我が道を行く自由人 (オカタヌキ)
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人物紹介

少しずつ更新していきます。


龍の紡ぐ絆(ドラゴン・トライブ)』司令官 『魔源覇王』 雷門竜也

人間→逸脱者(ディビエーター)◆フシギ族

体力;8 知力;8速度;9 耐久力;8 勇気;9 魔力;10 腕力;9 技術;8 地位;10

本屋の帰り道、オオクニヌシの誤って落とした雷に直撃して死亡してしまい、オオクニヌシに謝罪された後転生させてもらった本作の主人公。

自由奔放な性格だが責任感はあり、ぶっきらぼうな物言いをするが女性や子どもに対しては紳士的。家族や仲間、自分の大切なものにはとことん大切にするが、それを害する者は情け容赦なくブチのめす。

戦いにおいては主に不意討ちを得意とし、相手が自己紹介していようが人質をとっていようが一瞬でも隙を見せれば問答無用で一撃を入れた後ボコボコにする。自分でも卑怯ものだと自覚しているが改める気はさらさらない。

悪知恵が働くと周りがドン引きするほどの悪人面をする。

 

科学参謀 『白月龍皇』 雷門ヴァーリ

ハーフ悪魔→龍人(ドラゴノイド)◆ウスラカゲ族

体力;8 知力;9 速度;7 耐久力;7 勇気;8 魔力;8 腕力;8 技術;10 地位;9

幼少期、虐待を繰り返す親の本から逃げ出し行き倒れていたところを竜也に拾われ雷門家の一員として暮らす。後にアザゼルのスカウトを受けグリゴリに所属して竜也の指示で情報を横流しにしていた。

性格は原作に比べて比較的常識的で温和だが、グリゴリのアザゼルのもとにいたためか(マッドな)研究者としての面もあり、人工神器の開発にも携わっている。また、長い間竜也のそばにいたことで彼もまた腹黒い面を見せる時がある。

戦法は主に『白龍皇の月光翼』による半減の力と斬撃、また相手の自由を奪う魔法や巧みな話術で翻弄することを得意としている。戦いに置いては結果(勝利)を重視し、過程は気にしない。

竜也の右腕兼参謀的存在。

 

陸戦兵長 『赤陽龍帝』 兵藤一誠

人間→転生悪魔→龍人 ◆イサマシ族

体力;7 知力;6 速度;7 耐久力;8 勇気;9 魔力;7 腕力;8 技術;5 地位;7

竜也のことを幼少期はタツ兄、現在はアニキと呼び慕い、ヴァーリのことは大切な親友だと思っている。竜也に感化され、赤龍帝としての力に早く目覚め修行を共にしてきた。第六感に優れており、気配を敏感に感じ取れる。またARMを使ってきた影響で魔力も強化されている。竜也たちと修行に明け暮れていたことで原作のような変態ではなく、あくまで性欲は年相応。もとが悪くないのでそこそこ人気がある。

戦法は『赤龍帝の太陽手』の倍加の力と赤熱の炎、炎系のARMを操る。

レイナーレ改め天野夕麻を心の底から愛しており、だんだんとバカップルに拍車がかかっている。キレるとどこぞのヤクザのようなドスの効いた声を出す。イリナに告白された際は夕麻への思いと板挟みになっていたが、イリナの思いを聞き、彼女も心の底から愛することを決意する。だが一番は夕麻。

 

航空参謀 『混沌の姫巫女』 姫島朱乃

ハーフ堕天使→転生悪魔→混沌魔(カオスノイド)◆ブキミ族

体力;6 知力;8 速度;7 耐久力;6 勇気;8 魔力;9 腕力;6 技術;8 地位;8

幼少期、姫島家に母斗共々命を狙われた時颯爽と現れ助けてくれた竜也に惹かれ、竜也とは幼なじみにして初恋の相手。

雷の魔法、堕天使の光の力、悪魔の魔の力、母直伝の徐霊術、爆発系のARMを同時に操ることができる。また、団員の中でもっとも高い飛行能力を持ち、空中戦を得意にしている。ついた異名は混沌の姫巫女。母親譲りのドSは健在。

 

側近兼特務工作兵 雷門黒歌

猫しょう→転生悪魔→火車 ◆ブキミ族

体力;7 知力;8 速度;8 耐久力;6 勇気;7 魔力;7 腕力;7 技術;8 地位;7

はぐれ狩りの悪魔に襲われていたところを竜也に助けられ、飼い猫のクーとして生きていた。修練の門での修行の際にバレるが理由を知った竜也たちに受け入れられて雷門家の養子として迎え入れられる。竜也をご主人様と呼び慕っており、彼の膝上で撫でられることが何よりの至福。婚約してからは“だぁりん”と呼んでいる。

仙術と主にネイチャーARMを操り、幻惑などの搦め手を得意とするが、近接戦にも対応できる。

 

看護長 アーシア・アルジェント

人間→天使 ◆ポカポカ族

体力;5知力;6 速度;4 耐久力;6 勇気;8 魔力;8 腕力;3 技術;6 地位;6

まだ聖女として奉られていた時に竜也に出会い、彼に連れ出されてイッセーたちと知り合い友だちになる。基本的性格は原作と変わらないが、よく興奮して鼻血を吹く。後方支援は狙われやすく、自分の身を守れるようにと、竜也から書いた文字を実体化させる魔法、『ピクトマジック』を教わりホーリーやガーディアンARMを渡される。誰かを傷つけることにためらっていたが、自分の大切なものを守るために、力を受け入れる。

 

情報参謀 『撃滅女帝』 リアス・グレモリー

悪魔 ◆ウスラカゲ族

体力;7 知力;8 速度;7 耐久力;7 勇気;8 魔力;9 腕力;6 技術;7 地位;8

途中までは性格は原作と変わらなかったが竜也たちとの修行で自身のプライドよりも仲間たちとの勝利を優先するようになる。

自身をただ一つの存在として見てくれる竜也にだんだんと惹かれてるようになり、ライザーとのゲーム終了後正式に彼と婚約する。年上の女性として振る舞おうとするが、竜也の前では恋する乙女になってしまう。わりと容赦がない。

竜也との修行で習得した消滅の魔力に形を持たせる『消滅の造形魔法』に加え、はるか昔に失われたと思われていたグレモリーの『探索』の力に目覚める。

 

航空騎兵 木場裕斗

人間→転生悪魔→悪魔 ◆イサマシ族

体力;8 知力;7 速度;8 耐久力;6 勇気;8 魔力;7 腕力;8 技術;8 地位;5

基本的性格は変わらないが彼も少なからず竜也の影響を受けている。存在を忘れられたり爆発したりと何かと扱いが悪い。マイクを持つと性格が変わる。元ライザー眷属のカーラマインと交際している。周りからの評価は『初々しいバカップル』。

朱乃に劣らぬ高い飛行能力を持ち、持ち前の素早さと合わせた空中戦を得意にしている。

『龍の紡ぐ絆』のエンブレムを入れた際、羽が蜻蛉のように変化してしまった。最初は竜也を恨んだが、飛行精度が上がったので最近は悪い気はしていない。

 

迫撃兵 塔城白音

猫しょう→転生悪魔→火車 ◆ブキミ族

体力;7 知力;7 速度;6 耐久力;7 勇気;7 魔力;6 腕力;8 技術;6 地位;5

黒歌のはぐれ認定が解除されたことでそのまま白音を名乗っている。姉の過度なスキンシップに困惑気味。竜也とは善き食べ歩き仲間。基本ツッコミだが時々悪ノリする。

主な戦法はウェポンARMや体術を行使した接近戦。後に猫しょうとしての力に目覚め、妖術を体得する。



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人物紹介2

堕天使、天使は魔力→光力と表記します。


航空弓兵 夕麻(レイナーレ)堕天使 ◆ブキミ族

体力;6 知力;7 速度;6 耐久力;5 勇気;6 光力;8 腕力;5 技術;7 地位;5

駒王学園2年在学。旧名レイナーレ。かつては原作同様イッセーを殺すために近づいたが、竜也たちのバックアップによって本気でイッセーに惚れる。イッセー、そしてアーシアを殺そうとした戒めのためにレイナーレの名を捨て、夕麻として生きて行くことを誓う。

イッセーにはベタ惚れであり、竜也に「依存を通り越してもはや中毒(ジャンキー)の領域」とまで言わしめた。曰く、一日に8時間イッセーニウムを摂取しないと発狂するらしい。

 

航空忍兵 カラワーナ 堕天使 ◆ブキミ族

体力;6 知力;7 速度;8 耐久力;5 勇気;6 光力;7 腕力;5 技術;7 地位;4

夕麻(レイナーレ)と行動していた堕天使の一人。外見年齢は20代後半ほど。隠密活動に適正があり、任務時には黒装束を身に纏い、斥候並び敵情視察を行う。普段は駒王学園英語教師として勤めている。ショタコンの気がある。一時ギャスパー狙っていたが、ある事件を切欠に竜也に完堕…惚れる。

 

航空狙撃兵 ミッテルト 堕天使 ◆ブキミ族

体力;5 知力;6 速度;6 耐久力;4 勇気;5 光力;7 腕力;4 技術;7 地位;4

夕麻(レイナーレ)と行動していた堕天使の一人。ゴスロリ衣装の小柄な少女。駒王学園1年在学。ヴァーリ製作のサイレントガンを使い、自身の光力を弾丸に加工して放つ。 語尾に「~っす」をつける。調子に乗りやすく、よくポカをやらかす。普段はヴァーリの科学班で手伝いをしている。

 

秘書官 ドーナシーク 堕天使 ◆ブキミ族

体力;7 知力;7 速度;6 耐久力;6 勇気;6 光力;7 腕力;7 技術;7 地位;5

夕麻(レイナーレ)と行動していた堕天使の一人。外見年齢はアラフォーの男。野心家であったが、竜也の特訓という名の魔改造によって竜也に忠実になり、一人称も「私」から「(それがし)」になる。駒王学園用務員として勤める。光を加工したレイピアで戦う。

 

破壊工作兵 フリード・セルゼン

人間→堕天使 ◆ウスラカゲ族

体力;7 知力;7 速度;8 耐久力;7 勇気;8 魔力;6 腕力;8 技術;6 地位;5

『狂乱の退魔師』と恐れられているが、竜也のしごきによって原作よりはいくらかはましになる。通称クレイジー野郎。武器はゴーストARMと妖刀を加工して作られた大鋏『魔鋏砕牙』。影魔法を扱うがギャスパーの才能に隠れがちで複雑な心境。駒王学園2年、放送部に所属している。彼のMCを務める放送はわりと人気がある。

強襲兵 イル&ネル 悪魔 ◆フシギ族

体力;5 知力;5 速度;6 耐久力;4 勇気;5 魔力;5 腕力;6 技術;4 地位;3

元ライザー眷属の双子の『兵士』。共に12歳。竜也を『お兄ちゃん』と呼び、兄としても異性としても慕っている。元々の武器であったチェーンソーを竜也が改造して作った『変形銃槍剣(チェインブレード)』が武器。

 

迫撃兵 イザベラ 悪魔 ◆ゴーケツ族

体力;7 知力;7 速度;6 耐久力;7 勇気;7 魔力;5 腕力;8 技術;5 地位;4

元ライザー眷属の『戦車』。ライザー眷属解体後、竜也に引き抜かれる。ショタコンの気がある。とある事件を切欠に竜也に完堕ち…惚れる。竜也に言われて以来、仮面は戦闘時以外は外すようにしている。

 

騎兵 カーラマイン 悪魔 ◆イサマシ族

体力;7 知力;5 速度;8 耐久力;5 勇気;7 ;魔力4 腕力;7 技術;6 地位;4

元ライザー眷属の『騎士』。レーティングゲーム中、木場と戦い自身の行いを諭されたことが切欠に木場に惚れ、後に相思相愛になる。木場のことを木場殿と呼んでいたが、付き合い始めてからは悠斗様と呼んでいる。

航空騎兵 紫藤イリナ 人間→天使 ◆フシギ族

体力;6 知力;5 速度;6 耐久力;5 勇気;6 光力;7 腕力;5 技術;6 地位;5

元教会所属の退魔師。駒王学園2年在学。幼少期竜也らと過ごしたためか、人格は原作よりまとも。

エクスカリバー事件の際駒王街に再び戻りイッセーと再会。彼の言葉に自分の気持ちと向き合い告白する。その後夕麻とひと悶着あったが、二番目ということで納得し、夕麻の影響か瞬く間にイッセーとはベタ惚れのバカップルに。

 

遊泳騎兵 ゼノヴィア・クァルタ 人間→天使 ◆フシギ族

体力;7 知力;5 速度;6 耐久力;6 勇気;7 魔力;6 腕力;8 技術;4 地位;5

途中までは原作と変わらず。アーシアへの不用意な発言で全員から殺気を浴びせられ殺されかけたことは軽くトラウマ。聖書の神の死を知らされ失意に沈んだ際、竜也の呼び掛けによって奮い立たされ、追放され途方に暮れていた際竜也に拾われたことで竜也に忠誠を誓い、陛下と呼び慕うようになる。

使用魔法『遊泳(スイマー)』…どんな場所でも泳ぐことができる。娯楽を覚えるために竜也から買い与えられたガンプラにものの見事にはまり、もはや偏愛の領域に達した。彼女の中の優先順位は竜也<ガンプラ<<<仲間<世界らしい。時折組織の資金をガンプラ代に着服しては竜也にオシオキされており、組織の中で一番オシオキを受けた頻度が多い。

 

妨害工作兵 ギャスパー・ヴラディ ハーフヴァンパイア→ヴァンパイア・ロード ◆ウスラカゲ族

体力;6 知力;8 速度;7 耐久力;6 勇気;5 魔力;8 腕力;5 技術;8 地位;6

元引きこもりの女装少年。竜也の荒療治によって恐怖を克服し、その才能を開花させる。またヴァーリの指導により女装癖も直された。似たような境遇故か、ヴァーリを兄様と呼び慕う。また修業をへて戦い方が似ているのもあり、フリードとも仲がいい。それゆえに、彼の悪ふざけのとばっちりをよく被る。自分の中の存在に段々気付きはじめており………

騎兵団長 アーサー・ペンドラゴン 人間→天使 ◆イサマシ族

体力;8 知力;7 速度;8 耐久力;8 勇気;8 光力;8 腕力;8 技術;7 地位;7

竜也が旅の途中知り合い協力者となる。しばらく『禍の団』でスパイとして活動していた。裏切りの露見後、竜也らと合流し正式なメンバーとして加わる。血統故か戦闘力も高く、剣の扱いに置いては組織最強と言われている。普段は冷静で紳士的あるがブラコンであり、ルフェイのこととなると枷が外れ暴走する。

 

魔導士官 ルフェイ・ペンドラゴン 人間→悪魔 ◆フシギ族

体力;6 知力;8 速度;5 耐久力;4 勇気;6 魔術;8 腕力;3 技術;8 地位;7

アーサーの妹。天才的魔術センスを持っており、14歳にして朱乃に次ぐ技術をもつ。兄を尊敬しているが、暴走した際は冷めた目で見ている。竜也とは度々新魔法の開発に勤しんでいる。

教官 アラン 人間→エルダーヒューマン ◆ゴーケツ族

体力;8 知力;7 速度;6 耐久力;8 勇気;8 魔力;8 腕力;9 技術;7 地位;7

メルヘヴンのアランその人。『チェスの駒』、ハロウィンによって次元の狭間に跳ばされ、そこで竜也を転生させたオオクニヌシに出会い、竜也の助けにするため“修練の門”の中に入る。修業が終わった後、自身も門から出て雷門家に居候して現代社会を満喫している。

 

守護神 オーフィス 『無限の龍神(ウロボロスドラゴン)』 ◆ニョロロン族

体力;∞ 知力;? 速度;∞ 耐久力;∞ 勇気;? 魔力;∞ 腕力;∞ 技術;∞ 地位;9

無限を司る龍神。かつては老人の姿をしていたが、現在は少女の姿をしている。竜也の力に興味を持ち、彼に接触した際、竜也に提案されて共に暮らすようになり、徐々に感情というものを知る。その中で竜也に惹かれ、彼と共にいたいと思うようになり、それから竜也の守護神を名乗るようになる。

 



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原作前
プロローグ


「…あれ?何処だここ?」

 

確か俺は本屋で本を買った帰り道に急に視界が光に包まれて……

 

「すまなんだ!」

「どわぁ!びっくりしたっ!」

見ると白いひげを蓄えた貫禄のあるご老人が頭を下げていた。

「あの…あなたは一体…」

「儂の名はオオクニヌシ。日本神話の神をやっている。」

「はあ…そんな神様が俺に何のご用で?」

「実はのう、ついさっきまで儂の子どもたちが喧嘩をしておってのう、儂が叱りつけて納めたのじゃが怒鳴ったとき誤って本当に雷を落としてしまってのう、その雷がお主に直撃してお主を殺してしまったのじゃ。」

「え…えええ゛エエぇぇぇぇ!!!!?うっ、嘘でしょう!嘘ですよねぇ!!?」

「残念ながら本当じゃ、先ほど確認したら見事に真っ黒焦げじゃった。本当にすまなんだ」

な…何てことだ、俺の人生これで終了!!?こんな終わり方あんまりだ!まだ買った漫画も読んでないのにぃ!!

「まあ待て、そこでじゃ、お詫びとしてお主に第二の人生をプレゼントしよう。まあ現世での体が消し炭になってしまったから異世界になってしまうがのう。嫌ならこのまま閻魔のところで天国行きか地獄行きかの裁判を…」

「いえ!行きます異世界!まだ死にたくありません!」

「あい解った、では転生するのに当たり特典を決めよう。このサイコロをふり出た目の数だけこのくじを引き、書いてある特典を与えよう。ちなみに、特典はお主の記憶を参考にしておる。自分でもよくわからない特典を渡しても、使えなければ意味はない。」

「わ、解りました…」

そう言って俺はサイコロを振るった。出た目は3、次にくじを引いたのだが……

1『ゴゴゴ西遊記』の悟空の妖術と武器、初っぱなからえらいのが出たな…

2 『トリコ』の「天狗のブランチ」の能力、これは良い!使い勝手が良さそうだ

3 『わざぼー』に出てくるわざぼー、…いやとんでもないのが出たよぉ!!?わざぼーって確かコロコロイチバンで連載されてた相手の体に当てててきとーに技名を叫べば本当に出てくるっていうチート臭い棒じゃん!て言うかコロコロ多いな!あれか?さっき買ったのがコロコロだからか?良いじゃん別に高二がコロコロ読んでも!

「どうやら特典は決まったようじゃな。ではこの門をくぐるといい、そこからお主の新たな人生が始まる。」

そう言ってオオクニヌシ様が手を振るうと緑色の渦のようなものが現れた、…ここをくぐれば俺の新たな人生が始まる

「オオクニヌシ様、何から何までありがとうございました。」

「いや、先ほども言ったがこれはもともと儂のミスでお主の人生を奪ってしまったせめてもの罪滅ぼしじゃよ。お主の次なる人生に幸あることを願っているぞ!」

「はい!ありがとうございます!」

そう言って俺は門をくぐった。俺の体が徐々に光に吸い込まれて行く。…あれ、そういえば俺はどんな世界に行くのだろうか?

「あの…オオクニヌシ様、俺は何処の世界へ転生するのでしょうか?」

「おお、そういえば言っておらなんだな。確か…『ハイスクールD×D』…とか言うライトノベルをモデルにした世界じゃったかのう」

 

ピシャッ そんな効果音がするかのように俺は固まった。俺の記憶が正しければ、ハイスクールD×Dといえば悪魔や堕天使、果てには神やら世界最強の龍やらが出てくるパワーインフレ全開の世界……

「いっ…嫌だぁぁぁぁ!!!!」

そんな俺の嘆きを無視して、光は俺の体を完全に吸い込み消えた

 



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拾った命と初戦闘

皆さんお久しぶりです。神によって転生した主人公こと雷門竜也です。早いもので、転生から9年経ちました。あれから羞恥に悶えながら乳児期を過ごし、歩けるようになってからは、友達と遊びながらその間に自分の能力の練習をしていました。

わざぼーの技名を叫べば喉を枯らしご近所の方々には生暖かい目で見られ、発電能力を使えば直列と並列のコントロールがつかずに感電し……しかし、まさか原作主人公である兵藤一誠君とご近所とは…これも神の仕業でしょうか?

そんな俺ですが、いま夜の中全力疾走しております。なぜかというと……

「待たんかクソガキィィィ!!!!」

「待つかボケェェェ!!!」

黒猫を担いで悪魔から逃走しているからです。

始まりは、俺が能力の練習をしていた帰り、近道に通った雑木林の中で傷だらけの黒猫を見つけ、家に連れて帰り治療しようと抱き上げたとき、黒服を着た男が現れ、一瞬驚愕したかと思うと、黒猫を渡すよう言われ、嫌な予感がして断ると急に悪魔の羽を生やして襲いかかってきたのだ。

どうやらこの男、ここいら一帯に人避けの結界を張っていたらしく、その中にいた俺を神器持ちか何かと勘ぐりついでに捕らえようと考えたようだ。……とか言ってる間に男に追い付かれてしまった。

 

「チッ手こずらせやがって、おいガキ!その猫を余越な。そうすりゃ命は助けてやるよ。」

 

「それではいそうですかと渡すなら最初から逃げてないよバーカ」

 

「ああそうかい、なら死ね」

 

やつはそう言うと殺気を放ち、俺はわざぼーを出したが……

 

「なっ!…ブアッハハハハッ!!!!なんだそのブッサイクな棒はぁ、それがお前の神器なのかぁ!」

 

おもいっきり笑われました…だってしょうがないじゃん、こういうデザインなんだから!俺だってもっとカッコいいのが良かったわ!!

 

「うっさいなあ!じゃあお前の武器は何なんだよ!」

 

「ハハハハ、うん?俺の武器か?いいぜ教えてやるよ。俺のはそんな気の毒なのじゃなくt「どりゃあぁぁぁぁ!!!!」

相手がなんか言ってる間に懐へ突っ込む

 

(ずりぃィィィ!!!!)ガビーン

チョンッ「メガトンパーンチ!!!」

シ~~ン

「……うん?ハハハハなんだ、何にも起きないじゃないか!技名だけ言っても意味なヘブッ!!?」

そんなすっとんきょうな声をあげて悪魔はぶっ飛ぶ、俺はその隙を逃さず雷の速さで近づく

 

「百列ビンタぁ!!!」

 

「オブブブブブ~~!!!?」

悪魔はビンタを喰らい頬を腫らして地面に落ちる。

 

「グオオ痛ぇ、てめえ!さっきからなんだその技は!!!?いきなり見えないパンチやビンタが出てくる何てどんな仕組みだよ!」

「ん?てきとー」

ズデッ

俺の返事を聞いた悪魔がずっこける

 

「アホかぁぁ!!!!てきとーなわけねーだろーが!!!!大人をなめんなよテメー!!!!」

悪魔はキレて叫ぶが俺は続けて話す

 

「い~や本当にてきとーなのさ。こいつの名は『わざぼー』相手の体に触れて、てきとーに技名を叫べば本当にその技が飛び出すのさ!!」

 

(………何てつごうのいいオモチャだぁぁぁぁ!!!?)ガビーン

 

「じ…冗談じゃない!。そんなのに勝てるか!」

悪魔はそう言って逃げようとするが逃がす気はさらさらない。

 

「逃がすかぁ!!伸びろ如意棒!!!」

ズドゴッ「オドオッ !!?」

「止めだ!並列エレキパーンチ!!!!」

ズピシャァァァ「ギャアアアアア!!!?」

 

如意棒で脳天をどつかれ、エレキパンチで黒焦げになった悪魔は力なく墜落して行く。それを見届けた後、俺は黒猫を担いで家に帰る。

帰る途中俺は思った。

 

(……わざぼーだけで十分オーバーキルだな…)

 

その後、夜遅くに出歩いたことで母からこっぴどく叱られたのは余談である。

 

 

 

 



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弟と企み

どうも皆さん雷門竜也です。あの後、黒猫は衰弱していたけど無事に回復し、黒猫のクーと名付け、家で飼うことになった。しかし、あの悪魔はなぜクーを狙ったのだろうか?やはりクーは何か秘密があるのだろうか?まぁ、わからないものはしょうがない、成るようになるさ。

そして、我が家の同居人はもう一人…

 

「いてて…母さんめ、おもいっきり尻をひっぱたきおって、しばらく座れねーよ…」

 

「あはは、御愁傷様だね兄さん。」

「そう思うなら助けてくれよヴァーリ」

「無茶言うなよ。怒った母さんは俺でも手がつけられないんだ」

 

そう、同居人というのは何を隠そう滅神器『白龍皇の光翼』をその身に宿し、旧ルシファーと人間のハーフ、ヴァーリ・ルシファーその人である。

なぜそんな彼が我が家に居るのかというと、俺が4歳のときわざぼーの瞬間移動技、「ダイレクトワープ」を使い行き倒れているところを保護したのだ。原作をほんのりと知っている俺は親に虐待されていた彼を放って置けなかった。原作崩壊?知らんよそんなん。

ここはハイスクールD×Dというラノベをもとに創られた言わばパラレルワールド。オオクニヌシ様も言ってたし大丈夫だろう。

そんなわけで彼の境遇を知った両親は大号泣。すぐさま彼を我が家に迎え入れ、それ以来彼は雷門ヴァーリとして家族の一員として暮らしている。ちなみに一誠とは俺とよく一緒に遊ぶ仲だ。

 

「しかし、何度見てもカッコいいよな。お前の神器。」

 

「兄さんのそれだって十分チートだと思うけど」

 

「ええ~、だって顔がこれじゃん」

 

「おい、あんま言うと泣くぞコノヤロー」

そう、このわざぼー、原作でもそうだがしゃべるのである。それも無駄に渋い声で。どうせならヴァーリみたいなドラゴンの神器がよかったなぁ……待てよ、ひょっとするともしかして…

 

「……んふふふふ♪、何でこんなことに気がつかなかったのだろうか……」

 

(あっ、これはまた良からぬことを企んでるな…)

 

「神器が欲しけりゃ創ればいいじゃない♪」

 

「……とりあえず聞くけど何する気さ。」

「こうする気♪」

 

 

~~説明中~~

 

 

「………まじで?」

 

「まじで♪」

 

「…はぁ、止めたって無駄なんだろう?しょうがない、俺も付き合うよ。」

 

「おぉ、話しが解る。流石は我が弟♪」

 

「伊達に5年も弟してないよ。放って置くと何を仕出かすかわからないからね兄さんは。」

 

「ニシシッ、それじゃ行こうか、ダイレクトワープ!」

 

こうして俺たちは俺の野望を叶えるためにある場所へととんだ



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三首龍と決戦

ワープでたどり着いたのはとある洞窟の奥底。そこにやつはいた。

樹齢何百年もの大木を思わせる強靭な腕と脚。羽ばたけば俺たちなんか吹き飛ばされそうな二枚の翼、全身を包む禍々しい鱗、そして最も特出するのは長く伸びた三つの首。

そう、こいつこそ俺の求める龍、ゾロアスター教に記される千の魔法を司る三首の邪龍、魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)アジ・ダハーカである。

俺は以前この世界のことを考えて世界に伝わるドラゴンや悪魔や堕天使のことを調べてきたのだが、その中で最も興味をひかれたのが、このアジ・ダハーカである。その見た目もさながら千の魔法を司るとかロマンである。

そして前話俺は思った。こいつわざぼーで神器にできるんじゃね?そして、その神器で自分オリジナルの魔法造れるんじゃね?と

本来アジ・ダハーカは退治され封印されているのだが、わざぼーの自分の行きたいと思ったところへ行ける「ダイレクトワープ」によってその封印場所へ直接きたのだ。

 

「なんだ、貴様は?」「ニンゲンだ」「それに子供だ」

 

真ん中の首が喋りそれに続けてもう二つの首が喋る。

 

「俺の名は雷門竜也、こいつは弟の雷門ヴァーリ、魔源の禁龍アジ・ダハーカ、俺たちはお前に挑戦しにきた!!」

 

「あっ、やっぱ俺もやるのね。」

 

「ふんっ、何かと思えば貴様らのような小わっぱが我らに挑戦?身の程知らずも大概に…いや、確かに貴様からは今まで感じたことのない気配を感じるな。」「こんなの今まで見たことないね」「それに隣のあいつは白龍皇だよ!」

 

「フフフ、いいだろうおもしろい。せいぜい我らを楽しませドゴーーン!!!「「「グオオオオオ!!!?」」」

 

隙だらけだったので雷撃をお見舞いする。

 

「チョッとぉ、兄さんなにやってんのぉぉぉぉ!!!?」

 

「いや、隙だらけだったからつい…」

 

「いやついじゃないよ!て言うかそれならさっさと封印すればよかったじゃん!!」

 

「いや、流石にわざぼーも神器造るのは無茶だったらしくてある程度弱らせないと無理だってさ。」

 

「グオオ貴様ぁぁぁぁ!!!!」「ブッコロー!!!!」「ゼッコロー!!!!」

 

「そ~ら来なすったぞヴァーリ!」

 

「だぁぁぁもうわかったよやってやるよ!!!」

 

こうして一体(三頭?)と二人(一人ヤケクソ)の激戦が始まった。

「まずはこいつだ!並列エレキパンチ!!!」

俺はエレキパンチを飛ばすが、アジ・ダハーカの前に出現した巨大な魔方陣によって防がれた。

 

「ふんっ、馬鹿め!不意を突かれなければこんなもの造作もないわ!!」

そう言うとアジ・ダハーカの三つの首からブレスが放たれる。

 

「ヴァーリ俺の後ろに来い!わざぼー、アルティメットシールド!!!」

俺とヴァーリにわざぼーの先を当て叫ぶと二人の周りに強力なバリアが発生する。

 

「ほう、我らの攻撃を防ぐか。」

 

「兄さん、俺もわざぼーもあいつに触れないと意味がないぞ!!」

 

「わかってる!しっかり捕まってろ、ダイレクトワープ!!!」

俺が叫ぶと俺たちは一瞬にしてやつの懐へと移動する。

 

「なにぃ!!!?」「えっ!!?」「いつの間に!!?」

 

「バインドチェーン!!!」

俺がやつにわざぼーを当て、技を叫ぶと地面から何十本もの鎖が放たれアジ・ダハーカを縛り付ける。

 

「今だヴァーリ!!」

 

「おう!!」『Divide』

白龍皇の光翼から機械音が鳴りアジ・ダハーカの力が半分になりヴァーリに加算される。

 

「グオオォ、おのれぇ…我らの力を…」

 

「グゥゥ…流石は邪龍の一体ということか…吸収したエネルギーを維持するのがかなりきつい…」

 

「ちょっとだけ辛抱してくれ!食らえ流星爆裂拳!!!!」ズドドドドド!!!!

ヴァーリが半減した隙を突き超光速のラッシュを叩き込みアジ・ダハーカをヴァーリへと吹っ飛ばす。

 

「「「グアァァァァァ!!!?」」」

 

「やれぇヴァーリ!!!」

 

「バニシングブラスター!!!!」ズドーーン!!!!

 

「「「ギャアァァァア!!!!!」」」

超至近距離から白龍皇の光翼から放たれた光線を浴びてアジ・ダハーカは悲鳴を上げる。

「今だ!奥義神器封印!!!!!」

俺が叫ぶと、俺とアジ・ダハーカは光に包まれた。



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お叱りと新たな力

「こんのバカモンがぁぁぁぁ!!!!」

前回、俺はアジ・ダハーカにわざぼーの奥義神器封印を使って神器にしようと試みたのだが、光に包まれたと思ったらそこは上も下も目の前も真っ白な空間が広がっており、そこには気絶したアジ・ダハーカと、なぜか俺を転生させたオオクニヌシ様がおり、俺は今、オオクニヌシ様に正座してお叱りを受けている。

 

「あの、オオクニヌシ様。なぜ俺はまたここに来ているのでしょうか?あと、何をそんなに怒っているのですか?」

 

「どうしたもこうしたもないわ!!!お主とんでもないことをしてくれたのう!!!いくらわざぼーがどんな技でも出すことができるからといって、神器の創造など、それこそ神の領域の所業じゃぞ!!そんなまねをすれば……見てみろ!!!!」

そう言うとオオクニヌシ様は俺の目の前にぼろぼろになって折れてしまったわざぼーを出した。

 

「わっ…わざぼぉぉぉぉ!!!?」

なっ…何で、どうしてこんなことに……

「さっきも言ったが、神器の創造など神の領域の所業じゃ。その膨大なエネルギーにわざぼー自身が耐えられなかったのじゃ。」

そんな…俺の軽はずみな行動のせいでわざぼーが……

 

「オオクニヌシ様!!お願いします!わざぼーを治してください!!!」

こんなやつでも俺の相棒だ。見捨てることなんてできない!

 

「…うむ、十分に反省しているようじゃな。良かろう!わざぼーは儂が責任を持って治そう。もう二度と同じ過ちは犯すなよ。」

 

「…ッ!!!ありがとうございます!!!!!」

 

「かっかっかっ、良い良い、もともとお主は儂のミスで殺してしまったのじゃからのう。おあいこじゃおあいこ。」

そう言うとオオクニヌシ様は懐から以前俺の引いたくじの箱を出した。

 

「さて、一時的とはいえ特典が一つなくなってしまった。もう一度引くが良い。」

 

「いっいえいえそんな!わざぼーを治してくれるだけでもありがたいのに…」

 

「かっかっかっ、良い良い、人の善意は受け取るのが礼儀というもの。それに儂はお主のことをけっこう気に入っているのじゃよ?」

そこまで言われれば断る訳にはいかない。俺はくじを引いた。

 

メルヘヴン ディメンジョンARM『修練の門』

 

これはありがたいものが出た。この修練の門は、くぐると中は広大な修行場になっており、さらにこの中の1日は外の世界の60分の1しか経たず、外では1日しか経ってなくても、中では60日の修行ができるのだ。

「ありがとうございます、とてもいい物が出ました。」

「かっかっかっ、それは良かった。」

 

「グゥゥ此処は一体…」

あっ、アジ・ダハーカ忘れてた。

 

「おお、目が覚めたか。お主たちはこやつに敗れ神器に封印されたのじゃ。良ければこのままこやつの神器として使われてやってくれぬかのう?」

 

「………一つ聞きたい。なぜ我らを神器にしようとしたのだ?」

 

「ええっと、お前のことを調べた時、千の魔法を司るって書いてあったから、お前の力を使えばオリジナルの魔法を造れると思って……」

 

「……フフフ、いいだろう。我らはお前の神具器となろう」

 

「ええっ!!!いいのか?」

 

「ああ、確かあの棒は考えついた技を使うことができるのだろう?つまりあの技はお前があの場で考え付いたのだな?魔法を造る上で重要なのは柔軟な発想力、お前の造る魔法に我らは興

味を持ったのだ。」「すげーの造れよ!」「期待してるぜ!」

 

「ああ!これからよろしくな!」

 

「「「おう!!!」」」

そう言うとアジ・ダハーカは小さな光の玉となり、俺の体へ吸い込まれて行き、俺は光に包まれた。やがて光が止むと、俺は頭に竜の頭を象ったヘッドギアを付け、両手にはこれまた竜の頭を象った籠手を着けていた。

「かっかっかっ、それがアジ・ダハーカがお主の神器へとなった姿、『魔源の三つ首甲』(ディアボリズムトライヘッドギア)とでも名付けようかのう。」

こうして俺、はわざぼーを一時的に失う代わりに新たに『修練の門』と『魔源の三つ首甲』を手に入れたのだった。



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神社と姫

新たな力、俺専用の神器『魔源の三つ首甲』の能力に慣れるため今日もヴァーリと裏山で修行をいそしんでその帰り道。

修練の門は使わないのかって?あの後わかったことなのだか、修練の門は1日単位でしか使えないようで、さらに一度使うとしばらく使えなくなってしまう。

忘れがちだが俺は9歳でヴァーリは8歳。この年で1日行方をくらませたらえらいことになる。なので、少なくともこれを使うのは中学か高校に上がってからになりそうだ。

前回の一件、オオクニヌシ様にお叱りを受けている間、俺は意識を失っていたらしく、目を覚ました時ヴァーリに泣かれてしまった。こいつにとって、俺たちはやっと手に入れた心許せる家族。こいつもなんだかんだでやっぱり子どもなんだということを再確認させられた。(俺が言うのも何だが)そして、なし崩しに俺が転生者だとゆうことを話してしまった。これに関してヴァーリは…

 

「前々から規格外だと思ってたけどやっとその理由がわかった気がする。」

「たとえ兄さんが何だろうと俺の兄さんにはかわりないよ」

と言ってくれた。我ながらなんといい弟を持ったのだろうか。

そして、俺たちは今空を飛んでいる。ヴァーリは『白龍皇の光翼』で、俺は『魔源の三つ首甲』で造った魔法、鳥の翼を生やす『翼』(エーラ)で飛んでいる。ちなみに、周りに感知されなくなる魔法『インビシブル』を二人にかけてあるので見つかる心配はない。

 

「…おや、兄さんここ…」

ヴァーリが何か気がついたようだ。見ると下の神社一帯に結界が張られている。

 

「キャアアアアアア!!!!!」

 

「!!!?兄さん!!!」

 

「言われずとも!やるぞダハーカ!!!」

 

「「「おう!!!」」」

俺は『魔源の三つ首甲』を出現させ、結界を解除にかかる。千の魔法を司るダハーカ(長いからつけたアダ名)の知識を使うことができる今の俺にかかればこんな結界……

 

「解けた!いくぞ!」

俺たちは中へと突撃する。するとそこには刀を抜いた男たちに囲まれた俺たちぐらいの年の女の子とその母親と思わしき女性がいた。

 

「その子どもを渡せ!!その汚れた血を我が家に入れる訳にはいかんのだ!!!」

 

「嫌です!!!この子は私とあの人の大切な娘なんです!!!絶対に渡しません!!!!」

 

「そうか、ならせめて親子共々あの世へ送ってやろう!!!」チャキッ

 

「お母さま!!」

 

「朱乃!!!逃げてぇ!!!」

 

「死ねぇ!!!」

ガキィィィン

「なっ!!?」

「…え?」

「「させねぇよ!!!!」」

朱乃said

私のお父様は堕天使。私にはお父様の血が流れている。だけど、お母様の家の人たちはこの血を汚れた血、生きていてはいけない血だという。この人たちはお父様がいない時を見計らって私たちの家に乗り込んできた。私とお母様を殺す気だ。

お母様に刀が降り下ろされたと思ったそのとき、何処からか颯爽とやって来た白髪の男の子が青白い翼で、黒髪の男の子が竜のような籠手でそれを受け止めていた。

「こんなか弱い女の人によってたかって刀を向けるなんて、おじさんたちサイテーだね。」

黒髪の男の子が言う。

「なっなんだ貴様らは!!?」

「「通りすがりのドラゴンだ!!!」」

二人が口をそろえて言う。……打ち合わせしてたの?

「ドッドラゴンだとぉ?ふざけたことを…それにその白髪の子どもには悪魔の気配がするぞ!!不浄の輩め!!汚れた者同士共に死ね!!!」

そう言うと大人たちは一斉に二人に斬りかかる、あんな数が相手じゃ……すると黒髪の男の子はにっこりと笑い

 

「大丈夫だよお嬢さん。あなたたちは俺たちが絶対守って見せる。ヴァーリ!!!」

 

「了解!!トルネードカッター!!!!」ギュオオオオオ!!!!!

『グアァァァァ!!!!!』

白髪の男の子が高速回転すると巨大な竜巻が発生して大人たちを切り刻みながら空へと吹き上げる

「落ちろや!!!グラビドンプレッシャー!!!!!」ズドドドドド!!!!!

『ホゲァァァァ!!!!!』

黒髪の男の子が手をかざすとうち上がった大人たちが次々と地面に頭から突き刺さっていく。

 

「終わったな兄さん。」

 

「ああ、案外呆気なかったな。大丈夫ですか?お嬢さん。」

そう言って黒髪の男の子は私に近づき、そしてさっきみたいに優しく微笑んでくれた。

 

「はっはい、ありがとうございます////」

 

「ありがとう、あなたたちは私たちの命の恩人だわ。」

 

「いえいえそんな、俺たちはただ「朱乃ぉぉぉおまえぇぇぇ無事かぁぁぁぁ!!!!!」…うん?」

声のした方を見ると、お父様が猛スピードで迫ってきた。

 

「おや、この子の父親ですか?ちょうどよかっ「貴様らぁぁぁぁ二人から離れろぉぉぉああああ」ドわあぁぁぁぁ!!!!!」

お父様は聞く耳もたず二人に光の槍を雨のように投げる。……ナニヲシテイルノ……

 

「にっ兄さんヤバいよ!!!俺半分悪魔だから光の槍は不味いよぉ!!!」

 

「だな、お嬢さん、名残惜しいけどお別れです、また何処かで会いましょう。」

そう言い残して二人は消えていく……

 

「朱乃!おまえ!怪我はな「このバカァァ!!!!!」バキッ ブベラッ!!!?」

 

「お父様だいっ嫌い」ドスッ「グパァァァァ!!!!!」

Saidout

 

「………なんだこの状況?」

急いでバラキエルのあとを追ったが、犬神家状態の姫島家のものたちと、血へドを吐き真っ白になって地面に倒れ伏し妻と娘にボコボコにされるバラキエルを見て困惑するアザゼルであった。

 

 

「あれ、兄さんその刀は?」

 

「ああ、せっかくだから何本かくすねてきた。ほら見ろよ!これ妖刀だせ!!!」

 

「兄さん…あんたって人は……」

 




今回の魔法
『翼』背中に翼を生やす
『インビシブル』周りに感知されなくなる
『グラビドンプレッシャー』自分の一定範囲内の相手に超重力をかけ押し潰す
『トルネードカッター』真空の刃を纏った竜巻を発生させる


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白龍皇と今

「…………うぅん…朝か…」

 

窓から入ってくる日光に当てられ、ヴァーリは目を覚ました。眠そうに目をすぼめ、自慢の白髪には寝癖がついてしまっている。

 

『相棒、よだれが垂れているぞ。』

 

ヴァーリの『白龍皇の光翼』に宿る、かつては二天龍と呼ばれた二体の龍の片割れ、白い龍(バニシングドラゴン)ことアルビオンが、ヴァーリに指摘する。

 

「うん…ジュルル……ありがとうアルビオ……ク~」

『ぅおい!!!?』

 

原作では絶対に見られなかったであろうこのヴァーリのだらけきった姿、これも全て雷門竜也というイレギュラーが原因である。

虐待を繰り返す親の元から逃げ出し、行き倒れていたあの日、本来彼は堕天使総督であるアザゼルに拾われるはずだったのだが、それを横からかっさらって行ったのが竜也である。そして雷門家の次男として迎え入れられ、家族の温もりを知り、裏の世界から一歩引いた生活をしてきた彼は、まだ幼いとはいえ原作の戦闘狂じみた性格からは考えられないほど常識的なのだ。

 

『まったく、そんな調子では赤いのとの戦いには勝てんぞ。』

「だ~か~ら~、何度も言うけど俺はそんなのは興味ないんだってば。長きに渡る戦いの運命とか言われてもそんなの知ったこっちゃないし、…それにイッセーとは戦いたくないし。」

そう、彼はイッセーが赤龍帝だということを兄である竜也から知らされているのだが、彼はイッセーとの戦いを望んでいない。彼にとってイッセーは大切な友人なのだ。

 

『我が儘を言うんじゃない!我ら二天龍は遥か昔から戦い続けてきた。言わばこれは抗うことのできない運命だ!それに龍は力を、戦いを引き寄せる。いずれはあの小僧も目覚めるだろう。今回はこちらが早かった、それだけだ。』

「……て言うかそもそも何で二人は争ってるのさ?」

『ギクッ……そっ、それは言えん…』

「嘘つけ、どうせ忘れてんだろう?忘れるってことは大したことじゃないんじゃないか?」

『いっいや違うぞ!そうじゃないぞ!ちゃんと覚えてるけど言えないんだ!!!!』

「ふ~ん」

『おいっ!!!信じてないなその顔はぁ!!!』

「ヴァーリちゃ~ん、朝ごはんできてるわよ、降りてらっしゃ~い」

「は~い母さん今行くよ」

『おいっ!!!まだ話は終わってないぞ!!!ヴァーリ!!?聞いてんのか!!ヴァーリィィィィ!!!!?』

そんなアルビオンのシャウトを無視してヴァーリは食卓に向かう。

「おはようヴァーリちゃん。あらあら、寝癖がついちゃってるわよ。お母さんが直してあげましょうか?」

彼女は「雷門 茜」竜也とヴァーリの母親であり、のほほんとした笑顔の素敵な女性だ 。

 

「大丈夫だよ母さん、それくらい一人でできるよ。」

 

「そうだぞ母さん、それくらい出来んでどうする?ヴァーリ朝っぱらからだらしないぞ。男ならもっとシャキッとしないか。」

「父さん、後ろの髪が跳ねてる。」

 

「えっ!!嘘!!!うわっ恥ずかしっ!!!」

 

もう片方の息子に醜態を指摘されて盛大にテンパるこの男は、二人の父親にして雷門家の大黒柱「雷門 秀」である。少し間が抜けたところがあるが、いざという時は頼れる父親だ。

そして、そんな父を呆れた目で見て頭に飼い猫のクーを乗せているのは、ヴァーリの兄の竜也である。

 

「おはよう兄さん、また夜遅くまで起きてたの?」

「まあな、ボソッまた新しい魔法が考えついてな、後にでも見せてやるよ。」

「ボソッああ、楽しみにしてるよ。」

「あらあら、竜也ちゃん、夜更かししちゃいけませんよ?」プニ~~

 

「ふえぇぇぇ~~、わひゃっひゃ、わひゃっひゃふぁらふぁーひゃん(わかった、わかったから母さん。)」

 

「フム、よろしい。ではではそろそろいただきましょうか♪」

 

「「「「いただきます!」」」」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「兄さん遅れるよ?」

 

「わかってるよヴァーリ」

 

「おっす!!タツ兄、ヴァーリ」

「おはよー!タツヤくん!!ヴァーリくん!!」

 

元気よく二人に声をかけたのは、ご近所さんにして幼なじみの「兵藤一誠」と「紫藤イリナ」である。二人にとって竜也は頼れるアニキ分で、ヴァーリは仲のいい親友だ。

 

「じゃあなクー、行ってくるぜ。」

「ニャ~」

 

竜也が頭からクーを下ろし塀に乗せる。

大切な家族がいる、友達がいる、ヴァーリは毎日が幸せだった。これからもこの幸せがずっと続けばいいと、そう思った。

 

「おーいヴァーリ、置いてくぞー!」

 

「あっ、今行くよ兄さん!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

『……完全に忘れられとるなお前…』『ダッセー!』『ダッセー!』

『………………グスン』

 

 



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友情と新たな目覚め

今回は少し長めです


あれやこれやという間に4年がたち、俺は中学に上がりヴァーリとイッセーは小学6年生になった。あれから数ヶ月後、イリナは親の都合で海外に引っ越してしまい、俺とイッセーとヴァーリと親たちと共同でサプライズお別れパーティーを開いた。俺の手作り料理を振る舞い、俺たち三人で練習した歌と踊りを披露し、俺はリボン、ヴァーリはペンダント、イッセーはブレスレットを贈り(プレゼントを選ぶ時、イッセーは初めてイリナが女だと知り、めちゃくちゃ驚いていた)、最後はみんなで写真を撮り絶対に会う約束をして泣く泣く別れた。

ちなみに、イリナのお父さんは俺たちのことを気づいていたらしく、

「君たちならイリナを任せられる。」と言われてしまった。

そして12月のはじめの日……

 

「……なあ、タツ兄、ヴァーリ、二人に話したいことがあるんだ。」

 

「ん?なんだ?」

 

「どうしたんだイッセー?改まって?」

 

「ああ、実はこれなんだけど…」

 

そう言ってイッセーが左手をかざすと紅の籠手が現れる

 

「なっ!!?」

 

「………ッ!!!?な……何で……どうして……」

 

ヴァーリはひどく動揺していた。……ついにこの日がきたか。だけどどうしてだ?イッセーが赤龍帝として目覚めるのはまだまだ先のはず…何でこんなに早くに…

 

「ヴァーリ、気持ちはわかるが落ち着け。イッセー説明してくれ。いつからそれが出せるようになったんだ?」

 

「あっああ、あのさ、前にタツ兄とヴァーリが俺が中学生の不良に絡まれてたところをそいつらをボコボコにして助けてくれたことがあっただろ?俺、その時二人みたいに強くなりたいって思ってさ、ランニングしたり筋トレしたり父さんに頼んで空手習ったりしてさ、そしたら昨日夢の中ででっかいドラゴンが出てきてさ、そんで朝起きたらこれが左手に出てきて……出たり消したりできるみたいだけど」

 

そうか、それでイッセーはこんなにも早く目覚めたのか、俺たちに影響されて…

 

「…あ…あっ…ああ……うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「!!!?待て!!ヴァーリ!!!!」

 

俺の制止も聞かず、ヴァーリは『白龍皇の光翼』を展開して窓の外へ飛び去って行った。

 

「おっおいっ、タツ兄!!ヴァーリはどうしたんだ!!?」

 

「……イッセー、今から俺の言うことをよく聞くんだ。」

それから俺はイッセーに話した。この世界の裏側のこと、神器のこと、二天龍のこと、そして二天龍の神器の所持者の戦いの運命のことを……

 

「そっそんな…じゃあヴァーリは俺のせいで…」

 

「いや、さっきも言ったようにイッセーもいつかは目覚めていた。それが早まったに過ぎない。イッセー、それを踏まえた上でお前に聞くぞ………お前はどうしたんだ?」

 

「…俺は……俺はヴァーリと戦いたくない!!!ヴァーリは俺の親友だ!!!戦うなんて、傷つけるなんてできない!!!」

 

「……わかった!!来い『魔源の三つ首甲』!!!」

 

俺は『魔源の三つ首甲』を展開する。

 

「たっタツ兄それって…」

「詳しいことは後だ!!ダハーカ!!!ヴァーリの魔力をたどれるか!!?」

 

『任せられよう』『検索中ダゼ』『見つけた!!』

 

「よし!!!イッセー!俺に捕まれ!!!」

 

「わっわかった!!!」

 

俺は魔方陣を展開してそこをくぐった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

ヴァーリsaid

 

『…ヴァーリ本当にこれでよかったのか?』

 

「……ああ、これでいいんだ。」

 

『…………ハァ、好きにすればいい。お前の人生はお前のものだ。俺は何も言うまい。……ヤレヤレ、俺も焼きが回ったものだな。』

「ああ、ありがとうアルビオン」

恐れていた時がとうとうきた。イッセーが赤龍帝として目覚めた。龍は力を引き寄せる。だからってこんなかたちで……俺が…俺が不用意に力を使ったから……もうここには居られない。俺は大切なみんなを傷つけたくないんだ!!!

兄さん、父さん、母さん、クー、今までありがとう。イリナ、約束守れそうにないや。イッセー、ごめんな。

翼を広げ飛び立とうとすると目の前に兄さんの転送魔方陣が出現し、中から兄さんとイッセーが現れた。

 

Saidout

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「…………ヴァーリ、俺、タツ兄から聞いたよ、俺とヴァーリの神器のことも、この神器を宿した人たちがずっと戦って来たことも…」

 

「……ッ!!…だから…だから俺は!!!」

 

「ヴァーリ、俺、お前とは戦わないよ」

 

「……………え?」

 

「俺はお前とは戦わない。宿命なんか知らない!ヴァーリは俺の親友だ!戦いたくなんてない!!!傷つけたくない!!!」

 

「いっイッセー、…お……俺もイッセーと戦いたくない!!!…お前を…おま゛え゛を傷つけるなんでやだよぉ……」

 

「……ッ!!!?…ヴァーリぃ…」

 

『……なあ、赤いの』

 

『……なんだ?白いの』

 

『その、なんだ、たまには…戦わない時があってもいいのではないか』

 

『????どういうことだ?』

 

『それはその…ええ……ダアァァァァ!!!俺は思ったよりこいつらに毒されちまったってことだよ!!!俺はこいつらを見てるのが楽しい!!!こいつらを引き裂いてやりたくない!!!』

 

「あっアルビオン……」

 

『……俺も神器の中からこいつらを見ていた。確かにこいつらを見てると楽しい。飽きない。だが、俺たちは長きに渡り争ってきた。それに神器の奥底の歴代所持者の怨念のこともある。』

 

「そんなの知らない!運命なんか関係ない!!!怨念なんかに負けない!!!俺は親友を傷つけない!!!俺たちは殺し合いなんか絶対にしない!!!!」

 

「…ああしない、するもんか!!!!運命なんかねじ曲げる!!!!怨念なんか吹き飛ばす!!!」

 

『………フッ、俺たちの敗けだな』

 

『…………ハハッ、ああ、そのようだ』

 

「……ッ!!!?ヴァーリ!!!」

「イッセー!!!」

二人は涙を流し抱き合う。この二人を見ればわかる、これから先、二人が歴代所持者たちのように争い殺し合うことは永遠にないだろう。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「………そういえば、二人が戦ってきた理由って結局なんだったんだ?」

竜也が思い出したように言う。

 

「そういえば…」

「結局なんだったんだ?」

イッセーとヴァーリも尋ねる。

『フム、我らも気になるな』『なんだったんだ?』『なんだったんだ?』

アジ・ダハーカもちゃっかり乗っかる。

ギクゥッ『そっそれはだなぁ……』

 

『なっなんと言うかそのぉ………』

あからさまに誤魔化そうとする二体。

 

「………ダハーカ」

 

『『『おう!!!』』』

竜也が合図すると『魔源の三つ首甲』から念波のようなものが『赤龍帝の籠手』に放たれる。

 

『ヌアァァァァァ!!!!?』

 

『ドライグ!!!?』

「こいつは俺の開発した魔法『フランクウェーブ』相手に隠し事を洗いざらい白状させることができる。さぁ言え。」

 

『……………ほ』

 

『『『「「ほ?」」』』』

 

『おいっ!!!!バカ!!!?やめろぉ!!!!!!!』

 

『……惚れたメスドラゴンにどっちが先に告白するかで言い争ってたらもう他のドラゴンとくっついてた。』

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『『『「「「……くっだらねぇ」」」』』』

 

『『ウワァァァァァァァン!!!!!!!!!』』

 

この後、ドライクとアルビオンは一週間塞ぎ混んだ

 

 

ちなみに、神器の中の歴代所持者の怨念たちも、理由を聞いてアホらしくなり、大部分が解放されたそうな。

 

 

 



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再会と修行

前回の一件からしばらくたち、二天龍のメンタルケアが終わった頃には、三人は冬休みに入っていた。そして当の三人はというと……

 

「お~いそっち行ったぞ」

 

「了解。シビレ罠設置っと、イッセー誘導よろしく」

 

「あいよ」

 

三人で竜也の部屋でモンハンをしていた。イッセーは夏休みを利用して二人の家に泊まらせてもらっている。そして三人がG級に差し掛かろうというとき、玄関のインターホンが鳴った。

 

「はーい、悪いちょっとでてくるわ」

 

竜也は二階の部屋から玄関へと向かう。

 

ガチャッ「はーい、どちら様で………」

 

竜也の目の前にいたのは、以前ヴァーリとの修行の帰りに襲われていたところを助けた女の子と、大和撫子の言葉が似合う彼女の母親と、彼女の父親と思われる堕天使の男がいた。

 

「やっと…やっと会えた」

 

すると彼女は、涙を流し竜也に抱きついた。

 

「えっ?ちょっ!!あの!?」

あまりの急な展開に激しく動揺する竜也、見ると、彼女の父親から凄まじいまでの殺気がほとばしっていた。

 

「あらあら♪竜也ちゃんたら、いつの間にそんなかわいい彼女さんができたの?今日はお赤飯かしら?」

 

「そっそんな、彼女だなんて…////」

 

「うわぁ!?母さんいつの間に!!!?あと赤飯はいらないから!!!何言ってんの!!!?」

振り向くと、母がニヨニヨしながら爆弾を投下する。

「あれ?その子は確か…」

 

「……なんだこの状況?」

どうやら、イッセーとヴァーリも何事かと降りて来たようだ。イッセーはあまりのカオスな状況に困惑している。

 

「…………とりあえず上がってください」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

竜也said

 

 

「改めまして、姫島朱乃です。」

 

「母の姫島朱璃です。二人には危ないところを救っていただきました。」

 

「父のバラキエルという者だ。大切な娘と妻を救ってもらって本当に感謝している。」

 

「あらあら、すごいわねぇ竜也ちゃんにヴァーリちゃん♪」

 

「うむ、さすがは俺の息子だ。」

 

「へぇ、そんなことがあったのか」

 

今雷門家のリビングに、俺たち雷門家+イッセーと姫島家の面々が集いお互いに言葉を交わす。

 

「……しかし、よく俺たちの家がわかりましたね?」

俺はバラキエルさんに尋ねる

 

「ああ、グリゴリのネットワークを使ってここら周辺に住む白髪と黒髪の少年を割り出し、そのなかから該当する少年を探しだして住所を調べたんだ。これでも私はグレゴリの幹部だからな。」

 

ボソッ「なあタツ兄、グリゴリってなんだ?」

 

ボソッ「堕天使の所属する三大勢力の一つだよ」

 

ボソッ「にしてもなんちゅう職権乱用…」

 

「ハッハッハ、にしてもまさかヴァーリと竜也が堕天使の幹部の娘と知り合いだったとはなあ。」

 

 

「「「……………………えっ!?」」」

 

「ちょちょちょっと父さん今なんと!?」

 

ちょっと待て。今この人聞き捨てならないことを言わなかったか!!!?

 

「うん?お前たちが堕天使の幹部の娘と知り合いだったとはなあと……」

 

「えぇっ!?ちょっ、父さんなんで堕天使とか知ってるの!?」

 

「あれ?そういや言ってなかったなあ。父さんと母さんは昔はそれなりに名の知れた魔術師でなぁ、『紅の双雷』なんて呼ばれていたなあ。」

 

「あらあら、懐かしいわぁ」

 

「「「えっ!?」」」

 

「くっ紅の双雷!!!?10年前突然ふらりと戦場に現れて強力な雷の魔法で一瞬にして敵軍を全滅させてしまうというあの!?」

 

「「「えっ!?……えええぇぇぇぇぇぇ!!!?」」」

衝撃のカミングアウト、まさか俺の親がそんなデンジャラスな人たちだったとは……

 

「じゃ、じゃあ……」

 

「ああ、お前がドラゴンの神器を宿していて妖術や魔法が使えることも、ヴァーリが悪魔のハーフで白龍皇だということも、イッセー君が赤龍帝だということも、ちゃ~んと知ってるぞ。」

 

まじでか?ふとヴァーリを見ると、複雑な顔をしていた。すると父さんはヴァーリの頭を撫で

「心配するなヴァーリ、お前は誰がなんと言おうと俺たちの息子だ。」

 

「そうよヴァーリちゃん♪」

 

「……ッ!!!父さん…母さん…」

 

「……聞いていると凄まじい家だな」

あっバラキエルさん忘れてた

 

「お父様」

 

「あっああ、そうだな朱乃。話を戻すが、娘と妻を救ってくれた二人には是非ともお礼がしたい。何でも言ってくれ。グリゴリ幹部の権限を使ってできる限りのことをしよう。」

 

「だからそれ職権乱用…まぁいいや。そういうことなら一つお願いしたいことが…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「ほほう、これが修練の門か。」

 

「はい、とりあえず三日間お願いしたいのですが?」

 

俺はバラキエルさんに修練の門の使い方を説明した。修練の門は、発動すると、発動した者は中で修行が行われている間常に魔力を注ぎ込まねばならず、さらに門から一定範囲からは動けなくなってしまう。その役をバラキエルさんにやって貰おうということだ。

 

「わかった。喜んで承ろう。入るのは君たち三人でいいのかな?」

 

「私もっ!!私も行きたい!!!」

 

突然朱乃ちゃん(名前で呼んでとお願いされたので)がいっしょに行きたいと言い出した。

 

「朱乃ちゃん、中では修行のための試練がたくさんあって、入ったらそれを絶対に受けないといけないんだよ。それに外の1日は門の中では60日、三日ということは半年も修行するんだよ?」

 

「わかってる!私も竜也君やヴァーリ君といっしょに戦えるくらい強くなりたいの!!」

 

「朱乃!?半年もお父様と会えなくて平気なのか!?」

 

「うん、ぜんぜん」

 

ガーン!!!「…そ…そうか…」

 

「バラキエルさん、どうですか?今夜一杯?」

 

「グスッ……ありがとうございます…」

 

せっ…節ねえ、朱乃ちゃんわりと辛辣なのね、やっぱり母親譲りのSだな

 

「……ではいくぞ!ディメンジョンARM『修練の門』!!!」

 

すると俺たちの足元に門が現れ俺たちは落ちていく

 

「だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

「こういう入りかたなのぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」

上から俺、朱乃ちゃん、ヴァーリ、イッセーの順である

 

「ニャーーー!!!!」

 

「あっこらクー!!!?」

 

上でなんか聞こえたけどそれどころじゃあない。俺たちはどんどん下に落ちて行った

 

 



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秘密と家族

前回、俺とヴァーリとイッセーと朱乃ちゃんで修行のためにディメンジョンARM『修練の門』をくぐった(と言うか落下した)のですが…

「「「「イヤァァァァァァァァァァ!!!!」」」」

 

未だに落ちています。

 

「ウオォォォ死ぬ!!このままじゃ死ぬ!!修行始まる前に死ぬぅぅぅぅ!!!?」

 

「キャアァァァァァァ竜也くぅぅぅん!!!!!」

 

「おぉおお落ち着けみんな!!!ヴァーリは神器を出せ!!朱乃ちゃんは堕天使の翼を!!イッセーは俺に捕まれ!!」

 

俺たちはそれぞれヴァーリは『白龍皇の光翼』を、朱乃ちゃんは堕天使の翼を展開し、俺は魔法『翼』(エーラ)の翼を出してイッセーの手をつかむ。

 

「あぁ、助か「フニャー!!!」ブフォッ!!!」

 

安心して一息つこうとすると、俺の顔面になんか黒いものが覆い被さる。

 

「ニャー」

 

「クー、お前も来たのか?…しょうがない、頼むから暴れないでくれよ?」

 

俺はクーを頭に乗せ、俺たちは少しずつ地面に降りて行く。

 

「ようっ!!お前ら待ってたぜ!!!」

 

地面に降り立つとそんな声が聞こえ、振り向くと、そこには色の黒いオッサン、……と言うかまんまメルヘヴンのアランさんがいた。

 

「…あの、あなたは一体?」

 

朱乃ちゃんが恐る恐る尋ねる。

 

「俺の名はアラン。言うなればここの管理人だな。お前たち五人にはこれからあることをしてもらうぜ。」

 

アランさんは俺たちに説明する。あることって何だろうか?……て言うか五人?

 

「あの…アランさん、俺たち四人なんですけど?」

 

「あん?ちゃんと五人いるだろうが、ほれ。」

 

そう言ってアランさんは俺の頭にいるクーを指差す。

 

「いや、あの、クーは猫なんですけど?…」

 

「あん?だって妖怪だろそいつ?」

 

「「「「えっ!!!」」」」

 

アランさんの言葉に俺たちは驚く。クーが妖怪?悪魔に追われていた時点でただの猫じゃないとは思ってたけどまさか妖怪とは……ん?黒猫で妖怪……てことはまさか!!!?

 

「ほらお前、いつまで正体隠してるつもりだ?どのみちこいつらが実力をつけりゃ遅かれ早かれバレんだろうが。」

 

アランさんがそう言うと、クーは俺の頭から降り、ドロンという音とともに煙に包まれ、煙から出てきたのは着物を着た女の子だった。

 

「にゃはは…とうとうバレちゃったにゃ…」

 

女の子は苦笑しながら言う…これってやっぱり

 

「……クーなんだよな?」

 

「そうだにゃご主人様、これが私の本当の姿、元妖怪で主を殺して逃げたはぐれ悪魔の黒歌だにゃ。」

 

やっぱりそうか!?まさかとは思ったけど本当に黒歌だったとは…思えばなんでこんなあからさまなヒントを見逃したのか…

 

「クーがはぐれ悪魔?」

 

「そんな……」

 

「嘘だろ……」

 

みんなはクーの真実に驚きを隠せないでいた。そりゃそうだよな。驚くよな普通は

 

「クー、お前なんではぐれになったんだ?何か理由があるんじゃないのか?」

 

「兄さん、理由って?」

 

「眷属悪魔がはぐれになるのは二つ理由がある。一つは力に溺れ主を殺してはぐれになるのと、もう一つは無理やり眷属にされて逃げたことだ。……だけど俺はクー…黒歌が力に溺れたとは思えない。」

 

「どうしてそう思うにゃ?」

 

「お前が俺の家族だから…ってことじゃ理由にならないか?」

 

「……ッ!!」

 

「クーいや黒歌、俺はお前を信じてる。もしお前が苦しんでいるのはなら助けてやりたい、力になりたい……それに俺には相手に無理やり口を割らせる魔法があるしな、効果はドライクで実証済だ。」

 

「にゃ!!!?わ、わかったにゃ、本当のことを話すにゃ。」

 

そして黒歌は語り出した、その昔、白音と言う妹と途方に暮れていたところをある悪魔に出会い、身の安全を保証する代わりに黒歌が眷属になったこと、妹のために力を奮ったが、主は彼女ら姉妹の仙術に目をつけ白音にも手を出そうとし、彼女ら姉妹を最悪使い潰そうとしていたこと、妹を思い、主を殺し、自分は力に溺れたことにしてはぐれ悪魔になったこと、はぐれ狩りの悪魔に追われ、傷つき倒れていたところを俺に拾われ飼い猫のクーとして今まで過ごしてきたことを………

 

「このままじゃいけないことはわかってた、ここにいちゃいけないことはわかってた、でも出来なかった。ご主人様の私を撫でてくれる手が心地よくて、ご主人様、お父さん、お母さん、ヴァーリちゃんといる時間があったかくて、だけどもうバレちゃった。もう私はみんなといっしょには……」

 

「黒歌!!!」

 

俺は黒歌を抱き締める。

 

「ご主人様……」

 

「黒歌、俺はお前を絶対に拒絶しない。お前はもう十分に苦しんだんだ。これ以上辛い思いをしなくてもいいんだ。それにお前は俺たちの大切な家族だ。俺は家族を絶対に見捨てない!!!!!」

 

「ああ、兄さんの言う通りだ!!!」

 

「私も力を貸しますわ!!!」

 

「もちろん俺もだ!!!」

 

「み…みんな……」

 

すると黒歌は涙をポロポロ流し

 

「ご主人様…私みんなといっしょにいていいの?ご主人様のそばにいていいの?」

 

「当たり前だろう、お前は俺の家族なんだから……」

 

「ご主人様……ご主人様ぁ!!!うわあぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

黒歌は泣いた、これまでの苦しみを全部吐き出すかのように、俺たちはみんな黒歌を抱き締める。固く、固く、離さないように……

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「にゃはは、恥ずかしいところを見しちゃったにゃ…」

 

「気にするな、それだけ俺たちを信用してくれたってことだろう?俺は嬉しいよ?黒歌。」

 

「お~いお前ら終わったか~?」

 

すると向こうからアランさんが手を振りながらこっちに来る、あの人も気を使ってくれたんだろう。

 

「さてと、では改めてそちらの黒猫のお嬢さん、黒歌っつったか?お前さんはどうする?修行を受けるか?」

 

「にゃ、受けるにゃ、私もご主人様を守れるくらいに強くなりたいにゃ。」

 

「了解だお前も加わんな。……あと、俺にはあまり近づいてくれるなよ?」

 

「にゃ!!!?なんでにゃ!!!?」

 

「俺は猫アレルギーなんだよ!!!っとそれより、最初の試練が来たようだぜ?」

 

あっ、やっぱりそうなのか……て言うか試練?

俺たちはアランさんが指差す方を見ると細身の5体の鎧がガチャガチャと音を立てながらこちらに向かって来た。

 

「ガーディアンARM『リングアーマー』。とりあえずやつを一人一体倒してみな?」

 

なるほど、まずは腕試しと言ったところか

 

「んじゃ、ささっと終らすかねぇ!」

 

俺は雷の速さで鎧に近づき

 

「エレキナイフ!!!」

 

電撃をまとった手刀で鎧を真っ二つに切り裂いた。

 

「おお、すげぇ!!!」

 

「さすがは竜也君ですわ!!!」

 

「にゃはは、さすがだにゃご主人様!!」

 

「よっしゃ!俺たちも行くぜ!来い『赤龍帝の

籠手』!!!」

 

「俺もだ!来い『白龍皇の光翼』!!!」

 

「では私も!!!」

 

「やるにゃ!!!」

 

イッセーは『赤龍帝の籠手』で殴り飛ばし、ヴァーリは『白龍皇の光翼』で切り裂き、朱乃ちゃんは雷をまとった光の槍で貫き、黒歌は仙術で上がった身体能力で鎧を解体した。

 

「ほ~う、なかなかやるじゃねぇか?」

 

アランさんは感心したように言う。

 

「それで?俺たちはこれから何をするのですか?」

 

「待て待て、今説明する。」

 

するとアランさんはリングアーマーのいた場所に歩みより何かを拾い上げる。それは甲冑を模した銀の指輪だった。

 

「お前らにやってもらうのは宝探しだ。」

 

「宝探し?」

 

イッセーが言う。

 

「ああそうだ。お前らにはこれから二人一組でダンジョンに入ってもらう。ダンジョンの中には今みたいなガーディアンARMが徘徊しあらゆるトラップが仕掛けられている。お前たちにはその中に隠されたARMを探してもらう。」

 

「ARM?」

 

「そうだ、ウェポン、ガーディアン、ホーリー、ダークネス、ネイチャー、ディメンジョン、ゴーストなど数々のARMが隠されてある。3ヶ月の内により多く見つけたペアには特別ボーナスがあるぞ。」

 

「にゃにゃ!!!?なら私は竜也とペアになるにゃ♪」

 

「あっずるい!竜也君とペアになるのは私!!」

 

「残念ながらこいつはお前らとは別メニューだ。なんせ魔法だけでなく妖術に発電能力まであるんだ。よってこいつはお前らよりも難易度の高いダンジョンに入ってもらう。」

 

「そういうわけだ。悪いな二人とも。」

 

「にゃにゃ…それなら朱乃と組むにゃ。」

 

「しょうがありませんわね。」

 

「なら、俺はヴァーリとか…」

 

「よろしく頼むぜ?イッセー。」

「よっしゃ!ペアも決まったことだしそろそろダンジョンに転送するぜ!」

 

「おっとその前に……イッセーにヴァーリ、」

 

俺はイッセーとヴァーリにメモを渡す。

 

「……………兄さんこれって」

 

「おいおい…………」

 

『本気かこれは?』

 

『アジ・ダハーカ、お前の宿主はめちゃくちゃだな?』

 

『『『何を今さら』』』

 

「………とりあえず、終わったなら送るぞ?」

 

そうして俺たちは光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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共鳴と進化

イッセー、ヴァーリsaid

 

「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

あれから1ヶ月と10日、俺たちはダンジョンの中、巨大な石でできたゴーレムのガーディアン、『ブリキン』と戦っていた。

 

「ウィングスラッシュ!!!」

 

俺は風の魔力をまとった『白龍皇の光翼』でブリキンに斬りかかるが、せいぜい表面を軽く削る程度しかできない。

 

「おぉぉぉぉフレイムナックル!!!」

 

イッセーは炎の魔力をまとった『赤龍帝の籠手』でブリキンの胴体を殴るが、ヒビ一つ入らない。ちなみに、兄さんと魔法の練習をコツコツしていたことや、ダンジョンで手に入れたARMを使ってきたことで魔力が鍛えられたらしく、米粒程度しかなかった魔力は、まだ長続きしないがある程度は魔法を持続させられるようにまでなった。

 

「くそっ!!!まだ足りないのか!?」

 

『まだだ相棒!!!もっと神器と魔力をシンクロさせろ!!!』

 

今俺たちは戦いの最中、兄さんに手渡されたメモに書かれていたことを同時に実行している。それは俺たちの神器を自分専用に調整する事。兄さんの神器、アジ・ダハーカの封印された『魔源の三つ首甲』は兄さん専用に調整されたもの。それを俺たちの神器にも同じようにやれと言うのだ。それはアルビオン曰く、『これまで誰も考えつかなかったかなりぶっ飛んだこと』らしい。

 

「ッラアァ!!!」

 

俺は再び翼で斬りかかるが、やはり石の体はびくともしない。

 

「くそっ!!!これでもダメなのか!!!?」

 

『イメージしろ相棒、神器は使用者の思いに答える。思い描け!!!お前の理想の姿を!!!!』

 

俺の理想の姿……俺の技は翼による斬撃、だが俺の翼はこいつには歯が立たない。どうすれば……

 

「っ!!!?しまった!!!!」

 

するとイッセーがブリキンの腕に抑えつけられ動きを封じられた。そしてブリキンはもう一方の腕をイッセーに振りかぶる。っ!!?不味い!!!!俺はイッセーのもとへと飛ぶが…

 

「ぐはぁ!!!」

「!!!?ヴァーリ!!!」

 

俺はブリキンの腕に撥ね飛ばされてしまい、何度かバウンドして地面に落ちる。

 

「ぐあぁ……くそぉ!!!!」

 

このままじゃイッセーが潰される。そんなことはさせない!!!俺は再び飛ぶ。……俺の理想の姿…俺の翼ではやつを傷つけられない、もっと鋭く!もっと鋭利に!翼から全てを切り裂くような刃に!!!

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!俺の思いに答えろ!!!『白龍皇の光翼』ゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」

 

ズパァァァァァァン!!!!!!!

 

………そんな音がダンジョンに響き、ブリキンの振りかぶった腕が真っ二つに切り飛ばされた。

 

『………完成だ、相棒。』

 

見ると、俺の『白龍皇の光翼』の姿が変わっていた。羽の一枚一枚が、まるで鎌のように鋭い曲線を描いており、翼から漏れる光はまるで月光のようだ。

 

「これが俺たちの新たな姿、『白龍皇の月光翼』(ディバイン・ルナティックディバイディング)だ!!!!」

 

 

Saidend

 

 

イッセーsaid

 

 

 

「……すげぇ」

 

俺はヴァーリの新たな姿を見て思わずそう口から漏らした。『白龍皇の月光翼』…それがヴァーリの新たな力…

 

『相棒!奴らは至ったぞ!俺たちも負けてはいられん!!!!お前も思い描け!!!己の理想の姿を!!!!』

 

「わかってるさ!!!うおぉぉぉぉ!!!」

 

俺の理想の姿…俺の攻撃は炎の拳、もっと熱く!もっと力強く!全てを焼き尽くすような炎を拳に乗せて!!!

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!砕けろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

俺が籠手を振りかぶると大量の炎が溢れだし、俺はそいつで石の腕をおもいっきり殴る。するとやつの腕に何本も亀裂が入り、やがてがらがらと崩れ去る。

 

『……ふう、ギリギリ間に合ったようだな』

 

見ると、俺の『赤龍帝の籠手』の形が変化していた。どことなく炎を思わせる形となり、表面には何本もの黄色く輝くラインが入っており、それはまるで太陽のような模様になっている。

 

「こいつが俺たちの新たな力!『赤龍帝の太陽手』(ブーステッド・コロナギア)だ!!!!」

 

「やったなイッセー!!!」

声のした方を見ると、ヴァーリがこちらに向かって飛んで来た。

 

「っと!?喜ぶのは少し早そうだ!!!」

 

見ると、両腕を失ったブリキンがこちらに向かって来る。どうやら俺たちを踏み潰す気のようだ。

 

「いくぜヴァーリ!!!」

 

「おうさ!!!」

『Divide Divide Divide』

 

ヴァーリの翼から三回機械音が聞こえ、ブリキンの動きが以前に比べてかなり弱々しいものとなる。

 

「今だイッセー!!!」

 

「よっしゃ!!いくぜ!!!」

 

『Boost boost boost』

 

俺は三回倍加し、一気に解き放つ。

 

「うおぉぉぉぉ!!!バーニングドライブ!!!!」

 

俺は炎をまとった拳で勢いよく飛び込みブリキンの胴体に風穴を開ける。ブリキンは力なく倒れ付しARMに姿を変える。

 

「うおぉぉぉぉ!!!勝ったぜぇぇぇぇ!!!!」

 

「やったなイッセー!!!」

 

「ああ、やったなヴァーリ!!!」

 

俺たちは勝ったこととタツ兄の課題をやり遂げたことをお互いに喜びあった。

 

「というわけでこのARMは俺が貰う。」

 

「はぁ!!!?いやいや何でそうなるんだよ!!!?」

 

突然ヴァーリがそんなことを言う

 

「いやだって俺のサポートあってこその勝利だし」

「いや止め指したの俺だから!!!」

 

「先に課題をクリアしたのは俺だ」

 

『『やれやれ……』』

 

 

この後、小一時間ほど言い争った後、じゃんけんでブリキンのARMはヴァーリが持つことになった。……解せぬ

 

 



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脱出と復讐

「……………おや?」

「うん?」

 

「ありゃ?」

 

「あら?」

 

「にゃにゃ?」

 

「ようお前ら、3ヶ月間のダンジョン攻略終了だぜ。」

 

気がつくと俺や他のみんなは最初にいた荒野にいて、目の前にはアランさんがいた。

そうか、もう3ヶ月もたったのか。正直時間を気にしている暇もなかったからなぁ……魔力や妖力を封じたりそこら中避雷針だらけのエリアだったり、妖術を無効化したり魔力を吸収したり全身絶縁体のガーディアンが何体も出たり、上記+ボスクラスのガーディアンだったり、それら全部のせだったり………きついなんてものじゃなかった。いくらなんでもサービスし過ぎじゃありませんか?悪い意味で

 

「……何かタツ兄遠くを見て泣いてるんだけど、若干目も濁ってるし……」

 

「多分俺たちの想像を絶するような修行内容だったんだろう……怖くて聞けないけど……」

 

「にゃにゃ?かわいそうにご主人様、黒歌が慰めてあげるにゃ。い~こい~こにゃ~♪」

 

「あっ!?ずるい私も!!!」

 

そうして俺は二人に頭を撫でられる。……ああ、人の手ってこんなにあったかいんだね、黒歌の気持ちがわかった気がする。

 

「……ありがとう二人とも、なんか俺救われたよ……いやほんとマジで……」

 

「にゃにゃ!?ご主人様!?涙の量が尋常じゃないにゃ!!!?」

 

「竜也君!!!?」

 

「いやほんと何があったんだよタツ兄!!!?」

 

「いやなんか地獄と言うかいじめと言うか……そういえば二人とも俺の出した課題はどうなったんだ?」

 

まだ若干瞳に熱いものを感じるが、俺は二人に尋ねる。

 

「あっああ、それに関してはバッチリだぜ。見てくれ!!」

 

すると二人は神器を出す。ヴァーリの翼はそれぞれが三日月のような曲線を描いており、イッセーの籠手は太陽のようなラインの模様が入っている。

 

「これが俺たちの神器の新たな姿、『赤龍帝の太陽手』と」

 

「『白龍皇の月光翼』だ。」

 

これが二人の神器の新たな姿か。しかし、月と太陽か、やはり二天龍だけに対になるようになってるのかねぇ。

 

「……とりあえず集めたARMの集計をしたんだが…」

「にゃ!!!?そうにゃ!!勝った方はボーナスにゃ!!!」

 

「ったく現金なやつめ…集計結果だ!イッセー、ヴァーリペア18。朱乃、黒歌ペア32。そして竜也は108だな。」

 

「ひゃっ108ぃ!!!?」

 

「ドンだけ集めたにゃご主人様!!?」

 

いやだってねぇ、あんだけわらわら次から次へと出てくりゃそらこんな量になるわな……あ、なんかまた泣けてきた、ハハッ笑える

 

「おいっ!!!こんどは濁った目だけじゃなくて笑いながら泣いてるぞ!!!?」

 

「本当に何があったにゃご主人様!!!?」

 

「いや~どうもダンジョンのレベル調整を間違えたみたいでよぉ、想定してたのよりかなりハードなやつになったみたいだな。ワリイワリイ。」

 

は~ん間違い、なるほどねぇ通りで、ハハハハハハ…………………コロス

 

「いや~しかしよく生きて………あれ?」

 

そこまで言うとこのオッサンは固まる。その場にいる全員が目を丸く見開き驚愕している。そりゃ俺が急に何十人も増えれば驚くだろう。妖術「髪分身の術」自分の髪の毛を引き抜き息を吹き掛けることで髪の毛を自分の分身に変える。今なら60人くらいは作れる。さらに、何度も死ぬ思いをしたことでグルメ細胞にも覚醒したらしく、髪はすぐに生えてくる。

ある者は神器を出し、ある者は如意棒、ある者は電撃、ある者は体の一部を巨大化し、ある者はキントウン3号を呼ぶ。

 

「ま…待て!!落ち着け!!!話せばわかる!!!てかなんだその巨大ロボ!!!?」

 

『『『『『『『死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ

!!!!!!』』』』』』

 

「ギャアァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

 

その日、荒野にオッサンの断末魔が響き渡った

 



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資質と第六感

「スミマセンでした」

 

先ほどの問題発言のあと、このオッサンを集団リンチにしていたのだが、一時間したあたりでみんなからストップが入り渋々引き下がった。

 

「それで?俺たちは残りの3ヶ月間何をすればいいんだ?さっさと言えやマダオこらぁ!」

 

「……なんか俺の評価が段々下がっていってるんだが…まあそれは置いといて、お前らにはこれからはARMを使った修行をしてもらう。」

 

「?なんでARMなんだ?」

 

「いいか、ARMを使う際必要とされるのは魔力だけじゃない。持続させられるだけの精神力も必要なんだ。そしてそれは使えば使うほど体の中で練られ鍛えられていく。赤龍帝のボウズがいい例だな。」

 

「なるほど、通りで米粒程度の魔力しかなかったイッセーが魔法を維持できるようになったわけだ。」

 

ヴァーリが納得したように頷く。イッセーは不服そうだが、

 

「わかったならついて来な、次の修行場に連れてってやる。」

 

そう言ってアランは歩き出す。俺たちはそれについて行く。そこはまるで神殿のような場所で、中には5枚の石盤のようなものがあった。

 

「こいつは『割れずの門』お前らにはこいつをARMを使って砕いてもらう。いいか?割るんじゃない、砕くんだ。」

 

アランはそう言って葉巻を吹かし腰かける。…どこから出したその椅子?

 

「にゃにゃ、なら私から行くにゃん♪」

 

そう言って黒歌が前に出て着物の袖からARMを取り出す。

 

「ウェポンARM『ボールダークロー』にゃん♪」

 

すると黒歌の両手に石でできた巨大な爪が現れる。

 

「にゃん♪」

 

黒歌は石の爪で門を殴りつけ門には大量のヒビが入るが、門についた石像の顔が何か呪文を唱えると、門は元通り無傷の状態に戻ってしまった。

「にゃにゃ!?なんでにゃ!?」

 

「だから言ったろうが、割るんじゃなくて砕くんだよ。とりあえず、他の奴らもやってみな。」

そう言ってアランはまた葉巻を吹かす。

 

「…まあやるだけやって見るか。ウェポンARM『グリフィンランス』!!!」

 

俺はグリフィンランスで門を突き刺すが、砕くまでは行かず元に戻ってしまう。

 

「俺たちもやるか!ネイチャーARM『フレイムボール』!!!」

 

「ガーディアンARM『13トーテムポール』!!!」

 

「ネイチャーARM『エレクトリックアイ』!!!」

 

イッセーが炎の球を大量にぶつけ、ヴァーリが地面から出したトーテムポールをぶつけ、朱乃ちゃんが強力な雷を落とすが、やはり門は元に戻ってしまう。

 

「ちくしょーダメかぁ!!!」

 

「どうしたものか…」

 

「あらあら…」

 

「ムリゲーにゃん…」

 

みんなそう簡単にはいかないか。するとアランがこちらに歩いてきた。

 

「今のでお前らの資質は見せてもらった。とりあえず、今のところ見込みがあるのは魔源のボウズと……お前だな。」

 

するとアランはイッセーを指差しそう言う。

 

「おっ俺!?なんで!!!?」

 

イッセーはまさか自分が当てられるとは思わなかったのか、慌ててそう言う。

 

「いいか?この門には他の部分と比べて比較的もろい部分がある。そこをお前たちのARMとシンクロし、『第六感』(シックスセンス)を働かすことで見つけ出し、砕くことがこの修行だ。」

 

「第六感、ですか?」

 

朱乃ちゃんが尋ねる。

 

「ああ、例えば巨大な敵がいる。何をしても倒れない!だがシックスセンスで相手の弱点を感じることができたなら、小さな労力、少ない力で倒すことができる。無敵なやつなんかいない。まあ、気長にやるこった。時間はたんまりある。」

 

そう言いアランはまた葉巻を吹かす。シックスセンスか…やってやるか!俺たちは再びARMを構える。

 

アランsaid

 

 

 

それから18時間後

 

「よし!!!」

 

まずは魔源のボウズがクリアした。流石に早いな。

 

「よし、それじゃあその門をくぐりな。新たな修行場に続いている。」

 

「わかった!みんな先に行くぞ!!!」

 

「わかった!すぐに追い付く!!!」

 

「待っててにゃご主人様!!!」

 

そう言って魔源のボウズは門をくぐる。それからさらに4時間後…

 

「やったにゃ!!!」

 

「やりましたわ!!!」

 

黒猫の嬢ちゃんと堕天使のハーフの嬢ちゃんがクリアした。こいつは以外だった。恋する乙女というやつかねぇ。

 

「よし、二人とも合格だ。先に進みな。」

 

「にゃはは、今行くにゃご主人様♪」

 

「待っててね竜也君♪」

 

そう言って二人は門をくぐる。そしてさらにそれから3時間後…

 

「よし、成功だ!悪いなイッセー。」

 

「合格だ。門をくぐりな。」

 

白龍皇のボウズがクリアし、門をくぐって行く。すると赤龍帝のボウズが

 

「おい!オッサン!!!俺が見込みあるとか言ってなかったか!?どういうことだよ!!!?」

 

とかほざいてきた。

 

「知るか。俺は見込みがあるとは言ったが成功するとは言った覚えはない。あくまで資質の問題だ。まあ気長にやることだな。時間はたんまりある。」

 

「チクショーーーー!!!!!」

 

それから赤龍帝のボウズがクリアできたのは、結局開始から37時間経った後だった。

 

 




連載開始から一週間、見るとお気に入り数が100件となりました。正直驚いています。お気に入りしてくれた方々には感謝しきれません。これからもよろしくお願いいたします。


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結果と集大成

あれから俺たちは更なる修行に明け暮れた。ある時は断崖絶壁の頂上での精神統一。ある時は超巨大ガーディアンに全員で立ち向かい、またある時はだんだん足場が消えていく地獄のタイムアタックなど。

みんなこれまでの修行でかなりの力をつけた。中でも最も成長したのはイッセーだ。神器を展開した状態で複数のARMを使えるだけではなく、直感的に相手の弱点を瞬時に突き、複数の攻撃を見切るなど、アランの言った通りシックスセンスにおいては一番の精度だ。他のみんなも最初にくらべれば、見違えるような強さになった。そしてついに……

 

「よし!お前ら今までよく頑張った!修練の門での180日間の修行、今をもって終了だ。」

 

「よっしゃ終わったあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「なかなか濃厚な修行の日々だったな。」

 

「あまり実感湧かないけど…」

 

「あらあら、終わって見れば呆気ないものですわね。」

 

「私はもうこりごりにゃん…」

「ハハハ、本当によく頑張ったなお前ら。最初のころに比べれば段違いだ。そんなお前らにご褒美だ。この修練の門で手にしたARMを5つまでもって行ってもいいぞ。」

 

「うおぉぉ!!!?マジかよオッサン!!!やったぜ!!!」

 

イッセーだけでなくみんなも嬉しそうだ。やはり約半年も使ってきたものは愛着がわくのだろう。かと言う俺も内心喜んでいる。そして俺たちは持って行くARMを選ぶ。

 

「よし、全員選んだな。あと、朱乃と黒歌にはこいつだ。」

 

そう言ってアランは二人にそれぞれARMを手渡す。

 

「これは?」

 

「遅くなったがARM集め勝負のボーナスだ。それぞれ強力なガーディアンARMだが、使えばかなりの魔力を消費する。いざという時の切り札にしておきな。」

二人がARMを受けとると俺たちは光に包まれる。そして、再び目を開けるとそこは俺の家のリビングだった。

 

「朱乃ぉぉぉぉぉぉ!!!!!よく無事に帰って来てくれたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

すると帰って早々、朱乃ちゃんはバラキエルさんに抱きしめられた。

 

「お、お父様苦しい……ってどうしたんですかお父様!?何だかとてもやつれていますよ!!!?」

 

見ると、バラキエルさんは目にくまができ頬も若干こけている。まあ3日間不眠不休で魔力を送り続ければ当然か。

 

「みんなお帰りなさい」

 

「すごいじゃないか。3日前に比べて魔力の質も量も段違いだ!」

 

「あらあら、みんな頼もしくなって…」

 

「ただいま、父さんと母さん。」

 

「ただいま、」

 

「ただいま帰りました、お父様、お母様。」

 

「ただいまです。おじさん、おばさん。」

 

みんな無事に帰ってこれたことを喜んでいた。そんな中、黒歌は俺の後ろに申し訳なさそうにたたずんでいた。

 

「あら、竜也ちゃんその子は?」

 

母さんが黒歌に気がつき俺に尋ねる。

 

「そっその子はSS級はぐれ悪魔の黒歌じゃないか!?何でこんなところに!!!?」

 

バラキエルさんが声を荒げて言う。黒歌はさらに縮こまり、俺は黒歌の頭を優しく撫でる。すると黒歌は意を決したのか、前に出る。

 

「お母さん、お父さん、バラキエルさんもこれから私が言うことを聞いてほしいにゃん。」

 

黒歌は自身のことを話した。どうしてはぐれになったのか、なぜ我が家にとどまったのか。包み隠さずすべて話した。

 

「…まさかそんな事情が…」

 

バラキエルさんは驚愕していた。そして、もういないとはいえ、黒歌たちをおとしめた悪魔に嫌悪しているようだった。すると、黒歌は父さんと母さんの前に出て

 

「お父さん、お母さん、今まで騙してごめんなさい。こんな私だけど、これからもここにおいてくれませんか?」

 

…と頭を下げた。すると二人は黒歌を抱きしめ、

 

「黒歌、お前がただの猫じゃないことは知っていた。今さら何を遠慮する必要がある?お前はもう家の家族なんだから。」

 

「そうよ黒歌ちゃん、今まで本当に辛かったわね。でももう大丈夫よ。あなたはここにいてもいいの。」

 

「……ッ!?…お母さん、お父さん……」

 

うんうん、さすがは俺の両親だ。俺は黒歌の頭に手を置き、

 

「な?言っただろう?」

 

と笑いかけた

 

「…ッ!?うん!!」

 

黒歌も涙を流しながら笑った。

それから俺の両親の動きは早かった。黒歌をおとしめた悪魔を徹底的に調べ上げ、黒歌のはぐれとなった証拠とも言える数々の悪事の証拠を悪魔の上層部に叩きつけ、黒歌のはぐれ指定を解除させたのだ。まさか魔王直々に謝罪に来るとは思っても見なかったが…その際魔法少女の格好をした魔王様にえらく気に入られてしまった。その後、黒歌の雷門家としての戸籍を瞬く間に作り上げ、黒歌は正式な我が家の一員となった。そして、同居人といえばもう1つ……

 

「「「「「なんであんたがいるんだよ(ですか)(だにゃ)!!!!!!!」」」」」

 

そう、なんか知らんが修練の門の中にいたアランもこっちに来ているのだ。

 

「いや何、俺もこちらの世界に興味が湧いてな、しばらくいさせてもらうぜ?」

 

と、白飯を掻き込みながらアランは言う。…せめてなんか働けやマダオ!!!

と、まあ色々あったが俺たちの日常はこうして再び過ぎていくのだった。



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総督と決意

「ジャマするぜ~」

 

「ジャマするなら帰って~」

 

「ハイよ~…って何でだよ!!!?」

 

どうも、竜也です。黒歌の一件からやっと一段落ついたという時になんか金髪の胡散臭いオッサンがやってきた。

 

「で?あなたは一体何者ですか?」

 

俺は父さんと母さん、ヴァーリに黒歌、ついでにアランを呼びオッサンをリビングに上げた。ヴァーリと黒歌はやや警戒しているようだ。俺もだが、

 

「そう警戒してくれるなって。紅の双雷に白龍皇、元SS級はぐれ悪魔に魔源の禁龍をその身に宿し魔法に怪しげな妖術やARMとか言うものを操るやつとか、過剰防衛もいいところだぜ?」

 

「!!!?…本当に何者ですかあんたは?」

 

なぜこれほどまでに我が家の情報を……俺たちはより一層警戒の意図を高める。

 

「だから落ち着けって。もうそろそろ…」

 

すると玄関でチャイムが鳴る。

 

ガチャッ「すみません、急にお邪魔してしまい…」

 

そこにはバラキエルさんと朱乃ちゃんがいた。

 

「おっせーよバラキエル、危うく不審者と思われるところだったじゃねえか。」

 

「心配しなくてもあんたはもうとっくに不審者認定されてるよ。」

 

「うぐっ!!!」

ヴァーリと黒歌がウンウンと頷く。

 

「それで、バラキエルさん。この胡散臭いオッサンは誰なんですか?」

 

俺はバラキエルさんに尋ねる。

 

「ああ、この男はアザぜル。我らグリゴリの総督だよ。」

 

バラキエルさんはそう言ってあのオッサンを指差す。…一応上司なんじゃ…

 

「へぇ、この人があの…」

 

「お、俺のことを知ってるのかい?」

 

「自分の仕事は部下に押し付けて自分は趣味の研究三昧のプー太郎提督と名高いあの」

 

「いや誰がプー太郎だ!!!?誰が言ってるんだんなこと!!!?」

 

「まあ俺なんだけど」

 

「お前かよ!!!?大人に対して失礼だろうが!!!なあバラキエル。」

 

「大正解じゃないか。」

 

「上司を敬う心はねえのかお前はぁ!!!?」

 

「……それで?その堕天使総督殿が我が家にどう言った要件で。」

 

拉致が開かないので話を切り出す。

 

「ったく、後で覚えてやがれ…っとそうそう、要件だったな、単刀直入に言うぞ、お前らグリゴリに来る気はないか?」

 

アザぜルはそんなことを言い出した。なるほど要するにスカウトか。

 

「……その心は?」

 

「いいか?さっきも言ったがこの家はあまりにも強力な力が集まり過ぎている。バラキエルから聞いた話じゃ近所には赤龍帝までいてしかも和解しちまってるんだろう?それこそどこぞの上級悪魔にでも目をつけられかねん。黒猫の嬢ちゃんの件もあるしな。それならどこかの組織に身を置いた方が安全だろう?」

 

「あんたのところなら安心できると?」

 

「うちなら神器から始まり魔法にお前さんらの持つARMとやらの研究と鍛練も十分にできるぜ?というか俺が研究したい。なんだよ!?魔力があれば誰でも使える魔法のアイテムって!!!?興味深過ぎるわ!!!……それに、俺は基本的に戦争なんざ興味はねえ。日がな1日研究に没頭できりゃそれでいい。」

 

さらっと問題発言したなこのオッサン。どことなくアランと通ずるところがあるな。しかし、考えてみれば確かにあり得ることではあるな。下手すりゃそれこそ悪魔とドンパチやることになる。

 

「……俺、行こうと思う。」

するとヴァーリが突然そんなことを言い出す。

 

「にゃにゃ!!!?どうしてにゃ、ヴァーリちゃん!!!?」

 

「お前はそんなことを心配しなくてもいいんだ!!!」

 

「そうよ!!!あなたは私たちの息子なの!家族なのよ!!!」

 

「だからだよ。龍は力を呼び寄せる。俺がグリゴリにいれば、少なくとも皆には被害はあまり出ないと思う。それに、グリゴリっていうつながりがあれば、いざという時に皆を助けられる。だから俺は行くよ。」

 

「しかし……」

「いいんじゃねぇか?そいつの言い分は最もだ。いざって時頼れるもんがあるのは悪いことじゃねぇ。それに、これはヴァーリ自身が決めたことだ。息子の心意気を無下にするもんじゃねえよ。」

 

渋る父さんにアランがそう言う。あんたもたまには良いこと言うな。

 

「ヴァーリ、俺はお前の決めたことにどうこう言うつもりはない。お前はお前で信じたようにやればいいさ。それに、別に今生の別れって訳でもない。いつでも気が向いたら帰って来ればいいさ。お前の帰る家はここなんだから。」

 

「ッ!?…ああ!!!」

 

こうしてヴァーリはグリゴリへ行くことになった。この後イッセーにもこのことを話したのだが、案の定猛反対した。しかし、ヴァーリの決意といつでも帰って来れることを聞き、渋々納得した。

 

「じゃあなヴァーリ。また帰って来いよ。」

 

「行ってらっしゃいヴァーリちゃん。体には気をつけてね?」

 

「いつでも帰って来いよヴァーリ。」

 

「また一緒にご飯食べようにゃん。」

 

「グズッ、離れてても俺たちは親友だからな!!!ヴァーリ!!!」

 

「まあ、気いつけてな。」

 

「みんな……行ってきます!!!」

 

「そうだヴァーリ、ただ行かせるだけじゃ癪だから………ゴショゴショゴショ」

 

「………なるほど、了解。」

 

こうしてヴァーリはグリゴリへと旅立った。

 

「……なあタツ兄、最後にヴァーリに何をささやいたんだ?」

 

イッセーが俺に尋ねる。

 

「ああ、定期的にグリゴリでの研究レポートやら情報やらをこちらに流してもらうよう頼んだんだよ。」

 

「…………タツ兄、あんたって人は本当に…」

 

なんかみんなにドン引かれた……何で?



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完治と無限

ヴァーリがグレゴリに身を置いてからかれこれ半年がたった。あの後、グレゴリに所属しても別に通学は続けていいらしく、学校で会って拍子抜けしたのはイッセーの談だ。そして深夜俺の夢の中で俺は久しぶりにオオクニヌシ様に再会した。

 

「いやいや、遅くなってしまいすまんのう。ちと時間はかかったが、無事わざぼーは治ったぞ。」

 

そう言うとオオクニヌシ様は俺にわざぼーを手渡す。

 

「よう、久しぶり」

 

わざぼーは以前と変わらず無駄に渋い声で俺に話しかける。

 

「いや~久しぶりに見ると本当にブッサイクな顔してんなお前」

 

「再会の第一声がそれか!!!?」

 

「ハハハ、冗談冗談、また会えて嬉しいよわざぼー。」

 

俺たちはそんな軽口をたたき合う。良かった。本当に。

 

「オオクニヌシ様、わざぼーを治していただき、ありがとうございました。」

 

「いやいや、これぐらい儂のお主にしでかしたことに比べれば大したことではないよ。それと、わざぼーを治している時、他の神にどやされてのう。世界観を壊しかねないものを持たすなとな。そういう訳でわざぼーにはいくつかの制限がかかってしまった。すまないのう。」

 

「いえいえそんな、治していただいただけでもありがたいことですから。それで制限とは?」

 

「うむ、まず世界を壊しかねないような技は使えない、次に生命の創造や死者の蘇生などの生命の理に反することもできん、そして最後に1日に創造できる技は10までじゃ。」

 

「なるほど、わかりました。それと、わざぼーが治ったということは、修練の門は返却するべきでしょうか?」

 

「いや、わざぼーの力をだいぶ削ったのでな、そのまま持っていてかまわんよ。」

 

すごいなこの人(人じゃないけど)サービスし過ぎじゃありませんかね?

 

「いやいや、前にもゆうたが儂はお主のことを気に入っているでな、これぐらい軽い軽い。」

 

「いや、さらっと心読まないでくださいよ。……ともかく、ありがとうございました。」

 

「かっかっかっ、気にするな。さて、そろそろ目覚めるころじゃろう。ではまたな。」

 

そう言うとオオクニヌシ様は光の中に消えて行き、俺は目が覚めた。そして手にはわざぼーが握られていた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

『へぇ~、良かったじゃないか。』

 

その後、学校も終わり俺は家でヴァーリに定期通信という名の情報の横流しをしている。しかしアザぜルは本当に研究三昧なんだな。部下の苦労が目に見える。

 

「それで、どうなんだそっちは?」

 

『まあ悪くはないよ。みんないい人?だし、アザぜルも不器用ながら良くしてもらってるし、まるで二人目の父さんみたいで……これって浮気かなぁ?』

 

「お止め、…まぁ案外楽しそうで良かったよ。じゃあまたな。」

 

『ああ、また電話するよ。』

 

そして俺は電話を切る。さて、これから何をするかなぁ。部活も終わったし…ちなみに俺は料理部をやっている。

 

「……コンビニでなんか買うかな。」

 

そうして俺はコンビニに歩く。入るとちょうど中華まんの100円セールがしていたので、肉まんを10個ほど買って行った。そして家に帰る途中……

 

「お前、何?」

 

いきなりである。目の前に幼女が現れた。ゴスロリのような服を着ているがこの服、前が全開で胸には×印のテープが貼っているだけという、なんとも卑猥な格好だった。そして今の季節は冬、見てるこっちが寒い。俺は自分の着ているコートを彼女にかけた。

 

「何?」

 

「いや、見てて居たたまれなくなったから、温かいだろう?」

 

「ん、温かい。」

 

彼女はそう言ってコートにくるまる。しかし、この子は一体?

 

『おっお前は!?』

 

「アジ・ダハーカ久しい。」

 

「?ダハーカ、この子を知ってるのか?」

 

『ああ、こいつの名はオーフィス、無限の龍神(ウロボロスドラゴン)だ。』

 

無限の龍神、この世界の頂点グレートレッドの次に強いという……というか俺、最近原作知識薄くなってきたな。まあ、といってもアニメとWi○i○ed○aだけなんだけど……

 

「……とりあえず、そこのベンチに座ろうか?」

 

「ん、わかった。」

 

俺たちはベンチに腰掛ける。見るとオーフィスは俺の肉まんの袋を興味深そうに見ている。

 

「食べるか?はい。」

 

「ん、モキュモキュモキュ、ゴクン……美味。」

 

「それは良かった。そういえば自己紹介がまだだったな。俺は雷門竜也。少し規格外な一応人間だよ。」

 

『相棒は少しではすまないだろうに…』

「我オーフィス、無限の龍神、我、竜也から不思議な力感じた。我の無限にも似た力、我その力借りたい。」

 

「俺の力を借りて何がしたいんだ?」

 

「我、次元の狭間で静寂を得たい。だけど次元の狭間にはグレートレッドいる。我、グレートレッド倒して静寂を得たい。」

 

「それで?静寂を得たら何をするんだ?」

 

「何もしない。眠るだけ。」

 

「ふ~ん、それはもったいない。」

 

「?」

 

「いいかオーフィス、世界には色んな楽しいことや美味しいものがある。それを知らずにただ眠るだけなんてもったいないだろう?」

 

「?…我、わからない。」

 

「ならオーフィス、俺と一緒にいるかい?俺と一緒に居れば楽しいことや美味しいものをたくさん味合わせてやるぞ?」

 

「我、竜也と一緒に居れば、楽しいことや美味しいもの味わえる?」

 

「ああ、もちろん。」

 

「わかった、我、竜也と一緒にいる。」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「という訳で連れて来た。」

 

「我、おかわり。」

 

「はいはい、たくさん食べてね、オーフィスちゃん。」

 

「ハッハッハッハッ、まさか無限の龍神を拾ってくるとは、さすが我が息子!」

 

「へえ、こいつがねえ。」

 

「……流石ご主人様、規格外すぎるにゃ。」

 

こうして、我が家に新たに無限の龍神が加わった。



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踏み台と蝿

今回は少し長くなりました。


早いもので、オーフィスが我が家にやって来てから10日が経った。俺は今日の料理当番(基本的には母さんが作るのだが、土日は俺が作る)なのでオーフィスを連れて買い物に出掛けている。ちなみに、今のオーフィスは母の提供でゴスロリを着ている。

 

「オーフィス、何か食べたいせものはあるか?予算の範囲内で出来る限りのものは作るぞ。」

 

俺は俺と手をつないで歩くオーフィスに話しかける。

 

「我、卵ハンバーグを所望する。」

 

「半熟卵の乗ってるやつか?それともゆで卵の入ったやつか?」

 

「半熟卵乗せ」

 

「了解っと、となると必要な材料は豚ひき肉と玉ねぎにそれから………」

 

俺たちは料理に必要な材料とデザートに作るプリンの材料を買って、俺はオーフィスを肩車して帰路につく。

 

「どうだったオーフィス、この10日間は?」

 

「ん、我今まで知らなかったこと、たくさん知った。ママと竜也の作るごはんはとても美味しい。」

 

オーフィスは本当によく食べる。この小さな体のどこに入るのかってくらい。

 

「黒歌と一緒にお風呂に入って頭を洗ってもらってくすぐったかった。」

 

黒歌も、最初はオーフィスにおっかなびっくりだったけど、今では本当の姉のように接している。彼女の本当の妹とも、いつか和解できるといいな。

 

「時々来るヴァーリ、イッセー、朱乃とゲームして、初めて何かで負けた。だけど今はもう負けない。」

 

ヴァーリとイッセー、朱乃ちゃんも最初オーフィスのことを話したらかなり驚いていたが、今ではすっかり和解している。(ドライクとアルビオンは複雑そうだが、)

 

「アランとは昼間ゲームして、たまに修行してやるけどすぐに負ける。」

 

ふーん、たまに見ないと思ったらそんなことしていたのか。まあ、相手が無限の龍神じゃな。

 

「竜也に頭を撫でてもらったり、手をつないだりするとなんだかとても温かい。」

 

オーフィスは俺に何かとくっついて来る。まあ、一緒にいるってゆう約束のつもりらしいが、手をつないでいったのも彼女の要望だ。

 

「パパは………特にない。」

 

父よ………強く生きろ

 

「みんなといるとなんだか胸がぽかぽかする。こんな感覚は今まで感じたことがなかった。」

 

オーフィスは片手を胸に当てて言う。

 

「そうかい、だけど悪い気分じゃないだろう?」

 

「ん、悪くはない。」

 

そう言ってオーフィスは俺の顔を覗きこむ。いまだに顔は無表情だが、いつか彼女が心の底から笑顔になれる日が来るだろう。

 

「おい!お前!!!」

 

すると、なにやら金髪の男に呼び止められる。年はイッセーくらいかな?

 

「お前!何でオーフィスと一緒にいや

がる!!!」

 

どうやらオーフィスを知ってるようだ。前オーフィスが言っていた渦の団(カオスブリゲート)とかいう奴らか?

 

「オーフィス、あいつ知ってるか?」

 

「知らない、渦の団でも見たことはない。」

 

どうやら違うらしい、それならなぜオーフィスのことを……

 

「……あんた何者だ?何で渦の団でもないやつがオーフィスのことを知っている?」

 

「何者だぁ!?それはこっちのセリフなんだよ!!!!」

 

するとやつは空間から何本もの剣を打ち出した。……おいおいこんなところで

 

「オーフィス!!!」

 

「ん、もう人払いの結界ははった。ぶい」

 

「グッジョブ!!!ハンバーグ大きめにしてやるよ!ウェポンARM、エレクトリックフリスビー!!!ゴーストARM、ゴーストテイル!!!」

 

俺は雷撃を放つ何枚もの円盤と体から生やした漆黒の刃の尾で、剣を次々と打ち落とす。

 

「ARMだと?お前やっぱり転生者か!!?」

 

「ふーん、てことはお前もそうなのか。」

 

「ちっ!余計なことしやがって!!!せっかく原作介入してイッセー消してハーレム作ろうと計画してたのによお!!!!」

 

………あん、こいつ今なんて言った。イッセーを消す?

 

「……おい、その消すってのは殺すって意味か。お前、人殺すって意味がわかってるのか?」

 

「はぁ!?お前まさか情でも移ったの!!?こんなもん所詮架空の世界だろうが!!!こいつらは元々空想の住人だ!!!!んなもん知ったことかよ!!!!ギャハハハハハハ!!!!!!」

 

……ああ、ダメだ。出来れば穏便に済ませたかったけどもう我慢ならん。

 

「……ふざけるな。」

 

「は?」

「ここにいる皆は生きてる!!!架空なんかじゃない!!!!みんな血が通って心があってちゃんと生きてるんだ!!!それにイッセーは俺の弟分だ!!!!イッセーに手ぇ出す気なら容赦しねえ!!!!!!」

 

久しぶりだなこんなに怒りを感じたのは、こいつは絶対許さない!!!!

 

「ケッやってみろよ!!!この俺の『王の財宝』(ゲートオブバビロン)を破れるもんならなぁ!!!!!!

 

するとやつはさらに多くの剣を打ち出す。ゲートオブバビロン……確か異空間にしまってある財宝を取り出すとかそんなんだったかな?Fateは見たことないからよくわからん。

 

「ともかく!厄介なことこの上ないな!!!!風雷鎌鼬!!!!!!」

 

フリスビーとゴーストテイルだけでは間に合わないので、俺は風雷鎌鼬の雷の刃の嵐で剣を打ち落とす。

 

「ちっ!こんどはトリコのブランチかよ!!?しゃらくせぇ!!!!一気に決めてやる!!!!」

 

するとやつは黄色い本を取り出す。

 

「出番だ!!!やっちまえベルゼブブ!!!!」

 

「やれやれ、致し方ありませんね。悪く思わないでくださいよ。」

 

するとそこに背中に羽虫の羽の生えたペンギンのような生物……と言うか、よんでますよ、アザゼルさんのベルゼブブ優一だった。ということは……不味い!!!

 

「食らいなさい!」

 

するとやつは目から怪しげな波動を放つ。不味い!!!!やつの能力の一環である強制排便。生物に強制的に便意をよもおさせるある意味恐ろしい能力だ。便意に耐えながら戦うとか冗談じゃない。

 

「防がせてもらう、ホーリーARMイージス!!!」

 

俺は巨大な盾を出現させる。ホーリーARMの中でも屈指の防御力を持つこのARM。俺の予想は当たり、ベルゼブブの呪いを防ぐことに成功する。

 

「ほう、私の呪いを防ぎますか?」

 

「ここは勝ちに行かせてもらう。卑怯とはいうなよ!!!ディメンジョンARMサイコスペース!!!!」

 

すると俺たちは緑色のドームに包まれる。

 

「なっなんだこりゃあ!!!!?」

 

「サイコスペース、この中ではARMを発動させた者以外は強制的に魔力が二分の一になる。」

 

「なにぃ!!!?」

 

「ほほぅ、やりますねぇ。」

 

「感心してんじゃねぇよクソ鳥!!!とっととなんとかしやがれ!!!」

 

「はぁ!!?嘗めた口きいてんじゃねぇぞクソガキ!!!グリモアがなけりゃテメェなんざ用はねぇんだよ!!!」

 

どうやらベルゼブブは彼が持ち主というのは不服らしい。まあ、お互い性格的に会わないだろう。

 

「オーフィス、あのペンギンみたいなやつを相手してくれ。」

 

「ん、了解。」

 

そう言ってオーフィスはベルゼブブに向かって行く。

 

「おや?お嬢さんが相手ですか?誰であろうと手加減はしませんよ。食らいなさい!」

 

ベルゼブブはオーフィスに呪いを放つがオーフィスは何ともない。

 

「な!!!?ど、どうやら少し侮っていたようですね。ですがもう油断はしませんよ!!食らえ!!!!」

 

ベルゼブブは再び呪いを放つがやはりオーフィスは何ともない。

「な、なぜだぁぁぁぁ!!!?なぜ私の呪いが効かない!!!?」

 

「ああ、オーフィスはトイレいかないからな。」

 

「ん、我トイレいかない。」

 

流石は無限の龍神、生物の概念を越えている。

 

「そっそんなバカな!!!?排泄行為をしない生物など居るわけが……!!!!」

 

ベルゼブブは自分の呪いが効かないことに激しく動揺している。

 

「クソ鳥!!!何やってんだ!!!!」

 

「隙ありだ。」

 

「な!!!?」

 

「食らいな!!!ライト版スターライトブレイカー!!!!!!」

 

「グアァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

これぞ俺が『魔源の三つ首甲』の千の魔法を司り新たな魔法を創造する力を用いて編み出した新必殺技スターライトブレイカーである。ぶっちゃけパクりだが、硬いことはいいっこなし。威力は軽めにやったが、こいつを吹き飛ばすには十分な威力だ。

 

「殺しはしない。お前にはその価値もない。」

 

俺は倒れ伏すやつにそう言葉を投げ掛ける。

 

「!!!?……ふざけるなぁぁぁぁ!!!!!!」

やつは苦し紛れに剣を打ち出し、俺は難なくそれをはじく。弾いた剣は弧を描きながら飛んでいき……

 

「あ」

 

グリモアに刺さった

 

「あ、ああ、あぁぁアァァァァァ!!!!!!!!!!!!」

 

するとやつの体がベキバキと音を上げながら変わっていき、大きさもだんだんと縮み、そこにはもはや人はおらず、彼のいた場所から一匹のハエが飛んで行った。

 

「やれやれ、どうやら彼の出した剣が刺さったことでグリモアを破棄したと認識されたようですねぇ。」

 

いきなり聞こえた声に振り向くと、いつの間にか俺の顔の真横をベルゼブブが飛んでいた。

 

「いやはや、あなたには感謝していますよ。あんなクソ野郎にこれから先も使われるなんてゴメンでしたからねぇ。」

 

彼がハエになったことに一つも残念がらないベルゼブブ。よっぽど不満だったのだろう。

 

「だろうな。こうなると哀れに思うが自業自得だし、それで?お前はこれからどうするんだ?」

 

「そうですね、とりあえず新しい契約者でも探しましょうかね。なるべくカレーの上手い。」

 

「なら俺と契約するか。こう見えて料理の腕には自信があってね。」

 

「ん、竜也のカレーは絶品。」

 

「ほほぅ、あなたほどの実力者なら私の契約者としての資質は十分でしょう。わかりました。あなたと契約するとしましょう。」

 

こうして、俺は新たにベルゼブブのグリモアを手に入れ、今夜のメニューは卵ハンバーグカレーになった。ベルゼブブには「クソンメェェェェェェ!!!!!!」と絶賛された。

……そういえば、結局あいつの名前聞いてなかったな。今さらどうしようもないけど



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旅行と布石

冬休みが中盤に差し掛かったある日、俺たちは部屋でカーレースゲームをしていた。

 

「突然だけど、みんなでイギリスに旅行に行こうと思う。」

 

俺はゲーム機を置いてみんなに言った。

「……本当に突然だな。」

 

ヴァーリが同じくゲーム機を置いて俺に言う。

 

「いやな、久しぶりにお前も帰って来た訳だし、みんなで久しぶりにイリナに会いに行こうと思ってな。」

幼少期、俺とヴァーリとイッセーがよく遊んだイリナは今イギリスのエクソシストの養成所にいるらしい。

 

「確かに俺も会いたいけど、俺は悪魔、朱乃ちゃんは堕天使のハーフだぜ?昔はやり過ごせたけど今会ったらバレるんじゃないか?」

 

ヴァーリが俺に尋ねる。

 

「心配するな、こんなこともあろうかと、俺とアザゼルとで共同開発したこの指輪を着ければ悪魔や堕天使の気配を完全にシャットアウトできる。さらに言語翻訳機能付き!」

俺は懐から指輪を取り出しみんなに見せる。

 

「あっ、ちなみにイリナパパ含むみんなの親には了承済みだ。」

 

「「「「根回し早!!!?」」」」

 

「それとベーやんは留守番な。」

 

「ええっ!!!?」ガビーン

 

「我は?」

 

オーフィスが俺の袖を引いて尋ねる。……可愛いと思ってしまった俺は悪くないと思う。

 

「オーフィスは蛇に変身したならいいよ。」

 

「ん、わかった。」

 

心なしかパアァという効果音が聞こえた気がする。……言っておくが、俺はロリコンではない。フェミニストだ。子供好きの

「納得いくかこるぁ!!!何で私は駄目でそいつはいいんじゃぁ!!!!ひいきだ!!!差別だ!!!悪魔にも人権はあんだぞおんどりゃぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「うるさい」バキッ

 

「ペケポン!!!?」

 

ベルゼブブを黙らせとりあえずその日は解散となった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

あれよあれよという間に時間は過ぎ、現在俺たちはイギリスの空港に到着した。

 

「おーい!」

 

声のした方を見ると、数年ぶりのイリナとそのご両親がいた。

 

「ようイリナ、しばらく見ないうちにずいぶん女らしくなったな。」

 

「久しぶり、イリナ。」

「元気だったか?」

 

「うん!三人とも久しぶりだね!みんなにもらったプレゼント大事にしてるんだよ?」

 

そう言うとイリナは俺たちの挙げたリボン、ブレスレット、ペンダントを見せた。大事に着けているようだ。

 

「にゃにゃ、一応はじめましてかニャ?雷門家に養子としてお世話になってる黒歌にゃん♪」

 

実は黒歌は飼い猫のクーだった時に会っているのだが、イリナは知るよしもない。

 

「はじめまして、姫島朱乃と申します。三人には良くしてもらっています。」

 

「二人ともはじめましてだね!二人のことは竜也君から聞いてるよ。」

 

どうやら難なく打ち解けたようだ。流石女の子。

 

「やあみんなよく来たね。これからよろしく頼むよ?コソッ君たちのことはイリナには秘密にしているから安心したまえ。」

 

イリナパパさんが話かける。ちなみに彼は俺たちのことは知っている。曰く、「闇にいる者でも、それが絶対に悪とは限らない。」だそうだ。なかなかできた人間だと思う。ちなみに俺たちは紫藤家にホームステイすることになっている。

 

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。」

 

「「「「よろしくお願いします。」」」」

 

「あらあら、じゃあ早速家に向かいましょうか?」

 

イリナママさんにつれられて俺たちは紫藤家に向かう。こうして、俺たちのイギリス旅行は始まった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ーーー深夜、イギリスのとある森の中

 

「ギャアアァァァァァァ!!!!!!」

 

「キャハハハハハ!!!!!!汚物は消毒ってね!!!!」

 

闇の中血しぶきが上がり、怪物の断末魔と白髪のエクソシストの甲高い笑い声が響いた。

 

「ほほぅ、噂に違わぬクレイジーっぷりだな、フリード・セルゼン君?」

 

「あぁん?誰ですかぁ?」

 

フリードが声のした方を見ると、木の枝に自分と近いくらいの年の男が腰掛けていた。

 

「俺かい?俺は雷門竜也。ちょっと規格外な一応人間だよ。」

 

声の主、竜也はあっけらかんと答える。

 

「ふ~ん、それで?その規格外さんがおれっちに何の用ですか?」

 

フリードもこれまたあっけらかんと返す。

 

「な~に、巷で噂の天才エクソシストがどんなものかと拝見しに来た所存だよ。」

 

「ほほぅ、そりゃご苦労♪で?おれっちフリード・セルゼンの腕前はその規格外さんのお眼鏡にはかかったのですかな?」

 

「まあね、なかなかいいものを見せてもらったよ。だけど俺ほどではないけどね?」

 

そう言って竜也はあからさまに挑発した態度をとる。

 

「……へえ~、じゃあその腕前、是非とも見せてもらおうじゃない、の!!!!」

 

フリードはそう言うと光の剣を一瞬で取りだし竜也に斬りかかる。

 

「流石に速いね、………だけど俺には遅い。」

 

そう言うと竜也は雷の速さでフリードに接近し光の剣を蹴り飛ばす。

 

「エレキナイフ&ゴーストテイル。」

 

竜也は雷をまとった手刀をフリードの首に、ゴーストテイルを眉間に突きつける。

 

「……おいおい冗談だろ……あんた本当になにもんだよ。」

 

フリードは未だ笑ってはいるが、冷や汗をだらだらと流している。

 

「だから言ったろ?お前の腕前を見に来たってね。……さて、そんなフリード君に提案だ。」

 

「提案?」

 

「……お前さん、さらに強くなる気はないかい?」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「……兄さん、二日間もどこ行ってたのさ?」

 

「いやぁなに、なかなかいい拾い物をしたもんでね?」

 

「?」

 

 




という訳で、フリード君主人公と遭遇です。彼の目的は一体何か?次回をお楽しみに


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友達と約束

とある協会の聖堂の奥、椅子に鎮座する一人の少女がいた。彼女の名はアーシア・アルジェント、この協会の“聖女”である。彼女は生まれた時から聖女だった訳ではない。ある日、協会につれ込まれた怪我をした子犬を介抱しようとしたところ、彼女の手から淡い光が灯り、子犬の怪我を治したのである。彼女の宿す神器『聖母の微笑』(トワイライトヒーリング)、その力に目覚め子犬を癒したのだ。それ以来、彼女は協会で聖女として奉られるようになり、協会には多くの信者が訪れるようになった。責任感の強い彼女は、その事を誇りに思っていたが、同時に寂しくもあった。自分も同年代の子供たちのように友達を作って一緒に遊んでみたいと思うようになった。

 

「ーーわたしは友達を作ってはいけないのでしょうか………」

 

ふと何気なく漏らした声

 

「いやいや、そんなことはないさ。それはこの世の誰もが持つ当選の権利だ。」

 

その声に答える者がいた。

 

「えっ!?だっ誰ですか!?どこにいるのですか!?」

 

「ははは、ここだよお嬢さん。」

 

声のした方を見ると、協会の窓に腰掛ける一人の少年がいた。年は自分と同じか一つ二つ上くらいだろう。

 

「はじめましてお嬢さん。俺の名は雷門竜也。ちょっと規格外な一応人間だよ。よろしくどうぞ。」

 

「あわわっ!!こっこれはご丁寧に、わたしはアーシア・アルジェントと申します。」

 

相手の自己紹介に律儀に返すアーシア。彼女はやや天然であった。

 

「これはどうも、ではアーシア・アルジェントさん。あなたのその友達が欲しいという夢、僭越ながらこの俺が叶えて差し上げましょうか?もし叶えて欲しいならば、俺の手をとってください。」

 

竜也は窓から飛び降りアーシアの前で膝を折り彼女に手を差し出す。

 

「……本当に……本当に叶えてくれるのですか?こんなわたしの願いを……」

 

恐る恐る彼女は尋ねる。

 

「ええもちろん。我が持ち得る力全てを使って。」

 

「……なぜ、そこまでわたしのことを?」

 

「強いて言うなら、あなたのその健気さに心を打たれた…とでも言うべきかな?さっきも言ったけど、友達を作るのは誰もが持つ当選の権利だよ。責任や義務は確かに大事だけど、何も全て一人で背負うこともない。苦しみを分かち合う、そんな人も人生には必要なのさ。」

 

いつの間にか素に戻っている竜也だが、アーシアはそんな彼がとても輝いて見えた。何者にも縛られない自由な心、だがその心に宿る芯の通った覚悟。ーーーこの人ならきっと自分の願いを叶えてくれる。理由はわからないが、そんな確信が持てた。

そして彼女は手を取った。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「という訳で連れて来た。」

 

「あっアーシア・アルジェントです!!よろしくお願いましゅっ!!!……あうぅ…」

 

俺の連れて来たアーシアの登場に唖然とする一同。

 

「……二日間空けてまたいなくなったと思ったら……」

 

「自由だにゃ~ご主人様」

 

「あらあら、流石ですわね♪」

 

「イギリスに来てもぶれないなタツ兄……」

 

我がファミリーはもう慣れたものだ。

 

「たっ竜也君!!?不味いよ聖女さんを連れ出したりしちゃ!!!それと黒歌さん!?竜也君がご主人様ってどういうこと!!?」

 

「大丈夫だって、代わりにたんまり寄付金置いて来たから、それと黒歌のそれには触れない方向でよろしく。」

「どこにそんな金があったんだよタツ兄?」

 

「知ってるか?株ってわりと単純なんだぜ?」

 

「その金には血も汗も何も染み込んでないぞタツ兄!!!?」

 

イッセーが俺にツッコむ、最近ツッコミのレベル上がったなお前。

 

そんなこんなで俺たちはアーシアと共に町に繰り出した。まずはショッピングモールでアーシアの服を選ぶ。

 

「あっあの、どうでしょうか?」

 

「あらあら、とても可愛らしいですわアーシアちゃん。」

 

「うん、似合ってるぜアーシア。これにしようか。」

 

「でっでも、これってお高いんじゃ……」

 

「大丈夫だって、余裕はあるから。」

 

その後、俺たちはショッピングモールでアーシアと思う存分遊んだ。アーシアは本当に楽しそうだった。そしてその晩、俺の作った夕食をご馳走した。

 

「はうぅ、とっても美味しいです!」

「本当!すっごく美味しいよ竜也君!!!」

 

イリナもアーシアも気に入ってくれて何よりだった。そんな日々がしばらく続き、そしてとうとう俺たちが日本に帰る日。

 

「じゃあなイリナにアーシア。また会おうぜ。」

 

「またな、二人とも」

 

「元気でな、」

 

「とても楽しい日々でしたわ。」

 

「またにゃん♪」

 

「うん!絶対また会おうねみんな!!!」

 

「はうぅ…皆さんとお別れするのは寂しいですぅ……」

 

俺たちは空港で別れの挨拶をしていた。俺はアーシアにとあるものを渡す。

 

「…?これは何ですか?」

 

「盾のブローチ?」

 

「これはお守りだよ。もし危ない目にあったらこれを握って強く願うんだ。きっと助けてくれるはずだよ。……それとイリナ」

 

「なに、竜也君?」

 

「これから先、何があろうとアーシアの味方でいてあげてくれ。」

 

「…?うん、わかったよ!」

 

俺は最近、原作知識も大分薄れて来た。今では、これから先、アーシアにはとても過酷な運命が待ち受けていることくらいしかわからない。だからせめて、彼女の力に成れるようにしよう。

 

「じゃあな、二人とも。またいつか……」

 

「うん!またねみんな!!」

 

「皆さん!またいつかお会いしましょう!!」

 

こうした俺たちのイギリス旅行は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

その頃グレゴリでは、

 

「アザセル様、イギリスからアザセル様当てに服や食事などの代金の請求書が来ているのですが……」

 

「はぁ!!!?」

 

 




いかがでしたか?アーシア登場です。主人公がアーシアに渡したものは何か?次回もお楽しみに


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特別編
特別編、中学時代とクリスマス


これは竜也たちが中学3年の時の話です。


 

今日は12月24日のクリスマスイブ、竜也たちは竜也の家に集まってクリスマスパーティーをしていた。テーブルの上には竜也の作ったブッシュドノエル、ローストチキン、グラタンなどの料理がところ狭しと並べられている。

 

『てな訳で!第8回雷門家クリスマスパーティーを開催しまーーす!!!』

 

「「「「「イエーーーーイ!!!」」」」」

 

『みんな盛り上がってるかーー!!!?』

 

「「「「「イエーーーーイ!!!」」」」」

 

竜也がマイクで音頭を取り、イッセー、朱乃、黒歌、ヴァーリ、ベルゼブブ、オーフィスが返事をする。ちなみに全員毎年恒例でサンタのコスプレをしている。

「ではまずは毎年恒例隠し芸大会いってみよーー!!!」

 

「エントリーナンバー1、雷門ヴァーリ、行きます!」

 

ヴァーリが手を上げてテーブルの前に立つ。テーブルの上には大きめの皿が置かれ、両手には大根を持っている。そしてヴァーリは大根を上に放り投げ、

 

「はぁ!!!」《シュパパパパパパパパン!!!》

 

『白龍皇の月光翼』を出して大根を切る。そして皿の上には2つの大根の彼岸花が出来上がっていた。

 

『おぉ~~~』

 

パチパチと拍手が上がり、ヴァーリは満足そうに頭を下げる。

 

『ぅおいヴァーリ!!!『白龍皇の月光翼』は包丁じゃないんだぞ!!!?』

 

アルビオンはヴァーリの神器のあんまりな使い方に猛抗議するが、当の本人は何処吹く風である。

 

「エントリーナンバー2姫島朱乃ですわ♪」

 

続いてステージに上がったのは朱乃である。

 

「イッセー君、ちょっとこちらへ来てくださいな♪」

 

「へ?俺っすか?」

 

イッセーは朱乃に呼ばれステージに上がる。

 

「では……(スチャッ」

 

朱乃はそう言うと背中から両手に鞭を取りだし、シュパンと一瞬でイッセーの横を通過する。

 

「へ?」

 

一瞬で何が起こったかわからず呆けるイッセー

 

「……………《パチン》」

 

《ズババババババ!!!》「グギャアァァァァァァァァァ!!!?」

 

「「いっ、イッセーーーーーーー!!!?」」

 

朱乃が指を鳴らすと同時にイッセーの服の背中

がビリビリに弾け飛びさらされた背の中央には『メリークリスマス』の文字が、

イッセーはその場に倒れ伏した。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『え~~、そんなこんなで余興も終わりまして、いよいよプレゼント交換いってみよーー!!!』

 

「「「「「「イエーーーーイ!!!」」」」」」

 

竜也たちは円になりそれぞれプレゼントを取り出す。

 

「いいな?歌が止まるまでプレゼントを時計回りに回すんだぞ。それではスタート!」

 

そう言って竜也はラジカセのスイッチを押す。流れてきたのは『ラマさんのラママンボ』。

 

「いや歌のチョイス!!!?」

 

イッセーがツッコミを入れるがそれでも歌は流れる。そして二番の後半あたりで歌は止まった。

 

「よーし全員渡ったな?俺のは…ヴァーリのか。」

 

「うふふ、私は竜也君のですわ。今年は私の勝ちですわね?」

 

「「ちっ!!!」」

 

勝ち誇る朱乃に舌打ちする黒歌とオーフィス

 

「まあまあ2つとも…ゲッ!?べーやんさんのだ………」

 

「ゲッとは何ですかゲッとは、おや私は黒歌嬢ですか。」

 

「私はイッセーちゃんのにゃん《ボソッ》ご主人様のがよかったにゃん……」

 

「我、朱乃の《ボソッ》来年こそは……」

 

「俺はオーフィスのか……」

「よーし、じゃあ一斉にあけるぜ?いっせーの」

 

「「「「「「「ほい」」」」」」」

 

全員がプレゼントを開封して思い思いの反応をする。

 

「おお、ヴァーリのは翼のネックレスか、洒落てるねぇ。」

 

「あらあら、竜也君のは手袋ですか……うふふふふ、嬉しいですわ♪」

 

「我のマフラー、暖かい……」

 

「イッセーちゃんのはスノードームにゃん、なかなかきれいだにゃん♪」

 

「黒歌嬢は映画のDVDですか、今度見てみるとしましょう。」

 

「………なあオーフィス、この水晶からすんげぇ魔力を感じるんだが……」

 

「昔拾った、いらないからあげる。」

 

「……べーやんさん、なにこれ?」

 

「は?ヤギの糞ですけど?」

 

「いやですけど?じゃねぇよ!!!?なんちゅうもん渡してるの!?イジメ!!!?」

 

「なにを言いますか、ヤギの糞はベルゼブブ族にとっては最高の秘薬なのですよ?」

 

「いやいやいやいや!?俺にとってはただのウンコだから!!!?」

 

「やれやれ、しょうがないですねぇ。せっかく用意したのに、あむ、モグモグ、キタァァァァァァァァ!!!!キマシタよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!きっキモチ~~~~力がみなぎってくるぅうっへっへっへっへっへ~~~~~~♪♪♪♪♡♡♡♡」

 

「なんかキマっちゃってる!!!?」

 

そんなこんなで、クリスマスの夜は更けていくのであった。



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特別編、バレンタインと愛し愛され

これは現在書いているものよりも後の時間軸のものです


2月14日、バレンタインデー。元々はローマ帝国の迫害によって殉教した聖ウァレンティヌスに由来する記念日として西方教会に広まったもの。それが日本に伝わり、お菓子メーカーの計らいによって、いつしか『女性が男性にチョコを贈る日』としてすっかり定着した。そしてこの日、二種類の男が生まれる。『勝ち組』と『負け組』だ。

竜也side

 

朝、窓からの日差しに当てられ目が覚める。重たいまぶたを上げると、愛しい我が嫁の朱乃の顔があった。

 

「おはよう、朱乃」

 

「うふふ♪おはようございます、ねぼすけさん。はい、あーん♡」

 

朱乃は枕元に置いてある箱からトリフチョコを取り出して俺に差し出した。

 

「あーん、モグモグ……わざわざ待っててくれたのか?」

 

「ええ、リアスたちと昨日話し合ってチョコを渡す順番を決めましたの。せっかく一番になったのだから、一番最初に食べて欲しくて……どう、ですか?」

 

朱乃は俺の顔を覗きのみ尋ねる。

 

「ああ、美味しいよ、朱乃。……愛してる」

 

「嬉しい♡……私も、愛していますわ、竜也君♡」

 

俺と朱乃の顔がだんだん近づき、そのまま唇を重ねる。朝一番のキスは、チョコにも負けない甘さだった。

 

 

部屋を出て、リビングに降りると、俺の愛しい妻たちの姿があった。

 

「おはよう、みんな」

 

「あら、タツヤ。おはよう」

 

「おはようございます、竜也さん」

 

「おはようにゃん、だぁりん♡」

 

「おはよう、たっくん☆」

「おはよう、竜也、はい、あーん、して?」

 

挨拶際に、オーフィスがチョコを差し出した。

 

「あーん、ムグムグ……ありがと、オーフィス。チュ」

 

チョコを食べたばかりの口で、オーフィスに口づけする。

「ん、竜也……好き♡」

 

「ああ、俺も好きだよ、オーフィス。」

 

俺が笑顔で答えると、オーフィスは頬を紅く染めて微笑む。オーフィスもだいぶ感情が豊かになった。

 

「はいはーい☆次は私だよ、たっくん☆あーん♡」

 

三番目にセラたんがチョコを差し出してきた。

 

「あーん、モグモグ……美味しいよ、セラたん。セラたんらしい甘い味だ。」

 

「ふふーん、たっくんのために愛をたっぷり注いで作ったからね☆」

 

「嬉しいよ、セラ……愛してる チュ」

 

「ンチュ、たっくん♡……大、大、大好き♡」

 

俺はセラたんを抱きしめ、セラたんも俺の背中に手をまわす。

 

「次は私……と言いたいけど、朝からそんなにチョコを食べたら胸焼けしちゃうわね」

 

「ん?どうってことないさ、お前たちの愛ならいくら食べても胸焼けしない」

「うふふ、嬉しいけど、そろそろ朝ごはんを食べちゃわないと、遅刻しちゃうわ」

 

「わたしたちの分は学校に行ってからですよ、竜也さん」

 

「お楽しみは後でにゃん♡だぁりん」

 

「クハハ、ま、しょうがないか」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

イッセーside

 

拝啓、父上、母上、俺が夕麻ちゃんとイリナと同棲生活をはじめてから、はや数ヶ月

 

「イッセー君♡」

 

「イッセーく~ん♡」

 

「「大好き♡♡♡」」

 

俺は今、幸せの絶頂です!

俺の女神、夕麻ちゃんとイリナが俺に朝からずっと腕を絡ませ、耳元で愛をささやくのです!聞けば二人、俺に愛を伝えるために、今日は1日中こうしてくれるとか。これ以上の幸せがこの世にあろうか?いや、ない!!!

 

「はーい、イッセー君♡あーん♡」

 

すると夕麻ちゃんがチョコを差し出してくれた。翼の形のチョコレートだ。

 

「あーんモグモグ……美味しいよ、夕麻ちゃん清楚ななかに可憐さを感じさせる夕麻ちゃんらしいチョコだ」

 

「もう♡イッセー君たら……大好き♡」

 

「イッセー君、今度は私のも」

 

反対側からイリナもチョコを差し出した。夕麻ちゃんと同じ翼の形のチョコだがホワイトチョコでできている。

 

「あーむ、ムグムグ……イリナのも美味しいぞ。純粋でそれでいて優しいイリナの味だ。」

 

「嬉しい♡イッセー君大好き♡」チュ

 

「俺もだよ、イリナ」チュ

 

俺はイリナと口づけする

 

「あーん!イリナズルい!イッセー君、私もキス、して?」

 

「わかってるさ」チュ

 

「イッセー君♡」チュ

 

俺は夕麻ちゃんともキスをする。

 

「夕麻ちゃん、イリナ、好きだ、一生愛してる。」

 

「イッセー君、私も、世界の誰より愛してる♡」

 

「私も、この世で一番愛してる♡」

 

俺たちは再びキスをする。嗚呼、幸せだなぁ……

…………………………………あ、学校

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ヴァーリside

 

現在俺は、白音と一緒に登校している。

 

「………………」モジモジ

 

先ほどから白音はモジモジしながらチラチラとこちらをうかがっている。

 

「?」

 

「にゃ!?」サッ

 

今目が合ったがすぐにそらされた。初いやつめ

 

「………あの、ヴァーリ……さん」

 

「ん?なんだ、白音?」

 

「あの、そにょ…」

 

すると白音はカバンからラッピングされた小箱を取り出す。

 

「その…………これ!」

ドゴン!!ヒュン!

 

「オボァ!!!?」

 

次の瞬間、俺のボディーを凄まじい衝撃が襲い、俺は塀に突っ込んだ。

「お、白音ー、おは、よっ!!!?」

 

「ヴァーリさんが塀にめり込んでますぅ!!!?」

 

「は、腹が……腹が甘い……」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

竜也side

 

 

今年のバレンタイン、俺は結構な数のチョコをもらった。

 

「「お兄ちゃん、わたしたちの気持ち受け取って!」」

 

「竜也様、受け取って欲しいっす」

 

「竜也様、お受け取り下さい。で、できればちびっこの姿で!」

「竜也様、どうぞ。ああ、受けとる際にはショタっ子モードで『ありがとうお姉ちゃん!』と是非!!!」

 

と、まあそんな感じで仲間だったりクラスメイトだったりからチョコをもらっていた。

 

「はい、竜也さん、あーんです」

 

「あーん、ザクザク……うん、美味い。アーシアらしい優しい味だ。」

 

「ふふっ、嬉しいです」

 

昼休み、俺はアーシアに食後のデザートにチョコクッキーを食べさせてもらっている。そして机の上にはもらったチョコレートが小山になっている。これもちゃんと食べる。

 

「裕斗様、私のチョコはいかがでしょうか?」

 

「うん、とっても美味しいよ、カーラマインさん」

 

パアァァ「ありがとうございます/////」

 

「畜生リア充めぇ………」

 

「なんであいつらばかりが……」

 

「おのれぇ雷門竜也ぁ……アーシアたんの手作りバレンタインチョコをあまつさえあーんだなんてぇ……」

 

「ヴァーリめぇ……白にゃんのチョコをぉ……」

 

モテない男どもが(元浜、松田、ディオドラ、ジークに至っては血涙を流して、)嫉妬と殺意のこもった視線を向けて来るが、俺たちは何処吹く風である。

 

「お前ら、堂々といちゃこらしやがって、いい度胸してるよな」

 

一緒に弁当を食っていた匙が言う。

 

「ふん、この世には二種類の人種がある。持つ者と持たざる者だ。いやぁ、愛されてるって幸せだねぇ♪」

 

「てめぇ……なあ、一個ぐらい譲ってくれよ。そんなにたくさ《ガチャッ》え?」

 

額に突き付けられた何かに一緒呆ける匙、見ると竜也が般若の形相でライフルを構えていた。

 

「……消えろ、俺のチョコに触んじゃねぇ」

 

「どおぉ!!!?ちょっ!?待って待って待って待って!!!」

 

匙は両手を上げて降伏のポーズをとる。

 

「次ふざけたこと抜かしてみろ?その矮小な脳天に風穴開けたらぁ」

 

「ぜぇ、ぜぇ……ったく、たかがチョコにどんだけ必死なんだよ」

 

「「「「は?」」」」

 

ヴァーリ、イッセー、フリード、裕斗は匙を見る。信じられないといった表情で

 

「な、なんだよお前ら、その顔は」

 

「匙、お前チョコレートを何と心得る?」

 

ヴァーリが匙に問う

 

「は?いや、チョコはチョコだろ?」

 

「ダラッシャア!!!」

 

ドゴム!!!

 

「ゴヘァ!!!?」

 

匙はイッセーのボディブローをくらいもんどりうつ

 

「ふむ、この悶えようからしてあばらの2、3本は逝ったな」

 

ヴァーリが冷静に分析する

 

「ぐおぉ………な、なにすんだてめぇ……」

 

「いいか匙よ、バレンタインチョコとはすなわち女子から男子への誠意!本命だろうと義理だろうと貰った男はそれに答える義務がある!そのチョコをたかがと言い放ち他人の貰ったチョコを貰おうとするなんぞ愚の骨頂!そんなやつにチョコを貰う資格などぬわぁい!わかったかこのボンクラカスの生ゴミ野郎!!!」

 

「生ゴミ野郎!!!?」

 

「匙、お前はもうちょっとましなやつだと思ってたよ」

 

「ガッカリだよ匙」

 

「君には失望したよ匙君」

「元ちゃん……ないわぁ…」

 

「ええ!?何!?俺が悪いの!?俺がおかしいの!!!?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

放課後、俺はリアスと公園に来ていた。俺はベンチに腰掛け、リアスは俺の膝の上に座っている。

 

「うふふ、懐かしいわ。ここで私たちが最初に出会ったのよね」

 

「ああ、あの時はまさかこんな関係になるとは思っても見なかった」

 

「うふふ、本当に……タツヤ、あーん、して」

 

「あーん、モグモグ…ありがとうリアス。美味しいよ」

 

「タツヤ……」

 

リアスは俺の首に手を回し、俺とリアスはキスをする。最初は軽く触れる程度、そしてだんだん深く

 

「ん……はぁ、リアス、好きだ。愛してる」

 

「ふあ、タツヤ♡……私も好きよ。世界で一番愛してる」

 

「リアス……」

 

「タツヤ♡」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

その日の夜、寝室にて

 

「にゃは♡最後は私にゃん、だぁりん♡」

 

寝服姿になったリアスたちの前で俺と黒歌は向かい合わせに座っている。

 

「はい、にゃーん♡」

 

黒歌は俺にチョコを差し出す。

 

「あーん、モグモグ……変わった味だな、何が入って……っ!!!?」

すると、急に俺は体の底から熱くなっていくような感覚に襲われる。

 

「にゃはは♪猫しょう秘伝の媚薬入りにゃん♪」

 

「び、びやく……」

 

体が熱い、ヤバい、ぜんぜん我慢出来ない!?

 

「にゃはは♪心配しなくてもみんな了承住みよ?」

 

するとみんなは俺に抱き着く

 

「タツヤ♡」

 

「竜也君♡」

 

「竜也さん♡」

 

「たっくん♡」

 

「竜也♡」

 

「だぁりん♡」

 

「「「「「「いっ~~ぱい、愛してね♡」」」」」」

 

この後メチャクチャラブラブした




書いてて思ったこと。俺何書いてんだろ……
ちなみに自分はバレンタインは作る側です。以前他校の生徒と数を張り合ってた友人にチョコをやったら、それ以来毎年作ってやるはめになって、妹や親戚の子、果ては塾の同僚にまで作ることに………俺って……


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番外編:大晦日とブッキング

これは、本編開始前の大晦日の物語である。


年末、大晦日、竜也、ヴァーリ、朱乃、黒歌の四人は、雷門家和室でこたつに入り、鍋をつつきながら紅白を見ていた。

 

「けど、本当によかったんですの?私までお呼ばれしてもらって…」

 

「いーのいーの、どーせ今うち俺らしかいないし……しっかしうちの両親にも困ったもんだねぇ。年末に子供残して旅行に行くか普通?あ、朱乃ちゃんポン酢頂戴。」

 

「うふふ、はいどうぞ。まぁいいじゃありませんか。ラブラブでうらやましいですわぁ。それに、みんなで年越しを迎えられるのですし……」

 

「ゲラゲラポー!ゲッラゲラポー!にゃん!」

 

「止めてくれ黒姉さん、鍋の汁が飛ぶ。というかあんまり歌詞載せるとやばい。」

 

「うふふ、黒歌ちゃん?いい加減にしなさい。鼻の穴にチョコボーぶっ刺しますわよ?」

 

画面の中で歌う腹巻きを着けた赤い猫と合わせて踊る黒歌と、こたつの台を押さえて止めるヴァーリと鍋の灰汁を取りながら笑顔で脅す朱乃。そんないつも通りの光景を眺めていた竜也は、ふと誰が足りないことに気づく。

 

「あれ、そういえばイッセーは?あいつも呼んでただろ?」

 

「ああ、なんか鍋にキムチ入れるつってコンビニ行った。」

 

「ふーん」

 

「く~も~が~♪おっど~れば~♪」

 

「だから止めろって黒姉さん。あんまり載せるとマジでやばいから。最悪追放されるからこの小説。」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ところ変わってコンビニ、イッセーはキムチを買うついでに鍋に入れるものやお菓子など色々買っていた。

 

「ありがとうございましたー」

 

コンビニのバイトからレジ袋を受け取ったイッセーは自動ドアへ向かうが、ふと窓際の雑誌コーナーに目が向く。

 

「あ、ついでにジャンプでも買っとくか。」

そう呟いてジャンプ合併号に手を伸ばす。

 

「「あ」」

 

しかし、もう一人の男もまたジャンプに手を伸ばしていた。漢服の上にコートを着たその男に、イッセーは何やら一般人とは違う何かを感じたが、その目線は直ぐにジャンプ合併号へ向く。

 

「……え?ジャンプ合併号?」

 

「うん、ジャンプ合併号。え?おたくもジャンプ合併号?」

「ジャンプ合併号。えっ、ほんとにジャンプ合併号!?」

 

「ジャンプ合併号……」

 

二人はくどいぐらいにジャンプ合併号を言い合った後に互いにジャンプを見つめる。

 

「いや~参ったねこりゃ。やっぱ合併号だと一週空くからどこももうないみたいっすわ。」

 

「いや本当に参ったなぁ。俺はもう7~8軒ぐらいコンビニ回ったんだが……」

 

「へぇ~、そうなんすか。あ、ちなみに俺ここで10軒っすよ?」

 

「あ、やっぱさっきの間違い。よくよく考えたらもう15軒は行ってるかも。」

 

どんどん回った軒数を上乗せしていく二人。ちなみに、イッセーはこのコンビニに雷門家から直行で来たのは言うまでもない。

 

「いやな、うちの五郎がどうしてもジャンプ読みたいって聞かなくてなぁ。あ、五郎って俺の弟なんだけど、今年五歳。」

 

「へぇ~、うちもさぁ、病院の母ちゃんがどうしてもジャンプ読みたいってさぁ。母ちゃんあれ新年迎えられるかなぁ~?無理だろうなぁ~……」

 

「あ、実はうちの五郎も死ぬんだよ」

 

「五郎死ぬの!?」

 

イッセーが驚くそばで男はジャンプを手に取る。

 

「じゃ、まぁ、そういうことだから」

 

「いやいや、待ちなさいって。五郎ほんとにジャンプ読みたがってるの?最近ジャンプ長期連載軒並み終わって落ち目だよ?こっちの方がいいんじゃない?」

 

そう言ってイッセーは男の手からジャンプを抜き取りエロ本を渡す。

 

「いや、五郎五歳だっていってんじゃん………いや、でももしかしたら五郎これ読むかもしんないな。いや、俺が読むんじゃなくて五郎が……」

 

「いらっしゃいませー」

 

「っておい!!そりゃないんじゃないのか!?」

 

男がエロ本の中身を見てぶつぶつ言っている間にイッセーはジャンプをレジへ持って行き、バイトの声で我に帰った男はダッシュでイッセーを取り押さえる。

 

「いやいや、五郎五歳でしょ?ジャンプはまだ早いって。だから代わりに」

 

「こっちの方が早いわボケェ!!?」

 

男はイッセーからジャンプを取り返そうとするが、イッセーはジャンプを離さすそのまま取っ組み合いになる。

 

「だいたいなぁ!俺弟とかいないから!あれ嘘だから!!!五郎なんてやつこの世に存在しないんだよ馬鹿め!!」

 

「はっ!馬鹿はてめぇだ!俺だって死にかけの母ちゃんなんていないもんね!バーカバーカ!!」

 

「「はい金ェ!!!」」

 

二人は取っ組み合いをしながらレジに金を叩き付ける。なにがなんでもジャンプを手に入れる気である。

 

「あんたいい加減にしろよ!!どんだけジャンプ読みたいんだよ!!いい年こいて恥ずかしくねぇのか!!?」

 

「ジャンプに年は関係ない!ジャンプには男の夢とロマンが詰まってるんだよ!!だいたいお前こそいい加減にしろ!!大晦日にジャンプなんか買いに来おって!!寂しいやつだなオイ!!」

 

「あのすみません……」

 

「「あ“あぁ!!?」」

 

「お金足りません」

 

「「え?」」

 

「いや、だからお金、足りません。」

 

「「えぇ………」」

 

「二人分合わせたらちょうど足りますけど……どうしますか?」

 

「「……………」」

 

 

 

 

◆◆コンビニ外にて◆◆

 

 

「いや、だからさぁ、俺今晩読んだらあんたに貸すからさぁ、いいじゃんそれで」

 

「貸すってなんだよ。俺だって金出したんだぞバカ野郎この野郎テメェ」

 

二人はなおもどちらがジャンプを得るかで言い争っていた。男は最初の威厳のある口調がもはや崩れている。道行く人々が奇異な目で見ているが二人は気づいていない。

 

「だいたいお前ジャンプって言っても何読んでるんだ?どうせ2、3本読んでポイだろ?俺は全部読んでるぞ?俺の方が絶対ジャンプ愛してるから」

 

「何言ってんだ?俺なんか漫画だけじゃなくて後ろの漫画家のコメントも読んでるぞ?編集のどうでもいいコメントまで読んでるから」

 

「俺なんかお前あのプレゼント当選者発表のとこあれも全部読んでる!アンケートも毎週出してる!」

 

「甘いんだよ!俺なんか背表紙裏の微妙なツーハンの広告のとこも目ぇ通してる!しかも時々買ってるぅ!!」

 

二人は睨みを効かせジャンプを引っ張り合いながら自分がいかにジャンプを愛しているか聞いてもいないのに語っている。やがて、ジャンプからミシミシと嫌な音が立ち始める。

 

「おい、いい加減にしないとジャンプ裂けるぞ?一旦放せ。俺絶対取らないから一旦放せ、な?」

 

「お前が先に放せ。そしたら俺も放すからよぉ」

 

二人が不毛な言い争いをするなか、一人の腰の曲がった老婆がコンビニに入ろうと歩いてきた。

 

「そうだ!一旦あのおばあさんに渡そう。一旦な」

 

「おい、あのブーメランばぁさんお前の回モンじゃねぇだろうな?ブーメランだけに」

「上手くないんだよ!!どんだけ疑り深いんだキサマはぁ!!?」

 

そんなこんなで、二人は老婆の元に向かう。

 

「あの、すみませんおばあちゃん。ちょっとこれ持っててくれませんか?」

 

「え?」

 

「ああいや、『え?』ってなる気持ちはわかりますが、おねがいします。」

 

二人はそう言って老婆にジャンプを差し出し、老婆は困惑しながらもジャンプを手に取る。しかし、二人は一向に手放さない。

 

「ちょっ、ちょっと、あんたら放す気あるのかい?」

 

「おい、いい加減にしろよキサマ。この頃に及んでまだ放さないつもりか?」

 

「何言ってんの?俺ぁもう虚脱状態なんですけど?お前だろ?力入れてんのは」

「ヌグググ……ぬぅおあああああああァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

やがて老婆は顔を真っ赤にし、背が反り返り悲鳴のような叫び声を上げてジャンプを引っ張る。

 

「ぉおい!!いい加減放せって!!ばぁさんマジで逝っちゃうって!!!」

 

「お前が放せっつてんだろうが!!!ばぁさんもういい!!もう放していいから!!」

 

「ぉぉぉぉぉぉぉオオオオオオ!!!せぇいやぁぁぁぁぁぁあああああああッッッ!!!!!!」

 

そして老婆は渾身の力でジャンプを引っ張り、 ついにジャンプは二人の手から離れ、そのまますっぽぬけて天高く舞い上がった。

 

「「あ!!?」」

 

ジャンプは弧を描きながらトラックの荷台に落下し、ジャンプを乗せたトラックはそのまま発車して行った。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ジャンプを乗せたトラックは、現在夜間の道路を走っていた。その後ろを原チャリに乗ったイッセーが追跡する。

 

「こんな時の為に原チャリの免許取っておいて正解だったぜ!ってか待ちやがれ!!ジャンプは俺のもんだぁ!!!」

 

「いいや俺の物だ!!」

 

そう言い男は塀を飛び越えながらトラックの荷台の上に飛び乗った。

 

「野郎!化け物か!?あの身のこなしは!?」

 

「ふははははは!!悪いな少年!こう見えても俺はとある組織のトップに立つ男で《ガァン!!!》」

 

男はドヤ顔でイッセーに勝ち誇っていると、歩道橋に後頭部を激突し、荷台から投げ出されイッセーに向かってきりもみしながら落下していく。

 

「ちょっ!!?待て待て待て待て待て待て待てっつてッ!!!」

 

 

ギュルルルルルル!!ドガアアアアアアン!!!!!

