何故俺は鈍感と言われるのか解らない (元気)
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鈍感男の日曜日(前半)

初めてで、クッソ下手くそです。それでも見る人はマジで感謝です。
よろしくお願いします!


「私たちの約束…………忘れちゃ嫌だよ?」

 

 

 

 

 可愛らしい女の子が俺の手を握りながらそう言った。彼女の白い素肌に、大粒の涙がつたり、そのまま地面に落ちていった。俺は何て言えばいいか分からず、俺の瞳に映っている彼女を見ることしか出来なかった。すると、俺の考えを読み取ったのか、クスリと笑い俺の頬にゆっくりと手を添え笑顔で言った。

 

「本当に鈍感何だから……バカ……………………。」

 

 

 そしてそのまま画面が暗くなっていく。主人公が目を覚ますとベタな台詞が画面上の下側に出てきた。

 

 

「夢……か…。 にしてもスゴく懐かしい夢だったな。次はいつ会えるのかなぁ…あれ? 涙がとまんねぇや…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……はい、お疲れー。主人公君お疲れさまでしたー。俺はゲームのコントローラーをそっと床に置き、思いっきり伸びをした。

 

 どうもこんにちは。俺は塚崎 真守(つかさき まもる)と言うものだ。ついさっき、【学園生活】と言うゲーム、世間で言うギャルゲーを、たった今クリアしたところた。

 

 俺の友人が面白いからやってみろ。と、煩いもんだからなんとなーくでやってみたところ、意外と面白かったって言うオチである。

 

 

 

「鈍感…ねぇ。」

 

 

 俺は自分の頬をポリポリとかきながら、一人で苦笑いを浮かべた。

 

 俺は、よく、鈍感と言われる。

 

 

 そもそも、鈍感っていうけれど、いったいどこが鈍感なのかわらないし、理解ができない。俺の親友が、「あのこ、絶対お前のこと好きだよ?」と、言ってくるが、「はぁ?」としか返したことがない。

 

 

 そうかえすたんびに、俺の親友は深くため息をついて、可哀想な人を見る目で俺を見てくるが、普通はそう思わないだろ?

 

 やってくれたことと言えば、毎朝俺のことを見つけて笑顔で挨拶してくれたり、ノート貸してとか言われたり、隣の席になったときに嬉しそうにしたり、話していると時々肩とかをペタペタと叩いてきたり、「一緒に帰ろう♪」って、言われたり…。そんなことぐらいだ。

 

 

 どうしてこれだけの行動で俺のことが好きってわかるのか不思議である。

 

 

 首を捻りながら考えてみるが、意味のない行動だと判断したので、考えることはとりあえず放棄することにした。

 

 

 

 ソフトを取りだしケースにしっかりと入れる。時計を見てみると午後の3時だ。さて困った、いったい何をしようか。やることをやってしまった俺が一人悩んでいるとコンコン、とノックする音が俺の部屋に響き渡った。

 

「おにーちゃん♪」

 

 そう言って俺の妹の美奈が嬉しそうに入ってくる。

 

「買い物に一緒にいこー♪」

 

 言っておくが俺の妹美奈は中学一年生だからな。ここ、結構重要だからな覚えておけよ。テストに出すからな?覚えたならばよし。ついでに俺にはもう一人姉貴が居る、高校一年生だ。ちなみに俺は中学二年生だからな。おっと、話がズレたので元に戻すか。

 

「別にいいけど、みなは一人で行ける歳だろ……。」

「え~! おにーちゃんと一緒がいいー!!」

 

 ジタバタと手足を動かして訴えているみなは見ていてスゴく面白い。ちょっとワガママだけどな。

 

「ハイハイ。んじゃ、玄関で待ってて。」

 

 みなの頭を撫でると、嬉しそうに目をつむって大人しくなる。まるでさっきとは正反対の人のようだな……。ついつい甘やかしてしまうのは俺の悪い癖だ、これだとみなのためになんないよな。そう心のなかで反省をする。

 

「やったね! それじゃあ早くきてねおにーちゃん♪」

 

 ルンルン気分で俺の部屋から出る。俺が言うのも何だが、意外とかわいい顔をしてんだよな、みなは。学校でも可愛いって言われてるし俺と大違いだな。

 

 一人で苦笑いを浮かべながら立ち上がり、服が入っているタンスへと重たい足を持ち上げて歩いていった。別に適当で良いよな。目の前にあった服を引っ張り出してそのまま着替える。準備が終ると財布を持って部屋を出て、階段を降りていく。玄関につくと、みなは怒ったように「おそーい」と頬を膨らませて待っていた。

 

 

「ゴメン、ゴメン。遅れた分何か奢るから許しれくれ。」

「アイスクリームで手をうとう。」

「チョコアイスで良いよな。」

「お主、よくわかっているな。」

「何年一緒に暮らしていると思ってるんだよ……。好物くらい覚えるだろ。」

 

 ツッコミをいれながら靴を履き替えて、ドアノブに手をを伸ばす。

 

「行ってきまーす。」

 

 そう言って俺とみなは家から出たのだった。それとは裏腹にスーパーにつく頃にはとてもヘトヘトの状態。何故かって?それは俺の腕に抱きついている妹、みなのせいだ。嫌、絶対に。その元凶は寄り道から始まる。

 

 家からでてすぐに公園で遊びだし、それに付き合っていた俺はブランコに乗っていた、すると突然、俺の背中を思いっきり押してきた、それによってブランコから転落し顔面は避けたものの頬に切り傷がついた。

 

 

 次に野良猫と出会った。とてもたちが悪い猫で俺たちのことを睨みながら引っ掻いてきた。被害を受けたのは俺だけであって、みなは何もされていない。

 

 それ以外にも俺を盾にして自転車との衝突を避けたり、カラスの糞が落ちてきそうなところに俺を歩かせたりと、とてもじゃないが疲れた。

 

「おにーちゃんゴメン。何か本当にゴメンね……」

 

 突然謝ってきたみなに少し驚いたが、俺は笑顔でみなの小さい頭を優しく撫でる。

 

「気にすんなって、確かに疲れたけど楽しかったよ? 俺はだけど。」

 

 疲れたって言うのも本当だし、一番はみなが楽しそうで良かった。って言う感情がとても強い、だからさっき言ったことは嘘ではない。それにいろんな意味で強くなれた気がするし、ハハハ……。

 

「おにーちゃんありがと。」

 

 ギュッと俺の腕に更に強く抱きつくみな、何か柔らかいものが当たっているが気にせずに行こう。その状態からスーパーにつくと腕にくる力が弱まった。ふぅ、いろいろ危なかったな。俺だって男だからドキドキ位は余裕でするし、抑えるのに一苦労だ。そして、なかにはいると俺とみなはそれぞれ買うものを手分けして探すことにした。

 

「醤油……醤油っと、お?」

 

 いつも使っている醤油に手を伸ばすと反対側からも手が伸びた。チラッとその人を見てみると……

 

 

 目の前には目がつぶれそうなほどの、かわいらしい美少女が手を伸ばしていたのだった。

 

 

 




誤字脱字は日常。指摘&感謝お願い致します。
閲覧ありがとうございました!

ヒロインは次回からです。

※分けました。


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鈍感男の日曜日(後半)

わけてみました。


「葵 優(あおい ゆう)……」

 

 ついついフルネームで呼んでしまった…………葵優とは俺と同じクラスにいるショートカットが特徴的な女の子だ。運動と、ともに勉強までできる美少女。クラスの委員長をやっており、みんなからの信頼が厚く、人気者だ。そして、モテる。

 

 

 しかしそんな彼女でも料理が苦手、と言うより料理が絶望的に最悪と噂されている。実際どうなのかは食べてみないと分からないが、俺にはそんな勇気がない。

 

「つっ……塚崎くんッ!!」

「オッス。」

 

 何故か素早く手を引っ込めて後ろに隠す葵。俺なんかやらかしちゃったかな? けっこう傷ついた……まぁ、とにかく話すか、ここであったのも何かの縁だしな

 

「葵は何を買いにきたんだ?」

「えっ……と、見ての通り醤油だけど。」

「あっ、そうだな(笑)」

 

 しまった。とんだ馬鹿なことをしてしまった。ここに居るのは醤油を買うために居るんだろーが俺の馬鹿野郎。俺が一人で恥ずかしがっているとクスッと、笑だす葵。クッソ……ほんと今日はついていないなぁ………………

 

「塚崎くんって意外と面白いんだね。」

 

 満面の笑みでそんなことをいってくる葵に、胸の奥から溢れてくる羞恥心が、今にも爆発しそうになるまでに迫ってきている。と、ともに…スゴく虚しい…

 

 笑顔で言われるとさすがに俺でもに虚しくなるわ…。苦笑いを浮かべながら、さっき取ろうとした醤油を二本取り、そのうち一本を葵に渡した。

 

「はいコレ、さっき取ろうとしたよな?」

「あぁ、ありがとう。」

 

 葵は嬉しそうに受けとると大事そうにカゴに入れる。何でそんなに大事そうに入れるんだろうか……もしかして…………っ!

 

「葵って結構(その醤油が)好きなんだ。」

「えっ!?/////」

「俺も好きだよ(その醤油が)」

「ほ、本当にっ!?/////」

「お、おう。いっつも目につくんだよなぁ、それについつい目で追っちゃうんだ、やっぱ見た目も良いし何より中身が良いからな(その醤油が)」

「ありがとう/////」

 

 葵の頬がだんだんと赤みが差し、最終的には耳まで真っ赤にしてうつむいてしまった。

 

 

 ん? 何故葵は顔が赤くなってるんだ? それにスゴく嬉しそうだし……そうか、やっぱりそこまであの醤油が好きなんだな。その気持ちスゲーわかるよ。

 

 

 一人でウンウンと頷いていると、買い物のことを思い出した。やっべー少し話しすぎたな、みなが待ってるかもしれないし急ぐか。それにアイスも買わないといけないし。

 

「じゃあな葵、醤油の事についてたくさん話せて良かったよ。また明日な!」

「えっ!? ちょっと待っ………………………………もう何を一人で嬉しがってたんだろ…勘違いしてスゴい恥ずかしい…………/// 塚崎くんの…鈍感…。」

 

 そのときの少しだけ上ずった葵の声は、夢中になっていた俺にはとどかなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 買い物を済ませて家に帰ると俺はキッチンに足を運びつい先程スーパーで買った材料を使って料理を始める。

 

 意外と料理をするのが楽しくて、こういう風に親が料理をするのではなく俺が勝手にやっているが、姉貴曰く「男が作れる料理の領域を越えている」だそうだ。自分の料理だからあまり美味しいと思わないんだが、実際に食べている人がそう言ってくれるなら、それだけで満足だ。

 

 さて、夕食を完成させた所で俺にはやるべき事がある。

 

 

 それは………………姉貴を呼びにいく事だ!

 

 

 俺の姉貴は美術部(仮)に所属していて、最近漫画を作ることを課題とした部活の宿題を片付けている。一見言われてみるとそこまでたいしたことではないがうちの姉貴は特別だ。夕食の時間になって呼びにいくが中々ドアを開けてくれない。集中しすぎて回りの声が聞こえないとのこと。

 

 そんな重要な任務を任されている訳だが、嫌そこまで重要じゃないか…………まぁ、俺は優しいからね、行ってやるよ。

 

 

 コンコンとドアにノックをしてからドアノブを回すと、机に乗っている用紙とにらめっこしている姉貴が居た。奇跡的にドアが開いていたことに感謝しながら姉貴を見てみると、『私は今めちゃくちゃ集中していますので、話しかけないでください』と背中で語っているように感じるのは綺麗にスルーしよう。そうでもしないと出てこないしな。

 

「姉貴、ご飯できたぞ。来なかったら今日買った杏仁豆腐を全部喰うからな。」

「あー。お腹すいたなー。おっ、丁度夕食の時間だ早速食べに行こうかなぁー♪」

 

 スタッと立ち上がりさっきまでここに居た姉貴は瞬く間に消えてしまった。スッゲー速いな……特訓とかしたら陸上選手になれるんじゃね?いや真面目に。

 姉貴の部屋からでてリビングに向かうと、丁度母さんが帰ってきた。

 

「お帰り、今から夕食だから。それと、父さん今日遅くなるって。」

「おっ、ありがとー♪流石できのいい息子を持ったもんだね!」

 

 そう言って俺には抱きつく母さん。この人はスゴく軽いけど、とても元気だ。たまにスキンシップが激しいときがあるけどね……それは本当にやめてほしい。母さんは学校の先生をしている……それも俺の学校の…………………………。気にせずにいくか。俺を置いてそそくさとリビングルームに行く母さんを見ていると、ものすごくお腹が空いているのだと分かる。

 

 俺もリビングルームに着くと既に三人の女性が椅子に座って待機していた。

 

「遅いよおにーちゃん!早く早く!!」

「呼んでおいて遅れるとは、早くしろ。終わんなくなる。」

「まもるほら早くッ!!!お腹すいて私死んじゃうから!!!」

 

 母さんの顔がヤバイので急いでいつもの席につく、それじゃあ…………

 

「「「「いただきます!」」」」

 

 

 

 

 ~4数分後~

 

 

「「「ごちそうさま」」」

「えっ!?はやっ!?」

 

 僅か4分で俺の作った料理を全てたいらげてしまった。何時もなら30分くらいかかるのに今日は4分!?いくらなんでも早すぎる……この人たちに何があったのか俺にはわからない。ん?ちょっと待てよ……今日って日曜日だよな?

 

「お姉ちゃん、お母さん始まったよ♪」

 

 なるほど、ドラマの時間なのね。この人たちは現在韓国ドラマにハマっている。俺には何がいいかわからないけどね。女性ってみんなこうなのか?俺の疑問が増えるばかりである。

 

 この三人がテレビに釘付けになっているときに俺は一人で皿を洗っていた。いつものことなんだけど。皿を洗い終わった後に自分の部屋に戻り、そのままベッドにダーイブ。

 

 

 ふぅ、ベッドを開発した人はとてもスゴいな。フカフカだし温かいし何より、すぐに眠りにつける。ホントマジ神様だわぁ…その状態で時計をチラッと見てみる。現在7時31分。まだあの三人はドラマを見ている途中なので、風呂に入ることにするか。うん、そうしよう。

 

 俺はベッドから起き上がり服を持って風呂に入った。そして、風呂に入ること10分。濡れた髪の毛をタオルで拭きながら部屋に向かい、電気を消して一ベッドに横になる。疲れた体だから早い時間に寝ても問題ないよな?ウッシ、寝よう!そして、俺は疲れた体をいやすようにして深い眠りについたのだった。

 

 

 

 

 



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鈍感が学校に行くとこうなる

第2話です。見てるれると嬉しいです。
頑張ります。


 どうも、塚崎真守(つかさき まもる)です。現在友達と一緒に登校中でございます。

 

「真守よぉ~どうだった?」

 

 ニヤニヤしながら俺に感想を求めてくるコイツは、山下 朝一(やました あさいち)と言う奴だ。スゴく独特な名前ですぐに覚えることも出来たし、何より幼稚園からの付き合いだからな。嫌でも覚える。朝一って長いから俺はあさと呼んでいる。

 

「何がだよ?」

 

 すると更にニヤニヤし始める。なんだコイツ……気持ちが悪いな。

 

「金曜に貸したゲームだよ。で?どうだった?」

 

 お前がそこまで感想を求めるなら、俺は容赦なく言うぞ?勿論アイツが知らないような事まで知ってるぜ。なんにせ全クリしたからな。そこまで俺は暇人だった訳だ。

 

「あの金髪のヒロインが一番最初にクリアしたヒロインだな。確かに顔もいいって言われてたし性格もいいけど、本当の自分に自信がなくて、偽りの自分を演じてたって言うところが良かったな。ソコから主人公に泣きながら本当の自分ってどうやったらなれるのでしょう。っていう台詞が良かったな。あと、全員のヒロインのエンディングを見たあとの皆との別れもとても泣けたな。泣いてないけど。それに…「はい、もう良いです。許して下さい(泣)」

 

 

 なんだよ、まだまだたくさん感想を言っても良いのに。でも、俺の勝ちだな。誇らしい気分のまま学校に到着し、あさと一緒に教室に向かった。ちなみに俺とあさは同じクラスだ。何故だかコイツとはずっと同じクラスなんだよな。まぁ、嫌いじゃないからいいんだけど。

 

 

 教室に入ると、突然、内井 義成(うちい よしなり)が後ろから飛びついてきた。

 

 

「よっシー登場!!」

 

 コイツも俺とあさの友達だ。よっシーは毎朝、俺達に何かしら驚かしにくる。そのたびに面白いリアクションをするのが……

 

「ウワァッ!??」

 

 あさだった。今回のリアクションは、背中に乗ったよっシーにびびったあさが約10センチ中に浮き、ダッシュで教室の隅まで行った。この時間僅か30秒。素晴らしい!俺の周りには陸上選手になれる人がとても多いな!そのうちオリンピックにでも出られるんじゃないか?……冗談もさておき、今はまずよっシーに降りてもらう事を優先しよう。

 

「ひとまず一回降りたらどうだ?」

「おぉ、ワルいワルい(笑)。朝一が面白いもんだからね?」

 

 そう言ってよっシーは俺の背中から降りた。俺の隣に立つとやはり目立つな。なんにせよっシーは背がとても小さい。俺が162だとすると、よっシーは147…………だ。

 

「ププッ」

「なっ!?……お前俺の背が小さいことを馬鹿にしただろ?」

「すまん。だけど………………フフッ、ゴメン。俺には堪えきれない。」

 

 

 とうとう笑いだしてしまった。イヤ、俺にしては頑張ってこらえた方だ。ホントだぞ?初めてあったときなんか見た瞬間笑い出したしな。クククッ。

 

 笑いがやっとのことでおさまってくると、よっシーは怒りながら俺を睨んた。

 

「お前の眼鏡ぶっ壊して殺ろうか?」

 

 ヤバイな、よっシーはとても背が小さいことを気にしているんだよなぁ。このままだったらマジで眼鏡を壊されるかもしれない。なので俺は正直に謝る事にした。

 

「ゴメン、ゴメン。次からは気をつけるわ。」

 

 

 多分……。と言う言葉を飲み込んで謝るポーズをとった。すると溜め息をついてから俺を見るよっシー。これは許したときの仕草なのだ、つまり許してくれたって事だな。良かった、良かった。

 

「もういい。それには馴れたしな。」

 

 なれたんかい!ついつい突っ込みを入れてしまう俺だった。

 

 

 突然ガラララッ、っとドアがいきなり開く。何事かと思いそっちに視線を向けてみると、不良と噂されている基 茜(もとい あかね)が教室に入ってきた。

 

 基が教室に入ることで先程まで静かにしていたクラスメイトが騒ぎだす。ヒソヒソと小声で何かを言ってはチラチラと基を見ている。そうされるたんびに、基はキッとした鋭い目で睨んだ。

 

 

 葵とは違って腰まで伸ばした髪の毛を揺らしながら歩く姿は、まるで「近づくな」とでも言っている様だった。鋭く少しつり上がった目に、整った顔立ち。本当に不良なのか?と疑わせるような容姿は、葵と並ぶことが出来るほどの美少女だ。

 

 

 基は自分の席に着くと鞄から荷物を取り出して机の中に入れ、ロッカーに鞄を置いた。そしてそのまま、教室から出ていった。…………何故基を不良と言うのか俺には解らないな。さっきの行動からしてみると何も不良らしいことはしてないよな?ホント、意味わかんねぇー。

 

 

 俺は1つ溜め息をついてから自分の席に座って荷物の整理を始める。あさとよっシーも自分の席に着くと荷物の整理を始めた。

 

 

 俺は先程の基の事が気になって、自分でもわかるくらいモヤモヤしていた。本当にこれでいいのか?と。

 

 俺達の学校は二、三年生はクラス替えがなく二年生からずっと同じクラスなのだ。その中で基だけが一人だけでやっていけるわけがない。っていうか、そうなってほしくないんだ。このクラスは皆が仲良くなってもらわないと、俺と約束した奴に合わせる顔がなくなる。それだけは本当に避けたい。

 

 

 

 基を探し出すために教室を出ると、俺は迷わず屋上に向かった。何で屋上に行ったか分かるって?男の勘だっていうのは嘘で、俺が一年の頃にあさとよっシーとで屋上に行ったら、基が居たのを見たからだ。俺は悩みがあると屋上に行って気分を晴らしたくなるからな、それと一緒だと思う。悪魔でも俺はだがな。

 

 重たいドアを開けると思った通り、基がフェンスに手をかけて町を眺めていた。

 

「おはよう基。」

 

 基の隣に並んで同じ様にフェンスに手をかけると、いつの間にか基が俺の隣から約10メートル離れた位置に移動していた。俺って嫌われてるんだな……苦笑いを浮かべながら、俺は思っていたことを口にした。

 

「基って不良と呼ばれてるけど、全然不良じゃないよな?」

「ウチは十分不良だ、文句あるのか?それともからかってんのか?どっちにしろお前はウチの敵に変わりはない。」

 

 

 俺の言ったことに反論し、更にキツイ言葉を返してきた。自然と自分の心に何かが刺さってきた気がした。何だろう、この悲しい感情は……俺が黙っていると、基が睨みながら俺にいい放った。

 

「例えお前がウチの所に来ようが、ウチの気持ちをあじわうことは決してない。ウチはお前より辛い想いをしてきた。そんな気持ちがお前に分かるはず無いだろ、だからウチの目の前から消えろ。」

 

 グサグサと俺の心をエグるようにその言葉は突き刺さった。確かに、確かにそうだけど……俺は言い返す言葉が見つからなかった……。

 

 

 俺が何も言わずにうつむいていると、基は黙って屋上から姿を消したのだった。

 

「これじゃ、基はずっとあのままだぞ。それでいいのか?イヤ、ダメに決まってる。でも…………」

 

 先程の基が言ったように、俺は基の気持ちを知らない。過去に何があったのか、どんなことがあって心を閉ざしてしまったのか、どうして不良になったのかさえ、俺は何も知らない。さっき言われた言葉が頭を横切る。

 

『例えお前がウチの所に来ようが、ウチの気持ちをあじわうことは決してない。ウチはお前より辛い想いをしてきた。そんな気持ちがお前に分かるはず無いだろ、だからウチの目の前から消えろ。』

 

 そう、基は言った。力が足につたわらなくて、フェンスに寄りかかりながら座る。

 

「辛い想いって、どんな辛い事があったんだよ…………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、知ってますよ。」

 

 突然頭の上からそんな言葉が聞こえてきた。その言葉は、俺にとっては希望の言葉にも聞こえた。その人を見てみると、葵と同じくらいの長さの髪で前髪をピンで止めている女の子だった。

 

「私、愛川 彩夏(あいかわ さやか)。茜ちゃんの友達です。」

 

 その言葉を聞いて、俺は最後の希望を愛川にかけるとこにした。

 

「愛川、俺に教えてくれ、基の過去を。」

「はい、それでは言いますよ。」

 

 俺は愛川から視線をそらさずに、じっと見つめて話を聞くのだった。

 

 

 




たくさん出てきましたすみません。
感想&指摘お願いします!


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鈍感男の過去

今回はシリアスです。はい。


 俺は現在、基の正面にいる。あのあと愛川から話を聞いて、とても辛い想いをしてきたんだと知った。だから俺は放課後に基を屋上に呼び出した。基の気持ちを知った今なら間に合うかもしれないと思ったからだ。そして現在にあたる。

 

「大切な用と聞いたから来たが……またお前か。」

 

 冷たくて、とても鋭い目で睨んできた。だけど……俺には『助けて……』と、言っているようにも見えたのだった。何故だろう、今ならそう感じる。多分、本当に多分だけど、基は俺に期待をしてくれているんじゃないか?コイツなら、気持ちを知って、辛さを知って、今の状況から助けてくれるかもしれない。そう思っているんじゃないか?と。

 

 俺は息をゆくっくりと吸い込み、基に向かって話を始めた。

 

「とても辛い想いをたくさんしてきたよな。基は。」

「……っ!お前に何が分かる!!ウチが言葉だけで惑わされるわけが「そんなことない!!!!」

 

 つい大声で叫んでしまった。そのせいで基はビクッと微動して黙って俺を見た。俺はもう一度ゆっくりと息を吸い込み、優しい声で基に話続けた。

 

「確かに俺はその時の体験は出来ない……だけど、その気持ちは痛いほど分かる。だって………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺も友達を失ったから。」

 

 それを聞いた基は驚いていた。俺は驚いていた基に笑みをみせながら語るように昔のことを話した。

 

「俺は小さいときからずっと一緒に居た友達がいたんだ。」

 

 そう、それは今みたいにとても綺麗な夕日が見える時だった。俺は空を見ながら昔のことを思い出しつつ、基に話続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日はちょうど夏休みを迎える直前の出来事だった。ミーン、ミーンと、セミの鳴く音も、じわじわと肌が焼けるような暑さも。全部がその日で崩れていった。

 

「おーい、おっせぇぞまもる!」

「なんだとぉ~!かけっこでは俺に負けたくせに!」

 

 ソイツの名前は畠山 幸助(はたけやま こうすけ)。その時の俺たちはまだ小学四年生で、今とは違って、とても無邪気で素直でそんでもって、とてもバカだった。バカといっても頭のよさではない。むしろ小学生から90点以下を取ったことがない。まぁ、それは置いといて、バカというのは、人の気持ちまで考えることが出来なかったほうのバカだ。この事ができていたら、あの選択の時にキッとあんなことになることは無かったのに。絶望と後悔に自分で苦しめていくとは1つも…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時の俺達は学校の帰りにカブトムシを捕りに森に行った。その森はとても大きく奥に行けば行くほど道がわからなくなる。その事からこの森は『迷いの森』と言われていた。

 実際にあった事故では、ある大人が何かしらの用でここの森に来て奥まで入ったあげく、二度と帰らなかった。と言う説があった。その事も踏まえて、子供は勿論、大人だって入っては行けない領域まである。だからと言って子供たちの遊び場を無くすことにも繋がることから、最初の部分だけは入っていいようになっていた。

 

 

「知ってたか?ここの奥に行くと珍しいカブトムシが手に入るんだぜ?」

 

 ニヤリと笑いながら幸助は言った。その当時の俺はカブトムシが大好きで、誰も見たことがないような、すごいカブトムシを探していた。そんなこともあって入っては行けないとわかっているのに、珍しいと言う言葉に負けて聞き返してしまった。

 

「珍しい?それってどんなカブトムシなの?」

 

 幸助は座っていた切り株から立ち上がり「ついてこいよ」と良いながら歩いていった。

 

 少し奥まで行くと黄色いテープが木に巻き付いてあり、看板に【ここからは立ち入り禁止】と書いてあった。見るからに雰囲気がいつもと違うし、気温は30度に近いのに暑さは感じられず、むしろ背中から寒気がした。流石に不安になった俺は引き返そうと幸助の袖を引っ張った。

 

 

「こ、幸助、ここは不味いよ。俺、嫌な予感しかしねぇーし……。」

「へー、まもるはこんなとことーれないんだぁー。俺は通れるぜ?」

 

 

 黄色いテープをくぐり抜けて自慢気にする幸助を見て、『幸助が行けたから、俺も行けるはずだ!』と、思って俺もテープをくぐり抜けた。

 

 ここが俺の1つ目の過ち。嫌な予感がしていたのにも関わらず通ってしまったことだ。よくよく考えると、大人でも迷子になって出られない。と言う事は、その当時の俺達には死んでも出ることは不可能ってことになる。

 

 

 数分歩き回っていると、たしかに珍しい虫がたくさんいた、幸助は嬉しそうに「うわー!本当にいたー!」と言った。

 

 ここで第2の過ち。この時点で俺は可笑しいと思っていた。一回入ったことがあるのなら戻っては来られない、それに『本当にいたー!』と、言ったことに気づけなかった。来たことがあるなら、本当には付かない、つまり幸助も初めて来たと言うことになる。

 

 

 

 慌てて引き返そうと幸助を引っ張った。

 

「幸助帰ろう!ここなんかヤバいって!!」

「えー!良いだろ別に。だったらまもるだけ先に帰れよ。」

 

 珍しい虫に興奮しきっていた幸助の耳には俺の言葉は届かなかった。俺が焦っていると、突然幸助が俺の方を見てあることを告白した。

 

 

「まもるは知ってたか?俺、イジメ受けてるってことに。」

「えっ!?」

 

 俺はそこで初めての知ったんだ。幸助がイジメられていたことに。何で?幸助何か悪いことしたか?何で?

 

 

 

 俺が戸惑っているのを見ながらも幸助は虫をカゴにいれてから、静かに続ける。

 

「ウザイんだってよ、何でも押し付けるし先生来ると良いところを奪って褒められるんだって。」

 

 それは勘違いだ。俺は幸助をよく知っている。幸助は俺がやり残した部分を見つけて箒を代わってやってくれたら、たまたま先生が来て幸助を褒めただけだ。押し付けるも何も、幸助が俺のためにやらせてくれるのに………………あれ?何で俺が居るときだけ……。

 

 そして幸助は涙を流しながら

 

「子分にされてる、まもるがかわいそうだろ!! って、その日の放課後に殴られた。」

 

 ウソ……だろ?俺のせいで、何も悪いことをしていない幸助がイジメられる?可笑しいだろ?イジメを受けるなら俺の方だろ?何で、何で……何で俺じゃなくて幸助何だよ?

 

 涙が頬を伝った。色んな想いを乗せて沢山の涙がこぼれ落ちた。ゴメン、ゴメン、ゴメン、ゴメン。謝っても謝りきれない。何も気づいてあげられなかった。そんな自分が悔しい。泣いている俺を見た幸助は笑顔で言った。

 

「じゃあ、約束しようまもる。これからはイジメを受けている人を見つけたら、絶対助けてやってくれ。俺とお前の約束だ。」

「……勿論!!」

 

 俺達は固く指切りを交わした。これが最後にした会話だとは知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのあとは…………どうなったんだ?」

「……俺はそのあと気を失ったんだ、起きたときには病院にいて、幸助は…………教室で自殺していた。」

「っ!?」

 

 幸助は授業が終わってすぐに自殺した。だから俺と居た幸助は既に死んでいたんだ。もし、あの時俺がもっと森の奥に行ったらどうなったんだろうな。と、疑問に思うこことがある。でも、不思議と怖くなかった。だって俺、自殺した幸助を見て信じられなくなって、走って道路に飛び出した。そして車に引かれて病院に送られた。そのあと丸二日間目をさまさずに生死をさ迷っていたそうだ。奇跡的にかすり傷で終わったのも、全て幸助のお陰なんだと思う。それに、あの約束をするために幸助は森に俺を呼んで、助けてくれたに違いない、だって幸助は最後に

 

「助けてやったから感謝しろよな!そんで…………ありがとう真守。」

 

 そう笑顔で言ったんだから。

 

「でも実際には俺が幸助を殺したも同然なんだ、だから…………基を助けるんだ。幸助との約束のためにも。そして、基……いや、茜のためにも。」

 

 精一杯の笑顔で俺は茜に言った。茜は俺が助ける、絶対にだ。

 茜はうつ向くと、静かに泣いた。

 

「ウチの場合はまだ生きているから、仲直りすればその関係は取り戻せる……でも、お前の場合は…………もう、この世に居ないじゃないか…。ウチよりも辛い想いをしているのに……!!なのに……なのにウチは…………………………何も知らずに酷いことを……たくさん…。」

 

 茜は俺に言った言葉を思い出しながら謝罪をしている。涙をたくさん流して、顔がとてもグシャグシャになっているのに、俺の辛さを理解して、想像して、今、泣いているんだ。こんなやつが不良なわけがないだろう。だって、不良は俺の気持ちを知っても涙を流さないからな。俺と茜はとても似ていると思う。だから、幸助に言われたこともだけど、つい、手をさしのべて助けてあげたくなるんだ。

 

 そっと茜を抱きしめる、けっしていやらしいことは考えていない。ただ、泣けるぶん全て泣いて、スッキリしよう。と言う意味を込めて抱きしめた。それと共に、俺のために泣いてくれてありがとう。って意味も込めているんだけどな。

 

「もういい、茜が俺のために泣いただけで、とても嬉しいよ。ありがとう。」

 

 少しだけ強く抱きしめる。感謝の気持ちをたくさん込めたから自然と体が動いた。俺って変態なのかな?まぁ、今はそれで良いや。

 

「優しい茜ならキッとやっていけるから、だから、勇気を出して謝って、教室で沢山の人と関わりを持ってくれるか?」

「…………………………真守がそう言うなら、仲良くしてみる……。」

 

 俺から離れて茜は正面から俺に笑顔でそう言ってくれた。その時の茜は、夕日に手されて本当に綺麗だった。惚れそうなくらいにね。

 

「んじゃ、まず俺から仲良くなって欲しいね。さんざん罵倒を受けてきたし。」

 

 苦笑いを浮かべながら右手を差しだすと、頬を少しばかり赤く染めた茜が、俺の手をゆっくりと握った。

 

「本当は、心をずっと閉ざすつもりだった。でも、ウチの気持ちを知った上であの話をしてくれて……ウチだったら話さないよ、そんな悲しい記憶は、それなのに話してくれた。だからウチは、真守を信じることにしたんだ。」

 

 反則級の可愛い笑顔を魅せてきた茜に、ドキッとしながらも視線をそらさずに

 

「これからよろしくな、茜。」

 

 と、茜に負けないように、最高の笑顔を魅せたのだった。

 

 

 

 これでいいかな、幸助?

 空を見上げると、綺麗な夕日が俺達二人を包み込み、とても不思議な気持ちになった。ふと、

 

 《まだまだ助けるやつがたくさんいるだろ?お前ならできるぜ、真守!》

 

 そういっているかのように、優しくて、でもとても力強い風が俺の頬に触れた。それはまるで、幸助が笑っているような、そんな風のようにも感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




次回は茜の過去です。
指摘&感想よろしくお願いします!

ちなみに、幸助は時々過去編等で出てきます(笑)


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鈍感と茜(茜の過去編)

今回は、茜の過去編なので、またシリアスです(笑)


 茜side

 

 ウチは知らないくせに、その人の気持ちをしったかのように話すやつが嫌いだ。特に男子。

 そんなウチの前に出てきたヤツが、変人でお節介焼の塚崎真守だった。

 ホントにウザいし付きまとうし、今まであった変人ランキング第1位を飾る、そんなやつに出会った。初めは、ウチの気持ちを知らずにただしゃべっているのだけだと思った。でも……ウチよりも辛い想いをしていたのは真守の方だった。

 私の場合はまだ生きているから、いつでも謝る事が出来る。だけど真守は、真守の場合は、もうこの世に居ないじゃないか……。しかも自殺。それを聞いた私は泣いた。ウチのために、そして、約束のために動いてウチと話してくれたのは、これで二人目だった。

 一人目は愛川彩夏、ウチの初めての友達。そんなサヤに出会ったのは、小学1年生の頃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「茜ちゃんって言うんだ、よろしくね!」

「う、うん。よろしく……」

 

 その当時のウチは今よりも人と接するのが苦手で、1ヶ月たつのに未だに友達が出来ずに独りで教室にいた。そんなウチを見つけて、笑顔で話しかけてくれた。それがサヤとの出会いだったんだ。

 

 それからは、サヤを通してたくさんの人と触れあった。初めはなかなか自分から話そうとしなかったけれど、だんだんと馴れてきて、小学校卒業までにはたくさんの友達が出来たんだ。でも、その裏では、サヤがイジメを受けていることには気がつかなかった。

 

「サヤ、最近元気無いけど……何かあったの?」

 

 ある日の帰りに、いつもと違ったサヤの顔色気づいた。心配した私はサヤに様子を伺った。

 

「えっ!?…………と、全然問題ないよ?いつも通り元気だけど、それより茜ちゃんと中学一緒なんだよね?」

「えっ……う、うん!サヤと同じ学校だよ!!また同じクラスだといいね!」

 

 ホント馬鹿だ。何で気づかなかったんだろう。その時の見た痣を指摘していれば……と。今でも思い出す事が出来る、あのときのサヤの悲しそうな表情を…。ここで気づけば、喧嘩することだって…………………………

 

 

 

 

 

 

 

「何で教えてくれなかったのさ!!!」

「そ、それは……」

「もういい! サヤなんてもう知らない!!!!」

 

 卒業式当日。一緒に帰ろうとして校門で待ってたけれど、あまりにもサヤが遅かったので教室に行ってみたら、サヤが女子に囲まれて暴力を受けていたのを目撃した。髪を引っ張られ、カッターやハサミでサヤの綺麗な髪を切ろうとする。何とか避けてもお腹を足で蹴られる。そんなサヤを見たとたん、体が動いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ……ハァ…。」

 

 気づいた時の目の前の光景は酷かったのを覚えている。女子たちの顔はカッターで切った傷や、そこらじゅうにある痣、そして床には少しだが血がある状況だった。

 

 ウチは人をこんなにまで手を下してしまった。

 

 そんな罪悪感とサヤを助けた達成感が戦っていた。

 コイツらはサヤにこんな目に合わせたんだ、罪はまだ軽いはずだ。でも、ここまでしなくて良かったのに!

 そんなのばかりだ。サヤの方を見てみると、グシャグシャになった髪の毛はいつもの綺麗さを失っていて、体のいたるところには痣があった。

 

 

 焦ってたんだ。自分のせいでサヤがイジメを受けていたのに、しかもそのイジメた女子をボコボコにした。最悪だ。こんなの。

 そして言いたくないことが、傷つけてしまう言葉が口から溢れ出た。そして走った。大事な親友を置き去りにして。

 女子のことは自分から言った。そうでもしないと後々面倒なことになるから。

 

 それからは人との関わりを減らした。勿論一瞬にして噂は広まった。ウチたちが行った学校はあまり行く人が居なかったのでまだ平気だった。それに皆仲が良かった人たちばかりなのでまだ良かった方だ。その頃からウチは不良と呼ばれるようになったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからよろしくな、茜」

 

 コイツは本当に変人だ。ウチの気持ちを知った上であんな話をするんだ。ホント馬鹿だ。でも、コイツ、真守を見ているも心がとても和むのは何故だろうか?落ち着くって言うか、安心するって言うか、よくわからないけどとにかく安心するんだ、真守を見ていると。

 噂では聞いたの事があるが、実際によくみると顔は良い方だよな?美形ってやつか?な、なにをかんがえているんだウチはっ!?///////

 

 こ、コホン。まぁとにかく、コイツには元気を貰った、だからこれを次のステップに進める。そう、サヤと仲直りするんだ。話せなかった時間を取り戻すんだ。

 

「あー、茜、突然悪いけど俺かえるわ。」

「えっ!?何故だ!?」

 

 驚いて訳を聞こうとしたが、指で指している方を見たとたん、言葉を飲み込んだ。

 

「茜ちゃん。」

「……サヤ…。」

 

 黙ってうつ向いてしまった。何て言って謝ろう、どうしたら許してくれるんだろう。そんな感情が頭をぐるぐる駆け巡る。すると、ポンッと、混乱していた頭に手を置かれた。その手はとても大きくて、優しい。そう感じるような手だった。

 

「お前らなら出来る。」

 

 眼鏡の奥から見る真守の目には、確信があった。…………信じてみよう。

 ここまでしてくれたんだ。何でもやってやろうじゃないか!!

 真守をしっかりと見てから、

 

「勿論だ。」

 

 と、力強く言うと。ウチに笑顔を魅せてから、「んじゃ明日学校でな」と言い残して、屋上から出ていったのだった。

 

 ……ホント、かっこよすぎるだろ。惚れたらどう責任をとるつもりなんだ。バカ。

 

 ウチは微笑んでから、サヤを見つめた。

 

「久しぶりだな、サヤ。」

「茜ちゃん……!フフッ、久しぶり!」

 

 一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに懐かしいサヤの笑顔を見ることが出来た。サヤ、元気そうで良かった。

 心のなかで安堵してそのまま話続ける。

 

「あの時、本当にごめん。ずっとずっと、謝ろうとしてけど、勇気がでなくて。本当にごめん……」

 

 許してもらおうなんて考えていない、ただ、この気持ちが伝わればそれだけでウチは満足だ。

 

「ううん、私こそゴメンね。あの時、相談していればこの2年間こんな関係にならなかったのに…………だから、ゴメン。…………………………これで、おあいこだよ。」

「えっ!? そ、それってつまり……。」

「うん、茜ちゃんのこと、許すっ!」

「ほ、本当かっ!?本当に許してくれるのかっ!?」

 

 意外な答えについ声を漏らしてしまった。サヤは笑顔でウチを見続けて

 

「勿論。だって、私達は、ずっと、ずっとずっとずぅーーーーーっと、親友なんだから。」

 

 今日は泣いてばっかりだな。ウチは今日2回目の涙を流していた。嬉しくて、嬉しくて流れた涙で視界がボヤける。それでもウチは、サヤに抱きついて、思いを伝えた。

 

「これからも、ずっとずっと、ずぅーーーーーっと、親友だからな!」

 

 それを聞いたサヤは、最高の笑顔をウチに魅せてくれたのだった。

 ありがとう、サヤはこんなウチを許してくれて。そして、ありがとう。真守。

 

 そのあとウチたちは、笑いながら二人で帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真守side

 

 ふぅー、一件落着っと。

 俺はあの時帰るフリをして二人の様子を覗いていました。はたから見たらただの変態だな。一人で苦笑いを浮かべる。

 

「にしてもいい人だったんだね、基さんって。」

「うおっ!?」

 

 突然後ろから声が聞こえたと思って見てみると、葵だった。

 

「それにしても、そんなことがあったんだね。」

「お前はどこまで聞いてたんだよ……。」

「えーっとね、呼び出した所からかな?」

「始めからいるじゃねぇーか!」

「だって、告白すると思ってゴニョゴニョ……。」

「ん?なんつった?聞こえなかった。」

「もう!何でもない!!」

「何か理不尽じゃないか?」

 

 何で葵はあんな怒ってるんだ?全然わかんねぇ…。

 俺と葵は一緒に階段を降りていく。…………まだ怒ってるんだけど、俺なんかしたか?先程の会話を思い出しながら降りていくと、葵が立ち止まった。俺も立ち止まって葵を見る。

 

「どうしたんだ、葵?」

 

 俺が疑問に思ったことを聞いてみると、葵は首を横にふって「何でもない。」と、少しばかり悲しそうに見えたのは気のせいなのか?……やっぱり解らない…。

 

 教室に戻ると、俺はすぐさま部活にいく準備をする。

 

「じゃ、俺は行くな、気を付けろよ。」

 

 葵に手を振ると俺は走って部活に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優side

 

 ハァ、基さんズルい。名前で呼ばれるなんて……。

 私は深い溜め息を1つつくと、塚崎くんのように部活の準備を始めた。

 

 

「ズルいよ……塚崎くんは…。」

 

 この自分の気持ちを理解したときは嬉しかった反面、とても難しいと思った。塚崎くんはとてもモテる。カッコいい上に、優しい、頭いい、運動できる、そしてお人好しだ。そこも踏まえて好きなんだけれどね。一人で苦笑いを浮かべながら、教室を出て自分の部活に向かった。何故か足がとても軽く感じた。何でだろう?まぁ、いいか。

 

 苦笑いから、自然と口元が緩んで笑顔になった。

「やっぱり、好きだよ、塚崎くん♪」

 私は鼻唄を歌いながら部活に向かったのだった。

 

 

 

 

 




ちなみに、8人とハーレムする予定です(笑)
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鈍感は朝からついていない

ここで候補者が登場!



 チュンチュン。

 

「ファー。…………朝か。」

 

 俺の朝の目覚めはとても悪い。だけど、今日は珍しく早く起きることができたな。……何か悪いことが起きるかもしれないけど。

 ベッドから出ようとすると、隣からの温もりが気になった。そして隣を見てみると。

 

「スー、スー。」

 

 規制正しい寝息をたてながら寝ている、みながいた。おいおいどう言うことだよ……。昨日俺は確かに一人で寝ていたはずだが。

 俺が昨日のことを思い出していると、みなが目をさました。

 

「あっ、おにーちゃんおはよう。」

 

 そういいながら俺の胸に顔をうずくめた。おい、さすがに兄弟でも、これはアカンやろ!何故か関西弁になりながらも、みなを引き剥がした。

 

「おにーちゃん寒いー。みな死んじゃうよー。」

「今は5月だぞ、何いってんだよ。それにくっつきすぎ。」

「ええー。ヤダー。」

「やだじゃない。ほら起きるぞ。まだ寝るんだったら自分の部屋に行け。」

 

 無理矢理起き上がらせると、みなは頬を膨らませながら俺の部屋から出ていった。

 やっと行ったか。いつもはこの逆で、みなが俺をお越しに来る。多分その前に俺のベッドに潜り込んで、安らかに眠っているのだろう。寝ている途中に、時々抱き枕かと思えるようなモノが俺の隣にあるのだ。多分みなだろうけど。

 

 俺はカーテンを開けて制服に着替える。ネクタイをしっかりと絞めて朝食を作りに1階に降りる。夕食と休日の昼食は俺が作っているが、朝食と弁当は母さんが作る。まぁ、今回みたいに俺が早く起きると俺が家族全員分の朝食と、全員分の弁当を作るけどな。現在の時刻は5時24分。とても早く目が覚めたな。いつもなら7時20分位というギリギリの時刻に起きるが、自分で言うのも何だがホント、珍しいな。

 

「今日はトーストと、卵、ハム、サラダでいいよな。」

 

 めちゃくちゃ簡単だな。朝だからそんなもんだろ。うん、いいよな!

 一人で納得して勝手に作り始める。朝食と同時に一緒に自分を含めた5人分の弁当を作る。うわっ、母さんいつもこれやってんのかよ、マジ尊敬するわぁ~。と、一人で母さんに感謝しながらも、テキパキと、朝食を作り続ける。

 

「おはよーって、あらら、珍しくまもるが朝早くに起きて朝食と弁当を作ってらっしゃる。」

「詳しい解説ありがとう。さぁ、母さんには色々手伝って欲しいんだけど?」

「むぅ、まもるの成績下げるぞ?それでもいいなら手伝ってm「大人げない、それでも教師か。」

「すみませんでした。」

 

 謝りながらも、ペロッと舌を出してペ〇ちゃんみたいな顔をする母さん。いい大人が何やってんだか……。でも、それとは裏腹に授業は分かりやすくて評判がいいのだが……。常にそうしてもらいたいものだな。子供の願いだ、期待してるよ母さん。

 

 いい忘れていたが、今更だけど塚崎家の紹介といこうじゃないか。別にいいだろ、忘れてたんだから。

 

 父の塚崎 敬助(つかさき けいすけ)39歳、とても優しく、面白い。仕事は警察官だったりする。姉貴いわく、「お父さんと、真守の鈍感ぷりは異常。」だそうだ。だからな俺の鈍感は仕方のないこととなんだ。父さんのせいにしよう……。

 

 母の塚崎 愛実(つかさき まなみ)、紹介の通り俺の学校の先生をしている。この人もまた優しいが、天然ボケだ。それが人気の秘訣なのか、学校ではとても有名人で、授業が面白いと評判なのが驚きだったりする。父さんとは1歳離れている38歳だ。

 

 姉の塚崎 麗(つかさき れい)、高校1年生の彼氏無し。これを姉貴の前で言ったら殺されるが…………。美術部で絵がうまい。頭は良いが、運動はできるくせしてやらないというよく解らない姉貴だ。何故か俺にだけ口がとても悪い。

 

 そして妹の塚崎 美奈(つかさき みな)、ブラコン。ここ重要な?嫌われるよりは、はるかに良いのだが、時々すごい行動をとるのでやめてもらいたい。例えば、風呂に一緒に入ろうとしたり、色々ヤバイのだ。学校は女子校に行っている。男子が苦手らしい。本人いわく、「おにーちゃんは特別♪」だそうだ。

 

 以上が俺の家族だ。個性が豊かすぎるのが特徴的な家族だよな。うん、俺が言うんだ。間違いない。

 

 ~数時間後~

 

 家族全員が食卓につくと、いっせいに手を合わせた。

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 声を揃えて挨拶すると、父さんはトーストにかじりついた。現在6時時刻45分。みんなが起きて朝食をとる時間だ。ちなみに俺は大半まだ寝ているけどな。一人でいつもの光景を思い出していると、父さんが嬉しそうに俺に誉め言葉を言ってくれた。

 

「ん~。真守のトーストの焼き加減はちょうどよくて好きだぞ!」

「ん、ありがとう。」

 

 父さんに褒められると素直に嬉しい。なんにせこの人、味覚が活性化されているのか、味にはうるさい。そんな父さんを黙らせて、その上結婚までもちこんだのがこの女の人、母さんだ。

 

「本当、料理の腕あげたわねぇー。流石だわ、でも私の腕にはおよばないけど。」

 

 そのニヤリとしたような、ドヤ顔のような表情ムカつくな。何歳離れてると思ってるんだよ。母さんは人生の経験者だろ?俺はまだまだこれからだもんね。と、よく解らない争いを一人でやっていると。

 

「ごちそうさま。」

「姉貴はやっ!?」

「私もごちそうさま~。美味しかったよおにーちゃん♪」

「みなもっ!?」

「私もごちそうさま。次も期待してるわよー。」

 

 な、何だ。最近の女性はこんなにも食べるのか……。だってまだ2分いや、1分たったか、たってないかだぞ。お、恐ろしい………………。

 

 父さんと俺も食べ終わってから、みんなの分の皿を一人で洗う。それが終わる頃には6時52分になっていた。どうしようか、結構時間が余っている。いつも家を出る時刻は7時35分。思っていたよりも倍早く準備が終わってしまったのだ。さて、何をしようか……。

 俺が一人で悩んでいると、携帯が着信音と共にブルブルと震え始めた。いったい誰からだ?こんな時間に…。ポケットから携帯を取り出し、名前を見てみると、

 

【よっシー】

 

 と、表示してあった。俺は通話ボタンを押すと、携帯を耳に近づけた。

 

「もしもし?朝から何のようだ?」

『もっしよっシー、今日はなって、おおぉ!!珍しい、こんな時間に起きているなんて!』

「俺も自分自身で驚いている。まぁ、それはいいとして、何か話があったんじゃねないのか?」

 

 脱線しかけたので話をもとに戻す。よっシーはお喋りだからな。気づいたら1時間もたってるっ!?ってことが毎回だから気をつけないと。

 

『あぁ、そうそう。そうだったそうだった(笑)』

 

 ケラケラと電話の奥から笑い声が聞こえた。

 

『今日生徒会の活動入ったから、朝早く登校しろよなーてっ。』

「それ俺今日初めて知ったんだけど……?」

 

 初耳何ですけどっ!?

