乙女はお兄様に興味があるようで (シロガネ11号室)
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Prologue

素晴らしい原作様をやらなくても楽しめるように頑張ります
素晴らしい原作様を買いたくなるように頑張ります

千早の性格が環境の変化により少し丸くなってます。あと公式で千早と瑞穂はチート描写あるんで常人離れした能力持ってます
トリプル主人公です(千早、千歳、薫子)


 ドッドッド、と音が聞こえてくるような緊張感。眼の前にいる人の心の中がそのまま場の空気になっている。

 自分はと言えば「またか」という思いとともに「なぜ自分が」という思いが胸を占めている。

 

 こちらの鼓動はさながらS.O.Sを刻むようで、と云っても今ここで「助けてください!」と叫んでみようならただの変人だろうと思う。でも、叫びたい気持ちであった。

 

 同じような立場だと思う姉はというと、少し離れたところで男子生徒と話している。男子生徒の方は顔が赤く、とても決意したような表情出会ったが姉はというと普通に、ただお友達と話しているような雰囲気である。

 

 今日は卒業式、中学校に通うのはこれで最後となる。

 卒業式と云えば気になる先輩、または違う学校へ行き離れ離れになる気になる異性への告白の機会だ、と従姉妹であるまりや義姉(ねえ)さんは力説していたが(とは言っても彼女が行為を寄せる異性はいないらしいが)、自分がそういうのに巻き込まれるとは正直迷惑だ。

 

 確か去年もだったような、と思いながら相手の顔を見る。

 何やらまくし立てているがちっともこっちの耳に入らない。少し離れたところにいる姉は先程まで話していた生徒とはまた違う生徒と話している。相手は先ほどの相手と同じように何やら決意したような表情だったが。

 

 はあ、と溜息をついて目の前にいる男子生徒に顔を向けた。いい加減にしないと母さんが痺れを切らす。決意して僕は相手にこう云った。

 

「……僕、男に興味は無いので」

 

 女の子に告白されるならまだ分かる、というか嬉しい。しかし告白してくる相手は男だ。でも僕は男だ。

 

 どうして僕は男に告白されなければならないのだろうか。姉のほうを見た。姉はまた違う男子生徒から告白を受け、持ち前の天然さで告白に気づかずいつもの調子だった。気が抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「卒業式ってすごいね~全く知らない人から話しかけられてちょっと困っちゃったよ~」

「……はぁ」

「『好きです!』なんて云われちゃって。初めて話した人にも云われちゃったから困っちゃった!」

「……」

「ちーちゃんも話しかけられてたよね?」

「……はい」

 

 姉は脳天気だ。卒業式が終わり、帰り道。僕こと御門千早は双子の姉である千歳さん、そして御門の家に仕えている度會史と共に歩いていた。

 

「ねえ、史」

「何でしょうか、千早様」

 

 侍女として彼女は生まれた時から僕達と一緒にいる。彼女は中学二年生で、僕達が通っていた学校とは違うところに通っているが、僕達の卒業式ということで自分の学校ではなく僕達の方を優先して来てくれた

 少し感情が表に出にくい子で、向こうの学校でうまくやれているのかがすこし気になるところだ

 

「千歳さん、気付いてないのかな? その、男子生徒からの告白」

「おそらくそうでしょう。千歳様ですから」

 

 そう、だよね。千歳さんは長い間病気で学校とかに通えなかったから普通の人と少しズレがある。これから進学する高校では別々になるからそこのところが少し心配だ

 

「それよりも」

「ん?」

「史は、男性である千早様の方が女性である千歳様よりも多く告白されていたように見えたのですが」

「うぐっ!」

 

 そう、なのだ。そうなのである。何故か姉の千歳さんより僕のほうが告白されている。

 

