艦これはじめたらこちらの世界と鎮守府を行き来できるようになりました(改めて、供養) (トマト中毒 ww)
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始まりの夜

さて、初めましてトマト中毒です。
この度小説の執筆を始めようと思いまして、どうしたもんかとネタを探してたのですが、よくよく考えて同じく最近始めたばかりの艦これを題材にしてみようと思い、勢いですっ飛んでみました。
では、本編をどうぞ。


ゲームソフトのケースがズラリと並んだダンボールの箱。

途中で止めた参考書や、中途半端に手をつけてそのまま放置された宿題が小さめな山を作る机。

きれいに畳もうと苦労して、それでもいくらか雑になった衣服類が詰め込まれた押入れのクローゼット。

これぞ、とばかりに典型的な高校男子の部屋である。

 

2015年○月×日深夜、○☆県×△市♪区のとある一軒家の、そんな典型的な一室にて、ある男が1人、パソコンをベッドに引き込んでネットの海を渡っていた。

 

「確かこのサイトだったよな……よしっあった!」

 

彼は何を探していたのか?

それ即ち、

 

「遂に俺も『艦これ』デビューか!どんなゲームかな……」

 

そう、彼は新しく『艦隊これくしょん』の提督の一員になろうとしているのである。

彼の名前は藤原克哉、17歳。

彼は本来『艦これ』のサービス提供元であるDMM.comの登録可能年齢に達していない。

が、彼の周りには彼の友達や部活の後輩など、既に多くの提督がいた。

その内の1人なんか中学の頃にβテスターの1人であったくらいだ。

最初は自分の環境でプレイすることが出来ないと無関心を徹していたが、彼らが言う艦これの面白さに興味を惹かれた克哉は、つい昨日中間テストが終了したことを機に艦これを始めようと決意した訳である。

 

 

「……よし、登録もできたし、早速始めるか!」

 

克哉の興奮の強さに、微妙にベッドが軋む。

元々克哉はゲーム好きなため、新しいゲームとなると一気にハイになる性分なのである。

とはいえ、あまりうるさくするとゲーム根絶派の母親や姉が起きる可能性がある。

そんな事になれば、某リンゴマークの電話できるパソコンを取られるだけでは済まない。

実はこのパソコン、その母親の物なのだ。

これが、克哉が艦これをプレイ出来ないとした原因である。

要は、『自分用のパソコンを持っていない』のだ。

上記の通り、私と共に克哉氏を観察している貴方方の内、約半数が覗き込んでいるであろうその長方形の板、コンセプトとしては『会話ができるパソコン』と銘打ってはあるが、パソコンとは完全なる別種のモノ。

かのDMM社は、スマホ版のページとパソコン用ページを分けただけでなく、スマホ用ゲームとパソコン用ゲームの区別までつけてしまったのだ。

艦これは言うまでもなく、後者の方だ。

もちろん、今現在はリンゴで無い方でアプリ化された様ではあるが、克哉にとっては関係無い話、むしろ省かれたという観点からすると当事者になるのか?

喜ぶべきは、何故か彼の母親がいつも電源が着いたままパソコンを放置して寝る事である。

彼はリビングに置いてあるそのパソコンを、同じくリビングで勉強していた姉が寝静まるのを待ち、こっっそりと音を立てないように慎重に自分の部屋へ運んできたのだ。

明日から毎日、このハラハラする作業をしなければならないのかと思うとぞっとした克哉だが、何か打開策が見つかるまでの辛抱と割り切った。

 

「あとで検索履歴も消しとかないとなぁ……取り敢えずスタート!」

 

克哉はスタートの文字をクリックし、プレイヤーの名前を記入、サーバを選んでクリックした。

すると、

 

「っ!?」

 

突然パソコンの画面が歪み、ブラックホールのように渦を巻いた。

そしてすぐ側にあった克哉の頭を捉え、瞬時に画面の中へ引きずり込んでしまったのである。

 

「なっ!?えっ、ちょ、まあああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

唐突な事に咄嗟にまともな言葉も発せず、気がついたときにはもうパソコンの画面の向こう側に頭がめり込んでいた克哉の声は、パソコンの画面の外に吐き出されることはなかった。

 

 

 

 

 




……いかがでしょうか。
皆さんの暇つぶしになれるなら幸いです。
どうぞよろしくお願いします。


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ここは何処だ?

早くも2人、感想を貰えました。
俺のリア友も言っていた、感想は執筆活動の糧と。
ええ、嬉しくて必死こいて考えて金曜日に出すつもりだったのを今日仕上げて出しちゃいました。
今日一日中考えて出した一話ですが、どこか誤字やらここの表現がもっと欲しいとかあったら感想までお願いします。
では、本編をどうぞ。



クレーン、入渠舎、工廠、建造ドック……

カモメが空を舞い、ちびっちゃい女の子、通称妖精さん達が行き来するとある鎮守府。

 

「うわっ⁉︎」ドサッ

 

その一角、建造ドックの裏手に突如大きな黒い穴が湧き、妖精さんとは違う大きな人影を吐き出す。克哉だ。

 

 

 

 

 

「いってててて……」

 

尻から地面に着陸した俺は、ヒリヒリする尻をさすりながら辺りを見回した。

倉庫みたいなでっかめな建物、クレーンに、人がデフォルメされたような小さな小さな女の子?みたいなのがモップ持ったままこっち見て唖然としているのが見える。

 

「どこだここ?てかなんで日が出てるんだ?」

 

確か自分は深夜ベッドの中で艦これを始めようとして、パソコンで艦これでの提督名とサーバを選んだとこでなんかパソコンが歪んで……?

 

「?????」

 

何が何やらさっぱりピーマン。

取り敢えずこの状況とネット小説の知識からすると、大体の場合ここは艦これと関係の深い場所なのだろうが、自分は何も事前準備せず始めたからまっっったく状況が掴めない。

なんかあの小っちゃいの(妖精さんです)動いてるし、人型だから意思疎通は可能か?

もし可能なら、是非とも此処の情報が欲しい。

 

「なあ、そこの……」

 

ビクゥッ!!!!???

 

なんかアニメでよく見る、肩がトゲトゲみたいになる驚き方をしたちっちゃいの(妖精さんです)は、それでもこっちの話を聞いてくれるみたいだ。

めっちゃ可愛い。

 

「ここは何処なんだ?」

 

山ほど聞きたいことはあったが、取り敢えず頭に浮かんだことを尋ねた。

場所の把握は大事だね、うん。

帰ってからどういう風に艦これに関係するのか調べられるし。

もっとも、まず帰れるかどうかが問題なのだけれど。

 

「……ピ」

「ぴ?」

 

なんか最初の頃のポケ◯ンのアニメ見てた人しか分からんだろうけど、トゲ◯ーみたいな音程だな、声。

やっぱり小さいとそんな感じになるもんなのかね。

 

「ッピャアアアアァァァァァ!!?」トトトトトトトト

「おおぅっ⁉︎ってちょっと待っ……」

 

行っちまったか……ちっちゃいだけあってすばしっこいなぁ。

小ちゃい体だから、声の音量も小ちゃくて助かった。

あれ普通の声量まででかくなってたら、恐らく耳キーンなってるぞ。

ずっと此処にいてもしょうがないし、移動してみるとするか。

 

 

……まさか、今のが艦娘とかないよな?(だから妖精さんだって)

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

一方、鎮守府の最も大きな建物の中、提督の部屋。

前任の提督の頃のままの内装、板張りの床に赤いカーテンの窓がどこか一昔前の建物を想起させる中、その中にデデンと積み上がった段ボールの山の前で、1人の女の子がじっと立っていた。

 

「えーと、もう来る筈なのですが……提督はどうしたのでしょうか」

 

小さな体に栗色の髪、セーラー服は寝起きで急いで着たのか少し乱れており、ハシバミ色の大きな目には不安の色が浮かんでいる。

彼女はただの少女ではない。

背中に12.7㎝連装砲と90式魚雷を小型化したような外装を背負い、手には魚雷菅から取り出した魚雷を一本抱えている彼女こそ、克哉が今しがた話題にした艦娘の内の1人、駆逐艦の『電』である。

「でん」ではなく、「いなづま」である。

 

「朝の牛乳を飲まずに来ちゃったけど、一旦取りに帰っていいかなぁ……?」

 

因みに、長身で素敵な女性になるために朝の牛乳を欠かさないという、なんとも可愛いらしい一面もある。

そんな彼女は今、新しく配属される提督の到着を待っていた。

 

「マルナナサンマル、30分も経過したの?まだかなぁ……」

 

彼女が待っている提督とは、もちろん……

 

「……あれ?妖精さん、どうしたんですか?」

 

母港内で絶賛迷子中のこいつである。

 

「わっ、なんかいっぱい来た!なんだなんだぁ!?」

 

妖精さん、新任提督カツヤ捕獲せり。

 

 

 




俺が最初選んだ艦も、いなづまでした。
後にWikiみて、任務遂行のキーになると書いてあって、ちょっと得した気分になりました。
現在、川内が出てくれなくて那珂ちゃんだよーに悶絶しております。


……いくら嬉しくても、こうホイホイ話出してたら時間が無いかなぁ。
やっぱり一週間周期で出したほうが良いかな?


11/4、「いかづち」としていたのを「いなづま」と直しました。
なんとまあ不甲斐ない凡ミスをorz


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提督になりました

ようやっと、家の鎮守府に川内が

キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!

長かった……すごく長かったぞおおぉぉぉぉ!!!
そして待望の第3艦隊編成!
ようやく滞っていた遠征が進捗するぜイャッホゥ‼︎

嬉しかったので水曜日うpするつもりだった続きを今出します!
では本編をどうぞ!


こんにちは、克哉です。

小人みたいなのの大群に囲まれて、そのまま連行されてます。

 

「うわっとと、歩き難いってマジ!ちょっと離れてってば!」

 

想像してみて欲しい。

手くらいの大きさの小人の大群に包囲されて後ろからかかとのあたりを押されてるこの状況、非日常にも程がある。

何よりそんなに足元に群がられると、ちょっとした事で彼女達を踏んでしまいそうで怖い。

方向を示してくれたら自分で歩くのになぁ……。

ん?なんか向こうから女の子がこっち走って来てるな。誰だろ?

 

タタタタタタタ

 

「はぁっ……はぁっ……て、提督ですか?」

「へ?」

 

いきなりだったので聞き逃してしまった。

それよりなんかめっちゃ重そうなもん背負ってるけど、大丈夫かこの子?

てかバットみたいなの持ってるけど、それだけでも置いてきたら疲労度が違うだろうに。

 

「ふぅ〜……えっと、あなたは今回こちらの鎮守府に赴任してきたカツヤ提督ですか?」

 

あぁ、成る程そう聞いてきたのか。

俺、よく考えたら迷子だったし、もしかしたら俺を探してくれてたのかもしれん。

提督ってのは、艦これをスタートした時点で確定なんだろうな、これ。

てか、俺パソコンカタカタ触ってた時の寝間着まんまじゃん!

提督として部下との初対面がジャージってどうなんだこれ……。

 

「そうだよ、なんかゴメンね迷子になってしまって」

「いえ、そんな……」

 

めっちゃいい子じゃないか、よく見たら可愛いし。

妹にしたいな。

 

「電です。どうか、よろしくお願いしますね…?」

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

「で、此処は何処なんだ?俺、いきなりここまで飛ばされてここの事よく分かってないんだよ」

「それも含めて、これから提督さんの部屋になる場所で全て説明しますので、まずはそこに移動しましょう」

 

あの小人たち(妖精さん、というらしい。覚えておかないと)が帰ってから、俺と電は歩いて『俺の部屋』に向かっていた。

つまるところ、提督室である。

 

「ここを左に曲がって突き当たりの階段の一番上まで上れば目の前に提督室があるのです」

 

えっと、左右右左右階段で一番上まで行って目の前、と。

うし、覚えた。

 

「ちなみに、鎮守府の中で一番大きいこの建物は、提督の部屋をはじめ艦娘の部屋、食堂、購買スペースなどが内包された居住舎なのです」

「なるほど見上げるほどでっかい訳だなぁ」

 

とか言いながら階段を登りきると、やたらと豪華な扉が前方に見えた。

学校の校長室の扉みたいな、材質としては木だけなのだけど、すごい緻密な細工が一枚板に施されてる感じ。

 

「あそこが、提督さんのお部屋です」

 

やっぱりあれが俺の部屋らしい。

てか自分みたいな思いっきり庶民肌な部類の人間にはやはり一定の抵抗感があるというか……

 

「(わーあの扉ナンボかかってるんだろうなーゲームソフト15本位買えるんだろーなー……)」

 

軽く放心状態inしましたー。

 

「提督さんどうぞ…ってはわわわわっ⁉︎」

 

わはーこれって出世するともっと豪華になっていくんだろーなーてか初期状態の扉一枚さえこんななんだから手柄立てるとどんだけー……。

 

「提督さんの口からいけないモノが出てるですっ⁉︎提督さん戻ってきてくださーい!!」

 

 

 

 

その後もしばらく口から魂を垂れ流したカツヤは電の必死の介抱によってなんとか現世に戻ってきたとさ。

 

 




ふへぇ〜、出し切った……。

誤字・誤表現などは感想にどうぞ!

ではでは、また何もなければまた来週。
さーて、次は羽黒って人か……。


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なんとか帰れた……

おはこんば(こっから先NG
さて、ちょっと待たせてしまった今話、急展開+ご都合主義要素入ります。
皆さんの好みに関係する大事な事なのでもう一度。

今話、急展開+ご都合主義要素入ります。

無理!という人、ちょっと一気に後書きまでご足労願います。
いや、足使わないからご指労願います。
さくっと完結な文章にしときますので。
では、ばっちこいという方々は、本編をどうぞ。


カツヤが放心ならぬ放魂から還って来て少し後。

 

「取り敢えず、俺は何故この場所に飛ばされたんだろうか?」

「少なくとも、ジャージのまま工舎裏に現れるなんて事は聞いた事ないのです…」

「だよなぁ……」

 

電とカツヤは提督室に入ってダンボールの山の前で2人して首を傾げていた。

前任の提督だったおじいさんの小さな壁にかかった写真が2人を見つめている。

その眼差しはほんの少しだけ、柔らかい優しさがこもっていた。

 

 

 

 

 

さて、ついさっき俺はふと思った。

目の前の女の子、電は可愛い。

それこそ、2次元の住民が3次元に飛び出してきたと言われても納得できるほど顔立ちが整っている。

改めて俺は2次元の中にいるのだなぁと実感できるね。

俺が置かれてる状況は電にも教えた。

本当なら訳ワカメの一言で一蹴されそうな俺の境遇を、彼女は笑いもせずに真剣になって考えてくれる。

めっちゃいい子や……(´;ω;`)

数少ない、気が置けないダチの内のオタク共が言っていた「俺の嫁」ってのが少し理解できた気がするぜ!

……なんかごめんね、電。

 

「えと、何か言いましたか……?」

「ん?いや、何も言ってないけど?」

「そうですか」

 

……鋭いなぁ、この子。

 

気を取り直して、俺は考えた。

俺は、艦これを始めようと思ってパソコンを覗き込んでいる最中にパソコンの画面に生まれた渦のようなモノに吸い込まれてこっちに来た。

ならば、何らかの方法でその渦をこっちで発生させられたなら、向こうに帰ることができるのではないだろうか。

もしかしたら、その方法でこの世界と向こうの世界を行き来することが可能かも知れない。

ならば、何が条件でアレが発生したのかを調べなければ!

 

「なぁ電」

「はい、なんですか?」

「この鎮守府って、ベッドある?」

「……へ?」

 

 

 

 

 

あれからさらに少し時間は進み、現在鎮守府の時計は9時を表している。

あれからあらゆる可能性を探ってみたが、全くあの渦は出てこない。

ベッドに潜ってみたり(誰のか知らんけど借りた)、パソコン使ってみたり(書類作成用のツールしか入ってなかったけど)、部屋をいい感じに散らかしてみたり(後でちゃんと片付けました)。

一体何が正解なんだろ?

 

「ほんと何が条件でアレは出現したんだろう?部屋の照度を試すためにも夜まで待つしかないのかなぁ?」

「でも、このままだと提督さん学校行けませんよ?学生としては致命的ではないでしょうか……?」

「うっ……」

 

今日は眠っていないから、身体的にも精神的にもキツイ。

このまま学校行っても爆睡確定だな。

てか、おそらくまだベッドの上にパソコンあるんだろうなぁ。

こっち来てからもう一時間半が経っており、時間の進み方が同じなら向こうは4時、後一時間ちょいで母さんが起きてくる。

となればいずれはパソコンの消失に気づいて探すだろうし、無論一番怪しまれるのはこの俺だ。

 

ヤ バ イ

 

見つかったらパソコンは元に戻される。

あの渦が発生する条件が狂って帰れないかも知れない。

そしたら仮に向こうに帰れたとしてももう艦これで遊べないかもしれないし、こっちに帰ってこれないかもしれない!

せっかく電とも仲良くなったのに!

まだ妖精さんたちとも打ち解けあってないんだよ⁉︎

 

「提督さん…?」

 

まだだ、まだ諦めてはいけない!

てかなんでサクッと出てこないんだよアレ!

そもそもアレがいきなり出てきたからこんな事態になってるんじゃねぇか!

 

「提督さん、落ち着いt」

「さっさと出てこいやああぁぁあぁぁぁぁ‼︎‼︎」

 

グニョォォォン

 

「「……え?」」

 

なんか普通に呼んだら壁に出た。

え?こんな簡単に出せるもんだったの?

じゃあ今までの苦労と電にかけた迷惑は何だったの?

全部無駄だったってか?俺思いっきり道化(ピエロ)やってたワケ?

 

「何やってんだ俺……」

「提督さん、きっと…いい事あるですよ……?」

 

orzの格好になった俺の頭を、電が撫でてくれた。

マジでええ子や……(T^T)

 

 

 

一旦家に帰るために渦に潜った俺は、いつの間にか俺の部屋の机の前に立っていた。

あれ?俺ベッドの中から転移したよな?

ベッドに目をやると、艦これの画面がついたパソコンが置いてあった。

時刻は午前4時、予想通りだったか。

その他全部、転移する直前そのままだ。

 

「待ってろ!すぐに元(の場所)に戻してやるからな!」

 

取り敢えず艦これをやっていた証拠を隠滅、デスクトップがついたままのパソコンを忍び足でリビングへ!

そして音を立てずに定位置に定角度で配置したところで、パソコンの画面、時刻表示に気がついた。

 

09:00

 

「(これかよっ‼︎)」

 

どうやら、向こうはパソコンの時間に沿って時間が決まるようだ。

気がついて良かったぜ……。

そして時刻を正しく直してデスクトップのまま放置、自分の部屋に戻るとすぐに渦を呼んで鎮守府に移動した。

 

「てっ、提督さん…!なんだか急に空が暗くなったのですっ……⁉︎」

「お?ほんとだ。まあだいじょぶだから落ち着け?」

「でもっ…えっ…?ええっ…⁉︎」

 

帰ってくると電が妖精さんたちとワタワタしてた。

確かに外が暗くなって時刻もちゃんと4時過ぎになってる。

まぁ、俺がやったんだけどねー。

パソコンの時刻表示とつながってるって、一体どういう仕組みだろ?

 

「えっと妖精さんっ…!一旦、落ち着きましょうっ……!」アセアセ

 

彼女たちのテンパってるところを見てると今更危機を脱した実感が湧いて、

 

「よっしゃ帰れたし戻ってこれたああぁぁあぁぁぁぁ!!!」バッ

「はわわわっ⁉︎」

 

嬉しくって嬉しくって、そのまま電を捕まえて抱きしめたままグルグル振り回してしまった。

 

「わははははー‼︎」グルグル

「はわ…(あ……)」

 

後から考えて「やっちまったっ⁉︎」とベッドの上でグリングリンするレベルの事をやらかしたが、その時は喜びが先行してそこらへんは御構い無しにやってたので許してほしい。

 

「(あったかい……/////)」

 

 

 

 

正気に戻った俺は電に必死こいて謝った。

すごい顔真っ赤にしてたけど許してくれた。

そっか、やっぱ恥ずかったか……

その後、俺はあの渦に関する検証を行った。

 

「で、仮にあの渦にシフトホールと名付けるとして、あれは俺の頭の中の行きたい場所を読み取ってそこに送ってくれるらしい」

「なるほど、便利な…って何ですかこrはにゃっ⁉︎」バチッ‼︎

「ん?」

 

電に検証した結果を伝えていた時、不意に何かの紙が落ちてきた。

電が拾おうとしたらバチッて聞こえたが、静電気か?

代わりに俺が拾い上げて、紙を読む事にした。

 

 

貴方は私に名前を与えた事により、私こと『シフトホール』を所有する権利を得ました。

よって、私をいつでも呼び出せる能力が付与された時計を贈呈します。これを着けた瞬間から、貴方は貴方と貴方が認めた生命体が私の中を通ることができるようになります。では、どうか正しい用途で私を使役して下さることをお願いします。

 

シフトホール

 

 

「……ナニコレ?」

「さ、さぁ……」

 

首を傾げる俺の左手首に、どこからか出現した黒地に金糸が入った色の時計がはまり、小気味いい刻の音を響かせ始めた。

 

 

 




カツヤ、自分を鎮守府に連れてきた渦のようなモノの発生条件を模索し始める。

ベッドや部屋の散らかり具合など、色々試したが条件らしきもの発見できず。

学校どうしようとか、パソコン使ってた証拠消さないととか考えてまくって軽くパニックに

急に全てあの渦のせいだと怒り出し、出てこいやの一言

さくっと渦が出てきて、自分のピエロ加減に落ち込みつつ無事証拠を隠滅して帰ってくる

帰ってきてから安心感にほっとしてはっちゃける

電にフラグピコーン!

渦に関する検証を行い電に報告中に渦が自由に使ってくれと贈り物してきた。

カツヤは自由に鎮守府の世界と自分の世界を行き来できるようになった!


はい。これが内容です。
簡潔じゃねえって?これでも本文の一割の文字数です。

正直、今回オチに悩みまして。
次の話もあるし水曜日に出そうと思ってたのですが、今日の今日まで悩み続けまして、結果最後ら辺が急展開→ご都合主義→終了!となりました。
まだまだ時間も経験も足りてないですが、なんとか皆さんに一時の暇つぶしを提供したかったので。

次はカツヤが学生として生活している世界の一幕を加えたいと思います。
また時々こんな事になるかもしれませんが、暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。
では、また来週のどこかで。


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ダチ、そして異変

ども、トマト中毒です。
名前の通り、トマト中毒です。
あれはもう一種の麻薬ですね、本当に美味しい。特に丸齧りでいきたい!

いや、それはいいとして。
先輩になる、同じくハーメルンで活動してる作家さんから色々とアドバイスもらいました。
この小説を書き始めてもうすぐ1カ月経ちますかね、そんな若輩者に本気で助言をくださった彼(彼女?)に改めて感謝の気持ちを伝えとうございます。
本当にありがとうございます!
今俺の小説を読んでくれている皆さんも、
本当に有難うございますm(_ _)m

これからも、ここがダメだとかここがおかしいとかございましたらガンガン叱ってください、直せるところは直し、疑問なら聞き返し、成長して参ります。

その点に於いて、この小説は俺だけが作ってるのではありません。
読者の皆さんと俺との共同作業に等しいと自分、勝手に思ってます。

では気をとり直して、本編をどうぞ。



なんやかんやあった次の朝。

 

「眠い……」

 

俺は眠気にフラフラしながら、いつもの通学路を自転車で走っていた。

自転車だから走るが適切かと思いこの表現を使ったけど、実際のところフラフラ危なっかしく自転車を人が早歩きする位の速さでこいでいるだけ。

自分が通学中に寝ないようにこうやって誰かに説明するが如く思考しながら、学校の教室まで自分を操作して行く感じでなんとか道のりの半分まで来ている。

あれから俺は、提督としてのレクチャーを受けていた。

なんせ色々とありすぎて頭が興奮状態になっていて、全く眠くなかったからな。

電も最初らへん眠くなさそうだったし、本来なら鎮守府に着いてすぐに始めるはずだった俺の仕事について聞いていた。

そのおかげで鎮守府内の施設の概要や位置は把握できたし、妖精さん達とも打ち解けたが、やはり睡眠は大事だな。

睡眠時間が6時間以下の人はパフォーマンスが一気に下がると聞いた事はあったが、それ以前にここまで眠くなるとは思わなかった。

数学の時間にでも寝るか……。

 

……Zzzはっ⁉︎ Σ(゚д゚)

危ない危ない、も少しで自転車こぎながら船をこぐとこだった。

学校までの道のりも半分か、なら提督としての仕事の仕方でも思い出すとしよう。

えっと確か……

 

 

 

 

「提督さんの仕事は大まかに分けて7個ありますです」

「7?想像よりは少ないね」

「もちろん大まかに分けてなので、本当はもっとあるのです。大体……12か3位なのです」

「そうか、その位かぁ…」

「なのです」

「……では俺はもうさすがに学校の用意があるのでこれにて」

「ではまた明日、いえ今日?に説明するのです」

「ありがとう、じゃあ今はお休み……」

「お休みなさい、なのです…ふあぁ……」

 

 

 

しまった聞いてなかったっ!

もう時間的にギリギリだったし長くなりそうでつい逃げてしまったけど、電も眠そうだったので正しい判断だったのかもしれない。

てか電も無理してたか、申し訳ない事したな。

ええと、何か思い出す事…

 

「おーい克哉、通り過ぎてるぞー」

 

え?

 

後ろを向くと、ダチの一人で艦これを俺に勧めてきた張本人の富山和樹が校門の前でこちらに手を振っていた。

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

「そっかー、遂にお前も艦これ始めたかー!」

「あぁ、そうなんだ」

 

俺と和樹は教室までの廊下を並んで歩いていた。

こいつ、中学の時は町一番のヤンキー頭だったらしいんだけど、不意に始めたアプリが美少女系のやつだったらしく、それを切欠に足を洗ってオタク街道を突っ走っている、ちょっと変わったヤツだ。

ケンカに明け暮れた頃の名残なのか、その筋肉質な体には小さな切傷とかが所々残っている。

それだけ見るとめっさ悪いヤツだけど話してみると気の良い男で、そのワイルドなカッコからか意外に女子に人気だ。

だが……

 

「なあなあ見てくれ!俺の嫁、また進化したんだぜ!」

「はあ……」

 

美少女ゲーやってる時に一番輝いてるなんて、あの子達知ったらめっちゃドン引きすんだろーなー……。

 

「あ、そういやお前、パソコン使えなかったんじゃねえの?」

「へ?」

「いや、艦これはパソコン使わないとできないぞ?最近その状況は緩和されたけど、お前の持ってるリンゴ印じゃできないはずだ」

 

そう、後で調べたのだけれど、最近アプリで艦これが出来るらしい。

もっとも、それは俺が持ってるシリーズ以外のスマホだけらしいのだけれど。

 

「深夜、家族みんな寝静まったスキを見て、いつも付きっぱなしのパソコンで提督として名前を登録しただけなんだ。だからそのままゲームを進める事が出来ずに、興奮して眠れないまま朝を迎えてしまって……」

「そっか、だからあんなにフラフラして通り過ぎて行ったのか……。」

 

和樹の呟きにうなづきながら、俺は教室の扉を開けた。

幸い、俺と和樹は今席が斜め前後ろで近いため、ギリギリまで話は出来る。

この際だし、艦これに関して情報を聞き出そうか。

 

「なあ」

「お、なんだ克哉」

「あの妖精さんって、どういう存在なんだろうな」

 

まずあの不思議生命体から。

あんな身長で、あんな速く走って、あんなでっかい声出して、喋ってるのはまだ見た事ないけど多分あれは喋るのではないだろうか。

あんな小ちゃいのが大量に、一体どんなふうに生活してるんだろうな。

 

「ん?あぁ、艦これか。う〜ん艤装の絵とかにくっついてるあたり彼女達が動かしてる設定なんだろうし、建造や入渠も彼女達がやってる感じなんだろうけど、詳しいことは誰も分からん!むしろ俺が聞いてみたいな、運営達に」

「設定?……っ‼︎」

 

そっか、むこう(鎮守府)に本当の意味で行けるのは現状俺だけだった!

迂闊な事は聞けないなこりゃ。

 

「……そうか、取り敢えず分からないことがあったらガンガン聞くよ。よろしく頼むぜ先輩?」

「おうよ、ガンガンこい!ってか、美少女はともかくお前に先輩とか呼ばれたくねぇ‼︎」

 

二人の学生が教室で笑いあう、いつも通りの日常が展開されていた。

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

一方、その高校に道路を挟んで面する海の遥か向こう。

今からイカを釣りに行くでっかい漁業船が幾つか、大海原に浮かんでいた。

そしてここから、

 

「……なあ、あれなんだ?」

「え?あれって…女か……?」

「なんかでっかい箱みたいなの持って浮かんでるっぽいし、多分こないだの津波の遭難者じゃね?」

「あぁ、そうかも…ってなんだありゃ⁉︎」

「船に口が生えてるだと⁉︎」

「ば、化けもんだ!全速で逃げ……」

 

 

 

 

ッドガアアァァァァアァァァン!!!!!!!

 

 

 

 

 

全てが始まった。

 

 




では、また来週のどこかでお会いしましょう。

(⌒▽⌒)ノシ


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提督として初めて

どうも、トマト中毒です。
大っきいトマトの冬にピッタリで美味しい食べ方、見つけちゃいました。
何も作る気になれない時にはこれ作って食べます。
詳しくは、これを投稿してすこし後に書く俺始めての活動報告にて。

後、別の割と重要な話もそちらに書きます。
深夜になりますが、演習でもしてお待ち下さい。
では、本編をどうぞ。


空がいい感じにオレンジ色に染まって、学校の近くの海にその色がうつっているのを横目に、俺は自転車を家へと走らせる。

 

「早くっ、早くっ!」

 

改めて提督としての仕事を始めるため、早く鎮守府に帰らなければ。

もちろん俺が今着けているこの時計のおかげでいつでもどこからでも、学校からでも向こうへ行けるが、誰かに見られるのは不味い気がしたので基本家から移動することに決めている。

今の時間ならまだ誰も帰ってきてないはずだ。

今日は母さんはパート、姉さんは家電量販店でバイトに入ってるはず。

我が家には親父はいない。

いや、事故だの離婚だのではなくて、彼は長期間労働系なのだ。

だから、一定期間全く帰ってこない。

その代わりガッポリ稼いでくるわけだが。

因みに、ついこないだまで親父は帰ってきていた。

というわけでその帰ってくるまでの繋ぎで、二人とも働いている。

もちろん、俺も大学に入り次第バイトを始めるつもりだ。

 

「ただいまー」

 

でも取り敢えず今は、高校生としての勉強、いない二人の代わりに家事と、提督としてのお仕事もやらなければ!

なかなか忙しいなぁ……。

まずは、

 

「今晩何作るかな〜っと!」

 

 

 

1時間後……

 

 

 

現在藤原家のリビングにて俺の目の前では、

 

「だから!たまの外食なんだしちょっと高めなトコ行ってもいいじゃん!」

 

バイトから帰ってきたばかりで化粧も落としていない姉の美琴が

 

「いや、倹約しないとだめよ!今日はニコマルうどんで済ませるわ!」

 

パートから帰ってきて少し時間があり、すっかり私服に戻っている母さんの陸子と晩飯の話題でケンカしていた。

どういう事かというと、帰ってまず冷蔵庫を開けたら食材が無くて、母さんに買って帰って貰おうと電話をかけようとしたら本人が帰ってきて、姉さんに買って帰って貰おうとしたら電話の電池が切れていたらしく連絡が取れず、結果何の準備もできないまま晩飯の時間になったのだ。

生姜無い、もといしょうがないので久しぶりの外食にしようという話になったのだが、そこで姉さんと母さんがもめ始めた。

それぞれの意見は……それぞれの言い分そのままである。

 

(こんな事になるなら、さっさと食材買ってくりゃ良かったかなぁ……)

 

外は暗くなり始め、もうコウモリ達の時間になってきている。

夜には行くと電に伝えている以上、晩飯を終え次第すぐに向こうへ行くのがベストなのに、もういつも食べ終えてる時間が過ぎてるにも関わらず米粒一つも摂取していない。

早く行かなければ約束を破った事になる。

電は優しいからきっと何も言わず待っていてくれるだろうけど、やはり約束はちゃんと守らなければダメだろ。

 

「ねぇ、克哉は何が食べたい?」

「そうね、克哉が決めるといいと思うわ」

 

おお、チャンス!

 

「うん、たまには高めの店で美味しい物を食べるというのは悪く無いと思うけど、親父はこないだ帰ってきたばかりだからといってこれから生活費を浪費するのは良く無いからうどん食ってすますというのに賛成。ということでうどんにしよう」

 

せっかく二人が決定権を俺に与えてくれたのだから、近くてサクッと済ませられるうどんにした。

親父はもうすごい大金を置いていったわけだが、それでもいくらでもある、というわけでもないからちゃんと倹約しないと。

ごめんよ姉さん、また今度いつもの喫茶店へアイスでも食べに行こうぜ。

それはそうと、

 

(早く鎮守府行きてえなぁ……)

 

 

 

やっと落ち着いたリビングでの口先戦争、その余韻であるピリピリした空気に俺は頭を抱えながら俺を待つ優しい女の子と海の匂いを思い浮かべた。

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

 

艦隊これくしょんの世界は、リアルタイムで進行している。

もちろん、こうして皆さんがカツヤ少年の記録をナレーション・地の文こと、

 

「そう、ワシj」

 

てめえは黙ってろ第六天魔王!てか別ゲームから出てくんじゃねぇ!

(っ`・д・)三⊃)゚3゚)'∴:. ガッ

コホン、ナレーションこと私トマト中毒と共に読み進めている今も、艦これの世界の時間は進んでいく。

さて、克哉少年が頭を抱えている今現在、『カツヤ提督』管轄の鎮守府でも夜の帳が下りていた。

クレーンに取り付けられたランプが赤く、薄暗い港の海に反射して少しばかり不気味に揺らめく。

そして……

 

「まだ、かな……?」

 

カツヤの予想通り、まだダンボールが積まれたままの提督室で電は自分の提督を待っていた。

 

 

 

 

あの後驚き疲れて眠くなってしまい、気がついたらもう1000、いつもより4時間遅い起床をしたのです。

起き抜けの牛乳と少しの燃料補給を済ませ、いつも欠かさない基礎トレーニングをしてから甘味屋さんの間宮さんや妖精さんたちとお話しながら夜まで待ち、ようやくその時が近づいてきて、今提督室にて提督の着任を落ち着かないながら待っています。

とくん、とくん。

なぜか心ノ臓の音が大きく聞こえてきます。

ん〜、激しい運動でもしましたっけ……?

基礎トレーニングをしてから随分経つし、今ごろ呼吸に響くとは思えないのですけれど……。

 

「えと、確か大淀さんのお話では……」

 

電が提督に仕事の詳しいブリーフィングを行う際、開発や出撃など、軽く実践的なことをするらしいのです。

つまり、今まで練習の時にしか持ってなかった開発器具さんや連装砲さんを本格的に使ってみるということで……

 

「上手くできるでしょうか……」

 

開発はともかく、出撃するということは深海棲艦さんたちを倒さなければいけないということで、あまり気が進まないのですけれど……。

ともかくで今さっき片付けてしまった開発も、慌てて資材をダメにしてしまうかもしれません。

実際戦前に深雪ちゃんにぶつかっちゃったし、フィリピン制圧戦の時は輸送船の仙台丸さんにぶつかっちゃったし……また慌てて何かやる可能性も無い、とは言えないのです。

……でも。

 

「上手くいったら褒めてくれるかな……」

 

頑張って12.5㎝連装砲さんか7.5㎝機銃さんを開発できたら、あの大きなあったかい手で…えと……よしよし、とか……。

 

「……っ////」

 

……はにゃあっ!!!?

い、い今のはそそそういうのではっ、えと、その、ふえぇ⁉︎////

 

 

 

 

 

「はぁ、やっと来れた……てどした?」

 

それからさらに30分ほど過ぎてカツヤが着任するまで電の思考はループを続け、結果カツヤが提督として始めてやったことは電を落ち着かせることになった。

 

 




0歳から大体5〜6歳の自衛能力が低い子供は、まず親や兄・姉などの年上の保護下にいる状態、つまり保護者の温もりを求めると母が言ってました。
いつもはなんかトンチンカンな母ですが、その時はすごく「らしい」雰囲気を出していました。
電がカツヤに撫でポならぬ抱きポ状態になったのも、案外同じようなものなのかもしれませんね。




という解説wwww

まあ儂等男には女性の落ちポイントなんて分からんですよ。
ふとした瞬間、とか言いますしおすし。


誤字・誤表現・表現不足などありましたらどうぞ感想へ書きつけて下さい。

では次の話までadiós!(^-^)ノシ



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工廠、そして蹂躙の始まり

テスト終わったー!
というわけでずっと執筆してました。
正確には、家に帰ると殆ど小説の事を考えてました。
補習期間に入ったため、午前中で授業が終了するんですよ。
大分はかどりまして、予想より早く投稿までこぎつけられました。

まぁ、それでも息抜きは必要なわけでして。
ハースストーンというアプリを始めました。
まあ簡単にいうとスマホでもパソコンでもできるデュエマです。
俺は勿論スマホで。
そしたら面白いのなんの!
これを元ネタにして異世界チートを書きたいっ!とつい欲望が出ました。
ですが同じような事考える人っているもんですね。
MTGで書いてる人、もういました。
しかも絶対この人のほうが面白い自信があります。
いや、これ自信持って言うことか……?wwww
取り敢えず、この小説を書き進めて時間ができたら書いてみたいですね。

前置きが長くなりましたすんません。
では、本編をどうぞ。




「工廠は確か……ここだったか?」

「なのです!まずここでする事について説明するのです」

 

俺は現在電と一緒にブリキ板の屋根の建物、工廠の前にいた。

なんか冬に寒そうだなぁ……。

ここでも妖精さん達は働いているのかな?