 

 俺は生徒会に入っていて、その本部に所属している。ちなみに俺は副生徒会長な。選挙に受かって当選しました。それはどうでもいいとして……

 

『えっとなぁ、昨日言うの忘れたんだって、姉さんがそう言ってた。』

 

 内井 萌那(うちい もな)、すごい名前だよな。安心しろ、俺もそう思った。この人、俺のかよう光ヶ丘中学(ひかりがおか)の生徒会長様だ。つまり、よっシーのお姉さん(萌那さん)=生徒会長。

 

 ワーオ!これはすごい!!あのチb…………コホン。あのよっシーのお姉さんが生徒会長とはまさに驚きだ。驚き桃木ビックリゴキっと。………………。ふざけるのもひとまず止めて、これから生徒会の活動があるらしい。めんどくさいな…。

 

「わかった。すぐいく。」

 

 会話を終了させると、急いで学校に向かう準備を始めた。俺の家から学校までにかかる時間は歩いて約3分。余裕だな(笑)

 

 すぐさま鞄を持って家を出た。

 

「行ってきまーす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家を出て走ること2分。学校につくとそのままの勢いで生徒会室に向かった。そしてドアを開けると……

 

「遅いぞ真守。10秒遅刻だ。」

 

 そう言って竹刀を俺の顔に向けてニヤリと笑っているのが、生徒会長の萌那さん……だ。

 

「スミマセン、でm「言い訳無用!」

 

 今日は予言した通りについてないな。ホント、めんどくさいことに……

 

「遅れた罰として私の彼氏になれ。」

「ハイハイ良いですよぉ……って!?」

 

 ま、マジかよ。

 ソッと萌那さんを見てみると。イタズラしているような可愛らしい顔で俺を見ていた。

 

「契約成立だな。これからは私のものだ……真守。」

 

 竹刀をおろして俺の顔に手を添えながら顔を近づける。そして………………

 

 

 

 

 

 

 




はい、ここまでー(笑)
次は結構、萌那と彩夏の絡みが多いです。ハイ。

指摘&感想よろしくお願いします!


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鈍感と生徒会長と小動物と



今回はあの二人のイチャイチャしている場面がおおいっすね。
楽しんでもらえると何よりです。




「プッ」

「っ!?」

 

 突然笑いだす萌那さん。俺はそれを見て騙されていたと、ここで初めて気づいた。今までのはすべて演技って事だ。後輩をからかって遊ぶとは、何て先輩だ……。

 

「面白すぎだよ。真守クン。」

 

 とうとうアハハッと笑いだしてしまう萌那さんをジーっと見つめる。勿論、この先輩最悪だな。と言う意味を込めてね。

 

「萌那さんヒドイですね、そんな人だとは思いませんでした。」

 

 いや、何となくわかってたけど、流石兄弟だな……。朝から驚かせてくるのは性別は違っても同じか。これは本心から思ったぞ。マジで。

 

「いやいや、悪いねぇ~。フフっ、ハハハッ…………。いじめたくなってね?」

「ドSですかあなたは…………。ってかまだ誰も来てないじゃないッスか。どんだけ俺が走ったことか。」

 

 2分だけどね。これは内緒な。

 

 俺は笑いがおさまってきた萌那さんを見て、とてもやり返したくなった。フフフッ、先輩、選ぶ相手を間違えましたね。口元が緩むのを堪えて先輩にやり返すタイミングを見計らう。

 

「そうだな、確かに来るのが遅いな……。あいつらにもさっきやったヤツをやってみようかな。」

 

 にししと油断している萌那さんには、とても隙だらけだ。よしっ今だ!!

 

「先輩、俺、結構本気にしちゃったんですけど?」

「へっ?」

「だから……。俺は萌那が好きなんだけど?ダメか?」

 

 少しニヤリとした表情で、前姉貴の漫画で見た『アゴクイ』を、やってみた。ひひっ、どうだ!

 

「ふぁ///ちょっ、真守くん積極的過ぎないかな?/////」

 

 どんどん赤くなっていく先輩の顔がとても色っぽいのは口に出さずに、先輩の顔を見続ける。先輩ってこの学校の美人ランキング第1位だ。お団子にした髪に、綺麗で整った顔立ち、性格も良くて面白い。そんな人にこんなことしてる俺は、男子に知られたら即殺されるだろう。それに、現在、頬が赤い上に上目で俺を見ているせいで、先程からドキドキして、とても心臓がうるさい。

 

「先輩が悪いんですよ?」

 

 何故だか顔が動いて、先輩との距離が縮まっていった。あれ、俺何やってんだろ。

 

 頭ではそう思っても、体が言うことを聞かない。ヤバい、このままじゃ…………………………

 

「真守くん////」

 

 何先輩顔を赤くしてんだよ……。可愛すぎるんだけど。そしてそのまま俺たちは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガララララッ

 

「おっはよー!」

「せせせ、先輩ぃー、顔に何かついてますよー?」

「えーほんとー?とれたとれた?」

「二人とも、はやいねぇ!」

 

 あ、あぶねぇー!あと少しで色々と死ぬとこだった……。体にとっても、精神的にも死ぬとこだったぜ…。1つ溜め息を吐いてからついさっき来た、鎌谷 杏(かまや あん)さん。萌那さんの同級生で親友だ。ちなみに本部は全員で5人で、俺と萌那さん、杏さん、男子が二人だ。残りの二人の説明がないって?それは、モブキャラだかららしい。

 

 そのあとみんなが集まり、これから始まる体育祭について話し合った。俺たちの中学は6月に体育祭をやるので、ちょくちょく準備を始めていかないといけないのだ。それも結構大変で、家に帰るのが遅くなるときが多い。何で本部に入ったのか、よくわかんなくなってきたな……。

 

 話し合いが終わり、自分の教室に行こうとドアに手をかけた瞬間、俺の袖口が誰かの手によって引っ張られた。引っ張った相手を見ると、萌那さんが顔を少しだけ赤くして、俺を見ていた。

 

「あんなことをしておいて、ただですむと思ったのか?」

「あぁー。確かにあんなことがありましたねー。(棒)」

 

 やべぇ、会議をしているうちに頭から抜けてたわ。俺は確実に萌那さんに殺される。さて、どうしてきりぬこうか。

 

「………………許してください。」

「軽すぎるだろっ!!」

「いやあれは先輩も悪いですよ。」

「いじめたくなっただけなんだけど。」

「じゃあ俺もそれと同じ意見です。先輩可愛からいじめたくなっただけですよ。」

「かわっ!?////」

 

 みるみるうちに先輩の顔が真っ赤になっていくのがよくわかる。先輩どうしたんだ?熱でもあるのか?

 

 俺は先輩の頬を手でさわる。少しビクッと微動し瞼を閉じた先輩だが、俺が「熱いですね。一緒に保健室いきましょうか?」と、言ったところ、

 

「わ、わわわ、私は……平気だッ!!」

「そうですか?なら俺は行きますね。先輩風邪には気をつけてくださいよ?それでは。」

 

 最後にニッコリと笑ってから本部室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 萌那side

 

 クソッ、逃げられちゃったか……。

 私は内井萌那。生徒会長をやっています。現在私は好きな人に逃げられました。そう、あのモテ鈍感王子です。何でだろう、普通は《俺に気があるのか?》ぐらいは普通に思わないのかなぁー?全く……………………手強い相手だね。

 

「アゴクイは刺激が強すぎるって……。」

「えー?誰にされたのかなぁー?」

「!?」

 

 後ろを振り返るとソコには杏がニヤニヤしながら笑っていた。どうしよう、聞かれたら大変なことになる。急いで話を変えないと!

 

「そう言えば今日っt「真守くんとの出来事でしょ?」

「みてたのっかいなっっ!!」

 

 ハイ。つい突っ込みを入れてしまったじゃないか、それに私の人生終わったね。最後ぐらいはもう少し話したかったな……なんてね。

 

「どこから見てたのよ?」

「フフフッ、真守くんがドアを開けたところから。」

「本当の最初からいたんだねっ!!」

 

 泣きたい、泣きたいよぉ!!!今なら死ねる!!死ねるよ私!!!!!

 心の叫びと共に、崩れ落ちてしまった。仕方ないよ、誰だってあんな場面は見てほしくないでしょ?それと一緒だよ。

 

「後でたぁーーーーーーぷりっ、聞いてあげるからね♪」

 

 杏さん、その笑顔がとても怖いです。杏に真守くんが好きって言わなきゃよかったな。だって言った日から毎日からかうんだもん。こっちのメンタルはもうズタズタだよ。ハァ。でも、真守くん、かっこよかった……………………何でもないです////

 

 一人で赤面していることも知らずに、杏は私の手をひいて本部室から出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真守side

 

 にしても大丈夫かなぁ、萌那さん。顔があんなにまで赤くなっているのにも関わらずに立っていられるんなんて、流石よっシーの姉だな。

 

 教室に向かっている途中、ドンっと、誰かとぶつかってしまった。

 

「スミマセンッ!!、大丈夫ですか?」

 

 慌ててその人に手をさしのべた、すると見覚えのある人だった。

 

「ハイッ!大丈夫ですって、真守君だったんですね。」

 

「えへへ、ゴメンなさい。」と、言いながら俺の手を掴んで立ち上がる。あれ、そう言えば茜はがいないな。あの日から茜と愛川は一緒に仲良く登校している。仲直りしてよったと、心のそこから俺は思った。

 せっかくなので、教室まで愛川と歩きながら話すことにした。

 

「そう言えばさ、茜はどうしたんだ?いつも一緒に登校してるだろ?」

「茜ちゃん、寝坊したから先いってていいよーって、電話がかかってきたんです。なので今日は、私一人で登校してたんですよ。」

 

 茜でも寝坊ぐらいはするんだな。なんか意外だ。俺から見る茜は、普通に真面目でやることはしっかりとこなす。ってイメージがあったんだけれど………………、ほんと意外だ。

 

 茜はあのあとから、クラスに馴染むことかできた。誤解もすべてとけたし、葵と並ぶ美人と言われて男子の間では人気だし、良かった良かった。俺はチラッと愛川を見てみる。これもすべて愛川のおかげなんだよな。本心からそう思う。

 もしあのとき、愛川が俺の前にいなかったら、茜とはもっとギクシャクしていたし、茜を許してくれるほど心が広いし、出会うことができて良かったな。しかも…………………………。

 

「愛川って小動物みたいで可愛いよな。」

「ふぇえっ!?////」

 

 何故だか愛川から変な声が聞こえたんだが、俺なんか悪いこと言ったかな?…気づかぬうちに言ったのか!?それはヤバいな。すぐに謝んないと!

 

「あっ、ゴメンな。ついそんな言葉が……。(何もいっていないのに、架空の世界で何か言ったと思っている。)」

「うっ、うん! 私は大丈夫ですよっ!? …それに、嬉しかったです………。(さっき言った事だと思っている)」

 

 誉め言葉を気づかぬうちに言っていたのか、ならよかった。変なことをいってなくって良かった。後で恥ずかしい思いをするのは俺だからな…………。

 

「ならよかったよ。愛川見てたらそう思ってね。(何て言ったかわかんないけど)」

「あ、ありがとうございます////」

 

 愛川は何故か嬉しそうに歩いている。女子って、わかんねーな。俺は苦笑いを浮かべながら、愛川のスピードに合わせて一緒に歩くのだった。

 

 

 

 

 

 




ちなみに杏は候補に入れるか入れないか迷ってます。
そこんとこでリクエストがあるならいってください。多かったら入れようと思います。

誤字脱字の指摘&感想よろしくお願いします!












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鈍感と乙女な生徒会長?

萌那さんとのイチャコラが入っております。

暖かい目で見てやってください。


「じゃあな、愛川。」

「こちらこそ、ありがとうございます。」

 

 愛川を教室まで送り、俺は愛川に手をふったあと、自分の教室に向かった。

 

 俺の教室は2年3組だ。葵と茜とあさ、そしてよっシーと同じクラスで、愛川は2年1組だった。

 

 教室に入るとよっシーが飛び付いてきて、前まで流行っていた芸人の真似で、原始人みたいな人が、馬などを捕まえるときにする【ニ〇ブラ】と言うものをやってきた。

 

「痛い!痛い!止めろっ!」

 

 よっシーの場合はただの首締めだ。やべぇ、息できない。マジで俺死ぬ!!

 

「よぉーしっ、次は、朝一だな♪」

 

 どす黒いオーラを出しながらニヤニヤする姿は、まるで悪魔を連想させるような怖さだ。俺はともかく、あさがとても心配なんだが……。俺は助けてやれねぇぞ、頑張れあさ!お前なら生きて戻ってこれる!と思う……………………。

 

「今日の姉さん機嫌が凄く良かったろ?」

 

 よっシーが俺の机に乗りながらそういってきた。ほんとコイツはシスコンだよな。俺の妹みたいだ。

 

「良かったのかわかんねぇーけど、よっシーみたいな悪戯はしてきたぞ。」

 

 俺の発言を聞くと、よっシーはゲラゲラと笑い始めた。俺なんか悪いこと言ったか? 本当のことを言っただけなんだが。

 よっシーのことをジーっと見てると、それに気づいたよっシーは、目から溢れてきた涙をぬぐって話を始める。

 

「姉さん、今日の朝、真守に電話しようとしてたんだけど、何故か顔を真っ赤にして、「よ、義成かわってくれる?///」っつーって、可愛い姉さんのために電話したんだ、したらさ、何か嬉しそうに鼻歌を歌い始めんの。もしかして俺のこと好きなのかな?って思ったけど、流石に兄弟だから違うだろうなと思ったんだけどな。でも、俺いいことしたなーって。」

 

 長々と萌那さんについて語り始めるよっシーはとても嬉しそうだった。そのぐらい大好きなんだなって言うのが伝わってくる。多分だけど、よっシーは萌那さんのことが好きなんだ。兄弟と言う(ライン)を越えてね。どうすんのかな~、もし、萌那さんに好きな人が出来きて、萌那さんの好きな人が萌那さんのことを好きになって、両想いってなったら。…………その時は、全力でよっシーを助けてやろう。なんにせ、俺らは親友だからな。

 

 

 そう俺は決意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は放課後、朝の会議が終わらなかったので、放課後にもう一度やる。と言うことになっていたので、また本部室に居るのだが、

 

「萌那さん、これデジャブですよね?」

「うん、私もそう思う。」

 

 「午後5時に本部室にしゅーごー♪」って、言ったのモブキャラのあの二人だよな。言い出しっぺが何故遅れてるんだよ!!おかげてコッチは迷惑してるし、朝のことがあって未だに気まずいンだよ!! そう、心で叫んだところで誰も聞いてないけどな。

 

 俺と萌那さんは同時に本部室に来てしまい、しかも朝のかとがあって無言状態。今思い出すととても恥ずかしいことしたな。クソッ!思い出したら恥ずかしくなってきた……。

 

 どうしようか、こんな気まずい空気だと何もはなすことが出来n「ねぇ、真守くん。」出来たー!

 

 俺が話しかけようかすごく焦っていたのにも関わらずに、あの人、萌那さんは口を開いたぞ!…流石生徒会長だな。と、感心する。理想は、男の俺が言うべき時なのに…とても女々しいな…スゴく情けないっス。

 

「何ですか萌那さん?」

 

 椅子に座りながら顔だけを萌那さんに向ける。すると突然、目の前に萌那さんの顔があった。ち、近いですよ!?は、鼻がくっつきそう!?それに……いい臭いするし。萌那さん顔を赤くしててスゴく可愛いし、もう、何なんだよ!!

 

「真守くんさぁ、朝に私のこと【萌那】って、呼び捨てにしたでしょう?」

 

 自分自身でもわかるくらい顔から血の気が引くのがよくわかった。正確にはこれから亡くなるけどな………。調子に乗りすぎたか。すげえ~後悔してる。

 

「それは、そのですね。萌那さんがからかったので、やり返そうとしたら…そうなりましt「それで?(真守の膝に乗る)」ヒィッ!?」

 

 やややや、ヤバいッスよこれはー!!何でいきなり髪の毛おろすし!?しかも髪おろすとめちゃくちゃ可愛いし!何、何で!?俺を殺す気!!?そんでもって、何顔を赤く染めて上目ずかいなのかな!?このままじゃ誰か来たときに勘違いされる!!!

 

「真守くん~、耳、真っ赤だよ?惚れちゃったのかな?ふふっ、でも真守くんになら……」

 

 え?先輩何やってんの?何でいきなりリボン外すの?ねぇ?さらに第一ボタンをあけはじめたんだけど?ハッ!?←(めちゃくちゃテンパってます。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……先輩ダメですよ?」

 

 俺の理性ありがとな。見事勝ってくれて。さもないと男子全員に殺される。特によっシー。

 

 俺は先輩の手を抑えながらボタンを1つずつ閉めていく。あと少しで見えるってところまで開けていたのは見なかった事にしよう。全て閉め終り、先輩を立たせる。それと同時に俺も椅子から立ち上がった。

 

「萌那さん、そういうのは好きな人か、彼氏にやってください。俺にはダメですよ。」

 

 1つ上ってのを理解しているうえで、先輩のサラサラとした髪の毛を撫でる様にして手を置いた。先輩もったいないな、こっちの方が倍は可愛いのに……。どうしてなんだろうか。

 

 萌那さんは顔をうつむける。そして、言った。

 

「私、この髪を見せるときは、好きな人か、大好きな人にしか見せないって決めてるんだ。真守くんは、わ、私のこと好き…………?」

「……何いってるんですか?俺は先輩のこと普通に好きですよ?」

 

 その言葉を聞くと、先輩は顔を上げて驚いたような顔で俺を見た。な、何でそんなに驚く必要があるんだ?先輩が好きなのは当たり前だろ?だって……

 

「先輩のこと嫌いな人は居ませんよ。可愛いし、面白いし、性格が良いのかは置いといて、俺はスゴく先輩のことが好きですよ?」

「性格はとってもいいです~。でも……ほ、ホントに?」

 

 俺は笑顔で頷いて先輩の髪をくしゃっとする。

 

「ハイ!俺は先輩のこと、とっっっっっっっても尊敬してますもん!」

 

 その言葉を言ったとたん、先輩の笑みが消え去っていった。その代わり、先輩の顔からは冷たい視線と、呆れたような顔をされた。え?俺なんか悪いこと言ったか?

 

 戸惑っている俺を見て、先輩は盛大な溜め息をつく。

 

「何でそうなるかな~。普通はさ…………あー!!!もー!!!真守くんの馬鹿ぁ~~!!!期待した私が馬鹿だったわ!」

 

 先輩が何を考えてたかは全然分からないけど、ただ1つだけ分かったことがある。それは、俺のことをとてもけなしているって言う事だ。俺本当のこと言っただけなんだけど?よくわかんねぇーな、女子って。頭を掻きながら、先程の言葉の意味について先輩に質問した。

 

「俺よく分かんないんですけど、説明してもらっても良いですかね?」

「自分で考えろっ!!!!!バーーーーーーーカ!!!!!」

「バッ!?分かんないもんは分かりませんよ!!!」

「真守くんの鈍感!!!!!」

「そ、それは、と…父さんに言ってくださいよ!!俺最近よく鈍感って言われるんですけど、よくわかんないっすもん!教えて下さいよ!」

「普段は鋭いのに?私の恋とk…れ、恋愛に………、じょ、女子に鈍いのお前はー!!」

 

 何かめちゃくちゃ言い直しているんだが、まぁ良いとするか。女子…ねぇ、

 

「もしかして俺、女子に嫌われてるんですか?」

「何でそうなるのよ!?」

「むしろその逆で、真守くんはとてもモテるよ?ファンクラブまであるし。」

「杏!?いつから居たのっ!?」

 

 突然の杏さんの登場で俺と萌那さんは驚く。杏さんって存在感が薄いのか?嫌、薄くしてんのか?とにかく凄いことは俺でもわかるな。どんなスキル持ってんだよ、いつも見られてる見たいで怖いな。

 

「んーとね。二人が同時に入っていく所からかな?」

「最初から居たなら言ってよ!!??//////」

 

 リンゴみたいに顔を真っ赤っかにさせる萌那さんは、恥ずかしさのあまりしゃがみこんで、何かブツブツと言っている。

 

「ゴメンゴメン、お二人さんの雰囲気で、なかなか入れなくてね?」

 

 ニハッと笑う杏さんは、萌那さんよりも小悪魔に感じた。小悪魔どころじゃないな……魔王だわ、うん!魔王にしよう!!そうでもないと俺がスッキリしないんだけどね。杏さん馬鹿にしてスミマセン。

 1人で勝手に杏さんに謝罪してから、二人の様子をみてみる。

 

「あれれ?何でそこまで真っ赤になるのかな?やはり今現在好きな人が近くn「居ません!!」

「あれれれ?じゃあ私が好きになってっても?」

「いいいいい、良いけどダメ!!!!!」

「どっちやねん(笑)」

 

 悪魔女王で決定だな。これから広めようかな。なぁんて。チラッと悪魔女王様を盗み見してみると、口は笑っているけど目が笑っていないと、よく漫画であるやつではなくて、優しく笑ったような目をしているが、口元は死んでいた。言葉じゃ表現できないほどになってる。しかも後ろからヤバそうなオーラを放っているではないか。俺の人生もここまでか。

 

 

 

 

 そのあと、会議も無事に終わり、萌那さんとも仲直りしてから、俺は1人で無事に帰る予定だった。

 

 

 

 

 

 その日から、俺の運命も変わることになるとは知らずに……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




杏さん!!どうしようか!!

候補にぜひいれてほしいと思う方は、感想を待っています。

次回は、R-18?に近いです。気をつけてください。

何でR-18なのかって?それはねぇ、キャラが変た……ううん。何でもないです!

それでは感想&指摘よろしくお願いします!


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鈍感がやられるの巻き

やられます。はい。

一部ヤバい場面があるので見たくなーい!

という人は、バックお願いします。

全然構わねー!!早くみせろっ!!

って人は、どうぞ読んでみてください。(その人によってはあまりヤバくないと思う。)

ではどうぞ!!


「おいおいおいおい、ねぇーちゃんよ、俺らと遊ばね?」

「い、いえ、結構です………。」

「そう言わずに、俺達結構ヤり込んでるからさ~、普通のやつらよりは上手いぜ?」

「ヒッヒッヒ、見てみろよコイツ、いい女じゃねーかよ!あー!!!ヤりてー!」

 

 道の真ん中だと言うのにも関わらず、下ネタを連呼する馬鹿たちが、可愛いと言うより、はるかに美しいと言える女性にナンパをしていた。おい、そこらじゅうにまだ純粋な子供たちが居るだろ、そんなんじゃ子供たちが大人の世界という危ない階段を登ってしまうじゃないか。そうなったときにどう責任をとるつもりだよ、バーカ!ほら、子供たちをみてみろ、まだなにも知らない純粋な目でチラチラと見ているだろ!気づけよバーカバーカ!!

 

 そちらに向かって心の叫びを吐きまくった。ふぅ~、スッキリした。俺は満足したような顔で見ていたらなんと、ナンパされている女の人と目があった。すると突然、俺の方に走ってきたではないか。理解することが出来なかった俺はポカーンとした表情で硬直する。えっ、ちょっ…嫌な予感しかしないんだけど。

 

「ダーリン♪遅かったわね?さっさと帰ろ?」

 

 はい。来ましたー。俺死にましたー。嫌な予感は当たりましたー。

 

 とても美しい女性が俺の腕に体を密着させながら、演技とは思えないほどの魅力っぷりを男たちの前で振る舞う。そして、背中まである髪の毛をふわりと束にして、右肩にかけることで大人っぽさを演出しているその人は、近くから見ても、遠くから見ても、とても綺麗だった。

 

 そんな彼女に目を奪われていた俺は男たちの声にすこしばかり反応が遅れてしまった。

 

「おいおいおいおい、あり得ねーだろこんな弱そうなやつ。」

「兄貴の方が断然強いだろ(笑)。なぁ、そんなやつ置いといて、こっちこよーぜ?」

 

 なんだこの人たち、会ったばかりの人に失礼だろ。少々カチンと来た俺はギロッと男たち3人を睨み付ける。言いたい放題言うと、ろくなことが起きねーの知らないのかな?……ったっく、はらただしい奴らだ。

 

 俺のことは完全にスルーすると、さっき俺のところに来た女性の腕を引っ張る。

 

「嫌っ!!放して!!!」

 

 そう言っているのにも関わらず、ニヤニヤしたら顔で引っ張り続ける男に、とうとう堪忍袋の緒が切れた。

 

「スミマセンね。俺の可愛い過ぎる彼女が迷惑かけて。でも調子に乗るとどうなるか知らねーよ?」

 

 1人の男に近づき、腕を掴んで女性を解放させる。その時に、女性は俺の背中に隠れるようにして逃げた。

 

「調子のってんのはお前の方だ……ろ…、う、動かねぇ!?」

「どの口がそんなこと言ってんだ?」

 

 笑顔でそう言ってやると、男たちは俺の笑顔に恐怖し、瞬く間に逃げてしまった。臆病だな、だったら初めからナンパすんな。俺は後ろを振り返り女性が安全かどうか確認する。

 

「大丈夫でしたか?」

「あっ、ハイ!全然大丈夫です?」

「何で疑問系なの(笑)」

 

 何故か疑問系だったことにクスリと笑ってしまった。大人みたいな雰囲気なのにこんな面白いしことがあるとは思わなかったな。見かけで人は判断しないってのはこのことだな。そう、改めて思うのだった。

 

「じゃあ、俺はこれで帰るんで、またナンパされないように気をつけてください。それでは。」

 

 笑顔でそういい残して、綺麗に姿を消す予定だった。だがしかし、それだけでは終わらなかった。終わらなかった。と言うよりも、『終われなかった。』と言った方が正しい気がする。

 

「あの、またナンパをされるかもしれないので、その……家までついてきてもらっても良いですか?」

 

 俺よりも背がとても小さいその女性は上目ずかい、断れるわけないだろ。今日は何回これされたらすむのだろうか。内心そう思いながらOKと出す。

 

「勿論ですよ。」

「本当ですか!?わーい、やったぁー!」

 

 パァと明るくなった笑顔に目を奪われながらも歩き出す。ヤバイって、今まであったことのないタイプの人なんだけど…全然掴めない………………。

 

 見た目はとても小さくて身長は152位、まだよっシーよりは上だけど(笑)。でもそのわりにはスタイルは抜群。なんか色々な要素が入ってて怖いんだけど。もしかしたら性格が意外とヤバかったりしてね。

 

 それはないなー、と祈ってみた。

 

「そう言えば名前、言ってませんでしたね。わたしは野中 美帆(のなか みほ)貴方は?」

「塚崎真守。中学2年生です。」

「えっ!?わたしと同じだよー!!」

 

 意外だ。てっきり俺は高校2年生位かと思ったけど意外だ。同じ学年かー。仲良くなれるといいな。そんな俺はそのあとの言葉に心から驚いた。

 

「友未学園(ゆみがくえん)の高校2年生です!」

「………えっ?」

 

 美帆さん、まさかの天然。同じ学年と思わせておいての、高校2年生というフェイント。ホント掴めないなこの人は…………………。ある意味尊敬できる……。

 

「ねぇ、せっかくだし、わたしの家に入りなよ。お礼だけじゃ少しあれだし。」

「いいですよ、そこまでしなくても。美帆さんに迷惑です。」

 

 なんなんだこの人はっ!?甘え方が異常に上手い!何!?俺怖いんだけど!?俺のこと食べちゃいそうで怖いんだけどっ!?

 

 でもな、俺は今日疲れているんだ。残念ながら理性が勝っている。ごめんな美帆さん。あきらめt

 

「仕方ないなー。キス、しちゃうよ?」

「入らせていただきます!」

 

 今日初めてあった人なのにそんなこと言うか普通……くそっ、何て日だよ!!!精神的に疲れてんだよ俺はっぁ!!!

 

 泣きたい気持ちを抑えて美帆さんの家に入らせていただくことにする。じ、女子高生の部屋。とても綺麗。しかも……いい臭い…。

 

 俺が美帆さんの部屋を拝借していると、いつの間にかパジャマに着替えた美帆さんが、リビングルームに俺を案内してくれた。

 

「わたし一人暮らししてるんだ。その時にお母さんとお父さんがこの家をプレゼントしてくれたんだよー。」

 

 そういいながらすぐさま料理を作り始める美帆さん。それよりも俺はあることに凄くツッコミを入れたくて仕方なかった。それは……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 普通子供に家をプレゼントするかっ!!?どんだけ金もってんだよ!!!?

 

 綺麗な上に天然で、さらに一人暮らしで料理もできる。ましてや親は金持ちという完璧すぎる人間に今日俺は出会ってしまった。何て人だ。俺の金持ちの印象は何でもメイドや執事に任せる人ばかりを想像していてたが。例外がここに居たな。

 顔もいいし、きっとモテまくるんだろうな。あっ、そうだ、母さんに連絡しないと。

 

 携帯を取り出して母さん宛にメールを打つ。打ち終って、中身を確認してから送信ボタンを押した。よし、これでいいな。

 

 それから3分後、返信が帰ってきた。

 

【真守もついに……】

 

 題名から嫌な香りがプンプンするのを抑えて、静かに内容をみてみると。

 

 

 

 真守。とうとういい娘が見つかったのね。今度紹介してね?母さん、首を長くして待ってるから。

 

 追伸

  今度家に呼んで。家族を紹介してあげるから。はやく孫の顔を見たいわね(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何いってんだこの人は。とうとう頭おかしくなったのか?今度病院につれていかないと。

 

 メールを見終わった俺は、何もみなかった。ってことにして携帯を閉じた。それと同時に美帆さんの料理が運ばれてきた。ホカホカのできたてスパゲッティは、とても美味しそうに見える。赤い色のスパゲッティの上に乗っている青のりがとても綺麗で上品だ。ゴクリと喉をならしてスパゲッティを見る。はやく食べたい!そんな思いが頭一杯に広がった。

 

「さぁ、食べよう?」

「は、ハイ!それでは……いただきます。」

 

 フォークでクルクルまわしてスパゲッティを食べた。口一杯に広がるスパゲッティの味は、多分一生忘れないだろう。それほど美味かったのだ。

 

「ご馳走さまでした!」

「お粗末様です。」

 

 僅か2分で全てを完食してしまった。これは後でレシピを教えて貰わないと。料理の先生が出来たな。

 

「レシピなら後で教えようか?」

「ほ、ホントですか!?ありがとうございます!!」

 

 ニッコリと笑う美帆さんの笑顔はどこか大人びていて、高校生と思えないほどの綺麗さが、彼女にはあった。俺この人に会ってから綺麗という単語しか使ってないのは気のせいなのか?それほどまでに美しかったのだ。美帆さんは。

 

「ふふふ。まもるくんって、とっても可愛いよね?」

「そ、そうですか?」

「うん♪わたし、まもるくんのことが好きになっちゃいそうだよ?」

「え?」

 

 美帆さんは立ち上がって、俺の後ろにまわりいきなり抱きしめた。俺は思考回路が停止して、現在どんな状況になっているのか理解するのに時間がかかった。

 

「みっ!?美帆さん!!?」

 

 俺が動こうとすると大きい胸が俺の両頬に当たってとにかくヤバい!マジで喰われる!!

 

 暴れて抵抗するも、抵抗すればするほど胸に当たってしまうので大人しくするしかない。それを待っていたかのように美帆さんは俺の唇に指を当てた。

 

「まもるくん、わたしね、よくヘンタイって言われるんだ。フフッ、どうかな?思春期の男の子には過激すぎる?」

「ちょっ…やりすぎですよ美帆さん。離してください……。」

「どーしよっかなー?」

 

 俺を抱きしめる腕が少し緩んで少し安心する。俺は、束縛から逃げるようにして立ち上がり、美帆さんが変なことをする前に、美帆さんに詰め寄る。

 

「美帆さん?俺のことはからかうのもほどほどにしてくださいよ?」

「そのわりには耳まで真っ赤にしててよね?」

「俺だって男です。男をなめないでくださいよ?」

 

 必殺、【壁にどーん。】女の子が嬉しがるというヤツだ。これだったら美帆さんも手を出すことは出来ないな。完全に俺の勝利だ、そのときはそう思っていた。

 

「わかりました?」

「まもるくん……うぅ、ゴメン。……」

 

 しゅんと顔を俯かせて悲しそうな表情をとる美帆さん。なんか凄く演技っぽい。怪しすぎる。

 

「なーんてね♪」

 

 美帆さんは俺の肩を押して逆に俺を壁に押し付けて壁どーん。をする。

 

「うぇ!?」

 

 その時の美帆さんはとても綺麗でそして、とても悪魔のように見えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




逆壁ドン(笑)

勇気を出した真守くん、ドンマイ(笑)

この人の絡みが終わったら、一旦キャラを整理しようとおもいます。

感想&指摘よろしくお願いします!

杏さんの件もどうぞよろしくお願いします!


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鈍感は高校生に壁ドンをされる

 酷すぎる、理不尽だ。この世の男たちよ、俺たち男は壁ドンをする側だと思っているだろ。あぁ、俺もそう思っていたさ。だけれど、今はもう違う世の中になったようだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【女が俺達男に壁ドンをする世の中になった。】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺、塚崎真守は、今日初めて壁ドンをされた。しかも女子に。こんなことされるとは夢にも思わなかっただろう。

 

 

 …………………………壁ドンだぜ?初めて壁ドンをやった相手に、あっさりとやり返されて、今はその逆の俺が壁ドンをされている側だ。恥ずかしいったらありゃしねー。しかも美帆さん、背が俺より小さく、首もとに頭が来るような図になる。

 

 全然届いていない壁ドン。それを誤魔化すように背伸びをすることによって、やっと俺と同じ目線になる美帆さん。

 

 ……それがめちゃくちゃ可愛いかったりする。

 

 限界が来ては「ふぅー。」と息を吐いてから、「うっ!!」と言ってまた背伸びをするの繰り返し。ホントにそれが可愛くて仕方ない。小さいってわかってんならやるなよっ!!

 

 と、言ってやりたいのだが、一応3つも上なのでそんなことは言えない。まぁ、その動きをずっと見ていたいとも思う自分もいるので、どっちみち言わないのだが……。

 

 

 

 

 

 

「ま、真守くん…どう?…………女の…子……に壁ドンされている…き…気分はぁ………………?」

 

 途中途中息切れをしながら聞いてくる先輩はやはり天然なのだろう。いや、天然を越して馬鹿なのか?……それは置いておこうか。

 

「毎日やってもらっても構わないですよ。その代わり大変なのは美帆さん、貴女だけですけどね。」

「むぅっ!?気づかれてた?」

「はい、結構バレバレですし、いちいちの行動が可愛らしいので。」

 

 会話が終ると疲れたのか俺から離れていく美帆さん。額にはポツポツと汗が出ており、その汗で前髪が額にぴったりとくっついている。更にはパジャマの第一ボタンがハズれているため大きい胸の谷間が見える。更に更に、ハァ、ハァと息を整えている美帆さんはとても魅力的で、色っぽい。もう言ってしまうが、ぶっちゃけエロかったりする。その姿は年頃の男にしてはとてつもなくヤバいのだ。わかるかいこの気持ち。意外とドキドキが止まんないのだよ。

 

 視線をそらすことができずに、ついついずっと美帆さんを見ていたら案の定、ニヤニヤしながら口もとをを手で隠した。

 

 あっ、この人絶対変なことを考えている。そう誰でも思えるような分かりやすい顔でした。

 

「まもるくん、わたしの体に何か気になるようなものがあるのかな?例えばー……こことか?」

 

 俺の腕を自分の胸に押し付ける。いや、押し付けると言うよりは挟んだといった方が正確だろう。

 

「………って、な、なにやってんですか美帆さん!?!?」

「何って、おっぱいに真守くんの手を挟んだだけだよ?」

 

 こういうときに限って天然を入れるのをやめてほしい。理由は簡単、許してあげたくなるような気持ちが芽生えるからだ。ズルい人だよな、美帆さんって。

 

 …………ってか、それより今俺凄い状況になってんだけど!?何でっ!?

 

「フフッ、わたしね、やっぱりまもるくんの事が好きだなー。……………………なーんてね?」

 

 美帆さんは嬉しそうに俺の腕を握りしめながらそう言う。俺も美帆さんの事、友達としてとても好きだけどな。

 

 この短時間でたくさんの事があって、なんとなくこの人は大丈夫だと思った。変態だけど。

 

 面白いし、天然だし、でも料理上手いし可愛いし。変態だけど。

 

 俺はこれからも、この人と仲良くなっていきたいなと思ったのも事実だったりする。変態だけど。

 

 

「突然ですが美帆さん、これからも、よろしくお願いします。」

 

 挟まれている腕を抜き取って笑顔で言ってみる。なんとなく、こんな言葉がでてきたんだ。別に良いだろ。照れてなんかいないんだからねっ!

 

 1人で漫才か何かをやっていたら、美帆さんも笑顔で同じことを言ってくれた。

 

「わたしも、これからよろしくお願いしますね?まもるくんっ♪」

 

 珍しくフワリと笑っていう美帆さんに釘ずけだったのは内緒で。

 

 ひとまず落ち着いてきた頃に、ふと時計を見てみると午後8時33分。いつの間にか8時を越していたことにも驚いていたが、一番はここにいた時間の長さに驚いた。俺が美帆さんの家に来たのは午後5時40分。約2時間ここにいたことになる。あちゃ、結構迷惑かけたな。

 

 俺は帰る準備をするために美帆さんに話しかける。

 

「美帆さん、俺そろそろ帰られていただきますね。」

「えぇー、まもるくんもう帰るのー!?」

 

 子供みたいに甘えてくる美帆さんをキレイにスルーしてキッチンの所に向かう。スパゲッティを食べさせてもらったしね。後片付けぐらいは俺がやらないと。

 

「美帆さん、俺が皿を洗い終わったら帰るんで。」

「え、いいよそのくらいわたしがやるよ?真守くんはお客さんなんだし。」

「お客さんだからこそやるんですよ。」

 

 すると、美帆さんがテクテクと俺の隣に足を運ばせて並んで立つと、俺が洗剤を着けた皿を洗い流し始めた。

 

「これだったら問題ないよね?」

「…………はい……。」

 

 俺の方を見てニッコリ笑う美帆さん。俺は何回この人の笑顔に目を奪われるんだろうか。性格がもう少しよかったら文句無しなんだけどな、でも、その性格だからこそ良いこともあるんだな。(変態以外、ここ重要。)

 

 黙って皿をスポンジで拭いていると、俺が微かに思っていた事を美帆さんは口に出した。

 

「なんか…一緒に住んでいる恋人同士みたいだね!」

「俺もそれは思ってました…。」

「やっぱり!?フフフーン、真守くんとは気が合うね♪」

 

 何でそこまで嬉しそうにするのか俺にはわからなかった。最近こんなことがたくさんある。俺はなにもしていないのに女の人は嬉しそうにする。どうしてなんだろう。世界中の女の人はみんなこうなのか?俺の持つ疑問が増えるばかりだった。

 

「今日ね、真守くんに初めてあったのに、すぐに仲良くなれて嬉しかったんだよ?」

「俺も美帆さんに会えて良かったですよ?」

「ありがと。何でだろうね、あのとき、真守くんと視線が合ったじゃない?その時に『この人なら助けてくれるっ!!』って、思っちゃったんだよねー。」

「そ、そうなんですか?」

「うん。そうだよ。その時からかな真守くんのことが好きになったのは。」

「………………えっ?何て言いました?聞いていませんでした。もう一度お願いします。」

「っ!?////もういいよ、何でもないっ!!//////」

 

 これも最近多いんだよな、何かいってるのに聞こえないときや、聞き逃すとこだ増えたし、そうしたらさ女の人は怒るし。何でたろーな。

 

 皿も全て終わらせて、鞄を背中にしょって玄関にいく。美帆さんの家のドアを開けた瞬間、涼しい風が俺の頬をくすぐった。

 

 5月中旬の風は、夜だけれど何故か暖かくて、でもたまに冷たくも感じる。…………俺には詩のセンスが無いんだ、そこんとこはスルーお願いします。

 

 後ろを向いて美帆さんに面と向かってあいさつをする。

 

「スパゲッティご馳走さまです。とても美味しかったですよ。」

「どういたしまして。それじゃあ、気をつけて…帰ってね………。」

 

 ん?どうしてそんなに悲しそうな顔をするんだ。またいつか会えるのに。俺何か悪いことしたかな!?仕方ない、何か手をうたなければ…そうだ!

 

「美帆さん、アドレス交換しましょうよ。いつでもメール出来るように。」

 

 微笑みながら携帯を見せながら言うと、先程の顔が嘘かのように、美帆さんの笑顔が咲きほこった。うん。やっぱり笑顔が一番だな。

 

「うん。それじゃあはい!!」

 

 アドレスを交換し終わると嬉しそうに跳び跳ねる美帆さん。そこまでメールが好きなんだな。俺あんまりやらないんだけれど、これを気に毎日やろうかな……。

 

「それでは、また会いましょうね。お休み。」

「うん。たくさんメールしてね。お休み真守くん!」

 

 手をふってから美帆さんの家を背にして、俺は自分の家に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美帆side

 

 真守くんの後ろ姿が見えなくなるまでずっと見ていた。そして、とうとう見えなくなってしまうと悲しさが込み上げてくる。今日初めてあったのに、ここまで好きになるとは思わなかったな。

 

 わたしは家の中に入って一気に階段をかけあがり自分の部屋に行き、思いっきりベッドにダイブした。先程皿を洗っていたときの台詞を思い出して1人で恥ずかしくなる。わたしの馬鹿!!!順番ってものがあるでしょ!?何で今日初めてあった人に『好きです。』って、言っちゃったんだろー!!!??思い出すだけでとても恥ずかしい……。/////

 

「次はいつ会えるのかなー。」

 

 ポツリと呟いてみる。メールは交換したけれど、どうせ真守くんはモテるにちがいない。明日になれば真守くんのことが好きな女の子が、アタックしに行くにちがいないだろう。何となくその場面を想像してみる。

 

「そんなの嫌だな。」

 

 涙をグッと堪えながら寝返りをうってみた。今まで人を好きになったことはあるがそこまで多くない。付き合ったことも何回かある。

 どうしてもって言われて、可哀想だったのでOKしたら、突然襲いかかってきた。体の方は守ることが出来たけれど、精神的にズタズタになったことがあった。

 

 わたし自身の事を好きになってくれる人もいるが、大半は体目的だ。友達に相談したらみんな守ってくれだけど、油断は出来ない。でも、真守くんは違った。

 

 優しくて、面白くて、可愛くて、思っていたより純粋で、年下なのに頼りがいがあって、かっこよくて。こんな人がわたしの好きな人で良かった。と、心から思えるんだ。

 

「絶対に、真守くんをてに入れてみせるからね、覚悟しててよ?真守くん。」

 

 彼の事を思うと安心して寝れる。そしてわたしは、ゆっくりと深い眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




テスト終わったぁー!!!!


更新遅くなりましたスミマセン。

テストと言う大きな怪物が、行く手を阻んでそれはそれは…………。



いかがだったでしょうか?久しぶりの『俺鈍』は。

今回はあんまり鈍感シーンが少なかったデスネ。次頑張ります。


次の話は一旦休憩し、キャラ紹介としていきたいと思いました。いつの間にか、めちゃくちゃ

多くなっていますしね……。



感想&指摘、よろしくお願いします!