 僕と千歳さんは双子。性別が違う場合普通は二卵性で、そこまでそっくりと云うわけでは無いはずなのだが、何故か僕らは瓜二つなのである。

 某友人が『学校内付き合いたい女性ランキング』なるものを数人で作っていたが、千歳さんはなんと2位だった。それほどまでに容姿が優れているといえるのだ。それと僕は瓜二つである

 

 でも違うところはある。千歳さんの髪の毛と目は黒色なのに対し、僕の髪の毛は銀色で目は菫(すみれ)色。母方の祖母が北欧の人だったから隔世遺伝だと思う。ちなみにハーフのはずの母さんはどうみても生粋の日本人だ

 

 ちなみに先程のランキングの一位は僕だ。解せない。僕は男だ

 

 

 

「でも、ちーちゃんと学校に一緒に行くのは今日で最後なんだよね。ちょっと寂しいかな」

「そうですね。でも、少し僕に頼りっぱなしな所を治すと思ったら良いんじゃないですか?」

「そうだけど~」

 

 千歳さんは聖應女学院という所謂『お嬢様学校』に進学することが決まっている。史の通う学院の高等部だ。また、僕は某有名難関私立男子校へ進学する。

 

「ねえ、やっぱり一緒に行こうよ! ちーちゃんは美人さんだし女装してもバレないって!」

「バレるバレないとかそういう問題じゃないですから!」




続け



処女のほうの優雨√開放してHシーンはよ。やるき箱でもいいから

*原作知らない人のための簡易キャラ紹介*
詳しくはWikiでググってください
【御門千早】
原作主人公でもあり本作の主人公の一人、あとオチ担当
銀髪で菫色の瞳の超美少女……の容姿をした少年
原作では千歳が死亡した後、色々あって自分嫌い、男性嫌い、冷笑家、女の子の真似が得意になるなど最後を除き正に『メインヒロイン』
攻略できずに泣いた淑女が絶えないとか(私もその一人)しかし、全ての√が千早攻略√とも取れる
原作では妃宮千早として聖應女学院へ3年生で転入する

本作では千歳が死亡しなかったために家族仲は良好、大分丸い性格で男子にも女子にも人気がある模様
武道の心得もありそこらのヤの付く自由業さんは余裕で倒せる。華道なども嗜んでおり正に完璧超人(原作も同じ)
少々抜けた姉の世話を焼く苦労系主人公。私からはオチに使いやすいと評判

Amazonの『ベストオブ美少女キャラ2010』で2位に選ばれた。流石千早お姉様
ちなみに一位は能美クドリャフカでした。知名度の差ですかね


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第一話 黒の陽炎と銀のマトリックス
第一話その1 それぞれの始まり


執筆中ですけど投下。案外ここにもおとボク好きな人いるみたいで嬉しかったので
【追記】
入寮の描写がちょっと分からないので難航中→入寮までいかなかった


 4月、史は2年生から3年生へと上がり、千歳様、千早様は高校生へとご進学なされました

 別々の学校へ通うこととなり、史はとても心配です。というのも千歳様は少し、と云いますかかなり世間知らずな面がありまして、とてもお一人には出来ません

 

 早く私も高校生に上がらなくては……

 

 その点、千早様は完璧で人付き合いも良く、家事でも何でもこなされるので私の立場がありません。千歳様が病弱な頃から率先して色々となさっていたのが今でも身に染み付いているのでしょう

 しかし、千歳様と同じくお美しい容姿をお持ちのため男性から好意を寄せられることが多く、しかも男子校へご進学なさるので間違って衆道の道(※)に行かれないよう史が精一杯女体というものをお忘れにならないよう頑張らなくては……ッ!