 

 

イッセーはとっさにトラックの後ろに飛び乗り、男もまたイッセーの足を掴んで飛び付いていた。投げ出された原チャリはスピンしながらガードレールに激突し爆音を上げる。

 

「お前他人を巻き込む奴があるか!!もう駄目かと思っただろうが!!!」

 

「俺の方が駄目かと思ったわ!!!記憶が走馬灯のように目の前を駆け巡ったぞ!!て言うか今も駆け巡ってるんだけど!!?」

 

「うるせぇ!!テメェはそこで一生駆け巡ってろ!!!」

 

イッセーは男の頭を踏みつけ荷台に上がる。そしてその目の前にはジャンプがあった。

 

「よっしゃぁ!!もらっ「させるかぁ!!!」《ズガン!!》」

 

イッセーがジャンプに手を伸ばそうとすると、男はイッセーの頭を荷台に叩き付ける。

 

「キサマのような友情・努力・勝利のジャンプ三大原則も心得ないような輩にジャンプを読む資格はない!!!」

 

男はそう言ってジャンプへ駆け寄る。

 

「ッゴォ……させるかぁ!!」

 

「ぬがっ!!」

 

イッセーは叩き潰された鼻を押さえながら男に足払いをかけ、そのままヘッドロックに持ち込む。

 

「友情・努力・勝利?ジャンプを読んでそんなもん手にしたつもりになってんのか?悲しい奴だよお前は。お前は自分にない物をジャンプで埋めているだけだ!!慰めて貰おうとしてるだけなんだよ!!ジャンプはそんな事の為にあるんじゃねぇ!!!」

 

ブオン!!!

 

イッセーはとっさに身を翻し、イッセーがいた場所に鋭い光が一閃する。見ると、男の手には黄金に輝く一本の槍が握られていた。イッセーはそれを見て直ぐ様『赤龍帝の太陽手』を展開する。

 

「ほう、キサマ……ただ者ではないと思っていたら……神器所有者だったとは……」

 

「そっちこそ、妙な力を感じると思ったら、案の定か。」

 

二人はそのまま荷台の上で目にも止まらぬ激しい撃ち合いを繰り広げる。

 

「面白れぇ、男はやっぱこっちの方が早ぇよなぁ?後腐れもないし、ジャンプでもよくやってるし!」

 

「俺はバトル漫画よりラブコメの方が好きなんだが……まぁいい、愛を通すには戦わなければならないときもある!!」

 

二人は互いに向かい合い、ジリジリとにじりよる。

 

「兵藤一誠」

 

「曹操」

 

「「参る!!!」」

 

 

ドガン!!!

 

「「おげぁ!!?」」

 

二人は歩道橋に顔面から激突し、ジャンプもろとも近くを流れる川に投げ出された。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ゴォーン ゴォーン ゴォーン

 

 

「あ、除夜の鐘だ。」

 

「今年ももう終わりですわね。」

 

雷門家にて、竜也たちはこたつに入り年越しそばをすすっていた。

 

「ズルズルズル……そういえばさ、黒歌にヴァーリ、お前ら除夜の鐘聞いても平気なの?お前ら悪魔じゃん」

 

「ズズズズズズん?いや、俺ぁ一応ハーフだからそれほどでもないんだが……色欲の塊の黒姉さんはヤバいんじゃないのか?」

 

「ヴァーリちゃん?唐辛子絡めたそば鼻に流し込まれたいのかにゃ?」

 

「まぁまぁ。ま、とにかく、煩悩を否定する積もりはないがほどほどにってことだ。てめぇの欲望に囚われた奴ってのは大抵ろくな終わり方しないもんだ。」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

再び場所は変わる。川に落ちたイッセーと男は、川原に打ち上げられていた。

 

「「ジャ…ジャンプは…俺の物だぁ……!!」」

 

真冬の川に落ち、凍り付き悲鳴を上げる体に鞭打ち、二人は這いずりながらジャンプに手を伸ばす。もはやジャンプへの執念のみが、彼らを体を突き動かせていた。

 

そして、その手が遂にジャンプに届こうとした時……

 

「………………あれ、よく見たら……これ……」

 

二人はそこで力尽きた。

 

 

((赤マルじゃん……………))

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「そういやイッセー結局来なかったな」

 

「だな」

 

その後、体が凍り付いた状態で倒れ伏す二人を通行人が発見し、病院に運び込まれ一命をとりとめたことを竜也たちが知ったのは、正月の昼の事だった。




これにて今年最後の投稿になります。皆様、よいお年を


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本編
始まりと告白


原作開始です


時の流れは早いもので、俺たちは高校生となった。

私立駒王学園、それが俺たちの通う学校。朱乃ちゃんは3年、イッセーと俺は2年生だ。なぜ俺が2年なのかと言うと、中学を卒業した後一年ほど世界をまわり、実質留年という形になったのだ。別に後悔とかはない。いい拾い物もしたし。

話はそれたがこの学校、数年前までは女子高だったらしく、女子生徒に対し男子生徒が圧倒的に少ない。ゆえに、男子の中にはハーレムを狙うバカが一人や二人出てくる。ちょうどここに二人………

 

「「死ねぇイッセー、竜也ぁぁぁぁ!!!!」」

 

「うるさい」バギッ!!

 

「ショポッ!!!?」「ハペェ!!」

 

殴りかかってきたバカ二人、元浜と松田にダブルラリアットをかます。

 

「何度も何度も懲りないな、お前ら。」

 

イッセーがかがんで二人を覗き込む。ちなみにイッセーは変態ではない。長らく修行を続けてきた影響で、性欲は持ち合わせているがあくまで年相応だ。元は悪くないのでそれなりに人気はある。

 

「うるせーー!!!お前らに俺たちの気持ちがわかってたまるかぁ!!!!」

 

「自分に正直なだけで女子たちからゴミを見るような目で見られる我々の気持ちが!!!」

 

「いやいやお前らはオープンすぎるんだよ。」

 

「まずは自分の身の振り方から変えろ、ちったぁ欲望を抑えろ。」

 

「「それは無理だ!!!!」」

 

「じゃあもう無理だ諦めろ。」

 

そしてまた襲い掛かってきた二人にバックブリッカーからのバックドロップのコンボを決め屋上から吊し上げた。そして放課後の帰り道……

 

「あっあの!!!兵藤一誠君ですか!?」

 

イッセーと同年代ぐらいの黒髪の女の子、第一印象はそんな感じだった。

 

「…まあそうですけど、何か?」

 

「本当!!!?よかったぁ……あの…好きです!!わっ私と付き合ってください!!!」

 

突然の告白に戸惑った顔をしたイッセーがこちらを見る。俺は無言でうなずく。

 

「えっと、その、俺なんかで良ければ…」

 

「本当!!!?やったぁ!!!!よろしくお願いします!!!」

 

その後、二人は連絡先を交換しあい今日のところはわかれた。

 

「……なあアニキ、あの子の気配…」

「ああ、堕天使のものだ。」

 

堕天使のハーフである朱乃ちゃんやその父であるバラキエルさんと長年関わり、修練の門でシックスセンスを磨いたイッセーは堕天使や悪魔、人外の気配を感じ取れるようになった。ちなみに俺のことは現在アニキと呼んでいる。

 

「まあ、詳しいことは俺の家で話そう。朱乃ちゃんも呼ぶ。」

 

「ああ、わかった。」

 

そしてその後、俺の部屋にイッセー、朱乃ちゃん、黒歌、そしてモニター越しだがヴァーリの姿があった。このモニターは連絡しやすいように俺の部屋に取り付けたものだ。

 

「なるほど、そんなことが……」

 

「ああ、十中八九イッセーの神器が狙いだろう。」

 

『調べてみたが、堕天使を駒王町に派遣したなんて記録はなかった。おそらくそいつの独断だろう。』

 

「しかし、この町の領主とやらは何やってるにゃ?ただでさえはぐれ悪魔の取りこぼしを私たちが片付けてやってるのににゃあ。」

 

黒歌が呆れた顔で言う。事実、俺たちはこの町で多くのはぐれ悪魔を取り押さえた。

 

「まあまあ、彼女もそれなりに頑張っているようですから」

 

朱乃ちゃんがそれとなくフォローを入れる。原作と違い、朱璃さんは俺とヴァーリが助けたので、彼女はこの町の一応領主、リアス・グレモリーの眷属ではないが、学園での友人関係にはあるようだ。

 

「まあ、やっこさんらは大公からの依頼がなけりゃ動けないようだし、っと話がそれたが…イッセーお前はとりあえずその…夕麻だったか?その子と一週間ほど付き合ってみろ。」

 

「「「『ええ!!!?』」」」

 

「心配するな、俺たちで全力でフォローする。というわけで、イッセー以外集合!」

 

俺たちはヴァーリのモニターの前に集合する。

 

『……で?今度は一体何を企んでるんだ?』

 

「まあ聞け、俺の考えた作成、それはーーー

 

 

 

 

 

 

この一週間でそいつをイッセーに本気で惚れさせる!!!!」

 

「「『はい?』」」

 

「いいか?さっきヴァーリが言ったようにこいつはおそらくそいつの独断。成功したとしても恐らくグレゴリで裁かれるだろう。……て言うか裁かれなけりゃアザゼルシバく。まあそんなこと絶対にあり得ないが…っとまた話がそれたが、せっかくのイッセーに彼女ができる機会だ。本当に惚れてるならそれでよし。殺す気なら俺たちでイッセーをアピールしまくって本気で惚れさせてその気を無くさせる。」

 

『……いつもいつも何でそう斜め上の発想なんだよ……はぁ、わかった、俺も協力するよ。』

 

「あらあら、私も協力しますわ、せっかくのイッセー君のチャンスですもの♪」

 

「ニャはは、いっちょやるかニャ♪」

 

「よし!第して、イッセー死守&ハートゲット作戦開始!!」

 

「「『了解!!!』」」

 

「……何が?」

 

こうして俺たちの作戦は開始した。二人が道を歩いていれば荷物を持った老婆に変身した黒歌をみたイッセーが荷物を運んであげ、

たこ焼き屋に扮した俺が長年の研究で堕天使の好む味付けにしたたこ焼きの匂いに当てられ、案の定彼女は屋台に引き寄せられそこをイッセーがおごり、

ヴァーリが監視に放った使い魔のカラスが彼女の頭上に糞を落とし、それをイッセーが察知し助け、

朱乃ちゃんが雷魔法の応用で雲を雷雲に変え雨を降らし、イッセーに事前に持たせた傘で相合い傘、などとにかくイッセーの良いところをアピールしまくった。

そして日曜日、原作でイッセーが殺された運命の日。俺たちはまた全力でフォローに当たった。

イッセーには常に彼女の手を引いてリードさせ、

ショッピングモールの服売り場で朱乃ちゃんのコーディネートの元服を選んで買ってあげ、

またもや俺の扮したたこ焼き屋でたこ焼きをおごり、

黒歌の放った猫と戯れさせ、

そんなこんなで夕方、イッセーと夕麻と名乗った恐らく堕天使の彼女は、なぜか人の一人もいない公園の噴水に座っていた。

 

「イッセー君、今日はありがとう、とっても楽しかったよ。」

 

「うん、俺も楽しかった。」

 

「………ねえ、イッセー君。私のお願い……聞いてくれる?」

 

「……うん、いいよ。」

 

ボソッ 「そろそろだ、準備しておけみんな。」

 

ボソッ「「了解!」」

 

俺たちは気配を消し公園の茂みに隠れていた。ちなみにオーフィスとべーやんは家で待機だ。

…………動くとすれば今…

 

「……私と……私とキスして!!!!」

 

「……へ?」

 

思わずずっこけそうになった。見ると二人もそのようだ。……これは成功……でいいのか?

 

 

 

 

イッセーsaid

 

てっきりここで仕掛けてくると思ったけど、取り越し苦労だったのか?見ると、夕麻ちゃんは頬を赤く染めこちらを見ている。

 

『やれイッセー。男を見せろ!』

 

耳に着けたインカムからアニキの声がする。俺は意を決し彼女の唇にそっと自分の唇を重ねた。そっと目を開けると彼女の瞳から一筋の涙が流れた。ーーーー夕麻ちゃん、君は本当に……

刹那、後ろから向かってきた光の槍を神器を展開し粉砕した。

 

「……ほう、どうやらすでに神器には目覚めているようだな。」

 

そこにはスーツを着てハットを被った男が黒い翼を羽ばたかせ空を飛んでいた。

 

「ドーナシーク、なんで……」

 

「なに、どうせここで殺す計画にはかわりないでしょう?」

 

「……おいお前!どういうつもりだ?俺があのまま何もしなかったら俺ごと夕麻ちゃんも貫いていたぞ!!!」

 

「はて、何のことかな?ふむ、見たことのない形状だが竜の手(トゥワイスクリティカル)の亜種と言ったどころか……取り越し苦労だったようだな。」

『相棒、あいつぶっ殺していいか?』

 

「(我慢してくれ)そうか?何なら試して見るか?」

 

俺は『赤龍帝の太陽手』から炎を吹き出す。

 

「ほう、魔法まで使えるのか?ならばここで始末……」

 

「できると思ったか堕天使?」

 

「なっガァ!!!?」

 

するといつの間にか現れたアニキが如意棒でドーナシークと呼ばれた堕天使を叩き落とした。

 

「グリフィンランス……悪いけどこいつは俺のつれでね、殺らせるわけにはいかないのよ。今日のところは見逃してやる。とっとと消えろ。」

 

アニキは今度はウェポンARMグリフィンランスを展開して堕天使に突き付ける。

 

「ぐふぅ……き、貴様は…」

 

「聞こえなかったか?消えろ!」

 

「くっ!覚えていろ!!!!」

 

ドーナシークとかいう堕天使は転送魔法陣で消える。

 

「お前も今日のところは帰りな。」

 

アニキは夕麻ちゃんにグリフィンランスを向けて言う。

 

「え、えっと」

 

「夕麻ちゃん」

 

「え?」

 

「また会おう。」

 

俺は夕麻ちゃんに笑いかける。

 

「/////うん!またね、イッセー君。」

 

そして夕麻ちゃんもまた消えて行った。

 

「さてと……人のピンチをただ傍観とは感心しませんねぇお嬢さん?」

 

「……その割りには余裕ね。」

 

するとそこに朱乃ちゃんと学園の二大お嬢様と言われているリアス・グレモリー先輩が現れた。

 

「単刀直入に聞くわ……あなたは何者?」

 

「それについてはまた後程……今日は帰らせてもらう。」

「!?待ちなさい!!!」

 

先輩の制止を聞かずにアニキは俺を連れて転移魔法で消えた。

 



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自己紹介と部活

「失礼します、兵藤一誠君と雷門竜也君はいますか?」

 

放課後、部活はやっていないイッセーと今日は料理部は休みなので持ち物をまとめて帰ろうとしていた時、金髪の優男に名を呼ばれた。

 

「イッセーあいつ誰か知ってるか?」

 

「学園の王子様こと木場祐斗だよアニキ。」

 

「ふーん、で?その王子殿が俺たちに何のようだい?」

 

「リアス・グレモリー様の使いで来ました。二人ともついてきてくれるかな?」

 

ふーん使いねぇ……自分ではこないのかい

 

「わざわざご苦労なことで……どのみちこちらから伺おうと思っていたところだ。行くぞイッセー。」

 

「あ、うん、わかった!」

 

こうして俺たちは木場に連れられてリアス・グレモリーの拠点としている旧校舎へと向かった。途中女子がなんかかけ算を乱立させていたが知らん。この世には触れない方がいいこともある。そして俺たちは『オカルト研究部』という掛札のかかったドアの前に立っている。

 

「部長、二人を連れて来ました。」

 

『入ってちょうだい。』

 

そして俺たちは部屋に入る。中は至るところに魔法陣が書かれていた。

 

「うわー、なんと言うかそのぅ……」

 

「悪趣味だなぁ、いくらオカルト研究部つったってこれはいかがだろうか?どういうセンスしてるんだか……」

 

「ちょっ!?アニキそれはいくら何でも……」

 

「あらあら、それくらいにしといて上げて下さいな。」

 

見ると、朱乃ちゃんがティーポットを持って立っていた。

 

「おや朱乃ちゃん、何でここに?」

 

「ええ、以前リアスに眷属に誘われまして、でもリアスの実力不足で眷属には出来なかったので、知られてしまった以上部員としてここに所属してるんですよ。」

 

「まぁなんて勝手な言い分。」

 

「それがリアスですから。」

 

「あなたたち聞こえてるのよ?」

 

すると白いカーテンが開き、中からタオルを巻いたリアス・グレモリーが出てきた。

 

「ごめんなさい、昨日調べものをしてお風呂に入れなかったから。」

 

「だからって客を呼んだ時に入るかね普通?」

 

「確かに人を呼んでおいてそれはちょっと……眼福だけど……」

 

「あらあら、リアスフルボッコ♪」

 

「あなたたちさっきから酷くない!!!?」

 

リアス・グレモリーは叫ぶ。若干涙目だな。少し遊び過ぎたか。

 

「それで、俺たちを呼び出した要件は?まぁ昨日のことだろうけど。」

 

「ええ、そうね。さて、ではもう一度聞くわよ、あなたは何者?」

 

きを取り直してグレモリーは俺に尋ねる。他の二人もこちらをじっと見ている。……あれ?

 

「白音じゃないの。お前も悪魔関係者か?」

 

ちみっこもとい白音は俺と顔馴染みだ。以前行き付けのカフェで同じジャンボパフェを食べいるところを会い、俺が料理部の部長ということもあり俺の料理を振る舞ったり、一緒に飯を食いに行くこともある。ちなみに以前ちみっことうっかり呼んで殴られた。

 

「…はい、リアス部長の眷属です。……て言うか先輩今悪魔って…」

 

「まあな、裏の事情はだいたい把握している。イッセーと朱乃ちゃんもな?」

 

その言葉にオカルト研究会の三人は驚き目を開く。

 

「ではまずは自己紹介、駒王学園二年、雷門竜也。『魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)』アジ・ダハーカの宿りし神器、『魔源の三つ首甲(ディアボリズムトライヘッドギア)』を持つ少し規格外な一応人間だよ。以後ごひいきに。」

 

そう言って俺は神器を展開する。

「アニキは少しじゃ済まないだろうに……同じく二年、兵藤一誠。『赤き龍(ウェルシュドラゴン)』ドライグの宿りし神器を俺専用に調整した『赤龍帝の太陽手(ブーステッド・コロナギア)』の所持者にして今代の赤龍帝だよ。」

 

そしてイッセーもまた『赤龍帝の太陽手』を出す。

 

「あらあら、では私も…駒王学園三年、姫島朱乃、二人の幼なじみにして堕天使のハーフですわ。」

 

そう言って朱乃ちゃんは堕天使の翼を出す。…って!

 

「朱乃ちゃん…それはちょっとないんじゃないの?やっこさんら完全に固まっちゃったよ?」

 

「あらあら、それは二人も一緒じゃありませんか。」

「ちょちょちょっと待って!?朱乃あなた堕天使のハーフなの!!!?それに魔源の禁龍を宿した神器に赤龍帝にそれを自分専用に調整したって……」

 

「まあ待て待て、順を追って説明するから。」

 

こうして俺は俺たちの関係とこれまでのことを説明した。俺の能力の後半、黒歌、ヴァーリ、オーフィス、べーやんのことは適当にぼかした。知られると色々面倒だし、黒歌たちのことは当人たちの問題だろう。

 

「……あなたたち、私の眷属にならない?」

 

俺たちの経歴を知ったグレモリーは突然そんなことを言ってきた。

 

「……無理だな。俺たちの意識以前にあなたの実力が足りない。俺たちは昔から修行して切磋琢磨しあった仲だ。朱乃ちゃんが無理だったのに俺たちを眷属にできる訳がない。」

 

「ぐぬぬ……それならせめて部には入ってもらうわよ!あなたたちのような存在を野放しにしておく訳には行かないもの!」

「悪いが俺はこれでも料理部の部長なものでね。それもお断りさせていただく。」

 

「じゃあとりあえず俺だけってことで」

 

イッセーが割り込んで言う。

 

「……はぁ、わかったわ。二人のことはイッセーとタツヤと呼ばせてもらうわ。とりあえずイッセーは私のことは部長と呼びなさい。」

 

「じゃあ俺は……そうさな、お嬢とでも呼ばせてもらおうかな?」

 

「ええわかったわ。よろしくね、二人とも。」

 

「わかりました、これからよろしくお願いします部長。」

 

「よろしく頼むよお嬢?」

 

「よろしくね、タツヤ君、イッセー君。」

 

「…よろしくお願いします、タツヤ先輩、イッセー先輩。」

 

「あらあら、では私も、改めてよろしくお願いいたします皆さん♪」

 

こうして俺たちの自己紹介は一応無事に終わったのだった。



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涙と友の怒り

オカルト研究会の面々との挨拶から数日が経ちイッセーもだいぶ場の空気に馴染んだようだ。現在は「あなたの願い叶えます」と書かれた悪魔召喚のビラ配りの手伝いをしているようだ。……正直明らかに胡散臭いがそれでも召喚する人はいるらしい。

 

「きゃうっ!」

 

学校の帰り道、そんなかわいらしい声が聞こえたと思ったら、目の前をベールのようなものが風に流されて行った。俺はそれをつかみ、恐らく持ち主であろう声の主を探す。ベールの流されてきた反対の方向を見ると恐らく転んだのであろう地面から起き上がる少女がいた。身にまとったシスター服、風になびく 金髪(ブロンド)の髪、その姿には見覚えがあった。

「アーシア?」

 

「えっ……竜也さん?」

 

俺を見て目を見開くその顔は間違いなくアーシアだった。

 

「やっぱりアーシアか!どうしたんだこんなところで?」

 

「……竜也さん……竜也さぁぁぁぁん!!!!!」

 

するとアーシアは目から大粒の涙を流し俺に抱きついてきた。

 

「ヒック……竜也さん……竜也さん………」

 

「……アーシア、何があったかはわからないけど、俺で良ければいくらでも胸を貸す。今は我慢せずにおもいっきり泣いていいから……」

 

「グスッ、ヒック、……はい……」

 

その後、アーシアが泣き止んだ後、俺はアーシアを家に連れて行き、イッセーたちに召集をかけた。現在俺の部屋には俺のベッドに腰掛けたアーシアと、その周りに俺、イッセー、朱乃ちゃん、黒歌、そしてモニター越しだがヴァーリの姿があった。

 

「久しぶりだなアーシア。」

「元気にしてたかにゃ?」

 

「お変わりなさそうで何よりですわ。」

 

『ごめんなモニター越しで。できることなら直接会いたかったけど………』

 

「いえいえそんな!皆さんとまた会えてとっても嬉しいです。」

 

あれだけ泣いた後で目も赤いというのに、みんなと再会して本当に嬉しそうに笑うアーシアを見て、やっぱりアーシアはアーシアなんだと思った。

 

「………さて、聞かせてくれアーシア。あの後君に何があったのか、なぜこの町に来たのか。言いたくないなら無理にとは言わないが…」

 

「……いえ、お話します。私に何があったのかを…」

 

そしてアーシアは語り出した。あれからしばらくした後のこと、珍しく協会の外に出た時、深い傷をおい苦しむ一人の悪魔を発見しそれを癒したこと。そしてその一部始終を見られていたこと。その後、追いかけてきたエクソシストを殺害し悪魔は逃走、しかしその後が問題だった。協会は悪魔を癒したアーシアの力を「神から与えられた力が悪魔を癒すはずがない」と言い、アーシアに『魔女』の烙印を押し追放したのだ。そしてアーシアはある組織に拾われ、この町の協会に派遣された………

 

「イリナさんは私のことを最後まで庇ってくれました。……ですが結局私は追放され、イリナさんは「私もアーシアと出ていく」とまで言ってくれて……でもイリナさんにまで迷惑はかけられません。私は一人で協会を出ました。」

 

アーシアの話しを聞き、俺がまず感じたのは怒りだった。なぜアーシアが追放されなくてはならない!勝手に聖女と祭り上げ、勝手に魔女と切り捨てる協会が俺はどうしても許せなかった。見ると、みんなも怒りの表情を浮かべていた。

 

「……何だよ、何だよそれ!?何でアーシアが追放されなきゃいけないんだ!!!?アーシアは何も悪いことはしてないのに!!!」

 

「そうだにゃ!!勝手にアーシアを祭り上げといて、協会はなんて奴らだにゃ!!!」

 

「こんないい子を魔女だなんて……許せませんわ!!!」

 

『恐らく協会の面子を守るためだろう。悪魔を癒す少女が聖女であってはならないってな……虫酸が走るぜクソが!!!』

 

「……あの、皆さん何でそこまで私のために怒ってくれるのですか?」

 

アーシアは俺たちが怒っているのに戸惑っているようだ。

 

「……それはみんなアーシアが大事だからだよ。」

 

「えっ、私なんかが……」

 

「なんかじゃない。俺たちにとってアーシアは大切な友達だ。そんなアーシアが虐げられて怒らないはずがない。今まで大変だったろう、辛いなんてものじゃなかったろうアーシア。だけどもう大丈夫だ、俺たちが君を守る。もう君を絶対に一人にしない!!!」

「そうだ!もしアーシアを魔女なんて言うやつがいたらぶっ飛ばしてやる!!!」

 

「心配なんていらないにゃ♪」

 

「私たちがあなたを守ります。何があっても。」

 

『俺もだ。俺たちは絶対に君を見捨てない!!!』

 

みんなの意思は固く、そして確かなものだった。

 

「みっ皆さん、わたし、わたし……」

 

「アーシア、最初に会ったとき言っただろ?時には誰かに頼ることも大事だってな。それに俺は君の笑顔が好きだ。君の優しい笑顔が……だからアーシア、笑ってくれ。君の笑顔を守るためなら俺たちは何でもするぜ、なあ?」

 

「「「『ああ!(ええ!)(ニャア!)』」」」

 

「皆さん……はい!」

 

そうして見せた彼女の笑顔はとても優しく、暖かいものだった。

 

「……そういえば、アーシアはこの町の協会に派遣されたんだよな?」

 

「はい、そうですけど…」

 

「だとしたらおかしい。あそこはイリナたちが引っ越してから誰の手入れもなくすっかり廃れてたはずだ。」

 

「そういえば……」

 

「この前散歩がてら見たらすごいぼろぼろだったにゃ。」

 

「ええっ!?そうなんですか!!?」

 

「一体どういう…《ピロリロリロ》……っと悪い電話だ。」

 

俺は携帯電話をとり、電話に出ると、声の主は以外な人物だった。

 

「うん?珍しいな、お前から電話なんて…うん、……へぇ…………………なるほど。」

 

「……?アニキ?」

 

「ピースがつながった、さっそく仕掛けるとしようか……お前にも協力してもらうぜ?」

 

『あいよダンナ』

 

俺は電話を切る。堕天使の悪魔領への無断侵入、アーシアの派遣……なるほど、だが、そう都合良く行ってたまるかな?

 

「……ご主人様、完全に悪役の顔になってるにゃ……」

 

しっけいな、そう思って鏡を見るとそこには目と口を吊り上げ眉間に影の入った俺の顔が……これは悪人面だわ……



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計画と愛

「恐らくアーシアを呼び寄せたのはこの前の堕天使ども、そしてその目的はアーシアの神器だ。」

「神器?」

 

『恐らくアーシアの神器をエサに上司に取り入ろうって魂胆だろうな……バカな奴らだ。下手をすれば戦争の火種になるようなことをしでかして、待っているのは厳罰、最悪処刑だな。』

 

処刑という言葉を聞いてイッセーの顔が曇る。夕麻と名乗った堕天使のことを考えたのだろう。

 

「そこでだ、俺たちでそいつらをまとめて引っ捕らえる。ヴァーリはアザゼルに連絡。」

 

『了解!』

 

「俺とイッセー、黒歌、朱乃ちゃんで教会にいる連中を確保。」

 

「了解にゃ!」

 

「なあ、部長には知らせなくていいのか?」

 

イッセーが手を挙げ言う。

 

「そうだな、じゃあ朱乃ちゃんにお願いするかな。一応自分の管轄内のことだしな。」

 

「あらあら、任されましたわ。」

 

「さて、問題は連中をどうやって一ヶ所に集めるかだ。今ごろアーシアを血眼になって探してるだろうし………」

 

「あっあの……」

 

「ん?どうしたアーシア?」

 

「あの、……わたしもお手伝いさせてください!わたしが協会に行けば堕天使の皆さんはわたしの神器を抜くために集まると思いますから……」

 

「「「「『ええっ!!!!?』」」」」

 

突然のアーシアの発言にその場にいる全員が驚きの声をあげる。

 

「なっ何を言ってるにゃアーシア!!!危険過ぎるにゃ!」

 

「そうですわ!!!それにもし神器を抜かれてしまったらその人は死んでしまうのですよ!!?」

 

「それでも、わたしは皆さんのお役にたちたいんです!皆さんはわたしにとっても大切なお友達です!わたしのことで皆さんに任せっきりなんてできません!!!」

 

黒歌と朱乃ちゃんの制止を聞いても、彼女の発言と顔には迷いはなく、そこには確かな覚悟が感じられた。

 

「…………はぁ、わかった。アーシアにも協力してもらう。」

 

「「「『!!!?』」」」

「アニキ!!!?」

 

『兄さん何を言ってるんだ!!!?』

 

「少なくともアーシアの覚悟は本物だ。俺はそれを無下にする気はない。頼んだぞ、アーシア。」

 

「はい!皆さん、わたしは大丈夫です。だから心配せず、ご自分の役割を果たしてください!」

 

「「「『アーシア(ちゃん)………』」」」

 

「よし!それでは初めようか、やるぞお前ら!!!!!」

 

「はい!」「「「『了解!!!』」」」

 

こうして俺たちは行動を開始した。まず、俺がアーシアを協会に送り届け、アーシアに持たせたロザリオ型盗聴機を堕天使と思われる一人に渡させ、そこから聞こえた内容は、3日後の深夜、アーシアの神器を抜くための儀式を行うとのことだった。それまでこちらも準備させてもらうとしよう。

次にヴァーリに頼んでアザゼルに掛け合ったらところ………

「ちっあいつら余計なことを……言っておくが俺は何も知らないからな、そんなこと命令した覚えもないし、俺は戦争する気もない。」

 

とのことで、処罰はこちらに任せるとのことだ。次に、お嬢たちオカルト研究会に朱乃ちゃんが今回の一件を知らせたところ……

 

「なら私たちも協力させてもらうわ。私の領地で好きにさせておくわけにはいかないもの。」

 

と、お嬢たちオカルト研究会も堕天使討伐に協力してもらうことになった。

◆◆◆◆◆◆◆

時は過ぎ3日後、アーシアは協会の地下で十字架に張り付けにされ、アーシアから神器を抜く儀式は着々と進められていた。

 

「……これで本当によかったのよね……」

 

「レイナーレ様?」

 

「何を迷うことがありますかな?アーシア・アルジェントの神器『聖母の微笑』を手に入れレイナーレ様が志向の堕天使となる記念すべき時だというのに。」

 

「ええ、そうね。なんでもないわ、カラワーナ、ドーナシーク。」

 

天野夕麻、もといレイナーレは悩んでいた。彼女は最初、アーシアの神器『聖母の微笑』を手に入れ、志向の堕天使となり、アザゼルやシェムハザの愛を手に入れるためにこの町に訪れた。そして神器の反応のあった兵藤一誠を知り、計画の邪魔になる前に始末するつもりで接触し、せめて死ぬ前にはいい思いをさせてやろうと余興として彼と付き合うことにした。

しかし、彼と付き合った一週間、彼の優しさ、温かさを知ったレイナーレは、いつしか彼を本当にいとおしく思うようになってしまった。

そしてアーシアがやって来てから3日間。アーシアの優しさを知ったレイナーレは自分のやっていることが本当に正しいのかわからなくなってしまった。だが、もう止まれない。レイナーレはアーシアに歩み寄る。

 

「……ごめんなさいアーシア。でももう止まれないの。私たちがアザゼル様の寵愛を受けるためにはこの方法しか……」

 

「……いえ、いいんです。こうなることはわかっていましたから……それに」

 

「?」

 

「だっ堕天使様!!!」

するとそこにレイナーレたちの雇ったエクソシストの一人が駆け込んできた。

 

「なんだ?これから儀式が始まろうという時に。」

 

ドーナシークが忌々しそうに尋ねる。

 

「そっそれが、侵入しゃべぇ!!!!」

 

すると急に地下室のドアが吹き飛んだ。哀れ、エクソシストはドアごと吹き飛び壁とサンドイッチにされる。

 

「なっなんだ!?何事だ!!!」

突然の出来事にドーナシークは叫ぶ。他の面々も驚きを隠せないでいた。…ただ一人……

 

「……わたしには、強い味方がついていますから!!!」

 

アーシアを除いて

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ドアを吹き飛ばし、俺たちが見たのは十字架に張り付けにされているアーシアの姿。見ると、朱乃ちゃんや黒歌から怒りがほとばしっていた。オカルト研究会の面々も少なからず怒りを抱いているようだった。ちなみに先ほど再開した黒歌と白音だが、「詳しいことは後」ということでひとまず任務を優先させることにした。

 

「ご機嫌よう堕天使の皆さん。この町の領主を任されているリアス・グレモリーというものよ。私の管轄内で好きにやってくれたようね。」

 

お嬢が堕天使どもにそう切り出す。

 

「なっ!グレモリーだと!!?それにきさまはあの時の!!!」

 

「よう堕天使。首はちゃんと洗ったか?」

 

「ぐぅ、きっキサマぁ!」

 

「伸びろ棒」ズギュン

 

「はべぇっ!!!!!」

 

『『『ええっ!!!?』』』

 

隙だらけだったので如意棒をお見舞いする。堕天使の男は壁にぶつかり瓦礫の下敷きとなった。

 

「ちょっ、あんたいきなり何やってんすか!!?」

 

堕天使の一人が叫ぶ。

 

「いや、隙だらけだったからついノリで。」

 

「ノリ!!!?」

 

そんな中、イッセーは夕麻と名乗った堕天使に近づく。

 

「……久しぶりだね夕麻ちゃん。」

 

「…イッセー君、私……」

 

「ヌオォォォォォ!!!!!」

 

すると如意棒でぶっ飛ばされ瓦礫の下敷きになった堕天使の男が起き上がる。

 

「はぁはぁ、キサマよくもぉ!!!」

 

「堕天使様ぁ!!!」

 

「ええい、今度は何だ!!!」

 

するとまた別のエクソシストが駆け込んで来る。

 

「たっ大変です!フリードのやつが裏切り…」

 

「デモンズハウリング!!!」

 

「ぐべぇ!!!?」

 

するとエクソシストは背中から衝撃波をまともに受け盛大に吹っ飛ぶ。そしてその後ろから左手が異形と化した白髪の男が現れた。

 

「ケハハハハハハ!!!!!皆さんお取り込み中すいまっせ~ん♪フリード・セルゼン君とうじょ~う!いや~ぶっちゃけこれ以上ここにいてもな~んも意味なさそうなんでこの騒ぎに便乗してトンズラさせて頂きま~す。あっちなみに、退職金代わりに金庫の中身まるっといただいちゃったんで、じゃ、バイナラ☆」

 

言うや否やフリードは閃光弾を放り投げ辺りは光に包まれた。そして光が止むとそこにはもうフリードの姿はなかった。

 

「……なんだったんだ、今のやつ?」

 

「僕に聞かないでよイッセー君……」

 

「あれ?木場いたの?」

 

「ずっといたよぉ!!!?」

 

いやー、まったく気付かなかった。

 

「おのれぇ!!!次から次えと……こうなれば『聖母の微笑』だけでも、たとえ殺してでも抜き取る!!!」

 

「!!!?ドーナシーク、止めなさい!!!」

 

「うるさい!!!人間に毒されたキサマにはもう要はない!!!」

 

そう言ってドーナシークと呼ばれた堕天使は光の槍をアーシアに放つ。その時、アーシアは昔竜也に言われたことを思い出していた。

 

『もし危ない目にあったら、これを握りしめて強く願うんだ。』

 

(助けてください!竜也さん!!!)

 

するとアーシアの前に天女の彫刻の入った巨大な盾が現れ、光の槍を防いだ。

 

「何ぃ!!!?」

 

「あれはイージス!?何でアーシアが!!!?」

どうやら昔アーシアに渡したイージスが無事発動したようだ。やはり持たせて正解だったようだ。俺はその隙にドーナシークを取り押さえる。

 

「おのれ!!!人間風情が我々の計画を邪魔しおってぇ!!!!!」

 

「まあ待て、そろそろ………っと来たな。」

 

「ったくよ~、こんなところに呼びつけやがって……本当にお前の神器研究させてくれるんだろうな竜也?」

階段を下りて来たアザゼルは怪訝そうに言う。

 

「自分の部下の責任ぐらいとれよ。何なら無償でやってくれてもよかったんだぞ、なあアザゼル(・・・・・・・)?」

 

『『『『はぁ!!!?』』』』

 

その場にいた堕天使たちとオカルト研究会の面々が声をあげる。

「あ、アザゼルですって!?堕天使の総督がなぜ……」

 

「だから言ったろ?そいつに呼びつけられたんだよ。……ったくお前ら、悪魔の領地に上に無断で侵入とはどういうつもりだ?最悪戦争に発展していたぞ!」

 

「そっそれはアザゼル様のために……」

 

「俺がいつそんな命令をした?お前らのやったことはグリゴリ全体を危険にさらすことだ。……はぁ、もういい、お前ら全員クビだ、二度とグリゴリの敷地を跨ぐな!」

 

「そっそんな!?……」

 

「アザゼル様………」

「ったく、という訳だ、後はお前らの好きにしてくれ。……それと約束は守れよ竜也。」

 

「わかってるよ、今度の連休にそっちに行くよ。」

 

「本当だな!?忘れんなよ!!じゃ、俺は帰るぜ?」

 

そう言ってアザゼルは帰っていった。後に残された堕天使たちは皆意気消沈して床に座りこんでいた。もう戦う気も失せたのだろう。

 

「……私たちはこれからどうすればいいの?」

 

ポツリと夕麻と名乗った堕天使が呟き、他の堕天使たちは顔を伏せる。

 

「………レイナーレ様。」

 

すると、イッセーの手によって解放されたアーシアとイッセーが彼女の前に立っていた。

 

「…アーシア……イッセー君……ごめんなさい……私はあなたたちを………」

 

「夕麻ちゃん、」

 

すると、イッセーが彼女の言葉を遮る。

 

「俺……夕麻ちゃんに好きって言われて、正直戸惑ったけどすごい嬉しかった。夕麻ちゃんとデートしてすごく楽しかった。」

 

「イッセー君……私も……私も楽しかった。最初はあなたを殺すつもりだった。こんなのお遊びだって思ってた。……でもあなたといっしょにいて、あなたの温もりに触れて……段々あなたがいとおしくなってきて、あなたを欺いているのが辛くて、苦しくて、だからいっそ一思いにってあの公園で殺そうとしたの……でも、結局出来なかった。その上あなたは「また会おう」って私に言ってくれて……私……私……」

 

彼女の顔は涙でぐちゃぐちゃだった。それほどまでにイッセーを利用しようとしたことを後悔し、苦しんでいた。

 

「夕麻ちゃん、俺、夕麻ちゃんと別れてから気づいたことがあるんだ。」

 

「……?」

 

イッセーは息を吸い込み、そして宣言した。

 

「俺、兵藤一誠はあなたのことが好きです!これからもずっと俺と付き合ってください!!!」

 

そう言ってイッセーは頭を下げ、彼女に手を差し出す。

 

「………私は堕天使よ?」

 

「うん、知ってる。」

 

「あなたを騙していたのよ?」

 

「わかってる。」

 

「それでも……それでも私を好きって言ってくれるの?」

 

「ああ、何度でも言う。夕麻ちゃん、俺は君のことが好きだ!!!」

 

すると、彼女の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ…

 

「私も……私もあなたのことが好きです。優しいあなたが大好きです!!!」

 

「…!!?夕麻ちゃん!!!」

 

イッセーは夕麻を強く抱きしめる。彼女もイッセーを抱きしめ返す。固くそしてしっかりと離さないように

 

「……さて水を指すようで悪いが、お前らの始末をアザゼルから任されているものでね。」

 

「あっ、アニキ!!?夕麻ちゃんは…」

 

イッセーが彼女の前に立ち庇おうとするが彼女はそれを止める。

 

「いいのイッセー君、これは私たちの責任なの……」

 

「まてまて、別に殺す訳じゃない。お前らの罰は俺たちに対する無償奉仕だ。俺の家で使用人として働いてもらう。ちなみに、給料はない。小遣いは出すが。それと俺には逆らうな、意見する事は認める。以上だ。」

 

「えっ?」

「そんなことでいいんすか?」

 

「ちなみに、俺に仕えるならそれ相応の実力がないと困る。この後、簡単な挨拶をしたら地獄の特訓が待ってるぜ?」

 

「「「「ひぃっ!!!?」」」」

 

そんなこんなで協会堕天使事件は幕を閉じた。

 

 

「………私たち、いる意味あったかしら?」

 

「ぶっちゃけいらなかったにゃ。」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

その後、堕天使たちとアーシアを家に連れていき堕天使たちを修練の門に叩き込んだ後、

 

「悪いな、新しい働き口潰しちまって」

 

「いやいや、ダンナの頼みとあっちゃあ断る訳にはいかないっしょ、それにいいもんも見れたし♪」

 

「すまないねぇ。ほれ、報酬。」

 

そう言って竜也は懐からARMを取りだし放り投げる。すると竜也の影からズルリと手が出てARMをつかむ。そしてズルズルと残りの体が這い出し、中からフリードが現れた。

 

「次も頼むぜフリード?」

 

「あいよダンナ♪」

 

そう言ってフリードは夜の闇に消えていった。

 



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その後とひとまずの休息

堕天使四人を修練の門に叩き込んでから3日、正直きつかったが成果は上々だった。俺が引き取った堕天使たち、天野夕麻ことレイナーレ、ドーナシーク、カラワーナ、ミッテルトはそれぞれ修練の門の中でARMを手に入れて修行で中級並の力を得た。レイナーレとドーナシークに至っては上級に差し掛かろうとしている。そしてその後の彼らだが…

 

「改めまして、駒王学園二年に編入しました、レイナーレもとい天野夕麻です。イッセー君のお宅にはホームステイさせてもらっています。よろしくお願いします。」

 

「一年に編入したミッテルトっす。よろしくお願いしまっす!」

 

「英語教師として就職したカラワーナだ。よろしく頼む。」

 

「用務員として就職したドーナシークというものだ。以後お見知りおきを。」

 

と、それぞれ駒王学園学生または教師として身をおくこととなった。そして変化はもう1つ、

 

「じゃあこちらも改めて、リアス・グレモリー様の兵士(ポーン)となった兵藤一誠だ。よろしく頼むぜ!」

 

「あらあら、では私も、リアス・グレモリーが女王(クイーン)となった姫島朱乃ですわ。よろしくお願いいたします。」

 

「リアス・グレモリーが僧侶(ビショップ)ならびに駒王学園三年に編入した雷門黒歌にゃん♪よろしくにゃん♪」

 

「えっえっと、二年に編入しました、アーシア・アルジェントです!竜也さんのお宅にホームステイさせていただいています。よろしくお願いいたしましゅ!……あうぅ…なんかデジャヴです……」

 

イッセー、朱乃ちゃん、黒歌がお嬢の眷属となり、黒歌とアーシアは駒王学園に編入した。なぜ眷属にできたかと言うと、イッセーの『赤龍帝の太陽手』の力、赤龍帝からの贈り物(ブーステッドギア・ギフト)によって一時的にお嬢の力を底上げし、ついでに悪魔の駒(イービルピース)にも使ったところ、兵士の駒8つが一時的に変異の駒(イミテーションピース)となりイッセーは二個で転生できた。ちなみに堕天使四人は俺の配下ということで眷属にはならず、アーシアは「竜也さんが人間のままならわたしも人間のままでいます。」だそうだ。それとイッセーが転生した理由だが…

 

「ねぇ、イッセー君。本当に悪魔になってよかったの?」

 

「ああ、悪魔になって寿命が伸びればより長い間夕麻ちゃんと一緒にいられるだろ?」

 

「もう!イッセー君たら…放さないからね////」

 

「俺だって放すもんか////」

 

「おい、お前ら人の前でイチャつくな。」

 

「なら私は白音とイチャつくにゃん♪」

 

そう言って黒歌は白音の背中に抱きつく。

 

「…放してください姉様。////」

 

「いやにゃーん♪これまでの空いた時間分の埋め合わせにゃーん♪」

 

「……まあ、なるようになったということか。」

 

「そうかもしれないね?」

 

「あっ、いたのか木場。」

 

「ずっと部屋にいたよ!!?そんなに影薄い!?僕!!!?」

 

「悪い悪いっと、そういえば家でフルーツタルトを作ってきたんだ。」

 

「「私たちも手伝いました。」」

 

カラワーナとミッテルトがそろって言う。俺はディメンジョンARM『ジッパー』を使い、空中に浮かぶチャックを開けて中からタルトを出す。

 

「へぇ、そんなのもあるのねARMって、なら私も……」パチン

お嬢が指を鳴らすとテーブルの上にケーキが現れる。こっちも大概便利だと思うが……

 

「あらあら、では私はお茶の用意を…」

 

「いや、ここは我が主の執事である某が…」

 

「いえいえ私が」

 

「いやいや某が」

 

……なんか二人の間に火花が散っている。修行が終わってからドーナシークはえらく俺に忠実になった。なんでも、「命を救ってもらっただけでなく更なる力を与えてくださったあなたに恩を返したい。」だそうだ。別に力はお前らの努力の賜物だろうに……なんか一人称も某になってるし………

 

「は~いイッセー君、あ~ん♡」

「あ、あーん/////」

 

「………甘いっすね、このケーキ。」

 

「おかしいな、竜也様は砂糖は控えめにしたと……」

 

「いえいえ私が」バチバチ

 

「いやいや某が」キュイイン

 

「あなたたち!!?部屋の中で雷と光の弾を発生させるのは止めなさい!!!!」

 

「………僕ってそんなに影薄いかな……わりと目立つ方だと思うけど……」

 

………まあ、いっか♪



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悩みと夜這い!?

「準備はいいか二人とも?」

 

「ああ、いつでもいいぜ!」

 

「こちらもいいですわ。」

 

現時刻午前4時、俺たちは公園に集まり模擬戦をすることになった。ちなみに公園には俺特性の結界をはり、誰にも見つからず、たとえ壊れても元に戻る。いささか魔力を消費するが、俺と堕天使四人が囲ってそれぞれ補っている。ちなみに俺は審判も兼任していて、戦闘不能と見なすと強制的に離脱させる仕組みだ。

 

「それでは……初め!」

 

「先手必勝ですわ、ネイチャーARM『ストーンキューブ』!!!」

 

まず最初に朱乃ちゃんが仕掛ける。ARMを発生させると、朱乃ちゃんの周りに石のブロックがいくつも浮かび上がる。

 

「はねなさい。」

 

言うや否やストーンキューブは一斉にイッセーに向かって(シャレではない)飛んでいく。

 

「その手は食わないぜ!ネイチャーARM『フレイムボール』!!!」

 

イッセーもまたARMを発動し、イッセーの周りに火の玉がいくつも発生しストーンキューブに飛んでいく。

 

「今だ!!! 」

 

『Boost』

 

するとイッセーの『赤龍帝の太陽手』から機械音が鳴りフレイムボールの大きさが二倍になってストーンキューブとぶつかり爆発する。

 

「触れると三秒後に爆発する爆弾石のネイチャーARM、そうやすやすとは食らわないぜ?」

 

「キャー!イッセー君カッコいいー!」

 

「いやぁ////」

 

レイナーレの声援にイッセーは頬を緩ます。

 

「あらあら、ずいぶんと余裕ですわね?ならこれはいかが?ウェポンARM『マジックロープ』」

 

すると朱乃ちゃんの前にドクロの模様の入った壺が現れ、中からドクロの頭のついたロープが無数に飛び出し、あっという間にイッセーを亀甲縛りにする………なぜに亀甲?

 

「うおおやべぇ!?」

 

『バカ!油断するからだ相棒!』

 

「ストーンキューブ。」

 

石のブロックがイッセーを囲むように現れる。

 

「………降参です。」

 

「そこまで、勝者朱乃ちゃん。……ったく情けないぞイッセー。いくらお前が強くても一瞬の隙が命取りになるって言ってるだろうが。」

 

「ごめんアニキ、つい……」

 

「ごめんねイッセー君。私が余計なこと言ったから……」

 

「いっいやそんな!?油断したのは俺のせいだし、夕麻ちゃんは悪くないよ!…それに夕麻ちゃんに応援してもらってすごく嬉しかったし……」

 

「イッセー君/////」

 

「夕麻ちゃん/////」

 

「おまいら……はぁ、お嬢、一応終わったぞ。」

 

「………」

 

おや?呼び掛けても返信がない。

 

「お嬢?」

 

「…………」

 

「お嬢!」ズイッ

 

「きゃあ!?ごっごめんなさい、ついぼーっとしてて……」

 

目の前に顔を突き出してやっと気づいた。

 

「?……まあいいや、次スタンバイしとけよー!」

 

そんなこんなで早朝の模擬戦は終了した。その後全員で登校し、あっという間に放課後の会合も終わり帰路についているのだが…

 

「……なあ、どうも最近お嬢の様子がおかしくないか?」

 

「だニャ、部活の時もしょっちゅうぼーっとしてたニャ。」

 

「何か悩み事でしょうか?」

 

「まあ、こればっかりは本人の問題だしな。あんまり個人のプライベートに詮索を入れるものじゃないし、俺たちはできる範囲でサポートしてやろう。」

 

「だニャ。」

 

「そう…ですね。」

 

「それよかお腹空いたっす、今日の晩御飯何すか竜也様?」

 

「おまいは……ロールキャベツだよ。」

 

その後、職務ゆえに遅れて帰って来たカラワーナとドーナシークも入れた全員で食卓についている。最初は我が家の面子におっかなびっくりだった堕天使の面々も、今ではすっかり馴染んでいる。いや~慣れって怖いね。

 

「……おいべーやん。ロールキャベツにレトルトカレーかけるなよ。」

 

「ほんとべーやんさんカレー好きっすね?」

 

「わかっていませんねぇ?カレーこそ森羅万象なんでもマッチするオールマイティーフードなのですよ!」

 

「確かにカレーはなんでも合うニャ。」

 

「基本炭水化物とはな。」

 

その後、女性陣が風呂に入り終わってから我ら男性陣が風呂を使える。

 

「ふぃ~、さっぱりした。」

 

風呂から上がり髪をタオルでふきながら部屋に入る。すると俺の部屋に転移用の魔方陣が浮かび上がる。そして中からお嬢が出てきた。

 

「タツヤ、私の処女をもらってちょうだい。」

 

「はぁ!?」

 

いきなりお嬢がとんでもないことを言い出した。そしてお嬢は服を脱ぎだし……って!?

 

「待て待て待て!何なんだいきなり!?何がどうしてどうなったらそんな思考に至るんだ!!!?」

 

なんとか上着をはだける程度に落ち着かせた。

 

「いろいろと考えたけどこれしか方法がないの。既成事実ができてしまえば文句もないはず、裕斗は根っからの騎士だし、イッセーにはレイ…夕麻がいる。身近ではあなたしかいなかったの。大丈夫、お互いに至らないところもあるだろうけど…」

 

「落ち着け」ピシッ

 

「あうっ!?」

とりあえずデコピンで落ち着かせる。

 

「お嬢、何があったか知らないが、そんなことをしてもあんたが傷つくだけだ。俺はそんな真似はしたくない。そういうのは自分の心の底から愛する人にとっておきな。」

 

「タツヤ……そうね、ごめんなさい、いきなり来てこんなことを……」

 

「いいさ、あんたは俺の弟分と幼なじみの王なんだ。俺もできる限りの協力をするから。……それと別にお嬢に魅力がない訳じゃない、ただ俺がヘタレだった、ただそれだけのことさ。」

 

「タツヤ……」

 

するとまたグレモリー眷属の魔方陣が浮かび上がる。そして中から銀髪のメイドが出てきた。

 

「こんなことをして破談に持ち込もうというわけですか。」

 

「………いえ、私も冷静じゃなかったわ。それでグレイフィア、あなたがここへ来たのはあなたの意志?それとも家の総意?……それともお兄様のご意志かしら?」

 

「全部です。」

 

「……わかったわ。お兄様の女王のあなたが来たことはそういうことよね。詳しいことは私の根城で聞くわ。」

 

「わかりました。……それとそこのお方は?」

 

「これはどうもはじめまして、俺の名は雷門竜也、少し規格外な一応人間です。以後お見知りおきを。」

 

「これはどうもご丁寧に、わたくし、グレモリー家に支えるメイドのグレイフィア・ルキフグスというものです。今宵はご迷惑をおかけしました。」

 

「いえいえ、お嬢はに俺の弟分と幼なじみがよくしてもらっているのでね。こんなことでなければ俺のできる限りの協力はするつもりですよ。」

 

「そうですか……ではお嬢様、参りましょう。今宵は失礼いたしました。」

 

「ええ、そうね。……それとタツヤ、」

 

「ん?なに《 チュッ 》……へ?」

 

お嬢に聞き返そうとすると頬に柔らかい感触が……へ?

 

「今日はこれで許してちょうだい。……それと、あなたはヘタレなんかじゃないわ。」

 

そう言い残しお嬢はグレイフィアさんと転送魔方陣で消えていった。俺はしばらく立ち尽くしたままで、様子を見に来たアーシアの手で正気に戻った。



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不死鳥と対面

「あの竜也さん、ココアパウダーの量はこれぐらいでいいですか?」

 

「ああそれでいいよアーシア。じゃあそれをクッキー生地に練り込んでくれ。」

 

「竜也様、型に入れる生地の量はこんなもんっすか?」

 

「いいぞミッテルト、じゃあそっちのオーブンに入れてくれ。」

 

「はいっす。」

 

現在俺とアーシア、ミッテルトの料理部員と顧問のカラワーナは部室の調理室でお菓子作りをいそいんでいる。

昨日の晩は大変だった。あの後アーシアに続いてやって来たオーフィスの「他の女の匂いがする」という一言で、俺は我が家の女性陣に取り囲まれて洗いざらい白状する羽目になった。その際女性陣の漏らす殺気は半端じゃなかった。オーフィスなんかグレモリー家に乗り込もうとしたからなぁ。なんとか説得して事なきを得たが、なぜか全員と添い寝する羽目になった。ちなみに手は出していない。…………自分ヘタレですから。

 

「よし、できたてココアクッキーにマフィンの完成だな。早速お嬢たちに持って行くとするか。」

 

「「「「はい!」」」」

 

俺たちは差し入れを持ってオカルト研究会部室に向かう。途中木場と腕を組み歩くイッセーと夕麻に遭遇する。………だんだんバカップルに拍車がかかってきたなこの二人……

 

「おや、アニキにアーシア、それとミッテルトにドーナシーク先生とカラワーナ先生。」

 

「ようイッセー、それと夕麻に木場、差し入れにお菓子作ってきたぜ。」

 

「おお、本当だ。すごくいい匂いだよ……それと今日は気づいてくれたんだね。」

 

「だから悪かったって……うん?」

 

部室の中からお嬢たちとは違う気配がする。この気配は確か昨日の……

 

「……なあアニキ、部室から覚えのない気配がするんだけど。」

 

「上級悪魔…いやそれ以上ですな。」

 

「ああわかってる。俺はこの気配は知ってる。お嬢の家の関係者だから敵意はないだろう。」

 

「すごいな、竜也君だけじゃなくイッセー君たちもわかるのかい?」

 

「まあ俺たちはARMを使う上でシックスセンスを鍛えるからな。特にイッセーはシックスセンスの面においては俺に次ぐからな。」

 

「さすがイッセー君だね♪そこに痺れて愛しちゃう♡」

「いやぁそれほどでもないよ夕麻ちゃん////」

 

「あれ、なんでだろう?まだお菓子食べてないのになんか口の中が甘いや。」

 

そうこうしている間に部室前に着く。そこで木場たちも気配に気づいたらしい。

「………なるほど、これがイッセー君たちの言ってた…僕もシックスセンスを鍛えてもらおうかな?」

「機会があればな、ほれ入るぞ。」

そうして俺たちは部室に入る。中にはオカ研の残りのメンバーと昨日のメイドさん、グレイフィア・ルキフグスさんがいた。

 

「昨晩ぶりですねルキフグスさん。」

 

「ええ、昨晩は失礼いたしました。……それと私の事はグレイフィアとお呼びください。」

 

「わかりましたグレイフィアさん。」

 

「そうだニャリアス。その事についてよ~~く話を聞かせて欲しいニャ?」

 

「ええ、私もぜひO・HA・NA・SHIしたいですわ♪」

 

「部長さんが竜也さんのお部屋で……ぷはぁ。」

 

「アーシア、鼻血が出てるっすよ?」

 

朱乃ちゃんと黒歌の二人が黒いオーラを放ちお嬢に詰め寄る。アーシアは何を想像したのか鼻血を吹く。……さっそくカオスだな

 

「わっわかってる!わかってるから落ち着いて!?今から説明するから!!」

 

お嬢は二人をなんとか抑え、自身も息を整える。

 

「……はぁ、実はね」

 

そう言いかけたところに、部室に魔方陣が発生し魔方陣から炎が吹き出す。

「この紋章はフェニックスの…」

 

木場がそう呟き、魔方陣から誰か現れた。炎を片手で払い現れたそいつは赤いスーツを着崩した二十代ぐらいの男だった。

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだ。愛しのリアス、会いに来たぜ?」

 

その男はお嬢に向けてそう言う。一方お嬢の方は明らかに不快な顔をしていた。

 

「さてリアス、さっそくだが式の会場を見に行こう。日付は決まっているんだ、早め早めがいい。」

 

そう言って男はお嬢の肩に手を回す。

 

「放してちょうだいライザー。」

 

そう言ってお嬢はライザーと呼ばれた男を振り払う。よっぽど嫌だったのだろう。

 

「………グレイフィアさん、この頭悪そうな男は一体何者ですか?」

 

「あん?なんだとキサマ、それになぜ人間や果ては堕天使がここにいるんだ?」

 

「彼らは私たちの協力者よ。敵対するつもりはないわ。」

 

「ふーん、あっそ」

 

自分から聞いておいてまったく興味がなさそうなこの男……なんかすでに腹が立って来た。見ると俺以外の面々も怪訝な顔をしている。イッセーとドーナシークにいたっては青筋を浮かべて睨んでいる。

 

「……あの、グレイフィアさん。それでこいつは…」

 

もはやさっそく自分でもこいつ呼ばわりだが別に気にしない。自分でもびっくりするほど申し訳なくない。

 

「はい、この方はライザー・フェニックス様。純血の悪魔であり、古い家柄を持つフェニックス家のご三男であらせられます。………そしてグレモリー家次代当主の婿殿でもあらせられます。」

 

「へ?次代当主って部長のことじゃ……」

 

イッセーがグレイフィアさんに尋ねる

「リアスお嬢様とご婚約されておられるのです。」

 

なるほど、道理で妙に馴れ馴れしいと思ったら……お嬢も不憫なものだねぇ、こんなやつが婚約者とは…

 

「え、えええぇえぇぇぇええええ!!!!!」

「うるせぇ」バキッ

 

「ぽかべらっ!!」

 

「きゃあ!?イッセー君しっかり!!」

 

とりあえずイッセーは黙らせた



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婚約者と宣戦布告

「ふむ、リアスの女王の煎れてくれた茶はうまいなぁ。」

 

「痛み入りますわ。」

 

朱乃ちゃんは表面上は笑っているが、長い付き合いの俺にはまったく笑っているように見えない。まるで貼り付けたかのような作り笑いだ。いつもの「あらあら」や「うふふ」がないから余計に怖い。

ライザーはソファーに腰掛け隣にいるお嬢の髪や太ももを何度も触ろうとするがお嬢はそれを心底嫌そうに払いのける。

 

バンッ「いい加減にしてちょうだい!ライザー!以前にも言ったはずよ!あなたとは結婚しないわ!」

 

お嬢がとうとう痺れを切らしライザーに自分は結婚の意識がないことを怒鳴るが、ライザーはそれを怪訝に返す。曰く、先の三つ巴の戦で悪魔側は多くの純血悪魔を失いこの結婚にはグレモリー家、ひいては悪魔の未来を担っているのだと言う。対しお嬢は家を潰す気はなく婿養子も迎える気だが自分の相手は自分で決めると一歩も引かない。

 

「……俺もなリアス、フェニックス家の看板背負った悪魔なんだよ……この名前に泥をかけられるわけにもいかないんだ。それに君のために人間界に出向いて来たが、俺はこの世界があまり好きじゃない。この世界の炎と風は汚い。炎と風を司る悪魔として耐え難いんだよ!」

 

ライザーはソファーから立ち上がり炎の翼を広げる。

 

「君の下僕とお友達を全部焼き付くしてでも君をつれて帰るぞ。」

 

………あぁ?こいつ今何と言った?

 

「………おい、お前。今のは宣戦布告ってことでいいんだよなぁ?」

俺は龍のオーラを放ちやつを睨み付ける。見るとアーシア以外のみんなも戦闘体制に入っていた。

 

「……そこまでです。これ以上やるのでしたら私も黙って見ているわけにもいかなくなります。」

 

そう言ってグレイフィアさんは静かに睨み、俺たち全員に悪寒が走る。……やはりこの悪魔(ヒト)ただ者じゃないな。

 

「……最強の女王と称されるあなたに言われては仕方ない。」

 

ライザーはそう言って渋々引き下がる。

 

「こうなることは予想していました。こうなれば最終手段を取らせていただきます。」

 

その最終手段とは『レーティングゲーム』。曰く、本来レーティングゲームは成人した上級悪魔しか出来ないそうだが、家同士のいがみ合いなどの非公式の場なら参加できるらしい。

 

「おい、お嬢。こいつはおそらくお嬢の逃げ場をなくすためのものだぞ?」

 

「ええ、わかっているわ。……本当にどこまで私の生き方を弄れば気がすむのかしら?」

 

「ではお嬢様はゲームを受けないと?」

 

グレイフィアさんが尋ねる。

 

「いいえ、こんな好機はないわ。ライザー、あなたを消し飛ばしてあげる!」

 

「いいだろう。俺はもうレーティングゲームはすでに経験しているし今のところ勝ち星も多い。それでも受けると言うなら仕方ない。そちらが勝てば好きにするといい。俺が勝ったら君には即結婚してもらう。」

 

「…グレイフィアさん、少しいいですか?」

 

俺は手を上げグレイフィアさんに尋ねる。

 

「ええ、どうぞ。」

 

「なら遠慮なく、お嬢はまだレーティングゲームの経験はなく、対してそちらの金色鶏冠はゲームは何度も経験している。これではいくら何でもこちら側が不利だ。それ相応のハンデと勝った場合の報酬がなければ割に合わない。」

 

「……確かにそうですね。ではどのように致しましょうか?」

 

「おい、てかお前今金色鶏冠と言ったか?」

 

なんか言ってるけど無視無視

 

「まず、こちらに修行期間をください。10日もあればいい。あと報酬は……そうだな。」

 

俺はライザーの方を向く。

 

「そこのライザー君が俺たちの要求を何でもきく……というのはどうですか?」

 

「なっなんだとキサマ!人間の分際で!」

 

「え?何?もしかして負けた時が怖いから止めるとか?うわぁなんて根性なし。フェニックスからチキンに改名したらいかがかな、ライザー君?」

 

『プフッ!?』

 

すると部屋の中の何人かが顔を伏せ笑いをこらえて肩を震わす。

 

「なっキッキサマぁ!いいだろう!その条件で受けてやる。それにキサマも出ろ!この俺を侮辱したことを後悔させてやる!!」

 

「え?そんなこと可能なんですか?」

 

俺はグレイフィアさんに尋ねる。

 

「ええ、非公式のものなのでかまいません。」

 

「なら俺はお嬢の駒の空きの分に入ろう。確か戦車の駒が残っていたはずだ、そこに入らせてもらう。」

 

「主よ、では我々も」

 

「よし、お前たちは兵士の分に入れ。」

 

「「「「了解(っす)!!」」」」

 

「……というわけでお嬢、かまわないな?」

 

「ええ、わかったわ。それでいいわねライザー。」

 

「ふん、何人増えようと俺には関係ない。見るといい。」パチン

 

ライザーが指を鳴らすと後ろにフェニックスの魔方陣が描かれ、中から15人の女の子たちが現れた。

 

「これが俺の眷属だ。どうだ?お前たちのような下せんな輩には一生無縁なものだろう?」

 

「なっキサマぁ!!!我が主が下せんだと!?」

 

「聞き捨てなりませんわね。」

 

「にゃはは、鳥がピーピーわめいてるにゃあ?」

 

「てめえ、アニキを馬鹿にしやがったな!!!」

 

「やめろお前たち。」

見ると残りのミッテルト、カラワーナ、夕麻も光の槍を構えていた。ここで暴れるのは得策じゃない。

 

「しかし主よ!!!」

 

「俺は止めろと言ったんだ。」

 

少しドスを効かせて言うと皆は渋々と言った様子で下がる。後でねぎらいの言葉でもかけてやろう。

 

「悪かった、忘れてくれ。それとさっきの答えだが、別段うらやましいわけでもない。大体お嬢と結婚するという気なら女の子を侍らせるのはいかがかと思うが? 」

 

「ふん、人間の言葉で英雄色を好むと言うだろう?」

「は?英雄?アホ抜かせや、お前が英雄ならイッセーは大統領に成れるわ!!!」

 

「あれ?何で俺もディスられたの?」

 

「だっ大丈夫だよイッセー君!イッセー君の良さは私がわかってるから!」

 

「夕麻ちゃん……」

 

「イッセー君♡」

 

本当だれかなんとかしてこのバカップル

 

「こ…このぉ!言わせておけば…《グギュルルルル》あ゛あ゛ぁ!!!?」

 

急にライザーの顔色が悪くなり腹を抑えて震え出した。

 

「す…すまないがト…トイレを貸してくれ……」

 

そう言ってライザーはトイレによたよたと入って行った………さては

 

「……朱乃ちゃん、あの紅茶に何入れたの?」

 

「あらあら、ばれました?以前もらった下剤を砂糖に混ぜましたの♪」

 

ああ、以前便秘に悩まされていた依頼人のために作ったあれか。……けっこうエグいことするよなこの子も………

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

一時間半後

 

 

「……はぁ、やっと収まった。……一週間分以上出したんじゃないか?」

 

そんなことを言ってトイレから出たライザーが見たのは、

 

「うわぁ!このクッキー本当に美味しい!!」

 

「うむ、確かに美味だな。」

 

「お兄ちゃんおかわり♪」

 

「あっイルずるい!ネルももっと欲しい!お兄ちゃんちょうだい!」

 

「ハイハイ、お土産用に包んでおいたから、はいどうぞ。」

 

「「わーい!!」」

 

「ほら、他の皆さんもどうぞ。」

 

「まぁそんな…ありがとうございます。」

 

「すまないな、気を使わせてしまって。」

 

「いえいえ、美味しいと言ってくれると俺も嬉しいので。」

 

自分の眷属たちとすっかり意気投合している竜也の姿だった。

 

「おいお前!俺の眷属と何やってるんだ!!?」

 

「「あっライザー様!」」

 

「ライザー様もいかがですか?この竜也さんのクッキー、とても美味しいんですよ?」

 

「そうだ食え食え。」

 

「ご主人様のお菓子は絶品ニャ♪」

 

「確かにこれは美味しいわね…」

 

「はい、とても美味しいです。良ければレシピを教えていただけませんか?」

 

「いいですよ。まず……」

 

見ると、リアス眷属や堕天使四人にグレイフィアまでもが舌鼓を打っていた。

 

「おお、悪いな待たせて、良ければお前も食うかい?」

 

そう言って竜也はライザーにクッキーの入ってバスケットを差し出すが……

 

「ふざけるなよキサマ!俺は今機嫌が悪いんだ!!!」

 

ライザーはあろうことかバスケットに炎を放った。

 

『『『『『!!!??』』』』』

 

「おっお兄様!?なんてことを!!」

 

「五月蝿い!帰るぞお前たち!」

 

眷属の一人がとがめる様に言うがライザーはまるでお構い無しに転送魔方陣を発生させて眷属たちを送る。そして自分も入ろうとした時……

 

ガシッ「………待ちやがれやこの可燃ごみ野郎…」

 

竜也が凄まじい握力でライザーの肩をつかんだ。相当力を込めているらしく、メシメシと音を立てている。

 

『あっあいつなんてことを………』

 

『よりにもよって主のクッキーを燃やすとは……』

 

『にゃ~馬鹿だにゃあ』

 

『死んだっすね、あいつ』

 

『愚かな……』

 

『ああぁ、竜也さんがあの状態に……』

 

『……?どういうことなの?』

 

『いいから離れていた方がいいですわよリアス。』

 

見ると、竜也をよく知る人物たちはこの後の展開を予想し、顔を青くしてライザーに哀れみの目を向けていた。………彼は踏んでしまったのだ。龍の尾を……

 

「なっ!?かっ可燃ごみだと!!?キサマいい加減に…」

 

「俺はなぁ、そんなに人嫌いする性格じゃないんだ。だがなぁどうしても許せない人種ってやつが3つほどあるんだ。」

 

ライザーの声を遮り竜也は話し始める。よく見ると、肩を震わせ顔の上半分には影が入っている。

 

「1つ目、食い物を粗末にするやつ。」

 

そう言って竜也はライザーに燃やされたバスケットを見る。

 

「2つ目、女の尊厳を傷つけるやつ。」

 

そう言って今度はリアスの方を向く。 (この時リアスは二重にドキッとした。)

 

「3つ目、俺の大事な物に手ぇ出そうとするやつだ……」

 

そう言って竜也は部室の中をいるリアスたちを見回し、そしてライザーに向き直す。

 

「……………全部……該当してるじゃねぇかぁぁぁァァぁぁ!!!!!!」ドカァァン!!

 

「ぶべらぁぁぁぁ!!!?」

 

言うや否や、竜也はライザーの顔面にドロップキックをかまし、ライザーはその勢いで魔方陣に突っ込み消える。

 

「首洗って待ってやがれ、この世にゃあ不死身より強いやつはいるってことを思い知らせてやるよ。」

 

その言葉が聞こえたかはわからないが、魔方陣をくぐった時、ライザーは大量に冷や汗をかいていたという。




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特訓と改造

「というわけで、あの焼き鳥野郎を叩き潰すための特訓をしたいと思う!おのおの10日分の準備をしてから部室に集合!あの野郎解体(バラ)してタレと塩で味付けしたらぁ!!!」

 

『『『『了解

(っす)(ですわ)(にゃ)!!!』』』』

 

「……あの、勝手に決めないで欲しいのだけど……」

「お嬢!!!」

 

「はっはい!?」

 

「絶対に勝つぞ!!!」

 

「………ええ!」

 

こうして、俺たちの焼き鳥打倒特訓が始まった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「よし、全員集まったな。」

 

現在オカルト研究部部室にはリアス眷属と竜也配下が全員集結していた。

 

「学校には部活動のための強化合宿ということで許可は降りている。この10日間でお前たちをあの焼き鳥野郎を完封できるくらいに魔改ぞゲフンゲフン、強化してやる。」

 

「おい、今魔改造って言いかけただろアニキ。」

 

「気のせい気のせい。」

 

イッセーの指摘に竜也はあからさまにごまかす。

 

「……それで、集まったはいいけど部室で一体何をするつもりなのかしら?一応特訓場所には私の別荘を用意しているのだけど…」

 

リアスは竜也に尋ねる。流石に学校で特訓するわけにはいかない。

 

「わかってるって、まあ見たまえ。ポチッと。」ポチッ

 

そう言って竜也は懐から取り出したスイッチを押す。するとゴゴゴゴという音を立て部室の床が開き中に下り階段が現れる。

「……さて、行こうか。」

 

「ちょっと待ちなさい!?なんなのよこれ(・・)は!」

 

リアスは床に現れた階段を指差す。

 

「ああ、こんなこともあろうかと、密かに部室の地下に秘密基地を設立したのだ。」

 

『『『マジで!?』』』

 

「あなた勝手に何やってるの!!!?」

 

「いや、理事長から許可はもらっているけど?」

 

「お兄様………」プルプル

 

「ほれ、いいからみんなこい。」

 

そう言って竜也は階段を下って行き、残りの面々もあわてて後に続いて行った。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「……………マジで?」

 

部室の地下に下り、目の前の光景にイッセーは思わず呟いた。見ると他の面々も唖然としている。そこには、どこぞのカエル型宇宙人の侵略基地のようなオペレーションルームがあった。

「どうよこの設備、この俺の持てる力とアザゼルとの技術を費やした集大成だ!ちなみに全体図はこんな感じだ。」

 

そう言って竜也はパネルに基地の全体図を写し出す。それはまるで蟻の巣の様に学校の地下に部屋が張り巡らされており、もはや完全に某カエル型宇宙人の基地の図だった。

 

「このオペレーションルームの他にも試合場、大浴場、食料庫、厨房、ベッドルーム、展示室なども配備、さらに侵入者撃退用にオペレーションルームから数々のトラップが作動でき、さらにこのワープパネルをおのおのの家に設置し上に乗ることで直接基地に直行できる。どうよ!」

 

「………もう好きにしてちょうだい。」

 

「部長!?諦めないで下さい!!!」

 

「いくら何でもやり過ぎだろアニキ……」

「いや~、俺もアザゼルも作ってたらなんかノリノリになっちゃってて気づいたらこんなことに…」

 

「「「「アザゼル様ぁ……」」」」

 

「まあ、とりあえずみんな試合場に来てくれ。」

 

そう言って竜也は試合場と上に張り紙が書かれたワープパネルに乗り、シュパンと音を立て消える。

 

「にゃ!?本当にワープしたにゃ!」

 

「うおおすっげえ!!!ロマンだぜ!!!」

 

「うふふ、少年の心を忘れないイッセー君も素敵♡」

 

「…とにかく行きましょう。」

 

「そうね白音。」

 

そして残りの面々もワープパネルに乗った。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「よ~し、全員ついたな。お前たちには今から1日それぞれ俺と戦ってもらう。」

 

全員が試合場に集まったのを確認して俺は言う。

 

「戦うったってアニキ、まさか一人で全員の相手をするつもりか?」

 

「いやいやまさか、こうするんだよ。妖術髪の毛分身の術!!!」

 

俺は頭から髪の毛を数本引き抜き息を吹き掛ける。すると髪の毛はうねうねと形を変え、10人の俺になる。

 

「これで俺を含め全員の相手ができる。さあ初めようか!」

 

こうして、俺たち特訓1日目は火蓋を切って落とされた。

 

 

 




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課題と決意

「ーーーーこんなところかな。全員速やかに模擬戦をやめて集合!」

 

『『『『『了解!』』』』』

 

俺が召集をかけ、分身たちが集まってくる。そしてそれぞれの感想を元にこれからのプランを考える。

 

「や、やっと終わった……」

 

「…まともに攻撃を与えられませんでした。」

 

「私の攻撃もことごとくいなされて、反対に手酷くやられたましたわ……」

 

「彼の規格外と呼ばれる由縁を目の当たりにしたわ……」

 

「僕の魔剣がああも容易く折られるなんて……自信なくすなぁ………」

 

「ふえぇ、凄すぎです竜也さん。」

 

「アーシアもお疲れだにゃ。みんなの回復にてんてこ舞いだったからにゃ。」

 

「いえ、そんな!皆さんに比べたら……」

 

「流石は我が主と言ったところか。」

 

「一瞬も気が抜けなかったっす…」

 

「少しでも隙を見出だすと情け容赦なく追撃してくるからな、竜也様は……」

 

「夕麻ちゃん大丈夫?」

 

「うん、イッセー君こそ……」

 

「おーい、とりあえずこれからの特訓内容は大体できたぞ。」

 

俺はみんなを集めてこれからの修行内容を言い渡す。

 

「まずはお嬢、お嬢の『滅びの魔力』は確かに強力だ。だが一撃にかかる時間が長い上に軌道も単調で読まれやすい。そこでだ、お嬢には滅びの魔力に形を持たせる特訓をしてもらう。」

 

「…?形を持たせる?」

 

「そうだ。例えば滅びの魔力を盾の形にすれば、それは強力な守りになる。さらに剣の形にすれば例え接近戦に持ち込まれても応戦することができ、一発にかける魔力を小さく分けてマシンガンの様に連射して命中率を上げるなんてこともできる。」

 

「なるほど……わかった、やってみるわ!」

 

「次に木場、お前の神器『魔剣創造(ソードバース)』と騎士の特性である素早さの向上によって手数の多さについては申し分ないが、反対に一撃が軽い。」

 

「うん、僕もそこは把握しているよ。」

 

「そこでお前の選択肢は2つ。一つ、とにかく魔剣の生成する速度を上げて質より量で攻める。もう一つは相手を一撃で葬るような“必殺の一振り”を作るかだ。さあ、どうする?」

 

「……決めた、僕は必殺の一振りを選ぶよ。」

 

「わかった。次に堕天使四人、お前たちの課題は光の槍の形状変化だ。」

 

「……?形状変化ですか?」

 

カラワーナが尋ねる。

 

「そうだ、お前たち堕天使はみな光の力を槍の形にする。それは何故か?単純にそれが一番作り安い形だからだ。だがそれでは槍の扱いの苦手なやつは不利だ。お前たちにはこれから自分の最も扱い安い武器を探して、なおかつその形に光の力を変化できるようになってもらう。」

 

「「「「了解(っす)!!!」」」」

 

「次にアーシア、君には俺の魔法の一つを教えたいと思う。」

 

「魔法…ですか?」

 

「ああ、君は俺たちの重要な回復役だ。真っ先に狙われる可能性がある。だから自分の身は最低限守れるようになって欲しいんだ。」

 

「……わかりました!皆さんのためにもわたし頑張ります!」

 

「ありがとうアーシア。朱乃ちゃん、アーシアのサポートを頼むよ。」

 

「わかりましたわ、竜也君のご指名ですもの♪」

 

「ありがとう。あとは白音、お前はいかんせん戦車の力に頼りすぎだな。黒歌、白音に仙術とARMの技術の指導を頼む。」

 

「了解にゃん♪一緒にがんばるにゃん白音♪」

 

「…でも先輩、私はARMは持ってないんですけど……」

 

「心配するな、今からお前たち全員には修練の門の中で今言った課題をやってもらう。」

 

「修練の門というと、昔あなたたちが修行をしたっていうものよね。」

 

「そうだお嬢、この中での時間は外の世界の60分の1で流れる。みんなには外の世界での3日間、中では約半年の間修行してもらう。」

 

「……?何で3日間だけなんですか?どうせなら10日間入ればいいんじゃ……」

 

「修練の門もしかり、ARMは発動させるには術者の魔力を注ぎ続けなければならないんだ。流石の俺も10日はきつい。」

 

「じゃあ先輩は門には入らないのですか?」

 

「心配するな。中には俺の分身と助っ人を二人ほど同行させる。さて、今日はみんな疲れたろ、今日のところはゆっくり休んで明日入るとしよう。俺は食事の準備をしてくる。みんなはそこの食堂行きのパネルに乗ってくれ。」

 

そう言い残し俺は厨房行きのパネルに乗った。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

しばらくして厨房にて

 

「うおお、うめぇ!!!やっぱりアニキの料理は最高だぜ!!!」

 

「あらあら、流石竜也君ですわ♪」

 

「おお、このスープのピリ辛さ、体が暖まってきたぞ!流石は我が主!」

 

「凄いな、食べたら1日の疲れが吹き飛んでしまったよ。」

 

「五臓六腑に染み渡る味っす!」

「本当に美味しいわね……女として負けた気がするわ。」

 

「はい、イッセー君。あ~ん♡」

 

「あ~ん////」

 

「はうぅ、思わず食べ過ぎちゃいそうですぅ……」

 

「この鮭のムニエル最高にゃん♪流石はご主人様ニャん。ね~白音?」

 

「モグモグモグモグモグモグモグモグ…」

 

「白音が一心不乱に料理を味わってるにゃ!!!?」

 

「まだまだたくさんあるから、じゃんじゃんおかわりしてくれよ。」

 

『は~い!』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

その後、大浴場で入浴を済ませた後、イッセーたちは竜也に和室に集められた。何故かそこには敷き布団が敷かれていた。

 

「どうしたんだアニキ、みんなを集めたりして?」

 

イッセーが竜也に尋ねる。

「ふふふ、それはだな……これだ!!!」ブオン

 

ボスン「ブヘァ!!!?」

 

言うや否や、竜也はイッセーに枕を投げつけ、枕はイッセーの顔面にクリーンヒットする。

 

「ははははは!!!いっぺんやって見たかったんだこういうの!これより第一回オカルト研究部枕投げ合戦を開始する!そい!!!」

 

「わぷっ!?」「にゃぱ!?」

 

竜也は続けざまに朱乃と黒歌に枕を投げつける。

 

「うふふ、やりましたわね!」

 

「お返しにゃん!」

 

「ちょっ朱乃!?なんで私に投げるのよ!?」

 

「主よ、ここは某が壁になりましょうぞ!」

「じゃあ僕も!」

 

「はわわ、わたしはどうすれば…」

 

「ならウチらと組むっすよアーシア!」

 

「…頑張りましょう。」

 

「協力していこうぜ夕麻ちゃん!」

 

「オッケーイッセー君!」

「キイイ!!!こうなったらやってやるわよ!!!」

 

「はははは!!!返り討ちにしたらぁ!!!」

 

その後、枕投げ合戦は激戦と化し深夜2時まで続いた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

次の日、試合場にて

 

「ーーーというわけでこれから修練の門の中でみんなのサポートをしてもらう………」

 

「アランだ。よろしくな。」

 

「わたくし、ベルゼブブ931世、ベルゼブブ優一と申します。よろしくどうぞ。」

 

「ベッベルゼブブ!?」

 

「お嬢、驚く気持ちはわかるが、ベルゼブブ優一、通称べーやんはいわゆる異世界のベルゼブブなんだ。」

 

「いっ異世界?」

 

~~~~説明中~~~~

 

「……とまあそういうわけだ。」

 

「へえ、グリモアねぇ……」

 

べーやんのことは俺が偶然グリモアを手にいれて契約を結んだことにしておいた。さすがに転生者のことを話すわけには行かない。

 

「……それにしても恐ろしい本ね。悪魔が触れれば超常現象的罰が下って中には悪魔を従えさせる方法や悪魔を痛め付ける呪文がびっしり書かれているなんて……」

 

見ると、お嬢だけではなく悪魔組全員が顔をひきつらせていた。

「俺が眷属になるのを断ったのもこれが理由の一つだ。下手すりゃ俺が死んじゃうから。」

 

「ええ、よくわかったわ……」

 

「ああ、じゃあ話はそれたがそろそろみんなを送るぜ。頼むぜみんな。」

 

『『『『『了解!!』』』』』

 

「あいよ。」

 

「かしこまりました。」

 

「じゃあ行くぜ!ディメンジョンARM修練の門!!!」

竜也が修練の門を発動させると、リアスたちの足元に門が現れ、バカンと音を立てて開きリアスたちはそのまま落ちて行った。

 

「「「「えっ、ええええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!?」」」」

 

「「「「「「「やっぱりこういう入りかたなのおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」」」」」」」

彼らの声はどんどん小さくなって行き、とうとう聞こえなくなったところで扉はバタンと閉じた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

そして3日後

 

 

「ようお前ら、お帰り。」

 

竜也の前には修練の門から帰ってきたリアスたちの姿があった。みんな3日前とはオーラが段違いに強くなっている。

 

「どうやら成果はあったようだな?」

 

「ええ、もちろん。」

 

「はい!」

 

「うふふ、アーシアちゃんは頑張りましたわよ♪」

 

「白音だって頑張ったにゃん♪ね~白音?」

 

「はい、バッチリです。」

 

白音は竜也にVサインをする。

 

「僕も必殺の一振りをなんとか完成させることができたよ。」

「我々も自分の最も扱い安い形状の光の武器を編みだしました。」

 

「よし、みんなよくやった!残りの6日間はその力の最終調整とする。いいな?」

 

『『『『『『了解(にゃ)(っす)(ですわ)!!!』』』』』』

 

 

そして時は過ぎ、いよいよレーティングゲーム当日へ………

 

 

 




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自分自身とゲーム開始

レーティングゲーム開始前日の夜、俺は気分転換に書庫に向かったのだが、

 

「おや?」

 

そこにはメガネをかけたお嬢が、なにやら資料を読みふけっていた。

 

「どうしたんだお嬢、こんな夜更けに。それとメガネなんかかけてたっけ?」

 

「あらタツヤ、レーティングゲームの資料と相手のデータの読み返しをね……まあこんなもの気休め程度だけど。それと、このメガネはただの気分よ。」

 

そう言ってお嬢は本をパタンと閉じる。

 

「………タツヤはこのゲームどうなると思う?」

 

ふと、お嬢が俺に尋ねた。

 

「そうだな、みんなこの10日間……といっても正確には約半年間の修行でかなりの力をつけた。それこそ、ライザーの眷属を完封してライザーを袋にするくらいにな。やつの不死性を考えても全員で当たれば十分に勝てる。自分の成果を信じな。」

 

「……そうね、みんなこの修行で多くを得たわ。みんなあなたのおかげよタツヤ。」

 

「いや、努力して成果を出したのはみんなの功績だ。俺はただその手助けをしたに過ぎない。」

 

「それでもよ。あなたには本当に感謝しているわ。みんなを代表してお礼を言わせてちょうだい。ありがとう、タツヤ♪」

 

そう言ってお嬢は俺の手を握る。……なんだかドキドキしてきたな……

 

「なあお嬢、なぜそこまでライザーとの婚約を嫌がるんだ?確かにあの焼き鳥野郎は気に食わないが、お嬢の性格なら家の都合を優先させると思ったんだが……」

 

「……私は『グレモリー』なの。」

 

お嬢はポツリとそう言う。

 

「?お嬢はリアス・グレモリーなんだろう?」

 

「いいえ、別に名乗り直したわけじゃないの。私にはどうしてもグレモリーの名がついてくる。別に不満なわけじゃなくてむしろ誇りに思っているわ。だけどどうしてもみんな私をグレモリーのリアスとして見る、だから人間界での生活は充実しているわ。みんな私をリアスとして見てくれるから………」

 

そうか、だからお嬢はライザーとの結婚が嫌なんだ。あいつはお嬢をグレモリーの女としか見ていないから……

 

「私は私をグレモリーじゃない、ただのリアスとして見てくれる人と結婚したい。家のことを抜きにして、私自身を愛してくれる人に添い遂げたい。それが私の小さな夢……」

 

「………そんなこと願うまでもない。」

 

「え、タツヤ?」

 

「お嬢、あなたはリアス・グレモリーだ。それ以上でもそれ以下でも、ましてやそれ以外の何者でもない。ただのグレモリーでもただのリアスでもなく、『リアス・グレモリー』というただひとつの存在だ。少なくとも、俺もイッセーたちもあんたをリアス・グレモリーとして見ているよ。そして自分の持てる力のすべてを費やしてでも、あなたの願いを叶える所存だ。」

 

「…………どうしてそこまで私のために全力になってくれるの?イッセーたちは眷属だけど、なぜあなたが……」

 

「てめえの惚れた女に尽くして何かおかしいか?」

 

「なっ!?ほっ!!!?/////」

 

お嬢は顔を真っ赤にして慌てている。

 

「なははは、冗談冗談。お嬢にもなかなかかわいいとこあるじゃないか。」

 

「~~~~!!!?っもう!!!/////」

 

「なははは、だけど気に入ってるって意味じゃあながち間違いでもないぜ?俺は向上心のあるやつは大好きだからな。……さて、もう夜も遅い。俺はもう寝るとするよ。」

 

俺は立ち上がり書庫から出ようと扉へ歩みより、扉の前でお嬢に振り向く。

 

「お嬢、俺から最後のアドバイスだ。自分を信じろ。仲間を信じろ。自分にとって一番大事なものは何か、よく考えろ。あんたはイッセーたちの、ひいては今回の俺たちの王なんだから。」

 

俺はそう言い残し書庫を出た。

 

リアスsaid

 

まだ顔が熱い。彼に言われた言葉のひとつひとつが私の中で反復される。

 

「…………私にとって一番大切なもの」

 

私はこの学園が好き。みんなと一緒にいるこの時間が。私のかわいい下僕たち、最初は警戒していたけど、今ではいつの間にかともにいることが日常となっている夕麻、カラワーナ、ミッテルト、ドーナシークの堕天使たち。今まで信じていたものに突き放され、それでも諦めることなくひたむきに努力して友達が欲しいという夢を叶えたアーシア。……………そしてそんなみんなをつなぎ止めたのがタツヤ。

 

『てめえの惚れた女に尽くして何かおかしいか?』

「~~~~~~!!!?//////」

 

ああ、あの一言を思い出すとまた体が熱くなる。思わず悶えてしまう。こんな感情今までに感じたことがない。これって……ひょっとしてこれが………

 

「………責任はとってもらうわよ、タツヤ。」

 

私は誰にも聞こえない声でそう呟き、書庫をあとにした。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

時は過ぎ、ついにゲーム開始の時が迫ってきた。俺たちは部室に集合し、それぞれ最終調整にかかっている。

 

「おや、アーシアはシスター服にしたのか。」

 

「はい、自分の一番動きやすい服にするように言われたので、わたしにはこの服が一番思い入れがありますから…」

 

「にゃはは、やっぱりアーシアはその服が一番似合ってるにゃ♪」

 

「ありがとうございます、黒歌さんもその和服がとてもお似合いです。」

 

「ありがとうにゃアーシア。だけど本当によかったのかにゃ?アーシアまで出る必要はないにゃ。」

 

「いえ、わたしも皆さんのお力になりたいんです。それに竜也さんのおかげでわたしも皆さんのお役に立てるようになりました。だから大丈夫です!」

 

「その通り、アーシアも立派な戦力だ。期待してるぜアーシア?」

 

「はい、竜也さん!」

 

すると魔方陣が出現し、グレイフィアさんが現れた。

 

「開始十分前です。皆さん準備はお済みになられましたか?」

 

「今回のレーティングゲームはご両家の皆様に中継され魔王ルシファー様もご覧になります、それをお忘れなきように」

 

「お兄様が直接見られるのね……」

 

お嬢がため息混じりに呟く

 

「では皆様魔方陣がの方へ、開始時刻となりましたら異空間の戦闘フィールドへ転送されます。」

 

「どんな派手な事をしても使い捨ての空間ですので思う存分にどうぞ。なお一度あちらへ転送しますとゲーム終了まで魔方陣での転移は不可能となりますので」

 

「かえってくる時には勝敗が決しているってわけか。」

 

イッセーが生唾を飲み込んで呟く。

 

「なははは、上等だ。」

 

そして魔方陣が輝き俺たちは転送される。

「さあ、いよいよ初陣の時だ!お望み通り派手に暴れてやろうじゃないか!いくぞみんなぁ!!!」

 

『『『『『『おお~~!!!』』』』』』

 

ついにゲームの火蓋が切っておとされた






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お説教と爆炎

俺たちは魔方陣を通り、レーティングゲームのフィールドへ転送されたのだが、そこはなんと駒王学園のレプリカだった。その後、グレイフェアさんのゲーム内容の説明が校内放送を使って放送され、ついにゲームスタートのゴング(チャイム)が鳴らされた。

 

「さて、改めて、今回のゲームで軍師役を任された竜也だ。では早速作戦の説明をしたいと思う。」

 

そう今回俺はお嬢に頼まれて作戦参謀を任されたのだ。お嬢曰く、チーム全員の事を最も把握している俺が適任らしい。任されたからには全力でいくとしよう。

 

「まず連中の陣地は新校舎、敵陣から丸見えの前庭はパス。裏の運動場からの侵攻とする。まあ、連中もそれを読んで下僕を配置しているだろうが……それを踏まえた上での俺たちの布陣だが、まず王であるお嬢はアーシアとドーナシークとここ本陣で待機、何かあったら全員に知らせるんだ。」

 

「わかったわ。」

 

「わっわかりました!」

 

「承知いたしました。」

 

「まず、俺、イッセー、白音の第一侵攻部隊が体育館、運動場の順に進む。朱乃ちゃんは少し距離をおいて俺たちのサポートに回ってもらう。」

 

「「「了解(ですわ)!!」」」

 

「次に木場、黒歌には森の中に潜伏して侵入してきた敵の撃退。期を見計らって俺たちと合流だ。」

 

「「了解(ニャん)!!」」

 

「カラワーナ、ミッテルト、夕麻、お前たちはしばらく時間をおいてから気づかれないように進んで敵陣で合流、最後は全員でライザーを袋だ。」

 

「「「了解(っす)!!」」」

 

「さあ、期は熟した!派手に暴れるとしようじゃないか!」

 

『『『『『『応!!!』』』』』』

 

こうして俺たちの侵攻は始まった。まず、最初のターゲットである体育館へ向かう。

 

「……へぇ、ここも完成度高いな。」

 

「だな……よし、ここから演壇に上がれる。」

俺たちは演壇の裏に上がる。中から4つ気配を感じる。恐らく斥候だな。

 

「……気配、敵です。」

 

「そこにいるのはわかっているわよ。グレモリーの下僕さんたち!」

 

「……お呼びだな、いくぜ。」

演壇から出ていくと、戦車が一人と棍棒使いと双子の兵士が三人いた。

 

「…私は同じ戦車を相手します。」

 

「なら俺は棍棒使いの子と」

 

「なら俺はあの双子ちゃんたちだな。」

 

俺たちはそれぞれ自分の相手に向かう。俺は双子ちゃんたちに歩みよる。

 

「あっクッキーのお兄ちゃんだ!」

「あのクッキー美味しかったよ!」

「よう双子ちゃん、お手柔らかに頼むぜ?」

 

「う~ん、できればお兄ちゃんとは戦いたくなかったの……」

 

「でもライザー様の命令だから仕方ないよね、だから……… 」

 

二人はそう言って肩にかけたバッグからチェーンソーを取りだし………へ?

 

「「解体しま~す♪」」

 

二人そろってそんなことを言った。

 

「こらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」

 

ビクッ「「ひいっ!?」」

 

「「「「ええっ!!!?」」」」

 

思わず叫んでしまった。だがこれは見逃せない。

 

「何て物を持ち出してんの!!君たちみたいな小さな子がそんなもの持っちゃいけません!!!お兄さん怒りますよ!!!」

 

「…もう怒ってるじゃないですか。」

 

白音のツッコミはあえて聞かなかった事にする。

 

「でっでも……」

 

「これが私たちの武器だし……」

 

「シャラップ!!!もし刃が飛んで怪我でもしたらどうするの!?そもそもチェーンソーは木を切るための道具であって武器ではありません!!!」

 

「……そういう問題なのか?」

 

イッセーが何か言ってるが無視無視、俺は雷速で二人に接近してチェーンソーを取り上げる。

 

「あっ私たちのチェーンソー!?」

 

「返してよぅ!!!」

 

「ダメ!これは没収します!!!」

 

俺はジッパーを発動してチェーンソーを中にしまう。

 

「うぅ……ぐすっ……あーーーーーん!!!お兄ちゃんが怒ったぁぁぁ!!!」

 

「あーーーーーん!!!チェーンソー返してよーー!!!」

 

あちゃー泣き出してしまった。………少しきつく言い過ぎたか?

 

「……アニキ、小さな子を泣かせるのはどうかと思うぜ?」

 

「…見損ないました竜也さん。」

 

何か向こうも戦いの手を止めてこちらを冷ややかな目で見ている。……しょうがない、俺は双子ちゃんたちに歩みより軽く抱きしめる。

 

「ふえぇ!?////」

 

「おっお兄ちゃん!?////」

 

「ごめんな、少しきつく言い過ぎたな。あれも二人にとっては思い入れのある武器なんだよな?けど俺は君たちのことを心配して怒ったんだ。何も君たちのことが憎くて言ったわけじゃないんだぞ?」

 

そう言って俺は二人の頭を優しく撫でてやる。

 

「…うん////」

 

「ごめんなさい、お兄ちゃん……」

 

どうやら二人とも泣き止んでくれたようだ。良かった良かった。

 

「いや、頭ごなしに怒った俺も悪かった。お詫びと言っちゃ何だが、ゲームが終わったらこのチェーンソーを使って二人に新しい武器を使ってあげよう。」

「「本当!?」」

 

「本当本当、ほら指切り。」

 

そう言って俺は両手の小指を差し出し、二人も自分の小指を絡める。

 

「「「指切りげんまん、うっそついたら針千本の~ます、指切った!」」」

 

「………何か毒気抜かれちゃったわね…」

 

向こうの戦車の子がふと漏らす。

 

『皆さん、準備が整いましたわ。』

 

耳に着けた通信機から朱乃ちゃんの合図が聞こえた。

 

「うわっやべぇ!!!?みんな行くぞ!!!」

 

イッセーの言葉とともに、俺たちは体育館から脱出する。

 

「逃げる気!?ここは重要基点のは《ズガァァァン!!!!!!》

 

相手の言葉は最後まで続くことはなく、朱乃ちゃんの放った雷に声もろとも飲み込まれた。

 

『ライザー・フェニックス様の「戦車」一名、「兵士」一名、戦闘不能。』

 

グレイフィアさんの放送が入る。よし、まずは上々……あれ?兵士一名?

 

「なっ!?アニキ何持って来てんだよ!!!?」

 

「へ?…ああ!!!?」

 

見ると、俺はいつの間にか兵士の双子ちゃんを両脇に抱えていた。どうやらとっさに連れてきてしまったらしい。

 

「おっお兄ちゃん……」

 

「何で助けてくれたの?」

 

「いや、どうやら無意識のうちに連れてきてしまったみたいでな、とりあえず……『バインド』!」

 

俺は二人を下ろし、バインドの鎖で軽く縛る。

 

「とりあえず戦闘不能ってことで。」

 

「ったく、自分の立てた作戦を自分で崩してどうするんだよ。」

 

イッセーが呆れ顔で俺に言う。

 

「まあ、そう言うなって………それに」

 

《ボカァァァァン》

 

言い終わる前に、俺たちを爆発が包んだ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

撃破(テイク)。」

 

見ると、上空にライザーの女王の姿があった。

「うふふ、やはり獲物は自分の獲物を捕らえた瞬間が一番油断する……」

 

「ええ、その瞬間を狙ってくることはわかっていましたわ。」

 

「何!!!?」

 

「エレクトリックアイ!!!」

 

「きゃああぁぁぁぁ!!!!!!?」

 

ライザーの女王に朱乃のエレクトリックアイが直撃する。

 

「ばっ馬鹿な!?リアス・グレモリーがサクリファイスの手を使うなんて……」

 

「あら、いつ竜也君たちが撃破されたと言いましたか?」

 

ライザーの女王、ユーベルーナは自分が爆破した場所を見る。するとそこには防御結界をはり、無傷の竜也たちの姿があった。

 

「なっ!!!?」

 

「いや~、みごとに釣れてくれたなあ、ライザーの『爆弾王妃(ボムクイーン)』さん?」

 

「その呼び名は好きじゃなくってよ!」

 

「それは失敬、だが俺たちのもくろみは見事に成功。フルメンバーのそちらのとるであろう手は十中八九サクリファイス、俺たちが油断したタイミングを見計らって仕留めにくるだろうと思って朱乃ちゃんに待機してもらっていたかいがあったぜ。」

 

「くっ、イル!ネル!何をしている!?早くそいつらを……」

 

「残念だが、この二人は武器は取り上げられて拘束済み、助けることはできないぜ?」

 

「くっこの役立たず!!!」

 

その言葉を聞いた二人は目に涙を浮かべ顔を伏せる。それを見た竜也はユーベルーナに怒気を放ち、ユーベルーナは冷や汗を大量にかく。

 

「竜也君、優しいあなたの気持ちはよくわかります。ですがこれは私の獲物です。」

 

「……ああ、わかっているよ。」

 

竜也はイルとネルの頭をまた優しく撫でる。

 

「大丈夫、君たちは役立たず何かじゃない。」

 

「ぐすっ……お兄ちゃん……」

 

「悔しいよぉ………」

 

竜也は二人の頭をそっと撫で、イッセーたちの方を見る。

 

「………行くぞ!」

 

「おう!」

 

「はい」

 

そして三人は朱乃を残し運動場へ走って行った。

 

「うふふ、さて、竜也君の分まで頑張りませんと……」

 

朱乃はそう言ってユーベルーナを見据える。

 

「ふ…ふふっ、愚かね。四人でかかれば勝率が上がったものを……」

 

ユーベルーナは竜也がいなくなったことでなんとか立て直す。

 

「……ライザー・フェニックスが女王、ユーベルーナ。爆発魔法を得意とし、ついた異名は爆弾王妃………ですが、私に言わせてもらえば、あなたの爆炎ははっきり言ってぬるいですわ。」

 

「なっ!?なんですって!!!?」

 

ユーベルーナは自分の爆発をぬるいと言われ激怒する。

 

「ストーンキューブ」

 

朱乃はすかさずARMを発動し、ユーベルーナの周囲に大量の石のブロックが出現する。

 

「…!?これは一体……」

 

「見せてあげますわ、本当の爆炎を……」

 

その数分後、体育館跡地に凄まじい爆音が響き渡った。




竜也は子供好きです。あくまで子供好きなのであってロリコンではありません。次回もお楽しみに


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爆発王妃と混沌の姫巫女

もうもうと煙の立ち込める中、ライザーの女王であるユーベルーナはいた。全身はすすにまみれ、肩で息をし明らかに疲労している。

切な、煙の中から彼女に向かって無数の魔力の弾丸が飛び出し彼女はそれをなんとかよける。そしてなんとか煙から出ようとするが、そこに光の槍が彼女の横をかすめそれを遮る。彼女は槍の飛んで来た方角へ爆破魔法を放つ。《ドカァァァン》と爆音がなり、爆風が煙を吹き飛ばすが、そこに敵の姿はなかった。

 

「くっ!!!一体どこに消えた!?」

 

ユーベルーナは焦っていた。体育館に配置した下僕たちを囮にして、敵が油断したところを得意の爆破魔法で吹き飛ばす簡単な任務のはずだった。だが実際は、自分のその計画は看破され敵の進軍を許してしまい、偶然生き残った兵士のイルとネルは武器を取り上げられた上に鎖で縛られ使い物にならない。このままではライザー眷属の女王の名折れ、なんとかリアス・グレモリーの女王を先に仕留めようとしたのだが、結果はこの惨状。次々と襲いくる敵の攻撃に休む間もなくライザーから渡されたフェニックスの涙を使う暇もない。

 

「くそっ!?なんとかこの煙幕から脱出しないと…」

 

するとユーベルーナの背に冷たい感触が広がった。振り向くとそれは体育館の瓦礫を跡形もなく吹き飛ばし、この惨状を作り上げた石のブロックだった。

 

『3』

 

「…ッ!!!?不味い!!!」

 

すると石の触れた面に顔が浮かび上がり、爆発までのカウントダウンが始まった。急いで逃げようとする彼女だが、ふと自分の周りに舞散る羽に目が入った。

 

「ネイチャーARM、エレクトリックフェザー」

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

すると宙を舞う羽から電撃が走る。雷撃ほどの電圧ではないが、彼女の動きを止めるにはそれで十分だった。

 

『2・1』

 

「し、しまっt《ドカァァァァァン!!!》

 

切な、カウントダウンを終えたキューブが爆発し、至近距離でもろに受けたユーベルーナはキリモミしながら地面に落下していく。

 

「うふふ、勝負あり……いえ、狩猟(ハント)、と言ったところでしょうか♪」

見ると、右に悪魔、左に堕天使の翼を生やしたリアス・グレモリーの女王、姫島朱乃の姿があった。

 

「こっこんな馬鹿なことがあるか!?4つの属性、それも相反する光と闇の属性を同時に発するなんて!!!?」

 

そう、彼女もただアーシアの修行の付き添いをしていた訳ではない。

朱乃が修練の門の中で習得したのは複数の属性の同時展開。父から受け継いだ堕天使の光の力、リアスの眷属になることで得た悪魔の魔、ひいては闇の力、元々得意としていた雷撃の魔法とARMの爆破能力。これらを今や同時に発動させるだけではなく、2つ以上の属性を混ぜ合わせた魔法を放てるようにまでなったのだ。

 

「……さて、フェニックスの爆弾王妃さん。一応お聞きしますが、大人しく投降する気はありますか?」

 

朱乃は目を細めユーベルーナに尋ねる。それはユーベルーナのプライドを大いに沸騰させた。

 

「だ…誰かそんなことを!!!?」

 

ユーベルーナは怒り心頭で拒絶した。自分はライザー眷属の女王、実力ではライザーに次ぐ存在。王の名に泥を塗る真似はできない。

 

「……そうですか、では…」

 

朱乃は再びストーンキューブを発動し、両手の中で雷の魔力と光の力を混ぜ合わせる。

 

「消えてください。」

 

そう言ってユーベルーナにストーンキューブと雷光を一斉に放つ。

 

(……!?今だ!!!)「はあっ!!!!」

 

するとユーベルーナは懐から取り出したフェニックスの涙を一気に飲み干し、爆破魔法を最大威力で放ちストーンキューブと雷光を一掃した。

 

「………あら、フェニックスの涙ですか…」

 

「おほほほほほ!!!!!ええ、そうよ!いざという時に取っておいたかいがありましたわ!!!あなたはこれまでの攻撃でかなりの魔力を消費したでしょう!?対して私はフェニックスの涙によって万全の状態、これで形勢逆転ですわよ!!!」

 

ユーベルーナは勝ち誇った。そして嬉々として朱乃を見据える。しかし彼女は想定していなかった。元々魔法の才能のあった朱乃はこの修行、ひいてはこれまでの竜也たちとの修行によって魔力量が格段に増えていることを……

 

「……やむを得ませんわね。」

 

ふと、朱乃がポツリと呟いた。

 

「できることならこんなところで使うつもりはありませんでしたが、あくまで抵抗するのであれば仕方ありません。」

 

「…?あなた何を言って…」

 

「せめて一撃で仕留めて差し上げましょう。」

 

そう言って朱乃はドクロの装飾のついたチェーンリングのARMを放り上げた。

 

「ガーディアンARM…『ア・バオア・クー』!!!」

 

すると、空に暗黒の雲が渦巻き、中から巨大な骸骨のような怪物が現れた。怪物が口を開くと、そこから濃厚な闇が吹き出し、中心に巨大な血走った一つ目がギョロりと見開きかれユーベルーナを睨んだ。

 

「ッ!?なっこれは!!!?」

 

気がつくとユーベルーナは丸い結界のようなもので包まれていた。抜け出そうとするが、それはとても頑丈でびくともしない。

 

「うふふ、これで本当に最後です。私がある一言を言えばあなたは終わる。何か言い残すことはありますか?」

 

そう言って朱乃はユーベルーナに笑い顔で尋ねる。しかしその目は凍てつくような冷たい目だった。彼女もまた、自分の仲間であるあの双子のことを役立たずとのたまったことに怒りを感じていたのだ。ユーベルーナはこの時、自分の完全な敗北を悟り、また底知れぬ恐怖にかられた。

 

「ひっ!?いっ嫌!!!助け」

 

「バーストアップ」

 

朱乃の言いはなった言葉と同時に、ユーベルーナの入ったカプセルの中で強力な爆発が起こった。カプセルの中で爆発のエネルギーは拡散することなく一点に集中する。ついに爆発のエネルギーに耐えきれずカプセルは粉々に砕け散り、中からユーベルーナが力なく落下していった。

 

『…ライザー・フェニックス様の「女王」、「兵士」三名リタイア。』

 

「あら、どうやら向こうも片付いたようですね。」

 

グレイフィアの放送を聞いた朱乃はそう言って森の方角に目を向けた。そして次に運動場の方角を見る。

 

「………さて、早く竜也君たちに合流しませんと、」

 

そう言って彼女は再び堕天使と悪魔の翼を生やし運動場に飛んで行った。その後、彼女には混沌の姫巫女の異名がつけられ、ユーベルーナは爆発恐怖症に陥り、「爆発怖い、爆発怖い」と一週間閉じこもったという。

……そしてその場に残された双子の兵士は、あまりの恐怖に白目を剥いて気絶していた。

 




この世界の朱乃は堕天使と悪魔の翼を嫌ってはいません。むしろ自分のアイデンティティーだと考えています。
感想等お待ちしております。


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騎士とフラグ

『…ライザー・フェニックス様の「女王」、「兵士」三名リタイア。』

 

現在俺たちは体育館倉庫の中で一時待機しており、しばらくしてグレイフィアさんの放送が耳に入った。

 

「どうやら朱乃ちゃんの方は終わったみたいだな、兵士の方は木場たちかな?」

 

「ああ、おそらくな…にしてもあの爆発、ア・バオア・クーを使ったな。敵さんもかわいそうに……」

 

「…ア・バオア・クーって何ですか?」

 

「ああ、白音は知らなかったな。昔朱乃ちゃんが手に入れたガーディアンでな、相手をカプセルに閉じ込めてその中で爆発させるんだ。」

 

「………それは凄まじいですね…」

 

「発動したらほぼ回避不可能だもんな……俺も昔使われて爆発はされなかったけど死ぬかと思った。」

 

イッセーが遠い目で経験を語る。俺も間近で見たけどあれは凄かった。イッセーも使われてすぐギブアップしたからな……そんなことをダベっていると、後ろに2つの気配が…

 

「……木場、黒姉さん、時と場所を考えてくれよ。」

 

「にゃ!?ばれたにゃ!」

「やっぱりすごいなイッセー君は…」

ばれるとは思わなかったのか、木場と黒歌は驚いている。……お前ら

 

「ちなみに俺も気づいていたぞ。」

 

「……気づいてないのは私だけですか……」シューン

気づかなかったことに項垂れる白音。すると運動場に気配を感じた。

 

「…おいお前ら、ふざけてる場合じゃないだろうに、ほれ来なすったぞ。」

 

俺はグラウンドを指差す。そこには甲冑を着たおそらくは騎士の女性が堂々と仁王立ちしていた。

 

「私はライザー様に仕える『騎士』のカーラマイン!こそこそと腹の探りあいをするのも飽きた!リアス・グレモリーの『騎士』よ、いざ尋常に…」

 

「木場、やれ」

 

「了解、『剣山』!!!」

 

「剣を交えぇ!!!?」

 

木場は『魔剣創造』を発動し、カーラマインと名乗った騎士の足元から大量の魔剣を生やす。カーラマインは足元から飛び出した剣に驚くも、後ろに飛び退きなんとか回避する。

 

「隙ありだよ!」

 

「くっ!?何の!!!」

 

木場は隙を見計らいすかさず斬りかかるがカーラマインは剣を抜刀し受け止めそのまま斬り合いにもつれ込む。

 

「こんな場合だけど、リアス・グレモリー様の『騎士』の木場裕斗だよ。お望み通りに斬り合いと行こうじゃないか!」

 

「くっキサマ!不意討ちとは卑怯な、それでも『騎士』か!!!恥を知れ!!!」

 

剣の打ち合いの最中、カーラマインは吠える。相手に『騎士』がいると聞き、犠牲の作戦を飲んでまで尋常な切り合いを期待していたというのに、怒り半分、失望半分、彼女の心情はそんなところだった。

「……それでも『騎士』か…悪いけどそれはとんだ見当ちがいだよ。」

 

「なに!?」

 

「僕たちは『騎士』だ。だがそれ以前に王に忠実な下僕だ。忠誠を誓う王に勝利を捧げなくてはならない。戦場において一瞬の隙、油断、慢心は戦況を大きく揺るがす。ちょうどさっきのきみのようにね。

もしきみの軽はずみな行動で主人の顔に泥を塗ることになったらどうするつもりだい?」

「くっ!?そっそれは…」

 

「また隙だよ!『居合絶刀』!!!」

《バキィィィン》!!!

居合いの形からの勢いを乗せた抜刀、それによってカーラマインの剣は砕け散り、カーラマインは唖然となる。

「きみのそれは騎士道じゃない。ただの自己満足だよ。」

 

「…ッ!!!?」

 

カーラマインは崩れ落ちる。自分のしでかした愚行に気づいた後悔の念、そして相手と自分の実力の差に

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「あら、終わったみたいですわね?」

 

ライザーの妹にして『僧侶』のレイヴェル・フェニックスは『戦車』のイザベラを連れて二人の戦闘を観戦していた。

 

「まったく頭の中まで剣剣剣で塗りつぶされた者同士、泥臭くてたまりませんわ。カーラマインったら『兵士』を犠牲にする時も渋い顔をしていましたし…」

 

「暇そうだなお嬢さん。」

 

「…ッ!?誰ですの!?」

 

するとズボッという音とともに地面から鳥の頭を模したような槍と石でできた巨大な爪が突き出し、中から竜也たちが出て来た。

 

「にゃあ、まさか地面を掘り進んで敵をやり過ごそうとして敵の目の前に出るとわにゃ。」

 

「ダメじゃん。」

 

「まあそう言うなって…これはどうも、見たところ『戦車』と『僧侶』で間違いないですかな?」

 

穴から出て来た竜也が尋ねる。

 

「ああ、私が『戦車』のイザベラ、そしてこちらが『僧侶』のレイヴェル・フェニックス嬢だ。」

 

傍らにいたイザベラが答える。

 

「は?フェニックス?まさか妹?なに、あいつ妹もハーレムに加えてんの?馬鹿か?バカなのか?そしてばかか?それでいて莫迦(ばか)か?いやむしろBAKAか?」

 

「いやどんだけ言うんだ?…まあその気持ちはわかるがライザー様曰く『妹をハーレムに入れることは世間的にも意義がある…ほら近親相姦っての?憧れたり羨ましがる者は多いじゃん?まあ俺は妹萌えじゃないからカタチとして眷属悪魔ってことで』……だそうだ。」

 

「……お二人さん、今度愚痴でも聞こうか?」

 

「……哀れみの目で見ないでください。悲しくなりますから…それとこの前は兄が申し訳ありませんでした。」

 

「いや、お嬢さんが謝ることはないよ。つけは後であのプライドだけは一丁前のチキン野郎、略してプライドチキンにたっぷり払ってもらうから。」

 

「「「「「プッ!!!?」」」」」

 

「プップライドチキ……プフッ!!!」

 

「……一応私もフェニックスなのですけど……あと何であなたまで笑っているのですかイザベラぁ!!!?」

 

ふと、吹いた数が多いことに気がついた竜也が見るといつの間にか木場が合流していた。

 

「木場お前いつの間に…てかあの子なんとかしてやれよ。崩れ落ちたまま動かないぞ。」

 

「やれやれ、しょうがないね。」

 

そう言って木場はカーラマインに歩みよる。

 

「ん?ああ、リアス・グレモリーの騎士か、ふふ…滑稽だなお前に言われて初めて自分の愚かさを知るとは。」

 

「………悔いることができるならやり直すことができる。」

 

「え?」

「新に愚かなことは自分の間違いを否定し直視しないことだ……きみにはそれができるよね?」

 

そう言って木場はカーラマインに笑いかけ手を差し出す。

 

キュンッ「はっはいぃ//////」

 

カーラマインは頬を赤らめ手を取った。

 

「……立ったな」

 

「ああ、立ったな」

 

「立ったにゃ」

「…立ちましたね」

 

「立ったな」

 

「「「「「フラグ」」」」」

 

「……?どこに旗がありますの?」

 

ただ一人よくわかっていないレイヴェルだった。

 

『タツヤ!タツヤ!』

 

そんな時、竜也にリアスから通信が入る。

 

「どうしたお嬢?」

『タツヤ、ライザーから一騎討ちの申し出が来たのだけれど…どうする?』

 

そんなリアスの声はどこか浮かれているようだった。

「……クフフフ、いいぜ、存分に暴れな。ドーナシーク、アーシアを連れてお嬢と共に迎え。感ずかれないようにな。夕麻たちはドーナシークと合流。」

 

『『『『『了解(っす)!!』』』』』

 

『はっはい!』

 

「さぁて…そろそろ動くとしようか……」

 

ついに計画を実行に移す時が来たことに笑みを浮かべる竜也、その顔はその場にいた全員がドン引きするほどの悪人顔だった。

 

 




木場も少なからず竜也の影響を受けています。

感想等お待ちしております。中傷などはご遠慮ください。


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圧倒と修行の成果

「なっ何を企んでいるのか知りませんが無駄ですわ!不死のフェニックスであるお兄様に勝てるはずが…」

 

『ライザー・フェニックス様の『騎士』一名、『兵士』三名リタイア。』

 

「なっ!?」

ライザーの妹のレイヴェルとかいうお嬢さんが喋っている中グレイフィアさんの放送がかかる。俺はすかさず通信を入れる。

 

「今のはカラワーナか?」

 

『はい、ドーナシークと合流する際前庭にて発見しましたので私と夕麻様で仕留めました。』

 

「上出来、よくやった。……さて、悪いけどそろそろ潮時だ。大人しく棄権するかこの場で戦闘不能にされるか……どっちがいいかなお嬢さん?」

 

そう言って俺はお嬢さんとイザベラ嬢の方を向く。

 

「あら、ここにいましたの皆さん。」

 

すると上空から声がする。見ると悪魔と堕天使の翼を生やした朱乃ちゃんが宙にいた。

「おお、朱乃ちゃんお疲れ、どうだった?」

 

「ええ、少し長引いてしまいました。フェニックスの涙を使われましたが面倒なので一撃で潰しちゃいました♪」

 

「ああ……そうなんだ…………」

 

改めて思う、この子俺以上のドSだ!

 

「…なぁアニキ、フェニックスの涙ってなんだ?」

 

イッセーが顔をひきつらせながら俺に尋ねる。

 

「あ…ああ、フェニックス家が生産するどんな傷も癒し精神力も全快にするアイテムだ。レーティングゲームでは2つまでの持ち込みが認められている。向こうの女王が一つを持っていたか……となるともう一つはライザーかそこのお嬢さんか……どうなんだお嬢さん?」

 

俺はお嬢さんに尋ねる。

 

「えっ!?え、ええ、私が持っていますわ。」

 

そう言ってお嬢さんは懐から小瓶を取り出す。

 

「なるほど…よし、みんなはこのままお嬢のところに迎え。なぁに遠慮はいらん、相手はなんせ不死身だ、思う存分ぶちのめせ。俺はこのお二人さんの相手をする。」

 

「「「「「了解(ニャ)!!!」」」」」

 

みんなは俺の指示に笑みを浮かべ頷きそのまま新校舎の屋上へ飛んで行った。

「……さて、では答えを聞こうか、お二人さん?」

 

「……私はライザー様の下僕、ライザー様の前で無様な姿は見せられない。」

 

そう言ってイザベラ嬢は前に出る。

 

「…クフフフ、いいぜ?せっかくだ、俺も肉弾戦で戦うとしよう。」

 

そう言って俺は拳を構える。

 

「…何のつもりだ?さっきの指示にしてもそうだ、全員で私たちを倒してからでも十分間に合うはずだ。」

 

イザベラ嬢は目を細め尋ねる。

 

「なぁに、俺一人でも十分相手が勤まると踏んだまでだよ。……それにこのまま不完全燃焼は不本意だろうイザベラ嬢?」

 

俺がそう聞き返すと、イザベラ嬢は目を見開いた後すぐに笑みを浮かべた。

「…ふふ、君は気が利くようだな……それとイザベラ嬢は止めてくれ、なんだかこそばゆくなる。イザベラでいいよ。」

 

「了解、俺も竜也でかまわないぜ、……ああ、お嬢さんは俺たちが戦っている間暇だな、ほらこれでも見ているといい。」

 

そう言って俺はお嬢さんに映像投影水晶を投げ渡し、お嬢さんはあわてて受け取り、水晶から映像が映し出される。

 

「っと!?もう!いきなりびっくりするじゃないですか!?……それと私もレイヴェルで構いませんわ。」

 

「承知しましたっと……さて、じゃあ初めようか!!!」

 

「望むところ!!!」

 

そう言って俺たちは真っ向からぶつかり合う。それをレイヴェルはふんと鼻息をたてて流し見て水晶に映る映像を見る。

 

「…えっ!?こ…こんなことが!!!?」

 

そこには、リアスに圧倒されるライザーの姿が映っていた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「はぁ!!!!」

 

ライザーはリアスに炎をぶつける、そして炎が収まるが…

 

「ルイン・シールドアーケロン。」

 

リアスは破滅の魔力でできた全身が収まるほどに大きな海亀を模した盾で防いでいた。

 

「ルイン・ブーマーカイト!!!」

 

「がっ!?」

 

リアスは盾の形をトビの姿を模したブーメランの形に変えライザーに投擲する。ライザーは胴体を上下に両断されるがフェニックスの不死性によって蘇生する。

 

「はぁはぁ……くそっ!!!」

 

「あら、どうしたのライザー?息があがっているわよ。」

 

「くっ!うるさい!!!」

 

ライザーは内心焦っていた。ゲーム開始から自分の眷属だけが次々とやられて行き、気づけば残るは自分と『僧侶』であり妹のレイヴェルと『戦車』のイザベラのみ、このままでは不味いとリアスに一騎討ちを申し出た。「眷属に隠れていては王の名折れ」などといったプライドを刺激する言葉をかけ、案の定リアスは乗ってきた。

しかし実際はリアスは破滅の魔力をほぼ完璧にコントロールしており、フェニックスの不死性があるも、確実にライザーは追い込まれていった。

 

「ダァァ!!!」

 

ライザーは炎の弾をリアスに打ち出すが…

 

「ルイン・ウィップバイパー!!!」

 

リアスは右腕から蛇の形をした破滅の魔力を伸ばし炎の弾を打ち消す。

 

「ッ!?これでどうだぁ!!!」

 

ライザーはさらにバランスボールほどの大きさの炎球を大量に放つ。

 

「ハハハハハ!!!これならさすがに」

 

「ルイン・ウィップヒュドラ」

リアスは腕の蛇を九本に増やし全ての炎球をかき消した。これがリアスの修行の成果、さしずめ『消滅の造形魔法』とでも名付けようか、ちなみになぜ動物なのかと言うとより複雑な方が修行になるという竜也の指示である。

 

「なっ!?…くそぉ!ならば!!!」

そう言うとライザーは今度はアーシアに向かって炎を放つ。

 

「先に厄介な回復役から潰してやる!!!」

 

流石にアーシアにはなす統べはないと踏んだライザー、するとアーシアは背から万年筆を模した杖を引き抜き、空中に文字を書き出す。

 

「ソリッドスピリット“counter”!」

 

「なっがぁ!?」

 

するとアーシアの書いたcounterの文字が実体化しライザーの炎を弾き返す。ライザーは自分の炎を返されるとは思わずもろに喰らってしまう。これがアーシアの習得した書いた文字を実体化させる魔法、『ピクトマジック』である。

 

「はぁはぁ…こんなk《ドスッ》グアァァァァ!!!?」

 

切な、ライザーの肩を光でできた矢が貫通する。いくら不死と言えど悪魔に光の力は猛毒、ライザーは悶絶する。

 

「あああ゛あ゛あぁ!!!くそぉどこかr《ダンダンダンダンダン》《ザシュシュシュシュ》ギャアアアアアアア!!!!?」

 

革命舞曲(ガボット)ボンナバン!!!」

 

「グアァァァァァァ!!!?」

 

追い討ちをかけるようにライザーの四脚を光の苦無が貫き、心臓に光の弾丸が打ち込まれ、最後にドーナシークの光のレイピアによる突きを喰らってライザーは墜ちる。これが彼らの課題、『光の槍の形状変化』の成果、ドーナシークがレイピア、夕麻が弓矢、カラワーナが苦無、ミッテルトが2丁拳銃(グリゴリの提供)の弾丸である。

 

「あら、あなたたち。」

 

「すまない、残りを片付けていたら遅くなってしまった。じきに主たちも合流する。」

 

「……というかもう仕留めたんじゃないの?これ。」

 

「部長!ただいま到着しました……ってあれ、終わってる?」

 

「あらあら、少し遅かったようですわね。」

 

「な~んだ、つまらないにゃ。」

 

そこに竜也を除く残りのメンバーが集結した。皆満身創痍のライザーを見て皆驚き半分、そして暴れ損なった落胆半分といったところだ。

 

「やれやれ、案外呆気なかったな。」

 

「イッセーく~ん!私頑張ったよ!誉めて誉めて~♡」

 

「うん!すごいね夕麻ちゃん♡」

 

「やったー!イッセー君に誉められた~♡」

 

「あなたたち……まあいいわ、そろそろライザーの戦闘不能の放送が」

 

切な、彼女たちを炎が包み込んだ。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「……かはっ!?」

現在俺はイザベラとの肉弾戦の末、俺の蹴りが彼女の腹に入り勝負を決した。彼女の体がだんだん転送され消えて行く。

 

「み…見事だ、こんな熱い戦いは久しぶりだ……」

 

「ああ、俺も楽しかったよ……ああ、それと」

 

「?」

 

「あんた仮面は外したらどうなんだ?せっかくのきれいな顔なのに。」

 

「なっ!?/////」

 

『ライザー・フェニックス様の『戦車』リタイア。』

 

イザベラが完全に転送されグレイフィアさんの放送が鳴る。……最後なんか顔が赤かったような……

 

「ふぅ…さて、向こうの様子はっと。」

 

「あら、終わりましたの?」

 

「まあね、ちょっと隣失礼。」

 

そう言って俺はレイヴェルとお嬢とライザーの戦いを見る。戦況はまあ当然と言ったら当然にお嬢が圧倒し、駆けつけた堕天使四人が止めを刺す。遅れてイッセーたちが着いたけど…正直意味なかったな。それから数分たったが一向にライザーのリタイアの放送がかからない。するとみんなを炎が包み、炎が収まると火傷を負い倒れ伏すみんなと無傷のライザーが……一体どういうことだ?………待てよ、まさか!?

 

「…そうか、そう言うことか。」

 

「…?何のことですの?」

 

「ああ、レイヴェル嬢、あんたも当然知っているよな?レーティングゲームにはお互いにフェニックスの涙の二本までの使用が認められている。ましてやこれは魔王様の見る試合、そちらが用意したのならこちらにも当然支給されるはずだ。だが俺たちは受け取っていない。」

 

「……ッ!?ま…まさか……」

 

「ああ、ライザーのやつ俺たちに支給されるはずだったフェニックスの涙を楠ねやがった!しかもあの炎の勢い、二本同時に使いやがったな。」

 

「にっ二本同時!?…お兄様、あなたというヒトは……」

 

「ちっ、こうしちゃいられない!」

 

俺はすぐさまお嬢たちのもとに向かおうとする。

 

「おっお待ちになって!ただでさせ絶大な回復効果のあるフェニックスの涙を二本同時に使ったということは今のお兄様は全快時以上の力を得ています!いくらあなたと言えど……」

 

「それでも俺は行く。仲間だからな。」

 

「なっ!?……忠告はしましたからね!!!」

 

俺はみんなのもとへ雷速で飛んだ。

 

 




思いの他長くなってしまいました。次回でレーティングゲーム集結です。感想等お待ちしております。


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思いと決着

リアスside

 

全体が焼けるように痛い…いえ、実際に火傷しているわね。見るとみんな同じように倒れ伏している。この炎はライザーの…恐らくフェニックスの涙を使ったわね、だけどこの熱量は明らかに異常だわ。

 

「フフフ、形勢逆転だなぁリアス、大人しく投了(リザイン)するんだ。これ以上は無駄だ。魔王様に無様な姿は見せられないだろう?」

 

ライザーはさっきとは打って変わり勝ち誇って言う。投了する……私が?

 

「ふざけ…ないで、ちょうだ…いライザー……私はま…だ倒れていない……わよ……」

 

私は無理やり笑って拒否する。みんなは私のために長く険しい修行に耐えて戦ってくれた…それなのに、私だけが楽をするわけにはいかないのよ!

 

「……わからないな、何が君をそこまでさせる?わかっているのか、この結婚はグレモリー家のひいては悪魔の未来を担う重要なものなんだぞ。君ならわかるだろう?」

 

「それ…でも、あなた…と結婚な…んて絶対にいやってこと…よ……そ…れに…どんな…に惨め…でも最後…に勝て…ばよか…ろうなの…よ……」

 

私は痛む体にむち打ち立ち上がる。正直辛いなんてものじゃない、今すぐにでも楽になりたい。だけど私にはわかる、みんなの闘志は消えていない。それなのに私が諦めてどうするの?私はみんなの『王』なのよ!

 

「この状況でどうやって勝つと言うんだ?他の奴らは満身創痍、君も立っているのがやっと、あと一撃加えれば終わりじゃないか。どこに希望がある?」

 

希望?……希望なら……

 

「なら俺がお前を倒せばいいだけの話だ。」

 

「なっ!?ガァ!!!?」

 

ここにいるわ!!!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

なんとか間に合ったようだな、俺はライザーを蹴り飛ばしみんなのもとへ走る。

 

「竜也…君」

 

「アニキ…ごめん…また油断しちまった…」

 

「まったくだ、ったく後で反省会だぞお前ら……大丈夫かお嬢?」

 

俺はお嬢に振り向く。

 

「だい…じょ…うぶじゃないわ…よ、正直…立って…いるの…も辛いわ…」

「……わかった、すぐに終わらす。」

 

「…待ってください…竜也君」

 

俺はすぐにライザーのもとへ向かおうとするが朱乃ちゃんに引き留められる。

「どうした朱乃ちゃん?」

 

「このまま倒れ伏しているのは癪ですわ…だからこれを…」

そう言って朱乃ちゃんは俺に雷の魔力を流し込む。

 

「だったら…俺も『赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)』…」

 

『Boost Boost Boost!!! transfer!!』

 

そこにイッセーも加わり俺に倍化した力を譲渡する。二人は残りの力を俺に明け渡し崩れ落ち、俺は二人を支える。

 

「イッセー!朱乃ちゃん!」

 

「後は…お願いしますわ…」

 

「派手にかましてやれ…アニキ…」

 

二人はそう言い残し消える。

 

『リアス・グレモリー様の『女王』、『兵士』一名リタイア。』

 

「なら…わたしは部長さんを回復させて…少しでも長引くように……」

 

アーシアは聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の光をお嬢に向ける。

 

「だったら…私の魔力も使うにゃ、アーシア…」

 

「…なら私も……」

 

「僕もだ…」

 

「私も…」

「私もだ…」

 

「某も…」

 

「使って欲しいっす…」

 

そう言って残りのみんなはアーシアに魔力を手渡し、アーシアはお嬢の傷を回復させる。

 

「みんな…」

 

「わたしたちにできるのはここまでです…後はお任せします…」

 

そう言い残し、アーシアたちは消えて行った。

 

『リアス・グレモリー様の『僧侶』一名、『騎士』一名、『兵士代理』五名、リタイア。』

 

「みんな…ありがとう…」

 

「お嬢、いけるか?」

 

俺はお嬢に尋ねる。

 

「…ええ、当然よ!」

 

お嬢は俺の隣に立ち構える。見るとライザーがこっちに向かって来た。

 

「そうか…なら行こうぜ!」

 

俺は雷速でライザーに接近する。

 

「なっ!?」

 

「並列エレキパンチ!!!」

 

「ガァ!!!?」

 

エレキパンチを食らったライザーはお嬢の方に突っ込む。

 

「ルイン・ブリックバット!!!」

 

「ガァアアアア!!!?」

 

お嬢はライザーに小さなコウモリの羽の生えた破滅の魔力の弾を打ち出す。ライザーは体中に穴が開くがすぐに復活する。

 

「お嬢、今ライザーとやり合って何分もつ?」

 

「そうね…せいぜい8分くらいかしら。」

 

「わかった、3分…いや2分耐えてくれ。デカイの一発入れて決める。」

 

「了解!ルイン・ウィップバイパー!!!」

 

お嬢は両手に破滅の魔力でできた蛇を伸ばしライザーに向かって行く。俺はその場で電気エネルギーを増幅させる。

 

「なぜわからんのだリアス!これは君の家のためでも君自身のためでもあるんだぞ!」

 

「そんなもの知らないわ!私の一生は私のものよ!私の幸せは私が決める!私が掴み取る!あなたにも!例えお兄様にも妨げられるものじゃない!!!」

 

お嬢は両手の魔力を結合させ、竜の頭の形を作る。

 

「食らいなさい!ルイン・ブラスタードレイク!!!」《ドカァァァァァァン》

 

竜の頭から消滅の魔力を凝縮した砲弾が発射され、ライザーの体の大部分に風穴を空ける。ライザーは炎をまとい復活するが大分炎の勢いが弱くなった。

 

「はぁはぁ……もう諦めろリアス!これで君の魔力も尽きただろう!?これ以上は無駄だ!」

 

「はぁはぁ……フフフ、確かにもう私の魔力は空よ。だけどね……」

 

「よう焼き鳥、待たせたな。」

 

「ッ!?キサマ!!」

 

「3分経ったわ、後はお願いね竜也。」

 

お嬢は俺に言いかけ、俺はお嬢の前に出る。

 

「ああ、任せろお嬢…いや、リアス。」

 

「/////えっ!?あ、あなた今私の名前を……」

 

「今さら何言ってるんだ、仲間だろう?」

 

「あ、そう…そうよね……」

 

何でちょっと残念そうなんだよ…まあいいや、俺はライザーの正面に立つ。

「キサマぁ、本当にお前は俺の神経を逆撫でしやがる!わかっているのか?この婚約は悪魔の未来のためにも必要なものなんだぞ!?お前のような何も知らない小僧がどうこうするようなことじゃないんだ!」

 

「知らねぇよそんなもん、俺は人間だからな。だがな、本人の意思をねじ曲げて結ばれてもそこに幸せなんかない!幸せのない未来なんか、そんなもんいらないんだよ!!!」

 

俺はライザーに電気の通り道、ステップストリーダを放つ。

 

「なっこれは!?」

 

「ロックオンだ、何処にも逃がさねぇ……喰らいな、奥義、直列大帯電撃!!!!」《カッ ドカァァァァァァン!!!》

 

ライザーに超特大の電撃が炸裂する。ぐぅっ!?…流石にきついな……

 

「グガァギャアァァァァァァ!!!!!?」

 

「はぁはぁ…体内で最も電気を通すのは血液だ、いい具合に血に濡れてくれたなぁ……」

 

「!?そのためにあれだけの攻撃を…だが俺はフェニックス!すぐに蘇生を」

 

「言っておくが、その電撃は体内に帯電する。お前が復活すればずっとお前の体内に残り続ける。」

 

「なっ!?」

 

「いくらでも復活すればいいさ、永久にその電撃を食らい続けるだけだ。」

「なっ!?なにぃぃいいぃぃイいィィィぃ!!!!!?」

ライザーの体中で電撃が弾け、ライザーは悶絶する。

 

「言ったろ?不死身より強い奴がいることを教えてやるってな。」

 

「グガァアアァァァァァァちくしょおおぉぉぉぉ雷門竜也ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

ライザーは電撃に悶え、ついに倒れ伏す。とうとう限界が来たようだ…俺もそろそろ……俺はバランスを崩し倒れそうになる。

 

「タツヤ!」

 

すると、リアスが俺を抱きしめ支える。目からは涙が溢れている。

 

「わりぃリアス、心配かけた。」

 

「本当…本当よ……だけど、これで私たちの…」

 

「いや、まだやり残したことがある。」

 

俺はなんとか立ち上がり、ライザーに向かって歩み寄る。そして悶えるライザーの頭を掴み持ち上げ、拳を握り締める。

 

「ま…待ってくれ…止め…」

 

「らぁ!!!」

「ガハァ!?」

 

俺はライザーのどてっぱらに拳をふるいライザーの意識を完全に刈り取りに行く。そしてライザーの体内の電気を吸引する。

 

「お……お前……なぜ…」

 

意識のもうろうとする中、ライザーは俺に尋ねる。

 

「これはあくまで試合だ、戦闘じゃねぇ……それに……」

 

「お兄様!?」

俺が言いかけたところでレイヴェル嬢が駆け寄り、俺はライザーを手渡す。

 

「…お前みたいな奴でも、死んだら悲しむ人はいるだろう?」

 

「……ッ!!!?…ハハハ…そうか……道理で負けるわけだ……お前は……」

 

そこまで言ってライザーは完全に意識を失った。

 

『ライザー・フェニックス様の戦闘不能を確認、このゲームリアス・グレモリー様の勝利です。』

 

「タツヤぁ!!」

グレイフィアさんの俺たちの勝利を告げる放送と共に俺はリアスに後ろから抱きしめられた。

 

「リアス、やった《チュッ》…んむぅ!?」

 

俺がリアスに振り向いて言いかけると、俺の唇に柔らかい感触が……えっ?えっ!?これって…ええ!!!?

 

「んむ…ぷはっ、私のファーストキスよ。責任はとってもらうからね、タツヤ?」

 

リアスはそう言って俺に微笑みかける。え……まさかこれって…リアスまさか俺に…ええ!!!?

 

「あら?タツヤ、ねぇちょっと!?タツヤ!?」

 

そこで俺の意識は途絶えた。




次回後日談です。感想等お待ちしております。次回お楽しみに


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後日談と新生活

「今日からこのお家でお世話になります、リアス・グレモリーです。ふつつか者ですが、よろしくお願いします、お父様、お母様。」

 

あの一件の後、リアスは俺の家に住むことになった。何でこうなったかと言うと、魔王サーゼクス・ルシファーさん(さん付けでいいと言われた。)とリアスのお父上のグレモリー卿に直々に言い渡されたからだ。

何でもあの俺がリアスのファーストキスを奪ってしまった瞬間もばっちり見られていたらしく、魔王サーゼクス・ルシファーさんに呼び出された時は死を覚悟した。会った瞬間に土下座して床に頭を擦りつけた。しかしサーゼクスさんは……

 

「いや、謝るのは僕の方だよ。君を家同士のゴタゴタに巻き込んでしまったからね。それにライザー君の不正の件もあるし、僕もリアスには幸せになって欲しいからね。……それに、君ならリアスを任せても大丈夫だろう。」

 

とか言われてしまった……これってあれか?もう確定なのか!?後、リタイアしたみんなも見ていたらしく……

 

「リアスーー!!!どういうことにゃーー!!!」

 

「うふふふふふふふふふ、リ~~ア~~ス~~?」

 

「抜け駆けはひどいです部長さん!」

 

「えっちょっ!?待って!あれはその何と言うかほらって朱乃!?ちょっと何で縛るの!?えっ何処に連れてくのよあなたたち!?えっちょっ!?待って待って話をあああああああ!!!?」

 

その後、朱乃ちゃんや黒歌、アーシアにもキスされた。それも深い方の、アーシアは顔真っ赤にしてやった後盛大に鼻血吹いたけど……てか俺アーシアといつフラグ建てた?いや、思い当たる節がない訳もないが……

俺はそこまで鈍くないつもりだ、みんなの気持ちも薄々わかってはいたが…まさかこの年で身を固めることになるとわ…ってか前世あわせればもういい年なんだが、俺に誰か一人を選べるのか?みんなは本当にいい女だ。それこそ俺なんかにはもったいないぐらいに、俺はみんなを悲しませることはできない……なんて思っていたんだが………

 

「あら、いいのよ別に。悪魔の社会ではハーレムは普通のことだから…それに、タツヤなら大丈夫でしょう?」

 

「あらあら、私もかまいませんわよ?竜也君は優しいから、ちゃんとみんな愛してくれるでしょう?」

 

「にゃはは、甲斐性の見せどころだニャご主人様♡いや、旦那様って呼んだ方がいいかにゃ?」

 

「はぅ!?そっそんな!?わっわたしはその…竜也さんのお側に居られるだけで……竜也さんとわたしが……ぷはぁ!」

 

「アーシア、また鼻血だにゃ。」

 

それでいいのかみんな?ちなみにあのゲーム、サーゼクスさん経由で家の連中も見ていたらしく…

 

「ハハハ、やるな竜也!流石は我が息子!孫の顔はいつ見れるんだ?」

「あらあら、お嫁さんが4人もできちゃうなんて、今日はお赤飯ね♪ちゃんとみんな幸せにしてあげなきゃダメよ、竜也ちゃん?」

 

「おうおう、その年でやるじゃねぇか。うらやましいねぇ。」

 

「ほほほほ、流石私が選んだ契約者ですねぇ。」

「竜也、黒歌たちと結婚する?我は?」

 

ハズイ、死にたくなった…てかオーフィス勘弁してくれ、俺はそんな甲斐性はない。後、同居人と言うと……

「あ!?オーちゃんずるい!イルもお兄ちゃんの膝上乗りたい!」

 

「ネルもっ!ネルもお兄ちゃんの膝上乗る!」

 

「ダメ、ここ、我の特等席。」フンスッ

 

「きっ木場殿、よっよろしければその…私と…けっ剣の鍛練をしてくれませんか!」

 

「うん、いいよ。」ニコッ

 

「はっはひぃ…ありがとうございまひゅう////」

 

「なっなあ、仮面…外してみたのだが…どう…だろうか?」

なぜかサーゼクスさんに頼まれ、ライザー眷属のイル、ネル、カーラマイン、イザベラまで預かることになった。何でもライザーはレーティングゲームでの不正を行った罰としてしばらくのレーティングゲームの参加禁止を言い渡され、御家からも厳しいお叱りを受けたらしく、一人旅に出てしまったらしい。そして実質解散状態になってしまったライザー眷属はフェニックス家に引き取られ、レイヴェル嬢もフェニックス母殿の『僧侶』の駒とトレードされたらしいのだが、彼女らは俺のもとに来たいと言ったそうで、サーゼクスさんに頼まれ俺が引き取ることになったのだ。とりあえず、住居には地下秘密基地を提供して、イル、ネルは小学校五年生、カーラマインは駒王学園二年、イザベラは三年に編入してもらった。

 

「…はぁ、なんかさらに賑やかになったな。」

 

「あら、でも悪くはない…でしょう?」

 

リアスは俺にそう言って笑う。

 

「……まあ、そうだな。悪くない…」

 

こうして、我が家は今日も賑やかだ。

 




ライザー眷属の年齢は独断と偏見で判断しました。次回からは閑話を挟みながら本編を練っていこうと思います。感想等お待ちしております。次回もお楽しみに


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変質者とストーカー

「最近誰かに見られている気がする?」

 

オカルト研究部の部室にていつも通り俺の焼いた菓子と朱乃ちゃんの紅茶(火、木、土曜はドーナシークが担当)でテーブルを囲っていると、イル、ネル、アーシア、リアスから相談された。ちなみに、ライザー眷属の彼女らにも俺らと同じ特訓をしてその一環で気配察知能力が高くなっている。

 

「ええ、この前夕食の買い物に行った時誰かに後ろからしばらくつけられたの。それからも私が一人でいる時に気配を感じるの。街中だから力を使うわけにもいかないし……」とリアス。

 

「あの…わたしがお風呂に入っていると、なんだか見られている気がして…なんだか怖いです…」とアーシア。この時もし覗き魔がいたらと思うと軽く殺意が沸いた。

 

「あのね、小学校の帰り道で誰かが後ろからついてくるの。」

 

「こわいよぅお兄ちゃん……」

 

そう言ってイルとネルは俺に抱きつく。よっしゃその変質者殺す。ちなみに当然だが学校に通う間武器は持たせていない。

 

「よしわかった、俺がなんとかしてやろう。ドーナシーク、木場、付き合え。」

 

「はっ!御意に」

 

「ええっ!僕も!?」

 

「いや、俺的にストッパーがいてくれた方がいいと思って、下手したらスプラッタになるかもしれないし。」

 

「さらっと恐いよ!?て言うかイッセー君は!?」

 

「ああ、あいつらプライベートは基本デートだから。」

 

「イッセー君…」

 

というわけで、俺たちのストーカー撲さ…ゲフン、撲滅作戦はスタートした。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

現在リアスには夕食の買い物をしてもらっており、俺たちはそれを影で見守っている。『インビシブル』で気配を消したドーナシークに空から見張ってもらい、俺と木場が取り押さえる寸法だ。

 

『こちらリング1(ワン)、後方看板の後ろに怪しい人物を発見。』

 

『こちらナイト1(ワン)、人物を発見、視線からして部長を見ていると判断、黒です。』

 

「こちらサンダー1(ワン)、目標を確認、直ちに拘束する。」

 

ちなみにこれ気分を出すためのコードネームである。サンダー1が俺、ナイト1が木場、リング1がドーナシークである(ドーナシーク→ドーナツ→リング)。そうこうしてる間に俺たちはターゲットに近づく。

 

「…はぁはぁ、リアスはぁはぁ……」

 

ガシッ「何してるのお前?」

 

俺は不審者の頭をつかみ言う。

 

「あぁ?誰だキサマってお前は!?」

「……は?ライザー?」

 

なんとリアスのストーカーの正体はライザーだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「…………で?説明してもらおうかライザー、なぜリアスをストーキングなんて真似をした?」

 

現在ライザーは魔力を封じる鎖でがんじからめにされオカルト研究部に吊し上げられている。

 

「焼き鳥野郎もここまで堕ちたか。」

 

「見損ないましたライザー様。」

イッセーたちだけでなく、ライザー眷属のイザベラたちまでがゴミを見るような目でライザーを見ている。

「………しばらく旅に出て気付いたことがある。」

 

ライザーはそう言ってリアスの方を向く。

 

「リアス、俺はお前が好きだ!あのゲームで俺は君の芯の通った覚悟と決意を目の当たりにした!そんな君に俺は本気で惚れたんだ!」

 

ライザーの突然の告白に唖然とする一堂。だが鎖で宙吊りの状態ゆえに全くカッコつかない。

 

「………で?それが何でストーカーに繋がるんだ?」

「そっ、それはその……こっ告白するタイミングを計っていたら……」

 

「ストーキングに発展したと?」

 

「…………はい」

 

「ライザー……」

 

するとリアスはライザーの前に立ち…

 

「ごめんなさい。私の心は竜也に首ったけなの♪」

 

「ええっ!?」ガボーン

 

あっさりふった。ライザーは真っ白になって行く。そのさまはまさに燃えカス

 

「……さて、では皆の衆。」

 

俺の合図とともに全員が武器と魔力を展開する。

 

断罪(ギルティー)

 

《ドカバキドカガスベキバキボキグキドゴバキ》

ギャアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

次の日、午後3時、通学路にて

 

「はぁはぁ…、双子たんかわいいよ双子たん、はぁはぁ…」

 

ガシッ「人の妹たちに何してるのお前?」

 

「ふっ知ったこと、愛らしい双子が安全に帰路につけるように影ながら護衛を……って君は!?」

 

「…………は?ジーク?」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「………アニキ、何者なんだこいつ?」

 

「ロリコン剣士のジークフリード。」

 

そうこの男、俺が中学卒業後の旅で出会った竜殺しの英雄の子孫であるジークフリードである。なんか俺が村の子供たちと仲良くしてたら急に突っかかって来て返り討ちにした。その後何故か仲間意識をもたれしばらくともに旅をした仲だ。ロリコンの変態であることを除けばわりといいやつだった。

 

「僕を開放してくれブラザー!僕たちはともに汚れなき小さなエンジェルたちを愛でる同士ではないか…」

 

「断罪」

 

《ドカバキベキバキボキグキドゴバキドカガス》

「お兄ちゃんは紳士なの!」「いっしょにするな変態!」

ギャアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「フフフフフ、もうすぐだ、もうすぐその時がくる。」

 

屋敷の通路を歩きながらディオドラ・アスタロトは呟く。

 

「ディオドラ様、今日もお出かけですか?」

 

眷属の一人がディオドラに尋ねる。

 

「ああ、今日も一人で行く。誰もついて来るなよ。」

 

そう言ってディオドラは魔法陣に消えて行った。

 

~~~~~~~~~~~~

 

ところ変わって雷門宅風呂場、

 

「はふぅ~いいお湯ですぅ~♪」

 

現在、アーシアが入浴して湯船に浸かっていた。

 

「はぁはぁ…アーシアたんかわいいよアーシアたん、はぁはぁ…」

 

そんなアーシアの入浴シーンをディオドラは茂みに隠れ双眼鏡で窓から覗いていた。鼻の下はだらしなく伸びて鼻からは鼻血が、口からはよだれがだらだらと流れている。

 

「嗚呼、今まで数多くのシスターを見て来たけどアーシアたんは断トツの破壊力だよ!前みたいにシクってエクソシストに見つかった時アーシアたんに治してもらってから僕は君にゾッコンだ!君を魔女と罵った協会のクソ野郎どもは殺してやりたくなったけど一番許せないのはあの竜也とか言う野郎だ!あいつアーシアたんをあろうことか自分の家に住まわせるだなんて羨ましいけしからん!いつかブッ殺してやる!」

 

「へぇ~誰をブッ殺すって?」

「そりゃあもちろん雷門竜…也………」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「………するってぇと何か?お前今までも教会にいるシスター覗いてはシクってバレてそのシスターさん破滅させて眷属にしてると?」

「…………はい、そうです。」

 

顔面をぼこぼこにして吊し上げられたディオドラ・アスタロトが力なく答える。

 

「うわぁ、今まで見て来た中で断トツで最低な野郎だな。」

 

「ベルゼブブを排出したアスタロト家ともあろう者が……嘆かわしいわね。」

リアスたちがウジ虫を見るような目でディオドラを見る。

 

「眷属にしたシスターさんたちはどうした?まさか手込めにしたんじゃねぇだろうなぁ?」

 

「そんなことするわけないだろう!シスターは未婚かつ処女の汚れなき存在を差すんだぞ!あくまでも眷属にして保護しただけだ!僕嘘言ってない!命かける!!!」

 

ディオドラは凄まじい剣幕で否定する。後ろにスタンバイさせたべーやんに確認すると嘘ではないらしい。

 

「…………わかった、そこは信じよう。」

 

「はぁ、良かっ…」

「でもそれとこれとは話は別。」ジャキッ

 

「えっ?ちょっ!?ちょっ!?まっ…」

 

《ドカバキベキバキボキグキドゴバキボキグキドゴ》

ギャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

~~~~~~~~~~~~

 

その後、ぼこぼこにされ段ボールに詰められたディオドラがこれまでの所業の証拠とべーやんの暴露による証言の実録テープとともにアスタロト家に運送された。真実を知った眷属たちは汚物を見るような目でディオドラを見て去って行った。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ってて……あいつら不死だと思って散々ボコりやがって……」

 

「フフフ、変わっていないなブラザー、いつか君をこちら側に…」

 

「嗚呼、アーシアたん、僕はやはり君しか……」

 

バッタリ「「「うん?」」」

 

ストーカー(バカ)たちの出会った瞬間であった。

 

~~~~~~~~~~~~

 

ところ変わって居酒屋にて

 

 

「てやんでぇチクショー!自分の好きな相手に夢中で何が悪いってんでい!!!」

 

「まったくだよねぇ!いとおしい存在を遠目で見て何が悪いんだい!!!」

 

「そうだそうだ!俺たちは少し奥手なだけだぁ!!!」

 

「ハハハハハ!!!今日あったばかりなのになかなか気が合いますねぇ僕たち!」

 

「ハハハハハハ!!!まったくだ!!!」

 

「ねぇねぇあのさ!いっそのこと同盟組んだらどうかな僕たち!」

 

「おお!いいね、組もう組もう!」

 

「ではではぁ!我ら同盟の設立を祝して!」

 

カァン「「「カンパーイ!!!」」」

 

今ここに駒王ストーカー同盟が誕生したのであった。




ある意味きれい?なディオドラ。自分でもやっちまったと思います。感想等お待ちしております。次回もお楽しみに


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使い魔と顔合わせ

「そろそろイッセーにも使い魔を持たせようかしらね。」

 

ストーカー事件からしばらくしたある日、朱乃ちゃんの入れた紅茶を飲んでいたリアスがふとそう口にした。

 

「使い魔っすか?」

 

「ええ、イッセーが悪魔になってからしばらく経つし、そろそろ頃合いかと思ったの。」

 

頭に?を浮かべるイッセーにリアスは説明する。

 

「……なるほど面白そうだな、俺たちもついて行っていいか?」

 

「ええ、もちろんいいわよ。むしろタツヤも誘うつもりだったから♪」

そう言ってリアスは俺の頭を撫でる。ちなみに俺の隣に座るのはみんなでローテーションして決めていて、今日はリアスの番なんだそうだ。

 

「てか竜也様、使い魔ならべーやんさんがいるんじゃないんすか?」

 

白音とお菓子を頬張っていたミッテルトが尋ねる。

 

「いや、べーやんはあくまで契約関係だからな。本人の前で言うなよ、キレるから。」

 

「はいっす。」

 

容易に想像できたのかミッテルトは素直に頷きまたお菓子を食べ始める。

 

「すみません部長、今日はカーラマインさんと剣の鍛練をする約束がありますので……」

 

木場が申し訳なさそうに手を上げてリアスに言う。

 

「いいのよ裕斗、約束なら仕方ないわ。」

 

「申し訳ない木場殿、私のために……」

 

今度はカーラマインが申し訳なさそうに木場に頭を下げる。

 

「いいんだよカーラマインさん。部長も許してくれたし、それに前から約束していたことだもの。」ナデナデ

 

ポンッ「はっはひぃ//////」

 

木場はカーラマインの頭を撫でカーラマインは顔を真っ赤にする。すると誰かがドアをノックする。

 

「どうぞ、入って。」

 

ガチャッ「失礼します。」

 

ドアを開けて入って来たのは生徒会会長の支取蒼那だった。

「リアス、生徒会長と知り合いだったのか?」

 

「ええ、昔からの幼なじみなの。」

 

「支取蒼那改めソーナ・シトリーです。どうぞよろしく。」

 

そう言って支取蒼那もといソーナ・シトリーは挨拶する。曰く、彼女は昼間の学校の管理を任されているらしく、彼女も新しい眷属を得たのでその眷属も同行させてもらうために来たそうだ。

 

「こちらがその眷属です。匙、挨拶を。」

 

「はい会長、俺は匙 元士郎、ソーナ・シトリー様の『兵士』です。よろしくお願いします。」

 

「ふ~ん、俺と同じ『兵士』なのか。」

 

イッセーが興味深そうに匙 元士郎と名乗った兵士を見る。

 

「ふふん、並みの『兵士』といっしょにしてもらっちゃ困るぜ?なんせ俺は『兵士』の駒を4つ使って転生したんだからな!」

 

匙は自慢気に言う。それならイッセーは一時的とは言え『変異の駒』2つなんだが。

 

「自分の実力をひけらかすのはやられの典型だぞ?」

 

「なっなんだと!?」

 

イッセーは呆れたように眉を寄せて匙に言い、匙はイッセーに食って掛かる。

 

「止めなさい匙。」

 

「ですが会長こいつが!」

 

「イッセー、変に挑発すんな。」

 

「……別にそんなつもりはなかったんだけど…」

 

匙は生徒会長に注意されるも食い下がるが、イッセーは俺が注意すると大人しく引き下がる。もともとケンカをふっかける気はなかったのだろう。

 

「……て言うかなんで人間のあんたがいるんだ、雷門竜也?」

 

匙が怪訝そうに俺に尋ねる。

 

「まあ俺も関係者ってことさな。」

「ええ、そうよ。そして私の最も愛しい人よ♪」

 

そう言ってリアスは両手を俺の腕に絡める。……なんか嬉しいような恥ずかしいような…見ると匙は面食らったような顔をしている。

 

「……はっ?まっまままままマジですかぁ!!!?」

 

「ええ、ちなみに両家の親公認よ♪」

 

「ええっ!!!?」ガビーン

 

匙はさらに驚き飛び退く。……えらくテンション高いなこいつ…

 

「そんな…バカな……あの落第生の雷門竜也ごときが……」

 

『『『『あぁ?』』』』

 

切な、部室の空気が凍りつき、匙に大量の殺気が向けられる。

 

「………おい、てめえ今なんつった?アニキがごときだぁ?」

 

イッセーが普段見せないようなドスの効いた声を出し匙を睨み付ける。

 

「えっ!?ちょっ!?な、なんだよお前急に…」

 

「あなた、匙と言ったかしら?」

 

そこにリアスが割って入る。だがその殺気はイッセーに負けず劣らず…というよりイッセー以上だ。

 

「よく覚えておきなさい匙、自信があるのは結構なことだけど度を過ぎればただの過信よ。せめて自分の身をわきまえた発言をしなさい。あんまり調子に乗ったことを言っていると………消し飛ばすわよ?」ガシッ

 

「はっはいぃぃぃ!!!すいまっせんしたあああぁぁぁ!!!」

 

リアスが匙の頭をひっつかみ恐ろしく低い声でそう告げると匙は凄まじいスピードで土下座し頭を床に擦り付ける。……いっいつものリアスじゃない……

 

「……なあみんな、俺のために怒ってくれるのは嬉しいけどそれくらいにしてやってくれ。俺は気にしてないから。」

「……そうね、少しやり過ぎたわ。ごめんなさいねソーナ、でも下僕のしつけはちゃんとしておきなさい。」

 

どうにかリアスはいつもの調子に戻り、みんなもなんとか殺気を納めてくれた。いやぁ、こうして見ると、俺って愛されてるんだなあ…

 

「えっええ、ごめんなさいリアス……と言うかあなた性格変わった?」

 

「そうかしら?…さて、それじゃあ行きましょうか。」

 

こうして俺たちは魔方陣で転移した。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「………へえ、ここが使い魔の森か。」

 

「ゲットだぜ!」

 

「「「うおっ!?」」」

 

魔方陣で使い魔の森とか言う薄暗い森に移転したと思ったら、野球帽をかぶりTシャツに短パンという少年のような格好をしたオッサンが現れた。

「俺の名はマダラタウンのザトゥージ!使い魔マスターを目指したいるんだぜぃ!」

 

「………リアス、冥界に精神病院ってあるか?」

 

「気持ちはわかるけど落ち着いてタツヤ、彼はこれで正常なの。」

 

「いきなりヒドイんだぜぃ!?」

 

聞けばこのザトゥージとやら、使い魔の森の生態調査的なことをやっているらしく、こうして新人悪魔に使い魔の森のガイドをしているらしいのだ。

 

「さて、どんな使い魔がご所望かな?強いの?速いの?それとも毒持ち?」

 

ザトゥージは気を取り直して使い魔の希望を聞く。

 

「……そうさな、オススメとかはないのか?」

 

俺はとりあえずオススメを聞いて見る。

 

「俺のオススメはこれだな!五大龍王の一体、『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』ティアマット!龍王唯一のメスで、このドラゴンをゲットした悪魔は未だかつていない!」

 

『ほほう、ティアマットか。』『懐かしいな』『元気かな?』

 

(おやダハーカ、なんかえらく久しぶりに声を聞いたな。)

 

『ほっとけ、確かあいつはドライグのことをえらく嫌っていたな。』『赤龍帝ヤバいかも』『かわいそー』

 

(へえ、それまたなんで?)

