インフィニット・ストラトス ~蒼天の魔王~ (ハルン)
しおりを挟む

プロローグ 
出会い そして始まり


というわけで一話目ですが、少し文構成を変えてみました。
読みにくければ元に戻しますので言ってください。


ノルウェー空港に二人の日本人がいた。

黒髪の鋭い目つきの女性の名は織斑千冬と、その隣には弟の織斑一夏がいた。

千冬の第一回モンドグロッソで、総合優勝及び格闘部門において優勝したお祝いとして、一夏が貯めておいた貯金を全部使い今回のノルウェー旅行を企画、実行したのだ。

当初、千冬は行く気ではなかったが一夏の言葉攻め&上目遣いにより、渋々今回の旅行に参加したのだ。

 

 

「海外旅行とか初めてだね。千冬姉」

「はしゃぐな。見っとも無い」

 

 

口ではそう言う千冬だがその手には望遠鏡とカメラがあり、冬のノルウェーで見られるオーロラを見るつもりなのかその手には『厳選オーロラ絶景スポット』というタイトルの雑誌を持っている。

 

 

「ところで一夏。今日は持っているのか…。母さんがお前にあげたアレを・・・」

「うん...。『どこか行くときに持っていないさい』って言ってたからね」

一夏は鞄から一つの石碑を取り出す。古代の言語で書かれている為、それがどういう内容なのかいまだ解明されてない。

これは考古学者であった一夏の両親が二人から居なくなる前に一夏に託したものだ。

 

 

「そんな事どうでもいいから、早く行こうぜ。千冬姉」

「待て、一夏走るな! たっく仕方のない弟だ」

 

 

千冬は走っていく一夏の後を追い、追いつくと同時に千冬の拳骨が一夏の脳天に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数年前に千冬の友人である篠ノ之束が、宇宙進出を目的に開発したパワードスーツ『インフィニット・ストラトス』通称IS。

画期的な発明は世界から否定され、その数日後、全世界の弾道ミサイルが日本に向けて放たれるという事件が起きた。

世界各国はこれを阻止しようとするが敵わず、諦めていた時、純白のIS、後に白騎士と呼ばれる機体によって弾道ミサイル直撃という悲劇を逃れた。

だがこれは同時に世界を覆す、始まりでもあった。

ISの性能が世界に知れ渡ると今までの戦車や戦闘機等の兵器は一気に旧式化の一途たどり、ISには『女性にしか乗れない』という制約があり、それは世界が女尊男卑に変わる原因でもあった。

いつしか世界の男女の地位が逆転、女尊男卑が当たり前になった。

そして、女尊男卑が当たり前となった世界は一夏に牙を剥けた。

一夏は千冬と比べられ、その度に『織斑千冬の恥さらし』というレッテルを張られ、何か自慢出来る事をやってのけても真っ当な評価を貰えることは無くなった。

だが、一夏には千冬より優れた部分があった。 それは頭の中に入っている知識だ。

一夏は幼い頃から考古学者である、両親から神話や伝承などの話を聞いており、そう言う類の知識ならば負ける気はしなかった。

だが、神話や伝承っと言った真偽がハッキリしないモノを知っているから、何かに役立つのかと言うとそう言う訳でもなく、結果的に自慢できる長所にはならなかった。

一夏はそんな世界に少しずつ嫌気がさしていた。

こんな退屈な世界を変える出来事が起きないかと思うようになった。

そして、一夏は予約したホテルに付くと千冬にいつ頃戻るか言うと外に出かけた。

途中で一夏は如何にも怪しげな連中を見るが触らぬ神に祟りなし、その連中に関わる様な事は避け、行動していると絶景スポットに載っていた所に行くと双眼鏡からその景色を堪能しているとあるモノが映りこむ。

 

 

「――――なんだ、アレ」

 

 

見つけたのは不可思議なオーロラ。

そのオーロラは幸いにも自分が居る近くに現れ、一夏はそのオーロラが直で見えるであろう場所に向かった。

そして、走ること数分。

一夏は目的のオーロラを見ようと移動していると人陰が目に移りこみ、一夏は人陰のある方に移動した。

そこにいたのは純白の鎧を身に付けた一人の女性。

 

 

「ほう、我を視界に捕らえるか。人の子よ」

 

 

それは自分が居るこの”世界を変えてくれる存在”だと、直感すると同時に目の前の存在によって理解すると同時に本能的にこう思った。

 

 

――勝てない――

 

 

人間では勝てない、ISでも世界最強である自分の姉でも勝つことはできないと瞬間的にそう思った。

 

 

「その容姿、極東の者か。見つけられた褒美だ、名を申してみろ」

「随分、上から目線だな・・・。俺の名は織斑一夏だ。 俺は名乗ったんだからアンタも名

乗らないと不公平だろ」

 

 

目の前の女性を見据えながら、恐怖を押し殺し、強気な発言をする。

恐怖する反面、人ではない、ナニカ(・・・)強いて言うなら人ならざる者との遭遇に心踊らさせていた。

偶然かそれとも必然か、目の前の女性の名は自分と関わりのある名だった。

 

 

「我が名は主神オーディンに仕えるワルキューレの一人、ブリュンヒルデ。極東の戦士よ! 剣を取れ!この戦によって汝の魂はヴァルハラに導かれよう」

「なんだと...」

 

 

一夏は予想外の事態に目を白黒させる。

別に戦いたいわけじゃない。興味本位で来たのであったのだが、一夏の予想を斜め上を行く展開が起きていた。

 

 

「さぁ、剣を構えろ! その為に持ち我の前に立ちはだかったのだろう」

「俺はそんなつもり...」

「では、何の為にここに来た?まさか、我を謁見する為に来たという訳ではなかろう。

 

 

その背中にあるものは我と対峙するためのモノだろう」

一夏はブリュンヒルデと名乗った人物について考えていた。

 

(確か、ブリュンヒルデって北欧神話に出てくる登場人物の一人だよな…。戦場において

死を定め、勝敗を決する存在で王族や戦士を選り分け、ヴァルハラへ迎え入れてその人たちをもてなす...だったか...。後、寝取られ)

 

そんな事を考えているとビュリュンヒルデは構えていた剣を振り下ろすが寸前で一夏は横に転がり、剣自体の攻撃は避けるが、その衝撃波で2M程吹き飛ばされる。

 

 

「何もせずに終わるようであれば、汝の魂はヴァルハラには行けぬぞ!」

「そんな所に行くつもりは無い!」

 

 

ブリュンヒルデはもう一度、剣を振り下ろすが一夏は先程の衝撃で鞄から出ていた石板を手に取り、両手で防ぐが重い、とにかく重いその一撃に一夏の身体は悲鳴を上げていた。

 

 

「ぐぅ...!?」

「ほぉ、先程から感じていた神性はその石碑からだったか。神具の類か」

「俺はまだ死ねない...。千冬姉を置いて死ぬわけにはいかないんだ!!」

「!?」

 

 

一夏の叫び声と同時に石碑が砕け散り、砕けた石碑が光の粒子になり、一夏の手元に集うと樹の枝で出来たパッと見ただけならば普通の槍にも見えなくはないがブリュンヒルデは一夏の持っている槍に見覚えがあった。

 

 

「...いや、あの御方の槍がここにあるはずがない」

「此奴は...一体...」

 

 

今起きたことに疑問に思うイチカだが、一夏の右手にあるその槍がどういうモノか頭は理解し、一夏は槍を構える。

 

 

「先程の光景には驚いたが...。これで終わりだ、その強い思いを秘めた汝の魂はヴァルハラに導かれるだろう」

 

 

何か言っているブリュンヒルデに一夏は手に持っていた槍をブリュンヒルデに向けて、思いっきり投げる。

ブリュンヒルデは一夏が投げた槍を避けるがブリュンヒルデは先程の行動が失敗だった事に気づく。

 

 

「グゥ!?」

 

 

ブリュンヒルデが避けた槍は途中でUターンし、ブリュンヒルデの鎧を切り裂きながら、一夏の手元に戻ってきたのだ。

ブリュンヒルデの鎧から微かながら血が流れ、純白の鎧を赤く塗り替える。

 

 

「認めたくはないが...その槍は我が主の槍…。次の一手が来る前に倒さなければ、こちらが不利になる!」

「我が手に勝利をもたらせ!主神の槍よ!!」

 

 

ブリュンヒルデは剣を構え直し、一夏目掛け大地を駆け抜け、一夏も突きの構えを取り(グングニル)を全身の力をすべて使いブリュンヒルデを貫こうとする。

槍と剣がぶつかり、金属が砕ける音とブリュンヒルデに槍が突き刺さる光景を最後に一夏の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 




今回の一夏は暴走しやすいです。

一夏が神殺しになるにはこれ位した方がいいかと思ったり色々、あります。
ヒロインに関しては確定しています。(増える可能性あり)
え?あの人ヒロインなのって人もいます。


後一回まつろわぬ神と戦闘で本編突入する予定です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一夏の非日常

プロローグ最後のまつろわぬ神戦です。


「イチカー!起きて!起きなさい!」

「うーん、あと五分」

「良いから起きなさいよ!」

「あと一億年...」

「ドンだけ寝る気よ!このバカ息子!!」

「グォッ!!??」

 

 

眠りについていた一夏は少女の声とエルボによって、強制的に起こされる。

 

 

「痛い...。腹が痛い...」

「さっさと起きないから悪いのよ」

 

 

痛む腹を抑えながら、周りと目の前の少女を観察する。

あたりを見渡せば、灰色しかない世界。

地平線の先まで、ひたすら灰色の空間が続き、目の前には10代半ばぐらいで、身体つきは細身で胸が寂しく、少し卑猥な服装をしている。

 

 

「...此処は何処だ」

「ここは生と死の境界、私は神殺しの母パンドラよ」

「神殺し...?」

 

 

一夏は先程、倒したであろうブリュンヒルデについて考える。

ドイツ中世叙事詩『ニーベルンゲンの歌』ではイースラントの女王とされていることを思い出すがブリュンヒルデが神かというと少し疑問である。

 

 

「じゃ、俺はブリュンヒルデを倒して、神殺しに成ったって事?」

「そう!後、ママって呼んでくれてもいいのよ!」

「...ママって、さっき自分でパンドラって言ったけど、それって人類に災厄をもたらす存在の事?」

「よく、ホイホイとそんな知識が出てくるわね...」

「神話、伝承とか好きだからね」

 

 

両親が神話、伝承を研究対象とする考古学者である為、幼い頃からそう言った話を聞かされ、いつの間にかそう言う類が好きなオカルト系男子になっていた。

 

 

「所で、俺は死んだの?」

「死んじゃいないわ。あなたは神殺しに成功したのよ。そしてあなたは呪われた祝福を受けて生まれ変わるわ。

 『神殺し』『王の中の王』『魔王』

 ――『カンピオーネ』にね」

「良かった。色気のいの字も家事も出来ない、いつ結婚するのか分からない千冬姉を置いて死んだら、一体どうなるやら」

「カンピオーネになった事はノータッチなのね・・・」

「なったもんは仕方ないし、ここで騒いでもどうにもならないでしょ」

 

 

そう言いながら笑う一夏にパンドラは何かを思い出したのかポンと手を叩く。

 

 

「カンピオーネに成った今、どうでもいい話だけど、転生しなかったらイチカは30位までしか生きられなかったわよ」

「はぁ!?」

 

 

パンドラの思わぬ一言に驚愕する一夏。

 

 

「それ、どういう事だよ!!」

「イチカの使ったあの石碑は使用者の命を吸って発動するのよ。一気に命を消費したショックで髪の色素も落ちてるしね」

「マジで」

 

 

一夏は自分の髪の毛を一本抜くと其処には綺麗な銀髪があった。

 

 

「まぁ、無事カンピオーネに成った事だし、また神と戦う事になるけど頑張ってねー!」

 

 

パンドラの反応に軽すぎと思った瞬間、視界が急に暗くなり、そのまま抗うことなく一夏の意識は闇に飲まれていった。

 

 

 

 

 

パチッと目を開けると明るかった空は薄暗くなっており、先程まであったオーロラは消えていた。

一夏はもう一度、自分の髪の毛を見ると黒髪は銀髪に変わっていた。

 

 

「髪を黒に変えてから帰ろう。 きっと、千冬姉心配してるだろうし」

 

 

地面に倒れていた体を起こし、付いていた土を払いホテル目指して移動するのだった。

 

 

 

 

この日を境に一夏は最年少カンピオーネとして多くのまつろわぬ神との戦いに身を投じていくようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中学一年生になった一夏は現在、夏休みであり、暇を持て余していた。

 

 

「暇だなー。どこかにまつろわぬ神出てこねぇかなぁ」

「一夏。その様な事を言い現実になった場合どうするんです?一度、戦いから離れてはいかがですか」

神殺し(カンピオーネ)なのに神倒さないで何しろって言うんだよ!」

「この際ですから、周りに被害を与えない戦い方を考えましょう」

「それ、どんな無理ゲーだよ・・・。まつろわぬ神相手に周りに気を配れますかってんだ。てか、俺の権能で危険なのは現段階で一つだけだ」

 

 

先程から一夏に話しかけているのは一夏の従者である、マハード・ガーネット。

マハードは半年前にエジプトでまつろわぬ神との戦闘で負傷した所を一夏が助け、助けて貰った恩として、一夏の従者になり、忠誠を誓い一夏の身の回りの仕事をしている。

その実力は魔女と同等であり、剣術の才も高く、その実力は一夏の右腕として十二分に発揮している。

一夏が持つ、世界を焼き尽くす事が可能な切り札があるが、それが何処までの威力があるのか分からず、現段階では都市の一つや二つを焼け野原に変える事が可能ということは判明している。

最大の火力を出そうにも一夏のポテンシャルが複雑に絡んでくるのと、試す相手がいない為、分からずじまいである。

そんな会話をしていると物凄い勢いで何かが駆け上がり、近づいてくる音が部屋中に響く。

 

 

「一夏!「廊下を走るな!」ブフッ」

 

 

ドンッと勢いよく扉が開くと同時に一夏は近くにあった枕を先程、扉を開けた女性に投げつける。

枕はそのまま女性の頭に吸い付くかの様に当たり、そのまま後ろに倒れる。

マハードは何やら電話の対応をする為に一度退出している。

 

 

「ちょっと!いきなり何するのよ、一夏!!」

「お前こそ何してるんだよ、マナ!俺があれだけ口が酸っぱくなるまで言ったよな!!廊下は走らない、扉はノックしてから開けるってさ!!」

 

 

今、一夏の説教を受けているのはマハードの妹、マナ・ガーネットである。

マナもマハードと同じく、魔術師をしているが、まだ未熟なところがあり、現在マハードと一夏の師事の下、魔術を学んでいる見習い魔術師である。

 

 

「何か言いたいことがあるなら言ってみろ」

「うぅ、ごめんなさい。あのさ、一夏。今度の日曜日に海水浴に行かない?」

「なんか特別な事が起きない限り外に出たくない」

「先程、プリンセス・アリスから、ゴルゴンの石板の対処をしてほしいとの事です」

 

 

電話から戻ってきたマハードは一夏が興味を引く話をする。

ゴルゴンとは、地中海で発見された石板で蛇の頭を持つ女性のようなモノが刻まれた黒い石材で作られた縦横1m程の大きさのモノでギリシア神話に関する事が記述されている。

 

 

「お前ら、今すぐ仕度しろ」

「え?引き受けるの」

「行きたくないんなら行かなくていいよ。依頼をこなしながらギリシャの海でバカンス楽しむから。マハードは行くんだろ?」

「私は常に一夏と共にあります。王が行かれるのであれば例え、日の中、水の中、まつろわぬ神の戦いの中何処までもお供します」

「マハード...。お前の忠誠心は嬉しいけど、俺が言うのもなんだが、もう少し、自分の命大切にしようぜ。なら、今から仕度して来い」

 

 

付いて行く事を伝えるとマハードは自室に向かい、仕度の準備をする。

因みに住む場所の無いマハード達に『俺の家に住めばいい』と言い、姉である千冬は基本的に家にはおらず、部屋が余っているのでマハード達に部屋を貸し、同居している。

この時、見ず知らずのマハード達に部屋を貸すことに反対した千冬だが、家の実権を握る一夏に『認めないとビールは月に一本、自分の分しか家事はしない』という酒好きで家事全般が駄目な千冬に取って苦行と同時に死刑宣告を下すと千冬は意見をコロッと変え、賛成し、世界最強のブリュンヒルデにとって一夏は数少ない天敵と言えるだろう。

 

 

「行く!私も行くわよ!!」

「仕度次第、すぐ行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イチカ達の目の前には綺麗なエーゲ海が広がっていた。

 

 

「海とか久しぶりだな。最後に日本出たの半年前だしな」

「そうだね、半年前にエジプトに来たのが出会いだもんね」

「そうですね。あの時、一夏がいなければ、私もそうですが、マナの命も危険でした。この多大なる恩は必ずやお返しします」

「気にするなって、お前たちが俺の従者に...。家族になってくれて感謝してるのはこっちなんだからさ」

 

 

少し前の話をする一夏達。

何故、一夏がエジプトに居たのか、それは一夏の持つ権能を使い少し先の未来を見た結果、近いうちにエジプトにまつろわぬ神が現れる事を知り、単身エジプトに向かったのだ。

そこで起きたまつろわぬ神との戦いに巻き込まれたマハード達を助け、まつろわぬ神を無事倒し、(ピラミッド一つ破壊と周囲の生物の死滅という被害、後に一夏によって元に戻っている)無事解決したのだ。

 

 

「所で一夏。件の対処はどうなさるつもりですか?」

「取り敢えず、ぶっ壊す。龍脈とか周囲から呪力を集めてるが、今のところ影響はないけど、このまま進むと甚大な被害が出るからな」

「そうですか。取り敢えず、エジプトのような事態にはしないでください」

「いや、なったとしても後で戻すから大丈夫だって。明日、ぶっ壊すからお願いね」

「一夏!早く泳ぎましょ!そのために水着を新調したんだから!」

 

 

ゴルゴンの話をしていると水着姿のマナが一夏の腕を引っ張る。

 

 

「マハード、お前は俺の為に働いてくれるけど、偶には休め」

「ですが...」

「一夏からの命令だ。全力でこの休息を楽しめ、いいな!」

「...では、御言葉に甘えて」

 

 

マハードは着ていた服を脱ぎ捨てると其処には鍛え抜かれた肉体と海パンではなく、褌を付けたマハードの姿があった。

 

 

「って、なんで褌なんだよ」

「この間、買い物に出かけた時に『これを見に付ければ、願いが叶いやすい』という事で、買ってみました」

「そのお値段は?」

「5万です」

「それ、只のぼったくりの悪徳商法だ!たっく...」

 

 

一夏はマハードの行動に頭を抑える。従者としても魔術師としても一流だが、何処か抜けているのがマハードなのだ。

 

 

「騙せ、偽れ、欺け!我は森羅万象あらゆるものを惑わす者成り!」

 

 

一夏はマハードの褌が人の眼に付く為、一夏は聖句を紡ぐ。

一夏の持つ"騙す"権能を使い、マハードの褌を市販の海パンに変える。

 

 

「さて、何して遊ぶかな?」

「競争!スイカ割り!」

「釣りで」

「じゃ、最初は競争して、腹減ったらバーベキューでもするか!」

 

 

競争で始まり、スイカ割り、釣り、バーベキュー等、一夏達は普段遊べない分、精一杯遊んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日。

 

 

「じゃ、マハード、マナ。準備は良いな?」

「うん」

「いつでも」

「準備は出来ています」

「じゃ、やりますか」

 

 

全員の準備が出来たことを確認した一夏は聖句を紡ぐ。

 

 

「我は戦場に赴き、我は戦士の魂を選定し、我は選ばれし魂を宮殿に導く者なり」

 

 

一夏の身体に光が集まり、光が収まると其処には白銀の鎧を身に纏い、剣を携えた一夏の姿があった。

 

 

「せーの、でッ!」

 

 

一夏は剣を大きく振りかぶりそのまま叩き下ろす。

ゴルゴンに溜まっていた呪力は消え、ゴルゴンに罅が入り、砕け散る。

ゴルゴンが砕けると一つの光の柱が現れると其処から白馬が現れる。

 

 

「この感じ、神獣か...。マハード、頼んだぞ」

「一夏の意のままに」

「頑張って一夏。負けないでね」

「心配するな、俺は負けない。 オラ、ササッと行け!」

 

 

一夏の言葉に三人は一度顔を合わせ、お互いに頷いて駆け出した。

 

 

「悪いがお前に構ってる暇はないのでね。とっとと終わらさせてもらう」

 

 

一夏は中国の山奥に住む自尊心が異常なほど高い武人に教えてもらった縮地神功・神足

通、所謂、縮地と呼ばれる術を使い、白馬に接近し、頭上から剣を突き刺す。

白馬が倒れて、数瞬後、エーゲ海に巨大な渦潮が出来ると其処から一人の男性が現れるとイチカと目が合う。

 

 

「貴様...今代の神殺しか」

「あぁ、そうだ。俺は織斑一夏...東洋の神殺しさ」

「ならば、我も名乗ろう。我が名はポセイドン!天空神ゼウスの兄だ!」

 

 

一夏は聖句を紡ぎ臨戦態勢に入る。

 

 

「我は永久の生と死を繰り返し、天を廻る太陽と成り、天を照らす光と成る!」

 

 

一夏の背中から炎の翼が生え、羽ばたきながらまつろわぬ神に接近する。

接近する一夏をポセイドンは三叉の矛を一振りすると3m程の津波を操り、一夏に襲い掛かってくる。

 

 

「しゃらくせぇ!!」

 

 

一夏は津波を切り裂き、拡散するが完全に消えたわけではなく切り裂かれた津波はバラバラになったまま新たな津波になり、一夏を襲うが一夏は上空に退避する。

ポセイドンの手にある三叉の矛を一夏に向けて突き立て、一夏は回避する素振りを見せずに直進し、三叉の矛によって左腕を切り落とされ、苦悶の表情を浮かべるが、切り落とされた左腕から勢いよく炎が噴出し、炎が消えると其処には何事も無かったかのように切り落とされた左腕があった。

 

 

「肉体が再生した?...その炎もしや、幻獣フェニックスから簒奪したものか」

「...一応、正解だ。これは幻獣フェニックスから簒奪したモノだ。そろそろ、本気を出すかな」

「我を相手に手加減とは不愉快だな」

「世界を焼き尽くす劫火よ!天を焦がし、大地を灼熱の劫火で焼き尽くせ!」

 

 

一夏を中心に炎が広がると炎は一夏の左手に集まり剣の形になる。

 

 

神々の黄昏(ラグナロク)の始まりだ!」

「クッ!」

 

 

一夏は炎の剣を一振りすると炎はポセイドン目掛け突き進み、ポセイドンは自身を覆う程の津波を作り防ぐが、炎の勢いは止まらず津波を蒸発させ、そのままポセイドン襲う。

 

 

「グゥゥ...。この炎は...魔人スルトの...」

「そうだ。悪神ロキによって鍛えられたモノだ」

「...だが、本来の威力までは出せていない。その炎を凌ぎ、貴様を倒せば我の勝ちだ!」

「それはどうかな?」

 

 

一夏の身体が一瞬、揺らぐと同じ姿、同じ声をした一夏が二人いた。

 

 

「クッ!幻影の類か!!」

「嘗て、アンタはペラスゴイ人に崇拝された大地の神だった。だが、この時アンタは海神として力は今世に伝えられるほど強くなく、また全物質界を支配出来ていなかった」

「貴様!我を暴き立て、忌まわしき過去を思い出させるつもりか!?」

「ティターン神族との戦いの時にキュクロープスから海と大地を操ることのできる三叉の矛を贈られ、奮闘の末、勝利した。ゼウス、ハーデスとのくじ引きで支配領域として海を引き当てた。だが、海を支配するにはアンタの力は不十分だった!」

 

 

一夏は炎を操り、ポセイドンを襲うがポセイドンは水の盾を何重に重ねることで防ぎ、三叉の矛で一夏を攻撃するが、一夏の身体は霧に変わると霧散した霧が集まり一夏の身体を形成する。

 

 

「当時のアンタは嵐や津波を引き起こし、大陸をも沈ませることができたが・・・それでは支配しているには程遠い。そこでアンタはある人物に目を付けた」

「えぇい!聞いた風な口を聞くな!!」

「海の支配者として力の弱かったアンタはある人物に目を付けた、後にお前の妻になったアムピリテだ!アムピリテは強力な力を秘めた女神だった。大波を起こし、海の巨大な怪魚や海獣を数多く飼い嵐を鎮めることができる程の強大な力を持った女神だ。元々、大地の神であったアンタはアムピトリテと婚姻し、正妻にすることで彼女を傍に置くことで、海を支配することに成功し、大地と共に海をも司るようになった。異名の1つに大地を揺らす神ってのがあるが、それはアンタの大地の神としての性質を言い表してるものだ」

 

 

ポセイドンは一夏を三叉の矛で切り裂くが一夏の身体はまたもや霧になり、ポセイドンの周囲を覆い始める。

 

 

「目眩ましのつもりか神殺しよ!今すぐ、姿を表し、我を暴き立てた罪その身を持って償え!――――ゴフッ」

 

 

怒るポセイドンの背後から一瞬、冷たく鋭い感触がするとその感触は体中を巡ると胸元から剣先が姿を表し、ポセイドンは背後に視線を移すと其処には左手に炎の剣を持ち、右手に持っていた剣でポセイドンを突き刺す一夏の姿があった。

 

 

「グッ...。貴様ァ!」

「アムピリテと共通点が多いのは女王の時代が終わり、女性の地位は落ち、神話は書き換えられ男が世界を支配し始めた。その時に妻であるアムピリテの神格と力を引き継ぐ形で海神ポセイドンが誕生した。時代の変化によって生まれた、海神・・・。それがアンタの本質だ!!」

 

 

一夏は炎の剣を両手で持ち、ポセイドンに接近し、切り裂くと現れた炎柱にポセイドンが飲み込まれる。

 

 

「ぐぅぅぅ...流石は神殺しと言ったところか...。だが、只ではやられんぞ!!」

「グッ...!ガハッ!?」

 

 

ポセイドンは三叉の矛を振りかぶり、渾身の一撃を一夏にお見舞いする。

三叉の矛の一撃により鎧は砕け視界がぶれ、臓器を貫かれた一夏は態勢を崩し、海へ落ち、最後に一夏が見たのは剣が突き刺さったまま炎に焼かれゆっくりと灰になり消えていくポセイドンの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知らない天井「一夏ぁぁぁ!!」へぶっ!」

 

 

目を覚めた一夏はお決まりの台詞を言おうとした瞬間、一つの黄色い閃光が一瞬見えると腹部に衝撃が加わる。

 

 

「いきなり何するんだよ!」

「!?」

 

 

一夏は突撃したマナに拳骨を落とし、一夏は後ろで静かにしているマハードに視線を移す。

 

 

「マハード、あれからどれ位時間経った?」

「一日であります」

「マジで」

「はい。マジです」

 

 

マジかー、と呟きながら一夏はエーゲ海に沈む夕日を見る。

 

 

「じゃ、明日帰るか」

「もう大丈夫なの?」

「問題ない。まぁ、半ば観光で来たし、お土産買って帰るぞ」

「え~、もう少し、居たい」

「駄々を捏ねるな駄々を」

 

 

一夏はお目当てのまつろわぬ神との戦いであり、目的を達成し、権能も増えたことにより、一夏自身、満足であり、長居は無用と言わんばかりに帰りたいのが本心である。

 

 

「一夏。今回の戦での被害は今までの中で最も抑えられていました。一夏は周りへの配慮を考えたのですね」

「いや、周りに被害が出なかったのは場所が良かっただけだろ」

 

 

今回は海の上での戦闘がメインであったのと周りに何もない為、そこまで被害が出なかったのだ。もし、これが別の場所だった場合、地図を作り変える必要があっただろう。

 

 

「折角の海外なのに...」

「まぁ、近いうちに第二回モンドグロッソがドイツで行われるからその時にゆっくり、観光すればいいさ」

 

 

第二回モンドグロッソは後二ヶ月まで、迫っており、千冬は二連覇という偉業を成し遂げるために日夜トレーニングに時間を費やしている。

 

 

「まぁ、どっかのアホな国が馬鹿なこと考えていそうだな。誘拐とか」

「確かに一夏を誘拐する事で精神的に不安定にし、織斑千冬の戦意喪失もしくはリタイヤを狙うと言ったところでしょうか?」

「そんな所だろうぜ」

「その時の事はその時、考えましょ」

「だな」

 

 

起きたのならその時に考えればいいや、と頭の中で結論を付ける一夏であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は流れ、第二回モンドグロッソが開催されたドイツに一夏は姉である千冬の応援に来ていたのだが、ここで一つアクシデントが起きた。

 

 

「まさか、俺が捕まるとはな...。てか、見事なフラグ回収だな...」

 

 

一夏は観戦中に配られた飲み物を飲んだ途端、強い睡魔に襲われ、気が付いたら手足を拘束され、知らない場所にいたのだ。

 

(睡眠作用のある薬か・・・。飲み物に魔術でも仕込んでいた可能性もあるな)

 

カンピオーネである、一夏は人を超えた呪力を持っており、経口摂取などの特殊な方法でもない限り魔術や呪術を一切受け付けない体質になっている。

マハードに助けを頼もうにも現在、マハードは高熱を出して医者から絶対安静と言われ、歩くこともままならないマハードは弱っている身体に鞭を打ち同行しようとしていたが一夏の説得により渋々了承し、マナはマハードの看病をしている為、一緒ではない。

 

 

「おい、お前の姉は弟より名誉を選んだみたいだぞ」

「あのブラコン織斑千冬も世界的地位と名誉に目が眩んだか」

 

(たぶん、こいつらは千冬姉に直接脅迫したのではなく、日本政府に脅迫したんだろう。そして、日本政府はそのことを千冬姉には知らせなかったってところか...。女尊男卑が当たり前になった世界で男である、俺を見捨て、千冬姉に二連覇してもらい女性の地位を更に向上させると言ったところか)

 

 

戦いによって培われた勘は大したもので実際に一夏の予想した通りだったりする。

 

 

「このままじゃ織斑千冬が優勝してしまう」

「俺たちも殺されちまう」

「あいつら容赦ないからな」

「だが、亡ナントかは最悪、弟の身柄を引き渡しを要求していたから、此奴さえ、渡せば首の皮一枚つながる」

 

(ふぅーん。中々、面白い話が聞けたな。今、思えば僅かながら魔術の気配がしたな。まだまだ、未熟だねー)

 

 

この場から、脱出する為に得意のルーン魔術を行使する為、一夏はルーン文字を描く。

一夏がルーン文字を描き終ると同時に行使すると部屋一帯が炎に飲み込まれる。

 

 

「な、なんだ!?」

「いきなり、燃えやがった!!」

「逃げろォォォォ!!」

 

(よし、今だ!)

 

 

自分の事を忘れ、我先に逃げ出す誘拐犯を見ながら窓へ飛び込み、短く聖句を紡ぐ。

 

 

「天を翔ぶ、不死鳥よ!」

 

 

短くても聖句は聖句なので、権能をしっかり発動させ、炎の翼を羽ばたかせ、周りを確認する。

 

 

「よし、まだ外に誰も出てないな」

 

 

確認した一夏は新たに聖句を紡ぐ。

 

 

「大地を揺るがす怒りよ!その怒りの鉄槌で敵を討ち砕け!」

 

 

ポセイドンから簒奪した権能を行使し、倉庫を殴る。

すると、倉庫はまるで地震に合ったかのように大きく揺れると倉庫が崩壊し、土煙が上がり始める。

土煙が晴れると其処には奇跡的(・・・)に五体満足な誘拐犯がおり、多少怪我をしているが命に別状はなかった。

 

 

「王に対しての行い...本来なら万死に値する所だが、今回は見逃してやる」

 

 

そう言うと一夏は返事の無い誘拐犯に背を向け、権能を解除し、会場に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

向かっている途中で救援に来た、千冬とドイツ軍と合流、無事保護された。

どうやら、千冬は表彰式を抜け出して助けに来たらしく、一夏を見つけた時、半泣きの状態で抱きついてきた。

日本に帰国後、マハードにその事を話すと一夏を護れず、危険な目に合わせてしまった事に対し、死んで償おうとした為、マハードを止めるのに苦労した一夏であった。

 




Gジェネとこの作品のネタは思いつくかが、他の作品は思いつかない...。


次は本編です。

マハードとマナ遊戯王のブラックマジシャンとブラックマジシャン・ガールをイメージすればいいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

設定

一夏の権能がありますが、こちらに関しては随時更新したいと思います。

2016/2/24更新

2016/6/19権能の内容を更新

2017/4/22権能の内容を更新


織斑一夏 

 

七人目のカンピオーネ(護堂は九人目、ドニより先にカンピオーネになっている為、ドニは八人目)

 

性別 男

 

  

物心付いた頃には姉である、織斑千冬と二人で過ごし、幼い頃から家事全般している為、周囲の女子よりも得意。

普段は黒髪だが、とある理由により、髪の色素が落ち、銀髪になっている。

他のカンピオーネ相手に普通に喧嘩売ってたりするが、大半のカンピオーネとは仲はいいが、一部険悪な状態である。(一部フラグを建ててる。なんのとは言わない)

基本的に親友や仲間、家族を大切にし、甘いが叱るべき時は叱ったり、後輩などの面倒見もいい為、兄貴的な存在になる事が多い。

カンピオーネとしては"夜叉王"、"白き王"等と呼ばれ、幅広く知られている。

圧縮記憶法という特殊な記憶法により、過去に呼んだものすべて記憶しており、ずば抜けた知識を持っている。

また、上記の知識力とまつろわぬ神や神殺しなどの戦いによって、推察力、思考力、学力等が高い。

最近では、人間は護る価値があるのか疑問に思う時がある。

10歳の時に千冬と一緒に行ったノルウェー旅行の時にまつろわぬ神であるブリュンヒルデと偶然、遭遇し、持っていた石碑により、ブリュンヒルデを打ち倒しカンピオーネとなる。

その後、カンピオーネとして世界各地に赴き、まつろわぬ神との戦いを繰り広げる。

最も友好的で協力的で最凶の神殺しと周囲から認識されている。

権能を使わずに戦う時はルーン魔術などの魔術で戦うが、全ての武器を使う事が出来るがその中でも太刀もしくは大剣と魔術仕様の拳銃で戦う事が多い。

 

普段は優しいがその反面、戦闘狂としての一面がある。

過去の出来事により一部の女神が苦手。

そして、童貞ではない。

 

 

 

 

 

アイオーンの石碑

考古学者である一夏の母親が一夏の前から居なくなる前に渡したもので、対象とした人物の過去からランダムで関わりのあった人物の武器と知識を与えることが出来る。

ブリュンヒルデの過去から関わりのある人物として主神オーディンが持つ槍グングニルを顕現させ、その知識を一夏に与えた。

アイオーンの石碑は使用者の膨大な時間(寿命)を吸う為、ブリュンヒルデを倒した直後使用した、副作用として時間が吸われ、その際に急激に寿命が減ったショックで銀髪になる。

一夏がカンピオーネにならなかった場合、(パンドラ曰く)30歳までしか生きられなかったらしい。

 

 

 

 

 

一夏が所持している権能

 

 

 

炎庭の女騎士(フレイム・ワルキューレ)

 

北欧神話におけるワルキューレの一人ブリュンヒルデから簒奪した権能。

 

一夏が初めて殺した神であり、基本的には炎を操るというもので、他にも武具や純白の鎧を身に纏った騎士の姿になる。

 

また、大槍は相手に対する思いによって、その重量とサイズを変える事が出来る。

 

この炎には、相手の力(まつろわぬ神なら神格、魔術師並びにカンピオーネならば呪力)を一定まで(一夏の予想では2割程度)下げる効果がある。

 

何故、ワルキューレの一人であるブリュンヒルデにこの様な力があるのか明確に分かっていないが、「神格を奪われ、燃え盛る焔の中で眠り、火葬され最期を迎えた」という火と神格を失うというエピソードによるものではないかと考えている。

 

 

 

 

 

 

変幻自在の奇術師(トリックスター)

 

北欧神話の悪神ロキから簒奪した権能。

 

ロキという存在を体現した権能でロキに関する事なら大抵できる。

 

生物無機物関係なく変えたり、人や物事を隠蔽・隠匿するなどの力もありこの力は常時使用可能となっている。

 

また元ある存在を造りかえることも可能であり、また何かを騙したり、人や物事を隠匿・隠蔽する事が可能。

 

 

 

 

 

 

 

時の(オブジリィーヴァ)観測者(・タイム)

 

北欧神話のノルンの三姉妹から簒奪した権能。

 

"現在"、"過去"、"未来"の三つを操ることが出来る。

 

過去の歴史を見ることで相手の弱点を探ったり、未来を視る事で何が起きるのか確認したりする。

 

また時間という概念があるものであれば、存在しているのならばある程度、時間の操作が可能。

 

応用も可能なので使い方は多種多様と結構便利な権能なので日常生活でも比較的使いやすい権能である。

 

時間跳躍も可能だが、過去と未来への時間跳躍は「やったら面白くないから」という理由であんまり使用しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

世界を焼き尽くす劫火の剣(レーヴァテイン)

 

北欧神話の巨人スルトから簒奪した権能。

 

燃え盛る劫火の剣を顕現させる。

 

本人の意思と覚悟でその炎の威力が変わり、具体的にどこまでの威力を発揮できるのかは理解できておらず、一度使えば《鋼》を溶かせるほどの超高熱を発することが出来る威力を持つ事はわかっている。

 

加減をしないで使うと本当に全て燃やしてしまうので、本気で使った事はないが推測として全てを焼き尽くすまで終わらないと考えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

黄金に輝く太陽と鳥(プロミネンス・バード)

 

ギリシアの伝承に伝わる幻獣フェニックスから簒奪した権能。

 

その正体はエジプト神話に伝わる不死の霊鳥ベンヌであり、その魂は太陽神ラー。

 

肉体を不死にする権能。

 

如何なる攻撃を受けようと一瞬にして肉体が再生する。

 

発動中は自身の唾液や血液などには肉体を再生させる効果がある。

 

また、背中から炎の翼を出し、飛行可能になる。

 

自身の肉体を燃やすことで再生し、即死クラスのダメージを受けても肉体を再生させる(パンドラ曰く「ちゃんと死んで蘇る」)。

 

一度、死ぬことで呪いの類を解除でき、それは権能であっても可能。

 

肉体的ダメージには有効だが、精神的ダメージや不死殺しの概念を持った武器には弱く、再生するには精神の摩耗が起きるため精神を完全に削りとられると再生はせず、無防備になる。

 

蘇生するタイミングをある程度自由に決めれるが、この場合権能が発動するタイミング

が遅すぎると蘇生が出来ないまま死んでしまうのでそれなりのリスクがある。

 

権能発動中の体液には肉体再生の効果があり、発動中に採取した体液は権能を解除してもその効果は一定期間まで失わない。

 

また、発動中は太陽の属性を持つ攻撃は自分より上の太陽の属性の攻撃で無い限り無力化出来る。

 

 

 

 

 

 

 

激怒する大海(マーリス・イレ)

 

ギリシア神話の海を司る神ポセイドンから簒奪した権能。

 

基本的には水、剛力を操る事が出来る。

 

条件を満たせば、他にもポセイドーンの関する事が出来るが条件が厳しく、使う事が少ない。

 

一夏の持っている権能の中で最も使いにくい権能だが、その条件に似合う程、強力な力を発揮する。

 

トリアイナ:一定以上の怒りの感情が強い場合。

 

 

 

 

 

 

 

死滅の朱槍(ゲイ・ボルク)

ケルト神話の半神半人の英雄クー・フーリンから簒奪した権能。

 

一夏が持っている数少ない《鋼》の権能。

 

稲妻のような切れ込みがある独特の形状の穂先をした槍を顕現させ、クー・フーリンの規格外さを体現させる。

 

伝承に伝わる通りの規格外な力を持った権能だが、条件を満たすことでその真価を発揮できる。

 

通常は防具を貫通するというもので、それは神具であっても有効である。

真価を発揮する場合、自分に対し、禁忌(ゲッシュ)を立てる事だが、その禁忌を破った場合、自分もしくは周りに災いが起こる。

 

刺された者は必ず死ぬが、例え何度躱されようと標的を捕捉し続け、最終的には標的に刺さり、死に至らしめる。

 

使用している間、一夏は他の権能を使えないので、切り札の一つであり、最後の最後と追い詰められた時に使用する。

 

最大解放したこの権能は槍は貫いたという結果を作ってから槍を放つという原因を作る因果逆転の呪いが発動し、それに加え、死の呪いが付与されるため、トップクラスの殺傷力を持つ。

 

また、強力なこの権能の能力は分けた技が存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神殺しの巨狼(フェンリル・ヴァナル)

 

北欧神話おける神殺しの狼、フェンリルから簒奪した権能。

 

基本的には自身の両手足に枷と鎖を顕現させるもので、この鎖はグレイプニルそのものであり、一夏自身の力を抑える作用がある。

 

鎖は触れたいる間、敵の力を抑えこむ作用があり、また鎖自身は物理的な物体である為、拘束武器として運用される。

 

また、火球作ることも出来、枷や鎖で防御も出来るが、これらが破壊されると一夏の力が元に戻り始める。

 

枷が破壊されると一夏自身の肉体に変化が起き、狼を思わせる剛毛、爪や牙が現れる。

 

一夏自身の手で枷を壊す事も出来るが、その場合、要らぬ呪力の消費をする為、一夏は他者の手によって壊してもらっている。

 

全ての枷が破壊された時、一夏の肉体はフェンリルそのものになり、全身を覆う白銀の剛毛を持つ巨狼に変わり、サイズはある程度、自由に決めれるが最低でも、5メートル以上の大きさになる。

 

この状態の一夏の攻撃はまつろわぬ神には一撃で、葬る事が可能である。

 

 

 

 

 

 

雷霆の神王(デウス・トニートリ)

 

ギリシア神話の全知全能の天空神ゼウスから簒奪した権能。

 

基本的には三鈷杵や素手で雷を操るというもので、他にも雲、雨、雪などの天候を操る事が出来る。

 

直接手や足に雷を纏わせて攻撃する事も出来るがその応用として自身の肉体を帯電させ、神速で移動できる。

 

ある程度、力加減は出来るが、最低ランクの雷でも人を感電死させることは可能。

 

奥の手として、神すらも一撃で葬る雷霆を操ることが出来るが、一日一回という使用制限が存在しており、切り札の1つであって、使った場合その力加減で良くて廃墟悪くて更地にされる可能性がある。

 

 

 

第六天魔王

 

史実に登場する戦国武将、織田信長から簒奪した権能。

 

虚空から無数の火縄銃と二本刀を呼び出す。

 

生前の所業、比叡山焼き打ちなどの行為が恐怖として後世に伝えられ、神性や神秘が高い相手程、相性がよく、高い威力を発揮する。

 

 

 

 

冷獄の支配者(ヘルヘイム・オーナー)

 

北欧神話における冥界の支配者である女神ヘルから簒奪した権能。

 

ヘルの領地であるヘルヘイムの冷気を操り、死者を操る事が出来る。

 

また、生者を生きたまま、ヘルヘイムに落とす事も出来る。

 

やろうと思えば死者を生き返らせることも出来るが、9割以上の呪力を消費するため一夏は殆ど生き返らせることは無い。

 

 

 

 

 

 

流星一条(ステラ)

 

古代ペルシャにおける伝説の大英雄アーラシュから簒奪した権能。

 

呪力を瞬時に弓矢に変えるというものを弓矢としては普通の弓矢よりも少し、強い程度だが、一夏の技術と他の権能との併用で補っている。

 

究極の一矢によって2500kmにも及ぶペルシャとトゥランの両国に「国境」を作ったとされる一撃である。

 

 

その威力は一夏が把握して権能の中でトッぷの威力を誇るが、自らの生死を掛けての一撃は高確率で死ぬ。

 

これに対して一夏は

「死んだ伝承と生き残った伝承の両方があるが後者は時代の流れによる変化によって生まれたもの。それによって生まれた語り継がれた時間の差に比例している」と考えている。

 

 

 

 

 

 

 

天穹の狩人(ポイボス・タロスフォ)

 

ギリシャ神話における、純潔の狩り人アタランテから簒奪した権能。

 

狩猟の女神アルテミスから授けられた引き絞れば引き絞るほど威力の増す、漆黒の弓を呼び出す。

 

限界まで引き絞れば神具に傷を負わせることも可能。

 

また、生前贈られた魔獣・カリュドーンの皮を身に纏うことで対象を魔性の存在へと変

貌させ、理性を奪う代わりに強大な力を与えるが、論理的な思考を維持している。

 

使用者は黒い靄に包まれて、その動きは生物の領域を超越し、動作を可能とする。

 

腕を翼のように変化させ、飛行することすらできるが、人体の構造を無視した機動は全身に絶えず激痛を与えている。

 

自身の肉体を使った攻撃だけでなく、音速で石柱を貫通するほどの矢を連発することも可能。

 

 

 

 

 

 

 

業を抱きし授かりの英雄(カルマ・ヴィシャス)

 

インドの叙事詩マハーバーラタの英雄 アルジュナから簒奪した権能。

 

身の丈ほどある弓を呼び出し、自身の呪力を雷の矢に変えて放つことが出来る。

 

また、破壊神シヴァから授けられた破壊神の手翳(パーシュパタ)と呼ばれる破壊神シヴァ終末に於いて投じる、宇宙を滅ぼすための力を呼び出すことが出来る。

 

ただし、この力は威力が大きすぎる為、何重にも制限をかけて威力を抑える必要がある。

 

 

 

 

 

 

太陽の騎士(サー・ソルナイト)

 

アーサー王伝説に出てくる円卓の騎士が一人、ガウェイン卿から簒奪した権能。

 

エクスカリバーの姉妹剣である、午前9時から正午の3時間、午後3時から日没の3時間だけが3倍になるという特性を獲得する。

 

また、ガラティーンの柄には擬似太陽を封じてあり、その一撃は灼熱の太陽と同義であり、疑似太陽を解放した一撃は灰も残さず消滅させるほどの火力を誇る。

 

 

 

善なる神の印(エルダー・サイン)

 

クトゥルフ神話に出てくる善神、旧神ノーデンスから簒奪した権能。

 

現在判明しているだけで異空間へ追放と封印が確認されているが権能の一部である為、その全貌は不明。

権能を使っている時は両腕に旧神の印が浮かび、他の権能を強化することも可能。

その際は外観や性質に変化が起きる。

使用後は不定期に一夏の身体を蝕む謎の痛みと、自分が自分でなくなる感覚が襲うため一夏自身、その使用を拒んでいる。

 

 

 

天地繋ぐ禊の鎖(エヌマ・エリシュ)

古代メソポタミア神話その中でもギルガメッシュ叙事詩に登場するエンキドゥから簒奪した権能。

 

自身の身体、もしくは魔法陣や地面から槍や鎖といった武器を生み出し、攻撃又は相手を拘束する。

星、もしくは人類への破壊行為に反応して威力が激増し、また別のナニカからの力も作用している。

完全に権能を扱えておらず、部分的な開放に留まって

 

 

 

邪視の始祖(イーヴィル・アイ)

 

エノクの書に登場する死を司る天使サリエルから簒奪した権能。

 

相手の死を予見することができ、ヘルの権能と合わせることで相手の権能すら殺し、死の概念がない存在でも、一時的に死の概念を与えることができる危険度が高い。

この合わせ技は、死を扱う以上誰よりも死が近いため、多用は禁物である。

 

また、サリエルは邪視の始祖伝えられており、相手に幻術をかけることもできる。

 

 

 

聖騎士帝よ示せ(シュヴァリエ)儚き幻の輝剣(・パラディン)

 

史実およびシャルルマーニュ伝説の大王シャルルマーニュから簒奪した権能。

 

シャルルマーニュが所持していたとされるデュランダルと同素材で出来たとされる剣ジュワユーズを顕現させる。

十二勇士の化身であるたる剣の群れが顕現させ、十二勇士の武具の一部を顕現させることも可能。

 

 

 

麗しき騎士王を滅ぼす者(ブラッド・オブ・アーサー)

 

アーサー王伝説に登場する反逆の騎士モードレットから簒奪した権能。

 

反逆の騎士モードレットが扱ってきた不貞隠しの鎧と倉庫から無断で持ち去った宝剣クラレントを呼び出すことができる。

 

鎧には情報隠蔽の効果があり、この鎧を身にまとっている間、その権能や出自を暴くことができない。

 

 

 

マハード・ガーネット

カンピオーネに成った一夏がエジプトでまつろわぬ神との戦いで助けた魔術師。

マナ、ガガの二人の妹がいる。

年齢は一夏より、二つ年上でエジプト人。

エジプト人にしてはそこまで日焼けはしておらず、薄橙色の肌をしている。

青紫に近い長髪で翡翠色、長男で、魔術の才能は高く、実力は魔女と同等。

義理堅い性格で自分を救ってくれた一夏に忠誠を誓っている。

一度決めた事はよほどの事がない限り覆さない頑固なところもある。

また剣術、身体能力に優れ、飛翔の術なども得意。

 

 

イメージは遊戯王に出てくる ブラック・マジシャン。

 

 

 

マナ・ガーネット

カンピオーネに成った一夏がエジプトでまつろわぬ神との戦いで助けた見習い魔術師。

兄のマハードと双子の妹のガガがいる。

年齢は一夏と同い年でエジプト人、で胸は大きい方。

エジプト人にしてはそこまで日焼けはしておらず、薄橙色の肌をしている。

肩より少し長い金髪で目の色は翡翠色、兄妹の長女で、魔術の才能は高いが実戦経験が少ないため、実力は低い。

マハードに魔術を教えてもらっている為、飛翔の術等使えるが、剣術などの肉体戦は苦手。

まつろわぬ神に殺されかけた時に一夏に助けて貰い、助けられた際に見事一目惚れし、一夏の騎士(嫁)になることを決めた。

 

 

 

イメージは遊戯王に出てくるブラック・マジシャンガール。

 

 

 




詳細の無い権能に関しても随時更新したいと思います。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

IS学園
IS学園入学


本編開始です。


七人目のカンピオーネこと、織斑一夏は現在、困り果てていた。

何故困っているのか、それは一夏のクラスメイトが全員女子だからだ。

 

(はぁ~、何でこうなったのかな。数週間前の俺を殴り飛ばしたいぜ)

 

一夏は親友である五反田弾、マハード達と一緒に藍越学園に入学しようとしていたのだが、間違えてIS学園の試験会場に行ってしまい、其処でISを動かし、結果IS学園に強制入学となった。

 

(藍越学園か私立城楠学院高等部に行きたかったなー)

前者は学費が安く、家からも近く親友がいるので楽しい学園生活が送れるから、後者は一夏の勘がこの学園で面白い事が起きると訴えていたからである。

マハード達は藍越学園の入学が決まっており、一夏がIS学園に強制入学されることになった時、二人は自分達も一緒に行くと言いだし、一夏は二時間の説得の末、渋々了承した二人だが、どこか納得出来ていない二人に不安を持ちながらIS学園に来た一夏。

 

 

「初めまして、〇〇県から来ました―――」

 

 

一夏がそんな事を思いながら、持ってきた神話関連の本を読みながら、自己紹介を適当に聞き流す。

 

 

「一夏君。織斑一夏君!」

「あ"?」

「ヒッ!い、今、『あ』が終わって『お』だから自己紹介して欲しいなと思って...」

 

 

一夏にとってこの読書はまつろわぬ神との戦いにおいて、重要な事なのだ。

その神がどういう出自でどんな事をしてきたのか分かればその特性が分かり、戦闘が有利に進み、より確実にその神を倒す事が出来る。

その邪魔をされた一夏は一瞬、殺気を放つがすぐ抑え込み、壇上に上がると周りを見渡すと知っている顔があったが気にせず、自己紹介をする。

 

 

「俺の名前は織斑一夏。得技は家事全般で特に料理には自信がある。趣味は音楽鑑賞と読書で特に伝承、神話等のオカルト系を好んで読む。因みに女尊男卑に染まった人間が嫌いなので、そこの所お忘れなく」

「もう少し、まともな自己紹介はできんのか馬鹿者」

 

 

そう言ってきた声に振り向くとそこには教室に入ってくるスーツ姿の女性がいた。

 

 

「山田君、クラスの挨拶を押し付けて申し訳なかった。このクラスに入れる二人の手続きに少々手こずっていてな」

 

 

その女性は一夏のよく見知った織斑千冬だった。

 

 

「諸君、私が君達の担任の織斑千冬だ。私は君たち新人を、1年で使い物になる操縦者にするのが仕事だ。私の言う事はよく聴き、理解しろ。逆らっても良いが...私の言う事は聞け。良いな?」

 

 

凄まじいまでの暴力宣言に一夏は何処の暴君だよ、と他人事の様に心で思った。

 

 

「キャーッ!!千冬様ッ!!!」

「ずっとファンだったんです!!」

「私、お姉さまのためになら、何でも出来ます!死ぬ覚悟も出来ています!!」

 

(マハードの様な奴がいるな)

 

 

一夏は心の中で命は投げ捨てる物ではないと最後の発言者に対して思うのと同時に自分に対して少し、言い聞かせた。

 

 

「毎年よくこれだけ、馬鹿が集まる物だ。感心する、それとも私のクラスにだけ、馬鹿を集めてるのか?」

 

(今の女尊男卑だとこんな感じだと思うな)

 

頭を抱える千冬に対し、一夏は二連覇という偉業を成し遂げてから熱狂的なファンが増え、中には千冬を神と拝め始める信者まで現れる始末は半ば自業自得だろと思っている。

 

 

「で、満足に挨拶もできんのかお前は?最期辺りの趣味と発言はどうにかならないのか」

「残念ながら、最後の二つを変えるつもりは無い。それに趣味に関しては俺が(神殺し)である為に必要なモノなんでね。今後も変える気はないってわかったかな?千冬姉」

「ここでは織斑先生だ」

「一夏!」

「ダニィ!?」

 

 

何が起きたのか説明しよう。

一夏やや挑発気味に言う→千冬姉と言った事を訂正しながら出席簿アタック(伝家の宝刀)を繰り出す→聞きなれた従者の声が聞こえる→その声の持ち主が持っていた鞄で一夏を護る→その光景に千冬並びに教室中が口を開け、ポカーンとしている。

目の前に現れた人物に目を白黒させるが、いち早く意識を取り戻し、目の前に居る人物に問いかける。

 

 

「おい、マハード!なんでお前がここに居るんだよ!!」

「私は一夏を護る盾で有ると同時に剣であり、一夏の身の回りの仕事をする従者でございます。従者である以上、一夏の御傍にいるのは当然のこと」

「はぁ!?俺はお前に家の事は頼んだぞっていったよな!てか、マナはどうした」

「マナでしたらあちらに」

 

 

一夏はマハードが指を指した方を向くと其処には廊下でIS学園(・・・・)の制服で待機しているマナの姿があった。

勘のいい一夏は全てを察し、溜め息を漏らす。

 

 

「はぁ、アイツら...。マナはIS学園の制服なのになんでお前は制服じゃないんだ?」

「マナはIS学園の生徒として入学、私は一夏の身の回りの仕事をする従者としてここに

 

 

居ます。一応、飛び級で大学卒業しているので問題ありません」

 

 

「お前はいつもの立ち位置と変わらんだろ」

「はい。その通りでございます」

 

 

一夏はこの短時間で一気に疲れ、席に着くと周りから小さい声で一夏とマハードの関係に対しての声が聞こえ始める。

 

 

『やだ、あのイケメン・・・カッコイイ・・・』

『織斑君とどういう関係なのかしら』

『さっき、千冬様の事を千冬姉って言ってたけどもしかして姉弟?』

『じゃ、IS動かせたのもそのせい?』

『じゃ、あの人も動かせるのかな?』

『さっき、織斑君の従者って言ってたけど、もしかしてそう言うプレイ?』

『一体、どっちが攻めでどっちが受けなのかしら?』

『今回の夏コミの内容はこれだァ!』

「皆さん静かにしてください!遅れてきた二人の自己紹介を静かに聞いてください!!」

 

 

やや童顔の眼鏡を掛けた女性こと山田麻耶、通称山田先生によって教室は静かになる。

 

 

「私はマナ・ガーネット。好きなものは花で最近、一夏に料理を教えてもらっています。皆さんも一度は一夏の料理を食べてみてください」

「私はマハード・ガーネット。一夏の様にISは動かせませんが、一夏の身の回りの仕事をする執事の様なモノだと思ってください。一夏と共に過ごす、学友の方々とは仲良くしたいですが、一夏に危害を加えるようでしたら容赦なく排除させてもらいます」

 

 

マハード達の自己紹介が済むと丁度良くチャイムがなる。

 

 

「さぁ、SHRは終わりだ、諸君らには半月でISの基礎知識を覚えてもらう、その後は実践だが基本操作は半月で身体に染み込ませろ良いな?良いなら返事をしろ、良くなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

 

 

千冬の発言に一夏は鬼教官って千冬姉の事を言うんだろうな~、と呑気な事を考えていた。

 

 

「織斑の隣の席がガーネット妹だ。早く席に着け」

「あれ?マハードは?」

「私は一夏の身の回りのことをする為に来たのであって、ISを学びに来たわけではありませんので、教室の後ろで一夏を見守る事にします」

「分かった。すでに周りに邪魔にあっている気がするが、周りの邪魔にならないようにな」

 

 

そう言うとマハードは教室の隅に移動する。

 

 

「それでは授業を始める、教科書16pを開け」

 

 

こうして、神殺しこと、織斑一夏のIS学園の生活が始まった。




イギリス高飛車はいつ来るかって?
次回でますよ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王の怒り そして、新たな王の誕生

タイトルで何が起こるか分かると思います。


一時間目のIS基礎理論の授業が終わり、今は休み時間である。

 

 

「あー、暇だ。本、読もう」

「一夏。粗茶をお持ちしました」

「ありがと。ん?この本、前にも読んだな」

 

 

一夏は授業が終わると読み終わったケルト神話の本を仕舞い、民族神話でインカ民族に伝わる神話インカ神話につて書かれた本を読んでいるが、如何やら一度読んだことのある本の様だ。

マハードは授業が終わる少し前に教室を静かに抜けており、恐らく、先程一夏に渡したお茶を淹れに行ったのだろう。

 

 

「マハード、少しいいか?」

「なんでしょうか?」

「さっき気づいたんだが、お前の視線と気配で授業に集中できていなかった奴がいるから、もう少し、周りに配慮しろ」

「一夏が仰るのであれば、少し、気配を消すことにします」

「お兄ちゃんのガン見凄かったよ」

マハード達と会話を楽しんでいると一人の少女が一夏に近づく。

「少し、いいか?」

「ん?...あぁ、箒か。久しぶりだな」

 

 

かけられた声に、一夏は顔だけは動かして声の主を見上げた。

声をかけてきたのは一人の少女はISの生みの親、篠ノ之束の妹、篠ノ之箒だ。

 

 

「そうだな、少し、いいか?」

「別に構わんが、俺はマナ達との会話を楽しんでいる。できればここから動きたくない。変な話じゃないんならここでも話せるだろ」

「まぁ、いい。さっきから気になっていたんだが、その二人とやけに親しいが、どういう関係だ?」

「んー、そうだな。箒が転校してから、俺が身寄りを無くした二人を見つけて引き取って一緒の家で暮らしている」

「まさか、そこの女と破廉恥な事を・・・!」

「なんで、そんな変な考え方するんだか。俺は家族に手を出す趣味はねーよ。お前の頭の中お花畑か?」

 

 

一夏の答えに箒は変な解釈をし、一夏は身の潔白をと同時に箒に仕返しとして少し、からかう。

 

 

「な!?一夏貴様!!」

「変な考えをした罰だ。嫌だったら少しは頭を柔らかくしろ。自分の発言で言われた側は不愉快になることだってあるんだから気を付けろよ」

「そ、そうだよ。 一夏となら別に良いんだけどね(ボソッ)」

「そ、そうだな。私も言われて理解した。すまなかった」

 

そんなやり取りをしているうちに、予鈴のチャイムが鳴り始める。

 

 

「悪いな。久しぶりの再会だが、時間がなくて」

「いや、いい。また後で来る」

 

 

箒は自分の席に戻り、一夏達も出していた物を仕舞い、授業の準備をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、今から授業を始めます。入学して初めての授業ですから、まずはISについて本当に知っておくべき基礎知識についてです」

 

 

本を読む機会は多いが、IS関連の本を呼んだのは初めてであり、前もって渡された教科書は古い電話帳ほどの大きさがあり、一夏は理解するのに苦労しなかったが、隣のマナの姿を見るに如何やらあんまり理解していないようだ。現に頭から煙が出ている。

 

 

「織斑君、何か判らない点はありますか?」

「大丈夫です」

「そうですか、他の皆さんも分からないところがあれば言ってくださいね」

 

 

そう尋ねてくる山田先生に対し、教師として人として立派だと一夏は思った。

女尊男卑が当たり前となったこのご時世に人に対して手を差し伸べる人が減っている。

女性側は『男性なんだから出来て同然』『出来ない方が可笑しい』と当たり前の様な認識を持っており、そして、女性が男性に手差し伸ばす事は無く、『ISを動かす事の出来ない男性に助ける価値なし』『家畜に差し伸ばす手は無い』等という始末、そういった事が多々あるこの世の中で男性は女性に対しての反骨精神は薄れていってる。

男性が女性に対し、反抗すれば、大したことでも無いのに警察沙汰になり、そのまま裁判になり、女性優遇の社会で平等な判決などあるはずもなく、特に何もしていないのに留置所送りとなったケースがあり、これにより、男性は女性に対して卑屈な考えを持ち始めている。

そんな社会で教師という仕事抜きで、山田先生の行動に一夏は心の中で称賛し、まだ、こういう真っ当な(・・・・)女性もいるのだなと実感した。

 

 

「マナさんは大丈夫ですか?頭から煙が出ているように見えるんですけど...」

「だ、大丈夫です・・・。分からない所は一夏におしぇてもらいましゅ...」

「何で俺?まぁ、理解出来てるから別に問題ないけど」

 

 

頭から煙を出しながら授業を受ける、マナを尻目に一夏は授業を受けていた。

 

 

 

 

二時間目が終わり、一夏は身体を伸ばしながら、マナに視線を配る。

 

 

「あー、ダメだこりゃ。頭の中がショートしてやがる」

「......」

 

 

机に頭を付け、煙を出しながら微動だにしないマナに一夏は重症だなと心の中で思った。

 

 

「マナ、この程度の授業に付いて来れない様だったら、一夏に仕えることはできないぞ」

「勉強嫌だよぉー。でも、一夏の力になりたい...」

 

 

マナが勉強に対して文句を言ってると箒とは違う女子が近づいてくる。

 

 

「ちょっと、よろしくて?」

「ん?」

 

 

一夏は声のした方を向くとくと縦ロールのある長い金髪に透き通った碧眼を持つ如何にもお嬢様という女子がいた。

 

 

「まぁ? なんですのそのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄ですのだから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

 

 

自分は有名人ですよ、と言わんばかりのデカく出るが、一夏自身どうでもよかった。

このIS学園で大体威張るような態度を取るのはIS関係者もしくは虎の威を借りた狐しかいない。

 

 

「機嫌を損ねたのなら謝るけど、俺は君が誰なのか知らない。知らない人間に対して『何で知らないのよ。このクソ虫』みたいに言われても困るんだよね」

「知らない?このセシリア・オルコットを?イギリス代表候補生にして、入試主席のこの私を?」

「国家代表候補生?わー、すごいですねー。で、そんな事を威張りに来たの?もしそうだとしたら頭の中は愉快なお花畑で出来てるんだろうな」

「わ、私は優秀ですから、あなたのような人を小馬鹿にする様な人間にも優しくしてあげますわよ。わからないことがあれば泣いて頼めば教えて差し上げてもよろしくてよ。なにせわたくしは入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから!!」

 

 

一夏の煽る様な態度に我慢するセシリアだが、一夏の煽りはまだ終わらなかった。

 

 

「へぇー、お前も倒したんだ。なんかいい気分になってるところ悪いけど俺も倒したんだよねー。教官」

「な!?私だけと聞きましたわ!!まさか・・・」

「ププッ、そんな事に気づかないお前は本物のお馬鹿さんなのだ―」

 

 

煽りに煽りまくる一夏にセシリアは肩をプルプル震え、涙目になりながら一夏を睨むが一夏は涼しげな顔でセシリアを見ている。

「グスッ...。私だけだと聞いていましたが...」

「女性限定というテンプレ的な事にも気づかないとは...。本当に愉快な思考回路の持ち主だな。ホラ、落ち着いてお茶でも飲みなよ」

「こ、これが落ち着いていられますか!? ウ、ウワァァァァ、お母様ー!!」

 

 

先程の勢いはどこやら、チャイムが鳴るとセシリアは泣きながら席に向かって走った。

 

 

「恐悦ながら一夏よ。先程のは些か酷な扱いだと思いますが...」

「知るか。俺はあいう奴が大っ嫌いなんだよ」

「一夏って高飛車な人嫌いだからね」

「てか、教官弱すぎなんだよ。神獣の二匹や三匹くらい連れて来ないと相手にならんぞ」

「神獣って...私達からしたら脅威なんですけど...」

 

 

一夏の言葉に苦笑いするマナであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは実践に向けての授業を始めたいと思います」

 

 

山田先生は授業の内容を説明し始めるが、授業を始める前に千冬が教壇に立つ。

 

 

「授業を始める前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める。自薦他薦は問わない」

「一夏君を推薦しまーす」

「一夏を推薦します!」

「私も!」

「じゃ、私も!」

 

 

一人が一夏を推薦すると次々と一夏を推薦し始める。

 

 

「はぁ!?何でそんな面倒事を...てか、何お前も推薦してんだよ!!」

「いやー、一夏なら余裕かなって、それに一夏が活躍するとこ見たいし」

「お前...アトデオボエテロヨ」

一夏は本業(神殺し)の事もあり、無駄な時間を過ごしたくないので、拒否しようとすると一人の女子が待ったを掛ける。

 

 

「このような選出は認められません!!大体男が、クラス代表だなんていい恥さらしですわ!私に!このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえと言うのですか!」

「うわー」

「本当にメンドクサイタイプだわー」

 

 

一夏は突如、叫び出したセシリアに少し、引きながら長くなりそうな話を聞く。

 

 

「今の社会を作ってきたのは女性ですわ!!所詮、男性なんて子孫を残すことにしか能がない存在ですわ。女性に劣る劣等種である男性が脚光を浴びるなどと耐えれるわけありませんわ!」

「貴様!一夏に向かって「やめろマハード」一夏・・・」

「言わせたければ言わせればいい。所詮、虎の威を借る狐・・・いや、ISの威を借りる女性だ」

「何を涼しげな顔をしているのです!!決闘ですわ!!その涼しげな顔を二度と出来ないようにして差し上げますわ!!それとISを動かせない男がでしゃばらないでくださいませ!目障りですわ!!」

 

 

バンと机を叩くセシリア。

 

 

「何よその態度!!アンタなんか一夏に掠ることなんてできないわよ!! それに自分が1番だ何て、自惚れが過ぎるんじゃない?」

「よせ、マナ。俺はこっち(IS関連)では無名だ。こうなる事は薄々、予想はしていたが―――」

「「ゾクッ」」

 

 

一夏から溢れる殺気と威圧感にクラス全員が身を震わせる。

 

 

「俺の家族を馬鹿にされるとは思ってなかったな。家族を馬鹿にされて黙ってるなんざ、王でもなければ人ですらねェ。セシリア・オルコット、貴様の申し出受けてやる。だが、勝てると思うな、ただで済むと思うな。俺の家族に対する無礼は高くつくぞ。決闘なんだ、骨の1本や2本や一生モノの傷が出来たとしても恨むなよ。決闘って言うのはそういう物だ」

 

 

一夏がそう言うと、一夏の殺気に飲まれていた千冬が、我に返ると手をパンと叩き、一度場を収める。

 

 

「さ、さてと、話は纏まったな。それでは勝負は1週間後の月曜、放課後第3アリーナで行う。織斑それにセシリアはそれぞれ準備をしておけ。それでは授業を始める」

 

 

一夏は先程の殺気と威圧感は消し、授業を受ける。

 

 

 

 

 

 

この日、イタリアのサルデーニャ島にて9人目のカンピオーネが誕生した事を一夏はまだ、知らない。

 

 




新しい神殺しの誕生。

まぁ、誰かは言いませんがあの人です。

そう、天然女たらしです。

え?一夏もそうだろって?

一夏はまだマシ・・・・・・かな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王の暇つぶし

つい、この間友達にこう聞かれました。

「お前って艦これで好きなキャラ誰?」

「金剛さん、霧島さん、長門、空母棲姫」

「いつから提督に赴任した?」

「赴任歴ゼロだよ」

この時、友達がこの世に存在しないモノを見るかのような目で私を見ていた。

艦これのキャラは好きなだけで、ゲーム自体やってないんだよなー。

今からやっても、ついて行けるのなら、やりたいけどどうなんだろう?

それ以来、友達から艦これやろうぜと言う話ばっかされる...。


放課後、一夏達は千冬に教室に残るよう言われ、マハード達と雑談をしながら待っていた。

 

「はぁ、何か面倒事に巻き込まれるな」

「そんなの気にしないたら、キリがないよ。それと高飛車をギャフンと言わせましょ」

「あの温厚なマナがここまで言うとは・・・。一夏、頼まれていた物をお持ちしました」

「サンキュー」

 

マナの発言に驚くマハードだが、気持ちを切り替え、一夏に頼まれていた物を渡す。

 

「ふむふむ。やはり、居たか」

「何が居たの?」

「あぁ、このざる警備のIS学園がなんで『IS学園は絶対安全』って豪語出来るのか

 

気になっていたんだが、それを実行できるだけの後ろ盾があるという事が分かった」

 

「へぇー」

「その主な実行部隊は千冬姉率いるIS教師と更識家の連中が居るから、あそこまで言えるんだよ」

 

更識家という言葉に首を傾げるマナに溜め息を漏らす一夏とマハードは分かっていないマナに説明するのだった。

 

「お前らも知っている正史編纂委員会は日本の呪術師や霊能者が関わった事件の情報操

 

作などを行う政府直属の秘密組織なのに対して更識家も同じ裏で活躍する政府直属の組織なんだよ。で、ここは日本政府が運営しているので、その中で実力のある更識家の人間を護衛に付けているんだ」

 

「この二つの相違点を上げるのであれば、扱う事件、不祥事が違うという事だ」

普通(・・)の人間が解決できる事件は更識家で解決するが、更識家では解決できない特殊な事件は正史編纂委員会が解決する」

「話によれば、正史編纂委員会は更識家の事を知っているけど、更識家は正史編纂委員会の事は特に知らされていないらしい」

「なんで正史編纂委員会だけ扱いが違うの?」

「あぁ、解決できる事件や規模が違うのと組織の内容を非公開にする事で下手に介入させないようにして事件を最小限で食い止めよう、て感じなんだよ」

 

無理矢理な感じもするが、実際にそうなのだから仕方ない。下手に魔術と関わらせることで、余計な被害を出さないようにするために秘匿扱いされている。

更識家は普通の人間やISを対象にしているのに対し、正史編纂委員会は人間―――呪術師などの魔術関係やまつろわぬ神等、更識家では到底、解決出来ない事を行う為、上下関係的には正史編纂委員会の方が上である。他にも関わってきた歴史が違うというのもあったりする。

 

「だけど、その更識家から媛巫女が出たって話だしな。今後、更識家がコッチ(魔術側)に絡んでくる可能性があるのよね。てか、更識家はごく稀に媛巫女が出るらしい」

「私も聞いたことがあります。確か、万里谷祐理にも劣らぬ強大な霊視能力を持っているという話だったはずです」

「で、その更識家の娘が二人この学園に居るんだよ。ちょっと興味があるんだよね」

「では、捜索の方は私がしておきましょう」

「いや、それは俺がやる。良い暇つぶしになるだろうしな」

 

 

 

そんな会話をしていると教室のドアが開き、山田先生が入ってくる。

 

 

「あ、織斑君!まだ教室に居てくれたんですね」

「待てと言われたのでね」

「待たせたことには謝ります。これが織斑君のルームキーです。後、お二人も同じ部屋です」

「やったー!!」

 

 

一夏は山田先生からルームキーを受け取り、一夏と同室という事に両手を上げて喜ぶマナ。

一夏は一週間は自宅通学だった事を思い出し、何故こうなったのか分析する。

織斑一夏と言う存在は現在の世界では非常に大きなものだ。

女性しか扱えないISを現在唯一扱える男として、まつろわぬ神に対抗できる神殺しとして双方に大きな影響力のある存在なのだ。

一夏を解体したいと思っている変態や一夏を人身売買で一儲けしようと考えている黒服の人から護る為であり、過激なまでに現在の女尊男卑の風潮を信奉している存在から、その風潮を壊すかもしれない劇薬ということで狙われることもありえるだろうし、逆に現在の風潮を壊そうとする存在が一夏を神輿として祭り上げようと誘拐を企てる可能性だってありえなくは無いのだ。

そう言った思惑がある事を考えた上での配慮だと考える。

 

 

「俺の生活用品とかはどうすればいいですかね?」

「安心しろ、それならば私が既にここに運ぶように手配した。既に寮に届いているだろう」

 

 

真山田先生にに自身の生活用品について伺いを立てようとした時、教室に入ってきた千冬が一夏にそう告げる。

 

 

「へぇー、家では体たらくを晒している千冬姉にしては用意がいいな」

「織斑先生と言え、馬鹿者。届けてもらうといっても、必要最低限の物だけだがな。携

帯の充電器や数日分の着替え等だ。ほかに必要なものがあったら購買である程度は揃えれる。そこで買うといい」

「俺の神話関係の本は?」

「あんな物は置いてきた。授業の邪魔になるだけだからな。ISの授業の傍らにお前はそんな本を理解する余裕があるのか?それとこの学園にはそう言った本は売っていない」

「マハード!GO!!」

「了解した。我が主よ!!」

 

 

バンッと思いっきりドアを開けるとダッシュで廊下を走りだすと、数秒後、土煙を上げながら外を走るマハードの姿が見えた。

確かに多くの本を読んでいる一夏だが、読んだ本を覚えていないモノはあるかというと無いのだ。それは一夏の特殊な記憶法によって一字一句間違い間違いなく覚えているのだ。

 

 

「あ、あのー、マハードさんはどうされたのですか?」

「マハードは一回家に戻って千冬姉が置いてきた本を取りに行きました」

「え?でも何も言ってませんでしたよね・・・」

「お兄ちゃんと一夏は会話が成立しなくても意思疎通が出来るんです。伊達に一夏の従者やってないってことですよ」

「へぇー、凄いですね」

 

 

マナ達の言葉に感心する山田先生に自慢げに言うマナ達、それと対照的に千冬は何処か悔しそうな顔をしていた。

 

 

「クッ...。一夏の趣味を何とかする為にあえて持ってこなかったんだが...。余計な事をしてくれる」

「前にも言ったが、自分の価値観を押し付けてもらっては困る。マナ、マハードが戻ってくる前に部屋に行くぞ」

「はーい」

 

 

ルームキーをポッケに入れて、自分達の部屋に向けて移動を開始するのだった。

 

 

「織斑先生って自宅では体たらくなんですね。すごく意外な事実にビックリです」

「...山田君。どうです?久しぶりに一戦交えませんか」

「え?えぇぇ!?結構です!!仕事があるので......」

「そんな遠慮せず、確か、第一アリーナが空いていたはずですから早速行きましょうか」

「た、助けてぇぇぇ!!」

 

 

この後、第一アリーナで女性の悲鳴が聞こえたとか、聞こえていないとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

寮へたどり着いた一夏は寮の入り口近くで千冬が手配したであろう自身の荷物が入った大型のカバンを回収すると1021号室に鍵を使い中に入る。

 

 

「中々、良い部屋だな」

「うん。高級ホテルみたいな感じだね。行ったことないけど」

「ちゃんとベットも三つあるな」

 

 

 

ここまで設備がいいのと三人用の部屋になっている事に驚く。

そんな会話をしていると誰かがドアを三回ノックする。

 

 

『一夏。ご自宅より、本を持ってきました』

「よし、入れ」

 

 

一夏が入室を許可するとドアが開き、段ボール4つを抱え込んだマハードが入ってくる。

 

 

「一夏の部屋にあった本は全て持ってきました。書庫にある本も持ってくればよろしかったですか?」

「いや、これだけあれば十分だ。よくやったぞ、マハード。流石、俺の右腕だな」

「お褒めの言葉、ありがとうございます」

「所で一夏はあの高飛車になんか対策はあるの?」

「いや、特にない。強いて言うなら、権能は使わず、魔術を少し、補助に使うくらいかな。使っても基礎の基礎だな」

「そうですか。錬金術はおやめください。アレは目立ちますので」

「個人的に好きだけど使わねぇよ。試合中に『持っていかれたァァァ!!』何て言いたくないし」

 

 

一夏が魔術を使うのは卑怯と思うかもしれないが、逆に言えば魔術だけ(・・・・)で済むという事は有難いことなのだ。

一夏は過去に自分の忠告を無視した組織を潰した経験があり、その時は権能を使い壊滅させたのだが、それに比べればマシな方である。

 

 

「先程、甘粕冬馬と遭遇したのですが、一夏にとって喜ばしい情報を手に入れました」

「へぇー、どんな話だ」

「はい、サルデーニャ島でまつろわぬ神が現れたとの事です」

「で、誰か対処しに行ったのか?俺の予想だと、剣馬鹿か狼ジジィだと思うんだが」

「いえ、そのどちらでもありません」

「む?じゃ、翠姐さんかそれともアレクかな...。二人とも動きにくいだろうし、ジョン・プルートーか?災厄兎の可能性もなくもないんだが...」

 

 

一夏は頭をワシャワシャと乱し、一つ思いついたが、それは一番可能性が低く、一夏は降参と両手を挙げた。

 

 

「倒したのは一般人です」

「待て。今、倒したって言わなかったか?」

「はい。倒したと言いました」

 

 

一夏は思わず笑みを浮かべる。

何故なら、自分の退屈な時間を潰す存在が増えたのだから。

 

 

「そいつは誰だ?名前は?何処に住んでる?どの神を倒した?どうやって倒した?」

「まだ、情報はそこまでありませんが、現れたまつろわぬ神はゾロアスター教の神、軍神ウルスラグナとの事です」

「ウルスラグナといえば、十の化身が有名だな。なんとなく想像は出来るが、黄金の刃のある剣を持つ人間がどういうのか分からねぇな」

「では、新たなカンピオーネの情報を集める事にします」

「そうだな。できればその後の動向とかも探っておいてくれ、ちょっとそいつに会ってみたいからな」

「畏まりました」

 

 

今、一夏の中でセシリアとの決闘なんかどうでも良くなっており、今は新たなカンピオーネの事で頭がいっぱいだった。

 

 

「そういえば、一夏は昼食の時に幼馴染みとお約束があったと記憶しているのですが」

「あ、すっかり忘れていたわ。今すぐ向かうわ」

「私も行く」

「では、私も御同行させて頂きます」

 

 

一夏達はこれ以上待たせるのは申し訳ないと考え窓を開け、飛び降りるがこのままでは人目に付くので、権能を使い周囲の認識を騙し、約束の場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

一夏は目的の場所である、剣道場に着くと権能を解除し、剣道場の中に入る。

 

 

「遅かったな。一夏」

「あぁ、悪いな。さて、こんな事とっと終わらせようぜ」

「待て一夏。防具は付けなくていいのか?」

「こんなお遊びにイチイチ防具なんかつけるかよ」

「お遊び...だと...」

 

 

一夏のお遊びという言葉に眉間に少し、皺を寄せる箒。

 

 

「あぁ、お遊びだ。命のやり取りをしない時点でお遊びだ」

「一夏!剣道を侮辱するのか!!」

「お前にとっては侮辱に聞こえるかもしれんが、俺はそう言う認識なんだよ」

 

 

一夏は小太刀を逆手で持つと、そのまま棒立ちで左手をポッケに入れている。

 

 

「なんだ...その構えは?」

「我流と言ったら納得するのか」

「そんな不出来な構え、私が修正してやる!!」

 

 

箒は上段から振りかぶるが一夏は小太刀で受け止める。

箒は一歩下がると面、胴、小手とランダムで攻撃してくるが、一夏はそれを最小限の動きで躱す。

 

 

 

「何よ。あれだけの減らず口を叩いておいて、防戦の一方じゃない」

「やっぱり、言葉だけのようね」

「いいぞ!そのままやっちゃえ!!」

 

 

マナは一夏を馬鹿にした女子に苛立ち、前に出ようとするが、マハードによって、止められる。

 

(ちょっと!なんで止めるの)

(私だって一夏に対する暴言に怒りを感じているが今は我慢だ。今、行動したら最悪、

一夏の顔に泥を塗ることになる)

 

 

マナ達は小声で話し合っていると眼鏡を掛けた水色の髪をした女子が前に出る。

 

 

「貴女達の目は節穴」

「何ですって?」

「私達のどこが節穴よ!!」

「全部。彼が不利だと思っている時点でダメ。もう少し観察力を磨いたほうがいい」

「じゃ、この状況でも、私達の目は節穴だっていうの?」

 

 

女子の一人が剣道場の様子を指差す。

 

 

「うん。彼女は攻撃が当たらず、焦っているけど、あの人は最小限の動きで躱しているから、相当余裕がある。それにそろそろ、終わる」

「え?」

 

 

水色の髪の女子は視線をずらすと其処には手首を抑え、竹刀を落とした箒と首筋に小太刀を首筋に添えている一夏の姿があった。

 

 

「貴女達の目は節穴だった。もう少し、冷静さと観察力を身に付けないと生きていけない」

 

 

そう言うと水色の髪の女子はその場から離れ、少し経ってから剣道場から一夏が出てく

る。

 

 

「お疲れ、一夏。やっぱ、生身でも強いよね」

「一夏。お飲物をお持ちしました」

「ありがとさん」

 

 

一夏はマハードから、飲み物を受け取るとその場から離れ様とするが、剣道場の中から、一夏を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

「待て一夏!なぜそこまで強い...。どうしたらそこまで強くなれる!!」

「...人が強くなる大まかな理由は三つだ。一つは自分の欲望の為、二つ目は生きる為、三つ目は何かを護る為だ。俺はこの全てが当てはまるがその中でも二つ目と三つ目が大きいな」

「護る為はなんとなく分かるが、生きる為とはどういう事だ?」

「それは教えられない。ここから先は後戻りのできない一方通行だ。強くなりたいんなら、何のために強くなるのか考えるんだな」

 

 

そういうと一夏は剣道場を後にし、マハード達が一夏の後ろをついて行った。

 




チラッと出て来た神殺しが誰なのか分かったかな?


答えはWEBで


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新しい王の対面

これが人の夢! 人の望み! 人の業! 他者より強く、他者より先へ、他者より上へ! 競い、妬み、憎んで、その身を食い合う!

私は結果だよ…だから知る! 自ら育てた(ガチャ欲と物欲センサー)に喰われて、人は滅ぶとな!

もはや(ガチャを)止める術などない! そして、(課金して)滅ぶ…。 人は、滅ぶべくしてな!






最近、ガチャで当たらなかったせいでとち狂ってしまいました。





タイトル通り、一夏があの人と出会います。


セシリアとの決闘が5日後に迫った一夏だが、何か対策をしているのかというと特に対策をせず、新しく現れた9人目の神殺しの情報を集めていた。

授業が終わりIS学園をうろつき回っているとマハード達が一夏の前に現れる。

 

 

「一夏。9人目のカンピオーネの情報を手に入れました。こちらがその情報です」

「どれどれ」

 

 

一夏はマハードから渡された写真付きの紙を見ると一夏は体を震わせ、拳を強く握る。

 

 

「ふざけんなよッ!?この迷惑兎がァァ!!」

「「!?」」

 

 

一夏は怒りを露わにすると雄叫び声を上げながら地面を殴ると一夏を中心を地面が揺れ始める。

一夏は怒りのあまり権能を発動させ、地震を起こしたのだ。

その震度は2から3程度で短時間の揺れの為、そこまで被害は出ていないが、周囲から悲鳴が聞こえた。

 

 

「ちょっ!?権能使わないでよ!!」

「お、落ち着いてください。一夏」

「これが落ち着いていられるか!この草薙護堂って奴が居る私立城楠学院って所は俺が受けようか迷った場所なんだよ!!」

今にも飛び出しそうな一夏を宥めようとする。

「何故、その学校を受けようとしたのですか?」

「ここに行けば面白いことが起きると思ったからだ」

「なんで、一夏の勘はそう当たるの!?」

「あの兎...。次、会ったらこんがり美味しく焼いてやるわ」

 

 

宥めようとするものも一夏の驚異的な勘に驚くマナ。

マハードはこのままだと、IS学園が消える可能性があると考え、とっておきの情報を一夏に言い渡す。

 

 

「草薙殿は次の休みにイタリアに行くとの情報があります。そこでご対面するのはどうでしょうか?」

「...次の休みにイタリアに一人で行く。異論は無いな?」

「一夏がそう仰るのであれば」

「えー、私達も行きたーい」

「お前はISの勉強と魔術の練習でもしていろ」

 

 

そう言うと一夏は自室へと移動するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日

 

 

「昨日の地震怖かったよね」

「うんうん。いきなり揺れたから吃驚したよ」

「震源はIS学園の直下らしいよ」

「よく無事だったよねー」

 

 

次の日教室に行くと昨日起きた地震の話題が上がっており、原因のすぐ近くにいたマナ達はジト目で一夏を見ると一夏はマナ達から視線を逸らす。

 

 

「別に問題ないでしょ。そこまで大きな被害でて無いんだし」

「被害が出る出ないの問題ではありません。今後はあのような行動は慎んでください」

「善処する」

「嫌々、善処じゃなくて、次は絶対やらないて言ってよ!!」

「......」

「無視すんな!!」

 

 

両手を上げ如何に怒ってますよといったポーズを取るマナ。

その後、教室に来た千冬の主席簿アタックにより、撃沈した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、休日になり、一夏はイタリアに向けて、縮地を使い移動していた。

IS学園に無断でイタリアに向かっている一夏だが、ほんの数時間だけといい、IS学園から姿を消したとなると問題になる為、権能を使い、周囲はマハードが自分であると錯覚している為、本人が居なくても問題無い。

単身イタリアに行った一夏だが、何処に行けばいいか分からず、迷っていた。

 

 

「やべっ、どこ行けば分からねぇ。こんな事になるなら、マハードにもう少し調べさせておけばよかった。仕方ない、探索のルーンで何とかするか」

 

 

自分の浅はかな行動に叱咤するが、頭を切り替え、お得意の魔術を行使することにした一夏。

ルーン文字を描き、対象者(草薙護堂)の位置を調べる。

 

 

「んー、あっちか」

 

 

一夏は探索のルーンで得た情報を頼りに目的の場所に向かうのだった。

一夏は縮地を使いながら移動するとコロッセオの近くで複数の人影を見つけると高い所から三人を見つめる人の所に行く。

 

 

「みーつけた」

「あ、貴方様!?」

「織斑一夏殿!!何故、ここに」

「ここで9人目のカンピオーネに会えると優秀な従者が教えてくれてね。ちょっと、来てみたのさ」

「言ってくだされば、遣いの者を向かわせたのですが」

「こっちも忙しいんだよ。グダグダ言うと組織潰しちゃうぞ」

 

 

口角を吊り上げ、三日月の笑みを浮かべる一夏に、これ以上は危険だと察知し、三人はそれ以上何も言わなくなった。

 

 

「あそこで逃げ回ってるのが、草薙護堂か・・・。相手は紅き悪魔(ディアヴォロ・ロッソ)の称号を持つ、エリカ・ブランデッリか・・・。さて、どう戦うのか楽しみだね」

 

 

目をキラキラさせながら二人の戦いを見つめる一夏だが、いつもの黒髪が銀髪に変わっていた。

ブリュンヒルデとの戦いで銀髪になり、普段は髪染めで黒くしているが、気分が高まるとどういう分けか、塗料が落ち、銀髪になってしまうのだ。

エリカが、レイピアのクオレ・ディ・レオーネを地面に突き刺すと剣は膨張と変形を始め、銀色の獅子の姿になる。

獅子は護堂に襲い掛かり、逃げ回る護堂に獅子は前足を振り下ろすが、護堂はここで初めて避けなかったのだ。

護堂は獅子の前足を掴むと雄叫び声を上げ、そのまま獅子を投げつける。

 

 

「何という力だ...!!」

「これがウルスラグナ第二の化身。雄牛の怪力です」

「ウルスラグナを倒したって話を聞いた時から、ある程度は予想できたが、俺の見当違いじゃなければ他にも力があるはずだ」

「ご機嫌よう白き王、織斑一夏殿。白き王の言う通りです。護堂に注目してください」

 

 

エリカは何度か此方を向いていた為、一夏の存在に気づいていた為、差ほど驚くことは無かった。

獅子を地面に投げつけた事により、発生した土煙から、獅子の頭部の形をした、光弾が護堂を襲う。

 

 

「なんて速さだ...」

「これ程、強大な化身を後、八つもあるとは...」

「これがウルスラグナ第七の化身。鳳の力です」

「ここまでの力を持ったカンピオーネは滅多にいない...」

 

 

一柱の神から簒奪した権能でありながら複数の発動形態をとるのは珍しく、護堂の他にコスプレしてヒーロー活動をしているジョン・プルートー・スミス位だろう。

エリカは化身について説明するが、一夏は興味が無かった。あるのは只、一つ―――黄金の剣がどういう化身として現れるのかが気になっている。

 

(黄金の剣は相手に対する膨大な知識が必要か...。今回は見れそうにないな)

 

内心、ガッカリしているとエリカが下に降り、手を翳すと光弾はレイピアに姿を変え、ゴルゴタの言霊を唱えるエリカ。

神への憎悪と絶望の言霊でゴルゴタの丘と同じ冷気を呼び込む戦闘魔術。神をも傷つける強力な死の呪詛で、常人ならば即死、強力な魔術師であっても立てなくなる程に衰弱させる効果がある。

対する護堂は背後から20mの黒き猪が現れるとそのまま投げつけるが、エリカは上空に逃げる事で回避し、猪はそのまま突き進みコロッセオに衝突する。

着地したエリカに護堂がタックルをぶちかまし、結果、押し倒す形になる。

決闘は護堂の勝利となり、健闘した護堂に拍手が送られる。

 

 

「中々、面白いなお前」

「えーと、貴方は?」

「彼は貴方の先輩に当たる御方よ」

「初めまして、草薙護堂。俺の名は織斑一夏。世間を騒がせてる張本人だ」

「あー!!どっかで見たこと有ると思ったら、この前テレビに出ていた人だ!でも、明らかに髪の色が違う」

「昔はちゃんとした黒髪なんだけどね。ある事が原因で色素が抜けてこうなったんだ。普段は黒に染めてるんだよ」

 

 

笑いながら答える一夏に護堂は何処か呆気った表情をする。

 

 

「ん?どうした」

「いや、カンピオーネってのはドニみたいに自分勝手な奴ばっかだと思ってたから、織斑一夏さんの態度にちょっと・・・」

「まぁ、その見方で間違いじゃないけどね。後、俺の事は気軽に一夏でいいぞ」

「あ、やっぱり。じゃ、俺の事も護堂でいいですよ」

「どの、カンピオーネにも言えるけど、派手にやるよねー」

 

 

気の抜けた言い方をする一夏だが、パチンと指を鳴らすと先程の決闘で壊れたモノがまるで逆再生したかのように戻っていく。

 

 

「すげー、さっき、猪に壊させたコロッセオが完全に直った...」

「後輩の面倒を見るのは先輩の役目なんでね。それに俺、お前の事個人的に気に入ってるからさ。何かあったら言いな。助けてやるよ」

「でも、連絡先とか知らないから」

「心配するな。さっき、お前の携帯の友達の所に俺の連絡先登録しておいたから」

「え!?」

 

 

護堂は慌てて、自分の携帯をポッケから取り出し、操作すると一夏の言った通り友達欄に一夏の連絡先があった。

 

 

「いつのまに...」

「権能を使えばちょちょいとね。あの人達がなんか渡したいモノが有るらしいから行って来いよ」

「あれ、一夏さんはこの後どうするんですか?」

「帰って寝る。見たいモノも見れたし、会いたい奴にも会えたからな。長居は無用ってね」

 

 

一夏は足を踏ん張り、地面を蹴ろうとした時、ある事を思い出す。

 

 

「あ、そうそう。近いうちにお前は戦いに巻き込まれるから」

「え!?ちょっと、それはどういう事ですか!!」

「その時は助けてやるよ。じゃーねー」

 

 

騒いでいる護堂を後にし、地面を思いっきり蹴り、その場から消えるのだった。

 

 

「良かったわね、護堂。白き王に気に入られるなんて、さすが、私の護堂だわ」

「なぁ、エリカ。一夏さんってそんなに有名なのか?」

「いい意味でも悪い意味でも彼は有名よ。昔、気に食わないって理由で一つの魔術結社を潰したり、暇だからという理由で他のカンピオーネに喧嘩を売ったり、彼が戦った場合、被害額は兆を超える等、色々あるわよ」

「うわぁ、マジか...」

 

 

エリカから聞いた一夏の所業の数々に引く護堂であった。

 




己の尊厳と威厳を掛けた試合。

白き神殺しは女尊男卑に染まった少女と対峙する。

次回、インフィニット・ストラトス ~蒼天の魔王~ 「勝者と敗者」


勝利の女神は誰に微笑むのか




ダブルオー風の次回予告は前からやって見たかった。
最近、マキブで新しく機体追加されるけど何かな?
前回はレギルスだったけど、次はダークハウンドかAGE-FXかな?
最近はブリッツを使い始めました。
理由?友達がレギルスを使うから30、30という事故を防ぐために





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王の遊戯 勝者と敗者

という事で、セシリア戦です。

fate/goにノブと沖田が出て来たけど、沖田でないんだよなー

ノブの宝具LVはMAXに出来なくていいや。
ノブを最終再臨まで出来ればいいや。
それと、今回のイベント本当にぐだぐだだなー。



沖田で無かったんで幾つかネタをブッ込んでみた。反省も後悔もしていない。




イタリアから帰国した一夏は自室に戻るとマハード達が出迎えてくれた。

 

 

「ただいまー」

「お帰り」

「如何でしたか?9人目のカンピオーネは?」

「見どころアリだね。カンピオーネに成って日が浅いのにあの剣馬鹿と引き分けたんだからよ」

「アレ?お土産は」

「無い」

 

 

お土産が無い事にショックを受けるマナを無視し、一夏は周囲に掛けた権能を解除する。

 

 

「明日の対戦相手である、セシリア・オルコットの機体情報がありますが如何なさいますか?」

「いらん。まつろわぬ神やカンピオーネとかならまだしも、国家代表並びに候補生相手なら要らねぇよ。相手が慢心しているなら慢心して相手するのもまた、王の仕事だ」

 

 

一夏はマハードが淹れた紅茶を飲みながらある事を思い出す。

 

 

「そういえば、俺の機体はどうなったの?もしかして訓練機でやるの?まぁ、それでもいいけど」

「一夏がいない時に千冬殿が『国から支給される』と仰ってました」

「へぇー、数少ないコアを俺の為に使うか。まぁ、データ取りが目的なのは見え見えだけどね」

 

 

アハハ、と笑う一夏。

 

 

「では、この後はどの様にお過ごしで?」

「寝る。飯はイタリアで食ったし、食堂で食うなら食堂で食えばいいし、冷蔵庫に一応作っておいたから、それを温めて食ってもいいよ」

「あ!一夏だけずるい!!」

「分かりました。では、良い夢を」

 

 

一人だけイタリアン料理を食べた一夏に文句を言うマナだが、一夏は既に気持ちよさそうに寝息を立てており、マナの抗議は聞こえていなかった。

 

 

「一夏が作ってくれた料理を食べようと思うのだが...異論はないな?」

「一夏の作ってくれた料理は天下一品!!物凄く美味しいからね」

「では、一夏の料理を食べるとしよう」

 

 

マハードとマナが食事の挨拶をする。

 

 

「お兄ちゃん!その、から揚げを寄越せェェ!!」

「これは私のだ!誰にも譲らん!!」

「なら、その稲荷寿司を渡せッ!」

「それは私のおいなりさんだ」

「■■■■■■■■■■ーーーーッ!!??」

 

 

テーブルの上にある食材が無くなるまで、楽しい食事という名の戦争が勃発した。

 

 

 

 

 

マハード達の料理が決まった頃、別の部屋では

 

 

「...本音居たの?」

「あ、かんちゃんだー。おかえりー」

「...何で部屋の中に居るの?」

「かんちゃんの従者だから―」

「理由になってない...」

 

 

袖の余った狐の着ぐるみを着て、ベッドの上でお菓子を食べているのが布仏本音。その見た目と雰囲気からのほほんさんと呼ばれている。

部屋に入ってきた眼鏡を掛けた水色の髪の女子は更識簪。IS学園の生徒会長、更識楯無の妹で日本の代表候補生である。

 

 

「にしても、かんちゃん帰ってくるの早いねー。いつもなら、時間ギリギリまで整備室に居るのに」

「...明日の試合の為に早く切り上げてきた」

「かんちゃんもオリムーの明日の試合見に行くの?」

「勿論。その為のチケットも手に入れた」

 

 

机の中から明日の試合のチケットを取り出す簪。

 

 

「あの人の為なら、どんな苦労も惜しまない」

「おー、かんちゃんかっこいい」

「本音も見に行くの?」

「うん!オリムーに明日のチケット貰ってるからねー」

 

 

本音がそう言うと、簪からピシッと何かが響割れる音が聞こえた。

 

 

「...本音、もう一度言って。そのチケット誰から貰ったの?」

「え?オリムーからだよ」

「本音お願い。そのチケットとこのチケット交換して」

「えぇ!同じ最前列のチケットなんだよ!?交換する必要ないよ!!」

「確かに同じ。でも、私からしたらその価値は絶大」

 

 

その後、簪は本音のチケット手に入れるために部屋中を追いかけ回し、本音からギブアップとしてチケットを交換するとまるで新しい玩具を貰ったように嬉しそうにしていた。

簪がここまで一夏から渡されたチケットに執着するのには理由がある。それは男性初のIS操縦者などという理由ではなく、もっと原始的な理由があった。

 

 

「でも、オリムーはセッシーに勝てるのかな?」

「あの人なら勝てる」

「なんでそう思うの?」

 

簪は昔の事を思い出すようにどこか懐かしそうに力強く言う。

 

 

「だって、あの人は私を救ってくれた人(ヒーロー)なんだから」

 

 

簪にとって一夏は希望であり、特別な存在なのだから。

 

 

 

 

 

 

月曜日 ISアリーナ

 

「一夏のISはまだ来ないの?」

「話によると日本政府の人間が来るとの事だ。使者は私達もよく知る人物だとか」

「それは別に良いんだけど。一夏遅すぎて寝てるよ」

「グガァー」

 

 

試合開始予定から1時間が経ち、このまま届かないのではないかとソワソワするマナ達と暇すぎて寝ている一夏。

大切な試合を前に寝る一夏に呆れる箒と無言で出席簿を構える千冬。

 

 

「織斑君!織斑君!!織斑君!!!」

「ん?」

 

 

山田先生が一夏の名を連呼しながら駆け込んでくるとその後ろから見知った一人の男性が付いてくる。

 

 

「おやおや、大切な試合前だというのに随分な余裕ですね」

「甘粕...。確かに知らん奴が来るより、いいわな。関わりが長いから」

「まぁ、それはお互いの関係を考えたら仕方が無いことかと」

「世間話はいいから早くしろ」

「おぉ、怖い。かのブリュンヒルデに睨まれてしまっては蛇に睨まれた蛙同然ですからね。さっそく、取り掛かるとしましょう」

 

 

甘粕は千冬の威圧を軽く流し、一夏に専用機の説明をする。

 

 

「と言いましたが、私自身やることが無いんですよね。ISは専門外ですから」

「じゃ、何しに来たんだよ」

「機体の説明ですね。まず、機体の名称は白式です。本来の武装は剣一つでしたが、勝手ながら此方側の判断で少し変えさせて頂きました。一夏さんにあった物を選んでおきました。最適化(フィッティング)さえ終われば問題無いのですが...」

「チッ。余計な真似を」

「フン。その程度の障害に乗り越えられないほど俺は軟ではないわ」

「そうですか。では、白式に触れてください」

 

 

一夏が白式に触れるとカシュッと音を立てて白式が一夏に装着されていく。

 

 

「ISのハイパーセンサーは問題無く動いているな?気分はどうだ?」

「特に問題ない」

「問題がない様でしたら、私はこれで。仕事が立て込んでいるので」

 

 

そういうと甘粕はその場から立ち去る。

 

 

「じゃ、行ってくる」

「では、一夏。ご武運を」

「ガンバ一夏!!慢心しないでね」

「慢心せずして、何が王か!!」

「それフラグ!?」

 

 

そんな和気藹々とした会話をすると一夏はアリーナへと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか逃げ出したのではと思いましたが、安心しましたわ!」

「俺は逃げも隠れもしない。それに俺がお前如きにやられるかよ!」

「これが最後ですわ! この決闘、既に私の勝利は絶対そのもの! 素直に泣いて謝るというのでしたら、まぁ、許して差し上げないこともございませんことよ?」

「寝言は寝てから言えよ。さぁ、俺達のデート(戦争)をはじめようじゃないか!!」

「そうですか。では、...お別れですわ!!」

 

 

スターライトmkⅢの銃口から一直線に白式に向けて、光弾が放たれると同時に試合開始の合図が鳴り、観客は皆、この一撃が確実に命中すると思った。

だが、多くの強敵と戦った一夏からすればその攻撃は予想の範疇であり、余りにもお決まりの生ぬるい攻撃だった。

一夏は首を頭一つ分ズラすことで躱し、展開可能な装備の一覧を見ると一夏は思わず笑った。

 

 

「ハハッ!流石だな!!俺の好みの武器が分かってるじゃないか」

「如何やら、手加減は必要ないですわね!!!」

「まずはこれかな」

 

 

一夏は装備覧にあった剣を取り出す。

 

 

「このブルーティアーズに接近戦で挑んでくるとは笑止ですわ!!」

「おぉ、余裕余裕。余裕すぎてあくびが出るぜ」

「クッ!」

 

 

一夏は剣で迫りくる光弾を斬っていく。

 

 

「踊りなさい! 私とブルーティアーズが奏でる円舞曲(ワルツ)を!!」

 

 

スターライトmkⅢだけでは不利だと思い、誘導兵器である、ブルーティアーズ4基を射出して白式を追わせる。

 

 

「だから遅いってんだよ!!」

「なっ!?」

 

 

一夏は持っていた剣を投擲するとセシリアは思わぬ行動に驚くがスターライトmkⅢで上空に弾く。

 

 

「今の行動は驚きましたが、自らの武器を投げるとは...いない?」

「何処を見ている?俺は此処だ!!」

「早い!?まさか、瞬時(イグニッション)加速(・ブースト)!!この短期間で取得したというのですか!?」

「怯えろ!竦め!己の機体の性能を活かせぬまま死んでいけ!!」

 

 

一夏は空中に弾かれた剣を縮地を使い、取るとそのまま急降下し、ブルーティアーズの特徴的なフィン・アーマーの一つに突き刺し、抉るように切り落とす。

フィン・アーマーをやられた事で姿勢を崩すが、すぐさま姿勢を正し、一夏を見据える。

 

 

「良い切れ味だな。次はこの武器かな!!」

「ま、まだですわ!行きなさい!!ブルーティアーズ」

「撃ち出す弾丸は殺意の塊ってね!」

 

 

次に一夏は白と黒の二挺の大型拳銃を呼び出し(コール)すると飛来してくるブルーティアーズに向けて構える。

 

 

「目障りな武器ですな」

「なっ!?」

 

 

放ちその弾丸は一寸狂わず、ブルーティアーズ目掛け、放たれ、一夏は意図的に一つだけ残した。

 

 

「こっちは一次移行なんか終わってないからな。それまでの時間稼ぎでもするかね。ビット一つになったから操作しやすいでしょ?じゃ、頑張って」

「私を目の前にして、読書なんて...。何処まで、私を侮辱すれば気が済みますの!?」

 

 

一夏は恐らく、甘粕が用意したであろう。ギルガメシュ叙事詩を脚を組み、見えないイスに座ってるような姿勢を取り、リラックスしながら読んでいる。

一夏の態度にセシリアは激おこ状態となり、ブルーティアーズで攻撃するが、一夏は左手をに持った大型拳銃で、牽制と威嚇射撃を基本とし、隙を見て攻撃するが、一夏が光弾で相殺する為、決定打を作る事が出来なかった。

一夏の二挺の大型拳銃の一つである、白い大型拳銃は実弾ではなく、非実体系の弾丸であり、銃内部でエネルギーを生成する為、SEの消費は殆どないが、その代償として、連射性に少し難があり、銃自体が壊れない限り無限に撃つ事が出来るが、エネルギーを作るシステムと機構を銃に取り組んだ結果、重量がかなり重く、ISのパワーアシストがあったとして結構重いのだ。

故に照準を定めるのに時間が掛かり、持っているだけで筋肉に負担が掛かるのだが、当の一夏はそれを易々と扱っている。

一夏は羅翠蓮から戦い方を叩きこまれている為、彼女ほどでは無いにしろ、権能や魔術が無くても、強くなっている。

ある程度、読み終わった一夏はギルガメシュ叙事詩を仕舞うとそのままセシリアに接近する。

 

 

「特攻とは日本人らしいやり方でしてね!残念ながら、ブルーティアーズは6基ありましてよ!!」

「隠し武器なんざ、お決まり過ぎなんだよ!!」

 

 

一夏はミサイルを撃ち落とし、爆炎から姿を表すとセシリアに飛び膝蹴りを喰らわすとセシリアを地面に叩き落とす。

 

 

「クッ...こんなはずでは...」

「偶にはこういう、一方的な戦いもいいものだな。あぁ、鼻歌を歌いながら、散歩をするように気分がいい。まさに最高にハイってやつだ!!」

 

 

地面に着地した一夏はセシリアの下に歩みながら、薄らと笑う。

この時セシリアは一夏の足音が冥界から自分の命を刈り取りに来た死神のモノだと錯覚する程、心のそこから恐怖した。

 

 

「調子はどうだ?満身創痍だな。機体がボロボロだぞ。どうするんだ?手に負えない相手が目の前に入る時、おまえは逃げて、怯えて、隠れて、命乞いをし、強者に屈服する犬か?それともその恐怖を押し殺し、勇敢に立ち向かう人間か?」

 

 

先程の衝撃で機体のダメージランクはCを超え、精神的にも限界である彼女は最早戦える状態ではない。そんなセシリアに一夏が問いかける。

 

 

「ヒィ!?来ないでくださいまし!この化け物!!」

「そうか...。お前もISが無ければ転がり落ちてる勝機を見捨て、命乞いをするのか...。所詮、てめぇらはISに縋る犬か。ISが無ければ何も出来ない只の屑か!!」

「来ないで...来ないで...!!!い、インターセプター!!」

「無意味だ無駄だ愚かしい。滅びろ消えろ世界のゴミが!!」

 

 

一夏はセシリアの腕に一発打ち込むと、セシリアはその衝撃で武器を手放すと逃げれないように腹部を足で抑えると、無慈悲に二つの大型拳銃を放つ。

 

 

「きゃああああああああああっ!!!??」

 

 

セシリアの悲鳴と銃声がアリーナに鳴り響き、弾が切れれば白式に付属しているマガジンを排出し、その場で素早くリロードして先程と同じように撃ち、それを5回ほど繰り返すとセシリアの悲鳴が聞こえなくなり、一夏は撃つのを辞めると其処には白目を剥き、泡をを吹いて気絶しているセシリアの姿があった。

 

 

「試合終了!勝者!織斑一夏!」

 

 

試合終了の合図が鳴ると同時に一夏のISに変化起き、目の前に【一次移行完了】の文字が浮かび上がる。

一夏は内心、終わるの遅いと思いながら、ピットに戻るのであった。




モンハン出たし、とっとキリン防具作るか! 
え?性別?銀髪の額に布を巻いた肩甲骨辺りまである女性に決まってんだろ。



何のネタがあったか分かったかな?





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王と従者

槍師匠キタ! これで勝つる!!

と意気込んでガチャを回しても イツモドオリノ概念礼装ガチャダッタヨー。

概念礼装の中に人妻好きが混ざっていたけど、お前は回せばいつでも手に入るんだよ。

ランサーの絵が見えたからキター!と思った時の感動を返せ!