 

(※)衆道……単刀直入に云うとホモ

 

 千歳様は千歳様のお母様、妙子様から大変大事にされておられ、女子寮へとお入りになります。変な虫が付かないようにとおっしゃっておられましたが、逆に千早様には変な虫が付かないように自宅から通うよう何度も何度も、それこそ千早様がゲンナリするほどに言いつけておられました

 

 来年、史も聖應の高等部へ進学し、千歳様のお世話をするべく女子寮へと入ることにきまっています。おそらく千歳様は卒業後数年後にはご結婚なさると考えれば、これが最後のご奉仕となるのです

 

 史は御門の家の侍女ですから千歳様のご結婚相手が婿入りしない限りもうお仕えできないのです。千早様が後を継ぐと考えると婿入りの可能性は少ないでしょう

 

 史は千歳様にお仕え出来る一日、一日を大切にしていきたいのです

 

「千歳様、朝でございます。今日は入寮の日ですから身だしなみは完璧にいたしませんと」

「うぅ……わかってるよぉ~でも、あと五分だ、け……」

「千歳様!」

 

 

 

 

第一話 黒の陽炎と銀のマトリックス

 

 

 

 

 

「なあ御門。入学式は大丈夫か?」

「大丈夫か? ……って、何が?」

「お前、受験の日を忘れたのか? その銀髪は目立つし、なによりも見た目が……」

「やめてくれ、もうわかったから……」

 

 中学校の頃塾で同じだった友人と共に僕は入学式へと向かっていた。受験の日、何があったかというと『男子校の受験に女子が混じってる!』と騒ぎになったのだ。僕は男だ

 受験が終わった後、数人かの男子に囲まれて『おい、脱げ』とか云われたり本当に困った。上位校になればなるほど変人が多いと聞くけど人前で『脱げ』は変人じゃない。変態だ

 

「でもホント、ビックリしたよ。塾に初めて入った時『学ラン着てる女子がいる!』って思ったもん」

「うぅ……」

「お前、その髪の毛がいけないんじゃないのか? 切ればまあまあ男に見えるんじゃないか? 彫りが深い顔してるし」

「僕も切りたいんだけど」

 

 確かに、僕の髪の毛は背中ぐらいまで伸びている。千歳さんとおそろいだ。でも僕はそれを切れない理由がある。それは……

 

「小学生の頃さ、切ったんだよ、髪。そしたらうちの姉が……」

 

 一ヶ月口を聞いてくれなかった。あの天然で誰にでも笑顔で接する千歳さんが。僕はそれがショックだった。だから切れないでいる。せめての抵抗(?)として髪の毛を縛ってはいるけれども

 

「姉ちゃんが口をきかないって辛いな……でもお前の姉ちゃんか、噂では聞いてるけど見てみたいなぁ」

「噂?」

「おう、お前の学校のやつが云ってたぜ。嫁にしたいランキングナンバー2、あ、ちなみに一位は」

「嫌だ! 聞きたくない! 言わないでくれ!!」

 

 彼女にしたいランキングから嫁にしたいランキングとはランクアップしてるよ!

 

「お前の姉なんだからきっと美人に決まってる」

「……」

 

 僕は何も云わないぞ

 

 

 

 

 

「入寮式は始業式、入学式より早めにあるっては聞いたけど、なんでこんな早く家をでるの~?」

「千歳様が夕方から寮に入ってきちんとした寮生活をお送り出来るとは想像出来ません、そのために昼前に着くようにお屋敷を出ました」

「むー、もうちょっと寝れると思ってたのに」

 

 はあ、と史はため息をつく。千早のように出来過ぎた主も考えものだが、千歳のような主も考えものだ

 また史はダメダメな千歳に苦言を呈する

 

「学院ではそのような言葉遣いだとご学友が出来ません。郷に入れば郷に従え、と云います。どうか奥様を悲しませるようなことはなさらないでください」

 それに、と続ける

「史も、ご学友がおらず一人寂しそうにする千歳様のお姿は見たくありません……」

 

「史……」

 千歳は少し屈んで史と視線を合わせる

「それ、自分自身にも云ったほうがいいと思うな。私も史にお友達が少ないのはヤだよ?」

 

 史は目を逸らした。

 なんだかんだで心に刺さる言葉を投げ合う似たもの主従である

 