 

「では、中にどうぞなのです」

「お、おう……」

 

電に促され工廠に入りながら、俺は昇進したらまず提督室よりも先にここを改装してもらうことを決意した。

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

カツヤが電と妖精さん達に建造を行う場所を見せてもらっているちょうどその時、時刻にして2100。

藤原家の家から遠く離れた北の遠海を、少し高くなってきた波に揺られながら日本の巡視船がとある地点を目指して進んでいた。

 

「確か、ここら辺だったよな……」

「ああ、そのはずだな」

 

二人の男性が水面を走る巡視船の甲板に立ち、周りを目視で何かを探している。

前方から吹きつけてくる風に服がなびき、強い潮の匂いが鼻についた。

 

「しっかし、ここどっちかってぇと北国寄りだろ?なんで向こうは1ミリも動かないのかね?」

日本(そっち)側の船なんだからそっちが処理しろって事なんだろ、やっぱり」

「まあ、事件性が現状見当たらないただのSOSだしなぁ」

「意外と面倒くさいってのも多分に含まれてるのかもな」

 

軽口をたたきあいながらも周囲に向ける目は真剣そのもの。

なんだかんだ言いながらもしっかりと責務をこなしている。

 

「おい、向こうで火の手が上がってるぞ⁉︎」

「じゃあそれがおそらく(くだん)の船だ!」

「よし、ブリッジに連絡する!吉川は見ていろ!」

「はいよ!」

 

海の上にも関わらず火が点いているということは、何かが燃えているという事。

おそらくはSOSを発したイカ漁船だろうということで、吉川というらしい1人を残してもう一方が船の各所に取り付けられた内線で艦橋に連絡を取りに走って行った。

 

「しっかし、海の上で炎上とか何したんだよ……」

 

吉川と呼ばれた男は、走って行ったもう一方を見送ってから独り言ちた。

動力トラブルか、中途半端にタンクのふたを閉めていて漏れ出したか?

どちらにしても、しばらくイカの価格が吊りあがりそうだ。

今度の休暇、居酒屋でゲソの肴食えねえかもなぁ……。

と、その時。

 

「ん?女か?」

 

吉川の視界に海面から肩から上だけ出した女性が入った。

冷たい北の海に長時間浸かったせいか異常な程顔色が悪い。

夜なので暗くて顔がよく見えないが、おそらくイカ漁船に乗っていた女漁師の1人だろう。

最近は漁師になる女性も増えているので、彼はそこに女性が浮いている事になんの不思議も感じなかった。

 

 

それが間違っていたと気付いた時、すでに蹂躙は始まっていた。

 

 

「おーい吉川ー、連絡ついたぞー……ってどうした?」

「いや、あそこに女性らしき影があるからあの船の乗組員かなって思ってさ……」

 

さっきブリッジに連絡を取りに行った男が戻ってきた。

吉川が説明すると、その男はそのまま船縁に寄り、声をかけ始めた。

 

「……おっ、本当だ!おーい、大丈夫ですかー?」

 

……反応が無い。

 

「おい吉川、俺助けに行ってくるわ」

「お?……ああ、その方がいいと思う。多分もうすぐ船も動き出すし、連絡入れてくるから早く助けに行ってきなよ」

「分かった」

 

 

ブリッジに連絡を入れて戻って来て、もう一度同じ方向を見る。

今は人命救助を優先して船は止まっているが、あそこの燃えている所にも要救助者がいるはずだから、急いでもらわないと。

ちょうど、女性の方へ先ほどの男が泳いでいく所を見て、吉川は何故か安心ではなく悪寒を覚えた。

寒いからか?……いや、違う。

 

 

あの女、嘲笑(わら)ってやがる……っ⁉︎

 

 

「おいっ、なんか変d」

 

ドガッッッ!!

 

「おわぁっと⁉︎」

 

船縁に駆け寄り異常を知らせようとしたと同時に、何かが衝突した音がして船体が大きく揺れた。

吉川は危うく振り落とされそうになる。

海面を見ると大量の小型船のようなものが巡視船に体当たりをかましていた。

完全に異常事態だっ……!

 

「ブリッジ!ブリッジ報告があります!」

『なんだ、今の揺れの事か?』

「そうです!何か小型船の集団のようなものが体当たりを仕掛けてきたようです!」

『こんな所に海賊か……?取り敢えず船の特徴を教えろ』

 

近くにあった内線でブリッジに危急を伝えると小型船の特徴を尋ねてきた。

吉川がもう一度海面を見ると、少し離れて真っ黒い小型船が一列に並んでいる。

 

「夜だからかなんなのか、真っ黒くて何にも分からないです!あと現在奴らは一列に並んでいます!もう一回体当たりが来るかもしれません!」

『なに⁉︎』

 

一報入れてもう一回海を見る。

だが何故か奴らは近づいて来ない。

 

「いや、体当たりはしてこないようです。一体何がどうなって……っ!!?」

 

更に一報入れようとした時。

あり得ない光景に吉川は絶句した。

 

『どうした、何があった⁉︎』

 

ブリッジからの声も耳に入らない。

あり得ない、いや有り得ていいはずがない…っ‼︎

 

 

船に口が付いて剥き出しの歯が生えている(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)なんて、そんなバカな話があってたまるか……っ!!!!

 

「ブリッジっ、バケモンだ!逃げろ!」

『バケモンだと⁉︎何の冗談だ!それに目上の者には敬語を使え!』

「んなこと言ってる場合じゃねぇ!生きて帰ってから処分は幾らでも受けるんで早く踵返して逃げて下さいお願いします!」

『ふざけるな!お前の与太話に付き合ってる暇は無い!』

「んなこと言うなら自分で確認しろ!こちとら奴らが一斉に口開けてこっちに銃口っぽいの向けてんのリアルタイムで見てんだよっ‼︎」

『何をバカな……なにぃっ!!?』

 

ようやくブリッジも本当の意味の緊急事態に気がついたようだ。

早くこの場から離れないと……!

 

次の瞬間、

 

 

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガ

 

 

化物船の一斉掃射が始まった。

 

その時船には非戦闘用任務の為、64式小銃とショットガン程度しか載せていなかった。

しかし64式小銃の弾も跳ね返され、ショットガン程度でもなす術がなく、逃げるも追い打ちをかけられて船体が大破していく。

 

「ぐおっ……駄目だこりゃ」

 

ボロボロになった巡視船。

最後には魚雷らしきものを打ち込まれ船底に穴が開いた。

 

「あはは、俺の人生、これで終わりかよ……」

 

煙を上げながら沈んでいく船の上で、吉川は呟いた。

今更救命ボートなぞ乗った所で、ヤツらには追いつかれるだろう。

 

「もっといろんな事、したかったなぁ……」

 

彼女も欲しかった。

食べてみたい料理もあった。

行ってみたい場所もあった。

まだまだ両親に親孝行できてない。

 

「そういえば、さっきバケモン助けに突っ込んでったなぁ……」

 

ふと思い出すのはいまさっき泳いで化物船の仲間の女を助けに行った男の顔。

年上だしと思って敬語使おうとしたら堅苦しいの嫌だっつって直されたのは大分前の話か。

確か妻も子供もいると言っていた。

いまさっき彼の事を完全に忘れて逃げようとしたが、悪い事をした。

 

「あのおっちゃんは無事だといいなぁ……」

 

無理な相談だとは分かっている。

が、彼はもう幸せを掴んでいるのだ。

せめて彼は無事でいてほしい。

 

 

「なぁ、無事でいてくれよ……」

 

 

吉川の呟きは、

 

 

「藤原さん……」

 

 

海に飲み込まれて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

一方、所変わって鎮守府。

 

「出来ましたっ!」

「おっ、何が出来た?」

「これなのです!7.2㎝機銃なのです!」

「うん、よくやったな電!」ナデナデ

 

こちらはどこまでものほほんとしていた。

 

「えへへ……////」

 

 




この分だと多分今年中にもう一話いけるんで無かろうか。
……頑張ってみます。

では、いつものことながら、誤字・誤表現などありましたら感想欄にてご一報ください。

また、次の話でお会いしましょう。ノシ


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建造、そして構ってちゃん

どうも、トマト中毒です。

後にこの話を読んでくださる皆さんのために書いておきますと、これを投稿したはクリスマスイヴの夜中。

ということで、メリークリスマス!

後、我が同志達の声を継いでメリークルシミマスとも言っておきましょう。
リア充に爆発あれ。

というわけで、今年最後の投稿にはちょっとしたプレゼントが付いてます。
どうか、コーヒーのご用意を。

では、本編をどうぞ!


「今度は建造なのです」

「今さっき覗いてきた、あそこかな?」

「なのです!」

 

時は2200。

俺たちは、次の仕事『建造』を行うドックを目指し歩いていた。

新米提督である俺は、電に仕事を教えてもらわねばならない。

という事で、歩きながら建造について説明してもらう。

夜だし、電も眠たかったら困るから早く終わらせないとな!

 

「今現在確認されている250以上の艦娘は、殆どがこの建造でこの鎮守府に招致することができるのです」

「へぇ……え?」

「どうしましたか……?」

 

今250ってったか……?

艦娘ってそんなにいるの⁉︎

 

「……いや、なんでもないよ」

「そうなのです?なら続きを話しますね」

「頼む」

 

取り敢えず先を促すことにした。

また和樹に話を聞いて、どんな人がいるのか聞いておかねば。

250……つまり、パッとネットで見たような綺麗な人や電みたいな可愛い子が合計250人以上もいるということか!

これは我が提督人生、悶々としそうだなぁ……。

 

そのあとも電に歩きながら説明して貰ったことには、

 

・今さっき開発でも使った資源(弾薬、原油、鋼材、ボーキサイト)を使って建造の規格を指定し、妖精さん達に(その時の気分で)建造を行ってもらう。通常の建造では最低で30、最高で999の資材をつぎ込むことができる。例外はまた次の機会に。

 

 

・それぞれの資材を調節ふることである程度まで建造する艦種を絞れるが、建造は妖精さん任せ。完全に運なので、極端に少ない資源数で戦艦や空母ができたり、戦艦クラスに絞っても駆逐艦や潜水艦が出来上がったりする。

 

・早く建造を終わらせたい時は、『高速建造材』という燃料と建造に使う資材を妖精さん達渾身の作であるという特殊な火炎放射器に入れ、妖精さんが「こんな艦娘建造したい!」と思いながらドック中に火炎放射を行うといつの間にか建造が完了している……らしい。

 

 

「……妖精さんたちって、本当に何者なの?」

「いえ、詳しい話は聞いたことありませんし……」

 

話しながら歩いていると、いつの間にか俺たちは建造ドックに到着していた。

ちょうど手が空いていたらしい妖精さんの1人(で、正しいのか?)がこちらへ近づいてくる。

 

「試しに最低限の資材数で建造してみましょう」

「分かった、それじゃあ全資材30ずつで建造を行ってくれ」

 

俺がしゃがんで資材数を伝えると、妖精さんはうなづいてドックの方へ走って行った。

程なくして、資材を運んだり金槌を振るったりでドックが騒がしくなる。

 

「おぉ……」

「皆一生懸命建造してますね」

 

ちみっこいのが大量にせっせこせっせこ槌を振り、資材を運んでいる。

一言、可愛い。

 

「ではせっかくですので、高速建造材も使ってみましょう」

「これが高速建造材か?なんか……」

 

妖精さんたちの様子を眺めていると、電が饅頭位の大きさの石を手渡してきた。

少しズッシリとしていて、槌と釘のマークが表面に掘られている。

 

「大手m」

「妖精さん妖精さん、高速建造材を使ってくださいなのです」

 

建造材の感想を言おうとしたら電に被せられた。

しょうがなく、こっちに来た妖精さんに建造材を渡す。

トコトコと走って行く妖精さんを見送りながら、電さんにジト目を向けた。

 

「むう……」

「え?…えっと、その、直接名前を出すのはいけない気がして……」

「何故に?」

「う……」

 

困った顔で俯く電。

ちょっと顔が赤くなっている。

俺はそんな電を見て、

 

「……うん、可愛えのぅ」ナデナデ

 

頭を撫でた。

やっぱり可愛い子を見ると和むなぁ。

 

「えっ、ええっ⁉︎////」

 

真っ赤になって慌てるのも、いとらうたし哉。

ロリコンではないが、なんか凄く癒される。

 

ボオォォォォッ!!!

 

俺が電に癒されてる内に準備が整ったのか、ドックに炎が満ちている。

そこら一帯炎の海、というのはなかなかに壮観だ。

炎が終息すると同時に、妖精さん達とは違う人影がドックの中にいた。

 

「おーい電、建造できたみたいだから迎えに行こうぜ」

「……はっ⁉︎はいっ!////」

 

さて、彼女を迎えに行こう。

どんな人が仲間になったのかなー?

 

 

 

 

ドックに降りると、電にそっくりな女の子がこっちに来た。

電はバレッタで髪の後ろを止めているけど、この子は前を髪止めで止めてるな。

 

「あなたが提督?」

「おう、カツヤだ」

「私は(いかづち)よ、雷じゃないわ!そこんとこもよろしく……って電じゃない、あなたもいたの?」

「お姉ちゃん、なんか言い方がヒドイです⁉︎」

 

そっくりな2人が並んで、一瞬どっちがどっちか分かんなくなった。

お姉ちゃん……ということは、姉妹関係なのかな?

てか、船にも姉妹とかあるんだね。

 

「私とお姉ちゃんは姉妹艦なんです」

 

姉妹艦?なにそれ。

俺が大量に頭上にクエスチョンマークを発生させていると、雷がプクーッと膨れた。

 

「姉妹艦も知らないの?そんなんじゃダメよ提督、姉妹艦っていうのはs」

「設計が同じ軍艦の事を、昔から姉妹艦と言うのです」

「成る程そうなのか……」

「ちょっと電⁉︎」

 

姉妹艦か、そういう類の知識も頭に入れないとな。

しっかし、電ってこんな性格だったか?

初対面よりも自分の主張が大きくなってる気がする。

取り敢えず雷って子にも礼を言わねば。

 

「2人とも有難う。新米とはいえもう提督なんだし、そういった知識も蓄えた方が良いかもな」

「そうですね、変なところで齟齬が起きるといけませんし」

「まあ、分かんない事があったら2人に聞くよ、よろしくな」

 

また和樹のヤツに聞かねばならん事が増えた。

明日もまた休憩時間中寝れないなぁ。

 

「そうそう、もーっと私に頼っていいのよ」

「はは、じゃあその時が来たら遠慮なく」

 

 

(ああ、この子は構って欲しい子か)

 

 

ドヤ顔をする雷を見て、不意にそんな感想が頭をよぎった。

 

「取り敢えず、仕事の続きに行こうか」

「次はいよいよ出撃なのです!」

「あら、まだそんなとこだったの?これは私を旗艦にしてもらうしかないわね!」

 

 

初の出撃を行う為に海辺へ向かう三人は、まるで歳の離れた兄妹のようで。

 

「えと、その旗艦ってのは何?」

「それも知らないの?旗k」

「旗艦というのは……」

「ふむふむ」

「だーかーらー!」

 

騒がしく、そして楽しげに港を行く3つの笑顔は、夜の闇に紛れて消えていった。

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

ここは、とある鎮守府。

 

 

 

「よっこいせっと」

 

俺は今日も今日とて、この鎮守府に降り立った。

しかも今日は特別な日だから、俺の部屋もそれっぽい飾り付けでキラキラしてる。

今まで提督業で稼いだお金を下ろして皆にプレゼントを買ってるか作ってるかしてるので、皆に渡すのも大丈夫だ!

よし、今日も提督としてお仕事頑張りますかー!

 

バタン

 

「Hey、提督ぅー!Good morning!」バッ

「おう金剛、今日も相変わらず元気だなー」ギュッ

 

いつものように金剛が一番乗りで挨拶にくる。

いや、秘書艦も毎日最初に目の前にいることはいるのだが、彼女が俺に挨拶する瞬間金剛が入ってくるのだ。

結局気圧されて彼女は金剛がひと段落済ますまで挨拶できず、ちょっと悔しい顔をしている。

あっ、出てった。ちょっと悪いことしたかな?

 

「提督提督ぅー、今日はなんの日でしたっケー?」

「今日はクリスマスだよな」

 

そう、今日はクリスマス。

12月25日にかの救世主の誕生日を祝う、世界の記念日。

そして非リア充がリア充達に一際強い怨嗟の視線を叩きつける日でもある。

自分も以前は非リア充勢の一員だった事を思い出し、今更ながら感慨を覚えた。

 

「そう!メッリー、クリスマーース!」

 

金剛もクリスマスが嬉しいのか、超ハイテンションである。

俺から離れたかと思うとクルクルその場でターンしてクラッカーを発破、俺は小さな紙吹雪を頭にのせる事になる。

ほんと、いつも元気だなぁ。

 

「さあ、私へのPresentsをぉ、早く出すのデース!さぁ!さぁ‼︎」

「はいはい、ちょっとこっち来なさい」

 

この人、向こう(リアル)のWikiに書いていた通り、提督である俺に最初っからゾッコンである。

そんな人だからこそ、こんなのがいいんじゃなかろうか。

 

「提督、何くれるですかー?」

「はいこれ、『俺1日独占券』12回分」

「おぉぉー!ありがとうデース‼︎」

 

そう、ちょうど1カ月に一回の頻度で俺を一日中振り回す事ができる許可証を作った。

思った通り、凄く喜んでくれたようだ。

良かった。

 

「また来年からそのチケットは有効だから、今年ももう少し頑張ろう」

「はいデース!失礼しましたー!では次の人なのでーす!」

 

金剛はやはり笑顔で辺りに元気をぶちまけつつ、部屋を出て行った。

 

 

ん?次の人?

 

 

「失礼します」

「加賀さん、次の人って何?」

 

次にドアをノックして入ってきたのは加賀さん。

なぜか朝ごはんらしき米粒が頬に着いたままで、クールな性格とのギャップにドキッとした。

 

「聞こえなかった?提督が着任して金剛さんが走り出した時から皆ゾロゾロと移動してきたのに」

「???」

 

何のこっちゃ。

金剛のハイテンションで全く聞こえなかったぞ?

それに皆でゾロゾロって……っ!

 

「成る程プレゼントか」

「当たりね」

 

加賀さんが俺の答えを聞いて少しニコッとした。

成る程、去年も同じことやったから覚えてたのか。

ん?つまり今さっき出て行った秘書艦の陸奥もプレゼントのために?

……まあいい、女性の前で他の女性の事を考えるのは失礼だ。

今は加賀さんの事を考えよう。

加賀さんは着任当時は全くニコリともしなかったのに、最近は二人きりの時だけ少し笑うようになった。

初めて笑顔を見せてくれた時、嬉しかったなぁ。

そんなクールだけど可愛い加賀さんには!

 

「はい、メリークリスマス」

「……イヤリング?」

「似合うと思ったんだけど……駄目かな?」

 

雫型の小さなサファイアの宝石がついた、耳たぶを挟むタイプのイヤリング。

サファイア…加賀さんをイメージして青い綺麗なアクセサリを買った。

 

「……有難う」

「いや、気に入ってくれたみたいで良かったよ」

「着けてみていい?」

「もちろん」

 

試着のためか、彼女は早速着けてみたいと言う。

いいと言うと、そそくさと鏡の前に行って、イヤリングを着けて戻ってきた。

 

「似合う……かな?」

「うん、すごく」

「そう……ありがと////」

 

加賀さんにはやっぱり青が似合う。

ワンポイントつけるだけでグッと、更に綺麗になった。

 

少し赤くなった加賀さんが出て行くと、またドアがノックされる。

もしかしなくても全員終わるまで続くのだろう。

プレゼントを入れた袋をこちらに引き寄せながら、俺はドアの方に声をかけた。

 

「どうぞー」

 

 

 

 

 

「ありがとう提督!じゃあこれが最後っぽい!」

「そうか、ありがとう夕立」

 

俺がプレゼントしたマフラーを大事そうに抱きしめながら、ついこの間改ニになった夕立が出て行った。

さて、プレゼント渡しも最後になったけど最後に来たのは……

 

「やはり君だったね、電」

「はい…」

 

我が鎮守府の最古参者、改になって久しい電だった。

少し顔が赤い電を見て、俺は覚悟を決めた。

 

「なあ、俺が初めてここに来た時の事、覚えてるか?」

「え?あ、はい覚えてます」

 

良かった、覚えてくれていた。

 

「最初俺が鎮守府で迷った時、わざわざ探しに来てくれたね」

「まさか工廠の裏に現れるとは思いませんでした」

 

俺は話しかけながら少しずつ電に歩み寄る。

 

「向こうに帰る方法、一緒に探してくれたよな」

「結局普通に出てきてくれて、それまで苦労したことですごく怒ってましたよね」

 

それからもたくさん、いろんな事があった。

そしてそれらを一番長く、近くで分かち合ったのが電だった。

そして今日。

 

「電」

「は、はい」

 

俺は電に、

 

「これからも、共に全ての体験を共有して、一緒に泣いたり笑ったりして欲しい」

「……へ?」

 

かつてないほどの勇気を振り絞って

 

「これまでは仲間だった。これからは妻として、俺と共にいてくれ」

「……」

 

プロポーズした。

そして、

 

「……え?ええ⁉︎えぇええぇぇぇぇ!!!??」

 

案の定、電の頭がキャパオーバーした。

 

 

 

 

 

「突然すぎて、ビックリしました……」

「すまん、自分でも、覚悟を決めたら止まれなかった」

 

パニックでワタワタする電を落ち着かせるのに数分。

漸く落ち着いたと思ったら俺の顔を見てまた真っ赤になりながらパニック状態に陥る電は、なかなかに可愛いかった。

 

「で、どうだろう」

「ど、どうだろうと言われましても……」

 

やはり唐突すぎたみたいで、電は困った顔をする。

 

「ダメだったか……?」

「いいいいいえいえいえ!そ、その……」

 

電は必死に否定し、そして……

 

「ふ、不束者ですがよろしくおねがいします……なの、です////」

 

受け入れてくれた。

 

「……有難う、電。さぁ、これが誓いの指環だ」

「ふぇ⁉︎は、はい!」

 

カチコチになりながら手をこちらへ差し出してくれた電の左薬指に、自分でも分からない内に笑い泣きになりながら指環をはめた。

 

「グスッ……私はこれから、良き時も、悪き時も、富める時も、貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、貴女を想い、愛し続けることをここに誓います」

「でい゛どぐざん……うわあぁぁぁぁぁ」

 

遂に電も泣き出した。

嬉しいよ、そんな感動してくれたらもう俺だってマジ泣きしそうじゃないか。

俺は優しく、電を抱きしめた。

 

「これからもよろしくな、電」

「はい、はい!これからもよろしくお願いします、提督!」

「いやいや、これから俺らは夫婦だぞ?提督はないだろうに」

「へぁっ⁉︎えと、それじゃあ……」

 

 

「克哉、さん……////」

 

 

天使が舞い降りた。

 

「ひゃあああぁぁぁぁぁぁ可愛えぇええぇぇぇぇ!!!」

「ひぅっ⁉︎」

 

俺は全力で電を抱きしめた。

聞き耳を立てていたらしい夕立の言うことには、

 

「間宮さんの所に行ってコーヒーをガブ飲みしたかったっぽい」

 

そしてその他普通に各自の部屋へ帰っていた艦娘達は、総員突然の奇声にとても驚いたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、とある鎮守府で起こるかも知れないifの話。

 




クリスマスということで、クリスマスにちなんだ短編をプレゼント代わりに書いてみました。

では、いつもの事を。

誤字、誤表現、改善すべき点などございましたら、どうか感想欄に叩き込んでください。
当然ながらお褒めの言葉なども受け付けております。

次に皆さんに最新話をお届けできるのは2週間後以降となります。
ではまた、その時まで。

Happy new year!


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実践、そして動き出す

今日は、トマト中毒です。

改めまして、明けましておめでとうございます!
もう2日には帰っていたのですが、母親のバーゲンセールに連れて行かれて一日中引っ張り回されたりとか色々ありまして、今日ようやっと投稿と相成りました。

では、新年一発目の本編です!どうぞ!


「へぇ、提督って面白い事になってるのね!」

「面白いってお姉ちゃん、それはどうかと思うのです…」

 

月の光を道標に、海上を滑る様に移動する二つの影。

カツヤの鎮守府に着任して間も無い雷と、その姉妹艦である電である。

雷が自分が新しく着任した鎮守府がどんな所なのか、電に聞きながら水面を走っていた。

 

「だって、この世界の人じゃないんでしょ?しかも向こう側には深海棲艦がいないそうじゃない!こうやってこの子に頼らず、自由に航海できるらしいし」

 

そういう雷の肩には、自分と同じ大きさの羅針盤を両手で抱えて妖精が座っている。

この子が羅針盤妖精、艦娘達の海での道標だ。

 

「この子、暗礁とかの場所を避けてくれるから嬉しいけど、なかなか進みたい方向を目指してくれないのよねぇ」

 

雷が妖精を人差し指でつついた。

この妖精の困ったところは、その独特の進路決定方法でなかなか望みの方向に進めないことだ。

この子は羅針盤を『回す』。

そう、文字どおり勢いをつけて回して進む方角を決めるのだ。

本来の使い方なぞ知ったことかと言わんばかりである。

 

「……確かに、この方法少しランダム性が強いらしいですからね」

 

電も今しがた克哉から聞いたことを思い出していた。

 

『先輩提督達の言うことには、この子ともう1人、猫と一緒にいる子がラスボスじゃないかって』

 

克哉が和樹から聞いてきたことである。

 

『艦これのラスボスって、どんなやつなんだ?』

『いや、ラスボスというかまだイベントとかでバンバン出てくるからまだラスボス枠は埋まってないぞ』

『レ級ちゃんだろ!』

『いや、防空さんだな』

『いやいや羅針盤娘だろJK』

『妖怪猫土下座だろ』

『『『『『それだ』』』』』

『……は?』

 

他にも、群がってきた友達連中から色々ちゃっかり聞いてきた克哉であった。

 

「それにしても大分進んできたわね…鎮守府があんなに小さく見えるわ」

 

雷が来た道を振り返ると、今彼女達の提督であるカツヤが待っている鎮守府が小さく見えた。

沖に出て20分。

ずっとまっすぐ進み続けてきたが、羅針盤妖精は

 

「まだまだまっすぐだよー」

 

と言うだけ。

もちろん、まだまだ子供な駆逐艦にはだれる話である。

 

「まだなのー?もういいじゃない、周辺警備は大事だけど何もいないんじゃしょうがないわ」

 

比較的大人しい電はともかく、子供らしさが出ている雷はそうはいかなかった。

と、その時。

 

「もうそろそろ曲がら」

 

ヒュンッ

 

バッシャアァン!

 

「きゃっ⁉︎」

 

突如、雷の頬から数センチ、ギリギリを金属の塊が音速を超えて突っ切り、海水を衝撃で高く打ち上げた。

 

《グオォォゥァァァアアアッッ!!!!》

 

雷と電の前方に3つの影。

金属でできた体と青く光る目、大きく開いた口。

誰もが初めて通る道、深海棲艦駆逐艦型のイ級・ロ級・ハ級である。

2人とも、手持ちの12.7㎝砲を構えた。

 

「おお、敵発見ね!」

「姉ちゃん、なんでそんなに嬉しそうなんです……?」

 

 

 

 

「第一艦隊、戦闘海域に入りました」

「そうなの?ここからだと見えないから残念だなぁ」

 

俺は今、任務娘の大淀さんと一緒に提督室から作戦室へ移動して2人の様子を聞いている。

戦闘の様子とかめっちゃ気になるし見てみたいけど、俺自体は艦娘のような力がないから着いて行けなかった。

 

「残念だけど、しょうがないか」シャリシャリ

 

港からこっちへ帰ってくる時、ついでに挨拶しにいった間山さんからもらった生姜の蜂蜜漬けをかじる。

 

「ダジャレ言ってないで応援してあげて下さい……というか、そのまま食べて辛くないんですか?」

「ん?俺は辛いの全般大丈夫だから」シャリシャリ

 

 

 

ココ○チだと5辛まで平気、本場の激辛キムチもなんのその。

韓国の焼肉で出される生の青トウガラシも母親と姉から貰って父親と分け合って食べるほど。

生姜だって夏の辛味大根だってお手の物。

 

辛いの大好きな克哉であった。

 

 

 

そういえば、さっきからずっと気になっている事がある。

 

「そういえば、大淀さんも艦娘だよね?どうして艦装がないの?」

 

そう、目の前で通信機器の前に座りヘッドホンを着けている大淀さんは艦娘のはず。

しかし、最初に会った時から全く艦装らしき物は見ていない。

 

「あら提督、知らないんですか?艦装って普通に脱装着可能なんですよ」

「そうなの⁉︎」

 

 

 

 

一方、雷と電は。

 

「はぁっ…はぁっ…よし、あと一体ね!」

「ふぅ…ふぅ…早く撃退して帰りましょう!」

「…ほんと性格そんなだったっけ?」

 

どうにかこうにか棲艦を2体轟沈させ、あとはイ級一体だけとなっていた。

時刻は2242、2人の目は本格的に夜の闇に慣れ、ライトが無くてもイ級の姿を視認できる。

雷が擦り弾程度、電は小破しており足が少し水の中に沈んでいた。

 

「…冷たいです」

「大丈夫、私達駆逐艦が1番力を出せる時間帯だし早く終わらせましょう?」

 

そう、今は夜。

夜戦は彼女達駆逐艦が最大出力でぶっ放せるので、思いっきりやってさっさと帰ろうというわけだ。

しかし、駆逐艦なのは相手も同じ。

つまり……

 

キュンッ

 

「ひゃわっ⁉︎」

 

向こうも全力でぶっ放してくる。

だけど、今回はちょっと当たりどころが悪かった。

 

「あっ、電が小破したわ!艦装についてた7.2㎝機銃が吹っ飛んでる…わ…よ?」

 

雷もなにかに気づいたご様子。

油を差してないブリキロボの如くギギギギと首を回して電の顔を見た。

 

「あ……」

(初めて開発に成功して提督さんに褒めてもらえた艦装が……)

 

すっごい悲しい顔をした電がorzになりそうになっていた。

 

「(えっ、そんなに悲しがる事⁉︎てかなんか敵側まで困った顔してるんだけどっ⁉︎)」

 

もうすっかりorzになってしまった電を見て、イ級もオロオロしている。

とその時、不意に電がふらりと立ち上がった。

 

「…………そうですよね」ボソッ

「…へ?」

 

電の呟きに雷が聞き返した瞬間、電の雰囲気がグリッと変わった。

 

「あの人を完膚なきまでに叩き潰したら、また提督さんに褒めてもらえますよね…?」ゴゴゴゴゴゴ

「電のキャラが崩壊してるっ⁉︎てか提督この子に何したのよ一体⁉︎」

 

雷が思いっきり突っ込んでる間にも、電は今までオロオロしていたイ級に向かって12.7㎝砲を向けた。

 

「電の本気を見るのですっ‼︎」ガチャンッ

 

 

 

 

 

「敵対反応消滅。勝利しました」

「うん、帰って来ーいって言っといて」

 

大淀さんの報告に、俺は作戦室の中を見て回りながら返事を返す。

取り敢えず最初の戦闘は終了。

電が小破したけどその程度なら問題ないらしい。(和樹談)

 

「気のない返事ですね、もっと『頑張ったな』とか送ってあげなくていいんですか?」

「いや、そういうのは無線とかで信号送っても伝わらんでしょうに」

 

もちろん、帰ってきたら思いっきり褒めてやるつもりだ。

だって、チュートリアル相当とはいえ初勝利でしょ?

褒めてあげなきゃ、なぁ?

 

「……なるほど、ならば『帰って来ーい』とだけ送りますね」

「よろしく」

 

信号を送る大淀さんは、少し笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

「……『帰って来ーい』、ですって。軽いわねぇ提督」

「でもその方が色々と過ごしやすい気もしますよ?」

「хорошо(ハラショー)、過ごしやすいのは良いこと。電の言う限りだと、今回良い提督のようだね」

 

無線を受けた雷に、すっかり元の雰囲気に戻った電が微笑んだ。

目の前には、ドロップ艦の響が伸びをしている。

 

「まあね、早く帰りましょ?」

「はいなのです!」

「新しい提督にも挨拶しないとね」

 

もう帰ろうと雷と電と響が踵を返した、その時。

 

ズズズズズズズズズズ

 

「……あれ?」

 

電の耳が何かの音を捉えた。

 

「どうしたの?」

「何か気になる事でも?」

「聞き覚えのある音がするのです…ちょっと見てくるのです」

 

そのまま電は音を追って進み始める。

 

「あっ、ちょっと!…どうする?」

「是非もなし、一緒に行こう」

「分かったわ、先に追っておいて!私は連絡してから行く」

「понимание(了解)」

響が電を追い始めるのを横目に、雷は作戦室と連絡を取る。

暗号化された信号なので少し時間はかかるが、しょうがなかった。

 

「えっと……」

トントンツートンツートン……

 

 

 

「聞き覚えのある音……?」

「なんでしょうか?」

「うーん……まあ後で帰ってきてから注意する事にして、今は電のやる様にやらせておこう」

「……はい」(今度の提督、軽すぎないかしら?)

 

 

 

 

「ここら辺だと思うんですけど…ってあれ?」

 

今しがた三人がいた所より少し鎮守府から遠い場所。

電はそこにあるのはおかしい物を見つけてしまった。

 

ズゴゴゴゴゴゴ

 

「これって…提督さんが通ってくる穴……?」

 

カツヤが向こう(現実)から鎮守府に来る時に通る穴が海面に開いて、深海棲艦を飲み込んでいる所だった。

 




…さあ!
こっから少しずつ物語が動き出しますよ!

まずはあの穴!
すっかりご都合展開の原因となっていましたが、また今度の話でそれも無くなるかと思います。

次回をお楽しみに。

では、また次の話でお会いしませう!ノシ


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なんかよく分からないけど特隊員扱いされてるようです

ども、Wistelainです。

1話と4話で克哉の前に突如現れた、あの穴。
アレの正体が今回分かります。
寧ろ2話とか5話に持ってこれなくてごめんなさい。

では、本編をどうぞ!


「さて、電」

「は、はい」

「初出撃、よく頑張ったね」ナデナデ

「はい!////」

「でも単独行動は一応許可を取ってからな?」

「はい、ごめんなさいなのです…」

 

 

 

俺は今、提督室にて電たちが見た物の報告を受けていた。

 

「あの穴って、あんなに大きくなるんですね」

「提督って、いつもあんな穴を通ってきてるの?」

「Удивленный(驚いた)、空間が歪むなんてはじめて見た」

 

この子達が見た空間の歪みは、俺が訳わからん内に時計をもらったあの穴に似ているらしい。

しかし、そうなると余計に訳が分からなくなる。

もし、あの穴が深海棲艦をどこかに連れて行きたかったなら、最初から俺をこっちに連れてくる意味は無かったはずだ。

逆もまた然り。

俺を連れて来たかっただけなら、なぜ何処かへ深海棲艦を連れて行くのか?

 

ズゴゴゴゴ

 

「失礼します」

「…ん?誰だ君は、建造した覚えはないんだけど?」

 

考えるのに一生懸命になっていると、いつの間にか誰か知らない美少女が目の前に立っていた。

艶やかな黒髪に白い肌、服は某宇宙戦艦のクルーのスーツのように近未来を思わせるデザイン。

顔に表情が無い。

感情の起伏が薄そうだなぁ…。

 

「…そ、そんなに見られたら疼きます////」

「ちびっ子がいる前でそれはNGだっ!」

「冗談です」キリッ

「余計に悪質だ‼︎」

 

と思ったらいきなりNGブッ込んできた!

駆逐艦のちびっ子達がいるからそれはダメだ!

念のため駆逐艦トリオの反応を見る。

 

「……っ////」モジモジ

 

電よ、君はなぜ顔を赤くしている。

分かるのか?分かっちゃったのか?

 

「ははは、いきなり出てきた人とコントしてるー」

 

雷、君は幸せそうでいいね。

 

「……………⁇」?????

 

うん、その反応が1番正しいぜ響。

 

「取り敢えず、君は何者だ?」

「はい、私は全時空軸管理局の職員で名をレイといいます」

 

一瞬、場の空気が停止した。

うん、なんてった?

 

「…あれ?パラレルワールドって聞いたことありません?」

「パラレルワールド、なのです?」

「それってあれよ、カラフルな傘の世界って事じゃない?」

「それをいうならパラソルワールドだよ」

 

うん、君らはいいから。

え…と、確か多重世界の話じゃなかったっけ?

