけど、能力者ならほとんど問題なく合格すると思うし、御宅の槍使いなら楽勝じゃない?」

 シェスカはその答えに満足したのか、目を伏せると珈琲に口をつけた。

 

 貸本屋「百万図書」の番台に腰掛けた彼女の横では、勝手知ったる様子で来客用の椅子を引っ張り出しそこに陣取って本を読みふけるクロロと、団長の様子を見物に来たシャルナークが、茶菓子をつまんでいた。

 シャルナークは特別シェスカたちに何かをしにきたというわけではなく、興味本位で訪れたから気にしないで欲しと断ってクロロの横に腰掛けた。

 話の流れで彼がハンターライセンスを持っていることをきいたシェスカは、いつもなら必ず自分の傍にいる従者がいない違和感にやはり慣れない様で、シャルナークに試験について質問をしていた。

 

「あー……試験といえば…団長」

「何だ」

 

 ちらり、と本から視線を上げる。このあたりはシェスカにはない気遣いである。

 シャルナークはちらりとシェスカを気の毒そうに見ると、クロロに向き直った。なんだその視線は、解せぬ。とばかりに半眼になるシェスカ。

 

「今期の試験、ヒソカも受けるって」

「…ん?去年は落ちたのか、あいつ」

「試験官半殺しで強制退場らしいよ」

「……あー、…ディルムッドか……」

「絶っっ対、目をつけられてると思うね。強いし、好みでしょ絶対」

「待て待て、誰だ。女か?面倒ごとか?」

 

 仲間内の不審な会話に、眉を顰めたシェスカが会話に強制介入する。二人はシェスカに生暖かい視線を寄越すと口の端を歪めた。

 その反応に、ぴくりと彼女の眉が跳ねる。

 

「男だよ。俺たちの……あー仲間って言いたくない。仕事仲間なんだけど…」

「仲間なんじゃないか…そいつが何?面倒ごとは勘弁して欲しいんだけど!?」

 

 言いよどむシャルナークの言葉に、嫌なものを感じたシェスカがギッとクロロを睨む。するとどうだろう、クロロも凄く嫌そうな顔をしていた。なんだその哀愁漂う表情は。

 

「……ウボォー…ああ、この前ディルムッドと戦った巨漢なんだが、あいつと同じくらいの戦闘狂だ。多少、いやかなり性質の悪い、な」

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 高速で飛んできた物体を、布で包まれた愛槍で弾き返すと、襲撃者は嬉しそうに破顔した。

 

「なんのつもりだ」

「うん?君ってとっても美味しそうだから、ちょっと味見?」

 

 まったく同時刻に、彼の主がしたように眉間に盛大な皺を作ると、ディルムッドは襲撃者を睨み付けた。

 左目の下には涙型、右目の下には星型のペイントが施された、まるでピエロの様な格好をした男。

 第一次試験の途中、階段を上りきった先での茶番の後に、試験官とディルムッドに向かって、男はトランプを放った。

 試験官はそれらを全部掴み、ディルムッドはすべてをはじき返す。

 試験官サトツは、以後同じことがあれば試験官への反逆行為とみなし即失格と厳しく非難したが、ディルムッドに対して行われた襲撃に関してお咎めはなかった。

 ディルムッドは、悪寒を覚え腕をさすった。

 

 なんだあの獲物を狙うようなねっとりとした視線はっ!

 

 百戦錬磨の騎士とはいえ、変態には慣れていないのである。

 

「あんな変態にも試験が受かればライセンスを発行するのか?狂気染みているな」

 

 できるだけ変質者から距離をとろうと、移動に移動を重ね、試験官の真後ろにつける。【詐欺師の塒】とよばれるヌメーレ湿原は、濃霧によって視界が遮られるが、サーヴァントであるディルムッドにはたいした障害にはならなかった。たしかにサーヴァントアーチャーのような飛びぬけた視力があるわけではないが、それでも常人を遥かに超える視力を有しているのだ。

 

「レオリオ――――!クラピカ――――!キルアが前に来たほうがいいってさ――――!!」

「どアホ――――いけるならとっくにいっとるわい!!」

「緊張感のないやつら」

 

 併走する少年二人組みのうち、黒髪の少年が後方に向かって叫ぶ。それは後方においてきた仲間を気遣うものだった。

 ディルムッドはそれを微笑ましい思いで聴いていた。清廉潔白な騎士である彼にとって、血の匂いを撒き散らすもう一人の猫毛の少年とは違い、黒髪の少年は非常に好感のもてる存在だった。先ほど変態によって落ちたモチベーションが微かに回復する。ああ、主。シェスカ様。俺はがんばります。必ずご命令通りライセンスを獲得してまいります!クロロ殺す!

 若干意識が暗黒面へと向かっていくと、その気配に気付いたのか猫毛の少年が恐ろしいものを見たかのように、目を見開いて距離をとる。ディルムッドは少し傷ついた。

 

「ってえ――――!!」

「レオリオ!!」

 

 後方で男の悲鳴が上がる。それは先ほど少年が呼んでいた仲間の声だった。

 

「ゴン!」

 

 猫毛の少年の制止も聞かず、黒髪の少年、ゴンは後方に向かって逆走する。

 

 ディルムッドは、麗しい少年達の友情に水を差した変態に、盛大な舌打ちを送った。

 

 

 

 試験官の後ろをキープしたまま着いた先には、二次試験会場となるプレハブの建物が建っていた。

 ともに併走していた少年は非常にディルムッドを警戒しており、終始ぴりぴりとした雰囲気が漂っていた。二次試験会場についた途端に距離をとられると、やはり少し傷ついたのだった。

 

 二次試験は正午ぴったりに開始されるらしい。会場からは常に何かの唸り声のような音が聞こえており、受験者たちは荒い息をつきながら試験会場を見守っている。

 ディルムッドは今しがた走ってきた道を振り返った。

 あの黒髪の少年はまだこちらに来ていない。

 

「あの変態に殺されてしまったのだろうか」

 

 一目見ただけでも将来有望そうな彼が殺されてしまったというのは非常に残念で、ディルムッドは、もし彼が本当に殺されたというのなら、機会があればその仇とってやろうと誓った。『弱きを助け強きを挫く』聞くものが聞けば、そんな勧善懲悪などこの世には存在しない夢物語だと嘲笑するだろう。しかし、彼は騎士である。その考えを理想とし、理想に近づく騎士足り得ようと努力する英雄であった。この試験を受かれば、誰にでもおかしなほどに優遇されるライセンスが得られる。たとえ大量殺人者の変態であろうとそうだ。それが、どうしても納得がいかないのは、異界の出身であるからだろうか。

 

 視界の隅で、ぎりぎりに試験会場に到達した少年と金髪の青年を見つけて、ディルムッドは知らず頬を緩めた。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 二次試験官メンチは、その青年を見て思わずうっとりしそうになり、気を引き締めた。

 

 なんでなんでなんで!?なんでこんな美形が?あ、いや、美形が試験受けちゃ駄目とかそんなんじゃなくて!おかしいわよ、なんで?初めて見たのよ?こんな胸が高鳴るなんて可笑しいでしょ!?可笑しいわよ!ちょ、ブハラ、私のことちょっと殴って!

 

「メンチ、どうしたの?食べないの?」

「……な、なんでもない。いただくわ」

 

 青年の持ってきた寿司を一口食べる。

 駄目だ、全体的にバランスが取れてない、シャリも硬すぎる。

 

「…不合格」

 

 呟くようにいうと、青年はやれやれと呆れたように肩を竦め、次の受験生に場所を譲り調理台に戻っていった。

 

 うっ…。そりゃ、見たらわかるわよ、彼が一流の武人であることなんて。でも試験は試験だもの。この試験は料理を見るんだから、私的な思いで試験の合否は決めちゃいけないの!しっかりしろメンチ!いい男がなんだ!いい男が…!……試験が終わったら逆ナンしてやるんだからああああああ!!

 

 

 結局、会長が出てきて再試験になったわ。いや、いいんだけどね、再試験。自分が悪いって思うところあったし。

 マフタツ山での再試験。ゆで卵を作るように指示したけど、谷に飛び降りる人間は63人だけ。勿論、その中にあの美形の24番もいたわけだけど…。

 

 えーっと…非能力者よねぇ?びっくりして思わず凝視しちゃったけど、崖を手を使わずに走って上ってきたように思えるんだけど?

 …会長が物凄くいい笑顔なのが気になるわ。

 くそう、早く試験終わらないかしら。最終試験終わったら即効でナンパするのに!

 

 

 飛行船で出された食事を試験官だけで食べていると、今年の受験生の話になった。一度全員落としておいてなんだけど、粒ぞろいよね。

「新人がいいですね、今年は」

 サトツさんの言葉には同感。

 それぞれ受験生の評価を上げていくけど、やっぱり気になるのは…。

「24番は…規格外ですね」

「あー、それ同感。見た目も反則だけど、中身も反則よね、彼」

「多分彼は、あの中で唯一44番と正面切った勝負で勝てる存在でしょう。会長も随分気にしていましたよ」

「あー44番ね…一回24番にボコられちゃえばいいのに」

「それはそれで喜びそうだよね」

 

 ブハラの最後の台詞に、全員思わず鳥肌たてちゃったわよ。

 

 

 

 

 

 

 

 




試験はさくさく終わらせます。^^ヒソカ?変態だよね!

※合格者の人数の変更がかかってます。

あと、別にディルムッドさんはキルア嫌いじゃないよ。ただ、こんな子供が血の匂いを…Orzみたいな感じです。

そういえばマチたちには魅了は効かないのかという問題。えーっと心構えの問題とか思ってます。たとえば、まだ作中には出てきてないので伏字ですが、●●●は男性に対して好意的であるので、効きますが、ストーカーになるほどではありません。もとから自制心の強い人は、がんばって抗う感じ。
今回のメンチも、男性に対して好意的で、惹かれているんですが、試験官という立場で抑えてる感じです。
マチは、たぶん元から旅団内の男性以外はそんなに興味もなく、もとからちょっと拒否をしているような人で、ディルムッドとの接触は「団長をボコったかもしれないやつ」という警戒心があったため魅了にいたりませんでした。
と一応作者のなかでは折り合いつけて書いてるつもりだったんですが……苦しいですかね?一応、一般男性より好意的にはなると思うんですけどね。つまりもれなくツンデレってことかい?マチのツンデレとか俺得です。


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槍騎士、迷走する

 

 

 

 

「そういえば、本屋さんっていくつ?」

 何故か家まで上がりこんだシャルナークは、ムーディの作った夕食を当たり前のように食べている。ムーディは三人分作るのも四人分作るものあまり変わらないと気にした様子もなく、寧ろいつもより賑やかな食卓に満更でもない様子だ。

 元々親交のあるクロロと、クロロの仲間うちでも特に人当たりのいい好青年然としたシャルナークに警戒心もあまりない。

 シェスカは魚の身と格闘しながら、おざなりに答えた。

「今年24だけど…」

「へぇ団長より2コ下だね」

 気分を害した風でもないシャルナークの返答に、思わずシェスカはクロロを見た。

「何だ?」

「……ルシルフル童顔過ぎない?」

「ぶっは!」

 

 爆笑するシャルナークの足を、クロロは思い切り蹴り付けた。

 

 

 

 

 

 

 槍騎士、迷走する

 

 

 

 

 

 三次試験会場に到着するまで自由に行動していいとのことだったので、ディルムッドは隠れるように移動し、霊体化した。

 人間ではない彼には休息が必要なく、ただねっとりとした粘着質な視線が付き纏うことに耐えられそうになかったので行方をくらますことにした。

 変態に耐性のない彼に、44番ヒソカは少し刺激が強すぎた。神経を逆なでする敵に出会うことはあっても、自分のいろんな意味で身の危険を感じる相手に見えるのは初めてだったのだ。思わず槍に手が行こうとするのを必死に耐えている。

 殺すのは簡単だ。だが、自分の都合だけで人を殺すというのは、騎士道に反する。

 ディルムッドは心の葛藤の末、できるだけ関わらないことにした。

 だとすれば、接触の不可能な霊体化することが、何よりも効率がいい。

 彼は、この世界でやろうと思えば正確無比な間諜になれるだろう。間諜まがいなど騎士のやることではないが、主が望むのであれば、それも吝かではない。

 飛行船の中を、丁度いい場所を探し彷徨う。

 霊体化して人との接触はこれでない。今度は、到着するまで静かに過ごせる場所を探していた。

 ハンター試験は、受験者の緊張を孕んだ空気がそこかしこに漂っている。それは、武人として嫌な雰囲気ではないのだが、休息をとっているときもそれでは気疲れしてしまう。特に、この試験に受験しているなかでも、トップクラスの実力を誇る幾人かはおそらくは辟易しているものもいるだろう。

 休めるときに休む。それはとても重要なことだ。

 別段体は休息を必要とはしていないが、それとは別に心のリラックスができる空間を彼は求めていた。

 ふと通りかかった部屋の隅を見れば、奇術師ヒソカと名乗る変態がトランプタワーを崩し、快感に耽っている場面に遭遇してしまった。

 

 ああ、主。シェスカ様。この程度では俺は負けません。まさか女ではなく男の変態に気を使わねばならない日がこようとは思いもしませんでした。しかも、盗人と同じくらいのレベルです。危険です。排除したほうが世界のためだと思います。もしも興味をもたれて店に来たらどうしましょう。ご命令に背いて即効で殺してしまうかもしれません。いや、こんなことは騎士道に反しましょう。やつも話をすればもしかしたらまともな……ない、本当にない。俺もまだまだ修行不足です。これもシェスカ様をお守りする完璧な騎士になるための試練なのでしょうか。いえ、そうなのでしょう。シェスカ様が俺を試験に送り出したときにこのような出会いを果たすとは、これを試練といわずなんといいましょう。俺は乗り切って見せます。必ずや忠義に応え、ライセンスを獲得して見せます!

 

 

 ディルムッド ハ コンラン シテイル

 

 

 結局いい場所を見つけることができず、彼は飛行船の展望台でぼんやりと朝日が昇るのを眺めていた。

 

 

 

 三次試験会場、トリックタワー。

 試験内容は、制限時間72時間以内に生きて下まで降りてくること。

 

 ディルムッドはトリックタワーの淵に立った。下を覗き込むも、地面は見えないほどに遥か下にある。

「まさか、試験の為だけにこれを建てたのか?」

 まず突っ込むところが違った。

 ふと視線を向けると、86番のナンバープレートの男が微かな取っ掛かりを頼りにタワーの攻略に乗り出している。

 わずかな時間であっという間に降りていく彼を、好奇心の旺盛な二人の少年が見守っている。

 順調に進んでいるかと思われた86番だったが「うわあああああああ!」怪鳥の餌食となった。

「なるほど」

 視線をスタート地点に戻す。外が駄目なら中になる。この塔に仕掛けがあるのだろう。しかし、どうしたものかとディルムッドは首をかしげた。

 

 彼は、このトリックタワーから飛び降りようかと考えていた。

 勿論ただ飛び降りるのではなく、ところどころ手なり槍なりでブレーキをかけるつもりだ。それで十分にどうとでもなる。怪鳥に関しては、あまり心配していない。

 しかし、そうなると一番乗りになるだろう。

「……72時間も、何をする?」

 間違いなく暇だ。

 シェスカのように本を読み続けて暇を潰すこともなければ、体を休めるために休息をとる、ということも必要ないのだから。

「……普通に攻略するか」

 もし仮に72時間に間に合わないようならば、最終手段――――壁をぶち抜き外からゴール、も考慮しながら、足の向きを変えた。

 ぐるりとさほど広くもないスタート地点を見渡すと、55人いたはずの受験生の姿が半数以上消えていた。

 こつこつとブーツの先で叩くように歩くと、空洞がところどころに存在することがわかった。つま先で押すと、微かに持ち上がる。

「ふむ」

 隠し扉は簡単に見つかった。しかし、ここでひとつ懸念がある。これが正規のルートであるかどうか、罠などが張られていないかどうか。

 微かに逡巡した後、考えてもしかたがないと諦めその隠し扉を選んだ。もし正規ルートでない場合や、罠の場合は、最終手段で押し通る。

 

 ――――ガコン。

 

 

「やあ◆」

「っ!!!!!!!」

 

 幸運値か!?幸運値なのかっ!!??

 

 

 隠し扉の先には、にこやかに微笑む奇術師がいた。

 

 

「……」

「ここは二人で協力して下まで降りる道なんだって?頑張ろうね?」

 

 ヒソカは扉の前に設置されたタイマーを投げて寄越す。ディルムッドは無言でそれを受け取ると、のろのろと自分の手首にそれをはめた。モチベーションがぐんぐん下がっているのが見て取れる。

 重い音を立てて扉が開く。

 ディルムッドは憂鬱に深いため息を吐いた。

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 ズズズ、と重い音を立てて扉が開くと、ディルムッドとヒソカは1階の広間に足を下ろした。

 試験終了を告げるアナウンスが鳴ると、詰めていた息を吐き出す。隣の奇術師は非常に機嫌が良いようで、鼻歌でも歌いだしそうだった。

 三次試験中はいろいろな罠や復讐者を名乗る試練官の妨害もあったが、ヒソカも余計なちょっかいをかけずに順調に階下に降りることができた。

 所有時間は、6時間17分。

 66時間近く所有時間が余ってしまった。これではわざわざ正規の攻略ルートを通って時間をかけようとした意味がない。

 けれども二人で狭い密室という恐ろしい空間を6時間体験したディルムッドは、1階に着くとすぐさまヒソカから距離をとり、手首のタイマーを外す。これで変態と同じ狭い空間にいることは免れた。たまに前を歩くときに感じた臀部への視線は勘違いと信じたい。

 

 風を斬る音に、布に包まれた愛槍を振る。布を角に持っていかれ、端切れが目の前で舞った。

 

「なんのつもりだ?」

「今から66時間近く時間があるんだ。ボクと少し遊ばないかい?」

 

 返事も聞かず、ヒソカが間合いを詰める。

 ディルムッドは眉を顰めると、喉元に迫ったトランプを叩き落とし、後続して襲い掛かるそれらを二槍でことごとく弾く。

 にたり、と口の端を歪めたヒソカの猛襲。

 ぞわり、と走った悪寒に顔を顰めディルムッドが槍を振るう。

 

「君って、非能力者だよ、ねぇ?」

「念のことか。習得はしていないが――――たいした問題では、ないっ!」

 

 見えない何か、いや、微かにサーヴァントとして直感が告げる『何』かが、トランプと自分を繋ぐように伸びる違和感を感じ、ディルムッドはそれに槍の矛先を向けた。破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)は、念を魔術的効果と認識していない。そのため破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)の持つ魔術的効果を遮断するという本来の力は発揮されない。それでも神代の時代、養父妖精王オェングスから贈られた神秘の塊である槍と、稀代の槍の名手たるディルムッドの技術の合わさった攻撃にヒソカの『念』は微かな抵抗もなく斬り伏せられた。

 

「っ!?」

 

 ヒソカが驚愕したように目を見開き、距離を離す。

 

「斬った?……見えてないよね?」

「見えなくとも問題はない」

「…いいね!」

 

 途端、溢れる殺気にディルムッドは怯むでもなく二槍を構える。

 

「念のことは知ってるんだ。習わないのかい?!」

 ヒソカの拳に違和感を感じる。念を集めているのだろう。

「俺には必要がない」

「残念?君絶対素晴らしい使い手になるのに!」

 一気に跳躍。衝突の衝撃で床の一部が破砕される。

「それは褒め言葉として受け取っておこう!」

 迫り来る拳。

 ディルムッドは目を逸らすことなく迎え撃った。

 上体をひねり、拳を避け、槍をぐるりと後ろへ回し、腕を振るう。布がずるずるとほつれ、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)の全貌が明らかになる。

 ディルムッドは舌打ちした。宝具を晒すつもりはなかったのだ。

 この世界の人間が正しく彼の持つ宝具の真の意味を知ることはないが、宝具(ノウブル・ファンタズム)とは、いわば「物質化した奇跡」である。その内包される神秘は、たとえ魔術にかかわる人間でなくとも圧倒的な力の本流を感じ取ることができるだろう。そんな「物質化した奇跡」をもっていれば、嫌でも目立つ。最悪どこぞの盗人よろしく湧き出す可能性すら考慮しなければならない。できるだけ目立たない。それは主であるシェスカの本意である。勿論彼はそれに従う。

 

 ―――ああ、くそ。

 

 ヒソカは破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を見ると目に狂気を迸らせた。その好戦的な表情は、まるで酔っているかのようですらある。

 本能的に、それが幾たびの戦場を越えた担い手であることに気付き、相対することができたことに酷く興奮しているのが手に取るようにわかる。

 ディルムッドとて戦いに身をおき、そこに誇りを見出す猛者だ、気持ちはわからないでもない。

 

 

「イイ!凄くイイよ?こんなの初めてだ!」

 

「気色が悪いわああああああああ!!!!」

 

 

 わからないでもないが、趣味趣向は残念ながら理解できないし、理解したくもなかった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

「ディルムッドさん、今頃どうしてますかねー」

「……試験受けてるでしょ」

「怪我とかしてないといいですね」

「するわけがないでしょ、彼が」

 

 シェスカは、ムーディに返事を返しながらも手元の本から視線をあげない。碧眼は相変わらずもの凄いスピードで文字を追いかけ、次々に頁を捲っていく。

 

「ちょ、ムーディ。ジャンパウロスの研究日誌の貸し出しとか俺しらないよ」

「え…あー!ルシルフルさん何してるんですか!予約名簿は見ちゃ駄目ですよ!」

 

 声をかけられ視線を寄越せば、クロロが我が物顔でムーディの定位置に腰掛、青いバインダーを広げていた。貸本の予約名簿であるそれは、特に人気が高かったり、レア度が高かったりする本の貸し出しの一覧で、基本的には店員以外覗いてはいけない。

 ムーディは取り返そうと手を伸ばすが、一般人である彼の手など恐れることもなく、クロロはひょいとかわし、さらに名簿を捲っていく。

 

「え、うわ。邪神信仰の教本とか…アルセリア滅亡期の宗教庁の内部告発書とか…軽くミレニアム。大丈夫なのこれ。凄い見たい。なんで俺に知らせてくれないの?」

「君の予約はまだ他にもあるだろ。あとで話す気ではいたさ」

「本当?でも見たいな…」

「じゃあ予約は全部キャンセル?七日であの量を読みきる自信があるならいいけど…」

 

 予約の貸本の名前を聞いてムーディは「読書狂ってわかんない…そんなの読んで何が面白いんだろう」と、それに盛り上がれる二人を見ながら思った。ちなみに彼は漫画くらいしか読まない。貸本屋の店員としてはかなり低レベルな知識しか持ち合わせていないのだ。クロロとシェスカの話している本の作者や、時代背景などさっぱりである。残念ながらこれからも覚えるつもりなどかけらもない。

 

 予約名簿を見られて焦っているのは自分だけで、店主なんて気にもしていない。そんな二人を見ていると、自分が馬鹿らしく思えてきたので、ムーディは通常業務に戻ることにした。

 エプロンを結びなおして、返ってきた本を棚に並べていく。途中常連にいつもいるはずのディルムッドの行方を聞かれたりしたが、適当にはぐらかし本の運搬に集中した。

 

 ふと、クロロは視線を入り口に向ける。シェスカも反射でそれと同じく顔を上げた。特に変わった様子はないが、どうしたのだろうかと、クロロに視線を寄越すのと、入り口から小柄な人影が全力疾走してきたのは同時だった。

 

 

「シェスカ・ランブールゥゥゥ!!覚悟するだわさぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 




尻の心配w
ディルムッドの活躍していた時代に、男色は普通にあったと思いますが、正直ヒソカ氏並みに変質的な人はいなかったんじゃないかと…神代の時代だから!!神様が普通に奇跡飛ばしてて妖精王とかいるくらいだから!!あんまりひどいと手ひどいしっぺ返しきそうですよね、当時って。周りをみると神の系譜やら妖精の系譜やら癒しの使い手やら…


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貸本屋、弄る

 

 

 

 

 

 

 小柄な人影は少女だった。可愛らしいその少女は、いつも半分が開かれている「百万図書」の引き戸を粉砕する勢いで突撃してくる。

「いまなら、いけるっっ!」

 きらり、と狩人の目をした少女はそういって視界に納めた店主に狙いを定める。

 クロロは、その少女が念の使い手であることに気付くと、すぐさまシェスカの前に陣取った。達人と呼んで差し障りない流れるような纏に感心するとともに警戒する。

 少女は、自分の視界に納めていた店主にかわり、黒髪の青年が前を遮ったことに踏鞴をふみ、まるで車のブレーキをかけるかのように地面を擦って止まった。

 じろじろと、値踏みするかのようにクロロを見る。

 クロロも、いつでも動けるように、少女の動きに注視する。

 すると、少女は幾分もしないうちにふるふると体を震えさせ始め、拳をぎゅうと握り、歯を食いしばる。ギッ、と睨むようにクロロを見据え―――。

 

「ディルムッドに続いてこんないい男をっ!!く、くやしくなんてないんだから!!でも、どっちか寄越すだわさぁぁぁぁ!!!」

 

 力いっぱい叫んだ。

 

 

 

 

 

 貸本屋、弄る

 

 

 

「ビスケ…五月蝿いわ。騒ぐなら閉店後に来て頂戴」

「すっごい冷静、流石店長」

 ムーディは流れるような突っ込みの店主に思わず拍手をした。

 離れたところで全体を見ていたため、ムーディからは三人それぞれの様子が見えていた。

 クロロだけは、変な雄たけびに頬を引き攣らせはしたが、まだ目の前の少女が危険でないのか判断がついていないため警戒をといていない。

「ルシルフルさん、大丈夫です。店長の友達ですよ」

「友達じゃないわさ!」

 ムーディが二人の間に入ろうとすると、すかさず少女が反論する。

「えーっと…知人の方です」

 めんどくせぇ、と目が語るが、言い直してクロロに紹介する。

「ビスケット・クルーガーさん。たまーに来られるんです。店長とは長い付き合いらしいです」

 そうは紹介されても、第三者が変装しているということも考えられるため、一応シェスカに声をかける。シェスカは面倒くさそうに頷いた。気配でそれを察したクロロは、許可が下りたので横にそれる。

 少女、ビスケットの視界に、ようやく店主が現れた。

 店主はすでに少女から興味をなくしているのか、いつものように本を開いている。

 ビスケットはシェスカを認めるとずかずかと勇み足で近寄り、ずずいっと顔を寄せる。鼻先が当たるのではないかというくらい近づいているにもかかわらず、本から視線を上げない。男二人が妙なところでぶれないな、と関心していると、その反応にビスケットの額に青筋が走る。

 口を開きかけるその前に、目線をあげたシェスカの視線と絡んだ。

 

「折角何匹も猫を飼ってるのに、見せる暇が無かったわね」

「うぐぅぅっ!」

 

 ビスケットは妙な悲鳴を上げてうな垂れた。

 

 

「……えーっと…仲いいんだな」

「ええ、仲良しさんですよ」

 

 その一連の流れで、クロロは彼女等の関係を理解した。

 

 

 

「ムーディ、奥にいるから。ルシルフル、ビスケがいるから護衛はいいわ、本を読んでいてもいいからムーディと一緒に店内にいて頂戴。いつもディルムッドがやってることの延長をしてくれたらいいから」

 そういって店内から姿を消す二人に、クロロは手を振って応えた。

 そう長くもない廊下を二人で移動する。ビスケットは先ほどからクロロのことが気になるようで、扉が閉まるその瞬間も視線を逸らすことはなかった。

「気になるの?」

「いっちゃなんだけど、危険だわさ。どういった人間かわかっているんでしょうね?」

「常連客よ。私に借りがあるから、ちょっと手伝うように言ってるだけ」

 ダイニングに着くと、ビスケは当然のように一人がけのソファに座り、シェスカは珍しいことにキッチンに足を向けると、インスタント珈琲の缶を手に取った。インスタントなところにシェスカらしさを感じたビスケットは、相変わらずのずぼらさに呆れた顔をした。これが護衛の槍騎士なら、ちゃんとサイフォンで淹れてくれるのだから、見習えばよいのに。

 

「……ハンター協会の爺から連絡をもらったわ。随分危険な真似したと思ったら…あんなイイ男どこでみつけてきたわさ。寄越せ」

「だから、ただの常連よ。勝手に口説きなさい。ディルムッドがいないから番犬の真似してもらってるの。それより、なんで貴女に連絡がくるのよ」

 インスタントの粉に湯を注ぎ、ぐるぐるとスプーンでかき回すと、それを両手で持ち片方を少女に手渡す。

 ビスケットはマグカップを受け取ると、それに口をつけた。

 インスタントらしい味がした。

「爺が直接見たのよ。あと二十年若ければ戦いたかったらしいわよ。…あの爺は爺で人外だわさ、その人外でもディルムッドには勝てないでしょうけどね…。そんな人間がいたら、普通調べるのは当然でしょう?それが良識のある人間ならよっぽど囲いたいわさ。それで、あたしと面識があることがわかって連絡がきたのよ」

「それはまぁ、プライバシーの侵害と訴えてもいいのやら」

「察しなさいよ。アンタねぇ、自分がどんな人間を傍に置いてるか、理解してるの?そのお陰でこんな危険人物ホイホイな店舗で悠々自適に過ごせてるって言うのに」

 シェスカは無言で肩を竦めた。

 ビスケットはむっとして唇を尖らせ、形のいい眉がきりりとつりあげる。

「まったく!こんな店ディルムッドの顔を見に来るためじゃなければこないっていうのに、たまに見に来てみればこれだもの!罰当たりな奴だわさ!アンタそんなんじゃいつか刺されるわよ!?」

「私が刺されるかもしれないから急いで来てくれたんだ。ありがと」

 

 ビスケットは瞬間沸騰し撃沈した。

 

 

 どこかで悪魔の笑い声を聞いたと、後に常連の一人は語る。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 トリックタワーの1階。

 早々にタワー攻略を果たした雲隠流上忍のハンゾーは意気揚々とゴールを果たし、扉をくぐった。

 これは時間的に絶対に一番乗りだろうと、得意げな気分でいると、すでにゴール地点には先客がいた。

 先客は、24番ディルムッド、301番ギタラクルの二名。

 ハンゾーはその二人を見て鼻白んだ。

 大人気なく不満そうな顔をして、とりあえず二人から遠い場所に移動する。

 二人とも特にハンゾーに興味を持った風でもない。彼としては301番と仲良くしようとは思えないので別段構わないのだが、まともそうな24番に視線すら寄越されないというのは上忍としての矜持がいたく刺激される。そっちがそんな態度なら、こっちだって相応の態度があるんだ、と彼は自分勝手な自己完結をし、これから一切相手をしないと決めた。決して彼の容姿に嫉妬しているわけではない、絶対だ。

 そうして視線を誰とも合わせないまま壁際に移動して初めて、そこに二人以外の先客がいたことに気付くと、盛大に頬を引き攣らせた。たゆまぬ訓練が、彼が情けなく悲鳴を上げることを阻止した。努力は報われると、妙な関心をすることになったが、今はそれどころではない。

 

 埋まっている。

 ものの見事に埋まっている。

 

 そこには壁に3センチほど埋まった、44番ヒソカがいた。

 

 

 ハンゾーは思わず後退る。

 誰がどう見ても今試験でもっとも危険視されている受験生のヒソカ。その彼が、気絶しているのか、気配が薄い状態で壁にめり込んでいる。

 何がなんだかわけがわからず混乱したハンゾーは、あたりを見回した。

 

 そこで初めて視線が絡まる。

 

 24番ディルムッド。彼の視線は一直線にヒソカに向かっている。よくみれば、ゴール地点の床の一部がところどころ砕け、ここで戦闘があったことを如実に語っていた。

 そしてハンゾーは、ディルムッドの姿を改めて見て驚愕に目を見開いた。

 彼の手に握られていた長物が獲物であることは理解していたが、それを隠すように巻かれた布の下から、あのようなものが出てくるとはハンゾーは予想だにしなかった。

 

 ―――――槍。

 

 彼が知るどんな槍にも該当しない、恐ろしいほどの気配をもつ紅い槍。

 

 ――――ああ、ああいうのを、魔槍っていうんだな。

 

 槍の魔力に、ハンゾーはしばし見蕩れ、結局ヒソカのことを言及することをすっかり忘れ、真実を突き止めることはできなかったのである。

 

 

 

 呆けたようにディルムッド否、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を見つめるハンゾーとは別に、301番ギタラクル、本名イルミ・ゾルディックはこちらも視線を合わせないように努力しながらディルムッドを警戒している。

 パドキア共和国、ククルーマウンテンに居を構える暗殺一家ゾルディック家の長男であり、依頼があればどんな人物でも殺す暗殺者。

 そんな彼だが、父親から言いつけられている言葉がある。

「蜘蛛には関わるな。貸本屋には手を出すな」

 彼の父親は貸本屋「百万図書」店主の殺害を依頼された際、その貸本屋の護衛に暗殺を阻止された。相対した護衛の異常性に気付いた父親は、依頼の取り消しがあったあと「貸本屋には手を出すな」と彼も含めた息子達に警告した。

 実際に見ていないイルミには父親のいう「異常性」とやらがいったいどんなものなのかわからなかったが、今試験で実際に本人を見て父の言葉に従うことを決めた。

 自分がかつて、彼の主人を暗殺しようとした一族の人間と知れたらどうなるか…嫌な汗が背中を伝う。弟キルアが馬鹿正直に彼の前で自分の家名を名乗らないといいのだが、今は隠れて試験を受けている身だ、警告することもできない。

 

 ちらり、と壁と友達になっているヒソカを見て、ああはなりたくないな、と胸中ごちた。

 

 

 その後も、ぞくぞくと受験者たちが降りてきてはヒソカを見て悲鳴を上げるか、顔を引き攣らせるという現象が続き、今度は起きたらおきたで不気味な笑い声をあげるヒソカに、受験者達は気が気ではなかった。

 

 

 

 気が気ではないのは何も受験者ばかりではない。

 44番ヒソカ、301番ギタラクルという凄腕の念能力者を尾行しなければならない試験官たちは、いつかその矛先が自分達に向くのではないかとはらはらしながら追いかけていた。残念ながら、プロハンターであるにも関わらずあまり彼等の腕はよくないらしく、二人に早々に気付かれた。気付いていたが、放置された。そのことに試験官たちは胸をなでおろした。

 24番ディルムッドもまた、試験官を好きにさせていた。

 ただし、ターゲットを狩ってからは、霊体化させてもらうつもりなので撒く気満々である。

 ヒソカと拳を交えた彼は、この四次試験で絶対にかち合うことがないようにと気合をいれた。

 ディルムッドの生きた時代に、男色文化は広く根付いていた為、どちらもいけるという人間を見てきてはいる。見てきているが、あんな猟奇的な変態はいなかった。根本的に相容れないと早々に悟った彼は、とりあえずできるだけ接触をさけることにした。

 それならやはり霊体化が一番確実である。

 

「プレートを貰い受けよう」

 

「よりにもよってアンタかよ!」

 

 狙うターゲットは、294番。

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

「付き合いが長いって彼女いくつ?」

「さあ?女に歳は聞かないものだ、ってディルムッドさんが言ってたもので」

 

 見た目通りの年齢じゃないってことか、まあ念能力者だしな、と納得する。振り向いたムーディも情けなく眉を下げていた。

 

「なんとなーくなんですけど、ルシルフルさんたちと同類ですよね?」

「へぇ、気付いてたんだ」

「そりゃーいろんな方が来ますから」

 

 一流の念能力者ともなれば、その雰囲気も強者のそれになることが多い。ディルムッドという規格外が傍にいて、クロロという常連の気配に慣れれば、それとなく気付くこともできはするのだろう。

 

「ビスケさんも、ここが開店してからたまにディルムッドさん目当てに来店されますけど、もうここ5年以上姿が変わってませんから、気付きますよ」

「あー、寧ろそれで気付かなかったら相当鈍いよね」

 

 ムーディの脳裏に、ディルムッド相手に体をくねくねと奇妙に動かす少女の姿が浮かぶ。しかし彼女はディルムッドに対して誠実で、恋する乙女というには、落ち着き払った態度は寧ろムーディより年上に見える。真実そうではないかと半ば確信していたりする。

 

「まあ、いいんじゃない。シェスカは敵が多い。それは彼女が好きで作った敵ではないけど、味方が多いに越したことはないしね」

「ルシルフルさんも、手伝ってくれますしね」

 

 ムーディの無邪気とも取れる言葉に、クロロは意味深に微笑むだけで、答えることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これでクロロがビスケと仲良しだと、クロロがただのロリコンにしか見えないという、ね。ヒソカは喜んで対応しそうだけど、同属嫌悪とか覚えそうだなぁ。

ビスケさん、ツンデレ。需要などがあるかは謎です。

ビスケさんはチャームにかかっても、実年齢あれだから、結構落ち着いてそう、という勝手なイメージ。なのでディルムッドも邪険にしたりしないと。

さくさく試験は終らせます(・ω・`)ディルムッドのSAN値ががりがり削られてるから(笑)


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貸本屋、誘われる

 

 

 

 

 

 

 

「俺は夢を見ているのか…?シェスカが店から出る、だと…っ!?」

「女の買い物ですよ、ルシルフルさん」

 

 手の甲で何度も目を擦るクロロに、この人疲れてるんだろうなぁ、とムーディは生暖かい視線を送った。

 

 

 シェスカ・ランブールは自他共に認める引き篭もりだ。

 滅多なことがない限り移動は店舗と住居のみ。

 家事も仕事もアルバイト任せ。

 ご近所でも「あそこの女店主さん見たことないわねぇ」と言われるほどである。といっても貸本屋「百万図書」の周辺五十メートルは空き地だが。

 そんな彼女だが、現在長い付き合いの念能力者、ビスケット・クルーガーに手を引かれ近くの繁華街へとむかっている。

 女性に必要なものを買い出しにいっているのだ。

 ディルムッドの「魅了」は本当に強力で、ほんの少し人の多い場所にいくと、それだけで大量の恋する女性ができてしまう。

 そんな彼とでは、必要なものを揃えることはできない。しかし、彼がいないと護衛がいない。どうしようもなかった。

 通販で済む分は済ませているが、それではどうしようもないものが男女ともにある。それに気付いたビスケットは、シェスカと会うといつもこうして連れ出すようにしている。

 容姿だけ見れば、姉を引っ張る妹のように見えるかもしれないが、その実中身はずぼらな娘を心配する母親と、面倒くさがりの娘のそれだった。

 

「さーて…買うわよぉ!」

「私の買い物となると途端に金遣いが荒くなるね、貴女は」

「だってあたしの金じゃないし」

 

 途中タクシーを拾い、意気揚々と買い物に繰り出す。徒歩移動はあまりできない。貸本屋の店主の体力の無さを舐めてはいけない。

「さてさて、とりあえず…身の回りからだわね。コスメー、下着―、服―…」

「最近サイズが合わなくなった」

「はぁ、どこ?腹?足?アンタいい加減動くわさ」

「いや、胸が…。腰周りは去年とかわらな…」

「喧嘩売ってんの!?」

 

 

 

 

 

 

 貸本屋、誘われる

 

 

 

 

 ヒソカという名の変態をかわしながらターゲットを探すこと3日。ターゲットである294番は、今試験の中で念を習得していない受験者の中ではもっとも腕利きといっていいハンゾーという忍んでいない男。自分もまた狩られる側にあることを理解している彼は、高所を高速で移動していたが、さすがにディルムッドから逃げ切れるわけもなかった。

 ハンゾーはふてくされた顔をして地面に座り込んだ。彼の手元に、自身のナンバープレートはない。手元にあるのは、勘違いで手に入れた198番のプレートだけだ。

 見上げると、絶世の美丈夫がハンゾーのナンバープレートをしまいこんでいた。

 ハンゾーとて上忍としての矜持がある。抵抗を試みてみたものの、ものの数十秒で地面に押さえつけられたときに、改めて実力差を悟った。余計な抵抗は、これからの試験終了までの枷となる。ハンゾーは抵抗をやめた。

 せめてもと198番のプレートは手元に残しておきたい、という申し出を、ディルムッドは快く了承した。

 船の中で調達したのか、三次試験で見た槍は布に包まれ、あの魔性の姿を拝むことはできなくなっていた。

それだけは、残念だと思う。

 

「俺もなぁ、腕にゃあ自信があるんだけどなぁ」

 

 思わず零したぼやきに、ディルムッドの視線が降りる。

 ハンゾーも、自分が相当にお喋りだということは理解している。一番重要なことや、秘匿するべきことを話したりはしないが、それでも職業からしてみれば異常に話好きといっていいだろう。その癖が、ディルムッドの良識ある態度が、口を軽くした。

 

「そうだな。いい腕だと思う」

 

 まさか返事が返されるとは思っていなかったハンゾーは、思わずディルムッドを仰いだ。

 ディルムッドの真摯な双眸は、言葉がその場限りの嘘ではないことを語っていた。

 

「そうか、アンタにそういってもらえるなら少しは自信も回復するってもんだ」

 

 ふてくされた顔から一転笑顔で答えると、ディルムッドも微かに口の端を持ち上げて応えた。

 

 ディルムッドは、ちらりと視線を木々に向ける。ハンゾーもその視線の意図は理解した。そこに、協会の試験官がいるのだ。彼はそれを確認すると、微かに目を伏せた後、無言でハンゾーの前から姿を消した。

 

「…っし!プレート集めるか!」

 

 立ち上がり、気合を入れると、木々の上にと飛び上がりこちらも姿を消した。その後姿に憂いはない。

 

 ハンゾーと別れると、ディルムッドは道無き森の中を彷徨う。試験官はそれを尾行し続ける。

 プレートは手に入れた。これでディルムッドの持ち点は6点。このまま期間を無事過ごせば、この試験は合格。あとは最終試験を終えて、終了。彼は晴れて自由の身となり、準備期間も入れてここ数週間会うことのできなかった主人の下へと帰ることができる。そう思えば、ゼビル島滞在も苦ではなくなる。早々に今も尾行してくる試験官を撒いて霊体化しよう。変態に出会ったらことだ。

 そうと決まれば行動は早い。彼は両脚に意識を向ける。

 

 最速のサーヴァント、その速度についてこれるか?

 

 人の悪い笑みを浮かべると、彼は地面を蹴った。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

 目が合った。

 流石に驚いた顔をしている。

 

 ばっと釣竿を構えるが、その動きはまるで何かの阻害を受けているように緩慢だ。手先や踏みしめた足が微かに震えている。恐怖からではない。彼の目には恐怖による焦燥の色は感じられない。

 

 ディルムッドは一次試験で好感を持っていた黒髪の少年ゴンと、生い茂る大木の、人の大きさほどある根の絡み合った洞で出会った。

 試験官を撒いているが、人の目がない場所を探さなければならなかったディルムッドは、人の流れが良く見える背の高い木々のうえに移動しようとしていた。

 そこで、上手く気配を殺している少年と目が合った。

 

 警戒しているのが手に取るようにわかる。こちらの些細な動きも見逃さないと、その目が語る。

 ディルムッドは、両手を挙げた。

 

「もう俺はプレートを点数分集めている。危害を加える気はない」

 

 果たしてこんなことを言って信じてもらえるかどうかはわからないが、とりあえず言わないよりはましだろうと判断した。

 無言で消えても良かったのだが、そうするとこの少年にいらない警戒を常に持たせることになる。それはどうにも不憫に思えてならない。ディルムッドは友情や仁義といった人間の美徳を愛する精神をもっている。ゴンの持つ優しさや友情は試験中に何度か目撃している。好感の持てる人間に、いらぬ敵愾心をもたれたくは無かった。

 ディルムッドの琥珀の目から、逸らさずにじっと観察する。

 数拍の後、ゴンは深い息を吐き出すと構えをといた。

 どうやらディルムッドの言葉を信じることにしたらしい。

 

 動物的勘で動いているのか?