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鈍感とその仲間たち(キャラ紹介)

今回は本編から離れて、キャラ紹介です。

麗の部活を変更しました。



 塚崎 真守(つかさき まもる)

 

 

 

 性格……この物語の主人公で、どんな人にもモテると言う、よくわからない能力の持ち主である。性格が良く、優しく責任感が強い。仲間の事を大切にしていて、男女構わず危険なことがあったら自分を犠牲にする危なっかしい所もる。頭が良く、運動神経も良く、料理は文句がない、学校モテるランキング(男子)では第一位だが、史上最強の鈍感。友達を亡くす悲しい過去を持っている。その時にした約束を果たそうと努力している。ゾンビが苦手。

 

 

 外見……『カゲ〇ウデイズ』のセ〇みたいな感じで、黒ぶち眼鏡を装着。背は162センチ、体重47キロ。

 

 

 役職……光ヶ丘(ひかりがおか)中学の二年生、2-3組。生徒会副会長。

 

 

 部活……演劇部。生徒会。

 

 

 呼び方……俺、~さん、~ちゃん、~先輩、仲が良い人は呼び捨て。

 

 

 

 

 葵 優(あおい ゆう)

 

 

 

 性格……真守の事が好きな美少女。何でもこなし、万能な女の子だが、料理が破滅的に不味い。一度優の友達が食べてみたところ、その日の記憶が無くなったらしい。本人の前でこの事を言うと、翌日笑顔で手作りお弁当を貰える。明るくて友達が多い、皆のまとめ役。委員長にたくさんの推薦を受けるほど信頼されている。二人弟が居る。真守を好きになったきっかけは、中学の頃に助けてもらったときから。

 

 

 外見……『ニセコ〇』の、つ〇みみたいな感じ。背は156センチ、体重は42キロ。

 

 

 役職……光ヶ丘中学の2-3。学級委員。

 

 

 部活……水泳部

 

 

 呼び方……私、塚崎くん(真守くん)。~さん、~ちゃん、~くん。仲良くなると呼び捨て。

 

 

 

 

 基 茜(もとい あかね)

 

 

 

 性格……運動神経はそこそこだが、勉強が意外と得意だったりする。特に英語が。姉貴肌で、皆の面倒をよくみる。知ったかぶりで、何も考えずにペラペラ喋る人が嫌い。毒舌な部分が時々みられ、口喧嘩したら負けなし。一見怖そうに見えるが根は優しく、意外と恥ずかしがりや。優と並ぶ美少女だったりする。一人の姉が居る。真守を好きになった理由は、辛い想いをしたのに、その事を言ってくれたから。

 

 

 外見……『け〇おん』のみ〇、みたいな感じ。背は161センチ、体重45キロ。

 

 

 役職……光ヶ丘中学の2-3

 

 

 部活……帰宅部

 

 

 呼び方……ウチ、真守。~さん、仲良くなると呼び捨て。

 

 

 

 

 愛川 彩夏(あいかわ さやか)

 

 

 

 性格……友達思いの女神と呼ばれていて、常に誰にでも敬語を使っている。大人しく、あまり目立つことが好きではない。先輩や先生に対しての態度が良いことから、目上の人たちから人気と信頼が高い。本を読むことが好きで、1日に2冊読み終えるらしい。仲良くなると明るい性格になる。最近よく茜に、『サヤ、影が薄くなりつつあるから目立ちなって!』と言われたことが悩みの種となっている。真守に対する気持ちに迷いがあって、好きなのかは判明していない。

 

 

 外見……『GU〇I』の髪の毛が少し茶色っぽくなって、前髪を星形のピンでとめてるような感じ。背は155センチ、体重41キロ。

 

 

 役職……光ヶ丘の2-1。

 

 

 部活……帰宅部。

 

 

 呼び方……私、真守君。~さん、~ちゃん、~くん

 

 

 

 

 内井 萌那(うちい もな)

 

 

 性格……煩くてとても元気が良いが、子供っぽい時がみられる、人気がある生徒会長。しかも美人ランキング第一位独占。生徒の一人一人の発言に耳を傾けて、理想な学校にすることを目的にしている。全てをこなし、思い立ったら直ぐに行動に写す直感派。義成の姉で、仲は良い様子。非常に怖がりで、怖い話をすると誰かが隣にいないとダメ等と、可愛らしい一面もあり、意外と乙女だったりする。真守とは生徒会で仲良くなっていつの間にか好きになっていった。らしい………

 

 

 外見……『ハニワ〇クス』の夏〇に似ている。髪をおろすと可愛くなる。背は159センチ、体重44キロ。

 

 

 役職……光ヶ丘三学年の3-5。生徒会長。

 

 

 部活……女子バスケットボール部。部長。

 

 

 呼び方……私、真守くん。~さん、~くん、~ちゃん。仲良くなると呼び捨て。

 

 

 

 

 鎌谷 杏(かまたに あん)

 

 

 性格……一見おっとりしているように見えるが、結構Sで、すぐに人をからかう。恋愛には鋭くこの人に疑われたら一瞬でバレてしまう。恐ろしい人である。そのわりには気遣いがしっかりと出来て、空気を和ませることが出来る。萌那とはとても仲が良く、親友である。真守についての恋愛相談に的確なアドバイスをしてくれる反面、萌那の事をよくいじったりする。

 

 

 外見……『ニセ〇イ』の風ち〇んに似ている。背は163センチ、体重45キロ

 

 

 役職……光ヶ丘中学三年、3-5

 

 

 部活……女子バスケットボール部。副部長。

 

 

 呼び方……私、真守くん(ちゃん)。~さん、~くん、~ちゃん。仲良くなると呼び捨て。

 

 

 

 

 中野 美帆(なかの みほ)

 

 

 性格……ド変態。天然で、綺麗で、お金持ちで、料理も上手いがド変態。変態モードに入ってしまうと小悪魔と化する、要注意人物。普段は癒し系の女の子で、友達が多い。過去に何回か付き合ったことがあるが、体目的で襲われかけたことがトラウマ。裕福な暮らしをしていたおかげか、体の発育がいい。特に胸。自分でも【変態】と自覚していて、保健体育と家庭科はいつも満点だったりする。(家庭科は得意)だが、運動ともに勉強が破滅している。

 

 

 外見……『マ〇』のヤム〇イハが、髪を結んで右肩にかけている感じ。背は153センチ、体重40キロ

 

 

 役職……友未学園(ゆみがくえん)高校二年生、2-2

 

 

 部活……家庭科部。

 

 

 呼び方……わたし、(甘える時)まもるくん、(普通の時)真守くん。~ちゃん、~くん、~さん。

 

 

 

 

 塚崎 敬助(つかさき けいすけ)

 

 

 性格……真守が鈍感なのはこの人の遺伝子が強かったから。元凶はこの人の。料理の味にうるさい警察官。責任感が強くて家族を一番大切にしている。自分が犠牲になろうが家族を守り抜くと誓っている。怖いものは無いのだが、奥さんの愛美が怒ると恐怖のあまりその場から逃げる。意外とヘタレでもある。好きになるとそのまま一直線になる、尻に敷かれるタイプ。

 

 

 外見……ほんわかしているが、いざとなると真剣な表情になる。皆さんのご想像におまかせします(笑)。背は188センチ、体重62キロ

 

 

 役職……警察官。

 

 

 歳……39歳

 

 

 呼び方……俺、真守、母さん、麗、美奈、~さん。仲がいい人には呼び捨て。

 

 

 

 

 塚崎 愛美(つかさき まなみ)

 

 

 性格……とても軽く、スキンシップが激しい。子供が大好きで教師をやっている。普段は真面目では無いが授業はしっかりとこなす。そのためか学校では評判のいい人気の先生となっている。夫の敬助とは今でもラブラブしていて、子供たちがついていけない時がある。味のうるさい夫を黙らせて、更に結婚までさせた技術は並みでは無いのがよくわかる。どんな手を使ったか、夫以外知ることはない。学校では家で過ごしているように真守をこき使う。科目は理科。

 

 

 外見……毛先がカールしているロングヘアー。髪は茶色い。背は168センチ、体重53キロ。

 

 

 役職……光ヶ丘中学の教師、2-3を担当。吹奏楽部の顧問。

 

 

 歳……38歳

 

 

 呼び方……私、まもる、お父さん、れい、みな、~さん、~くん。仲がいい人には呼び捨て。

 

 

 

 

 塚崎 麗(つかさき れい)

 

 

 性格……高校1年生で、特技は絵を描くこと。この人に絵を描かせると涙が出るという噂がある。女友達はたくさんいるが、彼氏はいない。逆に女の子にモテる体質で、時々だが女の子に告白される。見た目も男子とよくみ間違えられる。最近は、「麗ちゃんが男装したらイケメンレイくんだねっ♪」と、笑顔で言われたことが凄い悩みである。ガサツでとにかく男っぽい。因みに彼氏居る?と、真守が聞くと殺されるらしい。頭はいいが、運動もかなりできるのに出来ないフリをしている。本人いわく、「体育の時に煩くなるし(女子が)、男子に睨まれるから。」だそうだ。

 

 

 外見……髪は首辺り。貴方が女子でめちゃくちゃカッコいい顔をしていると思う人を想像してください(笑)、背は166センチ、体重48キロ。

 

 

 役職……友未学園の一学年。1-4

 

 

 部活……(やりたかった部活)バレー部。(やってる部活)家庭科部と美術部(美術部は頼まれたときに行く)。

 

 

 呼び方……私、真守、お父さん、お母さん、みな、~さん、~くん。仲よくなると呼び捨て。

 

 

 

 

 塚崎 美奈(つかさき みな)

 

 

 性格……とにかくブラコン。お兄ちゃんが大好きすぎて危ない中学一年生。常に元気で甘えかたも上手。お兄ちゃんは大好きなくせに、真守以外の男性は無理(お父さん、親戚、従兄弟を抜く)。普段では、明るく皆のためになにかやろうとする性格で、一度決めたら真守がいいと言うまでやり続ける。弱点はお腹をくすぐるとこと。そうすれば一瞬にして離れていく。数秒後にもとに戻るけれど…。学校は女子校。

 

 

 外見……ツインテールにしている髪が、約15センチ位の長さ。背は148センチ、体重38キロ。

 

 

 役職……米倉女学校(よねくらじょがっこう)。1-1。

 

 

 部活……吹奏楽部。

 

 

 呼び方……私、おにーちゃん、おねーちゃん、おかーさん、おとーさん、~くん、~さん、~ちゃん。仲よくなると呼び捨て。

 

 

 

 

 山下 朝一(やました あさいち)

 

 

 性格……ゲームが大好きで、よく真守におすすめゲームをやらせる。所々ゲームのやりすぎでおかしくなるときがある。実は意外に静かで、黙っていればカッコいい。そのことから一部の女子から人気がある。友達おもいで察しがいい。それに加えとても怖がりで、女子よりも女子力がある。真守とは、幼稚園に入る前からの仲なので、何でも言い合える。真守のよき相談者だ。

 

 

 外見……髪の毛がユルユルしていて『スケットダ〇ス』のミ〇ルに似ている。(似ているだけであって性格は別。)背は167センチ、体重50キロ。

 

 

 

 役職……光ヶ丘中学の2-3

 

 

 部活……男子バスケットボール部。

 

 

 呼び方……俺、真守。~さん、~くん、仲よくなると呼び捨て。

 

 

 

 

 内井 義成(うちい よしなり)

 

 

 性格……お姉ちゃんがとても大好きなシスコン。密かに異性としてお姉ちゃんを見ている。とても活発的で誰もやろうとしない仕事を軽く引き受けたり、いざとなると、とてもたよりになるなど、意外と兄貴タイプ。背が小さいことをとても気にしていて、その事を話すと首を締められる。よく朝一をからかって遊ぶ。足がはやくすばしっこい、だがそれ以外は全然駄目で、勉強はいつも50点未満だったりする。体つきは細いが、体重がある。(背を伸ばすためにたくさん食べている。)

 

 

 外見……逆毛の短髪。見た目からして幼い印象を与える。背は152センチ、体重49キロ。

 

 

 役職……光ヶ丘中学の2-3

 

 

 部活……陸上部

 

 

 呼び方……俺(よっシー)、同年代または、年下には、初めてあった相手でも呼び捨て。年上には~さん。

 

 

 

 

 畠山 幸助(はたけやま こうすけ)

 

 

 性格……当時はとてもヤンチャで、真守のことを本当の兄弟のように接してきた。朝一ともなかがよかったが、その日(他界した日)は風邪で朝一は居なかった。人一倍責任感が強く、正義感溢れている少年だった。ある日真守がいじめられていると勘違いしたクラスメートに、放課後殴られる日々。そこで精神的に崩れてしまい、自殺を決意した。最後に真守と約束したことにより、しっかりと成仏することができたのだった。9歳に首吊り自殺をしてしまった。

 

 

 好きなこと……昆虫採取、遊ぶこと、お母さんの料理!!。

 

 

 嫌いなこと……いじめ、困っているのに助けないやつ、勉強。

 

 

 夢だったこと……真守のお父さんみたいな警察官!

 

 

 最近の夢……真守と、朝一に会いてぇなあ。あと!いじめが無くなるような世界にすること!!ニシシッ!

 

 

 

 

 

 

 

 




ここを知りたい!

というところがあるなら言ってください、書きますので。

これからも【何故俺は鈍感と言われるのか解らない】をよろしくお願いします!


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鈍感男の体育祭(練習)

シリアスです。

時々クサイ言葉が出ますが、気にせずに観ていただきたいです(笑)

それではどうぞ!!





 こんにちは、塚崎真守と言うものだ。突然だが、俺たち光ヶ丘の体育祭は今週の土曜日である。ここまでいったら何が言いたいのか分かるかな?そう、練習だ。練習次第でこの勝敗が決まる。それにうちの学校は、1、2、3年のくじ引きでその年の色を決めるというと面白い決め方なのだ。1~3年までのクラスは全て6クラスあるので、組団も勿論6クラスある。その組団の色を紹介しよう!

 

 

 

 

 太陽にも負けない情熱の結集した燃える赤。

 

 

 

 

 

 落ち着いた判断で決めに来る、冷静沈着な青。

 

 

 

 

 

 明るく楽しむ色の黄色は、どこよりも光輝くことを覚える。

 

 

 

 

 

 新緑の色は自然さへも味方にしていまう団結力を誇る。

 

 

 

 

 

 紫。真空の色をまとった騎士が集まる攻撃は、まるで閃光のよう。

 

 

 

 

 

 純白の天使の羽は優勝へと導きの切符。一人一人の始まりの色。

 

 

 

 

 

 勝つ。勝ちをだけを求め続けた後は、全ての色の終着点、黒に帰る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達2年3組は、『黒』。勝ちだけを求め続ける。そんなキャチフレーズがあるのだが、今の現状をみてほしい。

 

 

「えー、俺達来年もあっからいいんじゃね?」

「ってか、俺達弱いから諦めたほーいいんじゃねーの。」

 

 こんな様子なのだ、しかも残念なことに男子だけではない。

 

「ちょっと~、髪の毛がグシャグシャになっちゃったじゃーん。」

「真面目にやっても負けるだけなのにねー。」

 

 勝機が見えてこない。何故こんなになってしまったんだろうか。……心当たりがある。それは二日前に遡る、ある出来事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達が挑む競技は、背中わたり、全員リレー、借り物競争だ。背中わたりは名前の通り、クラスで一番軽いやつが登って皆の背中をわたってタイムを競う競技だ。いくつかのルールがあり、馬になっている人は踏まれてからでは行ってはいけないとか、崩れたら崩れた一番最初の人が四つん這いになる等、さまざまなルールがある。

 

 リレーでは皆が必ず走ってバトンを繋ぐ。クラスの戦略と、団結力が求められる競技だ。これもまたルールがあるのだが、だいたい知っていると思うので省略しよう。

 

 借り物競争は個人種目。二学年全員が色んな物を借りてゴールすると言うものだ。これも皆が知っているルールなのであまり触れないでおく。

 

 その日は背中わたりの練習をクラスマッチでやっていた。校舎側から1コースだとすると。

 

 

 

 校舎

 

 青

 

 黄

 

 黒

 

 白

 

 赤

 

 緑

 

 

 

 

 と言うような順番だった。その時は皆、まだ一生懸命やっている状態で、その日が初めてのクラスマッチだった。俺達のクラスは自分で言うのもなんだがとても早い。一番早く終われるクラスだと思っていた。

 

 よーい…ドンッ。先生の合図と同時に皆がいっせいに走り出す。俺達の上に乗る人は葵だ。足も早く文句なし。背丈もちょうどいいことから、クラスの皆で決めた。それに組団で唯一の女選手。練習では完璧な走りを見せた。勿論その日も、皆が認めるような走りを見せたんだ。ホント、何の文句もない。今もしっかりと一人一人を丁寧になおかつ素早く踏んで走っている。

 

 

 

 半分を走りきり、コーナーに回ろうとしたとき、チラッと他のクラスを見てみた………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダントツの1位だった。

 

 

 いいぞ、いいぞ、いいぞ!!

 

 そのまま、そのままゴールだ!!!

 

 

 期待と焦りで胸が一杯になる。皆も同じ気持ちだったのだろう。焦って焦って、判断力が低下していたのだろう。一人が馬になって、その隣にまた馬になる。その繰り返しなのに、急ぐことに夢中になって、葵の大変さを理解することが出来なかったんだ。ある男子が女子のと隣になることを少しためらい、離れた距離に馬を作った。そもそも馬とは、隣同士で支え合っている。その支えがなかったら、骨がない傘と同じだ。

 

「っ!?」

 

 落ちる。葵が乗った瞬間、馬になっていた男子が崩れて、葵が落ちた。

 

「葵っ!?」

 

 上に乗っている人を手を繋いで支える補助役がある。上に乗ることはとても難しく、バランスがとりにくい。その事から、補助役がついていた。葵の補助役は、最近仲がとてもいい茜だった。茜は落ちていく葵を助けようと近寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、間に合わずに落ちてしまった。

 

 

 葵は落ちた。頭から、落ちた。

 

 皆は方針状態になっていた。動くことを忘れ、ただ、ぼーっと見ていた。

 

 

 

 

 

 えっ?

 

 

 

 

 わからなかった。今の状況が頭に入ってこなかった。俺はそのとき、黙ってその光景を、頭から落ちていく葵を、見ることしか出来なかったんだ。それと同時に周りから、自分達のいた場所を次々と通り越す足音が、微かに俺の耳に響くだけだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆………ゴメンね…。」

 

 葵は今にも泣きそうな顔で皆に謝ったのを覚えている。あのあと、母さんが葵のもとに駆けつけて、保健室まで運んだ。幸い頭に異状は見られなかったが、右足にヒビが見られた。

 

 その事を知ったクラスの皆は、やる気が失せたのか、葵以外の人が乗ってもタイムは縮まらず、むしろ増えていくいっぽうだった。そして現在に至る。

 

 

 

「おい、皆……もうあと1週間きってるぞ!どうするんだよ!!」

 

 皆に問いかけてみた。まだ終わっていない!勝機はある!!。そう思ったのだが、次の瞬間、その思いが届かない事を知った。いや、知ったと言うより感じたの方が正確かな。なんにせ皆の目が、輝きを失い、まるで濁った水のような目をしていたのだから。

 

「せ、背中わたりだけじゃないだろ!?他にも全員リレーや、借り物競争があるd「たかが体育祭だろ?」

 

 俺の言葉は、ある生徒の一言で遮られた。

 

 フラっと立ち上がり、ゆっくりとおどけない足どりで俺の目の前に来たのは、畑 茅根(はた かやね)。このクラスの問題児と言っても可笑しくない人物だ。

 

 髪を赤色に染め、両耳には3つずつあるピアス。運動着も所々刃物でわざとらしく切ったであろう跡があり、一番の特徴的な顔の傷は、右の頬から顎のしたまでかけての長い傷痕。見るからに不良と思われる彼は、このクラスの誰もが思う問題児だった。

 

 そんな彼が俺の前に仁王立ちで佇んでいる。いつなにをしてきても可笑しくないこの雰囲気で、俺と茅根は睨み合う。ギロリとした細くて鋭い目は、瞳に色がなく、まるでこの世の終わり。を願っているような、そんな目だった。

 

 長い沈黙を破ったのは茅根の方だった。

 

「たかが体育祭、何でそこまで頑張る必要があるんだ?思いで作りか?ハッ!笑わせてくれる。」

 

 俯いて奥歯を思いっきり噛み締める。コイツ、何なんだよ。希望も、未来も全部捨てたような目をしやがって!

 

 俺の表情を見ながら、さらに続ける。

 

「何のために体育祭をやるんだ?何のために頑張るんだ?優勝か?優勝して獲られるものは何だ?トロフィーか?それだけか?もし優勝しなかったら?何も獲られない。だったら、負けるとわかってんだっら、やんなくてよくねーか?」

 

 その通りだった。

 

 確かに優勝しても獲られるものはトロフィーだけ、負けたらトロフィーは無くなる。当たり前だ、1つしかないんだから。そのためだけに頑張る必要はないのかもしれない。諦めてもいいかもしれない。

 

「でも…」

「あぁ?何だ?言えるなら全て答えろよ。」

 

 俯いていた顔を上げて茅根を見つめる。手を握り締めて、正面から、堂々と、言ってみた。

 

「ここまでの頑張りは水の泡にするのか?」

 

 思い出せよ。初めて背中渡りをしたときの事をよ……思い出せよ。その時、盛り上がって、一生懸命練習したよな?思い出せよ。俺達より、何倍も、なん十倍も努力したのは……

 

「葵は…葵の努力は無駄になるのか?」

 

 力強く、茅根だけにねはなく、クラスの皆に呼び掛ける。

 

「俺達は無力だ。ライオンのように力があるわけでもない。そんな人間は無力だ。……………一人だったらな。」

 

 そう、無力なんだよ、人間は。一人では生活できない。生まれてくるためにも、誰かの助けを借りて産まれる。学校で勉強することだって、先生と言う一人の人間が教えてくれる。だから俺達は……

 

「支えあっていくことで、1つのモノができるんだ。」

 

 葵の方に視線を向けて、優しく微笑みながら葵に1つの疑問を聞いてみた。葵ならキット答えてくれるだろう。そんな疑問だ。

 

「葵はどうやって背中わたりをやってるんだ?どうやって背中にのって走ってるんだ?」

 

 ポカーンとした顔をする葵。すると突然、ププッと、笑う声が聞こえた。近くにいた茜は、意味を理解したのか、やれやれ、と顔で言いながらも微笑んだ。あの茜でも理解できるんだ。簡単な問題だろ?

 

「それは勿論………皆がいるからだよ。私一人だっらさ、誰の背中に乗れって言うのよ?」

 

 笑いながら皆に向けて言う葵。それだけでは物足りなかったのか、なんと近くにあった机の上に乗って、皆を見渡す。お、おい。何を始める気だよ……。

 

 そんな俺の心配も、関心へと変わるような話を葵は笑顔のまま始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「先生には、全治3週間と言われましたが……私は走ります!!」

 

 その言葉に皆がいっせいに『えぇー!!』と、叫んだ。

 

 勿論そのなかに俺も含まれている。なんにせ、落ちたら葵の足は悪化させることになる。そんなことしてまで走る葵の結論に驚きを隠せるわけがない。茜の方を見てみると、呆れ顔で首を横に振った。諦めろ。そうとでもいっているのかのように。

 

 机の上から「ふぅ~。」と、息を吐く声が聞こえたので、もう一度葵の方に視線をもとに戻した。

 

「全ての色の終着点は黒なんでしょ?綺麗な鮮やかな色でも、透明で潤いがある色でも、その最終地点は『黒』っ!皆の一人一人の個性が違うのと同様に、色も一つ一つ違う。だけど、力を合わせて混ざり合うことで、団結の色、『黒』になるんだよ!だから皆で力を合わせようよ!見せつけようよ!『黒』の底力を!!団結力をっ!!!」

 

 全てを言い終わった葵は、静かに机から降りた。

 

 シーんと静まっているこの空気は失敗か?と思ったが、その心配は必要なかったようだ。なんにせ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆の目が、光輝きだしたからだ。

 

『うぉーーー』男性軍が雄叫びをあげた。

 

『キャーーー』女性軍も歓声をあげた。

 

 やる気をだしたクラスの皆は葵の周りに集まって盛り上がっていた。その光景を遠くから見つめていると、葵がいったように、皆の個性()が交わって、絆の黒のようにみえた。

 

 

 

 ただ一人、納得いかないように舌打ちをして、皆が盛り上がっているドアの反対側の方から教室を出ていった、茅根を除けば………

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりにシリアス編です。



全治3週間は短いのか?よく解らないまま書きました(笑)

次は体育祭直前の話です。あのキャッチフレーズは適当に考えたけれど寒すぎますね………




まぁ、いいか(笑)

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鈍感男の体育祭(前日)

久しぶりの投稿です。

色々忙しくて遅れてスミマセン。


「真守、ちょっといいか?」

 

 背後から聞き慣れた声が聞こえた。首だけ後ろに振り替えると、少しばかりだが、困っているような顔に見えたのは気のせいではないようだ。

 

 今日は体育祭前日。とうとう明日にせまってきた体育祭。葵がいった言葉に皆がついていったお陰で、いい感じに仕上がってきたのだ。背中わたりの練習になると、一段と真剣な表情になる皆。上に乗っているのは違う人だが、葵だと思って落とさないように最善の注意を払いながら練習した。ある一人を除けば……

 

「どうしたんだ茜?何か問題が起きたか?」

 

 優しく問いかけてみると、頬を少し赤くして、俯く。ん?俺なんか恥ずかしいことやったかな?

 

 疑問を抱いたまま笑顔の状態で俺が硬直していると、ハッとしたように、茜が我に戻った。茜、最近こんなことが多いけど大丈夫かな?無理してないといいんだけど……。

 

「ま、真守………あのな、茅根のコトなんだが…………。」

 

 顔を上げて俺に面と向かっていった言葉は、茅根のことだった。………………………あれ?もしかして茜、茅根のことが好き……なのか?

 

 俺の胸から何かソワソワしたものが出てくる。な、なんだこれっ!?もしかして………これがいわゆる親心?いやっ!落ち着け俺!さっきの茜の行動を振り返るんだ。

 

 ①俺に相談があった。

 

 ②顔を赤くした。

 

 ③茅根のことだった。

 

 ってことは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………………茜は茅根が好きなんだ!!

 

 

 

 あー!なんかこっちが恥ずかしいな!!そうかそうか、茜は茅根が好きなんだな……。全力で応援してやらねーと。茜も青春してんのかー。俺も頑張らねーとなっ!!!

 

 俺が一人でウンウンと頷いていると、変に思った茜が俺に向かって冷たいような目線を投げかけてきた。お、おう。な、なんか照れるな…。これが娘が嫁に行ってしまうときのお父さんの気分なのだろうか?嬉しいようで、寂しいような………さて、話を戻すか。

 

「茅根を練習に真面目に参加してほしい。って言う話だろ?」

 

 すると茜は目を見開いて驚いた。その様子からは、俺が当てるとは予想していなかったと、誰にでもわかるような反応だった。

 

「スゴいな真守、何でわかったんだ 」

「いやいや、あんな顔されたら小学生でもわかるわ。」

「そ、そうなのか?そんなか分かりやすい顔をしていたのか?…知らなかった……。」

 

 先程とは違い、少しばかり困ったような顔をする茜。意外と喜怒哀楽が激しいし、すぐに顔にでらるから、こっち側からしたらとても面白いな。

 

「まぁ、とにかく茅根のことは任せろ。俺だってクラスの皆が揃ってねーと嫌だもん。だから任せろ。」

 

 ニカッと、茜が安心できるような笑顔を魅せた。先程いった通り、クラスの一人でも欠けるといけないんだ。だから俺は、明日にせまってきた体育祭だけれど、死ぬ気で茅根をこっちに戻す。

 

 これが俺と、幸助の約束だ。でも、個人的にもイジメは好きではない。とにかく俺は、茅根のいった言葉を考えながら、作業につくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 茜side

 

 急に黙り込んで、顎に手を添える格好から、茅根のことを考えているのだと、ウチにもわかった。あの時もそうだった。ウチがまだ不良と言われていた時に、ウチののことを理解しようと一生懸命になりながら、今とまったく同じポーズをとっていたな?授業の時、休み時間の時、弁当の時。その日はずっとそのポーズをとっていたのを覚えている。だって…

 

 

 

 ウチはずっとみてたからな。

 

 

 

 誰かのために一生懸命になって、その人が笑顔になれるような言葉を見つけて手をさしのべる。真守の良いところだな。そーゆー部分はとても好きだったりするのは秘密だ。

 

 ウチは、真剣な表情をしている真守を目に焼き付けてから、少し離れてしまうことに寂しさを感じながらも、邪魔にならないていどに話しかけた。

 

「それじゃ、ウチは用事があるから行くな。」

「…あ、うん。後は任せて茜は補助に集中しろよ。」

 

 優しく微笑むその顔は、とても安心できるような、そんな顔だった。むぅ、その笑顔で何人を落としてきたんだコイツは……。

 

 真守に手をふりながら教室のドアを開けて優の所に向かった。これからやらなきゃいけない事がたくさんあるんだ。練習したり、先生のところにいったり、たくさんあるんだ。終わったら真守のところに行こう。どんな顔をして出迎えてくれるのか楽しみだな。

 

 口角が上がっている自分に気づかずに、軽い足取りで優のもとに走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ!?」

 

 廊下を走っていたら、誰かとぶつかってしまった。その反動で、床に手をつき、お尻を床にペタンとついてしまった。

 

「あっ、すんまs……」

 

 頭上から声がしたが、途中で切れてしまったことに違和感があり、誰とぶつかったのか確認するべく、顔をあげてみると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「茅根……って、敬語使えるんだな……!」

「当たり前だろっ!!」

 

 ウチのいったことを即答で否定する。おぉ、茅根って意外とマトモなんだな。

 

 見た目からして、【ザ・不良】って感じなのに、意外と敬語を話せたり、先輩には気を使うことができたり、コイツ不良か?

 

 ウチの疑問もたくさん出てきた事を悟ったのか、ウチの手を引いてどこかにつれていこうとする。その行動に驚いて、無意識のうちに捕まれた手を払ってしまった。

 

「あぁ、悪い。いきなりつかんで悪かったな。」

 

 2回も悪いって言ったぞ。しかも謝ってる……。いったいウチは何を見ているんだ?夢か現実かわからなくなってきてぞ………………。

 

 先程の行動に謝ってきた茅根に驚きつつも、首を振って『大丈夫』と伝える。それを見た茅根は安心したようにホッと息を吐いて、胸を撫で下ろす。

 

「とにかく屋上に来てくれるか?話したいことがあるんだが。」

 

 この言葉に少は期待しちゃうかもしれないが、茅根の真剣な目付きから、その期待は無いだろうとハッキリとわかるような感じがした。

 

 なんとなくで茅根を見つめていたら、茅根が何故か突然顔を赤らめ、モジモジし始めた。顎に手を添えては、頭をがしがしと掻いたりしては、「は、早くいくぞっ//」と、不良とは思えないような照れた動きを始めた。何ていきなり照れているのか気になったウチは、ストレートにきいてみた。

 

「なあ、何でそんなに照れているんだ?」

 

 するとピタッと立ち止まり、ぎこちなく振り返る茅根。その表情は、照れた女の子みたいな表情で、少々言いにくそうな顔にも見えた。何をそんなにためらっているのかはわからなかったが、茅根の言葉に初めて気づくのだった。

 

「……………………制服の時は短パン位履けよ……////」

 

 

 

 数秒の間があった。その時ウチは、固まっていた。思考回路が停止して、なにも聞こえなくなる。その時間が約3秒。3秒後に止まっていた脳ミソが動き出して理解しようと働き出す。そして…

 

「バ、ババババ、バカやろーーーーーーー!!!/////////」

 

 今までにない力で、思いっきり茅根の頬に張り手を喰らわせた。

 

「ぐほっ!?」

 

 数メートル離れたところまで吹っ飛んだ茅根は、空中で回転しながら床へと落ちた。ハッ!しまった、つい思いっきりやってしまったじゃないか!

 

 茅根のもとに行ってみると、頬に手形がくっきりと残っており、その部分は真っ赤に染まっていた。

 

「す、すまん茅根。大丈夫…じゃないよな?」

 

 しゃがんで茅根の頬を触ってみる。

 

 …痛そうだ。

 

 ウチがビンタをやってしまった張本人なのにも関わらず、痛そうだ。

 

「あ、顎が外れるかと思った……。」

 

 ゆっくりと起き上がった茅根は、さっきぶたれた頬に手を擦る。顔をしかめながら「言わなきゃよかった……」と後悔していた。

 

「まぁ、ゴメンな。次からは気をつけるんだぞ?」

「いや、オメーが気をつけろ!」

 

 な、なんだ。全然元気じゃないか!これなら次からも大丈夫だな。

 

「ほら、怪我人のフリをしてないでさっさと屋上に行くぞ。」

「十分怪我人だわ!!」

 

 鋭い突っ込みを入れてから立ち上がる茅根の姿には、教室で過ごしているすがたとは、まるで別人だった。

 

 そんな茅根の後ろに続いて、屋上に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




小説書くのは楽しいですねぇ。

まだまだ頑張りますので、感想&指摘お願いします!


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鈍感男の体育祭(前日②)

今回は体育祭(前日)の続きです。



 茅根side

 

 ったく、何なんだよ…

 

 俺は、先程の光景が頭から離れずに、とてもソワソワしていた。先程の光景とは勿論、基の下g……ゲフンゲフン。…女の見られたくない部分だ。意外とシマシマだったな……

 

「あぁ、そうだ茅根、今度もう一度ウチのパンツを思い出してみろ?人生の記憶ごと消してやるからな♪」

 

 

 

 コイツ………………俺の心を読みとったのか?

 

 

 

 突然俺の思っていたことを当てられて、背筋に冷たい汗が伝った。それと同時に基が笑顔で俺の方に顔を向ける。裏のない笑顔が恐怖感を増加させ、この俺でさえ、身体中に鳥肌がたった。

 

 …コイツ、運動は飛び抜けて上手いわけでもないのに、喧嘩とかになると突然強くなるパターンの奴だな。

 

 今まで喧嘩の日々を送っていた俺は、気づかぬうちに洞察力と、観察力が活性化していた。なので、数分の出来事でどんな奴なのかすぐに特定できる。

 

 例えば、口調が荒いヤツは短気。鉄パイプなど、素手でタイマンを張ろうとしないヤツはすぐにナイフを取りだし襲いかかる。髪の毛を金髪に染めたての不良で、不良座り、更にツレが3人ぐらいしかいないヤツは、ただの初心者。などと、いろいろなパターンを知って、それを極めたこの俺は、だいたい見た感じで性格を読みとることができるようになっていた。

 

 チラリと基の横顔を見てみる。……何でコイツらは真面目にやろうと頑張るんだ?

 

 つり目で筋のとおった鼻、横顔でも美人と人目でわかるような容姿をしている。一見おとなしそうでおしとやかで可憐にも見えるのに、性格はまるでその逆。煩くはないが荒い性格で大雑把。不器用で怒りっぽい。冷たい言葉をへーきで言える毒舌。しかも自分のことは『ウチ』と言う。それでいて……優しい。

 

 

 

 なんだコイツ……?

 

 

 

 しかしそんなやつに俺は、何で屋上に連れていく必要があるんだ?

 

 

 

 階段の一段目に足をのせ、体重を上に移動させる。その繰り返しで階段を登っていく。タンタン、と、二人の足音が響き渡った。その音が無性に心地よく感じるのが、俺には理解できない。だが、【俺と基はどこか似ている】。そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 チッ、無性に自分にイライラする。

 

 最後の段を登りきって、少し乱暴にドアを開けた。そのとたん、ウザイほど綺麗な青空が歓迎する。肺には新鮮な空気が入り込み、清々しいのが更にムカつく。

 

 いつからだ、こんな風になったのは。

 

 

 ふと、思い出したくない光景が脳ミソに蘇る。それも新鮮に、くっきりと。

 

 

 

 

 

 

 

「頑張ったって、なにもてでてこねーんだよ。」

 

 低く、低く、そう呟いてみた。そうでもしないとあの記憶を思い出すから。

 

 俺の様子に気づいたのか、基が心配そうに近寄ってきた。

 

「お、おい?大丈夫か?顔が真っ青だぞ?」

 

 

 

 

 

 

 蘇る。蘇る。蘇る。蘇る。蘇る。あの時の記憶が、思い出してくない記憶が、蘇る。

 

 

「誰かが必ず邪魔をする。」

 

 

 俺が誰かになにかを言っている光景が蘇る。

 

 

「頑張ろうと努力しても、結果はついてこよーとしねぇ。」

 

 

 俺は一人でなにかをやっている。が、奪われて捨てられた。

 

 

「自分がとてもバカらしくなって、諦めた。」

 

 

 男と女は、俺を冷たく、鋭い目で睨み付けた。

 

 

「だんだんウザくなってきて、危険な道に進んだ。」

 

 

 その男と女の前である写真たてを叩き壊した。

 

 

「最終的には暴力だ。」

 

 

 男をボコボコに殴った。自分の拳は血で、赤く、朱く染まってしまっていた。

 

 

「そこで解ったんだ、何をしても獲られない。獲られるのは心に残る深い傷だけだ。」

 

 

 男と女は俺の両親。男の方をボコボコにしたあと、油断した状態で女を見ようと振り返った瞬間。ツツー、と、俺の頬をドロドロとした赤い液体が伝った。女の手には果物ナイフ。果物ナイフの先端には、俺の血がついていた。次の瞬間、俺は容赦なく女をボコボコに殴った。男以上に。

 

 

「殴って、殴って、殴って、殴ってっ!!獲られるのはなにもない!!!失うだけだ!!!!」

 

 

 俺の小さい頃の夢。それは、家族皆が幸せに暮らすこと。

 

 その夢が、意図も簡単に砕け散った。触った瞬間に破裂するシャボン玉よりも、とても簡単に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「辛いなら、泣け。泣いて、全部吐き出せ。そうすれば、きっと、違う見方が見つかるはずだ。」

 

 ふわりと、暖かい温もりが俺を包んだ。その正体は…基だった。

 

 自然と涙があふれでてきた。何で、何でお前はそんなに…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺なんかに優しくするんじゃねーよ。泣き止まなくなるじゃねーかよ。」

 

 

 

 

 

 そのあとの記憶は残っていない。気がついたら床に横たわっていた。頭の方には何やら柔らかいものが俺を乗せてくれていた。すると頭の上から、優しい声が聞こえてきた。

 

「たくさん泣いたから、スッキリしただろ?」

 

 優しい声とは裏腹に、悪戯っぽい笑みで俺に言う基。俺に膝枕をしてくれていたようだ。

 

「お前、広めたらぶっ殺すぞ。」

 

 ヤバッ、ついいつもの口調で言っちまった。俺は後悔しながら起き上がる。……………泣いたの久しぶりだな……、最後に泣いたのは、何時だったかな……。

 

「分かてるって、そんなことぐらい。」

 

 にしし、と、嬉しそうに笑いながら言うが、全然信用できない。マジで言ったら殴るぞ…。

 

 頭を掻きながら溜め息をつくと、基は徐々に真剣な表情に変わっていった。そして…

 

「あのさ茅根、体育祭の事なんだけど。」

 

 基の真剣な表情から、心の底から勝ちたいんだなと、よくわかる。それでも、俺は自分の考えを変える気はない。俺が納得するような事以外は、聞く気は無いからな。

 

「俺は自分の考えを貫く。俺の考えに反論するなら、それに相応しい答えを出してみろよ。」

「うっ………………………………………………脳筋のクセに…。」

「テメーに言われたくねーな。」

 

 イラッとしたけれど、そこまでではない。むしろ、この何気ない会話が楽しかったりする。

 

「じゃあ、どんなに考えをもってるか、聞かせてもらおうじゃないか?」

「良いのか?脳筋には理解が難しいかも知れねーぞ?」

「ふんっ、ナメないでもらいたいね。こう見えて勉強は真面目にやってるんだからな。」

「授業何かやんなくたって、覚えられるし。俺とお前では脳みその出来が違うんでな。」

「殺るのかコラ?」

「俺だってヤンキーだ、ナメんな。」

「【無駄に】頭いいよな、一回死んでくれ。」

「死ぬのはオメーの方だっつっーの、死ね。」

 

 たくさん言い合ってからの沈黙。そして同時に笑いだした。

 

 今日は大変な1日だな、泣いて、笑って、忙しい日だ。………………でも、悪くないな。

 

「あはは、フゥ、それじゃ、言ってみなよ。君の理論を。」

 

 余裕の顔をしながら腕を組む基は、何処が自信げだ。俺の意見に反対する気満々なのだろう………負けてたまるかっての。

 

「それじゃ、いくぜ。俺の意見をな。」

 

 先程の沈黙とは違い、空気がピリピリとしている。俺は息をゆっくり吸って、言葉を放った。

 

「体育祭をやって、意味はあるのか?」

 

 ピクリと基の眉毛が動いたのを確認する。そのまま勢いをつけて終わらせてやるよ。基に向かって、自分の考えをぶつけた。

 

「ただ疲れるだけだし、勝っても負けても、トロフィーを獲られるか獲られないかだ。負けが見えてるんだったら、べつにやらなくてもよくねーか?」

 

 予想外の質問だったのか、眉間にシワを寄せて黙りこむ基。勝った。俺は心のなかでそう確信していた。

 

「どうだ?答えられるか?」

 

 勝利を目の前にして油断していた。だって、基が答えられなかったんだ、勝ちは貰ったも同然だった。第3者の発言を覗けば………

 

 

 

 

 

「仲間との団結力の大切さを、教えてくれているんじゃないか?悪魔でも俺はそう思うけどな。」

 

 重たい扉の向こうから、くろぶちの眼鏡がチャームポイントの塚崎が屋上に現れた。

 

 塚崎は、口角を持ち上げて、ニヤリと笑う。まるで、先程の俺の表情みたく笑っている。勝利に満ちた顔だった。

 

「それでは、俺の話を聞いてもらえるか、茅根?」

 

 俺の目の前に来て、笑顔で言ったのだった。

 

 

 

 

 

 




シリアスゥー。

次回からは少しずつ真守の鈍感を入れていきます!勿論イチャイチャ場面も入れますよ?(ニヤニヤ)

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鈍感男の体育祭(前日③)

最後の前日です。

次の次あたりから葵などを入れていきたい……。


 時を遡り、茅根と茜が屋上に行くところまで戻る。

 

 真守side

 

「よしっ!!これなら茅根を納得させられる!!!」

 

 勢いよく立ち上がったせいで、ガタンッ、と、椅子が後ろに倒れてしまった。後ろに倒れてしまった椅子をもとに戻して、机の下にしまった。その時にもまた、ガタンッ、と、音をたてて、机がズレた。クソッ!今机を直してる時間ないつっーの!!急いで行かないと茅根が帰っちゃうじゃないか。自分自身にイライラしながら机をもとに戻した。勿論乱暴に。仕方ないだろ、急いでたんだから。

 

 俺は教室をとびだし、学校中を走り回った。とにかく捜して、一刻も早くみつけだしたかった。しかし、なんの手がかりも無いまま、学校中をひたすら走り回っていくうちに、疲れがて出てくるのも当然。あと少しで全ての校舎を探し回る。っていう所では、すでに半ば諦めかけていた。そして、最後の希望を屋上に託して、行くことにした。

 

 すると、屋上の扉は既に数センチほど開いていて、なんとなく中を覗いてみた。そしたら……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ!居た!おーい茅n ………ッ!?」

 

 茅根の名前を呼ぶ寸前に、自分の口を抑えて、声が漏れるのを抑えた。

 

 あっぶねぇ…あともう少しで二人の邪魔をするところだった………。

 

 気づかれていないことにひと安心をし、そっと、ドアの隙間から二人を覗いてみる。ウム、はたから見たらただの変態だな。

 

 自然んとニヤニヤしてしまう口許。その原因は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 茅根が茜に【告白】しているからだ!!(半分当たっています)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドアの隙間から見る二人の雰囲気はまさに告白真っ最中の雰囲気だ。(半分当たっています)

 

 茅根は緊張しているのか、後ろから見ると耳が真っ赤に染まっていて、茜の方はというと、まるで、お母さんのような、優しい笑顔で茅根を見ていた。ーーーーーッ!!!!!

 

 まさか……、まさかの─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【両想い】っ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は今日の茜の様子を振り返ってみた。教室で会ったときには、頬を赤くして茅根の事を話していた(半分当たっています)その理由は、今日茅根に呼び出されて戸惑っていたんだ。告白されるから。あちゃー、もっと早く気づくべきだったなぁー。そうすればうまくアドバイスできたのになぁー。

 

 一人でソワソワしながら、発展はないか二人に視線を戻す。にしても青春送ってんなー、茅根と茜は。俺なんか全然モテないし、女の子との関わりが少ないからな。もっと積極的にいくべきなのか?……まぁ、今はいいや。それより二人だ。

 

 突然、茅根が泣き出したことに俺は驚いた。ワンワンと、たくさんの涙を流す。不良とは思えないような、幼い子供が、全てを吐き出したように泣く茅根を、ソッと茜が抱き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【告白】が成功したのだ。(半分当たっています)

 

 嬉し泣きをしている茅根の背中を擦る茜。その姿は始めから付き合っていた恋人同士の様だった。おめでとう二人とも。

 

 心のなかで二人を祝福し、拍手を送った。これで君らは今日からリア充だな。たくさんの奴ら(非リア)にからかわれたり、冷やかされたりするかもしれない。だけど、その時は俺も勿論助ける。DAKARA、二人で支えあって生きろよ。俺も非リアだけど。

 

 泣きつかれたのか、茅根が座り込んで茜に体を預けて、静かに眠った。茜は自分の膝に茅根の頭を乗せて膝枕をした。…ちょっと羨ましく思ったのは秘密だ。

 

 前までは不良と言われていた茜だが、葵が誤解を解いてくれて、クラスの皆と馴染めることができたのはごく最近。皆が認めてくれて、友達が増えて、俺だけ心を開いていた時期は、毎日屋上で、あさ、よっシーと、俺と、茜で弁当を食べていたけれど、最近は屋上にも来なくなり、あさと、よっシーと3人で男むなしく食べている。さらに、茅根と言う恋人ができた茜は、今よりもっと来なくなるだろう。親ばなれってヤツだよな。ヒヒヒッ、とーさんは嬉しい反面、少しだけ寂しいよ。

 

 

 茅根に関しては、茜の不良時期同様、あまり悪い奴には見えなかった。むしろいい奴なのではと思っている。そう思うようになったのほ、組団を決める時のこと。真っ先に教室に戻って黒板に、『黒組頑張るぞ。by先輩』と、書いていたのを目撃したからだ。勝ちたい気持ちは一緒なんだと思う。でも、その気持ちを食い止めるような、嫌な記憶があるのかも知れない。

 

 

 何かにいじめ、または暴力を受けたのかも知れない。

 

 

 いじめは学校だけとは限らない。家庭内での暴力だってある。俺はそれも含めていじめを無くしたいと、心から思っている。幸助との約束だからな。

 

 

 色々考えていたら、茅根が起きたのか、茜が膝枕をやめて立ち上がった。おっ、そろそろ俺の出番か?そう思った途端に、口喧嘩を始めた。お、おい……………。結構傷つく言葉しか言ってないぞ。脳筋とか、脳筋とか、脳筋とか。

 

 口喧嘩が終わった後は、先程と違って空気がピリピリしていた。そのピリピリとした空気の中で、一番始めに口を開いたのは、茅根の方だった。

 

 

 

 

 

 

「………………さてと、俺の出番だな。」

 

 茅根の結論を聞いた後、茜は、黙ってしまった。黙っているわりには、少しだけ呆れているような気がするのは、気のせいなのか?片方の眉を下げて、『う~ん、何でだ。何かが足りない…』と、顔に現れている。それを見ている茅根の方はと言うと、勝ち誇ったような顔で茜を見下していた。『俺の勝ちだな、脳筋。』とでも言っているように。しかし、その目には、吹っ切れているようだが、まだ、やる気を起こしていないみたいだ。

 

 

 二人の表情を見ていると、何故だか可笑しく見えてクスリと笑ってしまった。なんだよコイツら、流石恋人同士だな。

 

 

 俺はドアの隙間に手を伸ばし、ドアに触れると、一気に開いた。突然の登場に驚愕する二人。二人の表情の変化にまたもや笑ってしまった。茅根なんか、とても間抜けな顔をしていてとても面白い。茜の方は、待ってましたと言わんばかりに微笑んだ。

 

 さて、と。俺の意見を言いますか!

 

 屋上にある新鮮な空気を鼻を通して肺に送り込み、口から出る空気を、言葉と一緒に出した。

 

「仲間との団結力の大切さを、教えてくれているんじゃないか?悪魔でも俺はそう思うけどな。」

 

 ニヤリと笑みを溢す。さぁ、いくぞ。俺の結論を。

 

「俺達がこのクラスで出会うことは、もう二度とない。」

 

 卒業した後は、皆バラバラになる。同じ高校に入る人達なら、また会うことが出来るかもしれない。だけど、この【クラス】になることは二度と無いんだ。そう考えると、少し寂しい。だから………

 

「少ない時間で、どれだけ仲間を信頼しあって、どれだけ協調しあえるかを学べるんじゃないのか?確かに、負けたらトロフィーは貰えない。だけど、努力することの大切さや、仲間がいてできること、イヤ、仲間がいるから出来ることが見つかるんじゃないかと、俺は思うけどね。」

 

 優しく、笑う。

 

 俺の笑顔を見た茅根は、チッ、と、舌打ちをしながら俯いた後に、俺に近寄る。赤く染め上げた髪の毛が、風になびいて揺れた。目の前に来ると、いきなり、ニィと、笑った。物凄く悪戯っぽい笑みで。

 

「しゃーねぇーから認めてやる。チッ、納得するとは思わなかったな。」

 

 乱暴に頭を掻いて感情を抑えている茅根の目には、光が宿っていた。なんだよ、いい目に成れんじゃねーか。…………ウム。我は満足度じゃ。

 

 俺達は3人で笑いあった。何も可笑しくないのに、可笑しくて。笑いながら仲良く屋上から出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤー、よかったよかった。茅根がやる気を出してくれて。」

「まったくだ。始めからそうしてほしいもんだな。」

「茜がそれを言える立場ではない気がするけど。」

 

 傷つけないよつに満面の笑みでいってあげたのにも関わらず、綺麗に俺の腹に拳を喰い込ませきた。な、ナイスパンチ……。

 

 地面に両膝を付いてうずくまる。めちゃくちゃ痛い。なんだよ、何か悪いこと言ったかよ俺ぇ…。

 

「ふん。自業自得だ。」

 

 腕を組んで俺を見下ろす茜。クソォ、そんなんだと茅根にフラれるぞ。俺は知らないからな……。「イテテテ。」と、声を漏らしながら、お腹に手を当ててゆっくりと立ち上がる。茅根の先が思いやられるな…。ドンマイ。心の中で応援しながら再び歩き始めた。

 

 

 

 ん?

 

 

 

 ふと、現在の状況を思い出す。【何故俺は茜と一緒に帰ってるんだ?】。ふつーーーーは、彼氏の茅根と帰るハズなのに……………もしかして俺、邪魔だったりする?

 

 やってしまったと自分の額に手を添えた。俺のバカ野郎!!せっかく二人きりで帰れる時間を俺が潰してしまっったじゃないか!!明日謝んないとな…………。

 

 俺が後悔していると、茜が近くに寄り添ってきた。茜の綺麗で長い髪の毛が、俺の頬をくすぐる。

 

「……とても感謝しているんだからな。…………………………ありがとう…////」

 

 正面からはあまり、ありがとう。と言わない茜が、照れながら言ったことに、ドキッとしたが。首を横にふって思考を投げ捨てる。茅根の彼女だからな、さすがに手は出すことができない。イヤ、出さないことが常識だ。多分だけど、これから会う機会が減るから、最後にそうしているだけだ。うん。きっとそうだ。

 

「明日、頑張って勝つぞ。」

 

 力強くそう言う茜。俺は微笑しながら言う。

 

「勿論だ。」

 

 赤い夕焼けに照らされながら、俺と茜の最後の下校が、幕を閉じようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




葵「ねぇ、最近出番が無いんだけど?」

彩夏「わっ、私も……その…出番がなくて、………悲しい…です…。」

作者『…スミマセン……』

萌那「私も何だけど?」

杏「そうだね、茜ちゃんメインな回だもんね?」

作者『あのッ!?なぜ右手がグーになってんの!?』

杏「えっ?萌那の仇。」

作者『怖い怖い怖い怖い怖い!止めて!!』

美帆「まだいいじゃなぃ~、わたしなんか存在すら薄れてきてる……」

彩夏「わかりますっ!!」

美帆「ねぇ、この子可愛いんだけど。持って帰っていい?」

彩夏「……え、えぇーー!!」

茜「ダッ、ダメに決まってるだろ!!」

葵「そ、そうだよ!!私達の友達なんだからっ!」

美帆「えぇ、………わかった。じゃあ、またあとで会おうね♪」

作者『一旦静まろ?ね?』

「「「「「…………はーい。」」」」」



何で間があるんだよ……。

次回は、体育祭本番です!真守の運命はいかに!?