というわけで、自害しろ、ランサー


セシリアとの決闘と言う名の一方的な処刑が終わり、何処か清々しい顔をした一夏が、戻ってきた。

「あー、楽しかった。今まで溜まっていた鬱憤が1割位晴れたかな」

「あれだけ暴れて1割位なんだ...」

「中々、いいサンドバックだったぜ」

「一夏が楽しそうでなによりですが、その様な不謹慎な発言はお止めください。王としての品格が疑われます」

「別に<ピー>が必要な放送禁止用語を言ったわけじゃないし、問題ないだろ」

ケラケラ笑う一夏。

「だが、先程の戦闘はやり過ぎだ。損傷レベルCにオルコットがPT(心的外傷後)SD(ストレス障害)になったらどうするつもりだ」

「なったらなったらで、ソイツが豆腐より柔らかいメンタルの持ち主だって事だ。それになアイツは俺の前では決してやってはいけない(家族を馬鹿にする)事やった。それだけの事をやって治る見込みがあるって大分、温情だと思うんだがね」

一夏にとって、家族は欠けてはいけないいけないピースの一つであり、大切な宝物である。その宝物を傷つけるような真似をすれば、一夏の逆鱗に触れ、只では済まない。

「だが―――」

「黙れ。家事も何も出来ない駄姉が...。ビールの数減らすのと来月以降、お小遣い制にするのどっちがいい?」

「今回は見逃してやるが、次回は無いと思え」

「えぇー!!??」

グダグダ五月蠅そうな千冬に一夏は千冬にとって、死刑宣告に近い事を言うと千冬はコロッと意見を変え、それに驚く山田先生。

織斑家の実権を握っているのは一夏なので、千冬が文句を言えば規制する事で、今まで文句を言わせないでいた。威厳ある世界最強のIS乗りの姿は粒子の様に消えているのが、現状である。

千冬に対して一夏は自分に頼らず、自立して生活できるようになってて欲しいというのが、ここ最近の切実な願いである。

「疲れたという事で帰って寝る。今日はシンドイ」

「では、一夏は自室に戻り休んでください。後の処理は私がやりますので」

「じゃ、任せた」

そう言うと一夏は自室に戻り、マナ達も後を追うと千冬がの残ったマハードに近づく。

「何故、お前はそうまでして一夏に仕える?アイツはこれと言って取りえが無い。確かに家事全般できるし、知っている知識も多いだろう。だが、私はお前がそうまでして、一夏の傍にいようとするのか分からない」

「傍から見ればそうかも知れません。一夏に私達は命を救われた。ですが、私が一夏に仕えるのは一夏の優しさと人柄に惹かれ、一夏の可能性を感じました。一夏は今後、偉大な王として君臨するでしょう。私はそんな彼を支える存在でありたいと思ったからこそ、こうして一夏の傍で行動しているのです」

「確かに一夏は理由は分からぬが、ISを動かした事によって私と同じ場所に立っただけだ。私の様にモンドグロッソで優勝出来るとは限らんのだぞ」

「モンドグロッソ優勝などという小さなことで一夏は終わりませんよ。一夏の本当の(神殺し)姿を知らない貴女には分からない事ですが...。貴女の親友なら知ってるでしょうが教えてくれないでしょう」

「私の知らない一夏だと...。それはどういう事だ?」

「一夏が言わないという事は知らなくていいという事です。なら、私から口出しする必要は無いでしょう。言わないという事は貴女に対する、気遣いと優しさの露わだと言えます」

そう言うとマハードは一夏達の後を追い掛けようとすると山田先生がマハードに声を掛ける。

「一夏くんの所に戻るのでしたら、これを渡しておいてください」

「ハイ、確かにお預かりしました。必ず、一夏にお届けします」

「覚えること多いですけど大丈夫ですか?」

「一夏の記憶量は桁違いですし、今まで読んだ本の内容を全部覚えているような人ですから、問題ありません」

「へぇー、凄いですね。どんな方法なのか教えて欲しいですね」

「一夏が言うには圧縮記憶法という変わった方法で覚えてるとの事です。確か、一字一字読むのではなく、ページ全体を絵として頭の中に入れる方法でイメージ的にはパソコンの中に圧縮してファイルを詰め込んでいき、必要なファイルだけを解凍して使用する感じに近いらしいです」

「へぇー、凄いですね。一夏君」

「ハイ、自慢の主です。では、一夏の身の回りの仕事があるのでこれにて」

そう言い、マハードはその場から立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先に戻った一夏は服に仕舞っていた赤い液体の入った瓶を取り出すと近くに在ったナイフを取り出すとそのまま左ってに突き刺す。

短い悲鳴を上げ、ナイフを引き抜くと一夏は瓶の蓋を開け、先程ナイフが刺さった場所に液体を掛ける。

「やっぱり治らないか...。仕方ない、新しく作るか。我は天を廻りし、不死鳥なり」

そう言うと一夏は買い溜めしていた空の瓶を取り出し、聖句を紡ぎ、炎の翼を広げると蓋を開け、その中に自分の血を垂らしていく。

何も知らなければ、只の凶行だが、これには理由がある。

一夏の権能の一つに黄金に輝く太陽と鳥(プロミネンス・バード)という権能がある。

その権能には肉体再生ともう一つ能力というより副産物なのだが、この権能を使っている間、一夏の体液は治癒能力を有するのだ。

故に何かあった時の為に一夏は定期的に血を取るのだが、この体液に再生効果があるのは権能を解除してから一定期間、一夏の目安は2週間でその効力を失い、只の体液に戻る。

そんなこんなで、血を十個の瓶に入れると規則正しい扉をノックする音が聞こえた。

「誰だ?マハードなら何かしら言うのに何も言わない。違う奴か」

一夏は恐る恐るドアを開けると其処にはマハードではなく、水色の眼鏡を掛けた女子がいた。

一夏は記憶の中から該当する人物を探すとすんなりと見つかった。

「君は確か...四組の更識簪だったか」

「う、うん。一年四組の更識簪...。さっきの勝負で勝ったお祝いを...わ、渡そうと思って...」

「別にあの程度、如何という事ないんだけどね」

「...ISを動かして間もないのに代表候補生に勝つのはすごい」

「称賛はありがたく受け取っておくよ。部屋に帰りな、君にもルームメイトがいるだろう。こんな所にいると変な噂が流れるぞ」

簪と名乗った少女は恐らく、手作りのクッキーを渡すとその場から離れようとすると何かを思い出したのか一夏の方を振り向く。

「...それとあの時、助けてくれてありがとう」

言いたい事を言った簪はそのまま一夏の前から消える。

「はて?助けてありがとう、って言ってたけど......誰だ? 助けた奴が多くて分からん。まぁ、そのうち思い出すからいいか」

そう言うと一夏は部屋の中に戻っていき、こっそり持ってきた武器のメンテナスをする。

「最近、この魔術仕様の銃使ってないなー」

一夏が両手に持っている大型拳銃は以前にとある依頼で使って以来、一度も使ってないのだ。

一夏が自分の得意なルーン魔術をマガジンに施す事でその属性にあった弾を生成し、撃つことが出来る代物でお気に入りの武器なのだが、まつろわぬ神に効くのかというと微妙であり、自身の権能と肉体を使って戦う事が殆どである。その為、出番が少ないのだ。

「一夏よ、ただいま戻りました」

「どうぞー」

「山田教論から預かり物があります」

「へぇー、IS関連のか」

「ハイ、専用機を扱う上での注意点などが載っています」

「まぁ、読むのに困らないからいいか」

一夏はマハードから広辞苑並みの大きさの本を受け取ると早速読み始めるとマハードが辺りを見回して、何かに気づく。

「そう言えば一夏。マナは何処に居るのでしょうか?」

「買い物に行ってるよ。何でも『一夏が勝ったんだから何か作ってあげないとね!』と笑いながら出掛けた。別に勝って当然だし、自腹で材料買うとか言ってたから俺が出すと言ったら物凄い形相で断られた」

「そうですか。マナが居ないの理由が納得しましたし、一夏の申し出を断ったのも当然ですね。プレゼントするのにその送る人のお金で買っては意味がありませんからね」

うんうんと頷くマハードだが、ここである事を思い出す。

「そういえば、一夏は草薙殿に近いうちに戦いが起きると言ったそうですが、何故、分かったんですか?」

「んー、簡単に言うとちょっと未来を見たら護堂とまつろわぬ神が戦っているのが見えたのよね」

一夏が権能を使ってみた未来は空が暗く覆われ、翼のある蛇に乗った女神と黄金に輝く空間で立ち向かう護堂の姿が見えたのだ。

「しかも、見る限り一週間以内はこの戦いが起きるね」

「では、一夏はその戦いに参戦すると」

「しねぇよ。護堂の実力が知りたいし、黄金の剣がどういうのか知りたい。これ以上はヤバいかなと思ったら助ける予定」

「一夏が進んで戦いに行かない...だと...。明日は天変地異でも起きるのか...」

「失礼だな。俺だって物事の見極め位するわ」

「てっきり、考えなしで戦うモノかと...。過去に怒りに任せて一つの魔術組織を潰して、地図を作り変えなければいけない事案を作ったのは誰ですか?」

マハードの言葉に目を逸らす一夏。

「仕方ないだろ。アイツら俺がやるなって事やったんだからさ、それなりの罰が必要だろ」

「それでも、アレはやり過ぎです」

「悪い、悪い。今度から気をつけるから、このクッキーでも食べて落ち着け」

「本当ですか?では、あり難く貰っておきます。ほんのりとした甘さが出て美味しいですね。一夏の自作ですか?」

「いいや。さっき、女子が勝利祝いに持ってきたものでね。名は更識簪だったな」

「ブゥーーー!!ゲホッ、ゴホッ...。さ、更識って媛巫女が出た更識じゃないですか...。何か特徴の様なモノは覚えてますか」

飲んでいた紅茶を吹き出し、咽るマハードは一端、呼吸を整える。

「特徴ねー...。水色の内側に撥ねた髪に眼鏡を掛けた何処か内気な感じの人だったな」

「あー、それなら私達も見ました。一夏と箒殿が試合をしている時に居ました」

「そうなんだ。あの子が媛巫女だな。何か、万里谷裕理と似てるんだよなー。雰囲気というか何というか...。まぁ、あの子が媛巫女で間違いない」

「本人に確認を取ったら終わりですか。短いゲームでしたね。確認はいつ?」

「確認はいつでもいいかな。なんかあっちは俺に対して友好的だから、あっちから来ると思うぞ」

そんな会話をしているとドアが開き、マナが入ってくる。

「おまたせー。今日は私が晩ご飯作るから。だから、一夏はゆっくりしてて。後、お兄ちゃんもね」

「張り切ってるところ悪いけど、本当に出来るんだろうな?失敗して『食堂にレッツ、ゴー』とか無いよな? な?」

「そのフラグ染みた言い方辞めて」

「一夏...胃薬を用意した方がいいだろうか?」

「いや、暗黒物質の可能性もあるから下手に薬を飲まない方が――」

「ちょっと、そこ!聞こえてるわよ。今回はちゃんと作るから」

「前科持ちが作る料理って怖いんだよなー」

マナは一度、一夏達にワッフルを作ったのだが、只の焼き加減の間違いであれば一夏はここまで言わないのだが、この時のワッフルは半生に色々なモノを組み合わせた結果、甘いと同時に酸っぱく、辛いと同時に苦く等、総じて不味く、料理教室の先生も匙を投げるレベルである。

一口食った一夏はトイレに約二時間お世話になり、その後も腹痛と下痢に襲われたのだった。

その事を思い出したせいか、一夏の顔色がどことなく悪い。

「大丈夫よ!今回はちゃんとレシピ通り作るから。変なアレンジしないから」

「如何、アレンジしたら、あんな風になるんだよ...。思い出しただけで、吐き気が......」

「気をしっかり持て、一夏!」

今にも倒れそうな一夏を支え、励ますマハード。彼女の料理は一夏に深い傷を残したようだ。

「マハード、危険だと感じたら、気絶させてでもいいから止めろ!絶対だ!!」

「私もあのような体験はこりごりですからね」

「えー、私一人でやりたいのにー」

「文句を言うなら、調理場に立たせないぞ」

「はーい...」

渋々、了承したマナはマハードの監視の下、料理を作りだすのだった。

 

 

 

 

 

 

時間が経ち、一夏の目の前に如何にも美味しそうな日本食が並ぶが、一夏は冷や汗を流しながら、箸で魚の煮つけを解し、口に運ぼうとするが、寸前で止まり、チラッとマナ達を見るとニコニコ笑みを浮かべ、一夏の感想を待っていた。

「マハード、俺の葬儀は盛大にやってくれ」

「何変なの事言ってんのよ。早く食べて!美味しいから!!」

「ちゃんと味見した?」

「ちゃんとしたから。さぁ、早く食べて! ハリー!ハリーハリー!」

某吸血鬼の様に声を上げながら食べるように催促するマナ。

意を決し、一口食べるとマハードが心配そうに一夏を見つめている。

「ん?」

一口食べた一夏は何を思ったのか、もう一口食べると箸を勧めるスペースを上げると瞬く間に魚を食べきった。

「どうだった、一夏?」

「前回に比べたら格段に腕は上がってるな。これなら、普通に食べれる」

「やったー!一夏に褒められた!!これで明日から女性としてのプライドが傷つかなくて済む!!」

「どういう事?」

「一夏の料理が美味すぎて彼女は苦労しているのです」

現在、織斑家の料理は一夏がメインでするが、稀にマハードが代わりにする事があるが、この二人に共通で言える事は家事が一般の女性よりもできる事である。

マハードの料理が料理教室を開けるレベルなら、一夏は超一流レストランの料理長以上の腕である。

他の家事に関しては二人とも、幼少の頃からしている為、レベルが高い。

こんな彼らに家事で勝てるかというと、無理な話である。

もし可能な人がいるとしたら、中国の山奥に住む羅濠教主位だろう。一夏ですら、彼女の料理には敵わないと断言している。

「そう言えば、一夏の専用機は一次移行が終わらないまま勝ちましたね」

「いやー、一次移行まで適当に逃げ回っていようかなと思ってたんだが、気が変わったので、速攻落とした。反省も後悔もしていない」

「これ知ったら、あの高飛車の事だから、絶対五月蠅いわ」

「ていうか、戦闘が終わってから終了したからな」

試合が終わり、部屋で一次移行が終わった事を思い出した一夏は一次移行が終わった白式を見てみると外観が大きく変わり、武装一覧を見てみると白黒大型拳銃や剣に名称が付いている事に気づいた。

白い大型拳銃は454カスールカスタムオートマチック、黒の大型拳銃はジャッカルと表記されている。

「誰だよ吸血鬼が使った銃を用意した奴は」

「一夏はこういうの好きでしょ?」

「好きだね。てか、この大型拳銃...俺の持ってる銃と同じなんですけど」

一夏はベッドの下に置いてあったケースを開けると其処には全く同じ銃があった。

「それは甘粕殿が一度使った銃の方が使いやすいと思ったので用意した、との事です」

「へぇー、この『雪片弐型』もアイツらが用意したのか?」

「それは初期からあったそうです。千冬殿が使い、二連覇を成し遂げた剣に対しての思い入れの様なモノはやはりあるのですか?」

「正直言って無いね。カンピオーネじゃなかったら、まつろわぬ神や神殺しの様な裏の世界を知らなければ、俺は喜んでいたと思う。世界最強である、織斑千冬を最強へと導いた力を使える。これで俺も千冬姉の様に強くなれるってな...。神殺しとして、数多のまつろわぬ神と戦った俺から見れば、それは人間として(・・・・・)最強であり、まつろわぬ神や同類(神殺し)が相手なら勝てるのか、その力が通用するのかといえば、答えはNOだ。アイツらは一言でいえば、突然現れて周りに甚大な被害を出す災厄、天変地異だ。それを人間がどうこうできるのかといえば出来ないし、いくら科学技術を進歩させさせようと、ISが世界最強の兵器だとしても俺達の様な化物からすれば少し頑丈な鎧でしかない」

「だからこそ、一夏達カンピオーネがその災厄(まつろわぬ神)から護る為に戦うのでしょう。私達が魔術や呪術を極めようと敵いません。私は一夏の傍にいるからこそ、思うことがあるのです。私達にも力があれば、一夏に辛い思いをさせないで済むのに、と思います。ですが、私達にはその力はありません。結果的に一夏に頼る事になりますが、私はそれでも貴方の力になりたい」

「そうだな。俺は一人で戦ってる分けじゃない。お前たちの様な仲間が居る。なに一人で戦ってるみたいな気持ちになってるんだろうな、俺は...。さて、マハードもマナの料理を食べようぜ」

「えぇ、そうですね。いただきます」

マハードは両手を合わせ、食事の挨拶をするとマナの料理を食べてく。

IS学園の寮の一室から賑やかな笑い声が聞こえた。

 




どうやったら強くなりたいなら、コンビニにある魔法のカードを買えばいいって知り合いが言ってた。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王の学園生活と再会

Gジェネの方も投稿したいけど進まない。

4月までにはGジェネの方は終わらせたい。


千冬を除いた楽しい食事をした翌日、一夏は教室に向かうと予想だにしない事が起きた。

教室に入ると真っ先にセシリアと目が合い、一夏は怖がられるか再試合を申し込まれるなと思った次の瞬間。

セシリアはその場で土下座したのだ。

しかもただの土下座ではなく、その場で2回転宙返りと共に華麗なる土下座をした。

あの高貴な雰囲気を出していたセシリアが土下座したことに口を大きく開け、驚くクラス一同。

一夏は驚くと同時にまるでサーカスの一芸の様なアクロバティックな動きに少し、感動していた。

一同困惑する中、一夏は一足早く現実に戻り、セシリアに普通に謝罪するように言うと腰を90度曲げて謝罪した。

それを見た一夏は心の中でこう思った。

 

 

――最初っからそうしろよ。

 

 

 

 

 

 

そして、朝のSHRまで時間が進む。

 

 

「では、1年1組の代表は織斑一夏君に決定ですッ!!あ、1繋がりで良い感じですね」

「ヤッパリネ」

「一夏が勝った時点で結果は目に見えてたでしょ」

「マジかー。駄姉のいるここに長期間拘束されるのかー。まつろわぬ神と戦えないいじゃん。神殺しと戦えないじゃん。戦えないとか死活問題だよ...。あ、正史編纂委員会というか甘粕に言えば何とかなるんじゃね?」

「個人の理由で国と組織を使わないで」

「勝手に試合を申し込まれて、勝手にクラス代表にされた!(バンバン」

「ハイ、そこ。机を叩かないでね」

 

 

あまりの事態に台パンする一夏。

 

 

「この私を倒したのですから、一夏さんにはクラス代表として相応しい実力見に付けてもらわないと困りわすわ!き、恐悦ながら私が一夏さんのIS操縦を教えて差し上げようと思うのですが...どうでしょうか?あ、もしよければ今度、放課後に協ty――激しく罵ってくれとありがたいのですが」

「生憎だが、一夏の教官は足りている、この私が直々に一夏を鍛える。そして、その―――」

 

 

箒が何か言っているが話が長くなるなと思った一夏はポケットに入れていた耳栓を着け外部からの音を遮断し、箒と言い合いにをしているセシリアの背後に女性版暴君ネロ(織斑千冬)が宝具『生徒を律する戦乙女の剣(出席簿アタック)』を繰り出し、耳栓をしていたのにも関わらず聞こえた打撃音が一夏の耳に響いた。

 

 

「何時まで馬鹿騒ぎをしているつもりだ、もうとっくにSHRの時間は終っている

ぞッ!クラス代表は織斑一夏に決定で良いな」

 

 

静かになったのか確認するため耳栓を取った一夏に聞こえたのクラス代表確定宣告だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

代表が決まろうが、何が起ころうが、よほどでない限り授業は始まる。

今回の授業はグラウンドでの実技指導であった。

 

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実戦してもらう。織斑、オルコット試しに飛んで見せろ」

 

 

一夏はすぐさまイメージを固め、ISを展開すると千冬が飛べという命令に従い、一夏は大空に向かい羽ばたくとある程度上空まで飛ぶと制止する。

 

 

「先日もそうですが、ISを数回起動させた初心者と思えませんわ。なにか、心構えやコツの様なモノがございまして?」

「慣れとしか言いようがないな。まぁ、そこは深く言及しないでくれ」

 

 

不満そうにするセシリア。

一夏はISの展開は権能の発動、飛行は黄金に輝く太陽と鳥を使った時の感覚で飛んでいるので、普段通りといえば普段通りである。

展開時の聖句は『我は白き鎧を身に纏いし、神殺し成り』とある程度短い聖句を脳内で紡ぎ、展開している。

「織斑、オルコット急降下と完全停止をやって見ろ。目標は地表から10センチだ」

先に行こうとした瞬間、セシリアが右手で制止させ、先に行くと言いだしたセシリアに一番目を譲る。

指示通り10センチとぴったしで止まるセシリア。

 

 

「じゃ、行きますか」

 

 

目標地表から10センチと狙いを定め、急降下する。

一夏は別世界の彼のようにグラウンドに穴を開けるという失態は起こさなかったがある予想外の事が起きた。

 

 

「最初にしては上出来だな。9センチだ」

「アレェー」

「地面に衝突しないだけ上出来だ」

 

 

いつもの感覚通りなら、10センチぴったしで止まっていたのだが、1センチずれてる事に驚いた。

一夏は飛ぶ時に少し違和感があった。一夏の思考に白式が反応するのに権能使用時と比べると少し、タイムラグがある事を思い出した。

一見すれば、何とも無いミスだが、多くの実戦...ましてや格上であるまつろわぬ神や同族(神殺し)相手だと致命傷になりかねないモノだった。

ISで、彼らに戦いを仕掛ける事は無いから問題ないかと結論付ける一夏にとってISはさほど重要ではないのだから。

(IS使って戦ったらひどいことになるからな。特に翠姐さんにやったら絶対地獄を味あうわ)

ISという慢心した状態で羅濠教主に戦いを挑んで返り討ちに合い、昔以上の修行させられる姿が容易に想像できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の授業が終わり、食堂でクラス代表就任記念パーティーをやるという事で、マハード達と一緒に向かう一夏。

 

 

「Let's Party!! とか久しぶりだな」

「確かにそうですね。Let's Party!! するにも三人ではいつもと変わりませんからね。何故、筆頭風に言ったのですか?」

「そう言うお兄ちゃんも筆頭風になってるんだけど...」

「あれ?」

 

 

一夏につられ、某独眼竜の様な言い方をしてしまったマハード。

食堂に着いた一夏達は軽く挨拶をするとコップを取ると好きな飲み物を選び飲み始めた。

 

 

「はいはーい!!私新聞部2年の黛薫子。これ名刺」

 

 

食堂に突撃インタビューを仕掛けてきた新聞部の薫子に対し、マハードが一夏の前に行き、行く手を阻む。

 

 

「残念ですが一夏に対する質問は私を通してもらいたい」

「其処を何とか~。ね?お願い」

「引く気が無い様ですね。ならば私を倒し、貴女「やめんか」!?」

 

 

マハードの行動は行き過ぎている所があるな、と思いながら一夏はマハードの頭にチョップを喰らわし、静かにさせる。

この時、マハードの発言に数名の女子が黄色い歓喜の声を上げたとか、上げてないとか。

 

 

「別に問題ないだろ。なんで、そうヤケになって止めようとするんだ?」

「このインタビューで記事の捏造等によって、一夏の今後の学び舎での生活に支障が出ると考えたからです」

「世間ではそう言う記事もあるが...流石に学校でそんな事しないだろう。ね?」

 

 

マハードの言葉にビクッ、となった薫子に念のために釘を刺す一夏。

薫子は何度も頷き、その姿を見たマハードはやや疑いの眼差しで見つめ、してもいいと頷く。

 

 

「ちょっと、やりにくいインタビューだけど...。まずは織斑君ね。それじゃあまずは、クラス代表になった感想となった意気込みは?」

 

 

薫子はどこから出したのか、マイクを一夏に向けた。

 

 

「国家代表候補だろうが国家代表だろうが神様だろうがなんだろうが『勝ち方』を見つけて勝利する。キャリアや実力の差なんて関係ない。俺は勝者であり続けるまでだ」

「おぉ!いいね。こう言うのが欲しかったのよね。じゃあ次はセシリアちゃんね?」

「私、こういうコメントはあまり好きでは無いですが、しょうがないですね...お答えしますわ」

 

 

口ではそう言うが髪をかき上げて、いつでも来いとスタンバっている。

 

 

「では、どうして私は辞退したかというと―――「ああ、長そうだから良いや写真だけ撮らせて」」

 

 

これは長くなると思った薫子速攻で切り上げる。

 

 

「さ、最後まで聞きなさいッ!!」

「いいよ、適当に捏造するから...よし織斑君に惚れた事にしよう」

「なっ...なっ...ななっ!!」

 

 

顔を真っ赤にしながら後退するセシリアに薫子の一夏に惚れた説に心当りのあるクラス一同。

たった一度、コテンパンにされたからと言って、人の態度や思考が180度変わるかというとそうではない。

そこで考えられるのが一夏に惚れたという薫子の嘘から出た仮説である。

少し前までの態度でセシリアが好きですと言っても相手が答えてくれるだろうか、女尊男卑の思考を持ったまま上手く結ばれるだろうか?

答えはNOだ。そう考えた場合、セシリアの態度の豹変に納得がいくのだ。

そう思った瞬間、クラスメイトは子供を見守る親のような気持を抱き始めた。

ついでに言えば、あの戦い以降、一夏に対して新たな心理の扉(マゾの世界)に片足を突っ込みかけている事も周知である。

 

 

「はいはい、とりあえず並んでね。写真撮るから。注目の専用機持ちだし、ツーショット撮らないと」

「撮った写真は頂けますよね?」

「そりゃ、もちろん」

「では着替えて...」

「時間掛かるから駄目、はいさっさと並ぶ」

 

 

薫子はそう言うと、カメラを構える。

 

 

「それじゃあ、撮るよ? 1+1は!?」

「「2!」」

 

 

お決まりの合図に答えた直後、なぜかその場に居た全員が集まっていた。その中にはマナの姿があった。

 

 

「お前は参加しないんだな」

「一夏が言えば、参加しましたが言わなかったので参加しませんでした」

「お兄ちゃん空気読めないよね」

「私は空気を読んだぞ。読んでいないのは一夏とセシリア殿のツーショットなのに、突然入り込んだマナ達の方だと思うのだが?」

「グッ...。正論過ぎて何も言えない」

「まぁまぁ、気にしないで。やりたい事もやったし、というわけでスタコラサッサよ!」

 

 

これはこれで記念になると、納得する事にした薫子は颯爽とその場から去っていった。

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、新しく転校生が来たらしいよ」

「へー」

「あんまり、関心ないんだ」

「俺の関心は未知との遭遇だ」

「それはまつろうわぬ神と神殺しの事だよね?」

「その通り」

 

 

一夏の回答に頭を抱えるマナ。

もう少し、その関心を別の方向に向けて欲しいと心から思った。

 

 

「来月にクラス対抗戦がありますが、なにかする事はありますか?」

「クラス対抗戦はどうでもいいから、ちょっと護堂の見張りに行ってくれ。俺の神殺しとしての勘が今日、何かが起きると言っているんだ」

「分かりました。では、何かあったら連絡します」

 

 

マハードは一夏の命令を聞くと教室のドアを開け、退場した時に聞き覚えのある女子の声が聞こえた。

 

 

「一年の中で専用機を所持してるのは四組と一組だけだから一夏なら余裕じゃない」

「フリーパスの為に頑張ってね」

「そうだよ、織斑君が勝ったらこのクラスは嬉しいからね」

「そうやっていられるのも今の内よ、そう簡単には負けないんだから!!」

「その情報、古いよ」

 

 

すると、教室の入り口に一人の少女が扉に背を持たれ掛けながら言う。

 

 

「久しぶりだな鈴。元気だったか?」

「久しぶりね一夏、そっちも元気そうね。まぁ、IS学園にいることには驚かされたけど」

「まぁ、実際行く気はなかったし、駄姉が勝手に進めて現在に至る」

「勝手ねアンタのお姉さんは...」

「全くだ。それと後ろ注意」

 

 

鈴は背後を見ると其処には般若(織斑千冬)がいた。

 

 

「予鈴は既に鳴っているぞ。さっさと自分の教室に帰れ」

「ち、千冬さん」

「ここでは織斑先生だ。それから聞こえなかったのか?私は教室に帰れと言ったが?」

「は、はいっ!!」

 

 

千冬による怒号で鈴は脱兎の如く、自分の教室に戻っていくのだった。




近い内にオリジナルの神殺し戦をやりたい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

学園と後輩神殺しVS冥府の女神

さぁ、新年最初の投稿だ!


午前の授業が終わり、先程まで食堂で機嫌の良かったマナは頬を膨らませ、ふてくされていた。

 

 

「折角、一夏と二人で時間過ごせると思ったのに」

「アンタだけに良い思いはさせませんわよ」

 

 

食事の最中に相席をした人物達とマナの間で火花が散る。

今この席にいるのは一夏、マナ、箒、セシリア、鈴だ。

 

 

「俺とマナはお前の事知ってるけど、そこの二人は知らないから自己紹介位したらどうだ」

「一夏の中学時代のクラスメイトだった鳳鈴音(ファン・リンイン)よ」

 

 

鈴が自己紹介すると火花を散らしながら自己紹介を始める箒達。

 

 

「それにしても、一夏がIS学園に入るなんてね。アンタ、高校に行く必要性自体ないでしょ?」

「そうなんだが、友達と一緒に時間過ごしたいじゃん。だから、退屈な高校に行くつもりだったんだけど...この有り様だよ」

「高校に行く必要が無いとはどういう事だ?」

「アンタそんな事も知らないの。そんなんで幼なじみなんて、所詮は自称ね(笑)」

 

 

鼻で笑う鈴に箒は顔を赤くしながらプルプルしている。

 

 

「まぁ、箒さんを弄るのはそこまでにして、説明してもらって宜しいでしょうか?」

「そうね。一夏は頭がいいのよ。例えるなら超難関大学を慢心しても受かるレベルでね」

「「え!?」」

「前に何か偉い学者でも解けないという問題を公開してたからその問題を解いて、賞金貰ったな」

 

 

一夏の凄い所は神殺しという偉業を成し遂げただけではなく、その頭脳もまた可笑しいのだ。

一夏は知識と戦いに貪欲で、手当たり次第にその知識を吸収し、それを惜しみなく発揮できる為、一部の人間からは「篠ノ之束に並ぶ頭脳」と認めら、神殺し関係ではその知識に貪欲な所から「オーディンの生まれ変わり」と言われている。

ここまで、一夏の学力が高いのは知識力とまつろわぬ神や神殺しなどの戦いによって、培われた推察力、思考力、洞察力によるところが大きい。

一夏の異常性に驚いていると一夏のスマホが鳴り始める。

《このターンX凄いよぉ!流石、ターンAのお兄さんッ!! 俺は不可能を可能に...。 まだだ...、私はまだ自分を弱者と認めていない!》

 

 

「そのテラ子安な着信音どうにかならないの?」

「自作で作ったお気に入りの着信音なのに...」

「それより、電話に出なくていいのか?」

「知り合いからだと思うけどな。となわけで、少し席を離れるぞ」

 

 

一夏は席を立つとそのまま、廊下の方に歩くと流暢な英語で会話する。

 

 

「一夏さんは英語がお上手なんですね」

「一夏は大体の国の言葉は喋れるわよ。世界中飛び回ってるうちに覚えたらしいけどね。そんな金何処にあるのかしら」

「まぁ、素敵な事ではありませんか。色々な国に行けて、文化交流やその国の人と触れ合える...なんて素晴らしいことでしょう!」

「に、日本人は他の国の言葉なぞ、喋れなくてもいい。日本人は日本語だけ喋ればいいのだ」

「箒さん。その考えは時代遅れでしてよ。今の社会に他国との交流は必要不可欠なのですから、自分の国の言葉だけ喋ればいいなんてことは無いのですから、今からでも英会話などある程度出来た方がよろしくてよ」

 

 

セシリアが箒に英語など少しでも覚えた方がいいと説いていると一夏が戻ってきた。

 

 

「なんだったの一夏?」

「知り合いから今度、食事に行かないかと言う誘いだった。そして、夏休み中にアメリカに行くことになったな。...それよりも前に居るんだよなー、先客が。これで夏休みの自由時間が減ったな。翠姐さんの所にも行かなちゃいけないし」

「翠姐さんとはだれだ? お前の姉は千冬さんだけだろ」

「俺に武術と生きていく術を叩きこんだ師匠。そろそろ、次の授業は実習だから先に行ってるわ」

 

 

一夏は食器を返却口に置くとその場から去っていった。

 

 

「私達も早く食べましょ。遅れただけで叩かれたら、嫌だからね」

「私は食べ終わったから、おっさきー。待ってー、一夏!」

 

 

一夏の後を追うマナを見た箒達はマナに良い思いさせてたまるかと頼んだ料理を食べていくがその姿はとても、礼儀の良い物ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一日の授業が終わり、箒達がしたくのないISの指導をするとうるさいので、一夏は権能を使い周囲を騙し、屋上で横になってるとスマホから着信音と映像が流れる。

《( 0w0) ダディバナサン! (; 0w0)Σ ナゼェミテルンディス!! (; 0w0)オンドゥルルギッタンディスカー!!》

某オンドゥル語で有名なワンシーンと台詞をチョイスして作った一夏お気に入りの着信音シリーズである。

時間とネタがあれば作るほど、今ハマっているマイブームである。

 

 

「どうしたマハード?護堂がまつろわぬ神と接触したか...。了解した、すぐそっちに向かう」

「また...まつろわぬ神が出たの」

「あぁ、だからちょっくら行ってくる。我は天を廻る不死鳥となりて、我は大地を照らす太陽と成る」

 

 

一夏は背中から炎の翼を出し、飛び出した。

その姿を影から見守るマナ以外の一人の少女の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

「あれは...夜...。太陽は落ちてないのに夜の様に暗くなってた...。これもあの時見たまつろわぬ神の仕業なんだろうな」

 

 

一夏は視た未来を思い返してるとある事を思い出す。

それはプリンセス・アリスが予言した【星なき夜の予言】があの星の無い夜に当てはまるのだ。

 

 

「夜...闇...そして、蛇...。蛇は大地母神の象徴だが、これだけじゃ特定するのは難しい...。あと少し、キーワードがあれば...」

 

 

一夏はまつろわぬ神を特定するために思考を巡らせるが答えに辿り着けずにいると、ビルの屋上に槍を構えるエリカと銀の髪と闇色の瞳が特徴的な少女、そして、ビルの傍らには動かない護堂がいた。

 

 

「チッ...遅かったか」

「貴方は...」

「妾の前に立ちはだかる其方は何者だ?」

「そこで寝ている奴と同じ、東洋の神殺しだ」

 

 

一夏はエリカの近くに行くと聞こえるか聞こえないかの声で語りかける。

 

 

「護堂は死んでいるわけじゃないだよな」

「えぇ、まだ死んではいないわ」

「なら、俺が時間稼ぎをするからその間に護堂を連れて遠くに逃げな」

「どうか、ご武運を」

 

 

一夏は目の前の少女に一歩、歩み出す。

 

 

「次の妾の相手は其方か?」

「そうだ。だが、お前を倒すの俺じゃない。アイツはまだ終わってないからな」

「その口ぶり、あの神殺しはまだ生きているという事か」

「さぁ?どうだろうな!」

 

 

一夏は後方から飛んできた大型拳銃を受け取ると目の前の女神に向けて放つ。

 

 

「そのような、人の知恵で作られたモノが妾に通用すると思ったか」

 

 

少女の後方から飛んできた梟に放たれた弾丸が相殺され、相殺されなかった梟が一夏に襲い掛かろうとするが一夏は焦らず、聖句を紡ぐ。

 

 

「神王の雷光よ!我に立ちはだかる愚か者に、天の怒りを知らしめよ!」

「その雷は...父上の...」

 

 

一夏は右手を梟に向けると、右手から放たれた雷によって梟は撃ち落とされ、呪力に還っていく。

雷は留まる事を知らず、そのまま少女を襲うが、少女はそれを躱し、後方のビルの一部に雷が直撃する。

 

 

「驚いたぞ。よもや、父上の権能を持つ神殺しに会うとはな」

「初見で分かっちまうのかよ...。だが、おかげでお前の正体も分かった」

「ほぉ、では申してみろ」

「ギリシア神話に出てくる都市の守護者という意味の名を持つ女神...その女神の名はアテナ! ゼウスの娘だ!!」

「如何にも!」

 

 

少女の姿をした女神アテナは大鎌を呼び出し、一夏に接近する。

 

 

「ついでに言えばお前は大地母神であると同時に冥府の女王だ!梟は夜に冥界に渡ると鳥とされている。お前の聖鳥である梟はお前の死の一面を表したモノだろ!」

「まさか、この短時間でここまで暴かれるとは...。ここ数百年、其方の様な神殺しは居なかった。そして、アテナの感がこういっておる。其方は危険だと!」

「あぁ、そうかい!」

一夏は雷を纏った拳でアテナを殴りつけようとするがアテナは身の丈ある大鎌で難なく防ぐ。

 

 

「それにお前、自分を象徴するモノが一つ欠けてるだろ」

「!? よもやそこまで把握しているとは...。奇才な神殺しだ。それに故に危険!」

「おっと」

アテナは一夏を撥ねのけると大鎌で一夏の命を刈り取ろうとするが、寸前で回避するがIS学園の制服が少し、切り裂かれる。

 

 

「其方を相手にするには完全ならざるアテナでは不足の様だ。ここは引かせてもらおう。妾の目的は其方ではなく、ゴルゴネイオンなのだからな」

「しまった...」

 

 

アテナの後方に闇が広がるとそこから無数の梟が飛び出し、一夏に群がり、一夏を襲う。

一夏は全域に放電する事で梟を一網打尽にすると周りを見渡すが何処にもアテナの姿は無かった。

 

 

「マハード。護堂達の所にアテナは行ったか?」

「いいえ。別の方角に行きました」

「そうか。なら少し、待つか。この戦いは護堂にとっていい実戦になる」

「一夏自身が倒さないのはその様な目的があったからなのですね」

「俺だって考えて行動するさ」

 

 

一夏は居るであろう人物に話しかけると一夏の後方に従者であるマハードが姿を表し、先の戦いで大型拳銃を投げたのはマハードである。

一夏はその場に座り込むとコンクリートの冷たい感触が伝わってくる。

 

 

「アイツには強くなって貰わないと困るんだよ。あのまつろわぬ神が言った『全ての神殺しを滅ぼす、祝福されし王』と『この世界を裏で暗躍する混沌』て奴が現れるまでに強くなる必要がある。アイツも俺も」

「一夏はそのまつろわぬ神が来るまでに一夏自身も強くなる必要がある。だけど、その前に神殺しになったばかりの草薙殿を鍛える必要があるという事ですね」

「そうだ。俺は少しの間寝るから何かあったら起こしてくれ」

 

 

そういうと一夏はゆっくりと瞼を閉じていくのだった。

 

 

 

 

 

とある、儀式場に自分と同じ位の少女達が倒れていた。

一夏はこの光景を見てこれは幾度となく見た夢だと理解した。

これはドニと共闘したあの事件。

死者こそいないが最悪と言っても可笑しくない、一夏にとって自分の不甲斐無さを実感した瞬間。

目の前にいる人物はまつろわぬ神を降臨させるために少女達を犠牲にした思い出すだけで殺意が湧く同類(神殺し)

そして、自分を見つめる一人の少女。

顔を思い出そうとするが思い出せないがその少女は最近、再会したような気がした。

 

 

 

「一夏!一夏!」

「ん?」

 

 

眠りから覚めた一夏の前に焦った表情のマハードが居た。

 

 

「大変です!!」

「何が...。これは...」

 

 

辺り一面に広がるわ夜、大空に輝く星が無く、まるで闇そのものだ。

 

 

「これがプリンセス・アテナが予言した【星なき夜の予言】...。不完全なアテナが完全なアテナに舞い戻ったって事か...」

「如何なさいますか?」

「アテナの所に行く。まずはそれからだ」

「はい!」

 

 

光が消えた市街を駆け巡っていく一夏達は木々が生い茂る場所に一人の巫女服の女性が居る事に気づくと、一夏は女性の方に足を進めた。

 

 

「久しぶりと言うべきか、万里谷祐理」

「貴方は織斑一夏さん...」

「元気そうで何よりだ...」

 

 

一夏は少し、万里谷の顔を見ると目を合わせないように逸らす。

普段なら問題無く、相手を見る事が出来るが、一夏は過去の事件に関わった彼女達を事前に護る事が出来なかったことに対する罪悪感が一夏を襲うのだ。

あの時力があれば、もう少し、早く行動出来ればあんな事にはならなかったのかもしれない。

今となっては後の祭り、過ぎ去った過去故にどうすることも出来ない。

 

 

「まだ、あの時の事を気にしているのですか?」

「あれから、何年も経つが今だに忘れる事が出来ない。いや、忘れちゃいけないんだ...。それが救えなかったあの子達の為なんだ...」

「確かに救えなかった人もいました。ですが、私の様に救われた人もいます。それはあの人も同じはずです。だから、過去に囚われないでください!」

「...そうか。そう言ってくれると助かるよ」

 

 

そう言うと一夏は黄金に輝く空間を見つめる。

 

 

「万里谷祐理。あそこで、戦っているのは護堂と真のアテナか」

「はい。エリカさんが言うにはアレを使った護堂さんはえげつないらしいです」

「えげつない?」

 

 

万里谷の言葉に首をかしげる一夏だが、黄金の空間での戦闘を観察していると万里谷の言っている事が理解出来た。

切り裂いたのだ。神を神たらしめるモノそれは――

「神格を...切り裂いた...。俺がソレを使ったら、絶対勝てるやつだろ! なんで、俺の前に現れ無かったんだよ!!ちくしょーめ!!」

「い、一夏さん?」

 

 

黄金の剣がどういう化身か理解した一夏は心の底から嘆いた。

一夏は心の奥底からウルスラグナが世界のどっかで復活しないかなと思いつつ、その結末を見届けるために一度深く息を吐き出してから微笑み混じりの観戦を改めて開始した。

 

 

 

 

その結果は、言うまでも無いだろう。

 

 




明けましておめでとう!

今年も、投稿していくので、応援よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再会 神殺しと媛巫女

Fate/Grand Orderのガチャは闇だった(いつものこと

星4鯖が出ただけマシか・・・アルジョナ、カルナ、スカサハ、金時欲しかった。

「貴方もわたしが好きなのね! いいわ、それじゃあ……ヴィヴ・ラ・フランス!」
出たのはマリーさんでした。


護堂の戦いと見たいモノを見た一夏は満足そうな顔で帰宅した。

出迎えたのは先に戻っていたマハードと留守番をしていたマナだった。

 

「お帰り一夏。どうだった?草薙護堂って人」

「面白いね。一つの権能ので複数の能力を持ってるのは稀だ。何よりもあの黄金の剣...

 

 

戦士の化身は最高だね!アレはそのまつろわぬ神に対する知識があれば相手の神格を切り裂き、容易に倒す事が出来る。あえてダメな所を言うと知識が無さすぎる」

 

 

「ですが、無理もない話です。一夏の様に昔から神話などに触れるている訳ではなく、つい最近まで普通の一般人だったのですから」

「そうだろうな。俺が可笑しいだけだしな」

「あ、自覚あったんだ」

 

 

一夏自身、自分の異常性には気づいているが、周りが周りなのでこれも普通なのかな、と思う時がある。

 

 

「そういえば、最近は剣馬鹿と戦うこと多いな。剣馬鹿との戦いもいいけど、高頻度で戦うと飽きるんだよな」

「まず、高頻度で戦うこと自体可笑しいんだけど」

「そうか?アイツはノリノリで戦ってくれるから、楽しんだけどね。 久しぶりにまつろわぬ神と戦ったけど、今回のアテナは不完全な状態だったから、完全なアテナと戦ってみたいわ」

「え?不完全であれだけのことしたの!?」

 

 

あれとは、恐らく星無き夜の事だろう。

 

「不完全な状態でも、それなりに楽しかったなー。見たかったモノも見えたし、俺は寝るわ」

「もう寝るの?お休み、一夏」

「一夏、良い夢を」

 

 

 

 

 

 

 

瞼を閉じ、夢の世界に旅立った一夏が見たのは先程、見たばかりの夢...その続きだった。

ドニに招来したまつろわぬ神を任せ、自分は古参の神殺しと戦った。

苦戦はしたモノの勝利する事は出来た。

そして、犠牲になった少女たちが倒れ、中には狂った様に笑う少女もいた。

余りにも悲惨な光景に一夏は目を逸らしたくなった。

その中で水色の髪をした少女が自分をまるで英雄の様に、困った人を助けるヒーローを見るかのような視線で自分を見ていた。

その少女に一夏は口にこそ出さなかったが、心の中でこう叫んだ。

 

 

 

―――――違う...!俺はそんな褒められる様な事をしていない!!だから、何にも出来なかった俺をそんな目で見ないでくれ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏!一夏!!」

「ハッ!」

 

 

翌日、雀の鳴き声ではなく、聞こえてきたマナの声によって、一夏は夢から覚めた。

 

 

「大丈夫、一夏...」

「あぁ。少し、悪い夢を見ただけだ」

 

 

心配そうな顔をするマナの頭を撫でる。

マナの頭を撫でながらマナの近くにいるマハードに視線を配る

 

 

「ちょっと、放課後に会いたい奴が居るから、一人にしてくれないか?」

「会いたい人物と言うのは彼女の事ですね。ですが、私達が離れる理由が分かりません」

「少し、話をするんだが...。まぁ、そこは察してくれ。お前にも聞かれたくない話の一つや二つくらいあるだろ」

「分かりました。では、終わったら連絡をください。すぐ迎えに行きますので」

「あいよ」

 

 

そう言うと一夏は授業の準備をすると教室に向かう。

 

 

「オイ、一夏!何故、私との練習をサボるのだ。そんな事ではクラス対抗戦で無様な姿を晒す事になるぞ!」

「あー、うるさいうるさい。ちゃんとした流派(篠ノ之流)が適当な流派《我流》に負けて醜態をさらした奴に言われたくないわ」

「あ、アレは少し油断しただけだ。ISでは前回の様にはいかん!」

「はー。放課後、IS一本勝負で負けたら、お前の練習に付き合ってやるよ」

「その言葉、忘れるなよ」

 

 

一夏は朝からメンドクサイ人物に絡まれた事とによって、疲れた表情をしている。

 

 

「朝から、お疲れ様ですわ。ですが、箒さんの言うように練習を疎かにするのはいかがなものかと」

「煮詰めすぎてもいい結果は出ません。アイツの場合、貸し出しが許される限り毎日やるだろうし、それに素人が教えて一体何を学ぶんだ?反面教師にでもすればいいですか」

「た、確かに一夏さんの言う通りですわね」

一夏は箒が『篠ノ之束の妹』というIS世界においてこれ以上ない権力を乱用しているのではないかと予想している。

限りある予備機を一人の生徒が自分勝手な理由で使用した場合、練習したくても出来ないという他の生徒にとって迷惑この上ない事態になってしまう。

それを避ける最善策は予備機を使わせない、である。

その為、一夏は箒との練習を避けているのだ。他にも、学ぶことが無いという理由があるが。

 

 

「それでは、一時限目の授業を始める。教科書の20Pを開け」

 

 

そんな事を考えていると千冬と山田先生が教室に入り、本日の授業が始まった。

 

 

 

 

 

 

授業が終わり、マナとマハードは一夏の所に集まり、会話を楽しんでいた。

 

 

「はぁ、スタンドが使いたい」

「いきなり、何を言っているんですか?」

「久しぶりにジョジョを読んでいて使いたくなった」

「貴方の身近にいるじゃないですか。中国に住むカンピオーネで、身体に収まりきらない力が別の形になったりして、背後にナニカが現れる一夏の師匠がそうじゃないですか」

「え?あれ、スタンドなの?」

「あながち否定できないかも。共通点多いし」

 

 

スタンドと羅翠蓮の権能共通点として、本体が存在する、ダメージはフィードバックされる、武器を持たせられる、特殊な力がある。

 

 

「あの人の権能な...。小さい頃に植えつけられた恐怖しかないや」

「確か、最年少のカンピオーネとして、注目した羅翠蓮殿が一夏と接触し、戦闘が勃発。実力を認めた羅翠蓮殿が一夏を義弟にしたんですよね」

「そうそう、あの時はまだ二つしか無くてよ。苦戦の末、何とか勝てたけど、『私の義弟なら、半端な実力では認めません』と言いだして、修行と言う名の地獄を味わいました。油断と慢心を尽くしても、相手を薙ぎ倒す脳きn――実力者に鍛えられたら、誰でも強くなれるよ。それまでに、心が折れる人が続出するだろうけど」

 

 

笑う一夏だが、その眼には涙が浮かび上がっていた。

小さい時に植えつけられたトラウマはいまだ健在のようだ。

 

 

「そうだ、マハード。今度、俺と剣術の練習をしようぜ。お前は剣馬鹿ほどでは無いにしろ、剣術の腕は高いし、俺を除いたこの学園にいる全員よりも強い。それこそ、千冬姉よりもな」

「お褒めの言葉感謝しますが、要するに自分の剣術の腕を落とさない様にしたいという事ですね」

「要領が良くて助かるよ」

「私の腕も上がるので、こちらとしては歓迎ですよ」

「それと、後でこの封書をある奴に渡して欲しい」

 

 

一夏はマハードに一つの封書を渡すとマハードは裏面に書かれている名前に一瞬、驚く。

 

 

「一年四組の更識簪。アイツとは込み入った話があるのでね」

「...そうですか。私達は離れた所にいますので、ごゆっくりお話しください」

「悪いな。色々、気を使わさせて」

「気にしないでください。私は貴方にとって最善の結果が残るように努力するまでです」

 

 

一夏が良い従者を持ったなと思っていると次の授業の予冷が鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

一日の授業が終わり、一夏は屋上に一人でいた。

何故、一人でいるのか。

理由はここで、ある人物と待ち合わせしているからだ。

 

 

「そろそろ、来る頃だと思うんだが...」

 

 

まだ来ない待ち人の事を考えているとドアが開く音が聞こえると其処には眼鏡をかけた水色の髪の少女がいた。

 

 

「初めましてというより、久しぶりと言うべきなんだろうな。更識簪」

「お互いにちゃんと認識しているという意味なら、3年ぶりの再会になる...」

 

 

一夏はそうか、と返すがそこから会話が続かないでいた。

沈黙が続く中、最初に沈黙を破ったのは簪だった。

 

 

「あの時は私や万里谷、リリアナを助けてくれた」

「それは誤解だ。俺は何もしちゃいない...。止めるために戦ったが、動くのが遅かったせいで、あの子達を護れなかった...」

「確かに護れなかった人もいたと思う。でも、私達の様に助かった人もいる。今、こうしていられるのも貴方のおかげ...。だから、あの時言えなかったお礼をさせて。あの時、私達を助けてくれてありがとう」

「お前がそう思うならそう思ってくれて構わない。なら、俺からも言わせてくれ。あの時、怖い思いをさせてしまってすまなかった」

 

(一夏)があの時、護れなかった()に頭を下げ、謝罪した。

 

 

「頭を上げて。私は貴方の力になりたくて、貴方が助けてくれたように...今度は私が貴方を助ける為に私は媛巫女になった。まだ、自分を許す事が出来ないなら、次はちゃんと私達を護って」

「あぁ、約束するよ。今度こそ、俺がお前達()を護る。何が何でも」

 

 

一夏がそう言うと、簪が微笑む。

 

 

「その時はお願い。それと私の事は簪って呼んで」

「分かった。なら、俺の事は一夏で構わない」

 

 

一時はどうなるかと思った簪との再会は何の問題も無く進み、一夏の中の心にあった、わだかまりはいつの間にか消えていた。

 

「もうすぐ、日が暮れる。自分の部屋に帰った方がいいぞ。うるさくて婚期を逃しやすい寮長が出てくるからな」

「うん。一夏の言う通りに自室に帰るね」

 

 

そういうと簪は来た方に向かって歩いていき、一夏は簪の姿が見えなくなるまで、見送った。

 

 

 

 

そして、この時の約束がそう、遠くない内に訪れると二人は予想だにしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

一夏は約束通り、箒とISで試合をしたのだが、

 

 

「今死ね!すぐ死ね!骨まで砕けろ!!」

「グァ!」

 

 

貸し出された打鉄の刀型近接ブレードの刀身は雪片弐型をハンマーの如く打撃武器として扱った攻撃によって折られていた。

「死ぬかァ!消えるかァ!土下座してでも生き延びるのかッ!」

「ガァ!?」

「隙だらけなんだよぅ!」

 

 

雪片弐型による三連攻撃後、隙だらけな箒の懐に入り、斬り上げる。

 

 

「サイコクラッシャァァァ―!!」

「グワァァァ!?」

 

 

雪片弐型を捨て、空中で無防備になった箒に対して右腕を突き出し、突っ込むとそのまま地面に叩きつける。

 

 

「敗北者に死を」

 

 

煙が晴れると其処には無様に倒れている箒の姿があった。

 

 

「誰か瞬〇殺か禊を一夏にしてあげて」

「禊ならまだしも、瞬〇殺を出来るやつがいるか。瞬〇殺は一夏ならできそうだがな」

「それはそれで恐怖よ」

 

 

一夏の様子を遠い目で兄妹は見ていた。

 

 

 

 




Fateは今度コラボするって話だし、楽しみだなー


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クラス対抗戦 そして

FGOにとうとう、ヒロインXが来たか。

セイバー顔が多いからいつかは来るだろうなと思ってたよ。

そして、宝具は予想通りの内容でした。


簪との再会と謝罪から時間は過ぎ、クラス対抗リーグ戦初日、第一試合は一夏が代表を務める1組と、鈴が代表を務める2組の試合となった。

 

 

そして、当日。

両者、試合開始の合図を待っていた。

 

『それでは両者試合を始めてください』

 

ブザーが切れると同時に一夏はカスールと雪片弐型を呼び出し、まずは銃撃戦に入る。

鈴が手に持った異形の青龍刀で銃弾を弾いて行くが、完全に対処しきれていないのか、所々、掠っている。

 

 

「ああ、もう!鬱陶しいわね」

「もう、オコか? カルシウム足りてないんじゃないの?ほら、攻撃して来いよ!俺の

事知ってんならわかるだろ。本気出さないと秒殺されちまうぞ」

「そうね...。なら、手加減はいらないわね!」

 

 

甲龍の肩アーマーが開き中の球体が光るのが見えた瞬間、一夏は雪片弐型を地面に刺し、そのまま上空に退避する。

 

 

「ん~。あれは衝撃波か?」

「やっぱ、初見で見破るのね...。まぁ、予想していたけどね」

 

 

一夏は上空に回避した時、地面をみたら、自分が居た所より少し、後ろ側の地面が、何かにぶつかったのが原因なのか、地面が砕けていた。

それを見た、一夏は似たような事をする自分の師匠の権能を思い出しながら、先程の攻撃を見破る。

鈴自体も見破られることを想像していたのか、そこまで、驚いていなかった。

鈴は先程の攻撃、龍砲が通じないと分かると青龍刀で、接近戦を仕掛ける。

 

 

「へぇー、俺に接近戦で挑んでくるんだ」

「龍砲でチマチマ、攻撃するより、こっちの方が有効だろうからね!」

「あ、そう」

 

 

一夏は雪片弐型で受け止めると、反対側の手に持っていたカスールを向けると、一夏は龍砲の発射口と思われる肩アーマーを連続攻撃する。

 

 

「甘いわ!」

「それはどっちかな?」

 

 

鈴は動きが止まった一夏に龍砲を叩きこもうとするが、一夏は青龍刀を受け流すと態勢を低くすると、そのまま逆立ちをすると、腕の力で身体を回転させ、回し蹴りを繰り出す。

 

 

「グッ」

「まだ、俺の攻撃は終わってないぜ!」

「グヘェ!?」

 

 

攻撃を中断し、一夏の回し蹴りを防いでいた鈴だが、一夏はその回し蹴りを辞め、脚を鈴の首に絡めるとそのまま、背負い投げの要領で鈴を投げる。

投げ飛ばした時に鈴から、潰れた蛙の様な悲鳴が聞こえた。

 

 

「今ので、『ハイ、負けました』何て言わないだろ? ほら、早く立ち上がれよ」

「本当に容赦ないわね。おかげで変な悲鳴だしちゃったじゃない」

 

 

一夏の言葉に、すぐ立ち上がる鈴は青龍刀を構えなおすと、雪片弐型を肩で担ぐとカスールを鈴に向けた直後

 

 

ズドオオオオンッ!!!

 

 

「!?」

「ん?」

 

 

アリーナの遮断シールドを破って、現れた異形のISがその巨大な砲身を一夏達に向けると、そこから熱線が放たれるが、一夏が前に出ると雪片弐型で斬っていく。

 

 

「大丈夫?一夏」

「この程度で、へばると思う?」

「全然、思わない」

 

 

攻撃が終わると、ガチャンっと何かが切り替わる音が聞こえた瞬間、一夏は砲身にあるモノが見え目を疑った。

 

 

「アレは...ルーン文字...」

 

 

砲身に見えたルーン文字が輝くと、火炎弾が放たれ、一夏は上体を逸らし、避けると火炎弾はアリーナの壁に着弾するが、その威力は先程の龍砲とは火力が違い過ぎた。

それこそ、ISの絶対防御を貫ける程の火力だった。

 

 

「ッチ。鈴、邪魔だから、何処かに逃げな」

「流石にあの火力を見て無理して戦う気はないわよ。一夏も無理はしないでね」

「問題ない」

 

 

一夏は雪片弐型を地面に刺し、両腕にルーン文字を描いていく。

 

 

「目には目を、歯に歯を、ルーンにはルーンってね!」

 

 

そして、一夏はここで、周囲の監視カメラと人の眼を権能を使い騙し、欺く。

これにより、周囲は一夏と鈴が共闘してるように見えているだろう。

 

 

「じゃ、行くぜ!」

 

 

ISを解除し、両腕に炎を纏い、所属不明機の懐に縮地で潜り込むと、顔面を殴る。

 

 

「この感触...やっぱり、機械か。だから、生気も殺気も感じなかったのか。犯人の特定

 

 

も、てか、一人しかいないから、すぐ分かったな。今度会ったら、ムッコロス!」

 

 

「あ、犯人死んだわ。ご愁傷さま」

「受けてみなッ!俺の拳を!!」

 

 

一夏が所属不明機を何度も殴り、そのまま下から拳を打ち上げると、態勢を崩した所属不明機が頭部から落ちてくると、その頭部を掴み、アリーナの地面に押し付けながら走り出す。

 

 

「アッハハハハハ!!!」

「相変わらず、戦う時は生き生きしているわね」

 

 

一夏が走った所には所属不明機の部品が転がり落ちており、人が乗っているのなら血のラインがあるはずなのだが、その痕跡は無く、血の代わりにあるのはオイルだった。

その事から、先程の所属不明機は無人機だと理解した鈴。

当の一夏は無人機を掴んだまま、一度跳躍し、そのまま地面に叩きつけると機体の至る所が欠け、頭部は半分以上が消失し、残りの半分はルーンの炎によって融解し始めている為、元の面影は殆どなかった。

何かに気づいた一夏が上空を見ると、新たに二機の無人機が降り立った。

 

 

「そろそろ、違う武器が使いたいわ。という事で、よろしくマハード」

「一夏!新しい武器です!!」

 

 

穴の開いた壁から姿を現したマハードが、持っていた日本刀を一夏に投げると一夏はそれを受け取ると抜刀する。

 

 

「じゃ、やってみますか」

 

 

真剣な顔つきになった瞬間、抜身の刀の如く、触れれば斬られると思う程の真剣な顔つきになる。

 

 

「速く、鋭く!我が剣にて敵を斬る!」 

 

 

一瞬で居合いを詰め、十七の物体に切り刻むと残りの一機に集中する。

 

 

「秘剣の煌めき、受けるが良い!一歩音を越え...二歩無間...三歩絶刀! 無明三段突き!」

 

 

1歩、2歩と跳躍して姿を消し、敵の前に出現して一瞬にして三段突きを放つ。

本来なら、ほぼ同時ではなく、権能を使う事によって、同時(・・)に放つことが出来るが、権能無しなので、ほぼ同時が限度であるが、十分規格外な攻撃である。

突きを放たれた所から、オイルが噴水のように飛び出ると一夏は刀に着いたオイルを横に振り落すと、鞘にしまう。

 

 

「また、恐ろしい技を使うわね。誰かに使ったの?」

「剣馬鹿との死合の時に使ったな」

アンタ達の世界(神殺し関係)に詳しくないけど、あんまり、無茶をしない方がいいわよ」

「ん~。皆、強いから無理をしてナンボだからな」

「まぁ、死ななきゃ安いもんね」

「そうそう」

 

 

そんな会話をする一夏達だが、ここで一夏はある事に気づいた。

 

 

「なぁ、マハード。そこで、蓑虫みたいになっている箒はなんだ?」

「一夏達が戦闘している時に箒殿が何処かに行くのを見かけたので、尾行してみると先

 

 

程まで実況していた所に行くのが見えたので、何をするのかと思い見てみると、中に居た人を気絶させマイクを握り始めたので、このままでは色々面倒になると思い、独断で気絶させ、縄で拘束させました」

 

 

「理由は分かった。馬鹿だな箒は」

「何、応援でもしようと思ったの?馬鹿なの、アホなの、死ぬの?そんな事したら、私

達の気が逸れるだけじゃなくて、自分や気絶させた人が危険になるって想像できなかったのかしら」

「出来ないからしたのでしょう。彼女の頭は単細胞なんですよ」

「お前、偶に毒を吐くよな」

 

 

箒の行動に対して、三者三様の感想を言うと、マハードの毒舌発言に若干苦笑いする一夏。

 

 

「そういえば、一夏。あの衝撃砲、躱す以外にアンタなら、どう対処する?」

「似たようなことする人が居るから余裕。斬る事も出来るぜ」

「バカスカ撃たなくて正解だったわね」

「ん?ん"んん!?ん"ん"ん"ん"ん!!」

「五月蠅いから、もう一回寝てろ」

「......(ガクッ」

 

 

鈴が一夏に衝撃砲のどう対応するか聞いていたら、箒が目を覚ますが、鬱陶しい思った一夏が、髪の中に隠していた麻酔針を箒の額に刺し、もう一度、夢の国に誘う。

 

 

「アンタ、一体何所にそんなの隠していたのよ」

「師匠に色々、叩きこまれた技術の一つ。『権能を使わずに様々な状況で対応したい』と言ったら、その仕方を教えてもらっていつの間に暗器使いなりました」

「同い年のはずなのに...異常よそれ。どんな人生歩んできたのよ」

「真面な人生は歩んでいないと断言できる」

「いや、それ色々アウトだから」

「一夏は中国武術も出来ますからね」

「本当に芸達者ね!?」

 

 

そんな会話をしていると接近してくる教師陣に気づいたマハードはその場から、離れ、遅れてきたISを纏った教師に一夏達は保護された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、一夏は困惑していた。

一夏に簪からあるメールが届いたのだが、その内容に一夏は戸惑っていた。

『助けて』という三文字の内容だが、一夏は胸騒ぎをした。

 

「マハード。悪いが簪の住んでいる部屋に行って、本人が居るか確かめてくれ。胸騒ぎがする」

「分かりました」

 

 

一夏はこの胸騒ぎが、最近、見るようになったあの夢が何かの前触れなのではないかと考えているとマハードから連絡がきた。

 

 

『簪殿は居ません。部屋には誰一人居ません。簪殿の部屋に同室者は居ないんですよね?』

「居ない。本人がそう言っていたからな。分かった戻って良いぞ」

一夏が電話を切ると数分もしないうちに、着信音が鳴る。

「『スターバースト...ストr』もしもし護堂か?そうか...分かった。すぐにそっちに行く。こっちも同じ被害に同じ犯人にやられてるんでね。ちょっとお灸を据えてやらねぇといけねぇみたいだ」

「ただいま戻りました。探索範囲を広げた方がいいでしょうか?」

「いや、犯人の目星がついたからちょっと、出かけてくる。お前もすぐ出かけられるように準備しておけ」

 

 

そういうと、一夏は炎の翼を広げ、護堂と待ち合わせしている場所に向かう。

今回の事件の決着をつけるために。

 




強いの出すのいいけど、HP100万とか多すぎるのは何とかなるけど、二コラの宝具発動早すぎや!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

約束と王の邂逅 

FGOにブリュンヒルデ登場。
取るべきかスルーか正直迷っています。




夜の街を炎の翼を羽ばたきながら、護堂と待ち合わせしている場所に向かう。

 

 

「さっき護堂から、万里谷も攫われたのを聞いたから、簪の失踪とも無縁じゃないんだよな。二人共通の関わりのあるアイツだろ。あの事件の関係者が二人同時に消えるとなれば、ほぼ確実だ」

 

 

ヴォバンがいるその図書館の目の前で一夏達は集まる事になっている。

そして、その図書館の前に降りると先に付いていた護堂とエリカの姿があった。

 

 

「あ、一夏さん!」

「よぉ、護堂。で、ここにアイツがいるのか?」

「そうみたいです」

「それじゃあ、狼爺に決着つけに行くか」

 

 

ちなみに、駐車場には正史編纂委員会の使いが居るらしいが、一夏はその使いが甘粕じゃないかと予想している。

一夏自身、サポート役である、マハードに場所を教えてあるので呼べばいつでも来れる状況である。

 

 

「チース、三河屋でーす。狼爺に敗北をお届けに上がりました!」

 

 

とある日常アニメに出てくる三河屋さんの真似をしながら、扉を蹴り飛ばし、中に入れば風を巻いて、ボロボロの着衣を纏った人影が剣で斬りかかってくるが殴り飛ばし、落ちた剣をブーメランのように投げ、後ろにいたもう一人の頭に突き刺さり、呆気なく終わる。

 

 

「い、今のって...」

「狼爺の権能で"死せる従僕"だな。アレの相手するの面倒なんだよなー。数だけ無駄に多くて、飽きるんだよ」

 

 

先程の剣士たちは、間違いなく達人だった。

だがそんなのは知らぬとばかりに襲い掛かってくる従僕たちを全て権能なんて使わずに倒していく。

護堂はエリカや万里谷から、一夏の強さについてはある程度教えてもらってたが、実際に目の前でその強さの片鱗を見て唖然とするしかない。

一夏自身、従僕程度で自分が倒せるというのなら、是非とも倒してみて欲しいぐらいだ、と思っている。

一夏は伊達に修羅場を超えていなければ、羅濠教主に武術を習ってないのだ。

敗北した経験が無いわけではないが、もう遠い記憶である。

羅濠教主による、地獄が優しく感じる、師事を長年受け続けた結果、並大抵の達人では歯が立たず、まつろわぬ神もギリギリの戦いはあれど、負ける事は少なくなっている。

 

 

「お待ちください、王よ」

「あら、リリィ。あなたいつのまに日本へ来てたの?久しぶりね」

「なれなれしく呼ぶな、エリカ・ブランデッリ。友人でもないあなたに、そんな口を利かれる理由は無い」

 

 

青地に黒い縦縞の入ったケープをしている戦装束。

凛とした涼やかな声に、銀褐色のポニーテールと街を歩けば大体の人が振り向く美貌をした少女が現る。

なんとなく、見覚えのあった一夏はリリアナを見ながら首を傾げる。

 

 

「んー。何処かであったような...。剣馬鹿か、簪たちと同じあの時かな。確か、"青銅黒十字"の魔女、リリアナ・クラニチャールだっけ?マハードが寄越した書類にそんな感じなのがあった気がする」

「覚えていらっしゃったのですか?」

「俺を剣馬鹿や災厄兎と一緒にするな。ここに居るという事は狼爺のお供か?難儀なこって」

 

 

しかし、よくもまあこの真っ直ぐ少女をあの気性の荒すぎる狼爺に差し出せたものだと、少女の心が曲がるぞ、と一夏は思っていた。

最近、色々な組織のトップって、意外と頭のねじ外れてるの多いと思ったが言葉にするのはやめておこうと思った一夏だった。

 

 

「けれどリリィ、あなたよく我慢できているわね」

「はぁ?」

「伝え聞く侯爵の気性とバカ正直な貴方が上手くやれるとは思わないわ、どうせ言いたい事も言えずストレスを溜め込んでいるんじゃないかなーって」

「う、ううううるさいッ!見てきたみたいに言うな!」

 

 

声を荒げてエリカの語りを遮るリリアナに、これは図星だなと苦笑を浮かべる一夏とエリカに弄ばれている事に仲間意識を感じてしまった護堂。

 

 

「白き王、そして草薙護堂!草薙護堂の愛人がいろいろ申していましたが、全て事実無根です。お忘れください。私は確かにヴォバン侯爵の供をしておりますが騎士として何ら恥じるところはありません!ええ、絶対に!!」

「アッ、ハイ」

「あー、それはわかったよ、うん。それと、エリカは俺の愛人でもなんでもないから。それこそ事実無根だ」

「我らの情報網は、すでにあなた方の男女の...失敬、主と騎士を超えた関係だという事は把握済みです。この雌狐なら、若き王を骨抜きにするなど児戯にも等しいでしょうし」

「うわぁー」

「俺がエリカにたぶらかされてるみたいに言うな!あと事実無根だって言ってあるだろ!その情報は間違いだ!」

 

 

護堂はそんな事ないと言うが、現にエリカが護堂に腕に抱き付いて離れない姿を見る限り事実無根と言えないだろう。

 

 

「それと、我らの情報網には白き王も嘗て一人のまつろわぬ女神と淫ら「リリィ!それ以上言うのはやめなさい!!」しまった!?」

 

 

リリアナは一夏の情報もある程度掴んでいるのでその情報を言いかけた瞬間、エリカに止められ、リリアナも咄嗟に手で口を閉じた。

何故なら、その情報は一夏にとって、黒歴史であり、一夏の逆鱗にリリアナは触れてしまった事に、顔を青くしている。

 

 

「探るのは構わんが、少し、口が軽すぎたな。テメェとこの本拠点に案内しろ、今すぐ地図といままで歩んだ歴史を壊してやるからよ。あ"?」

「も、ももももも申し訳ありません!わ、私の発言で気を悪くしてしまったことを誠に申し訳ありません。今回の失態は全て私の口の軽さによるものですので、私を煮るなり焼くなり、好きにしてかまいません。ですが、"青銅黒十字"には何の責任もありません!王の寛大な慈悲で、どうか"青銅黒十字"を滅ぼすのはお止めください!!」

 

 

腰を90度曲げる謝罪から、土下座に移行したリリアナに一夏は腕を組み仁王立ちをしながら、殺気と怒気を撒き散らしながら、見下している。

美少女を恐喝する不良みたいな構図になっているが、誰も止めるものは居なかった。

飛び火するのを恐れて自ら、魔王の怒りを買う人物はいないだろう。

だが、このままでは無駄に時間過ぎ去ってしまい、あらぬ方向に被害が出るので、護堂は意を決し、一夏に話しかける。

 

 

「あ、あの一夏さん。このままだと万里谷や一夏さんのお友達も危ない目に遭うかもしれないから、先に進みませんか?」

「......」

目の前の怒りの般若(一夏)に護堂は敬語交じりで話してしまい、当の一夏は腕を組むのを辞め、周囲に満ちていた殺気と怒気は霧散していくのを感じると、護堂は胸を撫で下ろした。

 

 

「ハァ。おい、とっとと、狼老害とこに案内しろよ」

「は、はい!こ、こちらです!!」

「なぁ、エリカ。一夏さんって短気なのかな?」

「白き王はそこまで、短気という訳じゃないわ。今回はリリィの身から出た錆ね。彼にとって、リリィの話しかけたことは一種のトラウマとも、黒歴史とも呼べる出来事に触れたのが不味かったわ。私達の間では彼の前では、それを一種の禁句にしてるの。過去にそれを笑いながら話した魔術師は二度と人前に出てこなくなり、部屋の中から悲鳴や謝罪の言葉を叫ぶようになったって話があるのよ」

「一夏さん...。貴方は一体何をしたんですか...」

 

 

純粋に何をしたのか気になった護堂だが、目の前で、一夏の機嫌を確認しながら、行動する少女の様な真似はしないようにしようと心に固く誓った護堂であった。

 

 

リリアナの案内の下館内の奥へ進んでいく。

図書館の二階に上がり、閲覧室に足を踏み入れれば背の高い老人――ヴォバンと白衣と袴姿の万里谷と簪がいた。

 

 

「相変わらず、やんちゃな事をしているらしいな。えぇ、狼爺」

「貴殿と最後にあったのは1年程前だったかな...」

「確か、度の過ぎる事ばっかやっているアンタに説教と新しく考えた切り札の実験のために戦った時だったか。俺の一方的な協力に答えてくれてありがとうよ。有効手段が一つ増えたぜ」

 

 

言葉と言葉の口撃と、いつ戦いが起きるのか会話を聞いている方は冷や汗しか流れない。

 

 

「それで...今回は今日は何の用かね、夜叉王」

「流石の俺もテメェの所業に堪忍袋の緒が切れかけていてな、テメェをぶちのめして、綺麗さっぱり終わりにするつもりだったんだが、俺もコイツも別件で用があるんだよ」

 

"夜叉王"とは一夏が通り名の一つである。

戦いを望み、戦いを楽しみ、戦っている一夏の姿が鬼神の如き姿、そのあり様から付いたものである。

 

「草薙護堂だ、俺の友達を返してもらいに来た」

 

 

一夏がまず思ったのが「らしいな」だった。

王に相応しい自分本位の考えだと思いつつ、目の前で繰り広げられる会話を頭にいれるだけ入れるがほぼ右から左に流している。

言い合いの中にやはりというべきか、聞き逃せない項目が1つだけある。

その項目を聞いた一夏は目を細め、ヴォパンを見据える。

 

 

「ジジィ、テメェまだ懲りてないのか」

 

 

一夏の髪が毛先から徐々に黒から白銀へと変わっていく。

一夏の感情が高ぶっている証拠だ。

 

 

「まだ、あのくだらねぇ事を繰り返すつもりか? 流石にそれは許容できねぇな。さて、地獄への片道切符を買う準備は出来たか?」

 

 

何処に隠し持っていたのか、一つの刀を取り出し、いつでも攻撃が出来る様に構える。

 

 

「お、お待ち下さい白き王よ!ここで...この場で決闘をなさるおつもりなのですか!?」

 

住宅街にある図書館。

そんな場所で決闘を行えば、間違いなく当たり一面が廃墟になるだろう。

目の前の古参の神殺しはさておき、一夏はそこまで馬鹿ではないこのまま戦えば甚大な被害が出るし、助けにきた簪や万里谷をマモレナカッタなどと言う事態はしたくない一夏。

 

 

「しゃねーな、...なら、ゲームで決着を付けようぜ。俺と護堂そして、アンタだ。それとも何か?多勢に無勢じゃ、卑怯とか抜かさないよな。最古参の神殺しさんよ」

「ほぉ...、そのゲームの内容はどの様なモノだ?」

「アンタは30分後に追いかけてきて俺達を殺し万里谷と簪を捕まえる。制限時間は......夜明けまで、どうだ?」

 

 

一夏の提案にヴォバンは頷き万里谷の腕を掴んで護堂の方へ突き飛ばし、簪の腕を掴み引き寄せ、抱きとめるが、その身体は小刻みに震えている。

不安そうな顔をする簪に一夏は優しく語り掛ける。

 

 

「大丈夫だ。もう、これ以上お前が怖い思いをする必要は無い。あの時より俺は力を付けた。大丈夫、今度こそ、守ってみせる」

「う、うん...」

 

 

先程まで蒼白だった顔が赤くなっている事に不思議に思いながら、一夏はヴォパンを見つめる。

 

 

「いいだろう、今日こそ貴様との決着をつけてやる」

「今日こそ、引導を渡してやるぜ!狼爺ィ!!」

「あれ?勝手に話が進んでいく...」

 

 

護堂の知らぬ間に話が進み、困惑するが、ここまで話が進んでしまった以上、最後まで付き合おうしかない。

覚悟を決めた護堂を見た一夏は薄らと笑った。

 

 




マナプリズン5個と交換できる概念礼装は何にしました?

正直、ジャンヌか槍師匠で悩んでジャンヌにしました。
理由?ジャンヌがかわいいから。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決着 王との決闘

ヴォバン戦も終わりです。


「結局、戦う事になったんですね」

「アイツと戦い以外で何か解決した記憶ないわ」

一夏は今回の勝負の内容をマハードに教えると、必要な物を持ってくるように頼んだ。

「この人が一夏さんの従者なんですか?」

「意外か?」

「てっきり、エリカと同じ女性が来ると思ってたんで」

「確かに女性は居るが、二人ともまだ未熟だし、片方は今、エジプトだしな。その二人はマハードの妹なんだがな」

ちょっとした、世間話をしていると一夏と自分用に持ってきた二代のバイク、その一台のバイクに積まれていたアタッシュケースを取りだす。

「それはそれと、一夏。例の物が仕上がっております」

「ほう、見せてくれ」

マハードがアタッシュケースを開けると其処には、白銀と黒の巨大な銃と複数のマガジンが入っていた。

「大分、ガタ来ていたので、修復と弾薬の変更がなされてます。カスールの方は今までのルーンが刻まれた弾頭ではなく、ランチェスター大聖堂の銀十字錫を溶かして使用し、ジャッカルの方は初の専用弾13mm炸裂徹鋼弾を使用しています」

「パーフェクトだ、マハード」

一夏はマハードが持ってきたバイクに跨り、移動を開始した。

隣を平行して走る車には、甘粕に護堂とエリカ、と万里谷が乗っている。

道中、一夏は護堂に万里谷や簪の過去に何が起きたの説明していると、一夏のスマホが鳴り響く、30分経った知らせだ。

後ろを見れば、既に追いかけてきている巨大な灰色狼(グレイウルフ)の一群。

「一夏さん!」

「最初の刺客と様子見か...。舐めた真似するなジジィ!!」

一夏はジャッカルを取りだし、灰色狼を攻撃するが、当たりはするものの数が一向に減らない。

「ッチ。マハード!お前は先に行って、護堂達の護衛をしていろ。俺はこの狼を倒す。それと甘粕、少し首都高を壊すがいいな?」

「ハイ。今回は仕方ありませんからね」

確認を取った一夏は少しだけスピードを落とし車の後ろ周るとそのままUターンし、狼の数を数える。

「数は15か...。なら...!」

真剣な顔つきになると聖句を紡ぐ。

「焼け、焦がせ、焼き尽くせ!この炎は全てを焼き払う怒りの業火と知れ!!」

炎の大剣を振りかざし、その時に生じた業火の斬撃に飲まれ、狼が消滅していくのを見ていると狼の第二波が来ると一夏は新たに聖句を紡ぐ。

「天を支配し、神王の雷、その魂に刻み込め!この雷がオリュンポス最強の一撃だと知れ!!」

一夏は大きく跳躍し、両手に纏った雷を集め、一つの槍の様な形に変えるとそのまま、狼に向けて投擲すると首都高に着弾すると雷は周囲に拡散し、次々と狼たちに感電させる。

だが、威力が大きすぎた為、首都高を破壊し、周囲が停電になっているが、一夏はそんな事、気にせずバイクに乗ろうとした時、一夏の足元に黒い渦が広がると一夏の背後に一つの骸骨が姿を表す。

「護堂達の居場所はこの先の学校ね...。了解」

役目を終えたと言わんばかりに骸骨はその渦の中に沈んでいく。

今、一夏が使ったのは『冷獄の支配者(ヘルヘイム・オーナー)』北欧神話の女神ヘルを倒して得た権能である。

先程の骸骨はこの権能によって呼び出した死者である。

死せる従僕と違い、この権能は魂の拘束をせずに使用するため、こっちの方が善良的と言えるだろう。

死者に教えられた場所に向け、一夏はバイクを走らせ、一気にスピードを上げる。

 

 

 

 

 

 

バイクを止め、自らの足で走り出した先に見えたものに一夏は呆れた。

 

――オオオオオオオオオオオォォォォンンッッ!!

 

 

 

学校の屋上のフェンスに座り体長30m前後の狼に姿を変えているヴォバンを見てアホか、と一夏は内心呟いた。

太陽から召喚されたのであろう炎を丸呑みにする姿に、些か大人気ないだろうと呆れ顔で一夏は拳を強く握り、死せる従僕の中心に降り立ち、真っ直ぐヴォパンを見据える。

「マハード!行け!!」

「ハッ!」

護堂と万里谷の手を掴み飛翔の術で飛び去るのを見て、相変わらずいい判断をする、と心の中で称賛した。

「怒れ海神!その怒りは深海の如く、深淵の如き怒涛の怒りと知れ!我が拳は大地を砕き、冥府を揺さぶる鉄槌と成る!」

一夏は拳を振りかぶり、地面を思いっきり殴ると、その一撃は大地を砕き、抉り、引き裂き、その衝撃波はIS学園の時とは比にならない地震と成り、周囲を襲い、死せる従僕を一掃した。

「さっきの炎を食べたのは同じ属性だからか?まぁ、俺は只テメェを叩きのめすだけさ!ジジィ!!」

「いいだろう...。貴様との決着ここで付けてやる!」

「なら、少し本気出してやるよ!!」

神殺しは並の魔術師の数百倍の呪力を持っているが、一夏の保有している呪力の総量はこの世界にいる神殺しの中でトップの保有量がある。

一夏の権能は火力が高いが思いの他呪力を食うのだが、この高火力な権能を合わせた場合、どうなるのかと考え、いつも迷惑な事ばかりしている、ヴォパンに説教と言う名の実験をしたのが一年ほど前。

そして、一夏はあの時、取得した権能の"合成"を使うことにした。

「我が手に集え!天空と大海を支配せし者よ!我が怒りは敵を打ち砕き、我が雷霆は打ち滅ぼす!今宵、天地の審判をここに下す!」

二つの権能を同時に行使する事は呪力の消費量を更に加速させるのだが、一夏の場合2、3つの権能の同時行使は苦ではない。

全身に雷を纏い、大地を揺るがす怪力でヴォバンを殴り始める。

「ぐぅ...。IS学園とやらに入った事で平和ボケしたのではないかと思ったが...要らぬ心配だったようだな!」

「変なお節介どうも!俺が平和ボケするのはテメェがこの世から居なくなってからだよ!!」

一夏とヴォバンが取っ組み合いになり、互いに動かなくなるが、次の瞬間、護堂は目を疑った。

 

―――30m前後の巨体を持ち上げ、振り回し始めたのだから

 

「ウォォォォォッッ!!」

「ヌワァァァ!?」

そのまま地面に叩きつけると、一度後退する。

「おい、護堂!とっとと戦士の化身使って少しは応戦しろや!!」

「そ、そんな事言われても、まだ、あの権能の正体が...」

「教授の術でも、使えばいいだろ!時間なら稼いでやるからよ。何もしないんなら今度は俺がテメェと戦う事になるぞ」

「そ、それだけは勘弁してください!」

「なら、とっととしろや! 行くぞ、オラァ!!」

このまま、戦わないようなら、どうなるのか教えるが、もし、これを第三者が聞けば、脅迫と言うだろう。

「我は雷霆を支配せし者である、我は天空を支配せし者である、纏え、従え、集え、我が元に集いし雷よ、我が力となり給え!」

雷の槍を作りだし、構えると、全身に雷を纏い、神速で行動することで、ヴォバンに一撃入れる事が出来たが、咄嗟に後ろに飛んでいたので、余りダメージは無いようだ。

仲の良い、(ブラック)王子(プリンス)の"電光(ブラック)石火(ライトニング)"と違い神速を出すのは権能の応用みたいなものなので神速の把握は非常に楽なのだ。

神速で進み、雷の槍をヴォバンに向けて、投擲するがここで、一つある事を加える。

「進め、戻れ、止まれ、停止しろ、加速しろ、巻き戻れ!時針は我の思うがまま、時はこの身の思うがままに!"加速"しろ!!!」

更に加速させ、ヴォバンに向けて、槍を投げる。

「ぐっああああああああああああ!!!」

ヴォバンの悲鳴を聞きながら、一夏は呪力の消費を押させるために神速を解除し、縮地で護堂の近くに後退する。

「一夏さん。準備が出来ました!」

「りょーかい!」

やっとか、と内心苛立ちながら、護堂の近くに行くと護堂が聖句を紡ぐ。

「我は言霊の技を以て、世に義を顕す。これらの呪言は強力にして雄弁なり。勝利を呼ぶ智慧の剣なり」

そして、護堂の周りに黄金の空間が広がり始める。

「これが、草薙殿の化身...。なんと神秘的な空間なんだ...」

この空間を始めてみるマハードは驚きを隠せずにいた。

そして、黄金の剣はヴォバンに刃を向けた。

教授の術によって得た知識を駆使し、ヴォバンの権能を切り裂くと、30mの狼から元の姿に戻るが、ここで、化身の効果が切れた。

「さて、貴様の言霊...。アポロン以外に効くのかな?」

「クッ」

「はぁ。仕方ない、後輩の尻拭いでもしますか!」

ヴォバンとの戦闘を考え、比較的、呪力の消費が少ない、自身が持つ権能の中で、弱い部類の権能を使う。

「魂を見極めし、戦乙女よ!我に剣を授け、我らをヴァルハラに導き給え!」

一つの身の丈はあるであろう大剣を右手に持ち、カスールを左手で構え、接近戦と射撃戦による戦闘を始め、"死せる従僕"とヴォバンを相手にする。

「クソォ...。ここまでなのか...」

「まだ諦めるのは速いわ。何か策があるはずよ」

「侯爵は一夏に任せて、時間まで死守するのが、一番いいのでしょうが...戦力的に不利ですね」

迫りくる従僕を倒しながら、マハードは一夏が一から鍛え、授けた特製の剣で応戦している。

そんな時、一人の少女の声が響いた。

「草薙さん!剣を創り変えるのです!!アポロンとオシリスは元は極めて似た性質を持つ神です。きっと出来るはずです!」

「よし、やってみるか!」

輝きを失った剣に輝きが戻り始めるがここで、ある問題が起きた。

護堂にはその知識が無いのだ。

先程はアポロンの知識を得たが、オシリスに関する知識は今の護堂にはないのだ。

「少しは神話を覚えておけよ!」

「他に意識を配るとは...余ほど余裕があるようだな!」

「チッ。ハイヤッ!」

「ぐわぁ!?」

剣を地面に刺し、中国に住む師匠から学んだ中国武術を使い、応戦する。

震脚を利用した移動と同時に、背中による至近距離での突進で、体勢を崩させ、頂肘と呼ばれる技、所謂、肘打ちをし、一夏の身体能力+権能によりその威力は桁違いに上がっている。

一夏はチラッと護堂の方を見てみると剣を作り変えようとしているのだろう。

しかし、剣の形状が安定せず、燃え盛る炎の様に揺らいでいた。

そんな護堂に万里谷が近づき、キスをした。

そして、剣の形状を変えた戦士の化身は死せる従僕の権能を切り裂いていく。

 

だが、ヴォバンはまだ倒れていなかった。

 

「新参の神殺しとの闘争...。暇つぶしのつもりで、夜叉王の誘いに乗ったが...存外に楽しかったぞ!」

「チッ!」

護堂に向かって放たれた紫電、今の護堂では危険と判断した一夏の行動は早かった。

「ぐぉおおおおおおおおおおおおおお――!」

「い、一夏さん!」

放たれた紫電を受け止める一夏。

この行為には二つの意味があった。

一つは護堂を護る為、そしてもう一つはゼウスの権能の応用、自ら雷を放つのではなく、吸収する事で自らの力に変える為だ。

自虐とも取れるこの行為はダメージを喰らうが、その分吸収した雷は自らの呪力を使わず、扱う事が出来る為、呪力の節約にもなるのだ。

地面に刺した、剣を服に仕込んでいた鋼糸で剣に絡め、自分の所に引っ張るとそのまま掴み、構えると剣は炎と吸収した雷を纏う。

「お前たちは昔の私に似ておる。魔術など知らぬ身で王の権能を手に入れ、如何なる魔術師達も取得できぬ術を、その闘志と知恵で使いこなす。それは私が嘗て、通った道だ。フンッ!」

「後先短いジジィの癖に無駄にタフなんだよ!」

戦士の化身は似た性質を持っていれば、先程の様に作り変える事も出来るが、あの権能は類似するところが無いに等しい、故に効力は無い。

その事に気づいた一夏は迫りくる雷撃を切り伏せていく。

「確かにお前が通った道なのかもしれない。だがな、俺達は俺達の道を歩む!テメェみたいになるつもりは無い!!なぁ、そうだろ―――

 

 

―――護堂!」

 

「あぁ、俺はアンタの様な、神殺しになるつもりは無い!」

山羊の化身を使った護堂の手には一つの雷球があり、それをヴォバン目掛けて、放つが、ヴォバンは雷球を弾くと後方のフェンスに衝突する。

ヴォバンの後方では雷雲が蠢き始める。

それに対し、護堂は仲間と無念に散った従僕たちと心を一つにし、対抗する。

ヴォバンの紫電を防ぎ、護堂は人々の思いを受け止め、ヴォバンに思いの結晶ともとれる雷を落とす。

「グッヌゥゥゥゥゥ!!」

相手も最古参の神殺しとあって、簡単にはやられず、その雷を防いでいる。

「こ、この攻撃さえ防げば...!「何か忘れてないか?」何っ?」

この攻撃させ耐えれば勝てると思ったヴォバンだが、ふっと聞こえた声に疑問を浮かべながら声のした方を向くとフェンスの上で雷が迸る業火の剣を肩に担いだ一夏の姿があった。

「俺達はソロで戦ってるんじゃない。タッグ(・・・)で戦ってるって事をよぉッ!!」

「グワァァァァァァ!!??」

フェンスの上から縮地を使いヴォバンに接近する一夏に両手で護堂の雷を防いでいるヴォバンは防ぐことが出来ずに、振り落された雷炎の剣をまともに受け、防御が崩れたことにより、護堂の雷を直撃する。

閃光が止み、そこには巨大なクレーターが出来ている。

「勝った...のか...」

「人はそれをフラグと言うんですよねー」

疲労困憊の護堂とまだまだ余裕のある一夏。

「やるではないか...!」

「なっ」

「フラグ建てるからこうなる」

「これから始まるのは第三ラウンドという事でよいかな?小僧共!」

底が見えないクレーターから這い上がってきたヴォバンの姿は地獄から舞い上がってきた死者の様だ、と一夏は思った。

だが、ここで一夏はフっと笑みを浮かべる。

「残念だったな。どうやら、第三ラウンドは中止の様だぜ」

「アレは...」

「夜明けね!」

薄暗かった大地に光が差し込み、小鳥が鳴き始める。

それは夜が明けた知らせだった。

「グッ、ヌゥゥゥ...」

「さて、試合終了のゴングは鳴った。万里谷と簪を守り通した俺達のな。さぁ、どうする?」

「草薙護堂、夜叉王!貴様らに勝利をくれてやる!次、会いまみえる時は貴様らの命、全力で刈り取ってやろう!」

そういうと、ヴォバンは一筋の風と共に姿を消した。

そして、ヴォバンが居なくなった事で死せる従僕が解除されたのか、従僕たちは次々と消えていくが、一夏や護堂に称賛の言葉を送って言った。

「さて、俺達も帰るとしますか。約束を守ったかは分からんが、大きな問題が起きる前に助けることはできた」

「大丈夫、一夏はちゃんと約束を守ってくれた。あの時の様に、起きた後じゃなくて、起きる前に私達を守ってくれた。だから、一夏は約束を守ってくれた。ありがとう、ちゃんと守ってくれて」

「あぁ、そうか」

背負っていた物が一つ消えたせいか、一夏の笑顔は何処か清々しかった。

「マナの話だと、学園内では特に目立った行動は無く、簪が居なくなってる事に気づいてないそうです」

「警備ざるすぎだろ。まぁ、そのおかげで、容易に戻る事が出来るんだがな。じゃあな、護堂。また何かあったらいいな。今回の様に助けてやるからさ」

「はい。一夏さんのお陰で万里谷を助けることが出来ました」

「そうかい。次会うまでに少しは知識を身に付けておけよ」

 

 

一夏は簪をお暇様抱っこし、IS学園に向けて、三人は帰宅するのだった。

 

 

 

 

 




待ちに待ったFGOのコラボが空の境界...。

これは全力で行くしかない。(コンビニで買ったカードを片手に

個人的には月姫が良かったんですけどねー。

アルク使いたかった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王と新たな出会い

あの二人が出ます。


ヴォバンとの決闘から数日が経ち、一夏達はつかの間の平和を堪能していた。

あの一件以降、一夏と簪の中は深まり、親友として接している。

そして、一夏は放課後に整備室に行くようにしている。

理由は簪にある事を頼まれたからだ。

それは一緒に専用機を作って欲しい、というものだった。

一夏はこれを快く承諾し、専用機づくりに没頭している。

「で、作業するのは良いんだが...。背後からの視線と殺意が鬱陶しいな。ぶっ飛ばしていい?」

「で、出来ればして欲しくないかな...。恥ずかしいけど、あれ、お姉ちゃんだから...」

余りの鬱陶しさに一夏は仕込んでいたナイフをいつでも投げれるようにしている。

それに対し、簪は姉の行動に恥ずかしく感じてるのか、顔を赤くしたまま俯いている。

「取り敢えず、ウザいので、スタンガン投げまーす」

「うん。私もこのままだと恥ずかしさのあまり引きこもりになりそう...」

スタンガンのスイッチを入れ、対象に向けて投げ。

 

<フグリッ!ビリビリするゥゥゥ!!?

 

悲鳴?が聞こえると先程までの視線の持ち主が倒れかけるが、颯爽と現れた女子によって、何処かに連れてかれるのが見えた。

「今の誰?」

「倒れたのがお姉ちゃん。そのお姉ちゃんを連れて行ったのが虚さんで、一夏君のクラスにいる本音のお姉さん」

「妹と真逆じゃないですかー」

「そういう一夏も、どうなの?」

「姉妹にしろ、姉弟にしろ、そっくりになる事は少ないよな。あ、そのままだと、機体制御失って墜落するぞ」

「じゃ、こうすればいいかな?」

実質、一割しか終わってない、専用機作りが、ものの数日で、半分まで終わっている。

「マルチロックオンはイメージ的に種死とかに出てくるあれでいい?」

「そんな感じ」

「あ、余った素材貰っていい?作りたい武装があるんだ」

「どんなの?」

興味津々で聞いてくる簪。

「ウィングガンダムゼロのツインバスターライフル」

「やめてください。そんなの作ったら、ISの絶対防御貫通して搭乗者が死んじゃう」

「じゃ、東方の弾幕」

「気が滅入ってしまいます」

「月光蝶」

「文明が滅んじゃうよ!」

一夏自身もアニメやゲームは好きな方なので、そう言った武器を作りたいという気持ちはあるのだが、如何せん、危険すぎるモノが多い。

「じゃ、ビームマグナムとシールドビット」

「白式にサイコフレームを付ける事から始めよう」

「サイコフレーム...。作るか」

「一夏なら作りそうで、怖い」

「白式にサイコフレームを搭載したら、変形してガンダムになるんですね。分かります」

「そのまま、神ユニコーンになると思うよ」

アニメ好き二人は同じ領域(オタク)内で会話をする。

「ビームマグナムとシールドビットはすぐ出来るんだよなー」

「何で?」

「レーザーの出力上げと安定、これはカートリッジにすればいい。後は耐えれる銃本体と高出力のビームを保存できるモノを作れば完成。シールドビットはイギリスのビット研究のデータを、ハッキn...ちょっと拝借すれば、完成ですな」

「今、ハッキングって言いかけなかった?」

「ナンノコトデスカ」

「目を合わせて、言って」

露骨に目を逸らしながら、片言で言う一夏に簪はため息を吐く。

「そういうのは程々にした方がいいよ」

「善処しよう」

「する気全くないでしょ」

「それにしても、変形機構を取り入れたいなー」

「アレはロマン」

そんな、会話をしながら作業を進めていく一夏達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日、2人の転校生が来ていた。

 

「シャルル・デュノアです、フランスから来ました、この国では不慣れな事も多いと思いますが皆さんよろしくお願いします」

黒板の前で挨拶をする人物を一夏は観察していた。

(あれ男装だよなー。男性としての動作に違和感は無いけど、骨格もそうだけど、気配とか女性なんだよな。理由は...まぁ、俺だよな)

はぁー、と溜め息を吐きながら、マナの方を見てみると、何か違和感があったのだろう首を傾げていた。

「ねぇ、一夏。あのデュノアって人、本当に男?」

「お?そこに気づくとは大分成長したね」

「じゃ、もしかして...」

「はい、女性です」

マナの観察力が上がっている事に驚くと同時に感心した一夏だった。

「男子!二人目の男子!!」

「しかも、美形!守ってあげたくなる系だ!!」

「暴君系男子の織斑君とは別のタイプ!」

「え?俺そう思われたの」

シャルルが男性と分かると一気に興奮状態になるクラス一同。

その中で、聞こえた暴君系男子と言うクラスの認識に驚く一夏。

一夏が暴君と呼ばれる理由はただ一つ、その立ち振る舞いである。

時折、出る王様を沸騰させる姿や戦闘時の暴れっぷりを合わせたことで生まれた、新たなジャンルである。

「あー騒ぐな、静かにしろ」

面倒くさそうに言う、千冬。

「み、皆さんお静かに、まだ自己紹介が終わってないですから」

もう1人の転校生、長い銀髪に眼帯に、身に纏う雰囲気と染みついた硝煙と血の匂いを一夏は見逃さなかった。

(どんなに洗おうが落ちないあの匂いとこの雰囲気から察するに...軍人か)

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

余りにも簡潔すぎる自己紹介にその場に居た殆どの人が唖然としていると、ラウラは一夏の前に近づく。

「貴様が織斑一夏か」

「あぁ、そうだが」

「貴様が...!!」

唐突に平手打ちが飛んできた。だが、一夏がラウラの手首を掴むことによって、防がれる。

「チッ......認めん、貴様のような出来損ないが教官の弟だなどと、私は絶対に認めん!!」

憤怒の表情で一夏を見下ろしながら叫んだ後、ラウラは手荒く一夏の手を振り払い宛がわれた教室の一番後ろにある席に向かい、その席に座った。

シャルルもその隣の席に座った事で漸く落ち着いたのか、千冬が教卓の前に立ち、残りのHRを進める。

 

 

 

 

 

「では、1時限目は2組と合同でISの実習だ。着替えてグラウンドに集合しろ」

これにてHRは終わり、生徒達は急ぎ更衣室まで行かなければならない。IS実習は千冬が担当する授業、遅れれば待っているのは鉄拳制裁だ。

一夏からすれば別に大したことではないが、今は学生の身である以上、授業に遅れるのは本末転倒である為、一夏は素早く行動する。

「織斑、デュノアの面倒を見てやれ、同じ男子だろ」

そう言って、立ち去る千冬に一夏は呆れていた。

(あれ、デュノアが女子だという事に気づいてない可能性があるな。もし、見抜けてないなら、マナより格下という事になるぞ)

そう思うと、嬉しいような悲しいような複雑な心境なった一夏だった。

「君が織斑君?僕は...」

「ハイハイ、挨拶は後でね。行くぞマハード、マナ」

シャルルを連れて教室を出ると更衣室に向かって急ぐ一夏に挨拶をしようとするシャルルだが、一夏は此処で挨拶されるとメンドイ事になると思い、一端区切り、いつものメンバーで移動しようとした矢先。

「あ!織斑君よ!!」

「一緒に噂の転校生もいるわよ!」

「者ども!戦の始まりじゃ!」

「マハード、パス」

「えぇぇぇぇ!!??」

一夏はマハードに向けて、押すとそのまま一夏は壁と天井を螺旋を描くように走る。そして、その光景に驚くシャルル。

「では、デュノア殿。覚悟はいいですか?」

「え、え?一体何を、おおおおおおお!?ちょ、きゃあああああああああああ!!!?」

「では、ご武運を」

マハードの言っている事を理解出来なかったシャルルは首を傾げているとマハードがシャルルを担ぐと槍投げの様なフォームを取ると、そのまま一夏に向けて投げる。

それに驚くシャルルは空中で緩いカーブ描きながら、一夏の腕に着地する。

「じゃ、マハード後で」

「では、後ほど」

「後でね、一夏」

一夏はマハードと二手に分かれ、シャルルを担いだまま、廊下を走りだす。

 

<最後のガラスをぶち破れ-!

<世界が逆に回転するー!

 

パリィィィィン!!×2

 

「よし、マハード達は上手くいったようだな」

「え!あれで上手く逃げたの!?むしろ、警察沙汰だよ!!」

「大丈夫だ、問題ない」

「問題しかないから!!」

「神(殺し)は言っている、ここで死ぬさだめではないと」

「分かったよ...。そろそろ、僕を降ろしてくれるかな?もう、大丈夫だと思うから」

「もう外だし、更衣室も近いからいいか」

なんだかんだ言ってると、すぐ目の前には男子更衣室があった。

「さっさと着替えないと怖い、こわーい千冬先生の鉄拳が待ってるぞ」

「そうだね。って、えぇぇぇぇ!!??」

着替えようとしたシャルルの目の前には空中で人型を保ったIS学園の制服がそこにはあった。

「秘儀ルパンダイブ」

「何その、無駄技術!?」

「イチイチ脱ぐのメンドイので覚えた、以上。先に行ってるから」

「え?あ、うん」

手を振りながら、グランドに行く一夏であった。

 

 

 

 

 

既にグラウンドにはISスーツを着た女子生徒が集まっており、走り寄ってきた一夏達に歓声を挙げている者も何名か。

ガラスを破って来たマハードとマナは一切怪我をしていなかった。

「では、最初に実際にIS同士の模擬戦闘を見てもらう。オルコット、凰、前に出ろ」

「わたくしと鈴さんが、ですの?」

「え~、メンドー」

チャイムが鳴り、授業が始まると千冬の言った事に如何にもめんどくさそうな表情をする鈴だが、気持ちを切り替え、千冬に何を吹きかけられたのか妙にやる気になったセシリアと即席のタッグを組んで、山田先生と模擬線をしたが2人のコンビネーションは悪くはないが、所々、二人の攻撃が互いに邪魔をする場面があり、それに対し山田先生は2人の行動に適切な対応をし、2人同時に倒した。

「思ったより出来ていたが、こんなものか。諸君もこれで教員の実力は理解出来ただろう。以後は敬意を持って接するように」

千冬が手を叩きながら言う。

「専用機持ちの織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰、グループ分けをし、実習を行う!グループリーダーは専用機持ちがやること!」

専用機持ちによる実習が始まり、一夏は準備すると

「一夏君、一緒に頑張りましょ!」

「織斑君の武器の使い方教えて!」

「魔王さま~!」

あっという間に一夏とシャルルの周りに女子が集まり始める。

「マハード、メンドイからお前がやってよ」

「今回は一夏が頼まれていますし、ISを使う事が出来ない私にはISを使時の感覚が分かりませんので、上手く教える事は不可能です」

「専用機持ちの所へ行けと言ったがな......ちゃんと均等に分かれんか貴様等!!」

「ちゃんと指示しない方が悪いだろ」

「ほぉ?私に口答えするのか。私生活ならまだしも、ここ(IS学園)では、私の方が上だぞ」

「今回のミスは何処に誰を分けるのかちゃんと言わなかった駄教師がわるい。そもそも、ここには不本意ながら男性でISを動かせるのが一応、二人いるからそっちに人が集まるのは必然だろ?こんな事も分からないのかよ、この脳筋剣馬鹿駄姉。そんなんで、よく教師なんて出来たな、世界最強の称号は就職にも有利か?技術があっても、頭がパーなら意味が無いんだよ。私生活もダメ、授業もダメ...一体何が出来るんだ?」

 

グサッグサササ!

 

「ゴフッ」

千冬に言葉の槍が刺さりまくり、口から吐血しているよう周りの生徒は見えた。

「で、何か言いたいことある?速攻、論破してやるよ」

「い、いや、何もない。私が悪かった、だからこれ以上は勘弁してくれ。私の残機はもうゼロなんだ」

「分かったよ。今回の論破はこれまでにしておくとしよう」

ホッ、と胸を撫で下ろす千冬に一夏はあることを言う。

「今度、千冬姉の部屋に視察に行くから。部屋がゴミ部屋と言うか、いつも通りなら、色々規制するからー」

「\(^o^)/オワタ」

何処か清々しく、諦めたのか、某ボクサーのように真っ白に燃え尽きてく千冬の姿がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光景を見ていた同居人達は

「なんだ、いつもの光景じゃない」

「千冬殿が勝てる日は...一生きませんね。一夏に口で相手に出来るのは黒王子殿くらいでしょ」

 




やりました...。やったんですよ!必死に!その結果がこれなんですよ!!配布された石を貯めて、フリクエをクリアして、今はこうしてコラボガチャを回してるんですよ!これ以上なにをどうしろって言うんです!!何と戦えって言うんですか!!







式セイバーが出ました。ほんとありがとうございました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ある意味、賑やかな食事

今回は大勢での食事とネタです。



そして、ネタと息抜き感覚で書いたので、そこまで大した内容じゃありません。


千冬が一夏の死亡宣告ともとれる言葉を聞き、真っ白になって授業が進まない中、山田先生が臨機応変に指揮を取り授業を進めた。

この時一夏は千冬姉を副担任にすればいんじゃね?、と心の中で思った。

 

 

そして、授業は順調に進み、昼休み屋上でいつもの三人と簪で食べ様と思った矢先にセシリア達が一緒に食べようと誘い始め、急遽、大勢で食べる事になった。

一夏、マナ、マハード、簪、箒、鈴、セシリア、一人で食べようとしていたシャルルを誘い、計8人での食事である。

「大分、人増えたけど、それはさておき、楽しく食べようぜ!」

「只、食べるのもつまらないから、皆の料理を分けながら食べない?」

「賛成」

全員が持ってきた、料理を出し、鈴が分け合って食べるという案を出し、全員がそれに賛成する。

「まずは私ね。お父さん直伝の酢豚に私オリジナルの麻婆豆腐よ!」

「鈴は酢豚か」

「さぁ、食べた食べた!」

「どれ?ふむ...中々、いい出来じゃないか。鈴にしてはやるな」

「箒、アンタおちょくってんの?買うわよ、その喧嘩」

「ここで、争いは駄目だよ」

「辛さが足りない。味覚を破壊するレベルの辛さじゃないと」

「外道麻婆神父はお帰り下さい」

鈴の料理が思いの外美味しかったのか、箒から零れた言葉に敏感に反応する鈴、それを宥めるシャルルと一夏のネタにツッコミを入れる簪。

「次は私だな。私が作ったのはお手頃な料理のチャーハンだ」

「どれ、一口......。あれ?」

「どうしたの一夏?」

「味がしない...」

『え ?』

箒の料理を食べた一夏はよく噛んで食べるが、段々、噛むスピードが遅くなり、首をかしげ始める一夏を不思議に思ったシャルルは何があったのか聞くと、一夏は思った事をそのままいうと全員が不思議そうな顔をした。

全員が一口ずつ食べ始めるが全員の頭の上に?マークが浮かび上がった。

「ば、馬鹿な...。味がしない...」

「マズイ殺人料理並みに何故そうなったのか、不思議なんだが」

「えぇい!全部私が食べる!」

箒はチャーハンの入った容器を取り上げるとそのまま流し込むように食べ始める。

「私が作ったのはこれ」

簪は周りより少し、大きめの容器を取りだす。

「ほぉ、海鮮丼か」

「うん。朝早くから仕込みとかして、作った」

「中々、豪華ですわね」

簪が全員分に分け、食べ始める。

「酢が効いていて美味いな」

「このエビ、プリプリで美味しいですわ」

「もっと、食わせろ!」

簪の料理は大反響だった。

「私はお兄ちゃんと作ったの」

「私達が作ったのはフルーツサンドですね」

次々と各々、作った料理を出す中、一夏とセシリアはまだ自分の作った料理を出していなかった。

「ほれ、一夏も料理だしなさいよ。私の楽しみなんだから」

「悪いな、俺の料理はデザートだからな。マハードが作ってるなら、こっちはデザートにしようって話になってな」

「なるほどね、セシリアの手料理を食べて、一夏のデザート食べるわよ」

「私が作ったのはサンドイッチですわ!どうぞ、一夏さん食べてください!!」

「お、おう」

一夏は一口セシリアのサンドイッチを食べると口の中を襲う、痛みがやがて、胃へとたどり着くと、激しい吐き気に襲われた。

「どうでしたか、一夏さん?」

「正直に言うと......マズッ。具体的に言うと過去に作ったマナの料理の方が不味いがな。マハード、エチケット袋」

「そうでしたか...。では、一度自分の料理がどういう味なのか確認の為に食べた方がいいでしょう。では、これを」

「あの...マハードさん?何故、私の肩を掴むのですか?じ、自分で食べますので...押し付けないでください!後、笑顔なのに目が笑ってないのですけど!?」

一夏()をやられて、平気でいられる(従者)では、ないので。たっぷり、自分の料理で地獄を味わってください」

「くぁwせdrftgyふじこlp」

セシリアの料理を食べた一夏はマハードから、エチケット袋を貰い、屋上の人目の無い所に移動する一夏。

それを見たマハードは報復8割、今後の為2割の割合でセシリアに毒物サンドイッチを口の中に押し込め、噛み、飲み込んだ瞬間、言葉にならない悲鳴を上げた倒れた。

「ふぃー、出すもん出して、スッキリしたぜ。マハード、水」

「それは何よりです。口直しの為に自らの料理を食べてみてはどうですか?」

「そうする?大体食い終ったし、まぁ...セシリアに何があったのかは言わないが、程々にしておけよ」

「あれは自滅ですので、直接的には悪くはありません。私は彼女に自分の手料理を食べさせただけなので」

私は悪くないと自分は親善大使だと主張しまくる人物の台詞と某新世界の神の様な顔芸をするマハード。

「マハード、顔芸はそこまでにしておけ。一部を除いて、全員引いてるぞ」

「その時の写真だよ」

「これはひどい」

「アンタの顔芸なんか、どうでもいいから早く一夏のデザート食べましょ!」

マハードの顔芸に引いてる中、マナによって取られた、顔芸時の写真を見たマハードはひどい、と素直に思った。

そして、一夏は用意したティラミスを見せる。

「うわぁ...美味しそう...」

「ティラミスとは、またこったモノを作るわね」

「まぁな。さぁ、締めのデザートをどうぞ」

全員が一口一夏特製のティラミスを口に運ぶと鈴とマナ以外の全員が膝から崩れ落ちた。

「なんだこの...美味しさ...」

「うん、間違いなく、そこら辺のレストランより美味しいね。美味しいけど、凄い負けた気分」

「びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛」

「女性として、負けた」

「相変わらずの美味さね。そこら辺の女子より女子力あるんじゃない?」

「最初食べた時、私も凄い敗北感があったね」

「一夏の料理は絶品ですからね」

「俺の料理を超えるモノを作れる人を俺は知っている」

「へぇー、そんな人いるんだ」

一夏の料理を食べた事で、必ず起きる女性としての敗北感に襲われる簪達。

そして悟った、料理で一夏に勝てる気がしない。

何処か落ち込んだ様子で、一夏のデザートを食べる簪達を見ながら、賑やかな昼休みは終わった。

 

 




fate/grand Orderにシロウ・コトミネ実装。

CV内山昂輝...。

一夏とバナージの声...だと...。

取るしかない道が無いじゃないか(白目)

PS4買うタイミング逃したな。

にしても、アストルフォ君。君は次のハロウィンまで待機じゃなかったのか?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな同居人と少女の思い

四月からピカピカの(社会人)一年生だ!(白目)


昼休みが終わり、一日の授業が終わり、部屋に戻った一夏達に山田先生が訪れた。

「織斑君。少しいいですか?」

「えぇ、どうかしました? 愚姉の事だったら、後日時間があった時に」

「どうかしました?」

「誰か来たの? 一夏」

「皆さん揃ってるんですね。簡潔に言いますとマハードさんとマナさんにはお引越しをしてもらいます」

何か用なのかと集まり始めた一同に、二人に引っ越してもらうので、その準備をしろと言う山田先生。

「何故このタイミングで、引っ越す事になったのですか?」

「デュノア君がコッチに来たんですけど、同じ男性を一つにまとめて置いた方が何かあった時に駆け付けやすいという事と、異性同士同じ部屋にするのは不純過ぎないかという声がありまして」

「まぁ、明確な理由があるのでしたら私はそれに従いますが、私とマナは同じ部屋という事でよろしいでしょうか?」

「はい。兄妹なら特にそう言った事態になる事は無いだろう、という意見が多かったので、お二人は同じ部屋です」

「えぇー、一夏と離れちゃうのー」

「決まったのなら仕方のない。では、用意の準備をしますので外で待っていてください」

「分かりました。では、終わったら教えてください」

バタン、と一度ドアが閉まるとマハードが溜息をつく。

「すみません、一夏。従者である、私が王である一夏と離れて、護衛できない状態になってしまって」

「問題ない。取り敢えず、武器とかの調整はお前の部屋で頼むわ。部外者に視られるわけにはいかないからな」

「何かあったら、教えてください。すぐに駆け付けますので」

「おう、その時は頼んだ」

「お兄ちゃん、準備で来たよ」

「では、一夏。また明日」

「じゃあね、一夏」

用意が出来たマナとマハードが部屋から出るとすれ違うようにシャルルが部屋に入ってくる。

「今日から同室だね。よろしく」

「おう、よろしく」

「で、一夏は何をしているの?」

「クトゥルフ神話を読んでいる」

「一夏ってそう言うのが好きなの?」

「一番は神話、伝承かな。他にもアニメ、漫画、ライトノベル、小説、文明解明等があるかな」

「は、幅が広いんだね...。後、中に可笑しなの入ってるの気のせいかな?」

「そう思いたいなら、そう思えば」

そんなやり取りをしていると、一夏は読んでいた本を仕舞い、制服の袖から大量の道具を取りだし始める。

「ええぇ?! どこにそんな数のモノが入ってるの!?」

「俺、暗k...昔、マジシャンになりたくてな、体から鳩とか出すやつあるだろ。アレの練習をしているうちに身に付いてな」

「へー、一夏にそんな夢があったんだ。僕に少し見せて」

「じゃ、ひとつ」

一夏は部屋を歩き、一つのグラスと厚紙を取りだす。

「ここに変哲もないグラスと厚紙があるな」

「うん」

「まず、グラスの上に厚紙を載せます」

グラスの上に厚紙を載せるとポッケから百円玉を取りだす。

「じゃ、この百円玉をこの厚紙を退かすことなく、グラスの中に移動させよう」

「うんうん」

「じゃ、行くぞ。アインス、ツヴァイ、ドライ!」

 

――チャリン

 

一夏が指を鳴らすと宣言通り、百円玉は厚紙をすり抜けるようにグラスの中に落ちていき、その様子に今だ信じれないシャルルはグラスの中と一夏を交互に見ている。

この時、一夏はシャルルの顔が無邪気な子供の様だ、と思った。

一夏の名誉の為に言っておくと、権能や特別な力は使ってない。

「まぁ、こんな感じで、俺もある程度できるんだよ」

「凄いよ、一夏! どうやったの、ねぇ、教えて!!」

「それ分かったら、つまらないだろ。タネが分かったら言いな。答え合わせしてやるからよ」

そういうと、一夏は部屋の中を歩き始める。

「あれ?どこ行くの」

「シャワー。あ、シャワー中覗くなよ。まぁ、覗くなら覗いていいけど、そう言う趣味がある奴なんだって思いながら接するから」

「ち、違うよ!? 僕はノーマルだよ!!」

「お前の言葉を信じさせてもらうよ」

少し、弄りながら、シャワー室に向かう一夏だった。

シャワー室から出た一夏と入れ替わりでシャルルはシャワー室に向かった。

 

 

 

 

 

シャルルがシャワー室に入ったのを確認すると一夏はスマホを取り出し、マハードと連絡を取る。

「さて、マハードには、情報収集に行ってもらうか。行先はフランスだな」

一夏はベッドの下に隠しておいた銃のマガジンに弾を詰め込んでいく。

「何の用だ。頼み事はさっき連絡したろ」

「えぇ、仕事をする前に二つ程、用件がありまして」

「で、その用件とやらは?」

「一つ目ですが、これは確認と理由です。フランスということはデュノア社についてで、いいんですよね」

「そうだな。後はフランス政府とデュノア社で、行われているだろう黒いやり取りについてあればそれも調べてくれ。フランス政府のお偉いさん方の弱みも探ってくれると助かる。今後、役に立つだろう...あ!後、デュノア関連で魔術に関わっているか調べて」

デュノア社が何故、こんなハイリスクな事をするのか、その内部事情を知る事で解明する事、もし、何か行動するのであれば、魔術を使うのであれば、自分が出るだけで、収まる可能性があるからだ。

フランス政府関連は、デュノア社で問題が起きた時にこれ以上、面倒な事にならないようにする為である。

「二つ目は何だ?」

「もし、何か行動するのであれば、これを使ってください。防刃、防弾加工を施したコートと素顔をバレないようにする為の仮面です」

「あいよ。これに変声機能は?」

「ありますが、丈夫ではないので、大切に扱ってください。調べ終わり次第、連絡しますので、では」

「まぁ、壊れたら、俺が声を変えればいいか。ガンバ―」

一夏は手を振りながらマハードを見送っていくと、ガチャ、とドアが開く音が聞こえると一夏は素早く、銃とマガジンをアタッシュケースに仕舞うと、時計を見るとパソコンを取り出し、起動させる。

シャワー室から出て来たシャルルはジャージ姿で出てくると、一夏の隣のベットに座る。

「そういえば、一夏はIS学園卒業したら、どうするの?」

「なんだその質問? まぁ、俺は国家代表とか微塵も興味ないから、俺のやりたいように生きるさ」

「それだと、世界初の男性IS操縦者なんだから、絶対周りが許してくれないんじゃないかな?」

「なんで、俺がイチイチ周りに合わせて生きなちゃいけないんだよ。馬鹿馬鹿しい」

そう言いながら、一夏は先日、簪と話をした、ビームマグナムの設計図を描いていく。

「誰かに強要された人生なんざ退屈すぎて、生きる気力を失うね。お前は誰かに強要された、誰かが作った人生の線路を歩くのが好みなのか?」

「そんなわけないでしょ! 僕だって、一夏みたいに自分の思うがまま生きたいよ!!誰かに決められて生きる人生なんて僕は嫌だ!!」

「分かったから、そうヤケになるなよ」

「そう...だね...。僕も少し、熱くなりすぎたよ...。今のは、忘れて」

「お前が言うなら、忘れてやるよ」

「そうだ。明日、僕と模擬戦してくれないかな?」

「別に構わんよ」

「じゃ、明日の放課後に第三アリーナに集合だよ」

そう言うとシャルルはベットに横になり、寝息を立てる。

その様子を見た一夏は、やや煽る様な言い方をしたのはシャルルが何か抱えているのなら、助けてやりたいと思ったからだ。

だが、一夏は御人好しで人を助けるつもりは無い。

ほんの僅かでもいい、助かりたいと思ってる人を一夏は優先的に助ける。

先程、シャルルは今の自分の環境下に不満を覚え、逃げ出したい、助かりたいと思っている事が分かった。

助かりたいという意思があるのならば、救いの手を指し出してやろう、それが一夏だ。

「シャルル、お前を拘束するものを俺が壊してやる。困ってる人()がいるのなら、助けるのが()の務めだからな。だが...待て、しかして希望せよ」

そう言うと一夏は、不敵に笑い、拳を強く握った。

 

 

 

 

 

翌日、何事も無く、授業が終わりを告げ、一夏は放課後に模擬戦をするというシャルルのとの約束の為、第三アリーナに来ていた。

強いて問題があったのなら、ラウラからの敵意の籠った視線をずっと浴びていたことだろう。

この時一夏は某見た目は子供、頭脳は大人の少年探偵が使う麻酔針をぶち込んでやろうか、と何度か実行しようとしたが、隣の席のマナがいち早く気づき、阻止していた。

そして、模擬戦をする事になったのだが、何処から聞いてきたのか、箒、セシリア、鈴と合同で模擬戦をする事になった。

 

 

――― 一夏VS箒、セシリア、鈴、シャルルという形で

 

「多勢で寄って集って、戦ってるくせに、その程度か? 俺に傷一つ付けれねぇのか!」

「何だ...この強さは!?」

「大勢で挑んでも、勝機なんてありませんでしたわ」

「...ほんと規格外ね」

「射撃にはそれなりの自信があるけど...。あそこまで、避ける、斬る、相殺、掴むとか...さすがの僕でもへこむな...」

一夏の規格外の戦闘力を改めて実感する一同とその高さに驚く、シャルル。

訓練機で参戦した箒は、真っ先に潰され、セシリア、鈴、シャルルの即席コンビで応戦するも、セシリアのティアーズ全機撃破、鈴の龍砲、青龍刀半壊、シャルルはSE(シールドエネルギー)こそ減っているが、武器や機体の損傷はそこまで高くない。

対する一夏は縮地は使えど、それ以外は一切使わず、余裕の表情を浮かべながら笑っている。

SEを残り2、3割まで削られ、どうすればいいのか対抗策を考えていた時。

「なんか考える余裕あるの?ないでしょ!?」

「グフッ!?」

「セシリア!」

「どうやら、終わりの時が来たようだなぁ。岩盤浴はい・か・が?」

「ほぉああぁぁ?!」

瞬間加速でセシリアの懐に潜り込み、鳩尾に強烈な一撃を喰らわせ、怯んだ所を回し蹴りで沈め、そんなセシリアを心配した鈴の顔面を掴むとそのまま、アリーナの壁に叩きつける。

鈴をアリーナの壁に叩きつけた衝撃で、大きなクレータを作った。

「残りは...」

「ヒィ!?」

「お前だァ!」

残ったシャルルに向け、前進するが、シャルルも只、怯えるだけではなく、右手にアサルトライフル、左手に散弾銃を持ち応戦する。

「あらよっと!」

「しまった!」

一夏は地面に雪片を軽く刺し、棒高跳びの要領で、シャルルの背後を取ると慌てて、振り向くとそこにはカスールとジャッカルを構えた一夏の姿があった。

「ゲームオーバーだ!ド外道!!」

「キャァァァァ!?」

カスールとジャッカルを一心不乱に撃ちだし、可愛らしい悲鳴を上げるシャルル。

一夏の言葉を聞いた全員が、それはお前だ、と内心思ったがどんな仕打ちをされるか分からない為、言わなかった。

 

結果、模擬戦は一夏の完勝で終わった。

 

今回の模擬戦を終えて、得た事は一夏の理不尽な強さと模擬戦を仕掛けたら、地獄を見るという事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「箒、鈴、セシリアは頭が固いんだよ」

「「はぁ」」

「だが、剣は接近して、斬る為のものだろう」

「脳筋、猪突猛進過ぎ。だから、カウンター喰らって速攻落とされるんだよ」

「ぐぅ」

模擬戦が終わり、一夏による反省会が行われていた。

「セシリアはティアーズ破壊された時の対策が少ない。ショートブレードの展開も遅いから、接近戦において無防備同然なんだよ」

「でしたら、接近させなければいいだけですわ」

「バカスカ、接近されてたのは何処のどいつだ?展開遅いんなら、そのライフルで接近戦するとか考えておかないと接近されたら終わりだぞ。てか、同時使用出来る様になれや」

「はい...。以後、気をつけます」

言葉のナイフでドンドン、攻撃していく一夏に痛い所を突かれたセシリアはショボーンとしていた。

「鈴は強い武器に頼り過ぎ。例えば、龍砲とか、龍砲とか、龍砲とか」

「全部、龍砲じゃない。で、他の改善点は?」

「龍砲使う時に無意識だろうけど、少し、舌で唇を舐める癖があるからそこを直すのと、後は接近戦の練習。青龍刀なくなった時の策として、素手による格闘を覚えるとかな」

「ふーん。じゃ、もう少し、武術の練習するとしますか。その時、一夏指導よろしく」

「まぁ、ある程度できるし、いいぜ」

鈴の今後の改善点を言うと、鈴が武術の指導を申し込んできたが、この時、一夏は鈴を自分の師匠の魔術結社に送り込もうかと思ったが、自分でやった方がいいなと思い了承する。

「シャルルは特に悪い点は無いんだよ。相手との距離を常に考え行動するとか、高速切替とか上手く使えてるし。未熟な部分があるからそこを直せとしか言いようがないな。まぁ、原石に少し磨きが掛かった程度だから、まだ強くなるから、精進あるのみだね。あるとしたら、少し、効率的に動こうという姿勢が強いな。もう少し、効率性を無視した戦いをしてもいいかな」

「なるほどね。一夏はそう言うの考えないで戦ってるの?」

「俺は偶に考えるけど、基本的に本能で戦うかな」

「な、中々原始的な考えだね」

「偶にはこういう考えも必要という事さ」

「みんなー。喉乾いたでしょ?お茶持ってきたよ!」

シャルルの問題点を言っていると、マナが人数分のお茶を持ってくる一夏達とは反対の方から声がしてきた。

「あれっ、あのISってまだテスト段階じゃなかったの?」

「完成したからそのテストの意味も含めてここに来たのかしら?」

そんな周りの疑問を余所にラウラは一夏に問いかける。

「おい、貴様も専用機持ちなら私と戦え」

「嫌だね。戦う理由が無い」

「教官の汚点であるお前を私は許さない!お前を倒し、教官と同じ強さを手に入れる!」

この時一夏はラウラがどういう人間なのか理解する。

「その不躾な口を閉じろ、贋作(フェイカー)

「貴様!?」

一夏の発言にキレたラウラが、レールカノンを一夏に向けて狙いを定め、撃つが

「この程度か...。所詮は偽物か」

「くっ!」

一夏は素手で受け止めると、そのままラウラに投げ返すとラウラは手刀で切り落とす。

「頭に血が上り過ぎて、周囲への警戒が疎かになってるぞ」

「グッ」

次の一手を打とうとした瞬間、すでに背後を取っていた一夏がラウラの首筋に手刀を当たる寸前で、止める。

「贋作、偽物と言われたのが、そんなに癪か? だがな、お前の今の在り方は正に偽物だぞ」

「貴様に一体何が分かる!!」

一触即発な雰囲気にが辺りを覆うとアリーナのスピーカが響き始める。

『そこの生徒、何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』

騒ぎを聞きつけてきたのか、先生の声がスピーカーを伝わってアリーナに響き、ラウラから手刀を離し、鈴達の所に足を進める。

「戦う雰囲気じゃないのでね。此処は退かせてもらうぞ」

スタスタとアリーナを去っていく一夏を遅れて追い掛ける、マナ達。

 

 

 

 

 

アリーナを後にした一夏はマナの部屋に来ていた。

「ねぇ、一夏。なんで、ラウラに贋作なんて言ったの?」

「ん?あぁ、その事か。理由は簡単だ。アイツの在り方をそのまま言ったまでだ」

「ん?」

「アイツは駄姉の信者だろうな。恐らく、ドイツに行った時の教え子だろう。アイツに何があったのか分からんが、あいつの中身は空っぽ...その中身を"織斑千冬"という存在で埋めようとしているんだよ。"織斑千冬"という世界最強の強さでな」

「それは憧れとは違うの?」

「憧れとも違う。自分すら知らずに他者で自分を塗り固めようとしている。それは只の猿真似だ。自分と言う存在を理解し、意志をもって、真似ればそれは自分の力になるだよ。それは自分の意志が籠ってるからだ。だが、アイツは只、力を求めるだけで、其処には自分の意志は存在せず、模倣しようとする相手の思いも意志も何も考えず、只真似て、求める。だから俺は偽物、贋作と言ったんだ。それに、人は決して他人になる事が出来ない」

ラウラの千冬に対する態度は尊敬を超え、信仰と言っても過言ではない。

相手の技を真似るのであれば、相手の思いや意志を読み取り理解すべきだ、と一夏は教えられている。

『相手の技を模倣するのであれば相手を理解し、自らの意思を持ってその技を成せ』これは今は亡き親友が一夏に教えた言葉だ。

ラウラは只、力を模倣し、吸収しようとしてるのだ。相手を理解せず、相手の意志や思いも、ましてや自分の意思すら無く、真似るだけのその姿は正に偽物である。

それではいずれ力に飲まれ、自らを破滅に導くだろう、と一夏は考えているが、これについては彼女自身の精神的な問題である為、どうこうすることは出来ない。

「まぁ、俺がああ言った理由は以上の通りだ。アレは力に飲まれて、自滅するタイプだね。よくゲームとかで、力を手に入れるも制御できずに暴走させる奴とかさ」

「ふーん。そう言えば、お兄ちゃんはいつ頃戻ってくるの?」

「今週中には戻ってくるだろう。そこまで、難しい事じゃないし」

「因みにどんなこと頼んだの?」

「ちょっと、デュノア社とフランス政府の内部事情を調べてくれ、と頼んだ」

「それ、かなり難しいと思うんだけど...」

「アイツは『では、二日か三日で調べ上げてきます』と言って、旅立っていったぞ」

お兄ちゃんマジハイスペック、と言っているマナを無視し、部屋を歩き、ドアの前に立つ。

「そんなわけだ。後はいつも通り、自由にやらせてもらうから」

「程々にね」

「善処しよう」

そういうと、一夏は部屋を後にし自室に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻った一夏はそのまま新しい武器の設計図を描き、その他設定や色々奮闘する事数時間が経ち、太陽も沈み、闇が広がる夜。

基礎は出来上がり、外装もついでにマハードに外装の製作を頼んである為、後はプログラムなどの中身を手掛ければ終わりという段階まで進んでいた。

時計は既に八時を指しており、ずいぶん長い間纏め作業に没頭していたのだと気づかせる。

「一夏、そろそろシャワー浴びたいんだけど、先に一夏が浴びる?」

「ん? いや、先に浴びてていいぜ?」

「そう? だったらお言葉に甘えちゃおっかな」

一夏の言葉を聞いたシャルルはそういうとシャワーの準備をし始める。

それを横目で見ながらも一夏はデータ作成を続けていく。

そしてシャルルがシャワー室に消え、シャワーが流れる音が響きだす。

「あ~、マハードが帰って来ないと、『ドキッ、白き王の突撃(物理的)恐怖の家庭訪問』が出来ないじゃないか。アイツ、もうすぐ終わるって言ってたな。戻るまで寝よ」

そういうと、ベッドに倒れこむと、そのまま寝息を立て始めてしまった。

 

そして一夏が夢の中へと旅立った数分後。

 

 

「はぁ~、コルセット部屋に忘れるなんて、ドジだなぁ、僕」

シャワーを浴び終えたシャルルが部屋へと戻ってくる。

濡れた髪をタオルで拭きながら戻ってきた彼は、ベッドの上で自分の方に顔を向けながら寝ている一夏を見て思わずぎょっとする。

「い、一夏!? ......って、寝てるのか。はぁ、良かったぁ......」

そう言って胸をなでおろすシャルル。

その胸は、男ではありえないほどのふくらみを持っていた。

「やっぱり、やだなぁ、みんなを騙すのって」

彼は、実は『彼』では無く『彼女』だったのだ。

いったいどのような事情があり彼...否、彼女が自身の性別を偽ってここにいるのかは定かではない。

だが、彼女の様子を見るに、好き好んで性別を偽っていたというわけではないだろう。

「別にいいか、一夏も寝てるし」

取りに来たモノをつけずに、上着を着る。

「はぁ、どうしてこうなったのかな...。 僕はただ、母さんと普通に、ほんとに普通に暮らせればそれでよかったのに...」

だというのに、自分の母は病に倒れ、帰らぬ人となり、そのせいで今まで顔を見たことも無い父親に利用され、彼女がIS学園に入学したのはその父親に言われての事だ。

もちろん、ただ入学して来いと言われて来たわけではない。

「ごめんね、一夏。でも、僕にはこうするしかないんだ...」

今のような境遇になって、何度も何度も、毎日の如く呟いている『ごめん』そして、『こうするしかない』という単語。

だが、呟いたところで現状が変わるわけでもない。

結局は、今ある自分の居場所を保つために、自分はあの忌々しい父親のいう事を聞かなければならないのだ。

直接では無いにしろ確かに電話越しで、父親の声から発せられた命令。

それは織斑一夏のISのデータを入手してくる事。

今、デュノア社が欲しいのは第三世代のIS、そして、一夏のデータである。

後者に関してはその情報の価値は、まさに計り知れないほどの物となるのだ。

シャルルは用意された端末に白式をケーブルで繋ぐとそのデータをコピーしていく、その時だった。

「!? 何...この感覚...」

それは、背骨に直接氷を当てられたかのような寒気。

そして何者かに見られているかのような感覚。

ほんの一瞬の感覚に大量の冷や汗をかきながら、周囲を見渡す。

しかし、当然周囲に誰かがいるはずも無い。そこにいるのは眠っている一夏しかいないのだから。

何が起きたのか戸惑っているとデータのコピーが終わり、これをデュノア社の指定された場所に送れば終わり、これが終われば少しは楽になるのかな、と思った次の瞬間。

「いつかは実行するだろうなと思っていたが...まさか今日とはな」

声のした方を見てみると其処には眠たげに上体を起こしている一夏の姿。

一夏の瞳は、眠たげに細められているが、まっすぐシャルルを見つめていた。

 

 

 

 

 

 




デュノア社関係者逃げて超逃げて―

なにやら、行動を起こすつもりの一夏、デュノアに明日はあるのか!