 

『さぁ、それは我らも知らん。』『どうだろうね』『ドライグに聞いたら?』

 

「だな、おいみんな。」

 

俺はみんなにダハーカとの会話の内容を説明した。

 

「……ああ、道理でさっきからドライグが変にびくびくしてると思ったら……」

 

『知らない……ボク知らないもん……』

 

いや何やったんだよドライク。まあ十中八九昔の黒歴史のことだろうけど……

 

「……まあ、そんなわけでティアマットはなしで、」

 

「わかったんだぜぃ!じゃあとりあえずこの先に行くんだぜぃ!」

 

こうして俺たちは使い魔の森へと入って行った。

 




感想等お待ちしております


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カルチャーショックと使い魔ゲット

俺たちはザトゥージに連れられて使い魔の森の中を進んで行き、森の中の泉へとたどり着いた。

 

「さあついた。この泉には水の精霊ウンディーネがいるんだぜぃ!」

 

ザトゥージは泉を指差して言う。

 

「ウンディーネか、てことは……アーシア。」

 

「はい!ディーネさんのお仲間に会えるんですね。」

 

アーシアは目を輝かせて言う。

 

「?アニキ、ディーネさんって?」

 

イッセーが頭に?を浮かべて俺に尋ねる。

 

「ああ、それはだな………」

 

「おおっ!?いよいよウンディーネが現れるんだぜぃ!」

 

俺の言葉を遮りザトゥージが泉を指さし、泉から眩い光が放たれる。そして光の中からついにウンディーネが現れた。清楚な服に包まれたその身体はボディービルダー顔負けに鍛え上げられ顔はまるで歴戦のグラディエーターのような…………………………は?

 

『………………………………………』

 

見ると、みんなも目を見開き口をあんぐりと開けてまさに唖然という顔をしていた。

 

「……………ウンディーネ?」

 

俺はまさかと思いザトゥージに尋ねる。嘘だよね?んなわけないよね?違うよね!?

 

「おう!その通りなんだぜぃ!」

 

「いや嘘をつけええええええ!!!これのどこがウンディーネなんじゃああああ!!!?」

 

「水浴びに来た武闘家の方がまだ信じられるわああああああああ!!!!!!」

 

「返せ!!!俺たちの夢を返せええええええ!!!!!!」

 

俺のシャウトにイッセーと匙が続く。するとそこにさらに別のウンディーネ?が現れてもとからいたウンディーネ?と激しい肉弾戦を繰り広げる。

「見ろ、最近は環境破壊なんかで清らかな泉の数も減り、ウンディーネの世界も弱肉強食なんだぜぃ。ちなみにあれは女性型なんだぜぃ。」

 

「……………アーシア、お願い。」

 

俺は救いを求めるようにアーシアにすがりつく。あんなのがウンディーネのはずがない。そうに決まってる。

 

「はっはい!……」

 

アーシアはなんとも言えない表情で右手を掲げる。見ると人差し指に銀の指輪がはめられている。

 

「ガーディアンARM、ウンディーネ!!!」

 

アーシアがARMを発動すると、指輪がパキンと弾け、水でできた体に狐文字の書かれた布を巻き付けたガーディアン、正真正銘のウンディーネが現れた。

 

「おおおおおおおお!!!?これぞまさに理想のウンディーネぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

「女神だ!女神様が降臨なされた!!!」

 

イッセーと匙は滝のような涙を流しウンディーネとアーシアを拝む。

 

「…ねぇタツヤ、あれって……」

 

リアスが俺に尋ねる。

 

「ああ、以前俺が手に入れてアーシアに譲ったガーディアンARMだ。水を司るかなり上位のARMなんだぞ?」

 

『へぇ~~』

 

みんなは感心したようにウンディーネを見る。

 

「あらアーシア、今日はどのような要件で……」

 

そこまで言って、ウンディーネは泉で激戦を繰り広げるウンディーネ?を見て固まる。

 

「……竜也さん、彼女?らから私と同じ気配を感じるのですが………」

「ああ、こちらの世界のお前たちの成れの果てだそうだ……」

「……………ええ~……」

 

ウンディーネは呆然とウンディーネ?を見る。俺たちは静かにその場を去った。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「まったくお前たち注文が多すぎるんだぜぃ。」

 

ザトゥージはやれやれと言った感じでため息をつく。

 

あれからしばらくして、夕麻は一角ウサギのアルミラージ、ミッテルトはハロウィーンでお馴染みのジャック・オ・ランタン、カラワーナが機械弄りとお菓子の好きな小鬼グレムリン、ドーナシークがリザードマン、イル、ネルが山猫と契約した。ちなみに匙は毒トカゲのバシリスクと契約したのだが……めっちゃガジガジ噛まれてた。アーシアの『聖母の微笑』と俺の抗体がなければ危うく死ぬところだった。抗体で毒が効かなくなったことに興味を持って契約したそうだ。

 

「いやお前の紹介する使い魔がキワモノ過ぎるんだよ。」

 

そんなことを言いながら森の中を進んで行くと、突然木の上から俺の顔にゲル状の何かが降ってきた。

「がぼぼぼぼぼぼぼ!!!?」

 

「たっタツヤ!!!?」

 

「アニキ!!!?」

 

くっ苦しい!?ヤバい息がぁ!!!?

 

「タツヤ、動かないで!はあっ!!!」

 

するとリアスが消滅の魔力で俺の顔の何かを消し飛ばしてくれた。

 

「ぜぇぜぇ……ありがとうリアス。」

 

「ええ、これくらい゛ぃっ!?」

 

見ると、リアスの服に俺の顔についたゲル状の何かがはい回っていた。それは木の上からドボドボと落ちて来てリアスたち女性陣にまとわりつく。見るとなんかぬるぬる動く触手のようなものもいる。

 

「ちょっ!?なんなのこれぇ!!!?」

 

「あらあら……」

 

「ひぅぅ!?タツヤさぁん!」

 

「にゃあ!?なんにゃ!?」

 

「ふっ服が溶けてる!?」

 

「キモいっす!!!」

 

「…キモい」

 

「すっ凄い量だ!て言うか止めろぉ!」

 

「「あーん!お兄ちゃ~ん!」」

 

「ひっ!?やっ止めろ!?まさぐるな!」

……な、なんか凄いことになってる/////

 

「こいつらはスライム、服を溶かして食べるんだぜぃ!触手の方は名前はないけど人の体液を吸うんだぜぃ!」

 

ザトゥージが鼻血を流しながら解説する。……て言うか、

 

「「俺の女に何さらすんじゃこらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」

 

俺とイッセーの声がはもり俺の電撃とイッセーの炎がスライムと触手を消し飛ばす。

 

「あっ!?お前らなんてことを」

「「お前が何しとるんじゃあ!!!」」

 

「ぶへぁ!?」

 

俺とイッセーのドロップキックが匙にヒットして匙は吹っ飛び、俺たちはみんなのもとへ駆け寄る。

 

「大丈夫かみんな!?ディメンジョンARM、ジッパー!!!」

 

俺はジッパーを発動して中から布を取り出す。

 

「みんなとりあえずこれを、ドーナシーク配るのを手伝ってくれ!」

「承知しました!」

 

「夕麻ちゃん無事か!!!?」

 

イッセーは夕麻に駆け寄る。

 

「うっ、うん、大丈夫だよイッセー君。」

 

「ギャオ!」

 

「はわっ!?」

 

するとそこに青いドラゴンの子どもが現れアーシアの頭に止まった。

 

「『蒼雷竜(スプライト・ドラゴン)』その名の通り青い雷を操るドラゴンだぜぃ!どうやらお嬢ちゃんになついたようだぜぃ!」

 

ザトゥージが説明する。なるほど蒼雷竜か。

 

「アーシア、せっかくだし契約したらどうだ?」

 

「ええっ!?契約ですか……わたしと契約してくれますか?」

 

そう言ってアーシアは頭のドラゴンを見る。

 

「ギャウ!」

 

ドラゴンは力強く鳴く。どうやらオッケーのようだ。

 

「わかりました!よろしくお願いします、ドラゴンさん!」

 

「…………許さねぇ。」

 

「へ?」

 

ポツリとイッセーが何か呟いた。

 

「夕麻ちゃんの肌を汚しやがって……駆逐してやる。俺はスライムどもを一匹残らず駆逐してやる!!!」

 

「いっイッセー君!?」

 

「どうしたイッセー!?キャラが変わってるぞ!?」

 

「目標下劣なスライム!うおぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「イッセー!?戻ってこい!イッセーぇぇぇぇ!!!?」

 

~~~~ 一時間後~~~~

 

「ぜぇぜぇ……」

 

「イッセー君…私のために……」

 

「いや~森の厄介者を駆逐してくれて助かったんだぜぃ!」

 

イッセーは森のスライムを全て焼き付くし、すっかり燃え尽きていた。夕麻は目に涙を浮かべてイッセーを介抱している。するとイッセーの服の袖からポトリとスライムのかけらが『赤龍帝の太陽手』の宝玉に落ちる。すると宝玉が光を放った。

 

「!?まだ生き残りがいやがったか!!!」

 

イッセーはスライムのかけらを振り払う。するとスライムのかけらはだんだん大きくなって行き、やがて形をなして行き少女のような姿に……ってはいぃ!?

 

「すっスライムが女の子に……」

 

するとスライムはペタペタとイッセーに歩み寄る。

 

「…マスター。」

 

「「「「「「「「はいぃ!!!?」」」」」」」」

 

「マスター!」

 

そう言ってスライム娘はイッセーに抱きついた。

 

「え…えっと……」

 

「♪」

 

「……なんか、もうめちゃくちゃだな……そろそろ帰るか。」

 

「………そうね、帰りましょうか。」

 

「グオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」

 

切な、凄まじい咆哮が響いた。

 

『こっこの声はぁ!!!?相棒起きろ!帰るぞ!今すぐ帰るぞ!!!』

 

なにやらドライグが声を上げる。

 

「ほぅ、どこのバカが騒いでいるのかと思ったら……」

 

『ひぃぃぃぃ!!!?出たぁ!!!』

 

「ヒトを幽霊みたいに言うなボケぇ!!!」

 

見上げると、藍色の巨大なドラゴンが風を巻き上げながらやってきた。

 

「なっ!?出た!ティアマットなんだぜぃ!」

ザトゥージが叫ぶ。あれがティアマット…

 

「お前さんがティアマットかい?」

俺はティアマットに声をかける。

 

「ちょっタツヤ!!!?」

 

「うん?なんだキサマは?」

 

ティアマットがこちらを向く。

 

「俺の名は雷門竜也。龍の神器を宿した少し規格外な一応人間だよ。」

 

「龍の神器だと?」

 

『久しいなティアマット。』

 

すると俺の中のダハーカが口を開く。

 

「なっお前アジ・ダハーカか!?なぜお前が神器などに……」

 

『ああ、それはだな……』

 

ダハーカは俺の神器になった経緯をティアマットに話した。

 

「……ほぅ、そんなことが……」

 

「伝説の邪龍を倒すなんて……あなたの規格外は昔からなのね……」

 

ティアマットは興味深げに話を聞き、リアスたちは呆気にとられている。するとティアマットがこちらにやってきた。

 

「お前、雷門竜也といったか?どうだ、私と契約しないか?」

 

するとティアマットはそんなことを言い出した。

 

「………いいのか?俺は人間だぞ?」

 

「私は私にふさわしい強い相手と契約すると誓いこの森にいる。お前は人間の身でありながら、しかも幼少期にアジ・ダハーカを倒しすなど規格外にもほどがある。お前といれば退屈しなさそうだ。」

 

そう言ってティアマットは俺の前に出る。

 

「……わかった、契約しよう。」

 

「ああ、よろしく頼むぞマスター。」

 

「よしてくれ、そんな柄じゃない。竜也でいいよティア。」

 

「ティア?」

「ティアマットだからティアだ。なかなか愛嬌がある呼び名じゃないか?」

 

「ティア、ティアか……わかった、私のことはティアと呼ぶといい。」

 

こうして俺はティアと契約したのだった。

 

「ああ、そうだ。ついでにこいつらも一緒に頼む。」

 

そう言ってティアは2つの卵を出した。

 

「ティア、これは?」

 

「ああ、偶然見つけたものでな、おそらくドラゴンのものだろう。親らしいドラゴンも見当たらないし私が預かっていたのだが、お前なら任せられるだろう。」

 

「わかった、任せられよう。」

 

こうして俺は赤と青の卵を預かることになった。

ちなみにイッセーはあのスライム娘と契約してスーと名付け、アーシアは蒼雷竜にライヤンと名付けた。

 

 

 

「ところでティア、何でドライグはあんなにお前に怯えているんだ?」

 

「ああ、あいつ昔私のことを貧乳呼ばわりしやがってあいつの×××を……」

 

『イヤァァァァァァァァァァァ!!!!!!』

 

「お前何したの!!!?」

 




モンスター娘のいる日常よりスライムのスー登場。
ライヤン→蒼雷竜のライと竜也のヤ、ンは語呂合わせ。

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思い出と過去の記憶

今日のオカルト研究部は、旧校舎が清掃中ということで親交を深めるという意味合いで我が家でやることになったのだが……

「よう兄さん、お帰り。」

 

「!?ヴァーリ、帰ってたのか」

 

リアスたちを連れて家に入るとヴァーリがリビングにヴァーリがいた。

 

「おお、ヴァーリ久しぶり!元気そうだな!」

 

「ようイッセー、お前も相変わらずみたいで何よりだ。…で、あんたがリアス・グレモリーだな?」

 

ヴァーリがリアスの方へ向き直す。

 

「ええ、私がリアス・グレモリーよ。あなたがヴァーリね?」

 

「いかにも、俺が兄さんの義弟にして今代の白龍皇、雷門ヴァーリだ。一応堕天使勢力に身を置いているが別に敵対するつもりはないぜ?俺はあくまで兄さんの味方だからな。」

 

「…ブラコン」

「にゃにぃ!?」

 

白音の発言に反応してバッと白音の方を向くヴァーリ。

 

「ゴホン…気を取り直して、そういうわけでよろしくな、兄さんのフィアンセさん?」

 

「/////フィ、フィアンセ!?…え、ええ、もちろんよ。ヴァーリと呼ばせてもらっていいかしら?」

 

フィアンセという言葉に反応するリアス。

 

「あらあら、竜也君のフィアンセはリアスだけではないのですのよヴァーリ君?」

 

「ああ聞いてるぜ?朱乃ちゃんや黒歌姉さん、果てはアーシアとも婚約してるんだろう?いやはや、兄さんも隅に置けないなぁ。」

 

「にゃはは、そういうことにゃん♪ねー、だぁりん?」

 

「フィアンセ…わたしと竜也さんが……ぷはぁ!」

 

ヴァーリはニヤニヤと俺の顔を見て、黒歌は俺に腕を絡ませ、アーシアは何か想像して鼻血を吹く。あとあれから黒歌の俺の呼び方がだぁりんになった。

 

「あらあら~みんな楽しそうね。」

 

「あ、母さん。」

 

そこに母さんがやって来た。

 

「うふふ、なら皆さんこんなのはいかがかしら?」

 

そう言って母さんが懐から取り出したのは俺たちのアルバムだった。……て言うかどうやって入れてたんだ?

 

「うふふ、竜也ちゃんだけじゃなくてヴァーリちゃんやイッセー君の写真もあるけど…見る?」

 

『『『『見ます!』』』』

 

「「「ちょっ!?」」」

 

こうして救急アルバム観賞会が始まったのだが……

 

「うふふ、これが小さいころの竜也ちゃんたちよ。」

 

「あらあら、懐かしいですわ♪」

 

「にゃはは、ちっちゃいだぁりんも可愛いにゃん♪」

「「ちっちゃいお兄ちゃんかわいい!」」

 

「小さな竜也さん…ぷっはぁ!!!」

 

「アーシア!?鼻血の勢いがいつも以上っすよ!?」

 

「小さいタツヤ小さいタツヤ小さいタツヤ小さいタツヤ小さいタツヤ小さいタツヤ小さいタツヤ小さいタツヤ小さいタツヤ」

 

「ちっちゃいイッセー君ちっちゃいイッセー君ちっちゃいイッセー君ちっちゃいイッセー君ちっちゃいイッセー君ちっちゃいイッセー君ちっちゃいイッセー君ちっちゃいイッセー君」

 

「ちょっ!?二人とも恐いんすけど!?」

 

「夕麻ちゃん!?」

 

「はぁはぁ…幼い竜也様……いいっ!!!」

 

「解る、解るぞカラワーナ!これは…これはあまりにも威力がありすぎる!!!はぁはぁ…ジュルル」

 

「「もう嫌(っす)この変態(ひと)たち!!!」」

 

「………カオスだなぁ…」

 

「…今日はいつにも増してカオスです。」

「ああ、そう……白音だっけ?黒歌姉さんの妹の。」

 

「はい、そうです。…と言うか姉さんって?」

 

「ああ、黒歌姉さんは俺の姉貴分みたいなものだったからな、いつの間にかそう呼んでたよ。」

 

「そうですか……お兄様と呼んだ方がいいですか?」

 

「よしてくれ、ヴァーリでいいよ。俺も白音って呼ぶから。煎餅食うか?」

 

「もらいます、ヴァーリさん。」

 

「やれやれ……《ピロリロリロリ》っと悪い、電話だ。」

 

そんな中竜也に電話がかかって着て竜也は部屋から出る。見ると知らないナンバーからかけられていた。

 

「はいもしもし?どちらさまで…」

 

『もしもし!竜也君?私、イリナだけど…』

 

「………イリナ?どうしたんだ?今エクソシストとして活動してるんじゃなかったのか?」

 

「うん、その事なんだけどねーーーー」

 

「………なに?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「………アニキ、誰からの電話なんだ?」

 

「さぁ?後で聞いてみるか。」

 

「それにしても、二人は赤龍帝と白龍皇なのに本当に仲がいいんだね?」

 

木場がイッセーとヴァーリに尋ねる。長らく争って来た赤龍帝と白龍皇である二人が仲がいいのはそれだけ信じられないことだった。

 

「まあな、俺たちは昔からの友だちで、兄さんの弟分だったからな。」

 

「ああ、俺が赤龍帝として目覚めた時もアニキが俺たちを繋ぎ止めてくれたんだ。アニキは俺たちの恩人だよ……まあ、争ってきた理由も理由だし……」

 

「だな、」

 

「へぇ、どんな理由だったんだい?」

 

『それについては詮索しないでくれ。』

 

『て言うかしないでください、お願いだから!』

「う、うん……本当にどんな理由なんだろうか…」

「ふん、どうせアホな理由だろう。」

 

必死に懇願する二天龍に若干引く木場と、冷めた目で二人(の入った神器)をみるティアマット、ちなみに彼女は変身魔法で人間の姿になっており、身長180cmほどで、藍色の髪に切れ目の二十代くらいの姿をしている。

 

『何だとティアマット!』

 

『お前に俺たちの悲しみがわかってたまるか!!!』

 

「あぁ?」ギロッ

 

『すみませんでした!!!』

 

『ドライグ!?』

 

「あはは………うん?」

 

すると、アルバムを見ていた木場の手が止まる。

 

「……イッセー、この写真は……」

 

「ん?…ああ、イリナじゃん。」

 

それは竜也とイッセー、ヴァーリがイリナの家に遊びに行った時の写真だった。ちなみにヴァーリは半分悪魔なので若干顔がひきつっている。

 

「イリナ?」

 

リアスが聞かない名前にイッセーに尋ねる。

 

「はい、俺たちのもう一人の幼なじみです。」

 

「今はイギリスでエクソシストとして活動してるらしい。」

 

「エ、エクソシスト!!!?」

 

リアスは驚き声を上げる。光の加護を受けたエクソシストは悪魔の天敵なのだ。

 

「はい、次に会う時は敵同士……ということになりますね……」

 

イッセーとヴァーリの哀しげな顔にリアスは黙る。幼なじみが敵というのはやはり思うところがあるのだろう。

 

「イッセー君……」

 

夕麻はそんなイッセーを心配そうに、イッセーの手を握る。彼の悲しみを少しでも和らげられるように。

 

「大丈夫だよ夕麻ちゃん、俺は悪魔になったことは後悔していない。こうしてみんなと、夕麻ちゃんと一緒にいれるから。」

 

「イッセー君…ありがとう。」

 

「うん、俺もありがとうな夕麻ちゃん、心配してくれて……でそれがどうしたんだ木場?」

 

イッセーは木場に聞き直す。すると木場は写真に写っている西洋剣を指差す。

「…イッセー君この剣………」

 

「剣?」

 

「………これは聖剣だよ。」

 

イッセーはその木場の言葉に、何か深く黒い感情を感じた。するとそこに竜也が戻ってきた。

 

「あ、アニキ、誰からの電話だったんだ?」

 

「……その事についてみんなに話があるんだ。」

 

「?」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「どうだったんだ?久しぶりの幼なじみの声は?」

 

「うん、相変わらずだったわ………ようやく会えるね、みんな。」

 

新たな物語が動き出す。




感想等お待ちしております。


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球技大会と唸る球

カキーン「レフトー!」

 

「オーライオーライっと」パシッ

 

現在俺たちは学園の球技大会に向けて料理部とオカルト研究部に合同で野球の練習をしており、現在俺がオカ研メンバーにノックをしている。ちなみに今のはイッセーだ。

 

「次、ライトー!」

 

俺はライトの木場に球を上げるのだが…

 

「!?木場行ったぞ!」

 

「へっ?のげぇ!!」

 

木場は上の空でぼーっとしており、打ち上げられた白球は木場の脳天に落ちる。

 

「木場ぁ!しゃんとしろ!!!」

 

「おおおぉぉ……う、うん、ごめん…」

 

木場は頭を抑えながら謝罪するが、その後もどこか上の空だった。

 

「……なあリアス、木場のやつはどうしたんだ?」

 

「わからないわ。この前からずっとあの調子なの。」

 

「やれやれ、あんな調子じゃこっちの意欲も削がれるぜ。」

 

俺とリアスがそんなことを話しながらキャッチボールをしていると、イッセーが木場の方に歩いて行く。

 

「イッセー?」

 

「しょうがない、俺がなんとかするよ。」

 

そう言ってイッセーは木場の前に立つ。

 

「おーい木場!キャッチボールやろうぜー!」

 

「!?う、うん、わかったよイッセー君。」

 

木場は一瞬間を開けてイッセーに答え、二人は距離をとる。

 

「よーし、それじゃいくぜー!」

 

「イッセー君、始めは軽く頼むよ?」

 

「ハハハ、わかってるわかってる。よーし、それじゃ軽くいくぞー。」

 

そう言ってイッセーは大きく振りかぶり、『赤龍帝の太陽手』を出現させる……………は?

 

『Boostboostboostboostboost transfer!!!』

 

「クタバレぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」ドギュン!!!

 

「なにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?ぐばぁ!!」

 

倍加の力で強化され龍のオーラを纏った豪速球が放たれ、木場はキャッチしようとするがそのまま球に体を持っていかれる。

 

「グアアァァアアアァおおおおぉぉぉぉおおおあああぁぁぁアアアアアア!!!!!!!!」

 

ドガァァァァァァン!!!!!!

 

凄まじい爆音が鳴り響き、ドーム状のエネルギー波が発生する。エネルギーが収まると、そこには巨大なクレーターが出来上がり、その中心に真っ黒焦げの木場が倒れ伏していた。

 

「……………………ふぅ、」

 

「いやふぅじゃねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」ドカッ

 

「バリボゥ!!!?」

 

俺のドロップキックがイッセーに炸裂する。

 

「おのれは何をしとんのじゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「い、いや、豪速球で目を覚まさせてやろうと思って…」

 

「やかましいわ!!!目ぇ覚めるどころか永遠の眠りにつくわ!!!……はぁ、もういい、今日の練習はこれまでだ。グラウンドがこんなじゃ練習できん。みんな帰るぞ。イッセーは残ってそのクレーター埋めて元に戻しておけ。」

 

「えぇ~」

 

「えぇ~じゃねぇよ!?ったく、ちゃんとやっとけよ?」

 

そう言って俺たちは解散する。

 

「はぁ、やれやれ、それじゃあまずはトンボを《ガシッ》」

 

トンボを取りに行こうとするイッセーだが、後ろから木場に頭をわしづかみにされる。

 

「………どこへ行くんだい?うぅん?」

 

バキッ!!!ドカッ!!!ボコッ!!!

 

カンベンシテクダチャーイ♪

 

ダマレ♪

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

そして球技大会当日、雨が降ってしまい野外球技は中止となり、体育館内でドッチボールということになったのだが……

 

「ふっ、まさかこんな形で争うことになるとわなぁ。」

 

「ええ、皮肉なものね。愛する相手と争うなんて。」

 

第一回戦、俺たち料理部とリアスたちオカルト研究部がぶつかることになった。ちなみにこちらのメンバーは俺、アーシア、ミッテルト、イザベラ、カーラマインだ。

 

「だが勝負は勝負、手加減はしないぜ?」

 

「ええ、もちろんよ。何せあなただもの、全力でやらせてもらうわ。」

 

リアスはボールを構える。

 

「あっ、そうだ、もし俺を当てられたら俺のできることで何でも言うこと聞いてやるよ。」

 

瞬間、リアスたちの目が獲物を狙う野獣の目になった。

 

「………その言葉、忘れないでね?」

 

「にゃははは………ジュルル」

 

「うふふふふふふふふふふふふ」

 

「………なんか向こうすごいことになってるんすけど……」

 

「あっ、ちなみにお前らも一番相手を仕留めたやつには俺がご褒美を…」

 

「っしゃおらぁ!!!やったるっすよぉ!!!!」

 

「ご褒美……ふふふふふふふふ」

 

「ご褒美……竜也さんがわたしに…ぷはぁ!」

 

「木場殿……」

 

その後、コートで激戦が繰り広げられた。当てては取り、取っては投げ、当てられては当て、と勝負は平行線をたどっていた。

 

「はぁっ!!!」

 

「甘い!!!」

 

俺はリアスの投げた球を取る。そして俺はまた上の空のなっている木場を見逃さなかった。

 

「木場隙ありぃ!!!」

 

「!?しまっ!?」

 

「クハハハハハハ!!!もう遅いわぁ!!!」

 

俺は空中に飛び上がり、ボールを振りかぶる。

 

「クハハハハハハハハ!!!タマとったりぃぃぃぃぃぃぃ!!!!(球だけに)」

 

俺はボールを投げようとするが、急に足を誰かに捕まれる。見ると、カーラマインが俺の足をつかんでいた。

 

「!?カーラマイン、キサマぁ!!!!」

 

「申し訳ありません竜也殿、私には…私には出来ません!!!」

 

「おのれぇ!!!…だがもう遅い!!!」

 

「くそっ!逃げろ木場ぁ!!!」

 

「え?うわっ!?」

 

俺はボールを投げ、イッセーは木場を押し倒す。だが、バランスを崩した体制で投げたボールは俺の予想した軌道からずれ…

 

「ぐぱぁ!!!?」

 

ちょうどイッセーが押し倒した方向に飛び、木場のどてっぱらに炸裂して木場は盛大に吹き飛んだ。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

体育館が静寂に包まれた。

 

「………お、おのれアニキ!よくも木場を!」

 

「君のせいだろうがぁ!!!」ズガン

 

「バケボゥ!!!?」

 

木場のバックドロップがイッセーに炸裂する。その後、イッセーは再起不能となり数の差で俺たち料理部が勝利した。




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過去と聖剣

パンッ!

 

乾いた音が部室に響く。球技大会の後、リアスが木場に平手打ちをした音だ。

 

「どう?少しは目が覚めたかしら?」

リアスは目を細め木場を見る。

 

「…もういいですか?球技大会も終わりましたし夜まで休ませてもらいます。昼間は調子が悪かったみたいです。申し訳ありませんでした。」

 

木場は笑い顔を作り淡々と謝罪する。しかしその顔はいつもの爽やかさはなく、無理やり取って着けたような作り笑いだった。

 

「木場、お前本当にどうしたんだ?マジで最近変だぞ、なんか妙に機嫌悪いし」

「いや、機嫌の悪い理由の半分は君のせいだからね?この一週間君のせいで二回もデッド・オア・アライブの間を垣間見たんだよ僕は。」

 

イッセーの問いかけに木場は今度は若干顔をひきつらせやや怒気のはらんだ声で答える。よく見ると青筋を浮かべている。

 

「それについては悪かったって……それじゃもう半分はなんだよ?」

 

「君には関係のないことだよ。」

 

「俺だって心配しちまうよ。」

 

「どの口が言ってるんだい?……それに、僕は基本的なことを思い出したんだ。」

 

「基本的なこと?」

 

「ああ、僕が何のために戦っているのかをね……」

 

「主のリアスのためじゃないのか?」

「違うよ竜也君…復讐だよ……僕は復讐のために生きている。聖剣エクスカリバー、それを破壊するのが僕の生きる理由さ。」

 

そう言って木場は部室を後にしようと扉へ向かう。

 

「あの、木場殿……」

 

「……退いてくれないかい、カーラマインさん。」

 

そこにカーラマインが木場の前に立つ。

 

「木場殿、私は木場殿が何を背負っているのかはわかりません。……ですが、もし私で良ければ木場殿の力になります。」

 

「………君には関係のないことだよ。」

 

「しかし……」

 

「しつこいなぁ!関係ないと言ってるだろう!!!」

 

「っ!?……すみませんでした。」

 

「っ……とにかく放っておいてくれ!」

 

木場の怒鳴り声にカーラマインは顔を伏せ、木場は部室を後にする。

 

「………カーラマイン、」

イザベラが立ち尽くすカーラマインを心配そうに話しかける。

 

「…………………嫌われた」

 

「は?」

 

「グスッ木場殿にぎらわれだぁ~」

 

カーラマインはぼろぼろと涙を流して泣き出した。

 

「なっ!?カーラマイン!?」

 

「うえぇぇぇぇぇぇん!!!」

 

「ちょっ!?しっかりするにゃ!あんたそんなキャラだったかにゃ!?」

 

イザベラたちは泣き出したカーラマインを必死にあやす。

 

「……リアス、俺は先に帰らせてもらう。」

 

「タツヤ、あなた……」

 

「悪いが俺は修練の門の中でちらっと聞いちまってよ、みんなにも話しておいた方がいいだろう。それにあいつ傘持ってなかったしな。」

 

俺は『ジッパー』から二本の傘を取り出す。

 

「……あなたって結構世話焼きよね。」

 

「ま、あいつも俺の弟子みたいなものだしな。」

 

「……わかったわ、裕斗のことよろしくね。」

 

「いわずもがな」

 

そして俺は部室を後にした。

 

『わ゛ああああぁぁぁぁぁぁん!!!』

 

『いい加減に泣き止みなさーい!!!』ドカーン

 

なんか聞こえたけど聞かなかったことにした。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

木場裕斗side

 

雨の中、僕は傘をささずに歩いている。胸がもやもやする。それこそ雨に濡れるのも気にならないほどに。竜也君の家でアルバムの写真に写っていた聖剣を見てから僕の生きる理由を思い出し、協会に対する憎悪や嫌悪、怒りなどが湧き出て来てずっとその事を考えていた。だけどさっき、ついかっとなって怒鳴ってしまった時のカーラマインさんのあの悲痛な顔を見てから、僕の心はより渦巻いていた。

 

「よう色男、水も滴るいい男気取ってるとこ悪いけど、あんまり度が過ぎると風邪ひくぜ~。」

 

すると急に声をかけられる。声のした方を見ると白髪の神父服を着た男が傘をさして立っていた。

 

「君は……」

 

「どーもどーもお久しぶり…ってほとんど面識無いんだけども、はぐれエクソシストのフリード・セルゼン君でーす!」

 

やつはおどけた調子で自己紹介する。このふざけた物言いは……

 

「……堕天使に雇われていたはぐれエクソシストの一人か」

 

「イエ~ス☆俺っちあの後職失っちまってさ~まぁあの騒ぎに乗じて金庫の中身まるっと頂いたんだけど、やっぱ手に職つけるに越したことないじゃん?んで俺っち徒歩にくれてたんだけどまた雇われてよ~、再びこの街に舞い戻ったってわけ~。」

 

やつはくるくる回りながら僕に説明する。よく息が続くな……そして僕はやつが腰に下げている剣が目に入った。

 

「…………その剣は……」

 

「ん、これかい?いや~流石は剣士お目が高い、そうさ、これこそお前ら悪魔の嫌いな嫌いな聖剣エクスカリバー…」

 

その言葉を聞いた瞬間、僕は『魔剣創造』で剣を二本作りだしやつに、正確にはやつの剣に斬りかかった。

 

「へいへいへ~い、人が話してる最中にそれは無いんじゃないの騎士さんよ~」

 

「あいにく、僕は騎士である前に悪魔だからね」

 

「ケハハハハ!!!違いねぇ」

 

僕とやつの剣が何度もぶつかり合い、僕の剣は音を立てて砕けてしまった。しかし僕は再び魔剣を創り斬りかかる。折られては創り斬りかかり、また折られては斬りかかりをしばらく繰り返した。

 

「……………つまんねぇ」

 

ポツリとやつが呟いた。

 

「なに?」

 

「つまんねぇって言ったんだよ。なんだそれ?『魔剣創造』だぁ?さっきからボキボキボキボキ折れやがって、どこが魔剣だよ、鉄の棒の間違いじゃねぇの?」

 

「っ!?うるさい!!!」

 

僕は魔剣を創り全速力でやつに接近する。

 

「………はぁ、おっせぇなぁ」

 

瞬間、僕の魔剣が砕けてた。一体何が起こった、見るとやつは聖剣を振り上げていた。なんてことはない、やつは僕よりも速く剣を振り魔剣を砕いたんだ。

「もういいや、飽きちったわ。とっとと終わらそ」

 

切な、やつは一瞬にして僕の目の前に迫っていた。

 

「アバヨ、エセナイト」

 

そう言ってやつは聖剣を振り上げ…

 

ガキィィィィン!!!

 

あたりに金属音が響き渡り、目を開けると竜也君が銀の槍で聖剣を受け止めていた。

 

「なっ!?あんたは…」

 

「……ここは俺の顔を立てて引いてくれやフリード」

「…………あいよ、命拾いしたなぁエセナイト、次は少しはましになっててくれよ。」

 

やつはそう言ってドロリと夜の闇に溶けて行った。

 

「………何のようだい?放っておいてくれと言ったはずだよ?」

 

違う、言いたいのはそんなことじゃないはずだ。だけど僕の口は彼を拒絶するように言い放った。

 

「別に、ただ傘を持ってきてやっただけだよ、ほれ」

 

そう言って彼は傘を投げわたす。彼は傘を渡すとそのまま歩いて行く。

 

「……木場、お前が何を思って何をやろうがお前の勝手だ。お前の命はお前の物なんだからな、何をやろうがお前の自己責任だ。」

 

「だが、少なくともお前を按じているやつもいることを覚えておきな。」

 

何をやろうがお前の自己責任、それは僕が修練の門の中で言われたのと同じ言葉だった。

 

「カーラマインが泣いていた。」

 

「っ!?」

 

「せめて明日謝ってやれ、俺は女泣かすやつは嫌いなんだ。」

 

そう言って彼は夜道を歩いて行った。




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幼なじみとカミングアウト

イッセーside

 

アニキが出て行った後、俺たちは部長から木場の過去を聞かされた。聖剣計画、人を人工的に聖剣を使えるようにする計画で、木場はその被験者だったのだ。だが木場たちは誰も適応できず、適応できないとわかった教会関係者どもは木場たちを処分したのだ。そして木場は瀕死の状態だったところを部長によって悪魔に転生して生き延びた。

 

「……そんな……主に仕える者がそんなことをするなんて……」

 

それを聞いたアーシアはとてもショックを受けていた。

「……アーシアのことといい、教会の連中はどうしてこうも……」

 

「神に仕える者が聞いて呆れるにゃ」

 

「虫酸が走りますわ……本当、潰してやりたいくらいに……」

 

俺たちが感じたのは激しい怒りだった。これが神に支える者のやる諸行か!?夕麻ちゃんたちも声には出さないが、その顔には怒りが浮かんでいた。

《ピリリリリリ》…するとアニキから電話がかかって着た。

 

「もしもしアニキ、どうしたんだ?」

 

『イッセー、悪いがアーシアと黒歌と朱乃ちゃんを連れて家に来てくれ。』

 

「?…わかった。」

 

俺はアーシアたちを連れてアニキの家にやって来た。

 

「久しぶりだね、イッセー君。」

 

「!?イリナ!?」

 

そこには俺たちの幼なじみがいた。そして俺たちはアニキの部屋に向かった。

 

「……全部、竜也君から聞いたよ。ヴァーリ君が半分悪魔だったってこと、朱乃ちゃんが半分堕天使で、黒歌ちゃんが元はぐれ悪魔で、それで、イッセー君が……悪魔に転生したってことも……」

 

イリナは悲痛な顔をしていた。当然だ、信じていた幼なじみたちが自分の敵だったのだから。

 

「……騙しててごめんな、イリナ…だけど……だけどな、俺は君のことを本当に友達だと思っているぞ。」

 

「私も、同じですわ。」

 

「都合いいように聞こえるかもだけどにゃ、だけど本当だにゃ。」

 

「違う、違うの!確かにヴァーリ君たちが人外だったことはショックだけど私にとってもみんなは本当の友達だもの…私が言いたいのはそうじゃなくて……」

 

そう言ってイリナはアーシアに頭を下げた。

 

「アーシアちゃん、ごめんなさい。私は結局あなたを庇ってあげられなかった。教会に何度も異端の取り消しを要請したわ、だけど全く取り合ってくれなくて、ついにはあまりしつこいと私まで異端にすると言われた時は思わず教会を疑ったわ。私は…私は結局自分の保身のためにあなたを……グスッ…ごめんなさいアーシアちゃん、ごめん…なさい……」

 

イリナはポロポロと涙をこぼしてアーシアに何度も謝っていた。アーシアを救えなかったことを彼女はこんなにも後悔していたのか……

 

「…イリナさん、顔を上げてください。わたしはそのお気持ちだけで十分です。それにわたしは今幸せです。竜也さんたちと一緒にいられて、イリナさんのお気持ちを知ることができたのですから……」

 

「アーシアちゃん……うぅ…ありがとぅ… 」

 

イリナはアーシアを抱きしめて再び泣き出した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「………ごめんなさい、なんだか私泣いてばっかりね。」

 

「気にすんな、当然と言えば当然だろ。」

 

現在俺はアニキに頼まれて、イリナを泊まっているホテルまで送って行っている。

 

「………ねぇイッセー君、悪魔に転生して後悔してないの?」

 

夜道の中、俺はイリナにそんなことを聞かれた。

 

「………後悔してない訳じゃないよ、現にイリナと敵同士になって凄く悲しいしどうしたらいいかわからない。……だけど、それでも俺は夕麻ちゃんのことを愛しているんだ。」

 

「……本当に好きなんだね、その堕天使のことが…」

 

「ああ、好きだ、愛してる。彼女のためなら俺はなんだってできる。それくらい彼女のことを愛してるんだ。」

 

「……凄いなぁイッセー君は、自分の気持ちを真っ直ぐに伝えられて……」

 

「だって自分の気持ちに嘘はつけないだろう?どんなに取り繕ってもそれが本心なのにはかわりないんだから。」

 

……なんだか自分で言っておいて恥ずかしくなってきた

 

「……それにしても竜也君凄いよね。アーシアちゃんたちだけじゃなくてリアスさんって人…じゃなくて悪魔とも婚約してるんでしょう?」

 

「ああ、俺もそれを聞いた時は驚いたけど、部長曰く、悪魔の社会では一夫多妻は普通なんだってさ、それに何せあのアニキだし」

 

するとイリナは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。

 

「……そっか、そうなんだ……」

 

「イリナ?」

 

「あのねイッセー君、私…昔から好きだった人がいたの、その人はがんばり屋で優しくて、だけどある日から家の都合でまったく会えなくなっちゃって…」

 

ふむ、イリナにそんな人が…話の内容からして十中八九アニキか……あの人着々とハーレムを築いていってるな………

 

「久しぶりに会ったその人は前とは変わっちゃってて、だけど私わかったの、その人の中身は変わってなんかないんだって。」

 

そう言ってイリナは立ち止まった。

 

「?…イリナ?んむっ!?」

 

イリナの方を振り向くと、唇に柔らかい感触が……へ?これってまさか……

 

「イッセー君、私、紫藤イリナはあなたのことがずっと好きでした!」

 

「………え、え、ええ、え゛え゛ええ゛えええぇえぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

「ふふふ、ここまで来れば十分よ、ありがとうね、イッセー君♪……その夕麻さんには負けないから」

 

「えっ、ちょっ、ちょっまっ」

 

イリナはそのままスキップしながらホテルに歩いて行き、俺はしばらく立ち尽くしたままだった。




感想等お待ちしております。次回軽く修羅場です。お楽しみに


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訪問と激怒

翌日の放課後、イリナともう一人のエクソシスト、ゼノヴィアが部室に訪ねてきた。曰く、カトリック、プロテスタント、教会側の管理されていたエクスカリバーが奪われたらしく、下手人を追ってここまで来たらしいのだが……

 

「うふふ」バチバチ

 

「んふふふ~」バチバチ

 

イリナと夕麻がなんかすんげえ睨み合ってる。恐いよ!?なんか火花散ってるよ、二人の後ろに修羅が見えるよ、隣のやつも震えてるよ、イッセーなんか顔面蒼白だよ!?

 

「……で、その下手人は何者なんだ?」

 

このままでは不味いと思い思いきって話を切り出す。

 

「あっ、ああ、『グリゴリ』の幹部のコカビエルだ。」

 

「「「「!?」」」」

 

「…聖書に記された堕天使の名前が出てくるなんてね…」

 

リアスは苦笑し、堕天使四人は驚愕する。しかし、グリゴリの幹部か…

 

「……ヴァーリ?」

 

「言っておくが、これはコカビエルの独断だ。グリゴリの本部は関係ない。」

 

「ちっ、あのボンクラ提督、部下の手綱ぐらい握っとけや。」

 

「………ねぇ竜也君、それって……」

 

イリナが俺におそるおそると尋ねる。

 

「まあちょっと待ってろ。」

 

俺はすかさず電話をかける。

 

『へ~いもしもし?』

 

「おいまるでダメなおっさん総督、略してマダオ総督。てめえのとこの部下がまたやらかしやがったぞ。」

 

『……いきなりひでぇ言われようだな、で、どいつがやらかしたって?』

 

「コカビエルだとさ、教会から聖剣奪ってこっちに潜伏してるんだとよ。教会から派遣されて来たエクソシストがここに来てる。」

 

『……コカビエルか、あの野郎よりによってんなとこにいやがったか。』

 

「………竜也君、今竜也君が話してるのってまさか…」

 

「まあ待て、今テレビ電話に切り替える。」

 

俺は携帯のボタンを押すと、携帯の画面からスクリーンが映し出された。

 

「ちょっ!?竜也君、なんなのこれ!?」

 

「テレビ電話」

 

「私の知ってるテレビ電話とだいぶ違うんだけど!?」

 

イリナがシャウトする。

 

『まあ気持ちもわからんでもないが……とりあえずはじめましてだな、グリゴリの総督をやっているアザゼルってもんだ。』

 

「……まさか本当に堕天使側と繋がっていたとわな。」

 

ゼノヴィアとかいうメッシュの女が呟く。

 

『言っておくが、俺は別に悪魔側と結託した訳でもないしコカビエルに指示した訳でもない。あくまでこれはあいつの独断だ。俺は戦争をする気はないからな。』

「どうだかな……」

 

『おいおい本当だっての!俺は戦争を起こす気はねえ、面倒ごとはごめんだぜ。』

 

「おいこらボンクラ総督。お前がそんなことだからこういう事態になるんだろうが。ちゃんと仕事しろや、トップとしての責任を持てよ、そんなことだからプー太郎総督なんて呼ばれるんだよ。」

『いや呼んでるのお前だろうが!』

 

「いや、最近本当にグリゴリ内で浸透して来てるぞその呼び名。」

 

ヴァーリが横から言う。本当に呼ばれてるのかよ……

 

『マジで!?どうしてくれんだお前!?』

 

「いや全部お前が悪いんだろうが!」

 

『うぐっ……とにかく今回の件にはグリゴリ本部は無関係だ。』

 

「じゃあコカビエルはこっちでやっちまっていいんだな?」

 

『いや、できれば捕らえてこちらに送還して欲しい。』

 

「……わかった、それでいいかリアス?」

 

「えっええ、わかったわ。」

 

リアスはうなずく。

 

「お前らも聞いたな?」

 

俺はイリナたちの方を向く。

 

「えっええ、わかったわ。」

 

「!?イリナ、勝手に何を…」

「あくまで私たちの目的はエクスカリバーの奪還よ。コカビエルのことは対象外だわ。」

 

「……と、まあそういうわけだアザゼル。」

 

『あんがとよ、じゃあ俺からの依頼だ。コカビエルを捕縛してこちらに送還してくれ。』

 

「了解、承ったぜ。」

 

「まっ待て!教会本部の依頼はこの件は悪魔側には介入しないで欲しいというものだ!」

 

突然ゼノヴィアとやらがそんなことをのたまった。俺たちもアザゼルも唖然としている。

 

「……バカじゃねぇのお前、お前らごときが相手になるとでも思っているのか?」

「なっなにぃ!?」

 

「竜也君!?いくら何でもごときはひどいんじゃない!?」

 

「いや、イリナには悪いが事実だ。相手はグリゴリの幹部の最上級堕天使、対してお前らはせいぜい中級の中程度、犬死にして聖剣を奪われるのが関の山だ。」

「キサマ、言わせておけばっ!!」

 

「待ってゼノヴィア、竜也君、それでも私たちは教会の指示に逆らう訳にはいかないの…」

 

「………イリナ、アーシアのこともあるのにお前はまだ教会を信用するのか?」

 

「っ………」

 

「アーシア?ということはやはり彼女が『魔女』のアーシア・アルジェントか。」

 

ゼノヴィアの言葉に部室の空気が変わる。ああ、止めろ、ただでさえイラついてるのにお前はそんなに俺たちを怒らせたいか!

 

「元『聖女』が悪魔と協力関係とは、堕ちるところまで堕ちたものだな。……それに、君から信仰の香りがするな、君はまだ主を信じているのか?」

 

腸が煮えくり返るような怒りを必死に抑える。見ると、イッセーもリアスや夕麻たちも、イリナでさえ、みんな怒りを抑え込んでいるのがわかった。

「…どうしても捨てきれないんです、ずっと信じて来たことですから……」

 

「そうか、ならいっそこの場で我々に断罪されるといい。そうすれば主もお前のことを…」

 

「黙れよクソが」

 

もう我慢の限界だ。俺は抑え込んでいた怒りを解き放ち、それは殺気となってやつに向けられる。俺の殺気を皮切りに部室にいた全員の殺気がゼノヴィアに向けられる。ゼノヴィアは顔を真っ青にしてガタガタと震えているがそんなことは知ったことじゃない。

 

「おい……お前言ったよな?アーシアが悪魔を癒したから『魔女』だってなぁ。」

 

「あ…ああ……そうだ、主から与えられた力を悪魔などを癒すために使うとは立派な異端だ。」

 

「……ほぅ、ならそもそも神器は誰が創ったものだ?」

 

「何を…」

 

「誰が創ったものだと聞いているんだ!!」

 

「ふぅっ!?…そ、それは主が……」

 

「そうだ、お前たちの言う主、『聖書の神』が神器を創った。ならアーシアの『聖母の微笑』が悪魔や堕天使も癒せるように設定したのは聖書の神自身だということだ。」

 

『!!!?』

 

ゼノヴィアだけではなくその場にいた全員が驚愕する。てかアザゼルもかよ、考えたらわかるだろうが。

「わかったか?アーシアは与えられた力を正しく使ったに過ぎない、それを魔女だ異端だと騒ぎ立てるお前らこそがその主とやらを冒涜してるんだよぉ!」

 

俺の怒気の込められた言葉にやつは黙る。そりゃそうだ、俺は何も間違ったことは言ってないんだからな。

 

「……ゼノヴィア、訂正して。」

 

「!?…だ、だがイリナ、これは教会に対する侮辱だ…」

 

「いいから訂正して!わからないの!?竜也君の言っていることは何も間違っていない!あなたのその行動が主を冒涜しているのよ!」

 

「……っ!?」

 

「……いや、待てイリナ。」

 

「……竜也君?」

 

「夕麻!ドーナシーク!」

 

「「はっ!」」

 

俺の呼び掛けに応じて夕麻とドーナシークが前に出る。

 

「こいつらは堕天使、実力は中級の上、もう少しで上級に至る。お前らにはこいつらと模擬戦をしてもらう。こいつらに勝てないんじゃコカビエルなんざ到底無理だ。もし勝ったら俺たちはもう何も言わない、好きにしな。だがもし負けたら俺たちも協力させてもらう。」

 

「なっ!?」

 

「正直教会なんざ知ったことじゃねぇよ。だけどな、この街で何かやらかそうってことなら黙って見ているわけにはいかないんだよ。……それとお前、」

 

俺はゼノヴィアを指差す。

 

「負けたらアーシアに地面に頭擦り付けて土下座しろ。」



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模擬戦と謝罪

「………兄さん、何であいつを助けるようなことを言ったんだ?あの二人なら難なくあいつらを叩き潰せるだろうがそんなんじゃ俺もみんなも納得がいかない。」

 

ドーナシークたちが試合場に向かった後、ヴァーリが俺に話しかけた。見ると、みんな納得がいかないという顔をしている。

 

「……俺だってあの場であいつを八つ裂きにしてやりたかったさ、こんなことじゃ到底許せねぇ。……だけど、そんなことしたらアーシアが悲しむだろうが。」

 

みんなはハッとした表情をしてでアーシアを見た。アーシアは悲しげな顔をしていた。

 

「……皆さん、わたしは大丈夫です、皆さんがそばにいてくれて、受け入れてくれるだけで、わたしはとても幸せです。ですから……ですから、どうかわたしのために怒らないでください。あんな皆さんのお顔は見たくありません……」

 

アーシアは瞳に涙を貯めてみんなに頭を下げる。

 

「アーシア…」

 

「アーシアちゃん…」

 

「…アーシア、俺たちは絶対にお前を否定しない。さっきも言ったが君は『魔女』なんかじゃない。立派な『聖女』だ。この場にいる全員が保証する。なぁみんな?」

 

『ああ!』『うん!』『ええ!』

「皆さん……ありがとうございます…」

 

アーシアは瞳からポロポロと涙を流す。俺はアーシアを抱き締めて優しく頭を撫でる。

 

「……カーラマインさん」

 

そんな中、木場がカーラマインに話しかける。

 

「きっ木場殿!私は…私はあなたの背負った過去も知らずに無神経なことを……」

 

「ううん、謝るのは僕の方だよ。ごめんなさいカーラマインさん、僕は自分の過去にこだわるばかりに君に八つ当たりをしてしまった。」

 

木場はカーラマインに頭を下げ謝罪する。

 

「今さら都合のいい話だと思うけど、こんな僕に力を貸してくれませんか?」

 

「木場殿……はい!喜んで!」

「カーラマインさん……」

 

「カーラマインだけじゃない。俺たちだって力になるぜ、お前は俺たちとかけがえのない仲間なんだからな。」

 

「そうよ裕斗」

 

「しゃあねえ、力になってやるよ」

 

『『『『うん!』』』』

 

「竜也君、部長、イッセー君、みんな……うん、ありがとうみんな。」

 

木場は俺たちに笑顔を向ける。その顔はいつもの爽やかさが戻っていた。

 

「……さて、そろそろ試合が始まる頃だな。ポチッと」

 

俺がテーブルに置いてあったリモコンのスイッチを押すと天井から大型の液晶テレビが出てきた。

 

「………いつの間にこんなものを……」

 

「ほら、つけるぞ」

 

俺はそう言ってテレビをつけた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

試合場第一グラウンドでは、イリナと夕麻が凄まじい攻防を繰り広げていた。夕麻は光の槍と弓を巧みに使い分け、イリナは『擬態の聖剣』をある時は日本刀の形にして素早い斬撃を放ち、ある時は短剣の形にしてラッシュを叩き込み、ある時は刀身を鞭のようにしならせて攻撃する。竜也は彼女らを中級の上か中程度と言ったが、二人とも明らかにそれ以上の力を発揮していた。

 

「聞いたわよ!イッセー君の唇を奪ったそうね!人の彼氏にちょっかいかけないでちょうだい!」

 

「そっちこそ!私はイッセー君がずっと好きだったの!横入りしないでよ!」

 

「ふん!恋は早い者勝ちなのよ!それにあなた、引っ越してからずっと音沙汰なかったそうじゃない。そんなんじゃ愛想尽かされてもしょうがないわね!」

 

「尽かされてないもん!それにあなた、イッセー君のことを利用するために近づいたそうじゃない!」

 

「今は本当にイッセー君のことを愛してるわ!今では手をつないで登下校とかしてるもん!」

 

「うぐっ!?わ、私だって手をつないで一緒に帰ったこととかあるもん!」

 

「お弁当作ってあげてあーんして食べさせてあげたり」

 

「ぐうぅ!?私もあーんしてあげたことあるもん!」

 

「膝枕で耳掃除してあげたし~」

 

「ぐふっ!?…わ、私は転んで泣いたイッセー君をいい子いい子して、いたいのいたいのとんでけをしてあげたわ!」

「なっ!?なんてうらやま…ゲフン!、私たちなんか週3でデートしてるし~」

 

「ゴハッ!?…わ、私たちなんか一緒にお風呂入って洗いっこしたもん!」

 

「カハッ!?……ふ、ふふふ、なかなかやるわね。だけど私たちは……数え切れないぐらいキスしてるわ!」

 

「なっ!?」

 

「おはようのチュー、いってきますのチュー、お休みのチューの3回!さらにデートの時はこれに加えてもう2回、週平均27回よ!」

 

「グパァ!!!?」ドサッ

 

イリナは吐血して倒れ伏した。

 

「…ふっ、勝った」

 

夕麻は倒れ伏すイリナに近づき光の槍を振りあげる。

 

「…私なんて……」

 

「?」

 

「私なんて寝てるイッセー君の唇にキスしたんだからっ!!!」

 

イリナはガバッと立ち上がった。

 

「なっ!?…そ、それってつまり……」

 

「そう、イッセー君の初めては……私のものだぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「グッハァ!!!?」

 

今度は夕麻が吐血する。そしてふらりと倒れそうになるがズダンと踏みとどまる。

 

「はぁはぁ、……まだだ、まだ終わらんよ……」

 

「ふっ」

 

夕麻は光の槍を、イリナは聖剣を日本刀の形に変えてそれぞれ構える。

 

「負けられない」

 

「イッセー君の正妻の座は…」

 

「「私のものだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

ガキィィィィィン!!!

 

二人は一瞬で交差し、金属音があたりに響く。……そして、

 

ドサッ!

 

「………これが積み重ねた時間と愛の差よ。」

 

夕麻が高らかに軍配を上げた。

 

 

………一方その頃部室では、

 

「ヒューヒュー、愛されてるねぇイッセーく~ん♪」

 

「ぷはぁ!熱々ですぅ!」

 

「…………恥ずか死ぬ…/////////」

 

イッセーは羞恥に悶えていた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

試合場第二グラウンド

 

「はぁはぁ、くっおのれ!」

 

「それ!また隙だ!」

 

ドーナシークとゼノヴィアの試合は打って代わってドーナシークが圧倒的優位に立っていた。光の力によって作られたレイピアと、刀身がバネのようになっている伸縮自在のウェポンARM『スプリングソード』の二刀流でゼノヴィアを攻め立てていた。例え触れた物全てを破壊する『破壊の聖剣』であろうとも、触れる間を与えずに一方的なラッシュを叩き込んでいた。

 

「ふん、ただ振り回すことしか能がないとは、聖剣も使い手が三流では宝の持ち腐れだな。」

 

「なっ!?きさまぁ!!!」

 

ゼノヴィアはドーナシークの言葉に怒り聖剣を構えて突進する。

 

「やれやれ、こんな安い挑発に乗るとは……ウェポンARMハープーンピアス!!!」

 

ドーナシークはやれやれと肩を落として新たにARMを発動し、巨大な銛が現れる。

 

「はぁ!」

 

ドーナシークはハープーンピアスをゼノヴィアに投げるがゼノヴィアは『破壊の聖剣』によってそれを粉々に破壊する。

 

「ふん!無駄だ、『破壊の聖剣』は全てを破壊し…」

 

「残念だがそれはフェイクだ。」

 

「なっ!?」

 

見ると、ドーナシークははるか後方に移動していた。

 

「さて、そろそろ頃合いだろう。きさまの実力はだいたいわかった。見せてやろう、某の切り札を!」

 

そう言ってドーナシークは銀の懐中時計を取り出す。

 

「!?」

「現れよ!ガーディアンARM『クロックダイル』!!!」

 

現れたのは、体の至るところに時計をつけ、カチカチと時計の針の音を響かせる巨大なワニのガーディアンだった。

 

「なっなんだそいつは!?」

 

「今にわかる、クロックダイル!!!」

 

「シャアアアア!!!」

 

クロックダイルが声を上げると、背中の時計がボーンボーンと音を鳴らす。するとゼノヴィアの持つ『破壊の聖剣』がピタリと動かなくなった。

 

「なっ!?こ、これは一体!?『破壊の聖剣』が動かない!?」

 

「クロックダイルは器物の時間を30秒操作できる。お前の聖剣の時間を30秒間停止させたのだ。」

 

「なっ!?」

 

「クロックダイル!!!」

 

言うや否や、クロックダイルはゼノヴィアに飛びかかり、ゼノヴィアの頭に顎をいつでも噛み砕ける体制でピタリと止めた。

 

「………勝負ありだ。」

「あ、ああ、参った……」

 

ゼノヴィアは顔を真っ青にして両手をあげた




オリジナルARM
ガーディアンARMクロックダイル
体中に時計をつけた巨大なワニ(クロコダイル)のガーディアン。物の時間を30秒間操作できる。生き物の時間は操作できない。モデルはピーターパンの時計を飲んだワニ。


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探索と下準備

 

「……さて、約束は守ってもらおうか?」

俺は試合場から戻って来たイリナとゼノヴィアに告げる。

 

「あ、ああ…せ、聖剣の奪回の協力を許可しよう…」

 

「あ"ぁ?」

 

「ひぃっ!?い、いえ!手伝ってください…」

 

「解ればいい…それと?」

 

「ああ、わかっているさ……」

 

ゼノヴィアはそう言うと、アーシアの方に歩み寄り土下座する。

 

「すまないアーシア・アルジェント、私が間違っていた。先ほどは竜也殿に圧倒されて頭が回らなかったが、彼の言い分は最もだ。どうか許して欲しい。」

 

ゼノヴィアは頭を地面に着けたままアーシアに謝罪する。

「い、いえそんな!?頭を上げてください、そう言ってもらえただけでわたしは満足です…」

 

するとアーシアの瞳からポロポロと涙が流れ出した。

 

「あれ?あれ?…おかしいですね、教会の方に認めてもらえて嬉しいはずなのに…涙が止まりません。」

 

「「「「「アーシア(ちゃん)」」」」」

 

俺たち幼なじみはアーシアを抱きしめた。信じていた教会の連中に理解されず、拒絶され、罵られ、彼女には耐え難い苦痛だっただろう。……あのクソストーカー本当に殺してやろうか?

 

「……これでも彼女を『魔女』と呼べる?」

 

イリナがゼノヴィアの肩に手を置いて尋ねる。

 

「……ああ、私は本当に愚かだ。」

 

「うん、今度私の親友傷つけたらブッ殺すから♪」

 

「は、はい」

 

イリナの笑顔の脅迫にゼノヴィアは顔をひきつらせて頷く。残念、お前に味方はいない。

 

「さて、それじゃ作戦の説明と行こうか。」

 

俺はみんなの方を向いて言う。

 

「…作戦なんていつ考えたんだアニキ?」

 

「イッセー、お前は俺がただぽけーっと二人の試合を眺めていたとでも?」

 

「え、違うの?」

 

「ダッシャア!!!」ズトン

 

「ポゲェ!!!?」

 

俺のボディーブローが刺さりイッセーは崩れ落ちる。

 

「気を取り直して……連中の潜伏先も人数も目的も不明、わかっているのは連中の目当ての物のみ、ここは餌を泳がせて敵を誘い出す。」

 

「餌?」

 

「いるだろうがここに二匹。」

 

俺はイリナとゼノヴィアを指差す。

 

「ええ!!!?」

 

「私たち餌!!!?」

 

「うん、お前らには街を歩き回ってもらって敵を誘き寄せてもらう。堕天使四人と黒歌はそれぞれ散開して堕天使の気配を探せ。木場、白音、カーラマイン、イル、ネル、イザベラはイリナたちと探索、残りはここで待機だ。」

 

「……なあ、兄さん、何で俺とイッセーは探索メンバーに入ったいないんだ?」

 

ヴァーリが俺に尋ねる。

 

「お前らには修練の門でやってもらいたいことがある。」

「やってもらいたいこと?」

 

イッセーが俺の言葉をおうむ返しして尋ねる。

 

禁手化(バランスブレイク)だ。」

 

「「!?」」

 

「その様子じゃあヴァーリもまだなんだろう?まあ当然か、お前らの神器はお前ら専用に調整した物だ。これまでの代の物とはおそらく勝手が違うだろう。俺が魔力を注ぐ。その間お前らは…《パチン》」

 

俺が指を鳴らすと魔方陣が3つ展開して、中からそれぞれべーやん、アラン、ティアが現れた。

 

「この3人にリアスと朱乃を加えた5人と常に戦い続けてもらう。」

 

「「は?」」

 

二人はすっとんきょうな声をあげる。

 

「なあ竜也、要するにこいつらをいじめ続ければいいのか?」

 

ティアが俺に尋ねる。

 

「ああ、そう思ってくれて構わないよ。」

 

「「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!」」

 

イッセーとヴァーリがシャウトする。

 

「なんだよ二人とも?何か文句でもあるか?」

 

「いや文句しかないよ!いくら何でもそれは不味いって!!」

 

「部長や朱乃ちゃんはまだしもべーやんさんやティアの姉御はヤバいって!!!俺たち死んじゃうから!!!」

 

二人は俺に猛抗議する。ちなみにイッセーはティアのことを姉御と呼んでいる。

 

「あのな、相手は聖書にも記された最上級堕天使だぞ?それこそ過剰防衛なくらいに備えておいた方がちょうどいい。頼んだぞみんな、おもいっきりしごいてやってくれ。」

 

「あいよ!」

 

「ククク、せいぜい楽しませてもらおうか。」

 

「ホホホホ、腕が鳴りますねぇ。」

 

「あらあら、そういうことなら任されましたわ。」

「ばっちり鍛えてくるわよタツヤ♪」

みんな気合い十分なようだ。

「イヤイヤ待ってぇ!!!?」

 

「止めてくださいよ部長ぉ!!!?」

 

「アーシア、君には二人の回復役として同行してもらいたい。これは君の鍛練にもなるだろうからな。」

 

「はっはい!精一杯頑張ります!」

 

アーシアは両手をぐっと握り締めてフンスと鼻息を立てる。なんとも愛らしい、愛でたい。

 

「イヤイヤイヤアーシア!?頑張りますじゃなくて…」

 

「ああもういいから行ってこい。」

俺は修練の門を発動する。そしてイッセーたちの足元に扉がバカンと開きイッセーたちは落ちて行く。

 

「「イヤアアアアアアァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」」

 

二人の悲鳴はだんだんと遠ざかって行き、ついに扉はバタンと閉まった。

 

「…鬼だね。」

 

「やかましい……っとそうだ、木場、生徒会の連中に応援を要請してきてくれ。できれば彼女らの力も借りたい。」

 

「わっわかったよ。」

 

そう言って木場は生徒会室に向かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「そういうことなら喜んで力を貸しましょう。我々もこの街が脅威にさらされるのを黙って見ているわけには行きません。」

 

結果として、生徒会メンバーは快く協力してもらえることになった。

 

「しっかしえらいことに巻き込まれたな……」

 

匙がげんなりと言う。

 

「ま、俺はここから動けないから探索には加われないし、手数は多いに越したことはないだろう。例え半人前のぺーぺーであってもな。」

 

「なっなんだとぉ!!!?」

 

匙はリアスたちがいないためか俺に食って掛かるが……

 

「にゃはは……リアスに言われたことをもう忘れたのかにゃ?」

 

「あまり調子に乗っていると……殺すぞ?」

 

「ハイ、スミマセンデシタ……」

 

夕麻たちに光の矢、苦無、拳銃、レイピア、黒歌に爪を首に突き立てられて匙はカタカタと震えて頷いた。

 

「さて、それじゃあ任務開始だ。頼んだぞみんな!」

 

『『『『了解!』』』』

 

『りょ、了解…』

 

若干ノリに乗りきれてないゼノヴィアと生徒会であった。




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月夜と再戦

どうも、期末テストやら研修旅行の準備やらで遅くなりました。ちなみにまだテスト期間中です。三角関数とかわっけわかんねぇ………


オカルト研究部、料理部、生徒会メンバーが探索に行った後のオカルト研究部部室

 

「ーーーああ、ああ………なるほど、そういうことか……よし、お前は△公園に向かえ、確かそっちに木場たちが向かったはずだ。例え戦闘になっても深追いはするな、それとなーくヒントを与えてから逃げろ。なーに、これもあいつらにはいい試練だ。……ああ、ああ、そういうわけでよろしく。」《ピッ》

 

携帯電話を切り、試練の門の前で鎮座する竜也は窓から夜空を眺める。空には満月が青白く輝いていた。

 

「………団子食べたい。」

 

緊張感もへったくれもない男であった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

木場、カーラマイン、白音、ついでに匙の四人は△公園近くを散策していた。

 

「うぅ……グスッ木場ぁ…、お前の過去にそんなことが……透かしたいけすかない野郎だと思っていた俺を許してくれ!」

 

散策中、木場自信から彼の聖剣との因縁を聞かされた匙は左手で涙をぬぐいながら走っていた。そんな彼を木場はやや困ったように、カーラマインと白音はアホを見るような目で見ていた。

 

「……それにしても見つかりませんね……」

 

「ああ、聖剣のオーラすら感じられない。」

 

「気をつけて、彼は油断ならない。」

 

「わ~りと近くにいるかもよん♪」

「そうそう、わりと近くに…って!!!?」

 

突然の第5の声に木場たちはすかさず臨戦体制に入る。しかし、相手は影も形も見えず、木場たちは互いに背中合わせになって周囲を警戒する。

 

「後ろの正面だ~あれ、ってか!」

 

「「「「!!!?」」」」

 

後ろからの声に全員が振り替える。そこにはフリードが聖剣を振りかぶって今まさに降り下ろした。

 

《ガキィィィィィン!!!》

 

「やらせないよ。」

 

「ケハハハハ!!!また会ったなぁエセナイト!!!」

 

フリードは一旦飛び退いて距離を取ってから助走をつけて再び木場に斬りかかりそのまま打ち合いになる。しかし、前回とは違い 木場の魔剣は数度打ち合っても折れることはなかった。

 

「ふーん、どうやら今度はちゃんと(・・)の通った剣見たいだなぁ。」

 

斬り合いの最中、フリードは余裕そうにニヤリと口を吊り上げ木場に言う。

 

「まあね、色々と吹っ切れたよ!」

 

「ふーんそっか、ならもうちょい本気出してもいいかな!」

 

するとフリードのスピードがさらに増し、木場に凄まじいラッシュを叩き込む。

 

「速いね、それが君のエクスカリバーの力かい?」

 

「イカにもタコにもサンマにも!その名を『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピットリィ)』!!!俺っちの素早さ大アップ!ってか!!!」

 

フリードはさらにスピードを上げて木場に猛攻を叩き込む。

 

「なるほどね、所有者の素早さを向上させるのか……だけど、《剣山》!!!」

 

「うおっ!?」

 

フリードの足元から大量の魔剣が出現し、フリードは後ろに飛び退いて回避する。

 

「僕は別に斬り合いだけしか芸がないわけじゃないよ!《ソーディアンショット》!!!」

 

「うわっ!?ちょっ!?危なっ!?」

 

木場は空中に何本もの魔剣を浮遊させてフリードに打ち出す。フリードはそれを『天閃の聖剣』で強化されたスピードでヒラリヒラリと回避する。

 

「《疾風突き》!!!」

「おわっ!?」

 

そこへカーラマインが乱入してフリードに高速の突きを放つがそれもかわされてしまう。

 

「皆さん、他の方々に連絡をしました。」

 

そこへ白音がフリードに殴りかかりながら木場たちに言う。

 

「ゲッ!?ヤバい!」

 

「逃がすかよ!伸びろラインよ!」

 

応援が来ることを聞き逃げようとするフリードだが匙の放った黒いラインを足に巻き付けられ引き留められる。

 

「うわっなんだこりゃ!?ウザッ!?キモッ!?」

 

「やかましいわ!?そのラインはお前の力を吸収し続ける。お前がぶっ倒れるまで離さないぜ!」

 

「げぇ!?切実にやっべぇ!!!」

 

「今だよ!《ソーディアンショット》!!!」

 

「《火炎切り》!!!」

 

「《烈鋼拳》」

 

木場が魔剣を打ち出し、カーラマインが炎を纏った剣で斬りかかり、白音は鉄をも砕く拳の一撃をフリードへ向ける。

 

「はぁ、しゃあねぇ………」

 

フリードはため息をついた後聖剣を帯刀する。

 

「ーーーーーオーガハンド!!!」

 

「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」」」

 

するとフリードの両腕が巨大な異形のものとなり木場たちを攻撃ごと振り払う。

 

「ほーらお前も飛びな!」

 

「ぐがっ!?」

 

フリードは今度は匙を殴り飛ばし、それと同時に拘束から解除される。

 

「ガハッ………君のその腕は……」

 

「種明かしはまた今度だ、じゃ、また会おうぜナイト君。」

 

フリードは閃光弾を放ち、光が収まると、そこにはもうフリードの姿はなかった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

木場side

 

油断した。フリードにあんなかくし球があったなんて……それにしてもあの腕……まさか……いや、でもそんな………

 

「くっ遅かったか!」

 

声のした方を見るとゼノヴィアさんとイリナさんが駆けつけていた。

 

「みんな遅れてごめん!」

 

「まだ近くにいるかも知れない。行くぞイリナ!」

 

「あっ待ってよゼノヴィアぁ!」

二人はそのまま走り去って行った。

 

「……竜也君に…知らせないと……」

 

僕は懐から携帯を取り出した。

 

『どうした木場?』

 

「すまない竜也君、フリードに逃げられた。今イリナさんとゼノヴィアさんが追いかけて行ったよ。」

 

『はぁ!?ったくあいつら……わかった、一旦部室に戻って来い。他の探索に出たみんなにも一旦集まってもらう。二人は最悪黒歌たちに回収させる。』

 

「わ、わかったよ。」《ピッ》

 

「カーラマイン!みんな!無事か!?」

「元ちゃーーん!」

 

携帯を切ると、イザベラさんと生徒会のヒトたちが駆けつけてくれた。僕たちはイザベラさんたちに担がれて部室まで運んでもらった。

 

sideend




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帰還と目覚め

やっとテストが終わった……理数…理数がぁ………


「……それで、教会の二人はそのままフリードを追って行ったと、」

 

現在俺は部室で帰還して来た木場たちから報告を受けていた。

 

「はぁ、あいつら……さて、どう動いたものか……あいつらは黒歌たちがうまく回収してくれればいいが……うん?」

 

俺が今後の作戦を練っていると、修練の門の扉が開いてきた。もうそろそろ1日か……そして中からリアスたちとえらく憔悴したイッセーとヴァーリが出てきた。

 

「「た…ただいま……」」

 

「ようお前らお帰り、どうだった?禁手化には至ったか?」

 

「まあ……なんとかな………」

 

「あんだけ死ぬ思いをすりゃさすがにな……」

 

どうやら二人とも無事禁手に至ったようだ……いや、無事ではないなうん、なんか二人ともかなり精神的にキテるな。

 

「ふん、あの程度で情けない。」

 

ティアが鼻息を立てて呆れたように切り捨てる。

 

「いやフザケンナよ!?こちとら反撃どころか休む間もなく消滅の魔力、雷、光の槍、魔力弾、呪符、爆炎、空気の弾丸、脱糞の呪いにドラゴンブレスが雨のごとく降り注ぐ中必死に逃げ回ったんだぞ!!!?」

 

「この60日間、何度頭に死がよぎったことか!俺なんか新しい魔法習得しちまったよチクショウめ!!!」

 

イッセーとヴァーリは涙を流し拳を握りしめて語らう。……て言うか今ヴァーリから聞き捨てならない言葉が出たな…

 

「ヴァーリ、新しく習得した魔法と言うのは?」

 

「グス…ん?ああ、これだよ。」

 

ヴァーリがテーブルの花瓶に手をかざすと、花瓶の花は一瞬で氷つきチョンとつつくとパキンと砕けた。

 

「ほう、氷魔法か。」

 

「正確には冷気を操る魔法だな、少しでもティアマットたちの動きを止めようと魔力を変化させていたら偶然産み出した魔法だよ。」

 

「へぇ、ここまでの精度の魔法を独学で……元々お前は天才肌だったけど、これも生存本能のなせる技なのかねぇ……」

 

「おやおや竜也氏、新たな力に目覚めたのはヴァーリ氏だけではありませんよ?」

 

俺がヴァーリの魔法に感心しているとべーやんが割って入る。

 

「どういうことだべーやん?」

 

「それは本人に聞いた方がよろしいでしょう、さあお二方、」

 

そう言ってべーやんはアーシアとリアスを押し出した。

 

「二人とも、説明してくれるか?」

「はっはい!わたし『聖母の微笑』の光を出せる範囲が広がりました!あと、癒しの光で精神をリラックスさせたり、時間があまり経っていなければ切れた腕なども接着できます!失った血や魂には干渉できませんけど……」

 

「いやいや、それだけできれば十分だって……て言うか、ちぎれ飛んだのか?腕」

 

「はい、ティアさんの爪でスパンとかれこれ3回ほど、回復の精度が上がったらさらに過激になりましたし……お二人にはなんだか悪いことをしてしまいました。」

 

ジロ「…………………」

 

「ピュ~ピュ~♪」

 

俺がティアを見ると、ティアは目を反らし口笛を吹き、ヴァーリとイッセーは頭を押さえてガタガタと震え出し、皆は哀れみの目を二人に向ける。

しかし、えらくさらっと言ったが、アーシアはこの修行で血や怪我に対してかなり耐性ができたようだ。そりゃあ目の前で何度も血飛沫が上がれば耐性はつくだろうし、回復役としては望ましいことなんだろうが………なんか複雑だなぁ…

 

「………まあとにかく、喜ばしい進歩にはちがいない、すごいぞアーシア。」ナデナデ

 

「はふぅ~~~~♡(ダクダクダクダク」

 

俺はアーシアの頭を撫でてやると、アーシアはダクダクと鼻血を流す………血に耐性ができたのはこれも理由なのでは………

 

「……で、リアスの方はどんな力なんだ?」

 

俺はリアスの方を向き尋ねる。

 

「え、ええ、私はこれよ。」

 

リアスが手をかざすと、リアスの手に紅色の水晶球が現れた。

 

「それがお前の目覚めた力か?何ができるんだ?」

 

「ええ、例えば……ソーナ。」

 

「えっ!?私ですか?」

リアスは水晶球を覗き込み、ソーナ嬢は一瞬ビクッとなったが平静を保つ。

 

「……あなた今、『若干空気だった私にもついにスポットが!!!』…って考えたでしょう?」

 

「ええっ!?なっなんでわかっ、いっいえ別にそんなこと考えてませんよ!?本当ですよ!?ちょっ、何ですかあなたたちその哀れむような目はぁ!!!?」

 

汗をだらだらと流し必死に誤魔化そうとするソーナ嬢。

 

「他にも」

 

リアスは再び水晶を覗き込み魔力を流す、すると水晶は淡い紅色に輝いた。

 

「……左の引戸の奥に大量のお菓子がかくしてあるわね。」

 

「にゃ!!!?」

 

調べて見ると、引戸の奥に木のいたで細工しており、板の奥からポテチやらカステラやらが大量に出てきた。見ると白音が冷や汗をだらだらと流している。どうも最近菓子がなくなるのが早いと思ったら……

 

「没収」

 

「殺生な!!!」

 

「……と、まあこんな感じね、他にも器物から情報を読み取ったり、ちょっとした占い見たいなこともできるわ。」

 

リアスの説明を聞いて、俺はある仮説を立てる。

 

「……ひょっとしたらそれがリアスの受け継いだグレモリーの能力なのかも知れないな。

 

「……グレモリーの能力?」

 

「ああ、リアスの消滅の魔力は元々バアル家出身の母君から受け継いだものなんだろう?俺も一応悪魔、72柱について調べて見たんだがな、『グレモリー、宝冠を被った中東風の優雅な装束を身に纏った女性の姿で現れて、三界(過去、現在、未来)の知識を分け与え、隠された宝のありかを教え、恋を成就させることにも長ける』。…おそらくそれがグレモリーの三界を知り、隠された宝のありかを探すと言う力なんじゃないか?」

 

「だけどそんな話お父様からは聞いたことがないわよ?」

 

「これもまた予想だが、この能力はグレモリーの女性のみが開眼できるんじゃないのか?召喚されたグレモリーの図もほとんどが女性の姿だし。」

「なるほど……今度お父様にでも聞いて見ようかしら。」

 

「ああ、だけど今は―――っ!!!?皆!!!」

 

刹那、校庭の方から強大な力を感じ、俺たちは一斉に臨戦体制に入る。急いで校庭に転移すると

 

「フフフフ、ご機嫌ようグレモリーとシトリー眷属とその他諸君。」

 

今回の黒幕が空中の玉座に鎮座していた。

 

「てめえがコカビエルか」

 

「いかにも俺がコカビエルだ、『魔源の創者(ディアボリズム・クリエイター)』よ。」

ちょっと待て、今あいつ俺をなんと呼んだ?

 

「おい待て、その呼び名はなんだ?」

 

「フフフフ、お前は有名だぞ、千の魔法を司る邪龍『魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)』アジ・ダハーカをその身に宿し、あらゆる魔法を思うがままに創造するとな。」

 

えぇ~俺そんな風に呼ばれてるの?初耳なんだけど

 

「魔王の血縁者が二人もいるこの街で何をするつもりだ?最悪戦争ものだぞ?」

 

「そうだ、俺は戦争を望んでいる!先の大戦が中途半端に終わってから俺は退屈でしょうがなかった!あと少しで我ら堕天使が勝利をつかめたと言うのに、アザゼルのやつはもう戦争はしないと宣い果ては神器なんていうオモチャの研究に没頭している!」

 

こいつ、聞いてはいたがとんでもない戦闘狂…いや、この場合は戦争狂だな。

 

「…教会から聖剣を奪ったのもそのためか?」

 

「いかにも!ミカエルのやつに喧嘩を売ろうと聖剣を奪ったものを、やって来たのはこんな雑魚エクソシストに中級堕天使とはな。」

 

そう言ってコカビエルは血に濡れ気を失い魔方陣で拘束されたイリナ、カラワーナ、ミッテルトをこちらに投げつける。

 

「イリナちゃん!!!?」

 

「カラワーナ!!!?ミッテルト!!!?アーシアぁ!!!」

 

「はい!!!」

 

アーシアの『聖母の微笑』によって三人の傷は塞がって行く。

 

「ふん、片割れのエクソシストには逃げられたがこいつらの持っていた聖剣は全て奪った。パルパー・ガリレイ、五本の聖剣の統合にはあとどのくらいかかる?」

 

「5分もかからんよ。」

 

コカビエルが校庭にいた老人に問いかける。こいつがパルパー・ガリレイ…木場の敵……

 

「そうか、では《パチン》」

 

コカビエルが指を鳴らすと魔方陣が出現し、中から3つ首の魔犬が次々と姿を表す。

 

「……ケルベロス」

 

リアスがポツリと呟いた。

 

「フハハハ!さあ、戦争をしようじゃないか!!!」

戦いの火蓋が切って落とされた。




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総力戦とフルファイヤ

コカビエルの召喚した大量のケルベロスが牙をむき出しこちらに向かって来る。

 

「ふん、あんな犬ッコロ私の炎で消し炭にしてくれる。」

 

ティアが前に出ようとするが、俺はそれを手で制する。

 

「竜也?」

「………ここは俺に任せて欲しい。」

 

俺は数歩前に出て、俺の中のグルメ細胞の力を解放し、ケルベロスたちを“威嚇”する。

 

『!!!!!!??』

 

その瞬間、ケルベロスたちは俺の中のグルメ細胞の怪物に畏縮しガタガタと震え出す。その姿は一見アジ・ダハーカのようだがアジ・ダハーカよりも刺々しく禍々しい姿をしており、目は赤黒くランランと光り、ずらりと並んだケルベロス以上に鋭い牙をむき出しにしている。

 

「失せろ犬ッコロ」

 

『!!!?キャンキャンキャン!!!』

 

俺が言い放つとケルベロスたちは我先にと召喚された魔方陣に飛び込んで行く。

 

「待て」

 

「ギャン!!!?」

 

俺はケルベロスの一匹の尻尾掴み引き留める。引き留められたケルベロスはガタガタと震え今にも泣き出しそうだ。……一瞬動物虐待の文字が頭に浮かんだ。

 

「お前なかなか見所があるな、俺の元に来い。お前を更なる高みに連れて行ってやる。」

 

俺はケルベロスに手を差し出す。ケルベロスは一瞬ビクッとするがやがて俺の手をペロペロと舐める。

 

「契約成立、リアスーーこいつうちで飼っていいー?」

 

俺はリアスの方を向き尋ねる。リアスたちは一瞬ビクッとなるがなんとか平静を保つ。

 

「え、ええ、好きにしてちょうだい……」

 

リアスは若干ひきつった笑みを浮かべる。

 

「……すげぇ、地獄の番犬ケルベロスを畏縮させてあまつさえ手なずけちまった。」

 

イッセーが尊敬の眼差しで俺を見る。

 

「なんて威圧だ……私ですら圧倒されたぞ。」

 

「ええ、以前の私たちなら威嚇に当てられた瞬間に気絶していたでしょうね……」

 

ティアは戦慄し、リアスは嘲笑を浮かべる。

 

「……でも、不思議と恐怖は湧きませんでした。」

 

白音の呟きに皆は無言で頷く。

 

「フ、フハハ、フハハハハハハハハ!!!!素晴らしい!素晴らしいぞ『魔源の創者』よ!お前なら…お前なら俺を楽しませることができる!!!」

 

コカビエルは高らかに笑い声をあげる。

 

「悪いがこちらにもプランがあるのでね……ソーナ嬢!」

 

「は、はい!!!」

 

「今から派手に暴れる、学校に結界を張ってくれ。」

 

「………わかりました、皆!行きますよ!」

 

『はっはい!』

 

ソーナ嬢の号令と共に生徒会の面々は校外に走る。

 

「主よ!遅れて申し訳ない!」

 

「加勢に来たぞ!」

 

見ると、ドーナシークたちとゼノヴィアが駆けつけて来た。

 

「……うぅ……ここは……」

 

タイミングよく、イリナたちが目を覚ましたようだ。

 

「うぅ……ごめんねアーシアちゃん……」

 

「いえ、わたしは当然のことをしたまでですから。」

「イリナ!よかったぁ」

 

「イッセー君……ごめんねみんな、今から私も戦う!」

 

「駄目だ、イリナとゼノヴィアの聖剣は奴らに奪われてしまった。」

「そんな!?」

 

イリナは崩れ落ち、それをイッセーが抱き止めた。夕麻はそれを致し方なしという表情で見ている。

 

「イリナ、悪いがここは任せてくれ。ドーナシーク!カラワーナ!ミッテルト!夕麻!お前たちは生徒会と共に結界を張れ!」

 

「「「「了解(っす)!!!」」」」

 

「イザベラ!イル!ネル!ついでにケルベロス!お前たちはアーシアを守れ!」

 

「了解した!」「「うん!」」「ガウッ!」

 

「木場!パルパーはお前がやれ!カーラマイン!黒歌!白音!お前たちは木場を全力でサポートしろ!」

 

「竜也君……ああ、任せてくれ!」

 

「「「了解(にゃん)!!!」」」

 

「残りは全員でコカビエルだ!!!」

 

『『『了解(よ)(ですわ)(しました)!!!』』』

 

「よっしゃあ!いくぜヴァーリ!!!」

 

「おう!イッセー!!!」

 

「「禁手化(バランスブレイク)!」」

 

二人は禁手化し、鎧に身を包む。イッセーは紅をベースに所々オレンジの色合いの武骨な鎧で、後頭部からは深紅の鬣が生え、背に生えた翼の中央には灼熱の火の玉……いや、むしろ小さな太陽を背負っている。

ヴァーリは対象的に白をベースに青の入ったスマートな出で立ちの鎧で、肩からそれぞれ3本のケーブルが伸び、頭に生えた2本の角はどこかウサギを思わせる。

 

「『赤龍帝の太陽神鎧(ブーステッド・ギア・アポロンメイル)』!!!」

 

「『|白龍皇の月光神鎧《ディバイン・ディバイディング・ディアナメイル》』!!!」

 

「「ここからは俺たちのステージだ!!!」」

 

「フハハハハハハハ!!!素晴らしい!!!『魔源の創者』に加えて赤龍帝と白龍皇の亜種禁手だと!?こんなに心踊るのは久しぶりだ!!!」

 

コカビエルは高らかに笑い大量の光の槍を放つ。

 

「《アロー・オブ・ウェルシュ》!!!」

「《アロー・オブ・バニシング》!!!」

 

イッセーは籠手の宝玉から炎の矢、ヴァーリは肩のケーブルから冷気の矢を放ち光の槍をすべて相殺する。

 

「二人に続け!いくぞ!!!」

 

『『『『おう!!!』』』』

 




『赤龍帝の太陽神鎧』赤龍帝の鎧×デジモンのアポロモン

『白龍皇の月光神鎧』白龍皇の鎧×デジモンのディアナモン

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真実と覚醒

遅れて申し訳ありませんでした。修学旅行の後で色々ごった返してました。


「パルパー・ガリレイぃぃぃぃぃ!!!!」

 

木場は『騎士』の力を最大まで引き出した速度でパルパー・ガリレイに斬りかかるが、後数メートルというところでガキンと障壁のようなものに阻まれる。

 

「ふん、残念だったな、この結界は聖剣の統合が完了するまで決して破れない。」

 

「何せ俺っち特製の結界だからな、残念だったなナイト君♪」

 

見ると、いつの間にかフリードがパルパーの隣で結界を展開している。

 

「パルパー・ガリレイ、僕は『聖剣計画』の生き残りだ。……いや、正確にはあなたに殺されて悪魔として生き返った身だ。」

 

「ほう、あの計画の生き残りか。こんな極東の地で出会うとは縁を感じるな。フフフフ、どうせだ、聖剣が統合するまでに聞かせてやろう。」

 

そう言ってパルパーは語り出す。

 

「私はな、聖剣が好きなのだよ、それこそ夢にまで見るほどにな。幼少のころエクスカリバーの伝承に心踊らせたからだろうな、ゆえに自分が聖剣に適性がないと知った時の絶望といったらなかった……」

「聖剣が使えないからこそ使える者に強い憧れを抱いた。その思いは募りやがて聖剣使いを作る研究に没頭するようになったーーーそしてついに完成した、君たちのおかげだ。」

 

「……完成だって?僕たちを『失敗作』と断じて処分したんじゃないか!!!」

 

木場は噛みつくようにパルパーに怒鳴る。しかしパルパーは首を横に振り言う。

 

「聖剣を使うのに必要な『因子』があると気づいた私はその因子の数値で適性を調べた。被験者の少年少女、ほぼ全員に因子はあるものの、どれもこれもエクスカリバーを扱える数値に満たさなかったのだ。そこで私は一つの結論に至った。

ならば『因子だけを抽出し、集めることはできないか』………とな」

 

「……まさか、聖剣使いが祝福を受ける時に体に入れられるのはーーー」

 

「………なるほど、読めたぞ。」

 

ゼノヴィアとイリナの聖剣使いの二人は事に気づいたようで、ゼノヴィアは忌々しそうに歯噛みし、イリナは目を見開き口を両手で押さえる。

 

「そうだ、聖剣使いの少女たちよ。持っている者たちから聖なる因子を抜き取り結晶を作ったのだ。こんな風にな」

 

パルパーはそう言って懐から聖なるオーラを強く感じる光輝く球体を取り出した。

 

「これにより聖剣使いの研究は飛躍的に向上した。それなのに、教会の者たちは私だけを異端として排除したのだ。研究資料だけを奪ってな!貴殿を見るに、私の研究は誰かに引き継がれているようだ………ミカエルめ、あれだけ私を断罪しておいてその結果がこれか。まぁあの天使の事だ、被験者から因子を引き出したにしても殺すまではしないか、その分だけは私よりも人道的と言えるかな、くくくくくくくっ」

 

パルパーは愉快そうに笑い、それを聞いていた者たちは木場を筆頭には怒りに奥歯を噛みしめ、アーシアやイリナは教会の闇を目の当たりにして悲しんだ。

 

「………同士たちを殺して因子を抜いたのか!?」

 

「いかにも、この球体はその時の物だぞ?何せ初めての実験だったからな、錬度が悪くてこれ一つ程度しかできなかったがね?」

 

「……パルパー・ガリレイ…っ!!!自分の研究、欲望のためにどれだけの命を弄んだんだ!!!?」

 

「……キサマのせいで、キサマのせいで木場殿はぁ!!!」

 

「……正真正銘のクズ野郎です。」

 

木場だけでなく、その場にいた全員がパルパーに軽蔑と怒りを向ける。そんな中校庭の中央にあった五本のエクスカリバーが眩い光を放つ。それを見たパルパーは狂ったような笑みを浮かべ、コカビエルは拍手を送る。

 

「おお、ついに完成だ。五本の聖剣が一つになる。ああ、そうだ、どうせならこの因子の結晶は貴様にくれてやろう。どうせ環境さえ整えば後で量産できる段階まで研究は来ている。」

 

そう言ってパルパーは結晶を木場に向けて放り投げる。結晶は結界をすり抜けコロコロと木場の足元に行き着き、木場はそれを静かに屈み込んで手に取った。

 

「………皆…………」

 

木場の頬を涙が伝う。

 

「木場殿……」

 

カーラマインが声を掛けようとしたその時、結晶が淡い光を放ち、木場を中心に校庭を包み込み、聖剣の光さえ霞んで見えた。すると地面の光からポツポツと光が浮き上がり、やがてそれは人の形をなして行き、木場を囲むように現れた。………それは紛れもない、木場のかつての同士たちだった。

 

「……皆っ!僕は……僕は……っ!」

 

木場の目から自然と止めどなく涙が溢れた。

 

「……ずっと……ずっと思っていたんだ。

僕だけが生きていていいのかって……

僕よりも夢を持った子がいた。

僕よりも生きたかった子がいた。

僕よりも立派な子がいた。

……なのに、なのに僕だけが………平和な暮らしをしていいのか……僕だけが楽しい日々を過ごしていいのかって………!!!」

 

木場は結晶を抱きしめ絞り出すように心中を話す。

 

『いいんだよ』

 

『だって私たちのことをずっと思ってくれていた』

 

『ずっと忘れないでいてくれた』

 

『それに君には、君のことを心から案じてくれる人がいる』

 

そこに、カーラマインが木場に歩みより優しく彼の手を自分の手で包む。

 

「……木場殿、私はあなたの苦しみ、悲しみは到底わかりません……ですが、こんな私ですが、願わくばあなたの力になりたい」

 

「……カーラマインさん、みんな……」

 

木場の同士たちはそんな彼に笑いかけ、そして一斉に歌い出す。

 

「………聖歌」

 

アーシアがポツリと呟いた。しかし、不思議とその場にいた悪魔たちに頭痛は起こらなかった。そして彼らは青白い光を放ち木場を包み込んだ。

 

『僕らは一人じゃダメだった』

 

『だけど皆がいれば大丈夫』

 

『聖剣を受け入れよう』

 

『怖くなんてない』

 

『例え、神がいなくても』

 

『私たちが、そして今の君には仲間が、大切に思ってくれる人がいる』

 

『例え神が見守ってくれていなかったとしても』

 

『僕たちの心はいつだってーーーーー』

 

 

「ーーーーひとつだ」

 

青白く、優しい光が木場を包み込む。

 

「…………アニキ、あれは………」

 

「ああ、木場の同士たちの魂が木場の中に集まっている。そしてあれは……」

 

「さあ、木場殿」

 

カーラマインが木場の手を取り立ち上がらせる。

 

「………ああ、いこうカーラマインさん、皆。………僕はもう迷わない。」

 

木場は涙をぬぐい立ち上がった。

 

「パルパー・ガリレイ、まだ全てが終わったわけじゃない。あなたを滅ぼさない限り、第2、第3の僕たちが生まれてしまう。」

 

木場はパルパーを見据える。その目にはもう迷いはなかった。

 

「ふん、研究には犠牲はつきものだと昔から言うではないか、ただそれだけの話だぞ?それに、さっきまでボロボロと泣いていた奴がよく言う。ただの幽霊どもと戦場のど真ん中で聖歌など歌いよって………私はな、聖歌というものが大嫌いなんだよ!……それよりも、見るがいい!!!」

 

パルパーは狂喜に満ちた顔で術式の中央を指差す。そこには、青白いオーラを纏った一本の聖剣が浮かんでいた。

 

「エクスカリバーが一本になった光で下の術式も完成した。あと二十分もしないうちにこの町は崩壊ーーっ!!!?」

 

そこまで言ったところで、パルパーの顔が狂喜から驚愕に変わる。

 

「なっなぜだ!?なぜ術式が消えているんだ!!!?」

 

見ると、エクスカリバーの下の術式は完成するどころかきれいさっぱり消えていた。周りが驚愕する中、つかつかとフリードは聖剣に歩んで行く。

 

「なぜ?なぜってそりゃあ………」

 

「なっ!?がはぁっ!!!?」

 

言うや否や、フリードは聖剣をひっ掴み、パルパーを柄で殴り飛ばした。

 

「こういうこった」

 

フリードはニヤリと笑う。

 

「……どういうつもりだフリード?」

 

コカビエルは目を細めフリードを見据える。

 

「ケハハハハハハハ!!!どうもこうも!俺っちの仕事は始めっからこれだったんだよぉ!下の術式を聖剣が完成したら消えるように書き換えて、てめえらがアホ面かましてる隙に聖剣掻っ払うっていう竜也のダンナからのなぁ!!!」

 

『『『はぁ!!!?』』』

 

その場にいた全員が驚愕する。当の本人の竜也はニヤリと口角を吊り上げたいかにもな悪人面を浮かべている。

 

「……やはり君のあの時の腕はARMによるものだったんだね?」

 

「イエ~~ス!俺っちの十八番『ゴーストARM』。俺っちの気質とは見事にマッチング~~したみたいでさぁ~~っと、それはさて置き」

 

フリードは聖剣を構えて木場の前に立つ。

 

「おめぇさんもこのまま不完全燃焼なんざ御免だろ?俺っちが胸貸してやんよ……かかってこいやぁ!木場裕斗ぉ!!!」

 

「……ああ、いくよ!フリード・セルゼン!!!」




感想等お待ちしております。次回からはこれまでのペースに戻すようにします。


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聖魔剣と必殺剣

「木場!お前の覚悟見せつけてやれ!!!お前は俺たちの仲間で、俺のダチだ!背中ぐらい押してやる!!!」

 

「イッセー君………」

 

「踏ん切りはついたようだな、ならもう迷うことはない!お前の同士たちの思いを、願いを背負って、突き進め!木場裕斗!!!」

 

「竜也君……」

 

「行きなさい、あなたの信じる道を!私の『騎士』はエクスカリバーごときに負けはしないわ!!!」

 

「裕斗君、信じてますわ!!!」

 

「裕斗先輩、ファイトです!」

 

「部長……朱乃さん……白音ちゃん……」

 

「木場殿、私はただ、あなたを信じて待ちます。」

 

「カーラマインさん……僕は、僕は剣になる!仲間たちの剣になる!今こそ僕の思いに答えてくれ!『魔剣創造(ソード・バース)』ッッ!!!」

 

木場の中の神器と同士たちの魂が混ざり合い、同調し、形をなす。聖なる光と禍々しい闇の力が螺旋を描き、融合する。そして表れたのは一振りの西洋剣。

「【禁手化(バランス・ブレイカー)】『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』【聖】と【魔】を有する剣、その力、その身に受けるといい」

 

木場は禁手によって産み出した剣、聖魔剣を構えフリードの前に立つ。

「いくよ!!!」

 

「こいやぁ!!!」

 

瞬間、木場とフリードの姿が消え、空間に激しい金属音が何度も鳴り響く。木場は『騎士』の駒、フリードは『天閃の聖剣』の力でスピードを極限まで上げている。

 

「……すげぇ、全く見えねぇ………」

「………ああ、これでは踏み込む間もないな………」

 

イッセーは感嘆の声を出し、ゼノヴィアは少し悔しそうにそれぞれ二人の斬り合いを見守る。

 

「ケハハハハ!!!いいねぇいいねぇ最高だねぇ!!!だったらこんなのはどうだい!?」

 

フリードの持つ聖剣が光るとフリードが五人に増える。

 

「それもエクスカリバーの力かい?」

 

「応ともさ!『夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)』、本物はどれかなぁ!!!?」

 

五人に増えた(ように見せた)フリードは一斉に木場に斬りかかる。しかし、木場はそんな中、ゆっくりと剣を構える。

 

「……そこだぁ!!!」《ガキィィィィン!!!》

「何ぃ!!!?」

 

木場はフリードたちが向かってくる反対の方向、自分の後方に聖と魔の混ざり合ったオーラを斬撃に乗せて飛ばす。すると、空中からフリードの姿が浮かび上がり、盾のように広がった刀身で斬撃をガードしていた。

 

「幻影で注意を反らし『透視化の聖剣(エクスカリバー・トラペジィ)』で透明化して接近、『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』で刀身を広げてガードしたのか……」

 

「ご明察、まさか気づくとはね……」

 

「何せ竜也君にシックスセンスを本格的に鍛えてもらったからね!!!」

 

「あら納得!」

 

そして二人は再び目にも止まらぬ速さで剣を打ち合う。そして数秒間の斬り合いの後木場は飛び退き距離を取る。

 

「このままじゃジリ貧だね、一気に勝負をつけさせてもらうよ!」

 

「やらせると思うてか!!!」

フリードは『擬態の聖剣』の力によって刀身を何本も枝分かれさせて剣先を木場に伸ばす。しかし、木場の前に盾のように刀身の広がった剣が表れそれを止める。

 

「『シールドソード』、さっきの君のを参考にさせてもらったよ。………そして、これが!!!うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

木場は片手を天に掲げて神器の力を最大にまで引き出す。そして木場の手から剣を形作るオーラがぐんぐんと天に伸びて行く。

 

「えっ?ちょっ!?」

 

「これが!僕の必殺の剣!!!うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

オーラは雲に届くのではないかというほどに高く伸び、巨大な一振りの剣が表れる。竜の頭部を模した柄、そこから伸びた武骨な出で立ちの刀身は紅蓮の炎を纏っている。

 

「必殺ッ!!!!」

 

「ちょっ!?ちょっ待っ!!!?」

 

「『轟・斬!!ガルガンチュア・パニッシャー!!』あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

フリードの呼び掛けも虚しく、木場は巨剣を振り下ろす。

 

「でっ……デカ過ぎっしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!??」

 

《ズガアァァァァァァン!!!!》

 

聖剣も、フリードも、フリードの叫びも、全てが木場の必殺剣、『轟斬!!ガルガンチュア・パニッシャー!!』に飲み込まれた。

 

 

 

「………………(ピクッピクッ」

 

土煙が晴れ、剣が消えると、グラウンドがごっそりと削りとられており、中央で真っ黒焦げになって突っ伏しているフリードと、見るも無惨に粉々に砕け散った聖剣の姿があった。

「………みんな、僕らの力はエクスカリバーを越えたよ」

 

木場は天を仰いだ

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

その場にいた全員が思った。

 

『やり過ぎだ』………と。

 

 




木場の必殺技『轟斬!!ガルガンチュア・パニッシャー!!』元ネタはそのまんまフューチャーガードバディファイトのカードです。

感想等お待ちしております。次回もお楽しみに


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再開と暴露

今年最後の投稿です。この章は何かと難産です。


竜也side

 

裕斗の必殺技に呆然としていた一同だったが、裕斗が力なく崩れ落ちたことで沈黙は破られた。

 

「ッ!!!?木場殿!!!」

 

「あのバカ……」

 

カーラマインが裕斗を慌てて支え、俺は呟き裕斗のもとに向かう。

 

「竜也君……カーラマインさん……僕、やったよ……エクスカリバーに勝ったんだ……」

 

「木場殿………はい!見事な一撃でした!!!」

 

「ったく無茶しおってからに、めったなことで使うなっつったろうが。」

 

「あはは……ごめん……」

 

「おい木場ぁ!!!なんだ今の技!?危うく結界が崩壊しかけたぞ!!!」

 

ヴァーリが声を荒げる。見ると、上空の結界に巨大な亀裂が出来ており、魔力を流して必死に修復している。

 

「『豪斬ガルガンチュア・パニッシャー』、裕斗の産み出した『魔剣創造』の力を極限まで引き出した文字通り必殺技だ。」

 

「だがこいつは諸刃の剣、使えば己の力を全て使い果たし神器もしばらく使う事ができない。裕斗はもう戦えない。」

 

俺は裕斗を小突く。

「後は任せな、しばらく休んでろ。」

 

「……うん、そうさせて……もらう………よ……」

 

そう言って木場は意識を手放した。

 

「カーラマイン、裕斗を頼む。それとついでにあそこで黒焦げになってるやつも回収しといてくれ。」

 

「はっはい!了解しました!」

「…竜也殿、共闘の協定はまだ生きているか?」

 

ゼノヴィアが俺に歩みより声をかける

 

「………お前にその気があるならな」

 

「感謝する、ーーーーぺトロ、バシレイオス、ライオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ。この刃に宿りしセイントの名において我は開放する『デュランダル』!!!」

 

ゼノヴィアが呪文を唱えると空間に歪みが生じる、そして歪みの中に手を入れ引き抜くとその手には一振りの聖剣が握られていた。

 

「ばっバカな!?研究はデュランダルを扱える領域までは達していないはずだ!!!」

 

いつの間にか復活していたパルパーがゼノヴィアに吠える。

 

「私はイリナや人工聖剣使いと違って数少ない天然物でね。……パルパーは私に任せろ。」

 

「任せた」

 

俺はヴァーリのもとへと飛ぶ

 

「結界は俺が治す、お前はコカビエルを頼む。」

 

「了解」

 

ヴァーリは再びコカビエルのもとに向かう。そこではイッセーたちがコカビエルと再び交戦していた。

 

「『アロー・オブ・ウェルシュ』!!!」

 

「『ルイン・ブリックバット』!!!」

 

「小賢しいわっ!!!」

 

イッセーとリアスが弾を乱射するがコカビエルに一掃される。

 

「今よ!!!」

 

「爆雷光よ!!!」

 

「『にゃんにゃん波』!!!」

 

「『トップガン』!!!」

 

「グウオ!!!?」

コカビエルの背後に接近した朱乃ちゃん、黒歌、白音が攻撃を加える。

 

「ぬぅらぁ!!!」

 

「キャア!?」「あぐっ!?」「にゃう!?」

 

超至近距離からぶつけたに関わらずコカビエルは3人をふりはらう。

 

「さすがに聖書に記された堕天使なだけはあるな。」

 

そう言ってる合間に結界の修復が完了した。

 

「さて、どうするかな。イッセーたちに加勢に行くか、それとも……」

 

俺はちらりとゼノヴィアの方を向く。そこではゼノヴィアがデュランダルを構えてパルパーににじりよっていた。

 

「さあ、観念して貰おうか、パルパー・ガリレイ」

 

「くっおのれ!!!」

 

するとパルパーは懐から閃光弾を取りだし炸裂させる。

 

「くっしまった!!!」

 

「今のうちに…」

 

「逃げられると思ったか?」

 

「なっぐあ!?」

 

俺は上空から急降下してパルパーを押さえつける。

 

「お縄頂戴ってな、『バインド』」

俺は拘束魔法の鎖でパルパーを拘束する。

 

「やれやれ、油断大敵だぞ。」

 

俺はゼノヴィアにパルパーを指差して言う。

 

「あ、ああ、先ほどから済まないな。私はほぼ役立たずだな……」

 

「悔やんでる間があったら行動して挽回しろ。イッセーたちの援護でもしてこい。」

 

「ああ、わかった」

 

そう言ってゼノヴィアはコカビエルのもとに走って行った。俺はパルパーを引きずり裕斗たちのもとに向かう。

 

「よう裕斗、具合はどうだ?」

 

「ああ、なんとか動けるようには回復したよ。」

 

「そうか、なら……」

 

「ぐあっ!?」

 

俺はパルパーを裕斗の前に放り出す。

 

「……好きにしな。」

 

「……ああ、決着をつけさせて貰うよ。」

 

裕斗は聖魔剣を創造し握り締める。

 

「覚悟しろ、パルパー・ガリレイ。」

 

「バカな、あり得ん、本来相反する力が混ざりあうなど……」

 

パルパーは何かぶつぶつと言っている。

 

「…そうか!わかったぞ!聖と魔、二つの力を司る存在のバランスが崩れているというのなら説明がつく!!!つまり魔王だけでなく神も……」

 

「!!!?みんな俺の後ろに隠れろ!!!」

 

刹那、大量の光の槍が降り注ぐ。俺は障壁をはりみんなを守るが土煙が舞い上がる。目を開けると、目の前でパルパーが串刺しになっていた。

 

「………仲間を殺したのか?」

 

俺はコカビエルを睨み付ける。

 

「パルパーは優秀だったよ。だがもはや俺の計画には不必要だ。」

 

コカビエルはあっさりと言い放つ。

 

「………ダハーカ」

 

『『『おう!』』』

 

俺は『魔源の三首甲』を出現させる。

 

「『スターライトブレイカー』!!!」

 

「なっ、グアアアアァァァァァァァァ!!!?」

 

俺はコカビエルにスターライトブレイカーをお見舞いする。煙が晴れるとコカビエルがよろよろと飛んでいた。

 

「なんだ、まだ動けるのか」

 

「ぐっ……フフフフ、今のは効いたぞ、『魔源の創者』よ。礼にいいことを教えてやろう。」

 

「いいこと?」

 

「ああ、さっきパルパーが言いかけたことだ……」

 

そしてコカビエルは口角を吊り上げてし言い放つ。

「先の大戦で四大魔王だけでなく、神も死んだのさ。」




感想など貰えると嬉しいです。それでは良いお年を


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激励と激昂

コカビエルの言い放った「神は死んでいた」という発言にその場にいた全員が衝撃を受けた。

「……嘘だ……嘘だ……」

「そんな、そんなバカなことある訳……」

 

ゼノヴィアとイリナ、声には出さないがアーシアも体を震わせ激しく動揺している。しかしコカビエルは非情にも言い放つ。

 

「本当だとも、先の三つ巴の大戦、そして二天龍との抗争の中で魔王だけでなく神も死んだのさ。」

 

その言葉にゼノヴィアはカランとデュランダルを落とし、イリナ、アーシアと共に崩れ落ちる。当然だ、今まで信じていた神が死んでいたと知り、心の支えを失ったのだから。

 

「アーシア!!!?イリナ!!!?」

 

俺はアーシアとイリナのもとに飛ぶ。

 

「そんな……そんなの……」

 

「神は、神はお亡くなりになったのですか?なら我々に向けられる愛は………」

 

「アーシア!!!イリナ!!!しっかりするんだ!!!」

 

「アーシアちゃん!!!イリナちゃん!!!」

 

「気をしっかり持つにゃ!!!」

 

俺たちはイリナとアーシアに必死に呼び掛ける。そんな中コカビエルはお構い無しに語らう。

 

「二つの陣営がトップを失い我ら堕天使の勝ちが見えたと言うのにアザゼルのやつはもう戦争はしないと宣い神器なんていうオモチャの研究に没頭してやがる。我慢ならないんだよ、振り上げた拳を収めるのは!!!」

「俺は再び戦争を起こす!そして今度こそ我ら堕天使が勝利を掴むのだ!!!」

 

……なんだそりゃ、そんな自分勝手な理屈でアーシアを……イリナを……俺の大切な恋人と友達を………

 

「……許さねぇ」

 

「うん?なんだ『魔源の創者』?」

 

「許さねぇぞコカビエル!!!てめえの身勝手な屁理屈で三大勢力を散々引っ掻き回し、俺の大事な恋人と友達を傷付けた!!!てめえは絶対に許さねぇ!!!」

 

「許さないのは俺たちもだ」

 

イッセーたち幼なじみ組が全身から怒りをほとばしらせ前に出る。

 

「よくもアーシアを、そしてイリナを!!!絶対に許さねぇぞコカビエル!!!焼き付くしてやる、俺の炎で消し炭にしてやる!!!」

 

「骨の髄まで氷付けにして粉々に切り刻んでやる!!!」

 

「今回は私もガチでキレたにゃ……」

 

「骨の欠片も残しませんわ……」

 

「私達もやるわよタツヤ、跡形もなくこの世から消し飛ばしてやるわ!!!」

 

リアスや白音達も憤怒の形相で前に出る。

 

「ああ、その前に……スゥゥ……ッアーシア!!!イリナ!!!ゼノヴィア!!!諦めるな!!!生きる希望を捨てるんじゃない!!!」

 

俺は出せる限りの声で3人に呼び掛ける。

 

「竜也君……だけど……だけど主はもう………」

 

「だからどうした!?神がいないと生きられないのか!?生きてちゃいけないのか!?違うだろうが!!!聖書の神はとっくの昔に死んでいた、だからなんだ!!!?お前も、俺たちもちゃんと生きている!!!みんな毎日を必死に生きているんだ!!!誰しもが当然に出来ることがお前らには出来ないのか!!!?」

 

「竜也さん………」

 

「竜也君………」

 

「竜也…殿……」

 

「支えがいるなら俺が!!!俺たちが支えてやる!!!生きているなら!心があるなら!踏ん張って!立ち上がって!必死になって!生きてみせろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

喉が張り裂けるぐらいの全身全霊の声で、俺は3人に呼び掛ける。すると3人の目に徐々に生気が戻ってきた。

 

「わたしは……わたしは立ちます!!!立って皆さんの傷を癒します!!!それがわたしの出来る唯一のことだから!!!」

 

「アーシアちゃん……私も、私も立って見せる!!!立ってイッセー君と添い遂げてやるんだからぁ!!!」

 

「イリナ……二人は立ったんだ!私がへたり込んでいてどうするんだ!!!」

 

アーシアが、イリナが、ゼノヴィアが、心を奮い立たせて立ち上がる。どうやらちゃんと届いたようだ。

 

「ハハハハ!!!素晴らしい!まるでシネマのワンシーンだ、感動したよ。」

 

そんな中、コカビエルは見下したように空気の読めない発言をする。

 

「なんだ、わざわざ待ってたのか?律儀なもんだ。」

 

「ふん、そんなつまらないまねをしてたまるか!こんなに楽しい殺し合いを!!!貴様らを正面から叩き潰し、手始めに悪魔勢力から潰してやる!!!」

 

「そうか、けど俺たちゃ最っ高に頭に来てるんだ。徹底的に潰してやるよ……禁手化ぁ!!!」

 

俺は『魔源の三首甲(ディアボリズム・トライヘッドギア)』の禁手の鎧をまとう。ダークシルバーの鎧を身にまとい、頭のヘッドギアの角は大きく伸び、両腕の甲にはそれぞれ龍の頭を模した砲身がついている。

 

「『魔源(ディアボリズム)覇王の(・ルーラー・)三頭鎧(トライヘッドメイル)』、てめえは全身全霊の一撃で沈めてやるよ。」

 

俺は両腕の砲身をコカビエルに向ける。

 

「フハハハハハ!!!素晴らしい!!!それがお前の禁手化か!!!?さぁ!俺を楽しませ」

 

「今だやったれべーやん!!!」

 

「承知!!!」シュバッ!!!

 

「何!!!?」

 

コカビエルがつらつらとほざいている間に、べーやんが一瞬でコカビエルの後ろに移動する。

「今回の件、わたくしもかなり頭に来ている。これで終わりだ!!!ベルゼブブ流究極奥義『ファイナルビッグベン』!!!」《ズドォォォォォン!!!》

 

べーやんの究極奥義がコカビエルに炸裂する。これでやつは終わった。

 

「ふん、こんなものなんとも《グギルュオォォォォ》ぬおぁぁ!!!?なんだこの強烈な便意はぁ!!!?」

 

「今だ、ぶちかませお前らぁ!!!」

「ま、ちょっまっ!!!?」

 

「『ファイボス・ブロウ』!!!」

 

「『クレセントハーケン』!!!」

 

「ガァァァァァァァ《グギュゴォォォォ》あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!?」

 

イッセーの太陽の豪炎を纏った必殺の拳とヴァーリの月光を纏った斬撃を食らってコカビエルはこちらに叩き落とされる。

「堕ちろやクソ堕天使!!!『ドラグスレイブ』!!!!」

 

「消し飛びなさい!!!『ルイン・ブラスタードレイク』!!!」

 

「聖と魔の相反する力が混ざり合い、スパークし、絶大な破壊力を得る!!!『デッド・オア・アライブ』!!!」

 

「デュランダルの輝きを味わえぇぇぇぇ!!!」

 

「『にゃんにゃん波』フルパワーにゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「『トップガン』フルパワーです!!!」

 

「燃え尽きろ!!!『ソルブラスター』!!!」

 

「骨の髄まで凍てつけ!!!『コキュートスブレス』!!!」

 

「私のブレスで消え失せろ!!!」

 

ズドガァァァァァァァァァァン!!!!!!

 

「グギィヤァァァァァァァァァァ!!!?《ぶり》あぁ……」

 

9人の必殺級の一撃を食らいコカビエルは上空で盛大に爆発し、コカビエルの羽が舞い散る。

 

「…………きたねぇ花火だ」

 

「うん、まあ確かに……」

 

そんなことを言っていると、コカビエルが上空から落下してくる。

 

「おや、あの威力じゃ跡形もなく消し飛んでると思ったんだけどなぁ」

 

ヴァーリが腕を組んでコカビエルを見下ろして言う。

 

「『非殺傷結界』だ。生け捕りにするようにアザゼルと約束したからな。」

 

すると俺の前にコカビエルの羽がヒラヒラと舞い落ち、俺はそれをつかむ。

 

「…………ちっ、きったねぇ羽だ。」

 

「ああ、アザゼルの美しい漆黒の羽とは比べるまでもない。」

 

「夕麻ちゃんの綺麗な濡れ羽色の羽とは雲泥の差だぜ。」

 

「お父様の凛々しい羽とは似ても似つかない薄汚れた羽ですわ。」

 

俺は羽を握り潰す。若干3人の間に火花が散っているような気がするがそっとしておくことにする。俺はコカビエルを『バインド』で厳重に縛りあげる。なんかちょっと臭かったので触れないようにした。

こうして聖剣事件は幕を閉じたのだった。




これにて聖剣編終局です。この章はかなり難産でした。主にセリフで、
感想など楽しみにお待ちしています。
次回はエピローグです。お楽しみに


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報告と歓迎

 

コカビエルとの戦いから数日、俺は戦闘に参加したリアスたち、アーシアと俺配下の堕天使、べーやん、ティアたち、そしてソーナ嬢とその眷族たちに地下の基地に集まってもらった。匙は基地の中を見て『うおぉぉぉぉぉぉすっげぇ!!!』と興奮して、もう一人の『兵士』の女の子も目を輝せていた。ソーナ嬢は反対に頭を抱えていた。

 

「主よ、リアス様とその眷族、並びにソーナ・シトリーとその眷族、全員到着致しました。」

 

ドーナシークが報告する。

 

「おう、わかった。さて、みんなよく集まってくれた。」

 

俺は集まった全員の前に立つ。

「タツヤ、なぜ私たちだけでなくソーナたちも呼び出したのかしら?」

 

リアスが俺に尋ねる。

 

「それはここにいる全員が知る必要があるからだ。まずコカビエルについてだが、あの後ヴァーリによってグリゴリに連行されてコキュートスに幽閉されたそうだ。アザゼルから『礼を言っておいてくれ』、だとさ。」

 

「アニキ、コキュートスってなんだ?」

 

イッセーが俺に尋ねる。

 

「地獄の最下層にある氷の牢獄だ。もう二度と出てこれないだろうってさ。さて、次の報告だが……ヘイカモン。」

 

「ようイッセー、数日ぶり。」

 

「ヴァーリ!?」

 

「イッセーくぅん!!!」ダキッ!!!

 

「い、イリナ!!!?」

 

「ちょっとアンタ!!!なにイッセー君にいきなり抱きついてるのよ!!!?離れなさいよ!!!」

 

「嫌よ!!!もう我慢しなくていいんだもーん!」

 

「ちょっ!?二人ともやめっ!!!?」

 

「畜生イッセー爆発しろ!!!」

 

続いて出てきたイリナがイッセーに抱きつき、夕麻がイリナをひっぺがそうと掴みかかり、匙が呪詛の隠った言葉を吐く。

 

「やあ、久しぶりだな赤龍帝、そしてアーシア・アルジェント。」

 

「ぜ、ゼノヴィア!?」

 

「ゼノヴィアさん!?」

 

「ハ~イ♪ナイト君おひさ☆」

 

「!!!?フリード・セルゼン!?」

 

イリナに続いてゼノヴィア、さらにフリードが入って来た。

 

「お前ら何でいるの?てか、何で駒王学園の制服着てるんだ!?」

 

「それについては俺が説明しよう、ヴァーリはグリゴリから親善のために派遣された。」

 

「そういうわけだ、よろしくな」

 

ヴァーリが笑顔でVサインする。

 

「そしてイリナ、ゼノヴィア、フリードは新たに俺の配下に加り、理事長に頼んで編入させてもらったんだ。」

 

「え?でもはぐれのフリードはまだしもイリナとゼノヴィアは教会の……」

 

「それについては私が説明しよう、あの後エクスカリバーの核を送還するために本部に掛け合ったさい、私たちは異端として追放されたのだ。」

 

「はぁ!!!?」

 

ゼノヴィアの発言にイッセーを筆頭に全員が驚愕する。

 

「どどどどういうことだよイリナ!!!?追放って……」

 

「うん、連絡した時神の不在の真意を尋ねたらね。いっそ清々しいくらいの手のひら返しだったわ。」

 

イッセーが両肩を掴んで問い掛けるとイリナは自虐的に苦笑して話す。

 

「そして追放を言い渡され徒歩にくれていた我々を陛下が拾ってくださったのだ。」

 

「そうだったのか………てか陛下?」

 

「そうだ!神の死を聞かされ心が折れていた私は陛下のあの言葉で奮い立つ事ができた!さらに徒歩に暮れる私を拾ってくださった!陛下は神に変わる私の心の支えにして希望だ!!!」

 

ゼノヴィアは拳を握りしめ熱く熱弁すると、俺の正面に歩み膝を折る。

 

「今ここに宣言しよう、私ゼノヴィア・クァルタは陛下、雷門竜也様に永遠の忠誠を誓う!!!」

 

ゼノヴィアは声高らかに宣言する。心のよりどこを神から俺に移し代えたのか、まあ依存だな。

 

「……イリナ、お前は良かったのか?」

 

イッセーは神妙な顔でイリナに尋ねる。

 

「いいの、実はアーシアちゃんの件以来教会にあまり信用を持てなくなっていたの。」

 

「イリナ……」

 

「そ・れ・に~、これからイッセー君と一緒に居られるんだも~ん♪」

 

「ちょっ!!!?わかったから抱きつくなぁ~!!!」

 

「と、まあそんな訳だ。ついでだからフリードも一緒に配下に加える事にした。」

 

ガビーン∑「ちょっ!?ダンナぁ、ついではあんまりっすよ~」

 

「………てか兄さんはいつフリードと知り合ったんだ?」

 

俺とフリードの掛け合いの中ヴァーリが尋ねる。

 

「ああ、5年前イリナに会いにイギリス旅行に行ったときにぶらついてたら森の中で遭遇してな、資質は十分にあったが中身が最悪だったから修練の門で根性叩き直してやった。」

 

「いや~あの時はめっさボコボコにされちったぜ~、まぁそのおかげで俺っち超絶強くなったんだけど♪」

 

「………ああ、2日開けたあの時か……」

 

「んなことやってたのかアニキ……」

 

「ハイハーイ!そんな訳だからーー!皆さんよろシク35☆」

 

「4×9は36だ。」

 

フリードのボケにヴァーリが冷静に突っ込む。

 

「そして最後、これがお前たち全員を呼び出した最も重要なことだ。俺について来てくれ。」

 

俺はワープパネルに乗りとある部屋に移動する。その後からイッセーたちがやって来る。その部屋は綺麗に飾り付けされており、長いテーブルの上には布がかけられていた。

 

「兄さん、これは一体……」

 

「ふふん《パチン》ドーナシーク!」

 

「ハッ!」バサッ

 

ドーナシークが布を取ると、ところ狭しと並べられた俺の料理が現れた。

 

「これより!コカビエル撃破の祝賀会並びにヴァーリ、イリナ、ゼノヴィア、フリードの駒王学園歓迎会を始める!みんな存分に食って飲んで盛り上がれ!!!」

 

『『『イエーーーーイ!!!』』』

 

『『『わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』

 

それから始まるドンチャン騒ぎ

 

「んみゃーーー!!!竜也君の料理久しぶりに食べたけど以前よりもっと美味しい!!!?」

 

「ふぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!美味い!美味過ぎる!!!こんな………こんな味知ってしまったら、私は……私はもう陛下から離れられない!!!」

 

「ゼノヴィアさん、なんか卑猥です。でもその気持ちは凄くわかります。」

 

「あっ!?てめフリード!!!俺の唐揚げ取るんじゃねぇ!!!」

 

「んもぅ元ちゃんちっちゃいんだから~。ほれ、俺っちのアスパラガスあげるから♪」

 

「いや釣り合ってたまるかぁ!!!てか元ちゃん言うな!!!」

 

「はいイッセー君、アーン♡」

 

「あっ!!!?わ、私も!イッセー君アーン!!!」

 

「んぐっ!?むぐっ!?ちょっ二人ともそんなにいっぺんにはいらなムグゥゥゥゥゥゥゥ!!!?」

 

「木場殿、ジュースをお持ちしました。」

 

「あの、カーラマインさん…その、出来れば、あの……名前で呼んで欲しいな……何て……」

 

「//////ふぇ!?あぁうぅぅぅ………ゆ、裕斗……様……//////」

 

「//////は、はい、カーラマインさん……」

 

「おかしいですね、ピザなのに甘い酸っぱい……」

 

「ザラロロロロロロロロロロロ」

 

「ああ!!!?ミッテルトがとうとう耐えきれずに砂糖を吐いた!!!?」

 

「メーデーーーー!!!誰か早急にブラックコーヒーをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

パーティーは深夜まで続いた。

 

 

 

 




感想など楽しみにしてます。次回もお楽しみに


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初夏とプール掃除

読み返して見て文よりセリフの方が多いと思い、台本形式にしようか悩んでいます。試しに今回は台本形式にするので感想のほどをよろしくお願いいたします。


「あ~~つ~~い~~」

 

「まさにプール掃除日和だな。」

 

イッセーが嘆きヴァーリが汗を拭い呟く。現在、生徒会、料理部、オカルト研究部によるプール掃除の真っ最中である。ソーナ嬢から話を持ち掛けられた時は正直だるいから断るつもりだったのだが、終わった後泳げるってんなら別だ。ついでにヴァーリ、フリード、イル、ネルも呼んでおいた。ちなみにヴァーリは科学部、フリードは放送部に所属している。フリードは同じ放送部の桐生藍華と意気投合したらしい。

 

「水はもう抜いてあるから準備できたやつから始めてけー」

 

『はーーーーい!!!』

 

~~~~ここからは台本形式でお楽しみください~~~~

 

フリード「ひゅ~~夏のうなじが眩しいぜ♪」

 

匙「どこ見てんだ……」

 

イッセー「日差しじゃないのな」

 

フリードの呟きにイッセーと匙が突っ込む。ちなみに今の一同の服装は体操着だ。

 

フリード「夏日の健康美についね、GJ☆」

ヴァーリ「それはわからんでもないがうなじはわからんな」

 

フリード「ヴァーリ君の視線は白にゃんにロックオンだからね♪」

 

ヴァーリ「ブッ!!!ちょっ!お前!?」

 

イッセー「気づいてないとでも思ったか?」

 

フリード「いつから?ねぇいつから?」

 

ヴァーリ「…………お菓子食べてる姿が小動物みたいで可愛いなーと……ぜっ絶対に言うなよ今の!!!/////」

 

フリード「おーい白にゃーん(^_^)/」

 

ヴァーリ「ブッ殺すぞフリードぉ!!!」

 

フリード「言わない言わない、白にゃんこれ持ってちょ」

 

白音「……何故に両端ブラシ?あと白にゃん言わないでください。」

 

フリード「まぁまぁそう言わないで、これをぎゅんぎゅん回して汚れを一網打尽だよ!」

 

白音「……こうですか?」ドギュン!!

 

白音は両端ブラシを高速回転させ汚れを落とす。

 

匙「チクショー!!どいつもこいつも青春しやがって!独り身は辛いよなフリード!?」

 

フリード「あ!俺っち今度桐生さんとデートの約束シちった☆」

 

ガーン∑匙「うわーん!!お前らなんか嫌いだ!!!」

 

匙は走り去った。

 

イッセー「………いい性格してるよお前」

 

フリード「いやぁそれほどでもぉ_(^^;)ゞ」

 

イッセー「別に褒めてねぇよ」

 

フリード「んで、さっきの続きだけどみんなは女子のどこに目が行く?」

 

イッセー「俺は夕麻ちゃんやイリナの濡れた髪にぐっとくるね。」

 

ヴァーリ「またイッセーののろけか……俺は足だな、ニーソがあればなおよし!」

 

竜也「お前ら何アホな会話してんだ、とっとと掃除しろ。」

 

フリード「あ、ダンナ。ダンナは女子のどこに目が行く?」

 

竜也「うん?…………笑顔かな?」

 

ズガーン「「「!!!!!??」」」

 

自分は汚れていると思いしらされた一同だった。

その頃匙は

 

匙「うわーーーん!!!」

 

ギュンギュンギュンギュンスポッ「………あ」

 

匙「うわーー《ヒュンヒュンヒュンヒュンズパァァン!!!》パレオ!!!?」

 

「「「「匙!!!?」」」」

 

すっぽぬけた白音のブラシが顔面に直撃し、もんどり打っていた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

木場「ヤゴやカエルがちらほらいるね」

 

黒歌「流すのも何だしどうするかにゃ?」

 

真羅「確か用務室に水槽がありましたね。」

 

ミッテルト「じゃあヤゴは水槽で軍曹はーー」

 

黒歌「軍曹言うにゃ」

 

ミッテルト「塩かけるっすか?」

 

アーシア「何でですか?」

 

ミッテルト「溶か……す?」

 

アーシア「かわいそうですーっ!」

 

木場「それナメクジだよね!?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

イル「とりゃー☆」

 

ネル「りゃー」

 

イルとネルがブラシでタワシを打ち合う。

 

イッセー「お、タワシでホッケーでもするか!」

 

ソーナ「こらあなたたち、まだ掃除の途中ですよ!」

 

竜也「だいぶ終わってきたし、いいんじゃね?」

 

フリード「ではこのタワシに『匙君』と名付けます。」

 

匙「何で!?」

 

フリード「ボールは友達のアレだよ」

 

木場「その友達、友人に頭と足を使ったためらいのない打撃入れられてるよね?」

 

仁村「元ちゃんをブラシで打つよー!」

 

匙「いぢめか!?」

イッセー「タワシの方だろ」

 

匙「セリフだけだと俺の危機だよな?ってか、仮にも友の名がついてるんだからためらってくれよ……」

 

『・・・・・・・・・・』

 

フリード「でもそんなの関係ねぇ、っらぁ!!!」ドゴン!!

 

匙「ぅおい!!!?」

 

フリードの容赦のない一撃に皆も続く

 

イリナ「匙君覚悟!」ゴガッ

 

イッセー「クタバレ匙!」ズガッ

 

真羅「匙君、私本気で打つわ!」パカン!!

リアス「消し飛びなさい匙!」スカン!!

 

匙「何故にいちいち名前を呼ぶ!?」

 

竜也「こらこら、皆匙をいぢめすぎだぞ。」

 

さすがに見てられなかったのか、竜也が止めに入る。

 

イッセー「いやぁごめんごめん」

 

リアス「ついのっちゃったわ」

 

匙「お前なら止めてくれると信じていたぞ」

 

竜也の好意にホロリと涙する匙

 

竜也「ああ、よかったな『タワシ』」

 

匙「俺『匙』ぃ!!!?」

 

そんな匙を、木場は仲間ができたような目で見ていた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

アーシア「竜也さんバケツ持って来まし《ツルッ》きゃっ!?」

 

竜也「アーシ《ガボッ》っ!?」

 

黒歌「アーシア《ツルッ》っ!?」

ズガッ『ぬ"うっ!!!?』バタッ!!ビクンビクン

 

足を滑らせたアーシアを支えるために駆け寄った竜也の頭に水の入ったバケツが被さり、これまた足を滑らせた黒歌のヘッドバットが竜也の背中に直撃して、竜也は倒れ伏し痙攣する。

 

アーシア「ふえええええええ竜也さーーん!?」

 

リアス「竜也ぁーーーーーっ!!!?」

 

イッセー「アニキぃーーー!!!?しっかりしろーーー!!!?」

 

竜也「な、なんか頭部を水と衝撃と暗闇が襲った後背後から重い一撃が………」

 

イッセー「それはアーシアと黒姉さんの友情ツープラトン攻撃だアニキ。」

 

竜也「二人は怪我はないか?」

 

アーシア「はひ、竜也さんのおかげで」

 

黒歌「ごめんにゃだぁりん」

 

ヴァーリ「でもよかったな兄さん、もしバケツが逆さまだったら………」

 

白音「……いつもの木場先輩と匙先輩みたいになってましたね」

 

木場&匙「「!!!!?」」ズガーン!!

 

今ここに木場と匙の不遇キャラが確立した瞬間であった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

そんなこんなでプール掃除も無事?終わり、水もちょうどいい高さまではった。

 

竜也「よーし皆お疲れ、アイス用意してあるから並べ!」

 

『はーーーーい!!!』

 

竜也「あっ白音、そっちの端にスイカ2つ冷やしてあるから持って来てくれ。」

 

白音「わかりました」トテテテテテ

 

竜也「あんまり急ぐと転ぶぞー」

 

白音「大丈夫です、姉様のようなヘマは《ツルッ》………あ」

 

ヒューーーーン、ゴシャ!!!

木場&匙「「オギャア!!!?」」

 

イッセー「匙ぃーーー!!!?」

 

カーラマイン「裕斗様ぁーーーーー!!!?」

 

朱乃「割れましたね」

 

ミッテルト「頭っすか?スイカっすか?」

 

竜也「どっちもだろ」

 

案の定白音は転び、2つのスイカは木場と匙の頭に直撃し、プールサイドに二輪の赤い花が咲いた。ちなみにスイカは反対方向にもう2つ冷やしており、木場と匙は割れたスイカを食べる羽目になった。




次回、ついに水着!!!
感想等お待ちしております。


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プール開きと水着

 

プール掃除も無事終わり、俺たちは早速泳ぐことにしたのだが、生徒会とドーナシークとカラワーナの教師は仕事があるからと帰ってしまった。匙のあの絶望と無念に染まった顔を俺は忘れない。(フリードとヴァーリは裏で爆笑してた)。ドーナシークは『プ~ルゥ~』と嘆くカラワーナを引っ張って行った、

現在、早く着替えた俺たち男子は女子たちが来るのを待っている。

 

「いや~、しかし待ちきれないねぇ。いっそ先に入っちゃう?」

 

待ちきれなくなったのか、フリードがそんなことをのたまった。

 

「アホ、こういう時黙って女子を待つのが男の務めってもんよ。銭湯しかりプールの着替えしかり。」

 

「そうだよフリード君。」

 

「黙って待つのが男の美徳だぜ?」

 

「かーー!いいよなダンナや木場ちんやイッセー君はよぉ、愛しのハニーがいるんだからさぁ。いいよいいよ!せっかくの高校生活だし、俺っちも彼女作っちゃうもんね!」

 

フリードはプールサイドに立ちポーシングをとる。どこからともなくババーンという効果音が聞こえて後ろに日の出模様が見えた。

 

「気を着けろよフリード、桐生は女子の皮を被った狼だぜ?」

 

イッセーはニヤニヤとした顔でフリードの肩をポンとたたく。

 

「心配ご無用!何故なら俺っちは美男子の皮を被ったケダモノだから!」

 

「何最低なこと言ってるんだ。」

 

ヴァーリはフリードに冷ややかに突っ込む。

 

「ちゅーかヴァーリくんはどうすんのよ?白にゃんに告白とかはしないわけ?」

 

フリードの発言にヴァーリは一気に顔を真っ赤にする。

 

「バッ!?おまっ、そんなすぐできるわけないだろ!……白音の気持ちもあるし………」

 

「私の気持ちがどうしたんですか?」

 

「どぅえ!!!?わっだっどわっ!?」バシャーン!!