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鈍感男の体育祭(当日)

今回は少し長めです。

そして、久々に新ヒロインが登場します!




 今日は体育祭当日。そして今は結果発表をしている最中だ。発表をしているのは、ここの学校の生徒会長、萌那さんだ。

 

 恐る恐る紙をゆっくりと開く萌那さん。一生懸命心情を顔に出さないように堪えているのがわかる。黒とは対になる白のたすきを頭に巻いていて、そのたすきがふわりとした風でなびいた。

 

 残念ながら、今年最後の体育祭は萌那さん、杏さんとは違う組団だった。なんにせ、白組は優勝候補の中の大本命。4年連続で優勝しているので、注目度が非常に高い。一番は、3年5組に強い人たちが集まっているからだろう。陸上部のエース。野球部のキャプテン、美術部の一番絵が上手い人。そして………………完璧生徒会長。そんな人たちが集まりに集まっているから、とても手強い。

 

 まあ、もう、終わったことなんだけどな。今回は【黒】がぜってー勝つ!!

 

 

 

「今年の体育祭の、栄光ある優勝組団は、…………だ。」

 

 萌那さんの発表と同時に得点板に点数が表示された。

 

 達成感。満足感。優越感。優勝したらそんな感情ばかりが出てくる。誰だってそうだ。勝負に勝って嬉しくない奴なんかどこにも居ない。俺だってそうだ。俺たち生徒会が並んでいる所は、萌那さんが立っている台のすぐ後ろだった。そして、俺のとなりにいる杏さんをチラリと見てみると、

 

 

 

 

 

 

 

 涙が頬を伝っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 負けたら悔しいよな。努力して、努力して、努力して。それでも、勝つことのできないのが、厳しい勝負の世界のルールだ。現に先輩たちがそうだった。

 

 俺は実感が持てなくて、得点板をもう一度見た。あの、優勝候補の白組との差は、僅か一点。僅かなその一点の重みを感じとり、俺も涙を流した。今日の頑張りを、脳内に思い出しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか?ここまでの頑張りを無駄にするなよ!さぁ、いくぞおぉーーーー!!!!」

『おぉー!!!!!!』

 

 男女ともに声が枯れそうになるぐらい声を出して気合いを入れる。男女構わず肩を組んで丸くなり、そして、俺の掛け声と同時に皆の右足が地面を勢いよく踏みつけた。

 

 背中わたり直前の気合い入れ。ここまでの道のりはとても大変だった。しかし、それを乗り越えてきた俺たちなら絶対勝てる!!

 

 スタートラインギリギリまで先頭の人が詰める。そして、先生がピストルを空に高々と向けて……

 

 

 

 

『パンッ!』

 

「はしれぇーーー!!!!」

 

 ピストルがなると同時に皆も走り出す。先頭の人はすぐさま四つん這いなり、葵の踏み台となる。葵が素早い動きで背中に乗り、一気に駆け抜けていく。一人、二人、三人と、クラスの皆の背中を走っていく。その勢いはとどまらず、更に速く駆け抜ける。その目は、本気で勝ちたい。そう語っていた。

 

 俺は背中を丸めながら葵の昨日言った言葉を思い出す。

 

 

 

「私、一回しか走れないから。だから、皆も、私を落とさないように馬になってくれる?大変だけど……私、頑張るから!!」

 

 

 誰一人と頷かなかった人はいなかった。それほど、葵の真剣な目が、皆のやる気を上げていったのだろう。本番当日しか走ることのできない、一発勝負。皆の真剣な目に、心配はなかった。

 

 

 

 トンッ

 

 

 

 葵が俺の背中を渡った。一瞬で踏み終わる葵の速さに驚きながらも、流石だなと、尊敬もした。これが怪我している奴の速さかよ。口角が上がるのがわかった。チラリと隣を見てみる。

 

 

 誰もいない。

 

 

 俺達の速さについてこられないようだ。

 

 

 カーブを曲がり終えて終盤戦。まだ葵は一回たりとも落ちていない。勝てる!!そう思っていた瞬間、葵がぐらついた。背中を踏み外し、一つ右にズレて、転落しそうになる。誰も動くことのできない位い、一瞬の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人を除けば。

 

「落とすかよっぉ!!」

 

 茅根が葵の右足の所に馬になり、葵は馬になった茅根の背中を踏んで転落するのを防いだ。しかし、バランスが崩れてしまい、茅根の背中の上で膝をついている。

 

「葵、もうひと踏ん張りだ!がんばれ!!」

 

 俺が大声で話しかける。すると皆も、「もう少しだがんばれ!!」「優ならイケるよーー!!」「がんばれぇ!!!」と、皆の声援に、葵は立ち上がって再び走り出した。

 

「優は、ウチがいる限り落ちることはないからな。」

 

 茜が、そう微笑みながら言った。それを聞いていた葵は走りながらも細く微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 優side

 

 皆の声援で立ち上がることができた。そして、走る。痛い足を懸命に動かして、とにかく皆の背中を渡る。一人一人に、ありがとう。と、心の中で呟きながら、ゴールだけをを目指して走る。

 

 体力も残り少なくなるし、足はとても痛いし。それでも、皆と勝ちたい。皆のためにも、自分を犠牲にして馬になってくれた畑くんのためにも、負けられない。そう思うことで、自ら自分自身を奮い立たせ、自分の走る動きに勢いをつけた。白組も隣から迫ってきているのが、迫力で伝わってくる。でも、

 

 

 

 勝つのは【黒】だよ。

 

 

 

 最後の馬を踏み終えると、皆がいっせいにしゃがんだ。しゃがまないとゴールしたことにならないから。白組も、ほとんど同時にしゃがんだ。隣には最後に馬になってくれた塚崎くんが笑顔で「葵、完走おめでとう。」と、優しい笑みで言ってくれた。塚崎くんの笑顔と、結果と、二つにドキドキしながら俯いた。すると…………

 

 パサッ

 

 終わった合図の旗の色を確認する。女子は手を組んで祈り、男子は静かに息を飲んだ。私は、ゆっくりと上がった旗の色を見てみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【白】だった。

 

 隣から歓声の声が聞こえた。私は、罪悪感と悔しさで胸がいっぱいになって、目から溢れる涙を抑えきれなかった。あの時、転びそうにならなければ……きっと今頃は、

 

 ポンッ

 

 頭に置かれた誰かの手が、私の髪の毛をくしゃくしゃと撫でた。……塚崎くんだ。

 

「自分を責めるな、………優は怪我をしてもなお走ったんだ。俺は尊敬するね。」

 

 そんなの……ズルいよ…………余計涙が止まんなくなるじゃん。私は、陣地に戻ってからたくさん泣いた。そして、泣き止んだあと、立ち上がって、笑顔で皆に顔を向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 真守side

 

 立ち直ってくれて良かった。俺は、皆に囲まれながら、嬉しそうに接している優を見て心から安心した。あの時の優の表情は、自分をとても責めていて、とてもじゃないが見ていられなかった。やっぱり優は、笑っている方が、断然可愛い。と、俺はそう思っている。

 

 

『借り物競争に出場する選手は、準備を始めてください。』

 

 おっ、もう、借り物競争が始まるのか。準備しないと。俺は借り物競争に出場する選手なので、準備を始めた。各クラスの代表5名だけが出場することができるこの競技は、物凄く得点が高い。なので、皆の顔はとても真剣だ。残念ながらそれに選ばれてしまった俺は、渋々とよっシーと共に準備を始めた。

 

 俺の出番は、3番目。数メートル離れている地面から、2枚の紙を選んで、その紙に書いてある物を持ってゴールする。いたってシンプルな競技だ。だが、それがなかなか見つからない。去年の例では、【好きな漫画5冊】や、【初恋の人】などと、なかには【現在好きな人♪】等と、とてもえげつないものが紛れ込んでいる。

 

 ったく、誰だよこんなの作ってるやつ!!俺は心の中で愚痴を叫ぶ。しかし、その間に自分の順番が早々と回ろうとしている。そしてとうとう、俺の順番がやってきてしまった。

 

「真守ぅー。頑張れよ?」

 

 よっシーに背中をビシバシと叩かれながら、嫌々スタートラインについた。どうか運の神様、俺に変なのが当たりませんように。

 

「よーい………………『パンッ』

 

 合図と共に俺は地面を思いっきり蹴って、走り出した。滑り出しは順調で断トツでトップを走っている俺。急いで紙を2枚拾い上げ、恐る恐る中身を見てみた。

 

 

 

【可愛い双子(女子)】【ポニーテールとツインテール】

 

 

 

 

 

──はっ?

 

 

 

 瞬きを5回、目を擦る回数13回。だがしかし、俺の持っている紙に書いてある文字は一文字たりとも変わらない。いやいやいやいや、いるわけないでしょこんなやつら。無理だから。諦めている最中にも、背中からの足音がどんどん近づいてくる。とにかく俺は、1年生のいる所に向かって走り出した。

 

 まずは近くにいる青組の1年生を探してみることにした。いや、ぜってー居ないって。ホラ、その証拠にここには誰一人と双子がいn「あの、どうしました?」

 

 ソコには、ポニーテールの可愛らしい女の子が不思議そうに俺をみていた。

 

「双子じゃないけど、ポニーテール見つけたぁあー!!!」

 

 嬉しすぎて叫んでしまう俺を目にした女の子は、ビクッと肩を微動させた。あ、不味い。説明しないと変な誤解が学校じゅうに流れてしm「おねーちゃん…に………なにしてんですか……?」

 

 

 ソコには、ツインテールの可愛らしい眼鏡をかけた女の子が不思議そうに俺をみていた。

 

 

 

 

 

 

 

『双子キタァーーー!!!』

 

 俺は、二人の腕を掴んで、ゴールに向かって走り出した。

 

「えっ!?ちょっと!!?」

「おねーちゃん、私、初めて拉致されました。」

「拉致じゃねーよ。借り物競争だ。正式に認められてるんだから、問題ないだろ?」

 

 二人は納得したように「「あぁ。」」と、呟いた。いやー、参ったな。まさかこの学校に双子がいるなんて…………初耳だぞ………。

 ゴールのテープをきって、走者の邪魔にならない位地に移動してから、二人の手を放した。

 

「突然手を繋いでイヤだっただろ。ゴメンな。」

 

 とりあえず頭を下げて謝る。すると、頭の上から「いえいえっ!!頭を上げて下さい!」と、声が聞こえたので、頭を上げることにした。

 

「あの、私、野坂 陽乃(のざか ひの)と言います。」

「妹の……野坂 月乃(のざか つきの)です。」

 

 太陽と、月……か。俺は、二人の特徴をまとめてみることにした。

 

 まずひとつは、髪型。陽乃ちゃんの方はポニーテールで、いかにも運動が出来そうな雰囲気がある。それとは反対に、ツインテールの月乃ちゃんは、眼鏡をかけていて、勉強がとても得意そうだ。

 

 次に目にはいるのは………………………………………胸だ……。

 

 陽乃ちゃんは、少し小さめだが、月乃ちゃんは中学生とは思えないほどの大きさだ。美保さんよりは小さいが………。

 

 最後に目許を見てみる。陽乃ちゃんは、優しそうなタレ目で、月乃ちゃんはクールそうなつり目だ。

 

 二人をよく観察して、見分けられるようにする。間違えたら失礼だからな。おっと、そういえば俺の自己紹介をしていなかったな。忘れてたぜ。

 

「遅くなったけど、俺は、塚崎 真守だ。これからよろしくな。」

 

 ニコリと微笑みかける。第一印象は肝心だからな。ふと、時計を見てみると全員リレーが始まる時間になってきたので、ここでお別れだ。

 

「それじゃ、俺いくな。あと、借り物競争に参加してくれてサンキューな。」

 

 二人にヒラヒラと手をふってから、俺は、その場から消えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陽乃side

 

 笑顔を向けられた瞬間、私の心の中で、なにかが目覚めた。な、なんだろう……今までの男性は、私(月乃も)を見たとたん、頬を赤く染めて、照れるのに、この人は……そうならなかった。…………ふふふっ、落としてやろうかな?

 

 私が脳内である計画を立てていると、その脳みそが何かの震動によって揺れた。

 

「……おねーちゃん。また…男を落とそうと……………企んでいる…でしょ………?」

「あっ、バレたぁ~?」

「それは……よくないと思う……。」

「えぇー楽しいのにぃ~。」

「……………知らない…。」

「むぅー、何よそれぇ~。」

 

 バレバレだったかぁー、流石双子の妹だねっ!姉の考えてることがわかるなんて……恐ろしい子。

 

 私は月乃と一緒に同じ陣地に戻って、会話を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真守side

 

 全員リレー。結果的にいうと一位だった。白組はバトンパスでミスをしてしまい3位になっていたのが奇跡だった。因みに2位は青組だった。青組を見たときに、愛川が嬉しそうに飛びはねているのを見ていて和んだのは秘密だ。

 

 そして、全ての競技が終わり、結果発表に移るのだった。

 

 

 

 

 

 

「今年の体育祭の、栄光ある優勝組団は、青組だ。」

 

 俺達黒組の点数は1042点、3位の白組は1041点、そして、優勝した青組は1043点だった。僅か一点。抑えきれない感情に、俺は、とうとう泣いてしまった。悔しい、悔しい、悔しい。一致団結して、その結果2位だった。

 

 

 《本気で悔しい。》

 

 

 俺は、この気持ちを忘れることは無いだろう。決して。

 

 優勝した青組は、閉会式が終わったあと、トロフィーを掲げた団長を、空高く胴上げをしていた。その光景を無意識に見てしまう。嬉しそうに胴上げをする人、嬉し泣きをする人、来年に向けて頑張ろうとする人。様々な人が、色んな感情を抱いて、胴上げをしていた。

 

「来年は、絶対勝つ。」

 

 俺は、それだけ言い残すと、泣いている黒組の元に、走っていった。悔しい感情を忘れないように、心にしまいながら。

 

 

 

 

 




はい、双子ちゃんヒロインでしたー!

あと一人出したいと思います。

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鈍感男→変人男

遅くなってスミマセン!!

冬休みの宿題が……宿題が……宿題が………………




「おにーちゃん、朝だよ?起きて。」

 

 みなに体を揺らされて、無理矢理起こされる。なんだよこんな時間に………頭を掻きながら、じーっ、っと、みなを見つめてみる。すると、ニヤニヤしながら俺の腕に抱きついて上目遣いで俺を見ながら

 

「どーしたのおにーちゃん?もしかして……私に見惚れちゃった?」

「ハイハイ、ソウデスネー。」

 

 適当に流しながら、みなの束縛から逃げる。その時に、頬をプクーと膨らませて「少しぐらいノッてくれてもいいじゃん…」と言って俺の部屋から出ていった。ふぅ、これで着替えれるな。

 

 俺は部屋着を脱ぎながら、2週間前の、いつもよりも少し早い時期に始まった、体育祭の事を思い出してた。

 

 

 

 一生懸命頑張って練習した背中わたりは白組に負けて2位。ほとんど差がない状態だったと聞いたけれど、やはり致命的なミスは優が落ちそうになったところだ。でも、優は俺たちのために、怪我を承知で走ってくれたんだ。そう考えるとホントに凄いと思う。それでも…………やっぱり勝ちたかった。怪我をしてまで走ってくれた優に申し訳なくて、あの時、もう少し落ち着いていれば、あの時、優のために走りやすい馬になっていればとか、色々後悔してしまう。それでも負けは負けだ。後悔したところで変わることはない。

 

 俺は来年、絶対にチームを優勝に導きたい。

 

 

 そんな想いを抱きながら、制服に腕を通したのだった。

 

 

 

 一階に降りてリビングに行くと、できたてであろう、青色の包みに入った俺の弁当と、赤い包みに入った姉貴の弁当があった。ピンクの包みがないってことは、みなはすでに取ったのだろう。とりあえず、テーブルについて朝食をとることにしようとしたのだが………

 

「なぁ、母さん。この、濁った緑のドロドロとした液体は何なの?」

 

 そう、俺の目の前にあるのは、透明のガラスコップに《いかにも何か入ってます!》って感じのあり得ない液体があった。まるでヘドロみたいで、見ているだけなのにとても気持ち悪い。しかし、何となく鼻を近づけてみると、とてつもなくいい臭いがした。なんだよこれ……見た目に反してめちゃくちゃいい臭いするじゃんか………………飲まないけど。

 

「あぁそれ?ピーマンと白菜とキャベツとレタスと、とっても美味しいブロッコリーを入れてみました♪」

 

 

 

 笑顔でピースをするバカを睨み付けてから、一口だけ飲んでみた。……上手い。

 

 野菜だけで作ったとは思えないほどの甘さだ。なんと言うか……イチゴの味がある………………いやマジでさ。緑のドロドロからは考えられないけれど、本当にイチゴの味がするんだ。ウム、奇跡としか言いようがない。

 

 俺は騙されたようにその液体を一滴残らず飲みほした。その時に、母さんがニコニコしながら飲んでいる光景を見ていたのが、どうも不信に感じられたが無視して、残りの朝食も食べ尽くした。

 

「ごちそーさん。」

「!? お、お粗末様です。」

 

 何故か母さんが驚いたように返事した。ん?俺なんか変なこと言ったか?母さんを見つめてみると、笑顔で手を振られたので、俺も笑顔で手を振った。手を振り終わってから、鞄に弁当を入れてから、玄関に向かった。いつものように靴を履いて、いつものように玄関のドアを開けてから「行ってくる。」と大声で言ってから。玄関のドアをバタンと閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 愛美side

 

 いや、まさかとは思ったけれど成功するとは思わなかったわね。

 

 笑顔でテーブルの上に隠れているかのように、本の間に挟まっていた箱を取り出した。その箱の表紙に【性格変わり薬♪】と書いてある。そう、さっき、まもるに飲んでもらったドロドロの液体の正体はこれだったのだ。

 

「自分の息子を実験台にするとは…我ながらいい名案だわ~♪」

 

 ニコニコしながら箱を振ってみると、中からカシャカシャと、何かが箱とぶつかる音が聴こえる。んぅ~、いい響きだわ。この音好きなのよね♪

 

 ご機嫌のまま、胸ポケットに箱を入れてから、効き目が切れる時間を思い出した。

 

「確か……だいたい9時間だったわよね。」

 

 現在の時刻は8時20分。学校にいる間は効き目が切れることがないと安堵する。さて、私も学校に行きますか!

 

 いつもは「行ってきます。」と、普通の声できちんと言うまもるだけど、今日は大声で言ってたわね。薬が効いている事に喜びを味わいながら、私も家を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真守side

 

 なんだか、朝から変な気分だ。いつもならまったりと登校するのだが、今日だけは何故か気分がとても良く、騒ぎたい気分だ。何でだろうな……やっぱり原因はあの時の液体か?

 

 そう思っていると、誰かが背中を叩いてきた。今日、あさは用事があるから遅れる、と前の日に言われていたので一人で登校していた。そんな俺は誰か確認するために後ろを振り返ると、前髪を星形のピンでとめていて、眉毛が前髪で隠れていない、いわゆる『オン眉』の、俺がお世話になったよく知っている人物だった。

 

「おはようございます、真守君。」

「あぁ、おはよう彩夏!!」

 

 俺が元気よく挨拶をすると驚いた表情をした。んん? 俺何かしたか?

 

 俺の心を読み取ったのか、彩夏が元の表情に戻って説明をしてくれた。

 

「いつもなら名字で呼んでいたので驚いちゃったんです。」

「そ、そうだったか?」

「はい。あと、いつもより元気に挨拶していましたね。どうしたんですか?」

「どうもしないけど………まぁ、気にすんな!」

 

 ニカッとした笑顔を向けると、彩夏は顔を赤くして俯いた。ん?どうしたんだ彩夏?

 

 ここで俺は気づくべきだった。いつもなら思わないことを思ってしまったからだ。それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彩夏って俺のこと好きなのかな?

 

 そう思ってしまった。そして、もしかしてだけれども、そう思っている彩夏を目の前にしていたら、めちゃくちゃイジメたくなった。なんだろう、こう、イジメたくなったんだ。言葉では表現しにくいけど、こう、心から何かが込み上げてきて……

 

「なぁ彩夏、お前可愛いな、食っていい?」

「ふぇええ!?////」

 

 隣にいた彩夏の顎を右手の人指し指、中指、そして親指の3本の指を使って持ち上げて、俺と視線が合うようにする。そうしたら、更に顔を真っ赤にしてとても可愛い声を漏らした彩夏。少し短い髪の毛が揺れ、大きな瞳が俺をとらえて映し出す。そんな彩夏がいとおしく思った。そして、ゆっくりと顔を近づき、唇がくっつきそうになった瞬間、

 

「あ、茜ちゃんが悲しむのでダメですぅ!?///」

「あっ。」

 

 テンパってもう、めちゃくちゃな事をいい始めた彩夏は、赤い顔のまま走り去ってしまった。むむむ、惜しかったな。あと少しで彩夏の唇を堪能できたのに………

 

 そんなこんなで学校に到着すると、今度は優に出会った。………………よぅし、今度のターゲットは優にキーめたっ♪

 

 性格がおかしくなっていることに気づくことができないまま、俺は優に接近するのだった。

 

「おはよう優。今日も可愛いね。」

「まっ、真守くんっ!?//////」

 

 優の背中に飛び付くようにして抱きつくと、耳を赤くした優が俺を見た。へぇ~、優ってこんなことで照れんだ。もしかすると優も俺のこと好きだったりして?………うわっ、ありうる~。でも、美少女からモテると嬉しいよ塚崎さんは♪

 

 

 

 もはや、可笑しいを通り越して、ただの変人へと自分が変わっていくことに気づけず、そのまま優に抱きついていたら、恥ずかしくなってきたのか、優が離れようとした。

 

「は、はなれよう真守くん? 流石に恥ずかしくなってきちゃった…////」

「えぇ……俺は離れたくないんだけどな…………ダメ?」

 

 最後の一言を耳元で言ったら、黙ってしまった。何があったのか分からずに、抱きついたまま優を見ると、ほぼショート寸前だった。頭からは煙が無数にわきでて、口をパクパクとさせて固まった。

 

そんな優の腕を笑顔のまま引っ張り、俺は教室に連れていくのだった。

 

 

 

 

 




さて、どうなるんでしょうね?(ゲス顔

真守が酷い人間に……しゃーないか!(笑)

安心してください…………みんなにチャンスはありますよ。

色んなチャンスが…ね(ゲス顔

次回はヤバい回になりそうですが、楽しんでいって下さい!

あと、遅くなってスミマセンでした。これからは(多分)大丈夫です!

感想&指摘よろしくお願いします!!


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鈍感男→変人男→変態男

ヤバい、R16位はあるんじゃね?

タグにまあ、かいてあるんで、それを承知で見てください、はい……………。

それと、お気に入り60越しありがとうございます!!!

これからも頑張っていきたいと思うので、よろしくお願いします!


「おっはよ~!」

 

 

 

 

 

 

 ガラララッと、教室のドアを開けて元気よく叫ぶ俺。顔を赤くしたまま苦笑しつつも、少し嬉しそうに、俺に手を握られる優。このふたりを目撃した教室の人々は、皆が同時に叫んだ。

 

『えぇー!?』

 

 打ち合わせでもしていたのか、誰一人と遅れる人が居なかった。なんだなんだ? もしかして俺と優が付き合ってるとでも思ったのか?あぁん?

 

 

 こう思っているが、実際はとても面白がっている。皆を騙すのは素晴らしいな。なんと言うか………気持ちいい。優越感ってやつか?まぁ、とても笑えるのは確かだ。

 

 叫んでから数秒後、皆がいっせいに駆け寄ってきた。状況が理解できないから説明が欲しいのだろう。あぁ、勿論言われなくとも説明しますよっ!

 

「みんな、落ち着いて聞いてくれ………俺と優は付き合っているわけではない。」

 

 すると、みんなは安心したのか、フゥと、一つ息を吐いてから元の場所に戻ろうとした。その瞬間、安心した人達を裏切るようにして、にこやかに俺は爆弾宣言をいい放った。

 

「…前から付き合っていたんだ、気づかなかったのか?」

 

 またもや『えぇー!?』と、皆の声が揃った。隣にいた優も驚いて叫んでいたため、とても右耳が痛い。なんだよ、冗談に決まっているだろ?優の驚いた顔を見たかっただけだ。安心しろ。

 

「ゴメン、嘘だ。からかいたかっただけだよ。」

 

 パッと優の手を放して、両手を上げて降参のポーズをとると、今度こそ皆が周りから離れて元の位地に戻った。ふふふ、楽しかったな、なんて素晴らしいリアクションを貰ったので俺は満足していた。満足感に浸っていると、俺の制服の袖を優がチョンチョンと引っ張った。

 

「ん? どうした?」

「もしも、私が本当に恋びt「おはよッシー!」

「んおっ!?」

 

 優が喋っていたのにも関わらず、よっシーが後ろから勢いよく飛び付いてきた。そのせいで、優の言葉が遮られた上に、よっシーを支える事が出来なくて、前ではなく、後ろに倒れてしまった。しかも、俺を後ろに倒れた元凶は瞬時に離れて避難していたせいで、俺だけが倒れてしまったのだ。その光景を見ていた元凶は小学生みたいに「悪戯成功♪」と、口では言わなかったが、顔に書いてあった。

 

「いっつぅ……」

 

 教室の入り口、つまりドアの辺りで、床に転がったまま後頭部を手で抑えて痛みに耐えていると、突然、目の前が少し暗くなり、さっきまで見えていた学校の天井が、水色の水玉模様に変わった。

 

「義成、弁当忘れてた……よ……………………。」

 

 タイミング悪く萌那さんが現れたせいで、無実の俺は萌那さんスカートの中身をバッチリ見てしまった。フム、信頼の厚い生徒会長の今日の下着は水玉っと………。良いものを見てしまったな♪

 

 

 いつもなら慌ただしく離れて、顔を赤面させたまんま床にガンガンと、土下座までする真守だったが、今日の真守はひと味も、ふた味も違った、ただの変態だった。

 

 黙って起き上がり、萌那さんと向かい合う。プルプルと震えている萌那さんを目の前にして、ニヤリと笑うと、萌那さんの耳許に口を近づけて囁いた。

 

「可愛いですね先輩の下着。俺、萌那さんのこともっと知りたくなっちゃいました。」

 

 口を離して萌那さんを見てみると、今までで見たことが無いような位、顔を赤くして俺の腕をガシッと掴んだ。頭から煙が出るくらい顔を赤くしている萌那さん。それを見て俺はクスリと笑った。

 

「まっ、まもるくん!! ちょっといいかなぁ!?」

 

 俺の腕をグイッと引っ張って、速足で優とよっシーのもとを離れた。その時、優は顔を赤く染めて、手で目を隠して「私は何も見ていない…っ~///」と自分に言い聞かせていた。よっシーはというと、真顔で「一緒に倒れていれば…」と、ブツブツと一人で呟いていた。その時のよっシーの顔は、見たものがすぐさま逃げるほど怖かったと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと真守くん、どういう事か説明して?」

「それよりも先に、何で俺壁ドンされてるんスか?」

 

 学校内で人通りの無いところに連れ去られて壁ドンをされている俺。実際には壁ドンと言うよりも、壁をドンと、破壊しているようにも見えるのは気のせいではないだろう。それほどお怒りなのである。

 

 

 先程の俺の質問を無視して、ただ無言で睨み付けてくる先輩。そのキレ気味の先輩の頬に両手を添えて中央に寄せたり、引っ張ったりした。そうすると、勿論先輩の顔は面白くなり、ついつい笑ってしまった。

 

「先輩の顔ヤバいっスよ。」

「ヤバいっスよ。じゃないでしょ!? 私めちゃくちゃ恥ずかしかったんだよっ!?」

 

 いや、一番の原因は萌那先輩の弟でしょ。内心そう思っていると萌那さんが俺の手に自分の手を乗せて動きをやめさせられた。そして、少し恥ずかしそうに、俺を見つめてくる先輩にドキッとしてしまった。………だって先輩、目をウルウルさせて俺を上目遣いで見るんだもん。先輩は学校で一番モテる人だぜ?ドキッとしない方が可笑しいだろ……

 

「でも、一番恥ずかしかったのは、耳元で囁いたあの言葉だよ?」

 

 そう言われた俺は、もう一度ニヤリと笑って、先輩の顔から手を離し、壁ドン返しをした。その時に、もう片方の手を萌那さんの腰に当てた。一瞬ピクリと動く萌那さんだったが、すぐに「ん…。」と、可愛いらしい声を漏らす。萌那さんの声を聞いた瞬間、ゾクッと背筋が震えた。そして、先程のように萌那さんの耳許に小声で囁いた。

 

「襲っちゃダメですか?」

「だっ、ダメだよ。ここ、学校だよ……ひゃん…///」

 

 勿論冗談である。ここ、大事だからな?

 

 

 耳を優しく噛んでみると、驚き混じりに高い女の声の漏らした。先輩えろいな。まだ中学生だぜ俺ら……これ以上ヤってしまうと色々不味いので、先輩から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

「いや、えっ? じゃないですよ。俺は彼女にしかこれ以上の行為をおこないませんよ?」

 

 

 先輩の紅い頬を片手でピーっと伸ばしてから、「それでは」と、言い残して教室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人取り残された萌那は、床にペタンと座って「はぁーーー。」と、1人、とても長い溜め息を吐いた。今でも熱を帯びて熱くなっている両頬を冷ますように両手を添えた。少し落ち着き、冷静さを取り戻した萌那は、心配そうに真守のことについて呟いた。

 

「何かいつもと感じが違うな気がしたけど………、真守くん、何かあったのかな?」

 

 

 そう、真守本人は気づいていないが、登校中にあった彩夏や、優、そして萌那は、真守の異変に薄々気づいていた。だが、何も知らない真守は、これから先、まだまだ暴れだすことを知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっべぇ、色々やべえ。どうしよう。」

 

 先程先輩にやってしまった行動を思い出して顔を青くする。不味い…不味すぎる………でも、いいっか。次あったらその時に対応しよう。うん。そうしよう!

 

 性格が変わって無駄にポジティブになっていた真守は、何事も無かったように教室に戻った。教室に戻った時に、優とよっシーに誤解を解くために話しかけた。因みに、「正座をさせられてずっとお説教を受けていた」と、嘘をついてしのいだのだった。我ながらいい嘘だろ?1人で自画自賛する俺だった。

 

 

 

 それから、授業を四時間目まで受けて、昼休み、屋上でいつものメンツで食べて、いつもどーりに昼休みを終わろうとしていた。が、ここでもなお、【ラッキースケベスキル】が発動した。その餌食となるのは基 茜だった。

 

 

 先に食べ終わったよっシーと、あさは教室に戻ってしまった。いつもより倍に食べるのが遅かった俺は、一人寂しく階段を降りている。そしたらなんと、足を滑られてしまい、体が宙に浮いたではないか。重力に逆らうことが出来ないこの星。残念ながら俺は床とキスをしなければならないようだ。さようなら、俺のファーストキス。そして俺は床に激突……………

 

「あれれ?」

 

 俺の顔面は、床とキスをすることなく、よく分からない柔らかいモノに顔が埋っていた。正体を確認すべく、柔らかいものを触ってみる。

 

 

 ムニムニ、ムニムニ………

 

「いゃん…/// ちょっと…だ、あん//……誰だよっ!?////」

 

 上からよく知る人物の声が聞こえてきたので、これは胸だなと一瞬で分かってしまった。王道のあれだな、ホラ、よくあるだろ?階段から落ちたら美少女の胸に突っ込んでいたってやつ。そのあとは大抵ボコられる……けど………………

 

 未来を悟った俺は、殺される前に瞬時に起き上がった。すると、なんと言うことでしょう、男子の間で、胸が小さいと噂されていた基 茜様ではないでしょうか。男子みたいな口調から、胸は無いと言われていたが、あれは嘘だったんだな。なんにせ、さっき触ったけれど、とても大きかったぞ。着せ痩せするタイプか……

 

 そう思っていたら、バチンと頬を叩かれた。勿論茜に……

 

「き、貴様! 何を考えているんだっ!?///」

「あぁ、悪い。茜の胸のこと考えていた。」

 

 バチン。もう片方の頬にまたもやビンタを喰らわせられた。くっ…なかなかお強い。何だよ、正直に言った方が許されると思ってたのに………頭は堅いが胸は柔らかいとな。

 

「真守、もう一度そう思ってみろ、殺すぞ?」

 

 自分でもうまい。と思ったのもつかの間、茜の輝かしい笑顔に、背筋が凍るのが分かった。多分これはマジで殺られるな。そう察した俺は黙って頭を下げるのだった。これは忘れた方が命がもつ。絶対にだ。自信あるぞ俺。

 

 茜は深く溜め息をついてから「それじゃ、くれぐれも……な?」と、笑顔で言い残してから、俺の前を通り去ろうとした、が。

 

「きゃっ!?」

「うおっ!?」

 

 茜の細くて白い綺麗な足がもつれて、俺の方に倒れた。そしたら、明るかった素晴らしく、美しい世界が、またもや暗くなり、柔らかいモノで顔を潰されて、息をすることが出来なくなった。これはこれで素晴らしく、美しい世界かもしれないが、それよりも酸素が足りなくて死にそうだ……

 

「そ、そんなに動くな真守!? そ、そこはダメだ!!あんっ///」

 

 

 

 

 ヤバい、ガチな方で死ぬ!!

 

 

 とにかく俺はもがいて大きい胸から逃げることができた。どうやって逃げたかって?柔らかいブツを持ち上げたんだ。そうでもしないと死因が、胸に覆われて窒息死。なんてのになるのは絶対に嫌だったんでね。許してくれ茜………

 

 そう思いながら茜を見ると、頬を赤く染め、ハア、ハアと呼吸が荒くなっており、胸に手を守るように抑えていた。あぁ、殺されるんだな…俺、短い人生だったな………

 

「ま、真守…さんざんやって……おいて、殺されたい…のか?(ちょっと気持ちよかったが……//)」

「いやいやっ!!さっきのも、前のも事故だからっ!!」

「知るかそんなの! 真守のバカぁ!!一回死ねぇ!!!」

 

 そして見事に俺は、喧嘩に強い茜の正義の征伐を、ミゾオチに喰らわせられるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




合計四人がやられましたね……

だがしかし、作者の妄想劇は止まりません!!(止めますが…

陽乃「次辺りは…」

月乃「私達…」

美帆「楽しみぃ~♪ドSまもるくん早く会いたいなぁー♪」

陽乃&月乃「…………だれっ!?」

指摘&感想よろしくお願いします!




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鈍感男→変人男→変態男→鈍感男

寒くなってきましたね……はい。更新遅れましたスミマセン……






 

 

 

 

 

 

 

 なんだってんだよ……俺ただ胸揉んだだけだろ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程茜に殴られた所を押さえながら、渋々と俺は歩いていた。暖かいと言うよりも、暑すぎるほどの陽射しを太陽が照りつけて、涼しいはずの校舎は、真夏の太陽のせいで若干暖められていた。扇風機の意味無いだろ……。俺は深い溜め息を1つついてから、太陽を睨んだ。

 

 

 俺達の学校は、本格的に暑くなると、各教室に扇風機を1台ずつ置くのだが、それはもう接戦だ。その名も【扇風機争奪戦】。各教室の4すみの何処かに扇風機をおくことができて、そこに割り当てられている班は、代表者を1名出して、教卓の前で戦う。まぁ、ただ単にジャンケンをするだけなのだが……それがもう大変で。前のジャンケンの時なんか、一人が遅れただけでその人が失格になるとか、負けっぱなしのヤツがイラついて、勝ったヤツに殴りかかったりと、命をかけてジャンケンをするのだ。まぁ、俺は真ん中辺りだから、最終的には風は来ないけどな………。

 

 残り時間の少ない昼休み。俺は教室に向かうスピードを上げた。そうでもしないと授業に間に合わないからな。

 

 教室のドアを開けると、むしむししたような空気が漂い、俺の顔をしかめさせた。………たまには授業をサボるのも良いよな?悪い心を持っている俺は、苦笑いをしながらそう思った。たけど、それはみんなも同じか。屋上にいってサボりたい気持ちを堪えて、「入りたくない」と言い張っている重たい足を持ち上げ、みんなのいる教室の中に入った。

 

 

 

 

 

 やっとのことで授業をやりきった俺は、屋上で寝そべっていた。蒸し暑い教室から逃げ出して、すぐにここに来た。嬉しいことに、今日は部活がない。昼よりも倍ましになった屋上で、ウォークマンで曲を聴きながら空を見る。

 

 とても綺麗な青色で、雲1つ無い。太陽はというと、いつものように嫌がる熱さを放って、西に少しずつ動いていく。目を綴じると、ミーン、ミーンと、何匹ものセミが「ここにいます!」とでもいっているかのように、自己主張しながらなく。少し弱い風が吹くと、そこらじゅうにある木々が揺れ、涼しい音を鳴らしていく。

 

 この蒸し暑い季節も終われば、秋がきて、冬が訪れる。雪が溶けると、冬の間に蓄えていた花の種が芽を出す。そして春がきて、また蒸し暑い夏がやってる。

 

 

 

 

 その時の俺は、またこうやって屋上に寝そべって、何を思うだろうか……

 

 

 

 

 未来のことは分からない。知ることはまずない。誰にも分からないんだ。

 

 

 未来を知りたがる人がいるけど、正直俺は、未来が怖い。

 

 

 明日6月になる。だけど、死ぬかもしれない。人間いつ死ぬか分からない。だから俺は未来が怖い。

 

 

 

 

 

 

 …………でもそのぶん、今を生きることを楽しむんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何かクサいこと考えちまったな。

 

 曲を変えようとウォークマンに手を伸ばそうとした時、ガチャリと、屋上のドアが開いた。

 

 何だろうと思い、ドアの方に目線を移すと、体育祭の時に出会った、双子……確か陽乃ちゃんと月乃ちゃんが、二人の男性と一緒に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えっ…?

 

 何となく居てはいけないと本能が直感し固まる。こ、これって………告白だよな?

 

 奇跡的に気づいていないらしく、そのまま俺は存在感を消した。いやいやいやいや、おかしいだろ……何でこんなにも告白する事を俺は目撃してしまうんだろうか。失礼だろ………

 

 ゴクリと喉を鳴らし、黙って耳を澄ませた。

 

 

「あのっ、陽乃。俺、お前のことが好きだ! だから………お、俺と付き合ってくれっ!」

「ぼ、僕は月乃さんの笑顔が好きです。その笑顔をずっと守ります。なので付き合って下さいっ!!」

 頭を同時に下げて告白する1年生男子組。しかし、頑張って告白した結果は残念に終わった。

 

「私、イケメンで、黒ぶちの眼鏡をかけた、妹持ちの運動神経がよく、なおかつ頭がいい先輩としか付き合えないの、ゴメンね?」

「ゴメン……なさい…。」

 

 

 月乃ちゃんは少し悲しそうな顔をしていて、申し訳ないと言わんばかりに俯いた。が、その妹とは真逆に、陽乃ちゃんは輝かしい笑顔で告白してきた男子の肩をポンッと、軽く叩いた。

 

 

 ビッチだ…………。

 

 

 俺はここで改めて女の子は怖いと再確認したのだった。

 

 

 肩をガックリと落ちて、トボトボとした足どりで屋上を出ていく男子生徒二人。陽乃ちゃんに告白した方の男子なんか、とても残酷なフラれかたをしたので目が潤んでいた。ってか既に泣いていたのかも知れない。その光景を見て、俺は同情してしまった。

 

 

 うん。よく頑張ったよ。俺もあんなフラれかたしたら泣くわ。

 

 

 苦笑いをしながら頷いていたら、月乃ちゃんが俺に気づいたらしく、悲しそうな困り顔で俺のところにトコトコと歩いてきた。月乃ちゃんを不思議に思ったのか、陽乃ちゃんが月乃ちゃんを見ると同時に、俺の事を見つけたらしく、パァと、さっきよりも輝かしい笑顔で近寄ってきた。

 

 

 

「センパーイ! さっきの聞いてたんですか?」

「あ、あぁ……ゴメンな、屋上で満喫してたら何か出くわしてしまって……………。」

「いい…ですよ………告白は…よくされるので………………おねーちゃんが。」

「何いってるのよ月乃。月乃もよく告られるでしょ?」

 

 ジト目で月乃ちゃんを見る陽乃ちゃん。一瞬だがチラッと陽乃ちゃんを見る月乃ちゃんだが、すぐさまプイッと、視線をそらしてしまった。

 

 陽乃ちゃんは溜め息を1つついてから、笑顔に変わると、俺の隣に座ってきた。そして、体を密着してきた。

 

「えっ?」

「先輩、私、先輩のことが好きなんですよ?」

 

 俺の右腕を両手でギュッと掴んで、上目遣いで俺を見る陽乃ちゃん。

 

 その光景を目の当たりにした月乃ちゃんは、とても驚愕していて、細いつり目が最大限に開き、口は開いたままだった。

 

 俺は何があったのか理解できずに、数秒間ぼーっとしていた。そして……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええええぇぇぇぇ~~~~!?//////」

「あっ、先輩照れてる♪」

 

 右腕に頬擦りをしながら右手を太股で挟んだ。なので、俺の右手の指先は陽乃ちゃんのアソコに………

 

「先輩の………バカッあぁ~~!!」

 

 意識を取り戻した月乃ちゃんが、目にも止まらぬ速さで俺の頬をビンタした。だけどあんまり痛くなかった。

 

「と、突然何するの月乃ちゃんっ!?」

「先輩が…悪いん……です」

 

 そういいながら、陽乃ちゃんとは反対側、つまり、俺の左腕をとって月乃ちゃんの胸に挟まれた。こ、これは……………

 

「非常に不味い……」

 

 

 現在の真守は変態に覚醒している。いつもは、冷静で、優しく、イヤらしい事とは無縁の鈍感男子だったが。今はその真逆。煩く、ドSで、何でもヤる思春期男子だ。なのでこんなことをされたら、襲う意外他にない。これが今の事実だ。

 

 

 

 二人の双子の胸を触り、犯したい気持ちで一杯になる。だが、この小説はR18では無いので、勿論そんなシーンは存在感しない。それに、時間もそれなりに経過しているので、効果も徐々に薄れていっているのだ。

 

「なぁ、離れてくれるか? そうしないと俺の理性が持たないんで。」

「あっ、そうですね。付き合ってからするものですよね♪」

「先輩…………」

 

 陽乃ちゃんは「ウフフッ♪」と、悪魔の笑いをして離れ、月乃ちゃんは物足りなそうに、しゅんと顔を沈ませた。

 

 

 

 コイツら……本当に1年生か?

 

 高校1年生ならまだしも、中学1年生だぞ……もう少し純粋であってくれよ。要らない知識もきっとしってんだろうな………ここで俺はある1人の知り合いの女子高生を思い出した。………………ここまで酷くないことを祈りたいものだな。

 

 そんなことを考えながら、二人の頭を同時に撫でた。この時の真守は、何時もの様に優しい笑顔で撫でており、変態と言う面影は無くなっていた。つまり、薬の効果が思いの外早くきれたのだ。

 

「本当に好きな奴ができたときに、その言葉を言えよ? でないと、君達も大変だし、一番悲しいのは君達の事を心から好きな人が悲しむだろ?」

 

「先輩……」

「おねーちゃん……わかった…?」

 

 月乃ちゃんが嬉しそうに頭を抑えて陽乃ちゃんに向かって言うと、陽乃ちゃんは眉間にシワを寄せてプイッと、視線をそらした。

 

 

 

 

「先輩なんて死んでしまえばいいのに…」

 

「ハアッ!?」

「お、おねーちゃん……」

 

 陽乃ちゃんは頬をピンクに染めて立ち上がり、スカートの裾をパンパンと叩いてから、不機嫌そうに屋上から出ていってしまった。

 

 ポカーンと見ていた俺は、その時、辛そうな表情をしたもう1人の少女に気づくことが出来なかった。

 

「それでは………さようなら…まもる…………先輩…」

「あっ、うん。じゃあな月乃ちゃん。」

 

 月乃ちゃんに手を振って、屋上から居なくなるまで見送ると、先程と性格が真逆になった陽乃ちゃんに疑問を持ちながら、少しオレンジ色に染まった空を、音楽を聴きながらみていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、俺はもう帰れると1人で思っていた。だけど、人生はそこまで甘くはなかった。

 

 

 何故なら、このあと俺は、知らない男の人たちに誘拐されてしまうのだから………

 

 

 




治ってきましたね、真守。よかったよかった。

こんなに寒いのに夏の表現するのはとてもあれでした………夏が恋しいです……

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鈍感男に戻るとき

遅くなってスミマセンーー!!!(土下座)





 

 

 

「ん……ここは…?」

 

 少しだけ痛い頭をおこして、重たい瞼をこじ開けながら、ゆっくりと目を開く。ソコには一度も見たことのない光景が広がっていた。

 

 学校に使われていそうな椅子に俺は乗っているらしく、誘拐された時と同じ服装だった。逃げようと体を動かしたが、ビクリとも動かない。状況を確認するために、首を後ろに向けると、椅子の後ろに手首を固く縄で縛られていた。そのせいで俺は身動きが取れなかったのだ。幸いに、足は動かすことができたので良かったのだが、流石にこの腕が束縛された状態はあまりにも危険すぎる。さて、どうしようか………

 

 

 考えた結果、ひとまず場所の検討をつけるために、首を動かして周りを見回してみることにした。

 

 

 何処かの廃墟ビルだろうか、部屋の中はボロボロになっており、天井の隅には蜘蛛の巣が所々にあり、ディスクがあったのだろう、床のいたるとこのに黒いシミみていな模様が、長方形に点々とついていて、しこらじゅうに潰れた空缶や、割れた空瓶が落ちていた。それだけではなく、ガラスも3割ぐらい割れており、その欠片が床にたくさん落ちていた。

 

 目の前を見てみると、俺の目の前にソファーが置いてあった。最近置いたのだろう、少し汚れてはいるが、新品と同じくらいに見える。

 

 

 

 そんな風に周りを観察していると、後ろからジャリっと、ガラスを靴で踏みしめた音が聴こえた。いや、音がした。間違いない、俺を拐った奴らの内の1人だ。

 

 

 俺を拐った奴らの内の1人が、俺の反応を楽しむかのように俺の背後に近づいてきた。背中から感じる威圧感に、ゴクリと喉を鳴らし、ここが何処なのか、何が目的なのか、聞いてみることにした。

 

「何で、俺はここに居るんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 俺の質問には答えず、ただ無言で、ジャリ、ジャリと、俺の右側に移動したかと思えば、方向を変えて、俺の左側に、ソイツは足を運ばせた。俺の後ろを往復しているようだ。

 

 そして、もう一度俺の後ろで足を止めると、嘲笑してるかのように低い声でいい放った。

 

「オレたちのボスからの御命令だ。せいぜい楽しみにしてろ。」

 

 フンッと、鼻を鳴らしてから、俺の背後から消えるようにして部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 ボスって誰だよ……

 

 俺は誰かに何か悪いことをしたっけか? 頭を使って今までの事を思い出してみた。が、何も思い出せない。何故だか、朝のドロドロとした液体を飲んだところから記憶がない…。でも、拉致されたところは覚えている。あっ、後、陽乃ちゃんと月乃ちゃんに何かを言って、頭を撫でた所は覚えている。

 

 

 

 もしかして犯人は母さん…?

 

 

 

 目を綴じてから溜め息を1つこぼす。ゆっくりと目を開けるのと同時に、ガチャリと扉の開く音が聴こえた。

 

 カツ、カツ、カツ、カツ。ハイヒールを履いているらしく、ハイヒールと床からそんな音がした。

 

 音に集中していると、とうとう俺の背後で音がやみ、数分間の沈黙が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話しかけようか、黙っているかで迷っていたら、背後に立っている人が、俺に話しかけてきた。その声には少し、聞き覚えがあった。

 

「久しぶり、元気だった? まもるくん♪」

 

 久しぶり。こう言っている時点で知り合いだと言う事がわかる。それに、今日は学校に行った後だから、違う学校の知り合いは確定だ。更に、俺を拉致する事ができるほどの権力と財産を持っている女性は、あの人しかいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりですね。美帆さん…………。」

「ふふふ、セーカイです!」

 

 そう言って俺の目の前に飛び跳ねるようにして現れたあと、右目を綴じてウインクをしてきた。

 

 

 初めてあった時のように、大人びた顔立ちに、ふわりとした髪の毛を右肩にかけていて、とても綺麗だが、服装が何とも言えない。

 

 …何故にスーツを着ているんだ?