こう、世界は幕のようなモノであると仮定して、幾つも触れない程度の距離を保って垂れ下がっていて、ときたまポンって触れ合った時に世界が繋がるとかビッグバンが起きるとかいうヤツ。

別の考え方もあるってオタ原が言ってた。

 

…あ、オタ原ってのは俺のダチの1人で、よくこういう系統の話を持ってくるヤツの事。

 

「あ、今考えてたので大体合ってる」

「モノローグ読まないで⁉︎」

「モノローグも何も、口から漏れてたのです」

「提督って考えてる事が口からだだ漏れなタイプの人なのかー、分っかりやすーい!」

「ふむ、提督の弱点発見だね」

 

以前から周りの人に気取られやすいのはそのせいなのか?

むぅ…注意せねば。

てかレイさん、君段々と口調フランクになってきたね。

 

「で、パラレルワールドと君が来た所は何の関係があるんだ?」

「実は今さっきの思想、全く正鵠を射ていて…」

 

彼女の話はこうだ。

 

本来、今さっきの幕の世界一つずつにいろんな世界があり、かの竜の探求の世界そっくりの所から某黒酢さんワールドまでもがそのまんま展開されてたりするらしい。

今さっき彼女が言っていた「全時空軸管理局」というのは、偶然つながった世界同士の世界観が違いすぎてその世界特有の生態系や文化、行き過ぎると文明がぶち壊れる可能性があるらしく、その危険性が見えた時に世界の繋がりを無理やり引き剝がしたり、それまでの時間稼ぎを行ったりする所らしい。

 

今回、人の生存圏を侵攻している深海棲艦という「危険因子」がいる艦これの世界(こっち)ウチの世界(あっち)がつながってしまい、しかも思いの外深く繋がってしまったらしく全く引き剥がす方法が効かないため、せめてその手段が見つかるまで深海棲艦の侵攻を防ぐために彼女達に唯一対抗しうる艦娘と彼女達を指揮する提督を探していたら、パッと見つけたのが俺だったらしい。

 

「話は分かったが、この時計をもらった時のアレは何だ?」

「この穴、今まで明確な名称が着いてなかったからいい加減名前が欲しかっただけ」

「なんだそりゃ…」

 

俺は脱力した。

実験しまくってたあの時の苦労は何処へ…。

 

「そういえば、あの時の紙はまだある?」

 

あの紙というのは、たぶんあの手紙的なヤツだろう。

 

「んー?そういやどこ行ったっけ」

「取り敢えず取ってあるのです」

「ナイスだ電!」

 

どこからかあの紙を取り出してきた電の頭を撫でると、すっごい嬉しそうにはにかんだ。

かわえぇ。

 

「…ロリコン?」

「あぁ、成る程そういう事ね…」

「ん?どうかしたかい雷」

 

レイさん、俺はロリコンではない。

犬とか猫とか、小さいのが好きなだけだ。

雷、そういう事ってのは何?

響、ほっといていいよ。

 

「で、これが何か?」

「ほら、ここになんか書いてあるでしょ?」

「…なんだこれ、地球上の文字か?」

 

レイさんが指し示した所には、確かに何か書いてあった。

書いてあったのは間違いないんだが、少なくとも地球上の文字じゃないだろう。

なんのこっちゃ分からん。

 

「これは私たちが使う暗号で、『尚、この時計は我々全時空軸管理局配属の武力抑制部隊カーバンクルの隊員のみ着ける事が出来る特別製の物であり、これを着ける以上カーバンクルの一員として世界の平穏を維持するべく戦う義務が課せられます。悪しからず』と書いてあるわ」

「そういうのは俺に分かる文字で書け⁉︎」

 

この時計、普通の時計機能の他に通信、コンパス、シフトホール(俺命名)を一時的にこじ開けて別世界へジャンプする機能があるらしく、今晩は俺がこの最後の機能を使ってこの鎮守府に来たというわけだ(この時計を貰ってなかった時、なかなか穴が出なかったのはレイさんの悪戯だったらしい。もちろん、後でしっかりと電に諭してもらった)。

 

「改めて自己紹介するわ。『カーバンクル』のリーダー、レイよ。よろしくね後輩君」

「あぁ、これから宜しくお願いしますセンパイー」

「覇気が無いね、もっとシャキっとしようよ!」

「ってかいつの間にか俺、意思の尊重もクソもなくそのカーバンクルとかいうのに入ってる事になってるんだが」

「そこはまぁ…ごめんね?」

 

 

いつの間にか組織の中に組み込まれてました。

てか武力抑制だか実力行使だか知らないけど武術のぶの字も無い俺が物騒な部隊に配属。

 

 

母さん、姉ちゃん。

バイト見つかりました。

 

親父。

なんか似てる仕事に就けたよ。

 

 

折角だし頑張って世界を守るからねー。

 

 

 

 

 

 

……………………はぁ。

まあいいか。

 




さて、どうです?
あの時一気に飛ばして後書きまで行ったそこのあなたも、今ならなんとか読めなくもない感じになってるはずです。

さあ!次の話ではまたまた元の世界に戻りますよ!
しかもガンガン話が進…みたいですねハイ。

では、誤字・誤表現・改善すべき点等ありましたら感想までどうぞ。


また次の話でお会いしましょう!ノシ


P.S.そういえば、やはりあまり知られてないのか、それとも小説の題材にするとも考えられてないのか、ハースストーンの方はまっったく読者数が増えなかったので、もう少し時期を待って、今度はオリジナルではなく某召喚戦争な学園(予定)にぶち込んでみたいと思います。
それまでは毎週艦これですよ、やったね!

ではでは、今度こそまた来週。ノシ


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雷、落ちました。

ども、トマト中毒です。

今回は現実(リアル)サイドの話と言ったな。

あれは、嘘だ。


いや、嘘では無いのですけど、後ろ少ししか入れなかったです。
次こそ、次こそはちゃんとリアル中心ですよ⁉︎
…多分。

で、では本編をどうぞ!



俺は提督室にて、電に最後の仕事の説明を受けていた。

因みに、レイと雷、響に大淀さんもいる。

 

「最後に、提督に直接取り組んでもらう主な仕事はデスクワークなのです」

「あぁ大体分かった、資源の残量の記録でしょ?」

 

さっき工廠で妖精さん達がドックに運び込んでたでっかい原油缶や鋼材の塊、弾薬の山を思い出す。

確か最初単位抜きで200ずつ揃ってたのが、彼女達が見せてくれた目録によるとさっきまでの行動で少しずつ減っていた。

今さっきまでの業務説明で更に入渠用娯楽施設や食堂を見て回ったけど(ついでに雷・電姉妹は食堂でご飯を食べた)、全部資材が必要になる事が説明されたし、となると艦娘達が関係するほぼ全ての行動に資材減少が絡むわけで。

下手したら、「気がついたら資材が無くなってた」なんて緊急事態になりかねん。

まぁどっかで資材調達なんてことも出来るんだろうけど、例えば工廠で「限界値まで資材注ぎ込んで建造」みたいなこともしないといけないとしたらヤバイ。

 

「それもですが、本部からの特殊任務を受けたりした時に報告書も書かないといけませんし、あと演習の受付書も書かないといけませんし」

「えと、先輩提督さん達と実践訓練できるんだっけ?」

 

作戦室からここに帰ってくる間に演習のことを聞いて、真っ先に思い浮かんだのはダチ共の事だった。

もしヤツらと実践訓練する場が設けられたとしたら、もしかしたら『ヤツらの分身』と接触するのかもしれない。

ヤツらだけどヤツらじゃない彼らに会うのは、なんか複雑だ。

 

「でもさ、電よ」

「はい、なんでしょう?」

 

演習とか資材確保とかそんな話は置いといて、仕事の根本に響く大きな問題がある。

つまりは…

 

 

 

 

「デスクワークしようにも、ここ机ないじゃん」

「………」

 

そう、今の提督室(俺の部屋)には机が無い。

あるのは山積みのダンボールだけ、それだけだ。

これだと、冗談じゃなく書類仕事は出来ないだろう。

ダンボールを机にするとか、バ○テスみたいだな。

 

「あー、机って家具妖精さんが用意してくれるんだっけ?」

「На улице(その通り)、確か工廠の1番手前の部屋に住んでたはず」

「今どこかに行っていてすっからかんですよ?」

 

後ろで大淀さん達が何か言っているが、俺は今さっきレイに聞いた話を思い出していた。

 

 

 

「そういえばセンパイ」

「レイでいいしタメでいいわよ、で何?」

「んじゃあタメで。深海棲艦がシフトホール通って向こう行ってたよな?」

「うん、そうね」

「んじゃあ、電や雷達も向こうに連れて行けない?」

「連れて行けるわよ?むしろ連れて行かないと深海棲艦達に対抗できないし」

「………」

 

 

 

 

あの時俺は、もしスーパーとかで「人数分○○がお得に買える」みたいな事があった時に大淀さんとかを連れて行けたら人数マシマシになるのになー…って思ってたが、もしレイがこっちにいてくれるなら俺いい事思いついたかもしr

 

「あ、別の世界が繋がったら対策取らないといけないし私時々帰るわよ?大方向こうの部屋の机に繋げてもらってーとか思ってたんでしょうけど」

「デスヨネー」

 

やっぱり読まれてたか…

そう、向こうの俺の机に書類を届けて貰って、そこで仕事をこなそうと考えたわけだ。

しかし言い出す前にダメ出しされてしまった。

他に何か良い案は無いもんかなぁ…

 

「あの…レイさん?」

「どうしたの電ちゃん?」

 

別の方法を考えていると、電がレイに話しかけた。

何か妙案があるのかな?

 

「私もあの時計を貰えませんか?」

「へ?…あぁ、いいわよ」

 

えっ、いいの⁉︎

てか、なるほどその方法があったか!

確かにそれならレイがいなくてもOKだな!

…って思ったけど、それだと電が鎮守府に居ないといけない分スーパーに連れて行ける人数が減るなぁ…。

 

「って思ってるだろうし、いっその事皆カツヤに貰っちゃいなさい」

「また読まれたっ⁉︎てか俺に貰うってどういう事だよ」

 

どうやらこの時計、幾らでも劣化版を作成できるらしい。

今さっきの説明の時は言ってなかった気がするが、それはこの際いいとしよう。

もっともその場合管理局の本部へ入る権限は無くなるみたいだけど、俺たち元々そんなとこ行く気無かったから好都合だ。

 

「やり方は、カクカクシカジカっと」

「ふむ、マルマルウマウマな…っと、できた」

 

レイから教えられた方法を試すと、簡単に俺の時計に似た腕輪が出来上がる。

皆を呼んで腕輪を着けて貰った。

さて、これで皆行き来し放題だ!

仕事も捗るし、万々歳だな!

オレ氏勝った!完!

 

「じゃあまた明日、仕事来たら言ってくれなー」

「はい、了解なのですー」

「お休みなさーい」

「спокойной ночи(お休みなさい)」

「お休みなさい」

「お休み、また明日から頑張りなさいよ後輩!」

 

もう夜も遅いし、駆逐艦達も若干眠そうなので帰る事にした。

実は明日テストだったりして、勉強もヤバイ。

じゃあなんでテスト週間に艦これ始めたんだよ、とかはナシで。

皆の声を聞きながらシフトホールに入ろうとして、立ち止まった。

 

「あー、雷!」

「どうしたの提督ー?」

 

明日は朝早く起きて勉強しようと思ったので、ついでに艦娘に起こしてもらう事を思いついたのだ。

軍事関係なだけあって早く起きてそうだもんね。

 

「明日0630に起こしてくれい」

「りょうかーい」

 

俺としては雷をちょっと頼ってあげようと思っただけなのだけど、これがちょっとした騒動になるとは知る由も無かった。

 

 

 

「…帰っちゃったのです」

「それじゃあ、私達も寝ましょうか?」

「了解、響就寝する」

「私はちょっと本部に行ってくるわ」

「レイさんも大変ね、私は提督に頼られたし早く寝るわ!」

「お休みなさいなのですー」

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

次の朝、0630。

いつもの様に地味に散らかった克哉の部屋の片隅に置かれたベッド、そのすぐ側の壁に歪みが生じ、そこから雷が出てきた。

 

「よいしょっと…へぇ、本当に別の部屋に来たわ」

 

昨晩克哉に貰った腕輪を見やる雷。

腕輪から目を離すと、彼女は背負っている艦装を床に降ろした。

フローリングの床が、もう限界だと言わんばかりにギシリと軋む。

小型化し擬人化したとはいえ、雷は駆逐艦。

本来船に載せるべき大型装備が一般宅の床に置かれたのだから、無理も無い。

 

「ここが提督の部屋?微妙に散らかってるわね」

 

部屋を見回す雷は、ベッドに横になっている克哉を見つけた。

紺色の毛布を一枚体にかけて、横に体を向けて眠っている。

 

「よく眠ってるわねぇ…」

 

どこか少年のあどけなさを纏った克哉の寝顔を見て、雷は母性に溢れる笑みを浮かべた。

雷が『ダメ提督製造機』と呼ばれる所以である。

 

「…ちょっと可愛いかも?」

 

無意識に布団に潜り込む雷。

起こしに来たのを忘れて克哉の寝顔を見つめ始めた。

そして雷自身も、克哉の体温で温まった布団の温度で少しずつ眠くなってくる。

 

「ふわぁ……あむ…」

 

いつの間にか、雷は克哉の隣で眠り始めていて。

そしてその頬は、克哉の体温に温まっただけでなく少し赤くなっていた。

 

「もっと…頼っていい……の…よ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……まぁもちろんの如く、起こしに来た克哉の母親に見つかる訳で。

 

「かっ…克哉⁉︎起きて!これどういう事よ⁉︎」

 

克哉はいつもの様に母親に叩き起こされた挙句、朝っぱらから大目玉を食らうことになったとさ。

 




雷、落ちましたね。

次回、遂に艦娘達がリアルに進出…?
暁型の3人は克哉の買い物要員に加えられてしまうのかっ⁉︎



…ちょっと次回予告みたいなのしてみたかっただけです、ハイ。

では、いつもの様に誤字・誤表現や改善すべき点などありましたら感想へどうぞ。

また来週、次の話にてお会いしましょう。ノシ


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始まる侵攻

ども、トマト中毒です。

最近、マイページメニューの中に『メッセージボックス』なる物の存在を知りました。
アンケート行為などはこのメッセージボックスを用いて行えば問題無いという訳ですね。
教えてくれた方、本当に有難うございます。

そして、以前聞いた『物語に出たい人』の名前、間違えて無ければ三名集まりましたが、出てくる箇所が決まりました!
今回少しだけ出てきます。分かる人には分かると思い…ましょう。
勿論、まだまだ「自分の名前、使ってくれい!」という方募集しておりますので、どうかメッセージボックスを使ってお知らせ下さい。

では、本編をどうぞ!


「さて、どういう事なのかご説明願おうかしら、克哉?」

「聞くまでも無いわ、目の前にある今この状況が全てだもの」

 

やぁ、皆さん。

俺です、克哉です。

今リビングにて土下座なうです。

そして目の前には、なんか怒りの気が体から立ち上がって背後で鬼の形をとっているウチの母と、殺気が背後で死神の姿になってる俺の姉がいるのですが。

ねぇ2人とも、いつの間にス○ンド使いになったのさ?

 

「私はまだ信じたく無いのよ!ウチの家系から誘拐犯が出たなんて!」

「同感だけどもうどうしようもないわ母さん、私も弟がロリコンでペドフィリアだったなんて事信じたく無いわよ」

 

おおぅ、なんとも心を抉る罵倒。

だけど、確かに雷みたいな知らない小さい子と一緒に寝てたら誘拐犯とかロリコンとか言われても仕方ないかもなぁ。

だけどペドちゃう、この場合はハイコンかアリコンが正しいと思うぞ。

前にオタ原が言ってたことには、

ペドフィリア=0〜3歳、

ハイジコンプレックス=4〜6歳、

アリスコンプレックス=7〜12歳、

ロリータコンプレックス=13〜17歳

が対象の性癖だった気がするんだ。

閑話休題(それはいいとして)、これの発端である雷は2人の後ろからなんかショボーンな顔でこっちを見ていた。

 

「ごめんなさい提督…」

 

あぁ、雷は何にも悪くないよー。

いや、起こしに来て一緒に寝るってのはちょっと悪いのかも知れないが、俺は全く気にしてないからなー。

朝早くに起こしに来てとか、こんなちびっ子に言う俺も悪いんだし。

さて、今は7時10分。

このまま説教タイムが続くとテストに響くし、緊急手段を使って脱出するとしよう。

飯が目の前にあるのに食べられないのはキツイが、悪い点取るよりはマシだ!

 

「雷、適当な所で艦装背負って帰っといてー」

「え?あ、分かったわ」

 

雷に帰るよう言っておく。

この2人にいつまでも付き合わないでいいんだからなー?

 

「それじゃあお二方、また晩飯の時に説明するからなー」ズズズズズズ

「克哉何言って…え?」

 

俺は鬼2人に一声かけて、シフトホールを俺の背後に開けた。

2人とも驚いて固まっているが、仕方ない。

そりゃあ目の前の景色が歪んだらビビるよな。

 

「行ってきまーす………」

「えっ?ちょっとかつ…や………」

 

そのまま後ろに倒れこむようにしてシフト…もうめんどくさいからシフトホールの事はこれから『穴』と呼ぼう、うん。

鬼2人の唖然とした顔を見ながら、『穴』に入って修羅場を脱出することに成功したのだった。

 

 

 

「……今の、何?」

「さあ…」

「(それじゃあ私もこの辺で…)」ズズズ

「「あなたが代わりに説明してもらえると嬉しいのだけどね?」」

「…………はい」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「よしっ、上手くいったー!」

 

俺は、本来なら家から15分かかる学校に2分足らずで到着した。

どうやらこの『穴』、レイが言うには頭に場所を思い浮かべながら開くとその場所に繋がるらしいのだ。

だからまず自分の部屋まで撤退し、荷物を持って玄関へワープ、靴を回収して学校へワープしたわけである。

 

「これからはギリギリまで寝てられる…!」

 

実質一歩踏み出せば学校に着ける状態なので、移動する時間が要らなくなる。

これからは15分多く寝てられるぜ!

問題としては、誰かに見られた場合だな。

今日は目立たない路地裏とか探してから帰るか。

 

 

「おっ、よお克哉!」

「よっすオタ原!珍しいな、そんなもん開いて」

 

教室に着くとオタ原がいた。

本名は田原なのだけど、オタクなので皆にオタ原と呼ばれている。

コイツはフツメンのくせに可愛い彼女がいるので、非リア集団の俺たちの中ではいじられキャラが確立している。

しかもその彼女さんはオタク肯定派な上にゲーム好きらしくマジで充実した日々を送っているのだが、いかんせん頭が悪いので親にいつも怒られているそうだ。ザマァ

そんなオタ原は珍しくユ○タンなんか開いている。

 

「今回赤点とったらリンゴ取られるんだよ」

「大変だなぁ、頑張れよ?」

「えらく他人事だなぁオイ⁉︎」

「だって他人事だもんね、リア充撃沈しろ」

「(´・ω・`)ショボーン」

 

軽口を叩き合いながら、俺は自分のテスト用の席である窓側の真ん中ら辺の席に座った。

幸い、俺と友達連中の席は一ヶ所に固まっているため、こういう時も意外と近くで話せるのが嬉しい。

そして俺も、勉強道具を開いてテスト対策を取り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」カリカリ

Because solar radiation is diffuse, it must be……あれ?集中させるってなんだったっけ?

 

「(やっぱ英語は鬼門だなぁ…)」

 

現在1450、英語のテストなうです。

和樹もオタ原も、背中で必死さを醸し出しています。

 

「(うーん…あっ、concentrateか?)」

 

斯く言う俺も、必死こいてテスト解答中。

…だった。

 

「(へぇぇ疲れた、だるー)」

 

やっぱテストだりぃなー。

いや、必要な事なんだってのは理解できるよ?

ただ、進みたい道に応じて受ける教科を選べるとかできないのかなぁ。

例えば、土木関係に進みたいやつなら理科とか必要ないじゃん。

俺は親父と同じ道に行きたいから、英語とか社会は必要にしても理科は必要あるのか疑問だ。

あ、俺の親父は海上自衛隊に入っている。

外国語とかが必須なのは分かるけど化学知識や生物に関する知識は必要なのか?

…あ、でも物理は必要かもしれない。

 

「(親父、今どこら辺の海域にいるのかなぁ…)」

 

ふと俺は、横の窓からすぐ近くに見える海を見ていた。

既に高く登って、俺の肩まで暖かい昼の光で包んでいる太陽の光が、海面にキラキラ反射して少し眩しい。

 

「(意外と近くにいたりして)」

 

ふとそう思って、即座に切り捨てる。

ここら辺とか、警備するような物は何もないじゃないか。

ここは何の変哲もない港町だし、ここらに原子力発電所があるとか政治関連の建造物があるとかはない。

自分の考えに自分でツッコミを入れて少し可笑しくなった、その時。

 

「(……ん?何だあれ、船か?)」

 

海の遥か向こう、水平線よりは少し陸寄りに黒いポツポツが綺麗に列を成している。

そのポツポツは、少しずつこちらに近づいて来ているように見えた。

 

「(漁業船…にしては何か変だ、列が整いすぎてる)」

「おい藤原、今テスト中だぞー」

 

先生が注意してくるが、そんな事はどうでもいい。

ポツポツがだんだんよく見えてきて、一つ特徴に気がついたのだ。

 

 

 

それらの中の一つが海面から跳ねた時、前面に真っ白い歯が並んでいた(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

「深海棲艦…!」

「おい藤原、テスト中だぞ!」

 

先生が本格的に怒り始めたが、今はそれどころじゃない!

あいつら、もう地上侵攻を始めやがった!

 

「おい克哉、テストがだりぃからって訳分かんねぇ事言って…は?」

「大方昨日遅くまで艦これやってて幻でも見たんじゃ……マジかよ」

 

俺の前方席に座る和樹とオタ原も気づいたようだ。

 

「え?マジ?駆逐型だ」

「軽巡型と雷巡型もいるじゃん、目の色からしてヘ・チ・ハ・ハ・ロ、1-2の主力部隊か?」

「ガチマニア乙wだけど、なんでゲームのモブがリアルに出てくるのさ?」

「ちょっと待ってくれ、駆逐とか軽巡とかなんだよ、てか艦これって何さ?」

「オタク共うるさい」

「話について行けねぇ」

 

だんだんクラスのヤツらが賑わってくる。

確かに今テスト中だしこの騒がしさはダメだろうが、今は事情が違う。

この町で、海に面しているでっかい建物は、高層マンションが一つとこの学校だ。

あいつらは多分マンションとここを狙って砲撃を行ってくる。

なんとかして皆を避難させないと、下手したら全員瓦礫の下だ!

 

「皆静かに、今テスト中だぞ!克哉、終わったらしっかり説明してもらうからな!」

「それどころじゃない!先生、早く皆を避難させ」

 

 

ドガアアァァァァァァン!!!!

 

先生と口論している最中に、崩壊音と共に激しく校舎が揺れた。

 

「キャアアァァァァ!」

「何がどうなってるんだ⁉︎」

「皆、とりあえず机の下へ!」

 

学校全体が騒がしくなってきた。

クラスのヤツらがパニックになってきたので、クラス委員が指示を出している。

クラス委員有能ェ…

とりあえず鎮守府へ向かわねば。

雷がまだこっちにいた場合はそっちも回収して、編成組んで早いとこ出撃!

 

「和樹、オタ原、俺行かないといけない所がある」

「どこだよ、早く避難しねぇと危ねえぞ⁉︎」

「お前らは逃げろ、先導は頼んだ」

「ちょっ、オイ!」

 

和樹の制止をあえて聞こえないフリして走り出す。

目指すはトイレ、あそこならもし追ってきてもシリアスブレイクするだけで済むからな。

 

男子トイレへ駆け込み、洋式トイレに入ってドアをバタン。

腕輪を起動し、まずは家につなげる!

 

 

 

 

 

 

 

克哉がトイレに駆け込んだ十数秒後。

 

バタバタ

 

「めっちゃシリアスな顔して駆け込んだ場所がトイレかよwwww」

 

和樹、田原などの克哉のオタ友連中が克哉を追いかけてきた。

因みに、草を生やしているのは平常時のオタ原だ。こんなのが好かれるとか本気で不思議な話である。

 

「今バタンって音したから大か?まぁ、そりゃシリアスになるよなww」

「同調すなし」

 

この克哉に同調しているフツメンの名は青木。

彼は何気に陸上部のエースだったりするが、オタク属性のせいで今まで彼女はいた試しがない可哀想なやつである。

 

「ちょっと待て、ドアが開いてるぞ」

「…ありゃ、ホントだ」

 

3人が気づいた通り、和洋便器の個室のドアはどちらも開いていた。

克哉がなんとも詰めが甘い事に鍵をかけるのを忘れたのだ。

…まあ、もし鍵をかけていたとしても一声かけられればすぐにバレる訳だけれども。

 

「え?アイツ確かにトイレに入ったよな?」

「テンパって隣の女子トイレに入ったとか?」

 

 

 

何はともあれ、こうして克哉は学校から消えたのだった。

 

 

 

 




うん、色んな人が気になってるあの人は出なかった…。

次回バトルです…か?
日本語力というか文才というか、不安です。

ではいつも通り、誤字・誤表記・改善すべき点などはどうぞ感想欄にぶち込んで下さい。

あと、今週は進研模試があるので、来週若干遅れが出る可能性があります。とはいえ、木〜金位には出したいですね。

では、また次の話まで。ノシ


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テレビ報道、そして…

どうも、トマト中毒です。

えー、先週の後書きに書いた『県模試で投稿が遅れる』という話なのですが、実は先週県模試なかったんです。
ほら、今超インフルエンザ流行ってるでしょう?
うちの高校の教師達が幾人も轟沈してしまって、敢え無く中止になったんです。
さらに、今度は生徒間で流行り始めて学年閉鎖になるし。
ですからこの3日間、艦これとかリトルノアとかFGOとかハースストーンとかしながらゆっくり執筆してました。
それで、今週と来週の2つ執筆しとけばペース落ちないかなーと思って2つ書き進めて、前に置く話として一つ書き終わった時点で

『あれ?これこの話の後ろに置いた方が良くね?』

とこうなりました。
二つ同時に進めていったおかげで少し練度が足りないと思います。
という事でこの際、

一気に2日連続で投稿します!
うん、これでだいぶ話も進むし、いいとしよう。

では、本編をどうぞ!



深海棲艦によって襲撃された、克哉が住む町。

『海に浮かぶ女性型のバケモノが町に砲撃を行っている』という何も知らない人々からすれば訳のわからない情報は全国にSNSで拡散し、一部の人間を除いて「何言ってんだコイツら」と思わせた。

しかし同じ趣旨の主張をする人が余りにも多く、そしてその様子を少しだけ捉えた動画も投稿され、某掲示板では

 

『深海棲艦じゃねえか』

『ほっぽちゃん出現の可能性ありますなw』

『レ級ちゃんhshs』

『てか人間襲撃されてね?wwww』

『レ級たんとか俺らが会いに行ったところで嬲り殺し確定なんですね分かります』

『あっ……でも、いや逆にイイ!』

『お前wwwwwwww』

 

などお祭り状態になっていた。

そして報道陣も黙っていない。

ちょうど近くにローカルの記者がいたタイヨウTVを筆頭に、早速ここ一番の特ダネを掴むために記者を近くまで派遣していた。

 

 

 

 

「…は、はい!現場の白井です!私は今、謎の生物によって襲撃を受けたという○☆県△市の上空におります!」

 

克哉の住む町、深海棲艦が襲撃を行っている場所から少し離れた上空に一つ、ヘリが飛んでいる。

タイヨウTVの取材ヘリである。

そして、タイヨウTVのお昼のニュース番組にて、襲撃の様子の取材を生放送で流していた。

まだアナウンサーになって日の浅い白井が、緊張でガチガチになりながらも取材を進めている。

 

「えー、現在は襲撃を受けたという学校…が見えました!明らかにボロボロになっています!」

 

カメラが向けられると同時に、テレビの中継画面にボロボロに崩れた克哉の高校が写る。

と同時に、SNS等で

 

『てか自衛隊とかはなんでここまで陸に接近する事を許したの?』

『確かに不法入国に問われそうだな』

『警ら隊機能してんのか』

『深海棲艦だから深海からいきなりバシャッて上昇するんですね分かります』

『だから深海棲艦ってなんだよ』

 

などの投稿がされる。

そりゃあ無理だって、こないだも一隻沈められたんだし……。

という私ことトマトのつぶやきを他所に、

 

「学校があるなら、近くに……いたっ!ほら、あそこ写して!」

「どこだ?てか、よくそんな体のり出せるな!」

「うっさい、仕事なんだから根性よ根性!ほら、あそこ!」

 

生放送ならではの小ハプニング(アナウンサーとカメラマンの会話)も入りつつ、遂に深海棲艦がカメラに写された。

生取材の放送を始めた頃から視聴率が上がっていたタイヨウTVのチャンネルは、深海棲艦を写した瞬間一気に視聴率が上がり50%近くまで達した。

 

「見えるのは4…つ?人?体?」

「なんでもいいだろ!続けて!」

「分かってるわよ!えと私に見えるのは、箱から乗り出してるようなのが1、仮面をかぶってるようなのが1、イルカ…でしょうか、真っ黒なイルカみたいなのが2体見えます」

 

タイヨウTVに出演中のコメンテーターはいつもの様にそれらしくテキトーな批評をし、そして生放送を見ていた科学者達は深海棲艦を捕獲するべく行動を開始した。

その時。

 

「あっ!自衛隊の船でしょうか、謎の生物達に向かって行きます!」

 

海上自衛隊の巡視船が深海棲艦へ向かって進んできた。

途端にSNSが沸き始める。

 

『海上自衛隊対応遅いわwwww』

『自衛隊ちゃう、あれ保安庁の船だぞ』

『あれ、確かだいぶ前に防衛省になったんじゃなかったっけ?』

『どっちにしたって艦これの設定上彼女達には傷一つ付けられんけどな、御愁傷様』

 

実際、つい先日一隻船を沈められた防衛省としては耳の痛い話だが、その事はまだ発表されてなかったので一般の人々が知らなくて当たり前だった。

 

『砲撃を止めなさい!そこの…なんて呼んだらいいのか分からんが、兎に角武器を捨てなさい!』

「えっと、自衛隊の人達何言ってんだろ?町を破壊してる時点でとっくにそういう一線を越えてると思うんだけど…」

「こら!生だぞ生!」

 

白井が不意にもらした一言にカメラマンが注意した。

取材中に私語は厳禁、しかもテレビ局サイドとしてもかなりの失言である。

生放送の様子を見ていたタイヨウTVの上層部の人間は後に入ってくる政府その他諸々からの多数の苦情を思ってそろって頭を抱えたが、生放送なので後の祭り。

その一言は全国で聞かれ、

 

『おおぅグサッとくる一言』

『全くその通りだよな』

『ズバッと一刀両断していくスタイルw』

『そこらの下手なコメンテーターよりずっと好感持てる』

『俺この人好きかも』

『告ってこいww』

 

一気に人気が出た。

因みにこの一言をきっかけに、彼女はタイヨウTVで弾かれた後ネットニュースにスカウトされ深海棲艦関連専門の取材役に抜擢、その歯に衣着せぬ取材やコメントで人気を博すことになるが、それはまた別の話。

 

ドーーーーン

 

深海棲艦が町から自衛隊の巡視船に目標を変え、砲撃を始めた。

自衛隊の人々が応戦するが、深海棲艦達に人間の攻撃が効くはずもなく、間もなく船体が損傷して煙が出始めた。

 

「呼びかけも虚しく、あの生物に攻撃されています!自衛隊の方も銃などで応戦しているようですが、まっったく効いておりません!」

 

遂に、巡視船が本格的にボロボロになってしまった。

撤退しようとするも、追撃を受けてさらに損傷が激しくなっていく。

最終的に、船は横転してしまった。

 

「自衛隊の船がやられました!乗組員の方々は無事でしょうか?…ん?イルカ型のが船に近づいて行ってます」

 

某掲示板やSNS、テレビのコメンテーター達、放送を見ていた自衛隊員達と全国の人々が騒ぐ中、駆逐型の2体が横転した自衛隊の巡視船に接近する。

 

「…っ⁉︎船に近づいたイルカ型の生物が、大きな口を開けて船体を噛みちぎりました!あの生物は鉄を主食とするのでしょうか⁉︎」

 

駆逐型の2体が巡視船の船体を噛みちぎる映像は、全国の人々に生理的な恐怖を与えた。

ある者は怯え、ある者は海にトラウマを覚え、ある者は海からできるだけ離れる為住む場所を変えるべく荷物をまとめ始めた。

 

『魚っぽいと思ったら口あったのかよ!』

『てかあのフォルムにあんなバカでかい歯が生えてるとか気持ち悪すぎる』

『正にバケモノ、日本も終わりか?』

『なんかもう悪い冗談であって欲しい』

『船体を噛みちぎって海に浮かぶ黒い油を飲んでる、ありゃ補給してるのか?』

『あぁ成る程、やっぱり深海棲艦も補給行為するんだな』

『なんでお前らそんな知った風なの』

 

駆逐型が横転した船を喰らい尽くし、再度町に砲撃を開始して数分。

生中継を中断し、ヘリで待機していた白井が何かを発見した。

 

「そういえば、なんで私達のヘリは撃ち落とされないのかしら?」

「確かに…まあ、おかげで助かってるんだからいいだろ!」

「それもそうね…あれ?ねぇ、あそこ写して!」

「何だ?…なにっ⁉︎」

「れ、連絡いれて生中継に移してもらうわよ!」

 

 

 

 

 

そして、タイヨウTV取材班及び全国の人々は、目を疑うような光景を見ることになった。

 

 




だいぶ練度落ちたでしょ?
これ、この1日で書いたんです。
次の話は土曜から4日間かけましたので、大分練度は元どおりだと思います。

誤字・誤表現・改善すべき点等ございましたら、是非とも感想へどうぞ。

ではまた明日、次の話でお会いしましょう。ノシ


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反撃開始!

ども、トマト中毒です。
連日投稿2日目です。

自分、話を書き始める前にまず頭の中で「今回のはこんな感じにしよーっと」てな感じで場面をアニメにして流して、納得いってから書き始めるので、少し執筆に時間がかかるわけです。
非効率的かもしれませんが、頭の中の映像を見ながら描写をしていけばいいので、自分の中では1番楽なやり方です。

それはさておき、本編をどうぞ。



克哉の通う学校が襲撃されるほんの少しだけ前。

 

ずずず〜…

 

「…ふぅ、おいしい」

「ありがと、丁度いいお茶の葉を開けててよかったわ」

 

藤原宅では、雷と克哉の姉である美琴がゆっくり緑茶を啜っていた。

あの後、克哉の母の陸子はすぐに出かける時間になってしまい、雷は彼女が出て行った後で美琴に克哉のこれまでの話(昨晩海上で電と妖精さんから聞いた話)をして、打ち解けた二人はその後ゆっくり雑談をしながら克哉の帰りを待っていたのだ。

 

「あ、でもいまさっきの話からすると、いつここにその深海棲艦とかいうのが来てもおかしくないんじゃないの?」

 

今日は休みで外に出る用事が無い美琴は、上下スウェットに寝癖まんまの髪と、おおよそ仕事時の彼女とはかけ離れた格好をしている。

彼女の素はこっちのだらけモードであり、初めて仕事に行く時に克哉に「くっそ違和感たっぷりw」と大爆笑されるほど。

尚、その数分後には顔面の形状が思いっきり変形した克哉が床に沈む事になったのだが、それはまた別の話。

 

「そう、だから今日から提督にはしっかり訓練をつけてもらわないといけないの」

 

雷は、美琴と打ち解けた時に自然にするように言われて敬語を外している。

彼女としてもやはり軍艦の生まれ変わりとはいえ見た目は子供。

敬語は苦手だったようで、敬語が外れた今では最初の硬い感じが消えていた。

 

(いい子じゃないの)

(提督も面白いし優しいけど、お姉さんもいい人ね!)

 

二人のお互いに対する感想である。

 

「そういえば、提督っていつ帰って来るのかしら?」

「えぇと、確か今…英語のテストだからもう少しじゃない?」

「まだかかるの?この際、二人だけじゃなんだし皆呼んで来ようかなぁ」

「へぇ、もっとあなたみたいな子がいるの?」

 

なんて何気なく話している二人だが、本来はお互いに面と向かって話す事など不可能だった存在であった事をすっかり忘れている。

今回はイレギュラーと非常事態が重なってこれが起こっているだけなのだ。

そう、丁度

 

 

 

ドオオォォォォォォン!!!!