 

 ふと思ったが、声には出さず、両手を下ろした。

 

「怪我でもしているのか?」

 

 余裕や優越的地位にある状況からではなく、純粋にまだ幼い少年の精彩に欠けた動きを気遣って思わず声をかけた。

 少年は微かに目を見開く。確かにまったく試験中に関わることの無かった、いうなればライバルのような関係性の受験者から声をかけられれば、勘繰ってしまうことだろう。やってしまったか?と胸中後悔していると、少年は引き攣る頬で微かに笑った。腫れ上がった頬が痛々しい。

 

「手はいるか?」

 

 少年は首を横に振った。

 

「そうか」

 

 微かに顎を引いて応えると、少年は目元を和らげた。

 

「あと4日だ、気張れよ」

 

 あえて「頑張れ」とは言わない。彼はもう十分に頑張っているさなかだ。少年はディルムッドの気遣いに目線で答えた。

 ディルムッドはそれを確認すると、大木を駆け上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 シェスカは電話をするビスケットの後ろ姿をぼんやり眺めた。

 日差しを受けて、腰を下ろした噴水の水がきらきらと輝いている。目の前を子供達が駆けまわり、幸せそうな街の住人たちが談笑しながら通り過ぎていく。

 足元には最近調子の悪いパソコンの代わりに買ったノートパソコンの箱と大量の紙袋。中には、服や化粧品、下着や特売のインスタント珈琲、帰ったら四人で食べようと有名店のドーナツなどなど。

 シェスカはため息をついた。ビスケットとの買い物は有意義だが疲れる。先ほどのランジェリー店ではまるで親の仇を見るような目で見てこられて彼女はほとほと困った。育つものは育つ。こればかりは自分の意思でどうにかできるものではないのだ。

 

「は?嫌よ。なんであたしが…はっ?副会長派?馬鹿じゃないの彼は…」

 

 ビスケットの雰囲気が悪い。電話相手は彼女を怒らせているようだ。いや、好きで怒らせているわけではないのだろうが。

 シェスカの耳にたびたび聞こえる会話の断片。

 ビスケットの職業はハンターだ。非常に優秀で、いろいろなコネクションを各方面に持っているらしく、シェスカが世間に不慣れな頃は、彼女のお陰で助かったことも多々ある。ハンター協会会長の直弟子で、念能力者としても指導者としても優れているとかで、よく電話で借り出されるのも目撃している。

 今回も、なにやらお呼び出しのようであるが、彼女は非常に渋っている。忌々しそうな口調が、彼女の沸点を超えるまで時間がかからないと如実に告げていた。

 電話口でその容姿からは考えにくい罵声を飛ばすと、ちらりとシェスカに目配せする。

 シェスカの護衛がいないという話が、もし彼女を狙うものたちにしれたら、今ほどいい襲撃の機会はないだろう。ビスケットもそれを重々承知しているので、連れ出すときは細心の注意を払いながら、人通りのある場所を選んでくれる。今も、離れてはいるが会話の断片を拾えるくらいの距離ではある。

 

 ビスケットは会話を続けながら、シェスカから視線を逸らさない。

 何事かと彼女が首を傾げるが、ビスケットは眉間に皺を寄せるだけだった。

 

「……良いわ、馬鹿。どうやっても彼がどちらにもつかない(・・・・・・・・・)ってこと信じないなら、こっちからその証拠引っ提げてやろうじゃない。その代わり、そのことで彼の逆鱗に触れてあんた達の身が危険に晒されても、あたしは擁護しないわ。あたしの言葉を信じなかったあんた達の不始末はあんた達がしなさい!」

 

 棘のある言葉を叩きつけるように電話口の相手にとばすと、ビスケットは電話口で何事か叫んでいる相手を無視して携帯電話の通話を切り、電源まで切り落とした。

 

「……ご立腹ねぇ」

「馬鹿ばっかり!困ったもんだわさ!年長者の話を信じない馬鹿は痛い目みるといいわさ!」

 ずかずかと勇み足でシェスカの元まで戻ってくる。腕を組んで憤慨した様子を隠しもしない。

「甘いものでも食べる?」

「喉が渇いたから何か飲みたいわ」

「わかった。そこの珈琲ショップが、先ほどから私の嗅覚を刺激してやまないから行こう」

「読書狂はカフェイン摂取も半端じゃないわね」

「友達だから」

「友好関係の改善を要求するわ」

 

 調子が戻ってきたらしいビスケットが、紙袋の山を持ち、シェスカがパソコンの箱を持ち上げる。地力の差があるシェスカは大量の荷物を持って帰れないので、見た目に反して他の人類を圧倒する力を持つビスケットが荷物をもつ。傍から見ると、妹に荷物を持たせる意地の悪い姉にしか見えない。

 珈琲ショップに入ると、中央の席に陣取る。窓際はいけない、狙撃されるかもしれないから。入り口はいけない、突撃を受けやすいから。端っこはいけない、逃げ道がないから。

 

 シェスカは頬杖をついてビスケットに視線を寄越す。先ほどの電話に関しては追求しないが、なかなか不穏な会話だったように思われる。なんだかんだと付き合いも長く、それなりに恩もあり、ディルムッドに関しても他の女性達とは違い女性らしい「粘着性」や「見境のなさ」のない彼女には、できればあまり危ない橋を渡って欲しくないというのが、シェスカの本音だ。

 

 運ばれてきた珈琲を、ビスケットは二つとも手に取り、軽く口をつけシェスカに手渡す。慣れた動作のそれに、いつもシェスカは顔を顰める。毒見などして欲しくはないのだが、これは連れ出すたびに行われる半ば慣例化した作業だった。ディルムッドのいない彼女を守ることは、ビスケットの命を守ることにも直結している。いくらディルムッドにしても気安い女性とはいえ、彼にとっての一番は常に主であるシェスカ・ランブールであり、それ以外は手が回れば手助けをする対象でしかない。その主を、自分で守るから連れ出させて欲しいといっているのだ、守れなければどうなるか、考えるまでもない。

 

 湯気の立つ珈琲に鼻先を近づける。挽きたての豆の匂いに目元を和らげ、一口。

「…美味しい」

「あのイケメンに毎朝毎晩珈琲淹れて貰っていながら、さらに求める贅沢さ。万死に値する、提訴するわさ」

「今は飲めてないからその話は、反対多数で否決されました」

「……く、悔しくなんてないんだから!」

 

 自分の分のカフェオレを自棄なのか男前に一気飲みすると、ビスケットは真剣な目でシェスカを見据えた。

 器用に片眉を跳ね上げると、シェスカもカップをソーサーに戻す。

 居住まいを正したビスケットは、一度口を開き、閉じ、そしてまた開いた。

 

 

 

「ハンター試験最終試験会場まで、一緒に来て欲しんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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槍騎士、心配する

ご都合主義が全開です。ハンゾーはがんばりました。3次試験の合格者の人数を変更します。
トーナメント表が見辛いことがあったらお知らせください。挿絵にします。


 

 

 

 

 

 

「だが断る」

「即答かい」

「来て欲しいんだけど、というお願いの形式をとった実質強制だということを理解しているがあえて言おう。だが断る」

 

 実質強制の名の通り、結局のところ拒否したところで連行されるのは、彼女との長いつき合いから理解していた。だがあえて言う、これぞ引き篭もりクオリティ。

 

 

 

 

 

 

 槍騎士、心配する

 

 

 

 

 

 貸本屋「百万図書」に帰ると、ムーディが丁度道路に気絶した男を引きずり捨てているところだった。

 シェスカたちに気付いたムーディは、ぱっと顔を輝かせる。

 

「お帰りなさい、店長」

「ただいま。ムーディ、これ新調してきたからデータ移し変えて」

 

 ムーディに買ってきたばかりのノートパソコンの箱を手渡すと、彼は喜んでそれを受け取った。アルバイトにしてはありえない量の仕事をこなす彼には、パソコンは必需品なのだ。

 

「変わったことはなかった?」

「えーっと、比較的襲撃が多かったくらいですね。どうやらディルムッドさんがいないことがばれちゃったみたいですよ。まぁ、全部ルシルフルさんが処理してくれましたけど」

 ディルムッドが試験に行ってから結構な時間がたっていることを考えれば、情報規制は上手くいったと考えていいだろう。これに関しては「俺が手伝ってあげようかー?」とマドレーヌを頬張りながら提案してくれたシャルナークに感謝してもいい。ちゃっかり料金はもっていかれたが、その分仕事は確かだった。

「ちゃんと仕事してたんだな、よしよし」

「アンタ以上に仕事しないやつがいたら見てみたいわさ」

 腕を組んで無表情に頷く店主に、ビスケットは呆れた目線を送る。

「いいかい、世の中にはニートといってね…」

「店長職がなにをほざくか。世の中の働く店長さんに謝れ」

 ビスケットの突込みを軽く無視して店内に3人で戻ると、相変わらず来客用の椅子に腰掛けたクロロが本から視線を上げてこちらを見た。

 片手を上げると彼も片手を上げて応える。

「ムーディ、お茶淹れてくれる。ドーナツ買ってきたから」

「うわ、ブルーノのドーナツじゃないですか!やったー。淹れてきます!」

 ムーディはドーナツの箱を片手に奥へと引っ込んだ。

「荷物置きにいきましょ」

「アンタの部屋には入んないわさ」

「廊下に置いといていいよ」

「下着を廊下に置くな!痴女か!」

 

 

 

 色とりどりのドーナツを大皿に盛って、四人でお茶に舌鼓を打つ。

 貸本屋「百万図書」では、従業員と常連がこうやってティータイムをすることは周知されているため誰も突っ込まない。というか、この店にくる客は基本的に本以外興味がないので、従業員の態度に文句をいう人間自体滅多にいない。

「…ムーディ少しの間店を休みにするけど、ついてくる?それとも休暇とる?」

「ふえ!?急にどうしたんですか?」

「いや、私もよくわからん。ビスケがとりあえず私とのランデブー希望らしい」

「意味深な言い方すんな!」

「長期で出かけるってことですか?じゃあ俺久しぶりに買い物とかしたいんで…」

 ビスケットの叫びを黙殺し、貸本屋二人の会話は続く。

 拳をぷるぷる震えさせるビスケットに、クロロが哀れむような視線を送る。イケメンでもそんな目で見られたら嬉しくない、とビスケットはキッと睨み返した。クロロの視線の生暖かさが増した。撃沈した。

「そうね、じゃあ店は閉めといていいから、告知だけしておいて。ついでに10日間ほど休みにしておきましょう。連絡だけ取れるようにしておいてくれれば、あとは好きにしていいから」

「はい、わかりました。でも珍しいですねーどこ行くんですか?」

「さあ知らない」

 肩を竦める店主に、クロロとムーディの視線がビスケットに行く。ビスケットは忌々しそうに口を尖らせると最終試験会場の場所を答えた。

「遠いな…」

 クロロは、大陸をまたいだ先の場所に顔を顰めた。

「あぁ、着いてくるのルシルフル」

「こないと拙いだろう。俺はまだ死にたくないぞ」

 思い浮かぶのは、この店を送り出されるときの槍騎士の表情。

 クロロに対して飛ばされる視線のなんと恐ろしいことか。慣れてないものでは軽くトラウマになること必至のその視線は、それだけで人が殺せそうなほど怨嗟の篭ったものだった。

 そんな「主一筋」のディルムッドを差し置いて護衛をしているというのに、いくら念の使い手として優秀で、顔見知りとはいえビスケットにシェスカを一任して自分が傍を離れたらどうなるか。

 槍の矛先が自分に向けて放たれるのは目に見えている。

「そうそう、試験に君の知人?仲間?がいるんだったよね。もしその人も残ってたら、責任もって連れて帰ってね。こっちに被害がくるとか本当に勘弁だから、容赦しないから」

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

『え――――これより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は2階の第1応接室までおこしください』

 

 四次試験を終えた受験者達は、ハンター協会の保有する飛行船に迎えられ最終試験会場へと向かっていた。

 合格者は全10名。

 ディルムッドによってプレートを奪われたハンゾーも、試験終了まで駆け回りプレートを6枚なんとか手に入れ、飛行船に乗っていた。

 

 第1応接室と書かれたプレートの下がっている部屋の扉を数回ノックすると、中から了承の声がする。

 呼ぶ順番に統一性はないらしく、ディルムッドは最後の面談者になった。

「失礼する」

 ディルムッドは扉を開けて中に入る。一段上がった場所に、主人の好きなストローマット(畳)が引いてあり、中央にはハンター協会会長ネテロが腰掛けている。

「まあ座りなされ」

 ネテロが座布団を進めてくるので、素直にそこに腰を下ろす。

「参考までにいくつか質問するがよいかの?」

「お答えできる範囲であれば」

 ディルムッドの礼儀正しい態度に気を良くしたネテロは「それでは」と面談を開始するが、胸中では複雑な思いを抱えていた。目の前の美青年は、容姿もさることながら、底を感じさせない実力に思わず背筋を正してしまうような圧倒的な気配がある。それはネテロだけではなく、今期の試験官であるプロハンター達も感じたことだ。

 あと20年若ければ、一度手合わせをしてみたい。そんな言葉を無意識に零していたらしく、それを聞きつけた心配性の会長大好き!派の一部が勝手に動いているらしい。お陰で直弟子であるビスケットからお叱りの電話がかかってきた。師を敬う気持ちゼロである。

 面白いことは好きだが、面倒なことは嫌いなネテロは、双方ともに気を配らなければならない自分の立ち位置に軽くため息を漏らしそうになったとか。

 

「まず、なぜハンターになりたいのかな?」

「主に命じられてのこと。別段なりたいわけではない」

「…ふむ、ではおぬし以外の9人の中で1番注目しているのは?」

「…悪い意味なら44番。いい意味でなら405番、か」

「では、最後の質問じゃ。9人の中で一番戦いたくはないのは?」

「405番と99番。子供に手を出すの仁義に反する」

「ふむふむ、ご苦労じゃった。下がってよいぞ」

 

 ディルムッドは、失礼する、と声をかけて応接室を後にした。扉が閉まり、部屋を無音が支配すると、ネテロは先ほどの会話を思い出す。

 

「主…主人か。主定まった強大な力とは…下手な者の元にあれば、災厄しか招かぬのだが…ビスケにそれとなーく聞いてみるかのぉ」

 

 今期の最終試験に残った受験者の中には、殺人に有利といった人間の道徳など捨てきったような発言をするものもいる。

 

「これは注意が必要じゃのう」

 

 気付けば喉がからからに乾いていた。

 口に含んだ緑茶が、予想以上に苦いのは、どうしてか。

 

 

 最終試験場となるハンター協会が経営するホテルへつくと、各々休むようにと解散をさせられた。最終試験は3日後に開始するとのこと。ディルムッドはホテルに着くと電話を探した。1次試験から4次試験まで、シェスカに連絡することができないでいたからだ。定期連絡と、できれば主の様子が知りたい。本来なら、たとえ何があろうとも自分の手で守りたい主人が、よりにもよって一度は殺しにきた「盗人」と一緒にいるなど、本来なら許しがたいことだ。盗人ことクロロにとっては、ディルムッドを敵に回してまでシェスカに害をなすメリットがないので本人は何もする気がないのだが。

 いかんせん主であるシェスカは書物以外に心惹かれない、いい意味では意志が強く、悪い意味ではずぼらな性格であるため危機感が欠落している。彼は心配で心配でたまらなかった。

 

 ただひとつディルムッドの誤解があるとすれば、シェスカの危機感は欠落しているのではなく、ディルムッドによって欠落させられたといっても過言ではないということだ。これは両者ともに気付いてはいないことであったが、危機感を培う前に、ディルムッドがすべてを排除し、彼女から危険なものを遠ざけたことに起因している。

 

 ディルムッドは主を守りたかった。忠義を貫きたかった。

 シェスカはディルムッドに応えた。忠誠を受け取った。

 

 いかなる敵も、いかなる危機も、いつなんときも離れず、どんな敵に相対しても、ディルムッドの忠誠が揺れることはなく、そして敵の刃がシェスカに届くことはなかった。

 

 ディルムッドはいう、貴女にはどんな危機も近づけはしまい、と。

 ディルムッドはいう、貴女は何もなさらなくてもいい、すべては俺がやります、と。

 

 シェスカは頷いた、彼女の力で危機から脱することはできない、彼に任せたほうが効率がいい、と。

 シェスカは頷いた、彼が任せてくれといっている。それを覆すのは裏切りではないか、と。

 

 そんな生活が10年以上続き、いつしかシェスカから危機感は薄れていった。そんな生活が続き、ディルムッドはその忠義に報いるために彼女の敵を屠り続けた。

 

 両者ともに、そこに破綻がないので気付いてはいない。もし気付いても、その有様を受け入れるかもしれない。しかし、ごく一部、そのことに気付いている彼女等の知人は、そのことに密かに危機感を抱いているのは確かだった。

 

 

 ホテルのカウンターに立つフロントクラークの男性に声をかけ、電話を貸してもらうと早速店に電話をかける。

 店の電話はアンティークといっていい黒電話で、主人従業員ともに携帯電話なんて便利なものは持っていない。店から出ないのだから必要がないのだ。

 リリリリリン。

 リリリリリン。

 リリリリリン。

 リリリリリン。

「……」

 待てども待てども電話に出る様子がない。時計を見れば、まだ営業時間中だ。ムーディが忙しくてでれないのか。と思い、しばらく待つが、やはり誰もでなかった。黒電話には留守番電話機能などついているわけもなく、相変わらず着信を告げる音だけが無情に鳴り続けるだけだった。

「……」

 店が多忙なのはいつものことだ。比較的ゆっくりしているように見えるが、ムーディは基本的に忙殺されているし、主は電話にでない。クロロがいるが、彼が電話にでるとは考えにくい。

「あとでまたかけるか…」

 ディルムッドは結局電話を切り、宛がわれた部屋へ戻ることにした。久方振りに主人の声が聞けるかと思い微かに高揚した気分がどんどん落ち込んでいく。

 この試験を受けに来て、気分が優れたことのほうが少ない。

 なにやらもの悲しさを覚えながら、エレベーターに乗り込んだ。

 

 

 結局、電話は最終試験が始まるそのときまで繋がることはなかった。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

「最終試験は1対1のトーナメント形式で行う。その組み合わせは――――こうじゃ」

 

 

 

 

         ┃―――ディルムッド

      ┃――┃

   ┃――┃  ┃―――レオリオ

   ┃  ┃   

   ┃  ┃     ┃――ヒソカ

   ┃  ┃――┃――┃

 ――┃     ┃  ┃――クラピカ

   ┃     ┃―――――ポドロ

   ┃  

   ┃  ┃――――――――ギタラクル

   ┃――┃

      ┃  ┃―――――キルア

      ┃――┃

         ┃  ┃――ポックル

         ┃――┃

            ┃  ┃――ハンゾー

            ┃――┃

               ┃――ゴン

 

 

 

 

 このトーナメントの構成は身体能力値、精神能力値、そして印象値からなる3つの値から会長ネテロの独断と偏見で決まった。

 99番キルアはこれにおおいに不満を抱いているようだ。確かに、本来の成績でいうなれば、44番ヒソカ、301番ギタラクル、24番ディルムッドの成績は群を抜いていいので、このトーナメントの組み合わせは不公平になる。そこは、ネテロが判断した「印象値」によるところが大きいからだ。

 ヒソカは「殺人、その他利便性」ギタラクルは「仕事の都合上」ディルムッドは「主人の命令」と、好成績者は軒並みハンターになりたいからライセンスを取る、という理由ではない。ハンター協会側からすれば、きちんと「ハンター」としてライセンスを欲しいと思う者にチャンスを与えたくなるのも頷ける。

 ディルムッドとしては負ける気がしないので、文句もない。

 それは、他の受験者も同様らしくキルア以外は特に口をひらかない。

 

 

「それでは最終試験を開始する!!」

 

「第1試合、ハンゾー対ゴン!」

 

 

 

 

 

 



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貸本屋、合流する

 

 

 

 

「店長、これ連絡先です」

 ムーディは電話番号の書かれた紙切れをシェスカに手渡す。肩には旅行鞄が提げられており、10日間という休暇を有意義に使う気満々であることが伺える。

「誰?この番号」

「あ、知人の番号です。そいつにかけてもらえば俺に繋がります」

「うん、わかった。まあ、別に連絡することないと思うけど」

「携帯いりますかねぇ」

「必要性を感じないわ」

 基本的にシェスカは引き篭もりで店から出ないし、ムーディは半端ではない量の仕事をしているので、こんなときでなければ外出などしない。外にいる人間と連絡がとりたいなら、店舗の電話で事足りた。

「鍵閉め終わったわよ」

 貸本屋二人が視線を寄越すと、ビスケットが腰に手を当てて店舗の入り口を指差した。店舗の扉には、「お休みします。開店は10日後…百万図書」という張り紙が申し訳程度に張ってあり、普通の南京錠と、神字の刻まれた鍵も取り付けてある。これで「一般人」と「そうでない」者の侵入を防いでいる。壁一面いたるところに希少な蔵書が眠る店舗に穴を開けて侵入する者は少ないだろうということで、とりあえず入り口を塞いでいる。住居側の入り口も同様に鍵を掛け、そのほかトラップもしかけている。とりあえず、留守の間はこの仕様で不埒者を撃退するつもりでいた。もし仮に侵入を果たし、蔵書が盗難にあったとしても、残念ならが価値ある書物は基本的にシェスカの念能力による産物であるので、7日間で消失してしまうためそれほどの痛手をおうことはない。

「ありがとう、ビスケ」

「ま、これくらいはどうってことないわさ」

 ビスケットとしては、今後のためにもここで好感を残しておきたいので、神字を刻む行為も二つ返事で了承した。

 これが有効とわかれば、引き篭もりとワーカーホリックも少しは外に出るかもしれないという母性的な発想が影にはあるのだが、勿論そんなことはおくびにも出さない。

「ルシルフル」

「こっちはいつでも」

 セミフォーマルな格好をしたクロロは、特に荷物もないようで片手をあげて応えた。実は財布さえもっていない。必要なら奪う、とまさに盗賊の鑑のような男である。

「じゃ、いってくるわ」

「はい、気をつけて」

 

 

 

 

 

 貸本屋、合流する

 

 

 

 

 ハンター最終試験は、多少最初の1戦で時間がとられたものの、滞りなく進んでいた。ゴンVSハンゾーは、ハンゾーが負けを宣言することでゴンの勝利が確定し、次の勝負へと移行した。

 第2試合、クラピカVSヒソカ。この試合ではヒソカが何事かクラピカに囁き、その後ヒソカが負けを宣言し、クラピカの勝利に終る。

 第3試合、ハンゾーVSポックル。この試合は、第1試合のゴン戦を観戦していたポックルがハンゾーの脅しに屈し、負けを宣言。ハンゾーの勝利となる。

 第4試合、ヒソカVSボドロ。一方的なワンサイドゲームになっていたが、この試合でもヒソカが何事か囁き、その後ボトロが負けを宣言し、ヒソカの勝利となる。

 第5試合、キルアVSポックル。キルアが開始と同時に戦線離脱、ポックルの勝利となる。

 第6試合、ディルムッドVSレオリオ。この試合に関しては、レオリオが、この試合が終った後に控えるボドロのため、彼の怪我を理由に後回しにして欲しいと要求。これをディルムッドも了承、委員会も認めたため、ディルムッドVSレオリオは、ギタラクルVSキルアの試合の後に開始されることとなった。

 

 

 

「久しぶりだね、キル」

「あ、兄…貴!」

 ギタラクルの顔から鋲が一本一本抜けていくと、そこには先ほどとはまったくの別人としかいいようのない黒髪の青年が立っていた。

 彼等はキルアの言葉通りなら兄弟であり、殺し屋なのだという。

 キルアと長時間行動をともにしていたレオリオとクラピカは、彼等の家業を承知しているらしい。その職業を聞いても目立った困惑は見られない。

 暗殺者で、一家でそれを生業にしていると聞き、ディルムッドの秀麗な顔が歪む。

「失礼」

 距離を縮め、次の対戦相手であるレオリオに声をかけると、レオリオは視線をディルムッドへ向けた。怪訝な表情ではあるが、特に邪険にするでもなく「なんだ?」と聞き返す。

 このとき、密かにギタラクル―――イルミが身構えたのを、ネテロとヒソカは見逃さなかった。

「彼等の家名を知っていたら教えて欲しい」

「あ?ゾルディックだろ。有名らしいぜ」

「――――――ほう」

 

 瞬間。

 

 室内の空気は確かに凍りついた。

 イルミによる徹底的な教育により「勝ち目のない敵とは戦うな」と言い聞かせられたキルアなどは、可哀想なほどに怯えていた。何故なら、部屋を凍りつかせた絶対零度のその気配は、明らかに試験中の2人に向かって放たれたものであるからだ。

 

「…貴様等、よくもこの俺の前に出てこれたな…舐めているのか?」

「…『彼』から説明があったんじゃないの?俺たちはビジネスで暗殺を請けてる。君の主人に手を出すことはもうないよ」

「主を襲った事実には変わりはない。危険の芽があるとするならば、それを排除するのは当然の役目」

「えー…困ったな、どういえば信じてくれるわけ?うちとしては、勝算のない殺しはしないんだけど?」

「信じる?面白いことを言うな、暗殺者。主の命を奪おうという輩の言葉に耳を傾ける者がどこにいる?」

 

 ミシリ。

 

 と、確かに部屋の空気が軋む。2人にだけは理解できる話に置いていかれた周りは見守ることしかできない。それでも、圧迫する空気は彼等の意識を蝕む。それを向けられているわけでもないのに肌が粟立つというのに、濃密な殺意の本流は、中央にいる兄弟2人に向けられている。平然な顔をしているがその実高速でなんとか切り抜けようと考えるイルミと、それどころではないキルア。特に、念能力を習得しておらず、事情が理解できないキルアは混乱の極みで足ががくがくと震え、顔色は蒼白となっていた。

 

「昂ぶっているところまこと恐縮じゃがのう、今彼等に危害を加えれば試験失格になるぞ?この場合はお主の私情による試合の干渉になるので、失格になるのは当然お主じゃ――――その主人の命でここにきているのではなかったかの?」

 

 絶対零度の空間の中で、ネテロの言葉が室内全員に届く。その言葉を理解すると、じわりと温かみが広がるように感じるのは、そのカリスマ故か。

 無意識に息を詰めていたものたちが、はっ、っと呼吸を再開させる。

 ゴンのときとは違い、圧倒的に敗戦色の強い試合に手を出すのではなく、あくまで私生活の中であった事情による介入は、試合をしている二人ではなくディルムッド自身の過失となる。

 

 ディルムッドの怒れる琥珀の双眸がネテロを射抜いた。イルミとの間に割り込まれたからではない。事情も知らない第3者に主人のことを話題に出されたのが、今の彼には不愉快だったのだ。

 数拍の沈黙ののち、ディルムッドはゆっくりと目を伏せた。体を壁に密着させ、何事も無かったかのように腕を組む。

 空気が幾分か和らいだ。しかし、目線を上げたその双眸の苛烈さはなりを潜めてはいない。彼がまだ、煮えたぎる激情を抱えていることは誰の目にも明らかだった。

 兄のほうはまだ耐性があるとして、弟のほうは限界に近いのか、冷や汗が止まらず握り締めた拳の強さが、彼がいかに我慢を強いられているかを物語っていた。

 

「24番。やめろ(・・・)

 

 この状態のディルムッドに声をかけられるとすれば、それは彼の主人くらいしかいないものだと思われた。しかし、硬い声のそれは、彼の真横から聞こえた。

 

「……」

 

 403番、レオリオ。

 ディルムッドより微かに高い身長の彼は、不機嫌さを隠しもしないでなお続ける。

 

「キルアは確かにゾルディックっていう暗殺一家なんだとよ。でもあいつは暗殺嫌なんだと!自由になりたいんだと!どうやら事情知ってるのはあっちの猫目の兄貴のほうみたいじゃねぇか、12歳になったばっかの餓鬼に難癖つけんのやめろ」

 

 恐怖を感じないといえばそれは嘘になる。

 レオリオからすれば、良識のあるように見えるディルムッドは、しかし実力だけでいえばヒソカと同等ほどとみていた。そんな実力者に、自分が勝てるとは思えない。しかし、レオリオには言わないという選択肢はなかった。嫌というほど時間のあったトリックタワーで彼の話は聞いた。いくら暗殺一家期待の三男で、元暗殺者といっても、今のキルアは明らかに怯えていた。そして理解していない様子だった。

 レオリオにとって、キルアはもう仲間だった。彼にとって力の及ぶ限り手を貸すべき友人だった。

 そして、彼の恩人で仲間であるゴンと同じ、まだ12歳の子供だった。

 

 ディルムッドは微かに目を開いてレオリオを見た。

 後ろではレオリオの行動を見送ったクラピカも、呆然としていた。

 クラピカもディルムッドに言いたいことはあった。彼にとってもキルアは仲間である。様子からしてキルアは何も知らない可能性があることを理解した。しかし、どういっていいものか考えあぐねいていたのだが。

 自分の感情で走ることがあるとは思っていたが。彼はいい意味で、レオリオの凄さに賞賛を送った。

 そして、ディルムッドもまた同じ気持ちを抱いた。

 

「…そうか。そうだな…確かに俺の落ち度もある。…謝罪しよう、そっちの99番にだけな。これからの試合に俺は一切干渉しない」

 

 ディルムッドは恥じいるように目を伏せると、キルアに向けてのみ口頭での謝罪を口にした。その雰囲気は、通常の彼の雰囲気に戻っていた。

 

 キルアは緩んだ空気に力の入った体を弛緩させる。

 それを見たレオリオは「なんだこいつ、話したらわかるじゃねぇか」とディルムッドの評価を修正した。

 

「…いい友人に恵まれたものだな」

 

 ぽつりと零した言葉が、まさかこの試験に更なる波紋を呼ぶとは、彼は思いもしなかった。

 

 

 

 

 

「レオリオ氏VSディルムッド氏の試合は、圧倒的な実力差を感じたレオリオ氏が床に押さえつけられ、右腕を締め上げられたところでレオリオ氏が負けを宣言。ディルムッド氏の合格が確定しました。それから持ち越しされていたレオリオ氏VSボドロ氏の試合開始と同時に――――…キルア氏は、ボドロ氏を殺害。委員会は彼を不合格とみなしました」

 

 

 サトツは、ゴンに試験の顛末を語った。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

「冷や汗ものじゃったよ、ビスケ」

「そりゃご愁傷様。あたしも今はまだ無事だけど、これからどうなるかわかんないわさ。なんせ彼の逆鱗連れてきたわけだし。あとはあの能天気書痴が上手く制御してくれるのを期待するしかないわね」

「まったく…カリスマ☆会長とは辛いものじゃのう」

「☆とか付けるな、腹が立つから」

「ところでその『ご主人様』は今どこかのう?」

「その言い方、彼に聞かれないようにして欲しいわさ。多分本気で怒る……そこの窓から見えるわ…茶髪の女が黒髪の男とソファーに座ってるでしょ」

 

 会長ネテロは、最終試験会場まで赴いたビスケットと対面し、噂の『逆鱗』の所在を尋ねる。

 今試験に関わったハンターが集まる中2階のレクリエーション室の窓から覗き込むと、1階のロビーの様子がよく見える。

 エントランスロビーの、室内用樹木の隣にある大人が三人座っても余裕のありそうなソファーに、男女二人が腰掛けていた。

 一人は、電話をしているようで、額にバンダナを巻いた黒髪の男。

 一人は、黙々と本を読みふけっている、茶髪の女。

 ネテロは二人を観察し、まず黒髪の男の見事な纏に感心し、茶髪の女の見事な双丘にだらしなく目元を垂らした。

 ギロリ、と隣で直弟子に睨まれなければ、軽く10分は観察していたかもしれない。

 ゴホン、と誤魔化すように咳払いをする。ビスケットの絶対零度の視線がいやに痛かった。視線を鋭くしていたビスケットは、思い出したかのように掌を打った。

「それはそうと、念習得の合格者には話はし終わったの?」

「ほ?終っとるよ?それがどうした?」

「彼はどうするの。念を習得してようがしてまいがはっきり言ってあまり意味のない人だわよ」

「そうなんじゃよ…一応裏試験合格に『念』の習得は必須事項なのじゃが……彼、習得しとらんが見えとるんじゃろ?」

「ええ、はじめてあったときからわかってたみたい」

 

 ふたりの師弟は「あーっ…」とまったく同じ所作で天を仰いだ。

 

「無意識に『凝』みたいなことをしとるってことじゃろ?……もういんじゃね?」

「同感…一応委員会で話し合ったほうがいいとは思うけど…激しく同感」

 

 実際は違和感に対処しているだけだが、あまりに正確な彼の動作に、二人は彼が『見えている』ものと思ったのだ。

 一応部屋に集まったプロハンター達に視線を寄越すが、誰も彼も特に異議はないようである。特に、トリックタワーの監視カメラで2人の戦闘を見ていたリッポーは顔色が悪い。

 2次試験官メンチは、体をもじもじと落ち着き無く動かし、言おうか言わないでおくか、考えあぐねいている様子が手に取るようにわかる。

「メンチくん、どうしたかね?」

 意地は悪いが、おっぱい大きい女性が大好きなネテロはひげを弄りながらメンチに声をかけた。

 メンチは、微かに逡巡したあと、躊躇いがちに「主人」と「24番」がどうしてそう注目されているかを口にした。

 

「どこの誰か知らないけど、あれだけの実力者が副会長派に味方についたらどうしようとか、栓のないこといってあたしの手を煩わせたのよ。全く!こっちから言わせるならディルムッドがあいつ…シェスカ以外の人間に傾倒するわけないわさ!……んん?あーっ…ほら…丁度再会を…『ズガアァァァン』……再会した途端かよ」

 

 さすがディルムッド歪みない。ビスケットの真顔に試験官たちは引いた。

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 クロロは高速で上体を前に屈めた。

 チッ、と髪が何かを掠めると同時に、轟音が響く。

 

「―――…チッ」

「舌打ち!?舌打ちした今!?殺す気満々!?」

 

 クロロの後方。

 白い壁に轟音を立てて黄色い(・・・)槍が突き刺さっている。

 あと少し前に屈むのが遅かったら、クロロの顔に黄色い(・・・)槍が突き刺さっていたことだろう。

 

「何それスプラッタ」

 

 隣に座って本を読みふけっていたシェスカは、その事実に気付くと思わず呟いた。相変わらず突っ込みどころに問題ありである。

 

「盗人…貴様…貴様貴様貴様ァ!主をこのような場所に連れてくるとはどういうつもりだ!いや、言い訳はいい、聞かない。聞かないからとりあえず殺させろ。それで許す」

「殺されて許すってめちゃくちゃすぎるだろ!?」

「電話をしても出ないと思ったら、貴様が連れ歩いていたのだろう!主を危険に晒すとは、やはり貴様に護衛としての意識はないらしい。よし、死ね」

「嫌だこいつ全然俺の話聞く気ないよ!?」

「常識的なことを口にしようとしているようだが、まず俺は貴様に常識を求めていないから大丈夫だ」

「どの辺が大丈夫なの!?」

 

 ひゅん、と布に包まれた長い方の獲物を回し、いつでも突撃できる体制をとっているディルムッド。

 はっきりいえば八つ当たりだと思われるが、勿論彼が試験中にどんな目にあったか、クロロは知らない。

「シェ…シェスカ!」

 隣の唯一の制御装置に助けを求める。怖すぎて視線を逸らすことができないので、手探りで彼女の手を握る。ディルムッドの双眸が怪しい光をたたえる。

 シェスカは半眼でクロロを見た。

 そして過去を振り返る。

 まあ、借りの分仕事はしてくれたかな、という結論に達した。今の状況は、それ以上にホテル側に迷惑だろうと、クロロの身よりホテルを取った。酷い。

 

「ディルムッド」

「はい、シェスカ様」

 

 先ほどまでクロロに相対していたときには考えられない変わり身の早さで、シェスカに向き直る。

 これで彼等の間に色恋がまったくないというのだから、クロロには彼等の関係は理解し難いものだった。

 

「試験は?」

「はい、問題…なく」

 

 微かに間があったが、ディルムッドは手渡されたばかりのライセンスカードをシェスカに手渡した。

 シェスカはそれを手に取るとしげしげと眺め、感触を確かめたりしている。

 

「普通ね」

「セキュリティは半端ないらしいよ」

 

 シャルナークもライセンスを所持しているため、クロロは彼等よりライセンスに対する知識はある。

 一見普通のカードだが、それ自体に偽造防止のためのあらゆる最高技術が施されている。

 

「…そう」

 

 カードを返すと、周りを見渡した。もの凄い注目を集めるかと思いきや、ハンター協会が配慮したのか、囲んでいるものは『念』の気配があるものばかり。

 その中で、ぞくり、と背筋を粟立たせる感覚に、思わず視線を寄越す。

 

「……ピエロ?」

「…ヒソカ」

 

 そこにいたのは、にたりと微笑む、奇術師。

 思わず呟いたシェスカの視線を追ったクロロとディルムッドの眉間に皺がよる。

 

「知り合いか盗人。縁を切ったほうがいいと忠告できるレベルだぞ。ちなみに俺は貴様とも縁を切りたい」

「……あーあー…」

「あ、お仲間?」

「盗人、店の敷居を跨ぐな。2度とだ」

 

 今試験に彼等の仲間が参加しているという言葉を思い出したシェスカは、半眼でクロロを見たが、クロロの表情がディルムッドと良く似たようになっているのを見てなんだか可哀想になった。

 どうやら見ているだけで手を出してこないようなので、とっととビスケットと合流して店に帰ろう、と腰を上げる。

 

「ビスケと合流して帰りましょ」

「…主をここに呼んだのは彼女でしたか」

「どういう理由か知らないけど」

 

 肩を竦めるシェスカに、ディルムッドの表情が曇る。

 クロロに手を上げるのに躊躇いはないが、ビスケットは昔から世話になった知人だ。主を危険な目に合わせたという事実は憤慨するところだが、クロロのように簡単に槍を向けられる相手ではない。

 それに、考えようによっては、クロロとビスケットの二人がいると考えれば、確かにシェスカの身に及ぶ危険度は下がる。

 だからといって、一言も苦言を口にしないことはできないが。

 

「あ、そうだそうだ。そのビスケにやれっていわれたことがあったのよ…」

「はぁ…」

「うーん…恥ずかしい…やる意味もわからないけど…仕方ないか」

「主?」

「ディルムッド」

 

 シェスカの碧眼が琥珀の双眸に向き直る。ディルムッドは間をおかず姿勢を正した。

 

 

 

「良くぞ使命を遂行してくれました。嬉しく思います。流石は我が騎士。貴方は私の誉れです。これからもともに頑張りましょう」

 

 

 そういって、彼女は微かに微笑んだ。

 

 

 

 




オスカー女優!主人公!


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貸本屋、対面する

槍兵の服装ってどんなの?

①クロロみたいなセミフォーマル
②ブルゾンジーパンの一般人コーデ
③戦車男
④いつものケルティックボディスーツ

 脳内補完でよろしくどうぞ。


 

 

 琥珀の双眸が見開かれ、収縮する瞳孔。

 瞬く間にその水晶に薄い水の膜が張っていく。

 頬に走る紅色。

 戦慄く唇。

 

「あ、主…っ!!」

 

 微かに上ずった声音が、彼の興奮を如実に現していた。

 

 今生の主に膝をつき、臣下の礼をとろうと腰を下げ…

 

「あ、ビスケ発見」

 

 中2階に知人の姿を認めた主人の視線はあっさりと明後日を向いたのだった。

 

 

 超人的な視力をしていないシェスカは、何事か指示している知人の動きを確認しようと、従者の横をするりと抜けて、丁度真下の位置に移動する。

 

 腰を半分ほど落とした美貌の従者と、妙な表情で固まった盗賊集団の頭の時だけが凍りついている。

 

「……フッ…」

 

 従者は琥珀の瞳を閉じ、唇にシニカルな笑みを浮かべ――…

 

「フフフッ、フフフフフフッ」

 

 両手両膝を地面についてうな垂れた。

 

「これが…これが、幸運値Dということか…っ!」

 

「意味がわからないよ」

 

 

 

 

 

 貸本屋、対面する

 

 

 

 

 シェスカは中2階の真下で上を仰いでみたが、結局ビスケットが何を言っているか理解できない。残念ながら連絡手段も持っていないし、読唇術も会得していない。

 上を向いて痛くなってきた首を無視して、わからないという意味で傾ける。ビスケットはさらに何事かいっているようだ。

「…?…なんて言ってるかわからない」

「か れ と い っ し ょ に あ が っ て き な さ い…じゃないかな?」

「貴方、誰?」

「イルミ」

 

 気がつくと、気配もなく黒髪で猫のような目をした青年が隣に立っていた。驚いているのだが、シェスカは相変わらず表情に出ない。

 イルミ、と名乗った青年も、表情が動かないようで、その顔からはなんの情報も読み取れない。

 中2階で階下を見ていたビスケットの顔に焦燥が走り、窓ガラスから彼女の姿が消えた。

 

「…あのツインテールの子、【あがってこい】って言ってるんじゃない?」

「ああ、そうなの。ありがとう」

「どういたしまして。お礼なら君ん所の槍使いにもう疑うな(・・・・・)って言ってくれない?」

「…ディルムッド?なんなのかしらその意味深な言葉は」

「あ、俺イルミ。イルミ・ゾルディック。あそこのクロロに聞いたかもだけど、もう君に手は出さないから。それをちゃんと槍使いに言い聞かせといて欲しいんだ。こっちもいい迷惑なんだよね」

「暗殺者にいい迷惑と言われる謎について」

 

 最後はほぼ独白になってしまったが、イルミは特に気にしていないらしい。シェスカも、持ち前の危機管理能力の欠如から隣に元自分を殺しかけた暗殺者一味がいるというのに別段取り乱した様子もない。この光景を正常に動く状態の護衛の騎士が見たならば、壁に突き刺さった黄色い槍(・・・・)が高速飛翔することは間違いないだろう。

 

「ま、結局弟は家帰ったから別にいいんだけど」

「御宅の弟とうちのと何の関係があるのか説明求む」

 

 イルミが、ついと視線を逸らす。シェスカもその視線を追うと、丁度彼女の従者と常連が先ほど彼等に視線を向けていた奇術師と話しているところだった。

 奇術師ヒソカは目に見えて上機嫌で、特にクロロに絡んでいる。クロロの嫌そうな顔に既視感を覚える。そのまま従者を見ると、なるほど全く同じ顔をしていた。

 これまた珍しいことに、シェスカがイルミと接触したことに気付いていない。

 そこには、先程のやりとりで上がりに上がった彼のテンションを一瞬にして奈落に突き落としたという彼女自身の所業があっての結果なのだが、勿論彼女はそんなこと気付くはずもない。

 ただ、にたりと笑う奇術師の姿に得たいのしれない悪寒が走ったが、それはきっと気のせいなのだろうと頭の隅から追い払った。

 悪寒など、ディルムッドのストーカーや自身を殺しにくる暗殺者相手にも感じたことのない感情だった。それはどちらかといえば困惑に近く、生きてきた中で悪寒を感じたことのある人間は、自分を売り払おうとした両親とその買い付けに来た念能力者だけだ。

 集団に目を向けるシェスカの頭頂部を見下ろしたイルミは、試験中の出来事を反芻する。

 

「暗殺者に友達っていらないんだよね」

「それとうちのディルムッドとなんの関係があるかわからないけど、貴方がそう思うならそれでいいんじゃない?不要必要は個人の判断だと思うし。ただ私は友達っていてくれていいなって思うけど」

「どんなときに?」

「こんなときに」

 

 シェスカが指差すのと、人影が割り込んでくるのはまったく同時だった。

 肩で息をするビスケットは、シェスカを後ろ手に庇うようにイルミの前に立ちはだかる。どうやら中2階から走ってきたらしい。

 本当は窓ガラスを突き破ろうかとおもったが、隣にいたネテロにとめられたのだ。ネテロにとっては、先程の試合の印象が強いので、ディルムッドが近くにいる状態でイルミが手を出すとは考えにくかったのだろう。もともとゾルディック家に顔見知りのいるネテロは、彼らの『ビジネス』についてよく理解をしていた。本来なら、イルミの言を肯定してもいいくらいのものだったが、興奮状態のディルムッドにそれをいったところで聞き入れてもらえる可能性は限りなく低く、逆に彼に『敵』認定を受けてしまうかもしれなという危惧が老人の口を閉じさせた。

 ビスケットは何も言わずじっとイルミを睨んだ。イルミは特に表情を変えることなく彼女をみて、それから視線をクロロたちに戻した。

 丁度クロロがヒソカを嫌々ながら引き連れ、ディルムッドがしっしと犬を追い払うように手を振っているところだった。

 シェスカとの約束を違えず、ヒソカを連れて行くつもりのようだ。彼はこのためにいったいいくつの犠牲を払ったのか。

 渋面でため息をついたディルムッドが視線をあげ、ばっちりシェスカとあった。

 

 面白いように顔面が蒼白になっていくのは、いっそギャグだな。と思ったとか。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 イルミは「それじゃ」と体をすばやく反転させて場を離れた。それを見送るシェスカは、とりあえずこちらに猛然と突き進む従者を見て「猪が駄目なのに猪のようだ」と思った。

 

「主!ご無事ですか!?」

「特に問題なく。ルシルフルは行った?」

「ああ、よかった……」

「ねぇ、ルシルフルは帰ったの?」

「あの男は前に主を狙った暗殺一家の男です。目を放した隙に…」

「ね、帰ったの?」

「このような過ちは以後ないように護衛に勤めます。どうかお許しください」

「ディルムッド?ルシルフルは?」

誰です(・・・)、それ?」

 

 道徳の教科書に載せられるほど、完璧な微笑みだった。ビスケットは、反論を貰うのを覚悟でシェスカから目を離したディルムッドを忠告しようとして、うっかり魅入った。陶然とした顔で下から見上げる。

 

「そこに一緒にいた黒髪」

 

 しかし、主人には効かなかったらしい。

 

 途端憮然とした顔になったディルムッドは、顔を顰め厳しい口調で口を開く。

 

「奴の撒き散らした迷惑を考えるのなら、いなかったことにするのが一番だと思いまして」

 

 暗にもう関わりたくないと告げる。

 その顔に刻まれた表情が、彼の思いを如実に告げる。

 主に某奇術師のことが含まれてのことであったが、シェスカには勿論そんなことはわかるわけもなく、試験が面倒くさかったからその原因になったクロロにいい感情を向けらなかったのだろう、と勝手に結論づけた。

 ぽふぽふ、と鍛え抜かれた腕を数回叩く。

 

「ご苦労様」

 

 万感の思いをこめて労わると、騎士はようやく厳しい顔を緩めた。

 

 

 

「で、ビスケ。さっきの彼に【上に来い】って通訳してもらったんだけど?」

「はっ!あたしとした事が意識なかったわさ!そうそう、ディルムッドに委員会から用があったんだけど、あんた一人にはできないから特別に一緒でいいから来てもらおうと思って」

「まだ何か用があるのか?」

 

 若干うんざりしつつ、ディルムッドはシェスカと離れないことを条件にその誘いに応じた。

 ハンター試験最終試験から、試験終了後の講習会は実に長かった。

 

 彼の漏らした「いい友人」という発言に、先ほどのイルミが食いついたからだ。ディルムッドとしては、単純に自身の危険を顧みない友情に感銘を受けての発言だったのだが、ゾルディック家の長男にはそれが許せなかったらしい。それを弟が肯定したことも、彼の凶行に拍車をかけた。「友達がほしい」という実弟に「そんなものは必要ない」と切り捨てる実兄。人でなしならそうだろうが、少なくとも人殺しを嫌い友人を作りたいといった少年の小さな願いを、しかしイルミは許さなかった。彼が手をかざしたときに、妙な違和感に気づいたが、勿論ディルムッドはそれにどんな意味があるかわかるはずもない。

 結局、ここでも友人のために動いたレオリオの言葉にも少年は動くことができず、イルミの行動を見かねたディルムッドはレオリオたちと一緒に扉の前を陣取った。

 しかし、結局、少年は、ゴン(友達)を諦めた。

 そんな少年の行動に疑問を抱いた彼の仲間たちが、ネテロに対して猛然と抗議をしたり、ひと騒動あったりで、彼の拘束時間は彼の予想を大幅に超えた。

 

 

 

 シェスカはビーンズにすすめられた椅子に腰掛け、淹れてもらった珈琲に舌鼓を打つ。

 主の姿を横目で確認したディルムッドは、視線をネテロに向ける。ネテロは視界にシェスカを納めようとして、無意識のディルムッドとビスケットに阻害された。

 

「それで、用件とは?」

「うむ、実はハンター試験はまだ終わっておらん」

「…?どういうことだ、ライセンスは貰っているが?」

「それに関しては()の試験と呼んでおる」

「ふむ、つまり()があるわけか」

 

 ネテロは蓄えた顎鬚を撫でながら肯定する。

 

「念能力…これを体得することがハンターの必須事項なのだが、ビスケによるとお主は習う気がないと聞いておるが?」

「ああ、必要ない」

 

 正確には、習う気がないのではく習えない(・・・・)のだが、勿論それを説明する気はない。

 

「ふむ、意思は固そうだのう。……まあ、もう結論は出とるんじゃがね」

「と、いうと?」

「どうやら感知しておるようだし、確かに素の状態でその強さじゃどういった経緯(・・・・・・・)を経てそれほどの力を得ているかはわからぬが、委員会としてはお主の()試験合格を認めようと思っておる」

 

 ディルムッドはネテロの顔を注視し、彼の背後に立つ今期のハンター試験に関わったプロハンターたちを眺め、ついで隣に立つビスケットに視線を寄越す。

 視線に気づいたビスケットは、それが間違いのない事実であるという意を示してかすかに頷いた。

 シェスカは、相変わらず湯気の立つ珈琲を味わいながら隅でその話を聞いていた。

 本来は、その()試験の合格すら必要としていないといえば、彼らはなんというだろうか。

 シェスカがディルムッドに求めたライセンスは、彼のために求めたものだった。彼の素性を確固たるものにし、他者に介入を許さないための防波堤。

 ゆえに、強さが必要なハンターとしての行動をする予定がない。ならば、ライセンスを所持している(・・・・・・)という事実さえあれば、それ以上のものは必要ではなかったのだ。

 今でも話しているネテロの話を聞く限り、本来()試験というのは犯罪抑止力として犯罪者や密猟者を捕まえるハンターが、強さがなくては修まらないという事実から【念能力】の必要性を説いた結果のものだ。ならば、念能力者であろうと、既存の人類では勝機を見出すことすらできない英霊たる彼に、裏試験の必要性を説いたところで意味のないものだと思えた。

 

「というわけで、こちらとしてはお主のハンターとしての働きを期待しとるんじゃが」

「その期待には応えられそうにない」

「そのようじゃの」

 

 ひょいと肩をすくめる。

 主人の労いひとつで、ためらいなく衆人観衆のなかで膝をつこうとする彼から、件の主人を離すことなどできようはずもない。

 

「話は終わりだろうか」

「そちらから質問がなければの」

 

 ネテロにとっての話は終わった。後ろに控えるプロハンターの中で声をかけたそうにしているものもいるようだが、それは自分で機会を作って貰うほかない。

 

「それでは失礼させてもらう。……ビスケ、君には話があるので付いて来て貰いたい。勿論言わずともわかっているだろう」

「わかってるわさ。あーん、デートのお誘いならよかったのにぃ、絶対それはないとあたしの勘が告げる」

 

 ディルムッドは隣のビスケットを誘い、隅でおとなしく珈琲に舌鼓を打つ主人の下へ足を向けた。

 彼女との距離が一歩半の所で立ち止まり、かすかに頭を下げる。

 

「お待たせしましたシェスカ様」

「珈琲が美味しかったからいいよ」

 

 カップに残った珈琲を流し込み、立ち上がる。

 

「では、愛しきあばら屋に戻るとしますか」

 

 

 

 



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貸本屋、帰還する

 

 

 

「生犬神家をこの目で見ようとは…誰か金田一先生を呼んでくるんだ」

「主、キンダイチ先生とやらのご連絡先はどちらですか?」

 

 

 貸本屋「百万図書」の周辺には、不届き者がトラップにかかり死屍累々の体をさらしていた。

 

 

 

 

 

 

 貸本屋、帰還する

 

 

 

 

 

 

 

「てーんちょーう!ディルムッドさーん!ビスケさーん!……あれ?ルシルフルさんは?」

「あら、おかえりムーディ。ルシルフルは帰ったわ」

 

 シェスカ主従とビスケが店舗の前に到着すると、タイミングよくムーディがタクシーに乗って現れた。扉を開けると、腕に紙袋を大量に提げ、大きく手を振っている。

 アルバイトは「ナイスタイミングじゃないですか?」と腕時計を見て嬉しげに笑う。

 

「それにしても、結構かかってますね」

「そうね、原始的なトラップなのに、意外とかかってたわ」

「原始的で現代まで通用するということは、それだけ効果的ということでしょう」

 

 ムーディ、シェスカ、ディルムッドと、貸本屋一行はそれぞれ店舗の周りで醜態をさらしている老若男女の人間を見下ろす。

 それをたまたま目撃したタクシー運転手は、可哀想なほど顔を青ざめさせて急いで車をUターンさせていた。

 

「こうも大量だと処理に困るわねぇ」

 

 店主が頬に掌を寄せて面倒そうに眉根を寄せると、トラップの解除と神字の刻まれた鍵を外していたビスケットが呆れた顔で振り返った。

 

「あんたは何のためにディルムッドに試験受けさせたの。さっさと警察に連絡しなさい。全部あっちがいいようにやってくれるわさ」

「なにそれ素敵」

「あ、ディルムッドさんおめでとうございます」

 

 ビスケは南京錠を開錠すると、それをシェスカに手渡す。シェスカは南京錠をくるくると回し、それを上下左右からじっと観察した。

 

「あんたが本以外をとくと観察するところを目にするなんて、珍しくって槍でも降ってきそうだわさ」

「ディルムッドが上から跳んでくるよ」

「怖いわ!」

 

 事実、サーヴァントの脚力をもってすれば天上から槍の雨を降り注がせることは可能だ。ただ残念ながらどこぞの英雄王のように規格外なほど数を揃えることはないので、現状二本だけにとどまるが。

 

「これ、意外と使えるね」

「気に入ったのならあげるわ。それでたまには外出しなさい。引きこもりもたいがいにしないと体力落ちるわよ」

 

 深いため息を吐くビスケットの姿に、母親みたいだな、と胸中呟きながら、返事を返さず渡された鍵を懐にしまう。閉ざされた引き戸を引くと、循環されずに溜まった店舗内の独特の空気が一気にあふれ出す。

 周囲を確認し、隣にたったディルムッドが先に店内に入ると、次いでシェスカ、ムーディ、殿をビスケットが務める。

 シェスカが一歩、店内に足を踏み入れた瞬間。

 今まで、まるで死んだようだった店の中が、息を吹き返したかのように雰囲気を変貌させる。

 特に、他の3人のように住んで慣れているわけではないビスケットにはその違いが顕著だった。

 店内のいたるところにある本が、呼吸を開始したことが手に取るようにわかった。まるで生物のようだ。

 いくら長い付き合いとはいえビスケットも店主の能力の詳細はしらない。

 念能力者が自分の念能力を話すことはほとんどない。ビスケットがシェスカの念能力で知っていることといえば、彼女が何らかの方法で本を複製し、それは彼女の手から離れると7日間で失われるということだ。

 ただ、10日間という長い間彼女が留守だった店舗にある本は健在だ。

 これに制約がかかっていることは明白だろう。

 

 …シェスカの手となるものとして、土地、あるいはこの店舗自体があの子の一部として扱われる。じゃなければ、店に並んだ時点で、7日たてば本は消える。流石に1週間ごとに更新は面倒でしょうしね。

 

 推測の域を出ないことではあったが、ビスケットはこの土地あるいは店に制約がかかっているのではないかと考えた。

 そして、本体が帰還したことで、心臓が抜けた体が改めて活動しはじめた。

 シェスカの能力は誰に知られてもたいして困るものではない。完全に趣味のための力だからだ。

 ビスケットがそれを推察したのはただ単に念能力者である彼女の癖だ。

 

「さすがに少し埃っぽいね」

「掃除しちゃいましょうか」

「先に警察に連絡して頂戴。疲れてるのなら掃除は明日からでいいわよ、どうせここにくる客は埃を気にするような繊細な奴こないし」

「客商売あるまじき言動ね…」

 

 ムーディはシェスカの言葉に従い、アンティークのような黒電話に手をかける。ディルムッドは住居の点検に向かっている。

 ふいと視線を天井に向けると、陽の光を浴びてきらきらときらめくものが見える。ただしロマンチックな要素はほとんどない。ただの埃だ。

 彼女は掃除をしない。というか家事をしない。読書以外に自分の労力を回すとしたら、周りが煩くいう食事、入浴と生理現象くらいのものだ。自分の部屋も、ムーディが月に一回耐えられなくなって突撃してくるまでそのままだし、せっかく掃除されてもまた同じような有様になってしまう。彼女はそれを反省しない。同じ屋根の下に住んでいて、いくらディルムッドという絶対庇護者がいたとしても、ムーディがシェスカに他の男同様の目を向けないのは、そういった背景がある。つまり、女とし見られていない。よくも悪くも彼は店主を店主としてしか見ていない。彼女らの生活は驚くべきバランスで保たれている。

 

「ああ、落ち着いたら珈琲飲みたい」

 

 いつもの定位置に腰掛けると、呼吸するのと同じようにページをめくった。

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

「それでは彼らを住居侵入罪未遂で連行します」

「お願いします」

 

 ディルムッドは早速習得したライセンスカードを提示し、警察官にトラップに引っかかった犯罪者たちを引き取ってもらうよう交渉した。

 この地区にくる警察官は、よくも悪くも「百万図書」で起きるごたごたに慣れているので、最初は派遣された警察官も嫌そうな顔を隠しもしなかったが、ディルムッドがライセンスカードを手渡した瞬間、顔を引き締めた。「国家権力さえああなるとか怖い」とアルバイトが戦々恐々としていたのは余談である。ディルムッドも若干その効き目に引き攣っている。

 トラップにかかった人数が尋常ではなかったので、集まったパトカーはまるでドラマのワンシーンのように空き地や路地を塞いでいる。赤色灯がくるくると回り、一面赤色になっている。流石にこれはご近所でもうわさになるだろう。

 

