悔責の花(ジョジョの奇妙な冒険) (白争雄)
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プロローグ

彼には3人の父親がいる。

1人は血のつながった生みの親。

実際に会ったことはない。

ただ、母親がその男を深く愛し、まるで取り憑かれているかのように惹かれていたことは知っていた。

それは、愛情というよりも、崇拝とか信仰とかいった気持ちに近かった。

母が父の話をするときは、どこか虚ろで、うっとりとしていて、醒めない夢の世界にいるようだった。

ある日、父の写真を渡された。

そこには、写真を撮るには相応しくないであろう、真っ暗な部屋に佇む父の姿があった。

自分にはあまり似ていないと彼は思った。

髪の色は自分の黒髪とは違い、黄金に輝く金色をしていたし、肉体は鋼のようにたくましい筋肉が盛り上がっていた。

唯一、自分に似ていると感じたのは、肩にある『星の痣』だ。

自分の肩にも同じ『星の痣』があった。

痣の形や、その場所が遺伝するなんて話は聞いたことがなかったが、彼はその『星の痣』が、なにか大切なものを受け継いでいると密かに感じていた。

写真には『DIO BRANDO』と刻まれていた。

父の名だった。

エジプトで死んだと聞いている。

1人は育ての親。

母親の再婚相手でイタリア人。

母がどのような経緯で、生みの父親と別れることになったか彼は知らない。

父に捨てられたのか、あるいは死に別れたのか。

何にせよ、父と別れて故郷の日本へと帰った母は、その悲しみを紛らわすように夜の町へと繰り出した。

幼い彼を家に残して。

もともと自由な女だった。そして美しい女だった。

その自由さが、母の美しい容姿を形作ったのかもしれないと彼は思っていた。

そんな母を甘い言葉で惑わして、イタリアへと連れ帰った男が彼の育ての親だった。

それなりに裕福で、母を贅沢させる余裕はあるようだった。

写真で見た生みの父とは似ても似つかぬ男だったが、母には優しく、とろけるような愛の言葉を囁いた。

だが、それは母に対してだけだった。

彼にとってはいい父親とはいえなかった。

育ての父は、母のいないところでよく彼を殴った。

彼は殴られないために、作り笑顔を覚えた。

大人の顔色を窺うことを覚えた。

しかし、そのことすら彼の義父には気に障り、ベルトをぐるぐる巻きにした拳で彼は殴られ続けた。

彼はそのまま、心のねじ曲がったひねくれた人間に成長していく道を歩んでいくことになるはずだった。

だがそうならなかったのは『3人目』も父の存在があったからだ。

最後の1人は正確に言えば父ではない。

身内ですらない、赤の他人。

彼がたまたま出会い、そして、気まぐれで命を救った通りがかりの男。

男は命を狙われていた。

胸を銃で撃たれ瀕死の状態だった。

男を探しに来たであろう男たちに彼は嘘をついた。

「あっちへ行ったよ」

その小さな嘘が男を救った。

別に正義の心で男を救ったわけではなかった。

ただ血だらけで倒れているその男が、『自分と同じようにひとりぼっちでさびしそうだな』と思っただけだった。

彼がその男を助けた理由はごくごく単純なものだったが、その男は『普通』では無かった。

男は『ギャング』だった。

男は、彼に命を救われたことを「決して忘れない」と言った。

それは、本当にその通りになった。

以降、彼の周りでは不思議なことが起こった。

育ての父は暴力をやめ、町の悪ガキたちは彼をいじめなくなった。

彼は直接言われたわけではないが、あのギャングの男が自分を守ってくれているのだと分かった。

父のように自分を見守ってくれているのだと。

そうして彼は、初めて人を『信じる』ということを学んだ。

彼には2つの名前がある。

1つは『汐華 初流乃』

彼の母親の故郷である『日本』で名乗っていた名前だった。

その国では、『汐』とは、月の引力で満ち干きする潮の流れを表していた。

彼自身、自分の人生に何かの引力を感じることが多々あった。

何かに引きつけられるように、自信の運命の歯車が回っているのではないかと感じることがあった。

『華』にはきらびやかさや、美しさといった意味がある。

彼には、どこか人間離れしたような美しさがあった。

人を引き付けるようなきらびやかさがあった。

だが彼が、彼の住む国イタリアで、この名で呼ばれることはほとんどなかった。

彼がイタリアで呼ばれている名前。

2つ目の名は『ジョルノ・ジョバァーナ』

『汐華 初流乃』をイタリアの発音にした呼び名。

『ジョルノ』には日とか、明けた白日という意味があった。

イタリア語で「ブォン ジョルノ」とは「おはよう」を意味していた。

美しい朝日がイメージされる名前だった。

彼自身、その呼び名を少しだけ気に入っていた。

彼にはたった1つの夢があった。

人が聞けば、思わず顔をしかめてしまうような夢。

ある人はなれるわけがないと笑い飛ばし。ある人は彼の将来を心配するような、そんな夢。

同世代の男の子たちが、イタリア料理の一流シェフや、セリエAのフットボール選手に憧れていた頃、彼だけは全く違う夢を追い求めていた。

彼の夢は『ギャングスター』。

この町を支配する、ギャングのボス。

彼の進む道は、暗黒の道へと続いているのか、はたまた光り輝く黄金の道へと続いているのか。

それは誰にもわからない。

この物語は『汐華 初流乃』が『ジョルノ・ジョバァーナ』になる物語。

 