引っ越しの用意などで、今回の更新から少し、次の更新まで間が開くと思いますがご了承ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王の裁き

やっと投稿できる!!!

最新話どうぞ!


一夏とシャルルの間に沈黙が流れる事、数分が経っている。

何故、そんな状況になっているのかと言うと、シャルルが一夏のISである、白式のデータを盗んでいる現場を目撃されたからである。

 

 

「まぁ、気にすんなよ。見方を変えれば、ドジッ子属性と言う新たな自分発見なんだぜ」

 

「そんな発見要らないよ...」

 

「まぁ、シャルルの新発見は置いておいてだ。あんな事した?理由は容易に想像が付くがな」

 

 

死を待つ死刑囚のように怯え、顔を真っ青にするシャルルに一夏は通常運転で対応する。

 

 

「そうだな。とりあえず、氏名、年齢、国籍、犯行に及んだ簡単な説明でもしてもらおうか」

 

「え?えーと、シャルル・デュノアは偽名で、本名はシャルロット・デュノア。一夏と同い年、生まれも育ちもフランスで、僕のお母さんが病気で死んだ時にデュノア社の社長に引き取られて、間もなく、デュノア社が経営不振に陥って、第三世代のISを作れていなかったでデュノア社はイグニッションプランから外されるかもしれないという状況になって、そうなると国からの援助が無くなるから、打開策として、一夏のISのデータと世界で一人目の男性操縦社のデータ採取をする為に送り込まれました」

 

「ふーん。ハイリスク、ノーリターンな事を考えるな上の人はよ。理由が想像通り過ぎて、つまらね」

 

「つ、つまらないって...」

 

「最後に聞くけど。もし、自由が手に入るなら欲しい? 例え全てを失ってでも」

 

「え?」

 

 

先程までのふざけた表情から一変し、真剣な表情になり、シャルロットは少し困惑した。

 

「YESかNOのどっちだ? 未来を掴むために、地べたを這い、泥水啜って、周りから白い目で見られて、みっともないと言われてでも生きて行きたいか?それとも全てに挫折して、抵抗もせずに流されるまま自分の心を殺して、人形のように生きるか?」

 

「それってどういう...」

 

「なら、分かりやすく言おう。お前はシャルル(人形)か、それともシャルロット(人間)どちらで生きたいんだ?」

 

「そんなの決まってるよ!人形(シャルル)としてじゃなく、人間(シャルロット)

として生きたいよ!!誰かの命令じゃなくて、自分の意志で僕は生きたいんだッ!!」

 

 

一夏の質問に答えるシャルロットに一夏は不敵に笑う。

 

 

「喜べ、少女。君の望みはようやく叶う」

 

「それはどういう...あれ?」

 

 

一夏の言っている意図が分からず、聞きなおそうとした時、眠くなかったはずなのに突如、強烈な睡魔が襲い、そのまま眠ってしまう。

 

 

「シャルロット、お前は運がいい。なにせこの俺、白き王を味方にしたのだからな!」

 

「一夏。例の調査が終わりました」

 

「いいタイミングだ。拝見させてもらうぞ」

 

 

一夏は外で待機していたマハードから、資料を読むとマハードから受け取ったロングコートとを身に纏う。

 

「仮面はしないのですね」

 

「顔を覚えたのなら、恐怖で忘れないようにしてやるさ」

 

「流石一夏。やることがえげつない」

 

「じゃ、フランスまでちょっくら行ってくるわ。見張りよろしくね」

 

 

フッハハハ、と笑いながら、縮地で跳んで行く一夏を見て通常運転具合に安堵すると同時に、この後襲撃される人たちに向けて心の中でマハードは手を合わせた。

 

 

 

 

 

「ここがデュノア家か...。デカイな」

 

 

少し血塗られたロングコートを靡かせながら、豪邸を見る一夏。

 

何故、ロングコートが汚れているのか、それは一夏がデュノア社に強制捜査しに行った

時に出会い頭に数名程、麻酔と拳で気絶させた時についたモノである。

 

その後、デュノア社のサーバーにハッキングし、デュノア夫婦の行先を調べ、自宅にいる事が分かり、現在に至る。

 

 

「さて、行くか」

 

「ちょっと、待った」

 

 

一夏がデュノア家の中に入ろうとした途端、門番に止められる。

 

 

「ここから先は入場許可書を持ったものしか入れないわ」

 

「そうよ。アンタみたいな餓鬼が持ってるとは思えないけど、持ってないならとっと消えな。この家畜」

(女尊男卑の信者かよ。あ、殺意の波動に目覚めそう)

 

 

少し、穏便に行くかと思った矢先にこの始末に一夏は少し、過激に行くかと考え始めた。

 

 

「許可書があればいんだろ」

 

「有るの?なら見せなさいよ。こっちは忙しいのよ」

 

「許可書はこれでいいかな?」

 

「「!?」」

 

 

一夏はロングコートの袖からカスールとジャッカルを二人の門番に向けると問答無用で引き金を引く。

 

麻酔弾で門番二人を撃つと即効性が非常に高い為、何も出来ぬまま、倒れる。

 

「たくよ、何でこんな奴が門番やってんだろう。こんなの可笑しいよな」

 

 

疑問に思いながら豪邸に入る為の認証する機械から離れ、二人の門番の前で油性のマッキーをクルクル回しながら近寄る。

 

 

「取り敢えず、シャルロットの為三割、憂さ晴らし七割で行くか」

 

 

ガチャ、と大きな扉が開くと蓋の開いたマッキーを仕舞い、中に入っていく。

 

 

開いた扉の近くには盛大に落書きされた二人の門番がおり、余りの奇怪な落書きに近くを歩いていた人から写真を取られ、ネットで話題になるのはすぐ後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、見た目、心構え、殺る気、問題ないな」

 

指を鳴らしながら準備運動をしている一夏は一度辞め、玄関の前で拳を大きく振りかぶる。

 

 

「お邪魔しまーすッ!」

 

元気な声で扉を破壊しながら、中に入りこむ一夏に何事だと使用人や従業員たちが続々と現れる。

 

 

「誰だ貴様!」

 

「悲しみに沈む少女を助ける男。スパイ〇ーマッ!」

 

「戯言など要らぬ!何をしに来た!」

 

「問題のあるデュノア家に過激な家庭訪問に来たのさ」

 

 

ネタを挟みながら用件を言う一夏。

 

「健全な私達に問題などありませんよ」

 

「あ、そう。なら、個人的にムカつくから、テメーら潰すわ」

 

「過激な人ですね。お引き取り願いましょうか...命を持ってね!」

 

 

そういうと、女性使用人が銃を構え、放ち始める。

 

一夏は一切躱そうとせず、そのまま立ち止まる。

 

 

「馬鹿め!自らハチの巣になる事を望んだか!」

 

「男がでしゃばるからそうなるのよ!」

 

「この程度で俺を殺したと思った、お前の姿はお笑いだったぜ」

 

「なッ!?」

 

 

一夏のいた所は盛大に土埃を上げ見えなくなるが、ハチの巣になったと確信した女性陣

は勝利の声を上げるが、土埃から無傷の一夏が姿を現す。

 

 

「攻守交替でいいよな?」

 

「うわぁっぁぁ!?」

 

 

縮地で近づき、鳩尾を抉るように殴るとそのまま、天井に突き刺さる。

 

 

「俺を殺したかったら、バズーカでも持ってくるんだな!」

 

「なら、リクエストに答えてあげるわ!」

 

「なにィ?」

 

 

一夏は声のした方を見ると其処には一人の女性がバズーカを構えていた。

 

 

「吹き飛びなさい!」

 

 

飛来するバズーカを受ける一夏。

 

 

「流石に死んだでしょう「ギャハハハハハ!」嘘...」

 

「演出ご苦労ゥ!華々しく散らせてやるから感謝しろよ。三下ァ!」

 

 

爆炎から姿を現した一夏は狂気の笑みを浮かべながら、進んでいく。

 

 

「テメェらが魔術使えるのは知ったんだよ。本気出さないとサクッと逝っちまうぞ。相

手は何せ、神殺しなんだからな!」

 

「神殺し、白銀の髪、...白き...王...」

 

 

白銀の髪に戻った一夏はマハードの調べで、デュノア家で働いている者は全員魔術に関係していると知っている。

 

 

「か、神殺しが何よ!相手は只の子供よ!」

 

「そうよ、私達があんな、男性の子供に負けるわけがないわ!」

 

「皆で戦えば勝てるはずよ!」

 

「オラ、こいやァァァ!!」

 

 

火炎弾やゴーレムを使い攻撃するが一夏はカスールとジャッカルを取りだす。

 

 

「マッチのようにつめてぇ火炎弾だな!」

 

「ギャァ!?」

 

「このぉ!潰しなさい!」

 

「動作がおせぇんだよ!」

 

「私のゴーレムが!? でも、まだよ!」

 

「術者ががら空きだぜ!」

 

「キャア!?」

 

 

火炎弾を銃弾で相殺し、相手の懐に潜り込み、ゼロ距離からカスールの弾が切れるまで撃ち、ゴーレムを太刀で切り伏せ、がら空きの術者に峰内で、倒す事まで約10秒である。

 

 

「何よ!化け物じゃない!?」

 

「これならどう!」

 

 

複数で一夏を囲い、一人の女性が一夏の頭を狙撃し、撃ち抜く。

 

 

「倒した...」

 

「やったか」

 

「しーなーなーいーよー」

 

 

仰向けで倒れた一夏はそのまま重力に逆らうかのように起き上がり、撃ち抜かれた所から血を流しながら不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「ハァァ!」

 

「グフッ?!」

 

「アガッ!?」

 

「イィィヤァ?!」

 

 

十名で固まっていた団体の前に行き、二人の首を掴むと地面にめり込むように叩きつけ、カスールとジャッカルで七人をハチの巣にし、強烈な蹴りを叩きこみ、残り一人の頭を鷲掴みにするとそのまま家の壁にめり込むように叩きこむ。

 

 

「敵は...この奥か」

 

一歩進もうとした時に、左右から感じた殺気に気づき、上体を逸らし、躱すと二つの剣が通り過ぎる。

 

 

「躱したか」

 

「ほぉ、ISか」

 

「そうよ!アンタを倒すには勿体ないモノよ!」

 

「私達が味わった屈辱を晴らすために使う事にしたわ!」

 

 

一夏はカスールとジャッカルをISに放つがカチカチ、という音が出る。

 

 

「弾切れか」

 

「このチャンスでアンタを倒す!」

 

「ISで倒されることを光栄に思いなさい!」

 

「そらよっと」

 

「なっ...ゴハッ?!」

 

 

一夏はカスールとジャッカルと一緒に二つ上空に投げるとロングコートか取りだした刃渡り80cmの投擲剣を三本ずつ指で挟むように両手で持つと上段の構えで接近するいSに投げ、同じくロングコートに隠していた太刀を取りだすと一緒にIS乗りの方に移動する。

 

投擲剣を切り伏せていくIS乗りだが、投擲剣に隠れて一緒に向かっていた一夏に対応で

 

きず、無明三段突きを喰らわせ戦闘不能にし、もう一人のIS乗りの方に視線を向ける。

 

 

「私をさっきのと同じにしない方がいいわよ!私はISと魔術を合わせた攻撃が得意なのよ!最強の兵器と魔術があればアンタなんか目じゃないわ!」

 

「長ったらしんじゃボケ!」

 

 

一夏は先程上空に投げたカスールとジャッカルを掴むともう一人の方に接近、IS乗りはルーンの炎を纏った剣で攻撃するが一夏は剣に銃身を交差させ、防ぐ。

 

 

「どう?手も足も出ないでしょう!」

 

「手は出なくても、足は出るよね!」

 

「グッ!」

 

 

空いていた足でIS乗りを蹴り、姿勢を崩させるとそのまま接近し、銃口を顎に突きつける。

 

「何処を撃ち抜かれたい?5秒以内だったら、リクエストに答えてやろう」

 

「ざ、残念ね。その銃には弾は入ってないわよ」

 

「そうか、時間切れだ!」

 

 

一夏は一回引き金を引くと女性の顎に衝撃が襲う。

 

「嘘...」

 

「悪いな、リロードはあの上空に投げた時にしてあるんだよ。俺の特技の一つ、空中リロードだ」

 

「ま、待っt」

 

「喰らいなッ!!」

 

 

一夏はリロードが完了したカスールとジャッカルで女性に向け、乱れ撃つ。

 

乱れ撃ち終えた一夏は銃身を持ちそのまま、首筋に叩きつけ、気絶させる。

 

「弱っ。何が科学と魔術が交差した時、強くなるって? 全然よえーじゃん」

 

「何よアレ...化け物じゃない...」

 

「撤退よ!撤退をしないと全滅するわよ!!」

 

「逃げろォォォォ!」

 

 

後方に居た女性たちは一夏の戦に飢えた修羅の如く、襲い掛かってくるその姿に恐怖し、逃げ始め、地下へのエレベーターに乗り込む。

 

「これで少しは逃げる時間を稼げるわね」

 

「そうね。でも、なんでドアが閉まらないのかしら?」

 

「ウヘへへへへ」

 

「アンタ何してるのよ!」

 

 

エレベータのドアが閉まらない事に疑問に思った一人の女性が周りを確認すると、来たばかりの新人が狂ったように開けるを押し続けていた。

 

 

「そんな事したら、アイツが来ちゃうじゃない!」

 

「ヒィへへへ!」

 

「まさか、催眠術に掛けられてるんじゃ...」

 

「クッ!」

 

「フグリッ!!」

 

 

行っても聞かない新人に苛立ちながら、一夏に視線を配ると近くまでに来ていた、虹色に輝く瞳をした一夏の姿に催眠術の類に掛けられたのではと思い、護身用のスタンガンで新人の意識を刈り取る。

 

 

「オープン...セサミィ...!」

 

 

ドアが閉まり始め、安心すると、閉まりきる寸前に白と黒の銃身が交差し、強引にドアを開けると其処には魔王が居た。

 

「従業員並びに使用人諸君、任務ご苦労」

 

「ア...アァァ...ァァ」

 

「ハァァ...アァァァ...」

 

「うわぁ...あぁぁ...」

 

「さようなら」

 

「ギャヒッ」

 

「アガッ!?」

 

「ガッ?!」

 

 

降りていくエレベータの中で鳴りやまない銃声と悲鳴が響きつづけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏が過激なエレベータアクションで血祭りにあげている頃、地下の牢獄を思わせる場所に一人のボロボロの衣服を着、無精ひげが生えた男性と対照的に身なりが整った一人の女性が居た。

 

「上の階が少しうるさいわね。まぁ、彼女達なら問題ないわ、今日も私の愛妻弁当を食べなかったのね」

 

「お前の作った料理に何を盛ってあるか分からんからな、近くにいたネズミに食わせたよ。...結果は案の定だったがな」

 

 

男性はここ数日、出されていた料理を食べずにいる為、水だけしか飲んでおらず、衰弱している。

 

 

「無理にでも食わせてみろ。その瞬間、舌を噛み切って、死んでやる。そうすれば、事件性が出て、警察の手入れは確実だろうな!」

 

「男性風情が...!」

 

「私だって、男だ。大切な部下や娘を護る為なら死など恐れはせぬよ!シェリーヌ、無能な貴様に社長も、私の先祖代々受け継いできた黄銅十字社の長も務まらんよ!衰弱死となれば、色々不都合が出て、引継ぎに時間と金が掛かるし、無理矢理奪った魔術結社に付いて来る者もいないからな」

 

「言わせておけば...!」

 

 

衰弱しているとは思えない気迫で叫ぶ男性。

 

男性の名はエルリック・デュノア、デュノア社の社長にして、黄銅十字社の長であり、シャルロットの実の父親である。

 

そして、女性の名はシェリーヌ・デュノア、デュノア社の社長夫人であり、今回の一連の事件が起きた原因である。

 

エルリックとシェリーヌの関係は最悪と言っても過言ではない。

 

本来、エルリックが愛し合た女性は目の前の女性ではなく、ヒルデという女性であり、その女性こそが、シャルロットの今は亡き、実の母親である。

 

ヒルデとは学生の頃からの古い知り合いであり、十代の頃からの恋人関係である。

 

互いに大学卒業間際に、シャルロットを妊娠し、卒業と共に結婚し、父親から引き継いだデュノア社を一緒に支え、いずれ大企業にしようと考えていた。

 

だが、当時の資産家の娘であるシェリーヌとの縁談が持ち上がり、エルリックはそれを丁重に断った。

 

ヒルデが妊娠数から数か月後に、シェリーヌがエルリックとの女児を妊娠したと言う一報を受け、この事実を武器にしたシェリーヌの実家は婚約を迫り、エルリックの実家は抗議し、裁判沙汰にまでなり、結果は惨敗。

 

シェリーヌとの婚約をせざるを得なくなり、ヒルデと破局することになった。(ヒルデ一筋だったエルリックは見に覚えが無い為、逆レイプされたと推察している)

 

しかし、ヒルデの事を忘れる事の出来なかったエルリックはいつのしか、ヒルデとお腹の中の赤ちゃんと暮らす事を夢見て、自らの地位を上げ、周囲から文句を言われることの無くなるまで権力と地位を身に着け、いずれは離婚し、ヒルデを迎い入れようと考え行動を開始した。

 

迎い入れるまで不自由をさせまいと資金援助を続け、父親から引き継いだデュノア社を更に成長させ、周囲の誰もが認める手腕の社長として、成功を収め、シェリーヌとの離婚は時間の問題となった時にISが発表され、女性と男性の地位が逆転し、社内においての権力の低下と地位の逆転により、離婚は出来なくなり、自分の子供の様に育ててきた社員の不正解雇や女尊男卑の風潮に染まった人物を採用し、シェリーヌは自分の力を増長させ続けた。

 

このままではまずいと、努力するも如何せん、時代が時代なだけに認められることは無く、只時間だけが過ぎ去っていった。

 

不正解雇された社員には出来る限りの退職金を個人資産から出し、路頭に迷うという最悪な事を避けるようにした。

 

シェリーヌという女性は気位が高く、異常なまでの独占欲と出世欲の持ち主で、デュノア社での地位を我が物にしたシェリーヌは黄銅十字社も手に入れようとし始めた。

 

親は子に似ると言うが、娘のエルザもまた、女尊男卑に染まり、母親と同じ側面を持つ娘だ。

 

 

「貴方さえ、『はい』と言えば、後は勝手に捏造して、終わりなのにね」

 

「何でもかんでも、思い通りなると思うなよ。お前の不正解雇した社員に退職金を払い、そのおかげでヒルデへの援助が少なり始め、ヒルデが重い病に罹った時、後少し、金があれば助けれたモノを、賭博に無駄な金を使い、私の給料を減らし、会社の金に手を出し始めたおかげで、助けることが出来なかった!あの時の思い忘れはせんぞ!!」

 

「デュノア社も社員も、そして、黄銅十字社も私のモノよ! どう使おうが私の勝手よ!」

 

「ヒルデが死んだ時、お前の尻拭いの為に葬儀にも参加できず、デュノア社の経営が悪くなった時、人件費の削減と言い、シャルロットを呼び出し、危険な実験をさせた! 中には死ぬかもしれないモノも有っただろうが!!」

 

「あんな、小娘が死んだところで、もしそうなったら世間に『社長の愛人の娘、不慮の事故で死亡』としておけば、私に被害は無いわ」

 

「貴様ァァァァ!!」

 

 

胸ぐらを掴み引き寄せる。

 

「貴様の人を人と思わないその態度、自分の為なら周りの事を省みない事を知っているからこそ、私はシャルロットをIS学園に送った」

 

「そうね。おかげで溜まっている実験が出来ないわ」

 

 

シャルロットをIS学園に送り込んだ本当の理由はシャルロットを護る為なのだ。

 

残った自分に付いてきてくれる社員や魔術の同士は被害に遭わないように離れた所に非難させている。

 

 

「このまま私は衰弱しするだろう。ヒルデを助けることは出来なかった。だが、シャルロットは護る事が出来た!最初っから正体がバレナイなど考えていない。正体がばれた時、デュノア社の事を離せば、この事をは明るみになるだろう。私はそうなるように日本の知り合いに手配している。貴様の年貢の納め時も近いぞ!」

 

「...なら、そうなる前に逃げればいいのよ。今の社会ならいくらでもやりなおせるわ!!」

 

 

シェリーヌは懐から拳銃を取り出すとエルリックに向ける。

 

「さようなら。クソッタレな旦那様!」

 

「アガッ?!」

 

 

放たれた弾丸はエルリックの腹部を貫き、その場に倒れ込む

 

「グッ...、私もここまでか...。すまんな、秋十、春七...お前との約束守れそうにない...。シャルロット...お前は幸せに...」

 

「死に間際の遺言ってやつかしら? みっともないわね」

 

『そーでもねぇよ』

 

「だ、だれ!?」

 

 

ガタガタ、と誰かが降りていく足音が聞こえ、階段の方を見ると、返り血でロングコートが汚れた一夏の姿があった。

 

「子供?一体何者!」

 

「魔術に関係するものならわかると思うんだがな...。新参者か?まぁいい、俺の名は織斑一夏。白き王、神殺しだ」

 

「織斑...そうか、君は...」

 

「神殺しだか、白き王だか知らないけど、死になさい!」

 

先程、エルリックを撃った拳銃で一夏を撃つが弾丸を掴み、地面に捨てる。

 

 

「クッ...!エルザ!私のエルザ!!あの男を殺しなさい」

 

「分かったよ、ママ」

 

反対側の階段から現れた、一夏と同い年であろう金髪のボブカットの女性はラファールを纏い、ガトリングガンで一夏を襲う。

 

「こんなもんが効くと持ってるのかよ...。切り裂け!噛み砕け!飲み込め! 我は神々に仇成す、狼なり!」

 

「アレは...聖句か...」

 

「名誉に思いな。テメェらカス如きに俺が権能を使うんだからよ!」

 

「グッ!なにこの鎖!?」

 

 

一夏の両手足に枷が現れ、そこから現れた鎖がガトリングガンの攻撃を防ぎ、地中や壁を貫きあらゆる方向から現れる。

 

 

「当たらなかったら、どうってことないわ!!」

 

「フッ、感情的過ぎるな」

 

「これで...!?」

 

「まんまと人の策にハマってやがるよ」

 

 

エルザはアサルトライフルを取り出し、一夏に放とうと腕を動かすが、途中で鎖によって止まる。

 

 

「じゃ、地獄に逝くか?」

 

「ま、待っt」

 

「オーラ、オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!」

 

「ゲッ、アガッ、ブッ、ゲフッ!」

 

「織斑百裂拳!なーんちゃって」

 

 

身動きの取れない、エルザに蹴りを放ち、残像が残る程の速さで殴り続け、最後に腹部に強烈なのを入れる。

 

 

「え、エルザ!」

 

「ママ、痛いよ...助けて!」

 

「エルザ、...アンタも結局私の役に立てないの!?この金食い虫!アンタを育てるためにどれだけの金を使ったと思ってるのよ!!」

 

「ま、ママ?」

 

「どいつも、此奴も役に立たないわね!この私、シェリーヌ・デュノアの役に立つというのが、どれだけ名誉な事だと思ってるの!私は王!女王なのよ!!愚民は私の言う事をただ聞いていればいいのよ!」

 

「貴様!私だけではなく、実の娘に対しても!!」

 

「役に立たないんなら、親だろうが、夫だろうが、娘だろうが捨てるわ!所詮、貴方達は私の駒なのよ!!」

 

 

行き過ぎた人間の末路とも思えるその姿にエルリックやエルザは只、唖然とするしかなかった。

 

 

「テメェみたいな暴君は有史以来沢山いたが、大抵の末路は滅びだ。そして、お前もその例に漏れない」

 

「何を言ってるのかしら」

 

「つまりこういう事だ」

 

「え?――グギャァァァァァァ!!」

 

 

鎖を消した一夏はシェリーヌの目の前まで行くと左腕を比喩ではなく、握りつぶす。

 

 

「怒りのおかげで、聖句を紡がなくても権能が発動出来たわ。片方だけだと、可笑しいし、もう片方も潰すか」

 

「ちょ、待って!」

 

「何ィ?聞こえんなぁ!」

 

「ピギャァァァァァ!!」

 

 

今度は右腕を潰し、力が入らなくなったせいか、持っていた拳銃を落としてしまう。

「どうせ、今の社会だとお前みたいな奴は真っ当な罪に問われないだろうし、俺がお前を裁くか。まぁ、これも王としての仕事だよな。罪を犯した愚民を裁くのはよ」

 

「ヒィ!?」

 

「煉獄の劫火よ、焼き尽くせ。世界に終わりを、汝に終焉をもたらせ、全てを無に帰す、焔と成れ」

 

 

一夏から放たれる聖句は何処までも冷たく、まるで聞いているだけで、凍ってしまうのではないかという程、冷たかった。

 

右手に現れた炎の大剣を掲げる一夏。

 

「待って!私と手を組まない。そ、そこの男を殺せば沢山のお金が手に入るわ。私がデュノア社の社長になれば、副社長に任命してあげていいわ!わ、分かったわ!女ね、女が欲しいのね!思春期の男の子だからそう言うのに興味あるんでしょ?なら、多くの女性を飽きるまで抱かせてあげるわ!無能な奴らの代わりに私が面倒を見てあげる。そうすればあなたの人生も安泰よ!だ、だからお願い助けて!!」

 

「言いたいことはそれだけか?なら、大地に還りな」

 

「待ってくれ!」

 

「ん?」

 

「ハッ...アワァァァ...ァァ...」

 

 

一夏は劫火の剣で塵にしようとした瞬間、待ったを掛ける声が聞こえ、斬る寸前で止める。

 

止めたのは驚いたことに今回の被害者の一人、エルリックだった。

 

 

「待ってくれ、彼女を殺さないでくれ」

 

「変わった奴だな。こいつのせいで散々な目にあってきたんだろ。なら、何で止める?」

 

「確かに酷い目にあってきた。だが、無暗に消えていい命はこの世に存在しないと思うんだ。彼女には真っ当な報いを受けさせるべきだ。それに若い君がこれ以上、手を汚す必要は無い」

 

「真っ当な報いね...。今の世の中なら、無理だぞ。それでもか?」

 

「それでもだ」

 

 

一夏は目をつぶり考え、そして溜息を吐きながら頭をポリポリとかく。

 

 

「分かったよ。殺しはしねぇよ。その代り、顔面整形(物理)はするぞ」

 

「死なないのなら、構わない」

 

「ハァー、オラッ!」

 

「げぶっ!」

 

 

劫火の剣を消した一夏はシェリーヌの胸ぐらを掴むと顔面目掛けてタコ殴りにすること数分、整った顔立ちから、鼻は折れ、顔の至る所は大きく腫れ、顔の至る所の顔のパーツを物理的に変えた事によって醜悪な顔になり、元の顔にはもう戻らないだろう。

 

 

「すまない。私の我が儘を聞いてくれて...ゴホッ」

 

「そう言えば、お前撃たれていたな。ホレ、これを飲めな。俺お手製の霊薬だ。変な薬

は入れていないから」

 

「アイツらの子供だからな、そんなことはしないだろう」

 

 

一夏は渡された霊薬を飲むエルリックの発言に気になるところがあった。

 

 

「ん?アイツらって、俺の両親の事か?」

 

「そうだが?私の事は聞いていないのかね?」

 

「俺の両親は俺が小さい頃に行方不明になってね。親代わりとして千冬姉がある程度、育ててくれたよ」

 

「...つらいことを思い出せたね。すまない」

 

「別に気にしてないさ。立てるか?」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

一夏は衰弱しているエルリックに手を差し伸べると、フッ、と含み笑いをするエルリック。

 

 

「なんだ、急に?」

 

「何、困っている人が居れば手を差し伸べる姿が、二人にそっくりでね。二人とは同じ大学の同期なんだよ。勿論、ヒルデとも同期だ」

 

「ふーん、取り敢えずどっかのフランスの魔術結社にお前を預けさせるか。何かあったら権能でおどsゲフンゲフン、O☆HA☆NA☆SIすればいいや」

 

「少し、ニュアンスがおかしくないかい?」

 

「そうか?」

 

「あのー」

 

「ん?」

 

 

一夏はエルリックに肩を貸し、出ていこうとした時、一人の女性が声を掛ける。

 

 

「えーと、エルザだっけ?何の用」

 

「私はどうしたらいいのかな?信じていたママに否定されて、行き場が無いんだけ

ど...」

 

「知らねぇよ。親子関係直すのか、それとも一人で路頭を彷徨うのかはお前の自由だし、まぁ、その女尊男卑を直せば、ある程度、幸せな生き方が出来るかもしれないぜ。それでも駄目なら、俺が少し、手を貸してやるよ。改心する奴を見捨てるほど非道じゃないし」

 

「ア...」

 

 

この先に不安に思ったエルザは一夏達にどうしたらいいのか聞く。

 

先程までは倒す敵として見ていたが、いざ見直すと、整った顔立ち、細身でありながら

鍛えられて肉体、誰に出も差し伸べるその優しさ、そして先程の一夏の発言。

 

 

『行くところが無いんなら、俺の所に来いよ。面倒を見てやるからよ』

 

「ポッ」

 

「は?」

 

 

女性特有の身勝手な脳内変換により、言っている事の本質を少し曲げた解釈をするエルザ。

 

この時、エルザの中で一夏に対して何かが芽吹き始めた。

 

 

「取り敢えず、お前の自由以上」

 

「あ、待ってください!」

 

「こういう所もそっくりだな...」

この様子を見ていたエルリックが小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜道を歩いてる最中

 

 

「そう言えば、何か私関係で言い残してる事はあったかね?」

 

「ねーよ」

 

「そうか(あの約束を知らないのか。無理に私達の間で起きた約束を守らせるのもいいが、彼らの今後に関わるからな)」

 

「何かあるなら言えよなー」

 

「君は異性として好きな人はいるのかね」

 

 

エルリックの言葉にエルザは物凄い形相で一夏を見る。

 

 

「いないよ」

 

「そうか。貰えるモノがあれば君は貰うかね?」

 

「意図が分からんが人の善意は貰うね基本。お前は後で、シャルに謝罪でもしておけよ」

 

「一夜直伝の空中回転式トリプルアクセル土下座をしようと思う。アイツはやたらとモテル男でな、ついでに言えば女癖も少し悪い。そう言った事を夏燐にバレた時、土下座の最上位に値する土下座をしていた。アイツ曰く『これをすれば大体、機嫌を直す』らしい」

 

「せ、せやな(何だろう、父さんについて知るのが怖いな)」

 

(その時にシャルロットとエルザにあの約束について話そう。ダメならそれで構わない)

 




デュノア社を襲撃回でした。

なお、ヒルデはヒロインにするかは未定です。






FGOは邪ンヌとイスカンダルが来たので迷わず入れた。
そして勝った

贋作イベのビュリュンヒルデさん...壊れすぎでしょ。
百合で、ドMで、テケテケで色々、可笑しかったな。


茨城イベで、狂ニキは上手く回れば生存率高いかったなー。
孔明とジャンヌはあると鬼ごろし上手く回れるわ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな従者と小さな衝突

一夏に思いがけない出来事が!

ネタは少なめですが次回は多めにしてます。


エルリックらを最寄りの魔術結社に預けようとした時、面倒事に巻き込まれたくなかったのか、断ったが一夏がカスールと雷の槍をちらつかせ、半ば強引に了承させ、何かしたら潰すぞと目が笑って無い笑顔で、脅迫し、勢いよく、首を縦に振っているのを確認するとそのまま、日本へ帰国した。

 

 

「あーあ、社会マジ鬼畜」

 

「鬼畜?それは貴方の事でしょ。ハーブティです」

 

「どうも。実際そうだと思うんだがね、お前の淹れた紅茶は美味いなー」

 

「感謝の極み」

 

「そういば一夏さん、フランスのデュノア社で暴れた人がいるみたいですわよ」

 

「らしいな」

 

 

朝の教室で、話題となっているのが新聞一面を使って表示されてる『デュノア社襲撃!?』である。

 

 

「犯人は一人で、生身との事ですが。その様な人が実際にいるのでしょうか?生身であそこまでの被害を出すのは不可能かと」

 

「さぁ、出来る人にはできるんじゃない?」

 

「居るのでしたら、ぜひ会ってみたいですわ」

 

(居ますよぉぉ!!目の前にその人が居ますよッ!!)

 

 

セシリアの言葉にマナはその犯人兼可能な人がいる事に内心突っ込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ一夏。僕、お父さんと仲直り出来たよ」

 

「そうかよかったな」

 

 

一夏は屋上で横になりながら、何かを掴むように手を伸ばしながら聞いていた。

 

 

「一夏って王様だったんだね」

 

「王の前に魔がつくがな」

 

「ねぇ、一夏がISを動かせたのって、神殺しだから?」

 

「さぁ、俺達神殺しは人の身でありながら、本来なら殺す事の出来ない神を殺した一種のバグだ。最初に神殺しを行った時に、神殺しの母(パンドラ)によって転生する。それが原因で動かせたのなら、アレクや剣馬鹿にあの狼爺も動かせることになるな、新参のアイツも」

 

「そうなんだ。お父さんが自分の事やお母さんとの出会いとか、色々話してくれたんだ」

 

 

そういい、シャルロットは数時間前の事を思い出す。

 

苦手だった父親からの電話、失敗したことがばれたのかと思ったが、実際は違った。

 

最初に聞こえた言葉、謝罪の言葉だった。

 

そして、エルリックは話せる限り、シャルロットに喋った。

 

その中で、一夏や魔術についての話もあった。

 

 

「一夏君は『神殺し』『王の中の王』『魔王』『カンピオーネ』と呼ばれる存在なんだ」

 

「カンピオーネって、イタリア語でチャンピオンって意味だよね?」

 

「そうだ。カンピオーネとは神と争う事が不可能な人間が自分の実力と運によって、神

を倒した規格外な存在だ。神殺しは倒した神の力――権能と呼ばれるモノを確率的に手に入れる事が出来る。幼い時に行った旅行先で神殺しを成し遂げた最年少の神殺し、それが一夏君だ」

 

「神殺し...、昔お母さんが話してくれたお話に出て来た人だ」

 

「ヒルデも魔術を扱うし、神殺しの事は知っている。神殺しは人間離れした生命力と回復力、人を超えた呪力を得た事で特別な方法でも無い限り、魔術や呪術が一切効かない体質になり、並の人間や魔術師では勝つことは不可能と言っていい。例え、ISに乗ろうが、世界最強のブリュンヒルデと全てのISを使ったとしても、無理だと断言できる」

 

「そ、そこまで強いの?」

 

 

シャルロットはエルリックの言っている事に実感を持てずにいた。

 

 

「そうだな、一夏君を例にするのであれば、過去に地図を大きく創り変える破壊行動、跡形も無く消えようが再生する肉体、まつろわぬ神を一撃で仕留める雷霆、一度暴れれば被害額は兆越えなど色々あるな」

 

「色々、可笑しいよそれ!?」

 

「神殺しなら可能だ。神殺しについて書かれたとある論文の一文に『神殺しは人にあって、人にあらず』というモノが存在するくらいだからな」

 

「そ、そうなんだ。一夏はどれくらい神様を倒したの?」

 

「倒した数だけで言えば、30は超えているな。持っている権能は把握しているだけで11柱か、恐らくそれ以上持っているだろう。彼は戦闘狂だからな、まつろわぬ神が現れれば、すぐ戦い挑みに行くぞ」

 

「一夏って、戦闘狂なんだ...」

 

 

話を聞いたシャルロットは苦笑いをしていた

 

 

「まぁ、私の感が正しければ、彼も父親と似て、天然の女たらしだろうな」

 

「一夏のお父さんと知り合いなの?」

 

「大学の同期でな、一夏の両親とヒルデがそうだな。私達の間である約束をしたのだが、これをどうするか...」

 

「約束?」

 

「約束って何お父様?」

 

 

昔の約束を離すか悩むエルリックに、今まで話さなかったエルザの声が聞こえた。

 

「やっほー、元気にしてるシャルちゃん」

 

「え、エルザお姉さん...」

 

「何を思ってるのか分かるけど、昔の私と今の私は違うわ!今の私は恋する一人の乙女よ!」

 

「は、はぁ」

 

 

あれ?こんなひとだっけ?、とシャルロットは昔のエルザと比べた。

 

いつも、義母の命令を聞く、ロボットの様な人間だったが、今だと、年頃の女の子の様な反応だった。

 

 

「話してもいいか。受け入れるか、忘れるかは当人次第だからな」

 

「で、どんな約束なのお父様」

 

「昔、大学に居る時だったな。四人の間である約束をしたんだ」

 

「そ、その約束って...」

 

 

ごくり、と生唾を呑む二人。

 

「内容は『お互いに子供を産んだ時、それが互いに異性だった場合、その子供同士を婚約者にする』というモノだ」

 

「「え?」」

 

「つまり、シャルロットは一夏君の許嫁という事になるな」

 

「え?えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」

 

「私、私は!?」

 

「エルザは...半分私の血が流れてるからな...。正確な内容は『私とヒルデ、一夜と夏燐が生んだ子供』だから外れるな」

 

「そ、そんなぁ~」

 

 

あからさまにがっかりするエルザと頭の中で整理が付かないシャルロット。

 

 

「シャルロット」

 

「な、何お父さん!」

 

「この約束だが、一夏君の両親は行方不明、一夏君自体知らないモノだ。一応、約束をする時に証言はあるが、親同士が決めた勝手な取り決めだ。君達の今後も左右しかねない、故に私はこれを無かった事にしようと思うのだが、お前はどう思う?」

 

「ぼ、僕は別に、い、いいと思うよ。一夏の力になりたいから、僕に魔術を教えてくれないかな?」

 

「そうか、約束はそのままにし、一夏君には私から伝えておくよ。魔術の事に関しては一夏君や従者である、マハード君に師事してもらうと言い。一夏君もそうだが、マハード君は魔女と同等の力を持つ、そうだな...分かりやすく言うと国家代表レベルの実力者だ。遠くにいる私よりも近くにいる二人に教えてもらうと良い。何かあったら教えなさい、私が結社総出で対処しよう」

 

「お父さん、それ過保護過ぎだよ!?何かあったら、連絡するよ」

 

「そうか? 一度きりの学園生活楽しんできなさい」

 

 

そういうとエルリックは電話を切るのだった。

 

 

「僕が一夏の許嫁...か」

 

 

IS学園を卒業し、神殺しである一夏の右腕として隣に立ち、純白の衣装を身に纏い周囲から祝福され、子供を産み、家族団欒至福の時間を過ごし、夜になれば―――一夏との将来を予想し始め、枕で顔を沈め、体をクネクネさせるシャルロットであった。

 

 

 

 

 

「といわけで、シャルが新しく、魔術の世界に入り込んできた」

 

「成り行きは分かりました。要するに教え子が一人増えるという事ですね」

 

「だな」

 

「えーと、新しく一夏達の弟子入りした魔術師見習いのシャルロットです、よろしく」

 

「同じ見習いのマナよ、よろしくね」

 

「世間では魔女と同等の男性とされている一夏の右腕のマハードです。魔術の基礎を一

から教えるので、頑張ってください」

 

「白き王、夜叉王、地獄への水先案内人など呼ばれている、一夏だ。この学園には俺が知ってる限り、魔術関係者は四組の簪と知っている一般人なら、二組の鈴がいるな」

 

「へぇー」

 

 

軽い挨拶をした後、魔術関係者を教える一夏。

 

「そうだな、取り敢えずは俺とマハードの魔術を取り入れた格闘戦でもするか」

 

「分かりました。人払いの札を張りますね」

 

マハードはお手製の札を貼ると少し、華美な装飾がされた大剣を取り出し、一夏は刀を取りだす。

 

 

「ルールは戦闘の続行不可もしくはリタイヤでいいな」

 

「構いません」

 

「じゃ、行くぞ!」

 

「うわぁ!?」

 

 

両者ともに接近し、刀と大剣がぶつかり火花が散る。

 

「相変わらず鋭い一撃ですね」

 

「それを真っ向から受け止めるお前も大したものだよな」

 

「あり難い言葉です、ねッ!」

 

「ほいっと」

 

 

マハードは刀を払い除け、上段から一撃繰り出すが、一夏は剣先を蹴るとそのまま、後退し、縮地を使い再度接近する。

 

 

「セイッ!」

 

「クッ」

 

 

下からの切り上げを大剣の側面で防ぐと、数歩後退すると飛翔の術を使い上空に退避する。

 

 

「空を飛んだ!」

 

「アレは飛翔の術って言ってね。その名の通り空を飛ぶ術で、さっき一夏がお兄ちゃん

に一瞬で接近したのが、縮地って言うだよ」

 

「本当にそう言うの存在したんだね...!」

 

 

目の前で起きている、幻想的な光景に目を輝かせるシャルロット。

 

ISを使えば空を飛べるが、それは女性限定で、飛翔の術を覚えれば、男女問わず飛ぶ事が出来る。

 

 

「お前が飛ぶんなら俺も飛ぶか。我は天を飛ぶ不死鳥なり、我は輝く太陽なり!」

 

「来ますか。業火斬!」

 

「飛翔ッ!鳳凰斬!!」

 

 

互いに放った魔術を併用した斬撃は片方は炎を纏い弧を描き、もう片方は鳳凰を思わせる形になりながら衝突する。

 

 

「あそこまで行くのは魔術に詳しく、アレンジを加えるレベルまで行ったらあそこまで出来るね」

 

「す、凄い」

 

 

拮抗した斬撃は次第に炎の斬撃が押し始め、やがて鳳凰を切り裂き、一夏を襲う。

 

 

「イッテェ。力加減ミスった?まぁ、押されるとは思わなかったな」

 

「私の実力も上がってるという事ですよ」

 

「なら、敬意を表してこの技を送ろう。一歩音を超え...二歩無間...三歩絶刀!無明三段突き!!」

 

「グアッ!!」

 

炎の斬撃により少し、火傷した一夏は一度、後退すると構えを取り、縮地による連続移

動後、お得意の無明三段突きを放ち、マハードの持っていた大剣に亀裂が生じると、そのまま拡大し、砕け散る。

 

大剣が壊れてもなお、伝わってくる衝撃に少し、後ずさり、態勢を崩した一瞬の隙を一夏は見逃さず。

 

 

「さて、チェックメイトだ。マハード」

 

「グッ...。私の負けですね」

 

「試合終了。勝者一夏!」

 

 

間合いを詰めた一夏はマハードの喉に剣先を当たらないギリギリで突き出し、武器を失い、これ以上の戦闘は不可能だと考えたマハードは降参し、それを見かねたマナが勝利

宣告をする。

 

 

「まぁ、今回はお前の上達も見れたし、収穫はあったな」

 

「それは良かった。ですが、一夏にはライバルがいますよね? 彼女と戦った方が上達す

るのでは?」

 

「だーれが、アイツをライバルと認めるか。自称『いっくんのライバル』、とうるさい世界のお尋ね者を俺はライバルと認めない」

 

「一夏は彼女が嫌いですからね」

 

「視界に入れた瞬間、権能を使って襲う自信がある」

 

「ヤンデレ?」

 

「違うわ!!」

 

 

一夏はマハードの実力が上がってることを喜んだが、マハードから出された自称ライバルを謳う神殺しの事を思い出した瞬間、不機嫌な顔つきになり、マハードの天然?に声を上げる一夏。

 

マハードは人払いの札を剥がすと簪が血相を変えて、一夏の所に走って行った。

 

 

「た、大変だよ。一夏!」

 

「どうした?」

 

「ラウラがセシリアと鈴を...」

 

「なんか問題が起きたか...。あぁ、メンド―だなー。取り敢えず案内して」

 

「う、うん。こっち」

 

 

問題が起きた事に頭を搔きながら、簪に案内してもらう一夏達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場に付いて見た光景は、ボロボロになった甲龍を纏った鈴が気絶しているのか、アリーナの隅に横たわっている姿と、傷一つ無いシュヴァルツェア・レーゲンを纏ったラウラが甲龍同様ボロボロになったブルーティアーズを纏うセシリアがラウラの近くに倒れていた。

 

「うううっ...」

 

「イチカさん...」

 

「ただ見ているだけか、なら!」

 

 

辛うじて意識のある鈴に掴もうとした時

 

 

「たくよ、俺をあんまりイラつかせるんじゃねーよ。なぁ、贋作者(フェイカー)

 

「グッ...貴様!?」

 

 

ISのハイパーセンサーでは捉えることが出来ない速度で移動すると一夏はラウラの腹部に飛び蹴りを喰らわせ、その衝撃で手放された鈴を抱えそのままセシリアも同時に回収するとマハードの近くに行く。

 

 

「悪いが此奴らの処置を頼む」

 

「畏まりました」

 

「さて、悪戯好きな兎の躾をしないとな!」

 

「クッ...!」

 

「どうした、どうした!さっきまでの威勢はよ!!」

 

「舐めるな!!」

 

「こいつは...」

 

一夏はラウラに接近し、殴る、蹴るの連撃をするが軍人という事もあり、それなりに防

ぐが完全に避ける事は出来ずにいた。

 

一夏がもう、一発殴ろうとた時、身体に違和感を感じると思うように動けずにいた。

 

 

「どうだ!停止結界の味は!!なぶり殺しにしてやる!!」

 

「フッ...。やれるものなら、やってみな」

 

「強がりもここま...!?」

 

 

ラウラは一夏の強がりだと思い、手刀を構えた時だった。

 

二挺の大型拳銃を呼び出した一夏は不敵な笑みを浮かべ。

 

「この程度で俺を拘束したつもりとは...笑止!」

 

「なっ!」

 

「俺を止めたかったら、神様の道具(神具)(権能)でも持ってくるんだな!!」

 

 

停止結界を強引に破った一夏はラウラに狙いを定め、放とうとした瞬間。

 

「お前達、そこまでだ。これ以上の戦闘した場合は、私が相手になる!」

 

「!!」

 

「ほぉ」

 

 

千冬は右手にIS用のブレードを装備し、今回の死闘を止めに入った。

 

 

「だが、生憎私は学園から、私怨による戦闘は禁止されている。だから、今度行われる対抗戦で決着をつけてもらう」

 

彼女の提案にその場にいた全員が納得し、解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

「諸君、私はシャルロットが好きだ

 

諸君、私はシャルロットが好きだ

 

諸君、私はシャルロットが大好きだ

 

 

 

声が好きだ

 

金髪が好きだ

 

容姿が好きだ

 

笑顔が好きだ

 

泣いているのが好きだ

 

笑っているのが好きだ

 

怒っているのが好きだ

 

照れているのが好きだ

 

 

 

 

この地上で行われるシャルロットのあらゆる行動が好きだ

 

 

 

諸君、私はシャルロットの幸せを望んでいる。私に着き従う、諸君はシャルロットの一体何を望む?」

 

 

『ホープ!ホープ!ホープ!ホォォォプッ!』

 

 

 

 

「あの忌々しい、女は消えた。シャルロットは今、白き王と共に居る。だが、彼は全能ではない。故に有事の際は私達がシャルロットを護り、幸せにする。

 

私の愛娘シャルロットは白き王に恋心を抱いた。だが、敵は多い中には神殺しやまつろわぬ神もいる。

 

我らは僅か、百人、されど百人の凡人魔術師に過ぎない。だが、私は諸君が一騎当千の猛者であると信じている。ならば我らは、諸君と私で総勢百人のシャルロットの幸せを望み隊となる!

 

 

行くぞ諸君!我らが聖女、シャルロットの元へ!!」

 

『ウオオォォ!!』

 

 

各々武器を掲げ、エルリックの背後にあるシャルロットの写真に幸あれ、と雄叫び声を上げるのだった。

 

 

 

 

「うわぁ...」

 

 

それを見ていた娘は只ドン引きするのであった。

 

 




今回の三蔵イベは面白いんだけど、ダビデはいつも通りで、三蔵ちゃんの声があの人で、技がどっかのスパロボで見た感じだし、具体的に謂うとヤルダなんとかのあれでしょ。


呂布は今回色んな意味で役得だろあれ。三蔵ちゃんの馬という役で肩車をする...今すぐ変わってくれ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

偽りの最強 力の意味

ラウラ戦おわり!

次はやりたかったあれが出来る!


ラウラとの衝突後、一夏はセシリアと鈴の容態を確認する為に一度保健室に行き、特に異常が無いことを確認すると整備室に行き、白式の調整をしていた。

整備室に行くと簪が打鉄二式の調整をしていた。

「よ、簪。二式は完成しそうか?」

「上手くいけば、今回のトーナメントに参加できる。一夏は何しに来たの?」

「そうか、俺は白式に武器を付けたす事にした」

「因みにどんな?」

「手を抜いて、ビームサーベルとビームトンファー」

「角は割れないの?」

「まだ、変形してガンダムに出来ないんだよ」

「するつもりなんだ...」

一夏が何をしに整備室に来たのか聞いた簪だが、一夏の白式の改造案を聞くと、白式がこのまま行くと某可能性の獣に変わるのではないかと思い始めた。

「なんだったら、簪も新しい武器作るか?」

「因みにどんなの?」

「アロンダイトとパルマとか」

「二式の性能的にΞガンダムだと思う」

「なら、ペーネロペ―ユニットを実装するか?」

「そっち? 因みにさっき言った武器って運命?」

「その通り」

一夏はアニメやゲームなど好きだが、その中で好きなのはロボットアニメ、ついでに言えばガンダムが好きである。

故にガンダム系の改造をしようと考えている。

簪は考えた結果、あるモノを思いつく。

「なら、〇〇〇〇は作れる?」

「作れなくはない。俺の権能を使えば」

「流石神様の権能、不可能など無かった」

一夏に作れるか聞き、権能を使えば作れるという一夏の言葉に権能の凄まじさと実現できる事に歓喜した。

「そういえば最近、イナズマキックを覚えたいと思い始めた」

「叫びながら、機体を急上昇させて、アクロバティックな動きをしながらキックをかませばいい」

「一つ一つは小さな火。二つ合わせれば炎になる!炎になったガンバスターは無敵!」

「二式が出来たら、ご教授しよう」

「うん!」

最近、やってなかったス〇ロボをやったことによって、使ってみたいと思う気持ちがあった簪だが、如何やら実現できる日は近いかもしれない。

「そ、そういえばタッグトーナメントは誰と組むの」

「ちょっと訳アリで、シャルと組むことになった」

「女性だって、バレない為に?」

「うん。今バレると面倒だし」

「そう...。なら、次は私と組んでくれる?」

「構わんよ」

タッグトーナメントで一緒になることで、距離を縮めようとした簪だが、事情が事情なだけに、引き下がるが、只では引き下がらず、先に予約する事で、一夏を他の女子と組むことを防ぐ簪だった。

そして、その思惑通りに進んだことに内心、計画通り、と某新世界の神の様な事を思うのであった。

 

 

 

 

「螺旋力に目覚めたい。そして、ギ〇ドリルブレイクを使いたい!!」

「ドリルはロマンだが、お前の機体は遠距離主体だろうに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は過ぎ、学年別タッグトーナメント当日

「とうとう、この日が来たか」

「...うん、そうだね」

戦えるという事で生き生きしている、一夏と少し疲れ気味のシャルロット。

何故、シャルロットが疲れた表情をしているのか、それはついこの間まで、タッグである以上、誰かと組まないといけないのだが、その中で、圧倒的に多かったのがシャルロットなのだ。

何故、シャルロットなのかというと男性であり、この中で一番強いであろう一夏よりも人気だったからだ。

シャルロットを選んだ人たちの考えはというと『お荷物になって罵声を浴びせられる』『私の中の中が壊れる気がした』『魔王と組むなら王子様と組みたい』『魔王怖い魔王怖い魔王怖い』等という理由からだった。

一夏と組みたくない人の大半がシャルロットと組もうとし、中には当日仮病で休もうという輩まで居た。

結果、毎日のようにシャルロットの所にタッグ申請が来るため、その対応に疲れたのが原因である。

自分の事を優先していた一夏はそれを見かねて、自分と組む事を言うと、周りの女子は絶望で顔を塗り固めていた。

中には某サイヤ人の王子のように『もうダメだ...、おしまいだぁ...』と呟いていた女子もいたとか。

「さて、初戦の相手はラウラという事だし、シャルはもう一人の方を頼むわ」

「うん、まかせて」

「じゃ、いきますか」

「アレ? 白式が少し、違うね」

「武器を少し足した」

そう言うと、二人はピットから飛び出し、先に出ていたラウラと箒の前に着陸する。

「まさか初戦で当たるとはな、余計な手間が省けたというものだ。この前の雪辱を晴らさせてもらうぞ!」

「フッ、贋作者にしては吠えるじゃないか」

(そろそろ、ウザく感じてきた...。ドイツの上層部潰すかな?)

ラウラの態度が段々、ウザくなってきた一夏はドイツで暴れようか考え始めていた。

今、一人の少女によって、一つの国が存続のピンチに立っていた。

「勝負だ、一夏!」

「「邪魔(だ)!!」」

「ゲブッ!」

「うわぁ...」

試合開始の合図と同時に突っ込んで来た箒だが、はなっから眼中に無かった一夏とラウラは息の合った同時攻撃で、箒を殴り飛ばし、その光景にシャルロットは只、茫然としていた。

シャルロットは乱入した際の箒の身を案じ、箒の相手をすることにした。

「行くぜ!」

「グッ...、このぉ!!」

一夏は雪片弐型をブーメランのように投げ、ラウラはワイヤーブレードで弾くが意識が一夏から逸れ、そこを突いた一夏が、腰に搭載したビームサーベルを二本掴むと光刃を発生させ、斬りかかる。

一夏はヒット&アウェイを繰り返し、人差し指をクイクイとラウラを挑発し、それに対しラウラはレールカノンやワイヤーブレードで応戦するが、一夏に当たらず、更におちょくり始める始末。

「どうした、どうした? 雪辱を晴らすんじゃなかったのかよ! そんなんじゃ、一生晴らせねーぜ!!」

「グ...、言わせておけば!!」

「チョイサー!」

「グワァ!」

挑発に乗ったラウラはレールカノンを一夏に放つが、一夏はビームサーベルで両断すると、そのままラウラの懐に入り込むと斬り上げをする。

「確か、この国にはこんな言葉があったな...」

「ん?」

「肉を切って骨を絶つ!」

「ほぉー」

ラウラは斬られた衝撃に苦しみながらも逃がさないように一夏の腕を掴むと、AICで拘束するとレールカノンを一夏に放つ。

「これなら、奴も只では済まないはずだ」

自身もダメージは喰らい、至近距離で攻撃した衝撃波で少し、後退したが、手ごたえはあった。

「一矢報いるとはこの事だろうな。まぁ、これ位して貰わないと俺としては困るがな」

「なっ!?」

爆炎から姿を現した一夏だが、白式の一部が焦げているが、一夏自身は肩をグリグリ回し、余裕の表情を見せる。

「さて、次は俺の番だ、なッ!」

「グッ...。速すぎる!?」

一夏は地面を思いっきり蹴ると急上昇し、空中三回転後、両足で蹴り飛ばす。

「いつまでも他人の強さばかり追い求めるお前じゃ俺に勝てねぇよ!!イナズマキィィィィクッ!!」

「ガァァァァッ!」

蹴り飛ばされた衝撃でアリーナの壁まで飛ばされたラウラは壁との衝撃によって意識が遠のいていく。

(また屈辱を味わうのか? 嫌だ...またあの時の様に落ちぶれるなんて...そんなの...)

「嫌だアアアアァァァァ!!」

ラウラが叫ぶとシュヴァルツェア・レーゲンに紫電を放ち始めると黒い泥のようになるとラウラを包み鎧を纏った人型の様なナニカに変わる。

その姿を見た一夏は舌打ちした。

「チッ。結局、偽物は偽物か...。これがお前の求めた強さか? ラウラ・ボーデヴィッヒ」

「一夏!」

「シャルは箒を連れて離れてろ。馬鹿にお灸を据えてくる」

「大丈夫なのか一夏? 先生たちを待った方がいいのではないか?私の眼が確かなら、アレは暮桜だぞ」

「俺があの程度の偽物に負けるとでも? フッ、笑えねぇ...」

そういうと一夏の顔が何時に無く真剣な顔になると同時にその表情はどことなく怒っているようにも見えた。

「教えてやるよ。只、強さを求めてもその強さに意味がない事を、その強さは真の強さでは無く、只の暴力でしかない事を」

「シャルロット!何故一夏を助けない!!」

「箒は一夏が何を言ってたか覚えてる? 僕は君を連れて離れてろしか言われてないし、それに一夏の邪魔はしたくないんだ。一夏の邪魔をするなら、少し、痛い思いをするよ?」

「クッ」

シャルロットは一夏から、以前箒がしでかそうとしたことを聞いている。今ここでそんな真似をしても困るし、そんな事をすれば、一夏だけではなく、周りにも被害が出るのは明白だ。

それ以前に、シャルロットは一夏が負けるとは思っていない。

一夏は数々の強敵と戦い続けた、一夏が人間の範疇で最強のレプリカに負ける姿が想像できなかった。

シャルロットは一夏の方を見ると、拳で攻撃を防ぎ、有効打を次々と与えている一夏の姿があった。

 

 

 

「お前の攻撃は今も昔も、軽い。それはお前の思いが籠ってない証拠だ」

一夏は雪片を弾くと蹴り上げ、一度跳躍し、回し蹴りをする。

「思いが籠ってない力は只の暴力でしかない。現にそうだ、お前は力を求めるあまり、周りを傷付けている」

回し蹴りの衝撃でバウンドした暮桜モドキを踵落としで追撃する。

「目の前の力に固執し過ぎだ。自分の強さも思いも知らない奴が本当の意味で強くなれるわけないだろ!」

起き上がった暮桜モドキに向け、拳を大きく振りかぶる。

「思いと覚悟の籠った力はちっとばかし響くぞ!」

轟音を轟かせ、暮桜モドキの顔面を思いっきり殴ると、暮桜モドキはそのまま倒れ込み、再び泥状になり、元のシュヴァルツェア・レーゲンへと戻り、その傍らには眼帯の取れたラウラが横になっていた。

 

 

ラウラの暴走により、タッグトーナメントを中止、データを取る為、一回戦ずつすることが決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ...うぅ~...ここは...?」

一夏の手によって助けられたラウラが目を覚ました。

「お? 目が覚ましたか」

「お、お前は...、うっ...!?」

「無理するなよ。お前結構重症なんだから」

目を覚ましたラウラは声のした方を見ると其処には一夏がおり、立ち上がろうとした瞬間、全身を激痛が襲い、思わず顔を顰め、ベッドに倒れ込む。

「...私は何故ここに居る?」

「簡単に言うなら、暴走したお前のISにから助けられて、ここに居る。VTシステムは知ってる?」

「ヴァルキリー・トレース・システム......過去の世界大会の部門受賞者の動きをトレースするシステム......」

搭乗者を触媒にし、プログラムされたISの動きをするシステムなのだがこれには欠点がある。

使用者に多大な負担を掛け最悪、死に至る代物であり、媒体となる人間は唯の消耗品と言っても過言ではない。

何故、一夏がその事を知っているのかというとドイツのサーバーをハッキングし、VTシステムについてと、今回のVTシステムに関係した所を襲撃した帰りである。

「そうだ、現在はIS条約で禁止されている代物だ。それがお前のISに搭載されていた。操縦者の精神状態、機体の蓄積ダメージ、そして何より操縦者の意志......いや、願望か。それらが揃うと発動するようになっていたらしい」

「私が...望んだからか...」

「お前が強くなりたい理由なんかどうでもいい。力を求めるなら求めればいい。お前は何の為に力を求める?」

「わ、私は強く...強く...なって...」

ラウラは何故、強くなりたいの口にしようとした瞬間、その先が出なかった。

強さこそが全てだと思っていたラウラは目の前の男によってその強さを否定され、何の為に強さを求めていたのか、考え直した途端何故、強さを求めたのか口に出来なかった。

「強くなりたい理由が言えないか。なら、お前は何者だ?」

「私の名は...ラ、ラ...」

ラウラの目から思わず涙が流れる。

与えられた「ラウラ・ボーデヴィッヒ」と言う名が思うように出ない自分が悲しかった。

ISが現れる前までは優秀だったが、ISの登場によって、『優等生』から『落ちこぼれ』『出来損ない』と周囲から言われるようになった。

だが、千冬との出会いにより、力を身に着け、織斑千冬という存在に憧れ、目指し始め、織斑千冬という存在になろうとしたあまり自分という存在を見失い始めていた。

「私は...」

「俺がお前を偽物と言った理由はそれだ。皆、自分というモノを自覚しているが、お前はそれを自覚していない。お前は自分になる前に、違う別の存在になろうとしただろ? だから、偽物なのさ。自分という器を自分で満たさず、他者で満たそうとした」

「......」

「自分と言う存在がある以上、人が誰かになる事は出来ない。行き過ぎた力も、思いも覚悟も無い力も、間違った力も...只の暴力でしかない。そして、今まで自分をさせていた物が崩れたお前は空っぽだ」

空っぽと言う言葉がラウラの頭の中で復唱される。

「だが、それはある意味ではいいのかもしれない」

「え?」

一夏の言葉にラウラは疑問を浮かべる。

「今のお前は空っぽで、何者でもない。だからこそ、自分と言う存在を見直すにはいい機会とも言えるだろう。強さを求める理由も、人によって変わる。それに関して俺はとやかく言うつもりは無い。ラウラ・ボーデヴィッヒ!!」

「は、はい!」

いきなり、大声で名前を呼ばれた事に驚くと同時に身体の痛みも忘れて、背筋を伸ばす。

「もう一度言うぞ。お前は何者だ? 何故、力を求める」

「そ、それは...」

「答えが見つからないのなら、それでいい。なら、その答えを見つけろ。その為の時間はたっぷりある。どうしても、見つけれないのなら誰かに頼れ。それでもダメなら、そこで足踏みをして自分を見直せ」

そう言うと一夏は立ち上がり、医療室から出ようとする。

「待ってくれ!お前は自分と言う存在を分かっているのか? 何の為にあそこまでの力を求めた? それは教官の弟だからか?」

「なんで、千冬姉の為なんだよ。俺は織斑一夏だ、それ以上でもそれ以下でもない。俺のやるべき事の為に俺のやりたい事の為に力を求める。俺の人生なんだ、俺の自由に生きるさ。お前も自由に生きろよ、周りに拘束されて生きる人生なんて、息苦しくてつまらないからよ」

そう言うと一夏は医療室から出て行こうとした時、何かを思い出したのか一夏はラウラの方を向く。

「まぁ、俺の言う事が理解できないんなら、ここ()に従って行動しな、それがお前の本音だ」

一夏は自分の胸に手を当てながら言うと、言いたいことを言った一夏は医療室を後にすると、ラウラ一人だけになる。

「私の心...」

ラウラは自分の胸を抑えながら静かに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室に戻ろうとした一夏は途中で山田先生とバッタリ会い、大浴場が解禁されたという事で、一夏は早速大浴場に向かった。

その光景を後ろから、見ている人物が居ると知らず。

 

大浴場に着いた一夏は更衣室で着替えると、隠す所は隠して、大浴場の湯船に浸かる。

「ふぃ~、風呂は心の選択と言うがまさにその通りだな」

身体を伸ばしながら、ゆっくりと大浴場を堪能していると、ガラス戸が開く音と同時に誰かが入ってきた。

一夏はマハードが来たものだと思い音のした方を向くと其処には

「え?一夏!?」

「ア、ナンデ?」

マハードでなければ同性でもなく、異性で同室のシャルロットだった。

「あ~、俺もう上がるわ」

「待って!」

キラッと言う擬音が付きそうなポーズをし、その場から立ち去ろうとした瞬間、ガシッと肩を掴まれる一夏。

「い、一緒に入らない一夏?」

(この機会に一夏に僕と言う女性を認識させれば!)

「結構です(キリッ」

「そ、そう言わずにね?ほら、許嫁なんだから...ね?」

「やめろ!俺は裸の女性にいい思い出なんかないんだ!? 逃げるんだよォォォォ!!」

「させない!」

湯船から立ち上がり、出ようとする一夏にシャルットは後ろから抱き付き、引き戻す。

身体が密着した時に、女性特有のいい匂いだとか、柔らかい二つの感触とか、常人であれば理性が蒸発するよう要素が出てくるが当の一夏はというと。

(ビッチ悪魔に追い掛け回せれて...、呪力が無くなる限界まで逃げて...、何とか振り切って家に戻って、寝て...、重いと思って目を開けたらそこに全裸のビッチ悪魔がいて...、そして、そして......)

「ぶはぎゃはっほぅー!アンドロメダちゃぁーん、ぺロぺロペロペロペロペロペロー!!」

「えぇ!?」

「ぴぎぃ...ぶひぃぃ...ラビューン!!オッペラスッチョンコーポレーション!!(バタッ」

「えぇ? 一夏しっかりして、一夏! 衛生兵、衛生兵!!」

一夏のトラウマが蘇り、意味不明な叫び声を上げた一夏はそのまま、湯船に浮かんだまま気絶した。

 

その後、大浴場に来たマハードの手によって一夏は一命を取り止めた。

 

 

 

 

 

 

次の日、シャルルは自らが男性ではなく女性であることと本当の名前はシャルルではなくシャルロット・デュノアであることを告げたが、一組のメンバーはいつも通りに彼女を受け入れた。

なお、一夏は昨日の記憶――大浴場での出来事を覚えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

一時限目が終わり、一夏はマハードと雑談している時だった。

「少しいいだろうか?」

「ん?」

「一夏に何か用件ですか?用件があるのなら私を通してもらいましょうか」

雑談中に現れたラウラに警戒するマハード。

「大した用ではない。今までの無礼を謝罪し回っているんだ」

「俺に対する謝罪なんか別にいいのに。まあ、その心構えは良し、と言ったところか」

「あの後、私なりに強さについて、考えた。そして、私は決めた」

「何を?」

ラウラが何を決めたのか気になる一夏にラウラは頭を下げ

「私を身心共に鍛え直して欲しい。お願いします、嫁よ...いや、師匠!!」

「何か気になる所があるが、何で、一回嫁って言ったんだ?」

「自分の理想の相手に対して、『俺の嫁』と言う文化があると私の副官から聞いたんだ」

「合ってるような、合ってないような微妙な解釈だな。他に何か言ってたか」

「師匠と弟子には裸の付き合いがあるとか言っていたな」

「...そうか。そいつと連絡取ったら、一回変わってくれ」

一夏はラウラの日本の間違った文化を教えた人物と連絡を取れるようにする一夏。

『はい。此方クラリッサです』

「お前を...殺す...」

『え?ちょ、何!?どういうk(ブツッ』

声を変え、ドスの効いた声でサラッと恐ろしい事を言うと、そのまま無言で切る一夏。

「あんまり此奴の言う事を信じるな。俺の事は好きに呼んで構わないし、師事して欲しいならしよう」

「本当か!」

「あぁ、マハードと俺の二人で教えるから」

「教え子がまた増えるんですね。一夏に弟子入りする以上、一夏の恥にならないように努力してください。私の事はマハードで結構です」

「はい、お兄さん!」

「なんでさ」

お兄さんと呼ばれた事に思わず、ツッコむマハードだった。

 




次回はオリジナル神殺し戦です!



一夏の最後の悲鳴のネタが分からない?

弱酸性ミリオンアーサーで検索。

あれは良いモノだ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

VS魔王 決意と禁忌

オリジナルまつろわぬ神戦です。


IS学園に入学後、一夏は定期的に実家に帰っている。

理由は家の掃除と読み終えた本と新しい本を交換するためである。

そんな事はマハードに任せておけばいいと思うが、これにはちゃんとした理由がある。

「あそこに行くの久しぶりだな」

一夏は書庫の中にある本棚の前に行くと本を慣れた手つきで動かしていくと何かが作動した音が聞こえた。

音が聞こえると一夏はそこから数歩下がると、床が開き、そこには下へ続く隠し階段が現れる。

一夏は仕舞っていた懐中電灯を持ち、薄暗い階段を降りていくと、先程開いた床が閉じたが一夏は動揺もせず、進んでいく。

階段を降りていくと、一つの大きな扉の前に行くとあらゆる角度から無害な赤い光線が一夏を探るように照らし、赤い光線が消えるとピー、という機械音が響くと続いて、鍵が開く音が聞こえると一夏は目の前の扉を開ける。

「千冬姉も知らない、父さんと母さんの秘密の部屋。今となってはこの場所を知ってるのは俺だけだな」

一夏は部屋の中を進んでいくと其処には書庫にある本よりも古い文献や嘗て両親が仕事の関係上貰った遺跡の掘り出し物等、その道の関係者なら目を輝かせるような物が並んでいた。

そして、一夏は二つある机の内、一つの机の上にある一つの写真を見る。

其処に移っているのは自分に似た男性と小さい頃の自分を抱きしめる優しいそうな女性、二人の間で照れくさそうにしている千冬。

この二人が一夏の両親であり、一夏を神話や伝承好きにさせた張本人。

小さい頃は親が神話について話すが、とうの一夏は理解出来ずにいたが、話している時の両親は何処か楽しそうで、一夏自身も二人の楽しそうな顔を見ていると楽しかった。

今でも、はっきり覚えている思い出。

両親の写真は千冬によって、殆どが捨てられたが、この秘密の場所を知らない千冬はこの世界で一枚だけ残った家族全員が残った写真。

一夏はこの秘密の場所を誰にも教えたくなかった。ここは自分と両親の数少ない繋がりであり、思い出の場所であり、一夏の安らぎの場所。

この場所は両親によって、織斑家の人しか入れないようになっている。

先程、一夏に当てられた光線は遺伝子レベルで、登録した人物か判別するモノで、該当しない人物だった場合、その人物を追い出す為のモノが数多く用意されている。

一夏は机の上にある、一つの神話が記された文献を取りだす。

「これはクトゥルフ神話か...。今回はこれを持って行くか」

ついこの間読んだのより、明らかに古く、少しでも取り扱いを間違えれば悲惨な状態になるだろう。

少なからずこれは俺に関わりがあるしな、と心でボヤキながら用意した段ボールに入れていき、その後も一夏の気になった文献を段ボールの中に詰めていくと、一夏はその場を後にした。

この時一夏はある気配を感じ取ると自宅前に待機させておいたマハードに段ボールを渡すとその場から、跳ぶと屋根から屋根へと跳んでいく。

 

その気配がしたところまで。

 

 

 

 

とある高層ビルが並ぶ街に時代外れな鎧を着た武者がビルの屋上に立っていた。

「よもや、この儂がまつろわぬ神になるとは何たる皮肉か」

武者は腕を組み変わり果てた現代の日本を見る。

「時代の流れとは恐ろしいモノよ。儂の居た時代から何百年と経つがここまで進歩するとはな。だが...」

武者は苦虫を潰した顔をする。

「時代が進むにつれ文明が進歩するのは是非もなし。だが、それに伴って精神が、思考が衰退しておる。む?」

武者は現代の日本を見て、落胆していると炎の翼を羽ばたかせて、一人の男性が武者の前に降り立つ。

「さっき感じた、気配はお前だな。まつろわぬ神」

「遺憾ながらそうだ。同郷の神殺し、いや、同胞よ」

「同胞?」

同郷の神殺しという事は日本由来の神だと分かったが、同胞の意味が分からない。

「大将同士顔を合わせたのなら、名を申さぬか!戦の作法も分からぬのか!!」

言葉遣いといい、その姿、覇気は戦国時代の武者を沸騰させる。

「...同郷の神殺し、白き王。織斑一夏」

「漸く名を名乗ったか...。ならば儂も名乗ろう」

武者は一泊おいて、帯刀していた刀を抜き、一夏に向ける。

「我が名は第六天魔王...、戦国の世に生まれし、風雲児。織田信長じゃ!いざ、尋常に」

「なっ!? チッ、白き王、織斑一夏...」

『勝負(参る)!!』

始まる、と思った一夏は持ってきていた刀を抜刀し、縮地を使い信長に接近する。

「セイッ!」

「ぬぅ!中々、いい太刀筋をしおるな。我が同類よ」

「アンタからしたら、俺達は同類だろうな!魔王を名乗り、神々を敵に回す者同士な!!だが、一つだけわからない事がある」

「ほぉ、何だ?申してみよ」

「アンタは史実の人物(・・・・・)であり、ギリシア神話や日本神話の様な架空の存在(・・・・・)じゃない。ましてや、アンタの血筋が神々に連なるという文献も、アンタが生まれついて神だなんて聞いたことが無い」

一夏の疑問、それは何故、織田信長がまつろわぬ神として存在しているのかというものだった。

一夏はありとあらゆる文献に目を通している。

その中には日本の史実に関するモノも入っている。

一夏の記憶違いで無ければ、親友で半人半神の英雄の様な神の血筋という訳でもなく、特に変わった出自を持つという訳でもない。

「そうだ。余は生まれついての神という訳でも、その血筋という訳でもない。だが、時代の流れと共に存在が変わるとしたら、どうだ?」

「なんだと」

互いに手を止める事も無く、互いに持っている刀で一進一退の攻撃をしている。

「まるで後天的(・・・)に神になったみたいな言い方だな」

「その答えは貴様の知恵を持って、導き出せ!」

「なら、そうさせてもらおう!」

「グッ」

一夏は斬り上げをした後、強烈な突きを放つ。

だが、そこまでダメージがあるわけでもなく、平気そうな顔をする信長。

「ふむ、やはり刀より、こっちの方が良いな」

「!?」

間合いを詰めようとした一夏は信長に接近すると虚空から現れた火縄銃を突きつけられる。

一夏は咄嗟に上体を逸らし、避けると突き出された腕を蹴るとその反動で後ろに後退する。

「今の攻撃に対応するとは...、その反射と判断力、それなりの場数を踏んだと見込んだ」

「両手両足じゃ、数えきれない数を相手にしているんでね」

「では、この鉛球の雨に耐えきれるか?」

「マジかよ...」

信長の周囲に現れた無数の火縄銃の銃口が一夏を捉え、その光景に冷汗を流す。

「燃やせ、焦がせ、焼き尽くせ!劫火は我の思うがまま、全てを焼き尽くす焔と成る!!」

「放てぇい!!」

世界を焼き尽くす劫火の剣(レーヴァテイン)!!」

迫りくる、弾丸の嵐を炎の斬撃を飛ばし、鉛球を溶かし、斬撃が信長に命中すると思ったその時

「ふぅん!」

「何?」

火縄銃と同じように虚空から現れた刀を掴むと炎の斬撃を両断する。

両断された炎は周囲のビルに命中し、ビルを燃やす。

「我が権能が鉄砲だけと思わぬことだな」

「チッ、なら!」

「さぁ、貴様の力見せてみよ!この儂が見定めてくれよう!」

「こいつなら、どうだ!無明三段突き!!」

「甘いわ!!」

「ガッ!?」

一夏は劫火の剣の形状を刀に変え、無明三段突きを放つが、信長によって防がれ、一夏の背後から現れた、四本の刀が一夏の身体を突き刺さり、痛みによって出来た一瞬の隙を突いて、信長は蹴りを放ち、その衝撃で後方のビルに衝突し、刺さった刀がより深く刺さり、中には一夏の身体からその刀身が姿を見せている。

「どうした?もう終わりか」

「この...、程度で、終わるかよ!!」

「それでこそだ。我が同類よ」

「グゥ...アァァ!!」

背中に刺さった刀を引き抜き、無造作に投げる。

刀を抜く度に、鮮血が噴出するが一夏はそんな事気にせず、刺さった刀を全部抜く。

不死の権能を使っているのに妙に傷の治りが遅い事を気に留めながら、一夏は聖句を紡ぐ。

「戦乙女よ!我に汝の武具を、我に勝利を与え給え!」

「刀の次は槍か!面白い!!」

「ハァァァ!!」

身の丈はあるであろう大槍を一夏は容易に扱うが、血を出し過ぎたせいか、少し視界がぼやける。

「撃ち抜けェェイ!」

「ハァァ!!」

「なんと!?」

「デイヤァァァ!!」

「グォアァ!?」

至近距離の一夏に向けて放たれた、弾丸は一夏が手を横に振るうだけで現れた炎によって消され、その炎を喰らった信長は驚愕している隙に一夏は大槍で信長の鎧を突くと罅が生じる。

「一つ聞こう、第六天魔王。お前は今の世で、天下統一を成し遂げるとしたどうする?」

「決まっておろう。ISとやらを破壊し、この腐りきった世界(女尊男卑)を破壊し、儂が世界を統治する。儂に従わぬのなら、女子供関係なく、その首を撥ね、その撥ねた首をその者の家族に送りつけ、儂に歯向かうとどうなるのか教えてやろうぞ!」

「クソッタレみたいな回答ありがとうよ!おかげで、あの力が使えるよ!!」

「なんだと?」

一夏は一度、後退すると大きく上昇する。

「たおす、タオス、倒す、斃す!!お前だけは此処で倒す!!」

「グルァァァァァァ!?」

一夏の倒すという言葉に反応するかのように、槍はその大きさを変え、元の大きさの五倍以上の大きさになるが、更に大きくなる。

この槍は一夏の思いによって、重量とサイズを変える。

今、一夏は目の前の魔王を倒すという強い思いに共鳴し、最終的には十メートルに及び、重量は5トンを超えている。

超重量の大槍は慣性+炎によって、更に威力が跳ね上がり、その攻撃を真面に喰らう信長。

信長はそのまま、衝撃で地面に叩きつけられる。

「俺が最初に手に入れた権能だが、使いやすくもあるが、条件がメンドイ。それにここまでこの権能を使ったのは久しぶりだ」

「よもや、余の武具を壊すとは...。今世にここまでの豪傑が居るのなら、儂も本気を出すべきだろう」

信長は両手を広げ、叫ぶ。

「我は第六天魔王!我が前にひれ伏せい!!我が灼熱の焔は神仏に仇成す、紅蓮の劫火と知れィ!!」

鎧が砕け、鍛え抜かれた上半身が見え、信長が紡いだその瞬間、空間が(・・・)燃える。

「この紅蓮の業火は余が後世に語り継がれた、恐怖と畏敬の念が権能と成り具現化したモノだ」

「比叡山焼き討ちか...」

「その通りだ」

今の子供なら、聞いたことはあるだろう言葉。

比叡山焼き討ちは教科書に載る程の出来事なのだから。

一夏は思い出せる限り、信長はについて思い出す。

信長は豊臣秀吉、徳川家康に並ぶ、戦国三英傑の一人。

そして、家康と同じく神格化されている―――ここで一夏は信長が神として出て来たのか理解した。

「俺としたことが忘れてたぜ。アンタは明治天皇によって、健織田社、て所が創建され、其処でアンタは主祭神として、祀られてる。そこに長年積み重なった信仰によって、神格化したという事か。恐怖と畏敬ってのも一種の信仰だ。長い時間をかけて生まれた新しい神、それがお前だ!」

「よくぞ見破った!」

「オラッ!」

巨大かした大槍を振るうが、信長は容易に避け、掠っただけで新しく出来た、無人のビルが積み木崩しのように崩壊する。

 

 

 

幾度となく、繰り広げた攻防の最中、一夏は息を荒くして膝を着いていた。

「如何した、この程度か?」

「ハァ...ハァ...ハァ...。クソ、身体に力が入らない...、それに息苦しい...」

一夏は自分の身体に起きた、異変に困惑していた。

可笑しいのだ。それなりに体力があると思っている一夏だが、今までの戦闘より時間も少なく、そこまで、権能を使っている訳でもないのに体力の低下が速いのだ。

「身体の異常は...、その...炎か...。しかも、これは...呪いの類...!」

「ほぉ、この短時間で見破るとはな。貴様の想像通りのモノだ」

自分の魂がすり減っていくような感覚に危機感を強める一夏。

「この炎は儂の所業を具現化したモノ。「神秘」や「神性」を持つ者に対してはただ発動してるだけで、猛毒よ。時間が経てば経つほど、貴様を蝕み、最終的には死ぬことになるだろう」

「なんだよ...チートじゃねーか...。時間との勝負...これはアレを使うか」

「まだ、儂に立ち向かうか。その生きざまは良し!」

「俺にこの権能を使わせたこと...後悔させてるよ!お前の力、使わせてもらうぞ!!」

一夏は力の入らない身体に鞭を打ち、立ちあがると聖句を紡ぐ。

「我が宿敵にして、我が親友よ!我に力を、我に汝の朱槍を授けよ!我は汝の魂と共に戦場を駆け巡り、勝利を掴もう!!」

現れた一つの朱槍をて手にし、構える一夏。

信長は槍を手にした途端、槍から放たれる悪感もそうだが、一夏の雰囲気が今までとは比べものにならないほど変わる。

これは危険だ、と判断した信長は火縄銃を呼び出し、一斉射撃をするが、一夏は朱槍をペン回しの如く、指と手首を軽やかに使い全て、弾く。

「行くぜ!」

「ぐぅぅぅ、先程より、攻撃が鋭く、何より速い!?」

「オラオラオラッ!!」

残像が残すほどの連撃を信長は刀で捌くが完全には捌けず、身体の至る所から、血が流れる。

「その権能は何だ!」

「この権能は親友である、光の御子――クー・フ―リンから授かったモノだ!!」

「授かった?簒奪ではないのか!?」

「違う!奴は確かに俺達(神殺し)の敵だ。だがな、俺とアイツはその関係を超え、親友となった! そしてアイツはとある天空神との戦いで瀕死の重症を負い、消滅するのを待つだけだった」

一夏はこの権能を授かった時の事を思い出していた。

「アイツは只、消滅するのを良しとせず、俺に自分を倒し、権能を奪うように言った。俺は心が痛かったよ。例え敵であっても、親友を討つなんてしたくなかったから!だがな、それだとアイツの思いを踏みにじる事になる!」

「クッ!」

槍に込められる力が増していく、この権能を使う一夏にはある決意があるからだ。

「だから、俺はアイツをこの手で討った!その時にアイツは俺にこう言った!!」

『俺の槍を、魂を使う以上、誰にも負けない強者であり続けろ』

思い出したせいか、一夏の目には薄らと涙が浮かんでいた。

「だから俺は負けられない!例え、どんな強敵が来ようと、抗えない絶望だとしても、俺は勝ち続ける!!どんな結果になろうと、俺は強者であり続ける!!それがアイツを討つ時に決めた。俺の禁忌(ゲッシュ)だ!!」

「グァァ!」

槍は信長の左肩を刺さり、棘となり、信長の左腕を破壊する。

「この...程度...、効かぬわ!!」

「ガァァ!?...グゥ!」

虚空から現れた刀が一夏を両断しようとするが、咄嗟に避けるが完全に避ける事が出来ず、左肩から綺麗に切り落とされるが一夏は信長の腹を蹴り、槍を引き抜くと同時に下がる。

肩から切り落とされた左腕は再生しない。

それは死滅の朱槍(ゲイ・ボルク)は相手を倒す事だけなら、トップクラスだが......その反面、他の権能を使う事が出来ないというデメリットがある。

それは一歩間違えれば死を意味する。

「そろそろ、ヤバいな...。これで終わりにする!」

「来るがいい!打ち砕いてくれる!!」

死滅の朱槍(ゲイ・ボルク)を最大限に生かす為、一夏は聖句ではなく、禁忌(ゲッシュ)を唱える。

「我に敗北は無く、俺に敗走は無く、我にあるは勝利のみ!」

「三千の屍を超え、天魔降臨!」

禁忌を唱え、大きく跳躍しすると左腕から流れる鮮血が軌跡を描く。

『ゲイ・ボルクはな、ただ突いたりするもんじゃね。本来の使い方はな』

クー・フ―リンから教えて貰った本来の使い方、それは―――

「その胸に刻め!これこそが魔王の三千世界!」

穿て閃光、滅びの朱槍(ゲイ・ボルク)!!」

本来の使い方それは――相手に向けて、投擲する事。

大きく振りかぶり、投擲した槍は閃光となり、神速の領域で信長目掛けて、突き進んでいく。

銃弾が当たってもその勢いは止まらず、このままでは不味いと思った信長は刀を呼び出し、重ねる事で即席の盾を作る。

「これを凌げば...「これで終わったと思ってるんじゃねーぞ!!」何ィ!?」

声のした方を向くと一夏が信長目掛けて、急降下していた。

「どっわりゃぁぁぁ!!!」

跳び蹴りの態勢を取り、一夏はそのまま死滅の朱槍を蹴る事で勢いを加え、バキンッ!と金属が壊れる音が立て続けに起きる。

「貫けェェェェェ!!!」

「グワァァァァァァァッ!!??」

最後の刀を破壊し、信長を貫くが勢いは止まらず、そのまま数メートル引きずられた所で止まる。

「目には目を歯には歯を、呪いには呪いをってね」

「そうか...、身体を蝕むこの感覚...は死の呪いか...」

「死滅の朱槍で刺された以上、お前に待ってるのは死だ。それにこの槍は例え、外れようが標的を追う。アイツ曰く『最大解放したこの槍は貫いたという結果を作ってから槍を放つという原因を作る』確か、因果逆転の呪いだったな」

「放たれた時に儂の敗北は決まっていたか...」

死滅の朱槍の究極の一撃は一夏の持つ、権能の中ではトップクラスだが、デメリットや発動条件が大きいため滅多に使う事が出来ない。

地面に磔にされた信長は負けた筈なのに何処か、清々しい顔をしている。

「まつろうぬ神になった事で...、儂の魔王としての格が落ちたか...。だが、まつろわぬ神になった事で、お主の様な豪傑と相まみれた」

意識が遠のいていくのを感じながら、信長は笑みを零す。

「魔王としての存在は生前の儂...、いや、儂以上だ...。なら、儂が...負けるの...是非も......なし...」

光となって消えた信長を眺めながら、一夏の身体が一瞬重くなったのを感じる。

これは幾度となく感じたモノ、権能を手に入れた感覚だ。

「まさか...史実の魔王と戦うとは...な」

戦いの緊張がほぐれ、意識が遠のいていく。

このまま倒れればメンドイ事になると思った一夏は大きく跳躍し、ビルの屋上の壁に寄り掛かると死滅の朱槍を解く。

「我は天に登る太陽と成り、空を羽ばたこう」

切り落とされた左腕を再生させ、マハードに自分の回収を頼むと連絡を入れる。

意識を失う最中、紅い眼をし、長い青い髪を後ろで束ねた全身青タイツを着た一人の青年が『たく、情けねー野郎だな。だが、いい面構えだったぜ』と言っている気がした。

 

 

 

 

 




次は臨海学校いけたらいいなー


5次ランサーの刺し穿つ死棘の槍と突き穿つ死翔の槍を合わせた様なモノだと思ってください。

個人的に信長のCVは個人的に若本さんです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王の買い物 不安な未来への暗示

最新話の投稿です。



そして次回は臨海学校です!


戦国魔王、織田信長との戦いから数週間が過ぎ、来週から臨海学校が控えていた。

「一夏!海だよ!!来週には海に行けるんだよ!!」

「あーもう、朝から五月蠅いな! 二年一回のペースで世界中の海に連れて行ってるだろ!!」

「大勢で海に行くのは初めてだから楽しみなの!!」

「マナの言いたいことは分かりますね。海に行くにしても大体、いつもの三人とごく稀にガガが居るくらいですからね。私はそこまで浮かれてません」

「この前、スポーツショップで新しいボードを買おうとしていた奴が何を言うか」

海に行けるという事ではしゃぐマナとその意見に賛同するマハード。

自身はそこまで、浮かれていないと主張するが、サーフィンの道具一式を買うか悩んでいる所をとある後輩魔王が目撃し、一夏の耳に届いていた。

「そう言えば、一夏は買わ無くていいのですか?」

「何を?」

「水着です」

マハードの水着という言葉に何名かが、ガタッ、と言う音を立てる。

「ん~、特に買うつもりは無いかな。エーゲ海の時に買ったので十分だし、国からのアルバイトがなー」

「あ(察し」

「そう言う事だ。変な連中の駆除しに行かないと」

「人をまるで害虫のように言いますね」

「仕方あるまい。アイツら、まるで黒光りするGの様な驚異的な生命力で復活するんだから」

一夏が国から頼まれた事とは、違法組織の壊滅である。

今の社会に不満を持った人物が、今の社会を壊そうとまつろわぬ神の降臨や、人体実験など行っている組織が世界各地で山のように存在する。

それは日本も同じで、一夏は時折、その組織の破壊を頼まれることがある。

勿論、報酬もあるので一夏はアルバイト感覚でやっている。

因みにその、一回の報酬額は一般サラリーマンの年収より多い。

「一夏、貴方の財はどれ位あるんですか。もう、学生が持つ金額ではないですよね」

「上限突破通帳が、どれ位あったかな?まぁ、稼いだ金は俺が経営している孤児院に当ててるからな」

「最近、その孤児院に行って無いよね?なら、行った方がいいんじゃない」

「仕事帰りに土産買っていくか」

あまり知らされていないが、一夏は孤児院を経営している。

それは、一夏が世界中飛び回って、貧困に飢える子供達を何人も目にしている為、少しでも多くの子供を助けたいと言う一夏の善意によって、日本に設営している。

最初は小さな孤児院だったが、徐々に人が増え、建物が圧迫しているので、近い内に改築する予定である。

勿論、改築費は一夏のポケットマネーからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏、今度の休み――」

「用事があるから、無理」

「最後まで言って無いよ!?」

「今度の休み、臨海学校に向けて買い物に付き合ってだろ」

「よ、よく分かったね」

「箒、鈴、セシリア、簪と連続で来れば、大体同じ内容だったから、容易に想像が出来た」

授業が終わり、一夏が廊下を歩いているとシャルロットが話しかけ、その内容を察した一夏は無理、と断る。

「そこをお願い! ね?」

「...ちょっと待て、用事の日程を変えれるか聞くから」

「本当!」

そう言うと一夏はスマホを取り出し、依頼主と連絡を取る。

「もしもし、甘粕か」

『どうかしました、織斑さん』

「この前の依頼だけど、あれさ日程、速めてもいいか?」

『問題ありませんよ。実行するのはそちらですから』

「了解。じゃ、明日は授業休んでやるから、そっちから連絡してくれるか?」

『分かりました。そちらに関しては任せてください』

一夏は通話を終え、スマホをポッケに仕舞う。

「え?一夏明日学校休むの」

「国という後ろ盾がある以上、問題ない。小遣いも手に入るし、張り切るかな。取り敢えず、来週の土曜日でいいか?」

「あ、うん。それで大丈夫だよ」

「じゃ、明後日な」

そう言うと一夏は自室に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

次の日の昼頃、東京湾近くの孤島が突如、地図から消失したというニュースが報じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、元気にしているか?ちびっ子達」

「あ!一夏兄ちゃんだ!!」

「「「「「わー、一夏兄ちゃんだ!」」」」」

仕事帰りに、一夏は孤児院に寄ると、一夏の姿を見つけると孤児院のあちらこちらから、足音が聞こえると、一夏の周りに子供達が集まってきた。

「思ったより元気だな。お?」

一夏は集まった子供達の中から、三人の子供を見つける。

「ジン、ラグナ、サヤ。元気にしてたか」

「兄さんもサヤ、元気だよ」

「うん!ここに居る、皆元気だよ」

「ケッ、来るのがおせぇんだよ」

「最近、中二病に目覚めたらしいじゃないか。死神、ラグナ=ザ=ブラッドエッジ君」

「な、なんで知ってんだよ!?」

「セリカに教えてもらった」

シスタァァァ!、と木陰でてへぺろ(・ω<)してるポニーテイルの女子に対して叫ぶラグナ。

この三人は一夏が最初に保護した子供であり、行く当てのない三人とセリカの四人を見つけ、(国を脅して)作った孤児院に住まわせ、生活に必要な物や光熱費その他諸々、一夏が払っている。

最初こそ、反対していたが、先に折れ一夏からの支援を受けることにした。

そして、何時しか一夏が、世界中の行く当てのない子供を捨て猫を拾うような感覚で連れてきているため、何時しか、四人で暮らしていた孤児院兼教会は20人以上の子供達でいっぱいになっていた。

「ほらよ、お前が考えたラグナ=ザ=ブラッドエッジの衣装だぜ」

「何であるんだよ!?いつ作ったんだよ!!」

「暇つぶしに作った。ジンの分も考えていたよなお前。『ユキアネサ』も作ったぞ」

「ぼ、僕の分」

「サヤは巫女服が欲しいとか言ってたからな、ホレ」

「ありがとう!」

ラグナは秘密の書物(黒歴史の産物)に書いた衣装と武器を渡され、どうすればいいのか迷い。ジンは武器だけだったため、そこまで恥ずかしくない模様で、サヤは着てみたかった巫女服が着れるという事で嬉しがっていた。

「ラグナのいいなー」

「ジン、後で貸して!」

「それなら、アイツに...は?」

ラグナ達のお土産に羨む子供達にラグナは一夏に言え、と言うと思い一夏の方を見ると其処には

「もふ?(何だ?)」

「何きぐるみ着てんだよ!」

「ボ〇太くんだ!」

「もっふふー!(俺、参上!)」

犬だかネズミだかよくわからない茶色のきぐるみがそこにいた。

「ふーもふもふも、ふーもふもふもっ♪」

「「「ふもっふもっ♪」」」

「人気者ね」

「どっかの笛吹き男かよ」

「私の願い事が叶った!」

「お前が原因かよ、ノエル...」

ラグナは目の前のきぐるみが居る原因が、新しく来たばかりの新人、ノエルだったことに肩を落とす。

「ねぇ、兄さん」

「なんだ、ジン?」

「その衣装、着ないの?」

「ゑ?」

ラグナは困惑した。

ジンが言っているのは先程渡されたモノだ。

ラグナは断ろうとしたが、ジンやサヤ、ノエルの期待の眼差しに押し負け、ラグナは更衣室に向かった。

「き、着替えたぞ...」

着替えてから数分後、ラグナは赤いジャケットに剣を装備し、何処か恥ずかしそうな表情をするラグナ。

「もも、もっふー!(さぁ、考えた技を使ってみろ!)」

「いや、何言ってるから分かんねぇよ」

「そうだね。兄さんの考えた技見てみたいよ!」

「何で通じてるんだよ!てか、やるかよ!?」

「お兄ちゃんやらないの?」

「ラグナさん、やらないんですか?」

「うっ」

最愛の妹と彼に片思い中の少女は涙目+上目遣いでラグナを追い込む。

「わ、分かったよ!やればいいんだろ!!」

ラグナは一呼吸入れると真剣な顔になり

「デッドスパイクッ!って、えぇぇぇ!?」

「す、凄いよ兄さん!!」

ラグナが剣を振り上げると、黒い獣の頭部の様なモノが現れた。

「いや、(ルーン魔術で)出るようにしたから、これで攻撃も出来るぜ」

「マジかよ...。俺、本当に使えるのかよ」

「ユキアネサも使えるぜ。氷だけど」

「本当!?」

「ボ〇太くんが居ない...」

「次の用事があるから帰ったぞ」

「そうなんだ...」

ここ居る、子供達は全員魔術の事を知っている子達であり、中には将来有望な魔法使いになれる子もいる。

「よし、今日は俺が腕を振るって晩飯を作ってやる。たっぷり、食べな!」

「「「「やったー!」」」」

「お前の料理絶品だからな、今日は食うぜ!」

「一夏さんの料理、久しぶりだね」

「お兄ちゃん達も、シスターも一夏さんの料理大好きだからね」

「うっ、また体重が...」

「どうしたんですか?」

「...何でもないよ」

一夏の料理を食べれるという事で、大喜びする子供達と一人、食後に起きる現象に悩む女性の姿があった。

「あ、今度この教会改築するから、ある程度、広くなるぞ」

「大分、狭くなったからな」

「最初はシスターと四人だったけど、いつの間にか大勢の人が集まったからね」

「さて、晩飯の準備でもするか。誰か皿運んでくれるか?」

「僕が運ぶよ」

「しかたねぇ、手伝うか」

「一夏さん、タオカカの分もお願い」

「あいよ」

「にゃー」

全員の分とペットの猫の分を作る一夏、久しぶりに大量の料理を作った一夏はいい汗かいた、と清々しい顔をしていた。

「じゃ、みんな、一夏に感謝を込めて」

「「「「「「いただきまーす!」」」」」

「おう、おかわりもあるから、沢山食えよ。育ち盛りなんだから」

一つの教会で、賑やかな笑い声と笑顔に溢れ、その光景を見た一夏は

「この笑顔がある限り、俺は戦える...」

「ん?何か言ったか」

「何だ?から揚げ食わないのか。なら、俺が」

「誰がやるか!これは俺のだ!!」

この平和な日常を守ろう、そう思いながら、一夏はつかぬ間の一時を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルロットとの買い物をするという事で一夏は待ち合わせ場所の喫茶店でコーヒーを飲んでいた。

「てか、シャルルの奴遅くね?もう、一時間以上待ってんだけど!!」

持っていたカップで受け皿を叩き始める一夏。

「ゴメン一夏!この鶏が下水道に挟まっていてね、助けるのに時間が掛かっちゃった」

「んなの知るか!時間返せこの野郎!!」

「ゴゲー!?」

「あ、一夏!僕じゃなくて、鶏の方を殴るとか!」

こうして、一夏とシャルロットの買い物が始まったのだった。

 

 

 

「因みにこの鶏、今度は富豪の格好じゃないと表に出ないって言ってたよ」

「コケ―」

YES富豪、NO表と書かれた看板を持つ鶏。

「んなこと知るかッ!燃え尽きろ、このチキン野郎!!」

「ゴキゴッゴー!?」

「あ、一夏!僕じゃなくて、また鶏の方を!」

殴ると見せかけておいて、隠していたライターで炙る一夏。

なお、殴る、炙ると色々やられている鶏だが、耐久力が高いのかギャグ補正なのか今も生きている。

そして、IS学園で飼育されることになったのはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても熱いな」

「うん、そうだね」

「クソッ、蝉の野郎...いい具合に鳴きやがって、余計熱く感じるぜ」

「でも、蝉って一週間くらいしか生きられないから、今はそっとしておこうよ」

「え?あれって、『死にたくないッ!死にたくなぁぁィィィ!!』て言いながら一生懸命、鳴いているのか!?」

「違うよ!?」

今日も絶好調なボケをかます一夏とそれに対してツッコむシャルロット。

「で、何買うんだ?」

「取り敢えず、日用品とかな」

「了解」

「あれ? 開始早々なんか疲れてきたよ...」

モノの数分で疲れを感じるシャルロットであった。

シャルロットの買い物として、日用品その他諸々、何処で買うか一夏は決めていた。

「最近、レゾナンスという場所が出来てな、其処は大抵のモノが揃ってるらしい」

「じゃ、そこへ行こうよ」

「てか、着いてるんだよな。ホレ」

「え?」

一夏が指差す所には大きく、『レゾナンス』と書かれた看板があった。

一夏が待ち合わせに指定した場所はレゾナンスの一角にある喫茶店だったのだ。

「さて、時間は有限だ。さっさと買いに行こうぜ」

「待ってよ、一夏!」

一夏はシャルロットの手を掴むと人ごみの中を歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

日用品を買い、最大の目的である水着を物色している。

「暇だな」

一夏は買い物にそこまで悩むことは無く、即決で買う為、時間は掛からないが、やはり、女子の買い物は長いと思いながら、自販機で買ったコーヒーを飲んでいく。

今回一夏が買ったのは水着ではなく、漫画とゲームと魔法のカード(課金)である。

「にしても、次は水着イベントか...。欲しいキャラが出る以上、全力で行かせてもらう」

簪とよく遊ぶアプリゲームのイベントに備え、育成と闇のゲーム(ガチャ)に挑む準備をしている。

「まぁ、それはさておき。...何してんだ、アイツら?」

一夏は背後から感じる視線を隠していた手のひらサイズの鏡を反射させ、確認する。

そこには箒、セシリア、ラウラ、簪、マナの姿があった。

「にしても、何か言ってるな。ここは読唇術を使って」

様々な、技術を身に付けている一夏は恐らく尾行してきたであろう、一行の会話を読み解く。

『ぐっ、シャルロットの奴抜け駆けしおって!』

『一夏様と一緒なんて羨ましすぎます!今度の臨海学校の時、日焼け止めを塗ってもらっわないと割に合いませんわ!!』

『ふむ、師匠とシャルロットの中に入るとするか』

『こう言うの邪魔しちゃいけないと思うよ。にしても、シャルロットいいなー』

『パルパルパルパルパルパル』

上から、箒、セシリア、ラウラ、マナそして何やら、呪詛を呟いている、簪。

「そして、簪たちより後ろに駄目生徒ストー会長の姿があると。尾行している奴に尾行が着いている、謎の図が出来上がってるな」

「ちょっと、そこの男。これ戻しておいて」

「いや、そんな事言われても...」

「ん?」

一夏は聞き覚えのある声が聞こえるな、と思いした方を見ると後輩魔王こと護堂の姿があった。

「護堂、そんな女性ほっておいて私の水着選んでくれないかしら」

「じゃ、恵那のも選んでよ。王様」

「イチャつかないでとっと、戻しなさいよ!」

「なんか増えてる。そして、絡まれてる...。おい、そこのおばさん」

「お、おばさん!?」

面倒事に巻き込まれるのは今の世界上仕方のないのか、それとも神殺しはそう言う要らない恩恵でもあるのか、と思いながら一夏は面倒事に絡まれてる後輩の所に行く。

「アンタ、今なんて言った!!」

「おばさんにおばさんと言って何が悪い」

「この男性風情がッ!」

「そうやって、女尊男卑な性格だから、彼氏も出来ないで独身なんだよ。性格悪い生涯独身確定おばさん」

「あ、あの一夏さん...?」

「グフッ」

暴言と共に現れた一夏は目の前の女性に対して、遠慮の無い言葉を言い、その姿に戸惑う護堂。

「で、出会いさえあれば...」

「出会い?ハッ、その出会いを真っ向から潰している奴に出会い何かあるかよ。鏡の前で自分を見直せや、まるっきし駄目なおばさん。略してマ・ダ・オ!」

「うわぁぁぁぁん!お母さん!!」

叫びながら、女性はいずこかへと去っていった。

涙を盛大に流しつつ。

「面倒な奴は追い払ってやったぞ」

「追い払うのは良いんですけど...。もう少し、穏便に出来なかったんですかね」

「穏便?何それ美味しいの」

「アッ、ハイ。ナンデモアリマセン」

敵に対して、容赦のない一夏だが、一夏は一般の女尊男卑主義者にも容赦がないのだ。

「にしても、更に増えてるな。千鳥ヶ淵での、一件はお前だろ」

「な、なんで知ってるんですか?」

「理由は二つ、あんな馬鹿デタラメな事が出来るのは神殺しとまつろわぬ神だけだ。日本産の日本在住の神殺しは二人、俺とお前だ。俺はやっていないので残りの方がやった確率が上がる。後は時間遡り、過去を見たから」

「最期の反則じゃないですか!てか、何時権能使ったんですか!?」

「聖句を必要としない権能なんだよ」

一夏の権能の中には聖句を必要としないモノが二つある。

時間関係の権能を今回使う事で、ある程度事態を掴んでいるが、一夏にはある疑問がある。

時の観測者は時間関係の事ならある程度できるが、()()()()()()未来に関することだけ見る事が出来ないのだ。

視ようとするも、ある一定の未来からは何も見えず、真っ暗なままなのだ。

まるで、そこから先の未来が自分には存在しない、と言われているようなそんな気がしてならないのだ。

「まぁ、初めての奴もいるから自己紹介はしておかないとな。俺は白き王、織斑一夏だ」

「なら、恵那も自己紹介しないとね。清秋院 恵那、王様に仕えてるんだ」

「ふーん、まぁ、此奴は色々苦労するぞ。俺と同じで」

「一夏さんと同じって...」

「自分の周り、見直してみろ阿呆が」

一夏は周りの恋愛感情には敏感だが、自分のに関しては滅法だめなのである。

「そういえば、一夏さんは何でここに?」

「知り合いの買い物に付き合ってるの」

「へぇー、因みにどんな人なんですか?」

「名前はシャルロット・デュノア、フランスから来た女性。って感じの声」

「うわぁ、万里谷に声そっくり」

シャルロットの声真似をしながら言う一夏。

その声を聞いた、護堂達は双子の姉妹と言っても過言ではないレベルで同じ声に驚いていた。

「声が似ているね...。エリカよ、こう、硬くて、凛々しい感じでキリッとした声に出来るか?」

「む、こんな感じか」

「あー、似てる似てる。俺のファースト幼馴染にそっくりだわ。性質が似てるから行けるかなと思ったけど俺の目に狂いは無かったか」

「どんな感じの幼馴染なんですか?」

「そうだな、よく言うなら、武士道で悪く言ううなら、猪突猛進で周りが見えない危ない人かな」

「全然、いいイメージが持てないんですけど」

「なんか俺に依存してるみたいでよ、うざってぇたらありゃしないよ」

ハァー、と溜め息を吐く一夏。

そんな一夏に万里谷そっくりな声が一夏を呼ぶ声がした。

「うあぁ、一夏さんの声真似と同じじゃないですか」

「さて、呼ばれたから俺はいくぞ。何かあったら呼べよ助けてやるから」

そう言うと、一夏は自分を呼ぶシャルロットの下に行くのだった。

 

 

 

 

「ねぇ、一夏。さっきの人たちは誰?」

「あそこにいた男性が草薙護堂で、一番新しい神殺し、つまりは俺と同類だ」

「え!?一夏と同じ、神殺しなの!歴戦の勇士みたいな感じじゃなかったけど」

「あいつは数か月前に神殺しになった新参者だからな。まだ、弱い弱い」

「一夏からしたら大体が弱いような...」

「俺の師匠なんか、とあるドラゴンボール顔負けの戦闘してくるかな」

「え?何それ怖い」

そんな会話をしながら、買い物を進める一夏達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏達が買い物をして居る最中、マハードはタロット占いをしていた。

これまで、クラス対抗戦、タッグトーナメント戦と学園のイベントにはよくない事が起きていた。

二度あることは三度ある、故に今度の臨海学校でも何かが起きるかもしれないとマハードは考えたのだ。

そして、一枚目の出た結果...教皇の逆位置『自分の立場を悪用、周りに注意すべし』

二枚目の結果...月の正位置『隠れていた敵との遭遇、それに伴って起きる不安定化』

三枚目の結果...死神の正位置『終わりへの一歩、現状の終わり新たな始まり』

四枚目の結果...太陽の正位置『希望と祝福、新たな生命の誕生』

五枚目の結果...世界の逆位置『未完成、部分的な成功』

「太陽の正位置以外はあまりいい結果とは言えませんね...。これは...」

マハードがタロットカードを仕舞おうとした瞬間一枚のカードが落ちる。

「吊るされた男ですね...。意味は試練と忍耐そして、隠されたもう一つの意味は『魂の昇華』...」

只一枚のカードが落ちだけなのに、何故だか、ただの偶然では無く何かを暗示しているように思えた。

そして、マハードは出た結果を一度整理する事にした。

教皇の逆位置の結果から、何者かが自分の立場を利用し、周囲に危害を加えるという事なのだと分かったが残りのカードの意味が分からなかった。

「一つ、一つでは読みづらいが、繋げて読めば恐らく...」

マハードは二枚目以降の結果を繋ぎ合わせ、一つの答えに辿り着く。

「隠れていた敵との遭遇によって、誰かの肉体もしくは精神が不安定になり、今の日常が壊れ、新しい何かが始まる。その何かを打ち破る新たな存在の誕生...だが、その存在は完成された存在ではなく未完成な存在として誕生し、数多の試練を乗り越える事で、完成した存在になる」

だめだ意味が分からない、それらしい答え辿り着いたが、一体、何処で誰に起きるのかその具体的な内容まで見ることは出来なかったが、マハードの頭に一人の顔が浮かび上がる。

「一夏...。もし、そうだとしたら私は一夏を護る事が出来るのだろうか...」

読み取ったモノが本当なら、一夏に待っている未来は相当過酷なものになるだろう。

そんな状況で、自分は一夏の力になる事が出来るのだろうか、と不安になると同時に一夏がどこか遠くに行ってしまうようなそんな気がしたのだった。

 




今回のイベでは回さず新章で回すぞー!

円卓勢だけでもやべぇのにオジマンディアスとクレオパトラ?だと...