「と、とにかく! 千歳様が早く学院に馴染めるように史はお世話いたします」

 

 と、なんだかんだで聖應女学院寮へとついた二人。彼女らの家と比べると少々小さいが、一般的な建築物とは違った趣きのある大きなその建物は千歳の興味を大きく引いた

 

「わぁ、すごいきれいな寮だね」

「はい、史もそう思います。さあ、参りましょう」

「はい」

 

 史が扉に手をかける。が、それと同じか早く後ろから声がかかった。

 

「すみません! あなた達、寮生の人? ……じゃなかった、寮生の方ですか?」

 

 二人が振り返ると、そこには千歳に負けないくらいに女子にしては高身長で、足まで届くような美しいストレートの深い黒髪を持った少々狐目気味のキリッとした美少女が立っていた




続け



某銀の戦姫が終わったら私もIS×おとボク2書く

*原作知らない人のための簡易キャラ紹介*
詳しくはWikiでググってください
【御門千歳】
本作の主人公で、原作では故人。千早の双子の姉。原作で千早が聖應へ入る原因となった一人
原作では遺伝子疾患により幼少期に死亡、後に重要人物として出てくる

本作では子供の心を持った『お姫様』ポジション。原作の『高貴な姫』な印象の千早とは違い『童話のお姫様』のようなほんわかゆるふわ系美少女。あと天然
幼少期病弱で学校に通えなかったことから精神年齢が低め。そのため史と千早は千歳が心配
この性格は母親からの遺伝と思われる。千早の某友人が調べた妹にしたい子では一位を獲得したとのこと。ちなみに千早は姉にしたい子一位

女の子にしては慎重高め。千歳と千早の身長は現在165cmで、3年生の時点で168cmになる。千早は171を超えないことは薫子√エピローグより確定している


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第一話その2 寮生活は前途多難で

続いた

説明文臭い。あと原作知らない人のためのキャラ紹介(作者の偏見)を各話のあとがきに載せました


「あなたも入寮生?」

 

 千歳はそう黒髪の少女に振り向いて聞く。少女は振り向いた千歳の顔を見て何を思ったのか顔を赤くした

 

「うん、そうよ……じゃなくて、そうですよ」

「あはは~無理してるのバレバレだよー。私も新入生で、ここの事全ッ然分からないから気楽に良いよ?」

 

 コテン、と首を傾げながら千歳はそう云う。黒髪の少女とは違い、ほんわかとした美少女の千歳にはとても似合った動作で、またも少女は赤面する

 すこし和やかな雰囲気になったが、史が注意する

 

「この学院は外とは違います。そこの方も注意なさった方が良いかと。そうでなければ仲間はずれにされたり様々な問題が発生しますので」

 

 しばらく後、この史の云ったような厄介事が起きるのだが、この時の三人が知るはずもなく、千歳と黒髪の少女は史が開けた扉をくぐり寮へと入っていった

 

 

「すみませ~ん、新しく寮でお世話になる御門千歳って云います~。誰かいませんか~?」

「同じくお世話になる七々原薫子(ななはら かおるこ)です!」

 二人が声を上げると、すぐに返事があった

「新しい寮生の方ですかー! ちょっとお待ちくださいなのですよー!」

 

 少し特徴のある幼い声が奥から聞こえてきた。ギシ、ギシと時代を感じる床が軋む音と共にその声の主は現れた

 

「聖應女学院女子寮へようこそ、ですよ」

 声の主は千歳の胸くらいまでの身長で、大きなリボンを持つ小柄な少女だった

 

「奏(かな)ー!? 新しい寮生が来たのー?」

「はいなのですよー! 由佳里ちゃんも早く来るですよ!」

 

 トントントン、と玄関のすぐ近くにある階段を降りてきた由佳里と呼ばれた人物は少し日に焼けた健康的な八重歯が特徴の活発そうな少女だった

「二人共、いらっしゃい。ここが寮よ……って、あれ? 後ろの子も寮生? 入寮者は三人って聞いてたんだけど」

 