ジョルノ・ジョバァーナには夢がある。

彼の夢は、ギャングスター。



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ネアポリスの青年

その都市は、イタリアの中でも「見てから死ね」ということわざで比喩されている。

もちろん「死ね」というのはマイナスな意味ではなく、その町並みの風景を見ずに死ぬなんて、生きた甲斐がないほどに美しいということだ。

南イタリア最大の都市「ネアポリス」。

青く澄みきった空、空よりももっと青く澄んだ海、そして、燦々と輝く太陽。

白いレンガや、石造りの建物が建ち並び、その間をさわやかな風が吹き抜けている。

町に目を向ければ、陽気な住民たちの「ヴォン・ジョルノ」という明るいあいさつの声が聞こえてくる。

だが、光には必ず影があるように、その美しく、陽気な町にも後ろ暗い部分があった。

それは、治安の悪さだ。

町にはスリやひったくりが横行していた。

財布はもちろん、カメラやショッピングバッグ、腕にしている時計までひったくられるのは日常茶飯事だ。

地元の住民たちは、一番の防犯は「何も持たずに出歩くことだ」と冗談めかして言うほどだった。

そんな町中に、ぽつんと置かれた鞄が一つ。

茶色い革張りで、ある有名ブランド名が刻印されている洒落たデザインの鞄だった。

高級感のある鞄だった。

だがその鞄は、持ち主の目を離れ、無防備に、まるで迷子の子どものようにその場所に置いてあった。

この治安の悪い町「ネアポリス」で、だ。

しかし、その鞄をひったくろうとする人間はいない。

その鞄を盗もうとする行為が、どれだけ愚かで、マヌケな行為かということをその場にいる誰もが知っているからだ。

通行人も、野菜売りも、カフェの店員も、普段はスリを働く悪ガキたちでさえも、その鞄が爆弾のように危険なものであることを知っていた。

その鞄は、この街を支配する「ギャング」のものだった。

そう、この「ネアポリス」はギャングの支配する街なのだ。

鞄の傍には、高そうなスーツに身を包んだ男がいた。

まぎれもない、ギャングだ。

陽気な町の中、その男の周りだけ、冷たく尖ったナイフのような雰囲気が漂っていた。

自らの鞄には、気にも留めないようだ。

その様子には、自分の鞄を盗もうとする奴がいるわけがないという自信が表れていた。

そんな鞄に、手を伸ばす者がいた。

茶色がかった長髪を垂らした、青い目の青年だった。

モデルのような長身で、整った顔には、その小さな顔からこぼれ落ちそうな大きな黒縁メガネがかかっていた。

大きめのリュックを背中に背負って、はたから見れば観光客のようだった。

リュックにはネームプレートがついており、そのプレートには『チェザーレ・スカンピ』と書かれていた。

普段なら「カモだ。」と息巻くスリ連中も、その青年、チェザーレには手を出さなかった。

なぜなら、チェザーレがこれからやろうとしていることが自殺行為と知っていたからだ。

「ギャングの鞄に触れる」ということが自殺行為と知っていたからだ。

通行人も、野菜売りも、カフェの店員も、その青年のことを「マヌケな奴だ」と心の中で思った。

だが、そのことを教えてやろうと言う人間は誰もいなかった。

巻き込まれるのはごめんだった。

そして、チェザーレのすらっと伸びた手が、ギャングの鞄の持ち手に触れた時、その耳元で「カチャリ」という音が鳴った。