 

いきなり本人に声をかけられたことに気が動転してプールに落ちるヴァーリ、そして必死に笑いをこらえるイッセーと指を指して爆笑するフリード。こいつら後でしばかれるな……

 

「大丈夫ですかヴァーリさん?」

 

「あ、ああ、大丈夫だ……」

 

白音にプールから引き上げられるヴァーリ、絵図からして逆だな。それを見てさらにバカ笑いするフリードととうとう耐えきれなくなったのか声を上げて笑うイッセーと苦笑する裕斗。

 

「すみません、急に声をかけて驚かせてしまい……」

 

「いや、いいんだ。俺もオーバーにリアクションし過ぎた。……それと、水着、似合ってるぞ。」

 

見ると、白音は上がタンクトップ状になったセパレート水着を着ていた。

 

「にゃ!?…あ、ありがとうございます……」

ヴァーリの言葉にほんのりと頬を赤く染め、あわてて顔を伏せて頭を猫手でくしくしとかく白音………案外脈ありなんじゃないか?

 

「「お兄ちゃーーーん!!!」」

 

「おわっ!?プールサイドで走ったら危ないだろうイル、ネル。」

 

俺に突撃してきたイルとネルをあわてて抱き止め注意する。いくら悪魔と言えど転んで怪我でもしたら大変だ。

 

「だってお兄ちゃんに早くイルとネルの水着見て欲しかったんだもーん☆」

「見て見てお兄ちゃん!今日のためにふたりで選んだの!」

 

見ると、イルは桜色、ネルはレモン色のフリルのついた可愛らしい水着を着ている。年相応のあどけなさがあり実にキュートだ。

「うん、二人ともとても似合ってるぞ。とってもキュートだ。」

「わーい!お兄ちゃんに誉められたー!」

「お兄ちゃんもっとなでなでして~」

二人の頭を撫でてやるともっと撫でてとせがんでくる。可愛いやつらめ。

 

「あらあら、どうやらお待たせしてたみたいですね。」

「ごめんなさいね、待たせちゃって。」

 

すると続々と着替え終わった女性陣がやってきた。リアスは自身の髪と同じ赤いビキニ、朱乃ちゃんは黒のビキニにオレンジのパレオを巻いた水着(ちなみにこれ、ビーチドレスとワンピースにもなる優れものである)、アーシアはピンク、ミッテルトは黒のフリルのついたビキニ、イザベラとカーラマインは競泳水着、ゼノヴィアはセパレート水着だった。

 

「どう?似合ってるかしら?」

 

「いかがでしょうか陛下、教会にいた時はこんなことに興味を持てなかったのですが…」

 

「悪いけど俺は不器用でね、あまり気の聞いたことはいえないが……みんなとても似合ってるぜ?実に魅力的だ。」

 

「うふふ、その言葉だけで十分よ♪」

 

「イッセー君イッセー君!どう、この水着!イッセー君のために買っちゃった♪ほら、イリナも!」

 

「うぅ~、待っててば夕麻ぁ……ど、どうかなイッセー君、似合ってる?」

 

見ると黒のビキニを着た夕麻と白のビキニを着たイリナがイッセーのもとに直行していた。あの決闘まがいの後、同じ男を愛するライバルかつ同士としてなんだかんだで仲良くなったようだ。ちなみに正妻は夕麻らしい。

 

「ああ!夕麻ちゃんは黒髪と相まって大人な魅力があってイリナは清楚な白がよく似合ってる、さすがは俺の女神たちだぜ!」

 

「そんな…女神なんて…キャー」

 

「もうイッセー君たら……大好き♡」

 

イリナの告白からイッセーもなんか吹っ切れたらしく、『二人とも一生全身全霊で愛し続ける』と、この前二人に宣言したそうだ。ちなみにあの修羅場を経験し『もうこれ以上増やす勇気は俺にはない』とのことだ。あと自身の発言を振り返って軽く自己嫌悪に陥ったらしい。……それなら四人と婚約してる俺はどうなるんだ……

 

「裕斗様…どうでしょうか?」

「うん、とっても素敵だよ、カーラマインさん//////」

 

「はぅっ!?あ、ありがとうございます////」

 

あの後、裕斗はカーラマインに正式に告白して二人は付き合うことになった。この前デートの仕方を聞かれた。正直今さらな感じがするが………

「だぁりーーん♪(むにゅ」

 

刹那聞き慣れた声が聞こえて俺の背中に柔らかい感触が…見ると黒のミニコンを巻いた着た黒歌が俺の背中に抱きついていた。

 

「く黒歌!?当たってる!当たってるから!」

 

「当ててるにゃん、もうだぁりんったらわかってるくせに♡」

 

黒歌はさらに俺にその胸をむにむにと押し付けてくる。お、俺の精神がゴリゴリと削られていくぅ……

 

「黒歌?あなたなにうらやまゲフン!…ハレンチなことをしてるの?」

 

「黒歌さん自重してください(私よりも先にやるなんて)」

 

リアスと朱乃ちゃんが背中からどす黒いオーラを放ちながら黒歌に言う……若干本音が見えたが…

 

「ぶ~いいじゃにゃいの朱乃~これでも去年よりも自重したにゃ」

 

「当たり前です。どこに市民プールにスリングショットを着てくる人がいるんですか」

 

『『『!!!?』』』

 

「す、スリングショットぉ!!!?パネェ!黒歌姉さんマジパネェ!」

 

「黙れフリード、こちとらあれで色々限界だったんだよ。」

 

そう、去年の夏休み、皆で行った市民プールで黒歌はあろうことかスリングショットを着てきたのだ。あの時は俺たち全員で説き伏せ、なんとかレンタルの水着で過ごしてもらった。

 

「「いい加減に……」」

 

すると二人から魔力が膨れ上がり手のひらに収縮していく。

 

「ちょ!?二人ともストップストップ!プール壊す気か!!!」

 

この後なんとか二人をなだめ、背中にオイルを塗ることで許してもらった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「よ~しその調子、そのままばた足を維持だ」

 

「は、はひ!」

 

「いいぞ、この様子ならそろそろビート板なりで一人で泳げるだろう」

 

「…はい、ありがとうございますヴァーリさん」

 

現在俺たちは泳げないアーシアと白音の泳ぎの練習を手伝っている。俺がアーシア、ヴァーリが白音の手を引いてばた足の練習をしている。

 

「兄さん、二人ともそろそろビート板で泳げるだろう」

 

「わかった、ちょっと取ってくる。」

 

俺は一旦プールから上がりビート板を取りに行く。

 

「?」

 

ふと見ると、パラソルの影で黄昏るゼノヴィアが目に入った。

 

「どうしたゼノヴィア、そんなとこで黄昏て」

 

「ああ陛下、どうも馴染めなくて、これまでこういった娯楽とは無縁だったもので……」

 

ゼノヴィアは苦笑して答える。まあ当然か、これまでは神に支えることが生きる目的の全てだったんだからな。

 

「それなら趣味でも作ってみたらどうだ?」

 

「趣味……ですか?」

 

「ああ、何か趣味の一つでもあったら少しは気が紛れるだろう。何なら今度一緒に玩具屋でも行くか?」

 

「陛下……はい!ありがたき幸せであります!」

 

「うん、よろしい」

 

この約束があんな悲劇に繋がるなんて、俺は知るよしもなかった。

 

 





次からはしばらく日常回を考えております。
感想など楽しみにしてます。次回もお楽しみに


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趣味と偏愛

プールで約束の翌日、祝日だったこともあり、俺とゼノヴィアは早速趣味探しに近くの玩具屋に向かった。

「どうだゼノヴィア、何か興味を引かれるものは見つかったか?」

 

「申し訳ありません陛下、何分今までこういった娯楽とは無縁だったものでいまいちピンと来なくて……」

 

「ゼノヴィア?」

 

ふと、ゼノヴィアが歩みを止める。ゼノヴィアの目線の先にはガンプラシリーズの棚、ゼノヴィアはそこからストライクガンダムのプラモを手に取る。

 

「……興味が湧いたのか?」

「は、はい、なんとなく目にとまったもので…」

 

「よし、ならこれにするか」

 

俺はガンプラをレジに持って行く。

 

「へ陛下!?目にとまったと言ってもなんとなくですよ!?」

 

「何事もフィーリングが大事なのさ、直感ってのは案外侮れないぜ?」

 

「し、しかし私はプラモデルなど今まで作ったことも触ったことも…」

 

「心配するな、俺もサポートしてやるよ」

こうして俺たちはガンプラ片手に帰路についた。そして帰宅後、早速組み立てに取り掛かった。

 

「陛下、この“ニッパー”というものはどうやって使うのですか?」

 

「ああ、これはな………」

 

「へ、陛下!腕が胴体に付きません!」

 

「バカ!ポリキャップ付け忘れてるよ!」

 

「いいか、シールは慎重に貼れよ。しくじったら取り返しがつかないと思え」

 

「はっはい!……」ドキドキ

 

そんなこんなで30分後

 

「ぜぇぜぇ……完成だな……」

 

俺とゼノヴィアの前にビームサーベルを構えたストライクガンダムが立っている。思いの他時間がかかったがなんとか完成した。

 

「お、おお……おおおぉぉ」

 

見ると、ゼノヴィアはストライクガンダムに目を輝かせ感嘆の声を上げている。

 

「どうだ、感想のほどは?」

 

「は、はい!よくわかりませんが、謎の達成感があります!……それに…」

 

ゼノヴィアは再びストライクガンダムに目を向ける。

 

「……美しい」

 

ポツリとこぼれたその言葉に、俺は今回の計画の成功を感じたのだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

あれから数日後、

 

コンコンッ「お~いゼノヴィア~、ちょっと用事があるんだが」

 

最近あまりゼノヴィアの姿が見えないことで、何かあったのか尋ねようと先ほどからドアをノックしているのだが一向に返事が帰って来ない。

 

「ゼノヴィア~?………開けるぞ」ガチャ

 

俺はゼノヴィアの部屋の光景を見て絶句した。

必要最低限のものしか置かれていなかった部屋に積み上げられたガンプラの箱、いつの間にか運び込まれたショーケースの中に並べられたガンプラ、適当にまとめられたゴミ袋、それとは対象にきちんと整頓された工具一式と着色スプレー等、そして部屋の中心でザクを組み立てるゼノヴィア……

 

「……ゼノヴィア」

 

「はぁぁ素晴らしい、滑らかな中に刺々しさを兼ね備えたこのform……//////」

 

俺の呼び掛けにも反応せず頬を高揚させうっとりと組み立てたザクを眺めるゼノヴィア

 

「ゼノヴィア!」

 

ビクッ「へ、陛下!?いつの間に私の部屋に!!!?」

 

「ついさっきからだ……てか、なんだこの部屋の有り様は」

 

「い、いやぁそれが……あの後、ガンプラを組み立てた時のあの高揚感が忘れられず、一箱、また一箱と組み立てていたらいつの間にかこんなことに……」

 

ゼノヴィアは照れくさそうに人差し指で頭を掻く。

 

「……てか、このショーケースはどこから持ってきた?」

 

「ああ、はい、どうせなら飾る場所も必要かなとヴァーリに頼んで転移魔方陣で部屋に直接運んでもらいました。」

 

「お前……まあいい、とりあえずもう夕飯だからリビングに来い。皆待ってるぞ」

 

「すみません陛下、あと少しで組上がるので今しばらくお待ちいただけませんか?」

 

「いや、あとにしろよ。てかザクならそこに3つもあるじゃないか」

 

「ザクではありません!ガルマ・ザビ専用ザクです!!!それとそちらに飾っているのは左から量産型ザクとシャア専用ザクと宇宙用高機動試験型ザクです!!!」

 

「いや、うん、ごめん、俺進めといて何だけどそんなにガンプラ詳しくないのよ」

 

「なんと!!!?ならば不肖このゼノヴィアが、陛下にガンプラひいてはMSについて一から十まで根掘り葉掘り詳しく…」

 

「いいからとりあえず飯だ飯」ガシッ

 

「あっ!?お待ちください陛下、せめてあともう少しお待ちを!本当あとちょっと何で!あと武器組み立てるだけなので!」ズルズル

 

俺はゼノヴィアを引きずりリビングに向かう。まさかたったの数日でここまでのめり込むとは……

 

ズリズリズリ「……あ、陛下、それはさておき少しご相談が」

 

「何だ?言ってみろ」

 

「……来月分のお小遣いを前借《ゴン!!》アッガイ!!!?」

 

拳骨落とした俺は悪くないと思います。



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堕天使総督とバトスピ

ノリと勢いで書きました、プレミとかあったら教えてください。


イッセーside

 

現在、俺はオカ験の活動で契約を取りにチラシを使った人のもとに魔方陣でジャンプしたのだが……

 

「よう赤龍帝久しぶり」

 

「………何であんたが呼び出してるんすかアザゼルさん」

 

呼び出した相手を見てみれば、聖剣事件の時に画面越しではあるが会った堕天使総督のアザゼルさんだった。

 

「いやなに、こっちの方でちょいとばかり用事があってな、しばらく滞在することにしたんだがいかんせん暇でな、こうしてお前さんに相手して貰おうと呼び出したってわけだ。」

 

「いや、だったらヴァーリにでも相手にしてもらったらいいじゃないか」

 

「いや、ヴァーリのやつはいま雷門家だ。流石の俺も久しぶりの一家団欒を邪魔するほど落ちぶれてはねぇよ」

 

……この人(人じゃないけど)、なんだかんだでヴァーリのことを考えてやってるんだな

 

「……てか、これってヤバいんじゃねぇの?堕天使総督が契約とか」

 

「大丈夫だって、バレなきゃ」

 

「いや、一応部長には報告するから」

 

「けっ、真面目だねぇ悪魔のくせに」

 

「あんたは適当だよな、総督のくせに……」

 

本当何でこの人(人じゃないけど)総督なんてやってるんだろうか……

 

「まあそれはさておき……一つ付き合ってくれよ」

 

そう言ってアザゼルさんはバトルスピリッツのカードを取り出した。

 

「……何でそんなの持ってるんすか?」

 

「知ってるぜ、ヴァーリと竜也たちと昔からやってんだろ?俺もちょいとばかりな」

 

「……でも俺今デッキ持ってないんですけど」

 

「心配すんな、ほれ」

 

そう言ってアザゼルさんは俺にデッキを投げ渡す

 

「ふふん、こんなこともあろうかと竜也のやつから送ってもらっていたのよ」

 

アニキ……何を………

 

「はぁ…わかりましたよ、やりますよ」

 

「よっしゃ!んじゃ始めようぜ」

俺たちはプレイシートを広げて互いにデッキをシャッフルする。

 

「んじゃ、始めるならあれ言おうぜ?」

 

「えぇぇ……わかりましたよ…やりゃいいんでしょやりゃ」

 

もはややけくそである

 

「「ゲートオープン!解放!」」

 

「先行は貰うぜ?堕天使総督のターン。」

 

「……なんすかそれ?」

 

「ゼロっぽいだろ?【リビングガーゴイル】を召喚、そしてネクサス【魂の古都ジュデッカ】を配置、ターンエンドだ。」

 

リビングガーゴイルに魂の古都ジュデッカ……【魔影】デッキか…

 

「俺のターンか…(一応乗っておこう)赤龍帝のターン、【オードラン】と【カグツチドラグーン】を召喚、バーストセット、アタックステップ、カグツチドラグーンでアタック!効果で1枚ドロー」

 

「ライフで受けるぜ」

 

アザセル ライフ5→4

 

「ターンエンド」

 

「堕天使総督のターン、この俺、【堕天騎士アザゼル】を召喚、こっちもバーストセットだ。アタックステップ、俺でアタック、バトル時効果【毒刃:2】発揮、カグツチドラグーンの下にデッキの上からカードを裏向きで二枚入れて貰おうか。」

 

「ライフで受ける」

 

イッセー ライフ5→4

 

「バースト発動!【武威惶炎刃】、リビングガーゴイルを破壊です。」

 

「ちっ、俺はこれでターンエンドだ。」

 

「赤龍帝のターン、【砲竜バル・ガンナー】を召喚、そしてカグツチドラグーンにブレイヴ!カグツチをレベル2にアップ、そしてアタック!バル・ガンナーのブレイヴ時効果、1枚ドローしてアザゼルさんを破壊!そしてカグツチの効果でもう1枚ドロー!」

 

「なら破壊されちまう前に一仕事だ。アタック宣言によりバースト発動、【堕天騎士オルクス】の効果、俺の毒刃をもう一度発動、カグツチの下にもう二枚追加、そしてこいつをレベル2で召喚する。ブロック、そして【毒刃:1】オードランに1枚下に入れるぜ?そしてオルクスはジュデッカの効果で疲労状態で場に残る。」

 

堕天騎士オルクス レベル2BP7000vsカグツチドラグーンレベル2 +バル・ガンナー BP5000+2000

 

「俺はバル・ガンナーを残して……ターンエンドです」

 

「堕天使総督のターン、【堕天騎士タムズ】を召喚、効果でドロー、【串刺しの森】を配置、バーストセット、タムズでアタック、【毒刃:1】発動、オードランに1枚追加、さらに串刺しの森の効果で1枚ドローだ。」

 

「ライフで受ける」

 

イッセー ライフ4→3

 

「俺はこれでターンエンド」

 

ヤバいどんどんデッキが削られていく、早くなんとかしないと

 

「赤龍帝のターン、【英雄王の神剣】を配置、俺も俺の分身【太陽神竜ライジングアポロドラゴン】をレベル2で召喚!そしてバル・ガンナーをブレイヴ!バーストセットからアタックステップ、アポロでアタック!効果で1枚ドロー、そしてタムズを破壊!」

 

「ライフで受けるぜ」

 

アザゼル ライフ4→2

 

「バースト発動、【堕天姫エルシャ】をレベル2で召喚して効果発動、手札から毒刃を持つスピリット【闇騎神ネメシス】をレベル2で召喚だ」ニヤニヤ

 

いやすんげぇの出てきたぁ!!!?完全に向こうのペースだぁ!?

 

「た、ターンエンドです……」

 

「堕天使総督のターン、【護星鎧エクス・レウス】を召喚、そして毒刃をもつネメシスにブレイヴ!ネメシスはレベル3にアップするぜ。おまけに【堕天騎士アリエル】を召喚。」

 

「アタックステップ、アリエルでアタック、アリエルの【毒刃:1】発動、オードランに1枚追加だ。」

 

「ライフで受けます」

 

イッセー ライフ3→2

 

「続けてネメシスでアタック、ネメシスの【毒刃:2】発動、さらにブレイヴしているエクス・レウスの効果、ブレイヴしているスピリットの毒刃の枚数を1追加する、合計3枚をライジングアポロドラゴンの下に入れるぜ。」ニヤ

 

ネメシスはダブルシンボル、アタックを通すわけにいかねぇ……

 

「オードランでブロック!これで…」

 

「ネメシスの効果発動、ブロックされた時、相手フィールド上のスピリット全ての下にあるカードをあわせて3枚につき、相手のライフのコア1つをリザーブに送る。お前さんのスピリットの下のカードは合計6枚、よってライフ2個をリザーブに送るぜ。」

 

「……………へ?」

 

イッセー ライフ2→0

 

「はっはっはっはっ!俺の勝ちだな♪」

 

ま…負けた……バトスピ歴6年の俺がこんなブー太郎総督に……《ワナワナワナ》

 

「………なんか今失礼なこと考えただろ、まあいいや、楽しかったしな。ほれ、報酬」

 

アザゼルさんは俺に拳ほどの大きさの宝石をまた投げ渡す

 

「んじゃまた暇な時呼ぶぜ~あっはっはっはっ♪」

 

「……………失礼しました」

 

(絶対……絶対にリベンジしてやらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)

 

ブー太郎総督に復讐を心に誓い、俺はアザゼルさんのもとをあとにした。

 




感想など楽しみに待っています。次回もお楽しみに


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魔王訪問と爆弾発言

「冗談じゃないわ」

 

真夜中のオカルト研究部、紅の髪の美少女、我が恋人のリアス・グレモリーは眉を吊り上げ怒りを露にしている。なんでもアザゼルのアホが暇潰しのためにイッセーを呼び出してバトスピで負かされたらしい。

 

「確かに悪魔、堕天使、天使の三すくみのトップ会談が執り行われると言ってもいきなり堕天使の総督が私の縄張りに侵入して営業妨害だなんて」

 

「だから言ったんだよあのアホ総督……」

 

うん、本当に何やってるんだろうねあのボンクラ総督は……

 

「しかも私の大切な眷属であるイッセーにちょっかいをかけるなんて……万死に値するわ!アザゼルは神器に強い興味を持つと聞くわ、きっとイッセーが『赤龍帝の籠手』の持ち主だったから接触してきたのね……」

 

「いや、それは多分ないと思いますよ、とっくの昔に研究させてるんで」

 

『『『ええっ!!!?』』』

 

イッセーの発言に幼なじみ組(イリナ除く)以外がすっとんきょうな声を上げる

 

「ど、どういうことよイッセー!?」

「そうよイッセー君どういうこと!!!?アザゼル様に何かされたの!!!?」

 

「研究ってどんなことされたの!!!?改造!?改造手術的なことなと!?イッセー君は実は改造人間だったの!!!?」

リアスの言葉を皮切りにイッセーに詰め寄る夕麻とイリナ……てかイリナ、お前なに興奮してるんだよ、本当そういうの好きな、お前

 

「落ち着けお前ら、俺たちがアザゼルと接触したのは今から7年前、イッセーとヴァーリが神器を亜種化させてしばらくしてからだ。バラキエルさんを経由して俺たちを知りスカウトに来た。まあ、応じたのはヴァーリだけだったけどな。」

 

「あれ、そう言えばヴァーリ様はどこっすか?」

俺の説明にミッテルトが割って入る

 

「ヴァーリはさっきアザゼルのとこに行った。今ごろ説教中だろ。話を戻すが、グリゴリと友好関係を築いた俺たちは研究に協力する名目で神器の調節並びに修練のために時々グリゴリのラボに顔を出してたのさ。ゆえに、グリゴリの幹部連中や研究部とそれなりの交遊はある。コカビエルの野郎は知らなかったが……まぁそんなわけだから、多分本当に暇潰しだったんだろ」

 

「で、でも私の管理する土地で……」

 

「うん、この際だから言うけどさ、人間界は人間の世界であるから人間界なのであって、それを悪魔や天使が勝手にずかずか上がり込んで領地だなんだとほざいてるだけだから」

 

ガーン!!「わ…わかっていたわよそんなこと……だけどいいじゃない誇っても……私にはこれが名誉だったのよぉ……」

床に投げ座りになりいじけるリアス、不謹慎にも可愛いと思ってしまった

「ふ~ん気づいてたのか、よく気づいたってか認めたな」

 

「ふっ、あなたと一緒にいれば嫌でも思い知らされるわよ、あなたの前じゃプライドもへったくれもないもの……」

 

『『『『『うんうん』』』』』

 

「お前ら………」

 

その場にいる全員が力強く頷く、どゆこと?

 

「ハハハハハ、なんとも痛いところをつかれたね」

 

玄関から聞こえた聞き覚えのある声にその場の全員が振り向く。そこにいたのは銀髪のメイドを従えた紅の髪の青年、リアスの兄君にして魔王のサーゼクス・ルシファーさんとその『女王』のグレイフィア・ルキフグスだった。

 

「おっ、お兄様!?」

 

古参のグレモリー眷属やイザベラたち元フェニックス眷属の悪魔たちはすぐさま跪きイッセーと黒歌、朱乃ちゃんは少し迷った後ゆっくりと跪く。俺配下の堕天使たちと悪魔祓いは俺の後ろに控え気まずそうに整列している。

 

「コカビエルのようなことはしないよアザゼルは。今回のような悪戯はするだろうけどね。それにしても使総督殿は予定よりも早い来日だね。それとくつろいでくれたまえ、今回はプライベートで来ている。君たちも楽にするといい。」

 

サーゼクスさんはそう言ってこちらに笑いかける。俺は夕麻たちに無言で頷き、夕麻たちは緊張を解く。

 

「やあ、我が妹よ。

ふむ、あの魔方陣だらけの殺風景だった部屋がずいぶん見栄えがよくなったものだ。ナイスだよ竜也君。」

 

「ええ、誠心誠意リフォームさせて頂きました。」

 

現在この部屋は魔方陣は床だけに止め、オカルト研究部と言うことで本棚を増やしオカルト資料とそれをフェイクに冥界や悪魔、ひいては三大勢力や他神話についての資料や魔導書が並べられ、何か計測器っぽいもの(アザゼルのところから掻っ払って来た、何かは不明)や望遠鏡にプラレタリウムなんてものもあり、さらにリモコンのスイッチで液晶テレビやルームランナーやミラーボールも出てくる。

 

「お兄様、ど、どうしてここに……」

リアスが怪訝そうに尋ねるとサーゼクスさんは懐から1枚のプリントを取り出す。

「何を言ってるんだい?授業参観が近いんだろう?私も参加しようと思ってね、是非とも我が妹が勉学に励む姿を身近で見たいものだ。」

授業参観か……家の親も奮起してたな、娘息子たちの成長した姿を納めたいとかで……ヴァーリと朱乃ちゃんには内緒だがアザゼルとバラキエルさんも来るつもりらしい。

「ぐ、グレイフィアね、お兄様に伝えたのは……」

 

リアスはどこか困った様子でグレイフィアさんに問いグレイフィアさんは頷く。

 

「はい、学園からの報告はグレモリー眷属のスケジュール管理を任されている私のもとに届きます。無論サーゼクス様の『女王』でもあるので主への報告もいたしました。」

 

リアスはガクリと項垂れため息を吐く

 

「お兄様……お兄様は魔王なのですよ?いくら身内と言えど一悪魔を特別視なさるのは……」

 

「いやいや、これは仕事でもあるのだよ、リアス。 実は三すくみの会談をこの学園で執り行おうと思ってね。会場の下見も兼ねているのさ」

 

『『『『!!!!!?』』』』

 

サーゼクスさんの言葉に俺以外の全員が驚く

 

「こっ此処で!?本当に!?」

 

「ああ、この学園は何かしらの縁があるようだ。我が妹のリアス、伝説の赤龍帝に白龍皇、聖魔剣使い、聖剣デュランダル使い、猫しょうの姉妹、バラキエルの血族である混沌の姫巫女、『セラフォルー・レヴィアタン』の妹、更に紅の双雷とその息子、『魔源の創者』こと竜也君が所属し、そしてコカビエルが襲来してきた。」

サーゼクスさんは意味深な目でこちらを見、俺は苦笑する

 

「これは恐らく偶然では片付けられない現象だ。様々な力が入り混ざり、うねりとなっているのだろう。そのうねりを加速度的に進めているのはーーー竜也君たちだと思うのだが」

 

「はははは………」

 

目を細め締めるサーゼクスさんに思わず乾いた笑いが出てしまう

 

「ーーーそこでだ、竜也君、当日の会談に君たちにも参加してもらいたいのだが……」

 

「それについてはご心配なく、アザゼルのやつからも同じことを言われましてね、もとよりそのつもりですよ。」

 

「ありがとう。さて、これ以上此処で難しい話をしても仕方がない。

うーむ、せっかく人間界に来たと言ってももう夜中だ。宿泊施設は開いているだろうか……」

 

「ああ、なら地下秘密基地のベッドルームを使ってください。案内しますよ?」

 

「おお!それはありがたい、実は私も此処の基地には大変興味があるのだよ。」

 

「ならば……ポチッと」

 

俺はリモコンのスイッチを押し床が開き隠し階段が現れる。

 

「ではこちらに」

 

「うむ 」

 

俺はサーゼクスさんとグレイフィアさんを連れてワープパネルを通ってベッドルームに移動する。

 

「おお!これがワープパネルか、魔方陣による移動とはまた違った感じの不思議な感覚だ。」

 

「では、これがワープパネルの移動先の見取り図です。あと、我が家に通じるパネルもあるので、良ければ夕食は家でどうぞ、腕によりをかけて作りますよ。」

 

「本当かい?君の料理の腕はリアスから聞いているよ、これは楽しみだ。」

 

「ああ、それから赤印のワープパネルは使わないでください。登録している人以外が使うと警報装置と迎撃システムが作動して地下迷宮に強制転送させられます。」

 

「は、ははは、わ、わかった、肝に命じるよ」

 

「では、俺はこれで……」

 

俺はワープパネルに乗り部室に移動した。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「しかしアニキ、サーゼクス様が会談をこの学園でするって言った時全く動じてなかったけど……もう知ってたんだな」

 

「うん、てかサーゼクスさんに今日来るって伝えられてたから」

 

『『『『『ええっ!!!?』』』』』

 

驚愕の声を上げる一同

 

「ちょっ?!本当なのタツヤ!!!?」

 

リアスが俺に詰め寄る

 

「ああ、だから俺の配下全員を集めたんだろうが。眠いのに……」

 

「なら言ってくれてもよかったじゃない!」

 

俺の肩をつかみブンブンと前後に揺らすってか振るリアス……最近アグレッシブになってきたなこの子……

 

「口止めされてたんだよ、サプライズで驚かせたいってな」

 

「お兄様っ………」ワナワナワナワナ

 

ワナワナと肩を震わすリアス、若干髪が波打ってる気が………

 

「………てかどうやって連絡取ったんだよアニキ?」

 

「ああ、LINEで」

『『『『『LINE!!!?』』』』』

 

「あ、そうだ、お前らに言っておきたいことがある」

 

「……………何かすごく嫌な予感するけど、何かしら?」

 

「俺はこの会談で色々やらかす」

 

『『『『『『だと思ったよ!!!!』』』』』

 

全員がシンクロした、どゆこと?




感想等よろしくお願いします。


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贈り物と悪巧み

 

あれからしばらくして、サーゼクスさんたちが我が家に現れ俺が料理を振る舞い、父さんと母さんが息子娘自慢を始めてそれに釣られたサーゼクスさんが妹息子自慢を始めて大人たちで大いに盛り上がり、ついには父さんが秘蔵の酒を持ち出して酒盛りを始めてしまい、俺たちはそそくさと自分の部屋に退散して行った。現在俺の部屋にヴァーリが来て二人でバトスピをしている。

 

竜也 ライフ2

 

フィールド

次代機獣ブリザ・ライガLv4 一番槍のシベルザLv2(疲労) カキューソLv1×2

 

ネクサス

蟲招く妖花の塔 英雄皇の神剣

 

 

 

ヴァーリ ライフ2

 

フィールド

ソードールLv1 ダークガトファントLv1(疲労) 月光神龍ルナティックストライクヴルム+デス・ヘイズLv2(疲労)ダークバイソンLv1

 

ネクサス

蟲招く妖花の塔 光の聖剣Lv2

 

「やれやれ、父さんたちにも困ったもんだ、【次代機獣ブリザ・ライガ】でアタック、アルティメットトリガー、ロックオン。」

 

「全く……てかあれって本当に魔王か?もう一人とレヴィアタンといいアザゼルといい、三大勢力のトップはみんなあんな感じなのか?……コスト3【エゾノアウル】」

「ヒット、このアタックはブロックできない……リアスが授業参観を渋ってたのがわかったよ。この上ご両親も来るって言ってたからな、労いの言葉でもかけてやるとするよ。」

 

ヴァーリ ライフ2→1

 

「ライフ減少でバースト発動、【爆氷の覇王ロードドラゴン・グレイザー】をLv3で召喚。不足コストは場の【ルナティックストライクヴルム】と【ソードール】から確保。ソードールは消滅。」

 

「ブリザ・ライガは効果で回復、もう一度アタック、アルティメットトリガー、ロックオン。」

 

「………コスト7【氷の覇王ミブロック・バラガン】」

 

ヴァーリ ライフ1→0

 

「だあぁぁ負けたーー!」

「ふふん!まだまだだな弟よ」

 

「兄さん、いくら何でもブリザ・ライガ二枚刺しは無いぜ」

「よく言うよ、【バーストブレイク】で潰しにきた癖に」

「ならそっちだってシベルザで俺のブレイヴ封じてきたじゃないか。【レオブレイヴ】が手札で腐っちまったよ。

なあ兄さん、俺にもブリザ・ライガくれよ。二枚もあるんだからさぁ」

 

「ダメだ」

 

「お願い!せめて交換!もしくは売って!」

 

「だ~め、せいぜい自分で当てな」

 

するとドアをノックする音が聞こえる。俺たちはカードを片付け俺がドアを開ける。

 

「やあ、夜分にすまないね」

そこにはサーゼクスさんがいた。酔っているのか顔が赤い。部屋に入ったサーゼクスさんはカーペットの上に腰を下ろした。

 

「酒盛りはもういいんですか?」

 

「ああ、久しぶりに楽しく飲めたよ。グレイフィアは先にベッドルームに向かった。それに君たちのお父上とは連絡先を交換してまた今度一緒に飲みに行くことになったよ。いやぁいい飲み友達を得たよ♪」

 

父さん、魔王と飲み友って……

 

「……それで、魔王様が何かご用なんですか?」

 

ヴァーリが怪訝に尋ねる。ヴァーリは悪魔の上層部、ひいてはルシファーにいい印象が無いからな。

 

「おっとそうだった、竜也君、これを」

 

そう言ってサーゼクスさんが俺に箱を手渡す。箱を受け取り中を見てみると、中にはチェスの駒が一式入っていた。

「…………これって」

 

「『悪魔の駒(イービルピース)』だと!?兄さんに悪魔になれって言うのか!!!?」

 

「落ち着けヴァーリ」

 

今にもサーゼクスさんに掴み掛かろうとするヴァーリを抑える

 

「だが兄さん!!」

 

「落ち着け!」

 

ビクッ「す…すまない兄さん……だけど俺は………」

 

「まぁ待て……サーゼクスさん、これを渡すのはただの勧誘という訳ではないのでしょう?」

 

「ああ、さっきも言ったが、この町には大きなうねりが生まれている。その中心にいるのは間違いなく君とその仲間たちだ。この会談が決した時、君は間違いなくどこかの勢力に付くことになる。いや、つかねばならないだろう。……それに、君は将来はリアスと結婚も考えているのだろう?君なら上級悪魔として申し分ない。」

 

そこまで言うと、サーゼクスさんはすくっと立ち上がる。

 

「これはあくまで提案だ、無理強いはしない。だけどよく考えておいてくれ」

 

そう言い残しサーゼクスさんは部屋を出て行った。

 

「………兄さん、俺は…俺は兄さんには悪魔になって欲しくない。兄さんには人間として生涯を全うして欲しい。例え俺が残されても……」

 

「…………なるほど、勢力か……」

 

「……………兄さん?(こ、この感じはまさか……)」

 

「クフフフフ、良いこと思いついたぜぇ♪」ニタァ♪

 

(うわぁ~~~~、やっぱりまたよからぬこと思いついた~~~~)

 

「…………今回は何思いついたの?」

 

「あのね………ゴニョゴニョゴニョゴニョ」

 

俺の耳打ちを聞いたとたんにヴァーリは目を限界まで見開き俺の顔を見直す。

 

「………………………………マジで?」

 

「マジで」

 

ヴァーリは一度天をあおぎ頭を抱えてため息を吐く。

 

「……………いつものことながら今回はとびきりぶっ飛んでるな………良いぜわかった、俺は兄さんについて行くよ、何処までもな」

 

「ありがとうヴァーリ」

 

俺とヴァーリはがっちりと腕を組む。さて、これから忙しくなってくる、他の仲間たちにも連絡しないとな。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

翌日、授業参観当日、

 

「なぁなぁ、竜也にヴァーリ」

 

「松田に元浜か、どした?」

 

「お前らん家の親は来るのかなと思って」

 

「ああ、新しいカメラとビデオテープまで買って狂喜乱舞していたよ。」

 

「黒姉さんのところにも行くって言ってたな」

 

実はヴァーリにはもう一人来る予定だがまだ秘密だ

 

「ヤッホー竜也君!ヴァーリ君!」

 

「アニキ、ヴァーリおはようさん」

 

「おはようございます竜也様、ヴァーリ様」

 

「イッセー、イリナ、夕麻、おはよう」

 

「おはよう、お前らん家の親は来るのか?」

 

ちなみにイリナは現在イッセーの家にホームステイしている。

 

「ああ、うん、まあ………主にイリナと夕麻ちゃんを見に」

 

「心配しないでイッセー君、イッセー君のこともちゃんと撮ってもらうようにおじ様とおば様にお願いしておいたから(そしてその映像を私が……うふふふふふふふふふふふ)」

 

「ゆ、夕麻ちゃん?」

 

「もうなにトリップしてるのよ(その映像私にもよこしなさいよ)」

 

「ご、ごめんイッセー君、イリナ(わかってるわよ、抜け駆けなんてしないわ)」

 

……なにやら各々の思惑飛び交う授業参観になりそうだな

 





感想等楽しみにしてます。次回もお楽しみに


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公開授業と芸術品

 

時はたち授業参観の時間、俺たちのクラスは英語の授業だった………だったはずなんだか、なぜか俺の目の前には紙粘土が

「いいですかー、今渡した紙粘土で好きなものを作ってください。動物でもいい、人でもいい、家でもいい、自分が今脳に思い描いた表現を形作ってください。そういう英会話もある。」

 

「「「いや、ねーよ!?あってたまるか!」」」

俺とイッセーとヴァーリのツッコミが見事にシンクロした。

 

「Let's try!」グッ

 

「いやLet's tryじゃねぇよ!?無駄に発音いいとこも余計に腹立つわ!!」

 

今のツッコミはイッセーである。そんなこんなでぐだぐだではあるが英語という名の工作の時間が始まった。

 

「先生、前にある余った紙粘土もらっていいですか」

 

「いいですよーじゃんじゃん使ってください。」

 

「ぶっちゃけこの紙粘土消化するためにこの授業やったでしょう?」

 

「Let's try☆」

 

「誤魔化せるとでも思ってるのか?」

 

とりあえず、段ボールの中身まるごと持って行った。

 

「……そんなに紙粘土使って何作る気よ」

 

イリナが困惑して尋ねる

 

「なに、今にわかるよ」

 

そうして俺は作業に取り掛かる。作るのはズバリ俺の『家族』たち。まずは俺、手鏡を見て形作る。俺の周りにリアス、朱乃ちゃん、アーシア、抱きつくイルとネル、肩車したオーフィス、後ろに控えるドーナシーク、イザベラ、ゼノヴィア、カラワーナ、俺の左にヴァーリ、右にイッセー、イッセーを挟んでイリナと夕麻ついでにスー、白音に抱きつく黒歌、はにかみ手をつなぐ裕斗とカーラマイン、後ろに父さん、母さん、バラキエルさん、朱璃さん、さらにティア、ベル(ケルベロスの名前、あの後調べたらメスだった)、そしてダハーカとダハーカの尾で宙に撥ね飛ばされるフリードとアザゼル(針金で空中に固定)。我ながら力作だ。

 

「アニキ、俺も粘土もらって…ってうぉあ!!!?なんだこりゃあ!!!?」

 

「兄さんは昔から手先が器用だったが……あの短時間でここまでのクオリティでこの数を………あとアザゼルざまぁw」

 

「はう!わたしが竜也さんの隣に……ぷはぁ!」

「イッセー君の隣なんて、わかってるじゃない竜也君♪」

 

「ありがとうございます、竜也様♪」

 

「陛下…私は感激であります!」

 

「俺っちの扱いヒドくねぇ!?しかも無駄にダイナミック!!」

「んで、お前らは何作ったんだ?」

 

「俺はこれ」

イッセーが見せたのは俺に引けを取らないほど精巧な作りの夕麻とイリナ、そして顔だけのドラゴン。おそらくこいつがドライグなんだろう

 

「うわぁ!イッセー君ありがとう!大好き♡」

 

「もう!イッセー君たら……大好き♡」

 

「いやぁ二人のついでにドライグ作ろうとしたら足りなくなって」

 

『相棒、俺はついでか?ついでなのか?』

 

「俺はこれだ」

 

ヴァーリが出したのはこれまたハイクオリティーな一体のドラゴン。おそらくアルビオンだろう。イッセーと違い全身が精巧に作られている。

 

『ふふん、どうだ見たかドライグ。俺はお前と違って相棒と深い絆を』

 

「いや粘土残すのもったいないな~と思って精巧に作れるデカイやつがアルビオンぐらいしか思いつかなくて」

 

『夢を見させてくれよッ!!』

「私はこれであります!」

 

ゼノヴィアが見せたのは粘土で作られたアッガイ、これまた無駄に精巧……

 

「………ぶれないなぁお前」

 

「俺っちはこれ」

 

フリードが出したのはなんかピカソの絵のような一般人には理解し難い物体

 

「芸術は爆発だ!」

 

「なんとも言えねぇ……」

 

「あの……わたしはこれです……」

 

アーシアが取り出したのは人の形の粘土細工、体格からして男だとわかる。

 

「………ひょっとして、俺か?」

 

「はい、竜也さんの作品とは比べるのもおこがましいですけど……」

 

アーシアはそう言ってうつむいてしまう。俺は俺(粘土)を握る両手を優しく両手で包む。

 

「そんなことない、嬉しいよアーシア。ありがとう」

 

「そ、そそそそそそそんな!?竜也さん……ぷっはぁ!」ブバッ

 

アーシアの噴いた鼻血が俺(粘土)に盛大にぶっかかった

 

「ぎゃあああああああああ俺(粘土)がぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

「ふえぇぇぇぇぇぇぇ竜也さん(粘土)が血まみれにぃ!!!?」

 

「怖ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

「ほんわかした空気が一気にホラーに!?」

 

「うわぁお、呪いの人形みてぇ」

 

「陛下、私が祓いましょうか?」

 

このあと、俺たちの作品を巡るオークションがいつの間にか行われたが、俺たちは全力で死守した。(フリードは売ってた。父兄のかたに38000円で落札された。謎だ)

 

 



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魔王少女と撮影会

今回はちょっと長めです


授業参観も終わって現在は昼休み

 

「ハハハハハ!なかなかの力作だったな竜也!流石は我が息子!」

 

「お母さんとっても嬉しいわ竜也ちゃん♪」

 

「あ、父さん、母さん」

 

「ようヴァーリ、ちゃんと学生やってるみたいだな?」

 

「ぶっ!?とう…アザゼル!!!?」

 

アザゼルの訪問に飲んでいたカフェオレを吹き出すヴァーリ

 

「お!今なんて言いかけた?言うてみ?ほら言うてみ?」

 

「なっ何でもねぇよ!?てか何であんたここにいるの!?」

 

「何でって授業参観に決まってるだろ?ちなみにバラキエルのやつもいるぜ?」

 

するとヴァーリが何か察したようにこちらを睨む

 

「…………兄さんか?教えたの」

 

「うん正解☆」グッ

 

笑顔でサムズアップしてやった

 

「いや何やってくれてんの!?…はっ!まさか授業中感じた視線は!?」

 

「おうとも俺だ、いやぁ気配消して見てたが流石は俺が息子同然に育ててやっただけはあるぜ。ハッハッハッハッハッ♪」

 

「ぐううううううう!!兄さん!!!余計なことを !」

 

「クハハハハハハハ!よく言うぜ!嬉しい癖に」

「ッ!!!!?////////」カァァァァ

 

「あらあらこの子ったら顔真っ赤にしちゃって」

 

「おいアザゼル、言っておくがヴァーリの父親は俺だからな?」

 

「ハン!言ってろ、一緒に過ごした時間は俺の方が長いからな」

「父親らしいことは俺の方がしてやれてる。お前は毎日研究三昧だったのだろう?」

 

「うぐっ!」

 

クフフフフフ……ここらで助け船でも出してやるか

 

「ヴァーリ、確かグリゴリに行ってしばらくした時だったかな?『アザゼルにもよくしてもらってるし、まるで二人目の父さん見たいで……これって浮気かなぁ?』だったか?」

「!!!!!!?」

 

俺のカミングアウトにヴァーリはさらに顔を真っ赤にする

「ッ!!!?……ハハハ!嬉しいこと言ってくれるじゃねぇかヴァーリ!」ガシッ

 

「うおっ!?父さ…じゃなくてアザゼル!!!?やめっやめろって!!!」

 

アザゼルは一瞬驚いたと思ったらヴァーリを抱き抱え、笑顔でガシガシとヴァーリの頭をかきむしる。一瞬瞳から落ちた何かは見なかったことにしておいてやるよ。

 

「なるほど、ならヴァーリに免じてお前が『お父さん』と呼ばれることを認めてやろう。だが!孫を先に抱くのは俺だ!」

 

「バカ言え!俺が先だ!」

「ッッッッッ!!!?ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

兄さぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

「ハッハッハッ、去らばっ!」

 

俺はその場を後にした

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「やぁイリナ、久しぶりだね」

 

「!!?お父さん…なんで……」

 

ヴァーリたちが騒いでいる時、一足遅れてヴァーリたちのもとにイリナとイッセーたちの前に現れたのは、イリナの父だった。

 

「私も竜也君に呼ばれてね、ちなみにお母さんも来ているよ?今イッセー君や竜也君のお母さんたちといっしょだ」

「だ…だけど私は追放……」

 

「イリナ」

 

するとイリナの父はイリナを抱き締める

 

「イリナ、君が追放された時言えなかったが今言わせてくれ。例えおまえがどんな立場になったとしても、おまえは私たちの大切な娘だよ。」

 

「っ!!!?……お父……さん……」

 

「紫藤さん……」

 

「イッセー君、話は竜也君から聞いたよ。…イリナを幸せにしてくれると約束して欲しい」

 

「ッ!!!?…はい!!!俺、絶対にイリナを幸せにして見せます!!!」

 

「うん、その言葉、信じさせてもらうよ。……さて、それじゃあ私も同行させてもらえるかな?」

 

「はい!」

 

「こっち!こっちよお父さん!」

 

「ははは、わかったわかった」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ところ変わって中庭、ミックスジュースで一服しようと思ったのだが、なぜか魔法少女がいた。

 

「あれ?セラさんじゃん」

 

「あっ!たっくんだー☆」

 

俺をたっくんと呼ぶこの魔法少女、もとい魔王少女は、四大魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタンである。昔、黒歌のはぐれ指定解除の時お会いしてえらく気に入られてしまったのだ。

「わーい!たっくーん☆」

 

セラさんはいきなり俺に抱きついて来た。

 

「お久しぶりですセラさん、今回はどうしてここに?」

 

「えっとね☆ソーナちゃんの授業参観と、ついでに会談会場の下見かな?」

 

「ああ、そう言えばソーナ嬢はセラさんの妹さんでしたね。」

 

てかセラさん、会談の方はついでですか……その時俺はあることを思いついた。

 

「……セラさん、実は俺セラさんにお願いがあるんですよ。」

 

「え!ナニナニ!?たっくんのお願いならレヴィアたん何でも聞いちゃうよ☆」

 

「本当ですか!?良かったぁ、お礼にセラさんのことこれからは『セラたん』って呼んじゃいます♪」

 

「え!?本当!?やったぁ!じゃあじゃあ、ついでに私とは普通に話して!そしたらもっとがんばっちゃう☆」

 

「わかったよセラたん、だから俺のお願い聞いてくれる?」

 

恐れ多い気がするがこの人だから大丈夫だろう

 

「やっふー☆セラたんがんばっちゃうぞーー!!!」

 

「で、お願いなんですけど………」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

その頃ヴァーリたちは

 

「……はぁ、かんべんしてくれよ父さん…」

 

「本当ですわ、お父様ったら何も言わずに来るんですもの。自分の立場を考えて欲しいですわ」

「悪魔の巣窟だもんなここ」

 

「「はぁ……」」

 

「おーい、ヴァーリって何で凹んでるの?」

 

「察してくれ、んで、何だイッセー?」

 

「ああ、何でも体育館で魔法少女が撮影会してるって元浜たちが……」

 

それを聞いた瞬間、その場にいた幼なじみ組と悪魔が固まった。

 

「…………まさか」

 

「他に誰がいると?」

 

『『『…………はぁぁ』』』

 

『?』

 

よくわかっていないアーシアたち元教会組と堕天使たちだった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ところ変わって、体育館は熱気に包まれていた

 

「…………なんだこの熱気」

 

「おっ、おいヴァーリあれ!!」

 

「うん?」

 

そこでヴァーリが見たのは

 

『くっ、まさかここまでの力なんて!?』

 

『クハハハハハハハ!!!残念だったなレヴィアたん!きさまではこの魔源覇王には勝てない!』

 

竜也とセラフォルーが体育館の舞台で演劇をしていた

『まだよ!まだ諦めたりしないんだから!!』

 

『ふん!きさまごとき我が相手をするまでもない、出でよ!狂乱怪人フリード!MS怪人ゼノヴィア!』

 

『ヒャッハー!俺っちの名前を言ってみろーー!!』

 

『べあー』

 

すると今度は世紀末のような格好をしたフリードとベアッガイのキグルミを着たゼノヴィアが出てきた。

 

「「「「何してんのあいつら!!!?」」」」

 

イッセー、ヴァーリ、リアス、イリナがツッコむ

 

『ヒャッハー!魂までキザんでやるぜーー!!』

 

『べあー』

 

するとフリードは禍々しいオーラを放つ2mはあろうかという巨大な鋏を取りだし、ゼノヴィアの手首から肘にかけて魚のヒレのような刃が現れた。

 

「……おいヴァーリあれって」

 

「ああ、ゼノヴィアのあれはウェポンARM『フィンエッジ』、フリードの鋏は間違いなく妖刀の類いだな。」

 

『ヒャッハー!ちねーー!!』

 

『べあー』

 

言ってる間にフリードとゼノヴィアがセラフォルーに飛び掛かる。

 

「だっ、駄目だゼノヴィア、フリード!その飛びかたとセリフは…死ぬ感じだッ!!!」

 

イッセーが叫ぶがもう遅い

 

『あなたたちに恨みはないけどごめんなさい!『マジカルレヴィアたんフラッシュ』!!!』

 

セラフォルーの放った光線にフリードとゼノヴィアはなすすべなく飲み込まれる。

 

『ひでぶーー!!』

 

『ぜのべあー!』

 

「何こんなとこで魔法ぶっぱなしてるんだーー!!」

 

無情にも、ヴァーリの叫びは歓声に飲み込まれる。

 

『はぁはぁ…次はあなたよ!魔源覇王サンダーゲート!』

 

『クハハハハ!面白い!いいだろう、我自らがこの世から葬ってくれるわ!』

 

『負けられない!世界の平和を願うみんなのためにも!』

 

『死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』

 

『はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

「ストォォォォォォォォォォップ!!!」

 

すると二人の間に匙が止めに入る

 

「なんだよ生徒会!今いいとこだったのに!」

 

「そーだ!そーだ!」

 

「引っ込めタワシー!!!」

 

「やかましい!今日は授業参観であってアクションショーじゃないんだぞ!とっとと解散しろ!ってか誰だぁ!!!今タワシつった奴!!!?出てこいやゴルァ!!!」

 

生徒と父兄たちは渋々解散する

 

「んだよ匙、せっかくセラたんとの最終決戦に向かおうって時に邪魔しやがって」

 

プンプン「そーだよ!今いいとこだったのにぃ!」

 

「「んねー♪」」

 

相手の両手のひらと自分の両手のひらを合わせて左足を上げてポーズをとる竜也とセラフォルー

 

「んねー♪じゃねぇよ!?あと、あんたも学舎でそんな格好しないでくれ!」

 

「えーー、だってこれが私の正装だもん☆」

 

「そうだ!そうだ!人の格好にケチつけんな!そんなだからお前は匙なんだよ」

 

「「んねー♪」」

 

「もういいわ!!!ってかどういう意味だそれ!?悪口なんか!?匙って悪口なんかぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

匙のツッコミが体育館に響き渡る

 

「てか匙、お前立場的にセラたんにその物言いは不味いぞ」

「は?それってどういう……」

 

「何事ですか匙!?先ほど体育館から凄まじい魔力が…」

 

「ソーナちゃん見つけた☆」

セラフォルーがソーナのもとに一瞬で移動する

 

「な?言ったろセラたん。ここで騒いでたらソーナ嬢の方からやってくるって」

 

「本当だね♪たっくんやるぅ~☆」

 

「やあレヴィアタン、君も来てたんだね」

 

するとそこにサーゼクスが現れる

 

「レ…レヴィアタンってまさか……」

 

「いかにも!何を隠そうこのセラたんこそ、4大魔王が一人『セラフォルー・レヴィアタン』なのだ!」ドンドンパフパフー

竜也がどこからともなく取り出した扇子を両手に持ちセラフォルーを扇ぐ

 

「え…えぇぇぇぇええぇえええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?」

 

匙が驚愕のあまり絶叫する。それはそうだ、こんな魔法少女が魔王だとは夢にも思うまい

 

「お久しぶりですセラフォルー様」

 

リアスがセラフォルーに挨拶する

 

「あっリアスちゃんおひさー!元気だった?」

 

「え、ええ、今日は授業参観に?」

 

「そうなの!ソーナちゃんったらひどいんだよ!授業参観のことお姉ちゃんに黙ってて、お姉ちゃんショックで天界に攻め込むところだったんだから」

 

「おいおいセラたん、この時期に天界とドンパチは不味いぜ」

 

「う~ん、たっくんがそう言うなら止めとくよ☆」

 

「てか竜也!お前こそ魔王様になんて口聞いてるんだよ!!!?」

 

「ん?ああ、いいのよ俺は、本人がいいって言ってるし」

 

「うん☆私とたっくんの仲だもん」

 

「「んねー♪」」

 

「……………なぁ、何でこの二人こんなに仲いいわけ?」

 

匙がヴァーリに尋ねる

 

「色々あったんだよ、色々な……」

 

「もう限界ですっ!!!」

 

とうとうソーナが羞恥に耐えられず逃走する

 

「あーん!待ってよソーたん!お姉ちゃんを置いてかなんでーー!!」

「たんをつけて呼ばないでください!!!」

 

「まぁお待ちよセラたん」

 

竜也がセラフォルーを引き留め、ソーナはそのうちに体育館からから逃げ出す

 

「もー!何するのよたっくん!ソーたん行っちゃたじゃない!」プンプン

 

「まぁ待てよレヴィアタン。ああいう年頃の子供ってのは人の手前つい恥ずかしがっちまうが、内心は喜んでるもんなのさ。こういう時はそっとして置いてやんな」

 

するとそこにアザゼルが入ってくる

 

「あれ?なんで悪魔の巣窟に堕天使総督がいるの~?」

 

「悪いが今の俺は堕天使総督ではなく、ただのヴァーリの父親…そう、お父さんなんだ!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!止めてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ドーンと胸をはり高らかに宣言するアザゼルと羞恥に悶えるヴァーリ

 

「ああ、そうだセラフォルー、このあと私たち父兄で妹息子たちの成長を記録した映像の鑑賞会を行うんだが、良ければ君もどうだい?」

「うん行く行くー☆」

 

「「「「「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇてぇぇぇぇぇぇぇぇよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」




ちなみに、竜也が体育館に非殺傷結界を張っていたためゼノヴィアとフリードは無事でした。


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重要報告と女装少年

授業参観後、雷門家にて父兄組は現在進行形で絶賛子供自慢中

 

「どうだ見ろ秀!ヴァーリが初めて俺の作業を手伝ってくれた時の写真だ!」

 

そう言ってアザゼルはスパナを持って一生懸命作業を手伝うヴァーリの写真を見せる。

 

「なんの!ならこっちはヴァーリと竜也の二人三脚の写真だ!」

 

負けじと竜也の父、秀はアルバムのページを見せつける。

 

「ふふん、ならば私のリーアたんの初晴れ舞台の写真を刮目せよ!」

 

「だったら私もー!ソーたんが私とペアルックの服を着てくれた時の写真見せちゃうもんねー☆」

 

そこへシスコン魔王二人が参戦する。

 

「ならば私は幼少期のイリナの七五三の写真を!」

 

「朱乃の初巫女姿には敵うまい!」

 

「だったら僕もイッセーの取って置きの写真を!」

 

さらにそこへ現役悪魔祓いのイリナの父、グリゴリ幹部で朱乃ちゃんの父バラキエル、そこに一般人であるイッセーの父まで加わってアルバムのページをめくり相手に見せつける。

本来なら敵対している三勢力の要人たちが、酒が回っているのもあるのか嬉々として自分の妹、息子、娘を自慢している。そしてそれぞれの隣で酒のお酌をしている奥様方。その光景は正しくカオス。

 

「………地獄だわ」

と、虚ろな目で呟くリアス

 

「ああ、地獄だ……」

とまた虚ろな目で同意するヴァーリ

 

「お父様……」ワナワナワナ

ワナワナと肩を震わす朱乃ちゃん

 

「ううぅ~お父さんってばもう………」

両手のひらで真っ赤にした顔を被うイリナ

 

「………………」

 

「お~い、イッセー生きてるか~?」

 

その中でも最も憔悴が激しく、真っ白になり床に突っ伏すイッセーを揺さぶる竜也。なぜこうなったかと言うと数分前、三勢力会談を控えいよいよ本格的に裏世界に関わることを感じたイッセーは、サーゼクスさんたちを交え、自分の両親に自分のことを包み隠さず洗いざらい話したのだが………

「……こちとら最悪拒絶されるのも覚悟して打ち明けたのに、何が『ああ、そうなんですか!いや~昔からどうも普通とは違う子だとは感じていたんですよ~』だよ……俺の覚悟を返してくれ……」

 

結果はイッセーの両親はあっさり認めてしまい、挙げ句は全員名前で呼び合うほど仲良くなる始末。ぶっちゃけこれ和平会談いらなくね?ってぐらいに……いや、まだ天使側がいないから駄目か……

そして完全な空回りに終わってしまったイッセーは完全に燃え尽きていた。

 

……さて、話すなら今か……

 

「みんな、重要な話しがある、基地に来てくれ。」

 

俺の何時にない真剣な言葉に、みんな羞恥も忘れ困惑した顔で顔を見合わせる。俺たちは秘密基地に移動した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

地下秘密基地の奥深く、登録した者しか入れない秘密部屋に俺たちはいた。

 

「……それで、重要な話って何なのかしら? 」

 

リアスが俺に尋ねる

「前に言ったろ?俺はこの会談で色々やらかすって……具体的に何をやらかすかが決まった。心して聞いてくれ」

 

俺は今回の計画を包み隠さずみんなに話した

 

「………マジですか?」

 

「本気かよアニキ……」

 

俺の言葉に反応は様々、感嘆、呆気、困惑、喜び、驚愕……そして

 

「本気なのね?」

 

哀しみと葛藤

 

「ああ、本気だ」

 

「っ!!!?……」

 

俺の言葉にリアスは悲痛な顔をする。

 

「この選択で各々の人生が大きく左右される。強要はしない。けどよく考えて、後悔のないように決めてくれ。」

 

俺はみんなの顔を見回し、リアスの頬を撫でる。

 

「会談の日、答えを聞かせてくれ。」

 

『『『『『……了解』』』』』

 

「……わかったわ、必ず…必ずその時は答えを聞かせるから……」

 

「ああ、わかった」

 

その日、重い空気のまま解散となった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「『僧侶』?リアスの『僧侶』は黒歌じゃないのか?」

 

「封印されてたのよ、詳しいことは着いてから話すわ。」

 

「朱乃ちゃんは知ってるのか?」

 

「はい、数回お会いしましたわ。」

「お友達になれるでしょうか?」

 

「心配するな、アーシアなら大丈夫だ」

 

俺たちは指定された部屋の前に着く。なんでも先日の授業参観の後、封印していた『僧侶』の解放許可をもらったらしい。なんでも今までその能力が危険視されてリアスでは扱いきれない為、上から封印するように言われていたそうだ。そしてその封印されている部屋、通称「開かずの部屋」なのだか……

 

「……なんかいかにもって感じだよな」

「今までスルーしてたけど……」

 

『kEEP OUT!!』のテープが何重にも貼られ、術式も厳重に敷かれたこの部屋、前から知ってはいたがあえて触れないようにしていた。

「一日中ここに住んでいるのよ。一応深夜には術式が解けて旧校舎内だけなら部屋から出てもいいのだけれど、中にいる子自信がそれを拒否してるの」

 

「それって完全にヒッキーじゃん」

 

「フリード君、そういうのは思っても言わないのがお約束だよ」

 

「扉を開けるわ」

 

朱乃ちゃんとリアスが術式を解除し、扉を開ける

 

「イヤアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!!!!?」

 

とんでもない大絶叫が響き渡った。

「な、なんっすか今の……」

 

「頭割れるかと思った……」

 

「はぁ……入るわよ」

 

リアスはため息をつき朱乃ちゃんと一緒に扉に入る。

 

「ごきげんよう、元気そうで何よりだわ」

 

「な、な、何事なんですかぁぁぁぁ!!!?」

 

「あらあら、封印が解けたのですよ?もうお外に出てもいいんです。さあ、私たちと一緒に出ましょう?」

 

「やですぅぅぅぅぅぅ!!!ここがいいですぅぅぅぅ!!外に出たくないぃぃ!人に会いたくなぃぃぃぃぃ!!!」

 

「………重症だな」

 

「だな、対人恐怖症、引きこもりの典型だな」

 

ヴァーリが冷静に分析する。突っ立っててもしょうがないので、まずは俺とヴァーリ、イッセーが中に入り、残りは扉から覗き見ている。

カーテンが閉めきられた部屋、ぬいぐるみなどのかわいい装飾が多いが、そんな中で明らかに不自然なこれは……棺桶?

そしてリアスと朱乃ちゃんがいるその先には床にへたり込み、赤い瞳を涙で潤ませぶるぶる震える金髪の少…女?いや、駒王学園の女子生徒の制服きてるけどこれって……

 

「ひょー!金髪貧乳美少女!ソウキュー!」

 

「かわいいっ!なでなでしたいっ!」

 

「わ、私のアイデンティティーのピンチっす!?」

 

後ろで身を乗りだし騒ぐミッテルトとイリナとフリード

 

「おーいお前ら、喜んでるとこ悪いが」

 

「……こいつ多分男だぜ?」

 

「だな」

 

『……………はい?』

俺、イッセー、ヴァーリの言葉に古参のリアス眷族以外が全員固まる。ちらっとリアスを見ると無言でうなずいた。

 

「……っは!!!?い、いや、いやいやいやいやいやいや!!どっからどう見ても女の子でしょ!!!?」

 

「もーダンナったら冗談きっついなーもぅ!」

 

「本当よ、女装趣味があるの」

 

あ、何名か崩れ落ちた

 

「んなアホな……難易度高過ぎっしょ……」

 

とフリード

 

「神コノヤロウ……私に一体何の恨みがあると言うんすか……」

 

「落ち着けミッテルト」

 

「そんな……私よりかわいいのに男の子なんて……」

 

「だ、大丈夫だイリナ!お前にはお前の魅力があるだろう!?」

 

「イッセー君♡(ウルウル」

 

「……というよりあなたたちよくわかったわね?」

 

「俺は男性ホルモンの匂いで」

これは俺、

 

「俺はなんとなく気配で」

と、イッセー

「俺は骨格とか身体のつくりからだな」

と、ヴァーリ

 

「……もうなんでもありね、あなたたち三人は……」

「てか、何で誰も見ないのに女装してるんだ君は?」

 

「だ、だ、だ、だって女の子の服の方がかわいいんだもん!」

 

「金髪女装美少年………ジュルリ 」

 

「ハァハァ……ありだな…」

 

後ろの方で息を荒げるイザレラとカラワーナ

 

「ドーナシーク、カーラマイン、裕斗、連行しろ」

 

「「「了解」」」

 

「ちょっ!?離せドーナシーク!!」

 

「カーラマイン!私はヤらねばならない使命が!!」

 

「そんな使命ティッシュでくるんで捨ててしまえ」

 

二人はそのまま連行されて行った。

 

「と、と、と、ところで、後ろの人たちは誰ですか?」

 

「あなたが寝ている間に増えた眷族と協力者たちよ。」

 

「どうもはじめまして、俺の名は雷門 竜也。少し規格外な一応人間だ。よろしくどうぞ」

 

『『『『『竜也(様)(君)/(アニキ)(兄さん)(陛下)(ダンナ)は少しじゃすまないでしょ(だろう)』』』』』

 

全員にツッコまれた、失敬な

 

「リアス部長の『兵士』となった兵藤一誠だ。気軽にイッセーと呼んでくれ。」

 

「リアスの『僧侶』になった黒歌にゃん。同じ『僧侶』としてよろしくにゃん♪」

 

「元グリゴリ所属、現在は竜也様の配下でイッセー君の『正妻』の堕天使、天野夕麻よ。よろしくね?」

 

「なんで正妻を強調したんすか……同じく、ミッテルトっす。他にもドーナシークとカラワーナってやつがいるっす。」

 

「元教会所属の悪魔祓いで現在は竜也陛下の配下、ゼノヴィア・クァルタだ。よろしく頼む。」

 

「同じく、紫藤イリナよ。よろしくね♪」

 

「同じく元教会所属ってとこは合ってるけど、はぐれ悪魔祓いのフリード・セルゼンだぜ☆よろしく35!」

 

「だから4×9=36だっての」

 

「ちなみにこの他に元ライザー・フェニックスの眷族である『戦車』のイザレラと『騎士』のカーラマインと双子の『兵士』イルとネルがいる。」

 

「ヒィィィィィィィィィィィィィ!!!?ヒトがいっぱい増えてるぅぅぅぅ!!!」

 

………これは本当に重症だな、過去に何かトラウマでもあるのか?

 

「お願いだから外に出ましょう?ね?あなたはもう封印されなくてもいいのよ?」

 

「嫌ですぅぅぅぅ!!!僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁぁぁぁ!!!怖い!お外怖いぃ!!!どうせ僕が出ていっても迷惑かけるだけだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「…………(イラッ」

 

あ、ヴァーリがイラついたな。こいつこういう事故否定してばっかのやつ嫌いだからなぁ……かと言う俺も少しイラッと来た。多分イッセーもだろう。

 

「…………おい」ギロッ

 

「ヒィィィィィィィ!!!」

 

少年の絶叫と同時に世界が停止した、悪魔で世界が……

 

「な、なんでみんな動いてるんですかぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

そう、停止したのは世界だけ、俺たちは誰一人として止まっていない。

 

「どうして?んなもん俺たちがお前より強いからに決まってるだろう?」

ヴァーリが少し乱暴にいい放つ

 

「時間停止……神器か?」

 

「ええ、『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』よ」

 

ヴァーリの問い掛けにリアスが答える。ヴァーリはため息をつく

「『停止世界の邪眼』、書いて時のごとく世界の時間を止める神器。かなり強力な力だな」

 

「そ、それは……」

 

「だが精神があまりにも弱過ぎる、これでは暴走させてしまっても無理はない」

 

「おいヴァーリ!」

 

「だが事実だイッセー……本当にムカつく」

 

「うぅ……」

 

少年は涙目になりうつむく

 

「名前と種族は?」

 

「へ?」

「名前と種族は?自己紹介もまともにできないのか?」

 

「ぎ、ギャスパー・ヴラディですっ!!しゅ、種族は吸血鬼と人間のハーフです……」

「そうか……なあ兄さん、イッセー」

 

「俺はアニキの判断に任せるぜ?」

 

「そうか………リアス?」

 

「任せるわ、もともとこうなるとわかった上で来てもらったもの」

 

よし、了承はもらった。俺はヴァーリとイッセーに無言で頷く。

 

「……ギャスパー・ヴラディ」

 

「はっはい!《ダキッ》………へ?」

 

「強制連行」

 

俺はギャスパーを抱き抱えそのまま疾走する。ヴァーリとイッセーがあとに続く。

 

「い、イヤァァァァァァァァァァァァ!!!?」

 

ギャスパーの絶叫があとにひびいた




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凶行と露見

すみませんでした、テスト勉強やらで遅れました。


「……さて、ギャスパーを拉致ったはいいが、」

 

「いや拉致ったってアニキ……」

 

イッセーのセリフをスルーして俺は部屋の隅の段ボールの中で震えるギャスパーを見る。

 

「ギャスパー君、出てきてくださーい」

 

「ひどいやひどいやひどいやひどいやひどいやひどいやひどいやひどいやひどいやひどいやひどいやひどいやひどいやひどいやひど」

 

アーシアが呼び掛けるがギャスパーは段ボールの中で震えながらひどいやを連呼する。……ひどいやでゲシュタルト崩壊しそうになった。

 

「どうするのよタツヤ、完全に怯えちゃってるじゃない」

 

後から追ってきたリアスが俺をジト目で見る。ちなみに他のメンバーも集結している。

 

「………少しばかり荒療治になるが、いいか?」

 

リアスはじっと俺の目を見る

 

「………わかったわ」

 

「ありがとうリアス」

 

俺はギャスパーのもとに歩み寄る

 

「おーいギャスパー」

 

「ヒィ!?ごめんなさいごめんなさい!ぶたないでくださいぃぃぃぃぃ!!!」

 

「いやぶたねぇよ。ギャスパー、そのままでもいいから聞け、……お前はこのままでいいと思っているのか?」

 

ギャスパーは一瞬ビクッとなると恐る恐る段ボールから顔を覗かせる。

 

「ど、どういうことですか?」

 

「いいかギャスパー、さっきお前さんが神器を誤って発動させちまった時みんなが停止しなかったのはみんなが強くなったのもあるが、俺がとっさに結界を張ったからだ。」

 

「ええ!?そうなんですか!!!?」

 

「危機察知能力って言うの?俺たちはそういうのが敏感でな、それに俺の手に掛かりゃあれくらいの結界張るくらい訳ない」

 

「じゃ、じゃあ」

 

「ああ、俺がいれば例えお前が神器を暴走させても防ぐ事ができるだろう」

 

ギャスパーの表情が歓喜に変わる

 

「そ、それなら「だがそれは根本的な解決にはならない」………え?」

 

「確かに俺がいればお前の神器の暴走は防げる。だが俺がいなかったらどうする?

お前のポテンシャルを見せてもらったがこれは相当なものだ。お前の意識に反しお前のポテンシャルはまだまだ伸びるだろう。だがお前の心は弱いまま、これで禁手化なんてなったらそれこそ世界の全部を停めちまう、なんてことにもなり得るかもな?」

 

「そ…そんな………」

 

ギャスパーはさっきとは打って変わり絶望にうちひしがれた顔をする

 

「それを踏まえた上で聞く、……お前はこのままでもいいのか?」

 

俺はギャスパーの顔を覗き込む

「ぼ、僕は……僕は……」

 

ギャスパーはボロボロと涙をこぼしながら答えた

 

「僕はこんな力欲しくなかった!!!だってみんな停まっちゃうんだ!みんな怖がる!嫌がる!僕だって嫌だ!僕がいるとみんな不幸になる!僕なんか生まれて来なければよかったんだ!!!あの時あのまま死んでれば…」

 

「ッ!!!?ギャスパー!今のは聞き捨てならないわよ!!!」

 

リアスは顔を怒りに染めギャスパーに掴みかかるが俺がそれを遮る

 

「タツヤ放して!いくら何でもこればっかりは我慢ならないわ!!!」

 

「落ち着けリアス………ギャスパー、お前本当にそう思ってるのか?自分なんか死んでしまった方がいいって」

 

「グスッだって、だってそうじゃないですか!僕なんかがいるからみんなに迷惑がかかるんだ……」

 

「ふ~んそうか

 

 

 

 

 

 

なら死ね」

 

「え、アグッ!!!?」

 

『『『『『『!!!?』』』』』』

 

俺はギャスパーの首を締め上げる。ギャスパーはバタバタと手足を動かすが宙を掻くだけだ

「おいアニキ!!!何やってるんだ!!!?」

 

「タツヤやり過ぎよ!!!《ガンッ》な!?何これ!?タツヤ!ねえタツヤ!!!」ガンガン

 

イッセーとリアスが止めに掛かるが俺の張った結界に阻まれる。その間も俺はギャスパーの首をさらに強く締め上げる。

 

「あ……かはっ……やめ………はなして…」

 

「何故?これはお前が望んだことだろうが。お前肯定したよな?自分なんか死んでしまった方がいいって」

 

『竜也さん止めて下さい!!!』

 

『退いてろアーシア、強行突破だ!『バーニングサラマンダー』!!!』

ドガァァァァァァン!!!

 

イッセーの放った炎の竜が結界にぶつかるが結界はびくともしない

 

『なっ!!!?なんちゅう硬さだよ!?おいヴァーリ!ボケ~っと突っ立ってないでお前もなんとかしろよ!!!』

 

『断る、これはギャスパーの問題だ』

『何言ってるんだ!?おいアニキ!こんな冗談笑えねぇぞ!!!』

 

「当たり前だ、冗談のつもりはないからな……さて、気分はどうだギャスパー?」

 

俺は叫ぶイッセーの方をちらりと向きすぐにギャスパーの方を向く

 

「う……ぐ………あが………」

 

「手足の感覚がだんだんなくなって行くだろう?死とは消失じゃない、停止だ。

感覚が、思考が、鼓動が、記憶が、やがて自分の全てが停止する。----そして最後は永遠に時を止める。」

 

まあ、俺の『死』は一瞬だったけどな?

 

「あ……ああ…………あああ………」

 

「さて、お前の選択肢は2つだ。

一つ目、このまま自分の『死』を受け入れる。

二つ目、生きるために俺に抵抗して見せる。

----さぁ、どうする?」

 

(行ってギャスパー、きっと生きてまた会いましょう)

 

「う……ああ………うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

するとギャスパーの体が複数の蝙蝠に変わり俺の手をすり抜ける。そして結界にぶつかり再びギャスパーの姿になった。

 

「…………それがお前の答えか?」

 

「僕は……僕は死にたくない!!!生きたい!!!約束したんだ!生きてあの子とまた会うんだぁ!!!」

 

「………ニィ、ようやく思い出したみたいだな?大切な人との約束を」

 

俺はギャスパーに歩み寄る。ギャスパーは未だに怯えるが、俺の目を見据えている。

 

「なぁギャスパー、俺がお前を殺そうとした時、何でみんなが怒ったかわかるか?」

 

「え、ええっと……」

 

「お前がそれだけ本当に大切だからだ、リアスの時も同じだ。例えついさっき顔を合わせたばかりでも、お前はもうみんなの大切な仲間なんだよ。」

 

俺は結界を解き、ギャスパーをみんなの方に押し出す

 

「ギャスパー!!!」

 

するとリアスはギャスパーに駆け出し抱き締める。

 

「り、リアスお姉様……」

 

「ギャスパー、もう二度とあんなことは言わないでちょうだい!あなたは私の大切な眷属なの!仲間なの!家族も同然なのよ!」

 

「確かに俺たちが会ったのはついさっきだ。だけどな、関係ないんだよ!お前は俺と同じ部長の眷属で、俺の大事な仲間で、後輩なんだよ!」

 

「ギャスパー君、わたしギャスパー君とお友達になりたいです。」

 

「ギャー君、ファイトです」

 

「そうだ!泣きたいならお姉ちゃんの胸に飛び込んでこい!!!」

 

「いや!悩める生徒を導くのが教師たる私の役目!武闘家の硬い胸よりもこの私の」

 

「「は~い、お帰りはあちらで~す」」

 

「「ちょっ!?」」

 

イザベラとカラワーナは裕斗とカーラマインに連行されて行った。

 

「い、イッセー先輩、アーシア先輩、白音ちゃん、みなさん………う、ううぅグスッ」

 

ギャスパーはまたボロボロと涙をこぼす。だがこの涙は悲しみや痛みの涙ではなく嬉し涙なんだとわかった。

 

「なんだまた泣くのか?ヴァレリーの言ってた通りとんだ泣き虫だな。」

 

「!!!?ヴァレリーを、ヴァレリーを知ってるんですか!!!?」

 

いきなり俺に飛び付くギャスパー

 

「おう、以前俺が世界を渡る旅をしていた時、ルーマニアで偶然吸血鬼の領地に迷い込んでしまってな、その時カミーラ派だかなんだかしらんが吸血鬼の連中に問答無用で襲い掛かられて、ムカついたんで全員ボコボコにして十字架に逆さ磔にして太陽光の当たるか当たらないかぐらいの場所に頭から埋めてやった。」

 

『『『『『『ひでぇ!!!!?』』』』』』

 

「流石は兄さん、容赦ねぇ………」

 

「悪魔よりもよっぽど悪魔だにゃん……」

 

ドン引きを通り越して戦慄された。俺もあれはやり過ぎたと思うが敵にかける慈悲と容赦はない

 

「んで、なんか俺に賛同するやつらまで現れて、ついでにそいつらの施設を片っ端から破壊してまわってたら幽閉されていたヴァレリーを見つけて助け出したんだ。

今や吸血鬼どもは俺に絶対服従、ヴァレリーは俺という強力なバックネームにより吸血鬼帝国の女帝として君臨している。」

 

「吸血鬼帝国!?吸血鬼の世界はそんなことになってるの!!!?」

「ダンナその気になったら冥界滅ぼせるんじゃね?」

 

「さあ、どうだろうな?」

 

俺はギャスパーに魔方陣の書かれたガードを渡す

 

「吸血鬼帝国行きの魔方陣だ。今度会いに行けばいい。そのためにも、まずは神器をコントロールできるようにならないと、な?」

 

俺はギャスパーにウインクする

 

「~~~ッ!!!?はい!」

 

ギャスパーは涙を拭い、まだ目は赤いがさっぱりとした笑顔で返事する。

 

「よし、そうと決まればさっそく「はいストップ」《ガシッ》…………え?」

 

俺はイッセーに肩を掴まれる。て言うか痛い!肩に指食い込んでる!

 

「いい感じに終わらそうとしてもそれとこれとは話が別」

 

「え?ちょっ、イッセー君?」

 

「裁判長、判決を」

 

イッセーはリアスに問いかけ、俺はリアスに懇願の視線を必死に飛ばす

 

「うふふ、有・罪♪」

 

ドガバキズガボカドカガスズカボコドガバキズガボカボコドガ

 

裁判長の無慈悲な宣告と同時に、俺はヴァーリとギャスパーを除いた全員に袋叩きにされた。

 

「今回ばかりは容認出来ねぇぞアニキぃ!!!」

 

「見損ないました竜也さん!!!」

 

「物事には限度ってわけものがあるわよタツヤぁ!!!」

 

「ガッゴヘェ!?ちょっゲフゥッ!?まダバァ!?待っゴホォ!?た、助けて!助けてヴァーリぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」

 

俺はヴァーリに助けを求めるが、ヴァーリはどこ吹く風である。

 

「自業自得だ、まあたまにはいいくす《バキッ》リボォ!?ちょっ!?何で俺までぇ!!!?」

 

「るせぇぇぇぇぇ!!!止めなかったお前も同罪じゃボケぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「「ギャアァァァァァァァァァァァァ!!!」」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「……………で、反省したか?」

 

「「はい、もう二度としません」」

 

一時間後、俺たちはボコボコにされた状態で正座させられている。ちなみにアーシアは治癒してくれなかった。

 

「何で、俺まで……完全にとばっちりじゃん」

 

「ダマレ、止めなかったお前も同様に悪い」

 

「俺だってあんな凶行に出るとは思わねぇよ。これでも内心めっちゃ動揺してたんだぞ。」

 

再び視線が俺に集まる

 

「だって俺、命を軽んじるやつ嫌いなんだもん」

 

「極端なんだよ兄さんは、いくら自分が一回死んでるからって……」

『『『『『『は?』』』』』』

「ちょっ!!!?」

 

「え?………………あっ」

 

このバカ最後の最後にとんでもない爆弾投下しやがった

 

「ぅおいヴァーリ!?今聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ!!!」

 

「ちょっとタツヤ!?どういうことよ!!!?」

 

「一回死んでるってどういう意味ですか!!!?」

 

「洗いざらい白状するにゃ!!!」

 

俺はみんなにもみくちゃにされる

 

「おいヴァーリ」

 

「ご、ごめんよ兄さん、つい口が滑って………」

 

「お前……はぁ、しょうがねぇ、本当は会談の時に打ち明けるつもりだったが」

 

俺は意を決することにした

 

「みんな、俺が今から言うことは本当のことだ、心して聞いてくれ」

 

みんな静まりかえり俺に注目し耳を傾ける

 

「まず最初に、俺は普通の人間じゃない」

 

『『『『『『うん、知ってる』』』』』』

「いやそういう意味じゃねぇよ!?……俺は、と言うか俺の魂はもともとこの世界のものじゃない。とある神様の手によって、前世の記憶を持った状態でこの世界に転生させてもらったのさ。」

 

『『『『『『!!!!?』』』』』』

 

みんなの顔が驚愕に染まる。当然か、こんな話聞かされたら

 

「世迷い言だと思うか?狂ってると思うか?だけど事実だ。信じられないと思うがな?」

 

「………いや、俺は信じるぜ、アニキはこんな真剣な顔で世迷い言を言うような人じゃねぇ。」

 

イッセーの言葉にみんなは無言で頷く。

 

「ありがとう、信じてくれて。その神曰く、自分の孫たちが喧嘩をしていてそれを叱りつけた際本当に雷を落としてしまい、それが俺に直撃して殺してしまいそのお詫びとして転生させてくれたらしい。」

 

「いやそれ神としてどうなんだよ?」

またもやイッセーの言葉にみんなは頷く。

 

「それは言わないでやってくれイッセー、……俺のこの発電能力も、ARMも、妖術も、わざぼーも、みんなその神様から転生の際授かったものなんだ。ダハーカの神器とグリモアは違うがな。オオクニヌシ、それが俺を転生させた神の名前だ。」

 

「オオクニヌシ……日本神話の神ね?」

 

「ああ、本人もそう名乗っていたよ」

 

「………あの、竜也さんの前世の世界ってどういうところだったんですか?」

 

アーシアが俺に尋ねる。

 

「そうさな、基本的にこの世界と変わらないな。まぁ、今見たく世界の裏側に関わることはなかったし、存在するかもわからない。……だが、とある物語があった。」

 

ラノベとは言わない。雰囲気的に

 

「物語?」

 

「ああ、その物語には悪魔、堕天使、天使の三勢力がありその中の悪魔勢力、ひいては俺を除いた今この場にいるみんなのことが記されていた。」

 

『『『『『『!!!!!!?』』』』』』

 

「『ハイスクールD×D』、それが物語の名前だ。そしてその主人公は……イッセー、お前だよ。」

 

「お、俺ぇ!!!?……ちょっとまて、てことはアニキはこれから先何が起こるか知ってるってことかよ!!!?」

 

「いや、どういう訳かこの物語に関する記憶が年々薄れて行ってな、今ではほとんど思い出せない。それにこの世界も俺というイレギュラーの存在で物語から大きく歪んでしまった。

まぁもともとこの物語にはあんまり興味が湧かなくて内容も詳しくは知らなかったんだけどな?」

 

「いや興味なかったって……それはそれで傷つくな……」

 

うん、ごめんなイッセー興味なくって

 

「竜也君、何で竜也君はこんな重要なことを今まで黙ってたのですか?」

朱乃ちゃんが俺に悲しげな目で尋ねる。

 

「……怖かったんだ。本来いるべきではないイレギュラーである俺が、世界のあるべき姿を歪めてしまった俺が、責められるのが、気味悪がられるのが、拒絶されるのが、怖かったんだ……はは、これじゃギャスパーのこと言えないじゃねぇか………」

 

気づくと、俺は声が、ひいては体が震えているのがわかった。なんだかんだ言って臆病者は俺も同じだったってわけだ。

「………………タツヤ、あの時の答え、今ここで言うわ」

 

リアスはそう言うと、俺の前に歩み寄る

 

「リアス?」

 

「私、リアス・グレモリーは、未来永劫あなたのそばにいて、あなたを支え続けると誓うわ!今も、これから先もずっとよ!」

 

「リアス……お前……」

 

それはつまりグレモリー家、ひいては自身の夢とも決別するということだ。それが彼女にとってどれ程の苦痛か……

 

「……本気なのか?」

 

「ええ、本気よ。確かにつらい決断だったけど、後悔はしないわ。」

 

その言葉には強い意思が感じられた。

 

「わ、わたしも!わたしも竜也さんとともに歩みます!あの時わたしを連れ出して、本当の光に当ててくれた竜也さんの支えになりたいんです!」

 

「アーシア……」

「私は竜也君に母と私の命を救ってもらいました。それは紛れもない事実です。」

 

「私もだぁりんに命を救ってもらった。家族として支えてもらった。だから今度は私がだぁりんを支えてあげる番にゃん。」

 

「我、竜也に家族の暖かさを教えてもらった。たくさん楽しいことをした。我、もう孤独な静寂はいらない。みんなと、竜也と、暖かいいっしょがいい。ずっと竜也といっしょにいたい。」

 

「朱乃ちゃん……黒歌……オーフィス……」

 

「部長のその言葉を待ってたんだ!俺はずっとアニキの弟分でありたい!物語の本来の姿なんて知ったこっちゃねぇ!俺にとっての主人公はアニキなんだ!!!」

 

「イッセー……」

 

「僕もお供するよ」

 

「私も」

 

「うちもっす!」

 

「某も」

 

「お供しやすぜダンナ!」

 

「私も」

「ぼ、僕もお供します!」

 

「「ずっと一緒だよ、お兄ちゃん!」」

 

「私も」

 

「私もだ」

 

『『『『『『俺/私/僕たちはあなたを絶対に拒絶しない』』』』』』

 

「み、みんな……あ、ありがとう……こんな俺だけど、これからも仲間として、家族として俺に着いてきて欲しい…ッ!!!」

 

『『『『『『了解!!!』』』』』』

 

気づけば俺は泣いていた。なんだ、本当にギャスパーのことは言えないな。

 

この日、俺たちは改めて仲間、ひいては家族としての絆を誓った。そして俺の家族の紙粘土に新たにギャスパーが追加された。




思いの外長くなってしまった……
感想等お待ちしております。次回もお楽しみに


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スカウトと修行風景

現在俺は朱乃ちゃんに呼ばれて朱乃ちゃんたちの住居である神社にいる。

 

「いらっしゃい竜也君。」

 

「よう朱乃ちゃん、会議の打ち合わせはいいのか?」

 

「ええ、あちらはグレイフィア様がフォローして下さるでしょうし、ある程度進めば私がいなくても問題ありませんから。それに……」

 

「……なるほどね」

 

視線の先には、白いローブに身を包み整った顔立ちの青年がいた。そして特筆すべきは背中の金の12枚の翼と頭に浮かぶ天使の輪。これはまた大物が来たもんだ。

 

「はじめまして、雷門竜也君。私はミカエル、天使の長をしています。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

俺は朱乃ちゃんの先導で大天使ミカエルさんとともに神社の本堂へと入る。見ると本堂の中央に一本の聖剣が浮いていた。

 

「これはゲオルギウス、聖ジョージと言った方が伝わり安いでしょうか。彼の持っていた龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の聖剣『アスカロン』です。」

 

と、言われても、俺聖人とかあんまり知らないんだが……だけど、それでもこれがかなりのものだとわかる。

 

(大丈夫かダハーカ?)

 

(ああ、どういう訳か問題ない。恐らくお前のおかげだろう。)

 

(そうか、なら……)

 

俺はアスカロンの柄に手を掛ける。少しビリビリするが問題ない。

 

(それはそれでいかがなものか………)

 

「俺のもとに来な、アスカロン。」

 

するとアスカロンから眩い光が放たれ、光が止むとアスカロンは俺の手に収まった。

 

「どうやらアスカロンには認められた様ですね。」

 

「その様ですね。」

 

俺は試しにアスカロンを振るう。初めて使うはずなのに使いやすい。

 

「やはり君はこれを渡すのにふさわしい様ですね。」

 

するとミカエルさんは俺にトランプのジョーカーを渡す。

 

「これは?」

「『御使い(ブレイブ・セント)』、言うなれば『悪魔の駒』の天使版です。まだ試作段階ですが、君なら十分に天使になる資格はあるでしょう。」

 

魔王だけでなく天使長までが直々にスカウトとは、なんともリアクションに困る……俺はとりあえずトランプをポケットにしまった。

 

「先に言わせてもらうが、会談の時は失礼します。俺はあなた方に色々と言いたいことがあるので」

 

「……わかりました。詳しいことは会談の時に。では、私はこれで……」

 

そう言い残しミカエルさんは帰って行った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「………てな訳で、色々あったがアスカロンゲットした。」

 

俺は先ほどのことをみんなに報告した。

 

「に、兄さんそれ!アスカロン見せてくれよ!!!」

 

「お、おう……換装!」

 

なんかヴァーリがえらく食いついて来た。俺はアスカロンを取り出す。

 

パシッ!

 

『『『『『!!!!!?』』』』』

 

するとヴァーリが何を思ったかアスカロンを俺からひったくる。

 

バチィィィィィィィィィィィ!!!

 

「ぐぅ!!!?」

 

「バ!?バカ!ヴァーリ!!!?」

 

『ヴァーリ!何を考えている!?いくらお前がハーフでもその剣は龍殺しも』

 

「っらぁ!!!」

 

バシュゥゥゥゥゥン!!!

 

『『『『『えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?』』』』』

 

『気合いでオーラをかき消したぁぁぁぁぁぁぁ!!!?』

 

「ウソーン!?」

 

「兄さん!!!」

 

「うぇ!?え、なに?」

 

「これ!アスカロン!これちょっと借りてっていい!?」

 

「え?あ、うん」

 

「ありがとう兄さん!!!これで…これでやっとあれが…」

 

「ヴァーリ?」

 

それじゃみんな!俺しばらくラボにこもるから!」

「え!?ちょっ!?ヴァーリ!!!?」

 

それ以来、ヴァーリはラボにこもったまま出てこなくなった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

修練の門、遺跡エリア

 

乾いた風が吹き抜ける遺跡の中、ギャスパーが一人たたずんでいた。

 

「『影爪(シャドウクロー)』」

 

刹那、遺跡の一角からギャスパーに向かって影でできた爪が伸び襲い掛かる

 

バッ「『停縛(ロック)』」

 

ギャスパーはとっさに爪の方を振り向き目を見開く。すると影は空中でビタッと停止した。

 

「そこです!『錐影』!!!」

 

ギャスパーは人の腕ほどもある影でできた錐を影の根元に投げる。

 

「『スクラップファング』!!!」

バツン!!という凶悪な音が鳴り響き、ギャスパーの放った影は周囲の遺跡ごと両断された。

 

「………ひゅー、やるねぇギャスパーちん♪」

 

土煙が晴れ、禍々しいオーラを放つ鋏を構えたフリードが現れた。

 

「ふ、フリード先輩も凄いですね、その鋏…(は、鋏を閉じた剣圧で遺跡ごと真っ二つに……)」

 

「おうともさ♪『魔鋏砕呀(ましょうさいが)』、ダンナからもらった俺っちの愛刀、いや愛鋏?…まぁ、あんなエクスカリバー(駄剣)よりもよっぽどしっくりくるぜぇ♪」

 

フリードは閉じた状態の砕呀をブンブンと振り回す。竜也の作ったこの大鋏、刃はギザギザとした牙のような形状をしており、刃の外側は逆に刃になっている。閉じた状態では両刃刀として利用できるのだ。ちなみに材料は姫島家の刺客から剥ぎ取った妖刀である。(神社と姫参照)

 

「……だけど当たらなければ怖くない。影が固定されていると動けない…でしょう?」

 

「いや~【影魔法】の秘められた弱点だぜぇ。まぁ、そんな状況そうそうないけど…」

 

フリードは困ったように頭を掻く。これも竜也の与えた力、竜也の禁手化『魔源覇王の三首鎧』の能力は『魔法の創造』。自分の思い描く魔法を造り出すことができるのだ。さらに自身の魔力を結晶化させた物を取り込ませることで創造した魔法を相手に与えることができる。竜也はその力で自分の配下の者たちに魔力と魔法を与えているのだ。

 

「お話中のところ悪いけど、隙有りだぜ?」

 

「ッ!?上!?」

 

見上げると、頭上に飛び上がったイッセーの姿があった。

 

「ネイチャーARM『フレイムボール』!!!」

 

『Boost!』

 

イッセーは倍加によって膨れ上がった炎の球が二人に降り注ぐ。

 

「『世界停縛(ワールドロック)』」

 

瞬間、ギャスパー以外の全てが停止した。ギャスパーはコウモリの翼を展開してイッセーの後ろに移動する。

 

「『解縛(アンロック)』」

 

ギャスパーが目を閉じると停止した世界が再び動き出す。

 

「なっ!?」

 

目標を失ったフレイムボールはフリードに降り注ぐ。

 

「ちょっ!?洒落にならないっての!?」

フリードは鋏の止め金を外し、刃を両手に持つ。

 

「『クレイジーマーダー』!!!」

フリードは両手の刃でフレイムボールを次々と切り伏せる。

 

「後ろか!?」

 

「『喰影(シャドウジョー)』!!!」

 

「うおっ!?」

 

イッセーは直感的にギャスパーの居場所を察知するが、ギャスパーの放った大顎の影に捕まり地面に落下していく。

 

「くそっ!またやられた!『コロナックル』!!!」

 

イッセーは炎を纏った籠手で影を打ち砕きそのまま地面に着地する。

 

「ぜぇ…ぜぇ…イッセーちん勘弁してくれよ……」

 

「悪い行けると思って」

 

「おい元人間、狂った物差しで計らんでくれ」

 

「お二人とも大丈夫ですかー!?」

 

上空からギャスパーが二人に声を掛ける。

 

「ギャスパー!これは実戦を想定した修行だぞ!敵の心配すんな!」

 

「す、すみません!じゃあ…『鎌影(シャドウリッパー)』」

 

ギャスパーは影で鎌を作り出す。

 

「しかし参ったねぇ。時間停止、敵にまわすとここまで厄介とはねぇ。しかも【影魔法】の扱いはあっちゅうまに俺っち以上とか…はぁ~あ、自信なくすわ」

「いや、俺から言わせてもらったらお前ら全員化け物だからな。」

 

そこに匙がひょっこりと表れる。

 

「あれ?匙お前どこにいたの?」

 

「ずっと隠れてたんだよ!修行に付き合えって言うから来たのになんだこれ!?なんだここ!?殺す気か!!!?」

 

「だから言ったろ?ギャスパーの神器の暴発を防ぐためにお前のラインで余分な力を吸出すのが効率がいいって。まぁこの20日でだいぶその頻度も下がったけど」

「てか俺らここに20日もいるんだけど。本当に大丈夫なんか?」

 

「心配すんな、外じゃ半日も経ってないよ。」

 

「さて、んじゃそろそろ……」

 

「「行きますか!!!」」

 

「がんばれ~」

 

「「お前も行くんだよ!!」」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

修練の門、森林エリア

 

「「切りまーす!」」

 

双子の『兵士』イルとネルが剣を振りかぶりゼノヴィアに切り掛かる。

 

「なんの!!!」

 

するとゼノヴィアは競泳の飛び込みのように地面に飛び、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あーんまた潜っちゃった!」

 

「どこ?どこ?」

 

イルとネルはあたりをキョロキョロと見渡す。

 

ザバッ「隙有り!」

 

するとイルの後ろの地面からゼノヴィアが剣を振りかぶり飛び出した。

 

「隙な~し、変形銃槍剣(チェインブレード)ランサー形態!」

 

第六感によりいち早くゼノヴィアの気配を感じ取ったイルは剣についたレバーを動かす。すると剣はガチャガチャと音を立てて変形し、刀身がゼノヴィアに向かって伸びる。

 

「突きまーす!」

 

「ぬおっ!?」

ゼノヴィアは空中で身を翻し間一髪回避して再び地面に潜る。

 

「私も変形、ガンナー形態!」

 

片割れのネルが剣のレバーを動かすと、剣の刃が収納され両手銃のような形になる。これが竜也の与えた武器『変形銃槍剣』のギミック。その名の通り剣、槍、銃の3つの形態に変形できるのだ。

 

「射ちまーす!」

 

ネルは銃弾を乱射するがゼノヴィアは地表をスイスイ泳ぎ回避する。

 

「ハハハッ!無駄無駄ぁ!陛下より授かった私の魔法【遊泳(スイマー)】の前にはどのような攻撃も無意味だ!」

 

これがゼノヴィアが竜也から与えられた魔法【遊泳】、どんなところでも泳ぐことができる。ちなみに息継ぎも不要になる。

 

「ハハハッ!どこから表れるかわからない恐怖を味わ…………………………」

 

と、突然ゼノヴィアの声が途切れた。そしてそれから2分後

 

「黒歌お姉ちゃーん!」

 

「ゼノヴィアお姉ちゃんがまた埋まっちゃったー!」

 

「にゃあ!?またかにゃ?はぁ……行ってくるにゃ。」

 

「まったくゼノヴィアは………」

 

黒歌とイリナが修行を中断してやって来た。どうやら魔力切れを起こしてそのまま地中に埋まってしまったようだ。

「ええっとだいたい…この辺にゃね、『ボールダークロー』」

 

黒歌は巨大な石の爪を装備して地面を掘り返す。そして土にまみれたゼノヴィアが引きずり出された。

 

「何やってるのよゼノヴィア……」

 

「大して魔力もない癖に調子に乗るからにゃ」

 

「め、面目ない……」

 

「私はあっちでゼノヴィア蘇生させてくるからそれまで休憩だにゃ」

 

「「「はーい!」」」

 

新入り組、絶賛修行中

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「【アルティメットジークフリーデン】を召喚。さらにマジック【双光気弾】、ジュデッカを破壊。」

 

「げっ!?」

 

「ジークフリーデンでアタック、アルティメットトリガーロックオン!」

 

「…コスト4【串刺しの森】」

 

「ヒット、効果でBP10000以下のスピリットを4体まで破壊。」

 

「疲労状態のネメシス以外全滅かよ……ライフで受けるぜ」

 

アザゼル ライフ3→2

 

「マガツ・ドラグーンとイグア・バギーでアタック。」

 

アザゼル ライフ2→1→0

 

「だぁぁ負けかぁ!」

 

現在俺は修練の門を発動した状態で動けないのだが、家に来たアザゼルとバトスピをしていた。

 

「あ、そうだった、ほれっ」

 

アザゼルは何か唐突に思い出したようにポケットから何か取りだし俺に投げ渡した。

 

「これは…タロットカードか?」

 

「そうだ『悪魔の駒』を真似して作ってみた試作品だ。」

 

「転生堕天使ってことか?」

 

「そう言うこった。ちなみにこいつを渡すのはお前だけだぜ。」

 

「三大勢力はそんなに俺に人間辞めさせたいのか?」

 

「まあ、それだけお前の影響力が強いってこった。じゃ、俺は帰るぜ。」

 

アザゼルはそう言って帰って行った。俺はジッパーを発動して中から『悪魔の駒』と『御使い』のトランプの入った箱を取りだしタロットをしまう。悪魔のチェスの駒、天使のトランプ、堕天使のタロット………その時俺はあることを思いついた。

「もしもしヴァーリ、ちょっと来てくれ。面白いことを思いついた。」






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会談開始と総督いぢめ

 

三大勢力会談当日、とうとうこの日がやって来た。

 

「じゃあギャスパー、後でな。」

 

「はい!皆さんも頑張って下さい!」

 

この会談で俺たちは神の不在を知るものとして招かれているが、ギャスパーは神器の暴発を危惧されて参加出来ない。修行に付き合っていたイッセーとフリード、そしてヴァーリは猛抗議していたが、

 

「カラワーナ、イザベラ、ギャスパーの護衛は任せた。」

 

「「おっまかせ下さーい!!!」」

 

ギャスパーの護衛だが、直接戦闘に参加しなかったやつらの中から選ぶことにしたのだが、こいつらが土下座してまで志願してきたので妙な真似はしないよう誓約書まで書いて仕方なく付けることにした。

 

「……ベル、もしもの時は頼んだ。」

「ワンッ!」

 

ケルベロスのベルは現在成犬の姿でいる。後一つ姿があるのだが、これはまだ秘密だ。

 

「リアス、ご両親はどうだった?」

 

「ええ、しっかりと話は着けて来たわ。後はお兄様だけ」

 

「わかった、ありがとう。……さて、準備はいいかお前ら?」

 

『おう!』『はい!』『ええ!』

 

「心配するな、もしもの時のために即効性の超強力漢方胃腸薬を調合してきた。」

 

『『『『『流石はヴァーリ!!!』』』』』

 

「お前ら……まぁ、いいや……さぁ!行こうぜみんな!」

 

『『『『『了解!!!』』』』』

 

俺たちは会場に向かった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「やあ、来たね」

 

「んも~☆遅いよたっく~ん☆」

 

「よう、昨日ぶり」

 

「はじめまして」

 

会場である職員会議室に入ると、魔王であるサーゼクスさんとセラたん、天使長のミカエルさん、そして堕天使のプー太郎総督ことアホのアザゼルがいた。

 

「おい、今失礼なこと考えただろ」

「気のせい気のせい」

 

見渡すと、サーゼクスさんの後ろにはグレイフィアさん、セラたんの後ろにはソーナ嬢たちが控えており、アザゼルの後ろにはヴァーリが着いた。

「全員がそろったところで、会談の前提条件のひとつ。ここにいる者たちは、最重要禁止事項である『神の不在』を認知している。」

 

この言葉に裕斗含む元教会組の顔が曇る。イリナはイッセーがアーシアは俺が手を握り、ゼノヴィアは頭に手を置いてやる。とりあえず三人とも平常は取り戻したようだ。

 

「では、それを認知しているとして、会談を進める」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

会談はサーゼクスさんとミカエルさんが議題について各陣営に意見を出し、アホのアザゼルが余計なことを言って空気を凍らせてヴァーリにしばかれたりしたがとりあえず順調に進んではいた。

 

「さて、リアス、そろそろ先日の事件について話してもらおうかな」

「はい、ルシファー様」

 

リアスが事件の概要を説明する。

 

「ーーー以上が私、リアス・グレモリーとその眷属悪魔、ならびに雷門竜也とその配下が関与した事件の報告です。」

 

「竜也君、今の報告内容について何かあるかな?」

 

「いいえ、相違点一つありません」

 

あっぶなー、いきなり振らないで下さいよサーゼクスさん

 

「ありがとうリアスちゃん、たっくん☆」

 

俺の名前で素に戻ってるよセラたん

 

「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」

 

サーゼクスさんがアザゼル(アホ総督)に尋ねる。

 

「おい、今おかしなルビ入ったぞ………先日の事件は我が堕天使中核組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部コカビエルが、他の幹部及び総督の俺に黙って単独で起こした物だ。組織の軍法会議でコカビエルの刑は『地獄の最下層(コキュートス)』の永久凍結で執行された。もう出てこられねぇよ。というか本人がもう出てくる気がない。」

 

「…?どういうことかな?」

「どうもあの戦闘でプライドを酷く傷つけられたみたいでな、曰く『俺はもう戦士としても社会的にも終わった。もう二度と外は歩けまい。それならコキュートスでも同じだ。』とのことだ。…………お前らあいつに何をした?」

「この世には知らない方が幸せなこともあるんだよア…バk…アザゼル。」

 

「おい、今なんて言い直そうとした?てか最初のアもなんかニュアンスが違ったぞなあおい!?」

 

「ま、まあ説明としては最低の部類ですが、あなた個人が我々と大きな事を起こしたくないという話は知っています。それに関しては本当なのでしょう?」

 

「ああ、何度でも言うが俺は戦争に興味はない。コカビエルも俺のことをこきおろしていたと、そちらの報告でもあったじゃないか」

 

「こきおろしてってか、馬鹿にされてるの間違いじゃねぇの?」

 

「「「うんうん」」」

 

「その原因の大元はお前だろうが!この前とうとうシェムハザまでが俺のことをプー太郎と呼びかけたぞ!どうしてくれるんだ!!!」

 

「お前が働かないのがそもそもの原因だろうが!いい加減に上に立つ者としての自覚と責任をしっかり持てや!そんなんだからレイナーレたちみたいに変に勘違いしたようなやつやコカビエルみたいに不満を持つやつが出て暴走するんだろうが!!!」

 

「うぐっ!?……悪かった、確かに俺の責任不十分で起きた事には違いない。そう思えばお前らも十分な被害者だな。レイナーレ…いや、今は夕麻だったな。それにドーナシークにミッテルト、ここにいないカラワーナにも伝えてくれーーー本当にすまなかった。」

 

 

アザゼルは夕麻たちに向かって頭を下げた。サーゼクスさんたちは驚き目を見開いている。

 

「……アザゼル様、頭を上げて下さい。あれはもともと私たちの自業自得、本来なら処刑されているところを追放という形で命を助けてくださった。それだけで十分です。………それに、私は今とても幸せです。イッセー君という世界で一番愛しい人と結ばれることができたから。」

 

「ッ!!!?……夕麻ちゃん」

 

夕麻はイッセーの手を両手で包み込む。

 

「某は竜也様という素晴らしい主のもとに使えることができた……きっとこれでよかったのです。」

 

「ウチらは今の現状にとても満足してるっす。カラワーナもきっとそう言うっす。」

 

「あなたの寵愛を受けようと暴走した堕天使レイナーレは死にました。今の私は、イッセー君を心から愛する竜也様配下の堕天使、天野夕麻です!」

 

夕麻はイッセーの手を握りしめ、声高らかに宣言する。

 

「……ありがとよ、その言葉だけで十分だ」

 

「これに懲りたらこれからはしっかりやれよアホ総督」

 

「おい、言ったな?とうとう言ったな?てめえ後で覚えてやがれぇ!?」

 

「落ち着けプー太郎総督、これから挽回すればいいって」

 

「あんたならできるってプー太郎総督」

 

「お前らも励ますか貶すかどっちかにしろやイッセー、ヴァーリィィィィィィィ!!!」

 

「プ…アザゼル、ひとつ聞きたいのだが、どうしてここ数十年神器の所有者をかき集めている?最初は人間たちを集めて戦力増強を図り、天界か我々に戦争を仕掛けるのではないかと予想していたのだが……」

 

「おいサーゼクス、てめえまで今なんていいかけた?……まあ、強いて言うなら研究の為さ。なんなら資料も一部お前らに送ろうか?研究してたとしてもそれで戦争なんざしねえよ。俺は今の世界に十分満足している。部下に人間の政治には手をだすなと強く言い聞かせてるぐらいだぜ?宗教にも介入するつもりはねぇし、悪魔業界にも影響を及ぼさせる気はない。ったく、俺の信用は三竦みの中でも最低かよ」

 

「それはそうだ」

 

「そうですね」

 

「その通りね☆」

 

「何を今さら」

 

「「「「うんうん」」」」

 

「てめえら俺をいぢめるのも大概にしろよ!?しまいにゃ泣くぞコノヤロウ!!!」

 

シャウトするアザゼルはすでにちょっと泣いてた

 

「ったく神や先代のルシファーどもよりはマシだと思ったがお前らもお前らで大概めんどくせぇな。あぁわかったよ、和平を結ぼうぜ?もともとそのつもりだったんだろう?天使も悪魔も」

 

まさかアホ総督から切り出されるとは思わなかったのか、他勢力のトップは再び驚いている。

 

「次戦争を起こせば三竦みは今度こそ共倒れ、そして人間界に大きな影響を及ぼす。俺たちはもう戦争は起こせない。」

 

プーもといアザゼルは何時になく真剣な顔で語る

 

「神のいない世界は間違いだと思うか?神のいない世界は衰退すると思うか?残念ながらそうじゃなかった。俺もお前たちも今もこうして元気に生きている。ーーーー神がいなくても世界は回るのさ。」

 

アザゼルのその言葉は、俺の中に深く響いた。

その後、会談の内容は今後の勢力うんぬんの話になったいた。

 

「さて、会談もいいところまで片付いたし、お前たちの話も聞かせてもらおうか。

まずはヴァーリ、お前はこの世界で何をしたい?」

アザゼルがヴァーリに尋ねる。

 

「別に俺も戦争なんざ興味はない。ま、強いて言うなら、俺はこれからも兄さんたちと面白可笑しく暮らして、しょうがないバカ親父と研究できればそれでいい。あともっとしっかりしてくれて、身も固めてくれたらなお良し。」

 

「へっ、生意気言うようになりやがって……それで、お前さんはどうだイッセー?」

アザゼルは今度はイッセーに話を振る

 

「俺馬鹿だし難しいことは言えないけど、俺も和平の方がいいです。アニキやヴァーリたちとバカやって、夕麻ちゃんやイリナとずっと一緒に居られればそれでもう十分です。」

イッセーは夕麻とイリナの手を握りそう語る

 

「けっ、お熱いこって」

 

「愛と友情に生きる、素晴らしいことですね」

 

「さて、そんじゃ最後に……お前さんの話を聞かせてもらおうか、竜也」

 

「竜也君、中央の席に座ってくれたまえ」

 

とうとう俺の番が来たか、俺はサーゼクスさんに言われた通り中央に置かれた椅子に腰かける。

 

「さてと、お前さんには俺たちが開発した堕天使への転生システムの試作品を渡してある。」

 

「そうそうその事について詳しく聞かせてもらおうかクソ親父」メリメリメリメリメリ

 

ヴァーリがアザゼルに後ろからアイアンクローをかます。

 

「イデデデデデデデデデデデデ!!!?タンマタンマタンマタンマタンマ!!!?話を聞けっての!!!?」

 

「ヴァーリ、放せ」

 

ヴァーリは渋々といった様子で手を放す

 

「はぁはぁ……竜也の世界に与える影響はそれだけデカイってことだよ。こいつのあまりにも規格外な力を野放しにしておくのは不味い。それこそどこかの勢力のバカが無理やり引き入れようとしたり排除しようとしてくるかもしれないだろ?それに、どうせ他の勢力からももらってるんだろ?」

 

「いかにも、我々悪魔からは『悪魔の駒』一式」

 

「我々天界からは『御使い』のジョーカー」

 

「そして俺たちグリゴリはタロットの『愚者』……さて、竜也、お前はどれを選ぶんだ?」

 

「我々は君の意識を尊重する」

 

「無理強いはしません、あなたの素直な意見を聞かせて下さい。」

 

会場の全員の視線が俺に集まる。さあ、ここからは俺のターン。派手に打ち上げようじゃないか、旗揚げの花火を!!!




感想などお待ちしております。
次回、ついに竜也がやらかす!?お楽しみに


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旗揚げとOHANASI

書き上げるのに2日かかってしまった。つ、疲れた……
ど、どうぞお楽しみ下さい……


イッセーside

 

なんか久しぶりに俺の目線になったな。基本アニキ目線か三人称だからなぁ……まあ、んなことは今はどうでもいいや。現在会場の全員の視線がアニキに集中している。

 

「……あの、すみません、普段の調子で話してもいいでしょうか?」

 

「ああ、かまわないよ」

 

「どうぞ楽な風にお話しください」

 

「ありがとうございます……じゃあ、言わせてもらう。」

 

口調を変えたとたんに、アニキの雰囲気がガラリと変わった。目も鋭く光り何時になく真剣な顔……いや、あれには怒りや憎悪も含まれてるな…

「正直あんたら三大勢力には言いたいことが山ほどあるんだ。ボンクラ総督にはもう大体言いたいことは言ったし、あとは弟がやってくれるからもういいが……」

ちらりとアザゼルさんの方を見ると、ヴァーリが黒い笑顔を浮かべてアザゼルさんの肩をメリメリと音が鳴るほど掴んでいた。……ヴァーリ、よっぽど許せないんだろうな……ってかあいつ段々アニキに似てきたな………

 

「まず天界だが、俺は教会が嫌いだ」

ちょっ!?アニキ!?それはいきなりぶっこみ過ぎじゃあありませんかねぇ!?

 

「………理由をお聞かせいただけませんか?」

 

「理由?アーシアを『魔女』と罵り追放したこと、フリードや裕斗、あと他の俺の友人への非人道的な実験、エクスカリバーのザル警備、さらにこの前のイリナとゼノヴィアの一方的な追放、上げればきりがないね。」

 

次々とまくし立てるアニキ、その瞳には憤怒と憎悪がはっきりと浮かび上がっていた。

 

「それは……」

 

「あんたら天使は人間をより良い方向に導くのが使命だろうが。そのお前たちの管理する大元がこの様たあどういうことだ?あぁ!?」

 

青筋をたてて声を荒げるアニキ、ってか怖っ!?怖いよアニキ!!!なんかヤのつく自由業の人たちみたいだよ!?

「て…天使長になんてことを……」

 

「イリナ!?しっかりしろ!?」

 

イリナが顔を青くしてうわごとのように呟やいている。見ると、ゼノヴィアやアーシアも似たようなことになっていた。

 

「誠に申し訳ございません、返す言葉もありません。」

 

「謝るのは俺にじゃないだろう。自ら裏切った連中は何も言わないけどな、てめえらの勝手な都合で追放しておいてお前たちは何をした?アーシアみたいに神器を持って生まれた人々を保護するような機関もないのか?追放された人の中には身寄りのないような人もいたはずだ。まさかそのまま放置してた訳じゃあるまいなぁ?」

 

「それは…」

 

「『システム』を守る為ってことはそこのボンクラ総督から聞いている。だがな、そのために人の心を、意識を、命を蔑ろにしていいのか!?これならアホのアザゼルのところの方が百倍ましだ!!!……それによぉ、お前たちはそもそも間違っている。」

 

「……間違い、とは?」

 

「アーシアの神器が悪魔や堕天使も癒せると知れれば信仰に影響が出るって考えはわかった。だがな、そもそも神器を作ったのは誰だ?他でもない、お前たちの『聖書の神』だ。つまりだ、アーシアの神器を悪魔や堕天使も癒せるように設定したのもその聖書の神ってことだ。」

 

「ッ………!」

 

アニキの言葉にミカエルさんは目を見開く。俺らが言うのも何だけど、天界のトップが気づかなかったのかよ…そのせいでアーシアが辛い目にあって来たっていうのに……あ、なんか俺もムカついて来た。これもアニキの影響かねぇ…

 

「わかったか?お前たちの言う主の意識を蔑ろにしているのはお前たち自身だ。アーシアは『魔女』なんかじゃない!俺は彼女ほど気高く優しい人間を知らない!アーシアはまごうことなき『聖女』だ!!!」

 

「ッ!?…………竜也さん…」

 

アニキの言葉にポロポロと涙を流すアーシア。そうか、アニキはそれが何より許せなかったんだ。

 

「クハハハハ!どうだミカエル、考えてみりゃその通りだろ?俺もこいつに聞かされた時は目から鱗が落ちたぜ。」

 

「何であんたが得意げなんだよダメ親父」ギュゥゥゥゥ

 

「イデデデデデデデ!!!?千切れる!千切れるってわりと冗談抜きで!!!」

 

アザゼルさんの頬を思いっきりねじるヴァーリ

「………申し訳ありません、確かにその通りですね……しかし、しかし我々はそうするしかなかったのです、『システム』を守る為にはこうするしか………」

 

「言い訳は聞きたくない。過ぎたことはしょうがない、大切なのは過ちを否定せずに悔い改めることだろうが。本当に申し訳なく思っているなら行動で示せ。」

 

「はい、その通りです……」

 

すげぇ、天使長に説教してるよこの人!?

「……あの、ミカエル様。わたしのことはどうか気にしないでください。たった一人と大勢の人々、どちらを取るかなんて比べるまでもありません。……それに、わたしは今とても幸せです。竜也さんや他の皆さんと一緒にいられて、毎日がとても幸せなんです。これ以上何も望みません。」

 

アーシアの嘘偽りない心からの言葉にミカエルさんの表情が明るくなる。この時俺は、アーシアはやっぱり『聖女』なんだと再確認した。

 

「ミカエル、逃がした魚はでけぇぞ?」

 

「……ええ、まったく同感です。そしてゼノヴィア、イリナ、貴女方にも心からの謝罪を。何一つ落ち度のなかった貴女方を神の不在を知ったがゆえに異端としてしまった」

 

「いえ、ミカエル様。私もアーシアと同じ気持ちです。教会にいたころは出来なかったことや出会えなかったものに触れて、新たな生き甲斐を見つけて、陛下という素晴らしいお方に使えることができ、毎日がとても充実しています。」

 

ゼノヴィアさん、その生き甲斐ってもしかしなくてもガンプラだよね?

 

「私も同じ気持ちです。昔みたいに、また竜也君たちとまた一緒にいられて、そしてイッセー君と結ばれることができて、今がとても幸せなんです。」

 

イリナ……俺も幸せだぞ。もちろん、夕麻ちゃんもだけどな。

 

「そうですか。あなたたちの寛大な心に深い感謝を。それと竜也君、大切なことに気づかせて下さりありがとうございました。」

 

ミカエルさんは深々と頭を下げる。すげぇ、あれだけボロクソに言われた相手に本当に感謝してるよ。ちょっと尊敬するな。アニキも若干機嫌がよくなっている気がする。

 

「こちらこそつい言い過ぎた。そっちはそっちで苦辛しているのは知っているしな。」

 

「いえ、あなたの怒りは最もです。確かに、神がいないことを言い訳に少し怠慢になっていたのかもしれません。これからは出来る限りの努力をするつもりです。」

 

アニキが謝るとミカエルさんも再び謝った。やっぱりアニキもミカエルさんも根本的にはいいヒトなんだな。

 

「それらを踏まえて、俺からそちらへの要求は、4つ。一つ目、アーシアの『魔女』という呼び名の撤回。二つ目、アーシア、ゼノヴィア、イリナの容疑の撤廃。三つ目、これまでに異端とされ追放された人々の意識を尊重した保護。……そして最後に、今後木場たちのような存在を二度と生み出さないことだ。………それが誓えると言うならば、俺はあくまで俺個人としてそちらに協力しよう。」

 

「……わかりました、三人のことは私自らふれ出しましょう。そして、教会の制度や現在行われている研究などを全て調べて、彼らのような存在をもう二度と生み出さぬよう全力で努めます。追放した人々も責任を持って保護します。」

 

「よろしくお願いします。ああそれと、後の二つについては任せて欲しい。」

 

アニキは懐から紙束を取り出してミカエルさんに渡す。

 

「教会内でキナ臭い動きをしている連中のリストです。俺の信用出来る先からの情報なので、ぜひ使って欲しい。」

 

「は、はい……」

 

アニキが手渡した紙束をミカエルさんは顔を青くして受け取った。あ、アニキ、マジでか……

 

ヒソヒソ 「……ねぇ、何でミカエル様は顔を青くしているの?」

 

ヒソヒソ「言うなりゃあれは暗示だよ。『こちとらてめえのとこの表立て出来ない情報をこんなにもってるんだぞ?手ぇ抜いたらわかってるだろうな?』……て言うな。」

 

俺の答えと共に元教会組は顔をさらに青くしてさらには白目を剥いている。アニキ……あんたはそういう人だったよ……

 

「さて、次に悪魔勢」

 

「…………何かな?」

 

サーゼクス様は少し含んで聞き返す。そりゃそうだよな。天界側があんなにボロクソにやられたんならこっちは何されるか内心冷や汗ものだよなぁ……

 

「なぜ未熟な悪魔を領主に着けたんですか? 」

 

アニキのその発言は部長を貶しているも同然の言葉だった。部長の方を見ると、部長は悲痛な顔でスカートの裾を握り締めていた。前もって聞いてはいたけど、やっぱり辛いよな。好きな人の言葉ならなおさらだ。

 

「リアスは将来グレモリーの領地を任される身だ。何事も経験だろう?」

 

「24体」

 

「?」

 

「俺たちがリアスと接触するまでに取り抑えたはぐれ悪魔の数だ。」

 

『『『『!!!?』』』』

 

これは知らなかった。はぐれ悪魔の取り抑えは俺も行くことはあったけどほとんどアニキと黒姉さんでこなしてたからなぁ

 

「引き渡そうにも、当時はそちらと連絡を取る手立てがなかったからな。とりあえず引き渡しの手続きはセラたんにお願いしたからもういいが……」

 

えっ!?アニキいつの間にそんなことを

 

「セラフォルー、今の話は本当かい?」

 

「うん☆授業参観の時にお願いされちゃったんだけど、こんなお願いならお安いご用だよ☆むしろありがとね、たっくん☆」

 

セラフォルー様、アニキの前だと生き生きしてますね。セリフに星が飛びまくってる。あ、生徒会長が頭抱えた。

 

「それに堕天使の侵入に気づかずに結果として放置してしまった件もある。せめてサポートの出来る人材を派遣するべきだ。事実、こうして被害が出てしまっている。」

 

「……わかった、これからは未熟な領主悪魔にはサポーターをつけるようにしよう。」

 

「うん、それがいいね☆」

 

「次に、転生悪魔に対する対偶。これはさっきの話も関係する。俺たちの取り抑えたはぐれ悪魔の内13名は、主に酷い扱いを受けて逃げ出して来た者たちだった。」

 

その言葉に全員が驚いた。特に悪魔勢は

 

「………それは本当なのかい?」

 

「ええ、俺の仲間には心に秘めた思いを暴露させる能力を持ったやつがいる。その能力を使ったので間違いはないでしょう。まあ、残りは力に溺れた真性のクズでしたけどね。」

 

その言葉に、悪魔勢は深刻な顔をしている。半数以上、それだけの眷属悪魔が蔑ろにされていたという事実に

 

「なので、引き渡すのはそちらの方をお願いしたい。そして、虐げられた転生悪魔たちは本人の意識を尊重した相応の対応をして欲しい。」

 

「……わかった、そのように手配しよう」

 

「昔の黒歌の件もある、これを期に、冥界での転生悪魔たちの待遇の改善及び『悪魔の駒』を渡す悪魔の選別、さらに眷属にする際の取り決めなどを行って貰いたい。」

 

「了解した。私に出来る限りのことをしよう」

 

「ならばこれを」

 

アニキはまたもや懐から紙束を取り出してサーゼクス様に渡した。

 

「保護した転生悪魔たちから聞き出した主の情報です。使って欲しい。」

 

「ありがとう、助かるよ。」

 

「ねぇねぇ、たっくんは結局どこの陣営につくの?さっきの言い分じゃ天界じゃなさそうだし、この様子じゃ私たちのとこも怪しいし……ひょっとしてグリゴリn」

 

「それはない。()()の下につきたくない」

 

『『『だろう(でしょう)ね』』』

 

「おい、お前ら後で表出やがれ」

 

食いぎみで否定したアニキに全員が同意してアザゼルさんは青筋を浮かべている。

 

「……ならばどうするのですか?まさか何処にもつかないおつもりで?」

「そう、()()()()()()()()()()()()()。俺は……いや、俺たちは、新たな陣営を設立する!!!」

 

アニキの宣言にトップの全員が驚き目を見開いている。そうだ、これこそが俺たちがこの会談に参加した本当の目的だ!

 

「俺たちは何にも縛られない。さっき言った通り、要請を受ければ出来る限りの助力はするが、あくまでも全ては俺たちの意識と決まりで行動する。まあ、言うなればギルドみたいなものだ。とりあえず今のところの構成員は、俺を筆頭に……」

 

「私たち元グリゴリ所属の堕天使」

 

夕麻ちゃんたち堕天使組がアニキの後ろに整列する。

 

「わたし、アーシア・アルジェントやイリナさんたち元教会組」

 

続いて、アーシアを先頭に元教会組が整列する。

 

「悪いな、俺は兄さんの味方なんだ」

 

「けっ、このブラコンめ。……たまには帰ってこいよ。グリゴリはもうお前の帰る場所なんだ。」

 

「わかってるさ……行ってくるよ、父さん」

 

「ッ!!!?……ああ、行ってこい、ヴァーリ…」

 

ヴァーリはアザゼルさんとの挨拶を済ましアニキの隣に立つ。

 

「現グリゴリ所属、白龍皇にして雷門竜也の右腕!雷門ヴァーリ!」

 

アニキが此方に顔を向ける。俺たちは部長を先頭に前にでる。

 

「私、リアス・グレモリーとその眷属たちです。」

 

その言葉にサーゼクス様たち悪魔勢は多いに驚いていた。

 

「………どういうことだいリアス?」

 

「ルシファー様……いえ、お兄様。私、リアスは、雷門家に嫁ぐことを決意しました!すでに実家とは話をつけています。」

 

「何を言っているのリアス!?あなたの夢はどうなるの!?」

 

「全て覚悟の上の決断よ、ソーナ。私は彼と、タツヤと共に歩んで行くわ。今も、そしてこれから先も、未来永劫ずっとよ!」

 

その言葉と表情から、部長の決意を感じ取ったのか、生徒会長は押し黙った。

「………リアス、本気なんだね?」

 

部長はサーゼクス様の目を見つめ、無言でうなずいた。

 

「……わかった。竜也君、リアスのことをどうかよろしく頼む。」

 

「ッ!?…お兄様……」

 

サーゼクス様は寂しそうに、だけど少し嬉しそうな表情でアニキに言った。

 

「はい、もちろん。絶対にリアスを不幸にはしません!」

 

アニキは胸をドンと叩き、宣言した。サーゼクス様は笑顔で頷く。

「そして残りのメンバーだが」

ドガァァァァァァァァァァァン!!!!

 

その時、旧校舎の方角から凄まじい爆音が鳴り響いた。




人物紹介の方を更新しました。
感想等楽しみに待ってます。次回もお楽しみに


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テロと初陣

「………ちっ!これからって時に来やがって」

 

突然鳴り響いた爆音に周囲が騒然とする

 

「これって……」

 

「テロだな」

 

イッセーの呟きにアザゼルが答える。窓の外に光が見え、若干校舎が揺れている気がする。

 

「攻撃を受けているのさ、どこで嗅ぎ付けたか魔法使いまでいやがる。大体中級悪魔クラスってところか。ま、俺たちの張った結界があるから何をしようと無駄だけどな。」

 

「んで、ギャスパーの神器を強制的に禁手化させて、全員停止したところをフルボッコ……とでも考えたんだろうな」

 

俺が言うや否や、イッセー、フリード、ヴァーリから凄まじい殺気が立ち上がった。

 

「なぁアニキ、とりあえずあいつら全員ぶちのめしていいよな?」

 

「ダンナァ、あいつら皆殺しでいい?いいよね?ねぇ!?」

「クズどもが………生きて帰れると思うなよ…」

 

「おい!竜也!この物騒なこと言ってる奴らを止めろ!」

 

「待て待てお前ら」

 

「そうそうそれで…」

 

「ただ殺したんじゃそいつらを楽にしちまうじゃないか。やるなら殺すギリギリのところで生かしておいて生き地獄を味会わせてやれ。」

 

「「「了解」」」

 

「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」

 

俺の仲間を利用しようとしたこと、生まれて来たことまで後悔させてくれるわ

 

「ダハーカ」

 

『『『おう!』』』

 

『魔源の三首甲』を出現させて非殺傷結界を発動する。これで連中は誰一人として()()()()()()()()()

 

「…………あ、」

 

「…?ゼノヴィア?」

 

「ああぁ…あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

何か急にゼノヴィアが絶叫し始めた。

 

「お、おい!?どうしたゼノヴィア!?」

 

「部室には作ったばかりのMGドムがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ズデェェェェェェェェェェェ!!!

 

その場にいた全員がずっこけた。

 

「陛下!私はこれから旧校舎(のMGドム)に向かいますので!では!」

 

ズバビュンッ!!と、陸上選手も真っ青のスピードでゼノヴィアは会場から出ていった。

「…………き、気を取り直して、ギャスパーに連絡を取ろう」

 

俺はすぐにギャスパーに念話を飛ばす。

 

「ギャスパー聞こえるか!?」

 

『はい!聞こえます!』

 

「ギャスパー!無事なのね!?」

 

リアスがギャスパーに安否を尋ねる。

 

『はい!なんか魔法使いの人たちがいきなり襲って来たので全員停止させた後ベルちゃんが吹っ飛ばしました!』

 

「上出来!カラワーナ!イザベラ!ベル!そしてギャスパー!俺たちの旗揚げの景気付けだ!派手に暴れてこい!」

 

『『『了解!!!』』』『ガウ!』

 

「よっしゃ!……さて、こんなときに何だが、俺たちの勢力の名前を言っておこう。ドーナシーク」

 

「はっ、こちらに」

 

ドーナシークが丸めた旗を取り出し俺に手渡す。俺がそれを勢いよく広げれば、旗に描かれた龍の頭部を模した紋章が露になった。

 

「龍の紡ぐ絆、『ドラゴン・トライブ』!!!それが俺たちの勢力の名だ!」

 

俺は紋章をはためかせ、高らかに宣言する。

 

「ドラゴン・トライブ……」

 

「龍の紡ぐ絆…まさにあなたちにふさわしい名前ですね。」

 

「それじゃあ、俺たちの旗揚げの初仕事だ。外にいるボケナスどもをサーチ&デストロイ!!!」

 

『『『『『了解!!!』』』』』

 

「「禁手化!!!」」

イッセーとヴァーリが禁手を発動し、イッセーが『赤龍帝の太陽神鎧』、ヴァーリが『白龍皇の月光神鎧』を身に纏う。

 

「リアスとフリードはギャスパーたちと合流!アーシアは回復のオーラを飛ばしてみんなを援護!悠斗とカーラマインはその護衛!朱乃ちゃんと夕麻たち堕天使組は上空から空爆!残りはイッセーとヴァーリに続け!一人たりとも逃がすなぁ!!!」

『『『『『了解!!!』』』』』

 

「……………あ、そうだ、リアス」

 

「?何、タツヤ…《ガバッ》…へ!?」

 

俺はリアスを抱き締める

 

「た、タツヤ!?いきなり何を!?」

 

「………ごめんな、ひどい事言っちまった。」

 

これだけは謝りたかった。どんな理由であれ、俺はリアスを傷つけた。

 

「タツヤ………いいのよ、私が未熟なのは本当のことだもの。……それより、今は敵の殲滅よ。」

 

「リアス……行ってこい。お前の力を見せつけてやりな。」

「ええ、おもいっきりやってやるわ♪」

 

リアスは羽を出して飛んで行った。会場に残ったのは俺たち各陣営のトップとグレイフィアさんと生徒会のみ。

 

「あ、そういや竜也、お前俺がやった神器の力を抑えるリングは結局どうなったんだ?」

 

アザゼルがふと思い出したように俺に尋ねた。

 

「ああ、あれ?ありがたくギャスパーに使わせてもらったよ。おかげで神器の制御がだいぶスムーズになった。ぶっちゃけ匙いらなかったな。」

 

「……匙、あなたが報われる日は来るのでしょうか…」

 

さぁ、本人次第じゃないですかね、ソーナ嬢

 

「アザゼル、そのような物まで作れるほど神器の研究は進んでいるのですか?あなたはその研究の先に何を求めているのですか? 」

 

「神器を作り出した神はもういない。少しでも神器を理解出来るやつがいた方がお前にとってもいいんじゃねえのか?あとは、息子とのスキンシップと……備えていたっていうのもあるがな」

 

「備えていた?」

 

「俺は戦争を仕掛けるつもりはねえが、ただ自衛の手段は必要だろう?つってもお前らにじゃねえぞ?」

 

「『禍の団(カオス・ブリゲート)』」

アザゼルの代わりに俺が答える。

 

「なんだ竜也、知ってたのか?」

 

「ああ、俺たちにとってそいつらはとある理由で邪魔でね。近々潰してやろうかと考えてたんだが、まさか向こうからやって来てくれるとはね………クハハハ」

 

「…………おい、お前今ものすげぇ悪人面してるぞ」

 

アザゼルがなんか言ってるけどしらない

 

「……それで、『禍の団』とは何の組織なんだ?」

 

「名前と背景が判明したのはつい最近さ。最も、それ以前からうちの副総統であるシェムハザ目をつけてたんだがな。連中の目的は破壊と混乱。その為に三大勢力の危険分子を集めているだ。簡単に言えばテロリストだな。しかも最大級にたちが悪い」

 

「では、今回のテロも」

 

「『禍の団』によるものだろうさ。さらに悪いことにそいつらの頭が危険過ぎる。あの強大にして凶悪なドラゴンだよ。」

 

その言葉に、つい反応してしまいそうになる。

「ッ!………そうか、彼が、『無限の龍神』であるオーフィスが、神すら恐れた最強の存在が、ついに動いたのか……」

 

怒りが沸き上がるのを必死に抑える。落ち着け、サーゼクスさんたちは何も悪くない。だが……やっぱり家族を悪く言われるとつい怒りが込み上げてしまう。くそっ!

 

『……そう、オーフィスが『禍の団』のトップです。』

 

「ッ!?なるほど、そういうことか!今回の黒幕はーーー」

 

サーゼクスさんは舌打ちする。そして女の声と同時に、会場の床に覚えのない魔方陣が浮かび上がる。………とりあえず、この怒りはここで発散するとしようか。この新しい()()()でな。

 

 




『ドラゴン・トライブ』の紋章のイメージはトランスフォーマープライムのプレダコンのエンブレムです。


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蹂躙とDevil May Cry

「レヴィアタンの魔方陣……」

 

グレイフィアさんがぽつりと呟く。だがあれはセラたんのものとは形状が違うな……旧の方か。

そして魔方陣からやけに胸元が開いてスリットの入ったドレスを着た色黒の女が現れた。

 

「ごきげんよう、現魔王のサーゼクス殿」

 

不適な物言いでサーゼクスさんを見据えるこの女。まぁ例に違わずプライドの高そうな……思わずへし折ってやりたくなる。

 

「やはり君か、先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタン」

 

旧魔王派、過去の栄光にすがりつく連中……そして、

 

「旧魔王派の者たちはほとんどが『禍の団』に協力する事に決めました。」

ヴァーリの……俺の弟を苦しめた憎き血族の一派

 

「新旧魔王サイドの確執が本格的になったわけか。悪魔も大変だな……ボソッ 竜也、お前の気持ちはわかるが抑えてくれ。」

 

ボソリと俺に囁くアザゼル。見ると、片手を見えないように握りしめフルフルと震わせていた。

 

「カテレア、それは言葉どおりと受け取っていいのかな?」

 

「サーゼクス、その通りです。今回の攻撃も我々が受け持っています。」

 

「ーーークーデターか……カテレア、なぜだ?」

 

「サーゼクス、今回の会談のまさに逆の考えに至っただけです。神と先代魔王がいないのならば、この世界を改革すべきなのだと、私たちはそう結論付けました。オーフィスには、力の象徴として力を終結する為の役を担ってもらいます。彼の力を借り、一度世界を滅ぼし、もう一度構築します。……そして、新世界を私たちが取り仕切るのです。」

 

何処か誇らしげにカテレアは語らう。………するってぇと何か?こいつらは『今の世界が気に入らないから滅ぼそう』、なんていうしょうもない考えで俺の……オレノカゾクヲリヨウシタノカ……ッ!!!

 

「カテレアちゃん!どうしてこんなっ!」

 

セラたんの悲痛な叫びにカテレアは憎々しげに睨む

「セラフォルー、私から“レヴィアタン”の座を奪っておいてよくもぬけぬけと!私は正統なるレヴィアタンの血を引いていたのです!私こそが魔王に相応しかった!」

 

怒りがこんこんと沸き上がってくる。じゃあ何か?この女は自分が魔王に選ばれなかったなんていう逆恨みでこんなまねを?

 

「セラフォルー、安心しなさい。この場であなたを殺して、私が魔王レヴィアタンを名乗ります。そして、オーフィスには新世界の神になってもらいます。彼は象徴であればよいだけ。後の『システム』と法、理念は私たちが構築する。ミカエル、アザゼル、そしてサーゼクス、あなたたちの時代は終えるのです。」

 

ブチッ!!!……その言葉を聞いた瞬間、俺の中の理性が切れた

 

「……………クハ、クハハ」

 

「………たっくん?」

 

「クハハハハハハ!!!クァーーーハハハハハハハハハハハハハーーハーーハーーー!!!はぁ~あ……くっだらねぇ。」

 

「……なんですって?」

 

馬鹿馬鹿し過ぎて笑けてきてつい大笑いしてしまった。なんかカテレアが青筋立てて睨んでるが別に怖くも何ともない。

「くだらねぇつってんだよ。んなしょうもない理由で世界を構築するとかほざいて自己満足に浸ってるお前らがなぁ」

 

「私たちの考えが自己満足ですってッ!!!?」

「そうだろうが。自分たちが魔王を名乗るに相応しい?要するにてめぇらが認められなかったことを世界のせいにして八つ当たりしてるだけだろうが。まるで癇癪を起こして駄々をこねる子供の我が儘そのものだな 。」

 

「貴様……黙って聞いていれば……この人間風情が!!!」

 

するとカテレアは俺に魔力弾を大量に打ち出す。会場が破壊され土煙が舞う。

 

『『竜也(君)!!?』』

 

「たっくん!?嫌ぁぁ!!!」

 

サーゼクスさんたちの声、特にセラたんの悲痛な叫びが聞こえる。

 

「アハハハハハハハハ!!!『魔源の創者』もしょせんは人間!新の魔王である私には」

 

「なーにをバカみたいな高笑いしてるんだ?」

 

「なっ!!!?」

 

土煙を片手で払いのける。弱いな、これなら俺はおろかイッセーでも倒せる。

 

「そ、そんなバカな!!!?あれだけの魔力弾を浴びて人間が無事なはずがない!!!」

 

「悪いが俺は()()()人間じゃあないもんでな。………それと、お前のそのはったりに呆れたってのもさっきの理由の一つだ。」

 

「なっ!!!?はったりだと!?」

 

「ああそうだ、お前さっき言ったよな?オーフィスが『禍の団』のトップだと………だが実際は違う。なぜなら、現在の『禍の団』のトップは『オーフィス』ではなく、『不在』だからだ。」

 

『『『!!!?』』』

 

「な!!!?なぜ貴様がそれを!!!?」

 

「竜也、どういうことだ?」

 

アザゼルが俺に尋ねる。

 

「俺よりもあいつに聞いた方が早いだろ」

再び視線がカテレアに集まる。

 

「カテレア、どういうことだい?」

 

サーゼクスさんがカテレアに尋ねる。

 

「………12年前、ある日オーフィスは『我に似た存在を感じた』と言ってふと居なくなりそのまま消息を断った。どれだけ探しても決して見つかることはなかった。結果私たちはオーフィスの残した『蛇』で切り盛りせざるを得なくなってしまった!なぜ貴様がそれを知っている!?」

 

「それは俺よりも本人に聞いた方が早いだろう。………おいで、オーフィス。」

 

「ん、我、参上」

 

『『『『!!!!?』』』』

 

俺の呼び掛けに応じて次の瞬間、オーフィスが会場に転移してきた。

 

「なっ!?オーフィス!?一体今までどこにいたというのですか!?」

 

カテレアがオーフィスを問いただす。

 

「ん、我、答える。12年前、我の無限に似た力を持つ存在を感じ、探した。我、その時竜也と会った。」

 

「おい、初耳だぞ俺は」

 

「言ってなかったからな。」

 

「おい!!!?」

 

「我、竜也にグレートレッドを倒し、静寂を得る手伝いをするよう頼んだ。その時、竜也は言った。『静寂なんてつまらない。この世にはたくさんの面白いことや楽しいことがある。それを知らずにただ眠るだけなんてもったいない。』、と」

 

「おい、『無限の龍神』に何言ってるんだ」

 

「だけどたっくんらしいね☆」

 

「我、竜也の言ったことを知るために、竜也のもとにいた。我、いろいろなことを知った。美味しい食べ物、楽しい遊び、そして、家族の温かさ。」

 

「みんなと、竜也といると、胸がぽかぽかする。今までに感じたことのなかった感覚、ずっと味わいたいの思った。手放したくないと思った。竜也も我といっしょにいたいと言った。我はこれが嬉しいという感情だとわかった。

そして我は、竜也の家族になった。」

 

『『『『……え、ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?』』』』

 

オーフィスのカミングアウトに俺以外の連中は大絶叫する。オーフィスは構わずに話す。

 

「カテレア、我は怒っている」

 

「な!!!?……何に怒るというのですか?」

 

カテレアはぎょっとして聞き返す。そりゃ『無限の龍神』が怒ってると聞いたらな。

 

「我、竜也に『禍の団』のことを話した。竜也、我に騙されて利用されているだけと言った。我、何も感じなかった。けど、竜也はそれを聞いて怒った、悲しんだ。我、今度は胸が反対にチクチクした。これが悲しみだとわかった。我、竜也の悲しむ顔は見たくない。竜也を悲しませたくない。………我は竜也を悲しませる奴を許さない。」

 

刹那、オーフィスは一瞬でカテレアの目の前に現れた。

 

「ッ………ひっ!?」

 

「カテレア、『蛇』は返してもらう。」

 

「ぐっ!ああああああああ!!?」

 

オーフィスはカテレアの胸に手をかざす。するとカテレアの胸から黒い蛇のようなものが這いずりだし、オーフィスの手に収まり消えた。

 

「我はオーフィス、『龍の紡ぐ絆』の、竜也の『守護神』」

 

オーフィスの守護神発言に全員が言葉を失う。

 

「……おい、おいおいおい、さすがに洒落にならねぇぞ。『無限の龍神』が守護神とか……」

 

「ああ、協力関係を築いて本当に良かったと思うよ。」

 

「ええ……本当に……」

 

「さて、カテレア・レヴィアタン」

 

「ぐぁぁぁぁぁ……き、貴様ぁ……」

 

「俺はお前らがどんなことを企もうが何をしようが知ったこっちゃない。………だがな、その為に誰を殺すって?誰が象徴だって?……俺はなぁ、俺の大切な人に、家族に、手を出すやつは許さない。」

 

「ッ!……たっくん……」

 

俺はカテレアの方に歩いて行く

「くっくるな!くるなぁぁぁぁ!!!」

 

カテレアは俺に魔力弾を放つ。だが恐怖で冷静さを失って雑になった魔力弾はさっきの半分の威力もない。こんな奴に禁手を使うまでもない。………だが、こいつには最大級の屈辱と絶望を味わって貰おう。俺はグリモアを取りだし、一気にカテレアの目の前に接近する。

 

ガシッ!!

 

「むぐっ!?」

 

俺はカテレアの顔をわしづかみにする。逃がしはしねえよ。俺はグリモアのページを開き呪文を唱える。

 

「ーーーーーーーソロモンリング!!!」

 

瞬間、あたりが目映い光に包まれた。そして光が止むと、カテレアの姿は消え、俺と、俺に頭を掴まれ宙ぶらりんになっている幼女が現れた。

 

「……おい、竜也。なんだ今の?ってかなんだその本!?」

 

「………竜也君、なにやらその本から凄まじく嫌なオーラを感じるのだが……」

 

サーゼクスさんが顔を歪めて俺に尋ねる。

 

「これは『グリモア』。かつてかのソロモン王が作り出したとされる()()()()()()()()()()()()()ですよ。」

 

その言葉に全員、特に悪魔勢が驚愕する。

 

「………従える、というのは?」

 

「そのままの意味です。この本には悪魔を従える為の方法や悪魔を痛め付ける為の呪文がびっしりと書き記されている。そしてさっき俺がやったのは【ソロモンリング】。悪魔専用の封印術で、これを受けた悪魔は……」

 

「うぅ…屈辱だわ……」

 

俺は幼女の姿となったカテレアを全員に見せる。

 

「こうなる。さらに、これを受けた悪魔は力を大幅に奪われる。」

 

「大幅ってどのくらいだ?」

 

「そうだな、だいたい……」ポチッ

 

俺は取り出したリモコンのスイッチを押すと上からスクリーンが現れる。スクリーンにはこう映っていた。

 

『カテレア・レヴィアタン

体力;7→3 知力;8→5 速度;7→3 耐久力;7→2 勇気;6→4 魔力;8→1 腕力;6→1 技術;7 地位;7→1 』

 

「まぁ、ザックリ見積もってもこれくらいですかね?」

 

「ちょっ!?何よこれ!?メチャクチャ持ってかれてるじゃないの!!!?」

 

拘束を逃れたカテレアが足元に掴み掛かってくるが、ぶっちゃけ痛くも痒くもない。

「今のお前はそこらの野良犬とバトルして負けるレベルだ。」

「ギリギリでしょう!?ギリギリ負ける感じ何でしょう!?」

 

「いんや、野良犬ノーダメ」

 

俺の足元でポカポカやってたカテレアは崩れ落ち項垂れる。

 

「ひ、酷い…こんなのあんまりだわ……」

 

「諦めろ、この本がある限りお前の封印は解けることはない」

 

「ッ!?……(ならばあの本を…」

 

「ああ、ちなみにこの本、悪魔が触れるとその悪魔には超常現象的罰が下る。」

 

「………その、超常現象的罰、というのは?」

 

サーゼクスさんが恐る恐る尋ねる。

 

「ふむ、例えば、突然野犬の大群に襲われたり、空から隕石が降ってきたり、関節があり得ない方向にねじ曲がったり、体が粉々に爆散したり、死んだり………」

 

瞬間、その場にいた悪魔全員が壁まで飛び退いた。だが、カテレアは俺が首根っこをがっしり掴んで逃がさない。

「さて、カテレア・レヴィアタン。お前には2つの選択肢がある。」

 

「ちょっ!?放してぇ!?その本近づけないでぇ!?」

 

カテレアはバタバタと暴れるが手足は虚しく空を切るのみ。

 

「その無様な姿のまま見るも無惨に死ぬか、俺と契約して馬車馬の如くこき使われるか………どっちがい~~い?」ニィタァ~♪

 

「ッ~~~~~~~~~~~~!!!」

 

『『『あ、悪魔……(悪魔から見ても)』』』

 

この時、その場にいた全員が悟った。竜也を怒らせてはいけない。確実に破滅が待っている、と。そして、彼は悪魔のさらに上を行く『極悪魔』だということを。

 

この時、竜也は契約(奴隷)悪魔と、新たに『悪魔も泣かす極悪魔(ザ・デビルメイクライ)』の異名を得た。




感想など楽しみにお待ちしております。次回もお楽しみに


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無双と暴走

いや、何と言うか、ノリって怖いっすね


 

時はさかのぼること数分前、ゼノヴィアは急旧校舎へと走っていた。

 

「ん?あれは…」

 

「三大勢力の者だ!撃ち取」

 

「退けぇ!!!」

 

キィィィィィィン!!!

 

「「「「ギャアァァァァァァ!!!?」」」」

 

「はぁ…はぁ…頼む……無事でいてくれ……ッ!!」

 

『禍の団』の魔法使いをデュランダルのオーラで吹き飛ばし、ゼノヴィアは走る。全ては仲間(MGドム)のために。

 

「はぁ…はぁ……ついた…」

 

ついにゼノヴィアは旧校舎に到着するが、旧校舎はテロリストの襲撃(を、返り討ちにしたギャスパーたちの一撃)によって、見るも無惨な姿と化していた。

 

「ッ!?………クソッ!無事でいてくれよ!」

 

ゼノヴィアは瓦礫を片っ端からかき分ける。

 

「ッ!…………あった!!!」

 

そしてついに見つけたMGドム。パーツごとにバラけてしまってはいるが、幸い重要な部分は無事だ。ゼノヴィアは戦闘そっちのけですぐさま組み立てにかかった。

 

「はぁはぁ……永かった…なぜだろうか?誰のものよりも輝いて見えるよ。同じなのに不思議なものだ。」

 

もはや完全に自分の世界の中だった。

 

「よし、後は頭だけ……さぁ…聞かせてくれ、心の起動お《ドン!!》……………へ?」

 

思わずすっとんきょうな声が出た。MGドムの胴体は横から体をかすめて飛んできた魔力弾によって見るも、無惨に粉砕された。

 

「ふふふ、戦場のど真ん中でボーッとするなんて、バカな子ね。」

 

魔力弾を飛ばしたと思われる魔法使いの女が嘲笑する。後ろから仲間の魔法使いがさらに五人現れる。

 

「……は…はは、おかしいな………?頭がうまくはまらないぞ………」

 

ゼノヴィアがどう頑張っても、胴体を失った頭はスカスカと虚しく空を切るのみ。

 

「ふふふ、さぁ、言い残すことはあるかしら?」

 

魔法使いたちは魔力弾を構成しゼノヴィアに向け構える。

 

「……………ふ、ふはは………」

「?」

 

「ふははははは、はーーははははははははははははははははははははははははッ!!!」

 

突然、ゼノヴィアは狂ったように笑い出した。

 

「な、なんだこいつ……?」

 

「あらあらかわいそうに、死の恐怖でおかしくなっ」

 

次の瞬間、旧校舎は跡形もなく消し飛んだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

竜也side

 

「………さて、こっちは片付いた事だし、向こうはどうなってるかな?」

 

縛り上げたカテレアをそこらに捨て置いて、俺が外で見たのは

 

ズガーーーン!!!ドカーーーーン!!!

ズドーーーン!!!チュドーーーン!!!

 

ズガガガガガガガガガガガガガガッ!!!