 むむむ、と由佳里はまゆを顰める。由佳里の云う後ろの子とは勿論、千歳の後ろに控えた史の事だ

 

「はじめましてお姉さま方。私はこちらの御門千歳さまの侍女を努めさせていただいております度會史と申します。この度、千歳様がご入寮なさるとのことでご挨拶に参りました」

「侍女……って、御門? 御門ってあの御門?」

「あの、って何ですか?」

 

 由佳里が驚いたように声を上げ、千歳は理由を求める

 

「私のお姉さま……いや、三人は外部生だから分からないか」

「いえ、史は聖應の中等部に通っております」

「ああ、そうなの。二人がよく親しんだ言葉で云うと『先輩』に御門まりやって人がいたのよ。珍しい名字だから身内かな、って思ってね。違ったかな?」

 

 それを聞いた千歳と史は顔を見合わせる

 

「へー! まりやお姉ちゃんもここにいたんだ」

「千歳様はご存知無かったのですか。まりや様は幼等部から高等部までずっとこの聖應女学院に通われていましたよ」

「ということは千歳ちゃんとまりやお姉様はご親族なのですか?」

 

 奏が身長の関係で千歳を見上げながらそう聞く。千歳はそうですよ、と答えた。その様子を見ていた薫子だったが、ふと疑問に思ったのか質問をした

 

「さっき、そっちの先輩が『入寮生は三人』って云ってましたけど、私たちの他にいるんですか?」

「あ、ごめん! 私たちの自己紹介がまだだったわね。私は上岡由佳里、二年でこっちが」

「周防院(すおういん)奏、同じく2年生なのですよ。それで、薫子ちゃんの質問ですけど、もう一人、既に入寮を済ませているのですよ」

 

 そうだね、もう全員が揃っちゃったから入寮式を始めようか、と由佳里が云った

 

 

 

 

「で、前も自己紹介したけど私は上岡由佳里。今年から2年生で一応、ここの寮長をやってるわ」

「奏は周防院奏、同じく2年生なのですよ!」

 

 寮のリビング。集まった新寮生三人と在寮生二人が机に座り、そして千歳の後ろに史が控えて入寮式が始まった

 千歳、薫子に続く三人目の寮生の少女は薫子が気になるらしく、すこし怯えている様子を見せていた。

 

「じゃ、薫子から自己紹介を」

 

 寮生は家族と同じ、ということで基本的に年上は年下を呼び捨て、年下はお姉様と呼ぶこととなっているために由佳里は薫子、と呼んだ。薫子は『お姉様』と呼ぶのに慣れないらしく戸惑っていたが、千歳はノリノリである

 

「えっと、七々原薫子。一年生です! 少し蓮葉(※)でこういう『お嬢様~』ってのに慣れないけど頑張っていきます! 剣道が得意で一応三段持ってます」

 ピシッとした姿勢で薫子は挨拶をした。良くも悪くもこの聖應女学院では目立ちそうな子だなぁ、と2年生二人は思った

 

※蓮葉……所謂ガサツという事

 

「じゃあ次、千歳」

「はーい。御門千歳です! 小さい頃ちょっと体が弱くて学校に行けなかったからちょっと子供っぽいって云われるけど、ここでは頑張って『お姉様』って呼ばれるまで大人になりたいと思います! これからよろしくお願いします! 得意なのはお料理かな~? でも、弟の方がもっと上手だから得意って言えないかな?」

 

 気合の入った子供のような挨拶に上級生二人は微笑ましげに見ていた。また、千歳の云うように弟の千早は料理が得意である。というか家事全般、習い事全般千早のほうが得意だ

 

「へえ、千歳さんには弟がいるんだ」

「千歳、で良いよ薫子ちゃん。弟のちーちゃんはね、とーーーーーーっても可愛いんだよ!」

(弟なのに可愛いって云うって事は弟はまだ小さいのかな?)