 

 

こんな具合に。

 

「…あらら、今さっきの質問でフラグ立てちゃった?」

「…ええ、多分」

 

ズズズズズズ

 

「雷!やっぱりこっちに残ってたか!」

「提督、今の崩壊音ってやっぱり?」

 

二人して冷や汗をかいていると、丁度克哉が帰ってきた。靴を片手に靴下で家に上がってくる。

 

「艦装背負ってこい!すぐに向こうで編成して出撃するぞ!」

「分かったわ!」

 

うなづいて2階の克哉の部屋へ向かう雷を見送った克哉に美琴が歩み寄った。

 

「克哉、あの子から話を聞かせてもらったけど中々ややこしい事になってるみたいね」

「むしろ話を聞いて疑ってないのが不思議な位だよ」

 

美琴の言葉に克哉は苦笑した。

雷のような小さな子が遠い昔戦争の時代を駆けた戦艦達の生まれ変わりだなどと言われても、普通なら精神科に問い合わせるかそいつの熱を測るだろう。

こうもあっさりと、と思った克哉は、

 

「だって、妖精さん…だっけ?あんなの見せられたら信じるしかないし」

「あっ…」

 

美琴の一言と、彼女が指し示した方向にある机の上で美味しそうにクッキーを齧る妖精さんを見て一瞬で察した。

そして、美琴のさらなる一言でもっと驚いた。

 

「世界が繋がるとか深海棲艦とか私はよく分かんないけど、克哉が決めた道なら止めはしないよ」

「姉さん…」

 

彼女は普段から克哉が何するにしてもダメ出ししてきた(その殆どがゲーム関連だったのは言ってはいけない)。

そんな彼女が、自分で決めた事をスッと通してくれるのは克哉にとって初めてだったのだ。

 

「精一杯やってみなさい、私は応援するわよ」

 

そう言う美琴の目は、全てを包み込むような優しさを湛えていて。

 

「ありがとう、頑張るよ」

 

そう返す克哉は、照れくささに少し赤くなってはにかんでいた。

そしてこのいい感じの雰囲気は、

 

「それに、今からやるのは仕事なんでしょ?就職活動とかすっ飛ばして正社員とか、バイト探さなくてよくなって良かったじゃん!」

「今さっきまでの空気が勢い良くぶっ壊された⁉︎」

 

唐突に破壊される。

 

「それに、少なくとも克哉がロリコンとかの類じゃなくて安心したし」

「いやいやいや心配すんのそっちかよ⁉︎俺は普通の女性がいいんだっ!特殊性癖は持ち合わせてない!」

「へー、んじゃあ仕事モードの私は?」

「未だに超違和感たっぷいだだだだだだアイアンクローは無しだって‼︎」

 

今さっきまでの真剣な空気は何処へやら、現在進行形で深海棲艦の攻撃を受けているというのにここだけやたらと空気が和らいでいる。

その光景は、さながら猫がじゃれあっているかのよう。

思いっきりシリアスブレイクな二人の会話は、

 

 

バキッ‼︎

 

「あ」

「へ?」

「ん?」

 

艦装を背負った雷が重量に耐え切れなかった階段を踏み抜くまで続いた。

そりゃあ艦装だけで床が軋むのだから、子供の重量がプラスされて床が落ちても無理ない。

うん、しょうがないのだ。

階段に開いた穴は克哉が帰った後に修理するという話で落ち着いて、とりあえず克哉と妖精さんを肩にのせた雷は鎮守府に向かった。

 

「いってらっしゃい!頑張ってね!」

「おう、行ってくる!」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

崩れた学校。

船などがぶち壊された港。

普段は少しは飛んでいる海鳥がいなくなり、空には砲撃の音とテレビの取材用ヘリの飛ぶ音だけが響いている。

ここは、今しがた深海棲艦の攻撃を受けた克哉の住む町に隣接した海。

現在進行形で今度は住宅街の方向に深海棲艦達によって砲弾が撒き散らされている。

 

「……」

 

砲撃の手を止めた雷巡型チ級がふと港を見ると、視線の先にニンゲンがいた。

ニンゲンとは、彼女ら深海棲艦にとっては殲滅すべき相手だ。

なぜかは分からない。

だが、自分という命が海に現れた瞬間から頭の中に響くこの声が、

 

《…コロセ………》

 

こんなにも彼女達を突き動かすのだ。

 

「……ッ‼︎」

 

チ級の報告を受けて、旗艦の軽巡へ級が駆逐艦達に通達する。

間も無く、ニンゲンのいる地点に向かって一斉砲撃が開始された。

アレの生死は煙に隠れて分からないが、アレがいた地点は周辺を含め床の石材が崩れて崩壊している。

ニンゲンは非常に脆く、彼女達にはいとも簡単に殺せる。

何の抵抗手段もないアレらは、彼女達にとっては狩猟者に狩られる獲物と同じだ。

以前ニンゲンの生息地を破壊した経験から、まず助からないだろう。

そう思ってまだ煙っている地点から目を離したチ級は、次の瞬間目を見開いた。

 

別の地点に、今さっき葬ったはずのニンゲンが立っている。

 

「……ッ⁉︎」

「…………ッ‼︎」

 

焦ったようにニンゲンに向かって砲撃を行おうとした深海棲艦達。

少し後には、早々に撤退しておけば良かったと後悔する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズズズズズズ

 

「総員、出撃開始!暁の水平線に、勝利を刻むんだ‼︎」

「はーい司令官!行っきますよー!」

「了解、響、出撃する」

「電の本気を見るのです!」

 

 

 

 

 

獲物(人間)の反撃が、始まった。

 




さーて、次はバトル描写だなー…。

俺の手法の利点として、『同じようなシーンがあるアニメを参考にできる』というのがあります。
…まぁ、今回みたいなのに類似したヤツって、俺としては一つしか心当たりがないのですが。

誤字・誤表現・改善すべき点等ございましたら、ぜひぜひ感想へどうぞ。

ではまた来週、次の話でお会いしましょう。ノシ


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戦闘、そして克哉の新特技

お久しぶりです皆さん、トマト中毒です。

投稿遅れて申し訳ありません。
言い訳を簡潔に申し上げます。

イ ン フ ル エ ン ザ だ

流行に一足遅れてかかるとか、見事に乗り遅れたなぁ…という訳で、つい先日完治して急いで仕上げた訳です。

まぁいつにも増してグダグダかもしれませんが、本編をどうぞ。


「総員、出撃開始!暁の水平線に、勝利を刻むんだ‼︎」

「はーい司令官!行っきますよー!」

「了解、響、出撃する」

「電の本気を見るのです!」

 

打ち合わせ通り、俺が開いた『穴』から3人が飛び出してきた。

いやー、今さっきのは正直焦った。

なんせ俺に向かって全砲門ぶっぱしてきたんだもんな、完全にオーバーキルだろこれ。

それはそれとして、今はウチの子たちの活躍をしかと目に焼き付けるとしようか。

『穴』から飛び出した3人は、作戦通りに電を旗艦とした単縦陣の陣形を組んで深海棲艦に向かっていく。

彼女達が目の前にいきなり現れて驚いた様子だった深海棲艦は、それでもすぐに電達に砲撃を開始した。

 

バシャーーン‼︎

 

深海棲艦達の周りを時計回りにぐるっと進んでいく3人は弾が作る水柱を全て避けて行くが、響が不意に怯んだ瞬間、彼女が水しぶきに包まれた!

上がった水しぶきが晴れると、彼女の艦装から少し煙が上がっているのが遠目に見えた。

どうやら弾が掠ったようだ。

 

「大丈夫⁉︎」

「…うん、まだまだいけるよ」

 

雷が響を心配して声をかけたようだが、響は大丈夫なようだ。

 

「さて、やりますか…!」

「てー!」

「なのです!」

 

3人は1番近くにいた駆逐級を総攻撃し始めた。

3人が肩に担いだ連装砲が火を噴く度、小さな女の子が身近に聞いて耐え切れるとは到底思えないほどの音の衝撃が腹に響く。

歌手のコンサートとか行ったことある人なら分かると思うけど、これ意外と胃が揺さぶられるんだよなぁ。

 

《ガギャアアァァァァアアッッ!!!?》

 

そんな事を考えてる間に、3人は駆逐級をガンガン撃ちまくってもう一体をハチの巣にしてしまった。

撃沈した深海棲艦の遺骸がモクモクと黒い煙を吐き出しながら沈んでいくが、それを見つめる俺には一つ懸念があった。

 

「(あれって、やっぱり回収した方がいい気がするんだがなぁ…)」

 

そう、目の前で沈みつつある深海棲艦は沈む時、大破した所から黒い液体を垂れ流し、損傷部分から鋼鉄でできた体を排出している。

水質汚染なのは言うまでも無いが、後で科学者あたりが引っ張り上げて騒ぎ回っても面倒くさいし、後でどうにかして回収しよう。

購買スペースにいた明石さんの艦装がクレーンくっ付いてた気がするから、彼女を連れて来ればなんとかなるか?

 

「やった!」

 

と深海棲艦の遺骸の後処理を考えてる間にもう一体の駆逐型をつぶしたみたいだ。

目が潰れ顔が醜く抉れ、そこから黒い液体、海水に広がってない所を見るに、推定黒オイルが流れ出している。

当たりかたが良かった(クリティカル)んだろうな、あれをやった子は後で特に褒めたげよう。

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

《グオオォ…》ゴポポポ…

「やった!」

「あとは後ろにいた二体だけだね」

「後で提督にお願いできるように、早く残りも倒しちゃおう!」

 

倒した駆逐型を尻目に、雷と響は海上を進みながら声をかけ合っていた。

編成を行ってカツヤがこっちに戻って港に向かって来ていた間に、雷は美琴の事を皆に話していたらしく、早く深海棲艦達を撃退して帰投し、カツヤにお願いして皆で彼女に会いに行こうと思っているみたいだ。

 

「っ!」ボシュン!

 

2人が油断して会話してる間に、雷巡型が海中に魚雷を投射した!

その影はグングン2人に近づいていく。

 

「…!前方に魚雷なのです!」

「おっと、ここで当てられるのもっ!」

「なんだか締まらないからねっと…」

 

電に注意を促された2人は左右に分かれて魚雷を避けた。

標的を見失った魚雷はそのまま進んでいき港の克哉に影響がない所に着弾、コンクリの壁を削った。

しかしそれと同時に残りの深海棲艦2体が弾幕を張り、同時に後退し始めた。

 

「おっと!…これは近づき辛くなっちゃったわね」

「あの深海棲艦達ひゃっ!…後退し始めたのです」

「こうして弾を避けてほっ!…迂回してる間に逃げる気だね、なんとかっ!ならないか…」

 

向こうの世界(艦これ)なら深海棲艦たちを逃しても海域制圧が滞るだけだが、今回こっちの世界(リアル)で彼女達を逃すという事はつまり、この世界の海の制圧戦力をみすみす相手に与えてしまうという事である。

それは電達にとって羅針盤娘の補助を必要としない安全な正に夢の海がなくなるという事であり、それと同時に本来なら直接顔をあわせる事が無かったはずの彼女達の提督の故郷が脅かされる事であって、3人にとって許せる事では無かった。

 

「よし、ちゃちゃっと終わらせちゃいましょ!」

「後でまたこの海で走らせて貰いたいし、早く終わらせるとしよう」

「では、改めて単縦陣を組むのです!」

 

気を取り直した3人は、彼女達に5インチ単装高射砲を向け弾幕を張りながら後退していく雷巡チ級に標準を合わせた。

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

「よし、だいぶ慣れてきたな」

 

俺は電達の帰りを待っている間、思いついた事の練習を行っていた。

戦闘中もだんだん沖合に移動していた深海棲艦隊と電達は、駆逐型の2体が沈められた深海棲艦側の敗北の色が濃くなり生き残っている残り2体が逃げの一手を打った事で更に沖合に出てしまっている。

だから俺はこの比較的安全になった港のそこかしこに散らばった瓦礫を『穴』を使って掃除してから、いよいよやる事が無くなっていつもの実験をする事にした。

俺はいくらでも空間をつなぐ『穴』を作れる道具を持っている。

つまり、いろんなチート系小説にも登場するアレが出来るというわけだ。

もちろん、並々ならぬ集中力が必要になるが。

 

「よし、まずは取り敢えずやってみよう!」

 

決心した俺は、港の堤防の上を気合いを入れて走り出した。

最初は軽く、だんだん速度を上げて…!

 

「…今っ!」

 

堤防の少し向こう、全力で前方にジャンプした時俺の体が描く放物線に大体重なる感じで『穴』を展開。

堤防の縁を蹴って全力で穴に飛び込む!

『穴』の向こう側は海、少し沖に出た所の上空につなげた。

そして向こう側に出た瞬間、更に向こうの空中に通じる『穴』を俺の軌道上に展開、走った勢いのまま潜り抜ける。

俺の説明が分かりにくいかも知れないが、要は『穴』の空間をつなげる力を利用して擬似的な縮地を行っているのだ。

この作業、なかなか集中力が必要だけど慣れたら凄く便利だと思う。

この『穴』は一度目にした事のある風景の場所にのみ開くことが出来るわけだが、どうしても思い浮かべる工程で数秒のタイムラグが発生していた。

そこで今さっきふと思い立って港で実験してみたところ、俺の目が届く場所につなげるならば一瞬で『穴』を展開できることが分かったのだ。

つまりこの擬似縮地法で移動しているならば、今回のような知らない場所に対しても一瞬で移動できる。

…いや、実際使うとしても不良共とのケンカ時の間合い詰めとか体育祭のリレーとかしか使いようがないわけだが。

 

「…とうちゃーく」

 

縮地の反動で地味に頭痛くなってきた時、漸く向こう側の堤防の上に着いた。

ほんと慣れたら便利だろうけど…やっぱり急に試すと反動がキツイなぁ。

また時間が空いてるときに練習しよっと。

 

「そう言えば…」

 

ふと空を見上げて、今さっきまでいたヘリコプターの事を思い出す。

あれ、横のドアが開いてて人が2人程顔出してたけど危なくないのかな?

1人はなんか肩に担ぎながらだったし、余計に心配だ。

突然の強風で落ちたりとかしなければいいのだけれど。

 

「…ん?」

 

そういや、こんなでっかい事が起きてる訳だし報道関係が黙っちゃいないよな…つまり、

 

「全国生放送とかだったり⁉︎」

 

あれがもし国民放送とかタイヨウTVとかだったらあり得る!

つまり、今回の戦闘の様子はバッチリ抑えられてる訳だ。

深海棲艦との戦闘でボロボロになった町の補償金は誰が払う事になる?

本来なら深海棲艦達だろうが、彼女達は俺たち(主に電達)がしっかり撃沈しちゃう訳だから、払うも何も息してない。

つまりは俺だよ!

この件に1番関与している俺だよ!

もちろん顔がしっかりうつされてたらだけど!

あの高さから俺の顔うつすの無理だよな⁉︎

そうであってくれ頼む!

しかも艦娘達の戸籍の事も問われる事になるだろうし、絶対後で面倒くさいぞこれ!

とどのつまり、

 

コノ事ハ絶対ニ誰ニモ知ラレテハナラナイ

 

俺がいろんな意味で背筋を凍らせていると、カーバンクルのメンバーの証の腕時計の時計部分がチカチカと赤く点滅し、次に青く発光した。

エルに教えてもらった、通信機能の受信シークエンスだ。

恐らく、電達だろう。

 

「はいはい、こちらカツヤー」

『おぉ、本当に通信できるのです!』

『хорошо 、これは便利』

『提督、戦闘終了よ!幾らか攻撃を受けたけど、こちらの勝利ね!』

「よし、お疲れさん」

 

どうやら無事に戦闘は終了したみたいだ。

今回も大事が無くて良かった。

 

「よし、ドロップ艦と深海棲艦の遺骸をできるだけ拾って帰ってこーい」

『え?深海棲艦達もなの?』

「ああ、頼む」

『了解、響これより回収作業にはいる』

『もう少し待ってて下さいなのです!』

「できるだけ早く帰って来いよ?」

『分かったわ…あ!あか…』

『うひゃっ⁉︎何よ、レディらし…』

『では、通信を切るのです』

 

プチッ

 

ふぅ、終わったか。

取り敢えず、報道陣が押し寄せてくる前に彼女達が帰ってくる事を祈ろう。

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

「ふう、なんかとんでもない物を取材しちゃった気がするわ…」

「お疲れさん、まあ世の中にも不思議な事があるもんだなぁ」

 

生取材を終えたタイヨウTVの取材ヘリが帰る中、すっかりお疲れモードになった白井アナウンサーにカメラマンが声をかけていた。

その日、結果としてタイヨウTVは最大視聴率が生放送を流していた時間帯で61.7%を記録、上層部は嬉しい悲鳴をあげ、そのタイヨウTVの生放送に出てきた人影に特徴が良く似たキャラクターを多数世に送り出した艦これ及びDMM社へのアクセスも超急上昇、新サーバーの作成や問い合わせへの返答など、目が回る忙しさにこちらも嬉しい悲鳴をあげていた。

日本中の人々が、先刻まで繰り広げられていた戦いを生放送で見ていたのだ。

その数の影響も計り知れないほどであって当然である。

戦闘終了後いつの間に1人増えた艦娘達は、深海棲艦達の遺骸を拾い集め、そして港に戻って待っていた先の少年(カツヤですね分かります)と共に何処かへと消えていった。

その様子までしっかり捉えた今回の生放送はそれ相応にかなり話題性が高く、安定安心の某掲示板を含めあらゆるメディアや情報サイト、SNSなどでこの映像に関する感想や憶測が飛び交っていた。

 

「あの少年に話を聞けなかった事が心残りだけどなぁ」

「なんか急にふいっと消えたけど、あれは一体どういう事だろうな」

「結局顔も良く分からなかったし、また話を聞きに彼の所に行くのは難しそうね」

 

仕事が終わって一息つく白井達。

深海棲艦達の攻撃によって半壊した町の上空を、町の惨状を眺めヘリに揺られながら帰っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「防衛大臣、あの生放送見たか?」

「はい、ニホンにあのような少女達がいたとは初耳です」

「巡視船を簡単に破壊する化け物達、そしてそれらを一網打尽にする武装した少女…」

「あれは少女などではない、最早ただの生物兵器だ!」

「しかし、ニホンは憲法で人体実験を禁じていたはずだぞ」

「なんにしても、あの戦力はニホンに置いておくには勿体無い」

「なんとしてもあの少年の情報を洗い出そう」

「うむ、そして彼女達を是非我が国へ招待しようではないか、『丁重に』な」

「了解です」

 

 

 

 

 

 




移動能力だけチートになった主人公。
でも戦闘能力は未だ0!
…すっげぇ微妙なチートですな。

誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非是非感想にどうぞ。

学年末テストがあるからまた来週休みますので、そこはご理解下さい割とヤバいんですお願いします。

では、次の話にてお会いしましょう。ノシ


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ほんの少しだけの話

ども、トマト中毒です。
最近色んなアプリやらサイトやらに顔出してます。

学年末考査が終了し、最近行ってなかった東進にも行って、テストの点数が安定で怒られるを通り越して呆れられ、その他何やかんや色々…。
とどのつまり、今回の投稿遅れの原因は単純に

ど忘れ、です。

執筆し忘れたのではありません。
投稿をわすれたのです。
言い訳は見苦しいですねゴメンなさい。

テスト勉強の合間に少しだけ書いたショートな1話ですが、取り敢えずの生存報告も兼ねてどうぞ。




深海棲艦のリアル襲撃があった夜。

 

「陸子さん、お代わり!」

「はい、本当に良く食べるわねぇ」

「響ちゃん、デザートにシュークリームはどう?」

「Спасибо(ありがとう)、美琴さん」

「提督と電ちゃんもお代わりは要りませんか?」

「ありがとう間宮さん、でも俺はこれで腹一杯だよ」

「私もなのです」

 

母さんが帰ってきた後で姉さんと2人してあの夜の事から全部状況を説明。

訝しげながらも姉さんも同じ事を言っているため興味がわいたらしく、電達を呼んでくれと言ってきた。

鎮守府に向かい、電達に話して一緒に来てもらうついでに明石さんと間宮さんも誘った。

明石さんは今俺からの任務で夜の内に深海棲艦の残骸を全部回収してもらっている。

間宮さんは母さんと話が合いそうだから来てもらったわけだ。

そしてこの際交流会を行おうという事になり、俺と母さんと間宮さんで腕をふるい豪勢な晩飯を作った。

作業を行っていた明石さんももうすぐ帰ってくるとのことなので、帰ってきてもまだまだおかずは残っているだろう…と思う。

だから雷…ちょっと残しといたげてくれ(汗

 

「どうだ暁、新しい鎮守府の居心地は?」

「むぐっ⁉︎ふんぐぐぐぐ…」

「あぁ、悪かったから無理に飲み込まずにゆっくり食べてから話してくれればいいよ」

 

今回の襲撃で仲間になったドロップ艦は電や雷、響達の姉艦にあたる暁だった。

髪の色や性格など色々と違う彼女達だが、顔の感じとかどことなく似ている気がする。

やはり姉妹なんだなぁ…と当たり前な事を考えてしまった。

それにしてもこの子にとって、レディーらしくってなんだろな?

最初に会った時からずっと言ってるけど、この子今さっき普通に飯蛸のから揚げ一気に口の中に放り込んだんだが。

 

「んぐっ…いい所だと思うわ、正確には鎮守府じゃないけど」

「あ、それもそうだったな」

 

艦娘達が目の前にいるから、ついここを鎮守府だと思ってしまったようだ。

でも、こちら側を攻めてくる深海棲艦達を迎撃するという点に於いて、ここが俺たちの『第二鎮守府』だとしても違和感無いかもな。

まぁ取り敢えずそこら辺の事は今は良いとして、水無くなったしもう一杯汲んでこよう。

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

「タコは天敵ね、全く噛み切れないし!提督にレディーらしくないとこ見せちゃった…」

 

更に時間は過ぎて、艦娘達はささやかな宴が終わり鎮守府に帰ってきていた。

そして明日からまた頑張ろうというカツヤの言葉と共に解散し、歯磨きやお風呂に着替えも済ませて後は寝るだけとなった暁型駆逐艦達は、各々の布団に入って…はなく、薄暗い中でも比較的自由であった。

明石は近海に深海棲艦達の遺骸を沈めに行き、大淀は早々に就寝、電と雷は何か話しているし響もそれを静観、着任して数時間しか経っていない暁は横になりながら今日カツヤに対してとってしまった少し憮然とした態度を少し悔やんでいた。

 

「いや、そもそも提督が悪いのよ」

 

暁がカツヤに会った瞬間、彼女の心拍がガンッと上がった。

その時から何か、胸の中に温かい物を感じる様になったのだ。

それは彼と話したり彼に撫でられたり(とっさに振り払ってしまったが)する度に暁の体にふわふわとした温かみを広げ、彼が電や雷達と接する度にチクチクとした少しの痛みを与えた。

 

あぁこれ一目惚れだわ、はっきり分かんだね。

byトマト

 

「なんなのよこれ…」

 

布団の中で慣れない感覚に悶えてる暁であった。

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

「…っ、ててて…」

 

彼が目覚めて1番最初に目に飛び込んできたのは、今まで見たことがない程綺麗な夜空だった。

 

「よいしょっと…」

 

無意識に無精髭に手を触れていた右手の異常無し、左手問題無し、立ち上がってみるも両足に異常も見られない。

感覚からして、顔半分抉れてるとか背中の肉がボロッと取れてるとかも無さそうだ。

周りを見渡すと、薄暗くてよく見えないがどこかの浜辺のようだ。

後方には林もある。

 

「…何で陸?」

 

確か自分は、船が沈没する際に発生する大渦に巻き込まれたはずだが。

気絶してる間にどこかに流されたのか?

まあ何にしても、取り敢えず生きててよかったと肩を撫で下ろした。

 

「まぁ冷たい海の上よりマシか…」

 

取り敢えずこの場所に人が住んでいるなら、その人に現在地を聞きに行かねば。

あれから何日経ってるか分からんが、早いとこ上の人に無事を伝えねばならんし、もっと重要な話もせねばならない。

 

「…まぁ、なんだかんだ疲れたしなぁ…」

 

いくら重大な事とはいえ、色々ありすぎて疲れてるし五体満足とはいえ打ち身で全身が痛い。

薄暗いこの状況で木々の中を歩き回るのは得策ではないし、どうせまだ自分は「行方不明」なのだ。

なら、少しくらい体を休めて朝に行動を始めるのも問題ないだろう。

 

「じゃあ、お休み〜…」

 

結果として、その場で再び横になり眠り始めてしまった。

このちょっといい加減な男の名は藤原正義(ふじわらまさよし)

大渦に巻き込まれて生還したトンデモ強運なこの男は、すぐに息子と再開できると知る由も無く、空の月に届くようなでかいいびきをかき始めたのだった。




では、次の話を早速書き始めるとします。

誤字や誤表現、改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。

今回は、本当にごめんなさい。
自分でも不誠実極りない事をしたと深く反省しております。
願わくば、今この話を読んでいるそこの貴方が、こんな不誠実な俺でも許してくださることを。

では、また次の話まで。ノシ


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新しい日常、そして悩み

ども、トマト中毒です!
やったー今回普通に投稿できたー!

3学期補修で毎日12時過ぎには帰れたので、そこも執筆の助けになりましたね。

まぁそれはともかく、本編をどうぞ。


深海棲艦の襲撃。

その情報は瞬く間に全世界に広がり、人々を驚愕と混乱に染めた。

海に面した国ではすぐさま海の防衛に力を入れ始め、内陸国では皆ひとまずの安全に肩を下ろした。

『未知への恐怖』というのは恐ろしいもので、深海棲艦に対抗する手段を見つけるため、全世界の防衛機関トップ含む政治家達が皆揃って艦これを始める始末。

深海棲艦に襲われた克哉の町は全世界の提督含む有志達の募金で復旧作業が開始され、そして『深海棲艦に史上初襲われた町』を見に来た提督達によって俄かに活気付く事になった。

全世界の科学者達は町の近海を調べつくすも謎の生物の死体が見つからず首を捻り、ニュースでは未だに一日に一回は深海棲艦に関する記事を流し、深海棲艦の目撃情報を募っている。

全世界で『棲艦侵攻の日』と呼ばれる事になったその日、深海棲艦によって引き起こされた建造物の崩壊や砲弾の不運な直撃による死傷者、43人。

突然現れた人類の新たな脅威、その存在が全世界に知らしめられたこの日は、後に歴史の教科書にひっそりと載るほど強いインパクトをもたらしたのだった。

 

そして、その『侵攻の日』から一週間後。

その騒動の当事者である藤原克哉、『カツヤ提督』は現在、

 

「Zzzzzzz……」クカー

「おーい克哉ー、今授業終わったぞー」

 

爆睡していた。

 

「コイツ次生物なのに大丈夫かよ?」

「いいや、移動教室前の爆睡は遅刻フラグだな」

「起きろー!間に合わなくなるぞー!」

 

頭をペチペチ叩かれても、枕代わりの筆箱が乗っている机をガタガタ揺らされても、反応無し。

超爆睡タイムを満喫中であった。

自分たちの通う高校を深海棲艦によって破壊された克哉達は、近くに複数ある別の高校にバラバラに転入して授業を受ける事になったが、克哉は和樹とオタ原、青木と共にまたまた海辺の高校に転入する事になったのだ。

 

「っ…さっさと起きろ‼︎」ガンッ

「あでっ⁉︎後頭部はやめろ後頭部は!」

「うっせぇ!さっさと移動すんぞ!」

「んだ…とおおぉぉぉぉぉ⁉︎」

 

殴り起こされた克哉は時計を見て、一瞬で状況を察した。

マッハで用意を始めた克哉を見て、腐れ縁の2人はため息をつく。

 

「ったく…一緒に怒られてやるんだから感謝しろよ、オラ行くぞ!」

「ウオオォォォァァア後3分でええぇぇぇぇい!!!!」

「いやちょっ…いや、よっしゃ間に合え俺の足いいぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

気を紛らわせるかのように勢いよく走り出した和樹とオタ原を呼び止めようとして、慌てて走り出す克哉。

授業直前の廊下に、3人分の走る足音が響き渡った。

 

 

そして結局3人揃って授業開始に間に合わず、見知らぬ先生に大目玉を食らったのだった。

 

 

 

 

その放課後。

 

「(あん時とっさに口を噤んで良かった…)」

 

俺は歩きながら肩を撫で下ろした。

最近は本格的に鎮守府の仕事を始めたから眠くて眠くてしょうがない。

半分寝ぼけながら生物の用意をしていたが、走り出した三人を見て咄嗟に『穴』の事を言いそうになった。

やっぱり、便利になると大変だなぁ…。

 

俺は人通りの少ない裏路地の影を歩いていた。

今の高校に通うと決まった時に事前に見つけておいた人通りの少ない場所から鎮守府に『穴』を繋げる為である。

最近は減ってきたが、以前はマスコミ連中がうろちょろしていて、『穴』を使うなんて出来なかったんだ。

あの後動画サイトにアップされていたタイヨウTVの生放送を見たところ、俺が『穴』を使っている所がバッチリ全部映されていた。

つまり俺が『穴』を使っている所を見られた、その瞬間に町の修理代支払い(アウト)確定という事だ。

冗談じゃない、必死に人気の無い場所を探したとも!

で、良い感じの場所が見つかって一安心してる所だ。

 

「さて、帰るか…」

 

いつもの空き地に辿り着き、周りに誰もいない事を確認して腕輪を起動。

歪んだ空間に体を沈み込ませた瞬間、俺は鎮守府の俺の部屋にいた。

 

「あ、お帰りなさいなのです」

「あぁ、ただいま」

 

 

 

さて、今日も頑張りますか!

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

更に、場所は移ってとある深海棲艦達の棲域。

 

「ナニカ方法ガアルハズヨ…」

 

そうぼやいたのは、絹のような滑らかな髪を腰まで伸ばし、その豊満な体のラインがしっかり見えてしまう服装を身に纏い山羊に似た大きな角を生やした美女。

各地の提督達に『防空棲姫』と呼ばれ恐れられている深海棲艦である。

彼女が悩んでいる事は、

 

「ナントカ『オトコ』ヲ殺サズ拿捕シタインダケドナァ…」

 

彼女達深海棲艦は、深海棲艦として生を持った瞬間から頭の中のとある声に支配されている。

 

『人間ヲ殺セ』

 

彼女達はこの声に本能レベルまで洗脳されてしまっているため人間を見ると全力で殺しにかかるが、同時に興味も持っていた。

深海棲艦達のうち上位種は全て人間の姿をしている。

しかし、その姿特徴が人間の女と呼ばれる方に似た者しか確認されておらず、もう一方の男に関する事は全く知らないのが深海棲艦達の現状だ。

いや、駆逐型や軽巡型達『人間の姿をとっていない』棲艦達にとってはそれもどうでもいい事なのだろう。

実際、彼女達は人間を見るや否や即座に砲撃を行い、一瞬で男女関係無く挽肉にしてしまうし、それが当たり前の事だと思っているのだから。

しかし、重巡型や正規空母、戦艦などの人間の姿をとる棲艦達は皆少なからず男という存在に興味を持っているようなのだ。

防空棲姫も、例に漏れず男という存在に興味を持っているようである。

 

男とは?

人間に男女の区別がついている理由は?

男とはどのような姿をしているのだろう。

男が女と区別されているという事は、それぞれなにか役割があるのだろうか?

 

「…モウイッソ、男ノ生活圏ニ自ラ乗リ込ンデ攫ッテ来ルベキカ?」

 

いや、それをしようとすれば、男女関係無く本能で殺してしまうだろう。

男を研究したいなら、まずはこの頭にこびりついた声をなんとかせねばならない。

 

「ムゥ…」

 

男については知りたい、がそれには本能を抑制する必要がある。

己の経験と勘、そして生存本能が生還の鍵となる戦いに於いて、それははっきり自殺行為だ。

 

開発作業の報告にヲ級が訪れるまで、防空棲姫は頭を抱え続けたのだった。

 




ちょっと飛んで一週間後の話でした。
カツヤの鎮守府はどんな感じで成長してるんですかね。

では、いつもの。
誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。

それでは、また次の話でお会いしましょう。ノシ


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新しい仲間を建造しました

ども、トマト中毒です。

今日も学校が補修で12時40分に終わったので、今回は昼飯を食べに立ち寄った中華料理店兼惣菜店にて昼飯食べながら投稿です。
あぁ、肉まん美味ぇ。

では、本編をどうぞ。


深海棲艦がリアルに攻めてきてから、俺は本気でウチの鎮守府を強化する事に決めた。

それからはまず学校から鎮守府へ帰り、遠征などの報告を聞いて、また遠征に行かせてから家に帰って宿題、電から『穴』を通して送られてくる書類などを捌きながら宿題を終わらせ、晩飯を食うと鎮守府へ直行して出撃を繰り返す日々。

どうやらゲームでは直ぐに出撃、すぐに探索予定地に到着、探索開始らしいが、こちらも現実となってしまった以上そうはいかない。

こちらは深夜なのに、遠海の現地は時間のズレで朝か昼、夕方になる時もある。

そんなこんなで毎晩3時から4時に就寝がいつもの事だった。

だから今日の授業でも爆睡してしまったのだ。

…と言い訳はこの位にして、今日のデイリー建設は遠征で集まってきた資材をちょっと奮発してみようと思う俺氏である。

 

「あ、やっほー提督!」

「お、よう川内!夜戦バ艦がこんな時間に起きてるの、珍しいな!」

「うっさい!さすがにこの時間には毎日起きてるわ!」

 

すれ違った川内と笑いながら軽口をたたき合う。

現在ウチの鎮守府には軽巡の川内型三人娘と球磨と多摩、駆逐は吹雪型六人と暁型四人が所属している。

あれから高速建造材を節約しつつ建造を繰り返してだいぶ仲間も増えてきた。

そして今日、全く新しい艦娘を仲間に入れるため資材を奮発する!

 

 

建造ドックに着いた俺たちに頭に着けた溶接マスクを上に跳ねあげた妖精さんが近づいてくる。

俺は高速建造材を手渡しながら伝えた。

 

「第一ドックは250・30・200・30で、第二ドックは全部400で頼む、高速建造材を使ってくれ」

 

妖精さんはうなづくとマスクを下げながら奥に走っていく。

暫くすると、二つのドックは火炎放射の渦に赤く染まり始めた。

第一ドックは重巡型を狙った。

第二ドックは、いつかやってみたいと思っていた事を資材が貯まってきたのでやってみた完全博打建造である。

 

「これで良かったのですか、提督?」

「たまにはギャンブルも悪く無いと思ってやってみたんだけど、これで戦艦とか空母とか出たらすごくね?」

 

首を傾げる電にロマンだというと、彼女は苦笑いを浮かべた。

…と、もう終わったみたいだ。

さすが高速建造材、相変わらずいい仕事をする。

俺は電を連れて、まず第一ドックへ向かった。

 

 

ドックを二人して降りていくと、いつものようにドックの真ん中に人影がある。

だがその人影は今までとは何か、決定的な違いを感じられた。

 

「あの身長の大きさ、間違いなく重巡だよな」

「はい!建造成功なのです!」

 

電と建造成功を喜びつつ新しい仲間の方へ向かっていくと、そこには

 

「あら、貴方が新しい提督?」

「ぎっ…」

 

水の様に肩を流れ落ちる金髪に、パッチリとしたアクアマリンの瞳、スッとした体のライン、そして今までとは破壊力が違う胸部装甲を持つ美女がいた。

正直、目を合わせ辛い程だ。

 

「ぐっ…あぁ、カツヤだ宜しく」

「あわ、あわわわわ……」

 

俺は目を逸らしながら挨拶するが、自分でも顔真っ赤になっている事がわかる程頰が熱い。

電は電で、同じく真っ赤になりながら彼女の胸部装甲を見つめている。

 

「ふふっ、可愛い♪私は愛宕!提督、覚えてくださいね?」

「わわ分かった…宜しく頼むよ」

 

不意に俺に急接近してきて頰に手を添え、顔を覗き込んでくる愛宕。

こんなの、逆に忘れろと言われてもムリだっ!

いろんな意味で今まで無かったタイプの艦娘の登場に、俺は心臓が止まるかと思うほどドキドキした。

 

「つ…つつ次行くよ次!」

「はははははいなのです!」

「ふふっ♪」

 

俺はそそくさと歩き出すと、電そして愛宕を連れて第二ドックへ歩き出した。

なんか彼女、俺たちの反応を面白がってるみたいだなぁ。

 

 

 

 

「初めまして!貴方が私の提督ですか?」

「おぉ、おおぉぉぉ…!」

「わぁぁぁ…!」

 

第二ドックで待っていた艦娘に元気のいい挨拶をされた俺は、電と同時に彼女の方へ駆け出した。

 

「あぁ、やっぱり日本の雰囲気は落ち着くー…」

「なのですー…」

「わわわっ⁉︎何ですかいきな…あぁ」

 

手を取りブンブンと握手する俺と飛びついて抱きつく電に困惑した彼女は、愛宕を見て一瞬で察してくれた。

愛宕のドキドキするような綺麗さよりもこの人のような日本の落ち着くお姉さん的美人がいい!

 

「すまない、俺は提督のカツヤだ宜しく!」

「はい!航空母艦、飛龍です!空母戦ならお任せ!どんな苦境でも戦えます!宜しくお願いします!」

 

こうして、ウチの鎮守府はまた新たな仲間を迎えたのだった。

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

「はぁ…はぁ…っ」

 

一方その頃、カツヤの父である正義はあれから背後にあった森の中を、草の汁を吸い木の実を食べながら少しずつ歩き続けて一週間。

もうだめだと思ったその時に森の向こうが見えて走った先は一面青い海。

つまるところ、彼は中くらいの島を横断しただけだったのである。

 

「はぁっ…はっ…マジか……」

 

自分が歩き続けた意味は何だったのか。

現地の人なんかいないじゃないか。

もう分かる。自分は助からない。

 

「俺は…ここで死ぬのか…」

 

上官たちに一刻も早くあの化け物たちの事を伝えねばならない、その焦りが余計に膨らんでいく。

どこかの町が襲われてたらどうしようと思うとゾッとする。

もしかしたらオレの町かもしれないと思うと背筋が凍った。

早く助けないといけないのに。

あぁせめて、せめて…

 

「せめて、家族みんな(あいつら)に一目会いたかった…」

 

そして、彼は今までの島横断で溜まりきった疲れと自分は助からないという絶望感に倒れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?おーい、ココ人が倒れてるよー」

「え?あ、本当だ!白雪ちゃん初雪ちゃんコレ持ってて!治療しないと!」

 

 

…そこがいい原油収集場所で、カツヤの鎮守府がいつも利用している事も知らずに。

 




デザートのごま団子も、外サクサク中モチモチで中に入ってる餡子の甘みが市販のみたく甘ったるくない、ちょうどいい!
美味かった…。

あ、カツヤがやった博打建造、分量も結果も全く俺が実際にやった結果と同じです。
飛龍って、意外と出やすいんですか?