「さて、ようやく落ち着いたな」

「お疲れ様です。俺お土産買ってきたんで、ディルムッドさんもお茶しましょー」

「ああ。それより、どこにいってたんだ?」

「知人と一緒にヨークシンあたりまで。観光するところいっぱいあるんですよ、流石観光地!たくさんオークションもありましたし、値札競売市って楽しかったです」

「…よからぬところには近づいてないだろうな」

「よからぬところ?」

 

 ムーディは首をかしげた。ディルムッドはその反応に苦笑して気にするなと告げると、店内へ足を向ける。

 ヨークシンシティのあるヨルビアン大陸は、正規のオークションにまぎれて闇オークションが存在する。そこに一般人が足を踏み入れることはないが、稀に関わってしまうことがある。その末路は悲惨としかいいようがない。クロロかビスケット、あるいは主従がそばにいるならばともかくとして、ムーディのような一般人がもし関わってしまってはただではすまないだろう。

 ヨルビアン大陸はシェスカの故郷のある大陸で、彼女は親元から離れてしばらくは、ヨルビアンを中心に行動していた。

 あの日、シェスカを一度買った(・・・)男に再会したのも、ヨークシンシティの闇オークション会場だった。

 正確に言えば、ディルムッドを人目につかせないようにするために、あまり人気のない場所を選んで歩いていると、たまたまオークション会場から出てきた男に出会っただけなのであるが、あのときのシェスカの嫌悪に塗れた顔を、ディルムッドは今でも鮮明に思い出せる。

 彼女がこの世で嫌悪する人間は少ない。彼女自身が世間に興味がないからだ。

 その彼女が嫌悪する数少ない人間。それが、あの男だ。

 

『おや、奇遇ですね。こんにちはシェスカちゃん』

 

 そういって旧知の間柄のような親しげな態度に、主人の顔が歪む。それを見た従者の行動は早かった。

 牽制で矛先を突きつける。

 男は『怖い怖い』と笑って両手を挙げた。

 

『こんな所で会うとは…いけませんね。早めに離れることをおススメします。…オークション会場が近い。狙ってくれといわんばかりです』

 

 そういって、ディルムッドに阻まれていることなど意にも介さないようにシェスカに視線を向ける。

 シェスカは、できるだけ男の視線から逃れようと、ディルムッドの腰あたりにしがみついて後ろに隠れた。

 男はその姿を見て笑った。

 

『君のような女の子…容姿といい、能力といい。格好の獲物です。そちらの方が強いことは身をもって知っていますが…この都市は魔窟ですからね。昔のよしみで忠告しておいてあげますよ』

 

 男はそれだけいうとその場から姿を消した。

 男のいう『魔窟』という意味を理解するのはその時点ではできなかったが、ビスケットと知り合い、あの都市で行われるオークションや市長と蜜月の関係にあるマフィアの存在をしり、ディルムッドはあの都市にできるだけ近づかないことを誓った。

 シェスカのこともあるが、騎士として潔癖すぎる彼には、あの都市はあまりにも腐敗しすぎていたのだ。

 

 店舗に戻ると、二人の姿が見えなかった。住居のほうに引っ込んだらしい。引き戸を閉め『閉店』とやたらやる気のない筆跡の札を下げると、奥へと移動する。

 香ばしい珈琲の匂いが鼻腔くすぐった。

 

「あ、店長、ちょっとまってくださいよ!お土産あるんですってば!」

「早くだしなさいよ」

 

 ごそごそと紙袋から箱を取り出すと、テーブルに箱ごと出す。いちいち皿に盛らないあたりがこの店の従業員らしいといえばらしい行動だった。

 

「あらムーディ、ヨークシンにいったの?これ空港に売ってる銘菓だわね」

「そうですよ、見ただけでわかるなんて凄いですねビスケさん」

「にょほほ、あたしこれ好きなのよ」

 

 箱から掌に収まるほどの小袋をつまむと、嬉しそうにビスケットが口に運ぶ。ムーディも「これ試食したとき一目ぼれしたんですよー」と同じようにほくほくと口に頬張っている。

 

「ヨークシンっていえば、9月にあるわね、ドリームオークション」

「あ、10日間あるって奴ですね。俺と一緒にいった奴も9月に行くっていってました。俺も誘われはしましたけど…」

「なーに有給使えばいいわさ。あんたどんだけ働いていることか!10日間どころか1年分くらい溜まってるわよ、きっと」

 

 にやにやとビスケットは笑うと、ビニールの小袋がうまく破けず苦戦している店主と目が合った。店主の手から騎士の手に渡った小袋が、難なく破ける。店主の掌に菓子がのった。

 

「何?」

「あんたもねぇ、あたしにいわれたからとかじゃなくて出かけなさいよ。昔は結構出歩いてたんでしょ?一緒に旅行にでもいってきなさい」

 

 それは紛れもなく、母性やおせっかいからきた言葉で、彼女に他意はなかったのだが、シェスカは微かに口の端をゆがめた。誤魔化すように無言で菓子を口に含む。

 それをみたディルムッドが、ビスケットに向かってにっこりと笑う。

 ほやん、となりかけ、何かに気づいたビスケットは「にょほほほ…」と冷や汗をかきながら笑って珈琲を飲む振りをして誤魔化した。

 道中、シェスカを店舗から連れ出した件で散々お説教されたばかりだったのだ。舌の根の乾かないうちにまた「出ろ」とは、流石にタイミングが悪い。店の前でも同じことを言ったが、冗談めかしにいうと従者が恐ろしすぎる。

 

「ムーディ、いきたいなら別にいいわよ。私はいかないけど」

「ええっ本当ですか!?」

「ええ、でもあまり危険なところにはいかないようにね」

「大丈夫ですよ、俺と一緒に行った奴の友達で、凄く詳しい人が案内役してくれましたから。ヨークシン暦長いらしいです」

「そう」

 

 ムーディはまさか許しをもらえるとはおもっていなかったらしく、うきうきと興奮した様子を隠そうともしない。やはり長い期間閉鎖されたところに閉じこもっていると、ときたま刺激が欲しくなるらしい。

 彼の土産の量を見ればわかる。

 ムーディは旅行を満喫してきたのだ。

 よほど楽しかったのか、お茶の時間は彼がヨークシンの出来事を3人に聞かせていた。

 ディルムッドがハンターライセンスを取ったことで、警察との連携もうまくいくし、犯罪抑止力としては申し分ない威力のそれは、この店にやってくる犯罪者の抑制に十分に活用されるだろう。

 これで少しはムーディの進まない仕事もさばけるはずだ。ともすれば余裕の出た彼に休みを与えることは、彼のストレスの緩和にもなる。余裕が生まれると、人間は不満を強く思うようになる。そうして彼に辞められてもこまる。このくらいは必要処置だろうと、シェスカは許可をだしたのだった。

 

 

 

 

 その夜、ムーディはともにヨークシンシティに出かけた知人に電話をかけ、一緒に行ける旨を伝えた。

 

「そう、行ってもいいって許可がでたから。ジルブレッド(・・・・・・)さんにもよろしくいっといて」

 

 

 

 もしここに、主従のうちのどちらかがいれば必ず止めたことだろう、男の名を口にして。

 

 

 

 

 

 

 



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貸本屋、仕事をする

 

 

 

 

 視界がぐらりと揺れた。

 あれ、疲れているのかな?と目を瞬かせ擦る。

 何度か同じ動作を繰り返すとクリアな視界に切り替わった。視線の先で主従は相変わらず通常運行。店内も久方振りに開いたことで、店主の同類達がいつもより多い以外はなんの変わりもない。

 それにしても体がだるい。

 十日間も休みをもらっておいて疲労が残っているとは流石に言えず、虚脱感の酷い体に鞭打って積み上げられた本の山に手を伸ばし―――暗転。

 

 

 

「…インフルエンザ…だと」

『す、すみません…』

「熱は?」

『さっき…計ったとき、は…39度ほど…』

 

 

 受話器を置くと、古めかしい電話機が軽い音を立てて通話を切る。

 視線を寄越した従者に、ため息をつきながら視線を返す。

 

「ムーディは…インフルエンザなのですか…」

「そのようだね、私も一応確認したほうがいいのかしら」

「彼は?」

「気にせず休むようにいっているわ…戻ってきて移っても困るから無理言って入院してもらってる。流石にそこまで鬼畜にはなれないでしょう?」

「…店はどうなさいますか」

「……」

 

 

 店主シェスカ・ランブールは、沈黙にたっぷり時間をかけた。

 

 

 

 貸本屋、仕事をする

 

 

 

 翌朝、貸本屋「百万図書」を訪れた常連達から悲鳴が上がった。

 

「うわあああ!店主が、店主があああああ!」

「仕事をしている…だと!?嘘だ!」

「明日人類は滅びるのだろうか…ああ、あの預言書は本当だったんだ…」

 

 入り口でがくがくと震える男達は、古典的に頬をつねるものもいれば、ありえなさに目を見開くもの、この店で借りた胡散臭い預言書を手に取ったものもいる。

 店主はそれらに冷たい一瞥をくれると、無視して手に取った書類の束を机に叩いて整えた。

 

 あの、店主が書類を握っている。

 

 あるひとりの勇者が喉を鳴らし恐る恐る進入を試みる。きょろきょろと店内を見渡し、相変わらずこの世すべての男の敵である、絶世の美男子と目が合う。

 

「……ムーディは?」

「インフルエンザで入院だ」

「謎は…すべて解けたぁ!」

「帰れ」

 

 その台詞はまるでどこぞの少年探偵のようで。高らかに握りこぶしを掲げた勇者は、店主の絶対零度の声音に腰から崩れ落ちた。

 

「あー…鉄腕アルバイターが休みじゃねぇ」

「店営業できないんじゃないの?」

「いや、十日間も休みだったんだぞ?また店休とか流石に無理だろ」

「だからあのナマケモノが働いている…ように見えるが…働いているのか?俺はまだにわかには信じがたいのだが…」

 

 常では自分以外を無視して本を選び読みふける常連書痴たちは、このとき妙な結束感をもった。それだけの衝撃だったのだが、真相がわかった今は、慌てず騒がず店内を観察する。

 店主は先程から書類整理をしているように見えるが、一向に立ち上がったり、書籍の整理などをする気配はない。

 

「いや…書類整理でもするだけ働いてるだろ、シェスカの場合は」

 

 シェスカ・ランブール。いかなるときでも座して読む、が常のまさしくお飾り店主である彼女が、本か食器以外を持っているところを、彼等はもう何年も常連を続けているが見たことがない。どんだけなの。仕事しろ。

 

「これを機に、アルバイターのありがたみを覚えることだな」

「ありがたいとは言われなくても思ってるよ、口に出さないだけで」

「出したげてよぉ!」

「気持ち悪いから帰れ」

「この常連中の常連、貴様がまだ十代の頃からの付き合いであるこの俺に…!」

「信徒の癖に異端の神信仰してみたり、黒魔術とかシャーマニズムフェチの君の欲求を叶えられる本屋が他所にあるなら好きにするといい」

「ごめんなさぃぃぃぃ!」

 

 

 ディルムッドは、常連客と主人が戯れているのを視界に入れながら、ムーディの通常業務を少しでも肩代わりするようにせっせと働いた。基本的に真面目な性格なのである。

 ビスケットを帰したのは痛手だったなと頭の片隅で考えながら、サーヴァントの膂力で大量の書籍の詰まったダンボールを軽々と持ち上げる。

 常連客が今回借りていく古書の前作の素晴らしさを店主に語りだすと、それに店主が食いついた。どうやらシェスカもいたくお気に召したものだったらしい。

 ネットワークを開拓せず、むしろ閉ざした彼女には、店に来た人間としか語らえない。最近はどこぞの黒い男が、自宅か、と思いたくなるほど寛いでいたので、久しぶりの語りとなることは容易に把握できた。

 できることならば茶のひとつでも淹れて、存分に語り合ってもらいたいところだが、残念ながらそうもいかない。

 

「シェスカ様…」

「…あー…わかってる」

 

 気まずそうに視線を泳がせると、常連客に断りをいれる。常連も、残念そうにしながらも今日はこの店一番の働き手がいないことを理解しているのか、貸し出して続きを終えるとそうそうに店をあとにした。

 

「申し訳ありません」

「君は悪くないじゃないか」

 

 

 

 

 三日後、インフルエンザを完治させたムーディが帰ってくると、シェスカは手に持っていた書類の束を宙に放り投げ、無表情で鉄腕アルバイターを抱きしめた。

 唖然としながらも「おっぱい大きいやわらかい」と思ったり。

 それになんとなく気付いた従者の視線に失禁しそうになったり。

 やっぱり大量に溜まっていた仕事に魂が抜けかけたり。

 そうそうに自室に引っ込んで本を貪りはじめた店主に「帰ったんだー」と、溜まった仕事をみながらもほっこりしたり、したのだった。

 

 

 



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貸本屋、厄介な客と相対する

 

 

 

 

 

 貸本屋「百万図書」の周辺五十メートルは空き地である。

 近所の家屋も隣家との距離が離れており一軒家が多い。都会というには寂れているし、田舎といわれるほど廃れてもいない。

 樹木に覆われた通りの道幅は、交通量が少ないわりには広い。

 そんな道路を、一台の高級車が走る。

 ワックスをかけられたピカピカの車体が陽光を反射する。

 車内が見えないようにカーフィルムが貼られているため、運転手以外に搭乗者がいるかどうか判別はできない。運転手はハンドルを操作しながら空き地しかないエリアに車を進める。

 周囲は空き地ばかりのなかに、ぽつんと建つ小さな店舗。

 その店舗に駐車場は元からないが、周りの空き地が駐車場のように使われて久しい。土地自体も整備をしていないだけで店主が買い上げている。

 店舗脇に停まる高級セダン。

 運転手は車から降りると後部座席に回り、扉を開けた。

 

 

 

 

「ごめんください」

「あ、いらっしゃいませ」

 

 柔らかな声音が頭上から降ってきて、ムーディは顔を上げた。逆光で見えづらいが、体格や声から男と判断する。目を細め、立ち上がると、改めて男を見る。男はムーディが立ち上がって自分と顔を合わせるそのときまでじっとその動きを追っていた。

 濃い金髪の美男子といっていい容貌。

 美形に慣れたムーディは「おお、爆発しろ!」としか思わないが、この店の絶世の美男子を見たことのない世の女性からは大量にアプローチがかかるであろうとすぐに想像できるくらいには整っている。

 落ち着いた茶のストライプ柄のスーツに、柔和な表情は清潔感があり好感が持てる。

 

「何かお探しですか?」

 

 この店は本の量は膨大だが、某大型ディスカウントストアのようにどこに何があるかきちんと決められているわけではない。

 否、昔はちゃんと決めてあったのだが、ムーディにはどうやって手に入れているのかわからない位の量の本がぽんぽん入荷し、そしてそれをなおすのが鉄腕アルバイターとたまにしか手を貸せない輝くイケメンの二人しかいないものだから、そのうち手が回らなくなりとりあえずここにおいておく、あとで片付ける、結局片付かない。という負のスパイラルに陥った結果、初見で何があるかわからない体を晒すことになっている。

 ちなみに常連たちは妙な嗅覚でももっているのか自分の欲しいもの、興味のあるものは猟犬のように見つけて借りていく。中にはこのごちゃごちゃしたところから発掘するのが楽しいという、まさに某大型ディスカウントストアを楽しむお客様と全く同じ答えを返す客もいたりする。ちなみに、それらは発掘ハンターであることが多い。

 

「本も興味深いですが…店主さんはいらっしゃいます?あ、アポイントは取れてないんですけど」

「はぁ…店主ですか」

 

 男は手を後ろに組み、口の端を持ちあげて柔和に笑っている。

 今まで店主に用件のある人間は多数来店してきた。それぞれ様々な理由があっての来店で、そのすべてが決して常識から見ても「いい」と呼ばれるものばかりではない。

 この男性はどうなのだろう、とムーディは一瞬目を細める。

 しかし、決定権は彼にはないし、危険なことはするなといい含められている。この店の中でも特に弱いムーディに、もし害意をもって近づく輩がいれば、彼はそれを防ぐことができない。

 

「少し、お待ちください…お名前をお伺いしても?」

「ああ、これは名乗らずに失礼しました。ボクは、ハンター協会副会長のパリストン・ヒルと申します」

 

 

 

 

 

 貸本屋、厄介な客と相対する

 

 

 

「は?ハンター協会副会長?誰それ」

「パリストン・ヒルって名乗ってましたよ。金髪の、イケメーンでした」

「なんの用?」

「さあ…?」

 

 貸本屋「百万図書」店主シェスカはマカロンを咀嚼しながら最近のことに意識を飛ばす。いつだったか「副会長派」と聞いた気がする。

 自分に直接かかわりがあるとは思えない人物だ。どちらかといえば、最近ハンター証を手に入れた従者のほうが縁がありそうなものだが。

 ムーディにちらりと視線を寄越す。

 

「その人、私に会いたいっていったのよね?ディルムッドじゃなくて」

「店主さんいますかー?って言われましたから…副会長ですしディルムッドさんに用があるなら間違えないと思いますけど」

「そうよね…面倒だわ」

 

 紅茶を飲み干してソーサーに戻す。

 いつもの低位置で、本を読んで、お茶して、営業終了までそのスタイル。そこにちょっとした乱入者がくることがあるが、概ねいつも通りの流れだ。

 しかし、それにハンター協会副会長という大物がくるとは思いもしなかった。

 ちらりと、こちらに背を向けて店内を見回す騎士の頼もしい後ろ姿。

 溜息をひとつつく。

 正直狭い店内だ。

 どの位置からでもカウンターを覗き見ることはできるだろう。居留守も使えない。

 

「呼んで」

 

 仕方がないので嫌々会うことにした。

 

 

 

「いやー、お美しい方ですね。どうも、ハンター協会副会長のパリストンです。あ、名刺いります」

「結構」

「そうですか?残念ですねー、こんなお美しい方ならお近づきになりたいのに」

「ご用件は?」

 

 ハンター協会副会長パリストンと名乗った男は、握手を求めようとして隣に控えるディルムッドに遮られた。

 接触を解して何らかの念能力が発動することもあるのだ。よく知りもしない男に主を近づけさせるわけにはいかない。

 シェスカも胡乱気にパリストンを見る。

 どうにも胡散臭いと思ってしまう。ニコニコと柔和に笑っているが、雰囲気が同じく金髪のシャルナークを彷彿とさせる。シャルナークがここにいれば、同じにしないでよ、と突っ込みをいれるだろう。所謂同属嫌悪で。

 すげなく断られたにも関わらず笑顔を崩さない男は、カウンターに常備されている来客用の椅子に腰掛けた。

 

「いやー、突然申し訳ない。本当はアポイントを取りたかったんですけど、ボクはそちらと違ってなかなか時間がとれないものでして。急遽スケジュールに穴が開いたものだから今しかないなーと思ったんですよね!」

「お忙しいでしょうね、副会長なら。それでそんな忙しい役職の方が、いつも暇そうにカウンターで本を読んでいるだけの店主になんの用ですか」

 

 主への不敬に、ディルムッドの目に力が入る。見下ろしてくる双眸に宿る怒りを気付いていないわけでもないだろうに、パリストンは笑顔で後頭部を掻く。

 

「あ、嫌味に聞こえちゃいました?いやー本っ当に申し訳ない!」

「それでご用件は?」

 

 ディルムッドの苛立ちが手に取るようにわかる。目の前に座る男は、クロロとは別の次元で癇に障る人間のようだ。

 特にディルムッドのように騎士道や仁義を重んじる人間には、この軽薄さはうけつけないだろう。

 

「いえね、実はそちらのディルムッドさんに本当は用があるんですけど…どうやら貴女を通したほうが間違いがないようでしたから」

 

 にこりと人好きのする笑顔を浮かべる男に、やっぱり面倒ごとだったとシェスカは頭を抱えたくなった。

 この男はクロロとは性質が違うが、よく似ている。

 ここにクロロがいればいい勝負がみれたかもしれない。

 どうやらこの副会長は、シェスカとその周り、そして主従の関係を調べ上げているようだ。

 ディルムッドはシェスカの命令なら、それが多少意に沿わぬことでも頷くだろう。

 勿論、彼に無理強いを強いることはないし、それがあまりにも非道なことであれば主人を諌めるのも従者の役目であるので、絶対命令ということではない。

 けれど、逆を言えば、それ以外のことであればディルムッドは主人に尽くせることなら喜んで受け入れる。

 忙しいとどの口が言うか。シェスカは熱々の紅茶を顔面に注いでやろうかと、危ない思考を巡らせた。

 パリストンは、シェスカの無表情をじっと観察した。人を観察する目は養われている、彼は観察眼には自信があった。

 自分の言動が人を苛立たせることは計算尽くめでやっているのでよくわかっている。あちらがそれにペースを乱されて粗が出ればそこからつつく、えぐる、掻っ攫う。そういうやり方をいままでもやってきた。冷静さを欠いた人間は実に操りやすい。逆に徹頭徹尾冷静な人間は、冷静に深読みしすぎてパリストンの手の中で踊ることになったりもする。

 同僚のチードルは面白い人だと思っている。彼女からすればいい迷惑だろうが。

 

「協専ハンターというのを、ご存知ですか?」

「あいにくとハンターに興味が無くて…名前通りのことしか知りません」

「つまり、協専ハンターの存在はご存知と」

「ええ、まあ」

「それなら話は早い――――――…ディルムッドさん、協専ハンターになられてはいかがでしょう」

 

 

 シェスカは無表情に男の顔を見た。相変わらずニコニコ笑っている。

 本から知識を手に入れたシェスカと違い、ディルムッドは協専ハンターがどういったものかわからず首をかしげた。どちらにしろ、彼はシェスカを護衛すること以外やるつもりはないのだが、それを提案するということは、シェスカにうま味でもあるのだろうかと男を見下ろす。

 

「どういった経緯で協専になるという話になるのかわかりかねるわね」

「おや?そうですか?ボクは勿体無いとおもって声をかけたんですよ?」

 

 パリストンは手を顎に持っていくと、シェスカの隣にたつディルムッドを見上げた。目があうと「いやー、本当にかっこいいですねー。女性が放っておかないのも無理はないですね」といって笑った。

 

「ディルムッド・オディナさん。うちの会長が驚いたくらいの実力をお持ちと聞きます。実際見てみると本当にそうですね!びっくりしますね!え、見えない?いやだなーそんなことないですよ。緊張してますよ、本当ですよ!いや、そんな凄い人をこんなところに縛り付けるより、その実力を遺憾なく発揮できるところで振るうべきだと思ったんですよね!いや、ボクはただの親切でいってるんですよ、本当ですよ!あまりお傍を離れたくないようでしたから、協専なら依頼がこない限りは自宅待機でいいですし。お金手に入りますし。勿体無いでしょう?腐っちゃいません?執事したいわけではないでしょう?――――――戦士(・・)、したくないんですか?」

 

 

 戦士、したくないんですか?

 

 その言葉に、ディルムッドの琥珀の目が微かに見開かれる。パリストンはその動きを見逃さなかった。癖のある十二支んのなかで、六百名を越すプロハンターたちの中で、そんなことも見抜けないようでは生きてはいけない。

 シェスカは、組んだ手の甲の上に顎を乗せた。

 

「そりゃ、したいだろうね。彼は根っからの騎士だ。間違えないで。戦うだけの蛮勇を奮う戦士じゃない、忠義を重んじる騎士なの」

「ええ、ですから…貴女の傍にいるだけでは勿体無いなと」

「安心しなさい、そんなことは随分前に気付いてるわ」

「おや、じゃあ」

「でも、答えは随分前に貰ってるの。貴方には理解できないし予想もできないでしょうけど、彼は納得してここにいるし、私を守ることで、この店で働くことで自分の価値が損なわれるとは思ってない。思わせるつもりもない。彼が望むならそうしましょう。彼が忠義に相応しくない主であると判断すれば私は彼を止めはしない。生きたいように生きる権利がある。それを奪うつもりはないの……ただそうね、私から言わせて貰うとしたら、現時点で少なくとも貴方の掌で踊らされるのは気に食わないから絶対にそんなもの受けて欲しくない、ってことくらいね」

 

 

 きょとんと、子供のように目を丸くすると、パリストンは笑った。「ふふ、残念です」と唇の端をあげて楽しそうに笑う。

 彼の視線の先では、主の言葉に誇らしげに胸を張る美貌の騎士の姿があった。

 パリストンは腕時計の時間を確認し、紅茶を一気に煽ると席を立った。

 

「紅茶ご馳走さまでした。時間があまりないので【今日】は失礼します」

「何度来られても、俺はその協専ハンターというものに興味はないぞ」

「ええ、貴方のことはもういいですね。貴方のことはね」

 

 ぱちり、と男がやっても可愛らしくもないウインクをひとつして、パリストンは店を後にした。

 

「……あ?」

「えーっと…」

 

 ありがとうございましたー。と暢気なムーディの挨拶が聞こえる。入り口を振り向き、気にしながらシェスカの元までくると、主従が固まっていることに気付き首をかしげた。

 

「店長?どうしたんですか」

「塩をまけ、塩」

「え」

 

 

 

 

 



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貸本屋、異邦人と話す

 

 

 

 

 

「聞いていた情報と違うじゃねぇか」

『了解いたせ。どちらが本物かはわからぬが、微かでも可能性があるのならばそちらを探る必要もあるだろう』

「そりゃそうだが…」

 

 男は電話口で愚痴をこぼし、つるりと引っかかる髪のない後ろの首を掻いた。

 目的のものを手に入れるために随分手のかかる近道をしようとしているというのに、電話口の男が新たにもたらした情報が本当なのだとしたら、近道といっていたはずが、随分と遠回りしたことになる。男が納得できないのも無理はない。

 

『ともかく、真偽を確かめろ。頼んだぞ』

 

 一方的に告げると、電話は無常にも切れた。

 

 

 

 

 

 貸本屋、異邦人と話す

 

 

 

 

 

 端正な顔に疲労を色濃く残し、心持足取りが重そうな気配さえある常連客、クロロ・ルシルフルが来店すると、ムーディは新書の平積み作業をいったんとめてから顔を向けた。

 

「いらっしゃいませ、ルシルフルさん」

「やあ、ムーディ」

 

 クロロは片手を挙げて微笑する。それだけで陰のある美形のできあがりである。あーもう爆発しろ、とモテ期がいまだ来ない全男性を代表して、ムーディは心の中で叫んでおいた。

 クロロは慣れた様子で店内に足を踏み入れる。何人か相変わらずの常連が声まではかけないがちらほらと視線をよこすのは、一時期店番をしていたからだろう。いつものようにムーディは店主に声をかけ、奥へ消える。

 番台に腰掛けたシェスカは、古びた表紙の書物に書かれた文字を追うのに忙しそうにしていた碧眼を一瞬止めて、黒尽くめの客人にその視線をよこす。

 

「変態は連れてきていないでしょうね」

「まずそこかー。せめて形でもいいから労わって欲しかったなー」

「そんな君にこの言葉を贈ろう、自業自得、と」

 

 冷淡に返された返事に、クロロは来客用の椅子に座ると深いため息をついた―――瞬間。目にも留まらぬ速さで後頭部に手を伸ばし、重量のあるそれを受け止める。

 彼の掌には、言語辞書ほどの厚さのある書物が収まっていた。物理に滅法強いクロロはそんなことではダメージは負わないが、自分より上位者に後頭部を狙われてぞっとしないほど鈍感でもない。

 それは店のロフト部から、目の覚めるような美貌の青年が嫌がらせに投擲してきたものだ。体重を感じさせない動きでロフトから一気に跳躍し、目の前までやってくる。相変わらず嫉妬をするのも馬鹿らしくなるような美形の姿に、店主のいう「変態」もこっちに執心してくれればいいのにと思う。

 青年は射殺すような視線はそのままに「またきたこいつ」といいたげな顔を隠しもしない。

 

「ディルムッド、ありがとう」

「お安い御用です」

 

 店主が声をかけると、打って変わって輝くような笑顔で返事を返す。手に叩きがにぎられていることから、ロフト部の掃除をしていたことが察せられた。

 

「ルシルフルさんルシルフルさん、これお土産です」

「ん、ああ、ありがとう」

 

 お茶を盆に載せて戻ってきたムーディの手には、紙袋が握られていた。それを、袋ごとクロロに渡す。クロロはそれを受け取ると、紙袋の中身を覗き込む。

 

「旅行いったんだ」

「はい、ヨークシンに!楽しかったです、また休みとって行きます!」

「……ドリームオークション?」

「はい!」

「そうか…できるだけ大通りを通りなよ」

「??はい」

 

 クロロの意味深な言動に目をぱちくりと瞬かせるムーディ。慣れない旅行者が観光地のイベントで迷子やトラブルに会うのを危惧しての忠告と取れなくもないので、意味を深く考えず首肯した。その様子を見守る主従は、クロロが少なくともヨークシンの裏事情を了解していることを理解し、シェスカはその出自から若干顔を顰め、ディルムッドはやはり危険だと眉根を寄せた。

 

「ところで盗人、あの変態は撒いて来ただろうな」

「本当にいやになるくらい息の合った主従だなぁ君たちは…」

 

 

 

 

****

 

 

 

「ごめんよ、邪魔するぜ」

 

 その男が貸し本屋「百万図書」を訪れたのは、黒い常連客が入店して、店主が手に持っていた古い書物を肴に二人の会話がヒートアップ、アルバイトには手がつけられなくなってきたころだった。

 ムーディは立ち上がり男へ近づいていく。

 男はまだ若く、ムーディと同じか若干上といった年頃のようだが、彼とは違い鍛え上げられた体つきをしている。ムーディを見つけにっと笑った顔は幼い子供のようで好感が持てる。

 

「いらっしゃいませ、本日はどのような御用でしょうか」

「巻物を探しているんだ」

「はい」

「―――――隠者の書ってやつなんだが」

「んー…自分じゃわかんないんで、ちょっと店主に聞いてみますね」

「あ…ああ」

 

 巻物を探している、といって注文してきた男はムーディのあとに続き、たいして奥行きもない店の奥へついていき―――――目を見張った。

 

 番台に座る女と熱く語り合っている黒尽くめの男。視界に入れた瞬間に己ではどう足掻いても勝てる見込みのない絶対的な実力差を感じ取ったのだ。彼とて鍛錬に鍛錬を重ね、十代の前半には人を殺める仕事にすらつくほどの実力者である。しかし、実力者だからこそ、最近新たな修練で手に入れた力を手に入れたからこそわかる、その男から感じる絶対強者の気配に瞠目した。

 黒尽くめの男、クロロはその場に入ってきた客の姿を見て、感じ取り、微かに目を細める。――――気づかれた。

 

「ん…ハンゾーか」

「はっ…え、いやいや、あんたなんで!」

 

 身を硬くした男の耳朶に、女性をころっと転がせるような聞き覚えのある美声が届く。

 体をずらさなければ見えない位置に、絶世の美男子が棚に背を預けて立っている。男は、その青年に見覚えがあった。ありすぎた。

 

「なんでも何も…俺はここの従業員だが?」

「はあ!?」

「なに、ディルムッド知り合い?」

「はい、ハンター試験の同期です」

 

 黒尽くめの男のさらにその上を行く絶対的強者が貸し本屋の従業員という現実に、ハンゾーはぽかんと間抜けに大口を開けて晒した。

 

「店長店長、隠者の書っての探してるらしいですよー」

「隠者の書…?ああ」

「あるのか!?」

 

 ハンゾーの緊張等もろもろの事情など知る由もないムーディは、頬杖をついてこちらに視線を寄越すシェスカに用件を伝え、彼女はその巻物の名前を反芻し古典的に掌を拳の底で叩いた。

 

「ある…というか、貸し出し用じゃないんだけど」

「そこを何とか譲っていただけないか」

 

 ハンゾーはクロロをあえて意識しすぎないように注意しながら興奮気味にシェスカに詰め寄る。ディルムッドの眉がぴくりと跳ねた。

 番台から二歩離れたところまで近づき、じっと彼女から目をそらさない。

 クロロがあまりにも強烈過ぎてきちんと目視していなかったが、改めてシェスカの姿を認めると、ハンゾーはともすれば視線が下に下りそうになるのを堪えた。この店では珍しく非常に自分に正直な男である。ムーディにとっては好感のもてる反応だった。

 

「譲るもなにも…勘違いしないでいただきたいのは、うちは貸し本屋だということだ。本の販売譲渡は行っていない……それに、君が欲しいのは本物(・・)でしょう?」

「何…?」

「君の期待にはこたえられないといってるんだ。まこと残念なことにね」

 

 シェスカはそういうと興味が失せたように碧眼を伏せ、カップに手を伸ばす。それに納得が行かないのはもちろんハンゾーである。彼からすればただの言葉遊びにも聞こえる彼女の言葉に、もともと血の上りやすい彼が納得できるわけがない。

 手を伸ばそうとして、かちりと固まった。

 

 はくっと、空気が口から漏れる。

 全身が縄に絡めとられたかのように動かない。

 脂汗がにじみ、頭がぐらぐらと揺れる。

 

 ハンゾーただ一人にだけ向けられた、「百万図書」の二大強者による牽制は、すでに牽制という名を超えた凶器になろうとしていた。

 

 ハンゾーが『念』を習得したのはハンター試験を終了してからだ。

 彼の求める隠者の書は、ライセンスがなければ入国困難な国にあると、情報で知らされていた。なので、ハンター試験を受けライセンスを習得したのだ。そして、裏試験に挑み、見事合格。本格的に隠者の書を探そうとした矢先に、特にライセンスがなくとも入国できる国の、とある店に目的のものがあるかもしれないと、足を伸ばした。しかし、そこで待っていたのは、難解ハンター試験をも超える難易度の絶対強者だった。

 

 今、動けば、死ぬ――――。

 

 ハンゾーの意識が自身の死を悟った、その瞬間。

 

「店の中でやめてくれる?」

 

 店主によるその一言で、あっけなく解放されたのだった。

 

 ハンゾーは、どっとその場でひざをついた。

 ムーディはあまりの展開に目を白黒させている。唯一の一般人である彼には、何が起こったのか理解できないのだ。

 シェスカはカップをソーサーに戻すと、崩れ落ちたハンゾーに「あのさ」と声をかけた。

 

「君がこの店のことを何も知らないことがよくわかった。……この店にあるすべての書物は、私の手から離れると七日で消える(・・・・・・)。これが、この店が貸本屋(・・・)である理由なの。勿論、意味がわからないほど愚鈍ではないでしょう?」

 

 ハンゾーは、そういうのは先に教えてくれよ、とお門違いと知りながらも、恨めしげにシェスカを見上げたのだった。

 

 

 この店に、彼の目的のものはない。もうそれがわかっただけでよかった。一刻も早くこの店から離れたい。彼は涙目になりながら店を出て行った。

 

 彼にはなによりも、ディルムッドの氷塊の様に温度のなくなった瞳が堪えた。

 

 

 

 

「ところで隠者の書って何かな?俺も気になるんだけど」

「貸し出しをしていない、個人鑑賞用につきお教えできません」

 

 

 

 

 



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貸本屋、戌と話す

 

 

 

 

「こんにちは」

「あ…いらっしゃいませ」

「店長さん、いますよね」

「奥にいますが…」

 

 ひょっこりと常に半開きの扉から顔を出した男の疑問系と見せかけた確定的な言葉に、ムーディは苦虫を噛み潰したような顔をして、男の背中を見送った。

 

「…引きこもりの店長がいないわけないじゃん」

 

 右手のはたきで右肩を叩きながらため息をつく。丁度彼の右側面下段の本棚から書籍を引っ張り出していた常連も思わず頷いていた。

 

 隙間なく紙の束に侵略されている店の奥。唯一人間数人が活動できる程度のスペースが確保された番台には、今日も黙々と活字を追いかける女店主が一人。

 

「こんにちは店長さん、いい天気ですね」

「……」

 

 流れるような動きで来客用の椅子を引き、腰掛けると、パリストンはにこやかな表情でシェスカに声をかける。まるで狙い済ましたかのようにカップに口をつける寸前に目を合わせてくるその首の動作は確信犯という他ない。シェスカは口内に広がる芳醇な紅茶の味わいにかぶさる、不快感を煽る副会長の笑顔というオプションのせいで、刻みたくもない皺を眉間に盛大に寄せる。そんな状態で無視もできず嚥下と同時に無言で会釈した。

 

 

 

 

 貸本屋、戌と話す

 

 

 

 

 貸本屋「百万図書」の周辺五十メートルは空き地である。

 近所の家屋も隣家との距離が離れており一軒家が多い。都会というには寂れているし、田舎といわれるほど廃れてもいない。

 ただし、最近は某協会の副会長が多忙を極める中足しげく通っているという噂がたち、多方面から注目を集めているため、見慣れないよそ者が目に付くようになってきている。

 樹木に覆われた通りの道幅は、交通量が少ないわりには広い。

 そんな道路を、清潔感のあるホワイトパール色の高級車が走る。

 車内が見えないようにカーフィルムが貼られているため、運転手以外に搭乗者がいるかどうか判別はできない。運転手はハンドルを操作しながら空き地しかないエリアに車を進める。

 周囲は空き地ばかりのなかに、ぽつんと建つ小さな店舗。

 その店舗に駐車場は元からないが、周りの空き地が駐車場のように使われて久しい。土地自体も整備をしていないだけで店主が買い上げている。

 店舗脇に停まる高級セダン。その隣に、ホワイトパールの高級車は並列して停まった。

 

 

 

 常に半開きになっている出入り口を大きく広げ、店内に足を踏み入れる。

 

「これは…」

 

 店内を見て感嘆の声を上げる。

 本本本本。

 本本本。

 本本。

 本。

 入り口から入ってすぐ、視界を埋め尽くす書籍の数々。視界が開けるとともにまるで暴力のように襲い来る圧倒的蔵書量による圧迫感に、彼女は一瞬呆けた。

 右を見る。本棚にはぎっしりと隙間もないほどに書籍が詰め込まれている。しかしどれもこれも余計な圧力がかからないように無理に押し込めてはいない。理路整然と並べてあるように見えて、実はジャンルも著名も言語もバラバラであるので、実際は整理されていないところが窺える。棚用スライド式梯子が取り付けられた本棚の高さは軽く200センチを越えている。

 左を見る。こちらも同じように本棚にぎっしりと隙間なく書籍が詰め込まれている。右側と違うところは、右に広がるつくりになっている店舗なので左側は右側と違い本棚の後ろが店舗の壁になっているというところだ。そのせいで、左側の本棚は右側の本棚の高さを優に越えて天井近くまでもある。しかし、何人かリュックを背負った客が上っているのを見るに、これがこの店のいつも通り、なのだろう。

 上を見る。上はロフトになっているようで、そのロフトを支える柱の上にも書籍が積まれていることが下からも確認できる。おそらく、ロフト部も下部店舗と変わらず書籍が山と積まれているのだろう。そこにも人間の気配を感じるので、誰かいるのだろう。マニアの情熱というのは、インドア派な人間でもアグレッシブにしてしまうらしい。しかし、それは仕方のないことなのだ。この店舗で取り扱われている書物の中には、手に入れることすら難しいレベルのものから、失われて久しい過去の遺産までもが取り揃えられているのだから。

 奥を見る。並んだ本棚の所為で見えにくいが、奥に番台がある。

 彼女は奥へ足を進めた。

 

「こんにちは」

「あ、いらっしゃいませ」

 

 平積み作業を終えるタイミングでかかった声に、ムーディは視線を上げた。

 そこには、女性が立っていた。

 理知的な雰囲気の、清潔感のある女性だ。

 ムーディが立ち上がり会釈すると、彼女も同じように会釈を返す。非常に常識的で丁寧な応対だった。ここ最近破天荒で非常識が服を着て歩いているような人たちとばかり会っていたので、荒んだ彼の心が少し癒された。

 

「アポイントなしで非常識なのはわかっているのですが…店主とお話がしたいのです」

「…は、ぁ…えと、どちらさまで」

 

 店主シェスカと話がしたいという人は、実はそう少なくもない。ほぼフリーパス状態の某常連やその友人たちは言っても聞かないので放置されている状態であるし、某協会の副会長はスーパーシカトタイムにどうもぐりこむかという、非生産的な行為に勤しんでおり、店主本人が「無視してなさい」というので、触らぬなんとかということでこちらも放置されている。

 そのほかのお伺いに来店する人々は、店主と友誼を結びたいというマニアや、書籍の入手経路について疑いの目を向ける調査機関や、難癖をつけて財産を奪いたい頭のねじが抜けている人といった、難儀する輩がよく店主に会わせろと来店する。

 そのほとんどは、店主に無視され心が挫けたり、有害と判断され槍騎士に排除されている。

 

「失礼しました。私はチードル・ヨークシャー…ハンターです」

 

 

 最近、大物多すぎ…。

 ムーディは何匹買っても懐の痛まない猫を被って、心の中でため息をついた。

 

「お伺いしてきますのでお待ちくださいね…今来客中でして」

「アポイントなしですから、お気になさらず」

 

 

 本棚と本棚の狭い道を慣れた動作で進んでいくと、本棚に隠れて奥まで進まないと見えない来客のストライプの背広と、その横で無表情の中で唯一不快を表すように眉間に皺を寄せた店主の姿が見える。店主の傍には槍騎士が胡散臭そうな表情を隠しもしないで来客を見下ろしていた。

 

「店長ーお話中すみません」

「何」

「店長にお客様ですー…「すぐ連れてきて」

「……はい」

 

 ムーディの言葉に被さるように答える店主。「ああ、誰が来ても今お話中の似非王子よりましですもんねー…」できるアルバイトは正確に店主の心情を汲んだ。

 

 

 どうぞー、と軽い調子で案内され、チードルはどこからどう見ても素人であろうムーディの背中を追いかける。

 少し開けた場所につき、彼が横にずれる。

 最初からこの店に能力者がいるとは入店した時点で了解していた彼女だが、そこでにこやかに、胡散臭い笑顔を持って出迎えた男があまりに意外で顔をしかめた。

 

「っ!?パリストン!」

「あれー、こんにちはチードルさん!こんなところで会うなんて!いっやーすっごい偶然ですね!」

 

 本屋一同「胡散臭ぇ」という表情を隠しもしないで、どうやら知り合いらしい来客たちのやり取りを見守る。

 チードルはパリストンを見るや否やいやそうな表情を隠しもしなかった。理知的な言動を取っていた人にしてはなんだか意外だな、と笑顔で腹の探りあいになってきている二人のハンターのやり取りを傍観するムーディ。

 店主シェスカを見れば、半ば興味を失っているようで紅茶に口をつけながら半眼で二人のやり取りを静観している。すすすっとシェスカに近寄り「どうします?」と声をかけるムーディ。念能力者同士が衝突でもして被害が来ないように、護衛であるディルムッドは二人を庇える位置まで移動し、横目に二人を見る。

 

「ほっといたらいいんじゃない?面倒くさそう」

「あ、じゃあ俺仕事戻りますね」

「頼んだ」

「はい」

 

 さっさと仕事に戻るムーディの背中を見送り、シェスカは本を開いた。

 チードルとパリストンの間には、局地的寒波が襲ってきそうな雰囲気が漂っているが、それはいつも別の常連と護衛が起こしている超常現象でもあるので、店舗内の客の誰も気にしていない。

 

「結局…何しにきたんでしょう…」

「さあ…」

 

 シェスカは勤勉な護衛の背中を見る。

 いつでも動けるように彼女を庇え、なおかつ二人に接近できる距離を感覚で測る彼は紛うことない歴戦の戦士の背中をしている。

 そんなディルムッドの真面目さと正反対に、徐々に漫才地味ていく(主にパリストンのせい)二人組みに重いため息をつくと、シェスカはマドレーヌの包み紙をといて、護衛の口に放り込んだ。

 

 

 

 

**

 

 

 

 

 チードルは「そうではない!」と自身を叱咤した。

 調子に乗ったパリストンに付き合っていくうちに、嫌味の応酬になり、最終的には殺気混じりのにらみ合いになった所で、自分がどこにいるのかを思い出したのだ。

 普段は冷静沈着。しかしパリストンが絡むと沸点が低くなり、理性が徐々に崩れる。このあたりが、とある育児放棄の駄目親父に「キャラが固定していない」などといわれてしまう要因だった。

 

 チードル・ヨークシャーはパリストン・ヒルが嫌いだ。

 明言してもいい。

 いつも胡散臭い笑みで他人を懐柔して、部下を道具か奴隷のように使い潰し、協会を私物化し、あまつさえ尊敬し敬愛するハンター協会会長にいつも反抗的だ。そんな男をどうして好きになれるのか。この面の皮の厚い男のどこがいいのか、ファンの気が知れない。

 同じハンター十二支んでももっとも嫌われているといっていい。けれど、会長は黙認している。そんな会長の判断に異を唱えるわけにはいかない。

 しかし、危険な思想をもっていることは他のメンバー共通の認識だ。できるだけパリストンが強力な駒を得ないようにしなければならない。それを未然に防ぐことも、自身ができる会長への貢献と、チードルは確信している。

 

 だからこそ、彼女はこの()に来た。

 まさかそこでパリストンと会う羽目になるとは思いもしなかったが、これは完全に彼女の予想外のことだ。彼女の得た彼の今日のスケジュールに外出はなかったはずだし、彼がいつも使っている社用車も見当たらなかった。おそらく別の車でここに来たのだろう。

 自分の行動が筒抜けになっていた?

 いや、それはない。チードルは顔を顰めて胸中否定した。

 ハンター協会副会長という役職上、スケジューリングの組み換えは非常に厳しい。逆にチードルは彼よりも少し自由が利く。当日までスケジュールは予定通りにし、思いついたかのように外出した。仲間内にも話さなかったのだから、漏れようもない。

 

 嫌な偶然だ、重いため息が漏れる。

 

 ニコニコと笑顔を振りまく男は「あれ、もうお仕舞いですか?」といわんばかりの表情だ。またも一気に頭に血が上りそうになり――――――二人同時にその場を飛びのいた。

 

 

 ―――――威圧感。

 

 

 嫌な汗が一気に噴出してくる。

 常に余裕の表情を張り付かせている男も口を真一文字に閉じているが、そちらを見る余裕など互いにない。視線を上げるのさえも恐ろしい。

 

 誰の?

 愚問だ。

 そんなものは決まっている。

 

 

「……私とは違い常にお忙しい副会長さんは、もうお仕事に戻られたほうがいいんじゃないですか?」

 

 ぱらり、と頁をめくる音がやけに大きく聞こえた。

 余裕を崩された男の、衣擦れの音が、よく聞こえた。

 

「そう……ですね。そろそろお暇します」

「道中お気をつけて」

「またきます」

「態々ご足労いただく必要もありませんよ?さようなら」

 

 若い女の声は、酷薄に、淡々と、パリストンの帰りを促した。

 女の最後の言葉と同時に、威圧感が掻き消える。

 ハンター十二支んと呼ばれ、敬愛する会長にその実力を認められた自分が、これしきで醜態をさらすわけにはいかない。

 チードルは、ぎっと睨み付けるように視線を上げ…ほうとため息をついた。

 

 自分の語彙能力では語りつくせないほどの、美男子。

 人ならざるものに祝福を受けたかのような、この世界において()とつくものが霞むほどの、美丈夫。

 そんな存在が、チードルと、パリストンを睥睨している。

 

 美しいとは、聞いていた。

 聞いていたが、こんなにも魔性の存在であるなど、思いもしなかった。

 

 チードルはふわふわとした感覚に包まれ、胸元をぎゅうと握り締め「それでは、店長さん、また」天敵の声にはっと我に返った。

 

「チードルさんも、さようなら」

 

 揶揄るような含みは一切なかった。

 しかし、彼女はさっと頬に朱を走らせた。

 なんて失態!なんて無様!

 ぶるぶると拳を震わせ、改めて魔貌の男を視界に入れる。

 

 やはり、美しい。

 じわじわと神経が侵されるような、甘美な感覚が迫ってくる。

 

「私はチードル・ヨークシャー!店主とお話がしたい」

 

 それで負けては、会長に顔向けできない。

 

 きっと正面を向いた双眸には、理知的な光が宿っていた。

 頬は…赤かったが。

 

 

 

 

 

 結果だけいえば、チードルの心配は杞憂だった。

 槍騎士ディルムッドは、彼の主である「百万図書」店主シェスカにのみ従っている。彼女が命じなければ、彼自身も嫌っていることだし、パリストンの駒になることはまずありえないだろう。

 貸本屋店主も、パリストンに対する見解はチードルとどっこいで、むしろ半眼の彼女と硬い握手を交わした程度に、彼に辟易していた。

 パリストンの甘いマスクと言葉巧みな話術に陥落する女性を数多く見てきたが、それ以上の極上の美丈夫の存在と、彼女自身の興味のなさに、まずそれはありえないと判断した。チードルは自分の観察力と勘には自信がある。詰めの甘さがあると多少自覚はあるが、貸本屋一行がパリストンになびくことはないだろう。

 それがわかっただけでも店を訪れた甲斐があったし、何より知的好奇心旺盛な彼女は、「百万図書」の品揃えにも大変感動した。改めて本棚を漁ってみると、時間を忘れて没頭してしまっていたのだ。

 ほくほくとした顔で、三冊借りて、店を後にする。

 車内で頁をめくり、先ほどの貸本屋一行の顔ぶれを脳裏に描く。

 あの男が出現しないのならば、常連になってもいいと思っていた。

 

「…あら?」

 

 ふと、先ほどのやり取りと思い出す。

 チードルは自分の観察力と勘に自信がある。

 パリストンは、業腹だが、その手の手管には長けた男だ。彼なら、店主の興味が自分にないことなど、とうに理解していてもおかしくはない。

 パリストンは狡猾で、判断力の高い男だ。

 その男が、靡くはずのない相手にいつまでも時間をかけるだろうか?