 

 薫子はそう考えながら三人目の少女に目を向けた。その少女は薫子の視線が気になるのか、目を向けた瞬間にビクッと体を震わせた。

 

「じゃあ最後、初音」

「えっと、皆瀬初音といいます。幼等部からずっとこの学院にいましたけど、両親が海外に行くので寮に入ることになりました。えっと、い、以上です!」

 

 シュン、となって初音は身を縮める。どうやら生粋の箱入り娘に薫子という存在はどうやら初めての存在のようで、苦手そうにしていた。その様子をみて由佳里は薫子の耳元で囁く

 

「分かった? 学院ではそういう蓮葉なとこ隠さないとこういう反応されるから」

「は、はい。わかりました由佳里先輩……じゃなくてお姉様」

 

 由佳里は薫子の耳元から顔を話すと、史に顔を向けた

 

「じゃあ史、一応貴女もお願い」

「はい、度會史と申します。千歳様の家、御門家に仕える侍女で極端な云い方をしますとメイドでございます」

「ちょっと質問いい?」

「何でしょう、由佳里お姉様」

 

 由佳里は何か気になったのか手を上げた

 

「今『御門家の侍女』って云ってたけど、まりやお姉様に侍女なんていなかったのはどうして?」

「それはもともと、度會家が千歳様の母方、妃宮家に仕える侍女だったからでございます。妃宮家には男性がおらず、ご結婚相手の御門家に仕えることとなりました。まりや様は千歳様の従姉妹、即ち妃宮の家とは関係がないので侍女が居ないのです。まあ、お手伝いさんはいるようですが」

「そうなんだ」

 

 へぇ、と奏も声を上げる。そして史はこれから千歳の世話をするために寮に出入りしても良いかと由佳里に聞き、由佳里は是と応えた。

 寮長の許可が出た、ということで史は寮へ出入りすることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

『で、史が私のお世話をすることになったから帰るの遅くなるよ』

「まだ史が帰ってないと思ったらそういう事ですか」

 今は20時、僕は千歳さんと電話をしている。というのも史の帰りが遅いからと史の携帯に電話したら千歳さんの世話をして帰るから遅くなる、と云ってそれはちょっとダメなんじゃないかと思ったので千歳さんを呼び出したのだ

 

「史も女の子、しかも中学生なんだから。こんな遅くに一人で帰らせるのは危ないですよ」

『そうかな~?』

「そうです! ですから史には学校が終わったら帰るように云ってください。今日は危ないから僕が迎えに行きます」

『え、ちょ、ちーちゃん!?』

 

 僕は電話を切って、外に出かける準備をした。もう四月とは云っても夜は少し寒い。少しの防寒具を羽織って家を出ようとした

 

「ちょっと千早ちゃん、こんな夜遅くに外に出るのは危ないわ。千早ちゃんはこんなにきれいなんだから襲われちゃうわ」

「……あの、僕、男ですけど。というか男子高校生は夜中出歩くくらい普通ですから家を出ていいですよね母さ……」

「ダメです!」

 

 ちょっと史を迎えに行くのは遅くなりそうだ

 というか、合気道とか柔道とか空手とか有段になるまでさせて大体身を守れるようにしたの母さんでしょうに




続いてください



千早お姉様の事だから剣道とかも有段だったりしそう。OVAだとフェンシングやってるしやっぱこの人完璧超人だね。まあ千歳さんいることで歩く理論武装とまではならないだろうけど

*原作知らない人のための簡易キャラ紹介*
詳しくはWikiでググってください
【七々原薫子】
原作主人公でメインヒロイン。また本作でも主人公。一発で変換できない
女子にしては高い身長(170ある)と剣道により培われた綺麗な姿勢からかなり大柄に見える少女。しかし、内面は女の子っぽくなりたいと思う可愛らしいところもある。蓮葉、あと狐目