 

 

 

 

 

 黒い生地のスーツをビシッときめて、更に、俺と同じような黒ぶちの眼鏡までかけている。その姿はまるで、何でもこなす美人先生みたいだ。

 

 今日、何度目かの溜め息をついて、じーっと、美帆さんの顔を見る。まったく、なにするかわかんないなこの人……。そんな風に、少し冷たい目線を送っていると、先程よりも輝かしい笑顔で俺を見た。…………やっぱり掴めない…。

 

 天然どころでは収まらないぐらいアホだ。ここで改めて再確認をしたのだった。

 

「さてと、まもるくん。ここで問題です。何故わたしは貴方をここに誘拐したのでしょう?」

「………………わかりません。」

 

 考えることを放棄して、呆れ顔で美帆さんに視線を向ける。

 

 

 俺が考えようともしないのを想定していたのか、ニヤリと、悪魔の笑みをこぼし、束縛されて動けない状態の俺に、顔を近づけて耳許で、息を吐くように細く、優しく囁いた。

 

 

「まもるくん、性格が替わって、今は変態なんだよね?」

「…………はっ?」

 

 美帆さんが変なことを言ったので、つい声が裏返ってしまった。……ってそれより……………

 

「それなんのことですかっ!?」

「えっ? 違うの?」

「違いますよっ!? ってか、そうだったとしても、そこまでの記憶がありませんっ!!」

 

 ガーン。そう効果音がつくくらいに、ガックリと、美帆さんは肩を落とした。

 

 

 床に両手と両膝をついて、頭をたらし、俺と同じような黒ぶち眼鏡は、綺麗な顔から少し下の方にズレて、美帆さんは絶望に浸っていた。

 

 

 

「そんなの……………聞いてないよ……。わたしの知ってる情報と違うじゃない……」

「いや、そもそもなんで知ってるんですか?」

 

 美帆さんのストーカー発言を聞き流さず、しっかりと耳で、その言葉を聞いた上で、質問してみた。ってか、金持ちって怖いな。何するか分かんないから警戒しないと……。俺はここで改めて、お金のすごさを知ったのだった。

 

 

「まあ、いいや♪ まもるくん、ピーーーーー(禁止用語を発しているのでモザイクしています)しよっ?」

「はあっ!?////」

 

 美帆さんは、誰もが見惚れるくらいの可憐な笑顔で、そう言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ここからは音声だけでお楽しみ下さい~

 

「ちょっ!? 美帆さんっ!! 膝の上に乗らないで下さい!!///」ガタッ

「ん、気にしない……のっ♪」

「そっ、それに………ボタンを外すのも止めてください!! 見えますっ! 見えちゃいますよっ!?///」

「? なにいってるのまもるくん? 見えてるんじゃなくて…魅せてる(脱いでる)んだよ?」

「さらりとヤバイことを真顔で言わないで下さいっ!!////」

「気にしない、気にしない♪」

「気にしますよっ!!////」

「えぇ、ダメなの? ねぇ? おねーさん悲しんじゃうよ?」

「っ……………勝手に悲しんでてくださいっ!(ヤバい、上目遣いは反則だろ…)」

「間があったね、何かヤラシイ事でも考えていたのかな?」

「む、胸をくっつけないで下さいっ!!」

「まもるく~ん♪」

「聞いてないし!!!」

「ピーーしながら、ピーーーーーして、ピーーーすると、ピーーーーーーなんだって。」

「やりませんからね!?」

「えぇ、じゃあ、まもるくんのピーーーを、ピーーーーーするのは?」

「そういいながらピーーーしないで下さい!!」

 

 

 

 

 ~ここからは普通に戻ります~

 

 

 俺は自由に動かすことのできる脚を使って、とにかくジタバタした。ただ喰われたくない一心で、とにかく美帆さんの攻撃に耐えてつつ、逃げる隙を見計らった。

 

 すると、美帆さんはプクーと、頬を膨らませて、俺の唇に自分の人差し指を当てた。白くて細くて綺麗な人差し指が、思っていたよりヒンヤリしていて驚いたが、今はそれどころではないので、とにかく頭のなかを、逃げる方法だけを考えるようにした。

 

 

「それじゃあ………ほっぺにチューしてくれてら、解放してあげるよ?」

「手じゃダメですか?」

「……唇にk「それじゃあ、いきますよ?」素直でよろしい!」

 

 美帆さんは、長い睫毛をゆっくりと綴じて、顔を少し上に傾けた。さっきまで膨らませていた頬を、今度は朱に染めて、震えて俺を待っている。

 

 

 

 ………さよなら、俺のファーストキス。

 

 

 

 怖じ気る前にやってしまおうと決意し、俺はとうとう美帆さんに──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後8時25分。夕食を食べ終え、皿も荒い、風呂にも入り、宿題も済ませ、俺は、母さんの部屋で、母さんに向かって怒鳴っていた。

 

「母さん、ホントにバカなのっ!?」

 

 

 先程からニコニコしながら、悪気が一切無いような、誰がみても嬉しそうに微笑んでいる母さんの笑顔をみて、更にイラッとした。

 

 

「おかしいだろ、なんで俺なんだよ?」

 

 震えて、今にも殴りかかりそうになる右腕を、左腕で懸命に抑えながら、母さんに問い詰めてみた。

 

「でも別にいいじゃない。楽しかったでしょ?」

「楽しくも何ともねーわっ!!」

 

 

 目の前にある母さんの机を、自分の掌で、まるで雷が地面に落ちるような速さ並に叩きつけた。そのせいで、ジンジンと痛さが腕を通って体全体に広がるが、それさえも気にすることなく、ただ単に母さんを睨み付けた。それほどまでに俺は怒っているのだ。

 

 

 しかし、それとは真逆に、母さんは、天使でもみるかのように、女神の微笑みを続けていた。

 

「まもる。キッとあなたなら大丈夫よ。なんだって、私とお父さんの子供なのよ? 自分を信じなさい。」

「………………………もういい、めんどくさくなってきた。俺は疲れたから寝る。おやすみ。」

「………そう。おやすみ。」

 

 怒る気力も無くなって、何だかバカらしくなってきた。自分の息子を実験台に迷うことなくして、俺の苦労も知らないまま、その人は、また俺を実験台にするだろう。それでも俺は、どうでもよくなってしまった。それがあの人性格なのだ。一生治ることはない。つまり………時には諦めも肝心なのだ。

 

 階段を登っている途中で、ある出来事が頭をフラッシュバックして、足を止めてしまった。

 

 

 あの時、もし、美帆さんのガードマンの人が、塾の時間を教えに来ていなかったら。

 

 

 キス………………してたのかなぁ……。

 

 

 

 その先の事を考えるのを首をふって遮断する。何だか嫌な予感がしたのは、キッと気のせいではないだろう。これを世間では『死亡フラグ』っていうんだよな。………考えるのはやめておこう。ホントに死亡フラグ立ちそうだし…。いや、すでにたってるのかもな。

 

 

 今日一番の長く、深い溜め息を、1つ着いて、今日1日の疲れを背中で背負いながら、重たい足取りで、安心できる自分の部屋に「早く寝たい。」そう思いながら向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。美帆さんでした(笑)

お疲れ様です。

次回は、新キャラ登場ですっ!!

指摘&感想よろしくお願いします!!


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鈍感と転校生

最近インフルエンザに殺られてる人が続出してますね。

皆さんも気をつけて下さい。

それに、何だかキャラがみんな同じような性格みたいに感じる…





 朝、目が覚めると、いつも通り、みなが俺をお越しに来てくれてた。

 

「おにーちゃん、おはよう♪ 今日もいい寝顔だったよ。ごちそうさま♪」

「いやっ、何が「ごちそうさま♪」だよ……。」

 

 アクビをしながら頭を掻いてそう言う。窓の方を見てみると、黒い雲が遠くの方にあり、いつ雨が降ってもおかしくないような天気だった。そう言えば、昨日の天気予報に、明日、激しい雨が降るとか言ってたな。

 

 そんなことを思いながら、ベッドから出て、制服に着替えるために、みなを追い出した。俺の部屋から出るときに、「えぇ~。」と頬を膨らませながら反抗したが、「はい、はい。」とだけいって、綺麗にスルーして背中を押した。そうでもしないと、みなは部屋を出ていってくれないからな。年頃の男としてあまり体をじろじろと見られる事は、結構恥ずかしい。なので、部屋から出ていってもらった。

 

 

 部屋着を脱いで、制服に腕を通しながら、昨日のHRの時に渡されたプリントの内容を思い出した。その内容はと言うと、今日、6月1日に、転校生(男)が来るのだ。このプリントを渡された後に、男子の悲願の声と、女子の喜色ある声が混ざったのを覚えていた。

 

 

「変な奴じゃなければ良いんだけど。」

 

 つい、心の声が漏れてしまい、1人で苦笑いをする。最近、色々な事がありすぎて体が持たないのだ。昨日だって、美帆さんに拉致されて、大変な目にあったし、母さんには実験台にされていたし、とにかく疲れているのだ。なので、このタイミングで俺のまわりにメンドクサイ奴が増えてら、俺の精神状態は崩壊するだろう。

 

 まぁ、とにかく、今日はまともな人だと期待するしかないな。

 

 

 ネクタイをキュッと同時に、気持ちも一緒に引き締めて、鞄を片手に部屋をでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう。」

「おはよーまもる。昨日はゴメンね♪」

「謝るぐらいなら、初めからやるなよ。」

 

 自分のいつも食べている席に腰を落として座りながら、母さんに文句をぶつけた。

 

「だいたい、何でよりによって俺なんだよ? 自分でやればいいだろ。」

「いやーね。まもるがやるから面白くなるのよっ♪」

「サイテーだよこの人。俺の事を何だと思ってんだ………」

「んーとね。タダで使える兼面白い実験台?」

「あんた最悪な人間だな………………。」

 

 深すぎる溜め息を思いっきり吐いてから、目の前に置いてある、少し茶色くこんがり焼けている完璧なトーストに、こちらも綺麗に焼けている目玉焼きを乗せて、大きめに一口食べてみた。…………………うまい。

 

 母さんの料理はとてもうまい。ウザいほどに。あーもう、何だな負けっぱなしで嫌なんだけど……

 

 

 無言でトーストを頬張りながら、透明のガラスコップに入っているオレンジジュースと一緒に、トーストを飲み込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、真守! 俺さ、最近ゲームだけじゃなくて、アニメにもハマりだしたんだよっ!」

「ふぅ~ん。どんなやつ?」

 

 適当に流しながすつもりだが、面白そうなモノは見てみようと思って聞く準備はしていた……が、思っていたよりもあさは、熱く、熱く語り始めた。

 

「ご注文は〇さぎですか? の二期とか、あぁ、ごち〇さは、もぅ終わったけどな。あと、今やっているアニメは、無彩限のファントム〇ールドとか、暗殺〇室とか、僕だけがい〇い街とか、僕だけがい〇い街は、凄く面白いぞっ!!それから………お〇松さん!!あと、がっこ〇ぐらし!もよかったな~。終わったけど…、それにっ!!」

「もういい、ありがとう。後で見ておく…。」

 

 コイツ、さっきまで長々と語っていたアニメ愛のせいで、全然寝てないな……。

 

 

 チラッと、あさの様子を見てみると、目許には隈ができていて、髪の毛もボサボサのままな上に、制服も少しだらしなかった。

 

 いつもはピシッと、ネクタイを上まで絞めて、ブレザーのボタンもきっちり着ているが、昨日は本当に全然寝ていなくて眠いのか、ネクタイは途中までしか絞まってなくて、ヨレヨレになっている。ブレザーのボタンも2つしかないのに、上のボタンをかけ間違えていた。うん。ヤバいなコイツ。

 

 俺は少々哀れみの眼であさを見て溜め息をついた。溜め息をついてから、黒々とした空に眼を移した。

 

 

 

 こりゃあ、転校生はまともじゃないやつが来るな。

 

 なぜか俺はそう思ってしまった。残念ながら、その時の予想は見事に────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ハズレた。

 

 俺たちの教室に入ってきた男の子……いや、男の娘は、よっシーと同じぐらいの背の低さで、とてもじゃないが女にしか見えない。むしろ女なのではないか?そんな疑問が生まれるほど、女子っぽかった。顔だけを見ると…だけどな。

 

 制服を見てみると、ブレザーのボタンは全てあけており、中のYシャツの上に半袖のカーディガンをきていて、ネクタイはしていなかった。Yシャツの上にカーディガンを着るのは、別に校則違反ではないので問題はないし、ネクタイも、何かの行事がない限り着けなくてもいいことになっていて、この学校は意外とユルかったりする。それを生かして、制服をかっこよく着こなしている転校生が、自己紹介を始めた。

 

 

「僕は、早乙女 ひかる(さおとめ ひかる)だよ。みんな、よろしくー!」

 

 数秒間の沈黙が教室に駆け巡ったが、それは、女子の歓声で一気に無くなった。

 

『可愛いっ~!!』

 

「天使!!」

「男の娘サイコー!!!」

「弟にほしいぃー!!」

「は、鼻血がっ!?///」

 

 仲のいい優と茜をチラリと盗み見してみてみたら、優は頬を両手で抑えて、ニヤニヤするのを必死で堪えていた。茜はと言うと、頬を赤くして、口を金魚みたいに、開けたり閉じたりして、自分を見失っていた。

 

 

 そんな二人を苦笑いしながら眺めてから、再び前を向いた。

 

 

「……………(ニコッ)」

「っ!?(今、視線あったよな?)」

 

 早乙女と視線がバッチリあってしまって、内心焦り始めた。おいおい、何か少しだけだが、ニヤニヤしてるように見えるんだけども……気のせいなのか?

 

 

 

 早乙女は、テクテクと、自分の席に向かって歩き出した。因みにだけど、早乙女の席は、窓側の一番後ろだ。

 

 つい最近、母さんの気分がご機嫌だった時があって、その日に席替えをした。そのときの席が、今、早乙女が座っている前の席で、早乙女が来る前までの、窓側の一番後ろの席だった。窓を開けると、暑い太陽が照らしつけてくるが、たまに吹く風がとても気持ちよくて、睡魔が襲ってくる。そのせいで、うとうとしてしまうが、俺のお気に入りの席であった。しかし、今は、前言ったように、教室の真ん中の辺りの席である。もっと詳しく言うと、真ん中の列の、前から4番目だ。余談だが、一番後ろは7列目まである。更に言うと、現在、早乙女が座っている席は1つだけ突き出ている8列目になるのだ。

 

 

 一回だけ、早乙女の方をチラッと、見てみると、微笑みながら俺と眼があった。何故だか背筋がゾクりと凍った。よく解らないけど、嫌な予感がする。俺と早乙女は初対面だよな?あぁ、間違いなく初対面だ。なのに何故だろう、この気持ち悪い冷や汗は……。

 

 

 首をとにかく横に振って、考えたくもない何かを、頭から追い出し、これから始まる授業に集中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひかるside

 

 ボクは、「早乙女 ひかる」といいます。突然ですが、あの黒ぶち眼鏡の人が、とても興味深いです。

 

 

 

 

 

 

 ……あっ、さっきも目があった♪

 

 ん? ホモ? そんなの気にしないよ♪

 

 男とか、女とか、そんなのぶっちゃけどうでもいいのさ。好きになった人が、たまたま男だっただけなんだから……………ね?

 

 

 ふふふ、楽しみだなぁ~。何て話しかけようかな…。

 

 自分の席に座りながら、あの人の背中をみつめる。隣から「よろしくね。」と、声が聞こえたので、「うん。よろしく。」と、顔をその人に向けながら言い終わった後、すぐさま背中にまた視線を戻した。立派な背中だなぁ~。抱き締めたくなってきちゃったよ。あはっ。

 

 

 唇を自分の舌でなぞって、ニヤリと口角を上げた。前の学校では、『ヤンデレ』と言われていたが、そんなのはどうでもいい。ツンデレとか、クーデレとか、そんなのは人の個性だから仕方のないことだよ。ボクはただ、好きになった人を大切にするだけだよ。みんなと同じ、フツーの人さ。ははッ。

 

 

 おっと、ついついボクの愛が溢れてきちゃったから抑えないとね。ふぅ、それにしてもこの学校が意外とユルくてよかったよ。そうでないと乗り込めなかったしね。ここの制服も案外男っぽくてよかった。前の学校では、男子がちょっとアレだったからな~。でも、あの人なら許しちゃいそうだな、じゅるり。なーんてねっ。アハハッ。あっ、でもやっぱり女子にはモテておきたいね、そうでないと後々めんどうになるからね。アハハハッ。

 

 

 

 

 

 

 自然と笑顔になってしまう顔を堪えて、とにかくその人の背中を一時間目が終わるまで見続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 楽しみにしててね。まもる君。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヤンデレキャラを入れてみました(笑)

こういうキャラもアリですよね。……………アリですよね?

書いてる途中で、美帆を連想しました。所々似てますよねコイツら(笑)

キャラの個性もしっかりと区別して書くように心がけます。

感想&指摘よろしくお願いします!


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鈍感男に戻るとき 麗&美帆side

今回は前の物語の、サイドストーリーです。

真守がウハウハしていたときの、裏側です。






 真守が屋上にいた頃、真守の知らないところで、ある話がされていた。

 

 

 

 

 

 麗side

 

「ねぇ、ねぇ、レイちゃん。真守くんって知ってる?」

 

 同じ部活動をやっている先輩から、弟の名前が出てきたのでとても驚いた。

 

「えっと…まもるって人、どんな名字でしたか?」

 

 まさかと思って、一応名字を聞いてみることにしてみた。

 

 向の席に座って、私をみつめてくるのは、中野 美帆さん。高校二年生で、先程いったように、私の先輩だ。私からしての美帆さんの第一印象は、『見たことないほど綺麗。』だった。よく、テレビとかで可愛い女優さんが出てくるけど、美帆さんはそれと同じくらい、いや、それ以上と思えるほどの美人な先輩だ。

 

 ふんわりとした鮮やかな茶色の髪の毛を束にして、右肩にかけており。高校生とは思えないくらい、凄く大人っぽい顔立ちをしている。優しそうな目をしているけど、その瞳の奥には、小悪魔のような悪戯心が住み着いているらしいが、そこがとても可愛らしいと評判だ。そんな美帆さんは、ぶっちゃけとてもモテる。

 

 

 そのなかでも特に凄いと噂なのがある。それは……悩殺スマイルと言われている笑顔だ。それを見たものは、男女構わず好きになるらしい。因みに余談だけど、これを言っていたのは美帆さんの友達である。悩殺スマイルは、「ありがとう。」、「大好きだよ。」等の、何かのお礼の時や、美帆さんにとって嬉しいときにみれるらしい。

 

 

「う~んと、確か…」と、ついさっき始めたばかりの縫い物を、美帆さんの説明している最中に終わらせたらしく、先程完成したオシャレなティッシュカバーを眺めながら、美帆さんは口ごもって思い出し始めた。

 

「あっ、そうだ! 確かね、『塚崎』…だったような気がする! ううん、………絶対に塚崎だよっ!」

「あっ、うん。それ多分………私の弟です…。」

「ほ、ホントにっ!?…………ホントだ! 言われてみれば、真守くんと同じような茶色っぽい髪だし、目許も似てる! スゴい、スゴい!!」

 

 両目を大きく見開いて驚く美帆さん。そのあとすぐに顔が緩んで笑顔になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 っ!?……………………これが悩殺スマイル…か。…………威力高すぎでしょっ!?/////

 

 あと少しで私、変なのに目覚めるところだったよっ!?////

 

 それほどまでに、悩殺スマイルは破壊力抜群でした。

 

 

 

 

「…………………ハッ。…な、なんで美帆さんは真守の事を知ってるんですか?」

 

 

 意識が戻ってきて、私はハッとしてから、美帆さんに真守との出会いを聞いてみることにした。ヤバい、さっきの笑顔が頭から離れない…たすけて………///

 

 

 なんとかして、気持ちを切り替えそうと、首をとにかく横に振って、悩殺スマイルを頭から追い出そうとした。美帆さんはと言うと、机に両肘をついて、掌に顎を乗せ、嬉しそうに目を細めて笑った。その顔は、【恋する乙女】と、誰もが見ても解るような顔で、出会った当時を思い出しているのか、遠くを見つめるような、温かい眼で、語り始めた。

 

「真守くんと初めてであったのは、わたしがナンパをされていたときなんだ。」

「な、ナンパ…(何て王道な……)」

「うん。それで、男の人達がとてもしつこくて、連れ去られそうになったときに、真守くんと目が合ったんだ。その時に、ビビってきたの。この人なら、助けてくれるって。本能が言ってたから、真守くんの所に行ったんだ。」

「それで、真守が助けてくれた…と?」

「うん! それはもうカッコ良かったよ!」

 

 頭に『♪』マークがたくさん付くほど、美帆さんは嬉しそうに話していた。………恐ろしい奴め。

 

 私は、嬉しそうにニコニコ笑っている美帆さんとは反対に、「これでまた、真守を好きになった人が増えた…。」と、大きめの溜め息をついた。とうとう高校生にまで手を出したか……まったく、恐ろしくモテますね。真守が死んだら、お葬式は、男子より女子率の方が、圧倒的に多いだろうね。もちろん、そのなかにも、悩殺スマイルの美帆さんも入ってるけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 何でもできる自慢の弟に、たった今、少しだけ殺意を抱いた。

 

 ドジでも踏んで、たまにはモテない人の気持ちなもなれ。どれ程辛いか解らない奴は、バチが当たればいい。

 

 

 

 

 表面上では、美帆さんの話を聞きながらニコニコするが。内心では、少し赤黒く染まった殺意の種が、芽を出した。その芽には、異性にモテることのできない嫉妬や、怒りだけが込められている。もし、この殺意の花が咲いたとき、真守はこの世に居ないだろう。…………もちろん半分冗談だけどね。

 

 一瞬だが、口許がニヤリと上がったので、自分の口を一生懸命に結んだ。その時、朝に、真守に少し異変があったことを思い出した。確かアイツ、お母さんのいかにもヤバそうな緑色の液体を飲んでたな。ふふっ、ざまぁーみろっ♪おっと、ついつい弟に対しての感情が出てきてしまった。抑えないとっと。

 

 私は一人で両手を使って口を抑え、溢れる殺意を抑えた。

 

 

 …でも、あのあとの真守は少し変だったな~。

 

 

 今朝の真守を思い出してみる。いつもは「いってきます。」と、フツーに言ってるけど、今日はやけに元気だったな。それに、テーブルの上に、ヤバそうな薬が置いてあったし、そういえば、箱の表面に紙が貼ってあったな。確か…【性格変わり薬♪】って書いてあったような…………

 

 

 

「美帆さん、真守今、きっと性格が反対になってますよ。」

「ええぇ!?そうなのッ!?」

「はい。それにしても嬉しそうですね…。」

「そ、そうかな?(だって、だってさ! 優しい真守くんの性格が反対になったら…優男→ドS=変態っ!!だよね!?)」

 

 何を考えているのか解らないけど(真守が関係してることはわかるけど…)、美帆さんは頬を紅く染めて、その紅くなった頬に両手を添えてニヤニヤし始めた。

 

 

 マジで殺そうかなアイツ……

 

 

 

 

 そのあとも、真守についての話をたくさん美帆さんに教えた。性格や特技、小さい頃の話や、今のこと。入っている学校や成績もついでに教えてあげた。そのたんびに美帆さんは、笑顔で頷いたり、大きく目を見開いたりしていたと、表情がコロコロ変わって、私が男子だったら惚れてたな~と、思うぐらい可愛かった。真守は今日、死刑決定だな。

 

 

 

 なんとなく時計をチラッと見てみると、部活の終わる時間の1分前だった。私は美帆さんに時刻を知らせると、美帆さんも時計を見て確認した。

 

「あぁ、ホントだ。やっぱり、楽しい時間はすぐに終わっちゃうんだね…。」

 

 困ったような笑顔をして、美帆さんは若干物足りな表情をした。

 

「そうですね。また、真守について話しましょうよ。」

「それはた助かる! ありがとー♪」

 

 本日2回目の悩殺スマイルありがとうございました。私はもう真守を地獄でも殺し続けますっ!

 

 家庭科室をでて、鍵をかけた。私たち以外の人たちは、既に帰っていたらしく、私たちが最後だった。鍵を職員室にいる顧問の先生に返してから、私と美帆さんは家に帰ることにした。

 

「それじゃ、わたしほこのあと塾に行くから。じゃあねーレイちゃん! また明日っ!」

「はい。さようなら美帆さん。」

 

 手を左右にフリフリする美帆さんの背中を見ながら、私も帰ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美帆side

 

「あっ!もしもし? ガードマンさん? わたしですけど、………あのですね、光ヶ丘中学にいる、塚崎真守って人を、お父様のビルの地下に閉じ込めてください。あぁ、その時に、廃墟のビルっぽくセットしてくださいね。そっちの方が雰囲気でて良いですから♪………もちろん、イスに座らせて腕だけを縛っておいてください。はい。……………特徴はですね、少し茶色っぽい髪の毛に、イケメンの男の人で、黒ぶちの眼鏡をかけています。髪型は、右側の髪をかきあげて、ピンでその髪を留めて、余った髪を左に流した感じですね。演出、忘れないでくださいよ?…はい、それでは、よろしくお願いしまーす!」

 

 スマホから耳を離して、鞄にしまった。先程の電話の相手は、わたしのガードマンさんのガードマンさん。えぇ…っと、『ガードマン』って言う名前なのです。まぎらわしいよね!

 

 

 お父様のビルに向かって歩くけど、自然と足取りが軽くなり、スキップしながら向かっていた。真守くんと会えると思うと、心も体も嬉しくなるんだ。うん。やっぱり、わたしは、真守くんが大好きなんだ。と、改めてそう思った。

 

 そう思うと、更に嬉しくなって、気づいたら、誰もいない路地を一人で叫んでいた。

 

「待っててね、まもるくん~!!」

 

 綺麗な空に向かって、大声で真守くんに宣戦布告してみた。笑顔で言ってみるとそれに答えるようにして、ガードマンさんから電話が掛かってきたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──すみません、お嬢様。わたくしめが来なかったらきっと……」

 

 リムジンの運転をしながらガードマンさんはわたしに謝ってきた。バックミラー越しから、黒いサングラスをかけて、スーツをビッシッとキメた、ガードマンさんと視線が合った。

 

 わたしは明るく微笑んで、「全然大丈夫だよ? 次もよろしくね。」

 

 と言ってから、窓に視線を移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 もし、あの時、真守くんにキスをされていたら……

 

 そう考えるだけで、頬がつり上がってニヤニヤしてしまった。それと同時に、嬉しすぎて倒れてしまう自分も想像した。

 

 

 うぅ、いまだにドキドキが止まらないよー…////

 

 でも、そうでもしないと真守くん、わたしの気持ちに気づかないから……だからここは、積極的にいかないとっ!!

 

 

 

 

 景色が変わって、赤色に染まる夕日を見ながら、もう一度さっきのことを思い出しては、照れる事を繰り返した。溢れる想いが口から出てしまうと、ガードマンさんはサングラス越しから優しく微笑んだ。

 

 

 リムジンが止まってわたしの家に着いた。ドアが自動で開いたので、そこから地面に足をつけた。「ありがとう。」と言ってから、ドアが閉まり、リムジンが去っていった。リムジンが見えなくなるまで見送ると、おもいっきり背伸びをしてみた。うん。今日は真守くんと夢で会えそうな気がするよ! そう思いながら、寝ることを楽しみにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こんな感じでした(笑)

途中集中力が無くなって雑になってる気がする…反省。

もし、この作品が終わったら、今度は、暗殺教室か、がっこうぐらし!か、スケットダンスか、未来日記の小説を書こうと思います。何故か懐かしいのばかり(笑)

指摘&感想よろしくお願いします!


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鈍感とヤンデレ

遅くなり申し訳ありません!

なんにせテスト期間ですからね!

ん? テストってなに?

……とりあえずどーぞっ!!


 

 

 

「ねぇ、まもる君。僕さ、まだよくこの校舎のこと知らないからさ、案内してよ!」

 

 6月2日。俺の机の前で、太陽と同じくらいの眩しい笑顔で俺をみているのは、つい昨日、光ヶ丘中学に転校してきた「早乙女 ひかる(男)」だ。

 

 一見、とても可愛い背の小さい女の子と思うが、本人いわく男子だそうだ。

 

 男のわりには短髪ではなくセミロングの髪型。目も大きく唇も小さい。体つきも、並の男と比べると、圧倒的に細く、肌も白い。まさに『美少女』という言葉が似合う早乙女は、何度も言うが男である。たまに、同じクラスの友達が、「オレ、早乙女だったらアリかも…」と、獲物を狙うような、危ない目でみているのをチマチマと目撃する。

 

 だが、それだけでは終わらない。

 

 隣のクラスの男子が、つい昨日、屋上で告白したらしい。男だと知っているのにも関わらずに…だ。

 

 

 

 それを聞いた俺は、とにかく背筋が凍った。この学校には、残念ながらホm …男好きの男が多いらしい。因みに、告白した男子はアッサリとフラれたそうだ。「ボクには既に好きな人がいるんだ。ゴメンね。」と、言い残して、屋上を後にしたらしい………。

 

 首を横に振って、危ない考えを追い払った。そうでもしないと俺も可笑しく成りそうだったからだ。………よし。俺は正常。ノーマル人間だ。大丈夫。…………イヤ、別にほ…男好きの男は悪くないと思う。うん。人それぞれだしな。だけど俺は、女の子と恋に落ちる予定なので…ね?

 

「あぁ、いいよ。俺でよければ放課後、一緒に校舎をまわろう。」

「ほんとぅに? やったぁ! ありがとう!」

 

 ニカッと微笑む早乙女。ここで俺は、何故、早乙女が女として生まれてこなかったのか、物凄く不思議に思ったりしたのは内緒だ。

 

 

 そのあと、授業の始まりのチャイムがなったので、早乙女は自分の席に戻った。気のせいだと思うが、戻るときに、嬉しそうにスキップしていた。そこまではいいのだが、目許が、なんというか………獲物を仕留めたような、凄い目付きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………何も見なかったことにしようっと。

 

 机の中から数学の教科書と、ノートを取り出した。あぁ、よりによって数学か…証明とか好きじゃないんだよな……。

 

 苦い顔を浮かべながら、筆箱からお気に入りのシャーペンを取り出して、ペン回しを始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~放課後~

 

 ひかるside

 

 僕は鼻歌を歌いながら、頼りになるまもる君の背中を追いかけていた。大きくて優しい、そんな背中を近くでみていたボクは、自然と嬉しくなっていた。

 

「ここが体育館な。んで、ここがトイレ。」

「体育館ってとても広いね! それにトイレもキレイっ!!」

 

 ここの体育館はとても広く、テニスコートが3つ出来るほどだ。そして、入り口のすぐ近くに、とても丁寧に掃除をしているって言うのが分かるくらい、とても綺麗だった。

 

「前の学校では、ここまでトイレは綺麗じゃなかったよ…。いい学校なんだね。」

 

 体育館から出てから、まもる君に向かって感想を述べてみた。素直にそう思ったので、そのまま伝える。

 

 僕がそういい終わった後に、とても嬉しそうな顔で「そうだな。」と、言ってくれた。その笑顔に魅了されて俯く。まもる君は心配そうにボクを覗き込むが、ボクは赤くなった顔をみられないように、数メートル走った。そして、後ろを向いて叫ぶ。

 

「早く次のところに行こう! 僕、もっといろんなところみてみたいしー!」

「早乙女は、元気だな。わかった、じゃあバンバンいくぞー!」

 

 僕の隣に並んで一緒に走る。途中で、すれ違った男の先生に「廊下は走るなー!」と言われたけど、二人して『ハーイ!』と返しただけで、スピードを落とす素振りはみえない。そもそも歩くつもりないからね。ゴメンね先生。

 

 

 舌をベーッとしてみせて、ボクは嬉しさのあまりにまもる君の手を繋いで引っ張った。そして走りながら言う。

 

「ボクのことは早乙女じゃなくて、ひかる。って呼んでよ。ボクもまもる君って呼ぶからさ。」

「……ははっ、それじゃ、ひかる。もっとスピードあげるぞ。」

 

 そういってボクたちは、図書室まで走っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 図書室の扉の前につくと、ボクはパッと手を放した。もっと大好きなまもる君の一部を永遠に触りたいけど、この格好の以上不可能だ。まぁ、男なんだけどね…………フフッ。

 

 自分でも薄気味悪い事ぐらい分かっているけど、ついつい溢れてしまう。仕方ないよね。それほど大好きなんだから……

 

 まもる君の方をみてみると、ちょうどボクをみていたのか、視線が重なりあった。その瞬間、まもる君はドアに手をかけて「中に入るぞ?」と、言ってボクの方をみたので、ボクは深く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 フフッ、まもる君。君って本当にカッコイイ人だね。

 

 君の体も、顔も、手も、足も、全てボクのモノになればいいのにな。そうすればいつでも、ボクの思い通りになるのに……ね。…帰り道後を追ってみようかなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──えっ? ストーカーだって?

 

 

 

 アハハッ。何をいってるんだい? ボクを気持ち悪いストーカーと同類にしないで欲しいな。

 

 

 ボクの場合はストーキングじゃなくてね『まもる君と仲好くする(愛し合う)ための準備』だよ。

 

 

 ホラ、良く気が合う子には親近感が湧くでしょ? それと一緒さ。

 

 

 まもる君の好きなものは、ボクの好きなもの。

 

 

 まもる君が嫌うものは、ボクの嫌うもの。

 

 

 まもる君がトイレに行くならボクも行く。

 

 

 

 まもる君が死ぬなら……………………ボクも死ぬ。

 

 自然と笑顔が浮かび上がるのがわかった。えへへ、まもる君カッコイイね?

 

 

 永久保存したいくらいだよ?

 

 

 もちろん、ボクの部屋に……ね? アハハハッ。

 

 

 ボクが入ってこないのに疑問に思ったのか、まもる君は疑問符を浮かべてボクをみてきた。なので、ボクは最高の笑顔を魅せてから、まもる君の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───右手に自分の携帯を握りしめながら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 真守side

 

 ゾクッ

 

 隣からどこからともなく寒気が俺を襲った。誰だと思って隣を見てもひかるしかいない。気のせいだと思い、とにかく図書室に入ることにした。

 

 何だか、さっきから寒気がおさまらないんだよな。周りを見てみてもひかるしかいないし。………もしかして…っ!?

 

 

 チラッとひかるを盗み見した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─もしかして、俺、夏風邪ひいたんじゃないか!?

 

 そう予想した俺は、ひかるに風邪をうつしてしまうと考えたので、先程ひかるを確認したのだ。

 

 うわー。まじか…俺、知らず知らずのうちにひかるに風邪をうつしたかもしれない……不味い。

 

 転校してきたばかりのひかるには、俺以外でも話せるような人を早く増やして欲しい。それなのに、早くも休んでしまうと、色々気まずくなって話す相手もいなくなり、最終的には虐めに……それだけは本当に不味いっ!!

 

 

 罪悪感に包まれながら、俺は図書室に重たい足を踏み入れた。

 

 

 どうしよう、ドウシヨウ、ドウシヨウ、ドウシヨウドウシヨウドウシヨウドウシヨウ!!

 

 顔から血の気が引いていく、あぁ、ゴメン。ひかる、ゴメン。

 

 もう一度ひかるの顔を見てみると、健康そうな顔色で、苦しそうな素振りはみえなかったので、取り敢えずひと安心する。それと同時に、なかなか入ってくるような気配がみられないので、俺は首を傾げてひかるをみつめると、ひかるは気づいたのか、可愛らしい笑顔で、図書室に入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが図書室。図書館並みに無駄に広いから、迷子にならないようにな。」

「へぇー! ここが図書室! ちょっとどんな本があるのか興味があるなあー。」

「ん。ひかるはどんな本が好きなんだ?」

「……変って言わない?」

 

 男だと分かっているのに、上目遣いで俺をみてきたので、不意にドキッとしてしまってた自分が悔しい。

 

「もちろん。」

 

 何とか返事を返すと、息を吐くような細い声で、恥ずかしそうに言った。

 

「れ、恋愛小説…。」

「………………別に変ではないと思うけど?」

「ほ、ほんとにっ!?」

「あ、うん。よっシーとか、萌那さんの恋愛小説勝手に持ってきて、色々勉強してるし。」

「あ、そうなんだ…それよりも、萌那さんって人だれ?」

 

 急に鋭い目付きに変わったひかるに驚いたが、義成の姉なおかつ生徒会長で、生徒会で色々お世話になっていると言うと、少し強張った顔が緩くなった。

 

「生徒会長さんかぁ……(恋人じゃなくてよかった。もし、恋人だったら…)。」

 

 ひかるの背後から、とめどなく殺気がみち溢れ、黒々しいほどのオーラがみえるほど、怖い顔をしていた。何でご機嫌が逸れたのかは分からないけど、とにかく話題を逸らしてみることにした。

 

「他にはどんな本が好きなんだ?」

「…あっ、う~んとね……推理小説とか、ホラーとか。(推理小説では、たまにピッキングのやり方とか載ってるし、ホラー系は、ストーカーがどうやって部屋に入っているのか知るために。)そんな感じ。」

「俺も好きだよ、推理小説とホラー。」

 

 同じ共通点が合って親近感わいたなー。なんて思いながら、俺達は図書室を後にした。

 

 

 

 

 

 そのあとも、色んな教室を教えたりして、楽しく学校案内を終えた。

 

 俺は遅い時間だが、部活に行くためにひかると別れた。

 

 帰り際にひかるが何か呟いたのだが、急いでいた俺には聞こえなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひかるside

 

「また後で会おうね。」

 

 そっと小声で呟いてから、まもる君に手を振った。

 

 ふぅ、と、1つ大きな息を吐いてから、ポケットにしまった携帯を取り出して、アルバムを開くと、目の前の画面全てにまもる君が写っていた。

 

 眠たそうにアクビをするまもる君に、笑顔で話している横顔のまもる君。更には図書室で隠し撮りしたビックリしたときのまもる君もぉ♪

 

 溢れるまもる君愛を抑えて、携帯を優しく撫でてからパタンと閉じた。

 

「さっき、萌那さんとか言う人が気になったけど、彼女じゃないなら別にいいや。」

 

 背伸びをしながら今日の予定をたてることにした。まず最初に、演劇部が終わったあと、まもる君の家を見に行かないとね♪

 

 ニヤリと口許をあげながら、ボクは足を弾ませて昇降口向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もちろん、少しは性格をマシニさせますよ。

そうでないと残りのキャラが死んでしまいそうなので……えっ? (笑)


因みにですが、次の小説は未来日記にしようと思います!

懐かしいですねー。ヒロイン候補では、ヤンデレクイーンのあの人意外で…多分ですけど、西島からあの人を奪っちゃうと思います…。ゴメン、西島!


戻りますけど、新キャラのひかるは、今暴走しかけているので、もう少し落ち着かせます。

そうしないと本当に危ないので……(遠い目)

感想&指摘よろしくお願いします!


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鈍感男とコミュオンチと唐揚げ

今回は恋愛要素無しですね(笑)




 

 

 

 

 

 6月10日。まだ誰も起きていない時刻に、男女二人は、ベッドで息を弾ませていた。

 

「んぁっ!?/// お、おにぃ…ちゃん………ふぁああぁあぁ////」

「くっ、みなの…スゴいな…」

「んっ、んんんっ///」

 

 少し暗い部屋で、女の子…塚崎美奈は、頬を赤らめ、どこからともなく襲ってくる快感に、声をあげながら堪えていた。しかし、両手で口許を抑えていても、背筋からくる『何か』に耐えられなくなり、甲高い声を両手の隙間から漏らしてしまう。

 

「うんぁ、ん、んんっ、ふぁあ、あんっ!///」

 

 その声を聴いている男…塚崎真守は、美奈の上ずった、色のある声を聞くたびに、高ぶる鼓動を必死に耐えていた。が、じりじりと理性を削っていく声に、そろそろ限界が近づいていた。そして……

 

「俺…もっとヤりたい……」

 

 一言そう呟き、スピードと力を加えていった。

 

「きゃあっ!?/// は、激しいよぉっ!!///」

「みなが…スゴいから、やる気がでるんだあっ!」

 

 美奈も真守も、限界が徐々に近づき、美奈は期待を込めた瞳で、真守を見つめた。それに気づいた真守は、一度行為をゆっくりにして、美奈を見つめ返した。すると、潤んだ瞳で、恥ずかしそうに俯き、小さく呟いた。

 

「おにーちゃん……………もっとやっていいよ?」

「っ!? …もっと激しくなるけど……それでもいいなら…」

 

 それを聞いた真守は、一瞬驚いた表情をみせるが、すぐに微笑み、優しい声でいった。

 

 そして、美奈の要望を聞き入れたのか、先程までやっていた時とは桁違いの早さで行為を始める。

 

 突然襲い掛かってきた快楽に、美奈は抑えることができずについ叫んでしまった。

 

「んあっ/// みな…嬉しいっ!!////」

 

 行為も後半戦。そろそろ体力もなくなってきた二人。そして真守は終わらせるかのように、溜めを作り、そして………解き放った。

 

「いくぞっ!! みなぁ~~!!」

「きてぇーーー!!」

 

 二人の動きが突如に止まり、……沈黙の時間が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ? 肩凝りは治ったか?」

「うんっ! もうバッチリ♪」

 

 俺はベッドで座って肩を回しているみなを見て、達成感で溢れた。

 

 

 

 先程まで、俺はみなの『肩を揉んでいた』。今日、俺はいつもより早めに起きていた。早朝。それも朝4時12分。暑さで目が覚め、寝られずにいた俺は、ベッドから飛び出てとにかく窓を開けた。朝の涼しい風が俺の部屋を循環して、空気を変えていく。冷たい風が、俺の部屋にあった蒸し暑い空気と共に、眠気も一緒にもっていったおかげで、完璧に目を覚した。

 

 背伸びを1つしてから、学校の準備をしようと、机にある教科ごとに整った本棚から、理科と英語の教科書を取り出そうと手を伸ばしたとき…みなが少しダルそうに俺の部屋に入ってきたのだ。

 

 

 何かあったのかと、心配した俺は、ダルそうにしているみなのもとに駆け寄った。そしたら、みなは心底驚いたような顔をして「おにーちゃんが起きてる!」と、俺を指差した。

 

「今日はたまたま暑くて起きただけだよ。」

「そうなんだ。残念、今日は寝顔なしなんだぁ~…。」

 

 

 イヤ、何時からお前は俺の部屋にきてるんだよ…。

 

 

 最近本当に溜め息しか出てこない。良く言うだろ? 溜め息をすると幸せが逃げていくって。はぁ、あっ。また溜め息をついちゃったよ。クソッ。

 

 

 

 

 

 

 一人で落ち込んでいると、みなは俺のベッドで横になり、ゴロゴロし始める。「う~ん。おにーちゃんの臭いサイコー♪」と言いながら、とにかく左右にゴロゴロする妹を、哀れみの目でみていると、みなは顔だけを上げて俺を見て話を始めた。

 

「おにーちゃん。みなさ、最近隣の席の大和ちゃんのせいで肩が凝ってるんだけど……肩揉みしてよ!」

「ん? 別にいいけど、隣の席の大和ちゃんと何があったんだよ……………」

 

 自分のベッドにたち膝をして、俺の前にあるスペースを手でポンポンと叩くと、察したみなは、俺の目の前に座った。

 

「あのねー、大和ちゃんって子がさ、スゴく男子みたいな性格でね、良くみなを困らせてくるんだ。それで疲れちゃって。」

「へー。それってさ、みなと仲良くなりたいってことなんじゃないかな?」

 

 腕を前に伸ばして、準備を始めると、みなは顎に手を当てて「そうなのかなぁー?」と呟いた。

 

 

 ぶっちゃけみなは、コミュオンチだ。

 

 

 家では普通に過ごしているのだが、とてつもなく人見知りをする。今は、仲良くなっている人が2、3人居るらしいが、正直な話、その人達意外の人とは一度も話していないらしい。一度だけ俺は聞いたことがある。「友達ってなんだと思う?」と。そしたらなんといったと思う?

 

 

「めしつかい。」イヤイヤ、「お金をくれる人。」まさか……みなは、こう言ったんだ。

 

 

 

 

 

「結婚するほど仲がいい人。」と………………。

 

 

 

 

 

 

はあ?

 

 その当時の俺の耳が壊れていたのかと疑ったほどだ。ってか疑った。鼓膜が破れたのかな? そうとも思った。なのでもう一度聞いても。

 

 

「結婚するほど仲がいい人。」

 

 

 今度は決め顔で言ってきた。

 

 

 

 

 

…この現状をどう思う?

 

『友達』それは話せる人や一緒に遊んだり親しい人のことを言う。だけど『結婚できる(・・・・・)ほど仲がいい人。』とは格が違う。

 

 

 

 

 まぁ、ソコもツッコミをいれたのだけど、そう考えると、恐ろしいことを俺は気づいてしまった…。

 

「みなには結婚できる【女の子】が2、3人居る。」

 

 

 

 将来が心配になってきた俺である。

 

 いや、ね。べつに女の子と結婚してもいいけどさ。俺は「おじさん!」って言って抱きついてくる、みなの子供がみたいわけですよ。はい。なので、ダメとは言わないよ? でも、出来るなら子孫を残せる男の人を選んでほしいかなぁ…って、俺は何を考えてるんだろ………さて、話を戻そうか。

 

 

 

 とにかく、俺の妹はコミュオンチなのである。はい。この話はおしまい!

 

 

 そのあとは、冒頭のように、肩凝りが治るような肩揉みをやっただけだ。それだけだ。

 

 

 

 

 俺はベッドから立ち上がり、思いっきり伸びていると、みなは「ありがとう、おにーちゃん♪」と言い残して、俺のベッドで目を閉じた。なのですかさず眠りにつきそうな、みなの頭をチョップして起こした。寝かせるわけないだろ。ここは俺の部屋なんだからな。

 

「自分の部屋で寝ろ。」

「むぅ、おにーちゃんのケチ。」

「ケチで結構。」

 

 のろのろとした動作で俺のベッドから起き上がると、物足りなそうな顔を俺に向けるが、俺が顎で行けとさすと、名残惜しそうに部屋を出ていった。

 

 

 ふぅ、やっと出ていったか…。

 

 これで制服に着替えられる。そう思いながら俺は制服に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

~2時間後~

 

「「「「「いただきまーす!」」」」」

 

 家族全員が揃っての食事。いつもは俺だけを抜かして食べているが、今日は違った。俺がそれに加わっているのだ。まぁ、俺が早起きをする日は決まって朝食と家族全員分の弁当を作るのだが。

 

 

 お椀からできたての真っ白なご飯を箸でつかんで、口許に運んで食べてみる。………まあまあかな。

 

 モグモグと口を動かして、おかずに箸を伸ばすと、誰かの箸とにらみあって止まる。目線を上げて誰か確認したら…姉貴(女王)だった。

 

 俺と姉貴の睨み合いが続き、ビリビリと火花がとんでいるなか、平然とした顔で、取り合いになっていた唐揚げをヒョイッと取って、なおかつ美味しそうに「う~ん♪」と、言っていたみなが居た。

 

 

「「あぁーー!!」」

 

 そんなことはお構いなしに、次々と唐揚げを取っては食べるを繰り返すみな。その勢いはとどまることを知らずに、最後の1つで完食した。

 

「ごちそうさまっ♪」

 

 スタスタとその場から逃げるように流しに皿を置いて、リビングからみなが消えた。でもこれで、強敵はいなくなった!今、まさにここは戦場だ!

 

 

 

 

 

 

 静まりかえる俺と姉貴。母さんは黙々と食べ、父さんはテレビに夢中になっている。シーンとした空間に、姉貴の声が響いた。

 

「真守、前に500円貸したよね?」

 

 くっ、そうきたか。でも、まだまだまけないぜ?

 

「そうだったっけ? あれ? でもさ、俺が姉貴に貸している漫画は5冊。だいたい400円だとすると、合計2000円になるけど?」

「はぁ? じゃあ、前食べたハーゲンダッツ。あれさ、高いの知ってるよな? ローソンで買うとだいたい250円。それを約13個奢ってやったよな? な? 何円になるとおもう? ………3250円だよ?」

「へっ、んじゃあさ、俺、姉貴に服を買ってやったよな? あの、お気に入りの服。あれさー、高かったんだよー? 5067円! わーお!」

 

 鋭い目付きでにらみあう。チラッと皿の上をみてみると、『早く食べて!』とでも言っているかのように待っている唐揚げが1つある。

 

 喉を鳴らしてから、視線を戻して姉貴をとにかく睨む。そして、もう一度皿の上に無い唐揚げを見る。うん。美味しそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─ん?