 

「……もしかして(・・・・・)、あいつ…」

 

 チードルは掌で口元を覆い、自分の辿り着いた推測に唇を戦慄かせた。

 

 

 

 

 




ちな、彼女の考えているような関係ではありません。


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貸本屋、破壊する

 

 

残暑の日差しがまだまだ容赦無く照りつける夏の末。チードル・ヨークシャーは貸本屋「百万図書」の常に半開きになっている扉をくぐった。

 相変わらず暴力的なまでの書籍の圧迫感と、古い本独特の匂いが鼻をつく。虫干しを定期的にしていたとしても、この数と、実質働いているのがアルバイト一人という事実が、まったく間に合っていないことを示していた。

 我関せずと自分の世界に没頭する来店客たちの中に、念能力者がいないことを確認すると、彼女は書籍の荒波を泳ぐように前に進んでいく。前回の失態のもと天敵(パリストン)がいないことも確認済みだ。向かうのは彫刻のように不動の姿勢を見せる女店主の定位置、カウンター。

 

「あ、えっとこんにちは」

「こんにちは、店主さんは」

「はい、いつも通り奥にいます」

 

 屈みこんだ自分の上にかかる影に顔を上げたアルバイトのムーディは、彼女の存在に気付くと案内役を買って出て先頭を歩く。特別広くもなければ迷うような作りでもないのだが、前回と違い、きちんとアポイントを取って訪れた彼女は正式に店主の客でもある。客をもてなすのも彼の多様な仕事のひとつだ。

 

 

 

 貸本屋、破壊する

 

 

 

 

 

「店長ぅ、ヨークシャーさんご案内しました」

「ごくろうさま」

 

 活字の海を縦横無尽に泳いでいた湖面を思わせる碧眼が、ゆったりと持ち上がり二人を視界に収めた。

 ムーディはチードルに椅子を進めると、そのまま店舗奥へと消えていく。先日出かけた折にいい茶葉を手に入れてきた。店主のお気に入りだ。

 貸本屋「百万図書」店主、シェスカ・ランブールは彼女にしては珍しく、手に持っていた書物を閉じると、チードルに向き直った。彼女の傍には、美貌の槍騎士が不動の姿勢で護衛についている。

 チードルは努めて彼を視界に入れないよう店主に向き直ると、長い髪を揺らして会釈し、それぞれ挨拶しあった。ここ最近来店してきた癖の強すぎる訪問客たちを脳裏に描くと、その常識的すぎる態度に槍騎士は胸中感動に震えた。彼は真面目すぎるのだ。

 

「時間を作っていただきありがとうございます」

「とんでもない、このような身分ですから、いくらでも。それで、お尋ねしたい()があると聞き及んでいますが?」

 

 シェスカがことさら真面目に対応している理由――――正体不明の、奇妙な()について、智慧をお借りしたしたいと、チードルから連絡があった。

 シェスカの行動理由のほぼ七割を占める活字への渇望。

 彼女の念能力「百万大図書館」は、この世に溢れる膨大な数の書物を彼女に与え、その渇望を満たす。「正体不明」「審議するべき書物」「レアリティの高い稀覯本」といった判断に困るものに対して彼女の知識は大いに活用される。

 チードルもそれを認めたため、今回自分に回ってきた処理に困る本の扱いを、彼女に頼ったのだ。

 もともと彼女は著名なハンターといえど、専門は難病。形あるものより、ないものに対しての知識を有する彼女に、何故お門違いにも「本」が巡ってきたか。

 彼女は店主に促され、鞄から一枚の写真を取りだした。未知に挑むハンターあるまじきことだが、できるだけ視界に入れないように、それを番台の上にそっと差し出す。

 

 それは一言でいえば、異様(・・)

 

 撮影者が、苦心して撮ったのだろうことがよくわかるほど、写真自体はぶれていた。しかし、そこに写る悍ましい本は、そんな状態であってもその異常性をまざまざと見せつける。赤い天鵞絨に無造作に転がされた、それ。表紙は人間の皮膚で装丁されており、苦悶で大きく口を開いた歪んだ表情を浮かべたデスマスクがあしらわれている。

 躊躇うことなく写真を手に取ったシェスカから思わず魔導書(・・・)の名前が漏れる。

 

螺湮城教本(ルルイエ異本)…っ」

 

 槍騎士、ディルムッド・オディナの脳裏に、かつての戦争の記録(・・)が蘇る。あれは、たしかに数多の一般人を殺め、自分たちを苦しめた魔導書に違いない。その悍ましく理不尽な力を振りまいた存在(キャスター)を、忘れるわけがない。だが、なぜここにあるのか。

 

「知っているのですね」

これ(・・)は、今どこに…?」

「ハンター協会に。…これの所有者はことごとく発狂しています。何らかの力が働いているのは間違いありませんが、誰一人これの知識を持つものがおらず…扱いに困っていたのです」

 

 難病ハンターであるチードルに、魔導書がめぐってきた理由。それは、それを手にした人間がことごとく発狂し、自我喪失に追い込まれたからに他ならない。

 念というのは、奥深い。深い恨みや未練をもったまま念能力者が死亡すると、その念は恐ろしく強く残る。この本もまた、そんな強い恨みや未練の末に、所持者に害悪を振りまく存在になったのではないか、と考えられた。あるいは、本当に目に見えない病原菌の寝床となっているか。

 その両方の可能性から、それはチードルのもとへとやってきた。

 

 ルルイエ異本…原本は紀元前三千年頃、人類以前の言語で記されていたとされる。甲骨に書かれたオリジナルがあるといわれるが、すでに破壊され、漢文で書かれた人皮巻物と、英語訳、独語訳、伊語訳が存在する。伊語訳は14世紀にマルコ・ポーロが中国から持ち帰ったものを十五世紀に魔術師フランソワ・プレラーティが部分的に伊語へと翻訳し、それをナポレオン・ボナパルトが所持していたという説がある。

 

 もともとこれ自体は架空の書籍だったのだが、シェスカというイレギュラーが存在する以上、広大な百万世界にはこれが実装されている世界線があってもおかしくはない。実際、ディルムッドは、この魔導書を使った教信者に辛酸を嘗める苦戦を強いられたのだ。まったく同じもの…つまり宝具(ノウブル・ファンタズム)ではないことは間違いないが、それでも数多の信仰をもつ魔導書だ。それ自体が人理から外れた力を持っていることは間違いない。

 

「ディルムッド…」

「はい、お任せくださいシェスカ様」

 

 チードルは、なぜここで槍騎士の名がでるのか不思議でならなかったが、この悍ましい本について自分より遥かに知識を有する彼女が必要だと考えたのならば、なによりも必要なのだろうと納得した。相手の念能力を探るのはご法度。対面したこの貸本屋が、実は除念師である、という可能性だって捨てきれないのだ。

 

「これを誰かに持ってこさせるのは危険です。面倒ではありますが、私達が保管場所まで移動します」

「それは!助かります」

「できるだけ誰も近づかないようにしてください…危険です。ですので、心苦しいのですが、これは処分させていただきたい」

 

 初めて見る貸本屋の店主の強い視線に、気圧されたわけではなかったが、チードルは静かに頷いた。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 部屋に一歩踏み入れると、それだけで空気が変質したような錯覚に陥る。否、もしかするならば、それは錯覚ではなく事実であったのかもしれない。

 暗く、そして、恐ろしいほどに広く、何もない部屋だ。

 その存在に恐れるように、部屋の隅に追いやられている台座。その上に、その魔導書は在った。表紙は人間の皮膚で装丁されており、苦悶で大きく口を開いた歪んだ表情を浮かべたデスマスクがあしらわれている。見えてはいないが、背表紙には美少年の裸像を模った銀細工が施されているはずだ。

 

「私は、本という本。あらゆる活字を愛している」

 

 ディルムッドを伴ったシェスカは、まるで劇作家のように派手に両腕を広げると、そう愛を囁いた。湖面をたたえた碧眼は、その視線を魔導書から一ミリも動かすことなくとらえている。二人は、開いた距離を埋めるように台座に足を向ける。魔導書から放たれるプレッシャーが増したような気がした。それは――――なにを恐れてか(・・・・)

 

「魔王が作曲したとされる闇のソナタを代表に、超常の存在によって齎されただろうものはいくつか聞き及んでいるし、たとえそれが読めない見れない聞けないものであっても、私はその存在を許容し、愛する。――――――が、貴様はだめだ」

 

 シェスカの繊手が持ち上がる。号令をかけるように、それがゆっくりと前に切られた。

 それを待っていたといわんばかりに、ディルムッドが愛槍を構える。

 魔術的防御や魔力的効果を打ち消すことのできる、彼の愛槍破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)

 

「さようなら螺湮城教本(ルルイエ異本)。二度とこの世に現れてくれるなよ」

 

 駄目だ。その存在を許容することが、どうしてもできない。

 苦い記録になってしまっているとしても、彼を追い詰めたそれを、彼女は―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに、あれはなんだったんですか?差支えなければ」

「異界の邪神をたたえる魔導書です」

「」

 

 いあいあ!

 

 

 

 

 




勿論本来の螺湮城教本ではありませんよ!


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【番外編】ハンターチャンネル!

にちゃんねる風の話になりますので、苦手な方はプラウザバックプリーズ。wwwwや顔文字、AAを多用しております。
ちなみに作者はROM専でまとめ見る程度なので、一部間違っていたりしますのであしからず


 

 

 

 

 

 

 【巨乳美人】一つ屋根の下でも特に問題が起きない【輝くイケメン】

 

 

 

 

 

1 名無しのハンター

 

 

 暇な人は付き合ってくんない?俺の職場俺以外従業員いないしさー

 

 

2 名無しのハンター

 

 

 巨乳美人だと!?

 

 

3 名無しのハンター

 

 

 スレタイなんだ、リア充か?

 

 

4 名無しのハンター

 

 

 とりま、コテハンとスペックよろ

 

 

5 名無しのハンター

 

 

 輝くイケメンってなんぞww

 

 

6 鉄腕アルバイター

 

 

 コテハンってこれでいいかな?

 

 とりあえずスペック投下するな。

 

 

 1:鉄腕アルバイター

 二十代。男。フツメン。ってかモブ?

 元浮浪者、現貸本屋アルバイト

 店長に拾ってもらってからまともな生活おくれてるぜ(*´∀`*)

 ただしガチで激務だ。

 

 店長

 二十代。女。美人。おっぱいおっぱい!( ゜∀゜)o彡°おっぱい!おっぱい!奇跡の体現。

 無表情。書痴。働かない。リアルに働いたら負けかなって思ってるw

 

 輝くイケメン

 二十代。男。神に愛された神話級イケメン。ガチムチ。

 プロハンター。強いよ!(`・ω・´)よくストーカーが現れる。店長の従者。

 

 

 こんな感じ?

 

 

7 名無しのハンター

 

 

 うおおおお!店長結婚してください!

 

 おっぱいの画像うp!

 

 

8 名無しのハンター

 

 

 おいwwww突っ込みどころありすぎるわww

 

 とりあえず>>1とイケメンが裏山、爆ぜろ

 

 

9 名無しのハンター

 

 

 あれ、店長って店長いってるわりに俺たちのお仲間?ww

 

 とりあえずおっぱいうpれ。

 

 そして>>1とイケメンは滅べ

 

 

10 鉄腕アルバイター

 

 

 お前等ぶれないな(´・ω・`)

 

 画像はむり。イケメンまじ怖いもん。お前等あのひとの怖さしらないからいいだろうけど。

 ガチで強いんだよ?ハンター試験片手間だもん

 

 

11 名無しのハンター

 

 

 難関ハンター試験片手間って…人間じゃねーな…

 いや、ハンター連中人間じゃなさそうだがwwww

 

 

12 名無しのハンター

 

 

 あいつらガチでやばいよな。

 俺この前プロハンターが銃撃戦やってるところたまたま見たけど、マジ失禁するかと思った。

 なにあいつ等?ターミネーターなの?

 

 

13 名無しのハンター

 

 

 デデデンデンデンデデデンデンデン!

 

 

14 名無しのハンター

 

 

 ターミネーターwwどういうことなのwww

 

 

15 名無しのハンター

 

 >14

 銃弾跳ね返してた

 

 

16 名無しのハンター

 

 

 >15

 釣り乙

 そんなん人間じゃねぇだろww

 鉄板仕込んでんのか?鋼の兄貴かよww

 

 

17 名無しのハンター

 

 

 釣り乙

 

 

18 :12

 

 

 釣りじゃねーよ!ヽ(`Д´)ノ

 マジで効いてなかったんだって!

 

 

19 鉄腕アルバイター

 

 

 あーうん。銃弾ごときじゃ傷ひとつつかないよね

 

 

20 名無しのハンター

 

 

 え…まじなの?

 

 

21 名無しのハンター

 

 

 流石にそれは…

 

 

22 鉄腕アルバイター

 

 

 本当だよ。じゃなきゃあんな特権階級つくれねぇってwwあれって一種の抑止だって店長言ってたww

 さすが店長wwアングラなひとたちと無意識に仲良くなって情報ばっちりっすwwwまったく興味ないみたいだけどw

 

 

23 名無しのハンター

 

 

 まあ>>1はプロハンター知り合いにいるもんな…でも銃弾って…

 

 っか、店長アングラーなの?ww怖すぎwww平然とする>>1も終ってんなwwww

 

 

24 :12

 

 

 本当だって!

 マフィアさんたちもポカーンだったもん!俺も(゜д゜;)って顔なったけど!

 

 

25 名無しのハンター

 

 

 マフィアの銃撃戦とか怖すぎww

 ワロタwwwワロタ・・・

 

 

26 鉄腕アルバイター

 

 

 証拠は見せられないけど本当だ。

 まあ、実際刺しても撃っても効かないからやってもらうのが一番だけど・・・無理だな!

 そんなことしたらそのへん歩いてる女に殺される

 

 

27 名無しのハンター

 

 

 

 

28 名無しのハンター

 

 

 

 

29 名無しのハンター

 

 

 

 

30 名無しのハンター

 

 

 イケメンって…そんな…

 

 

31 名無しのハンター

 

 

 だいたい神話級イケメンってなんなの…?

 

 

32 名無しのハンター

 

 

 おっぱい無理ならイケメンの画像うp!

 

 

33 名無しのハンター

 

 

 そうだ!画像うp!

 

 

34 名無しのハンター

 

 

 話はそれからだ!

 

 ついでに店長のおっぱいうp!

 

 

35 鉄腕アルバイター

 

 

 わかった、あの人実はメディアに顔バレしてるからいっか。ってかちょっと金払ったら場所特定できるらしい。怖いな情報社会って。でも身バレ怖いし、一応保険でピンボケな

 

 つ【ちょっとぼけた輝くイケメンな画像】

 

 あと店長はマジで駄目だ。ばれたら本人じゃなくてまわりに殺されるwww

 

 

36 名無しのハンター

 

 

 うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!イケメーン!マジイケメェェェェェェェン!!!!!!

 

 

37 名無しのハンター

 

 

 ちょ、うそだろ!!!嘘だろなんてこった!!!!!!!イケメェェェェェェン!!!!

 

 

38 名無しのハンター

 

 

 これなら結婚できる!!!!!

 イケメン俺だ!結婚してくれ!!!!

 

 

39 名無しのハンター

 

 

 >38

 阻止

 

 

40 名無しのハンター

 

 

 >38

 阻止

 

 

 

41 名無しのハンター

 

 

 >38

 阻止

 

 

42 鉄腕アルバイター

 

 

 >38

 阻止

 

 

43 名無しのハンター

 

 

 >>1

 混ざるなwww

 

 

44 名無しのハンター

 

 

 というかこの方どっかでみたことあるんだが・・・

 

 

45 名無しのハンター

 

 

 禿同

 

 

 

46 名無しのハンター

 

 

 禿同

 どこだったかな

 

 

47 名無しのハンター

 

 

 多分天空闘技場

 

 

48 名無しのハンター

 

 

 >47

 そ れ だ !

 

 

49 鉄腕アルバイター

 

 

 あ、やっぱ知ってる人いるんだな

 そんなに有名なの?(´・ω・`)

 あんまり昔の話しないんだよねあのひと

 

 

50 名無しのハンター

 

 

 有名すぎ

 輝く貌のD様だろ?

 

 

 

51 名無しのハンター

 

 

 だな。

 当時超有名だった

 特に女の悲鳴凄かったな・・・

 まあ、俺もファンですけど?

 

 

52 名無しのハンター

 

 

 同じく

 あの強さはイケメンいう前に惚れ惚れした

 

 

53 名無しのハンター

 

 

 チケットすげー値段したよな

 

 

 

54 鉄腕アルバイター

 

 

 今は店番してるけどね^^

 

 

55 名無しのハンター

 

 

 >>1

 どういうことなの・・・

 

 

 

56 名無しのハンター

 

 

 え、プロなんだよな?

 

 

57 鉄腕アルバイター

 

 

 そうだよ

 でもその前にうちの店長の騎士なんだって

 

 

58 名無しのハンター

 

 

 騎士とか意味がわからないですね

 

 

59 鉄腕アルバイター

 

 

 騎士は騎士なんだって。店長が子供のときにしりあってそれからずーっと守ってんだって。

 でも実際ガチ騎士だよ。俺の忠誠は主に捧げている(`・ω・´)キリ っていってたし。店長にちょっかいかけようとする人たちは輝くイケメンが全部追い払うし。最近だとライセンス貰って警察も完璧味方につけたよ!

 

 

 

60 名無しのハンター

 

 

 予想以上に騎士だった件

 

 

 

61 名無しのハンター

 

 

 D様に守ってもらえるとか、店長裏山あぁああああああ!

 

 

 

62 名無しのハンター

 

 

 D様ファンの嫉妬がこええな

 

 

 

63 鉄腕アルバイター

 

 

 >62

 それは結構あるよ。スペックのところにストーカーによく会うってかいてるだろ?リアルだぜ。お前等の幻想ぶちこわすようだけど、マジキチの女怖いよ?この前店長宛に届いたはがき、紙面いっぱいに「死ね」って書いてあったし、猫とか犬とかの小動物の死骸よく届けられた。

 

 

 

64 名無しのハンター

 

 

 え…

 

 

65 名無しのハンター

 

 

 なにそれ怖い

 

 

66 名無しのハンター

 

 

 巨乳美人とD様に囲まれてる>>1裏山、爆ぜろと思ったけど全然羨ましくも無かったでござる

 

 

 

67 名無しのハンター

 

 

 て、店長大丈夫なのか!?

 

 

68 名無しのハンター

 

 

 あっ、そうだよ!店長無事か!?

 

 

69 鉄腕アルバイター

 

 

 大丈夫、俺たち店舗兼自宅に三人で住んでるからなんかあったらすぐわかるし、いまそのストーカー自体は解決した^^ 日常茶飯事だぜ?

 

 

70 名無しのハンター

 

 

 そうか…貴重なおっぱいが失われるのは全人類の宝の損失だからな…

 

 

71 名無しのハンター

 

 

 禿同

 

 

72 名無しのハンター

 

 

 おい、今さらっと>>1が同棲匂わせたんだが…

 

 

73 名無しのハンター

 

 

 あ、本当だ!おいこら>>1!!!俺たちのD様とおっぱい店長と同棲ってどういうことだこらああああああ!!ヽ(`Д´)ノ

 

 

74 鉄腕アルバイター

 

 

 え…住み込みアルバイトだけど?

 一応いっとくけど本当になんもないよ?店長と輝くイケメンも何もないし、俺もラッキースケベも起きないし起こす気もないし。ただの同居。

 俺もイケメンも店長のことそういう対象として意識してないし。 

 

 

75 名無しのハンター

 

 

 >>1がはじまってた

 

 

76 名無しのハンター

 

 

 アーッ!

 

 

77 名無しのハンター

 

 

 アーッ!!

 

 

78 名無しのハンター

 

 

 アーッ!?

 

 

79 名無しのハンター

 

 

 76-78

 重婚おめ

 

 

80 名無しのハンター

 

 76-78

 お前等ケコ━━━━(・∀・)人(・∀・)━━━━ン

 

 

81 名無しのハンター

 

 

 なんだホモか

 

 

82 名無しのハンター

 

 

 本日のホモスレはここか?

 

 

83 名無しのハンター

 

 

 おっぱいたゆんたゆんよりガチムチイケメンに走ったか…まああのイケメンじゃあな…ちかたない

 

 

84 鉄腕アルバイター

 

 

 ちょ、勝手に人のことホモ扱いすんなしwwwwwwちげーし。俺おっぱい大好きだし店長が揉ましてくれるっていうなら延々もみもみしたいよ?wwww

 この前インフル明けで病院から帰ってきたら抱きしめられたwwwwwめっちゃおっぱいでかくて柔らかくて至福でしたwww俺店長にどこまでもついていきますwwwwwwでも輝くイケメンの視線めっちゃ怖かったww視線で殺せるなら多分三回以上タヒってるwwwwww

 

 

 店長は女としてある意味終ってるから意識から外れるんだよなー見た目もすげーいいし、女王様とかすきなら絶対踏んでください!ってなると思うけど、そんなつもりないだろーし。むしろドン引くだろうね。

 

 

85 名無しのハンター

 

 

 >>1 自害せよ

 

 

86 名無しのハンター

 

 

 >>1 掘られろ

 

 

87 名無しのハンター

 

 

 >>1 穿たれろ

 

 

88 鉄腕アルバイター

 

 

 だが断る

 

 

89 名無しのハンター

 

 

 だいたいなんだお前!ヽ(`Д´)ノ

 店長が女として終ってるってどういうことだ!どう考えても高スペック美女じゃねぇか!喧嘩売ってんのか!?

 

 

90 鉄腕アルバイター

 

 

 あー…うん。店長はね…。

 スペックんところに書いたけど、あの人めっちゃ本好きで動かない人なんだよね。

 

 

91 名無しのハンター

 

 

 それがなんだよ。

 貸本屋なんだから本好きでも動かなくてそんなおかしくはねーだろ

 

 

92 名無しのハンター

 

 

 俺も本なら山盛りあるぞ

 ベッド埋まるくらい

 

 

93 名無しのハンター

 

 

 俺も俺も。

 本棚入りきらんし、一部屋潰れてるし

 

 

94 鉄腕アルバイター

 

 

 そういうレベルじゃないんだ。マジ書痴。

 部屋は本がマジタワーいくつも作ってるし、うちの居住スペースで本を見かけないところがないくらい。廊下にも侵食してるし、店長の部屋はリアル書庫。勿論店舗も本だらけ。本棚はパンパンだし入らないところは天井の梁とかロフトの上とかまで置いてある。

 

 あと重度の書痴だから本を読む以外は寝るか風呂かトイレか飯くらい。動かない本当に動かない。目の前で電話鳴っててもとらない。

 置物みたいに定位置にすわってずっと本読んでる。

 

 

95 名無しのハンター

 

 

 店長が廃レベルだった

 

 

96 名無しのハンター

 

 

 それ、D様がいてもそうなの?

 

 

97 鉄腕アルバイター

 

 

 >96

 そう。

 あのイケメンを意識から外すくらいの書痴。

 本まっしぐらの書痴。

 

 家事もしない働かない食っちゃ寝で本読んでる人…

 

 いくら美人でも…って思うぜ実際。家事してんの俺だし

 

 

98 名無しのハンター

 

 

 oh…

 

 

99 名無しのハンター

 

 

 店長がエプロンつけて台所に立つ姿を妄想した俺に謝れ

 

 

100 鉄腕アルバイター

 

 

 100ゲト

 >99

 お前が店長に謝れ

 

 

101 名無しのハンター

 

 

 即レスwww

 >>1は女として店長を意識してないけど店長大好きだなwwwww

 

 

102 鉄腕アルバイター

 

 

 店長俺の命の恩人だ(`・ω・´)

 店長いなかったら俺たぶんのたれ死んでた!

 店に来るのマジ怖い人ばっかだけど、それでもがんばるのは店長に恩をかんじてるからだ!

 

 

103 名無しのハンター

 

 

 >>1 元浮浪者だしな

 

 

104 名無しのハンター

 

 

 店長ちゃんと守れよ

 

 

105 鉄腕アルバイター

 

 

 守るのはイケメンの仕事。俺は店を維持して回転させるのが恩返しなのwだって店長仕事しないもん(´・ω・`)

 

 

106 名無しのハンター

 

 

 弱いww

 

 

107 名無しのハンター

 

 

 怖い人くるんだろww大丈夫かwwってか怖い人ってなんだよ

 

 

108 鉄腕アルバイター

 

 

 弱いよ、多分最弱じゃね?

 いや、イケメンとか、店長の友達がちょっと意味わからない位強いだけだけどね^^

 プロハンターとか殺し屋しかこないし。

 

 

109 名無しのハンター

 

 

 >プロハンターとか殺し屋しかこないし。

 

 

110 名無しのハンター

 

 

 >殺し屋しかこないし。

 

 

111 名無しのハンター

 

 

 つ…り?

 

 

112 名無しのハンター

 

 

 殺し屋とかねーよwwww

 

 釣り…だよね?

 

 

113 鉄腕アルバイター

 

 

 釣りじゃないよ。

 ある夜中スゲェ地響きみたいな音がしたから吃驚して飛び起きたら壁に大穴が空いていたでござる。

 そこに見知らぬダンディおっちゃんが立ってた。空気がすげーびりびりしてて、イケメンが槍構えてた。

 そしたら俺なんか攻撃されたっぽくてイケメンが庇ってくれたんだよね。

 でも気付いたらダンディおっちゃんいなくて、店長の部屋が大破してた。店長は寝ぼけてた。どんだけ度胸あんのwwww

 あとから聞いたら殺し屋さんだったらしい。有名な人だって。今は契約が破談になって店長には手は出さないよ、っていってるから大丈夫ww

 

 

 

114 名無しのハンター

 

 

 …え

 

 

115 名無しのハンター

 

 

 ってか貸本屋の店長がなんで狙われんだよ

 

 

 

116 名無しのハンター

 

 

 店長の部屋大破って…ねーよww

 釣りだろww

 

 

117 鉄腕アルバイター

 

 

 つ【壁に大穴が開いた部屋の写真】

 

 

118 名無しのハンター

 

 

 うわああああああ!マジで大穴!

 

 ってか本の量が半端ない件

 

 

119 名無しのハンター

 

 

 マジだし!

 だがそれが襲撃によるものかはわからん!

 

 ってかD様は槍使いなの?何それ胸熱wwwww

 

 

120 名無しのハンター

 

 

 なんか古い本とかいっぱいだな…

 店長マジで本スキーなんだな…

 

 

 あああああD様が槍構えるとか!絵になる以外ないな!www

 

 

121 名無しのハンター

 

 

 空気が微妙だね、清涼剤を上げよう

 

 つ【組んだ腕の上にのる重量感のある胸の画像】

 

 

122 名無しのハンター

 

 

 はっ?

 

 ってwwwwwwうぇwwwwうぇwwwww

 この流れでお前は勇者かwww

 

 

 いいおぱーいですね

 

 

123 名無しのハンター

 

 

 ちょ、>121がマジ勇者wwww

 

 これは至宝だな

 

 

124 名無しのハンター

 

 

 ちょっとクラシカルな服装なのがたまんねぇなwww

 禁欲的な服は暴きたいwwww

 

 

125 鉄腕アルバイター

 

 

 え

 

 え?

 

 

126 名無しのハンター

 

 

 ん?どうした>>1

 

 

127 名無しのハンター

 

 

 どうした?

 店長のおっぱいよりいいおっぱいでびっくりしたか?

 

 

128 名無しのハンター

 

 

 たしかにこれはいいおっぱい。

 おっぱい信者の俺は即保存余裕でした

 

 

129 鉄腕アルバイター

 

 

 >121

 誰?

 この距離でなんで撮れたの?

 

 

130 名無しのハンター

 

 

 おや?

 >>1の様子が…

 

 

131 名無しのハンター

 

 

 >130

 pkmnかしwwwwww

 

 

132 名無しのハンター

 

 

 >130

 BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB

 

 

133 盗人

 

 

 彼女はもっと危機感を持つべきだよね。

 イケメンの隙を突いて携帯激写余裕でした^^

 

 

134 名無しのハンター

 

 

 は?

 っかコテハンwwwwww

 

 

135 名無しのハンター

 

 

 知り合いキター?(・∀・)

 

 ってww盗wwww人wwwww

 

 シーフさんチィーッスwwww

 

 

136 名無しのハンター

 

 

 えっ、てことはこれ店長なの?

 店長のおっぱーいなの?wwwww

 やばい、お店行きたいですwww

 

 

137 名無しのハンター

 

 

 俺も見たい…

 でも扉が一向に開いてくれないんだよなww

 

 

138 名無しのハンター

 

 

 >137

 とりあえず鍵は開いてるだろ

 外に出ろ

 

 

139 鉄腕アルバイター

 

 

 >盗人さん

 何してるんですかアンタ…

 

 何してくれちゃってんですかあああああああああ!!!???

 

 店長のおっぱい写真なんて!写真なんて!!

 

 眼福です。ありがとうございます 

 

 

140 名無しのハンター

 

 

 >>1 

 おいwwwwwおwwwwwいwwwwww

 

 

141 盗人

 

 

 どういたしまして^^

 写真とってもシャッター音がでないように仲間に改造してもらったから気付かれてないと思う。

 まあ俺はそんなへましないけどね。

 

 

142 名無しのハンター

 

 

 最後の一行だけ見るとかっこいいがやってることは犯罪だwwwww

 

 

143 名無しのハンター

 

 

 この盗人やりおるぞwwwww

 

 

144 名無しのハンター

 

 

 店長のおっぱいいいおっぱいwwww

 

 

 

 

 うっ

 

 

145 名無しのハンター

 

 

 盗撮写真で抜くなwwwwww

 

 

 

 

 ふう

 

 

146 名無しのハンター

 

 

 やだこのスレイカ臭い…

 

 

147 鉄腕アルバイター

 

 

 こらー!ヽ(`Д´)ノ 店長で抜くなー!

 

 店長は俺が、俺が…いやイケメンが守る!(集中線)

 

 

148 名無しのハンター

 

 

 >>1

 お前が守れしwwwww

 

 

149 名無しのハンター

 

 

 安定のイケメンのイケメン具合wwww

 

 1ェ…

 

 

150 名無しのハンター

 

 

 守るならまず盗人から店長守れよww

 

 盗人も店長で抜いてるだろ!(`・ω・´)

 

 

151 盗人

 

 

 失礼だな。

 いい胸だったから思わず撮っただけで、そんなことしないよ。

 

 

 

 

 

 

 そんなことしなくても一夜限りの女性はいくらでも手に入るし^^

 

 

 

 

152 名無しのハンター

 

 

 

 

153 名無しのハンター

 

 

 

 

154 名無しのハンター

 

 

 

 は?

 

 

 

155 鉄腕アルバイター

 

 

 残念だったな諸君。

 盗人さんプロハンターに通用するくらい強い人だ。この人に一時期店番頼んだときに不審者が面白いくらいなぎ倒されるのを見て確信している。

 

 多分天空闘技場200階軽くいけるレベル。

 

 そんな人に…俺が喧嘩売るわけないだろ (´;ω;`)ブワッ

 

 

 

 あと、盗人さんは輝くイケメンと並んでも見劣りしない黒髪イケメンだぞ?

 

 

156 名無しのハンター

 

 

 盗人爆発しろ

 

 

157 名無しのハンター

 

 

 盗人滅べ

 

 

158 名無しのハンター

 

 

 盗人自害せよ

 

 

159 名無しのハンター

 

 

 おwwwww前wwwwww等wwwwww

 嫉妬乙wwwwww

 

 

 

 盗人爆散しろ

 

 

160 盗人

 

 

 はははー^^やーだよ☆

 

 

 

161 名無しのハンター

 

 

 ぬがあああああああああああ!!!!!!

 ちょ、むかつく!その星やめろ!!!!

 

 

162 名無しのハンター

 

 

 スレ住民の安定のイケメン嫌いwwwww

 

 ただしD様は除く

 

 

163 名無しのハンター

 

 

 D様ディスるとかあるわけねーだろJK

 

 

164 鉄腕アルバイター

 

 

 お前等度胸あるなー(´・ω・`)

 盗人さん天空闘技場200階レベルだよ?

 

 

165 名無しのハンター

 

 

 イケメンは…イケメンはすべてに恵まれているというのか…orz

 

 

166 名無しのハンター

 

 

 匿名だから気にしない!(`・ω・´)

 

 

167 盗人

 

 

 ハンターライセンスって便利だよね?

 

 IDだけで探ることもできるし^^

 

 

168 名無しのハンター

 

 

 うわあああああああああああああああああああああああああああ

 

 

169 名無しのハンター

 

 

 ごめんなさいごめんなさいごまんなさいごめんなさいごめんなさい

 

 

170 名無しのハンター

 

 

 ぎゃああああああああああああああああああああああああああ

 すいませんすいません許してー!!!!

 

 

171 名無しのハンター

 

 

 サーセンしたああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!_| ̄|○

 

 

 

172 名無しのハンター

 

 

 プロハンターじゃないですかー!!!やだー!!!

 

 

 なまいってサッセンしたああああああああああ!!!!

 

 

173 名無しのハンター

 

 

 ディスってたやつ等の絶叫wwww

 

 

174 名無しのハンター

 

 

 予想外の盗人さまのスペックに動揺を隠せないwwww

 

 

175 名無しのハンター

 

 

 盗人さまがおっぱいうpしてくれたときから味方に回っていた俺に隙はなかった(`・ω・´)

 

 

176 盗人

 

 

 しかたないな┐( ̄▽ ̄)┌

 許してあげる

 

 

177 鉄腕アルバイター

 

 

 珍しく盗人さんが第三者に優しいwwww

 

 というかキャラがキャラが…wwww

 いつものクールっぷりはどこに行ったの?www

 

 

178 盗人

 

 

 君の大好きなおっぱい店長に変態押し付けられたときに家出したよ

 

 

179 名無しのハンター

 

 

 顔文字も草もなくて盗人さまのテンソンが下落したのはわかったでござる

 

 

180 鉄腕アルバイター

 

 

 え?

 

 え?

 

 

181 名無しのハンター

 

 

 >>1 がめっちゃ焦ってるwww

 

 ざまぁwwww

 

 

182 名無しのハンター

 

 

 >>1 

 状況がわからずに焦っておるwwwwざまぁwww

 

 

 まあ俺もよくわかってないが

 

 

183 名無しのハンター

 

 

 >>1ザマァ! プギャ――m9(^Д^)――

 

 

 で、盗人さまどうしたの?大丈夫?(´・ω・`)

 

 

184 名無しのハンター

 

 

 おっぱい店長が変態を押し付けるって…

 プロの盗人さまでも手に余る廃スペな変態だったの?

 

 

185 鉄腕アルバイター

 

 

 え、え。大丈夫ですか??店長が?え?この前出かけて帰ってきたらもういなかったですよね?そのとき?

 俺の知ってる人?

 

 

186 名無しのハンター

 

 

 >>1 がマジ焦ってる件ww

 

 

187 名無しのハンター

 

 

 予想外のテンソンの落差www

 

 

188 クールが家出中の盗人

 

 

 いろんな意味で廃スペックだね。

 普段はこんなところROMもしないのに覗いてしまうくらいには…もう疲れたよ。

 

 

189 名無しのハンター

 

 

 >>188

 コwwwwテwwwwハwwwwwンwwww

 

 

190 名無しのハンター

 

 

 >>188

 あかん!それ死亡フラグや!

 

 

191 鉄腕アルバイター

 

 

 えええええええ!しっかりしてください!!!アワワ ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ

 

 

192 クールが家出中なうの盗人

 

 

 なんなのあいつなんであんないいえがおでおいかけてくんのやらないかとかどこのあべさんなのあべさんとなかよくすればいいじゃないおれなんかほっといてくれよまじでかんべんしてよあんさついっかのちょうなんとともだちなんだろそっちいけよまじでかんべんしてくださいおねがいしますだれでもいいからちょっとたすけにきてくれてもいいじゃないなんでだれもきもいのひとことででてきてくれないのまじなきそうなんだ…

 

 

193 名無しのハンター

 

 

 盗人様がご乱心だ

 

 

194 名無しのハンター

 

 

 これは酷い

 

 そしてコwwwテwwwハwwwwンwww

 

 

195 名無しのハンター

 

 

 >>1

 知り合いだろ?

 なんか楽しい話でもして慰めてやれよw

 

 

196 鉄腕アルバイター

 

 

 え、え?

 楽しい話…ええといくつかあるけど…じゃあ安価しよう安価!

 

 ①輝くイケメンがまさかの涙目!俺と店長の2828が止まらない!

 ②店長いけません!ここには男もいるんです!

 ③金もある顔もいい地位もある。しかし店長の基準はそこじゃない。プギャ――m9(^Д^)――

 

 

 安価>>205

 

 

197 名無しのハンター

 

 

 ちょっ!wwwちけぇwww

 

 

198 名無しのハンター

 

 

 >>1 てめぇこの野郎全部読みたいわ!

 

 

199 名無しのハンター

 

 

 くそwwwくそwww選べないぜwww

 

 ②

 

 

200 名無しのハンター

 

 

 ③

 

 

201 名無しのハンター

 

 

 ①だろ

 

 

202 名無しのハンター

 

 

 ③

 

 

203 名無しのハンター

 

 

 ②

 店長結婚してくれ

 

 

204 名無しのハンター

 

 

 ③

 

 

205 常識を拾ってこさせたい盗人

 

 

 ①

 

 かれのよわみをにぎれるのかい?

 

 

206 名無しのハンター

 

 

 ②

 さらっと求婚すんなし

 

 

207 名無しのハンター

 

 

 ①

 D様hshs

 

 

208 名無しのハンター

 

 

 >>207

 てめぇは俺を怒らせた

 

 

209 名無しのハンター

 

 

 お

 

 

210 名無しのハンター

 

 

 お

 

 

211 名無しのハンター

 

 

 ①か。

 

 ってか盗人様wwww

 大丈夫?しっかりwwwww

 

 

212 名無しのハンター

 

 

 盗人様のコテハンが毎回吹くんだがwww

 

 

213 名無しのハンター

 

 

 やったーおれ①だったんだww

 D様涙目とか…w

 

 

214 鉄腕アルバイター

 

 

 あ、きまったな。①ね。

 わかった書き溜めるからまってて(`・ω・´)

 

 

215 名無しのハンター

 

 

 ノシ

 

 

216 名無しのハンター

 

 

 まってるー ノシ

 

 

217 名無しのハンター

 

 

 wktk

 

 

218 名無しのハンター

 

 

 >>1 が書き溜めるまで輝く貌のD様の話しねぇ?んで質問あったらきかね?

 

 

219 名無しのハンター

 

 

 >>218

 いいね!天闘板ではいまだに固定ファンついてるけど、こんな私生活の話しらないだろうしな!

 

 

220 名無しのハンター

 

 

 この板の存在気付いてないだろうなww

 あとで絶対悔しがると思うww

 

 

221 名無しのハンター

 

 

 楽しいのうwwww楽しいのうwwww

 

 

222 名無しのハンター

 

 

 2ゾロゲト

 

 天闘板のやつら妙な戦闘の考察とかいれて新参とか素人ばかにするから嫌いなんだwww

 

 

223 名無しのハンター

 

 

 D様が現役のときは女で埋まってたな。

 女スネークの多さは気持ち悪かったわ。

 

 

224 名無しのハンター

 

 

 まああのイケメン…というかイケメンという俗語で語るのもおこがましいほどの輝く貌ではちかたないと思う

 

 

225 名無しのハンター

 

 

 一時期出待ちも酷かったらしいけど、気付いたらふーっと消えるみたいにいなくなるんだと。

 その時期から店長一緒ならそのまま帰ると店長の命の危機だよな

 

 

226 名無しのハンター

 

 >>225

 stkの性質考えると、D様は隠れて帰るしかなかったんだろうな。闘技場の部屋は使って無かったって話だし。

 

 

227 名無しのハンター

 

 

 マジキチ女マジこわす

 

 

228 名無しのハンター

 

 

 しかし美形はいつまでたっても美形だな

 年齢を感じさせないふつくしさ

 

 

229 名無しのハンター

 

 

 >>228

 あ、それ他の闘士もじゃね?

 特に200階から上の闘士って年齢不詳だよな

 

 

230 名無しのハンター

 

 

 >>228

 俺なんかきいたけど、特殊な健康法?みたいなのもってて肉体細胞の活性化が凄くて老化が鈍るんだと…

 どこまで本当かしらないけど。

 教えて欲しいっていったらめっちゃ酷い修行?だったからやめた。

 

 

231 名無しのハンター

 

 

 >>230

 まああの写真がいつごろのものかわからないけど確かに当時と変わらずの美しさだな。

 ってか自然に男に美しいとか使っちゃうんだけどwwww

 D様マジスゲェww

 

 

232 名無しのハンター

 

 

 俺たちのD様は

 

 

233 名無しのハンター

 

 

 最強なんだ!(集中線)

 

 

234 名無しのハンター

 

 

 やwwwwwwめwwwwwろwwwww

 

 

235 名無しのハンター

 

 

 >>232-233

 その台詞もどこがモトネタかわからないけど妙な可笑しさで人気あるよなwww

 

 

236 鉄腕アルバイター

 

 

 ただいまーヽ(´∇`)ノ書き溜めたよー

 投下していい?

 

 

237 名無しのハンター

 

 

 ε=ヾ( ・∀・)ノ   オカエリー! ヽ(・∀・ )ノ

 

 

 

238 名無しのハンター

 

 

 キタ*・゜゜・*:.。..。.:*・゜(゜∀゜)゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*!!!!

 

 

239 名無しのハンター

 

 

 キタ━━━(゜∀゜)━( ゜∀)━(  ゜)━(  )━(  )━(゜  )━(∀゜ )━(゜∀゜)━━━!!

 

 

240 名無しのハンター

 

 

 カモ━━━━щ(゜д゜щ)━━━━ン!!

 

 

241 名無しのハンター

 

 

 早くしてくれ!寒くて仕方ないんだ!

 

 

242 名無しのハンター

 

 

 なんで脱いだし

 

 

 今日は風が冷たいな :(;゛゜'ω゜'):サムィー

 

 

243 名無しのハンター

 

 

 俺なんてスレタイの時点で全裸だぜ!

 

 

244 名無しのハンター

 

 

 貴様等!ちゃんと靴下は履いてるんだろうな!

 

 

245 名無しのハンター

 

 

 紳士の正装はネクタイだろ?

 

 

246 鉄腕アルバイター

 

 

 つ【エプロン】

 

 

 じゃあ投下していくな

 

 

 

 前にも書いたけど店長はスゲェ書痴。

 止めなかったら延々読み続けるし、本を読む以外は生理現象のときくらいしか動かない。

 その集中力はあの輝く貌の魅了さえ跳ね除けるほどだから凄いんだ。

 知り合いのプロハンターとかもよくいってたんだよね「その集中力は驚嘆に値するわさ。見習いたくはないけど」ってwww

 まあ確かに、常識的に狂ってるといわれるくらいには酷い読書癖だと思うwww店長は店長じゃなかったら多分生きていけないwww

 今は昔より酷くないけどね。周りに言われ続けてちょっと周囲を気にするようになった。それでも酷いんだけどww

 

 んで、輝くイケメンはともかくうちの店長が好きっていうかよいしょっていうか…いい言い方が思いつかないけど、主!主!って大事にしてんのな。ちと過保護とも思うけど、店長はもう一生あのままの店長だろうからちょっと過保護くらいじゃないと多分いきていけない…。

 

 基本的に駄目人間の体を晒す店長だけど、その集中力はやっぱ誰がみても凄くて…(;´д` )うわあってなる凄さだけどねwwwwww

 

 イケメンはそれは見習うべき所です( .・`ζω・´)キリ っていってどうやったら集中力あがるかって話になった。

 

 

 

247 名無しのハンター

 

 

 なんでエプロンなんだよwwww

 

 

248 名無しのハンター

 

 

 皆が店長に酷いwww

 

 

249 名無しのハンター

 

 

 D様の顔文字の秀逸さに吃驚したわwwww今度わざと天闘板で使ってこようwww

 

 主!っていうD様マジ騎士www俺も守られたいwwww

 

 

250 鉄腕アルバイター

 

 

 盗人さん大丈夫?見てるー?

 

 

 続き!

 

 店長はイケメンが凄く凄く真面目なのを良く知ってるからここでへんなこといったら本当におかしなことでも実行してしまうんだろうなとおもったらしい。それはそれで面白いと思っていたと俺は確信している。店長は妙なところで愉快犯だすときがある。たまにネタを使うから勘弁して欲しいwwあの人ネットにはあんまり触れてないはずなのにな。

 

 それで店長は山積みになった本から一冊抜き出して、引き出しから和紙を出した。

 

 和紙ってわかる?

 ジャポンで作られてるぺらぺらの紙!あんなに薄いの何に使うのって思ったけど、なんか像とか絵とかの修復につかったりって結構応用効くらしいね。ジャポンの人凄いな。

 店長はジャポン好き。結構そういうグッズ持っててストローマットも敷いてたりする。

 

 そんで、筆ペンっていう、和紙に書くときに使う液体の凄いペン…先っちょが毛になってるんやつ。

 

 つ【墨の垂れる筆ペンの画像】

 

 こんなやつね。これイケメンに渡した。

 

 店長「これを写経したらいいんじゃない?」

 

 イケメン「これは?」

 

 店長「正座してその文字を上からなぞるの。昔から集中力と平常心を養うといわれているやりかたよ。あまり室内でそういうことしないでしょ?いつもと違うやり方を実践してみるのもひとつの手じゃないかしら」

 

 イケメン「なるほど!さすがです店長様!早速やってみます!」

 

 写経セットを受け取ったイケメンの貌が本当にシャイニーでした。見慣れた俺でもまぶしい。

 普段そっち方面にとことん興味を示さない店長が付き合ってくれたのが嬉しかったのかな?

 

 

251 名無しのハンター

 

 

 いい笑顔のD様マジ天使!

 

 

252 名無しのハンター

 

 

 いいなーstkは勘弁だけどD様と店長のやりとりみたいわー

 

 

253 名無しのハンター

 

 

 ジャポンの技術凄いよな。

 あと飯が美味い。

 

 

254 名無しのハンター

 

 

 わかる。あとジャポン人年齢不詳すぎ。

 いくつ?ってきくとだいたい予想より5歳上とかざら。

 

 

255 名無しのハンター

 

 

 盗人さまの反応ないんだが…

 

 

256 名無しのハンター

 

 

 まさか変態に…

 

 

 

257 ROMに専念することで嫌なことを忘れようとしている盗人

 

 

 >256

 ころすぞ

 

 

258:256

 

 

 すみませんごめんなさいすみません!!!!!本当にすみません!!!!!!

 

 

259 名無しのハンター

 

 

 盗人さまが狂気やでぇ!!!(゜д゜;)

 >>1 早くするんだ!

 

 

260 鉄腕アルバイター

 

 わかった!盗人さん気をたしかに!今度美味しいものつくりますから!

 

 

 続き

 

 いそいそと机に向かって正座をするイケメン。

 勿論俺もイケメンも正座なんて普段しないよ。椅子オンリー。店長くらいかな、座椅子使うの。本当にジャポン好きらしい。

 

 その後は静かな時間が流れたよ。

 俺は二人にお茶入れようとサイフォン取り出したり、店長は相変わらず黙々と本読んでる。イケメンはめっちゃ集中して写してた。

 手元みたらちょっと震えてた。

 万年筆やペンと違って筆ペンって安定しないんだ。けどあれ凄いよな。あれで文字かくとなんかペンとかで書くのと違うその人の人格とか見えてくる…素人の俺でもそう思う。

 

 店長が、イケメンは集中してるからお茶はあとにしなさいっていうから店長と俺だけでお茶した。

 

 ちなみにイケメンはストローマット敷いてある和室で写経してるから、併設してるリビングからはその姿がみえるんだよね。

 

 鉄板でもしこんでるのかってくらいぴんとしたいい姿勢でかいてた。

 

 

 そんな状態が約20分ほどつづく…

 

 その間は特に問題もなにも無くて。ふう、って溜息つくからイケメン見ると一ページがどうも終ったらしい。20分間もお疲れだなーと思って二人で見てたら、店長が「お茶にしない?」ってイケメンを呼んだ。

 

 イケメンはいい笑顔で挨拶して立ち上がる…

 

 

261 名無しのハンター

 

 

 おい!こんなところで切るなよ!

 

 

262 名無しのハンター

 

 

 >>1 貴様は人の気持ちがわからない!!

 

 

263 イケメンの涙目待機なうの盗人

 

 

 はよ

 

 

264 名無しのハンター

 

 

 だから、盗人様wwww

 

 だが同意はよはよ( ;゜皿゜)ノシΣバンバン

 

 

265 鉄腕アルバイター

 

 

 盗人さん…あなた疲れてるのよ…

 

 

 続き!

 

 

 立ち上がろうとしたイケメンに電流走る!

 

 リアルに( .・ζω・;)エ…

 見たいな顔してた。

 

 店長「どした?」

 

 普段にない表情に心配したらしい。てくてく歩いていく店長。俺も心配になってついていくと、イケメンが掌こっちむけて止めてきた。

 

 イケメン「お、おまちください!いきます!すぐ行きますから!」

 

 店長「う、うん…」

 

 俺「Dさーん?」

 

 イケメンは大きく息を吐くと、何かを決意したような顔をして立ち上がって…

 

 

 膝から崩れ落ちた

 

 

 店長「D!!??」

 

 俺「Dさん!!??」

 

 普段のイケメンは闘技場しってる人なら知ってると思うけど、どんな攻撃も当たらないし、当たっても平然としてる超人。そんな姿みたことなくて俺と店長はめっちゃ焦って近づいていった。

 

 店長が珍しく焦った声で「Dっ」って呼んでた。空気読まなくてもうしわけないけど、あー本当にお互い大事なんだなーとかおもった。

 俯いてたイケメンが「…っ」ってうめいたあと顔を上げた。

 

 

 この世で一番の破壊力のある涙目の上目遣いで俺\(^o^)/オワタ

 

 

 凄い破壊力でした。あの人はあの顔で世界征服できると確信した。

 

 

 俺や店長じゃなかったらあまりのことに奇声をあげていただろう。ぶっちゃけ規制ものだ。

 

 

 

266 名無しのハンター

 

 

 たった

 

 

267 名無しのハンター

 

 

 おっきした

 

 

268 名無しのハンター

 

 

 あれ俺いつ書きこんだっけ

 

 

269 名無しのハンター

 

 

 あれ、俺がいる

 

 

270 鉄腕アルバイター

 

 

 >>266-269

 死んじゃうよ?(´・ω・`)

 

 

 顔を上げたイケメンは眉を寄せて悔しそうに顔をゆがめて

 

 

 

 

 イケメン「…っ…、っ!申し訳ありません…

 

 

           痺れてうごけません  ( .´;ζω;`)ブワ  」     

 

 

 

 店長と俺は同時に吹いた。

 

 

 店長はもう遠慮もくそもなく腹抱えて笑い出して、俺はイケメンの手前そんなことができないと腹筋を最大出力で締めたが…無理だった。口からぶふって!出た。

 

 

 イケメンは「くっ!」と凄く悔しそうだったけど。普段の姿をしってる俺たちはなんかもー可笑しいやら可愛いやらでずーーーーーーっと2828してた。

 

 

 多分軽く30分くらい2828してた。

 

 

 そしたらイケメンが拗ねた。部屋から出てこない。

 

 

 店長は2828ながら「しゃーねーな」みたいな顔して部屋に説得に行った。

 

 俺はお茶入れてあげた。

 

 

 凄い破壊力とギャップでした。

 

 

 以上

 

 

271 名無しのハンター

 

 

 俺は今新たな扉を開けてしまった

 

 

272 名無しのハンター

 

 

 >>271

 おまおれ

 

 

273 名無しのハンター

 

 

 おれ今からFC入ってくるわ。

 そしてこの話を「私生活ちょっとしってるんだぜ」って絶対話さないで匂わせるわ

 これは俺の中でしまっとく

 

 

274 名無しのハンター

 

 

 これが…!!戦闘力53万の顔面偏差値の力!!!!

 

 

275 いい話を聞いてご満悦な盗人

 

 

 2828

 ありがとう。

 これはちょっと彼をおちょくるいいネタだ。

 

 

276 鉄腕アルバイター

 

 

 >盗人さん

 元気になりました?

 

 でもあんまりイケメンさん弄るのは…

 

 

277 そろそろ落ちようかとな盗人

 

 

 大丈夫、殺されたくないから匂わせるくらい^^

 

 いい話きいたな。ありがとう。今度いったら美味いもの作って

 

 

278 名無しのハンター

 

 

 おお、盗人さまに顔文字がついたぞ…!