原作、エトワールと本作に性格に変更は無い。但し、千歳との出会いによりこれから変わっていく可能性もある
美人な女性に弱いために、千歳にまだ慣れない様子。初音からは怯えられている

なお、私はエトワールを今どっかにやってしまい今相当困っている


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第一話その3 衝撃的な出会い

 少しの邪魔が入ったけれども僕は無事に家を出ることが出来た

 近くの駅まで歩き、そこから聖應女学院の近くの駅まで行く。一度も行ったことは無いけれども、この聖應女学院というのは広く知られた女学校で、大体の場所が分かるくらいに有名なのだ

 

 して、到着

 校門の前には守衛室があるのを見る限り、相当な警備を敷いてあるのだと云うのが分かる。史が後に昨年くらいに女子生徒が襲われた事件があったからと教えてくれた

 

「すみません、身内の迎えに来たのですが」

 

 僕は守衛さんにそう声をかける。守衛さんは顔を上げて僕を見て、しばらくしてああ、入っていいよって云った。それで良いのか、守衛さん

 

 とりあえず校門をくぐったはいいけれど、史が今いる寮がどこなのかまでは分からない。だから史に電話することにした

 

「ああ、史。僕だけど今、校門の近くにいるよ」

『千早様……申し訳ありません』

 

 電話にでると共に史は謝ってきた。はて、何かあったのだろうか

 

「どうしたんだい?」

『それが、千歳様の弟と云うのを見てみたいと寮の皆さんが仰っていまして』

「寮生の人が僕を?」

『はい。私の迎えに来ると聞いて興味が湧いたようです。申し訳ありませんが来て頂けませんか?』

 

 急だな。迎えに行った僕まで遅く帰ると無理言って出てきたから母さんが何と云うか……

 

「はぁ、わかった。少しだけだよ?」

『ありがとうございます』

「校門の近くにいるから迎えに来て」

『承知致しました』

 

 ピッ、と電話を切り当たりを見回す。夜、光がないからわからないけれど昼ならばきっとここは綺麗な桜並木道であるに違いない

 

『ちーちゃんは美人さんだから女装すればぜーーーったいバレないよ!』

 

 ふと、千歳さんの云ったことを思い出す。もし、ありえないがもし僕が女装をしてこの桜並木道を歩いているとしたら

 自分でもありえないと思ってはいながらも考えてしまい、フフッと笑ってしまった

 

「千早様、お迎えに上がりました……どうなされました?」

「いや、なんでもないよ、史。さあ行こうか」

「そうですね、皆さんがお待ちしてます」

「……あまり期待されても困るんだけどね」

 

 そう云いながら桜並木道から少し外れた道を歩き、そして質素ながらもお嬢様学校にふさわしい建物が見えてくる。おそらくそこが寮なのだろう

 

「お、おじゃまします」

 

 史が扉を開き、僕はそう挨拶をする。扉の向こう側には女の子たちがこちらを見ていた

 

「え、ちょ、千歳ちゃん! 弟って云いましたですよね!? よね!?」

「はい! 弟の千早、ちーちゃんって呼んでいいよ!」

 

 何勝手に人の呼び方を決めているんですか千歳さんは、そう云いたかったけど初対面の人ばかりだったのでグッとこらえる。こういうことはいつものことだから慣れたと云えば慣れたけれど

 見ると、目の前にいる少女たち全員がぽかんと口を開ている状態で

 

「いつもの事ながら、千早様の容姿に驚かれているようですね。女装無くともこの学院に……」

「史、それ以上は言わないでくれ。男としての大事な何かを失いそうだから」

「史は事実を申したまでです」

「くっ」

 

 僕はそこまで女の子に見えるのか

 