 

 皿の上に【無い】唐揚げ?

 

 すると、なんと言うことでしょう。皿の上に綺麗に残っていた唐揚げは、父さんの手によってなくなっていたではないか!!

 

 しかも、美味しそうに「ウマッ」っと、言いやがってっ!!

 

「「(お)父さんっ!!」」

 

 

 俺と姉貴は同時に叫んだ。その叫び声は、家の外まで聞こえていたと言う………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はどんなのだろうー。

茅根辺りの、男の友情かな?(笑)

でも、ヒロインも出しますよ!絶対!!

因みにですけど、あの喧嘩(?)は実際に起こったヤツをもとにしました。お金は思いつきですが…

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鈍感は生きることの大切さを知った。

テスト終わったぁ~!!

これからは出せなかった分、頑張りますっ!!


「真守くん、おはよう。」

「ん? あぁ、おはよう。」

 

 いつも通り教室にはいると、優が眩しいぐらいの輝く笑顔で挨拶をしてきた。

 

 優は学級の委員長をやっているだけで、きちんと制服を着こなしている。

 ピシッとリボンを着けて、つい最近、衣替えをしたばかりで、真っ白なブラウスから透き通るような白い肌が出ており、その腕は細くて女の子らしい。スカートの丈は膝から上の位置にあり、走ったら見えるのでは?と、思うくらい短い。まるでよくあるアニメの制服みたいだ。赤いチェックのスカートにリボン。うん。アニメ化も夢ではないな。

 

 そんな冗談を一人で考えていると、優は頬を赤く染めて俯いた。

 

 何事かと思い、あたふたして戸惑っていると、優は恥ずかしそうに、小さく細く呟いた。

 

「そ、そんなにまじまじ見つめられると……は、恥ずかしいよ///」

「っ!? ご、ごめん……。」

 

 不意討ちだ。中学生の少女らしく、もじもじした感じが可愛さを倍増させて、とても可愛いと思ったじゃないか。流石だ。あの笑顔でいったい何人の男を虜にし、悩ませたのだろうか…。

 

 自分でも分かるくらい熱くなる顔を優から背け、つい黙ってしまう。静かな時間が訪れ、変な空気も漂い始めた。それを感じているのか、優の方も、頬を赤くしたまま俯いて俺と同じように黙ってしまった。

 

 

 な、何か話さねーと。

 

 不味い空気に耐えられなくなった俺は、適当に話題をふってみることにした。

 

「ゆ、優ってさ、いつもしっかりしてるうえに、とっても可愛いよな!」

「ふぇ!?//// か、かわっ、かかかか、カワイイッ!?」

「あっ!? …あのっ、えぇと、うぅんと、その、違くて、いや、違くないけど……うん!可愛い!!」

 

 

 

 やっちまった……………。

 

 自分の額に手を当てて、心の底から湧き出て止まらない羞恥心を必死に抑える。焦りすぎて変なことをいってしまったことに、とても後悔する。

 

 まったく、何やってるんだよ俺はぁ!!

 

 

 

 本当に気まずくなり、2度目の沈黙が二人の間を走った。

 

 俺なんかに可愛いって言われても、誰も嬉しがるヤツなんかいるわけないだろうな。

 

 くそっ。

 

 ごめんな、優。

 

 

 心の中で頭を下げて謝りながら、優を静かにみつめる。すると、俺の視線に気づいたのか、優は先程と同じように、頬を赤色に染めたまま、俺の目を見る。そして、気まずい沈黙自ら破ったのだった。

 

「ありがとう、真守くん。 私、嬉しかったよ? これからも、真守くんに「可愛い」って、言われるように頑張るね。だから………そ、その時は…笑顔で言ってくれると嬉しいかな。」

 

 首を少し傾けて、笑顔でそう言った優は、天使にも見えるくらい、とてもいい笑顔を俺に向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優って、実は俺のことを………………まさか、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あるはずもない思い込みを、首をふって追い払い、俺も笑顔で、優に向かって言った。

 

「今の笑顔は、とても可愛かったよ。優。」

「…ふふっ、本当にズルいよね、真守くんは。」

「ん? 俺は、何もズルいことはしてないけど?」

「真守くん。『鈍感』って言葉、しってる?」

「あぁ、もちろん。鈍いことだろ?」

「意味は理解してるんだね。じゃあ、仕方ないか。」

「えっ? なにが?」

「自分でなんとかしてくださーい!」

 

 

 

 あぁ、きっとそうだ。そうだったんだ。やっぱり優しいヤツだな。優は。こんな俺のことを……

 

 上ご機嫌のまま、手をふって自分の席に戻る葵 優。

 

 

 

 

 

 皆のまとめ役で、優しくて、周りをみれる、俺たちの学級委員は……俺のことを──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─【励まして】くれていたんだ。

 

 

 冴えない俺なんかに褒められても嬉しくないハズなに、わざわざあんなことを言ってくれた。

 

 正直とても嬉しかった。俺に、「可愛い」って言ってもいい自信を与えてくれた。そうか……ちゃんと、TPOを確認してから、言えばいいんだな。ここで俺は改めて、女の子に『可愛い』と言うことの重大さを、優のお陰で再認識することができたのだ。

 

 スッキリした気持ちのまま、俺はよくわからないけど、嬉しい気持ちで胸が一杯になり、自然と笑顔になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよっシー!!」

「グハッ。」

 

 不覚。

 

 

 背後から近づいていた悪魔に気づくことができずに、まんまと首を締められ、空気の通り道を閉ざされてしまった。

 

 

 ヤバい、コイツ…俺を、殺す気…だ……。

 

 だんだんと意識が遠ざかり、クリアに見えていた視界は、よっシーが抱きついた反動で床に落ちて、眼鏡がない状態のうえ、涙で視界が歪んだままだ。体内の酸素がなくなっていくのがわかり、俺に【死】が近づいてきたのが分かる。俺の首を締めている張本人…よっシーは、死にそうなのに気づかず「おれおれ!」と、無邪気にじゃれて勢いをますだけだった。

 

 

 

 

 

 

 本当に…死ぬのか………

 

 

 あぁ、せめて、誰かを好きになって、その人と恋に落ちたかった……な。

 

 

 ごめん…………未来の…お嫁さ……ん。

 

 

 

 背中からの重みも感じられなくなって、俺はとうとう、目を閉ざしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まもる君が死んだらどうするつもりかな? よ、し、な、り、くん?」

「ん? おっ、ひかるじゃんか! おはよっs、グオッ!?」

「…っ!? ゲホッ、ゲホッ……」

 

 酸素が一気に身体中を駆け巡り、全身に染み渡っていく。それと同時に、大量の酸素を吸いすぎて、床に座り込んで咳きをしてしまった。

 

 苦しい…。そう思えるのは、生きていることの証だ。

 

 そう、俺は……助かったのだ。生きている!!!

 

 初めて死にそうになって、ようやく生きていることの大切さ。を、改めて実感した。うん。生きてるって素晴らしい!!!

 

 床に座り込んだまま、掌を広げてみたり、閉じたりしてみて、何処か異常がないか確認してみた。息はできる。手も、足も、目も、しっかりと動かせる。

 

 

【生きる】って、なんて素晴らしいことなんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「…ほら、みなよ、よしなり君。君が知らず知らずのうちに、まもる君の首を絞めていたせいで、まもる君、可笑しくなっちゃったじゃないか!!」

「いや、俺は正常だから。安心しt「まもるぅーーー!!!」いや、話聞こ?」

 

 俺の肩をがっくんがっくん揺らして「正気かぁーーー!?」と叫んでいるが、一番正気じゃないのはどう考えてもよっシーの方だと思うが…。

 

 

 

 そんなことを思いつつ、揺さぶられる俺を助けてくれたのは、またもや笑顔の美少女…美少年のひかるだった。

 

「落ち着こう、よしなり君。…ね?」

「(ゾゾゾッ)ハイッ!!」

 

 暴走しかけているよっシーの肩をガシッと、真顔で置いているひかるの目は、まるで死神が生きている人間を殺そうとするような、とてつもなく恐ろしい目付きだけど、輝くほどの笑顔で、よっシーの右肩にメリメリと力を加えた。その光景を観てしまった俺は、ガクガクと震えているよっシーの隣に一緒に正座して、静かに俯いた。

 

 

 ひそひそと、俺とよっシーを変に思った生徒や友達は、ひかるの顔を見てビビる者やクスクスと俺とよっシーを見て笑う者、更には色んな意味で泣き出す者もいた。

 

 

 そりゃそうだよ。俺は今、教室のドア付近で、ひかるに向かって正座してるんだから……はは。同級生に…だぜ。

 

 

 

 

 

 そのあとは、チャイムが鳴るギリギリまで、ひかるはよっシーに説教を続けた。

 

 ん? 俺?

 

 俺はなにも言われなかったぞ。ただ、強いて言うなら、時々ひかるの目が、濁っているようにみえたんだ。なんか、「これだからよしなり君はっ!」とかではなく、「まもる君」という単語が出てきた時に、そんな目をする。

 

 何を意味してるかは知らないけどな。

 

 

 

 説教から解放され、俺は固まった体を大きく背伸びをしてほぐした。久しぶりにあんなに正座したな~。

 

 何てことを思っていると、ゲッソリとしたよっシーは、フラフラとした、おぼつかない足取りで、自分の席に座り、静かに机に顔を伏せた。あのよっシーが、だ。

 

 いったい……何をしたんだ…ひかるっ!!

 

 何があったのか知るために、ひかるの顔をみてみるが、ニコニコとした輝く笑顔で、言った。

 

「ボクはいつでも助けに行くからね。」

「お、おう。ありがとう?」

「うん! 安心して、変な奴がきたら、一瞬で消滅させるからっ!!」

「ど、どうやってだよ?」

「う~んとね、背負い投げとか、一本背負いとか?」

「マジで!? ひかるって凄いヤツだったんだな!」

 

 ひかるの意外な特技を知れて良かったような…危なくなったような……。

 

 

 

 なにかを忘れているような気がするけど、本能が危ないと言っているので、あえて口に出さなかった。俺はただ、ニッコリしているひかるの無駄に寒気を感じる顔だけを、眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 




スミマセン、茅根の回はもう少し待ってください…

部活ぅ~。多いよぉー、小説かけない~(泣)


できるだけこれから頑張るので、期待して待っていてくださいっ!!!

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鈍感と茅根と…

遅くなり申し訳ございませんでしたぁーー!!(スライディング土下座

今回は茅根のかいです。ちょいシリアス?



 茅根side

 

「あれ、そう言えば茅根。あんまり茜と居ないよな? 喧嘩でもしてのか?」

 

 はぁ?

 

 塚崎 真守、馬鹿なようで、意外とみんなのことを考えているクソ鈍感野郎。

 

 ほら、みてみろよ、アイツの顔を。

 

 何の悪びれもなく、アホずらかまして、小さい子供が「どうしたの?」とでも言っているような顔をし、純粋を通り越し、もはや『馬鹿』と言っても過言ではない目をしながら、変なことを訊きやがった。マジで何考えてんだコイツ…。

 

 

「俺と茜はセット感覚なのか? あぁん?」

「いや、だって…ねぇ。」

 

 右頬をポリポリと掻いて、斜め下に目線を動かして、真守は俺の耳許で小さく呟いた。

 

「お前ら…これだろ?」

 

 そう言って、右手の小指をたてる。

 

 

 ………はぁッ!?

 

 

 

 顔…いや、全身が一瞬にして熱くなるのがわかった。突然の『茜と付き合ってるんだろ?』と、遠回しに言ったんだ。そりゃ、熱くもなるし恥ずかしくもなる。なんにせ、付き合っていると勘違いをされているのだからな。

 

 俺は誤解を解こうとするも、さっきの言葉のせいで上手く口がまわらない。

 

「ちがっ、あのな、ってか…何で知って、いや、違うけど、……何でそう思った!?」

 

 最後の言葉だけは、絶対に伝えたかった。ってか、そもそも何でこの鈍感クソ野郎がそう思ってんだよ。コイツ意外と他人のことについては鋭いのか?だとしたら気持ち悪いな…

 

 

 自分でもわかるほど顔をしかめて、睨んでしまった。

 

 睨んでしまったせいで、ビクッと真守は肩を震わせて、ピクピクしながら一歩、後退りする。そして、苦い顔をしながら、両手を前に出して『まあまあ。』と言わんばかりに手を動かしている。

 

「だって茅根、屋上でさ……なぁ?」

「 ………あれを観たのか?」

「ッ!?」

 

 輝く笑顔で、左手を胸の前で開き、その左手に、勢いよく右手の拳をパシンと当ててみる。その動作を3から4回ぐらい続けると、意味を察したのか、さっきまで浮かべていた苦笑いが一瞬で消えて、顔の色がみるみるうちに蒼白くなっていき、まさに【恐怖】。の二文字が、真守の顔だけをみても伝わった。

 

 

 

 怖がるくらいなら初めから言うんじゃねーよ。マジで殴るぞ…。

 

 真守は、運動神経がいいが、あまり他人と喧嘩はしない。

 

 優しい性格の真守は、どちらかと言うと、全てを受け入れてしまい、パシりに使われるような奴だろう。赤の他人のために、怖がっていても、その人の役に立とうとする姿勢は、馬鹿だ。馬鹿だと思ったと同時に、正直尊敬した。

 

 威張らず、見栄を張らず、皆の役に立とうとする事は、口先ではとても簡単だ。簡単だからこそ、いざそうしよう、としたときに難しいのだ。なのに…コイツは……

 

 

「今すぐ殺してーよ、クソ野郎。」

 

 馬鹿なうえに鈍感な奴は、意外と変人みたいだ。

 

 

 何を考えていてのか、身構えた姿勢でいるクソ野郎は、何が起こったのかよくわからずに、キョトンとしていた。

 

「…まぁ、いいか、茅根がいいならいいけど。」

 

 身構えた体制から、右手を腰にてを当てて、残りの左手を顎に添えて、なにかを考えるようなポーズに切り替わり、真守は「う~ん…。」と、一人で唸っていた。

 

 

 

 なんか、色々とムカつくな。

 

 よくわからないイライラが、どこからともなく込み上げてきた。……まぁ、いいか…。

 

 

「あっ、おはよう真守、茅根。」

「っ!?」

「あ、おはよう茜。」

 

 背後から聞き覚えのある声が聴こえて、ついドキッとしてしまった。

 

 恐る恐る首を動かして、後ろをみると、右手を上げてニコッと笑う、可愛い茜が立っていた。長い艶のある、綺麗な髪に、長い睫毛、鋭い目許に、整った顔。まさに美少女の文字が相応しい茜が、俺の前に立っていた。

 

 

 

 

 何でだ…いつもより茜が、か、可愛く……見える…。

 

 

 

 俺の視線に気づいたのか、茜は俺の方に近寄り、見上げてきた。

 

「どうしたんだ茅根? ウチの顔に何かついているのか?」

 

 小首を傾げたとにき、長い髪の毛が小さく揺れた。大きな睫毛がパチパチと動き、それに…近いせいか、シャンプーか何かの、いい匂いがする…って!? なに考えてるんだよ俺!? 変態かよっ!? それに…上目遣い…何なんだよコイツッ!?

 

 

 クルクル目が回るような感覚に襲われ、顔が一気に熱くなった。手からは汗がじわりと溢れてきて、背中からも嫌な感じのする汗が、ゆっくりと伝った。

 

 

 

 どうしたんだよ…俺ぇ!?

 

 

 混乱する頭を必死にフル回転させて、変に思われないように、何か、話題を必死に探した。言葉を探しだしたり、単語を見つけては、今の状況に合っているのか確認しては、ダメだと本能が呟き、違う話題を探す。これの繰り返しだ。

 

 言葉にいきずまり、「えっと、うんと…あの…。」と、なかなか言い出すことができない。いつもなら、こんなことはなかなか起きないのだが、ってか、起きることはない。なのでぶっちゃけ、とても困っている。

 

 

 不良と言われているから、ナンパはできるだろうと思っているだろうが、俺はこう見えてナンパはしたことがない。したことがない。ホントだぜ?

 

 だから、テンパるも納得いくだろ? ナンパしかしていないやつは、こういう場面のトークスキルが半端なく高いのだ。だから、仕事帰りの疲れがたまっている女や、駅など、そこら辺にいる、少し悪に憧れているような女なら、一発で釣れる。そして、まんまと騙されて、金を盗られたり、嫌な行為までされ、体だけではなく、心と共にボロボロになってから、後悔するんだ。

 

 これをただのバカと言う。

 

 そんなことを思っていると、茜が俺の頬っぺたを、優しくペチンと叩いた。そして、それと同時に、一瞬にして現実に引き戻された。

 

「茅根~、熱でもあるんだろ。さっきからボーッとして、保健室行ってこい。」

「イヤ…多分……平気だ。」

「そうか? なら無茶はするなよ。」

「…おう。」

 

 俺と茜のやり取りに、ニヤニヤする人物が1人。マジでぶん殴っていいか。ウザイんだけどあの顔。

 

 

 真守を鋭く睨み付けると、何かを思い付いたのか、先程よりもニヤニヤが増した顔つきで、パチッと、右目でウインクすると、手をヒラヒラ振ってから「ガンバれ。」と、口パクで言い残して、朝一と義成のもとに走って行ってしまった。

 

 

 

 

 余計なお世話だっつーの!!!!

 

 

 顔が強張るのが自分でも解る。眉間にシワがよって、とてもじゃないが、キレているようにしか、周りからは見えないだろう。まぁ、実際そうなんだけどな。

 

 俺の様子が変わったことに気づいたのか、茜は不思議そうな視線を俺にビシバシ投げ掛けてくる。そのあとに、一つ小さな息を吐いて、真守の方に視線を移した。

 

 

 ズキン。

 

 そんな効果音が、俺の胸を、心を、刺した。

 

 締め付けられるように、苦しい。まるで、心臓を誰かに鷲掴みされるように、苦しい。

 

 

 茜の目を見ると、そう思えてくるのだ。

 

 真守をみつめる、優しい、何かの感情が、入り交じっているその眼は、想像もしたくない、考えたくもない、なんとも言えない……そんな感じだった。

 

 

 

 

 

 何で、そんな眼をするんだよ。

 

 

 何で、俺に向けてくれないんだよ。

 

 

 何で、俺じゃないんだよ。

 

 

 何で、こんなに苦しいんだよ…。

 

 

 

 

 …あんな鈍感野郎より、俺にその眼を向けてくれよ。アイツの鈍感プリは、みててあり得ねぇ! って、思うくらい、もどかしいんだよ。

 

 可笑しいだろ、あんなのまさに奇跡といってもおかしくないだろ! 本気でさ!!

 

 

 

 

 

 …でも、アイツは、恨んでも、憎んでも、怨めしく思っても、やっぱり、いいやつなんだよな。

 

 

「あ~あ、やっぱり勝てねーわ。」

 

 笑顔で呟いてみた。

 

 

 茜は、俺の声が聴こえなかったのか、それとも無視してるのか、まぁ、明らかに聴こえなかったのだろうけど、真守だけをみつめている。

 

 手を伸ばせば、届く距離なのに、逆にそれが、とてつもなく遠い存在だ。

 

 俺は君が好きで、でも君はアイツが好きで、憎いアイツは友達で、恨めなくて、……………なんだよこれ、俺って、フラれてるんじゃねーかよ。

 

 

 大きい、大きい溜め息を吐いて、 俺は茜の背中を押した。

 

 女性らしい細い背中、そこまで伸びた髪の毛、一本一本が、艶があって綺麗で。

 

 そんな俺の片想いの相手の恋を応援する。はは、どっかの漫画でもあったな~。最後はどうなるんだっけか? まぁ、いいや。

 

 

 驚いている茜の目の前に握り拳を突き出して、笑って魅せた。

 

「行ってこい。」

 

 恥ずかしそうに、でも、嬉しそうにはにかむ笑顔は、目惚れるほど美しかった。

 

「行ってくる!」

「…おうっ!」

 

 

 茜が真守のところに走っていく。そこで俺は、自分のやっていることに後悔を覚えた。

 

 

 あんな可愛い笑顔は、マジで反則だろーが。惜しいことしたなー。

 

 

 楽しそうに話している茜。これでよかったよな。

 

 そうでもしないと、泣きそうになるから、歯を必死で噛み締めて、感情を、とにかく堪える。胸から込み上げてくる、悲しい、哀しい感情を、とにかく堪える。

 

 

 

 

 

 そう言えば、 漫画の人物はこんなこと言ってたな。

 

 

 

「もしフラれたその時は、俺が一番に慰めて、2回目の恋をさせてみせる。」

 

 

 窓の外を観てみると、あの日、屋上で話した時みたいに、太陽は照りつけてきて、空はウザイほどに真っ青で、それで。

 

「絶好のサボり日和だな。」

 

 俺は、教室を出て屋上に向かった。階段を登り、重たいドアを、手で開けて、新鮮な空気を思いっきり吸って、そして─

 

 

 

 

 

「ありがとぉおおぉぉぉおーーーー!!!!!!」

 

 

心から叫んだ。何故だかそんな言葉が出てきたんだ。…出て……きたんだ。

 

「待ってるよ、お前が俺のもとに来るまで。ずっと……」

 

強がって、笑顔で言ってみたら、ポタポタと、頬をつたるものが流れてきた。

 

暑苦しい太陽の光を浴びながら、俺は、屋上で1人、涙を流したのだった。

 

 

 

 

 

 




まぁ、しゃーないんだよ。

そんなこと、誰かは経験したことあるだろ?

ちなみに作者は経験ありますよ。そんな恋。

とにかく泣きました(笑)


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鈍感男と朝一

春休みまでもうすこしー。

大量の部活までもうすこしー。


 6/12 2:02 [塚崎家2階]

 

「えへへ、おにーちゃん♪」

 

 深夜の静かな時間。誰もが深い眠りについているときに、塚崎家長男の、塚崎 真守しか寝ていないハズのベッドが、モゾモゾと動いた。

 

 毛布から顔を出して、真守の隣に横になっているのは、塚崎家次女で末っ子の、塚崎 美奈。かわいい顔をして、コミュ障の男嫌い。女子校に通っている中学1年生だ。……中学1年生だ。

 

 

 

「やっぱり、おにーちゃんと寝ると、安心できるなぁ~♪」

 

 真守の胸に、頬をスリスリしながら小さく呟く小悪魔。

 

 塚崎 真守の1日は、ここから始まるのである。

 

 

 

 6/12 6:42 [塚崎家2階]

 

「おにーちゃん、起きて、寝坊しちゃうよ?」

 

 ゆさゆさと、隣で規制正しい寝息をたてた、実の兄を、塚崎 美奈は揺らして起こしていた。

 

 朝が弱いせいか、起きる気配がしないと悟った美奈は、1つ、溜め息をついてから、真守の布団に潜り込んだ。ゴソゴソと奇妙に動く布団。その原因は、顔をニヤリとさせた、塚崎 美奈の仕業だった。

 

「起きないといけないのに……もぅ…」

 

 

 そう言いながら、寝ている真守の隣に並ぶように寝転がった。

 

 

 最近の美奈はこうして、カッコいい兄の寝顔を堪能するのが流行りだ。流行りといっても、いつも同じようにしているのだが…。

 

 ニッコリした顔で、寝ている真守の顔に手を伸ばして、そして…触れてみる。

 

 男性だけれど、プニッとした感触が、美奈の人差し指を包み込んだ。フニフニと、何度も同じ行動を続けてみると、真守が「うぅん…」と、唸り始めたので、名残惜しそうな顔をして、真守の温もりがある布団から出た。

 

 

 それを見計らったかのように、同時に真守は眠い目を擦りながら、ゆっくりとだが起き上がった。

 

 

 真守が起きるまでの時間…約11分。 現在の時刻…6:53

 

 

 

 そして、美奈は先程の名残惜しそうな顔とは一変、輝くような笑顔でいつもの言葉を言った。

 

「おはよう、おにーちゃん♪」

「…んぁ、おはよう……みな。」

 

 大きいあくびをしながらも、真守は美奈に向かってそう言った。

 

 

 

 

 真守は美奈を部屋から追い出してから、着替えを始める。

 

 先にズボンを穿いてから、ワイシャツに腕を通して着て、ネクタイを締めて、ブレザーを羽織る。これで一通り制服はきおわった。というより、完了した。

 

 昨日準備しておいた鞄を持って一階に降りる。一階に降りると、既に朝食をとり終えた3人が、それぞれ準備を始めている。

 

 塚崎家の大黒柱、塚崎 敬助は、警察署に向かう準備は完了しており、今すぐにでも出発するようだ。

 

「それじゃ、行ってくる。」

『いってらっしゃい~』

 

 家族皆の声が綺麗に揃った。それを聞いていた敬助は、笑顔で家を出たのだった。

 

 

 

 それから約10分くらい後に、真守が朝食を食べ終えて、皿を洗い始めた。

 

 そのころ、塚崎家、弟に容赦のない鬼畜長女の、塚崎 麗は、息子を実験台にする、鬼畜母親の、塚崎 愛美と一緒に、白いソファーに座ってニュースを観ていた。

 

 

「へぇー。あの人あんなに金持ってたんだな…」

「れい。あなたならきっと、お金持ちになれるわよ。」

「…なんで?」

「……漫画家になりなさい。」

「…めんどくさい。やだ。」

「…えぇ~! それじゃあ、スポーツ選手にでも……」

 

 等と、変な会話をするのが日常となっている。

 

 

 7:23 [塚崎家玄関]

 

「行ってきます。」

『いってらっしゃい~。』

 

 敬助と同じような声の調子で、塚崎女性組は、またもや声を揃えて言った。

 

 真守はその声を聞いてから、敬助と同じように、家を出たのだった。

 

 

 

 

 

 7:24 [山下家一階]

 

「ん…」

 

 ボサボサで至るところについた寝癖頭が、重たそうに持ち上がった。

 

 たった今、目を醒ましたのは、山下 朝一である。

 

 

 欠伸をしながら、時計に目を向けるとが、朝一の覚醒する瞬間である。

 

「うわぁぁあああぁあ!!!!!」

 

 奇声をあげてベッドから跳ね起き、そして、とにかく急いで制服を着る。

 

 急いで制服を着たせいで、ボタンはズレて、かけ間違っている。

 

 

「母さん! 起こしてくれたっていいじゃんか!!」

 

 階段をかけ降りてリビングにつくと、椅子に座り、目の前の茶碗にあるご飯を、勢いよく食べ始めた。

 

 その光景を笑いながら見ているのは、山下 朝一の母親だ。

 

 

 常にニコニコと、笑顔を崩さない朝一の母親は、察しの通り、とても優しい。怒ることもなく、息子の成長を楽しみにしているいい母親だ。例え、テストの点数が悪くても、朝一を励まし、やる気を出させる。まさに理想の母親を持った朝一は、自分の母親が自慢だった。

 

 しかし、そんな人でも欠点はある。

 

「ゴメンね朝一。すっかり忘れてたわ。」

 

 

 

 極度の忘れんぼうなのである。

 

「次は頼むよ…母さん。」

 

 別に認知症なのではない。ただ、極度な忘れんぼうなのである。実際にある例だと、お弁当は作ったけれど、箸を忘れたと言うような、そんな感じなのである。

 

 

 その間、僅か1分で朝食をたいらげてしまった朝一は、食器を台所に置いてから、リビングを出た。

 

 リビングを出て、すぐ近くにある右隣の静かな部屋に、1つの仏壇がある。その仏壇の上には、笑顔で写真に写っている男の人が飾られている。歯をみせて笑う写真からして、とても元気だった人なのだろう。

 

 その写真を懐かしそうに見ながら、朝一は仏壇の前に敷いてある座布団に正座し、静かに手を合わせ、目を瞑り、そして、静かに呟いた。

 

「…父さん、行ってきます。」

 

 そう、囁くような細い声を発してから、朝一は鞄を持って玄関に向かい、最近新しくかってもらった靴を履いて、もう一度大きな、明くるい声で言った。

 

「行ってきます!」

 

 笑顔のまま出ていく息子に手を振り、朝一の母親…山下 葉瑠(やました はる)は、小さく呟く

 

 

「さすが、貴方の息子ね。後ろ姿や、性格まで、貴方にそっくり……」

 

 左手の薬指にはめてある、銀色のリングが、太陽に照らされて、キラリと光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 7:30 [公園]

 

 そのころ、真守が待ち合わせの場所に到着すると同時に、朝一がダッシュで滑り込んだ。

 

「っ!? …おまえ、大丈夫か?」

「おう! 全然ヘーキッ!」

 

 顔の所々に傷ができ、血がドロォっと、溢れてしまっているが、見慣れているのか、真守は何の反応もせずに、スタスタと歩き始めた。そして、朝一は真守に続くように歩く。

 

 

「なぁ、もし、人類が滅ぶって、言われたらさ。何する?」

「…いきなりどうした? さすがにアレは、あさでもマズかったか?」

「そうじゃないけどさ~。真守ならどうするのかなって…」

「う~ん。そうだなぁ…」

 

 真守は歩きながら、顎に手を当てて考え始めた。その光景を息を飲んで見守る朝一。そして、数秒後に答えがでてきた。

 

「その時しだいだからな…わからない。」

「…そうだよな!」

 

 たわいもない話。そんな感じの雰囲気を作り出せるのは、幼馴染みだからこそできるのである。

 

 

 日常と言うものは、いつ可笑しくなって、いつ狂い出すのかわからない。そんな『日常』を、どれだけ大切に過ごすかで、人生は変わっていくのだ。

 

 このとき、朝一はそう改めて思ったのだった。

 

 

 

「んじゃ、俺からも質問。あさは、死ぬ前に何をしてから死にたい?」

「…おなじような気がするけど…まぁ、いいか。」

 

 両手を頭の後ろで組んだまま歩きながら、朝一は考えてみる。そして、こちらも答えを導きだした。

 

 

「俺もわかんねぇー。」

 

 にーっとした顔をして、二人とも顔をみつめあう。そして、同時にドッと笑った。

 

「だよなー。真守も同じこと思ってたか(笑)」

「さすがだな。……やっぱさ、今を生きることが、とても大事なんだよな。」

「今日を生きてるってことは、死んじまった人たちの、生きたかった未来なんだよなー。」

「あさが、良いこと言ってる。奇跡だな。」

「俺だって、たまにはたくさん活躍したいんだよ。この鈍感主人公め…」

「鈍感はよけーだって。」

 

 

 

 笑顔が溢れる『今』を精一杯生きることの大切さを痛感するのはもう少し先の話になるのだった。

 

 

 

 




今いきることは、本当に大切なことなんですよね。

震災とかもう、それを超実感しましたね。

東北の人なので、命を大切にしたいです。



はい、朝一のかいでしたねw

うん。後書き終わるか(笑)

感想&指摘よろしくお願いします!


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鈍感男は苦労する

久々の投稿ですね…

最近ネタが無くなって、全然書けない…(ただの言い訳)



お気に入り85を越えました!! UA11.000越えました!!

ありがとうございます!!(涙)



 6月中旬にさしかかり、いつもの時間より、倍長く、部活をする権利が与えられる時期だ。それもそのはず、なんにせ、3年生からしたら、最後の『中総体』があるからである。

 

 

 野球部、サッカー部、バスケ部、テニス部、卓球部、陸上部、水泳部、剣道部、柔道部、バドミントン部等々。

 

 

 3年生からしたら、3年間の努力と想いの全てを、その大会にぶつけるのだ。しかし、この世界は残酷だ。勝つ者もいれば、もちろん負ける者も出てくる。

 

 

 

 一生懸命頑張って、努力して、挑んでも、負けないと気持ちを作っても、強者には、どうあがいたって負ける。ならば、負けるのだったらば、始めから頑張る必要がない。そう思う者もいるだろう。しかし、そう思っていても、負ければ誰だって悔しい、それが人間だからだ。

 

 本当に負けてもいいと思っているなら、始めからその部には入らないし、入ったとしても、すぐに辞めて違う部活に転部するだろう。

 

 

 

 

 3年間続けていたから、負けたくないと思えるプライドがあるのだろう。俺はあくまでもそう思っている。

 

 

 

 

 さて、熱く語ってしまったが、もちろん、部延長をするのは運動部だけとは限らない。

 

 俺が所属している演劇部も、9月に行われる『演劇大会』に向けて、練習を続けているのだ。

 

 

「フハハハッ!! それでもお前は勇者か?」

「……ふっ、あぁ! 勇者だ!」

 

 勇者役の先輩が、右腰辺りにある剣を、勢いよく抜き取り、剣先を魔王役の先輩に向けた。

 

 

 

 

 ……だが、第3者の大声により、劇の続きが断ち切られてしまう。

 

「はいストォーープッ!! 勇者!! お前は町の勇者なのだろう? 何で魔王のあつに圧されているんだよっ!!?」

「す、すまん…」

 

 勇者役の先輩は、申し訳なさそうに頭を掻いた。

 

 

 この劇、『ナルシスト勇者と泣き虫魔王』の総合監督──演芸 貴意(えんげ きい)先輩。あの生徒会の男子二人組の1人、モブキャラだった人だ。

 

 貴意先輩は、生徒会副会長であり、演劇部の部長、またのなを『鬼畜監督』だ。

 

 

「確かにナルシストな勇者は難しい…だがしかーし!! 何のために今まで苦痛トレーニングをやってきたと思っている!」

 

 鬼監督が言う、自称【苦痛トレーニング】とは、鬼畜監督…貴意先輩が指定した性格を、1週間、毎日演じる。と言う内容だ。

 

 もちろん、学校だけではない。メンドクサイことに家でも演じることになっている。

 

 

 そんなのサボればいいじゃんか。と、思うかも知れない。が、貴意先輩はなみの人ではない。演技を一通り観ただけで、わかってしまうのである。そうなるともう、ただの変態監督だ。

 

 

「さぁ、やってみろ! お前ならできるぅう!!」

 

 あぁ、熱血モードに入ったよ。この人。

 

 いつもはもう少し大人しい生徒会副会長だが、演劇の時だけは一味も二味も違う。1回スイッチが入ってしまうと、熱血教師とほぼ同じレベルになるぼとに熱くなってしまう。まぁ、ある人が来ると、熱血モードが一瞬で解除するんだけどな。温度差が激しい副会長兼部長である。

 

 

 

「……ふっ、あぁ! 勇者だ!」

 

 文字をみたら、何も変わっていないようにみえるが、実際、何も変わっていない。俺の耳がおかしくなければ、先程と同じように聞こえるが、監督さんはなんと言うのか期待だ。

 

「どーーーしたっ勇者!? さっきと何も変わっていn「真守くんと貴意くん居る?」

 

 

 ナルシスト勇者の台詞が変わっていないことを指摘しようとした貴意先輩のスイッチが、今 、一瞬にしてOFFに切り替わった。

 

「おう、オレと真守ならここにいるぞ?」

 

 

 爽やかな笑顔を萌那さんに向けながら、右手をあげる貴意先輩。先程とは一変して、今は爽やか系男子に戻っている。

 

 

 ここで察した人も多いかもしれない。そう、貴意先輩は萌那さんが好きなのである。なので、ついさっき言った、ある人とは、学校1モテる内井 萌那さんのことである。

 

「よかった、よかった。ちょうど今から、生徒会室で色々と話し合うことになってね、呼びにきたんだけど。今、大丈夫だった?」

 

 首を傾げて訊いてくる萌那さんを直視した貴意先輩は、爽やか笑顔のまま「あぁ、勿論だよ。内井さんのためなら今すぐにでも。」と言った。

 

 

 

 前言撤回。少し大人しいと言ったが、大人しいんじゃなくて、性格が大幅に変わる。の方が正しかったな。間違えた、間違えた。

 

 

「真守くんの方は?」

 

 一人で苦笑いを浮かべて貴意先輩を見ていた俺に、萌那さんは貴意先輩と同じことを訊いてきたので、俺も「大丈夫です。」とだけ答えておいた。いや、さすがにねぇ? ここで馴れ馴れしく萌那さんと会話すると、ある人の機嫌がちょっと悪くなるのでね……ね。

 

 

「よかったー。それじゃあ、いこ?」

 

 萌那さんの満面の笑みを間近で見た貴意先輩は、頬を赤く染め上げて

 

 

「そ、そうだな。行くぞ真守。……内井さん。」

 

 

 そう言いながらも、口許は何かを堪えるかのように固く結んでいるが、ぷるぷると震えて限界が近そうだったし、ぷるぷしているのは唇だけではなく、肩も微かに震えていた。……まあ、一言で言うと、貴意先輩は萌那さんを見て悶えているのだろう。

 

 

 そんな萌那さんの事が大好きな貴意先輩の後に続いて歩くと、俺の隣に萌那さんが続いて歩いてきた。

 

「そういえば真守くん、部活の調子はどう?」

「えっ、と。まぁ、いい感じに出来上がっていると思います…よ。」

 

 

 萌那さーん。何故それを俺に、訊いたんですかね!? 目の前に監督が居ますよね? わかってて言ってるんですかね!?

 

 

 ホラ、萌那さんが俺にはなしかけてきたから、貴意先輩、ムッとした顔で俺のこと睨んでますよ? ねぇ?

 

 そんな俺の心を読めるはずもなく、萌那さんは容赦なく、俺に話しかけてきた。

 

「へぇー。因みに真守くんは何の役をするの?」

「えーと、勇者のお供をする魔法使いです。」

「ほほぉ、真守くんは魔法使いか、いい配置じゃないか。」

「あ、アザーす。」

「どんな内容なの?」

 

 くっ、なんて手強い相手だ…流石よっシーの姉である。話の終わりがみえてこないぞ…このままだと、鬼畜監督が……

 

「内容は言っちゃダメだよ真守。企業秘密だからね。」

 

 後ろを向いて、かっこよく右目でウインクし、右手の人差し指を立てて口許に持っていくポーズ。いわゆる『内緒っ♪』ってやつを、男である貴意先輩がやった。

 

 

 貴意先輩は、フツーにしていれば格好いいしイケメンだ。だけども、色々と残念な人なのである。例えば、性格がね。と、前に杏さんが言っていた様な気がした。

 

 俺の印象もそんな感じである。普段はいい先輩をしているけど、萌那さんの前とかでカッコつけている先輩をみると、正直に言うけど苦笑いしかできない。何て言うか…こう、痛いのだ。

 

 

 普段は爽やか系男子だが、好きな人の前になると、ヘタレひ弱残念男子、なおかつ演劇になると熱血漢になる得点つき。ハァ、まさに残念男子だ(笑)。と、杏さんが軽蔑したような目で言っていたのを思い出した。なんか、とことん可哀想な先輩である。

 

 なんだかんだで生徒会室に着くと、俺はある用事を思い出した。

 

 

 

 ヤバい……陽乃ちゃんと、月乃ちゃんに演技を教えるんだった。

 

 生徒会室のドアに手を置いたまま、固まる。背中から嫌な汗がつたり、手からも汗が吹き出てきた。不味い。

 

 

 

 

 約束を交わしたときに、陽乃ちゃんがこう言っていた。

 

 

「センパイ。私達はあの変な監督さんからスカウトを受けて、わざわざセンパイのいる演劇部に転部してきました。なので、色々と教えてください。センパイなら断りませんよね? ね? あと、これは別にセンパイと一緒に練習がしたいんじゃなくて、あくまでも…『あ・く・ま・で・も』私達のためでから、ソコのところは勘違いしないでくださいよ。良いですか?」

 

 

 そして最後に、俺の胸ぐらを掴んでから

 

「もしも来なかったり、一秒でも遅れてきたときには………センパイに酷いことしますから。」

 

 

 

 

 その時の陽乃ちゃんの顔は、悪魔にとりつかれているのではないかと疑ったほど、ヤバい顔をしていた。

 

 

 不味い。

 

 体中からどっと汗が出てきて、止まりそうにない。息もどんどん苦しくなっていて、自分の精神状態が危うい事は理解できた。

 

 

 さて、どうしたものか……

 

 陽乃ちゃんの威圧感に脳が殺られて、ネガティブ思考になってきているうえに、頭が回らなくなっている。更に目眩までしてきた……ヤバい、マジでどうしよう。陽乃ちゃんのあの顔はマジの顔だったからな…。下手したら死ぬぞ。

 

 

 未来の俺を想像してみる。陽乃ちゃんに何かを殺られて、心と体がボロボロになり、服は所々張り裂け、そして、周りに誰もいない、暗く、冷たい地面で俺は独り、ひっそりと干からびて死んでいく。…………コワッ!?

 

 

「真守くん? どうしたの、席に着きなよ?」

 

 萌那さんにの声が聴こえて、ハッとする。俺は、現実に引き戻された。

 

 顔をあげると、既に皆が各自、自分の席に座って、生徒会室に置いてある青いファイルから、今日の内容が細かく書かれてあるプリントを出して待機していた。

 

 

「あっ、はい。今……座ります。」

 

 首を横に振って悪い考えを頭から無理やり追い払い、俺は自分の席に静かに座った。

 

 

 俺が席に着いたことを確認してから、会長の萌那さんは、会議を進めるために、ホワイトボードの目の前に立ち、号令をかけた。

 

「起立っ、これから、今年の中総体に向けての話し合いを始めます。お願いしますっ!」

『お願いします!』

「着席っ!」

 

 萌那さんの明るい声が、左耳から入ってきて、右耳から流れてしまって、話に集中することができなかった。俺の頭の中では、『死んだ』の3文字だけが、脳にこびりついている。なので、まあ、ほとんど聞いていない。

 

 

「それでは、意見を出してください。今日は、これをまとめたら部活に戻ってもいいので、早く部活に行きたい人は、パッぱと意見を出しましょう!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺の脳ミソが覚醒した。

 

 それと同時に、俺は挙手をする。

 

「ハイッ、真守くん。」

 

 ニッコリと笑っている萌那さんが一瞬天使に見えた。それほどに萌那さんはいい笑顔をしていたのである。

 

「はい。今年の中総体は……」

 

 

 そのあとは、俺の頭をフル回転させて、たくさんの意見をとにかく出しまくった。一刻も早く陽乃ちゃんと月乃ちゃんの約束を守るために。

 

 

 そして……

 

「ハイッ! 真守くんの頑張りのお陰で、約16分で終わることができました。みんなー、真守くんに感謝するんだよ? ハイ、それでは今日はかいさーん!」

 

 

 ハァ、ハァ、ハァ。なんとか、5時には間に合った。時計を確認すると、現在の時刻は4時38分。走って部室まで行っても約1分。余裕で間に合うことができる。

 

「ふぅー。」

 

 一安心して、たまっていた不安を、息を吐くと同時に一緒に出す。よかった。陽乃ちゃん、なにしだすか解んないからな。美帆さんみたいに…。

 

 

 そんなことを思っていると、俺の所に萌那さんが近寄ってきた。

 

「真守くん、オツカレサマー。」

 

 俺の髪の毛をぐしゃぐしゃにして萌那さんはそう言った。

 

 

「相当急いでたんだね。メチャクチャ顔が必死だったよ? なんか用でもあったのかな?」

 

 

 流石は萌那さん。観察力が鋭いですね。この人はこーゆー所とか、優しいところとかがあるのが、皆からの人気がある秘訣なのではないかと、今、俺は思った。

 

「ちょっと後輩の子と約束を…」

「……………へぇー。」

 

 少し口を尖らせて、ムッとした表情をする萌那さん。何がいけなかったのか俺には解らないが、気のせいではない限り、萌那さんは何かに少し怒っているように見える。

 

 

 何となく萌那さんを見ていると、萌那さんは同じ表情のまま、俺の頬を思いっきり引っ張ってきた。……痛い。

 

「ふーんだ。真守くん何て、約束破ってお仕置きされればいいんだ。」

「なんかひどいっひゅね。」

「…ベーだ。」

 

 未だに頬を引っ張られているため、日本語が少し変になる。………ってか、萌那さん、力入れすぎじゃないですかね?そろそろ痛くて涙が出ちゃうんですけど……

 

「ハァー。ホントに君は、鈍感なんだから。」

 

 

 深い、深い溜め息を大袈裟について、萌那さんは呆れたような顔で俺を見てきた。

 

「俺…なんか悪いことしましたかね?」

 

 赤くなって、少しヒリヒリする頬を右手で擦りながら、俺は萌那さんを見上げた。俺は現在、自分の席に座っているため、立っている萌那さんを見るためには、見上げるしかないのである。

 

 

 そんな俺と数秒ぐらい視線をぶつけ合うと、萌那さんは、もう一度深い溜め息を吐いてから、俺の髪の毛を、先程とは違って、今度は丁寧に撫でてくれた。

 

「やっぱり君には、直接伝えるしかないみたいだね。でも、今の私にはまだ難しいんだ。だから…もう少しこの関係で待っててくれるかな?」

 

 

 優しい口調で、可愛い笑顔で、萌那さんは俺にそう、囁くような細い声で、言った。

 

 何のことか全然解らない俺は、萌那さんの笑顔につられて微笑みながら、返事を返した。

 

 

「よく解らないですけど…俺でよければ、いつでも待ちますよ?」

 

 そう言うと、萌那さんは、可愛い笑顔から、弾けたような、はにかんだ元気一杯の、まるで、小さな子供のように、無邪気な笑顔で頷き、言った。

 

「ありがとう!」

 

 

 その時の萌那さんの笑顔は、俺の目と心に、しっかりと焼き付いたのだった。

 

 

 




むぅ、すこし告白っぽかったなー。

まぁいいか(笑)。

最近『このすば』にハマり、小説を読みまくっている作者…



茜「クズでダメな作者だな。」 グサッ

陽乃「まったくです。この〇〇〇作者…」グサッ!

ひかる「もう、やめちゃいなよ♪」グサグサッ!!


ヒデーコイツら…出番無くしてやる………

これからも頑張りますので、よろしくお願いします!

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鈍感男と双子の想い

遅くなりました。

いいわけは…しません。

もぅ、スランプ状態で、ヤバいです

あれ、言い訳して…

さぁ、今回は双子ちゃんがメインです!

どーぞ!!


「センパイ。0.4秒遅刻です。」

「うっ、……べつにそれぐらいなら許してくれるよな?」

「ダメに決まってるじゃないですか。 って、言いたいところですが、今日は、生徒会の活動が途中で入ってしまったので、《今日だけ》は許してあげましょう。」

「うん。まぁ、ありがとう…。」

 

 何なんだ…コイツ……初めて会ったときや、屋上での時との態度が全然違いすぎるんだけど……なんで?

 

 

 今日の部活は、この双子ちゃんの練習に付き合う。という約束は、まぁ、先程の会話通り合わなかった。

 

 理由はとても明確である。ただ単に生徒会室で萌那さんと色々話していたら、時間がいつの間にか過ぎて、残り1分ってところで気づいて、全力ダッシュしてきたのだけれど、間に合わなかった。と言うオチだ。

 

 

 自分でも、俺が悪いと言うことはわかっている。自業自得なのだ。しかし…、何でこんなにも陽乃ちゃんが冷たいのか解らない。

 

「ホラ、さっさと演技のコツとか教えてくださいよセンパイ。さもないと殴りますよ?」

「おねーちゃん……流石に…言い…過ぎ」

 

 そう言って月乃ちゃんは、陽乃ちゃんの頭をポンッと、優しく叩いた。

 

「イタッ。」

「いや、どうみても痛くなかっただろ、今の。」

 

 俺が苦笑しながら言ってみると、陽乃ちゃんはムスッとした顔になり、地面に穴があくんじゃないかって思うくらい、グリグリと陽乃ちゃんの靴で俺の足を踏んできた。

 

 

 俺、一応先輩だよね? 何でこんなことになってんの?