 

 

279 名無しのハンター

 

 

 本当だ!よかったな!

 

 

280 名無しのハンター

 

 

 変態なんかに負けるな盗人様!

 

 

281 鉄腕アルバイター

 

 

 あ、ごめん店長呼んでるから落ちる。

 ごめんね!

 

 

282 名無しのハンター

 

 

 >>1

 はあ?!

 まだ②と③があるだろ!!!!!!!

 

 

283 名無しのハンター

 

 

 >>1

 ちょ、1ィィィィ!!

 

 

284 名無しのハンター

 

 

 それが人間のやることかよ!!!

 

 

285 鉄腕アルバイター

 

 

 いやー本当にごめん!

 付き合ってくれてありがとう!

 

 

286 名無しのハンター

 

 

 >>1

 うわああ!

 ばかぁぁぁ!

 

 

287 名無しのハンター

 

 

 もっとkwsk!!!!!!

 

 

 

288 名無しのハンター

 

 

 いってしまった…_| ̄|○

 

 

289 名無しのハンター

 

 

 いや、ちょっと呼ばれただけかもしれない!皆のもの希望を捨てるな!

 

 

290 名無しのハンター

 

 

 そうだ!もしかしたらすぐ戻ってくるかもしれない!

 

 

291 名無しのハンター

 

 

よし!何をするかわかってるな!

 

 

292 名無しのハンター

 

 

 ほ

 

 

293 名無しのハンター

 

 

 し

 

 

294 名無しのハンター

 

 

 ゅ

 

 

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

 

(現在雑談にて保守中…)

 

 ・・・

 

 ・・

 

 ・

 

 

343 名無しのハンター

 

 

 あーでもD様の槍を振るう姿

 生でみたかったなー

 

 

344 名無しのハンター

 

 

 はげど

 

 素手でアレだけ魅せる人だったからなー

 槍での戦闘ってどんなだったのかなー

 

 

345 名無しのハンター

 

 

 200階以上じゃないと武器使用しないからな

 俺当時めっちゃ期待して待ってたのに、200階上る寸前でやめてったからさ (´;ω;`)ブワッ

 

 

346 名無しのハンター

 

 

 俺も期待してた。D様の武器ってなんだったんだろうって。

 でも槍とかマジかっこよすw

 

 

347 名無しのハンター

 

 

 今200階で期待してるのはあの子供の二人組みかなー

 12歳だろ?

 すげくねあれ。

 

 

348 名無しのハンター

 

 

 >>347

 誰?

 

349 名無しのハンター

 

 

 >>348

 最近きた「押し出し」と「手刀」のコンビ。

 どっちも12くらいのガキ。でもめちゃくちゃ強いよ。

 

 

350 名無しのハンター

 

 

 俺は…

 奇術師やっぱ見ちゃうな…

 

 

351 名無しのハンター

 

 

 あー…

 あれは見ちゃうよな、いやでも目に付く。

 

 

352 名無しのハンター

 

 

 あれの固定ファンって怖いよな

 血ぃみせろ!って感じ

 

 

353 名無しのハンター

 

 

 なんでトランプであんなに斬れるんですか (´;ω;`)ブワッ

 

 

354 名無しのハンター

 

 

 でも、D様いたらVS奇術師 期待しただろうなー

 

 

355 名無しのハンター

 

 

 俺も

 

 

356 名無しのハンター

 

 

 はげど

 

 

357 鉄腕アルバイター

 

 

 トランプ対槍になるの?

 

 トランプで防げるかな。

 イケメンの槍凄いよ?壁に大穴空けるくらいなんだけどな…

 

 

358 名無しのハンター

 

 

 今度虎咬拳とやりあうよな、奇術師

 

 

359 名無しのハンター

 

 

 新人ハンターに狙われないといいな>子供2人組

 

 

360 名無しのハンター

 

 

 >>357

 >>357

 >>357

 

 

361 名無しのハンター

 

 

 え

 

 

362 名無しのハンター

 

 

 おい

 

 

363 名無しのハンター

 

 

 1ィィィィィィ!!!

 

 

364 名無しのハンター

 

 

 待ってたー!

 

 

365 名無しのハンター

 

 

 キタワァ*・゜゜・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*!!!!

 

 

366 名無しのハンター

 

 

 キタ━━( ´∀`)゜∀゜)*゜ー゜)・ω・) ゜Д゜)´ー`)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)`Д´)´Д`)丶`∀´>━━!!

 

 

367 名無しのハンター

 

 

 キタァ(゜∀゜)ァァ( ゜∀)アァ( ゜)ァア( )ァァ(` )アア(Д` )ァア(*´Д`)アァン

 

 

368 名無しのハンター

 

 

 >>1

 さらっとwwwwwwwwwww

 

 

369 名無しのハンター

 

 

 >>1

 混ざるな自然wwwwwwwwwww

 

 

370 鉄腕アルバイター

 

 

 てへぺろ(・ω<)☆

 

 

371 名無しのハンター

 

 

 >>1

 は?

 

 

372 名無しのハンター

 

 

 >>1

 ウザイ

 

 

373 名無しのハンター

 

 

 >>1

 ふざけんなテメェ

 

 

374 鉄腕アルバイター

 

  

 |出口| λ............トボトボ

 

 

375 名無しのハンター

 

 

 おい、あんま>>1いじめんなよ!

 

 

376 名無しのハンター

 

 

 ほんとだよ!D様とおっぱい店長の話聞く前に帰っちまうじゃねーか!ヽ(`Д´)ノ

 

 

377 名無しのハンター

 

 

 サーセン(゜σ ゜)ほじほじ

 

 

378 名無しのハンター

 

 

 (^Д^)サッセーン

 

 

379 名無しのハンター

 

 

 ('A`)サーセン

 

 

380 名無しのハンター

 

 

 謝る気ないwwwww

 

 

381 名無しのハンター

 

 

 だが気持ちはわからんでもないwwwww

 

 

382 鉄腕アルバイター

 

 

 (´;ω;`)ブワッ

 

 悪かったと思ったから画像用意したいとのに…

 

 (;д;)カエリマス…

 

 

383 名無しのハンター

 

 

 1イイイイイイイイイイイ!!!!!

 

 

384 名無しのハンター

 

 

 >>1

 待ってぇ!!!!!!111!!!

 

 

385 名無しのハンター

 

 

 ちょ、ま!

 

 

386 名無しのハンター

 

 

 え、餌を

 餌をくださいぃぃブヒイイイイイイイイイイイ!!!

 

 

387 名無しのハンター

 

 

 マジでさっせんでしたあああああああああああ!!!!

 

 ブヒィィィィィィイィィイ

 

 

388 名無しのハンター

 

 

 帰らないでぇええええええええええ!!!!!

 

 ブヒィイイイイイイイイイイイイイ

 

 

389 鉄腕アルバイター

 

 

 |д゜)チラッ

 

 イテモイイ?

 

 

390 名無しのハンター

 

 

 >>1

 !!?

 いいに決まってんだろ!

 

 

391 名無しのハンター

 

 

 はよ!

 

 

 

 

 靴下だけでは寒いんだ

 

 

392 名無しのハンター

 

 

 なぜ脱いだし

 

 

 

 

 っくしゅ

 ネクタイだけでは寒いな

 

 

393 名無しのハンター

 

 

   バン    はよ

バン(∩`・д・) バン  はよ

  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/   

  ̄ ̄\/___/

 

 

 

394 名無しのハンター

 

 

 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン

 バン       バンバンバン゛ン バンバン

バン(∩`・ω・)  バンバンバンバン゛ン

 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/

    \/___/ ̄

 

 

395 名無しのハンター

 

 

 お前等の変わり身の早さにワロタwwww

 

 

 

 

 

 

 ヌンバンバンバンバンバンバンバンバンバン

ルンバンバンバン゛ン バンバンバンバンバン゛ン

ポン(∩`・ω・)  バンバンバンバン゛ン

 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/

    \/___/

 

 

396 鉄腕アルバイター

 

 

 つ【座り込んでぬこをもふる茶髪の女性の後ろ姿】

 

 つ【女性の隣でエプロン着た黒髪の男性がぬこを覗き込んでいる後ろ姿】

 

 おぱーいは駄目だけど後ろ姿ならいいよ。

 

 ちなみに呼ばれた理由は猫缶どこだ?でした。そのあと話し込んでたら遅くなった

 イケメンは皿洗ってた。

 

 

397 名無しのハンター

 

 

 プギィィイイイイイイイイイイ!!

 店長腰細ぉぉおおおおおおおおお!!!

 

 

398 名無しのハンター

 

 

 D様エプロン!!!!!hshshshshshs

 

 

399 名無しのハンター

 

 

 え、エプロオオオオオオオオオオ!!!!!

 

 <●><●>

 

 

400 名無しのハンター

 

 

 GJ>>1イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!

 

 主従可愛いよ主従うううううウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!

 

 ・

 ・

 ・

 

 (以下絶叫でスレ消費)

 

 

 

424 鉄腕アルバイター

 

 

 おまいら怖すぎワロタwww

 

 

425 名無しのハンター

 

 

 俺たちのD様と

 

 

426 名無しのハンター

 

 

 おぱーいにかける情熱は

 

 

427 名無しのハンター

 

 

 本物なんだ!!(集中線)

 

 

428 名無しのハンター

 

 

 明日から本気出す

 

 

429 名無しのハンター

 

 425-428

 お前等事前に打ち合わせでもしてんの?wwwwwwwww

 

 

430 名無しのハンター

 

 

 結婚しろ

 

 

431:425

 

 

 だが断る

 

 

432:426

 

 

 だが断る

 

 

433:427

 

 

 だが断る

 

 

434:428

 

 

 だが断る

 

 

435 名無しのハンター

 

 

 だwwwwwwwかwwwwwwwらwwwwwww

 

 

436 名無しのハンター

 

 

 もう重婚どもはいいよwwwwほっとけよwww

 せっかく>>1帰ってきたのにwwww

 

 

437 名無しのハンター

 

 

 >436

 修正乙

 

 

438 鉄腕アルバイター

 

 

 >436

 ㌧クス

 

 

439 名無しのハンター

 

 

 さあ>>1

 俺たちに餌を与えるんだ!

 

 

440 名無しのハンター

 

 

 お慈悲をおおおお!!

 おっぱい店長とD様の萌えな話をおおおおおおおwwwwwwww

 

 

441 名無しのハンター

 

 

 安価の②と③をおおおおおおおおおおおお!!!

 

 

442 名無しのハンター

 

 

 安価も気になるが俺はD様の槍が壁に大穴あけたってのが気になるんだがwww

 どういうことなのwwwwwwwww

 

 

443 名無しのハンター

 

 

 >442

 おまおれ

 どんだけ物理高いんだよwwww

 

 

444 名無しのハンター

 

 

 444ゲト

 >>442

 はげど

 安価も気になるが俺たちのしらないD様の戦闘シーン気になる

 

 

445 名無しのハンター

 

 

 >>1

 話せる範囲で!

 話せる範囲でいいんでおしえてください!!オナシャス!

 

 

446 鉄腕アルバイター

 

 

 素人目線だけどおk?

 

 

447 名無しのハンター

 

 

 >>1

 かまわん!

 

 

448 名無しのハンター

 

 

 >>1

 カモ━━━━щ(゜д゜щ)━━━━ン!!

 

 

449 名無しのハンター

 

 

 wktkwww

 

 

450 鉄腕アルバイター

 

 

 えっとね、イケメンの槍は二本あんの

 短いのと長いの

 いつも長いので戦うらしい

 

 

 店長曰く「短いのが出たらデストロイ。殺る気ボルテージMAX(意訳)」らしい

 

 槍の短いのだと何が違うのか俺にもよくわからん(´・ω・`)

 ちなみに200階闘士クラスの盗人さんは一度イケメンにボコボコにされてるよ。

 俺壁に隠れてgkbrしながらみてたけどイケメン超怖い

 俺のトラウマが再来www

 ストレスがマッハだったなwww

 

 

451 名無しのハンター

 

 

 二槍使いwwwwwwww

 D様マジかっこよすwwwwwww

 

 

452 名無しのハンター

 

 

 天闘板のやつ等は知らないだろうD様の戦闘スタイルwwwww

 ってか短い槍は謎だな、どっちかってと長いほうが一般的じゃねーの?

 

 

453 名無しのハンター

 

 

 >452

 長さにもよるんじゃね?

 長いほうに比べて短いってんなら、俺たちのものさしでいう短さじゃないのかも

 

 

454 名無しのハンター

 

 

 というか誰か盗人様に突っ込めwwwwwww

 プロハンターボコすとかマジD様強すぎワロタwwwwwwww

 

 

455 名無しのハンター

 

 

 もう盗人様いないよな?

 落ちたよな?

 

 

456 名無しのハンター

 

 

 >455

 落ちただろ

 ほとんど雑談、D様考察スレになってたし

 

 

457 名無しのハンター

 

 

 ・・・

 

 

458 名無しのハンター

 

 

 ・・・

 

 

459 名無しのハンター

 

 

 ・・・

 

 

460 鉄腕アルバイター

 

 

 ?(´・ω・`)

 

 

461 名無しのハンター

 

 

 盗人 ざまあああああああああああああああああ プギャ――m9(^Д^)――

 

 

462 名無しのハンター

 

 

 プギャプギャ━━━m9(^Д^≡^Д^)9m━━━━!!!!!!!!

 ざまあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 

 

463 名無しのハンター

 

 

 黒髪イケメンざまあああああああああああああああああああああ

 

 m9^Д^)m9^Д^)m9^Д^)ジェトストリームプギャー

 

 

464 名無しのハンター

 

 

 m9。゜(゜^Д^゜)゜。プギャーハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

 

 ボコられてやんの ざまああああああああああああああああああああああああああ

 

 

465 名無しのハンター

 

 

 こいつらwwwwwwwwwwww

 wwwwwwwwwwwwwwうえwwwwwwwwwwwwwwwうえwwwwwww

 歪みないwwwwwwww

 

 

466 名無しのハンター

 

 

 スレ住民のwwwwwww

 安定のイケメン嫌いwwwwwwwwうぇwwwwwwwwwwうぇwwwwwwww

 

 

467 名無しのハンター

 

 

 あんだけ謝ってたのにwwwww

 いないとわかるやこの強気であるwwwwwwwwwww

 

 

 だが嫌いじゃないぜ(`・ω・´)

 

 

468 鉄腕アルバイター

 

 

 盗人さんwwwwwwめっちゃディスられてるwwwwwwwwww

 

 まああのときの精神がマッハだっただけで

 普段のあの人はこんなところ絶対覗かないし

 そんな暇あったらもっと別のことに有意義に時間使う人だから

 

 

 多分大丈夫・・・・・・・・・・多分

 

 

469 名無しのハンター

 

 

 最後の一行がなんだか嫌な予感しかしないでござる

 

 

 

470 名無しのハンター

 

 

 >469

 やめろ

 それはフラグだ

 

 

471 名無しのハンター

 

 

 この話はなしだ。

 

 ってゆうか保険のためにも早くこのスレ流そうぜ(;´∀`)

 

 

472 名無しのハンター

 

 

 >471

 さんせー

 

 

473 名無しのハンター

 

 

 >471

 急に盗人様の恐怖が蘇ってきた

 

 

474 名無しのハンター

 

 

 >471

 なんか背筋ぞくぞくするお

 

 いないのに妙な存在感…

 カリスマCって所か…

 

 

475 名無しのハンター

 

 

 >474

 カリスマCってなんだよwwww高いのかわかんねぇしwww

 

 

476 名無しのハンター

 

 

 カリスマC

 小隊を指揮・統率する程度の才能

 

 

477 名無しのハンター

 

 

 >476

 よくわからんがwwwwとりあえず集団を指揮する程度のカリスマ把握wwwww

 

 

478 名無しのハンター

 

 

 勝手に盗人のステになんか妙なもん追加すんなしwwwww

 

 

479 鉄腕アルバイター

 

 

 あ、でも盗人さんリアルで会うと本当にカリスマあるよ

 存在感があってつい見ちゃうっていうか

 いやイケメンってこともあるんだろうけど

 

 

 

 

 

 

 

 まあうちにくるとログアウトしちゃうんだけどね!(`・ω・´)

 

 

480 名無しのハンター

 

 

 どんだけ盗人ハイスペックって思ったらwwwww最後wwww

 

 

481 名無しのハンター

 

 

 盗人ェ…

 

 

482 名無しのハンター

 

 

 tkなんでボコボコにされてんのwwww

 店長に手出した?www

 

 

483 名無しのハンター

 

 

 >482

 それはたしかにD様の逆鱗wwww

 

 

484 名無しのハンター

 

 

 >482

 おっぱいの写真撮ったのばれたんじゃねwwwwww

 

 

485 鉄腕アルバイター

 

 

 >482

 禁則事項です(`・ω・´)

 

 

486 名無しのハンター

 

 

 >>1

 なんでだよwwwwww

 

 

487 鉄腕アルバイター

 

 

 だってあんまり人様に話してもいい話じゃないし…(´・ω・`)

 うちの店ってちょっと特殊だから

 店長が「黙ってなさい」っていうことには従うことにしてる

 

 

488 名無しのハンター

 

 

 >>1

 あーそういえば( ゜∀゜)o彡°おっぱい!おっぱい!

 が強烈過ぎて忘れてたが

 店長ってアングラーなんだよなwww

 

 

489 名無しのハンター

 

 

 >488

 あ、本当だ

 すっかり( ゜∀゜)o彡°おっぱい!おっぱい!に気をとられてたwwww

 

 

490 名無しのハンター

 

 

 >488

 プロハンターと殺し屋の来る貸本屋とかねーよwww

 

 

 

 

 まあ、あの奇跡の山脈の前ではたいした問題でもないな

 

 

491 名無しのハンター

 

 

 >490が男前すぎた

 

 

492 名無しのハンター

 

 

 >490

 おいwww

 こいつ最初の頃にいたおっぱい信者だwwww

 ID同じじゃねーかwwwww

 

 

493 名無しのハンター

 

 

 おっぱい信者歪みないなwwwww

 

 

 

 

 かくゆう俺も実は信者なわけだが

 

 

494 名無しのハンター

 

 

 わかってねぇなお前等

 

 

 

 

 

 尻ほど崇高なものはないぞ?

 

 

495 名無しのハンター

 

 

 >494とはいい酒が飲めそう

 

 

496 おっぱい信者

 

 

 >494

 テメェは世界中のおっぱい信者代表の俺を怒らせた 

 

 

497 名無しのハンター

 

 

 >496

 コwwwwテwwwwハwwwwンwwwww

 

 

498 名無しのハンター

 

 

 >496

 男前過ぎるwwwwww

 

 

499 美尻ハンター

 

 

 >おっぱい信者

 尻の崇高さを理解できんとは嘆かわしい

 

 

500 名無しのハンター

 

 

 500ゲト

 >美尻ハンター

 アマチュアですねwwわかりますwwwww

 

 

501 おっぱい信者

 

 

 >美尻ハンター

 きさまら尻党とは一度雌雄を決するべきと思っていた

 

 

502 美尻ハンター

 

 

 >おっぱい信者

 遥か太古から双璧をなしてきた我等の戦いについに決着をつけるときがきたわけだな

 

 

503 名無しのハンター

 

 

 >おっぱいと尻

 とりあえず他所の板にイッテ( ゜д゜)(゜д゜ )ヨシ

 

 

504 名無しのハンター

 

 

 >おっぱいと尻

 たぶん永遠に決着つかねーわ

 

 

505 名無しのハンター

 

 

 はげど

 

 

506 鉄腕アルバイター

 

 

 わかるけどねwwwww

 

 気持ちは凄くわかるけどねwwwww

 

 

507 名無しのハンター

 

 

 まったくおっぱいと尻信者のせいで脱線したじゃん

 

 

508 名無しのハンター

 

 

 しかも決着のつかない話なわけでww

 

 

509 名無しのハンター

 

 

 永遠の平行線

 

 

510 名無しのハンター

 

 

 まったくヽ(`Д´)ノ

 俺はD様の話とか聞きたいんだよ!

 

 

511 名無しのハンター

 

 

 そうだ!そのために保守してたんだぞ!

 

 

512 おっぱい信者

 

 

 サーセン(´・ω・`)

 

 

513 美尻ハンター

 

 

 おスマン('A`)トルコ

 

 

514 名無しのハンター

 

 

 美尻ハンターが心底ウザイ

 

 

515 名無しのハンター

 

 

 ウゼェ ■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ 

 

 

516 名無しのハンター

 

 

 ウゼェェェェェェェヽ( ゜∀゜)ノ┌┛)`Д゜)・;'ガッ!!

 

 

517 名無しのハンター

 

 

 UZEEEEEEEEEEEEEEEEEEE ○(#゜Д゜)=(  #)≡○)Д`)・∴'.

 

 

518 名無しのハンター

 

 

 フルボッコwwwwwwwww

 

 

519 鉄腕アルバイター

 

 

 これでもみてもちつけ

 

 つ【レア画像】

 

 

520 名無しのハンター

 

 

 ゑ

 

 

521 名無しのハンター

 

 

 どうしたらいいかわからない

 

 

522 名無しのハンター

 

 

 萌えればいいと思うよ

 

 

523 名無しのハンター

 

 

 叫べばいいと思うよ

 

 

524 名無しのハンター

 

 

 うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 

 

525 名無しのハンター

 

 

 うひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

 

526 名無しのハンター

 

 

 (;゜Д゜) ええええええええええええええええええええええええええええええええ

 

 

527 名無しのハンター

 

 

 あかん

 

 あかん

 

 あかんでええええええええwwwwwwwwwwwwww

 

 

528 名無しのハンター

 

 

 開けてはいけねぇ扉をあけてしまった…

 

 

 

 

 だが後悔が涌かない

 

 

 どういうことなの…(´・д・`)

 

 

 

529 鉄腕アルバイター

 

 

 乳と尻の間を取ってみたよ!(`・ω・´)

 

 

530 名無しのハンター

 

 

 これは間違いなく

 

 

531 名無しのハンター

 

 

 雄っぱいですね!!!!

 

 

532 名無しのハンター

 

 

 D様の!

 

 

533 名無しのハンター

 

 

 雄っぱいですね!!!!

 

 

534 名無しのハンター

 

 >>1

 まったく間じゃないwwwwww

 

 

 

 

 

 しかし雄っぱい画像は俺の神速の右クリが即保存した 

 

 

535 名無しのハンター

 

 

 ありがとうございますありがとうございます!

 

 

536 名無しのハンター

 

 

 まさか雄っぱいを保存することになろうとは…www

 

 

537 名無しのハンター

 

 

 店長のおっぱいは駄目でもD様の雄っぱいはいいという>>1が本当にわからないwwwww

 

 

 

 でもありがとうございます(*´∀`*)

 

 

538 名無しのハンター

 

 

 ( ゜∀゜)o彡°雄っぱい!雄っぱい!

 

 

539 名無しのハンター

 

 

 盛 り 上 が っ て 参 り ま し た

 

 

540 名無しのハンター

 

 

 かつてこれほど雄っぱいに盛り上がったスレがあっただろうかwwwwww

 

 

541 おっぱい信者

 

 

 どっちもいける俺に隙はなかった

 

 

542 美尻ハンター

 

 

 このスレに最早俺の居場所はないらしい

 

 

 

 |出口| λ............トボトボ

 

 

543 名無しのハンター

 

 

 >>542

 ドンマイ☆

 

 

544 名無しのハンター

 

 

 >>542

 いや、おっぱいじゃなくて雄っぱいだからセウトだろ?

 

 

545 鉄腕アルバイター

 

 

 なんか…お前らこの画像でそんなにテンソンってあがる?(´・ω・`) 

 

 

546 名無しのハンター

 

 

 >>1

 爆弾放っといて何をいうかwww

 

 

547 名無しのハンター

 

 

 >>1

 お前はこの画像の凄さを何も理解していないww

 

 

548 名無しのハンター

 

 

 tk>>1はなんでD様の雄っぱいなんて撮ったのwwww

 

 

549 鉄腕アルバイター

 

 

 >548

 デジカメ買ったばっかりのときに試し撮りしてて、風呂からあがったイケメーンがいたからつい…てへぺろ(・ω<)☆

 

 

550 名無しのハンター

 

 

 >>1

 顔文字がいらつく

 

 

 

 

 がGJ

 

 

551 名無しのハンター

 

 

 >>1

 顔文字に殺意しか涌かない

 

 

 

 

 しかしGJ

 

 

552 名無しのハンター

 

 

 >>1

 風呂上りD様目撃とかマジ裏山爆ぜろ

 

 

 

 

 だがGJ

 

 

553 名無しのハンター

 

 

 550-552

 お前等ケコーン

 

 

554 名無しのハンター

 

 

 こいつら前からいる重婚メンバーwwww

 

 まじケコ━━━━(・∀・)人(・∀・)━━━━ンしろww

 

 

555 名無しのハンター

 

 

 通例通り

 

 だが断る

 

 

556 名無しのハンター

 

 

 これは模式美だ

 

 だが断る

 

 

557 名無しのハンター

 

 

 もはや慣例だ

 

 だが断る

 

 

558 名無しのハンター

 

 

 >>重婚共

 もう突っ込まねぇよ

 

 

559 名無しのハンター

 

 

 なにこの一体感wwww

 

 

560 鉄腕アルバイター

 

 

 イケメーンって本当に人気あるのな(´・ω・`)

 俺はもうかれこれ数年間一緒にすんでるからおまいらがwktkする気持ちがちょっとわかんね

 

 

561 名無しのハンター

 

 

 寧ろ俺は>>1が何故あんな超弩級イケメンとおっぱい店長と一緒にいて間違いを起こさないのかが信じられん。主に同性として

 

 

562 名無しのハンター

 

 

 もしかして:不能

 

 

563 名無しのハンター

 

 

 もしかしなくても:イ●ポ

 

 

564 名無しのハンター

 

 

 もしかしなくても:二次元が嫁

 

 

565 名無しのハンター

 

 

 >564

 ああ、お仲間か

 

 

566 名無しのハンター

 

 

 >564

 俺の嫁はどうやったら画面から出てきてくれるかな

 

 

567 名無しのハンター

 

 

 >566

 ツンデレなんだよ、ほっとけよ

 

 

568 鉄腕アルバイター

 

 

 お前等かってなこというなよヽ(`Д´)ノ ウオオオーン

 俺だって健全な青年だよ!お前等とかわんねぇよ!

 ただお前等が考えるよりもずっとずっとイケメーンって容赦ないんだぜ?店長いわく「秩序・中庸が属性」ってよくわかんないこといわれたけどさ!ちゅ…中庸?

 中身もイケメンだけど!

 店長が絡むと鬼になるとか!

 たまに目が赤く光るような幻覚を見るとか!

 

 そんなこと…わかんないよねー (´;ω;`)ブワッ

 

 

 俺はこれがまったくのトラウマで、ハンちゃんでは強気に出れるけど、リアルだともっと腰低いお?

 

 

569 名無しのハンター

 

 

【速報】イケメンは中身もイケメン

 

 

570 名無しのハンター

 

 

 属性ってなんだwwww

 

 

571 名無しのハンター

 

 

 おっぱい店長はよくわからないステをD様に付与すんなww

 

 

572 名無しのハンター

 

 

 ってかトラウマって…トラウマになるなんかしたんか?

 

 

573 鉄腕アルバイター

 

 

 ヒント:元浮浪者

 

 

574 名無しのハンター

 

 

 なんか下衆い匂いがぷんぷんすんな

 

 

575 名無しのハンター

 

 

 はげど

 

 

576 鉄腕アルバイター

 

 

 まあ…いっちゃうとさ…

 うちの店ってきな臭くない人いないよ、基本的に

 

 

577 名無しのハンター

 

 

 おっぱい店長:アングラー

 

 

578 名無しのハンター

 

 

 貸本屋:プロハンと殺し屋がくる

 

 

579 名無しのハンター

 

 

 なんてカオスなんや…

 

 

580 名無しのハンター

 

 

 思えばプロハンとおもわれる盗人もコテハン盗人なんだよなww

 

 

581 名無しのハンター

 

 

 なんか喉に小骨が引っかかった感覚だw 

 

 

582 鉄腕アルバイター

 

 

 フェイクありでその辺もちょっと話そう!もう話して楽になろう!主に俺の性癖の救済のために!

 

 

583 名無しのハンター

 

 

 こwwwwwwらwwwwwwwww

 

 

584 名無しのハンター

 

 

 >>1のトラウマがwwwwwwww

 性癖と同格wwwwwwww

 

 

585 名無しのハンター

 

 

 もうやだこいつwwwwwwww

 

 

586 鉄腕アルバイター

 

 

 ついでに安価②も消費しちゃおう

 

 ちょっと書き溜めるなヽ(´∇`)ノシ

 

 

587 名無しのハンター

 

 

 いてらー

 

 

588 名無しのハンター

 

 

 おーノシ

 

 

589 名無しのハンター

 

 

 しかしトラウマが性癖と同格なのは実はちょっと同調できる件

 

 

590 名無しのハンター

 

 

 >589

 どこが?

 

 

591 名無しのハンター

 

 

 >590

 俺は死ぬときに自分の命とPCのHDDを天秤にかける

 

 

592 名無しのハンター

 

 

 それはwwwwwwwwいろんな意味でトラウマwwwwwwwww

 

 

593 名無しのハンター

 

 

 死人にトラウマとかないわwwwwwwwwww

 

 

 

 

 

 誰か死んだら俺のクロゼットの中身を燃やしてくれないか?

 

 

594 名無しのハンター

 

 

 見られたら確実に憤死する

 

 

595 名無しのハンター

 

 

 確かに性癖=HDD トラウマ=死後の評価wwwwwwwww

 

 

 

 

 

 

 俺のHDDに時限爆弾しかけるにはどうしたらいい?

 

 

596 名無しのハンター

 

 

 中身を

 

 中身を燃やしてぇぇぇぇぇ!!!

 

 

597 名無しのハンター

 

 

 ナウ●カ自重汁wwwwwwww

 

 

598 名無しのハンター

 

 

 俺たちって身の内に爆弾をもってたんだな…

 

 

599 名無しのハンター

 

 

 >598

 俺の厨二病がうずくからそういう言い回ししないでwwwwww

 

 

600 名無しのハンター

 

 

 600ゲト

 

 俺の中に眠る暗黒が、俺の死後解き放たれてしまうんだ…!

 

 

601 名無しのハンター

 

 

 >600

 やwwwwwwwめwwwwwwwwwwwろwwwwwwwww

 

 

602 名無しのハンター

 

 

 その中を覗いてはいけない。そこから先は深淵しかないからだ。決して覗くな。触れず、覗かず、無かったことにして―――――――消してくれ。

 

 

603 名無しのハンター

 

 

 いかん、右腕が疼いているぞwwwwwwwwwww

 

 

604 名無しのハンター

 

 

 ここは厨二を拗らせた人が多いインターネッツですねwwwwww

 

 

605 鉄腕アルバイター

 

 

 俺も自分用PC欲しいなぁ(´・ω・`)

 

 

606 名無しのハンター

 

 

 お、お帰り>>1

 

 

607 名無しのハンター

 

 

 おかー

 

 

608 名無しのハンター

 

 

 おかーヽ(´∇`)ノ

 

 ってか>>1のPCは自前のじゃねぇの?

 

 

609 鉄腕アルバイター

 

 

 店のだよ(`・ω・´)

 調子悪いっていったら最新型買ってきてくれた!

 

 

610 名無しのハンター

 

 

 >>1

 仕事しろwwww

 

 

611 名無しのハンター

 

 

 >>1

 履歴辿られたら終るwww

 

 

612 名無しのハンター

 

 

 しかしHDDに危機は潜んでいないという…

 

 

613 名無しのハンター

 

 

 店長やらD様の画像の宝庫なのに? 

 

 

614 名無しのハンター

 

 

 >>613

 それは人界の宝の危機だな

 

 >>1よ、バックアップは十全か!?

 

 

615 鉄腕アルバイター

 

 

 画像は保存してないよ(`・ω・´)だって店のだもん!

 基本的にPCにはいってる画像は店長の「ぬこフォルダ」だけ!

 

 

616 名無しのハンター

 

 

 (*´ω`*)

 

 

617 名無しのハンター

 

 

 (*´ω`*)

 

 

618 名無しのハンター

 

 

 (*´ω`*)

 

 

619 名無しのハンター

 

 

 (*´ω`*)

 

 

620 鉄腕アルバイター

 

 

 ???(^ω^ ≡ ^ω^)???

 

 

621 名無しのハンター

 

 

 店長かわいいいいいいいいいいいいいいい!!

 

 

622 名無しのハンター

 

 

 ぬこフォルダとかかわいいいいいいいいいいいいいい!!

 

 

623 名無しのハンター

 

 

 そういえばwww画像でもぬこwwwwwもふってたなwwwww

 

 

624 名無しのハンター

 

 

 おっぱい店長のスペック

 

 女

 ツン系美人

 巨乳( ゜∀゜)o彡°おっぱい!おっぱい!

 書痴

 店長という名のニート

 輝くイケメンの主人

 ぬこ好き←new

 

 

625 名無しのハンター

 

 

 うお、こう見るとおっぱい店長mj高スペックww

 

 

626 名無しのハンター

 

 

 アングラーなのを抜きにしてもお近づきになりたいww

 

 

627 名無しのハンター

 

 

 そんな店長の萌えーな話が②なんだろ!>>1よ!

 

 

628 鉄腕アルバイター

 

 

 萌えなのかどうかはわかんない(´・ω・`)俺は店長に萌えたことないからさ…

 

 店長に萌える(燃える)=イッケメーンのトラウマスイッチON☆

 

 

629 名無しのハンター

 

 

 oh…

 

 

630 名無しのハンター

 

 

 安定の騎士D様

 

 

631 名無しのハンター

 

 

 同居人だからこそ容赦しないD様hshs

 

 

632 名無しのハンター

 

 

 >631

 貴様を許さない

 

 

633 鉄腕アルバイター

 

 

 でも②にはイッケメーンでないんだ(;´∀`)ゴメンネー

 

 では投下します

 

 

634 名無しのハンター

 

 

 D様なしか

 

 

635 名無しのハンター

 

 

 しかし至高のおっぱいが出る

 

 

636 名無しのハンター

 

 

 wktk

 

 

637 鉄腕アルバイター

 

 

 登場人物紹介(笑)

 

 まあスレの最初の頃にいたあの人なんだけどww

 

 盗人さん

 

 男

 二十代の黒髪イケメン

 店長曰く胡散臭い

 強い

 この人もたいがい本スキー

 プロハン?友達の金髪は間違いなくプロハン

 

 

 ここでひとつ…うちの店は特殊と話したとおり、プロハンやらアングラな人が来る。それ以上に店に押し入り強盗まがいのことする人も多い。ええっと…まあ店長資産持ちなんだよね。お金持ちなんじゃなくて資産持ち。

 

 店を開いてから数え切れないくらい強盗くるんだ。もう俺とかうちの常連さんなれちゃってて凄いスルースキルをもっていますよ(;´∀`)スルースキル検定があったら多分Aだね!

 

 んで、けっこうな頻度でK察にお世話になってるんだけど…K察もあんまり頻度多いんで凄い嫌がってて…店長がいい機会だからイケメンを試験にやることにした。はっきりいってイケメンなら何の問題なく試験を終えて帰ってくると信じてる。この辺店長の信頼深いよねー。

 

 勿論イケメンは超絶に反対した

 

 

 理由は……わかるな?

 

 

638 名無しのハンター

 

 

 主ー!!

 

 

639 名無しのハンター

 

 

 俺がいない間!誰が主をお守りするのです!

 

 

640 名無しのハンター

 

 

 主の騎士は俺デス☆ 

 

 

641 鉄腕アルバイター

 

 

 まさしくwwwwww

 なんだおまいらwwww見てたんかwwwwww

 

 

642 名無しのハンター

 

 

 tkあってんのかよwwww

 

 

643 鉄腕アルバイター

 

 

 あってるwww

 凄いあってるwwwww

 

 

644 名無しのハンター

 

 

 D様から溢れる主人愛www

 

 

645 名無しのハンター

 

 

 tkここで盗人とかww

 

 盗人がいる間安価②になったらどうすんのwwww

 

 

646 鉄腕アルバイター

 

 

 >>645

 盗人さんを抜きにした抜粋店長物語!になってただけ!(・ω<)☆

 

 

647 名無しのハンター

 

 

 >>1

 なにそれ読みたいww

 

 

648 名無しのハンター

 

 

 >>1

 結局は②は運しだいってこと??

 

 

649 鉄腕アルバイター

 

 

 >>648

 正解

 というかだいぶ楽しいことはあの人が絡むことが多いからね!あの人……店にくるとCOOLが強制ログアウトしちゃうからww

 まあ盗人さん抜きの抜粋店長物語も結局以下の話に含まれるんだけどね!

 

 

 

 続きー

 

 

 本気で試験を嫌がるイケメンを前に表情筋を一切動かさない店長

 

 

 店長「や、盗人に店番させるわ。貸しあるし」

 

 盗人「」

 

 こんな感じだったらしい。俺は現場みてないから脳内補完だけどwwでも大体あってるwwいつもこんなんだしww相変わらず盗人さんクールなカリスマがキャストオフwwww

 

 そのあとイケメンは荒れたよー一人orzやって「これが幸運値Dということか!」って叫んでた。幸運値ってなんだろうな、リアルラックかな(´・ω・`)確かに女難の相はあると思う…

 

 

 なんやかんやで輝くイケメンが試験行ってる間は護衛することになった盗人さん

 イケメンの射殺さんばかりの視線にgkbrしてたけど、距離感掴むの上手だからイケメンの槍の餌食にはならなかった。(;´∀`)ざ、残念なんて思ってないよ!

 盗人さんは前から店に結構な頻度で遊びに来てた常連さん。常連や店長の友達に強い人はたくさんいるけど、盗人さんも基本的に凄い強い。だからまあ安心しなよ、って感じで軽ーく送りだされて

 

 |試験会場|λ............トボトボ

 

 こんな感じでイケメン試験参加!

 

 

 俺と店長と盗人さんの三人で短期間同居をすることになった

 

 

650 名無しのハンター

 

 

 D様ああああああああああ!

 

 

651 名無しのハンター

 

 

 D様リアルラック低いのかwwww守るひとなのに守ってあげたいwww

 

 tk店長軽いwwwめっちゃ軽いwwww

 

 

652 名無しのハンター

 

 

 てぇぇんちょうううううう!もっとD様に声援おくったげてよーつД`)・゜・。・゜゜・*:.。

 

 

653 名無しのハンター

 

 

 tk短期間同居とか盗人裏山

 

 

654 鉄腕アルバイター

 

 

 >653

 そう思うか?

 だとしたらイケメンを舐めてかかってるな(´・ω・`)

 

 

655 名無しのハンター

 

 

 >>1

 え

 

 

656 名無しのハンター

 

 

 >>1

 え

 

 

657 鉄腕アルバイター

 

 

 続きー

 

 

 

 さて、みんな今までの流れと店長のスペックで理解していると思うけど店長は超弩級書痴だ。盗人さんも本スキーだが店長ほど生活を侵してない。ただし集中力は凄いらしくて延々読んでるけどな。まあ仕事してる分まだ盗人さんのほうが…とか思わなくもないw店長ほんと酷いww

 

 そんな二人と俺で同居をするわけだが、店長は勿論盗人さんも基本的に客扱いになるので家事なんてしない。全部俺。俺は二人が住居スペースでのんべんだらりんしてる横で忙しなく働いている。もう今更だから慣れてるけどね!つД`)・゜・。・゜゜・*:.。

 

 

 夕食が終ったあとに店長を風呂にやって一息。俺のほっとする時間ですね。今回はいつものイケメーンがいないのでちょっと緊張した。でも基本的に二人はなにもしないなら本読んでるから無害。どんなに凶悪な人でもうちではログアウトしちゃうからね(`・ω・´)

 

 

 俺はぼけーっとバラエティ見てた。テレビの音にもぴくりともしない盗人さんmj店長の同類ww類友ww

 

 

 

 

 そしたらさ聞こえてくるんだ…。

 

 

 ひた

 

 ひた

 

 ひた

 

 ひた

 

 

 ってなんか水気を含んだ足音が…

 

 

658 名無しのハンター

 

 

 (;゜ Д゜) …!?

 

 

659 名無しのハンター

 

 

 え!?

 何?

 (((( ;゜д゜))))アワワワワ

 

 

660 名無しのハンター

 

 

 なにそれこわい

 (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

 

 

661 鉄腕アルバイター

 

 

 本から顔を上げる盗人さん。

 

 なんか眉間に凄い皺よってます。

 

 え?何?なにその顔?

 

 

 これがジャポンホラーか…!

 

 

 

 

 (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

 

 

 

 

 俺はなんか怖くなって机の下にもぐった

 

 

 

662 名無しのハンター

 

 

 なんでだよwwwww

 

 

663 名無しのハンター

 

 

 こらwwwwww

 

 

664 名無しのハンター

 

 

 台無しだwwwww

 

 

665 鉄腕アルバイター

 

 

 だって怖かったんだもん!つД`)・゜・。・゜゜・*:.。

 

 

 ひた

 

 ひた

 

 ひた

 

 

 ガチャ

 

 

 店長「鉄腕アルバイター、ボディソープの換えどこ」

 

 

 

 

 

 

 

 体にバスタオル巻いただけの水濡れ店長が普通に入ってきた

 

 

 

 盗人「」

 

 

 

 俺「てんちょっ!」ゴン ゴロゴロ

 

 

 俺はその場で立ち上がったから机の天井に頭を盛大にぶつけ床に転がった

 

 

 

666 名無しのハンター

 

 

 

 

667 名無しのハンター

 

 

 

 

668 名無しのハンター

 

 

 

 

669 名無しのハンター

 

 

 

 

670 鉄腕アルバイター

 

 

 

 盗人「」←ガン見

 

 店長「どこ」

 

 俺「痛いいいいいいいいい!あああああああああああ、棚です棚!洗面台の棚!いい加減覚えましょうよ!」

 

 

 そして!

 

 恥れ!

 

 ここには!

 

 客がいる!!! 

 

 

 男のな←重要

 

 

 (´Д⊂ヽウェェェン

 

 

 俺の心労がマッハ

 

 

 

671 名無しのハンター

 

 

 え

 

 

 え

 

 

672 名無しのハンター

 

 

 お前

 

 お前

 

 

 

 ラッキースケベはないって

 ないっていったじゃねぇえかあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!

 

 裏切り者ー!!!!!

 

 

673 名無しのハンター

 

 

 半裸店長おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!

 

 

674 名無しのハンター

 

 

 盗人ガン見すんなしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!

 

 

675 名無しのハンター

 

 

 ばっちりスケベじゃねぇかばかああああああああああああ!!!ああああああああああああああああ!!!!

 

 

 

 kwsk!

 

 

676 名無しのハンター

 

 

 濡れた店長おおおおおおおおおおおおおおおおお

 

 

 

 kwsk!!

 

 

677 鉄腕アルバイター

 

 

 

 だから!ラッキースケベじゃねーよ!俺の文体みてなんでそう思うんだよ!!!!明らかにキョドってんだろ!!!!!

 お前等現実見ろよ!!!!!

 

 

 

 盗人「………ぅん」

 

 

 

 何頷いてんだアンタアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!

 

 

678 名無しのハンター

 

 

 畜生

 

 

 畜生

 

 

679 名無しのハンター

 

 

 画像は

 

 

 画像はないんですか

 

 

680 鉄腕アルバイター

 

 

 >679

 ねーよ( ゜д゜)、ペッ

 

 

681 名無しのハンター

 

 

 >>1

 切れよったぞこいつ

 

 

682 名無しのハンター

 

 

 自分のラッキースケベ振りを認めずに切れたぞ

 

 

683 鉄腕アルバイター

 

 

 三日目

 

 

 美少女ロリプロハンが来店した

 

 

 

684 名無しのハンター

 

 

 ロリッ(ガタツ

 

 

685 名無しのハンター

 

 

 美ロリと聞いて(ババッ

 

 

686 名無しのハンター

 

 

 さすがのスルースキルAwww

 

 

 

 

 

 脱いだ(バッ

 

 

687 鉄腕アルバイター

 

 

 スペックなんて晒さない…

 

 と思ったけど書き溜めてるからそのまま投下する

 

 お前等これを思い出す俺の心労なんてわかんないんだろうな…(´Д⊂ヽウェェェン

 

 

 ロリ美少女

 

 見た目十代前半

 格好がロリ

 金髪ツインテール

 しんげんりゅーとかいう流派の師範らしい。強い。多分盗人さんとどっこい?

 店長の知己

 

 

 

 イケメンがいない=うちの警備が手薄

 

 をききつけてやってきてくれたらしい。盗人さんを見るなり「イケメンだけでは飽き足らず!黒髪イケメンだと!!!???」って悔しがってた。相変わらずでなによりです。俺はこの人にも萌えたことなんてない。中身知ってるから。

 

 

 それから久しぶりに店長と出かけるっていうんで送り出した。タクシーで買い物に出かけてったな。

 

 その間に襲撃が一回ありました。

 

 盗人さんの拳が唸りました。

 

 常連はスルー。

 

 いつも通りですねわかります(`・ω・´)

 

 

 

 んで数時間くらいしたら戻ってきた。

 

 手には大量の買い物袋

 

 さすがプロハン。

 みためは可憐な美少女。

 しかしその手には総数云kgの荷物が。

 店長はノーパソ一台でひいひいいってた。貧弱。

 

 なんか店休業して出かけるとかいう話になって珍しいなーなんて暢気に思ってましたよ。

 

 

688 名無しのハンター

 

 

 盗人爆発しろ

 

 

689 名無しのハンター

 

 

 前回分もまとめて爆発しろ

 

 

690 名無しのハンター

 

 

 ツインテちゃんprpr!

 

 

691 名無しのハンター

 

 

 ツインテちゃんhshs!

 

 

692 名無しのハンター

 

 

 心源流の師範って…mjか

 

 

 やっべ超つぇーじゃん

 tk盗人も互角なら超やべーじゃん

 

 

693 名無しのハンター

 

 

 >692

 そんなに?

 

 

694 名無しのハンター

 

 

 >693

 ハンター協会会長がそこのtop

 

 

695 鉄腕アルバイター

 

 

 ほんとぶれないなおまいら(´・ω・`)ちょっと落ち着いた

 

 

 

 うちの中にあがっていく二人。

 ちょうどいい時間だから帳簿確認して閉店作業する俺。

 律儀に最後までいてくれる盗人さん。まあ本読んでますけど?デフォですねわかります。

 

 

 盗人「終った?」

 

 俺「はい、お待たせしましたー」

 

 盗人「腹減ったな」

 

 

 夕飯は何がいいとか話しながら中入る俺と盗人さん。

 

 ちなみに店舗と住居スペースはいうなればまっすぐ一本道でそれぞれ壁にそって部屋がある感じ。リビングと和室だけつながってるからちょっとでかい。細長い住居を思い浮かべて欲しい。そしてリビングは一番奥だ。その間俺たちの部屋の前を通り過ぎる。

 

 

 盗人「ん?」

 

 

 店長の部屋の前に紙袋が放置されている。

 

 廊下に荷物を置くな!ともおもったが、あー…部屋にはいらなかったのか。だってあそこ足の踏み場もないもんな。書庫だし。

 

 と呆れていた俺は、盗人さんの行動を止めることができなかった。

 

 

 

 盗人「Eの65か…見立て通りだな……ぅん」

 

 

 

 紙袋からするっと取り出したのは

 

 

 

 黒 レ ー ス の ブ ラ ジ ャ ー だ っ た 

 

 

 

 

 (  Д ) ゜ ゜

 

 

 

 

 

696 名無しのハンター

 

 

 

 

697 名無しのハンター

 

 

 

 

698 名無しのハンター

 

 

 

 

699 名無しのハンター

 

 

 

 

700 名無しのハンター

 

 

 

 

 

 

 ふう

 

 

701 鉄腕アルバイター

 

 

 >700

 抜くな

 

 

702 名無しのハンター

 

 

 

 

 

 うっ

 

 

703 鉄腕アルバイター

 

 

 >702

 抜くな

 

 

704 名無しのハンター

 

 

 ここは無言で賢者タイムの多いスレですねwww

 

 

 

 

 Eの65おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!

 

 

 

705 名無しのハンター

 

 

 細い!細いよ店長おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおそしてデカイよおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!

 

 

706 名無しのハンター

 

 

 ありがとうございますありがとうございますうううううう!!!!!!!Eィィィカップゥゥゥゥゥゥゥ!!!!

 

 

707 おっぱい信者

 

 

 俺の見立てとも寸分も違わなかった…゜・*:.。..。.:*・゜ヽ( ´∀`)人(´∀` )ノ・゜゜・*:.。..。.:*

 

 

708 名無しのハンター

 

 

 店長結婚して付き合ってください

 

 

709 鉄腕アルバイター

 

 

 >708

 阻止

 

 

710 名無しのハンター

 

 

 即レスwwww

 

 

711 名無しのハンター

 

 

 具体的な数字を聞くと……

 

 

 盛 り 上 が る な 

 

 

712 名無しのハンター

 

 

 ドキムネすんな(*´ω`*)

 

 

713 名無しのハンター

 

 

 これは:恋?

 

 

714 名無しのハンター

 

 

 もしかして:恋?

 

 

715 鉄腕アルバイター

 

 

 もしかしなくても:変

 

 

 

 

 

 俺はうんうんと頷き何事も無かったかのように紙袋を漁り、中身を確認する盗人さんを見送ってしまった。

 

 黒レースだけじゃなくて、黄薔薇のあしらわれた白とか、真ん中に赤いリボンのピンクとか…それらを全部確認すると、盗人さんは凄くいい笑顔でそれを直しにかかった。

 

 

 その時の顔はやり遂げた漢の顔をしていた。

 

 

 (  Д ) ゜ ゜

 

 

 そのとき俺は、全力でこのことを隠蔽しなければいけない、でなければ彼の命に関わるとガチの震えを感じた。

 

 

 

716 名無しのハンター

 

 

 ブラ想像余裕でしたwwww

 

 

 って>>1?

 

 

717 名無しのハンター

 

 

 ブラのディティールに禿萌えたwwww

 

 

 ん?>>1?

 

 

718 鉄腕アルバイター

 

 

 ここで俺と盗人さんのトラウマの話をしよう… 

 

 

719 名無しのハンター

 

 

 キタ

 

 

720 名無しのハンター

 

 

 gkbrするトラウマキタ

 

 

721 鉄腕アルバイター

 

 

 俺はかつて浮浪者だった。

 極限までボロボロの体を引きずって辿りついたのが店長の店で。

 

 正直どこでもよかったんだと思うが、俺は当時心底下衆で女一人の店番なんて力でねじ伏せられると思って、凸した。

 

 

 詳細は省くが、そのとき俺はイケメンに殺されると本気で思った。

 

 イケメンの殺気半端ない。mjで殺気だけで殺せるってこいつのことをいうんだと思った。まあ俺が全面的に悪いから殺されても文句言えないと思う。でも店長はそんな俺を拾ってくれた。心から感謝している。

 

 そんで住み込みアルバイトにしてもらった。恩返ししようと思った。店長に言われたことはなんでもやった。

 

 けど勿論、店長を守ってるイケメンはそんな短期間で俺を信用なんぞしない。常に監視している。

 

 そんな中で、店長相手にhshsprprとか考えられると思うか?