鞄の持ち主であるギャングが握った拳銃の撃鉄が上がる音だった。

「おいおい兄ちゃん。お前が今、何をしようとしているのかわかっているのかい?」

ギャングは、静かな声でチェザーレに言った。

「え?え?もしかしてこの鞄はあなたのですか?僕は……」

銃を向けられ、歯をガタガタと鳴らし、今にも泣きそうな顔をして怯えるチェザーレ。

しかし、ギャングはその青年の答えにすっかり逆上して言った。

「おいおいおいおいおいおいおいおいおいッ!質問しているのは俺の方だッ!質問には質問で答えるんじゃねーぜ!この田舎もんがぁッ!」

ギャングはチェザーレのこめかみに銃口をグリグリと押し付けた。

「すみません!すみません!!僕はただ、こんなところに鞄が落ちていたから危ないなと思って!!誰かに盗まれてしまわないかと、それで……」

言い終わらぬうちに、チェザーレの脇腹にギャングの右足が突き刺さった。

チェザーレは前のめりになり、胃液かヨダレか分からない液体をだらだらと地面に垂らした。

「それで?自分が盗んじまおうって考えたのか?浅はかな考えだったなッ!」

そう言って、ギャングは拳銃の引き金に指をかけた。

ギャングの世界はナメられたら終わりだ。

ギャングの男は、見せしめにチェザーレを傷めつけてやるつもりだった。

太もも辺りを銃で撃って、悲鳴を上げさせ、今一度、町の連中にギャングの恐ろしさを見せつけてやろうと考えていた。

そのために青年が一人犠牲になったところで、なんとも思わない。

目の前の青年は、怯えた目で「すみません。」と「誤解です。」を繰り返している。

この青年は、きっと自分の鞄を盗むつもりはなかったのだろう。

だが、そんなことはどうでも良かった。

そうしてギャングの男が、引き金にかかった指を引こうとした、その時だった。

チェザーレとギャングの間を割って、拳が飛び込んできた。

その拳は、真っ直ぐに、チェザーレの顔面へと向かい、そのままチェザーレをぶっ飛ばした。

チェザーレは、その長髪をなびかせながら地面へと倒れ、倒れた衝撃で黒縁メガネが吹き飛んだ。

ギャングは、突然現れた男に銃口を向け直した。

チェザーレも殴られた右頬を押さえながら、自分を殴った男を見た。

そこには、青年が立っていた。

朝日を背負って立つその青年は、まるで後光が差しているようだった

まだあどけなさの残る顔立ちで、少女のような可憐さが伺えた。

かと思えば、黒く流れる髪の間から覗くその目からは、強い意志が感じられるような、力強い視線が放たれていた。

大きく開かれた胸元、襟には翼のようなデザインが施された学生服のような服姿。

服や靴には、この国で幸運の象徴であるテントウムシのブローチがところどころに付けられていた。

「なんだぁ?ガキが邪魔をするんじゃ……」

「おいテメエッ!!人の女に手を出しといて、タダで済むと思ってるんじゃねーだろうなッ!!」

ギャングは青年に問いかけようとしたが、町中に響き渡るような怒号がそれを遮る。

その怒りの声は、チェザーレ・スカンピへと向けられていた。

自身に銃口を向けられていることを忘れているかのように、ギャングの存在を無視して、青年の怒号は続いた。

「お前がその赤ん坊のケツみてーに青い目で俺の女を惑わしたのか?ああッ?テメーの無駄に長い手足をへし折って薪ストーブの燃料にしてやろうか?」

 