課金必須じゃにですかー、ヤダー

前回の様な変なバグ出すなよ!(フラグ)


どうっでもいいことですが無事に我がカルデアにスカサハ師匠を迎える事が出来ました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

海と白き王の過去

後半はネタです。中の人の




一夏はある夢を見ていた。

それは嘗て戦かったまつろわぬ神の時の記憶だ。

『俺を倒すか!神殺しよ!!』

『ハァ...ハァ...』

心臓をゲイ・ボルクで刺されたまつろわぬ神は一夏を見据える。

『俺を倒したことによって、お前の運命は確定した』

『俺の人生を...決めるのは、俺だ!誰かに決められた運命なんざごめんだね!!』

『だが、運命は変える事が出来る。決められた運命が嫌ならば、今より強くなれ!でなければ、お前は俺と同じ未来を辿るだろう』

『それは...、どういう...ことだ...』

消えていく、まつろわぬ神は意味深な事を言うと、薄らと笑う。

『俺を倒し、運命に抗おうとするお前へのちょっとした神様からのアドバイスだ。お前らはいずれ『全ての神殺しを滅ぼす、祝福されし王』と戦う事になる、奴は強敵だ。だが、その強敵すら可愛く思える『この世界を裏で暗躍する混沌』がお前の前に現れるだろう。混沌を倒さぬ限り、お前に...いや、お前達に未来は無い』

『何故...俺にその事を教える』

『忘れていた、人の可能性に掛けたくなった...としか言いようがないな。織斑一夏!お前の辿る未来は熾烈なモノだ!そんなお前に祝福と呪いの言葉を送ってやる。『勝ち続けろ、そして、何者に負けぬ勝者であり続けろ』この先、お前に負ける事が許されぬことを、しかとその胸に刻み込め!!』

『待て!何故、俺の名(・・・)知っている!答えろ!!』

一夏はこの戦いで白き王とは名乗ったが、自らの名を名乗っていない。

なのに、一夏の名をフルネームで呼んだ五芒星が描かれたマントを纏った身体の三分の二以上が消えた神に対して叫ぶ。

『......それは時が来ればわかる』

『待て!お前は、お前は!!』

 

 

 

 

 

 

「何者なんだ...」

「目が覚めましたか、一夏」

「あ?」

一夏は辺りを見渡すとバスの中で会話を楽しむクラスメイトの姿があった。

「少し、魘されてましたが...」

「昔の事を思い出してな。アイツと戦ったのもこんな海だったからかな?で、うちの馬鹿(マナ)はなんで白目向いてるんだ?」

「それはとあるソロモンの悪夢の台詞で美味いこと言った途端、千冬殿に<テッレテー>されました」

「そうか。<テッレテー>されて<デデドン>されたのか。因みにその台詞言えるか?」

「待ちに待った時が来たのだ。多くの英霊達(生徒)が無駄死にではなかった事の証明の為に。再び私達の青春を謳歌させるために!海よ、私は帰ってきたっ!です」

「声を変えての再現どうも。そりゃ、やられるわな」

 

 

程のなくして、バスが旅館の近くに止まり、生徒はそれぞれ荷物をバスから降ろし、もちろんイチカも荷物を降ろし、自分の部屋に向かう。

部屋は一人部屋であり、イチカは荷物を置くと水着とタオルを持ち出かけようとすると、旅館の中庭をじっと見つめている幼馴染を見つけた。

「箒? 何見てんだ?」

「あぁ、一夏か、あれだ」

箒が指差した先には旅館の中庭。

その一角に、異質なものが置いてある。

どっからどう見ても兎の耳だった、鋼鉄製の。

「ふぅーん、アイツが居るのか。ぺっ」

「い、一夏?」

明らかな嫌悪感まるだしの顔をすると唾を吐き、更衣室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

海に出た一夏は目の前の水着を着た女子達の姿があった。

自由時間という事もあり、閉鎖的な学校から解放されたという事もあり、皆はしゃいでいた。

そして何人か、一夏とマハードに大胆なポーズを取る人が何人かいた。

水色とピンクのビキニタイプの水着を着ているマナは大勢で海を楽しむ事が無かったため、楽しみにしていた。

「マナさん、一夏様はどこですか?」

「一夏はね、あそこ」

「12匹目フィッシュゥゥゥゥ!」

「大漁ですね一夏」

「釣りを楽しんでるよ」

別に、ここにいる魚を全部釣っても構わんのだろう?、と言いながら先に来ていた釣り人を余所にドンドン釣っていく一夏。

「マナっていい身体してるわよね...。モゲレバイイノニ」

「ねぇ、鈴。私のある部分を見ながら、呪詛を吐かないでくれる?」

「いいよね、ある人は...。少し、分けて欲しい」

「簪、一夏は有る無いで、人を見ないから安心して、ね?」

「皆ゴメン、着替えるのに時間かかっちゃった。後この鶏がすぐナンパして、困っちゃったよ」

「フンッ」

「ゴキー!?」

取り敢えず、行き場の無い怒りを鶏を殴る事で、晴らす簪だった。

「ねぇ、シャル」

「何?」

「其処のタオルミイラは何?」

「あ、これはね...」

銀髪ツインテールのタオルミイラの事が気になったマナ。

「いいの?そのままだと、一夏に見せれないよ?」

「いいか悪いかは私が判断する」

「あ、一夏だ」

「何?こうしてはおれん!」

バッ、と纏っていたタオルを脱ぎ捨てるラウラ。

「何処だ!何処に師匠が!!」

「ゴメン、なんか時間かかりそうだから」

「謀ったな!?」

「でも、一夏なら釣りしてたよ...あれ?」

簪は先程まで、一夏が釣りをしていた場所を見ると其処に一夏の姿は無かった。

「一夏なら、ほらあそこ」

「え?」

マナが指さした方を見ると其処には

「中々、いい波ですね。一夏!」

「おうよ!俺の波乗りスキルEXを見せてやるぜ!」

「最高な気分です!」

「俺に乗りこなせない波は無い!」

「お兄ちゃんと一緒にサーフィンを楽しんでるよ」

「一夏って芸達者だね...」

そんな事を言っていると、濡れた髪をかき上げ、海から上がってくる一夏達。

「何してるんだ?そこで」

「一夏の事を探していたんだよ」

「ふーん、次は何するよ。マハード」

「そうですね。一夏、イルカ呼べます?」

「そんな事出来る訳「了解」出来るの」

「俺は動物使いなんだが、イルカたち曰く『良くないモノに近づきたくないらしい』」

千の言語と呼ばれる秘術を一夏達カンピオーネは取得しているが、これは長年修行すれば誰にでも扱えるモノであるが取得までの期間が長い。

会話相手の言葉から他言語を短期間で収得するというモノで、これによって、一夏は動物との会話を成功させているが、イルカたちはこの近くによくないモノがあるらしく、近寄りたくないとの事。

「一夏君!ビーチバレーやりましょ!!」

「マハードさんも一緒に」

「チーム編成は俺、マハード、マナで行くか」

「夏のサマーデビルと呼ばれた私のおs《バン!》ゑ?」

何か言おうとした瞬間、物凄い破裂音が聞こえると其処には無残な姿になったボールと着地した一夏の姿があった。

何が起きたのか、理由は簡単一夏がアタックをしたがボールがその衝撃に耐えきれずに破裂したのだった。

「一夏、壊しちゃダメでしょ」

「いや~、もう少し丈夫かなと思ったんだがな」

「一夏の力に耐えれるわけないでしょ」

「オリハルコン製じゃないとだめだな」

「そんなのあるか!」

「試合再開と言いたいが、腰抜かしてだめだな」

相手側は先程の事態を理解した途端、死の恐怖が押し寄せ、お互いに抱き合いながら震えていた。

「ほぉ、面白そうなことをしているな。どうです?山田先生」

「私も参加しちゃおうかな」

「千冬さんが出るなら私も」

「お?速攻で新たなチームが出来た。先行どうぞ」

「では、そうさせてもらおう」

新しい、ボールを千冬に渡すと試合が始まった。

 

 

 

 

「ここで姉としての立場を取り戻す!」

「出来る者なら、やってみな!この駄姉が!ジェノサイドブレイバァァァ!」

「マナ、一夏のアタックを受け止めていますよ」

「でも、千冬さんのアタックを受け止めてるよね。お兄ちゃん」

回復アイテム(水分補給)なんざ使ってんじゃねぇ!!」

「ぷぎゃ!?」

「見てください、人がゴミのように吹き飛んで行きましたよ」

「モップが死んだ!?」

「この人でなし!」

姉としての威厳を取り戻したい千冬だが、水分補給をしていた箒の顔面に吸い込まれるようにボールがヒット。

そのまま数メートル吹き飛ばされる。

「これが俺の赤い一撃(レッドフレーム)だ!」

「ふみゃぁ!?」

「山田先生の本体(眼鏡)は無事のようですね」

「いやいや、違うから」

「山田先生、最後に倒すと言ったが、あれは嘘だ」

殴り込みアタック(レッドフレーム)を受け止めようとした山田先生だが、逆に飛ばされ、その豊満な部分が揺れた時、一部の女子が舌打ちをした。

ややコマンドー化している一夏。

一方的なワンサイドゲームに変わっている。

「誰かが人柱になって(一夏を)沈めなちゃな!」

「うるせぇ!威厳取り戻す前に彼氏でも作れやぁ!歳考えろや!いつまでも若くいられると思うなよ!!」

「その時は一夏が私を貰ってくれるんだろ!」

「俺にそんな趣味はねぇ!死をくれてやる!この阿呆駄姉がぁぁぁ!!」

「一夏の塩配布入りまーす」

「お、重い!?」

一夏のボールを両手で交互に殴る一夏。

この時、一夏から炎が見えた人もいるが、夏の暑さにやられたのだろう、と自分に言い聞かせていた。

弾いたボールは一夏の方に飛ぶと、マハードがトスし、軽く5メートルはジャンプする。

「風がかたりかけます。この勝負は俺のモノだと!」

「は、早すぎる!?ヴェアアアアアアアア」

「あ、ワールドデストロイヤーの態勢だ」

「...勝ったな」

「サングラスをかけて、とあるマダオの真似をしないで」

一夏一人による完勝で幕を閉じた。

そして、観客はこう思った。

全然、語りかけてねーよ、と

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

とあるラボに二人の女性が居た。

「くーちゃん、明日束さんはいっくんに会いに行ってくるよ。あ、ついでに箒ちゃんに専用機渡さないと」

「自分の妹なのに他人事の様ですね」

「束さんの優先順位は何事においても、いっくんが優先事項だからね」

年甲斐もなくはしゃぐ、目の前の人物にくーちゃんこと、クロエはこの人一夏さんと同じなんですよね...、と少し落胆していた。

クロエは付けている半分の花の形の髪飾りを触る。

これは助けてもらった時に一夏に貰ったモノであり、この世界で唯一無二の宝物である。

助けてもらった時、一夏は自分の所ではなく、束の所に預けられたときショックを受けたのは今でも覚えている。

「じゃ、くーちゃんは束さんがいない間のお留守番お願いね!」

「...はい。束様」

できる事なら同行したい、と思うが主(仮)の言う事は一応聞いておく。

一夏が、いつか自分を引き取ってくれると信じて。

「そういえば、束さんやくーちゃんの大好きないっくんは新たにフラグを立てたらしいよ」

「え?」

「ついでに言うと、ロサンゼルスに住む、神殺しとデートがあるらしいね」

「(‘0言0́*)ヴェアアアアアアアア!イチカサントラレルゥ!?」

「え?くーちゃんしっかりして!くーちゃん!くーちゃん!?」

思いっきり背中から倒れるクロエだが、一応受け身は取っていたので、そこまで(肉体的)ダメージなかった。

そして、ラボに一人の天災の叫び声が響いた。




クロエの叫び声が分からないのなら(‘0言0́*)<ヴェアアアアアアアアで調べれば出ると思いますよ。


さて、今回出てきた神様は何か分かったかな?




後、コラボしたい(願望)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

天災と違和感

最新話です。


FGOの新イベもよかったが、なにより6章が良かった。

あれは心に来た。ヴェルヴィエール...。君は素晴らしい騎士だ。

ランスロとマシュちゃんのやり取りは笑ったw


ストーリクリア後の10連で、孔明が出ました。個人的にガウェインか槍セイバーが欲しかった。




夕食の時間、自由時間の間にジャンケンで決まった通りに、一夏の隣にはシャルロットと簪が座っている。

「違う、シャル。箸は中指をあいだに入れて親指と人差し指で動かすんだ」

「一夏は簡単に言うけど、これはかなり難しいよ?と言うか、なんでマナはそんなに上手にお箸を使えるのさ?」

「伊達に一夏と何年も同じ屋根の下で過ごしていないわよ」

「私は日本生まれだから、出来て当然」

一夏の正面に座っているマナを見ると、箸を上手く使っていた。

一夏の下で何年も過ごし、指導を受けてきただけの事はあり、箸の使い方はマスターしている。

そして、流石は日本育ちという所か、簪は箸の使い方がうまく、一つ一つの動作に気品が感じられた。

「所で一夏。これは?」

「本わさですねー」

「本わさ?」

「本物のわさびをおろしたやつのことを言うんだ。最近は練りわさびが多くなってきたから、結構珍しいんだぜ? 学校の定食についてるやつは、練りわさびだな。原料は、ワサビダイコンとかセイヨウワサビだな」

「へー」

一夏の説明を聞いたシャルロットは本わさびの山を醤油に溶かすが、量が量なので、溶ききれるはずもなく、刺身を付けたべると、背筋を伸ばし、そのまま倒れ、鼻を抑えなが蹲っている。

「大丈夫か?」

「らいひょうふ...」

それでも笑顔を見せようとするあたり、本当に優等生だと感心を通り越して呆れていると簪がシャルロットの近くに行くとシャルロットの足の裏を小突く。

「ふみゃ!?」

「やっぱり、足がしびれてたんだ。無理しないで崩せばいいのに」

「だ、だからって小突かなくても...」

「大丈夫、別に一夏と許嫁とか親同士が決めた婚約者とか羨ましがってないから。そういう関係に嫉妬して八つ当たりで今も小突いてるわけじゃないから」

「あっ...ちょ...んぅ...。これ以上敏感な所(足)を責めないで!!」

「ここでしょ?ここがいいんでしょ?」

「やめんか」

色々と危ない二人を止めるために一夏はその元凶を作っている簪にチョップをする。

「とっとと、飯を食うぞ」

「一夏、取れたてのホタテを持ってきました」

「そのホタテを七輪で醤油をかけて焼こうぜ」

「あ、余ったら僕にも分けてくれないかな?」

「いいか。マハード?」

「構いません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事を終えた一同は自室に戻る中、簪とマナは無くなった飲み物を補充するために、売店に行き、その帰りに一つの群れを見つける。

「何を――むぐっ!?」

「(ちょっ、静かにしなさいよ......! 今大変なんだから!)」

「(た、大変?)」

「(いいから聞いてみなさいって!)」

鈴の言われるがままにマナと簪は耳を澄ます。

『一夏、久しぶりだから少し、緊張してますか?』

『そんな訳あるか。――あっ! す、少しは加減をしろ......』

『分かりました。そんじゃあここは......と』

『くっ!アッァァァァァァーー!』

一部を除いて腐方面の映像が膨らんでいく。

「い、いいいい一夏さんは一体何を......?」

「「......」」

(や、やはり、ここは事実の確認を――)

そこで、バンッと勢い良く扉が開かれ、三人が転がった。

「......何をしているか、馬鹿共」

「す、すみません......」

「こ、これは......たまたまで」

「そ、そうっ! た、たまたまですわ!」

見つかった途端、三人は一気に逃げ腰になった。さっきまでの好奇心と落胆は、一瞬で恐怖へと変わる。

だが、セシリアもシャルロットも箒も良く分かっていた。千冬相手に逃げ切れるはずもないことを。世界最強を前に、逃げる術などあろうはずがない。

三人は覚悟を決めたが、千冬の言葉は以外なものだった。

大体何が起きているか正しい方向で予想した残りの三人は面倒事に巻き込まれたな、と思った。

「盗み聞きとは感心しないが、ちょうどいい。入っていけ」

恐る恐る、部屋に入るとそこにいたのは、肩の具合を確かめるように軽く回す一夏と、軽く汗を流していたマハードだった。想像していたような衣服に乱れはない

「ああ、そうだ。――篠ノ之、ついでにボーデヴィッヒも呼んで来い」

「は、はいっ!」

 

箒は駆け足でラウラの部屋へと二人を呼びに行った。

 

 

「あの一夏とマハードはさっき何をしていたんですか?」

「一夏の腕の骨をはめ直していました」

「「え?」」

「一夏は自分の身体を酷使しますし、自分で骨をはめ直しますが、本来の状態から歪んだ状態で過ごすと今後、支障をきたす可能性があるので、その歪みを正すために一夏の骨をはめ直しているのです」

「お前、力いっぱいやるから痛いんだよ」

「中途半端な力でやっても意味がありません。痛みは生命活動の証拠です」

どこぞの狂化しまくってる婦長の様な事を言うマハード。

「お前ら、少し汗臭いから風呂に入ってこい。そろそろ時間だぞ」

「よし、行くか。マハード」

「ご一緒させていただきます」

そう言うと、風呂道具一式携え、部屋から出ていく二人。

 

入れ違いでラウラと呼びに行った箒が戻ってくる。

「ようやく揃ったな...では、まず聞こうか、この中で家の愚弟に惚れている者は挙手しろ」

箒、セシリア、マナ、簪、シャルロットが挙手すると千冬が意外そうな顔をする。

「お前らは惚れていないのか?」

「私は師匠として、尊敬はしていますが、恋愛感情は持ってません」

「確かに一夏はいいところ尽くしだけど、最初は好意はあったけど無くなったわ。今は親友というポジションで満足ね」

「ほぉ、中々興味深い事を言うな」

「ライバル多すぎでしょ。秘書みたいな年上の人と居たり、褐色のシスターみたいな人と居たり、相手のレベルが高すぎて、対抗する気が無くなちゃったわよ」

鈴の言っている人物が誰なのか分かったマナは確かにレベルが高いと納得する。

「何?それは本当か」

「『夏休み日本に居る時間が少ないなー』ってぼやいていたわよ。で、色々お得な一夏に好意を持ってる勇者はにどこが好きなのか言ってもらおうかしら?」

「何故お前が仕切っている」

鈴を睨む千冬だが、どこ吹く風と流している。

「えっと、私は......昔、小学校の頃、助けてもらって......その時の一夏に、はい」

「普通にラブでコメるような展開ね、つまらん」

「そんな!?」

 

自分から語れといってきたくせに、いざ語ったらこの扱い。

あまりにあんまりな扱いにさすがの箒もショックは大きい。

部屋の隅でしくしくと体育すわりで泣き始める箒。

「いい加減にしろ馬鹿者」

「イタッ!?」

チョップで鈴を鎮める千冬。

鈴を鎮める事で主導権を取り戻した千冬はセシリアを指さす。

「次、オルコット」

「私は一夏さんの...強い所が―――」

「なんだ、只のドMホイホイか」

「違います!!」

「次、更識妹」

「聞いてますの!?」

セシリアの抗議を無視し、千冬は話を進める。

「私は小さい時に、一夏に助けてもらったのが理由です。あの時一夏が居なかったら、今の私はいないと思います」

「今より根暗にでもなっていたか?次だ、次」

「順番的に私?私はエジプトに来た一夏に出会ったのが初めてで、その後一夏に私達三人の命を助けてもらったのが切欠かな。妹のガガも一夏に好意を持ってるから、本当にライバルが多いですね」

「なんだ、そのヒーロー系のアニメみたいな理由は?デュノア、GO!」

「えっと、その、僕性別偽って入学してきたじゃないですか。その一件で一夏に助けられたと言うか、助けてもらえるきっかけを作ってもらったというか...一夏と許嫁というのもありますから、僕は一夏との許嫁は大いに歓迎ですね」

「許嫁だと!?お姉ちゃんそんなの知らないぞ!!」

「ちょ!?近い、顔近い!それにお酒臭いですよ!!」

てか、さっきから飲んでいたのは酒か!、と内心ツッコむシャルロット。

「一夏の許嫁...一夏どこか行っちゃう!お姉ちゃん一人になっちゃうぅぅ!!一人になったら私はァァァァァァ!!!」

「誰かこの酔っぱらいを止めてぇぇぇ!!」

酔っ払いに絡まれたシャルロットの悲痛な叫び声が響いた。

その後、戻ってきた一夏によって気絶させられ、お開きとなった。

 

 

 

 

 

 

合宿2日目。ISの装備とデータ取りの準備をしていると千冬箒を呼ぶ。

「ああ、篠ノ之。お前はちょっとこっちに来い」

「はい」

打鉄の装備を運んでいた箒を呼び寄せた、その時だった。

「いっくーーーん!!」

「親方!空からおんn...天災が!!」

青空から現れた人影は一夏に抱き付こうとするが

「セイヤァァ!!」

「え?ちょ!?あわ、あわわわわ!!アッー――!」

半弧を描き、背後を取るとそのままタイキックをかまし、ザバッーン、と海へ落ちる人影。

「朝から耳に悪いの聞いたなー。あー、こりゃ一日中機嫌悪いわ。ととっとやって、ととっと終わらせようぜ。アイツのいた場所に一秒たりとも居たくないんだよ」

「気分が悪い貴方に束さん印のこのお手製ドリンク!疲れが取れと同時に未知の事象へ導いてくれるよ!!」

「あまり煩わせるな。面倒だ」

「ぺっぷし!」

「消えろ!この天災(笑)ガァァ!!」

「ひどいなー。束さんは正真正銘の天災―――待って!その技は危険だよ!!??」

「キン〇ドライバーだぁぁ!!」

(あ、逝ったな)

海藻類やタコなどを付けた状態で這い上がってきた束は一夏にアイアンクローされた後、地面に叩きつぶされ、起き上がると今度は両足首を掴んだ状態で上昇し、空中で逆さになった相手の腋に足をかけてそのまま落下する。

「痛いよ、いっくん!でも、束さんはいっくんと「屑がぁ...」ふおおおぉぉぉぉぉぉッ!?」

人外染みたタフさ持つ束はけろっとした表情で起き上がるが、束にラリアットをかましながら、岩盤に衝突する束。

顔面を鷲掴みにし、何度も岩盤に押し付ける。

「もう、終わりかぁ...?」

「む、無念...」

「終わったな...。所詮、クズはクズなのだ!!」

「伝説の...スーパーサイヤ人...。勝てるはずがないよぉ...」

「あ、悪魔だ...」

「誰かカカロット呼んで!」

フフフ、ハハハッ、ハーハハハハハ!と大笑いする一夏。

一連の流れのせいか、一夏の姿がブ〇リーに視えてしまった一同。

「可笑しいですわね。あの岩盤にクレータが出来ているように見えますわ」

「流石、師匠!私達に出来ない事を平然とやってのける!」

「其処にしびれるぅ!憧れる!」

「おら、とっとと用事済まして帰れよ(ゲシゲシ」

「やめてあげてよぉ」

とある奇妙な冒険に出てきそうなセリフを言うラウラと簪。

一夏はピクリとも動かない束を蹴り続ける一夏。

「てか、本当に何しに来たんだよ。ア”?」

「何って、勿論いっくんをハグをしてその後、熱い時間を――」

「何?自殺願望あるの?分かった、無明三段突きの後に流星一条ぶっぱした後に破壊神の手翳で滅ぼしてやるよ」

「やめてください。そんな事したら束さんは跡形も無く消えてしまいます」

「それとも、今開発中の双腕(ツインアーム)零次集束(ビッククランチ)の実験台にしてやろうか?」

「あれー、それって過剰な呪力を暴走させて、擬似的な暗黒物質を作って、周囲のあらゆる存在を取り込む超激やば魔術だよね。そんな事したら、束さんどころかその周辺が更地になるよね!?」

「俺だけの呪力じゃ、足りないので龍脈に接続しないといけないがな」

「いっくんは束さんと同じ領域にいるんだね!いやー、手取り足取り教えたかいがあるよ。今までの授業料として束さんのお婿さんに!」

流石の一夏も限界があり、ある程度抑えていた束の態度に怒りが天元突破した。

「秘剣・燕返し!」

「おっと、やめてよね。これ以上束さん(僕の)描いたシナリオ(展開)に遅れが生じちゃうからねー」

「グッ!」

いつも通り隠し持っていた木刀で円弧を描き、三つの斬撃を権能を使用し、同時に放つが束はそれを容易に避け、一夏の腕を掴むと一夏は今の束に違和感を覚えた。

いつもとは違う何かを感じ、まるで違う誰かが束になり替わっているようなそんな感覚だった。

「束、時間を押している。ささっと済ませろ」

「はいはーい。じゃね、いっくん()()()でね!では、空を見よ!」

と天を指差した。

全員が上を見た。

その直後、轟音と共に何かが落着した。

すると青いひし形の物体があった。

「ラミ〇ル?」

「いやいや、加粒子砲とか撃ったりしないから」

コンテナがじょじょに開いていき、そして、中から現れたのは―――紅。

そう! 私が箒ちゃんのために愛とか愛おしさとかその他もろもろをとにかく詰め込んだ箒ちゃん専用IS! その名も―――『紅椿』!!」

「わ、私の専用機!?」

「そう、箒ちゃんの、箒ちゃんだけの力。私が箒ちゃんの為に作り上げた、第四世代のISだよ」

「第四世代か...」

「そう! 第四世代! なんとこの紅椿! 展開装甲って言う状況等に応じていろいろ変わる装甲とかを持ってて、パッケージ換装とか無くてもあらゆる状況に対応できちゃうのだ!」

「待て束! 未だに第三世代もまともに出来ていないこの現状で、よりによって第四世代だと!?」

世界が第三世代の着手し始めた段階で、この天災は第四世代を作ったのだ。

一夏は呆れて、眉間を抑えている。

「さ、箒ちゃん。ちょちょっと調整済ませちゃおう!」

「えっと、は、はい......」

 

そんな千冬の頭痛をよそに、束は箒を紅椿に押し込むと、紅椿に端末を接続し、目にも留まらぬ速さで仮想キーボードをタイプする。

 

「ほい終了! はっやいねぇ、さすが私! さ、箒ちゃん、飛んでみて飛んでみて!」

「飛ぶ......」

 

時間にしておよそ20秒かかったか否か。

その極短時間で調整を終えると、束は箒に飛行するよう促す。

今まで専用機は持っていなかったが、授業の中で操作はしてきた。

そのときの感覚を思い出し、箒は宙を舞う。

箒はいつの間にか束が取り出したミサイルポッドから放たれるミサイルを避けたり、両手に持った刀で切り払ったりしている。

その動きにはまだぎこちなさは残っているが、それでもルーキーの動きとしては破格の動きを見せている。

その一連の行動を見ていた一夏はこう思った。

「振り回されてるな。性能に、自分の力に...。そして、浮かれている」

「これは危険ですね」

「あぁ、そうだな」

一夏とマハードの意見は合致した。

箒は第四世代というまだ見ぬ領域の力を手にしたことによって、新しいおもちゃを手に入れた子供のように浮かれていると感じたのだ。

一夏は多くのまつろわぬ神と強敵と戦ってきた事で学んだことがある。

それは強い武器を使うものが強いのではなく、武器を使いこなすものこそが強い、である。

多くの権能を持つがその権能は本来の担ぎ手ではなく、簒奪したモノであり、十全に扱うことは出来ない。

故に多くの書物を読み、その権能の特性を理解し、十全に扱えるように己を鍛えなければならない。

でなければ、権能に振り回され、そんな姿を晒すようであれば、簒奪したまつろわぬ神に対して面目が立たない。

 

そんな事を思っていると、切羽詰まった様子で山田先生がこちらに近づいてくる。

「織斑先生! 緊急事態です!」

「どうした? 山田先生?」

普段の山田先生からは考えられないような様子に、千冬もその表情を引き締める。

しばらく、山田先生は間を空け、そして口を開いた。

「......アメリカ、イスラエルが共同で開発していた軍用IS、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が暴走、現在、この場所へ向かってきているとのことです!」

 




束と一夏は顔を合せると大体こんな感じですね。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

敗北と再会

えー、福音戦ですがタイトルの通りになります。

そして、ここから大きく話が変わってきます。


天災の出現で一夏は疲れている中、ISの暴走という緊急事態が起き、専用機持ちは指定の場所に集められている。

集まっていた専用機持ち達の前にホロウィンドウが投影された。

そのホロウィンドウには、地図と件の機体の写真が表示されていた。

「今から約数時間前に、アメリカとイスラエルが共同開発した最新鋭軍用IS、シルバリオ・ゴスペル。通称、福音が原因不明の暴走を開始。投入された追撃部隊を壊滅させて、亜音速で逃走。こちらに向かってきているとの情報だ」

千冬がそう説明すると、表示されていた地図にその福音の逃走経路が表示された

千冬は全員がそこまで確認したのを見ると

「そして、この福音に対して迅速に部隊を送れるのが我々のみということで、政府はアメリカ、イスラエルからの要請を受諾し、我々に迎撃命令を下してきた」

一夏はこの命令を出した人物に一夏は馬鹿じゃないの、と内心呟いた。

自分ならまだしも何故、素人同然の彼女達を参加させたのか、その意図が分からずにいた。

(最低でも、甘粕が命令を出しているという事は無いだろうな。アイツは俺の事をよく知っているからな)

命令を出した人物は一夏の本性(神殺し)を知らな人物という事は推察できるが一夏はそこから先はどうでもよかったので考えるのを辞めた。

「何か、質問はあるか?」

「対象機体の詳細な情報を!」

「いいだろう、許可する。ただし、機密情報だからな。もし、他の者達に漏らしたら、外出の制限と在学中に監視が付くからな。そのつもりで」

千冬がそう説明した直後、専用機持ち達の前にホロウィンドウが開いた。

そのホロウィンドウには福音の詳細なスペックが表示されている。

武装自体はたった一つ、銀の鐘(シルバー・ベル)と呼ばれる大型スラスター兼射撃武装であるこれだけだ。

が、この武装、ただの射撃武装ではなく、砲口を36も持つ広域射撃武装であり、下手に近づこうとすれば近づく前に面で制圧されるだろうことは最早火を見るより明らかだ。

速度を持って戦場を翔け、持ち前の面制圧力で戦場を支配する。

「高機動型の遠距離機体か...。交戦は一回、出来て二回かな?」

「それに、この特殊武装も厄介ですわね。ブルーティアーズと同じ、オールレンジ......」

「攻撃力も、かなり高いみたいだね......本社から新しく送られてきたガーデン・カーテンでも、何回もは防げないかな......」

と鈴達が呟くように確認していくが、一夏の顔は優れていない。

「この中で、一番の適任者は一夏よね」

「だろうな。だが、目標まで運ぶ足が必要だ。俺は目標までの足と援護要因として簪を推奨する」

「その作戦ちょっと待った!!」

と、いきなり天井の板が吹き飛び、穴から束が入ってきた。

「ちーちゃん。私の頭の中にもっと良い作戦がナウ・プリーティング!!」

「出て行け。束」

千冬に詰め寄る束の襟首を掴み、扉の外に放り投げようとするが

「ここは断然紅椿の出番なんだよ!」

「なに?」

その言葉に動きが止まった。

これを見よと言わんばかりに束が指を鳴らすとモニターが紅椿のデータに変わった。

「紅椿は高機動パッケージ無しでも超音速飛行が可能なんだよ!それはさっき見たでしょ!?」

「......」

「でもって、展開装甲を調整すれば、すぐにでも出撃は可能だよ!!」

「......それはどれくらいかかる?」

「ざっと七分!!」

「よし、では織斑と篠ノ之の両名の出撃にする。何かあるか」

その言葉に真っ先に挙手したのは一夏だった。

「悪いが今の俺はルーキーを庇いながら戦うのは無理だ。体調が悪い上に無性に嫌な予感がする」

「待て一夏! 私では不服だといううのか!!」

「おうおう、束さんお手製のISにケチ付けるのかい?」

「ケチも何も、例えどんな名刀(IS)だろうが、使う奴が素人ならその切れ味(性能)を生かすことは出来ない。箒お前なんだ?」

「ど、どういう事だ...」

一夏は知っているのだ。

強大な力(権能)を使うモノの責務と覚悟が必要な事に。

「専用機貰ってはいるが、お前にそれは相応しいのか?国家代表でも、代表候補でもない。軍属でも企業のテストパイロットでもないお前が専用機を持つのが可笑しんだよ。お前は努力して、専用機を手にしたのか?違うだろ」

「そ、それは...」

「力に振り回されるようなら三流、その力を十全に扱え、昇華させる奴が一流なんだよ。俺から見ればお前は三流以下のズブの素人だよ。そんな奴に背中を任せたくないね」

「なら、他の奴らはお前の言う一流なのか!」

「一流かどうかはともかく、他の奴らは覚悟も実力も上だ。お前よりは専用機を得るために血が滲む様な努力はしている。そう言う奴は素直に称賛するし、嫌いじゃないね」

「なら、私だって――――ッ!?」

何か言いかけた箒だが、一夏の殺意の含んだ眼を見た瞬間何も言えなかった。

「いい加減にしろよ。たかが剣道大会で優勝したくらいで調子に乗ってるんじゃね。ルール―アリの死の無い戦いしか知らない餓鬼が、お前みたいな奴が戦場を混乱させ、被害を大きくするんだよ」

「ISには絶対防御が―――」

「この世に絶対などという文字は存在しない。絶対防御?そんなもんいくらでも破れるし、零落白夜を使えば一発だぞ。で、指揮官はそのあたり分かってんだろうな?」

「織斑の言っている事は事実だ。だが、猫の手も借りたい状況だ。作戦には織斑と篠ノ之の二名をメインとし、有事の際は補助に回れるようにデュノアと更識妹を空域に待機させる」

「ち、千冬さん!?」

「二人だけよりはマシか...」

一人で騒ぐ箒を無視し、千冬が命令する。

「よし、では本作戦は織斑、篠ノ之の両名による目標の追跡及び撃墜を目的とする。そしてバックアップで更識妹、デュノア。残りは旅館に待機。作戦開始は10分後。各員、直ちに準備にかかれ!!」

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、一夏」

「何だ?」

「さっき、調子が悪いっていたけど、大丈夫?」

「肉体的には健康だろうな。だが、精神的には、と聞かれたら答えはノーだ」

「え?」

一夏の事が心配になった簪は一夏に容態は大丈夫か聞く。

「何故だろうな、今から戦う福音に対して、言いようの無い不安と恐怖が俺に押し寄せてくる。俺の勘が言っているよ、この戦いは只では終わらない、とな」

「大丈夫だよね?」

「大丈夫だ、何が何でも、どんな結果になろうと俺が守ってみせる」

「そろそろ、時間だね。何かあったら、言って。すぐ駆けつけるから」

 

 

作戦開始の時間になると二人は行動を開始した。

「暫時衛星リンク確立......情報照合完了!!10秒後に接触する!!」

箒の言葉に一夏は雪片弐型を大きく振りかぶる。

だが、福音の装甲を掠めるだけで撃墜とまでは行かなかった。

一夏も一撃で仕留められるとは思っていなく、次の一手を打つ。

「はァァァァァァ!!!」

一夏は縮地を使い、福音に接近すると斬り上げをするが福音は容易に避けると、福音が大量の光弾を放つが一夏は雪片弐型をブーメランのように投げると、相殺し、相殺しきりなかった残りをカスールとジャッカルで撃ち落としていく。

「私のことを忘れてもらっては困る!!グァ!?」

『力の無い人間が鬱陶しい』

背後から一撃喰らわせようとした時、振り向きもせずに回し蹴りをすると聞こえてくるはずの無い声が聞こえる。

福音の操縦者は気を失っていると事前に分かっており、暴走を止めると同時に搭乗者を救う救出作戦でにあるのだ。

一夏は聞こえてくる狂ったフルートの音色に困惑する。

聞いているだけで、自分の中の何かが湧き上がってくる感覚に戸惑いを隠せずにいた。

「チッ!耳障りな音を出しているんじゃねーよ!!」

「隙ありィ!!」

一夏は縮地を使い、雪片弐型でガードしながら、敵の正面に突っ込むと、そのまま斬り上げると仕込んでいた鋼糸を柄の部分に撒きつけるとそのまま回転しながら切りつける。

一夏の攻撃が止むと同時に箒が背後から福音の翼を一刀両断する。

翼を失った福音は海に沈む中、一夏は海に沈んだ福音を見据える。

「ふん。他愛もない。貴様程度では紅椿と私の敵では無かった。どうだ?一夏。少しは私の事を見直したか」

「―――!?チィ!!」

「な、何をするいt――― 一夏!?」

「グゥ...」

油断している箒の直下の海面に異変が起きると同時に一夏は箒を押しのける。

その事に気づいていない箒は一夏に何かを言おうとしたが、一夏の苦悶の表情と背後に居る倒したはずの福音に驚愕の色隠せずにいられない。

「一夏!大丈夫か!!」

「背中を少し、斬られた程度で騒ぐな...。来るぞ!」

一夏を心配する箒だが、一夏は平気な表情をするが、白式の装甲が切り裂かれ、赤く染まっている。

一夏は福音に注意するよう箒に呼び掛けたその瞬間、変化が起きた。

福音に異変が起きたのだ。

人型だった福音の手足から何百人の血を吸ってきたカのように赤黒い鋭利な爪、斬られた翼は生物的な霊長類を思わせる翼が六対生え、身の丈はあるであろう尻尾、フェイス部分を突き破るように現れた凶悪な牙。

その姿から、先程までの天使を思わせる姿から、悪魔よりおぞましい姿になる。

そして、福音が嗤った瞬間。

「ガハッ!?」

「一夏!?グッ!!」

目にも止まらぬ、速さで一夏に接近すると一夏の鳩尾を殴ると身体を回転させ近くにいた箒に尻尾を叩きつけると一夏に狙いを定め、猛攻撃をする。

「この感じ...。アイツと同じ...気配がする...」

「私を無視するなぁぁ!!」

「よせ!そいつに無暗に近づくな!!」

「グァァァァ!!」

一夏を助けようとした瞬間、箒に飛び蹴りをかますと連続で殴ると回し蹴りをする。

攻撃はそこで終わらず、箒にその鋭利な爪を突き立てようとした。

箒は思わず、目をつぶるが、いつまで経っても痛みが来ない事に不思議に思い、恐る恐る目を開けると其処には

「グボァ...」

「い、一夏...」

護るように立ち塞がり、鋭利な爪で腹部を貫かれている一夏の姿があった。

「心配だから、応援に...、一夏!」

「よぉ、簪...。来て早々に悪いが、頼みがある」

「待って。今すぐ、助けるから」

「そんな事はいいッ!!今から言う事をよく聞けよ」

一夏を助けようとしたシャルロットだが、一夏の声に思考を中断した。

「コイツはISじゃ、到底敵わない化け物だ。コイツに勝てるのは特別な人間だ」

「い、一夏...。何をいって」

「俺も長くは持たない!だから、早くここから逃げろォ!!」

ガシッ、と自分の腹部を貫いている腕を掴む。

一夏は理解しているのだ、この福音に取り付いている敵の正体に

「時間なら俺が稼ぐ...。だから!?」

「お前を置いて、逃げるモノか!一人でダメなら二人が掛かりなら、倒せる!命など惜しくもない!!」

「あのバカ箒!一夏の言っている意味が分からないの!?」

「シャル、少しここで待っていて」

「簪?」

箒の無謀なその姿に叱咤するシャルロットに簪は待つように言うと一夏お得意の縮地を使い箒に背後を取ると

「フン」

「うっ...」

「馬鹿は回収した。ここから離れるよ。シャル」

「う、うん。一夏、無事に戻って来てね」

「信じているよ。必ず戻って着てくるって」

そう言うと、二人は箒を担ぎながら、その場から、今出せる最大速度でその場から離れていく。

「さて、やっと二人っきりだ、な!」

一夏は福音の肩を掴むと膝蹴りをかまし、出来た一瞬の隙を見逃さずに福音の腹部を蹴り、福音を自分から離す。

『そうだね。やっと二人っきりだね』

「女性...?」

機械交じりの声だが、何とかその声の持ち主が女性だと聞き取れた。

『僕はこの時を待っていたんだ!君と二人っきりになれるこの時を!』

「チィ!!我は天を廻る不死鳥と成り、空に昇る太陽となる!」

一夏は不死鳥の翼を出し、傷を塞ぎ、新たに聖句を紡ぐ。

「我は戦国の世に生まれし魔王なり、神仏に仇成す修羅なり!」

虚空から現れた刀を手に取ると一夏は福音に近づき、斬りつける。

「お前は何者だ!?何のためにここに来た!!」

『僕は僕の目的の為、君の前に現れた。まぁ、今回は物語(シナリオ)の修正だよ』

「シナリオ...?」

『そう、修正だ。君は彼の権能を全く使わないからね。おかげで思うように進んでいないみたいだから、僕自ら動くことにしたのさ。まぁ、君に会いたいという気持ちもあるんだけどね』

爪と刀が交差し、火花が飛び散る。

一夏は白式を解除し、戦闘を行っている。

「わけのわからないことを、ぬかしやがる!」

『ほれほれ、懐がお留守だよ?』

「ガァ!?」

さっきのお返しと言わんばかりに一夏に飛び蹴りをし、爪で一夏の肩を貫く。

「ゲホッゴホッ...。くそ、傷の治りが遅い...、グゥ...」

『僕は君の権能と相性がいいからね。僕自ら君を傷つけた方が進行が速いみたいだね』

「な、何だこれは...!?」

一夏は自分の中から目の前の敵に対して湧き上がってくる怒り、悲しみ、憎しみ、殺意等といった感情が自分を支配しようとする同時に一夏の身体に異変が起きる。

「ア...ガァ...アァァ...!?」

『フフフフ』

息苦しい、自分の中のナニカが変わっていく久方ぶりの感覚に身体が思うように動かないでいた。

『このまま、待つのもいいけど、さすがに暇だ。さっきの彼女の達と遊んでこようかな?』

「サセルカァァァ!!!」

『おっと、いきなり無明三段突きとは...女性に優しくしない男性は嫌われるよ?』

「大切な...家族を...、傷つけようとする奴に、好まれたくないッ!!クトゥルフの神々さんよ!!」

そう言うと一夏は新たに聖句を紡ぐ。

「あらゆる叡智、尊厳、力を与えし輝きの主よ。我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ!救世の一矢となり、戦いに幕を降ろそう!」

一夏は縮地を使い、福音の懐に潜ると現れた赤い弓矢を福音に向ける。

「我が絶技はを見届けよ!我が生死を汝らに託そう!―――流星一条(ステラ)ァァ!」

『ぐぅぅぅぅぅ!?』

放たれた究極の一矢は天を裂き、流星より疾く福音を射抜いた。

一夏が腕を降ろした瞬間、ピキッという何かが割れた音が聞こえる。

「チッ、今回は駄目か。まぁ、こいつは死ぬ(・・)ことの方が多いし仕方ないか」

よく見ると一夏の顔に、腕に、胴に、脚に罅が入り、その罅から炎が顔を見せている。

一夏が放った一撃は純粋な威力だけで言えば、かなり高い部類なのだ。

この権能の伝承では2500kmにも及ぶ射程距離と文字通り「大地を割る」威力を持つ、人ならざる絶技なのだから。

人ならざる絶技の代償として、高確率で死ぬが。

『今のは中々だったよ。でも、僕には届かなかったね!』

「今ので倒せればよかったんだがな!」

『グッ!な、何をする気だ!』

「今の状態じゃ、お前を倒す事は出来ない。だが、只で負けるわけにはいかない。痛み分けまで持ち込ませてもらう。だが、二回戦目は俺が勝つ!」

攻撃が終わり、機体の至る所に傷があるが平気そうな顔をする福音に一夏は背後を取り、逃さないと言わんばかりに福音に取り付く。

取り付いた瞬間、一夏の身体が、激しく燃え始める。

『まさか...自爆!?』

「傷も塞がらない。このままジリ貧をするくらいなら、一度場面をリセットしないとな!」

『グッ!このままじゃ――なんてね』

「何?グァァァァァァ!?」

福音に取り付いた一夏だが、福音の背中が膨れるとそこから、無数の棘と成り、一夏を貫く。

だが、いくら身体を貫かれようと力を緩める事は無く、むしろ先程よりも強く、拘束する。

『まさか、死に体同然のその身体ここまでの力とは...。流石は僕が認めた存在なだけあるよ』

「認めた...?俺は...お前と会うのは初めてのはずだ!」

『そうだね。今回(・・)は初めてだ。だけどそれより前から君の事を知っているのさ!』

「訳の分からんことを...」

グラッ、と意識が遠のいていく感覚に本格的にヤバいと思う一夏。

あまりにも血を出し過ぎたのだ。

そして、一夏の身体がより、一層激しく燃える。

落陽して、(プロミネンス)日は昇る(・フレア)

一夏の身体が眩い輝きを放つと轟音ともに爆発し、福音を紅炎が襲う。

例え、太陽が沈んでも時間が経てば、空に昇る様に、この技も一度死んでもまた蘇る事から名づけられた技。

灰となった一夏の身体は海中で集まり、燃え始める。

一夏の身体が蘇ろうとしている証拠だ。

炎が人型になり、少しずつ消火され、最終的に炎が消えると其処には五体満足の一夏の姿があった。

だが、まだ目覚めの時ではない。

一夏は潮の流れに身を任せながら、海中を彷徨う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の制服を着た一夏は砂浜に立っていた。

「ここは...」

目の前に広がるのはただ、広い海と白い砂浜が広がっている。

「あの忌まわしき狂ったフルートの音色が鳴った。こうも速い段階で、奴が動くとは思っても見なかったがな」

「お前は...」

一夏は声のした方を見ると其処には黒いズボンに白と黒のラインが入ったタンクトップに、五芒星が描かれたグレーのロングコート、背中より少し長い黒髪、その姿に一夏は見覚えがあった。

「久しぶりだな。織斑一夏」

「旧神...」

嘗て倒した、まつろわぬ神がそこにいた。

 




今回の一夏の使用した技の解説。

落陽して日は昇る

自分の命を一つ犠牲にした自爆技。
その自爆は太陽爆発と比喩されるほどの爆発を起こし、敵に大ダメージを与える。
極短時間で復活出来、傷も塞がるが一夏の精神力を大きく削る為、多用は出来ない。

元ネタ ウルトラマンタロウのウルトラダイナマイト

今回使った新しい権能は...分かる人ならすぐ分かります。


感想の返事は16日以降になります。実家に帰るからです。



戻っても、FGOはやりますけど!

水着スカサハ、水着モーさん、清姫を全力で取りに行く。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

リベンジと異変 加速する物語

パソコンの故障でデータ全部消えてスランプになっていましたが、頑張って投稿。

消える前の内容とだいぶ違うんだよなー

一番きついのはGジェネの方は完結まで言っていたのに消えたことですよ。





そんな私にも希望はあった。

FGOで弓王とイリヤが出たことです。その希望があったから私は頑張れた。




目が覚めればそこは海上でも、海中でもなくどこまでも続く見知らぬ砂浜と雲一つない青空。

だが、一夏は見知らぬ場所にいるよりも、目の前にいる人物対する感情のほうが大きかった。

 

「狂ったフルートは鳴った。その音に惑わされ、みすみすやられたか...これに託したと

思うと悲しいな。

 

―――なぁ、一夏」

 

「旧神...。なんで、お前がここにいるんだ。そもそも、ここはどこだ?」

「ここはISコアが各々持つ心象風景、白式の世界だ」

「...なるほどな。だが、ここでひとつ疑問が生まれる」

「なんだ?」

 

今いる場所が白式の世界だと理解した。一夏は奥で水遊びをしている白いワンピースの少女とそれを見守る白い騎士甲冑の女性を横目で見ながら、旧神に問う。

 

「ここが白式の世界だというなら、神であるお前が何故、ここに存在する。お前は俺が―――」

「倒した。そうだ...。俺はあの時、お前の死滅の朱槍によって貫かれ、呪いによって、俺は消滅した。だが、消滅する寸前に強大な何かよって別の場所に移されたとしたら?」

「その巨大な何かとは、何だ?」

「星、もしくは世界の意思と言ったところかな。そして、大いなる存在はこれから起こるであろう事に危機感を覚えている。それに立ち向かえるのは一夏、お前だ」

「...俺。だが、その大いなる存在は何に対して危機感を覚えているというんだ。わからないければ対処はできないぞ」

 

自分がここにいるのは世界の意思だという旧神だが、その意思は何かに対して危機感を覚えているらしいが、詳細が分からない以上手の打ちようがないという一夏。

 

「確かにそうだ。だが、お前にはその事実はまだ早い。だが、その元凶とならもうお前は交戦している」

「......福音に憑いたまつろわぬ神か」

「奴は行動的な脚本家だ。自らの描いた物語を実行し、問題が起きれば自らの手で修正していく。お前は自分の体に違和感があったはずだ。それも奴にとっては物語において重要なキーワードでもある」

「違和感...。」

 

違和感という言葉に一夏はあの時の感覚を思い出す。

自分が自分でなくなる感覚に一夏は戸惑いを隠せないでいた。

 

「あれはなお前を○○に変える。決して逃れる事のない呪いだ。幸いなことにその呪いのそこまで進んでいない」

「じゃ、俺はいずれ○○になるというのか! なぜだ!」

「俺とおまえが戦った時に......いや、アイツに目を付けられたときに決まっていたのかもしれん」

「そんな...」

「だが、抗うことはできる。その為の力も貸してやる」

そういうと旧神は一夏に二つの大型拳銃を渡す。

「これは俺が愛用していた。旧支配者の力を借りることができる特製のものだ。後は―――あまり長く話しすぎたか、外も大変なことになっているな」

「外...? そうだ、外にはアイツが!」

「そのまま言っても、返り討ちに会うかもしれん。それでもか?」

「あぁ、俺が嫌いな言葉が一つだけある。それは諦めるだ。諦めが人を殺す、人はどんなに困難なことがあっても、立ち向かい、乗り越えていくことが出来る。だが、諦めてしまえば、乗り越えられる困難も越えれず、自分の夢も、希望も、可能性を殺してしまう。それは抗うこと事を忘れ、流されるがまま流されてしまい立ち向かうことができなくなるからだ。だから俺は諦めない。何が何でも!」

「奴と戦って、心が折れたのかと思ったが...いらぬ心配だったか。お前のあり方を目にしたからこそ、俺はお前に託すことができたんだ。俺にもう一度光を見せた褒美だ。特別厄介な外道の術を教授してやる。その力でお前のやりたいことをやってこい!」

「なら、お前の望む通り、俺のやりたいようにやらせてもらう!」

 

そうすると、一夏の足元に五芒星の魔法陣が現れる。

 

「お前の意識は現実に戻される。外ではお前の大切な奴らがアイツと戦っている。お前の為にな」

「あれほど戦うなと...」

「お前にとってアイツらが大切なように、アイツらもお前が大切なんだよ。だから―――」

旧神は一夏を一瞬だけ、悲しい表情をすると一夏を力強い視線をを送る。

「決して離すな、取りこぼすな、逃すな。俺が言えることはそれだけだ」

一夏は拳を突き出し、そして不敵に笑った。

「フッ、言われるまでもない」

 

 

そういうと一夏は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう!どんだけ強いのよ!?」

「一夏さんがやられた理由も納得の強さですわ...」

「うん、僕の銃撃も盾殺し(シールド・ピアス)も全然、ビクともしないね」

「あれ程の速度では狙い撃ちは不可能だ...」

「紅椿が手も足も出ないとは...」

「山嵐も同じ...、それでも諦めない。倒すことはできない、いい所、時間稼ぎにしかならない。それで構わない。一夏が戻ってくるまで私は抗い続ける」

 

機体はボロボロ、装備も破壊されSEもだいぶ削られ、敵の圧倒的な強さに心が折れそうになるが、死に物狂いで、立ち向かった一人の少年(一夏)が戻ってくるまでの時間を稼ぐ。

戦意消失していた箒を鈴と簪でたたき起こし、やる気を出させ、今に至るのだが敵が人を超えた存在―――まつろわぬ神である以上、勝ち目など無いに等しい。

なら、なぜ彼女たちは戦っているのか。

それは自分たちの為に命を張って戦った男が戻ってくるまでの時間稼ぎである。

本音を言えばある程度ダメージを負わせたいが、恐らく無理だろう。

それでも彼女たちは戦う。彼が戻ってくるまで。

 

「ハァ!」

 

簪は薙刀で接近戦を仕掛け、離れれば超電磁砲で応戦しながら、戦う。

 

「そこ!グワァ!?」

「箒!!ハァァァ!!」

 

福音の背後を取った箒は両手に持った刀を振りかざすが裏拳で刀身を砕くと尻尾で箒を拘束する。

下手に動くことができなくなる。

それを見かねた簪は薙刀で連続で突きを放つがすべて躱され、箒を助けようと残りのメンバーも攻撃に加わるが、拘束していた箒を盾にすることで防ぎ、箒を危険にさらしてしまう。

 

「グゥ...。なめるな!」

『!?』

「デェェヤァァァ!!」

 

拘束されていた箒は一瞬の隙を作るため、折れた刀を思いっきり福音の背中に叩き付けると思わぬ攻撃に福音の気が逸れると、簪は加速しながら、突きを放つ。

 

「なッ!?」

 

だが、福音が白刃取りをし、薙刀の刀身をそのままへし折ると刃の部分を逆手に持ち心臓めがけて振りかざす。

刺されると思った瞬間、金属同士がぶつかる甲高い音が響くと同時に一つの人影が現れる。

そこにいたのは日本に伝わる鬼を沸騰させる二本の角、ウェイングクラスターの形が収納、変形し、装甲の所々にグレーが交じり、装甲も軽量化され、日本刀で福音が振りかざした刃を防いでいた白銀の髪の少年。

 

「挑むなと言ったのに...馬鹿者。だが、強者に恐れず挑むその姿勢と意気込みは中々だったぜ」

「やっぱり...無事だった...。よかった...生きてて...本当によかった」

「心配かけたな。後は俺に任せろ」

一度、福音を押しのけると裏拳を腹部に食らわせ、福音との距離を作る。

「だが、一人で大丈夫か?姿が変わっているから恐らく、二次移行しただろうが。お前は...」

「確かに一度やられたさ。だが、お前らのSEも心もとないんだろ?なら、俺が行くのが一番だろ」

「じゃ、一夏。約束して必ず帰ってきて」

「うん。また負けるんだったら、手榴弾を飲ませるからね?」

「何、そのブラックジョーク...。まぁ、任せろ。必ず勝ちをもぎ取ってくるさ」

 

そういうと一夏は遠くで自分を待っている福音を見据える。

 

「白式・夜叉、織斑一夏...参る!」

 

折りたたまれたウィングクラスターを展開すると、炎の様に放出された光はやがて翼となり、その姿はまるで大空に羽ばたく不死鳥を沸騰させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それが君の新しい姿か?中々、幻想的だね』

「俺の前だと喋るんだな。まぁ、いい...。決着を付けようか、クトゥルフの神々」

『僕の声は君にだけ聞いてほしいのさ。他でもない君自身にね。君の新しい力で僕の心を躍らせてくおれよ!』

「行くぞ!」

 

まず最初に動いたのは一夏だった。

鞘に納めていた刀を抜刀し、斬撃を飛ばすと同時に移動相手の背後を取る。

 

『おっと、その程度の火力じゃ、僕に傷をつけることはできなよ?』

「流石にまつろわぬ神相手だと効かないか」

 

斬撃と同時に行う挟み撃ちは常人であれば反応できずに大ダメージを負うが、まつろわぬ神相手では効果はなく拳で斬撃をかき消し、空いた手で防いでいる。

その後、何度かぶつかり合うと、白と黒の螺旋を描きながら、上昇していく。

 

「流石に生半可な武器だと太刀打ちはできないか...」

 

『じゃ、どうするんだい?まさか、これで終わりなんて言わないよね?』

一夏は不敵に笑うと旧神から授かった二つの武器の名を呼ぶ。

 

「イタクァ!クトゥグア!」

『そ、その武器は彼の...!?』

「燃やし尽くし、凍てつくせ!」

『ぐぅぅぅ!?』

 

赤と青の三つの弾丸は爆炎と冷気を纏ながら、福音めがけ放たれる。

最初の弾丸をはじき、もう一発を避ける。

最初の一手はよかったが二手目の行動は悪手だった。

避けた冷気の弾丸は途中で方向転換し、背後から福音を襲うと間髪入れずに正面から爆炎の弾丸が襲う。

この弾丸は旧支配者の力だけではなく、弾丸には旧神の印が施されている為、威力は上がっている。

そこから先は銃撃戦に代わり、一夏はイタクァとクトゥグアを放ち応戦するが、弾丸が底を尽きる。

クトゥグアを素早くリロードすると、福音に向ける。

 

「クトゥグア!」

『ぐぅぅあぁぁぁ!ハァァァ!!』

「チッ!このぉ!!」

 

クトゥグアの攻撃に一瞬怯むが、攻撃を耐えると一夏に接近し、右手に持ったクトゥグアに対し回し蹴りをした後、一夏に踵落としをする。

回し蹴りの衝撃でクトゥグアを手放し、態勢を崩された一夏は一度後退し、福音を見据える。

 

「やはり、使うしかないか...」

『まだ何か隠しているのかい?なら、惜しみなく僕に見せておくれよ』

「あんまり、使いたくないが...。直接的だろうと間接的だろうが俺に影響が出るから

な...。それにこのままだと勝ちは薄そうだからな、仕方がないか」

 

そういうと一夏はイタクァを仕舞う。

 

「疑似神格化・旧神」

『ぐぅ...この気配は旧神?いや、旧神の力の一部を引き出しているのか!』

「よそ見をする暇があるのか!」

『チィ!』

 

嘗て激闘の末に倒した神である、旧神が白式の中に居た為に起きたイレギュラー。

宿った旧神の力を権能を使わずに一時的に、引き出す事が出来る。

一夏の左目の瞳が赤く染まり、目元には奇妙の模様が現れ、白式が白一色に統一され、ウィングクラスターを覆おう五芒星のマントが現れる。

 

「阿修羅観音!」

『えぇい、小賢しい!』

 

虚空より現れた複数の刀、小太刀が福音めがけ放たれ、福音はその刀を片っ端から弾くが、弾かれた二本の小太刀を持つと腕を交差させる。

 

十字断罪(スラッシュ・クロス)!!」

『ぐぁぁぁああ!!』

 

ただ敵を十字に切り裂くだけの簡単な技だが、直前で雷を纏い旧神の力を上乗せさせたその一撃は十分なものだった。

 

『まだ!まだ終わらないよ!!』

「ゴホァ...」

 

相手を斬る以上、相手に近づかなければいけない。

福音は一夏の攻撃に耐え、その鋭利な爪で心臓を貫くが、まるで手ごたえがなかった。

次の瞬間、ガラスが砕けるような音が聞こえると先ほど貫いた一夏の幻影(・・)が消える。

 

『幻影!?いつの間に!!』

「トリックだよ!」

『ッ!?』

 

本体を探していると自分より遥か上空から声が聞こえると、そこには福音めがけ直進している一夏の姿があった。

 

『また神風かい?芸がないよ!』

「なら、こいつを食らいやがれ!!旧神お前の技使わせてもらうぞ。術式展開!

 光射す世界に、汝ら暗黒棲まう場所なし」

『そ、その技は彼の...!?』

 

一夏と福音を覆うように結界が張られる。

周囲への被害を極力防ぐと同時に、これから叩き込む攻撃の威力を余す事無く相手へとぶつけるために。

まるで右手を相手に見せ付けるように開き、腕を突き出す。

その開かれた右手のひらには、膨大なエネルギー―――無限熱量が収束している。

右手を振りかぶり、一夏は福音に突撃する。

 

「レムリアァァァァ......インパクトォォォォォ!!!」

「ーーーーーーーーーーっっ!!」

 

 

予想外な事態に何もできず、ただただ、声にならない声をあげるだけだ。

そのまま近くにあった島に福音を叩き付ける。

 

『っぅぅ、ぬっぅぅぅぅ!!』

「グッ...!」

 

福音は右手で一夏の首をへし折らんと掴み、一夏は苦悶の表情を見せるが攻撃の手を緩めない。

福音の最後の抵抗もやがて、緩み始めると一夏はここで一気に畳みかける。

 

「昇華!!」

 

一夏の声に反応し、結界が収縮。

その後、叩き込んだ熱量が弾け、周囲一帯ことごとくを焼き尽くした。

当然、その爆心地とも呼べる地点にいた福音はただでは済まさず、周辺に罅の入ったコアと多少やけどがあるが、まだ生きている福音の操縦者がそこにいいた。

 

「ハァ...ハァ...。やったのか...グッ!?」

 

疑似神格化も解け、元の白式に戻ると先ほどまで赤い瞳や奇妙な模様は消えるが、一夏が苦しみだすと消えたはずの変化が現れ、模様は先ほどよりも大きく、そして、より濃く現れる。

苦しみだす一夏の周りに黒い影が現れる。

 

『どうやら、今回は君の勝ちの様だね』

「第三ラウンド開始か...」

『僕としてはそう行きたいところだけど、今の君と戦ってもつまらなさそうだし、誤っ

 

て君を倒してしまったら、僕の描いた脚本(シナリオ)に支障をきたすからね。今回はこのままおとなしく下がるよ』

苦悶の表情を浮かべながら拳を構える一夏にこれ以上戦う意思はないと言う。

 

『君も気づいているんだろう?このままじゃ僕に勝てないってね。なら今より強く力を

つけておくれ。じゃないと君との勝負はつまらなくなるからね。その時までに素晴らしい姿になってること願ってるよ。僕の愛しい一夏。フフフ、ハハハハ、アッーハハハハハ!』

「言いたい放題...言ってくれる」

 

笑い声と共に消えていく、気配に悪態を突きながら体が限界だったのか膝を突く一夏。

そんな彼に複数の機体が集まる。

 

「大丈夫、一夏?」

「あぁ...、大丈夫だ...」

「ところで一夏、その髪は...」

「髪?」

 

シャルロットは一夏の異変を指摘し、一夏は自分の一本引き抜くとそこには黒髪ではなく白銀の髪がそこにあった。

 

「私と同じですね。師匠!」

「あぁ、うん」

「ラウラさんフォローになってませんわ」

「福音は無事に倒すことが出来たんだな」

「だな。さて、旅館に戻るとするか」

 

そういうと一夏は立ち上がる。

 

「うん、そうだね。きっと、織斑先生の説教が待っていると思う」

「だよねー。私達、待機命令無視して行動したんだもんね」

「ふむ、早く戻らないと反省文とかが増えそうだな」

「あー、戻るのなんかいやだわー」

 

そんなこと言いながら、一同は旅館に帰還するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「作戦終了と言いたいが......お前達は独自行動で重大な違反を犯した。帰ったらすぐに反省文の提出と懲罰用の特別トレーニングを用意してやるからそのつもりでいろ」

 

旅館に戻るとそこには腕を組み仁王立ちをしている般若(千冬)の姿があった。

彼女の怒りの理由は学園に戻った後、来るであろう報告書と各国家に対する専用機の被害報告、謝罪など徹夜覚悟の仕事が待っていることに対する八つ当たり......ではないはず。

 

「それと織斑」

「はーい」

 

次の瞬間、ガキンッ、と何かがぶつかる音が聞こえると一夏の頭に振り下ろされようとした出席簿とそれを受け止める一つの木刀があった。

 

「なんの真似だ。ガーネット兄」

「なんの真似だも何も、けが人対して、暴行しようとしている教師の行動を止めたまでです」

「暴行ではない。私、織斑千冬がその軽薄な態度を粛清しようというのだ。何故それがわからん」

「エゴですよ。それは」

「なんか、アクシズ落ちそうだな」

「誰か虹に乗らないと」

 

自分の正当性をいう千冬だが、それをエゴだと言うマハードに一夏と簪は某機動戦士の流れを連想していた。

 

「織斑先生、それよりも大切なことがあるのでは」

「ん?あー、そうでした。織斑」

「ん?」

「その髪はどうした?」

 

一夏は普段黒髪で通しているが、実際は過去の神殺しで色素が抜け白銀になっている。

福音とのリベンジ時、髪を戻さずに戦闘していたので、気づいていなかった。

一夏からすれば普段通りだが、周囲からすれば異変ともとれるだろう。

 

「あー、人間は強烈なショックやストレスによって髪の色素が抜けるという事例があってな恐らくその類だろう」

「強烈なショック...」

 

箒は心当たりがあるので深刻な顔をするがこの髪になったのは小さい頃なので、実際のところ関係ない。

曖昧な返事をしていると、千冬が話しかける。

 

「織斑君は一番のけが人ですし、髪の事もありますから、ほどほどした方が...」

「そうですね...。ここまできれいに落ちるということは相当なものだったのでしょう。

織斑は特別に免除だ。有り難く思え」

「アリガトウゴザイマス」

「各自解散!自室にて待機だ。福音の操縦者は医務室に連れていき身体にに異常がないか検査させろ」

 

 

 

各自解散後、一夏の部屋には鈴、簪、シャルロット、マナ、マハードの姿があった。

 

「にしても、一夏も髪の色素が落ちるなんて大変だね」

「まぁ、昔からだからなー」

「え?一夏の髪って黒だよね?」

「あれ?シャルロットは知らないの?」

「何が?」

 

シャルロットは何に対して知らないのか首をかしげると一夏が口を開く。

 

「シャル、俺の神殺しの二つの名は?」

「白き王」

「その白き王ってのはこの白銀の髪が由来なんだよ」

「じゃ、一夏の髪って...」

「小さい頃に黒から銀髪へ、離れて数時間で髪の色変わったらあの人取り乱して何するかわからないから、その場で髪を黒く染めて、定期的に黒にして周りを誤魔化していたね」

「どういうわけか黒く染めても気分が高揚とすると白銀に戻りますからね」

 

そうそう、と言いながら笑う一夏。

 

「その事って誰が知ってるの?」

「ここにいるシャル以外と、知り合いの弾って奴と神殺し関係」

 

この時、謎の置いてけぼり感に襲われたシャルロットだった。

 

「じゃ、皆はどういう経緯で知ったの?」

「私は一夏の従者ですからね」

「出会った時は銀髪だったからね」

「私は同級生は見た、的な感じよね」

「私は姫巫女だから、政府から聞いた。そ、それに助けてくれた時、白銀だった」

 

orz状態のシャルロットは許嫁だとかいいポジションなのに、持っている情報の差に後悔した。

 

 

 

 

 

いよいよ、IS学園一行は学園へと帰る事になった。

既に殆どの生徒がバスに乗り込み、残るは教員が乗り込むだけとなっている中、ふと視界の隅に見覚えのある金髪が映ったのに気がついた。

その人物は明らかに日本人ではなく、そしてIS学園の生徒でも教員でもない人物、この旅館に現在居る人物でIS学園関係者以外の外国人となれば一人しか居ない。

 

「ナターシャ・フアィルスか」

「久しぶりね。ブリュンヒルデ」

「なんの用だ?私達はこれより、IS学園に戻らねばならないんだが」

「ちょっとお礼にね。貴方の弟、織斑一夏君にね」

 

千冬は少し、考えた末、了承し、一夏を呼び出す事にした。

 

「だが、時間が迫っている。手短にな」

「はいはーい」

 

軽い挨拶をするナターシャだが、千冬は気にせず、バスの中にいる一夏を連れてくる。

 

「なんの用ですか?は不要か」

「貴方にお礼をしたいと思って、それと...」

 

ナターシャは一つのアクセサリーを取り出す。

 

「これについてもちょっとね」

 

それは修理不能まで砕けた福音のコアをアクセサリーに変え、ナターシャに送ったのは何を隠そう一夏本人である。

 

「まずは私とこの子を助けてくれてありがとう。朧げな意識の中、貴方があの闇から私

たちを助けてくれたのは覚えているわ」

「別に気にしなくていいですよ。助けるべくして、助けたんですし。それにそれが()の役目ですから」

「そう、それと一つ聞きたいのだけど。あの得体の知れない闇について教えてくれるかしら?」

 

得体のしれない闇が何を意味しているのか一夏は分かっているが、一夏は教えるつもりはなかった。

 

「正体については俺も知らない。だが、福音がそうなった理由は知っている。福音は貴女を守るためにその身を闇に差し出すことで、貴女に与える影響最小限にしたんですよ。そして、闇から守り続けた結果、戦いが終わると同時に力尽き砕けた」

「そう...。あの子は私のために...」

「もう、あなたと一緒に空を飛ぶことは出来ない。だけど福音の貴女を守りたいという(コア)の欠片は貴女と一種だ。きっと、貴女のことを見守ってくれますよ」

「一緒に飛べないのは残念だけど、これからも一緒なのね」

 

握りしめたアクセサリーから五芒星の紋章が姿を見せる。

福音が身代わりになったとはいえ、クトゥルフの神が取憑いていた以上、何かしらの影響があるかもしれないと思った一夏は福音のコアの欠片に旧神の権能を使い邪気を浄化し、身に着けている者を守る様に仕組んである。

 

「そろそろ、時間なんで戻りますよ」

「えぇ、時間を取らせてごめんなさいね」

 

一夏はバスに向かいながら手を振り、ナターシャはそれを見送る。

 

 

 

 

一夏の乗ったバスは出発の時間となり、IS学園に向かって発進していく。

その様子を遠くから見るものがいた。

機械のうさ耳に不思議の国のアリスを思わせる服を着た女性、篠ノ之束だ。

 

「今回の彼は予想外な力を持っているから、これから先が楽しみだな。何せ、前の旧神が使っていた武具を使えるんだからね!」

 

篠ノ之束の周りに深淵が噴き出るように現れ、三つに分かれた燃え上がる目が一夏の乗るバスを見つめていた。

 

「まだ、君は強くなれる。強くなって最後の戦いのとき僕を楽しませておくれ。愛しい愛しい僕の一夏」

 

深淵は束の身体に吸い込まれるように消えていくと束は周りを見渡す。

 

「あれー?束さんなんでこんな所にいるんだろう?んー、流石に天才の束さんでも十徹は苦行だったかー。そのせいで、記憶に穴があるよ。早く戻って、くーちゃんの料理食べてナデナデしよっと!」

 

そういうと束は姿を消し、そこには誰もいなくなった。

 

 

 

 

 

 

これは一夏が歩む数奇な物語の序章、終わりの始まりでしかない。




次のサンタは邪ンヌじゃだめですか?





最近、ステゴロ聖女使うの楽しい。

一日一回の流星一条と鉄拳聖裁


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王の夏休み

ネエエェロォォォッ!


ということで、タイトル通り夏休み編です。

実はこの話、途中まで書いたはいいけど、最後まで書いたとき保存せずに閉じちゃったんですよね。

なので、後半は当初書いていたのと違う展開になりました。





IS学園も夏休みに入るのだが、ある生徒は優雅の時をある生徒は苦行とも言える時間を過ごすか決める大きな障害があった。

それは期末テストである。

頭脳明晰な一夏は特に苦も無く乗り越えたが、IS学園はISに関する授業以外にも普通の高校と同じ授業もある。

国語と日本史が苦手なマナはテスト一週間前から一夏とマハードに頼み込み、教えてもらい、尚且つ一夏との距離を縮めようとするも、同じことを考えていた、一夏ラヴァーズによって阻止され、みんな仲良く一夏に教えてもらった。

 

「自然と頭の中に残る」

「分かりやすい授業」

「分かるまで的確に教えてくれる」

「ただ、小テストをするんじゃなくて、解説も入れてくれる」

「もう、アイツが先生すればいいと思う」

 

等々、高評価であった。

一夏の授業も分かりやすいのもあるが、呑み込みが早いのと意欲があるため一夏は熱心に教え込み。

結果、全員補修を免れたのである。

 

 

 

 

 

そして、夏休みのある日。

 

『.........』

 

その表札に書かれた、『織 斑』の文字をまじまじと見つめている。

夏の強い日差しが照りつける中、その少女......シャルロット・デュノアは固唾を呑んで立っていた。

 

「大丈夫大丈夫...。今日はいるって言ってたから...」

 

自分に言い聞かせる様にして、シャルロットは織斑家のインターホンに指を伸ばす。

だが、指先がボタンに近づいていくに連れ、次第に心臓の音が激しくなっていく。

 

「うっ......ううっ......!」

 

あとほんの数センチ。

だが、その数センチが中々進まない。

まぁ何と言っても、一夏の家なのだ。好きな異性、許婚、将来の旦那様、将来が約束された?相手なのだから、問題ないと強く言い聞かせ、インターホン押そうとした瞬間。

 

「届け!僕の思い!!」

「なーにやってんだ。お前」

「ひゃぁ!?」

 

背後から聞こえた声に不意を突かれ、小さな悲鳴を上げるシャルロット。

 

「い、一夏いつの間に!?」

「なーんか、インターホンの前でもたついてる当たり」

「最初からだよね!?」

「まぁ、入れよ。お茶くらい出すぜ」

「...う、うん」

 

どこか恥ずかしそうな表情でシャルロットは答える。

それもそのはず、先ほどまでの痴態をほぼ全て見られていたのだから。

 

 

 

 

手の甲で額の汗を拭う一夏の後ろ姿を見て、シャルロットは喜びを噛み締めながら後をついていく。

玄関の扉を開け、中に入る。

すると、そこにはすでに、靴が三足置いてあった。

そのうち二つはどう見ても女物の靴だ。

 

「......え?」

 

一つはマハード、もう一つはマナと予想できるが、もう一つが予想できない。

まさか、新たな敵(恋敵)ではないかと思い、一つの不安を抱えながら廊下を進んでいくと居間へと繋がっている扉を開けた瞬間、不安は確実なものになった。

 

「お帰り一夏」

「外は厚かったでしょう。冷えたスポーツドリンクです」

 

居間に入るなり、マナとマハードが出迎えてくるのは予想済みである。

だが、一つだけ予想外な事があった。それは―――

 

「お帰りなさい。一夏さん!お腹減ったのなら何か作ります!後これタオルです!」

「ん?別にいいよ。はいよ、人気ファッション雑誌『フェアリーダンス』」

「ありがとうございます!」

 

目の前にいるピンクのスカートにオレンジのラインが入った黒のアメリカンスリーブを着たマナとそっくりな少女がいることである。

 

「ねぇ、一夏その知らない女の子は誰?」

「紹介がまだだったな。彼女は―――」

「はい!マナお姉ちゃんとマハードお兄ちゃんの妹、ガガ・ガーネットです!中学二年です!」

「エジプトの学校が休みに入ったから遊びに来たそうだ」

「そ、そうなんだ」

 

シャルロットはガガと呼ばれた少女を観察すると見れば見る程、マナとそっくりだが、違いとしては身体的な特徴として身長とマナの瞳が翡翠色に対して、ガガはルビーのように赤い瞳のである。

後は胸であるが、もちろん姉である、マナの方が大きいがガガは一回り小さい。因みにシャルロットは二人の中間くらいである。

そして、シャルロットは乙女の感というもので、気づいた。―――ガガも一夏に惚れていると。

 

「ふ、ふーん。三人とも僕より前に来たって事?」

「私は一週間前から来ています」

「え?」

「私とマナは一夏の家に住んでますよ。三年以上前から」

「うん(ドヤッ」

「えぇぇ!!?」

 

衝撃の事実と出遅れた感がシャルロットを襲う。

 

「なんだよ、さっきから騒がしい」

「べ、別に羨ましくないもん。僕は一夏の許嫁なんだから」

「そうですね。まぁ、許嫁だからと必ず結ばれるとは限りませんよね?」

「グフッ!?」

「おぉと!ガガの口撃がシャルのLP(精神)にダイレクトアタックだ!!」

 

今の現状とライバルの多さを考えた時、現実に起きそうことを言われた途端、シャルロットは口から血を吐いた......ようにみえた。

 

「あ、そうだ。黒鍵の刃こぼれ直してくれる?」

「またですか? 構いませんが最近多くないですか?」

「仕方ないね。女尊男卑主義者だとか、IS委員会の差し金やら、白衣を着たマッドな人とかから狙われてるからね」

 

肩を竦めやれやれ、と呆れた表情の一夏。

そう、一夏は夏休みに入るなり、襲撃を受けているがそのすべてに返り討ちにしているのだ。

そのかずざっと100を越えている。

 

「死人は?」

「出してない。無明三段突きか暗殺者みたいな闇討ちがメインだからな」

「IS相手は?」

「九頭龍閃」

「数が増えてるじゃないですか。やだー」

「後は新技の実験に鶴翼三連」

「一夏が考えた投擲と斬撃を重ね当てる必中不可避のコンビネーション、でしたね」

「あれはお互いに引き合う特性とかないときつい。ない場合の成功率は2割だ」

 

襲撃の際に一夏が相手をなめて戦っている部分があるということである。

相手が人間、一夏は神殺し。その力量もさることながら、多くの強敵と戦って来た一夏からすると弱すぎるのである。

 

「ガガって子の前でそんな話してもいいの?」

「ガガも魔術見習いだから問題ない。ねぇ、神官さん」

「確かに私の家系は代々神官ですし、本来であれば私が神官を務めるわけですね。長男ですから」

「へぇ、そうなんだ」

 

(こっそり、一夏とお話ししようと思って、ここへ来たなんて知られたら......!ていうか、一夏の弟子として僕が一番下なの!?)

 

(......とか思ってるんでしょうね~。残念、何年も前から一夏の家に同居しているから、抜け駆けは不可能よ!)

 

(また一夏さんを巡るライバルが増えてる...。多分、IS学園でさらに増えてるんだろうな。こうなったらお母さんに頼んで、日本に留学して、一夏さんの家に住もう!!)

 

などと三者三様な考えが巡っている中、マハードは姉妹丼でよくね?、という考えを持っていた。

 

「とりあえず、紅茶と自作のクッキーだ」

「...ど、どうも」

「一夏さんの料理っておいしいよね。...女性としてなんか悔しいけど」

「あろうがとう~♪」

 

本を取りに書庫に向かおうとした途端、インターホンが鳴る。

 

「また?来客多くね?」

 

時点での家主である一夏が、部屋の中に取り付けられている内部カメラの映像を通して、外でインターホンを押した人物の姿を見る。

そこに立っていたのは......。

 

「あ、セシリア」

『ごきげんよう、一夏さん。ちょっと近くを通りかかったので、様子を見にきましたの』

「誰が来たんですか?」

「セシリアが来た」

 

来客が多いな、と思いながら玄関まで向かう。

玄関でスリッパを履いて、外で待っているセシリアを迎えに行く。

セシリアも一夏の出迎えに、顔を綻ばせ、意気揚々と一夏の背中についていく。

 

「...ど、どうも」

「セシリアも遊びに来たんだ」

「初めまして、ガガでーす。よろしく!」

「外は熱かったでしょう。紅茶とクッキーです」

「まぁ、よっくりしていけよ」

「ア...アァ...ァァ...」

 

しかし、そんなに上がっていたテンションも、リビングに入った瞬間にFXで有り金全て溶かした人のような顔をするセシリア。

 

「まぁまぁ、そんな所に突っ立ってないで、ここに座りなさいな」

「え、あ、は、はい......って! なんで皆さんがここに居ますの!?」

「私とお兄ちゃんは一夏の家に住んでるからね」

「以下同文」

「エジプトから遊びに来ました!」

「なっ!えぇぇぇ!!??」

 

この流れ、デジャブを感じる...、とシャルロットは心の中で思った。

 

「では、此方の黒鍵を鍛え直しますので、替えを持ってきます。何かあったら、携帯の方にワンコールください」

「え?ほら貝じゃダメ?」

「お兄ちゃんなら、犬笛とかでも来そうだよね」

「ここは戦国時代じゃないんですよ。それとガガ、私は確かに一夏に忠誠は誓ったが、犬ではない」

 

一夏以外は忠犬というイメージがあるので、心の中でいやいや忠犬でしょ、と内心ツッコんでいた。

 

「あ、そういえば一夏の部屋ってどこにあるの?」

「ん?二階にあるぞ」

「ちょっと、見てもいい?」

 

と、いきなりの事だがシャルが提案する。

 

「私も一夏さんの部屋に行きたいです!」

「別にいいけど...。なんでまた」

「気になるもんなんだよ?男性の部屋って。...特に好きな人のだと尚更」

 

シャルロットの提案に乗っかるガガに構わないという一夏だが、なぜそこまで行きたいのか理解していないのに対し、マナが説明するが、最後の方は小さくて聞こえていないようだ。

行きたいのなら仕方ない、と一夏は自分の部屋に案内する。

階段を上り、少し歩くと部屋が左右に六つの部屋が確認できる。

 

「あ、右側の一番奥は千冬姉の部屋だから」

「私は左側の一番先頭で、お兄ちゃんが私の隣」

「俺の部屋は右側の一番先頭のここだ」

「へぇー」

 

学園では凛々しく全生徒の憧れの千冬の部屋がどんな部屋か興味があるが無断で入り、その事がばれた場合、どんな目に考えた瞬間、絶対入らないでおこうと思った一同である。

 

「ここが一夏さんの部屋なんですね!」

「これが殿方のお部屋ですか...!」

「綺麗に整頓されている。男の子の部屋ってもって散らかってるイメージが...」

「周りは出来て、自分の部屋だけできないのはおかしな話だろう?部屋が汚部屋になっているのは千冬姉の方さ」

 

四方を覆う様にある本棚、本棚、本棚etc...一夏の趣味を知っていれば納得の部屋だが、知らなければドン引きするレベルの色々なジャンルの本が置いてある。

 

「一夏さんって、考古学や神話系の本がお好きの様ですから、そういった本がたくさんあると思っていましたわ」

「あー、そっちは書庫があるからそっちにあるんだよ」

 

今本棚にある本の7:3の割合で、漫画、ライトノベル系が多い。

以前、独自ルーツから手に入れたかなり古い文献を手に入れたのだが、勝手に入った千冬によってゴミに出されかけたことがあるのだ。

本人は知らないが、その価値は専門家に渡せば、仕事しなくても織斑家の四人が裕福な生活ができる程のお金が手に入るなど思いもしないだろう。

そんなことを思い出していると来客を知らせる音が鳴る。

 

「まぁたー?」

「あ、私が行きます!一夏さんは待っててください!!」

「ちょい待ち。行かなくていいから」

 

そういうと一夏はスマホを取り出し、ワンコールすると切る。

 

「ちょっと、玄関行って、相手の対応頼んだ」

 

一瞬現れた気配はまるで最初から居なかったかのように消える。

 

「一夏さん、今のは...」

「多分、お兄ちゃんでしょ?」

「というよりも、あんな事できるのお兄ちゃんだけ」

 

『ドーモ。リン=サン。マハードです』

『アイェェェ!マハード!?マハードナンデェ!?』

『勝手に入る不届き物は成敗!』

『イヤーッ!』

 

代表として、セシリアが疑問を言うとマナとガガが答える。

すると、突然の悲鳴から少し経つと複数の足音が階段を上がってくる音が聞こえると三回ドアをノックする音が聞こえる。

 

「どうぞー」

「一夏、お客様と不届き物です」

「ああ、すまん一夏。勝手に上がり込んで」

「 久しぶりだな、師匠。夏休みに入ってから、会う機会が減って、私は寂しいぞ」

「お、お邪魔します...」

「別に来るのはいいんだが...」

 

一夏はジト目で鈴を見る。

 

「不届き物って、お前何したんだよ」

「私の家は私の家、一夏の家は私の家。自由に上がり込んで当然でしょ」

「何その、ジャイアニズム」

「だから成敗したんですよ」

「痛かったわー」

 

このマハード、一夏に近づく不届き物は家族だろうが親友だろうが問答無用で成敗する。

一夏は鈴の自滅だな、と片付ていると。

ラウラと簪が部屋を物色している姿が見えた。

 

「なに、やってんだ。お前ら」

「「エロ本探し」」

「友達の家に遊びに行った時にやるべき行動だと、副官が行っていた」

「い、一夏がどんな女性に興味があるのか知る為...。それは有益な情報源に...」

「んなもんねーよ。てか、ラウラ。それは男同士の友達の家に行った時に起きるイベントだから」

 

二人のやろうとしている事を知った一夏はない事を主張し、突っ込みを入れる。

そんな時だった。一夏の視線が鋭くなるとマハードに何か要求する様に手を差し出すとマハードは替えの黒鍵を取り出す。

窓を開け、家の庭に生えている木を凝視すると黒鍵をまるで投擲するような構えをとるとそのまま思いっきり投げる。

 

「な、なんの真似だ。一夏!?」

「一体何事ですの!?」

「さっき投げたところ見てみろ」

「え?」

 

一同、その一点を見つめると、そこには切り落とされた機械のうさ耳と布の切れ端が落ちていた。

 

「なんか妙な視線を感じるな、と思って投げてみたが正解だったようだな」

「一夏、心当たりは?」

「災厄兎。チッ、今度血祭りにあげるか...。でもなー、アイツと戦うのなー、めんどいんだよな」

 

そういうと、二階から飛び降り、一撃で仕留めるつもりだったが、致命傷にならず、要らない部位破壊のみ、となってしまった。

確認した一夏は二階に戻ると、思い出したように一同を見る。

 

「そうそう。俺、明日の朝一番で日本から居なくなって海外に行くから。夏休み最後まで戻らないので」

「えぇ!?」

「それはどういうことですの!?」

「先客なんだから、仕方あるまい。何か月も前から会う約束してるんだから。大型連休は師匠の所に行くのがお約束だからな」

「因みにそれどんな人?」

「一人は鈴も一度は見ているぞ。秘書然とした女性」

 

思い出した一夏は明日には日本を離れることを言うと箒とセシリアが驚き、鈴はどんな人に会おうのか気になったらしく、聞いてくると、一夏はどんな感じか教えるとポン、と手を合わせ、納得したような表情をする。

 

「師匠の師匠はどんな人なんですか?」

「自尊心が高いを通り越して、異常な武人。自身が許可した者以外には配下であろうとその姿や声を見聞きした場合、その両目や耳を削ぎ落し償いとする人。人は有益かどうか疑問視して、現代社会も蒸気機関の発明から堕落したとして嫌っている等々」

「へ、へぇー、変わった人だね」

「最初はアメリカに停泊させている豪華客船、夜はロサンゼルス。残りは師匠と実践込みの死合形式の修行が待っている」

「あれ?試合が死合に聞こえる...」

「最初なんかな、一撃受けただけで腕が粉砕骨折したからなー」

「それ大丈夫なの!?」

 

この時、誰もが思った。一夏の強さの秘訣はその人だと。

そして、誰もその人に師事してもらおうと思わなかった。そして思ったことはただ一つ、“普通っていいよね”だった。

 




ハルンのFGO連絡


三十連回して赤王三枚か...まずまずだな。


エキビジョン?フィナーレクリアできたけど、きつすぎね?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王の夏休みと会談

一夏の夏休み part2です。

夏休み編は三話で終わらせるつもりです。


一夏の家に集合してきた一夏ラヴァーズ。

流石に、このまま何もしないというのも暇なので遊ぶことにしたのだが。

 

「で、遊ぼうとしたら一部を除いて全然、据え置き型のゲームをしたことがないと」

『ハイ...』

 

一夏の言葉に力なく答える箒、セシリア、シャルロット、ラウラ。

 

「だが、ゲームなどと言う軟弱なものに時間を費やすなど―――」

「その軟弱なゲームの技で沈められた奴が何を言うか」

「私は家を守るのに必死で...」

「僕はあんまり時間がなかったからね...。アハハ...」

「クラリッサはそういう類のものを勧めていたが、...。軍に戻ったら早速クラリッサに教えてもらおう」

 

等々、ゲームに触れる機会がなかった人達に対し

 

「せっかく、一夏さんと遊ぶためにいっぱい練習したのに!」

「ガガは負けず嫌いですからね。一夏に負けたのが相当悔しいのでしょう」

「私達は一夏と一緒に住んでるから、触る機会が多いからね」

「主と共に娯楽を楽しむのもまた、従者の務めです」

「暇を見ては簪とかとゲームしてるが、マハードはともかく、簪は強いよなー」

「伊達に引きこもりみたいなことはしていない。ゲーム、アニメ、漫画、ライトノベル何が来ても私は話についていける」

 

負けず嫌いなガガは一夏に対して対抗心を燃やし、マナとマハードは一夏ともにいる時間が多い分、サブカルチャーに触る機会が多い。

そういった類に精通している簪は何でも来い、とやる気満々である。

 

「後メジャーなトランプ、UNO、ジェンガ...。大穴突いてバルバロッサしかないな」

「ほう、我がドイツのゲームではないか」

「ああ、バルバロッサですの」

「これは、どうやって遊ぶのだ?」

「たしか、プレイヤーが作った粘土を当てるゲーム......だったよね?」

「うむ。簡単に言うとそうだな」

 

その横から、セシリアと箒が覗き込み、バルバロッサの遊び方を知らない箒に、簪が簡単なルールだけ教える。

一応念のために、ゲーム発祥国のドイツ人であるラウラに確認を取り、一同はこれをしようと決めた。

 

「あ、一夏。アニメ、ゲーム、神話ネタは無しですよ」

「「ナ、ナンダッテー!」」

「今この状況かでそんなネタで攻められたら、答えられる人限られているでしょ!」

「「知らない方が悪い」」

「なら一夏。試しに作ってくださいよ」

「はーい」

 

一夏は慣れた手つきで粘土をこね、形を整えていくと、炎の様に燃える鳥が出来上がった。

それを見た瞬間、一部は納得した表情になるが、残りは首をひねっている。

 

「よし、一夏に質問だ」

「よかろう」

「それは鳥か?」

「YES」

「それは昔から存在するものか?」

「YES」

 

このゲームでは、質問者は回答者が『No』と言わない限り、質問をしてもいい。

もしもNoと言われれば、その場で回答することになっている。

もちろん、それ以前にわかったのならば、質問ではなく回答してもいいが、それで間違えてしまえば、その回答者のターンはなくなる。

 

「この世に存在するものか?」

「NO」

 

ここで一夏からNoという言葉が出た。

箒は一夏の作ったものが何なのかを回答しなくてはならない。

 

「ああっ!」

 

閃いた!

とばかりに箒は立ち上がり、一夏の作ったもの指差す。

 

「ずばり、鳥の丸焼きだ!」

「違うわ、ボケ」

 

バッサリ切り捨てた。

しかも不正解ついでに毒も吐いておく。

当の本人は不正解だった事に納得できないのか、ソファーに座り込むと、首を捻って、ラウラの作り出した物を睨んでいる。

 

「一夏の作った物の正体がわかった人」

「はい」

「はい、簪」

「...フェニックス」

「正解」

 

正解したことに安堵しつつ、心の中でガッツポーズを取る。

他に分かったのはマナ、ガガ、シャルロット、鈴であり、他は箒と似た答えである。

 

「セシリアは分かりそうだがな」

「出身の違いでしょう。フェニックスはギリシァ神話に出てきますが、これは東南ヨーロッパが発祥とされています。ですがウェールズ地方やアイルランドはケルト神話の方が有名かと、後はアーサー王伝説とかですかね」

「やっぱそこら辺の差か」

「これで分かったでしょ?その類のネタは通じないのだと」

「不満しか残らない」

 

アニメ、ゲーム、神話ネタは無しのバルバロッサをする事になった。

原作と同じ展開なので割愛する。

 

 

 

 

 

 

そして、時間が過ぎ、そろそろ夕飯という時間になった時、一夏とマハードが厨房に立とうとした瞬間、女性人によって止められ、自分たちが作ると言い出し、稀にはそういうのもいいかと。一夏は承諾した。

晩飯をどうするか決めた一夏達は近くのスーパーで買い物する事にした。

 

セシリアが料理を作るといった瞬間、食べた事のある一夏は死にたくないィ!死にたくないッ!?死にたくないィィ!!、と某ダメギの様な悲鳴を上げていた。

 

 

 

とりあえず、全員それぞれ作りたいものを決め、それに必要な素材を選んでいるようだ。

 

 

 

「軍ではローテーションで食事係があったからな。軍仕込みの腕を見せつけてやる!」

「ラウラ、軍の料理って......一般家庭の料理に合うかな?」

「何を言う、マナ! 軍ほど栄養価を考えた料理人はいないのだぞ! ならば問題はあるまい」

「そうかなぁ...。意外と偏ってそうなイメージだけど」

 

正直ラウラが厨房に立っているイメージがわかない為、セシリア同様作らせても大丈夫なのだろうかと不安になるマナ。

 

「どうしてわたくしが料理をしてはいけませんの!? わたくしもイギリス代表として腕を振るいたいですわ!」

「...あんたがイギリス代表なんて言ったら、イギリスの人たちに失礼でしょ」

「どういう意味ですの!?」

 

既にセシリアの料理人としてのレベルの低さを知っている鈴からすれば、今回の夕飯の仕度自体を、やらせたくない気持ちでいっぱいだ。

そんな事して、完成品を食そうものなら、死人の一人や二人が出てきてもおかしくはない。

そして一番ひどいのは、当人にその様な自覚が一切ないという事だ。

 

「死ぬなら、一夏の泰山特製の激辛麻婆豆腐で死にたいわ」

「だから、どういう意味ですの、それは!」

 

一方、一夏は―――

 

 

 

「誰かが俺の麻婆を食べたがってる気がする」

「そんなわけないでしょ。あんな料理を食べるのは一夏か紅洲宴歳館・泰山によくいるという神父くらいなものですよ」

「そうかな?」

「あんな、味覚どころから痛覚すらマヒする麻婆なんて、この世にあってはいけないんですよ」

「大丈夫。あれは中辛だから」

「中辛であの辛さ!?」

 

何処からともなく聞こえた麻婆に反応した一夏だが、マハードは一度食べた麻婆の恐怖を思い出していると、あの辛さで中辛という事実に驚きを隠せないでいた。

 

「まさか、作らないでしょうね?」

「自分用に作っている」

「進行形!?いつからですか?」

「一週間前から、厳選された香辛料と合わせればさらに辛さを引き立たせる材料を入れて煮込んでいる」

「その辛さのランクはどれくらいですか?」

「激辛だ。あと一つ上がある」

「もはや、殺人料理!?」

 

一夏が紅洲宴歳館・泰山で学んだ辛さは中辛、激辛、愉悦の三種類である。

中辛でさえ、異常なのにその上が二つもある。しかも、愉悦に関しては言葉で言い表せない辛さが全身を襲う。

その愉悦を食べれるのは一夏と一夏曰く「ラスボスやってそうな神父」の二人である。

 

「一夏さん!このお菓子買っていいですか?」

「構わん。金なら余るほどあるんだからな」

 

そして、一夏達も買い物を進めていくのだった。

 

 

 

 

そして一同、織斑家に戻ると、調理場に行き料理を始める。

 

「にしても、暇だな」

「まぁ、今回は彼女たちが作るということですから。私たちは気長に待ちましょ」

「待つのはいいんだがさ...」

「言いたいことは分かります。呪術の儀式をしている魔女セシリアの事ですね」

 

一夏が口ごもりながら言うとマハードはそれが何か察しながら言う。

セシリアは赤が足りない!、ということでケッチャプ、タバスコ等、赤い物を大量にぶち込んで煮込んでいるのだが、その姿が魔女の儀式にしか見えない。

一夏とマハードはセシリアの後ろでテーレッテレー、という音が聞こえていた。

 

「師匠、師匠!」

「ん?」

 

突然、ラウラから声をかけられ、すぐそばにラウラが来ていることに気がついた。

 

「もう出来たのですか?思ったよりも早いですね」

「勿論ですよ、兄さん!見るがいい! 私の渾身の一品を!」

 

バッ! と出されたその料理に、一夏と、その隣にいたマハードが呆然とした。

串に刺してある竹輪、大根、三角形のこんにゃく。

大根にはかつおだし薫るつゆが染み込んでおり、ほんのり茶色がかった色をしている。

それは正に――

 

「おでんだ」

「え?」

「『おでん』だ」

「二回言わなくていいわ。いや、なんでおでんよ...」

「何故と言われてもな......。これが日本の伝統的な食べ物なのだろう?」

 

伝統的な食べ物と言えばそうだが、基本的におでんは冬などの寒い季節になって食べるものであり、真夏に食べる料理ではないだろう。

 

 

 

 

バアアアアアーーーーン!!!!

 

 

 

 

「うわっ!?」

「な、なんだ!」

 

そんな事を考えていると厨房から突如、爆発音。

ガス漏れでもあったのか、それとも、セシリアの料理が本当に何かの儀式として成立したのかと思い、急いで厨房に行く。

いや、そのどちらとも違う。

よく見ると、セシリアが煮詰めていた鍋はひっくり返り、中の物がコンロにぶちまけられていた。

そしてその近くには、浮遊する蒼いフィン状の物体がそこにはあった。

 

「おいおい、冗談だろ...」

「ちょ!? 何してるのセシリア」

「何って...火力を上げただけですわ」

「レ、レーザーで加熱なんて無茶だよ...」

 

セシリアの両隣から、マナ、シャルロットがセシリアに問いただす。

マナと一緒に作っていたガガも、まさか料理にBT兵器を用いるとは思ってもいなかったらしく、セシリアの行為を未だ信じられないと言った表情で見ていた。

 

「『失敗は成功の母』! 今度こそ成功させてみせますわ! 行きますわよ、セシリア・オルコットの《IS料理》‼︎」

「させるか!マハード、あれを持ってこい!!」

「ハッ!」

 

これ以上は危険だ、と確信した一夏はマハードにあるものを取りに行ってもらうとレンゲに入った赤い料理――麻婆がそこにあった。

 

「げ、それは...」

「おまえはこれでも食って、おとなしくしていろ!」

「くぁwせdrftgyふじこイ゙ェアアアア!?」

 

一夏はマハードが持ってきた紅洲宴歳館・泰山特製麻婆―――別名外道麻婆を食った瞬間、声にならない悲鳴とどこぞの館のような悲鳴を上げ、口から先ほど食べた麻婆が吐血したような感じになりながら倒れた。

 

「そ、それはあまりの辛さから食べれる人が世界で二人しかいないという伝説の麻婆!?」

「...合言葉は愉悦、だったはず」

「あ、その二人のうち一人は俺」

 

その後、鈴が蹴り起こして、食器をテーブルに並べさせることで料理を作らせないようにした。

なお、麻婆のことは覚えていなかった。

 

「ま、まぁ、いろいろあったけど、食べましょうか!」

 

そのテーブルの上には、様々な料理が並んだ。

鈴の作った『肉じゃが』

シャルロットの作った『鶏の唐揚げ』

箒の作った『カレイの煮付け』

ラウラの作った『おでん』

マナとガガ作ったエジプト料理『コシャリ』

ガガが作った『デミグラハンバーグ』

マナが作った『野菜サラダ』

一夏専用『紅洲宴歳館・泰山特製麻婆(激辛)』

簪が空いた時間に作った『杏仁豆腐』

 

「凄いな、どれも美味しそうだ」

「えぇ、どれも美味しそうです」

 

並ぶ料理の数々に、一夏の口から賞賛の声が上がる。

その言葉に、作った六人の顔は綻び、笑顔が咲いた。

一同は両手を合わせた。

そこからは、とても楽しい晩餐会になった。料理の腕も悪くない。食堂でも、こうやってみんなでテーブルを囲み、同じ釜の飯を食べてきたが、今日のそれはいつもの食事よりも、美味しくいつもより笑顔が輝いて見えた。

それ見ていた簪は『こんな時間が、これから先も、ずっとあります様に...』と心の中で思った。

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日

 

 

豪華客船の中で一人の男性が優雅にワインを飲んでいた。

男性の名はアレクサンドル・ガスコイン。一夏同様神殺しの一人である。

アレクは今日会う予定の人物である、一夏が来るのを待っている。

予定した時間が近づき、腕時計を見ようとした瞬間、一つの人影が近づいてくる。

スーツを着込んだ一夏である。

 

「ふむ、相変わらず時間ぴったりに来るな」

「間に合ったから、いいだろう。てか、なんでスーツ着用義務よ」

「その場にあった服装を指定したまでだが?」

「ハイハイ。で、今日は何の用で俺を呼んだんだ?」

 

一夏はアレクの正面に座るとグラスにロゼワインが注がれていく。

注ぎ終わったロゼワインを一口、口に含むと、テーブルに置く。

未成年が酒を飲むのは違法だが、一夏はもう、成人している(・・・・・・)ので問題ない。

 

「世界が注目している、男性操縦者が朝からワインを飲んでは色々、騒ぎになるんじゃないのか?」

「どっかの能天気夫人のせいで、実質的に俺は成人しちまったよ」

「過去に飛ばされた回数は本人に次いで多かったな」

「いい迷惑だよ。面倒ごとを起こした上で相手を巻き込むから。なお、質が悪い」

 

何か思い出したのか、心底嫌な顔をする一夏。

一夏は本題を話せと、目で訴える。

 

「ISを動かした貴重な男性操縦者として、感想が聞いてみたくてね」

「今の社会を作った元凶であり、現代兵器を上回る性能があるが上、絶対防御というのもあるが、俺たち(神殺し)からすれば弱い。SEがある間はある程度自由に動けるが、ガス欠になれば強制解除して生身になって普通の奴なら危険だ。神獣相手は相当腕の立つ奴が複数いれば、勝てるかもしれない程度だな」

「やはり、そんなものか」

「お前が話題に出すという事は興味があるのか?」

「あるとすれば、なぜ一夏が動かせて他の男性が動かせないのか、という所だな」

「それに対してはある仮説がある」

 

ほぉ、と両肘を立てて寄りかかり、両手を口元に持っていき興味深そうに耳を傾ける。

 

「俺たち神殺しは一度、転生している。それに古文において『神殺しは人であって、人ではない』というのがある。それが力ではなく、存在的な意味だとすれば、ISは俺たち、神殺しを人間の『男性』としてではなく、例として『神殺し』という理解できない存在だと認識した場合、エラーとして処理するか、例外として処理するかによって、起動するか否か決まる」

「なるほどな。だが、その理論が正しいのであれば、ISは後者として認識したのなら、コアネットワークを通してそれが広がることによって、他の神殺しも動かせることになるという事か。確かに理は適っているな」

 

一夏の仮説に納得したのか、首を縦に何度か振る。

次に話を出したのは一夏だった。

 

「で、今お前が一番興味あるのはISじゃなくて、『聖杯』だろ」

「あぁ、そうだ」

 

聖杯という言葉に一夏は腕を組み、考える。

その手の人間でなくても、ゲームやアニメに度々出てくる単語で言葉だけなら多くの人が知っているであろう。

 

「聖杯か...。一番著名なのがアーサー王物語の一つ聖杯伝説だろうな。最も関わりのある円卓の騎士はパーシヴァル卿とその妹のボールス卿、そして―――」

「マーリンからは「父をも超える最も優れた騎士となる」と予言された騎士ガラハッド」

「アーサー王の城で聖杯の幻影が姿を現すようになり、アーサー王は聖杯を見つけ出すよう円卓の騎士に言ったのが始まりだったな」

 

聖杯探索を命じたアーサー王だが、円卓の騎士が挑むが失敗に終わり、ガラハッドの父であるランスロットはグィネヴィアとの不倫があったため、穢れ無き者しか手にすることが出来ないとされる聖杯探索を辞退したとされている。

そんな中で白羽の矢が立ったのがガラハッドである。

パーシヴァル卿とその妹、そしてボールス卿と出会い、彼らと旅路を共にする。途中、パーシヴァルの妹が亡くなり、それを機に二人と一度は袂を分かって父・ランスロットと旅を続けたが、しばらくのちに再会する。

ガラハッドは旅路で数々の聖遺物を手に入れ、それらの助けを借りて遂にカルボネックに至って聖杯に到達した。

聖杯を得た帰路でサラスに到達した一行は、異教の王に囚われ、投獄生活を送ることになる。

しかし聖杯を隠し持っていたおかげで食に窮することはなく、死期を悟って改心した王は三人を赦し、王の死後はしばらくガラハッドがサラスを治める。

それから一年の後、ガラハッドは聖句を唱えているアリマタヤのヨセフをはっきりと幻視し、彼に「この世を去りたい」と申し出た。

ヨセフはガラハッドの願いを聞き入れ、天使たちを呼んで聖杯と血を流す聖槍を抱えたガラハッドを昇天させた。

 

「というのが大まかな内容だが、伝承の通りならガラハッドが持っているのが妥当なんだが、以前に聖杯争奪戦があったがどれも偽物だったんだろ?」

「あぁ、だが偽物が存在するということは本物が存在するということになる」

「本物があるから偽物があるか...。伝承通りなら白い盾が必要になるんじゃないか?あれがあったから聖杯を手に入れたと言えるからな」

「白い盾にはヨセフの血の文字があるとされ、血を流す聖愴はロンギヌスの槍を示している...。やはり、彼女も関わってくるのだろうな」

「神祖グィネヴィアか...。俺の所にも表れたな...、伝説の大英雄と戦ってみないか?みたいなこと言われて、その話に乗ってみればそこに居たのは古代ペルシャにおける伝説の大英雄と来たものだ」

「奴は何かを企んでいると考えた方がいいのかもしれんな」

 

だな、と短く答えると一夏は気になることを聞く。

 

「所で、なんで聖杯に興味があるんだ?」

「何、どういう代物か研究してみたいだけさ」

 

そう言いながら、ワインを一口に運ぶアレク。

その回答に一夏は予想通りだな、と思いながら自分もワインを飲むのであった。

その後は互いの持論を含んだ考察が続けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

アレクとの議論を終え、ロサンゼルスの高層ビルの一角にあるレストランに向かう。

そこは各国の富豪や大物俳優、政治家などがよく訪れる店である。

その中を一夏は躊躇いもなく入ると、一人の受付の人が立ちふさがる。

 

「お客様、当店は会員様限定となっております。お手数ですが、会員証もしくは招待状をご提示ください」

「これで」

「お預かりします」

 

一夏はスーツの胸ポケットから一つの封筒を渡すと受付の人は確認すると一夏を一瞥する。

 

「アニー・チャールトン様の招待状ですね。ご案内します」

 

一夏は案内されるがまま奥に進むと一室に案内される。

 

「アニー・チャールトン様、ご招待された方がご到着です」

『分かりました通してください』

 

「中にアニー・チャールトン様が居ます。よいひと時を」

一夏は中に入るとそこには谷間を覗かせる黒いスーツを着た燃えるような赤毛のショートヘア―の眼鏡を掛けた、如何にも秘書という感じの女性がそこに居た。

 

「予定より、少し遅いですが...、来たので問題ないでしょう」

「よ、ジョン・プルートー・スミs...イィッ、タイッ!?」

「貴方は毎度、出会う度に言ってますが...、貴方は何故そうもその名で呼びたがるのですか...。踏みますよ?」

「踏んでから言った~、しかもハイヒールの踵で踏んで。痛ッ、足に罅が入った」

「その程度の怪我、貴方なら問題ないはずです」

「ひでぇな」

 

そういいながら、一夏は回復の霊薬を飲み怪我を直すと席に座る。

 

「よくもまぁ、毎回こんな高級料理店を取れるものだな。1年予約待ちだろ、ここ」

「貴方と共に過ごせるのであれば、これ位の苦労、苦でもありません」

「お、おう...」

 

話をしていると、一夏達の前にフルコース料理が並んでいく。

 

「なんも頼んでないぞ、俺」

「勝手ながら、此方でこの店のNo,1フルコースを頼んでおきましたので」

「アッ、ハイ」

 

流れの主導権持っていかれたな、と思いながら、フルコースを食べていく。

この手の礼儀作法は師匠から教えてもらっている為、問題なくこなせる。

 

「そういえば、一夏はIS学園に入りましたよね」

「世界的ニュースになったからな」

「IS学園は基本女性しかいません。えーと...、気になる女性とか居たりするのですか...?」

 

どこか不安げな声で言うアニー。

 

「気になるね~。親友以上恋人未満ならいるが...。あ、そういえば許嫁がいたな」

「い、許嫁!?一体どこの女ですか!私ですらまだ、親友的なポジションなのに......、そんな羨ましいゴホゴホッッ...、失礼、一夏に許婚が居たのは驚きですが、それは一体どこの輩なのですか?」

「輩って...、親同士が決めたものらしくてな、フランスの代表候補性の子なんだ。まぁ、綺麗な方だと思うぞ」

 

アニーから睨まれながら一夏は料理を食べていく。

 

「それに俺が女性と親密な関係作りたくないの知っているだろ?」

「あの原初の悪魔に襲われた(意味深)時からですよね」

「あぁ、あれ以来、俺は女性が苦手になったね。服越しとかならまだしも、生身で抱き着かれたらトラウマが蘇って発狂するな」

「その原初の悪魔で小耳に挟んだのですが」

「ん?」

 

どこか言いずらそうな表情をするアニー。

 

「一夏がかの悪魔を封印した石碑が破壊されていたとの情報と実際の写真があります」

「ハァ!?おいおいおいおいおい、冗談だろ?」

「実際の写真です」

「ナッ!?」

 

一夏はアニーが見せた写真を見て絶句した。

そこに映っていたのは封印の呪文と何かの模様が描かれていたであろう石板である。

石板は完全に砕け散り、周りには複数の足跡が残っていた。

 

「恐らくは複数による計画的な犯行でしょう。初見では突破できない魔術結界を破ったことから、相当な実力を持った魔術師若しくは魔女だと考えるのが妥当でしょ」

「マジで......、俺はまたアイツと会うのか...。やばい、自我を保てる自信がない」

「まぁ、いままで封印されていた以上、ある程度時間が経てば恐らくは」

「うわぁぁぁ」

 

気分消失気味な一夏はとりあえず、この時間を楽しもうと頭の中切り替えることにした。

 

 

 

 

「だーかーら、一夏。貴方、IS学園に入ってどうなんですか?好きな人が出来たんですか?それともハーレムでも作るきですか!?」

「嫌...、だから作る気はないって...。それともうやめた方がいいって。それで何本目だよ?」

「あれ、一夏はいつから残像拳を使えるようになったんですか?あ、ワインが空っぽだ?!新しいの下さい!」

「あかん。完璧に酔いどれや」

 

先ほどから、度数の高めのお酒を飲みまくっているアニーは完全に出来上がっており、一夏はかなり食いつき気味に話す女性関係に疲れていた。

 

「どうせ私みたいな沈黙系迷惑コスプレヤ―は売れ残るんですよ...!」

「いきなり何言ってんですか...」

「ギャングとの抗争を防ぐために3年間恋人のフリするんでしょ?後ワインついで」

「だーれが極道の跡取り息子だ。ほら、もうお開きにしますよ」

「一夏が私と結婚してくれるな辞める~」

「なぁにそれ。ほら冗談言っていない帰りますよ」

 

一夏はアニーを担ぐと荷物を取り、レジに向かう。

 

「すいません。会計お願いします」

「ハイ。こちら、合計65万7560円になります」

「カードで」

 

一夏は財布からクレジットカードを取り出すと会計を済ませ店を出る。

背中に背負ったアニーから柔らかい二つの感触が伝わってくるが、特に気にしないで進んでいく。

 

「一夏...なぜ私の気持ちに気づいてくれないのですか?私は...貴方の事が好きなんですよ...」

「...知ってるさ...それくらい。マナやガガ、簪やシャル達が俺に好意を向けてるくらい」

 

そういうと一夏は空に昇った月を見上げる。

 

「俺は愛情というものを知らない。小さい頃に親は行方不明、千冬姉はいつも抜き身の刀のような感じだったし、小さい頃に与えてもらえるはずの愛を知らず、ISが出来れば、俺は千冬姉のオプションか差別の対象だった」

 

アニーからの返事がないため独白に近い形になっているが一夏は自らの心情を語り続ける。

 

「俺は愛を知らず育ってきた。だから、俺に向けてくる好意にどう向き合い、どう答えればいいのかわからないんだ。知っていて知らない振りをする...残酷な男だな。例え向き合ったとしても、あの人たちの様に突然消えると思うと...俺は...。周りから強いだとか、頭いいとか、尊敬とか、恐怖とか、いろいろ言われているがな、結局俺は臆病でヘタレなんだよ。ただ、背伸びして、見栄はって、ないものを取り繕って立派に見せようとしている餓鬼なんだよ...。ん?」

 

喋っていた一夏は一向にアニーから相槌すら帰ってこないことに疑問に思った一夏はアニーの方に視線を向けると

 

「...スゥー...スゥー...」

「こいつ...寝てやがる...。はぁー、なに一人で恥ずかしい事ペラペラ喋っていたんだろうなー」

 

寝ていることに気づいた一夏は口は災いの元という言葉を思い出し、口を閉じ、アニーの住んでいる家に向かう。

歩いている最中に突如、強烈な痛みに一夏は胸を抑えるが、収まる。

臨海学校以降起きるようになった原因不明の痛みが一夏を襲うようになった。

 

「原因は分かっている...。俺に残された時間は短いんだ...、そんな俺の為に人生を棒に振るような真似をさせたくないな」

 

どこか哀しみのある表情を一瞬した一夏だが、まずはアニーを自宅に送り届けようと足を進める。

アニーを自宅に送った後、一夏は近くのホテルに一泊し、羅翠蓮の元に向かうのだった。

 

 




ハロウィン復刻!この調子でいけばぐだぐだ本能寺もワンチャンあるな。

あー、沖田さん取らないと

クレオパトラの声がくぎゅうで、ダンロンだったのが驚きでした。

そして、どスケベマシュ取ったどぉぉお!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

師匠と王の修行

エクステラ購入まであと三日...。

エミヤとアルテラのモーション変更はよし。

玉藻かアルテラで迷った末 玉藻にした。

そして、今回の放送で不正はなかった。


アニーと別れた一夏は中国の山奥に来ていた。

何故そんな所に居るのかちうと一夏の大型連休のメインともいえる恒例イベントが待っていた。

目の前の門をくぐり、進んでいくと神すら認める美貌の中華風美少女がいた。

 

「お久しぶりです。師匠」

「えぇ、久しぶりですね義弟。貴方の噂は風の噂で聞いていますよ?なんでも、あの兎の魔王が作った玩具を動かしたそうですね」

「はい。不本意ながらISを動かしてしまい、IS学園に通う羽目になりました」

「そうですか。私が出した、修行は怠ってないでしょうね?」

「腕立て伏せ・上体起こし・スクワット各2000回を朝昼晩三セットづつとランニング42.195㎞を毎日欠かさずやっています!」

 

 

一夏の強さの秘訣はこの常人では到底不可能と言わんばかりの修行を毎日欠かさずにやっていることである。

最初の頃は常識的な範囲の内容でトレーニングだったが、回数を重ねるごとに激化、最初こそ悲鳴を上げていたものの今では平然とできるレベルまでなっている。

 

 

「まずはこの重りを着けて、この山を休憩なし2時間ランニングから始めましょう」

「因みに重りはどれくらいですか?」

「1tです」

「マジで...。分かりました......動きやすいように着替えてからでいいですか?」

「構いませんが、素早くお願いします」

 

 

そういうと一夏は屋敷に入り、持ってきたジャージを着ると渡された計1tの重りを全身に着けると準備運動を始める。

準備運動を終えた一夏はクラウチングスタートの体勢をする。

 

 

「では、始め!」

「シャッァァ!!」

 

 

こうして、一夏の二週間に渡る一夏の過酷な修業が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

二時間に及ぶ、休憩なしのランニング後、一夏は翠蓮の前で顔色一つ変えずに立っていた。

 

 

「持久力は以前より、高くなっていますが...筋肉が多少減りましたね?その代わり、脚力が上がっている...」

「まぁ、最近戦うこと少ないですから...。IS学園だとどこまで行っても人間しかいませんからね」

 

 

そんな一夏の体を触り、触診する翠蓮に一夏は思い当たることを言う。

それを聞いた翠蓮は少し、考え込むと一夏を見据える。

 

 

「今回の修業内容が決定しました。今回は実践をメインとした内容にします。異論はありませんね?」

「実践をメインと言うけど、具体的には...?」

「最初の四日間は今ある術の見直し、改善、研磨します。そして、残りは私との組手と権能込みの実践をします」

「...ゑ?」

 

一夏は翠蓮の言った前半は理解出来たが、後半に言った事を理解した。

そして、一夏は生まれて初めて、心の底から震えあがった...、真の恐怖と決定的な挫折に...、恐ろしさと絶望に涙すら流した。

 

 

「逃げるんだぁ...」

「まずは武術から始めましょう」

「うわぁぁぁ!」

 

 

逃げようとした一夏の首を掴み、道場まで引きずっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

武術オンリーの組手をしていた一夏。

 

 

「ガッ!?」

「もう少し、震脚を意識しなさい。その様な甘い震脚では逆に反撃されるのは明らか」

「実践での...指摘...あざっす」

 

 

組手の最中、震脚の甘さ突いた一撃を受け、吹き飛ばされた一夏は視界が急変し、頭に強い衝撃を受けた。

立ち上がった一夏を見つめる翠蓮。

 

 

「先ほどの組手から、余分なものを感じれます。変に加減していませんか?」

「いえ、特に...」

「では、本気の一撃をやってみなさい。私を殺すつもりで」

「え...?......分かりました」

 

 

構えを取る一夏だが、先ほどまでとは雰囲気が変わり、闘志と殺意の孕んだ鋭い目つきになる。

 

 

 

「フッ!」

「これは...」

 

 

一夏の拳を受け流し、一夏の腹部に剛打を叩き付ける。

その衝撃で道場の分厚い壁にめり込む一夏。

そんな一夏を気に留めず、受け流した腕を確認する翠蓮。

壁からパラパラ、と砕けた壁を落としながら一夏が出る。

 

 

「いってぇ...」

「なるほど、私が感じていたものの正体がわかりました」

「正体?」

「ええ、義弟の武術は相手を確実に殺す暗殺拳になり、相手を無暗に殺さない為に無意識に手加減しているということです」

 

 

 

剣術も武術も、それはスポーツや演武用に衰退していった技でしかない。

更に言えば、自分の戦いを綺麗に見せる方法の一つと言えるだろう。

だが、先ほどの一夏の一撃は確実に相手を殺せる技。

そして、一夏の心はそれを良しとせず、無意識のうちにリミッターを掛けているのだ。

 

 

「これ自体は直す必要はないでしょう。無駄な血が流れることを良しとしない心の優しい義弟の長所でもあるのですから」

「はぁ...」

「ですが、命をかけた戦闘において、それは無用の長物です。手加減は相手にとっては自分の実力を愚弄されたと思うでしょう。何より、手加減して負けたなどあってはなりません」

「ハイ...」

「戦闘に出たときすぐ切り替えれるようにするのと、一つ質問ですが戦っている最中に視界から色が消えたことはありますか?」

 

 

一夏は顎に手をやり、考え込むと思い当たる節があった。

 

 

「嘗て、まつろわぬ旧神と戦った時に一度...。それが?」

「義弟が体験したのは領域(ゾーン)と呼ばれるものです」

「あー、聞いたことある」

「極限の集中状態。これに入ると身体能力だけでなく、飛躍的に反射速度も上げることができるのですよ。この状態に入れる者は極々僅かな者のみ。そして、意図的...に入れる者はその中でも一握りです」

「俺にそれを取得しろと?」

 

 

翠蓮は何も言わない。

だが、幼い頃からの付き合いで、一夏はなんとなくわかるのだ。

 

 

「分かりました。で、その方法は?」

「自分で見つけなさい」

「ですよねー」

「身に着けるまでの手伝いますか?ただし、四日で身に着けるのが条件ですが」

「お願いします」

 

 

領域(ゾーン)取得の修行が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ...ハァ...ハァ...」

「少し、休憩を挟みましょう」

「み、水...」

 

 

あれから四日、一夏は僅かな時間だが、意図的に入ることができるようになった。

権能を使わず、壮絶な殴り合いを四日間繰り広げ、一夏の身体は疲労がたまりにたまっていた。

 

 

 

「僅かな時間ですが、領域に入ることが出来るようになりましたね。では、明日からは権能込みの実戦形式で行きます。今日は終わりにして、明日の為に上がっていいですよ」

「あぁ、空に輝く死兆星が見える」

「戯言が言えるということはまだ余裕があるということですね?では、、あと一本組手をしますか?」

「いいえ!ゆっくり休ませてもらいます!!」

 

 

そういうと一夏は屋敷の中に戻ると、気の流れを正し、睡眠をとることにした。

明日からの地獄の為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、一夏達は山の中にいた。

互いの権能の関係上、被害は甚大、に成るため、心置きなく戦うために山奥で戦うことになったのだ。

 

 

「では、行きますよ?義弟」

「俺はいつでも」

「では...」

「チッ!?シャラァッ!」

 

 

お互いに準備完了であることを示すと、翠蓮が踏む込み、一夏に急接近すると一夏の顔面めがけてその剛腕を振るうが一夏は咄嗟に上体をずらし避けると、そのまま体を捻じり、回し蹴りをする。

 

 

「咄嗟の反射と判断力は健在の様ですね」

「それが俺のとりえみたいなものなので、ねッ!」

「義弟は私に通じるものを感じます。このまま行けばいずれ、私を超えるでしょ」

「翠姐に褒められるとは...明日は流星群が降るのかな?」

 

 

 

激しい攻防を繰り広げる、二人の周りにある木々はその衝撃でなぎ倒されていく。

 

 

「準備運動はこれまでです...行きますよ。義弟」

「来るか...!」

 

 

翠蓮が聖句を唱えたのを確認すると一夏の目に翠蓮の背後に金剛力士が見え始めた。

一夏は構え直すと翠蓮が権能の正体を知っている為、無暗に接近戦で戦う真似はしたくないのが心情である。

一夏の身体の一部が燃えると、一夏は思いっきり踏み込む。

 

 

 

「ハァ!」

「むぅ...」

 

 

翠蓮の目の前に現れた一夏に一瞬困惑するも、慌てず迎撃をし、振りかざした拳を受け止める。

 

 

「可笑しいですね。私の目には義弟が二人(・・)いるように見えているのですが?」

「効かないか...。権能で俺の身体の一部を燃やすことで蜃気楼を作り、その蜃気楼を本物の俺だと錯覚させるように幻術も併用する、だまし技さ」

「そういう種でした、かッ!」

「...チッ。神仏に仇名す魔王の剣よ!」

「なんと...」

 

一夏は先ほどの種明かしをすると翠蓮の後ろにいた金剛力士が掌打をしようとしたのを見た一夏は自らの腕を虚空から現れた刀で切り落とすと地面を思いっきり蹴り距離を取る。

 

 

「切り落とされし、右腕はあらゆる困難を打ち砕く剛腕となるッ!」

「ほぉ...」

 

 

一夏の切り落とされた右腕から出ていた血が腕のような形になると巨大化し、翠蓮に向け、飛翔する。

翠蓮は面白いものを見たというような表情をすると金剛力士にさらに呪力を込めると巨大な黄金の掌を一夏と同じように飛ばす。

互いにぶつかり合い、相殺する土煙が上がる。

一夏はフェニックスの権能で右腕を再生させると土煙から金剛力士が飛び出し、一夏を殴る。

 

 

「ぐうぅぅぁぁッ!」

 

 

咄嗟に防いだものの、木々を倒しながら後方に飛ばされ、巨大な岩に衝突し、埋め込まれる。

 

 

「いってぇぇ、腕に罅が入った...。って...やば」

「よそ見とは...ずいぶん余裕ですね、義弟」

 

 

20m以上飛ばされた一夏は罅の入った腕に気を取られ、縮地で接近していた翠蓮に反応が遅れ、その剛腕をもろに受け、その衝撃に一夏を埋め込んだ岩は崩壊している。

崩れた岩の下敷きになった一夏を見つめる翠蓮だが、積もった岩を飛ばしながら現れた一夏は上空に位置すると、聖句を唱える。

 

 

「あらゆる叡智、尊厳、力を与えし輝きの主よ。我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ!―――流星一条(ステラ)ァァ!!」

「流石にこれは危険ですね」

 

 

一夏は流星一条を放ち、それを見た翠蓮は危険だと判断し、金剛力士にさらに呪力を送り込むと先ほどとは比較にならない大きさの黄金の掌を飛ばしす。

だが、一時的に押したもの、黄金の掌は消えるが、金剛力士が構えを取ると残像の残る速さで殴り始めた。

その光景に驚いた一夏だが、それよりも驚く事態が起きた。

 

「嘘だろッ!?流星一条を止めただと!そんな方法で止めた人なんかいなかったぞ!!」

「なら、私が初の実例ということですね、義弟」

「俺が言うのもなんだけど、この人絶対おかしいよ!」

 

 

そういうと一夏は新たに聖句を紡ぐ。

 

 

「神王の雷よ!雷電の身に纏い、戦場を駆け巡ろう!」

「次は何を見せてくれるのです?」

「ゼエェェヤアァァッ!」

 

 

両手を大きく、振りかぶり、交互に雷光を飛ばす。

少しでいいから時間を作る、攻撃の裏で作っているものを気づかれないために。

 

 

「目くらまし...その程度ですか?」

「いや、俺の目的は達成された!」

「何ですって...」

「ポセイドンフォース!」

 

 

一夏は身の丈の倍はあるであろう大気中の水分を集め凝縮した巨大な水球を放つ。

別名、元気玉を放つも翠蓮はその剛腕と金剛力士で応戦し、退ける。

一夏はアレクが言った「腕力至上主義」の意味を改めて実感した。

 

 

 

「もう一丁!」

「同じ技は通用しませんよ!」

「同じじゃないよ!」

 

 

一夏は作り出した水球を掲げると、波紋を浮かべ、そこからマシンガンの如く連射される。

予想していなかったのか、翠蓮の顔が驚愕している隙に刀を取り出し、構える。

 

 

「一歩音を超え、二歩無感、三歩絶刀...!」

「クッ!」

「無明三段突き!」

 

 

一夏が作った水球の攻撃に気を取られ、反応が遅れた翠蓮は金剛力士で防ぐが、この権能は金剛力士が受けたダメージは本人にフィードバックされるという性質がある。

本人が受けるよりは致命傷にならないが多少のダメージを与えることはできる。

現に先ほど一夏の流星一条を高速で殴った際にもダメージは受けている。

 

 

「ぐぅぅ...。さすがは義弟と言ったところでしょう。ですが...!」

「しまった!?」

 

 

一夏の腕をつかむと翠蓮は剛力で一夏の腹部を殴り、怯んだ隙に掌底で打ち上げ、アームハンマーで地面に叩き付ける。

 

「まだ、グッ!?」

 

痛みをこらえ、起き上がった一夏の目に入ったのは迫りくる無数の拳であった。

起き攻めで翠蓮の連続掌打を真面に食らった一夏は全身から聞こえてはいけない音を聞きながら、最後の止めの掌底を喰らい山の壁に縫い付けられる。

そして、迫りくる黄金の拳をただ受けるほど一夏は潔くない。

 

 

「ただでは終わらん!―――神罰執行!汝の命をここで絶つ!破壊神の手翳(パーシュパタ)!」

 

 

一夏の手に現れた光球が手から解放されると強く輝き出し、黄金の拳とぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

この衝撃で一つの山が世界地図から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果だけ言うなら一夏の負けである。

翠蓮との戦いで一夏が勝ったことなど、両手で数えることくらいしかなく、今回も一夏は翠蓮との戦いで黒星一つ増やしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一時間の休憩後、また実践を開始しますよ。義弟」

「呪力足りるかな...」

「無ければ権能なしの死合に変わるだけです」

「教えてくれ白式...。俺はあと何回翠姐に薙ぎ倒されればいい? 誰も教えてくれない...」

 

 

 

こうして、残りの時間を一夏は死と隣り合わせの修行をするのであった。

 

 

 

 

 

 

「踏む込みが甘い!」

「イイッタイッ、メガアアア!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄の修行を終えた一夏はIS学園の自室にいた。

 

 

「あー、ニート最高」

「開始早々、何を言っているんですか?今回の修行で何回死にました」

「十回くらい死にました!」

「元気よく言わないでください。なんか悲しくなるんで」

 

 

午前の日課を終えた一夏は自堕落な生活を送っていた。

 

 

「明日から、学校ですが何か忘れ物は?」

「宿題は貰った時点で終わらせたしなー。特にない」

「夏休みの宿題じゃないですよ、それ」

「マナはやり忘れた読書感想文に苦悩していると」

「一夏は逆に得意ですよね」

 

 

 

一夏は学園行事予定表を見る。

 

 

「あ、学園祭あるんだ...。招待券あったけど誰に渡そう?」

「弾でいいのでは」

「面倒だしそうするか」

「なんか面白いこと起きるかな?例えばテロとか」

「何物騒なこと言ってるんですか一夏?」

 

 

 

そんな会話をしながら一夏は読書感想文に苦悩するマナを見ながら愉悦と心の中で思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある、某所

 

 

「あぁ、兄さんにやっと会える...。待ってて、すぐ会いに行くから...兄さん。フフフ、ウフフフフ...」

 

 

身体に蛇を巻き付け、発育のいい身体の少女がいた。

 

 

「私もあの人も兄さんが欲しい...!兄さんの全てを独占したい!すぐ会えるからね...、待っていて兄さん...」

 

 

部屋中に飾られた一夏の写真の中で、一枚とると恍惚とした表情で見つめる千冬そっくりな少女の姿がそこにあった。

 

 

「なぁ、スコール。次の任務さ」

「駄目よ、オータム。あの子を一人にしたら何が起きるかわからないわよ」

「あんなの制御不可能だって、この任務終わったら、有給使っていいか?」

「えぇぇ、いいよ」

「2年分の有給を使わせてもらうわ」

「そんなに!?」

 




ふと、思いついたこの作品の一夏を鯖にした

宝具のルビが降っていないのはネタバレ防止です。


真名 織斑一夏

エクストラクラス 神殺し



クラススキル 


武術 A+

自身のカード性能をアップ

神性 B+

自身に与ダメージプラス状態を付与

対魔力 A+
自身の弱体耐性をアップ




スキル


神殺し EX

自身に【神性】特攻状態付与&天地人の力を持つサーヴァントに特攻状態付与

邪神の溺愛 A+

自身のバスターカードの性能をアップ&自身の弱体耐性をダウン【デメリット】

五芒星の加護 A

無敵状態付与&味方全体の防御力と攻撃力をアップ&自身のHP減少【デメリット】


宝具「奮い立て、深淵を祓いし希望の光」

敵全体に超強力な防御無視+確率で即死効果+敵のスキル封印+チャージ減少



ボイス

召喚「サーヴァント、エクストラクラス...神殺し(カンピオーネ)召喚に応じて参上した。...そんなクラスがあっるのかって?あるんだよ、俺専用だけど。まぁ、よろしくなマスター」



開始1

「白き王、神殺し...。参る!」
「さぁ、派手に行こうぜ!」

スキル使用自

「少し、本気を出すか...」
「こいつならどうだ?」

EXアタック

「俺のターンはまだ終わってないぜ!」

宝具カード選択時

「明日への希望を...奪わせはしない!」



宝具発動

「...我は魔を断つ剣と成り、深淵の闇を祓う希望と成る!......奮い立て、深淵を祓いし希望の光ッ!」

勝利ボイス

「アイツらとの誓いを...破るわけにはいかないのでね」

「皆が希望を抱き続ける限り...俺は戦う!」



戦闘不能

「久方ぶりの敗北だ...。悪いなマスター...力になれなくてよ...」

「いいんだこれで...。これで...俺は...」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

学園祭前

ヒャッハー!二日で仕上げたぜ!!