 

 

 無理

 

 

 絶対無理。

 

 

 死ぬ。

 

 

 で、盗人さんも実は似たような経験がある。

 禁則事項に関わるから詳細は省くが、この人はもっと酷い。無駄に強いからね。俺みたいに最弱じゃないから徹底的だったようだ。

 

 

 俺は壁から顔をだしてgkbr|д゜;))))してた。

 

 

 イケメンはただのイケメンではないのだ!

 

 

 

 

 

 問題です。

 

 

 Q,そんなイケメンが自分のいない間に店長のラッキースケベに遭遇したとしったらどうなるでしょう。

 

  ⊂二二( ^ω^)二⊃ブーン

 

 

722 名無しのハンター

 

 

 アウト

 

 

723 名無しのハンター

 

 

 私刑

 

 

724 名無しのハンター

 

 

 タヒる

 

 

725 名無しのハンター

 

 

 ドMの俺にはご褒美です

 

 

726 名無しのハンター

 

 

 >725

 真性か…

 

 

727 鉄腕アルバイター

 

 

 ( ゜∀゜)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

 

 

 おまいら、今まで店長とイケメンに対する俺の評価を謝れ!

 

 まったく同じ立場ならきっとおまいらも俺と同じになるよ!(^ω^ ≡ ^ω^)おっおっおっ?

 

 

728 名無しのハンター

 

 

 サーセン('A`)

 

 

729 名無しのハンター

 

 

 サッセーン(゜∀゜)

 

 

730 名無しのハンター

 

 

 謝る気/Zerowwww

 

 

731 名無しのハンター

 

 

 所詮他人事wwwwww

 

 

732 名無しのハンター

 

 

 しかしこれ聞いて盗人って元気になれた?

 

 

733 名無しのハンター

 

 

 あー…たしか盗人を元気にするための安価だったっけ?wwww

 

 

 でも元から話す内容を運次第で変更してたんだろ?

 

 

734 鉄腕アルバイター

 

 

 ( ゜д゜)、ペッ まあいいけどさ!

 

 >732

 最初は( ゜∀゜)o彡°おっぱい!おっぱい!

 の話に持って行こうと思ったんだけどね…あの人なんでもないような顔して絶対おっぱいスキーと思う。

 

 

 

 

 

 

 まあ、この話は個人的に俺が面白くて、オチがあるからしただけだが(`・ω・´)

 

 

735 名無しのハンター

 

 

 よしきた(バッ

 

 

736 名無しのハンター

 

 

   バン    はよ

バン(∩`・д・) バン  はよ

  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/   

  ̄ ̄\/___/

 

 

737 名無しのハンター

 

 

 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン

 バン       バンバンバン゛ン バンバン

バン(∩`・ω・)  バンバンバンバン゛ン

 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/

    \/___/ ̄

 

 

 

 

738 名無しのハンター

 

 

 

 

 ヌンバンバンバンバンバンバンバンバンバン

ルンバンバンバン゛ン バンバンバンバンバン゛ン

ポン(∩`・ω・)  バンバンバンバン゛ン

 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/

    \/___/

 

 

 

739 名無しのハンター

 

 

 スレ住人の一体感wwwwww

 

 

740 鉄腕アルバイター

 

 

 736-738

 魔法使いになる前に結婚しろ

 

 

 

 

 続きー

 

 

 

 

呆然とする俺はその場で棒立ち。でも頭ん中はどうしようどうしようと冷や汗だらだら。この人の命にかかわる…!!

 

 

 カシャ

 

 

 

 なんて焦ってたら廊下に電子音が響いた。

 

 

 

 

 盗人「!?」

 

 俺「ぅへぇ!?」

 

 

 盗人さんmjシーフwwwと思える動きで構えて前方を見ると

 

 

 

 

 

 ロリ美少女がいい笑顔で携帯撮影してましたwwwwwwwwww

 

 

 盗人さんwwwwww手にwwwwwwwwwまだブラ装備wwwwwwwwwwwww

 

 

 

 wwwwwwwwwwうぇwwwwwwwwwwwwうぇwwwwwwww

 

 

 弱みwwwwwwwww握られたwwwwwwwwwwww盗人さんmj乙wwwwwwwwwwww

 

 

 

741 名無しのハンター

 

 

 

 

 

 

 盗人ェ…

 

 

 

 m9(^Д^)プギャー

 

 

742 名無しのハンター

 

 

 ちょwwwwwwww

 

 

 

 

 プギャプギャ━━━m9(^Д^≡^Д^)9m━━━━!!!!!!!!

 

 

743 名無しのハンター

 

 

 罰が当たった!

 

 

 プギャ━━━━≡≡≡≡≡⊂`⌒m9^Д^)⊃━━━━ !!!!!!

 

 

744 名無しのハンター

 

 

 変wwwwww態wwwwwwwwwwwwwざまあああああああああああああwwwwwwwwwwww

 

 

745 名無しのハンター

 

 

 イケメン、ざまあああああああああああああああああああああああああああああああwwwwwwwwwwww

 

 

746 名無しのハンター

 

 

 m9(^Д^)プギャー ざまああああああああああああああああ

 

 

747 名無しのハンター

 

 

 m9(^Д^)プギャー さまああああああああああああああああ

 

 

748 鉄腕アルバイター

 

 

 盗人さんマジオチ要員wwwwwwwwwwwww

 

 

 まあ盗人さんのSAN値が削られたのは変態さんのせいらしいけど、ロリ美少女のことが絶対かかわってないとは思えないwwwwだってロリ美少女だもんwwwwwwww

 

 

 

 彼女は腹黒いぞ…

 

 

 

盗人さんマジ乙ゥゥゥゥゥ!!!

 

 

 

749 名無しのハンター

 

 

 おい>>1も結構愉悦ってるぞww

 

 

750 名無しのハンター

 

 

 この>>1やりおるわww

 

 

751 名無しのハンター

 

 

 今北産業

 

 

752 名無しのハンター

 

 

 俺たちの

 輝くイケメンは

 最強なんだ!(集中線)

 

 

753 名無しのハンター

 

 

 おっぱいと

 雄っぱいの

 夢の饗宴

 

 

754 名無しのハンター

 

 

 イケメンの

 不幸で

 今日もメシウマ

 

 

755 名無しのハンター

 

 

 >>1による

 おっぱいとイケメンの

 愉悦講座

 

 

756 名無しのハンター

 

 

 なるほどわからん

 

 遡ってくるヽ(´∇`)ノ

 

 

757 名無しのハンター

 

 

 なんて産業www

 

 

758 名無しのハンター

 

 

 説明する気Zeroww

 

 

759 名無しのハンター

 

 

 いてらーノシ

 

 

760 名無しのハンター

 

 

 プロハンにも勝るとも劣らない盗人をここまでこき下ろすスレもねーだろなww

 

 

761 名無しのハンター

 

 

 あー、プロハンで顔バレしてるやつ等のスレって怖いよな

 

 

762 名無しのハンター

 

 

 だいたい星もってないやつばっかだけど、確かにいってることは俺らにできないことだから尊敬するのはわからんくもないんだけどな

 

 

763 鉄腕アルバイター

 

 

 でも、顔バレしてない人のほうが実力あるみたいだよ?ロリ美少女が言ってた

 

 

764 名無しのハンター

 

 

 >>1

 kwsk

 

 

765 名無しのハンター

 

 

 kwsk

 そういや>>1んところはプロハン集まるんだもんな。

 顔バレしてないプロハンってどんな??

 D様以外ね

 

 

766 名無しのハンター

 

 

 星もちの功績だけは辿れるんだけどな…

 

 

767 名無しのハンター

 

 

 >>766

 だけな。個人情報は絶対手にはいんない

 

 

768 鉄腕アルバイター

 

 

 えーkwskいわれてもな…

 

 そうだな…盗人さんの友達の金髪さんはプロハンだった。

 普段どんなことしてるかって聞いたら情報処理してるっていってた

 kwskは教えることできないって

 なんかクラッキングがどうとか言ってた。その気になれば国のデータベース?入れるって??

 

 

 あと美少女ロリは前に言った師範なんだって

 だいたいパンチ一発で筋肉だるまな強盗を軽く三メートル以上吹っ飛ばすかな?

 ちょっと力入れると車をもちあげるんだって店長が言ってたww持ち上げるだろうな、あの人ならww

 

 

 あんまり頻繁に来る人じゃなかったけど、髪長くてハンター歴長いプロハンがいて…その人は剣使うのかな?

 薬中が店に車ごと突っ込んできたとき、その車を一撃で真っ二つにしてた。こう、終った後にハンチング帽をちょっと下げるのがカッケーのww

 

 

769 名無しのハンター

 

 

 

 

770 名無しのハンター

 

 

 

 

771 名無しのハンター

 

 

 

 

772 名無しのハンター

 

 

 

 

773 名無しのハンター

 

 

 

 

774 名無しのハンター

 

 

 

 

775 名無しのハンター

 

 

 強すぎワロタwww

 

 

 ワロタ…

 

 

776 名無しのハンター

 

 

 人間ですか?(´・д・`)??

 

 

777 名無しのハンター

 

 

 そういやプロハンは銃弾きかねぇんだったな

 

 

778 名無しのハンター

 

 

 そういやリアルターミネーターだったなw

 

 

779 名無しのハンター

 

 

 そんなのがゴロゴロいやがるのか協会は…コワス

 

 

780 鉄腕アルバイター

 

 

 んー

 本当に実力のある人はロケランが平気なんだと。どこまで本当か知らないけどね。

 ここまでくると釣り臭いけどww

 

 

 

 

 

 まあ俺はイケメンの実力はこれっぽっちも疑ってないわけですが

 

 

781 名無しのハンター

 

 

 ロケランとかwwww釣りだろwwwwww

 

 

 

 

 釣りっていってください

 

 

782 名無しのハンター

 

 

 つまり:プロハンはターミネーター

 

 

783 名無しのハンター

 

 

 結論:人外

 

 

784 名無しのハンター

 

 

 おまいらヒドスwwwww

 

 

 

 人外理解

 

 

785 鉄腕アルバイター

 

 

 ロリ美少女の話だと、本当に実力ある人は基本的に隠匿されていることが多いんだって。よく協会の使いって言われてる人や表で顔知られてる人は、協専?って言われてるよろず屋?雑用係?みたいな人で、プロハンで実力ある人からはあんまり好かれてないんだと。

 

 あ、星持ちは別ね。あの人たちは本当に実力あって単純に星貰ったから有名らしい。隠し様がないんだね、大変だ(´・ω・`)

 

 

786 名無しのハンター

 

 

 ハンター考察板でもないのにこの内部事情である

 

 

787 名無しのハンター

 

 

 やばい

 

 やばい

 

 

788 名無しのハンター

 

 

 この>>1お宝の宝庫だぞwwwww

 

 

789 名無しのハンター

 

 

 いまだかつてこんなにもホイホイとハンタ協会の内情暴露する奴がいただろうかwwww

 

 

790 名無しのハンター

 

 

 そして内部犯というわけでもないから特定されにくいというwww 

 

 

791 名無しのハンター

 

 

 最強の守護も店にいるしなwwww

 

 

792 名無しのハンター

 

 

 >791

 どうなんだろうな?

 D様はそりゃ強いだろうけど、協会全体に働きかけるくらい強いのか否かは俺らじゃ判断できんだろ?

 しかも新人じゃん?一般人相手なら無双できるだろうけど、それがプロハンに通用するかは俺らじゃわかんねーよ?

 

 

793 名無しのハンター

 

 

 あれ、それじゃあ>>1

 死亡フラグ??wwww

 

 

794 鉄腕アルバイター

 

 

 えええええええ アワワ ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ

 俺いつの間にフラグ立てたの?

 そんな話ちゃいけないような話?

 話しちゃいけないんだったら俺みたいな一般人に話してないだろ?俺店に勤めてるだけで最弱一般人よ??

 店長みたいにアングラーなわけじゃないのよ?(´・ω・`)

 

 

795 名無しのハンター

 

 

 まあそうだな。あんだけ情報に鍵かけてるプロハンがそんなにぺらぺらしゃべるのも変な話だよな

 

 

796 名無しのハンター

 

 

 D様も新人だし

 店長も周りも精査くらいしてるだろ

 

 

797 名無しのハンター

 

 

 というか、プロハンがこんな雑談スレを覗いてるわけないだろwwwww

 

 

798 名無しのハンター

 

 

 確かにwwww

 

 

799 名無しのハンター

 

 

 盗人というイレギュラーを忘れるなよwww

 

 

800 名無しのハンター

 

 

 800ゲト

 

 >799

 折角忘れてたのに…空気読めよww

 

 

801 鉄腕アルバイター

 

 

 (´Д⊂ヽウェェェン

 なんか急に怖くなってきたよおおおおお!

 

 

802 名無しのハンター

 

 

 今更wwwwww

 

 

803 名無しのハンター

 

 

 mj今更過ぎるww

 

 D様に相談汁

 

 

804 名無しのハンター

 

 

 それか知り合いのプロハンに頼るかだな

 

 

 D様と店長がどれくらい影響力もってるかが今後の鍵だwwww

 

 

805 名無しのハンター

 

 

 楽しんでるだろおまいらwwww

 

 

806 名無しのハンター

 

 

 >805

 いままでのノリで深刻になれってのも無理があるわww

 

 

807 名無しのハンター

 

 

 禿同

 

 

808 名無しのハンター

 

 

 はげど

 

 

809 鉄腕アルバイター

 

 

 (´Д⊂ヽウェェェン

 ええええ俺本当に命の危機なの!?イケメンに頼っても駄目なの!?

 俺の知ってる人で地位のある人なんて協会の副会長くらいしか思いつかないんですけどおおおおおおおおおおお!!!

 

 

810 名無しのハンター

 

 

 

 

811 名無しのハンター

 

 

 

 

812 名無しのハンター

 

 

 

 

813 名無しのハンター

 

 

 

 

814 名無しのハンター

 

 

 おい

 

 

 

 

 おい

 

 

815 名無しのハンター

 

 

 ちょ

 

 

 待てよ!

 

 

816 名無しのハンター

 

 

 なんでお前そんなに爆弾ホイホイ落とすの??

 馬鹿なの??イミフなんですけど??

 

 

817 名無しのハンター

 

 

 おれこの>>1が本当にわからない・・・

 

 

818 名無しのハンター

 

 

 >>1は馬鹿でFA

 

 

819 名無しのハンター

 

 

 お前は…自分でフラグ立てて折るんか…器用だな…

 

 

820 名無しのハンター

 

 

 大丈夫、副会長いるならなんの問題もねーよ( ゜д゜)、ペッ ちょっと心配して損したわ

 

 

821 名無しのハンター

 

 

 副会長とか…

 

 

822 鉄腕アルバイター

 

 

 えええええええ(´・ω・`)あの人そんな凄いの?

 店長に冷たい目であしらわれてるのに??

 

 

823 名無しのハンター

 

 

 >>1

 kwsk

 

 

824 名無しのハンター

 

 

 >>1

 kwsk!!!

 

 

825 名無しのハンター

 

 

 >>1

 狂おしくkwsk!!!

 

 

826 鉄腕アルバイター

 

 

 え?(´・ω・`)おまいらの変わりようがよくわからないんだけど??

 

 どういうことなの…?

 

 

827 名無しのハンター

 

 

 >>1

 お前がどういうことなのだよ

 

 

828 名無しのハンター

 

 

 この>>1はどうしようもないなww

 

 

829 名無しのハンター

 

 

 >>1

 気にしなくていいからとりあえずkwsk

 

 

830 名無しのハンター

 

 

 そうだ!kwsk!!

 

 

831 名無しのハンター

 

 

 やべえよwwwwやべえよwwwww

 

 このスレを知らない考察スレの住民共乙wwwwww

 

 

832 鉄腕アルバイター

 

 

 えー…まあぶっちゃけさ、安価③がその副会長なんだけど

 

 

833 名無しのハンター

 

 

 安価 キタ━━━(゜∀゜)━( ゜∀)━(  ゜)━(  )━(  )━(゜  )━(∀゜ )━(゜∀゜)━━━!!

 

 

834 名無しのハンター

 

 

 まて!確か安価③って…店長にイケメンがm9(^Д^)プギャーじゃなかったか!?

 

 

835 名無しのハンター

 

 

 はっ!

 まさか、まさかなのか!?

 

 

836 名無しのハンター

 

 

 リア充代表みたいな副会長が…?(゜д゜;)

 

 

837 名無しのハンター

 

 

 >>1

 はよ!

 

 バン    はよ

バン(∩`・д・) バン  はよ

  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/   

  ̄ ̄\/___/

 

 

838 名無しのハンター

 

 

 はよ

 

 はよ

 

 

  バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン

 バン       バンバンバン゛ン バンバン

バン(∩`・ω・)  バンバンバンバン゛ン

 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/

    \/___/ ̄

 

 

839 名無しのハンター

 

 

 ちょ…もう脱ぐものないんですけどー!

 

 

840 名無しのハンター

 

 

 >839

 なんだまだ脱いでなかったのか?( ´,_ゝ`)

 

 

841 鉄腕アルバイター

 

 

 よくわかんないノリになってきたな(´・ω・`)

 

 

 じゃあ、あわせて投下するね ノシ

 

 

842 名無しのハンター

 

 

 これは…mj全裸待機だな

 

 

843 名無しのハンター

 

 

 ただの巨乳美人とイケメンの話をするだけの板だと思ってたのにwwww

 

 

844 名無しのハンター

 

 

 いつから雑談スレだと錯覚していた?

 

 

845 名無しのハンター

 

 

 ハンタwww内部wwww情報wwwwとかwwwww

 ハッカー涙目wwww

 

 

846 名無しのハンター

 

 

 ハッカー仕事しろwwwww

 

 

847 名無しのハンター

 

 

 ハッカー( ゜д゜)く一般人に話す程度の話など重要では………え?

 

 

848 名無しのハンター

 

 

 ハwwwッwwwwカwwwwーwwww

 

 

849 名無しのハンター

 

 

 確かにwwww確かにwwww重要度が高いとは思えんがwwwww

 

 

850 名無しのハンター

 

 

 まず個人情報を収得の時点で無理ゲーwww

 

 

851 名無しのハンター

 

 

 その個人情報収得不可率の高い情報をwwwwwスレで晒す>>1wwwwww

 

 

852 名無しのハンター

 

 

 もって行くところに持っていけば高値…か?

 

 

853 名無しのハンター

 

 

 >852

 雑談で使われる程度の情報じゃたかが知れてんじゃない?戦闘スタイルとか、電話番号とかじゃないんだから

 

 

854 名無しのハンター

 

 

 >852

 まあ、それでも普通流出しない情報だけどねwwwwwww

 

 

855 名無しのハンター

 

 

 下手したら弱味になるもんなwwwwww

 

 あれ、>>1の命マッハ?wwwwwwwwww

 

 

856 鉄腕アルバイター

 

 

 なんで俺の命の話になるの?(´・ω・`)ただの雑談で俺は自分の寿命を削ることになるのか…

 

 

 もうこの話やめようず

 

 

857 名無しのハンター

 

 

 >>1

 ちょ、ここまできて!!

 

 

858 名無しのハンター

 

 

 >>1

 お前、それは人間のやることじゃない!!

 

 

859 名無しのハンター

 

 

 >>1

 大丈夫だよ、こんなとこで情報漁ってるハッカーなんていねーよwwwwwそんな奴の情報とか買わねーし

 

 

860 名無しのハンター

 

 

 >>1

 っか、一般人との話でそんなフラグたつようなこと早々ないだろ、副会長だしwwwww

 

 でもm9(^Д^)プギャーされることはあると思うよwwwwwwwww

 

 

 イケメンの不幸で飯が上手いいいいいいいい!

 

 

861 名無しのハンター

 

 

 >860の通りだ!

 それを全裸で待機する俺たちを見てお前はなにも感じないか?>>1!

 

 

862 鉄腕アルバイター

 

 

 おまいらの肌色みてもなんとも思わんのだけど…(´・ω・`)

 

 まあ書き溜めたから投下するわ…連投すんな

 

 

863 鉄腕アルバイター

 

 

 店長はお前等ももうわかってると思うけど、巨乳で知的美人だが書痴だ。酷い書痴だ。

 でも店長は店長しかもてない武器をもってる。それがまあびっくりするくらいの本の数なんだけどね。その辺はちょっと禁則事項ということで…とりあえずレア・マニアック本の倉庫番と思えばいいよ。

 噂程度でうちの店のことを知っている人は結構いるけど、最近そこに新たに武器が加わったのな。それがイケメンがライセンスを取って公僕を味方につけたこと。これは結構大きい。

 

 いままでは、店に資産がある→襲撃かけようず!(`・ω・´)→イケメン( .゜ζд゜)く氏ね!

 というスタイルだったのな。イケメンは有名だが、それはお前等みたいな一部の人間にとって有名であって、視野狭窄な奴は目の前の餌にしか興味ないのな。

 でも最近では、店に資産がある→襲撃…え、プロハン?mjで(;´д` )無理ゲー… で諦めてくれるようになった!だいぶ襲撃が少なくなって俺は嬉しい!

 

 

 で、だ。イケメンのステをちょっと投下するとだな…

 

 

 イケメンのステ

 本名:イケメン

 渾名:輝く顔のD、呪われた顔面()

 経歴:店長の騎士→天空闘技場200階闘士クラス→店長と店の護衛→プロハンター→現在進行形騎士

 特技:二槍使い。顔を見ただけで乙女をヤンデレにする。stk量産機。プロハンをボッコにする程度の能力

 

 

 ここまではおk?

 

 

864 名無しのハンター

 

 

 突っ込みしかないけどおkwwwww

 

 

865 名無しのハンター

 

 

 stk量産機とか言ってやるなよ馬鹿あああああー!

 

 

866 名無しのハンター

 

 

 >プロハンをボッコにする程度の能力

 最強じゃねぇか馬鹿wwww

 

 

867 名無しのハンター

 

 

 >>1

 基本的にお前はD様あああああああん!!!!にならないからな。ある意味客観的にD様見れて凄いと思うわぁ…

 

 

868 鉄腕アルバイター

 

 

 >867

 俺は乙女じゃないからな(´・ω・`)イケメンに燃えを求めても萌えは感じないよ…というか男に萌えってw

 

 続きー

 

 そんなイケメンをさ、上手く御せたらいいんじゃね?これはいけるくね?とおもったのが副会長。

 

 

869 名無しのハンター

 

 

 

 

870 名無しのハンター

 

 

 

 

871 名無しのハンター

 

 

 

 

872 名無しのハンター

 

 

 は?

 

 

873 名無しのハンター

 

 

 は?

 副会長?

 

 

874 名無しのハンター

 

 

 おい

 

 

 俺たちのD様に不穏な影が…

 

 

875 名無しのハンター

 

 

 なんだコレは、この展開は…つまり副会長をDisればいいのか?

 

 

876 鉄腕アルバイター

 

 

 変なとこで切ってすまん(´・ω・`)

 

 

 副会長が店に来ていってたのが「そんな強いイケメンをこの店に置いとだけってもったいなくね?もっと使い道あるんじゃね?イケメンもそんだけ強いのに店番とかどうなの?よかったら僕と契約しませんか?(????)」意訳

 

 店長曰く「確かにイケメンを表にだしゃあ、イケメンにホイホイされた女や強さに憧れる男が副会長につくだろうねーなんか対立があるらしいからさー。イケメン強いし、それだけでいい宣伝になるでしょうね、協専契約をしている人たちの中にダイヤモンド投げ込むようなもんだわーないわー(意訳)」なんだって。

 勿論店長そんなこと気付いてるからテメェと契約なんてさせねぇよ!ってわけで第一回目は塩を撒いて終了になりました(^人^)乙!

 

 

 しかし、あの貴方の隣でニコニコの副会長はそんなことでは諦めませんでした。

 イケメンを釣るには店長を釣るしかない。ということに早々に気付いている副会長からの猛アピールwwはっじまるよー!www

 

 

 と思いきや、店長のスルースキル発動!目すらあわせてもらえないwwwwwwwww

 

 

 あ、ちなみに副会長のステ。画像なんてないぞー

 

 役職:ハンタ協会の副会長

 容姿:イケメン爆発しろ!ニコニコ微笑み系男子ただし腹黒策士系

 備考:盗人さんとならんでもまあ見劣りしない…んじゃないかなーな容姿。金持ち。社会的地位は高い。俺には優しい←多分外堀から埋めようとしている。

 

 

 まあ、この人、口で忙しい忙しいといいながらwwwwよくwwww店長に絡むわけですがwwwww店長は取り付く島もありませんでwwwwwwwww

 

 

 副会長「こんにちは店長さん、今日もお美しいですね?何を読まれているんですか?」

 

 店長「●●文明の発展の土壌になった●●族の書記です」

 

 副会長「おや、それは興味深い」

 

 店長「…………●●文明の発展にはあの一族の犠牲があってなりたっています××で●●で△△でくぁwせdrftgyふじこlp云たらかんたら……」延々と店長の意味不明な発言が続く

 

 副会長「」

 

 

 店長wwwwwそんなに長々と話すことなんてないのにwwwwwwwそんなに嫌ですかwwwwwそうですかwwwwwwww鬱陶しいんですねwwwwwwwwわかりますwwwwwwww

 

 副会長会話を理解してないwwwwwwwwいや、知識がないとかじゃなくてwwwwwwww店長がコアにコアを重ねたアレな話をwwwwwわざとですねwwwwwわざとですねwwwwww

 

 

 

 

 プギャプギャ━━━m9(^Д^≡^Д^)9m━━━━!!!!!!!!

 

 

 

 

 

877 鉄腕アルバイター

 

 

 店長の攻撃はまだまだ続く

 

 

 後日

 

 

 副会長「こんにちは店長さん、今日は」

 

 店長「あ、サーセン取引相手がこの後来るんでお引取りください」

 

 副会長「」

 

 

 勿論wwwwwwwwww嘘wwwwwwwwwww店長が仕事するわけないwwwwwwwwwwww

 

 

 

 後ろでイケメンがなんともいえない顔をwwwwwww

 俺に優しくしてくれてるけどwwwwwwwみえみえwwwwwwww店長に話聞いてる俺に死角はなかったwwwwwwwwwwww下心ばれの助wwwwwwwww

 本当に店長に惚れたとしてもwwwwwww間違いなくあんたは好みからはずれてますwwwwwwwwwww

 

 

 プギャプギャ━━━m9(^Д^≡^Д^)9m━━━━!!!!!!!!

 

 

 

 さらに後日

 

 

 副会長「こんにち…」

 

 店長「暇なんですか?」

 

 目すらあわせなくなりました(*´▽`*)

 

 

 俺(;´д` )店長ェ…

 

 ( .・ζω・)主…

 

 ………えーっと…!ハッ!Σ( .・`ζд・´)

 

 ( .・`ζω・´)お任せを!もう店にいれません!

 

 

 

 こうして、百戦錬磨であろう男はうちの敷居をまたげなくなったのでしたwwwwwww

 

 

 ただし、最後になんの繋がりもなくなるのは困るとおもったのか、俺に名刺渡してきた。今は受け取ってよかったと思っているwwwwwww主に俺の寿命のためにwwwwwwwwww

 

 

 

 プギャプギャ━━━m9(^Д^≡^Д^)9m━━━━!!!!!!!!

 

 

 微笑み系イケメンざまああああああああああああああああああああああああああ

 

 

 

878 名無しのハンター

 

 

 ( ゜д゜)ポカーン

 

 

879 名無しのハンター

 

 

 ポポポポポ( ゜д゜)゜д゜)゜д゜)゜д゜)゜д゜)ポカーン…

 

 

880 名無しのハンター

 

 

 (  Д ) ゜ ゜

 

 

881 名無しのハンター

 

 

 ポーン(  Д )⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒...。....。コロコロ

 

 

882 名無しのハンター

 

 

 ( ゜д゜ )

 

 

883 名無しのハンター

 

 

 こっちみんな

 

 

884 名無しのハンター

 

 

 ( ゜д゜ )ドウイウコトナノ?

 

 

885 名無しのハンター

 

 

 (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

 

 

886 名無しのハンター

 

 

 おい

 

 

 

 

 

 

 おい

 

 

887 鉄腕アルバイター

 

 

 (´・ω・`)???

 

 なんでみんなイケメンざまあああああ

 

 しないの??

 

 

888 名無しのハンター

 

 

 

 

889 名無しのハンター

 

 

 

 

890 名無しのハンター

 

 

 

 

891 名無しのハンター

 

 

 こ、このスレは釣りです!!!!!!!!!!!

 

 

892 名無しのハンター

 

 

 ( ゜д゜ )ハッ

 

 このスレは釣りです!!!!!釣りったら釣り!!!!

 

 

893 名無しのハンター

 

 

 

 このスレは釣りだよー☆

 

 え、何まさか釣られたの?

 

 えーm9(^Д^)プギャー

 

 

894 名無しのハンター

 

 

 釣りに決まってるだろ☆

 

 (≧ω≦)

 

 信じちゃったの?ばっかでー

 

 

 

 そんな君は「コレは釣り☆」と三回呟いてこのスレを閉じなさい。

 

 幸せになれるかもね☆

 

 

895 名無しのハンター

 

 

 釣りって思ってね☆

 

 じゃないと円環の理に導かれちゃうぞ☆

 

 

896 鉄腕アルバイター

 

 

 (´・д・`)え?

 

 おまいらどうしたの???

 

 

897 名無しのハンター

 

 

 いいから!!!>>1!!お前は黙ってろ!

 

 

898 名無しのハンター

 

 

 >>1

 それかお前も釣りって宣言しろ!!!!

 

 

899 名無しのハンター

 

 

 >>1

 この馬鹿あああああああああああああ!!

 

 

900 名無しのハンター

 

 

 900ゲトおおおおおおおおおおおお

 

 とりあえずコレは釣りだ!!

 

 流せ流せ!!

 

 

901 名無しのハンター

 

 

 ここまできたから付き合ってやるよおおおおおお!!!!

 

 

 流せぇぇぇぇぇぇ!!!!

 

 

902 鉄腕アルバイター

 

 

 アワワ ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ

 

 え

 

 え?

 

 どういうことなの!?

 

 

903 名無しのハンター

 

 

 >>1この馬鹿まだ気付いてねぇええええええええええ!!!

 

 

904 名無しのハンター

 

 

 お前死亡フラグたてんな馬鹿あああああああああああああ!!!

 

 

905 名無しのハンター

 

 

 もういいほっとけ!このスレを流すぞ!!

 

 

906 名無しのハンター

 

 

 ksk

 

 

907 名無しのハンター

 

 

 ksk

 

 

908 名無しのハンター

 

 

 ksk

 

 

909 名無しのハンター

 

 

 ksk

 

 

910 鉄腕アルバイター

 

 

 (´Д⊂ヽウェェェン

 

 誰か説明してよおおおおお

 

 

 

 

 

 ・・・

 

 ・・

 

 ・

 

 

 

990 名無しのハンター

 

 

 1000なら>>1のスレは誰にも見られない!

 

 

991 名無しのハンター

 

 

 1000なら死亡フラグなんて立たない!

 

 

992 名無しのハンター

 

 

 1000ならここに関係者は居ない!!

 

 

993 名無しのハンター

 

 

 1000なら>>1をD様が守るうううう

 

 

994 鉄腕アルバイター

 

 

 (´Д⊂ヽウェェェン 

 よくわからないけど!

 

 1000なら店長とイケメンと一緒に俺は平和あああああ

 

 

995 名無しのハンター

 

 

 1000ならD様が天空闘技場再来!

 

 

996 名無しのハンター

 

 

 1000なら>>1の店は平常営業!

 

 

997 名無しのハンター

 

 

 1000なら↑の1000ならが全部叶う

 

 

998 名無しのハンター

 

 

 1000なら全部叶って>>1は無事!

 

 

999 名無しのハンター

 

 

 1000なら生主従が見れる!

 

 

1000 名無しのハンター

 

 

 酷いですねぇ…まったく(^ω^)

 

 個人情報流出とはいただけない

 

 

 

 このスレッドは1000を超えました、新しいスレッドを建ててください…

 

 

 

 

 

 

 

 



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貸本屋、捻る

作中は独自解釈でありますので!こんな風に考えてねぇよ!と思われる方もいらっしゃるかもしれません。作者も途中何が書きたいんだかわかんなくなりました。短いし…
とりあえず後ろでハムスケ…じゃなかったキンクマさんが煩かったんで集中力切れちゃいましたよう…。
あ、たくさんの感想やランキング(!)ありがとうございます。H×Hやっぱり人気あるね!うれしい!うっかりお舟ならぬお刀にうつつを抜かしてる場合じゃないね!がんばろう!昔のにじファンの時から~とか聞くと時代を感じます。ありがとうございます。


 

 

 

 コンクリートの床を革靴を鳴らしながら前に進む黒髪の男は、この店では当たり前の光景になっている、番台から一ミリも動く気のない女店主の元まで一直線に向かった。

 まず、隣に佇む美貌の騎士がその存在に気づき盛大に顔を顰める。その動きでだいたい誰が来たか悟った女店主もゆっくりと活字の海から帰還すると、ゆるゆると碧眼を手元の書物から正面へと向けた。

 彼女と付き合いの長い人間ならば、この辺りで黒髪の男が店主とそれなりの人間関係を築いていることに気付くだろう。本当にどうでもいい人間に対して、彼女の挙動は一ミリもぶれないからだ。ちなみに、某協会の副会長になると、これとはまったく違う対応になるのだが、それは逆に人間関係構築をさせないための行動だったりする。

 女店主と目が合うと、黒髪の青年―――クロロ・ルシルフルは、その端正な顔を盛大に寄せた。

 隣の騎士から手が出る前に、口を開く。

 

「魔導書とか凄く気になるんだけど。それはないわけ?」

「…人間関係の入口とされるコミュニケーションツールである挨拶を無視してそうくる?つまりお前とキャッチボールする気ないぜってこと?」

「シェスカさま、つまりこいつがボールですね!」

「こんなの絶対可笑しいよ!」

 

 サッカーしようぜ!ボールは…

 

 

 

 貸本屋、捻る

 

 

 

 クロロは今にも蹴ってきそうな槍騎士から慌てて距離を取る。キャッチボールとは、と小一時間ほど問い詰めたい思考回路だ。

 まあ、根本的にこの槍騎士ことディルムッド・オディナという美貌の男は、クロロを毛嫌いし、隙あらば排除、可能ならこの世から消したいというクロロからすれば非常に危険な思考を持っているので、常識的に言ったところで聞いてもらえる可能性は皆無だろう。

 

「店長ぉ、珈琲がいいですか?それとも紅茶?」

「紅茶、セカンドまだ残ってる?」

「ありますよ!淹れてきますね!」

 

 常連や一部の人間からは鉄腕アルバイターの名で親しまれているできるアルバイト店員ムーディは、緊張感を漂わせているルシルフルを素通りすると、慣れた様子で店舗奥の住居へと消えていった。このあたりのスルースキルもこの店ならではといえる。

 そうか今日はセカンドか…ダージリンかな。なんて、思考に飛ぶあたり、クロロもこの店に染まっているといえようか。こんなんだからCOOLがキャストオフするとか言われるのだ!

 この店で一番の権力者であり、もっとも力が強い(・・・・)女店主、シェスカ・ランブールが、無言で椅子を進めてきたので、クロロはほっと息をついてそこに腰かけた。

 盛大な舌打ちを送ったが、ディルムッドは、いくら気に食わない相手とはいえ主人の意向の邪魔をする気はない。

 気だるげに番台に肘をついたシェスカは、胡乱な眼差しで今日も貸本屋で生き延びた(・・・・・)常連に水を向けた。

 

「先日ぶりね、ルシルフル。それで、いきなりなんなの?」

「ムーディに聞いたんだけど…魔導書(・・・)とやらを検分したんだって?」

「あいつ…なんでも君に話すようになったわね。釘を刺しとかないと」

「酷いなぁ、ただの常連との世間話(・・・)じゃないか!俺は彼に良くしてると思うけど?」

「普段素行の悪い不良が、雨の日に子猫に傘をさしてあげているところを見ると『あれ、彼ってもしかして優しい…?』ってなる現象のことを言ってるの?その幻想は打ち砕くわ」

「俺が畜生に優しい男に見えるのか君は…」

「全然」

 

 両肩を竦めたクロロは、いまだに閉じられていない彼女の片手に収まっている書籍に目を向ける。

 それは今からさかのぼること千五百年前ほどの古文書で、はっきり言って美術館クラスのものなのだが、この店では当たり前(・・・・)の部類にはいるものだ。確かに古いものだが、それ自体が、彼女の危惧するような代物には見えない。つまり、魔導書(・・・)ではない。

 

「わざわざ君が動くなんて、そんな稀有なものがこの世に存在したことに驚いてるし、それを俺がしらないことにも感動してるんだよ。俺もまだまだだな。そして見てみたい。あとそれも読みたい」

「知っているだけで、()っているわけではないのよ。人を発狂させて深淵へ誘うものなんて、人の世にあるだけ害悪でしょ?」

「君がこと本に対してそんな感想を抱くなんてね。ますます興味深いなぁ。念の宿ったものだったのかい?」

 

 シェスカは深くため息をつくと、脇に寄せていた書物をクロロに手渡した。彼女が持っているのは第二部で、手渡した方が第一部になる。クロロはそれを礼を言って受け取ると、興味深そうに頁を慎重に捲った。古すぎるそれは、すでに全体が黒く変色しており、綴られた文字も解読し辛い。しかし、それがいい。

 ふんふんと頷きながら頁をめくるが、魔導書から頭が離れたわけではない。この店で乱暴は働きたくない、というか働けないので、もっと別の場所(ムーディ)から攻めていくかと攻略法を練り直す。

 

「ルシルフルは、聖書は読んだ?」

「…読んだけど?福音書もいくつか。翻訳版だけど」

「例えば君の立場で言うと聖人とはなんになる?」

「先導者で念能力者(・・・・)じゃないかと」

「じゃあ君の立場で魔術師とはなんになる?」

「……詐欺師(・・・)か、念能力者かな」

「ありがとう」

 

 会話はお盆にティーセットを乗せたムーディが奥から出てきたことで一時的に中断された。彼女は、鼻腔を擽る芳醇な匂いを堪能すると、カップに口付けた。

 

 この世界において、何らかの超常現象を行う=念能力者という方程式が出来上がっている。それは、念能力の汎用性があまりにも高いからに他ならない。彼女はそれを、弊害と認識している。

 確かに念能力は素晴らしい。自分がその有用性のおかげで今こうしているのだからそれは間違いようのない事実であり、真理である。

 けれど、それ以上に危うい均等の上に成り立っているといっていいだろう。

 

 先ほど、クロロ・ルシルフルは聖書を読んだといった。聖人と、その奇蹟を認識している。瑣末な違いはあるけれど、ほぼほぼ彼女の第一の人生で認識していた聖書の内容と違いはない。元の人生においても世界中で「新たな聖書」が見つかっていたのだから、それらの違いは誤差の範囲内だろう。

 この世界にも、神の子がいた。

 シェスカは、先ほどまで読みふけっていた古書に意識を向ける。今から約千五百年ほど前の「とある騎士の王」の物語の原本に当たる。つまり、彼女の第一の人生における「アーサー王伝説」に当てはまるだろうか。

 このように、類似する何か(・・)がある。

 そして、どういった原理か、その時代の聖遺物(・・・)と呼んで相違ないものが、流れ着く。

 先日、槍の騎士によって破棄された魔導書。

 彼女の知る原本や、その劣化版には遥かに劣るものであったが、それでもれっきとした魔導書としてこの世界に存在している。勿論、念能力によるものではない。

 シェスカ・ランブールという異物(イレギュラー)の混入以前に、この世界には確かに魔術が存在していたはずだ。それが、失われてしまっている。おそらく、念という存在によって。魔術を使うには、回路が必要だ。念を使うには、回路は不要だ。どっちがより汎用性に富んでいるかなど、考えなくても答えがでる。

 まあ、だからこそ、この世界において彼女の従者を傷つけることができるものはいないのだが。

 

 クロロは、魔術を端から信じていない。宗教にとっての唯一神や、聖人の痕跡(念能力)は理解しているようだが、それ以上の超常的なもの天災のようなものと認識しているようだ。念能力を超えた、超抜的な力。神秘。

 

 そんな彼に、魔導書など与えられないし、その存在に興味を持たれても困る。いくら超級の念能力者とはいえ、ディルムッドの宝具による攻撃に耐えられるわけがない。心臓を必ず持っていく系の槍兵ではなくても、ディルムッドの腕なら普通に死んでしまうだろう。あと、この機会を逃さず彼がうっかり(・・・・)やってしまうかもしれない。

 

 ううむ、と悩んだ結果。魔導書足りえるほどの神秘を内包していない普通のクゥトルフ関係の本を取り寄せて、それを手渡すことにする。いくらなんでも旧支配者は来ないよね!大丈夫だよね!神霊なんて呼べないよね!フラグ?およびじゃねーよ!へし折る!

 

 そっと差し出されたそれが、アルバイトから聞き及んだ魔導書ではないことに気付きはしたが、クロロは黙って受け取った。まず予備知識というのは必要だ。

 その際、槍騎士から生温い視線をもらった。解せぬ。

 

 

 

 後日

 

「ああ、窓に!窓に!」

「いあいあ!って何やらせるんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




っても作者クトゥルフ触りしか知らないんです…好きな人はごめんなさい。


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【番外編】ハンターch〜IF 従業員達の地獄の鬼安価編〜2016-6-9追記

IFなんで深く考えてはいけない!!!
ご要望があったんでIF編のせときますね(´・Д・)」

スレッド395から以下、友人Hによる「続きがあったはずなんだが?」の一言でHDDから掘り出してきたIFの続きを載せています。ぶっちゃけ、作者よりよく覚えている友人です、本当に…。IFは続いているんですが、長くなりそうなのと、次話の前書きに書きたいことがあるので、別に投稿したいとおもいます。ありがとうね、友人H!


 IF~もしも安価でイケメンが天空闘技場再来をこなすことになったら~

 

 

 

 

 

※このお話は、もしも盗人の安価のあとに、アルバイターが③を先に語っていたらというIFです。

※それによって、某協会副会長の丘さんが何故かスレに降臨。すったもんだの末、住人に行動安価を指示されたアルバイターは、混乱して馬鹿正直に安価を決行。丘さんが安価をスナイプ☆しちゃって…

 

 

 

 

 

「何故…?」

 ディルムッド・オディナは溜息をついた。

 自らの魔貌を少しでも隠すため、眼鏡と帽子を深く被る。

 しかし、それでも溢れるオーラが周囲の視線を集めていた。

「あーっと…うーっと…すいません」

 その隣では、ことの原因である貸本屋のアルバイト、ムーディが申し訳なさそうに顔を歪めさせて謝罪を口にした。びくびくと怯えるように肩を震わせて謝罪するが、それに応えることもなく、柳眉を顰めたディルムッドは本日何回目になるかわからない溜息をついた。

 

 

 

 ことのおこりはただの匿名掲示板での雑談から起こった。

 掲示板の中で、アンカー(安価)と呼ばれる行動指示に、よりにもよって某協会の副会長が参戦。結果、彼の安価指示である『イケメンと一緒に闘技場へ行く』という無茶な安価が決行されることになった。

 勿論、イケメンこと輝く貌のオディナと呼ばれるディルムッドは、主を置いて闘技場に赴くことなどするはずもなく、彼のお願いはすげなく断られることになる。

 それを掲示板で報告すると、数分もしないうちに店の電話が鳴った。

 相手は、鉄腕アルバイターのHNでコケ下ろしてしまった某協会の副会長。

 これはオワタ\(^o^)/と、ムーディがリアルorzをしていると、彼の敬愛する店長こと、貸本屋の店主が受話器を手から引ったくった。

 店主のありえない行動に目を丸くする彼を他所に、電話で二言三言喋った店主は、盛大に眉を顰め、いささか乱暴な仕草で電話を切ると、ディルムッドを呼び出した。

 

 

 そして、気付けば闘技場前。

 

 

 副会長と間で何がしかのやり取りがあったのだろうが、店主は何も言わなかったし責めなかった。逆にそれが居心地が悪いのだが、彼が文句を言えるはずもない。

 ムーディが掲示板で報告すると「安価は絶対!」と騒いでいた住人達の歓喜のレスで埋まっていく始末。

 

『店長さんはボクが責任もってお守りしますよ』

 

 といってニコニコ笑いながら来店した金髪の青年に凄まじいまでの怒気を孕んだ視線が送られるが、青年はニコニコ笑って店主を見て首を可愛らしくかしげて見せた。

 正直そんな仕草されても可愛くない。シェスカとムーディは盛大に顔を顰めた。

 ムーディは自分の安易な行動がいけなかったと反省しているが、原因の一旦であるこの男に敵意を抱かずには要られなかった。

 

『がんばってください!あ、そうそう200Fまで行かないと二度と参戦できませんから、200F到達楽しみにしてます!ええほんっとうに、いちファンとして!』

 

 ニコニコ笑って送りだす男に「あんた本当は暇なんじゃねーの!」と文句をいいつつ、彼等はパドキア共和国に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

【イケメンと一緒】鬼安価で現地入り【俺の胃がマッハ】

 

 

 

 

 

・・・

・・

 

 

 

87 名無しのハンター

 

 

 おい!天闘HP見たか!?マジでD様来たぞ!

 

 

88 名無しのハンター

 

 

 >87

 なんだお前アルバイターのこと疑ってたのか?

 

 

89 名無しのハンター

 

 

 >87

 前スレ知らないんだな。

 あいつガチの知り合いだぞ

 

 

90 名無しのハンター

 

 

 っていうかアルバイターはマジで同居してっからなwww

 

 

91 名無しのハンター

 

 

 しかし鬼安価だったな!

 

 副会長ェ…

 

 

92 名無しのハンター

 

 

 しかしD様ファンである俺にはネ申だった

 

 

93 名無しのハンター

 

 

 禿同

 

 

94 名無しのハンター

 

 

 はげど

 

 最初「断られたよ!(;´д` )」

 

 って言ったとき実は「だよねww」と諦めてたのだがww

 

 

95 名無しのハンター

 

 

 まさか店長が説得してくれるとはww

 

 

96 名無しのハンター

 

 

 いや、なんか取引でもしたんじゃまいか?

 

 

97 名無しのハンター

 

 

 怖いからやめとこうぜww

 おっぱい店長はガチで知り合いがやばいらしいからwww

 

 

98 鉄腕アルバイター

 

 

 (´Д⊂ヽウェェェン

 

 次スレ乙ですうううううう

 もう100行こうとしてるじゃないかー!

 

 

99 名無しのハンター

 

 

 あ!

 アルバイターじゃないか!

 

 

100 名無しのハンター

 

 

 100ゲト!

 

 アルバイターよくやった!マジで安価実行するとはwwww

 

 

101 名無しのハンター

 

 

 D様ああああああああああ!

 

 

102 名無しのハンター

 

 

 今天闘板スゲェ盛り上がってるぜ!

 

 

103 名無しのハンター

 

 

 ある意味前スレのお陰なんですけどね!

 

 

104 鉄腕アルバイター

 

 

 とりあえずイケメンが物凄く怖い(;´д` )あの副会長…マジで…_| ̄|○

 知り合いのプロハンに連絡入れて監視お願いした。盗人さんも多分来てくれると思うけど、盗人さんが来るとイケメンのSAN値が拙いから内緒にしてる

 

 

105 名無しのハンター

 

 

 D様、SAN値チェックです!

 

 

106 名無しのハンター

 

 

 とりあえずお前が苦労してることはわかったww

 

 しかしD様復活祭はやめない

 

 

107 名無しのハンター

 

 

 今度は200階までいくよな?

 行かないと二度と闘技場これないぜ?

 

 

108 鉄腕アルバイター

 

 

 >107

 うん、一応槍もってきたから200階で一回は戦う気らしい。

 

 店長が店出るときに実況みてるから、っていってたから多分がんばると思う。

 

 古いPCでも実況くらいなら見れると思う。

 

 

109 名無しのハンター

 

 

 古いPCか…重いんじゃねーかなぁ…

 

 

110 名無しのハンター

 

 

 ああ、多分凄く混線するぜ…

 

 

111 鉄腕アルバイター

 

 

 (;´д` )えええええ

 

 それだけがイケメンの今の心の支えなのにぃぃぃぃぃ!!!

 

 

112 名無しのハンター

 

 

 >111

 

 お前はもう少しD様のことを学べ

 

 あの人の人気はガチだ

 

 

113 名無しのハンター

 

 

 >111

 

 お前はもう存在位置が裏山過ぎる

 

 

 

 

 D様との日常実況オナシャス

 

 

114 名無しのハンター

 

 

 >111

 D様いま何してる??

 

 

115 鉄腕アルバイター

 

 

 イケメン?

 店に電話して店長と話して今は落ち着いてる…

 

 イケメンが真剣に携帯を持とうかと検討してるんだが…

 

 つ【顎から上が見切れている男性の画像、手には携帯のカタログ】

 

 

116 名無しのハンター

 

 

 うわあああああああああああああ

 

 

 保存余裕でした!

 

 

117 名無しのハンター

 

 

 ありがとうございますありがとうございます!

 

 

 

 D様携帯もってねーの?プロハンだよな?

 

 

118 名無しのハンター

 

 

 顎から下でもわかるイケメン具合!!!即効保存した!!

 

 

 携帯はプロハンの必須道具じゃね?

 

 

119 鉄腕アルバイター

 

 

 店にいる分には、携帯いらないもん。

 店長が持たないからイケメンが持つはずない。

 

 でも今の状況は不安らしい。店の人間全員に持たせたいっぽい。

 

 

 心配性なんだ(´・ω・`)

 

 

120 名無しのハンター

 

 

 男がもんとかいうな可愛くない

 

 

 まあ、店長店の電話にもでないもんなwww

 

 

121 名無しのハンター

 

 

 なってても無視されるんじゃねwwww

 

 

122 名無しのハンター

 

 

 お前はハンちゃんやってそうだなwwww

 

 

123 鉄腕アルバイター

 

 

 今回の件でハンちゃんは懲りたよ…(´・ω・`)

 

 

 でもまたやらかしそうで怖い…

 

 

124 名無しのハンター

 

 

 反省しろwwww

 

 

125 名無しのハンター

 

 

 反省しろwwww

 

 

 しかし今回は反省しなくていいwwww

 

 

126 名無しのハンター

 

 

 つかD様一日目で150階なんですけどwwwww

 

 

127 名無しのハンター

 

 

 あ、一回200階までいったからだろ?

 

 

128 鉄腕アルバイター

 

 

 とりあえず何がなんでも即効で終らせるっていってる

 

 目が据わってますマジで怖いつД`)・゜・。・゜゜・*:.。

 

 あとイケメンの後ろをぞろぞろ女の人がついてくるの怖い

 

 俺めっちゃ見られてる!誰かたすけろください

 

 

129 名無しのハンター

 

 

 >128

 イ㌔

 

 

130 名無しのハンター

 

 

 >128

 安定のstk量産機ですね…

 

 

131 名無しのハンター

 

 

 >128

 俺アルバイターみたぞ

 すげー普通だ。

 そしてびくびくしとるwwww

 

 D様のイケメン具合が眼鏡でも隠しきれない(*´▽`*)めちゃかっこいい!!