その後も、青年の口からは、チェザーレ・スカンピを罵倒する言葉が次々と飛び出した。

「なあ?お前が何者かは知らねーが、今この兄ちゃんは俺と取り込んでてだな……」

隣でその怒号を聞いていたギャングは痺れを切らして、横槍を入れた。

その手に握られた拳銃の銃口は、相変わらず突然現れた青年に向けられている。

青年は、ギャングに対して物怖じせず、一言

「何です?」

とだけ言った。

その言葉はシンプルではあったが、そのギャングのチンピラを怯ませる『スゴ味』があった。

ギャングが怯んだ様子を見て、青年は少し落ち着きを取り戻し、そのギャングに敬意を払うように、礼儀正しい言葉遣いでこう言った。

「あなたがこのクソ野郎に腹を立てているのは分かりました。しかし、この野郎は俺に対して決して許されないことをしました。お許しいただけるなら、あなたの怒りの分までも、俺の方でオトシマエをつけさせていただきたいのですが、よろしいですかね?」

そう言われて、ギャングは、ふん、と鼻を鳴らすとあっちへ行けと追い払うようなジェスチャーをした。

もともと、対してこだわりのある見せしめではない。

少しばかりからかってやろうくらいの気持ちだった。

それにテントウムシの青年が自分に敬意を払う姿に、少しばかり、ギャングの溜飲も下がったようだった。

青年は「ありがとうございます。」と頭を下げるとチェザーレの長髪を鷲掴みにして、人通りの少ない裏路地へと引きずっていった。

町の人々は、これまでのやり取りを「何も見なかった」というように普段通りの日常へと戻っていった。

チェザーレ・スカンピの運命など誰も気にしない。

洗濯物をパンパンと叩く音や、交差点でのパア―パアーという音がネアポリスのまちを埋め尽くしていった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

裏路地。

テントウムシの青年は、人目がないことを確認すると、ミネラルウォーターの入ったボトルをチェザーレに投げてよこした。

そうして言った言葉は、チェザーレの予想を裏切る意外なものだった。

「まったく……あなた観光客ですか?それともあのギャングの下っ端が言っていたようにこの町の『ルール』も知らない田舎者ですか?」

そこには、先程まで怒りを爆発させていた恐ろしい青年とはまるで別人のような爽やかな青年の顔があった。

それどころか、どこか自分のことを心配しているようだとチェザーレは感じた。

チェザーレがきょとんとした顔をしていると、青年は水を飲むようなジェスチャーをしながら、

「口ゆすぎなよ。殴って悪かったですね。」

と言った。

だが、チェザーレの方もそれを聞いて先ほどとは顔つきが変わった。

ナヨナヨとしていた青年はクックックと笑うと、鼻にかかった大きなメガネをクイッと上げて、

「なんだ?さっきアレは『演技』か?アレで俺を助けたってわけかよ『汐華初流乃』」

と言った。

 