 

「ギャアァァァァァァァァ!!!?」

 

「イヤーーーーーーーーー!!!?」

 

「ヤメテェェェェェェェェ!!!?」

 

「タスケテェェェェェェェ!!!?」

 

「ママーーーーーーーーー!!!?」

「ひどいやーーーーーーー!!!?」

 

「ヒャッハーー!!!汚物は消毒だぜぇーーー!!!」

 

「悲しいけど……これって戦争なんすよねぇ」

 

「敵は殲滅慈悲はなし、ですよ?」

 

「モチコース!!」

 

「いかがですか?テロリストの皆さん。これが駒王の雷ですわ。」

 

「いいあなたたち!!逃げるやつはテロリストよ!!逃げないやつらはよく洗練されたテロリストよ!!まあとにかくサーチ&デストロォォォォォォォォイ!!!」

 

『『『『『『イエァァァァ!!!』』』』』』

 

「………なんだこの世紀末」

 

アザゼルが呟く。爆音が鳴り響き、激しい光が立ち込め、テロリストたちの断末魔の叫びが響き渡る。まさに阿鼻叫喚、死屍累々の地獄絵図であった。

 

「「「ガウッ!」」」

 

ふと、鳴き声のした方を向くと、魔獣モードのベルが3つの頭にそれぞれ何かくわえてやってきた。ベルはその何かをベシャッと下に落とし、光を放ちその姿を変える。

光が止むと、そこには長い黒髪をリボンでポニーテールにして束ね、大きめの胸を隠すのに巻かれた黒い布とホットパンツという開放的な服装に、犬耳としっぽを着けた中学生くらいの女の子がいた。

これぞベルが俺の調教という名の魔改造によって身につけた変身能力。人形モード、犬モード、魔獣モードの3つの姿になることができるのだ。

 

「ご主人様さまーー!」

 

「うおっと!お帰り、ベル」

 

ベルは人形になるとすぐに俺の胸に飛び込んで来た。俺はそれを優しく受け止める。

 

「ご主人さまご主人さま!ボクはたくさん敵をやっつけたぞ!ほめてほめて!」

 

「おーそうか~よしよし、ベルは賢いなぁ~♪」

 

俺が頭を撫でてやると、ベルは目を細めてしっぽを振る。

 

「クゥ~ン…ご主人さまのなでなでは気持ちいいぞ~♪もっとなでてご主人さま~」

 

「よしよ~し……ところでベル。お前さんがくわえて来たあのぼろ雑巾みたいなやつらは何だ?」

 

「んぁ?ああ、きゅーこーしゃってところで魔法使いを吹っ飛ばしたあとになんかこそこそやってたから捕まえたんだぞ!」

 

「ふーん、どれどれ……」

 

よく見るとそれは、ライザー、ジーク、ディオドラのストーカー三人衆であった。

 

「…………何してんのお前ら?」

 

ビクッ!!!「………や、やぁブラザー久しぶり」

 

「久しぶりじゃねぇよ。何でここにいんの?今の状況わかってるのか?」

 

「い、いやぁそれは……」

 

「…………まさか、お前らとうとうテロリストにまで身を堕としたんじゃねぇだろうな?」

 

「そんなわけないだろうが!いくら家から勘当されてストーカー行為を働いていようとそこまで落ちぶれてたまるか!!!」

 

「そうだ!だいたい犯罪ギリギリのラインでイタズラするのが楽しいんじゃないか!!!」クワッ!!

 

(((((十分身を落としてるだろ)))))

 

「じゃあ何でここにいるの?」

 

ギクッ!!「そ、それはええっと…………」

 

ふと目線を向けると、三人の腰に不自然に膨らんだウエストポーチが目に入った。

 

「…………お前ら、そのウエストポーチ何入ってるの?」

 

ドキッ!!「べっ別になにもぉ!」

「た、たいしたものは入ってないぞ!なぁ!?」

 

「う、うんうん!」ダラダラ

 

「………………………」ガサゴソ

 

「ちょっ!?止めて!勝手に開けないで!!!」

 

俺はジークの制止を無視してウエストポーチのチャックを開ける。すると、中にはブラやパンツなどの下着が詰め込まれていた。

 

「…………………………………これは?」

 

サッ!「「「…………………………………」」」

 

三人は目を反らす。どうやらこの騒ぎに乗じて下着ドロを働こうとしたらしい。

 

「ベル、食い殺せ」

 

「がーお♪」

 

「「「ギャァァァァァァァァァァァァァァ!!!」」」

 

さて、バカも葬り去ったことだしそろそろ終幕と………

 

『おまんら全員アホンダラじゃああああああああああああ!!!!!』

 

……はならないようだ。声のした方を向くと、校舎の頂上に立つゼノヴィアの姿があった。頭と腹にはダイナマイトが巻き付けられており、脇にはドムの遺影が抱えられている。

 

「こちとら命捨てる覚悟なんざぁとっくの昔に出来てるんでぇ!!三大勢力も和平会談も知るかぁ!!こうなったら私がこの世の全てに終止符を打ったらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

するとゼノヴィアの後方からバカでかいミサイルがゴゴゴゴゴッ!!!と音を立てて現れた。俺もイッセーたちもテロリストも魔王も天使長も堕天使総督も3バカも、全員が言葉を失い唖然とその光景を見つめていた。

 

「…………おい竜也、なんだありゃ?」

 

「……ヴァーリ?」

 

俺はゆっくりとヴァーリに顔を向ける。

 

「ああ、俺が前に暇潰しに作った世界を3べん焼き尽くす超破壊ミサイルだな。」

 

『『『『『『『………………………………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?』』』』』』』

 

ヴァーリ以外の全員が絶叫する。

 

「ちょっ!?おま!はぁぁぁ!?お前まじでぇ!!!?」

 

「なんちゅーもん作ってんだこのバカ息子ぉ!!!」

「いやちょっ!!!?ゴメンて!ほんの出来心なんだって!!!」

 

「出来心の暇潰しでんな破壊兵器作り出すなぁぁぁ!!!バカなのか天才なのかどっちなんだお前はぁぁぁぁ!!!」

 

「ギャアァァァァァァァァァァ!!!」

 

「ゼノヴィア!バカな真似は止めなさい!」

 

ヴァーリがイッセーとアザゼルたちに袋叩きにされる中、ミカエルさんはゼノヴィアの説得を試みる。

 

「あーーーはははははははははは!!破壊だぁ!!!世界は全て無に帰すのだぁ!!!」

 

あぁ、駄目だこりゃ。完全に理性が吹っ飛んでる。大方目の前でドムを破壊されたんだろう。

 

《爆発まで、あと30秒》

 

そうこうやってる間に破壊までのカウントダウンが始まった。

 

《25》

 

「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!なんとかしろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

《20》

 

「無理無理、あれ起動したら手動でしか停止できないもん」

 

《15》

 

「こんのバカ息子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

《10》

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!もうダメだぁぁぁぁ!!!」

 

「おろろろろろろろろろろろろろろろ」

 

「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」

 

「狼狽えるなジーク!吐くなディオドラ!お前死なねぇだろうがライザー!て言うか何でいるんだよ3バカぁ!!!」

 

「夕麻ちゃーーーん!!!イリナーーー!!!愛してるよぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「「イッセー君ーーーーー!!!」」

 

「カーラマインさーーーん!君に出会えて良かったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「裕斗様ーーー!!最後の時は一緒ですぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

「たっくーーーん!!!好きーーー!!結婚してーーーーー!!!」

 

「竜也ーーーーー!!!愛してるわーーーーー!!!」

 

「竜也さーーーーーーん!!!」

 

「竜也君ーーーーーーーー!!!」

 

「だぁりーーーーーん!!!白音ーーーーー!!!愛してるにゃーーーーー!!!」

 

『『『『『竜也(様)ーーーーー!!!』』』』』

 

《9》

 

「ゼノヴィアーーそれ使ったら全部まとめて吹っ飛ぶぞーーー」

 

《6》

 

「はははははは!!望むとこ」

 

「オモチャ屋やガンプラ工場も吹っ飛ぶぞ?」

 

「ーーーーーーーーッ!!!?」

 

《3、2………中断が選択されました。中断します》

 

「………………………………………あれ?」

 

「助かった……………………のか?」

 

全員が顔を上げ、やがてゼノヴィアの方に顔を向ける。

 

「………ああ!そうじゃないかっ!?……いやぁ、危ない危ない…」

 

『『『『『ダァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!?』』』』』

 

もう何度目か、全員がずっこけた。




ベルのモチーフはエンジェルマスターのケルベロスです。


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終戦と逸脱者

独自解釈あります
※改訂しまいた


俺が新陣営を旗揚げし、強襲して来たテロリストを蹂躙して、軽く世界が滅亡しかけた三大勢力会談だが(我ながら何言ってんだろうか…)、なんとか閉幕に差し掛かろうとしていた。

「……さて、強襲して来たテロリストどもはこれで全員だな?」

 

俺は縄で縛られ一まとめにされた魔法使いたちを指差して尋ねる。

 

「ええ、【探索】で敷地内を隈無く調べたから、これで全部のはずよ。」

片手に水晶球を持ち、赤い髪を靡かせたリアスが答える。俺はそれに頷き、テロリストどもの前に立つ。

 

「いいかお前ら、今回は特別に命は助けておいてやる。代わりに『禍の団』の情報を洗いざらい吐け。嘘や自害なんて考えるなよ、てかさせると思うな。今度俺の仲間ーー“家族”に手を出そうなんて考えたら……潰すぞ?権力と腕力の全てを使って、()()()になぁ」

 

おもいっきり睨みとドスを効かせた声でテロリストどもに告げる。これで今後下手なことは……

 

『『『『キャァァァァァァァァ!!!』』』』

ガクッ!

 

思わずずっこけた。テロリストどもの4割ほどは思惑通り完全に萎縮しているが、残り、とりわけ女性の魔法使いから返ってきたのは何故か黄色い歓声だった。

 

「『魔源覇王』様!本物の『魔源覇王』様よ!!!」

 

「私、魔源覇王様に会いたくてフランスから来ました!」

 

「魔源覇王様のためなら死ねます!」

 

いや、どこのブリュンヒルデだ俺は。え、何?これってどゆこと?

 

「……あ、ああ~ちみちみ」

 

「ひっひゃい!わ私ですか?」

 

とりあえず適当に手前にいた魔法使いに声をかけるとめちゃくちゃ動揺された。それにこれは怯えとか恐怖からの動揺ではない気がする。

 

「なんなのこの子らの動揺、俺ってそんなに有名なん?」

 

「あ、ひゃい!ま、『魔源覇王』、雷門竜也様は、私たち魔法使いの間ではどんな魔法も思いのままに操る、まさに神的存在なんですっ!!!かく言う私も魔源覇王様の大ファンです!あなたに潰されるなら本望です!さぁ一思いにブチッと!!!」

 

「お、おう……」

 

ちょっと、怖いんですけどこの子……てか、俺って魔法使いの間でそんな風に扱われてたのか……

その時、俺はあることを思い付いた。

 

「……なぁお前たち、尋問の前に提案があるんだが、どうだ?」

 

俺は笑みを浮かべてテロリストどもに話しかける。萎縮してた連中が顔面蒼白にしてるが知らん。

 

「て、提案ですか?」

 

魔法使いの一人が聞き返す。

 

「そうだ、実は俺は先ほど新しい陣営を設立したんだが、いかんせん始めたばかりで人材が足りない。……そこでだ、お前ら、俺の下で働いてみないか?」

 

「んなっ!?おいアニキ何言って」

 

『『『『キャアァァァァァァァァァァァ!!!』』』』

 

「に゛ゃあああああああ!!!?」

 

歓声ソニックウェーブをまともに食らってイッセーは悶絶する。

 

「魔源覇王様直々のスカウトォ!!!」

 

「ああっ!私もう死んでもいい!!!」

 

「夢なら覚めないでっ!!!」

「お母さんこの世に産んでくれて有難う!!!」

 

狂喜乱舞する魔法使いたち。あ、ヤバい、なんかテンション上がって来た

 

「クハハハハハ!よぉしお前たち!先に言っておくが俺は他人を崇めるのも崇められるのも嫌いだ!俺の下に着きたいならこの場で俺に忠誠を誓えぃ!」

『『『『はい!!!私たちは『魔源覇王』雷門竜也様に忠誠を誓います!!!』』』』

 

「クハハハハハ!よろしい!お前たち、我が覇道についてくるがいい!」

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

『『『『キャアァァァァァァ!!!』』』』

 

「クハハハハハ!あでででででででっ!?痛いよリアス!」

 

笑ってたらリアスに頬をつねられた。見ると周りの一同も俺をジト目で見ている。

 

「もう!竜也!何勝手なことしてるのよ!」

 

「いやぁ~俺って使えるものは使って貰えるものは貰う主義だからさぁ」

 

「あなたは………はぁ、好きになさい。あなたが責任者よ。」

 

「クハハ、了解。てな訳でこいつらの身柄は俺たちが預かるので」

 

「あ、ああ、わかった…」

 

サーゼクスさんが引きぎみに答えた。

 

「しっかし便利なもんだなぁ、これがグレモリーの【探索】の力か。」

 

「ああ、等の昔に失われたとされていた、グレモリーの女性だけが持つ力だ。まさかリアスが開眼するとは思っても見なかったよ。」

 

アザゼルが興味深そうに呟き、サーゼクスさんがそれに答える。

 

「後悔してるか?お前らからすりゃ結構な痛手だろうに」

 

「悪魔という種族から見れば貴重な先祖返りを手放すのは確かに痛手だが……兄として妹の新たな門出と決意を応援してあげたい気持ちの方が強いのさ。」

 

「けっ、あのシスコンがよく言えたもんだぜ」

 

「子煩悩の君には言われたくないね 」

 

「ははっ、違いねぇ」

 

二人語らうアザゼルとサーゼクスさんは、魔王と堕天使総督ではなく、子供の独り立ちを嬉しくも寂しがる親の姿そのものだった。

 

「あのぉ、陛下、そろそろ我々を解放してもらいたいのですけど……」

 

目を向けると、腕を後ろに縛られ正座の姿勢で膝上に重石風こんにゃくを乗せられ“反省中”の掛札を首に掛けたゼノヴィアとヴァーリ、ついでに木の杭に逆さ磔にされたストーカー三人衆の姿があった。

 

「はっはっはっ、ダメ♪あと2時間ね?」

 

「んな殺生な!?」

 

「あ…頭に血がぁ……」

 

残念ながら今の俺にお前らを弁護してやる気はさらさらない。

 

「さて、バカどもは放っておいて、さっきやりかけたメンバー紹介をしようか。」

俺は一同の方に向き直し告げる。

 

「ああ、そういえばその途中で襲撃を受けたんだったな。」

 

「いかにも、では……我が同士たちよ!我がもとに集結せよ!」

俺が合図すると、転送魔方陣が3つ出現し、中から残りのメンバーが現れる。

 

「んじゃ、とりあえず自己紹介しとくか、俺はアランってもんだ。アザゼルとは面識はあるが、よろしくな。」

 

人の姿(こんななり)をしているが、『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』ティアマットだ。」

 

「わたくし、ベルゼブブ961世、ベルゼブブ優一と申します。よろしくどうぞ。」

 

「おいおいおい、『無限の龍神』だけでなく『天魔の業龍』まで配下に入れたのかよ。」

 

アザゼルが半ば呆れ気味に呟く。

 

「………というか僕はベルゼブブというのが気になるのだが、」

 

サーゼクスさんが説明を求める様子で俺を見る。とりあえず説明しますか。

 

「グリモアの話はさっきしたでしょう?このベルゼブブ優一、通称べーやんはそのグリモアに宿っていた、言わば異世界のベルゼブブなんですよ。」

 

「ええ、信じられないとは思いますが、そういう訳なので、どうぞよろしくお願いいたしますよ。サーゼクス氏。」

 

「あ、ああこちらこそよろしく」

 

べーやんがサーゼクスさんに握手を求めサーゼクスさんはそれに応じる。

 

「ねぇねぇたっくん!」

 

するとセラたんが話しかけて来た。

 

「ん?どしたのセラたん?」

 

「うん、あのね、私、たっくんがカテレアちゃんにやられちゃったと思ったとき、凄くショックだったの。世界が全部真っ暗になっちゃうぐらいに……それと、さっきミサイルが爆発するってときにとっさに出た言葉でね……私、気づいちゃった☆」

 

「?」

 

「私ね、たっくんが好き!だからね、たっくん。結婚して☆」

 

「は?」

『『『ッ!!!!!!!?』』』

 

「ねぇねぇいいでしょ?結婚しよーよー」

 

「ちょっ!?セラフォルー様!?何言ってるんですか!?いくら何でもこればっかりは聞き捨てなりませんよ!!!」

 

リアスがセラたんの魔王という立場にも臆すことなく言い寄る。

 

「えぇ~いいじゃないリアスちゃ~ん。私だってたっくん大好きだもん!立場とか関係ないもん!」

 

「関係なくありません!第一タツヤの意見も聞かずに」

 

「たっくんがいいって言ったらいいの?」

 

セラたんの質問にリアスは怯む。

 

「それは……まあ……タツヤがいいなら私は何も…」

 

それでいいのかリアスよ……そして目線は再び俺に集まる。

 

「ねぇねぇたっくん、たっくんはどう?私と結婚はいや?」ウルウル

 

ちょっ!?そんなウルウルした目で上目遣いは反則ですって

 

「う、うん、俺も、その……セラたん好きだよ?……けど、俺はリアスに朱乃ちゃん、黒歌にアーシアも比べられないぐらいに好きなんだ。……それでもいいのか?」

 

パァァ「うん!いい!ぜんぜんいいよ!たっくん大好きー!!!」ガバッ

 

セラたんは俺に勢いよく抱きつく。はぁ、我ながら最低だな、俺は

 

「………と、いう訳なんだが………いいかな?みんな」

 

俺はリアスたちの方を向き恐る恐る尋ねる。呆れられただろうか……嫌われただろうか……もしそうなら俺は……

 

「………はぁ、しょうがないわね。タツヤは優し過ぎるのよ。」

 

「けど、そこが竜也君の良いところですわ。」

 

「ふふっ、はい。まったく、しょうがない竜也さんです。」

 

「けどだぁりんのそういうとこ、私は大好きよ♡」

 

「み、みんなぁ……」

 

みんなええ女や……本当、俺にはもったいないくらいに……

 

「グスッ、みんなありがと……あ、そういえば()()すっかり忘れてた」

俺は上着のポケットからあるものを取り出す。

 

「……?そいつはスタンプか?」

 

アザゼルが尋ねる。それは俺たち『ドラゴン・トライブ』の紋章の入ったスタンプだった。

 

「いかにも、このスタンプはただのスタンプではない。ミカエルさんからもらった『御使い』のトランプ、サーゼクスさんからもらった『悪魔の駒』、そしてアザゼルからもらったタロットカードを材料に俺とヴァーリで作り出したオリジナルの転生システムだ。」

 

三大勢力のトップは再び驚愕する。俺はヴァーリにスタンプを渡し、服の背中をまくり後ろを向く。

 

「んじゃ、頼むわヴァーリ」

 

「………兄さん、本当にいいんだな? 」

 

「ああ、俺はお前たちと同じ時を歩みたい。そう思ったら人間辞めるのに悔いはないさ。」

 

「ッ!………わかった、いくぞ兄さん。」

 

「おうよ」

そしてヴァーリは俺の背中にスタンプを押した。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

イッセーside

 

ポンと小気味良い音が鳴り、アニキの背中にオレンジ色の『龍の紡ぐ絆』の紋章が刻まれた。すると、紋章が光り、光りはアニキのオーラが変化を始めた。

 

「に、兄さんどうだ? 」

 

「な、なんか背中と頭がムズムズする……」

 

するとアニキのオーラが聖なるものに変わり、アニキの背中から白銀の天使の翼が生えて頭には金色の天使の輪が現れた。

 

「どうやら竜也君は天使に転生したようですね。」

 

ミカエルさんが嬉しそうに言う。

 

「いや、竜也の性格からして、すぐに堕天するだろうさ。ほれ」

 

アザゼルさんがそう言うと、アニキの翼が黒く染まり、天使の輪はなにやら黒い瘴気のようなものが吹き出している。

 

「ほれ見ろ、黒い輪は想定外だが、案の定竜也は堕天使だ。」

 

「いや、そうとは限らないよ」

 

「何?」

 

すると、アニキの翼から黒い羽根が抜け落ち悪魔の羽になり、輪は体に取り込まれ、二本のカールした角と先端が尖った黒く細長い尻尾が生えた。

 

「ふむ、角と尻尾はともかく、この気配は間違いなく悪魔のものだね。」

 

「いや、まて。まだ変化しているぞ。」

 

アザゼルさんの言った通り、アニキはまだ変化を続けていた。角と尻尾はさらに太くなり、翼や尻尾、両腕の肘から下、目尻の下がダークシルバーの鱗で覆われ、指からは鋭い爪が生えて来た。

 

「おいおい、今度はドラゴンのオーラだぞ。一体どれだけ変わるんだよ。」

 

「いや、どうやらまた変わるみたいだ。」

 

すると今度はドラゴンの鱗は消え、翼と尻尾は体の中に収納されて、爪も元にもどり、もとの人間に戻ってしまった。それから一分二分とたったが一向に変わる気配はない。するとここでアニキが口を開いた。

 

「どゆこと?」

うん、それは俺たちみんながそう思ってることだよ。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

竜也side

 

あの5変化の後、リアスの探索で調べてもらったところ、俺は天使、堕天使、悪魔、龍、人間の特性をあわせ持ち、なおかつ五つの種族に変化が可能な訳のわからん生命体になってしまったらしい。

 

「しっかし、元から規格外なやつだったがとうとう種族まで規格外になりやがったか。」

 

「今の彼を言い表すなら『逸脱者(ディビエーター)』と言ったところかな?」

 

「逸脱者か、まさにこいつを言い表すのにぴったりだな。」

 

逸脱者ねぇ……俺も晴れて人外の仲間入りか、いや、人間の要素も入ってるから正確には人間辞めた訳ではないが……ちなみにあの後、『龍の紡ぐ絆』のメンバーにも紋章を入れたのだが、

 

「すっげぇな、角にもちゃんと感覚がある 」

 

「へぇー、尻尾ってこんな感覚なのか」

 

まず、イッセーとヴァーリの二人は悪魔から半龍半人の存在『龍人(ドラゴノイド)』となった。さらにドライグとアルビオン曰く、神器は完全に二人の魂に定着し、二人は二天龍と半ば融合した状態にあるらしい。

 

「ふ~ん、転生するときの感覚ってこんな感じなのかしら。」

 

「やっぱり若干、背中に違和感があります…」

 

次にリアスたち悪魔は、さっきの俺のような角と尻尾が生え、夕麻たち堕天使は背中に黒いリングが浮かび上がった。リアスに至っては翼が3対計6枚になり、朱乃ちゃんは左が悪魔の翼3枚、右が堕天使の翼3枚のアンシンメトリースタイルになった。しかも黒い輪は両手首にも発生している。

この角と尻尾や輪、リアスによると、俺の中の真相心理にある悪魔や堕天使のイメージが反映されているらしく、体内の魔力が実体化したものらしい。

 

「にゃあ、新感覚だにゃ」

 

「全く熱くありませんね」

 

黒歌と白音、そしてギャスパーは、元の種族である猫しょうとハーフヴァンパイアに戻り、黒歌と白音の尻尾が3本に増えて尾の先に鬼火が灯った。曰く、獣の妖怪の尾の数は神通力の強さを表し、二人も成長するに連れて本数が増えるはずだったのだか、悪魔に転生したことでそれもなくなっていたそうだ。だか、流石に鬼火はないらしく、これも俺のイメージが反映されているらしい。そして、人間組だか……

 

「ヒャッハー!堕天使なフリード君、爆☆誕!」

 

「はぅぅ、まさかわたしが天使様になれるなんて、感激ですぅ!」

 

「うん!夢にも思わなかったよ!ありがとうね!竜也君!」

 

「ああ、陛下!私はあなたに出会えたことを心から感謝いたします。ですからとりあえず拘束を解いて頂けませんかねぇ!来日1ヶ月少しの私に正座はキツいですので!」

 

フリードは赤黒い翼の堕天使、アーシアは金緑色、イリナは薄黄色、ゼノヴィアは群青色の翼をもつ天使に転生した。ゼノヴィアの翼はやや半透明になっており、何処と無く魚のヒレを連想させる。ちなみにまだお仕置き中である。さらに、俺の力が影響して俺がいる限り堕天することはないらしい。なにそのチート………さて、問題は…

 

「なんで……なんで僕だけ………」

 

「ゆ、裕斗様!お気を落とさず、大丈夫です!私はカッコいいと思いますから!」

 

「ごめん。本当にごめん。」

 

裕斗はどういう訳か、トンボのような虫の羽根が生えてきた。リアス曰く、やはりこれも俺のイメージが影響しているらしい。いや、なんか裕斗って素早いのと緑色なイメージがあったか ら、なんか虫を想像しちゃったんだよね……とか考えてたら裕斗が泣きながら親の仇を見るような顔で見てきたので、全身全霊で土下座した。いや、本当にごめん。いやマジで

まあとりあえず、三大勢力会談はこれにて無事?終了したのだった。



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後日談と色々

 

三大勢力会談からかれこれ2週間、大小様々な事があった。

まず一つ目、我が家が増築した。四階建てに。ええ、そりゃもうちょっとしたマンションぐらいに。これはサーゼクスさんの仕業だった。両親とアラン曰く、俺たちが学校に行っている間に冥界から業者の方々が来てあっという間に増築して行ったらしい。冥界の技術ってすげぇ

 

「必要ならその都度また増やすわ。そうならないように自重してね、タツヤ?」

 

リアス、俺はそんなに節操のない男だろうか……考えてみれば間違いでもないな。はぁ、俺って……

二つ目、『龍の紡ぐ絆』のメンバーが全員家に越してきた。さっそく増築が役立った。下働きの魔法使いたちはサーゼクスさんに頼んで寮みたいなものをつくってもらい、そこに生活している。

 

三つ目、地下秘密基地を我が家の下に移転させた。アザゼルにも手伝ってもらい、超空間的なアレで移転させた。

 

四つ目、セラたんとオーフィスとも婚約した。セラたんの告白の後、オーフィスが「我も竜也と結婚したい。」と言い出して、二人とも婚約することにした。セラたんの妹であるソーナ嬢からは「不出来な姉ですが、何とぞ!何とぞ!よろしくお願いいたします!」と言われた。手放す気はないことを伝えたら、パァァと顔を明るくして何度も例を言われた。なんだかんだで、この子も姉のことを思ってたんだな。そして今年の俺の18歳の誕生日に、みんなと結婚することになった。いやぁ楽しみだなぁ。

 

五つ目、アザゼルが学校に赴任してきた。オカルト研究部とヴァーリのいる科学部の顧問として。曰く、もともとここには滞在するつもりだったらしく、現在は科学部でせっせとヴァーリと研究に勤しんでいる。ちなみに、白音はヴァーリの助手のようなことをしているらしい。

 

そしてもう一つ、

 

「お、おい!今動いたぞ!」

 

「あっ!今ひびはいった!」

 

カタカタカタカタ、パキッ!

 

「ぴぃ、ぴぃ」

 

「きゅう~」

 

『『『『おおおぉぉぉ!!!生まれた!!!』』』』

 

『『『『可愛いぃ~~~~!!!』』』』

 

以前ティアから預かっていた2つの卵がついに孵った。一方は赤い鱗のドラゴン、もう一方は青い鱗で尾にヒレのようなものがあった。

 

「ぴぃ、ぴぃ」

 

「お、おう、どうした?」

 

青い方がヴァーリにすりよる。

 

「『パパ』と呼んでいるな。」

 

ティアが翻訳してくれた。

 

「パ、パパぁ!?俺が!?」

 

「よかったなヴァーリ、父さんやアザゼルに孫抱かせてやれるぞ」

 

「ちょっ!?兄さん!?」

 

「きゅう~ん」

「お、お前は俺か?」

 

「『ママ』と呼んでいるな。」

 

「何でぇ!!!?」

 

赤い方はイッセーに、青い方はヴァーリになついた。どうやら刷り込みらしい。赤い方はイッセーに『イルル』、青い方はヴァーリに『カンナ』と名付けられ、それぞれに預けられることになった。

あとは……ギャスパーが吸血鬼帝国に行ってヴァレリーと再会したり、なんかイザベラやカラワーナと距離が縮まってたりと……だいたいそんなところだな。もうすぐ夏休み。新勢力を旗揚げして色々とやることもあるし、忙しくなりそうだ。




イルルのイメージはレッドコドラ、カンナのイメージはブルーコドラです。
次回からはしばらく日常回をはさもうと思います。お楽しみに


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広報活動と歌

ヴァーリside

 

現在俺たちは兄さんに呼ばれて地下秘密基地の放送室に向かっていた。

 

「急に呼び出して、何のようなんだアニキは?」

 

「さぁ、俺はただ『龍の紡ぐ絆』の主要メンバーを集めて放送室に来いとしか 聞いていない。」

 

「まぁ十中八九いつもの突然の思いつきでしょうね。」

 

そんなことを言ってるうちに放送室に到着した。

 

「兄さん来たぞ。」

 

放送室の扉を開けると、中は真っ暗だった。

 

「ありゃ?いないのか?おーいアニ《カッ!!》おわっ!!!?」

 

すると急にフラッシュがたかれ、シルクハットをかぶりギターを抱えた兄さんが現れた。

 

「諸君、今回は集まってくれてどうもありがとう。」

 

「……兄さん、今回は何を思い付いたんだ?」

 

「よくぞ聞いてくれた弟よ」ジャジャーン

 

ギターを鳴らして、回転椅子を回してこちらを向く兄さん……何このキャラ着け

 

「今回みんなに集まってもらったのは他でもない。実はだ、俺たち『龍の紡ぐ絆』が旗揚げしてかれこれ2週間になるが、一向に依頼が来ない。」

 

「そりゃまぁ設立2週間じゃそんなもんだろ」

 

「だぁらっしゃいこの白餡野郎!!!」ギュイ~~ン!!

 

「白餡野郎!!!?」

 

どんな罵倒だよ!?てか俺はどっちかと言うとこし餡派だ!

 

「この状況を由々しく思った俺は考えた。……そして思いついたのが《ギュインギュインギュインギュギュギュ~~ン!!!》音楽だ!!!俺たちのライブをネットで配信し知名度アップを計り依頼を呼び込む。さらにやがてはライブやCD、プロモーションビデオなども売り出して我らの資金源に!!!」

 

「要するに芸能プロダクションみたいなことをするってことか?」

 

て言うかむしろそっちの方が本命になってないか?

 

「その通り!!!スポンサーにはセラたんとアザゼルに着いてもらったぁ!!!幸いみんなルックスは大変いい!!!これを利用しない手はない!!!」

 

「なるほど、なかなか面白そうね♪」

 

「はぅぅ、けどわたしダンスなんてしたことありません」

 

「俺もまともに楽器引いたことないしな。」

 

「心配するな!こんなこともあろうかとインストラクターを呼んである。セラたんカモン!!!」

 

「はーいセラたんでーす☆私が来たからにはみんな超一流のアイドルにしちゃうよー☆」

 

スポットライトを浴びて登場したのは兄さんの新たな婚約者にして現魔王のセラフォルー・レヴィアタンであった。

 

「セラフォルー様……また魔王業をほっぽって来たんですか?」

 

リアスが半ば呆れてセラフォルーに尋ねる。

 

「ダイジョブよー、サーゼクスちゃんには『龍の紡ぐ絆』との外交って名目で許可はもらって来たから。それにサーゼクスちゃんもこの企画には乗り気みたいだからね☆」

 

「てな訳でさっそく行ってみようか『修練の門』」

 

バカン!!!ヒューーーーーーン

 

『『『『『『またこれかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?』』』』』』

 

「わーーーい☆これやって見たかったのーー!」

 

「……さてと、んじゃあとは頼むは分身」ポイッ

 

「あいよ」パシッ

 

「よっと」

 

全員が落ちたのを確認した後、竜也は分身に修練の門を渡して自身も中に入っていった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「という訳で、現在絶賛レッスン中の我が本体たちのパートナーを探すためにオーディションを開催したいと思う。この俺自らがじきじきに見定めてやるから心してかかりたまえ。」

 

((((((いきなり上から目線で何を言っとるんだコイツは………))))))

 

竜也(分身)によって呼び出された生徒会メンバーと元ライザー眷属は思った。

 

「……て言うか呼んだ覚えのない奴らもいるんだけど」

そこにはなぜかアザゼル、さらにジーク、ライザー、ディオドラのストーカー三人衆の姿があった。

 

「こんな面白そうなことに呼ばねぇとかあり得ねぇだろ。せっかくスポンサーになってやったってのに」

 

「俺の名声を取り戻すチャンスと見た!」

 

「アーシアたんがアイドルデビューすると聞いて黙ってられないよ!是非とも僕がアーシアたんのプロデューサーに!!!」

 

「僕は白にゃんやミッテルトたん、双子たんのプロデューサーに是非!!!」

 

ポチ、バカン!!!ヒュン!

 

「「あれぇ~~~~~~~~~~!!!?」」

 

『『『『ええっ!?』』』』

 

竜也(分身)がスタジオのボタンを押すと、ジークとディオドラの足元の床に穴が空き、二人はまっ逆さまに落ちて行った。

 

「とりあえず最初に……そこの女子、スタジオに入って歌ってみろ。」

 

「は、はい!?わ私か!?」

 

指名されたのは元ライザー眷属の『騎士』のシーリスだった。

 

「よし行けシーリス!お前の美声を芸能界に轟かすのだ!」

 

「黙っててくださいストーカーお兄様」

 

「ぐほっ!!!?」

 

ちなみにライザーがストーカーをやってることは残りの元ライザー眷属にも伝えてある。レイヴェルはゴミを見るような目でライザーを切り捨てた。それでも『女王』他数名はまだ気にかけてくれてるみたいだが。

 

「それじゃ始め」

『は、はい!~~~~♪』

 

「オーケーオーケーもういい」

 

『は?』

「荷物まとめて帰りなお嬢ちゃん。せいぜいパパの家業でも手伝って暮らすんだな」

 

ガーン!!∑『ヒーン!!』

 

シーリスは泣きながらスタジオをかけ出た。

 

「ひでぇ!自分で歌わせといて!」

 

匙のツッコミがスタジオに響くが竜也(分身)はどこ吹く風である。

 

「しゃあねぇ、ここは大人の魅力ってやつを教えてやろう」

 

「!!!アザゼル先生!!!?」

 

次にスタジオに入ったのはアザゼルであった。

 

「行くぞ!ミュージックスタート!」

 

漆黒堕天節

作詞;作曲 アザゼル

 

『『『『自作!!!?てか演歌ぁ!!?』』』』

 

『漆黒~翼~なびかっせ~て~♪』

 

『『『『しかもけっこう上手い!!?』』』』

 

すると、竜也(分身)は音量調整の部分を下にスライドさせる。

(音量調整か?)

 

『あ~あ~♪漆黒~堕天節ぃ~~んぁ』

 

プシューーー!

 

『うぐっ!!!?』

 

「ガスだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

録音スタジオ内にガスが充満した。

 

『あ……かはっ………《カリッ》はぁはぁ……か』ドサッ

 

血文字で“たすけ”と書いたところでアザゼルは崩れ落ちた。

 

「次、用意しとけ」

 

「ヒド過ぎるだろ!!!てか大丈夫なのかこれぇ!?」

 

「心配するな、ただの睡眠ガスだ。ほれ、次」

 

「ふん、俺が行こう」

 

『『『ライザー様!?』』』

 

「ゴミぃ様!?」

 

「レイヴェル?ちょっと酷くない?……まあいい(本当は良くない)メインのお前を喰ってやるわ!」

 

ライザーは竜也(分身)に指差し宣言し、スタジオに上がる。

 

『我が美声に酔いしれるがいい!行くぞ!ミュージックスターツッ!!!』

 

ポチ、バコーン!!!

 

『ハーーン♡!!!?』

 

『『『『『ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?』』』』』

 

ライザーの言葉とともに竜也(分身)がスイッチを押すとスタジオの天井が高速で落下しライザーを押し潰した。天井が元に戻るとペラペラにのされたライザーの姿があった。

 

「消えろヘタクソが」

 

「まだ歌ってすらないのにぃ!!!?」

 

そんなこんなでオーディションは進んでいき、結果、ソーナとレイヴェル、そしてソーナ眷属の『女王』である真羅椿姫の三人であった。

 

「三人ともよく頑張ってくれた。君たちは俺の本体とセラたんが全力でプロデュースしよう。」

 

((失敗したら命が危なかったからですよ))

(あぁ、これにさらにお姉様が加わるのですか……)

 

「はい、それでは、追加三名ご案内」

 

バカン!!!

 

「「「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ結局ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」」」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

~~~~翌日~~~~

 

「よう、お帰り本体。」

 

「ただいま分身、もう帰っていいぞ」

 

「じゃあ俺消えるわ」ドロン

 

分身が元の髪に戻り俺の頭に戻るとともに俺に分身の記憶が入ってくる。これはグルメ細胞と髪の毛分身を合わせたオリジナル技である。

 

「さて、それじゃさっそく行ってみようか!」

 

『『『『『おお~~~~~~!!!』』』』』

 

ここ60日で俺とセラたん(主にセラたん)によって歌や踊り、演奏などのパフォーマンスを叩き込まれた一同はかなりノリノリである(やけくそとも言う)。

 

「……………はぁ」

 

「うふふ~~♪」

 

「シャアァァァァ!!!」

 

そんな中、一人憔悴した様子のヴァーリと笑顔でその右腕に腕を絡めるソーナ眷属の真羅椿姫とその反対側に腕をからめ椿姫を威嚇する白音。中で何があったのかはまた後程ということで。そしてついにネットライブを配信したのだが

 

「兄さん、アップロード数が百万回を越えたぞ!」

 

「たっくん冥界から凄い数のファンレターが届いてるよ!」

 

「CD出すって書いたら俺たちのブログが大炎上してるぞ!」

 

なんか思った以上に大反響となりました。




感想等お待ちしております。次回もお楽しみに


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大掃除と大惨事

ネタで書いたつもりが、書き上げるのに2日かかってしまった。しかも何気に今までで一番長文。
それではどうぞ


夏休み、それは学生の様々な思惑が飛び交う長期休暇。その夏休み前日の日曜日、人っ子一人いなくなった駒王学園校舎に『龍の紡ぐ絆』学生メンバーと生徒会メンバーが集まっていた。

 

「よーし、みんな集まってるな」

 

名簿らしき物を脇に抱えた竜也があたりを見回して言った。

 

「…………なぁ、兄さん。俺たちはついに依頼が来たって聞いたんだが………何で誰もいなくなった校舎に集められてるんだ?しかも朝っぱらに」

 

ヴァーリが竜也に怪訝に尋ねる。

 

「まぁ待て、今から説明する。俺たちの記念すべき最初の依頼、それは………校舎の大掃除だ!!!」

 

「…………大掃除、ですか?」

 

アーシアがコテンと首を傾げて聞き返す。

 

「そう、大掃除だ。英語で言うとビッグ・クリーニングだ。」

 

「いや嘘をつけ!」

 

イッセーが反射的にツッコむ。

 

「正しくはスプリング・クリーニングです 。英語圏では春に大掃除をする事が由来ですね。」

『『『『へぇ~』』』』

 

アーシアの英語豆知識に感心する日本人一同。

「さて、少し脱線したが、もうすぐ駒王学園は夏休みに突入する。だからその前に一学期の煤、埃、塵、芥を掃いて拭いて洗って清めておこう、そしてその役に我ら『龍の紡ぐ絆』学生メンバーが生徒会と合同で行うことになった、という訳だ。ちなみに依頼人は理事長ことサーゼクスさんだ。」

『『『『ええぇ~………』』』』

 

せっかく初の依頼でやる気になっていたのに拍子抜けな内容にあからさまにテンションの下がる一同。

 

「おいお前ら、今からやるのは大掃除だ。これはただの掃除じゃない、大掃除だ。気合い入れてかからないと………」

 

そこで一旦言葉を区切り、竜也は目を細める。

 

「……命落とすぞ」

 

「「ヒィッ!?」」

 

「いや命って……」

 

またもや反射的につっこむイッセーと、竜也の気迫に怯えるアーシアとギャスパー。

 

「そりゃいくらなんでもオーバーだろアニキ」

 

「オーバーじゃない。いいか?よく聞け」

 

すると竜也は古ぼけた本を取りだし、本を開き読み始める。

 

「大掃除・・・格家庭で年に一度ないし二度行われる大規模な掃除のことであるが、その起源は古代中国で行われたとされる集団戦闘訓練にさかのぼる。当時、勇名を馳せていた武術家、『王宗地(おうそうじ)』が弟子の育成のため、現在で言うところの箒やハタキに似た形状の武器を」

 

「いや、もういいわ!民明書房か!てか『男塾』知らない奴らがおいてけぼりになってるよ!!!」

 

すっかりツッコミに板が着いてきたイッセーが竜也の言葉を遮る。

 

「はぅぅ、知りませんでした。大掃除って恐かったんですね。」

 

「なんと、大掃除にそんな歴史が……」

 

「ほら見ろ!来日組が変な誤解受けちゃってるよ!違うからなお前ら!アニキの嘘情報だからな!」

 

「うっせーな、いっぺんやってみたかったんだよ、こういうの。ってか、民明書房刊『家事手伝いーー血塗られたその歴史』より、まで言わせろよ。」

 

「こえーよ!タイトルが!」

 

「まーとにかく」

 

イッセーのツッコミをあっさりかわして竜也は続ける。

「大掃除と言うからには総力戦だ。今から割り当て発表するからよく聞くように。ちなみにこの割り当ては俺の独断と偏見で決めさせてもらったものだが、変更の希望は一切受け付けないからそのつもりで」

 

竜也の言葉に一同の顔色が変わる、竜也の独断と偏見、嫌な予感を抱くなと言う方が無理な話である。

「じゃあまずは、アーシア、ミッテルト、そして俺の料理部、ついでにディオドラは家庭科室の掃除だ。特にディオドラ、お前は換気扇やガスコンロのまわりの頑固な油汚れを落としておけ」

 

「はーい!」

 

ディオドラが勢いよく手を挙げる。

 

「何でメンバーでもない僕がここにいるのでしょうか!?あと、何でよりにもよって頑固な油汚れ担当なんですか!?それはちょっとした嫌がらせじゃないでしょうか!?」

 

「お前がいる理由はお前が二学期から転入するからだ。あと、ちょっとしたじゃない。本気の嫌がらせだ。」

 

「ストーカーの僕が言うのも何だけど、訴えるよ?刑事と民事の両方で」

 

「うっせぇな、俺たちの割り当てに家庭科室があるのはマジなんだよ。それとも何か?アーシアに家庭科室の油汚れを落とさせる気か、お前は?」

 

「全力で努めさせていただきます!!!」

 

それはそれは見事な敬礼であったという。

 

「次に、フリード、ヴァーリ、ギャスパーは男子トイレ、んで、花戒、巡、由良は女子トイレの掃除だ。便器に顔が映るぐらいにいつも以上にピカピカにしておけ。」

 

「げっ!?マジかよ……」

 

「よりにもよってトイレか……」

 

ぶーたれるヴァーリとフリード、他の面々も不満そうである。トイレ掃除とはそんなもんだ。

 

「次に、黒歌、仁村、草子、お前らは教室のワックスがけを頼む。」

 

「「「はーい(にゃん)」」」

 

「次、リアス、朱乃ちゃん、ソーナ嬢、真羅は応接室の掃除を頼む。」

 

「わかったわ」

 

「了解しました」

 

「「わかりました」」

 

「んで、イッセー、白音、裕斗、匙は旧校舎まわりの草むしりだ。季節的にきついだろうがまぁ頑張れ。」

 

「なぁアニキ」

 

「却下」

 

「早いよ!?まだなんも言ってないだろ!?」

 

「んだよ、変更は受け付けないつったろ?」

 

「いやでもおかしいだろ?何で草むしりに男手の大半が駆り出されてるんだよ?」

 

「私もお聞きしたいです。なぜ私たちが草むしりなのか。そしてなぜ世界から争いが無くならないのか。」

 

「いや白音ちゃん?でかすぎるから二個目の質問、てか今聞くことじゃないでしょ。」

 

「それは旧校舎裏の雑草の生えようが特に酷いからだ。そして、知性を持つ生き物はこの世に生まれ落ちた瞬間から生存のために」

 

「いやそっちの説明はいいから!?」

 

「あ、そう?なら残りのメンバーは全員廊下のモップがけを頼む。」

 

『『『『了解!』』』』

 

「さて、まぁだいたいこんなものか。……じゃあ大掃除始める前に、恒例のあれやっとこうか。」

 

「………あれ?」

 

匙が首を傾げる。

 

「エイエイ」

 

『『『『『『オーー掃除ーーーー!!!!』』』』』』

 

「だせぇ!?てかいつ決めたんな掛け声!?俺だけハブぅ!!!?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「さて、あいつらちゃんとやってるのか?」

 

竜也は現在理事長のサーゼクスに報告をした後、大掃除の見回りをしていた。応接室の方は問題なかった。真面目メンバーを選出した結果である。ワックスがけの方も問題はなかった。モップがけも、先ほどイリナとゼノヴィアがモップがけしながら廊下を爆走していったが、まぁ問題ないだろう。

竜也は自分の持ち場でもある家庭科室の扉に手をかけた。

と、教室の前方教師が使用する調理台にアーシアとミッテルト、さらにモップ係数名が集まっているのが見えた。そしてその人だかりの中心にいるのはディオドラ。油汚れで真っ黒になった換気扇の羽や焦げ付いた鍋をいくつも台の上に並べ熱弁をふるっていた。

「はいっ、いいですか皆さん。このガンコな油汚れを見てください。ここまで汚れたら市販されている普通の洗剤じゃ落ちませんよ。ところがこちら、冥界製の超強力洗剤、その名も『ブロッケン・ジュニーア』を使えば……見てください、ちょっとスポンジにつけて軽くこすっただけで、ほら!ほーらほら!ね?みるみる汚れが落ちていくでしょう?」

 

『わぁ~』

 

女子たちが歓声をあげる。

 

「ほーら見てくださいよ、これもう新品じゃないですか。まるで!」

 

「ディオドラ」

 

「しかも皆さん、今日はこれだけじゃないんですよ」

 

「おいディオ」

 

「こちらのスチーム噴射式の洗浄機、その名も『カナディアンマン2号』、これを今の洗剤が入ったタンクをセットしますと……ほら!ほーらほら!シンクの水垢がみるみると!」

 

「はぅ!すごいですぅ!」

 

「家にも欲しいっすね…」

 

「コラお前ら」

 

「はぅ!竜也さん!?」

 

「た、竜也様いたんすか!?」

 

やっと竜也の存在に気づいた一同。

 

「いたんすか?じゃねぇよ。何掃除さぼって子芝居やってるんだよ。お前らもとっとと持ち場にもどれ。」

 

「はひぃ、すみません、つい……」

 

「ちぇ、いいとこだったのに」

 

竜也が注意したところで女子生徒たちは潮が引くように調理台から離れていく。

 

「あ、皆さん、買っていかないんですか!?『ブロッケン・ジュニーア』と『カナディアンマン2号』!」

 

慌てて女子生徒たちを引き留めようとするディオドラ

 

「おいディオ、お前何掃除さぼって実演販売なんぞやってるんだよ。てか、何処から仕入れてきたこの怪しげな商品は」

 

「や、あの、僕の親戚のおじさんが代理店やってましてね……」

 

「リアルな説明だなオイ、つーか何やってんのアスタロト家は。はぁ……もういいから、とにかく掃除しろ掃除、ちゃんとやったら報酬も払うから」

 

「わかったよ」

 

神妙に頷きディオドラは言った。

 

「じゃあ掃除にかかる前にこのポータブルオーディオプレーヤー『ステカセコング』の紹介だけ」

 

「しつこいわぁ!!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「ぬおるぅぅぅぅぅぅぅあぁぁぁぁぁ!!これぞ遠心力パゥワァァァァァァァァァァ!!!」

 

「すごいですフリード先輩!なんて勇者なんですかあなたはっ!!!」

 

水の入ったバケツをぐるぐる振り回すフリードとそれをキラキラした尊敬の眼差しで見つめるギャスパー。そしてそれを呆れた目で見るヴァーリ。

 

「いい加減にしろよお前ら、小3か」

 

「え、何?ヴァーリきゅんもやっちゃう?バケツ・ローリング・フェスタ」

 

「いや普通にバケツ回しって言えよ。やらねーよ。」

 

「えー何ー?こぼしちゃうの怖いのー?リバース!」

 

「ふぉぉぉ!!!?話しながらしかもリバースなんて!?フリード先輩すごすぎですぅ!」

 

逆回転に瞬時に切り替わるフリードにさらに目を輝かせるギャスパー。

ピクッ「んな訳ねーだろ。下らないからやりたくないだけだ」

 

「恐くないならやってみーよ。ハリー、ハリー」

 

「僕!ヴァーリ兄様のフェスタ、見たいですぅ!」

 

フリードのバカにしたような笑みと、ギャスパーの期待の眼差しを受けて黙ってられるほどヴァーリは冷静でなかった。ちなみに、ギャスパーは似たような境遇故か、ヴァーリのことは兄様と呼んでいる。

 

「……上等だ、見せてやるよ俺のフェスタ!」

 

するとヴァーリは両手にバケツを持った状態で回転し始めた。

 

「ダボゥル・スウィングゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

「ほぁぁぁ!!!ダボゥルだなんて…兄様、あなたが神か!!!?」

 

「何のぉ!ならば俺っちはクロス・スピンぬぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

フリードは負けじと右上から左下、左上から右下へと連続で斜め回転を始める。

 

「きょぉぉぉぉ!!!クロス・スピンなんて初めて見ましたぁぁぁぁ!!!」

 

「「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

「いい加減にしろよてめえら」

 

「「えっ!?どわぁ!!!?」」

 

突然聞こえた声に驚くヴァーリとフリード。そして回転を乱した二人は頭から水をかぶるはめに

 

「フリードはだいたい予想はしてたけど、ヴァーリ……お前まで一緒になってなにやってんだよ」

 

竜也は呆れと失望を含んだ目でヴァーリを見る。

 

「い、いや兄さん!俺は最初はちゃんと掃除してたんだ!だけどこのクレイジー野郎のせいで!」

 

ヴァーリは必死に弁解しようとする。

 

「掃除してたってお前……」

 

竜也は驚いたように目を見開く。

 

「そんな汗だくになるまで掃除してたのか?死ぬ気か?」

 

「いやこれ汗じゃねーから!どんだけ頑張り家さんなんだ俺は!?」

 

「バケツ両成敗だ」

 

「いや訳わかんねぇから!なに喧嘩両成敗みたいな感じになってるの!?」

 

反射的につっこむヴァーリ

 

「けしかけた方も悪けりゃ乗った方も悪いってことで」

 

「納得いかねぇ……」

 

「まぁとにかく、ちゃんと掃除しろ」

 

「「へーい」」「はーい」

「大丈夫なんだろうか……」

 

そう言い残し、竜也は去って行った

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「………ふぅ」

 

麦わら帽子をかぶり、草を抜いていた匙が、ふと声をもらし、軍手を着けた腕でとんとんと背中を叩き、伸びをする。照りつける日差しのなか、旧校舎周りの草むしり。最初はキツかったが、草を抜き一ヶ所に集める単純で単調な作業はその分無心になれた。久しぶりに嗅ぐ土と草の匂いも何処か懐かしい。

 

「……こんな日も素敵かもしれない」

 

匙がそんなことを呟いた直後、背後からイルルの強烈なタックルを食らい、匙は草山に頭から突っ込んだ。

 

「ダメですよイルルちゃん。あとちょっとで匙先輩轢いちゃうところでしたよ?」

 

追いかけてきた白音がイルルをたしなめる。

 

「いや実際に轢かれてるから!草もちょっと食べちゃったよ!」

 

ペッと口から雑草を吐き出し、草山からはい出た匙は怒鳴った。

 

「悪い匙、いい天気でイルルもテンション上がってるんだ」

 

続いて追いかけてきたイッセーが木場の手を引き立ち上がらせる。

 

「もう、ちゃんと見ててよ。イッセー君がイルルちゃんの親代わりなんだから。」

 

刈ったやぶを手押し車で運びながら木場がイッセーに注意する。

 

「だから悪かったってば」

 

「マスター、これ、食べてイイ?」

 

イッセーの召喚した使い魔であるスライム娘のスーがイッセーに尋ねる。

 

「いいぞ、食べろスー。」

「わかっター」

 

スーは雑草を次々と体に取り込み消化していく。

 

「おーい、お前らー、ちゃんとやってるかー?」

 

するとそこに見回りをしていた竜也が歩いてくる。

 

「アニキー、やっぱキツイよ。人数増やしてくれよ」

 

「なに言ってんだ、イザベラたちは体育館裏で女子だけで頑張ってたぞ。」

 

「いやあそこ日陰だし、それにこっち結構広いし」

「うだうだ言ってないで手を動かせ」

 

「へーい」

 

「きゅーい!きゅあー!」

 

するとその時、イルルが盛んに鳴きだした

 

「ほれ見ろ、イルルだった草むしりしたい、つってるぞ」

 

「勝手な翻訳だねぇ」

 

「違いますよ、竜也兄様。イルルちゃん何か掘り出したみたいです。」

 

イッセーたちから数メートル離れた場所にいるイルルを見ると、確かに イルルの足元の土が盛り上がっている。

 

「何だ?徳川埋蔵金か?」

 

懐かしいことを言う竜也を先頭に、イッセーたちはイルルに歩み寄って行った。

イルルの掘った穴、その傍らに何か金属製の筒のようなものが転がっていた。全体が土にまみれ錆びが浮いている。

 

「何だこれ?」と竜也。

 

「水筒ですかね、遠足に持ってくような」と木場。

 

「……これって、あれじゃないですか?ブリキのオモチャ」と白音。

 

「おお!テレビで見たことある!そういうのってアンティークとかで結構な値段になるんだよな!」

「だとするとこいつのお手柄だな」

 

竜也はイルルの頭を撫でる。 ワイワイとテンションの上がる竜也たちだが、木場はその中には加わらずに考え込んでいた。

オモチャという意見に一旦賛成した木場だが、何かが引っかかる。どうも全体的なフォルムが子供向けに見えない。もっと無機質な情緒のないある意味実用の品、例えばミサイルとか爆弾とかそういった類いの………

 

思考がそこに至った瞬間、木場は卒倒しかけた。アワアワと息を喘がせ、絶え絶えに声を出す。

 

「み、みみみみみみみみ、みんな、こ、これ、これ、」

 

「ん?どうした裕斗、そんなに動揺して」

 

「こ、これって、ふ、不発弾、とかじゃ、ない、よね?」

 

その時、空気が一瞬にして凍りついた

 

「……………ば、ばばばばバカなこと言ってるんじゃねぇよ!」

 

「そ、そうですよ木場先輩!」

 

「い、いやだって、だってだよ、よくよく考えてみたらこんな校舎の手入れもされてない所にブリキのオモチャなんて埋める?それに、この穴けっこう深いよ。それならむしろ不発弾とかの方が納得でき…」

 

そこまで言ったところで、木場は竜也たちの姿がないことに気づく。みると、はるか前方に、全力疾走する竜也たちの姿が見えた。

 

「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!置いてかないでよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

木場は自らの出せる限りの力を振り絞り、ボルトも真っ青なスピードで竜也たちに追い付いた。

 

「バッカお前!ちゃんと呼んだぞ心の声で!」

 

「誠に残念だけどお互いの心が伝わるまでに僕たちの友情はまだ至ってないようだねぇ!!!」

 

半ばヤケクソ気味に木場は叫ぶ

 

「ッ!?ちょっ!待って!イルルがいない!?イルルー!!!何処だー!!!」

 

「きゅー!」

 

声のした方を見ると、イルルはいまだに掘った穴のもとにいた。

 

「イルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!今すぐそこから離れろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!こっちに来なさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」

 

「きゅーい!」

 

イッセーの呼び掛けに、イルルは素直に応じてイッセーたちのもとに駆け寄る。掘り出した物を抱えて

 

「ちがうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!イルルーーー!!!それは置いて来なさーーーい!!!」

 

「イルルちゃーーん!それ爆弾だからーー!乱暴にあつかっちゃダメーー!」

 

「てか、そんなに急いだら転…」

 

「きゅあっ!?」

 

「「「「「あ」」」」」

 

竜也の指摘の最中、イルルはつまずいた。そして抱えていたものは弧を描き、そのまま地面へ

 

((((終わった))))

 

「伸びろラインよぉぉぉぉ!!!」

 

誰もが諦めたその時、匙はこれまででは考えられないほどのスピードで『黒い竜脈(アブソープション・ライン)』を伸ばし、筒をキャッチしたのだ。

 

「ぃよくやった匙ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

「ナイスファインプレーーー!!!」

 

「じ、自分でも信じられねぇ……こんなに早くラインを伸ばせるなんて……」

 

「火事場の馬鹿力ってのもあるだろうが、俺たちの修行に付き合わされた成果ってのもあるんじゃねぇか?ひょっとしたら、このまま禁手に至れるかもしれないぞ。」

 

「ま、マジで!?俺が禁手!?」

「多分な?その前にまずはあれの処理だ。」

 

竜也は筒を指差す。

 

「あ、ああっ!そう…だな……」

 

「いいか?下手に巻きつけずに下から支えた状態でゆっくりと下ろせ。俺が何重に結界を張ったあと爆発させる。」

 

「わ、わかった……」

 

匙はゆっくりとラインを動かそうとするが、いかんせん距離が離れているため力加減が難しい。全神経を集中させてラインを動かす。

 

「やあ君たち、大掃除は進んでいるのかな?」

 

「「「「「!!!!?」」」」」

 

はりつめた空気を中、突然聞こえた能天気な声に心臓が跳ね上がる一同。そして集中の乱れたラインは揺らぎ

 

スルッ

 

「「「「「あ゛っ!!!?」」」」」

 

「?」

 

カツン

 

乾いた音が響き、五人の目の前に、これまでの思い出が、走馬灯のように駆け巡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………あれ?なんともない?」

 

数秒がたち、何も起こらないことに不思議に思い、おそるおそる目を開ける。痛みを感じる間もなく吹き飛んだかと思ったが、ちゃんと体の感覚はある。つまり…

 

「いっ生きてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

竜也たちは生きてることの歓喜に震え、互いに抱き合い涙を流した。

 

「よかった!よかったよぉぉぉぉ!!!」

 

「死ぬかと思った!今年二度目の死ぬかと思ったぁ!!!」

 

「う゛う゛う゛ぅぅぅぅぅ!!!グシュッ!兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「……?どうしたんだい君たち?いきなり静止したと思ったら泣き出して」

 

「「「「「あんたのせいだよ!!!」」」」」

 

∑「ええっ!!!?」

 

まったく状況が理解できないサーゼクスだった。

 

「……………そういえば、結局どうなったんだ?あの爆弾」

 

ふと思いだし、爆弾と思っていたものに目を向けると、筒は2つに割れて、中から紙のようなものが出ていた。

 

「…………なんか割れてるな」

 

「紙っぽいものが出てますね……」

 

「……?君たちはさっきから一体何の……あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!あれはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

すると突然サーゼクスは大声を上げて割れた筒に走り寄る。

 

「………サーゼクスさん、それが何だか知ってるんですか?」

 

竜也が意を決してサーゼクスに尋ねる。

 

ビクッ「こ、これかい?これはねぇ………ぼ、僕の書いたグレイフィアへのラブレターなんだ。」

 

「「「「「は?」」」」」

 

五人は一瞬意味がわからなかった

 

「……昔、グレイフィアに宛てたラブレターを書いていたことがあったんだが、あまりにものめり込んでしまってね。後で読んだら自分でも引くぐらいのが出来上がってしまったんだ。こんなものは渡せないし、かといって捨てるのも気が引ける。それで、せめてもの思い出にしようとタイムカプセルに入れて埋めたんだよ。」

 

サーゼクスは照れくさそうに話す。

 

「…………タイムカプセル?」

 

「爆弾じゃない?」

 

「勘違い……」

 

「「「「「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」

 

五人は一気に脱力して、地面にへたりこんだ。

「なんだよ勘違いかよ~」

 

「木場ぁ…」

 

「木場先輩…」

「しょ、しょうがないだろ!思っちゃったんだからぁ!」

 

「まぁまぁ、結局俺らの取り越し苦労だったってわけだ」

 

「「「「「………あははははははははははは」」」」」

 

五人は顔を向けあって笑いあった。

 

「悪いんだけど、これはまた埋め直しておいてはくれないか?僕の大切なメモリーなんだ。」

「はっはっは、埋め直し料と口止め料もいただきますよ。五人分」

 

「いつになく辛辣だね竜也君!ええっ!?何!?僕なんかした!?」

 

「さぁ?どうでしょう?」

 

「きゅあー!」

 

すると、またイルルの鳴き声が聞こえる。見ると、また筒のようなものを掘り出していた

 

「おーい、またイルルがタイムカプセル掘り出したみたいだぞ」

 

「サーゼクスさん、2つも埋めたんですか?」

 

「いや、僕のものはこれだけだったはずだよ」

 

「なあ、開けてみようぜ」

 

「いや、ダメだよ。」

 

木場が止める。

 

「サーゼクス様のは不可抗力で開いちゃったけど、本来タイムカプセルは埋めた本人が開けるものなんだよ」

 

「かってーなこの蓋」

 

言ってるそばから竜也は二個目のタイムカプセルを開けようとしている。

 

「いや、僕の話聞いてる?」

 

しかし竜也たちは聞く耳なし。なおもタイムカプセルを振ったり叩いたりしている。しかもそこにサーゼクスまで加わっている。

 

「ぜんぜん開かないな」

 

「滅びの魔力使ってみる?」

 

「埋め直すときもとに戻せないですよ」

 

「開け方とかどっかに書いてないか?」

 

「ちょっとまてよ」

 

竜也はカプセルの表面の錆びを払い調べてみる。

 

「あー、なんか錆びててよく読めないけど、ここに『軍』って字が書いてあーーー」

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオン!!!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオン!!!

 

 

『『『『『ええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?何事ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?』』』』』』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

翌日の朝刊各紙。社会面には次のような見出しが並んだ。

 

ーーー『高校で不発弾が爆発 重症者数名』

 

ーーー『旧校舎全壊 あとかたもなく』

 

さらにニュースでは

 

『駒王町駒王学園で不発弾が爆発、生徒数名と教員が重症を負い、旧校舎は全壊したもようです。』

 

と報じられた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

大部屋の病院。

ずらりと並んだベッドの上で、竜也たちは包帯だらけになっていた。隣ではリアスたちが看病している。

 

「ギャグパートでの爆発で死人は出ない業界ルールがあって助かったな」

 

竜也が天井を見つめて言った。

 

「てか、これ小説だけどな。もっと言ったら二次創作」

 

匙が同じく天井を見つめながら言う。

 

「いきなり爆音が鳴り響いたときは何事かと思ったわよ」

 

リアスがリンゴを剥きながら言う。

 

「てか、どうするんだよこれからの部活」

 

イッセーがイリナと夕麻に支えられながら言う。

 

「あとかたもなく吹っ飛んだからね、旧校舎」

 

木場がカーラマインに体を拭いてもらいながら言う。

 

モグモグ「……でかでかとニュースに取り上げられちゃいましたから、冥界の技術を使う訳にもいきませからね……」

白音が黒歌にリンゴを食べさせてもらいながら言う。

 

『『『『『………はぁ』』』』』』

 

「うぅ……グスッ……僕のタイムカプセル……僕のメモリー………」

 

「しっかりしてくださいサーゼクス様」

 

『『『『『『いや、何であんたまで入院してんの!!!?』』』』』』

 

その後、病院は適当に理由をつけて退院し、竜也たちは冥界の技術で治ったそうな。

 

 




今回はいつもより力入れました。ネタなのに
感想などお待ちしております。次回もお楽しみに


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冥界行きと特設ライブ

すみません、テストとかあってぐたついてました。


「お前ら、冥界に行くから準備しな」

 

夏休みに入ってしばらくしたある日、オペレートルームに集められたメンバーは、竜也に唐突に告げられ唖然とする。

 

「…………毎度のことながら本当に唐突だよな。んで、今回はどう言った用件なんだ?」

 

ヴァーリが半ば呆れぎみに竜也に尋ねる。

 

「ああ、今回の用件は主にリアスの里帰りだ。毎年恒例らしい。で、それに乗じて俺のリアスのご両親への顔見せと、あとなんか若手悪魔の集まりみたいなものがあるらしいくて、セラたんに頼まれてリアスたちオカ研メンバーと俺も出ることになった。ああ、それとセラたんとサーゼクスさんの計らいで、冥界でライブすることになった。チケットはすでに完売らしい。」

「なるほど、なかなか忙しいことになりそうだ」

 

「そういう訳だから、みんな準備してちょうだい」

 

竜也の隣にいたリアスが言う。

 

「俺も冥界に行くぜ、何せお前らの先生だからな」

 

奥からアザゼルが現れる。

 

「アザゼル先生は同行するのね?予約はこちらでいいかしら?」

 

「おう、よろしく頼むぜ。」

 

こうしてその日は皆冥界行きの準備に取り掛かった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

竜也side

 

~~~~そんなこんなで当日

 

「まさか駅の地下が冥界行きの駅になってるとは……」

 

「人間界に影響され過ぎっしょ」

 

「そういやこの町って悪魔が管理してたんだったけな………一応は」

 

当日、駅に集合した俺たち初冥界行きのメンバーは、地下に隠された冥界行きの駅に驚き唖然としていた。

 

「びっくりするのも無理はないわね。裕斗たちも最初はそうだったもの」

 

「ほれ、ボケ~っとしてないでとっとと行くぞ。」

 

アザゼルに呼ばれて俺たちは三番ホームのグレモリー家の列車に乗った。ちなみに、ティアやベルたち使い魔と、アラン、べーやん、ドーナシークと魔法使いたちは留守番で残ってもらうことにした。必要に応じて呼び出すつもりだが。どう呼び出すかは……あとのお楽しみってことで♪

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『レディース&ジェントルメーン!今日は俺たちの車内特設ライブに来てくれてありがとー!!!』

 

『『『『『Yeah!!!』』』』』

 

現在、グレモリー領地への列車の中でライブへの景気付けに、車掌のレイナルドさんに特別に許可を貰ってライブをやることになった。ライブって言うよりカラオケのノリに近いが……

 

『このライブで俺たちは全員がシンガーでオーディエンス!司会はこの俺竜也が務める!みんなで盛り上げようぜー!!!』

 

『『『『『Yeah!!!』』』』』

 

『では早速一曲目いってみよー!俺、雷門竜也と!』

 

「俺、兵藤一誠と!」

 

「私、姫島朱乃で!」

 

「「「神のまにまに!!!」」」

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

「へぇ、なかなかやるじゃねぇか」

 

「はひ!とっても素敵な曲ですぅ!」

 

「なんだか勇気付けられます!」

 

一曲目が終わり、車内に響く拍手と俺たちへの声援……良かった、やった甲斐はあったな。

 

『よーし!この勢いで二曲目いってみよー!!!』

 

「俺、雷門ヴァーリと!」

 

「私、塔城白音」

 

「サブに黒歌と」

 

「アーシア」

 

「フリードで!」

 

「「「「「あっちでこっちで!!!」」」」」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

『どんどん行くぜ!三曲目!』

「歌は私、リアス・グレモリー!」

『伴奏は俺(私)たちオカ研メンバーで!!!』

 

「ぱんでみっく!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

その後、数曲を歌ったところで車内放送がかかる

 

『えぇ~皆様、本日はご利用誠にありがとうございます。車掌のレイナルドでございます。まもなく、グレモリー領に到着でございます。』

 

『おっと、そろそろ時間だな。名残惜しいが、ラスト一曲!最後は18番で閉めようか!!!』

 

『『『『『Yeah!!!』』』』』

 

『オカ研メンバーに俺、ヴァーリ、アーシアで!!!』

 

『『『『『晴レルヤ!!!』』』』』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「周りが明るくなったきたわ……みんな、そろそろよ」

 

『残念ながらこれにてタイムリミット。みんな!この調子で冥界でもいってみよー!!』

 

『『『『『Yeah!!!』』』』』

 

最後の曲を終え、窓を見るとトンネルを表す真っ暗闇から日暮れのような紫色の空が広がった。ここが冥界……さて、忙しくなりそうだ…

 

 




伴奏のイメージですが、
竜也はギター、サックス、三味線。
ギャスパー、フリードがギター。
ヴァーリがショルダーキーボード。
オーフィスはピアニカ。
イッセーとゼノヴィア、ティアマットがドラム。
朱乃が琴。
黒歌と白音は三味線。
リアス、夕麻がバイオリン。
アーシア、イリナがピアノ、もしくはオルガン。
木場とミッテルト、カーラマイン、カラワーナ、イザベラ、がトランペットやクラリネットなどの管楽器。
イル、ネルは木琴や鉄琴。
ドーナシークはチェロ。
ベルはハンドベル(洒落ではない)
って感じですかね。
感想等お待ちしております。次回もお楽しみに


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出迎えと甥っ子

アザゼルを除いたメンバーで駅のホームに降りると、

 

『リアスお嬢様、お帰りなさいませ!!!』

 

耳をつんざくような大衆の声を皮切りに、打ち上がる花火や祝砲、鳴り響くファンファーレ、圧倒され唖然とする俺たち……これどう考えても出迎えの規模じゃねぇだろ……

 

『リアスお嬢様、お帰りなさいませ』

 

「ありがとう、皆。ただいま、帰ってきたわ」

 

整列する執事やメイドに笑顔でそう返すリアスに、同じように笑顔を浮かべる彼らを見て、やはりリアスは皆に愛されているのだと思った。すると、そこに、グレイフィアさんが一歩出てきた。

 

「リアスお嬢様、お帰りなさいませ。そして雷門竜也様とそのチームの方々、いらっしゃいませ。お早いお着きでしたね。道中ご無事で何よりです。皆様、馬車にお乗りください。本邸にはこれで移動しますので」

 

グレイフィアさんに誘導され、見えたのはまさに豪華絢爛といった馬車。しかも1台だけでなく複数

 

「申し訳ない、こんな立派なものまで用意してもらって」

 

「いえ、どうかお気になさらず、グレモリー卿も竜也様をお待ちになっていますので」

 

「あぁ……そう…ですか……」

 

や、やべぇ……なんか今から緊張してきた

 

「? どうしたのタツヤ、顔色が優れないけど…私と一緒に乗る?」

 

「い、いや、大丈夫だリアス。お前は自分の眷属と一緒に乗る方がいいだろう。俺は俺の直属の配下と乗るよ。」

 

その後、馬車に乗る組分けをじゃんけんで決め、俺と一緒に乗るのはヴァーリ、アーシア、カラワーナ、フリード、黒歌の五人だ。俺たちが乗り込むと馬たちはパカパカと蹄の音をたてながら動き出す。

 

「…………はぁ」

 

「どうした兄さん、体調が優れないのか?兄さんの癖に」

 

「おい、どういう意味だヴァーリコラ………なに、柄にもなく緊張しちまってよ…それよりお前こそどうした?さっきからよそよそしかったが」

 

先ほどの馬車に乗るまでの間、ヴァーリは何かそわそわしていた。

「いや、それは、その……グレイフィアさんがな…なんか言い難い表情で俺を見るんだよね、あのヒト」

 

「あぁ…」

 

グレイフィアさんのいたルキフグス家は旧魔王派のルシファーに支えていた一族だもんな……こいつの名は明かしてないが、十中八九バレてるなありゃ…

 

「お、おい、ダンナ…あれ……」

 

「ん?どしたフリード?」

 

なにやらフリードのやつが窓の外を指差している。見ると、きれいに舗装された道の先になにやら巨大な建造物が…て言うか城が…

 

「…………なにあれ?」

 

「おそらく、あれがグレモリーの本邸だろうな」

 

「邸って言うか……城じゃね?」

 

「凄まじいな……」

 

「わ、わたしたち入っても大丈夫何でしょうか……」

 

「大丈夫にゃアーシア、たぶん皆そう思ってるにゃ」

 

「いや、たぶん俺の元いた家はあれよりでかかった気がする」

 

「「「「「え!!!?」」」」」

 

ヴァーリのカミングアウトに驚愕する一同。そういやこいつルシファーだもんな。

そんなこんなでしばらくすると、庭と思われる場所を進んで行き、馬車が止まるとドアが開き、降りるとリアスたちと合流してドデカイ門が開いて行く様を眺めていた。

 

「リアスお嬢様、そして眷属の皆様、雷門竜也様とその配下の方々。どうぞお進みください。」

 

グレイフィアさんが解釈して俺たちを促す。

 

「さあ、行くわよ」

リアスが歩き出そうとした時、メイドの列の方から小さな人影が飛び出し、リアスに飛び込む。

 

「リアスお姉様、お帰りなさい!」

 

「ミリキャス!ただいま、大きくなったわね」

 

リアスは愛しそうに少年を抱き締める。

 

「あ、あの、部長、その子は?」

 

「この子はミリキャス・グレモリー。お兄様、サーゼクス・ルシファー様の子供なの。私の甥ね」

 

「「「「「え!!!?」」」」」

 

メンバーの内何名か(特にイッセー)は驚いていた。すると、ミリキャス君が俺の前に歩いて来た。

 

「はじめまして、ミリキャス・グレモリーです!あなたがお姉様のお婿さんの雷門竜也さんですか?」

 

「も、もう!ミリキャスったら/////」

 

「お、よくあいさつできたな。偉いぞ。」ナデナテ

 

「えへへ///」

 

頭を撫でてやると、ミリキャス君は嬉しそうに頬を緩ます。

 

「知っての通り、俺の名は雷門竜也。ちょっと規格外な一応人間の人外だ。よろしくな?」

 

『『『『『タツヤ/竜也(様)(さん)/アニキ/兄さん/ダンナは少しじゃ済まないだろ(でしょう)!!!』』』』』』

 

『龍の紡ぐ絆』のメンバー全員につっこまれた。

 

「うっせ、これが俺の挨拶の形式なの」

 

「うふふ、お父様の言ってた通りの人ですね」

 

ミリキャス君は笑いながら言う。

 

「ん?サーゼクスさんは俺のことをなんて言ってたんだ?」

 

「はい!とっても愉快で見ていて飽きない人だと言っていました。……あの、お兄様って呼んでいいですか?」

 

「ん?ああいいぞ。リアスと俺が結婚したら俺と君は身内同士ということになる。何かあったら俺に頼りな。力になってやる。」

 

パアァ「はい!お兄様!」

 

「うん、よろしい。」

 

ヒソヒソ(流石は兄さん。魔王の子供でも平常運転だ。)

 

ヒソヒソ(竜也君は昔から子供に優しいお方でしたから)

 

ヒソヒソ(フェミニストだな)

 

ヒソヒソ(てかロリコ《ヒュン!!》)

 

フリードの頬を投げた手裏剣がかすめる

 

「何か言ったか?」

 

「いえ!なんでもありません!」ビシッ!

 

グレイフィアから見ても、それはそれは見事な敬礼だったと言う。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

リアスの家、もとい城に入った俺たち。

 

「お嬢様、早速皆様をお部屋にお通ししたいと思うのですが」

 

「そうね、私もお父様とお母様に挨拶をしないといけないし」

 

「旦那様は現在外出中です、夕刻までにはお帰りになる予定です。夕食の席で皆様と会話しながらお顔合わせしたいとおっしゃっていました。」

 

「わかったわ、グレイフィア。それじゃあ皆には一度それぞれの部屋で休んでもらおうかしら。荷物はもう運んであるわね?」

 

「はい、お部屋の方も今からお使いいただいて構いません。」

休めるのか、列車の中ではしゃぎ過ぎたし、ここらで一服するとしようか。

 

「竜也様、ヴァーリ様」

 

「はい?」

 

「……何でしょうか?」

 

部屋に向かおうとしたらグレイフィアさんに呼び止められた。何故かヴァーリまで。

 

「誠に申し訳ございません。お二人にはこれから魔王様方のもとに下って頂きたいのです」

 

「「は?」」

 



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白月龍皇と顔合わせ

 

「たっくぅーん☆久しぶりー会いたかったー♡」

 

「ようセラた〜ん♪俺も会いたかったぞ~♪」

 

顔を会わせて早々にセラたんとハイタッチする。

 

「おっすお前ら、さっきぶり」

 

「何でいるんだバカ親父」

 

何故かそこにはアザゼルの姿もあった。

 

「やあ、竜也君、ヴァーリ君、久しぶりだね。とりあえず、そこの席に座ってくれるかな?」

 

サーゼクスさんが声をかけてくる。俺とヴァーリは指定された席にすわった。

 

「君たちが『逸脱者』と今代の『白龍皇』だね。アジュカ・ベルゼブブだ。よろしく」

 

「……ファルビウム・アスモデウスです」

 

科学者らしき風貌の悪魔と、見るからに気だるそうな悪魔が俺たちに挨拶する。この二人が残りの四大魔王か……

 

「はじめまして、俺の名は雷門竜也。ちょっと規格外な一応人間の人外です。よろしくどうぞ」

 

「………雷門ヴァーリです」

 

(あれ?おかしい、いつもなら『ちょっとじゃ済まないだろ!』と真っ先につっこみに来るのに……)

 

竜也はヴァーリの反応の薄さに困惑する

 

「さて、君たちをここに呼んだのには2つ理由がある。」

 

サーゼクスさんが切り出す。

 

「…………理由、とは?」

 

「ああ、僕の『女王』であるグレイフィアからの報告なんだが、……ヴァーリ君。君の魔力はかつてグレイフィアの支えていた、ルシファーの魔力によく似ていると……」

 

言うより早く体が動いていた。椅子を蹴りあげて立ち上がり、ヴァーリの前に立つ。

「それがどうした?例えルシファーだろうと関係ない。こいつは俺の弟で、右腕で、家族の、雷門ヴァーリだ。それ以上でもそれ以下でもない。」

 

「っ!!………退いてくれ、兄さん。俺の口で言いたい。」

 

ヴァーリと目が合う。いつも以上に真剣な目。俺はただ頷き後ろに下がり、ヴァーリは立ち上がる。

 

「そちらの予想通り、俺のかつての名はヴァーリ・ルシファー。旧魔王派、ルシファーの血筋だ。」

 

その言葉に、魔王たちは驚愕し、アザゼルは神妙な顔になる。

 

「まぁ、と言っても俺は悪魔と人間の混血で、そして宿したのが『白龍皇』。俺の父親は大層俺が不気味に見えたんだろうさ。そしてそいつのとった行動は虐待。日に日に暴行はエスカレートしていき、食事もまともに与えられない日もあった。」

 

それにより反応したのはサーゼクスさんとセラたんの二人。二人とも家族に強い思い入れがあるからだろう。ふと、アザゼルの方を見ると、握り締めた拳には血管が浮き上がり、奥歯を噛み締めているのがわかった。

 

「あの時はただ辛かった。何が悪いのかわからない。どうすればいいのかもわからない。痛くて、辛くて、苦しくて、悲しくて、ある日俺は、持てる力を振り絞って逃げ出した。だけど行く当てなんて有りはしない。ふらふらとさ迷って、立ち上がる力もなくなって、ここで野垂れ死ぬんだと思った。希望なんて有りはしなかった。ただただ自分の生を呪った。」

 

ヴァーリの言葉に全員が黙って耳を傾けていた。

 

「………そんな時だ、兄さんが俺を絶望の淵から引き上げてくれたのは。兄さんは今にも死にそうな俺を家まで連れて行った。家では父さんと母さんが手厚く看病してくれて、俺は助かった。そして俺はヴァーリ・ルシファーから、雷門ヴァーリになった。その日から全てが変わった。雷門家の次男になって、兄さんの弟になって、イッセーたち親友が出来て、大切な仲間が出来て、親父が一人増えて……幸せだった。世界が輝いて見えた。手放したくないと思った。」

 

ヴァーリは目を閉じ、息を吸い込んでから、吐き出すように言った。

 

「俺はもうルシファーじゃない。俺の親父は雷門秀とアザゼルだ!俺の母親は雷門茜だ!俺はヴァーリ・ルシファーじゃない!俺は……兄さん…雷門竜也の弟で、右腕で、家族で、『龍の紡ぐ絆』の科学参謀、兄さんの影を照す月!『白月龍皇』、雷門ヴァーリだ!!!」

 

それはヴァーリの心の底からの叫びだった。俺は再びヴァーリの前に立つ。

 

「聞いた通りだ、ヴァーリはもうルシファーとは何の関わりもない。なんなら俺の首を賭けてやってもいい。」

 

「なら俺の首も賭けな。」

 

するとアザゼルもが前に出てくる。

 

「と、父さん……」

 

「ヴァーリよぉ、お前は誰が何と言おうと俺の息子だ。親ってのはてめえの子供のためなら命も惜しくはねえ。それが出来ねえやつは親を名乗る資格もねえ、ただのグズだ。そんな奴に……お前の親は名乗らせねえ!」

 

アザゼルの今の姿は、堕天使総督ではなく、子を思う一人の父親の姿だった。

 

「………やれやれ、参ったね。これでは完全にこちらが悪者じゃないか。」

 

「だから言ったでしょサーゼクスちゃん。たっくんなら大丈夫だって☆」

 

「ハハハ、その通りだ。済まないヴァーリ君、君を疑うようなことを言って。君たちなら心配はないだろうと思ってはいたんだが、……いやはや、君たちの絆の深さには感心させられるね。僕は君を信用させてもらうよ。」

「私も私もー☆」

 

「僕もそれでいいや」

 

「私は研究者として彼のスペック、特に頭脳に実に興味があるのだが……」

 

「おい、俺の弟に妙な真似してみろ。和平協定関係なくカチコミかけるからな」

 

「ハハハ、それは勘弁願いたいね。君に本気で暴れられたら僕もただではすまなさそうだ。て言うか冥界が滅ぶ」

「………サーゼクス、まじで?」

 

「「「まじで」」」

 

なんとも言えない表情になるベルゼブブとアスモデウスの二人。

 

「さて、ヴァーリ君についての話はここまででいいだろう。彼は十分に信用に値する。ということで、いいね?」

 

「うん☆」

 

「ああ」

 

「へーい」

 

三者三様の返事をする魔王方。

 

「それでは2つ目の用件だが、竜也君。明日若手悪魔を集めた会合が開かれるのは知ってるかな?」

 

「ええ、聞かされてはいますよ。」

 

「よろしい、それで君には我々と同じ立場ということで参加して欲しいんだ。」

 

「なるほど、こいつはもはや一陣営のトップだ。妥当なところだろうな。」

 

アザゼルが顎をさすりながら言う。

 

「わかりました。それくらいなら」

 

「ありがとう、助かるよ」

 

その後、会合時の大まかな打ち合わせなどがあり、四大魔王+堕天使総督との会議は終わった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

あれから数時間後、俺たちはグレモリー邸に戻っていた。現在俺はグレモリー卿とその御夫人と対面している。

「では、はじめましてだな、雷門竜也君。君のことはサーゼクスからよく聞かされているよ。」

 

「うふふ、はじめまして、リアスの母のヴェネラナ・グレモリーです。」

 

にこやかに挨拶をしてくれるグレモリー卿と御夫人。……てか二人とも若いな。御夫人なんかパッと見リアスと姉妹に見える。

「はじめまして、グレモリー卿、そして奥方様。この度リアスと婚約させて頂いた雷門竜也です。」

 

「ハハハ、そう固くなることはない。もうすぐ我々は身内同士になるのだからね。なんなら今からお義父さんと呼んでくれてかまわないのだよ?」

「い、いや、今からは流石に……」

「あなた、竜也さんが困っているでしょう。どのみち今年中には結婚するのだから、焦り過ぎではないの?」

 

「う、うむ、しかしだな」

 

「あなた」

 

「……そうだな、どうも私は急ぎすぎるきらいがあっていかん……」

 

……どこの家でも女が強いんだな……俺も将来尻に敷かれるのだろうか……

 

「グレモリー卿、本来なら次代当主となるはずだったリアスを我が家に嫁入りという形になってしまい、誠に申し訳ありませんでした。」

「いや、これはリアス自身が決めたことだ。君が気にやむことはない。それに、私たちは親として、リアスの幸せを願っている。私は一度、危うく彼女からそれを奪ってしまうところだった。……娘を、リアスのことを、どうかよろしく頼む。」

 

真剣な眼差しで俺の目を見るグレモリー卿。

 

「承知しております。俺は絶対にリアスを不幸にはしません。例えこの命に代えても」

 

「ハハハ、信じているよ、竜也君。」

 

「おまかせあれ」

 

こうして、俺のリアスのご両親との顔合わせは無事達成できたのだった。……そして俺が戻ってきた後のことだった。

 

「うう……ヴァーリお前…お前ってやつわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「グスッ…ヒック…ヴァーリ兄様ぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ヴァーリさん、辛かったんですね、苦しかったんですね。大丈夫です、私がそばにいてあげます。」

 

「に゛ゃあああ!ヴァーリちゃぁぁぁぁん!!!お姉ちゃん気づいてあげられなくてごめんに゛ゃあああぁぁぁぁ!!!」

 

「おうおう、愛されてるねぇヴァーリ」ニヤニヤ

 

「…………覚えてやがれクソ親父ぃ……」

 

現在ヴァーリはうちのメンバー、特に古株の連中に泣きながら抱きつかれ、もみくちゃにされている。先ほどの会議、証言記録とかで映像に撮していたらしく、それをアザゼルが持って来てみんなに見せて、この有り様である。

「ま、これもお前への愛ゆえだよ」

 

「………愛」

 

ヴァーリは咀嚼するように繰り返し言う。俺はヴァーリの頭をコツンと小突く。

 

「これからもよろしくな、弟よ」

 

「兄さん………ああ!」

 

ヴァーリの今の顔は、少し涙目だが、さっぱりとした笑顔だった。

 

 




感想等楽しみにしてます。次回は番外編、バレンタインデーの巻、お楽しみに


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若手悪魔と顔見知り

現在俺たちは若手悪魔たちの顔見せの行われる魔王領の都市、ルシフォードの一番大きい建物のエレベーターに乗っている。

 

「いいかみんな、俺は今回魔王と同格の立場としてアザゼルと共に出席する。みんなは他の若手悪魔たちと同じ場所に待機しててくれ。」

 

『『『『『了解』』』』』

 

エレベーターが止まり、案内人に先導されて会場に向かう。すると廊下に複数の人影があった。

 

「サイラオーグ!」

 

リアスが人影の内の一人に声をかけた。

 

「久しぶりだなリアス」

 

「リアス、知り合いか?」

 

「ええ、彼はサイラオーグ・バアル。私の従兄弟よ。」

バアルと言うと、魔王に次ぐ地位の大王家の跡継ぎか。

 

「貴殿が『魔源覇王』殿だな?俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次代当主だ。」

 

サイラオーグは俺に歩出て俺に握手を求め、俺はそれに応じる。

 

「でも何で廊下に?」

 

リアスが尋ねるとサイラオーグは心底嫌そうな顔をする。

 

「ああ、それはだな……」

 

ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!

 

「な、何だぁ!!!?」

サイラオーグが何か言おうとした時、爆音が周囲に鳴り響く。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 

「こ、今度は地震だ!!!?」

 

「みんな、姿勢を低くして防災頭巾を被って机の下に!!!」

 

「いや、頭巾も机もねぇよ」

 

裕斗のボケは置いといて、地震の振動と共に伝わって来たこの魔力……

「あいつらか」

 

「は?」

 

「はぁ……ちょっと行ってくる」

 

「ちょっ!?アニキ!?」

 

イッセーの呼び掛けに片手を振ってあしらい、俺は会場に入る。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

イッセーside

 

アニキの後に続いて会場に入ると、中は滅茶苦茶に破壊されており、その中央で、同い年ぐらいと思われる、鋭い目付きの眼鏡をかけたドレス姿の美少女と、顔にタトゥーを入れ緑色の髪を逆立てたパンクファッションのヤンキー風の男が睨み合っていた。

 

「ゼファードル、こんな所で暴れて何考えてるの?バカなの?死ぬの?」

 

「黙りやがれシークヴァイラ!てめぇのその減らず口永遠に聴けなくしてやろうか!あぁ!?」

 

シークヴァイラと呼ばれた女の子が見下したように言い捨てると、ゼファードルと呼ばれた男が睨みを効かせて捲し立てる。

 

「はん、やってみなさいよ成り上がり風情が」

 

「ッ!!!?………ああいいぜ、やってやらぁ!」

 

するとヤンキーは床を蹴り女の子の正面まで接近する。

 

「『エクスプロードブロー』!!!」

 

ヤンキーがパンチを繰り出すと、女の子は横に飛び避ける。すると拳の直線上にあった床が爆発した。

 

「『クエイクウェーブ』!!!」

 

女の子の杖の先から衝撃波を放たれる。ヤンキーはそれを紙一重でかわすが、軌道上にあった壁が粉々に粉砕された。

 

「ちっ、チョロチョロとうざってぇなぁこのアマ!」

 

「あなたは殴ってばかりで単調なのよチンピラ」

「その口爆散させてやろうかこのワニ女!!」

 

「その矮小な頭粉々に粉砕するわよこの駄犬!!」

 

「「上等だぶっ殺す!!!」」

 

二人は再び攻撃を放とうと身構える。

 

「なーにやってんだお前ら」

 

するとそこにアニキが割って入った

 

「あ゛ぁ!?なんだ…お!?」

 

「邪魔するんじゃ…な!?」

 

すると二人は驚いたように目を見開く

「た、竜也様!?」

 

「あ、アニキ!?竜也のアニキじゃねぇですかい!?」

 

『『『『『『はぁ!!!?』』』』』』

 

え、何!?このヒトらアニキと知り合い!?

 

「『魔源覇王』殿、シークヴァイラとゼファードルとは知り合いなのか?」

 

サイラオーグさんがアニキに尋ねる。

 

「ああ、二年ほど前にな。当時俺は世界を回る旅をしていてな、その時ちょうど眷属探しをしている二人と出会ったんだ。」

 

「正確には俺が先でこの女が後から横入りしてきたんだがな」

 

ゼファードルがシークヴァイラさんを指差して言う

「ふん、よく言うわ。竜也様に喧嘩吹っ掛けてボコボコにされて金魚の糞みたいにくっついてた癖に」

 

「お前も似たようなもんだろうが!散々アニキのこと見下したこと抜かしといてメッタメタにやられてアニキの寛大さに触れたとたんに手のひら返しやがって!」

 

「落ち着けっての、ったく相変わらず仲悪いなお前ら。んで、喧嘩の原因は何だ?」

 

「あっ、そうだ!このアマ俺がアニキの組織に入りてぇつったら、『あんたなんかが入ったら竜也様の面汚しになる』…とか抜かしやがったんだ!」

 

「当然でしょう。あなたのような品性の欠片もないようなやつが加わったら竜也様の品格が下がってしまうじゃないの。私のような知性と気品に富んだ者こそが竜也様の配下にふさわしいのよ。」

 

「なーにが知性と気品に富んだだよロボオタクが」

 

「分子レベルまで粉砕するわよこの駄犬!!」

 

「チリも残さず爆破すんぞこのワニ女!!」

 

「「んだてめぇやんのかこらぁ!!」」

 

「だから落ち着けっての」

 

二人が掴みかかろうとするとアニキが抑える。

 

「はぁ、言っておくがなシークヴァイラ、俺は別に汚れるほどの面は持ち合わせてないし、入ってくれるやつにケチはつけん。」

 

「て、てことはアニキ!」

 

「ああ、来い来い。お前らなら大歓迎だ。」

 

「ほ、本当っすか!?ありがとうごぜぇますアニキ!」

 

ヤンキーもとい、ゼファードルは嬉しそうに両手でガッツポーズをする。

 

「た、竜也様!?本当によろしいのですか!?」

 

シークヴァイラさんは慌ててアニキに問いただす。

 

「別に構わんよ。なんならお前も入るか、シークヴァイラ?」

 

「!!!?わ、私が!?本当によろしいのですか!?」

 

「何度も言わせんなっての」

 

「ッ!!………ありがとうございます!!!」

 

…………な、なんか急展開過ぎてついていけないけど…新たに仲間が増えたらしい

 

「おいシークヴァイラ、俺が先に入ったんだから俺が先輩だぞ。せいぜい敬えよ」

 

「寝言は寝て言いなさいよ駄犬」

「んだこらてめぇ!!」

 

「止めろっての」

 

また取っ組み合いの喧嘩を始めた二人を抑えるアニキ、すると見覚えのある顔が歩いてきた。

 

「やれやれ、やっと終わったと思ったらしょうがないねぇ。やあ皆さんお久しぶり」

 

「「「「「何でいるんだてめぇはぁ!!!」」」」」

 

「ソモサン!!?」

 

俺たちのドロップキックを食らい吹っ飛ぶディオドラ

 

「おいてめぇ、何でここにいるんだこのストーカーが」

 

「い、いや何でって、僕も一応若手悪魔だし……」

 

「てめぇは日頃の行いが問題なんだよ!」

 

「痛い!ちょっ!?止めて蹴らないで!」

「あ、あの……その辺にしてあげてください」

すると誰かが話しかけてくる。見るとディオドラの眷属だった元シスターさんたちだ。

 

「あんたら、何でまだこいつのとこにいるんですか?なんか弱みでも握られてるんですか?」

 

「い、いえ違います!私たちは自らの意識でディオドラ様のもとにいるんです!」

 

「は?」

 

「真実が発覚した後、ディオドラ様は必死に私たちに謝り続けました。何時間も土下座して、蹴られても、ぶたれても、摩りきれて額から血が出ても頭を地面に擦り付けて……それに、それ以前もディオドラ様は、私たちのことを本当に大切にしてくれました。だから……」

 

俺はディオドラを見る。

 

「お前、今のは本当だろうな?」

 

「本当だ。僕は彼女らの人生を狂わせた。それに変わりはない。僕は責任を取らねばならない。この命に変えても」

 

俺はディオドラの目を見る。嘘は言っていないな……

 

「………はぁ、わかった。その言葉、信じるぞ」

 

「ありがとう」

 

なんだかんだでこいつも根は悪いやつじゃないんだな。ストーカーだけど

 

「あ、そうだ。僕らも『龍の紡ぐ絆』に加わったから」

 

『『『『『『はぁ!!!!?』』』』』』

 

こと後アニキに問いただしたところ、曰く『ほっとくと何仕出かすか解らんから手元に置いとくことにした』らしい。

 

 




感想等お待ちしております。次回もお楽しみに


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会合と夢

お久しぶりです。やっと期末テストが終わりました。


あの後、ゼファードルたちは職場契約としてうちに入ることとなり、ゼファードルはイッセー、シークヴァイラはヴァーリ、ディオドラたちは眷属が元シスターや聖女ということや本人の要望(土下座)でアーシアの配下に加わることになった。ちなみに、俺は三大勢力での会談の際、各勢力からお互いの同意の上でならスカウトできる権限をもらっているので問題はない。

しばらくして、イッセーたちはスタッフに連れられてさっきの待合室よりも更に広い場所に移り、俺はサーゼクスさんとセラたんのいる広場よりも高い場所にある席に向かった。そこにはいかにも権力持ってそうな連中がふんぞりかえって座っていたのだが……まぁ案の定俺のことを見下したようないかにも気にくわないって目で見て来やがる。まあ別に今のところはどうでもいいけど。セラたんは俺を見つけるとブンブン手を振り、俺はセラたんの隣の席に座った。

「ヤッホーたっくん☆」

 

「ようセラたん昨日ぶり」

 

「竜也君、今日はよろしく頼むよ」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。サーゼクスさん」

セラたん、サーゼクスさんと軽く挨拶をして下の広場を見ると、リアスたち若手悪魔六人とさその眷族、そこに加えて『龍の紡ぐ絆』ナンバー2のヴァーリを先頭に残りのメンバーが整列していた。リアスやヴァーリは今のところ緊張した様子はないが、アーシアやギャスパーは慣れない空気故かそわそわしている。そうして、リアスたち若手悪魔とヴァーリが一歩前に出た。

 

「……まずは、こうして集まってくれたことに感謝を。この会合は、次世代を担う若い悪魔である貴殿たちを見定める為のものである。」

 

「まあ、早速やってくれたようだが?」

 

初老の悪魔がしゃべり、ゼファードルやシークヴァイラを見て皮肉気に言うが、当の本人たちは全く気に止めてない。

 

「………だがその前に、若き新勢力の主には一言言わせてもらおう」

 

髭を蓄えた悪魔が言うと、その場にいる全員の視線が俺に向けられる。こりゃ転生前の俺なら卒倒してたな。

 

「貴殿は魔王様の要望によってこの場にいるが、本来なら貴殿がこの場にいることは許されないことは理解して頂こうか」

 

「さよう、人間ごときがこの会合に立ち会うなど本来あってはならないことである」

 

「身の振り方には気を着けてもらおうか」

 

おうおう、いきなり言ってくれるねぇ。要するに新参者の若造、しかも人間がデカイ顔するなよってことだろ?全くこれだからなまじ権力のある連中はめんどくせぇ。

ふと視線を反らすと、ヴァーリやリアスたち、果てはゼファードルやシークヴァイラまで俺の同席に文句を言った連中を敵意丸出しの目で睨み付けていた。

 

「まあまあお三方、そこまで言わずともよろしいではないか。新勢力のトップと言えど雷門殿はまだお若い。我々が大人の対応を見せましょうぞ。あぁそれと雷門竜也殿、私の孫が貴方の歌の大ファンでしてな、後でサインでも頂けませんかな?」

 

端の方に座っていた老人がやんわりとフォローを入れてくれた。向けられる視線が敵意だけてないことに安心した。

 

「さて、君たち六人は家柄実力共に申し分ない次世代の悪魔だ。更に、『龍の紡ぐ絆』の君たちも未来有望な若者たちだ。だからこそ、デビュー前に互いに競い合い、その力を高め合って欲しい。」

 

サーゼクスさんがそれぞれに視線を向けながら言う。

 

「我々もいずれは『禍の団』との戦いに投入されるのですね?」

 

サイラオーグがサーゼクスさんに尋ねる。

 

「それはまだわからない。だが、私としては出来るだけ若い悪魔たちは戦いに投入したくないと思っている。」

 

サーゼクスさんはそうサイラオーグに返す。まあこの人ならそう言うだろうな。

 

「お言葉ですが、我らとて悪魔の一端を担っています。この年になるまで先人の方々から多くのご厚意を受けている身でありながら、何も出来ないとなれば……」

 

「サイラオーグ、その気持ちは嬉しい。勇気も認めよう。だが、はっきり言わせてもらえば、それは無謀と言うものだ。万が一にも、君たちを失う訳にはいかないのだ。次世代を担う君たちは、君たちが思っている以上に、私達とってかけがえのない宝なのだから。焦らず、ゆっくり、確実に成長していって欲しいのだよ」

 

すみませんサーゼクスさん。かけがえのない宝、すでに1/3が引き抜かれてます。サーゼクスさんの言葉にサイラオーグは納得したのか、そのまま何も言うことはなかった。

それから、お偉いさんの何人かの冥界の歴史やら自分の事やらを長ったらしく語り、サーゼクスさんがレーティングゲームについて色々と説明したりとして時間が過ぎていった。

 

「さて、長い話に付き合わせて申し訳なかった。これで最後だ。冥界の宝である君たちに、それぞれの夢や目標を語って貰おう。」

 

「俺の夢は魔王になる事……それだけです」

 

最初に答えたのはサイラオーグ。それは要約すればいつかその椅子をもらい受けると言うこどだ。しかし、彼は迷いなく真正面から堂々とそれを言ってのけた。それは生半端な覚悟ではないだろう。

 

「ほお、大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」

 

「私は『魔源覇王』雷門竜也の妻として、“誇り”を決して忘れずに、生涯彼を支えて行く事が目標です。」

 

二番手はリアス。なかなか嬉しい事を言ってくれるじゃないか。“誇り”と“プライド”を履き違えた他の連中とは大違いだ。

 

「私は自らの培ったこの知識と技術を、竜也様の様に世界に役立てて行きたいと思っています。」

 

「僕はこれと言った夢や目標はありません。ですが、こんな僕と共にいてくれる眷属たちと、これからも共に歩んで行きたいです。」

 

「俺は竜也のアニキのようなデカイ男に成りたい。そしていつか、アニキと真正面からぶつかりあえる男に成りたいです。」

 

続けて、シークヴァイラ、ディオドラ、ゼファードルの順だ。ゼファードルとシークヴァイラの夢を語る際、俺の名前が出た時、お偉いさんはあからさまに気にくわない顔をしていたが。

 

「私の夢は……レーティングゲームの学校を建てる事です」

 

そして最後であるソーナ嬢が自身の夢を語った。

 

「レーティングゲームを学ぶ場所ならばすでにあるはずだが?」

 

さっきの髭悪魔が尋ねるが、ソーナ嬢は淡々と続ける。

 

「それは上級悪魔と一部の特権階級の悪魔のみしか行く事が許されない学校の事です。私が建てたいのは、下級悪魔、転生悪魔も通える分け隔ての無い学舎です」

 

なるほど、身分の差別の無い開かれた学校のことか。相変わらず悪魔らしくない、だけど彼女らしい夢だな。

 

「「「ハハハハハハハハハハハハ!!!」」」

すると突然お偉いさんの何人かが笑い出した。何だ?今のどこに笑う要素がある?

 

「それは無理だ!」

 

「これは傑作だ!」

 

「なるほど!正に夢見る乙女と言う訳ですな!」

 

「若いというのはいい!しかし、シトリー家の次代当主ともあろうものががそのような夢を見るとは!ここがデビュー前の顔合わせの場でよかったと言うものだ!」

 

何だこいつら?俺が言うのも何だけど、この会合の主旨わかってんのか?

 

「私は本気です」

ソーナ嬢はそれでも引く事なく笑う連中を見据えて言う。

 

「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出だされる常。その様な養成施設を作っては伝統や誇りを重んじる旧家の顔を潰す事となりますぞ?」

 

「さよう。悪魔の世界が変革の時期に入っている事は我々も認めている。だが、変えていいものと悪いものの区別くらいはつけてもらいたい」

 

「たかが下級悪魔に教育など、悪い冗談としか思えんな」

 

……………あぁ、駄目だわこりゃ、抑えらんねぇわ

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ヴァーリside

 

(チッ、老害どもが、胸糞悪いぜ)

 

嘲る様にシトリーの語った夢を笑うお偉い連中を見て俺は内心舌打ちする。見るとイッセーやリアスも不快と苛立ちを含んだ顔をしていた。

 

『グルルルルルルル………』

 

『『『『!!!!?』』』』

 

その時だった、笑っていた連中に向けて三つ首の龍が牙を向いて目の前まで迫っていた。それは以前、コカビエルとの戦いの際にケルベロスの大群を畏縮させた兄さんの幻影、曰く『グルメ細胞の怪物』だった。怪物から放たれる濃厚な殺気、並大抵の生物は意識を保っていられないだろう。

殺気の大元である兄さんは、かつてないほどの鋭い目で連中を睨み付けていた。情の深い兄さんのことだ。こうなる事はわかっていた。

連中は兄さんを侮り過ぎたのさ。たかが人間?若造?とんでもないね。確信を持って言えるね。兄さんが本気で暴れれば、()()()()()()。哀れだねぇ、連中はもはやライオンに捕まったネズミも同然だ。

 

「ま、魔源覇王……殿…何か言いたい事でも?」

 

さっきまでの態度を一変させて一人が尋ねた。見ると兄さんは魔王サーゼクス・ルシファーに目線を向けていた。恐らく発言の許可を求めているのだろう。サーゼクス・ルシファーが無言で頷くと、兄さんもまた頷き口を開いた。

 

「言いたい事ねぇ……逆に聞くが、貴方はこの会合の主旨を理解しているのか?若手は“宝”、そう言ったのはそちら側のはずだ。その“宝”の夢を笑うとはどういう了見だ?」

 

「そ、それは……」

 

「もちろん、伝統や誇りが大事なのは重々承知している。だがな、そもそもそちらが転生システムを産み出したのは何の為だ?悪魔の種の存続の為だろう?それなのに、その転生悪魔や下級悪魔たちを蔑ろにしては本末転倒ではないか?そのような状態が続けばどうなると思う?積もり積もった負の感情はやがて……」

 

兄さんはそこで言葉を区切り目を閉じる。

 

「クーデターという形で牙を剥く。」

 

再び目を開けた兄さんは、凶悪な笑みを浮かべて笑った連中を見据える。

 

「その点、ソーナ嬢のその夢は実に良い。誰もが分け隔てなく通える学校。それは転生悪魔や下級悪魔たちに渦巻く負の感情の潤滑油になろう。もし彼女の夢が実現することになったならば、我々『龍の紡ぐ絆』は全力でバックアップしよう。」

 

兄さんの言葉に、会場が静まりかえる

 

「………と、言うのが俺の建前だ。」

 

思わずずっこけそうになった。兄さん、あんたは何でこういう時にギャグに走るんだよ……

 

「本音を言わせて貰うとな、既に知っている人もいると思うが、俺は今年、このセラフォルー・レヴィアタンと婚礼の儀を挙げる」

 

いや、このタイミングで言う事だろうか?セラフォルーは「そ、そんなたっくん……いきなり…」とか言って顔を赤くしてるし……

 

「何故このタイミングで言う必要がある?ってか?まぁ聞け。俺たちが結婚すればシトリー家の面々と俺は親戚関係となる。つまり、遠くない先、ソーナ嬢は俺の身内ということになる訳だ。」

 

………なるほど、そういう事か。兄さんが言いたいのは…

 

「身内を悪く言われて黙っていられるほど、俺は大人じゃないんだよ」

 

兄さんは笑みを浮かべた顔から一変、怒りに染まった顔で連中を睨み付ける。会場が再び静寂に包まれた。

 

「…………ソーナ・シトリー殿」

 

「はい」

名前を呼ばれて返事をしたシトリーに、笑った連中は頭を下げた。

 

「無礼を詫びよう。貴殿の夢を笑い、申し訳なかった。今後一切、貴殿の夢を笑わないと誓おう」

 

まさか謝られるとは思わなかったのか、シトリーの顔が驚愕に染まる。その直後、兄さんから発せられていた殺気が消えた。

 

「さて、それじゃあサーゼクスさん、そろそろ本題に入りましょうか?」

 

「ああ、そうだね。それじゃあ、若手悪魔、そして『龍の紡ぐ絆』の諸君、君たちでレーティングゲームをしないかい?」

 

『!!?』

サーゼクスの言葉に広場の全員が驚いていた。

 

「実はね、アザゼルとセラフォルーが各勢力のレーティングゲームファンを集め、デビュー前の若手の試合を観戦させる計画が『龍の紡ぐ絆』と共同で進行中でね。その大一回目として、リアスとソーナでレーティングゲームを執り行ってみないか?」

 

リアスとソーナは顔を向け合う。その瞳には闘志が宿っていた。

 

「公式では無いとは言え、私にとっての初のレーティングゲームの相手が貴女だなんて、運命を感じてしまうわね、リアス」

 

「負ける気は毛頭ないわよ、ソーナ?」

 

両者火花を散らしていた。

「我ら『龍の紡ぐ絆』は2チームに別れてそれぞれの総当たり戦となる。詳しい日付と対戦カードは後日伝えよう。」

 

「二人のゲームの日取りは人間界の時間で八月十日。それまで各自好きに時間を割ってくれてかまわないってそれでは、本日はここまでとしよう。」

 

そうしてこの日はその場で解散となった。レーティングゲーム総当たり戦……なかなか面白いことに、なったじゃないか

 

 

 

 

 

 




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チーム分けとつかの間の休息

「なるほど、シトリー家か」

 

リアス宅に戻った俺たちは、一足先に来ていたアザゼルに事を知らせていた。

 

「人間界の時間で言うと……今から計算して二十日後か」

 

「やっぱり修行ですよね」

 

イッセーの質問にアザゼルは頷く

 

「それじゃあ、チーム分けの発表といこうか。あ、その前に……夕麻、カーラマイン、お前たちはリアスのチームに行って貰う。カーラマインが『騎士』、夕麻が『兵士』だ。」

 

「「はい!」」

 

「よろしくね、カーラマインさん」

「はい!頑張りましょう、裕斗様!」

 

「頑張ろうな、夕麻ちゃん!」

 

「うん!イッセー君♡」

 

「いーなー!いーなー!私もイッセー君と同じチームがいいー!」

 

イリナが駄々をこねる

 

「文句言うな、チームバランスのためだ」

 

「ぶぅ~!」

 

「やれやれ……まずAチーム、『王』にヴァーリ」

 

「おう」

 

『・・・・・・・・・・・・・・』

 

「い、いや違うからね!?だじゃれじゃないからね!?」

 

「次」

 

「聞いてぇ!!?」

 

「『騎士』にイリナとドーナシーク」

 

「はっ!」

 

「オッケー」

 

「『僧侶』にアーシア」

 

「はっはい!」

「『戦車』にイザベラとフリード」

「はっ!」

 

「ケハハハ!りょ~かい☆」

 

「『兵士』にミッテルト、イル、ネル」

 

「了解っす!」

 

「「はーい」」

「続けてBチーム、『王』は俺」

 

「……………何でBの方なんすか?」

 

「何となくだ、続いて『騎士』にゼノヴィア」

 

「はっ!光栄至極にあります!」

「『戦車』にベル」

 

「わん!」

 

「『兵士』にカラワーナ」

 

「はっ!」

 

「………と、まあ、今のところはこんな感じだな」

 

「ありゃ?アニキのチームはえらく少数精鋭だな?」

 

イッセーがふと疑問を口にする

 

「確かにちょっと数が心もとないわね」

 

「大丈夫か兄さん?」

 

リアスとヴァーリも俺に心配そうに尋ねる

 

「お前ら……俺だよ?」

 

『『『『『ああ、納得』』』』』

 

一発で全員納得しやがった。いやいや、突っ込めやお前ら

 

「……ま、まあ…と、言うのもだが、実は『騎士』と『僧侶』には当てがあるんだ」

 

「それは新入りということですか?」

 

ゼノヴィアが尋ねる

 

「ああ、以前から旅をしていた時に知り合った仲でな、所用で別行動をしていたんだが、しばらくして合流することになったんだ。二人とも実力は申し分ないし、ま、会ってのお楽しみってことで」

 

「わかった」

 

「よし、早速明日から修行を開始するぞ。既に各自のトレーニングメニューは竜也と考えてある。」

 

「ああ、その事何だか、俺はソーナ嬢のトレーニングをつけることになったから、その間お前らは俺なしでトレーニングをつけろ」

 

俺の言葉に全員が驚愕する

 

「どっどういうことだよアニキ!?」

 

イッセーが慌てた様子で尋ねる

 

「理由としてはセラたんに頼まれたのと、なるべく勝負になるようにするためだ。ぶっちゃけ、今のソーナ嬢たちじゃ、お前らに勝つ見込みはほとんどないだろう。

……あとは、お前らが俺の助力なしでもやってのける様になるため、だな」

 

「…………どういうことかしら?」

リアスが尋ねる

 

「いいか?今までの事を考えると、お前らは肝心なところで俺に頼ってしまう。『俺がいるから大丈夫』、『例え自分がダメでも俺が何とかしてくれる』ってな?」

 

思い当たる節があるのか、みんなは顔を伏せて黙ってしまう。

 

「頼ってくれるのはかまわないが、それだとお前たちはいつまでたっても成長出来ない。これから先、俺が手を貸してやれない時もいつか来るだろう。そんな時が来ても大丈夫なように、俺に証明してみせな?」

みんなはしばらく黙っていたが、意を決した様に俺の顔を見る。

 

「………わかったわ、私たちがどれだけ成長したか、このゲームで見せてあげる!」

 

「アニキの手を煩わせるまでもないぜ!」

 

「ウチらも竜也様がいなくても大丈夫ってところ、証明して見せるっす!」

「よっしゃ!期待してるぜ、お前ら!」

 

『『『『『『了解!!!』』』』』』

「話は以上だ。明日は朝食後に庭に集合しろ。そこで改めて修行の内容について発表する。気合い入れろよ。」

 

『はい!』『おう!』『ええ!』

 

各々気合いの入った返事をする一同

 

「皆様、お話がまとまったところで温泉の準備が出来ましたので、よければご利用ください」

そこへ狙い済ました様にグレイフィアさんが現れた。

 

ヒソヒソ(なあ、温泉って個人の家にあるものなのか?)

 

ヒソヒソ(突っ込むな、庶民の我々からは次元の違う話だ)

 

俺に耳打ちするイッセー

 

「お、いいねぇ!やっぱり冥界と言えば温泉に限る!」

 

ヒソヒソ(そうなのか?)

 

ヒソヒソ(俺に聞くなよ)

 

イッセーは今度はヴァーリに耳打ちしている

 

「冥界で屈指の名家であるグレモリーの私有温泉とくれば名湯も名湯だろう。今から楽しみだぜ♪」

 

「し、私有温泉……」

 

「突っ込むな、突っ込むんじゃない。我々の理解の範疇を越えている」

 

ウキウキ顔のアザゼルに反し、唖然とするイッセーとイッセーの肩に手を置く俺。

 

「そうね、会合で疲れちゃったし、早速入ろうかしら」

リアスが肩に手をやり言う。やはりリアスにも精神的疲れがあったのだろう。

 

「にゃふふ、白音~、いっしょに洗いっこするにゃ♪」

 

「いいですけど……変なとこ触らないでくださいね?」

 

手をワキワキさせる黒歌と半目で黒歌を見る白音。まさか前科が?

 

「イッセーきゅん、わかってるよね?」

 

「ふっ、言われずとも……」

 

なにやらヒソヒソやっているイッセーとフリード。こ、こいつら………

 

「そ、そんなぁ……ヴァーリ兄様と裸のお付き合いなんて……僕には難易度高過ぎですぅ……」

 

「おい、何でそこで俺の名前出した?それだとなんか俺がアブナイやつみたいじゃねぇか。」

 

顔を赤くしてモジモジしながら言うギャスパーに突っ込むヴァーリ。

「は、裸のお付き合い……竜也さんが……ぷっはぁ!」

 

「アーシア、鼻血鼻血」

 

顔を赤くして鼻血を吹くアーシアとハンカチでアーシアの鼻血を拭くイリナ………なんだろう、もう既にカオスだよ……

 

そんなこんなで、俺たちは一旦部屋に戻りそれぞれ着替えを持って温泉に向かったのだった。

 




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温泉と男の性

すみません、しばらくぶりだったので調子が出なくて遅くなりました。
《》は小声での会話と思ってください


立ち込める湯気の中、カポーンと小気味よい音が鳴る。現在俺たちはグレモリー家所有の温泉にいた。

 

「漆黒~翼~靡かせて~♪」

 

アザゼルが湯に浸かりながら自作演歌、『漆黒堕天節』を歌っている。

「……相変わらず無駄に上手いなこのヒト…」

 

「てかなんなんすかその歌?」

 

「ん?俺の自作演歌『漆黒堕天節』、もうすぐリリース予定だぜ」

 

アザゼルが自慢気に言う

 

「んなもん誰が買うんだよ」

 

「せいぜいアザゼルのシンパか部下からの接待目的だろ」

 

「需要がないのは間違いないな」

「おいお前ら、ヒソヒソ話してるつもりだろうが音が反響して全部聞こえてんだよ」

こめかみをヒクヒクさせながらアザゼルが睨んでくる。

 

「まあまあ落ち着けっての、ほれおひとつ」

桶に入れて湯船に浮かべていたお猪口と土瓶を取り出してアザゼルにお酌する。

 

「ったくこんなとこは用意いいな……グビッ…ブッ!?おま!これ牛乳じゃねぇか!」

 

飲んだものを吹き出すアザゼル

 

「ノンノン、牛乳にあらず山羊乳。健康に良いんだぜこれ」

「女子かお前はぁ!?」

 

「ははは……しっかしおせぇなぁ、ギャスパーとヴァーリ」

 

「ほら、早く行けって」

 

「で、でもぉ……」

 

すると遅れてヴァーリとギャスパーが入って来た。

 

「ずいぶん遅かったなヴァーリ」

 

「ああ、兄さん。いやギャスパーのやつがな、皆が入った後で入るなんて言うから引っ張って来たんだ。さっきもタオル胸まで巻こうとしてるし」

 

「だ、だってぇ…恥ずかしいんだもん!」

 

ギャスパーは顔を赤くして両手で胸部を隠しながらモジモジして言う。

「だもんじゃねぇよ、お前男だろうが。モジモジすんな胸を隠すな気色悪い」

 

ヴァーリはそう言って後ろからギャスパーの両手をつかみ上に上げる。

 

「やぁぁぁぁぁ!!ヴァーリ兄様のエッチーーーー!!襲われるぅーーーー!!!」

 

「誤解を生むような叫び声を上げるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

すると女湯の方から石鹸が飛んで来た。俺はそれをキャッチする。

 

「……………ヴァーリ、ほれ」

 

俺はそれをヴァーリに投げ渡す。

 

「何だよ兄さ………ッ!!!?」

 

石鹸にはこう彫られていた。

 

『ヴァーリさん、後でお話があります。by白音』

ダラダラダラダラ「……………………」

 

ヴァーリはダラダラと冷や汗を流しながら震える手で持った石鹸を凝視していた。

 

《止めときなってフリード君》

 

《大丈夫だってイケるイケる》

ふとそんな声が聞こえてきた方を見ると、カメラや双眼鏡のような物を傍らに置いたフリードと、それを止めようとする裕斗の姿があった。

《何してんのお前ら》

 

《あっ!竜也君たちも止めてよ!フリード君女湯覗こうとしてるんだよ!》

《お、何だよもう始めてたのか》

 

《後でちゃんと焼き回ししろよ?》

 

《ほーん、面白いことやってんじゃねぇか。おじさんも混ぜたまえよ♪》

 

裕斗の懇願に反し、嬉々としてそこに加わろうとするバカとマダオ。

 

《ちょっ!?何皆悪のりしてんの!?て言うかアザゼルさん!あんた仮にも先生でしょ!?》

 

《ふっ、だからこそ先生として生徒が不祥事を起こさない為にバレないよう協力するんだろうが》

 

《覗きを行おうとしてる時点で既に不祥事でしょうが!ちょっ、本当止めなって皆!バレたら事だよ!?殺されるよ!?》

《心配するな、この俺特製のステルスカメラだ。撮影時音は一切鳴らず撮影した映像は直ぐ様アジトの俺のパソコンに移転されさらに内部に脚と羽が内臓されており自立稼働と遠隔操作が可能だ》

 

《何でこういう時ばっかに本気だすんだよ君は!?てか犯罪だよ!?》

 

《俺ら人外なんて皆生まれた時から犯罪者みたいなもんだろ?》

 

《失礼な事を言うんじゃないよ!?人外の人たちに八つ裂きにされるよ君!?てかイッセー君!君には夕麻さんとイリナさんがいるでしょうが!》

 

《心配しなくても俺は夕麻ちゃんとイリナの完全に無防備なあられもない姿にしか興味ねぇよ。てか木場ぁ、そう言うお前だってカーラマインのそんな姿に興味あるだろ?》

 

《ッッ!!!?》

 

イッセーのその言葉に裕斗は沈黙する

 

《……っは!い、いや べ、別にき、興味ないって言ったら嘘になるけど、でも……》

 

《あれれぇ~?どしたの木場ちぃ~ん?》

 

《はぁ、やれやれ、しょうがねぇなぁお前ら》

 

《あ、アニキ》

 

《良いか裕斗?お前らもよく聞けよ?ある人がこんな言葉を残した……『エロいのは男の罪、………それを認めぬは女の罪ぃぃぃ!!』》

 

『『ッッッッッ!!!!??』』

 

その瞬間、イッセーやアザゼルたちは雷が落ちたような顔をした。

 

《…………………ふ、負けたよ》

 

裕斗は何処か吹っ切れたような顔になる。

 

《ははっ、まさかこの年になって教えられることになるとはなぁ》

 

《流石はダンナぁ!》

 

《言う事が違うぜ!》

 

《よし!やるぞお前ら!》

 

『『おう!』』

 

バカが団結した瞬間であった。

 

《よし!それじゃさっそく》

 

ドン!ボカン!

 

すると突然上空から魔力の弾丸が飛んで来てヴァーリのカメラを破壊した。イッセーたちが上を向くと、タオルを巻いたリアスが羽を出して覗き込んでいた。

 

「聞こえてるのよ、あなたたち」

 

そう言ってリアスは女湯に戻って行った。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「………………ゴミムシを見る目だったね」

 

「………………うん」

 

「あれ?てかアニキは?」

 

「あ、そういえばいつの間にかいない……」

 

イッセーたちがあたりを見渡すと、竜也はギャスパーと共に湯船に浸かっていた。

 

「へぇ、山羊乳ってけっこう美味しいんですね」

 

「だろ?」

 

(((((ず、ずりぃ………)))))

 

その後、温泉から上がってからイッセーたちはしばらく女性陣から口を聞いて貰えなかった。

 




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説教と古今東西

「………………で、反省してるのかしら?」

 

「「「「「はい、すみませんでした」」」」」

 

現在、覗きを働こうとした一同は皆正座させられており、その正面にもうそれだけで人を殺せそうな目をしたリアスたちが仁王立ちしている。

 

「まったく、覗きならまだ笑って許せたけど、盗撮なんて言語道断よ。わかってるの?ん?」

 

「は、はい……すみませんでした……」

 

リアスの睨みに萎縮するフリード、こいつだけ実行犯という事で重石風こんにゃくを乗せられている。さて、そろそろ助け船を出してやるかな?

 

「まあまあリアス、未遂に終わったんだしその辺に……」

 

「焚き付けたあなたも同罪だからねタツヤ」

 

「あ、はい、すみませんでした」

 

聞かれてたよおい、俺の嫁怒らすとすっげえ恐い。結婚するの怖くなってきた………嘘です本当はすっげえ楽しみ。リアス怒った顔もマジ可愛い」

 

「!?////もう!何言ってるのよ!」

 

「あれ?声に出てた?」

 

「うふふ、出てましたよ?『俺の嫁怒らすと』の辺りから」

 

「えぇ…ほぼ全部じゃん……」

 

「うふふ、お風呂上がりで気が緩んでたんですわね。竜也君ったら可愛いですわ♪」

 

「うなー!リアスだけズルいにゃ!だぁりん私はー!?」

 

すると黒歌が前から飛びついてきた。はだけた浴衣の隙間から見える湯上がりの火照った肌と柔らかい二つの感触が……

 

「もちろん黒歌だって可愛いぞ。ほ~れ、よ~しよしよし」

 

「ふにゃ~♡ごろごろごろ~♪」

 

抱き締めて喉を撫でてやると、黒歌はとろんとした目で喉を鳴らす。

 

「あらあら、では私はどうなのですか?」

 

朱乃ちゃんが笑いながら問いかけてくる。

「もちろん朱乃ちゃんも可愛いぞ?当然アーシアもな?」

 

「はう!そっそんな!たったちゅやしゃ……ぷはぁ!」

 

フェイントでウインクしてやると顔を真っ赤にして鼻血を吹き出すアーシア。心なしかいつもより量が多い気がする。

 

「もうアーシア、また鼻血が出てるわよ湯上がりなんだから気をつけてね?」

 

「は、はひ、しゅみましぇん…」

 

「クハハハ、まあリアス、とりあえずこの辺で勘弁してやれや、ボソ《何なら後で混浴するかい?》」

 

「ッ!?しょ、しょうがないわね、この辺にしておくわ……それに、後はやってくれるでしょうし」

 

見ると、各々がこってりと絞られていた。

 

「イッセー君、どういうことなの?裸なんて言ってくれたらいつでも見せてあげるのに……」

 

「それとも、リアスさんたちの裸にも興味あるの?」

 

「そんな訳ないだろう!俺は夕麻ちゃんとイリナのあられもない無防備な姿が見たかったんだ!二人の魅力の前では他の女なんて霞んで見えるぜ!」

 

「!?/////っもう!イッセー君ってば!」

 

「調子いいんだから/////」

 

イッセーたちは向こうは向こうで甘い空間を作り出している。

 

「ヴァーリさん?私言いましたよね?おふざけもほどほどにしてくださいって。」

 

「は、はい…」

 

「今回は未遂だったから良かったものの、悪ふざけが過ぎるとそのうちひどい目に合いますよ?椿姫さんの事といい……」

「はい………」

 

ヴァーリは白音にこってりと絞られていた。今ならヴァーリの方が小さく見える。

 

「裕斗様、え、エッチなのはいけないと思います!/////」

 

「あ、あい……」

 

一瞬でものってしまったからか、裕斗は完全に縮こまってしまっている。

 

「アザゼル様、この事はシェムハザ様にも報告させて頂くっすので」

 

「同じ教師として言わせて頂きますが、教師としての、もっと言えば大人としての自覚を持って下さい。」

 

「あ、あの、俺一応元上司……」

 

「「関係ありません(ないっす)」」

 

「は、はい……」

 

元部下、しかも末端に説教される元上司。威厳の欠片もないその光景、彼女らも失望の眼差しを向けている。その後、しばらくしてイッセーたちは解放されたが、アザゼルはいまだにこってりと絞られた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「あぁ~あ、酷い目にあった」

 

説教から解放されたイッセーたちは各々の寝室に向かっていた。

 

「いや、もとはと言えばお前のせいだろうが」

 

「たはは~、メンゴメンゴ……ありゃ?」

 

ふと見ると、温泉から本館に向かう途中の通路に卓球台が置いてあった。

「お!卓球台あるじゃん!」

「いや、何であるんだよ卓球台」

 

「お答えします」

 

「おわ!?グレイフィアさん!?」

 

突然現れたグレイフィアさんに驚いてしまった。

「皆様が楽しめるようにとご用意いたしました。どうぞお楽しみ下さい。」

 

「あ、はい、どうも……」

 

「では、私めはこれで」

 

そう言ってグレイフィアさんは去って行った。

 

「…………とりあえず、やってく?」

 

「いいね!あれやろうぜあれ!」

 

「古今東西?」

 

「お題に答えて玉を打つあれか」

 

「やるなら罰ゲーム決めようぜ」

 

「なら、負けたやつはアザゼルさんを一発殴るってことで」

 

「「「「よし!」」」」

 

 

~~ここからは台本形式でお楽しみ下さい~~

 

竜也「よし、全員準備はいいか?」

 

ヴァーリ「三回ミスしたら罰ゲームな」

 

竜也「それでは第一回目、お題は……天王星の衛星の名前!」

 

イッセー∑「え!?」

 

竜也「はじめ!!」

 

ヴァーリ「アリエル!」カンッ

 

木場「ウンブリエル!」コッ

 

フリード「チタニア!」カッ

 

イッセー「え、………えーー……?」

 

呆けていたイッセーがアウトになった。

 

イッセー「ちょっ!ちょっとまって!問題難しくない!?」

 

ヴァーリ「そうか?」

 

竜也「第二回目!お題は!世界の黒人大統領の名前!」

 

ヴァーリ「ケムア共和国、ムアイ・キバキ!」ガッ

 

木場「セネガル共和国、アブドゥライ・ワッド!」ゴッ

 

フリード「オバマ」カツッ

 

イッセー(言われたっ!?)スカッ

 

イッセーが空振りして2アウトになった。

 

イッセー「お前ら!絶対打ち合わせしてんだろ!」

 

竜也「いや、ぜんぜん」

 

イッセー「もういい!俺にお題決めさせろ!」

 

ヴァーリ「いいよ、どうぞ」

 

ヴァーリがイッセーにピンポン玉を投げ渡す。

 

イッセー(俺の得意分野で攻める)「国旗に月のマークの入っている国の名前!マレーシア!」ゴッ

 

ヴァーリ「チュニジア!」カンッ

 

木場「アルジェリア!」カッ

 

フリード「パキスタン!」コッ

 

イッセー(マレーシアしか知らねぇし俺!)ビシッ

 

イッセー動かず 、3アウト

 

竜也「はいイッセー3アウトー」

 

フリード「罰ゲームよろ」

 

イッセー(何者なんだよこいつら……もういーよお前らの勝ちで!)

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「…………と、いうわけでして、すんませんね」

 

「いやふざけろぉぉぉぉぉぉぉ!!や!ちょっ!?まて!落ち着け!とりあえず神器をしまえぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

その夜、グレモリー館にオッサンの悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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朝礼と新兵器

 

翌朝、リアス眷属+α、『龍の紡ぐ絆』A・Bチームはグレモリー家の中庭に整列していた。

 

「よし、みんなそろったな?昨日も言ったが、これから修行期間である一週間、俺はソーナ嬢とその眷属たちの監督に着く。その間お前らの修行の監督に着くのが、知っての通りそこのアザゼルだ。」

 

「おう、よろしく」

 

全員の視線がアザゼルに向き、アザゼルが軽く挨拶をするが、その顔は方頬が痛々しく腫れ上がっており、メンバーは必死に笑いをこらえていた。

「俺が提示するトレーニングメニューは各々の将来的なものを見据えた上でのものだ。当然、効果を実感できるやつは一人一人違うだろう。……だが、あせるな。今日より明日、明日より明後日、どれ程歩みが遅くても、歩み続ける事が大事だと胸に刻め。お前らは若い。若いからこそ未熟だ。だからこそ、これからどんどん成長していく事ができるはずだ。」

 

『・・・・・・・・・・・・・・』

 

「アザゼル、カッコいいこと言ってるけどその顔で全部台無しだぞ」

 

『『『『『ブッ!!?アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』』』』』

 

ヴァーリのその一言で、周囲はたちまち笑いの渦に飲まれた。

 

「アーーーハハハハハハハハハッ!!ヴァーリ!おま!このタイミングでそりゃねぇだろ!」

 

「クハハハハハ!!ひっ必死でこらえてたのにどうしてくれるんだヴァーリ!?クァーーハハハハハハハ!!」

 

「アハハハハハ!もうっ!ヴァーリさん!?」

 

「ハハハハハハハハ!!ごめんごめ……ブッ!アッハハハハハ!!」

 

「アッハハハハハハ!!かはっ!?…コヒュー…コヒュー……」

 

「ケハハハハハハハッ!!ぅおい木場ちん!?過呼吸起こしてんじゃん!どんだけツボってんだよ!?ケァーーハハハハ!!ケッゲハッ!?ゲホッ!?おぇ……」

 

「いやお前もえずくほどにツボってるじゃねぇかフリード!?アッハハハハハハハ!!」

 

『『『『『アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!』』』』』

 

笑いが笑いを呼び、リアクションが更なるリアクションと笑いを呼び、鎮火したのはかれこれ30分後の事だった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「はぁ……はぁ……や、やっと治まった……」

 

「ふ、腹筋が……腹筋が踊ってる……」

 

「これ、ある意味もうすでに修行だろ……」

 

約30分笑いに笑った一同はすでにグロッキー状態となっていた。

 

「ゴホッゴホッ……き、気を取り直して、各々のトレーニングメニューを……って、あれ?アザゼルは?」

「あ、そういやいつの間にかいない……」

 

「あ、あそこ」

 

イリナが指差す方を見てみると、アザゼルは木陰で体育座りしていた。

 

「アザゼルさーん、いい加減機嫌直して下さいよー!」

 

「おーい父さん、笑って悪かったてば」

 

「アザゼル様ー?」

 

「いいんだいいんだどうせ俺なんていいんだいいんだどうせ俺なんていいんだいいんだどうせ俺なんていいんだいいんだどうせ俺なんていいんだいいんだどうせ俺なんていいんだいいんだどうせ俺なんて…………」

 

この後、アザゼルを宥めるのにさらに30分かかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「さて、早速我々恒例のカオス状態に陥ってぐだついてしまったが、改めて各々のトレーニングメニューを提示するぞ。」

『『『『『了解!!!』』』』』

 

「よーしその意気…っと、その前にお前ら、特にリアスチーム、わかってると思うが、相手が格下だからと言って決して手ぇ抜いたりなめてかかるような真似はするなよ。ゼファードル・グラシャラボラス、シークヴァイラ・アガレス、そして最近だがディオドラのやつには俺の魔法を授けてある。さらにソーナ嬢とその眷属たちはこの俺直々に鍛えるんだからな?

さらにあのサイラオーグ・バアルという男、あいつは間違いなく強い。恐らく若手悪魔の中でもトップクラスだろう。」

 

その言葉に一同に緊張が走る。竜也のその言葉はイッセーたちが気を引き締めるに十分な言葉であった。

 

「さて、それじゃ最初に……イッセー!ヴァーリ!」

 

「「おう!!」」

 

竜也の呼び掛けにイッセーとヴァーリは前に出る。

 

「お前たちには特別メニュー、さらに特別講師を用意しておいた。」

 

「特別講師?」

 

「うむ、それじゃあおいでませ!」

 

竜也が空に向かって呼び掛け、イッセーたちもまた空を見上げる。“それ”が現れたのはそのほぼ同時であった。地面に降り立つとその衝撃で大地は震動し強風が起こる。二本足でそびえ立つ巨大な体躯、鋭い牙の生え揃った口、巨大な翼、そして身を包む赤紫の鱗。

 

「………ドラゴン」

 

「アザゼルよ、よくもまあ悪魔の領土に堂々と入り込めたものだな」

 

「お、心配してくれるのか?安心しろ、ちゃんと魔王様には許可をもらってるからよ。文句はないだろタンニーン?」

 

「ふん、抜かせ。さっきまでいじけて体育座りしてた癖に」

 

「ぅおい何で知ってんだ!?さては見てやがったなてめぇ!!」

 

「やかましい!キサマが無駄に時間をとるせいで俺は一時間も待機する羽目になったのだぞ!」

 

軽いやりとりのつもりが口論に発展する一人と一頭を呆然と見つめる一同。

 

「なあアニキ、このドラゴンは?」

「ああ、こいつの名は『魔龍聖』タンニーン。聖書にも記された龍であり、かつて『五大龍王』は彼を入れた『六大龍王』であったらしい。今は転生悪魔であり、その中でもトップに位置する最上級悪魔だ。」

 

「りっ龍王の転生悪魔ぁ!?」

 

イッセーは度肝を抜かれたように驚き、他の面々もタンニーンのことを知らなかった者たちは皆驚いていた。

 

「しかし兄さん、いつそんなヤツと知り合いになったんだ?」

 

「ああ、一昨日の打ち合わせの時にサーゼクスさんに聞いて会いに行ったんだ。で、『俺の力を借りたければその力を見せてみろ』って言われたから、ぶちのめした☆」

 

∑「んな!?おい!お前!軽々しく口にするなと言っただろうが!!!」

 

「プーー!だっせwww」

 

「黙れこの体育座り総督が!!!」

 

「んだこらてめぇやんのかあぁ!?」

 

「止めなさいってあれ?みんなあんまり驚かないのな?」

 

リアクションが薄いことに疑問を持つ竜也

 

「はっ、これまで散々兄さんの規格外っぷりを目の当たりにしてきて、今さらそれぐらいじゃもう驚かないっての」

『『『『『うんうん』』』』』

 

「あ、そう……ま、そういう訳で、特別講師ことタンニーンとあとは……じゃん!」

 

竜也はそう言うと左手の袖を捲る。そこには青い腕時計のような物が取り付けられていた。

 

「おっ!兄さん、ついにそれを使うんだな!」

 

「クックック、ついにこいつのお披露目か」

 

「?アニキ、何だそれ?」

 

竜也のそれを見て興奮するヴァーリとアザゼルを見てイッセーが尋ねる。

 

「こいつは俺と、ヴァーリ、アザゼルで共同開発した人工神器、『友情の腕時計(トライバル・ウォッチ)《プロトタイプ》』。契約した相手を呼び出す事ができるのさ。」

 

「へぇ、すげぇな、どうやるんだ?」

 

「ふふん、イッセー、ちょっと握り拳出してみな」

「へ?こ、こうか?」

 

イッセーが言われた通りに握り拳をつき出すと竜也もまた握り拳を出してイッセーの拳と重ねる。すると二人の拳から魔方陣が発生し、中央から一枚のメダルが飛び出した。

 

「これが契約の証、『トライブメダル』。お互いがある一定以上の信頼関係を築いている状態で発生し、これを『友情の腕時計』に差し込むことで契約した相手を召喚することができる。ちなみにみんなはもうメダルを出してるぞ。」

 

「え!?マジで!?何で言ってくれないの!?」

 

「いや、こういう時イッセーが一番いいリアクションしてくれるからさぁ」

 

「ひっでぇ……」

 

「あっはっは~、それじゃあいってみよう!メダルセットオン!」

 

ガシャン!!《♪~レディースエーンドジェントルメーン!ニョロロン族~♪》

 

「は?」

 

竜也がメダルを差し込むと『友情の腕時計』から魔方陣が発生し、メロディーが流れ出す。

 

♪~~♪《ニョロロンニョロロンニョロロンローン♪ニョロロンニョロロンニョロロンローン♪》♪~~♪

 

「ティアマット!」

 

メロディーが終わると同時に魔方陣から人の姿のティアマットが現れた。

「竜也、人工神器の実験はどうやら成功のようだな」

 

「!?お前ティアマットか?人間の使い魔になったというのは本当だったのか?」

 

「おお、タンニーンか、久しぶりだな。いかにも、私は今や竜也の使い魔だ。こいつといると毎日が飽きない、このような楽しい日々は初めてだ。」

 

「…………なあアニキ、何だ今の曲?姉御、魔方陣の中で踊ってたし」

 

「ああ、今の?俺の趣味」

 

「……………姉御、いいんすかこれ?」

 

「ああ、それ何だかな……踊ってる時、結構気持ちよかったんだ!」

 

「あ、そうなんすか……」

 

「で、話は戻るけど、お前らはこれから一週間このタンニーンとティアに徹底的に鍛えてもらうから」

 

「「は?」」

 

「竜也、要するにこの前のようにこの二人をタンニーンと共に一週間いじめぬけと言うことか?」

 

「うん、まあそう言うこと」

 

「「いやいやいやいやいやいやいやいやいやまてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」

 

「毎度毎度俺たちだけ扱いが酷過ぎるだろ!!!」

 

「いっくら何でも龍王二人掛かりは洒落にならないって!!!」

 

「心得た、ではリアス嬢。あそこに見える山を貸して頂けないか?修行の場にしたいのだが」

 

「ええ、存分に使って鍛えて上げてちょうだい」

 

「部長ぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

「あ、それと今回は回復役のアーシアは同行できねぇから、死ぬなよ?」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉい!!?それはマジで洒落にならないからぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「イッセーさん、ヴァーリさん、ファイトです!」

 

「アーシアァァァァァァ!!!ちょっ!?まっ!?止めて放してあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

問答無用と言わんばかりにイッセーとヴァーリはそれぞれタンニーンとティアマットに連れ去られる。

 

「「誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」

 

二人の叫びは虚しく、二体の龍はどんどん小さくなって行く。

 

「んじゃ、俺はシトリー領に行くから」

 

『『『『『いってらっしゃーい』』』』』

 

そうして竜也はグレモリー家を後にした。

 




『友情の腕時計』のモデルは言うまでもなく『妖怪ウォッチ』です。ちなみにUプロトタイプの方です。


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現状と覚悟

 

俺は現在セラたんの依頼で、ソーナ嬢とその眷属たちを鍛えるためにシトリー領へと赴いていた。シトリー領に着くと、ソーナ嬢が出迎えてくれた。

 

「こんにちは、竜也さん。この度はよろしくお願いします。」

「おう、こちらこそよろしく。じゃあ早速庭に眷属たちを集めてくれるか」

 

「わかりました」

 

そう言ってソーナ嬢は一旦戻り、俺は先にシトリー家の庭に移った。それから少しして、ソーナ嬢が眷属の生徒会メンバーたちを引き連れてやって来た。

 

「さて、もう知ってると思うが、これから一週間お前たちを鍛える雷門竜也だ。よろしく頼むぜ。」

 

俺はソーナ嬢たちに軽く挨拶をする。

 

「最初に言っておく。このゲーム、お前らはこのままでは一欠片も勝ち目はない。」

 

俺はそう断言すると、生徒会メンバーがざわつく。しかしソーナ嬢はだいたい予想はしていたようで、対して顔色に変化はなかった。

 

「おい!そんな言い方ないだろうが!」

 

生徒会メンバーの匙が声を荒げる。

 

「実際事実だ。相手は一発がほぼ即死級の『消滅の魔力』と『探索』の圧倒的情報収集能力をあわせ持つリアスを筆頭に、灼熱の炎を操る最強の赤龍帝(当社比)、それを支える堕天使弓兵、あらゆる属性を使いこなす『混沌の姫巫女』、圧倒的速度と抜群のコンビネーションを誇る騎兵コンビ、多彩な手数を持つ猫しょう姉妹、著しい成長を見せる時間停止のハーフヴァンパイアだぞ?対してお前らはちょっと前までは一般的だった転生悪魔。結果は火を見るより明らかだろうが。」

 

俺の言葉に匙は押し黙る。他のメンバーたちも顔を曇らせ目線を伏せている。

 

「………はぁ、落ち込んでるんじゃないよ。何のために俺がここに来たと思ってるんだ?」

 

生徒会は顔を上げてこちらを見る。

 

「俺がお前らを鍛えてやる。ただし半端な内容じゃないぞ。あいつらとお前らとでは質も経験もまったくかなわない。それをなんとか渡り合えるまでに引き上げるんだ。生半可な覚悟じゃつとまらないぞ。それこそ、修行中に死んでも文句は言えないと思え。」

 

に生徒会メンバーに緊張が走る。そんな中、ソーナ嬢は俺の方に歩みよる。

 

「………いいんだな?」

 

「ええ、すでに覚悟はできています。今のリアスと渡り合うにはそれくらいでないと」

 

「わかった……で、お前たちはどうする?」

 

俺は生徒会メンバーに向き直る。

「別に強制はしない。別にわざわざ死にに行くような真似をしなくても相応のトレーニングである程度の力は着く。覚悟のあるやつだけ前に出な。」

 

その場に沈黙が訪れる。少しして、匙が一歩前に出た。

 

「……俺はやる、やってやる!勝って会長の夢を証明してみせる!」

 

「元ちゃん……わ、私もやる!会長の夢を叶えたいのは私も同じだもん!」

 

「私も」

 

「私もだ」

 

「私だって」

 

そうして一人、また一人と前に出て、ついに全員が前に出た。

 

「いい眷属を持ったじゃないか、ソーナ嬢。」

「……ええ、私の自慢の眷属たちです。」

 

ソーナ嬢はそう言って頬を綻ばせる。

「よし、それじゃ早速行って見ようか!ディメンジョンARM『修練の門』!!!」

 

俺はARMを発動させ、ソーナ嬢たちの足元に門が出現する。

 

『『『キャアァァァァァァァァ!!!?』』』

 

「ギャアァァァァァァァァァァ!!」

 

門はバカンと音を立てて開き、ソーナ嬢たちはまっ逆さまに落ちて行った。用意していたメダルを『友情の腕時計』にセットする。

 

「そんじゃ、メダルセットオン」

 

《♪~レディースエーンドジェントルメーン!ゴーケツ族/ブキミー族~♪》

 

♪~~♪《ゴーケツ!ソイヤ!ゴーケツゴーケツ!ソイヤ!》♪~~♪

 

『アラン!』

 

♪~~♪《ブ・キ・ミ♪ブ・キ・ミ♪ブキミー♪》♪~~♪

『ベルゼブブ!』

 

召喚のメロディーが止み、魔方陣からアランとべーやんが出現する。

 

「で、おまけに……《ブチッ》アテテ……“髪分身の術”!!!」

 

竜也は髪の毛を引き抜き息を吹き掛けると髪の毛は竜也の姿に変わる。

 

「んじゃ、あとは頼むわ」

 

『『『了解!!』』』

 

「あいよ」

 

「任されました」

 

そう言って二人と分身たちは門の中へ入って行った。全員が入ると、門は重い音を立てながら完全に閉じられた。

 

「………さて、期間はゲーム開催前日の6日後まで、中での時間は約一年。難易度は昔俺が体験したスーパーハード。はてさて、誰がどれだけもつかな?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

現在、修練の門をくぐった匙は荒野の中全力疾走していた。

 

『グルアァァァァァァァァァ!!!』

 

匙の後方からはブロンズの身体をもつ翼の生えたライオン、ガーディアン『フライングレオ』が5体、牙を剥き出し追いかけている。

 

「ほれ、逃げてるばっかじゃ話にならねぇぞ~」

 

空中から見ていた竜也の分身が呑気に言う。

 

「いや!無理無理無理ぃ!初っぱなからこれは無理だって!物事にはもっと順序ってもんがさぁ!」

 

「うだうだ言ってないでこの状況をなんとかすることを考えな。あ、一匹増えた」

 

『『『『『『ゴガアァァァァァァァァァ!!!』』』』』』

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

匙は本気で泣き叫びながら逃げ惑う。

 

「…………ホントに、これくらい切り抜けられなけりゃとても扱えないんだよ。この魔法はな」

 

手元で竜也(本体)の生み出した魔力の結晶を眺めながら、竜也(分身)は呟いた。

 

 




感想等お待ちしております。次回もお楽しみに


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二天龍と覚悟

 

修行開始から3日、ここはグレモリー領の山の一つ。そこでは現在凄まじい爆音が鳴り響き、所々で煙が上がり、地面は抉れ、木々は無惨にへし折れている。山はもはや原型を留めておらず、周囲に住む動物たちはすでに一匹残らず逃げてしまっていた。そんな惨状を作り出した張本人たちは今なお激戦を繰り広げていた。

 

「喰らうがいい!」

 

元龍王が一人、『魔龍聖』タンニーンがヴァーリに向かってブレスを放つ。

 

「くっアルビオン!」

 

『Half Dimension!』

 

禁手、『白龍皇の月光神鎧』を纏ったヴァーリは、白龍皇の能力の一環である空間や物質にすら干渉する半減の力を使い、タンニーンのブレスを半減する。

「『ツンドラブレス』!!!」

 

ヴァーリは猛吹雪を凝縮したかのような冷気のブレスを放ちタンニーンのブレスにぶつけて相殺する。しかし凄まじい衝撃が発生してヴァーリは吹き飛ばされた。

 

「ちっ、半減してこの威力か。流石に龍王の名は伊達じゃない。」

 

ヴァーリは苛立たし気に舌打ちする。

 

「どうした?今代の『白龍皇』よ。まさかこれでおしまいではなかろうな?」

 

「冗談!だが、俺はどちらかと言うと頭脳戦向きでね。絡め手でやらせてもらうとしよう!『グッドナイトムーン』!!!」

 

すると『白龍皇の月光神鎧』の両足に装着された三日月の装飾“グッドナイトシスターズ”から光の波が放たれる。直後、それを浴びたタンニーンに異変が起こった。

 

「な、なんだこれは……急に睡魔が………」

 

「『グッドナイトムーン』の放つ月の光は浴びた者を眠りに誘う。さらにもう一つ!」

 

『binding chain!!』

 

ヴァーリが翼を大きく広げると、翼から何本もの鎖が飛び出しタンニーンを縛りあげる。

 

「ミスリルで作った特別製だ、そう簡単にはちぎれないぞ。その状態ではなおさらだ。」

 

「くっ小癪な……」

 

「小癪で結構!卑怯で結構!『白龍皇』の力は強い力をもつ相手に特化している。相手の自由を奪い、手札を潰し、好きなことをさせず、勝利を掴む!……それが俺の戦いだ。」

 

そう言うとヴァーリは三日月状の鋭い刃が連なったような翼を真っ直ぐに伸ばし、刃が正面を向くように反対に向ける。

 

「『スパイラルシュレッダー』!!!」

 

ヴァーリはそのまま縦回転を始めタンニーンに突っ込む。逃げようにも鎖はヴァーリの翼に直結しており、強烈な睡魔もあって、タンニーンは回転に引っ張られる形で肉薄する。

 

ギュギィィィィィィィィィィ!!!