 

 俺ずっとファンなんだ!!!!

 

 

132 名無しのハンター

 

 

 うあああああああああ生D様みたい!

 

 200階行く前に闘技場いくわ

 

 

133 名無しのハンター

 

 

 俺もうチケット買った(`・ω・´)

 

 

134 名無しのハンター

 

 

 今天闘板でアルバイターが騒がれてるwwww

 

 誰あれって発言しとる女怖すぎワロエナイ

 

 

135 名無しのハンター

 

 

 アルバイター

 イ㌔

 

 

136 鉄腕アルバイター

 

 

 こわいいいいいいいいいい

 

 

 とりあえずイケメンの傍から離れない怖い

 

 

 実況ってか…日常実況になるかもだけど、またなんかあったら報告する

 

 イケメンがstk振り切るっていってるから落ちるな。PCの電源もやばそうだし

 

 

137 名無しのハンター

 

 

 おお!がんばれwwww

 

 保守っててやるからwww

 

 

138 名無しのハンター

 

 

 天闘板のほうは適当にかき回しといてやるからwww

 

 

139 名無しのハンター

 

 

 D様の激写まってるからwwww

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最新型のPCを閉じてボディバックの中に収める。

 ちらりと後ろを振り向けば、まるで飴に群がる蟻のように女性たちが群をなしていた。

 

 女の人怖いぃ!

 

 ムーディは小さくひぃと悲鳴を上げた。

 これは確かにシェスカが居たら大惨事だろう。当時、天空闘技場に近づかなかったという彼女の判断は正しい。

 男性であるムーディであったとしても彼の隣にいるというだけで突き刺さる視線、視線、視線――――。

 一般人である彼には刺激が強すぎる。

 

 ああ、なんでこんなことになったんだろう。

 

 時間が巻き戻せるならば、彼はきっとスレッドを立てなかっただろう。

 とはいえ終ったことを悔いてもはじまらない。なにより、そんなことを口にすれば、それに巻き込まれて大事な主人から引き離された隣を歩く「輝く貌のオディナ」ことディルムッド・オディナに申し訳がたたない。

 彼は本日闘技場で悠々とストレートで150階行きをもぎ取った。

 本人曰く「もう少し評価が高いかと思った」らしい。なにそれ怖い。最初から200階狙ってきてる。

 ムーディの誘導されたスレッドでは早くも盛り上がっていたが、同時に天闘板とよばれる専用の別板では、ディルムッドの活躍と、その彼についていく哀れな男のことも話題にあがっていた。刺されるんじゃないだろうか、と不安になった彼は多分悪くない。

 後ろをゆく女性達も、憧れのディルムッドの隣を歩く彼に相変わらず苛烈な視線を注いでいる。

 

「ムーディ、いいか?」

「だ、大丈夫ですぅ」

 

 返事を聞くなり、ディルムッドはムーディの腰に腕を回し、小脇に抱えた。

 後ろで悲鳴やら怒号やらがあがるが、そんなことを気にしている場合ではない。

 ムーディは、ディルムッドが何をしようとしているか正しく理解し、とっさに口を閉ざし、腕につかまった。

 

 

 

 その日、ムーディは人生初の壁走りと、ビル間飛行を体験することになる。

 

 

 

 いいんだ。プリンセスホールドとかされるよりずっとよかったから。寧ろ姫抱きとか誰得だよ。

 姫抱き?あれは店長限定だろJK。

 店長相手なら絶対俺にしたみたいなことしないから。

 え、安定の騎士?

 当然でしょうが何年店長相手にしてるとおもってるんだおまいら。

 イケメンの騎士道が一番発揮されるのは守る人がいるときだよマジで。

 

 あー、もう、人間でもジェットコースター再現できるとか、ほんと人間じゃないわー。マジでないわー。

 

 

 ムーディは死んだ目をしてキーボードを叩いた。

 

 

 

 

 

 

307 名無しのハンター

 

 

 ほ

 

 

308 名無しのハンター

 

 

 し

 

 

309 名無しのハンター

 

 

 ゅ

 

 

310 名無しのハンター

 

 

 ほっしゅ☆

 

 

311 名無しのハンター

 

 

 つ【破魔の紅薔薇を振るう男性の後ろ姿】

 

 

312 名無しのハンター

 

 

 ほ

 

 

313 名無しのハンター

 

 

 し

 

 

 

 

 

 ん

 

 

314 名無しのハンター

 

 

 え

 

 

315 名無しのハンター

 

 

 もしや…

 

 

316 鉄腕アルバイター

 

 

 ハンちゃんよおおおおおおおおお!!私は帰ってきたああああああああああああああ!!!!

 

 

 

 

 

 

 マジで女の人怖いボスケテつД`)・゜・。・゜゜・*:.。

 

 

317 名無しのハンター

 

 

 ソロモン自重wwww

 

 

 

 って

 

 

318 名無しのハンター

 

 

 アルバイター!

 アルバイターじゃないか!!

 

 

319 名無しのハンター

 

 

 アルバイタアアアアアアアアアア!!!!

 

 

320 名無しのハンター

 

 

 ヽ(*´ ∇`)ノ≡☆:*:.おかえり

 

 

321 名無しのハンター

 

 

 εεεε♪≡ヽ(*´∀`)ノ ォ帰ェリ冫⊃~♪♪

 

 

322 名無しのハンター

 

 

 っかあらぶってるなwwww

 

 

 

 

 画像の後ろ姿にマジ惚れる

 

 即効保存した

 

 

323 名無しのハンター

 

 

 画像のD様は槍振るってるんですか!?そうなんですね!!!!

 

 

 

 

 100回保存した

 

 

324 名無しのハンター

 

 

 どうした、マジキチ女に詰められたか?

 

 

 

 

 200階での活躍期待しております(`・ω・´)

 

 

325 鉄腕アルバイター

 

 

 つД`)・゜・。・゜゜・*:.。

 

 

 ぞろぞろぞろ蟻んこみたいについて来るんだよー目が怖いよー

 

 

 イケメン人を荷物みたいに担いで壁走りとかビル間飛行するんだよー

 

 

 いいよもう、姫抱きよりマシだもん

 

 

326 名無しのハンター

 

 

 つまり俵抱きか?wwwwwww小脇に抱えられたか?wwwwwwwww

 

 

 

 

 お前の姫抱きとかねーよ

 

 

327 名無しのハンター

 

 

 お前の姫抱きとか誰得だよ

 

 

 

 

 

 それは店長だけなんだろう?

 

 

328 鉄腕アルバイター

 

 

 そんなの知ってるよー!!

 

 イケメンは店長の騎士なんだから当然だろ!つД`)・゜・。・゜゜・*:.。そうじゃなくて、壁とかビルとかに誰かつっこんでよおおおおおお

 

 

329 名無しのハンター

 

 

 >328

 自分でD様の人間をやめた動きを前スレから語っていたくせにwwwwwいまさらすぐるwwww

 

 

330 名無しのハンター

 

 

 禿同wwww

 

 

331 名無しのハンター

 

 

 はげどwwwwww

 

 

 

 

 ってか、今天闘板みたら荒ぶるstk女のスレでkskしすぎワロタwwwwwwwwww

 

 

332 名無しのハンター

 

 

 アルバイターいい迷惑wwwwwww

 

 

333 名無しのハンター

 

 

 ただの身内なのにwwwww

 

 

334 名無しのハンター

 

 

 こwwwwwwれwwwwwwっうぁwwwwwww

 

 

 

 

 

 アルバイターは泣いていいな

 

 

335 鉄腕アルバイター

 

 

 >天闘板

 

 そんなに酷いの???? (´;ω;`)

 

 

336 名無しのハンター

 

 

 >335

 みないほうがいい

 

 

337 名無しのハンター

 

 

 >335

 お前のSAN値がマッハ

 

 

338 名無しのハンター

 

 

 >335

 まさにSAN値直葬

 

 

339 名無しのハンター

 

 

 とりあえず天闘板にデマ流してきたwwwwww

 

 

340 名無しのハンター

 

 

 >339

 ナイスwwwwww

 

 

341 鉄腕アルバイター

 

 

 ぜったいにみない

 

 

 

 

 

 ぜったいにだ

 

 

342 名無しのハンター

 

 

 で、お前はいまどこいんの?wwww

 

 

343 名無しのハンター

 

 

 カキコできてるってことは避難はできたんだろ?wwwwww

 

 

344 名無しのハンター

 

 

 D様画像の背景は…?公園か?庭園?

 

 

345 鉄腕アルバイター

 

 

 場所特定が怖いからあんまりいえないけど

 

 

 

 ホテルのスイーツだよ

 

 そこのバルコニーが庭のような広さでした。小市民にはつらい(´;ω;`)ブワッ

 

 ライセンスマジぱない。宿泊費ガチ無料で俺(  Д ) ゜ ゜

 

 

346 名無しのハンター

 

 

 >345

 馬鹿が凸るかもしれんから仕方ない

 

 

347 名無しのハンター

 

 

 >345

 ただしい判断。

 お前連れて闘技場の部屋はやばい

 

 

348 名無しのハンター

 

 

 もうすでに脂肪フラグたってるしな

 

 

349 名無しのハンター

 

 

 >348

 

 

350 名無しのハンター

 

 

 >348

 

 

351 名無しのハンター

 

 

 >348

 

 

352 鉄腕アルバイター

 

 

 (´・ω・`)

 

 

 

 

 

 (´;ω;`)ブワッ

 

 

 

 

 

 つД`)・゜・。・゜゜・*:.。

 

 

 

 

 

 |←樹海|     ┗(^o^ )┓三

 

 

353 名無しのハンター

 

 

 ああ!

 

 アルバイター!!

 

 

354 名無しのハンター

 

 

 アルバイターもどれ!そっちは危険だ!!

 

 

355 名無しのハンター

 

 

 諦めんなよ!!

 

 

356 名無しのハンター

 

 

 348テメェ!!

 

 

357 名無しのハンター

 

 

 348自害せよ!!

 

 

358:348

 

 

 ごめんなさいいいいいいいい!!!

 

 

 

 

 責任とって天闘板ちょろりと荒らしてきます_| ̄|○

 

 

359 名無しのハンター

 

 

 >358

 荒し、いくない

 

 

 

 かき混ぜるだけにしろよ

 

 

360 名無しのハンター

 

 

 >358

 最低限のマナーだぜ

 

 

 

 フェイク多様だ!

 

 

361 名無しのハンター

 

 

 おwwwwwwwwwwwwうぃwwwwwwwwwwww

 

 

 

 

 天闘板wwwwwww次スレたったぞwwwwwwwwwwwwww

 

 

362 名無しのハンター

 

 

 >361

 マジかwwwwwwwwwwwwwwwwwkskしすぎwwwwwwwww

 

 

363 名無しのハンター

 

 

 しかし内容はバイオレンスでござる

 

 

364 名無しのハンター

 

 

 おい

 

 

 

 

 

 おい

 

 

365 名無しのハンター

 

 

 アルバイター見るなよ!?

 

 

 絶対見るなよ!?

 

 

366 名無しのハンター

 

 

 そして見ちゃうんですねわかります

 

 

367 名無しのハンター

 

 

 >365

 それフラグや…

 

 

368 名無しのハンター

 

 

 うわ…ちょっと見てきた…ひくわ…俺あの板ちかよらね

 

 

369 名無しのハンター

 

 

 >368

 普段は普通の闘技場内スレなんだけどな

 

 今はD様復活祭とアルバイターああん?誰だテメェ(#゜Д゜)ゴルァ!!で可笑しくなってるだけ

 

 

370 名無しのハンター

 

 

 これはますますこのスレの秘匿に努めんといかんな…

 

 

 

 

 主にアルバイターのSAN値的に

 

 

371 鉄腕アルバイター

 

 

 (´・ω・`).;:…(´・ω...:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..

 

 

372 名無しのハンター

 

 

 ああ!アルバイターがタヒった!

 

 

373 名無しのハンター

 

 

 この人でなし!!!

 

 

 

 ってwwwwwwアルバイターどうしたwwwww

 

 

374 名無しのハンター

 

 

 いきなり消えるなしwwwwww

 

 

375 鉄腕アルバイター

 

 

 ちょっとみた

 

 

 なにあれこわい

 

 

 

 ふくかいちょうちくしょう!

 

 

376 名無しのハンター

 

 

 

 

377 名無しのハンター

 

 

 

 

378 名無しのハンター

 

 

 

 

379 名無しのハンター

 

 

 

 

380 名無しのハンター

 

 

 おう…

 

 

381 名無しのハンター

 

 

 あれほど見るなと…

 

 

382 名無しのハンター

 

 

 orz

 

 

383 名無しのハンター

 

 

 今の内容は心が折れる

 

 

384 名無しのハンター

 

 

 アルバイター貴方疲れてるのよ…

 

 

385 名無しのハンター

 

 

 寝ろ…寝て忘れろ…

 

 

386 名無しのハンター

 

 

 そうだないろいろkwskしたいけど

 

 とりあえず寝ろ

 

 

387 名無しのハンター

 

 

 普段は厳しいスレ民がwwwwwwwwwwwwww

 

 

 

 

 寝ろ、そんでわすれちゃいなYO!(`・ω・´)

 

 

388 鉄腕アルバイター

 

 

 (´・ω・`)

 

 

 もれ、知り合いのプロハンに頼んで情報シャットダウンしてきてもらうお…それから寝るお…

 

 

389 名無しのハンター

 

 

 >388

 自分の持てる伝手を最大限に使うwwwww

 

 いいと思う

 

 

390 名無しのハンター

 

 

 おやすみアルバイターいい夢みろよ

 

 

391 名無しのハンター

 

 

 大丈夫!D様ついてっから!!

 

 

392 名無しのハンター

 

 

 さて!アルバイターの脂肪フラグをへし折るためにカチコミにいってくるぜ!(`・ω・´)

 

 

393 名無しのハンター

 

 

 俺もいくぜぇぇぇ!!!

 

 

394 名無しのハンター

 

 

 保守はまかせろー!(バリバリ

 

 

395 名無しのハンター

 

 

 >394

 やめてwwwwwwwwwwww

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。ムーディの心を反映することもなく、透き通るほどの青空が視界いっぱいに広がっていた。高級ホテルのスイートは空に近い分嫌味なほどにその現実を突きつけてくる。本来なら堪能するべきふかふかのベッドも、一般家庭に出回ることもないような高級アメニティも楽しむ気にはならず、断続的な疼痛がムーディを苛む。

 ベッドルームの扉を開けると、陽光を背にした目の覚めるような美丈夫がいた。

 疼痛の原因でもある槍騎士、ディルムッドだ。

 

「起きたか」

「おはようございます…ディルムッドさん…」

「朝食を運ばせる手はずになっている。一応念のためお前が受け取りに出てもらえるか」

「よろこんでぇ!」

 

 本来ならば、受け取るのはいつでも襲撃に対応できるようにディルムッドの役目だ。しかし、今の彼はできるだけ姿を隠したい。ルームサービスを持ってくるのが男性スタッフならまだしも、女性スタッフであったらことだ。一流ホテルの従業員の矜持を、魔貌で狂わせるのは忍びないものがある。もっと切実な現実をつきつけるならば、それが原因で情報漏洩して、セキュリティのしっかりした寝床を追われるのは勘弁してほしいのだ。せめて闘技場を去るまでは、できるだけ。

 それはムーディとて了解している。というか、この騒動の原因は自分の自業自得だ。よりにもよって店長とその護衛に一番嫌な形でそれぞれが迷惑をかけている。自分の頭が残念なのは認めるが、だとしてもあんまりだと、彼は心中嘆きを叫んだ。

 ディルムッドはスイートに併設された庭園に出ると、愛槍を振りかぶった。彼はできれば、今日中に200階に上る気でいるのだ。

 

 

 

 

 B闘技場の観覧席は満員だ。立ち見の客も含めると、超過すぎるほどに。

 ムーディは念のためにと売店で買ったキャップを深くかぶりおっかなびっくり席で縮こまっている。

 まあ、今からある戦闘にみなが気を配っているので、彼を気にする人間はいないのだが、すこしばかり臆病なくらいが今の彼には丁度いいだろう。

 闘技場全体を振るわせるほどの大声量が響く。

 双方の登場ゲートに無手の男が現れた。

 劈くような、悲鳴のような、怒号のような、歓声のような、なんともつかない人間の出せる限りの声音があたりを包む。ムーディは思わず耳を塞いだ。観客たちはみな興奮状態なので気に留めていないようだが、臆病に席に体を埋めたムーディは見慣れた同居人の姿に興奮する趣味はないので、周りの感情についていけず、ひとり周囲の熱気に圧迫されているのだった。

 

「ううっ、ディルムッドさんがんばれ…」

 

 ムーディの応援など周りの歓声にかき消されてしまう。なにより、そんな応援なぞなくても、彼は主の元に帰るために負けるつもりなどないのだけれど。

 審判の号令とともに、双方走り出す。

 

 サーヴァント中最速を誇るランサーのスピードに、相手選手含め、追いつけるものなどいないのであるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひょいと軽い動作で読書中の書籍を取り上げられると、シェスカは思わずすべての動作を停止させた。はっとして視線で書籍を追うと、金髪の男が胡散臭さと爽やかさが絶妙なバランスで混ざった―――でもやっぱり胡散臭い笑顔でそれを掴みあげていた。

 

「本屋さん、繋がったよ」

 

 パソコンを起動させて動画サイトに繋げたまではできたものの、大混線の回線に古いパソコンはフリーズを起こし、そんなパソコンの前でお手上げ状態。無言で読書に逃げていた彼女は「ああ…」と思い出したように呟いて、礼をいいつついそいそと彼の持参したパソコンの前に移動する。声をかけてもらわなければ、すっかり見過ごすところだった。

 

 もしここに、働き者のアルバイトがいたら一言「それだけが、今のあの人のやる気の源なんでっ!ちゃんと見たげてよぉ!」とあまりの不憫さに嘆いてくれたかもしれない。お前が言うな。

 

 それを見越して金髪の男―――スレッド内で「知り合いのプロハン」と呼ばれているシャルナークを派遣したムーディは、実は先見の明を持っているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

『天空闘技場を愛する観客席の皆様こんにちは!残念ながら闘技場に足を運べなかった画面の向こう側の皆様方もお待たせいたしました!待ちに待ったこの記念すべき日がやって参りましたぁぁ!』

 

 ワアアアアアアアアアアアア

 

 天空闘技場200階は異様な熱気に包まれている。

 最初から最後まで、ディルムッドに付き合ってすべての試合を観戦しているムーディからしてもその様は異様に思えた。

 それもそのはず。ムーディも散々にスレッド内でレスをつけられていたが、彼は基本的にディルムッドを【同居人】としか認識していないからだ。それは、場所が貸し本屋からこの天空闘技場に変わってもかわらない。このあたりの認識力というのは、実は店主とよく似ているという蛇足。 

 

 かつて、天空闘技場190階まで上り詰めた美貌の騎士。

 その一言で済ませられてしまうが、当時はもっと派手派でしい美辞麗句がついてまわっていた魔貌の戦士。その彼が、いままで誰も見たことのなかった獲物を手に戻ってきたのだ。かつてのファンも、今まさに虜になったファンも、本領を発揮するであろう200階の試合を今か今かと待ち望んでいた。

 闘技場全体に響く実況アナウンスの鼻息も荒くなるというもの。

 

「大丈夫かなぁ、店長…。一応シャルナークさんにお願いしてきたけど」

 

 湧き上がる闘技場内で、ムーディは相変わらず一人ぽつねんと、びくびく怯えつつ寂しく席に腰掛けている。

 彼は、二日目にして「辛抱溜まらん!」と爆発したディルムッドに付き合って携帯ショップで携帯電話を買い与えられていた。ショップでは、周囲から隔離されたVIPルームで女性の襲撃を受けずに無事携帯契約を済ませた。流石ライセンス先輩!ディフェンス力に定評があります!

その携帯がチカチカと煌いてメールの受信を告げる。ちなみに、シェスカにも送られているが、初期状態で放置され、ただのイルミネーションが光るだけの箱と化している。

 メールフォルダを開くと、差出人はシャルナークで、メール本文はなく、パソコン前に体育座りで待機する女性の後姿と、画面に入り込むピースサインを出す手だけが写った画像が添付されていた。

 それをみて、ほっこりと微笑むムーディ。

 ピースサインは一見すると元凶の副会長に見えなくもないが、とりあえずクロロとばれなければなんとかなるだろうと、控え室にいるディルムッドにさくっと転送。ちなみに、超多忙を極める副会長が、自分の代理として貸し本屋に送り出した護衛のハンターたちは、黒衣の盗賊、ロリロリツインテール、爽やか胡散臭い守銭奴に追い払われ、帰るわけにも行かず泣く泣く店舗周囲に広がる空き地に停めた車中で待機しており、店にいなかったりする。

 

 店長がきちんとパソコン前で待機していることが確認できたムーディは、満足げに息を吐く。その吐息が、熱を孕む。

 

「暑いってか…熱い」

 

 熱気は満員率超過の観客のせいだ。この観客全員がディルムッドのファンだとは思っていないが、それでも彼が人気者なのはここ数日間で大体把握している。

 

「……一回戦って帰るってわかったら、落胆するんかなぁ」

 

 

 

 

819 鉄腕アルバイター

 

 

 って思ったんだけど

 

 

820 名無しのハンター

 

 

 ≫819

 当たり前だっての

 

 

821 名無しのハンター

 

 

 ≫819

 わかっていても、悲しいの

 

 

822 名無しのハンター

 

 

 D様の勇姿が一度だけなんて…(´;ω;`)

 

 

823 名無しのハンター

 

 

 ≫822

 悲しいけど、これ現実なのよね

 

 

824 名無しのハンター

 

 

 D様はおっぱい店長大事すぎてね

 

 

825 名無しのハンター

 

 

 おっぱい店長≫≫≫≫≫多分アルバイター≫≫超えられない壁≫≫≫≫≫≫≫≫バトルオリンピア

 

 

826 名無しのハンター

 

 

 ≫825

 これは酷い

 

 

827 名無しのハンター

 

 

 ≫825

 アルバイター裏山ぁ…

 

 

828 名無しのハンター

 

 

 ≫827

 ただしstkとマジキティに耐えられる強心臓に限る

 

 

829 名無しのハンター

 

 

 いい加減にしろよ!前スレでアルバイターの位置は裏山だけど一般人には無理だって結論でただろぉ!(´;ω;`)

 

 

830 名無しのハンター

 

 

 ≫829

 泣くなよ(´;ω;`)

 

 

831 名無しのハンター

 

 

 ≫829

 店長におっ勃てずにアルバイター並みに仕事家事こなして

 本職より怖い人たちが来ても動揺せず

 D様に睨まれても失禁しなくなってからもう一回がんばろ?

 

 

832 名無しのハンター

 

 

 ≫831

 それなんてドM

 

 

833 名無しのハンター

 

 

 ≫819

 tk店長ちゃんと動画つなげた?

 かなーり混線してるっぽいけど

 

 

834 名無しのハンター

 

 

 ≫819

 マジそれ

 俺の廃スペも一瞬止まった

 

 

835 鉄腕アルバイター

 

 

 ≫833-834

 大丈夫ありがとう

 ちゃんとパソ強いプロハンにお願いした

 さっき画像来たけどちゃんと体育座りでパソ前で待機してるみたい

 

 画像はイケメンに送っといた

 

 メールに不慣れなイケメンがたどたどしい短文で返してきたけど、やる気ゲージたまったっぽい

 

 

836 名無しのハンター

 

 

 ≫835

 短文メールうp

 

 

837 名無しのハンター

 

 

 ≫835

 よく訓練された貴様なら何をすべきかわかっているはず

 

 

838 名無しのハンター

 

 

 ≫835

 バンバンバンバンバンバンバン

バン     バンバンバン

バン (∩`・ω・) バンバン

 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/

   \/___/ ̄ ̄

 

 

 

  バン   はよ

バン (∩`・ω・) バン はよ

  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/

  ̄ ̄\/___/

 

 

839 名無しのハンター

 

 

 ≫835

      ; '     ;

       \,,(' ⌒`;;)

       (;; (´・:;⌒)/

     (;. (´⌒` ,;) ) ’

(  ´・ω((´:,(’ ,; ;'),`

( ⊃ ⊃ / ̄ ̄ ̄/__

    \/___/

 

 

840 名無しのハンター

 

 

 ≫839

 壊すなよwww

 

 

841 鉄腕アルバイター

 

 

 えーメール晒すの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回だけね

 

 

842 名無しのハンター

 

 

 流石アルバイターわかってるううううう

 

 

843 名無しのハンター

 

 

 一回しか戦わないんだから(´;ω;`)そんくらい!たどたどしいD様!

 

 

844 鉄腕アルバイター

 

 

 『画像 見たぞ ちやんと見てくださつているのだな 相手はあいつだが 俺も期待にこたえよう』

 

 

 ちなみに、句読点とちっちゃい「っ」とかがまだ巧く変換できないようだ

 何時代の人なのかと

 あ、店長もか……('A`)

 

 

845 名無しのハンター

 

 

 ≫844

 ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

 

846 名無しのハンター

 

 

 ≫844

 D様あざといさすがあざといD様あああああああああ

 

 

847 名無しのハンター

 

 

 ≫844

 ちょ、あ

 

 

848 名無しのハンター

 

 

 くぁwせdrftgyふじこlp

 

 

 

 

 

 

 

 

 以下悲鳴

 

 

 ・・・

 ・・

 ・

 

 

 

869 名無しのハンター

 

 

 おまいらもちつけ

 スレ消費しすぎw

 

 

870 名無しのハンター

 

 

 だって途中で忠犬D様とか誰かいうから

 

 

871 名無しのハンター

 

 

 くそー

 携帯片手に犬耳D様とか幻視したじゃねーか

 変な扉開けたらどうしてくれるんだ!

 

 

872 名無しのハンター

 

 

 ≫871

 それ片足はいってる

 

 

873 名無しのハンター

 

 

 ≫871

 残念手遅れ

 

 

874 名無しのハンター

 

 

 ≫869

 同意

 

 このままだと次スレ行くな

 970スレたて頼んだー

 

 

875 名無しのハンター

 

 

 あー萌えた萌えた

 

 おにゃのこでもないのに不覚

 

 

876 名無しのハンター

 

 

 くやしいのうくやしいのうw

 

 

877 名無しのハンター

 

 

 でもなんか文面からすると相手が苦手っぽい感じ?

 

 

878 鉄腕アルバイター

 

 

 ≫877

 

 嫌いだってはっきりいってた

 

 

879 名無しのハンター

 

 

 ≫878

 おうふ

 

 誰だっけ相手

 

 

880 名無しのハンター

 

 

 ≫879

 そんくらいggれカス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピエロだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)は人目に触れさせるには過ぎた宝具(ノウブル・ファンタズム)である。ゆえに、今回ディルムッドは知己であるビスケット・クルーガーに頼んで神字の織り込まれた布を用意してもらい、それで彼の愛槍をいっそ窮屈なほどにつつんで参戦した。

 

「おや◆今日はその綺麗な槍、見せてくれないのかい?」

「開帳するつもりはない」

「残念★」

 

 にたりと口角を弓なりに曲げて喜悦に顔を歪める対戦相手―――――奇術師ヒソカ。ハンター試験の際に、彼には破魔の紅薔薇の全貌を見られている。当時はそれ以上の追及はなかったが、やはり異常なほどの戦闘狂とはいえ耐性のない人間。宝具の持つそ魔力に魅入られている節が見られる。

 ディルムッドは、こういうのを後悔後先に立たずというのだな、と秀麗な顔を顰めた。

 とりあえず200階にいって、さくさくと試合を終わらせて帰るのだと、そればかりが先行していた彼は、試合相手の選択を誤った。

 誰でもいいからいつでもいいからできるだけ早く。

 

 それに、待ってましたといわんばかりに飛びついたピエロ。

 

「じゃあ、試合中に剥いじゃおうね★」

 

 赤く濡れた舌で、唇をぬるりと舐める。

 

 鳥肌が立ったのは、言うまでもない。

 

 ぐっと愛槍を持つ手に力をこめる。

 

「主っ!この試合、貴女に捧げます!」

 

 審判の号令と同時に、二人は闘技場の床を蹴った。

 

 人体を易々と切り刻む死のトランプと、物質化した奇跡たる槍が衝突する――――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日の動画は、見える人間にしか見えない現象があるにも関わらず、一日で30万再生を突破した。

 

 

 

「捧げられてもなぁ…」

 

 どっかの店主がぽつんと呟いた、かも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




未完!!!!!!!


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IFその2~店長、奇跡の外出するってよ~

というわけで、前話がIFならそのさらにIFIF(IFのゲシュタルト崩壊)が今回の話です。タイトル通り、彼女が外出します。当時の文章そのまま転載しているので、ぶっちゃけ誤字とか文章やべぇとか思いますがぶっちゃけそれやってる暇がなくて……あーん、ぶっちゃけるとですね。わたくし、住居が熊本でして。ええ、被災しましてね。あんまりいろいろできない環境なんです。はい。なんで返信とか、続きとか、富樫先生も仕事し始めたんでしたいんですけど、まだ気長に待ってくださるとうれしいですはい。引っ越しするかもだし。本人は元気なんで、本当に待ってくださってる人(いる?)には申し訳ないです。

では、IFどぞー


 

 

 

 

 

 

 

「本屋さんさあ、このパソコンで繋げるのは無理があるよ」

「そういわれてもな」

「飛行艇なら急げば間に合うし、いっそ会場にいくってのはどう?」

「はぁ?」

「そんな嫌そうな顔しないの。外で寂しくこっちを眺めてる彼らじゃどうせ俺には勝てないし、護衛にもならないんだし。俺、近くで見たいし」

 

 貸本屋の旧式のパソコンを指先で突くと、シャルナークはお手上げと両肩をすくめた。闘技場HPは、いつになく混線しており、たとえ最新版のパソコンでもその重さに辟易したことだろう。シャルナークが自身のライセンスを使えば問題なくアクセスできるだろうが、本体の惰弱さはどうしようもない。

 なにより、シャルナークは今回の対戦を、できるならば間近で観戦したいと思っていた。なんというドリームマッチ。いけ好かないあの変態が辛酸を舐める姿を安全な場所で見下ろすことができるのだ、これを見逃す手はないだろう。自分のライセンスと現地にいるアルバイトを使いっパシリにすれば、今ならばいい観覧席が手に入るはずだ。

 それに、あの槍騎士とて、できるならば自分の主は自分の視界に入る場所にいて欲しいと願っているはずだ。彼の大事なご主人様は、戦闘能力皆無なうえ危機管理能力が欠落している。しかも、今回護衛を約束した男が送ってきたSPのなんと脆弱なことか。団員レベルほどとは行かずとも、伝手を生かせば十分に満足のいくレベルを送り込むことも可能なはずだ。それを怠っている彼は、あの槍騎士を怒らせたいのだろうかと勘繰ってしまう。本当に危険に陥ったときには自分に有利に働くようなタイミングで介入してくるつもりなのかもしれない。面白くない、と思うのは、シャルナークもまた、どちらかといえば策を弄する側だからだろうか。だからこそ、恐らく一番可能性の低いと踏んでいたはずの選択肢である「外出」を選ぶわけだが。

 

「本屋さんもさ、あの胡散臭い男の思うままに動くのは、業腹じゃない?」

「……まあ…」

「彼も、本屋さんが近くにいたほうがやる気もでるし?護衛なら俺がしてあげる。格安で」

「金はとるんだ」

「当たり前!俺はただ働き大っっっ嫌いだから」

 

 貸本屋店主シェスカは本から顔をあげて常連客の仲間である、金髪の青年シャルナークを呆れたような目で見た。自分の命令で遠征してくれている従者の試合を「見れないならしかたない」で見ないような薄情者にそんな目で見られるのは彼とて心外だ。

 

「だって彼、本屋さんの無理なお願いを聞いていきたくも無い天空闘技場まで行ってるわけでしょう?労わってあげなきゃ悪いんじゃない?本当なら近くにいて欲しいのに『無理ならWeb観戦だけでも』っていうささやかな願いも反故にしちゃうわけ?」

「…む」

「新しいパソコン買うより見に行ったほうが安上がりだし確実だし時間の無駄じゃないよ。帰りに美味しいご飯でも食べていけばいいじゃん」

「…まあ、そうね」

「でしょう?それにどんなやり取りをあの男としたか知らないけど、俺的にはムーディと別れているってのも気になるわけ」

 

 あの胡散臭さを凝縮してコンクリートで固めたような副会長が、貸本屋の住人がばらけているこの状況をただ面白おかしく観察しているだけで終わるだろうか。むしろ面白おかしくかき回すほうが性に合ってそうな雰囲気を醸し出している。守るにしても、固まってもらっていたほうが気がらくだ。それは、今は違う場所で槍を振るうことになった彼も同じ気持ちだろう。

 別段命令があったわけではないが、暇な休みを有意義にするにはそれなりのイベントだ。ここはとことん楽しむのが正しい過ごし方なのではないか?

 

「さっ!準備して本屋さん」

 

 

 

 

 

 

 

550 鉄腕アルバイター

 

ということでなぜか店長がくることになった(´・ω・`)

 

551 名無しのハンター

 

どういうことなの…

 

552 名無しのハンター

 

つまり撹乱部隊プロハンが店長を闘技場まで連れてくるってこと!?

 

553 名無しのハンター

 

大変だ

チケット買わなきゃ(錯乱)

 

554 名無しのハンター

 

つまりおっぱい店長を 生 で 見 れ る と?

 

555 名無しのハンター

 

》554

 

556 名無しのハンター

 

》554

mjd!?

 

557 名無しのハンター

 

うひょおおおおプロハンありがとうううううううう

 

558 名無しのハンター

 

うわあああああいきてぇえええええ

 

559 名無しのハンター

 

 アルバイター情報でチケット買ってた俺に隙はなかった

 

560 名無しのハンター

 

 誰かスネークしろよ!

 

561 名無しのハンター

 

そうだ

D様に一身に忠誠を誓われる店長を見てみたい!

 

562 名無しのハンター

 

任せろ!

 

563 鉄腕アルバイター

 

ほ、ほどほどにしてよね!画像とかも駄目だからな!

 

 

 

下手するとプロハンとイケメンに…

 

 

564 名無しのハンター

 

 》563

イエス…

まだ死にたくないんで…

 

565 名無しのハンター

 

》563

あ、はい

節度を守って

 

566 名無しのハンター

 

犯罪駄目絶対

 

 

 

 

 

 

 闘技場は圧倒的な熱気に包まれていた。そこかしこから上がる歓声や黄色い悲鳴にシャルナークはおかしそうに笑い、隣を歩くシェスカは鬱陶しそうにしながら帽子を深く被りなおした。

 

「本屋さんって、闘技場にあんまりいなかったんだっけ」

「ええ、ミルフィーユなみに重なった面倒事が、容易に想像できるでしょ?」

「ははっ!確かにね」

 

 立ち見も含めてかなりの観客が詰め寄っている会場は、移動するにも肉壁の間を縫っていかなければならず、シャルナークは槍騎士がいないことをいいことに、シェスカの肩を引き寄せるとムーディの元へ向かった。階段を降りて、席を探す。

 

「あ、店長!」

「いたいた」

 

 店主同様に帽子を目深に被ったムーディが、こちらに気付くと大きく手を振って答える。その顔には安堵の色が色濃く反映している。

 席に着くと、シェスカは深い溜息をついた。引き篭もりにこの人波はそうとうに堪えたらしい。

 

「シャルナークさん、いろいろすみません」

「うん、面倒だった。でも金もらったしいいよ」

 

 遠慮のないシャルナークの答えに、ムーディは困ったように頭を掻いた。元はといえば自分の不注意のせいである。誰に何を言われても、彼には反論する権利がまったくない。

 

「さーて、そろそろかな?」

「ですね。あっ、店長水飲みます?まだ口つけてませんよ」

「頂戴」

 

 彼らが一息ついたところで、闘技場内にアナウンスが流れる。それにあわせて、会場内が爆発したかのような歓声があがった。シェスカは思わず眉間に皺を寄せ顔を顰める。

 中央のリングに、2人の選手が登場する。

 シェスカの護衛騎士である、ディルムッド・オディナ。

 そして、対戦相手で因縁のある相手である奇術士ヒソカ。

 ともに多くのファンを獲得する闘技場の有名選手である。このドリームマッチに、周りの観客たちの興奮は最高潮に達している。

 ディルムッドは、200Fに上がり己の獲物である二振りの槍をもって中央に踊りでた。ヒソカもまた、心底楽しそうに手の中でトランプを弄っている。

 

「彼には、本屋さんのこといったの?」

「え、いや言ってないです。心配するかなって」

「いや、逆に喜ぶでしょ?試験とは状況が違いすぎるからね」

「そうですか…いったほうがよかったかな」

 

 ムーディが困ったようにシャルナークへ向けていた視線をリングに戻す。流石に携帯電話は控え室だろうから、今の彼に主人が闘技場にいることを伝えることはできない。

 

「大丈夫、気付いたわ」

「え、本当ですか!?」

 

 思わず2人はシェスカを見、それからすぐにリングに視線を向けた。そこには、こちらを凝視する槍騎士の姿。間違いなく気付いている。美しい琥珀の双眸は、視線を浮気させること無くじっと3人、正確にはシェスカを射抜いていた。

 シェスカは溜息をつきつつ、軽く手を振って答えた。常に無いディルムッドの行動に騒ぐ観客に嫌気がさしたのだろう。

 それなりの距離があるはずであるのに、主の存在を認めたディルムッドは、その輝ける美貌に隠しもしない喜色を含ませて、陶然と微笑んだ。

 

 悲鳴も上がらず、そこかしこで倒れる音が相次ぐ。 

 

「呪いだわぁ…」

「店長酷い」

「いや、わりとマジで」

 

 誇張無く彼の黒子にはそういった加護(呪い)が備わっていて、かつては彼女の母さえ誑かしたわけだが、ムーディは勿論そんなこと知る由もなかった。

 

「わぁ、なんか遠目でもわかる。やる気に満ち溢れたね、あれ。ヒソカ後愁傷さま」

「応援しなくていいの?仲間でしょ?」

「あれと仲良しで、仲間だと思われたくないわーないわー」

 

 リングの上では、モチベーションが最高潮に達したディルムッドが、布に包まれた槍を器用に回してその感触を確かめていた。覇気溢れるその姿に「アレには勝てないわ無理だわー」とシャルナークが素直に感想を述べる。

 

「だいたい、二槍使いって…かなり変則的だよね。戦い方も変則だし、素早いし」

「私には戦いというのがよくわからないわ、ずぶの素人だから。ただ、ディルムッドって実は槍より剣のほうが強力なのよね」

「…………………………はっ?」

「ん?」

「え――――――――マジ?」

「ええ、本当に」

 

 長さの違う二槍を巧みに操り、ヒソカに肉薄するディルムッド。その槍捌きは、歴戦の猛者、達人、超越者と様々な言葉で言い表すことができるだろう。それほどに見事な身のこなしだった。

 それが、実は本気装備ではない、とは。

 シャルナークは言葉を失った。

 隣では、ムーディも口をぽかんと開け、呆気に取られている。

 実は彼らの後ろの席を取ることに成功し、聞き耳を立てていたスネークもいたりするのだが、その彼も実況中の携帯を取り落とした。

 

実家()においてきてしまったのよね。双剣使いだと聞いているわ。どっちも得意だけれど、故郷では剣を使った武勇のほうが有名だったらしいわよ?奥さんのオススメは、長い方の槍と剣の装備で…」

「はぁ!?彼、既婚者なの!?」

「ええっ!妻帯者なんですか!?」

「ん?ええ、ちなみに4人の子持ちよ?」

「まさかの妻子持ち!?」

 

 試合は最高潮で、他の観客たちはリングに釘付けになっているというのに、貸本屋一行のいる空間だけ、明らかに空気がおかしかった。

 ムーディは焦ったように両手を振り、何か言いたそうに口を何度も開閉させるが、結局なんといっていいかわからず口を閉ざした。

 そんなムーディを尻目に、遠慮の無いシャルナークはシェスカにぐいっと顔を寄せる。「近い」と文句を言われたが、黙殺された。

 

「え、何それ…奥さんいるのに本屋さんと一つ屋根の下?」

「私と彼との間に恋愛感情なんてないわよ?」

「いやいや、それどうなの。奥さんそんなの信じるの?あんなイケメンだよ?どう考えても普通勘繰るでしょうそうでしょう」

「ないわ。有り得ないもの。奥方もそう。ちゃんとわかっているわ、お互いに…ね」

 

 あまりにも自信に満ちたシェスカの言葉に、シャルナークは口を閉じた。確かに彼らは観察眼に長けた自分や団長のクロロから見ても、男女の関係になっている節はまったく見当たらない。それは認める。しかし、まさか妻子持ちとは普通考えないだろう。「俺は普通の考えのはずだ…」シャルナークはあんまりにも自信満々に返されて思わず胸中呟いた。

 英霊の座という概念のない彼らには、無理からぬことだった。

 

 

 

 

608 スネーク@おっぱい美味しいです

 

【速報】D様妻子もち

 

609 名無しのハンター

 

うえええピエロ超笑ってるんですけど!?

 

610 名無しのハンター

 

訓練されたドMはやっぱ違うな

 

611 名無しのハンター

 

》608

 

612 名無しのハンター

 

 》608

 

613 名無しのハンター

 

 》608

 

614 名無しのハンター

 

》608

はっ?

 

615 名無しのハンター

 

 え?

 

616 名無しのハンター

 

妻子持ち…?

 

617 名無しのハンター

 

 

 

 

え?

 

618 名無しのハンター

 

嘘乙

 

619 名無しのハンター

 

妻子持ちが女とひとつ屋根のしたとかねーから

 

620 名無しのハンター

 

お前D様にNTRの疑いがあると!?

 

621 名無しのハンター

 

お前おっぱい店長にそんなこと…

殺されるぞ?

 

622 スネーク@おっぱいの後ろ

 

その店長情報なんですがそれは…

 

俺にも意味わからん

 

ただ店長にNTRの疑いはない

とんでもない意味不明な懐の深さということはわかった

 

623 名無しのハンター

 

どういうことなの…?

 

 

 

 

 

 




ごめんね友人H、ありました!


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9月1日

 

 

 

 

 

 鮮血が舞う。

 言葉にしてみれば、ただそれだけの事だ。

 けれど、その言葉以上に目の前の光景はただただ恐ろしかった。

 

 広い室内を砲弾が飛び交う(・・・・・・・)ように見えた(・・・・・・)

 実際に、()にはそれは見えていない。

 なぜなら、彼にはそれを見通す力がないからだ。あるいは、彼の上司や同僚がいれば、それを見て、そして防いだことだろう。

 しかし、彼にはその術がない。

 彼は、この空間において圧倒的弱者であったのだ。

 何が起こったのか理解できない。けれど、砲弾に撃たれたように、隣人の頭が吹き飛んだ。

 頭部を失い体を支えられなくなった誰か(・・)の体が崩れ落ちる。その上に、さらにまた別の誰か(・・)の体が重なり。さらにさらにさらにさらに。

 今、自分が生きているのは偶然なのだろうか。そう思えるほどに周囲におびただしい量の血と臓物が飛び散っている。原型を残さず肉塊になった誰か(・・)は、次の瞬間自分の未来だと示唆しているようですらあった。

 

 

突如、両脇から腕が二本生えた。それは有無を言わさぬ力強さで彼を絡めとる。

 脚部に灼熱が走る。

 錆びついたように鈍った思考が一瞬覚めて、恐る恐る熱源に視線を寄越すと、右脚の腿に、肉がなかった(・・・・・・)。弾け飛んだように歪な形に抉られたそれを認識すると、突如痛みが襲ってきた。立って居られなくなって思わず腰から崩れそうになる。

 本来ならその場で無様に床に転がるはずであったのに、両脇を固める誰か(・・・・・・・・)に掬い上げられて、無理矢理に立たされる。思い出したかのように傷口から血が迸るが、両腕を固められて止血することも、傷口を気遣うこともできない。

 

「…ッはっ!」

 

 知らず知らずのうちに呼吸を止めていたらしく、血液が循環すると同時に気管に酸素が送られる。血は呼吸とともに溢れ、右脚は見る見るうちにどす黒く変色していった。

 

「ぐっあああっ!」

 

 悲鳴を上げられるということは、生きているということ。

 物言わぬ躯が毎秒事に量産されるこの空間で、彼は自分の幸運を知る。

 しかし、それがいったい何の慰めになるというのか。

 また、目の前で人が紙屑のように吹き飛んだ。四散した頭部から噴き出した血潮が視界を覆い尽くす。

 生ぬるいそれが、額から顎下までをしとどに濡らした。

 死だ。

 死が充満している。

 強者による圧倒的な死で満たされた空間で、弱者に慈悲などない。

 

 ないはずだった。

 

「まったくまったく、君がいなければどうなっていたことやら…」

 

 耳元で、場にそぐわない囁きが聞こえる。

 多分に焦りを含んだその声音には、聞き覚えがあった。

 けれど、どうして今それを言う(・・・・・・)必要があるのか(・・・・・・)

 

 キャパシティを超えた空間にあって、混乱し、正常な判断を失った思考は行き止まりに突き当たった。みっともなく泣き叫んで殴打しても、蹴り飛ばしても、壁は一向に崩壊しない。行き止まりでぐるぐると。壊れたレコードのように同じ言葉を繰り返す。それだけが、かつて彼を彼として認めてくれたものだったから。

 

「…ぅ、ううう。てん…、てん。てんちょ…店長」

 

 店長。

 

 

 

 薄れていく意識のなかで、誰かの掌が向けられ―――――――。 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 経年劣化によってぼろぼろになった、かつて赤かったであろう背表紙から、変色した破片が零れ落ちる。変色し、カビに侵されたそれは、現代の製造方法とは大きく異なる製本技術によって作られたことが一目でわかるほどに古い。

 重いものなどもったこともないだろう繊手の指先が、慎重に、しかし大胆に古ぼけた頁を捲る。古い書物特有の匂い。それを鼻腔いっぱいに吸い込み、凪いだ碧眼が活字の海に沈んでいく。

 窓の外が深い闇に覆われる夜の21時。

 常にビブリオマニアたちによって賑わう貸本屋「百万図書」は、本日の営業を終え、ゆったりとしたプライベートな雰囲気が漂っていた。

 ただひとつ違うことは、いつもならば職場に台所にと大忙しのアルバイトが一人、長期休暇に入っているということくらいだろうか。

 おかげで店の機能はがた落ちしたが、多少通常業務が怠っているくらいでは、熱い欲望を滾らせる来店者(探求者)たちを妨害することなどできはしなかった。

 実は、いつもの倍以上の動きで通常業務を終わらせたアルバイトが「船で寝れますから!」と目の下に盛大に隈を作って働いたおかげである。あまりの哀れさに常連たちが次の日に栄養ドリンクを持参してきたあたり、彼はある意味店長以上に必要とされているといってよかった。

 

 アルバイトの代わりに家事を代行した美貌の槍騎士は、洗い終わった食器を棚に片づけながら壁に掛けられたカレンダーに目を向けた。

 件のアルバイトは、昨夜タクシーに乗って元気にヨークシンシティへ向かった。本人が宣言した通り船で寝るために最終便に乗船して。

 ヨークシンはきなくさい(・・・・・)都市だ。槍騎士は、できることなら近づきたくないし、近づいてほしくもなかったが、彼の土地は観光地としても実に魅力にあふれた都市でもあった。前回の旅行の時にも付き添ってくれた、現地をよく知る知人もすでに現地入りしているという。忠告もしたし、いざとなれば「身内にプロハンターがいる」と言えと言い含めてある。事実、業腹であるが、アルバイトに何かあれば槍騎士だけでなく彼の協会の副会長もこれさいわいと口をだすだろう。彼の女主人にとっては関わりを絶ちたいところであるが、人命には代えられない。

 

「そういえば」

 

 ぽつりとつぶやいた囁きは、頁を捲る音以外しない静謐な空間に思いのほか響いた。見ると、碧眼が活字の海から浮上し「どうしたのか?」と無言で問う。それに小さく謝罪を返す。彼は、邪魔する気はさらさらなかった。ただ、槍騎士の言葉は無視していいもののカテゴリには入っていなかったため、その囁きを彼女は拾い上げた。

 

「いえ、ドリームオークションが、開催されたな。と」

「ああ、そっか、今日なんだ」

 

 彼女は、イベントの名前に、端正な眉を顰めた。

 いい思い出のない場所の、いい思い出のないイベントだ。

 話題を失敗したなと、生真面目な騎士は内心慌てたが、ここで変に言葉をきると、いらぬ気遣いをさせてしまうため、申し訳なく思いながらも続きを口にした。

 

「はい。周囲が活気づくと、トラブルも増えますから…大事ないといいのですが」

「まあ、ね。ただのいざこざ程度なら、ここで鍛えられてるからあしらえると思うけど…。問題は、その間よそからろくでもないやつらが集合することなのよね」

「はい。まあ、やつらなりに遠慮して、観光客が訪れるような場所に出てくることはないでしょうし、ムーディでは逆立ちしても格式高いオークションに参加することはできませんから」

「まあ、念のために携帯のマナーモードは解除しておいてね」

「ええ、心得ております」

 

 

 その夜、無機質な携帯電話はついぞ鳴ることはなかった。

 

 

 

 

 **

 

 

 

 その日、ヨークシンシティは早朝から人で賑わっていた。観光地なのだから、人が多いのはいつものことだ。

 しかし、その日は特に活気が違った。

 ヨークシンシティで年に一度開催される世界最大の大競り市、10日間開催される公式の競りだけでも数十兆の金が動くといわれるドリームオークションの初日だからだ。

 モノが集まり、金の動く、必然そこには人も集まる。

 三つの要素が集まったヨークシンは、欲望の坩堝と化している。

 といっても、その渦中に飛び込めるのは一部の富裕層や特殊な職業の人間だけだ。町全体はお祭り騒ぎで、住人や観光客の表情はみな明るい。

 

「ふあぁ、前来た時よりも人間に溢れてるな」

「当然だろ。なんたってドリームオークションだぜ?どんだけ金が動くと思ってるんだよ」

「前にも言ってたな、それ。見物できるの?」

「お前なーんも知らねーな。できるわけないだろ!入場券を兼ねてるカタログだけでも1200万もするんだぜ!俺ら底辺には関係ないの」

 

 そのあまりの高額さに「1200万っ!?」と思わず声をあげ、衆目を集めてしまい、同行者に頭を叩かれた。

 

「ばかやろう、ムーディ。でかい声出すな。お上りは狙われるぞ」

「ええ、何に?」

「スリとか、いろいろ。この街、実際そんなにオキレイナとこじゃないんだぜ」

 

 前回の旅行でも案内役を買って出てくれた知人が、肩を寄せて耳元で囁く。ムーディとて、今の職場に就職する前はまともではなかった類の人間だ。知人の言わんとしていることが容易に理解でき、小さく謝罪する。

 いくぞ、と声を掛けられて、ちいさく頷いて人ごみに紛れる。

 今の発言で注目を集めた今、勘違いした輩に目をつけられても困るのだ。

 本来なら冷やかして回りたかった露店もスルーして、知人の後を追う。彼は一般的なこげ茶色の髪をしているので、見失うとすぐに見つける自信がなかった。

 周囲の人々に、あれだけ注意するように言い含められていたというのに、浮かれすぎているなと気を引き締める。

 人波が切れ、知人の横に並ぶと「こっちだ」と大通りから外れた路地裏に案内される。

 

「どこいくんだ?」

社長(・・)のとこだよ。待ち合わせ場所はこっち」

「随分なとこに居を構えていらっしゃる」

「嫌味か馬鹿野郎。ショートカットもしらんのか」

「あいすまぬ」

 

 けらけらと笑いながら、朝日の差し込みにくい路地を行く。お互いにもともとが決して人に自慢できる身分になかったためか、路地裏に入ること自体は特別恐れることもなく、石畳を軽快に進んでいく。

 この先を抜けたビルだ、という知人の指さす先には、観光地らしからぬビル群が立ち並ぶエリア。

 先ほどまで露店が犇めいた場所が一般の観光客向けのエリアであり、ショートカットした先は、所謂ビジネス街と呼ばれる場所だった。

 舗装は情緒ある石畳から武骨なコンクリートへ変わり、背の低い煉瓦作りの建物は無機質な雑居ビルへ様変わりする。

 

「あの13階建てのビルが社長のもちもんだ」

「ふぇぇ、すげ。住む世界違いすぎるわ」

「それは俺もそう思うわ」

 

 彼の指さす先には、隣接するビルと見分けのつかない雑居ビル。

 玄関に立つ警備員に慇懃に会釈を返す知人の後ろについて、自動ドアを潜る。懐から取り出したカードキーをエレベーターの階数ボタンの下に設けられたセンサーに翳し、迷いなく最上階を目指す。

 

「なんかなぁ、楽しみにしてるといいって言ってたぜ」

「へぇ、なんだろ。金持ちの考えることって全然思いつかない」

「奇遇だな、俺もだ」

 

 ぐんっと体に重力がかかる。ゆっくりと上昇を始めた密室で、軽口をたたく。知人もムーディとたいして変わらないような人生を送っていた、脱落者(・・・)だったが、彼のいう社長に雇ってもらえて、ようやくまともな生活を送れるようになったという。どちらも境遇が似ていたためか、友人とまでは行かずとも、縁が切れずに現在に至っている。

そうこうしているとエレベーター上部のパネルが最上階を示した。一歩出ると、赤い絨毯が敷き詰められた廊下に出る。華やかなのは、最上階が社長室だからだ。

知人に連れられて、社長室へ入室する。

 

 大きな窓から差し込む光が、ムーディの目を焼いた。

 思わず何度も目を瞬かせる。

 

「やあ、よく来たね」

「おはようございます、社長」

「うんうん、ご苦労様。さて、そこにかけるといい」

「ありがとうございます、失礼します。…おい、いくぞ」

「う、ううん」

 

 知人に案内されて、一人掛けのソファに腰かける。

 対面には逆光で表情の見えない社長(・・)

 

「さて、朝早くから呼び出してすまないね」

「あ、いえとんでもないです」

「もしかしたら彼から聞いたかもしれないけれど、実は滅多に参加できないある競売に君も参加してみてはいかがかとおもってね」

 

 社長の後ろに知人が移動して、陽光が遮られた。一応ムーディは客扱いだが、彼は社員らしく立っておくようだ。

 燦燦と降り注ぐ太陽の恵みに手を焼いていたムーディは、そこでようやくほっと一息ついて改めて対面の彼に視線を向けることができるようになった。

 

「売人側で参加するんだが、3人一組じゃないと入れなくてね。今回一緒に参加するはずの仲間が急にこれなくなって、難儀していたんだ。君と、彼と、私で、どうかな?」

「ええ、いいんですか?そんな…俺はありがたいですけど」

「構わないとも、それなり(・・・・)に格式が高いけれど、注意を守ってさえくれるなら」

 

 先ほどの知人と交わした会話が脳裏に浮かぶ。

 格式高いオークションには、一般人はそうそう参加することなどでない。

 今回の長期休暇だって、本当ならばそうすぐに与えられるものではなかったはずなのに、彼の店長は(地獄を見たが)気前よく送り出してくれた。

 今度いつそんな機会が回ってくるかわからない。だったら、折角なので普段見れないと所を見てみたい。

 大丈夫、前回来た時も、二人はとてもよくしてくれた。

 

「あの…だったら。はい、よろしくお願いします、ジルブレッド(・・・・・・)さん!」

 

 ムーディの返答に、神経質そうな社長(おとこ)は口を弓なりに歪ませて微笑んだ。

 

 

 

 

 




推敲ってなーんだ。過去を振り返らないことさッ!