では、誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら是非感想までどうぞ。

では、次の話にてお会いしましょう。
ご馳走様でした。


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カツヤがウハウハになって、それからカオスを見ました

どうも、トマト中毒です。
自分はトマト超大好きという意味でこのネームにしたのですが、最近本気でトマト中毒が存在するらしい事が分かってビックリしました。

どうやらまだ未熟で青い状態の時、虫害を避けるために虫が嫌う匂い成分を多く含有しているらしく、それを人間が多く取り込むと下痢だの何だの地味にキツイ症状が発生するらしいです。
皆さん、トマトはできるだけ青い部分を避けて食べましょうね。
特に知り合いの農家さんとかが大量に送ってくる、地味に青い部分が残ったトマトとか注意してお食べください!

いやそんな事より、それでは本編をどうぞ!


愛宕と飛龍を仲間にした次の日。

 

ズズズズズズ

 

「カツヤ、ちょっといい?」

「ん?…あぁレイか、どうした?」

 

いつもの様に鎮守府の俺の部屋、段ボールの上で書類を捌いていると、レイがやって来た。

俺がリアル鎮守府の提督になったきっかけであるこの女の子は最近、唐突に鎮守府を訪ねてきては唐突に帰るという行動を繰り返している。

 

「うちの上司から話があるらしいの、一緒に来てくれる?」

「…これから出撃予定なんだけど」

「あなたが行く訳じゃないんでしょ?お願い、あの人の頼みは断れないのよ」

 

どうやらレイの上司が俺に用らしい。

出撃って、普通のゲームとしての艦これと違って普通に時間がかかるんだけどなぁ…。

でも、ここに座る事ができるのもレイのおかげだし、断りたくない。

…直ぐに用事を済ませて帰ってこよう、そうしよう。

15分から20分くらいで帰ってきて、皆には謝ればいい。

 

「しょうがない、か…」

「ほんと⁉︎ありがとう!」

 

承諾すると、レイは花が咲いたような笑顔で俺を招き寄せ、『穴』を開けて俺をその向こう側に連れていった。

 

 

 

 

 

 

コンコン、ガチャッ

 

「ぱんぱかぱーん!提督、出撃じゅ…って、提督?」

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

「ここは…」

「ここが私達の職場、Organizations to manage the whole space-time、最初らへんの頭周辺を取って『オーマ』(O r m a)と皆呼んでいるわよ」

 

『穴』を抜けると、そこは映画で見るようなトンデモ近未来の世界だった。

そうだな、スター○ォーズのXウ○ングとかがいっぱい置いてある所を想像すれば近い感じか。

ただ、Xウイ○グの代わりにいっぱい『穴』が開いていて、上空を少人数乗り用っぽい小さい乗り物が浮いて走っている。

『穴』には色んな人が出入りし、中には戦闘服の人が向こうに行ったり、帰ってきた人がボロボロで担架に乗せられて行ったりもしていた。

 

「ここはオーマの玄関にあたる所よ、ここから色んな世界に繰り出して『穴』に関する情報操作や監視、場合によっては戦闘も行うの」

「へぇ…」

 

初めての場所にキョロキョロしつつ、レイに様々な場所の解説をしてもらいながら進んでいった。

 

エントランスからエレベータに乗って兵器開発部門へ、通路を右に曲がって実践シュミレータ室、ジム、サウナ、治療室を左…。

左右右エレベータで上左左右下右右上左右左左

 

「ふぅ、やっと着いたわ」

「なっげぇーーーよ⁉︎」

 

流石に覚えらんねぇよ!

たどり着いた黒1色の廊下、その向こう側には重厚な金属光沢を持つ扉があった。

 

「少し遅刻気味ね、急ぎましょう」

「分かった」

「取り敢えず腕時計の通信機能はミュートにしといて、ここではマナーなの」

「了解」

 

言われた通りに腕時計の通信機能をミュートにして、開いた扉を潜り、奥に入っていく。

そこは個人オフィスらしく、なかなかの広さの部屋に休憩用かダーツやらエアガンやらが小さめな机の上に置いてあり、1番奥の大きな窓の側、後ろを向けば外が見えるというような位置にワークデスクが置かれ、1人の男が座っている。

歳は克哉よりだいぶ離れているだろう、恐らく40〜50くらい。

少し白髪がまじる頭髪はビシッとキメられて、若干皺が入り始めているイケメン顔と相まってダンディな雰囲気を醸し出していた。

何か書類を処理中だったのだろう、下を向いてペンを持った手を動かしていたが、俺達が近づくと手を止めてこちらを向いた。

 

「連れて来ました」

「やあ、来てくれたかい」

 

レイが報告すると、フレンドリーな軽い物腰で返事をした。

なるほど親しみやすい系ダンディ上司か、モテ男だなクソが。

 

「…?なんか寒いな」

「お疲れですか?それならまた別の時にまた来るというのも…」

「いや、構わない。このまま済ませてしまおう」

 

心配したレイの提案を却下し、男は俺の目を覗き込んだ。

何か頭の中を弄られるような感覚がして、俺は少し顔を歪めてしまった。

 

「…ふむ、君はリア充か。死に晒せ」

「⁉︎」

 

男は目を離すと、あろうことか俺を罵倒した!

てか俺がリア充だと⁉︎

…はい、最近リア充になりましたスンマセン。

 

「そういう貴方はどうなんです?フレンドリーでダンディなイケメン上司、正にモテ男の風格なのに」

「男に褒められても嬉しくないのだよ、まぁ有難うとは言っておくがね」

 

男は俺の反論に言い返しながら立ち上がると、俺の方に歩み寄って握手を求めてきた。

 

「コール・ブライトマンだ、宜しく」

「藤原克哉です」

 

コールの大きな手と俺のインドアな細い手がガッチリとお互いを握り合うと、コールは手を離して俺をデスク前の机とソファー一式の方に座るように促した。

俺、そしてブライトマン氏がソファーに対面して座り、彼の後ろにレイが待機して会話が始まった。

 

「君の活躍は君の世界に派遣している調査員に見せてもらったよ」

「活躍、とは言っても電達を呼び出しただけなんで俺は何もしてないですよ」

 

机の上に置いてあるタブレット機器のような物を操作して俺たちが映されたあの生放送の様子を画面に映し出すブライトマン氏に冷静に答える。

生放送で実況している女子アナの声が、部屋の中によく響いた。

 

「単刀直入に言おう、君はこの『オーマ』に入る気は無いかね?」

「…何でです?」

 

いきなり俺をスカウトしてくるブライトマン氏に、俺は少し驚きながらも聞き返した。

正直、俺は俺の代わりに誰か鎮守府を任せるから君はこの金を持ってさっさと普通の生活に戻りやがれください、とか言われるのかと思っていた。

 

「まあなんだ、折角カーバンクルの腕時計を持っている訳だし、君の世界の事が終わった後でも安い給料でこき使ってやろうと思った訳さ」

「とんでもねぇ理由だった…」

 

急に真剣な表情から悪そうなニヤ顔になりながらそんな事を言うおっちゃんに、俺はため息をついた。

ん?最初ブライトマン氏だったのがおっちゃんになってるって?

こんなんおっちゃんで充分だ!

と、レイがこっちに来た。

 

「克哉、ここの給料は1番安くても一月100万円よ?こっちの原価はキミの世界の原価より高いの」

「マジで⁉︎」

「そうだよ君、正直みんな君の世界に買い出しに行きたがっているくらいなんだけどね?大量にそちらに行ってしまうと市場が混乱するから順番待ちなんだ」

 

レイがとんでもない額を提示してきた⁉︎

おっちゃんもフレンドリーな雰囲気に変わると、笑いながら俺にこの『オーマ』がある世界と俺の世界の市場の違いを説明してくる。

どうやらこの世界の物の価値は、俺の世界に於ける価値の約4倍らしい。

つまり、向こうで約10円で売ってる某サクサク棒スナックが、こちらでは約40円という事だ。

つまり、俺は未来の職場を約束されて、尚且つ普通に働いたら大金持ち確定!

おっちゃんとか呼んですんませんコールマンさん!

 

「えっと…カーバンクルって全ての世界軸を飛び回るんですよね?もしかして、一月くらい帰れない可能性もあるんですか?」

「あぁ、まあそこは許容してくれると嬉しいのだけれどね」

 

流石にそこは許容するしか無いようだ。

しかしコールマンさんによると、俺に与えられる最初の任務は俺の世界の事らしい。

しかも深海棲艦に市街地とかを破壊されてもほぼ全額を負担してくれるらしい。

こっちの人にとっては俺の世界の町を直す程度は意外と安いもんなんだろう。

実際、俺の町を直す為の募金、実は6割がこの組織が出したらしい。

 

「君の世界の…そうだな、アメリカが全部壊滅しても全部直せるくらいのポケットマネーは持ってるぞ?」

「……」

 

驚いて返す言葉も無い。

 

「どうだろう、受け入れてくれるかい?」

 

コールマンさんが俺に優しげに問いかけてくる。

俺は、最終確認として質問を多数彼に叩きつける事にした。

 

「なにか特別な訓練は必要になりますか?」

「君はその腕時計をしている以上、カーバンクルに入る事になるだろう。当然兵士として訓練は受けねばならない。が、ファンタジーな世界から輸入してきた時空魔法をエンチャントした部屋に入って訓練を行うから時間はかからないよ。戦闘がある訳だし死亡事例もあるにはあるが、これまたファンタジーから輸入してきた蘇生魔法で蘇生すればいいだけさ」

「うぐっ」

 

一回質問しただけで質問しようと思っていた全部に返答されてしまった。

読心術でも会得してるんですか、あなたは。

 

「これら全部、カーバンクルにスカウトした全員が最初によく心配することだからね」

「…なるほど」

 

何はともあれ、取り敢えず心は決まった。

俺は、安定した職と大金持ちの道を取る!

 

「分かりました、俺はカーバンクルに入ります」

「よし、よくぞ言ってくれた!」

「ありがとう、カツヤ!」

「ただ一応親にも相談させて下さい、もしかしたら却下されるかも知れないけどちゃんとこういう時は相談するのが親子でしょう?」

「あぁ確かに、もちろんさ」

 

2人とも俺の選択を喜んでくれているようだ。

改めて俺とコールマンさんは握手をし、また家族会議の結果の報告を聞く為に後日また俺をここに呼ぶ事や今さっき俺にこれまたファンタジーから輸入した記憶読み取り魔法を使った事についての謝罪やその記憶を掘り下げて鎮守府での生活などの話題、俺の開発した『擬似・縮地』の事など、最初考えていた事をすっかり忘れてかれこれ1時間程長話してしまって、つい長居しすぎたと頭を下げると急いでコールマンさんの部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

「うん、あの移動法といいあの『穴』の利用の仕方といい、中々面白い戦力が手に入ったものだ」

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

一方、少し時を遡ったカツヤの鎮守府。

 

「提督?どこですかー?」

 

今回の出撃にて旗艦の愛宕がカツヤを提督室まで呼びに来るも、カツヤは『オーマ』に向かってしまい、見つからない。

 

「提督さん、コーヒーでき…あれ?愛宕さんどうしたのです?」

「ねぇ電ちゃん、提督見なかった?」

 

ちょうどコーヒーをいれに行っていた電が戻ってきたが、当然分からない。

2人ともカツヤを探し出して段々大事になっていき、遂には鎮守府全体+カツヤの家周辺の大捜索となった。

 

「提督ー⁉︎どこですかー!」

「克哉ー?…食材の買い出しでも行ったのかしら」

 

しかし、いくら探せどカツヤは見つからず。

パニックに陥る者や不安がる者、果ては泣き出す者も出だした。

元々カツヤは、勝手にどっかへ行って長時間戻ってこないような不誠実な男では無い。

カツヤとしても、すぐに戻ってくる気だったのでコーヒーを淹れに行った電に知らせなかったのだが、今回はやらかしてしまったようだ。

 

「提督…何か考えがあっての事だと思いますが、大丈夫でしょうか…」

「てーとくが居ないなんて、那珂ちゃんどうすればいいのー⁉︎」

 

実の所言うと、鎮守府勢は皆理由や経緯、大小は違えど揃ってカツヤに好意を持っている。

まぁそんな相手に何か良からぬ事が起こっていると思うと人は誰しもパニックになるのが自明の理。

皆が皆カツヤに異常事態が発生していると思うと、思い思いに暴走を始めた。

…もう鎮守府内はすっかりカオスである。

 

「出撃は中止、駆逐の子達や軽巡の子達は暴走しだすし、そもそも提督がいない⁉︎どうすればいいの多聞丸ー‼︎」

「でい゛どぐー!どごい゛っだの゛ー⁉︎」

「успокаиваться、落ち着こう皆…落ち着かねば…落ち着け私…!」

「提督さんがどこにもいないのです…提督さんの部屋にも食堂にも工廠にも入渠施設にもいつも一緒に散歩に行ってる海岸にも向こうの家にもいないし、通信にも応じてくれないのです…提督さんがいないなんてこの鎮守府は…私はどうすれば?提督さんがいない生活なんて耐えられない提督さんどこですか提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん提督さん」

「わひゃあっ、電が病んでる⁉︎提督ー、早く出てきて電を治してよー!正直私も少しこうなりそうで怖いのー、早く出てきてー‼︎」

「私が…いけないの?からかい過ぎたから、怒って何処かへ行っちゃったの?可愛い反応するから、ついつい続けちゃったけど…そんなに嫌だったの?私が…私がいけなかったの…」

 

 

 

 

 

まぁこんなカオスの最中に原因が現れると、当然一気にカオスが加速するよね。

 

ズズズズズズ

 

「すまん、帰りが遅くなった!すぐに出げ…カオスだっ⁉︎」

「提督⁉︎どこ行ってたんですか!心配してたんですよ⁉︎でも何より先に取り敢えずこの状況なんとかしてください!」

「提督さん…?提督さああぁぁぁん!!わああぁぁぁぁん!!!!」

「でい゛どぐううううわああぁぁぁぁん!!!!」

「Это было хорошо…良かった、ほんどに良がっだ…!」

「てーとく!那珂ちゃん心配したんだよー⁉︎」

「皆ー!提督がいたぞー!」

 

 

結局、カツヤがこのカオスを納めるのに朝までかかった。

その日彼が着ていたお気に入りの服が鼻水や涙などで大いに汚れてしまったのは完全に自業自得である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「決めた!私は提督の…」」」」




いやー、今回書きたい事が一気にバンッ‼︎と湧いてきてそれを全部詰め込んだら大増量になりました!
いつも少量ずつで物足りなかったという読者さんたちも(いたとして、です)、恐らくお腹いっぱいですね!

では、いつものを。
誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。

それでは、また次の話にてお会いしましょう。ノシ


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バレた…けど、もう問題ないよね!

ども、トマト中毒です。

最近物忘れがひどくなってきました。
今日の昼飯食った事を忘れて「今日昼飯なに…いや何でもない」と素でやらかしました。
毎日田舎でのんびりしながら宿題&勉強&執筆してるからですかね。

ですが、ハーメルンに小説を執筆&投稿する事だけは忘れてませんよ‼︎

という訳で、本編をどうぞっ!


俺の不注意で鎮守府の皆を心配させてしまった次の日。

 

「克哉!早く起きなさい、授業始まるよ!」

「んぅ?…あ」

 

俺は今日の4時くらいまで次々と泣きついてくる電たちをなだめ続け、疲れて爆睡した挙句に、

 

「やっべ⁉︎」

 

初めて寝坊した。

 

 

 

 

「行ってきます!」

「「行ってらっしゃーい」」

 

ヤバい!

何がヤバいのかというと時間がヤバい。

俺は現在『穴』を使って登下校しているため、本来自転車で20分ほどかけて登校するところをかなり短縮し、最近少なくなった睡眠時間に充てている。

この方法は家族たちにも話してあるため、母さんは飯を食う時間+着替える時間を考慮して起こしてくれるが、今日は俺がやらかしたおかげで着替える時間しかない!

俺は全力で服を着替え、朝飯をラップで包んどくように母さんに頼み、靴を履いて急いで『穴』に飛び込んだ!

急がないと!

急がないとっ‼︎

 

 

 

 

所変わって克哉の教室。

黒板の前で世界史の教師が授業の準備をしている中、富山和樹、青木優、田原純也はオタ友である克哉の事を若干心配していた。

 

「今日はカツヤ休みか?」

「さあ…いつもなら授業開始10分前には登校して来てるだろ?」

「アイツ遂に遅刻か?ww」

 

克哉はすっかり寝坊屋としてこのクラスで認知されてしまっているが、それでも遅刻してくる所だけは前の高校からの仲である和樹達も今まで見た事がなかった。

故に、克哉は今日風邪引きなのかつまんねぇの、という訳である。

 

「…よし、もうすぐ授業始まるな。誰かいないヤツはいるかー?」

「あぁ、初遅刻確定だな…ん?」

 

世界史の教師が授業の準備を終え、チャイム前の欠席確認を始めたのを見て、和樹がつぶやきながら目をそらすと、不思議な現象がそこで発生していた。

天井ギリギリから生徒の頭ちょい上の高さまでの大きさの空間が歪んでいたのだ。

 

「オイお前ら、あれなんだ?」

「ん?…なんだろ、あれ?」

「んー、目の調子がおかしい…昨日美羽とゲームしすぎたかな?」

 

彼らが三者三様の反応をした、その時。

 

「ぃよいしょーってうわぁっ⁉︎間違えた!」

「「「「「!!?」」」」」

 

 

 

 

 

あぁやっべぇ間違えて教室に直接繋げちまった!

どうやら『授業に間に合う事』を強く意識し過ぎて無意識で教室に繋げてしまったらしい!

周りのみんな目がテンになっているじゃねぇか!

って問題はそこじゃない!

 

「「「「え゛っ」」」」

 

このままだと目の前の女子集団に突っ込むって事だ!

ヤバいこれはヤバいなんとかしないと!

想像するは自分の席!

自分の席自分の席自分の席自分の席!

腕時計、起動!

 

「間に合ええぇぇぇぇぇぇ‼︎」

「「「「キャアアァァァァァッ‼︎」」」」

 

女子連中にぶつかるギリギリのところで『穴』が出現!

 

「よっしゃ間におごっ⁉︎」

 

ドンガラッシャンドーン!!!!

 

女子の塊との接触事故を回避した俺は、自分の机の上の天井に開いたもう一つの『穴』から真っ逆さまに落ちて机にベーゼをかまし、さらに床に背中を強打する事になった。

 

 

 

 

 

「じゃあ、艦娘たちを呼び出してたのは克哉だったんだな?」

「あぁ、そうだ」

 

昼休み。

俺にとって貴重な睡眠時間である長めの休み時間は、現在進行形で友人達への事情説明会に費やされている。

教室の周りは噂を聞きつけた野次馬達が押し寄せ、クラスの奴らも俺の話にこっそり耳を傾けている。

すっごく…眠たいです(切実

 

「あの生放送の少年がお前か…とんでもねぇダチを持ったもんだなぁ」

「なぁなぁ、誰かお前のとこの艦娘を連れて来れないか?生艦娘、会ってみたいんだ」

「ヴェルたんを、ヴェルたんを頼む!w」

 

俺が最初にパソコンに吸い込まれた所からこの町が襲われた日の事までを話すと、和樹が感慨深い表情をする中、青木とオタ原が無茶振りを敢行してきた。

今はみんな訓練中だから無理だっての。

 

「今みんなは鎮守府備え付けの訓練用の的で射撃訓練中だから無理だ」

「頼む、頼むよ克哉!」

「俺たちマブだろ⁉︎」

「無理だって…あ、弁当忘れた」

 

彼奴らの無茶振りをかわしながら机の横を探ると、弁当が無い。

どうやら今朝慌てて家を出たせいで持ってくるのを忘れたようだ。

 

「すまん、ちょっと取ってくる」

「あーなるほど、そういう使い方がある訳か」

「便利だな、その腕時計」

「そのついでにヴェルたんを!ww」

「だから無理だって」

 

オタ原の懇願をスルーしながら弁当を取ってこようと立ち上がったその時。

 

ズズズズズズ

 

「提督さんは…あ、提督さん!」

「「「………」」」

 

『穴』が俺の横で出現し、電が出てきた。

周りが皆驚愕してフリーズしている中、電は俺に弁当を渡してくる。

 

「これ、忘れてましたよね?」

「あ、あぁサンキュ…だが、訓練はどうした?サボって来たんなら罰だぞ」

 

今日は低レベル帯の艦娘達も揃っての訓練だから、大体今から更に1時間くらいかかるはず。

この先どれだけ深海棲艦が攻めてくるか分からない現状で戦闘力強化を怠る事は死を意味するに等しい。

以前訓練をサボって間宮さんの所でグダッていた暁を俺は罰として尻叩き20回に処した。

もし適切な理由がない場合、電にも暁と同じ刑に処す所存である。

 

『ていっ!せいっ!てりゃっ!』

『提督!許してっ!もうしません!』

『ダメだ!罰はっ!罰だっ!』

『止めてっ!許して!あぁん…っ♡』

『…』

 

なんか暁が目覚めた気がしたのは気のせいだ、絶対そうなんだ。

 

「今日はみんな頑張って予定より早く目標レベルに達したので、お姉ちゃんと一緒に今日お仕事がお休みの美琴さんに会いに来たら、27分と43秒前にお昼休みが始まっているはずなのにお弁当を忘れたようでしたので届けに来ました」

「おおぅ、そうか…けど、ここの事は知らなかったはずだろ?なんで『穴』を繋げられたんだ?」

「提督がいる所って念じながら『穴』を繋げました、上手くいって良かったのです」

 

なるほど、どうやら皆頑張っているようだ。

感心感心。

雷は姉ちゃんと仲が良く、姉ちゃんのバイトが休みの日は家に遊びに来る。

だから、今日バイト休みの姉ちゃんに一緒に会いに来て偶然気づいたのか。

まぁ、なぜそのまま訓練を続けてさらに戦闘力強化を図らないのか…とか聞いたら絶対皆にブーイングくらうだろうな。

あと、どうやら『穴』は人を対象にして開く事が出来るのが新たに分かった。

今度また実験しようっと。

…ところで、なんか昨日から電に若干病み成分入っている気がするんですがそれは(ry

 

「…今度から収入が入り始める訳だし、姉ちゃんも連れて皆で間宮さんの所で甘味でも食べてなさい」

「本当ですか?ありがとうございます!」

 

とりあえず罰は無し、休憩時間ついでだと分かったし『穴』の新しい情報も得たし、弁当も届けて貰ったからな。

 

「克哉、こちらモノホンの電さんだよな?」

「ん?そうだが」

「写メっていい?」

「あ、俺もいいか?」

 

ご褒美が出た事に喜んでいる電をこちらもニコニコしながら見ていると、青木がケータイを取り出しながら声をかけてきた。

同じく和樹がケータイを取り出して許可を取ってくる。

 

「…まぁいいか一枚だけだぞ、ほら電、カメラの方向いて」

「やった!一生マブだぜ!」

「はい、チーズっと」

 

パシャパシャッ、と二つ分のシャッターがなると、今まで時が止まったようにフリーズしていた周りの野次馬達も再起動し始めた。

 

「お、俺も一枚いいか⁉︎」

「うっわ、ナマ電だ!」

「可愛い!私も一枚いい?」

「マイ最初期艦ktkr!」

「あー、めんどくさい事になってきた!」

 

ワイワイと騒ぎ出す野次馬達。

こんな大多数の撮影会なんざ面倒いだけだ!

てかこの高校意外とオープンなオタクが多いのな。

 

「ほれ、早よ帰って餡蜜でも食べとけ」

「はい!では提督、また後で!」

「弁当ありがとなー」

 

ズズズズズズ

 

「「「「あーー!」」」」

 

心底残念がる野次馬達。

こんなとこで撮影会なんかやったら間違いなく先生達が出張ってくる事になるだろうが。

 

「…まぁ、後でつぶやきサイトに鎮守府の様子でも貼っとくから今は撤退してくれ」

「「分かった!有難う同志よ!」」

「「「鎮守府って何さ?」」」

 

オタク共は一瞬で察してくれたのか、俺に敬礼して早々に撤退していった。

多分話の途中から聞き始めた奴らもいるんだろう、何度も出てきた単語を知らないと言っているんだし。

 

「君たちにはググれカスと言っといてあげよう、それと艦これ始めてみろ面白いから」

 

キーンコーンカーンコーン

 

ちょうどチャイムが鳴り、これ幸いと野次馬達を帰らせる。

皆がブーイングしながらも教室へと帰り、古文の先生が入ってきたところで気がついた。

 

「あっ、弁当食ってない!」

「「「バカスwwww」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、この人重いよー!」

「深雪ちゃん、頑張って…鎮守府は近いから…」

「もうすぐ交代時間だから、そこまでファイト!」




さて、もうそろそろまた物語を進めてもいい頃かなー…。
あ、今更ですが除草剤は読者さん持ちですので、俺は散布しませんよー。

それでは、毎回恒例のを。
誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。

また次の話にてお会いしましょうノシ


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体力をつけよう!

ども、トマト中毒です。

あぁ、明後日から3年課程開始してしまう…。
つまり受験年度突入です。
親や姉からのプレッシャーが現状でもキツイのに、この一年耐え切れるだろうか…。
心の安寧を得るには、

艦これを書くしかない!

よし、これからもガンガン書くぞー。
それはさておき、本編をどうぞ。


「そう…もう就職先、決まっちゃったのね」

「いや、まだまだ先で構わないんだけどね」

「やったね克哉、本気で就活の手間省けちゃったよ!」

「あぁ、それは確かに…でも、いいの?」

「克哉がやりたいなら、私は応援するわ」

「私も!雷ちゃんたちも可愛いし、なにより克哉が決めた事だからね!」

「…ありがとう、2人とも」

 

 

学校で盛大にやらかした夜、晩飯の席で俺は2人にオーマの事について説明して許可をもらった。

親父に関しては、自衛隊だし次戻ってくるのは大分先になってしまうので残念だがスルーさせてもらおう。

そして、晩飯の後再びレイを呼び出した俺は、

 

「エレベーターで上…大会議室を左…トイレを右…突き当たりを左…でもいっかい左…と」

「メモなんか書かなくたって、何回も通るんだからじきに覚えるわよ」

 

もう一度案内してもらいながらブライトマンさんのオフィスへの道順をメモに書き込んでいた。

ブライトマンさんに会いに行く度に何回も呼び出してレイに迷惑をかける訳にはいかないからね。

因みに、今日オーマに来る事は先に艦娘たちに知らせておいた。

 

『出来るだけ早く帰ってきて下さいね…?』

『また昨日みたいにあんまり遅かったりしたら、今度こそ駆逐ちゃん達が壊れちゃいますからね⁉︎』

『わ、分かった分かったっ!』

 

あの事件の時比較的冷静な方だった神通と飛龍にめちゃくちゃ諭されたが。

てか、そんなにみんな壊れてたの?

確かに電とか少し病み成分入ってたけど。

 

「…よし、行くか!」

 

書き終わったメモをしまい、俺は目の前の重いドアを開けてブライトマンのオフィスに入った。

昨日より若干散らばったブライトマンさんの休憩グッズをレイが机の上に整理していくのを少し待っている間に、俺はブライトマンさんがバカでかい筋肉の塊のようなおっちゃんと話しているのを見ていた。

 

「…だ………む…ば…………」

「……し……ても……ろ?」

 

そのおっちゃんは筋肉隆々の体に日焼け痕が残り、スキンヘッドの頭を含め見えるところだけでも至る所に傷痕が残っていて、正に歴戦の強者という雰囲気だった。

親しげに話し合っているのと見た感じ年齢が同じくらいなのを見るに、同僚関係とかだろうか。

レイが戻ってきたので彼らに話しかけるとするか。

 

「失礼しますブライトマンさん、親に許可をもらってきました」

「おお克哉君、丁度いいところに!オッズ、この少年が今話していた克哉君だ」

「おぉそうかそうか!お前が克哉か、歓迎するぞ!ガッハハハハハハハ!」

 

ブライトマンさんが俺を紹介すると、おっちゃんが豪快に笑いながら背中をバンバン叩いてきた。

正直、痛いなんてもんじゃない。

 

「うっ…ぐっ…ごふっ……」

「おいおいオッズ、そこらへんにしといてやれ」

「あぁすまん…だが体の線が細すぎる、このままじゃ1兵としてはちとキツいぞ」

「だからお前に頼んでるのさ」

 

俺が呼吸困難に陥って苦しんでいる間にも、何やらどんどん話が進んでいく。

どうやら俺は、このおっちゃんにしごかれるようだ。

めちゃくちゃ心配なんだが…。

この筋肉おっちゃんの名はオッズ・クレイル。

ブライトマンさん曰くカーバンクルに入るための新人用キャンプ専任教官らしい。

ブライトマンさんとは同期で、それ以来の付き合いだそうだ。

 

「こいつは信頼できる、安心して特訓を受けてくれ」

「よし坊主、お前はしっかり鍛えねばカーバンクルの兵としてはキツい!ビシバシ行くからついて来い!ガッハハハハハハハ‼︎」

「はい!(もうどうとでもなれ!)」

 

 

 

 

オッズ教官に連れられて、昨日ブライトマンさんが言っていた『時空魔法をエンチャントした部屋』に入ってまず行ったことは、腕立て・腹筋40回と50メートル走を休憩を挟みながら体力の限り続ける事だった。

 

「最初から過度に体に負担をかけ過ぎるのも実はあまりよろしく無いんだ」

「は、はぁ…」

 

部屋といっても、体育館2〜3個分の空間にいくつかの間切りが設けられ、訓練用アスレチックやら小規模の川の様な水浴び場やら某核戦争後の世界ゲームのようなクッキングステーションやら寝袋やらが設置されている超巨大訓練施設で、俺は真ん中のだだっ広いスペースで力尽きるまで延々と筋肉をイジメ続けた。

 

「11秒42…これだけ繰り返してよく持ったもんだ、じゃあ一区切りつけて座学の時間といこう」

「はっ…はぁっ……はい…」

 

限界まで基礎体力運動を繰り返して倒れそうになったところで、次に倉庫スペースの壁に貼り付けられたホワイトボードの所まで移動し、座学の時間となった。

まずオーマの理念と在り方を復習、次にカーバンクルのモットーを習った。

時空軸の管理と世界ごとの在り方の維持という聞けば当然な内容だったが、深海棲艦に実際に自分の町を襲われた身としてはとても大事な事であるという事が改めてよく分かった。

 

「だが、今回のお前の世界のケースの様に深く強く繋がってしまう事案は意外と多い!その場合、お前の世界の場合の様に繋がりが切れるまで侵略などを防ぐため戦うか、共存を選んで馴れ合っていくしかないわけだ」

「成る程…もし深海棲艦の様な破壊勢力がいなかった場合、ウチの世界でも共存の選択があり得たわけですね?」

「そういう事だが、実際はそうはいかなかっただろう?だからお前がしっかりお前の世界を守るんだぞ」

「はい!」

 

更に『穴』の発見から始まったオーマの歴史などを簡単に説明してもらったり、実際にカーバンクルの武器(テンプレの如く、某星間戦争に出てきたような光線銃や超高速で振動する事で鋼程度だったらラクラク斬り裂ける日本刀とかだった)を見せてもらったり。

そしてそのまま倉庫スペースに入って色んなモノ(巨大昆虫の生肉とか得体の知れないナマモノの体液とか)を持ち出してクッキングステーションで調理、見た感じ明らかにゲロ物なのに意外と美味くてバクバク食べきった後で更に少し座学を行い、水浴びをしてから寝袋にもぐり込んだ。

 

「よし、明日もまた基礎体力運動を続けるからな!よく休むんだぞ!」

「はい、お休みなさいオッズ教官!」

 

 

 

 

こうして、俺の『カーバンクル式・超長期型新人特訓キャンプ』第1日目は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

 

一方、克哉の世界(リアルサイド)では。

 

『今日、提督少年があの町にまた現れたってマジ?』

『マジか直ぐに凸らねばwwww』

『愛しのヴェルたんに1番に会わせてもらうのは俺だ─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ』

『まあ待て、情報が揃っていない内に体当たり敢行してどうする』

 

克哉が朝起こした騒動は既にSNSで全国に拡散され、それを拾った某掲示板ちゃんねるの住民達が騒いでいた。

 

『アイツ普通に教室に転移して時間ギリギリに登校してきたからマジでみんな目がテンになってたwwww』

『目撃者キターーーー!』

『その話kwsk』

『A君がその時見た物とは⁉︎www』

『説明あくしろよA君』

『うっさい、俺らみたく黙って待ってろよ』

 

だが、目撃者の登場でさらにお祭り騒ぎになる掲示板を見つめるのはネット上で叫びまくるオタク達だけでは無い。

とあるオフィスに拠点を構える『ラプターネットニュース』のリーダー、土門栄一郎はパソコンを見つめながら目の前にいる新入りに初仕事前の激励をしていた。

 

「よし白井、あの少年の身元が分かり次第すぐに一緒に取材に行ってもらうからな」

「はい!」

 

あの生放送の後、案の定タイヨウTVから弾かれた白井アナウンサーはラプターネットニュースにスカウトされた。

そして彼女は深海棲艦関連専門として仕事をもらう事になり、今回が初仕事なのである。

 

「私も一緒に見てていいですか?」

「うむ、その意気や良し!ほらこっち来い」

 

土門と白井は2人して、パソコンに流れるカオスを見つめるのだった。

そして一方、

 

「防衛大臣、身元は掴めたようだな」

「はい、ちょうど今使いの者をよこしました」

「なんとしてもあの少年を捕獲するのだ、あの者が唯一の『少女達』への糸口なのだからな」

「了解しました」

「…しかしこの『艦これ』といい、この『艦娘』といい、ニホンは侮れぬ国だな」

「全くです」

 

こちらもこちらで動き出していた。

世界中の闇が蠢き始める中、

 

『マジかよwwww』

『何それ超便利ww』

『忘れた弁当を知らない場所まで持ってきてくれる電たんhshs』

『弁当ついでに電たんもいただ(ry』

『憲兵さんこっちです』

『憲兵さんに通報しますた』

『なんでや!みな思っとるやろ⁉︎』

『ダチから提督少年の情報を聞き出した、俺ちょっと凸ってくるわ』

『その情報俺にもよこせ、俺が1番にヴェルた(ry』

『いや、俺が1番乗りしてロリお艦に会わせて貰うんだ!。・*・:==͟͟͞͞( 'ω')・.:゚。』

『バカ野郎、俺が1番乗りしてアタゴンに凸撃させてもらうんだよ≡└(┐卍^o^)卍ドゥルルル』

『もう変態しかいないwwwwwwww』

 

祭り騒ぎに狂乱しているこいつらが、1番平和しているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鎮守府着いたー!」

「疲れたぜ…」

「よし、あとは私が医務室へ連れて行く!」

「あ、吹雪ちゃん達おかえりなさいなのです…あれ、その人どうしました?」

 




今回初登場のオッズ教官は、某美食バトル漫画に出てくる勘違い所長をイメージして書きました。

誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。

ではー(^_^)ノシ


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体力がついた…どころの話じゃないよねコレ

ども、トマト中毒です。

今日、人生で二度目の寝坊をやらかしました。
しかも、今日は3年1学期入って最初の実力テストの2日目。
少し勉強してちょっとだけアテにしていた社会科のテストが20分ほど削れて結果平常運転になりました。

川orz

ま、まぁその話はその位にして、本編をどうぞ。


あの日から。

 

「っはぁ…くっ…はぁっ…」

 

俺がオッズ教官に教えを乞うたあの日から、どれくらい走り続けただろうか。

総合距離でいうならもう軽くユーラシア大陸を横断するくらいにはなっている…いや、もしかしたらそれも優に超えているかもしれない。

 

「…ぉおおっ‼︎」

 

あの日からどれくらい、模擬剣を振り続けただろう。

記憶のはるか彼方、それほど昔に思える実際は一週間前にやっていた某龍狩りゲームなら、初期装備で古龍種を討伐し終えたくらい振り続けているだろう。

 

「『マナランス』っっ‼︎」

 

あの日からどれくらい、魔法を放ち続けたのだろう。

初めて魔法を覚えたあの日、確かこのキャンプが始まって1〜2週間後くらいの、模擬剣の素振りがまだ50回で済んでいたころに教えてもらった『マナガン』に狂喜乱舞していたあの頃が、とても懐かしい。

 

「まだまだ!ガンッガンかかって来いぃ‼︎」

「でえぇぇぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁああああッッ!!!!」

 

『カーバンクル式・超長期型新人特訓キャンプ』第150日目、遂に最終日となったこの日の最終プログラムは、ここまで俺を鍛え上げてくれた恩師との死闘であった。

 

 

 

 

 

「いっててて…ものの見事に負けたなぁ」

「ガッハハハハハハ、当たり前だ!まだ150日しか経っていないひよっ子に負けてたまるか!」

 

気がついた俺が頭にできたタンコブをさすりながら立ち上がると、クッキングステーションの鍋をかき混ぜながらオッズ教官がいつものように豪快に笑った。

本当にあれから、電たちと別れてから特訓の日々だった。

最初の辺はまだまだ優しかったが段々厳しくなってきたオッズ教官のトレーニングメニューは、毎日全身を走り続ける激痛に呻きながらも更に体の構造を壊し続けるという選択肢しか存在しなかった。

おかげでこの150日、剣術槍術柔術魔術銃戦法などの戦闘術やサバイバル知識、カーバンクルに入った後も使う敬礼の仕方とか普通に高校課程修了レベルまでの勉強まで粗方覚えてしまったが、確かこの訓練って…?