 

「グガアァァァァァァァァァァ!!!」

 

切り裂くことに特化したヴァーリの翼はまるで丸ノコのようにタンニーンの鱗を切り裂いて行き、タンニーンは悲鳴を上げる。

 

「グオォォォォォォォォ!!!?な、なめるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

するとタンニーンは筋肉が膨張するほどに全身に力を入れ、ミスリルの鎖を力任せに引きちぎった。

 

「なっ!!!?」

 

「ぐぅ…やってくれる、おかげで眠気がすっかり覚めたわ!」

 

「クソッ!『ツンドラーー」

 

「遅いわぁ!!」

 

ヴァーリがブレスを放つ前に、タンニーンのブレスがヴァーリを飲み込んだ。

 

一方その頃、少し離れた場所では、イッセーと人間形態のティアマットが激しい肉弾戦を繰り広げていた。

 

「ハハハハハッ!そらそらどうしたぁ!?お前の実力はそんなものか!?」

 

「ぐっ!くそっ!」

 

ティアマットが拳のラッシュを叩き込み、イッセーはそれを何とかガードする。

 

『相棒!このままではいずれ押し負ける!一旦体制を立て直せ!』

 

「言われずとも!『プチプロミネンス』!!!」

 

「ぬおっ!?」

 

イッセーは全身から炎を立ち上げティアマットを退ける。

 

「『紅・赤龍之舞』!!!」

イッセーは炎を纏った拳と蹴りのラッシュをティアマットに叩き込む。ティアマットはそれを両手をクロスさせて防ぐ。

 

「ぬうぅぅぅぅ!!!なんのぉ!!」

 

「んなっ!?」

 

ティアマットはクロスさせた腕を勢いよく広げることでイッセーを弾く。

 

「ハッハーー!『業龍の咆哮』!!!」

 

「ーーッ!!!?硬質化『ウイングシールド』!!!」

 

『Boostboostboostboostboost!!!』

 

ティアマットはイッセーにブレスを放ち、イッセーは自身の翼の硬度を倍加させて盾代わりにしてガードするがブレスの勢いに押し負けて吹き飛ばされてしまう。

「うおおおおおおおおおおおおお!!?ガハッ!!!?」

 

ブレスに吹き飛ばされたイッセーはそのまま地面に叩きつけられた。

 

「い……イッセーか?」

 

声のした方に顔を向けると、イッセーが飛ばされたところの近くにヴァーリが上向けに倒れていた。

 

「ヴァーリ……なんでぇ、手酷くやられたなぁ……」

 

「うるさい、お前も同じだろうが」

 

「ハハハ、いつぶりだろうな?こんな風にボロクソにやられたの」

 

「だな、上には上がいるってことか。……だが、いつまでも倒れている訳にもいくまい」

 

「ああ、アニキと共に歩んで行く以上、こんなところでへこたれてたまるかってんだ」

 

『しかし、今のところの相棒たちの力では奴らにはかなわない。『覇龍』でも使えば別だが』

 

「…………ま、そうなるわな」

 

『現状、今の相棒たちなら『覇龍』に飲まれる心配はなさそうだが、何せ相棒たちは歴代の二天龍の中でもイレギュラーもイレギュラー。どうなるかは検討もつかない。』

 

「……いや、まだ『覇龍』に頼るには早いぞ」

『何か考えでもあるのかヴァーリ?』

 

「ああ、ーーーーーーーー

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ーーーー、というわけだ。」

 

「『『・・・・・・・・・・』』」

 

ヴァーリの考えにイッセーたちは絶句する。

 

「………おいおいヴァーリ、マジか?」

 

「本気と書いてマジだ」

 

『………アルビオンよ、お前の相棒は雷門竜也とそう変わらんな』

 

『ヴァーリ、お前最近兄に似てきたな』

 

「ははっ、それは光栄だな。で、どうする?」

 

「……いいぜ、乗った。無理も通せば道理も引っ込まぁな……それに、なんせ俺たちは逸脱者の弟分だもんな」

 

『やれやれ、バカと天才は紙一重と言ったところか』

 

『だが、俺は今回で学んだぞ。バカも貫き通せば可能になることがある、とな?『逸脱者』がいい例だ。』

 

「バカバカうっせ………さて、そろそろ来るぞ」

 

その直後、タンニーンとティアマットが姿を表した。

「おお、タンニーン。お前の方もそろそろか?」

 

「ああ、この3日間我ら龍王を相手によく頑張ったと言えよう。……だが、これまでだ。安心しろ、殺しはしない。あとは療養に専念するといい。」

 

そう言ってタンニーンとティアマットは二人に近づく。

 

「はっ冗談!ドライグ、ヴァーリ、アルビオン、覚悟決めるぜ」

 

「くくっ、言われずともさ」

 

『ハハハハハハッ!面白い!面白いぞ相棒!いいだろう!正気の沙汰ではないが、我ら二天龍が龍王などに負けるのは我慢ならんからな!』

 

『だが、それを望むなら死を覚悟する必要があるぞ?お前たちにその覚悟はあるか?』

 

「はっ上等だ!俺は天下無敵の『逸脱者』の弟分!死ぐらい乗り越えてやらぁな!」

 

『ハハハハハハハッ!!よく言った相棒!いや、兵藤一誠!我は赤き龍の帝王!この程度の障害、共に乗り越えてやろう!』

「俺は死ぬのは勘弁願いたいね。まだまだやりたいことがたっぷりある。……だが、痛みぐらいなら我慢してやる!」

 

『ふっ、お前らしいなヴァーリ、いや雷門ヴァーリよ。我は白き龍の皇王、共に生きて乗り越えようじゃないか!』

 

「……?なんだ?お前たち、何をーー」

 

「『白い龍(バニシングドラゴン)』アルビオン!ヴァーリ!もらうぜ!お前たちの力を!」

 

「『赤い龍(ウェルシュドラゴン)』ドライグ!イッセー!お前たちの力、もらい受ける!」

 

イッセーは右手、ヴァーリは左手の甲にはめ込まれた宝玉を取り出してお互いに交換し、それを外した場所にはめこんだ。瞬間、ヴァーリとイッセーの体が一瞬脈打ったからと思うと、二人はそれぞれの腕を押さえて絶叫する。

 

「グガアアアァァァァァァァァァァァァ!!!グギィィィィィィィィィィ!!?」

 

「ウグウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!グアァァァァァァァァァァァァァ!!!?」

「なっ!!!?なんて馬鹿なことを!!」

 

尋常ではない叫び声を上げる二人に狼狽えるタンニーン。

 

「止めるんだイッセー!ヴァーリ!お前たちは相反する存在!そんなことをすれば自殺行為だぞ!ドライグ!アルビオン!今すぐ二人を止めさせろ!」

 

『グウゥゥゥゥゥ!!…こ、断る!』

 

「なっ!!!?何を言っているんだ!!こんなところで消滅することが貴様らの本懐か!?」

 

『これはイッセーとヴァーリの覚悟だ!俺たちはそれに答えなくてはならない!』

 

「馬鹿を言うんじゃない!イッセー!ヴァーリ!止めてくれ!お前たちはこんな馬鹿な真似で終わるような男ではないだろう!」

 

ティアマットは必死に二人を止めようとする。彼女も彼らと時を共にする内に情が移っていた。

 

「心配すんな姉御!俺たちはこんなところで死なねぇよ!ドライグ!まだか!?」

 

『後少しだ!後少しで解析が終わる!………よし!こっちは終わったぞ!』

 

「アルビオン!こっちは!?」

 

『案ずるな!いま終わった!』

 

「イッセー!手を!」

 

「頼むぜ天才!」

 

イッセーとヴァーリは宝玉をはめこんだ方の手でがっちり掴み合う。

 

『グウゥゥゥゥゥ!!……取り込んだ相手の力を分析ぃ!』

 

『そして、相手に渡した力を己の手で安定させる!』

 

イッセーの右手から白、ヴァーリの左手からは赤い光が発せられる。

 

「「うおおおおおおおおおおおお!!!神器よ!!俺たちの思いに答えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」

 

『Vanishing Dragon Power is taken !!』

 

『Wales Dragon Power is taken !!』

 

赤と白の光が混ざり合い、二人を包み込む。光が止むと、イッセーの右手には結晶のような形をした白い籠手、ヴァーリの背には『白龍皇の月光翼』の下に炎を模したような赤い翼が出現していた。

 

「はぁ…はぁ……『白龍皇の氷結籠手(ディバイディング・フロストギア)』ってところか?」

 

「ふぅ……『赤龍帝の炎翼(ブーステット・ブレイズディバイン)』とでも呼ぼうか。」

 

二人は息も絶え絶えながら、満足気に呟く。

「ば、馬鹿な……こんなことが起こり得るのか……?」

タンニーンは驚愕に目を見開き空いた口が塞がらない。

 

「………アハハハ、アーーーハハハハハハハハハハハ!!凄い!凄いぞイッセー!ヴァーリ!やっぱりお前たちは竜也の弟分だ!」

 

ティアマットはしばらく呆けていたが、あり得ない現象を作り出した二人に大笑いする。

 

「あたぼうよ!さぁ、リターンマッチと行こうじゃねぇか!」

 

「『『おう!!!』』」

そう言うとイッセーとヴァーリはほぼ同時に飛び出した。

 

「早速いくぞ!」

 

『Boost !!』

 

ヴァーリの『赤龍帝の炎翼』から機械音が鳴り、ヴァーリの力を倍加する。

 

「『フレイムテンペスト』!!!」

 

ヴァーリが『赤龍帝の炎翼』を大きく羽ばたくと、両側の翼から炎の渦が発生し、タンニーンに襲いかかる。

 

「グオオォォォォォォォォォォォォォ!!?」

「ッ!?タンニーン!!!?」

 

「前方不注意だぜ姉御!」

 

ティアマットの気が逸れた一瞬を逃さず、イッセーはティアマットに接近する。

 

「なっ!!!?」

 

「『フロストナックル』!!!」

 

「がはっ!?」

 

イッセーの冷気を纏った拳がティアマットの腹にヒットする。

 

「おまけだ!」

 

『Divide !!』

 

「うおっ!?」

 

イッセーの右手の宝玉から機械音が鳴り、ティアマットの力を半減する。

 

「うーん、安定させたとはいえ、やっぱ連続では使えないか……」

 

「こっちもそんな感じだな、まぁこれからだんだん慣らして行けばいいさ」

 

「だな……あっ!なあヴァーリ、俺いいこと思い付いた!」

 

「ん?なんだイッセー?」

 

「俺たちの()()でよぉ、朱乃ちゃんみたいなことできねぇかな!?」

 

「朱乃ちゃん?……ああ、なるほど。いいぜ、やってみよう」

 

そう言うとイッセーは左手と右手から、ヴァーリは光翼と炎翼から、それぞれ赤龍帝の炎と白龍皇の冷気を発生させる。

 

「赤龍帝と白龍皇、炎と氷」

 

「相反する力を互角の力で合成」

 

イッセーは両手を合わせ、ヴァーリは上下の翼をクロスさせて、2つの力を混ぜ合わす。相反する属性は混ざり合いながらスパークし、膨大なエネルギーが発生する。それを見たタンニーンとティアマットの危険信号が鳴り響いた。

 

「ッ!!?逃げるぞタンニーン!!」

 

「ああ、あれは不味い……!」

 

言ったが早く、二人はすぐさま全力で回避行動をとった。

「「『メドローア』!!!」」

 

ドガアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、グレモリー領内の一つの山が、跡形もなく消し飛んだ。

 




二人の技はそれぞれデジモンの技からとりました。
感想等お待ちしております。次回もお楽しみに


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竜也流飴と鞭

 

ソーナ嬢たちを修練の門にぶちこんでから6日後、現在俺たちは無事(?)帰還してきたシトリー眷属たちをシトリー家の一部屋に集めて修行成果の報告会をしていた。

 

「しっかしよく生きて帰ってこれたなぁ。一人か二人は死んでると思ったのに」

 

『『ちょっ!!?』』

 

「冗談だよ、本当は死にそうになったらギリギリのところで強制的に帰還させるつもりだったんだ」

 

「………でも、死ぬギリギリまでは放置するつもりだったんだよね?」

 

「うん」

 

『・・・・・・・・・・・・・』

 

「…………今思えばよく生きて帰ってこれたよね、私たち」

 

「ああ、この一年間何度目の前を死がよぎったことか……」

 

「私、これから先に何があってもへこたれない自信があるよ。『あの時の地獄に比べたら』って」

 

『『うんうん』』

 

「ハハハハ、皆さん息ぴったりですね」

 

「ま、この一年間地獄のしごきに耐え抜いた仲間なんだ。結果オーライだろうさ」

 

するとそこに、ソーナ嬢と匙を部屋に運んでいたアランとべーやんが戻って来た。

「あ、アランにべーやん」

 

「アランさん、べーやんさん、会長と匙君はどうでしたか?」

 

ソーナ嬢の『女王』である椿姫が二人に尋ねる。

 

「ええ、二人ともよほど疲れていたのでしょう。今は緊張の糸が切れたかのようにぐっすりと眠っていますよ。」

 

「ま、二人とも俺たちと竜也の分身のしごきに耐え抜いたんだ。しょうがあるめぇよ」

 

そう、修練の門の中での約一年の修行の間、生徒会メンバーそれぞれには俺の分身をつけていたのだが、チームの要とも言えるソーナ嬢にはさらにべーやん、匙にはアランがついていたのだ。その内容も他のメンバーと比べて断然ハードである。

 

「よし、じゃあ最終調整は明日にする。お前らも今日のところはゆっくりと休め。」

『『わあああああああああああああ!!!!』』

 

「あったかいお布団で寝られるーーー!!!」

「お湯で体が洗えるーーー!!!」

 

「もう食料は現地調達しなくていいんだーーー!!!」

 

俺の言葉に狂喜乱舞する一同。女子高生としてはそこは死活問題だったろう。そこも含めてよく耐え抜いたな。

こうしてその日は解散となった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

翌日、目を覚ましたソーナ嬢と眷属たちはダイニングルームに集められていた。目の前にはたくさんの料理がところ狭しとテーブルに並べられている。

「た、竜也…これって……」

 

匙が恐る恐ると俺に尋ねる。

 

「ああ、見事修行に耐え抜いたお前たちに俺からのご褒美だ。好きなだけ食べろ!」

 

『『『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』

「おいしい……おいしいよぉぉぉぉ!!」

 

「はぐはぐ……グスッ…涙で……涙で前が見えないよぉ……」

 

「うう゛ぅ……グスッ……お米ってこんなに甘かったんだ……」

 

「貴族の娘として生きてきたつもりでしたけど……こんなに……こんなに食事を美味しく感じたことはありませんでした……ッ!」

 

「畜生……うめぇ…うめぇよぉ!!」

 

みんな約一年ぶりのまともな料理に涙を流して噛みしめながら味わってくれた。いやぁ、こんなに喜んで貰えると作った方としても嬉しい限りだ。

 

 

 

「さて、それじゃ俺たちはそろそろ行くぜ」

 

食事を終えてしばらくしてから、俺はソーナ嬢たちに言った。

 

「………竜也さん、それにアランさんにベルゼブブ優一さん、この度は本当に、本当にありがとうございました。このご恩はゲームの結果で必ずお答え致します。」

 

そう言ってソーナ嬢は頭を下げる。他のメンバーたちも、ソーナ嬢に続いて頭を下げた。

 

「…………ゲーム、楽しみにしてるぜ」

 

『『『ッ!……はい!!!』』』

 

そうして俺たちはシトリー領を後にした。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「……と、まぁ、向こうではそんな感じだったな」

 

「そうかい、まぁとりあえずお疲れさん」

 

ところ変わってグレモリー領、現在俺は久しぶりに集まったメンバーの各々の修行成果の報告を受けていた。

 

「しかし、俺が言うのも何だがとんでもねぇこと考えたなお前ら。まさか修行開始から3日で山ぶっ飛ばしたとは……」

 

「いや、兄さんほどではないよ」

「で、修行場がなくなっちまった訳だから、残りの時間は『白龍皇の氷結籠手』と『赤龍帝の炎翼』の練習に当てたんだ。今ならだいたい5~6回ぐらいまで連続で使えるようになったぜ。」

 

「ほほう、しかし興味深いね。今度俺ともやってみるか?」

「いや、向こうしばらくは遠慮しとくよ」

 

「あんな痛いのはしばらくは御免だぜ」

「そうかい、まぁまた今度でいいや」

 

「だぁり~ん!会えなくて寂しかったにゃ~ん」

 

すると黒歌が後ろから抱きついてきた。とりあえず撫でてやる。

 

「はいはい、俺も寂しかったぞ」

 

「ごろごろ~♪だぁり~ん、頑張った私にご褒美欲しいの~」

 

「わかったわかった、それじゃ、みんなに俺の特別フルコースご馳走してやるよ!」

 

『『『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』』』

 

『『『わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』

 

俺の言葉に歓声を上げる一同。

 

「ハハハハ、んじゃ、俺は厨房に行くぜ」

そう言って俺は厨房に向かう。

 

「そういえば竜也氏、ソーナ嬢らに振る舞ったあの料理、ただの料理ではありませんね?」

厨房に向かって歩いていると、後ろからべーやんが追いかけてきて尋ねる。

「おや、わかったか?」

 

「ええ、あの料理を食べてから、彼女らの生命力が格段に上昇しましたからねぇ。」

「まあな、あいつらの疲労度合いから割り出したもっとも適切な献立だ。食物のエネルギーは無駄なく体に吸収される。もちろん今から作るメニューもな?」

 

「なるほど、それを想定した上でのあの内容でしたか。相変わらず抜け目ないことで」

「まあな?で、べーやんは何かリクエストとかある?」

「牛糞」

 

「ねぇよ」

 

「冗談ですよ。カレーライス、中辛、ビーフでお願いします。」

 

「了解」

 

そう言って俺は厨房に移動した。

 

 




感想等お待ちしております。次回もお楽しみに


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ドレスアップとドラゴンライド

 

その日の夕方、正装に着替えた俺は集合場所の客間へと向かっていた途中、ソーナ嬢と遭遇した。

 

「あら、竜也さん。また会ってしまいましたね」

 

ソーナ嬢は華やかなドレスに身を包んでおり、俺を見つけると口元を緩めて言った。

 

「だな、せっかく景気付けに俺の特別フルコースをご馳走してやったのに。あんなボロボロ泣いて喜んで貰えるとは思わなかったけどな」

 

「~~~//////っもう!それは言わないでください!」

 

俺がからかうように言うと、ソーナ嬢は顔を真っ赤にして両手で隠す。

 

「ハハハハ、ごめんごめん。で、何でここに?」

 

「こほん、パーティー会場にはリアスと入る予定ですので。ところで、リアスはどこか知りませんか?」

 

「悪いが俺も今部屋から出たばかりでな、何か用でも?」

 

「ええ、宣戦布告を。今回の勝負、私たちは夢のために彼女たちに全力で立ち向かいます。」

 

ソーナ嬢は真っ直ぐな目でそう言った。ソーナ嬢の夢……誰もが通える学校を冥界に作る…か

 

「そうかい、まぁ応援してるぜ」

 

するとソーナ嬢はポカンと目を丸くする。

「………どうした?」

 

「い、いえ、リアス側のあなたに応援されるとは思わなかったので……」

 

ああ、そういう事ね

 

「確かにリアスは俺の未来の嫁で、あいつらは俺の自慢の仲間だが……別にそれがソーナ嬢の夢を応援しない理由にはならないだろ?それを言うなら、ソーナ嬢は俺の未来の親戚で、お前たちは俺の弟子だろうが。……それに、俺はソーナ嬢の夢は割りと気に入ってるんだ。言ったろ?もう実現したら支援してやってもいいって。」

 

俺はソーナ嬢の肩に手を置く。

 

「自信を持てよ、自分の夢に。少なくともここにお前の夢を肯定するやつがいるんだからな?」

 

「………竜也さんは八方美人ですね」

 

「レディはソフトに扱うのが俺のポリシーだからな?」

ソーナ嬢がいたずらっぽく言うので俺もそう返す。

 

「ありがとうございます、竜也さん。私はこれまで、なんと言われようと、自分の夢は曲げないつもりでした。けど、誰かに応援される事が、こんなにも心強いとは思いませんでした。」

 

「お役に立てたのなら結構。手が借りたきゃいつでも言いな。悪知恵と汚い手なら誰にも負けないよ。」

 

「ふふっ、ならなるべく手を借りずに済むようにしないと」

 

「ああ、それでいいのさ」

 

「「……………ははっ!」」

 

俺とソーナ嬢は顔を見合わせて笑い合った。

 

「さて、あんまりレディを引き留めるものじゃないな。んじゃ、またあとでな、ソーナ嬢」

 

「………あの、竜也さん」

 

立ち去ろうとする俺をソーナ嬢が引き留める。

 

「ん、どうしたソーナ嬢?」

 

「その……ソーナ嬢ではなく…ソーナ、と呼んで頂けませんか?いつまでもソーナ嬢では他人行儀でしょう?」

 

「ああ、なるほど……なら…また後でな、ソーナ」

「!!?……は、はい、また後で」

 

そうして俺はその場を後にした。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ソーナと別れてから数分後、俺たち男性陣は先に客間で待機していたところ、ドレスアップしたリアスたちがやってきた。

 

「ごめんなさいタツヤ、待たせちゃって」

 

「ねぇねぇだぁりん。どう?私のドレス姿。似合ってるかにゃ?」

 

「竜也君、アーシアちゃん今回は張り切ったんですよ。ね、アーシアちゃん♪」

「はぅ!……あ、あの、どう……ですか?竜也さん」

 

思わず見とれていると、リアスたちが感想を求めてきた。

 

「ああ、リアスはまさしくお嬢様って感じで板についてる。朱乃ちゃんと黒歌は普段は和服なイメージだから新鮮な感じだな。アーシアは…なんかもう、あれだ、まさしく天使だな。ま、何が言いたいかって言うと、みんなマジで似合ってる。超可愛い、超ビューティフル、もう今すぐでも結婚したいくらい」

 

「!!?やっやだもう、タツヤったら//////」

 

「あらあらもう、竜也君はお上手ですわ////」

 

「んもう、だぁりんったら正直なんだからぁ……大好き♡」

 

「はうぅ!しょっ!しょんにゃ!……ぷ、ぷぅ……」

 

(((((あ、ヤバい)))))

 

「ふむぅっ!!」

 

「「「「「耐えた!!?」」」」」

いつものごとく盛大に鼻血を吹くかと思われたアーシアだが、なんと自ら踏みとどまり噴射を抑えた。

 

「ふぅ、ふぅ……せ、せっかくの晴れ着を台無しには出来ませんから」

「すごいじゃないかアーシア!」ポン!!

 

「ぅひゅう!!?」

 

「え?」

 

「「「「あ」」」」

 

「ぷ、ぷわっはぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ブシャァァァァァァァァァァァァ!!!

 

一旦溜めた分その噴射の勢いや凄まじく、頭から被った俺は再び着替え直すことになりましたヽ( ̄▽ ̄)ノ

 

その頃、他の面々では

 

「よし、ちゃんとドレスでなくスーツで来たな」

「ううぅ~~だってヴァーリ兄様がスーツ着て来ないとレバー山盛り食べさせるって言うから~~」

 

「どうかな?イッセー君」

 

「私、こんなドレスなんて着たことないんだけど……似合ってる?」

「………はっ!う、美し過ぎて一瞬意識が飛んでたぜ……二人ともマジで似合ってるよ!!流石は俺の女神!!」

「や、やだもう!////」

 

「そ、そんな……女神なんて/////」

 

「い、いかがでしょうか、裕斗様。や、やはり私にドレスなんて……」

 

「ううん、そんなことない。綺麗だよ、カーラマインさん」

 

「ふぇ!?は、はひぃ、ありがとうございますぅ/////」

 

そんなやり取りがあったそうな。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

さて、早速ひと悶着あったわけだか、やっと落ち着いたというところで庭に何やら大きな音がした。それから数秒して、執事の一人がやって来た。

「タンニーン様とその眷属の皆様がご到着なされました。」

 

全員が急いで庭にでると、タンニーンと複数のドラゴンたちの姿があった。

 

「タンニーンのおっさん!来てくれたのか!」

 

「約束だからな」

 

「どういうことだ?」

 

「おっさんが俺たちをパーティー会場まで乗せて行ってくれるって約束してたんだよ。修行を頑張ったご褒美にって!」

 

「そういう事だ。予定よりも人数が多いようだが……かまわん、全員きっちり運んでやろう。」

 

「竜也、お前は私が運んでやるからな」

 

龍の姿に変わったティアが言う。

 

「おう、それじゃひとっ飛び頼むわ」

 

俺はそう言ってティアの背中に飛び乗った。

 

「全員乗ったな?では出発しよう」

 

そうしてドラゴン一行は会場へ直行した。

 

 

 

 

 

 

 



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文学少女と接点

前半ってかほぼ全部ネタ回です。終盤少し真面目になります。それではどうぞ


タンニーン率いるドラゴン一行に乗せてもらって約一時間後、パーティー会場のどでかい建物に着いた俺たち。そんな俺は現在……

「ち、ちかれたぁ………」

 

グロッキー状態で椅子に項垂れている。ついて早々セラたんに捕まって演説紛いのことさせられてその上貴族の人たちに質問責めにされて、一に酔うわアドリブで緊張しまくるわで……もう限界

 

「大丈夫か兄さん?」

 

「大丈夫に見えるか弟よ?」

 

「いや、ぜんぜん」

 

「竜也さん、お水、持って来ましょうか?」

 

「うん、お願いアーシア」

 

「はい!」

 

そう言ってアーシアはトテトテと早歩きでその場を後にした。

「あらら、ダンナ完全にグロッキーじゃん」

 

「なんか新鮮ですね」

「タツヤも人の子なのね」

 

もの珍しそうに言うフリード、白音、リアス

 

「アニキって意外と緊張しいだからな」

「緊張しいなんじゃなくてアドリブに弱いんだよ………」

 

「うふふ、そう言えば小学校の時の選手宣誓の時も」

 

「ああ、あったにゃそんなこと。だぁりんったら宣誓の内容忘れちゃって」

 

「なんとかアニキのアドリブで事なきを得たんだけど……」

 

「そのあと、裏で吐いたんだよな、兄さん」

 

『『『『『ええっ!!!?』』』』』

 

ちょっ!?こいつら俺がデカイ声出せないのをいいことに何人の黒歴史を!!?

 

「ちょっと!本当なのそれ!?」

 

リアスが声を荒げて聞く。

 

「本当ですよ。それでその様子を見た先生も怒るに怒れなくて」

 

「はぁ~~おれっちてっきりダンナは何でもござれの完璧超人かと」

「意外な一面ですね」

 

「お前ら………ってか、来てるんなら水ちょうだいよアーシア」

 

「はひ、ごめんなさいです。はい、どうぞ」

 

「おう、サンキュ。ゴクゴクゴク…ぷはっ!……はぁ、幾分かましになったな。ちゅうかお前らぁ…」

 

「悪かったって兄さーー!?悪いちょっと用事思い出した」

 

「は?おっおいヴァーリ!?」

 

俺の呼び掛けにも応じず、ヴァーリはそそくさとその場を後にした。

 

「あら、皆さん。」

 

「あ、生徒会副会長の真羅椿姫。」

 

ヴァーリと入れ違いでやって来た真羅にイッセーが反応する。

 

「すみません、ヴァーリ君はいらっしゃいませんか?」

「ヴァーリならあっちに行ったぞ。」

「わかりました、では」

 

「ふかーー!!」

 

そう言って真羅椿姫は指差した方に向かった。白音は終始真羅に威嚇していた。

 

「ねえ竜也君、生徒会の真羅さんとヴァーリ君ってどういう関係なのかしら?」

 

「あ、私も気になるにゃん」

 

朱乃ちゃんが質問して黒歌もそれに乗っかる。

 

「ああ、そう言えば二人は知らなかったな。あれは確か俺が中二、イッセーたちが中一くらいの時ーーーー

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

5年前

 

夕焼けの河川敷の道を真羅椿姫は歩いていた。ふと土手の芝生を見ると銀髪の少年が寝転んで本を読んでいる。中一のヴァーリである。一見河原で黄昏て本を読む美少年の図だが、当の本人は

 

(……風が強くてまったく読めねぇ。はぁ、失敗したなぁ……河原で本なんか読むんじゃなかった)

 

とか思っていた。本をたたんで帰ろうとしたその時、椿姫はヴァーリの斜め後ろに腰を下ろした。それに気づいて一旦停止するヴァーリ。一見動じていないように見えるが

 

(……き、気まずい!な、なんだ?誰だこの子!?何で無言なんだ!?このクソ広い河原で俺の隣にわざわざ座っといて!)

 

内心めっちゃ動揺していた。

 

(何の用か知らんが、やっぱり俺から声をかけるべきだろうか?いや、でもなんで?)

 

(何か気の効いたセリフ…… 『夕焼けが綺麗ですね』。いやいや、そんなありきたりなセリフこの状況に合わない。そう、この状況。夕日に染まる河原で孤独に本を読む美少年(当社比)と出会う幻想的なシチュエーション。多分この人、ロマンチックで非現実的なボーイミーツガールを期待しているのでは……)

 

そう思いヴァーリが振り替えると、椿姫はそわそわとやや落ち着きのない様子でいた。

 

(……どうもそんな感じだな。となるとイカした一言だな…ってか、そもそも俺は兄と友人が部活で遅くなって暇だから一人で読書していただけなんだが……まあいい、とにかく彼女の期待を裏切る訳にはいかんな。飛ばすぞ、すかした言葉

を!)

 

「……今日は……風が騒がしいな…」

 

(あれぇ?なんか死にたくなってきたよ!?なんだこりゃ?恥ずかしいとかそういうのではなく、なんかこう……死にたい)

 

ヴァーリは平静を装っているが、内心言い様のない羞恥に悶えていた。今の彼の心はコキュートスよりも冷えきっているだろう。

 

(……引かれたか?)

そう思い後ろを横目で見ると、椿姫は顔を赤くして必死に笑いを堪えていた。

 

(いや、なんか嬉しそうだ!よし、少々精神が氷河期に入りかけたが言ったぞ!さぁ、どうする!?)

 

すると椿姫は立ち上がり口を開いた

 

「でも少し、この風……泣いてます」

 

(あっはははははははははははは!!面白いわこの子!)

 

もはややけくそであった。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

そしてそのまま静寂が訪れ風の音のみが響く。

 

(……いや、もう勘弁してください。もう……限界です)

 

もはやヴァーリのメンタルは限界であった。

 

(すまない、どうやら俺には空想力というものがないらしい。もうこの空間には耐えられそうにない。ゆえに既に呼ばせてもらった。二人の救助隊を)

 

沈黙の中、ヴァーリは密かに携帯を使って竜也とイッセーに急かす主旨のメールを送信していた。 一刻も早くこの空間から抜け出す為に

 

(さあ、来い戦士たちよ!一刻も早くこの結界を破壊してくれ)

 

「………………」ザン

 

するとそこに土手の上から竜也が現れた。

 

(来たッ!早いな……)

 

ヴァーリは喜んだ、あとは『早く行こうぜ』とでも声をかけて貰えばこの空間から抜け出せる。

 

「急ぐぞ弟よ、どうやら風が街に良くないものを運んで来ちまったようだ」

 

(なんで今日に限ってテンションたっけぇんだお前はあああああああああ!!?)

 

ヴァーリの思惑は偶然テンションの高かった竜也の言葉で脆くも崩れ落ちた。心の中で絶叫するヴァーリ。

 

「あ」

 

竜也はここで椿姫の存在に気づいた。

 

「~~~~///////」カァァァ

 

(いやカァァァじゃねぇよ!?この愚兄!死ね!!)

 

ヴァーリはあくまで無表情をキープして椿姫の方に視線を向ける。椿姫はさらに顔を赤くして息を荒くし胸を片手で押さえていた。

 

(うわっ!?めっちゃ嬉しそうだよ!もう嫌だ!河原で一人黄昏れる少年に声をかけたいという願望はもう十分にかなっただろう!?こうなれば俺自らこの空間をぶち抜いて帰らせて貰おう。現実的な一言でな!)

 

「急ごう、風が止む前に」

 

(何を言ってんだ俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?)

 

もうヴァーリ自身、テンパってワケわからなくなっていた。

 

(もういいよ畜生!こうなったら行けるところまで行ってやる!)

もはややけくそである。

 

「まて!」

 

すると正面から呼び止める声がする。顔を上げるとイッセーが夕日をバックに佇んでいた。

 

(お前はもう一人の救助隊、イッセー!)

 

「……おいヤベーって!そこのコンビニポテト半額だよ!早く行こうぜ!!」

 

(空気読めやお前はぁ!!いや読んでるけど!)

 

「ふん!」バキッ!!

 

「なぶで!?」

 

すると椿姫は凄まじい速さでイッセーに接近して渾身のアッパーカットを炸裂させる。

 

「あ!お!ぎゃ!?ちょっ!?止め!」

 

椿姫はそのままマウントポジションをとりイッセーをボコボコにする。そんなに空気壊されたことが許せないのか

 

「ん、なんだこれ?」

 

するとヴァーリは椿姫の持っていたカバンから紙の束がはみ出ているのを見つける。見てみるとそれは原稿用紙であった。

 

「ほぉ、自作小説か」

 

「!!?」

椿姫は慌てて取り返そうとするがヴァーリはそれをひょいひょいと避けながら見る。

 

(なるほど、少年と少女が河原で出会うラブストーリーか)

 

「主人公は風の能力使い」

 

ちゃっかり竜也も読んでいた。

 

(びっくりするほどこの状況と一致している。恐らくこの子は自分の憧れを実現させたくて、俺を物語の主人公に見立てて隣に座ったと……いや、別にそれはいいんだが……ただ問題なのはこの主人公、特徴的な設定をしているな。すなわちこれは……)

 

「俺が孤独で根暗なオタクに見えたという事かあああああああああああああああああ!!!?」

 

「別にいいじゃん」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「…………と、まあ最初の出会いはそんな感じでな、それからもちょくちょく絡む事があって、言わば彼女はヴァーリの数少ない天敵みたいなものなんだ。高校進学を期に距離を置いていたようだが………」

 

「ヴァーリくーーん♪」

 

「コナイデェェェェェェェェェェェ!!!」

 

見るとヴァーリが真羅椿姫に追いかけられていた。

「はははははは、……………うん?」

 

すると、何処からか……パーティー会場の外から妙な気配を感じた。

 

「アニキ、これって……」

 

どうやらイッセーたちも気がついたらしい。

 

「リアス」

 

「わかってるわ」

リアスはそう言うと【探索】を発動する。

 

「出たわ。会場から50mの茂みから生体反応。人間が3人にこれは……妖怪が一人。一人は魔力が頭一つ抜けて高いことから恐らく魔法使い。それとこれは……一人の全能力が飛び抜けて高いわ。他の面々も上級悪魔クラスよ」

 

「わかった、気づいているのは?」

 

「今ここにいるメンバーですわ」

 

「了解。それじゃ、俺、イッセー、リアス、黒歌、フリードで行くぞ。朱乃ちゃん、アーシア、白音はここに待機、ヴァーリたち他のメンバーにも知らせて警戒に当たれ。」

 

『『『『了解』』』』

 

「よし、行くぞ」

 

そうして俺たちは早速行動に移った。

 

 




感想等お待ちしております。次回もお楽しみに


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訪問者と侵入者

俺たちはリアスの【探索】の反応のあった場所に黒歌に仙術で気配を消してもらい向かった。気配をたどって向かうと、そこには魔法使いの特徴であるとんがり帽子をかぶった少女を庇い剣を抜いた眼鏡を掛けた青年。そしてその剣の切っ先には、棍棒を構えた男と陣羽織を羽織り鞘の上から鎖が巻かれた刀を向ける男がいた。

 

「あいつら……」

 

「?」

 

「はぁ……まず俺とリアスで行く。お前たちはそのまま潜んでろ。」

 

「「「「了解」」」」

俺はリアスと共に茂みからゆっくりと出る。

 

「あなたたち、冥界の悪魔の領土でどういう了見なのかしら?」

 

リアスが高圧的に言う。

 

「うお!?なんだってんだ!?気配も感じなかったのにいきなり……」

 

棍棒を持った男は偉く驚いている様子だった。

 

「あっ!竜也さん!」

 

「おや、竜也君。」

 

「ルフェイ、アーサー、お前ら何やってんの?」

 

同じようにこちらに気がついた魔法使いの少女ルフェイと兄のアーサーが声をかける。

 

「タツヤ、彼らは知り合いなの?」

 

「ああ、アーサー・ペンドラゴンとその妹のルフェイ・ペンドラゴン。かの有名なアーサー王の子孫だよ。」

 

「なんですって!?」

 

リアスが驚き声を上げる。アーサーとルフェイは照れくさそうに苦笑いを浮かべている。

 

「以前世界を旅していた時に知り合ってね、今でも時々連絡を取り合っていたんだ。」

「あっ!?ああそうだぜぃ!『禍の団』の同行を内部から探るスパイといてな!けどまさか『魔源覇王』繋がってたとは……驚きだぜぃ」

一瞬呆けていた棒を持った男が思い出したと慌てて言う。

 

「お前ら……バレたのかよ」

 

「あはは……はい…近々合流しようと思い、冥界に向かったところつけられていた様で」

 

「連絡を取ろうとしたところでバレちゃいました」

 

「お前ら……はぁ、しょうがねぇ。ちょっと待ってろ、今助けるから。リアス、やるぞ。」

 

「わかったわ。上級悪魔クラスが四人から二人に減って数はこちらが有利、思ったより楽に片付きそうね。」

 

そう言って俺とリアスは構える。

 

「くくくっ、言ってくれるじゃあないか。あまり我々を嘗めるなよ。」

 

すると陣羽織を羽織った男が初めて口を開き刀をこちらに向ける。

 

「さて、まずは自己紹介と行こうか。俺の名前は織田信長。『禍の団』英雄派所属にしてそいつの元上司だ。」

 

陣羽織を羽織った男、織田信長が名乗る。

「織田信長……するってぇとかの有名な大六天魔王の子孫か。」

 

「はい、その通りです。英雄派は彼や私のような英雄の末裔によって構成された派閥です。」

 

織田信長と名乗った男に代わりアーサーが答える。

 

「てことは他にもお前らみたいな英雄の末裔が『禍の団』にはいるってのか?はぁ…嘆かわしいねぇ、ご先祖様が泣いてるぞ、おい。」

 

「あはは、耳が痛いです」

 

アーサーは苦笑いを浮かべて言う。

 

「俺っちは美猴ってんだ!闘戦勝仏の末裔の猿の妖怪だぜぃ!」

 

棒の男…美猴が棒を肩に担いで言う。

 

「闘戦勝仏……ってことは孫悟空か?おいおい、かつて名を馳せた連中の子孫が揃いも揃ってテロリストとは…世も末だな。」

 

俺はそう言いつつ神器を展開する。

 

「ま、名乗られたからにはこちらも名乗らないとな。『龍の紡ぐ絆』司令官、雷門竜也。少し規格外な一応人間の人外だ。」

 

「あなたは少しじゃ済まないでしょうに」

 

リアスからお決まりのツッコミをもらった。

 

「てか人間の人外って……ワケわからんな」

 

信長に呆れ顔で突っ込まれた。

 

「うるせ、ほれ、いいからかかってこいよ。相手してやるから」

 

俺はそう言って人差し指を前後する。

 

「くくくっ、ならば俺がお相手しよう。」

 

そう言って信長はこちらに刀を向ける。するとそれを美猴が手で制する。

 

「いんや信長、『魔源覇王』は俺っちがやるぜぃ。」

 

「む、何故だ美猴?」

 

信長が美猴に尋ねる。

 

「聞いた話じゃあいつ、かつて俺っちの爺、孫悟空が使っていた妖術、果ては如意棒の偽物まで持ってるって話じゃねぇの。どんな手を使ったかは知らねぇが、そんな偽物野郎を黙ってる訳にはいかないんだぜぃ!」

 

ああ、あれね。一応あれも()()なんだが……違う世界のだけど

 

「なるほど、良かろう。と、なると俺の相手はそこのお嬢さんか?」

 

信長は美猴の横に移動して退屈そうに言う。

 

「あら、女が相手なのは不服かしら?心配せずとも、私も伊達に『龍の紡ぐ絆』の『参謀』は名乗ってないわよ?」

 

「それに少なくとも退屈はさせねぇよ。お前ら、出ろ!」

 

「「「了解!!!」」」

 

俺の合図と共に茂みに潜んでいたイッセー、フリード、黒歌が飛び出す。

 

「見たところ、お前が一番やるようだからな。アーサー、ルフェイ、お前たちも加われ。」

 

「はい!」

 

「了解です」

 

アーサーたちはそう言ってリアスたちに加わり、信長を取り囲む。

 

「おいおい、多勢に無勢とは卑怯じゃないか?」

 

信長が刀の背で肩を叩き言う。

 

「へっ、悪いな。敵はサーチ&デストロイが俺たちの方針なんだよ」

 

「ケハハハ!犯罪者に人権は無いので~す☆」

 

「フルボッコだにゃん♪」

 

敵に情けの欠片もないやる気十分な『龍の紡ぐ絆』一同。

 

「気をつけて下さい。彼は『禍の団』の中でも相当の実力者です。」

 

アーサーが剣を構えて言う。

 

「ありがとう、でも心配には及ばないわ」

 

リアスはそう言ってアーサーから信長に目線を移し消滅の魔力を両手に纏う。

 

「くくくっ……良いだろう。まとめて相手をしてやる。この俺の神器、『蛇鉄封神丸』でな!」

 

そう言って信長は()()()()()()()()()刀を構える。戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 




だんだん染まってきた『龍の紡ぐ絆』一向。織田信長とは何者なのか?戦いの運命やいかに!?次回もお楽しみに


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猿とキントウン

わかる人はわかると思いますが、『ゴゴゴ西遊記』のネタを張らんでいます。では、お楽しみ下さい。


 

「で、俺の相手はお前かい?」

 

俺は目の前で棒……恐らくはこの世界における如意棒を構えた美猴に尋ねる。

 

「そうだぜぃ偽物野郎!この美猴様がお前を……

 

「そうかい、伸びろ棒」

 

ドギュン!ボカッ!

 

「ウキィ!!?」

 

「んな!?」

 

「「「「「「出た、不意討ち」」」」」」

 

手の内につまようじぐらいのサイズに縮めてあった如意棒をノーモーションで顔面にお見舞いしてやる。

 

「て、てめえ……卑怯な……」

 

「甘いな、これは試合じゃない。ゴングなんざありゃしねえのよ」

 

「よっ!いっそ清々しいほどの外道っぷり!」

 

フリードが相槌を打つ。

 

「て、てめえ…い、いや!そんなことはこの際どうでもいい!おいてめえ!それをどうやって作りやがった!?」

 

美猴は俺の如意棒を指差し吠える(猿なのに)。

 

「作った?言っておくが、こいつはれっきとした()()の如意棒だ。」

 

異世界の、だがな?

 

「んな!?うっ嘘をつけ!如意棒はこの!俺っちが爺からぶん取ったこの世にただ一本だけだぜぃ!」

 

美猴はそう言って手に持った如意棒を掲げる。

 

「だが本物なんだからしょうがねぇだろ」

 

「く、クソッ!ふざけやがって!金斗雲!」

 

すると美猴の足元に金色の雲が現れ美猴は宙に飛び上がった。

 

「ほほう、なら俺も、キントウン!」

 

「なに!?」

 

美猴は身構えるが、竜也の足元には一向に雲は現れない。

 

「あ……?ははっ!なんだぜぃ、ただのはったり……」

 

「どこを見てるんだ?ここだ」

 

「は?」

 

ドギュン!ボコッ!

 

「タマリン!?」

 

刹那、竜也が胸に着けた炎を模したようなワッペンから雲が飛び出し、またもや美猴の顔面に直撃した。撃墜され地面に落ちる美猴。

 

「ええぇぇぇぇ!?“ソレ”ってただのワッペンじゃなかったのかよ!?」

イッセーが驚きのあまりシャウトする。

 

「そう、“コレ”にはキントウンが収納してあるんだ。」

 

一同は再びキントウンに目を向ける。ふわふわと宙を漂うキントウンとそのそばで倒れ付し痙攣している美猴。

 

「よっしゃとどめだ。いけ、キントウン!」

「いけ?」

 

ニョキッ!!ボカッ!!

 

「なんだベァ!!?」

 

『『『ええぇ!!?』』』

 

するとキントウンから細長い手足が生えて美猴の顔をぶん殴った。

ドカバキドカガスボカスカドカガス!!

 

「ギャアアァァァァァァァ!!!」

 

「ええぇぇぇぇ!?雲から手足が生えて殴る蹴る等の暴行を加えとる!!?」

 

イッセーがまたもや驚きシャウトする。

 

「よし、もういいぞキントウン、戻れ」

 

そう言うとキントウンはてくてくと歩いて戻ってくる。その姿は雲にたれ目の顔があるって言うか雲全体が顔になっているようなフォルムでそこから細長い手足が生えており、額にあたる場所には4の文字がある。

 

「ぜぇ…ぜぇ…ぅおいてめえ!なんだそれ!?本当に()()()なのかよ!?」

 

「うん?ああいかにも、こいつは、キントウン4()()()()!」

 

俺は高らかに宣言する。

 

「4号機!?なんだそれ!?」

 

「え?格闘系のキントウンだけど、知らないの?」

 

「知るか!!他に何系があるんだよ!?てかなんだ4号って!?1~3号があるって前提か!?あるとしても1号から出せよ!意味わかんねぇだろ!!」ウガー!!

 

「あー、それがな、あのおっさんは『給料増やせ』だの『休み増やせ』だの不平不満が多いから“クビ”にしてやったんだ。」

 

竜也の頭の中にはハゲ頭でランニングシャツのおっさんの姿をしたキントウン1号に宿った精霊が浮かんでいた。

 

「えーーー!!?1号っておっさんなの!?しかも給料制!?」ドビーン

 

衝撃の事実に驚きを隠せない美猴。

 

「もう訳わかんねぇ!まとめてぶっとばしたらぁ!」

 

美猴は再び金斗雲に乗り空に飛び上がった。

 

「その前に俺がぶっ飛ばす。行くぞキントウン!」

 

竜也はキントウンの背中?に飛び乗る。そしてキントウン4号機は竜也を背負って走りだした。

 

「えぇ!?走っとる!?」ガボーン

 

またもやツッコミを入れるイッセー。

 

「飛ぶ前に助走がいるだけだ!さあ飛べキントウン!」

 

ゼェー…ゼェー…ハァ、ハァ、オェェェ―

 

「助走で息切れしてますけど!?」

 

イッセーのツッコミが入る

 

「おい!なんだそのザマは!?」

 

するとキントウン4号機はプラカードを取りだし、それにはこう書かれていた。

 

【いやぁ昨日、ヒック、飲み過ぎちゃって】

「いや二日酔い!?おっさんか!?」

 

これは竜也のツッコミである。

 

【失礼な!!ワシはまだ93才じゃ!おっさんじゃないわい!(*`Д´)ノ=3】

 

「93!?」

 

「こりゃ失礼、おじいさんってか、よくみたら顔赤っ!まだ酔ってるだろ!!」

 

ウィィ【とんでもヒックない!見てよこの足取り!!】

 

だが、キントウンの顔は確かに赤くなっており、足取りも完全に千鳥足である。

「フラッフラじゃねーーか!!」

 

【!!Σ(゜Д゜)】

 

「「?」」

 

オロロロロロ【き、気持ち悪い……やっぱ飲み過ぎた……】

 

と、書かれたプラカードを片手にゲロを吐くキントウン。もう何なんだこの物体は?

 

「あっはっは!どうしたどうした!?ぶっ飛ばすんじゃなかったか!?」

 

形成逆転とばかりに元気になる美猴。

 

「クソ!キントウンやってしまえ!」

 

オロロロロロ【ムリ】

 

「あっはっは!ムダだぜぃ!後ろ見てみろ♪」

 

ブロロロロロ!!ドカン!!

 

「チンパン!?」

 

「うんお前がな?」

 

すると美猴の後ろから4つのタイヤのついていて、先頭に2の文字がある雲が走って来て美猴を撥ね飛ばした。

 

「今度は雲にタイヤ着いとる!?」

「陸専用機のキントウン2号機だ。よくやった2号ーー」

 

ギュン!!ゴーーー!グシャ!!

 

【ギャァァァァァァァ!!】

 

2号機は竜也の呼びかけを無視してそのまま4号を轢いた。4号と2号はそのまま取っ組み合いの喧嘩を始める。

 

「な、なんなの……」

 

「2号と4号は仲悪いんだ」

 

キィィィィンドゴーーーン!!

 

【ギャアアァァァァァァァ!!!】

 

すると美猴は妖気の砲弾を2号と4号に飛ばし2機はまとめて吹っ飛んだ。

「あっはっは!これでもう飛べないぜぃ!さぁ!ここからは俺っちの独壇じょーーー」

 

そこまで言って美猴は気づく。急に自分の体が影に覆われたことに、下にいる竜也以外の全員が驚愕の表情で目を見開いていることを、そして後ろを振り向くと……………

 

 

 

 

 

 

『ガウ(ども)。』

 

全身黒塗りで、胸と額に3の文字が刻まれた巨大ロボの姿があった。

 

「なななななななななんじゃああああああぁぁぁぁぁぁああああああ!!!?」

 

美猴は叫んだ。もうこれ以上ないってぐらいに

 

「クハハハハハ!!!そいつはキントウン3号機だ!!」

 

「「「もはや雲のカケラもねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」」」

 

イッセー、フリード、そして美猴のツッコミが重なった。

 

「てゆーかどっから来たにゃ!?」

 

『ガウ(あっち)。』

 

黒歌のツッコミに律儀に答えるキントウン3号機。

 

「クソ!食らえってんだぜぃ!」

 

美猴はもうヤケクソ気味に妖気の砲弾を放つ。

 

パクッボフン!

 

「ウソーン!!?」ガビーン

 

しかし、美猴の砲弾は3号機にあっさり食われてしまった。しかもまったく堪えていない。

『(ニターーッ)』

 

「あ……あぁぁぁ………」

 

『ガウアーーー!!(キントウンパーンチ!!)』

 

ボカァァァァァァン!!!

 

「ウータァァァァァァーーーン!!!!」

3号機のパンチを食らい天高く吹っ飛ぶ美猴。

 

「き……キントウンって一体……何………?」キラーン

 

((((((さぁ?))))))

 

そう言い残し、美猴は冥界の空の彼方へと消え、ついに星になった。

 




感想等お待ちしております。次回VS信長!お楽しみに


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信長と確信

この度、機種変しました。


「……さてと、それじゃあそっちもとっとと終わらすとしますかね」

 

俺はそう言って信長へと向き直る。

 

「おいおい、この上お前まで加わるのか?過剰戦力もいいところだな」

 

信長はそう言って微笑する。

 

「ケハハハ!心配しないでもダンナの出るまでもなく終わらせてやんよ!『喰い影(シャドウジョー)』!!!」

 

「『バーニングサラマンダー』!!!」

 

「『焔玉(ほむらだま)』にゃん♪」

 

フリードが顎を模した影を、イッセーが炎の竜を、黒歌が五本の尾から鬼火を、それぞれ信長に向けて放った。

 

「……」スッ

 

すると信長は刀の柄を縦になるように持った。

 

「『壱の太刀』」

 

次の瞬間、信長は刀を地面に叩きつけた。すると凄まじい衝撃波が発生してイッセーたちの攻撃をかき消した。

 

「んな!?」「はぁ!?」「にゃんと!?」

 

大技ではないにしろ、自身の攻撃がかき消されたことに動揺するイッセーたち。

 

「どうした、もう終わりか?」

 

「っ!?…けっ!んなワケねえだろうが!」

 

そう言うとフリードは『魔鋏砕牙』を閉じた状態で構えて信長に迫る。

 

「『ソウルチョッパー』!!!」

 

相手の肉体だけでなく、魂までも切り裂く刃が信長に降り下ろされる。

 

ガキィィィィィィン!!

 

「なっ!?」

 

しかし、フリードの刃は信長の刀、『蛇鉄封神丸』によって防がれた。

 

「成る程、速いな。それだけでなく切っ先は的確に急所を捉えている。……だが、俺には届かん。」

 

「ちっ!」

「『鬼伸突』」

 

「グガッ!!!?」

 

信長の突きがフリードに突き刺さり、フリードは肺の空気を吐き出され木に叩きつけられる。

 

「フリード!!!?」

 

「さあ、次はーー、む?」

 

そこまで言い、信長は違和感を感じる。どういうわけか足が動かない。見ると、自分の影に黒い杭のような物が数本刺さっていた。

 

「『杭影』、ただじゃやられねぇよ。ケハハハ…ガッ」

 

「肺の空気吐き出した後に笑うんじゃねぇよ。黒歌、頼む」

 

「りょーかいにゃん」

 

フリードを黒歌に任せて、俺は信長に構える。

 

「フリードの働きを無駄にするな!やつに並の攻撃は効かん、出し惜しみはなしだ!」

 

「『紅蓮赤龍波』!!!」

 

「『ルイン・カノン』!!!」

 

「我々も行きますよ、ルフェイ!」

 

「はい!『爆炎矢(ヴァ・ル・フレア)』!!!」

 

先ほどよりも巨大な炎の龍、高密度の消滅の魔力の砲弾、聖剣『コールブランド』の聖なる刃波、被弾と同時に炸裂する炎の矢が一斉に信長へと向かう。それぞれが並の魔獣なら跡形もなく消滅する威力だ。

 

「成る程、ここからでも解るそれぞれが凶悪な威力の技だ。ならば、『参の太刀 天守閣』!!!」

 

信長は再び刀を地面に叩きつける。すると瞬く間に信長の足元の地面が浮き上がり、岩でできた城が出来上がった。

 

「なぁっ!?城!?」

 

「動けぬなら、足場を動かすまでだ」

 

イッセーたちの攻撃は全て岩の城に当たり、城は倒壊。それと同時に信長の拘束も解除される。

「さて、そろそろこちらも反撃にーー」

 

「移れる余裕があるといいな」

 

「……何?」

 

突然の声に信長の言葉が遮られる。声のした方を見ると、上空にタンニーンと翼を展開して飛ぶヴァーリの姿があった。

 

「ヴァーリ!タンニーン!」

 

「よう、兄さん。さっき会場に変なやつが飛んで来てな」

 

「それで、飛んで来た方角を追ったところたどり着いたと言うわけだ。」

どうやら先ほどキントウン3号機に殴り飛ばされた美猴はヴァーリたちの警備していた会場に落ちたようだ。

 

「そうか、で、そいつは?」

 

「今朱乃ちゃんが縛り上げて尋問中」

 

「ああ、そうか……哀れな…」

 

「だな」

 

見ると他のみんなも頷いている。アーサー兄妹は首を傾げているが。

 

「やれやれ、裏切り者を捕らえるつもりが、仲間は捕まり、『白龍皇』に『魔龍聖』まで現れるとは、今日は厄日だな。」

 

信長はそう言いため息を吐く。

 

「で、お前はどうする?」

 

俺はそう言って信長に笑いかけてやると、信長はギョッとした顔をする。失敬なやつだ。

 

(出た~、アニキの悪役顔)

 

(久しぶりに見ましたが、相変わらず凶悪な顔ですね)

 

(この状況といい、どっちが悪人なのかしら)

 

(俺たちって……)

 

……なんか、うちの連中が意気消沈してるんですけど…

 

「う、うむ、今日のところは引き上げさせてもらうとしよう。」

 

「ほう、我々がみすみす逃がすと思うか、小僧」

 

「無論、俺一人では逃げるのは困難だろう……ゆえに」

 

すると、信長は懐に手をやり、中から漆黒の小さな画面のついた機械を取り出した。っておいおいおい、あれってまさか……

 

「リロード!トループモンズ!ゴーレモンズ!ムシャモンズ!そして、マッドレオモン!」

 

すると信長の手にある機械の画面が光り、その光から様々な怪物が現れた。ざっと数えると、全身が黒いゴムで包まれガスマスクを着けたやつが20体、岩でできた体に仮面を着けたゴーレムのようなやつが5体、鎧武者のようなやつが3体、そして紫色の赤い目をしたライオンのようなやつが1体。

 

「おいおいおい!『蛇鉄封神丸』って名前でなんか変だと思ったが、まんまデジモンじゃねぇか!?」

 

俺は思わず叫んでしまった。

 

「兄さん、こいつらを知っているのか?」

 

「っ!?…知っている、ということはお前、やはり…」

 

「ああ、だいたいお前の想像であってると思うぜ」

 

「っ!?……そう、か」

 

まったく、昔のあのカス野郎でだいたい予想はしていたが……三人目がいたとはな……

 

「信長様、この度はどの様なご用意でしょうか?」

 

「しゃべった!?」

 

紫色のライオン、マッドレオモンが信長に膝を折る。

 

「俺が撤退する間、奴らの足止めを任せる。いいな?」

 

「はっ!お任せ下さい!」

 

「そうはいかねぇ」

「? アニキ?」

 

俺はそう言って前に出る。

 

「予定が変わった。お前は俺が引っ捕らえる。」

 

俺は雷速で一気に信長に接近する。

 

「なっ!!!?のっ信長様!!」

 

「『インパクトノッキング』!!!」

 

「ふっ…『鬼神突』!!!」

 

俺の拳と信長の突きが衝突して、辺りに凄まじい衝撃波が発生する。

 

「なっ!?兄さんの雷速に反応しただと!?」

 

「一瞬とはいえ音速越えてるんだぞ!?あり得ねぇって!!」

 

イッセーやヴァーリが何か言っているが、全く耳に入らない。それほどにこの衝撃は大きかった。

 

「お前には聞きたい事がある!」

 

「それは俺もだが、それはまた今度だ。リロード、ファルコモン!」

 

信長は再び漆黒の機械、クロスローダーを取りだし、デジモンをリロードする。現れたのは、忍び装束を着た黒いミミズクのようなデジモンだった。

 

「さらばだ、()()()よ。」

 

「『打竹落とし』!!!」

信長がそう言ったところでファルコモンは竹筒をばらまき、竹筒は爆発し、中から煙が立ち上がる。煙が晴れると、そこにはもう信長の姿はなかった。

 

 




感想等お待ちしております。次回、VSマッドレオモン、お楽しみに


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電子獣と新たな仲間

 

「リアス、やつは!?」

 

「任せて!」

 

リアスはすぐさま『探索(サーチ)』の水晶を出す。

 

「させるか!トループモン部隊、放て!」

 

『『『『デスマーチ!!!』』』』

 

マッドレオモンが号令すると、黒いゴムの体にガスマスクを着けたデジモン、トループモンたちが一斉に銃を放つ。

 

「ッ!?みんな防げ!」

 

「っ、みんな私の後ろへ!『ルイン・シールドアーケロン』!!!」

リアスは水晶を消し消滅の魔力によって形成された盾を造り、銃弾を防ぐ。見ると、上空のタンニーンとヴァーリも防御壁を張って防いでいた。

 

「くっ、消滅の魔力を形成するのに両手がふさがって『探索』が使えないっ!」

 

そう、造形魔法は魔力に形を持たせ、なおかつその状態を保つために高い集中力が必要とされ、同様に意識を集中させる『探索』は同時に使えないのだ。

 

「っ!?アニキ後ろ!」

「「「『切り捨て御免』!!!」」」

 

後ろから斬りかかって来たムシャモンを雷速で回避する。

「「「「「『カースクリムゾン』!!!」」」」」

 

するとゴーレモンたちが一斉に毒ガスのブレスを放つ。見るとブレスに当たった木々が灰になって行く。

 

「ちっ、ダハーカ!」

 

『『『おう!!!』』』

 

「『空気結界呪(ウインディ・シールド)』!!!」

俺は『魔源の三つ首甲』を纏い、風の結界を発生させてブレスを防ぐ。

 

(ちっ、今さらながら場所が悪いっ!成熟期程度一掃するのは容易いが、下手に大技を使うとみんなも巻き込んじまう)

 

見ると、どうやらみんなもそのような様子でなかなか手が出せないでいた。

 

「グハハハハ!!!どうしたぁ!さっきから防戦一方ではないか!もっと歯応えのあるやつはおらんのか!?」

 

マッドレオモンは笑いながら言う。ちっ、下手に出てりゃ付け上がりやがって……どうしてくれようか

 

「ケハハーー!ならこんなのはいかがかなぁ!」

 

するとトループモンの一体の影からフリードが飛び出した。

 

「なっ!あいついつの間に!?」

 

「にゃはっ!私もいるにゃん!」

 

「何!?」

 

すると今度は地面から石の爪を装備した黒歌が現れた。

 

「ケハハハ!『八つ影(オロチシャドウ)』!!!」

 

「シャッ!『ボールダークロー』!!!」

 

フリードは八本の蛇を模した影を放ちトループモンたちをなぎ払い、黒歌は石の爪でゴーレモンたちを引き裂いた。それと同時に弾幕の雨と毒ガスも止む。

 

「ッ!今なら!」

 

リアスは直ぐ様水晶を出して『探索』を発動する。

 

「っ……ダメだわ、もう有効範囲にはいない」

 

リアスは悔しそうに歯噛みする。

 

「マッドレオモン様、どうやら信長様も無事御戻りになられた様子、我々も撤退致しましょう。」

 

ムシャモンの一人がマッドレオモンに言う。

 

「いや成らん!このままこやつらの首を持ち帰り信長様へと献上するのだ!」

 

…………は?何を言っとるのだこいつは?

 

「………なあ兄さん、俺今物凄くイラッと来たんだが」

 

「ん?ヴァーリもか?俺も」

 

「あら奇遇ね、私もよ」

 

「あ、俺もっす」

 

「マジで?俺っちも」

 

「私もだにゃん」

 

俺はリアスたちのもとに飛び、横一列になるように並ぶ。

 

「あ、あの…み、皆さん……?」

 

アーサーが後ろでなんか言ってるが相手をしてやる暇はない。

 

「グハハハハ!!!何をしようと同じ事よ!全員かかれ!」

 

『『『『『ハラショーアタック!!!』』』』』

 

「「「「「『カースクリムゾン』!!!」」」」」

 

「「「『切り捨て御免』!!!」」」

 

「『覇王堕拳』!!!」

 

マッドレオモンの号令と共に奴らは一斉に技を放った。

 

「グハハハハ!!!これできさまらも終わーーー」

 

「『ツンドラブレス』!!!」

 

「『ルイン・ブラスタードレイク』!!!」

「『紅蓮赤龍波』ぁぁぁ!!!」

 

「『角刀影(角トカゲ)』ぇ!!!」

 

「『にゃん にゃん 波』ぁぁぁ!!!」

 

「『龍破斬(ドラグスレイブ)』ぅぅぅぅ!!!」

 

ドカァァァァァン!!!ズドォォォォォォン!!!ボカァァァァァァン!!!

 

『『『『『ギャアアアアアアアアァァァァァァァアアアアアア!!!!!』』』』』

 

爆風と衝撃波により土煙が吹き上がる。感情のままに放った俺たちの攻撃は奴らの攻撃を容易く飲み込み消し飛ばした。

 

「「「・・・・・・・・・・・・・」」」

 

アーサー兄妹とタンニーンは呆然と立ち尽くしていた。

 

「あ~~~スッキリした」

「久しぶりにぶっぱなしたぜ」

 

「私としたことが…つい」

 

「でも、スッキリしただろ?」

 

「………うん」

 

「しかし、この様子じゃ一匹残らず消し炭に……ん?」

 

そこまで言ったところで土煙が晴れる。見ると案の定デジモンたちは皆跡形もなく消し飛んでいたが、その中でマッドレオモンだけが生き残っていた。しかし、紫の皮膚は黒く焼け焦げており、立つのもやっとの状態だった。

 

「が…ごあ…ま、まさか、こんな…」

 

「あら?まだ生き残りがいたのね」

 

「さすがに指揮を任されるだけはある…か」

 

「ぐ…がはっ、きさまらぁ……」

 

『マッドレオモン』

 

「!!!?のっ信長様!」

 

すると突然信長の声が聞こえる。恐らく通信機か何かだろう。

『慢心が過ぎたな、マッドレオモンよ。俺はもう本部に着いた。お前も戻るがいい』

 

「は、はは!きさまら、覚えていろ!」

 

そう言い残してマッドレオモンは消えた。

 

「とりあえず、終わった、かな」

 

「そうね、とりあえず戻りましょうか」

 

「だな」

 

こうして俺たちは会場へと向かった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「…………と、いうわけで、新しく仲間に加わるアーサーとルフェイだ。」

 

「はじめまして、この度『龍の紡ぐ絆』に加わるアーサー・ペンドラゴンです。階級は騎兵団長、至らぬところもあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。」

 

「同じく、この度新たに皆さんのお仲間に加わるルフェイ・ペンドラゴンです!階級は魔法士官です!よろしくお願いします!」

 

アーサーとルフェイが会場にいた皆に挨拶をする。

 

「あらあら、ということは、あなた方が竜也君の言っていた優秀な『騎士』と『僧侶』ですか」

 

「騎兵団長ということは私たちの上官か、よろしく頼む。」

 

「不満はないのか?ゼノヴィア」

 

「陛下のお選びになったことだ、十分に信用に値するだろう」

 

「相変わらず見上げた忠誠心だことで」

 

「当然だ」

 

「ははは、精一杯勤めさせて頂きます。」

 

「魔法士官…てことはあの魔法使いどもの上官に当たるのか……」

 

「え?」

 

「ま、頑張れ」

「え?え?」

 

「何かあったら相談して下さい。心を強く持ってくださいね」

 

「え?え?ええぇ!?な、何があるんですか!?」

 

「アハハハハ……しかし、織田信長か…」

 

俺の呟きに、皆の空気が変わる。

 

「それほどの使い手だったのですか?」

 

ゼノヴィアが尋ねる。

 

「ああ、断片的だが、今まで戦ってきた奴らとは別格の強さだった」

「俺たちの攻撃もことごとくかき消された」

 

「それに、奴の従えていたあのデジモンという魔物……あれは一体」

 

「デジタルモンスター、略してデジモン。デジタルワールドという世界に住むデータが具現化した存在。」

 

俺の言葉に全員が反応する。

 

「兄さん、やはり知っているのか」

 

「ああ、俺の世界にも携帯育成ゲームとして存在していた。」

 

「アニキの世界……?てことはあいつは…!?」

 

「ああ、恐らく俺と同じ転生者だ」

 

『『『『『!!!!?』』』』』

 

俺の言葉に全員が驚愕する。

 

「マジかよ……アニキの他に転生者が…」

 

「やつはまた会おうと言った。恐らくやつはまた俺たちの前に現れるだろう。そうなった時は俺が相手をする。みんなも十分に警戒しておいてくれ。」

 

俺がそう言うと、皆は無言で頷いた。

 

「ま、何はともあれ、会場が無事で何よりだ。今は明日のゲームに集中しよう。」

 

「……そうね、そうしましょう」

 

「警備は俺たちに任せろ。お前たちは全力でゲームに当たれ。」

「タツヤ……ええ!」

 

「よし、その調子だ」

 

これにより、それまで針積めた空気が和らいだ。

 

「……あれ、そういえばアザゼル先生は?」

 

『『『『『あ』』』』』

 

「そういえば……」

 

「姿が見えませんね」

 

ちょうどそこにソーナが歩いて来た。

「あ、ソーナ。アザゼル知らない」

 

「あら竜也君、アザゼル先生ならーーー」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ここはパーティー会場に設けられたカジノ。

 

「よし来い!来い!来いぃ!!こ、あ"あ"あ"あ"あ"あ"また外したぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

現在そこでアザゼルはスロットマシンに釘付けになっていた。

 

「ちくしょう、今度こ……そ?」

 

『『『『・・・・・・・・・・・・・』』』』

 

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

「な、なんだよお前ら……揃いも揃って」

 

「お前ら」

 

「ん?」

 

「やるぞ」

 

『『『『『了解』』』』』

 

「え?ちょっ!?何す…お、落ち着けって!まっあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」

 

 

◆◆~~しばらくお待ち下さい~~◆◆

 

ギャアアアァァァァァァァァァ!!!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「ったく、人が戦ってる時にカジノで遊んでただぁ?このボンクラ親父が」

 

現在アザゼルは全員に袋叩きにされて縄で縛られていた。

 

「まあまあ皆、それくらいにしておいてやろうや」

 

「た、竜也ぁ……」

 

「あ、それはそうとアザゼル大根好き?」

 

俺はわりと太めの大根を取り出して聞く。

 

「だ、大根?まあ嫌いではないが……」

 

「鼻から食べるとおいしいよね♪」

 

「は?」

 

「鼻から食べるとおいしいよね♪」

 

「いや、そんなの絶対ムリ……」

 

「鼻から食べるとおいしいよね♪」

「ムリに決まって……」

 

「お・い・し・いよねぇ~~♥」

 

「………マジで?」

 

 

◆◆~~しばらくお待ち下さい~~◆◆

 

エッ!?チョッ!?チョッマッ!!

 

ドスッ!!

 

グアアアアアァァァァァァァァァァァァ!!!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「まつんだ、兄さん!」

 

「ヴァーリ?」

 

「ヴァ、ヴァーリィィィィィィィ(泣)!!」

俺がアザゼルにオシオキをしていると、ヴァーリが止めに入った。

 

「これくらいはしないと、ほれ、父さんプレゼントだ」

 

そう言ってヴァーリはアザゼルの前に時計を置く。

 

「ん?なんだこれ?時計?」

 

カチ、カチ、カチ、カチ、カチ、カチ、カチ、

 

「おい、何か音大きくないか?え?何でお前ら離れてくの?え、ま、まさか……………」

 

ドカァアアアアアアアアアアアン!!!!

 

「あっちぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

戻ってくると、黒焦げになったアザゼルが倒れ付していた。

 

「……で、みんなに言うことは?」

 

「す、すいませんでした……」

 

「わかればいい」

 

その後、パーティーでは何のトラブルもなく、1日が終了したのだった。

 

((早くもやっていけるか不安になってきた……))

 

一方その頃、

 

(結局タツヤ様たちと会えませんでした)

 

と、しょぼくれてる金髪ドリルの姿があったとか。

 

 

そして翌日、ついにレーティングゲーム当日となった。



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いきなり最終回!?別れはいつも突然に


オカタヌキ「皆様、こんにちは。作者のオカタヌキです。この度は『我が道を行く自由人』をお読み頂き、誠にありがとうございます。皆様に重大なお知らせがございます。今作品、『我が道を行く自由人』は、今回で打ちきりとさせていただきます。皆様、これまで本当にありがとうございました。」

『『『『『いやまてまてまてまてまてまてまてまてまてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!』』』』

竜也「いきなり何を言っとるんじゃおのれはぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」

イッセー「最近ネタにつまってるからって血迷った事を抜かしてるんじゃねぇよ!!!」

ヴァーリ「なんだかんだで人物紹介を除いて93話まで行ったじゃん!!あとちょっとで100話行くじゃん!!もっと頑張れよ!!!」

リアス「そうよ!これから私たちとソーナとの決戦って時に!!!」

アーサー「私たち兄妹も仲間になってこれから活躍しようというのに!?」

信長「俺との因縁はどうなるんだ!?これから先立ちはだかる的な流れだったのに!!」

オカタヌキ「……………だって、だってしょうがないじゃないかっ!!!」

『『『『『!!!!?』』』』』

オカタヌキ「投稿しだしてはや6ヶ月ちょい、最初のうちは1日一話を心がけていたのにっ!一旦止まったらめっきり怠け癖がついて、テストが終わってもずるずると投稿せずにとくにすることもなく怠慢な時間を過ごして……最近はネタばっかでぜんぜんストーリー進まないし、そのネタもだんだんなくなって来て……それに、俺はもう今年で高3なんだよ。いい加減に受験も考えないといけないんだ!!」

『『『『『ッ!!!!!?』』』』』

竜也「………そうか、受験か」

ヴァーリ「なら、仕方がない…か」

イッセー「だな、名残惜しいけど、こいつにも進むべき道があるしな」

オカタヌキ「っ……!お、お前ら……」

竜也「ま、初めての連載にしたらよく頑張ったんじゃないか?」

ヴァーリ「1日一話なんてよくやるなって、部活の同僚の方々によく言われてたしな」

イッセー「このまま終わっちまうのは悲しいけど、これもお前の漫画家に成りたいって夢のためだ。」

オカタヌキ「っ………すまない、みんな」

竜也「いいさ、この二次創作を書いた経験と、思い出がお前の心にあり続けてくれるなら」

オカタヌキ「ッ!……ああ、忘れない、絶対に忘れるもんか!」

竜也「ありがとよ……じゃ、最後はみんなで締めようぜ!」

オカタヌキ「グスッ……ああ!」

竜也「皆様、これまで読んでくれて本当に」

『『『『『ありがとうございましたっ!!!!!』』』』』









オカタヌキ「ま、嘘だけどね」



『『『『『……………………………は?』』』』』

オカタヌキ「ヤダナーみんな、今日が何の日か忘れた~?四月一日はエイプリルフール!嘘をついてもいい日だしょ?」

竜也「え?い、いや、だって…お前…受験……」

オカタヌキ「いやいや、そりゃもちろん受験勉強はやりますよ?でも流石に止めるまではいかないわ。ある程度期間は空くことになるかもしれないけど息抜き息抜きに書き続けますよこれからも。そもそも俺って己の欲望に弱いからさぁ~♪あはははははははは~~♪」

『『『『『・・・・・・・・・・・』』』』』

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!!

オカタヌキ「ははは…え?ちょっ……ま、ま、まってみんな、落ち着いて。エイプリルフールに便乗した軽いジョークじゃん?笑い話じゃん?え…ちょっ!?その包丁と鍋は何!?待って待って待って話せばわか……」

『『『『『死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇクソタヌキィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!』』』』』

オカタヌキ「ギィャアァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」





竜也「さて、クソ作者も葬ったことだし、本編いってみようか」

イッセー「それでは皆様、これからも『我が道を行く自由人』を」

『『『『『どうぞよろしくお願いいたします』』』』』

竜也「それでは本編の方をどうぞ!」



 

初陣と規制事項

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

もう一人の転生者、織田信長との戦い、新たな仲間、アーサーとルフェイの加盟、そしてそんな時にカジノで遊んでたアザゼルを袋叩きにしたりと色々あった決戦前夜であったが、ついにリアスチームとソーナ眷属との決戦の日を迎えた。

 

「いいなみんな、この戦い、決して油断するな、慢心するな。己の持てる力を持って全力で叩き潰すつもりで行け。下手に手を抜こうとしたら足元すくわれると思え。……ま、俺がお前らに言うことはこんなところだ。それじゃあ、行ってこい!」

 

『『『『了解!!!』』』』

 

リアスたちは力強く返事をして、転送用魔方陣に乗り、決戦の場へとジャンプした。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

イッセーside

ついに始まった生徒会…ソーナ眷属とのレーティングゲーム、舞台となるのは駒王町にあるショッピングモールだ。俺たちもよく利用しているからだいたいの地理は把握している。ま、それは向こうも同じだろうけど。そして今回のゲームのルールは次のようになっている。

 

・先に相手の『王』、もしくは制限時間内により多くの相手を撃破した陣の勝利とする。

・両陣営にはフェニックスの涙が一本づつ支給される。

・リアス陣営は二階東側、ソーナ陣営は一階西側を両陣地とする。

・フィールドであるデパートを大規模に破壊することは禁止、違反した場合その者は速失格となる。

 

さらに俺たちには以下のような制限がかけられた。

 

・ギャスパー・ヴラディの神器、『停止世界の邪眼』の使用を禁止する。

・リアス・グレモリーの【探索】の使用を禁止する。

 

というものだ。まあ、ゲームバランス的に仕方ないのかもしれないが、これによって俺たちはだいぶ行動と戦力を制限されてしまった。

 

「参りましたわ、大質量による攻撃がほとんど制限されてしまいました。」

 

朱乃ちゃんが頬に手を当てて言う。

 

「とくに部長、イッセー君、朱乃さんにとってはかなりの痛手になりましたね。」

 

木場が腕を組んで言う。

 

「だな、最悪デパートごと吹っ飛ばそうと思ったんだけど……」

 

「イッセー先輩、その発想はおかしいです」

 

当初の計画を呟いたら白音ちゃんにつっこまれた。解せぬ

 

「まあ、出来ないことを嘆いても仕方がないわ。タツヤに言われた通り、私たちは出来る限りの事をやった上で……」

 

そこまで言ったところで、リアス部長は一旦区切り、片手を掲げて、消滅の魔力を纏い、握り締めた。

 

「全力で、捻り潰すわよ」

 

『『『『了解!!!』』』』

 

そしてミーティング時間である30分が経過し、

 

『皆様、開始時間となりました。それでは、ゲームスタートです。』

 

「さあ、行くわよ!」

 

『『『『了解!!!』』』』

 

ついにゲームの火蓋が切って落とされた。

 

 




竜也「おい、明らかに本編が短いんだが」

オカタヌキ「ドキッ!!や、アのですね?今回はどっちかって言うと上のやつの方がメイン……みたいな……?」

竜也「ったくしょうもない真似しくさってからに、今後は勉強と折り合いを着けつつ連載しろよ?」

オカタヌキ「…………あい」


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主神と黒い龍脈

すみません遅くなりました。デジモンリンクス試しにやったら面白くて……つい


 

竜也side

 

リアスたちを見送った後、俺とヴァーリたちはアザゼルやサーゼクスさんたちのいるVIPルームにいた。

 

「さて竜也、この試合お前ならどう見る?」

 

ゲーム開始間近という時、アザゼルがそんな事を聞いてきた。

 

「そうさな……リアスチームは一人一人が一部隊並の力を持っている。対人戦では並大抵のやつには負けはしない。対してソーナチームはソーナの戦略を軸とした眷属たちの連携を得意とする。恐らくソーナは一対多の集団攻めでリアスの眷属を一人づつ倒す戦法だろうな。リアスが火力で攻め落とすか、ソーナが戦略で絡めとるか……ま、そんなところだろ」

 

「ほぅ、で?お前はどちらを応援するんだ?」

 

「どちらも、だ。ソーナたちの育成には力入れたし、リアスたちの修行の成果も見てみたいしな。ま、お互いに悔いのない試合にして欲しいね。」

 

「なるほど」

 

俺とアザゼルが話していると、扉の開く音が聞こえた。

 

「ほっほっほっ、にぎやかそうじゃのう」

 

そこには北米神話の主神オーディンと戦乙女ヴァルキリーのロスヴァイゼさん姿があった。

 

「オーディン殿、お久しゅう。ロスヴァイゼさんもお久しぶりです。」

 

「おうおう、久しいのう竜也よ」

 

「お久しぶりです、竜也君。」

 

俺はオーディンのじいさんとロスヴァイゼさんと軽く挨拶する。

 

「あの、竜也さん。こちらのおじいさんはどちら様でしょうか?」

 

隣に座っていたアーシアが俺に尋ねる。

 

「ああ、こちら北欧神話主神のオーディン殿と戦乙女ヴァルキリーのロスヴァイゼさん。昔旅をしてた時北欧で世話になったんだ。」

 

「はわっ!?かっ神様ですか!?」

 

「ほっほっほっ、神で~す♪」

 

「相変わらず兄さんの人脈は広いな……驚くの通り越して呆れるわ……はぁ」

 

何かヴァーリにため息つかれた。何故に?

 

「ほっほっ、儂も長いこと神をやっとるが、こやつは実に興味深い。日本の神の加護を受け、ゾロアスターの邪龍をその身に宿し、儂の知識にもないこやつは本当に興味が尽きんわい……して、そちらのお嬢ちゃん。ええ体しとるのぉ、おっぱい触らせてもらってええかの?」

 

「はうっ!!!?」

 

途中まで割りと重要なこと言ってたのにセクハラエロジジイ発言で台無しにしたオーディンは両手をワキワキさせながらアーシアに迫る。俺は直ぐ様雷速でオーディンの後ろに回り込みアイアンクローをかます。

 

「はっはっはっ、おいこらクソジジイ。てめえ何人の女にセクハラしようとしてんだ?あぁこら。殺すよ?」

 

「いでででででで!!!?タンマタンマタンマ!ジョークじゃって!主神ジョークじゃって!ぬしマジで洒落になってないから!マジで死んじゃうから!タスケテロスえもーーん!」

 

「はぁ……竜也君、放してあげて下さい。」

 

ロスヴァイゼさんに言われたのでしぶしぶジジイの頭を放す。

 

「あてて…いったいのぉ~。少しは老人を労らんかい」

 

「じゃあ労るだけの威厳を見せろやエロジジイ」

 

「竜也君、すみませんうちの神が……」

 

「いえ、ロスヴァイゼさんに比べたら俺なんて……ご苦労お悔やみ申し上げます」

 

「ええ……本当に……」

 

「「……はぁ」」

 

俺とロスヴァイゼさんは向かい合ってため息をつく。

 

「あれ?何で主神の儂はぞんざいで戦乙女のロスヴァイゼはそんな丁寧なの?逆じゃね?儂ってそんな威厳ない?」

 

「……神相手でも容赦ねぇな兄さん」

 

「ある意味大物だよ、こいつは……」

 

「……俺の女って、女って、ぷは~~~~♡」

 

「きゃっ!?その子鼻血吹いちゃってますよ!?」

 

「あ、お構いなく。いつものことなんで」

 

「おーい、お前ら。試合始まってるぞ」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「………はっ!!?今美味しいタイミングを逃した気がするわ!」

 

「何を言っとるんですか部長」

 

突然そんな事を叫んだリアスをコウモリに変身して天井にぶら下がっているギャスパーが半目でツッコミを入れる。

ゲーム開始と共に、リアスたちは複数に別れて行動を開始していた。

まずはギャスパーが複数のコウモリに変身して、分身体であるコウモリを監視カメラ代わりに放ち、本体とリアスは本陣のフードコートに陣取る。立体駐車場からは木場&カーラマインペア、店内をイッセー&夕麻ペア、白音と黒歌の猫しょう姉妹が二手に別れて進軍。朱乃ははるか上空で待機し隙を見て空爆といった手順だ。

 

「あ、部長、駐車場の分身がやられました。『騎士』の巡 巴柄さんですね。退魔を生業とする一族出身だと言う。」

 

「わかったわ、引き続き監視を続けてちょうだい。ザザッ 裕斗、カーラマイン、駐車場のギャスパーの分身がやられたわ。相手は『騎士』の巡 巴柄。準備しなさい。」

 

『『了解』』

 

「ふぅ……さあソーナ、来るなら来なさい。」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

イッセーと夕麻の二人は、白音と黒歌と一旦別れて中央通路を進んでいた。すると、イッセーの第六感が敵の気配を感じ取った。

 

「……夕麻ちゃん、向こうから二人、天井近くを移動しながら向かってくる。3分ほどで接触する。」

 

「オッケー、イッセー君。」

 

イッセーと夕麻は走りながら、イッセーは神器、夕麻は光の弓を構える。すると、天井に『黒い龍脈(アブソープション・ライン)』をロープのように使い天井を移動する匙の姿を捉えた。

 

「夕麻ちゃんよろしく!」

 

「了解!」

 

夕麻は光の弓から矢を放ち匙のラインを切断する。匙はバランスを崩して落下して行き、よく見ると背中にもう一人を背負っているのが見えた。

 

「んなっ!?兵藤!?」

 

「喰らえや匙!ネイチャーARM『フレイムボール』!!!」

『BoostBoostBoost!!!』

 

イッセーは3回分の倍加を“速さ”に乗せてARMを発動する。バスケットボールサイズの炎の玉は凄まじいスピードで匙に放たれ、空中で逃げ場のない匙たちに襲い掛かる。

 

「ビーストアーム“サラマンダー”!!!」

 

「ん?」

 

すると匙の右腕神器が変化した。黒い蛇が何匹も巻き付いたような形から、腕は赤黒い鱗で覆われ巻き付いた蛇は、炎が蛇を形作っているようだ。そして匙は炎の蛇を放ち、炎の蛇に触れたフレイムボールは吸収されてしまった。しかし、高速で放たれたフレイムボールを全て受け止めることは出来ず、何発かは被弾していまい、匙はなんとか一緒にいた仁村 留流子を逃がすも自身はそのまま廊下に落ちる。

 

「がは……おい兵藤、どういうことだ…お前の神器の能力は“力を倍加させる”だろうが」

 

匙がよろよろと立ち上がりながらイッセーに尋ねる。

 

「一口に“力”って言っても、何も単純な“破壊力”だけじゃないだろ?他にも重さ、速さ、固さ、密度。炎だったら温度に面積。能力は使い用だぜ」

 

「な…んだよそれ……」

 

「てか、俺としちゃお前の“それ”の方が気になるんだよ。なんだそれ?」

 

そう言ってイッセーは匙の右腕を指差す。

 

「く、くく…こいつか?こいつはな…こういう事だよぉ!!伸びろラインよ!」

 

すると匙の腕にまとわりついた炎の蛇がイッセーの左腕の神器に巻き付いた。

 

「………おい匙、何のつもりだ?高温の炎を操る俺の神器に、んな炎が効くとでも思ってんのか?」

 

イッセーが匙を睨む。長年連れ添った自慢の炎を、サラマンダー程度の炎でダメージを負わせようとは、馬鹿にするにも程がある。

 

「へっんな事思っちゃいねぇよ!俺の本命は“これ”だ!!」

その瞬間、イッセーは少なくない脱力感を感じる。じわじわと力を吸われるのとは違う。ごっそりと持っていかれたかのような。イッセーは直ぐ様匙の炎の蛇をかき消した。

 

『………驚いたな。相棒、俺の力の一部を持って行かれたぞ。』

「はぁ!!!?」

「見せてやるぜ、俺の新たな力をよぉ!!!」

 

すると、匙の右腕が再び変化を始めた。赤黒い鱗で覆われた腕は黒紅の刺々しい鱗に変わり、まとわりついた蛇は東洋風の竜へ…

 

「……おい、おいおいおい、なんだそりゃ…?そいつは……ドライグの腕そのものじゃねぇかよ!!?」

 

『俺の腕はあんな黒くはないがな』

イッセーの言葉にドライグが補正する。

 

「見た目だけと思ったら大間違いだぜ!」

 

『Boost!』

 

すると匙の腕から機械音が鳴り、それと同時に匙の力が倍加された。

 

「匙、お前…ドライグの力を…」

 

「そうだ!これが俺の魔法、【接収(テイクオーバー)】!!!相手の力や体を吸収して自分の一部にするんだ!」

 

匙は腕から竜となったラインをイッセーへと伸ばし、イッセーは第六感を駆使し、向かってくるラインを次々と回避する。

 

『成る程、ヴリトラの神器とはべらぼうに相性のいい魔法だな』

 

「ったくアニキも面倒なもんをっ!!」

イッセーは避けながら悪態をつく。

 

「どうした兵藤!?防戦一方じゃねぇか!お前の実力はこんなもんか!?」

 

「……匙、一つ忘れてねぇか?」

 

「?」

 

『ソーナ・シトリー様の『兵士』一名、リタイア。』

 

「なっ!?っがあぁぁ!!!?」

 

アナウンスに気をとられた次の瞬間、匙の右腕に光の矢が突き刺さった。悪魔にとって聖属性は猛毒に等しい。匙に激痛が襲う。

 

「今だ!!」

 

「何!?」

 

その瞬間をイッセーは逃さず、匙のラインをまとめて掴み匙を一気に引っ張り寄せる。

 

「『コロナックル』!!!」

 

「がぁ!!!」

 

炎を纏った鉄拳が匙の腹に突き刺さり、匙は壁に叩きつけられた。

 

「これは団体戦なんだよ」

 

「イッセー君大丈夫!?血ぃ出てない!?」

 

ソーナ眷属のもう一人の『兵士』である仁村を倒し、匙に矢を放った夕麻がイッセーに駆け寄る。

 

「ありがとう夕麻ちゃん、助かったぜ」ナデナデ

 

「うにゅ~~/////イッセーくぅ~~~~ん♡」

 

「お、お前らぁ……こんな時まで見せつけやがってぇ……」

 

すると匙がよろよろと立ち上がる。イッセーは左腕を、夕麻は光の弓を構える。

 

「どうする匙、絶体絶命だぞ?」

 

「………………け……らんねぇ……」

 

「?」

 

「負けらんねぇ、負けらんねぇ!負けらんねぇぇ!!俺は負けらんねぇんだああああああああ!!!」

 

すると、匙の右腕からどす黒い瘴気のような物が吹き出し始め、さらに匙の右腕から尋常ではない数のラインが伸び、匙の腕から体全体に巻き付き始めた。

 

「い…イッセー君………」

 

「おいおい……」

 

そのおぞましい光景にイッセーと夕麻は言葉を失う。

 

「今こそ解き放つ。五大龍王ヴリトラの真なる力を!『禁手化』ァァァァ!!!」

 

匙の叫びと共に瘴気が吹き飛び、その全貌が明らかになる。漆黒の鎧に身を包み、全身から生えた黒い触手がゆらゆらと揺らめいており、漆黒の炎が立ち込め、そして特筆すべきは全身から吹き出す瘴気に込められた凄まじいまでの呪詛。その禍々しい姿にイッセーと夕麻は絶句し、その痛々しいほどの呪詛に全身から危険信号が鳴り響く。

 

「い…イッセー君………」

 

『相棒、あれはヤバいぞ』

 

「………アニキ、あんなバケモン生み出しやがって……今日ばっかりは恨むぞ……」

 

そう言い、冷や汗を流しながらもイッセーは拳を構える。

「『罪科の黒邪龍王の鎧(マレーヴォルシェ・プリズン・メイル)』。俺たちの前に立つやつは、不滅の呪いで朽ち果てろ!」

 

「………上等だぜ、望むところだぁぁ!!『禁手化』ぁ!!!」

 

イッセーもまた『禁手化』し、紅とオレンジの鎧に身を包み、背の翼の中心には小太陽が明々と燃え、後頭部には紅の鬣が揺らめく。

 

「『赤龍帝の太陽神鎧(ブーステット・ギア・アポロンメイル)』。呪いなんて焼き付くしてやる!俺の太陽の炎で!!」

 

「やってみやがれ兵藤ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「きやがれ匙ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

今、二体の龍がぶつかりあう。

 

 



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油断ともう一つの戦い

イッセーと匙が交戦する中、リアスチーム本陣フードコートでは、ギャスパーが分身体の目を通しての情報をリアスに伝えていた。

 

「部長、匙先輩が禁手化してイッセー先輩と交戦中です。禁手は『罪科の黒邪龍王の鎧』。凄まじいまでの呪詛を放っています。」

 

ギャスパーの報告を受けたリアスは顎に手を当て考えるそぶりを見せる。

 

「そうね、この状況からして匙はイッセーに任せるしかなさそうね。

 

「ですね……けど、匙先輩大化けしましたね。これもう存在そのものが強大な呪詛と言っても過言じゃありませんよ?」

 

「はぁ……タツヤもとんでもないのを作ってくれたわね」

 

「ええ、彼は私たちの中でも一番ハードな内容だったらしいので」

 

「「!!!?」」

 

突然聞こえた第三者の声に、リアスとギャスパーは直ぐ様臨戦体制にはいる。

「その声はソーナね!出て来なさい!」

 

リアスは辺りを見回し叫ぶ。しかし、どこにもソーナの姿は見えない。それが一層二人の警戒心を掻き立てる。

 

「『水流拘束(ウォーターロック)』」

 

「ガボッ!?」

 

「っ!!!?ギャスパー!!」

 

突然ギャスパーが水の球体の中に閉じ込められる。分身体を放ちコウモリの姿となった今のギャスパーは本来の力は出せない。さらにコウモリの体では水を掻くことが出来ず、ギャスパーは水の中で悶え苦しむ。

 

「ギャスパー!今助けるわ!」

 

【探索】が使えない現在、ギャスパーは現状を知るための重要なオペレーター。失う訳には行かない。リアスはギャスパーを助けようと走る。

 

「『エアゼロ』」

 

「ガボッ!?ゴボッ!ゴッ…………」

 

すると水の球体にブクブクと大量の気泡が立ち上がる。気泡が収まる直後、ギャスパーは完全に意識を手放した。

 

『リアス・グレモリー様の『僧侶』一名、リタイア。』

 

ギャスパーの姿が消え、 グレイフィアのアナウンスが鳴ると共に水の球はバシャッと弾け、床に水溜まりを作る。

 

「っ!?……水の中の空気を抜いたのね…」

 

「『水流拘束』」

 

「っ!!!?」

 

直後、今度はリアスが水の球体に閉じ込められる。しかし、リアスは直ぐ様消滅の魔力を全身から発して水を消し飛ばす。それは細かく鋭いトゲ状となった消滅の魔力が全身に列なっており、一見イガのように見える。

 

「はぁはぁ……『ルイン・アーマーヘッジホッグ』。同じ手は二度も食わないわ。さあ、出て来なさい!」

 

すると、フードコートに設置されている給水機からゴボゴボと大量の水が溢れ出て来た。それはやがて人の形を成して行き、そしてソーナが現れた。

 

「やれやれ、やはりあなたはそう簡単には落ちませんね、リアス。」

 

「……まさかあなたが単身乗り込んで来るとはね、ソーナ。」

 

リアスは驚きと困惑の混じった顔をする。思慮深い彼女がこのような手に出るとは到底思えなかった。

 

「このような手に出るとは私らしくない。そう言いたそうな顔ですね、リアス。ええ、それこそが狙い。匙たちがあなたの眷属…いえ、仲間の注意を引いている間に私が水になって水道管を通って接近する。一人一人の力が優れたあなた方なら、『王』であるあなたは本陣に控えていると予想していましたよ。」

 

やられた、完全に動きを把握されて逆手にとられた。不意に竜也の言った『決して油断するな』という言葉が頭を過り、リアスは唇を噛み締める。そして、直ぐ様通信機に手をかけるが、刹那高圧で飛ばされた水が頬をかすめ、通信機は破壊される。

「『水流圧線(ウォーターレーザー)』。応援は呼ばせませんよ。異変を感じる人たちもいるでしょうが、すぐに来ることはできないでしょう。みんなが必死に足止めしてくれていますから。」

 

仲間との通信も遮断され、応援も恐らく間に合わない。となると取る手は一つ

 

「ここで決着をつけるしかないようね、ソーナ」

 

リアスは静かに両手を構え、消滅の魔力を発する。

 

「ええ、そうです。あなたはそうするしかない。あなたの消滅の魔力は確かに脅威。ですが『フィールドを破壊してはならない』という規制のせいで、あなたは存分な力を発揮出来ない。対して、私の操る水は衝撃はあれど建造物を破壊するまでもない。」

 

瞬間、フードコート中の給水機や洗面台からから大量の水が溢れだし、ざわざわとリアスの周りを波打つ。

 

「さあ、私の水芸を堪能あれ!『水流舞踏(ウォータープロメネーデ)』!!」

ソーナが腕を振るうと、波打つ水は無数の槍となり、リアスへと一斉に放たれる。

 

(もらった!!)

 

すると、リアス深く息を吸い込み、両手に意識を集中する。イメージするのは、全てを切り裂く鋭い爪。

 

「『クリンゾンネイル』!!!」

 

刹那、リアスの両手は消滅の魔力で覆われる。そしてそれは自身の手よりも一回り大きく鋭い爪の伸びた手を形成するし、リアスはそれを振るい次々と水の槍を切り裂いた。

 

「なっ!!!?」

 

ソーナは思わず声をあげる。完全なウィザードタイプのリアスが近接戦をとったことが想定外だった。

 

「ふふふ、これでお互い様ね、ソーナ。造形魔法に必要なのは柔軟な発想。そして私たちの持ち味は手札の多さよ。これくらいのことはできるわ」

 

リアスはそう言って爪を擦り合わせる。

 

「ごめんなさいソーナ。正直、私はあなたたちのことをどこか見くびっていたわ。タツヤに怒られちゃうわね。……けど、これからはそうは行かないわ。あなたに敬意を評し、全力を持って相手をする!」

 

「……ええ、今こそ決着の時です!!」

 

二人の王が激突する。

 

 



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赤陽龍帝と黒邪の龍王

遅くなってすみません。どうもここのところスランプみたいで…


 

「兵藤ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「匙ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

禁手の鎧を纏ったイッセーと匙は喉が張り裂けんばかりの声を上げ、壮絶な肉弾戦を繰り広げていた。

 

「イッセー君…負けないで……」

 

イッセーと共に進軍していた夕麻は、二人の戦いをただ見ていることしか出来ないでいた。自身とは次元の違う戦いに自分は邪魔でしかないと思い、そして何より、イッセーの姿が『手出し無用』と物語っているように感じて。

 

「ぐうううううううッ!!!?」

 

殴りあいの中、イッセーは両手に感じていた痛みが徐々に大きくなっていることに気がつく。目を向けると、両手は匙の放つ呪詛に蝕まれ、黒く変色していた。

 

『相棒!』

 

「解ってる!『コロナフレイム』!!!」

 

「ぐぅッ!!!」

 

イッセーは両手から高温の炎を放ち呪詛を焼き払う。その熱波に当てられた匙は思わず身動ぐ。

 

『相棒、接近戦は無駄に消耗するだけだ!一旦離れろ!』

 

「言われんでもっ!」

 

イッセーは後ろに飛び距離をとる。

 

「逃がすか!喰らいやがれ兵藤!!」

 

匙は全身の触手をイッセーに差し向ける。

 

()()に捕まると力を吸われる上に呪詛を流し込まれる!絶対に捕まるな!!』

 

「にょろにょろ鬱陶しいんだよ!『アロー・オブ・ウェルシュ』!!!」

 

イッセーは両手の紅玉から灼熱の矢を連続で放ち触手を打ち消す。

 

「まだだ!俺の触手はまた生え………ッ!!!?」

 

そこまで言ったところで匙の顔が驚愕に変わる。切られた触手が再生しないのだ。

 

「なっなんで!!!?」

 

「やっぱり再生能力を持ってたか」

 

イッセーは息を整えながら言う。

 

「ヘラクレスはヒュドラを倒す時、切り落とした首の根元を火で炙って再生をふせいだらしい。それと同じでお前の触手の断面を俺の炎で焼いてやったぜ。」

 

「ちぃっ!!余裕かましやがって!!!」

「余裕?まさか。一杯一杯だよ。お前の呪詛を焼くのに手間取って余計に魔力を使っちまった。俺じゃなかったらとっくに脱落してただろうよ。」

 

実際イッセーにはもう余裕は残っていなかった。匙の呪詛はそれだけ強力なものであり、それだけ多くの力と体力を消費してしまった。

 

「へっ当然だ。何せ俺は修練の門の中、呪いのスペシャリストであるべーやんさんにみっちり鍛えられたんだからなぁ。」

 

匙は多少よろめきながらも口角を吊り上げて言う。

 

「なるほどねぇ、道理で……」

イッセーはそう言うと、それまで傍観していた夕麻の方を見る。

 

「夕麻ちゃん、あと頼んだ」

 

「ッ!!!?……わかったよイッセー君。負けないで!」

 

夕麻はそう言うと堕天使の翼を広げてその場から飛び去る。

 

「匙、俺は正直お前のことを舐めてた。だが、もうそうは行かねぇ!お前を残せば間違いなく脅威になる!お前はここで俺が撃ち取る!!」

 

イッセーはそう言って拳を構え力を集中する。 そこから放たれる熱波によって()()が発生し、周囲の空間を歪める。

 

「俺の全力を乗せた必殺の拳!受けてみろ!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 

イッセーはその一撃にありったけの倍加を乗せる。

 

「……だったら俺も、全力を込めた大技で決めてやらぁ!!!」

 

そう言い匙が両手を構えると、大量の呪詛を含んだ漆黒の炎が発生する。その様子を眺める中、イッセーは匙の生命力が徐々に薄くなって行くのを感じた。

 

「……匙、まさかお前…自分の生命力を魔力に変換してるのか?」

 

「ぐふッ……ああ、そうだ!俺がお前を倒すにはこれぐらいしないと追いつかねぇ!!」

 

その業火は徐々に肥大化して行き、匙の体を覆い隠すほどに膨れ上がった。

 

「ガハッ…まだだあああああああっ!!!ビーストアーム“ウェルシュドラゴン”!!!」

 

匙は叫ぶと、纏った漆黒の鎧の左腕がドライグのものへと変化する。

 

『BoostBoost!!!』

 

「ゴハッ!?」

 

二回倍加したところで、匙は吐血する。

 

「ッ!!?バカ野郎!生命力を減らした状態で手に入れたばかりの倍加なんか使ったらそうなるに決まってるだろ!死ぬ気か!!!?」

 

「ッ…フッガハッ……俺は……俺たちは絶対に負けられないんだ!お前に解るか?夢を笑われた俺たちの気持ちが!日本じゃ懸命に努力すりゃ程度はともあれ結果を出せる!それが出来ない冥界を変えたいっていう会長の…俺たちの夢を叶えたい!!!そのために結果を出して笑う奴らを黙らせる!!そのためにもお前は絶対に倒す!!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 

匙は悲鳴を上げる体に鞭打ち更に倍加を重ねる。口からは更に血が吹き出し、目からは血涙が流れる。

 

(ッ!!!?おいおいおい、あんなん生身で喰らったら骨の欠片も残らずに消し飛ぶぞ!?)

 

炎を扱うからこそ解るその炎の威力、そして何より匙の意識と勝利への執念にイッセーは冷や汗を流す。

 

「……お前の覚悟は伝わった。だが!こっちも負けてやるつもりは更々ない!!」

 

しかし、それでも勝ちを譲る理由にはならない。そんな真似は彼らへの侮辱に他ならないからだ。

 

「喰らえええええええええええ『メギドフレイム』ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

匙の放った黒炎は巨大な龍の形をなし、イッセーに迫る。

 

「オオオオオオオオオオオオ『ファイボスブロウ』!!!」

 

それと同時にイッセー走り出し、溜めに溜めた力を拳に乗せて解き放つ。

 

「ハァァァァァァアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

「オオオオオォォォォォォラァァァァアアアアア!!!!!」

 

ぶつかり合う巨大なエネルギーは衝撃波となり通路の壁一帯に亀裂が走る。この時点で、二人は『フィールドの大規模な破壊を禁止する』というルールにより失格となるのだが、その凄まじいエネルギーゆえに運営側は手が出せないでいた。“龍”と“龍”の戦いは誰も手出し出来ない。

 

「グゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウッ!!!」

 

ぶつかり合いの中、イッセーが苦悶の声をあげる。匙の放った漆黒の炎は呪いの塊。匙の生命力と倍加によって増した呪いはイッセーの体を蝕んで行く。

 

(勝った!!)

 

己が勝利を確信したその時、匙は気づいた。イッセーの口角が不適に上がっていることを。

 

「匙よぉ、奥の手ってのは最後の最後まで残しておくもんだぜっ!!」

 

その時、イッセーの右腕が白く変化し、イッセーはその腕を炎の中に突っ込んだ。

 

『DivideDivideDivideDivideDivide!!!』

 

次の瞬間、匙は業火の力が著しく低下したのを感じた。

 

「お前っ…それは白龍皇のッ!!!?」

「ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

『BBBBBBBBBBBoost!!!!!!』

 

業火の力を半減・吸収し、最大まで倍加を乗せた拳は業火を突き破り、匙の体へ突き刺さった。その拳から放たれる灼熱の炎は匙だけでは収まらず後ろの建造物をも飲み込ん突き進んだ。

炎が止むと、その起動上にあった建造物は跡形もなく消し飛んでいた。その中で、唯一残っていたのは、漆黒の鎧は粉々に砕け、肌は焼け焦げ、倒れ伏す匙の姿だった。

 

「ハァ…ハァ……ハハッ、どう…だ、このや…ろ………」ドサッ

 

そう言い、全ての力を使い果たしたイッセーは前のめりに倒れた。

 

「………………畜生」

 

「ん?なんだ……まだ意識あったのか……しぶてぇやつ……」

 

「うっせ…………ああ………負けちまったなぁ………」

 

「バーカ、俺たちゃあのぶつかり合いの時点でルール違反でどっちも退場なんだよ。引き分けだ引き分け」

 

「そうじゃ…な…勝ったの…は…おま……」

 

「へっ、けど……少なくとも、お前の力を見せつけるって目的は果たせたんじゃねぇか?」

 

「………」

 

「お前は強いよ」

 

「ッ………あ…りが…と………よ……」

 

そう言い残し、匙は意識を手放した。

 

「かっはは……俺も…久々に楽しかったぜ……」

 

そう言い、イッセーもまた意識を手放す。己が誇りをかけてぶつかり合った“龍”は、共に満足気な表情を浮かべていた。

 

『……リアス・グレモリー様の『兵士』一名、並びに、ソーナ・シトリー様の『兵士』一名、共に戦闘不能。』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

『フハハハ……面白い…』

神器の奥深く、バラバラにされ分けられた中の一つに過ぎなかったソレは、静かに目覚めた。

 



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撃滅女帝と水流令嬢

お久しぶりです。しばらくは不定期更新が続くと思います。AO受かるかな……


 

「『水流昇霞(ウォーターネブラ)』!!!」

 

「『ルイン・ウィップヒュドラ』!!!」

 

ソーナの放った水流が螺旋を描きリアスに迫るが、リアスは消滅の魔力によって作り出した九つの蛇の頭を操り、ソーナの水流をかき消した。

 

『……リアス・グレモリー様の『兵士』一名、並びに、ソーナ・シトリー様の『兵士』一名、共に戦闘不能。』

 

(っ!…どうやら二人は痛み分けに終わったようね)

 

戦闘中聞こえてきたグレイフィアのアナウンスに、リアスは奥歯を噛むが、直ぐに思考を切り替える。

リアスとソーナ、『王』同士のぶつかり合い、一見均衡に見えるこの戦いだが、徐々にリアスが押されていた。

ルールによって屋内では全力の出せないリアスに対し、ソーナは水を壁に纏わせて自身の力で破壊してしまうのを防いでいる。

リアスは、『造形魔法』によってなんとか渡り合ってはいるが、肉体的にも精神的にも徐々に疲労が積み重なっていた。

 

その時、リアスの足元の水が突然波打ち、リアスの足を絡め捕った。

 

「っ!?しまっ」

 

「『水流斬波(ウォータースライサー)』!!!」

 

その一瞬を逃さず、ソーナの放った水の斬激がリアスに迫る。

 

「っのぉ!『ルイン・シールドアーケロン』!!!」

 

リアスは、消滅の魔力で出来た海亀を模した盾で水の斬激を防ぐ。

 

「やっと隙を見せましたね!『水流拘束(ウォーターロック)』!!!」

 

「っ!!」

 

しかし、それはソーナの陽動だった。ソーナはリアスの後ろから水を被せ、水の牢獄に閉じ込める。

 

「これで終わりです。『エアゼロ』」

 

「ぐっ!!…ぅぼぁ!?」

 

ソーナは水牢の水を操り空気を抜き取る。リアスは消滅の魔力で吹き飛ばそうとするが、水中で酸欠に陥り朦朧とする意識では上手く魔力を纏うことが出来ない。徐々にリアスの意識が薄れ行く。

 

 

 

 

「ーーーギリギリセーフね」

 

「なっ!?《ドスッ》ぁぐあ゛!!!?」

 

突然聞こえた声に反応し、ソーナが振り替えるより早く、光の矢がソーナの背に突き刺さる。悪魔にとって光は猛毒に等しい。ソーナはその凄まじい痛みのあまりに意識が乱れ、それにより水牢が弾けリアスは解放される。

「ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!~~~っはぁ!」

 

解放されたリアスは、飲み込んでしまった水を吐き出し、すんでのところで意識を取り戻した。

 

「なんとか間に合ったみたいね、リアス。」

 

ソーナに向けて矢を放った者、夕麻がリアスに話しかける。

 

「ハァ…ハァ…ええ、ありがとう夕麻。あぶないところだったわ。」

 

息も絶え絶えではあるが、リアスは夕麻に返事を返す。

 

「う…ぐぁ…な、なぜ…ここに…?外には椿姫たちが……」

 

ソーナは激痛に苦しみながらも立ち上がり、夕麻に問い掛ける。

 

「外では白音や木場たちが全力で抑えこんでくれているわ。そのおかげで私はここまでこれた。」

 

『ソーナ・シトリー様の『女王』、『騎士』、並びにリアス・グレモリー様の『女王』、戦闘不能。』

 

そこにグレイフィアのアナウンスが入る。

 

「……どうやらこのゲームも大詰めみたいね。リアス、二人でソーナを倒すわよ!」

 

夕麻は光の弓矢を構える。

 

「……ごめんなさい、夕麻。こんなこと評価されたものじゃないことは解ってる。……けど、お願い!ソーナとの決着は、私1人で着けたいの!」

 

「……竜也様に怒られるわよ?」

 

「ふふっ…ええ、そうね。きっと叱られちゃうわ。……けど、それでも私はっ……!」

 

「……わかったわ、好きになさい。けど、負けたら承知しないわよ。イッセー君との初ゲームが敗北なんて」

 

そう言って夕麻は弓矢を下げた。

 

「さあ、ソーナ……決着を着けましょう」

 

「……ええ、リアス」

 

二人は静かにお互いを見据え、魔力を練り上げる。

 

「『クリムゾンネイル』!!!」

 

「『水流双牙(ウォータークロー)』!!!」

 

リアスは消滅の魔力、ソーナは水流で出来た爪を両手に纏い、全力を込めて相手に走る。

「ソーナァァァァァァァァァァァ!!!」

 

「リアーーーーーーーーーーース!!!」

 

ザン!!

 

二人の影が交差し、過ぎ去り、二人は動きを止める。そのまま時が止まったかのように錯覚してしまいそうになる。……そして、遂に

 

「………流石、です…ねぇ…」

 

ドサッ

 

ソーナはそう言って、前のめりに倒れた。

 

『ソーナ・シトリー様、戦闘不能。よってこのゲーム、リアス・グレモリー様の勝利です。』

 

こうして、リアス・グレモリーとソーナ・シトリーのレーティングゲームは、リアスの勝利に終わった。

 

その後、その戦いを見た者たちから、リアスには『撃滅女帝』、ソーナには『水流令嬢』の異名がつけられるのだが、それはまた別の話。

 

 




感想などもらえると嬉しいです。


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ゲーム終了後とその他ダイジェスト

久しぶりに“ヤツ”が帰ってきます!


 

ゲーム終了後、匙とイッセーにサーゼクスさんから勲章が与えられた。ま、あれだけの戦いを見せれば当然だがな。そして、リアスだけでなくソーナに対する評価もうなぎ登りになった。これであの老害どもも下手なことは出来んだろう。まあ、俺がさせんが。そしてその後、他の面々のレーティングゲームも同時たはつ的に行われた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ヴァーリチームVSシークヴァイラ・アガレス

 

「『クエイクウェーブ』!!!」

 

シークヴァイラの持つ杖から衝撃波がヴァーリに向けて放たれる。ヴァーリは『白龍皇の月光翼』を展開しそれをヒラリとかわす。

 

「成る程、振動の波を放つのか。当たれば内部で共鳴を繰り返し、そして最後は弾け飛ぶ。しかも、振動だから相手の防御力は関係なし…と。したらば、『禁手化』」

 

ヴァーリは禁手、『白龍皇の月光神鎧』を纏う。

 

「例え白龍皇の鎧で有ろうとも、私の魔法『振動(クエイク)』ならばーーー」

 

「『グッドナイト・ムーン』」

 

シークヴァイラが言い終わる前にヴァーリが動く。鎧の両足の月の装飾“グッドナイトシスターズ”から相手を眠りに誘う月の光が放たれ、シークヴァイラはそれをもろに浴びてしまった。

 

「なっ…こ、こん…な……zzzzzzz……」

 

シークヴァイラが眠りに落ちたのを見て、ヴァーリは地に降り立つ。

 

「別に無力化するのにわざわざ戦うまでもないのさ」

 

そう言ってヴァーリは魔力弾を放った。

 

『シークヴァイラ・アガレス様、戦闘不能。よってこのゲーム、雷門ヴァーリ様の勝利です。』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ゼファードル・グラシャラボラスVSサイラオーグ・バアル

 

「オラァァァァァァァァ!!!」

 

ゼファードルが渾身の拳を放つ。サイラオーグはそれを己が頬で受け止めた。

 

「…………チッ、届かねぇか…」

 

「いや、お前の拳、確かに俺の魂に届いた。故に、俺もそれに答えよう!」

 

次の瞬間、サイラオーグの拳がゼファードルの片頬に食い込み、ゼファードルは大きく吹き飛んだ。

 

「ガフッ……おい、お前…俺に勝ったんだ。無様な負け方はするんじゃねぇぞ」

 

「無論だ。また戦える時を楽しみにしているぞ、ゼファードル・グラシャラボラス。」

 

「………へッ」

 

ゼファードルは小さく笑い意識を手放した。

 

『ゼファードル・グラシャラボラス様、戦闘不能。よってこのゲーム、サイラオーグ・バアル様の勝利です。』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

竜也チームVSディオドラ・アスタロト

 

「おい、久々の出番かと思ったらこんなやつかよ」

 

「そう言うな、力を見せつけるって意味でもちょうどよかったんだ。」

 

竜也は片手に持つ可笑しな顔の付いた棒、“わざぼー”に向かって言う。

「………いや、何そのブッサイクな棒?え、何?馬鹿にされてんの僕は!?」

 

「いやいや、全然そういう訳じゃないから。むしろ逆。まぁ喰らえや」

 

すると竜也は一瞬でディオドラの目の前に移動しわざぼーをディオドラに突きつける。

 

「えっ!?ちょっ!?は」

 

《チョン》「大火力炎上!!!」

 

「ヒィ!?」

 

シーーーン

 

「………ん、ん?な、なんだ、なにもな《ボオオオオオオオ!!!》アッチィィィィィィーーーー!!?」

 

安心したのもつかの間、突如ディオドラの体が炎上した。

 

「熱いか?なら冷ましてやるよ。《チョン》ナイアガラフォール!!!」

ザバァァァァァァァァ!!

「ゴベバボボバベボベバベベア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!?」

 

竜也が再びわざぼーでディオドラに触れて技名を言うと、今度はディオドラの頭上から大量の水が滝のように降ってきた。ディオドラの体の炎は鎮火したが、今度は水圧に押し潰される。

 

「ぜぇ、ぜぇ……な、なんなんだよその棒はぁ!?いきなり発火したり滝のような水が降ってきたり!」

 

「ん?これか?これは“わざぼー”」

 

「わ、わざぼー?」

 

「そう、こいつで相手に触れて技名を叫ぶと本当にその技が出てくる。それがわざぼーの力だ。」

 

(………………え”え”え”え”え”え”え”!?!!?うそーん!?何そのチートアイテム!?聞いてないわよ~~!!!?)

 

「はっはっはっ、衝撃の内容に言葉が出ない様だな」

 

(はい)

 

素直に頭を縦に振るディオドラ

 

「と、いう訳で、諦めてくらえ」

 

チョン

「あ」

 

「サンダーファイヤー10連発!!!」

「………え?」

 

バリバリバリ!ボオオオオ!バリバリバリ!ボオオオオ!バリバリバリ!ボオオオオ!バリバリバリ!ボオオオオ!バリバリバリ!ボオオオオ!バリバリバリ!ボオオオオ!バリバリバリ!ボオオオオ!バリバリバリ!ボオオオオ!バリバリバリ!ボオオオオ!バリバリバリ!ボオオオオ!

 

「あぎゃあああああああああああああああ!?!!?!?」

 

『…………でぃ、ディオドラ・アスタロト様、戦闘不能。よってこのゲーム、雷門竜也様の勝利、です。……』

 

 

と、このような結果となった。何はともあれ、こうして冥界での夏合宿、並びに、初レーティングゲームは終了したのだった。

 

 

ちなみに、ディオドラは全治一ヶ月の重体だそうだ。流石にやり過ぎた。後悔はしてないが。



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熱唱と初ライブ

 

冥界のとある場所にある巨大なライブ会場。そこは現在、冥界中から集まった観客たちで超満員になっていた。

 

「うわっすげぇ、まじで満員だよおい……」

 

会場の幕の影から覗き見たイッセーが壮観と言った表現で呟く。

 

「き、緊張してきたっす……」

 

「な、なんか変な汗出てきた……」

 

「わ、私大丈夫でしょうか……」

「心配するな、今までの練習を思いだしな。」

 

「『龍の紡ぐ絆』の皆さん!本番10分前です!スタンバイお願いしまーす!」

 

緊張をほぐすために雑談していると、スタッフから声がかかる。

「さあみんな、そろそろいくぜ!響かすぜ!俺たちの歌を冥界中に!」

 

『『『『『了解!!!!』』』』』

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

超満員のライブ会場、そのステージの中心に1つの影が駆け込む。中心に着くと同時にスポットライトが灯り、マイクを持った竜也の姿が浮き出る。

 

『諸君!今日は俺たち『龍の紡ぐ絆』のライブに来てくれて、どうもありがとーー!!』

 

『『『ワァァァァァァァアアアアアアアア!!!』』』

 

竜也のマイク越しの呼び掛けに、会場に集まったオーディエンスたちは皆歓声を上げる。

 

『いいねぇ!いいねぇ!最っ高だねぇ!俺たちも全力で盛り上げるから、みんなも楽しんでいってくれよーー!!』

 

『『『ワァァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!』』』

 

『それじゃあ早速いってみようかぁ!!』

 

「「あいよ!!」」「ええ!」「にゃあ!」

 

竜也の呼び掛けに応じて、竜也の背後にスポットライトが灯り、楽器を構えたイッセー、ヴァーリ、朱乃、黒歌が現れた。

 

「1、2、1234!」

 

 

 

【晴レルヤ】

 

【好奇心オンデマンド】

 

ボーカル兼ギター:竜也 ボーカル:朱乃 ギター:ヴァーリ ドラム:イッセー キーボード:黒歌

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『『『ワァァァァァァァァアアアアアアアアアアア!!!』』』

 

『ーーーふぅ、センキューみんなーー!!続いてはこいつらの登場だぁ!』

 

「さあ、みんな行くわよ!」

 

『はい!!!』

 

【ぱんでみっく!!】

 

【りばいばる!】

 

【sticky lucky stupids】

 

ボーカル:リアス 演奏:オカルト研究部

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

『つ、次の曲は私たちが歌います!』

 

『目一杯盛り上げるっすよぉ!』

 

『おもいっきり歌います!』

 

『……では、聞いて下さい』

 

『『『『完璧ぐ~のね!!!』』』』

 

 

【完璧ぐ~のね】

 

歌:アーシア・ミッテルト・ルフェイ・白音

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

『『『ワアアアアアァアアアアア!!!』』』

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!ルッフェェェェェェェェェェイ!!!」

 

「アーシアたぁぁぁぁぁぁぁん!!きゃわいいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ミッテルトたぁぁぁぁん!!白音たぁぁぁぁん!!こっち向いてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」|

 

ピンクのハッピにハチマキ、両手にサイリウムと完全武装で絶叫するシスコン(アーサー)ストーカー(ディオドラ)ロリコン(ジーク)。ちなみに、ハッピの背とハチマキにはそれぞれ、妹命、聖女命、ロリ命と刺繍されている。

 

その後、『龍の紡ぐ絆』の冥界初ライブの盛り上がりはとどまることを知らず、ますますヒートアップして行った。

 

【ぜっこーちょー】

 

歌:イッセー

 

 

【あっちでこっちで】

 

歌:ヴァーリ・白音

コーラス:黒歌・アーシア・イッセー

 

【SOMEONE ELSE】【COOLISH WALK】【NOW!!!GAMBLA】

 

歌:アーシア・イリナ・ゼノヴィア

 

 

【めいあいへるぷゆー】

 

歌:夕麻・カラワーナ・ミッテルト

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『龍の紡ぐ絆』の初ライブ、その熱気は遂にピークを迎えていた。

 

『みんなぁ!次でいよいよ最後の曲だぁ!名残惜しいが、最後まで取り上げていこうぜぇーーー!!!』

 

『『『『『ワァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアア!!!!!』』』』』

 

『みんなありがとう!それじゃあ聞いてくれ!』

 

『俺たち三人の熱かりし魂を込めた曲だぁ!』

 

『いくぜ!』

 

 

 

『『『エボレボ!!!』』』

 

 

【エボレボ】

 

歌:竜也・ヴァーリ・イッセー

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

『『『『『『イエェェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエ!!!!!』』』』』』

 

『みんなーー!!今日は俺たちのライブを聞いてくれて、本当にありがとーー!!』

 

「こっちこそありがとー!」「すっげぇ楽しかったぜー!」「キャーーー!!!竜也様ぁぁぁぁぁ♥♥♥!!」

 

『今日のことは絶対に忘れねぇぜーーー!!』

 

「俺たちも忘れないぜーー!」「かっこよかったー!」「せきりゅうてー!』

 

『み、皆さん!本当に、本当にありがとうございまちた……あぅぅ……』

 

『『『キャーーーーーー!!!カワイイーーーーーー♥♥♥!!!』』』

 

『『『萌えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』』』

 

「ぅウオォォォォォオオオオオオァァァァァアーシアたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

飛び交う声援、沸き上がる拍手、発狂するバカ、会場の熱気はまさに最高潮に達していた。

 

『それじゃあオーディエンスのみんなぁーーー!』

 

『『『『『またお会いしましょーーーう!!!』』』』』

 

『『『『『ワァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!』』』』』

 

こうして、俺たちの初ライブは無事に大成功を納めたのだった。

 

 




歌のラインナップとキャスティングは100%自分の趣味です。次回もお楽しみに


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歴史とすごろく

前後編にしようと思いましたが、一話にまとめました。


「すごろく?」

 

それはとある日、リビングでくつろいでいた竜也のもとに、アザゼルが一本の巻物を持ってきたことから始まった。

 

「おう、だがただのすごろくじゃねぇぜ?ほれ」

 

アザゼルが巻物を広げるとそこにはシンプルなマスの書かれたすごろくだった。だが、マスにはなにも書かれていない。

 

「なんだよ、白紙じゃんか」

 

「ところがどっこい、サイを振ってコマを進めると文字が浮かび上がる。浮かび上がるのは西暦とその年に起こった事柄。プレイヤーはその時代にタイムスリップしたかのような擬似体験ができるゲームだ。」

 

「へ~、面白そうじゃん。」

 

竜也はすごろくを除き混む。他の面々も興味深そうにすごろくを見ていた。

 

「ふっふっふっ、驚くのはまだ早いぜ?このゴール、今はまだ空白だが、無事ここまでたどり着いた奴は、この空白に未来の予定を書き込む権利を得るのだ!」

 

その時、その場にいた全員の目の色が変わった。

 

「ふっ、どうやらやる気十分なようだな。ちなみにこれ、二人一組の三チームでやるみたいだから、まずは俺のペアを……」

 

『『『『グッパーホイ!!!』』』』

 

「えっ、ちょっ!?お前らぁ!」

 

こうして、アザゼル完全無視で『龍の紡ぐ絆』すごろく大会がスタートした。

 

 

Aチーム 竜也、朱乃ペア

 

「くっくっくっ、手加減はなしだ…」

 

「あらあら、うふふ♪」

 

 

Bチーム イッセー、夕麻ペア

 

「頑張ろうねっ、イッセー君!」

 

「おう、夕麻ちゃん!」

 

Cチーム ヴァーリ、黒歌ペア

 

「やるぜ黒姉さん」

 

「にゃっふっふっ、任せるにゃんヴァーリちゃん♪」

 

観戦 アザゼル、リアス、イリナ、アーシア、白音、ゼノヴィア、オーフィス

 

「ちっ、俺が持ってきたのに……」

 

「くっ!あそこでパーを出していれば……!」

 

「イッセーくーん!夕麻ー!ファイトよーーー!」

 

「皆さん頑張って下さーい!」

 

「…ヴァーリさん、姉様、ファイトです」

 

「くっ!世界中のガンプラを我が手に掌握する夢が……!」

 

「でけぇのかちっちぇのかわかんねえ夢だなおい…」

 

「竜也、がんば」

 

そんなこんなで、第一投はイッセー、夕麻ペア

 

「そんじゃ、よっと」

 

イッセーはサイを振り、コマを進める。すると、止まったマスに文字が浮かび上がった。

 

「おお!本当に文字が浮かび上がった!?」

 

「ええっと、何々……」

 

【57年 奴国王、金印を授かる】

 

すると、すごろくのマスに渦のような物が発生し、イッセーと夕麻が吸い込まれて行った。

 

「「ぎゃばーーー!!!?」」

 

「怖ぁっ!?」

 

その光景に竜也は思わず叫ぶ。

 

「な、何だ今の……」

 

「吸い込まれたにゃ……」

 

唖然とするヴァーリと黒歌

 

「言ったろ?未来の予定を書けるのは無事ゴールできた奴だけだって。ちなみに、クリアできた奴はいまだにゼロだ。」

 

「そういう危険性は先に言っとけバカ親父!」

 

ヴァーリが突っ込む

 

(((((じゃんけん負けてよかった……?)))))

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

その頃、イッセーと夕麻は……

 

「へぇ~、ここが奴国か」

イッセーはあたりをキョロキョロ見渡す。

 

「イッセー君、これ見て!」

 

夕麻が指差す先には一枚の立て札があり、そこには【帰還方法 捺印しろ!!】と書かれていた。

 

「捺印?」

「金印を押せって意味だな。じゃ早速奴国王に会いにいこうぜ。」

 

そう言ってイッセーが振り向くと、真っ赤に焼けた金印を構えた武者の姿があった。そしてその武者は、金印をイッセーの顔面に押し当てた。

 

ドジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!

 

「ぎょえええええええええええええええっ!!?」

 

「イッセーくぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!?」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

しばらくして、イッセーと夕麻がすごろくから飛び出てきた。

 

「あ、帰ってきた」

 

「金印の使い方が間違ってんだろぉぉぉぉ!!!」

 

号泣するイッセーの顔には金印の文字がくっきり入っていた。

 

「おおっ、『漢委奴國王』。習った習った」

 

金印の文字を見てやや興奮気味の竜也

「あーーん!イッセー君の顔がーーー!!」

 

「きゃぁぁぁぁ!!!?いったい何があったのーーー!!!?」

 

イッセーの惨状に取り乱す夕麻とイリナ

 

「アーシア、根性焼きって治療できる?」

 

「は、はひ!頑張ります!」

 

とりあえず、イッセーの治療はアーシアに任せることに

 

「一度行った年以前は皆行けないらしい」

説明の巻物を呼んでアザゼルが言う。

 

「ゲームが進むにつれ、皆現代に近づくのか」

 

「戦争のある年は避けたいな」

 

「何か法則があるのかにゃあ?」

 

「ここは一端態勢を立て直して慎重に……」

「よっと」

 

ヴァーリたちが真面目に考えている端で、竜也がサイを振っていた。

 

【1600 関ヶ原の戦い】

 

「「「「いっそ死んでこい!!」」」」

 

「どあっ!?」

 

「あらあら」

 

竜也は他のチームに蹴り飛ばされ、朱乃はそれに続いて巻物に吸い込まれる。

 

「ほんと最低だあの愚兄!」

 

「勝手に振りやがって!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

【帰還条件 四時間以内に大将を倒せ!!】

 

すごろくに吸い込まれ、目の前すぐにあった立て札にはそう書かれていた。

 

「……大将?」

 

「あれじゃね?」

竜也が指差す方を見ると、武者の大群が後方から押し寄せていた。

 

「やる?」

 

「やりますわ」

 

二人は短く掛け合うと、自然な動作で両手を構える。

「『スターライトブレイカー』」

 

「『デッドオアアライブ』」

 

カッ!!!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

吸い込まれて数分後、早くも竜也と朱乃は帰還して来た。

 

「四時間もかからなかったな」

 

「ですわね」

 

「何がだ!?」

 

そんなこんなで三番手、ヴァーリ、黒歌ペア。

 

【1685~ 生類憐みの令発布】

 

「あ、なんか楽そうだにゃ」

 

「サクッと行ってくるか」

 

そう言って二人はすごろくに吸い込まれて行った。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

【帰還条件 一匹残らず動物を撫でろ!!】

 

そしてヴァーリたちの目の前には、犬、猫、馬、ヤギ、羊、虎、カバ、キリン、ライオン、ワニ、コモドオオトカゲ、ミノタウルス、ドラゴン、等の多種多様な動物たちが…

 

「いやオカシイだろぉ!!!日本の条令に猛獣と幻獣もってくんなぁ!!」

 

『『『ギャオオオオオオオオオ!!!』』』

 

ヴァーリのツッコミに反応したのか、動物たちが一斉に襲い掛かってきた。

 

「ヴァーリちゃん!帰還条件は愛でろだから傷つけちゃダメにゃあ!」

 

いつの間にか遥か後方に避難した黒歌がヴァーリに叫ぶ。

 

「いや、何一人だけ安全圏に避難してんだ!!!?ったくしょうがない…『禁手化』」

 

ヴァーリは『白龍皇の月光神鎧』を身に纏う。

 

「『グッドナイトムーン』」

 

ヴァーリは浴びた者を眠りに誘う光を放つ。それを浴びた動物たちは、ふらふらと足取りがおぼつかなくなり、やがて皆眠りについた。

 

「…さて、それじゃあ始めるか」

 

 

~~10分後~~

 

 

「おかしい…こいつで最後のはずだが……」

眠りこけるドラゴンの頭を撫でながらヴァーリが呟く。

 

「ヴァーリちゃん急いで!早くしないと起きちゃうにゃ!」

 

黒歌が小声で呼び掛ける。

 

「と言われても………うん?」

 

ふと、ヴァーリは黒歌の顔を見る。

 

「な、何にゃ、ヴァーリちゃん?」

 

ヴァーリはそのまま黒歌の頭に手を置いた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「うわっ!?ヴァーリ、何だその顔!?」

 

帰還してきたヴァーリの顔には痛々しい引っ掻き傷があった。

 

「ふっ、猛獣にやられたのさ」

 

「ふん!」

 

その後、各チーム順調にコマを進め、遂にゴール目前となった。

 

「ふっ、遂に最終局面か。黒船とやりあった傷はもう良いのか、アニキ?」

 

「イッセーこそ、杉田玄白に解体されかけてボロボロだろうが」

 

イッセーと竜也が火花を散らしている端で、黒歌とヴァーリは柱をバリバリと引っ掻いていた。

 

「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ~~~」

 

「我輩は猫である~~~」

 

「ヴァーリさん姉様正気に戻って下さい!」

 

「ヴァーリと黒歌は夏目漱石に洗脳されてリタイアか……決着着けるぞアニキ!」

 

(あっちは後回しでいいのかしら……?)

 

「5以上出せば勝ちだぞ朱乃ちゃん!」

 

「うふふ、4でした」

 

「遅かった!!!?」

 

【1918 米騒動勃発】

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

【帰還条件 米を食え!!】

 

目を開けると、そこは米だらけだった。

 

「豊作じゃねぇか!!?」

 

「米騒動」……第一次世界大戦後、米の買い占めによる米価高騰によって起こった暴動。

 

「パン食がなんぼのもんじゃーー!!」

 

「生玉子かけるんじゃねえっ!」

 

「米寿祝えやーー!!」

 

「愛してるよ納豆!」

 

「ちっ!何て騒々しい米たちだ!これを食えってか!?」

 

「…いえ、これまでのパターンからして、どこかにボスにあたる米がいるのでは?」

 

襲い来る米たちを退けながら、竜也と朱乃はそれらしき米を探す。すると、米の群れの中に、ホカホカと湯気を上げているものがいた。

 

「…一匹だけ炊けてるやつがいる」

 

「あれですわね」

 

「………塩ほしい」

 

「あったかいウチに食べましょうね?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「ゲフ 結構旨かった」

 

「手足は残してよかったのでしょうか?」

 

((((何食べたのか聞くのが恐い……))))

 

「ハハハ!!残念だったなアニキ!1を出さない限り俺たちはゴールだ!俺たちの勝ちだ!!」

 

勝ち誇りサイを振るうイッセー。そして出たのは……

 

【1972 パンダ来日】

 

「……俺、パンダ好きだし」

 

「負け惜しみが苦しいよイッセー君!!」

 

「意地らしいイッセー君も素敵っ!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「グマーーーッ!!」

 

ペシャーーーンッ!!!

 

「ブベラーーーーーッ!!!?」

 

「イッセーくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!?」

 

突如シロクマに殴り飛ばされたイッセー。

 

「パンダってシロクマじゃねーか!?パンダはどこに……」

 

辺りを見回すと立て札を発見した。

 

【帰還条件 パンダにしろ!!】

 

「どういうことだぁ!!!?」

 

「イッセー君!ここに大量の白髪染め(黒)がっ!!」

 

「やれってか!!!?」

 

「グマーーーッ!!」

 

イッセーの困惑もお構い無しに、襲い来るシロクマ。

 

「クソー!こうなったらやるしかねぇ!いくぞ夕麻ちゃん!」

 

「うん!イッセー君!」

 

「グマーーーッ!!」

 

「ちょっ!?暴れるなって!」

 

「お客さん動かないで!?」

 

~~20分後~~

 

「ぅおっしゃ完成!」

「やったねイッセー君!」

 

「グマー♪」

 

決死の思いでシロクマをパンダに染めたイッセーと夕麻。パンダカラーとなったシロクマも手鏡片手に頬を染めている。

 

「……ごめんな、夕麻ちゃん。俺が1なんか出したから負けちゃって……」

 

「ねえ、イッセー君。もしゴールしたらどんなことを書き込むつもりだったの?」

 

「あ、ああ、それはな……」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「夕麻ちゃんとイリナと、みんなで末永く幸せに……て、あれ?」

 

気づいたらイッセーはもとの世界に戻っていた。

 

「へ~、イッセーお前結構純情なのな」

 

「イヤァァァァァァァァ聞かれてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

羞恥に悶えるイッセー

 

「さて、そんじゃあ今度こそ……」

 

ピンポーン『こんにちはー、ピザヘッドでーす。ご注文のピザをお届けに参りましたー』

 

「あ、ピザ届いた」

 

「え!?いつの間にピザなんか注文したの!?」

 

「いや、だってそれなりに時間経ったしお腹空いたし。んじゃ、アザゼルよろしく」

 

「ったく、しょーがなねぇなーっと」

 

渋々アザゼルは立ち上がろうとする

 

ビリッ

 

「うおっ!?あ、足痺れたっと、と《ベリッ!》…………あ」

 

凍る空気、唖然とする一同、そして、アザゼルの足には破れたすごろく

 

「…………ボンクラ親父」

 

「ちょっちょっちょっと待て!事故!事故だっての!」

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「ギャァァァァァァァァァァ!!!?」

『あのー、ピザのお届けー?』

 

こうして、第一回雷門家すごろく大会は幕を閉じたのだった。

 

 



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義賊とパンツ 前編

 

「また兄さんの突然の呼び出しか」

 

「今日は何なんだぁ?」

 

「新しい依頼って言ってたけど……」

 

現在、『龍の紡ぐ絆』メンバーは、竜也の召集命令を受けて地下秘密基地へと集結していた。そしてその中に何故かアザゼルの姿もあった。

 

「って、なんでいるんすかアザゼルさん」

 

「さぁ?なんでも、今回の件で少なからず関係してるから取り敢えず来いってよ」

 

そんな雑談をしていると、一同は会議室の扉に差し掛かった。扉に近づくと扉は自動で開き、中には竜也と竜也に連なり先に着いていたドーナシークの姿があった。

 

「諸君、よく来てくれた。それでは今回の仕事について説明しよう。」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「下着ドロぉ?」

 

茶菓子のクッキーをかじりながら、イッセーは竜也の言葉をおうむ返しする。

 

「ああ、最近巷を騒がせてるはぐれ悪魔で、名をスケール・サルガタナス。通称『ふんどし仮面』。赤いふんどしを頭にかぶり、ブリーフ一丁で闇夜を駆け、綺麗な娘の下着をかっさらい、それをモテない男にばらまくという妙なやつだ。」

 

「いや、なんだそら?鼠小僧の変態バージョン?」

 

困惑した表情を浮かべるイッセー

 

「なるほど、このパンツにはそんな意味が…」

 

「お前貰っとったんかいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

見るとアザゼルの手にはパンツが握られていた。

 

「ケハハハハハ!!!そりゃあんた、モテない男と見なされた勲章だよ!」

 

「哀れだねぇ!ぷぷぷ~」

 

アザゼルを指差して大笑いするフリードとディオドラ。しかし、動いた拍子に懐からそれぞれ何かがこぼれ出た。

 

「おーい見えてるぞお前らー。モテない男の勲章がこぼれ落ちてるぞー」

 

「で、そのふんどし仮面とやらが駒王街に潜伏してる、と?」

 

朱乃の煎れた紅茶をすすり、ヴァーリは竜也に尋ねる。

 

「ああ、実際に被害者も出ている。そこで、俺らの出番という訳だ。」

 

きびつを返し幹部勢を見渡す竜也。しかし皆の反応は薄い。

 

「……アニキぃ、それって結局いつものはぐれ狩りだろ?しかも下着ドロて…モチベーション上がんねぇよ」

 

「これを見ても同じことが言えるか?」

「え?」

 

「ヘイカモン」

 

竜也の合図とともに、夕麻とイリナが部屋に入って来た。その表情はどこか沈んでいる。

 

「あれ?夕麻ちゃんにイリナ。いないと思ってたらどうし……」

 

その時、イッセーは何かを覚った。

 

「……ま、ましゃか…ふ、二人とも……」

 

「う、うん……」

 

「盗られちゃった…みたいなの、パンツ……」

 

「ぬぅわぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!!?!!?」

 

イッセーは激怒した。そして、心に固く誓った。今は見ぬかの変態を必ずや血祭りにあげると。

 

「おのれぇぇぇふんどし仮面んんんんん!!!よくも俺の女神のパンツをぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!野ぁ郎ブッ殺してやぁるぅぅぅぅぅぅううううう!!!!!」

 

般若のごとき形相で絶叫し怒り狂うイッセー。あまりの怒りから額の血管は文字通りぶちギレ血が吹き出し、全身からは怒りの炎が立ち上がる。

 

「うお!あまりの怒りに人体発火した!?」

 

「これ以上刺激するな。何かに変身しそうだ。で、だ。このままだと駒王街中の娘達が被害にあうだろう。しかし、冥界、人間界共に民衆、特にモテない男達からなまじ人気があり、さらにはそいつの能力もあってなかなか捕まらないらしい。」

 

「ケッ、変態風情がいっぱしの義賊気取りか。……よし、今回は俺も協力する」

 

そう言うとアザゼルはフラりと立ち上がる。

 

「あ、アザゼルさん?」

 

「フザケンナ、フザケンナよ…俺はモテないんじゃねぇ!独身なんじゃああああああああ!!!」

 

ビリビリビリビリィ!

 

「「「「ああああああパンツゥゥゥ!!!」」」」

 

アザゼルは怒りに任せ手に持ったパンツをビリビリに破り捨てる。

「いくぞ野郎どもぉ!!」

 

「乙女の純情と男のプライドを踏みにじった白ブリーフを己の血で真っ赤に染めたらぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

『『『『お、お~~』』』』

 

「いや、勝手にしきんないでほしいんだけど……」

 

こうして、若干温度差はありながらも、作戦は開始されたのだった。

続く!



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義賊とパンツ 中編

スミマセン、まだ続きます


その後、竜也たちは早速怪盗ふんどし仮面を捕まえるべく動き出した。

「と、言い訳で、これより怪盗ふんどし仮面捕獲の捕獲作戦を開始する。」

 

庭に集結した『龍の紡ぐ絆』メンバーに、木箱で作った壇上に乗った竜也が切り出す。

 

「作戦はズバリ張り込み。場所はこと雷門家。

この家は駒王街でも屈指の美少女(当社比)が集まっている。そして奴はパンツの量より女の質を求める真正の変態だ。近いうちに間違いなく狙ってくるだろう。その前にこの家を難攻不落の要塞にして奴を伐つ。わかったなお前らぁ!」

 

『『『『了解!!!』』』』

 

かくして、『龍の紡ぐ絆』フルメンバーによる仮面ふんどし仮面捕獲作戦の火蓋は切られた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「ふん!はぁ!らぁ!そぃ!ぅおらぁ!!」

 

鬼気迫る表情でシャドーボクシングをするイッセーに、回りにいるメンバーは思わずたじろぐ。

 

「気合い入ってるなぁイッセー君」

 

「自分の女のことになると性格変わるからな、あいつ」

 

木場と竜也がそんな事を話していると、袋を担いだアザゼルがやって来た。

 

「よっこいせっと、ふ~」

 

「アザゼル先生、いったい何を運んできたんですか?」

 

アザゼルの下ろした袋を見て、木場はアザゼルに尋ねた。

 

「ああ、良いもの持った来たぜ」

 

「良いもの?」

 

アザゼルが袋を開けると、黒い円盤のようなものがたくさん入っていた。しかし、それは円盤等という生易しいものではなく……

 

「まあ、なんつーか、地雷……的な?」

 

「いや『的な?』どころか地雷そのものじゃないですか!!」

 

ほぼ条件反射的に木場がツッコミをいれる。当然といえば当然である。下着ドロを捕縛するのに地雷を持ってくるやつがいると誰が思おうか。そんな中、竜也は袋をつかんでメンバーに呼び掛ける。

 

「よーしお前らー、これ配るからそこらに埋めてけー」

 

「いや何君もさも当然の様にしてんの!?完全にジュネーブ条約に違反してるでしょうが!」

 

「よそはよそ、ウチはウチ」

 

「いやんなオカンルールで誤魔化せると思ってるのか君はぁ!?」

 

「てか、そもそもそれって人間の世界での話じゃん?俺ら人外集団じゃん?相手もはぐれ悪魔じゃん?だったら問題ないじゃん?」

 

「じゃんじゃんウルセェェェェ!!ああもう!こういう時の竜也君のブレーキ役のヴァーリ君はどこ行ったぁぁぁぁぁ!!?」

 

声を粗げキャラでないツッコミをいれる木場。彼も着々と染まりつつあった。

 

「ああ、ヴァーリはいま装置の調節に行ってるよ。」

 

「装置?」

 

「それも今終わった所だ。」

 

するとちょうどそこへヴァーリが歩いてきた。

 

「ヴァーリ、どうよ具合は?」

「バッチリだ、問題なく作動するだろう。」

 

そう言ってヴァーリは片手に持ったスイッチを見せる。

 

「それは?」

 

「詳しいことは今から説明する。おーい!全員集合!」

 

竜也の呼び掛けに応じて『龍の紡ぐ絆』メンバーは何だ何だと集結する。今度は壇上に上がっているのはヴァーリだ。今現在、ヴァーリは白衣を纏い眼鏡を掛けた研究者スタイルだ。

 

「では、これより俺の開発した自慢の装置の御披露目とする。助手の白音君、実験動物を連れてきたまえ。」

 

「はい先生」

 

すると、いつの間にかヴァーリの隣にいた白音が走っていった。ちなみにヴァーリと同じく白衣姿である。数分後、木の柱に貼り付けにされたライザーを滑車に乗せた白音が戻ってきた。

「お待たせしました」

 

「うおぉぉ!や、やめろぉ!放せ!放すんだぁぁぁぁ!」

 

ライザーは激しく抵抗するが、当の白音はどこ吹く風である。その様はまさに、悪の秘密結社に囚われ改造されそうになっている男の図であった。

 

「それでは始めよう。ポチッとな」

 

ヴァーリは淡々とスイッチを押す。すると家の周囲にエネルギー波のようなものが発生し、その場にいた者たちは何やら空気が変わったような感覚になる。

 

「それじゃあ兄さん、そこにいるモルモット(ライザー)に一発かましてやってくれ。」

 

「こいつひでぇ!モルモットと書いてライザーと呼びやがった!?」

 

ヴァーリのあんまりな対応に、さすがのイッセーもツッコむ。

 

「威力はどんなぐらいだ?」

 

「軽くで大丈夫だ」

 

「そっか、んじゃ、『電気ショック』」

 

バリバリバリバリバリバリ!

 

「あばばばばばば!!!?」

 

竜也の放った電撃を受け感電するライザー。数秒後、竜也は電撃を止めると、縄が焼き切れてライザーは地面に落ちた。

「ふふん、成功だな」

 

「成功?何がだ?」

 

「ほら、それだよ」

 

ヴァーリが指を指した先には、()()()()ライザーが転がっていた。

 

「ライザーがどうしたってんだよ?」

 

「わからないか?不死のフェニックスならとっくに復活してるだろ?」

 

『『『あっ!!』』』

 

ヴァーリの指摘に全員がハッとした。ライザーは回復することはなく、未だに黒焦げの状態でのびている。

 

「それだけじゃないぞ?みんな、魔力を使ってみてくれ。」

 

ヴァーリに言われ、その場にいた者たちはやや困惑しながら魔力を使おうとする。しかし、一向に魔力の感覚を感じず、一同に動揺が走る。

 

「なっなんで!?魔力が!?」

 

「これは…」

 

「どっどういうことだよヴァーリ!?」

 

今までにない事態に、一同はヴァーリへ詰め寄る。そして当のヴァーリはどこか自慢気な顔をしている。

 

「ふふん、これぞ我が頭脳を結集して造り出した、その名も『魔封結界発生装置』!!!」

 

『『『『ま、魔封結界発生装置?』』』』

 

「その通り、我が雷門家地下中枢部に仕掛けた装置を作動させることにより、雷門家敷地内にあらゆる『魔』を封じ無効化させる結界を発生させるのだ。さらに、制御装置への通路に入って来た侵入者には、俺自慢の防御システムによるレーザー弾幕がお見舞いされる。」

 

『『『『お、おぉ~~~~』』』』

 

「……な、なんと言うか……科学?」

 

「進歩した科学は魔法と変わらないと言うが……まさにこの事だな」

 

ヴァーリの新たな発明、魔封結界発生装置に唖然とする一同。と言うか、自分たちの家の真下になんつう物騒なもんを造ったんだと思う竜也だった。

 

「……ま、まぁとにかく、仕掛けは上々。決戦はいよいよ今夜だ。気ぃ引き締めろよお前らぁ!」

 

『『『『了解!!!』』』』

 

こうして、天才的馬鹿親子の手によって難攻不落の要塞と化した雷門家。あまりにも物騒な下着ドロ捕獲作戦が、今始まる。

 




竜也「さんざん引っ張っといてまだ続くのかよ」

す、すんません。つ、次はなるべく速くあげるので……

イッセー「次回もお楽しみに」



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義賊とパンツ 後編

こんなアホな話を長々と引っ張って申し訳ありませんでした

竜也「始まるよ」


 

夜のとばりの降りた駒王街、その一角にある雷門家にて、雷門竜也とその仲間たちは巷を騒がす下着泥棒ふんどし仮面を捕らえるため張り込みを続けていた。

 

「………来ねぇなぁ」

 

「来ませんねぇ」

 

ふと漏れた竜也のつぶやきに隣に控えた朱乃が答える。現在彼らは庭の垣根の裏に隠れていた。他にも縁側の下や屋根など、あらゆる場所に『龍の紡ぐ絆』メンバーが隠れていた。

 

「………なあアニキ、こんなんで本当に引っ掛かるのかねぇ、ふんどし仮面」

 

「ったりまえだ、あんな極上の品々が並んでいるんだぞ。引っ掛かるに決まってるだろーがよ」

 

そう言って竜也が指を指した先には縁側にポツンと吊るされたパンツがあった。ちなみにリアスたち物である

 

「イヤイヤ、あからさま過ぎるから」

 

「明らかに罠ってまるわかりだっての」

 

「んだとこらぁ、俺の嫁のパンツには魅力がねぇってかてめえらぁ…」

 

イッセーと木場の指摘に凄みを効かせる竜也、

 

「イヤイヤイヤイヤ!誰もそんな事言ってないから!」

 

「ただ果たして()()が罠として機能するのかと」

 

「うるさいですよ、イッセー先輩、木場先輩。」

 

「そうよ、静かにしなさいあなたたち」

「こちとらパンツ賭けてるんだにゃ、黙って張り込みするにゃ愚民ども」

 

「いやっ!段々呼び方が酷くなってんですけど!?」

 

三人の物言いにイッセーがつっこむ。慣れない張り込みと夏の夜の蒸し暑さで、彼らは徐々にイライラがつのっていた。

 

「まぁまぁ、みんな落ち着けって。蒸し暑い中イライラしてるんだろうが、俺の発明を信じて気長に《バチィッ‼》ブベラァ!!!?」

 

険悪な雰囲気に成りつつある一同を宥めるため仲裁に入ったヴァーリだが、いきなり平手打ちを喰らいのけ反る。

 

「おぉぉ……な、何してくれとんじゃぁぁぁ!?」

 

「蚊」

 

打たれた頬を擦りながらヴァーリは叩いた張本人たる竜也にシャウトし、竜也は叩いた掌をみせる。悪びれもしない竜也の態度にヴァーリは今にも飛び掛かりそうだ。

 

「ま、まぁまぁ二人とも落ち着い《バシィ‼》テベラァ!!!?」

 

流石に不味いと思い木場が止めに入るが、そこに今度は木場にイッセーの平手打ちが飛んだ。

 

「蚊」

 

「いや蚊って……何処にもいないじゃん蚊、絶対憂さ晴らしでやっただろ君」

 

「いや本当だって逃げられたんだって、すんでのとこで」

 

「いーや嘘だね、その平手に確かに殺意を感じたよ僕は」

 

「イヤイヤ本当にちげーって ボソッ(まじしつけぇな、出番少ない癖に)」

 

「ぅおい今何てった?今君何て言った?ちょっとばかしこの小説で優遇されてるからって調子に乗るなよ」

 

「ぁあ?何だてめぇヤンのかこら」

 

「上等だよ表でな」

 

「うるっさいのよあなたたちさっきからぁ!」

 

「ただでさえ暑苦しいのが余計に暑苦しくなったにゃ!」

 

「皆さんいい加減に黙って下さいぶっとばしますよ」

 

「うふふふふふ、喧しいですわよ皆さん。鼻の穴に炭酸水流し込みますわよ」

 

「いやお前ら全員うるさいんだよ、永遠に黙らしたろか」

 

その場はまさに一子即発の雰囲気に、このままでは『龍の紡ぐ絆』内部崩壊の危機か

 

「まてまてまてお前ら!イライラしてるのはわかるが内輪揉めしてる場合じゃないだろう!こんなことで言い争っても不毛なだけじゃないか!俺たちの目的は下着ドロを捕まえることだろう!」

 

ヴァーリの言い分に竜也たちは黙る。ヴァーリに正論を言われたことで段々と冷静さを取り戻してきた。

 

「あの…なんかごめんな木場、思いっきりぶっ叩いて……」

 

「い、いや、僕の方こそついカリカリしちゃって…」

 

「わ、私も…すみませんでした……」

 

「私も暑さで気が立ってたみたいだわ」

 

「申し訳ありませんわ」

 

「にゃあ……」

 

「俺も…悪かったなヴァーリ、左頬大丈夫か?」

 

「ふっ、わかってくれたならいいさ。さて、それじゃあみんな元の配置に……」

 

プ~~~~~~ン

 

【【【【バチィィィィィィ!!!】】】】

 

その音が聞こえた瞬間交差する平手、そして始まる乱闘

 

「てんめぇヴァーリ!さっきまで言ってた事はどうしたぁ!?」

 

「甘いんだよ!何年あんたの弟やってると思ってんだ!」

 

「朱乃あーた!後頭部は洒落にならんにゃあ!」

「そちらこそボディーに重いのきめてくれましたわね……」

 

「てめぇ木場ぁ!二発も殴りやがったなぁ!」

 

「うるさいんだよ!ちょっと出番多いからって調子こいてるんじゃないよ!」

 

飛び交う平手ってかもはや拳の嵐、流石にこれは見てられずに他の『龍の紡ぐ絆』メンバーも集まってきた。

 

「あーあ、完全にスイッチ入っちゃってるよ。どうする?」

 

「どうするって、うちらで止められるわけないじゃないっすか」

 

「だからといってこのまま傍観するのも……」

 

残ったメンバーたちはなまじ彼らとの実力差を知っているが故に手が出せないでいた。そんな中、のしのしと歩いてくるのはアザゼルだ。

 

「やれやれ、情けねぇ。こいつらもおめぇらも、ガキの癇癪も止められないでどうする」

 

「あ、アザゼル様……」

 

「も、申し訳ありません……」

 

アザゼルの指摘に頭を下げるカラワーナとドーナシーク、何気に彼らがメンバーの中で年長者であった。そしてアザゼルは未だに乱闘を繰り広げる竜也たちのもとに歩み寄る。

 

「ほらお前ら喧嘩してんじゃねぇよ。ほら、みんな暑さでイライラしてんだな?よし、ちょっと休憩」

 

「黙れマダオ総督」

 

「黙れ未婚総督」

 

「黙れボンクラ総督」

 

「黙れ中二総督」

 

「黙れプータロー総督」

 

「黙れ髪の毛吐瀉物カラー」

 

「黙れクソゲロ」

 

「ブベアオォ!!!?」

 

止めようと思ったら生徒たちからの暴言の雨あられに血ヘドを吐きぶっ倒れるアザゼル。

 

「ア、アザゼル様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「誰だぁぁぁぁぁぁ!?今クソゲロつった奴誰だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

「は、はは……暑さのせいだよね……みんな暑さが悪いんだよね……」

 

うわ言を言いながらふらふらと立ち上がるアザゼル。しかしそこにはもう大人の貫禄はなかった。

「あ、俺ちょっとコンビニで飲み物買ってくるけど、お前らなんかいる?」

 

「◯リ◯リ君マンゴー味!」

 

「ファン◯グレープ!」

 

「◯カリ!」

 

「アク◯リ◯スZERO!」

 

「パフェアイス×3」

「◯ーゲン◯ッツにゃ!」

 

「午◯の紅茶!」

 

「あーハイハイ、ちょっと待っててねー」

 

そう言ってアザゼルはとぼとぼと歩いて行く

 

カチッ

 

ドカーーーーン!!