誤字報告ほんとありがたいですありがとうございます。絶対なおすんでちょっとまってください。

ヨークシン編はっじまるよー
(書き方忘れたわ)


※矛盾が見つかったりするとこっそり直すことがあります(多めにみてっ!)


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9月1日-2

前話、襲撃中の描写を修正。

ムーディ信用なさすぎぃ!!(突然)
久しぶりの投稿にひやひやしてましたが、みなさん暖かいお言葉をありがとうございます…!!感想を下さったしほん様、勘太郎様、猫シノン様、ぐーらz様、心戯様、白狐様、日暮様、鈴虫のラガー様、くらねす様、黒鷹商業組合様、シリアナード・レイ様、元祖「へぇ~」様、ありがとうございます!あといつも活動報告で相手してくださる方々もありがとうございます。一番いつも尻たたきしてくる友人Hもありがとね!
みなさんの感想のほとんどがムーディの安否じゃなく「こいつまたやってるよ(意訳)」みたいな感じでやっぱりこいつギャグパート担当だなと、作者はある意味安堵しております。

Vitaが明日届くから、今日早めに投稿しておきます。



 

 

 

 壇上から二人組のオークショニアが降りてくる。小柄で黒髪のオークショニアの足元で満身創痍ながら生き残っていたマフィアの幹部が断末魔をあげて射殺された。鳴き声(・・・)を上げる掃除機を抱えたラフな格好の女が肉塊になったそれを掃除する。掃除が終えたのを確認すると向きを変えた黒髪の男が、唯一の生き残りに向き直る。

 

「おい、その男(・・・)此方(こち)に寄越すね」

「お断りしよう。まだ死にたくないんでね」

 

 金髪の男を盾にした神経質そうな男は、にべもなく断る。

 瞬間、ひどくすっきりした会場に、可視化されたのかと錯覚するほどの殺気が満ちる。男の頬から冷や汗が流れる。会場の入り口からこちらに向かう数人の気配に、さらに腕の中で意識を失った男を手放すものかと力を籠める。

 

「ふぅん、ちゃちな念能力者だけど、使いどころを間違えないぐらいには頭があるのか」

「シャル、ウボォー。お疲れ」

 

 顔色ひとつ動かさなかった眼鏡の女が、入口から入ってきた男たちに片手を上げて労いの言葉を投げる。彼女は、盾にされている男も、その背後の男も襲わない仲間の行動に首を傾げる。どちらも手古摺るような実力者には見えない。しかし、この空間の指揮権は先ほど入ってきたシャルと呼んだ仲間にある。なにがしか事情があるのだろうなと、成り行きを見守ることにした。

 

「どういってくださっても結構ですよ」

「面倒くさいなぁ、お前マジで死んでよ」

「その前に、出血性ショックで彼が…ムーディ君が死にますよ。この状態(・・・・)で彼が死ぬのは、あなた方にとって一番避けたいことでは?」

 

 その言葉は的を射ていたのだろう。サングラスを苛立たし気に取ったシャルナークが男を睨み付ける。

 彼、「百万図書」従業員であるムーディが地下競売(ここ)にいることは、彼らにとって大誤算だった。

 この地下競売は、今ヨークシンシティで公に開催されている各オークションとはまったく性質の違うものだ。主催者は、裏社会の強大なマフィアン・コミュニティであり、地下競売(アンダーグラウンドオークション)に参加する客はすべてその裏社会の住人だ。貸本屋「百万図書」がいくら魔窟のような場所であるとはいえ、女主人は基本的に引きこもりのお人よしで、それに従う化け物のような槍使いも根は真面目で善人だ。従業員のムーディにしても、産まれはともかく現在は裏社会との関係は完全に切れているといっていい。多少の縁があったとしても、地下競売は面子争いの場である。自他ともに認められるうっかり(・・・・)屋であるムーディがどう転んでも参加できるような場所ではない。であるにも関わらず、彼はなぜかこの競売に現れた。入口で検問所のスタッフのふりをして紛れ込んでいたシャルナークとウボォーギンは目を剥いた。自分では逆立ちして足を踏み入れることができないだろう場所にはしゃいぐムーディ。サングラスをしているとはいえ二人に気付かない鈍感さは貸本屋の店員で間違いなかった。レンタルなのだろうドレスコードに合わせたフォーマルな服装は馬子にも衣裳だったし、緊張の面持ちで入口を潜るほかのマフィア連中とは違い阿保面を晒している様は、他人なのにこっちが「しゃんとしろよぉ!」と声を上げたくなるほど完全におのぼりさんだった。彼がいるなら女店主とその従者もいるはずだ。だとしたらこの地下競売のお宝をまるごと掻っ攫うのはかなり困難といえるだろう。まずフランクリンが実行する予定の俺の両手は機関銃(ダブルマシンガン)は100%回避され、主人(とついでに従業員)を危険に晒したことに激怒した槍騎士に本気を出されたら、お宝どころではない。基本的にあの主従に手は出さないというのが、幻影旅団のスタンスなのだ。

 ところが、おのぼり丸出しのムーディの連れは貸本屋の主従ではなかった。ジルブレッドと呼ばれた、神経質そうなちゃちい念能力者と、その連れのぱっとしない茶髪の男。

 はて?と首を傾げる。

 団長に指示を仰ぐには圧倒的に時間が足りない。それにこの競売に参加しているという事は、男は堅気ではないということになる。そうなると、あの貸本屋の知り合いというより、ムーディ個人の知り合いとなるのだろう。

 正直、今にでも首根っこつかんで外に放り出したいところだが、変に騒がれても面倒だ。

 仕方なく、シャルナークはオークショニアに扮するフェイタンとフランクリンに「ムーディに危害が及ばないように、周りを綺麗にするように」指示をだした。

 基本的に冷酷無比な彼らは、ムーディの身体的な被害だけを注意し、彼の精神的な被害を考慮しなかった。当然だ。彼らにとって世界は「強者」と「弱者」であり、「弱者」が死ぬのは自分が弱いからであり、それによって起こる被害など彼らは眼中にない。精神的苦痛というものが、彼らは理解できない。

 フランクリンは指示通りムーディを避けて念弾を放った。彼の周りの被害が緩やかだったのはそのせいだし、彼が盾に(・・・・)にされた(・・・・)のも、その猶予があったからに他ならない。

 ジルブレッドは、自分如き念能力者では、圧倒的な威力を誇るフランクリンの念弾を防ぐことができないとすぐに悟ると、ムーディだけを(・・・)避ける(・・・)念弾の軌道に、すぐさま脱出することを諦め、彼を盾にすることで自分への被害を抑えることにした。

 シャルナークが言うように、彼はこの場において冴えていた。

 ムーディは彼らにとって襲ってはいけない人間で、人質として(・・・・・)生きている(・・・・・)から価値がある。

 生きてこの場から返さなければならない彼が、襲撃者(フランクリン)の念弾によって被害を受け、それによって命を落とす。

 幻影旅団の一人であるマチの能力ならば、傷口を完璧に復元することはできるが、死因までは覆すことができない。

 大量出血によって彼が死亡し、そこを襲ったのが幻影旅団だとばれれば、女主人(シェスカ)は彼らに必ず何かしらの報復を誓うだろう。普段の行動が、それを裏付けている。

 そして、現在の状況は非常に面倒くさい。

 ムーディはジルブレッドに拘束され、すでに意識はない。我々の顔を見ていないことから、あとあと面倒がなくていいのだが、その意識がない原因が脚部に負った大きな銃痕であり、さらにそこから絶えまなく血が滲んでいるところを見るに、即急な治療が必要とみられる。

 しかし、おそらくジルブレッドは彼を手放すつもりはない。そうしたら最後、彼自身が間違いなく殺されてしまうからだ。

 

「…で、ここでいつまでもこう(・・)してても意味ないんだけど?」

「話が分かる方で助かりますねぇ、ええ。多くは望みません、私に手を出さずここから生かして帰すとお約束いただければ、彼を解放いたしますよ。ただし、念書をいただきます」

「あー、もう面倒くさいなぁ。本当に死んで?予想外なことばっかで嫌になるなぁ」

「どうする、シャル」

「誰か紙とペン持ってきてよ」

 

 この男のいうことを黙って聞くのか?と幾人かが視線で訴えてくるのを黙殺する。我々が(・・・)手を出さないと約束はしてもいい。ただし、ここにいない(・・・・・・)メンバーが手を出さないとは言っていない。

 シャルナークはハンター証を持つプロハンターだ。顔と名前がわかればいくらでも素性も逃亡先も見つけることができる。幻影旅団(クモ)を馬鹿にしたのだ、元から生かしておくつもりは欠片もない。

 

 それに、おそらくこのジルブレッドという男、―――――すでに詰んでいる(・・・・・・・・)

 

 

 

 

 ***

 

 

 

()っていいよな?」

『勿論だ、追って相手に適当に暴れてやれよ。そうすれば陰獣(やつら)の方から姿を現すさ』

「あっと、団長電話はそのままだ。シャルに代わる」

『ん?』

 

 8人(・・)の乗り込む気球を操作をしていたシャルナークが、団長と通話を終えたウボォーギンから電話を引き継ぐ。

 

「あ、団長?ごめん面倒ごと」

『何があった』

「競売会場にムーディがいた」

『………はぁ……怪我は』

「ちょっとミスった。今はマチに治療してもらったから怪我自体は癒えてるし、気絶したからたぶん俺たちの仕業だとばれてない。ただ、ムーディを会場に誘った念能力者がいるんだけど、そいつがムーディの身柄と取引ひっかけてきたから、取りあえず(・・・・・)乗って上げた(・・・・・・)

 

 シャルナークの頭上でエンジンの燃焼音がひときわ響いた。それと同時に、地上がにわかに騒がしくなる。ぞろぞろと団体客が気球を追いかけてくる。さっきのさっきでジルブレッドが十老頭に情報をリークしたとは考えにくい。唯一の生き残りで念能力者など、疑ってくれとっているようなものだ。となれば、団体客は旅団のことを何もしらない非能力者のただの(・・・)マフィア。彼らの敵には成りえない。

 

『お前の考えは?』

「本屋さんの敵」

『なるほど、まあ9割がたそうだろうな。あとの1割は利益目的といったところだろう』

「どうする、団長。今の今で本屋さんに連絡するのは悪手だと思う。かといって連絡しなかったら最悪団長は私刑じゃない?」

『……なぜ俺だけに絞る…。まあいい。陰獣をおびき寄せてお宝を奪い終わったらムーディを連れて一度アジトに戻れ。ムーディの状況を確認次第彼女には俺から連絡をいれよう。あと、逃げ出した念能力者の件だが、お前に任せる……まあ、電話してどう出るか(・・・・・)次第で、必要なくなるかもしれないがな』

「りょーかい、詳細はまたその時に」

 

 通話を終えた携帯をしまうと、不思議そうな顔をしているシズクと、通話の内容がよくわかっていないノブナガがシャルナークを見つめていた。その顔にはありありと「説明しろ」と書かれている。

 

「あーシズクもノブナガも、彼のこと知らないんだっけ?」

「本屋って…もしかして団長が贔屓にしてるっていう?」

「そう、そこの従業員が彼。あ、マチ。念のためにムーディに目隠ししてくれる?あともし声を掛けられたら無視するかシズクが対応して。俺達だと声で気付かれるかもしれないから」

 

 まあ、この鈍臭い男がそれに気づくとは思えないが。

 マチはその指示に頷きポケットからハンカチを取り出し半分に割くと、それを縒ってムーディの目元を多い、念糸で両の親指同士を結び自由を奪った。

 

「そこの本屋にはマジもんの化け物がいるんだ。それに出てこられのは避けたいからね。彼に此処(・・)で死んでもらうと困るんだ」

「ウボォーが負けたっていう人」

「そう。あと、さっきの念能力者、おそらく本屋さんの敵だ。だとしたら、わざわざこっちが手を出さなくても勝手に自滅するし、上手くいけば本屋さんに借りをつくることができる」

 

 敵に回す相手を間違えたね、馬鹿なやつ。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 暗闇の中で意識が覚醒した。

 しかし、目を開けたと思ったのにまだ目の前が真っ暗で、彼は「これが店長が言ってた明晰夢?」と首を傾げた。寝転がっている場所は平坦だが、ごつごつした岩か、あるいは瓦礫が背中に当たる。申し訳程度に毛布が敷いてある。随分とリアルな夢だ。

寝転んでいるようなので起き上がろうとするが、両手の自由がきかず上手くいかない。「あれ、これ夢じゃ無くね」とそのあたりでようやく気付く。

 

「え、えええ。どこ。誰かいないの?これどういうこと?」

「あ、起きたんだ」

「ええ?誰ですかぁ?!」

「それは言えない。けど、危害を加えるつもりはないから安心してほしい」

「は…はぁ?あれ、でも俺なんで…?確かヨークシンで…」

「詳しくは話せないし、当分この部屋にいてもらうね。けど、暴れないで、何度も言うけど危害を加える気はないから。腕は話が終わったら解いてあげる」

 

 声は女のものだ。一方的に言われるがまま、反論を抑える。気の抜けた彼でもわかる。この状況はかなりまずい。どこまで信じることができるかわからないが、女の言葉が真実ならこちらに危害を加える気はないらしい。ならば、彼は上司に言われたように反抗しないことにした。

 

「私たちが部屋を出たら(・・・・・・)腕の拘束は解けるから。この部屋から出る以外は何してもいいよ。そのかわりじっとしてて」

 

 がくがくと頭を縦に振って肯定を示す。それに満足したのか、足音は遠ざかり、軋んだ音を立てて金属の扉が閉まる音が聞こえた。

 

「あ、ほどけた」

 

 女の言ったように、腕の拘束が解け自由に動かすことができるようになった。

 とりあえず凝り固まった腕を回し軽くストレッチすると、そっと目隠しをとる。

 部屋は薄暗かった。

 自分が座っているところは、予想通り山になった瓦礫を背にした平坦なコンクリートの床。そこに、毛布が引いてあり、1メートルほど離れた場所に、ゆらゆらと炎を揺らすランタンと水や食料の入ったビニール袋が転がっている。部屋の大きさは10畳ほどで、窓はなく錆びついた金属扉がひとつだけ。念のためそろそろと近づいてドアノブを回してみたが、案の定開くことはなかった。

 

「……携帯、やっぱないや。どうしよう」

 

 こんなとき、自身の敬愛する店長ならどうするだろうと想像してみた。

 想像の中の彼女は、毛布を整えると床に腰かけ、いつものように古臭い本を取り出し読書を始めた。

 

「…うん…なんか…参考になんない」

 

 それに、もしそんなことになろうものなら、主を攫われたことに自責の念と怒りに捕らわれた槍の騎士が、双槍を振り回して突撃してくるだろう。

 どうしたもんかと頭を悩ませていると、想像の中の上司が本から視線を上げて、彼を見つめて一言。

 

「いらんことするな」

 

 

 彼は、しょんぼりと肩を落とすと、食料を手に取り毛布の上に転がった。

 

 

 

 

 

 




頭の中に話の筋はできてるけど言い回しが面倒くさ…げふんげふん。言い回しや表現に矛盾がでたりしたら前の話とかもちょこちょこ修正していくので、お手柔らかにお願いします…。



キングハサン来ません…!!!!!

破産しちゃうううううう


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9月3日

触媒にはパンがいいそうだ。孔明もおまけできたらしいぞ(朝パンぱくー)


感想ありがとうございます(ぺこぺこ)励みになります!( ;∀;)
みんな「おとなしくしとけお前は(意訳)」しか言ってなくて笑ってしまった。
大学籍番号様、torin様、千千代様、hakutyou様、Dibella様、黒きち様、シャノン様、天津六雪様、gaa様、シリアナード・レイ様、ダクソ廃人様、只野飯陣様、あおいゆきだるま様、ひね様様、メタリカ様、倫太郎様、黄葉様、アナクニ様
たくさんの感想ありがとうございます!

あと、課金は食費まで、家賃に手を出したらあかんで?(´・ω・`)


 

 

 

 クロロ・ルシルフルには幾つかの懸念がある。

 ひとつは、鎖野郎に捕らわれた旅団員のウボォーギンが連絡を絶ち、帰ってきていないこと。シャルナークが調べ上げた内容は、ハンター証を使用しなければ利用できないサイトで得た信頼の厚い情報だ。となれば、鎖野郎の足取りは掴めたようなものだし、時間的に戻ってきてもおかしくはない。であるのにも関わらず結局ウボォーギンは夜が明けても戻ってくることはなかった。この時点で、クロロは彼の身に最悪の事態が起こったことを想定した。

 もうひとつは、旅団がアジトに使っている廃ビルの一室に軟禁しているムーディ(ばかたれ)

 馬鹿だし阿保だし考えなしだが、放っておくことができない。その場に放置することも、すぐに返すことも、そのすべての手段が最良と言い難い。ウボォーギンが戻ってきていたならば秘密裏に彼女に連絡を取ってもよかったのだが、不確定要素が多すぎる現段階ではそれもいい手とは言い辛い。せめて鎖野郎の情報が欲しい。

 身内にも手癖の悪い男がいる。(ヒソカ)の好みとはかけ離れた軟弱、貧弱、脆弱の三弱を冠するようなムーディだが、槍騎士(ディルムッド)を誘き寄せる撒き餌としてはそう弱くはない。強者との戦闘をこよなく愛するあの男が、興味でも持って調べられると面倒だ。

 ちなみにジルブレッドとかいう小物の情報はすでに揃っているが、これはあえて放置している。この情報を彼女に渡したら、一体どんな反応をするのか。興味深くはあった。

 

 現時点の優先順位はウボォーギンの行方と鎖野郎の情報を集めること。旅団員を用心のために二人組(ツーマンセル)で行動させ、待機組と捜索組に分ける。クロロにはやることがあったため、アジトには初日にムーディの対応をしたシズクと何人かを残し、夜明けとともに行動を開始した。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 午前11時。

 貸本屋「百万図書」の出入り口で開店するのを待っていた常連客たちは、いつもへらへらと締まりなく笑いながら顔を出す平凡顔のムーディではなく、朝から輝かんばかりの美貌を振りまく美丈夫が扉を開けたため、眩しそうに眼を細めた。「あ、あいつ休暇中だった」と思い出し普段通りに入口にはいってすぐ四方に散開した。

 しかし、いざ貸本を手に番台に近づくと、足を止めて目をこすった。

 基本的に午前中出勤がありえないはずの女主人が、番台に座っている。しかも、苛立ちを隠しもせず、ワインレッド色の小型携帯電話を机上で何度も置いては手に持ちまた机上に戻すという行動を繰り返しているではないか。起きて身なりを整えた後は、活字の海に沈むのがルーティンの彼女が、本を抱えていなことに、常連客はことの重大さに気付いた。

 

「……帰ったほうがいいな。これは嵐がくるぞ」

世紀末(ノストラダムス)…!!」

「折角だが、俺はこの扉を潜って帰るぜっ!!」

「冒険はしない!命あっての物種だ!」

「というか、おい!ディルムッド」

 

 言いたい放題。

 まさに言いたい放題だ。

 基本的に群れることのない極度の愛書狂(ビブリオマニア)の集団であるが、ひとたび結束すると妙な団結力を発揮する。

 そのうちの一人が、滅多に水を向けない美丈夫に嫌そうに声を掛けた。嫉妬ではない。嫉妬では。

 

「なんだ」

「なんだじゃねーよ、相変わらず客商売する気のねー奴等だな!もう今日閉めろよ、あんな状態のあいつをあそこに座らせていたって、誰も借りる気しねーぞ」

「この貸本屋周辺で起こる珍事件より珍事」

「怖い、怖すぎる。仕事をしてるような気がした(・・・・)先日より怖い。圧倒的恐怖」

 

 貴様ら…と言いかけて、ディルムッドは口を閉じた。割と客の目が本気だったし、彼だとて、今の彼女を放っておくことはしたくはなかったのだ。店を開けたのは彼女がそう命じたからだ。

「なんてことないわ、ムーディ(あいつ)がいないだけよ。そうね、どうせ旅行が楽しくて連絡するのを忘れてるだけよね…今夜帰ってくるわよ」

 まるで言い聞かせるように、ディルムッドにそう命じた。

 二泊三日。貸本屋「百万図書」からすれば長期休暇になるこの三日間、ムーディから連絡があったのは、初日に無事空港に着いたという旨と、今から友人と遊んで回るといって露店の写真を添付したメールを送ってきただけだった。旅行が楽しくて無心で遊びまわっているだけならそれでいい。初めてのヨークシンシティの時は連絡手段を持っていなかったので仕方ないとして、現時点では三人ともそれぞれ携帯電話を所有している。彼の性格上、旅先の写真をいくつか送りつけてくるものだと思っていたのに、それがない。試しに、ディルムッドがメールを送ってみたが、返答はなかった。

 ヨークシンシティには、いい思い出はない。杞憂ならばいい。無事帰ってくるのなら、それ以上は望まない。

 

「早く連絡ぐらい寄越しなさいよ…」

 

 シェスカ達は、タクシーを走らせ空港まで来ていた。ディルムッドはその魔貌を隠すために、帽子とサングラスをかけている。

 結局夜も更け、帰宅予定時間を過ぎても、ムーディは帰ってこなかった。

 

「…何かあったのかしら」

「…やはり、電話にも出ませんね」

「…ヨークシン行の最終便はまだ残ってたかしらね」

「……21時の夜間便が最終ですね、空席の確認をしてきましょうか」

「お願い」

 

 軽く頭を下げてカウンターに迎うディルムッドを見送ると、シェスカは苛立ちのままに、親指の爪を強く噛んだ。

 ヨークシンシティが御綺麗な観光地ではないと知っている。知っていたのに、この様だ。

 わかっているつもりでわかっていなかった。長い間危険とは無縁の生活を送ってきたために、危機感が欠如していた。自らの迂闊さに臍を噛む思いだった。

 天井に取り付けられた電光掲示板を見上げる。ヨークシン発の別便の横にはすでに「到着済み」の明かりが灯っている。間違ってこれに乗って帰ってきていやしないかと、視線を搭乗口に向けるが、降りてくる乗客の中に見知った阿保面はいない。

 

「シェスカ様、お待たせしました。空席ありで、すぐ乗れます」

「行きましょう」

 

 用意も何もしていなかったが、決断は早かった。

 ディルムッドがハンター証を持っているため、特別な手続きをすることなく手早く飛行船に乗り込むことができた。ありがたいことに個室である。

 もしここで顔を見せろと指示されたら、騒ぎになって発進に遅れが出てしまう。それは避けたい。行方不明、と早々に決めつけてしまうのも危険ではあるが、もし仮にそうであった場合、時間経過によって生存率が大きく変わる。こういう場合早ければ早いほどいい。

 携帯電話を取り出したシェスカは、履歴を呼び出す。掛けたのはムーディではなく「あ、もしもし、ビスケ?」知己のハンター。

 

「今どこにいるの?え、ヨークシン。そう…それは好都合だわ」

『なんだわさ、いきなり』

「ヨークシンでムーディの馬鹿が行方不明なの。今私もそっちに向かってるわ」

『……どこに行ったか目星は?』

「わからないわ、知人と観光してくる。とだけ」

『……ふーん…いいわ。かしいち(・・・・)よ、こっちでも調べてあげる』

「ありがとう」

 

 ビスケット・クルーガーは、ハンター歴の長い凄腕の念能力者だ。それ故に、彼女独自の情報網を持っている。現地に彼女がいたことは僥倖だ。基本的に引きこもりの貸本屋一行には、こういった情報戦に滅法向いていなかった。

 「はあ」疲れ切ったため息が出た。

 こんなに長い時間読書をしなかったのは初めてだ。それなのに、三大欲求よりも強かった読書欲が鳴りを潜めている。

 

「私も人間だったのね」

 

 すっかり参ってしまっている主を気遣い、ディルムッドが備え付けの茶器に手を伸ばす。電子ケトルに水を溜めようと持ち上げると、彼のポケットが震えた。

 急いで、電話を取り出すと、そこには「非通知」の文字。

 

「……もしもし」

 

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 壁が破壊された。

 

 あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!俺は扉が一つしかない10畳ほどの部屋に軟禁されていた。だが、いつの間にか壁に人ひとりくらい通れるほどの穴が出現したんだ。な…何を言ってるのかわからねーと思うが…俺も何が起きたのかさっぱりわからないんだ…頭がどうにかなりそうだ…催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。

 

 つまり、物理。

 

 薄暗い部屋で体を丸めて過ごしていたら、突然大きな音が響いた。それも、何回も。壁の向こうでのことだとはすぐにわかったけれど、それがどんどん近づいてきて、怖くなったので慌てて火を消し、毛布を頭から被り、息をひそめて隅に身を寄せた。

 

 破砕音。

 

 大きな穴がぽっかりと。

 その向こうには、人影が見えた。思わず、息を止める。

 人影はそのまま侵入してくることなく、隣の部屋に引っ込んだ。それから少しして、また誰かが入ってきたがこちらに一瞥をくれるだけ。

 

「キルアッ!!いるか!?」

「ああ、いるぜ」

 

 意外なことに、建物に響いたのはまだ変声期の来ていない高い子供の声。

 部屋に入ってきた背の高い人影は、舌打ちすると重い金属扉を蹴破って屋外に飛び出してしまった。

 怒涛の展開に体が震える。

 先ほどの背の高い人影の舌打ちが本当なら、あの穴をあけたのは、あの声の…子供の仕業なのか。世の中には、凄い人がたくさんいるとは思ってはいた。自分の同僚なんてそのもっともたる存在なのだが、まさか子供が壁を粉砕するなんて。そんな思ってもみないだろう。ゴリラにでも育てられたのか?

 はらはらどきどき、心臓が煩いぐらいに鳴っているし、息が荒くなる。

 どのくらいその場でそうしていたのかはわからない。

 10分?1時間?もしくはそれ以上?

 深と静まりかえった建物の中は、人の気配が感じられない。

 想像の中の店長が「いいから黙って座ってろ」と眉根を寄せて渋面を作っているが、どうしても好奇心に負けて、そろそろと扉(がかつてあった場所)まで身を寄せる。

 

「…あ、もしかして…これも囮かっっ!!!」

 

 入口に近づいた途端、男の叫び声。苛立った様子で「畜生っ!」と吠える。

 怖くなって、扉から離れ定位置に戻る。

 階段を降りる音が聞こえた。

 じっと耳を澄ませるが、それ以降何も聞こえてこない。

 

 嚥下した自分の唾液の音が随分大きく聞こえた。

 

 そろそろと忍び足で、廊下へ歩を進める。

 

 

 振り返った建物は5階建ての廃ビルで、同じような作りの建物が他に何棟か建っていた。

 先ほど怒声を上げた男の姿は結局見えず、びくびくとおっかなびっくり階段を下りて外に出てみたが、鉢合わせすることはなかった。もしかしたら、忘れられているんだろうか?そんな馬鹿な。

 けれども、好都合だ。

 何とかして人通りのあるところまでいかなければ。

 頭から毛布をかぶり、時折周りを警戒しながら、ようやくハイウェイまで出る。すでにへとへとだったが、気力を振り絞り街の明かりを目指す。

 

「ヒッチハイク…そうだ、ヒッチハイクだめかな?誰か通らないかな?」

 

 望み薄と知りながらも道路わきで毛布をバタつかせていると、奇跡的に気のいいトラックの運転手が街まで乗せてくれた。

 

「なんだ、金まで盗られたのか?そりゃ災難だったな。まあでも命があってよかったじゃねぇか」

「ええ、まったくです。取りあえず上司に連絡とります」

「電話代くらいならやるよ、ほら」

「うわーん!ありがとう運ちゃん!」

 

 完全にでっち上げの嘘を運転手は信じてくれた。心が痛んだが、警察でもない彼に話して巻き込んだりしても嫌だ。いい人だからこそ、余計に。

 あっという間に、ヨークシンシティの都市部に到着した。歩きだったら何時間かかるかわかったもんじゃない。

 運転手に礼をいい、今では珍しくなったボックス型の電話機を探す。

 10分ほど歩きまわると、緑色のそれを発見した。

 

「どっちにかけよう」

 

 受話器を上げて、はたっと悩む。電話番号は覚えているが、上司である店長か、腕っぷしの立つ同僚か。

 

「あ、電話は…でないだろうしな」

 

 上司が電話に出ているところをまっっったく想像できなかったので、同僚の電話番号を間違えないようにプッシュ。

 

 2回のコール音。

 

『……もしもし』

「あっ、ディルムッドさーん!ムーディです!」

『無事かッ!!!』

「え、なんで」

 

 実は結構大事(おおごと)になってるなんて、知る由もなく。

 

 

 

 

 




 旅団「なぜかマフィアは動きを止めたし、ノブナガ一人で大丈夫やろ」
 ノブ「むっきー!二人とも逃がさないんご!探すんご!」
 店員「ラッキー」


 

 



 触媒ありで当たるとはいってない。
 ん、自分?無事ラスボスな声の晩鐘が響きましたよ?(にっこり)



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9月4日

 

 

 

 

 ヨークシンシティ中心部セメタリービル。現在、彼の都市に集結した大勢の裏社会の住人が顔を寄せ合っているそにを目指すように、放射線状に火の手が上がる。遠くにいても、優れた五感が闘争の匂いや音を正確にかぎ取る。

 ビスケット・クルーガーは空に舞い上がるきな臭い煙に舌打ちして、足の向きを変えた。

 中心部の喧騒は外周部にも届いている。SNSやインターネット通信の普及にともない、情報は加速度的に外部に届けられる。それでなくとも、ヨークシンに古くから住む住人たちは、この街の市長がマフィアン・コミュニティと蜜月関係にあることを察している。表立って批判するものはいないが、そんな土地柄である、いつ何が起こってもおかしくはない。賢い判断を下す彼らは、中心部から急いで足を遠ざけた。おかげで、どこもかしこも渋滞が起きている。

 この状況では車も拾えないし、一般人をかき分けていくにも時間がかかる。

 彼女はいったん路地に入ると、「絶」で気配を消し、音もなく飛び上がり建物の屋上に踊り出た。

 屋上のフェンスの上から、火の手の上がる中心部を眺める。もうもうと上がる火の手と、風に煽られる煙。もっと近づけば、不協和音を奏でる銃声と怒声、そして断末魔をこの優秀な耳は拾い上げるだろう。

 けれど、彼女はそこに用はない。何があっているか知らないし興味もない。相手に向かって銃口を向けるということは、いつかその銃口が自分に向くことも覚悟してのことだろう。

 

「いけない、こんなことしてらんないわさ」

 

 収まることのない騒動に背を向けて、フェンスを蹴る。疾風となって宙に躍り出ると次々と建物の屋上や屋根を伝い移動を始める。

 ポケットから取り出した携帯電話には、滅多に連絡を寄越してこない知人(・・)から、一通のメール。

 既読済みのそれに書かれた住所に向け足を進めながら、顔を顰めてぼやく。

 

「ったく、小心なんだか大胆なんだかさっぱりわかんないわさ」

 

 ビスケットがヨークシンを訪れたのはオークションのためだ。と言っても用があるのは競りに参加する方ではなく、その後にある。

 グリードアイランド。

 現在、大富豪バッテラが25本を所有するハンター専用のハンティングゲーム。それが、このヨークシンシティにおいて格式規模ともに最大のサザンピースオークションに、プロハンタージェイトサリの顧問弁護士によって7本出品される。

 そのグリードアイランドに、彼女は用がある。

 大富豪バッテラ自身は非能力者。彼に雇われたプロハンターあるいはアマチュアが、グリードアイランドに挑戦する。ネットの告知を見た彼女は、その選抜のためにこの地を訪れていた。

 連絡をもらった直後に居場所が判明するという締まりのないやりとりがなんとも彼等らしい。なんだかんだと律儀なので一応、かし「いち」は「いち」と数えてくれるだろうがなんともやり辛いとため息をひとつ。

 彼女からの頼み。従業員の確保。

小動物みたいに小心なくせに妙に大胆になる、そばかすだらけの男の顔を思い出す。へらへらして締まりのない顔をしているけれど、おそらくあの主従(・・・・)のそばでまともな思考をしていられる稀有な人間だ。

 

「あー…わかったわさ。あれだわ、ハムスター…」

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 夜の帳が捲れヨークシンシティの喪が明ける。

 街を舐めるように走る煙と炎が沈下され、ビルの谷間から太陽が顔を出す。

 セメタリービルを中心にした騒動は、主犯である幻影旅団が鏖殺されたことで落ち着いた。深夜を回ったころからオークションは通常通り開催。十老頭も観覧し参加者はみな張り切った様子で競りに参加。無事、最終の品まで競り切ったという。

 セメタリービルから2kmは離れた高層ビルの上で、情報収集に開いていた携帯を閉じる。

 あの極悪極まりない集団がそう簡単に殺されたとはにわかには信じがたい。相対したことがあるから余計に。

 しかし、実際に死体も回収されているという。マフィアに雇われる念能力者は多い。彼らならば死体が偽造されていても聡いものなら気付く。ということは、本当に死んだのだろう。

 深く大きく息を吐く。

 

「障害のひとつは片付きましたが、さすがに彼はちょっともったいなかったですね」

 

 思い出すのは、たった二回しか会ったことがないにも関わらず、警戒心もなくほいほいと自分についてきた平凡そのものの男。

 かねてより目をつけてはいたが、こうも上手くいくものかと内心高笑いを上げていた。しかし、旅団によってそれをあっさり失うことになる。

 

「また、仕込みなおさないといけませんね。ああ、折角あのお嬢さんの絶望に歪む顔が見れると思ったのに」

「そんな機会はもう訪れないから安心しろ」

「ッ!?」

 

 風が体を貫いた。

 そんな気がした。

 衝撃に目を白黒させ、ゆっくりと視線を胸に落とす。

 

 紅い薔薇が美しく咲いていた。

 

 自分の胸を貫く紅く鋭い矛先。

 じわじわと紅に侵食されていく胸部。

 

「な…な、な…ぜ?」

「何故?」

 

 意味が分からない。なんだこれは?どうしてこんな風に?俺の、体がっ!!

 矛先がゆっくりと横にスライドしてく。その先は、その先は駄目だ。そんなことされたら…!

 

「死んでしまう!」

「生かしておく気はないから、気にするな」

 

 恐怖で目の前が真っ赤に染まる。恐ろしくて恐ろしくて、矛先を握りこんだが、それらはまったく微動だにせず、まるで嬲るかのようにゆっくりと横にずれていく。

 口から血の泡が溢れる。口内が血の味で満たされる。死が近づいている。足音が、じわじわと、じわじわと。

 

「嫌だっ、や、やめてくれ!」

 

 応えはない。

 相手が誰だかわかっているのに、振り向くのが恐ろしい。

 振り向いて懇願すればいい。

 助けて、殺さないでと。

 けれど、首が固定されたかのように動かない。

 許しを請うことができな――――――――――――。

 

「―――――――――――」

 

 

 

 

「黙って土竜に徹していれば、見逃してやっていたのにな」

 

 

 

 

 

 

 

 




本日二話投稿


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9月4日-2

本日2話投稿、前話から閲覧してください。


 

 

 

 

 

 時間としては深夜3時を回ろうという時間。無事ヨークシン郊外のリンゴーン空港に到着したシェスカ達は、タクシーを走らせ市内を目指していた。市内へ続く道程は、時間帯の助けもあり予定より早めに移動できたほどだったのだが、遠くに見えていた摩天楼に近付くにつれ、道路には車両が、歩道には人々が詰めかけていた。

 

「……随分混んでるわね」

「すみません、お客様。どうも街で騒ぎが起きてるみたいで、このままでは到着はかなり遅れてしまいます」

 

 車内無線機を片手に申し訳なさそうに頭を下げる運転手。

 シェスカはじっと考え込むと、金を払い車を降りた。

 確かに、どこもかしこも混んでいる。というより、これは避難している(・・・・・・)といったところか。

 誰も口にはしないが、都市部でよろしくないことが起きているのは明白だ。隣で銃の乱射音を聞きながら睡眠をとれる人間などそういないだろう。彼らはことが落ち着くまで外周部で身を寄せ合っているのだ。それを非難することはできない。

 

「ディルムッド」

 

 主人の呼びかけに頷いて返すと、彼女をエスコートするように路地へ。「失礼します」耳元で囁いて、膝の裏と背中に手を回す。

 

「窮屈ではありませんか?」

「大丈夫よ、場所はわかる」

「地図は頭に入っていますので、―――跳びます」

 

 人ひとりを抱えているとは思えない跳躍で、周辺の建物の屋上に足を掛けると、そのままどんどん跳ねて移動していく。あまり手にも、自慢の脚にも力を入れ過ぎず、傷をつけないように加減しながら、満月の妖しい光が注ぐヨークシンシティの夜空を駆けた。

 風で乱れる長い髪を右手で抑えながら、ディルムッドの進む先を目を細めて窺う。向かう先は、散々に文句を言う予定の従業員(ムーディ)と、彼を保護してくれた知己であるビスケット・クルーガーが宿泊しているホテル。彼女に連絡を取ってすぐ、タイミングを見計らっていたのではないかと疑いたくなるようなタイミングで、ムーディから連絡があった。怒鳴りつけるように電話口で声を上げたディルムッドに、シェスカもさすがに腰を浮かせた。怪我もなく、体調も良好であるが、正体不明の人物に拘束されていたのだという。彼の身柄の保護を優先するために、話はそこそこに現在地だけ聞き出すと、すぐに現地にいるビスケットに連絡を取り、保護に走ってもらった。十数分後、涙目のムーディの写真が添付されたメールには、簡潔に保護した旨と現住所が記載されていた。

 部外者だが、ビスケットにもともに話を聞いてもらう。逃げ道をなくしたやり方は卑怯で言い逃れはできないが、プロハンター歴の長い彼女の手が必要になる可能性は十分ありえる。ムーディには何もない。彼には貸本屋(・・・)「百万図書」(・・・・)の従業員(・・・・)であるという価値しかない。ゆえに、価値がある(・・・・)。シェスカの思い過ごしで在ればいい。だが、もしそうでなかった場合、シェスカでは取れる手は限られる。

 

「シェスカ様」

 

 人ひとり抱え、軽く数キロは移動したとは思えない涼し気な声に、視線を上にあげる。見慣れた美貌が彼女を見下ろす。

 

「ついた?」

「はい、一度地上に降ります。舌を噛まぬようにお気をつけください」

 

 ほとんど衝撃を感じることなく無事地上へ着地する。礼を言って腕から降りると、懐からワインレッドの携帯電話を取り出し、履歴を辿る。

 

「もしもし、ついたわ。今ホテルの前」

『あら、早かったわね。街混んでたでしょ?フロントには通してあるから、そのまま10階の1005号室まであがってくるわさ』

 

 通話を切ると、指示通りフロントを通して10階までエレベーターで移動し、1005号室をノックする。

 

「お疲れだったわね、あんた達。中はいんなさい」

「ムーディは…」

 

 挨拶もそこそこに奥へ足を進めるシェスカの背中を、子供を見るような目で見送るビスケットに、ディルムッドが小さく謝罪する。「いいから、早くあなたもいったら?」という言葉に甘え、足早に主人の後ろを追った。

 

「ああ、店長っ!」

 

 広い室内に設置されたローテーブル。対面に設置された2人掛けのソファから腰をあげたムーディが声を上げる。

 喜色と緊張、極端な感情が綯交ぜになった情けない顔。

 散々に文句を言われるだろうと身構え、じっと待つ。しかし、シェスカはムーディの前に立ったまま、じっと顔を注視し口を開かない。

 

「え、と。店ちょおお?」

 

 右頬をつねり、ぎりぎりと。

 

「ひぃたいれふ、てんちょ!」」

 

 抗議の声を上げるが、シェスカの指は頬に吸い付いたように離れない。

 追いついた二人も、二人のやり取りを呆けた顔をして見ている。

 

「てんひょぉぉぉ」

 

 涙目で手をバタつかせるムーディ。

 じっと無言で頬を抓るシェスカ。

 

「てん、ひょ。いたぃいいい」

「ちょっと、話が進まないから、やめたら?」

 

 ビスケットに止められ、ぱっと手を放すと、ムーディの頬はリンゴのように真っ赤に腫れていた。涙目で頬を摩るムーディ。反面シェスカは満足そうな顔でひとつ頷いた。

 

「もういい?取りあえず貴方たち座んなさい。今お茶いれるから」

「ありがと、ビスケ」

「かーしーいーちー」

 

 

 

 各々に前に湯気を上げるカップが配られると、シェスカが徐に口を開く。

 

「それで、何があったのか話せる?わかる範囲でいいわ。憶測も予想もいらない。自分が真実目にしたことだけ話して」

「…ちょっと、シェスカ?」

「悪いわね、ビスケ。諦めて頂戴?」

「……むぅ。まあ、保護以外なにもしてないからいいけど…」

 

 抗議の声を上げるビスケ。納得はしていないが使われてやろうという気は一応あるらしく、おとなしくソファに腰を落としている。ディルムッドが一瞬気遣わし気に視線を寄越してきたので、それでチャラにしてやることにした。

 

「えっと…ヨークシンにきて、友達と合流したですよね…」

 

 ムーディはできるだけ鮮明に思い出すため、何度も記憶を反芻しながら、言葉を選んで9月1日の出来事を語る。

 怪我をしたはずだが、脚に怪我はなく衣類も解れていないというのはおそらく念だろうと、三人とも特別不思議がることなく続きを促す。

 

「それと…確かに、誰かに後ろから拘束されてたはずなんですけど…それも朧気で。気づいたらその監禁場所にいたんですよね。それからは、脱出するまで動いてないです。声の女の人も記憶にないし」

「…なるほど…しかし、其れだけの人間が襲撃されたってのに、それが騒ぎになってないっていうのは…」

「はい…傷もないし、俺自身なにもされなかったし、保護されてからは知人の行方が気になったからネットで検索してみたけど、そんな話出回ってないみたいだし…あれは本当にあったことなのかなって…」

 

 話のおかしさに、全員が首を傾げる。知人と一緒に襲撃されたムーディも、普通ならトラウマものの記憶のはずなのだが、あまりにも痕跡がなさ過ぎて現実味がなく、白昼夢でも見ていたのかと錯覚するほど。「もしかして…」と呟いたのはビスケット。

 

「知ってるかしらないけど、この街の市長はマフィアと蜜月の関係にあるわさ。その関係で一部治外法権になってる区画があるくらい裏世界の人間が幅を利かせてるんだけど…その中の競売に参加した。っていうのなら、話は通じないでもないわ。自分たちの面子に盛大に泥を塗られたんだもの、隠蔽に走るのは当然だわさ」

「……確証はないけど?」

「そう、確証はないけど。それに、そこにムーディを連れていくメリットがまっっっったくないわさ。自分で言っててないわねって思うくらいには」

「酷くないですかぁ?」

「「「事実でしょ(だろ)(だわさ)?」」」

 

 ユニゾンで否定されたムーディが肩を落とすが、三人は構わす話を続ける。

 

「マフィアの競売なのかの是非は問わないとして、なんでムーディだけ無事だったの?」

「前提がおかしいわさ。もしかしたら無事な人間は別にいるかもしれないわさ」

「生存者を隔離したということか?」

「外にばれると面倒と思われたとか?」

「少なくない数が犠牲になっているのに?」

「というか…ムーディ。お前その知人の連絡先は知らないのか?」

 

 はたと、三人とも手を止める。昨今、安否の確認は手軽にできる。特別な理由がなければたいていの人間は携帯を所有しているはずだ。

 

「あ~…ホテルから電話したんですけど、出ないんです。もう一人の、一緒に連れて行ってくれた社長さんは、もとから連絡先しらないのだ」

「…社長ね…ふーん…だったら調べられるわよ。出費は必要だけど」

「え、本当ですか!?」

「ええ、プロハンター専用サイトなら、役職もちの人間を探すのは容易いわ。でも、結構な額、請求されるわよ?」

 

 頬杖を突きながら、ビスケットが窺う相手はシェスカ。ムーディがなぜ関わったのか、なぜ拘束されたのか、今も狙われているのか、あらゆる可能性を探るためには情報が必要だ。それに、金を掛けるか否か。

 

「いいわよ」

 

 返答は簡潔に。

 一切の迷いなく。

 

「おーけー。それで、ムーディその社長の名前くらいはわかるかしら?」

「はいっ!それならわかりますよ、ジルブレッド(・・・・・・)さんです!」

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

『もしもし』

「おっと、まさか君が電話にでるとわね」

『切るわよ?』

「何をそんなに怒ってるんだ?イライラしてるな」

『……要件は何?』

()は無事かな?」

『…………なるほど、なるほどね。見えてきたわよ』

「おっと、先に弁解させてもらえるか?俺たち(・・・)は誓って彼を傷つけようなんて思ってなかったんだ!それは信じてほしい。彼に傷をつけるメリットがこっちには全くないからな。さすがに、それはわかるだろ?」

『……なんで連絡しなかったの?』

「できなかったんだ。こっちにもいろいろあってな。今ようやく一仕事終えて帰って祝宴を上げてるとこ」

『……』

「―――――縁を切らないからこうなった。これは君が招いたことでもある」

『……ああ、そう。調べたのね』

「まあね、そのままには出来ないからな。あんなちんけな男、さっさと始末しておけばこんなことにならなかったのに、君が変に仏心をだしたからこうなった」

『―――』

「詰んでるよ。どうあがいてもあの男は詰んでる。でも、そのままにしておけばまた同じようなことをしないとも限らない。まあ、そっちがどうしなくても、こっちで殺すよ?放置できないからね」

『…………情報』

「ん?」

『情報をそのまま転送して』

「ふーん……いいよ」

『…なに』

「いや、なんでも」

『お礼はいわないわ。それでも(・・・・)巻き込んだのは貴方なんだから』

「ああ、それでいいよ。これでお互いチャラだ」

『ブッ…ツー…ツー…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




んんっ!温度差っ!
温度差がひどすぎたので2話で分けたけど結局温度差変わらなくて草。
ホットラインマイアミのBGM聞いてたら頭がぱーんっとなってなんかおかしい文章になってしまったのでおもいっっっっきり編集するかもしれません。はい。
D様による本作品初の■■。
でもハンターハンターって本来そういった描写込だもんね(´・ω・`)大丈夫…大丈夫?

あの、でもいうほどなんかあるわけじゃないですよ?
シャル( ゚Д゚)くちゃちい念能力者
なんで。

さくーっと
さくーっと進めます、はい。
エクステラしたいからね


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