 

 そんなことを思いながら、踏まれている足を動かそうとするが、力が強いあまりにびくともしない。

 

 

 俺の足を踏みつけている張本人の陽乃ちゃんの目が……俺のことを軽蔑してるような、馬鹿にしてるような、そんな感じで視てきて、とてつもなく怖い。うん。姉貴がキレる寸前の時の顔とにていて、とても怖い。

 

 

 そんなことを思いっていると、腕を組ながら俺を見上げる陽乃ちゃんが、冷たい目のまま俺に向かって

 

「これは、センパイに触りたくてやっているのではなく、ただのストレス発散です。なので気にしないでくだ………さいっ!!」

「いっつぅ!?」

 

 先程よりも倍の勢いをつけて、陽乃ちゃんは俺の足を踏みつけてきた。

 

 

 あぁ、ヤバい、痛すぎて感覚が無くなってきたんだけど…。

 

 そこでやっと、俺の足の現状に気づいた月乃ちゃんが、驚いた顔をしたあとに、慌てて俺の足を思いっきり踏んでくる陽乃ちゃんを止めに入った。

 

 

「おねーちゃん…!? なに…やってるの!? まもる先輩が、痛そう…だよっ!?」

 

 双子の姉を少し強く押して、俺と距離をとらせる月乃ちゃんに心から感謝した。

 

 俺の右足は、解放されたが、ジンジンと痛みが右足の甲に広がって、なんとも言えないような感覚に襲われる。うぅ、俺なんか悪いことしたかな? イタタ……

 

 

 そんな俺の様子を観ていたのか、月乃ちゃんは俺の前に来て頭を下げた。

 

「ごめん……なさい。おねーちゃんが、酷いことを…して…。」

「えっ、あ、ううん。俺のせいだと思うし、別にいいよ。」

「………」

 

 月乃ちゃんは頭をあげるが、その顔は少し悲しそうだった。そして、陽乃ちゃんの方は、黙って俯いたままだった。

 

 

 そんな双子を目の前にしている俺は、つい、クスッと笑ってしまった。俺が笑ったことに驚いた二人は同時に俺を見る。そして、そんな息ぴったりな双子の姉妹の頭を、少し乱暴に撫でた。

 

「気にするな。これでも一応先輩なんだ。後輩を大切にするのは普通だろ?」

 

 笑顔で二人に言うと、陽乃ちゃんは俺の手を振り払って、ズカズカと近づいてきた。

 

「おねーちゃん…!?」

 

 また何かするのではと思った月乃ちゃんは、焦りと不安が混じったような声で陽乃ちゃんを呼んだ。が、その心配は、陽乃ちゃんの一言で消え去った。

 

「センパイは、ズルいです…………………………バカ。」

 

 

 台詞的には、結構心にグサリと刺さるモノが来るけれど、その言葉とは裏腹に、陽乃ちゃんの顔は笑顔で満ちていた。

 

「でもセンパイ。調子に乗らないでくださいよ。」

「いや、乗らないから。ってか、何に対して言ってるんだよ?」

「それは…私がセンパイのことがすk「まもる先輩!」

「うおっ!?」

 

 月乃ちゃんが、陽乃ちゃんの言葉を遮るように、俺の右腕に抱きついてきた。するとどうだろう、右腕から何か、柔らかいモノがフニフニと当たって、俺の理性を削ぎ落としにきた。

 

「あぁっ!? ……センパイ、やっぱり殺します。」

「えぇ!?」

 

 

 そのあとは、貴意先輩に見つかって、三人して怒られたけれど、怒られた後に、楽しく演技を教えることができてよかった。けれど、やはり陽乃ちゃんの態度は変わることもなかった。…いや、少しは変わったかな? なんか柔らかくなったと言うか…まぁ、そう言うことにしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陽乃side

 

「あああぁあぁぁぁ!!!」

 

 私は自分の部屋に入ると同時に、叫びながらベッドにダイブした。そうでもしないと、恥ずかしさが込み上げてきて倒れてしまうからだ。

 

「何で素直になれないのー!! 私のバカァーーー!!」

 

 猫の肉きゅうをイメージして作った、買いたてホヤホヤの新品枕に顔を突っ伏して、とにかく叫んでみた。

 

 

「ううぅ…………センパイ…。」

 

 センパイの顔を思い出しながら、先ほど撫でられた自分の髪の毛を弄ってみる。優しい瞳が私をとらえて、笑顔で頭を撫で続けてくれるセンパイをもう一度思い出すと、顔が沸騰するかと思うくらい赤面した。いや、もう既に沸騰していると思う。

 

 私は枕に顔を埋めながら、初めてセンパイと会った時のことを思い出した。

 

 

 

 

 センパイと初めてあったときの第一印象は、チョロそうなイケメンだった。

 

 自分で言うのもなんだけど、私はいい顔をしている方だと思う。そうおもえる一番の理由は、たくさん告白されるからだ。つい最近だって、月乃と一緒に屋上に呼び出されて告白されたし、昨日だって、隣の席の男の子が筆箱を忘れたって言ってたから、私のペンを笑顔で貸して上げだら、顔を真っ赤にさせて俯いたし。しかもその日の放課後に告白されたし…だから、顔は悪くない方だと思う。

 

 

 そして、私の最近のブームは、男の子を落とすことでもある。

 

 これを聞いたら「うわぁ…」って思うかもしれない。でもね、振った男の子たちには申し訳ないけど、これが意外と楽しいんだよ!?

 

 

 なんて言うんだろー…あっ、そうだ。あれだよ、アレ。ラスボスを倒す感じ。

 

 ホラ、よくゲームとかでさ、攻略がほぼ不可能な、世間で言う無理ゲー?っていうヤツがあるじゃない? それとも同じような感覚なの。

 

 スポーツ系男子だったり、大人しくてクールな人、紳士的でモテる人だったり、彼女作らないって威張ってたヤンチャ王子だったり、落としたときの達成感はスゴく気持ちいいんだよ?

 

 まぁ、ビッチな性格なのは既に自覚済み。でも、ちゃんと友達もいるよ。最近は皆に師匠って言われるし…。

 

 

 とまぁ、こんな風に過ごしてきてんだけれど、あの日、センパイと屋上で会った日に、私に異変が起きたんだ。

 

 はじめの方は皆と同じように接してたんだけど、今日と同じように頭を撫でて貰った。そしたら、今まで余裕だった気持ちが、急に苦しくなって、普通の人とは、なにかが違うって、思った。

 

 そして、センパイの近くにいるだけで胸がドキドキして、煩くて、落ち着かなくて、最終的には素直になれなくて、ツンツンしたまんまで…それで、改めて実感したんだ。

 

 

 

 あ~、これが『好き』って気持ちなんだなー。って。

 

 そう思ったあとの行動は早かったな~。今の性格を知ったら、絶対に嫌われちゃうと思ったし、ライバルは数多くいる。もちろん、月乃もライバルに含まれてるし。とにかく変わらなきゃって、思った。

 

 振った男の子たちに頭を下げて心から謝罪もした。今思うと、とてもひどいことしたなって、深く反省してる。好きな人に勇気を振り絞って告白するのは、ホントはとても大変で、恐いのに、私はそれを簡単に踏み潰した。だから、心から謝罪したのだ。

 

 

 

「もう、告白しかないのかなぁ…」

 

 顔を突っ伏したままそう呟いてみた。その声は、誰にも届かないまま、私の部屋に響き、私は静かに目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月乃side

 

「おねーちゃんは、まもる先輩…の事が…………好き、なんだよね…」

 

 私は椅子に座りながら、今までのおねーちゃんの行動を思い出していた。

 

 

 おねーちゃんは、とても不器用だ。本当に好きな人ができると、突然態度が変わって、冷たくなる。冷たくされている男の子は、おねーちゃんの態度の変化に驚いて、周りとの温度差があると気づき、そして、『嫌われている』と勘違いされて、呆気なくおねーちゃんの恋が終わってしまう。と言うパターンが、何回かあった。

 

 普段のおねーちゃんは、男女構わず笑顔で話しかけて、でも、変なことを考えていたりしてるけど、やっぱりいい人で。

 

 

 そんなおねーちゃんと好きな人が一緒になることは、今回が初めてで、正直困っている。

 

 

 私は、あんまり自分を表に出せなくて、よく人に誤解を生ませてしまう。最近は、クラスに慣れてきたけら、だんだんと話すことが出来るようになってきたけど、始めのほうなんて、話しかけられも、あたふたしちゃって、会話が続かない時だってあった。

 

 そんな引っ込み思案の私の初恋は、おねーちゃんと一緒なのである。

 

 

 しかも、おねーちゃんだけではないのだ。まもる先輩は数多くの人を虜にする能力を持っている。だから、ライバルはおねーちゃんだけではないのだ。

 

「うぅ…どうしたら………いいのかな。」

 

 机に頭を乗せて、一人で悩む。私、どうしてあの人を好きになったんだろう…

 

 

 そんなことを思うと、ふと、今日の出来事を思い出した。迷惑をかけていたのに、笑顔で許してくれて、心が広いな~。って思って、笑顔が素敵で、でも鈍感で。良いとこを見つけていくたんびに、こんな一面もあるんだな~。って。あっ、私

 

 

 

…良いところを見つけていくたんびに、どんどん好きになっていたんだ。

 

……恋って、嬉しいけど、苦しくもあるんだね。スゴくもどかしいよ。

 

 

「おねーちゃんには負けないよ。」

 

 私は起き上がって、笑顔でそう呟いてみたのだった。

 

 

 

 





修学旅行が近いな、投稿できるかな…

目標は50話で完結!!

これからも頑張っていくので

指摘&感想よろしくお願いします!!


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お弁当と言う名の鈍器 by鈍感男

何か後半シリアスな展開になっちゃった(笑)

てへペロッ♪

優「流石に私でも引いたな…」


グサッ…

それではどうぞ!!



「……これは…何だ?」

 

 ただいま真守は、命の危機に直面している。

 

 鈍感男こと、塚崎 真守は、目の前の机に置かれてある、どす黒い色をした、『物体』を指差し、その物体を作ったであろう、葵 優に訊いてみた。

 

「冗談はよしてよ。どこからどうみても、お弁当だよ!」

 

 純粋な優の笑顔が、俺の心をギュッと、締め付けた。

 

 

 見間違いだと、思った俺は、微かな希望を持って、目を擦った。……が、もちろん変わらない。

 

 可愛いらしいピンクの花柄の包みからは、得たいの知れないオーラを放っている、多分…手作り弁当なのであろう物が、静かに置いてある。青いケースに入っているものを、目を凝らして見てみると、定番の卵焼き?…が、輝く黄金色を失い、黒く、なおかつ、ぐちゃぐちゃになった状態で入っていった。

 

──しかし、悲劇は卵焼きだけではすまなかったのだ。

 

 

 ウインナーは、形はまずまずだが、紫色に変色している。…いや、マジで。

 

 

「あの…ウインナーって、赤くないっけか?」

 

 確認のために、ニコニコしている優に訊いてみた。すると、ニコニコした顔のまま、俺に絶望を告げる。

 

「赤色だと定番だから、那須の汁に浸してみたんだ!」

 

 

 嬉しそうに言われた。太陽に負けないくらいの、輝く笑顔で、そう言われたら、みんなはなんて返事する? 教えてほしい。俺は、今まさに、困っている。俺は何て返せばいいんだ? あと、ウインナーを那須の汁に浸すって美味しいの? 俺、初めて聞いたぜ。ウインナーを那須の汁に浸すってこと。

 

 

 

…なぜ、こうなったのか、俺にはどうしてもわからない。

 

 

 

 

 

 

─あっ、思い当たるのが、1つだけあった。ってか思い出した。

 

 それを思い出した俺は、深い溜め息を吐いて、自分の顔を掌で覆った。

 

 

 それは、昨日の放課後に遡る。

 

 

 

 

 

「ねぇ、真守くん。真守くんって、いつも誰がお弁当作ってるの?」

 

 短学活が終わり、部活に向かおうとしたとき、突如、優に呼び止められてそう言われた。

 

 俺は、荷物を鞄に詰めながら、優に返事を返した。

 

「大抵は母さんだけど、たまに朝早く起きたときは、俺が家族全員分つくるけどな。」

「へぇー! 真守くんって、料理もできるんだね…そうだ! 明日、私の料理を食べてみてくれる? 悪かったところがあったら、ソコをなおすから。ね?」

 

 俺はこのとき、母さんに頼まれた仕事を丁度思い出して、優の言葉を流してしまったのだ。

 

「あぁ、いいよ。」

 

 この一言が、俺の人生を変えるとは知らずに───

 

 

 

 

 

 

──あぁ、死んだな。

 

 昨日の自分を殴りたくて仕方がない。なぜあのとき俺は、聞き流してしまったのだろう…あはは、あははは……もう一度言わせてほしい。

 

 

──死んだな。

 

 絶望の淵にいる俺に、優しい天使の手がさしのべられてきた。

 

「なぁ、教室で食べるのもあれだし、屋上でくぉーぜ?」

 

 あさだった。

 

 

 苦笑いを浮かべているあさは、自分の弁当箱を大事そうに両手で持ち、教室のドア付近に移動した。

 

 よっシーはと言うと、俺の肩に無言でポンッと手を置いてから首を左右に振ってから、あさに続いて教室を出た。

 

 

…よっシー、顔、死んでたな。

 

「諦めろ」とでも言わんばかりに、首を振り、口は固く結ばれ、目はいつもの元気さを失い。死んだ魚のようになっていた。

 

 そういえば、優とよっシーは小学校の頃からずっと同じクラスらしく、仲良く話しているのもよく見かける。でも、お弁当に関しては、何も話さなかったなー。あっ、でも。1回だけ、屋上で弁当の話題が出たときに話してたなー。確か。

 

『優の飯はな、食わない方が良いぞ。』

『えっ、何で?』

『葵さん、めちゃくちゃ料理上手そうだけど?』

『アイツの飯食ったら、1週間は何も食べたくなくなるぞ? まぁ、それほどヤバイんだ。』

 

 1週間かぁー。俺生きてるかなー。

 

 

 そんな失礼なことを考えていると、優は俺の服の袖をちょんちょんと引っ張っり、俺を見ながら「行こう!」って言ってきた。

 

 スゴく可愛らしい笑顔なのに、今の俺からしたら悪魔の笑顔に見えた。

 

 

「お、おう。さっさと終わらせるか。」

「むぅ、終わらせるかって、どういう事かな、真守くん?」

「いやだなー。さっさと食べようってことだよ。」

 

 今にも涙が出そうなのに、声が震えて仕方ない。

 

 そんな俺をジト目で見つめてくる優の腕を掴んで教室を出た。教室から出るときに茜の冷たいような視線が背中にビシバシ刺さったが、気づかないフリをした。

 

 

 

 昼休みの賑やかな廊下を二人で歩いていると、優は何か不安そうな声で話しかけてきた。

 

「真守くんってさ、その、料理ができる人と、できない人だと、どっちの方が好み?」

 

 チラリと優の方を見ると、お弁当が入っている包みをギュッと握り締めて、俯きながら歩いていた。先程の会話からして、優は自分が料理することが苦手なのだと自覚しているらしい。

 

「ん~。」

 

 廊下の天井を見ながら考えていると、ふと、優が歩くのを止めて、その場に立ち止まった。

 

「優? どうした?」

「やっぱり…料理できる人の方がいいよね。」

「優?」

「ごめんね、真守くん、もぅ…食べなくていいよ。こんな不味いお弁当食べたらお腹壊すし、あはは、ごめんね。…おいしく…ないよね。」

 

 今にも泣き出しそうな、か弱い震えた声で、優は小さく呟いた。肩も震え、手に持っているお弁当を強く握りすぎて、手が白くなっている。

 

「捨ててくる。」

「はぁ、なにいってるんだ、不味いわけ無いだろ。」

「嘘なんてつかなくていいよ!! 不味いことぐらい自分が一番知ってるよ!!!」

 

 俺に向かって優は叫んだ。目にはたくさんの涙を浮かべていて、大粒の涙が真っ赤な頬を伝って、静かに冷たい廊下の床に落ちた。

 

 優がいきなり大声で叫んだからなのか、周りにいた人たちが急に静かになって、俺と優の事をまじまじと見ていた。

 

 

 俺はひとまず優の手首を握って、一通りのない階段の踊り場に移動した。あのままだと周りの視線が痛いし、何より、優が泣いている所を人前に見せたくない。あぁ、俺なにやってんだよ。女の子泣かせるとか最低だな…。

 

 

 

 誰もいないことを確認してから、俺はひとまず息を吐いた。そうしてから、優の頭を優しく撫でながら、俺の想いを伝える。

 

 

「確かに俺は、優の料理は上手いとは思っていない。」

 

 俺がそう言うと、更に優の目からな涙が溢れた。ストレートに『不味い』と言われたら、誰だってそうなるに決まっている。俺だってそうだ。でも…

 

 

 

「味とか、見た目とか、そんなのは関係ない。料理に込められてる想いが、俺は一番大切だと思う。だから…」

 

 優が握っているお弁当を俺は貰うと、包みを開き弁当の蓋をあけて、箸を取りだし、先ほど見た紫色のウインナーを箸でつまみ上げると、そのままパクりと口に含んだ。

 

「あっ、だっ、ダメだよ真守くんっ!! お腹壊しちゃうよ!!!」

 

 優が驚いて俺からお弁当を奪おうとするが、俺は優がお弁当を奪おうとするのを避けながら、モグモグと食べ続けた。そしてとうとう俺は、優の手作りお弁当を完食した。

 

 

「確かに、見た目も良いと言えないし、味も少し変だ。でも、それ以上に、優の想いがたくさん詰まってて美味しく感じた。そして、何よりも……嬉しくなった。俺のために弁当を作ってくれたことが、何よりも嬉しかった。」

 

 

 笑顔で言って魅せると、今度は涙でぐしゃぐしゃになった顔で、嬉し泣きをした。目と鼻が真っ赤になって、鼻をすすって、声が漏れて、それでも優は、嬉しそうだった。

 

「真守くんのっ…ひっく、ばか……グスッ…」

「また、作ってくれよな。優。」

 

 優の頬に伝ってきた涙を、俺の人差し指ですくうと、今までにないくらい、輝かしいいい笑顔で、優は頷いた。

 

 

「うんっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~オマケ~

 

 そのあと、優が泣き止むまでその場にとどまっていたが、俺はなにかを忘れているような気がしてならなかった。

 

 ん~。なんだっけかな。忘れちゃったわ。

 

 

 

 一人で思い出そうとしていたら、泣き止んだ優が俺に抱きついてきた。突然の行動に頭がついていけず、数秒間黙ってしまったが、現状を理解してきた俺は、顔に赤みが差してきた上に、俺の脳みそが、危険信号を送ってきた。

 

「ちょっ、な、ななななな、何やってんだよ優ッ!?」

「ん、もう少しこうさせて。」

 

 俺の胸に頬をスリスリさせてくる優から、とても甘い匂いがしてきたり、女の子特有のなんか、その、柔らかい肌がフニフニしてて、何か…ヤバい。心臓がめっちゃバグバクしてて煩いし。なんだよこの状況!?

 

 

「ふふっ、真守くん…ありがとう。」

 

 そう言うと、優は俺から離れて笑顔で言った。

 

「これから、もっとたくさん料理の練習して、真守くんのハートを奪っちゃっうからね!」

 

 

 手を銃の形にして俺に向ける優は、とても楽しそうだった。その雰囲気につられて、俺は笑顔で挑発する。

 

「奪ってみろよ、俺のハート。まぁ、その前に基礎からやった方がいい気がするけどな。」

「なっ、なにをー!」

 

 俺と優は、一緒に廊下を歩いて教室に向かった。…あれ、やっぱり何か忘れているような気がするけど……まぁ、いっか!

 

 

 

 

 

 

 

 そのあと、屋上に来なかった件について、あさとよっシーが問い詰めてきたのは、また、別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何でこうなった…

最初の笑いはどこいった…


好きな人にお弁当を渡すのって勇気いりますよねー。

まぁ、作者はお弁当作るなら手作りではなく冷凍食品をたくさん詰めますがね…(泣)

指摘&感想よろしくお願いします!!


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鈍感と夏風邪

そのまんまです(笑)

真守は夏風邪でダウンします。




あと、修学旅行楽しかったですよ!!

渋谷で迷子になった(笑)




あと、お気に入り100になってました。マジで泣きました。ありがとうございます!!!




「おにーちゃんが熱出すなんて珍しいね。」

「確かにね、馬鹿は風邪引かないって言うのにね。」

「おい姉…貴、ちゃっかり馬鹿って、言うな。」

 

 つい最近7月になったばかり。俺は夏風邪を引いてしまった。

 

 

 朝、いつものように、みなに起こされたが、起きようにも起きれなくて、体が異常にダルくて、熱を測ったら、38.7度もあった。そのお陰で俺は今日、学校に行くことができない。

 

 

 母さんは心配そうに俺の様子をみてから、何故だか笑顔でそのまま学校に行った。何かをたくるんでいることは、顔をみて気づいた。何が起こるかわからないから、要注意しておかないとな。

 

 

 

 本格的に夏に近づいてくる月が7月である。ギラギラと輝きを増していく太陽の光が、じめじめとした蒸し暑い部屋に差し掛かり、寝巻きと俺が横たわっているベッドが、汗でベトベトになってしまう。

 

 

 今、俺の部屋には兄大好き過ぎる妹美奈(ブラコン)と、俺にだけ毒舌過ぎる男子系女子の姉貴、麗がいる。

 

「へっ、俺よりテスト…の順位、低い……くせ、に…」

「よし、真守じっとしてろ、今すぐ殺す。」

「まぁまぁ、おねーちゃん落ち着こ?」

 

 俺が小声でボソッと呟いたのにも関わらず、漏らすことなく聞き取った地獄耳の姉貴は、顔を笑顔にしながら、右手をグーにしている。グーにしている右手と、額からは青筋が見えていて、周りのオーラから考えると、本気で俺を殺すつもりだったらしい。

 

 

 もしここに、みなが居なかったと思うと、背筋が一気に凍りついた。みな、ありがとう。お兄ちゃんは心から感謝するぞ。

 

 そんな事をしていると、姉貴は俺の部屋から出ていった。

 

「ふん、せいぜい苦しんで、そのまま死んでしまえばいいのに。」

「おい…皮肉を言うために、わざわざ……俺の部屋に、来たのかよ…」

 

 姉貴に向かって突っ込むが、いつもの勢いはなく、弱々しい声になってしまった。何か色々と屈辱…

 

「それじゃあおにーちゃん、私、学校に行くから。遅くなるけど我慢して待っててね?」

「う、うん。言ってらっしゃい。」

 

 涙目になって俺に渋々手を振るみなは、姉貴と違って本気で俺の事を心配しているようだった。お兄ちゃん、2回目の感動だよ。みなの優しさに涙が出そうだったぜ…。

 

 

 

 

 改めて部屋で一人になると、とても静かだった。

 

 暑さしのぎの扇風機の音と、時計のカチ、カチ、カチとなる秒針の音、道路の方から聴こえてくる車が通る音位が、俺の耳に届いた。

 

 

 からだの方は、まだ熱くて、下がりそうにはなかった。頭に冷えピタを貼っていて、額からひんやりとした感じが少しずつ広がってきた。時々咳をするのが少し苦しいが、それ以外はだんだんと良くなってきた。薬が効いてきたのだろう。

 

 俺は目を閉じて、大きく深呼吸をしてから、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、ふぁ~。…………今、何時だ?」

 

 時計に眼をやると、現在午後4時30分丁度だった。この時間帯は、部活が終わる時間帯だ。6月の中旬か、下旬に確か中総体があって、勝った部はそのまま部活延長できて、県大会を目指し、負けた部はソコで3年生が引退となる。のだけれど……

 

 因みに、うちの学校は運動部が強く、どこも勝って県大会出場だった。改めて俺の学校は、どんなチート学校だよ…。そう、心から思ったのだった。

 

 

「うぇ…、Tシャツが汗でベトベトだ。着替えねーと。」

 

 朝と比べると、だいぶ良くなってきて、体も完璧ではないが、十分に動かすことが出来るようになってきた。やっぱり寝ることって大切なんだな。いい勉強になった。

 

 

 今、俺の部屋には着替えるようなTシャツが無い。昨日まとめて洗ってしまい、畳んだ服が全てリビングに置いてあるので、取ってこないといけない。

 

 

 俺は汗で濡れてしまったTシャツを部屋で脱ぎ、上半身裸の状態で、1階に降りた、姉貴が帰ってくる時刻でもなければ、みなも遅くなると言っていたので、変な格好をしても、この家には俺一人だけなので問題ない。ハズだった。

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす!!」

「ただいま~。」

 

 

 

 

──えっ?

 

 俺は脱衣場にある洗濯機にTシャツを突っ込んで、脱衣場のドアを開けたそのタイミングで、姉貴が美帆さんを連れて帰ってきやがったのだ。

 

 つまり……

 

 

 

 

「あの…」

「コッチ見んなキモい…。」

「キャアーーー、まもるくんの裸だぁー!!」

 

 俺はなんともいえないような顔で

 

 

 姉貴は汚物でもみるかのような冷たい眼で

 

 

 美帆さんは…嬉しそうに叫んで

 

 

 

 

 それぞれの感想を持ちながら、俺と姉貴の間に静寂が走った。

 

 唯一煩いと言えば、美帆さんが何かを発している。ってことだけだ。

 

「私、自分の部屋に行くから。美帆さんをよろしく。あと、変なことしたらマジでミンチにしてぶっ殺すから。」

「あっ、うん。了解しました。」

 

 玄関で固まっていた姉貴が、呆れたような顔で自分の部屋に向かった。しかもよりによって美帆さんを残して…。

 

「…俺、ちょっと服着ますね。」

「えぇ~。そのまんまでもいいのにぃ~。」

 

 頬をプクーと膨らませて抗議する美帆さんを置いて、俺はリビングに向かった。

 

 俺の後を続くように、美帆さんはリビングに入ると、近くにあったソファーに腰をかけて、マジマジと俺の着替える様子を、笑顔で観察していた。

 

 

 言いたいことはたくさんあるけれど、俺は敢えて何も喋らずに、上を着た。着替え終わると、俺はなんとなく、美帆さんの隣に腰をおろした。

 

「風邪は、もういいの?」

「あっ、はい。寝ている間に良くなりました。今はもう大丈夫です。」

「えぇ~。」

 

 眉毛を八の字にして、残念そうに声を漏らし、脚をパタパタと動かしている姿は、小さい子供のようだった。

 

 

「せっかくお粥作ってあげようとしたのに…、それに、ちゃんとシミュレーションもしてきたんだよ? なのに~!」

「…シミュレーション……?」

 

 美帆さんの文の中で、1つ気になった点があったので、同じことを繰り返してみた。すると、美帆さんは笑顔で頷き、学校で想像した、俺の看病を話始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美帆side

 

『それじゃ、あのアホをよろしくお願いしますね。』

『うん。』

 

 

 イケメン顔のレイちゃんが微笑みながら、すたすたと階段を上がっていったので、それにわたしは続いた。

 

 今日、大好きなまもるくんが夏風邪を引いてしまったらしい。その事を、部活動中レイちゃんから聞いたわたしは、一肌脱ぐことにした。制服のボタンを1つずつ外そうとしたけれど、レイちゃんが慌てて『美帆さん、何やってるんですか!?』と、止めに入ってきてしまったので、服を脱ぐことは出来なかった。

 

───一肌脱ぐって、そう言う事じゃないの?

 

 

 そんな疑問が生まれたので、レイちゃんに訊いてみると『全然違いますよ…』と、呆れられたような顔をされてしまった。ひ、酷いよレイちゃん…ソコまで冷たい眼でわたしをみないでぇ~!

 

 

 

 

 まぁ、そんなことがあり、今の状況になっていると言うワケですね。

 

『ここですよ。真守の部屋、それでは私は自分の部屋に行くので、真守をよろしくお願いします。』

 

 ペコリと頭を軽く下げたレイちゃんの頭を、優しく撫で撫でしてあげると、嬉しそうにレイちゃんは顔をあげてくれた。

 

 

 

 

『よ、よしっ、平常心…へいじょーしん……っと。』

 

 まもるくんのドアをコンコンコンと、三回中指でノックすると、『は、い…。』と、中から弱々しいまもるくんの声が聴こえた。

 

 ドキドキしている自分の胸に手を当ててから、わたしはまもるくんの部屋に一歩、脚を踏み入れた。

 

 中に入ってみると、男の子らしい物が置いてあった。机から顔を上げた時にみえる壁には、プロのサッカー選手のポスターや、アニメのキャラクター等が貼ってあり、机の反対側には、たくさんの本や漫画が整頓されてある本棚に、タンスの上にある音楽機器。机の真横にあるベッド、そして、四隅のうちの左上の角に、テレビとゲーム機が華麗に整備されて、全体的に青色で統一されてあった。

 

 

 

 

 何か…

 

『凄い…』

 

 わたしが感激していると、まもるくんは苦しそうに起き上がった。

 

『美帆さん…? スミマセン…ケホッ、今俺、ちょっと風邪をひいて…ケホッ。』

『あっ、うん。それはレイちゃんから聞いたよ。だからね…なんと、わたしが看病することにしました!』

『ホントですか? あ、ありがとうございます…ケホッ、ケホッ。』

 

 

 いつもと違って、元気さを失っているまもるくんは、とても苦しそうだけど、わたしからしたらとても新鮮で、嬉しかったような気がした。

 

 

 普段まもるくんが見せない一面、みれて得したな~! ふふっ。

 

 わたしはベッドで横になっているまもるくんの近くに座って、部活中に作ったお粥を取り出した。

 

『まもるくん、食欲は?』

『ん…と、少しだけ…』

『わかった。それじゃあ……わたしが食べさせてあげるね♪』

 

 少し冷めてしまったお粥を、プラスチックのスプーンでかき混ぜてから、まもるくんの口許に持っていき『あーん。』と言うが、横になっているまもるくんは凄く食べにくそうだった。

 

 

『んー。まもるくん、食べにくそうだな……あっ、そーだっ♪』

 

 わたしはまもるくんの使ったスプーンにお粥をすくって、自分の口の中に入れた。

 

 そう、食べにくいなら、直接口移しさせればいいんだよ! どーしよう!! 名案過ぎてすごいねっ!!!

 

 

 わたしは何回かお粥をを噛んでから、ゆっくりとまもるくんに近づき……そしてっ…!

 

『モグモグ、チッュ、んっ…///』

『んっ!? …んっ、くちyu「ストォーーーーーーーープッ!!!!!」

 

 

 突然、まもるくんが大声を出して、わたしの話を遮った。 もー。駄目だよまもるくん、これからが山場だったのに…このあと二人は更に激しく求めあってついには…「美帆さーーーん!!?」

 

「何を考えてるんですか!? そろそろ病院いった方がいいですよっ!?」

 

 耳まで真っ赤にして、まもるくんは立ち上がりながら叫んだ。その様子から察するに、とてつもなく恥ずかしかったのだろう。ふふふっ、ソコまで本気にしなくて良いのに…。

 

 

「ってか美帆さん。何でも俺の部屋の構造ををしってんですか!?」

「あぁ、それはね、レイちゃんから聞いたんだー♪」

 

 

 わたしは納得しきれていないまもるくんを一端ソファーにもう一度座らせてから、話を始めた。

 

 

 

「いきなりだけど、わたしね、将来は素敵なお嫁さんになるのが夢なんだ。」

「……夢?」

 

 

 驚いたような顔をしてから、まもるくんは何か納得したような顔に戻してから、わたしに聞き返してきた。

 

「うん。ほら、わたしってさ、家事以外取り柄何もないの。だから、素敵な旦那さんと結婚して、その人を隣で支えるのが、わたしの小さい頃からの夢なんだ。」

 

 

 

 わたしは眼を綴じて、まもるくんの左肩に頭をソッと乗せた。

 

「いいと思いますよ。確かに美帆さん、家事とか得意そうですしね。」

「そうでしょ? そして、こう言うの。あなた、今日はご飯にする? お風呂にする? それとも……」

 

 何かを感ずいたのか、まもるくんはビクッと体を震わせて離れようとしたが、それをわたしは阻止した。まもるくんの左腕をわたしの右手で掴んで、わてしはまもるくんの膝の上にストンと乗った。そして極めつけに、わたしの胸をまもるくんの胸にぐぐっと押し当てて近づき、まもるくんの真っ赤かな耳許で、息を吐くように、優しい、細い声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

「わ、た、し?」

 

 言い終わってから、体を離すと、全身が赤くなったまもるくんが居た。眼鏡がずり落ちて、少しボーッとしてしまっている。ふふ、効果抜群だったね。これはきっと。

 

 

「それで、まもるくんはどれを選ぶの?」

 

 笑顔で訊いてみると、まもるくんは俯いて小さく呟いた。これはもう、わたしを選ぶしかないよね! そう確信していたのに……

 

 

「テレビを観る。で。」

「えぇー! それは無いよまもるくぅーん!!」

 

 負けた。やっぱり、この超鈍感男には、直接の告白しかないようだ。うぅ……しぶといデスネー。マモルクン。

 

 

 

「それでは美帆さん、降りてください。」

「ブウー。」

「降りてください。」

「えぇー、うぅ。やだよー!」

「降りろ。」

「はいっ!」

 

 そのあとは、帰るまで口をきいてくれませんでした。とほほ……ふざけすぎました。深く反省してます。

 

 こうしてわたしとまもるくんの1日が終わったのでした!!

 

 

 

 

 




今回はいつもより長かったですね

これからも頑張りますのでぜひぜひ感想や評価してください。

感想&指摘よろしくお願いします!!


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鈍感と視線と…

ひとまず、全員にフラグを建てる。

ここからやらないと最終回に持っていけないので(笑)

では、どーぞ!!


 6月も終わりを迎え、本格的に夏へと進む季節。7月初旬の太陽は6月の時よりも暑さを増して、外を歩くのも嫌になってくる。むしむしした、嫌な空気が、2階の教室中を充満する。早くも6月の始めに設置した扇風機は、風力を強くしても、全然涼しく感じなくて、ほぼ無いのと同じだ。

 

 そんななか、多分だが、俺だけが寒いと感じているだろう。

 

 背筋から、冷や汗が止まることがなく、滝のようにだがだがと流れる。理由はいたって簡単だ。

 

 

 

 

 

 誰かが視ているのである。

 

 

 

 

 

─いや、フツーはさ、たかが視線でこんなになるのは、あり得ないと思うだろ? あぁ、俺も思ったさ。だけど………さっきから止まんないんだよ…寒気が、さ……。

 

 

 毎時間、背中を観察されている…いや、監禁されているような気がしてたまらないんだ。しかも、授業中だけではない。

 

 朝、学校に着いて椅子に座ったとき、授業中、移動中、昼食中、休み時間、掃除中、そして…下校中。

 

 

 ずっと、背後から視線を感じるんだ。勇気をもって、後ろを見ると、案の定誰もいない。さすがに不味いと思った俺は、ある人物に相談してみることにした。その人物とは──

 

 

 

 

 

 

 

「まもる君。僕に任せてよ!」

 

 小さい体に、トンっと手を当てて、ニッコリしながら胸を張っているのは、ひかる。女の子みたいな顔の可愛い『男』だ。顔が可愛いことから、女子からはひかるちゃんと呼ばれているが、本人はあまり気にしていないようだった。

 

 

「キャー!! ひかるちゃんが…ひかるちゃんがぁ!!!」

「かあーい! かあーーい!! 私、もう、なにも要らないよぉ!!!」

「ちょっと、天国行ってくる。」

 

 女子たちが、歓声の声をあげながら叫ぶ。息をハァハァいわせる人もいれば、貧血で倒れる人もいた。同じクラスにいる優と茜は、顔を紅潮させて、静かに悶えている。

 

 

 男子たちは、男だとわかっていても、鼻血を出す者や、とにかく沸き上がる感情を抑えるために、必死にして机をバンバンと叩くものも現れるほどだ。あさとよっシーの様子を伺ってみると、あさは顔を赤く染めて机をとにかく叩いていた。机を強く叩きすぎて、掌が真っ赤になるほどだった。よっシーの方は、前の事(鈍感男は生きることの大切さを知ったを参照)があったのにも関わらず、「うぉーーーー!!!!」と、叫んでいた。

 

 

 なんなんだ…このクラス……。

 

 

 でも確かに、ひかるはぶっちゃけ可愛い。男として生まれたことが、勿体ないくらいに可愛い。でもやはり、ひかるは男だ。

 

「ひかる、ありがとう。」

「まもる君が困ってるんだもん。見逃せないよ! それに、許せないしね、そんな奴……」

 

 一瞬、ひかるの顔が、ニヤッっとした、顔になったような気がした。その顔に、背筋がゾクッとするような感覚が襲う。…あれ?…これって………

 

 俺がチラッとひかるを見てみると、可愛らしく首を傾けて「ん?」と言ってきたので、俺は「なんでもない。」とだけ返した。やっぱり、気のせいだったみたいだ。よかった。

 

 

 

「対策として、これから僕と一緒に行動してもらいたいんだけど。いいかな?」

 

 微笑んだまま、ひかるはそう言った。

 

「あぁ、もちろんだ。頼む。」

 

 俺もつられて微笑んだ。やっぱり、ひかるに頼んで正解だったな。

 

 

 俺がひかるに頼んだ理由は二つある。

 

 一つは、単純に、あさとよっシーに相談できるような内容では無いからだ。

 

 もし、あさとよっシーに相談したとする。あさの場合は、俺の話を聞いたときに、取り敢えずビビるだろう。ビビりにビビった後は「き、ききき、気のせいだろ?」と、暗示のように問いかけてくるに違いない。ってことで、あさには相談不可能。よっシーは、もぅ、論外だ。相談しても、煩く騒いで、一気に話が広まる。そして、「真守なら、大丈夫だ。」と、言って、終わらせるだろう。

 

 なので、ひかるに相談したのだ。

 

 別に女子に相談すれば効率がいいかもしれないが、ちょっと難しい。なので、話しやすく、仲が良いひかるを選択したのだ。

 

 

 二つ目は、ひかるがこう言うの得意そうだったからである。ただ、そう直感した。それだけだ。

 

「それじゃあ、改めてよろしくね、まもる君!!」

 

 笑顔で言うひかるは、誰が見ても紛れもなく可愛い顔をしていた。

 

 

 

 

──────────

 

[一時間目]

 

 俺はひかるから1つ提案されたことを実行している最中だ。

 

 その提案とは、ノートに時刻や症状を記入することだ。記入内容は

 

 

 ①時間を詳しく書くこと。

 

 ②何回目なのか。

 

 ③どこから視線を感じるのか。

 

 ④どんな感じの視線なのか。

 

 ⑤いま、どんな気持ち(症状)なのか。

 

 

 の、5項目である。

 

 

……因みに現在の状況をかくとこんな感じだ。

 

 ①午前9時41分。

 

 ②1回目。あっ、今視線感じた。ので、2回。

 

 ③背中から。もっと詳しく言うと、左後ろから。

 

 ④監視しているような、そんな感じ。

 

 ⑤背筋が凍ってる。あと、寒い。

 

 

 これからも記入していこうと思う。

 

 

 

[二時間目]

 

 今はあまり得意じゃない数学の授業中だ。それでも俺への視線は変わらず感じる。

 

 ①午前10時30分。

 

 ②二時間目だけで5回目。

 

 ③一時間目と同じ感じ。

 

 ④一時間目と同じ感じ。

 

 ⑤一時間目と同じ感じ。

 

 

 

[三時間目]

 

 ヤバい…気がする…。これ以上書いてはいけないきがする。ヤバい。ひかると一緒にいても視線が感じるのだ。一緒にいればいるほど近く感じる。

 

 ①午後11時1分。

 

 ②これで43回目。

 

 ③同じ。

 

 ④同じ。

 

 ⑤同じ。

 

 

 

 

[四時間目]

 

 書く気さえおきない…どうしよう。昼休みにひかるに相談しないと…。

 

 ①午後12時7分。

 

 ②114回。

 

 ③同じ。

 

 ④同じ。

 

 ⑤同じ。

 

 

──────────

 

 

 

「っと、結構ヤバいねまもる君。そう思わない?」

「俺の精神状態の方がヤバい気がする…」

 

 あのあと、本能的にマズイと思った俺は、四時間目の授業が終わったあとにダッシュでひかるのところにむかったのだ。

 

 ひかるは俺が書き留めた記録本をパタンと閉じると、自分の椅子に深く座り直して、唸りながら考え始めた。腕を組んで、眉を寄せて考えているせいか眉間に少しシワができている。そして、数分考えてから、ひかるは俺に1つの提案をした。

 

 

「う~ん。危なかった時のために、一応僕とメアドを交換しておこう? そうすれば無くなる気がするんだよね。僕。」

「そ、そうなのか?」

「うん! そうだよ。」

 

 悩んだ末に出した結論が、ひかるとメアドを交換する。であった。

 

 

 うぇ? そんなんだけでいいのか? という俺の思いが強かった。 いや、だってさ、あれだぜ? ほら、四時間目だけで3桁越すんだよ? スゴくない? 相当俺に恨みを抱えてるやつだよね? ね?

 

「まもる君。恨みを抱えている奴もいると思うけど、歪んだ感情もあると思うんだよね。僕。」

 

 俺の心を見透かしたかのように、ひかるはさっきの考える表情から、何かを知っているような…気がついたような顔で、俺に向かって言った。

 

「歪んだ感情って、例えばどんなのだ?」

 

 参考までに聞いてみたかったので、俺はひかるの方を向いて言ってみると、ひかるはニヤリと不敵に笑うと、俺にその答えを教えてくれた。

 

「まもる君の事が大好きすぎて、そうなることもあるんだよ?」

「そ、そうなのか……」

 

 

 俺の事が大好きすぎて…か。嬉しいようで、恐いな。それ。

 

「んじゃ、僕はお昼を食べに行くから、まもる君も一緒に行こう?」

「あぁ、そうするよ。」

 

 

 俺は弁当を持って、俺よりも小さいひかるの背中が、とても大きく見えて安心感を抱きながらその背中についていった。

 

 

 

 

 

 

──────────

 

[五時間目]

 

 

──何故だ?

 

 ひかるの言ったとうり、メアドを交換し終わった時から、何だか視線を感じなくなってきたのだ。

 

 もしかして、俺とひかるとの行動を見た犯人は、何かしらの感情が芽生えて、俺のことを追うのをやめたのだろうか。それとも、一時的にやめて、数日後にまた同じようにするのか……いや、どう考えても最初の考えに違いない…!!

 

 

 俺のことを何かの感情を抱いたままの犯人は、俺とひかるが仲よさそうにしているのを目撃し、安心したのか、あるいはもう嫌になったのか…ひかるに迷惑をかけたくなかったのか…そんな感じの理由で、俺のことを追い回すのをやめたのだ。うん。きっとそうにちがいない!!!

 

 ってわけだか、しっかりと記録はしておこうと思う。

 

 

 

 ①午後1時。

 

 ②131回。

 

 ③左後ろから。

 

 ④なんか、先程と比べたら優しくなったような気がした。

 

 ⑤何も感じない。寒気もしない。ってか、どっちかというと暖かい?

 

 

[六時間目]

 

 体育館でただいま記入中だ。五時間目以降、冷たい視線はなくなったが、20分に1回目のペースで視線は感じる。でも、その視線はなんか、暖かいし、四時間目のときと比べると圧倒的に視線を感じる回数が少ない。そんな状況だがいったん記入することにしよう。

 

 

 ①午後2時9分。

 

 ②134回

 

 ③体育だからか、よくわからない。

 

 ④五時間目と同じ。

 

 ⑤五時間目と同じ。

 

 

──────────

 

 

「うん、うん! 良かったねまもる君!!」

「あぁ、これもひかるのお陰だ。」

 

 六時間目の授業を終え、ひかるのもとに記録本を手渡すと、ひかるは黙って本を開き、黙読した。そのあとに、安心しきった顔を俺に向けて、心底嬉しそうに微笑んだ。

 

「始めはどうなるかと思ったけど…やっぱりひかるはとても頼りになる。また困ったら助けてくれるか?」

 

 あさと、よっシーにも、勿論頼りにしている。でも、こんな感じの悩みなら、きっとひかるが最適なのであろう。実際に解決してくれたも同然なんだ。ホント、ひかるに頼って大正解だった。

 

 

 今日の経験で、ひかるはとても頼れる存在と認識した俺は、少し恥ずかしさを混ぜながらも、笑顔で訊いてみると、ひかるは快く頷いてくれた。

 

「モチロンだよ!!」

 

 

 可愛らしくも、整った顔から、ひかり輝く笑顔が今、咲いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひかるside

 

 僕は家に帰ると、ひとまず自分の部屋に向かった。部屋について早々、手荷物を机の上に放り投げ、制服を脱いでハンガーに制服をかけてから、無言でベッドにダイブした。

 

「へへへぇ…まもる君、結構やるね。でも、本当に恋愛面で超鈍感なんだね。」

 

普通の人なら、恋愛に関するものが多いので真っ先に疑うと思っていたけれど、全然そっちに結び付かなくて、とても呆れてしまった。でも、そんなまもる君も大好きだよ♪ そんなことを思いながら、机の上に目を向けた。

 

 机の上に置いてあるのは、まもる君が今日視線を感じたのを記録したノートが置いてある。水色と白のストライプ模様でとても可愛らしいノートだ。そんなノートに書いてある内容は…全てがボクのコトである。つまり…

 

 

 

 

 

──ボクが見ていた(犯人)んだ。

 

 

 ボクはまず、まもる君と仲好く(愛し合う)するために一晩寝る間も惜しんで考えたんだ。そして! 思い付いたのがこの作戦。

 

 

『ボクの存在を必要としてくれること。』

 

 今回の件は、全てボクがまもる君と仲好く(愛し合う)するために考えた作戦だ。

 

 

 まもる君はとてつもなくモテる。鈍感のクセにかっこよくて、優しくて、周りがみれて。そんな彼がボクは大好きなんだ。愛してるんだ。だから、まもる君をボクのモノにするために考えたのが今回の作戦なんだ!

 

 

 

 

──スゴいでしょ!!

 

 

 まもる君の事をずっと見ることが普通になってきちゃったから、メアドを交換したあとは辛かったけど、メアドを手にいれただけでも良かったことにしよおっと。

 

 

「えへへ、まもる君。携帯を開いたとたんに君の顔が観られるのが嬉しくて仕方ないし、メアドを手にいれたし、残るは…アハハハ。」

 

 

 携帯を右手でギュッと携帯を握りしめてみる。ボクの携帯の待受画面は、図書室で隠し撮りしたまもる君になっている。画面越しに写っているまもる君の額にキスをしてから、ボクは携帯を静かに閉じた。

 

 

 ふふふっ、まーもーるー君っ♪

 

 

 待っててねー?

 

 

 

 ボクは部屋で優しく携帯を抱き締めながら、次の作戦を考え始めるのだった。

 

 

 

 

 

 





ひかる「僕とボクでは、違うからね。」

作者「そう…なの?」

ひかる「そうだよ? 貴方が作ったんだよね? しっかりしてよー。」


ってことです。(笑)


感想&指摘よろしくお願いします!!


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鈍感男の懐かしい記憶

なんか、後半シリアスになったんだけど…まあ、いいか(笑)




「そういえば、真守くんは、どんな感じの子供だったの?」

 

 

 家庭科で、小さい頃の様子などを親に書いてもらう。と言う内容の宿題が出されて、教科委員がその宿題を集めている最中、近くにいた優が俺に話しかけてきた。

 

 

「あっ、それ僕も気になる!!」

「真守の小さい頃か…」

「真守かぁー。なんか、俺的には今と変わってない気がするぞっ!!!」

「いや、意外とシャイで大人しかったよな(笑)」

 

 それぞれ言いたい放題言ってから、皆の目線が俺に刺さった。

 

 優の後に続いて言ったのは、机に思いっきりバンッ、と手をついて興味津々な顔をするひかるだった。瞳をギラギラとさせながら、俺を見続けてくる。ひかるの背後から見えるドス黒いオーラからは、とてつもなく寒気が俺を襲った。何だかとても怖いのは、気のせいじゃないよな…?