おかげでいつもより少ないけどネ!


夏休みも終わり、二学期が始まっていた。

生徒達は各自、夏休みの思い出を語っている。

 

 

「一夏元気?どうだったのお師匠さんとの修行?」

「10回くらい死んだよ」

「死にかけたじゃなくて?」

「人生終了のお知らせの方だ」

「えー...」

 

 

シャルロットはただ茫然と呟くことしかできなかった。

修行で死ぬなぞ、論外もいい所であるが、それが平然と起きているのだ。

死ぬような修行は一夏が不死の権能を得たのが原因なのだが、当の本人はそのことに気づいていない。

 

 

「そういえば一夏。全校集会で重大な発表があるらしいですよ」

「そうなのか?有給休暇三年付与みたいなのある?なら、おれはすぐそれを行使して、溜まっている積みゲーを消火して、スマホのゲームに集中して遊べるじゃん!」

「何その娯楽三昧?ダメ人間の片鱗を見た気分だよ...お兄ちゃん」

 

 

 

壇上に立った生徒会長の更識楯無がSHRと一限目の半分を使っての全校集会の理由を説明する。

近時か行なわれる学園祭ことだ。

IS学園とは言え、ここも学校であるのだ。その為、こう言った行事ごとはある。

とは言っても招待制なためごく一部の一般とVIP、企業の者しか参加できない。

 

 

「さてさて、今年は色々と立て込んでちゃってちゃんとした挨拶がまだだったね」

 

 

異性すら惚れさせるその笑顔を見せる楯無は今月の一大イベントにある特別ルールを導入したことを発表した。

 

 

「名付けて、『各部対抗織斑一夏争奪戦』!」

「ナ、ナンダッテー!!」

「一位の人には一夏君を入部させます」

 

 

キラッという効果音が聞こえそうなポーズをする楯無。

一夏の肩に手を置くマハード。

 

 

「一夏、ガンバ」

「ついでにマハード君もプレゼント!」

「NOOOOOO!!USODAAA!!」

「匿名希望の謎の黒騎士がいるぞ」

 

 

SaraaaSikiiiii!!、とどこぞの狂化しまくってる円卓の騎士のような叫び声をあげるマハード。

内容は最も投票を多く手に入れた部活に一夏が所属するということだ。

ともあれ、これがきっかけに体育館を揺るがす大歓声に呑み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日、教室にて放課後の特別HR。

今はクラスごとの出し物を決めるため、わいわいのと盛り上がっていた―――一部を除いて。

 

 

 

「一夏君は何かやりたいことある?」

「ア"ァ?」

「いえ、何も」

「マハードさん?その大量のオキシドールはなんですか?」

「何、不衛生な狸(更識楯無)を真っ白に消毒するだけですよ。えぇ、痛みは生命活動の証ですからね」

「消毒以外に何かしますよねそれ!?」

 

 

机の上で足を交差させ、腕を組み、グラサンを掛け、話しかけた子に威圧とガンを飛ばす不良一夏。

巨大なバケツに大量のオキシドールの入った容器を入れるマハード。

 

 

 

「一夏いつ殺りに行きます?」

「取りあえず、学園祭が終わるまでは残りの人生を楽しませてやるか」

「はいそこ、不気味な話しない」

 

 

色々不気味な話をする一夏とマハードに突っ込みを入れるマナ。

クラスでやる出し物はメイド喫茶に決まった。

中には欲望まみれの案があったが、一夏のガンと無言の威圧とマハードの目が笑ってない笑顔で誰もその案に投票しようとしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の発表で一夏は精神的ストレスの性でちょっとした破壊衝動が起きていた。

 

 

「あー、やっべ、超ヤベー。朝のあれのせいでイライラする...。俺ニコチンとか取ってないのに」

 

 

そういいながら、一夏は自室のドアノブに手を掛け、開けた。

 

 

「お帰りなさい。ご飯にします? お風呂にします? それともわ・た――」

 

 

バタン! と相手が全てを言い切る前に、一秒も掛けずに扉を閉じた。

 

(今回のストレスの原因の幻が見えるとか...、相当やばいな)

 

一瞬しか見えなかったが、目の前に立っていた少女の幻はエプロンしか身に纏っていなかった。

一夏はもう一度、ドアノブを捻る。

 

 

「お帰りなさい。私にします? 私にします? それともわ・た・し?」

 

 

バタン! と相手が全てを言い切ると同時に閉めるとスマホを取り出し構えながら、ドアノブを捻る。

 

 

「もうぅ...お姉さんをじらせ<パシャッ!>え?」

「ブラックメール送信と」

「送信?まさか...、誰に送ったの!さっき撮った写真を誰に送ったの!?」

「ピーピー、うるせぇんだよ...。とっと退かないと、ど玉ぶち抜くぞ?」

 

 

一夏は裸エプロンもどきの格好をした痴女の写真を一番見られたくない()に送ると久しぶりに取り出したカスールの銃口を向ける。

 

 

「3つ数えるまでにそこをどけ。はい、いぃ~ち(ズドン」

「2と3はァァァッ!? 」

「しらねーな、そんな数字。男はなァ、1だけ覚えとけば生きていけるんだよ」

 

 

一夏はCV若本な警察庁トップの様なセリフを言いながら、楯無の後ろにあった花瓶を撃つ。

 

 

「ほら、とっと中に入れ。後が閊えてんだよ」

「閊えてるって...、織斑君しか...。はい、何でもありません、なのでハイライトの消えた目で銃口を向けないでください。ものすごく怖いです」

 

 

ようやく中に入った一夏は腕を組みながら、目の前の痴女ストー会長を睨む。

 

 

「で、何しにきたんだ?」

「いや、私今日からここに住もうと思ってね」

「は?」

「従者のあの子たちには別の部屋に引っ越してもらったわ」

 

 

ここで、一夏はあることに気づいた。

 

 

「消毒液臭いなー」

「会った瞬間に問答無用で、オキシドールでじゃばじゃばされました」

 

 

一夏は実の妹に醜態を晒すという方法で、仕返しをしたが、マハードはバケツ一杯まで入ったオキシドールでじゃばじゃばされたようだ。

一夏の頭に殺菌!消毒!、と言いながら実行しているマハードの姿が思いついた。

気が晴れたマハードは一夏も楽しむことが出来ると踏んで、部屋を変わったのだろう。

 

 

「まぁ、護衛だろうが別に構いませんが、俺の邪魔はしないでね」

「!? なんでそう思ったのか、お姉さんに教えてくれるかしら?」

「世界初の男性操縦者という存在は世界中から狙われるから。特に、学園祭だと外部から来る人もいるからね。それに対する対応と言ったところでしょう。後は好奇心か」

「へぇ、中々鋭いのね」

 

 

一夏の推論に『お見事』と書かれた扇子を取り出す楯無。

 

 

「まぁ、どちらかと言うと織斑君の情報収取がメインなのよね」

「俺はISが動かせるだけのただの高校生ですよ」

「貴方のような高校生が居るわけないでしょ。貴方のその戦闘力ははっきり言って異常なのよ。織斑先生の弟だけで済む範囲を超えているわ」

「疑いあるものは排除、ですか?それならそれなりの実力行使をさせてもらいます?」

 

 

楯無が一夏と同室になったのは護衛だけではない。

謎が多い一夏を調べる目的もあったのだ。

楯無は今までの真剣な表情から一転、柔和な笑顔を見せた。

 

 

「生徒を守る生徒会長としての立場だと、今のところ貴方とマハード君は信用できないわ。けど、私にはIS学園の生徒会長として生徒を守る役割があるの。だから、信用出来るまで貴方からは離れないわ」

「監視と護衛の両方同時に仕様という魂胆ですか...。別に構いませんよ」

「私個人としては貴方と仲良くしたいと思ってるの、織斑君といれば私の勘が言っていたのよ♪」

「まぁ、要は同室になった理由として『俺との生活が面白そうだったから』があるって事ですか?」

 

 

面白がるように笑い、『仲良くしてね♪』と書かれた扇子を開いて見せる楯無。

 

 

「それに織斑君を調べていたら気になるワードがあったのよ」

「ほぉ...。それは」

「神殺し」

 

 

一夏は一瞬、表情が変わるが、それは常人であれば気づく事は無い、微々たる変化だったが楯無はそれを見逃さなかった。

 

 

「脈あり、何か知っているみたいね。お姉さんに教えてくれないかしら?」

「知ったらどうするつもりで」

「勿論、簪ちゃんをそんな訳のわからない連中から切り離すためよ。簪ちゃんがその神殺しって連中と関わってるのは最近の調査でようやく突き止めたのよ」

 

 

その神殺し俺です、と内心思いながら一夏は楯無の話を聞いていく。

 

 

「それに簪ちゃん小さい頃に誘拐されてね。怖い思いをしちゃったのよ...。それも神殺しが関わってるんじゃないかって私は予想してるの」

「誘拐ねぇ...」

 

 

それはクソジジィのせいで、むしろ負い目を感じている事件ですよ、と心の中で思った。

 

 

「だから、これ以上簪ちゃんが怖い思いをさせないためにその神殺しに関する情報が欲しいのよ!」

「んー、神殺しに普通の人間だろうがISだろうが勝てません。世界最強(笑)と思ってる連中と実力者ですからねー」

「そんな道理、私の胸でこじ開ける!あ、簪ちゃんからメールだ。.........オワタ」

 

 

ブシド―のような事を言っていると、楯無の携帯が鳴ると嬉々とした表情でとるが、一瞬にして、絶望で塗り固められた。

 

 

『お姉ちゃん見損ないました。

 

 私に痴女なお姉ちゃんは居ない。

 

 さようなら、私のお姉ちゃんだった人』

 

 

一夏が楯無の後ろから覗き見した内容である。

そして、一枚の離縁書と書かれた紙の写真が載っていた。

 

 

「かぁぁぁんざしちゃぁぁぁん!!これには事情があるのぉぉぉ!!」

「うわっ、盛大に泣き叫びながら出ていったぞ...」

 

 

ただのシスコンじゃないか、と一夏は思いながら部屋のドアをそっと閉めた。

外から『一回話をしましょ!ね?』『簪ちゃん開けてぇぇぇ!』『簪ちゃんわ"た"し"を見捨てないでぇぇぇぇ...』など生徒会長の悲痛な声が響いた。

 

 

 

 

 

 

ちなみにその晩、姉妹関係の危機をなんとか脱した彼女は復讐と悪戯で夜這いを仕掛けた彼女が簀巻きにされ部屋の外に放り出された事件が起こり、また姉妹に亀裂が生じかけたのはまた別の話である。

 

 




2016年クリスマスは邪ンヌですか?邪ンヌですよね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

学園祭と王の遊戯

クリスマスのライト版は報酬までライトにしなくてよかった件



そして、呼符一枚で出た師子王に思わずガッツポーズ。


一日の授業を終えた一夏は自分の趣味の一つになってしまった収集した刃物の手入れをする。

 

 

「なんで、俺刃物の収集なんて始めたんだっけ?あ、暗器に使えそうなのを探したのが始まりだ」

 

 

刃物収集から発展し、刃物制作までする始末である。

七日七晩で考えた事から一夏は『七夜の技』と命名した技は彼の師匠曰く『相手を殺すことに長けた技』との事。

七夜と彫られた一見すれば文鎮のような仕込みナイフを必ず所持している。

理由は簡単、目立たず、素早く相手を倒せるからである。

 

 

ガチャ、という音が聞こえると同時に広げていたものは仕舞、短刀も暗器術の要領で仕舞う。

 

 

 

「一夏くーん。マッサージお願い?」

「はぁ?なんでまた」

「一夏君のマッサージすごく気持ちよかったのよ。簪ちゃんの言っていた通りね」

「要らぬこというな簪の奴」

 

 

そういうと一夏は部屋に入るなり、制服を脱ぎYシャツ一枚になる楯無の要望を渋々、叶える。

寝そべっている近くに行き、慣れた手つきでマッサージをしていく。

マッサージ開始から20分が経ち。

 

 

 

「ハァ...ハァ...。一夏君の気持ちよさすぎ...。本当、一夏君って激しいのね...」

「その誤解を生むような言い方辞めろ。俺は普通にマッサージしただけで胸とか尻とか触ってないだろ」

 

 

頬を染めながら言う楯無に一夏は七夜の技喰らわせてやろうか?、と思うも踏みとどまり、風呂場に向かう。

 

 

「あら、どこに行くのかしら?」

「風呂ですよ」

「ふーん......」

 

 

一夏が風呂場に入るなり、楯無はまるで悪戯を思いついた子供のような悪い顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、お湯の温かさが身に染みるー」

 

 

一日の疲れを癒している一夏はスポンジで体を洗う一夏。

そんな時、浴室の外で何かが動く気配を感じた、次の瞬間。

 

 

「―――ジャンジャジャ~ン!! 楯無お姉さんの登場よ~!!」

 

 

スク水を着た楯無が勢いよく飛び込んできた。

その姿を確認した一夏は何とも言えない表情で白い目を向ける。

そして唐突に彼女に背を向ける。

 

 

「確か、退魔用のお札が...。あ、これ人払いだ」

「なんでお札!?妖怪?私が魑魅魍魎だって言いたいの!?」

「ある意味では魑魅魍魎より恐ろしいですね。水着を着てるとは言え、男子がいる浴室に躊躇いなく入ってこれる痴女は...。う、頭が...」

 

 

だから痴女じゃないってば! と突っ込みを入れる楯無を無視し、毒気を抜かれた一夏は眉間に皺を寄せながら、溜息を吐いた。

 

 

 

「少しの間で良いから部屋の方で待っててくれませんか? あとはシャワーで泡を落とすだけだからさ」

「あら、まだ背中が洗えてないみたいだけど? ねぇ、折角同室になったんだし、裸の付き合いで親睦を深めましょ?」

「...同室になるように仕向けたのは貴女ですよね? それに裸の付き合いがお望みなら、今直ぐ簪の部屋に行って、同じこと言ってください。きっと面白いことになりますから」

「何かトンでもないところに着地したけど、幾ら妹が大事だからって私にそんな趣味はないわ!?あと、それ簪ちゃんに嫌われちゃうから!!」

 

 

え?、と何言ってんだこいつ的な視線を送る一夏はシャワーノズルを手に取った。

楯無の言う通り背中はまだ洗い終わっていない。

 

 

「いいからいいから、偶にはお姉さんに甘えなさいって」

 

 

だが、それを察知したかのように楯無は無理矢理一夏を座らせ、先程まで身体を洗う為に使っていたタオルも引っ手繰る。

取り返そうと腕を伸ばしたが、彼女はそれを巧みに躱し、最終的には抵抗も虚しく背中を洗われる。

権能を使ってもよかったが、そんなことをすれば自分の正体を晒すことになる。

ばらすような行為を避けたい、では体術は?、と思ったが、変な警戒心を生みかねないので、ここは彼女に従う選択を一夏は取った。

 

 

「貴方を見ていると、簪ちゃんと重なるのよね」

「俺が簪と?」

「なんでかなと思って。調べてみたら、貴方と簪ちゃんの境遇が似ているからよ」

 

 

一夏は何となく察した。

一夏と簪の似ている部分、優秀な姉を持ち、まっとうな評価を受けず、迫害されたことだろう。

 

 

「確かに俺は偏見の目と批判と迫害を受けた時期もあったが、そんな有象無象の戯言にいちいち気にしていたら人生損するからな。それと」

「え?―――グッ!?」

「トラウマが横切ってうざいから退出願おうか」

 

 

一夏は縮地を使った三次元移動をし、楯無の背後を取ると首筋に手刀を当て、気絶させる。

そのまま、風呂場を出ると楯無を放置し、そのまま残りの日課を済ませ、夢の世界に旅立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――これより、第10回、IS学園学園祭を開催いたします!』

 

 

天井付近に設えられたスピーカーから実行委員長の宣言が響くと同時に拍手と歓声に包まれた。

IS学園の生徒が待ちに待った、学園祭の始まりである。

 

 

「うそ!? あの織斑くんの接客が受けられるの!?」

「しかも執事の燕尾服!」

「写真も撮ってくれるんだって! しかもツーショットよ、ツーショット!」

「行くぞ!」

 

 

今注目の男性操縦者である、一夏の接客が受けられるという噂を聞き付けた来客は一年一組の 『メイドカフェ☆アーネルンベ』は大盛況であった。

「いらっしゃいませ、こちらへどうぞお嬢様♪」

そう言いながらシャルロットも人を中へと案内していく。

接客は彼女以外にもセシリア、箒、ラウラ、一夏、マナ、その他クラスメイト複数である

一夏は燕尾服を着込んでいるが、その服の中には暗器の類がぎっしる詰まっていた。

接客をし、客を相手にしているのだがその客は妙に頬を赤めており、中にはマナやシャルロットなどに鼻息を荒げる同性愛者がそこにいた。

 

 

「5番テーブル遅れてるわよ!何やってんの!!」

「情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、誠意!そしなによりも―――速さが足りない!!」

「説教するか、運ぶかどっちかにして!」

 

来客で賑やかになるにつれて厨房の方も忙しくなる。

 

 

 

「一夏、そろそろ休憩に入っていいですよ」

「大丈夫?これから更に人増えると思うけど」

「これ位、捌けなくて何が従者ですか」

「そうか。なら、休ませてもらうわ!」

 

 

そういうと一夏は親友と約束した場所に向かう。

 

 

 

 

 

「IS学園キター!」

 

 

赤毛の長い髪をした少年、一夏の親友である五反田弾はIS学園に来た喜びのあまり、宇宙を題材にした特撮系の台詞を言う弾。

 

 

「お前は来て早々、なに言ってんだよ」

「何、ここに来るのがどんなに待ち遠しかったか...。こんな花の園に行けるとか、どんだけ人生、潤ってんだよ!」

「はぁー、あれが女性と関係持つことにただならぬ思いがあるのお忘れで?」

「すまない。つらい思い出を思い出させて」

 

 

先ほどの元気はどこへやら、一夏の気分を悪くしたと思った弾は頭を下げて謝罪する。

と、そんな時、ふとこちらへとやってくる女子生徒がやってきた。

いかにも出来る女と思わせるほど、キリッとしていて、知的そうなメガネをかけている。

 

 

「すみません、うちの生徒たちからの招待状か何かはお持ちですか?て、織斑君じゃない。てことは織斑君の招待した人ですか?」

「えぇ、招待状見せろよ」

「お、おう...」

 

 

弾は携帯にあるデータを見せる。

 

 

「織斑君の招待状ですね。ようこそ、IS学園へ。一応、ここは国家機密の場所などもあります。こちらが出している案内板をご確認して、今回の学園祭を楽しんでいってください」

 

 

そう言うと、女子生徒は「では、私はこれで」といい、その場を立ち去る。

その後ろ姿をただ見つめる弾に一夏は背後に回りタイキックをかます。

 

 

「ッタイ!?何しやがる一夏!」

「ずーっとぼったてるから現実世界に戻してやったんだ。感謝しろ」

「もう少し、穏便な方法があったろ?!」

「あともう一つ、ケツバットがあったが」

「ガキつかか!所でよ、さっきの人知ってるか?」

「あぁ、三年生の生徒会会計の布仏虚だな。マハードの資料にあったから、覚えてる。一目ぼれか?」

「一目ぼれ...。これが一目ぼれと言う奴なのか...」

 

 

彼らはそんなやり取りをしながら学園の敷地内を歩いていく。

一夏達が真っ先に入ったのは一年四組の『体験コスプレ喫茶』だった。

 

 

「なんだ...こいつは...」

「なんでも、クラスの約7割がオタクという奇妙なクラスでな。出し物何にするかという話になったときに、『遊びに来た人も参加できるモノ』を目指した結果こうなったらしい」

「どこをどうすればそうなるんですかね?」

「さぁ?面白そうだから入ろうぜ」

 

早速、入ってみるとピンクをメインにした探偵がいた。

 

 

「ようこそ、体験コスプレ喫茶へ...って一夏!?」

「面白そうだから来たぞ」

「此方へ、どうぞ...」

 

 

メニュー表とコスプレできる一覧を渡された。

 

 

「どうしようかな...。アナハイムの制服で声真似しまくるか?」

「ならおれはタツヤをやろうか?」

「司祭服着て、天草四郎の真似をするか」

「なら、俺は巌窟王」

「じゃ、こっちの方で着替えを...」

「分かった...、だが、その手に持っているカメラはなんだ?」

「一夏のコスプレ映像を残しておくだけ...」

「なら、いいや」

「いいのか!?」

 

 

そんなことを言いながら、一夏達は着替えると髪を逆立てせ、赤と黒の司祭服に着込んだ褐色の男性と深緑のジャケットに帽子をかぶった男性がいた。

 

 

 

「待て、しかして希望せよ」

「真名、天草四郎時貞...召喚に応じて参上しました。貴方が私のマスターですね?」

「キタ――(゚∀゚)――!!」

「GOOOOOOOOD......」

 

 

一夏達の着替えが終わると、歓喜の声と眩いばかりのフラッシュが一夏達を襲う。

 

 

「なにこれ完成度高すぎぃ!」

「やばい、興奮してきた!!」

「ぜひ私の生涯のサーヴァントに!!」

「裏切者がいるぞ!始末しろ!」

「嘘です!ごめんなさい!!」

「なんで私の所に...エドモン来なかったのよぉぉぉ!!」

「回せ、しかして希望せよ」

「しゃぁぁぁぁぁ!」

 

 

知るはずもない、一夏と弾は名の知れたオタクであり、コスプレイヤーなのだから。

完成度が高いのは当然である。

 

 

「裁定者と復讐者のなんかポーズを!」

「荒事は苦手なのですが...」

「お前は我が姿に何を見る!」

 

 

 

一夏は片手に刀をもう片方の手に三本の剣を指で挟むように持ち、背面立ちしながらこちらをチラ見する弾、しかも背中合わせである。

 

 

「キタコレ!」

「一夏君の燕尾服?そんなのよりこっちの方が需要があるわよ!!」

「しかも、もう一人の方もしゅごいぃぃぃ!ぜひ、お友達に!」

「セブン!倒れなさい!!」

「なんでカレー先輩が!?ギャァァァァ!!」

 

 

予想がいな収穫に興奮する四組にいる人たち。

そして、抜け駆けしようとした人にカレーを持っていた眼鏡をかけた青髪の女性がパイルバンカーで攻撃してきた。

 

 

「どうします?声真似をしながらここにいますか?」

「こういうのは久しぶりだからな。少し堪能することにしよう」

「では、そのように」

 

 

 

そういいながら、二人は席に着きコスプレを堪能しながら、時には客の要求に答えていった。

 

 

「俺のタンメンまだー」

「まだですー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四組の出し物を堪能した一夏達だが、いまだコスプレ姿のままである。

理由は四組の来客からのリクエストで、学園祭の間この姿でいてほしいというものだった。

一夏達は面白そうだからOK、と快く承諾し、廊下を歩いている。

その浮いた格好から通りすがる人全員に見られているが、学園祭と言うこともあり、とくに奇怪な目で見られることは無かった。

 

 

「おや?クラスから連絡ですね」

「なら、早く出た方がいいんじゃないのか?」

「そうですね」

 

 

完璧にハマった二人は成り切ったまま会話をしている。

コスプレをする以上、その役になきらなければいけないという職人魂に火がついていた。

 

 

「こちら、一夏。どうかしました?」

『あれ?声の感じなんか違う...?じゃなくて、今すごいお客さんが来て、一夏がいない!?ってすごいクレームなんだよ!!』

「分かりました。すぐそちらに戻ります」

『うん!お願い!!』

 

 

そういうと一夏はシャルロットからの電話を切る。

 

 

「なんだ、もう終わりなのか」

「えぇ、そのようですね」

「そうか...。なら、今度食堂に来い。俺の腕前を披露してやる」

「楽しみにしていますよ。あぁ、親友と別れるのは事に...私は寂しい...(ポロロン」

「それは違う。天草じゃなくてトリスタンだ」

 

 

シャルロットからの電話を傍らで聞いた弾はもう少し、一夏と回りたかった為、残念そうな顔をする。

その顔を見た一夏は竪琴を鳴らしながら、自分も同じ気持ちだというが、今演じてるキャラと別だと突っ込みを入れる。

別れを惜しみながらも、お互いに心から笑いあってる二人は楽しそうであった。

 

 

 

 

 

 

一夏が一組に戻ってくるなり、一組中が困惑した。

そこにいた全員が一夏が来るもんだと思っていたが、そこに居たのは赤と黒の司祭服に着込んだ褐色の男性だった。

 

 

「えーと、一夏でいいんだよね?」

「ほんの少しの間、会わなかっただけで忘れられるとは...私は悲しい」

「え!?本当に一夏なの!?全然、別人だよ!!」

「ガチコスプレイヤーを舐めてもらわないで欲しいですね。いやでしたら、すぐ着替えましょうか?」

「時間がないから、顔の化粧を落とすだけでいいよ!」

 

 

そういうと一夏は化粧落としをしようとするマナがタオルを持ってくる。

 

 

「はい、コスプレが出し物のクラスがあったんだ」

「一年四組にあるぞ」

 

 

そういうと一夏は顔を拭き化粧を落とすと声と口調を元通りにする。

一夏目当てで、訪れている客が多い以上、厨房に行かせるのは更なるクレームを呼びかねないので、基本的にホールの入るが、稀に厨房の方に回っている。

こうして、順調にお客さんを回転させていきながら、一組は収入を増やして行く。

一夏が厨房に戻ろうと、体を反転させたその瞬間、一夏の目の前に、いつも目にしている水色の髪をした痴女会長が目に入る。

 

 

「ジャジャーン♪」

「何しに来たんですか?」

「突然で悪いけど、観客参加型演劇に参加して頂戴!」

「は?んー、俺が面白くなるのでしたらいいですけど」

「大丈夫よ。一夏君も参加する皆も楽しめるわ」

「ならいいですけど」

 

 

しばらくの間、一夏は一組でのメイド喫茶の業務に勤しんでいた。

その後、エドモンの格好をした弾が遊びに来ると遅れて、鈴が訪れ。

エドモンが弾だと鈴は分からず、元の声を出すまで分からなかった。

そして、一夏と弾の格好を見た一部の人が涙を流していたのは気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一夏は楯無の言うがまま貴族服に着替え、王冠をかぶるとステージに上がる。

 

 

「むかしむかし、あるところにシンデレラと言う少女が居ました。しかし、そのシンデレラと言うのは本当の名前ではない、舞踏会と言う名の戦場を潜り抜けし最強の戦士たち。彼女たちにふさわしい称号。それがシンデレラ!今宵もまた血に飢えた彼女たちが現れる。王の冠に隠された隣国の軍事機密を狙い舞踏会と言う名の戦場が幕を開ける!!」

 

 

スクリーンに映し出された『灰被姫』の文字。

文字だけ見ればまさしくシンデレラだ。

すると、周りがいきなり明るくなり、舞台全体が映し出された。

中世ヨーロッパの造型で作られたセット。

レンガ造りの塔や、舞踏会などのシーンで見るテラス席と、そこにつながる階段...。

そして、今一夏の立っている場所は、まさしく舞踏会の会場。

その証拠に、置かれた円卓と燭台。

今まさに宴が始まるのではないかと彷彿とさせる舞台があった。

だが、楯無の前説を聞いたら分かると思うが、これはただのシンデレラではない。

 

 

 

上空から影が現れると、一夏はバックステップで避けると青龍刀を振り下ろした純白のドレスを着た少女―――鈴がいた。

 

 

「あ(察し」

「一夏!私と戦いなさい!」

「なんでさ」

「面白そうだからよ!」

 

 

そういうと鈴は3本の飛刀を投げると一夏はその内の一つを取ると、逆手で持ち後は弾く。

一夏は久しぶりに『七夜の技』を使うかと、思うとクラウチングスタートの様な姿勢を取ると、鈴に急接近する。

 

 

「なッ!?」

「フッ...!」

 

 

ガキン!、と金属同士がぶつかり合う音がした。

なんとか、一夏の行動に反応出来たもの、次の一手を取ろうとした瞬間。

 

 

「あれ...?一夏は?―――ギャァァァ!!」

 

 

目の前から消えた一夏を探す鈴に一夏は鈴の真上から飛刀を振り下ろす。

鈴は本能的に青龍刀で防ぐが、大きくのけ反り、青龍刀に罅が入る。

鈴を無効化しようとした一夏に一瞬、空気が揺らぐのを感じると飛刀で何かを弾く。

 

 

「これは...、レーザーサイト...。狙撃か」

 

 

そういうと一夏は貴族服のポッケに片手を突っ込んで余裕の表情で放たれる弾丸を弾いていく。

だが、一夏はある不安があった。

 

(この飛刀も長くはもたないだろうな...)

 

そう、一夏が持っている飛刀が刃こぼれしているのだ。

狙撃を防げているものいつ壊れるかわかったものではない。

そんなこと考えていると一夏の背後に二つの人影が現れる。

 

 

「どうやら、お困りの様ですね。王子」

「た、助けに来たよ。お、王子様」

 

 

マハードとマナが一夏の助けに来たのだ。

マハードの格好は青紫の鎧を身に纏った魔術師と胸元が見える水色とピンクのミニスカにステッキを持った魔法使いのマナの姿だった。

 

 

「マナ...お前...」

「言わないで一夏!私だって恥ずかしんだから!!」

「年甲斐もなくそんな恰好をして恥ずかしくないんですか?」

「グフッ」

 

 

顔を赤くしながら言うマナに一夏は思ったことをそのままいうとマナの心にダメージを負わせる。

 

 

『リアル魔法少女...ハァハァ...』

「ヒィ!?一夏!私変な目で見られてる!!」

「そりゃ、攻めまくった格好をすれば異性だろうが同性愛者だろうが反応するだろうな。お前かわいいもん」

「あ、うん。ありがとう一夏...」

「ゴホン、王子よ。貴方の為の剣をお持ちしました。この剣でこの舞踏会を生き延びてください」

「私達も王子様の援護するから!あの狙撃手は任せなさい!!」

 

 

いやらしい視線に怯えるマナに一夏は原因をいうと、さりげなく褒める。

その言葉を聞いたマナは嬉恥ずかしそうに答えると、マハードが咳払いし、セリフぽっくいうと一夏に鞘に入った150㎝の大太刀を渡すとその場から離れる。

 

 

 

「さーて、王の進軍の開始だ!」

 

 

そういうと一夏はステージを疾走するのだった。

 




少し区切りが悪いですが、後2話で学園祭は終わりかな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王の技 不審と出会い

学園祭もクライマックス!


邪ンヌもスキルマできたし、後はイベントに逝くのみ!




誤って、ピックアップ十連回したらジャック出ずに、カレスコ...。

凸させようにも凸したのとは別にあと一枚欲しいな...。


進軍すると言ったものの、とくにどうするか決めていない一夏は取りあえず、ステージを進むことにした。

 

 

「さて、どうするかなー。取りあえず、この塔を上るか」

 

 

そういうと一夏は上り詰めていく。

 

(さて、誰が出るかな?箒、鈴、ラウラ、簪、シャルかな?遠距離タイプのセシリアが前面に出てくるとは考えにくい)

 

敵がどう出る考えていると急にスポットライトが当てられ、その光に照らされたシンデレラは、銀髪のストレートで、両手に軍用のコンバットナイフを装備していた。

 

 

「次はお前か...」

「私はこの時を待ちかねたぞ!師匠(ガンダム)!!」

「おい、後ろにガンダムって文字が見えたぞ!」

「今日この日......私は師匠を倒し、超えていく!」

 

ガキン、とナイフと鞘が衝突する。

ナイフ二刀流で突っ込んでくるラウラ。

逆手に持ったナイフを、右に左にと振り抜いていく。

一夏も僅かな動きで攻撃を躱し、いなし、受け止める。

 

 

「流石は師匠!剣を抜かず、私の二刀流についてくるとは!」

「まぁ、見切れない速さじゃないし。剣馬鹿に比べたらねー。足元注意っと」

「くっ...!」

 

 

ラウラの二刀流を難なくかわすとラウラの行動に合わせ、鞘をラウラの足に引っ掛けさせ、転倒させようとするも現役軍人と言うこともあり、すぐさま体勢を立て直す。

次の一手を打とうとしたとき、一夏の横に影が現れる。

 

 

「切り捨て御免ッ!」

「はーい、奇襲は叫びながらやると失敗しますよ」

 

 

一夏は抜刀し、日本刀を構え、上空から奇襲した箒と鍔迫り合いになる。

 

 

「流石は一夏だ!私の奇襲を難なくクリアするとは!!」

「あれを奇襲と言うなら、全世界の暗殺者に謝罪した方がいいぜ」

「グッ...!」

 

 

二人の剣戟がぶつかり合うと一夏は右手に持った大太刀で箒を押し返すと、すかさず間合いを詰め、左手に持っていた鞘の鯉口で箒の腹部に強く打ち付ける。

 

 

「戦術が剣道のベースだから、動きが読みやすいんだよなー」

「篠ノ之流にそのような動きはない!お前の流派はなんだ!!」

「だーかーらー、俺は我流だってかなり前に言ったろうに」

「我流であそこまで完成させるのは不可能だ!」

 

 

実戦で磨き上げてきたものだからな、などと言えるはずもなく一夏は刀を鞘に納めると後方から音もなく一夏を襲撃しようとしたラウラの攻撃を受け流す。

 

 

「奇襲ってのはやっぱそういいのだよな。フンッ!」

「グアッ...!?」

 

 

受け流した時にがら空きになったラウラの腹に鞘を叩き付けると一夏は苦しむ二人を無力化し、眺めていると、その後ろから、ひたひたと近づいて来る者がいた。

 

 

「っ!?」

「何やってんの?」

 

 

咄嗟に後ろを振り向き、居合の構えた一夏。

するとそこには、水色髪の少女が立っていた。

しかも、一夏の頭の上に手を伸ばそうとしていた状態で...。

 

 

「大体予想着くけど何しに来た?」

「え、えっと...」

 

 

一夏の冷静な対応に、一瞬身じろぎした簪。

恥ずかしそうに顔を赤らめて、ドレスの裾を握ってモジモジとしている。

 

 

「い、一夏の王冠を...その...」

「ヤッパリネ」

 

 

弱々しくそう言う。

やはり簪も一夏の被る王冠を求めて来たようだ。

 

 

「そんなに欲しいならやるよ」

「え?本当!?」

 

 

飽きたから渡して楽になろう、と一夏が王冠に手を取った瞬間...。

 

 

「ビリッと来た!?」

「っ!?」

 

『自責の念によって、電流が流れます! あぁ、何ということでしょう......王子たちの国を思う心は、そうまでして重いのか......。

しかし、私たちは見守ることしかできません! あぁ、何ということでしょう!!』

 

 

思わぬ電撃にびっくりする一夏だが、そこまでダメージはない。

そして、先のアナウンスにイラッときた一夏は刀を抜く。

 

 

「ガァァベラストレェェトッ!」

『うわっ、危ない!?』

 

 

人を参加させておいてこの対応にイラついて刀を投擲した一夏は恐らく悪くない。

 

 

「あ、武器なくしちゃった。しゃーね、短刀使うか」

『嘘ッ!ボディチェックした時に無かったのに!?こうなったらポチッと!』

 

 

一夏は隠し持っていた仕込みナイフの『七夜の短刀』を取り出すとその光景に驚く楯無は何やらボタンを押す。

 

 

グイイィィーーーーン

 

 

塔の上に居た一夏と簪は音の発信源を見た。

と、その正体を見た瞬間、一夏と簪は驚愕した。

 

 

「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか。完成度高けーなオイ」

『アームストロング二回言った!そんな卑猥な大砲なわけないでしょ!?』

 

 

どこぞの雪まつりに出てきた雪像を思い出した一夏は思ったことを言うと、楯無が突っ込みを入れる。

そんなことをしているとゆっくりと砲身が移動する。

射角を揃え、刀奈の押したボタンに反応し、アームストロング砲の砲弾が発射された。

 

 

「本当に撃つなよ。たくっ」

 

 

クラウチングスタートの様な姿勢になるとそのまま放たれた大砲めがけ進み、短刀で大砲を真っ二つに切断する。

 

 

「こんな事いつまで続くんだか...。で、お前は俺と戦うの?」

「僕は一夏を助け様としただけなんだけどなー...。...アハハッ」

 

 

一夏は剣先をシャルロットに向けるも敵対する気はないといい、その手には防弾ガラスで出来たシールドを持っていた。

 

 

そんなことを言いながら一夏達は進んでいくと塔の中に進んでいく。

一夏の耳に中が押される音と何かが稼働する音が聞こえる。

一夏達は音のした方を視線を移す一夏達。

 

 

すると、今まで壁だと思っていた城壁が、両手開きのドアの様にパカリと開く。

だが、開いた先に問題があった。

どこからそんなものを持ち出したのかと疑いたくなる様な、巨大な鉄球が現れたからだ。

 

 

 

「なっ!?」

「嘘っ?!」

 

 

現れた鉄球は、コロコロと坂道になっている道を転がってくる。

そしてその行く先に、一夏達の姿あった。

 

 

「こっち着てるよ一夏!!」

「その楯でなんとかならないの?」

「無理だよ!嫌だ!?死ぬなら一夏と一線超えてから死にたい!!」

「シャルロット...後で倒す...」

 

 

迫りくる鉄球に平常心を失いけてるシャルロットは自分が今一番叶えたい願望を言うと簪から黒いオーラが出始めたのは気のせいだろう。

その光景に溜息を吐きながら一夏は前に出る。

 

 

「死夏・十七分割」

 

 

一夏の姿が一瞬消えると、鉄球に一閃した。

そして、次の瞬間には言葉通り、十七の鉄くずに成り果てる。

 

 

「ねぇ...。あれが何かわかる?」

「一夏が編み出した『七夜の技』と呼ばれる技の一つ。その技の一つ一つは相手を確実に倒す事を念頭に置いて編み出された一夏だけの技しかわからない...」

 

 

一夏が編み出した一夏だけの技であり、同族である神殺しが相手の時、もし呪力が切れ権能が使えないときのことを想定して編み出した技。

その技の一つ一つはISでは相手にならず、神殺し相手でもそれなりに対抗できる技である。

現に一度、技の一つである極死・七夜という技でヴォバンと兎の魔王を倒している。

 

 

『さぁっ! ここからは、フリーエントリー組の参加です! みんな、王子様の王冠めがけてガンバってぇ~~っ!!!!』

 

「What?」

「「な、なにぃ~~っ!」」

 

 

驚愕するシャルロットと簪だが、楯無の言葉とともに、雪崩れ込んでくる一般生徒たち。

 

 

「じゃ、ここから別行動ってことで」

 

 

塔の壁を切り刻み、そのまま降りるとあちらこちらに参加した一般生徒が沸いていた。

 

 

その中で、まだ人がいない場所めがけて着地すると、ふと、足を掴まれた。

 

 

「此方です」

「誰だ?」

「私の事は後で説明します。今は追われているのでしょ?」

 

 

確かに、もう追っ手がそこまで迫ってきている。

少し休むかと、一夏は目の前の女性についていく。

 

 

 

 

 

「私、『みつるぎ』という会社の営業担当をしております、巻紙 礼子と申します。我が社の新作製品のご紹介を――」

「そんなまどろっこしい説明要らないよ。用件だけとっと言ってくれない?」

「...ですから、我が社の新作製品のご紹介をしようと」

「くどいぞ、愚民」

「っ!?」

 

 

突如、放たれた一夏の威圧感に思わず後退する礼子。

 

 

 

「お前の白式を奪いに来たってとっと言えばいいものを...。お前から匂う血の匂いは表社会の営業が着くわけないだろ」

「へぇ...、餓鬼だと思って甘く見ていたけど...。なら、リクエスト通り...さっさとその機体を寄越しな!!」

 

 

突如、礼子からの蹴りが放たれた。

咄嗟に一夏は後ろに避け、蹴りを躱し、臨戦態勢に入る。

 

 

「お決まり文句言うけど、お前何者だ?」

「あぁ? そんなもん決まってるだろう......てめぇの専用機をもらいに来た、謎の美女だよッ!!!!!」

 

 

突如、礼子の上着のスーツが膨れ上がる。

そして、それを突き破り、中から8本の金属の棒が現れた。

 

 

「ハッ、自分の顔を鏡で見てから言えよ。BBA」

「ぶち殺す!」

 

 

礼子の体にも、光が溢れてくる。

光が収まると同時に、その姿にも変化が......。

赤黒い色と黄色という、とても不気味な色合いを基調としたIS。

先ほどから攻撃していた8本の棒は、全て地面に着き、脚のようなっていた。

その他に、自身の腕につけられた装甲。

全ての手足を合わせると、10本にも及ぶ。

一夏はその姿に心当たりがあった。

 

 

「アラクネ...。それがお前のISか?」

「そうさ!これがてめぇをぶち殺す機体の名で、そして倒す人物の名はオータム様さァ!」

 

 

一夏は短刀を構えながら、直進する。

 

 

「いい的だぜ!」

「――閃鞘・七夜」

「グッ...!」

 

 

アラクネの腕で攻撃しようとしたオータムだが、一夏に攻撃を当てずに、逆にダメージを負う。

 

閃鞘・七夜

 

一夏の編み出した『七夜の技』の一つ。

一直線に突き進み、相手の懐に潜り込みながら相手をすれ違いざまに斬り付ける技だが、その速度はISでは到底反応することが出来ない速さである。

 

 

「オラオラオラオラオラッ!!!!!」

 

 

アリーナの更衣室という、ISの戦闘ではまず狭すぎる場所にて、銃撃戦が始まっていた。

そうIS(・・)では狭すぎるが、一夏は生身であり、そしてこのように狭い場所は一夏にとって自分の狩場同然である。

一夏は『閃走・水月』とい『七夜の技』に置いて高速移動術の基本であり、床を、時には壁や天井などを使い三次元移動で行動し、避けている。

 

 

「ちっ! ちょこまかと......! 逃げ回るしか能がねぇのかっ!? おいっ!」

「なら、リクエストに応えてやるよ...!」

「グワァ!?」

 

 

閃鞘・一風

 

接近し肘打ちで相手を怯ませ掴みかかり、後ろ側に脳天から地面に叩きつけるように投げる。

そして、怯んだ隙に、10本にも及ぶ腕を一つを切り落とす。

 

「ふんっ! たかだが腕一つやられただけだ!」

「む?」

 

 

一夏は残りの腕を使った掌打を最初に放った腕を足場に体を捩りながら避ける。

一夏が避けている間にオータムは体勢を立て直し、攻撃を再開する。

 

 

「オラッ!」

「フッ!」

 

 

ブレードが付いた足が、一夏に迫りくるが、一夏は短刀で受け流しながら近づくと閃鞘・七夜で更に腕を切り落とす。

 

 

「クッ...、このクソガキがぁぁっぁ!出てこい!!」

 

 

腕を切り落とした後、一夏は近くのロッカーを使い姿を消し、一向に姿を現せない一夏に苛立つオータム。

そんな時、オータムのすぐ近くで、カラン、と空き缶が転がる。

 

(これは罠か...。あっちに気を取らせて背後からの奇襲が目的か!)

 

そんな考えをしているとオータムの考え通り背後から音がするとすかさず制圧射撃を繰り出し周りを穴だらけにする。

立ち上がった土煙が消えると、そこには穴だらけになった床と壁しかなく、一夏の姿はどこにもなかった。

 

 

「なっ!?奴はどこに...、アァァァ!?」

 

 

当たりを捜索しているオータムに、突如、頭上から現れた一夏は頭上から相手の脳天目がけて切り付ける。

 

 

閃鞘・八穿 

上空より姿を現し頭上から相手の脳天当たりを斬り付ける技。

 

閃鞘・八穿により頭部ヘルメットに罅が入る。

 

 

 

「はっ、ははっ! いいぜ、最っ高だよお前! まさかあん時の弱虫小僧がここまで強くなるとわよ!」

「あの時?」

「あぁ、覚えてねぇのか? なら教えてやるよ......いつだったか、お前を拉致った時があっただろう?拉致ったのは、俺たち亡国機業なんだよ......っ!」

「ふーん...」

 

 

オータムの告白にどうでもよさそうな反応をするが内心違った。

自分を誘拐し、千冬の二連覇を阻止したことが憎いか?違う。

自分を誘拐したことに対する侮辱か?これも違う。

自分を誘拐したことで、マハードやマナ達に心配させた後悔と怒りが一夏の中で激しく燃えていた。

 

 

「吾は面影糸を巣と張る蜘蛛。

――――ようこそ、この素晴らしき惨殺空間へ」

「一体何を...ぐぁぁ!?」

 

 

一夏はオータムに接近すると無尽蔵に斬撃をばら撒く。

 

 

閃鞘・八点衝  

 

無尽蔵に斬撃をばら撒く。前方に斬撃を乱れ打ち、敵を切り刻むと同時に接近及び反撃を防ぐ技である。

 

 

「蹴り穿つ!」

「グハッ!?」

 

 

だが、一夏の攻撃は終わらず斬撃をばら撒くのをやめると瞬時に同じ箇所目掛けて斜め上に向かって蹴りを六発叩き込む。

 

 

閃走・六兎

 

奇襲用の高速蹴技。瞬時に同じ箇所目掛けて斜め上に向かって蹴りを六発叩き込む。

だが、一夏の攻撃は終わらず、がら空きになった頭部を掴むと地面に叩き付ける。

 

 

「俺の記憶が正しければ、ぼ、亡ナントカだったよな。()に喧嘩を売ったんだ...、ただで帰れると思うなよ」

「グッ...、調子に乗るなよ!このクソガキがァァぁ!!」

 

 

オータムは両手に持った大型のビーム砲を一夏に向けるが、短刀で銃口をズラし、空いた手でもう片方のビーム砲の銃口をずらす。

 

 

「待ってたぜ!この時をォ!!」

 

 

両手が塞がった今が好機と思ったオータムは脚部のビーム砲で攻撃する。

頭部を消し炭にした衝撃で、後ろに倒れる一夏。

 

 

「ハハハハッ!このオータム様をなめた罰だぜ!!地獄で後悔しやがれってんだよ!!」

「馬鹿だなお前...」

「あ?」

 

 

ビーム砲で頭部を消し炭にしたことで、確実に殺したと思ったオータムは高笑いをするが、聞こえるはずのない声が聞こえると消し炭になった頭部が燃え上がると、瞬時に炎が消えるとそこには何事も無かったように首を回す一夏の姿があった。

 

 

「...な、なんで」

「なんで生きているか?それは俺が不死の男だからだよ」

「クソっ! クソクソクソッ! なんなんだよテメェはッ!」

「ただの神殺しだよッ!」

 

 

斬撃をばら撒きながら前進し、交互に飛び蹴りをし、逆袈裟で切り付けつける。

 

 

「化け物野郎がッ!」

 

 

脚部ビーム砲からルーン文字が現れるとルーン魔術とビームが交わり一夏を襲う。

 

 

「遅すぎるんだよ!」

「...グァァァ!?」

 

 

閃鞘・七夜でオータムを切り付けると残った腕を二本切り落とすと、オータムの首目がけて回し蹴りをする。

先の蹴りを受けたオータムは理解した。

新米の魔術師のオータムは神殺しと言う存在を甘く見ていた。

所詮は同じ人間、こっちにはISがあるのだから勝てると自身を過信していたが、その過信は今この瞬間完全に崩壊し、目の前にいる化け物(一夏)に対する恐怖が増幅し、今すぐ逃げなければ危険だと、警告を出していた。

そして、オータムの取った行動は...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっく、一夏の奴何処に行ったのよ?」

「知らん。一夏に無力化されたからな」

「師匠...、お腹が痛いです...」

「一夏は壁を壊してどこかに行ったから、その先は分からない...」

「人間離れした技を見れたけど...、なんか怖かったな...」

「痛いですわ...。マナさんとマハードさんに思いっきり殴られて銃も壊されて散々ですわ!」

 

 

舞台の広間にて、専用機持ち達というか滑稽なシンデレラ達は一夏を探すために集まっていた。

 

 

 

『緊急事態です! 未確認のISが学園に侵入!繰り返します!!

 

 

「「「「「「ッ!!!!!?」」」」」」

 

 

『専用機持ちは、直ちにISを展開! 一般生徒及び、来客の避難誘導と、周囲の警戒を行ってください!』

 

 

 

マイク越しに真耶の緊迫した声が聞こえた。これは間違いなく、訓練ではない。

専用機持ち達は思わぬ状況に息をのむ。

そんな中、ラウラがあることに気づいた。

 

 

「師匠は!師匠は大丈夫なのか!?今回の襲撃は師匠が目的ではないのか!!」

「何だと!今すぐ、私と赤椿が一夏を救いに!!」

「待ちなさい。貴女達は一般生徒と来客の避難誘導と周囲の警戒をお願い。一夏君は私が助けに行くわ」

 

 

自身の専用機霧纏の(ミステリアス)淑女(・レイディ)を起動させ、専用機持ち達に指示を出すと、次の瞬間、舞台のセットを突き破り、二つの影が飛び出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは...!」

「一夏!!」

「ISも纏わずに無謀ですわ!!」

 

 

逃げ回っている間に一夏によって切り落とされ、4本足になったアラクネと、短刀を一つで攻撃をいなし、反撃する一夏。

 

 

閃鞘・四辻

 

短刀で斬りつけ、返す刀でさらに斬り、閃鞘・七夜のように突進して斬る連続攻撃後、閃走・六兎で追撃する。

 

 

「どうした?その程度か」

「こんな...はずじゃ...」

「物事思い通りなるなんざ、極々稀だ。今まで運が良かっただけに過ぎない」

「この...クソガキがァァ!舐めるなぁァァ!!――ッ!?」

「舐めているのはお前だ...。 極彩と散れ!」

 

 

諦めの悪いオータムは残りの脚部からビーム砲を一斉射撃するが、間を縫うように進む一夏だが、途端にスピードの緩急を極端にし、相手の体制が崩れた所を上空、下段から高速での斬撃を相手に叩き込む技である閃鞘・迷獄沙門を叩き込む。

 

 

「ガハッ...!?」

「つくづく無能だなあ?オマエ...」

 

 

誰もが息をのんだ。

勝ったのだ生身でISに乗るテロリストに。

だが、誰もがその現実を受け入れることが出来なかった。

IS=世界最強という図式が出来上がってる社会に置いて、一夏のした事は偉業とも取れるだろう。

テロリストである以上、最低でも国家代表候補クラスの実力があるはずの相手に生身で勝ったのだ。

だが、一夏の目を見た瞬間、誰も声を掛けようとしなかった。

相手の弱さに悪態を突く一夏の瞳はいつもの優しい目ではなく、敵ならば斬るという、明確な敵意と殺意の孕んだその瞳を見た瞬間、蜘蛛の巣に捕らえられた羽虫の様に身動きが取れないでい居た。

 

 

 

「本当に...一夏なんだよね...?」

「ん?あぁ、そうだ。俺は俺だ、それ以上でそれ以下でもない」

「やっぱり、お姉さんに一夏君の秘密話してもらおうかしら?」

「お、お姉ちゃん!!」

「先の戦闘を見て、警戒心を上げたか...。まぁ、当然の事だな」

 

 

先ほどのオータムの戦闘の一部だけとはいえ、その戦闘力は異常である。

国を守る暗部の長として、学園を守る生徒会長して、一夏に矛先を向ける楯無。

 

 

「簪ちゃんは静かにしてて。私は生徒会長として、学園の生徒を守る義務があるのよ」

「違う!一夏は私たちの敵になんかならない!!あの時だって...!」

「危険な人物を簪ちゃんの近くに置いておけないわ!あの時の様に危険な目に遭うかもしれないのよ!?」

「一夏はそんなことしない!今も昔も、一夏は私を助けてくれる英雄(ヒーロー)なの!!何もできなかった、お姉ちゃんと違う!!」

「か、簪ちゃん!?」

 

 

一夏に敵意を向ける楯無に簪が一夏の無害を主張するとやがて、姉妹の間で口論になる。

そんな二人を眺めながら、どうするか考えていると複数の光線が楯無と簪に牙を向ける。

楯無はISを展開しているのでそこまでダメージを負わないだろうが、簪は生身の状態である。

そんな状態で、攻撃を食らえばどうなるかは目で見るより明らかである。

 

 

「たく、口論するのはいいが...、そのせいで周囲の警戒心が薄れるとか駄目だろう」

「貴方...、なんで...?」

「さぁ?気が付けば動いていた。理由ぽっく言うなら、何となくかな」

 

 

二人の前に出た一夏は持っていた刀で防ぐ。

一夏は攻撃したであろう蝶を連想させるデザインのISが一夏を見下ろしていた。

 

(あいつから僅かながら、妙な気配がする...)

 

 

刀を構え、目の前の敵を見つめる。

 

 

「あぁ、やっとやっとやっと会えた!私の愛しい兄さん(一夏)!」

 

 

狂喜に満ちた少女の声が木霊した。

 

 




少し、七夜の技を使わせたけど...。

七夜の技一覧みたいなの作った方がいいかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再会の家族 

この作品ではマドカは生き別れの妹として扱います。


オータムを倒した一夏だが、新たな襲撃者にオータムの時より、警戒を濃くしている。

何故か、それは人間では出すことが出来ない気配を感じていたからだ。

 

 

「貴様、何者だ?」

「フフフッ」

 

 

一夏の問答にただ笑うだけ、一夏は刀を鞘に納め、かスールとジャッカルを取り出す。

不確定要素が多い敵に対しては先ずは観察し、対策練るのが常識であり、一夏はその大切さを知っている。

故に遠距離からの攻撃で、様子を見ようとした矢先。

 

 

「ハアアァァッ!!」

「あのバカ!?臨海学校で何学んだんだよ!!セシリア援護!!」

「嘘...あれは...、そんなはずは...」

「馬鹿セシリア!あんたも援護しなさいよ!!」

「っ!?は、はいっ!」

 

 

イノシシの如く突っ込む箒に頭を悩ませながら、援護する鈴だが、セシリアが思考の渦に捕らわれていたセシリアを正気に戻し、援護する。

蝶の様なISから、小さいパーツが放たれるとそれは間違いなく、BT兵器搭載型の特殊武装であるビットだ。

 

 

「ちょ!?あれセシリアのブルー・ティアーズと同じじゃないの!」

「あれはイギリスの第三世代型ISの、BT兵器搭載型試作二号機、サイレント・ゼフィルスですわ!」

 

 

鈴の攻撃をビットでけん制し、セシリアの狙撃を鏡撃ちで相殺し、迫りくる箒を蹴りで吹き飛ばす。

 

 

「私と兄さんの邪魔をするなッ!!」

「グ、ハァ...!?」

「あれは...」

「俺の...七夜の技か!」

 

 

サイレント・ゼフィルスはレーザーブレードで鈴を切り付けるが、その技に一夏達は見覚えがあった。

それは先ほど、まで一夏が使っていた『七夜の技』に非常に似ていた。

 

 

「ッ!?」

「所詮は模倣だよ兄さん。七夜の高速移動も出来ない、見よう見真似だよ」

「チッ...。お前の声を聴くと懐かしく、頭が割れそうになる...。何故だ...」

「それは兄さんが私の事を覚えているからだよ。記憶じゃなくて心が私を覚えている証拠」

「何?」

 

 

カキンカキン、とレーザーブレードをガン=カタの要領で防ぎ、反撃しているが、一夏は突発的な頭痛とその場に似合わない懐かしさに戸惑いながら、攻撃する。

レーザーブレードが頬を掠めるが、一夏はジャッカルをサイレント・ゼフィルスの搭乗者のバイザーに押し付ける。

 

 

「俺を困惑させるそのお前の顔拝ませてもらおう!」

「クッ!?」

 

 

カスールを真上に高く投げ、空いた手で突きだしたレーザーブレードを持った手を掴み、逃さないようにする。

連続で引き金を引き、マガジンが空になると同時に降りてきたをカスールに持ち変えると同じようにマガジンが空になるまで撃ち続ける。

空になると、一夏はカスールの銃身を持ちそのままバイザーに叩き付ける。

 

 

「オータムじゃ当て馬にもならないか...。流石は私の兄さんだよ」

「お前は何者だ...。何故、俺を兄と呼ぶ...」

 

 

バイザーに罅が入り、少しだけ砕けると、蒼い瞳が一夏をみつめると一瞬悲しそうな顔をする。

 

 

「...そんなの決まってるじゃない。兄さんが私の実の兄なんだから...。ねぇ、一夏兄さん」

「グッ...!そ、の...声は...俺の妹......!!」

 

 

言いようのない痛みが襲い、一夏は後退すると頭を抱え苦しみだす。

苦しみ出す一夏の頭に掛かった靄が晴れるよう感覚が起きると、今まで忘れていた記憶が蘇る。

 

いつも自分の後ろについてくる一人の年端もいかない少女、いつも一緒に遊んでいた少女、両親と一緒にどこかに行ってしまい自分と離れたくないと泣き叫ぶ少女の名は――――。

 

 

「...織斑、マドカ」

「え?一夏、それはどういうことだ?」

「ようやく思い出したんだね。妹の名前を忘れるなんて...いけない兄さん」

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 

失った記憶を取り戻した一夏は目の前の人物がマドカであると思い出すと、箒は一夏に説明を求めようとするが、マドカは嬉しそうに言うと、壊れかけのバイザーを取ると一夏以外の全員が目を見開いた。

目の前のマドカの顔は千冬と瓜二つなのだから。

 

 

「俺の両親が居なくなる時に、一緒に連れていったのがいるそれが――」

「それが私。途中で私を施設に預けて二人はどこかに行ったけどね」

「じゃ、織斑先生と一夏の...」

「あぁ、実の妹だ」

 

 

実の妹と言う言葉に誰もが息を飲むが、彼女の戦闘力の高さに納得がいった。

だが、誰もが動かない中、突如マドカの周りが爆発した。

 

 

「感動の再開中悪いけど、この学園を守護するものとして、貴方達の行いは認められない。これ以上、手荒な真似はしたくないの。投降しないなら、そのきれいな体に傷ができるわよ」

「その程度の攻撃で私に傷を付けることが出来ると思っていたのか?」

 

 

爆炎が晴れるとそこには外傷も無く、三日月の笑みを浮かべるマドカから出る、()()()()()()と同じ気配に一夏は驚きを隠せない。

 

 

「何故だ!お前は人間だろ!!なのになんでまつろわぬ神と同じ気配がするんだよ!!」

「まつろわぬ神?」

「白き王と呼ばれ、戦い抜いてきた神殺しである兄さんが分からないはずがないもんね!兄さんなら、これがなんのまつろわぬ神かわかるんじゃない?」

「...リリス」

「せいかーい」

 

 

 

 

 

 

リリス

 

旧約聖書やユダヤの伝承など多くの書物に記され、男児を害すると信じられていた女性の悪霊であり、サマエルの伴侶、俗説ではサタンの伴侶などと言われている。

その起源は旧約聖書より前であり、その原型ともいえる存在もある。

着物をベースにした衣装を身に纏う。それは嘗てリリスが着ていたものだ。

 

 

 

 

 

「リリス?神殺し?何を言っている貴様!」

「兄さんに蔓延るうっとおしい女...。消えちゃえ」

「っ!?」

「なんで邪魔をするの?兄さん」

「目の前で知り合いが死ぬのは目覚めが悪くてね...。それに()守るべき仲間(民衆)を守って何が悪い!」

 

 

何処からともなく出した大鎌で箒の首を刎ねようとしたマドカの攻撃を鞘で受け止める一夏。

 

 

「箒、お前は退け!」

「な、なぜだ一夏!?」

「お前じゃ、相手にならないからだ!例え、ここにいる専用気持ちが全員で戦っても勝てない!」

「お姉さんの実力舐めないで頂戴!生徒会会長は常に『最強』であれってね!」

「えぇい!これだから、何も知らない連中は!!戦国の世に生まれし魔王の剣よ!」

「グッ...!?」

 

 

一夏は箒と楯無を簪たちのいる方向に蹴り飛ばすと虚空から現れた、刀を地面に突き刺す。

地面に突き刺した剣が、境界線の様になる。

 

 

「そこから出るなよ!何が起きても、俺は知らねえぞ!!」

「フフフ、他者を気遣うなんて、本当に優しいね兄さん」

「答えてくれ、マドカ」

「ん?」

 

 

警告を出した一夏はずっと気になることを聞く。

 

 

「何故、お前からリリスと同じ気配がする?お前は人間だろう」

「確かに私は人間だよ。でもね、少しずつ人間を辞め始めているってのが正しいかな」

「何?」

 

 

一夏の疑問に答えるとマドカは自分の身に何があったのか語り始める。

 

 

「思い出したように、私は両親に連れてかれ、何処かの施設に預けられ、身寄りの無い私を亡国企業が引き取ったんだ」

「つまり、恩返しか」

「違うよ。手段だよ」

「手段?」

「そう、手段さ。私は兄さんと離れて寂しさのあまり死にそうで、心に穴が開いた気分だったよ。でも、ある時気づいたんだ。私があの家に戻るだけじゃ、この穴は埋まらない。兄さんの全てを独占しないと気が済まない!!」

 

 

マドカの語りを聞いたとき一夏はあるワードが思い浮かんだ。それは“ヤ”で始まって“レ”で終わる四文字のワードだった。

 

 

「だから、兄さんの周りにあるもの全部壊す。友人も、思い人も、家族も有象無象全て...、兄さんに纏わり付く蠅を消す...、世界なんてどうでもいい、周りの人間なんて勝手に死ねばいい...。兄さんが居ればそれでいい...、兄さんの顔も、身体も、声も、流れてる血の一滴全て、兄さんの全てを私のモノだ!邪魔をするんなら皆、消えちゃばいいんだ!!」

「こいつ、狂ってやがる...。病みすぎたんだ...」

 

 

一夏が連想した通り以上のヤンデレであった。

 

 

 

「だけど、私には力がない。例えISに乗っても神殺しの兄さんには勝てない。兄さんを奇襲して、拉致監禁しようと思った時だった。ある日、夢の中で黒い影が私に『兄を自分のモノに出来る力』を挙げるって言ってね。何を言ってるかわからなかったけど、その影が封印されたリリスの居場所を教えてくれたんだ」

「俺の封印を解いたのは...」

「うん、私だよ兄さん。石板に封印されたリリスを現世に復活させたのはいいけど、身体が弱っていてね。私の肉体を乗っ取ろうとしたんだけど、逆にリリスの全てを取り込んだんだ。それがあの影が言っていた力だって理解するのに時間はかからなかったよ」

「おいおい...、異常もいい所だろ...。取り込むって前代未聞すぎ...」

「これも兄さんへの愛がなせる技なんだよ」

「愛って怖いなっ!?」

 

 

マドカの言っていることが、真実なのは間違いないんだろうが、人の身で神を取り込むなど、どのような事態になるかわかったものじゃな。

だが、その傾向どころか、むしろ好調な様子から一夏はある仮説が出来た。

 

 

「リリスの力に引っ張られて、肉体がまつろわぬ神に近くなっているのか...」

「その通りだよ兄さん。だから」

「グァ...!?」

『一夏(君/さん)!!』

「ISの時より早く、そして重い攻撃を出せるんだよ!」

 

 

一気に距離を詰めたマドカは一夏の鳩尾を殴るとステージの壁まで吹き飛ばす。

 

 

「本来のまつろわぬ神よりも下とはいえ、この威力か...」

「普通の人間なら、胴体が真っ二つになっているのに...、流石は神殺しだね」

 

 

まつろわぬ神と神殺しの力関係上、まつろわぬ神が上だが、現在のマドカの力はまつろわぬ神より下でありながら、神殺しより上であると一夏は考えた。

ここである疑問が一つ出てくる。

 

 

「兄さんの考えていることは分かるよ。私とリリスの相性が良かったのか、ものの一か月で6割くらい使えるようになってね。呪力も人間だった時とは比べるのが馬鹿馬鹿しいくらいに上がったよ」

「予想通り...。だが、ここでお前を助けないとこの後どうなるか分からん。悪いが倒させてもらう!」

「傷つけられるの?家族を大切にする兄さんが?」

「無明三段...、クッ...」

 

一夏は虚空から出した刀を引き抜き無明三段突きをしようとするが、寸前で止まり、刀からガチガチ、と振るえる音が聞こえる。

 

 

「そうだよね。出来ないようね!兄さんは家族を傷つけられない、大切な家族に優しいもんね!そんなんだから、兄さんの周りに虫が蔓延るんだ...」

「クソッ!震えが止まらない...、マドカを斬ることに戸惑ってやがる...、ガ、ハッ...」

 

 

震えが止まらない一夏を壁に投げつけた次の瞬間、マドカが一夏の顔の近くまで接近し、片手を壁に置いていた。所謂、壁ドンである。

一部の女子が居れば黄色い歓声が響いただろう。

 

 

「兄さんの心を手に入れるのなら、周りを排除した上で実力行使しないと...。でも、私は周りに見せつけるのが好きなんだ」

「一体、何を......ムグッ!?」

『あぁっぁぁぁぁぁ!?』

「殺殺殺殺殺殺殺」

 

 

一夏の頬を抑えると一夏にキスをしたのだ。

その光景に一夏ラヴァーズは悲鳴を上げ、一部の女性は暴走していた。

その様子をマドカは眺めながら、足元に闇を広げ、そこから大量の蛇を差し向ける。

 

 

「んっ...、まだ私の愛を受け取る気にならないの兄さん?せっかくここまで大胆になってるのに...」

「プハッ...、そんなことに積極的になるな!俺は家族にそんな関係を求めない!!」

「むぅ...、なら、もう何も考えれなくなるくらい熱く情熱的で、激しいのをしよう。フフフッ、何もできないまま兄さんの事を見守ることしかできない...ゾクゾクするね」

「うわぁー、ヤンデレと同時にSだよこの妹...、ガッ!?」

「私から逃げられないように...、動けないにしないと」

 

 

両腕から出てきた蛇がピン、と伸びると鋼の如く硬くなった蛇を一夏の両腕に刺し、動きを封じる。

そして、一夏の唇に触れようとした瞬間、二人の間に一筋の刀が割り込む。

 

 

「見ない間に、ずいぶん生意気になったな。マドカ」

「邪魔をしないでよ、姉さん」

「両親が居なくなった時、一夏を守ると決めた!マドカお前が戻るのなら...」

「守る?フフフッアハハハハハ!!お笑いだよ姉さん!兄さんの事何一つ知らず、守ることなんて出来てないくせに...。その上私を守るぅ?寝言は寝てから言いなよ!!」

「グッ!?」

 

 

一夏を助けるように入った千冬だが、マドカの言ったことに唇を噛むが、マドカが千冬の頭を掴むと地面に叩き付ける。

 

 

「結局、口だけで何もできない。世界最強の称号に甘んじた道化らしいよ」

「クッ...本当にあの優しかったマドカなのか...」

「私は私だよ。私の邪魔をするならたとえ姉さんでも...」

 

 

千冬に大鎌を振り下そうとしたマドカの前に一つの影が立ちふさがる。

 

 

「磔にしたはずなのに...、邪魔をするの兄さん?」

「千冬姉はお前の家族だろ!なのに何故!?」

「例え家族でも、私の障害になるなら排除するまで」

「ヤンデレになったせいか、それともリリスを取り込んだせいか、何方にせよ性格が変わりすぎている!!」

 

 

先ほどまで一夏が居た場所には刺さったままの蛇と刺されたときに付着した血が残っていた。

七夜の短刀で防ぐ一夏だが、その手からは血が零れ落ちている。傷が塞がっていない証拠だ。

 

 

「このままじゃ、何もできない...。なら!」

「何をしている一夏!」

「グッ...」

 

 

短刀を自分の左肩に刺し、引き抜く。

突然の自傷行為に戸惑いを隠せない千冬。

だが、これは一夏の気持ちを切り替えるために必要な事なのだ。

 

 

「俺はお前を助けるために心を鬼にする!行くぞ!!」

「おいでよ兄さん!すべて受け止める、人間の兄さんも、神殺しの兄さんも全部全部!!」

「我は天を照らす太陽と成りて、蒼天に舞う不死鳥となる!!」

 

 

大鎌を持ち飛翔するマドカを炎の翼を広げ、羽ばたくき追撃する一夏。

六本の黒鍵を持ち腕をクロスさせながら、進むとマドカの背後に闇が広がると、そこから大量の蛇が雨の様に襲いかかる。

 

 

「マハード!マナ!そいつらを頼んだ!!」

「任せなさい、一夏!」

「一夏!貴方は妹を救うことに専念してください!!」

「こんな時でも...そいつらの心配かい兄さん!!――グハッ!?」

 

 

 

飛来する蛇を黒鍵で防ぎながら進み、マドカに接近すると力を一点に集中した右腕の突きを放つとマドカは体勢を崩し、地面に落下する。

これを見た鈴はマジカル八極拳でしょあれ、とつぶやいていた。

蛇を防いだ時に刀身が砕け、柄だけになるとその場に投げ捨てる。

 

 

「これが兄さんの人体破壊に特化した八極拳...。中々の威力だね...」

「内臓を破壊するつもりでやったんだが...甘かったか」

「内臓は破壊されたよ?でも、すぐ再生したけどね。もともと戦闘向けじゃないから」

 

 

仕方ないか、というマドカだが実際は一夏と相性がいい。

フェニックスの権能は元を辿れば、太陽神ラ―であり、その神格を受け継ぐフェニックスの権能は太陽の属性を持つ。

太陽は闇夜祓う光だが、夜は太陽を遮り、深淵に陥れる闇であり、互い相克関係である。

故に一夏がフェニックスの権能を使おうと夜に彷徨う悪霊であり、冥界に属するリリスの力を持つマドカの攻撃は一夏の再生を著しく低下させる。

現にフェニックスの権能を使っている一夏だが、両手の傷はまだ塞がっていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼェエヤァァァ!!」

「効かないよ。兄さん」

「チィ!!」

 

 

千冬から離れ、雷電を纏い、雷光を放ちながら遠距離から様子見する一夏だが、マドカは大鎌で雷光を切り伏せながら突き進と大鎌を振り下ろすが一夏は黒鍵を交差させ、防ぐが罅が入る。

後ろに下がろうにも、飛来してくる蛇が行く手を阻み、近距離を仕掛けようにも傷を負えば致命傷になりかねない為、遠距離からの攻撃するも大鎌で切り伏せられる。

 

 

「流石、兄さん。例え戦闘向けの力じゃなくても、相性が悪いことに気が付いて、遠距離からの様子見...。でも、それだけと勝てないよ!!」

「チィ...。月と狩猟の女神よ!汝が授けし、弓は蒼穹の彼方を射抜く一矢と成る!」

「クッ...!」

 

 

まだ公開していない権能を発動させ、漆黒の弓を出現させるとマドカの持っている大鎌に向け放つ。

一夏はマドカの攻撃を避けながら、同じ個所目がけ射っていく。

 

 

「威力はある...。だけど!!」

「セイッ!!」

「なんという命中率...。流石は『外れることがわかった上で射った』時しか外さないと言われるほどの名手なだけある。だけど、その権能は決定打に欠ける!!」

「これで...!」

「ナッ!?」

 

 

大鎌を横なぎにしようとしたマドカだが、弓を最大まで引き絞った一撃を受けると大鎌は射った場所から真っ二つに割れる。

 

 

「例え、神の武器だとしても形がある以上、限界はある。同じ場所射抜き続け、ダメージを蓄積させ、最大の一撃を与えれば壊れる」

「流石は兄さん...。常人では、出来ないことを平然とやってのける...」

 

 

口で言うのは簡単だが、実際にやれと言われれば止まっている的であればまだしも、動いている的なら無理難題に近いだろう。

一夏が戦いの中で培ってきた人並み外れた集中力と精神力によるものだ。

だが、マドカは不敵な笑みを浮かべ、一夏は不思議に思っていると左足に強烈な痛みが走る。

 

 

「グアッ!?...足が...動かない」

「左足のアキレス腱を食われたからね...。左足は動かせないよ」

「小癪な...。アァ...!?」

 

 

闇から這い出た蛇に左足アキレス腱を食い千切られた一夏は左足に力が入らず、片膝を突く一夏だが、心臓が大きく跳ねると痛みが走り、胸を抑える。

 

 

「...その目から感じる不快感...気に食わない...」

「グワァァァ!!??」

『一夏!!』

「フフフ...」

 

 

左目が白から黒に反転し、赤い瞳に変わり、何やら模様のようなものが浮かび上がるがマドカは左目から感じ取れる不快感から一夏の左目を抉る。

その光景を見ていた者は悲鳴と心配が混ざった声で一夏を呼ぶ。

 

 

 

通常ならこの程度の怪我、どうという事ないのだが、フェニックスの権能が雀の涙ほどしか効果が出ない以上、再生は期待できない。

一夏の強みである、再生が使えない今、一夏はどうすればこの状況を打開できるのか考える。

撤退させるにも、一歩間違えればマドカが死ぬかもしれない強力な権能しかなく、自分の権能の内容に初めて悔やむ一夏。

だが、一つだけ使った事のないのがある事に気づく。

 

 

「イチかバチか試すしかないな...」

「何を...?クゥ...」

「い、...一夏?」

「GUUUU...」

 

 

一夏が動物の皮を取り出し、身に纏うと一夏の身体が変化が起きる。

一夏の髪が薄紫色に変わると、全身が黒い靄に覆われ、靄から呻き声が聞こえ、その姿に誰かが一夏の名を呟いた。

 

 

 

「GUUUAAA!!」

「クッ...!」

 

 

咆哮と共に一夏はマドカに接近し、体当たりを喰らわすが、寸前で避けると上空に避難すると両腕から翼の様なものを出した一夏が追跡していた。

突きだした右腕を掴むとその勢いを利用し、背負い投げをするマドカだが、弓を射ながら体制を立て直す。

先ほどマドカが掴んだ腕の部分の靄が取れるとそこには人間には決してない翼が生えていた。

射られた弓はステージに大穴を開け、マドカは自分に向けて射られた矢を掴むと一夏の腹に突き刺す。

 

 

「GUU...UAAAA!!」

「何!?...グアァ?!」

 

 

突き刺さった矢を気にせず掌底を叩き込まれたマドカはステージの壁を破壊しながら飛ばされる。

そして、一夏はマドカが飛ばされた方向を見つめながら着地すると、蛇の矢が一夏に飛来するも弓矢で落としていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、すごい...」

「これが一夏の実力...」

「これが神殺しの戦い...」

 

 

 

一夏とマドカの戦闘を見ていた一夏ラヴァーズはその戦闘の現実離れした光景に口がふさがらないでいた。

だが、そんな中でマハードは思いつめたような顔をしていた。

 

 

「あの靄が覆ってから一夏の生物の領域を超越した動き、そしてあの翼...」

「どうしたのお兄ちゃん?」

「あの権能は初めて見るが、あの動きと変化が気になってな」

「あのような動きが出来るほど変化があったのではないのか?」

「いや、それにしても...。あれは...」

 

 

何かがおかしい、そう思い動き回る一夏を見つめるとある事に気づく。

腹に刺さった矢だけでは到底出ないであろう血と靄が部分的に消えたことで見えた一夏の身体と右目を見て、ある事に気づいた。

 

 

「あの理性のない目...、あの不自然な傷...。まさか、あの権能は一夏の理性を失わさせ、人体を無理やり変えているのか!?」

「それはどういうことなの?」

「あの権能は一夏の理性と引き換えに発動するんです。腕を翼のように変化させ、飛行し、人を逸した動きができ、理性を失っても論理的な思考を維持している。ですが、人体の構造を無視した機動や変化は全身に絶えず激痛を与えているはずだ...」

「それって...」

「このまま使えば一夏が危険だ!最悪、死ぬぞ!!」

 

 

マハードの観察によって、一夏の権能の内容が明らかになる。

マハードの推察通りで、肉体の強化と変化を使用者に与えるが、その代償は一夏の身体を絶え間なく激痛が襲っている。

ガラガラ、と壊れた壁を支えにしながら、マドカが一夏の前に再び現れる。

 

 

「あと少し...耐えれば...、兄さんに限界が来る...はず...」

「あいつ...まだ...」

 

 

息も絶え絶えで現れたマドカだが、一夏はマドカ見つけるなり、接近するとマドカは再び大鎌を構える。

 

 

「ハァァァァ!!」

「GUAAA!!」

 

 

拳と大鎌が交差すると静寂が訪れる。

 

 

「ゲホッゴホッ...、うぅぅぅう...」

「AArrr...」

 

 

一夏の拳がマドカの腹部にめり込むように殴り、マドカの大鎌は一夏の左肩を軽く切り込み、数歩交代すると倒れる。

 

 

「勝ったんだ...神殺しの兄さんに勝ったんだ!!」

「一夏が...負けた...。そんな...」

「これで兄さんを...。グハッ...」

 

 

勝利の笑みを浮かべ、おぼつかな足取りで一夏に近づくマドカだが、一夏のすぐ目の前まで行くと吐血し、血だまりを作る。

殴られた腹部を抑えながら、一夏に触れようとした時、マドカにプライベートチャンネルが開く。

 

 

『オータムは回収したわ。M、撤退しない』

「馬鹿な!兄さんを目の前にして撤退なんかできるものか!!」

『そんな手負いの状態で、そこに居る全員を相手にするつもり?さすがの貴女でも苦戦は免れないわよ』

「それでも、私は...!」

『そんな状態で戦って万が一一夏君に当たったら?傷だらけの貴女は一夏君を守りながら、戦えるの?もし、貴女が死ぬ可能性だってあるのよ』

「クッ...、了解...」

 

 

そういうとマドカは上空に少しづつ浮かんでいく。

 

 

「待て!逃げるのか!!」

「今は兄さんを預けてあげるよ。...でも、必ず兄さんをお前たちから奪って見せる」

「うぅ...、マド...カァ」

「待ってて兄さん...。必ず、必ず迎えに行くから」

「行くな...。マド...カ...」

 

 

マドカに向けて手を伸ばし、今に消えそうな声で呼ぶがマドカはその場から離れていく。

小さくなっていくマドカの背中を見ながら一夏の意識は途絶えた。

 




イシュタルは手に入れたけど...中の人ネタなのか所々にリリなののセリフが入っている。


邪ンヌ礼装落ちないよぉぉぉ!!??


JDASLは癒しで、何かに目覚めそう...。ハァハァ



因みにリリスの見た目は最弱無敗に出てくる切姫を更に大人にした感じです。

リリスを取り込んだことによって見た目も変わっています。

身長も大きく出るとこは出ていて、目は青と紫のオッドアイになっています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王の目覚め 明かされる事実

出来たので投稿。

シリアスと説明会が苦手ですねやっぱ。






学園祭襲撃によって、戦闘になった一夏だが、ISとの戦闘は慢心して余裕で勝利した。

だが、思わぬ襲撃者によって、一夏は深手を負った。

そのまま、学園祭は最後まで行われた。

 

 

 

たった一人を除いて。

 

 

 

 

 

「ねぇ、マナ。一夏、まだ目を覚まさないの?もう一週間は学校に来てないよ」

「うん。まだ目を覚まさないの」

 

 

そう、学園祭は一夏を除いた状態で再開されたのだ。

マドカとの戦闘で一歩間違えれば、死んでもおかしくない重傷を負った一夏は再生も出来ないまま、眠りについている。

心身共に負った傷は深く、マハードの推察では『本能がこれ以上は危険だと判断し、意図的に深い眠りについた』となっている。

一夏が万全の状態になるまで目は覚めないと考え、逆に言えば、いつ目覚めるかは分からない状況である。

 

 

「普段の一夏なら、寝ていても最低限の防衛はできますが...、今の一夏は意識がかなり深い所にまで潜っている為、出来ません。そのような状態で襲われれでもしたら大変です。それに、何も知らない人によって一夏の容態が悪化するのを避けるために面会謝絶にしています」

「それは僕や簪さんも駄目なの?」

「極力は避けたいですが、......まぁ、お二方ならいいでしょう。放課後、一夏の自室に来てください。それとこれが合言葉です。授業が始まりますので、そちらに集中してください」

「うん...」

 

 

マナとシャルロットは一夏の事が気になり、授業は集中できず、千冬の宝具(出席簿)を受けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「簪さんは一夏の容態についてなんか聞いてる?」

「...ううん。かなり重症としか聞いてない。...甘粕さんに少しだけ聞いただけだから。あ、甘粕さんは正史編纂委員会の人で、正史編纂委員会は日本政府直属の魔術組織で、私は一応、媛巫女の一人でお手伝いを...」

「簪さん巫女なんだ。僕はまだ見習い魔術師だよ」

「大丈夫、努力さえすれば魔術師として力がつくから」

「そういえば、マハードさんって魔術師としてどれ位の実力なの?」

黒き魔術騎士(ブラック・パラディン)という二つの名を持つ、ものすごく有名な人。一夏専属の従者である、あの人に教えてもらうなんて血縁者でもない限り普通はあり得ない」

 

 

 

よく隠れがちだが、マハードも魔術関連ではかなりの有名人であり、その実力は聖ラファエロに匹敵すると言われている。

二人は話を進めながら、一夏の部屋の前に着くと、ノックを二回する。

すると、ドアの向こうから声が二人の耳に聞こえた。

 

 

『神殺し、王の中の王、魔王これらの意味する者の名は―――』

「「カンピオーネ」」

 

 

ガチャ、と音が聞こえるとドアが開き、二人は中に入る。

二人は今も眠りについたまま、目を覚まさない一夏の傍に移動する。

 

 

「ねぇ、一夏は大丈夫なの?かなり重症だって聞いたけど...」

「左目の失明、全身の切り傷、アキレス腱の断絶、全身の筋肉に深刻なダメージ、内臓に空いた穴、そして、心に負った傷は深いでしょう...。生き別れの妹が敵になっただけに留まらず、因縁のあるまつろわぬ神に近い存在になったとなれば複雑でしょう」

「そこまでなの...。一夏はいつも、こんな傷を負っているの!?」

「いつもではありませんが...腕を食い千切られたや、全身が吹き飛んだこともありますが、一夏は肉体再生、蘇生の権能があります。ですが、今回の敵はその効果があまり発揮しなかった。それによって、一夏はこのような手傷を負いました...」

「権能にも相性はあるの?」

「ええ、あります。例えば――」

 

 

マハードから、一夏の容態を聞くと、そのあまりの酷さに、思わず目を背けたくなった。

常人なら、誰かの介護が無ければ、生きていくことは到底できない程の重症。

マハードはこうなったのには権能の相性があると言い、詳しく説明しようとした時、ドアを強く叩く、音が聞こえると複数の話し声が聞こえた。

 

 

『えぇい、一夏!いつまで引きこもってる気だ!!』

『此方も急いでいる故、篠ノ之。ISの使用を許可する』

『はい。来い!紅椿!!』

「一体何を!?」

 

 

斬ッ!と音をたてながら、ドアを切り裂かれ、状況が掴めないマハード達を他所に紅椿を纏った箒を先頭に続々と部屋の中に入ってくる。

 

 

「ここは王の寝床であり、神聖の場です。己を弁えず、この様な愚行...。少々、やりすぎですね」

「無礼は承知だ。だが、此方も状況の説明もなく、『説明することはありませんので、関わらないでください』といわれて引き下がれると思っているのか?」

「下がらないでしょうね。結果がこれなんですから」

「師匠は!師匠はどうなっているんですか!」

「そうですわ!一夏さんが相当傷が深いのでは...」

「肉体そのものはほぼ完治しています。日常にも支障はないでしょう」

 

 

そう、肉体自体は一夏が渡したフェニックスの権能で作って霊薬によって治っているが、起きないという事は精神の方で問題があるという事なのだろう。

 

 

「一週間で、そこまでの重症が治るものか。ならば設備の整った病院に送るのが本来やるべき事だろう」

「そのやるべき事を終えて、今も眠っているのですよ。肉体の傷が治っても眠ったまま、ということは精神にまだ傷があるという事。それはどれほど医療施設が整っていようと治りませんよ」

「それにお姉さんはあの戦闘で起きたい異常ともいえるアレの説明もして欲しんだけど、それも無理かな?」

「無理ですね。一夏から話は聞いてますよ。神殺しについて調べていると...。悪いことは言いませんから、それから手を引いた方が身のためですよ。それに一介の従者が王の承諾も無しに説明するとでも?」

「貴様が話さないというのなら、一夏をたたき起こして説明させるまでだ!あの様なオカルトに手を出しおって!その根性叩き直してやる!!」

 

 

二人の話を全て、NOで答えるマハード。

楯無はあの戦闘で、一夏の異常性を確信し、もし学園の敵になるのであれば、排除しなければならない。

敵か味方か、判断する為に、説明を求めるが、マハードは逆に自分達について、説明することで、危険な目に遭うと確信したマハードは戻れるうちに戻った方がいい、と意味を込めて言い返す。

だが、何も知らない箒の自分勝手すぎる発言に久しぶりに怒りを覚えた。

 

 

「何も知らない小娘が、言いたい放題言ってくれますね。この様な愚者の為に一夏が身を削って戦っていると思うと、一夏が哀れですね」

「な、ななな何をするつもりだ!?」

「貴女のような愚者でも一人でも減れば、一夏への負担は減るのでしょうか?傷を負った一夏を叩き起こす?根性を叩き直す?それは貴女でしょうに。王への侮辱...許しませんよ」

「ヒィ!?」

 

 

箒の言ったことに完全にキレたマハードは濃密な殺意と敵意を箒に放ち、小さい悲鳴を上げる箒。

向けられていない筈の千冬達ですら、心臓を鷲掴みにされたような感覚に生きた心地がしなかった。

だが、その息苦しい殺伐とした時間もすぐ収まった。

 

 

「......そこまでだ、...マハード」

「一夏...目が覚めたのですね」

「あんなの放っておいて、...よく言うぜ」

 

 

深い眠りについた一夏が目を覚ましたのだ。

その光景を見た金髪の少女が一夏に勢いよく抱き着いた。

 

 

「一夏!」

「だーかーらー!けが人に思いっきり抱き着くな!!」

「っ!?」

「出遅れたと思ったけど、やらなくてよかった」

「うん。僕たちもマナの二の前になってたね」

 

 

パシィーン!、といい音を立てながらマナの頭をハリセンで叩く一夏。

その光景にやらなくてよかった、と心の中で思う簪とシャルロット。

 

 

 

「遅い目覚めでしたね」

「すぐ起きれる状態だったが...、飲んだくれの御老公に精神を幽世に連れてかれ『まつろわぬ神になりかけた妹にやられるとか、白き王も落ちたものだな』と大笑いしながら言ったのでさっきまで喧嘩をしていた」

「人が心配してる時に...貴方と言う人は...」

「心配かけたのは悪いと思うけど、それが俺だからなー」

「まぁ、一夏らしくて、逆に安心しましたよ」

「痛い...。でも、よかった」

 

 

 

 

一夏はすぐ目覚める事が出来る状態だったが、飲んだくれの御老公―――須佐之男命と先ほどまで喧嘩をしていたらしい。

その有様にマハードは一夏らしい、と笑みを零し、抱き着いたマナは叩かれた頭を抑えながら一夏が、目覚めたことを喜んだ。

 

 

「早速で悪いが、一夏。今回の事について説明してもらおうか」

「パス。説明したところで、対処なんかできないよ」

「何故だ、一夏!ここにはISと千冬さんがいるのだぞ!!何か不満があるのか!?」

「は?だから何」

「なっ!?」

 

 

説明を求める千冬に一夏は拒否するが、ほぼ関係のない箒が食って掛かってきたが、予想外な反応をする一夏に箒は驚きを隠せずにいた。

 

 

「たかが、地震や天変地異を止めることも、起こすことも出来ない。ISなんていう玩具に群がって喜ぶ子供の集団と過去の栄光に縋り、胡坐を掻いている奴に話す事なんざないね」

「まるで、自分なら出来るみたいな言い草ね。それにISが玩具なんて、一夏君だってそのISを使ってるじゃない」

「本音を言えば、俺は暇つぶしで此処にきてるだけだしね。俺、いや俺たち(神殺し)からすれば玩具だろ。本来は宇宙開発の発明が、世界最強の兵器に生まれ変わり...。碌に意味も在り方も理解せずに上っ面しか見ずに、女尊男卑だの馬鹿馬鹿しい考え出てくるし、画期的な発明品が、人類の汚点に早変わりだよ」

 

 

ハァ、と溜息を吐く一夏は内心、翠姐の言っている意味が分かるな、自分の師匠の考えが理解できるような気がした。

 

 

「俺の知り合いの言葉を借りるなら『人類は蒸気機関から堕落している』そして、その決定的なのがISだろうな」

「汚点って...。そのISを一夏さんも使っているのですよ。...なら、もう少し評価を――」

「改めろと?変えられないね。俺からすれば暇つぶし、学校なんざ別に行く必要なんて俺には無い。世間的(・・・)に仕方なく行っただけだ」

「行く必要がないだと...。今の社会では高校卒業しないと、就職は難しいぞ。国家代表や企業代表になるにしろIS学園を卒業せねばならん」

 

 

話が平行線のまま進み兼ねない状況に一夏は内心舌打ちをする。

 

 

「一々...。()に上からモノ言うとは...貴様ら愚民はいつからそこまで偉くなった?」

「い、一夏?」

「その口を閉じろ、愚民()。さっきから聞いていれば、織斑千冬に同調し、何かを言い...、俺がISに関わる事が確定したような言い方なんだ?」

「関わるも何もお前は専用機を―――」

「誰が喋ることを許した?」

 

 

一夏から放たれる静かな威圧は先ほどのマハードの敵意がかわいく思える程、箒たちは勿論、10年以上一緒にいる千冬も知らない一夏(神殺し)の側面に圧され、静かになる。

 

 

「今回の事について説明と言っていたが、俺はしない。この世界には知らぬが仏、と言う言葉が存在する。お前らの知ろうとしているのは、正にこの事だ。中途半端に知ることは許されぬ。言いたいことがあるなら言え、発言を許可する」

「今回襲ってきたテロリスト...。その中に居た、織斑先生の妹との戦闘について、その妹に何が起きたのか。それについても話さないつもり?」

「くどい。全てにおいて半端な貴様らに何故、話す必要がある? 知ってどうするつもりだ...」

「どうするも何も、対策を練って、対処するわ。捕まえるにしろ、殺すにせよ情報が必要なの。この中で、一番情報持っているのは一夏君だけなの。協力してくれないかしら?」

「ククク...フフフ、フフハハハハハハハ!!」

 

 

話すつもりなどない一夏だが、楯無の話を聞いた途端、腹を抱えて笑い始める。

 

 

「な、なにがおかしいのよ!!」

「何が可笑しいって...、無知故に知りたがり、剰えマドカを捕まえ、殺す?人間じゃ出来ない事を絶対に出来ると思い込んでるその態度が可笑しんだよ。クククッ...」

「ISは世界最強なのよ。人を捕まえること位、造作もないわ」

「まだ、そんなこと言うのかよ...。フフッ、やばい...。笑いすぎて腹が痛い...」

 

 

いまだ笑い続ける一夏は目元に薄っすらと涙を浮かべながら、楯無を見る。

 

 

「俺をここまで笑わせた礼だ。一つだけ教えてやる」

「何かしら?」

「ISに縋ってる時点で、アイツには勝てない。ましてや、お前が調べている神殺しは特にな」

「何を馬鹿な事を、IS世界最強の兵器なんだぞ。その神殺しとやらもISの前では手も足も出ないはずだ!」

「神殺しにそんな常識は通用しねぇーよ。馬鹿馬鹿しい...全世界にあるIS全てに千冬姉並みの人が乗っても無理。あー、久しぶりに笑ったぜ」

 

 

大笑いした一夏は千冬達を部屋から出そうと、マハードに言おうと思った時、窓の向こうを睨む一夏。

一夏の行動に首を傾げる箒たちを他所に天災が飛来した。

 

 

「ヤッホー!いっくーん!!呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーん!天災の束さんだよ!!」

「オラッ!兎は月に帰りやがれ!!」

「ギャッ!?」

 

 

窓を突き破り、一夏にダイナミックに現れた束はそのまま一夏に抱き着こうとするが、その場でサマーソルトキックをし、束は天井に頭部をめり込ませ、ぶら下がっていた。

 

 

「ね、姉さん!?」

「博士がマミッた!?」

「痛いなー、いっくん。束さんじゃなかったら死んでたよ」

「チッ...」

 

 

殺意の籠ったサマーソルトをするも、自力で天井から抜け、何事もなかったようにする束。

 

 

「お前に構っている暇はない。とっとと帰れ」

「酷いなー。いっくんが面白い話をするから飛んできたのに」

「おい、変なこと言うんじゃねーぞ」

「大丈夫大丈夫。ほら、束さん口硬いから、間違ってもいっくんが神殺しなんて言わないよ」

「何サラッと言ってんだァァ!!貴様ァァ!!」

「ぷぎゃ!?」

 

 

言うなと言った瞬間にナチュラルに一夏が神殺しだと、喋った束に激昂しながら、ジャーマンスプレックスをする。

 

 

「この野郎...。人が喋らないまま終わらせようとした瞬間に...」

「まぁまぁ、喋ったところで何も出来ないんだしさ。いいじゃん、減るもんじゃないんだし」

「あ゛ぁ゛?」

「おぉ、怖い怖い」

「待ってください、一夏君が神殺しってどういう事ですか!?」

 

 

聞き流してくれればな、とほのかな希望も今、必死に神殺しに関する情報を集めようとしている楯無が見逃すはずもなかった。

 

 

「なんだよ、そこの駄目水色」

「だ、駄目...。私は今、神殺しに関して調べています。篠ノ之博士も神殺しをご存じなんですか?」

「なんなんださっきから...。ふぅーん、しーちゃんに比べて、凡人な姉に興味はないよ」

「ぼ、凡人...。確かに篠ノ之博士に比べたら私は凡人ですが―――」

「違う違う。束さんが言っているのは媛巫女としても、魔術師としてもからっきし駄目な君に興味はないの。そういう意味だと、ちーちゃんや箒ちゃんも同じなんだけどねー。結局、ISは人間の中で最強って話だしね。あ、別にちーちゃんや箒ちゃんが嫌いってわけじゃないから安心してね」

 

 

束はISの生みの親であるが、その束は最早、今のISに興味はなく。

故に先ほどから話しかけている楯無をそこまで煙たがりはしないもの、その目は全く興味を持っていなかった。

 

 

「まぁ、優しい善人の束さんが親切に教えてあげるよ。ありがたく思え!神殺しはいっくんや束さんの様な、人の身で神様を倒した物凄い人たちの事を言うのだ!」

「神って...。そんなオカルトが信じれるわけないでしょ!ふざけないでください!!」

「チチチッ、頭の固い箒ちゃんに信じられないだろうけど事実なんだよねー。もう少し、頭を柔らかくしないと、成長したのはその豊満な胸だけかな?」

「神を倒したとして、その後どうなる?英雄にでもなるのか」

「英雄?違うよ、ちーちゃん。神殺し、王の中の王、魔王と呼ばれ、倒した神から権能...その神様の力を手に入れることが出来るの。おとぎ話みたいでしょ」

 

 

愉快に話す束は箒にセクハラ発言しつつ、神殺しがどういう存在か簡単に話していく。

その光景に眉間を押さえ、盛大に溜息を吐く一夏。

 

 

「他にも普通の人間と違う所があるけど、まぁ、話すと半日以上は掛かるし、詳しくはいっくんに聞いてよ」

「話すだけ話して、人に振るな。最後まで自分の口で言え、災厄兎」

「えー、めんどくさい。夜叉王なら、説明するの問題ないでしょ?いっくんは束さんと同等の頭脳の持ち主なんだし」

「先天的か後天的かの差だろ。なぁ、自称ライバルさんよ」

「自称じゃなくて、事実だよ。まぁ、世の中何があるか分からないよねー。誘拐されて助けた女の子に再開したり、その助けた女の子の姉が目障りにも神殺しについて探ったりさー」

 

 

 

楯無は束の言っている事に心当たりがあった。それは正に自分がやろうとしてることで、実際に妹の簪に起こったことだからだ。

 

 

「待って!じゃ、あの時簪ちゃんが誘拐されたのって...」

「まぁ、同じ神殺しが神様呼ぶために集めた人身供物だね。まぁ、それに止める為に戦ったのがいっくんとにーくんで、また誘拐された君の妹を助けたのもまた、いっくんなんだよねー。正にヒーローだね、惚れ惚れしちゃうよ」

「はぁー、とある人からあの老害が幼い子供たちを集めてまつろわぬ神を呼び出そうとしてるのを知った俺は知り合いを呼んで、現場に向かった。そこで見たのは儀式の影響で倒れ、狂気に飲まれた同い年の子供...。まつろわぬ神は一緒に来た奴に任せ、おれはあの老害と戦った。苦戦はしたが、勝つことが出来た。今でも思う、あの時力があれば、もう少し、早く行動出来ればあんな事にはならなかったのかもしれない。己の無力さを痛感した」

「知らない私たちの為に、命を懸けて戦って、守ろうとした。あの時、一夏は泣いていた...。助けることが出来たのに、あの時一夏は泣いていた。きっと自分達の事を思って泣いているんだって、だから一夏のした事が間違ってないって、誰かの為に戦う一夏の力になりたくて、私は媛巫女になったんだから」

「待って...。じゃ、簪ちゃんが神殺しに近づいたのって...」

「...うん。付き纏われているわけでも、脅されてるとかない。私は一夏の支えになりたくて、自分から媛巫女になる事を決めたの」

 

 

そんな...、とてっきりその逆を想像していたが、実際は自分の意思で、媛巫女として神殺しと関わっていく事を決めた事に驚きを隠せずにいた。

自分のしようとしていた事はなんだろう、と自分の中で何かが崩れていくのを感じた。

 

 

「いっくんは戦闘狂だから、まつろわぬ神が現れたら、真っ先に戦いに行くよね。まぁ、それが神殺しの役目だから何も言わないけどさ」

「待て、じゃ、一夏は毎回危険な目に遭っているというのか?他に神殺しとやらが居るのなら、そいつらに任せればいいだろう」

「分かってないなー。神殺しは自分本位な人しかいないんだよ?そんな連中が、興味のない相手に戦いを挑むと思う?世界各地に出る神様を駆逐しているいっくんに感謝しないと、皆平和なのいっくんのおかげなんだから」

「まぁ、アイツらを放置すれば、国の一つや二つ消えるしな」

「だからって、島一つ消すいっくんも大概だけどねー」

「あ?」

 

 

明らかに規模が違う会話をしだす、二人についていけない箒たち。

 

 

「で、どうするの?まどっち助けるの?」

「そうだ!マドカは助かるのか!?」

「相性が悪いんだよ...。俺の再生も雀の涙程度しか発揮しないし、他の権能は強力すぎて逆に殺しちゃう可能性ある。だが、俺は諦めない...、必ず救ってみせる」

「いっくんの権能って強烈だよねー!山や島を簡単に消しちゃうもんね!!」

「うるせ」

 

 

マドカの事を思い出した束はどうするか一夏にどうするか聞くと、一夏は助けるという意思を示すと束は頷き、ある事を提案する。

 

 

「そうだ!いっくんの神殺しとしての姿をみんなに見せちゃえば、認めてくれるんじゃないの?」

「何?権能ショーでもやれってか?」

「違う違う。束さんと模擬戦をするのさ。そうすれば神殺し同士の戦いがどういうものかわかるじゃん。明日、死合しようぜ!」

「マジか...。まぁ、リハビリには丁度いいか」

 

 

束の申し出にどうするか考えた末、一夏は受けることにした。

 

 

 

「何が始まるんです?」

「大惨事大戦だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

 

 

「そういえば、俺の王冠どうなった?」

「それなら、簪が手に入れて、一夏の同室権を手に入れたわよ」

「だから、皆やる気になっていたのか」

「一夏と同室になると決まった時、楯無が抗議しまして、此方になります」

 

 

一夏は王冠がどうなったのか気になりマナに聞くと王冠は簪が手に入れ、それを楯無が抗議、マハードが録ったボイスレコーダーが再生する。

 

 

『まだよ!まだ劇は終わってないわ!ノーカウント!ノーカウント!ノーカン!ノーカン!ノーカン!』

『ふざけるな!』

『恥を知れぇ!』

『馬鹿やろう!』

『そうだそうだ!!』

『死んでしまえェェェ!』

 

 

ここで音声は終わるが、一夏は困惑した表情で聞いていた。

 

 

「賭博黙示録のようなセリフが聞こえたぞ」

「まぁ、妹を思っての行動なんでしょうが、罵詈雑言の嵐でしたね」

「で、いつから来るんだ?」

「今日です」

「はやっ」

 

 

地下強制労働のシーンを沸騰させる流れを聞きながら、いつ来るのか聞くと今日だと、言うマハード。

 

 

「...え、えっと...今日から、よろしく一夏...」

「あぁ、よろしく簪」

 

「パルパルパルパルパル」

 

念願の一夏と同室に嬉しさと恥ずかしさが混ざった表情で挨拶をする簪とその光景に呪詛を吐く女性が一人いた。

 

 

 

 




サンタ・リリィのおかげでロリに目覚めっ掛けましたね。



七章はクリアできたけど、六章に次いでやっぱいい話でしたね。

そして次はソロモン戦!絆礼装はジャンヌだけ...あと一つは欲しいな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

激突!災厄兎VS白き王

束VS一夏の神殺し戦です。


束から、決闘を申し込まれた次の日。

幸いにも休みという事で、殆どの人があらず、束の政府に対してお話し(脅迫)した結果、全アリーナ使用禁止がIS学園関係者に言い渡された。

 

そして、第二アリーナに二人の神殺しが立っていた。

 

 

「お前と戦うのは久しぶりだな」

「そうだねー。大体二年ぶりかな?」

「あの時は俺の勝ちだが、今回も勝たせてもらうぞ。全力でな」

「それはどうかなー?」

 

 

二人の会話を遠くから聞いているマナ、マハード、簪は不安そうな顔をしていた。

 

 

「お兄ちゃん。今回、どれくらい被害出るかな?」

「私の予想が確かなら、アリーナ全破壊は余裕でしょ」

「...もう少し、離れて見た方がいいかな...」

 

 

三人はこの二人が戦うと、どうなるのか知っているが為、その被害は過去に余波で小国を3つ滅ぼすほどである。

 

 

 

「何をそんなに不安な顔しているのだ?所詮は人の戦いだぞ」

「そんな顔をしないの簪ちゃん。ほら、ポップコーン持ってきたから」

「なんか、皆映画感覚な気が...」

「何も知らないからでしょうね...。何かあった時の為に、結界の準備でもしますか。マナ」

「はーい」

 

 

何も知らない連中は、優雅に飲み物片手にポップコーンを摘まんでいるが、マハードは念に念を、と気休め程度にしかならない結界の制作を始めた。

 

 

「開始の合図はこのコインが地面に着いたらだ」

「OK。じゃ、始めようか」

 

 

一夏は開始の合図として、コインを高く投げると、回転しながら地面に向かった落下する。

コインが地面に着いた瞬間、二人の目つきが変わった。

 

 

「天地創造の女神にして、原初の海よ。我より生み出されし子達よ、我が声を聴き、我が命に従え」

「初手はそれか、なら―――この剣は太陽、湖の貴婦人より授けられし、もう一振りの聖剣」

 

 

互いに聖句を紡ぎ終えると、束周辺の地面が盛り上がり、形を変え、魔獣になる。

対して、一夏は青と白の剣を呼び出し、構える。

 

 

「行くぞ!」

「行っちゃえ!かわいい魔獣たち!」

 

 

アリーナの半分を埋め尽くす、魔獣達が一斉に一夏を襲い始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何よ、あれ...」

「なっ!?数で攻めるとは卑怯な!!」

「数で相手を押すのは戦術としては間違っていないが、流石にこの数は師匠でもキツイのでは?」

「これも神殺しの権能ってやつなのよね。そこ当たりの説明しもしてくれる?」

 

 

触媒があるにしろあれ程の数を操る束と現象に驚く楯無、対して卑怯だと言い始める箒、軍人からの視点で評価をし、一夏でもつらいのでは、と考えるラウラ。

神殺しの戦闘を見たことの無い、鈴は驚きを隠せず、マハードに説明を求める。

 

 

「束殿が使った権能は『原初の生命の海(オリジン・オーシャン)』メソポタミア神話における女神の1柱、ティアマトから、簒奪した権能で。任意の魔獣創造と、大地を操ります。対して、一夏が使っている権能はアーサー王伝説に出てくる円卓の騎士ガウェインから簒奪した『太陽の騎士(サー・ソルナイト)』です。あの聖剣の中には疑似太陽が封印されてます」

「かの有名なアーサー王伝説の権能ですか...」

「本気になった束殿の権能は生体系を容易に変えれます。神殺しの権能は私達では到底、敵いません」

「あ、一夏が新しく聖句を唱えたよ」

 

 

マハードは鈴の要望に応え、説明する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「埒が明かないな」

「ここは龍脈も近いし、いい触媒があるからね。魔獣を沢山作ることが出来るよ!」

「一掃するしかないか―――この剣は太陽の現身!もう一振りの星の聖剣。あらゆる不浄を浄化する焔の陽炎!転輪する(エクスカリバー)勝利の剣(ガラティーン)!!」

「これは避けれそうにないなー」

 

 

 

魔術師が相手なら苦戦しか出来ない魔獣も一夏が相手なら、赤子の手をひねる様なもの。

だが、数が多い上、倒しても新しく生まれる為、埒が明かないでいた。

だから、一夏は魔獣を一掃する為に、太陽の聖剣を全力解放した。

横なぎに放たれた灼熱の炎は魔獣達を一匹残らず灰にする。

だが、束は自分の目の前に魔獣の壁をを作り、土の壁と何重に作ることで攻撃を凌いでいた。

攻撃の余波でアリーナが半壊した。

 

 

「危ない、危ないっと」

「今ので終わるほど、お前は軟じゃないからな」

「いっくん、もう少し勇気をもって挑まないと!」

「っ!転輪する――」

「遅いよ!―――私は蛇!私は嵐!明けの明星、その輝きしかと刻み込め!!」

 

 

嵐を纏った束は一夏に接近し、ガラティーンを振るおうとするも接近していた束がガラティーンを持っている手首を折るとそのまま空中に舞い上げてから、体を固定しパイルバンカーを喰らわす。

パイルバンカーを盛大に決め、アリーナを覆うほどの土煙が舞い上がる。

上空、1000mからのパイルバンカーを喰らえば、普通なら死は免れないだろう。

 

 

「あれ?全然出てこないなー。およ?」

「ゼェェェヤァァァァ!!」

「お、ととっと」

 

 

一向に出てこない一夏を不思議そうな目で見る束に土煙か刀が飛来すると、太陽の翼を出し、避難すると土煙から異形の大槍を構え突撃する。

それを見た束はさらに高く舞い上がり、1500mまで上がると炎を纏い、炎を纏った大槍を突きだす一夏にそのままキックをかます。

 

炎のキックと炎の大槍がぶつかり、やがて2つの炎をが一つになると二人は地面に着地する。

 

 

 

 

「可笑しいな。真面に入ったはずなのに」

「グフッ...。内臓破裂...、即座にフェニックスの権能を使わなかったら危なかったぜ...」

「大分実戦から離れていたけど、神殺しとして先輩である束さんはそう簡単にやられないのだ!」

「ケツァル・コアトルの権能とプロレスの合わせ技とか...。うまく受け身取れなかったら、首の骨へし折れてたぞ」

 

 

持っていた大槍を使い、体をほぐす一夏。

そして、束は神殺しとして、一夏の先輩に当たるのだ。

 

 

「束さんに槍で挑むとは...、その勝負乗った!」

「クッ...」

 

 

ガキンガキン、と互いに持つ異形の大槍がぶつかり合う。

 

 

「槍じゃ、束さんに勝てないのに挑むなんて...。大分勇気が身に着いたんじゃない?」

「かもな!」

「ねぇ、知ってるいっくん?」

「あ?何が...」

「真の英雄は目で相手を殺すんだよ」

「それを言うなら、武具など不要、真の英雄は目で殺すだッ!...ッ!?」

 

 

槍同士、鍔迫り合いになると一夏は束を穿とうとするも躱され、束の言ったことを訂正すると、一夏の本能に従い、その場から離れると束の右目から光線が放たれた。

 

 

「おー、今のを躱すとは流石だね。束さんのブラフマーストラを避けたのはいっくんとすーちゃんだけだよ」

「...ブラフマーストラ。インドの叙事詩の英雄が持つとされる武具か...。ハァ!」

「そうそう。いっくんもいるでしょ。インド神話の英雄の権能がさ」

「使いどころは俺が見極めるさ!」

 

 

肥大化していく大槍を振り回し、攻撃するも束は優雅に躱し、一夏に着実にダメージを与える。

一夏は一度大きく、跳躍する。

 

 

「ウオオォォォォッ!」

「防げない!?チッ...」

 

 

一夏は大槍を束目がけ、思いっきり投げると束は防ぐごとが出来ないと判断するとその場から、バックステップで避けていく。

投げた大槍は大気を切り裂き、地面にぶつかり、アリーナの地面を大きく二つに割った。

 

 

「クッ...。あんな勢いで投げれば肉体が耐え切れずに崩壊するはず。それを不死の権能でカバーするか...。だけど、壮絶な痛みが襲ったはずだよ」

「この程度の痛み...、もう慣れたわ!―――神々から愛されし、授かりの英雄。炎神より授かりし武具で、汝を打ち倒そう!」

「キタッ!」

 

 

痛みに慣れている一夏は素早く聖句を紡ぎ、身の丈はあるであろう大弓を構える。

それを見た束は口角をつり上げ、笑う。

 

 

「さぁ、始めようか。神話を超えたライバル同士の戦いをさ!!」

「自分一人でやりやがれってんだよ!」

 

 

 

一夏が青白い矢を放ち、束がその矢を叩き、落とし束の攻撃を弓本体で凌いでいる。

一連の攻防を繰り広げ、IS組はその戦闘に魅入られていた。

モンド・グロッソでも、ここまで魅入る試合は片手で数える位しかない。

ましてや、両者共にISうを使わずにここまで出来るのだから、自分達とは住んでる領域が違うことを理解するまで、時間はかからなかった。

 

 

「ハァァァ!!」

「フッ!」

「グッ!?」

 

 

縮地を使い、束の目の前に移動し、矢を放ち、束がブラフマーストラを放つも背後に回っていた一夏矢を放ち、距離を取る。

 

 

 

「束さんに無い俊敏性...。性格無慈悲な攻撃に、束さんより多い呪力...。長期戦は不利だよね。だから、少し本気を出すね!」

「ん?...あれは」

 

 

束が大きく上昇すると束の背後に炎が日輪の如く噴き出ると、一夏の手から大弓が消えていた。

それを見たマハードは危機感を覚えた。

 

 

「総員退避!!巻き込まれますよ!!」

「防御用の結界は...」

「効くわけないでしょ!神々をも打ち倒す力と、シヴァが終末に於いて投じる宇宙を滅ぼすための力ですよ!!耐えれるわけないでしょ!?」

 

 

マハードが危機感を覚えるのも無理もない。

一夏はエジプトでの神殺し時にこの権能を使い、当たり一面を死の土地に変えているのだから。

 

 

「神々の王の慈悲を知れ。インドラよ、刮目しろ。絶滅とは是、この一刺。 灼き尽くせ」

「神性領域拡大、空間固定。神罰執行期限設定、全承認。 シヴァの怒りをもって、汝らの命をここで絶つ」

「―――日輪よ(ヴァサヴィ)死に随え(・シャクティ)!!」

「―――破壊神の手翳(パーシュパタ)!!」

 

 

 

束が持つ、大槍から放たれる光に一夏の手に現れた光球が束の放った光に向かうと、光球から光が溢れる。

二つの大技がぶつかり合った瞬間、その二つを中心に眩い閃光と衝撃波が襲う。

咄嗟に専用機を展開し、避難したIS組だが、先ほどまでいたアリーナは原型を止めておらず、あるのは瓦礫のみ。

アリーナ周辺の植物は抉られるように倒され、先の攻撃をした二人はどうなったかハイパーセンサーで探す。

 

 

 

「いってぇ...。左腕持ってかれたな」

 

 

衝撃波によって吹き飛ばされた一夏は地面を5回バウンドしながら、瓦礫にぶつかりようやく止まったが、左腕が力なくぶら下がっている。

一夏は素早く左腕をはめ直すと、束を探すと正面より右側の土煙の中に特徴的なうさ耳が見えた。

 

 

「そこか!阿修羅観音!!」

 

 

虚空から現れた刀を、うさ耳目掛け放つと刀が刺さった衝撃で土煙が晴れる。

 

 

「アレは土人形(デコイ)...。じゃ、本体は...」

 

 

攻撃したのは土人形であり、本体はいまだ見つからない状況で、一夏は神経を研ぎ澄まし、当たりを捜索すると、一夏の後方の地面が盛り上がる。

 

 

 

「URYYYYYYY!!」

「てめぇは時を止める吸血鬼かよ!!シャラァァ!!」

 

 

盛り上がった地面から飛び出した束は奇声を発しながら、手刀を繰り出すが、一夏は突っ込みをしながら突き出された腕を掴み、身体をひねりながら蹴りを束の顔に喰らわす。

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッー!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァー!」

 

 

互いに接近しあうとオラオララッシュを始め、そのスピードはハイパーセンサーでは捉える事の出来ないスピードだった。

お互いの拳が顔面を的確に捉えると、その衝撃で後方に押され、互いに首や肩の骨を鳴らしている。

 

 

「最高にハイって奴だよ!いっくん!!」

「てめぇはDI○か...!!」

「それ地味に伏字になっていない!」

「一歩音を超え...、二歩無間...、三歩絶刀...!―――無明三段突き!」

「グッ...!?」

 

 

 

一夏お得意の無明三段突きをするも束は少し、よろける程度で終わり、一夏は縮地を連続使用した高速戦に切り替えて攻撃する。

 

 

「手応えがない...。まだ鎧は健在か」

「罅が入った程度...。まだ耐えれるよー」

「なら、こいつならどうだ?」

「うゆ?」

 

 

一夏は束にダメージがない理由を知っていた。

束が使った権能『太陽の施し(ソル・カルナ)』と呼ばれる権能が理由である。

この権能は束が持つ複数の力を持った権能であり、その一つとして、『黄金の鎧』と呼ばれる不死の鎧を着込むことで、不死性を獲得している限り、束に本来のダメージの10分の1程度しか通らない。

ならば、一夏のやることはただ一つ、その鎧を破壊することである。

 

 

「あらゆる叡智、尊厳、力を与えし輝きの主よ。我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ!―――流星一条(ステラ)ァァ!」

「ぐぅぅぅ...。だけど、これを耐えれば...」

「おら、もう一丁!流星一条(ステラ)ァァ!!」

「なっ!?」

 

 

正面から来る流星一条を受け止めるが、上空から放たれたもう一つの流星一条を避ける術も受ける術もない束はその極光を成す術もなく喰らう。

極光が消えると、服の至る所が破けた束の姿が映った、瞬間―――。

 

 

「ゴアッ...」

「油断大敵だよ。いっくん」

 

 

次の瞬間、瞬きをする暇も無く、一夏の懐に潜りこんだ束は一夏の鳩尾を抉りこむように殴る。

 

 

「この感覚は...神速...」

「束さんが持つ、時間操作系の権能だよ。簒奪したまつろわぬ神の名はクロノス。この権能は自分の触れた対象の時間を操作できて、最大一週間前まで戻せるんだよ」

「解説どうも...」

 

 

束が使った権能についての説明を聞いた一夏は黒鍵を指で挟むように三本ずつ持ち、腕をクロスさせる。

束の足元の地面が盛り上がると、そこから土塊がマシンガンの如く、放たれる。しかも、権能を介している為、その強度と威力は上がっている。

 

 

腕をクロスさせ、土塊を防ぎながら突き進み、束は自らの時間を加速させ、一夏の目の前に接近するが、彼女の目に映ったのは攻めりくる拳だった。

 

 

「ぐぅぅぅ...!?」

 

 

師匠直伝の絶招を叩き込み、束をアリーナの壁まで吹き飛ばす。

 

 

「相手が倍以上の速さで動くのなら、それを考慮したい上で、間合いを詰め、タイミングを合わせればいい。何、簡単な話だ」

『いやいやいやいや』

 

 

一夏の言葉を聞いた束以外の全員が手を振りながら否定した。そんなことが出来る時点で人間辞めている。

 

 

三重加速(トリプルアクセル)!」

「むぅ...」

 

 

束は二倍では駄目だと悟ると、三倍に変え、石で来た斧剣を振り回すと一夏は回し蹴りをし、斧剣を壊すが、壊れた斧剣が細かく砕け、一夏に飛来すると一夏は回避していると束が後ろに下がり、なにやら聖句を唱えると雷を纏った槌を横なぎに振るう。

本来は距離的な関係からあたることがないが、突如、肥大化し大きく伸びると一夏の横腹にめり込む。

 

 

「アガッ...。...その槌は...北欧神話に伝わる...」

「YESYES。雷神トールのミョルニルだよ!」

「チッ...。全てを灰燼に帰せ、煉獄の劫火よ!」

 

 

雷を纏ったミョルニルを振り回し、その一撃は大地に大穴を開ける程、一夏は世界を焼き尽くす劫火の剣(レーヴァテイン)を構え、攻撃するも呪力が少なくなってきた一夏は世界を焼き尽くす劫火の剣(レーヴァテイン)の火力を発揮できないでいた。

 

 

「あれをやるか...。ガンド!」

「鬱陶しいなー」

 

 

一夏はポッケから赤い宝石を取り出すと、呪力が籠った宝石を投擲すると、途中で弾け、9つの閃光となり束を襲うも、ミョルニルの一振りで無力化させられる。

 

 

「さーて、いっくんは何を見せてくれるのかなー?」

「筋系、神経系、疑似呪力化完了...。二重奏(デュオ)!」

「権能の火力が上がった?」

 

 

突如、一夏の呪力が上がったことに首をかしげながら一夏の攻撃を躱しながら、なぜ上がったのか考察していた。

 

 

「あそこまで権能を乱発すれば例え、いっくんの呪力でも、大分消耗したはずなのに...。呪力を回復させる秘薬でも作ったのかな?」

「確かに俺の呪力は大分危ういさ。なら、別のモノを置き変えればいい」

「置き換える?...まさか、自分の身体の一部を呪力に変換している。だとしたら、呪力を使うだけで、途方もない痛みと全身のいたる箇所に深刻な損傷を受ける。代わりに瞬間的に大出力を得るそんなの禁術クラスだよ...」

「更に追加!血管系、リンパ系、疑似呪力変換完了!!五重奏(クウィンテット)!!」

「まだ上がる!?ぐぅぅぅぃ!」

 

 

今できる最大呪力変換をし、失った呪力を補い、炎の斬撃を飛ばし、束はその斬撃をミョルニルで受け止めるもその威力に苦悶の表情を浮かべる。

攻撃を受け止める事に成功した束が見たのは上空で轟々と燃え盛り、勢いを増していく炎の大剣を掲げる一夏の姿だった。

 

 

「なるほど...。全て一撃に掛けるって事かな?いいよ。束さんも乗った!」

 

 

一夏が何をしようとしたのか察知した束はミョルニルを構えると、頭上に雷雲が集まり、落雷をミョルニルで受け止め続ける。

 

 

「ミョルニルゥ!!」

世界を焼き尽くす劫火の剣(レーヴァテイン)ッ!!」

 

 

嘗て無い勢いで燃え盛る世界を焼き尽くす劫火の剣(レーヴァテイン)を振り下ろす一夏に束は大きく跳躍し紫電を纏い、巨大化したミョルニルを振り上げる。

二つの大きな力が激突、その衝撃だけで当たりを破壊しつくし、ぶつかり合いながら動かない二人の間で炎と紫電が更に周りに被害を与えていた。

 

 

 

「ウオオォォォォ!!!」

「ハアアアァァァ!!!」

五重奏(クウィンテット)でだめなら、六重奏(セクステット)だァァ!!」

「そんな!?」

 

 

このままではキリがないと察した一夏は更に気を呪力に変換することでブーストを掛け、その事態に束は驚愕を隠せずにいた。

だが、束も諦めずに更に雷を吸収し、ミョルニルの威力を上げていく。

強大な二つの力の衝突はやがて、大きな轟音と爆風と共に終わり、両者後方に吹き飛ばされる。

 

 

「これで終わりだよ。いっくん!」

 

 

一夏が着地すると同時に地面が盛り上がり、一夏を串刺しにする。

だが、ガラスが砕ける音と共に串刺しになった一夏の姿が消える。

 

 

「な!?幻影!じゃ、いっくんは...」

「こっちだ!」

「っ!?」

 

 

自分が串刺しにした一夏が、幻影であると気づいた束は一夏を探すと上空から一夏の声が聞こえた。

 

 

「蒼覇ァ!剛掌閃ッ!!!」

「うにゃああああぁぁぁぁぁ!!??」

 

来ていたIS学園の白い制服は呪力変換の際、全身のいたる箇所に深刻な損傷を受け、赤く染まっている。

束を無数の掌底で打ち据え、バウンドした所を掌底で吹っ飛ばし、アリーナ諸共粉砕する。

 

 

「ハァ...ハァ...ハァ...」

「うにゅぅぅ......」

「俺の...勝ちだ...」

 

 

最後の渾身の一撃を喰らった束はボロボロになりながらも完全に目を回し、気絶している姿を確認した一夏だが、意識を保つので精いっぱいな状態である。

 

 

「この勝負、白き王一夏の勝利です!」

 

 

薄れゆく意識の中で、自身の勝利宣言を聞きながら、一夏の意識を手放すのであった。

 

 




今回の戦いで束は自身が最初に倒した神の権能を使わずに負けました。

束が最初に倒したまつろわぬ神のヒントは 戦争と死の神、魔術に長けているです。



とうとう、ソロモン戦!その前にマーリンを取らなければ!(ガチャガチャ



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

明かす王の事実

ということで説明会です!