 

「あのー、オッズ教官?」

「なんだ坊主、今日の晩飯でも気になるか?まぁここで食べる最後の飯だから無理もないか」

「いや、そうでなくて…確かこの訓練って、ブライトマンさんによると30日分のプログラムで基礎体力だけつけてくれるやつじゃありませんでした?」

 

そう、あの日俺はこの部屋に入る前に事前説明を受けていた。

 

『克哉君、君にはこれから30日間分の基礎体力増強プログラムを、昨日話した部屋で行ってもらうよ』

『昨日…ああ時空魔法をエンチャントした部屋ですね、ですが基礎体力増強だけでいいんですか?』

『君はまだ正式にカーバンクルに入った訳じゃ無いからね、まだ正規の兵士(プレーンズ)育成プログラムを君に課すことはできないんだ…それに、今のまま正規プログラムを受けると、君は絶対心身共に壊れるよ?もちろん、物理的に』

『基礎体力だけでお願いします』

 

なんか俺、その兵士(プレーンズ)育成プログラムとかいうのを受けた気がするんだが。

いや、だとすると俺なんで壊れてないんだよ。

 

「あぁー…ま、なんだ!意外と筋が良かったからそのままプレプロまで一気に行ってしまおうって思ってな!ガッハハハハハハハ!」

「おぅふ…」

 

確かに思い返してみれば、一気にプログラムの内容が濃く激しくなってきたのが大体30日目前後くらいだった気がする。

やけに長いなーとは思っていたが、成る程そういうことだったか…。

 

「はぁー…なんかもういいや、色々ためになったし」

「…なんか色々すまんかった」

 

ため息をつく俺に教官が頭を下げてくる。

いや嫌味とかではないし、実際ここまで鍛え上げてくれた教官には感謝している。

インドア生活まっしぐらだった俺は当時少し腹周りが緩くなってきていた気がしていたし、女子思考では無いが異性である艦娘たちと近くで接する以上腹が出てるなんて気付かれたくなかったんだ。

 

「提督さん、おやつの食べ過ぎなのです?」

「あれー?提督、間宮さんの所に通いすぎてない?今度から制限してもらわないとね!」

「提督のお腹…ぽよぽよ…甘味の食べ過ぎ?」

「提督さん!確かに間宮さんの餡蜜は美味しいですけど、食べ過ぎはメッ!ですよ!」

 

なんて艦娘たちに言われた日にゃ、間違いなく俺は樹海散歩に旅立つ所だった。

それをこんな細マッチョ…とはいかないけど、こう少し引き締まった感じに調整してもらえた上に、これから何かあった時のための護身術も無意識レベルまで叩き込んでくれたのだから、感謝こそすれど非難なぞとんでもない。

ただ、見た目の豪快さに違わず思考も豪快で、行動も大雑把な事が多いのは150日間寝食を共にした自分にはよく分かっていた。

今度からは少し抑えて欲しい所ではある。

 

「今日の晩飯はボーパルバニーのスープだからな、最後の晩飯だしよく味わって食べるんだぞ」

「おおやった、最後の最後でボーパルバニーだ!」

 

90日目から始まった完全サバイバル実践訓練。

とあるファンタジー世界のとある場所、その一部分のみを全て、遺伝子レベルまでコピーして目の前に再現するトンデモ技術を駆使し、かなり危険な森の中で実際に生活する危険と生存本能からくる「火事場の馬鹿力」を任意で発動できるようにするその訓練では、飯の調達も自前だった。

ハエや蚊なんかの巨大生物を含むめちゃんこ不味い動物共の中で最も美味いボーパルバニーは、その森でも相当なレア物な上、下手すれば一瞬で喉元を噛み切られて御陀仏という色んな意味でオワタ級生物。

俺はオッズ教官が食べる所を巨大ゴキブリの焼肉を食いちぎりながら見ているしかなかったが、遂にこの肉を食える日が来たんだやったぜ!

 

「では最後の晩飯…」

「「いただきますっ!」」

 

天然モノの兎肉というのはとてつもなく美味い物なのだということが、とても良く分かった晩メシだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、遂にお前も立派な兵士(プレーンズ)だな!」

「いや、まだ俺高校卒業するまでオーマに就職しないですよ?」

「そういえばそんな事も最初に言ってたな、まぁ将来そうなるってことだ!ガッハハハハハハハ!」

 

キャンプ最後の晩メシを堪能した後、俺と教官は2人してこの訓練施設の出入り口へ向かう。

先ほど森のコピー投影を終了してこの空間は以前の何も無いだだっ広い場所に戻り、扉までは一直線だ。

以前のようにバカでかい木を回り込む必要も、巨大アリや凶暴化したサルの集団に襲われる危険も無い。

ていうかこれ確か艦これの小説だよな?

俺一体何してんだよ。

 

「メメタァッッ!!」トマト汁ブシャー

「ん?坊主、なんか言ったか?」

「いえ、俺は何も…教官は何か言いました?」

「いや、俺も何も言ってない…空耳か?」

 

何か聞こえた気がして2人して周りを見るが、何もおかしな点は無い。

取り敢えず気を取り直して歩き続け、そして扉まで辿り着いた。

 

「よく頑張ったな、坊主」

「はい、有難うございました教官」

「うむ、ではこれにて訓練終了だ!」

 

最後に扉の前で立ち止まり、教官と向かい合ってオーマ式の敬礼を行う。

今日をもって、俺の『カーバンクル式・超長期型新人特訓キャンプ』は終了した。

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

「あぁ、懐かしいなぁ…」

 

時空の亀裂を潜り抜けると、そこはとても懐かしい風景だった。

俺はあの後、扉の向こう側で待っていたブライトマンさんとレイに出迎えられ、挨拶と訓練のお礼を済ませると、ブライトマンさんがオッズ教官に詰め寄るのを後ろ目に早足でエントランスへ移動し、喜びの勢いそのままに『穴』を潜った。

後ろからブライトマンさんの怒声が聞こえた気がしたが、そこは俺の与り知らぬ所だ。

そして今、俺は実に150日ぶりに(体感)我が鎮守府の床を踏みしめた!

 

「あ…はは、ははははっ」

 

なんかもう感動とかそういうのを通り越して涙すら出てこない。

ただただ嬉しくて、俺は何故か笑いが止まらなくなってしまった。

 

「やった…俺はやりきった!くくっ…くっははははははは!」

 

しばらく笑い続けると、部屋の扉が開いて懐かしい人が入ってきた。

 

「愛宕…」

「あら提督、もう用事は済んだんですか?」

「愛宕っ!」

 

更に地獄を耐え抜いたという実感と喜びが込み上げてきて、少し驚いた顔で話しかけてきた愛宕に俺は走り寄って抱きついた。

 

「やった…やっと終わったぁ…」

「ど、どうしたんですか提督⁉︎なんか一気に雰囲気が逞しくなったし、無精髭がボーボーになってますけど!それにやっとて…確か1時間も経ってないですよ?」

「あぁそうか、確かにそうだったね」

 

俺はめっちゃ真っ赤になっている愛宕から身を離すと、ここまでの修行の事を簡単に説明した。

話し続けるに連れて同情的になる愛宕の目が複雑だけど、同時にこの感動を分かってくれたようだ。

 

「そう…そんな事になってたんですね」

「あぁ…死ぬかとおもた」

 

俺は不意に、愛宕に抱きしめられた。

丁度同じくらいの身長だったから、駆逐艦のみんなの様に俺の腰に抱きつかれるような事もなく、軽巡のみんなの様に胸に頭を押し付けてグリグリされる事もなく、我が頰にはプルプルお肌の頰が押し付けられ、胸には彼女自慢の胸部装甲が張り付き、俺の脳クソに思いっきり煩悩という負荷を流し込んでくる。

その頰は少し熱を持ち、いやでも俺に『今自分が美女と密着しているという事』を実感させ、これまた一気に俺の血流が加速した。

 

「もう大丈夫ですよ提督、ここには無茶振りばかりの教官も、油断=死みたいな過酷な森も無いんですからね」

「あ、あぁ…(これヤバイってこれヤバイってこれヤバイってこれヤバイって‼︎)」

 

俺は息子がおアップを始めた事を気付かれない様に軽く抱き返しながら、すっかり忘れてた言葉を口にした。

 

「ただいま」

「お帰りなさい、提督」

 

 

 

 

 

アタゴ ニ レンアイ フラグ ガ タチマシタ!

 

 

 

 

 

「ん?なんか言いました提督?」

「いいや何にも、愛宕は?」

「いえ、私も…」

 

不思議そうな顔をして頭上に?マークを大量生産しながら俺を見る愛宕。

若干既に頰が赤くなっていたのが一瞬硬直して耳まで真っ赤になると、俺との密着状態から離脱しようとジタバタした。

 

「ーーーーーーーッ⁉︎〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ‼︎」ジタバタジタバタ

「はは、そんな慌てなくてもいいのに」

 

元々緩くしか愛宕の腰と肩に手をやっていなかった為すぐに愛宕は俺から離れ、深呼吸して落ち着こうとする。

しかし落ち着いていざ此方を見た瞬間にまた真っ赤になり、ワタワタし続ける堂々巡りが俺の目の前で展開された。

…やっぱり今さっきの空耳、的を射ているのかな?

いや、まさか…。

今さっきの空耳の言う通りだとして、俺はそんな初めて会って1〜2日で恋愛フラグ云々とかのワードが出るほど卓越した恋愛フラグ建築士ではないはずだ。

…まあいいか、それよりちょっと愛宕に言っておく事がある。

 

「愛宕、悪いがちょっと母さんと姉さんの顔を見てきていいか?さっきも話したが、こちとら丸々150日間家族の顔を見てないんだ」

 

そう、家族の顔を見たい。

150日も閉鎖空間に閉じこもっていると、やはり若干ホームシックが出てしまい、その時に帰ったら絶対2人の顔を見ると決めていたのだ。

 

「え?…あ、そうですよね」

「あぁ…少し顔見てきてすぐ戻ってくるから、皆は出撃の準備をしておいてくれ」

 

紅に薄く染まった愛宕のはにかみ顔に手を振って、俺は『穴』をリビングに繋げた。

 

 

 




ベッドというのは怖いものですね。
あのフカフカにはずっと潜っていたくなる…。
皆さんは寝坊にご注意下さい。
特にもう職に就いている方、遅刻して永久休暇与えられた〜とかシャレになりませんからね。

誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。

それではー(^_^)ノシ

追記
4月14日、克哉の『空耳』を少し修正しました。
本来ならその時点で書くべきだったのですが、授業開始ギリギリだったので、咄嗟にスマホをホーム画面に戻してそのまま忘れてしまっていました。
すんませんm(__)m


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愛宕の頭ン中、そしてインタビュー

ども、トマト中毒です!
若干お待たせしました。
風邪ひいて寝込んでて、スマホを握る気になれませんでした。

言い訳はいいとして、本編をどうぞ!


 

 

「行っちゃった…」

 

「家族に会ってくる」と言って、今ではすっかりお馴染みになった『穴』を潜って家に帰った敬愛すべき提督を、先の無意識下に於ける自分の行動に赤面しながら見送った私は、小さく振っていた手を下ろしてそう呟いた。

自分の事とはいえ思考回路や行動原理が全く分からなくなっている。

 

「……ふぅ」

 

最初はただ、「可愛い」と思っていた。

自分を見た瞬間赤くなって横を向いた彼は、分かりやすく照れていた。

一気に距離を縮めると余計に赤くなって、ウブというかなんというか…すごく、可愛かった。

それをもっと見たくて、しばらくずっとイタズラをし続けたものだ。

 

「…ふふっ」

 

私はこの鎮守府に来てあまり経っていないけど、それでも彼はいろんな表情を見せてくれた。

笑ったり、照れたり、ちょっと拗ねてみたり、穏やかに微笑んでみたり。

駆逐ちゃん達が出撃中に深海棲艦達と交戦している時は、祈るような表情をしている。

この前提督が不意にいなくなって大事になった時、私はイタズラされ続けるのがイヤになって出て行ったのかと、今になると飛躍しすぎだとハッキリ分かるような短絡思考をして落ち込んでいたが、用事が急にできて長くなってしまったらしく、提督が謝りながら鎮守府に飛び込んで来て、彼に飛びついて泣き噦る間宮さんを含めた皆に1人1人頭を下げていった後、私の所に来て同じように謝ってきた時はものすごく申し訳なさそうだった。

 

「…なんで間宮さんまで泣きつくのか不思議だったけどね」

 

そして私があの短絡思考のままイタズラのしすぎを泣きながら謝った時、彼は一瞬驚いた顔をして、それからあの穏やかな笑みでゆっくり諭してくれた。

思えば、私はあの表情の豊かさに惹かれて、あの時あの笑みを向けられた瞬間━━━━

 

「落ちたんだろうなぁ、私」

 

実際、あの時から私の頭の中は提督の事ばかりだ。

いや、「ばかり」でなく「だけ」と言うのが正しいか。

朝起きて、服を着替えてる最中に提督の事を思い浮かべ、気恥ずかしくなってベッドにダイブした。

朝ご飯の最中、提督が何を食べてるか駆逐の子達が予測し合っているのを聞きながら、自分が作った朝ご飯を提督がお代わりしてくれる所を想像してにやけつつハヤシライスを食べ終わり、

鎮守府備え付けの砲撃訓練場で自分の練度(レベル)を鍛えてる最中、的に頭の中で一瞬提督の顔をくっつけてしまい怯んだ所で失格にされ、最古参の電ちゃんに「提督さんに怒られちゃいますよ?」と言われて割と本気で凹んだ。

間違いない、自分は提督に恋している。

 

「とは言っても…」

 

提督に振り向いてもらうのはハードルが高い。

なぜか、それはこの鎮守府に現在所属している間宮さん・大淀さん・明石さんを含む全ての艦娘達が、経緯の違いや若干の大小こそあれ提督に好意を持っているから。

本当ならこれから女性特有のドロッドロな争いが始まるのだろうけど、私としてはそんなモノは起こしたくない。

私は皆のいい所をいっぱい知っている。

恐らく、皆も同じだろう。

そんな仲間同士で争うのはいやだ。

提督もそれは望まないだろう。

もしそんな事になったなら、その時は全力で皆を止める。

若干電ちゃんが不安だけど、少なくとも『提督を巡って同士討ち』とかは無いはずだ。

差し当たっては、荒波を立てずに提督にどうやって振り向いてもらうかだけど…。

いやむしろ全員で…?

 

 

 

 

 

この後愛宕は、克哉が提督室に帰ってくるまでずっと『いかに争いを起こさず克哉にアプローチするか』を考え続けた。

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

オッズ教官にビシバシしごかれ体感150日、やっとの思いで家族に再会して若干嬉し涙さえ溢れた次の日。

 

「行ってらっしゃい!」

「行ってきます!」

 

いつも通りに学校に登校(転移)すると、靴箱に靴を突っ込んで上靴に履き替え、教室へ向かう。

 

「よっ!」

「おう、今日は寝坊しなかったな!」

「おっす克哉ー」

 

いつもの様に教室に入り、いつものようにダチと駄弁る。

いつもと若干違った所は、

 

「あ、『提督』おはよー」

「おい同志よ、昨日の約束忘れてないか?」

「え?俺の事?…あぁすっかり忘れてた、すまん」

 

いつの間にか周りに『提督』と呼ばれ始めていた事だ。

あと、オープンオタク達には『同志』と呼ばれているようだ。

そういえば150日前(昨日)昼休みに鎮守府の写真をSNSに貼ると言ったっけ。

オーマに行く前に済ませておけば良かったなぁ。

 

ガラッ

 

「もう授業始まるから席につけー」

「やべっ⁉︎じゃあ頼んだぞ同志!」

「あぁ、今夜こそな!」

 

オープンオタク君が逃げて行く背中に、今日こそ写真を投稿してあげようと思った。

那珂ちゃんでも一緒に写したげるかな?

 

 

 

 

「ご馳走様っと」

「お前弁当食うの早いなぁ」

「おうよ、たまには訓練の様子も見とかないとな」

 

昼休み。

弁当を食い終わって立ち上がる俺に和樹が声をかけてきたので、笑いながら返事する。

また誰か暁みたいにサボっていても行けないし抜きうちで視察に行く事にしたのだ。

 

「それに、あのオープンオタク君達の期待にも応えたいしね」

「なるほど、視察ついでに写真も撮るのか」

「お前が帰ってくるまでツイッターずっと開けておくとしよう」

「俺も」

 

どうやらコイツ達は向こうからでもツイッターに投稿できると思ってるらしい。

悪いけど時空軸ごしにネットは使えないからな?

 

「じゃあ行ってk」

「あの、すいません!ラプターネットニュースの者ですが、ここに『提督』君がいると聞きまして…」

 

俺が『穴』を開けようとしたその時、見知らぬ2人組が先生に連れられて入ってきた。

なんか見覚えのある女性はマイクを持ち、もう1人の男性は撮影用のカメラを担いでいる。

ラプターネットニュース…最近出てきたネットニュースグループの事だっけか。

 

「おい藤原、お前に取材したいんだとさ」

「えと…でも俺、これから皆がちゃんと訓練こなしてるか見にいこうと思ってたんすけど」

「バカモン、堂々と学校を抜け出すなどと言うな!」

「あっ、サーセン」

 

先生に呼ばれて咄嗟に逃げようとするも、逆にそれで怒られてしまった。

確かに堂々と学校を抜け出す宣言しちゃったもんな、そりゃ怒るか。

 

「君があの時の少年ね?生放送だったけど、君すぐに消えちゃうから取材できなかったからね…今、頼めるかな?」

「あの時?生放送…あっ、生放送の!」

 

思い出した!生放送の映像の中でヘリに乗って実況してたアナウンサーだ!

 

「でもなんでラプターネットニュースに?」

「え?えと…あれからすぐにタイヨウTVから弾かれてね?それからラプターにスカウトされたの」

 

俺の疑問にあの時のアナウンサー…確か白井さんだったか、は答えてくれた。

道理でタイヨウTVつけても白井さんが出てこないわけだ、納得。

 

「という訳でコレが私の初仕事なのよ、インタビューお願いできるかな?」

「は、はぁ…先生、いいんですか?」

「ん?実は俺も、このアナウンサーの一刀両断するような物言いはスカッとしてたんだよな…てな訳で、次の授業の先生には一声かけとくからじっくり取材されて来い!それに、この学校の宣伝にもなるしな!ハッハッハ!」

「それが目的か…んじゃあ、お願いします?」

「はい、お願いします!では、こっちで…」

 

その後俺は、5時間目に使われない事を白井さん達が事前に確認していた第一生物教室にて暫くの間インタビューを受けた。

俺は始まりからこないだの棲艦襲撃事件までを基本的に全て話した。

ただし、オーマに関しては「とある組織」として、あまり核心的には話さなかった。

できるだけ緊急時に切れるカードの一つとして取っておきたかったのもあるし、俺がこの場で話す事によって彼らに迷惑を少しでもかけたくなかったからだ。

とはいえ、俺がそこの組織と懇意にしてもらっている事と、そこで鍛えてもらった事は話したけど。

 

「まあ、そこの組織で権力傘にきたクソ(愚か者)共からの護身の方法を教えてもらって、ある程度自分の身を守れるようになった上で、次の『襲撃』に備えて戦力を増強している最中なんです」

「な、なるほど…文字通り、世界を越えた規模の大きな話なんですね」

「ええ…ですから、できるだけ国の権力だの何だのに邪魔されたくないんですよ」

「国の権力…ですか?ていうか、さっきから邪魔されるのが分かっているように聞こえるんですけど…どうして、そんなピンポイントで言えちゃうんですか?」

 

インタビューの途中で白井さんが質問してくる。

斯く言う俺だって、朝までそんな事は知らなかった。

 

「とある人が教えてくれたんですよ、今朝登校した時靴箱でね」

 

 

 

『よいしょ…っと、よし』

『おはようカツヤ!ちょっといい?』

『うわぁっ⁉︎…っと、ビビらせないでくれよ、レイ』

『ゴメンゴメン、ちょっと気になる事があってね…』

 

 

 

ウチの子(艦娘)達の『チカラ』を手に入れるために各国のエージェント達がこの町に集結しているらしいです。俺を…ひいてはあの子達を、自分の国に『招待』しようとね」

「うわぁ…なんか一気にヤバい雰囲気の話になってきましたね、私達とか消されませんか?」

「大丈夫ですよ、いざとなったらまた俺を訪ねて来てください 」

「ちょっと悪い2人とも、こんな盛り上がってる時に悪いが時間ギリギリだ」

 

若干青くなっている白井さんに冗談を言ったところでカメラの人が時間切れを通告してきた。

どうやらまた別の記事に関してのインタビュー、そのアポの時間が迫ってきたらしい。

アナウンサーってのも大変だなぁ。

 

「突然の取材にご協力いただき、有難うございました!」

「あぁいえいえ、また今度来た時は鎮守府でも案内しましょうか?」

「いいんですか⁉︎」

「ハハハ、流石に冗談ですけど、また気になる事でもあったら来てください」

「あ…はい!」

 

俺はラプターの2人を靴箱まで見送り、そして別れた。

こうして、俺の初インタビューは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、終わりましたね!」

「なんっつうか…只者じゃないな」

「へ?ただの好青年にしか見えませんでしたけど?」

「ああ、だが…いや、何でもない」




インタビューってどんななんでしょうね、受けた事がない俺には分かりませんが…取り敢えずやってみました。

誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。

では、またー(^_^)ノシ


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はぐれ艦との戦闘と決意、そして再会

ども、トマト中毒です!
失踪ワンチャン⁉︎と思っていた方々、大丈夫!
GWの宿題排除に追われてただけですので!
すんませんした!

まぁ、勿論全部やった訳じゃないんですけど、
「これは出そう!」
って思ったものはちゃんと処理しました。
という事でこれから数日間!
FGOとハースストーンと執筆に充てられる訳ですよ!
やったね!

という事で、本編をどうぞ!


インタビューってのを初めて受けて、学校でどんなだったか聞かれまくった帰り。

 

「たまには歩いて帰りたいよな」

 

というわけで、提督室にいた雷にその事を報告して歩いて帰っている。

とは言っても雷には少し用があると言われたし、流石に全部徒歩だと合計で30分以上かかってしまうので、途中までは穴縮地(擬)を使い海が良く見える橋の所まで駆け抜けたけど。

 

「…うん、やはり海が良く見えるなぁ」

 

というか目の前が海なんだよなぁ、ここ。

むしろこないだの襲撃で何故破壊されなかったのか不思議なくらいだ。

俺は橋の上にえっちらおっちら上ると、1番高いとこから海を眺めた。

相変わらず青に黒が若干混ざったような、港特有の濁った海だ。

沖縄みたいな透き通った海なぞ、直接見た事が無い。

どうせ艦娘(ウチの子達)に泳いでもらうなら、そちらの方が映えるだろう。

だけど俺はこの海も嫌いじゃない。

慣れ親しんだが故、だろうか。

海の向こうで船が上げている煙が空へ向かっている、汽船だろう。

その推定汽船が上げる煙が高く高く上がっていく先にある太陽の光が、海に反射してなんとも綺麗な光景を…

 

「ん?なんかあの船、船体全体から煙吐いてないか?」

 

確かに汽船は黒い煙を上げる、しかし船体全体から煙を上げるモデルとか聞いた事が無い。

てかイヤな予感しかしないんですが…。

そして俺が見たのは、一体の黒いバケモノが向こう側から船を噛み砕いて真っ二つにし、哀れな船が爆発を起こす所だった。

 

「深海棲艦じゃないですかヤダー!」

 

俺が海に向かって叫ぶと、周りを行く人々の目が俺と海の向こうの煙の元に集まる。

まだ情報は回りきってないが、『また深海棲艦が襲撃に来ている』なんてつぶやきがSNSにのるのは時間の問題だろう。

また別の意味で面倒くさいことになるかも知れない。

だが今はこの周辺にこの情報を回してできるだけ人的被害を減らす事を優先すべし!

 

「バ…バケモノが来た!」

「また襲って来たぞー!」

「嘘でしょ⁉︎なんでまた‼︎」

 

よし、いい感じにパニクって逃げていく!

最適解は別にあったのかもしれないけど、バカな俺に考えつくのはこんな事位だったから、後でレイあたりにお小言をもらったとしても甘んじて受け入れるとしよう。

差し当たっては皆さんに、何も不幸が起こりませんように。

主に流れ弾とか、建物の倒壊に巻き込まれるとか。

一般民衆の皆さんが逃げ出していく中、俺は鎮守府側に通信をかける。

 

『はい、提督さん?どうしたのです?』

「深海棲艦が現れた、多分はぐれ艦だと思う」

 

運良く1発目…電が通信に出てくれた。

都合が悪くて3〜4番目とかだったらタイムロスも甚だしいからな。

 

『えっ、ホントですか⁉︎』

「安心しなよ、相手は駆逐艦が1だけだしすぐに終わるさ」

 

見たところ噂のフラグシップなる卑怯艦ではなさそうだし、今の皆のレベルなら文字通り秒殺だろうな。

とはいえ、もうそろそろ向こうの射程距離が町にかかり始めただろうし、こっちも早く手を打たないと。

 

「取り敢えず俺が沖まで誘導しとくから、3分以内に準備を整えて『俺がいる場所』に来てくれ」

『分かりました、編成はどうしますか?』

「そうだな…1番の新参者である愛宕に頼むとしよう、練度(レベル)の足しにもなるしね」

『はいなのです』

 

愛宕が準備している間に、俺は町に降る敵艦の弾を海にそらしながら注意をひきつけ、沖へと誘導する任務を行う。

というわけで、通信が切れた直後俺は、早速橋に向かって飛んでくる5inch単装砲の弾を『穴』を通して海に軌道をズラした。

 

「はいはい、危ない弾は海に返しちゃおうねー」

 

はっはっは、駆逐棲艦の目がテンになってる。

本当は「しまっちゃおうねー」って言えたら面白かったんだけど、それはまあ仕方がないか。

この隙に橋の上をダッシュして一気に海上へと縮地(穴)を発動、駆逐棲艦の目の前を横切って沖へ飛ぶ!

そうそう、挑発も忘れずに。

 

「Hey! hey! hey! C'mon,wimp!」

 

訳:ヘイヘイヘイ来いよノロマ!

一時期やってた某悪魔殺しゲームからヒントを得たけど、なかなかどうして上手くいったらしい。

 

『グォアアアァァァァァァァ!!!!』

 

なんかね、全速力っぽいよあのイルカ。

ケータイとかの絵文字とかだとこう…(#゚Д゚)こんな感じ?

めっちゃ超速度でこっち接近してきてるんですが。

てか英語分かるのね、キミ。

 

バギューン!

 

「うぉっ⁉︎」

 

顔のすぐ横を5inch砲弾が通り過ぎていく。

弾撃ちながら全速前進ってそんな事も出来るの⁉︎

沖に出たから、船が通りかからない限り被害はある程度少ないと思うけど、それでも危ないのは変わりない。

誰が?俺がだよ!

5inch砲弾とかまともに受けたら体吹っ飛ぶわ!

 

ギューン!

 

「いてっ!」

 

嫌な予感がして若干位置を横にずらした『穴』を通り抜けると、今俺が移動していた軌道線上を砲弾が通り過ぎ、ちょうど今さっきの胸の位置にあった俺の肩を掠めていった。

 

「(やっぱ怖ええええぇぇぇぇぇ!)」

 

ついこないだまで兵士訓練を受けていたとはいえ、マジの命がけとなるとやはり足が竦みそうになる。

だってついこないだまで戦争とか知らなかった現代っ子なんだもの、仕方ない。

取り敢えず、どっか弾が飛んでこないところに逃げ出したい。

どっかに死角とか無いか?

もうそろそろ沖合だし、愛宕も出てくる頃だと思うんだが…ん?ちょっと待て、あそこならどうだろ?

 

「よいしょっと」

 

…よし上手くいった、砲撃が止んだな。

取り敢えず、いい感じの()に座って休憩Online。

めちゃくちゃ探してる様だけど、悪いが俺は見えないと思うぞー。

ん?何処にいるのかって?

そりゃあね、沖合に障害物とか無いだろ普通?

だからこうするしか無いのさ。

分かるだろ?

俺は自分の座っている金属光沢の床を平手でペシペシ叩く。

 

「鬼さんこちら、頭のなる方へー」

『ギッ⁉︎』

 

俺の声を聞いた駆逐棲艦がその場をグルグル旋回し始めた。

当然俺は床に掴まった。

ここまできたらもう分かるだろうけど、俺は今駆逐棲艦の頭の上に居座っている。

ここなら常時駆逐棲艦の居場所を捕捉できるし、弾もあたり様がないから安全性も事足りるよね。

これが潜水艦とかだったら海に潜られてゴポゴポゴポゴポ…とかもあるかもしれないけど、駆逐艦だから海に潜るという選択肢は無いはずだ。

さて、もうそろそろ愛宕が来る頃かなー?

 

ズズズズズズ

 

「提督、お待たせしました!深海棲艦は何処ですか⁉︎」

 

丁度いい所に愛宕が出てきてくれた。

いいね、ナイスタイミング!

 

「おお来たか!実はだけどね、この床がそうなのさ」

「え、床?…えぇっこれが⁉︎てかなんで提督乗っかってるんですか‼︎」

「だってここ1番安全で楽だし…まあ、後は頼んだよ」

「はぁ…了解」

 

話をしている内に自然とこちらに身を乗り出し、『穴』から出て駆逐棲艦の床に乗ってくる愛宕。

入れ替わりで俺は『穴』を通って鎮守府へ行く。

後は任せたぞ愛宕、俺はもう疲れた。

ずっと縮地で移動しなければならないから正直脳への負担がでかすぎる。

 

「あ、お帰りー提督」

「ただいま雷、なんか用があるらしいけど?」

「うん、ちょっとこっち来て」

 

工廠の出撃準備用ドッグから出ると、丁度そこに雷がいたので、用だという場所まで連れて行ってもらうことになった。

 

「…いてて」

「大丈夫?」

「ああ、ちょっと頭の使いすぎだよ」

 

頭を揺らさない様に歩いているが、やはり頭痛がする。

やっぱり俺は海上戦は無理のようだ。

 

俺はもう深海棲艦とは戦わない。

鎮守府の運営と艦娘たちの指揮に全力を注ごう。

これが、今回俺が学んだ事だった。

 

考えながら歩いている内に、目的地に着いたらしい。

《治療室》と書かれた扉の前で雷が立ち止まり、こちらを見ている。

ここは確か、出撃時に受けた艦装の損傷を入渠ドックで妖精さんたちに渡した後で艦娘自身が負った軽傷程度の傷を癒すための部屋だったはずだ。

入渠ドックにも治療設備はあるが、重い傷でなければ基本的にこの部屋で治療し、ひとっ風呂入って身を清めるだけで艦娘たちは傷を癒せる。

 

「ここよ、提督」

「治療室…ここで何か厄介事でも起きたのか?」

「う〜ん…そう言えばそうなるのかもね」

 

よく分からん一言と共に中に入るように促され、俺は訳が分からぬまま治療室に入った。

 

「あ、提督さん」

「吹雪…そういや昨日遠征(お使い)から帰ってきたんだったか」

 

治療室に入ると椅子に吹雪が座っていた。

確か、昨日原油採取から帰ってくる予定だったはずだ。

昨日はあれから疲れてベッドにダイブしたからなぁ。

 

「もう!報告する間もなくどっか行って、帰って来たかと思えば疲れてバタンキューとか何やってたんですか?」

「あーいや、厳ついおっちゃんに体力作りを手伝ってもらったのさ…それで、なんで吹雪がここに?」

「それが、この人が倒れてるのを発見して治療の為連れて帰ったんですけど…」

 

俺の問いかけに吹雪が目の前のベッドを指差す。

気がついてなかったけど、どうやら人が寝ていたらしい。

俺がその顔を視認した瞬間、俺の脳は一瞬完全に活動を停止した。

 

「…か…つや……」

 

そこで寝転がりうなされていたのは、俺の親父だったのだ。

 

 

 

 




久々に出てきました、親父さん。
目覚めるのはまたいつ頃でしょうね?
そしてココ重要、

カツヤは深海棲艦との戦闘に参加しない。

次回!
カツヤ提督の鎮守府の艦娘たちに最大の敵が現るっ⁉︎

誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ!

それではまた、次の話までー(^_^)ノシ


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親父、写真、そしてハイテンション

ども、トマト中毒です!
皆さん、雨好きですか?
俺は…雨好きです。
俺の地元・岡山は、中国山地と四国山地に囲まれているため、県がキャッチフレーズを「晴の国」とする程度には若干雨が降りにくいんです。
ですから、今日…投稿日のような1〜2日連日降りというのは珍しく、非日常感が出てワクワクします。

雨のような何でもない事も、「あー、珍しいな」と思えると楽しくなってくる事に気付いた17歳でした。

あ、本編どうぞ。


雷に連れられてやってきた治療室、そこに眠っていたのは本来こちらの世界にいないはずの俺の親父だった。

 

「……親父」

「やっぱりね」

 

雷によると、ずっと俺や母さん、姉さんの名前をうなされながら呼び続けていたのと顔立ちが俺に似ていたので俺の関係者かと思っていたらしい。

 

「お父さんもカッコいいのね!」

「…取り敢えず少し家に帰ってくるよ」

 

雷の感想はさておき、一旦家に帰って親父が鎮守府にいる事を書き置いて戻ってきた。

多分今日、初めて俺以外の向こう(リアル)の人がこの鎮守府に入ってくる事になるだろう。

 

「吹雪、遠征の報告を提督室で聞いてもいいか?」

「はい、分かりました」

 

親父も心配だしどうやってこの世界に入ってきたのかも疑問だけど、今はやる事を済ませてからゆっくり見守った方がいいと思ったので、親父の事は雷に任せて提督室に移動、吹雪の報告を聞く。

 

「原油缶と弾薬が200、鋼材とボーキサイトが20か…よし、記録した!お疲れ、1日待たせたお詫びだけど今日は休日な」

「ありがとうございます!」

「ああそうだ、ちょっといいか?」

 

報告を書き留め、そのまま部屋を出ようとする吹雪を呼び止める。

そう、同志たちに頼まれたアレをしなければならないのだ。

 

「この場所の写真を撮りたいし、映えるから吹雪も入ってくれる?SNSに載っけたいんだけど」

「写真、ですか?いいですよ!ですが、どうしていきなり?」

「ああ、向こうの友達たちに見せてくれと言われてね?ついでだからSNSに投稿するのもどうかと思って」

「成る程成る程、ではどこら辺を撮ります?」

 

吹雪の了承をもらい、スマートフォンを取り出してカメラを起動する。

最近購買部の奥にある古い机を家具コインと交換してもらっといてよかった…。

 

「良かったらその椅子、座ってみるか?」

「提督の椅子にですか⁉︎はい、座ってみたいです!」

 

どうせならと思って吹雪には俺の机の椅子に座ってもらい、満面の笑みでピースしてる吹雪を真ん中に提督室を撮影した。

 

パシャッ

 

「ありがとう吹雪、いい感じに写せたよ」

「いえいえ、また何時でも言ってください!」

「俺はもっと写真を撮りながら建造結果を見に工廠に行くけど、吹雪はこれからどうするんだ?」

「みんなが間宮さんの店で待ってるので、そちらへ向かおうと思います!」

「んじゃあちょっと違う道だね…先に間宮さんの所へ行ってからでいいか!」

「なら、一緒に行きましょうか!」

 

部屋を出て吹雪と俺は間宮さんの店に行くため提督室の左の階段を降りていく。

途中艦娘たちの居住スペースを通りがかった所で、球磨と多摩と電と暁が追いかけっこしてるのに出くわした。

ちょうどいい、居住スペースも撮影したかったんだ。

 

「あっ提督だクマー」

「こんにちはだニャー」

「おっす皆、ちょっといいか?」

 

皆を呼び止めて事情を説明する。

するとすぐに承諾してくれて、すぐ隣の第一艦隊の寮室で撮影する事になった。

 

「それじゃあ、私はここに座りますね」

「じゃあ、球磨はここから顔を出すクマー」

「んじゃあ、多摩は一つ下で顔を出すニャ」

「んん〜…じゃあ私は鏡台に座るわね」

「じゃあ、私はこの写真は止めとこうかな?」

「そっか、じゃあ撮るぞー!」

 

パシャッ

 

皆が思い思いの場所へ行き、多摩と球磨は写真真ん中の多段ベッドから顔を出し、電は左側の小さな畳スペースに正座、暁は右側の鏡台の椅子に座るという構図の写真が撮れた。

よし、後撮りたいのは間宮さんの店と工廠だ。

 

「ありがとな、みんな」

「面白かったクマー!」

「なんか新鮮だったのです」

「おやつ食べたいし間宮さんの店に行きたいニャ」

「さんせいっ!どら焼きが食べた…っ⁉︎いや、レディはそんなにがっつかないものよ!」

「ははは、ちょうど用があったんだ、みんなで行く事にしようぜ」

 

撮影が終わり、4人も間宮さんの店に行きたがっていたので、皆でぞろぞろと行進する事になった。

みんなでワイワイしながら間宮さんの店に到着、その場にいるみんなに許可をもらって写真を撮る。

 

「ほら、間宮さんも入ってください」

「あら、こんなおばさんが入っていいんですか?」

「いいんですよ、てか本気でおばさんって感じじゃないんですけど間宮さん幾つなんですか?」

「ヒミツです♪」

「…さいですか」

 

パシャッ

 

間宮さんが見守る中でみんなが笑いながら各々のスイーツを口にしている、とてもいい写真が撮れた。

…年上もいいかmいや、なんでもない。

ここで吹雪たちと別れて、俺は工廠に向かう。

 

「それじゃあ、ありがとなー」

「また後でー」

「提督も食べていけばいいのにクマー…」

「つまんないニャー…」

「提督さんにも仕事があるんですよ」

「しょうがないのですよ」

 

不平タラタラな多摩たちの声を背中で受けながら工廠へ歩いていく。

並木道を通り、川にかかった小さな橋をわたって工廠の近くに来た所で愛宕と鉢合わせた。

 

「お疲れ、どうだった?」

「1発当てたら吹き飛んだわ、ちょうど明石さんに引き渡して来た所なの」

「そうか…もうひとつ、頼まれてくれないか?」

 

2人で工廠に歩きながら事情を説明する。

SNSの所で愛宕が質問してきた。

 

「うーん…友だちに見せるというのは分かるけど、その…SNS?とかいうのにあげると全国の人々が見るんでしょう?」

「うん…でももう既に俺や君達の事は向こうのみんなある程度分かっちゃってるし、オーマに後ろ盾もできたからこの際オープンでもいいかなって」

「…それもそっか、なら問題無いかなー?」

 

了承を得た所で工廠にたどり着き、そのまま建造ドックへ向かう。

途中にある入渠用スペースに艦装を預けようとした愛宕を止めた。

 

「どうしたの提督?」

「いや、今まで色んな所で写真撮ってきたけど艦装つけた子を撮ってなかったから、艦娘らしさも出した方がいいと思ってな?」

 

もし俺が艦装をつけていない艦娘たちの写真を撮り終わりSNSにうpしたとしよう。

同志たちはそれでも納得するだろうが、全国の提督たちが全員そういうわけではない。

捻くれた奴らが解析だのなんだのと騒ぎ立て、成金の道楽だとか言いかねない。

いや、もうニュース沙汰になっているからそんな事もないか。

でもまあ、「艦娘らしさ」を出してみるのもいいんじゃないかと思う。

そういうわけで、艦装備背負ったまま写真を撮る事を提案したのだ。

 

「成る程、一枚くらいはそういうのもいいかもね」

「あと、妖精さんを肩に乗っけるとか?」

「それも面白いかも…あ、建造終わってるみたいよ」

「あ、ホントだ」

 

写真について話しながら建造ドックに到着するともう建造が終了していたようなので、妖精さんたちに労いの言葉をかけながらドックの中へ下りていく。

今回は一つのドックだけ稼働させ、資材をそれぞれ400、30、600、30つぎ込んでいた。

超火力の主戦力、戦艦狙いだ。

 

「今日はどんな艦娘が来てくれるんだろう?」

「仲間が増えるのね、楽しみ!」

 

2人でウキウキしながらドックを下りると、新しい艦娘の姿が見えない内に向こう側から話しかけられた。

 

「アナタが私の提督ですカー?」

「おう、そうだぞー」

 

なんか独特の喋り方だけど、ドックの真ん中に立つ影からすると無事に戦艦を建造できたようだ。

上手くいった事を愛宕と笑いあって喜び、重巡の愛宕よりも少し大きな新しい艦娘に近づいていくと、半分もいかない内に向こうからこっちに走り寄ってきた。

 

 

「英国で生まれた、帰国子女の金剛デス!ヨロシクオネガイシマース!」

「提督のカツヤだ、よろしく」

「あははー!提督提督提督ぅー!」ギュムッ

「うぐぅ⁉︎」

 

金剛と名乗る新しい艦娘と自己紹介した所で思いっきり抱きしめられた。

テンション高い子が来たなぁ。

てか若干身長が俺より上だからというか、頭を抱え込まれているというか、とにかく押し付けられてる!