 

 

 

「アッパーーーーーー!!!?」

 

 

 

『『『『!!?!!?!?』』』』

 

突然鳴り響く爆音に喧嘩の手を止める竜也たち。見ると、黒焦げになったアザゼルが地面に倒れていた。

 

「あらあら、アザゼルさんが爆発しましたわ」

 

「暑かったから」

 

「いやいや違うでしょ白音ちゃん、どうみても地雷踏んで爆発したんだよ」

 

「自分で埋めた場所も覚えてないのかよ、ダッセー」

 

『『『『アハハハハハハハハハハ』』』』

 

「ハハハハ……あれ?ちょっと待ってよ、みんな……自分の埋めた場所……覚えてる?」

 

 

 

 

『『『『・・・・・・・・・・・・・・』』』』

 

 

 

 

「あら大変、新聞配達の叔父さんが爆発しちゃいますわ」

 

「いやいや呑気なこと言ってる場合じゃないって朱乃ちゃん!どーすんだよこれぇ!?俺たち動けねぇじゃねぇか!!」

 

策士策に溺れるとはこの事、イッセーの叫びは虚しく夜空に響く。

 

「やれやれイッセー君、何を言ってるのよ。地面がダメなら飛べばいいじゃない!とう!」

 

そう言ってやれやれのポーズで歩み出たイリナは掛け声を挙げてジャンプする。そして背から天使の翼を出して夜空を舞う……

 

 

 

「あり?」

 

ことなく地面に着地した

 

 

 

ドカーーーーン!!!

 

 

 

「ワッショーーーーイ!!?」

 

「イリナァァァァァァアアアアアア!!!?」

 

『訳がわからないよ』という顔で爆発するイリナと悲痛な叫びを上げるイッセー

 

「アホ、今この雷門家の敷地内には異能を封じる結界が発生させてるのを忘れたのか」

 

ヴァーリが呆れ顔で言う。薄れ行く意識のなか、イリナは『もっと早く言えよ』と思っていた。

 

「おいヴァーリ!今すぐ結界を切りやがれ!」

 

ヴァーリの襟首をつかみブンブン揺さぶるイッセー

 

「いやぁ、それなんだがな………」

 

 

「……………なんだよ?」

 

 

「………………………………………」

 

 

そのままヴァーリは黙ってしまった。

 

「………………まさか、解除するスイッチをリモコンに付け忘れたとかじゃないよな?」

 

「………………………………………」

 

 

「………………………………………」

 

 

「………………………………………てへ♪」

 

「ぅおい!?!!」

 

 

 

図星だった☆

 

 

 

「おいぃぃぃぃぃぃどうすんだぁぁぁぁぁぁ!!?!?異能が使えなきゃ俺たちゃただの一般ピーポゥじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

イッセーの魂のシャウトが夜空に響き渡る。まさに絶対絶命であった。

 

 

『ハーーーーハッハッハッハッハッ!!!』

 

 

その時、何者かの高笑いが夜空に響いた。声のした方を見ると、塀の上に影が見えた。

 

「光あるところに影がある

ひとつひとよりハゲがある。

パンツの友に導かれ、今宵も駆けよう漢ロマン道!

怪盗ふんどし仮面、ここに見・参!!!」ドドーン!!

 

月夜をバックにポーシングを決める赤いふんどしをマスクのように被り、ブリーフ一丁の変態、怪盗ふんどし仮面の姿がそこにあった。

 

「ハーーーハッハッハッ!滑稽だぁ、滑稽だよお前ら。俺の為に色々用意してくれてたみたいだが、全て無駄に終わったようだな。」

「さ、最悪だぁぁぁぁぁ!!最悪のタイミングで出て来やがったぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「こんな子供騙しにこの俺が引っ掛かるとでも?天下の義賊、ふんどし仮面もなめられたものよ。ここまで来れば相手になってやるぞ?ん?」

 

「くっ!」

 

ふんどし仮面の挑発に、イッセーたちは歯を食い縛るしかなかった。

 

「そこで指をくわえて見ているがいい。己のパンツが、変態、電波男、チェリーボーイ、スケベドビッチ、妄想スキーたちの手に渡る瞬間をなぁ!」

そう言ってふんどし仮面は垣根から飛び移ろうとする

 

「させるかぁ!」

 

その時、ふんどし仮面の足下の垣根が破壊され、そこからデュランダルを持ったゼノヴィアが表れた。

 

「ぬぅ!貴様は!?」

 

「ゼノヴィア!?いないと思ったらあんなところに!?」

 

「ふ、こんなこともあろうかと垣根の中に潜らせてたのさ。侵入するとしたら縁側の正面のあの垣根しかないからな。」

 

そう言って竜也はピースサインをする。竜也はふんどし仮面が侵入する場合を想定してゼノヴィアをずっと待機させていたのだ。

 

「ふん!この垣根は結界の範囲内からギリギリ外れている。私の魔法も難なく発動できるのだ!さぁ!大人しくお縄に付けぃ!」

 

ゼノヴィアはデュランダルの切っ先をふんどし仮面に向けて言う。

 

「ふん、小娘が意気がりよって、魔法が使えるのは俺も同じ、見せてやろう…我が能力を!」

 

するとふんどし仮面の姿が段々と透けて行き、ついには完全に景色に溶け込んでしまった。

 

「なっ!消えただと!?」

 

『ハッハッハッ!これぞ我が能力!この『透明化』によって俺はあらゆる場所に忍び込みパンツを盗んできたのだ!何処にいるか解るまい!』

 

ふんどし仮面は得意気に笑う。だが、

 

「そこだぁ!」

 

「何ぃ!?」

 

ゼノヴィアがデュランダルを振るい垣根を破壊する。するとそこからふんどし仮面の姿が表れた。

「ば、バカな!なぜわかった!?」

 

「ふん、陛下によって第六感を研ぎ澄まされた私の前で、透明化など無意味よ。」

 

そう言ってゼノヴィアはジリジリと距離を近づける。

 

「くっおのれぇ……!」

 

「さあ、これで貴様も年貢のおさ……」

 

カチッ

 

 

ドカーーーーン!!!

 

 

「ゲルググーーーーーー!?!!?」

 

「ゼノヴィアァァァァァァァァァァ!!!」

 

「誰だぁぁぁぁ!!垣根の上に地雷仕掛けた馬鹿野郎はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

その時、倒れていたイリナが微妙に顔をそらした。

 

「ハーーーハッハッハッハッ!愚かなり『龍の紡ぐ絆』!とう!」

 

ふんどし仮面は垣根から飛び上がり縁側に着地した。

 

カチッ

 

 

ドカーーーーン!!!

 

 

 

 

「ゲホッゲホッゲホッ………んあ?」

 

硝煙が止むと、そこには破壊された縁側が残っていた。

 

「床の下にも地雷を仕掛けていたのか」

 

「そうみたいだな」

 

「あっ!あれは!」

 

指差す先を見ると、爆風によって吹き飛ばされたパンツが、ヒラヒラと舞い落ちてきた。

ガラッ ガシッ!!!

 

『『『『!!!!?』』』』

 

すると、瓦礫の中から腕が飛び出し、舞い落ちてきたパンツをつかみとった。そして瓦礫は崩れ落ち、中からふんどし仮面が這い出て来た。

 

「甘いよ…こんなものじゃあ俺は倒れん。全国の変態、電波男、チェリーボーイ、スケベドビッチ、妄想スキーたちが、俺の帰りを待っているんだ。彼らの声が、俺に力を与えてくれる……」

 

「クソッ!なんてしぶてぇヤロウだ!」

 

「こんなところで負ける訳にはいかん!ふんどし仮面の名誉にかけて!彼らのもとにもどらねばならんのだぁ!!」

 

ふんどし仮面は立ち上がる。全ては自分の帰りを待ち、声援を送るモテない男たちのために。

 

 

 

 

「おいてめぇ………」

 

「ぬ?」

 

 

だが、しかし、彼は踏んでしまった

 

 

「俺の女のパンツに……触ってんじゃねえええええええええええ!!!!」

 

龍の尾を

 

竜也は雷の速度で一瞬にしてふんどし仮面に肉薄し、彼の手からパンツを奪いかえす。

 

「100万V…」

 

「なっ!?」

 

「電気ショォォォォォォォォォック!!!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

ふんどし仮面が反応するよりも速く、竜也の電撃が炸裂する。高圧電流を喰らったふんどし仮面は膝から崩れ落ちる。

 

「素顔もさらせねぇ奴に、俺のパンツはわたさねぇ。心まで素っ裸になって出直してきな」

 

「ぐ、ぬぅぅ……ぬぅおおおおおおおおお!!!」

 

すると、ふんどし仮面は雄叫びを上げ立ち上がる。掲げた右腕の上空に、死兆星が光った。

 

「我が右手に……一片のパンツなし…………グフゥ」

 

そう言い残し、ふんどし仮面は仰向けに倒れた。

 

「…………ふぅ、終わったぜ?」

 

そう言って竜也は仲間たちに笑い掛けた。

 

『『『『ウワァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』』』』

 

「すげぇぜアニキィ!!……けど、なんで結界の中で技が使えたんだ?」

 

「……そうか、兄さんの発電能力はデンキウナギなんかと同じ()()()()()()()()、それで結界の影響を受けなかったんだ。」

 

「な、なるほど」

 

 

「おーい!みんなー!」

 

 

「あらあら、竜也君」

 

「竜也さん!お怪我ありませんか!?」

 

「だぁりん!大好きにゃん!」

 

「竜也ぁ!信じてたわ!」

 

「アニキ!」

 

「兄さん!」

 

『竜也様ぁ!!』

 

喜びを分かち合おうと走り寄る竜也たち。

 

 

しかし、彼らは重要なことを忘れていた。

 

カチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッ

 

 

『『『『・・・・・・・・・・・・あ』』』』

 

 

 

ドドドドドドドドドッカーーーーーーーーン!!!!!!

 

『『『『ギャアァァァァァァァァァァアアアアアアァァァァァ!!!!!!』』』』

 

こうして、怪盗ふんどし仮面は捕らえられ、結界と壊れた垣根と縁側、そしてブレイクされたアザゼルのハートを残し、事件は幕を閉じたのだった。

 

 

 



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スイカとバイオマス

とある夏の日のこと

 

茜「みんなー、田舎のおばあちゃんからスイカが届いたわよー。」

 

そう言って竜也たちの母、雷門茜が持ってきたのは、段ボールに収まった二つのスイカだった。竜也たちの母方の祖母は農業を営んでおり、毎年定期的にその季節の野菜が送られてくるのだ。(節分の日は大豆だった)

 

ヴァーリ「おお、スイカか」

 

竜也「ばあちゃんのスイカは格別に旨いんだよなー」

黒歌「速く食べるにゃん♪」

 

毎年恒例のスイカに年甲斐もなくはしゃぐ竜也たち。毎年夏に送られてくるスイカは密かな楽しみだった。

 

リアス「あら、それってスイカ?」

 

白音「…美味しそうです」

 

朱乃「あらあら、今年も届いたんですわね♪」

 

するとちょうどリアスたちがリビンクに降りてきた。

 

黒歌「にゃあ、白音もいっしょに食べるにゃん。おばあちゃんのスイカは最高にゃん♪」

 

竜也「せっかくだからみんなで食おうぜ。俺上の連中呼んでくるわ。ヴァーリ、イッセーに電話入れてくれ」

 

ヴァーリ「了解」

 

 

~~しばらくして~~

 

雷門家リビンクには『龍の紡ぐ絆』メンバーが勢揃いしていた。

 

竜也「……と、まあ、それでは」

 

 

『『『いただきま~す!!』』』

 

ガブッ

 

 

『ッッ!!?』

 

 

竜也「食った気がしねぇだと……」

 

よく見ると、手渡されたスイカはかなり薄くカットされていた。

 

リアス「仕方ないでしょ、人数分カットしたんだから……」

 

通称、ドリフカット

 

茜「もう一個切りましょうか?」

 

イッセー「いや、もう一個切っても大して……て、あれ?そういやヴァーリは?」

 

黒歌「にゃっ!?白音もいないにゃ!」

 

夕麻「あら、カラワーナとミッテルトもいないわね」

 

竜也「ん……まさか!」

 

竜也はハッとして段ボールに駆け寄る。すると、中に入っていたもうひとつのスイカが消えていた。

 

竜也「あ、あいつらーーーーッッッ!!!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ヴァーリ「やれやれしょうがない。ここは俺が一肌脱ぐとしようかね。全員配置につけ」

 

『はっ!!』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

茜「いいじゃない、またおばあちゃんに送ってもらえば」

 

竜也「いや、そういうことじゃないんだよ。なーんか嫌な予感が……」

 

トン トン トントントン

 

竜也「ん?何………」

 

戸を叩く音が聞こえ振り向くと、ベランダの外から白音がガラス戸を叩き手招きをしていた。

 

竜也「なんだ白音、ノコノコ戻ってき……て……」

 

ガラス戸を開けてベランダに出ると、そこにはいなくなったヴァーリが、何かを囲んでパソコンに数値を打ち込んでいた。見るとそこには、フルーツキャップをかけられ、備え付けの蛇口のホースに繋がれたスイカの姿があった。

 

イッセー「……なあ、なんかさっきより大きくなってないか?」

 

ヴァーリ「シハハ、水分を吸収して再成長するように品種改良したのさ。もちろん味はそのまま、好きなだけデカイのが食えるぜ。あえて言おう、『暑中お見舞い申し上げます』と!!」

 

ヴァーリはだて眼鏡をくいっと上げて声高らかに宣言する。

 

竜也「なるほどねぇ、そういうことならありがたく……!?」

 

途中まで言いかけた竜也はギョッとした表情になって固まる。

 

ヴァーリ「ん?どうし…たぁ!?」

 

ヴァーリが振り向くと、スイカは自身の身長をゆうに越える大きさに成長していた。

 

イッセー「お、おい……なんかでかすぎじゃね?」

 

カラワーナ「ヴァーリ様!スイカの“食いごたえゲージ"が急上昇です!予定値を大幅に越えています!」

 

ヴァーリ「ふむ、食べ頃かな?あとは水を止めれば……」

 

ブチ ブチ ブチ……ぶちィ!!

 

成長に成長したスイカはフルーツキャップを引きちぎり、伸びた“ヘタ"の部分を振り回して暴れ出した。

 

ヴァーリ「なっ!?拘束具をっ!?」

 

黒歌「あれってフルーツキャップじゃなかったのかにゃ!?」

 

カラワーナ「あれはスイカの成長を制御するためのものです」

 

ミッテルト「おっかしいっすねぇ。ちゃんとフルーツにあわせて調整したんすけど……」

 

『『『は?』』』

 

ミッテルト「え?なんすか?」

 

ドーナシーク「スイカはウリ科に当たる野菜の仲間だぞ」

 

ミッテルト「え?」

 

拘束を解かれたスイカは宙に飛び上がり、口?から掌ほどもある種を弾丸の如く連射した。

 

ダダダダダダダッ!!

 

木場「へべれけドベガスンダッ!!?」

 

カーラマイン「ゆ、裕斗様ぁぁぁぁ!!?」

 

哀れ、たまたまその場に居合わせた木場は種の集中放火を(主に顔面)に浴びて倒れた。

 

竜也「ちっ、しょうがなねぇ」

 

そう言うと竜也は雷速で一瞬にしてスイカの裏に回り込み、スイカに繋がれたホースを切り裂いた。スイカは糸が切れたように沈黙する。

 

カーラマイン「き、吸水ホース切断!スイカ、沈黙しました!」

 

イッセー「た、助かった……危うくスイカに潰されるところだった……」

 

ヴァーリ「いやはや、まさかこんなことになるとは」

 

竜也「ったくお前ら科学班はいつもいつも…」

 

茜「あら、良い音するじゃない。ツヤもいいし、身も詰まってて美味しそう♪」

 

『『『え?』』』

 

スイカの表面を叩きながら、茜はにっこり笑って言った。

 

「もったいないじゃない♪みんなで食べましょう♡」

 

『『『えぇ~~~~~~っ!?』』』

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

リアス「あら、本当に美味しいわね♪」

 

朱乃「うふふ、昔を思い出しますわ♪」

 

夕麻「イッセー君、あーん♡」

 

イリナ「はいこっちも、イッセー君あーん♡」

イッセー「あーん♡」

 

フリード「ちぃっ!見せつけやがってバカップルが……!」

 

カーラマイン「裕斗様ぁ、大丈夫ですか?」

 

木場「ぼ、僕の出番って……」

 

アーシア「スイカのシャーベットが出来ましたー」

 

茜「スイカのジュースにスイカアイス、スイカシェイクもあるわよー」

 

アーシアと茜がお盆にスイカデザートを乗せてやって来た。

 

朱漓「すみません雷門さん、私達まで呼んで頂いて」

 

茜「いいんですよ姫島さん。皆さんも、みんなで楽しく食べましょう♪」

 

茜は他の団員の両親たちにも連絡して、ママ友同士で楽し気に話していた。

 

竜也「モグモグモグモグシャクシャクシャクシャク………責任取って全部食えよ、お前ら」

 

カラワーナ「う…うぷ……」

 

ミッテルト「も、もう勘弁っす……」

 

白音「ハグハグハグハグシャクシャクシャクシャクモシャモシャモシャモシャチューチューチューチュー」

 

黒歌「我が妹ながらすさまじい食べっぷりだにゃ白音……」

 

ヴァーリ「お、俺……スイカになってしまいそう……」

科学班は今回の罰として、スイカの身がなくなるまで食事にはスイカが出され続けることになり、しばらく彼らの前でスイカは禁句となったそうな。

 

 




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計画と”修練の門“……?

 

「突然ですが、俺『禍の団』滅ぼす」

 

『『『・・・・・・・・・・・・・・・・』』』

 

いつもの如く、竜也の突然の呼び出しを喰らって集められた『龍の紡ぐ絆(ドラゴン・トライブ)』のメンバーたちに、竜也が言い放った第一声がそれだった。

 

「…………取り敢えず、一応、聞いておくが、それに思い至った理由は?」

 

突然告げられた困惑、またかよと言う呆れ。一同が言葉を失う中、一番付き合いの長いヴァーリが尋ねた。

 

「いや、な~んかさぁ~あいつらさぁ~うざくね?」

 

「いやんな適当な理由で組織が動いてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

竜也の適当な物言いに声を粗げるヴァーリ。怒る理由も最もなので、誰も止めようとする者はいなかった。

 

「冗談だよ冗談。ちゃんと説明するからよ」

 

「ほんッッとに頼むぞ。毎度毎度後始末つけるのは俺なんだからな?」

 

ヴァーリは念を押すように竜也に言う。

 

「さて、順を追って説明するとだな、ここ最近『禍の団』、特に『神器持ち(セイクリットギアホルダー)』の連中が俺らにちょっかい掛けてきてるのは知ってるな?」

 

竜也の質問に、主に『龍の紡ぐ絆』主要メンバーが頷く。

 

「襲撃の頻度はまだ小規模なものだが、いい加減に鬱陶しくなってきた。おまけにとっ捕まえて尋問しようにも目覚ましたらほとんどの記憶を失っているというふざけた使用だ。」

 

竜也の意見にイッセーたちも同調する。例え『神器持ち』であろうと、竜也に鍛え上げられたイッセーたちにとっては雑魚でしかなく、いい加減に鬱陶しく思っていたのだ。

 

「で、だ。向こうが妙なこと仕掛けてくる前にとっとと潰しちまおうと思う。何か心当たりはあるか?」

 

「恐らくですが、それは英雄派、主に曹操一派の者でしょうね」

 

竜也の問い掛けに答えたのは、元禍の団英雄派に所属していたアーサーだった。

 

「曹操、って言うと三國志の英雄の一人か」

 

「はい、現在英雄派は曹操率いる過激派と信長率いる穏健派に分かれています。私達は信長の穏健派に所属していました。」

 

その名を聞き、イッセーたちは眉を寄せる。織田信長、かつて自分たちの攻撃をことごとくいなし、竜也が相手をできるのは自分くらいとまで言いきった人物。そして竜也と同じ転生者。

 

「なるほど、『神器持ち』どもを送って来てたのはその過激派って訳か」

「はい、恐らく。私達は信長の下で『禍の団』の情報を集めていたのですが、前回の件で我々の裏切りが発覚してしまったので……」

そう言ってアーサーは顔を伏せる。前回自分の失態で裏切りがばれたことに負い目を感じているのだ。

 

「ま、気に病むことはないさ。それに……誰がスパイはお前たちだけだと言った?」

 

『『『え?』』』

 

「あ、アニキ……あんたまさか………」

 

イッセーが恐る恐る尋ねる。

 

「そ、他にも数名潜り込ませているのさ。因みに一人はお前らも知ってるやつだ。」

 

竜也の発言に、一同は呆気にとられ言葉も出なかった。

 

(本当に何なんだろうな、この人の人脈は)

 

(てかこれってほぼ悪役の手口じゃねぇか……)

 

と、イッセーたちはそんな事を考えていたのだが、それを竜也がしるよしもなかった。

 

「で、だ。そいつらの情報によると、旧魔王派の連中が次に行われるレーティングゲームに乗じて襲撃を掛けてくるらしい。そこを万全の態勢で一気に叩く。」

 

竜也がそう言うと、一同はその意思を感じて真剣な顔つきになる。

 

「……覚悟は決まったようだな?それでは、我らの勝利をより揺るがないものにするために………」

 

竜也はそう言って懐から何かを取り出す。それを見た一同はこれから起こることを予想し、固まった。

 

「………修業、逝って見ようか♪」

 

『『『字が違う!?!!』』』

 

バカン

 

『『『あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?』』』

 

有無を言わさず、竜也はディメンジョンARM“修練の門”を発動し、『龍の紡ぐ絆』メンバーたちは、毎度恒例の如くまっ逆さまに落下していった。続けて竜也も飛び込もうとするが、ふと違和感を感じた。

 

「はて、“修練の門”ってこんな形だったか……?」

 

しばしその違和感について考えた竜也だが、遅れては不味いと考え、門をくぐる。竜也が門をくぐると、門はゆっくりと扉をしめた。門の頂点には舌を出したピエロのようなレリーフが飾られていた。

 



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番外編:宴会と上戸

これは『龍の紡ぐ絆』初ライブ修了後のこと

「え~それでは、我々の初レーティングゲームが無事我々の勝利によって終わり、なおかつ初ライブの成功を祝って」

 

『『『『乾杯!!!!』』』』

 

ここは『龍の紡ぐ絆』地下基地の宴会場。竜也たちの参加した若手悪魔たちによるレーティングゲームが修了し、竜也たちは勝利の宴を行っていた。

 

「はい、イッセー君あーん♥」

 

「あーん♥」

 

「イッセー君、ジュースのお代わりは?」

 

「うん、注いでー♥」

 

「ハグハグハグハグモシャモシャモシャモシャゴキュゴキュゴキュゴキュムシャムシャムシャムシャバクバクバクバク」

 

「白音、もうちょっとゆっくり………いや、なんでもないにゃ……」

 

「フリードきさまぁ!!そのチキンは私のものだぁ!!」

 

「へへーん早い者勝ちですぅ~」

 

「クハハハ!………ん?」

 

ふと、竜也はどこかしずんたま朱乃の姿を見つける。

 

「よう朱乃ちゃん、楽しんでるかい?」

そう言って竜也は朱乃の隣に腰かける。

 

「ぁ、竜也君……え、ええ、楽しんでいますわ」

 

「嘘だね」

 

「え?」

「長年の付き合いの勘…かな?な~んか思い悩んでる感じがする」

 

「………ふふっ、竜也君に隠し事は出来ませんわね……」

 

そう言われて、朱乃は空になったグラスを見つめてポツリポツリと語り出す。ゲーム中、油断して攻撃を放ったところをソーナ眷属『女王』の椿姫の神器『追憶の鏡(ミラーアリス)』によって自身の攻撃を跳ね返され大ダメージを負ってしまい、そこから追撃をくらいリタイアしてしまったことを。

 

「どこか傲っていたのかもしれません。私は竜也君の女なんだ、負けるはずないんだと……その結果がこの不様な有り様。恐らくこのゲームの評価において、私はチームのマイナス点になっているでしょう。……そして、それはまた竜也君の…」

 

「てい」

「あうっ!?」

朱乃の語りは竜也の軽めのチョップで中断される。

 

「ま、失敗を反省するのは良いことだと思うよ?けど、それをいつまでも引きずるのはだめだ。」

 

「うぅ……」

 

「何、次で挽回すればいいさ。チャンスはいくらでもある。絶対大丈夫だ。お前は俺の自慢の仲間で、俺の惚れた女なんだから」

 

「竜也君……はい、そうですね。次で挽回してみせますわ♪……ありがとう、竜也君。」

 

「クハッ、いいさ。ほれ、んな辛気くさい顔してないで、今日はみんなで勝利を祝おうや。ほら、おひとつ」

 

「クスッ、頂きますわ♥」

 

そう言って竜也は近くにあった瓶を手にして、朱乃の空のグラスに注ぐ。

「へっ陛下!それはジュースではなく酒です!」

 

「えぇ!?」

 

ドーナシークの指摘に竜也は注いだ瓶を見る。フルーツの絵が描かれているが、よく見ると果汁を使用した酒と書いてあった。

 

「だっ大丈夫か朱乃ちゃ」

 

「注げ」

 

「え?」

 

言葉を遮られ、目の前に突き出されたグラスに、竜也は一瞬理解が追い付かず思考が停止する。

 

「注げ」

 

「えぇ……?」

 

朱乃の淡々とした今までにない粗っぽい物言いに、竜也は困惑する。

 

「注げ!」

 

「え、えぇっと……あ、朱乃ちゃ…」

 

「酒が足りねぇつってんだよぉ!樽ごと持ってこいやゴルァ!!!」

 

バリィィィィィィィィン!!!

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?」

 

『『『ッッッ!!!?!?!??』』』

 

突如、朱乃は手元にあった酒瓶を掴んで竜也の頭を殴りつけた。よほどの力で殴ったのか、酒瓶は粉々に砕け竜也は撃沈する。その突然の凶行にその場にいた一同が唖然となる。

 

「おいてめぇ何寝てんだよ、夜はまだこれからだろうが!!」

 

そう言って朱乃は竜也に強烈な往復ビンタを叩き込む。

「ギャッ!?バッ!?ブッ!?ベッ!?ボッ!?ゴッ!?ガッ!?」

 

「え、ええええええええええええええ!?誰あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

「おいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?どうなってんだこれぇ!?酒入ったとたんに別人になってんぞ!!?」

 

「竜也ぁぁぁぁぁぁぁ!!!竜也が殺されるぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

朱乃の豹変に騒然となるイッセーたち。

 

「ちょっちょっちょっと待って!?あっ朱乃ちゃん!え?朱乃ちゃん?朱乃ちゃんだよねこれ!?俺チェンジとかしてないよね!?朱乃ちゃんが朱乃ちゃんだよねぇ!?」

 

「あぁ!?ったりめぇだろ!こちとらてめぇのためにこんなおめかしして酌してやってんだろぉが!!!殺すぞこの野郎!!!」

 

「い、いやてかまだお酌したの俺だけってギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?」

 

そう言って朱乃はまた竜也をリンチにする。それを見ていたイッセーたちは、このままでは竜也の命が危ないと直感的に思ったが、自分に飛び火するのが恐くてだれも近づけないでいた。

 

「よ~しぃ、それじゃあ盛り上がってきたところでいっちょゲームでもすっかぁ~」

 

そう言って朱乃はフラフラと立ち上がる。

 

「ほれやんぞぉ~あっちむいてほい~負けたら一枚ずつ脱いでくやつな~」

 

「ちょっ!?朱乃ちゃん不味いってみんなもいるのに……っていねぇ!!?」

 

気がつけば、開場からは竜也と朱乃を残して皆いなくなっていた。そして、当のイッセーたちは宴会場の襖の隙間から二人を見守っていた。

 

『すまない兄さん、俺だちに今の朱乃ちゃんを止める勇気はない』

 

『み、見てはいけないものを見てしまったわ………』

 

『酒乱ってレベルじゃねぇぞあれ。まるっきり別人じゃねぇか』

 

『にしてもびっくりしたにゃあ~、朱乃の知られざる一面だにゃ』

 

「おらぁ、誰もいねぇんだからいいだろぉ?や~れ~よ~」

 

「ちょっや、やめ……!」

 

『うわぁ~、完全に飲み屋でホステスに絡むおっさんだよ』

 

『逆じゃね?絵面的に』

 

「あんだよ~、私の裸見たくねぇのかよ~~」

 

そう言って朱乃は服をずらして肩をはだけさせる。

 

「い、いやそういうこっちゃなくてさぁ……」

 

「……んふ~~、見たいんだぁ~~。エ~ロ~い~、たっくんエロ~~い♥」

 

「メンドクサッ!?朱乃ちゃんメンドクサッ!!」

 

朱乃の絡みに竜也は頭をかきむしりながら叫ぶ。

 

「んじゃ~~私が負けたら一枚ずつ脱いでくから~、お前も負けたら一枚ずつ脱いでけよ~、皮を」

 

「朱乃ちゃん!!辞書でフェアって字引いて!!赤線引いて!!」

 

「んじゃ~~行くぞ~~」

 

「聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「さいしょはぐー!じゃんけん」

「くそっ!」

 

「「ポン!」」

 

竜也 チョキ× 朱乃 グー○

 

「ゲッ!?」

 

「あっちゃ向いてオラァ!!」バキッ!!!

 

朱乃はグーを保ったままアッパーカットを放ち、竜也に炸裂する。

 

「朱乃ちゃんこれもうすでに罰になってるぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

「じゃ~んけ~んポン!」

 

竜也 パー○ 朱乃 グー×

 

「よっしゃあ!あっちゃ向いてほ「ふんっ!」《バキッ!!!》あ"あ"あ"あ"あ"!!!朱乃ちゃんこれ俺勝ったけど結局これ俺負けてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

朱乃は竜也が言い終わる前に竜也の指した人差し指を無理やりねじ曲げた。

 

「さいしょはグー!《バキッ!!!》「グボァ!!!」あっち向いてドーン!《ボカッ!!!》「がぺぇ!!!」」

 

こうして、あっち向いてほいという名のリンチが繰り広げられられること数分

 

「ゴクゴクゴク プッハァ!おぉい!なにぼーとしてんだよ。ほらぁ、酌してやっからお前も飲め」

 

そう言って朱乃はらっぱ飲みしていた酒瓶を突きだす。

 

「い、いや、俺、酒はちょっと……」

 

「いいから黙って飲めやぁ!」

 

「グボァ!?」

 

そう言って朱乃は竜也の口に酒瓶を無理やりねじ込んだ。

 

『お、おい!不味いぞ!アニキって……』

 

『ああ、ブランデーケーキ一口で気分が悪くなるほどの下呂だ』

 

『『『え!!!?』』』

 

案の定、竜也は顔を真っ赤にして倒れてしまった。

 

「あれぇ~?たっくんも~ダウン~?起~き~ろよ~、起きないと~襲っちゃうぞ~?」

 

 

 

『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』』

 

 

 

『………………ま、まさか』

 

「……………………ジュル うへっ、うへへへへへへへへへへへへへ♥……いいの?え?これホントにいいのぉ?♥」

 

(((や、ヤる気だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)))

 

『おいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!ヤバイぞこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!このままじゃアニキの貞操の危機だぞ!!?』

 

『初体験が幼馴染みに襲われたなんて永遠のトラウマ物だぞ!!?』

 

『朱乃、竜也に欲情?』

 

『てか言ってる場合じゃないにゃ!』

 

『もう我慢ならないわ!行くわよみん……』

 

「おいお前ら、邪魔したら殺すぞ」

 

朱乃の据わった目から放たれるそれだけで人が殺せそうな視線を浴び、イッセーたちは一瞬で理解した。

 

(((一歩でも踏み入れたら殺られる!!?)))

 

「ん…んむぅ……」

すると、竜也がフラリと起き上がった。しかし、まだ酔いが回っているらしく、顔は真っ赤で目は虚ろだ。

 

「あれぇ~?たっくん起きちゃったの~?でも~、ここまできたらかんけ~ないよね~?んふ~では~いっただっきまっ《チュッ》んむぅ!?」

 

『『『!!!!!??』』』

 

竜也は朱乃を確認すると、突如朱乃に抱きつき唇を奪った。突然のことに朱乃は混乱し、そのまま押し倒されてしまう。

「チュッ チュッ チップッ チュパッ クチュッ チュッチュッチュ~~~~~」

 

「んっんみゅっふむぅ、ちょっ、ま、まって、たちゅやく、んっんっんぅ~~~~~~♥♥♥♥♥♥」

 

しばらくして、朱乃は数度痙攣し動かなくなった。

 

『『『・・・・・・・・・・・・・・』』』

 

その光景に、一部始終を見ていた『龍の紡ぐ絆』メンバーたちは、唖然として固まっていた。

 

「……………むふっ」

 

「え?」

 

それは一瞬のことだった。竜也がこちらをみて笑ったかと思ったら、気がつけば目の前に竜也の姿があり、そしてリアスが押し倒されていた。

 

「んむっ!?うっ ふぅっ あっ んっ んぅっ た、竜也ぁ…だめ…こんなの…ゃあ…あっあっあっあうぅ~~~~~~♥♥♥♥♥♥」

 

『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・』』』

 

ムクッ「………………………………ふへっ」

 

『『『ッッッ!??!!!!?』』』

 

「にっ逃げろぉぉぉぉぉぉぉ!!!キス魔だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

『『『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!』』』

 

「ふへへへへへへへへへへへへへへへへへっ!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「……………ん、んん゛ぅ…………あれ?俺は……」

 

翌日、昼に差し掛かろうという時間に、竜也は目を覚ました。

 

「づぅっ!?あ、頭いてぇ……たしか俺……朱乃ちゃんに酒飲まされて……それから……だめだ、思い出せん……あの後なにが…………ん?ん!!?」

 

そこで、竜也が見たのは

 

「えへへへへへへぇ~~~♥竜也くぅ~~~~~ん♥♥♥」

 

「たちゅやぁ~~~ちゅきちゅき~~~~~♥♥♥」

 

「あひぃん……たちゅやしゃ~~~ん♥♥♥」

「にゃあ~~~ん♥♥だぁり~~~ん♥♥もっとちゅっちゅっ~~~♥♥♥」

 

「ん……竜也……我に欲情?」

 

「た、竜也様ぁ……激しいぃぃん♥♥♥」

 

「竜也様ぁ……こんなの知ったらぁ……もう……私、らめだぁ♥♥♥」

 

「「お、お兄ちゃぁぁん♥♥♥」」

 

「へ、陛下ぁぁぁぁん♥♥♥」

 

「ふ、ふふ……やったぞ……俺は守りぬいたぞ………!!」

「よがっだ……カーラマインさん……無事でよがっだぁ………」

 

自分の回りで惚けた表情で悶える『龍の紡ぐ絆』女性陣、ある者は壁やテーブルにめり込み、ある者は何かて頭を強打して気絶している男性陣、そして自分の思い人を抱き締めむせび泣くイッセーと木場……その状況はまさに死屍累々。

 

「………な、何だこれ?何だこれぇ!?何だこの状況!?い、一体なにが……」

 

「あ、起きたのか、兄さん」

 

ふと声のした方をみると、いつの間にかそこにはヴァーリが立っていた。

 

「ヴァ、ヴァーリ!?おいっ!何だこの状況!?一体昨日の宴会で何が……」

 

ヴァーリは、混乱する竜也の目の前に、水の入ったグラスを無言で差し出した。

 

「……………取り敢えず、飲みなよ。………俺も、昨日のことは、忘れるから」

 

死んだ魚のような目をしたヴァーリは、消え入りそうな声でそう言った。

 

「え?え、え゛え゛え゛え゛え゛え゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええ!!!?」

 

グラスを手渡し、そのまま無言でヴァーリは立ち去る。

 

「い、一体昨日の晩に何が起きたんだ!?俺は一体何をしたんだ!!?誰かぁぁぁぁぁぁぁぁ教えてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

後に、その夜のことは『龍の紡ぐ絆悲劇の宴会』として団員たちに語り継がれることとなり、団員たちの間で竜也と朱乃に酒を飲ませることは硬く禁じられた。

 




おまけ

リアス「ねぇ竜也ぁ、こんどデートに行かない?二人っきりで、ね♥?」

朱乃「竜也くぅん、何だか竜也君を見てるととっても切ないんですのぉ♥」

アーシア「た、竜也さぁん、ふ、服を買いに行こうと思うんですが、た、竜也さんが、え、選んでくれません、か?/////」

黒歌「だぁり~ん♥ちゅ~、ちゅ~するにゃ~ん♥」

オーフィス「竜也、ちゅー、する?」

カラワーナ「た、竜也様、授業でわからない箇所などございませんか?も、もしよろしければ、こんど私と二人っきりで……/////」

イザベラ「竜也様、よろしければ組み手にご協力くださいませんか?………夜の」

イル「お、お兄ちゃぁん/////」

ネル「イルとネルとお散歩…いこ?/////」

ゼノヴィア「へ、陛下!私とガンプラ作りませんか!?/////」

竜也「…………なんか、あれ以来みんながえらく積極的になった……」




フリード「いや~、にしてもあの宴会は衝撃的だったな」

イッセー「ああ、まさか朱乃ちゃんが酒乱でアニキが酔ったらキス魔になるとは………酒ってこえぇな……」

フリード「それに見ろよあの被害者たちを、完全に堕ちてんぞ。どこのエロゲースキルだよ」

木場「あれ?そう言えはヴァーリ君は?」

イッセー「なんか精神的衰弱が激しいから白音ちゃんによる療養(?)中」

木場「そっか……尊い犠牲だったね」

イッセー「ああ、これから先、あんな悲劇が二度と繰り返されないようにしようぜ」

「「ああ」」


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メルヘヴン編
異世界転移と盗賊


思う所あり、勝手ながら数ヶ所加筆した上で再投稿させて頂きます。


どうも皆さん、『龍の紡ぐ絆』司令官の雷門竜也です。前回、いい加減ウザくなってきた『禍の団』を潰すためにメンバー全員で“修練の門”をくぐった。………くぐったんだが………

 

「あら?どないしてんたつやん、そないなところでボーっと黄昏なさって」

 

「あ、いや、なんでもないよ()()()

 

今俺に話しかけたのは、長い金髪の下に赤いバンダナで目元を隠した盗賊ギルド『ルベリア』のボス、ナナシ。来ちゃいましたよ、メルヘヴン。なんでこうなった?いや、大体想像はつく。門についてたあのレリーフ、今思えば完全に“門番ピエロ”じゃねぇか……なんで忘れてたよ俺……

 

また、俺の他に飛ばされたのが、イッセー、ヴァーリ、朱乃ちゃん、リアス、猫姉妹、アーシア、ゼノヴィア、夕麻、イリナ、ついでにアランと見事に主要メンバーだ。

 

おまけにグリモアも消えてるし…やはり作為的なものを感じてしまう。

 

「いや、竜也君!僕!僕もいるから!!」

 

あ、そーいやいたね木場……

ともかく、その後宛もなくたどり着いた場所が盗賊ギルド『ルベリア』の近くで、俺たちはナナシたちルベリアに、この世界において己の悪意のままに暴虐の限りを尽くすならず者集団、『チェスの兵隊』と勘違いされて攻撃された。まぁ、俺とイッセーとヴァーリで全滅させたんだけど。あ、言っとくけど殺してはないよ?

その後、殺気立つみんなを何とかなだめて状況を説明するとみんな大層驚いていた。強化合宿のつもりが異世界旅行とは夢にも思うまい。

 

因みに、この世界出身のアランに聞いたところ、チェスの駒との戦争中、“ハロウィン”という男の攻撃を受け、次元の狭間に飛ばされたらしい。原作では犬と合体させられたはずだが、パラレルワールドというやつだろうか。で、次元の狭間を漂っていたところをオオクニヌシ様に拾われて、俺たちを鍛えてやってほしいと頼まれ、俺の修練の門の中に入ったのだとか。なんでんな重要なことを言わなかったのかと聞くと…

 

「いや、だって聞かれなかったし。ぶっちゃけあっちの世界での暮らしに馴染んでてすっかり忘れてたわ。わり」

 

ぶん殴った俺は悪くないと思う。

 

ひとまず、アーシアにルベリアの連中の治癒をしてもらい、俺とこの世界で名の知れたアランの二人で、俺たちが『チェスの駒』でないことを説明した。そうしたらナナシにえらく謝られ、俺たちは行く宛もないのでルベリアに厄介になることにした。

 

その後、ヴァーリが『白龍皇の月光翼』に収納していた部品で時空観測機なるものを作り上げ(お前は某いたずら王を目指すキツネか白衣の熊かよ)、この世界の時間は修練の門の中と同じく、俺たちの世界の1/60の速度で進んでいるのだとか。それを聞いてひとまずは安心した。

 

あれから数日、俺たちは帰る方法を探すためにルベリアを拠点として世界に散らばって情報を集めていた。

「悪いなナナシ、関係のないお前にまで手伝ってもらってよ」

 

「ええねんええねん。ワイが好きでやっとるんやさかい。たつやんもアーシアちゃんもイチ坊も、『龍の紡ぐ絆』の人らはみんなええやつやし。それにワイも、異世界っちゅうのは興味あるしな」

 

あれから、俺たちはナナシを初めとしたルベリアの連中とはいい関係を築けている。ナナシは軟派なやつだが、話せば気持ちのいいやつだ。(うちの嫁事情を話したら血涙流して襲い掛かってきたが)。ルベリアの連中も、堅気の人間は襲わず、盗賊ギルドと言うだけあって、その情報網は侮れない。実際その情報に大部助かっている。そしてナナシを兄と慕い、ルベリアの砦で生活しているピルンという少女は、イルとネルとよく遊んでおり、他のメンバー、特にリアスたち女性陣に可愛がられている。

 

「取り敢えずこの辺はこんなもんだろ。行こうぜナナシ」

「さよけ、ほな行こか」

 

すると別ルートで調査中のイッセーとヴァーリから連絡が入った。

 

『なあ、なんか俺らと同じく異世界から来たっぽいやつといかにもな魔女と遭遇したんだが……どうする?』

 

『聞いてくれよアニキ!農家の親子に野菜食わしてもらったらこれがすっげえうめぇんだ!』

 

………お前ら、遭遇すんの早すぎだろ……はぁ



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銀の少年と緑の少年そして惨劇

ヴァーリside

「へぇー、じゃあヴァーリさんも違う世界から来たのかー。」

 

「そう言うことだ。ま、俺たちは異世界と言っても()()の連中だがな」

 

「ちょっとー君たちー、おしゃべりはいいから早く来なさいよー」

 

現在俺は、散策中偶然出会った俺たちと同様に異世界から来た少年ギンタと、黒い服にとんがり帽子といかにも『魔女』という格好をした桃色の髪の女、ドロシーと共に、伝説のARM『バッボ』が眠るという洞窟を進んでいる。

ドロシーはこのバッボを手に入れるためにやって来たそうで、それを聞いたギンタがすごくワクワクした目でついて行きたいと言い出し、放っておくのも忍びないので俺も着いてきたのだ。

 

「おっと、ストップだ二人とも」

 

「え?」

 

「どーしたの?」

 

呼び止められキョトンとする二人

 

「トラップだ。体重に反応して作動するタイプだな」

 

「すっげぇ!そんなことわかるんだ!」

 

「へぇ、やるじゃないアンタ。じゃ、ここは私が……」

 

「いや、それには及ばん。見てな」

 

ドロシーの言葉を遮り前に出た俺は大きく深呼吸し、そして吐き出した。

 

「『ツンドラブレス』」

 

吐き出した息は超低温の吹雪となり、床一面を凍結する。

 

「うおぉぉぉすっげぇ!!!」

 

「なっ!?(魔力の量も質も段違い。コイツ、一体……)」

 

「これで罠も作動しないだろ。ほれ、行くぞ。足元気をつけろよ」

 

「へへっ、ダイジョブダイジョブってわぁ!」

 

「ああっこら!」

 

言ってるそばからギンタがスッ転ぶ。俺は床を滑るように移動しギンタを支える。こんなこともあろうかと靴裏にスパイクを内蔵しているのだ。

「全く、言わんこっちゃない」

 

「なはは~悪ぃ」

 

やれやれ、引率も楽じゃないな

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

イッセーside

 

「いやぁー!美味い!」

 

「ほんと!なにこれすっごい美味しい!」

 

「こんなに美味しい野菜始めてかも……」

 

現在俺たちは偶然立ち寄った農家の親子の家で取れたての野菜をご馳走になってる。パッと見ウリのような見た目だが、そのまま食べられて生野菜特有の青臭さも感じさせず、カリッとした食感とみずみずしさがまた食欲をそそり……まぁ、何が言いたいか具体的に言わして貰うとすんげぇ美味い!

「当然っす!オイラと母ちゃんが丹精込めて作った野菜っすから。」

 

そう言うのは眉が太くて何となくサルっぽい顔をした俺たちで言うところの中学生ぐらいの少年、ジャックだ。

 

「ハハハッ、いい食べっプリだねぇ。ほら、たんとお食べ」

 

そう言ってジャックの母親であるおばちゃんは野菜を盛り付けた皿をテーブルに乗せる。

 

「あっご馳走でーす!」

 

「あ、もうイリナったら」

 

「悪いなおばちゃん、こんなにご馳走になっちまって」

 

「いいんだよ、腰を痛めて動けなくなってたところを助けてもらったんだから。これくらい当然さ」

そう言っておばちゃんはニカッと笑う。なんとも気持ちのいいオカンだ。

 

アォォオォォオオン

 

 

「!!!」

 

狼の遠吠えが聞こえたかと思うと、ジャックは目のいろを変えてドアを開けた。そこには鋭い爪の着いた獣の手形が入った紙が釘で打ち付けられていた。

 

「ジャック?」

 

「まただ……予告状っス………っ!」

 

聞けば、一年ほど前から「ルーガルーブラザーズ」を名乗る人狼の盗賊兄弟がジャックの家の野菜に味をしめて、度々野菜を食い荒らしているのだとか。

ジャックの父親は既に他界しており、その形見だというARMをバカにされ、自身も意気地無しだと笑われて、目の前で丹精込めて作った野菜を食い荒らされる様を見せつけられて来たと言うジャックの顔は、悲痛なものだった。

 

「………なあ、ジャック。お前、悔しいか?」

 

「………悔しいっス、悔しいに決まってるじゃないっスか!!!」

 

声を荒げ、ジャックは立ち上がる。

「ふーん、ならなんで今まで立ち向かおうとしなかったんだ?」

 

「何度も戦おうとしたっス!けど…けど!!!オイラ、弱いから……怖くて、足がすくんで動けなかったっス………」

 

顔を伏せ、奥歯を食い縛り、ジャックは漏らす。

「じゃあどうする?ずっと意気地無しって笑われて続けるのか?そのルーガルーブラザーズとやらに」

 

「ちょっ、イッセー君!いくらなんでも言いす「ちょっと黙っててねイリナ」ムグゥ!?」

 

止めに入ろうとしたイリナを夕麻ちゃんが野菜を口に突っ込んで黙らせる。

 

「……嫌だ、嫌っスよそんなの!!!オイラ……オイラ、立ち向かいたい……意気地無しを捨てたいっス!!!」

ジャックは涙を流して恐らくは心からであろう叫びを上げる。

 

「………にひっ。よっしゃ、合格だ」

 

「へ?」

 

ジャックは不意をつかれてそんなまの抜けた声を出す。

 

「なあ、ジャック。俺らの故郷に一宿一飯の恩義っつう言葉があってな。えー、一晩泊めてもらったとか、飯を食わせてもらったとか、そんな小さなことでもきっちり恩は返すとか…まぁ、そんな感じの意味……だったけか?」

 

「いや、オイラに聞いてどうするんスか」

 

なんだろう。何となくジャックの声はツッコミがしっくりくる気がする。

 

「ま、とにかくだ……」

 

俺は椅子から立ち上がり、ジャックの肩を叩く。

 

「俺が力をかしてやる。お前に勇気を着けてやるよ、ジャック。」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

『と、まぁそんなわけでバッボはギンタが所持することになり、ドロシーは興味を失ったのか去って行った。』

 

『で、俺が一夜漬けで鍛えてやっていざジャックが飛び出したところ、そのギンタだったってわけだ。人狼どもは多少危なっかしくはあったがギンタとジャックが倒したんだが、その時連中妙なやつと話してたんだ。捕まえようと思ったが、言うだけ言って消えちまった。』

 

「で、今はアランが合流して修業中と」

 

『おう、凍り付けの城でスノウ姫を救出した後な』

 

俺は現在、ナナシととある港の宿屋で定期通信を受けていた。いや……なんなんだろうかこの巡り合わせは。何か見えない力でも働いてるんじゃないか?

 

「しっかし向こうさんもえらい込み入ったことになっとんのー」

 

通信機を覗き込みナナシが割り込む。

 

「だな、それなりに時間もたったし、そろそろルベリアに招集しようか。」

 

「せやな」

 

『陛下!陛下っ!!』

すると突然、ルベリアに待機させていたゼノヴィアから緊急の通信が入った。

 

「ん?どうした一体」

 

『ル、ルベリアが…ルベリアが……』

 

「ルベリア?……ッッ!!!?」

 

その時、俺はすっかり忘れていた

 

「何で……何で……俺はいつも……ッ!」

 

「なっなんや!?どないしてん竜やん!ルベリアがどうした!?」

 

「……チェスどもだ。やつら俺達がいない間にルベリアをッッ!!」

 

「なっ!?」

 

チェスの駒による、ルベリアの虐殺

 

 

 

◆◆◆◆◆◆□◆◆

 

sideイッセー

 

「な…んだよ……これ……」

 

アニキからの緊急招集を受け、ルベリアに戻った俺たちだったが、目の前に広がるのは凄惨な光景だった。血濡れになって事切れているルベリアの人たち。その亡骸を抱き締め咽び泣く生き残った人々。それはまさに地獄絵図だった。

 

「……チェスの兵隊の襲撃だ」

 

アニキの言葉にみんなの視線が集まる。アニキの見据える先には、ドクロと十字架の組合わさったマークの書かれたカードが、柱に短剣で突き立てられていた。

 

「へ、へい…か……」

「っ!?お前らっ!」

 

声のした方を見ると、ルベリアに残り、留守を任されていたゼノヴィアが、ぼろぼろの身体を引きずりながらやって来た。翼はズタズタになり、身体の至るところから流血している。その様を見たアニキが駆け寄る。

 

「しっかりしろ!何があった!?」

 

アニキがゼノヴィアの身体を抱き抱え訪ねる。

 

「突然チェスの駒のペタと名乗る男がやって来て……「お前たちはもう用済みだ」と、ルベリアの人々を……我々も、応戦するも歯が立たず……申し訳……ありませ……」

 

そこまで言い、ゼノヴィアは意識を失った。それを見てイリナの顔色が青くなる。

 

「ゼノヴィア!そんなっ!?」

 

「大丈夫、気を失っただけだ。今アーシアが全力で治療している。手の空いているやつは全員救護に当たれ!まだ息のあるやつを一人でも多く助けるんだ!!!」

 

アニキの言葉に俺たちは全員動き出した。

 

 

畜生っ何だってこんなことにッ!!

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

竜也side

 

結果として、助かったのは全体の4割、他はもう手遅れだった。俺たちの目の前には、散ったルベリアの人々の墓が広がっていた。

 

「なぜだ……なぜだチェスの兵隊ぁ!?この子が一体何をしたぁ!!」

ベットの上で目を閉じたまま動かないピルンの手を握り、彼女を妹のように可愛がっていたゼノヴィアが、包帯に血が滲むのも構わずに叫び声を上げる。アーシアの神器である程度は回復したがそれでも重症だ。

 

戦う力のないピルンは、チェスの駒の襲撃でゼノヴィアに守られていたが、彼女一人で全体を守りながら戦うのは至難の事で、それでも敵が去るまて気力で耐え続けたが、最後の最後で打ち捨てられ、その際彼女も敵によって致命傷を受けてしまったのだ。

 

なんとか一命をとりとめたが、眠ったまま目を覚まさないでいた。治療に当たったヴァーリ曰く、目を覚ますかは五分とのことだ。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……わたしにもっと力があれば……!」

 

隣のベットでは、アーシアが涙を流し救えなかった人々への謝罪を繰り返している。アーシアは一人でも多く救うために力を使い果たし、ついに倒れてしまったのだ。彼女はそれが何より許せないのだろう。優しい彼女だからこそ……

 

「アーシアは悪くない。現に、アーシアのおかげで多くの人の命が救われた。」

 

「せや、アーシアちゃんはワイらの恩人や。悪いのは全部ーーーーチェスの駒のクソや。」

 

 

そう言ってナナシはチェスの紋章のカードを握り潰す。バンダナから覗くその瞳は怒りに燃えていた。

 

「この落とし前はきっちりつけたんで、チェスの駒のペタさんとやらよぉ。絶対に見つけ出して殺ったるわ」

 

「…………なぁ、ナナシよぉ。口挟んじまって悪いがよ。俺ぁ大事な仲間を傷つけられた。仲良くしてた女の子もこの様だ………俺は奴等を絶対にせねぇ」

 

それにこれは俺の責任でもある。俺は知っていた。この展開を知っていたんだ……なのに忘れてた。そのせいで多くの命が失われた。救えたかも知れない命を……

 

 ああそうさ、こんなもんはただの自己満足で、幼稚な善意と罪悪感からなる偽善にすぎない。俺も俺達も本来この世界には存在しない。俺達がこの世界に介入してどうなるか。予定調和とやらが働いて、なにも変わらないか、ひょっとしたらより悪いほうに傾いてしまうかもしれない。だが、それでも俺は

 

「……悪いみんな、帰るのはちぃと先になりそうだ」

 

「構わないさ……俺たちもみんな同じ気持ちだ」

 

俺の声に答えるヴァーリ、そしてみんなの顔は同じだった。ほんっと、俺ってやつはどうしようもなく恵まれてる。

 

 ああそうとも、何が正しいだ間違いだの下らん問答をする気はない。俺は俺を支えてくれる大切なもののためにこの力を振るう。

 

「ふっ、そうかい……

 

『龍の紡ぐ絆』が司令官、雷門竜也が宣言する!『チェスの駒』は我々の“敵”だ!還付なきまでに撲滅せよぉ!!!」

 

『『『おおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!』』』

 覚悟しやがれチェスの兵隊、そして世界の悪意とやらよ。てめえらは龍の尾っぽを踏んだ

 



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遭遇と開戦

チェスの兵隊殲滅を決意した俺たちは、俺たちのいるヒルド大陸に向かっていたアランたちと合流し、そこでこの物語の鍵となる少年、ギンタとであった。知ってはいたが、やはり実在の人物として正面から話しをするのとは違う。いまどき珍しい、この竹を割ったような少年は、話していてとても好感がもてた。

 

 ことの事情を説明し、チェスの所業を知ったギンタは激しい怒りを覚え、快く俺たちの協力を受けてくれた。

 

その時、生き残ったルベリアの構成員が動きのあるチェスを発見、場所は以前まで俺とナナシが探っていたヴェストリだった。ナナシの持つ転移系ディメンジョンARM“アンダータ”の範囲内だったこともあり、メルのメンバーと、『龍の紡ぐ絆』からは俺、ヴァーリ、イッセー、夕麻、イリナ、朱乃ちゃん、そして皆の反対を推してアーシアが向かうことになった。

 

「ほな行くで!ディメンジョンARM“アンダータ”発動!このメンバーをヴェストリへ!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

向かった先ヴェストリは、以前来た時は水と自然に溢れる素晴らしい村だった。それが今は、家々はメチャクチャに壊され、所々に煙が上がり、悲惨な光景が広がっていた。

 

アーシア、スノウ姫、付き人の犬エドが怪我人の手当て、イッセー、ジャックが壊された街の復興のため残り、俺たちはチェス討伐のために地底湖へと向かった。

 

地底湖で遭遇したチェスの兵隊の『ビショップ』、筋肉達磨のバカっぽいオルコとかいうやつはナナシが、額に目がある鬼のようなギロムとかいうチビはギンタがバッボバージョン③『ガーゴイル』によって文字どおりぶっ飛ばされた。そして俺たちはと言うと………

 

「よぉ、お前さんがファントムかい?」

 

地底湖の奥部、帆船の残骸が鎮座する海へと続く洞窟の入り江で、包帯で被われた左腕を持つ男と対峙していた。

 

「………さぁ、なんの事かな?」

 

「惚けるなよ。てめぇのその包帯まみれの腕から胸糞悪い魔力をビンビン感じるんだよ。この世界でそれほどの邪悪な魔力を持ってるやつとくりゃ、大体想像はつくわな。」

 

「………………ほぅ」

 

その瞬間、俺は鏡のようなものに閉じ込められた。俺は神器を展開し、魔力を爆発させ鏡を突き破る。

 

「へぇ、やるね。あと二秒遅かったら死んでたよ」

 

「。この程度で俺が殺れると思ったか?

 

グオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

 

俺はグルメ細胞の力を開放し龍の咆哮を上げる。やつは今俺のグルメ細胞の悪魔を見ていることだろう。

 

俺の咆哮によって地底湖は大きく揺れ、周囲には亀裂が入り、天井はがらがらと崩れ出す。やつの頬を一筋の汗が流れたのを俺は見逃さなかった。

 

「別にこの場で始末してやることもできるが、てめぇは()()()()()()で始末してやる。やるんだろ?ウォーゲームとやらを」

 

「……………………」

 

奴は何も言わずにこちらを見据えている。その顔は先程の余裕綽々のニヤケ顔ではなく、何処までも冷淡で無機質な、能面のような顔だった。

 

「お前らは俺の仲間に手を出した。お前らは踏んじまったのさ、()()()をな。お前らには俺たちの用意しえる最高の恐怖を、苦痛を、屈辱を、絶望を、敗北を味会わせてやるよ。クククク……」

 

崩れ行く地底湖の中、俺は転移魔方陣を展開しやつと対峙したまま脱出を図る。いやはや、怒りすぎると逆に笑けてくるのって本当なのな

 

「………君は、一体何者だい?」

 

「『龍の紡ぐ絆(ドラゴン・トライブ)』総司令官、雷門竜也。人は俺を『魔源覇王』と呼ぶ。良く覚えておきな。てめぇらを葬る男の名だ。クハハハハハ……クァーーーハハハハハハハハハハハハーーハーーハーーーー!!!」

 

俺は怒りの余り込み上げた笑い声を上げ、魔方陣の中に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……兄さん、あの時のノリ、完全に悪役のそれだったぞ。」

 

「うふふ、そんなあなたも素敵でしたわ♥」

 

「……言うな。俺も変なテンションだったんだよ。」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ヴェストリの村に戻った俺たちは、チェスの兵隊討伐と家の復興で希望を取り戻したヴェストリの人々に便乗し、俺たちも飲めや歌えやの大騒ぎである。

 

「ほら!野菜のテンプラが揚がったぞ!野菜スープにサラダ、野菜グリルに特製スイーツもまだまだあるぞ!みんな好きなだけ食べろ!」

 

『『『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』』』

 

「すげぇ!なんだこりゃ!?メチャクチャうめぇ!」

 

「こんなに美味い野菜料理は初めてだ!」

 

俺はジャックの作った作物を使った料理を人々に振る舞っていた。ジャックの耕した畑……畑っつうかもはやあれは森になっていた。ジャックの修行を担当したイッセー曰く、

 

「いやー、なんかあいつ見てると俺にも弟分ができたみたいに思えてさ。つい振り切っちまったぜ♪」

 

とのことだ。

 

「はーい、皆さーん。ちゃんと全員分ありますから、並んでくださーい」

 

『『『はーーーーい!!』』』

 

「ふふっ、はいどうぞ。」

 

「わぁー!ありがとう聖女さまー!」

 

「ふふふ、どういたしまして」

 

アーシアには料理の配膳をして貰っている。その癒しの力で献身的な治療を行ったアーシアは、ヴェストリの人々から聖女様と崇められていた。

 

「このジュースもっとほちぃ!」

 

「姫に酒を飲ましたのはだれじゃあーーーっ!!?」

「ぅおらぁ!竜也ぁ!もっと酒注がんかい!」

 

「朱乃ちゃんに酒を飲ましたのはだれじゃあーーーっ!!?」

 

そんなこんなで、宴会も大いに盛り上がっていたその時、

「っ!?竜やん!ギンタ!月を見てみい!!」

 

ナナシに言われて空を見上げると、月の表面が鏡のように変化していた。そしてその中に、三角の帽子を被った道化師のような男が姿を表した。

 

「……キレ目の三角帽子…ゼノヴィアの証言と一致する。やつがペタだ……!」

 

「………ほぅ、あいつか」

 

ナナシの目が獲物を狙う野獣のものに変わる。

 

『メルヘヴン全土に存在する……

我等チェスの兵隊に敵意を抱く全ての者達に告ぐ……!!

再びウォーゲームを始めようではないか!!』

 

その日の夜、メルヘヴン全土に、ウォーゲームの開戦が宣言された。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

2日後、俺たちは開戦の場に宣言されたレギンレイヴ城に集結していた。

 

「ようガイラ、久しぶりだな」

 

「アラン!!生きていたのか!?」

 

アランが声を掛けたのは、白いヒゲを蓄え、しかしその身からは未だ衰えない生命力の溢れる老人と、細身ながら前者に負けないかそれ以上の力を感じさせられる、傍らに妖精の女の子を連れた黒髪の青年だった。

 

「色々あってな、今はこいつのとこで世話になってる」

「『龍の紡ぐ絆』総司令官、雷門竜也だ。あんたらがクロスガードのガイラとアルヴィスだな?アランから話は聞いている。ウォーゲームには俺たち『龍の紡ぐ絆』も参加させてもらう。宜しくたのむ」

 

「ああ、ともに戦う仲間は多いに越したことはない」

 

「俺もアランさんから話は聞いている。アランさんはお前たちを高く評価していた。十分に期待できるだろう」

 

俺たちは握手を交わす。すると、レギンレイヴ城から正午の鐘が鳴り、城の窓から囚われのレギンレイヴ姫が現れた。

 

「お集まり頂いた皆様、ようこそレギンレイヴへ。心より歓迎いたします。」

 

「今より、ウォーゲームを開催致します。

その前に………このゲームをするのに相応しき者かテストを行います。参加希望者はその台座に置かれている、マジックストーンを手にしてください。」

 

俺たちはそれぞれ、台座に置かれたマジックストーンを手に取る。

 

「あ、あのぉ……わ、私は取れなくてもよろしいですよね?」

 

スノウ姫の付き人(犬)のエドがおそるおそる聞いてくる。

 

「いいんじゃねぇの?ぶっちゃけ戦力外だし。100パー死ぬよ?」

 

「あ、はい。じゃ、じゃあ私は見てます。」

 

エドはそう言ってあっという間にリング外へと下がって行った。早っ

 

「テスト、開始」

 

 

□□□□□□□□□□◆

 

 

 

レギンレイヴ姫が開始を宣言すると同時に、マジックストーンが光り、俺は真っ暗な空間に飛ばされた。

テスト開始の宣言とともに世界が暗転した。どうやらあのマジックストーンはディメンジョンARMだったようだ。その中で現れたのは、両手に巨大な鍵爪を着けた仮面の男。恐らくこいつがチェスの兵隊の【ポーン】だろう。

 

「死ねッ!!」

 

「やだね」

 

向かって来たポーン兵に蹴りを叩き込み沈める。

 

これがテストだと言うなら嘗められたものだ。魔法やARMを使うまでもなかった。するともとの場所に転移したのでマジであれがテストだったのだろう。

 

『龍の紡ぐ絆』はもちろん、メルのメンバーも楽勝だった。しかし、クロスガードはアルヴィスを除き全滅。生き残ったガイラは、運悪く一人だけ混ざっていた【ナイト】にやられたらしい。アーシアが急いで向かったが、既に全員事切れていた。アーシアは涙を流していたが、言っちゃ悪いが【ポーン】に敗ける強さで挑もうとする方が悪い。せめて敵は取ってやろう。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

翌日、ついにウォーゲームが開始された。チームのキャプテンだが、多数決で俺になった。最初の相手はロキドンファミリー。対するこちらからは、実力を見ておきたいということで、アルヴィス、ジャック、ギンタが出た。

結果はアルヴィスとギンタが勝利。ジャックは……うん、不幸な事故だった。あの後、男性陣が少しジャックに優しくなった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ウォーゲーム2NDステージ。砂漠フィールドの戦いとなった。この日、ギンタとジャックは昨日の反省点を踏まえ修行のため不参加。

 

一戦目、スノウ姫VS【ルーク】のフーギ。スノウ姫が辛くも勝利を納めた。

 

二戦目、ナナシVS【ルーク】ロコ。実力ではナナシが勝っていたが、油断してレディーファーストなんぞ宣ったせいで相手のダークネスARMに引っ掛かり、何とか相手のARMを破壊するも敗北となった。

 

三戦目、ドロシーVS【ビショップ】マイラ。マイラは包み込んだものを破壊するスライムのガーディアン『バキュラ』を繰り出しドロシーのガーディアン『リングアーマー』を破壊する。しかし、ドロシーの繰り出したガーディアン、『ルインドック』のトトによってバキュラは破壊。マイラは降伏しようとするが、トトによって食い殺された。

 

姫さんは殺すまでもなかったのにと非難したが、これが遊びではなく戦争なのだということをナナシに言われ押し黙った。

 

「つ、つかれたぁ~~っ」

 

「お、鬼だよっ。あのオヤジとヴァーリさん……」

 

するとそこに、ちょうど修行を終えたギンタとジャックが戻って来た。

 

「どうよ二人とも、あいつらは?」

 

俺は修行の監督役をしたガイラとヴァーリに訪ねる。

 

「うむ、なかなか育てるのが面白いぞ、あやつら。見よ」

 

そう言ってガイラはギンタとジャックに向けて石を投げつける。するとギンタは顔を反らして避け、ジャックは裏拳で破壊しもんどり打っていた。………アホだ

 

「兄さんの言う通り、あやつらはなかなか見所がある。天才ってやつだ。もし俺たちと同い年なら、スペックはイッセー並かそれ以上だろう。」

 

「げっ、マジかよ……」

 

幼なじみのギンタに対する評価に軽くショックを受けるイッセー。まあ俺もこいつも元は凡才の類だからな。

 

「シハハハハッ、まぁそう気を落とすヌボァッ!!?」

 

突然ヴァーリが吹っ飛ぶ。見るとドロシーがヴァーリに抱きついていた。

 

「やっぱりヴァーリーーンっ♥」

 

『『『ヴァーリン!!!?』』』

 

ドロシーのヴァーリの呼び方に驚愕する一同。てか何すかその変わり身

 

「そ、その呼び方は止めてくれと言っただろドロシー………」

 

「いいじゃないのー。それよりヴァーリーン♥私達勝ったよ!スゴいでしょ?」

 

「ブェッフォ!…別に驚きはしないさ。君の実力を考えれば当然のことだ。」

 

「きゃっ♥信じられちゃった♥」

 

ヴァーリからの評価に両手を頬に当て体をくねくね動かすドロシーに言葉を失う一同。つーかお前いつの間にフラグ立てたん?

 

「……………さっきまでの人間とは考えられへん」

 

「女はこえーな……」

 

ナナシとイッセーの呟きに激しく同意する男子一同。するとそこへ………

 

「……ドロシーさん。ヴァーリさんは修行を終えて疲れているんです。余り引っ付かないで下さい。」

 

不機嫌オーラ全開の白音ちゃん登場である。

 

「あらあら、なぁにおチビちゃん?男の人に取ってはこういうコトも癒しになるのよ?お子ちゃまにはわからないでしょうけど」

 

ビキッ

 

「無駄に年喰ってると言うことが違いますね、オバサン」

 

ブチッ

 

「んふふふ~~♪」

 

「フシャァァァァァァ!!」

 

バチバチバチバチバチバチッッ!!

 

『『ヒィィィィィィッッ!!』』

 

今まさに、女の火花が散っていた。

 

「ギンタ、ジャック、よ~く見とけよ。あれが修羅場だ」

 

「こ、こぇ~……」

 

「マジで恐いっす!」

 

イッセーがギンタとジャックになんか教えていた。そして二人の間に挟まれているヴァーリの顔は青かった。あとで労ってやろう。

 

 

 

 

 



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蝋燭と好敵手

 

ウォーゲーム3NDステージ、火山群フィールド。5対5の戦いとなる。チェスの一人が寝坊し試合が遅れるというアクシデントもあったが、さして問題なく進められることとなった。

 

「さて、そろそろ俺たちも出るとしよう。連中に思い知らせてやれ。俺たちの力をっ!」

 

『『『了解!!!』』』

 

 

 

 

◆◆◆◆□□◆◆◆

 

 

 

一戦目、『龍の紡ぐ絆』教官 アランVSチェスの兵隊【ルーク】 アリババ。アリババは始まって即ガーディアンARM『魔人のランプ』を繰り出した。

 

「教えてやるぜアランさんよぉ、オレをルークだと思ってナメるなよ。

階級(クラス)とそいつの強さが比例してるとは限らねぇ!ARMの使い方次第で金星だって取れる。

そしてこのARMこそ、大金星を取れるARMさ!!出でよ“ランプの精”!!!」

 

アリババがランプを擦ると、ランプから煙が出て、ランプの精が出現する。アリババはアランに自身のARMを自慢気に語るがアランはどこ吹く風。怒ったアリババはランプの精をアランに向かわせる。

 

「あ、あいつ終わったな」

 

「えっ!?」

 

イッセーの紡きに驚くスノウ姫。次の瞬間、ランプの精はアランの拳によって粉々に粉砕された。

 

「何てことはない。あんなもん魔力もまともに通ってない風船みたいなもんだ。アランじゃなくても、『龍の紡ぐ絆』のメンバーならみんなあれくらい出来る。」

 

イッセーの解説に唖然とするスノウ姫。アランはそのままアリババを殴り飛ばし、火山火口に投げ落とした。絶叫を上げ落ちて行くアリババ。こうして一戦目はアランの勝利となった。

 

二戦目、ジャックVS【ルーク】 パノ。1NDのリベンジマッチとなった。前回とは違い、ジャックはパノの攻撃を完全に見切っていた。ジャックは第六感、特に気配察知に長けるイッセーが鍛えている。その成果を遺憾なく発揮していた。しばらくして、ジャックはパノに木の刺を打ち込み、そこから強い幻覚作用をもつ毒キノコ、マラライダケを生やす『マジカルマッシュルーム』を発動した。幻覚作用によって完全に錯乱するパノ。最終的にジャックがギブアップを薦め、パノにはそれが幻覚作用もあってかイケメンに見えたらしく、ジャックに抱きつきギブアップを宣言する。こうして、二戦目はジャックの勝利となった。

 

三戦目、スノウ姫VS【ビショップ】 Mr.フック。氷を扱うスノウ姫には火山地帯は堪えるだろう。徐々に体力を消耗し追い詰められて行く。最後の力を振り絞り、ガーディアンARM『スノーマン』を繰り出すが、Mr.フックの『怒りの碇(アンガーアンカー)』によって粉砕される。魔力を使い果たしたスノウ姫はついにリタイアとなった。

 

「よく頑張ったな姫さん。あとはまかせな」

 

イッセーはスノウ姫を担いで移動させる。

 

「さぁて!ここはバシッと決めねぇとなぁ!誰でも来やがれ!!」

 

「そんじゃカノッチ出てみよう。」

 

出てきたのは白いシルクハットを被りマントを羽織ったてるてる坊主みたいな顔をした男?だった。

 

「それでは、チェスの兵隊【ビショップ】 カノッチ!!『龍の紡ぐ絆』陸戦兵長 イッセー!!

勝負、開始!!!」

 

 

 

「ドーン。」

 

勝負開始と共に、カノッチはイッセーに向けて指を突き出し言う。イッセーは頭に?を浮かべ自分の体をまさぐる。

 

「……なんだ?」

 

「お前さんはこれでカノッチに呪われた。カワイソウなこったぁ」

 

そう言ってカノッチはシルクハットを外す。中からは一本の蝋燭が出てきた。

 

「ダークネスARM『ボディキャンドル』。このロウソクが燃え尽きたときにはさーーー、()()()()()()()()()()()()も消えちまうってんだ」

 

「何?」

 

「今すぐそのARMを壊せイッセー!!そいつの言っていることは本当だ!!」

 

アランの焦った掛け声から、イッセーは敵の言っていることが嘘ではないことを悟った。そして指示通りARMへ向かおうとすると、カノッチはARMを指から外し、それを飲み込んだ。

 

「タネも仕掛けも、消えちまったってこった」

 

カノッチの持つ杖から炎が吹き出す。

 

「かまやしねぇ、腹ぶん殴って吐き出させりゃいいだけの話だ!」

 

そう言ってイッセーは神器を展開しカノッチに一気に接近する。

 

「んなっ!?(オイオイ、やっこさん‼ちょいと速すぎやしねぇかい!?)」

 

「『コロナックル』!!!」

 

「グボォッ!!?」

 

イッセーの鉄拳がカノッチの腹に突き刺さる。

「ゲホッ……本当に吐きそうになっちまって笑えねぇ……」

 

カノッチはそう言うと頭のロウソクに杖を向け炎を吹き出す。すると、イッセーの体がドロリと溶け出した。

 

「作戦変更だね。1秒でも速いトコ、燃え尽きてもらうのも悪くねぇ。」

 

「………残念だが、そうはいかねぇ」

 

『Absorption!!!』

 

「んあ?」

 

『赤龍帝の太陽手』から機械音が鳴る。すると、カノッチの杖の炎がみるみる吸い込まれていった。

 

「ちょっ、ちょいと!お前さんそいつはどういうこったい!?」

 

カノッチは予想外の光景に取り乱す。

 

「どうよ、驚いたかい?俺は炎や熱を吸収して魔力に変換できるのよ!」

 

「んな!?お、お前さんそいつは……」

 

「そうさ。俺に炎系の攻撃は効かねぇ。それにここは火山地帯、其処ら中に炎や熱が溢れてる。俺にとっちゃ、ここは最っ高の狩り場なのさ‼」

 

(冗談じゃねぇぞおい…絶体絶命ってやつかい、こりゃ)

 

イッセーは笑みを浮かべカノッチを見据え、カノッチは自分の状況に冷や汗を垂らす。

 

「おいアンタ、カノッチっつったかい?お前、なんでチェスにいる?

俺はお前が人殺しを楽しむようなやつには思えねぇ。ま、勘だがな」

 

イッセーは構えは解かず、カノッチに訪ねる。

 

「…………人殺しにはキョーミねェ!ただ、カノッチって男は、スリルと刺激が欲しいのさ。ウォーゲームなんて刺激的だ。わるくねェだろ?」

 

そう言って、カノッチは語り出す。その脳裏に移るのは、自分の幼い日々の記憶。燃え上がる炎、人々の怒号と悲鳴。

 

「俺は、物心ついた時には既に戦争の真っ只中だった。そこがカノッチって男の生きる場所だったのさ。

………だから、平和な世界なんざぁ、死んじまうほどつまんねェのさ。」

 

カノッチの言葉に皆が顔を歪める。どう答えたらいいかわからないって顔だ。平和な現代日本に生まれ育った俺達には到底理解出来ない心境だろう。どこかの誰かが言ってたな。“戦争を知らない子供と、平和を知らない子供では価値観が違う”

 

「ギリギリの命をかけた「ゲーム」に興味があるのさ。カノッチが負けて死んでも悪くねェ!お前さんに勝ってスッキリするのも悪くねェってこった!」

「………よぉするにあれか。単なる戦闘狂かよ。あんた。」

 

「そういうイミじゃお前さん側について、チェスの連中と戦ってたのもわるくねェ話だったなぁ。」

 

イッセーはそれを聞いてポカーンとした顔をした後顔を伏せた。そして、徐々に肩を震わせ笑い出した。

 

「…………ククク……カハハハハハ、カァッハハハハハハハハハ!!!いいねぇ!お前見たいなの嫌いじゃないぜ!」

 

イッセーは一通り笑い、カノッチに向けて指を指す。

 

「なぁカノッチ、俺とひとつ賭けをしないかい?」

 

「賭け?いいねぇ、おもしれェ。俺は何を賭けりゃいい?」

 

イッセーの提案に関心を示すカノッチ。

 

「この戦いで俺が勝って、なおかつお前も生きてたら……お前、俺の下に付きな。」

 

『『『はぁ!!?』』』

 

イッセーの勝手な提案に『龍の紡ぐ絆』メンバーが声を上げる。

 

「……いいのかい?んなこと勝手に決めちまってよぉ?」

 

「かまやしねぇさ。こちとら今まあんにゃろうのワガママに散々付き合わされたんだ。これくらいのことは認めて貰わねぇとな」

 

そう言ってイッセーはこちらに目を向けてニヤリと笑みを浮かべる。……はぁ、しょうがねぇ。皆には俺から言っておいてやろう。

 

「で、どうするよ?乗るか?降りるか?」

 

「………はっ!いいぜ、おもしれェ!やってみな!」

 

「やってやるともさ‼」

 

『Boost!!!』

 

再び『赤龍帝の太陽手』から機械音が鳴り、イッセーのオーラが2倍に脹れ上がる。

 

「こいつが俺の『赤龍帝の太陽手』の()()()効果。10秒ごとに俺の力を倍加する。」

 

「んなぁ!?オイオイマジかい!?」

 

「行くぜ!!!」

 

イッセーは足の裏から炎を吹き出し、ロケットの要領で一気に加速しカノッチの真正面に接近する。

 

「『サラマンダーブレイク』!!!」

 

「グガァッッ!!?」

 

イッセーの炎を纏った旋風脚がカノッチに炸裂する。その威力に、カノッチはついに飲み込んだARMを吐き出した。イッセーは直ぐ様それを掴み、握り潰した。

 

「俺の勝ちだ」

 

イッセーがカノッチに向かってニヤリと笑う。

 

「…………ああ、こんなのも、悪くねェ………」

 

カノッチもまたニヒルに笑い、そして意識を失った。

 

「第四戦!!!勝者、イッセー‼」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆□◆◆□

 

 

3RDバトル最終戦、クロスガードのアルヴィスVSチェスの兵隊【ナイト】ロラン。先制攻撃にアルヴィスの放った“13トーテムポール”は、全てロランに見切られた上でかわされ、反対に爆弾石のブロックを操る“ストーンキューブ”の猛攻を受けていた。

 

「あの男、惚けた言動だが侮れんな」

 

「あらあら、同じARMを使う者として興味深いですわぁ♪」

 

「あれが【ナイト】か。あの強さのやつが後12人……こりゃ一旦編成を考え直す必要があるな。」

 

月に映る映像を見て、竜也達は各々の見解を口にする。アルヴィスはロランの放った“溶岩の蛇(マグマスネーク)”に飲み込まれたかと思うと、蛇の口に“13トーテムポール”を放ち溶岩の蛇の頭を吹き飛ばした。

 

「ほう、食われる直前に蛇の口にトーテムポールを捩じ込んだか」

 

「コンマ1秒の判断や。やっぱ強いでアルちゃんは」

 

「でも…」

 

「ああ、ドロシー。ARMを使い過ぎた。もはやアルヴィスの精神力は限界だ。」

 

映像の中では、アルヴィスはアランに同様の理由でギブアップを薦められ、ロランはだめ押しとばかりにアルヴィスの周りに大量のストーンキューブを出現させる。

 

「ぼ、僕はむやみに人殺しはしたくないのです!ギブアップしてください!……さもなくば、あなたは爆死しま……」

 

「…ハイスピード……13トーテムポール……!!!」

 

「ッ!………!!?」

 

最後の最後、満身創痍の状態で放った最高速度の13トーテムポールは、ロランの頬に確かな傷を負わせた。それを確認したアルヴィスは、ギブアップを宣言する。

 

「今の俺はナイト級にそう遠くはない。通用することを理解した。足りないものは一つ、魔力の持久力。直ぐに追い付いてやるぞ……」

 

アルヴィスは驚愕して固まるロランに向け、笑みを浮かべ宣言する。

 

「アルヴィスのやつ、次の試合を考えて割りきったか」

 

「賢明な判断だ。褒美に帰ってきたらみっちりしごいてやろう♪」

 

「それは褒美とは言わんぞ兄さん……と、その前に……」

 

「ああ、どうやら奴さんもおいでなすったみたいだな」

 

いつか触れた胸糞悪い醜悪な魔力を感じ、俺たちは皆城の一角に目を向ける。

「い、()()()やがった……()()()()()()()()ァーーーっ!!!」

 

その場にいた誰かが()()()を指指して叫ぶ。くすんだ白髪、一見優しげにも見える目付きの奥にはどす黒く濁った瞳が鈍く光る。そして最も特徴的なのが、()()()()()()()()()()()()()()

 

「トム‼ヴェストリのトムじゃねーか‼イエーっ!元気かーっ!?」

 

いつの間に戻って来てたのか、ギンタが呑気な声でやつに手を振っている。

 

「おいギンタ、どこでやつと会ったかは知らないが、あいつはヴェストリのトムなんてやつじゃねぇ。

 

……あいつは……あいつこそが…!前回のウォーゲームでダンナを殺した!チェスの兵隊の司令塔、ファントムだッ!!!」

 

緊迫した空気の中、アランの叫びが城に響いた。

 



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狂気と影

「てめえそこ動くんじゃねぇぞ!!!ぶっ殺…」

 

「待てギンタ!!」

 

ファントムの正体を知り、今にも飛びかかろうとするギンタをイッセーが止める。

 

「はっ離せよイッセー!!俺はあいつを…」

 

「許せねぇのは俺たちもいっしょだ!!!」

今まで聞いたことのないイッセーの声にギンタは固まるが、辺りを見て気づく。イッセーだけではない。竜也が、ヴァーリが、朱乃が、リアスが、『龍の紡ぐ絆』のメンバー全員が、ファントムに向けて怒りと憎悪に染まった目で睨み付けていながら、歯を喰い縛りその場に留まっていることに。ファントムの後ろには、彼に続いて現れた『13星座(ゾディアック)のナイト』の姿がある。今ここで怒りに任せて飛びかかれば、多くの命が失われるとわかっているから……

 

「今はその目に焼き付けろ。あいつが……俺たちの倒さなきゃいけない最大の敵だ!」

 

イッセーの言葉を受け、ギンタはその目をファントムに向けた。

 

「………ねェ、ギンタ。 僕はこの世界が大嫌いだ!臭くて臭くてたまらない。」

 

そこにあったのはドス黒い狂気。10人が見れば全員が揃って「狂っている」と述べるだろう、まるでヘドロやタールのようなどろどろとしていて嫌悪感を抱く悪意。

 

「世界の中心で置くのは常に自分。他者を傷つけ、妬み、嫉み、それでもいつでも自分が一番正しいと思っている。嫉妬、憎悪、背信、不遜、傲慢、欺瞞……それが人間の本質……醜悪だね……臭くて吐き気がする。

 

見せかけだけ。皆 馬鹿ばっかりだ。だから全て殺すことに決めたのさ。」

 

 

 

 

「はっ、下らねぇ。んなもんただの言い訳だろうが。」

 

竜也の発した言葉に、その場は静まりかえる。

 

「…………なに?」

 

「だってそうだろ?お前らはただ自分のことを棚上げして世界に八つ当たりしてるだけだ。それの何処に正当性がある?

世界が汚い?穢れてる?俺に言わしてもらったらお前らの方がよっぽど薄汚れて見えるがね?」

 

 

「お前らのやってることは要するにガキの癇癪と同じだよ。自分の気に入らないことがあれば周りに当たってて喚き散らす。……ほら、何が違う?」

「そうだ!ふざけんな‼てめえのやってる事こそ自己中心的じゃねぇか‼オレはてめえをぶっ飛ばす‼」

 

「……ダンナと同じことを言うんだね。それ故に、哀れだ……」

 

そう言ってファントムはマジックストーンを投げ放り落とす。

「バッボのマジックストーンだ。強くなって、会いにおいで。」

 

「………なるほど、それならこっちも方針が決まった。」

そう言って竜也はマジックストーンを拾い上げギンタに投げ渡し、ファントムに凶悪な笑みを向ける。(その笑みにその場にいた数名が悲鳴を上げたのは聞こえなかった)

 

「お前を()()のはギンタだ。……そして、お前を()()のは、俺だ。」

 

「………成る程、二人とも、楽しませてくれよ」

そう言ってファントムは消えて行った。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「ウォーゲームは3日おきに1日休みがあります。明日はご自由におくつろぎ下さい。」

 

そう言って審判のポズンは去って行った。

 

「よっしゃナンパや!」

 

「してる場合かアホ、修行だ修行!」

 

「や、やっぱりっすか……」

 

はしゃぐナナシへの竜也のツッコミを聞いてゲンナリと肩を下ろすジャック

 

「ガイラさん、頼むわ」

 

「うむ、ギンタ、ジャック、アルヴィス、ナナシ、ドロシー、そしてイッセー、ヴァーリ、アケノ、クロカ、シロネ、ユウト、フリード、ゼノヴィア、お前達にはこれから一日分修練の門に入って貰う。」

 

「あの……私は?」

 

「言ったはずだぜスノウ、お前は少し休んで貰う。」

 

アランの指摘にスノウはしゅんとした様子で縮こまる。

 

「私たちが選ばれなかった理由は何かしら?」

 

修行メンバーに選ばれなかったリアスが訪ねる。他の選ばれなかった面々も不服そうだ。

 

「このメンバーがウォーゲームに置ける主要メンバーだからだ。俺たちの目的はチェスの壊滅。ウォーゲームが終わったからと言ってチェスの脅威が去る訳ではない。そのためにも兵力を温存する必要がある。特にお前の情報収集能力とアーシアの回復は絶対に失う訳にはいかないんだ。わかってくれ。」

 

竜也の真剣な表情に、リアスや他の選ばれなかったメンバーは無言で頷く。

 

「それも今回は特別メニューだ。もうお前達に余裕はないのだ‼覚悟はよいな?お前達」

 

そう言ってガイラは修練の門を取り出す。

 

「ムリヤリですやん………」

 

「諦めろ」

 

ナナシの嘆きをバッサリ切り捨てる竜也であった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

所変わって修練の門の中、別々に他のメンバーとは飛ばされたヴァーリはガイラの言葉を思い出していた。

 

『お前達は今回、ある意味最も戦いにくい相手と戦うことになる。』

 

「最初は仲間内で戦うことになると思っていたが………」

 

ヴァーリが目を向ける先には、『()()()()()()()』を展開する黒い影。

 

「……まさか、自分の影、とはな……」

()()()()()()()()()()()()と対峙し、ヴァーリは苦笑する。

 

その他の場所でも、メンバーたちは自身の影を相手に苦戦を強いられていた。

 

「ネイチャーARM“シャドーマン”。魔力、身体能力、知能、全てが同じ自分の写し身。魔力が上がればシャドーマンも上がる。それが常にMAXの状態で襲い掛かる。極限までいじめぬいて己の限界を越えな!」

 

門の前で佇み、竜也は笑みを浮かべて言った。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「……おいおい、冗談じゃねぇぞ……」

 

「こいつ…俺だって使った事無いのに……」

 

突然なにかをぶつぶつ呟いたかと思ったら、()()姿()()と変貌した自分の影と対峙して、イッセーとヴァーリはそれぞれの場所で冷や汗を流し呟いた。

 

「VS『覇龍(ジャガーノートドライブ)』ってか……あんのクソ兄貴ぃ……毎度毎度そんなに俺たちを殺したいかああああああああああ!!!」

 

ヴァーリの絶叫が異空間に木霊した。



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帰還と4thステージ

修行開始から現実世界に置ける24時間後、修行終了。

 

「「くたばれクソ兄貴ぃ!!」」

 

門から帰って来て早々襲い掛かるイッセーとヴァーリ。そしてそれをいなす竜也

 

「おいおい、いきなりなんだよ」

 

「黙れ愚兄!よくもあんな地獄に放り混んでくれたなごらぁ!!!」

 

「60日間『覇龍』相手にガチバトルとか完全に殺す気だろぉ!!!デッド・オア・アライブの間を軽く70回は垣間見たわ!!!」

 

「…………それで生還してくる二人も大概だにゃ」

 

「だな、我々なら等に跡形も残らんよ。流石は陛下の弟分、龍の兄弟は龍か」

 

同様にあまりのハードな修行に物申そうと思ったが、二人の魂の叫びを聞いて文句を言う気も失せた『龍の紡ぐ絆』修行組。正直ドン引きである。

 

「……なんか、よくわかんないんすけど、覇龍って何すか?」

 

「そうだな、しいて言うなれば神すら滅ぼす最終破壊形態…的な?」

 

「ちょっ!?何すかそれ!?」

 

「キャー!さっすがヴァーリン♥」ダキッ

 

「ぬっ!!?自分にも抱っこしてくれドロシーちゃん‼」

 

「アホは変わってないみたいだなナナシ」

 

「ヴァーリさんから離れて下さいドロシーさん。あざとウザイです。」

 

「あ?なによチビネコ、ヤル気?」

 

「早速修行の成果を見せる時が来たみたいですね」

 

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

「夕麻ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!イリナぁぁぁぁぁぁ!!!会いだがっだよぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「「イッセーくぅーーーん!!」」

 

自分を挟んで睨み合いを始めた白音とドロシーに胃を痛くするヴァーリを尻目に、イッセーは滝のような涙を流しながら夕麻とイリナに駆け寄り、二人もそれを受け止め抱擁する。

 

「グスッ!…俺、俺ぇ!も、もう二度とふたりに会えないのかと……!!」

 

「よしよし、もう大丈夫だよイッセー君。私たちがイッセー君を癒してあげる」

 

「今日はずーっといっしょにいてあげるからね♥」

 

(なぜだ!なぜオイラはモテないのだ!?……農夫だからか!?)

 

「で、どうよリアス、延びしろは?」

 

血涙を流すジャックを尻目に、竜也はリアスに訪ねる。

 

「………正信予想以上よ。みんな入る前とは段違い。特にイッセーとヴァーリの二人は一線を画してる。」

 

【探索】によって出現した水晶を覗き込みリアスはその結果に驚きながらも竜也に伝える。

 

「だな、正直ここまでとは……(一日分でこれなら今度残りも合わせて全員にやれば十分な戦力増量が期待できる) ニヤリ」

 

ゾクッ((((!!?))))

 

突然言い知れぬ悪寒を感じた『龍の紡ぐ絆』一同であった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

翌日、再び始まるウォーゲーム。その4THバトルは6対6の氷原フィールドでの戦いとなった。今回の戦いでは修行成果を確認するために竜也とアランは不参加。参戦するのはアルヴィス、ドロシー、ヴァーリ、ギンタ、白音、朱乃の六人であった。

 

対するのは、

 

 

「寒いね寒いねぇ‼こういう時はどうすればいいんだい!?あっつーーいモノを喰うのさ‼

お前達全員焼き肉にして喰ってやるよォオーーー!!!この美しいラプンツェル様がねえーーー!!!」

 

「…………な、なんだあいつ……」

 

その呟きは誰のものであったか。現れたのは、長い金髪をドリルのように固め、ボンテージスーツを着た老け顔の女であった。

 

「チビ!!!不細工な白髪!!!もう一人不細工!!!チンチクリン!!!ブス!!!もう一匹ブス!!!てめぇら全員地獄に叩き落とすよォオ!!!ブッ殺してやる!!ギャハハハハハ!!!」

 

次々とギンタたちをまくし立てたかと思えば、いきなりヒステリックな笑い声を上げる女。その様をギンタたちは唖然と見ていた。

 

「なっ……なんだあのドリル頭のおばさんは……」

 

「ぁんのババァ……誰と誰がチンチクリンと不細工だってぇ……」

 

「………コロス」

 

「あらあら、うふふ♪」ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 

訂正、呆気にとられているのはギンタのみ。ヴァーリはこめかみに青筋を浮かべ、白音は無表情、朱乃は微笑みを浮かべているが、背中にどす黒いオーラを漂わせており、アルヴィスは我関せずといった表情で彼らから距離を置く。真面目な顔をしているのはドロシーぐらいなものだった。

 

「ラプンツェル様、クラスはナイト。性格はヒステリックで好戦的で自己中心的。しかし、強いですよ。」

 

ギンタの呟きにポズンが審判として淡々と答える。

 

「さぁいくよォオオ!!!」

 

「ちょっ!?ちょっと待てよねーちゃん!!!」

 

今にも飛びかかろうとするラプンツェルを、以前ギンタと戦ったチェスのビショップ、ギロムが肩を掴んで止める。

 

「なんだいギロム?」

 

「ねーちゃんは俺たちのボスだろ?やっぱ最後の方がいいよ!」

 

先ほどとは打って変わって穏和な表情でギロムに尋ねるラプンツェルに、ギロムは出るなら最後だろうと提案する。

 

「んんー?まあ…カワイイ弟がそう言うならねぇ…」

 

「そうですね。それに、お言葉ですがラプンツェル様。あの二人はブサイクとは思いませんよ?カッコイイです♡」

 

巻き貝のような帽子を被った少女が話しかけた瞬間、ラプンツェルは再び凶悪な表情を浮かべる。

 

「ばっ馬鹿!!!ねーちゃんに謝…」

 

パンッ!!!、と乾いた音が辺りに響く。ラプンツェルが少女の頬を叩いたのだ。

 

「……じゃあ、どっちが美しいんだぃぃーーっ!?あの二人とォ…私のさァ!!!」

 

「……ら、ラプンツェル様…です……」

 

頬を打たれた少女は、震える声でそう返す。

「言葉にゃ気をつけなこのクソ女!!!私はデリケートなんだ!豚!!!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

レギンレイヴ城、竜也side

 

「うっわ、最悪だあの女。俺の一番嫌いなタイプだわアレ」

 

月に映る映像を見ながら思わずそう漏らしてしまう。いやだってしょうがないじゃん。なにあの世のヒステリックな女性の悪いところを一個にまとめたみたいなやつ。

 

「ほんとに最悪ね、同じ女として恥ずかしいわ。」

 

「何処と無く誰かを彷彿とさせるな」

 

イッセーの呟きに、俺達の脳裏に浮かんだのは、バカ笑いをする白髪の男の姿だった。

 

◆◆◆◆◆□□◆

 

「へっぶわっくしょい!!!いやー、美女が俺っちの噂してるぜぃ」

「なーにをアホなこと言っとるんですか先輩」

 

とある世界とある場所、くしゃみを上げてとんちんかんなことを言う白髪の青年に、金髪の少年が冷ややかなツッコミを入れた。

◆◆◆◆□□◆◆□

 

アルヴィスside

 

 

今から6年前、当時チェスの兵隊と戦っていたメルのもとに、一人の少年がやって来た。

 

『おう、なんだ?その年で気合い入ってるじゃねーかよ、ボーズ。メルヘヴンが好きってか?へへっ、じゃあ俺と同じだな。一緒にチェス倒すか!』

 

『子供に戦かわせるなんてできるか馬鹿!!!……しかし、大人でも逃げ出すウォーゲームだってのにな。面白えガキだぜ。』

 

 

 

 

『いい目をしている、勇気ある君によいプレゼントを贈ろう。ゾンビタトゥ、そのタトゥーが身体中にまわりきった時、キミはボクと同類になる。』

 

 

『 生ける屍。』

 

『ダンナ!!』

 

『ダンナさん!!』

 

『相討ちか……しかし、終焉ではない。死することないファントムは、またいつか甦る。その時、戦争は再び繰り返されるのだ。』

 

 

それから6年後、ファントムは甦り、少年は再び合間見える。今度は、仲間と共に戦う戦士として。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

4thバトル第一戦はアルヴィスVSクラス【ビショップ】のMr.フック。3rdバトルで地の利もあり、スノウを破った相手に、アルヴィスはノーガードで構える。それに怒ったフックは、『フィッシングロッド』でアルヴィスを捕らえ、『ハープーンピアス』で串刺しにしようとするが、アルヴィスはそれを素手で破壊した。

 

「ちっ、あの野郎使えねぇぜねーちゃん。」

 

「Mr.フック!!!負けたらどうなるかわかってるねェえ!!制裁が待ってるよォおお!!!」

 

「む、無茶を言うな……あの男は、まだARMすら出していないんだぞ……」

(一口にクラスと言っても、その中にはランクが存在する。ナイトに近いビショップ、ルークに近いビショップ、某はせいぜいルークの上程度だ。

それにあの男、ロランと戦っていた時よりも格段に強さを増している!息一つ乱さずARM一つ使わず戦うとは!?)

 

先ほどから攻撃をしていながら、実質追い詰められているのはMr.フックの方だった。彼はこれまでの攻撃で悟ってしまったのだ。アルヴィスとの実力差に。

 

(こうなれば、某、最強で最後のアレを使うしかないぞよ!魔力を極限まで込め、狙いを定めよ!!!)

 

「行くぞ!『アンガーアンカー』!!!」

 

次の瞬間、アルヴィスの頭上にスノウの『スノーマン』を粉砕してみせた巨大な碇が現れた。碇は重力に任せ落下、アルヴィスの立っていた氷の大地を粉々に粉砕してみせた。

 

 

「…………終わりだねぇ」

 

「はぁ……ガァッ!!」

 

勝負は決した。アルヴィスは一瞬にしてMr.フックの背後に移動し、その意識を容易く刈り取った。

 

「勝負あり!!!勝者、チームメル!!アルヴィス!!」

 

「おっしゃあーー!!!」

 

「ほぉ、やるねぇ」

 

(あれから6年が経ち、戦争は繰り返された。そして今、俺はウォーゲームで戦っている。)

 

「楽勝だったじゃねーかコノヤロー!」

 

「誉めてつかわす!わははは!!」

勝利を納めたアルヴィスに、ギンタは笑顔で駆け寄りる。それを見たアルヴィスは、ふと昔自分が聞かれた言葉を思い出した。

 

「ギンタ」

 

「うん?」

 

「メルヘヴンが好きか?」

 

一瞬、ギンタはきょとんとするがすぐに笑顔で答える。

 

「当たり前だ!!」

 

その答えに、アルヴィスは顔を綻ばせ、そしてより決意を固める。

 

「じゃあ……俺と同じだな。一緒にチェスを倒すぞ!」

 

この戦争は、俺たちが今度こそ終わらせる。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

竜也side

 

4thステージ第一試合終了後、それは起こった。重い足取りで戻ってきたMr.フックに、ラプンツェルは突然じゃんけんを持ちかけたのだ。突然のことにMr.フックは慌てて手を出し……

 

「負け…たわ……」

 

ザクッ❗❗❗

 

 

『『『ッッッ?!!!!』』』

 

ラプンツェルは、Mr.フックの首を切り落とした。

 

『運がないねぇ!Mr.フック!ギャハハハハハ!!!』

 

「ッ!!!…ぁんのババァ!!!」

 

奴の甲高い笑い声に全身の血が沸騰するような怒りがこみ上げる。確信した。奴は殺しを楽しむ完全な殺人鬼だ。自分が楽しむためなら、仲間すらも手にかける!!

 

「ひ、酷い……」

 

「あのババァ許せねぇ!!!」

 

「醜いわ、実にもって醜悪ね 」

 

皆奴の行動に嫌悪感を表している。くそっ、こうして目の当たりにすると、奴らの醜悪さを改めて実感する。今すぐにでもあそこに行ってあのババァをぶちのめしてやりたいが、それは………

 

『おい、ババァ!!!』

 

あいつらに任せるとしよう。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「おい、ババァ!!!てめぇは自分の仲間も殺すのか!!?それがチェスのやり方なのか!?」

 

ギンタの怒号に反応し、ラプンツェルはゆっくりと振り向く。

 

ピク…ピク…「……ギィンタァ……お前……今何て言った?」

 

「ババァだってんだよババァ。」

 

そこにドロシーが介入する。

 

「ハッキリ言ってさっきから不愉快なんだよね、あんた。そのデカイダミ声も、姿形も、ムカつくったらありゃしない。」

 

「ドロシーの言う通りだ。不快な姿さらしやがって、消えろクソババァ。」

 

そこにヴァーリも加わり、ラプンツェルに対して募った不快感を吐き捨てる。その瞬間、ラプンツェルの顔が怒りと狂気で染まった。

 

「ああぁ!!!今すぐ人を殺したいぃぃぃぃィッ!!!全員こいよゴラァ!!!」

 

「まっ、待ってよねーちゃん!!!」

 

今にもギンタたちに飛び掛かろうとするラプンツェルをギロムが止める。このゲームの映像は“クイーン”の元にも届いている。ルール違反を起こし、彼女の機嫌を損ねるのは不味い。

 

「ねーちゃんには一番おいしいところをやらせてやる。もうしばらく辛抱してくれ。」

 

「フヒー、フヒー!!!……ギンタ、魔女、ヴァーリ……あいつら死なないとぉ、絶頂なんか出来ないよぉォオッ!!」

 

なんとかギロムに宥められ、ラプンツェルは引き下がる。しかし、その顔には尚もヒステリックに歪んでいた。

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

4thステージ第二試合、組み合わせはチェスの兵隊【ビショップ】コレッキオVS龍の紡ぐ絆【迫撃兵】白音

「試合、開始!!!!」

 

「……行きます」

 

ポズンの宣言と共に、白音はゆっくりと拳を構える。対するコレッキオは、トランプの束をシャッフルし、その中の1枚を白音の足元に投げた。カードは氷の大地に刺さり、見ると、それはジョーカーのカードだった。

 

「それがお前の運命、死。『マジックハンマー』」

 

「言ってて下さい。」

 

コレッキオはハンマーのARMを発動し白音にラッシュを仕掛ける。対する白音は、コレッキオの攻撃を全て見切っていた。

 

「フッ!!」

 

「おぁ…!」

 

白音はコレッキオのハンマーを掻い潜り、拳の一撃を捩じ込むが、コレッキオはそれを紙一重でかわし、一旦後ろに飛び退く。

 

「……一撃、一撃当てれば俺の勝ち決定。一撃当てる!」

 

コレッキオの何か仕掛けようという仕草に、白音は警戒を表す。

 

「むっ…」

「ああーーーっ!!!アレ何!?」

 

突然、コレッキオは大声で白音の後ろを指差した。

 

 

『『『・・・・・・・・・・・・・・・』』』

 

 

「……………ひっかかりませんよ?」

 

ガーン!!!(後ろ向く思ったのに!!こいつなかなかやる!!)

 

試合を見ている何人かが思った。こいつバカだ、と。

 

「仕方ない、これ使う。」

 

コレッキオはそう言うと左手中指に着けたARMを発動する。

 

「『スロードリィ』」

 

ARMが発動すると、突如白音の動きが固まる。

 

「……ッ!!?……か、体…が……」

 

「ッ!?どうした白音!?」

 

「ダークネスARMよ、ヴァーリン。『スロードリィ』、効果は確か相手の動きを鈍らせる。そして、その代償は、発動させている間視力を失う。」

 

「……さて、どこ?」

 

コレッキオはハンマーを片手に、ゆっくりと白音を探す。

 

「クッ!……」

 

白音は全身を覆う重みに抗い、必死に体を動かそうとする。

 

(…これを破るためには、このARMを発動させるしかありません。動いて下さい、私の体!!)

 

『メルヘヴンは好きか?』

 

不意に、白音は先ほどのアルヴィスの問いかけを思い出す。

 

(私達はこのメルヘヴンの外から来た存在、『メルヘヴンは好きか?』、と聞かれてもピンと来ません。……だけど、)

 

脳裏に浮かぶのは、チェスの兵隊によって破壊されたルベリアの光景。殺され、息耐えた遺体を抱きしめ咽び泣く人々。

 

(あんなの見せられて、黙ってられるわけないでしょう!!!)

 

それは、自分もかつて味わった大切な人を失う悲しみ。いや、自分はまだ幸せだ。離ればなれになったが、姉は生きており再び再開することができた。だが、目の前で大切な人を殺され、もう二度と会うことは出来ない彼らの悲しみは、自分が経験したものよりも何倍も深いだろう。

 

(そんな悲しみを理不尽に世界に撒き散らすチェスの兵隊を、許す訳には行きません!!!)

 

白音は力を振り絞り、ゆっくりと両手を上げて行く。そしてそれが顔の前に届こうとした時に……

 

「魔力、感じた…!」

 

「ッ!!しまっ…」

 

 

ドゴッ!!

 

鈍い音がフィールドに響く。

 

「ッ!?白音ぇ!!」

 

「う…クッ…!…あ、体の重みがなくなった。」

 

白音はふらふらと立ち上がると、体を包んでいた重みが消えているのを感じた。

 

「よし、これなら…………にゃ?」

 

白音は拳を再び構えるが、そこにコレッキオの姿はなく、代わりにいつの間にか、()()()()()()()()()が立っていた。ゆっくりと上を見上げると、そこにはビルほどの大きさになったコレッキオの姿があった。

 

「きっ、巨大化……っ!?」

 

「逆、お前、小さくなった。マジックハンマーで一撃当てる。相手小さくなる。」

 

ドゴッ!!

 

「ぁあ!!!」

 

コレッキオは小さくなった白音を、その身長ほどもある足で蹴り飛ばした。

 

「何度も蹴る。死ぬまで蹴る!コレッキオ負けない。Mr.フックみたいに死にたくない!!」

 

コレッキオは再び足を振り上げ、白音に向かって振りかぶった。

 

「くっ!!ぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

それに対し、白音は迫り来る足を避ける訳でもなく、それを真っ向から受け止めてみせた。

 

「………何?」

 

あり得ない、そうコレッキオは思った。あの小さな体、それも今やゾウとネズミほどの体格差のある自分の蹴りを、白音は止めて見せたのだ。

 

「…こう見えて、力と耐久が自慢…ですから!」

 

刹那、白音はコレッキオの足に飛び乗り、素早い動きでコレッキオの体をよじ登っていく。

 

「くっ!堕ちろ!!」

 

コレッキオは白音を払い落とそうとするが、白音はコレッキオの腕を掻い潜り、ついにコレッキオの眼前に到達する。

 

「ダークネスARMを解いたのは失敗でしたね!ネイチャーARM『煙幕』!!!」

 

白音はARMを発動し、口元で印を結び、そこに息を吹き込むと、勢いよく煙が吹き出た。

 

「ッ………目眩まし?」

 

「いいえ、違います。」

 

「!!?」

 

コレッキオが目を向けると、煙の中から元の大きさに戻った白音が飛び出した。

 

「なっなぜ……!?」

 

「ネイチャーARM『煙幕』の煙は魔力を遮断します。当然、ARMの魔力もです。……それよりも、」

 

白音はゆっくりとコレッキオに近づく。

 

「…あなた、さっきはよくも蹴っ飛ばしてくれましたね」

 

「す、スロード…!!!」

 

「ぶっ飛べ」

 

ドゴッ!!!

 

「ガハァ!!?」

 

コレッキオがARMを繰り出す前に、白音の拳がコレッキオの腹に突き刺さる。コレッキオはバットで打たれたボールのように吹き飛び、数度バウンドした後に倒れ伏した。

 

「勝者、シロネ!!!」

 

「大逆転だァーー!!!」

 

「うん、流石だ白音」

 

「へぇ~、やるじゃんあのチビッ子」

 

「にゃん」

 

仲間たちからの称賛に、白音はブイサインで答えた。

 

 

 

「……う…ぐぅ…」

 

一方、吹き飛ばされたコレッキオは、腹の痛みに耐え、なんとか立ち上がろうとしていた。そして、顔を上げると、そこには悪魔の形相をしたラプンツェルの姿があった。コレッキオの顔が絶望に染まる。

 

「ジャーン」

 

「ケーン。」

 

「ホイ!!!」

 

とっさに自分の出した手はチョキ、そして、ラプンツェルの手は、グー。

 

「…ま、負け……!」

 

「ヒャーーー!!!」

 

ズガンッ!!

 

ラプンツェルがコレッキオの首を切ろうと手を伸ばした瞬間、ラプンツェルとコレッキオの間に光の槍が突き刺さった。

 

「ぁ“あ“!!?なんだぁこりゃあ!!?」

 

「あらあら、困った人ですわぁ。先ほどヴァーリ君たちの言ったことをもうお忘れかしら?……これ以上その不快な光景を見せないでくれませんこと?吐き気がしますわ。」

 

そう言って、微笑を浮かべ歩み出るのは、光の槍を彼女に向かって投げた朱乃であった。

 

「うふふ♪次は私が行きますわ。ほら、出て来なさいなオバサン。消し炭にしてさしあげますわ♪」

 

ビキッ!

 

朱乃のその言葉にラプンツェルの額に青筋が浮かぶ。

 

「だ、だ、誰、誰がオバサンなんだい~~~~!?私はまだ29なんだけどねえ~~~!!!」

 

「あらあら、ご冗談を。どうみても40後半でしょうオバサン。死んで下さい♪」

 

怒りに震えるラプンツェルの反論を朱乃はバッサリ切り捨てる。

 

「キィィィィィィィィィィィッ!!!」

 

ラプンツェルはヒステリックな奇声を上げながらズカズカと朱乃に突進する。いつの時代、どこの世界でも女性に顔と年の話は禁句なのだ。まぁ、この場合は致し方ない気もするが……

 

「ま、待てよねーちゃん!!あんなブスの挑発にのるなってば!!ね、ねーちゃんの方が……全然キレイだ……ぜ……?」

 

ギロムは暴走する姉の前に立ち塞がり必死に宥めようとする。言葉が絶え絶えなのは姉に対する恐怖からか、はたまた自分でも無理があると理解しているかは定かではない。そして弟のそんな世辞に、ラプンツェルはバッと止まり、先ほどまでの態度が嘘であるかのように顔を緩める。

 

「そうかいそうかいギロム~~~♡かわいい弟がそう言うなら本当だろうね〜〜〜」

 

「あ、ああ……ほんとだってば……」

 

ギロムは冷や汗を流しながら、ホッと一息ついた。

 

 

 

 



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貝と氷魔

「あらあら、ノッて来ませんか。つまらないことですわ」

 

ギロムに説得され引き下がるラプンツェルを見て、朱乃は口を尖らせぼやく。

 

「てか朱乃ちゃん、何抜け駆けしてるんだよ」

「そーよそーよ、あのババア私が殺りたかったのにー」

 

「あらあら、早い者勝ちですわ♪最も、お目当ては釣れませんでしたけど……」

 

ブーブーと文句を言うヴァーリとドロシーを尻目に、朱乃は目線をチェスに向ける。出てきたのは、道化師のような頭巾の上から仮面を着け、左手に異様に大きな鍵爪を着けた男だった。

 

「まぁ、いいですわ。とっとと終わらせるとしましょう」

 

朱乃は獲物を見据える猛禽のような微笑…否、冷笑を浮かべゆっくりと歩み出た。

 

 

◆チェスの兵隊【ビショップ】▼アヴルートゥ▼

 

 

◇龍の紡ぐ絆【航空参謀】▽姫島朱乃▽

 

「第三戦‼アケノVSアヴルートゥ!!!試合、開始ぃ!!!」

 

開始と同時に、アヴルートゥは自身の装着した爪を堅持するように掲げた。

 

「ウェポンARM『シェラキー』。この爪は何でも切り裂く。ARMでも…だ。」

 

「あら、そう。キョーミありませんわ」

 

「なっ!?きさ…」

 

「『エレクトリックアイ』」

 

 

カッ!!ドガアアアアアアン!!!

 

 

 

 

瞬殺。まさにその一言だった。朱乃の放った電撃は、一瞬にしてアヴルートゥの身を焼いた。

 

「ば、バカな…何もしてない…」

 

アヴルートゥはそのまま崩れ落ちた。

 

「しっ勝者、アケノ!!!」

 

「あらあら、何でも切り裂く?だったら雷も切ってみなさいな。」

 

朱乃はそう言い残して自分のチームへ戻って行った。

 

「お疲れ朱乃ちゃん、てか瞬殺かよ。」

 

「流石ですね、朱乃先輩」

 

「てんで期待外れでしたわぁ。もう少し歯ごたえがあるかと思いましたのに…」

 

朱乃たちが和気あいあいと話している中、ギンタたちは朱乃のことを唖然と見ていた。

 

「あ、朱乃さんすげぇ……」

 

(あの威力…前にベストリで見たナナシのエレクトリックアイよりももっと上、しかも全く消耗していない!?)

 

(強い……アケノ、彼女は既にナイト級……いや、もしかするとそれ以上か……これが、龍の紡ぐ絆……)

 

「う……ジャンケンか…」

 

アヴルートゥはヨロヨロと立ち上がり自陣へ戻る。

 

「お前みたいなクズはジャンケンする…必要もない。」

 

ガッ!!

 

「すぐ死ね。」

 

ラプンツェルはそう言ってアヴルートゥの首を跳ねた。

 

「………次、いきますっ。アヴルートゥのようにはいきませんからっ。アクアちゃんがんばっちゃうよーー  」

 

そう言って前に出てきたのは、最初にラプンツェルに頬を打たれた少女だった。頭にはホラ貝のような帽子を被り、フリルの付いたドレスには、星や真珠のような装飾がちりばめられ、常に笑顔を浮かべる顔の左頬には星のペイントが入れてある。

 

「なんぢゃあのブリブリは!?あれが戦うのか!?」

バッボの疑問は最もだろう。彼女の外見はとても戦うようには思えない。

 

「…さて、残ったのは俺とギンタとドロシーの三人だが……」

 

ヴァーリは朱乃とギンタの二人を見る。

 

「俺はいいよ、向こうに俺と戦いたがっている奴がいるみたいだから。」

 

そう言うギンタの目線の先には、狂暴な笑みを浮かべるギロムの姿があった。

 

「そうか、ならここは俺が出よう。あのババアはドロシーにゆずるとするかな。」

 

「あーんヴァーリンやさしぃー♥そういうとこ大好きぃー♥」

 

「……ぁのアマぁ……!」

 

ドロシーはヴァーリに抱きつき頬擦りする。その様子を白音はどす黒いオーラを放ちながら見ていた。

 

◇龍の紡ぐ絆【科学参謀】▽雷門ヴァーリ▽

 

◆チェスの兵隊【ビショップ】▽アクア▽

 

「第四戦‼ヴァーリVSアクア!!!開始!!!」

 

 

「レディファーストだ。先手は譲ろう。」

 

ヴァーリは余裕の笑みを浮かべて手招きをする。

 

「まぁ!なんて優しい人なんでしょ!ありがとうございますぅ!それではぁ…お言葉に甘えちゃおっかな~~♥」

 

アクアは(元々だか)笑顔を浮かべて胸元をまさぐり、一つのARMを取り出した。

 

「ガーディアンARM!!!出て来てアッコちゃん!!!」

 

ドズズズズゥゥゥゥゥゥン!!!!

 

《ぐるるるるるる!!!》

 

氷の大地を砕き、現れたのは巨大な真珠貝のガーディアンだった。貝殻の中にはボウと2つの目が浮かび、ガチガチと貝殻を鳴らして威嚇している。

 

「ほぉ、デカいな」

 

「Goーーーっ!!」

 

アクアの号令を受け、アッコちゃんはその巨体に似合わない速さでヴァーリに突進する。

 

「“アイスファランクス”!!!」

 

ヴァーリは冷気によってできた氷の槍を打ち出すが、アッコちゃんの殻には刺さらず砕けてしまった。

 

「なるほど、硬いな」

 

ヴァーリは『白龍皇の月光翼』を展開し、迫り来るアッコちゃんを飛んで回避する。するとアッコちゃんは貝殻を大きく開き、バスケットボールほどもある真珠をマシンガンの如く打ち出した。

 

「アッコちゃんは最高の防御力をもってるの 必殺技”ぺルルアタック“の味はどうですか?カッコイイお兄さん。」

 

ヴァーリはアクアの問い掛けには答えず、大きく息を吸い込み、そして吐き出した。

 

「“ツンドラブレス”!!!」

 

吐いた息は強烈な吹雪となり、冷気を浴びた真珠は皆勢いを無くして凍り付き、全て粉々に砕け散った。

 

「残念、一つも当たらなかったぞ。」

 

ヴァーリは余裕の笑みを浮かべた。

 

「あら。まあ。ふむぅ…それでは作戦を変えましょう!」

 

アクアはそういうと、アッコちゃんを引っ込めた。

 

「やっ!」

 

可愛らしい声を上げて飛び上がると、アクアの靴の裏にスケート靴のブレードが現れた。

 

「ウェポンARMか!?」

 

「そうは見えないけど……よくわからない敵ねぇ」

 

「せーの……すぃーーーーっ!!」

 

アクアは勢いを着けて飛び出し、そのままヴァーリが飛んでいる下を周り始めた。

 

「すぃーーーっ」

 

「すぃーーーっ」

 

「すぃーーーっ」

アクアはそのままぐるぐると周り続け、ヴァーリはそれを上空からただ見ていた。しばらくすると、ヴァーリの下には大きな円の跡が残っていた。

 

「よし!!行きますよぉーーっ!ヴァーリさん!」

 

アクアは滑るのを止め、頭の貝殻を取り外した。

 

「ぷはーーーーっ……」

 

《ブオオオオオオオ!!!》

 

 

アクアは大きく息を吸い込み、貝殻に吹き込むと大きな音が辺りに鳴り響いた。すると、氷の下にユラリと大きな影が見えたかと思うと、氷を破り巨大な怪魚が姿を表した。

 

「ッ!!?(円を描いてたのはこいつの出現場所のマーキングのためか!?)」

 

怪魚はヴァーリを飲み込み、飛沫を上げて海中に姿を消した。

 

「ネイチャーARM『スピカラ』です。これでアクアの海のお友達を呼べるんですよ!」

 

氷の下の海を泳ぐ巨大な魚影、しばらくすると、その周りが赤く染まりだした。

 

「ヴァっ……ヴァーリィィィィィィ!!!」

 

ザパァアアアアン!!!

 

ギンタの叫びに呼応するかのように、再び怪魚が水面から飛び出した。すると、怪魚の頭部から二本の刃が突き出ていおり、そこから血が吹き出していた。

 

「「…………!?」」

 

次の瞬間、怪魚の頭は粉々のみじん切りになり、そこからヴァーリが姿を表した。

 

「呼んだか?ギンタ」

 

ヴァーリはギンタに笑みを向けて地面に降り立つ。頭部を失った怪魚の体は、血飛沫を上げながら氷の大地へ落ちた。

 

「『白龍皇の月光翼』、羽根の一枚一枚が刃のごときこの翼の切れ味は、さっきの奴の爪などとは一線を画す。……それよりあの魚、寒さで身が引き締まってなかなか旨そうだ。あとで刺身にでもするとしよう。」

 

ヴァーリはそんな呑気なことを言いながら翼に付いた血を払っている。アクアは、そんなヴァーリの余裕の態度を見て、彼にとって自分は歯牙にもかけない存在なのだと思い知らされる。脳裏に浮かぶのは、負けた他の面々が首を切られる光景。アクアの顔がみるみる青ざめる。

 

「やだ………首を切られるのは嫌ですぅ!!アッコちゃん!!!」

 

アクアは再び貝のガーディアン、アッコちゃんを呼び出し、その殻の中に飛び込み、アッコちゃんの殻が閉じる。一見、硬い殻に逃げ込んだのかと思われたが、アッコちゃんは徐々に回転を始め、高速回転しながら突進した。

 

「ローリングアッコちゃんアタックですぅ!!!」

 

「なるほど、硬い貝殻に入ることで術者の身を守りながらその硬さを攻撃に転用、さらに発動中は動きが規制されるガーディアンARMの弱点もカバーできるというわけか。

………だが、ここまでだ。」

 

ヴァーリは翼を合わせて折り畳み、そのまま縦回転をしながら突っ込む。

 

「“スパイラルブレード”!!!」

 

ゴガッ!!!

 

 

 

鈍い音が響き、二人?はそれぞれ宙を舞い落下する。

 

相討ち、そう思われた。しかし、煙が晴れると、ヴァーリはムクリと立ち上がり、アッコちゃんはズルリと左右に別れた。

 

「へ……へ……へろへろ~~~~っ……」

 

アッコちゃんから這い出てきたアクアは、ぐるぐると目を回し倒れ伏し、それと同時にアッコちゃんも消滅した。魔力も体力も尽き果てたのである。

 

「勝者!!!ヴァー……!?」

 

ポズンがヴァーリの勝利を宣言しようとすると、ヴァーリはふらふらとふらつき始め、仰向けに倒れてしまった。

 

「お、俺としたことが……勢い余って翼を当てる前に頭をぶつけてしまうと……は………」

 

そう言うヴァーリの額には、大きなたんこぶができていた。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 

全員が唖然とする中、ポズンはコホンと咳払いをし、試合の結果を宣言した。

 

 

「第四戦‼両者ドロー!!」

「はぁー、やれやれ。俺としたことがなんと間抜けな。後で兄さんになんと言われることか……」

 

ヴァーリはぶつぶつと言いながら起き上がり、倒れていたアクアの手を引き起こした。

 

「ヴァーリさん……」

 

「形式はどうあれ結果は結果だ。この試合は両者引き分け……それだけだ。」

 

ヴァーリはそう言い残して自陣へと戻って行った。

 

 

 

「………ありがとう」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「すまん、しくじった。」

 

自陣へ戻ったヴァーリは、仲間たちにさらっと謝罪した。

 

「何がしくじったですか。わざとでしょうに。」

 

「…ヴァーリさんって時々アホなことしますよね。」

 

「もぅー、ヴァーリンったら。あんまり他の女に目移りしちゃ嫌よー」

「さて、なんのことかな?」

 

ヴァーリは3人に言い寄られても惚け、ちらりとアクアの戻っていったチェスの陣営に目を向けた。

 

 

チェスの陣営、そこでアクアはラプンツェルとギロムの2人に挟まれていた。

 

「……どうして、なんでジャンケンなんですか!?アクア…ドローでしたよ!?」

 

「敵に情けをかけられて恥ずかしくないのかいぃーーーっ!?お前は負けたんだよ豚ぁあ!!だから制裁なんだよアクアーーー!!」

 

「……わかりました。ジャンケンに勝てば首斬りは無しですもんね?」

 

アクアはラプンツェルの剣幕に怯んだが、覚悟を決める。

 

「ああ。そうともそうとも。ジャ~~ン、ケ~~ン……」

 

「「ホイ!!」」

 

アクアの出した手はチョキ、そしてラプンツェルの出した手は、パー。

 

「勝った……っ…」

 

その時、一瞬にして近づいたヴァーリが、ギロムの放った氷の槍を破壊した。

 

「なっ!?てめぇ!!」

 

「っ!?ヴァーリさんっ!」

 

「……さっきからいい加減にしろよ貴様ら。二人そろって不快な真似しやがって…」

 

ヴァーリは静かに怒り、ギロムとラプンツェルを睨みつけた。その氷のような視線に、二人はゾクリと背筋が氷った。

 

「……本当ならお前たち姉弟二人ともこの場で細切れにして魚の餌にしてやりたいが、生憎俺は既に試合を終えている。後は2人に任すとしよう。」

 

ヴァーリはきびすを返し自分の陣営に戻ろうとつかつかと歩いて行くが、ふと立ち止まり振り替える。

 

「あぁ、そうだ。戦利品として彼女は貰っていく。」

 

「え、へあっ!?」

 

言うや否や、ヴァーリはアクアを抱き抱え、一瞬にして自陣へ戻って行った。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「……さて、どうだ?具合は」

 

「は、はい。大丈夫です…」

 

4thバトル第五戦、ギンタとギロムの戦いが行われる最中、ヴァーリによってギロムの魔の手から救い出されたアクアは、ヴァーリが竜也から与えられたホーリーARMと白音の仙術によって治療を受けていた。

 

「……ありがとうございます、ヴァーリさん。2回も助けてくれて……」

 

「…自分の行動には最後まで責任を持てと兄さんに教えられた。俺は責任を果たしたに過ぎない。」

ヴァーリは素っ気なく答えるが、照れくさそうに目を背ける。そんな彼をアクアは、頬を桜色に染め、熱に浮かされた目で見つめて、白音はため息をつきまたかとジト目でヴァーリを見ていた。そんな目を誤魔化すように、ヴァーリは目線をギンタとギロムの戦いに向ける。

 

「『アイスドアース』!!!」

 

ギロムは氷の礫をギンタに飛ばす。氷のフィールドにおいて強化された氷のARMは、ヴェストリの時よりもその数と威力を増していた。

 

「バッボ、バージョン②!『バブルランチャー』!!!」

 

それに対しギンタは、バッボの形態を変化させ、泡の弾幕で全ての礫を相殺してみせた。

 

「こ、このガキャ~~ッ!!」

 

ギロムは苛立ちを露にする。最初はギロムの挑発に乗せられ頭に血が登り冷静さを欠いていたギンタであったが、バッボに叱責されたことで冷静さを取り戻し、魔力のこもった攻撃をぶつけていた。

「よぉ」

 

「ッ?!!」

 

冷気の煙が辺りに舞う中、ギンタはギロムの目の前にまで接近し、ギロムの顔面に鉄拳を叩き込んだ。ギロムは吹き飛び、氷山に激突する。

 

「ッッがぁああああ!!!糞がぁぁあああ!!!ビックアイスドアース!!!」

 

ギロムは怒声を上げ氷の瓦礫を吹き飛ばし、さらに巨大な氷塊を飛ばす。ギロムは以前ヴェストリの地底湖でギンタに敗れており、ギンタに対して強い怨みを募らせていた。しかし、その強い怨みはギロムの苛立ちを余計に募らせ、魔力に歪みを生じさせる。

 

「バージョン①!『ハンマーアーム』!!!」

 

ギンタはバッボを腕に装着したハンマーに変化、全ての氷を砕いてみせた。

 

「……ギロム、お前達はなんで仲間も殺せるんだ?」

 

「………はぁ?簡単なことじゃねぇかバァーーーカ!!!仲間だと思ってねぇからだよーーーっ!!あいつらは所詮使い捨ての道具なんだ!道具が壊れたらすてる!使えねぇ道具になんざ用があるか!?」

 

「……やっぱり、そういう答えか……

かわいそうなやつだよ、お前は。」

 

ギンタの答えに、ギロムは奥歯を噛み締める。

 

「かわいそうなのはてめぇさギンタァーーー!!!ネイチャーARM!!!『クレバス』!!!」

 

ギロムがARMを発動すると、ギンタの足元が突然ひび割れ、氷の大地は二つに裂け、文字通り巨大なクレバスが出現した。ギンタはそのまま氷の谷底へと落ちてゆき、轟音を立て氷の谷間は閉じられる。

 

「ひゃはははははは!!!ついにあの憎たらしいギンタをあの世へ…」

 

その時、閉ざされたクレバスが吹き飛び、中から巨大なゼリーのようなものに包まれたギンタが現れた。

 

「なっ…なんだありゃああああ!!!」

 

ギロムの顔が驚愕に染まる。

 

「バッボ バージョン⑤『クッションゼリー』!どんな重てぇ攻撃も、このゼリーは吸収しちまうのだ!」

 

ギンタの創造したバッボの五つ目の能力、それはあらゆる衝撃を吸収する防御形態だった。その弾力によって氷の壁の衝撃は吸収され、その反動でクレバスは砕け散ったのだ。まさに、柔を持って剛を制する力である。

 

「ち…ちくしょう!ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょぉぉぉぉおおおおおおお!!!ガーディアンARM『エゴラ』!!!」

 

「『ガーゴイル』!!!」

 

現れたのは、氷の身体を持つ巨人。対峙するのは、岩石の巨体を持つ悪魔。二体は互いに腕を組み合い、相手を粉砕しようと力を込める。

 

「いいよぉ!!そのままガーゴイルの腕へし折ってやりなぁ!!」

 

(ここは氷原!氷のガーディアン・エゴラは100%以上の力を出せる。負けるはずがねぇ!!)

「この大自然全てがお前の味方だ!!魔力MAX!!!行けエゴラァ!!!」

 

「わかるかみんな」

 

「ええ、ヴァーリン。魔力の通うスピードが半端じゃない!まだ…まだ上がってる!」

 

ヴァーリたちはギンタの想像以上の成長に冷や汗を流す。ガーゴイルは徐々にその力を増して行き、やがて、エゴラの腕の根元にビキビキと亀裂が走り、遂に両腕をもぎ取られ、粉々に粉砕された。

 

「なっ!!!?」

 

ガーゴイルは口に加えたリングを離し、バチバチとエネルギーが充填され、必殺技“ガーゴイルレイ”が放たれた。 リングによって増幅された光線は、エゴラの体をいとも容易く貫通し、エゴラはガラガラと氷の瓦礫となり崩れ落ちた。

 

「なっ!?……はっ!!」

 

気がつくと、ガーゴイルはギロムの目の前にまで迫っていた。

 

「次はお前だ、ギロム!!」

 

「わっ…悪かったってホント!反省してるって!ホントだって!悪かったって……」

 

「ぶっ飛んで反省しやがれ」

 

ガン!!!

 

 

ガーゴイルは腕を凪ぎ払い、それをまともに受けたギロムは空の彼方へと飛んでゆき、やがて見えなくなった。

「第五戦!!勝者、ギンタ!!!」

「ぷはー!スッキリしたーーーっ!」

 

ギンタは大きく息を吐き出し、緊張の糸が解れスッキリとした表情を浮かべる。

 

「よくも…よくもぉ!!よくもカワイイ弟にあんな事してくれたねェェェええええええ!!!ギンタァア!!!」

 

唯一の肉親であり、またストッパーでもあるギロムが倒されたことで、ラプンツェルは顔を怒りと憎悪に染めて怒声を上げる。

「六戦目もてめぇが出てこいギンタァ!!!ギロムの仇を討ってやるよォーーー!!!」

 

「上等だ。お前ら姉弟にはムカついてるからな」

ギンタは再び前に出ようとするが、後ろからヴァーリが肩に手を置き、ドロシーが手を前に出し制止する。

 

「駄目だギンタ。今の戦いでだいぶ精神力を使ったはずだ。」

 

「そうよギンタン。あのババアの相手は私に任せて。」

 

ドロシーはギンタににこりと微笑むと、ラプンツェルを挑発する。

 

「おーーーい!!わかったかババア!!ドロシーちゃんが相手してやるぞ!喜べーーーっ!!」

 

「ッッッ!!!…ババア、ババアって……そんなに私を絶頂させたいのかい……?

相手になってやるよォーーー!!!魔女!!!」

 

「その前に~…フフーン♪」

 

ドロシーは鼻歌を歌いながら指のARMを付け替えた。

 

「ドロシー、負けるなよ。」

 

「っ!うん!ヴァーリン♥」

ヴァーリのエールを受けて、ドロシーは上機嫌でスキップして行った。

 



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髪とボロ人形

先日、高校の卒業式がありました。終わって見ると、なんともあっさりしたもので、ちょっとセンチになっちゃったりもして……
そんな自分も来月には大学生。四年間のキャンパスライフ、夢に向かって楽しもうと思います!!

竜也「それで一月丸々更新サボった言い訳になるとでも?」

…………………





「まずは、軽ーくイッちゃうよォォ。『アイススパイク』!!!」

 

4thバトル最終戦、ドロシー対ラプンツェル。

 

チェスの兵隊13星座(ゾディアック)の一人であるラプンツェルはギロムと同様に氷のARMを操る。そしてここは氷のフィールド。冷気系の力は100%以上の力を発揮する。ドロシーはそんな迫りくる尖った氷の群れをひらりひらりとかわす。

 

「ババア、なめてんの?こんな攻撃じゃジャックも倒せないよ(笑)」

 

「私は美しい……」

 

「は?」

 

自身の挑発に対してラプンツェルは涼しい顔で語りだし、ドロシーは怪訝な顔をする。

 

「ブサイクなお前には理解できないようだから教えてやろう。周りをよく見てみな!!」

 

「ッ!?」

 

気づくと、ドロシーの周囲から先ほどの鋭い氷が、ドロシーを囲うように次々と発生していた。

 

「『スパイクサンド』!!!」

 

氷のトゲで覆われた氷の大地は、虎ばさみのように反り上がり、ドロシーを押し潰した。

 

「もう一度いってやるよ!私は美しい。お前はメス豚だ魔女!」

 

ラプンツェルは勝ち誇った様子で叫ぶ。あのようなものに押し潰されれば命はないだろう、そう思った瞬間、氷塊の中から竜巻が発生し、氷を粉々に吹き飛ばした。竜巻が消えると、銀の箒を構えたドロシーが現れる。

「い、今のは少し…驚いたよババア!『西風のホウキ(ゼピュロスブルーム)』!!!」

 

ドロシーが箒を振るうと、彼女の周りを風が吹き荒れる。ゼピュロスブルーム、ドロシーが空を飛ぶ際使われるそれは、風を操るネイチャーARMである。

 

「そうか、お前風使いかい!私の氷と…

どっちが強いかねぇ!!!」

 

ラプンツェルは再び氷のトゲの波をドロシーへ放つ。その量と速度は先ほどの比ではない。

 

ヒュンッ ゴガガガガガガガガ!!!

 

それに対し、ドロシーは箒を一振りすると、再び彼女の周りに竜巻が発生し、氷のトゲは強風に全て砕かれた。

 

「相殺。お前の氷は私に絶対当たらない。ざ~~んね~~んで~~した~~っ♡」

 

再びドロシーが箒を振るう。弾かれた風はかまいたちとなりラプンツェルの頬を掠める。

 

「あ……っ……」

 

あまりの速さに反応が遅れるラプンツェルだが、やがて頬の痛みに気づく。その左頬は真空の刃によって切り裂かれ、血が滴り落ちていた。

 

「わ、私の顔に傷……私の美しい顔にィィィィィイイッ!!

やってくれたねメス豚ぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

自身の顔を傷つけられたことに気づいたラプンツェルは目を血走らせ絶叫しARMを発動する。

 

「本気でぇ……絶頂(イカ)させてもらうよォォォォォォォォッ!!

ネイチャーARM『ヘアマスター』!!!」

 

ラプンツェルがARMを発動すると、その頭のドリルのような髪がほどけていき、意思をもつかのようにウネウネと動きだす。ラプンツェルはその髪を自身の周りに突き刺した。

 

「髪でバリアをはったつもり!そんなもん風で斬ってやるぞババア!ゼピュロス…」

 

ズン!!

 

ドロシーが箒を振るおうとした瞬間、硬質化したラプンツェルの髪が地表を砕き現れ、ドロシーの脇腹を刺し貫いた。ドロシーの口内に血が登ってくる。

 

「げほっ…!!」

(これは…硬質化した髪の毛!?地表を砕いて私の懐に入ってきた……しまった!!)

 

「風使いには一つ弱点がある。自分の周囲には台風の目!つまり、無風空間が存在する!その深手じゃあもう風も産み出せないだろうぅ!?えぇーーっ!?メス豚ぁ!!ヘアマスターーー!!!」

 

ラプンツェルは硬質化した髪を伸ばし、ドロシーをズタズタに切り裂いていく。そして頭や胸は狙わず向けるのは腕や脚ばかり。じわじわといたぶり殺すつもりなのだろう。

 

「もうやめろーーーッ!!ドロシーの負けだ!!」

 

「お生憎様だねぇ……私もギロムも女を殺すのが大好きなのさァ!!!」

 

ギンタの制止も気に止めず、ラプンツェルはサディスティックな笑みを浮かべる。そして、自分たち姉弟の生い立ちを語り始めた。

 

 

昔、ある所に父、母、姉、弟の4人家族がいた。

 

ある日、病気で父が死んだ。

 

それから母親は豹変した。姉弟に食事も与えず、毎日ムチで2人を殴った。

 

2人は心に大きな傷をおい、ある日、ついに眠っている母親を斧で殺した。

 

 

「どうだィィィィィィ!?泣ける話だろう!?その姉弟が私達さァーーー!!!」

 

ラプンツェルの絶叫が辺りに響く。夫の死により心を病んだのか、それとも元々そういった気質があったのか。ともかく、度重なる肉親からの虐待によって、二人は人を、とりわけ女を殺すことに快感を覚える殺人鬼へと変貌をとげたのだった。

 

「私は魔女を殺して次のバトルに出る。そして次はギンタァ!お前だァ!!」

 

 

「………泣ける話ねぇ……自分達だけが辛い思いをしてきたみたいな顔するなよ。

殺したくなくても……殺さなきゃいけない人間だっているんだ!!」

 

「……」

 

「……?ヴァーリ、さん?」

 

その時、白音はヴァーリが震える眼で奥歯を噛む姿を見た。今まで一度を見たことのない彼の表情に、白音はなにも声をかけることが出来なかった。

 

「ごほっ!……これはちょいとヤバいね……仕方ないや。こいつを使うか……」

 

ドロシーは口元の血を拭うと、バトル前に付け替えた人差し指のARMを掲げる。

 

「出てきな……ガーディアンARM『クレイジーキルト』!!!」

 

現れたのは小さな人形のような姿のガーディアンだった。継ぎ接ぎだらけの服にボサボサの髪、顔には大きさの違うボタンが3つとチャックのついた口、下半身は独楽か杭のような歪で不気味さを感じさせるその人形は、ドロシーの周りをふよふよと浮かんでいる。

すると、クレイジーキルトの口のチャックがゆっくりと開いた。

 

「お早うドロシーあたいだよ!!スクラップのクレイジーキルトさ!!今日のあたいは何をすればいいんだい!?なんてったって外に出たのは何日ぶり!?何ヵ月ぶり!?それとも何年ぶりかもしれないよねぇ!!絵の具箱のようなトコロにあたいをずーーーっとしまってさぁ!!」

 

チャックが空いた途端、その見た目とは裏腹に、堰の切れたようにダミ声の早口で捲し立てるクレイジーキルトに一同は唖然となる。

 

「き、傷にしみる……!こっちで大声出さないでくれる!?今日の獲物は…あれだよ。」

 

痛みに顔をひきつらせ、ドロシーはほどけた長い髪をくねらせるラプンツェルを指差した。

 

「ヒャーー!!またスゴイ奴がいるよ!!キラキラのゴテゴテ!!でしゃばりな羊飼い達の中にもあんな奴はいないよ!!」

 

「あのババア倒してくれる?」

 

「イヤよ!!あたいは今久々に自由なんだ!!なにをしてもかまわないの!!花をつんだり石ころを動かしたり小さな子供達と遊ぶ事だってしていいのさ!!んぅ!!?」

 

久々に出られたのだから自由にしたいと主張するクレイジーキルトは、ドロシーの脇の傷に気づく。傷口からは血が吹き出しドロシーの息遣いも荒い。見るからに致命傷である。

 

「ドロシー死にそうな傷じゃないのさ!?誰にやられたの!?そうか!!あいつね!?あいつなのね!?」

 

「う、うるさいARMだなぁ……」

 

「……ぜんぜん強そうに見えませんね…」

 

「……だが、ドロシーが戦闘前に付け替えたARMだ。なにもないはずはない」

 

クレイジーキルトの見た目と挙動に唖然とするギンタと白音に対して、ヴァーリはドロシーがクレイジーキルトを持ち出した理由を冷静に分析する。

 

「許せない!!許せないよ!!あたいのお友達にあんなことをして!!クレイジーキルトは怒っているのさ!!」

 

「しゃらくさいねぇーーー!!!『ヘアマスター』!!!」

 

クレイジーキルトは怒声を上げてラプンツェルに突進し、ラプンツェルは硬質化した髪をクレイジーキルトへ伸ばす。次々迫る髪の毛を、クレイジーキルトはその小さな身体で掻い潜る。

 

「あんたもクレイジーかい!?でも残念!!あたいはもっともっとクレイジーなのさ!!」

 

クレイジーキルトはそう言うと、ラプンツェルの周りをぐるぐると回りだす。

 

「…?なんだい…!?何をする気だい、この人形みたいなガーディアンは!?」

 

「唄え。クレイジーキルト!!!」

 

ドロシーの指示を受け、クレイジーキルトは唄い出す。それはまるで不協和音。ガラスを釘で引っ掻いたような、発泡スチロールを擦り合わせたかのような、否、それ以上の強烈な不快な音が頭の中を響き渡る。

 

 「井戸の中にはネズミが一匹 助けようにも助からない♪なぜって奴には羽がないからね 水の中にはあたいは入れない♪なぜってキルトにしみがつくからね♪」 

 

「なっ…なんだァ!!?この歌声は……!?頭がぐしゃぐしゃになるうぅぅぅぅぅ!!!」

「怪音波の歌を唄うガーディアンか…!ここから聞いても頭が痛い……!」

 

ヴァーリは耳を塞ぎながらも分析する。実質、それなりに離れた位置にいるギンタたちも耳を塞ぎ顔を歪ませている。猫耳を持つ白音は特に)。至近距離から聴かされているラプンツェルは相当なものだろう。脂汗が滝のように流れ、額には血管が浮かんでいる。

 

(こ…こんなところで……負けられないんだよォォォ!!ギロムの仇討ってやるんだ!!見ててよギロム、姉ちゃんががんばってるところ……!!)

 

ARMのコントロールもままならず、顔面蒼白になりながら尚耐えるラプンツェル。その脳裏には、愛しい弟の顔が浮かんでいた。

 

(ギロム……可愛いギロム……私のだった一人の肉親……)

 

バシュ!!!

 

次の瞬間、ラプンツェルはドロシーの振るったゼピュロスブルームの風の刃によって切り裂かれていた。

 

「あ……ッ」

(い、一瞬で……ガーディアンを消して、風に切り替えた……)

ラプンツェルは血を吐き、仰向けに倒れる。

 

(ギロ……ム………絶頂……出来なかったよォ……)

 

「ドロシーVSラプンツェル!!勝者、ドロシー!!」

 

「やったぜドロシーーーッ!!!」

 

「…………ん?」

 

ギンタが喜び声を上げる中、ヴァーリはドロシーがラプンツェルに歩み寄る様子に気づく。

 

「……ナイト級のお前なら知っているはずだ、答えてもらうよ……

”ディアナ“という女を知ってるな?」

 

その名を聞いた途端、ラプンツェルの顔が驚愕に染まる。

 

「な…なぜ………

 

 

 

 

 

 

クイーンの名を…………!?」

 

 

「……やっぱりね。」

 

「……ドロシー?」

 

ラプンツェルの反応を見たドロシーの顔はどこか悲しげなものだった。

 

「点と点が繋がった。私は一度魔女の国に一度戻らなければならない。」

 

 

 

 

 

所変わって薄暗い宮殿の中、桃色の髪をした女が、鏡に映るドロシーの姿をじっと見ていた。



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恐怖とフラストレーション

チェスの兵隊たちの襲撃を受けたカルデア。美しい風景は破壊され、家々は焼かれ、血を流した人々が横たわる。未だに続く惨劇。だが、唯一変わったことがあるとすると……

 

 

 

「ギャアアアアアアアア!!!」

 

「ひ、ヒャアアアアア!!!」

 

「た、助けてくれぇぇぇぇ!!!」

 

悲鳴を上げ逃げ惑っているのは襲って来たチェスの兵隊たちだということだ。先ほどまでの威勢は欠片もなく、その顔は皆恐怖に染まっていた。

 

「あらあら、先程までの威勢は何処へ行ったのかしら?ねぇ皆さん」

 

「おっっホホホホホ!!!ほらほらぁ、そうよあなたたちぃ。もっと元気に恐怖しなさいなぁぁぁぁ!」

滅びの魔力が、電流を纏った光の槍が、チェスの兵隊たちに襲いかかる。東の塔へ向かったチェスの兵隊たちは、たった二人によって蹂躙されていた。

 

「こ、こえええええ!!?もうどっちが悪者かわっかんねぇよあのひとたち!!」

 

チェスの兵隊たちを現在進行形で恐怖のどん底へ落とし入れているリアスと朱乃ちゃんを見て叫ぶイッセー。うん、それには激しく同意する。

 

「いや、実際リアスは試合に出れてなくて、朱乃ちゃんもあっさり終わってフラストレーション溜まってるかな~と思って出撃させたんだけど……ここまでとは……」

 

その様は、いち速く察知して怒り飛び出そうとしたイッセーが直ぐ様消火活動にまわったほどである。

 

雨のように降り注ぐ滅びの魔力は、鎧や障壁をいとも容易く貫通し、身体に風穴を空ける。

例え回避したとしても、足元には槍から流れる高圧電流が襲いかかる。

しかもこいつら、タチの悪いことに致命傷にならないギリギリのところで長々といたぶってやがる。

時折、破れかぶれになって反撃に出て、かすり傷程度のダメージを負わす者もいるが、その傷は後方に控えたアーシアが直ぐ様回復させてしまった。もうほとんど悪夢だろこれ。

 

「おーい、お前らー!あんまやり過ぎんなよー!後で尋問するんだからなぁーー!」

 

まぁ、例え生き残ったとしても、後に待ってるのは朱乃ちゃんの拷問フルコースなんだけどな。ま、相手が悪かったってこったな。

さて、そんじゃボチボチ終わらせっか。

 

「ちょっと行ってくる、こっちの火ぃ全部消しとけよイッセー!」

 

「ふぇーい」

ごぼごぼと炎を吸い込むイッセーを尻目に、俺は広場の中央へと飛んだ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「『ドラゴントライブ』のヴァーリだ!首を取って名を上げろーー!」

 

チェスの兵隊数十人がヴァーリへと躍りかかる。

 

「『ツンドラブレス』」

 

それに対し、ヴァーリが放った吹雪によってチェスの兵隊達は全員頭を残して氷付けとなり、その余波によって辺りに上がっていた火の手も全て消し止められた。

 

「…『13トーテムポール・ロッドver』」

ヴァーリはロッド状に変化させた13トーテムポールを手に、徐々ににチェスの兵隊の一人へ歩む。

 

「……なあ、知っているか?急激に冷凍されたものは著しく壊れ安くなる。例えば……」

 

ヴァーリはチェスの兵隊の目の前にロッドを突きつける。

「こんな棒で殴られただけで粉々に砕け散る」

 

ヴァーリはそう言うと、突き出したロッドを頭上に振り上げた。

「ひ、ひぃい!!たっ助け、助けてくれ!!命だけは……!!」

 

「今までそうやって命乞いをした相手を、お前は一同でも助けたことはあったか?」

 

ヴァーリはそう言って、底冷えするような鋭い眼差しでロッドを振り下ろした。

 

「ひ、ひゃああああああ!!!」

 

『てめぇら全員ブッ殺してやるよォオオオ!!ギャハハハハハ!!』

 

「ーーーッッ!!!?」

その時、ヴァーリの脳裏にチェスの兵隊ナイト、ラプンツェルの笑い声が浮かび上がった。ヴァーリはロッドを叩き付ける寸前に手を止め、チェスの兵隊は泡を吹いて気絶していた。

『っ!?ヴァーリ、後ろだ!』

 

「…なっ!?」

 

突如、ヴァーリの脳内に生まれた時から共に歩み、運命を共にすると誓い合った相棒、白龍皇アルビオンの声が響く。振り替えると、アサシンのような風貌をしたチェスの兵隊が小刀を振りかぶり、目の前に迫っていた。

恐らく隠密系のARMを使っての奇襲。いつもなら容易く看破出来たであろう()()を、この時のヴァーリは気づくことが出来なかった。

「はい残念」

 

ドガン!!!