IS学園で行われた、神殺し同士の戦いはIS学園に甚大な被害を与えて終幕を迎えた。

 

 

「あー、久しぶりに体を動かせたぜ」

「束さんもラボに引きこもったけど、久しぶりに体を動かすと気持ちがいいねー」

「お二人が盛大に体と権能を使って、学園は甚大な被害が出てますよ」

 

 

戦いを終え、全員一夏の部屋に集まっていた。

激しく体を動かした二人は清々しい笑顔で話しているが、IS学園に起きた被害は決して笑えるものではない。

 

 

「んなこと言ったてよ。たかがアリーナ全部お釈迦になっただけだろ?」

「何を馬鹿な事を言っている!お前たちのせいで、今後の実習に甚大な影響が出ているんだぞ!!それにこの被害額を見てもそんなことが言えるのか!?」

「どれどれ?......別に大した被害じゃないな。たかが一億」

「だまらっしゃい!!」

 

 

一夏達の会話を聞いた千冬は青筋を浮か、激怒しながら被害額と今後の影響が書かれた書類を見るも大した事ないと言い、書類を紙飛行機にして、飛ばしている。

 

 

「学園に甚大な被害が出たけど、これは誰に請求すればいいのかしら?」

「だから、たかが一億...。あ、普通払えないのか」

「それだけあったら、国の財政が少しはいい方向に傾くんじゃない?」

「無理っしょ。お偉いさんたちの汚職に金が消えるのが関の山だって。なら、貧困の国の人たちに向けて何か買って、送った方が実用的だな」

「面倒だから、権能で直しちゃえば?じゃないと、ちーちゃんが激おこのままだよ」

「えー、国に出させればいいんじゃね?そうすればお偉いさん達も無駄金使えないし」

 

 

楯無が誰に請求すればいいのか聞いてくると、政治家の汚職などに詳しい一夏達は国に出させればいいと言い出し、束は権能で直せばいい提案する。

 

 

「いっくん時間系の権能あるんだし、いけるいける」

「それはお前もあるよな。なら、お前がやれよ」

「いやー、束さん呪力すっからかんでさ。呪力が残ってるいっくんが適任だって」

「またまた、手を抜いて戦ってたから呪力余ってるくせに。嘘が下手だなー」

「そういういっくんこそ、全力じゃない癖に」

「「アハハハハハ」」

 

 

互いに笑いながら何方が直すか擦り付け合いながら、腹の探り合いをする二人。

 

 

「もう、二人で直せばいいだろ!しないのなら私が直すぞ!」

「えぇ~、本当でござるか?」

「いっくん、煽んない煽んない。なんか説明してほしいって顔の人多いし、時間もないから...もう、こうなったら束さんが直すよ。それでいい、いっくん」

「どうぞどうぞ」

 

 

束は周りを見渡すと自分達(神殺し)について説明しろ、と目で訴える箒を見ながら、自分が直すと提案する束に一夏は了承すると束が急に指パッチンする。

 

 

「はーい、おーわり。流石束さん、仕事が速いね」

「な、何を戯けた事を...。そんなふざけた事で、直るわけ...わけ......」

「それができちゃうんだよねー。束さんたちは」

 

 

もう直ったという束の言葉を信じれなかった箒は外を見ると、そこには更地になったはずのアリーナ跡地に何事も無かったかのように存在する傷のないアリーナがそこにあった。

 

 

「さて、アリーナも元に戻ったし、何について聞きたい?あ、権能については見せたもの以外話さないし、他の神殺しについては話さないから」

「全部赤裸々に話してもいいのでは?」

「分かってないなー、金髪ドリル。権能の詳細を話すという事は切り札をばらす様なものなんだぜ。そんなの普通するわけないでしょ」

「き、金髪ドリル...」

「じゃ、神殺しについて詳しく説明してもらえるかしら?」

 

 

元に戻ったのを確認した一夏は何について聞きたいの聞くが、一部説明できない言うとセシリアが全部話せない事に疑問に思うと、束が罵倒しながら答える。

 

 

「まず神殺しについてね。まず、俺たちの事を知ってる奴と別れるか」

 

 

一夏の言葉を聞いたマハード、マナ、簪、シャルロット、鈴が一夏達の方に移動する。

 

 

「まぁ、この通り半分が関係者という事。で、神殺しについてだが、まず神殺しは人の身でありながら、本来なら殺す事の出来ない神を殺した世界が生んだ一種のバグだ。瀕死の重傷や四肢欠損などからも回復する。人間離れした生命力と回復力、そしてヒトを超えた呪力を得たことで経口摂取などの特殊な方法でもない限り魔術や呪術を一切受け付けない体質を持ち、並の人間や魔術師じゃ相手にならない化け物。更に高い言語習得能力、梟並みの暗視能力、人間離れした直感力など、身体能力は基本的に人間時のままで闘争心に正比例して勘や反射神経といった集中力とコンディションが最良に近づき、潜在能力が完全に発揮される。まぁ、たまにそれ以上の力を引き出す奴もいるけどな。俺みたいに」

「簡単に言うと神殺し、まつろわぬ神と戦う事に適した体に生まれ変わるんだよね。それでも弱点があってね、闘争心が湧かなければ、権能や経口摂取などによる毒や術が影響を及ぼすことがあるだよ」

「そんな俺たちは『神殺し』『王の中の王』『魔王』『カンピオーネ』と呼ばれる。そして俺たちは唯一の義務がある」

「義務?その力で人を導いたりですか?師匠」

「違う。俺たちはまつろわぬ神が現れた場合、人類代表として戦うこと...。命を懸けて、それが俺たちの存在意義だ。そして、その義務さえ果たせば何をしても許されるという暗黙の了解がある」

 

 

彼らの存在意義、それはまつろわぬ神と戦う事。

戦うだけの存在と言う、一夏の言葉がラウラの中で復唱される。

 

 

「暗黙の了解って言うけど、実際は逆らえないっていうのが正しんだよねー」

「自ら逆鱗に触れて、悲惨な末路を辿りたくないからな」

「実際に何人もやったことのある人が言うと説得力があるねー。昔、いっくんを馬鹿にした人がいたよね」

「あー、あいつか。俺の黒歴史を笑いながら言ったから、見せしめの意味を込めて死なない程度に心を折ってやったわ」

「おー、いっくん悪魔だね、魔王だね」

魔王(サタン)だからな」

 

 

何やら黒い話をし始める二人に楯無は恐る恐る手を上げる。

 

 

「ぐ、具体的に何をしたんでしょうか...」

「いっくんのトラウマはね、まつろわぬ神がいっくんに一目惚れして、肉体的に迫ってきたんだよ。まだ、中学生だったいっくんは常軌を逸した愛情を恐れて、迎撃しつつ世界をまたにかけた鬼ごっこをして、何とか巻いたいっくんは呪力がすっからかんで、明日対抗策を考えるかって寝たら、お腹の当たりが重いと思って起きたらなんとそこには全裸のまつろわぬ神が居て、成す術も無くそのまま肉体を重ねたんだよー」

「てめぇ、赤裸々に人の黒歴史を語ってんだよぉぉぉぉ!!」

「いやぁぁ!?」

 

 

赤裸々に語る束をジョノサイドカッターをすると、そのまま束の頭を鷲掴みにする。

 

 

「この俺の手が真っ赤に燃えるぅ!貴様を倒せと雄たけび上げるぅ!!爆熱ぅゴッドォォ...フィンガアァァ!!!」

「ちょ!いっくん、シャイニングとゴッド混ざってる!!束さんの頭にザクロが咲いちゃうぅぅぅ!?」

「ヒィィィト、エン――」

「一夏、それ以上は危険です!お茶の間に見せれない光景が!!」

「知るか!此奴は俺の黒歴史を口にした。殺すのには十分な理由だ!!」

「ほら、一夏落ち着て?どうどう」

 

 

これはやばい、と一夏から明白な殺意を孕んだ瞳を見たマハード達は一夏を止めに入る。

一夏と束を強引に離し、マナが後ろから一夏を羽交い絞めにして抑えている。

取り残された人たちは理解した。これ振れたらアカン奴やと。

 

 

「シャルロット。肌を重ねるとはどういうことだ?」

「え?ら、ラウラは知らなくていい事だよ!それ以上言ったら一夏に嫌われるよ」

「う、うむ、少し気になるが...。師匠に嫌われるのは嫌だからこれ以上は聞かないでおこう」

「ガルルルル...」

 

 

何も知らないラウラは束が何言っているのか分からず、シャルロットに聞くが、狼狽しながらラウラがこれ以上聞かないように答える。

自分の黒歴史を暴露された一夏は獣のような唸り声をあげながら、束を威嚇する。

 

 

「その一件以来、いっくんは裸の女性とかに抱き着かれると、トラウマが蘇って発狂しちゃうんだよねー。情けないなー」

「聴くがよい、晩鐘は汝の名を示した。―――」

「あー!!ストップストップ!!それ相手を確実に殺す権能ですよね!?マナ、一夏の口を塞げ!だれか縄と手錠を持ってきて!!」

 

 

束の黒歴史を使った煽りに一夏は完全にキレ、自分が持つ死の権能を二つ合わせて使う、相手を確実に殺す権能を使おうとしたのを見たマハードは危機感を最大限に上げ、止めに入る。

 

 

「いっくん発狂させればよくない?」

「クッ...。こうなったら...マナ!羞恥を覚悟で頼む!」

「う、うん!」

 

 

従者として一夏のトラウマを蘇らせるような真似をしたくないマハードだが、このままいけば確実に死人が出るので、ポジション的にいい所に居るマナに頼み込む。

マナは何をするのか分かると、衣服を全部脱ぎ、下着姿になると一夏に抱き着く。

 

 

「お願い、一夏!止まって」

「くぁwせdrftgyふじこlp!」

 

 

不意を突かれた一夏はマナの行動によって黒歴史が蘇り、声にならない悲鳴を上げて意識を失う。

 

 

「すまない、マナ。だが、お前の行動は無駄ではなかった」

「...うん」

「じゃ、あの時一夏が意識を失ったのって...」

 

 

顔を真っ赤にしながら制服を着るマナにマハードは謝罪するが、その傍らで以前大浴場で、一夏が気を失った理由を知った一人の少女は顔を真っ青にしていた。

 

 

「どうしたシャルロット?顔色が悪いぞ」

「だ、だだだだだ大丈夫だよ!も、問題ないよ!?」

「う、うむ」

 

 

明らかに様子が可笑しいシャルロットだが、それ以上何も言えないラウラ。

 

 

「そうか。それが一夏の弱点か...。ならば、次何か言った時は...」

「あー、やめた方がいいよちーちゃん。いっくんの幻術で地獄を見て、心へし折られるから。しかもやり方かなりえぐい」

「因みにどんな方法なのかしら?」

「一夏が持つ権能には幻術系のモノがあります。例を挙げるのでしたら外では一瞬ですが、身動きがとれない相手に剣をいつ、どこを、どのタイミングで何本刺されるか完全なランダムを24時間体験させるというものです」

「なにそれ怖い」

 

 

なお、その幻術を掛けられた当人は完全に心をへし折られ、部屋に閉じこもり、悲鳴と謝罪の言葉を叫び続けるている。

この前例がある事から、一夏の黒歴史を本人の前で話題にするの禁止されている。

 

 

「まぁ、いっくんは有言実行するタイプの人間でね。やるなよ、と言った傍からやらかした連中の組織を潰したりとかよくあったしね」

「今は丸くなってOHANASIで済んでますからね」

「いやいやいや。それ全然変わっていませんよね?」

「何を言うんですか?気に食わなかったら『ヒャーハー!汚物は消毒だ!』と言いながら組織をつぶしていた一夏が『OHANASIされたくなかったらいう事聞けや』で済んでるんですよ?画期的な進歩じゃないですか」

 

 

何かが可笑しい、そう思った楯無たちだが、彼らにそれを言っても無駄なのだろうと悟り、言わなかった。

 

 

「あぁ~。なんか嫌な事思い出した様な...何だっけな?」

「覚えていないという事は覚える価値がないから覚えてないんですよ。なら、思い出さなくても問題ないでしょう」

「んー、そうか...。いや、そういう事なのか?」

 

 

気を失ってから数分で起きた一夏だが、どうやら記憶がすっぽり抜けているようだ。

 

 

「いっくんが起きたという事で、次いってみようか」

「ハイ!師匠達が使う権能とは何なのでしょうか?」

「権能はまつろわぬ神が使う力の事で、俺たち神殺しの最大の特徴と言ってもいい」

「束さん達、神殺しは倒した神様から、その権能を簒奪することで、その権能を使うことが出来るんだよ。戦闘向けやサポート向け、戦闘には使えない儀式系の権能、日常で使えるような権能など色々あるんだよ」

「まぁ、倒しても手に入るかは運だけどね。権能を使うのには呪力や魔力と呼ばれるものが必要だ。これは誰もが持っているが、俺たちの神殺しの呪力はその数百倍と言われている」

「強力な権能程呪力の消費量は多いよね。まぁ、いっくんは現存する神殺しの中で一番呪力多いから、権能ばかすか打てるんだよね。分かりやすく言うと、一般人が第二世代の量産型ISだとしたら神殺しが第四世代以上の軍用ISと言ったところかな」

 

 

一夏と束は神殺しの最大の特徴である権能について説明する。

権能を手に入れるかどうかは(パンドラ)次第なので、必ず手に入るというわけではない。

権能にも種類があるのは先の戦闘で理解しているが、ここで千冬はある疑問があった。

 

 

「その権能はお前たちはどれくらい持っているんだ?」

「束さんは7柱だね。いっくんは13柱だよね?」

「あ?今は20柱だぞ。倒した数だけで言えば70は超えているわ」

「あれ?去年より増えてる...」

「賢人議会には報告しているぞ」

 

 

神殺しがまつろわぬ神と戦う運命なのは理解できた。

なら、少なからず戦っている以上複数の権能を持っているのは間違いないだろうと踏んだ千冬は持っている権能の数を聞く。

束は自分の持っている権能の数を言うと、一夏の権能の数を言うものの実際の数が、去年より増えている事に驚くと、千冬達は一夏の倒した数に驚いた。

互いに手を抜いているとはいえあのような戦闘を70以上している一夏の戦闘意欲に驚かされると同時にその倒した数が一夏の強さを示していた。

 

 

 

「なら、私もそのまつろわぬ神を倒せば私も一夏や姉さんと同じように強くなれるのか...」

「神殺しになる?なんだその手の込んだ自殺は」

「じ、自殺?私は本気だぞ!!」

「馬鹿なの?アホなの?死ぬの?神殺しはなろうと思ってなれるものじゃない。実力と運によりなした埒外だが、そもそもまつろわぬ神との遭遇率も極めて低い。言っておくが、神殺しとまつろわぬ神との力関係はあっちの方が上だ。俺だって、あと少し、運が無ければ死んでいたんだぞ?あのノルウェー旅行の時に、神殺しが成功しなかったら30位までしか生きられないんだからな」

「それはどういうことだ!説明しろ一夏!!」

 

 

自分も神殺しになると言い出した箒に一夏は辛辣な言葉と成りたくてなれるようなものではないと説明すると、自分も一歩間違えていたら死んでいたかもしれないというと千冬が血相を変えて、一夏に迫る。

 

 

「俺が神殺しになったのはノルウェー旅行に行った時だ。あの時、両親から渡されたアイオーンの石碑が無ければ死んでいたし、神殺しが成立しなかったら石碑の副作用で30位までしか生きられなかったしな」

「それはどういうことですか師匠?」

「まず、アイオーン石碑は対象の過去からランダムで関わりのあった人物の武器と知識を与えるんだが、使用者の膨大な時間...つまりは寿命を吸うんだ。あの時は北欧神話に伝わる主神オーディンからグングニールを手にすることで、まつろわぬ神に対抗で来た。あの時俺の手に石碑が無ければ俺は死んでいたし、石碑があったとしても、神殺しが成功しなければ、俺の寿命は30しかない。お前はそれだけのリスクを覚悟の上で、言っているのか?IS同士の戦いを経験して言っているのなら、例え第四世代だろうが第七世代だろうが、負けて死ぬ。序に、その副作用で俺の髪はこんなのになってるんだからな」

「箒ちゃんは少し、甘く考えすぎだね。目先の強さに捕らわれて、大したリスクも背負ったことがないから言えるんだよ」

「む、だが...」

 

 

一夏は神殺しになるまでの簡単な経緯を説明する中で、自分がどれだけリスクを背負って挑んだのか説明する。

条件が不足すれば死、失敗すれば寿命を大幅に削られるという大きなリスクを覚悟で挑んだ上で、成功している。

だが、箒はそのようなもの一切背負った覚えがない。

紅椿がいい例だろう。一夏の隣に立ちたいという理由だけで、ISの生みの親であり自分の実の姉である束のコネで専用機を手にしている。

楯無やセシリアの様に相応の実力も血が滲む様な努力もしていない、それに見合った覚悟もない。

自分の事を先輩と呼び、一夏と高頻度で死合をしてくれるドニですら相応の実力を持って、神殺しをなしている。

だが、箒にはそのすべてがない。故に一夏は箒の事をあまりよく思っておらず、ただ力を振り回し満足する餓鬼大将にしか見えないのだ。

 

 

「ま、神殺しになるのはやめておけ。権能の内容について喋るのは嫌だが、最初に倒したまつろわぬ神なら言ってもいいか」

「お?公開しちゃうのなら、束さんも言うね!束さんが最初に倒したのはさっき出てきた、北欧神話の主神オーディンで『叡智の(フィヨルスヴィズ)(・ハール)』だよ」

「俺は同じ、北欧神話の戦乙女ブリュンヒルデから簒奪し『炎庭の(フレイム)女騎士』(・ワルキューレ)だ。さっきの戦いで使った、槍がそうだな」

 

 

二人は最初に倒したまつろわぬ神と権能名を言うと、世界最強の女性(ブリュンヒルデ)の弟である一夏が同じ名のまつろわぬ神(ブリュンヒルデ)を倒した事実にどこか複雑そうな顔をする千冬。

 

 

「他何かある?何なら、質問会はここでいったん終わり。気になるのなら、後日俺の所に来い」

「質問じゃないけど、日本を守る一族の長として、この場を借りてお礼をするわ。身を挺して私達を守ってくれてありがとう一夏君」

「別に気にしなくていいのに...。俺はやりたいことをやっただけで、その過程でお前らが勝手に助かっただけだ」

「いっくんは素直じゃないな~。本当はうれしくて心がぴょんぴょんしてるくせに」

「......。我が瞳は始まりの邪視。月と死を司り大天使よ、汝の罪を測り裁こう」

「あ、ちょ?!にゃみゃぁぁああああ!!??」

 

 

日も傾き始め、そろそろいい頃合いかと思った一夏は切り上げようとすると、楯無が知らない所で自分達を守ってくれていた事にお礼をすると一夏は気にしなくていいと言うが、束の発言が癪に触った一夏は話題に上がった瞳の権能を使うと虹色に輝く瞳で、束を睨むと悲鳴を上げながら倒れる。

 

 

「あのバカは知り合い(クロエ)に任せて、解散!」

「では、束殿は私が受け渡し場所まで運びますね」

「さっき連絡しておいたら、こっちに来るとよ」

「このまま放置しておきますね」

「ただ、放置するのも嫌だから落書きしておくか。太い眉毛でつなげるとかさ」

 

 

キュキュキュニャー!キュキュキュニャー!

 

 

その後、どこぞの狩りゲーに出てきそうなBGMが鳴らしながら一夏は取り出した油性ペンで落書きされた束を見た一同は大いに笑ったのであった。




今回のピックアップ

武蔵、ギル、婦長、金時が当たった。

その過程で、エリちゃん、ヘラが宝具5にステラの絆礼装もゲット!


なにやら、セイバーウォーズの復刻をほのめかす発言がありましたが、ぜひ復刻してほしいですね!

色々、当たってQPと素材、リアルマネーがヤバいぜ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去 光の御子との出会い

タッグトーナメントまでの繋ぎとして今回は過去をメインにしています。


一日の授業が終わり、放課後の教室に一夏を中心に人が集まっていた。

 

 

「は?キャノンボール・ファストが中止?」

「うん。なんでも、何度も襲撃されてるのが原因で、それが行事の時に限って、起こるから各国のお偉いさんが来たがらなくてね。それで学園側は一つ行事を削った上で、汚名挽回の別の行事に変更して行おうってなったらしいよ」

「二週間後に専用機持ち限定タッグマッチトーナメントするらしいですよ」

「そうそう、それで一夏に話があるのよ」

 

 

キャノンボール・ファストは中止となり、一夏は新しい武器でも作るかなー、と考えていると鈴が一夏に話しかける。

 

 

「一夏。そのタッグトーナメント私と組みなさいよ!」

「貴様!抜け駆けをするつもりか!!一夏と組むのは私だ!」

「いいえ、一夏さんと組むのはこの私、セリア・オルコットですわ!」

「ち、違うよ!一夏は僕と組むんだよ!!」

 

 

誰が一夏と組むで揉める四人だが、その様子を勝ち誇った顔をする少女が居る事に気づいてない。

 

 

「ふっ」

「何が可笑しい簪?」

「いや、あまりにも無益な争いだなって思って...」

「何だと!?」

「だって、一夏と組むの私だもん」

 

 

不敵な笑みを浮かべる簪に疑問を持った箒は簪に詰め寄る。

それに対し簪は煽る様に言うと自分が一夏と組むと確信を持って行った。

 

 

「あー、その事なんだが...実は一か月くらい前に簪から誘いがあってそれを了承したんだよ」

「え?それって...」

「今回、俺は簪と組む」

 

 

一夏の言葉に、鈴以外が膝を突き落ち込む。

鈴に関しては、なら仕方ないかー、と言いながら落ち込んだ素振りを見せないでいた。

 

 

 

「それで一夏。ペーネロペーは完成したけど、天と天使、後ノルンがまだ完成してないから手伝って」

「俺もカレッドとかタクティカルとか作りたいのあるし、いいぜ」

 

 

そういうと、いまだ茫然と四人を他所に一夏と簪はタッグトーナメントについて話し合うのだった。

 

 

「ん?ペーネロペー...ノルン......。あ...」

「どうしたのお兄ちゃん?」

「いや、これから起きる悲劇がな...」

 

 

簪と一夏の言った単語に心当たりがある人知れず冷や汗を流すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、第三整備室に居る簪と一夏は新しい装備を作ってたいた。

 

 

「ねぇ、一夏は怖くないの?」

「何が?」

「まつろわぬ神と神殺しと...うぅん。戦うこと自体怖くないの?」

「怖いか...。俺は死ぬことよりも、何かを失う事の方が怖いな」

 

 

一夏は作業を止め、天に向けて手を伸ばす。

 

 

「俺は多くのモノを手に入れ与えてもらった。だけど、その中で失ったモノや壊したモノも多い。敵でありながら、気さくに俺に話しかけ、釣りとかに誘ったクーを失った時とかな」

「ケルト神話に出てくる英雄、光の御子クー・フーリンの事だよね。一夏とまつろわぬ神が一緒に行動しているって私達の間で話題になったけど、その詳細について何も知らない。よかったら、教えてくれる一夏?」

「あいつと出会ったのはアイルランドに遊びに行った時だったな」

 

 

一夏は掛け替えのない宿敵(親友)について語り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイルランドと言えばケルト!ケルトと言えばクー・フーリン!この国の魔術組織に押しかけて文献を漁るか」

 

 

アイルランド市街で意気揚々とやられた側としては迷惑な行為を言う一夏。

 

 

「そういえば、最近この国にまつろわぬ神が出たって話だよな。出会ったら戦うかな」

「よ、そこの兄ちゃん」

「ん?」

 

 

一夏はまつろわぬ神が招来したことを思い出していると背後から自分を呼ぶ声が聞こえ、振り向くとそこには青い髪を後ろで一つに纏め、猛禽類を思わせる鋭い赤い瞳をした一人の青年が居た。

 

 

「ちょっと、この場所までの行き方を教えてくれねぇか?」

「あぁ、それならここをまっすぐ進んで突き当りを右に行けばすぐだ」

「おぅ、助かったぜ兄ちゃん」

「どういたしまし―――!?」

 

 

行き方を教えた一夏にお礼を述べる青年だが、いきなり手刀を一夏の顔面目掛けて繰り出すと、一夏は咄嗟にしゃがみ。バク転しながら後退する。

 

 

「へぇー、あの至近距離で咄嗟の判断力と反射...流石と言ったところか?神殺し」

「お前...人間じゃないな。この気配、まつろわぬ神か...」

 

 

 

青年から感じる気配に一夏は臨戦体制に入る。

 

 

 

「なぁ、神殺し―――腹減ってねぇか?」

「は?」

「は?じゃねぇよ。よく言うだろ?腹が減っちゃ戦はできないってよ。なんか食い物ねぇか?腹が減って仕方がないだ」

「え?いや...えー...」

 

 

いつでも戦えるように全身を研ぎ澄ましていた一夏に目の前のまつろわぬ神は腹が減ったと言い出し、剰え敵である一夏に食い物をねだる始末に一夏は戸惑いを隠せずにいた。

 

 

「そうか...。なら、死ぬまでホットドッグを食べ続けるがいい」

ホットドッグ(犬の丸焼き)はやめてください。お前、俺の正体知って言うとか...お前鬼かよ!」

「ホットドッグ...ドッグ...。犬...食べれない...アイルランド......。あ」

「あ、やべえ」

 

 

一夏は目の前に見えたホットドッグの出店を見て言った一言に過剰に反応し、自分が持つ知識をフル活用し、答えを導き出すと青年も自分の仕出かしたミスに気付く。

 

 

「お前、ケルト神話に出てくる光の御子クー・フーリンか!」

「あぁ、そうだよ!俺がクー・フーリンだよ!で、食い物持ってるのかよ」

「...なぁにこれぇ?あっちに猪の丸焼きがあるから、それを奢ってやるよ」

「お、マジか。敵なのに悪いな」

 

 

一夏が導き出した答えはケルト神話に出てくる光の御子クー・フーリンであるが、その事にやっちまったと半場自棄になりながら言うクー・フーリン。

正体がばれてもなお、食い物を求める彼に一夏は困惑しながら、肉料理がある事を説明すると相当腹が減っていたのか、その肉料理がある店に向かうクー・フーリン。

 

 

「うわぁ、この肉料理うめぇな!」

「お、おう。そうか」

「食わねーのか?なら、俺が貰っていいか」

「いや、構わんが...」

「じゃ、有り難く!」

 

 

出てきた料理を豪快に食べていくクー・フーリンに一夏は頭を抑える。

 

 

「追加注文いいか?」

「好きにしろ」

「なら、遠慮なく。おう、そこの姉ちゃん!追加で――」

 

 

持ってきた財布の中から札が羽根がついて消えてく様を見ながら、一夏は目の前のまつろわぬ神に聞く。

 

 

「お前がここ最近現れたまつろわぬ神でいいのか?」

「あぁ、大体一週間くらい前か?現界するのはいいが...食い物を買う金もねぇし、困ってた所にお前さんが現れてな。戦う序に飯でも奢ってもらおうかなって思ったわけよ」

「何この貧乏人。敵に塩を求めるとか」

「また、いつ現界するか分からねぇし。ちょっと俺の用事に付き合ってくれねぇか?」

「いや、俺は敵だよ?」

「気にするなって。戦場なら敵だが、ここは戦場じゃね。なら、互いに交流を持っても問題ないだろ?」

 

 

目の前のまつろわぬ神の言い草に本格的に頭を抱え始めた一夏は最後まで付き合ってやるか、と考えても無駄だと悟った一夏であった。

 

 

「お会計、6万7千250円です」

「あ、カードで」

 

 

 

 

 

 

 

「で、なにしたいんだ?」

「そうだな、海に行って釣りや素潜りがしてぇな。後はいつまでも、戦うわけでもねぇのにこの戦闘服でいる訳にもいかねぇよな」

「絶賛奇怪な目で見られてるもんな。ラフな服でいいなら、このアロハシャツがあるが?」

「なら、後はこのジーンズってズボンにするかな」

 

 

クー・フーリンはやりたいことを言うと、自分の今の恰好がこの場に遭わないことに気が付くと一夏の金で衣装チェンジしていく。

 

 

「お、中々いいじゃねかこの恰好!このあたりになんかいい釣りスポットねぇのか?素潜りとかが出来る海でもいいぞ」

「やだ、この英雄現代満喫する気満々じゃないですかー。知り合いの剣馬鹿が教えてくれたいい場所がある」

「お?ならそこ行こうぜ!」

「フレンドリーだなー」

 

 

行く場所が決まった一夏達は釣りスポットを目指し移動し、目的の場所に着くと釣竿を用意し、釣りを開始する。

 

 

「な、神殺し」

「あ?なんだ」

「どっちが多く魚を釣るか一つ勝負と行こうぜ」

「面白い、その勝負乗った!」

 

 

クー・フーリンの提案を飲んだ一夏どちらが多く釣れるか勝負が始まった。

 

 

~30分後~

 

 

「フィッシュ!悪いなクー・フーリン、俺だけ釣れてさ!」

「ぐぬぬぬ...。条件は同じはずなのに...」

「追加でもう一匹フィッシュゥ!!」

「おい!神殺しお前イカサマとかしてないだろうな?」

「そんなことするか。釣りに権能なんか使うかよ」

 

 

その後も一夏は魚を釣りまくり、対してクー・フーリンは全く釣れず『別にここにいる魚を全部釣ってしまっても構わんのだろ?』と煽る始末。

 

 

「なぁ、クー・フーリン」

「なんだ神殺し?」

「お前の師匠...影の国の女王スカサハってどんな奴なんだ?」

「あ?師匠...?誇り高く、何者にも傅かなくて、昔から無茶なことを言う奴でな......」

 

 

―――『この甲羅を背負い、今から私が魔獣の巣に投げるお前の文字が書かれた石を取ってこい...半日までにな。勿論武器は無しだ』

 

―――『今から全員で私を殺しに来い。勿論、私もお前たちを殺しに行く』

 

―――『まずは戦え。考える前に戦え。悩み惑うは戦の後、生き残った王者の特権よ。故に戦え、戦え、戦って勝ち取れ!それがケルト流だ!』

 

 

 

「ケルトって世紀末だな」

「まぁ、そんな感じなんだよあの人は...。まぁ、神殺しで、原初のルーンとか使える大魔術師であり、誇り高き戦士だけどな」

「原初のルーンか...。、北欧神話の女神スカジのケルト神話に於ける姿ってのが関連してるのか?」

「何言ってんだ?師匠は女神じゃねぇぞ。生粋のケルト人...つまりは人間だ」

「何っ!?」

 

 

一夏はクー・フーリンから聞いた話から素直な感想を言うとクー・フーリンが一夏の予想外な事を言う。

 

 

「はぁっ!?スカサハって人間!女神じゃないの!?」

「あの人は人の身で人と神と亡霊を斬り過ぎた事で、神の領域に近づいたんだぞ。ついでに言えば、あの人が現界することはないだろうな...。まぁ、最後のはこれ以上聞かないでくれ」

「まぁ、気になって仕方ないんだが...。お前が言いたくないんなら言わなくていいや」

「おう、すまないな。お?キタキタッ!」

 

 

予想だにしない事実に詳しく話してもらおうと思った一夏だが、クー・フーリンの表情に影が差しこれ以上言及するのをやめた。

そして、二人は日が傾くまでお互いについて話ながら、釣りを楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、日が傾いてきたし、今日は引き上げるとするか」

「あ?俺と戦わないのか?」

「なんて言うかな...。お前さんとは正直戦いたくないんだよ。お前は宿敵っていうよりダチ近いんだよなぁ」

「まぁ、俺もお前とはあんまり戦いたくはないな。こんな気持ちになったのは初めてだな。敵を目の前にしてここまで戦意が沸かないのも」

「だろ?なら、互いに仲良くやろうぜ」

 

 

刺し伸ばされた手を掴み握手をする二人。

ほんの数時間一緒に過ごしただけで、二人は意気投合し互いの関係を超え、親友になっていた。

 

その後も、彼らの交流は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これがクーとの出会いであり、始めて宿敵(親友)だった」

「そういう事もあるんだね」

「神殺しとまつろわぬ神は目的が合えば一時的に協力関係になることは偶にあるが、俺たちのは違った。俺はあいつを親友だと思っていた。勿論あいつもな」

「その後はどうなったの?」

「偶に釣りや山登り、サバイバルとかしたな。それに槍の修行に付き合ってくれたぜ。普段は何してるのか聞いたら、ナンパとバイトだぜ?現代を満喫しまくってて笑ったな。ほんと...こんな日がずっと続くんだろうなと思ってたよ。...あの時までは...」

 

 

 

 

 

休日、一夏はギリシャ神話関連の文献を呼んでいると、ある人物の気配がした。

 

 

「ん?近くにクーの気配がする...。だけど、妙に弱い...少し様子を見に行くか」

 

 

クー・フーリンの気配に違和感を覚えた、一夏は呼んでいた文献を仕舞い、クー・フーリンの気配がした場所まで向かう。

 

 

「気配はこの辺り...!? おい!どうしたその怪我!!」

「よぉ、神殺し...。会ったばかりで悪いが、頼みを聞いてくれないか?」

「無駄口を叩くな!今、怪我の治療を...」

「いくら治療しようが無駄だ...。ゲイ・ボルクで破壊された心臓は二度と直らねぇ...。たく、油断したぜ...まさか俺のゲイ・ボルクを躱した挙句、逆に奪って俺に突き刺したんだからな」

「そんな...ほかに手はないのか?」

 

 

胸を貫かれた青い戦闘服はその部分を中心に鮮血で染め上げられていく。

自身を象徴する魔槍によって傷を負ったことを説明する。

 

 

「なぁ、神殺し―――――俺を殺せ」

「なん...だと...。俺に親友であるお前を討てと言うのか!!」

 

 

クー・フーリンの衝撃の発言に一夏は声を荒げて言う。

 

 

「お前につらい思いをさせるのは心が痛い...。俺はな、現界した意味を残したいんだ」

「現界した...意味...」

「あぁ、人生ってのは生きている間は無意味なんだよ。そいつが死んで、物語が終わる...それを周りの連中が評価してようやく意味が生まれるんだよ。それは俺たちのような存在も同じだ。俺がこのまま消えれば現界した意味も無く、お前と過ごした日々も無駄になっちまう。それは俺も嫌だからな、だから...俺の権能を簒奪しろ」

「クー...フーリン...。俺は...」

 

 

クー・フーリンの最後の頼みに、一夏は拳を強く握る。

 

 

「男が情けない顔をするなよぉ...。俺を倒せば、生きた証として俺の誇り(権能)が残る...。安心しろ、権能はお前のモノになる」

「あぁ、じゃあな宿敵(親友)。お前と過ごした時間楽しかったぜ...」

「そうか、そりゃよかった。お前さんに倒される前に祝福と呪いの言霊を授けてやる」

 

 

下半身が消え、もう時間が残されていない事を理解した一夏は最後の願いを聞き入れる為、炎の大剣を構える。

 

 

「俺の槍を、魂を使う以上、誰にも負けない強者であり続けろ。――――あばよ、ダチ公(一夏)

 

 

一夏はクー・フーリンが送った最後の呪いと言う名の祝福を胸に刻み込み、炎の大剣を振り下ろす。

振り下ろされた炎はやがて、円柱と成り天高く伸びていく。

それはクー・フーリンの魂が天に帰っていくかのように見えた。

 

 

「戯れのつもりで光の御子と戦になったが...。いやいや、中々いい三文芝居だったよ。これで劇は終了かな?...いや、もうお腹一杯だよ」

「てめぇが、クー・フーリンを...」

「中々、いい憎悪だ。名乗りまだだったな...我はオリュンポス十二神が一柱、神々の王ゼウスなり」

「白き王...神殺し、織斑一夏だ...」

 

 

一夏は久しぶりに自身の中で燃え滾る憎悪を自覚しながら、炎の大剣を構える。

 

 

「ゼウスゥ!!天への懺悔は済んだかァァァ!!」

「血の気の多い神殺しだな!」

 

 

怒りで平常心を失った一夏は炎の大剣を豪快に振り回し、ゼウスはその攻撃を躱し続ける。

 

 

「隙だらけだぞ!神殺し!!」

「ぐっぅぅ...!?」

 

 

ゼウスは空中に雷の槍を生成すると一夏に向けて放ち、自身も槍を構え、正面から立ちはだかり、雷の槍と炎の大剣が幾度とぶつかると不意にゼウスが笑みを浮かべると一夏は背中に走った悪感に従い、後退するも側面に生成された雷の槍が一夏の腹に掠ると臓物を焦がす。

 

 

「我は天を羽ばたく不死鳥と成り、我は天に輝く太陽と成る!」

「ほぉ、我が神話の聖鳥フェニックスの権能か」

「流石にわかるか...。だが今の一撃で、だいぶ頭が冷えた。――業を抱きし定められし英雄よ!我に汝の武具を授けよ!」

「次は何を見せるのだ神殺しよ?」

「ハァッ!!」

 

 

一夏は身の丈ある大弓を構えると縮地を使いながら、ヒット&アウェイを繰り返しながらゼウスを攻撃する。

 

 

 

「えぇい、ちょこまかと!」

「せぇい!」

「クッ...!ハァァァ!!」

「グワァァァァ!?」

 

 

縮地を多用した戦闘に苛立ちを覚えるゼウスに近距離から弓を放つも、近づくのを待っていたゼウスは一夏の右腕を掴むと雷の槍で一夏の左目を抉る。

 

 

「ぐぅぅぅ...ハァ!」

「クッ...!―――我は神々の王にして、天空を司りし支配者なり!我が威光に逆らう愚者に神罰を下せ!」

「ゴァ...!?」

 

 

大弓を消し、掌打をゼウスの腹部に打ち込むと、右腕を掴んでいた力が弱まり拘束を解き離れると、ゼウスが聖句を唱えると雷の球体を呼び起こすと、神速で一夏を跡形も無く消しい飛ばした。

 

 

「ふっ、他愛もない。所詮は人の子よ......む?」

 

 

一夏を跡形も無く吹き飛ばしたことにより勝利を確信したゼウスだが、飛び散った一夏の肉片が燃え、一か所に集まるとそこから何事も無かったかのように傷がない一夏の姿があった。

 

 

「あぶねぇ、フェニックスの権能が無ければ終わっていた...。これがキュクロプスに作らせた雷霆か...なら、あれを使うか」

「存外にしぶといな神殺し」

「ヘルの冷気よ、今我が下に集え。死を司りし、異形の天使よ。生者を死者に、我が書物より汝の名は消えよう」

「これは...」

 

 

 

一夏は二つの権能の聖句を紡いだその瞬間、一夏の身体を冥界の冷気が覆い、一つの大剣を構えるが、ゼウスは一夏から放たれる濃密な《死》に冷や汗を流す。

 

 

「...そこか」

「くっ...傷が...」

 

 

青い冥界の炎が一夏を覆うと、次の瞬間姿を消しゼウスの目の前に現れた炎から一夏が姿を現すと大剣でゼウスを斬るが、自身に起きた異変に戸惑いを隠せずにいた。

 

 

「傷が治らない...。我の身体に何をした!?」

殺した(壊した)モノが治る通り無し。―――晩鐘は汝の名を示した。ならばその命を絶とう...告死の羽」

「ぐぅぅ...!?なら、もう一度我が雷霆で......どういうことだ!!?」

 

 

一夏はゼウスが持っていた雷霆を斬ると、一度後退し権能の合わせ技を解除する。

息も切れ切れ、顔色が優れない一夏を見たゼウスは好機ともう一度、雷霆で一夏を葬ろうとするもどういうことか雷霆が現れず混乱する。

 

 

「...さっき雷霆を来た時に殺させて...もらった。ウグッ...!」

「馬鹿な権能を殺した(・・・・・・)とでも言うのか!?」

「...さっきの二つは...死を操る権能の合わせ技だ。冥界の冷気と『死』を身に纏い、自身を『死』を上書きすることで死を操る様にする...」

「そんな出鱈目をすれば人の身である貴様にどのような影響が出るか分かったものではない!!先ほどの貴様は冥府神そのものだ!!」

 

 

大きく取り乱すゼウスだが、一夏のやったことはゼウスからすれば正気の沙汰ではない。

死を扱うという事は誰よりも死が近くに存在するという事であり、それは一夏の寿命を縮める事他ならない。

短時間であればそこまで影響は出ないものの長時間使えば確実に命を削る、まさに死と隣り合わせの技である。

 

 

 

「さぁ、後はあいつが授けてくれたこの槍で止めを刺してやるよ!」

「ふっ、そのような当たらない槍など、怖くはないわ!」

「ぬかせ!」

 

 

クー・フーリンより、授けられた魔槍ゲイ・ボルクを構えた一夏はゼウスに接近し、クー・フーリン直伝の槍捌きで翻弄する。

 

 

「ソラソラソラソラァ!」

「えぇい、調子に乗りおって!」

「ぐぅ...。こなくそぉ!」

 

 

頭上から無数の大量の槍の穂先がゼウスを襲うが、傷を負いながらも一夏に接近すると雷を纏った拳をめり込ませると、口から血反吐を吐きながら後退する。

 

 

「意識が持たねぇ...。なら、あの技を使うしかない!」

「来るがいい!我が楯でその一撃防いでやろう!!」

「行くぞ!刺し穿て、死滅の朱槍(ゲイ・ボルク)!」

 

 

一夏の最後の一撃に掛け、ゼウスは彼の娘であるアテナによく貸したと言われる、雷霆の一撃をも防ぎ、更に敵を石化させるアイギスの楯を呼び出し、一夏の一撃を防ぐ。

 

 

「うおおおぉぉぉぉ!!」

「ぐぅぅぅぅ...なんという一撃だが、この楯は破れん!」

「クー・フーリンの、アルスターの魂嘗めるなよぉ!」

「なにっ!?」

 

 

互いに拮抗した状態から徐々にアイギスの楯に罅が入り始めたのだ。

だが、一夏の身体も徐々に、アイギスの楯の石化の力により右足や左腕など、所々が石になり始めている。

一夏は一度、アイギスの楯を全力で蹴り、距離を取ると肉体が崩壊するレベルでゲイ・ボルクを投げる。

 

 

「ぐぉぉおおおお!!」

「ぬぅぅぅぅ!?この一撃を...ふせげ...ば」

 

 

自らの肉体の崩壊も辞さないほどの全力投擲だが、ルーン魔術によって「崩壊する肉体を再生させながら」投擲しているため、ダメージを受けることはない――途方もない苦痛を除けばであるが。

この投擲により、アイギスの楯を破壊し、ゼウスの心臓を貫く。

 

 

「この神々の王である...我が...」

「お前が負けた理由はシンプルでたった一つの理由だ。―――てめぇは俺を怒らせた」

「友情とは...侮れぬものだな...」

 

 

自らの敗北を認めないゼウスに自身が負けた理由を言うと、ゼウスは友情を侮った報いを受けたのだと理解し、消えていった。

 

 

「クー...、敵は...とった...ぞ...」

 

 

緊張が解れた一夏に体に重くのしかかるような感覚と全身の怠惰と疲労、意識が完全に途絶える瞬間、よくやったとサムズアップをしながら笑みを浮かべるクー・フーリンの幻影を見ながら意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼が俺とクーの話だ...って、あれ?」

 

 

過去を話し終えた一夏があまりに静か故、不思議に思い簪を見てみるとその瞳には大粒の涙を浮かべながら話を聞いていた。

そして、よく見ると周りにはいつものメンバーが感極まった表情でティッシュやハンカチで涙を拭き、鼻をかんでいた。

 

 

「一夏...お前そんな過去がったのか...」

「宣誓布告の為に来たつもりでしたが、まさかこのようなお話を聞けるとは思いませんでしたわ...」

「...一夏...つらい思いをしてきたのね」

「いや、昔話昔話。そんな感動する話でもないだろ?」

 

 

どうしたらいいのこの状況?、と珍しく自らが引き起こした事態の収集に困る一夏。

 

 

「師匠!貴方は嘗ての友との約束を守るために、ここまで強くなったのですね!そして、これからも!私は貴方に一生着いて行きます!!」

「僕も今の話で見方が変わったよ!僕は自分の為だけじゃない...誰かのために何かを残す。僕もそんな生き方が出来るように頑張るよ」

「お、おう...」

 

 

もうどうにでもなれ、と投げやりな気持ちになり始めている一夏。

 

 

「生きてる間は無価値、だけど死んでから価値が出るか...。なら、少しでも自分が歩んだ物語(人生)を価値のあるものする為に人は頑張るのね...」

「色々、参考になる話だったし、一夏と光の御子の間に在った絆は確かなものだと思う。だから、一夏は忘れないで誇りに思えばいいと思う、彼と過ごした日々を、日常を...」

「あぁ、そうだな...。クー俺は前を向いて歩いている...だから、俺の人生という旅を見守っててくれ」

 

 

簪の言葉を聞いた一夏は笑顔を見せ、拳を手に向けて伸ばし、嘗ての親友の様に大切な存在が出来た事、守れなかった彼の様な結末を迎えない為に、一夏は歩き続ける。




復刻だ!月見だ!久しぶりのイベントだぜ!

礼装とか全部売っちゃ長け努何とかなるさ!



翁チャレンジは成功!ジョージボイスは最高ですね!

宝具2目指して回した結果出たのは玉藻...私にアーツパを組めと?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

専用機タッグマッチ 一試合目

キャノンボール・ファスト抜いて専用機タッグです。





ついにタッグマッチトーナメント当日を迎えた。既に朝から全校生徒の寮の部屋にトーナメント表が配られているらしく、全員がそれを見て優勝チームを予想していた。

その予想は大きく二つに分かれていた。

IS学園最強(一部を除く)の楯無と第四世代という未知数の最新鋭の専用機を持つ箒ペア、白き暴君と学園の生徒から恐れられ始められてる一夏のずば抜けた戦闘力は『実は織斑先生より、強いんじゃない?』という意見が出始めている。

なお、簪のISは初期案から大きく外れた仕様になっている為、大きな注目を浴びてる。

 

 

「私達の初戦の相手は鈴とセシリアだね」

「シャルとラウラが上級生のイージスコンビとで、楯無と箒がシード枠だったな」

「うん」

「行くぞ、白式!」

「行こう、弐式」

 

 

対戦相手を確認した一夏達は各々専用機を纏うとアリーナへ移動した。

 

 

 

 

 

 

「あれ?一夏の白式なんか変わってない?」

「改造した」

「絶対それ魔が付くでしょ!!」

「ナンノコトデスカ?」

 

 

先にアリーナにで待機していた鈴は一夏の白式が変わっている事に気が付く。

一夏が右手に持っている武器と同型のモノが背面に追加された専用アームに付属されている。

 

 

「簪さんの機体もかなり重厚ですわね」

「...問題ない。それをカバーできるだけの機動力があるから」

 

 

スマートな白式に対しかなり重装甲な弐式だが、特に問題ないという簪。

 

 

『試合開始!』

 

「行くぜ!レッd......ホワイトドラゴン!!」

「今レッドドラゴンって言いかけたでしょ!あんた何処のジャンク屋の装備を実装したの!?」

「最カッコいいだろ?」

 

 

右手に持っているカレトヴルッフを背負い、帯刀しているガーベラ・ストレートを抜刀がその姿はどことなく竜の様に見えた。

一夏お得意の刀を使った攻撃を双天牙月で防いでいく。

一夏と鈴が白熱した格闘をしているの対し、セシリアと簪は射撃戦をしていた。

 

 

 

「そこっ!」

「スターライトmkⅢの攻撃が利きませんわ!?」

「そっちがレーザーならこっちはビームだからね!」

「くっ...」

 

 

出力の差からセシリアの狙撃も簪のビームライフルによってかき消され、苦戦を強いられていた。

 

 

「行きなさい!ティアーズ!!」

「行って!ファンネル・ミサイル!!」

 

 

四基のブルー・ティアーズを出し、攻撃するセシリアに対応するように簪の周辺に現れたひし形に似た形状の物体が空中を浮遊していると一斉にブルー・ティアーズとセシリアを襲う。

 

 

「この攻撃...!ティアーズと同じ!?」

「今の弐式ならオールレンジ攻撃も出来る!」

「くっ...。でも、実弾ならティアーズの攻撃で!」

「これならどう?」

 

 

ティアーズの操作に専念しているセシリアは他の武器との連携はうまくできないが、このままではいけないと感じたセシリアは鍛錬に励み続け、その結果。

 

 

「お生憎、ティアーズと同時に他の武器は使えませんが...それでも!」

「なっ!?」

「こういう事ならできますわ!」

「チッ...」

 

 

前情報としてブルー・ティアーズの操作集中する為、行動が制限されるという情報を持っていた簪はブルー・ティアーズを操作しながら接近し(・・・・・・・・・)、スターライトmkIIIを振りかぶるセシリアに驚きを隠せずにいた。

弐式の機動性を生かしながら、右後ろに回転しながらビームライフルとミサイルを二発放ち牽制しながら、後退する。

攻撃に失敗したセシリアは後退し、狙撃を開始しようとするも、簪が両腕を前に突き出している事に気が付く。

 

 

「レンジの外に逃げれたと思わないで!」

「それも射撃武器でしたの!?」

 

 

両腕に搭載されたビームライフルより威力のあるメガ粒子砲を放ち、緊急回避しつつ、狙撃をするも簪は弐式の機動性を生かしながらセシリアの攻撃を回転しながら回避し、ビームライフルとミサイルで攻撃とこっちもこっちで激戦を繰り広げていた。。

 

 

 

 

「カーベラ・ストレートォ!」

「あんた何処のジャンク屋ギルドよ!私がその機体苦手なの知ってて選んだでしょ!!」

「ん~?聞こえんなぁ!!」

 

 

背負っていたカレットヴルッフを右手に持ちながら、左手で勢いよくガーベラ・ストレートを鈴に向けて投げると鈴は上空に回避するもそれを予想していた一夏はGモードでうまく誘導された鈴を撃つ。

だが、鈴も代表候補生のはしくれ、その攻撃を躱すが一夏は相手の二手、三手先を予想して行動する一夏はその行動予想済みで、鈴が避けた先に移動し、カレットヴルッフで腹部に叩き付ける。

 

 

「...ガッ...!?」

「リミッター解除!ドライグヘッド起動!!」

「やっぱそれレッドドラゴンじゃない!」

 

 

額から伸びた二本の角に赤いビームで出来たアンテナが形成し、V字アンテナになる。

その姿を見た鈴は某機動戦士に出てくるレッドフレームのある形態を沸騰、と言うよりまんまであった。

 

 

「行くぜ!」

「ぐぅぅぅぅ...」

「コロイド展開!」

 

 

カレットヴルッフで突きを放ち、手持ちのカレットヴルッフを背負い、専用アームに装備されているカレットヴルッフを二つ持ち、切り抜け後、連結させると巧みに回転させ、切りつけると斬り飛ばす。

飛ばした鈴を追撃する白式に手持ちのカレットヴルッフを格納させ、カレットヴルッフから放たれる粒子は光の翼の様な形状になると高速で移動する。

その姿を見た鈴は攻撃が来る瞬間、龍砲を叩き込んでやろうと構える。

 

 

「貰ったわよ!一夏!!」

「甘い!」

「嘘ッ!」

 

 

龍砲が放たれる瞬間、一夏はぴょん、と跳ねるように飛び上がり龍砲を避けると頭上から背負っていたカレットヴルッフで唐竹割りをする。

 

 

「ぐぅ...やっぱあんた強すぎよ!」

「力こそ正義!いい時代になったものだ!」

「何処の世紀末よ!てか、それだとアンタビルから飛び降りる事になるわよ!!」

「ビルから落ちた程度では死なんよ!」

「だよね!」

 

 

一夏は鈴に接近しようとした瞬間、二人の間に青い閃光が横切り、一夏の周辺から同じく閃光が襲うもアクロバティックな動きですべて避ける。

簪がやられたか、とセシリアの方を向くと、そこには二基のティアーズが一夏の周りを浮遊して、時折レーザーを曲げて一夏を攻撃していた。

 

 

「鈴さん!ご無事ですか!!」

「セシリア!アンタいつの間にあんなこと出来る様になったの?」

「つい先ほどですわ。簪さんとの戦いの中、負けたくないという気持ちで挑んでいたら頭の中でしずくが落ちて波紋を浮かべた瞬間、頭の中がクリアになったと思ったら出来る様になりましたわ」

「あれだろ、人間逆境に追い込まれる中、諦めず進ん結果自分の中の可能性が開花したといったところか...。土壇場で、こんなのモノが見れるとはな...。どう思う?簪」

「私も驚いた。まさか、偏光制御射撃(フレキシブル)を身に着けるとは思わなかったよ...。少し、追い詰めすぎたかな?」

 

 

一夏の背後に現れた簪の二式はセシリアにこっ酷くやられたのか機体の至る所に傷がある。

次の瞬間、二式を覆う装甲が解除され、要所要所に着いた装甲と両腕のメガ粒子砲と素っ気無い姿になるが次の瞬間

 

 

「バックパック換装、エクセリア!」

 

 

二式を光が覆うと簡易的な姿から、ピンクと白のツートン、どことなく女性を思わせる機体になる。

 

 

「そこ!」

「狙撃でこのブルーティアーズに敵うとでも!」

「一夏が居る前で不様に負けるわけにいかない!一夏の支えになるって決めたあの時から負けるわけにはいかないの!!」

 

 

互いに動きながら射撃戦をする中、セシリアは偏光制御射撃(フレキシブル)を織り交ぜた攻撃で攻めるも簪は射撃をモノとせずに、攻める。

 

 

「タァアアアアアア!!」

「攻撃が効きませんの!?」

 

 

前面にシールドビットを展開し、セシリアの攻撃を防ぎながら正面から超高速で接近するとビームライフルから対艦刀にビーム刃を形成し、強烈な突きを放つ。

 

 

「セシリア!?」

「お前の相手は俺だぜ!」

「クッ...!」

 

 

セシリアを心配する鈴に接近してきた一夏はカレットヴルッフで攻撃するも、鈴は振り下ろしたカレットヴルッフの力を利用しカウンターを放ち、上空にカレットヴォルッフを弾くと、双天牙月を二刀で構え、挟むように斬ろうとする。

 

 

「こういうのもあるんだぜ!」

「しまった!?」

 

 

だが、専用アーム格納されたカレットヴルッフが鈴の方に向くとそこから巨大なビーム刃が形成され、防ぐとそのまま左右に開き、がら空きになる。

 

「これが俺の!」

「...ガ、フッ...!」

勝者の一撃(カンピオーネ)だぁ!!」

「うわぁぁぁ!!?」

 

 

ボディーブローを食らわせ、浮いた鈴の身体を逃さないように左肩を掴むと白く発行する稲光の球体を押し付ける。

 

 

「まだよ!まだ終わってないわ!」

「まだ動けるのか...」

 

 

薄れゆく意識の中、鈴は最後の力を振り絞り、一夏に向かった拳を振りかぶると一夏も合わせる様に拳を振りかぶる。

互いの拳が交差し、鈴の右頬を捉える。

 

 

「...ちぇ、届かなかったか...」

「...いいや、届いていたぜ。いい拳だ...今日からお前は鉄拳(アイアン)の女神(ビューティー)だ!」

「何その不名誉な仇名!?」

 

 

不名誉な仇名を授けられた鈴は思わず声を上げる。

そんな二人に爆風が襲う。

 

 

「ナニカが爆☆散したな」

「ゲホッゴホッ...口の中に土がァァァ...!!」

 

 

爆風によって口の中に土が入った鈴は涙ぐみながら咳き込む。

対して一夏は爆心地の方を向くと、そこには両手から砲撃を出している簪とそれを喰らっているセシリアの姿があった。

 

 

『セシリア・アルコット並びに凰鈴音エネルギーエンプティ。よって勝者、織斑一夏&更識簪!』

 

 

会場を覆う歓声を聞きながら鈴はある疑問を言う。

 

 

「ねぇ、一夏。簪のパッケージどうなってんの?あんな瞬時に普通出来ないでしょ」

「あぁ、あれ。前もってインストール済みの俺の自作バックパックを詰め込んで、その場で出来る様にしてるんだよ。そのおかげで他に武器搭載できていないけどな。イメージ的にはストライクとかに近いかな」

「あー、他にもあるってこと?」

「エクセリア、ペーネロペーにあと三つだね」

「うわぁー、あんな凶悪なのがあと三つも...」

 

 

 

 

一夏の権能と知識と発想によって実現した機能に冷や汗を流しつつ、他の三つが気になった鈴だった。

 

 

 

 

 




昔はきつかった巌窟王も今では楽にクリアできるな。


最後は婦長持って行かないと


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

嫉妬の第二試合 そして

一か月ぶりの投稿です。


リアルが忙しくて、全然書けず、この始末。


セシリア・鈴ペアとの第一試合を難なく勝った一夏は次の試合開始まで待機していた。

 

 

「...ねぇ、一夏」

「なんだ?」

「一夏にとっての」英雄(ヒーロー)の条件って何?」

「ヒーローの条件?ハンサムが勝つことs」

「フ ザ ケ ナ イ デ」

「い、イエッサー」

 

 

何やら、真面目な表情で言う簪の顔を見た一夏は少し、冗談交じりで言うが、どうやら不評だったようだ。

 

 

「英雄の条件ね...。特に考えてなかったが、俺は誰かが泣いたり、悲しみに沈む顔を少しでも減らしたい。俺は色々の所に行ったが、幸福な人が居れば、不幸な人が大勢いた。中には希望を見いだせずに世界に絶望した人もいた...。俺はそんな人たちの希望になりたい。諦めずに前を向いて歩き続ければ、未来はあるんだって教えてあげたいんだ」

「...すごく...いいと思う。私もそんな、一夏を支えれる様な人になれるかな...」

「なれるさ。恐れていては何もできない、あるゆる局面でも希望を抱き、歩き続ける事が大切なんだ。僅かな勇気...これが大切なんだ」

「僅かな勇気...。これも一夏が神殺しになってから、覚えたの?」

「いや...、これは両親の口癖だ。よく言ってたよ『諦めたら、そこで何もかも終る』俺はその意味が何となく分かる」

 

 

何処となく、暗い表情をする一夏。

簪の質問に答えたとき、頭の中で生死不明の両親の顔が浮かぶ。

 

 

「なんで...俺や千冬姉...」

「一夏...。暗い顔してるけど...大丈夫?」

「ん...。あぁ、大丈夫だ。少し昔を思い出しただけだから」

「あまり、無理しないで一夏...」

「大丈夫。次の試合が始まるから準備しようぜ」

「...うん」

 

 

簪はどこか不安そうな表情をするも二式を展開し、アリーナに行った一夏の後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「正直、上級生コンビ出てくると思ったんだが...予想以上にやるな」

「ちょっと、一夏の悪口を言ったから少し、本気出しちゃった」

「うむ、あの時のシャルロットはすごかったぞ。タイムラグがほとんどなく連続パイルバンカーで沈めたのだからな。我が停止結界で、動きを止め背後からの連続パイルバンカーはもはや阿修羅すら凌駕する勢いだったぞ!」

「何処の釘パ○チですか?」

「やられた方はとても、怖かったと思う」

 

 

ラウラの話から恐らく片方ではなく、両方に理不尽な攻撃を浴びせてのだと推察した一夏と簪はシャルロットへの警戒だけは怠らないでおこうと心から誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

『第二試合、開始!』

 

 

 

「一夏、シャルロットは私に任せて!」

「了解!ラウラは任せな!!」

「そうはさせないよ!」

「甘い!貰った!!」

「させるか!」

「それはこっちも同じ!」

 

 

各々担当する相手を決め、先手を取ろうとしたい一夏にシャルロットはさせまいと、二人に割り込むように入るとショットガンである『鮮血の嵐(ブラッド・ライン)』を至近距離で打ち込むが一夏は左手に持ったナイフから無数の斬撃を飛ばす切り伏せていくと、ラウラがワイヤーブレードで弾くとレールカノンを一夏に狙いを定めて放つも、一夏の背後から姿を現した簪が青い天使をイメージさせるバックパック『フリーダム』に換装し、両サイドスカートに設置されたレールガンでレールカノンを相殺する。

 

 

 

「また姿が変わった...」

「自由への翼...。それが『フリーダム』パック!!」

「姿や性能が変わっても、僕は負けないよ!一夏に関しては特にね!!」

「私だって負けない!負けられない理由がそこにあるから!!」

 

 

ビームライフルと背部ウイング内に計二門装備された高出力プラズマビーム砲で攻撃、シャルロットはアサルトカノン「ガルム」と連装ショットガン「レイン・オブ・サタデイ」で応戦し、激しい銃撃戦を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

「今日こそ私は師匠を超える!」

「来るがいい。どこからでもかかって来い!!」

 

 

一夏は背負っていた巨大な棺桶を地面に突き出すと大型の二丁拳銃カスールとジャッカルを取り出し、銃撃戦を開始する。

 

 

「相変わらず、性格無慈悲な射撃ですね...!師匠!!」

「射撃の腕はそこそこ自身があるんでね!!そういうお前こそ、俺の弾をワイヤーで弾いて、逸らして、やるじゃん!」

「師匠を超える為に日々修練に励んでいるんですから!」

「そうかよ!」

 

 

接近する一夏にプラズマ手刀で迎撃すると、一夏は鋼糸を取り出し、棺桶に括り付け引き寄せる。

棺桶から嫌な予感がしたラウラはいったん距離を置く。

 

 

「因みにどんな修練を積んだ?」

「副官であるクラリッサから「腕立て伏せ・上体起こし・スクワット各100回とランニング10㎞を毎日やる」「毎日三食欠かさず食べる」「精神を鍛えるため夏冬問わずエアコンの使用厳禁」をしつつ自分を限界まで追い込めば強くなれるといっていたぞ」

「アカン。最終的に頭髪が全て抜け落ちるぞ」

「クッ...」

 

 

棺桶の側面から数発のミサイルが飛来し、ラウラはやワイヤーブレードで応戦する。

 

 

「ミサイルだけに集中しているとハチの巣になるぞ!」

「えぇい...!!」

 

 

 

 

 

 

 

ラウラと一夏が激しい攻防を繰り広げている最中、こちらも激しい攻防を繰り広げていた―――別の意味で。

 

 

「私は認めない!貴女が一夏の許嫁なんて!!」

「親同士の決め事なんだから仕方ないでしょ!!」

「親同士、親同士って言いながらさっきから笑ってる!!」

 

 

そう、意中の相手を巡る激しい女の争いがそこにはあった。

実弾や非実弾の嵐に加え、ビーム刃と対ビームコーティングがされた二丁の銃剣による接近戦を繰り広げながら、二人の女性は争っていた。

 

 

「何も知らない(魔術関係)人が一夏の隣に立つなんて許せない!」

「だろうね!だから、僕は一夏と二人っきりで色々、教えてもらっているんだから!!近い内に僕は一夏に相応しいお嫁さんになるんだ!!」

「だけど、今の貴女は花嫁修行を怠っている。知識や力だけじゃない、精神的に支えられる人こそ、一夏に相応しい」

「愛人枠なら簪に譲ってあげるよ。一夏は簪より、僕の方が好みだと思うけどね」

 

 

上空から胸を張りながら言うシャルロットだが、これが悲劇の開幕だと当の本人気づいていない。

持たざる者が生んだ誤解からの悲劇であるが、それを攻めるものは誰もいない。

 

 

「私に...が...ない」

「え?」

 

攻防が一端止んだと思った瞬間、唐突に俯き小言を言う簪に首をかしげるシャルロット。

 

 

「私に胸がないって言いたいの!?胸があれば正義だとでもいうの!そうやって持ってる人(巨乳)持ってない人(貧乳)をいつも見下す!そして周りの人もそうだ!!この間実家に帰ったら、『楯無様あんなに成長したのに簪様は...』とか『妹は姉同様に成長しないのか...』言われる立場の人の気持ちを考えてるの!?」

「え?えっと...簪さん...少し、落ち着こう。ね?」

「ピエロ達へ」

「え?まさか...」

 

 

シャルロットの行為によって生まれた誤解からとち狂った簪は狂乱状態に自分のコンプレックスを指摘されたと思い込んでいる。

この時、上空から自分の胸を協調するポーズや目線が簪の胸の当たりでなかったら、このような事にはならなかったのかもしれない。

狂乱状態の簪は一枚のレターを取り出すと、最初の一文を読み上げると心当たりのあるシャルロットの顔色が一気に青白くなる。

 

 

「Hey,you!醜い仮面をいつまで付けてるの?外す勇気がないだけって気づきなさいよ。薄っぺらい正体を見栄っぱりでコートして、私が罠にかかるのを待ってるんでしょ?おあいにくさま!騙されるほどバカじゃないのよ。こっけいな演技はもうやめなさい。そしたら私も踊ってあげる。踊るアホーに見るアホーよ!Hey,Dancing tonight!」

「うぁああああああ"あ"あ"あ"あ"!!??」

 

 

読みだした書き手不明の痛いポエムを音読していく簪にシャルロットはパイルバンカーを構え、叫びながら突撃する。

その叫びは気合の咆哮なのか、それとも読まれたポエムに対する心からの悲鳴か、それは本人しかわからない。

 

 

「Hey,you!なんで、そこにあるの!?厳重に鍵を付けて保管していたはずなのに!!」

「一夏に頼んで、開けてもらった」

「一夏ァアアアア!!」

「フフッ...愉悦。だけど...私は貴女が許せないィィ!!」

 

 

厳重保管も一夏の前では無意味だったようで、簡単に解除され、ばれない様に完璧な模写を残しての犯行である。

そして今回の共犯者の名を叫ぶシャルロットの姿を見た簪は笑みをこぼす。

 

 

「精神的な報復は終わり!次は私のコンプレックスをに対する肉体的に...!」

「黒い...ユニコーン」

 

 

いつもは気弱な簪だが、女の戦いと狂乱状態の為、180度性格が変わっている。

簪は『フリーダム』パックから『ノルン』パックに換装する。

全身が黒く、背中にシールドを背負った一本角が特徴の機体。

 

 

「貴女さえ居なければアァァァ!!」

「さっきまでとは威力が桁違いすぎる!?」

「バンシィ!」

 

 

全身から金色の光。続いて胸部、フロントアーマーも展開し、バンシィの身体が一周り大きくなる。

ビームサーベルのグリップが背中から肩へ、そして頭部が特徴的な変化を始めた

頭部に屹立していた一本の角。瞳を覆うかのようなバイザー。それが変化を始めたのだ。

バイザーは収納され二つの瞳に。角が割れてV状に完全に開き金色のライオンの鬣が現れる。

 

 

「姿が変わっただけじゃない...、このプレッシャーは...!でも、こんなところで引いたら、一夏の隣に立つことなんかできない!!」

 

 

パイルバンカーを再び構え、突進するシャルロットだが、簪はバンシィのビーム・マグナムに追加された武装リボルビング・ランチャーが回転するとそこから小型の大量の球体の様なモノが放たれ、シャルロットは後退するも、一瞬遅く球体に触れると連鎖的に爆発を起こす。

爆炎の中から姿を現したシャルロットはアサルトライフルで応戦するも、弾丸をバレルロールを描きながら躱すとシャルロットの目の前まで移動すると、持っていたシールド――アームド・アーマーDEでシャルロットを突くと突き飛ばし、連続で行う。

 

 

「グッ、鋭い...!」

「なんで!ナンデ!みんなあんな贅肉の塊が好きなの!?バストが大きい=女性の魅力なの!!陰湿でネガティブで、胸もあまりない私はァァァ!!」

「簪さん!自分を見失わで!!小さくても好きな人はいるよ!」

「持ってる人が言っても何の慰めにもならない!自分が惨めになるだけよ!」

 

 

貧乳の心からの叫びに戸惑うシャルロットだが、金色の光が簪の声に応える様に輝きが増してゆく。

 

 

 

「僕の声が届かない!?」

「貴女だけはここで落とす!」

 

 

シャルロットは16連ミサイルランチャー「リベット」で応戦するも、アームド・アーマーDEに搭載されている銃口を向けると、閃光がミサイルを呑みこむ。

 

 

「クッ!?」

「逃さない!!」

 

 

空になったミサイルランチャーを捨てる簪はリボルビング・ランチャーから青色に光る弾丸を放つとシャルロットの姿が隠せるほどのシールドを取り出し、防ぐも着弾した弾丸は閃光を放ち、爆発する。

 

 

「なんて威力!?」

「誰かが人柱になってぇ、沈めなちゃな!!」

「性格が変わりすぎてる!!」

 

 

ビームマグナムからカチッ、という音が響くとシャルロットはイチかバチか攻めに出る。

 

 

「これで!!」

「やらせない!」

 

 

シールドを構えながら、突撃するシャルロットに簪はリロードしたビームマグナムを連発し、攻撃すると5重装甲のシールド突破するのに時間が掛かるも全体に傷を負わせるとリボルビング・ランチャーを回転させ、大量の球体を放ちシールドに触れた瞬間、爆炎が襲う。

爆炎から破壊されたシールドが落下するも肝心のシャルロットが姿を現さない事に、疑問に思っていると背後から鋭い一撃が簪を襲う。

衝撃が襲ってきた方を見るとそこにはパイルバンカーを振りぬいたシャルロットの姿がそこにはあった。

 

 

「さっきのシールドと爆炎の間に私の背後を...」

「あの攻撃を逆手に取ったいい攻撃でしょ?」

「でもセンサーには...」

「デュノア社新作のステルス迷彩さ。効果は十秒くらいしかないけど、ISのハイパーセンサーを欺く高性能な逸品だよ」

 

 

やられた、とシャルロットのその場の判断力に称賛しながら、二度目のパイルバンカーをアームド・アーマーDEで防ぎながら突進する。

 

 

「シールドバッシュ...!簪さん!機体に心を捕らわれてる!?」

「そうさ、囚われているのよ。決して解けない血の呪縛(婚約)にね!」

「うぅっ!うあぁぁぁあああ!?」

「許嫁...許嫁は...敵ィィ!!」

 

 

回し蹴り、踵落とし、ビームサーベル乱舞でシャルロットを攻撃し、アームド・アーマーDEで突きを放ち先ほどの乱舞で意識朦朧しているシャルロットに止めのビームマグナムを放つ。

 

 

「そうだよ...最初っから許嫁なんていなかったのよ...」

 

 

そこには狂気の笑みを浮かべた簪の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石に原作再現し過ぎたか...」

 

 

制作に全面的に関わった一夏は今回の出来に、冷や汗を流していた。

「n_i_t_r_o」の発展形であるアームド・アーマーXCは流石に危険だと判断した一夏は精神高揚と言う形で再現し、武装なども弱体化している。

5連パイルバンカーによって破損されたアームド・アーマーXCをパージするも機体のダメージが大きいせいか、NT-Dが解除されその場に膝を突く。

 

 

「流石にこれ以上長引かせるわけにはいかんな。これで決めさせてもらおう」

 

 

棺桶からミサイルと機関銃をばら撒きながら前進しようとしたした瞬間、邪悪な神格を感じた一夏の前に一つの閃光が降り注いだ。

 

 

 




ヴァレンタインは色々よかったが、ジャックのお母さんになるために飛ばして無事にお母さんになることが出来ました。

その結果 謎のヒロインXオルタが宝具4になったのでそのまま回して宝具5へ

その過程で アルテラ、メイヴ2ゲット

新宿幻霊はシナリオが良く、そして白い犬が飼いたくなった。名前はカヴァス二世する(断言

エミヤオルタと新宿のアーチャーゲットしつつ、邪ンヌの絆礼装ゲット。

邪ンヌのドレス姿...最高すっね!

旧セイバー実装に伴い、ガチャ、そしてゲット。

あぁ、種火が足りない 誰から育てよう...(ジャックとXオルタはレベルマ済み




それと、4月以降にIS×最弱無敗の神装機竜を新しく投稿しようと考えています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

顕現せし外なる神

タイトルで分かると思いますが、あの神話の神様が出ます!


ラウラに止めを刺そうとした瞬間、邪悪な神格を感じた時だった。

 

二人の間を一つの閃光が降り注ぎ、一つの女性と思わしき姿をしたISが一夏の前に降り立った。

 

 

「なんだこいつは...」

「ISではないのですか?」

「外見はISだろうが中身は別だろう...。僅かながら神格を感じる...しかもとっびっきりやばいタイプのな」

 

 

目の前のISから感じる神格に一夏は心当たりがあったが、思い出せないでいた。

 

思い出そうと記憶を辿っていると、正体不明のISの右腕と一体化した銃口を一夏に向けた瞬間、先ほどまで彼らが居た地点に向かって高出力のビームが放たれていた。

 

 

「凄い威力だ...当たったらひとたまりもないぞ!師匠、私はどうすれば......師匠?」

 

 

ラウラの言葉に、一夏は答えない。

 

その事を不審に思い、一夏をみてみると多くの強敵と戦い生き抜いてきた一夏の顔色が優れなかった。

 

 

(ヤバい、ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ...『アレ』は臨海学校の時と同じ、神格だ...!)

 

 

先ほどのビーム......否、高密度の呪力の奔流を見て分かった。

 

アレは自分が使うことを拒んでいる権能を使わなければ勝てない相手だと。

 

 

「にしても、ISは現世に留める為の入れ物か...あるいは憑依させているのか...。どちらにしても危険なのは間違いないな」

 

「師匠どうすれば!?」

 

「お前は簪とシャルロット連れて逃げろ。あれは人が足を踏み入れていい領域じゃない。例え神殺しでも...」

 

「では、師匠は大丈夫なんですか!」

 

「俺はこの類に対抗するための権能を一つ持っているから、問題ない」

 

 

一夏はこれに対抗できる手段を持っているから問題ないが、常人が触れてしまえば狂気に身を堕とすことになるだろう。

 

 

「速く行け!今回ばかりはお前らを守りながら戦うの無理だ!!」

 

「ハイ!師匠、ご武運を」

 

 

ラウラとシャルロットが動けない簪を運んで、遠くに離れていく姿を確認していると、所属不明のISは逃げるラウラ達にアリーナのシールドバリアを破った銃口を向け、閃光が放たれる。

 

 

「やらせねぇよ!」

 

 

だが、炎の翼を展開した一夏は翼を前面に覆い防ぐと聖句を紡ぐ。

 

 

黄昏(ラグナロク)の時来たれり、悪神より生まれし巨狼よ!神々を恐怖させし、咆哮を挙げよ!」

 

 

一夏の四肢に拘束具と鎖が現れると左手に持っていたイタクァで右手の拘束具を破壊すると一夏の右腕に変化が現れる。

 

白銀の剛毛が右腕を全体を覆い、鋭利な爪が現れると一夏は鋭利な爪で所属不明のISの装甲を引き裂く。

 

だが、その攻撃をモノとせず、巨大な右腕をハンマーの如く振り回し、一夏の脇腹を捉える。

 

 

「グァ...!?野郎ッ!!」

 

 

左腕で防ぐも、ビキッ!と明らかに聞こえてはいけない音がするも一夏は苦悶の表情を浮かべるも往復ビンタの要領で爪で攻撃すると、左足を軸に強烈な回し蹴りを喰らわす。

 

 

「チッ、奴さんあんま効いてねえのか...。やはり、あれを使うしか...」

 

 

連続攻撃の最中何回か、装甲の中にあると思われる本体に当たったが、聞いた様子がない

 

次の策を練っていた時、一夏の肩に一羽の雀が乗るも、所属不明のISのいる方を見た瞬間、徐々に動きが鈍くなると最終的に石のように動かなくなると一夏の肩から落ちる。

 

 

「肉体が石化したんじゃない...。精神が、魂が石になってやがる...!...だが、やっぱり予想通りだったか、なぁ! ガタノトーア!!」

 

 

目の前に存在する人型の正体。

 

それはルルイエの主、クトゥルーとイダ=ヤーとの間に生まれた三柱の神の一柱にして長兄。

 

ユゴス星の先住民族からの崇拝を受け、彼らと共に地球へ降り立ち、古代ムー大陸に君臨していた旧支配者、ガタノトーアだったのだ。

 

本来なら無定形であるはずの彼がこのように、人型をしているのは恐らく人型はガタノトーアの入れ物だから。

 

シャルロットやラウラが見ても無事だったのは表面の装甲を見ても異常はなかった。

 

だが、先ほどの雀は運悪く、一夏が引き裂いた装甲の穴から本体であるガタノトーアを見たため石化したのだ。

 

 

「マハード!今すぐ、このアリーナを映し出している映像と侵入を絶て!!無暗に被害を大きくする必要はない!!」

 

『りょ、了解です!』

 

 

いつもと違う、血気迫った声に戸惑いつつも、ガシャンガシャンとシャッターが閉まる音が聞こえるのを確認した一夏は覚悟を決める。

 

 

「この権能は使うつもりはなかった...。使えば自分が自分じゃ無く(・・・・・・・・・)なる感覚が怖いから、だけど...!使わなければ最悪負ける、そうなれば多くの被害が出る...、そうなる位なら喜んでこの命くれてやるよ!!」

 

 

覚悟の籠った瞳でガタノトーアを睨むと、一夏は禁じ手の聖句を紡ぐ。

 

 

「集え、旧神の印に集いし者たちよ!我らに光の加護を、我らに勝利と祝福をもたらせ!!」

 

 

喉がはち切れんばかりの咆哮をあげ、右腕に掲げられた旧神の印が一夏の雄たけびに同調するかの様に輝きを増す。

 

 

「ぐうぅぅ...ぁぁぁああああ!!!」

 

 

右腕をガタノトーアを覆う装甲を貫き、本体であるガタノトーアそのものを蹂躙する。

 

 

「■■■■■■■■■■■■ッッッ!?!?!」

 

 

手ごたえあり、今まで何をされても揺るがなかったガタノトーアが痛みにもだえ苦しむかのように声にならない声、音にならない音で泣き叫び、装甲の切れ目からは汚泥のような血が流れ出す。

 

その様子を見た一夏は旧神の力なら対抗できる、と可能性が見えた瞬間、右腕の銃口が一夏の顔に向けられていることに気づく。

 

 

「アァァァアアアアッ!?」

 

 

咄嗟に空いた左手で逸らすも、顔左半分を閃光が襲い、悲鳴を上げ意識が飛びかける一夏。

 

消失した部分から炎が噴き上がり、一夏は右腕を引き抜き、サマーソルトを食らわせ、一端距離を置くと右手に大きな赤い火球を作り出すと旧神の力に作用され、次第に白く変化する。

 

 

「うぉぉおおおりゃぁああああ!」

 

 

一夏は火球をガタノトーア目掛け、投げつけるがガタノトーアは回避行動しようとした時、足元からジャラ、と音が聞こえ動けない事に気づく。

 

鎖が両足に巻き付き、力を抑え込まれ思うように動けないでいた。

 

 

「悪いが、動きを封じさせてもらった!」

 

 

一夏は左足を少し上げると地面に潜り込んでいた鎖が姿を地面を引き裂きながら現れるとその鎖はガタノゾーアを拘束する鎖に繋がっていた。

 

抵抗するガタノトーアだが、火球は頭部に命中し、そのまま後ろに倒れると一夏は権能を解除し、ガタノゾーアを倒し切ったか確認するため近寄ったその時。

 

 

『■■■■■■■ッ!!』

 

「なんだ、急に...!?」

 

 

鼓膜が破れるのではないかと思うほどの大音量の悲鳴にも似たナニカに思わず耳をふさぐ一夏。

 

音も止み、ガタノトーアから神格を感じない事から、倒すことに成功したのか、一抹な不安と疑問を抱きながら目の前の危険物の消滅をさせようとした瞬間。

 

 

「グッ!?ッウゥゥオオオォォォ!!??」

 

 

強烈な痛みに一夏は胸を抑えるがら蹲る。

 

 

「ぅう...!...ハァ...ハァ...ハァ」

 

『一夏大丈夫ですか!?今、そちらに―――これは!!』

 

一夏の様子を独自の手段でモニターしていたマハードは呼びかけるも、一夏は返す余裕も無く、深手を負ったのではと、様子を見行こうとした瞬間、周囲の警戒をしたいた小型のゴーレムが何かを見つけたのか、マハードに知らせるとマハードの顔は蒼白になる。

 

 

『一夏大変です!こちらに向かって隕石が飛来しています!!しかしこの大きさは―――』

 

「さっきの咆哮は...そういう事か...。だが、大きいなら、撃ち落とし甲斐が...ありそうだな...」

 

 

先ほどの断末魔ともいえる咆哮で隕石を呼び出したのだろうと推測する一夏だが、息も絶えながら虚栄を張る。

 

 

『直径約530m、これは小惑星ゴレブカです!衝突すれば日本の首都機能が麻痺し、多大な被害が!!』

 

 

ゴブレカ、それは地球に衝突危険がある数ある小惑星の一つ。

 

21世紀中にゴレブカは2046年、2069年、2092年の3回地球へ接近するとされている。

 

 

「うぅ...、この状況で衝突阻止できるのは...俺だよな...」

 

『一夏、なにを!?』

 

「ちょっくら隕石衝突を止めてくだけだ!何すぐ戻ってくる。衝突までの時間と経路の計測を頼んだぞ」

 

 

 

そういうと一夏は炎の翼を羽ばたかせ、飛翔する。

 

 

 

 

 

 

 

「あれが小惑星ゴレブカか...。角ばっていやがるな。まずは...削るか」

 

 

両腕にオリジナルの術式を展開すると、両腕に青白い光と赤黒い光を纏う。

 

 

術式(へヴンズフィール)起動、万物に終焉を――双腕(ツインアーム)零次集束(ビッククランチ)!!」

 

 

両腕に光が螺旋を描きながら、進みやがて一つになると疑似的なブラックホールを形成する大技だが、使うには大きく二つのデメリットがある。

 

まず一つ目、一夏だけの呪力では放つことが不可能なこの技はIS学園付近の龍脈に自身を接続し、足りない分の呪力を補う必要がある事。

 

二つ目、放つ際に呪力の塊に自身の呪力を加え暴走させるのだが、その代償は――

 

 

「ガッ!?ぐぅぅっ...」

 

 

両腕に罅が入ると、ガラスが砕けるかのように粉砕する。

 

一夏の両腕が過剰な呪力に耐え切れず、更に呪力の塊を暴走させた衝撃も相まって耐える事が出来ずに砕け散ったのだ。

 

一夏は両腕から炎が吹きでると、やがて失った両腕を形成する。

 

 

『少し削れただけ、まだ健在です!』

 

「いや、計算通りだ!」

 

 

あまり成果がない事に焦りだすマハードだが、一夏は計算通りだと主張すると次の手を打つ。

 

 

「戦場駆け巡りし、戦乙女よ!我に汝の武具を授けよ!!」

 

 

一夏はブリュンヒルデの槍を呼び出すと、自分の後ろに居る大切な人(守るべき人々)の姿を思い浮かべる。

 

思いを糧に巨大化する槍は忽ち大きくなり、50Mの大きさになるが、まだ足りないと一夏は更に思いを強くする。

 

最終的に元の大きさの約100倍の200Mに及び、重量100トンを超えている。

 

 

「?...」

 

 

巨大化した槍を投擲する構えを取った瞬間、最初は気のせいかを思ったが、その痛みは次第に熱を帯びてきた。焼印でも押し付けられているかの様であり、錯角ではないと分かる。

 

何が......? と恐る恐ると言った様子で、一夏は脇腹に視線を向ける。

 

一夏の脇腹を深々と食い込んだ不定形の鋭い何かその奥には―――頭部を失い、所々に傷があるガタノトーアの入れ物だった。

 

 

「が、はっ......!...これ...は...!!」

 

 

吸われている、深く食い込んだガタノトーアの腕は一夏を傷付けるだけでは済まず、一夏の呪力、精神力を吸収し始めたのだ。

 

一夏の精神力が低下してきたせいか、炎の翼が徐々に小さくなり始めている。

 

その様子を嘲笑うかのように、失った頭部によって見えた本体が放つ赤い二つの妖光が輝く。

 

 

「う...おぉぉおおあああぁぁぁああああああぁああああッ!!」

 

『■■■■■■■■■■■■ッ!?』

 

 

死ぬ物狂いと言った様子で絶叫を上げながら、彼は力任せにガタノトーアの腕を掴むとそのまま回転し、接近するゴレブカに向かって投げつける。

 

 

「それがテメェの棺桶だッ!」

 

 

巨大化した槍を構え直し、今出せる最大限の力で投擲するが、一夏はまだ終わらなかった。

 

 

「進め、戻れ、止まれ、停止しろ、加速しろ、巻き戻れ!時針は我の思うがまま、時はこの身の思うがままに!加速しろ!!“三重加速(トリプルアクセル)”!!!」

 

 

 

放たれた槍は瞬く間に姿を消し、第三宇宙速度の領域まで行った槍は矛先から炎を吹き出しながらガタノトーアをゴレブカに縫い付ける。

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■ッ!!』

 

 

人には聞き取れない悲鳴を上げながら、自分縫い付けようとした手に掛け、その場から離れようとする。

 

 

「逃がすと思うなよ!!」

 

 

左目から流血し、体の所何処から傷がある一夏は今ここで、ガタノトーアを逃すわけにはいかない、と飛来するゴレブカと一緒に消し去ろうと考えた。

 

 

「聖なる主よ

 あらゆる叡智、尊厳、力をあたえたもう輝きの主よ

 我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ

 さあ、月と星を創りしものよ

 我が行い、我が最期、我が成しうる“聖なる(スプンタ・)献身(アールマティ)”を見よ

 ―――流星一条(ステラ)ァァァ!」

 

 

放たれた一条の流星は一夏が双腕(ツインアーム)零次集束(ビッククランチ)で付けた印とそこを基点に投擲された槍によって生まれた亀裂を加速させ、その閃光はガタノトーア呑み込み、この宇宙から消滅させた。

 

 

『やりました一夏!ガタノトーアは消滅、ゴレブカもこれで......再計測した結果、砕けたゴレブカの後ろ半分は大気圏の摩擦熱で燃え尽きますが、残りの前半分は燃え尽きず...日本全土だけではなく、その周辺国にも被害が...!?』

 

「うぇええ...、一番手っ取り早いのは流星一条だが、もう精神が尽きかけだ...」

 

 

ガタノゾーアによって精神力と呪力を吸われた一夏は、二発分の精神力を失い、蘇ることが出来ない状況だ。

 

そんな状況で流星一条を使えば高確率で死ぬ(・・)だろう。

 

 

「方法は何通りかあるが...条件は広範囲かつ高威力の技か...。マハード、多分日本海のどっかに落ちると思うから回収頼んだ」

 

『待ちなさい一夏!自力で戻れない様な危険な方法は駄目です!!どうか考えなおしを!!』

 

「悪いな、確実性を追い求めた結果がこれなんだ...」

 

 

そういうと一夏はマハードとの通信を切り、聖句と詠唱を唱える。

 

 

「筋系、神経系、血管系、リンパ系、擬似呪力化完了!」

 

 

足りない呪力を体に流れる全てを呪力に変換すると、手のひらサイズまで小さくなっていた炎の翼が元の大きさに戻る。

 

 

「これは太陽の...現し身。もう一振りの...ゴフッ...星の聖剣!あらゆる不浄を......浄化する焔の陽炎ッ!転輪する(エクスカリバー)勝利の剣(ガラティーン)ッ!!」

 

 

放たれた灼熱の斬撃は飛来する隕石を瞬く間に溶解させるだが、隕石の影に隠れていた溶解されなかった1Mの残り一つが一夏の目の前に迫る。

 

 

「俺は...俺は死なないッ!」

 

 

炎を纏った聖剣を突き刺し、噴出した炎が隕石を焼き尽くす。

 

 

『ゴレブカの、消滅を確認!やりました!!被害はありません!!』

 

「そう...か...。今から降下するが、間違いなく...意識を手放すと思うから、悪いが...回収の方頼んだ...」

 

 

そういうと一夏は炎の翼で体を包み込み、顔を守るよう両腕を持っていくとそのまま落下し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、一つの流星が日本海沖で観測された。




ぐだぐだ明治維新に茶々(別名:淀)が実装ということはサルも来るか?

幕末のバーサーカーは土方だと予想。

バーサーカーは潤っているから回す気はないけど、声優と性能次第かな。



CCCコラボ今一番待ち遠しいのはこれだぁ!

BB使いたい!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

護った日常

今回は後日談とおまけの息抜き話となります。


ガタノトーア殲滅後、小惑星飛来による未曾有の災害を阻止した一夏は某機動戦士の自爆少年の様に日本海に浮かんでいた所、マハードによって回収された。

 

全身の至る所にやけどの跡があるも命に別状はなく、一夏は自室で二日間眠りについていた。

 

そして、未確認のIS侵入などの度重なる不測の事態によって、各国からのクレーム対応の為、教師の手が足りず、休みとなった。

 

そして、一夏が目を覚ましたのは休みになったという、校内アナウンスが放送された後であった。

 

 

 

一夏Loveな彼女達は我先にと一夏の部屋に向かおうとする。

 

 

「一夏!大丈...夫か...」

 

「一夏さん!何か...欲しいもの...は?」

 

「えーと、どちら様?」

 

「誰よ、アンタ!」

 

「DEBUUUUUーーーウ!」

 

 

少女たちの目に入ったのはベッドの上で食べ物を掃除機の如く食べる少年の姿だった。

 

問題なのはその少年の外見である。

 

光を反射する白銀の髪、体の至る所に包帯を巻き、左目を包帯で塞がれ、右手には白式の待機状態である白いガンレット。

 

ここだけ見れば問題ないが、その体格は小太りを通り越して肥満であることだろう。

 

部屋を間違えたかと部屋を一度出て確認するも間違いなく一夏の部屋である。

 

そして、認めざるを得なかった目の前の人物が意中の一夏であるという事実に。

 

 

 

「マハード!ちらし寿司十人前、カレー5人前、後は泰山特製麻婆辛さは愉悦を追加だ!まだカロリーが足りねぇぞ!!」

 

「お願辞めて!これ以上僕たちからカッコいい一夏を壊さないで!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、食った食った」

 

「アンタどんだけ食べてるのよ...。大食い選手も顔真っ青よ」

 

「限界以上の呪力使うと俺は無性に腹が減るんだよ。まだ腹六分目だぞ?―――フッ!」

 

 

床に積まれた皿はあともう少しで天井に着くほど積まれた皿が複数ある当たり相当な数の量を食べた事になる。

 

まだ食い足りない一夏だが、いったん切り上げ足りない分は夜に食えばいいかと考えると、体に力を入れると身体に蓄積された贅肉や脂肪がみるみる吸収され、包帯越しでもわかる鍛え抜かれた肉体が姿を現す。

 

 

「なん...だと...」

 

「世界中のダイエットに励む人に対する侮辱よ、あんなの...」

 

 

急激な肉体の変化に驚きを隠せないシャルロット達。

 

そんな彼女たちを他所に一夏はある事を思い出し、マハードに質問する。

 

 

「そういえばマハード、この前録画を頼んだあれを見たいんだが...」

 

「あれ?あー、『アルキメデスのΨ難』ですか?それでしたら、いつでも見れますよ」

 

「暇だし見るか」

 

「聞いたことないけど、どんな話なの?」

 

「人間嫌いで偏屈な数学者兼探偵が、助手のアイカツ女子が持ってきた事件に巻き込まれて、事件解決することになる推理ドラマだな」

 

 

簡単な説明をすると一夏は録画の再生ボタンを押す。

 

 

オープニングが流れ、ドラマが展開される。題名は“容疑者X”

 

まず初めに映ったのは、何やら図形を描くことに没頭する主人公。

 

そこへ、アイドル活動女子、略してアイカツ女子が飛び込んでくる。

 

 

【ちょっと、聞いてよ! すごい事件が起きたのよ!完全犯罪よ!!】

 

 

そして、間髪を入れずに床に散らばった図形を踏んづける。

 

中にはビリッ、と書いた図形が破ける音がする。

 

 

【私のぉ! 図形を踏むなぁあああっ!!】

 

【いいじゃない別に。減るもんじゃないし】

 

【私の精神は確実にすり減っているぞ!?これ以上踏むなぁ!私のSAN値が直送してしまう!?】

 

【相変わらずせっかちね。そんなどうでもいいわよ。それよりも事件よ! 事件!】

 

 

かなり偏屈な主人公と、とても助手とは思えないレベルの性格をした助手との凸凹コンビである。

 

 

【容疑者全員にアリバイがある殺人事件が起きたのよ】

 

【他の人間ではないのですか?】

 

【それが部外者は絶対に入れない場所で、なおかつダイイング・メッセージを残してたの】

 

【ほう、それはなんと?】

 

【一文字だけ、“X”って】

 

 

少しだけ考える仕草を見せる主人公。

 

 

【ちなみに被害者は?】

 

【えーと、確か円卓財閥で社長やってた武内って人】

 

【容疑者は?】

 

【セイバー・アルトリアに謎のヒロインX、謎のヒロインXオルタ、セイバー・アルトリア・オルタ、それからアルトリア・リリィね】

 

 

「ねぇ、一夏このキャスティング可笑しくない?皆同じ顔なんだけど...」

 

「静かに」

 

「アッ、ハイ」

 

 

【謎のヒロインXが一番怪しいんだけど、他の社員複数に見られている。それで逆にアルトリア・リリィは社員には見られてないけど、他の全アルトリアから庇われてるの。特にセイバー・アルトリアの庇いが顕著ね。ものすごい、庇いようよ】

 

【ふう......くだらない。実にくだらないですねぇ。こんな事件は警察で十分ですね。

低級な事件は警察に任せておきなさい。私はこの作業に忙しいのです】

 

 

一瞬で事件の犯人が分かってしまったのか、興味をなくし作業に戻る主人公。

 

しかし、助手がそれを止める。

 

 

【あ、もう前ギャラはもらってきたわよ】

 

【この低級助手がぁぁぁッ!!】

 

 

素晴らしいキレっぷりと顔芸を見せる主人公。

 

役者の演技は鬼気迫るものがあり、まるで本当に怒っているような迫真の演技が話題となって人気沸騰中である。

 

 

【ほら、早く行くわよ。サクッと解決してくればいいじゃない】

 

【し、仕方ありませんね。些か不本意ですが、いいでしょう。その低次元な事件を解決してみせましょう】

 

 

助手の身勝手な行為によって、結局、事件現場に行くことになった主人公。

 

乗る気のない依頼を終わらせる為、容疑者達を呼び出し、あっさりと解決に導こうとする。

 

 

【雑ですねぇ!実に雑ぅ!犯人もトリックも全て雑ゥ!!】

 

【流石ね!もったいぶらないで犯人を言っちゃいなさいよ!この、人間嫌いな数学者!】

 

 

犯人を特定した主人公は容疑者の周りを歩き始める主人公。

 

緊張した面持ちのアルトリア達。

 

主人公はピタリと一人の前で立ち止まる。

 

 

【犯人は―――】

 

【すまない...折角の推理の途中で、配達に来て、推理の邪魔だけではなく、名シーンの邪魔をして......本当にすまない】

 

【誰ですか!こんな時に配達を頼んだのは!?】

 

【あ、すいません。非常用のお菓子が切れたのでその補充を頼んだんです。糖分が無ければ頭は周りませんから】

 

【すまない...俺はお邪魔のようだから、ここに判子かサインしてくれれば俺はすぐここから消えよう】

 

 

腰が低く、何処か幸薄そうな少年はタイミング悪く入ってきた配達の少年はどこかすまなさそうに対応すると、謎のヒロインXオルタの荷物の様でサインをすると宣言通り、すぐさま姿を消す。

 

 

 

【腰を折られましたがもう一度...。犯人は謎のヒロインX殿!ではなく―――セイバー・アルトリア殿、あなたです!!】

 

【......ほう、何を根拠に言っているのですか? 私はその時間に確かにガウェイン卿が目撃しています】

 

【ガウェイン殿、あなたは確かにセイバー・アルトリア殿を見たのですか?】

 

【はい。確かに我が王は業務をこなしていました】

 

【その時に話されましたか?】

 

【いえ、王の業務の支障となると思いましたので】

 

 

まさかの犯人に驚く現場。

 

犯人は謎のヒロインXだと思っていたのが大半の様でシャルロットや箒は驚きを隠せずにいた。

 

 

【皆さんは自分の癖や習性、好みをご存知ですか?】

 

【...ッ!】

 

【いや、癖や習性など知らんが、好みはわかるぞ。私は常にジャンクフードを食べなければ落ち着かん。部下のものは付き合いと感覚でわかる】

 

【え、ええ。みなさん、それに私も分かるものであれば知っているかと】

 

 

僅かに身じろぐセイバー・アルトリアに焦りだすアルトリア・リリィ。

 

オルタは憮然とした態度を貫く。

 

 

【その通り。先ほど、皆さんの仕事中の映像を見させてもらいました。みなさん、時折、癖が出ています。染みついた癖が一定の間隔で出ています。事件発生時を除いて、ですがね】

 

 

主人公の言う先程とは10分にも満たない。

 

その計算速度に主人公の優秀さが表されていた。

 

 

【妙なんですよ。セイバー・アルトリア殿の癖が事件発生時だけ―――アルトリア・リリィ殿のものと完全に一致しているなんて】

 

 

全員の視線がアルトリア・リリィに向く。

 

 

【アルトリア・リリィ殿、あなたは事件発生時に何をしていましたか?】

 

【お、屋上で休憩していました】

 

【それを証明するものは?】

 

【あ、ありません】

 

 

アルトリア・リリィを目撃したという証言はない。

 

あるのは、リリィがそんなことをするわけがないという擁護と。

 

セイバー・アルトリアによる証言のみ。

 

 

【セイバー・アルトリア殿。あなたは事件発生時に―――リリィ殿を変装させていましたね?】

 

【......さて、なんのことやら】

 

【ごまかしても無駄です。私の数式に狂いはありません】

 

 

あくまでもポーカーフェイスを貫くセイバー・アルトリア。

 

 

【正解を出してあげましょう。この事件のつまらない解をね!】

 

 

主人公は欠片も揺らがず、決め台詞を放つ。

 

 

【あなたはアルトリア・リリィ殿に自身の変装をさせ、ガウェイン卿に目撃させてアリバイを作った。そしてあなた自身は最も怪しまれるであろう、謎のヒロインXに変装し、武内殿を殺害した。......違いますか?】

 

  

セイバー・アルトリアと思われていたのは、実はアルトリア・リリィであり、そして、犯人と思われていた謎のヒロインXはセイバー・アルトリアだったと主張する主人公。

 

外見が瓜二つな彼女たちなら出来る手段である。

 

 

【同じ、アルトリア顔を恨んだ人間の犯行にして、アルトリア顔を利用したトリック。ですが、雑ゥ! 実に雑な犯行です! 創造神の愛は(新たなアルトリア)は止まらない。武内+自由=アルトリア顔の方程式は決して破れることは無い!!それは死してなお、崩れることのない絶対の理!】

 

 

ビシッと指をさして決める主人公。

 

しかし、セイバー・アルトリアは黙したまま動揺を見せない。

 

それどころか静かに口を開き、問いかける。それでは私を倒すことはできないと言わんばかりに。

 

 

【見事な推理です。ただし―――証拠があればですが】

 

【証拠? 私がそれすら持たずに来るとでも? 助手殿、例の証拠】

 

 

そう言って今まで黙っていた助手の方を向く。

 

呼ばれたことに気づき、何かを飲み込みながら振り向く助手。

 

 

【美味しそうだから食べちゃったわ。テヘ☆】

 

 

【この、どこに出しても恥ずかしい最高最低の無能助手がぁアアアッ!!】

 

 

衝撃の展開に絶叫する主人公と、呆気にとられるアルトリア達。

 

こうして、物語は後半部分の新たな謎解きに入っていくのだった。

 

その光景を見ながら誰かが皆の心の声を代弁した。

 

 

「このドラマ...斬新すぎない?」

 

 

 

 

 

 

【私は許せなかった...! あの人が、これ以上アルトリア顔が増やすことが...ッ】

 

 

新たな証拠を突き付けられ、ガックリと膝をつき、悲痛な思いを吐くセイバー・アルトリア。

 

 

【次回、『フュージョン? ポタラ? それとも調融合?謎の増殖事件! ~増える助手と胃薬 そして五重奏~』をお楽しみに!】

 

 

次回予告で、増殖した助手を見て、失神する主人公と赤と白のドレスを着た二人の皇帝系女性とユニットを組むと宣言する助手の姿が映り、映像は終わる。

 

 

 

 

 

 

 

「なんというか個性的なドラマだな」

 

「最近似たようなドラマしかないから、こう斬新なドラマは見てて飽きない」

 

「あ、そう言えば一夏に新しいゲームが手に入った、って言ってなかった?」

 

「ゲーム?あー、新作のマジンハザードの事か」

 

 

マジンハザード?、と全員が首をかしげる中、簪はそのワードを聞いた瞬間、ガクガク震え始めた。

 

 

「出たの!?前作のラフムですら、相当ぐろくってC○ROにギリギリ通ったってあれでしょ。今作はそうとうヤバいってネットで話題になってたけど...」

 

「ラフムでもあそこまで残酷になれない」

 

「......それってどんなゲームなの?」

 

「ホラーゲーム」

 

 

初代マジンハザードは敵である“ラフム”から生きる為、人類を守る為に戦うというゲームなのだが、グロイ、とにかくグロイ。

 

ラフムの姿然り、描写然りかなりグロテスクかつ、残酷なあまり発売されないのでは?と危惧された作品である。

 

 

「今回は“襲い来るマスターから魔神柱として生き延びろ!”なんだけど無理ゲーだろ。描写然り、難易度然りあれはキツすぎる」

 

「マギマリ☆ロマンも下手を打ったと思う。いくら要望があったとはいえ、あれはね...」

 

「まぁ、プレイしてみれば分かりますよ。カーテンを閉め切って真夜中の電気も突けずにやると涼しくなりますよ。具体的に言うと冬のテムズ川に落とされた気分」

 

「あれは涼しいとかそういうレベルではない! こう、魂の底から凍るような怒りの方が...」

 

「何言ってるの?」

 

 

何やらトラウマを引きずり出されたのか、頭を抱える一夏。

 

恐らく彼と関わりのある頭の中お花畑(戦闘)ばかりな後輩魔王で、愉快犯な剣が関係しているのだろう推察したマハードだが、下手に触ると爆発しかねないので触れないでおく。

 

 

 

「ゲームと言えば、前に鈴が日本に居た時に弾たちと楽しかったなー」

 

「ゲーム?あぁ、あの醜い争い」

 

 

~以下回想~

 

大乱闘黄金闘士Xという四人対戦のゲームをしたとき

 

 

「なによこれ!?防御方過ぎでしょ!バグでしょ!?」

 

「悪竜の鎧が強すぎてすまない。これでも、竜殺しの大英雄の力のほんの一端なんだ(ニヤリ」

 

「おら!背中に向かってブリュンヒルデ・ロマンシアだ!」

 

「あ、ちょ!?背中はァァ!」

 

 

各神話や伝承を再現したこのゲームなのだが、弾の使っている大英雄ジークフリートの防御の硬さはもはやバグレベルそのあまりの強さに、一方的な戦いになってしまったり(一人除く。

 

 

 

 

「ヒャッハ―!キングボンビーをくらえ!」

 

「ちょっ、ふざけんじゃないわよ!弾のくせに!!」

 

「おう、リアルファイトやめーい」

 

 

最下位争いで、醜いボンビーの押し付け合いを行った、弾と鈴。

 

結果的にリアルファイトが勃発し、鈴の腕ひしぎ十字固めが炸裂した。

 

この時弾はマナだったらあの豊満な胸が...、と煩悩丸出しだったりする。

 

 

 

色々、個性的な人が集まれば簡単に問題を起こしていったのだ。

 

 

 

~以下回想 終了~

 

 

 

 

 

「そんなことあったわね」

 

「桃鉄に関しては血を吐きながら、走り続ける悲しいマラソンだったな」

 

「光の巨人の名言を乱用しないでください」

 

 

そんな中、一人一夏が話題に出したゲームに興味津々の人物が一人いた。

 

 

「ねぇ、一夏君。そのホラーゲーム貸してくれない?」

 

「構わんが...」

 

「おすすめのプレイ方法ある?」

 

「暗闇、ヘッドホン推奨」

 

「じゃ、その方法でやってみるわ」

 

「え?お姉ちゃん正気なの!?」

 

 

まさかの楯無がマジンハザードに興味を持ち、一夏から最も推奨されていない(・・・・・・・・)方法を教えられ、それを実行しようとする楯無に正気かと疑う簪。

 

 

「大丈夫よ、簪ちゃん。所詮ゲームなんだから怖いなんて高が知れているわよ」

 

「あー、自分から地獄に足を踏み入れちゃったよこの人」

 

「流石の私もあれは引きましたね。人類悪と言う言葉が浮かびましたね」

 

「人間ってあそこまで醜く、貪欲なれるんだって初めて知ったよ」

 

 

トラウマにならなきゃいいなっと思いながら、一夏達は楯無をみるのであった。

 

 

 

 

 

~おまけ マジンハザードplay(楯無)~

 

 

 

 

生徒会室の大型モニターに借りたハードを繋げ無線タイプのヘッドホンをする楯無。

 

 

「噂のゲームどれほどか、この私が確かめてあげるわ!」

 

 

意気揚々と挑む楯無であったが、そんな彼女を恐怖のどん底に落とし込む。

 

 

 

【どうして...、どうして死んだの...?】

 

 

一人の女性が呆然とした声で呟く。

 

目の前には血塗れになった少女の死体。

 

一見すれば愛する者を失った悲劇に見えるだろう。

 

だが、これはそんな生易しいものではない。

 

 

【ほんの数百万回殺しただけじゃない?】

 

 

血と脂で切れなくなったナイフを、少女に突き立てながら女は涙を流す。

 

まるで、少女が別の誰かに殺されたかのように嘆く。

 

深く、深く、海の底に沈みこむような絶望と狂気の声で。

 

 

【僕はただ、君を殺したかっただけ(・・・・・・・・・・)なのに】

 

 

己が惨たらしく殺した(・・・)少女の前で女は慟哭の声を上げる。

 

心底悲しげに、殺した者に憎しみを籠めるように。

 

女性の後ろに現れた黒髪の男性は続けるように叫ぶ。

 

 

【死んで欲しくなんてなかった! 俺はただ君を殺したかっただけなんだッ!!】

 

 

それは狂気。

 

一体、それ以外でこの叫びを表せるだろうか。

 

己で殺しておきながら、死んで欲しくなかったと零す二人。

 

手が届くのならば、この手で男女平等パンチで殴り飛ばしてしまいたいと願うほどに、二人は狂っていた。

 

 

【バルバドス...? 君の心臓(思い)は僕だけのものなんだよ?】

 

 

抉りだした心臓があった場所に手を入れ、体内を掻き回すが既にそこには何もない。

 

この程度ではまるで満足できないのに、どうして死んだのだと。

 

 

【バルバドス......目を開けてよ。じゃないと君を殺せないじゃないか】

 

 

塵すら残さないとばかりに、女性は少女の体を解体し始める。

 

骨を奪い、目を抉りだす。とてつもない価値がついた宝石を扱うように丁寧に、優しく。

 

そして、傍と気づく。自らの様子を窺う―――楯無という存在に。

 

 

【やぁ、こんばんは。君は......良ぃー爪を持ってるねぇ。まるで混沌が見えるようだ】

 

【その首についた鎖...まるで愚者のようだね。それに中々、いいスカラベと勲章を身につけているね】

 

 

 

ニタリと女性と男性の口が大きく歪む。

 

乾いた血と肉片が顔の表皮からこぼれ落ちていく。

 

それを勿体ないとばかりに舌で舐めとり、女性はバルバトスの体をゴミのように投げ捨てる。

 

死んだ体に興味はない、今欲しいのは新鮮な生き血だと言わんばかりに。

 

 

【今夜は月が綺麗だ。きっと君の冷たく青白くなった肌に良く映える】

 

 

【さぁ、死ぬ物狂い(カーニバル・)な狂宴(ファンタズム)を始めよう】

 

 

狂気に満ちた満面の笑みに思わず気圧され、一歩下がってしまい小枝を踏む。

 

パキリ、そんな耳を澄まさないと聞こえないような小さな音が立つ。

 

でも、虐殺開始のゴングにはそれで充分だった。

 

 

【お願いだから死なないでね? 僕は君を殺したいんだから―――永遠にねぇッ!!】

 

【その透き通るようなきれいな声で、悲鳴をあげてよ!!】

 

 

二人が嬉々として襲い掛かってくる。

 

 

―――目を抉られ、爪を剥ぎ取られも、死ぬ物狂いで抜け出すも二人は黄金に輝くりんごと、虹色に輝く結晶を齧ると、先程とは段違いの速さで追いかけ、捕らえる。

 

逃れられないように、足を切り、爪を剝ぎ取り、体内の結晶を引きずり出していき、残りの爪を剥ぎ取り、失った目から流す血涙を瓶に詰め、身につけていた装飾を剥ぎ取っていく男性に楯無は全く反抗ができない。

 

コントローラーを動かすはずの指は凍り付いたまま動いてくれない。

 

 

【ヒャハハハッ! 死なないで! もっと生きてね! 僕は君がもっともっと欲しいんだッ!】

 

【目だ!鎖だ!骨だ!心臓だ!もっとだ...ミステリアル...お前の全てを俺によこせ!】

 

言葉とは矛盾するように、画面の中の楯無は殺されていく。

 

一秒たりとも休まることなく、何百もの死を体験する。

 

殺してくる。欲望のままに、ただひたすらに殺してくる。

 

これを悪と呼ばずに、罪と呼ばずに何と言えばいいのだ。

 

間違えようがない。二人の存在は―――人類の悪性そのものだ。

 

 

【あれ...? 噓でしょ。もう、動かなくなっちゃうなんて...嫌だよ。僕、嫌だよ!