何がだと⁉︎察せ‼︎

愛宕ほどではないが立派なもんです!

おかげで呼吸ができん、このままじゃ酸素が!

ATP生産できなくて全身の活動停止しちゃう!

助けてアタゴン、君だけが頼りだ!

 

「むぅ…私も!」モギュウ

「もがー⁉︎(なんでー⁉︎)」ジタバタ

「暴れないの、くすぐったいネー!」

 

我が希望アタゴンも俺の後ろ頭に抱きついてきた⁉︎

こっ呼吸が!呼吸ができない!

暴れて少し空気を交換したら、さらに強く抱きつかれて頭を固定された!

あかんって!死ぬ!

常人は20秒から30秒呼吸を止められると気絶するんだぞぉ‼︎

 

「提督のheartを掴むのは私デース!」

「うん分かるわ、すごく分かるけどみんな提督が大好きだからそういう訳にはいかないのよ…てあれ?提督の抵抗が…」

 

愛宕と金剛が何か言ってるけど頭が言語として認識しない。

そんな事より酸素…酸素をくれ…。

む、無理…酸素足りない…ギブミーモアATP…。

グッタリ。

 

 

 

 

 

 

数十秒後、再び覚醒した俺は2人に若干の小言を聞かせた。

2人とも落ち込んでいたので、どうやら反省してくれたようだ。

 

「金剛、俺もできるならスキンシップ取りたいけどやり方に注意な?」

「ごめんなさいデース…」

「愛宕もしっかり状況を把握しようぜ」

「はい…」

「よしっこの話は終わり!って事で、一つ頼まれてくれないか?」

 

お小言タイムをぶった切って、3人でドックを出ながら工廠を撮影したい事を説明する。

途中で興味津々の妖精さんたちも集まってきて、結局人数だけ見ればだいぶ大人数になった。

 

「そうだな…ドックを背にして2人とも立ってくれるか?」

「ワッカリマシター!」

「少し開いてドック自体も少し見せましょうか」

「妖精さんたちは…そうだな、何人か2人の肩に乗って1人くらい頭に、残りは服に掴まったり艦装に乗ったり色々してくれ」

 

写真に写りたい妖精さんたちが選抜じゃんけんをして金剛と愛宕に乗っかり、思い思いのポーズを決めた所でシャッターを押した。

 

パシャッ

 

左のはにかむ愛宕の右肩に工具を自慢げに振りかざした妖精さんが2人、帽子の上からカメラを覗き込む妖精さんが1人。

右のエネルギッシュな笑顔でピースしてる金剛の右腕に乗ってピースの上でピースしてる妖精さんが1人、服に掴まってこちらを見ている妖精さんが1人、頭のカチューシャについている横の突起にへばりついてる妖精さんが1人、初期艦装の35.6㎝連装砲に乗っかっている妖精さんが1人。

総勢で9人、意外と少人数に収まった工廠の写真が撮れた。

 

「ありがとなみんな!じゃあそろそろ提督室に戻ろう」

「はい!」

「提督の部屋⁉︎って事は、グフへへへ…」

「⁉︎」

 

俺の部屋と聞いて変態的な笑みを浮かべる金剛に若干引きながら、妖精さんたちに礼を言って提督室に戻る。

 

ガチャッ

 

「…っと、ここが俺の部屋だよ」

「ということはっ…⁉︎」

 

提督室に入るなりキョロキョロしだす金剛。

何を探してるんだ?

 

「…プライベートな空間が見当たらないのデース!提督、どこで寝てるんですカー⁉︎」

「ん?こことは別の場所だよ?」

「な…んと……」

 

俺の返答を聞いて完全にorzになる金剛。

俺の部屋を見たかったのか?

…まあ、これから向こう(リアル)に用があったし、ちょうどいいか。

 

「愛宕、ちょっと母さんたちが帰ってきてるか見てくるよ」

「ん?ああ、了解です」

「金剛も一緒に行くか?俺の部屋」

「…え?いいんですカ⁉︎行くデース‼︎」

 

親父に関する伝言を書いてるから帰ってきたら読むだろう。

心配するかもだから、2人が帰ってきてたらこちら(鎮守府)に連れてきてあげなきゃならない。

愛宕に言うついでに金剛に声をかけると一気にテンションマックスになって飛んできたので、若干ビビった。

 

「は、ハウス金剛!」

「ワンッ!」

「ええっ⁉︎」

 

咄嗟に犬に待機命令出すようにしてしまったが、なぜか上手くいった。

和樹の家の犬が激しいからいつも困っていたのが、今回ここで役に立ったみたいだ。

てかなんで金剛はあの一言を理解できたのかな?

しっかり犬のマネまでしてたけど。

 

「えっと金剛、向こうは駆逐艦の艦装ですら床が軋んだんだ。だから戦艦クラスだと間違いなく床が抜ける、艦装は外して行ってくれないか?」

「らじゃなのデース!」

 

俺が頼むと金剛はシュバッ‼︎と効果音が出るほど素早く艦装を外す。

よっぽど行きたいみたいだ。

 

「じゃあ愛宕、ちょっと行ってくるね」

「行ってらっしゃい提督」

「よし金剛、このグニグニした空間に入るんだ」

「ここですカー?」

 

俺は家へつながる『穴』を開けて、金剛と一緒に入って行った。

 

 

 




金剛…真っ向から提督LOVE全開な彼女に、カツヤ鎮守府の艦娘たちはどう対抗していくのでしょうか。
これから書いていくのが楽しみでもあり、ちょっと表現力的な意味で不安だったりもします。

誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。

それではまたー(^_^)ノシ


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少し短いお話

ども、トマト中毒です。

先週投稿するための今話完成直前にテスト週間に入ってしまいました。
現在『コミュニケーション英語』という科目の勉強中、隙を見てキリの良い所まで書き終わった…気がするので投稿します。
受験勉強などの忙しさがこれから先さらに激化する可能性も考慮してして、今まで1〜2週間に1回くらいで比較的安定して投稿していたところを、

近い内に3〜4週に1回程度に投稿ペースを下げる事を検討しています。
あぁ、まだですよ?
まだですけど、近い内にそうなる事は知っておいてください。

では、急いで仕上げたので表現が幾分稚拙な気もしますが、本編をどうぞ。


 

「さて、我が家へようこそ」

「お邪魔シマース!ここが提督のprivate spaceですカー?」

「そうだよ、ここが俺の部屋」

「…ナルホドー」

 

めちゃくちゃ元気いっぱいな艦娘、戦艦の金剛を手に入れた俺は、そろそろ母さんと姉さんが帰ってきてないか確かめるために金剛と一緒に自分の部屋まで帰ってきた。

金剛が周りをキョロキョロ見ているが、なにか珍しい物があったのかな?

 

「とりあえず下のリビングに母さん達が帰ってきてないか見に行くけど、どうする?ここにいる?」

「あ…えと…ここに残ってマス……」

「分かった」

 

部屋を出ようとして金剛に一声かける。

ものすごく真っ赤になってモジモジしていた。

なにこの人、不意に雰囲気変えてなんか可愛いというか綺麗というかドキドキするんですが。

なんかその場にいるのが気まずく感じ、早足で部屋を出て扉を閉めた。

 

 

 

 

 

「…行った?行ったヨネ?」

「…提督のベッドにdive!」ボフッ

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

階段を下りてリビングを確認する。

2人ともまだ帰ってきてはいないようだ。

 

「うーん…鎮守府の写真をつぶやいてから部屋に戻るか」

 

すぐ済むだろうし、彼らの期待にも応えねば。

食卓の椅子に座り、スマホからツイッターを開けてアカウント名を若干変更、その上で少しの文章と共に提督室の写真を投稿した。

 

 

カツヤ@鎮守府は第二の家

 

同志達よ!

頼まれてた我が鎮守府内の写真をいくらか撮ってきたぞ!

まずは一枚目、俺の部屋を偶然居合わせた吹雪と一緒に撮ってみたんだ。

こないだダンボールから購買スペースの奥にあった机に家具コインで交換しといて良かった…。

 

【写真】

 

 

「よし、こんなもんか…」

「たーだいまっと」

 

つぶやき終わったところで姉さんが帰ってきた。

今日は大学に行く日だったようで、俺にはよく分からんファッションとリュックを背負っている。

 

「おかえり姉さん、親父が帰って来てるよ」

「ホント⁉︎なんかいつもより早い気がするんだけど、なんかあったのかなぁ?」

「なんかあったっぽいよ?今俺の鎮守府の治療室で治療受けて寝込んでる」

「…どゆこと?」

 

姉さんは机の上にリュックを置いて俺の前に座り、疑問を投げかけてくる。

とはいえ母さんが帰って来てから説明した方がいいと思ったので少しお茶を濁す。

 

「あー…少し待っててくれないか?母さんが帰って来てから2人一緒に説明したいんだ」

「そう、それじゃあお茶でも淹れていようかな」

 

姉さんが台所でお茶を淹れている間に俺は残りの写真をつぶやいていく。

全部写真をつぶやき終わるのに少々時間がかかったけど、全部つぶやき終わるまでにもなんかものすごい勢いでフォロワーが増えてきてビックリだ。

…いや、当然と言えば当然なのか?

自惚れてる訳ではないが、一応町の危機を救ったというか未知の存在と戦って勝った訳だし。

まぁそれはそれとして話題性は充分だろう。

つまり俺はいい話のタネなワケですね分かります。

 

「テイトク、まだですカ〜?」

 

若干テンション下がってる所に金剛が下りてきた。

頬をむすっと膨らませ怒りを表現しているようだ。

しかし、時折艦娘たちのこういう顔を見てきたが、例に漏れず怖くない。

てかちょっと可愛いとさえ思えてしまう。

やはり彼女たちを率いる立場の者としては間違っているのだろうか?

そういえば、今さっき見た時より若干の違和感がある。

…あぁ、なるほど。

 

「今さっき見た時より若干服が乱れてるぞ、どうした?」

「What⁉︎…な、何でもないデース!」

 

今さっき、俺の部屋で見た時はまだピッとした真新しい感じの巫女服だったのに、今はちょっとヨレてる。

指摘するとメチャクチャ慌てたようで、若干裏返った声で返してくる。

しかし、そんなにシワが寄ってるし…

 

「…ベッドにでも横になった?」

「Oh⁉︎何で分かったデスカー⁉︎」

「前に同じ事があったからさ」

 

以前雷の添い寝ハプニングの時、俺はベッドに寝ていた雷のセーラー服がヨレヨレになっているのを見ていた。

今ふと思い出して口にしただけだったのだけど、当たっていたらしい。

そんなに俺のベッド、気持ち良さそうか?

 

「ただいまー」

「あ、帰ってきた」

「あらら、せっかくお茶注いできたのに」

 

そんな所で母さんも帰ってきた。

丁度そのタイミングで台所から戻ってきた姉さんが湯気の立つ茶飲みを持って来てバツの悪そうな様子だ。

 

「ついでだしここで説明する事にしたから、あと二人分お茶を入れてきてくれる?」

「二人?…そこの人の分?」

「そう、今日ウチに来た新しい艦娘の金剛さんです」

 

さっきから金剛が気になっていたようなので、二人に金剛を軽く紹介する。

姉さんが納得してお茶を淹れてくれている間に、俺は母さんに着替えてくるように言った。

 

「今日はこれから鎮守府に来てもらいたいから、ちょっと汚れてもよさそうなラフなのを着て来てくれない?」

「汚れるかもしれないの?分かった、ちょっと待っててね」

 

汚れてもよさそうなのを着てもらったのは、万が一資材との接触事故が起きた場合の事前対策だ。

特に原油缶は、下手したら服をダメにしてしまうかも知れないからな。

 

「はい、どうぞ金剛さん」

「ありがとうございマース!」

「お待たせ、着替えて来たわ」

 

数分後再びリビングに集まった姉さんと母さんが席に座るのを確認して、俺は親父に関して分かっている事…吹雪達が遠征を行った場所に倒れていた事、傷だらけでだいぶ衰弱していた事、現在は鎮守府の治療室で寝込んでいる事を話した。

 

「えっと…克哉がその鎮守府って所に行けるのはその腕時計のおかげなのよね?なんであの人は鎮守府に行けたのかしら」

「偶然時空の歪みに足を突っ込んだとかじゃないかな?深海棲艦だって普通にこっち側に入ってこれるし、何も不可能ではないと思うよ」

 

首を捻る母さんに、俺は雷と電そして響が以前出撃時に棲艦たちが時空の歪みに入っていくのを見た事を説明する。

普通に通り抜けてこちらに来る事ができるのだから、鎮守府側へ行く事も可能だろう。

 

「謎を究明するより、父さんのお見舞いに行かない?そのためにこっちで待っててくれてたんでしょ?」

 

俺が母さんに考えを教え終わると、親父を心配した姉さんが俺たちを少し急かした。

姉さんは実はおばあちゃん子ならぬお父さん子であり、そんな姉さんが早く親父の顔を見たいとソワソワし始めている。

 

「ついでに今日は鎮守府の晩飯を食って帰る事にしないか?飯の準備してなかったし」

「そういえば炊飯器、保温状態になってなかったかも…母さんはどう思う?」

「何も出来てないんでしょ?克哉が働いている場所も見てみたかったし、別に良いと思うな」

「よし、それじゃあそういう事で行くか!」

 

今日は写真撮影で時間を食い晩飯を作ることができなかったため、そして姉さんと母さんを出来るだけ親父の所に居させてあげるために今晩は食堂で飯を食べることを提案しながら穴を開き、俺たちは鎮守府へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。

それでは、またー(^_^)ノシ


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沸く掲示板

ども、トマト中毒です。

長らくお待たせしました。

もうこんな感じじゃあね…むしろ不定期ってした方がいいかも知れませんね。
よし、不定期ですって後で説明書きに書いときます。

今日は、以前意外と反響…というか感想が多かった掲示板回です!
では、どうぞ!


「うわぁ…!」

「ここがその、鎮守府って所?」

「その中の一室、提督室…つまり俺の部屋ってわけさ」

 

俺は母さんと姉さんを連れて鎮守府に帰ってきた。

先に穴を通って鎮守府に戻っていた金剛が、提督室にいた電に自己紹介している。

 

「父さんはこっち、さあ行くよ」

「分かったわ」

 

先に立って歩く俺にキョロキョロしながらついて来る母さんと姉さん、さらに金剛と電も後ろからついてきて軽い行進みたいになりながら、俺たちは治療室に向かった。

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

一方克哉の世界(リアル)では、突如ツイッターに現れた『提督少年』と彼が『同志』と呼ぶ者に向けて発信したと思われる鎮守府内の写真にまた彼らが沸いていた。

 

 

 

提督少年の謎を追うスレ 4回目

ここは、この世界に現れた深海棲艦や艦娘などの生態や、提督少年に関する事、こっそり調べてみた『棲艦襲撃の日』に関するアレコレを報告しあい、ひいてはかの提督少年にお頼みして、我らが嫁艦を愛でさせてもらいたいという願望スレです。

誹謗中傷などは遠慮してください。

皆同じ志を持つ同志なので。

 

過去スレ

提督少年の謎を追うスレ 1回目

 

提督少年の謎を追うスレ 2回目

 

提督少年の謎を追うスレ 3回目

 

ーーーー(中略)ーーー

 

 

42、無名提督

深海棲『艦』っていうくらいだし、鉄はもちろん入ってるだろうなぁ

でも有機物も入ってないと生物っぽい動きができないだろうし…

 

43、少年A

おーい

アイツ鎮守府内の写真公開してるぞー

 

44、無名提督

⁉︎

 

45、無名提督

なに⁉︎

 

46、無名提督

⁉︎

 

47、無名提督

Σ(゚д゚)

 

48、無名提督

⁉︎

 

49、無名提督

⁉︎

 

50、無名提督

⁉︎

 

51、無名提督

⁉︎

 

52、無名提督

その話kwsk

 

53、無名提督

ちょっと調べてくる

 

54、無名提督

その写真はよ

 

55、無名提督

写真!写真はよ!

てかどんな写真なんだろ?

 

56、無名提督

写真はよ

 

バンバンバン

バンバンバンバン゙ン バンバン

(∩`・ω・)バンバンバンバン

_/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/

  \/___/ ̄

 

57、無名提督

それは見てからのお楽しみってヤツじゃないか?

 

58、少年A

ほい写真

つ【写真】【写真】【写真】【写真】

 

59、無名提督

イェアアアァァァァァァァ!!!

 

60、無名提督

歓喜!圧倒的歓喜っ‼︎

 

61、無名提督

こんなもん保存1択だろうが絶対!

皆笑顔が可愛い(;_;)

 

62、無名提督

( 。・ω・。)ノ 凸ポチッ[保存]

 

63、無名提督

これはもう永久保存版ですな

 

64、無名提督

<<61

いやお前なんで泣いてんのw

 

65、無名提督

A君毎度有能だなぁ

やっぱり友達ポジの同志がいるって素晴らしいね

 

65、無名提督

いやだって、皆すごいイキイキした笑顔だなって

電ちゃんもロリお艦もアタゴンも主人公もバーニングラブも、皆こっち見てスンゴイいい顔で微笑んでくれているのを見てさ、なんか幸せになった

もう俺死んでいい

 

66、無名提督

彼が約束を守ってくれたようで、俺とても嬉しい!

というか鎮守府内の写真って言っただけなのに艦娘達も撮ってくれていて凄く幸せです

いいヤツなんだな、彼

お礼に何かジュースでもおごるかな

 

67、無名提督

おーいお前ら、写真持ってきたぞってA君がもう貼ってたよ

orz

てか何回見てもすごいよなこの写真、皆めっちゃくちゃ幸せそうな顔してんの

提督少年君はホワイト確定だね

 

68、無名提督

<<66

お前も少年の関係者かよww

 

間宮さんの甘味、全部美味そう!

餡蜜、アイスクリーム、どら焼き、羊羹…全部食べたい全部!

 

69、無名提督

うわマジだめっちゃ美味そう

てか腹減ってきた

…給料日2日前で金がねぇ(´・ω・ `)

 

70、無名提督

妖精さんが腕によじ登ったり服にしがみついてるの可愛い

こんなの見せられたら世の中の捻くれ共も本物だと思わざるを得ないよね

 

71、無名提督

間宮さん超キレイ

俺先入観で服装からして熟女かと思ってたけど若いってかホント何歳よ彼女?

あれで40とか50とかだったら俺熟女好きにジョブチェンジするわ

 

72、無名提督

<<69

ならせめて美味そうな写真で腹を満たせ

 

つ【写真】【写真】【写真】【写真】

 

73、無名提督

対一人限定飯テロタイムってか?

いいぜノッてやろうじゃないの

 

つ【写真】【写真】【写真】【写真】【写真】

 

74、無名提督

うわああああああああやめてえええええええ

もう俺の満腹度は0よ(´・ω・ `)

 

75、無名提督

1枚目は見た感じ俺たちの部屋だよな?

2枚目は恐らく艦娘たちの部屋の中だと思う

3枚目は間宮さんのお店だな間違いなく

だけど4枚目はどこだ?こんなとこ知らんよ

 

76、無名提督

自分女だから分かる

皆乙女の目してるよ

恋、しちゃってるんだろうね

提督少年もやるねぇ

 

まぁブサい私が彼女たちの事言ったって虚しくなるだけさねorz

 

77、無名提督

<<76

お前女だったんかいww

 

78、無名提督

ツイッターに写真と一緒に出してたつぶやきによると、

1枚目は提督室、

2枚目は艦娘たちの部屋、

3枚目は間宮さんのお店、

4枚目は工廠の中、建造ドック前だって

 

79、少年A

<<76

マジか

確かアイツ、最大で現状電ちゃんがLV42になったばかりだっていってたんだが

艦娘って大体LV20前後で恋の前段階くらいは行くのかも知れないな

 

…明日アイツ1発ぶん殴ってくる

 

80、無名提督

<<77

女で艦これしてちゃいけない?

電ちゃんに萌えてたらいけない??

アタゴンの胸見て格の差に嘆いちゃいけないのかよおおおおおお

 

81、無名提督

俺のも1発たのむ

 

82、無名提督

俺のもだ

 

83、無名提督

ニーを1発入れてくれ

 

84、無名提督

俺も頼んだ

 

<<80

苦労してるんだね…

 

85、無名提督

俺の代わりにコークスクリューを!

 

<<80

ごめんよ…

 

86、無名提督

いいんだっ!

私は提督少年に会って!

アタゴンに会わせてもらって!

自分にない分を存分にモフモフさせて貰うんだ!

 

87、無名提督

<<86

それモフモフちゃう、パフパフや

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

今日も今日とて、オタクたちの狂宴は続くのであった…。

 

 

 

 

 

 




あ、後ですね。

話のテンポとかの関係で出なかったネタを活動報告にSSとして乗っける事にしました。

もちろん、本編が優先ですが。

誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ!

それではまたー(^_^)ノシ


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親父が起きました

ども、トマト中毒です。
なんかもうゴメンなさい。
スランプ+テスト続きとか冗談じゃねーですよ。
しばらく書く事とか何も思いつかなくて試しにテストに打ち込んでみた結果がこれですよ!
いい加減書かないと流石にアカンと若干強引に話を進めてしまいました。
なので4話並みのグダグダ感が出ていると思われます。
すいませんが、スランプ脱却のための布石としてご了承ください。
それでは本編をどうぞ。


彼が目を覚ますと、目の前には見慣れぬ天井が広がっていた。

 

「…?」

 

はて、これはどうしたことだろうかと考える。

自分は確か、見慣れぬ島を彷徨って倒れたはずなのだが。

探し求めた現地の人々が自分に気づいて助けてくれたのだろうかと、未だボンヤリした頭で考えた。

 

「…」

 

目の前に広がるだだっ広い天井は、とても立派な木材の板張り。

合成素材や発泡スチロールに木材の模様を描いた物を天井に敷いたりしてるのが多くなった昨今では珍しい、木材独特の香りがする。

木造建築、しかも意外と最近できたものだろうと当たりをつけた。

どうやら自分はベッドに寝かされているようだと、敷布団が不意に恋しくなって少し残念に思った。

ベッドの周りは衝立で囲まれている。

彼は昔通った学校の衛生室のみたいだと少し懐かしくなった。

 

「…ん?」

 

彼は起き上がろうとして、ベッドの横に女の子がいることに気がついた。

自分の腰に頭を乗せるようにして眠ってしまっている。

栗色の髪を短く整えてある頭をむにゃむにゃ言いながらぐりぐり押し付けてくる少女、この子が助けてくれたのだろうか?

つい目の前の頭を撫でてしまっている事に気がついて、慌てて手を引っ込めた。

 

「…んにゃ?ていとく、かえってきたの〜…?」

 

身じろぎしたからか、少女が起きてしまった。

髪の色と同じ栗色のとろんとした目が、起き上がっている自分の方へ向けられる。

 

「ん?…あ、起きてる!」

 

しばらく?マークを頭上に生産していた女の子は、不意に状況に整理がついたのか身を乗り出して来た。

しっかりと目が覚めた彼女は快活そうないい笑顔を見せてくれている。

彼はここ最近の凶事続きで滅入っていた心が少し癒された気がした。

しかし、今度は彼女の次の一言に彼自身が?を量産する事になる。

 

「うんうん、やっぱりお父さんなだけあって提督に似てるわね!」

 

(え、提督て誰よ?)

 

 

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

 

母さんと姉さんを連れて鎮守府内を少し案内しながら親父の所へ向かっていた俺たちが治療室の近くまで来た時、治療室の中で親父を見ていた雷が誰かと話しているのが聞こえた。

 

「親父はここで寝てて雷が様子を見てるんだけど…」

「妖精さんと話してるのかな?」

「さあ…」

 

姉さんの推測に答えながら治療室に入ると、父さんのベッドのある衝立の中から雷の声がする。

 

「甘味なら、間宮さんのお店が近くにあるの!今度立てるようになったら提督も一緒に行ってみましょ!」

「成る程、羊羹があれば嬉しいんだけどね」

「とびっきり美味しいのがあるわ!」

 

雷の話相手は妖精さんではないようだ。

というより、この若干掠れているものの聞き慣れた声は間違いなく…!

 

「正義さん!」

「お父さん起きてる!」

 

俺が反応するよりも早く母さんと姉さんが飛び出してしまった。

ほんと、親父の事になると2人とも突っ走るんだから困ったもんだなぁ。

つい苦笑いを浮かべながら、衝立を素早くどけて中へ入っていく2人を追って俺も衝立の間に入っていく。

中でベッドの端っこに腰掛けている雷の頭を撫でながら、

 

「起きあがれる位には元気みたいで良かったよ、親父」

 

俺は少しやつれた、それでも尚元気そうな親父に声をかけた。

 

 

 

 

「そこの雷ちゃんから話は聞いたぞ、啓介」

 

再び横になり姉さんの持つ吸い飲みから水分を摂取した親父は、若干掠れながらもよく響く声でそう言った。

 

「提督、というのを始めたそうだな」

「ああ…どこら辺まで聞いた?」

「あの船のバケモノが俺たちの世界とは違うモノなのは聞いた、そして奴らが町を襲いお前たちが撃退した事もだ」

 

親父が起きている事に興奮してハイになっている母さんと姉さんを落ち着かせ、俺と親父は最近の近況を報告しあう。

俺は雷が話していなかったオーマ関連の事を話し、親父に喜ばれた。

 

「うん、将来の就職先がもう見えているというのは実にラクだな!勝ち組だぞ啓介、まさに僥倖だ」

 

勝手に決めて怒らないのかと聞いたら、『息子がやりたいと思って自分で決めた事だ、何を怒る必要がある?』だとさ。

ほんと、いい家族に恵まれたよなぁ。

親父からは、日本から離れた海で深海棲艦に襲われた事を聞いた。

救助作戦中、乗っていた船は破壊され船員は無事でないだろう事、海上にて囮の深海棲艦を救助しようとしていた自分は捕縛されそうになったため必死で逃げようとして船の沈没に巻き込まれた事。

気がついたら何処かの島に流れ着いていて、結局そこが俺たちの原油供給元だったようだ。

船の沈没の瞬間は巨大な渦が発生し、周りの海洋生物やらなんやら大量に巻き込むと聞く。

やっぱり、生きてくれていてよかった…

 

「啓介、俺がヤツらに出くわした海域はもしかして…」

「ああ、十中八九深海棲艦の制海権になってしまってるだろうね」

 

深海棲艦が襲撃してきた海域は日本の北、どちらかというとロシアの方が近いらしい。

海寄りの町に住む人々とか大丈夫なんだろうか…。

いつ深海棲艦の襲撃が発生するか、今からでも身構えとくか。

 

 

ギュルルルルルル

 

 

不意に誰かの腹の虫が不平を言った。

部屋を見回すと母さんが赤くなっている。

母さんもパートで腹の中身を消費しただろうし、俺は晩飯を提案した。

 

「親父、取り敢えず晩飯食いに行こう!暫くまともに食ってないんだろ?」

「そうだな、それを思い出して腹が減ってきたし、なんか食いたい」

「間宮さんによると今日の献立は和食らしいし、父さんのお腹にもいいんじゃない?」

「それじゃあ行きましょう?私もお腹空いたわ」

 

親父がヒョイッと立ち上がるのを見てやはり身軽だなぁとか立ちくらみとか大丈夫なのかとか思いつつ、皆で食堂へ向かう俺たちだった。

 




ここからは学校が補習期間、少しずつ書いていけたらいいな。

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それでは、またー(^_^)ノシ


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仲間を増やそう!

ども、トマト中毒です。
すっかり不定期が板についてしまいました(?)。
日本語があっちゃこっちゃなのも、ますます定着してます。
むしろこびりついてます。

今日まで最高8度4分の風邪を引いていたのがようやく治ったので、夏休みだしこの際だからバンバン進めよう!というわけで一気に書き進めて今書き終わりました。
まあ治ったとか言いつつ「真熱が残っている」とかばっちゃんに言われてるという。
だがそんな物は知らん!とばかりに『すーぱーぬこわーるど』を聴きつつ投稿です。
ではどうぞ。


親父が意識を取り戻した次の日。

 

「話がある、ちょっとこっち来てくれないか」

「ん?まあ分かった、行こう」

「お前の相談なら、のろうじゃないか」

「何?ヴェルたんに会わせてくれる話ならのるよ?wwww」

 

俺は昼休みに、和哉、青木、オタ原の3人を呼び出して人目のつかない校舎の影に入った。

これから起こるであろう事に対して、対抗策をとっておきたいのだ。

 

「どうした、こんなとこまで連れてきて」

「早く昼飯食いたいんだが」

「あっし生憎と男に襲われる趣味はありませぬゆえww」

 

三者三様の反応をする我が友人たちに、

 

「頼むっ、力を貸してくれ!」

 

俺は頭を下げた。

 

「…は?」

「ほうww」

「ふむ…」

 

 

 

昨日、俺は考えた。

以前この町を襲撃してきた深海棲艦の編成について和哉から聞いた時、当時は「雷と電が出撃した海域のボス扱いなのか…」程度にしか考えていなかったけど、普通の海域にいる編成があり得るならイベントに出るような鬼強い編成もあり得るし、もしかしたらそれこそイベント並みの大集団が攻めてくるかもしれない。

もっと艦娘たちの練度が上がった状態で迎えられるならいいけど、もしかしたら現状のLV50辺りをウロチョロしてる時に廃人達が本気出さなければならないくらいのバケモノ共が来る可能性だってあるのだ。

レイにアポを取ってもらってオーマに出向き、条件付きで許可を貰ってきた上でこうやって頭を下げているのだ。

 

「それってつまり、」

「その便利な腕時計を貰えるって事か⁉︎」

「遂に俺氏もヴェルたんとデュフフ…⁉︎w」

 

まぁ、3人の反応は大体予想ついていたけど。

 

 

 

 

 

放課後。

俺は戦力として協力を要請した3人の家を順番に訪れていた。

親御さんへの挨拶もそこそこに早速3人の部屋に入れてもらって、『艦これ』のホームページを開いてもらう。

 

「よし、今からお前のパソコンに穴を開くから、お前は俺がいいと言ったら飛び込んでくれ」

「了解!」

 

俺が経験したままにパソコンの中へ飛び込んでもらい、数十秒後に俺も飛び込む。

穴が閉じてしまったら腕輪が無いと向こうから出られなくなるからね、仕方ないね。

そして鎮守府で大興奮中のオタクに腕輪をつけてやり、使い方を教えてから退場するだけの簡単なお仕事です。

艦娘を目の当たりにして感動のあまり泣き崩れようが、1人の駆逐艦娘に号泣しながらルパンダイブしようが当方には与り知らぬ事ですハイ。

ただ、暴走鎮静役としてレイに空間座標をコピー&ペーストして送信しておいたから、艦娘たちに不愉快な思いはさせないだろう…多分。

 

 

…何かあっても間に合ってくれるといいんだが…。

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

現実世界(リアルサイド)はベーリング海の、アリューシャン列島が描く弧の内側に位置する海域。

日付変更線周辺を中心として、現在とある生物群が制海権を得ていた。

 

「ヲ級、配備ノ程ハ?」

「前線基地トシテ、組ミ込メルモノハ全テ」

「後ハ整備ドックノ配置ダケダナ」

「ソレガ終ワッタラ制海域ノ巡回ルートニ見回リノ順番ヲ決メヨウ」

 

そう、深海棲艦達である。

以前制海権を広げるために遠征を行った際に日本の巡視艇も沈めていた彼女達は、今やベーリング海全域にコッソリと小さな基地を作るまでになっていた。

観光地として賑わうアリューシャン列島へ向かうフェリーが目撃されてからは、人間を捕食・殺害する事しか知らない駆逐級などの棲艦は一旦向こう側の(艦これ)世界の本棲地に帰され、『声』に従わず人間に攻撃しない事ができる正規空母や戦艦、潜水などの棲艦が深海に潜りバレないようにコッソリと制権を広げていく事で、人間側の混乱と人質、とある実験のモルモットも手に入れる作戦だ。

その実験というのは、

 

「早ク知リタイナ、男ッテ何ナンダロウ?」

「ソモソモ深海棲艦二男ナンテイナカッタカラナ、実験ガ捗リソウダ」

「報告二ヨルト我々ハ女二相当スルヨウダガ…女トイウノモ知リタイ所ダナ」

 

ある種の保健体育であった。

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

「…」

「あのー…」

 

とある鎮守府は、提督室。

 

「……」

「あのー、司令官?」

 

その男は、

 

「………お」

「ど、どうされました司令官?」

 

困惑する部下も尻目に、

 

「おおおおおおおおーーーーーんっっ!!!」

「うひゃーっ⁉︎何なんですか『みたらし饅頭』司令官ー⁉︎」

 

ドバーーーッという擬音を背中に背負うのが相応しい程大号泣していた。

 

「克哉あああ!!!ほんっっとうに、ありがとおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「あ、ああ…」

 

いやマジで、青木のヤツも長門と抱きあってさめざめ泣いてたけど…よりによってコイツがここまで漢泣きするとは思ってなかった。

ヤツの秘書艦である吹雪がめちゃくちゃ混乱しながらも必死に宥めてる。

いや、オタ原のヤツみたいにルパンダイブするとは思ってなかったが…コイツの事だから冷静な顔して全力で艦娘を愛でにいくかと思ってたわ。

あ、俺もみたらし団子好きだぞ。

 

「遂に…遂に俺たち(オタク)の夢がっ…『嫁』に会いに行く夢がああああああああああああ!!!!!!!!」

 

ダバーーーッ

 

「あーもう誰か提督を止めてーーー⁉︎」

 

 

 

〜〜暫くお待ち下さい〜〜

 

 

 

「落ち着いたか?」

「ああ…すまん、取り乱した」

 

ようやく落ち着いたか…。

吹雪が呼んだ加勢の艦娘達が現れるたびに余計に激しく泣き始めるから正直びびった。

一回ウチの電を見たはずなんだが、その時は泣いてないしなぁ…なんだコイツ?