青年は、見ず知らずの観光客だと思っていた自分の助けた男から、自らの名前を聞いて驚いた。

「なんで僕の名前を知っているんです?」

「おいおい!自分と同じ学校に通う人間の名前くらいは覚えておくもんだぜ?汐華初流乃……いや、ジョルノ・ジョバーナと呼んだほうがいいかな?」

どうやら二人の青年は、同じ学校に通う学生らしい。

ジョルノはチェザーレのことは知らなかったが、チェザーレの方はジョルノのことを知っているようだった。

チェザーレはジョルノから受け取った水を口に含むと、クチャクチャと口をゆすいで路地にペッと吐き出した。

「一応礼を言っといたほうがいいのか?だが、勘違いするなよ?お前の助けがなくても、俺にはあの状況を切り抜けるプランが3つはあった。」

そう言いながら、チェザーレはニヤけた顔をジョルノに向けた。

「じゃあなんであんな不用心な真似を?」

そう問うジョルノに、チェザーレはジャケットの内ポケットから取り出した高そうな財布を見せびらかし、自慢気にパンパンと叩いてみせた。

その財布は、一目見て、先ほどのギャングから奪い取ったものだということが分かった。

「お前のおかげで『仕事』がスムーズにできたよジョルノ・ジョバーナ。俺のプランよりも殴られる回数が少なく済んだ。」

「ギャングからスるなんて呆れた人ですね……」

「そういうお前の方こそ、ギャングに『スゴむ』なんてイカれてるぜ?あいつが下っ端のチンピラだって知っていたのか?」

「あいつが『本物』のギャングだったら、あんたが鞄に触れた時点であんたは死んでますよ……」

ジョルノがそう言うと、チェザーレは「違いねえ」と笑った。

「それにしても……その財布にどれだけの価値があるか僕にはわかりませんが、命をかけてまでスるほど貴重なものには思えないですけどね。」

ジョルノはその黒く長い髪をかきあげながら言った。

その問いに対し、チェザーレは指を3本立ててこう言い放った。

「いいかジョルノ・ジョバーナ。理由は3つだ。まず一つ、ギャングってのは見栄っ張りなんだ。その財布にいくら金が入っているかや、どんないい女を連れているかで自分の価値が決まると思ってやがる。だから、たかがチンピラの財布でも学生の俺たちならひと月は遊んで暮らせる金が入っている。」

チェザーレが指を一つ折る。

「そして、二つ目に俺は命を賭けちゃあいない。俺には『確実に助かる自信』があった。まあお前に説明しても理解できないだろうがな。」

そのぼんやりとした説明に、ジョルノは眉をひそめたが、チェザーレは構わず続けた。

「そして、最後の理由、これが最も大切で大きな理由なんだが……」

チェザーレは親指で自分の喉を掻っ切る仕草をして、こう言った。

「俺はギャングが大嫌いだ。」

チェザーレはそう言いながら、とぼけた表情をしていたが、その目には、どこか怒りや悲しみがこもっているようだった。

「ともかく、10分やそこらで大金を稼げるんだ。こんなうまい話が他にあるか?まあ、つまりお前の親切な行為は全くの無駄だったわけだが、俺の方こそ、なんでお前が見ず知らずの俺を助けようとしたのかを知りたいね。」

そう言われた、ジョルノはチェザーレに背を向けて、明るい表通りの方へと歩き出した。

「僕の行為が無駄だって?あいにく僕はあんたのやり方よりも、もっと安全で、誰にも殴られないうまい方法を知っている。例えば『ギャングのチンピラから財布を抜き取っていい気になっている奴からスる』とかね。」

そう言うと、ジョルノは背中越しに大金の札束をチェザーレに向かって見せびらかした。

チェザーレは、まさか、という表情をして、自分がギャングからスリとった財布の中身を確認する。

高そうな財布の中身は、フットボールの試合チケットの半券やらレシートやらはあったが、現金はすっかりなくなっていた。

チェザーレ・スカンピは少しだけ焦ったようだが、怒る様子もなく、参ったぜといったようにクククと笑い、ジョルノ・ジョバーナに向かって言い放った。

「気に入った!面白いやつだぜお前は!ジョルノ・ジョバーナ!!」

その言葉を聞いてか聞かずか、

 

「無駄は嫌いなんだ。無駄無駄」

そう呟くと、ジョルノ・ジョバーナはネアポリスの町へと消えていった。



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