 

君が死んじゃうなんてイヤだ!! まだ、3万回しか君を殺してないのにィ!!

 

お願い...目を開けてよ。まだまだ、全然、爪を剥ぎ取れてないんだよ?

 

死なないで、僕のために生きて。もっと―――殺させてよ(楽しませてよ)?】

 

 

 

赤髪の女性の狂気に染まった顔が映ったところで、楯無は耐えきれずにゲームの電源を落とした。

 

楯無は大して効いていないはずの冷房にガクガクと震え、あまりの残酷さに、握っていたコントローラを離し、静かに目を覆っている。

 

夜の闇に覆われた部屋に居る誰もが、凍り付いたまま動けない。

 

 

「お嬢様、紅茶を淹れました」

 

「ぴゃぁぁああああ!?」

 

 

背後から聞こえた声に、思わず悲鳴を上げながら飛び跳ねる楯無。

 

 

「なんですか、急に声を上げて?」

 

「一夏君に借りたゲームが並みのホラーゲームより怖かったのよ...」

 

「マジンハザード...本音が一人でやると怖いってゲームですね」

 

「あ、良かったら虚ちゃんも一緒にやらない?」

 

「時間もありますし、いいですよ」

 

 

一人でやるより、二人でやった方が怖くない筈、と電源を入れた楯無。

 

 

 

【【よかった。また、バルバドスを―――いっぱい殺せるんだ】】

 

 

モニター一杯に映った血の付いたナイフをチラつかせ、狂気の笑みを浮かべる女性と男性の姿が映し出された。

 

 

 

夜8時の生徒会室に二つの悲鳴が響いた。




土方さん取ったー!CVキングじゃないですか!!(おい、デュエルしろよ

茶々はCV阿澄さん ロり声が最高じゃー!


増えるノッブの中にマジンガーとか、ロボグレンダイザーとか、ガンタンクとか、あの攻撃はどう見ても内閣総辞職ビームだよな...やっぱぐだぐだなのじゃ。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

簪の挑戦 日常と変化

久しぶりの連日投稿だな。


それはある日の放課後。

 

 

「一夏...付き合ってください!!」

 

「いいぜ―――――買い物だろ?」

 

 

 

意を決して告白した少女簪はフラれるのではないかと言う恐怖と不安を感じながら返事を待つと、帰ってきたその返事はあまりにも嬉しいものだったが、次の一言によって、絶望のどん底に突き落とされた。

 

 

 

「で、いつ出かけるんだ?」

 

「...コンドノニチヨウビデ」

 

 

あまりの追い打ちに片言になる簪。

 

その様子を見守っていた金髪貴公子と金髪ドリルはガッツポーズを取り、極小中国とツインビックピラミッドは哀れみを込めた視線向けるのであった。

 

 

 

 

 

 

「なんで...こんなことに...」

 

「なんだ?具合でも悪いのか」

 

 

あまり気分がすぐれない簪を気遣う一夏だが、簪は気分切り替え、「一夏と二人っきり」という絶賛稀な状況を謳歌しようとするのだった。

 

 

 

「で、最初は何を見るんだ?」

 

「服が...見たいかな」

 

「なら、あそこの店にするか?なんか評判いいらしいぞ」

 

「じゃ、そこにしよ」

 

 

一夏と簪は服屋に入ると、簪は並んでいる服を物色すると何着か選ぶと、試着室に入る。

 

 

「えーと...、感想を...お願い」

 

「任せておけ」

 

「着替え中に...覗かないでね」

 

「覗かねーよ」

 

 

一夏に覗かないと言われたとき、僅かながら落ち込む簪。

 

やっぱ自分には魅力がないのでは...、思い込み始めながら試着する。

 

 

「これはどうかな?」

 

「皇帝だな」

 

「これは?」

 

「セクシーだね」

 

「これは?」

 

「どスケベだわ」

 

「これは...どうかな...」

 

「ビーストだな...。って、なんかだんだん露出上がってね?」

 

 

 

赤い皇帝を思わせる服装から、少し露出の多い服、どかのハロウィンで不評被害を食らった礼装や、煽情的とでこちらもハロウィンをイメージする服装だが、一夏はこの一連の流れに妙な策を感じた。

 

簪は少しずつ露出の多い服装を着て、一夏の女性に対する黒歴史を刺激させないようしつつ、女性としてのアピールをしようと言う算段なのだ。

 

 

 

「これ、全部買います」

 

「合計 5万2千円になります」

 

 

追加で着物やウェディングドレスのような服、後楯無が欲しがっていた青いミニスカ着物と狐耳&尻尾のコスを買って店を出るのであった。

 

 

 

 

「そういえば一夏。今日、あのロボットアニメの映画上映日だよ」

 

「よし、見に行くか。チケットは俺が出すか」

 

「前売り券なら、ここに」

 

「抜かりないなー」

 

 

 

ある映画の上映日だという事を思い出した簪は一夏とその映画を見に行くことにする。

 

 

 

 

 

 

一夏のおごりでキャラメルポップコーンとジュースを買い、指定された席に座る。

 

見る映画のタイトルは“機動戦士インフィニット・ストラグル 逆襲の冬”

 

 

 

 

 

 

この作品はISを題材にした作品はISの設定が幾分か散りばめられており、機動戦士インフィニット・ストラグルという作品の続編で、主人公の沢村千夏は憧れの兄一冬と親の離婚により、生き別れとなり、ある科学者が発表したインフィニット・ストラグルとその基幹をなすコア、通称ISの登場によって世界は戦争が頻発しする中、世界における唯一の安全国である日本で戦争など関係なく育つ千夏。

 

そんなある日、住んでいる町で起きたISを使ったテロに巻き込まれ、死にゆく友人たちを目撃しながら、避難所に逃げる為の準備をする中、あるものを見つける。

 

それは『大切なもの守る力がここにある』と書かれた紙であった。

 

これ以上、大切な人を失わない為に、千夏は指定された場所に向かう。

 

そこにあったのは一機の不思議な力を持ったIS『黒式』だった。

 

多くの人と出会い、別れと生き別れの兄と再会し、テロ組織を壊滅させるも、戦いが終わった後、兄一冬の姿はなかった。

 

 

 

これが簡単な概要である。

 

 

「お、そろそろ始まるぞ」

 

「ラストがあれだから、どうなったのか気になっていたんだ」

 

 

定番のブザーが鳴り、プロローグが始まる。

 

 

【一兄、テロ組織は壊滅したのに、戦争はまだ消えない。人は争いから抜けられないのか...。無人のISによる戦闘か...】

 

【そんな事ないよ。千夏や一冬さんは明るい未来を目指して頑張ったんだ...。今はだめかもしれない、でもいつかきっと戦争がない時代が来るよ!】

 

【そうだな、新しい命の為に、少しでも明るい未来にしないとな】

 

 

主人公は幼なじみ系ヒロインの冥紗の少し、膨れたお腹をさする。

 

主人公とヒロインは結ばれ、子供も授かり、幸せな時間を過ごしていた。

 

だが、その時間もすぐ崩壊する、思いもしない人物によって。

 

 

【私、沢村一冬はここに全世界への宣誓布告を宣言する。私の両親とその知人が生み出したISによって、世界は戦争が勃発、暴力が世界を征服する世界になってしまった。その最もたる存在が、テロリスト集団である最後の狂宴(ラスト・カーニバル)である。彼らは――】

 

 

突然の全世界一斉ジャックによる演説をする主人公の兄一冬は前作の黒幕である最後の狂宴によるテロ行為について語り始める。

 

その光景を千夏は見つける事しか出来ないでいた。

 

 

【世界を恐怖に陥れた最後の狂宴は打ち倒された。だが、何故世界から戦争は消えず、今も起きている?それは人が誰かを見下し続ける限り、決して訪れることは無い。あの最後の狂宴(ラスト・カーニバル)は元を辿ればこの男尊女卑が原因なのである。故に私は男尊女卑社会を粛清しようというのだ」

 

【そんなことしたって何も変わらない!過ちを繰り返すだけだ!!】

 

【止めよう。一冬さんを!】

 

 

兄の愚行を止める為、千夏はレジスタンスを結成し、一冬を止めるべく立ち向かう。

 

 

 

幾度となくぶつかり合い、幾戦幾万の血が流れ、物語は最終決戦に向かった。

 

 

【これが最後の戦いなんだよね...】

 

【ここで奴を仕留めれば、戦いは終わる】

 

【戦わないで済む方法は...もう、ないのかな...】

 

【もしかしたら、あるのかもしれない。だが、俺たちは見つけるこは出来なかった】

 

【そう...、千夏!】

 

【なんだ...むっ!?】

 

 

戦いは避けれないと確信する千夏、そんな千夏に冥紗は口づけをする。

 

 

【勝利の前祝。...帰ってきてお腹の子の為に、必ず】

 

【...分かった。俺は必ず帰る、なにがなんでも必ず】

 

【約束...だからね...】

 

 

 

 

 

 

【ようやく来たか、千夏。待ちくたびれたよ】

 

【一冬、ここで決着を決める!】

 

【もう、兄とは呼んでくれないのだな...】

 

 

最終決戦、千夏を待ち構えてたのはかつて兄と呼んだ男、一冬だった。

 

 

 

互いに武器を駆使し、激しい攻防戦を繰り広げる。

 

 

【千夏!男尊女卑に染まった人間が地球のノミだとなぜ分からん!貴様の未熟さでララァが死んだあの苦しみ!存分に思い出せ!】

 

【情けない奴ッ!それでも俺は人の可能性と善意を信じて歩き続けたい!」】

 

【その結果はどうだ!?男尊女卑は瞬く間に広がり、今となっては全世界に浸透し、地球そのもの汚染している。だから私、沢村一冬が愚かな男尊女卑主義者を粛清しようというのだ!」

 

【エゴだよ。それは!】

 

【お前も、私の弟なら何故それを理解できない!!】

 

【そんな身勝手な考えがどれだけの人を不幸にするつもりだ!】

 

 

持っていた銃は互いに弾薬が切れ、互いに剣をでの接近戦へと移り変わる。

 

 

【今の剣をよけるか...流石、私の弟だ!】

 

【チィ!】

 

 

 

 

【行くぞ、桜花!忌まわしき過去と共に!】

 

【それでも、可能性を信じて歩き続けるんだ! 黒式、俺に力を貸せ!】

 

 

 

 

東京都より大きい、一冬の空中要塞の周りで接近戦をする二人。

 

やがて、二人は空中要塞の中に入る。

 

 

【厳しくも優しかったあんたは何処に行ったんだ!】

 

【世界の全てを知ったからこそ、今の私が居るのだ!】

 

【だからって!】

 

 

千夏の剣が一冬の左腕を、切り落とすが血は流れ図代わりに流れたのはオイルだった。

 

 

【なんと!?】

 

【義手!?】

 

【お前と再会する前に、失った...。知人に頼んだ特別性だよ!】

 

【このくらいッ!】

 

【剣の腕で私が負けているだと!?ンええいィ!】

 

【一冬!】

 

 

再び、空中要塞の外に出ると、互いにぶつかり合い持っていた剣は破壊される。

 

互いに武器を亡くした二人は壮絶な殴り合いをする。

 

 

【何っ!?一度、帰還しろだと!?男同士の間に入るな!!】

 

【ズオオオオオオオオオオ!】

 

【貴様が居なければ!!】

 

 

互いの拳は交差し、一冬の身体を貫く。

 

 

【ロボット...!?】

 

【最早...人の身体を探す方が難しいレベルさ...。だが、この勝負、私の勝ちだ!】

 

【ッそれはどういうことだ!】

 

【あの要塞には大量の核が積まれている。そんなものが地表に落ちたらどうなるか想像はたやすいだろ?】

 

【地球が核で汚染されて、人が住めなくなってしまう...。チッ!】

 

 

何が起きるのか、容易に想像できた千夏は落下する空中要塞に向かうと一緒に連れてきた一冬を空中要塞に叩き付ける。

 

 

【ふざけるな!たかが鉄くず一つ黒式で押し出してやる!】

 

【バカなことはやめろ!】

 

【やってみなければ分からん!】

 

【正気か!?】

 

【貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類に絶望もしちゃいない!】

 

【要塞の落下は始まっているのだぞ!】

 

【黒式は伊達じゃない!!】

 

 

落下する空中要塞を一人で支えようとする千夏。

 

 

【フッ...。これほどの質量を支えるなど不可能だ。自ら命を摩耗させてるだけだ!】

 

【馬鹿にして…! そうやって貴様は、永遠に他人を見下すことしかしないンだ!】

 

 

空中要塞を支えるのに孤高奮闘する千夏。

 

 

【千夏さんだけにカッコいい思いはさせませんよ】

 

【地球が駄目になるかならないかなんだ!やってみる価値ありまっせ!】

 

【...無理だよ、みんな下がれ!】

 

【しかし...要塞の重量に耐えれずパワーダウンしている機体だってある】

 

【駄目だ...。オーバーロードで自爆するだけだぞ!】

 

 

また一機と千夏の周りにレジスタンスの人間が張り付き要塞を押し返そうとする。

 

中には敵である、一冬の軍すら押し返そうと奮闘するも、一機また一機と、機体が耐え切れず、墜落していく。

 

 

 

【もおいいんだ! みんなやめろォーーーッ!!】

 

【結局‥遅かれ早かれ、こんな悲しみだけが広がって、地球をおしつぶすのだ...

 

ならば人類は、自分の手で自分を裁いて、自然に対し、地球に対して、贖罪しなければならん

 

それをわかるんだよ!】

 

 

空中要塞の落下阻止という、その目的の為に一つになっていく皆の思念。

 

その思いが、一つの奇跡を起こした。

 

 

【こ、これは!?ISのコア同士が共振している?人の意志が集中しすぎて、オーバーロードしているのか?

 

な何、恐怖は感じない? むしろ暖かくて、安心を感じるとは...】

 

【これは...お腹の赤ちゃんの声...】

 

【なんだ、千夏から感じていた諦めや挫折などと言った感情を感じられない...】

 

【そうだ...俺には守るべき人がいる...。大切な人を護る為に、黒式...いや、黒騎士!俺に力を貸してくれ!】

 

 

ボロボロだった黒式の装甲が修復され、中世の騎士を思わせる姿になると、装甲の隙間から輝く淡い緑色の光が輝くと、空中要塞を覆いその勢いによって跳ね飛ばされるIS達。

 

 

【そうか...!しかしこの暖かさをもった人間が地球さえ破壊するんだ!それを分かるんだよ千夏ッ!】

 

【分かってるよ! だから、世界に人の心の光を見みせなけりゃならないンだろ!】

 

 

黒騎士はその力を象徴するかのごとく、オーラを周囲にまき散らしつつ、彼方宇宙へと飛び去っていく。

 

 

 

 

 

 

【ねぇ、お母さんあそこにあるISって黒式?】

 

【そうよ。アレはね、お父さんが皆を護る為に戦った機体なのよ】

 

 

あれから数年、全存するISで稼働するもの存在しない。

 

稼働しない理由は不明だが、開発した本人が曰く『ISのコアが何者かの意思が反映されている』とのことだった。

 

あの不思議な光を目の当たりにした人々は次第に差別的な思想が消え始め、世界は平和への道を歩み始めた。

 

そして、一年前、家の前に一機のISが空から降り立った。

 

冥紗その機体を見た時、涙を流した。

 

彼は約束は果たしたのだ、例え肉体を失ってもその魂は帰るべき場所を理解していたのだ、愛すべき人の場所を、一言言うために。

 

 

【生きて帰ってこなかった...。だけど、あの時紛れもなく私に『ただいま』って言ったのよ...】

 

 

最早、動くことの遺物だが、もし、最愛の人たちに危機が訪れた時、かの騎士はその鋼の肉体で護り、その剣で災厄を祓うだろう。

 

その時まで、彼は大切な人を見守り続けるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中々、面白い話だったな」

 

「主人公が魂だけになってでも約束を護る所とか泣いた...。しかも、最後の一言がただいまとか...もう...」

 

 

映画の感想を言う簪の涙腺は次第に潤んできた当たり、涙脆い性格なのかもしれない。

 

 

「そういえば、一夏はどんな大人になりたいの?」

 

「どんな...、みんなの希望かな...。皆が楽しく笑って、過ごしてほしい。暗闇で前が見えないのなら、俺が光になって照らしてあげたい。世界はこうも希望に溢れているんだって、教えてあげたい」

 

「それ...すごくいいと思う。一夏ならきっとできるよ!」

 

「そうか...。なら、いいんがな...!?」

 

「一夏?」

 

 

何処か照れくさそうにする一夏だが、突然胸を抑え始める。

 

 

「あ...ガッ...!ぐっぅぅぅっ!?」

 

「一夏!?一夏、大丈夫!...嘘」

 

 

突然苦しみだした一夏を心配する簪だが、一夏から本来感じる事のないものを感じ、動揺を隠せずにいた。

 

 

「なんで、一夏から神格が...」

 

 

神格、それは本来神にまつわる者が持つ力である。

 

神格を感じるときは二つ、神殺しが権能を使った時、そしてもう一つは相手が神若しくはそれに類似する存在である。

 

今、一夏は権能使っていない為、前者はありえなく、後者は人間である、一夏が神格を保持することはありえない。

 

では、何故一夏から神格を感じるのか、思考していると一夏から神格の気配が消えると、一夏は意識を手放し倒れてしまう。

 

 

「一夏しっかりして!一夏、一夏!」

 

 

ひとりの少女の声が、町の中で響いた。




FGOは育成期間が欲しいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

部活体験 テニスの王様

何が起きるかはタイトルで察して


何も前触れも無く起きた胸の痛みに悶え、意識を手放した一夏はある夢を見た。

 

自分と、まつろわぬ神が戦っている姿だった。

 

黄金の柄を持つロングソードを持った男性は数多の悪魔を切り裂き、霧がかかりその全容を確認できないが三つに分かれた燃え上がる目が確認できた。

 

二人が衝突する寸前で、眩い光が一夏を襲い、景色が遠のいていく。

 

 

 

「むぅ...。俺は...」

 

「一夏...!良かった意識が戻ったんだね!」

 

「簪...?そうか...俺は気を失ったのか...」

 

 

目を開けた一夏が最初に見たのは心配そうな顔をする簪の顔だった。

 

何が起きたのか思い出し、一夏はあることに気が付いた。

 

簪が自分を見下ろす様な視線、後頭部から伝わる柔らかい感触...それが意味するものは―――。

 

 

「簪...これは...」

 

「えーと、一夏かが倒れて、...どうしようか考えたらまずは安静にさせないと思って、...その...膝枕を...」

 

「そうか...。悪いことしたな...」

 

「あ...、で、出来れば...もう少し、このままでいてくれると嬉しい...かな」

 

 

案の定、膝枕状態だった事に気が付いた一夏は膝枕をしていたという事は同じ姿勢のままという事に気づき、起き上がろうとするも簪のこのままでいて欲しい、という言葉に一夏はし越し思考を巡らせる。

 

自分が起きるまで、不安の中離れず看病をしていたのだ、ならそれなりの報酬を挙げなければならないと一夏は考える。

 

 

「そうか。なら、簪の言葉に甘えるとしよう」

 

 

そういうと一夏は起き上がらず、簪の柔らかい膝にもう一度頭を落とすと、目をつぶる。

 

 

「そういえば、魘されていたけど大丈夫?」

 

「少し...ある戦いの夢を見てな、とあるまつろわぬ神との戦いの記憶だ」

 

「そう...きっと、つらい戦いだったんだね。でも、一夏がこうして私の前に居るってことはそのまつろわぬ神は倒したんだでしょ?」

 

「あぁ...そうだな」

 

 

この後一夏は何も言えなかった、先程言った記憶を自分は体験していない(・・・・・・)別の誰かの記憶なんだと。

 

記憶の中のまつろわぬ神を思い出すと、一夏の中で妙な胸騒ぎが起き、言いようもない恐怖が這い寄ってくる。

 

一夏の頭を過るこの言いようのない思いを頭の片隅の仕舞い一夏は眠りにつく。

 

まだ、12時半を少し過ぎた位で、昼食の後の仮眠を一夏は簪の膝枕を堪能しながら取るのだった。

 

その後、一夏と簪は楽しい買い物をし、IS学園に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、生徒会室に呼んだ理由何?」

 

「一夏君にはある事をして貰おうと思うの」

 

「やめろ、俺に酷い事をするんだろ?エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」

 

「しないわよ!あ、でも一夏くならちょっとしてみたいかも―――冗談ですよ、冗談。オホホ」

 

 

 

週初めの授業が終わり、一夏は生徒会室に呼ばれ、椅子に座った瞬間拘束され、身動きが取れなくなるが、いくらでも抜け出せるのだが。

 

一夏は場のノリに任せ、言うも張本人である楯無は否定するも、影から現れた忍者衣装に身を包んだマハードが姿を見せた瞬間、楯無は顔を真っ青にし否定するのだった。

 

 

「ドーモ、タテナシ=サン。マハードです」

 

「ドーモ、マハード=サン。タテナシです」

 

「主に仇名す者、皆死すべし!」

 

「イヤーッ!」

 

現れた、マハードは拘束具を破壊すると楯無に向かってお辞儀をする。

 

これに対し楯無もアイサツを返した瞬間、マハードは楯無を襲うのだった。

 

 

 

 

 

 

「俺に部活動に入れって?」

 

「各部活動の人たちからクレームが入ってるのよ。『織斑君の入部はよ、はよ!』とか『次のコミケの為に織斑君をぜひ、我が同人部に!!』とかね」

 

「まぁ、部活動に入らなかった俺の悪手か。入ってもいいけど、大体よえーし」

 

「一夏といい感じの勝負をするのには人をやめないといけませんからね。テニスとかそうですよね?」

 

「超人テニスですまなかったな。てか、テニスに関してはお前も同じだろ」

 

 

 

マハードにケジメを付けさせられた楯無は頭に二段たんこぶを作りながら説明するが一夏の様な色々人間をやめ始めてる一夏には常人同士のスポーツは暇つぶしにすらならない。

 

 

「たかがスポーツで、大げさね一夏君は」

 

「毎回、言ってるよなこの人」

 

「論より証拠、一夏を各部活動に参加さればいいでしょう」

 

「何だ一夏?部活に入るのか」

 

「正直入りたくないな」

 

 

部活と言う噂を聞き付けたいつものメンバーは楯無との間に入っていく。

 

 

「なあ、私達の部活に見学されてはいかがですか?」

 

「別にいいが、全部回るのか...。すぐ終わるな、テニス以外」

 

「そうですね。久しぶりにテニスで勝負しますか?」

 

「取りあえず、テニス部の見学かな」

 

 

 

 

 

 

「騙して悪いが...、俺の眼の前ではお前の死角は丸見えだ!」

 

「くっ...!」

 

 

一歩も動けぬテニス部部長の横をボールがバウンドしていく。

 

絶対死角。相手の骨格・筋肉全てを見極めた上で返球することのできぬ場所に打つ。

 

シンプルゆえに破ることのできない絶対的な能力。

 

 

【ゲーム、一夏 4-0 ゲームセット!】

 

 

「相手にならないな」

 

「この私がここまで、圧倒されるなんて...」

 

「マハード、やろうぜ」

 

「いいですね...。私も勝負したくてうずうずしていたんですよ」

 

 

完封されたテニス部部長は覚束ない足取りで歩いて行き、一夏の指名を受けたマハードはコートに上がる。

 

 

「最初に言っておくけど、ここからの勝負は最早テニスの様な何かだから」

 

「あー、あれが始まるのね」

 

「何が始まるんです?」

 

「大惨事大戦だ」

 

 

 

 

 

「では、行きます!」

 

「何ですの!?あのサーブは!!」

 

 

マハードが打ったサーブは跳ねる事無くバウンドせずに地面を駆け抜ける。

 

だが、一夏は跳ね際を叩くことで返球し、幾度かラリ―が続くと。

 

 

「そこです!」

 

 

相手の死角に氷柱を降らせ、狙い打ちをする様にマハードは打球を打ち込む。

 

 

「また腕を上げたな...」

 

「えぇ、あの敗北が私に火を付けました!」

 

「なんですのあの技は...」

 

「お兄ちゃんが最初に打ったサーブはタンホイザーサーブって言って着地後バウンドせずに地面を転がるサーブってのが分かりやすいかな。そしてさっきのポイントを取ったのが氷の世界っていう相手が反応すらできない死角を的確に見抜いて打球を打ち込むんだけどその一撃がつららの様に鋭いからそういう風に命名されたの。お兄ちゃんの眼力(インサイト)は磨きぬかれた洞察力で相手の弱点を見抜くからできる技なんだ」

 

 

超人テニスの由縁知った一同だが、マハードがあのような技があるのであれば一夏も同様の技があると考える。

 

 

「俺の眼力(インサイト)がある事を忘れてないか?」

 

「忘れましたか?私の技は108式あるんですよ」

 

 

途方もない数に誰もが言葉を失う。

 

途方もない数の技を持つ彼に勝てるのか、一同に不安が過る。

 

 

「スケスケですね!」

 

「さっきよりも鋭いぞ!」

 

「あ、あれは柘榴王国(ガーネットキングダム)!お兄ちゃんの眼力(インサイト)で相手の絶対死角を骨格レベルで見抜く技!」

 

 

氷の世界の上位に位置する柘榴王国(ガーネットキングダム)を放つもまるで竜巻を起こして吸い込むように返す。

 

 

「あれは織斑ゾーン!相手が打ち返しても勝手に帰ってくるように回転をかけて球を打ち返すことにより、その場を殆ど動く事無く、相手の球を打ち返し続ける技!!」

 

「あれ?テニスってこんな競技だっけ...」

 

「これで終わりです!柘榴王国(ガーネットキングダム)

 

 

 

今度はフォアハンドでので柘榴王国《ガーネットキングダム》コートの隅を狙う。

 

一夏はふっとニヒルな笑みを浮かべる。

 

あと少しでバウンドする。そう思った時―――ボールがコートの外に弾き出された。

 

 

「まさかこんな早く、この技を使うとはな...」

 

「くっ...!」

 

 

あり得ない現象に驚愕の声を上げるマハード。

 

 

「あれは...!」

 

「知ってるんですか部長?」

 

「知ってるも何も、あれは―――サマーファントムよ!」

 

「サマーファントム...!?」

 

 

中々、物々しい技名に声を上げる一同に、部長は解説する。

 

 

「その昔、天才と謳われた奇跡の世代の一人、織斑夏燐が編み出した技、織斑ゾーン。特殊な回転をかけることで、相手のボールすらコントロールしてしまう悪魔の技よ。そして、同じ奇跡の世代で、結婚相手である織斑一夜がさらに改良を加えたのがサマーファントムなの。ベースとなった織斑ゾーンの6割増しの負担と引き換えに相手の打球を全てコート外に弾き出す...。織斑の外道な技と言われれば誰もが思い浮かべる技よ。そのサマーファントムを彼が引き継いだわけね!」

 

「ごめん、全部ちゃんと聞いた上で理解できなかったんだけど...」

 

 

意味☆不明と口をそろえて言う中、興奮した様子の部長。

 

そして、全員が理解したこれは部活に居れたら常識が狂うと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、久しぶりに無我の境地まで使うと疲れるわー」

 

「一夏も...腕を挙げましたね...。才気煥発の極みを使いましたけど...やはり一夏の方が上でしたか」

 

「もう、テニスじゃないよ...あんなの...」

 

 

汗を流し、どこか楽しそうな二人だが、完全な超人テニスは途中から髪の毛が逆立って色が薄くなりどこぞのスーパーサイヤ人の様な風貌になったのは気のせいだろう。

 

 

「あ、そういえばマジンハザードどうだった?」

 

「なによあれ!?怖いのレベルを超えて、狂気よ!おかげで一人でトイレ行けなくなったじゃない!」

 

「まぁ、一番推奨されていない方法でplayさせたしな!」

 

「この人でなしぃぃぃ!!」

 

 

以前貸したホラーゲームの感想を聞いた一夏に楯無は震えながら答えるが、一夏から衝撃の事実に楯無は一夏の胸ぐらを掴み揺らし続けるが一夏は笑いなが全く反省していない。

 

 

「一言だけいっていい?」

 

「何かしら?」

 

「愉悦」

 

「テメェなんざ怖くねぇ!野郎、ぶっ殺してやる!!」

 

「貴様を最後に倒すと言ったな...。アレは嘘だ」

 

 

キレた楯無は一夏に襲いかかるも掌打を撃ちこまれ撃沈した。

 

途中でデェェェェン、という効果音が聞こえたのは気のせいだろう。

 

 

「続編また出るらしいけど...やるか?」

 

「やるか!」

 

 

 

放課後の食堂で少女の叫びが響いた。




待望のCCCイベ!


メルト、リップ、御前は宝具2まであげて撤退でした。

知り合いは8万で三人宝具5にしていたけど...。

私はいつか来る月姫コラボまで全力を出すつもりはないですね。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幼き王 託された杯

最近仕事が忙しくて、全然書けなくてストレスが溜まってスランプ気味...。


今年中に終わらせる予定なんだけど終わるかな...。


簪との買い物を終えた一夏は寮に戻り近くにあった椅子によしかかる。

 

 

「あー、疲れたー。やっぱカラオケで歌いすぎたか?喉がカラカラだぜ」

 

 

簪と近くのカラオケで好きな曲をマイクを離さず歌い続ける事4時間。

 

流石の演歌、洋楽、ヘビメタ、アニソンetc様々な曲を歌った一夏は冷蔵庫を開けると新品のボトル目に入る。

 

 

「簪が買った奴かな?これ以外飲み物ないし、簪はいま楯無の所だし...。まぁ、後で飲んだ事は謝っておこう」

 

 

一夏はボトルを開け、一気に呑みこむと疲れが来たのか瞼をこすりながらベッドインする。

 

このとき一夏は気づいていなかったボトルの底に兎のマークが入っていたことに。

 

 

 

 

 

 

 

簪にとって至福の時間が過ぎ、学生や社会人とって憂鬱な気分になる月曜日。

 

 

「はぁー、今日からまた学校かー」

 

「月曜日ってなんかやる気起きないよね」

 

「早く、来週になって彼氏と会いたいなー」

 

『だまれ!このリア充!!』

 

 

早朝、一年一組の教室はいつもながら賑やかだった。

 

 

「そういえば、いつもなら、もう織斑君たち来ているのに今日は遅いね?」

 

「マナちゃんやマハードさんもいないけど...篠ノ之さん何か知ってる?」

 

「いや、朝迎えに行ったらマハードの奴が『一夏は少し調子が悪いので、先に行ってください』といい中に入れてくれなくてな」

 

「ふーん、一夏体調悪いんだ。後でお見舞いに行こうかな?」

 

「でしたら、このセシリア・オルコットが真心を込めて手料理を振る舞ってあげますわ!」

 

『それはやめて!』

 

 

授業が始まる5分前になっても来ないことに疑問に思った一人が箒に聞くも、箒も特に事情を知らない様子だった。

 

一夏に対して少しでもポイントを稼ごうとお見舞いに行こうとするシャルロットに同調するようにセシリアが料理を振る舞うと言い出したが、セシリアの料理を知っている全員が止めに入る。

 

 

「みなさーん。授業を始める前にお話があります。ほら、皆怖くないから大丈夫ですよ」

 

「はーい」

 

 

幼い子供の声が聞こえると、中に入ってきたのは白銀の髪に一夏をまんま幼くした感じの子供が中に入ってくる。

 

 

「えーと、僕は一夏、織斑一夏です!」

 

「え?一夏」

 

「うん、僕一夏」

 

『えぇぇぇぇぇ!!??』

 

 

 

 

 

 

目の前の子供があの魔王系男子の一夏であるという、ミステリーに直面した一年一組。

 

 

「山田先生!なんで一夏はこんなに小さくなってるんですか?」

 

「それは私が説明します。事の発端はこちらの飲み物が原因とさされています」

 

 

クラスメイトの一人がなぜこうなったのか聞くとマハードはビニール袋に入ったボトルをクラスメイトに見せる。

 

 

「見た感じ、普通の飲み物みたいだけど...」

 

「えぇ、ですが此方はとある天災印の特製ドリンクで、千冬殿がご本人に確認に取った所、飲んだ相手を精神的、肉体的に幼くするというもので、効果は一日だそうです」

 

「そのことが分かった途端織斑先生は『ちょっと兎狩りをしてくるので、一日有給を取らせてもらいます』と言って完全武装して行きました」

 

「また、姉さんの仕業か...」

 

「せんせー!授業まだですかー」

 

「あ、はい。今しますから少し待ってくださいね」

 

 

事の成り行きを説明する中、箒はその実行犯が自分の姉であることに頭を抱える中、当の一夏は授業を受ける気満々なのか文房具を片手に待っている。

 

 

「取りあえず、一日通常通り授業を受けさせますが、くれぐれも一夏に悪影響が無いようにお願いしましすね」

 

「では、この方程式の問題ですが...」

 

「ハイハイ!」

 

「えーと、一夏君」

 

 

数学の問題を書く山田先生は誰に答えさせようか周りを見る中、人一倍元気よく挙手をする一夏。

 

幼い一夏に問題が解けるのか疑問だったが、あそこまで自主的に手を挙げる生徒を見逃せず、指名すると一夏は教卓まで上がると、黒板を見上げる。

 

何を要求しているのか分かったマハードは幼くなっているという事は必然的に身長が縮んでいるというで、今まで届いていたものが届かなくなっている可能性があるという事。

 

台を用意すると一夏はマハードを見ると。

 

 

「ありがとう。優しいお兄ちゃん」

 

「あ~、これが、これこそがアヴァロンなのですね!」

 

「お兄ちゃんが変な扉開けかけてるぅ!?」

 

「この笑顔を見れば誰だってこうなりますよ」

 

「にぱー」

 

 

ショタ一夏の穢れなき笑顔にマハードは『護りたいこの笑顔』という意味を理解した。

 

だが、傍から見れば危険な人になりかけてると思ったマナは声を上げるがマハードは一夏の笑顔をクラス全員に見せると約数名、花から赤い愛情が溢れていたとか。

 

 

「カワイイ!」

 

「先生!今日の授業は中止でいいですよね!!」

 

「やだ、カワイイ...。お菓子あったかしら」

 

「待って!今取りに部屋に戻るわ!!授業?そんなのより目の前の天使を愛でるのが優先よ!」

 

「皆のモノ!この天使に貢ぐ準備はいいか?」

 

『オオオォォォォ!!』

 

 

授業など完璧に消え、一心不乱の大行進をするクラスメイト達。

 

 

「せんせー。授業は?」

 

「今日は一日中自主勉強にします!先生も少し離れますね!!」

 

「やだーこのショタコン製造機」

 

「自主勉強?じゃ、僕は本読む!」

 

 

一人の存在によって、完全に学級崩壊が起きた瞬間である。

 

 

「ねぇねぇ、一夏君!お菓子あるけど食べる?」

 

「食べる!」

 

 

自室から戻った女子は早速一夏にお菓子を挙げると一夏は笑顔で受けとる。

 

 

「モグモグ」

 

「私の荒んだ心が浄化されいく...!これが儚き理想郷(アヴァロン)!!」

 

「t0ee!(特別意訳:カワイイ)」

 

「カメラ足りないよ!なにやってんの!!」

 

「ショタは概念!」

 

「次は私よ!このキノコの様な飴を上下に――」

 

「何をしている貴様ら!」

 

「ゲッ!?織斑先生!!」

 

 

至福の時間というものはすぐ過ぎ去ってしまうもの。

 

赤く染まった刀を担ぎながら兎の討伐を終えた千冬に心底いやそうな顔をする。

 

 

「授業をサボった罰としてそのカメラと菓子は没収する!さっさと席に付け!」

 

『HEEEEYYYY、そんなのあァァァんまりだァァアァ!!』

 

 

ショタ一夏がお菓子を頬張るその様子は小リスを沸騰させ、鼻から愛情を流しながらガッツポーズを取りながら、興奮する中戻ってきた千冬は授業をサボった罰としてお宝映像を没収宣言すると某奇妙な冒険に出てくるとあるサラリーマンの様な声をした柱の男の様な顔芸をする。

 

折角得た至宝を尽く奪われたせいか、意気消沈状態の生徒は授業を真面に受けれるわけも無く、大量の打撃音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「授業楽しかった!」

 

「高校生の授業に平然とついてこれる頭脳...。一夏はこの時から頭が良かった?」

 

 

午前の授業が終わり昼休み、食堂ではショタ一夏の周りでは各々の昼食を持って集まっていた。

 

一夏の頭脳はそのままなのか、ISの授業に問題なくついてくるこのショタの頭脳の高さに驚くマナ。

 

 

「所で、お姉さんたちだれ?」

 

「私はイギリスの貴族、セシリア・オルコットですわ!」

 

「安産型高飛車系没落貴族?」

 

「なッ!?ぼ、没落貴族ではありませんわ!」

 

「優雅さのないセシリアにはお似合いね」

 

「何ですって!?」

 

 

どこで覚えたのか疑問の浮かぶワードを並べるショタ一夏。

 

 

「まぁ見てないさいって。ほら、鈴お姉ちゃんって言ってみなさい」

 

「ちんちくリンリンお姉ちゃん!」

 

「え?もう一回行ってみて」

 

「ちんちくリンリン!」

 

「小さいって言いたいの!胸がないって言いたいの!?」

 

「ひんぬーちんちくリンリン?」

 

「うがー!」

 

 

どう足掻いても悪意しかない呼び方に敵意をむき出しにする鈴。

 

 

「うわー、この人怒った!助けて忠誠神なお兄ちゃん!」

 

「何でしょう...力が漲ってきます...!今なら魔術師百人抜きとか出来るかもしれませんね!!」

 

「やっちゃえ!バーサーカー!」

 

「■■■■■■■■■■ッッー!!」

 

 

一夏に助けを求められたマハードは小さくなったマスター()を護る姿はさしずめサーヴァント(従者)である。

 

ショタになったせいか、鬼畜ロリとギリシャ神話の大英雄の姿がちらつくのは気のせいだろう。

 

 

「小さい頃って一夏口悪い?」

 

「自分に素直なんだと思う」

 

「箒そっくりー!お姉ちゃん名前は?」

 

「む?私は篠ノ之箒だ」

 

「じゃ、モッピーだね!」

 

「モッピー違うよ。私の名前はモッピーじゃないよ...」

 

 

幼い方が毒強くない?と思い始める一同。

 

モッピーと呼ばれた箒は体育座りをしながら『モッピーじゃないモッピーじゃない』とつぶやいている。

 

 

「つまり、一夏が心の奥底で思ってる事なのかな?なら、僕は一夏の許嫁だからそんな変なのにはならないね!僕はシャルロット、君のお嫁さんだよ」

 

「え?ごめんなさい、妄想恋愛は他所でやってください。僕に婚約者何ていない!」

 

「も、妄想!?違うよ、これは確固たる事実なんだよ!」

 

「この人、夢と現実が曖昧だ!危険だよ!!」

 

 

自分は婚約者だと名乗るシャルロットだが、一夏が許嫁が居るという事実を知ったのはつい最近の出来事であるため、幼い一夏が知る筈も無く危険人物認定される。

 

 

「えーと...私は更識...簪」

 

「簪...お母さん?」

 

「え?」

 

『な、ナンダッテー!!』

 

 

根暗だとか、言われるんだろうなーと思っていた簪。

 

だが以外!言われたのはお母さんだった。

 

散々な目に遭った人たちが納得できないと言った表情で詰め寄ってく。

 

 

「何故だ!私はモッピーだというのになぜだ!母性なら私の方が!!」

 

「僕なんか事実を言っただけなのに危険人物だよ!?なんで簪だけ!!」

 

「だって、お母さん似てるんだもん!」

 

「フフフッ...私が一夏のお母さん。つまり、母性=胸があるっていうわけじゃないんだ」

 

 

一夏を自分の膝の上に乗せ、頭をなでる簪。

 

 

「ん~、じゃ私は?」

 

「ポンコツ駄目お色気担当弟子」

 

「それ、大人一夏の評価じゃないかな...」

 

 

大人一夏の記憶も混ざってる?と幼い一夏から放たれる言葉は毒しかないようだ。

 

 

「あれ?簪ちゃんその子は...」

 

「一夏と私の子」

 

「お母さん!」

 

「嘘だッ!」

 

 

ショタ一夏の毒のあるあだ名を聞いていると楯無が登場するも上機嫌な簪は冗談を言う。

 

本来なら分かるような嘘だが、一夏そっくりな子供が簪をお母さんと呼んでいる為、信憑性は鰻登りに上がり、某ひぐらしの様に吐きながら簪に詰め寄る。

 

 

「嘘!いつの間に!?せっかく私が『奥までぎっしりツイン更識姉妹丼計画』が!!簪ちゃんに先越された!?」

 

「ねぇねぇ、あの人何言ってるの?」

 

「うん...私のお姉ちゃんだけど、色々残念なところがあるから...」

 

「まるきっし駄目で残念なお姉ちゃん...。つまりマダオだね?わかるとも!」

 

「グハッ!?」

 

とんでもない計画を暴露するも当の計画の要因の一つである簪に呆れられ、その被害者になる予定のショタ一夏は簪から聞いた情報を整理し、渾身の名を送る。

 

 

「ゴメンお姉ちゃん...。さっきの嘘で篠ノ之博士によって小さくなった一夏」

 

「A○TX4869!?実用化されたの!」

 

「見た目は子供!頭脳は大人!名探偵一夏!」

 

「何処の子供探偵よ!てか、小さくなってかわいい!!」

 

「ギャァァァァ!?」

 

 

ショタ一夏が考えた仇名に思わず倒れかけるもショタ一夏の姿を再度見た瞬間、簪の膝の上に座る一夏を器用に奪うと頬ずりをする。

 

 

「ほっぺなんかマシュマロみたいにぷにぷにして柔らかい!いつもは魔王とか暴君みたいだけど今はかわいさ百倍の別の生き物よ!」

 

「HA☆NA☆SE!」

 

「嫌がる姿とか凄く斬新!あ、なんか興奮してきた...!」

 

「離せって言ってるでしょうが!この変態!!」

 

「ふぎゃ!?」

 

 

一向に解放しようとしない楯無に堪忍袋の緒が切れたショタ一夏は思いっきり振りかぶり頭突きをすると顔面にクリティカルヒット。

 

あまりの痛さに頭突きを喰らった顔面を抑え、頭突きをしたショタ一夏は楯無の腕から逃れる際、サマーソルトを楯無の顎に食らわせ、体操選手よろしく空中三回転後綺麗に着地し、その見事な身のこなしにショタ一夏に拍手を送る。

 

 

「僕はお師匠様に鍛えられてるからね!負けないよ!!」

 

「ほぉ、因みにどのような修行をしていたのだ?」

 

「腹筋・腕立て・背筋100回3セットに懸垂100でしょ...」

 

 

この時点で子供がやるトレーニング内容ではないと思う一同。

 

 

「最近だと身体が慣れて負荷が足りないってことで木に足を引っ掛けて腹筋とか三本指で片手で腕立てとかするようになったなー」

 

「え?体は大丈夫なの...」

 

「最初は半分熟せればいい方だったけど、今はちゃんとこなせるから問題ないよ!」

 

 

笑顔でサムズアップするショタ一夏だが、一同はどんな幼少期送ってるんだ、と不安になる一方一夏にこのような修行を課す師匠はきっと屈強な肉体を持つ巌の様な巨漢の姿をしているのだろう想像する。

 

 

「昔はお師匠様と一緒にお風呂に入ったこともあるんだよ!」

 

「一緒に風呂か...。まぁ、同性同士なら問題ないな」

 

「何言ってんのこのモップ。お師匠様は女性だよ!しかもすごく綺麗!!」

 

「えええぇぇぇぇぇっ!?一夏の師匠って女性なの?!」

 

「私は一度だけお見えになったことありますが大変綺麗な方ですよ」

 

 

爆弾発言は不発で終わったかのように思えたが、一夏の追加発言によって盛大に爆発した。

 

 

「羅濠教主は世界に存在する神殺しの中で最古参の1人で、一夏に体術や戦い方を教授したお方です」

 

「あれ?その師匠って声や姿を見たら償いをさせるって人?」

 

「えぇ。私の場合実力もさることながら一夏が進言してくださったので問題ありません」

 

「一夏の話だと人は有益かどうか疑問視してるとか、現代社会も蒸気機関の発明から堕落したとか言っちゃう人らしいよ」

 

「最近だと一夏も言っている意味理解できるとか、女尊男卑のせいで」

 

「あれ?もしかして人類オワタ?」

 

 

もしかして私たち積んでる?っと他の神殺しがどれほどの強さか分からないのと他に日本に神殺しが居ないと思っている箒たちは一夏が見捨てたら終わりだという事実に一夏が人類を見捨てないように努力しようと思うのだった。

 

 

「あぁ、最古の神殺しの一人に一夏の事を弟と呼ぶはた迷惑な方が居ましたね」

 

「ん?アイ―シャ夫人のことお兄ちゃん」

 

「えぇ」

 

「アイ―シャ夫人?」

 

「思い込みの激しい、行動の全てが傍迷惑で楽天的でおっちょこちょいで行く先々で奇跡と面倒ごとを起こす聖女と悪魔のような女性ですよ」

 

 

誰にでも礼節を弁えた発言をするマハードがここまで言うのだから相当な人物なのだろうと予想する一同。

 

 

「一夏を弟だという理由は『幼い頃に家族全員を亡くし、愛を知らずに育ったから捻くれてしまったに違いない。なら、私がお姉ちゃんとしてしっかり面倒を見ないと』ですからね」

 

「え?何その妄想癖怖い」

 

「千冬さんが姉だって言っても「同性同名の人を姉だと思い込んでる」とか言っちゃたらしいよ」

 

「彼女が起こした面倒ごとは基本一夏が後始末をしますし、権能もうまく制御できていないので被害がとんでもない」

 

「戦い方えぐくてねー。例えば戦うそぶりを見せずに権能の暴走で不意打ちを加え序盤から切り札の『冥府落とし』で相手を地下深くへ叩き込む、「氷の大蛇」で拘束した敵の真下に冥府の穴をあけ金剛三鈷杵による神の雷で追い打ちを加えるなど。あの戦闘狂な一夏ですらドン引きするレベルだからね」

 

 

どのようなものか想像できないが、冥府と言う言葉から相当危険なものなのだろうと想像する。

 

 

「権能の中にはこことは違う場所につながる権能も存在します。一夏の場合はアトランティスとヘルの領土ですね。行き方はそれぞれ違いますが」

 

 

ジョン・プルートのオベーロンの森の様に一夏も持っているがそれぞれ触媒や方法が違う。

 

例を挙げるのであればアトランティスに行くとするのであれば大量の水とあらかじめ用意した魔法陣に血を流し満たすなどがある。

 

 

「最近師匠が、気を肉体の回復だけじゃなくて、攻撃にも転用したらって提案してきたの」

 

「因みにどのような?」

 

「えーとね<キーンコーンカーン>放課後みせるね!」

 

 

この後全員が知ることになる。この時から一夏は規格外であるという事実に

 

 

 

 

 

 

 

「魔神拳!輪舞旋風ゥ!吼えろッ!獅子戦孔!」

 

「なっ!?ぐぅぅぅぅっ!!」

 

「我が剣は王の牙!闢・魔神王剣!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!馬鹿なァァァァァ!?」

 

 

 

放課後一夏が考えたという技を実演するという事で相手(生贄)に選ばれた箒。

 

一夏は開始早々、縮地で距離を縮め、拳による連撃後放たれた衝撃波により後方に飛ばされるも絡め取るような回し蹴りで敵を引き寄せると獅子の形をした気を放つ。

 

獅子に吹き飛ばされた箒だが、一夏の攻撃は終わらず、吹き飛ぶ箒を追跡し、腰に帯刀していた刀を抜き高速の斬撃を放ち打ち上げると、権能で大気中の水分を集め、箒を拘束すると大上段から一刀両断する。

 

それまでの一連の動きに余分なものは一切なく洗礼されていた。

 

 

「最近箒がやられ役として磨きがかかってるような...。」

 

「其処は触れないことにしましょう」

 

「多分技名からして、元ネタはテ○ルズだね...」

 

「さりげなくポセイドンの権能を使うあたり容赦ないですね」

 

 

一連のコンボ技を喰らった箒はその場で轟沈、意識を手放すことになった。

 

 

「最近は獅子戦孔をもっと強力に出来ないか考えてるんだ」

 

「真・獅子戦孔じゃなかな」

 

 

アニメやゲームの技を真似るのは小さい子供がよくやることだが、環境と言うのもあるだろうがそれを現実にする一夏の努力は並みならぬものである。

 

 

「もう少し、暴れたい!」

 

「ゑ?そうだ!そろそろ晩御飯の時間だから!一夏は何が食べたい!」

 

「一番辛いマーボー知ってるから、それ!」

 

「そのお店何処にあるの?」

 

「日本にお店出した神父さんが言ってた!」

 

 

そういうと一夏は電話を取り出すとどかに掛け始める。

 

恐らくは先ほど言った店に電話しているのだろう察する一同。

 

 

「もしもし神父さん?外道愉悦ラーメン10人前お願いします」

 

「え?外道?愉悦?...それって...」

 

「まさか紅洲宴歳館・泰山じゃ...」

 

「うん。よく知ってるね」

 

「\(^o^)/オワタ」

 

 

一夏が出前で頼んだモノの正体がわかった一同は一瞬にして顔を青を通り越して真っ白になる。

 

 

「15分後に来るって」

 

 

こうして、残り僅かな余命宣告を小さい悪魔は囁くに出会った。

 

 

 

 

「はい、ラーメン10人前」

 

「え?ラーメン」

 

 

15分後、体格のいい何処かでラスボスはってそうな中年の男性が入ってくると全員の前に料理を並べていくがその料理が可笑しかった。

 

 

「赤い...」

 

「えーと、これは...」

 

「ん?麻婆豆腐だが」

 

「ラーメンは何処いったの!?」

 

「麺など飾りだ。麻婆の海の底に申し訳程度に入ってる程度だ」

 

「うわぁぁ!?ラーメンのスープすらない!全部麻婆のあんかけだ!!」

 

 

出されたのは鮮血よりも赤いラーメン...というより麻婆である。

 

恐る恐る一口口の中に運ぶ。

 

 

「見た目通り辛い!?まるで地獄の様に辛くていひゃい...」

 

「文句の多い客だ。少年を見習ったらどうだ?」

 

「え?」

 

 

一口食べた一同の感想を鈴が言うと店主はショタ一夏の方を見る様に言う。

 

 

「ゴクッ...ゴクッ...。口と胃の中が焼けただれたようにズンガズンガして汗と震えが止まらない...。でもやっぱおいしい!」

 

「もはや料理の感想じゃない!?その割には目が死んでる!」

 

「言うまでもないが、お残しは許さん。どうしても無理と言うのなら、首から下を土に埋めて直接麻婆を流し込んでやろう」

 

 

普通の人が言えばそこまでも怖くはないだろうが、言っている見た目かそれとも声のせいか、逆らったら命がないような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそう...ざしゃまでじた」

 

「喜べ、少女たちよ。これで君は一日分のカロリーを摂取したことになる」

 

「どこまで残酷な料理なのよ!」

 

 

綺麗に食べられた食器を満足そうに見ながら、男性は少女たちにとって残酷な事実を漏らす。

 

 

「そういえば、何故少年が私が出会った時の姿になっているのかね?あの番号私が認めた相手にしか教えていないのだからな」

 

「実は―――」

 

 

マハードは事の成り行きを言う。

 

 

「ふむ、なるほど。そういう事があったのか」

 

「事は内密に」

 

「私としても少年の信用を失うような真似はしたくない。それと少年が元の姿に戻ったらこれを渡してくれ」

 

 

男性は黄金に輝く杯を置いていく。

 

 

「これは?」

 

「綺麗...」

 

「嘗てとある二人の考古学者から借りたものだ。少年であればこれが何かわかるだろう」

 

「貴方がその考古学者にお返しすればよろしいのでは?」

 

「これはメソポタミアと呼ばれる今のイラクの一部だった昔の国が作ったものなのだが、分けあって借りていたが二人が行方不明になって返すタイミングを逃してな。その二人の子供である少年に返しても問題はなかろう」

 

「そういうことでしたら承ります。できればお名前を教えてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「名乗るほどの名などない。呼びたければ言峰とでも呼ぶがいい」

 

 

そういうと男性、食器を仕舞い、帰宅の準備をする。

 

 

「それと少年の麻婆ラーメンだけ特別性でね。あるものを仕込んである」

 

「まさか...毒!」

 

「そのようなものは仕込んでいない。一度だけ、対象を最善の状態に戻す神具を使ったまでだ」

 

「最善に...?まさか...!」

 

 

言峰が何か盛ったことを明かすと、マハードは毒ではないかと考察し、オリハルコン製の剣を構えるが、言峰はそれを否定し、何を言っているのか理解したマハードは一夏の方を見ると一瞬、光り輝くとそこには元に戻った一夏がそこにはいた。

 

 

「どうやら、問題なく作動したようだな」

 

「あれ?俺は何を...」

 

「全く私も柄にもない事をするものではないな」

 

「悪そうな顔をしてアンタ意外といい人なんじゃないの?」

 

「さぁ、それはどうかな?もしかしたら、見た目通り悪人かもしれんぞ」

 

 

そういうと言峰はその場から消える。

 

 

「そういえばこの杯はなんだ?物凄い力を感じるが」

 

「なんでも一夏のご両親から借りていたもので、メソポタミアに由来するものだそうです」

 

「メソポタミア...杯...この感じ神具だとすると...」

 

 

一夏は知識をフル活用しモノが何なのか理解した瞬間一夏は今までに見たことの無い顔つきになる。

 

 

「え?もしそうだとすると、俺の両親やばくね?」

 

「一夏?その正体はなんの」

 

「メソポタミア、大杯、神具この三つから俺が導き出した答えはウルクの大杯。聖杯の原点とも呼べるものだ」

 

「へぇ~聖杯なんだ...え?聖杯!?」

 

 

聖杯、それはロンギヌスの槍で刺されたキリストの血を受けた聖なる器のこと。

 

現在アレクが探し求めている物の一つであり、現在残っている物は模倣した贋作とされている。

 

 

「ウルクの大杯って...俺の両親どんだけよ」

 

「巡り巡って一夏の下に届くって運命を感じるね」

 

「何はともあれ、それは一夏が持っていた方がいいでしょう」

 

「あぁ、そうだな。ところでなんか食べない?例えばラーメンとか」

 

『絶対食べない』

 

 

この時一夏を除く全員の心が一つになった。




鬼ヶ島復刻やったぜ。

アガルタも間近、これは仕事の事を忘れてやるしかない!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

恐怖の旅行 猿猴神君と魔教教主

前回投稿日から約二か月。

上司からブラック宣言やイベントなどにより思うように筆が進みませんでした。


今年中に終わらせる予定とか言ったけど、正直無理ですたい。

Gジェネの方も展開は決まっているのに進まないという体たらくですよ。





ピリピリとした空気、鼻腔を突き刺す硝煙。

そして、この身を滅ぼす神々の権能。

そうした日々の戦闘に疲弊した少年はこう思うのだ。

 

 

―――そうだ、栃木に行こう。

 

 

「その回想で何処をどうすれば、栃木に行こうになるのか小一時間ほど問いただしたいのですが...」

 

「きっと一夏も戦いや神殺し関係から離れたいんだよ」

 

「栃木って日光東照宮とかあるしさ、それに俺の神殺しの勘がここに面白い事が起きるって」

 

「アカン、それは戦いが起こるパターンの勘や」

 

「後輩魔王こと護堂も誘おうっと」

 

 

だめだこの人...早く何とかしないと...、長い間戦いに身を焦がし続けたせいか自然とそっち(神殺し)系の思考をする様になってしまっているようだ。

 

善は急げと言わんばかりに一夏は護堂に電話を掛けている。

 

 

『あ、もしもし三河屋でーす』

 

『一体だれの物まねをしてるんですか!?』

 

『知らないのか?日曜の由緒正しきアニメを』

 

『知ってますよ!ナンデ早々にそんな物まねをしているんですかって話ですよ!』

 

『悪いな、俺はネタから始めるタイプなんだ。その事は置いておいて、今度栃木行かない?移動手段は俺が用意するから』

 

『あ、こっちも用事があるので問題ないですよ』

 

 

ネタを交えながら会話を進める一夏は細かい日程と集合場所を決めていく。

 

 

「よし、十月上旬の三連休で栃木に行くぞ」

 

「やはり、栃木か......。いつ出発するの?私も同行しよう」

 

「花京...じゃなくて簪」

 

「私とお姉ちゃんが始めて行った―――」

 

「SHUUUUUUUUTTTTUPPPPPPPPPP―――!!!それだと本当に奇妙な冒険になっちゃうからダメ!」

 

「なら、旅行先はエジプトに変k「アウトォォォォ!」DI○とかいねぇかな...」

 

「伏字になっていない!?」

 

 

賑やかな会話が響く中、その会話を物陰に隠れて聞く人影があった。

 

 

「今度の三連休...一夏は栃木に」

 

「旅行かー、最後にお父さんとお母さんと行ったのも栃木だったわね...」

 

「日本を学ぶという名目で同行すればあるいわ...」

 

「日本を学ぶのであれば秋葉原がいいと、副官のクラリッサが言っていたぞ」

 

「合ってるような間違ってるような...。アニメとかのサブカルチャーなら間違ってない......。ウゴゴゴ」

 

「僕は一夏の婚約者...僕が一夏の一番の伴侶...。そうだよ、僕がこそが一夏の...なら教えてあげないとね...。ウフフフ」

 

「相当、ショタ一夏君に言われたことが響いたようね...。魔界の瘴気の様などす黒いものを感じるわ...。面白そうだからお姉さんも同行しようっと!」

 

 

この時、一夏を含め思いもしなかったこの後に起きる戦いを持って理解するのだった神殺しとまつろわぬ神は常識では計り知れない存在なのだと。

 

 

 

 

 

草薙家近くの駐車場に一台のバスが駐車していた。

 

 

「えーと、一夏さん。これに乗るんですか...」

 

「そうだな。もう少し小さいのでよかったんだ十人位の奴でよ。だけどよ、手配したはいいんだが、どうやら話が漏れていてね。こっちで追加が出てね急遽大きめの奴を手配したんだ」

 

「だからって、こんな大型じゃなっくていいでしょ!!修学旅行とかそんなサイズですよこれ」

 

「仕方ないだろ。手配したのキャンセルして、自家用車(・・・・)を持ち出してきたんだから」

 

「可笑しい、絶対に可笑しい。普通こんな大きいバス持ってるはずがない」

 

「後同じサイズが4台ほどあるな」

 

「そんな大人数で何処か行くことあるんですか...」

 

「孤児院の子供を選んで連れていくと面倒ごと起きるからね。なら全員で行けばいい。簡単でしょ」

 

 

 

ダメだこの人...ナニカが可笑しい...と戦慄する護堂に一夏は早く乗るよう促す。

 

 

「何をもたついていやがる。早く乗りやがれ、後が閊えてんだ」

 

「あ、すいません。よろしくお願いします」

 

「...(コク」

 

 

 

護堂の挨拶に頷く運転手に違和感を覚えた護堂。

 

一夏はその様子を察し、一夏は護堂の疑問に応える。

 

 

「そうそう、この運転手は俺の権能で現世に呼び出した死者だから」

 

「は!?いやいやいや、なにこんな真昼間から権能使ってんですか!」

 

「運転手呼んでもいいけど、こっちの方がお得だし、しかも涼しい」

 

「いやいや、そうじゃないでしょ!」

 

「権能の事か?大丈夫、神殺しについてはここに居る全員知ってる」

 

「そうじゃない!」

 

 

ぜーぜー、と一夏の予想外な行動に思わず叫んだ護堂は辛く呼吸を乱す。

 

 

「仕事とプライベートのギャップはありますが、今後長い付き合いになるんですから今のうちに慣れておいた方がいいですよ」

 

「にしても、お前はあれかこんな多くの女性を近くに置いてなに、ハーレム願望でもあんの?このジゴロ」

 

「いやいや、一夏さんほどではないですよ。俺より多いですし、世界各国飛び回る一夏さんなら現地妻とかいるんじゃないんですか?」

 

「HAHAHA!此奴口だけは達者だな。いいだろうその不敬、不問とするぞ草薙」

 

 

表情は笑っているが、その目は笑っておらず、互いに女性関係に突っついて藪から蛇どころか、ドラゴンが出てきそうなほど、不穏な空気を互いに出し合う二人。

 

周りからしたら似た者同士、どんぐりの背比べ、同族嫌悪などこの状況にぴったしな言葉を頭に浮かびながら触らぬ神殺しに祟りなしと傍観に努める一同。

 

 

「まぁいい、今度その当たりきっちりさせようじゃねーか、腰軽男」

 

「えぇ、そうですね。互いに譲れないものがりますからね。女難王」

 

「「あ?」」

 

 

言葉の矛は引くことを知らず、互いに攻撃し、取っ組み合いを始める始末。

 

これ以上危険だと判断した、マハードはこのまま進むとこのあたり周辺が廃墟になると確信し、行動に出る。

 

 

「一夏、シャルロットに魔術について教えるんですよね?移動まで時間はありますからご教授したらどうでしょうか、ね?」

 

「え?ウン、ボクマジュツニツイテシリタイナー」

 

「護堂、このバス熱いわ。ちょっと飲み物持ってきてくれない?」

 

 

互いに一度睨むと鼻を鳴らし、自分たちを呼んだ人たちの近くに座る。

 

 

「悪いな、出発が遅れた。これから出発するから席に付けよ。アレン、運転よろしく」

 

 

こうしてハラハラドキドキ(別の意味で)な旅行が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「シャルロットは呪力少ないから、俺が使う魔術はあんまできんぞ。てか、伸びしろ悪すぎるんだよなー。マナの方が見込みあるぞ」

 

「なんか、ゴメン」

 

「シャルロットも精進しないとね」

 

 

一夏の一言が胸を抉る様に刺さるシャルロットに対し、見込みがあると言われたマナは胸を張りながら、どや顔をするのであった。

 

 

「やるとしたら、魔術の近代化だな」

 

「魔術の近代化?」

 

「俺のカスールとジャッカルは弾丸を変える事で五属性の弾丸やルーン魔術の派生であるガンドを放つことが出来るんだ。魔術師の心臓を材料に使った呪殺手榴弾とか色々あるぞ」

 

「へー」

 

「近代化のメリットは前もってストックを作ることが出来る。デメリットはその逆、ストックが無くなると戦力が下がることだ。まぁ、魔術を極めるのであれば自分の『起源』をしることだな。一族から伝わる魔術とかかな」

 

「デュノア家は置換魔術とルーン魔術に特化してるからそこを攻めた方がいいかもしれん」

 

「ルーン魔術は分かるけど、置換魔術ってあんまり聞かないんだけど」

 

 

聞いたことない魔術に首をかしげるシャルロットにマハードが説明する。

 

 

置換魔術(フラッシュ・エア)と呼ばれる魔術は元々は何かを何かで置き換える魔術。錬金術から派生した魔術系統で、原理的には劣化交換にしか至れない下位の基礎魔術ですが、デュノア家は特化している為、そこら辺は問題ないでしょう」

 

「デュノア家レべルであれば置換魔術は、空間と空間を繋げたりすることも出来るはずだ。こんな感じに」

 

 

一夏は分かる様に一度投げたナイフを置換魔術でナイフの飛ぶ空間を固定する。

 

 

「じゃ、問題。この空間を固定したナイフはどういった状態でしょう」

 

「通常ナイフの切れ味は肉体を切断するほどの切れ味は存在しない。筋肉や油などが刃の切れ味を鈍らせるため、せいぜい切る程度だ」

 

「だが、空間と空間を固定させる事で加速させ続ける事で威力を上げ、反応できない速さで攻撃することも出来、どこに置換するかで相手の死角を突くことも出来る」

 

「な、なるほど」

 

「一夏は魔術に精通してますから、知らない事があったら一夏に聞くのが一番ですね」

 

「あの一夏さん...」

 

 

一夏が問題形式で教えるとラウラが、補足を入れる中護堂が申し訳なさそうに一夏の近くに来る。

 

 

「んだ?何しにきやがったこのヤロー」

 

「さっきはすみませんでした、もう二度と言いませんので話の輪に入れてください」

 

「あぁん、なんで?」

 

「いやー、その...」

 

 

何故こちら側の輪に入りたいのか気になった一夏達に護堂は視線を一夏達より前の席で盛り上がってる一団に視線を向ける。

 

 

「エリカ姉さまが、お兄さまのご正室でいらっしゃるのですか?」

 

「えぇ、ひかりもこれから護堂の近くを侍るつもりなら、私のいう事をよく聞いて、姉の祐理を補佐するつもりでいなさい」

 

「つまりチームワークが大切という事でしょうか...!?」

 

 

 

そういう事か、と納得した一夏だが、そう易々と許すほど機嫌は良くなかった。

 

だからといって、人の行為を無下にするほど根性は腐ってはいない。

 

 

「いいだろう、ただし条件ある。この超激辛麻婆を完食したら、此度の不敬、不問としてやろう」

 

「なんだ...これは...」

 

 

一夏は根性は腐ってないが外道であり、愉悦を好む為、ちょっっとしたロシアンルーレットに使おうと持ってきた紅洲宴歳館・泰山特製麻婆を持参してきたのだ。

 

 

「なに、完食すれば二日分のカロリーが摂取できるぞ」

 

「どんな料理ですか!?」

 

「え?二日分...。それ何に使おうとしたの?」

 

「よくあるわさび入りロシアンをこの麻婆に置き換えてやろうとしたまでだ」

 

「なん...だと...」

 

「匂いを嗅いだだけで鼻が...!?」

 

 

一夏の発言に戦慄する一同だが、その恐怖の遊び(カロリーと味覚が)が無くなる可能性がある人物(生贄)が現れた事に光を見出す。

 

その人物は鼻腔を刺激する匂いに危機感を覚えるも、これは食わなければ精神的にキツイ思いをするか、肉体の一部(主に味覚)を犠牲にしてでも許しを請うか選択するまでも無かった。

 

 

「あんな生き地獄喰らうのなら、この一瞬の痛みに耐えるまで!!」

 

「無茶ですよ!今なら引き返せます!!」

 

「逝くって言ったんだ。男に二言はないよなぁ?ほれ、口の中をドバァーと流し込め」

 

「やってやるです!――――ギャァァァァアアアアア!!??」

 

「苦痛に満ちたいい悲鳴だ。あぁ、麻婆三杯行けるね。フフッ、愉悦」

 

 

予想以上の辛さを通り越した痛みが全身を駆け巡り、悲鳴を上げる護堂と、この麻婆(凶器)を使ったロシアンが行われなかったことに安堵する一同。

 

そして護堂は心の中でこう思った、この人に喧嘩売ったら倍返しでは済まないレベルで帰ってくるという事、そして料理は時として凶器になることを実感した。

 

 

「ところで、お替りがあるが...食うか?」

 

「食うか!」

 

 

 

 

 

 

麻婆恐怖症になりかけた護堂はめでたく完食し、一夏達の輪に入ることに成功した。

 

 

「で、なにが聞きたい?あの麻婆の作り方か?」

 

「いえ、あれに関してはもうこりごりです...。いや、本当真面目な話」

 

「そうか、残念だな」

 

「一夏さんって意外とS?」

 

「どうでしょう...。仲間や家族に対しては基本慈愛とお節介ですが、敵や仲の悪人、自身の気に食わない人には辛辣、外道、徹底的に叩きのめすタイプですね」

 

「え?やっぱ、この人怒らせては駄目なんですね」

 

「今更ですね」

 

 

身内には優しく時折愉悦、敵には厳しく外道で徹底的というのが一夏の性質なので認めてさえもらえれば最大限の力を使って守るし、手加減なしで滅ぼすだろう。

 

 

「所でマハード。俺ライディングデュエルがした」

 

「おい、デュエルしろよと言いながら決闘が始まるんですね」

 

「いや、魔王(キング)はただ一人、この俺だ!」

 

「そっちか!?」

 

「大丈夫だ、問題ない。Dホイールならもう二台作っている」

 

「まさかの現実可能!?」

 

 

一夏が突拍子もない事を言い始め、準備万端と言う一夏に驚きを隠せない護堂。

 

そして、とてつもなく参加したいと思う気持ちはやはり彼も決闘者(デュエリスト)だからなのだろう。

 

 

 

 

 

一夏の謎技術に驚きながらもやってみたいと思う護堂。

 

一夏は今度、東京に(国に内緒で)ソリッドヴィジョンを施そうなどと考えている。

 

なお、Dホイールで簡易的なソリッドヴィジョンが出来ると悪友に言うと「最高にCOOLだぜ一夏!俺はお前に一生着いて行くぜ!!」と興奮状態であった。

 

女性一同はカードゲームの何がいいのかわからなかった。

 

 

 

日光東照宮に着いた一夏ご一行は二手に分かれる事にした。

 

護堂と祐理、ひかりそして何かあったときの保険に一夏+αで簪とシャルロット。

 

他のメンツはエリカやリリアナと行動することになるがやや不満の表情を見せる。

 

 

「なんか嫌な予感がするからお前らこれを持ってろ」

 

「む、これは...」

 

「お守り...ですか?」

 

「綺麗...」

 

「使っている宝石はラピスラズリだ。古くから邪気を祓うとされているものでな、そこに俺の権能を施してあるからある程度の権能や魔術は防げるぜ」

 

 

紺青色の宝石の中心に燃える柱、もしくは目をもった五芒星が描かれたお守りを人数分渡す。

 

 

「大丈夫ですか?その権能は貴方がが最も拒んでいる権能ですよね...」

 

「自分の身の危険なんかより、自分の大切な人を護る為なら拒んでいる権能だろうと喜んで使ってやろう。その結果俺が俺じゃなくても後悔はない」

 

「危険ですよ...。その考えは」

 

「理解している。だが、それが俺だ」

 

 

その考えがいつか自分を滅ぼすとしても一夏は止まることはないだろう。

 

それこそ、自分が本当の意味で滅ぶまで止まることの無い暴走列車の如く彼は走り続けるだろう。

 

 

 

「所で万理谷はそのナントカの祠に行ったことがあるのか?」

 

「はい、媛巫女になる前に一度。本殿に入っただけで、祠にはいきませんでした」

 

「わ、私も同じ」

 

 

祐理と簪は迷わぬ足取りで、東照宮の鳥居を進んでいく。

 

 

「ここには徳川家康を神格化して祀ってあるけど、もしかしたら会えるかもしれんな」

 

「誰にです?」

 

「東照大権現、つまりは徳川家康にさ」

 

「歴史上の偉人も出てくるんですか?まつろわぬ神として」

 

「可能性はなくもないな。現に俺は第六天魔王波旬、織田信長と戦ったしな。勿論、権能もゲットだ」

 

 

いつの間にそんな戦いをしてんだと思いつつ、以前建築中のビルや道路が破壊され、遂に日本にテロか!ってテレビで取り上げられた事を思い出した。

 

 

「まさか、以前テレビであったテロ疑惑のあれって...」

 

「あぁ、それ俺だな」

 

「ですよねー」

 

 

やっぱりか、と思いつつ修学旅行でおなじみのコースから外れの場所に向かう。

 

ひかりがある場所を元気よく指差す。

 

 

「ほらっ、あそこにおさるさんがいますよ!お兄さま!!」

 

「なろほど、ここは見ざる聞かざる言わざるの場所か」

 

 

目・耳・口を塞ぐサルの彫刻を見て一夏はこの場所の見どころを思い出した。

 

 

「そう言えば昔から、サルが馬の病気を治すという言い伝えがあってな、だからこの馬小屋周辺にはサルが多いんだっけな」

 

「へー、そうなんですか。だが、なんで徳川家康にサルが関係するんだ?」

 

「時代的に考えるとサルの異名を持つ豊臣秀吉が関係しそうだが、また別だろ。サルに関係するまつろわぬ神か何かが関係してるんじゃないのか?」

 

「西天宮に祀られてる神君は、猿猴神君さまとおっしゃいます!おサルさんの化身で竜の庇護者だそうですよ!」

 

「ん~サルが関連する神話関連だとインド神話のハヌマーン、スグリーヴァとか中国だと朱厭、後は孫悟空かな。庇護者と言う意味ならハヌマーンか孫悟空当たりが妥当か?」

 

「一夏はいつもこんな感じなの?」

 

「キーワードがあれば推察して、いざと言うときに対処できるようにする。前もって会うことが分かっているのなら予め予想していく事は大事だぜ。先輩としての助言だ」

 

 

 

一夏がカンピオーネの先輩として助言しながら、先に進む。

 

準備が出来たひかりと『弼馬温』呼ばれる宝刀を携え扉を開けていく。

 

扉を開いたそこは幽世と呼ばれる生と死の境などと呼ばれる場所につながっていた。

 

そして、万理谷の霊視によって、この幽世が神君を封じ込めるための檻だと告げられる。

 

そして、目的の場所に場所に着くと、一夏はいつでも、戦闘に移れるように準備した。それは護堂も同じようだった。

 

 

「あ、おサルさんが居ます!」

 

 

ひかりが指さす方には、ニホンザルとは別のオレンジ色に近い金色の体毛のサルが居た。

 

一夏達カンピオーネはこのサルを見た瞬間確信した、此奴は『まつろわぬ神』だと。

 

 

「我が宮殿によく参った。久しぶりの客人じゃぞ。しかも神殺しも混ざっとる!」

 

 

80センチ程度の猿が元気に飛び起きる。

 

 

「お前が、猿猴神君か」

 

「我を封じ込めた連中はそのように呼んでおるよ。我にはもっといかした真名があるのだが、そいつは封じられているのでな」

 

 

かなり明るいというよりもお調子者の様な性格をしたまつろわぬ神だと思った一夏と護堂。

 

一夏は同じ幽世にいる年中酔っぱらってる日本のトリックスターと呼ばれた人物を思い出しながら目の前のまつろわぬ神を見据える。

 

 

「小さい方の女の子がお前の巫女さんをやるかどうか悩んでいるんだ。それで今日は、下見に来たんだけど」

 

「あぁ。最近、巫女さんが遊びに来ないと思ったんじゃ」

 

「遊びに、だと?」

 

「そうだとも。我の遊び相手をする巫女よ。雑談したり、追いかけっこをしたり、双六をしたりな。我は賑やかな遊びが好きでな、舞や歌が得意だと点数が高くなる」

 

 

なんともまぁ、牧歌的な仕事だなと思う一夏たち。

 

 

「あのー、もしかかして神君様の遊び相手をするだけなのでしょうか...。私、とても重要なお仕事だからぜひやってほしいと頼まれて、悩んでいたのですが...。」

 

「遊びだけだと失敬な。毛並みを整えたりしてもらうぞ。......ま、我が要求する賦役それくらいよのぉ。むしろお主たちが我に剣呑な頼みごとをするのではないか」

 

「私達...媛巫女が、ですか?」

 

「うむ、やれあの蛇を追い出してほしい、あの竜を倒してほしいと泣きついてくるであろう?そのたびに昔取った杵柄で、暴れまわるのじゃ」

 

「ん?お前は竜を庇護するんじゃにのか?」

 

「庇護はするのぉ。ただし、ぶん殴って子分にした後でな。我はこれでも《鋼》の端くれ、竜蛇の類の類にそういう振る舞いをするのは慣わしでの。ひぃ、ふぅ、三度暴れたか。最後はお主ともめた時かの?」

 

 

猿猴君臣の問いかけに一夏と護堂は首をかしげる。

 

この神様相手にもめ事を起こしたことは二人にはないのだ。

 

だが、猿猴神君は一夏達など気にせず続ける。

 

 

「どこぞの都で暴れていた地竜を打ち取った後にお主とやりあったんじゃ。決着はつかず、我がねぐらに戻る刻限となった。お主はあの後祠の扉を壊そうとしたのじゃろ?」

 

「えぇ。そうすれば、あなたの居場所にたどり着けるかもしれぬと考えたからです」

 

「え?...この声まさか...」

 

 

 

突如、聞こえた女性の声。猿猴神君はこの声の主と話していた分かったが、一夏は聞き覚えのありすぎる声に顔色が真っ青になり、今すぐこの場から消えたいと思い始めた。

 

 

「祠とそばにあった社を壊しただけで、ここへと繋がる回廊に押し入る事はできませんでしたが...。わたくしたちの暦で100年近くも前の話です」

 

 

猿猴神君の視線の先には一匹の蜥蜴が居た。だが、そこから感じる堂々たる王者の威圧に一夏は確信した。間違いなくあの人(師匠)だと。

 

 

「あ、あなたはまさか!?どうしてこのような場所に!?」

 

「どうしたんだ、万理谷!?」

 

 

祐理は顔面を蒼白に、唇を震わせていた。ガチガチと震えている。恐怖ゆえに。

 

護堂は祐理を宥めようとした。

 

 

「ご、護堂さんっ。あちらにいらっしゃるあの御方は、御方は...!!」

 

 

何を霊視したのか説明を求めようにも混乱している祐理を落ち着かせるために肩に手を置き、この中で一番カンピオーネ歴が一夏に説明を求め様とした護堂の眼に入ったのは驚愕の光景だった。

 

 

「もうだめだぁ...おしまいだぁ...」

 

「えぇ!一夏さん!!」

 

「ど、どうしたの一夏!?」

 

「お前らにはわからないのか!勝てっこない、勝てるはずがない。あの人は伝説のスーパーカンピオーネなんだぁ...。勝てっこないよぉ」

 

 

完全にヘタレていた。それこそ某摩訶不思議アドベンチャーのセリフを使ってる当たりふざけているのでは?、と思う一同だが完全に一夏は伝説の某スーパーな人に遭遇したM字野菜人状態である。

 

現に先ほどまであった戦闘意欲の高ぶりは完全になくなっている。

 

 

 

「ほぉ、媛巫女とやらですか。なるほど、さすが神祖達の遠い遠い裔。わたくしの素性を視るとは、よい目をしています。そして―――」

 

 

蜥蜴から白い煙が立ち上る。

 

ちっぽけな蜥蜴はみるみるうちに絶世の美少女に変化した。

 

古い中華の服装、漢服に身を包んだ黒髪の美少女はいまだヘタレている一夏を一瞥する。

 

 

「義弟」

 

「(ビクッ!」

 

「なんですかその体たらくは?わたくしは言ったはずです...。常に心を強く、余裕を持ち、そして、優雅たれと。ですが、わたくしの言葉を忘れてしまった様子...もう一度、骨の髄まで叩き込まないといけないようですね」

 

「殺される...殺される...。ぶっ殺される...!もうだめだぁ...おしまいだぁ...」

 

 

修行以外では、基本顔合わせたくない一夏。

 

理由は何故か?幼少期に最初に戦った時のトラウマが蘇り、一夏の戦意を完全にそいでしまうのだ。

 

一夏の弱弱しい姿に、この人にも天敵はいるんだなと思いつつ、どのような関係なのだろうと疑問に思う一同。

 

 

「お主なんと言ったかな?名を訊いてもいいかね、同郷の神殺しよ」

 

「あなたの記憶に名を刻めなかった未熟さ、口惜しく思います。ならば、ふたたび名乗りましょう。そして、死を以ってふたたび忘却させて上げましょう」

 

 

猿猴神君に向け、可憐な唇が冷たく宣告する。

 

 

「我が性は羅、名は翠蓮、字は濠。正教の教主にして、武の頂点に君臨するものです」

 

 

恐るべき魔教教主、羅濠もしくは羅翠蓮。

 

一夏の師匠にして古くから存在する古参のカンピオーネは、苛烈にして壮絶な乙女であった。




始まった新水着イベ!

狂ノッブはEXでどっかで聞き覚えのある技名や宝具でオラオララッシュしてくるし。

フランちゃんは喋るし、かわいい!!やったー!

シーtニトクリスは何処のメジェドだよと思いつつ、宝具は伝承通りで。

水着ネロは、てんこ盛り過ぎ!?艤装にファンネルにガイナックス立ちとか

頼光ママは自分で風紀乱してるし、エレナママどこの光の戦士で、どこのキングのDホイール持ってきてるんですかね?

水着オルタ社長の趣味てんこ盛りすぎ


イベント内容もいつも通りでよかった


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王 決断と意思

このままでは、スランプに逆戻りだ...。

本来、一話にする予定でしたが、二つに分けて執筆せねばまたスランプになる。





東照宮に来た一夏達が出会ったのは猿猴神君と一夏の師匠である、羅翠蓮であった。

 

 

「どうしたの一夏!いつもの戦意は何処に行ったの!?」

 

「お前には分からないのかぁ...!あの人は俺のお師匠様なんだぁ...。あの人は鍛え抜かれた武術と権能で俺たちを叩きのめしに来る...!?」

 

「え?あの人が一夏の...」

 

「いつまで私の前でその不快な態度を続けるつもりですか?」

 

「ほおぁぁぁぁぁ!?」

 

「い、一夏さん!」

 

 

10mはある距離を一瞬で、一夏の眼前に近づいた羅翠蓮は一夏の頭を掴むとそのまま地面に叩き付け、犬上家状態にする。

 

先程の衝撃で着いた土埃を祓い、猿猴神君に視線を移す羅翠蓮。

 

 

「それにしても嘆かわしい。稀代の英雄であった神がそのような矮小卑賎、畜生同然の姿に成り果てるとは...。腑抜けもいい所です。恥を知りなさい」

 

「いや、畜生と言われてものう。畜生じゃし」

 

 

羅翠蓮にぴしゃりと言われ、恥ずかし気に頭をかく猿猴神君。

 

まぁ、サルだしな。とつい頷いた直後

 

 

「新たな倭国の王よ。今よからぬことを考えましたね?」

 

 

ぎくっ、と感想を口にしていないのになぜ分かる!?、と驚愕する護堂。

 

 

「愚昧な。この羅濠は武功を極め、武林の至尊と呼ばれる者。あなたの不遜な考えなど、顔を見れば察しがつきます」

 

 

心が読めるのか、と戦慄した護堂だが、どうやらそんなことも無いようだ。

 

 

「また不敬な考えをしましたね。倭国の王は礼節を知らない様ですね」

 

 

やはり当てずっぽうのようだ。だが、表情の微妙な違いで内心を察するというのは相当な眼力なのだが。

 

 

「同格の『王』でなければ、非礼と断じて相応の報いを与えるところなのです。しかし、同じ覇道を歩む先達として、寛大さを示しましょう。感謝しなさい」

 

「......それはどうも」

 

 

この人は誰に対しても上から目線なのだろうと思いつつ、寛大さとは一体と思いつつ今だ犬上家状態の一夏に視線を移す護堂。

 

 

「その巫女と下々も私の姿を直に見たのであれば断罪しなければなりません」

 

 

あまりに物騒な発言に奥の方では媛巫女姉妹と簪が、すくみ上りなぜいまだそこまで平静さを失っているのか理解できないシャルロット

 

ひかりと簪が謝罪し、万理谷が妹を庇う始末。

 

 

「巫女たちよ。分を弁え、羅濠への直言は控えなさい。今私は『王』と神に向けて話しています。お前たちを視界に入れるつもりはありません」

 

 

完全にすくみ上がっている媛巫女一同とあの傍若無人、暴君系魔王と名高い一夏がなすがまま犬上家にされたことにより、恐怖が込み上がっていた。

 

 

「さっき、サルの神様と戦うって言いましたよね?突然やってきて勝手とか、いつ不法侵入とか敢えて言いませんから教えてください。一体、何の為?」

 

「そのものを誅殺する為です」

 

 

即答である。

 

 

「我が国の英雄でありながら、倭人に飼われて遊び暮らすなど...まこと、度し難い罪と言えましょうこのような輩の存在を知りながら放置したとあっては、羅濠の名折れ。かねてよりより断罪の時を待ちわびていました」

 

 

突如、護堂の近くで土煙が上がると、骨が鳴る音が聞こえた。

 

 

「中国に伝わる猿の英雄なんざ、一人位なものだよな。くそ、目まいがするぜ」

 

「あの状態で、よく聞き身が取れたものですね。夜叉王」

 

「手に入る情報は手に入れ、その情報を元に正解を導き出す。最も正道で王道な方法だろ」

 

 

音の発信源は先ほどまで、犬上家状態だった一夏であった。

 

身動きの取れなかった一夏は自身の呪力で周囲を吹き飛ばし、小さなクレータを作りながらも脱出することに成功したのだ。

 

 

「上半身が埋まっても、音は伝わってくるからな、余計な音は無視して、静かにしていれば案外聞けるものさ」

 

 

全身の至る所から、骨を鳴らし眼前の女性―――羅翠蓮に対して溜息が漏れる。

 

 

「そのために、わざわざ日本まで来た、と」

 

 

複雑な事情があるのだなと察した護堂は、先輩魔王たちの様にそちらには興味はないく、知らない方がいい様に思えたのだ。

 

 

「だそうだから、ここでチャッチャッと決着をつけるのはどうだろう?たしか幽世の中だと、人間の世界には被害が出ないんだろ?」

 

「うーむ。『それならオレに関係なし―』と思っているのが丸わかりじゃのう」

 

「うん、まぁ......。百年前からの因縁があるみたいだし、俺が口出する事じゃないかなってー。人間社会に影響が出ないならいいかなって」

 

「うわぁ、スゲー似非平和主義の板垣を見たぞ」

 

 

猿猴神君の評価を悪びれまなく言う護堂に、一夏は思わず内心でマジか、とつぶやいた。

 

 

「正直は美徳と言うが、この場合は身も蓋もないというべきかの」

 

「いいだろ別に!俺だって毎回、神様や魔王と戦うのは飽き飽きしてるんだよ!」

 

「え?」

 

 

護堂の自称平和主義者の一面と対峙しながら、一夏は俺はそんなことは無いけどな、と自分と周りの考えの違いに思わず声が漏れた。

 

 

こいつ、異色すぎね?と自分の周りの環境を思い出しながら一夏は思った。

 

だが、悲しい事にこの呟きにお前が毒されすぎなんだよ、とツッコみを入れる人は誰もいなかった。

 

そんな中、猿猴神君は宮殿によって力を封じられてる事を伝えると、封じられた力を解放する方法を教授する。

 

 

「我をこの地に封ずる『弼馬温』の呪法。これを一時的に解くには、三つの条件が必要じゃ。第一は、我の敵たる竜蛇の神格が現れる事。第二は、術を弱める式を仕込んだ宝刀がある事。第三は禍祓いの巫女に宝刀を持たせ、霊力を使わせる事じゃからのう」

 

「竜神なり蛇紙の用意が最も厄介でしたが、都合よく首を差し出す者がいたので、どうにかなりました。神を生け捕りにするのは私の武功を以ってしても、やはり難しい。あるいは、あなたとの再戦は終生かなわぬやとも覚悟していたのですが」

 

 

ここにきて羅翠蓮の呪力が高まった。

 

権能を使った時の様な危機感は無く、どちらかというと魔術をこうした時に近い感覚だった。

 

魔術を行使するための口訣。

 

まるで音楽を奏でるかのような美声。

 

だが、一夏はこの時ナニカいやな予感がした。

 

術は完成し、警戒する一夏と護堂だが、祐理に抱きかかえられていたひかりが無理矢理ほどき、白木拵えの宝刀を抜き放つ。

 

 

「一夏さん!護堂さん!あの宝刀には、神君さまの封印を解くカギの様です。羅濠教主は膨大な呪力を注ぎ込むことで、刀を目覚めさせたのです!光もそれに呑みこまれています!」

 

 

さて、一気に猶予が無くなり、護堂は敬語を殴り捨て、羅翠蓮に訴えた。

 

 

「ま、待った!羅濠さん、ちょっと待ってくれ。あんたはサルの神様が地上に降りて、好き放題暴れてもいいのかよ!?あんたは偉い王様なんだろうッ!なら、普通の人の事も考えろ!!」

 

「ええ。私は武林の至尊にして、何人にも掣肘させれる事なき覇王。私が意を向けるべきは天の意思と地の理。人は私にとって、決して慈しむべき存在ではないのです。天地にとって、人の存在は有益かどうか...」

 

 

この問題人物がなぜ権能を手に入れたのか、もっともらしく呟く羅翠蓮に嘆きたくなった。

 

他でやるのであれば、問題ないだろうがこの地を戦地になることを良しとしない人物がいた。

 

 

「ここは貴女の治めてる地じゃない。ここは俺達が生まれ育った我らが故郷。この地を戦地に変えるというのなら......」

 

 

この地を治める王は護堂だけではない。

 

周囲から暴君と称される彼もまた、この地を守護し治める王である。

 

ならば自らの領地で行われる蛮行は止めなければならない。

 

それが彼にとって最優先事項(大切な人)を護ることに繋がるのなら。

 

 

「貴女がこの地を蹂躙する賊であるというのなら、師弟の縁を捨て、剣を向ける事になるだろう」

 

 

戦意消失していた一夏の瞳に光が灯る。

 

 

「若き魔王が誕生した倭国に乗り込み、その膝元で事を起こす以上、過程はどうであれ彼らと衝突するのは必定。王を制するのは王のみ、故に私の光臨を願うと―――ふふふ、なんとあれが予言になるとは」

 

 

静かな足取りで羅翠蓮は二人に近づいていく。

 

近づいてくる羅翠蓮に対し、一夏は首を落とすつもりで蹴りを放つ。

 

 

「夜叉王、そして草薙王よ、武の頂点に仕合う運命に感謝なさい。あなた方を我が障碍とみなし羅濠の武と術を以って蹴散らしましょう!」

 

 

一夏の蹴りを受け止め、空いた手で護堂の肩を掴み腕を振るった瞬間、天高く打ち上げられた。

 

二人の身体は馬小屋を突き破り、蒼天へと舞い上がっていくのだった。

 

 




最近、アズレンを初めて、モンストにゴンさん光臨という事で復帰して、FGOはエリちゃんがメカで、アルターエゴになるという始末。

やったねエリちゃん!アルトリアより先にアルターエゴになれたよ!!

私は初号機を選びました。リア友がなんか二号機が多くてね...。

ゴジラなタイトル演出に、機竜の様な何かとどこぞのスパロボ守銭奴の戦闘砲だしなー。

スパロボやってなかったら見落としてたぜ。


シンゴジはもちろん見ましたよ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

武林の至尊と若き魔王 

某日 織斑家にて暴君に異変が起きた。

「オイラはビィ!オイラはビィ!オイラはビィ!」

「大変だよお兄ちゃん! 一夏の様子がおかしくなっちゃった!?」

「戦いの中で頭を打ち付けすぎたり、爆発四散しすぎたのがこんな所で現れるなんて」

「オイラはビィ!...夢の中で赤い竜が呼びかけてきてな」

「本格的に頭が可笑しくなって変なトカゲの夢を見ちゃったよ...」

『オイラはトカゲじゃね!』

「「「! ?」」」

「直接脳内に...!」

「い、一夏の後ろに謎の赤い二頭身のナニカが見えたよう...」





(待ってるぜ相棒。いつか、一緒に空を駆ける時が来る日をよ)


この出来事が、後に一夏の大きな力になるとしらずに。


天高く舞った護堂は背中から地面に打ち付けたが、対してダメージは無かった。

 

柔道の達人は投げた相手のダメージをコントロールできるという。

 

だが、それは相手を掴んでいるからできる芸当であり、放り投げただけの羅濠がこのような芸当が出来る事からどれだけ常識離れした達人なのか窺える。

 

そんな常識はずれが自分の身近にもう一人いた事を護堂は思い出した。

 

 

「ダッリャ、ダダダダダダダダダダッ!」

 

「以前合った時よりも突きの鋭さが増していますね。喜ばしい事です...。ですが」

 

「ンッ!?」

 

「まだまだ粗削り...そのような拳では私に膝を突かせることはできませんよ?」

 

「ンワァ!? クッ...オラオラオラオラオラオラオラッ!」

 

 

空中で残像が残る速さで殴る一夏の拳を何食わぬ顔で躱す羅濠は、突き出された拳を掴み近くにあった木々目掛け放り投げるが一夏はその木を思いっきり蹴り再度、羅濠に接近すると高速で殴りつける。

 

その光景を見た護堂は「まるでDBだ...」と武の達人たちの戦闘にただ釘付けになっていた。

 

 

「流石は、私が見込んで王ですね。あと5年もすればこの羅濠と同等か、それ以上の強さを得るでしょう」

 

「グッ!?」

 

「先刻、告げたようにまだ粗削りの状態。フフッ...その成長は師として喜ばしい事です」

 

 

オラオララッシュを何事も無い様に躱し、その成長速度の感心する羅濠は回し蹴りをした足を掴み護堂の近くに投げつける。

 

 

「だ、大丈夫ですか!? 一夏さん!」

 

「腕の骨が外れる程度、いつもの事だ。気にするな」

 

「全然大丈夫じゃない!?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

 

外れた左肩押さえつけながらぐりぐりと回しハメていく一夏。その光景に問題しかない、と言う護堂だが一夏はすまし顔で問題ないという始末。

 

 

「仕合をするのであれば広い所がいいと思いましたが、先ほどのような戦いは草薙王は出来ない様子。であれば地に足をつけ、適度に痛めつけ蒙を拓く程度にしておきましょう」

 

「蒙ってなんだよ!アンタに教えてもらう事は何もないぞ!!」

 

「羅濠の勅に逆らう。この所行を藁と呼ばずなんと呼ぶのです?」

 

「護堂!」

 

 

いつの間にか接近した羅濠に天高く投げ捨てられた護堂。これを数回繰り返していく最中に気づいた事がある。

 

羅濠が護堂の胸ぐらを掴むと腰を落とし、踏ん張る。

 

怪力の持ち主と対決する時だけ発動できるウルスラグナの権能の化身の一つ『雄牛』が使える事に気づいたのは投げられている最中だけだった。

 

 

「アンタのその怪力! 権能だろ!!」

 

「阿吽一体の仁王より簒奪した『大力金剛神功』です。非力なる者を強者にしてこその武術。しかし、剛力なる壮者が至高の技を会得すた時に得る武功はその比に及ばず」

 

「強キャラにチート性能が加わるんだ、バグだよ。まったくさ!」

 

「天道清明、地道安寧、人道虚寧!―――哈!」

 

「深海に住まいし天と冥の兄弟を持ちし海神よ!」

 

「夜叉王よ。突きとはこうやるのです」

 

「ウ゛ゥ゛!?」

 

 

深くめり込んだ羅濠の拳に一夏は内臓にダメージを負ったのだろう。

 

口の端から鮮血を零し、死者の呻き声を沸騰させる苦悶の声を漏らしながら一夏は打たれた野球ボールの様に体をくの時にしながら飛ばされていく。

 

飛ばした一夏に目もくれず、護堂に向け地面を砕きながら進んでいく。

 

 

「でいやァァァァ!」

 

 

意味のない咆哮上げ護堂は地面を思いっきりジャンプする。立ち幅跳びの要領で羅濠の頭上を飛び越えていく。

 

『雄牛』の怪力は、振う対象によってその強さが変化する。

 

4tトラックに使えば、それを両腕で持ち上げることも出来る。逆に言えば、70キロそこそこの護堂に使っても小なりとはいえ効果を発揮する。

 

羅濠の正面から脱出するだけならばこの程度で十分だろう。

 

護堂は、そのまま走る。とにかく走り続ける。

 

走る先には、豪華な宮殿の建物があった。

 

壁全体に対して、『雄牛』の怪力を使いその壁を突き崩していく。

 

その光景に腕力至上主義の乙女が賛嘆が響く中、護堂は宮殿内部に入ることが出来た。

 

 

「草薙王よ、何か仕掛けるつもりですね? あなたの目の輝きが、秘めた企みの存在をわたくしに教えてくれます。この羅濠、逃げも隠れもいたしません。その秘策、存分に試してみなさい!」

 

「分かっていて好きにさせるのかよ?」

 

「当然です、わたくしの様な武の大家が少壮の若輩なりふり構わず打ち負かすなどあってはならないこと。これは武林の慣い、遠慮は無用です」

 

 

その割にはその若輩(一夏)をなりふり構わずやっていなかったか?、と思いながら心の中で弟子だから問題ないのか、思いを秘めながら護堂は新たな化身『猪』を行使した。足元の床が黒く変色する。

 

巨大、雄壮にして傍若無人な黒き『猪』の顕現だった。

 

 

「鋭く近寄り難き者よ! 契約を破りし罪科に鉄槌を下せ!」

 

 

言霊を強く叫びで神獣をたきつける。

 

『猪』が広間を叩き割りながら全身が浮上する。巨大な物体を破壊するときだけ顕現可能な化身。

 

今回対象にしたのはこの宮殿である。どうせ人間社会に影響ないのだから問題ないだろう、と自分も周りと同じような思考をしていることに気づいていないようだった。

 

並みならぬ大きさの猪を目の前にしても「でけぇ!(驚き)」ではなく、「次何するの?wktk」と言った様子の羅濠は並みの神経はしていなようだ。

 

宮殿を粉砕しながら突き進む『猪』は外に躍り出た。崩壊する宮殿に羅濠を置き去りにして。

 

本来なら、事が事なだけに慌てるものだがまぁ、神殺しだし何とかなるだろう、等と考えていた。

 

 

「並みのロデオじゃ問題ないが、こいつは相当な暴れ猪だな!」

 

「い、一夏さん! ...倒されたはずじゃ!?」

 

「残念だったな、トリックだよ」

 

 

いつの間にか、『猪』の毛に掴まり、カウボーイハットを指で回しながら楽しんでいた。

 

ロキの権能で自分の存在を欺き、木陰から|木|ω・)チラッ、っと様子を窺いながら護堂が走り出すと同時に、アンパン食ながら並走するという、お前参戦しろやと言いたくなるような行動である。

 

そんなこと知らない護堂は、いつからここにいた?などと考えていると猪の動きが止まる。

 

活動現界か、と思いながら廃墟となった惨状を目にしながら気を引き締める。

 

剣馬鹿であれば瓦礫を切り裂き、狼爺であれば巨狼になり周を吹き飛ばすだろう。

 

彼女も何かしらの方法で脱出できるだろうと確信した瞬間、その次の展開に呆れた。

 

 

「哈――――ッ!」

 

 

美しい掛け声と同時に宮殿の建材が吹き飛ばされていく。

 

それを行っているのは急旋回する美少女の肉体。両腕をまっすぐに伸ばした姿勢でプロペラの様に回転し、浮上していた。

 

 

「空を自由に、飛びたいなー。はい! スイコプター!!」

 

「すっごーい!彼女は空を飛ぶことが出来るカンピオーネなんだね!!」

 

「なにあれ、なにあれ! じゃなくて、急激にIQが下がっているぞ」

 

「一夏さんだって、変な歌を歌ってるじゃないですか!」

 

 

あまりの光景に両者ツッコみとボケを同時にするという珍事態が発生していた。

 

 

「褒めてあげましょう、草薙王! そして、よくぞ五体満足で戻ってきました夜叉王! あの一撃は確実に全身を破壊するつもり放った一撃です。羅濠の衣に土埃つけさせるものは滅多にいません。サルバトーレ某といい、英吉利国のひねくれ者といいい、夜叉王といい、ここ10年で4人もの魔王がこの難業に成功するとは......。覇道の先達として、嬉しく思います」

 

「やったね護堂! 翠姐に認められたよ!」

 

「露骨なフラグやめてください」

 

 

翠コプター改めオトコプターを止め、瓦礫に降りた羅濠の発言に「あー、だから何時もより痛かったんだ」と一撃貰った場所を擦る一夏は、目の前の現実から逃げる様にボケるのだった。

 

地面に降りたった羅濠の衣服は確かに土埃で薄汚れているが、彼女の身体は傷一無く、髪一つ乱れていない。

 

そんな彼女の服装が、何かしらの魔術なのだろう、仙女思わせる淑やかな漢服からチャイナドレスに似た華やかな衣に、空いた胸元や裳のスリットからからは玉の肌がかいま見える。

 

衣装が変わり、より動きやすくなった羅濠に対し一夏達に緊張が走る。

 

何故なら、動きやすい服装に変わったのだから。

 

 

「...本当は三手譲るつもりでおりました」

 

 

彼女はにっこりと微笑む。可憐な、素晴らしい乙女の表情である。

 

だが、一夏は普段の彼女を知っている為、内心「やだぁ...。地上最強(オーガ)の生物が...笑ってる...」と恐怖していた。

 

あふれ出る無邪気な可憐さに、隠れたその過激な武を知っている一夏は気を引き締めるのだった。

 

 

「でも、もうやめておきましょう。あなたたちに二手を許せば、わたくしといえども不覚を取りかねません。ですから、先達として譲るのは一手まで。......これより全力の羅濠で、あなたたちに武の険しさを示します」

 

 

何処か可愛らしく、慎ましやかに言い渡された。

 

高みから見下ろす様ないままでの物言いよりも、むしろ逆に怖い。

 

 

「我が権能、『大力金剛神功』はすでに見せました。今から披露するのは『竜吟虎嘯大法』。この大絶技ふたつを以て、わたくしは武林の至尊となったのです」

 

 

次の瞬間、羅濠は大きく息を吸い込み、美声と共に吐き出された。

 

吐き出された美しい謡声は、周囲のあらゆる総てが吹き飛び出す。

 

瓦礫が、建物の残骸が、まだ無事だった宮殿の壁や石畳が、強風で吹き飛ばされるように。彼女の謡は、万物を薙ぎ倒す魔風さながらだった。

 

魔風は重圧に変わり、そして衝撃波に威力が上がっていった。

 

『猪』の魁偉な巨体が一瞬、宙に浮くとそこに追い打ちをかける衝撃波。

 

バランスを崩された神獣の巨体は横倒しになった。

 

 

「うわあああッ!」

 

「神々によって生み出され、逆らいし者よ!! 天を繋ぐ鎖としての輝きをここに示さん!!」

 

 

背中に乗っていた一夏は瞬時に猪から離れ、不死の権能と初出の権能の聖句を唱え、落下しそうになった護堂の身体に一夏の腕から現れた黄金の鎖のような形状の物を巻き付けると、自分の所に引き寄せ掴むとそのまま地面に着地する。

 

 

「ありがとうござます。一夏さん」

 

「気にするな」

 

 

地上に降りた二人はある事に気づいた羅濠の謡が終わっていたのだ。

 

今が好機と言わんばかりに『猪』は、咆哮を挙げるが、羅濠の全力はこれからだった。

 

 

「赫々陽々、電灼光華! 天霊霊、地霊霊、太上老君、急急如律令!」

 

 

漆黒の巨人?に悠然と近づきながら、言霊を唱える。

 

羅濠から呪力が立ちのぼり、ゆらりと陽炎の様に揺らめく。

 

待ち構える『猪』に殴りつける。

 

 

――――ルアアアアァァァンッ!