「お、お、お、男!? ちょっと千歳っ! 本当にこの子が弟なの!?」

「薫子ちゃん、驚きすぎだよ。まっ、ちーちゃんは可愛いし当然の反応だよね~」

「うっわー、すごい。色以外全く千歳と同一パーツで出来ちゃってるよこの子」

「あ、あの、ちょっと近いです……よ?」

 

 八重歯が特徴的な少し日に焼けた活発的な少女に詰め寄られて狼狽する、と一歩下がるとそこは扉でこれ以上下がれない

 

「由佳里お姉さま、千早様がお困りです」

「あ、ごめんね」

 

 史にそう言われて由佳里お姉さまと呼ばれた少女は僕から離れた、と史にクイクイと袖を抓まれる

 

「千早様、自己紹介を」

「あ、うん。えっと僕は御門千早と云って、そこの千歳さんの弟になります」

「男……私よりも全然可愛いじゃない」

 

 そう云われても、と崩れ落ちる黒髪長身の女の子を見つめながらそう思った。と云うかそこまでショックなのだろうか

 

「千早様はもう少しご自身の容姿に関心をお持ちになってください」

 

 ああ、関心は持ってるさ。どうすれば男っぽくなるかとかね!

 

 

 

 

 

「本当に男の子なのですか?」

「『本当に?』って聞かれてもそうですよとしか云えませんよ、奏先輩」

 

 一同は本当に千早が男と理解できない―――否、したくないのだろう

 

「ね、千早ちゃん! どうしたらそこまで綺麗なお肌になるんですか!」

 

 初音にそう云われながら千早は頬を抓まれる。抓まれた千早の頬はシミひとつ無い透き通るような真っ白な肌で、またキメの細かい触ってて心地の良い肌だった。余談だが、それは千歳も同じである

 千早も男であるから、そのように初対面の少女にずいっと詰め寄られ顔を見られるというのは気まずい、いや、女であっても気まずいだろうと彼は考えた

 

「初音お姉さま、千早様は今まで何もお手入れ等されておりません、髪も同様です」

「嘘!? こんなにさらさらってしてゆるっとしてふわってしてるのに!?」

 

 薫子も初音同様に千早の髪の毛を好き勝手弄っている。この光景を千歳は笑いながら見つめて、上級生二人は呆然として見ていた

 

「由香里ちゃん」

「何?」

「どうして私たちの近くって瑞穂お姉さまと云い、紫苑お姉さまと云い、美人な方ばかりなのでしょうか?」

「さあ」

 

 瑞穂お姉さま、紫苑お姉さまと云うのは彼女らの姉であり、去年の卒業生である。瑞穂は昨年のエルダーシスター、簡単に云うと学院生全員の尊敬を集める生徒に選ばれるほどの美貌と知性を備えた人だった。紫苑は病弱で留年したものの、瑞穂の前のエルダーシスターを務めた生徒である

 そんな彼女らと関わりのあった奏、由佳里はそのような女性に憧れると共にその美貌が羨ましくもあったのだ

 

 それに、今この場に現れた少年は銀の髪、菫色の瞳も相まって彼女らの姉と同等の美少女に見える。彼女らも十分美少女と云える外見なのだが、それを超える人とどうしても比較してしまうためにどうしても卑屈になってしまう

 

「あ、あの二人共? そこら辺で……」

「いえ! これは全女子に対する挑戦です! ね、薫子ちゃん!」

「そうね、初音。男で手入れしてないでこれ……秘密を解き明かす必要があるわ!」

 

 しかし、この少年の登場が中々距離の縮まらなかった薫子、初音の距離を縮めてくれたようで奏と由佳里はまあいいか、という心境になったのだった

 

「わー、ちーちゃんモテモテだね~」

「世の殿方が希望しているモテ方とは少し違うと思いますが」

 

 その日、結局帰宅が遅くなった千早と史が妙子に怒られたのは簡単に想像できることだろうが、そんなことを気にすることが出来ないほどに千早は薫子と初音に色々と質問攻めに合うのであった



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