 

「ぶげぁ!!?」

 

その時、突如現れた竜也のニードロップがアサシンチェス(仮)に炸裂した。体重を乗せた膝の一撃にアサシンチェスは痙攣した後意識を失った。

 

「兄…さん……」

 

「……なにやってんだヴァーリ、こんなお粗末な気配断絶、読み取るのは訳ないだろ」

 

竜也のいつにない咎める険しい目と口調に、ヴァーリは目を伏せる。

 

「……すまない」

 

『竜也、ヴァーリは……』

 

「弁解は後でいい。今はとっとと終わらせちまおうか。」

 

竜也はそう言うと、龍の翼を出して上空に飛び上がり、存在するチェスの兵隊に、電気の通り道、『先駆放電(ステップストリーダ)』を作り出す。秒速200㎞/s、約マッハ600のそれは、人間が反応出来る速度を優に越える。

 

「生かさず、かつ殺さず……」

 

そして、そこから放たれるのは、秒速一万㎞/s、マッハ三万の電撃。『帰還電撃(リターンストローク)』。

 

「並列…『エレキチョップ』!!!」

 

竜也が手刀を振り下ろすと、通常よりも()()()()()()電撃の刃が、その場にいた()()()()()()()()に降り注いだ。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

カルデア、西の塔近辺。単身そこへ向かったギンタは、チェスの兵隊ルーク級を三十人以上を倒す。

しかし、突如ギンタの前に現れたファントム。ギンタはファントムに突っ込むも、蓄積された疲労、そして興奮して頭に血が登り冷静な判断が下せず、遂に魔力切れを起こしてしまい、ファントムの放った一撃によって倒れふした。

 

「よっしゃあーーッ!!!」

 

「殺っちまえ!!!」

 

「まて。」

 

ギンタが倒れたのを見て、それまで傍観していたチェスの兵隊達がギンタへ躍りかかろうとするのを、ファントムの一言が制止する。ファントムが脇腹を拭うと、手にはギンタによって切りつけられた傷から滲んだ血が滴っていた。

 

「(満身創痍の中でボクに傷を付けた……)初めて会った頃とは全然違う。強くなったね、ギンタ。」

 

 

 

 

カッッ!!ドガアアアアアン!!!

 

『ギャアアアアアアアアアア!!!!??』

 

「なっ!?グアァァァァァァァ!!!」

 

その時、竜也の放った雷の刃がファントム含むチェスの兵隊全員に降り注いだ。

 

「な、がぁ……こ、れは……」

 

久しく感じることのなかった激しい()()。ファントムが辺りを見ると、そこにいたチェスの兵隊達は皆、プスプスと煙を立てながら倒れ付していた。辺りに肉の焼ける匂いが漂う。

 

次の瞬間、ダンッという音と共に、上空を漂っていた竜也が、ギンタとファントムの間に、ファントムを遮る形で降り立った。

 

「………失せろ、次は殺す」

 

ゾワッッ!!!

 

「ーーーッッ!!?!?(……震えている?ボクが?まさか、バカな!?ボクが…ボクがこいつに恐怖しているとでも言うのか!!!?)」

 

恐怖、それはこの世に生を受けた生命が、自身の命を守るために等しく持つ感情。すなわち、死の警告。

ゾンビタトゥをその身に刻み、不死の体を得てから久しく感じることのなかった()()に、ファントムは激しく動揺した。

 

「……くっ!!」

 

ファントムは急遽アンダータを発動、その場を離脱した。

 

(ライモン・タツヤ……ヤツだけは…ヤツだけは絶対に殺さなくては……!!)

 

今までにない鬼気迫った表情を浮かべるファントム。自身を急かすその感情を、プライドを傷つけられたことに対する()()だと決めつけた彼は、拠点であるレスターヴァ城へと移転した。

 

「………ふう、さて…」

 

ファントムが去ったことを確認した竜也は、其処ら中に転がるチェスの兵隊を縛り上げた後、ギンタとバッボを拾い上げる。

「うわっ重っ!?マジで重いなバッボ。(やっぱ、こいつが選ばれた所有者ってことなのかね、ギンタ……)」

 

竜也はギンタを背負い、バッボをズルズルと引きずりながらカルデア宮殿へと向かう。

 

「アダダダダダ!!?もっと丁寧に扱わんかバカタレ!!」

 

「うるせぇよ。何でこんな重いんだよあんた……」

 

文句を言うバッボに文句で返しながら、竜也はギンタに目を向ける。

「気張れよギンタ、お前は着実に強くなってる。お前がファントムを倒すんだ」

 

(所詮、この世界において俺たちの存在はイレギュラー。二つの世界を跨いだ宿命、それをこいつは果たさねばならない。

だが、今回の件でファントムは確実に俺を危険分子と見なした。一体どんな手を使ってくるか……)

 

いくつかの思いを巡らせながらも、駆け寄る仲間達の姿を見て、竜也はこの世界における自身の役割について再び見つめ直した。

 

「だからっ、引きずるなっと、言っておるだろうがぁぁぁぁ!!!」

 

「アダダダダダ!!?噛むな!噛むなっての!」




今回、竜也はその気になれば皆殺しに出来たのですが、情報収集と楽に死なすのは癪だという考えから半殺しですませました。

次回もよろしくお願いいたします


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幻想と龍

チェスの兵隊を退けた俺たち龍の紡ぐ絆とメルの連合軍。民家は半壊し、決して少なくない死傷者が出たが、不幸中の幸い何とか被害を食い止めることができた。

ちなみに、ここカルデアにおいても神器とARMを駆使して献身的な治療を行ったアーシアは、またもや民衆から『聖女様』と崇められていた。……この世界の宗教概念は知らんが、その内マジで祭り上げられるんじゃなかろうか。アーシア教とかで。

 

と、まあ…それはさて置き、カルデア宮殿へ戻った俺たちは、此度の礼として宝物庫に保管されていたARMを幾つか貰い、目を覚ましたギンタと共に長老からARMの概念について学んだ。

 

そもそも、特殊な能力を持つARMは、カルデアの魔法使い達が特別な彫金を施したアクセサリーに、自身の魔法をダウンロードしたものだという。その中でも、『バッボ』とはカルデアの歴代長老の意識と魔力をダウンロードした、「人の意識をもダウンロード出来る」唯一のARMなのだと言う。

 

(ん、まてよ。魔法をアクセにダウンロードしたのがARM……つうことは……)

「ワシって……ここの長老じゃったのか?」

 

「うむ、そうじゃ」

「じゃあ偉いんじゃな!?」

 

「今はただのARM、偉くも何ともないわ」

「……………」シクシクシク

 

「問題は十年前のことじゃった」

 

泣いているバッボを無視して長老は語る。かつてカルデアには世界中の人間の悪意を封じ込めた禍々しい『オーブ』が封印されていた。しかし、 ディアナはバッボにオーブに封じられていた『悪意』をダウンロードし、カルデアを捨てたのだ。6年前、ファントムが使っていたのは、その悪意がダウンロードされたバッボらしい。

 

「今は()()は入ってないようじゃ。()()()()が入っているように見える。お主、半分の人格の記憶を失っておるな?」

 

「半分の人格?」

 

「どれ、消えている記憶が戻るよう魔法をかけて見よう。」

 

長老がバッボに手をかざすと、バッボは一瞬光に包まれる。光が止むと、バッボはゆっくりとギンタへ振り向いた。

「………バッボ?」

 

ギンタに声をかけられたバッボ。その時、彼?の表情が驚愕に変わる。まるで、久しく会ってなかった相手に再開したような……

 

「お前……ギンタ…か?」

 

「当たり前だろ!何言ってんだバカっ!」

 

「……はっ、そ、そうだな!」

 

ギンタのキレ気味の指摘にいつも通りひ戻ったバッボ。恐らく、今出てきたのが長老の言ったバッボの()()()()()人格。たしか、これが最終局面の結構な伏線だった気がするんだけど……あああ!何だっけ!?

 

と、少々気になることもあったが、復興はカルデアの住人たちに任せ、俺たちはレギンレイヴ城に帰還することにしたのだが……

 

「悪ぃなお前ら、俺しばらくここに残るわ」

 

『『『はいぃ!!?』』』

 

俺の申し出に驚愕する一同。ま、そうなるわな

 

「ちょっ!何言ってんだよアニキィ!?」

 

「イキナリどうしたってんだよ!?」

 

「クッフフフフ……なに、い~いこと思いついたのさぁ……」ニタァ

 

「「「ッ!?」」」ビクッ!

 

((((あっまた録でもないこと考えてるな、この人))))

 

「おい、またなんか失礼なこと考えてるだろお前ら……心配すんな、二、三日で戻る。それまではお前らに任せるさ」

 

(いや、そういうことじゃねぇんだよ……)

 

(棒魔法使いの国で何やらかす気だこの人……)

 

「あ、そだ。それとドロシー」

「……私?」

俺はドロシーに近づき、回りに聞こえないように細工して(こいつら普通の人間より聴覚いいからな)、彼女に耳打ちする。

「……今晩あたり、ヴァーリの相手をしてやってくれ。あいつの様子がおかしかったの、気づいてるだろ?」

 

ドロシーは一瞬目を見開いたが、俺の目を見て、小さくうなずいた。

 

「あ、ついでに白音にもこの事を伝えたおいてくれ。彼女もまた、あいつには必要だ。」

 

「……………」

 

「なッ!?」

 

「……………………」コクリ

 

白音の名前を出した途端、露骨に嫌な顔をしたが、やや強めに念を押したら渋々うなずいた。

 

こうして、皆はレギンレイヴ城へと戻り、俺は一人カルデアへと残ったのだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「………さて」

 

仲間達を見送った後、俺は長老の方へ振り返った。

「長老、あんたら気づいてるんだろ?俺やヴァーリ、イッセーの中に()()()()()()。」

 

「……ほう、気づいていたのか」

長老は特に動じた様子もなく応える。食えないじいさんだことで……

 

「まあな。あんたらの俺たちに対する態度、どこかよそよそしかった。『よそ者だから』…って言っちまえばそれまでだが、あんたらの目。未知に対する『好奇』や『恐怖』とはまた違う、絶対的強者、または、それこそ王にでも出会ったかのような『畏怖』と『崇拝』の念を感じた。」

 

「………ふむ、流石の洞察力じゃな。龍をその身に宿す者よ。」

 

このじいさん、やっぱり気づいてやがったな。

 

「勘違いしてもらっちゃ困るが、別にそれについてウダウダ文句を垂れるつもりはない。ただ、あんたらのその反応の理由が知りたい。」

 

「うむ、それは当然じゃろう。ドロシーほどの者になれば影響はないじゃろうが、お主らのその清らかな魔力。それは幻想種とされる竜に他ならない。」

 

『はっ、邪龍と呼ばれた我が清らかか……』

『純粋なって意味じゃねぇの?多分……』

パット見、大魔王最終形態みたいなこいつが清らか……似合わねぇ……

 

「竜とは、我ら魔法使いに取って格上の存在。それこそ、お主の言ったように“王”に等しい。カルデアの民も、それを無意識の内に感じ取っていたのだろう。」

 

なるほどね。魔力を専門的に扱うからこそ、幻想種たる竜に畏怖と崇拝の念を抱くってことね。俺の中の()()()なら、なおさらか。

 

「それで、わざわざその事を聞くために残ったのかの?」

「ああ、いや。それを聞きたかったのは本当だが、要件はまた別にある。」

俺は長老にそつ告げると、意識の中に潜った。

『じゃ、頼むぜ?』

『了解した、運転を変わろう。』

『いや、どこで覚えたんなセリフ』

 

意識の中でそんな掛け合いをしながらも、俺は身体の主導権を相方に譲り渡す。

 

「お、おぉぉぉォォォオオオ……!」

 

バキバキと音を立てながら変わって行く俺の身体。体長は何十倍にも脹れ上がり、全身は鈍色の鱗に覆われ、翼と尾が突き出て、伸びた首は3つに別れた。

「お、おぉ……お主…いや、貴方様は……」

 

「…我は千の魔法を司りし魔龍、アジ・ダハーカ。人は我を魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンドドラゴン)と呼ぶ。我が(ともがら)の呼び掛けに応じ、この場に馳せ参じた。」

 

さて、楽しい時間の始まりだ。





なんやかんやで一年半投稿してますが、まだぜんぜんつたないです。感想、誤字報告などあったら指摘して下さい。次回もよろしくお願いします


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ニンゲンとアクマ

今回、ある意味結構なキャラ崩壊があります。こんなのぜんぜん違う!と、思った人は申し訳ありません。






「おお!ギンタたちが帰って来たぞ!」

カルデアからレギンレイヴ城へ帰還したギンタたち。それを見たレギンレイヴ城の兵士たちと、無事?修行を終えた龍の紡ぐ絆の面々が、どこか慌てた様子で彼らに走り寄る。

 

「あれ、だーりんはどうしたにゃ?」

 

駆け寄って来たメンバーの一人、黒歌が竜也の姿がないことに気づいた。

 

「ああ、アニキはカルデアに残ったよ」

 

『『『ええっ!!?』』』

 

イッセーの言葉に驚愕する一同。

 

「ど、どういうことなのですか!?」

 

「一体向こうでなにが…!?」

 

錯乱した龍の紡ぐ絆の面々がイッセーに詰め寄る。ウォーゲームも後半戦に差し掛かり、これから戦いがさらに激化しようという時に突然のリーダーの離脱。動揺するのは当然だった。

 

「………いつもの()()だよ」

 

『『『ああ………』』』

 

イッセーのその一言で、龍の紡ぐ絆の面々は全てを察したような反応をする。

 

「ええ!?それで伝わるのかよ!?」

 

龍の紡ぐ絆メンバーたちの一瞬で納得したような反応に驚愕するギンタ。それに対し、一瞬にいたアランを初め、龍の紡ぐ絆の面々はかなり疲れたような顔をうかべる。

 

「ああ、あいつの突然の思いつきは昔からだったからなぁ……」

 

「付き合わされる方も大変ですよ」

「まったくもって……」

 

『『『はぁ………』』』

 

「………なんか、みんな苦労してるんだなぁ」

 

「ええ、そりゃあもう……っとそれどころじゃない!大変なんだ!」

 

「先ほど、チェスの兵隊を名乗る男が……」

 

「何だって!?」

 

「チェスの兵隊が!?」

 

「……向こうで子どもたちと遊んどるのです。」

 

ズテッ

 

ズッコケるギンタたち。そんなバカなと指を指す方を見ると、灰色のローブを被った長身の男が、確かに子供達と遊んでいた。

 

「なっ、何者だおめーーーっ!!?」

 

「ん?」

 

ギンタに呼び掛けられ振り向くチェスの兵隊を名乗る長身の男。振り向いたその顔には、舌を出したどくろの仮面を被っていた。

「やっと帰って来たかぁ。待ちくたびれたよ~。ま、子供達と遊んでたから楽しかったけどね。

あ、別に襲いに来た訳じゃないよ?伝えたいことがあってさ、ナナシってどの人?」

 

見た目とは裏腹に飄々とした言動をするその男は、ナナシとは誰のことかと尋ねる。

 

「自分や。何かあるの?」

「君に会いたがってる男がいるんだよ。次のバトルに必ず出て来て欲しいってさ。

そして俺はゾディアックの一人、『アッシュ』。俺が戦いたいのは、ギンタ君。君さ。」

 

そう言って、アッシュと名乗った男は、ギンタを指差した。

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

レスターヴァ城、城内。かつては王の謁見の間であったそこは、 現在はチェスの兵隊【クイーン】、ディアナが占領し、蝋燭の炎が揺らぎ、中央に魔水晶が設置された、彼女の魔術工房へと改造されていた。

 

 

「只今帰還しました、クイーン。」

 

そこで水晶を覗き込んでいたディアナの元に、彼女の命でカルデアへ侵攻していたファントムが帰還してきた。

 

「そう。私の故郷はどうだったかしら?」

 

「とてもステキだったと思います。ボクたちが、行くまでは……」

「収穫は?」

 

「ありません。それどころか手酷くやられました。」

そう言われて、ディアナはゾンビタトゥの効力ですでに回復しているが、ファントムの身体に所々焼け焦げた跡があることに気づいた。

 

「ライモンタツヤ、かしら?」

 

「はい、連れて行ったチェスは全滅。ボク自身も殺されるかと思いました。」

殺されるかと思った。ファントムの言った言葉がディアナには信じられなかった。ライモンタツヤ、門番ピエロの誤作動によって大量に呼び出された異世界人のリーダー格。彼が規格外の強さを持つことは報告されていた。

しかし、ファントムの“殺されるかと思った”という言葉、それはつまり、相手がどれだけ強いということではなく、自分がただ一方的に狩られる立場なのだと理解したと言うことだ。

 

「不死の貴方が殺される?笑えない冗談ね」

 

「冗談ではありません。本気で殺されるかと思いました。……彼はボクが絶対に殺しますよ。」

 

ファントムの嘘偽りない言葉と決意の固まったような瞳。それを見て、ディアナはそれが真実なのだということを理解した。それと同時に、彼女の中に渦巻くどす黒い欲望が刺激された。ディアナは水晶に竜也の顔を写す。

ライモンタツヤ、自身の最高傑作と言えるファントムに死の恐怖を与えた男。この男を手に入れることが出来たなら、自身の野望を現実にすることが出来る。

 

(ライモンタツヤ……欲しい、欲しい!貴方が欲しい!!)

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

同時刻、レスターヴァ城。現在、城はレスターヴァ姫の計らいで、ウォーゲームで戦う戦士たちに休息の場として解放されていた。

そしてそこの一室、月の光の差すバルコニーで、ヴァーリは一人夜空を眺めていた。

 

「ヴァ~リん♪」

 

「……ドロシー、か」

 

笑顔を浮かべヴァーリに声をかけるドロシー。それに対し、ヴァーリは心ここにあらずのような返事をする。

 

「………どうしたの、ヴァーリん?4thバトルが終わった辺りから、何だか考えて込んでるみたいだけど……」

 

そんな彼の様子を見て、ドロシーは

 

「……4thバトルで戦ったナイトのラプンツェル。あいつは……俺に似てるんだ…」

 

ヴァーリの言葉にドロシーは首を傾げる。自身の享楽のためなら仲間すら平気で殺すヒステリックで醜悪なクソババァ、それが彼女のラプンツェルに対する印象だった。とてもヴァーリとは似てもにつかない。

 

「……何言ってるのよヴァーリん。あんなババァとヴァーリんが似てる訳ないじゃん」

 

「いや、違う。見た目的な意味ではなく……」

 

ヴァーリはそこから先を言うべきかと言い淀んだが、意を決して言うことにした。

 

「………ドロシー、俺は……俺は人間じゃないんだよ」

 

「ヴァーリん、だから何言って……!?」

 

そう言い掛けた時、ドロシーは驚愕し息を飲む。ヴァーリの背から、以前見た三日月が列なったような美しい翼ではなく、黒いコウモリのような四対の翼が生えていたのだ。

 

「……これが俺の正体だ。俺は……人間と悪魔の混血なんだよ」

 

「あく……ま…?」

 

ヴァーリはドロシーに自身の生い立ちを語り出す。自身がルシファーという悪魔の中でも最上位にある血筋の悪魔と人間の間に生まれたこと。

半分人間であるがゆえに、人間のみが生まれた際に稀に授かる神の創った武器、『神器』を持って生まれたこと。

さらに、ヴァーリが得たのは神器の中でも、神すら滅ぼす力を持つ神器、『滅神器』の一つ『白龍皇の翼』であったこと。

……そして、その持って生まれた力の強さを恐れた父親から、虐待を受けていたことを。

 

「あの時は、毎日が地獄だった。父親には毎日殴られ、憎悪の言葉を吐きかけられ、祖父はそれを見て大笑いしてやがったのさ。

そしてある日、俺は決死の思いでそこから逃げた。宛もなくさ迷い、このまま野垂れ死にするかと思った時、助けてくれたのが……」

 

「…タツヤ、なのね?」

 

ヴァーリは静かに頷く。それを見て、ドロシーは彼の家族、特に竜也に対する深い愛情に納得した。そして、顔も知らない彼の父親と祖父に激しい怒りを感じた。

 

「あの時、ラプンツェルの話を聞いて思ったんだ。もし、兄さんと出会わなかったら、俺もあいつと同じになっていたんじゃないかって。あいつのような、狂気と悪意に飲まれた殺人鬼に…」

 

「違う!!そんな事絶対にない!!だって、ヴァーリん優しいじゃない!」

 

ドロシーはヴァーリの言葉を真っ向から否定する。自分はヴァーリと出会い、行動を共にする中で、彼の人となりを知った。一見、クールで冷淡な印象を与えるが、その中に揺らぐことのない強固な意識をもち、他人を思いやる優しい心がある。そんな彼だからこそ、自分は惹かれたのだ。

 

「……違う、違うんだドロシー。元々吉兆はあったんだ。」

 

それに対し、ヴァーリは言う。自分には以前から片鱗があったのだと。

 

「今までも、時々あったんだ。肉親に対する増悪が、そして、その肉親から受け継いでしまった残虐性が、顔を出すことが。

その時は、兄さん、父さん、母さん、そして、イッセー、朱乃ちゃん、黒姉さん。みんながいる日常が、そんな黒い感情を払ってくれていた。……けど、消え去ってはいなかった。その黒い感情は俺の心の中に燻り続けていたんだ。……そして、そいつが、俺の心を掻き乱すんだよっ!!!」

 

自身の胸を握りしめ、声を荒げるヴァーリ。そんな彼の見たことのない追い詰められたような姿に、ドロシーは押し黙る。

 

「声がするんだ。奴らを決して許すなと、この手で息の根を止めろと。……だが、もし衝動のままに()()をすれば、俺はあいつと同じになってしまう。そうなればもう、俺は兄さんと…みんなと共にいられない。それだけは絶対に嫌だ。」

 

瞳からボロボロと涙がこぼれる。自分でも情けなく思った。だが、心から溢れ出た激情を、ヴァーリは抑えることが出来なかった。

 

「もう一人になりたくない。やっと手に入れた光を失いたくない。だが、俺の中の憎悪は、蓄積され、脹れ上がり、俺の心を蝕んでいく。憎しみを抱えたままに生きるのは辛い。だがみんなを失いたくない。俺は……俺は……俺はぁ!!」

 

ヴァーリは声を荒げ、遂に膝から崩れ落ちる。溢れる涙は止まる事なく、石造りの廊下が抉れるほどに力んだ爪には血が滲む。

 

「どうしたら…いいんだ……」

 

それは、ヴァーリが決死に絞り出した言葉だった。

 

 

 

 

「……そういうことでしたか」

 

突然現れた第三者の声。振り向くと、物陰から現れたのは白音だった。

 

「……白音、聞いていたのか」

 

「はい、竜也兄様からの伝言で……ドロシーさんから」

 

「ホントは呼びたくなかったんだけどね~。タツヤがどうしてもって言うから。」

 

「……兄さんには全てお見通しだったって訳か。ははっ、かなわないなぁ……」

 

そう言ってヴァーリは乾いた笑いを浮かべる。兄の手を煩わせるのは昔から変わらないのかと。

 

「そんな事より」

「そうね」

 

ドロシーと白音の二人は、そう言って互いに頷き会い、ヴァーリの目の前まで歩み寄る。

 

「ヴァーリさん」「ヴァーリん」

 

「「歯ぁ食いしばんな/って下さい」」

 

「…………は?」

 

バッチィィィィィィン!!!

 

「ハムフラビ!!?」

 

突如、二人による強烈なビンタがヴァーリに炸裂する。ヴァーリはキリモミしながら綺麗な曲線を描いて吹っ飛んだ。

 

「い、イキナリ何を……」

 

「タツヤに言われたのよ。ヴァーリんが情けないこと言ってたら渇入れてやれって。」

 

「渇…ってかこれトドメ……」

 

「「ヴァーリん/さん!!!!」」

 

「はっはい!ムギュッ!?」

 

突然二人に大声で名前を呼ばれ、条件反射的に起立したヴァーリは、二人に両側から顔を押さえつけられる。

 

「ヴァーリさん。私は、貴方のことが好きです。いつも冷静で、だけどいっしょにいると暖かくて。賢くて、なのにたまにおバカなことして。そんなあなたが大好きです。」

 

「…………え?」

 

「ヴァーリん。私も、あなたのことが好き。カッコいいところも、賢いところも、優しいところも、ちょっぴりオチャメだったりナィーブだったりするところも。全部、全部ひっくるめて、大・大・大好き!」

二人の突然の告白に、ヴァーリは呆然とする。その衝撃は、それまで彼の中に渦巻いていた感情が一気に吹き飛んで頭が真っ白になったほどである。

 

「だからね、ヴァーリん。私、ずっとヴァーリんといっしょにいるよ?

悲しいときも、嬉しいときも、ヴァーリんがどんな風になったって、ずっとずっと一緒にいてあげる!

ホントは私一人だけでいいけど、ヴァーリんさびしんぼちゃんだから特別に白音も一緒にいさせてあげるよ。」

 

「ドロシー……」

 

「……いちいち癪に触る言い方ですが、私も同じです。

例えどんな風に変わっても、ヴァーリさんはヴァーリさんです。竜也兄様も、黒歌姉様も、イッセーさんも、リアス部長も、みんなそう言うと思います。

だって、みんなヴァーリさんのことが大好きなんですから。

……だからヴァーリさん、これから私たちと、みんなと、いっぱいいっぱい思い出を作りましょう。辛い過去なんか気にならないくらいに、沢山の楽しい思い出を。」

「白音ぇ……俺は…俺は……う、うぁあ゛ぁ…‼」

 

ヴァーリは二人を抱き締め、顔を埋めて再び涙を流した。しかし、今度のそれは苦しみから流れるものではなかった。

 

「うん…‼うん…‼…あり……が、とう……」

 

「…もうっ、ヴァーリんったら」

「…まったく、しょうがないヴァーリさんです」

そう言って、二人もまたヴァーリを抱き締め返したのだった。




感想など貰えたら幸いです。次回もよろしくお願いします。


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お菓子と魔笛

宣誓!私は、7月までに新章に突入することを誓います!!

「いったな?」

「言ったわね?」

「言ったぞ」

「もしその言葉違ったら……」

『『『フフフ……』』』

……ッッ!!?!?……やってやる、やぁってやるぞぉおおおおお!!!!


 

「おはようございます‼昨日はよく眠れましたか?」

 

色々な思いの交差した長い夜は開け、ウォーゲーム6thバトルの時がやって来た。メルと龍の紡ぐ絆の連合軍は、城の会場へと終結していた。

 

「あんまり~~」

 

「一睡もしてねぇよ。文句あるか?」

 

「ずーっと女の子と遊んどった」

 

「ヴァーリ、なんか目の下に隈出来てるぞ?寝不足?」

 

「ん、ああ、いや。これは…」

 

「んもう!ヴァーりんったら昨日は離してくれなかったんだものぉ♥」

 

「ヴァーリさんは自分の中に渦巻く激情を抑えることなく、私達を押さえつけて…」

 

「誤解を招く言い方すなぁ!!!」

 

 

(こいつら…… )

 

メルの面々の気の抜けた態度にポズンは内心イラつくも、手に握られた2つのダイスを見せる。

 

「今度から私、ポズン自らダイスを振ります。よろしくお願いします。」

 

「イカサマしたらくびり殺すわよ?」

 

ビクッ‼「や、やだなーー。そんな事しませんよぉ~」アセアセ

 

(しようとしてやがったな……)

 

リアスの鋭い目付きで放たれた脅しにポズンはしどろもどろに答える。

 

「で、では!!」

 

気を取り直して、ポズンが投げたダイスの結果は、5vs5の砂漠ステージ。だが、現れたチェスの兵隊は、フリフリのドレスを着た小太りの女と、トンガリ帽子を被った道化師のような風貌をした男の二人だけだった。

 

「二人しかいねーじゃねぇかコロヤロー!!」

「どういうことだてめえーー!!」

「ギャース!!そ、そんなはずは……!!」

 

ポズンを二人して踏みまくるイッセーとギンタ。

 

「た、大変だみんな!」

 

「「何だよ!!?」」

 

「昨日のやつがまた子供達とあそんどる」

 

ズテッ!!

 

再びスッ転ぶギンタ。今回はイッセーも一緒にズッコケていた。

 

「ごめんよぉー。……さて、これで3人。あとは……そこのキャンディスで、4人目ね。」

 

またもや子供達と遊んでいたチェスの兵隊【ナイト】、アッシュが飄々とした調子で指差した先には、際どいボンテージファッションを着て白塗りの仮面を被った長身の女だった。

 

「もう一人は最後になったら出てくるそうよ。ナナシと縁のある人間らしいわ。」

 

「さて、それではそちらのメンバーを選択して……おや、そちらのリーダーであるタツヤ様はいかがなさいました?」

「兄さんは所用で外れている。兄さんが不在の間は、代理としてギンタがリーダーということになる。」

 

ヴァーリの言葉を聞いてポズンは腕を組み唸る。

 

「ふむ…困りましたねぇ。ウォーゲームの途中にリーダーの不在は想定外の事態です。考えようによっては棄権と見なすことも……」

 

ウォーゲームも後半戦に差し掛かろうというところにリーダーである竜也の不在。そしてひょっとすると棄権もあり得るということに、集まった民衆はざわつく。

 

「お、おいどういうことだよ!?」

「俺が知るか!!」

「タツヤはどこに行ったんだ!?」

 

「ど、どうしよう失格かもって!」

「どうなるっすかぁ!?」

「ぁんのアホンダラぁ…」

「やれやれ、」

 

「ぁんのバカ兄ぃ…こういう展開は予想できただろうが…!」

「竜也のマイペースにも困ったものね」

「けどどうするよ?このままじゃまじで失格だぜ?」

「うふふ♪いざとなったらこのまま全面戦争に……」

「おい、大和撫子」

 

 

「いいんじゃないかな」

 

突如聞こえたその声に、会場はシィンと静まりかえる。民衆の内の一人が城の屋根を指差すと、その先にはファントムの姿があった。

 

「ファントム……!!」

 

「せっかくここまで登りつめたんだ。特別に許可しようじゃないか。もちろん、仮とは言え彼が帰る前にギンタが負ければその時点でゲームオーバーってことになるけど……いいのかな?」

 

「当ったり前だ!!負けるもんか!!」

 

ギンタの自信に溢れる言葉に、メルと龍の紡ぐ絆のメンバーは満足の笑みを浮かべる。それはファントムも同様だった。

 

「ははっ、わかったよ。ここからはもうルークも半端なビショップも出さない。そこにいる二人はね、ビショップの中でも最も強い三人の内の二人なのさ。そしてナイトが三人。全員ラプンツェルなんかより強いからがんばってね♪」

 

ラプンツェルよりも強い。ファントムの言葉にメルと龍の紡ぐ絆のメンバー達に緊張が走る。

 

「ファントム!」

 

すると、キャンディスが突然ファントムの名を呼び仮面を外す。仮面の下の彼女の素顔は、切り傷の入った右目に眼帯をした小綺麗な顔だった。

 

「あ、あたしが勝つとこ見ててね!わ、私、がんばるからね!」

 

「うん。がんばってね、キャンディス。」

 

「キャーーッ!!がんばるっ!がんばる!!」

 

キャンディスの宣言に笑みを浮かべて答えるファントム。それに対しキャンディスは、恋する乙女の表情を浮かべてぴょんぴょんと跳ね体全体で喜びを表す。

 

「………」

 

「…………ッ!!」

その時、朱乃とキャンディスの視線が会い、二人に電流が走った。

 

「……皆さん、彼女とは私がやりますわ」

 

「え、朱乃ちゃんなして?」

 

朱乃の突然の言葉に困惑の表情を浮かべるイッセー。

 

「……感じましたの。シンパシー♥」ニコォ♥

 

『『『あ、はい。どうぞ』』』

 

それはそれはイイ笑顔だった。

 

こうして今回の連合軍からのメンバーは、朱乃に加え張り切るギンタ、指名を受けたナナシ、他を抑えやる気満々のスノウ、そして今まで出ていない中からくじ引きでゼノヴィアとなった。

 

「では、改めまして……『アンダータ』!!!このメンバーを砂漠ステージに!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

火蓋を切られたウォーゲーム6thバトル。第1戦目はチェスの兵隊ビショップのエキモス、メルからはスノウの対決となった。

 

試合開始直前、エキモスは剣型のガーディアン『魔剣ダンダルシア』を出現させる。

 

「魔剣ダンダルシア、世界で一番かわいいのってだあれ?」

『あなたです、マスター』

エキモスの問いかけに対し、ダンダルシアは機械的に答える。

 

「じゃーあー、あそこにいるブサイクと私、どっちがイケテるぅ?」

エキモスは、今度はスノウを指差しダンダルシアに尋ねる。突然のことに、スノウはきょとんとした表情を浮かべる。

『マスターに決まっております。あの女のコはブスです。』

 

カッチーン

 

その時、スノウの中の何かがキレた。

 

「私、一番に出るね?文句ないね?」

 

「「「ど、どうぞ!」」」

 

「あらあら、うふふ♪」グッ 

 

笑顔でキレるスノウに、ギンタ、ナナシ、ゼノヴィアの三人は気圧され、朱乃は笑顔で親指を立てた。

 

こうして始まったスノウとエキモスの対決。先に仕掛けたのはエキモス。繰り出したのは、人の顔ほどもある大きな花だった。

 

「あんたをォ…占ってあげるしぃー」

そう言ってエキモスは花弁をむしり始める。すると、花弁がむしられるごとにスノウの髪の毛がブチブチと抜け始めたのだ。

 

「ブス。美人。ブス。美人。ブス。ブス。あーら、二回言っちゃったし~」

 

「いたっ!いたっ!いたたっ!?」

 

そうして、やがて花弁はなくなり、最後の1枚をむしると、スノウのいた場所が突如爆発したのだ。

 

「あたた…けほっけほっ!」

 

「えーー?私の”花占いでボン!”でも死なないー?意外とタフだしー。ブスだけどォー。」

 

「こ、こいつぅ…さっきから、ブスだの何だのって…温厚な私だって怒るんだぞーー!!」

 

ここからスノウの反撃が始まる。『アイスドアース』の氷の礫を大量にエキモスに放った。しかし、エキモスはそれを(見た目の割に)軽やかな動きで、全て回避してしまった。

ならばこんどはユキちゃんこと『スノーマン』を繰り出すも、エキモスはそれをダンダルシアを使って真っ二つにしてしまった。

 

「あんたってー、顔もブサイクです弱いのねぇー。かわいそーっ。そう思うっしょ、ダンダルシア?」

 

『イエスマスター。その通りです。』

(あっちのコの方が全然カワイイっての……嘘つくのも疲れるなぁ~もう…)

 

エキモスの答えに社交辞令的に答えるダンダルシアだったが、内心エキモスに対して不満たらたらだった。

 

そんな最中、エキモスは新たなARMを繰り出す。

 

「私のもっとスゴイところ見せるしー。出てこい…………

 

 

ズズゥゥゥゥゥン!!!

 

 

 

 

 

 

『おかしの家』ーーーーっ。」

 

「は?」

『『『んなぁにィィィィィィ!!?』』』

 

それを見ていた全員が驚愕の声を上げる。砂漠のど真ん中に、書いて時のごとくお菓子でできた家が降ってきたのだ。そして、エキモスはお菓子の家の壁や柱をひっぺがして、バリバリと食べ始めたのだ。

 

「モグモグ……うまいしぃ~」

 

「た、戦ってる途中に食事?というか何の属性のARMなのあれ?」

 

スノウはそよ予想外すぎる光景を唖然と見つめる。エキモスはそれを無視してお菓子の家をバクバクと食べまくる。

 

「もう!なんかバカにされてる見たいで腹立つ!!」

 

痺れを切らしたスノウがエキモスに突っ込む。それに対してエキモスは……

 

「……食べたらぁ…食べただけェ……ブオオオオオオオ!!!」

 

「キャ!!!わあああああ!?」

 

息を吐き出しただけ。それだけでスノウは吹き飛ばされてしまった。

 

「強くなるしぃー。」

 

これこそが『おかしの家』の効力。パーツのお菓子を食べれば食べるほど、術者の力を肥大化させていくのである。その効力は徐々に現れ始めた。エキモス体がどんどん膨らんでいるのである。

 

「……カルデアで頂いたARMを使う時が、来たようだね。」

 

スノウはポケットをまさぐる。取り出したのは、カルデアで授けられた新たな力……

 

「来てっ『ウンディーネ』!!!」

 

現れたのは、身体に魔法文字の書かれた布を巻き付けた美しき水の精霊。ガーディアンARM『ウンディーネ』であった。

 

「今回私が倒すべきはあちらの方なの?クスクス…美しくない方ね。」

 

ウンディーネはエキモスを見て嘲笑する。それを見てエキモスは怒りだす。

 

「私が美しくないってーーーー!?ダンダルシア!!!どう思うしーーーー!?」

 

『美しいです……あっちの方が』

 

バギィッ!!!

 

遂に本音を言っちゃったダンダルシア。哀れ、彼はエキモスによって粉々に粉砕されてしまった。

「もうあんなガーディアンいらないしぃー。私にはおかしの家があるんだしぃー」

 

エキモスはそう言ってさらにお菓子の家を食べまくる。

 

そこにウンディーネが仕掛ける。巨大な水の渦を地面から吹き出し、お菓子の家を破壊したのだ。

 

「わ、私のおかしの家がぁ………!!許せないしィィィィィィィ!!!」

エキモスは怒り狂いウンディーネに突っ込む。それに対し、ウンディーネは水の膜でエキモスの顔を包み込んだ。どれだけのパワーがあろうとも、息が出来なければ酸素が脳に回らず、意識が朦朧として窒息、やがて死に至る。

 

「あのような者でも人は人。命の選択をさせてあげてはいかがかしら?」

 

ウンディーネの提案にスノウは頷き、エキモスにギブアップをするなら手を叩くようにいう。しかし、エキモスはビショップ三人衆としてのプライドからそれを拒む。やがて、エキモスの顔色が青ざめて行く。

 

「手を叩いて!エキモス!!」

 

いよいよ命が危ういという時、エキモスの顔を覆っていた水が弾ける。ウンディーネが先に水を解いたのだ。息ができるようになったエキモスだが、酸欠でそのまま仰向けに倒れた。

 

「あの方は死ぬまでギブアップをしなかったでしょうね。だからその前に水を解きました。」

 

倒れるエキモスの顔をポズンが覗き見る。どうやら失神しているだけのようだ。

 

「勝者!!!メル、スノウ!!」

 

「スゴイじゃねぇかスノウ!!」

 

「ナイスですわ、スノウちゃん♪」

 

仲間達からの歓声に、スノウは笑顔のピースサインで返した。

◆◆◆◆◆◆◆

 

続く第2戦、勢いに乗るべく出陣したのは、龍の紡ぐ絆【遊泳剣兵】ゼノヴィア。対してチェスからはエキモス同様ビショップ三強の一人であるハメルンであった。

 

「…………ブツブツブツ」

 

「……?何を言っている?」

 

開始直後、何かをぶつぶつと呟くハメルンに、ゼノヴィアは目を細める。ハメルンは彼女の問いかけに答えず、唐突に取り出した笛を吹き鳴らした。

 

「なっ!?」

 

笛の音が耳に入ると同時に、ゼノヴィアの体は虚脱感に囚われる。ゼノヴィアは、自身の体から魔力がハメルンへと流れ出ているのを感じ取った。

 

「『ソウルフルート』。魔力はいただくって言ったのサ。」

 

ハメルンは不気味な笑みをさらに深める。ハメルンが発動したソウルフルートは、音色を聞いた者から魔力を奪うARMである。そしてその効力は、フルートの音が届く範囲全域に及ぶ。

 

「なんてARMだ…!オレたちの距離からでも魔力を吸ってくる!」

 

「離れろゼノちゃん!!」

 

「くっ!!」

(笛を吹いている今のヤツは無防備。だが、この吸引速度……私の魔力量では近づく前に吸い尽くされる!)

 

ゼノヴィアはハメルンの笛の音から逃れるべく距離をとる。

 

(接近戦は不利か……ならば!)

ゼノヴィアは十分に離れたことを確認し、ARMに手を触れる。

 

「くらえ!ナナシ直伝、『サウザンドニードル』!!!」

 

発動したのはナナシも所持するウェポンARM。無数の銀の槍が地面から突き出し津波のようにハメルンに襲いかかる。

 

「……届かない…ヨ」

 

それに対し、ハメルンは翼のARMを発動し、空へ逃れる。さらに、翼を激しく羽ばたかせ砂を巻き上げた。

 

「グッ…!!」(羽ばたいた風で砂嵐を発生させた……目眩まし!?)

 

ゼノヴィアは顔を手で被い砂を防ぐ。まもなくして砂嵐は収まるが、ゼノヴィアはその光景に目を見開く。ハメルンが()()()()()()()いたのだ。どのハメルンも先が大きく広がった不気味な縦笛を持っており、何重層にも重なった笛の音色が辺りに響く。

 

「『チャームホルン』。どれが本物かわかるかイ?」

 

どのハメルンが言ったかは定かではないが、ハメルンはそう言うと一斉に短剣をゼノヴィアに投げつけた。

 

「くっ!『遊泳』!!!」

ゼノヴィアはとっさに『遊泳』の魔法を使い砂の中に逃れる。遊泳を使っている最中は、周りの状態の影響を受けず、どんな場所でも『泳ぐ』ことができる。砂が目や口に入る心配もない。

 

対象を失ったハメルンの短剣は、全て砂地に突き刺さった。

 

「隠れても…無駄…だよ」

 

ハメルンはそう言うと、一斉に翼を羽ばたいた。複数人で引き起こされる風は先程の比ではなく、巨大な竜巻が発生。辺りの砂を巻き込んで渦巻き始めた。

 

「なっなんてヤツだ!?羽ばたいた風ででっかい竜巻を作りやがった!!」

 

「不味いで…あんなんに捕まったら!!」

 

「逃げて、ゼノヴィアさん!!」

 

「くっ…言われずともっ!」

 

スノウの警告を聞くまでもなく、ゼノヴィアは距離を取ろうとする。しかしその時、不気味な笛の音色が辺りに響き、ゼノヴィアは再び虚脱感に襲われる。分身したハメルンの内の一人が、再びソウルフルートを吹き鳴らしたのだ。ゼノヴィアの動きが鈍る。

 

(不味いですわ……あのハメルンという男…接近戦が主体のゼノヴィアさんにとっては最悪の相性!このままでは……)

 

「ぬ、ぬ…ぐ……ぬあああああ!!」

 

そして遂に、竜巻はゼノヴィアの周りの砂を巻き上げ、ゼノヴィアは宙に投げ出される。

 

「くふふ…み~~っけ♪」

 

その時、ゼノヴィアは宙に大量にいるハメルンたちの真下にあるはずの()()()()()()()()()()()ことに気づいた。そして、唯一影が浮かんだ場所の真上にいるのが……

 

「見つけたのは…!こちらだぁ!!」

 

ハメルンが投げた短剣が逃げ場のないゼノヴィアに襲いかかる。体の至るところに短剣が突き刺さる中、ゼノヴィアはARMに手を伸ばす。

 

「ぐっ!?あぁ゛ぁあ゛…ッ!!!サウザンド…ニードル……”一攫千銀“!!!」

 

ゼノヴィアの渾身の力で放たれたサウザンドニードルは、一本に纏まることで巨大な槍と化し、空中にいるハメルンの内の一人の羽を刺し貫いた。

 

「ぶはっ!!」

 

羽を失ったことでハメルンは地に落ち、それと同時に他のハメルン達も消滅する。

 

「はぁ、はぁ…デュランダル!!!」

 

ゼノヴィアは息も絶え絶えながらも、自身の切り札である聖剣デュランダルを異次元より手に納める。以前は召喚ごとに詠唱を必要としたが、竜也より教えられた異次元に武器を保管し瞬間的に装備する魔法、『換装』によって隙を生まないようにした。(これに対し、ゼノヴィアは『聖人に対する不敬になるのでは?』と竜也に尋ねたが、『死んだら不敬もクソもないだろ』と返した。)

 

「…ここまでの苦戦を強いられたのは私の油断が招いたことだ。故に…次の一手で確実に決めてやる!!」

 

ゼノヴィアはそう言うとデュランダルを構える。

 

「ふーん、でもボクにはまだ秘策があるのサ。」

 

ハメルンは再びソウルフルートを吹き鳴らす。それに対し、ゼノヴィアはこれまでの戦いで大体把握したソウルフルートの効力の及ぶ範囲から脱する。

 

「もうその手は喰わん!!」

 

ゼノヴィアはそう言ってハメルンにデュランダルの剣先を向ける。向けられたデュランダルの刀身は淡く光を放っていた。

 

「…ならこれはどう?ハメルン最後にして最強のガーディアン…『ボリノ』!!!」

 

現れたのは、長い腕とその先に生えた3本の鍵爪、コウモリのような大きな耳と目玉、そして手に生えた爪と同等もある牙がはみ出た巨大な口をもつ怪物だった。

 

「今度は、逃げられないヨ?次で決めると言ったネ?だったらボリノを倒して見せてヨ」

 

「ああ、もとよりそのつもりだよ。」

 

ハメルンの挑発に、ゼノヴィアはあっけらかんと答える。不振に思ったハメルンだが、次の瞬間、その不気味な笑い顔は驚愕に変わる。ゼノヴィアの持つデュランダルから目映いばかりの光が放たれていたのだ。

 

「な、なに…それ……ッ!?」

 

「デュランダルを出現させた時から私はデュランダルの光力を練り続けていた。貴様がおしゃべりをしている間もなあ。おかげで十分な力を溜め込むことができた。

まぁ、貴様に気づかれないよう光の力をデュランダルの中に押し込んでいたのだが、いい加減にデュランダルも窮屈だろう。そろそろ解き放つとしようか。」

 

そう言うと、ゼノヴィアはデュランダルを頭上に振りかぶった。

 

「ッ!!?ボリノ!!!」

 

ハメルンはすかさずボリノをけしかける。だが、ゼノヴィアはお構い無しにデュランダルに押し込めていた光力を解き放ち、大きく振り払った。

「まとめて消し飛べ!!“デュランダル!!レディアントォ…パニッシャー”ァァァァァアアアア!!!」

 

押し込められた光の力が一気に解き放たれる。解放された光は巨大な柱と化し、迫るボリノもろともハメルンを叩き潰した。目映い光が爆発し辺りを包み、強烈な衝撃波によって砂が巻き上がる。

 

光が止むと、そこはまるで隕石が衝突したかのような巨大なクレーターが出来上がり、その中に黒焦げになり泡を吹いて倒れ伏すハメルンの姿があった。

 

「本来なら跡形もなく消し炭にしているところだが…特別に加減してやった。

 

悔い改めよ。」

 

そう言ってゼノヴィアはきびすを返し自陣へと歩き出した。

「……!!し、勝負あり!!勝者、ゼノヴィア!!!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「……な、なんてヤツだあの野郎……」

 

城に設置された鏡に映る光景を見て、アランは唖然と呟いた。

 

「すげーぞあの嬢ちゃん!!」

「イカすーーッ!!」

 

「いや……もはやあれ剣じゃねぇだろ」

「あっはははは……」

「なんだろう、あれがゼノヴィアの本来の姿な気がする…」

「ツーかあれって木場ちんのパク…」

「シッ!!!」

 

「でも、これでこちらの二勝よ。これでギンタが負けなければ…」

「喜ぶのはまだ早え。問題は、次からだ……」

 

ゼノヴィアの勝利に思い思いに盛り上がる周りをよそに、アランは残ったチェスの二人を見据えていた。

 




感想なぞ貰えると嬉しいです。次回もお願いします。


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徹夜と寝起き

「ただいま」

 

「ブッ!!あ、アニキィ!?」

 

カルデアでの仕事をやっと終え、アンダータで城に戻って来たらイッセーに飲み物吹き掛けられた。

「きったねぇな。なにすんだよいきなり」

 

「いや、あんたこそなに何の脈絡もなく帰ってきてんだよ!!」

 

「なんだなんだ?」

 

「あ、だーりん帰って来てるにゃ」

 

「陛下、お待ちしておりました!」

 

顔拭いてたら他の連中が集まってきた。

 

「おーい竜也ぁー!おっす!」

 

「よおギンタ、その様子じゃバッチリ勝ったみたいだな」

 

「おう!皆勝ったぜ!」

 

にかっと笑いVサインを向けるギンタに、こちらも自然と笑みが浮かぶ。やはりこいつに任せて正解だったな。

 

「帰ったか、兄さん」

 

「おう、ヴァーリ。お前も踏ん切りはつけれたようだな。」

 

「ふっ、まぁな。……」

 

俺の問いにふっと笑みを浮かべるヴァーリ、その顔にもはや影はない。後ろで白音とドロシーが笑ってるのを見るに、こいつはもう大丈夫だろう。

 

「さて、それはそれとして、兄さん、カルデアに一人で残った理由を教えてもらおうか。」

 

「あっ俺も知りたい!」

 

ヴァーリはにやりと笑い、ギンタは興味津々といった顔で尋ねてくる。周りを見ると、皆俺に視線を集めていた。

 

「ああ、そいつは…これさ」

 

俺は担いで来た袋をテーブルに置き、中身を見せる。

 

「これは……ARMか?」

 

「すっげー!いっぱいだぁ!」

 

「これだけのARMをどこから……」

 

皆は袋に詰まっている大量のARMをまじまじと眺める。そんな中、ドロシーが歩みでて袋のARMを手に取る。

 

「すごい…どれもこれも素晴らしい質。しかも、どれも見たことのない型よ…」

 

「アニキ…まさか、これだけのARMをかき集めるために、カルデアに残ったのか…!」

 

「いや、かき集めたってのは少し違う。」

 

「え?」

 

俺の答えが以外だったのか、きょとんとするイッセー。俺は袋にボスンと手を置く。

 

「この袋の中のARMはな、ぜーんぶ俺が創ったのさ」

 

 

 

『『『・・・・・・・・・・・え、え゛え゛え゛え゛ええええええええええええええぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!??』』』

 

一瞬間をおいてから絶叫する一同。うん、いいリアクションをありがとう。

 

「つ、つつつつくったぁ!?ARMをぉ!!?」

 

「別にそんな盛大に取り乱すことでもねぇだろ。カルデアの長老も言ってたろ?ARMは魔法使いが自身の魔法を特殊な彫金をしたアクセサリーにダウンロードしたものだって。」

 

そう、それこそが今回俺が一人(正確にはオーフィスもいたが)カルデアに残った理由である。特殊な彫金をしたアクセサリーに魔法をダウンロードしたのがARMならば、同様の原理で俺自身の創り出した魔法もARMという型に出来るのではと。

 

そう思った俺は、長老やカルデアの彫金師たちの手に手を借りて、千の魔法を司る龍、アジダハーカの宿る神器、『魔源の三首甲』の禁手化、『魔源の三首鎧』の力によって創造した魔法をダウンロードしまっくったのだ。

 

「とりあえず、造れたのはウェポン、ネイチャー、ディメンジョン、ゴースト。数も千とはいかず大体二百くらいだ。」

 

「……それをたったの2日程度で仕上げてくることが異常よ。」

 

「そうだよ、2日だよ。2日も寝てないんだよ俺は……あ、」

 

再認したことでどっと眠気が溢れ出てくる。体の支えが効かなくなり、俺はふらっと倒れ、図らずして横にいた朱乃ちゃんの豊満な谷間へと顔を埋める形となった。

 

「あんっ、もう。竜也君ったらぁ、欲しがりやさん♥」

 

「ご、ごめん…今はマヂでムリ。寝かして…」

 

ああ、この柔らかさ。包まれるような暖かみ。も、もう…こ、こ…で………

 

「あら?竜也君、竜也君?……ホントに寝ちゃってますわ」

 

「二徹明けっつってたからな。しゃーないだろ」

 

「てゆーか朱乃!あーた何しれっとだぁりんのこと抱きしめてるにゃ!!」

 

「あらあら、意図してやったのではありませんわよ?役得役得♪」

 

「ほら、あなたたち。いいからタツヤをベッドに運ぶわよ。じゃれるのは起きてから。」

 

『はーい』

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

翌朝、窓から差し込む太陽の光に当てられ、俺は目を覚ました。

 

「ん……ぁあ゛あぁ~~~ッ!!寝たなぁ~。しっかし、徹夜明けの爆睡は来るものがあるな。身体の節々が痛……え?」

 

寝起きで固くなった身体を伸ばしたところで、俺は周囲の光景に気がつく。

 

いつの間にかベッドの中にいたのはまあいい。誰かが運んでくれたのだろう。

 

服がなくてパンツ一丁になっているのもまだ容認できる。誰かが寝てる間に身体を拭いてくれたのだろう。だけど、だけどだよ?

 

「くぅ…くぅ…ぅうん……」

 

「うみゅ…にぁん……」

 

なぁーんで全裸のリアスと黒歌がボクの布団の中ですやすやと寝息を立てているのかしらん?しかも両側から俺が腕枕する形でぇ…

 

いかんいかん、気が動転するあまり変な口調になってしまった。いやいやいや、え?てか、え?どういうことなのこれ?え?うそ、ウソだよねこれ。まさか、まさかだよね?え?

 

「あ、あっははははは……」

 

思わず変な笑いが出てきた。いや、ない。ないないないないない。いや、だってあれだよ?流石に婚約してるからってなんの脈絡もなくこんな唐突に……

 

「…ゃあん、もう。タツヤったらぁ…そんなとこさわっちゃいやん♥」

 

「あぁん…だぁりん……だぁりんのぉ……もっとちょーだいにゃん♥」

 

 

………でえええええええええ!!

 

嘘だよねこれ。俺なーんにも覚えてないよ?だって、え?ウソ……お、俺のはじめてがこんな…

 

「ノォオオオオオオオオン!!!?」

 

「ん…んむぅ……あら、起きたのね、タツヤ」

 

「うみゃぁ……だぁりんおはようにゃん」

 

ふたりともただでさえ美人でナイスバデェな上に、寝起きの無防備な色っぽい声、しかも全裸でやられたもんだから思わずドキンとしてしまった。

 

いや、んな男子の健全な欲求はさておき、わたしゃ今のこの状況が理解不能すぎて頭ん中真っ白だよ!!

 

「あ、あの…お二人さん。この状況は一体……」

 

「んぅ?……ああ、これね。昨日、あなたがあんまりにもお疲れのようだったから、あなたに疲れを取ってもらうために救急タツヤの添い寝係の選抜が始まったのよ。そして、私たちはそれを勝ち取った」

 

「は?」

 

「いや~凄まじい白熱っぷりだったにゃん。朱乃なんて『自分の胸に飛び込んで来たんだから自分が寝かしつけるんだ!!』ってゆずらなくて。後半はほぼ殺しあいみたいになってたにゃ~」

 

いや、どんな選抜戦?ってか、仮にも戦争の真っ最中になにしてんのあんたら!!?

 

「いや、それはわかったけど(意味わからんが)……なぜに裸?」

 

「あら、私が裸じゃないと寝れないのは知ってるでしょう?」

 

「私はだぁりんが喜んでくれると思ったからにゃん……で、どう?嬉しかった?ドキッてした?」

 

「え?!いや、その……」

 

はい、正直めっちゃ嬉しいです。だってしょうがないじゃない!?ただでさえ超絶美少女でスタイル抜群な愛しのマイスイートハニーたちが裸で両側からおはようだなんて……興奮するに決まってるじゃない!男の子だもん!」

 

おっといかん、また煩悩の海に沈みかけた。………

て、あれ?なんで二人とも頬を桜色にしてポーっとこっちを見てるのでしょうか?

 

「…愛しのマイスイートハニーって、ハニーって♥」

 

「もう、だぁりんったらぁ。私のこと大好きなんだからぁ……私も大好きにゃん♥」

 

リアスは頬に両手を当てて身体をくねくね動かし、黒歌は上体を起こした俺にしなだれかかってくる。

……二人とも、めっちゃエロいです。ってか、俺また声に出してた?

 

「そっそれよりも!早く起きてみんなのところへ行かないとっ!」

 

「あら、ダメよ。あなたはまだ疲れてるんだから、ゆっくり休んで。」

 

「け、けど、これからウォーゲームも大詰めといったところで寝てる訳には……」

 

「ウォーゲームまではまだ時間はあるわ。あなたはしっかりと身体を休めて」

 

そう言うと、リアスと黒歌は俺を両側から押し倒す形で俺をベッドに寝転がす。いや、てか!ふ、二人が両側から密着して、は、肌!む胸の感触が!?ダイレクトにににに!??!?

 

「だ、駄目だって二人とも!ま、まだ結婚式もあげてないのにッ!!」

 

「あら、先か後かの違いよ。私たちはあなたを癒してあげたいだけ」

 

「ほら、だぁりん。リラックスして。私たちがス~~ッキリ、させてあげるにゃん♥」

 

二人はそう言って俺の身体に細くきめ細かい手をつぅーと這わす。だ、だめ、だめなのに…でも、でもぉ…

 

バタン!!

 

「「そこまでです/わ!!!」」

 

その時、勢いよく扉が開かれ、俺の婚約者である朱乃ちゃんとアーシアが颯爽と現れた。

 

「あまりにも遅いと思って来てみれば…あなたたち!抜け駆けは許しませんわよ!」

 

「竜也さんはお疲れなんです!あまりハードな行為はお控え下さい!」

 

うん、二人とも違うよね?そうじゃないよね?ポイントは

 

「あら、協定ではタツヤがハジメテに誰を選ぶかは恨みっこなしのはずよ。それに、私の場合は『公☆認』だから」

 

「敗れ去った敗残兵には口を挟む権利はないにゃ~」

 

ビキッ!!と、何かが軋む音がする。てか、今さらっと変な単語が聞こえたのだけど。協定ってなに?

 

「…ふ、うふふ、それは昨晩までのことですわぁ。さ、竜也君。そこの『肉布団』は早く畳んで起きて下さいな。」

 

ビキッ!!と、両側から何かが軋む音が聞こえてくる。直感的にヤバいと思った俺は、ゆっくりと服に手を伸ばすが、その伸ばした腕を朱乃ちゃんとアーシアに捕まれ引き上げられる。

 

「た、竜也さん!に、肉体の疲労はまだ残っていふと思いますので…わ、私の神器でしっかりとお癒しします!」

 

 

「あら、でしたら竜也君。私の電気を竜也君に。ほら、竜也君。ちゅうちゅうしてよろしいのですよ♥」

 

金緑色の淡い光の灯った手のひらが胸に当てられ、パリパリと電気の流れる細い指が口に侵入する。こんな状況だというのに、身体は残っていた疲労が抜け落ち心地よい感覚に包まれ、細胞はギュンギュンと発電を開始する。

 

「だぁり~ん、それよりも私の仙術の方がいいにゃん。血行の流れもよくして老廃物もデトックスできちゃうにゃん♪」

「ぐぬぬ……はっ!ねぇタツヤぁ、マッサージはどうかしら?私の『探索』を持ってすれば何処が凝ってるのか的確に揉みほぐしてあげられるわよ♪」

 

そう言って黒歌とリアスもまた俺の身体に手を這わす。ああ、なんかもう、どうにでもなーれ♥

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

数十分後、朝食を終えた俺たちはウォーゲーム会場へと集結していた。

 

結局あの後、俺の貞操は守られたままであった。ヘタレだって?……ふ、ああそうだよ俺はヘタレだよ!こんな状況下でできるか!

 

そんな中、アランの野郎がわざとらしく俺に近づき肩に手を置き囁く。

 

「昨晩はお楽しみでしたなあ、ん?後ろの女どもはなんだ?淫ら体験アンビリーバボゥか?ん?」

 

「ふん!!」

 

バキッ!!

 

「オボァ!!?」

 

ムカついたのでボディブローを叩き込んでおいた。セクハラしてんじゃねぇよエロオヤジが。

 

「ってぇな……おい、あいつ自分が女に手ぇだせなかったからってこっちに手ぇ出しやがったぜ」

 

「え、アニキあんたまさか…」

 

「どーりでいつまでも進展がないと思ったら」

 

「…衝撃の真実ですね」

 

「おいてめぇらぁ!!!」

 

この日、俺はもう二度と徹夜はしまいと心に誓った。そして神よ、もしこの世界にもいるのなら、あのマダオに罰をお与えください。

 

 




散々引っ張った挙げ句にエロ路線……疲れてるのかな、俺……

ナナシ「いや、んなことより!わいとギンタの戦闘シーンはどないなってん!?けっこう重要なシーンやであれ!」

あ、カットで

「「ええっ!!?」」


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猫と顔

 

「おはようございます、メル並びにドラゴントライブの皆さん。今日は6thバトル!よく進みましたね。」

 

「それでは、ステージとメンバーの人数を決めさせて頂きます。」

 

ポズンは赤(人数)と白(フィールド)の二つのダイスを投げる。出た目は赤が5、白が2。

 

「出ました!キノコフィールド、人数は5対5!誰が出ますか!?」

 

メルから名乗りを挙げたのは、ギンタ、スノウ姫、ドロシー。俺たち龍の紡ぐ絆からは木場、そして……

 

「そしてオレ様だ!フフフ……」

 

珍しくアランのやつが名乗り出た。

「オッサンが出るの久しぶりだなぁ」

 

「たまには体動かさねぇとなまっちまうからな」

まーこの余裕ムカつく。おもいっきりアホな負け方すればいいのに……

 

「ではこの五人を…『アンダータ』!!!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

いや~まさか願いが通じるとは、世の中何があるかわかんねぇや。

 

「だぁ~ッッひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!」

 

「あ、アニキ、流石に笑っちゃ悪いぜ…プッ!」プルプル

 

「いやだってよ!あっひゃひゃひゃひゃ!!!腹痛てぇ~~~!!」

 

第1戦目から意気揚々と出場したアラン。それに対してチェスの兵隊から出てきたビショップ三人衆の最後の一人、シャトン。

 

『ニャーーーン!!!あちしがシャトンちゃんだにゃん!!』

 

『おい、誰か代わってくれ』

 

それがなんと、猫耳の獣人娘だったのだ!

 

そう、何を隠そうアランは猫アレルギーなのである!!

 

それでこのシャトン、まあなんつーか元気いっぱいっ娘でアランは翻弄されまくり。

アランは近寄れず『エアハンマー』撃ち込めば泣き出されるは、ネイチャーARM『ネコジャラシ』で無理やり近づけられて麻痺爪『パラクロー』で動きを封じられてタコ殴り。(倒れてるところに口にチューされてもんどり打ってるところは爆笑した)

 

挙げ句の果てにカルデアや俺の渡したARMを忘れるという体たらく。

 

『おい!あのオッサンARM忘れてるぞ!!』

 

『いやアンタなにやってんの!!?』

 

『バカー!アランーー!!』

 

『死ね!!そのまま死ねぇ!!』

 

いや…もう、お前ホントに氏ねや。

 

で、シャトンの止めとして繰り出したブルドッグ(土佐犬?)のガーディアン『ブルル』をこれ見よがしに撃破したはいいが、ブルルを囮に接近したシャトンのゼロ距離からの『ニャンニャン波』でノックアウト。結局実力の1割も出せずに負けやがった。

 

「アホかーーー!!なにやってんだオッサンこらぁ!!!」

 

「私と同じ家に長年居候してるんだからいい加減慣れとけにゃーー!!」

 

「期待して損したわ!!」

 

「しょっぱなから黒星飾りやがってマダオ2号が!!」

 

会場からもブーイングの嵐である。ま、仕方ないよね☆

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

続く第2戦、連合からは龍の紡ぐ絆『航空騎兵』木場裕斗。チェスの兵隊からはゾディアックのナイトの一人、コウガ。奇して『ナイト』同士の戦いとなった。

 

 

「ウェポンARM『十文字』!!!いくぜぇ!」

 

先に仕掛けたのはコウガ。巨大な十字手裏剣を構え木場に踊り掛かる。

「ふっ」

木場はコウガの振るう十文字を軽々とかわし、『魔剣創造』によって一本の剣を精製。コウガの十文字を弾き飛ばす。木場はコウガを真っ直ぐに見据える。

 

「ああ、そのツラ……気に入らねぇ!!ディメンジョンARM『砂地獄』!!!」

 

コウガは次のARMを発動する。すると、木場の足元が部分的に砂地となり、流砂が発生する。

 

「なっ!?(体が…流砂に飲まれる!)」

 

流砂は木場を徐々に飲み込んでゆき、やがて膝まで沈んだところで止まった。

 

「その辺で止めといてやるぜ。全部潜らせちまったら楽しみがなくなっちまう。

ウェポンARM『百足』!!!」

 

現れたのは、肩から手の先まで覆った百足を模した巨大な腕甲。コウガが百足を振るうと、蛇腹状になった間接部が伸び木場に襲いかかる。木場は何度も打ちのめされる。

 

「俺様はお前みたいな美少年ぶってるやつが大嫌いなんだ!理由を教えてやる」

 

そう言ってコウガは仮面を外す。現れたのは、眉間によったシワ、隈の深い細い目、傷の入った団子鼻と、お世辞にもキレイとは言えない顔だった。

 

「見ろ、このツラを。俺は醜い。この顔を理由に昔から俺はバカにされ、突っ掛かられてきた。」

 

「………」

 

「同情を求めてる訳じゃねぇぞ。俺は確かに醜い。だが、俺には力がある!俺は俺をバカにする奴らを全員ぶちのめして来た。言わばこの顔は、『強い男の証』と言えるものだ!」

 

コウガは打って変わり、自分の顔のことを誇らし気に語る。その顔はより醜悪に歪んでいた。

 

「……だからなぁ、お前のように小綺麗にまとまった野郎を見ると、今まで俺をバカにしたやつらのようにズタズタにしてやりたくなるのよ!!」

 

木場はそれまで表情を崩さずにコウガの言い分を聞いていたが、ふっと口角を上げる。

 

「……確かに、醜いね。その顔も……そして中身も。」

 

「ーーッ!!減らず口をぉ!!」

 

コウガは再び百足を伸ばす。

 

「『爆雷剣(エクスプロード・ショック)』!!!」

 

それに対し、木場は一瞬にして精製した剣を百足へと投げつける。剣は百足の頭部を貫いた瞬間に爆発を起こし、百足は粉々に弾け飛ぶ。

 

「なっ!?俺の百足がっ!!」

 

コウガが怯んでいる中、木場は二対四枚の蜻蛉の羽を出し流砂から脱出する。

 

「出ようと思えばいつでも出られたんだ。君との実力差がどの程度なのか様子を見ていたんだ。

結論として、君はナイトの中でも下位程度。あのラプンツェル以下だ。僕で十分対処出来る。」

「ぐ…このぉ…ぶっ殺してやるチビーー!!ネイチャーARM『煙幕』!!!」

 

木場の言葉に激昂したコウガは、印を結び息を吹くと、吹いた息は白煙となって辺りを包む。

 

「あれは白音の使った…!」

 

『俺様が何処にいるか見えないだらう!?この煙幕は魔力も消すぜ!!どうする色男!?』

 

木場は何も答えずその場に立ち尽くす。コウガは四方八方からその太い腕で木場を殴りつける。

 

『撤回しろ!!俺を弱いと言ったことを!!』

 

『そして死ね!!死にやがれガキが!!』

 

 

「……死なないし、撤回もしない。何故なら、君は僕の次の一手で敗れるからだ。」

 

「……ほう、おも知れえ。」

徐々に煙幕が晴れる。煙が晴れると、コウガは赤茶色のドジョウ髭を生やした巨大なカエルの頭に乗っていた。

 

「ガーディアンARM『クンフーフロッグ』!!!こいつを出しちまった俺様に同じ事が言えるかな!?」

クンフーフロッグは前足をヒュンヒュンと動かし唸り声をあげる。

「クンフーフロッグはクンフーの達人!お前なんか殴り殺してやるってよぉーー!!」

 

クンフーフロッグはその巨体に似合わなず、素早い身のこなしで跳躍し、木場に襲いかかる。木場はそれをさらに高く飛び上がることで回避する。

 

「ちっ!ハエみたいにチョロチョロしやがって!降りて来やがれ腰抜け野郎!!」

「焦ることはないよ。言ったろう?次で終らす」

 

木場は大きく息を吸い、右手を天に突き出す。

 

「……すぅぅう…ふぅう…【禁手化】、『双覇の聖魔剣(ソードオブビトレイヤー)』!!!」

 

光と闇が混ざり絡み合い混沌となる。渦巻く混沌は瞬く間に天を貫かんがごとく伸び上がり、鐵となり刃を形造る。鐵は熱く煮えたぎる溶岩のごとき熱波を放ち、燃えたぎる炎は龍の爪となり得物を支える。

 

「『轟斬 ガルガンチュア・パニッシャー』!!!」

現れたのは、山をも斬り裂かんが如く巨大で、海を蒸発させんが如く煮えたぎる紅蓮の刃。

 

「な、なんだそりゃあ!!?そんなのありかよ!!?」

 

その規格外の大きさ、そしてそれから放たれる凄まじい威圧感に、コウガは冷や汗を流して狼狽える。彼を乗せたクンフーフロッグも、口をあんぐりと開けて唖然とそれを見る。

 

「……さて、言い残すことはあるかい?」

 

大気が歪むほどの熱波と裏腹に、木場は底冷えするかのような冷徹な眼差しでコウガを見下す。

 

「ちょ、ちょっと待て!!美少年はもっと優しくするもんだぜ兄ちゃん!?」

 

「悪いけど、僕は見た目はそんなに気を使ってないんだ。呆気ない最後だったね」

 

「そ、そんなぁ…アワワワ」

 

コウガの説得に耳を貸さず、木場は真っ赤に熱を帯びた大剣を降り下ろす。

 

「『轟斬‼ガルガンチュア・パニッシャーーー』!!!」

 

 

ドガァアアアアアアアアアアン!!!!

 

 

 

「ウッッギャアァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

刀身が地に触れた瞬間、辺りを炎が包む。吹き荒ぶ熱波は周囲を焼け野原にし、五頭龍を象った火柱が立ち上がった。

 

炎が消えると、服は焼け落ち焼け焦げたコウガが倒れていた。体が痙攣している辺りまだ息はあるようだ。

 

「勝者、ドラゴントライブ!ユウト!!」

 

「殺しはしない、君にはその価値すらないよ」

 

木場は踵を返して自陣へと飛んで戻って行った。

 

「な、なんだ今の……」

 

唖然とするギンタにアランが解説する。

 

「イッセーやヴァーリの持つ『神器』ってのは前話したろ?木場の神器、魔剣を造り出す『魔剣創造』、その力を極限まで引き出し、数百本分の力を圧縮きたのがアレだ。前使った時はまともに立ってられないくらいに消耗してたが……」

 

そこに、昆虫独特の羽音が近づき、見ると木場が羽をはためかせて戻って来た。

 

「やあ、勝ってきたよ」

 

「…全然、平気だね……」

 

「うん……」

 

いつもと変わらぬ爽やかな笑顔でVサインをする木場に、ギンタとスノウは唖然とする。こうして、6thバトル第2戦は連合軍側の勝ち星となった。



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マリオネットと大鯨

「次、ボクが出るヨ」

 

そう言ってチェスの兵隊の一人がフィールドへ降りローブを脱ぎ捨てる。現れたのは、凶悪な顔に長い鼻をした木彫り人形だった。

 

「っ…アイツは……!」

 

ドロシーの能力に昔の記憶が甦る。それは、昔姉が自分に造ってくれたマリオネット。

 

「ディアナの造った人形だって!?」

 

「そう、ディアナはよく私に人形を作ってくれた……だからアレは、私が破壊する」

 

そう言ってドロシーはフィールドへと降りて行った。

 

◆チェスの兵隊【ナイト】▼ピノキオン▼

 

◇メル▽ドロシー▽

 

「試合、開始!!」

 

対峙する二人は互いに動かず睨み合う。程なくして、ドロシーはピノキオンに話しかける。

 

「ディアナは元気?」

「ううん、病気で死にそうなんダ」

 

ピノキオンがそう答えると、彼の鼻が少し伸びた。

 

「アンタはディアナに造られたんだろ?」

 

「ううん、違うヨ」

 

また鼻が伸びる

 

「私に勝てると思ってるの?」

 

「とんでもない、負けると思ってるヨ」

 

更に伸びる。倍近くに伸びた鼻の先に、銃口が現れる。

 

「キヒッウソだヨ」

 

鼻先の銃口が火を吹きドロシーに襲いかかる。爆煙が晴れると、ドロシーは動くことなくそこに立っていた。額から血が垂れる。

 

「避けようともしないんダ。憎らしいヒトだヨ」

 

ピノキオンはそう言うと、体に隠した()()()()()()を出す。

 

「ウェポンARM『ノコギリギリ』」

 

自身の身の丈ほどもある巨大な刃のノコギリを三本の腕に持ち、ピノキオンはドロシーに襲い架かる。それに対し、ドロシーは『ゼピュロスブルーム』を展開し応戦する。

 

「うっとおしんだよ人形!!“突風槌(ガスト・ハンマー)”!!!」

「うわあぁぁア!!?」

 

ドロシーが箒を振るうと圧縮された空気の塊がピノキオンに炸裂する。重い一撃の後解放され弾けた突風がピノキオンを吹き飛ばした。

 

「ふぅ、ディアナも凶悪なもんを造ったもんね……」

 

「違うよ、ボク凶悪じゃないヨ」

 

またピノキオンの鼻が伸びる

 

「ディアナはレスターヴァ城にいるのね?」

 

「いないヨ」

 

さらに伸びた鼻からは、再び銃口が現れ火を吹く。

 

「“空断壁(エア・ヴァルム)”」

 

ドロシーが再び箒を振るうと、今度は彼女の正面に風の壁が現れ爆炎を防ぐ。

 

「ちっ、まともに会話も出来やしない。この嘘つき人形」

 

「そんな事言わないデ、近くでお話しようよお姉さン!“ワイヤーハンド”!!!」

 

ピノキオンはそう言うと三本の腕の肘から先を射出しドロシーを掴む。その名の通り射出した腕はワイヤーで繋がっていた。

 

「キヒヒッ、キレイなお姉さン。イイものあげるヨ」

 

ピノキオンの服のボタンが弾け飛ぶ。あらわになった腹部から、高速回転する丸ノコが飛び出した。ピノキオンは腕のワイヤーを巻き上げ、掴んだドロシーを引き寄せる。

 

「こっちへ、オイデ」

 

「冗談じゃないよ!!」

 

ドロシーは指にはめたゲーム直前に竜也から渡されたARMに魔力を込める。

 

『ドロシー、弟の礼の代わりと言っちゃ何だが、こいつを渡しておく。お前さん用に特別に調整したARMだ。……ちなみに、素材としてヴァーリの鎧の欠片を使ってたりする。』

 

(なんて言われたら、使わない訳ないじゃない!!)

 

「ネイチャーARM『月光の翼片車(ルナテック・ウイング・ウィル)』!!!」

 

現れたのは、蒼白い光を放つ羽をもつ四つの風車。宙に浮かぶ風車は間もなくして回転を始め、四つの光の輪が灯る。それは何処か幻想的な光景でだった。

 

「やれ、月光の翼片車!!」

 

月光の翼片車は回転しながら一斉に動きだす。風を纏った羽は刃となり、ワイヤーを全て切り裂いて見せた。

 

「ニャッ!!?ボ、ボクの腕ガ!?」

 

「喰らえ、“列空爆風陣(トルナード・エアブラスト)”!!!」

 

風を裂きながらドロシーのもとへ集った月光の翼片車は、それまでとは比べ物にならないほどの回転を始める。最高潮に達した回転は、鎌鼬を纏った竜巻を発生させ、四つの竜巻がピノキオンを吹き飛ばす。

 

大きく吹き飛ばされたピノキオンはよろよろと立ち上がるが、体のあちこちはひび割れ、片足は砕け散り、見るも無惨な姿と化していた。

 

「その体じゃもう無理ね。あと一撃でバラバラにしてあげる」

 

「……バラバラになんてされてたまるカ。ボクは…ボクは……

 

お前を倒してディアナ様に人間にしてもらうんダーーーーッ!!!!」

 

ピノキオンは体に隠し持った最後のARMを渾身の力で発動させる。全ては自分の夢。人間になって“イイ子”になるために。

 

「ガーディアンARM!!『ファスティトカロン』!!!」

 

 

『ブオオオオオオオオオン!!!』

 

現れたのは、山のように大きいクジラのガーディアン。ファスティトカロンは空気が震えるような鳴き声を上げると、その巨大な口を開けてドロシーに襲いかかる。

 

「き、キャーーーっ!!」

ファスティトカロンは、あまりの光景に呆気にとられたドロシーを、そのままを飲み込んでしまった。

 

「ど、ドロシーーー!!!」

 

「ケケケ……これでボクはもう人形なんかじゃなイ!人間になれるんダーーーッ!!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「うっわくっさ!参ったねこりゃ……」

 

ファスティトカロンの胃袋の中、ドロシーは胃液に浮かぶ廃材の上に佇んでいた。辺りには大クジラの飲み込んだであろう船の残骸が漂っていた。その中で、ドロシーは何者かの気配を感じる。

 

「ッ!!誰!!?」

 

そこには、頭に発光する提灯のような触角のある小人が、ちゃぶ台の置かれた座敷の上に座って茶をすすっていた。

 

「やあおじょーちゃん。君もファスティトカロンの中に入って来たんだね。」

「……あんた、何者?」

「ボクはファスティトカロンの住人。ポコっていうんだ、よろしく。」

 

「あんた……ずーーっとこのクジラの中に住んでるの?」

 

「そうだよ。普通の人間はこの中にいると、溶けてしまうんだ。ホラ、そこ見てみそ」

 

ポコの指差した先を見ると、そこには胃液で溶けた人骨が浮かんでいた。

 

「お生憎様、こんなところすぐ出てやるよ!溶けちゃうなんてドロシーちゃんまっぴら!」

 

ドロシーはそう言ってARMを取り出す。

「レインドッグ!!!」

 

しかし、何も起こらなかった。

 

「アレ?アレレ?どうなってんの!?『クレイジーキルト』!!!『月光の翼片車』!!!『ゼピュロスブルーム』!!!」

 

しかし、何も起こらなかった。

「ムリムリ、この中ではARMは発動できないんだ。ボクの許可なしでは、ね。」

 

ポコは茶をすすりながら淡々と説明する。

 

「なら許可しなさい!!」

 

「だ、ダメだよ~っ。こ、これはディアナの呪いなんだ……」

ポコは語る。かつて彼はディアナに使える召し使いだった。ところがある日、不注意でディアナのスカートを踏んでしまった。そして彼は、ディアナの呪いによってファスティトカロンの中に閉じ込められ、せめてもの情けで胃液で溶けない体にされた。それ以来、ずっとこな中にいるのだ、と。

 

 

「……あんた外に出たくない?」

 

「そりゃ出たいさ。もう何年もこんなところにいるからね。」

「じゃあARM使うの許可してよ。そしたらあんたも一緒に出してあげる。」

 

「ダメだよダメだよ!!ファスティトカロンか死なないとボクは外に出られないんだ!おじょーちゃんにファスティトカロンが殺せるわけないじゃないか!!それに、おじょーちゃんだけがそとに出たら、ボクはまたひとりぼっちだ!!」

ポコは必死に拒絶する。ファスティトカロンか強大なガーディアンだ。殺せる訳がない。上手いことをいって逃げるつもりに決まってる。長年一人でクジラの腹の中にいた彼は、これ以上の孤独は耐えられなかった。

 

そんな彼の触角に、ドロシーは優しく口づけする。

 

「ファスティトカロンは一撃で殺すわ。信用して」

 

「~~~~~~ッ!!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「……もう15分は経つよ」

 

「あの中に、ドロシーが……!」

 

ギンタたちは悠々と宙を泳ぐファスティトカロンを、ずっと眺めていた。今はゲーム中、下手なことは出来ない。

 

「なあユウト!さっきのでっかい剣でアイツを真っ二つに出来ないのか!?」

 

「出来ないこともない。けど、あれは大きくする分威力もデカくなる。あの巨体を斬り裂けるだけの大きさともなれば、中のドロシーさんごと火だるまだ……!」

 

「……くそ!どうすりゃいいんだ!」

 

ギンタたちが歯噛みする中、ピノキオンは退屈そうにファスティトカロンを眺めていた。

 

「ねえポズン~。もう勝負は決まっただロ?ちゃっちゃと宣言しちゃってヨ!勝者ピノキオンってサ!」

 

「ふむ…これはもう終わりですね!勝者…」

 

「待って!様子が変よ!」

 

「「!!?」」

 

スノウの声に、全員がファスティトカロンを見上げる。見ると、ファスティトカロンは突然苦しみだし、うめき声を上げていた。

 

 

そして、ファスティトカロンの体を食い破り、レインドッグのトトが、ドロシーとポコを乗せて現れた。

 

「出られた……!!外に出られたよ~~~!!」

 

「ね、言ったでしょ?」

 

ポコは数年ぶりの外の世界に涙を流して喜ぶ。ファスティトカロンは断末魔の悲鳴を上げて消滅し、そのARMも砕け散った。

 

「ボ、ボクのファスティトカロンが……」

 

「あんたからはディアナの匂いがプンプンする。不快だよ、消えな。」

 

次の瞬間、トトがピノキオンの体を噛み砕いた。粉々になった体から、ピノキオンの頭が転がり落ちる。

 

「あ、あなたみたいなキレイなヒトにやられてうれしいヨ」

 

「………嘘つき」

 

ドロシーはピノキオンの鼻をへし折り、残った頭を無造作に投げ捨てた。

 

「ごめんねディアナ、また壊しちゃった。」



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罪と因縁

半月かかってほとんどダイジェスト……どうしたものかな、俺


6thバトル第4戦、連合軍からはスノウが出陣する。それに対するのは……

 

「お久しぶりです、姫様」

 

「!?あなたはマジカル・ロウ!?」

 

道化師のような風貌の男、マジカル・ロウはスノウにペコリと頭を下げる。彼は、かつて母を亡くし泣きじゃくるスノウに使わされたお守り役であった。彼はあらゆる曲芸を彼女に見せ、彼女を笑顔にしてんなみせた。

 

「あなた様とこのような形で再開するのは、正直、心が痛みます。あの頃は毎日遊んでいましたからね」

 

マジカル・ロウは懐かしそうにスノウに語りかける

 

「どうしてあなたがチェスなんかに!?あんなに優しくしてくれたじゃない!!」

 

「チェスに入ったのではなく、もとからチェスだったのですよ。私の主人はディアナ様、その命に従っただけ……」

 

「そんな……!」

 

 

「運命が二人を手繰り寄せた。勝負です、姫様!」

マジカル・ロウは見た目通りに曲芸のようなARMとトリッキーな戦法でスノウを翻弄するが、スノウはそれらを正面から打ち砕いていた。

 

「ネイチャーARM『シャボンレオ』!!!」

 

「『アイスドアース』!!!」

 

スノウは迫り来るシャボンでできた獅子を、氷の礫で粉砕する。

 

「ほう、一撃か。これはますます驚きましたぞ……」

 

マジカル・ロウはスノウの戦いをみて感心する。かつて

 

「……マジカル・ロウ。私、あなたと戦いたくない!!」

「……私もです、姫様。

しかしこれもディアナ様の命、戦わなければならないのです、姫様!!ガーディアンARM 『トランプソルジャーズ』!!!」

マジカル・ロウはARMを発動する。現れたのは、トランプのそれぞれのAを模した四体のガーディアンだった。

 

「どうしても、駄目なんだね……」

 

「………やれ」

 

マジカル・ロウの指令を受けたトランプの兵隊達は一斉にスノウに襲いかかる。

 

「たくさんの……ユキちゃん!!!」

 

スノウはユキちゃんこと『スノーマン』達を呼び出し、トランプソルジャーを押し潰す。

 

「今だ、『マネっこメダリオン』!!!」

 

次の瞬間、スノウの頭上に黒いスノーマン達が現れ、スノウに降り注いだ。

 

「な、なんでユキちゃんが!?」

 

「マネっこメダリオンは相手の発動したARMの能力が使うことができるのです。トランプソルジャーは囮だったのですよ。ガーディアンARM『ナイトメア』!!!」

 

マジカル・ロウはすかさずARMを発動する。現れたのは、所々に目や鋭い牙の生えた口があるつぎはぎだらけの玉の群れという、異様な姿のガーディアンであった。

 

ナイトメアは自身の体を分解し、四方八方からスノウに襲いかかる。

 

「『ウンディーネ』!!!」

 

ウンディーネの起こした激流は、ナイトメアを一つ残らず押し潰し、ぐしゃぐしゃになったナイトメアは消滅する。

 

次の瞬間、突如ウンディーネとスノウのリンクが切れ、ウンディーネは消滅する。気がつくと、スノウは半透明の球体の中に囚われていた。

 

「まさかナイトメアすら一撃とは……本当にお強くなられましたね、姫様。」

 

マジカル・ロウはスノウに歩み寄る。その顔はどこか悲し気な笑みを浮かべていた。

 

「しかし、ナイトメアすら囮だったのですよ。私の本当の目的は、あなたを倒すのではなく、あなたをディアナ様のもとへ連れて行くこと。」

 

マジカル・ロウはメルの面々へ振り替える。

 

「これもディアナ様の命、姫はレスターヴァに連れて行く」

 

「そんなの嫌だよ!ギンタ!!ギンタぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「スノウーーー!!!」

 

『姫様は頂きましたよ、メルの皆様』

 

そう言い残し、マジカル・ロウはスノウを連れて消え失せた。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「おい、ヤベーぞアニキ!!スノウ姫が!!」

 

「ん?お、おう」

 

「……どうした、アニキ」

 

「いや、やっこさん、えらく悲しい顔してんなって思ってな……」

 

「………?」

 

◆◆◆◆◆◆

 

6thバトル最終戦、連合軍からはメルのリーダー ギンタ。対するのは、これまでにギンタと二度戦い、ナイトにまで登り詰めた元ルーク兵のイアンが、三度目となる激闘を繰り広げていた。

 

イアンはかつて破れた『バブルランチャー』を三日月型の投擲具、『ムーンフォール』によって相殺し、以前よりも手数と再生力を増した『オクトパスⅡ』によってギンタを攻め立てる。

 

(恐ろしく強くなってやがる。……しかし、なんだあの毒々しいオーラは!?憤怒?悲愴?)

 

「ギンタ、おめー、自分自身に対して怒りを感じたことはあるか?」

 

「……?」

 

「オレっちには今許せないものが3つある。1つ目、オレっち自身だ。第二次メルヘヴン大戦の開戦の日、オレっちはファントムの命を背いてお前に会いに行っちまった。…そのせいでギドが……」

 

「ギドってあの時お前といっしょにいたポーンの女のコか?何があったんだ!?」

 

「蟲にされちまったよ」

 

「蟲!?どういう事だ!?」

 

「制裁さ。ギドは蟲にされちまって言葉も喋れない。」

 

「……っ!」

 

「2つ目……ギンタ、お前だ。

ダークネスARM 『悪魔の絆』!!!」

 

ギンタとイアンの手首が不気味な鎖で繋がれる。

 

ジャラ「逃がさねぇよ」

 

「悪魔の絆だと!?なんて危険なARMを使いやがる!?」

 

「どういうことですか?」

「あれはただの鎖じゃねぇ!鎖に繋がれた者の魔力が血となって流れ落ちるんだ!!術者だって関係ねぇ!長時間つながれっぱなしだとどちらかが……死ぬ!」

 

「聞いたギンタン!!早くアリスで消しなさい!!」

 

「よし!バージョン④……」

 

「させるかよ!『嘆きの分銅』!!!」

 

張り付けにされた女という痛々しい装飾の分銅がギンタを押し潰す。

 

「ぐっ……ぅあ!!」

 

「いいザマだな……2つ目の理由を教えてやる。おめーがオレっちに勝っちまったって事さ」

 

イアンは鎖を引っ張り、ギンタを引き寄せ殴り飛ばす。鎖から垂れた血が辺りに飛び散る。

 

「おめーにわかるか?大切なモノを失ったっていう気持ちが!あぁ!?わかるのかよギンタぁ!!!」

 

「……俺にだってあるさ。俺はあの時約束したんだ!スノウを助けるって!!」

 

ギンタは『ハンマーアーム』でイアンを殴り返す。

 

「バッボ バージョン④『アリス』!!!」

 

「やれやれ、またあの姿になるのか……」

 

浄化の力を備えたアリスによって呪いの鎖が砕ける。しかし、お互いに多くの魔力を失っていた。

 

「ちっ…!!」バッ

 

イアンは巨大な扇のARMを両手に装備する。扇を振るうと突風が発生し、ギンタを吹き飛ばした。

 

「3つ目……ギドをあんな姿にした、チェスの兵隊だ」

 

「おかしいだろ!!じゃあなんでまだチェスにいるんだ!?」

 

「……ギドを、元に戻してやりたいからさ」

 

「お前の気持ちはよくわかる。でもお前は間違ってる!そんなにギドって子が大切なら、なんでチェスになんて入った!?6年前の戦争で、チェスがどういう集団かわかってたのに、なんで入ったんだ!!

お前の間違いはそこから始まってるんだ!!イアン!!」

 

「うるせえええッ!!『アームブレイク』!!!」(わかってるんだよそんなことは!でも、もう戻れねぇんだよ!!)

 

イアンの服を突き破り、大量の凶器がギンタに降り注ぐ。それをギンタはクッションゼリーによって全て無効化してみせた。

「あんたはもうわかってる。だから自分が一番許せない」

 

「それ以上言うんじゃねええええええええッッ!!!ガーディアンARM!!『ペリュントン』!!!」

 

「バッボ バージョン③!!『ガーゴイル』!!!」

 

石像の悪魔と合成魔獣が対峙し、片方は口、もう片方は胸部を開き光線を放つ。ありったけの魔力が込められた光線は正面からぶつかり合いスパークする。

 

「お前は強くなった、イアン。でもそれはきっと怒りで強くなったんじゃない。ギドを思う気持ちで強くなったんだ。」

 

ガーゴイルの光線が徐々にペリュントンの光線を押しやり、ついにその胸部を撃ち抜いた。ペリュントンは断末魔の悲鳴を上げて爆発する。

 

ペリュントンが消滅すると同時に、イアンは仰向けに倒れた。

 

「……魔力が……尽きた」

 

「お前の道はもう決まってる。ギドにひどいことしたやつ、倒すんだぜ!」

 

「……説教してんじゃねぇよ、バカヤロウ。……だが、寄り道しちまったらしいな。」

 

イアンは仮面を外す。その顔は晴れやかなものだった。イアンはナイトの証であるピアスを外し、放り捨てた。

 

「こいつはもういらねぇや。命をかけて取り戻してやる。オレっちの、大切なモノ」

 



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決戦と水面下

ウォーゲーム、最終決戦。レギンレイヴ城にはメルヘヴン各地から大勢の人々が勝負のゆくえを見届けようと集まっていた。

 

「ヴェストリから来ました!頑張ってください!」

 

「聖女様ーー!!」

 

「ルベリアから来たぜ!」

 

「ボス!ドラゴントライブの皆さん!応援してます!」

 

次々と声援を送られる連合軍の戦士たち。そんな中、クロスガードナンバー3、ガイラは息を乱し仰向けに倒れていた。戦士たちの最後の修行をつけるために、全員分の修練の門を一晩とはいえ発動させ続け、魔力も体力も使い果たしたのである。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……、ゥオ゛ッ」

 

「大丈夫か?3番目の男ガイラ」

かつてのクロスガードナンバー2、現『龍の紡ぐ絆』の教官、アランが葉巻を噴かしながら尋ねる。

 

「だ、大丈夫ではない!しかし……あやつらは強くなっておるか、アラン!?」

 

ガイラの問い掛けに、アランは戦いに赴く彼らの顔を見回し、核心を持って答える。

 

「ああ、立派なもんだぜ。勝てる……いや、絶対に勝つ!!」

 

そこへ、審判のポズンがゆっくりと歩み出てくる。

 

「皆さん、おはようございます。いよいよラストゲームですね。正直ここまで来るとは思いませんでした。敵ながら天晴れ!ですよ……

それでは!フィールドを!!!」

 

ポズンは感傷深げに頷き、そして片手を勢いよく挙げる。すると、チェス盤を模したリングが城の広間の中央に現れた。

 

「最後の舞台っすね…」

 

「ああ!」

 

 

『『『メル!!!』』』

『『『メル!!!』』』

『『『メル!!!』』』

 

『『『ドラゴントライブ!!!』』』

『『『ドラゴントライブ!!!』』』

『『『ドラゴントライブ!!!』』』

 

メルヘヴンに生きる人々の、これまで戦い抜いてきた戦士たちへの賞賛、そしてその勝利を願う大歓声が城に響き渡る。

「その大きな期待も、このメンバー達はきっと打ち砕いてくれるでしょう。

 

最後にして最強のチェスの兵隊!出場!!!」

 

現れる、最後のチェスの兵隊達。しかしその中に、ファントムとペタの姿はなかった。

 

「……ファントムは?」

 

「ペタもや」

 

「遅れてくると言っていました。皆さんが戦いで勝ったらきっと出てきますよ」

 

ゾディアックの一人、ロランがニコニコと答える。

それを聞いた連合軍の面々は微かに顔を曇らせた。

 

「それでは第1試合!戦士は前へッ!!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

レスターヴ城。クイーンの魔力によって天高くを浮遊する城の門を、チェスの兵隊ポーン兵が番をしていた。

 

「おーい、交代だ」

 

「お、すまねぇ。ウォーゲームはどうだ?」

 

「今から第1試合が始まるころだ。あーあ、俺も見たかったぜ……」

 

「仕方ないさ。ファントム様の命令だぜ?お前の分まで俺が見てきてやるよ。」

 

「ちっ、他人事だと思いやがって。だいたいこんな空の上に誰が来るって…………あん?」

 

そこまでいいかけたところで、ポーン兵の一人は視線を門の先に向ける。

 

「ん、どした?」

 

「おいあれ、誰か来るぞ」

一人が指を指した方を見ると、遠くから一人の男が城門に向かってゆっくりと歩いて来ていた。

 

「おいてめえ、何の要だ?」

 

ポーン兵は手に持つ槍を向けて男に尋ねる。それに対し、男は涼しい顔であっけらかんと答える。

 

「いやなに、この城に預りものがあってね、ちょいと受け取りにきた次第だ」

「預りものだと?この城がいま誰のものだかわかってんのか?」

 

「ああ。だがなにせ急なことだったもんでアポ取る暇もなくてね。その代わりと言っちゃ何だが……」

 

男はそう言うと左腕をゆっくりと正面に向ける。すると、男の両腕に龍の頭を模した籠手が現れ、その口に光が集まる。その時、門番の一人がその顔を思い出した。

 

「こ、こいつ!?ライモ…」

「ライト版、“スターライトブレイカー”!!!」

 

気づいた時には既に遅く、放たれた光線は城門を粉々に吹き飛ばし、門番や周囲にいたチェスの兵隊達は何が起きたのかもわからぬまま光の中に消えた。

 

「ごめんくださいってこった」

 

その惨劇を作り出した張本人、雷門竜也はニヤリと口角をつり上げた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

事は全日の夜に遡る

 

6thバトルに勝利し、帰還してきた連合軍。その前に、ファントムが残りのナイトを引き連れ宣戦布告に現れた。

 

「あれはクイーンがやったことだからボクにはどうしようもないよ。直接クイーンに会いにいくしかないね。」

 

「……………ほ~ん♪」ニタァ

 

そして、ファントムが戻って後……

 

「つーわけで、お望み通り殴り込みに行こうと思います」

 

竜也の言葉にそこにいた全員が呆気にとられて声も出なかった。

 

「うん、その反応はわかるがまあ聞け。明日の最終決戦、ファントムは残りのナイトを引き連れてこのレギンレイヴ城にやってくる。その時、チェスの戦力はクイーンとファントムに大きく二分される。その瞬間を見計らい、チェスを双方から同時に叩く。」

 

「………理屈はわかった。だが、どうやってレスターヴァまで行く。今城は跡形もなく消えちまってるんだぞ?」

 

「それについては大丈夫だ。おい、」

 

竜也が呼び掛けた先にいたのは、先ほどギンタと激戦を繰り広げたイアンだった。

 

「イ、イアン!?」

 

「ようギンタ、さっきぶりジャン」

 

 驚くギンタに対し、イアンはあっけらかんと答える。

 

「帰る前に声をかけといたんだ。こいつの持ってるアンダータをこっちにコピーした。これでチェスの本拠地までいける。」

 

竜也はそう言ってアンダータのリングを見せる。

 

「イアン……ありがとな!」

「へっ、なぁに。最後に戦った相手に塩を送るのも悪くねぇと思ったのさ。じゃ、オレッチはもういくぜ」

 

 ギンタは一瞬複雑そうな顔をするが、すぐに笑みを浮かべてイアンに例を言う。それに対し、イアンもまた笑みを浮かべて去っていった。

 

「よーし!そうとなればさっそく……」

 

「いや、ギンタ。お前はここに残れ」

 

 やる気十分なギンタに対し、竜也は待ったをかける。

 

「な、なんでだよ!おれだって……」

 

「スノウ姫を助けたい気持ちはわかる。だが、むこうさんはお前との決着をお望みだ。いないとわかれば必ずかんどられる。それに、たとえファントムが抜けても向こうにはまだクイーンがいる。これまでのゲームには参戦していない俺のほうが動きやすいんだ。わかってくれ」

 

 食い下がるギンタだが、竜也の言い分に口をつぐむ。確かに竜也はウォーゲームにこそ出ていないが、ヴェストリやカルデアでのチェスとの戦いで、彼が自分よりもはるかに強いことは重々感じ取っていた。

 

 「心配するな。スノウ姫は必ず無事に助け出す。だからギンタ、ファントムはお前に任せたぞ」

 

 そう言って、竜也はギンタに拳を突き出す。

 

「ッ!おう!!」

 

 それに対し、ギンタは自分の拳を竜也の拳に合わせることで答えた。

 

「クハッ、よし!明日が文字通り最終決戦だ!さあお前ら、世界を救うとしようじゃねぇか!!!」

 

『『『おおーーーーーーッッッ!!!!!』』』

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

そして現在、レスターヴァ城にて、

 

「ゲホッ……兄さん。ちょっとは考えろよ!この城人のなんだぞ!後で損害賠償でも要求されたらどうすんだ!」

 

「心配するな。この状況だ、向こうも多少のことは目ぇつぶるだろ。最悪全部こいつらがやったことにすればいい」

 

「相変わらずタチ悪いなあんた……」

 

舞い上がった土煙を払いながら現れたヴァーリが小言を言うが、平然と罪を擦り付けようとする竜也に、今さらながら彼の人間性を再認した。

そうこうしている間に、異常に気づいたチェスの兵隊たちがぞろぞろと城門に集まっていた。見渡せば、そのほとんどがポーン並びにルーク兵であった。

 

「おーおー、随分集まったなー。アリみてぇに入り口つついたらぞろぞろと。」

 

「て、てめえら何者だ!こんなマネして、生きて帰れると思うなよ!」

 

集まったチェスの一人がいきり立ち声を上げる。それに対し、竜也はニタァ~と笑みを浮かべ

 

「ドーモドーモ、チェスの皆さん。わざわざ集まってもらったとこ悪いが………」

 

再びキャノン砲に魔力を充填させた。

 

「ッ!?ヤべ…!!」

 

「アッハッハ、クタバレ☆」

 

再び魔砲(誤字にあらず)をブッパなした。



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突入と巡り合わせ

 
レスターヴァ城突入部隊メンバー
 竜也、ヴァーリ、ドロシー、朱乃、木場、ゼノヴィア

外部待機
黒歌、白音、アクア、コレッキオ、カノッチ


    

竜也said

 

「ギ、ギャアアアアアアアアアアアア!!!?」

 

「グギャアアアアアアアアア!!!」

 

「と、とめろぉ!!こいつらをとめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ

ッ!!!」

 

「ハハーー!!去ねやぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 チェスの雑魚共を蹴散らしながら俺達突入部隊は城の中を進んで行く。最高戦力が最終決戦の最中、突然の襲撃を受けたチェスの兵隊は総じてパニックに陥り、中には反撃に出る者もいたが、皆一瞬で蹴散らされた。   

 

「陛下、雑魚共は我々にお任せを!先にお進みください!」  

 

「ッツ!わかった、死ぬなよ!!」

 

 ゼノヴィア、木場の二人が、続々と集まるチェスの兵隊を蹴散らし立ち塞がる。俺達は振り向くことなくその場を走り去った。

 

「城の最上階から膨大な魔力を感じる!クイーンとスノウ姫はそこだ。いっきに突っ切るぞ!!」 

 

『『『了解!!!!』』』

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

レギンレイヴ城

 

竜也達がチェスの本拠地を進撃する最中、こちらでも激戦が繰り広げられていた。

連合軍からの一番槍は、メルからギンタの親友にして植物使い、ジャック。対するは、頭に小さな木を生やした植物使いの老人、ヴィーザル。奇しくも植物使い同士の宿命の戦いとなった。

 

「行くっすよ!!」

 

ジャックは続行で肉弾戦を仕掛けるが、ヴィーザルはヒラリヒラリと全ていなす。ジャックは直ぐ様『大地のスコップ』を展開、ようやく一撃を与えることに成功する。そのスコップを見たヴィーザルは目の色を変えた。

 

「お主……そのスコップをどうやって手に入れた?」

 

「……?これは父ちゃんの形見っス。」

「っ!?……ほう、なるほど……やはりお主ジェイクの息子か…!」

 

6年前のウォーゲーム、ジャックの父であるジェイクは植物使いとしての腕を見込まれ、ダンナことギンタの父にクロスガードにスカウトされ、ともにウォーゲームを戦った。その中でヴィーザルと戦い、そして敗れた。

 

「やっぱり父ちゃんはウォーゲームに参加してたんだ!……そして、ジーちゃんが父ちゃんの仇!!」

 

「……そうか、ジェイクは死んだか……」

息子(ジャック)から好敵手(ジェイク)

の死を聞かされ、ヴィーザルは何処か寂し気な目で空を見上げ、そして再びジャックへ顔を向ける。

 

「ジェイクは強かったぞえ。最後はワシが勝ったがのう!『シードキャノン』!!!」

 

ヴィーザルの袖から幾つもの筒状の枝が伸び、果実の弾丸が連続で発射された。

 

「なんの!!よっ!」

 

次々迫る果実弾を、ジャックは持ち前の反射神経(ドロシー曰くサル並み)によって軽々とかわす。目標を失った果実弾は次々フィールドに着弾し、小規模の爆発を起こしていた。

 

「ジャックくん頑張ってーーー!!」

ズテッ!!

 

突然の黄色い歓声にズッコケるジャック。見るとそこには、ウォーゲーム一回戦と三回戦で戦ったチェスの兵隊【ルーク】、パノの姿があった。以外な相手からの応援に、ジャックはおろかその場にいた応援団の面々すら唖然となる。

 

「ね、姉ちゃんなんであんなブサイクを……いや、それ以前に敵を応援すんなっつの!!」

 

姉の突然の奇行に弟にして同じく【ルーク】兵のレノがツッコミを入れるが、当の彼女は真剣な顔で答える。

 

「全く、失敬な!

ジャックくんは、ここにいる中で、ギンタよりも、タツヤよりも、ナナシよりも、アルヴィスよりも、イッセーよりも、ずーーーーーーっとステキよ♥」

 

 

 

 

『『『・・・・・・・・・・・・はい?』』』

 

静まり帰る一同。それだけでなく、パノは決戦の前夜、格上のヴィーザルに対してまでジャックを殺さないように釘を刺していたのだ。つまりはそういうことである。

 

未だに辺りが唖然とするな中、イッセーが声を上げる。

 

「おらジャック!ぼさっとすんな!!まだ戦いの途中だろうが!お前に惹かれた女の子が応援してくれてんだ!負けられねぇ理由が一個増えたぞ!!」

 

「パノさん……イッセーの兄ぃ……」

 

イッセーに渇を入れられ、ジャックはスコップを握りしめる。ジャックの修行を先導する中、いつの間にかイッセーは彼の兄貴分のような存在になっていた。イッセー自身も自分に弟分が出来たことに、そしてその成長を目にして嬉しさを感じでいた。

 

「フェッフェッフェッ、青春じゃのう。……じゃが、よそ見は禁物じゃよ!」

ヴィーザルは再びシードキャノンをジャックに発射する。

 

「オ…オイラ…オイラ!!」

 

それに対し、ジャックはスコップをバットのようにフルスイングし、果実弾をひとつ残らず空の彼方へかっ飛ばした。

 

「この試合!絶対勝あああああああああつ!!!!」

 

「おい、魔力が上がったぞ」

「現金なやっちゃで……」

 

「カッハッハ!!いいぞジャック!!」

 

ちょうどその頃、チェスの兵隊【ルーク】のロコと【ビショップ】のシャトンがアンダータでレギンレイヴ城に到着した。(これに入れ違う形で突入部隊が襲撃を仕掛けた)

 

「ンニャ~、遅くなったニャ」

 

シャトンは呑気に毛繕いをする。その時、ジャックのかっ飛ばした果実弾の一つが……

 

「……んえ?」

 

ヒューーンボカァァァァァン!!!

 

二人が降り立った屋根に着弾した。

 



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世界樹と炎魔

今回初めて特殊タグを使ってみました。どうっすか?


 

「フェッフェッフェッ、さすれば…これならどうじゃ?」

 

シードキャノンを全ていなされたヴィーザルだったが、表情一つ変えずに直ぐ様次のARMを発動する。腕に着けた数珠状のARMが輝くと、フィールドの石畳の隙間から植物の茎が次々と伸び、先端にスイカほどの黄色い実を着けた。

 

「なんだアレは……草?」

「油断するなよジャック!!」

 

突如生え茂る謎の植物に警戒するメルの面々。それに対し、ジャックは何処からか取り出した伊達眼鏡をかけてその植物をまじまじと観察していた。

 

「ふむふむ。こいつは…植物マスターのオイラでも、見たことがないっスねぇ……」

 

ジャックが指先で植物の実の部分に触れると…

 

ボカァァァン!!!

 

「のぎゃーーー!!!」

 

実は爆発を起こし、ジャックは吹っ飛ばされた。その威力は先ほどのシードキャノンの果実弾よりも上である。

 

「不用意に敵の技に触るなサル!!」

 

「アホォォォォォォォォ!!!」

 

ジャックの軽率な行動にキレるイッセーとアラン。せっかくさっきまでかっこよかったのに、台無しである。

 

「だ、大丈夫っス…この植物、一撃で根絶やしにするっス!」

 

ジャックは素早く起き上がると、大地のスコップを地面に突き刺した。

 

「“アースウェイブ”!!!」

 

波打つ大地の衝撃は一直線に進み、巻き込まれた植物は次々と連鎖爆発。結果、ジャックの宣言通り一本残らず根絶やしとなった。

 

「おお!草がいっぺんに吹っ飛んだ!!」

「ジャックすげぇ!!」

(アースウェイブもさらにパワーアップしてるな……やるなジャック!!)

 

「おお、ジェイクと同じ事をしよる。ワシの『グラスボム』を一発でなくしおった。

ならばワシも、あの時と同じ事をしようかのぉ」

 

ヴィーザルは手に持つ木の杖の葉の中をまさぐり、一つの指輪を取り出した。

 

「ネイチャーARM………

 

 

 

 

 

ユグドラシル』!!!」

 

ヴィーザルはARMを宙に放る。すると、ARMから膨大な魔力が放出され、石畳を突き破り一本の樹木が発生。やがてそれは急速に成長し、天高くそびえ立ち、フィールドからはみ出さんばかりの大樹となった。

 

「フェッフェッフェッ……ここまでおいで。」

 

 「捕まえちゃる!ロッククライミング!!!」

 

ヴィーザルは老体にも関わらず、身軽な動きでユグドラシルを登って行き、ジャックも負けじと追いかける。

 

 

「(ジェイクよ、6年前に戻った気分じゃよ……)」

 

 ヴィーザルは枝に飛び移り杖を振るう。すると、ユグドラシルの枝に茂る葉が一斉にジャックに襲いかかった。

 

「“木葉乱舞”!!!」

 

「あだっ!?あだだっ!おのれジーちゃん!“アースビーンズ”!!!」

 

ジャックは木の隙間に豆を埋め込み、大地のスコップの力によって急成長させ、豆の木のツタはヴィーザルに巻きつき拘束した。

「およよ、これもジェイクがつこうたわ。親子よのう。さすれば……『デッドリーフィールド』!!!」

 

 ヴィーザルは慌てることなくARMを発動する。するとヴィーザルの周りに円形の幕が現れ、その中に入ったツタは一瞬にして枯れ落ちた。

 

「デッドリーフィールドはあらゆる植物を腐らせる。かと言って、ワシの頭の木は腐らんがのう」

 

 「クソッ!(ダメなのか?あんなに修行したのに……!!)」

 

 「がんばれジャック!!」

 

 「あきらめるな!オヤジさんの敵を討つんだろうが!!」

 

 得意技を封じられうつむくジャックだが、ギンタとイッセーの声援を受け顔色を変える。

 

 「(ギンタ…兄ぃ……)二人の言うとおりだ…!これがオイラの最後の戦いっス!!」

 

 「フェッフェッフェ、返り討ちにしてくれるわ。“スネーキーボウ”!!!」

 

 ヴィーザルが再び杖を振るうと、ユグドラシルの枝が蛇のように蠢き、ジャックに襲い掛かった。

 

 「ガーディアンARM!!『メヒィトス』!!!」

 

 それに対し、ジャックは自身の()()()()()()()()であるARMを発動させる。現れたのは、巨大なハエトリソウの姿をしたガーディアン。メヒィトスは迫り来る枝の群をいともたやすく噛み砕いた。

 

 「なんじゃと!?」

 

 ヴィーザルが驚くのをよそに、全ての枝を噛み砕いたメヒィトスはヴィーザルへと迫る。

 

 「ふむ……さすれば、」

 

 それに対し、ヴィーザルは幹から飛び降り、メヒィトスの口に飛び込んだ。

 

「自らメヒィトスの中へ!?」

 

「何か来るぞジャック!!」

 

『フェッフェ…、メルの連中は察しがよい

 

 行くぞ!!ガーディアン!!! 

枯れ木の鳥(ブライディングバード)』!!!」

 

 その瞬間、メヒィトスは一瞬にして腐り落ち、メヒィトスを突き破り、中からその名のごとく枯れ木でできた巨鳥が姿を現した。

 

「ブライディングバードは敵の全ての植物を腐らせる。打つ手なしじゃろ。おぬしの父もこのガーディアンの前に成すすべなく敗れた。チェックメイトじゃ」

 

「……まだ負けじゃない!オイラにはまだARMが残ってるっッス!!」

 

 ジャックは切り札の一つ、カルデアで授けられた左手に着けた指輪のARMを掲げる。

  

 

「…ジャック、やはり()()を使うつもりか」 

 

「アニキ(分身)?」

 

「アレとは何じゃ!?」

 

竜也(分身)の呟きに、観戦していた連合軍の視線が集まる。

 

「さっきのメヒィトスともう一つ、カルデアで貰ったARMを使うつもりだ。あまりにも強力で、制御が難しく、その危険性ゆえ長老も封印するしかなかったARM……その名は…」

 

 

 「いくっスよ!火のガーディアン!!!

鬼火属 フォレ!!!」 

 

 

 

 

 

ドロンッ!!!

 

 

 

 

「ハーイ!呼ばれて飛び出てボヨヨヨ~~ン!」

 

 

 

「え?」

 

「ひょ?」

 

『『『は???』』』

 

満を持して現れたガーディアン、鬼火属フォレ。それは想像とは裏腹に、妖精のベルとほぼ同サイズの、にやけ顔をした炎の魔人であった。

 

「恐ろしいARMって…」

 

「言うな、ベル」

 

「めっちゃキュートやん…」

 

「どの辺が危険?」

 

「いや、俺に言われても…」 

 

「イヤ、マジだぜ」

 

「ああ、あのARM、恐ろしい勢いでジャックの魔力を吸っておる」

 

アランとガイラの指摘のとおり、フォレはただ現々しているだけでジャックの魔力を次々と消費していた。

 

「ボス、ご命令を!」

 

「あ、あいつをやっつけるっス!できるっスか!?」

 

「ラジャッ!!」

 

フォレは小さな体で一すばやくブライディングバードに接近し、手を触れる。その瞬間、ブライディングバードは一瞬にして全身が燃え上がり、灰も残らず消え去った。

 

「なんと…じゃが、たとえその炎でも、ユグドラシルは燃やせん!!」

 

「ぜぇ…ぜぇ…そうっスよね……だからこれも使うっス!!!

 

ネイチャーARM!!『豊穣の太陽光(サンシャインエナジー)!!!

 

ジャックは竜也からもらった最後のARMを天に掲げる。すると上空に輝く太陽の輝きが増し、暖かな光がジャックとフォレを包みこんだ。

 

「うおおおお~~~!!!力が湧いてきたぞ~~~!!!」

 

「『豊穣の太陽光』、このARMは日の出ている間しか使えないけど、オイラのARMの力を倍増するっス!!」

 

「な、なんじゃと!!?」

 

「だが、持続させるのに魔力を消費し続ける。フォレだけでも相当の魔力を消費するのに、最悪命を落としかねない…!!」

 

「ジャック…!」

 

 

「いっきに決めるっス!!フォレーーーーッッ!!!!」

 

「ハ~~~イッ!!!」

 

ジャックの全身全霊の魔力を受け取ったフォレの炎は、瞬く間にユグドラシルを包み、人々の嘆きを喰らい続けてきた魔性の樹は、やがて灰塵に帰した。

 

「ま、まさか…ワシのユグドラシルが……」

 

「フォレ…!最後はあの木っス!!!」

 

「ハイ~~~!!!」

 

ジャックの指令を受け、フォレはヴィーザルに向かって一直線に飛ぶ。

 

「ヒ、ヒィィィィイィィ!!?」

 

 

ボン!!

 

「はぁ……」ドシャ!!

 

頭の木を燃やされたことで、ヴィーザルは力なくその場に仰向けに倒れた。

 

「ワ、ワシの頭の木が魔力の源と気づいておったか…」

 

そう呟くヴィーザルに、ジャックはゆっくりと歩み寄る。

 

「……ジーちゃん」

 

「なんじゃい」

 

「オイラ、人を不幸にするユグドラシルなんかなくても、いつかきっと、天までとどく植物を育てて見せるっス!それがオイラと…父ちゃんの夢だから!!!」

 

「……フェッフェ、ワシの完敗じゃ。おぬし、ジェイクを越えたぞ」

 

「勝者、メル!ジャック!!!」

 

 

『『『『『ワアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』』』』』

 

 

「やったぁぁぁぁぁ!!!ジャックくぅ~~~ん♥♥♥」

 

「姉ちゃん……」

 

「うおおおおおおお~~~~!!!ジャッグゥゥゥゥゥゥゥウゥゥゥ!!!」

 

「「イッセー君……グスッ」」

 

 

「(母ちゃん。父ちゃんの敵、討ったっスよ!!)」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

北の離島・パヅリカ

 

「見てるかい、父ちゃん?あの子、あんなに立派になったよ……」 

 

野菜の供えられた墓の傍らで、ジャックの母は、空に映る息子の姿に涙を流した。



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有限と永遠

 

ウォーゲーム最終決戦、第一戦目はジャックが辛くも勝利を収めた。

 

「来いよロラン、もう一度勝負しよう。」

 

アルヴィスの指名を受けたロラは笑顔で応じる。彼は、以前の戦いで敗れた相手にして、自身と同様にファントムから不死化の呪い『ゾンビタトゥ』をその身に刻まれた存在であった。 

 

最終決戦・第二戦 

 

◆チェスの兵隊【ナイト】▼ロラン▼

 

◇メル▽アルヴィス▽

 

「開始!!」

 

先に仕掛けたのはロラン。開始とどうじに爆発石のARM『ストーンキューブ』を一斉にアルヴィスへ放つ。それをアルヴィスは顔色一つ変えずに、全て回避して見せた。

 

「…こんなものか?」

 

「動きが全然違う。成長なされたのですね。

では、こうしましょう。『レイピアウィップ』」

 

ロランが続いて繰り出したのは、石でできた細剣のARM。それを見て近接戦を予想したアルヴィスは13トーテムポールを”ロッドバージョン”にしてかまえる。

 

「いきまーーーす。せーー……のッ!!!」

 

ロランは相変わらず変化のない笑顔で石の剣を振るう。すると刀身がまるで鞭のように撓りながら伸び、不意を突かれたアルヴィスの肩を襲う。さらに直後、刀身に触れた部分が小さな爆発を起こした。

 

「ぐっ!!(剣ではなく、爆発を生む鞭だったのか!)」

 

「どんどんいきますよ♪」

 

ロランはそこから連続で攻撃を仕掛ける。一撃の爆発は小規模だが、それでも連続で喰らうと危険だ。それに対し、アルヴィスはロッドでいなしながら一瞬の隙を突き、爆弾石の刀身を掴み無理やり引きちぎった。

 

「ムチャな人ですね」

 

「助けてやりたいんだ、スノウを。…俺にはもう時間が残り少ない。タトゥがほぼ全身に廻りつつある。」

 

「喜ばしいことじゃないですか!ワーイ♪ 

私のはまだ時間が必要ですからね。実にうらやましい」

 

「ふざけるな!!」

 

悲痛な顔をするアルヴィスに対し、本気で賞賛と羨望をむけるロラン。それに激高し13トーテムポールを放つアルヴィスだが、ロランはそれらを軽々と避ける。

 

「ふざけてなどいませんよ。私は本気です。永遠の命が手に入るのですよ?老いることもなく。

 

そう、ファントムのように」

 

 ロランは幼少時、両親を亡くし天涯孤独の身になり、物乞いをして生きていた。この世界に孤児など珍しくもない。道行く人々は、彼を見向きもしなかった。いや、気にも停めていなかった。まるで道端の石ころや雑草のように 

 

 そんな彼に、手を差し伸べたのがファントムだった

 

 それ以来、彼はファントムの元で直々に教育を受け、手巣の尖兵として育てられ、彼の思想に感化されていった。

 

「全ての人間がそんなものに憧れるわけじゃない!お前は生ける屍になりたいのかロラン!!!」

 

その時、最高速に達した13トーテムポールの一本がロランの肩を掠めた。

 

「限りある命を、大切な人と歩むことに、人間の意味があるんだ」

 

「違いますよ。大切な人と限りなく歩むことの方が素晴らしいのです」

 

二人は互いの信念をぶつける。相反する心情は交わることはない。ゆえに戦うしかない。

 

「…理解できません。永遠の命が手に入れば、大切は人が死ぬ悲しみからも開放されるのですよ?」

 

「………」

 

「わかってくれるまで戦います。『エル・ダンジュ』!!!」

 

ロランの背から純白の翼が生え、ロランは宙に舞い上がる。直後に、大きく羽ばたいた翼からナイフのごとき羽根が無数にアルヴィスへと襲い掛かり、アルヴィスは盾のARM『ガーデス』によってそれを防ぐ。

 

「ファントムはゆがんでいる!なぜそれに気づかない!!!」

 

アルヴィスは13トーテムポールをパーツごとに分解することで空中の敵へと連続で射出する。奇してストーンキューブの意趣返しとなったそれは、ロランの翼を貫き、地に堕ちた後も休むことなく続いた。

 

「うおっ、直撃だよ…」

 

「あんな使い方が…」

 

観衆が固唾を呑んで見守る中土煙が晴れ、ロランはボロボロに成りながら、尚も立っていた。 

 

「…それでも好きなんですよ、彼が」

 

ロランは困り笑顔でそう言って、一つのARMを取り出した。

 

『そろそろだなぁ…』

 

「フェッフェ」

 

ロランは目を閉じARMに魔力を練り上げる。そしてゆっくりと目を開け、アルヴィスを正面から見据えた。

 

「あなたには、自分よりも大切なモノはありますか?」

 

「ある。メルヘヴンの平和だ」

 

アルヴィスは何の迷いもなくそう言った。

 

「私は、ファントムです。」

 

ロランもまた何の迷いもなく言い切った。

 

「ファントムが与えているのは愛情なんかじゃない!!永遠という名の束縛だ!!」

 

「……束縛でも、かまわない。私は、一人で生きるのも死ぬのも怖いのです!!  

 

 

コカトリス!!!

 

現れたのは、血走った眼を剥く巨大な怪鳥のガーディアン。

 

『ごげぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇぇ』

 

コカトリスは甲高い鳴き声とともに土煙のようなものを吐き出す。土煙を浴びたアルヴィスは触れた部分から徐々に石化していく。

 

「石化ブレスか!?」

 

「キャンディスのゴーゴンと同じ!?」

 

騒然とする外野と裏腹に、アルヴィスは依然として落ち着いていた。体が石になるのも厭わずに、限界まで魔力を錬り上げる。

 

「……人間は皆同じなんだよ、ロラン。」

 

そして、魔力をARMに乗せて一機に解き放つ。

 

ア・バウア・クー!!!!

 

アルヴィスの渾身の魔力を贄に、現れた骸の幽鬼(ア・バウワ・クー)。大きく開いた口から溢れる闇の中央に鎮座する眼球に気づいた瞬間、ロランはコカトリス諸共半透明のカプセルへ閉じ込められた。

 

「っっ!!?し、しまった!!」

 

「お前が出会っていたのがファントムではなくダンナさんだったら、同じ道を歩んでいたかもしれないな、ロラン」

 

 

 

ーーーーーーーーーバーストアップ

 

ゴンッッ!!!

 

ア・バウア・クーの瞳が光り、カプセルの中で爆発が起こる。圧縮された衝撃が無情に襲い掛かり、コカトリスは砕け散り、ロランもまたカプセルが砕けると同時に力なく地に堕ちた。コカトリスが消えたことで、アルヴィスの石化も解ける。

 

「ファン……ト………」

 

「勝者!!アルヴィス!!!」

 

「やったぁああ!!!!」

 

『『『『ワアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』』』』

 

観衆が沸き立つ中、連合軍の面々は、静かにアルヴィスを見つめていた。

 

「……アルヴィスはゾンビになることを心から望んでいねぇ。もし、ゾンビになりそうになった時、あいつは自ら命を絶つたろう。」

 

アランの思い言葉に連合、特に『龍の紡ぐ絆』の面々は言葉を失う。彼の背負う悲痛、そして覚悟を知ったからこそ、彼らは何も言葉が出なかった。 

 

そんな重い空気を打ち払ったのは、ギンタの声だった。

 

「そんなことさせねーよ!!あいつも仲間だ!!」

 

「仲間というか家来じゃな。今回のがんばりを踏まえて第3家来に昇格してやるかのう!ワッハッハ…アイタッ!?」

 

「聞こえてるぞ丸いの」

 

高笑いするバッボを戻ってきたアルヴィスが13ロッドでドツく。そんな光景に気が抜けたのか所々でクスクスと笑いが起こる。

 

その中で、リアスが神妙な顔で竜也(分身)に歩み寄る。

 

「……ねえ、タツヤ」

 

「ん?なんだ、リアス?今ヤツを見て、俺がお前らと生きる為に転生したことをいまさら後悔してるとでも?」

 

言わんとしていたことを言い当てられ、リアスは一瞬驚愕してすぐに苦笑いをうかべる。辺りを見ると、『龍の紡ぐ絆』のメンバー達も、竜也へと不安気な視線を集めていた。

 

「……本当に、あなたには何でもお見通しなのね」

 

「…はぁ、ったく。いいか?俺は分身だし本体(あっち)と合流したら他のやつらにもちゃんと言うが、とりあえずはよく聞けよ?」

 

誰かが唾を飲む。

 

「確かに俺は、お前たちと共に歩みたいがために人間を辞め、挙句に『逸脱者』なんつーわけのわからんモンになっちまった。寿命がどれくらいあるのか、正直寿命なんてものがあるのかすらわからん。いや、案外あっさりすぐに死んじまったりしてな。

ともかく、アルヴィスのヤツから見れば、俺は…いや、俺達はファントム同様に忌むべき存在だろうな。」

 

「ッ…なら!!「だが」……?」

 

「だが俺は、そのことを後悔なんてしない。今も、これから先もずっと。

確かに、俺は文字通り人の道からは外れた存在だろう。

 

だが、俺はお前達がいてくれるなら、ずっと俺でいられる。

 

大切なお前達がいてくれるから、俺は生きていられるんだ。」

 

 

「……タツヤ」

 

「そもそも、俺らとあいつらとじゃ経緯は似てても行き着く先が全く違う。何が正しくて何が間違ってるかなんて所詮は人の主観でしかない。同じ道を歩み、違う志を持った者がかち合ったら、どちらかが潰れて道を開けるしかないのさ。言っちまえば、こんなのは所詮俺のエゴだ……だからお前ら、」

 

『?』

 

 

 

 

「間違っても勝手に死ぬんじゃねぇぞ。

俺が俺でいるためには、お前らがいてくれなきゃならねぇんだ。

 

だから俺は、お前らより1日でも長く生きて、お前ら全員を看取ってから、一辺の悔いもなく笑って死ぬ。……それが俺の行き着く先さ」

 

 

「……もう、何よそれ」

 

「……自分勝手過ぎだろ、アニキ」

 

「そうだよ?俺は自分勝手だよ。なにを今さら?」

 

「……はぁ、もういいわ。あなたってヒトはもう…」

「一瞬でも気に病んだのがバカらしいぜ……」

「全く」

 

『『『…………はははははははは!!!』』』

 

 

 

「クハッ!……さて、長々と話しちまったが、向こうさんもそろそろ我慢の限界か」

 

竜也はそう言って敵陣に視線を向ける。すると残ったナイトの一人、骸骨の仮面を被ったキメラがステージへと上がり、倒れ伏すロランを蹴り飛ばした。

 

「それじゃ、そろそろ………

 

俺、行ってみようか」

 

そう言って竜也はステージへと飛び込んだ



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連鎖する憎しみと狂気

竜也(分身)side

 

 

「それでは、第三戦を開始します!!」

 

最終決戦・第三戦

 

◆チェスの兵隊【ナイト】▼キメラ▼

 

◇龍の紡ぐ絆【総司令官】▽雷門竜也▽

 

さて、久しぶりに俺の戦闘描写だ(分身だけど)。ここは張り切るとしようかねぇ

 

「タツやん大丈夫なんか?あのタツやん分身なんやろ?」

 

「アレは竜也のやつが一晩かけて練り上げた魔力を込めて造られた特別製だ。ちょっとやそっとじゃ消えやしねぇ。」

 

ちなみに、本体に魂と直接結びついてる神器こそ使えないが、元々身体に備わった発電能力や妖術、もちろんARMも使えるぜ?

 

「だが、それでもダメージを食らい過ぎたり、魔力を使い切ればただの髪の毛に戻っちまう。そう時間はかけられねぇ……問題は向こうだ」

 

アランは葉巻を付ふかしながら対戦相手のキメラを睨む。6年前のウォーゲームにキメラなどという者はいなかった。つまりこの6年以内にナイトにまで登り詰めたことになる。

 

「試合 開始ぃ!!!」

 

先に仕掛けたのはキメラ。魚とも悪魔とも付かない異形の魔獣どもを召喚し一斉に向かってくる。まぁ…

 

「かんけーないがな!!“並列エレキパンチ”!!!」

 

拳を突き出しその軌道へ向けて放電する。放たれた電撃は一直線に進み異形どもを纏めて消し炭にし、そのままキメラへと向かう。並大抵の奴らはこれで終了なんだが……

 

「おろ?」

 

今回はそうはならなかった。キメラは地面を叩き付け、その衝撃波で電流を分散させた。本体に比べて程度は落ちるとはいえ、それでも一瞬対応が遅れれば同じ運命を辿ったものを……

 

そんな事を考えている間に、キメラは俺の目前まで一瞬で踏み込んで来た。長い袖から異形の口へと歪んだ右腕が姿を現し、俺に向けられる…

 

「伸びろ棒」

 

ボカッ!!

 

「ッ?!」

 

『『『ええぇ!?!!』』』

 

「「「出た、不意討ち」」」

 

前に如意棒をやつの顔面にぶっ込んだ。いやー、久しぶりにキレイに決まったわ。

 

と、その衝撃でやつの仮面が吹き飛び、その素顔が明らかになる。

 

「ッ!?……お前」

 

「……この程度かい?ライモン・タツヤ」

 

仮面が外れたことで露になったその顔と声は、女のものたった。しかし、その顔の右半分は痛々しく焼け爛れ、それを覆い隠すように大小様々な無数の目玉が突き出していた。

「ふふふふふふ…あーーーはははははははははッッツ!!!ドラゴントライブの司令官ってのも大したことないねぇ!あの老人と同じだ!」

 

キメラは狂った笑い声を響かせ、再び異形と化した右腕をこちらに向ける。

 

「”ゴーストARM”を知ってるかい?」

 

「知ってるとも。自身の体を媒体に発動し、その性質上術者の体に多くの負担を掛け汚染する。ゆえに、禁断のARM。お前さん、どうやらその使い手らしいな。」

 

「ああそうとも!『ハウリングデモン』!!!」

 

異形の口から衝撃波が放たれる。わざわざ喰らってやる必要はないが、後ろには民衆がいる。彼らに防ぐすべはない。

 

「やれやれ、っと!」

 

俺は如意棒を振るい、放たれた衝撃波を打ち砕き、四散させる。その突風に呷られ、奴の異形と化した腕が露わとなった。

 

「なんだあの腕!?」

 

「キモチ悪い!!」

 

「人間じゃない……」

 

思わず漏れた民衆達の言葉に、キメラの顔は狂気を増す。

 

「…そうさ、私は人間であることを捨てたのさ。あの日から」

 

そうしてキメラは語りだした。自身の過去を

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

  

 

 とある教会で新郎と新婦が婚礼の儀を挙げようとしていた。新郎の名はマルコ。彼はかつてチェスの兵隊に身をおいていた。新婦の彼女はそれを知っていが、それでも彼のことを愛していた。

 

幸せの絶頂だった。だが、それは唐突に崩れ去る

 

突如教会に男達が大挙として現れた。

 

『チェスの残党がいたぞ!!』

『つかまえろ!!』

 

彼らはチェスの残党狩りだった。二人は組み伏せられマルコは拘束される。

 

『やめて!!マルコを連れて行かないで!!戦争はもう終わったじゃない!!』

 

『終わっているものか。チェスは皆殺しだ』

 

必ずもどってくる、彼はそう言った。

彼女は待ち続けた。毎日教会で祈り続けた。彼がもどってくるのを信じて

 

 

数日後、彼女の前にマルコを連れて行った者達がもどって来た。

 

『マルコは?マルコはどこ!?私のマルコ!!』

 

()()がマルコだ』

 

男達の一人が、彼女の目の前にナニカを投げ捨てる。

 

 

 

 

ソレは、指輪のはまった血塗れの薬指だった。

 

 

『いや…いやああああああああああああああああああああ!!!!!!』

 

それが何を意味するか、彼女はすぐに理解した。理解してしまった。彼女はソレを抱きかかえ泣き叫んだ。

 

『ヤツはチェスの残党のことを何もしゃべらなかった。次はお前を連れていく』

 

 

それから彼女は、毎日地獄のような拷問で嬲られ続けた

 

数ヶ月後、彼女は隙をついて男達から逃げ出した。しかし、拷問の末、彼女の体はもはや女とは言えない凄惨な状態だった。

 

幸せの絶頂から絶望の底へ落とされた彼女は、全てを憎んだ。最愛の人を奪った者達に、この世界に復讐することだけを考え生きてきた。

 

程なくして、彼女はチェスの参謀ペタと出会い、彼に見込まれゴーストARMを受け取った。

それから彼女は修練の門に身を投じ、自身の体を何年も掛けて戦闘用に改造していった。この世の全てへの憎悪を募らせて

 

自分の名を棄てた

 

女であることを棄てた

 

ヒトであることを棄てた

 

そして彼女は混沌の魔獣(キメラ)となった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「そして私はゾディアックに登り詰めたのさ」

 

キメラはそう言って舌に着けたナイトのピアスを見せる。彼女の話に辺りは騒然とする。

 

「そんな…そんな事って…!!」

 

「……なんか、かわいそうっスね」

 

「一部の連中だろう。チェスへの憎しみから魔女狩り的なことをしていたのは聞いてる。あいつもまた、戦争の被害者だ」

 

「同情はいらないんだよ、クロスガード!」

 

「しねぇよ。お前の愛する者を奪われた苦しみも、憎しみも、俺には到底想像出来ない。もし同じ事が俺にも起きたなら、俺も間違いなく狂うだろうよ。……でもな、」

 

俺は奴が話している間に練り上げた魔力を纏い、如意棒を構える。

 

「だからこそ、お前が俺の大切なモノに絶望を振り掛けるなら、俺はお前を全力で排除する。お前がどんな過去を背負っていようが関係ない。俺ぁ不毛な憎しみの連鎖に組み込まれるのは御免なんだ」

 

「上等さ!あんたのその大切なモノとやらも、醜くしてコレクションの一つにしてやるよ。かのギドとかいうポーン兵のようにね」

 

ギドの名が出た瞬間、俺の前にイアンが遮るように現れる

 

「おい、」

「下がれ魔源。ようやくはっきりしたぜ。キメラ……殺してやる!」

 

ゴンッ!!

 

会場に鈍い音が響く。俺が如意棒でイアンの頭をひっぱたいたのだ。

 

「下がるのはてめぇだ。ありゃ今は俺の獲物だ。筋の通らねえ真似すんじゃねぇ。この戦いが終わったら、後はお前の好きにすればいい」

 

「………わかったよ」

 

イアンは渋々頷くと、リングの外へ出て行った。

 

「さあさあ大丈夫ですね!?第三戦再開します!!」

 

「『オーガハンド』!!!」

 

再開早々、異形に歪んだ巨大な腕がこちらに向かってくる。俺は自分の髪の毛を数本引き抜き息を吹き掛ける。

 

「妖術、“分身の術”!!!」

 

別名、”身外身の術“。舞い散った髪の毛はうねうねと形を変えてたくさんの俺になる。今ので何人か分身が持ってかれたが、元である俺は無傷だ。

 

「うわっ!?増えた!?」

 

「ちぃっ!おのれ小賢しい!!」

 

キメラは巨大な腕を振るい分身を一掃する。が、それは想定内。俺は振るわれる腕を掻い潜り奴の懐へ飛び込む。

 

「おらぁ!!」

 

「ぐっ!!『ゴーストテイル』!!!」

 

俺は如意棒を突き出すが、奴はとっさに後ろへ飛ぶことで威力を受け流し、すぐさまブレード状の尾を伸ばし、俺の脇腹を殴打した。ちっ、初めてダメージらしい一撃を貰っちまった。

 

「けほっ、今ので決まると思ったが……」

 

「同じ手になんどものるか。そろそろ決めてやる。最強のゴーストARMでね!!」

 

次の瞬間、キメラから相当の魔力が放出され、肉塊がみるみるその体を被ってゆく。やがてそれは巨大な異形の怪物を形作った。本来頭があるであろう場所には本体であるキメラが埋まっている。

 

「ゴーストARM『キマイラ』!!!これでお前をズタズタにしてやる!!」

 

キマイラはドリル状の爪を回転させこちらに降り下ろす。

 

「そうだな、これで詰みだ。

 

 

 

 

お前の負けでな」

 

 

「なにを言っ………!!!?」

 

次の瞬間、俺は電撃で形作った大包丁を振るい、キマイラの体を切り刻んだ。

 

「稲妻包丁 “渦雷微塵切り”」

 

粉々に切り刻まれ尚且つ高圧電流で焼かれたキマイラの体は本体のキメラを残し一辺も残らず灰塵となり消え失せた。最強の体を失ったキメラは、そのまま地面に叩き付けられる。

 

 

「あっが…!ば、かな……」

 

キメラは血を吐き仰向けのまま動かない。電流で麻痺している上に背骨を打ったんだ。もはやまともに動けまい。

 

「ぐ、ぎぃ!くそぅ…あ゛だしは…!」

 

「……悲しいねぇ。お前は憎しみのあまり、人としての幸せすら捨てちまったのさ。」

その顔を狂気と憎悪に歪め、なおももがき立とうとするキメラを見て、せめてもの俺の出せた言葉だった。ここで殺すのは容易いが、約束がある。俺の出来るのはここまでだ。

 

「勝負あり!!勝者‼タツヤ!!!」



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アランとパンプ



「う、ぐっ…ぎぃ!!……ゲームなんか関係ない、人間は皆殺しだぁ…!!」

キメラは血を吐きながら立ち上がり、呪詛の言葉を残し消えた。

「逃がさねぇよ、キメラ!」

それを追いかけイアンも飛ぶ。ま、約束だし、後はあいつの取り分だ。

「……因果は巡るってことなのかねぇ」




「出て来いトマト野郎。6年前のケリつけようぜ」

 

アランは葉巻を噛み潰し、力強くフィールドへ踏み込んだ。対するは、かつてウォーゲームで死闘の末痛みわけとなった因縁の相手、ハロウィン。奴が苦し紛れの放ったARMの力によって、アランは次元の狭間へと飛ばされることになった。

 

「ヒュッヒュッヒュ……バカめ。次元の狭間で永遠に漂っていればよかったものを……!」 

 

最終決戦・第四戦

 

◆チェスの兵隊【ナイト】▼ハロウィン▼

 

◇クロスガード【ダンナの右腕】・龍の紡ぐ絆【教官】▽アラン▽

 

「し、試合開始!!」

 

「『フレイムハンド』!!!」

「『エアハンマー』!!!」

 

動いたのはほぼ同時だった。ハロウィンの放った炎の腕をアランの空気を圧縮した拳が砕く。ポズンはあまりの衝撃に腰を抜かし、這う這うの体で逃げ出す。

 

「……てめえ、6年前と同じ技使いやがって…ナメてんのか!?」

「じゃこんなのはどうだい?『アンタレス』!!!」

 

天体の名を模した高熱の火球が放たれる。身構えるアランだったが、アンタレスは彼の横を素通りし、その後ろにいる民衆へと襲い掛かった。

 

「ッツ?!!させっかよ!!」

『Absorption!!!』

 

異変を察知したイッセーは『赤龍帝の太陽手』を展開し、民衆へ迫るアンタレスを籠手に吸収する。それを見て安堵したアランはハロウィンに吼える。

 

「てめえ…最初から民衆を狙ってやがったな!!」

「ヒュヒュヒュ…お前はカンタンに死んでくれないからなぁ……そこらへんの奴は幾等でも殺せる。」

 

ハロウィンはさらに大量の火球を生み出し、辺りに漂わす。

 

「てめえ!!」

「ヒューーヒュッヒュッヒュ!!!そーら、アンタレスアンタレスアンタレス!!!」

 

ハロウィンは不気味な笑い声を揚げアンタレスをフィールドの外へと無差別に放った。無数の火球が民衆に襲い掛かる。

 

「思い通りにさせっかよ!みんな!!」

『『『応!!!』』』

 

しかし、外ではイッセー達が既に動いていた。フィールドの四方に散り火球の群れを次々と破壊していく。

 

「アラン、こっちは任せておいて!」

「その腐ったトマト野郎を叩き潰してやれ!」

 

「ふっ……助かったぜ、お前ら…」

「余所見をしてていいのかな?『ナパームデス』!!!」

 

ハロウィンの体を軸に植物の蕾を模した大砲が現れる。アンタレスの数段上の魔力が込められた砲弾が発たれ、アランはそれをその身一つで受け止めた。

 

「アラン!!?」

「オッサン!!?」

 

「グホッ…てめえ、いい加減にしやがれよ!!」

「その身を盾にカス共を守るか、偽善者。だが、ナパームデスを喰らってその程度のダメージとは……また強くなったようだな、アラン。『爆発植物 トリックオアトリート』!!!」

 

細長い手足の生えたカボチャの群れが現れノタノタとアランに迫る。この植物はその名の通り頭に刺激を受けると爆発を起こす性質を持つが、アランはお構いなしに全て拳一つで粉砕して見せた。

 

「俺が偽善者ならお前は卑怯者だぜハロウィン!!」

 

「ヒュヒュヒュ、変わらねぇなあお前は……ガキの頃から何も変わっちゃいねぇ。俺が動物を殺した時もお前は俺を咎めたよなぁ……」

 

「あぁ?……ッツ!!ま、まさか…まさかお前!!?」

 

「6年前は気づかなかっただろ?俺だよ、ガキのころお前とつるんでた……」

 

「………パンプ、か?」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

その昔、二人がまだ子供だった頃、アランとパンプは同じ町に住んでいた。宿無しだったパンプは何時も他の子供達に苛められ、そんな彼を、当時から腕っ節の強かったアランが助けていた。

 

『大丈夫かパンプ?』

 

アランが彼を助けていたのは、完全な善意からだった。しかし、パンプはそうは思わなかった。彼が笑顔で手を差し伸べる度に、自分が弱者だという劣等感が胸に満ちた。

 

そしてある日、パンプはナイフを盗み出し、野犬を切り刻んで殺した。

 

『なんてことをするんだパンプ!!』

『何怒ってんだアラン。弱い奴を殺しただけだぜ?』

弱者は強者の犠牲になるのが必然ーーパンプはそう結論付けた。

 

 

後日、町で5人の子供が虐殺される事件が発生。犯人はパンプと断定された。だが、その時既にパンプの姿は町にはなかった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「6年前、そして今回またお前と再会したときは、正直うれしかったぜぇアラン?」

「……それでもよぉ、センチなのは俺のガラじゃねぇ。なおのこと、お前は俺が倒すしかねえなぁ!!」 

 

「できるかな、お前に?『グレイヴ・ヘイル』!!!」

 

ハロウィンは新たなARMを発動させる。目や口の浮き出た不気味な墓標の群れがアランに襲い掛かるが、アランはそれもまた拳で粉砕する。

 

「へっ、全部壊してやったぜ、パンプよぉ!」

「その名で呼ぶんじゃねえ!!俺はゾディアックのハロウィンだぁ!!!」

 

ハロウィンは背負った十字架を炎に変えアランにぶつける。アランはそれを両腕で振り払いネイチャーARM『フレイムドラゴン』から炎の龍を放ち、ハロウィンはまた炎をぶつけ総裁する。互いに一歩も譲らない、一身一体の攻防が続くその中、二人は着々と魔力を練り上げていた。すべては必殺の一撃を叩き込むために。

 

「てめぇはあの時、俺を見下してやがったんだ!!俺は強い、お前は弱いってなぁ!!さぞ優越感に浸っていただろうよ!!お前は心の中で、俺を馬鹿にしてやがったんだ!!!」

 

技がぶつかる度にハロウィンの中の憎悪の炎が燃え上がる。傍から見れば見当違いも甚だしいが、物心付いた時から劣等感に支配されていた彼には、アランの想いを理解することも、感じることもできなかった。

 

アランは懐から取り出した葉巻に火を着け、煙を吐き出す。

 

「……パンプよう。俺はただ、お前と友達になりたかっただけなんだぜ?」

 

「ッッツ!!?……んな、そんなデマカセ信じられるられるかあ!!!どの道。俺達は最初から違うセカイにいるんだよおおお!!!」

 

アランは咥えた葉巻を吐き棄て踏み消し、犬歯を剥く。その瞳は闘志に燃えていた。

 

「……そうだな、”久しぶり“そんで”さよなら“だ。」

 

「こいつで死に腐れ!!!ガーディアン、『ワカンタンカ』!!!」

 

現れたのは、人間の髑髏を持つ巨大な蛇の骸骨とでも言うような怪物であった。ワカンタンカは長い体をくねらせ、巨大な顋でアランに噛み付く。アランは咄嗟に片腕でガードするが、ワカンタンカの牙が食い込んだと共に、アランの全身が燃え上がった。

 

「ヒューーヒュヒュヒュヒュ!!!今度こそお前をこの棺桶の中に入れてやる!!くたばりやがれアラン!!!」

 

火達磨になり動かないアランを見て、ハロウィンは勝利を確信する。しかし、アランは全身が焼け焦げる中、ひたすらに魔力を練り上げていた。

 

(しっかし、色々あったもんだなぁ……)

 

6年前の最終決戦、お互い満身創痍の状態の中、ハロウィンが苦し紛れに放ったARMによって次元の狭間に飛ばされ、宛もなくさ迷っていたところを神を名乗る老人に拾われた。

 

『お主にはこの後、ここにやって来る子供達を鍛えてやって欲しいのじゃ』

 

行く宛も帰れる保証もないので受ける事にし、そして出会ったのが竜也達だった。それから6年の間、彼らの成長を見守って来た。

 

そして、何の因果か自分はまたウォーゲームの最終ステージに立ち、因縁の相手と向き合っている。

 

「……やっぱセンチなのはガラじゃねぇや」

 

アランはふっと鼻で笑うと、ずっと練り続けていた魔力を一気に爆発させた。

 

「いくぞおらあああああああああ!!!!」

 

ガーディアンARM

 

セイント・アンガー!!!

 

現れたのは、ワカンタンカをも越える巨大な一対の腕のガーディアン。聖なる腕はワカンタンカをアランから引き剥がす。ワカンタンカは抵抗するが、呆気なく頭を握り潰された。

 

「さあ、お別れだ。パンプ」

 

セイント・アンガーの片腕がハロウィンを掴み投げ飛ばす。その先には、もう片腕が拳を振り上げていた。

 

(ああ、アランよぉ……)

 

一人でも強くあれる心が妬ましかった。 その優しさが疎ましかった。自分にない強さが悔しくて、羨ましくて、煩わしくてーーーー

 

(やっぱてめぇは、強えなぁ……)

あまりにも、眩しかった。

 

ドガァァァァァン!!!

 

勢いのままに殴り飛ばされたハロウィンは、天高く吹き飛ばされ、そして見えなくなった。

 

「しょっ、勝者!アラン!!!」



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