 

 

殴られた猪が哭いた、苦痛にのたうち回る犬のように。

 

護堂は陽炎を注視して、絶句した。

 

ゆらゆらと蜃気楼のように揺れる状態から形をとる様になり、陽炎は逞しい巨人へとなった。

 

綺麗に剃り上げた頭。厳めしい表情。筋骨隆々とした巨体。下半身を覆う粗末な衣。そして、全身が金色に輝いていた。

 

流石に神話などに疎い護堂もこの巨人の正体を理解した。

 

以前、写真で見た東大寺南大門、金剛力士像だと理解するのに時間はかからなかった。

 

彼女の身体から立ちのぼる金剛力士の影が機敏に動く。

 

上段の突き、踏み込みながらアッパーと膝蹴りを同時に。続いてショートパンチの連打、膝蹴り中段突き。空中に舞い上がって、回し蹴りを着地なしで二連続する。

 

まるでカンフー映画の殺陣流麗さ。食らう『猪』の咆哮はもはや泣き声である。

 

 

「あれ、食らうと痛いんだよなァ...」

 

「い、痛いって言いますけどどれくらいですか?」

 

「軽く逝けます。天国に」

 

「アウトじゃないですかそれ!?」

 

「あの権能だけで俺はもう、三途の川を50回以上往復してるよ」

 

「もはや常連?!」

 

 

修行で喰らったことを思い出した一夏は苦笑いしながらサムズアップするが、体験者の話を聞いた護堂は思わず叫んだ。

 

ハハハ、と乾いた笑みを浮かべる一夏の心の傷は相当深い。

 

一夏のボケ?に突っ込んでいると金剛力士に投げられた神獣が落下すると霞の様に消えていくのだった。

 

 

「さぁ、貴方の顕身は消えました。次はあなた自身の番です」

 

「俺を忘れてもらっては困りますな」

 

 

羅濠の怜悧な瞳が護堂を捉える中、一夏が羅濠を睨んだ、その時だった。

 

 

「ご、ご無事ですか、護堂さん!?」

 

「大丈夫、一夏!?」

 

 

可憐な少女の声が聞こえた。

 

それは、転移によって護堂のすぐ側に現れた万理谷祐理の姿と、虚ろな瞳で茫洋としているひかりを連れている。

 

そして、上空からはISを身に纏ったシャルロットと簪が一夏のすぐ後ろに着地した。

 

話を聞く限り、猿猴神君の神通力にかかり、意識はあるが意思疎通出来ない状態であり、あのままいては危険だと判断し、護堂の近くに転移したとのことだった。

 

同様に簪も一夏の場所を特定し、周囲の状況を確認する為、別方法できたとのことだった。

 

目の前の脅威もそうだが、対処しなければいけない相手は一つだけではなかったことを思い出した護堂達。

 

だが、この状況に目の前の脅威は柳眉をひそめいていた。

 

 

「......魔王と魔王が鎬を削る戦場に、紛れ込むとは恐れを知らない巫女供ですね

 

 

呟きに合わせて金剛力士が拳を振りかぶった。

 

一夏の腕から現れた鎖は金剛力士の腕に絡みつきその動きを封じると、顔面蒼白の祐理を背に庇い護堂は叫んだ。

 

 

「ちょっと待った! 俺と一緒に万理谷もそいつでぶん殴る気か!?」

 

「か弱き少女の身で我らの間に割って入ったのです。主に殉死する覚悟はすでに抱いている事でしょう。ならば、羅翠蓮、君臣の固き絆に水を差すような無粋はいたしません。草薙王よ、娘を死なせたくなければ我が絶技破って見せなさい!」

 

 

羅濠の言葉に頭を抱えたくなった護堂だが、それよりも先ほどから俯いた一夏の様子が気になった瞬間。

 

 

「そンなふざけた事、今ここデ起こさせル訳にハ行かなインだよッ!!」

 

「い、一夏さん!?」

 

「グ嗚呼ああァァァァaaaaa!!!」

 

 

ひかりの事を考え、この場から離れたい護堂は策を巡らせる中、一夏はそれを読み取り一歩前に出る。

 

一夏の右肩に漆黒の猪の頭部が現れると身体の至る所に現れた黒い毛皮、鋭利な爪、そして、一夏が纏う雰囲気そのものが変質していた。

 

 

「時間を稼いでやる。それまでに考えろ」

 

「え?」

 

「アァッ!!」

 

「自ら理性を失うとは...。愚策に出ましたか夜叉王!」

 

「ア゛アアァゥッ!」

 

「クッ...!このような事が...」

 

 

現界まで引き絞られた弓から放たれた一撃は相当の反動だったったのだろう。持っていた腕を振り上げるほどだった。

 

羅濠はその一撃を金剛力士の巨腕で薙ぎ伏せるが、放つと同時に移動した一夏に正拳突きが迫るが、一夏はその腕を蹴り、躱すと同時に金剛力士の正面に迫ると両腕の鋭利な爪で攻撃するとすぐさま背後を取り、攻撃し頭上から踵落としをすると金剛力士のいた地面が割れる。

 

理性の無い狂戦士の如く咆哮を挙げ、猛攻を繰り出している一夏に驚きを隠せずにいられなかった。

 

 

「理性を失ってなおこの動き、何処か獣の狩りを思わせる、迅速に相手を倒すような行動...。膨大な力の代償に理性を失うが、論理的思考が可能となり、さらにその戦闘に対しての自己進化が促されてる様子」

 

「憎め、憎め憎め、憎め憎め憎め憎め憎め憎め憎めッ!!」

 

「その禍々しさ、差し詰め魔緒と言った所でしょうか」

 

 

漆黒の猪に変化した一夏は金剛力士に突撃、踏み砕くと人の姿に戻り弓を取り出すと二矢を番える。

 

 

「我ガ憎悪よッ!天地二轟けェッ!!」

 

「流石に全て防ぐのは困難ですね。理性を失ってなお、このような攻撃をしてくるとは...」

 

「ウァ...ア゛アアァァァッ!!」

 

 

豪雨の如く降り注ぐ矢に流石の羅濠も防ぐのは困難と判断し、後退する。

 

後退する羅濠を両腕に翼を生やした一夏が複数の矢を番え放ちながら追従する。

 

そして、ある程度護堂から離れると一夏は何処までも高く飛んでいく。

 

 

「間違いじゃない......!間違いのはずが無いんだ!俺は、俺は......。ア゛アアァァァーーッ!! 『闇天の弓(タウロポロス)』!全て喰らいつくせぇ!」

 

「回避不能の一撃と見ましたよ義弟。なら、羅翠蓮その一撃に答えましょう」

 

 

金剛力士が姿を消し、羅濠に金色のオーラが収束していく。

 

収束したオーラは巨大な掌となり、一夏とぶつかり合うと当たり一面を覆う闇と光のぶつかりは、凄まじい閃光を生み出した。

 

閃光が止むにつれ、一つの物体が吹き飛ばされてくる。

 

 

「い、一夏!!」

 

「だ、大丈夫一夏!?しっかりして」

 

「...うるさい。この程度どうってことは無い」

 

「大丈夫なわけないじゃない! そんな傷だらけで、それに頭から血だって...」

 

「んなの日常茶飯事だ。で、状況を打開するための策は?」

 

 

なんとか力のぶつかり合いは拮抗し、打ち勝つことが出来たが羅濠に一撃を与えるだけで終わり、そのまま返り討ちに遭い護堂達の所に飛ばされた一夏。

 

全身傷だらけ、打ち所が悪かったのか頭から流血しているが、当の本人はどこ吹く風と至って平然としてる。

 

 

「色々、考えましたがどれもダメです。転移もきっと警戒してるから出来ない。『鳳』で逃げ回って―――」

 

 

羅濠が再び、金剛力士を呼び出し構える最中、護堂はやたら燃える様に熱かった右手が何か疼くと、鋼の輝き、剣の閃き。なぜかそんなことを思い浮かぶ。

 

次の瞬間、護堂と万理谷姉妹の身体は霞の如く消え去った。

 

 

「い、一夏! 三人が消えちゃった!!」

 

「あの感覚は...。俺たちを置いて行ったな飲んだくれの剣は...」

 

「夜叉王よ。忽然と消えていった草薙王と巫女共の行方を知っていますね」

 

「さて、行先は予想はつくが......。まぁ、俺達はこのまま戦っても不利だろう。だから、ここはお暇させていただこうか」

 

 

一夏の足元に大気中の水分を集めて出来た大量の水が現れると渦を巻きながらシャルロットと簪まで広がると一夏は背中から現れた黄金の鎖が二人を離さないように腕に絡みつく。

 

振り下ろされた拳を前にしても一夏は微動だにせず、一言呟いた。

 

 

深海に沈みし(ゲート・オブ・)幻想大陸(アトランティス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げましたか。今のは間違いなく転移の法......しかし城内には姿は見えず」

 

 

阿形仁王尊の拳を受ける前に、護堂と巫女二人は姿を消え、その後を追うように一夏と巫女と魔術師もその場から消えた。

 

常にあらゆる策を講じながら戦う一夏は、戦闘中にシャルロット達の周囲にあらかじめ水分を集めいつでも逃げれるように準備していたのは知っていた。

 

護堂が消えたのは、間違いなく幽世への旅をする転移の法。だが、城内は閉ざされた結界、あの技には必要不可欠な精神集中をする暇はなかった。

 

城内に居ないか探知してみるも見つからず、護堂は何らかの方法で結界を斬り破り、外界へと転移したのだろう。

 

 

「あの少年、なかなか奥深い素性を隠していると見えます。......まぁ、ここで一息に仕留めるのも短兵急というもの。しばし放っておきましょう。そして、流石は義弟と言った所でしょう。わたくしに手傷を負わせ、あのような権能を隠し持っていようとは......」

 

『くくっ。お主も随分と暴れたようじゃのう』

 

 

旧敵である猴王の声が、忽然と響いた。

 

声だけという事は、まだ完全に蘇っていないのだろう。

 

 

『さっそく現世に戻って勝負―――と行きたい所じゃが、今しばらく待て。弼馬温の位を突っ返すには、まだまだ時が必要じゃ』

 

 

こちらはもう良いようだ。羅濠は地上の事を思い出した。

 

ならば、向こうの様子が気になる。弟子たちが怠けぬよう目を光らせるとしよう。

 

 

「承知しました。わたくしは一足先に現世に戻り、再戦の時を待ちましょう」

 

『ああ。ご期待に答えて進ぜよう。括目して待つがよい、神殺しよ!』

 

 

 

 

カラカラ、と笑いながら猴王の声は尊大に告げた。

 

武林の至尊は大いに勇を示し、まつろわぬ神猿は聖蛇を生贄として本堂に戻る。

 

この一幕がいかなる騒擾へと至るかは、いまだ定かではなかった。

 

 

 

 




深海に沈みし(ゲート・オブ・)幻想大陸(アトランティス)

ポセイドンの権能のもう一つの能力。
大量の水と一滴の血液を媒介に開くことが出来る扉を開く。
この中へは一夏が認めたもの若しくは触れていなければ入ることができないため
緊急の脱出手段であり
自分が許可を出さない限りその大陸から出ることが出来ない為、足止めにも使える。
また、この大陸から幽世に行くことも可能。

天地繋ぐ禊の鎖(エヌマ・エリシュ)
古代メソポタミア神話その中でもギルガメッシュ叙事詩に登場するエンキドゥから簒奪した権能。

自身の身体、もしくは魔法陣や地面から槍や鎖といった武器を生み出し、攻撃又は相手を拘束する。
星、もしくは人類への破壊行為に反応して威力が激増し、また別のナニカからの力も作用している。
完全に権能を扱えておらず、部分的な開放に留まっている。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

君臨するは古参の王 挑むは若手の王

長かった。

今回は過去最大となっています。

途中extralinkとか、バトオペ2とか、グラブルとか、FGOで忙しくて全然進まなかった。

FGOガチャ?魔神さんとか、以蔵さんとか、一役三人とかいう豪華なワルキューレとか、正義の眼鏡・セイバーマンことシグルドとか、福袋で実所持鯖のアガルタの17歳教とか、スカディとか引いてましたよ。

バトオペは基本、ガンダム(バズーカ装備)ジムスナカス、ジム改で楽しんでますね。

宇宙空間でのスナイプは楽しい。



因みにマハードの声は誰で再生されます?私は福山さんです。


一夏と護堂が女性版範馬勇次郎やブロリー、凄女(せいじょ)等と陰で呼ばれている腕力至上主義筆頭、羅翠蓮と邂逅していた頃、マハードたちは思わぬ来訪者に緊張が走っていた。先日ロサンゼルスに現れた蛇神レヴィアタンがこの地に現れ、奇妙な魔女や女嫌いの一夏の弟弟子に当たる人物などで外は外で賑わっていた。

 

 

「レヴィアタンですか、先日ジョン・プルート・スミスと暇つぶしで参戦した一夏によって撃破されたと聞いていましたが、生きていたのですね」

 

「いや、暇つぶしで参戦って...。一夏君はどれだけ暇なのかな?お姉さん気になちゃう」

 

「一夏曰く『動物と植物が俺に教えてくれる』だそうです。なんでもギルガメッシュ叙事詩に出てくるエンキドゥを倒してから気配感知が異常なレベルで上がったそうで」

 

「いつでも対処できるように警戒態勢に入る? お兄ちゃん」

 

 

ええ、と頷くとマハードとマナの手元に剣と小さな杖が何処からとまなく飛来する。一夏が二人の為、希少金属であるオリハルコンやミスリル、ダマスカス鋼など現代において入手困難もしくは手に入らない素材を贅沢に使った武具である。地上に居るのであれば自分の手元に来るようになっており、優れた性能があり、マハードの持つ剣に関してはエリカとリリアナの持つ名剣にも劣らない代物である。未熟なマナに関しては、魔術の補助的役割が強い。警戒態勢に入る中エリカとリリアが考察していると参考にマハードの意見を聞きだした。

 

 

「『黒き魔剣士』の異名を持ち神官である貴方から見て、あのレヴィアタンはどのような存在だとお考えですか?」

 

「我が主、夜叉王は半年前にロサンゼルスの守護聖人と共闘で、蛇神を撃破したと先ほど言いましたが、その蛇神を《蠅の王》の邪術師が単独で顕現されたと推測されてますが、これに関しては私や主も疑問を抱いています。単独で顕現が出来るのかと」

 

 

マハードは一端話しを切ると日光山に居る蛇神を一瞥すると話を再開する。

 

 

「《蠅の王》の総帥であるアーシェラと呼ばれる魔女でしたが、先刻目撃した魔女もアーシェラと名乗り、ロサンゼルスから来たと言っていました。恐らく、先程目撃したアーシェラと呼ばれる魔女とロサンゼルスに現れた魔女は同一の存在と見ていいでしょう。同名の魔女が現れるとそこに蛇神が現れた。話に聞いた外見的特徴と一致しています。そして、アレは魔女などと呼ばれる存在ではなく―――信じがたいですが、アレは真祖と呼ばれる存在だと推測します」

 

「真祖?」

 

「詳細は省きますが真祖とは、地母神と呼ばれる神の中には弱まり、落ちぶれ、神の座から追放され神でなくなった存在です。この真祖がアーシェラだとするのであれば突然現れた蛇神に説明が付きます。彼女が元の姿に戻っただけですからね」

 

「アーシェラという名前、アシェラトが変化したものかもしれないわね。旧約聖書を始め各地の神話に登場する海獣レヴィアタンは、メソポタミアのアシェラト女神を悪しき獣として語り替えた神格ですもの」

 

 

そういうと魔術関係者は日光山の上で縦横に走る多少の全身の傷から、血を流し日光山を鮮血で紅に染めている蛇神を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

近くの西天宮の境内で様子を窺っていると甘粕と合流した。日本古来の隠密術に長けたエージェントである彼がここに来たという事は、現状有益な情報を持ってきたと考えていいだろう。

 

 

「私からの報告です。陸鷹化(りくようか)と思われる少年は東照宮の奥社にて待機中。何やら人待ち顔でしたな。で、ご存じなかったと思いますが、その祠はあなた方の言うところのアストラル界に繋がる扉です。《鋼》の軍神が封じられています」

 

 

一気に言い切られたためエリカ達は苦笑いした。

 

 

「甘粕冬馬、そんな重要機密をわたしたちに話してもいいのか?」

 

「機密は可能な限りなしにするから、一緒にやろうということでしょ」

 

「まぁ、そういうことになります。あとうちの上司から草薙さんと織斑さんの居場所についての伝言があります。こいつを踏まえる共闘するメリットは大いにあるかと」

 

 

さりげなく告げた最重要情報に護堂側は呆れ、一夏の裏顔を知っている者は「なんだいつものことか」とむしろ安心していた。マハードとマナは、友人の家に遊びに行くと言い見送った目の前で迷惑夫人の『通路』に呑みこまれる光景を見たことあるせいだろうか。各々自分たちが持っている情報を交換する。

 

 

「ははあ。思いがけない名前と、予想通りの名前が出てきましたな」

 

「さっき《鋼》の神格が眠っていると言ったな? あのレヴィアタンはまるで《鋼》を呼び寄せるための餌に見えるぞ。死にかけの体をさらして、生贄の様ではないか」

 

「生贄と言い得て妙ですな。実際その通りでしょう」

 

 

リリアナの甘粕は頷き、《鋼》を封印している『弼馬温』の封印の解き方を呟いていると、いきなり祠の格子戸が開き、内側から強烈な風が吹き出す。絶世の佳人が天女の如く空を舞っていた。上空から地虫でも眺めるかのように興味なさげな表情。彼女が飛び出そうとした直前、エリカは叫んだ。

 

 

「お待ちくださいませ、羅濠教主! 我が主、草薙護堂はいかがなさいましたか!?」

 

「特別に直答を許しましょう。金髪の髪の娘よ、今日この時が初対面の筈、この羅濠の竜顔何処で知りました?」

 

 

美しい、しかし臓腑を抉るような迫力、一目見ただけで分かるほどの次元の違いを実感する。片膝を地に着け、騎士の礼を取りながら答える。

 

 

「我が名は、エリカ・ブランデッリ、《赤道黒十字》大騎士。拝謁の栄に浴したのは、おっしゃる通り本日が初めて。私はただ全ての状況を鑑みて、御身の御名は羅濠教主ありえないと推察しただけでございます」

 

 

これまでの情報を照らし合わせ、その名を言い当てたのだ。これはエリカの思考が並外れて早かっただけ。

 

 

「草薙王は、目端の利く臣を持っているようですね。おまえの機知に免じて答えを授けましょう。―――かの、王たちは幽世にて武威に屈し、何処かへと逃げ去りました。しかし、退却も兵家のひとつ。そして、この羅濠より退いてみせた手際の見事さをほめるべきでしょう。そして、夜叉王は相変わらず、奇策を講じ、相手を欺き悪だくみと密事には、毎度ながら呆れるを通り越して、天晴と言いましょう」

 

 

羅濠との戦いはもう終わっていたことに、マハードは「あぁ、今回もダメだったよ。アイツは一歩歩けば面倒ごとに巻き込まれるからな」とどこぞの天使長を思わせる台詞を内心呟きながら、「まぁ、一夏なら問題ないでしょう」とほぼほぼ心配していなかった。むしろマハードの中で、「大丈夫だ、問題ない(キリッ」とどや顔をしている一夏の姿が頭を過った。

 

 

「ならば教主......!」

 

「これ以上は控えよ、大騎士! わたくしは今、征路の途上にあります。お前ごとき顧みている暇はないのです!」

 

 

体が震えるほどの一喝。 いや、震える等と生易しいものではなかった。その場にいた全員が暴風雨にあおられたかのように吹き飛んだ。木々に叩き付けられたエリカ達は立ち上がった時には、羅濠はレヴィアタンのいる東照宮上空に向かっていた。

 

 

「いやはや。衝撃的としかいいようのない方でしたな、色々な意味で」

 

「羅濠教主がまさか女性だったとは...」

 

「主の師匠ですからねあの人。幼少期に負ったトラウマは相当なもので修行以外で遇うことを忌避する数少ない人物ですよ」

 

「あの人が一夏さんのお師匠さんなのですか? 織斑先生の上位互換の様な人の様ですが、幼少期の一夏さんに何がおありに?」

 

「最年少カンピオーネである主を拝見のつもりが、実力を測るという事態に発展し戦闘になり権能が二つしかない主は苦戦。有効打を与えたら勝ちという大ハンデの中行われました。実力差があり、一撃喰らっただけで腕は骨折、衝撃で後方の木々を倒しながら飛ばされ1Km離れた大岩にクレータを作ったり、徹底的に痛めつけられましたが起死回生の一撃により何とか条件を満たし、その果てない闘争心と素質に気が付いた教主が主を弟子にしたという経緯があります」

 

 

お前はどんな幼少期を送ってんだよ、と全員の思いが一つになった。IS組の中で「人間の範疇での強さ」が一番であるという認識が出来つつあった。

 

 

「だが、どうする? 草薙護堂や万理谷姉妹それに夜叉王を迎えに行くかレヴィアタンと羅濠教主の対応をするのか。いっそ二手に分かれるか?」

 

「そうね。できれば、そうしたいところね」

 

「でしたら、教主を追うべきでしょう。目の前にある問題を最優先すべきです。アストラル界に行くにしても準備が必要でしょうが、その時間すら惜しいです」

 

「アストラル界とはなんだ? それと一夏達を放っておいていいのか?」

 

「そうですね。現世と不死の領域の境目といえば大体分かるのですが...。簡単に言ってしまえば三途の川の一歩手前と言った所でしょうか?行くには世界移動(ブレーンウォーキング)という貴重な霊薬が必要です。まぁ、殺しても死なない人ですから、問題ないでしょう。彼に関する心配はするだけ無駄ですよ」

 

「そうね。護堂もあっさり終わる様な人ではないわ。それに一緒にいる彼女達も無事よ、きっと。あの二人の事だから、全力で守っているわ」

 

「―――そういうことでしたら、私がアストラル界にへ参りましょうか?」

 

 

突如聞こえた若い女性の声の方を全員が向いた。エリカやリリアナ、甘粕そしてマハードにも気取られずに者など滅多にいない。

 

 

「わたし、荒っぽい事は苦手なのです。だから、どうやって皆さんのお手伝いをしようか悩んでいたんですけど...。でも幸い、そちらの方面(・・・・・・)は専門家といってもいいですよ。お任せいただけませんか?」

 

 

各々、声の聞こえた方を見る中、エリカは珍しく驚きの表情が出ており、マハードは眉間に皺を寄せ飽きれていた。プラチナブロンドの二十代前半の美女は服装も相まって何処ともなく『お忍び街を歩く姫』を思わせる。取りあえず、彼女の頼ろうとマハード達は決断するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

激しい豪雨に打たれる山小屋の中に二人の神殺しと隠居した老神スサノオと即身仏と亜麻色の姫君の二人の人物がいた。

 

 

「よりにもよって、なんでここに居るんだ? 俺は」

 

「え? お前の意思で此処に来たんじゃないの?」

 

「そりゃあ、オレの劔がおめぇらをここに連れてきたからよ。ほれ、天叢雲」

 

「やっぱ、この劔は俺の所有物ってことなのか」

 

 

羅濠との戦いで追い詰められた時、右手が疼き気づけばここ幽世にたのだ。この事を後に合流した一夏に話すと「厨二病でも再発したか?」と揶揄われる始末。お前たちの存在そのものが厨二だと突っ込む輩は誰もいない。

 

 

「おおよ。まだ完全に掌握していなようだが、いずれは完全に使いこなせるようになるぜ。まぁ、長い間一緒に戦った相棒だ、大事にしてくれや」

 

「銃刀法違反するつもりなかったんだけどな...」

 

「うんうん、そうだね。それもまた銃刀法違反だね」←暗器仕込み捲ってる人

 

 

一夏はともかく、この剣が無ければ護堂はあの場でタコせんべいの如くプレスされていただろう。まぁ、そうならないように一夏は事前に仕込みをしていたので問題なかったのだが。

 

 

「それはそうと、万理谷達を元に戻してもらうわけにはいかないのか?」

 

「いかねえなァ。俺はざっくばらんな方だが、これでも神の端くれなのさ。御坊や姫だって、人間どもの前に軽々と姿を見せるわけにはいかねぇ立場だ。魔王でもない人間がオレらのことろに来るのは認められねえ。ま、しばらく我慢してくれ」

 

「お? 珍しく神様ぽいこと言ってるぞ此奴」

 

 

護堂は手元にある大小二つの櫛があった。この場所に転移した時、気絶した二人に対し何か唱えると櫛に変えられたのだ。一夏は、こうなることを理解していたので幻想大陸に置いてき、終わったら呼ぶ予定である。

 

 

「なにやら、外では面白そうなことを起こしているようですな」

 

「起こしているじゃなくて、巻き込まれただ!」

 

「結局、どちらにしろ事の渦中にいる以上、対して変わんないって。後、その被害者ズラがむかついて殴りたくなる」

 

「理不尽!?」

 

 

包帯のないミイラ、干乾びた即身仏に力一杯反論するが、一夏の癪に障ったのか歯食いしばれ、と拳を握る。そんな二人に咳払いし、十二単(じゅうにひとえ)を纏った手前にあった水鉢を押し出すと、そこには上半身のサルで下半身は石であり眼球は赤く瞳は金色。酷く奇妙な姿である。

 

 

「実は申しますと、『弼馬温』の城内に猿王を閉じ込めたのは私たちでございます。特に中心となって事を運びましたのは―――」

 

 

姫君にちらりと見られた即身仏は、歯のない口を開いて笑った。

 

 

「左様。地上にあった頃のそれがしでございます」

 

 

なんでそんな面倒ごとを、という視線を送る護堂を尻目に一夏は話を聞いていると気になる単語が出来た。

 

 

「実は、我が国には厄介な『御子』が眠っておりましてな。()つ国より流れ着いた播神、最強の《鋼》なる御子でござる。この神を起こすぬ為に、猿王殿には竜蛇除けに招いたのです」

 

 

最強の《鋼》という単語が一夏の頭の中から離れない。それは、決して忘れる事も記憶の片隅に置くことも許されないと一夏の勘が訴えていた。それこそ、目の前のサルよりも重要な事だ本能的に実感しているからだ。

 

 

「なるほどな、あのエテモンはそういう役割で此処にいたのか。だから、中国ではなく日本にいる訳か...。お前らにとって最強の《鋼》を目覚めさせることは何を犠牲にしてでも阻止したい存在という事か」

 

「え? 一夏さんつまりどういうことですか」

 

「お前は前にペルセウスと戦ったな。アイツは何が原因んで顕現した?竜蛇と《鋼》の関係を思い出してみろ。そしたら分かる」

 

「それは竜が現れて、それを打倒すために現れたはず。《鋼》は竜蛇を倒すことが役割みたいな感じで...。あのサルは竜蛇を倒す役割で招かれて、ここには《鋼》が眠っている......あ!」

 

 

あのサルがいる理由は理解した護堂だが、ここに来てからよく聞く単語に疑問があった。

 

 

「ここに来てから、ひつばおん(・・・・・)ってよく聞くけど、それはあの神の名前なのか?」

 

別の方(・・・)なら、あながち間違ってはいないだろうけど、正確には違う。弼馬温はいわば天界から与えられた役職だな。厩で馬を管理するそれが弼馬温。まぁ、低い役職で激怒して唆されて改名したよな《天に斉しき大聖者》ってな」

 

 

護堂の頭にある名前が浮かび上がってきた。それはあの剽軽なサルの本名。神としての名。護堂は試しにその名を口にしてみると夜叉王は「ようやくか」と呆れ、スサノオは「へえ」とつぶやき、姫は目を見開き、黒衣の僧はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべている。

 

 

「なんだお前、エテ公の正体に気づいたのかよ」

 

「ちょっと思いついただけだよ。くそ、もしかしたらアテナより有名かもしれないだろう!」

 

「子供でも知ってるだろうな。絵本やドラマにもなってるくらいだし」

 

 

その正体の気づいた護堂は舌打ちした。徳川家康とかそんなレベルではない。

 

 

「あのサルをもう一度封印するには、どうすればいいんだ!?」

 

「『弼馬温』の呪縛を解こうとしているのは、唐国の君。あの御方をあなた方の手で掣肘なされば。猿王も再び眠りにつきましょうが......」

 

「俺が猿山を倒すから、お前翠姐相手な」

 

「俺に死ねっていうんですか!?」

 

「戦って死んで強くなる神殺し生活」

 

「そんなのいやだぁぁぁぁ!!?」

 

 

取りあえず、決意と覚悟を叫びながら地上に戻すように言うが、スサノオと黒衣の僧が猿芝居をを始め、一夏はそんなやり取り白い目で見ていると、亜麻色の姫君が護堂と一夏に迎えが来ていることを伝えると、護堂を送る。

 

 

「で、お前は行かなくていいのかァ?」

 

「行く前に確認したい事があってね」

 

「エテ公の事か?それはお前さんの手で見つけるべきもんだろ」

 

「あのモンキーマジックなんざレベルを上げて物理で倒すからいい。俺が確認したいのは最強の《鋼》だ」

 

 

そう一夏が聞きたいことは、ちらっと話に上がった最強の《鋼》の事だ。未だにその全貌が掴めないその存在の手がかりがあるのだ。それを逃すような真似はしたくなかった。

 

 

「俺の勘なんだが、その最強の《鋼》は、『全ての神殺しを滅ぼす、祝福されし王』と以前聞いた奴と同一の存在じゃないかって思っている」

 

「なァ。織斑、それをどこで聞いた?オレ達はそれを一切外に話したことは無いんだ。なのにお前は何で知っている?お前は何処まで掴んでいやがる」

 

「氷山の一角、俺達神殺しに対する抑止力であり、幾度も現れては倒す規格外な存在としか知らん。情報元は俺が嘗て倒したまつろわぬ神、旧神ノーデンスだ。こいつを倒し、『この世界を裏で暗躍する混沌』を倒さない限り、俺たちに未来はない、と言われてな...。戯言だと流せばいいだろうが、俺にはどうしてもそうは思えないんだ」

 

 

一夏の口から出た思いがけない推測にスサノオ達は、先ほどまでのふざけた態度は消え、真剣な表情になる。

 

 

「前者については、詳しい事は今は教えられないなァ」

 

「同一の存在なのかこれさえわかれば俺は、次の対抗策が練れる。だから答えてくれ」

 

 

一夏の言葉に誰も答えない。だが、それが何を意味するのか、長い付き合いの一夏に理解できた。

 

 

「沈黙は肯定と取るぞ?」

 

「好きにしな。だが、後者に関してはお前の方が知ってるんじゃないのか」

 

「『虚妄と狂気、そして狂信的な夢見る男は、本来は此処には存在しない外(・・・・・・・・・・)の神話を言い当てることで、それは存在すると肯定された邪悪』恐らくは、この世界で最も新しい神話であり、最も邪悪で狂気に満ちた神々。だが、その中の誰が当てはまるのか俺には分からない」

 

 

一夏は、自分の推測が当たっているという証言は手に入った。後は自力で見つけるのみ。あの二つの戦いは今までにない熾烈な戦いになるだろう。その時、自分や護堂は大切なものを護り、勝利をもぎ取れるのか分からない。出来る限りの事はするし、最善は尽くす『織斑一夏』という存在の全てを捧げてでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付けば湖のほとりに居た護堂は、立っていた。水は清らかで、木々を透き通る風は気持ちよかったが、護堂はあることを思い出した。

 

 

「―――ッ、そうだ!万理谷達は!?」

 

 

竹の櫛にされていた二人が、手元にない事に気づいた護堂は周囲を見渡すと湖の近くで折り重なる二人を見つける。

 

 

「...ここは、まだ幽世の中なのですね?」

 

「う~ん...頭が痛くて、ものすごくだるいです。お兄さま」

 

 

意識を取り戻した二人に安堵する。特に羅濠との邂逅時、様子がおかしかったひかりも回復してるのが確認できた。護堂は、二人に櫛されている間の事を説明する。

 

 

 

「大体の事は分かりましたが、一緒に居た一夏さんはどちらに?」

 

「そういえば、白い王様見当たらないです」

 

 

 

護堂と一緒に居た、一夏の姿見当たらない事に不思議に思った巫女二人の前にナニかが、上空から土煙を上げ飛来した。

 

 

「待たせたな」

 

「スネェェェクッ!...じゃなくて、一夏。もう少し安全な方法で来れなかったの?」

 

「この手に限る」

 

「この手しか知らないんでしょ!!なんで、いきなり『これから高度1000mからスカイダイビングを始める』ってなるの!?あの都市に行くとき普通に行けたよね!!?悲鳴すら上げる暇なかったよ!!気絶してたから!!!」

 

「最高のショーだと思わんかね!」(愉悦的な意味で)

 

「そんなに落ちたいんなら、一夏なんて、バルスされちゃえばいいんだよ!!」

 

 

土煙の中から聞こえた声に、心配するだけ無駄だと実感した。

 

 

「一夏さん...なにしてるんですか...?」

 

「いや、そのまま海門(ゲート)潜ってきてもインパクト少ないし、なら上空から行ったら面白いんじゃね?、て考えてな」

 

「もう...、あんなの...こりごり...」

 

 

楽しさとスリル、そして愉悦を求めた結果があの行動なのだろう。確かに、インパクトはデカいが、犠牲(同行)者は顔を真っ青にし、口元を抑えてる当たり相当な恐怖なのだろう。

 

 

「で、向かえは誰が来るんだ? てか、遅くね」

 

「もう来ておりますよ。やっと見つけました!」

 

「What?」

 

「うわぁぁ!?」

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

 

声がしたと思ったら、いきなり一夏達の前に一人の女性が立っているのだから、驚かない方が無理である。現にシャルロットは悲鳴を上げている。

 

 

「びっくりさせてごめんなさい。わたし、これでもあなた方の見方です。実はエリカ・ブランデッリとは以前からの知り合でもあります」

 

 

プラチナブロンドを輝かせる。優美な白人女性に一夏が近づくと握りこぶしを振り下ろす。

 

 

「痛い!?何をするのですか!」

 

「痛い、じぇね!お前こそ何をやってるんだ!!アレク(保護者)呼ぶぞ!!」

 

「待ってください!保護者って誰ですか!!もしかして、アレクですか!?そもそも、毎度のことながら、幽体なにのに痛く感じるの?!」

 

「魂とか魔術が関連してるなら、いくらでも権能で対応できるわ」

 

 

近づくくと何の迷いもなく、拳を振り下ろす当たり旧知の中なのだろう、と考える護堂は薄っすらと涙を浮かべながらゲンコツが落とされた頭部を抑える女性とは、どのような関係なのか気になった。

 

 

「来てもらってなんだけど、立て込んでるから名前を教えてもらえるか?」

 

「今回の出張では『匿名希望の謎の美女』で通すつもりなのですが...」

 

「エリクソンとアレクの番号は、と」

 

「で、ですが王のご下問とあれば、とぼけられませんね。仕方ありません、お答えいたしましょう」

 

 

色々と面倒ごとが舞い込んでいる為、時間が惜しい護堂は謎の女性の名前を訊こうとするも、答えようか迷ってる様子を見た一夏はこの女性の最も関わりのある二人の名前を出しつつ、スマホをいじる。あ、これチクられる、と理解した女性は名乗ることを余儀なくされた。

 

 

「名をアリスと申します。ときどき「プリンセス」等と呼ぶ方もいらっしゃいますが、わたしは恥ずかしくて口にできません」

 

 

これで問題ないですか、と一夏を見るアリスと名乗る女性。その名を聞いた祐理、ひかり、簪はまるで有名人でも見るかのような視線を送っている。ここまで来た経緯を話し、幽世に着くはいいものの中々見つからず苦労したと漏らすアリス。そんな彼女右は日本に来日した経緯を説明し始めた。

 

 

「実はわたし、ある魔女の足跡を追ってフランスからアジアに渡ってきたのです。今回羅濠教主が贄とした蛇神レヴィアタン。あれを融通したのは彼女の仕業です。私は追跡の対象を蛇神と教主に変え、日本にやってきました。そして、護堂さまの不在で困っているエリカ達にあいまして、協力を申し出たのです」

 

「傍迷惑な連中が、好き勝手にワールドワイドで暗躍してるんだな...」←戦闘の余波で色々壊してる人(予備軍)

 

「お、せやな」←世界中で有名且つ活躍、暴れまくってる人(末期)

 

 

アリスが日本来日の理由を聞いた護堂は、迷惑な連中もいるんだな、とブーメランともいえる事を口にしながら、周りからしたら自分たちがそれなんだよな、と思いのほか自覚症状のある一夏だった。そんな彼はここに近づく気配に気づくと、警戒度を上げる。現れたのは、猿猴神君の面影を持つサルであった。

 

 

「彼奴の分身みたいなのか」

 

「護堂さまの権能でなんとかなりませんか?一夏は、私達に対する被害が出るので結構です」

 

「俺の力は色々制限があって使いにくいんだ」

 

「あ゛?お前は少し、権能を手に入れる事を少し考えろ。お前ら、俺の周りに密着するように集まれ。そうそう、そんな感じ」

 

 

一夏が指示を出している間も20にも及ぶ猿共は、包囲しじわじわと追い詰めてくる。不安になる一行に対し、一夏が口角を二ィ、と上げると一瞬一夏の周辺に呪力が迸る。

 

 

「畜生の分際で、いい気になってんじゃねぇぞ!」

 

 

一夏周辺から護堂たちを巻き込まないように、衝撃波が放たれ、サルたちはそのまま吹き飛ばされていく。

 

 

「一夏さん...。今何をしたんですか?」

 

「俺の呪力を放出して吹き飛ばした。いやー、お前たちを吹き飛ばさないようにするの面倒なんだわ、これ。地上に戻る手段あるんだろ?ほら、ととっと使えよ」

 

「実は、幽世でみなさんを探していたらアストラル体の呪力を大きく使ってしまいまして、地上に戻る儀式が出来ません。どうしましょう?」

 

「一応、そういう事(・・・・・)にしておいてやるが、次はない」

 

 

ここに来て、呪力が足りないと言い始めるアリスに一夏は小さな青筋を浮かべ始める。これ以上は色々と疲れると感じた一夏は、アリスの儀式ではなく、別の方法でどうやって戻るか考える。

 

 

 

 

 

 

 

地上に居るエリカに護堂のウルスラグナの権能、十の化身の一つ《強風》は、発動条件こそ限られるが、自分を呼ぶ相手の下に風に包まれ瞬間移動する事が可能である。

 

 

 

「移動方法は分かったから、後は翠姐の対処か...。これが一番の難題なのよネー」

 

「でも、二人がかりでなんとかなるようには見えないけど...。一夏は、なにか対策とかあるの?」

 

「私にいい考えがる」

 

「ものすっごい不安なんだが...」

 

 

ISのハイパーセンサーを駆使し、様子を窺っていたシャルロットは一夏に何か作戦はないか聞くと、人差し指を立てながら言うが、この考えはきっと碌な目に合わないんだろううなと考えていた護堂は言いようもない不安があった。後、今の一夏から妙な胡散臭さが漂っていた。

 

 

「取りあえず、最後の決め手は護堂。お前だ」

 

「というとそれまでの直接対決は一夏さんが?」

 

「正確には、序盤から中盤までだな。取りあえず、『駱駝』と『鳳』可能であれば『戦士』かな。作戦としてはね――――」

 

 

一夏は意気揚々と現状の戦力で、羅濠に認められ尚且つ勝利をもぎ取る作戦を護堂に説明する。成功するための保険込みの作戦に護堂は舌を巻く。

 

 

「一番大事なのは一番最初の俺だが...。まぁ、成功するだろう。人間が持つ思い込み(・・・・)を利用させてもらう。ちょっと、呪力回復したいから一人にしてくないか?本格戦闘となると、相当な呪力使うんよね」

 

「そういうことも出来るんですね...」

 

 

だろ、と一夏は最初の仕込みが成功するという、確信があった。そしてその理由を説明した時、一同目を見開き、特に魔術に関して詳しいアリスは驚きを隠せずにいた。そんな中、他の女性陣と話していた万理谷護堂達に近づく。

 

 

「申し訳ありません。一夏さん、少しだけ席を外してもらってよろしいでしょうか?」

 

「なんでそんなこと...。あー、そういうこと完全に理解した」

 

「いや、絶対理解してないですよね?」

 

 

万理谷からのお願いに一夏は、腕を組みながら内容を把握したような素振りを見せるが、護堂はしていないだろと離れていく一夏をジト目で見ていた。

 

 

 

「どうしたんだ万理谷? みんなで帰るんだから一緒に居た方がいいぞ。でも、一夏さんは別行動だったな」

 

「わ、わかっています。ですが、席を外してもらった方がよろしいかと......」

 

「なんでさ? このままエリカが俺の事を呼んだらアリスさんもひかりも置き去りになるんだろ? 早く呼び戻してこよう」

 

 

護堂としては当然の指摘をしたつもりだったが、しかし祐理は驚愕の表情で、

 

 

「で、ですが、私達は今からあれ(・・)をするのではないのですか......?」

 

「あ、あれ? あれってなんだよ?」

 

「あれと言ったら、あれです。あなたはまもなく羅濠教主と戦われます。あの方の権能を『剣』の言霊で無力化するために、ここで準備を済ましておくべきでしょう。とっくにお気づきだと思っておりました」

 

 

言った本人である祐理は顔からうなじまで赤く染まり、すでに霊視済みでいつでも問題ないという祐理に、護堂は覚悟を決め唇を重ねる。そして、その様子を遠くから見守る四つの人影。

 

 

『お姫様の言う通りお姉ちゃんとお兄さま、凄い事をしてます!』

 

『ね?言った通り来てよかったでしょ? あの巫女は何か隠しているとは、思っていましたが......ここまで凄いものが見れるとは思いませんでした!』

 

『あの二人、いつもこんな事してるの?うわー、舌まで入って、あんなに激しくして!い、一夏もこういうのする時とかあるのかな!?今から練習した方がいいかな!?』

 

『正直、一夏は必要ないような...。で、でも一夏の時はもっと、こう...激しいのかな』

 

 

 

外野の存在に気づいた護堂は気まずくなるも、目の前の少女は気づいておらず、没頭しており、集中力を欠いてはいけないと、自分だけに集中するように仕向ける。徐々にヒートアップしていく様を見守る四人の背後に一人の夜叉が降臨した。

ゴツンという音共に四人が草むらから出る。

 

 

「ひ、ひかり!?離れていてってて言ったのに!?」

 

「ごめんお姉ちゃん......。見ちゃった」

 

「――――――!?」

 

 

妹の告白に声にならない悲鳴を上げる万理谷。

 

 

「何、見られると興奮するのか?所構わず、公然の場でキスするバカップルか?こっち来るなとか言ったら行きたくなるのが人間だろ?お前ら馬鹿だろ」

 

「お願いです一夏さん!これ以上は、言わないでください!!万理谷が羞恥死しちまう!!」

 

「後、お前らもそういうのは興味本位で見るもんじゃね。見るなら本人の前で堂々と見やがれ」

 

「後半可笑しいですよ一夏さん!!?一夏さんだって、こうやって教授とかやって事あるでしょ!」

 

「は?俺は―――」

 

 

一夏は必要とはいえ、キスをしていた護堂達を煽り始めるが、その言葉は護堂の『剣』の如く、主に万理谷に突き刺さり、全身を真っ赤に染め上げ、両手で顔を隠しながら俯いていた。それを見かねた護堂は一夏にこれ以上はやめろとお願いする中、一夏は興味本位で見ていた四人に注意するが、後半はかなりズレた事を言っていた。護堂も反撃と言わんばかりに一度くらい経験あるだろ、というと一夏は少し、昔を思い出す。

 

 

『フフフ...世界を股にかけた追いかけっこ...。恋人同士が浜辺で追いかけっこする気持ちがわかるわ!追いかけ、弱らせ、そして食べる...その過程と雰囲気を作る絶好の行為よ!!』

 

『んぁ...あぁん...。あぁ、いいわ、いいわ、とてもいいわッ! やはりあなたと体の相性は最高を通り越して完璧よ!!両手足を切り落として、意識を消失させ愛玩人形にしなくて正解だわ!!』

 

『触れあった肌から伝わるかしら?私の温もりを。あなたの温もりや鼓動すらとても気持ちよく感じるわぁ』

 

『その怒りと憎しみ、そして絶望に染まった表情もそそっていい!その奥に見える諦めないで燃え続ける希望も逆にそれを挫折させたい...!アァ...心も体も昂っていく...体が熱くなって止まらない!!』

 

『さぁ、まだ夜はここからよ? 淫靡に淫蕩に、廃退的にどこまでも堕ちていきましょう。もっと深くもっと奥へ一緒に進みましょ。可愛い、可愛い私の愛玩ペット(ア・ナ・タ)

 

 

「うっ...」

 

「ゑ? 一夏さん?一夏さぁン!?」

 

 

キスとか余りしたことの無い一夏は、記憶の奥底まで思い返すとあの日のトラウマが蘇る。そう、一夏が女性とのそういうことに対して苦手意識が芽生えた原因である淫乱クソビッチ諸悪ビチクソ腰軽女悪魔(リリス)の事を思い出した一夏は一瞬にして顔が蒼白になると口元を抑え木々の奥へと向かった。要領を得ないひかりは首を傾げ、ある程度一夏の過去を知っている人たちはトラウマが蘇ったのだと理解し、きっと銀色のアーチを作りながらリバースしているだろう。

 

 

「ややや、やばい!?一夏さんの逆鱗に触れちまった...!どうしよう、どうしよう!」

 

「だ、大丈夫ですよ。...きっと」

 

「取りあえず、誠心誠意謝罪した方がいいかな...」

 

 

 

無意識のうちにやらかしてしまったことに気づいた護堂は怯え始め、他の人たちがフォローする一夏は、口元をハンカチで拭きその場で燃やす。

 

 

「あ、あの一夏さん...」

 

「安心しろ今回はお前は悪くない。俺が記憶を呼び起こしすぎただけだからな。...まぁ、翠姐戦ってる最中の誤射には注意しておけよ」

 

 

あ、行動一つで天罰下るな、と思った護堂は『確実に勝とう、必ず勝とう、絶対勝とう!』負けたら何をされるのか分からない。明日をもぎ取る為に護堂は戦意を滾らせるのだった。

 

 

『来なさい、草薙護堂!あなたの女がこんなところで死にかけて、あんなヤツにいいようにされているのよ!? 今すぐ駆けつけて、仕返しして頂戴!』

 

「誰が俺の女だ。勝手に設定作ってるんじゃないぞ......!」

 

 

だが、これは二重の意味で救いの手。今までの気まずさを払うように周りに女性を手招きする。そして、護堂は《風》に乗って飛び、幽世から地上へ、仲間達が待つ日本の聖域へ!周囲で吹き荒れる暴風が消え去ったとき、東照宮最上部の奥社にたどり着いた。

 

 

 

 

「―――草薙王よ、幽冥界と人界の狭間を風に乗って超えましたか」

 

 

あの麗しい花の様な可憐さで、羅濠教主はにっこりと笑いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羅濠の愛おしさは今まで出会った美少女を凌ぐほどだが、一度手合わせをした護堂にはゴリラ女(脳筋凄女)にしか見えず、女性ではなく拳闘士(グラップラー)という認識が出来つつあった。

 

 

「あなたは武と膂力だけだはなく、術にも通じているのですね。ふふふ、新たな倭国の王がここまで見どころのある若者だったとは、嬉しき発見です。今の世に幾人の『王』がいるかは知りませんが知勇双全なるはこの羅濠のみ。しかし、あなたや夜叉王は我が後継者となるやもしれません」

 

「あんたの後継者なんか、冗談じゃない。誰がそんなのになるかよ。俺は他人を傷つける武道なんかに興味ないし、怪しい魔術なんか勉強するつもりなんざ金輪際ないんだよ!」

 

「そうでありながら、強大な権能を握りますか」

 

 

可愛い弟でも眺めるような眼を教主の眼を、真っ向から睨みつける。

 

 

「それもまた王者の特権です。たとえば我が仇敵、東欧の狼王は武芸を知らず、魔術にも背を向けた魔王。それでいて彼はわたくしと同等の力を持つのですから。また逆も然り、この羅濠のように武芸に励み、様々な魔術に精通する我が義弟、夜叉王もわたくしに迫る勢いで強くなっています。いずれはわたくしと同等もしくはそれ以上の力を持つでしょう。それほど内に秘めたる力は凄まじいものです」

 

 

狼王というのが一瞬分からなかった護堂だが、それがヴォパンを示していることに気づくのにさほど時間はかからなかった。確かに死者を隷属、狼に変身など異常なところはあるが、身近にそれを超える逸般人(一夏)がいるせいか羅濠と同等という言葉がしっくりこなかった。

 

 

「とにかく!俺はあんたのやろうとすることは認めない。あのサルを神様に戻すなんざふざけすぎている。おかげで、万理谷やひかりが大変な事になったんだ。俺は平和主義をを掲げているが今だけ返上して、あんたとやりあってやる」

 

「このわたくしと武で競うと?勝てるつもりですか、草薙よ?夜叉王がこの場に居ない状況で......。いいえ、彼の事です何か企んでこの場に居ないのでしょう」

 

「勝てるかどうかはどうかが問題じゃない。やるかやらないかが問題なんだ。そして俺は大いにやる気だ!」

 

「その言や良し。この羅翠蓮の権能と絶技、存分に味わいなさい!」

 

 

互いに戦闘態勢に入ったとき、羅濠の上空から12本の剣が円を描きながら降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーと、そろそろ始まるな。じゃあ、始めますか」

 

 

一人、幽世に残っていた一夏は木の上から地上の様子を確認すると海門を二重に開き、聖句を唱える。

 

 

「集え、十二勇士よ!今此処に我らは王勇を示さん!―――疑似勇士召喚!!」

 

 

一夏の周りに12本の剣が現れると海門の中に落とすと一つ目を閉じる。

 

 

「我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ。さあ、月と星を創りしものよ。 我が行い、我が最期、我が成しうる“聖なる献身”を見よ!――――流星一条(ステラ)ァァ!!」

 

 

続くように流星一条を放ち、別の弓を取り出し海門越しから地上の状況を確認しながら、2本の矢を番える。

 

 

「太陽神と月女神の加護を願い奉る。この災厄を捧がん」

 

 

上空に放たれた2本の矢は矢の豪雨となり降り注ぐと残った海門を広げ、豪雨の矢は吸い込れていく中一夏もその中に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

羅濠の退路を断たんなと言わんばかりに周囲に突き刺ささるとほぼ同時に頭上から極光が降り注ぐ。極光が羅濠に触れる間際に剣が爆発、一瞬怯んだ羅濠の眼前まで迫っていたが、その自慢の腕力を持ってして、上空に弾く。だが、それすらも予想していたと言わんばかりに矢の豪雨が羅濠を襲った。

 

 

「なんという波状攻撃でしょう。相手の退路を立った上でのあの砲撃、たとえ外れても問題ない様に次の手を用意するのは戦の常とはいえ、ここまでのモノを用意するとは...流石夜叉王と言った所でしょう」

 

「では、次の手に移らせてもらおう」

 

「む?」

 

 

豪雨により多少被弾するも未だ、大して特にダメージとなっている様子はない。それを何処かで窺っていた一夏は次の一手を打つ。羅濠の周辺に複数の魔法陣が現れるとそこから伸びた黄金の鎖が、羅濠の四肢を拘束すると背後から音もなく現れた一夏は頂肘すなわち肘打ちの態勢で羅濠の背中にまで接近する。拘束?そんなもの知らん、と言わんばかりに鎖を砕き回し蹴りをするも靄の様に揺らめき空ぶると背後から重い音が響く。そこには鉄山靠をした一夏の姿あった。

 

 

「ぐっ...この羅濠の背後を取るだけではなく、ここまでの一撃を与えるとは見事です。夜叉王」

 

「かの李書文により、鍛え上げた正統派の八極拳。その一撃は二の打ちあらずという文字通り一撃必殺の技だ。一撃で終わらせるつもりで、放った一撃だがやはり耐えるか...。一人で戦うのには俺は力不足だ、だから二人一組で戦わせてもらう」

 

 

一夏の言葉に護堂は一歩前に出ると『駱駝』を使う。本来、『駱駝』は一定以上のダメージを負うのが条件だが、護堂は先ほどまで戦っていない為、傷は負っていない。なら、何故発動できるのか。それは一夏が鉄山靠をした時、護堂は近くに居たのだが、その際鉄山靠をした際に放たれた衝撃波は護堂にまで届き、条件を満たすほどのダメージを与えたのだ。発動条件を最小限のダメージで済んだのだが、味方の余波で発動したことに護堂は少し複雑な気持ちになった。

 

 

「ほお...以前と交えた時と動きが変わりましたね。技ではない。闘士と精強さで勝利を引き寄せる、獣の身ごなし―――。敵の力と状況に合わせて自らを変える。あなたは千変万化の闘神より戦いの権能を簒奪したのですね。そして、それを良く使いこなしている!」

 

 

護堂は蹴りを放つも容易に躱す羅濠。『駱駝』を使ったことにより、格闘センスの向上に加え異常回復能力もあるためなんとか凌げていたが、絶技を見せようと少し本気を出した羅濠は瞬く間に護堂の顎を掌打で撃ち抜かれ、両手の掌で腹を打たれ、肩の鎖骨の当たりを手刀で抉られ、揃えられた指で腿を穿たれた上に衝撃波まで使ってきた。

 

 

「アグニの咆哮!」

 

 

それを見かねた一夏は二人の間に高威力の矢を放ち、距離を作り、そして一夏は一歩前に出ると神速で動き始める。

 

 

「神速の弓...受けてみるか!」

 

 

四方八方から襲う攻撃に羅濠は焦らず躱し、例の謡が出てくる。

 

 

「猶お()る、太白の雪。遇うを喜ぶ、武夫の天。影は静かなり、千官の裏。心蘇る、七校の前。今朝より漢の社稷(しゃしょく)は新たに中興の年を数えん」

 

「開け!海門ッ!!」

 

 

見えない壁の如く、衝撃波が襲いかかるが、一夏が護堂の前に行くと空気中の水分と幽世の湖にあった水をあらかじめ開いた海門から流し込み、10メートルはあるであろう渦巻く水壁を作り防いでいた。

 

 

「あの衝撃波を防ぐなんて...。流石です!一夏さん!!」

 

「衝撃波は防げても翠姐自身は防げないしなー。あ、そうそう護堂」

 

「なんですか一夏さん?」

 

「仕込み失敗した」

 

 

一夏の思わぬ一言に(゚д゚)ハァ?と思わず間抜け顔になったのは致しかたないだろう。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!? 当初の作戦失敗したら負ける未来濃厚じゃないですか!?」

 

「諦めんなよぉ!」

 

 

我に返った護堂は思わず叫ぶ隣で、頑張れ頑張れできるできる絶対出来る頑張れもっとやれるって! やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ! そこで諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張れ頑張れ と鼓舞している暑苦しい一夏の姿は見えてない。見えてないったら見えてない。

 

 

「じゃ、どうすれば...」

 

「諦めたらそこで試合終了ですよ?」

 

「一夏さんは少し黙ってください。いや、ほんとマジで」

 

「と言われても...」

 

 

ザシュ、と肉を裂く音が聞こえると一夏の左腕が宙を舞う。

 

 

「ッ!?」

 

「この通り、左腕損失してるんよ。まぁ、時間は稼ぐからさ、それになんも問題ないからさ。鮮血よ、鮮やかに舞え」

 

「む?」

 

 

次の一手を打とうとする羅濠に対し、余裕の表情を崩さない一夏は護堂に問題ないと伝えると、宙に舞う左腕がさく裂すると鮮血が矢のように二人の間を射抜くと、その隙に海門を一夏と護堂の周辺を隔離するように覆う。羅濠の衝撃波も肉体も内側まで通さず、成す術がない状況が一分ほど過ぎた時だった。

 

 

「これは...水蒸気?」

 

 

辺り一面を水蒸気が覆い、視覚を封じられ中、水蒸気の些細な動きから何かが上空に飛ぶのがわかった。

 

 

「例え、一夜一時の幻であろうと我らは此処に王勇を示す。聖騎士帝よ示せ(シュヴァリエ)儚き幻の輝剣(・パラディン)!!」

 

「ほお、なんと優美な」

 

 

上空に飛び立ったのは一夏だった。左右に展開された12本の剣が広がる際、まるで天使の羽ばたきの様なものが一瞬見えると目標に(羅濠教主)向けて、手に持っていた聖剣から放たれた13の光が降り注ぐ。直撃こそ免れているが、放たれた光が着弾する際に周囲を爆破しており、微々たるものだが着実にダメージを与えていた。攻撃を終え、滞空している一夏の動きがない事に疑問を持った、羅濠にナニか別の力が作用したのか急に体制を崩す。倒れ際に見たのは黄金の馬上槍を振り回した一夏の姿であった。

 

 

「粉砕爆裂ッ!!」

 

「むっ?」

 

 

倒れる前にすぐさま体勢を立て直すが、先ほど羅濠がいた場所に先ほどとは別の剣を持ち、地面に叩き付けると爆炎と共に大きな爆発音が轟く。

 

 

「わたしの眼には夜叉王が二人いる(・・・・)様に見えます。あなたの十八番である相手を欺く戦いは変わりませんね」

 

「人間そう簡単に変わるのであれば、とっくに人類はよりいい方向に進んでいる。そうならないのは人間が同じことを繰り返す愚かな生き物だからだ」

 

「長い年月を生きる羅濠の眼から見てもそれは明白でしょう。戦い、奪い、見下し、差別しそれを繰り返し続けている。高度な技術革命を遂げると同時にそれは悪化の一途をたどり、ISと呼ばれる鉄鎧もそうです。蒸気機関から堕落をより加速くさせているのですよ? 女性が使えるから女性が優れている...?戯言も行き過ぎれば狂気といえましょう。人類史を支えてきたのは女性かと言われれば否、天動説を覆した星見は? 天才と謳われし芸術家は? 神の雷を人類にもたらした者は? 世に名を轟かせている者たちの大半は男性です。それに対し、過去の偉人を咎めて尚、鉄くずに乗れる自分たちの方が優秀と謳う者たちの心情は理解できず、呆れを通り越して苛立ちすら覚えます。何故、あのような不出来なものを世に知らしめたのかあの物の意図が計り知れません。全くを持って女尊男卑とは愚かなものです」

 

「お、おう」

 

 

上空に滞空する一夏の姿が一瞬ぶれるとそこには骸の大きな鳥に捕まり剣を振り下ろした髑髏がいた。昔から変わらない戦い方についての話だったが、いつの間にかISに対する非難に代わっていた。思いのほか、よく見ているなと思いながら一夏は話を聞いていたが、この会話が聞こえたであろうIS勢の顔色が悪いのは気のせいだろう。もしかして人類に味方するカンピオーネ少ない?私達護られない?、と不安にはなっているのはおいとこう。

 

 

「ま、まぁ...取りあえずは今回タッグなのでね。そろそろ翠姐の気になっているあいつに頑張ってもらおうかな。行けるよな? 護堂」

 

「大丈夫です、一夏さん! 羅濠教主! あんたの謡はインドの女神ガーヤトリーを倒して簒奪した権能だ! 五面十臂―――五つの顔と十本の腕を持ち、聖なる賛歌を女神に擬して拝めた神格!」

 

 

護堂の周辺に星のように瞬き出すと、羅濠の周囲では衝撃波に伴う魔風が周辺を破壊し、夜空を彩る星々の様に煌めく光を自分の周りに展開し、衝撃の魔風から身を護る。

 

 

「古代バラモン教の聖典であるヴェーダ。ガーヤトリーとはヴェーダの韻律のひとつ、典型の一パターンをも指す言葉だ。でも、神としてのガーヤトリ―は創造神ブラフマーの妻にして河の女神、文字と言葉の女神、更の遡れば地母神にまで至るサラスヴァティーと同体を成す。極めて高位の女神なんだ!」

 

 

今や教主の放った衝撃波は最大限まで高められている。形あるものはすべて破壊され、無事なのは台風の眼である教主と『剣』によって守られている護堂、海門を開き迫りくる衝撃波を幻想大陸(アトランティス)に流すことで身を守っているが、衝撃波の到達地であるアトランティスはもはや、発掘された古代遺跡の如くボロボロ......で済んでいればいいな、と考える一夏だった。

 

 

「サラスヴァティーはサンスクリット語とデーヴァナーガリー文字の創造主。音楽と武芸を司る女神であり、日本では弁財天となる。ガーヤトリーとしての彼女は音の霊を操り、神々へ捧げる賛歌を司る女神! これがあんたの権能の源だ!」

 

 

『剣』を加速させ女神ガーヤトリ―の権能を切り裂かせる。手応えはあった。唐突に荒れ狂う魔風が止み衝撃波による破壊も停止した。

 

 

「神を切り裂く言霊の剣、見事なり!草薙王―――いえ、草薙護堂よ。魔王としての我が生は200有余年、このような手で私を追い詰めたものはほんの一握りのみ! ふふふ、やはり同格のモノとの仕合は心躍ります。今度は我が絶技を披露しましょう!」

 

 

羅濠の言葉の中で特に「仕合いは心躍る」という言葉に同意すかのように頷く戦闘狂。さて、一夏の目的である護堂が羅濠に認められるという目的は達成したも同然だ。ならば、残るは全身に闘気に満ち、殺る気満々の羅濠を倒すのみ。自覚せずに微笑む護堂は東に意識を向ける。羅濠の横暴さは、民衆の敵に対する正義の焔を解き放させてくれた。

 

 

 

「我がもとに来たれ、勝利の為に。不死の太陽よ、輝ける駿馬を遣わし給え。瞬足にして霊妙なる馬よ、汝の主たる光輪を疾く運べ!」

 

 

ウルスラグナ第三の化身で、太陽の似姿である『白馬』を呼び出した。

 

 

西に沈んでいく太陽とは別に東から暁の曙光を放つ。天体としての太陽では、その大気中で爆発が起きるという。それがフレアだ。東天より、麗しき魔教教主めがけて、白く燃える焔の鉾先が伸びていく。それはまさしく白いフレアそのものだった。それを見た羅濠教主は言霊を唱えると仁王尊を今度は二体呼び出すと白き焔の前に雄々しく立ちはだかると。

 

 

――(フン)ッ!!――()ァッ!!

 

 

二重の掛け声とともに前に踏み出すと羅濠教主の前で肉壁に『白馬』の焔から護った。黄金の肉体がドロドロに融解する必死の形相で耐えていた。宇宙的スケールの超々高温のと破壊から、創造主を護ろうとしているのだ。やがて、暁の曙光が消え、白色のフレアの槍も攻撃を止めた。終わると同時にドサッと膝を突く仁王尊の半分は融解し、残りもひかりとなり消える中、仁王尊の顔はやり切った漢の顔だった。

 

 

「そんなてがあったなんて...」

 

「いや、可笑しい。絶対可笑しい。俺の流星一条の時も同じだけど絶対おかしいって。あの人さ異能生存体かなんかじゃないの?」

 

「わたくしは、賛嘆の念を惜しみません。次は当方が絶技を見せましょう。羅翠蓮の拳脚と掌は、100万の軍さえ滅ぼすと知りなさい!」

 

 

 

 

 

 

そこからは超高速の戦いだった。鳳凰の如く舞ながら戦う羅濠、その速さにウルスラグナ最速の『鳳』で回避し、攻撃に移り、師より優れた縮地と神速による高速戦が始まった。それを遠くから見ていた者は「凄い...」「一体...何が起きているんだ?」「目で追うのがやっとだ」大半がヤムチャ視点になっていた。そんな高速戦の中護堂は不利な状況だった。低スペックPCでオンラインゲームをしているかのように二人の動きがカクカクするのだ。

 

 

「これはどうだ!」

 

「残念ながらその手は届きませんよ。一夏」

 

「挟み撃ちなら!」

 

 

同じ領域で動ける一夏が羅濠の動きを止め、何とか追いつける護堂が隙を突くという戦法を取るも一向に決まらないでいた。互いの顔を見るや一夏と護堂は一端後ろに下がる。

 

 

「ほお......覚悟決めましたか。よい目をしています」

 

 

二人からの攻撃を待つかのように無防備の様で無防備ではない、彼女の狙っているのはカウンターだという事は二人は理解した。

 

 

「行くぞッ!」

 

「来ますか義弟ッ!」

 

 

一夏は羅濠に肉薄すると把子拳と呼ばれる指を握り込まない八極拳特有の拳で、貫通力に優れた“穿つ拳”を放つもカウンターを放つと、一夏の身体が壊れたガラス細工のように砕けるとすかさず突然現れた一夏が頂寸を放つ。

 

 

「グッ...ですがまだ甘い!」

 

 

教主もすかさず全身の筋の連動を一点集中させ、密着状態で放たれる発勁である「寸勁」を放つと頂寸を放った一夏は陽炎の様に揺らめく。一体何が...、と疑問に思っていた時一つの衝撃が羅濠を襲う。いつの間にか接近を許した護堂が右の拳を羅濠の鳩尾にめり込ませていた。『く』の時に折れ、膝を突くとそこで予期せぬ事態が起きた。轟!と風が唸りを上げると護堂の拳と羅濠の鳩尾の間で、風が唸り、地上のあらゆる物体を薙ぎ倒す衝撃波が羅濠を駆け抜けた。まるで羅濠が衝撃波の魔風雨を生み出したように。

 

 

「なんとか勝てたな」

 

「一夏さん...」

 

 

護堂の後ろから、一夏が歩み寄っていく。

 

 

「一夏さんの『幻術で隙を作り、一気に攻める』という作戦はうまくいきましたね」

 

「まぁ、といってもされは最後だがな。最初に悟られないように幻術を仕込み、機を見て発動させ、一気に攻め落とす」

 

「にしても本当に起きるんですね。起きていないのに痛みが襲うって」

 

「脳の誤作動によりありもしない痛みが本当にあったように起きる(・・・・・・・・・)痛み―――幻痛(ファントムペイン)。一度目は把子拳はちゃんと起きるかの再確認、二度目の幻術で隙を作り、三度目はお前を認識できないようにし、一番にいいのを食らわせる。うまくいってなに...より...」

 

「い、一夏さん...!?」

 

 

痛みは脳から送られた信号の受信で成立する。今回の幻痛の理屈は、その信号を誤作動させる事で本当に痛みが起きたように肉体を錯覚させるというものだ。中盤の失敗という発言は嘘であり、敵を騙すならまずは味方からという考からだ。一夏は護堂の肩に触れようとした緊張が解れ、疲労が一気に来たのか、後ろに倒れ、そんな一夏を助けようとした護堂の心臓がギリギリと、絞められるような痛みが襲う。『鳳』の副作用だ。

 

 

「あー......これは師父の負けですねェ」

 

 

皮肉っぽい声が告げたのはその直後だった。

 

 

 

 




夏休み恒例行事のアレンジとしてラジオア○ゴリズム体操をすることにした。
本日の歌の皆さん。箒、セシリア、鈴、ラウラ、楯無、マハード、マナ。体操ペアは一夏、束ペア、シャルロット、簪ペア。スマホにスピーカを繋げ、音楽を流す。


<テッテレッテテッテテッテテーテッテ


『こっち向いて二人で前ならえ~♪×4』

『手を横に~』

『あら危ないッ!!(一夏がシャイニングウィザード)』

「イィィタッタイ!!」

『頭を下げれぶつかりません。手を横に~』

『あら危ない(束が波動拳)』

『頭を下げれ大丈夫(後方に阿修羅閃空)』


そして、ISを起動した簪が同じく起動したシャルロットの手を掴む


「回転ッ!」

「ふみゃ!?」

『ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐ~るぐ~る~♪×2』


そして曲も終盤に差し掛かり


『パッチン(ビンタ)パッチン(全力ビンタ)ガシン(頭掴んで)ガシン(頭突き)×2』

「うごっ...!?」

『パッチン(しげるビンタ)パッチン(往復ビンタ)ガシン(一夏を空中で掴み)ガシン(飯綱落とし)』

「まそっぷ!?」

『パッチン(蝶野ビンタ)パッチン(倍返し蝶野ビンタ)ガシン(束を空中で掴み)ガシン(マッスルスパーク)』

「ホウセイキュアアムールゥァァァ!?」


そして最後の締めに一夏と簪が......


「「吸って吐いたら...」」


一夏は山吹色、簪は銀色の波紋を両手に纏わり......


「「波紋疾走(オーバードライブ)!!!!」」

『ギャァァァァ!!?』


こうして朝の(殺伐とした)アルゴリズム体操は終わったのだった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Fの世界 影の国と邂逅

一日遅れだけど、明けましておめでとう。
今年も執筆していくのでよろしく。


「あー......これは師父の負けですねェ」

 

 

皮肉っぽい発言をしたのは細身の少年だった。羅濠教主の直弟子の一人にして、一夏の弟弟子である陸鷹化だ。彼と共にエリカやリリアナも歩み寄ってくる。どうやら無事の様で護堂は安堵した。

 

 

「負けね...。俺一人じゃ、どうにもならなかったらな。一夏さんが居なかったら負けてたのは、こっちだからな」

 

「一夏兄さんのことだから、ある程度余裕を残して戦ってるからなァ。まぁ、草薙さまを戦い慣れさせるために手を抜いていたと思いますよ。ほら」

 

 

陸鷹化は自分の師に視線を移すとそこには膝を突き俯いたまま微動だにしない羅濠は護堂の一撃により気絶していた。陸鷹化が言った戦い慣れさせるという言葉に護堂はまさか、と思い倒れた一夏を見る。

 

 

「なんでさ」

 

 

そこには希望の花を咲かせるポーズを取っている一夏の姿があった。何処からとなく止まるんじゃねぇぞ...、という声が聞こえたのは気のせいだと思いたい。何処からともなくフリー○アが聞こえてくるのも気のせいだ。とある水色の髪の人は「団長(一夏)なにやってるんでか!」と反応していた。この男なら止まることは無いだろう(暴走特急的な意味で)と思った自分は悪くない、と護堂は思ったその時だった。

 

 

―――一夏の背中から大量の血が噴水の様に舞った。

 

 

 

「は?え?」

 

「一夏さん!一夏さん!?一夏さぁぁん!!?

 

「はうぅ...」

 

 

余りの異様な光景に茫然とし、ある者は困惑し、ある者は安否を確かめ、ある者は気絶寸前だった。そんな中、血の勢いが止まり、血の海に沈んでいた一夏の身体がむくり、と起き上がる。

 

 

「あー、死んだ。まじで、死んだ。あの人容赦なく殺しやがった」

 

「え、あの...大丈夫なんですか?」

 

「軽く精神体で死んだけど、大丈夫大丈夫平気平気、背中穿たれただけだから」

 

「全然大丈夫じゃない!?」

 

「あのー、一夏...一体何があったのか説明してもらっていい?」

 

「あれはふざけて希望の花を咲かせるポーズを取った時に不本意ながらいきなり視界が暗転して意識を手放してな。気が付いたら別の場所に居たんだ」

 

 

 

 

 

 

「ここは...。どこだぁ...?」

 

 

意味不明な現象が起きるとそこは見知らぬ大地だった、と変なナレーションを付けた一夏の目に移ったのは『異界』という言葉が相応しい所だった。大地に蔓延る亡霊、生命が生きていくのは不適合な死が蔓延した空間、ここの主が住んでると言わんばかりの城、一目で現世ではない事に気づいた一夏。自分の身体の調子を確認する。体は動く、呪力も使える、試しに海神の権能で試し使用可能だと確認できた。さて、ここからどう出ようか考えていると一つの気配が近づいてくるの気が付いた。

 

 

「ほぉ、我が領地に珍しい来客と思えば強者が放つの覇気を感じる人間...お主、本当に人間か?」

 

「邂逅一言目、ちょっとひどくないですかね?」

 

「実際、貴様は混ざりもの故、一目では判別が厳しい。かの騎士王が持つ『星の聖剣』と同じ気配、いやどちらかといえばメソポタミアの神々が生み出した土人形が基礎(ベース)と言った方が正しいいか。その上、貴様からは神性と儂と同じ神殺しの匂いもする。まだ使えていないようだが、なかなか面白いものを持っておる」

 

 

黒い戦装束、簡潔に言うのであれば黒い全身タイツ姿はどことなく親友である光の御子の全身蒼タイツを沸騰させ、そして何より目を引くのはその手に持っている深紅の魔槍(ゲイ・ボルク)だ。

 

 

一夏は知っている。目の前の女性が誰なのか。その名は―――

 

 

 

 

「...影の国の女王、スカサハ」

 

「ほほぉ、儂の事を知っているようだな。如何にも、儂こそが影の国の女王スカサハだ。久方ぶりに門が開いた思って来てみれば...。ふむふむ、かなりの強者と来た」

 

「ここが影の国でお前がスカサハだということも分かった。俺はここから出たい。どうすればいい」

 

「先ずは状況の確認が必要だな。ここに来るまでの経緯を教えてもらおうか」

 

 

一夏はすぐさま戻る必要があったため、事の経緯を説明した。必要となる情報は全て話した。

 

 

「なるほどな、となると根底から考え方を変えねばなるまいか。...まさか違う世界からの来訪者とはな

 

「戻る方法は?あの門を潜ればいいのか?」

 

「まぁ、そう慌てるでない。にしてもよく見れば見るほど、奇怪な小僧だ。先ほど言ったことと言い、貴様に絡みつく幾星霜もの人間の願いと思い、それを体現する祝福の結晶...、これは最早呪いだな。貴様に待ち受ける未来は...いや、これ以上は言うまい。これは当人が打破すべき事は当人に任せるべきか」

 

「あのー、戻る方法は...」

 

 

舐め回すように見ると、なにやらぶつぶつと呟く中、一夏は恐る恐る聞く。

 

 

「あぁ、それなら問題ない。すぐ解決できる」

 

「すぐ解決できる。そうか...で、なーんで槍を構えてるんですかね?」

 

「今の貴様は肉体と魂が分かれ、魂を覆うように強引な肉付けをした状態。仮初の肉体と言った所だ。この肉体との繋がりが無くなれば魂はあるべき場所に戻ろうだろう。故に貴様と戦う」

 

「なんでさ!?なら、術式組んでやれば十分じゃないですかねー!?」

 

「別に、久方ぶりの実戦だとか、未知の体験に心が躍り、術式を組んでやるのがもったいないとかではない。断じてない」

 

「それ本音ですよねぇ!?」

 

「構えろ勇士。でなければ死あるのみ」

「あぁ、もう!やってやるです!!」

 

 

 

 

「偽りの肉体は崩れた。後は時間が経てばここから居なくなるだろう」

 

「俺生きている...。マハード、マナ...俺ちゃんと生きて帰れるよ...」

 

 

戦闘描写は割愛するが一夏曰く「いつ(魂が)死んでも可笑しくなかった」「久しぶりに死を覚悟した」と軽くトラウマを植え付けられたと言っておこう。

 

 

生の実感をしている一夏だが、意識が次第に遠のいていくのを感じた。

 

 

「どうやら、始まったようだな。久方ぶりの勇士との死合、よき一時であった。また、楽しみたいものだな」

 

 

 

こんな経験二度とごめんだぜ、と一夏は指先一つ動かせない状態で心の中で思った。だが、変な思いは仇となって帰ってくるのは世の理。

 

 

「貴様が、我が影の国に来れるように貴様に細工を施しておいた」

 

「え?」

 

「儂の気が向いたときにお主をこちらに呼び出す。ふふっ、セタンタ達以来の教え甲斐がありそうだな」

 

 

ナンッテコッタイ/(^o^)\っと内心嘆いている一夏にスカサハはその深紅の瞳で嬉しそうにそして何かを念願しながら一夏を見る。

 

 

「貴様がセタンタと同じ槍を使う以上、生半可なものでは儂が許さん。故に扱く、徹底的に扱き『好きなものはゲイボルク、得意なことは槍術及びゲイボルク、好きな事はゲイボルク、尊敬する人物はスカサハ』と思うような立派なケルトの戦士にしてやろう」

 

「それ洗脳ぉっぉぉぉぉ!?」

 

「お主ほどの者なら、すぐ上達する。...お主なら可能かもしれんな。儂を―――」

 

 

最後の言葉は聞こえなかったが、決していいものではない事はスカサハの表情を見て理解できた。これから不意に訪れる地獄に怯える日々が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「という事があったんですよ」

 

「馬鹿ですかアナタは」

 

「基本的に悪い事してない筈なんですがねー」

 

 

頭をポリポリと掻く一夏に見知った顔がいる事に気が付く。

 

 

「おう、陸じゃないか。翠姐の付き添いか?」

 

「えぇ、そうなんですけど...此度の戦、その勝敗をどうしようかと思いましてね。師父は気絶。其方は双方ともに重傷です」

 

「なら、痛み分けが妥当だろう。生憎、今の状態で使える権能は少ない。あの影の女王め、残していていた再生が残り僅かまで減りやがった」

 

 

あー、穿たれたとこ痛い、と腰を擦る一夏。

 

 

「うん、その辺りが落としどころかな。じゃ、そろそろ起こしますか。―――師父! お目覚めください、師父!大丈夫でございますか!?」

 

「たしかに深刻な昏倒ではなさそうだが、治療した方がいいんじゃないか?」

 

 

声をかけるだけの陸鷹化は肩を竦め、一夏はあー、と声を上げる。

 

 

「翠姐はだな...、寝ていたり意識が無くても、相手の首をねじ切る位は出来るんだよ。俺の様に不死の権能とかがあるならまだしも、ないなら要人にこしたことは無いんだわ」

 

「わぁお」

 

「この師にこの弟子ありね」

 

 

とんでもない話を聞き戦慄する中、この外道(一夏)はこの人の背中を見て育ったからこうなったのか、と納得する一同。陸鷹化は遠くから、羅濠に声をかけ続ける。

 

 

「...こ、ここは?私は一体―――?」

 

「師父。お三方の猛々しい立ち合いを弟子陸鷹化、目から鱗出る思いで見届けました。草薙様と一夏兄様持力を使い尽くして一歩も動けず、師父も気絶となれば、ここは勝者無しの引き分けとすべしと検分しますが、如何に―――」

 

 

最初こそ無言だったが事の顛末を思い出した羅濠の顔が羞恥でみるみる赤くなる。

 

 

「鷹児、お前の検分は至極妥当といえましょう! 皆の者、さがりなさい!」

 

 

その直後であった。この場に集う者は涼やかな少女の声を聴いた。

 

 

「おや、神殺し諸君、どうしたのかね? そのようなボロボロの成りをして? ははは、そうか。お主らはまだ勝負をやっていたのか。血の気の多い連中よのう!」

 

 

万理谷ひかりの声でありながら全く異なる存在が発する声は金色の雲に乗って、空中から下界を見下ろしている目が可笑しかった。眼球が赤い、瞳は金色で所謂火眼金晴(かがんきんせい)と呼ばれるもの。

 

戦いの後で、呪力も肉体も限界に近いのに対して、闘志が沸きあがってくる。まるで長年の宿敵と再会したかのように。

 

簡潔に言うのであれば今の万理谷ひかりはまつろわぬ神(・・・・・・)だ。一夏は時間系の権能を使い少し前の万理谷ひかりの時間を視覚し、事の顛末を理解する。

 

 

「蘇ったのですね。美猴王」

 

(にしては少し疑問がある。ひかりの身体に憑依している(・・・・・・)。万全であるならばそんなことをする必要はないはず)

 

 

 

一夏は考える。小さな疑問であっても見落とさず、答えを見つける。「全体に集中して、小さなもの見落としてはいけない」これが、一夏の神殺しとして戦う上で欠かさない要素の一つだ。例え、ほんの小さなモノでも紐解けば答えを見つける重要な情報になりえるからだ。

 

 

「如何にも、如何にもじゃ、同郷の神殺しよ!」

 

 

ひかりの声で『まつろわぬ神』は天を指さす。

 

 

「我は猿猴君臣に非ず。我は天なり。天に斉しき存在なり」

 

 

その威厳は明朗快活な巫女のモノでもなく、滑稽なサルのモノでもなかった。

 

 

「我、石より生まれし猴王にして、神通無限、変化は千変にして万化なり。天宮にて丹を偸み、酒を貪り、蟠桃を喰らう。武を弄び、凶を為し、悪を顕す!」

 

 

ひかりの手中に鋼の棒が現れた。

 

 

「我が性は孫、名を悟空。斉天大聖の号を得たり!」

 

 

斉天大聖・孫悟空。それがあのまつろわぬ神の名だった。

 

 

 

 

同時刻・成田空港では、ターミナルを出て特急列車を探す、一人のアメリカ人女性がいた。

 

つい先日、夜叉王こと一夏をディナーに誘ったはいいが酔っていたと言え痴態さらしてしまった事をがっつり覚えている彼女は最近、忙しく海外旅行に行っていない事を思い出した。

 

悪の魔法使いとか怪物とか悪魔とか暴君とか暴君とか暴君とか、最近の心労は彼の様な気がする。 主に一方通行な恋愛という意味で。

 

酔った女性を自宅まで付き添い介抱するのは紳士的でいいだろう、酔っていた自分が『着替えさせて』というと少々めんどくさそうな表情で着替えさせ、母親が子を寝かしつけるかのような感じで夢の世界に行かせ、寝ている間に家事、掃除、洗濯(下着を含む)を全てこなし、朝食まで用意していくという始末。

 

無防備に寝ているそれなりに綺麗な女性がいるのに襲わないとはどういう了見だろうか。ナニもされなかった自分の身体を確認し、私には魅力がないのか、と絶品低カロリー朝食を食べたのは記憶に新しい。

 

 

『乙女に対する気づかいは出来るのに、乙女心は理解できないとはこれいかに...』

 

『よもや、女性として見られていないのでは...。周りにいる女性はどれも綺麗ですからなw』

 

 

親しい老人たちなら、このように言うだろうな思うのだった。

 

 

彼女の名はアニー・チャールトン。またのをジョン・プルートー・スミス。ロサンゼルスにおいて生きる伝説とまで言われる魔王その人である。

 




最近、アークスに復帰したり、仕事辞めたり、ヒャ、我慢できねぇ、EXAMだァ!とBD2号機に乗った、大乱闘したり、新しい艦これ若しくはアズレンのギャグ小説が浮かんで進まなかったなんてことは絶対ない。絶対にだ!


このまま次巻分までやってもよかったのですが少しキリが悪いので、今回短めでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

迷いと協力者

久しぶりの更新。

今回は真面目成分が多いです。あー、ギャグかきたい。


ひかりの身体に斉天大聖が憑依し復活をは現世に蘇った。

 

 

「姿はともかく《鋼》として本地を取り戻したようですね。......、よいでしょう大聖。今こそ決着をつけましょう!」

 

 

羅濠が鋭く言う中、一夏は残る力を振り絞り動こうとするも、うまく力が入らないでいた。それは、護堂も同じようだった。

 

 

「護堂、このまま戦うのは相当厳しいと思うわよ」

 

「ええ、奪われた万理谷ひかりの奪われた体を取り返したい所ですが、あなたも羅濠教主も休息し、力を蓄えなくては。退却すべきです」

 

「王よ、どうかご決断を」

 

 

脇からエリカが警告し、リリアナが進言し、マハードが決断を求める。

 

 

「では、古き因縁にケリをつけるかね。ただし、まとめて始末させてもらうがね」

 

 

黄金の雲に乗ったまま、地上を見下ろしている。ただし、その目には一夏や羅濠ら神殺ししか映っていない。

 

 

「至れる哉、坤元(こんげん)。萬物資りて、生ず。乃ち順(すなわちしたが)いて天を()く地勢は坤なり!」

 

 

斉天大聖が片手で印を結び、口訣(こうけつ)を唱える。変化はいきなりだった。禿山となった日光東照宮の奥社の地面が石となって固まっていた。一夏達の立っていた地面は、瞬く間に覆われていった。

 

 

「ははははは!石山岩窟の秘法を持って、おにしらを閉じ込めてくれる!」

 

「くっ――!私達を封印するつもりですか」

 

「ははッ!ご名答じゃ!手負いとはいえ、おぬしら神殺しは侮れぬ……いや、むしろ手負いの方が恐ろしいという、道理の通じぬ奴らじゃからのう。せっかく蘇ったんじゃ、あえて火中の栗を拾いに行く必要もあるまいて!」

 

「...チィ!野郎ゥ!!」

 

 

咄嗟に地面を殴り上空に飛んだ一夏は、斉天大聖の眼前まで近づくと回し蹴りお見舞いしようとした。

 

 

「甘いぞ!小童!!」

 

「...ぬぅ?!」

 

「一夏!」

 

 

だが、斉天大聖が持つ如意棒で腹部を叩き付けられ苦悶の表情を浮かべながら、マハードたちのいる方に、飛ばされた。

 

 

「護堂!」

 

「草薙護堂!」

 

「師父!」

 

 

エリカ、リリアナ、そして陸鷹化が叫んだ頃には、二人を地面に沈み込んでいった。

 

 

「咄嗟に反撃に移ったのが功を奏したと言うべきか...。何とか全滅は免れたか」

 

「おぬしの身体は、限界が近いのではないか?いや、身体だけではない、精神そして魂すら摩耗しているようにみえるのお」

 

「俺が限界だって?フッハハハハ!そんなもん、テメェの物差しだけで測ってんじゃねーぞ!!」

 

「一夏!」

 

 

呪力も権能もほとんどが使えない一夏は、思いっきり地面を蹴りもう一度、斉天大聖に肉薄する。

 

 

「大衆は我らが権能得た事に目を行きがちだが、真に恐ろしいのはその底なしの戦闘欲とその魔獣にも等しい性質よのお。現に権能は使うこと敵わない筈の身でここまでくるのだからな」

 

「逆境を好機に変えてこそのカンピオーネ(勝者)だからな!――ッ?!」

 

「むぅ?」

 

一夏の拳を余裕の表情で受け止める斉天大聖と次の一手を考える一夏に謎の悪感と視線を感じた。まるで、この世の悪意や不条理と言ったものを混ぜ合わせ、圧縮したような混沌としたナニカの視線を感じる方に一夏はゆっくりとかを向ける。

 

 

「...なんだ...アイツは」

 

禿山と化した一角に肌も衣服も漆黒に染まった男がその無機質な瞳で一夏を見つめていた。

 

 

「あいつ?あそこに誰かいるのか」

 

「僕たちには一切見えないけど...」

 

「ふむ、この孫さまにも見えぬがお主の視線の先に一人分の謎の空白の様なものを感じるのお。そこだけ切り取ったように(・・・・・・・)何も感じぬぞ」

 

「どういうことだ...」

 

マハード達だけではなく、まつろわぬ神である斉天大聖すらも視認できない状況に自分の頭が可笑しくなったのかと錯覚しかけるも、特に何もしてこない様子だ。

 

 

「ふむ、見えぬ存在からの視線と言うのは不気味なものだが、何もするつもりがないのなら放っておいても問題なかろうて」

 

「ぐぅ...!」

 

斉天大聖は不気味ではあるものの、邪魔さえしなければどうこうするつもりはないようで、空いた手で如意金箍棒を振り回し、一夏の横腹に叩き付けると怯んだ所を見逃さず、金色の雲の上で振り回し、放り投げる。

 

 

「大丈夫ですか!一夏!!」

 

「平気だ。たかが、肋の数本折れた程度...。いつものことだ」

 

「全然、平気じゃないから!速く手当てしないと!!」

 

「護堂無事だったのね!でも、羅濠教主は!?」

 

 

マハード達の近くに投げ飛ばされた一夏の気に掛けるマハードに、いつものことだ、と平気そうな顔をするが、シャルロットは問題だと言い手当てするよう勧める。そんな時、先程護堂達が沈んだ場所から白虎が護堂を桑乍ら飛び出すが、其処には羅濠の姿はなかった。

 

 

「お、俺を助ける代わりに、下に落ちていった。本人は自力で脱出するって言っていたけど」

 

「師父らしい言い草ですね。草薙さまを見捨てて自力で一人で戻ったら、悪い噂になると考えたんでしょう」

 

「あー、確かに翠姐なら考えそうだ」

 

うんうん、と頷く弟子二人によく師匠の人柄を理解しているな思う護堂。そして、どんな師弟関係だよ、と思わずにいられないIS組なのであった。

 

 

「ほう、一人逃がしてしまったか。思い通りにはいかないものじゃのおう

 

雲の上にに乗っていた如意金箍棒を振り上げた。

 

 

「みんな、集まれ!ふもとまで飛んで、万理谷祐理と合流しよう!」

 

「飛翔術で行くにもこの人数だと限度がある...。IS持ちは一か所に集まれ!海門(ゲート)をお前たちを逃がす!」

 

超高速で移動できる飛翔術を使う気の様だが、あの孫悟空から逃げきれるか疑問に思うと同時にIS組の今後の自衛手段としてなるべくSEは消費したくない一夏は残りの呪力を使い逃がそうとする。

 

 

「だが、一夏はどうするつもりだ?まさか残る気なのか」

 

「俺のことを考えるなら、とっと海門をくぐりやがれよ!」

 

「い、一夏!?な何をッ!うわあああぁぁ!!」

 

この場にいたIS組は次々と海門を潜っていく中、最後に残った箒が一夏のことを気に掛けるが、現状あまり余裕のない一夏は地面を思いっきり殴り、箒の近く箒の眼前まで跳ぶと胸ぐらを掴み思いっきり海門に向けて投げ込み、潜り終えたのを確認して、海門を閉じる。

 

 

「ふふん、逃げても無駄じゃよ。この孫さま、電光石火の早駆けに自信があってのお。十万億土の端から端までひとっ飛びで―――くはっ!?」

 

目に見えない一撃を受けたかのように雲の上で膝を突く大聖。それを好機と見たリリアナは飛翔術を使いその場から逃げ、一夏もマハードの飛翔術でその場から逃げた。ふもとの表参道へ着陸すると祐理とプリンセス・アリスが駆け寄ってくる。

 

 

「万理谷!すまない、ひかりがあのあのサル、斉天大聖び身体を乗っ取られて......!」

 

「はい、もう存じております。姫様が幽―――あの御力で護堂さんや一夏さんと教主との戦いを覗かれて、なにが起きているのかを教えてくださいました」

 

護堂が謝罪しようとしたら、万理谷に遮られた。そしてプリンセスが現状を教えてくれた。山のほとんどが強力な神力で侵され、一夏達を封じ込めようとした結界を疾くとしたら数カ月長ければ数年はかかるとのこと。なので羅濠をすぐ救出することはできない。

 

 

「でも、その割には貴方たちはお師匠様の心配をしていないようね?」

 

皆が不安そうな顔をする中、陸鷹化と一夏は違った。陸鷹化はのほほんとし、一夏は羅濠とは関係のない事を考えているようだ。現に「あの黒い男は...」とか「インド神話の連中とは違う...」だの今の現状とは関係のない単語をぶつぶつ呟いている。

 

 

「だって、閉じ込められただけで死んじゃいないんだろ?だったら師父は自力で牢屋をぶち破る方に賭けたっていいな」

 

「あら、その根拠は?」

 

「ないよそんなの。でもさ、其方の王様が同じ境遇になったとするだろ。姐さんたちも、多分心配はするけど死んだとか思わないじゃないか?それと一緒だよ」

 

陸鷹化の言い草にエリカは目を丸くし、そのあと微苦笑いした。それは、マハードやマナ達も同じようだ。そんな話をしていたら石化した杉林の奥から小さい生き物がこちらに近づいてくる。――――猿だ。

 

 

「何だこいつらは?斉天大聖は野生のサルでも呼び出したのか?」

 

「にしたって、数が多すぎな気がします」

 

「さっきから気になっていたんだけど、近くに居た人たちは何処に行ったのかな?」

 

嫌な予感がする...。一夏がそう思った時だった。媛巫女である万理谷が声を震わせながら叫んだ。

 

 

「このサルたちは――いえ、この方々は人間です!斉天大聖さまの神通力でサルに変えられてしまったんです!おそらく、さきほどまで日光山に訪れていた方や、町の方々ではないかと...」

 

まつろわぬ神が現れた土地には非現実、超自然現象がしばし発生する。今回は、人がサルに変わったのだ。斉天大聖に支配されたサル達から逃げる算段を立てる一夏達だったが、途中斉天大聖の神獣である大型のサルに邪魔をされたが、一夏達は事件が解決するまで借りることを決めた所有者不明の車に乗り闘争をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日光市街から少し離れた霧降高原に到着する一行。一夏達は休憩できる場所がある霧降高原のキャンプ場のログハウスで英気を養っていた。

 

 

「おい、一夏は大丈夫なのか?」

 

「一夏は今、消費した精神力と呪力の回復に努めています。ですので、騒がず、焦らず、ちょっかいを出さないでください」

 

一夏の容態が気になった箒はマハードに問い詰めるが、マハードは冷静に余計なことはするなよと警告をする、。現在一夏はログハウスの外で座禅を組みながら、瞑想をしていた。

 

 

「あれで、その呪力とかが回復するのか?」

 

「他の方がどうかは知れませんが、一夏はある権能を得てからは、早急に力を蓄える必要がある場合、あんな感じで回復しますね。なんでも、『大地から力を吸収し、自分の力に変換する』らしいです」

 

「ん?どういう事お兄ちゃん?」

 

「マナ......。お前って奴は...」

 

魔術についてつい最近知ったばかりのラウラが疑問に思うとマハードは、知っている限り説明するが、かなり長い時間一緒に居るはずのマナが理解していない事に、頭を悩ませるマハード。

 

 

「簡単に言うなら「オラに元気を分けてくれぇ!」した奴を自分に還元するといえばわかりやすいでしょうか」

 

「すまん、さっぱりわからん」

 

「あー、なるほど」

 

「あー、そーゆーことですわね。完全に理解しましたわ(わかってない」

 

マハードなりに分かりやすく説明したつもりだったが、箒、セシリアには今一つ理解できなかったようだ。そして、護堂は正史編纂委員会のお偉いさんである沙耶宮と連絡中だ。そして、スパイスの香ばしい匂いがすると一夏の閉じていた瞼が開く。

 

 

「飯の時間か、マハード」

 

「先程、リリアナ殿が料理すると言っていましたのでもう出来ているのでは?」

 

「腹が減っては戦はできぬ!飯をたらふく食うぞ!!」

 

美味しそうな匂いの痕跡を辿り進む一夏の後に続くIS組。

 

 

「一夏、その呪力とやらは短時間で回復しないのか?」

 

「呪力を水と考えるなら、コップと鍋だと入る量が違うだろ。それと同じでな、俺達カンピオーネの呪力は魔術師の約数百倍だ。普通の魔術師と比べて、それを全開させるとなるとそれなりに時間がかかるんよ」

 

「な、なるほど」

 

「さっきの座禅はその時間を短縮するための補助の様なものかしら?」

 

「それに近いな。自然回復しつつ、他所から吸収することで一度の回復量を増やすのが目的だな」

 

会話をしながら進むと、食卓に並べられたキャンプの定番バーベキューやカレー、イワナやニジマスの塩焼き山菜のおひたしなどかなり豪勢だった。食べ終えた一行は、今後のことについて話そうとする中、そこには一夏の姿が無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生い茂る木々の中で一人の男が思い悩んでいた。

 

 

「俺が見たあの男...」

 

悩んでいたのは神殺しが一人、一夏だった。斉天大聖との戦いの時に見たあの黒い男が一夏の脳裏に焼き付き離れないのだ。

 

 

「『黒い』というのであればクリシュナが思いつくが、あそこまで混沌とした気配を放つとは考えにくい。この世全ての悪と呼ばれたアンラ・マンユと考えれば納得は行くが...」

 

アンラ・マンユとは、ゾロアスター教に伝わる悪を司る神であり、この世の悪を生み出した存在とされている。一夏の感じた混沌としたあの感じは彼の悪性を現したのかもしれないが、それでも納得できない自分がいた。

 

 

「そもそも、アンラ・マンユはこの世にあらわれる時は蛇や蜥蜴のような姿を取るとされている。だが、あいつは完全な人型だ。それにアンラ・マンユとあの黒い男は恐らく、かなり近い別存在と言った所か」

 

推察を重ねていく一夏だが、納得のいく答えが出ず、モヤモヤとした気持ちとこれ以上、考えてはいけない様な気がしてならないのだ。

 

 

「あぁあ、クソッ!ここまで、答えが出ないのも久しぶりだ!!待てよ...」

 

頭を乱暴に掻く一夏に、ある可能性が思い浮かんだ。それは、存在するかも怪しい創作神話の神。だが、その神の内二柱をすでに倒している為、否定することが出来ない。

 

 

「クトゥルフ神話...黒い男の別名を持つ存在...」

 

―――ナイアルラトホテップ。一夏の導き出した最も有力な答えであるが、一夏はその可能性を否定したかった。なぜなら――

 

 

「もしそうだとして...、俺はどうやって倒せばいいんだ?」

 

倒し方が分からない。他の神話であれば少なからず弱点と呼べるものがある。例えば北欧神話の雷神トールはラグナロクにてヨルムンガンドに致命傷を与え勝利するも、9歩退くとされている。この9歩退くとは、大蛇の毒を受けていたために9歩下がった後に死んだと解釈されるており、トールを9歩後退させれば、死亡若しくは弱体化すると考えていいだろう。この様に何かしら弱点と言えるようなものが残っている場合が多い。だが、クトゥルフ神話となると話は別だ。

 

 

「あいつ等に、明確な死の描写はないに等しい。ましてや、その神の起源やルーツと言ったものがあるか分からない」

 

大体の神話にはその存在の大本と呼べる、ルーツ、起源が存在する。例えば日本で縁起物とされる七福神は、それぞれインド、中国から集めたグループで、中心に存在する大黒天は、家門繁栄、家内安全と言ったご利益があるが、仏教では悪しきものを力ずくで教化して仏道に帰依させる青黒い肌の荒神とされ、本来は鬼神として日本にきたされている。起源を辿るとインド神話に登場するシヴァの一つの化身マハーカーラとされ、シヴァの破壊神としての側面が強く出た鬼神とされている。元を辿ると現在とは違う神性、違う神話の存在と言う事が多々ある。だが、クトゥルフ神話はそういったものが存在しない。

 

 

「地球の神々は脆弱でエジプトの神々は一柱を覗いて旧支配者か旧支配者の眷属だっけか。アイツらは存在というより概念に近い気がするんだよ」

 

概念に近い相手にどう勝てと言うんだ、と珍しく戦う前から弱気になる一夏。誰かに打ち明けられればいいのだろうが、突拍子のない事を言って不安にしたくはない一夏はこのどうしようもない悩みを一人抱え込むしかないのだった。

 

明日に備え、睡眠をしっかり取らなくてはならないが周囲の警戒も必要だ。故に一夏は亡者を呼び出し、周囲の警戒をさせつつ、ログハウスの近くにある木の上で寝る事にした。

 

 

 

 

 

この日、幽霊を見たという一般人が続出したが、それは別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、沙耶宮と合流するべく移動した一夏達だが、車内はある話題が上がった。

 

 

「そういえば、昨日幽霊が出たらしいよ。昨日居たキャンプ場で見たって人が続出したんだって」

 

「幽霊か、今の状況を考えればいてもおかしくないかもしれんな」

 

(多分それ、俺が周囲の警戒をさせた亡者だろうなー)

 

心当たりのある一夏は、まさか目撃者がここまで多いと思っていなかった。

 

「一夏、この幽霊って...」

 

「完璧に俺が警戒に出させた亡者です。ありがとうございます」

 

「気をつけてくださいよ。一応、魔術とかは秘匿されるべきものなんですから」

 

「善処しよう」

 

そんな小話を聞きながら、車は進み沙耶宮との合流地点に到着した。ここで、思わぬ再開があるなどと一夏は考えもしなかった。

 

 

「甘粕さんは、そのごどうなされましたか?」

 

実は、甘粕が現在行方不明になっていたのだが、一夏はそんなこと知らず、敵に見つかり情報を護る為、サヨウナラー!と言いながら爆発四散したのかなと考えていた。

 

 

「その甘粕君だけどね、今朝早朝に保護されてね。この件については面白い話があるからあとにしよう」

 

そして、一夏達はある場所に向かった。そこは、羅濠が斉天大聖の手によって封印された場所だった。

 

 

「甘粕さんの報告だと、この下に羅濠教主が閉じ込められた......といいますか、生き埋めになっているんですよね?無事でいらしゃるでしょうかね?」

 

意思で塗り固められた地面を小突きながら、呟く沙耶宮。

 

 

「はははは!たかが、半日生き埋めになった程度で、師父が死ぬわけないだろ!そんなやり方で師父を倒すんだったら3年は必要だね!」

 

笑い飛ばしたのは石化した杉並から舞い降りた陸鷹化だった。今回の関連人物が続々集まり、会議が行われた。そこで、案の定と言うか予想通りの報告が出てきた。

 

 

「実は昨日、神獣と追いかけっこした後、逆にあいつらの後を追ったら、奥日光の霊山で、ただならぬ気が集まったんで見てきたんですよ」

 

陸は男体で見た一部始終を語った。こうして一夏達は新たな敵の出現を知ったのだった。

 

 

「沙悟浄と猪八戒が現れたね。まぁ、予想していたというかな...従属神の類だろうな」

 

「そうだとして、かなり厄介なことになりましたね」

 

「鷹化、ひかり―――大聖に体を乗っ取られた女の子はどうなった?」

 

「それが妙なんですが、斉天大聖はあの姿のまま寝込んでしまいましてね。遠くから聞いた限りだと、巫女の身体から出れないだとか」

 

ひかりの容態を聞いた護堂は度化案したような表情をした。以前と変わらないとうことは、まだ最悪の事態になっていないという事。

 

 

「...ですが草薙さん。ひかりが、向こうの人質同然も変わらないんですよ?斉天大聖を討つ際、妨げに―――」

 

「沙耶宮さん、そいつを言うのは無しですよ」

 

護堂が素早く遮った。

 

 

「俺はひかりをあのサルから奪い返して、必ず助けます。そのほかのこと――『まつろわぬ神』を倒すとか、困っている人助けるとかは、全部後回しです。だから、今言いかけた事を俺に説明する必要はないですよ」

 

「...それが、あなたのご結論ですか」

 

護堂の言葉を聞いた一夏は、順調に染まり始めてるな、と思った。普通であれば、100(人々)を救うために(ひかり)を切り捨てるだろう。だが、護堂はその逆を選んだ。正に自分本位、カンピオーネらしい一面が出てきたなと思った一夏だった。

 

 

「迷惑な神様がいて、それを倒すことが俺にしかできないならおれが戦うのは別にいい。かまいません。でも、俺の力は俺だけのものだ。誰かの自由にさせるつもりはない。俺が気に食わない事に力を使うつもりはないし、それに対しての文句を聞くつもりもないんです」

 

護堂の言葉を聞いたIS組が驚きを隠せずにいる。中には何を馬鹿なことを、と言った表情をした人もいる。だが、これが神殺しなのだ。

 

 

「女の子一人見捨てて、もっとたくさんの人を助ければいいとかいう奴は、自分で神様と戦えばいい。俺の知ったことじゃない。でも、俺にどうにかして欲しいなら、俺の流儀に合わせてもらおう。要はそれだけの話です。他人の力を当てにするなら四の五五月蠅いこと言うなってことですよ」

 

「ごもっとな仰せですねェ。草薙さま、それでこそ魔王のお言葉ですよ。ねぇ、一夏兄さん?」

 

「全く、いい感じに育ってきたな。それに付け加えるなら、一度決めた事を曲げるな、諦めるなと言った所かな。中途半端に流されるようなら、アトランティス島流しでもしてやろうかなと思ったけど無用なようだな」

 

魔王と魔王の弟子に褒められ恥ずかしくなる護堂だが、言い方を変えると『いい感じに周りに囚われない自分本位で身勝手な人』になったと言われていることに気づいていない。そんな中、沙耶宮の携帯に着信が鳴る。

 

 

「草薙さん、一夏さん。行方不明になった人がいま到着したそうです。ちょっと面白い客人も一緒なんですよ」

 

行方不明者とは甘粕の事だろうが、面白い客人とはだれか分からず首をかしげる護堂達は東照宮前の表参道まで行く。見慣れた背広姿の人物が挨拶してきた。

 

 

「......ああ、護堂さん、一夏さん。遅れながら今戻りました」

 

力ない口調、しかも顔色も悪い。ここまで弱った甘粕を見たの初めてな護堂。そして、甘粕の後ろに居た白人の女性に気づいた。その時、背後から「ゲェ...」と言う声が聞こえたのは気のせいだろう。燃えるような影のショートヘア、知性と理性の鋭さを表す整った顔立ち。非の打ち所のないクールビューティ、そんな雰囲気の女性だ。

 

 

「こ、こちらアニー・チャールトンさん。いい、意識不明のままずぶ濡れになっていた私を見つけ拾ってくださった、い、命の恩人です」

 

氷を思わせる女性は「アニーよ、よろしく」と流暢な日本語で話した。

 

 

 

 

 

 

甘粕はどうやらずぶ濡れのまま何時間も昏倒強いたせいで風邪をひいてしまったようだ。そして、アニーは自分が日本に来た目的を護堂達に話した。始祖アーシェラを追ってきたとのことだ。

 

 

「隠す必要もないから最初に行っておくと、私はロサンゼルスのチャンピオンに依頼されて、アーシェラの生死を確認するために来たの。あの魔女がもう死んでいるなら任務が終わったと言える。でも、この異変を素通りするつもりはないわ。貴方たちに協力させてちょうだい」

 

「ロスのチャンピオン?では、貴女は――」

 

「ジョン・プルート・スミスの部下なの!?」

 

驚くリリアナと万理谷だが、一夏が前に一歩出ながら言った。

 

 

「なーにが、ジョン・プルートの部下だ。お前がジョンアアアアアアアァァァァァ!!?」

 

何か重要なことを言いかけた一夏だったが、途中で悲鳴に変わった。何故か、理由は簡単である。

 

 

「イッテェ!?ハイヒールの踵で思いっきり踏むなよ!!複雑骨折したじゃねーか!」

 

「あなたが変なこと言おうとしたからよ。今度言ったら踏みますよ」

 

「踏んでから言ったー。そもそも、変態コスプレ傍迷惑偽善者がいまだに真実と言う名の純白のベールを脱がないから俺が代わりに―――ぐおぉ!?」

 

一夏の足にハイヒールの踵で思いっきり踏んだのである。痛がる一夏は尚も辞めるつもりはなく、更に言おうとした瞬間、今度はアームロックで一夏を締め上げてきたのだ。二人の関係をしらない人たちは顔の色を青白くしながらあたふたしていた。

 

 

「私は部下ではなく協力者で、彼は今だに存在し続け、自分の国を築いた事のない人物。あと私と彼は旧知の中だからこれ位無礼講よ。OK?」

 

「アッハイ」

 

「分かった、分かった。俺が悪かったから離して、な?イテテテテテテェ!」

 

「アニーさん、それ以上はいけない」

 

身体を張ったミニコントが始まったが、戦う前にダメージを負うのはあまりよろしくないので、護堂は止めに掛かった。そして、アニーを含め情報の共有をした。陸が目撃した男体山での三神集合。弼馬温の消失。一夏が語り、それに対し頷く者、頭を悩ませる者、救出がこんなになったこと知る者と様々だった。

 

 

「そう、それは大変な状況ね。だとしたら、一刻も早く現地に向かって、事件の解決に臨むべきだわ。そうじゃない、ゴドー?」

 

アニーは先程の事が嘘のように表情を変える事も無く言う彼女に大丈夫だろうという思いと僅かな不安を感じながら、北米のカンピオーネの協力者を名乗る女性は、そう思わせる不思議な何かを持っていた。彼女の問いかけに護堂は頷いた。




FGOでエルメロイの事件簿コラボ。ルヴィアとライネスはゲット。グレイは配布。

予想だとグレイはランサーだと思ったけど、アサシンですかー。

レイドがあるようなので、がっつり刈り倒しゲフン!倒さないと!


新しく、艦これのギャグ小説を執筆中です。

記憶喪失提督と艦娘の記憶 もよろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

外伝
聖なる一日


待たせたなメリー!

今回はギャグがほとんど

クリスマスは笑って楽しく過ごしましょう!


うまくいけばあと一話投稿できるかも


季節は冬

 

子供たちが待ち遠しいイベントを翌日に控えた某学園の廊下に深紅の衣装に身を包んだ一人の銀髪の女性があった。

 

 

「走れソリよ。風のように、星の海を~パドル、パドル~♪」

 

「え?なにアレ?」

 

「ちょっとかわいい...」

 

 

この光景を目にした一部の女性は、回りながら廊下を渡るミニサンタの格好をした女性をスマホに納めるのだった。

 

 

 

「待たせたなメリー!やはりここが気になったので、立ち寄る私だったのだ」

 

「え...あれ、ラウラ?いつもと様子が...」

 

「今日はサンタがプレゼントを配る日だと思い出してな、いつも貰っていた私が忙しいサンタの代わりになろうというのだ!さぁ、受け取るがいい!!」

 

 

食堂で準備をしていたシャルロットにサンタラウラは大きな袋をゴソゴソと漁ると、一冊の本を取り出す。

 

 

「えーと、『許嫁だから安泰は時代遅れ!確実に堕とす攻略術!!(朴念仁編)』」

 

「シャルロットは師匠が好きなようだが、ライバルが多い上に、シャルロットにはないアドバンテージを持っている人が多いからな。この本をもとに師匠を攻略してほしい!私は応援しているぞ!!」

 

「ありがとうラウラ!特に確実に堕とすとか朴念仁とか気に入ったよ!」

 

「うむ、気に入ってもらえて何よりだ!」

 

 

ラウラからのプレゼントに喜んでいると食堂に新たに人影が入ってくる。

 

 

「チョリース、篠ノ之箒でーす。チョリース」

 

「うわぁ、なんかキャラ崩壊してる...」

 

「こんにちはメリー!相変わらず妬ましいほどの二つの団子を揺らすな。それはそとして...うむ、見事な崩壊だ。まさにベルリンの壁がごとしだな」

 

 

散々一夏にいじられ続けたせいか、自分と言うキャラをヨグソ=トースの如く、行方不明になった箒。

 

 

「うむ、どうしたら一夏に振り向いてもらえるのか姉さんに聞いたら『今から送るドラマCDの刹那ってキャラの真似をすればいいよ』と言っていたのだがな」

 

「なんというか......、まんまと嵌められてる?」

 

「他には篠ノ之博士は何か言っていなかったのか?」

 

「ふむ後は『てへぺろ(・ω<)』とか『アガトラーム片手に歌う』とか『カッコカワイイ宣言』とか『けいおん!』だな」

 

「取りあえず、全部やめた方がいいと思う。篠ノ之さんにもあるんだよね?」

 

「うむ、箒にはこれだな!」

 

 

袋の中から取り出したモノを箒に渡すサンタラウラ。

 

「なになに、『猿でも情欲する色気の出し方!』ってこんなものはいるぬわ!」

 

「ふむ、校内でよく『篠ノ之さんって固いよね』とか『今時、堅物猪とか流行らないし、世の中くっ殺だよ!でもネタにならないあの人!!』と言う声があったのでなYAMA育ちのしぐさが色っぽい尼僧にアドバイスをもらったのだ!」

 

「余計なお世話だ!」

 

「あら、大声出してどうしたの?お姉さん知りたいなー」

 

「もめ事?」

 

 

箒の怒号に連れられ、次々と見知った顔が食堂に集まってくる。

 

 

「忙しいサンタの代わりになろうと張りきったのだが...、見当違いなものを渡してな」

 

「いや、プレゼント自体よりも送ろうという誠意の籠った気持ちが大切だと思うよ。他にどんなものがあるの?」

 

「...うむ、そうか。そこまで言うのであれば見せないこともないぞ」

 

 

見当違いなものを送ったことにより、落ち込むラウラにプレゼントより気持ちが大切だと説くマナ。

 

励まされた、ラウラはプレゼントを渡していく。

 

 

「えーと、『今日から始めるシャフ度達人への道』中々面白そうね。あ、付録も着いてるのね『独占入手!マジンハザード3とプロデューサインタビュー!!』ぴぃややややややや!!??」

 

「トラウマになったんだねお姉ちゃん...」

 

「怖いよ、簪ちゃん...。人類悪が、人類悪が来ちゃうよぉ~。やだよぉ...死にたくないよぉ...」

 

 

付録の中身を見ようとした瞬間、トラウマとなったワードが目に入り、簪の腰に抱き着き怯える楯無はやや幼児退行しかけている。

 

その姿を見た簪はやだ、私のお姉ちゃんカワイイ...とひそかに思いながら付録を確認すると次回作の内容が大まかに書かれており、恐怖の決戦から逃げ延びた四柱は各々の思いに従い独自行動を開始しする。

 

なお一部展開上、R-17.5とのことだった。

 

 

「次はシャルロットと簪だな。確か、...うむ、これだな」

 

「えーと、これは...」

 

「なぁにこれぇ...」

 

「うむ、最近シャルロットと簪が黒く染まっていると巷で噂でな、この機会に綺麗になってもらおうと算段だ」

 

「あ、うん...」

 

「ワタシ、ヨゴレテルノカー」

 

 

サンタラウラは二人に『漂白剤』を渡すと二人は神妙な顔つきになるとラウラがプレゼント選んだ意図を説明する。

 

巷で言う汚れは決して落ちないものだから意味がないなどいう輩は誰もいなかった。

 

この時全員が思ったこれブラックサンタじゃね?

 

 

「えぇい!他に配らなくてはならない人がいるのだ一気に配るぞ!」

 

 

そういうとサンタラウラは袋からプレゼントを取り出し、次々と渡していく。

 

『毎日やれば貴女も伝説の超サ○ヤ人に!筋トレセット』『VOCALOID』『(ワンサマー制作)BMGセット実用版』『(ワンサマー制作)BMセット実用版』を渡していく。

 

 

「後半は好みが分からなかった故、それっぽいものを選ばせてもらった」

 

「そういえば、一夏にはないのですか?」

 

「ん?あるぞ。師匠にはこれだな」

 

 

この場に居る全員に配り終えるサンタラウラだが、その中に一夏の分がない事に気が付いたマハードはあるのかないのか聞くとラウラはあると答えると袋をゴソゴソと探る。

 

「あった、これだな。『そのイカレた幻想(味覚)をぶち壊す!』という味覚矯正薬だ。師匠は難点はないのだが、あるとしたらあの外道麻婆位なものだ。副官であるクラりッサの古い知り合いの匿名希望の黒幕疑惑のPが作ったもので、これを呑めば味覚は直るそうだ」

 

「そうだよね。一夏は優しくて、強くて、カッコいいし、料理も出来て、頭もいいけどあの麻婆はね~」

 

「全くよね。私なんか一番勧められない方法でプレイさせられたし、てか、あの戦闘狂具合を何とかしてほしいわよね」

 

「そうそう、家事や身の回りの事は何でもできる夜叉エプロンは執事に転職しろっ話しですよ」

 

 

一夏のプレゼントから話しが進み、笑い声が広がる中突如辺り一面暗くなる。

 

 

「お前は間違っている!」

 

「何!?」

 

 

突如聞こえた聞き覚えのある声を聞きながらあたりを見渡す一同。

 

 

「無暗やたらと自己主張し、自分好みのものを押し付ける......そんなものはサンタではない!」

 

 

ラウラ達の目の前の一か所がライトアップされる。

 

 

「サンタとは世を忍び影から影に渡り歩く、ウォッチメン!見るがいい、これが正しいサンタの姿だ! とう」

 

 

ライトアップされた場所に、一つの白い影が朱い軌道を描きながら屋上から飛び降りる。

 

 

「私が、私達がサンタムだ......!」

 

 

そこに居たのは、ユニコーンを沸騰させる白い機械の身体を展開し、所々に朱いラインが現れ、一本角が割れ、黄色のV字アンテナになると目元をくりぬいたアイマスクを付けた我らが王、一夏の姿があった。

 

 

「ブホォ!?」

 

「きゃぁぁぁ!貴方が一番間違えてますぅぅぅぅ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「......すまない、どうかしていたようだ。まだ記憶がだな、ハッキリしないというか...。サンタの服装をした時に言峰から電話があって『新しく、伝説の超麻婆ゴッドとそこから派生した新たな辛さである超麻婆ゴッドSSと超麻婆ゴッド辛王拳20倍や超麻婆身勝手の極意を試食しないかね?』と言われてな」

 

「ゑ?」

 

「あの辛さを超えるものが生まれた...だと...」

 

 

 

一夏から知りたくなかった情報に開いた口がふさがらなくなった一同。

 

 

「今までない未知の辛さに舌鼓を打っていたんだがな」

 

「は?」

 

「ダメだこの人...。味覚(辛さ)がイカレてやがる...遅すぎたんだ...」

 

 

最早、想像も着かない辛さの領域モノを食べても美味しいという辺り、もう手遅れなのだろう。

 

 

「食べた分の料金を払って、出ようとした時に褐色白髪の赤い人に『そんな装備で大丈夫か?』といわれてね。つい、『一番いいのを頼む』と答えてしまったんだ。そこから先の事は覚えていなくてね。だが、意識がない中、変な夢を見てね。これだけは覚えてる」

 

「一体何を覚えてるのよ。サッサと言いなさいよ」

 

「あぁ、夢の中で地上とは別の場所で、グロテスクな72本の肉柱に狂気に呑まれた赤髪ポニーテールの女性と同じように狂気に呑まれた黒髪の男性が無数にいて、その柱殴り倒してたんだ。何本か倒すと金銀銅の林檎か虹色に輝く結晶を噛み砕いて、もはや作業と言わんばかりんび薙ぎ倒してサンドバックにしていくんだ。何か言っているから耳を澄ますと『貴様に朝日は拝ませねぇ!』『今日の俺は紳士的だ、運が良かったな』『ぶち殺す!』『もっとだ、○○○○○。...お前の全てを俺に寄越せ!』『スキルなんぞ使ってんじゃねぇぇぇぇ!』『今死ね!すぐ死ね!骨まで砕けろぉ!』『絶好調であるぅ!!』『その○○...もらい受けるぅ!』って笑顔で叫んでたんだよ。一柱が逃げようとすると『どこ行くんだぁ...』ってギュピギュピって足音を立てながら近づいて『ここから非難する準備だぁ!』っていうとそいつは『一人用の転移魔法でかぁ?』逃げようとしたそいつを魔法陣ごと圧し潰すと『頼むもう勘弁してくれ』って悲願るんだけど『狩られてこい!』っと元いた場所に投げ返したんだ」

 

「なぁにそれ?」

 

「いとも容易く行われるえげつない行為を静観してると『頼む兄貴!死なないでくれ!』って泣き声が聞こえたんだ。そいつは一人用の魔法陣で逃げようとした奴で『兄貴が俺たちにくれたものは間違いがなかったんだ!だから、生きるのを諦めないでくれ!』あぁ、良い友情ダナーって思っていたんだが『お願い、消える前に気持ち百回狩らせてくれ』って言ったんだ。そいつは『止まるんじゃねぇぞ...』って残して消えていったんだ。その消えていく様を見ながらそいつ等は『殺したかっただけで死んで欲しくなかった』って涙を流してた。なんだか寂しい気持ちになったよ」

 

「正気に戻って早々の一夏からそんな話を聞かされてどんな顔すればいいのよ」

 

「......笑えばいいと思うよ」

 

 

 

 

 

 

 

さて、一夏が見た謎の夢(一部実録)を聞きどうすればいいのか分からない表情をする一同に笑えばいいと説く一夏。

 

そんな中、チーンと耳心地のいい音が鳴る。

 

 

「あ、料理が出来たみたい。でも、他のは出来ていないみたい」

 

「他に、プレゼントを配る人は?」

 

「師匠も手伝ってくれるのですか!?はい、この人です!」

 

「え?子供...?」

 

 

一夏は渡された渡す予定の一覧を見て首を傾げた。

 

そこにはこう書かれていた―――『山田麻耶』

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、確かに童顔だけどさ...」

 

「プレゼントを求めれば誰でも子供だ!」

 

「さて、やるか」

 

「拳銃...?」

 

「安心しろ、魔術製で音は出ない」

 

「ちょ、おま!待っていt」

 

 

『山田麻耶』と書かれたネームプレートの前で、何か言おうとした箒を他所に一夏は拳銃でドアノブを破壊するとそのまま侵入する。

 

 

「これじゃ、強盗...」

 

「俺が法に従うんじゃなくて、法が俺に従えってんだよ」

 

「もうやだぁ、この人」

 

 

部屋に侵入した一夏は山田先生が欲しいものを確認する。

 

 

「ふむ、『幽霊負けない』か」

 

「難題だけど、どうします師匠?」

 

「結果だけを与えるのは意味がないし、だからってホラー映画を見せるだけだとパンチが弱いし、中間的なもの...あ、いいのがあるわ」

 

 

そういうと一夏は緑色のヘッドホンを取り出すと起こさないように着ける。

 

 

「今流行りのVRでな、仮に怖くて目を閉じようが直接脳に映像を送り込む代物だ。睡眠学習としても使えるぞ」

 

「流石、師匠です!」

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」

 

 

―――ガシャン!ガシャン!バキッ!

 

 

「いや......得意げになってるところ悪いけど、起き上がった山田先生が近くにあった街灯を振り回してるんだけど...」

 

「活きのいい暴れっぷりだ。さて俺達も次に行くぞ。ここに居てもトレーニングの邪魔になるだけだ」

 

 

俺、いい仕事をしたわーと言わんばかりに満足げな表情のブラックサンタはラウラサンタよりもブラックだと思いながら、部屋からスタコラサッサのであった。

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!ヴィアァァ!やめて!やめてくださいぃ!!」

 

 

涙を流しながら街灯を振ります姿は生徒に見せれるものではないな、とい思いながらブラックサンタの後を追うのであった。

 

 

 

 

 

 

「えーと、次は千冬姉か。さて内容は『酒1n』」

 

「い、一夏さん」

 

 

次の相手が、千冬なのだがその内容を見た一夏は真顔で紙を破り捨てる。

 

 

「ふふふっ、怒りのあまりゴ○さんみたいになるところだったぜ」

 

「いやー、あの...一夏の髪が逆立って天井まで伸びてるように見えるのですが、てかハイライト消えて筋肉質になってません?」

 

 

怒りのあまり権能が無自覚に発動し、一夏が脳内に思い浮かべた一夏(verゴ○さん)を周囲に居る人に直接させているせいか、其処には間違いなくゴ○さんがいた。

 

 

「な、何事だ!?」

 

 

ドアを破壊しながら入った一夏は○ンさんのテーマが、なぜか脳内に直接聞こえると奇妙な踊りを踊りながら千冬の背後を取ると

 

 

「ホォアタァァ!!」

 

「ぎゃぴっ!?」

 

 

華麗で強烈で無慈悲な蹴りを叩き込むと、あまりの痛さに千冬は意識を手放すのだった。

 

蹴られた場所から煙が出ているのは気のせいだと思いたい。

 

 

「さて、千冬姉...。アンタの願いは『酒一年分』だったが...。碌に部屋を掃除せずに汚部屋にした罰で、実費による酒は断酒2週間にしたからって、んなこと願わなくていいだろ」

 

「あ、だから一夏は怒ってたんだ」

 

「軽めにしてたんだが...仏の顔もなんとや。この特製お薬を3錠飲ます」

 

「それってどういう薬なの?」

 

「一錠で10日日間酒が飲めなくなる薬だ。飲んだ瞬間、吐き気と目まいと、頭痛が襲う代物だ、フフッ、悔い改めるがいい」

 

「ブラックサンタだー」

 

 

一夏は断酒薬3錠飲ませたことにより、1ヵ月真面に酒が飲めなくなるので、酒好きの千冬にからすれば生き地獄であろう。

 

 

 

 

「他にはどういうのがあったのですか?」

 

「他?俺の所には『一夏との幸せな一日by匿名希望の水眼鏡』『一夏との子供by将来はBMG』『妹と一緒の温かい家族byミステリアスな長』中にはどういう訳か...『兄さんとの熱い夜、兄さんの種子、兄さんとの子供、兄さん(そのもの)』」と最後は最早だれか予想しなくても分かる始末だ」

 

「今の人たちは聖夜が性夜になってませんか?」

 

 

ラウラが他に何があるのか気になると一夏は自分に届いたお願いの一部を言うと一夏は懐から、自分をデフォルトにした二頭身くらいのぬいぐるみを取り出す。

 

 

「俺に対して何かしてほしい奴にはこのぬいぐるみを送って我慢してもらうか」

 

「そういえば、マハードは何かお願はあるのか?」

 

「そうですね、取りあえず早くマナとガガとくっ付いて欲しいですね。既成事実?どんどんやればいいと思います。姉妹丼でもう構わないじゃないですか」

 

「お前は何を口走ってるんだ」

 

「ちょっ!?お兄ちゃん!!」

 

 

偶に此奴何言ってるのか分からないなと首をひねるとマハードは盛大に溜息をついた。

 

 

「因みに一夏。クリスマスプレゼントに生まれたままの姿でリボンでしばった状態で『私があなたのクリスマスプレゼントです』と言われたらどうします?」

 

「まず、スマホで写真を撮ります。その次にSNS及びブログその他サイトを開いたら『これが身近にいる淫乱痴女』というタイトルで全世界に向けて配信します。勿論モザイクなし」

 

「全世界に痴女認定されちゃぅぅぅ!?」

 

「社会的に抹殺する気満々ですね」

 

 

マハードの意味不明な質問に素直に実行する事を言う。

 

 

 

 

一通り荷物を配り終えた一夏達一行は食堂に戻ると出来た料理を並べ料理を食べていく。

 

楽しそうに、話をする彼女たちを見ながら、一夏はジュース片手に笑みをこぼす。

 

 

「何を笑っているんですか一夏」

 

「何、自分が血泥まみれになって戦う意義を見失う事が何度かあってな。強敵との戦いで何度も心が折れかけた、逃げたくなった、何度も後悔した、何度も諦めかけた。だが、そんな時、いつもあの笑顔が、あいつらとの思い出が俺を奮い立たせる。ここで倒れたら、あの日常はもう二度と味わえないかもしれない、と思うと自然と力が入った。お前らは俺に助けられてと言うが、実際は俺が助けられたことの方が多いんだぜ」

 

 

ここだけの話しな、と口に指を当て言う一夏。

 

さて、時間は10時を過ぎ一夏は来ていた服を脱ぐと、其処には黒い神父服の上に赤い外套を身に着ける。

 

 

「む、一夏。そんな恰好をして何処に行くのだ?」

 

「IS学園のプレゼントは配り終えましたが、私にはまだ子供たちにプレゼント配らなければいけないのでね。ここでいったん退席させてもらいますよ」

 

レア度の低そうな仮面をつけると一夏は窓を開け飛び出していく。

 

 

「まだ、待っているのです。このサンタからのプレゼントを待っている子供たちが今か今かと待っているのら私のやることはただ一つです」

 

「師匠!」

 

「今の私は『サンタアイルランド仮面』夜叉もワンサマーも関係ありません!それ以上でもそれ以下でもないのですから!!」

 

「い...サンタ!料理は残しっておくわよ!」

 

「えぇ、お願いします。行くぞ、子供たち!叶えたい願いの数は十分か!!」

 

 

サンタアイルランド仮面の長いクリスマスの夜は始まったのだった。




エレちゃん取れたし、良いクリスマスが

本作一夏にdies irae要素を足した姿を想像した瞬間これやべータイプだ自覚。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。