 

 

 その次に口を開いたのは、顎に手を添えて、考えるポーズをとっている茜だ。無言で俯き、小さい頃の俺を想像しているのか小声で「いや、違う…もっとこう……可愛い…っ!?/////」っと、声を漏らしていた。最後の方では、何を考えたのが分からないが、一人で顔を紅潮させて悶えていた。お前にとっての小さい頃の俺は、どんな性格をしてんだよ…

 

 

 親友のよっシーに関しては、ピョンピョンと跳ねて俺の肩を揺らしまくっている。視界が急にぐらつきはじめて気持ち悪くなってきた。よっシーの予想では、今の俺と変わらないと言っているが、その答えはあさがしっかりと答えてくれた。

 

 

 

…ってか、さっさと放して…そろそろ限界が近づいているんだが…、よ、よっシー? 俺死ぬんですけど……それ以上早く肩を揺らしたら俺、朝食をリバースしそうなんですけど…吐き出しちゃうんですけど……

 

 

 

 俺は、やっとのことで解放してくれたよっシーを、数秒間睨みながら呆れ半分と怒り半分の溜め息を、大きく着いた。俺、マジで吐くかと思ったわ…あさに感謝だな……。

 

 そう、俺の事を助けてくれたのは、俺の小さい頃からの幼馴染みで親友の山下 朝一こと、『あさ』である。

 

 流石俺の幼馴染み兼親友だけあって、俺の事をすぐに助けてくれる。もう一人の親友とは大違いである。常にまわりのことをみていて、困った人がいたら、すぐに駆けつけて助けにいく姿は、よっシーにも見習ってほしい。優しいあさは、一部の女子に大人気である。流石あさだ、俺とは大違いでとてもモテるな。俺なんか、誰一人と俺の事を好きなやつは居ないからな。

 

 しかし、そんなあさでも弱点はある。

 

 

 1つはお母さんだ。

 

 あさは、母子家庭で、母親一人であさを育てているため、お母さんのことが心配でたまらない。あさの母さんの話題になると、あさは突然立ち上がり「ちょっと、母さんの仕事場に行ってくる。」と、真顔でいってきた。俺とよっシーは慌てて止めたが、その日は本当に仕事場に行ってきて、様子をみたらしい。

 

 

 まあ、簡単に言うと、世間で言うマザコンだ。

 

 

 2つ目は、2次元が大好きすぎることである。

 

 家に帰ってすぐに、あさはパソコンを開きネットに直行する。主にはアニメを観たり、ボーカロイドと言うモノを観たり聴いたりしているらしい。

 

 

 気づけば夜中になっている時があって、十分に睡眠がとれないときがあって、制服の着こなしが変になってしまうときがあるのだ。

 

 

 おっと、話が大幅にズレてしまったので、戻すことにしよう。そういえば、俺の小さい頃の話だったような気がしたんだけど…

 

 

「俺は、あさが言ったように、シャイで大人しかったよ。でも、それを変えてくれたのは……幸助のお陰なんだ。」

 

 

『幸助』と言う言葉に、あさ、よっシー、そして…茜が小さく反応する。三人とも覚えてくれていたんだな。

 

 内心、嬉しいようで、悲しいような感情が、小さな渦を巻いていく。何だか…とても懐かしい響きだ。俺は静かに苦笑いをした。

 

 

「幸助? って、まもる君の知り合いかい?」

 

 ひかるが首を傾げて、俺に訊いてきた。優も、誰なのか知らないので、ひかると同じように「誰?」って顔をしている。

 

 俺はゆっくりと目を閉じて、椅子の背もたれに寄りかかった。あの時の事を思い出を、引き出しを開けるかのように、思い出す。その引き出しは、たくさんの埃を被ってはいるが、開けてみると、つい昨日の出来事だったみたいに、今でも新鮮に思い出せる。

 

 その懐かしい出来事を、俺は笑顔で話始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────

 

 今は7月中旬で、とても暑いが、俺と幸助が出会ったのは今よりも、倍涼しい、春の時だった。

 

 

 残念ながらあさとはクラスが離れてしまって、寂しい気持ちを抱えたまま、俺はその日、学校に登校してきていた。

 

 

 春とは、出会いの春であり、別れの春である。俺の場合は、出会いの春だった。それはあさと別れて、1年生の教室に入り、初めての学校の授業そうそう、訪れたのである。

 

「ああ"ーーーー!!! 筆箱わすれたあーーーー!!!」

「ヒッ!?」

 

 真後ろから突然、叫び声が聞こえてきた、その内容は、初授業にも関わらず筆箱を忘れてきてしまったらしい人が居た。その叫んだ張本人が、今後俺の人生を大きく変えることになる人物。畠山 幸助だった。

 

 不意にも俺は、情けない声を出してしまい、恥ずかしくて俯いてしまっていた。

 

「チクショー。なんだよ、しっかりカクニンしたのにぃー!!」

 

 またもや背後からでかでかとした声が聞こえた。担任の先生をみてみると、苦笑いを浮かべながらも、幸助を落ち着かせるために声をかけることにしたのか、幸助の席に近づいて幸助と同じ目線になるように屈んだ。

 

「幸助くん? 皆の迷惑になるから、少し落ち着こう?」

「はーい…」

 

 少しムスッとした顔をしてそっぽを向き、幸助はそう返事した。

 

「それじゃあ、隣の人か前の人に、鉛筆を借りて下さいね?」

「わかりましたー!」

 

 すると、俺の背中から、突然痛みがした。背中の真ん中辺りを思いっきり指で深めに挿してきて、とてつもなく痛い。

 

「イダッ!?」

「なーなー!! えんぴつ、かしてー!」

「あっ、う、うぅ…ううう、うん?」

 

 なぜか最後が疑問系になってしまったが、なんとか俺は頷いて返事を返すことができたのである。

 

 仮面ライダーがついている四角い筆箱を開けると、5本の鉛筆が入っていて、その鉛筆にそれぞれキャップがついてある。四角い筆箱の表側には、すでに本体にキャップがついてあって色々便利だったのをよく覚えている。確か、消ゴムをいれるための穴みたいなスペースもあったような気がする。あと、鉛筆削りも本体についてたような気がした。

 

 

 そして俺は、カッコいいキャラクターの絵がついてある鉛筆を一本引き抜いて、机の上に置いた。この鉛筆は、とってもお気に入りの鉛筆だった。デザインもよくて、人気のキャラクターがついていたので、即座に買ったヤツだった。

 

 そして、まだ1回も使っていない、真っ白で綺麗な四角い消ゴムを真っ二つに折った。1回半分に曲げると、数秒後に何処かにヒビが入るので、そのヒビを定規で切るようにして押し込むと折ることができた。物凄く抵抗があったが、幸助のために意をけっして折ったのだ。しかし、変な風に折れて、片方が短くなってしまった。

 

 

「は、はい…」

 

 俺が鉛筆と、長い方の消ゴムの破片を渡すと、幸助は嬉しそうに受け取ってくれた。

 

 

「うおっ!! ありがとう!! コレ、めっちゃカッコいいなあ!!!」

「っ!? そ、そうかな…」

「うんうん!! 俺、このキャラ好きなんだよなー! 正義のヒーローみたいに出てきてんで…」

「うんうん! お、俺も大好きなんだ!」

「「二人ともうるさいよっ!!」」

 

 俺と幸助が盛り上がって話し込んでいたら、幸助の隣の席にいた女の子と、俺の隣の席にいた女の子が同時に怒って、俺たち二人に注意してきた。

 

 先生は、何故だか笑い始めて、それにつられてクラスの皆も声をあげて笑った。

 

 

 怒られることを予想していなかった俺たちは、呆然として固まっていた。数秒後にやっと頭の整理がつくことができて、恥ずかしくなった。そして、幸助の方をみてみると

 

「…おこられたなっ!」

 

 笑顔でピースして俺に向けてくれたのだった。

 

 

 

 その日から、俺と幸助は仲良くなった。次の日には、隣のクラスにいるあさを紹介して、三人で遊ぶようになった。とっても楽しかった。幸助と話していくうちに慣れてきて、皆と話せるようになった。それ以来俺は、人前でも普通に接することができるようになったのだ。

 

 

 

 

─────────────

 

 

 

「なんか、スゴく微笑ましい話だったね。」

 

 優が感想を述べると、皆も同時にうんうん。と、頷く。

 

 

「俺、スゲェ感動した。幸助ってヤツのことは真守の話にしか会ったことないけど、きっと、いいヤツなんだろうな。」

「あぁ、とってもいいヤツだったんだぜ? 真守に紹介されたときとか、直感でそう感じたし。」

 

 あさとよっシーがそんなことを言う。二人とも、どこか嬉しそうで、どこか悲しそうで…少し複雑な感じの表情をしていた。

 

「あれ? そういえば、こうすけ君って、何処に住んでるの?」

 

 ひかるが純粋に質問をしてきた。俺は、その質問に答えるべく、口を開こうとするが、どうも、その先が言えない…やっぱり、俺は死んでしまったことを認めたくないんだろうな。って、改めて思った。

 

 

「幸助は…自殺しちゃったんだ。小四の時に…。」

 

 俺の代わりにあさが説明してくれた。その回答を聞いたひかるは、驚愕したあとに申し訳なさそうな顔をして謝った。優の方は驚いたあとに、悲しそうな顔で口許を手で抑えている。

 

 

「…ゴメン…僕、嫌なこときいて。」

「ん、気にするなよ。幸助は…俺たちの中でずっと生き続けてるから。」

「真守の言う通りだ。この世にいなくとも、心の中で、幸助くんは生き続けているさ。」

 

 茜が元気付けるためにそう言うと、皆も納得したような顔で頷いた。

 

 

 

 

──幸助…観てるか? 俺、お前が自殺して心から哀しかったんだぞ。

 

 

──次会うときがあったら、今度はみんなに会わせてやるよ。

 

 

──だから、絶対会おうな。

 

 

──『約束』だぞ。

 

 

──追伸、俺はお前との約束、守ってるからな。お前も守れよ。

 

 

──んじゃ、元気でな。

 

 

 

 窓の隙間から力強い風か、優しく俺の頬を撫でたような気がしたのだった。

 

 

 

 

 




次は、んーと。確か…

茜「ウチの出番だ!」

茜のフラグを建てます!(笑)


感想&指摘よろしくお願いしまーす!!


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鈍感は彩夏の気持ちも知らない

久しぶりに二日連続投稿できた…!

しかし、予告詐欺をしてしまいました…スミマセン

茜の回は次です…スミマセン



そろそろ新しい小説作ろうかな…

ではどうぞ!


 彩夏side

 

「おはようサヤ。」

「おはよう、茜ちゃん。」

 

 私が玄関のドアを開けると、いつも通りの時間に、いつものように、優しい微笑みをして出迎えてくれるのは茜ちゃん。去年までは、いろんなことがあって、話すことができなくて、とても苦しい日々を送っていました。毎日が苦しくて、胸が締め付けられて、毎晩、布団の中でも涙をこぼしてきました。

 

 

 悲しくて、哀しくて。

 

 

 

 後悔ばかりして、何も行動に移せない自分がイヤで、嫌いで、大嫌いで。

 

 そんなときに、屋上で茜ちゃんと、私と茜ちゃんを仲直りさせてくれた人。塚崎 真守君が居ました。茜ちゃんがイライラしながら屋上を出ていくと、真守君はフェンスに寄りかかって座りました。そして、私は何故か、彼なら助けてくれる。と、思い、真守君に話しかけました。これが、私と真守君との初めての出会いです。

 

 

 今でも明確に、ハッキリと覚えています。

 

 

 

 ほとんど諦め状態の顔をして、落ち込んでいた真守君。私が茜ちゃんの過去を話した後の、悔しそうな顔も。

 

「何で貴方が悲しそうな顔をするんですか?」

 

 不思議に思った私が、俯いて、掌を握りしめている真守君に聞いてみました。そしたら、更に悔しそうな顔をして

 

「俺はその時、基や愛川さんに………何もできなかった…。」

 

 普通の人なら、「そうか…」ぐらいで終わるけれど、この人は特殊でした。その言葉を聞いた私は、驚愕して、『そんなこと思う人が居たんだ。』と、心底思いましたね。真守君はそれくらい、私達を助けたかったんですね。そう思うと

 

 

 

 

 

 

──キュッ。それは、突然襲いかかってきました。

 

 真守君が言った言葉が、胸を締め付けて、よく解らない感情が、体いっぱいに広がりました。

 

 

 

 

 

 

 

──これは…何なのでしょう?

 

 

 

 

 今では、その感情が何なのかは理解できました。

 

 

 その時から私は、真守君に【恋】をしたんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日、知り合ったばかりの人に恋をして、今まで過ごしてきました。恋って言う感情がよくわからなくて、楽しいのかな、とか、苦しいのかなとか、色々考えていた時期がありました。でも、今となると、恋と言うのは、とても…とても……悲しいものです。

 

 そのあと、私と茜ちゃんは仲直りをして、現在に至りますが、隣で鼻歌を歌っている茜ちゃんを見ると、少しだけ悲しくなります。だって茜ちゃんも、真守君の事が好きみたいですから。

 

 

 できるなら、私は茜ちゃんと争うことはしたくありません。そうなって、また喧嘩とかになるなら、真守君の事は諦めた方がいいです。しかし、そうしようとしても…諦められません……。

 

 あれ?私、いつからこんなワガママになったんですかね…。茜ちゃんのためにも、諦めないといけないのに…

 

 

 

 

 どうしたら……いいんでしょうか…?

 

 

 ボーッとしながら歩いていると、何かが足にあたって躓いて盛大に転んでしまった。

 

「サヤ!? だ、大丈夫か!?」

「う、うん。大丈夫だよ…ちょっと……擦りむいただけですんだから。」

「な、ならいいんだが……」

 

 茜ちゃんが安堵したのか、短い息を吐いて、胸に手を当ててなだでおろした。

 

「さぁ、サヤ行こう?」

 

 茜ちゃんの優しい笑みが、私に元気を貰うと同時に、また胸が苦しくなった。茜ちゃんの恋を叶えさせたい! でも…

 

 

 諦めたいよ、真守君にたいしての感情なんて、何も持っていない。彼と私は、ただの友達。それで…いいんだ。それで……。

 

 

 

 

 

「おはよう。」

「!?…っ……」

「おっ、真守おはよう。」

 

 

 突然、頭の上からよく知っている人の声が聴こえた。顔をあげると、会いたくない、会っては行けない。でも会いたかった人。

 

 

「ん? どうしたんだ彩夏?」

 

 

 心配そうな顔をして私の顔を覗いてくるのは、塚崎 真守君。だった。

 

 

「あっ、そう言えば私、用事があったんだった。それでは茜ちゃん、真守君、またあとで会いましょう。」

 

 

 後半、声が震えそうになったけれど、何とかして堪えてみせた。そうでもしないと、諦めきれそうにないから。私より、茜ちゃんの方が真守君と釣り合ってるから。だから…

 

 

 

──あれ…何で、涙がでてるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ。」

 

 気づいたときには、私は屋上にた。真守君と出会って、茜ちゃんと仲直りできた、とても思い出深い場所。私が大好きな場所に、先客が来ていた。

 

 

「ん。……お前ってたしか…茜といつも一緒に登下校している…」

「はいぃ!?」

 

 失敗した。であったのが、よりによって不良のなかの不良と噂されている人、畑 茅根だった。

 

「どどどど、どうしよう…」

「おい、声が駄々もれだぞ。」

「ひいっ!? すみませんでしたぁー!!」

 

 ウシロヲ向いて逃げようとしたら、自分の靴に足が引っ掛かり、またもや盛大に転んでしまった。今日で盛大に転んだのは二度目になる。そろそろ膝も限界に近いだろう。

 

「おいおい、大丈夫かぁ?」

 

 私に近づいて手を差し伸べてくれた。

 

「えっ?」

「いや、えっ? じゃないだろ。さっさと起きろ、じゃないとスカートから見えてるものが露になったままだぞ。」

「っ…////」

 

 拍子でさしのべられた手を叩いてしまった。

 

 

 この人…この人ぉ………

 

 私は一人で起き上がってその人を思いっきり睨むと

 

 

「一回死んでください。」

 

 

 そういい放った。

 

 自分でもこんな言葉を言えるのかと驚いてはいるが、表には出さないようにした。と言うか、ほんとサイテーな人ですねこの人。女性の敵ですよ。敵、流石不良ですね。

 

 せっかく好感度が急上昇していたのに、さっきの一言でガクンとがた落ちです。馬鹿なんですかねこの人…。

 

「なんか、理不尽じゃねーか?」

「煩いですよ変態さん。警察に通報しますよ。」

「なんでお前の黄色と緑のぱん、いでぇ!?」

 

 全てを言い終わる前に、私は変態さんの足を踵で踏み潰した。それはもう全身全霊力を込めて。

 

「はなせっ!! はなせっ!!! 死ぬ!! 足踏まれただけで死ぬぅ!!!」

「そう言えば、なんでこんな貴方のようなゴミクズがこんなところに居るんですか?」

「そういいながら踏む力を強くすんなーっ!!」

 

 仕方ない人ですね。更に強くふんずけてやりましょう。コレは仕返しです。あのとき以来、私は汚されました。この人は女の子の天敵です。それだけは認識しています。

 

 

…真守君だったら、こんなことになっていたのでしょうか…?

 

「…………………」

「……お前も失恋したのか?」

「っ!?」

 

 一旦その人から離れて、距離をとった。知らない相手でもでもわかるくらい、きっと表情に出ていたんでしょう。

 

「失恋ではありません。恋を諦めただけです。」

「それを世間では失恋というんだけど。お前馬鹿なの?」

 

 イラッと来ました。そろそろ殴っても良いですかね? ……あれ、そう言えばあの人……お前『も』って…

 

 俯いていた顔をゆっくり上げてみると、その人は苦笑いを浮かべながら、恥ずかしそうに、それでいて悲しそうに、頭を掻いていた。

 

「俺の好きなやつがさ、俺の友達なんだ……。」

「っ…私もです。」

「そっか…。」

「はい……。」

 

 

 その人は、マジマジと私の事を観察するかのようにみてきた。そして、鼻で笑った。

 

 鼻で笑われたことにムカッてきたが、次の一言で、その感情はかきけされてしまった。

 

「まだ、諦めきれてないじゃないか。」

「っ、う、うるさいですよ。私は諦めたんです!」

「嘘つくなよ、じゃあなんで泣いてるんだよ。」

「えっ?」

 

 自分の頬を触ってみると、確かに涙だった。ポロポロと、次から次へと止まることを忘れてしまったのか、徐々に涙の量は増えていった。

 

 

 諦めたと思い込ませていたけれど、やっぱり…無理だったんだ。

 

 こころにポッカリと空いた穴が、何か暖かいもので埋め尽くされていった。足りなかったネジが見つかって、綺麗にはまって、そして、ゆっくりとだが、噛み合って回っていく。そんな感触。

 

 

 ここで私は、改めて思った。

 

 

 

 

 

 

──私は、やっぱり真守君が好きなんだ。大好きなんだ。

 

 

 自分の気持ちに嘘をついて過ごすより、自分に正直になろう。茜ちゃんに言おう。この気持ちを。正直に。

 

 

「まぁ、ガンバれよ。あと、俺みたいになるんじゃねーぞ?」

「えっ? それはどういう…」

 

 言い終わる前に、その人は私を残して屋上から出た。

 

 

 

 いったい、何だったんだろう?

 

 そんなことを思っていると、短学活…HRの始まりのチャイムが鳴った。

 

 私は急いで屋上から出ると、さっきあの人が言ったことを理解できた。

 

 

『俺みたいにその恋を諦めるなよ。』

 

 多分、そうなのだろう。あの人なりの、応援のメッセージだったんだ。

 

「ありがとうございます。」

 

 

 私を微笑みながら、階段を急いでかけ降りた。そのときの足は、とても軽くて重い鎖が外されたようなかんじだった。そして、どこへでも行けそうな、そんな気がしたのだった。

 

 

 

 




うむ、さっさとフラグ建てて終わらせるか?

そう言えば最近、タイトル詐欺してる気がするので、次回辺りから意識する。

感想&指摘よろしくお願いしまーす!!


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鈍感に向ける茜の想い

言い訳させてください。

タブレットがすべて悪いんです。

月の始めは調子がよくて…!!

アプリを一瞬で開けるからっ!!

すべてはこいつが悪いんでs…茜「それではどうぞ。」


 茜side

 

「おはよう、茜。」

 

 教室に入ってすぐに見たのは、アイツの顔だった。

 

「おはよう…真守。」

 

 ウチがそんな感じで返すと、何も考えていないのか、それともただ単にアホなのか分からないが、真守は無邪気な笑顔を浮かべて、ニカッと、ウチに笑って魅せた。

 

 あぁ、コイツはこの笑顔で、何人の人を殺めてしまったのだろうか……。 可哀想に…勿論、やられた人に向けて言っている。真守のことなんか知るか。

 

 

 ウチは自分の席に行こうとするものの、突然、真守がウチの目の前に現れたので、つい「ひゃっ!?」と言う声が漏れてしまった。

 

 

「そういえば茜、数学のプリントっていつまでだっけ?」

 

 ただいま、ウチの顔の目の前に、真守の顔が間近にあるので、ドキドキが止まらない状況だ。こんな時に話しかけられても、ウチは黙って俯くことしかできないのだ。なぜか恥ずかしくて、緊張して、いつも意識してしまう現象に悩まされているのに、更に意識してしまって、空回りになりそうだったから。だからウチはなぜかニヤける口を必死で堪え、そんな情けない顔が見られないように、静かに俯くのである。

 

 

 

──何なんだ…『コレ』は……

 

 

 なぜ、真守と居ると嬉しいんだ? 意味がわからないのだが…

 

 何なんだこれはぁーー!!!!

 

 

 

「茜?」

「っ!?////」

 

 ウチは真守の肩を両手で押して道を強制的に作ると、そそくさと自分の席に向かった。すれ違い様に真守の顔を盗み見してみると、驚いたような顔をしていた。

 

 そりゃそうだ。ウチもあんなことされたら驚くに決まっている。でも、今のウチには、真守の顔をみて、目をみて話すことが、何だか恥ずかしくてできないのだ。ホント、何なんだ、この胸の中にある、フワフワとしたような、締め付けられるような…変な感情は。経験したことがないぞ…何かの病気なのか? 新型のインフルエンザなのか? う~ん。よくわからないな。

 

 

 自分の席に着くと、茅根がウチの席に近づいてそして、ウチの目の前で立ち止まった。

 

「おはよう脳筋ヤロー。」

「おはよう外見不良中身キチガイ茅根。」

 

 ウチは笑顔でそう言い返したが、残念なら茅根も笑顔だった。なんだ、今日はてっきり泣くかと期待したんだが…。

 

 

 ウチと茅根はいつもこんな風にして挨拶をする。周りからみたらとてつもなくヤバい雰囲気が漂っている風に見えるが、まぁ、朝の挨拶の時だけは実際に漂っている。近づくだけで泣くぞ。なんにせ…

 

 

「本番はここからだぞ? わかってるのか? お前こそ脳筋なのではないのか?」

「フンッ、確かに英語『は』お前の方が点数はいいが、そんなに差はないだろう? さて、どっちが脳筋でしょうか?」

「脳筋っていった方が脳筋だろ。この脳筋め。最近全然出番が来なかったくせに。」

「なっ…それは俺じゃなく、作者にいえよ。俺に何かの嫉妬でもしてんのか? 普通に考えろよおバカさん。」

「お前に嫉妬することなんてないだろ、出番が全然ないくせに…このモブキャラ。」

「黙れ。」

「はい、論破っ!」

 

 そしてウチは、足下にある茅根の右脛を制服越しから結構強めに蹴った。

 

「イダァッ!?」

 

 

 茅根は痛さのあまりに後ろ側に飛び跳ねてしまい、災難なことに、後ろにあった机の角に自らの肘をガツンとぶつけた。脛と自分の肘に痛みを感じているのか、茅根はその場にしゃがみこんでしまう。

 

「いっつぅー。」

「今日もウチの勝ちだな。」

「くっそー。何なんだよ、いきなり攻撃すんじゃねーよ。」

 

 痛そうに脛と肘を抑える茅根を、満足げに数秒間眺めてから、ウチは優しく微笑んだ。

 

「朝の恒例行事で一度も負けたことが無いからな。そのお祝いに脛を軽く蹴ってみたんだ。その様子だと…効果は抜群ってことだな。」

「それを笑顔で言うことかよ…ってか、軽くって…ドンだけ力強ぇーんだよお前は……」

 

 軽くってのはモチロン嘘である。正直あれは、結構本気で蹴ったんだが、まだまだ余裕な表情なのは、やはり男と、女の体つきの問題なのだろう。前まで喧嘩に明け暮れていた茅根との違いは、やはり経験の差と体作りの差なんだなと、改めて思う。

 

 

「…んで、話変わるけど、茜は好きなヤツとか居んのか?」

「……………ハァ!?」

 

 不味い、つい大声を出してしまって、クラスの皆がウチと茅根の方を向くが、すぐにどうでもいいと思ったのか、それぞれの会話に戻った。

 

 誰も追求しなかったことにひとまず安堵して、恥ずかしい思いをした元凶を睨み付ける。

 

 

 すると、「やっぱりな」と言わんばかりに、茅根はニヤニヤした顔つきになる。

 

「おっと、そんなに睨むなってば。睨むってことは好きなヤツがいるんだな…」

「ばっ!? そ、そんなことは…ない……。」

 

 

 最初は強い口調で言えたものの、後半は自信が無くなって、自然と張り上げていた声が一回り小さくなった。何故なんだ? 強く否定することができない。

 

 

 友達から聞いたことがある。

 

 人は誰かを好きになると、毎日が楽しくてしかたがないと。憧れの人とすれ違ったり、視線があったりするだけでも、心臓がドキドキしたり、話しかけられると嬉しくなったり、憧れの人が知らない女性と話をしていると悲しくなったり。さまざまな感情がうまれるが、正直よくわからない。

 

 なんにせ、ウチは今まで【恋】というモノを経験していないからだ。

 

 

 男子と話すことの、どこにそんな感情が生まれるんだ? なんで緊張するのか、よくわからない。

 

 

 

 

──好き。ってなんなんだ?

 

 そもそもウチには好きと言えるような人がいない。…いないはずだ……たぶん…?

 

 

 チラっと、真守をみてみた。

 

 今は自分の机に寄りかかって、朝一と義成の3人でおしゃべりに花を咲かせている。そのなかでも、自分の瞳が、真守だけを映してしまう。自分の目なのに、なぜかそっちが気になるのだ。

 

 

 あっ、クラスの女子が、真守に話しかけた。

 

 真守は楽しそうに笑顔でその女の子と話をしている。みんなに向ける笑顔が優しい顔が、今はなぜか憎い。

 

 

 その笑顔をウチに向けてくれればいいのに…真守なんて大嫌いだ。

 

 

 

 ってか、そもそもなんでウチは、真守をみたんだろう…ウム、よくわからない…

 

 そんなことを思っていると、ウチの肩をチョンチョンとつつかれたので、振り向いてみると、とてつもなくドアップした茅根の少し悔しそうな顔があった。

 

 

「うわっ!?」と、声を出しながら後ろに下がろうとしたものの、椅子に座っていたため、ガタッと音を上げて転びそうになってしまった。

 

 

 

「ちっ、俺は負けねーからな。」

「なっ、なにがだよ!?」

「ん、全部に決まってんだろーが。俺はぜってぇーに奪うからな。」

 

 最後にウチをみながら、茅根はニコッと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~放課後~

 

 サヤと一緒に、すっかり赤くなった空の下で帰り道を歩いていた。暑くなりつつあるこの時期、部活をやっていないウチたちは、汗をたくさん流すわけでもなく、帰宅していた。

 

 いつものように駄弁りながら歩き、ネタが尽きて一息していた時、サヤはなにか決心したような目になった。

 

 

 その姿に、なにか嫌な予感を感じた。聞いては聞けないような、後悔するような、そんな感じの予感。ウチは首をふってそんな思考を停止させるが、残念ながらその予感は的中することになる。

 

「茜ちゃん、私ね………真守君のことが好きなんだ。」

 

 

 歩きながら空を見上げながら、サヤはそういった。

 

「えっ?」

 

 

 動いていた自分の脚が、何かに引っ張られるかのように、その場に立ち止まり、動けなくなる。コンクリートの地面に草が生えて、ウチの脚に絡み付いて、全く動くことができない、そんな感じ。

 

 暑いはずの空気が凍り、何も感じられなくなる。汗が頬をつたり、静に地面に落ちた。コンクリートに汗が染み込むのと同様、サヤの言葉はウチの心に染み込んだ。一分一秒がとても長くて、長くて、長くて…

 

 

「茜ちゃん、私は絶対に負けないから。」

 

 あぁ、これ、どこかで聞いたことがある。どこだっけか?

 

 

 全然頭が追い付けなくて、ただただ呆然と立ち尽くした。脚が動かない。動けない。心臓が脈打ってうるさい。そして、心がとてつもなく悲しい。

 

──サヤも真守のことが好きなんだ…

 

 

 

 

 

 

 サヤ……「も」?

 

 

「あっ、そうなんだ。」

 

 止まっていた時計が動き出すかのように、ウチの固まっていた頭が一つの答えを導きだした。

 

 

──これが『好き』なんだ。

 

 ウチは緊張している顔のサヤをみて、息を吐きながら笑って魅せた。

 

 

「もちろんだ。ウチだってサヤにも負けない!」

 

 ライバルがいるから、親友がいたから、ウチは初めての感触を味わえることができた。 どっちかが負けるか、どっちも負けるか…ホントは怖くて嫌なはずなのに、気持ちの整理が必要なのに、なぜかウチは嬉しくなった。だって、サヤが正直に話してくれたんだ、ライバルって認めてくれたんだ、初めての気持ちに気づけて嬉しいんだ!

 

 

 

 男っぽくて、全然女の子じゃないウチでも、ちゃんと好きな人ができて、恋することができて、本当に嬉しいんだ。

 

 だから、サヤにこう言うんだ。

 

 

「サヤ、ありがとう。」

 

 

 二人で顔を見合わせて同時に笑った。

 

 サヤの真剣な宣戦布告を聞いて、ウチも宣戦布告をして、二人で笑ながら帰る。そのときに、新たな決意がウチの中で大きく芽生えたのだった。

 

 

 

 




好きな人でてこーい!

そう願う作者です。


感想&指摘よろしくお願いしまーす!!


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if story【真守と手を繋いで帰ったら】

遅くなりましてすみませんでした(土下座)
もう一つの方に力を入れているので、コチラの更新は少し遅いです。

今回は、もし、真守と晴れて恋人になったヒロイン達のリアクション。的な感じのヤツです。
久しぶりに書いたので、試し書きみたいになっていますが、楽しんでくれるとなによりです。それでは!




【もし、真守が「手を繋ごう?」と言ってきたら、どんな反応をするのか】

 

 

 

~優の場合~

 

 

「優、手を繋いで帰ろう?」

「ふぇ!?」

 

優は変な声をあげて、真守の顔を見た。

 

真っ赤に染まる空の下、いつもの通学路を一人で歩いていた優は、今日は偶然にも真守と出会ったため、一緒に帰ることになった二人。会話しながら歩いていたが突然、真守が笑顔でそんなことを言った。

 

真守が笑顔なのにたいして、優の表情は驚愕の一言につきた。目を大きく見開き、口を開けて驚いている。優自身、まさかこんなことになるとは、全然予想していない出来事(イベント)だった。口をパクパクとさせて真守をみるが、当の真守は笑顔で、優の返事をひたすら待っているようだ。

 

 

優はポッと頬を赤らめ、数秒間黙ったまま俯くと、何かを決意したのか、顔を上げて静かに真守の左手を自分の右手で握った。

 

 

「こ、コレでいいかな?」

 

恥ずかしいのか、またもや俯き、先ほど発せられた声も微かに震えていた。

 

そんな優を笑顔で見つめ続ける真守は、どこか満足したような顔で「ありがとう。」と告げて、再び歩きだす。そのあと優は、羞恥で心に余裕がなかったのか、無言のまま歩き続けたが、手だけは優の家に帰るまで放さなかったと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

~茜の場合~

 

「茜、手を繋いで帰ろう?」

 

真守が茜に向かってそう言うが、茜は無視して無言で歩き続けた。「聞こえなかったのかな?」と思い、もう一度言おうと息を吸ったところで、言葉を発するのを止める。その理由は1つ、茜をよくみてみると、茜の耳が真っ赤だったからだ。茜も、冷たく接しているように振る舞っているが、実のところ口許は既に緩まっており、ニヤける顔を抑えるので必死のようだ。

 

そこで、真守は先程言うことが出来なかった言葉を、あえてもう一度同じ事を言ってみることにした。

 

「茜、手を繋いで帰ろう?」

 

笑顔で訊いてくる真守に、茜は立ち止まって背を向けたまま真守に聞こえる程度の声で呟いた。

 

 

「どうしてもか?」

「どうしてもだ。」

 

 

「本当にか?」

「本当にだ。」

 

 

「…私が好きか?」

「大好きだ。」

 

 

真守に背を向けていた茜は、クルッと方向をかえてスタスタと真守の隣に来ると、真守の左手をギュッと握ってすぐにパッと、手を放す。

 

「コレでいいだろ、ちゃんと手は繋いだぞ?」

「えぇ~。俺は帰るまで繋ぎたい。」

 

幼稚園児が欲しいものを親にねだっているみたいだ。と、その時茜はそう心から思った。

 

「しかたないな…。」

 

溜め息を1つ着いて再び手を繋いで歩き出す茜だが、その表情は満面の笑みだった。

 

 

 

 

 

 

 

~彩夏の場合~

 

「彩夏、手を繋いで帰ろう?」

「えっ? ………よく聞き取れなかったので、もう一度ゆっくりお願いします。」

 

真守はさきほどと変わらない笑顔でゆっくりと、彩夏に分かるようにもう一度言った。

 

「彩夏、手を繋いで帰ろう?」

「……はいぃっ!! もちろん! 喜んで承ります!!」

 

驚いた勢いで、彩夏はそのまま真守の手を握った。

 

「……彩夏、コレじゃあ握手だ。」

 

しかし、緊張のあまり左手で手を握ったため、手を繋ぐではなく、握手になってしまっている。彩夏は「で、ですが…」と、両頬を赤くし、オロオロしてしまった。

 

そんな彩夏を見た真守は、笑顔のまま彩夏の頭を撫でた。優しく髪をとかすように真守は彩夏を撫でる。頭を撫でられたからか、彩夏は息を吐いて落ち着く事が出来た。そして、一旦真守から離れて正面に立つと、静かに真守を見つめた。真守だけを映しているその瞳は、とても力強く光輝いている。

 

「えいっ!!」

 

そして…ついに二人は手を繋ぐ事に成功する。

 

「やっ、やりましたよ真守君!!」

「あぁ、流石だな彩夏。」

 

無邪気に喜ぶ彩夏を目尻に、真守は優しく笑いながら、二人は肩を並べて歩きだしたのだった。

 

 

 

 

 

 

~萌那の場合~

 

「萌那、手を繋いで帰ろう?」

「あっ、今、呼び捨てにしたでしょ? どーしよーかなー?」

 

むすぅーっとした顔になるが、萌那の顔はどこか嬉しそうにも見える。本人はああ言いながらもまんざらではないらしい。

 

「あっ、それじゃあ今回は止めておきますね。」

「じょっ、冗談に決まってるでしょ! そこは察してよ!」

 

今度こそむすぅーっと頬を膨らませて萌那は怒ったのか、真守から顔を逸らした。真守はそんな萌那をみて笑いだす。笑いながら、真守は自ら萌那の手を握った。

 

「コレでいいですか?」

「………うん。」

 

真守の笑顔に負けたのか、ポカーンとした顔から、じょじょに頬を真っ赤に染めた萌那は、また真守から視線を逸らして違う方向を向く。その横顔をは、誰がどうみても恋する乙女の顔だった。

 

「萌那さんはカワイイですね。」

「………ばか。」

 

 

カワイイと言われて、素っ気なく返す努力をする萌那だが、体は正直で、真守と繋いでいる右手に自然と力が入ったことには気づかなかった。しかし、萌那自身は気づかなかったが、手を握られた真守は気づかないハズがない。真守は嬉しそうに帰り道をあるくのだった。

 

 

 

 

 

 

~美帆の場合~

 

「美帆、手を繋いで帰ろう?」

「もちろんいいよっ! はいっ!!」

 

そう言って美帆は真守の手を握った。そしてそのまま、手を握りながら真守の左腕を自分の胸によせて、と言うよりも、胸にモロに当てて真守と腕を組んだ。

 

「どぉー、まもるくん? わたしの胸の感触は?」

「スゴイデスネー」

「ふふぅーん、そうでしょ? そうでしょ? それに最近更に大きくなってきたんだよー? どう? どう??」

「ハイハイ…スゴイデスネー」

「えへへ~、ありがとう。」

 

そう言って美帆は真守の腕に頭を擦り付けた。真守の方から美帆のいい匂いが漂ってきて、少しずつ真守の理性を削ぎ落としてくるが、真守は鋼の精神で堪えることができる。が、次の一言で大きく削ぎ落とされてしまった。

 

「まもるくん、大好きだよっ♪」

「…っ」

 

天然は恐ろしいと、改めて思う真守であった。そこで、話題を少し逸らしてみることにした。

 

「明日、男友達の誕生日なんだけど、何か面白いものある?」

 

数秒間「う~ん。」と首を傾げて考えてから、美帆は閃いたのか明るい顔にしてから言う。

 

「カーネーション!!」

「えっ? …なんで?」

「えっ? だって明日はお母さんの日でしょ?」

 

 

輝く笑顔でいい放つ天然を苦笑いで対処して、真守は深く溜め息をついたあと、なぜか笑顔になってしまう自分の頬をムニムニと触りながら帰ったのだった。

 

 

 

 

 

〜陽乃の場合〜

 

「陽乃、手を繋いで帰ろう?」

 

真守が陽乃の目の前に手を差し出すと、陽乃はその手を真顔でパシンと叩いて払った。

 

「手なんて繋ぎたくないです。なんで先輩の汗くさそうな手を触らなくちゃいけないんですか?」

「じゃあいいや、ゴメンな?」

 

結構心に残る傷がついた真守は、苦笑しながら残念そうに俯いた。自分の手が汗くさいと言われて、実際に嗅いでみた。その次に、自分の拒絶された両手を、どうしたらいいか考えながら、自分の両手を無言でみつめる。が、次の瞬間、悲しそうな表情は喜びにかわる。

 

 

「手を繋ぐのはイヤですけど……腕を掴むなら…」

 

陽乃は、ソッポを向きながらも、顔を火照らせながら陽乃は真守の腕に手を回し、体を密着させた。しかし、それでも少し、陽乃は物足りなそうな顔をする。

 

 

「……先輩、これだけじゃ嫌です。ハグしてください。それもとびきり強く。」

「そっちの方が汗くさくないか?」

「ち、ちがっ!? ……大好きな先輩の温もりを感じたいんです。ダメ...ですか?」

 

 

陽乃のツンデレデレに負けて、真守は陽乃のコトを強く強く抱きしめる。

 

「先輩……へへっ、何だか先輩に抱きつかれるとキモチワルイですね。」

「えっ...なんだよそれ。」

「ふふっ、ホント、キモチワルイです。」

 

そう言いながら、真守の胸板に、どこか嬉しそうに頭をたくさん擦り付ける陽乃だった。

 

 

 

 

 

〜月乃の場合〜

 

「月乃、手を繋いで帰ろう?」

 

真守がそう言うと、月乃は何の躊躇いもなく、真守の手をギュッと握った。月乃の手は、思っていたよりも冷たくて、少し真守は驚いた。

 

「月乃? どうしてこんなに冷たいんだ…?」

「………体温が、低いから…だと、思う」

 

そう言い終わると、月乃は優しく微笑み、さらに強く手を握った。

 

「先輩の手、凄く温かい……ずっと、握っていたい」

 

足を止めて、月乃は正面からそんな事を真守に言った。恥ずかしかったのか、言い終わったあとに俯いてしまう。そんな月乃を見て、真守は心から可愛いと思った。

 

 

「陽乃もそうなってくれれば嬉しいんだけどな」

 

すると、今度は突然ムスッとした顔つきになる。

 

「今は…おねーちゃんはいない……私だけを、見て欲しい」

 

 

真守との距離を一気に縮めて、月乃はそう言った。そう言われた真守は顔を赤くして口元を抑えている。可愛らしい言葉に、この鈍感男はキュンと来たらしい。ソレに満足したのか、月乃は天使の笑みを浮かべて、真守との距離を近づけたのだった。

 

 

 

 

〜ひかるの場合〜

 

「ひかる、手を繋いで帰ろう? ……ていう前から繋いでるか」

「ん? まもる君、何か言った?」

「いや、何も」

 

真守は手を繋いで帰ろう?と言おうとした瞬間、すでに手を繋いでいるコトに気づいた。だが、ここでふと、驚くべきことが起る。

 

「いやっ!? いつ手を繋いだんだっ!?」

 

驚いてひかるに問いかけてみる。すると、ひかるは可愛らしく首を傾けて微笑んだ。

 

「いつって、ボクの名前を呼んだ時からかな?」

「……さすがだな」

 

 

真守は苦笑いを浮かべながら、握っている手に力を込めた。すると、ひかるは嬉しそうに真守に抱きついた。首に細い腕を回して密着して、見つめ合う。フワリと微笑んでから、ひかるは真守の唇に自分の唇を近づけた。

 

 

 

「……なーんてね」

「えっ?」

 

唇に感触がしなかった事に疑問を抱きながら、真守はひかるをみた。ひかるは笑顔を崩さないまま、真守の耳元に囁いた。

 

「まもる君からしてくれるまで、キスはお預けだよ?」

 

そう言ったひかるは、まるで小悪魔のように見える真守だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




これからも頑張るので、感想&評価よろしくお願いします!


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鈍感な後輩とナルシな先輩

急いで投稿したので、素晴らしく雑になっています

すみませんm(_ _)m


受験ややわ……


 貴意side

 

 むむっ。恋って、とっても複雑なんだネ。改めて思い知ったよ。

 

 

 

 

 7月中旬の、べっとりとした空気を歩きながら感じているオレは、実にCOOLだ。暑さに負けないように、涼しい格好の制服姿をしながら、ただいま通学路を一人であるいている。ブレザーのボタンを全部開けて、Yシャツの第一ボタンもあける。まさにカッコいい男とはオレのことだな。

 

 正直、オレはカッコいい顔をしていると自信がある。前に自分の部屋で鏡を見ていたのだが、それはもう……めちゃくちゃカッコよすぎて惚れるところだったほどだ…。

 

 

 しかし、こんな完璧副会長でも、ただひとつだけ、どうしてもできないことがある。それは…

 

 

 

「あ、おはよー貴意くん。」

 

 突然背後から思い人の声が聞こえたので、ビクリと肩が動いた。ゆっくりと首を動かし振りかえるオレは、まるで錆び付いた人形が動くみたいにギコチナイ。

 

「お…おはよう……内井さん。」

 

 

 いつもと違って突然現れて緊張しているのか、自然と声が震えてしまう。顔は熱くなって、身体中から汗が噴き出して止まらない。視界がグルグルしはじめて、内井さんが二人にみえだした。

 

 

「どうしたの貴意くん? もしかして具合が悪いの?」

「そそそそ、そんなわけないよ。気のせい気のせい。オレは…大丈夫だから。」

 

 

 昨日も練習しまくった完璧スマイルで今日こそは…落とす!!!

 

 

 言い終わった直後に、会心の笑顔を内井さんに向けると、内井さんはホッとしたのか、優しく微笑んだ。

 

「なら保健室に行かなくても大丈夫だね。よかったよかった!」

「なっ!? …う、うん。…そう、だね…………。」

 

 

 

 

 クソーーーーー!!!!!!!

 

 イベントを逃しちまったぁあー!!!!!!

 

 

 オレは心のなかでとにかく叫んだ。さっきの行動をとって後悔しながら、頭を抱える。

 

 

 保健室に行くだとっ!? それはもう落ちたも同然!! 男のオレが覚醒して、一気に畳み掛けて…そして、見事にハッピーエンドになる、そうはならなくとも好感度が一気に急上昇する大大イベントをオレは逃しちまったぁあー!!

 

 

 ベットで弱ってるオレを見て、内井さんはときめき、オレの顔とか体をさわりはじめて、そしてオレが寝たフリをしながら内井さんの腕を掴んで「も、萌那…好き…だよ。」って呟いたら一瞬でノックアウトだったのにぃー!!

 

 

「オレのバカ…」

 

 つい、口に出てしまうのは、しかたなのない癖である。

 

 気づかれない程度にため息を一つ着いて、オレは気をとりなおすことにした。

 

 

 なんにせ、今日は偶然同じ時間帯での登校なんだぞ。こんなのなかなかない。まるで運命の神様がオレの頑張りを称えるかのように、こんな奇跡を起こしてくれたのだ。これは有効に使わなくては…!!

 

 

 そんなことで頭をいっぱいにしていると、ふと、内井さんの髪の毛に目がいった。

 

 とてもきれいな髪の毛で、一本一本が艶やかで、お団子で結んでいるのに、柔らかい印象をオレに植え付けた。とても綺麗で上品な髪の毛なのに、内井さんは髪の毛を下ろそうとしない。体育の水泳の時は、下ろしているものの、上がるとすぐさまお団子になおしてしまう。だから、内井さんのストレートヘアーはレア物なのだ。噂では、好きな人にしかストレートヘアーを見せないとか…

 

 髪の毛を見たあとに、自然と内井さんの横顔を見てしまった。首が勝手に動いて、視線が内井さんの綺麗な横顔に釘付けにされてしまう。

 

 

 整いすぎた綺麗な顔立ちに、キュッとした薄いピンク色の唇。肌は前の体育祭で少し焼けているが、それがちょうどいい。はにかんだ笑顔を人が直視すれば、その人は一瞬で虜にされてしまい。気づいた時には、すでに【内井萌那生徒会長ファンクラブ】に入会していることだろう。

 

 それほど彼女は、とてもすごい人なのである。

 

 そんなすごい人に、オレは恋に落ちてしまった。

 

 

 

 

 恋に落ちたきっかけは、生徒会に入った時だ。当時は、オレが会長にならなかったのに納得がいかなくて、不機嫌なまま生徒会室に行ったのだ。するとどうだろう、扉を開けたそこには、夕日に照らされながら窓を眺めている生徒会長がいたのだ。窓を少し開けていて、風が微かに入ってくる。

 

 そしてコチラに気がついたのか、ニッコリと微笑んだのだ。その笑顔は美しく、綺麗で、マジで惚れた。

 

 ハッとして、首を横に振りさっきの光景を頭から離す。あのころは、外見だけ会長だと思っていたからだ。彼女に近づき、スッと右手を差し出した。

 

「よろしく、演芸 貴意だ。仲良くしてくれると助かる」

 

 オレの最高にカッコイイSMILEでキメた。このオレ様の完璧イケメンSMILEにかなう女子は存在しない! なので、オレの完璧イケメンSMILEを見た者は、必ず堕ちる!! ハズだった。

 

「うんっ! ヨロシクねー!」

 

 オレよりも倍の可愛い笑顔でやり返されて、見事にオレの方が堕ちてしまったのである。

 

 

 

 

 そんな懐かしい思い出に浸っていると、内井さんは脚を止めて、ある一点に目が釘付けになっていた。嫌な予感がして、オレもソッチを向いてみると……案の定、そこにはオレの永遠のライバル、塚崎 真守が居るじゃないか。

 

 塚崎 真守とは、成績優秀、運動神経抜群、優しい、イケメン(まあ、オレには及ばないけど(笑))、友達想い。まさに、女子の理想がぎっしりと詰まった結晶だ。女子からはモテ、男子からは尊敬の眼差しで見られる。誰もが見惚れ、近づく、カリスマだ。まあ、オレの方がモテるし? イケメンだし? 優しいし? 友達想いだぞ?

 

 えっ、声が震えてるって?

 

 そそそそそ、そんな分けないだろ? こんなにカッコイイオレがビビるなんてないんだからな?

 

 

 ゴッホん。しかし、そんな奴にもキチンと弱点があるのだ。その弱点、それは奴が極度の鈍感ってことだ。いや、ホントに。

 誰もが意識はするだろう女の子のアタックを奴は見事に躱し、気づかない。いや、気づくことが無いのだ。そのような構造になってる。

 

 例えば、誰が見ても可愛らしい女の子が「好き」と言ったら「俺も友達として好きだよ」と、最高の笑顔で言うやつだ。

 

 fwo iguzanpo 誰が見ても可愛らしい女の子が顔を赤くしたら「熱あるの? 保健室いく?」と、心配そうに言うやつだ。

 

 正直言って、なんであそこまで鈍感なのか分からなすぎて、女の子に同情する始末だ。もはや病気と言っても過言ではない。

 

 

 そんな奴に、内井さんは恋をしている。

 

 何でかは分からない。なんであんな奴に恋をしてしまったのか、オレには分からない。けれど、オレが内井さんに向ける本物の好きと同じように、内井さんは奴に本物の好きを向けているのだ。それがたまらなく悔しい。

 

 コッチを向いて欲しいのに、奴なんて居なくなればいいのに。そう何度も思ったさ。けど奴にもいい所があるのを、オレは知っている。だから余計に腹が立つ。悪質だ。

 

 

「けれどもオレは、諦めない」

 

 

 

 緊張で震える手を誤魔化すように握りしめる。心臓が加速し、身体中が熱い。それでも、オレは彼女のコトを諦めたくは無かった。勇気を振り絞り、口にした。

 

「うちい……、もっ……萌那っ!」

 

 コッチを向け!! 向いてくれ!!

 

「んっ、いきなり名前で呼んで……どーしたの?」

 

 彼女はオレに顔を向けて、面白おかしく笑った。オレに名前で呼ばれたのが意外だったのか、少し驚いた顔をしていた。

 

 それがたまらなく嬉しくて、嬉しくて。湧き出る羞恥心を抑えながら、返事をする。

 

「なんでもない!」

「……えぇー、なにそれー」

 

 そう言って彼女は話を続けてくれた。

 

 

 

 オレの好きな人は、オレの後輩が好きだ。オレもその後輩は嫌いじゃない。いい後輩と思っている。だからこそ、彼女のことに関しては、一歩も引く気は無い。もしお前が萌那を選ばなかったとしたら、オレが持っていくからな。

 

 複雑な心境だが、オレは何故か、微笑んで萌那の話を聞いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




息抜き程度には書き進めます……

受験が終われば、すぐにでも投稿しますので、もうしばらくお待ちください。


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