 

「取り敢えず、今さっき教えた通りにすりゃあいつでもココに来れる様になったからな」

「ああ…本当にありがとう克哉、感謝してもしきれないくらいだ」

 

腕輪の使い方を教えた時点で、この鎮守府での俺のやる事は終わった。

一応3人ともには厳選した人間しか入れてはいけないと言ってあるし、3人の腕輪は俺の腕時計の劣化版だから腕輪を作る力は無いから外部漏れも心配無い…と思う。

悪用した時点で腕輪を持つ権利を剥奪するとも言い含めたから問題無い…はずだ。

 

さて、帰って自分もデイリーミッションこなしますか。

 




さて、先に攻撃されるのは米か露かどっちだ?



誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。
ではまたー(^_^)ノシ


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大戦の予感

ども、トマト中毒です。
FGOのイベントが鬼畜です。
しかもきよひーが来ないよぅ…。

夏休み、もう直ぐ終わりますね。
俺は夏を、姉貴が友達のスウェーデン人さんに教えてもらったらしい工夫トマトで乗り切りました。

話は簡単、トマトを冷凍するだけでシャーベットみたいになります。

スウェーデン人さんありがとう。

それはそれとして、本編をどうぞ。


 

和哉たちに腕輪を渡し、補助戦力(いや、むしろ真打?)とした次の日。

 

「よし、ちゃんと練度(レベル)が5まで上がったな!それじゃあ今日はここまでにして食堂に行くか!」

「やったー!訓練終わったっぽいー!」

「提督も一緒に晩御飯にしましょ?」

「晩御飯は勝利定食だといいわね!」

 

今日の建造で仲間になった夕立・如月・足柄を訓練場でスパルタしてレベルを5まで上げ、晩飯を食いに食堂へ向かう。

最近は時々家族全員でこちらの食堂を利用したりし始めたので、時々母さんや姉さんの姿を鎮守府で見るようになった。

ていうか腕輪を渡したわけじゃなくて自分で連れて来る。

そりゃあ皆に腕輪を渡しておいた方が連れてくる手間も省けるんだろうけど…。

 

「提督ー!一緒にsupper食べるデース!」

「提督さん、一緒にごはん食べるのです!」

「提督、私と一緒じゃなきゃめっ!ですよ?」

「もがっ⁉︎」

 

うん、最近艦娘たちからのアプローチが多くなってきてるんだ。

ごはんの時に同席をおねだりしてきたり、今愛宕にされたみたいに抱きついてきたり、何も予定がない艦娘たちが提督室まで遊びに来て引っ付いてくる。

俺としても悪い気はしないし、彼女たちがもし本気でそういう気持ちを俺に抱いているなら真剣に向き合いたいから、そういう時間をゆっくり取れるように、家族みんな(お邪魔さん)が絶妙なタイミングで割り込んで来ないように腕輪を渡していないというわけだ。

…別に俺だってこのハーレム状況でニヨニヨしていいだろ!

 

「んぐんぐ」モッキュモッキュ

「…来るなら来ると言ってくれよ、レイ」

「ん…お邪魔してるわ、カツヤ」

 

とはいえ、レイに関してはどうしようもないけども。

彼女は一週間に一回オーマから来て、深海棲艦の襲撃の有無や戦力のほどを聞いてくる。

正式にはオーマに入っていないとはいえ『カーバンクル』の腕時計をしてる訳だし、一応部下にあたる人間の組織の大きさは把握しておく、『だけ』だそうだ。

そして、地球側に派遣されている諜報員から得た、俺が知っておくべき新しい情報も持ってきてくれたりする。

確かにこちらとしても利点はあるし、腕時計に関して恩義もあるし、基本的にしっかり提督業務をこなしていれば別段どうこういうわけでもないから普通に受け入れてるけど、何曜日の何時って決めずに毎回唐突に現れるからヒヤヒヤする。

レイのテキトーさが災いしてる訳だろうし、そこだけはなんとかならないかなぁ。

 

「飯の後で今週の報告すっから、今は飯に集中しようぜ」

「分かったわ」

 

今日はレイがいるという事で艦娘たちを説得し、渋々ながらも一緒に飯を食うのは諦めてもらってレイの目の前の席に座った。

 

「皆に相当好かれてるわね、誑しの才が開花したの?」

「んなモンは俺には無いってか、むしろこんないっぱい美女美少女に好かれるとか未だに夢じゃないのかと思ってたりする」

 

艦娘たちに聞こえないような声量でレイにニヤニヤしながら言われた冗談に、こっちも艦娘たちに聞こえないくらいの声量で返してみる。

俺とレイが大体出会ったその場で報告作業を行う事は艦娘たちには知れ渡っているので、仕事の邪魔にならない様に(愛宕談)こちらを気にしてわざわざ少し離れて飯を食ってくれている。

報告作業中にイチャイチャとか確かにレイの額に青筋が立ちそうだし、本当にありがたい事だ。

 

 

 

 

「…以上が今週の戦力増強の内容な」

「分かった、その様に伝えておくわね。あと、地球側の諜報員が入手した情報だけど…」

 

晩飯を食べ終えて今週の報告を終えると、レイが今週のニュースを言いかけて止まった。

なんかヤバイ事でも起きてるのか?

 

「どうした?」

「向こう側のアリューシャン列島付近で現在、常時雷雲が発生している事は知ってる?」

「ニュースで言ってたから分かるよ」

 

今日のニュースで流れていた話が出た。

学校から帰った時に見た夕方のニュースでもやってて、なんかコメンテーターが「地球温暖化」云々「エコ大事」云々言ってたのを覚えてる。

地球温暖化の原因は太陽の活動活性化だっつの。

 

太陽には活動周期ってのが存在する。

その周期は11年周期で、今現在太陽の活動が活性化する時期なのだ。

確かに二酸化炭素とかフロンとかの温室効果ガスも小さな要因かもしれないが、それを言うと実は酸素も温室効果ガスだったりする。

確かに高気温による異常気象も気になるけど、あと15年くらいで「小氷期」っていうミニ氷河期に入る可能性が高いようだから安心していいと思うよ。

…別の意味で安心できねぇか。

 

「ウチの研究班が『時空に大穴が空いてる影響じゃないか』って言ってる、もしかしたら深海棲艦たちがなにかしてるのかも知れないよ」

「…そうか、注意しておくよ」

 

心配そうなレイに軽く答えながら、俺も若干今の話から思うところがあった。

棲艦の生態のヒントになるかも知れないと思ってアニメにも手を出してみたが、その時に『深海棲艦の棲地は常に暗雲が立ち込めている』という設定があったのを今思い出したのだ。

…これはもしかしたら、近いうちに『イベント級大戦』が起こるかも知れん。

 

「観測を続ける様に言っておいたから、今度カツヤの方でも見に行っておいてくれる?」

「分かった、ありがとう」

「それじゃ、ごちそうさま!またね!」

 

レイは食べ終えた食器を返却すると手を振りながら帰って行った。

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

次の日。

 

「よし!それじゃあその…覇龍たん?って所に行ってみようぜ!」

「アリューシャン列島!アカムじゃねぇ!それに無断で向こうに行ったら立派な不法入国だかんな!」

 

青木のアホな一言に和哉がツッコミを入れるのを眺めながら、俺はオタクその他大勢の人々に取り囲まれていた。

 

「なあ、俺ら友達だろ?」

「克哉君、お願いがあるんだけど…」

「なあ同志、頼むよ!」

 

 

 

「「「「「あの腕輪、分けてくれ(貰えない?)」」」」」

 

うん、今日の朝気づいた時にはもう遅かった。

俺は3人に「悪用ダメ、絶対」とか「無闇に無関係者を鎮守府に入れるな」とか言い含めた訳だが、肝心の「一目につく様にはなるべく使わないでくれ」と言うのを忘れていたんだ。

俺が堂々と使っている手前3人にも強くは言えないけど、やっぱり「アイツにあの腕輪を貰えばスゴイ事ができる」と広まるのはマズイ。

今までは俺1人だったから「アイツが特別なのさ」で済むけど、和哉達3人まで使っているとなるとそうはいかなくなる。

最悪、「ウチの国の軍隊にその腕輪を売ってくれないか」とか「こいつらを殺されたくなかったらその腕輪を有りっ丈作れ」とかなりかねない。

ん?元々そういう可能性はあっただろ?

いや、俺の「腕時計」はDNA認証式らしいから、多分俺じゃないと使えないと思う。

もし認証が外れたらどうなるかって?

オーマにいるブライトマン氏の部下Aさんによると、

 

『もしDNA認証が合致しなかったら、データハック回避の為にそいつの腕ごとファンタジーから輸入してきた爆破術式で自爆する様になってるから、ご家族の皆さんにもよく言い聞かせておいてくれ』

 

らしい。

まあ、要は完全に自分の不注意でめんどくさい事を引き起こした自業自得という訳だ。

 

「うーん、ダメか…また気が変わったら声をかけてくれよ?」

 

あ、オタク代表君が抜けた。

取り敢えずじゃあなーと手を上げておこう。

それにしても、ここまでポケーッと思考の海に意識を流してもまだ喋り続けているな、他のヤツ。

しかもほとんどがヤンキーとか学年の御局様とか性格悪いのばっかじゃねぇかよ…。

 

 

 

結局、御局様たちには丁重にお帰りいただき、ヤンキー共は最近母さんと交代々々に間宮さんが作ってくれる様になった弁当をはたき落としてきたので、特別にブートキャンプの時にオッズ教官に叩き込まれたカーバンクル式CQCでサンドバックにしてあげていたら昼休みが終わった。

 

弁当がorz

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

「長官!国籍不明の船の様なものが現在領海を航行しています!なにやら艦隊の様なものを組んでいる模様です!」

「衛星で探して拡大しろ!」

 

某国、とある場所。

とある建造物の中は現在、混乱の渦に包まれていた。

 

「あれは…!」

「いや日本がダメだったんだ、むしろこっちに来るのが筋かもしれん」

「いかがいたしますか、長官?」

「…有りっ丈のSSMを目標の進行方向の海岸に配備、いつでも発射できる様に準備しておけ!」

「了解!」

 

 





誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。

それでは、また(^_^)ノシ


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また外出、荒ぶる艦娘たち

ども、トマト中毒です。
精神的にギリギリです。

母ちゃんに力尽くでFGOアンインストールされました。
しかも油断して引き継ぎコードをとり忘れているという。
現在、「俺」を捜索してもらっています。
合計で2〜3万程課金している微課金者ですので、少しは復旧の確率も上がったのでしょうか。

それでは、本編をどうぞ。


ある日、学校から帰ってくると親父から留守電が入っていた。

 

『克哉、俺の上司がお前と話したいそうなんだ。突然だが、昔連れて行った東京タワーを覚えているか?頼む、あそこまで跳んで来てくれ。待ってるぞ』

 

親父は、こちら側に帰って来て一先ずゆっくりしてから防衛省に向かった。

親父の乗っていた船が沈められた事に関して状況説明と、深海棲艦の危険性を目の前で体験した自分の口で訴えたかったようだ。

恐らく親父は、俺の名前を出したのだろう。

彼の頼みは断れないし、準備して出発といきますか。

 

「ナルホド、そういう事なら待ってマース!」

「よろしく頼むよ、金剛」

 

まず鎮守府に行って、ちょうど提督室にいた金剛に少し遅くなることを伝えてくる。

これで、以前の様なカオスにはなりにくいだろう。

そしてもう一件。

 

「もしもし?…レイ、一つ頼みごとしていいかな?」

 

 

 

 

全てやる事を終えた俺は、かつて連れて行ってもらった記憶を辿って東京タワーに跳んだ。

赤と白の塔、懐かしい光景が目の前にある。

思い出の場所を見上げながら入り口に進んで行くと、入り口すぐ横に親父がウンコ座りしてた。

 

「おっ、来たか克哉」

「こんな所でウンコ座りしてんじゃねえよ親父…」

 

今はもうスカイツリーの時代になって東京タワーの名前単体は影に隠れてしまった感があるけど、近くには住宅街や駅や商店街、かの有名なプリンスホテルもあったりする。

 

トマト「修学旅行で行きましたが、あそこはもうすごいの一言しか出て来ませんでした…」

 

ん?なんか変な電波飛んで来た?

とにかく、地元の人やら観光客やらが散歩・散策で意外とこの近くを通りやすい。

こんなとこでビシッとしたスーツでウンコ座りしてスマホ見てる父親とか、息子として少しどうかと思う。

特に初めて日本に来たの外国人さんとかが今の親父を見ると日本の印象が悪くなりそうで怖い!

 

「ほらチャッチャと立つ!で、件の上司さんはどこにいるんだ?」

「ったく、最近お前も口煩くなったなぁ…こっちだ、着いてこい」

 

オッズ教官に鍛え上げられた腕で親父を引っ張り起こすと、彼はブーブー言いながら俺を連れて東京タワーに入った。

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

一方、カツヤの鎮守府の提督室。

 

コンコン、ガチャ

 

「愛宕さん、提督さん帰って来ました?」

「電ちゃん、まだ提督が外出してから15分も経ってないわよ?」

 

提督室の扉が開かれ、秘書艦である愛宕に本日3回目の質問がされた。

質問をした電の目に光は失せ、底の見えぬ闇…いや、病みが渦巻いている。

一方で電を窘めた愛宕も、落ち着かない様子で秘書艦用の椅子に座りモジモジしている。

以前カツヤがやらかした事件以降、事件の体験者達の頭の中では『カツヤが外出してお偉いさんと会う』という事イコール『カツヤがいつまで経っても帰って来ない』という事、と自動で脳内変換されるようになっていた。

その中で突然『提督が向こうの世界の軍隊に入っている提督のお父さんの上司さんに会いにいく』というイベントは、正に皆のトラウマの再起爆剤になったのだった。

 

「提督が外出⁉︎また提督いなくなるの⁉︎那珂ちゃんいやー!」

「提督が外出する事が、どうしてそんなに嫌なんですか?」

「だって…あそっか、あの時いなかったんだっけ?あのねあのね…」

 

この様にして、新参の艦娘たちにも当時の話は伝えられる。

突然いなくなる提督。

何処を探してもいつまでも現れない。

これは異常だ、なぜ彼はいなくなったのか?

いやいなくなるはずがない、彼の人となりは分かっているつもりだ。

では何故…?

このままいなくなったら?

このまま鎮守府に現れなかったら?

かの事件の話は、艦娘たちの主観…つまり、彼女たちの提督に対する想いから来る困惑と不安、狂気で2倍3倍に水増しされ、経験者独特の説得力で新参艦娘たちに伝達された。

そしてその不安は、狂気は、新参艦娘たちにも受け継がれる。

 

「ホント辛かったんだからね?カクシカカクシカ…」

「ひうぅ…」

「ウッ…」

「…うぅ」

「……」

 

現在も相変わらず、この鎮守府はカツヤに想いを寄せる艦娘たちで溢れている。

しかもカツヤは

 

「ちょっと違うけどこれって雇用関係に近い感じだよね?つまりそういう感情の有無関係なくコミュニケーションは取っておいた方がチームワーク取れていい気がするんだ」

 

という持論に基づき、毎日彼女たちに話かける。

しかも、その何気ない会話を全力で楽しむのだ。

艦娘たちも女性という前に人間の知を持っている、自分と楽しそうに会話をしている人が不快な筈はない。

それが自分の想い人なら当たり前の話だ。

そんなある日、『想い人がいなくなる話』をされたらどうなるか。

答えは簡単、こうなる。

 

「提督さん、まだかしら…」

「提督ー!早く帰って来てクダサーイ!!」

「提督が帰って来ないはず無いっぽい!大丈夫、絶対大丈夫っぽい!!絶対…きっと…」

「そうよ、提督が帰って来ないはず無いじゃない!すぐに帰って来るわよ!万が一も無いわ!…無いわよね?提督が、私の提督が帰って来ないはず…無い、わよね…?」

 

彼女たちは、先輩たちの話に精神が壊れるギリギリまで抉られた。

不安に押しつぶされそうになり、心が凍え、体が震え、涙が溢れて止まらない。

もちろん、普通の人間ならここまで激しく精神不安定にはならない。

多くの艦娘たちは、鎮守府と海上以外の世界を知らない。

彼女たちの『世界』が狭すぎるのだ。

故に彼女たちは、彼女たちの『世界』を多く占める『提督』という存在に激しく依存していた。

嫌悪も好意も何もかも全て『提督』がキーになって発動するし、『提督』がいなくなるなら彼女たちは徐々に『生』を失っていく。

それでも新参たちがまだ完全に壊れないのは、

 

ココンガチャッ

 

「愛宕さん、カツヤさん帰っt「ちょっと電ちゃん、こっち来て一緒に紅茶飲んで落ち着きましょうか?」」

 

先輩たちの話に『壊れた』例が出てきたから、そして目の前に壊れた例が実際に見えているからだ。

先輩格の艦娘たちの話の最後には必ず、彼女が登場した。

1人で鎮守府周辺・提督宅周辺を走り回り捜索、帰ってきたらきたで提督室の片隅に膝を丸めて座り込み、頭を抱えて壊れたラジオの如く提督を呼び続ける。

当時はそれどころじゃ無いとほとんど放ったらかしにされていたが、後から考えてやはり皆怖かったらしい。

さもありなん。

 

「電ちゃん、ゆっくり紅茶を飲んで落ち着「そういう愛宕さんも落ち着いてませんよ?」」

「私達、まだあそこには至ってないわよね…?」

「ま、まだ大丈夫デース…」

「あれは流石にちょっと恐いっぽい…」

「あそこに到達しないように、しっかり正気を保ちましょう…」

 

こうしてカツヤがいない間に、再び鎮守府にカオスの空気が広がっていっていた。

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

チーン

 

「よし、こっちだ」

「うん」

 

エレベーターで展望台まで登って来た俺たちは、少し小さめのお土産屋を通り過ぎる。

帰りに下の階のお土産エリア行って母さんと姉さんになんか買って帰るか。

…艦娘たちは、全員に買って帰るとお店の在庫が無くなりそうだから今回は我慢してもらおう。

そんな事を考えながら親父の後をついていくと見覚えのあるおっさんがいるのが見えて来た。

太っているでもなく、ヒョロッとしてるでもなく、なんか全体的にガッシリしたおっさんが親父とよく似たスーツの人達に囲まれて佇んでいる。

 

「防衛大臣だ」

「なんっ⁉︎…成る程、見覚えがあるわけだ」

 

一瞬ビックリしたが、テレビに出てるのを見たのだと分かってスッキリした。

なるほど、防衛大臣だったか。

…てか、上司どころかトップじゃね?

とか思ってたら大臣のおっさんがこっちに気づいて話しかけて来た。

 

「君が、藤原克哉君かい?」

「はい、初めまして」

 

さて、サッサと会談を終わらせて鎮守府に帰りたいな。

 

 

 




誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。

それではまたー( ̄∇ ̄)ノシ


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防衛大臣との会談(ただし会談するとは言ってない)

やあどうも、トマト中毒です。

絶賛中間考査なうです。

勉強しろやワリャア( ꒪ д꒪ ⊂彡☆))Д´)
だが断る(乂∀・)┌┛)`д)∴

元鬼英語教師のじっちゃと元鬼数学教師のばっちゃに「センター勉強を重視しなさい、中間考査なんぞテキトーにやっときゃいい」と言われたので、のんびりとセンター勉強しつつ休憩時間に書き上げました。

まあ、本編をどうぞ。


東京都港区、東京タワー。

一階のエレベーターと階段は見張りの警察官により事実上閉鎖され、展望台デッキは即興の会談室になった。

そしてそこで『日本の護り』を指揮する防衛省の頂点と『提督少年』こと俺、藤原克哉の会談が始まる

 

……とでも思ったかね?

 

 

 

「克哉君、君は…」

「あーすんません、小難しい話はめんどくさいので俺の未来の上司とやってくれますか?」

「は?いや、一体どういう…」

「今呼びますねー…『レイ、出番だよー』」

 

俺の一言でもってクエスチョンマークを頭上に生産した防衛大臣のおっさんと親父を横目に、俺はオーマ謹製『カーバンクル腕時計』でレイに合図を送った。

 

ズズズズズズ

 

「ほい、連れてきたよー」

「克哉君、後は任せておきたまえ」

「ありがとうございます、ブライトマンさん」

 

ここに来る直前、レイに頼んだ事というのはブライトマンさんに繋いでもらう事、そして彼に回線を繋いでもらった俺は自分の状況を説明し、1学生では太刀打ちできないような相手と対談する事になりそうなので自分の代わりになんとかして欲しいと、その代わり今度日本の最高級スイーツを手土産に訪問すると交換条件をつけてお願いした。

以前初めてオーマを訪ねた時ブライトマンさん達が度々口を揃えて「是非とも君の世界に買い物に行きたいが、順番待ちが長くて長くて云々」と言っていたが、オーマがある世界はとことん物価が高い上に美味い食べ物、特に甘いスイーツ類が全く生産されないので特に甘味の文化が発達している俺達の世界は安くて美味い食べ物の宝庫らしい。

実は数年前に起こった『中国人爆買い騒動』にはオーマのある世界から来た住人が何百人も紛れ込んで日本のスイーツやお菓子をピンからキリまで買い漁って帰っていたという話をレイから聞いたりもした。

以前からなんだか馬が合ってすっかり仲が良くなってしまっているとはいえ、未来の上下関係以前に大人と子供。

突然話がしたいと電話して相手側の仕事の都合も確認せずに私情を割り込ませてしまった事、今から考えればなんとも不躾だったと猛省しているしスパッと了承してくれたブライトマンさんには感謝の言葉しかないのだけれど、もしかしたら交換条件のスイーツに惹かれただけなのかも知れない…とも思ってしまった俺である。

 

「…状況が読めないぞ克哉、ひとまずそちらの方々を紹介してくれないか」

「ん?あ、まだ紹介してなかった、これは失敬。こちら俺の就職予定先のトップであるコール・ブライトマン氏と、その秘書的存在のレイ」

「ちょっと、秘書的存在って紹介の仕方としてどうなのよw草生えるじゃないww」

「もう生えてるよ、後で除草剤なりなんなり撒いとけ」

 

ポカーンとしてる大臣に代わって少し早く再起動した親父が顔を引きつらせながら紹介を要求してきたので、ええ加減な感じにサクッと紹介するとレイのツボにハマったようだ。

元々親父の上司との会談、最低限のマナーは守るべきだけど…下手に口を滑らせて揚げ足を取られて話の主導権を握られると、何をさせられる事になるか分かったもんじゃ無い。

小難しいお話はすっかり約束のスイーツに乗り気なブライトマンさんに任せて、自分はサッサカ帰って鎮守府のお仕事を続けよう。

 

「ああそうだ克哉君、ロシアの政府とアメリカの政府に潜入してる職員からGOサインをもらえたからアリューシャン列島の状況をちょっと調査しときなさい」

「なにか動きがあったんですか?」

「いや、ただ偵察チームの話によるとどんどん雷雲の範囲が大きくなっているようなんだ…君の話が正しければ、恐らく『棲域』なるものがどんどん広がっているに違いない」

 

確かにアリューシャン列島にかかっていた雷雲の固まりは最近どんどんニュースとかで「地球温暖化の影響にしても異常だ」とか報道されるようにまでなった。

早いとこ偵察を行っておいた方がいいかもな。

 

「分かりました、すぐに偵察戦用の艦隊を組んで向かわせます」

「フッ、また私の部屋で結果を話そう…その時には、『ブツ』を忘れない様にな」

「ええ、その時には必ず『アレ』を持って参ります」

 

ゲス顔でニヤニヤしながらブツだのアレだの話している俺たちを見て親父や大臣さんが若干引いているが、そんな事は知らない。

こちとらスイーツでお茶会の話をしているのですしおすし。

 

「あ、なんか土産買って帰ろうっと…それじゃあ親父また今度な、大臣さんもお疲れ様でした」

「え?お、おい!」

「んあ?あ、ああ…気をつけて帰りなさい…?」

 

俺がエレベーターに向かって歩き出すと親父が引き止めようとしてきたけどもういいや。

一回食材の買い出し途中に自衛隊所属のバンから降りてきたムキムキのナイスガイ数人に拘束されかけた事を忘れた訳じゃないんだからなー。

その時の資料をブライトマンさんに渡してるから有効に使ってくれるだろう。

裏路地で襲われて良かったよ、誰も見てなかったし被害も安売りの卵が1パック全滅した程度で済んだし所属や階級云々色々聞き出せたし、何より親父は全く関与してなかったのがホッとした。

親父はあくまで勝手に大事なお話が始まった直後に退場しようとした不躾なバカ息子を止めようとしたのだろうけど、向こう側が拉致してまで此方の情報をタカリにきてる事実上これ以上俺の口は開かない。

情報戦が得意なウチの未来の上司から奪えるものなら奪ってみろ。

むしろブライトマンさんに手玉に取られて終了、となりかねないけどね。

 

「あ、私も帰りにお菓子買って帰ろ」

「おおそうだな、では私も」

 

後ろでレイとブライトマンさんが俺の思いつきに同調して呟いているのを聞きながら、俺は穴で一階に降りた。

 

「そうだなぁ…うん、これだけ買えばいいか」

 

お土産とはいえ1人ずつに買えるわけでもなし、とりあえず東京土産といえば東京ばな奈!

16個入りと8個入りを買って一個ずつあげれば数個余りが出るから、それは姉さんと母さんにあげよう。

皆にあげるための買い物だから自分が食べられるかどうかは度外視で。

まあ、来ようと思えばいつでも来れるから大丈夫かな。

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

「ただいまー!…っとと!?」

 

会計を済ませてレジ袋を片手に穴を開けて鎮守府に帰ってきたら、我先にと言わんばかりに電と愛宕が俺に飛びついてきた。

やっぱり、以前の事が相当ショックだったかな?(ド忘れした人は是非19話を読もう!)

けど、そこまで心配されるというのも大事にされてるみたいでちょっと嬉しかったり。

 

「ただいま、2人とも」ギュウゥ

「っ…お帰りなさいなのですっ!」

「おっ、お帰りなさい提督!」

 

あはは、2人とも思い切り抱きしめると赤くなった。

以前から思ってたけど、ウチの艦娘たちの中でこの2人は特に俺のことを想ってくれてるようだ。

どこかのタイミングで俺からも答えを出してあげたいけど…少なくともそれは今じゃない。

アリューシャン列島の事もあるし、それに…

 

ガチャッ

 

「提督っ!帰ってきたのね!?」

「提督ー!寂しかったデース!!」

「よかったー!よがっだっぼいー!!かえっでぎだっぼいー!!!」

「ええそうよね、私の提督が帰って来ないはずがないわよねっ、よかったぁ…」

 

うん、ドタドタ足音が近づいてたからある程度察してたけど…見事にそのまんまだったね。

大方口の軽い那珂ちゃんか相談役の間宮さんあたりに新参グループがあの時の話を聞いて不安になったんだろう。

けど、話を聞いた程度で普通こんなになるものなのか…?

まあいいや、とりあえず皆落ち着かせてお土産配って、そこからアリューシャン列島への偵察艦隊を編成しようか。

 

 




自分で書いてて思う事

ふはっ、克哉死に晒せww


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それではー(^ ^)ノシ


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編成、そして襲撃

ふっはははははー!
ども、トマト中毒です!

実は数日前、じっちゃんから提案がありまして。

「学校めんどくさいか?…そうかそうか、なら休むか!」

センターなどの勉強道具を持ってじっちゃん家に木曜夜から泊まり、仮病を使って月曜日まで妹分(人も犬もいます)に囲まれながらのんびりスローライフ!
はははははははは、俺の時代キターーーーー!

というわけでセンターの勉強をしつつ、少しずつ書きためていた話を短いながらに仕上げて投稿です!
さあ、この際だからダンまちのほうもやっちゃおっかなー!

あ、本編をどうぞ。


「こらこら暁、もう仕事の話するから離れなさい」

「むぅ…分かったわ」

 

新参組を落ち着かせ、古株組に声をかけ、漸く全員を落ち着かせる事に成功した。

今さっきまで俺に抱きついて鳩尾に頭をグリグリ押し付け頭上に音符を生産しまくってた暁もやっと離してくれたので、早速アリューシャン列島の話をするとしよう。

 

「まあ皆これでも食べながら話を聞いてほしい、1人一個な」

「「「「おぉ〜…」」」」

 

全員に東京ばな奈を配っていく。

通信係の大淀と購買にいる明石、間宮さんの3人もいたので配ったら、ちょうど全部になってしまった。

…まあ、母さんと姉さん(あの2人)にはまた今度買ってきてあげるとしよう。

 

「「「「「ん〜…♪」」」」」

 

なんというか、皆今度は花を生産し始めたんだけど…片付けは頼むよ?

 

「よし、それじゃあ仕事の話をするよ」

 

何種類もの花を部屋中に撒き散らしていた彼女達だったけど、どうやら話は聞いててくれたようで冷静に編成を聞いてそのチーム通りに固まってくれた。

まず偵察部隊としてアリューシャン列島の東側から暁型4人娘と川内・神通を、西側から吹雪型6人組を派遣して状況を見る事に。

何かあるまで他の子達は待機、一応いつでも出撃できるように編隊だけやっておく事。

 

以上。

 

「「「「「…えっ、それだけ!?」」」」」

「相変わらず軽いわねぇ…」

「今んとこは偵察して状況を見ないと何もしようがないからね、とりあえず皆間宮さんとこのスイーツで元気出しといておくれ」

「提督も一緒に食べにいくのよね?」

「いや、俺はちょっとハワイとアメリカとロシアに行ってくるよ」

 

もしかすると、大陸本土に直接攻撃が加えられるかもしれない。

実際、棲域を示す黒雲はアメリカとロシアに近づいて行っているのだ。

ロシアの人たちも攻撃されたら反撃せざるを得ないだろうし、血の気が多いアメリカさん達はむしろいつ自分達から攻撃し始めるか分からないくらいだ。

どちらにせよ負けフラグしか立っていないので、すぐにそちらで出撃・深海棲艦を迎撃できるように海岸とかビーチとかを目に焼き付けてくるつもりだ。

 

「でもどうやってそこまで行くの?すごく時間がかかると思うけど…」

「オーマの人たちに協力を請うんだよ」

 

俺の説明に皆納得した様子だったけど、愛宕が首を傾げた。

愛宕の言う通り、今から偵察部隊を俺の町から出撃させると同時に俺も飛行機に乗るとしても、何時間も何時間もかかってしまい、実際にアメリカさんやロシアさんが襲われてもすぐに対処できない可能性がある。

そこで、オーマの人たちに助けてもらう事にしたのだ。

彼らは一回はこちらの世界に来た経験があると聞いている。

『日本』ではなくこちらの『世界』に、だ。

つまり、中国やブラジルやアメリカやロシアに…世界の国々に行ったことがあるという人がいる可能性がある。

その人に頼み込んでアメリカとロシアに一緒に飛んでもらって、そこから海岸に向かう。

それでみなさんの仕事を妨害してしまうことはブライトマンさんに許可を貰えたし、海に近くなかった時のために『カーバンクル』部隊専用の飛行ユニットの使用許可も出ている。

飛行ユニットに関しては、オッズ教官に叩き込まれたので使用方法もコツも掴んでいる、早速実践だ!

 

「提督さん、絶対その飛行ユニットっていうのにワクワクしてるです…」

「ええ、絶対ワクワクしてるわね…」

「というわけで偵察部隊はこの部屋で少し待っててくれ、他は予定で編隊して待機、それじゃあ解散!」

 

雷電コンビがボソッとなんか言ったけど、俺には聞こえなかった。

そう、聞こえなかったのだ。

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

一方、アメリカ・ロサンゼルスから少し離れたとある港町。

日本では夜だが、時差の関係上アメリカは早朝である。

そして静かな港町は、朝日に輝く巨大な物体に日常を乱された。

 

「なんであんな物騒なモノが港に居座ってるの?」

「さあ…ジョーズでも来るのかね?」

「いやいや、ジョーズでもミサイルはオーバーキルすぎないか?」

 

普段はのんびりとした町の雰囲気が、港に並ぶSSM…『ハープーン』の多重展開で一気に騒々しくなった。

一般の町民である彼らは知らぬことだが、それに加えてレーダーや通信を行う支援車両まで側に配置して命中精度を上げているあたり、アメリカ軍の本気がうかがえた。

 

「はー、すごいねアレ」

「避難勧告とか出されるんじゃない?学校が休みになる可能性キタわー!」

「なんかやっぱり、男だからこそなのかなぁ…ミサイルとか見ると、心踊るよな!」

「だよなだよな、一体何が起こってるんだコレ!?」

 

イレギュラーな出来事にすっかり舞い上がるティーンエイジャー、そして子供心を忘れぬ多くの大人達。

学校が休みになるだの兵器はロマンだだのと騒ぐ学生達の横で、漁師や老人たちが配備された兵士達を呼び止めて問うた。

 

「これから何が起こるんじゃ?儂等は漁師、海に出かけられないなら仕事が出来ないんじゃが」

「今こちらの方向に危険が迫っています、即刻山の方まで避難をお願いします」

 

左腰にM9をぶら下げ、補助車両からRPGまで取り出した若い兵士が真剣な顔で自分を呼び止めた爺さんに告げた。

今さっきまではしゃいでいたティーンエイジャー達も、別の兵士に誘導されてワイワイ移動を開始している。

遠足気分か。

 

「敵影、水平線上に確認!」

「避難急げ!」

「さあ、こっちへ!早く!」

 

西の水平線に黒い点が浮かぶ。

以前日本が苦労して退けたモノたちが迫ってきている。

しかし兵士達は、自信を持ち続けていた。

日本と違い、こちらは世界に誇る超大国・アメリカである。

こちらの方が軍事力が上なのは道理、それにライフルで撃ち抜けないならばミサイルをぶち込めばいいだろう。

これで日本との上下関係を改めて誇示して、あわよくばなにか防衛関係の有利な条約なぞが他国から寄せられればボーナスもガッポリ、万々歳だ…。

その程度に考えていたアメリカの兵士達、無知とはこと怖ろしきかな。

 

「Fire!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

15分後、その港町があった場所には瓦礫と飛び散った人間の肉片しか残っていなかった。

 




よし、地学のセンター過去問一年分解いたらダンまちも書こっと。

誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。
あと、誤字に関しては『誤字報告』なる機能も使えますので、そちらでも構いませんよ。

それでは、またー('ω')ノシ


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間に合わず、そして胸部装甲

ども、トマト中毒です。

以前小説の宣伝とかした方が読んでもらえるかなーとアカウントを作ってみたツイッターがバグか何かなのか全くアプリに同期せずに、めんどくさくなってやめてしまってから早数年、こないだ開いたら普通に同期できてたのでそちらでも宣伝する事にしましたー。
他にも、普通に呟いてみたりするのでよかったら『トマト中毒』で探してみてください。
…あ、俺の『作者のページ』に貼っとけば早いのかな。
それでは、本編をどうぞ。


「ウオオオオオオアアアアアアアアアアアアアーーーーーッッッッ!!!!!」

 

ども、ハイテンションな克哉です。

現在アメリカのユタ州、エリア51付近上空の高高度をステルス機能搭載の飛行ユニットで飛行中です。

ナ◯シカのメー◯ェみたいな機体に腕でしっかり掴まって、前方をしっかり確認しながら顔面に当たる風に抵抗してます。

ステルス機能…というかステルス魔法のおかげで全く気づかれないから、最重要機密が入っているだろうエリア51の上空を飛んでも警戒すらされない、すごいねこのユニット。

個人的にエリア51の秘密を暴くのも面白そうだけど、今はそれどころじゃない。

今さっきロシア側を回ったときは深海棲艦の「せ」の字もなかったが、こっちでは早速ドンパチやらかしたようだ。

なんせ、目の前に黒い煙が高く立ち昇っている。

いや、火事かもしれないけどさ?そうだとしても無視はできないのが俺クオリティ。

それに…

 

「海辺で町一個規模の火事とか、それはそれでただ事じゃないよね」

 

行く先の黒い煙、その発生源が海に隣接しているのだ。

今さっき言ったけど俺は高高度を飛行中、流石に燃えている現場や深海棲艦のいるいないは見えないから分からないけど、今さっき飛び始めた時にこの高度から見る町の大きさなんてのは大体理解してるわけで。

あれは間違いなく、日本でいう「市」単位で燃えている。

海という豊富な水資源がある以上、その規模になるまで火事が広がるというのは異常だと思う。

俺は少し急ぐために飛行ユニットのアクセルボタンを押した。

 

 

 

 

 

「こりゃひでぇや…」

 

飛行ユニットを手前の山の中腹に降りるように操作しながら、目の前に広がる惨状に軽くポカーンとした。

海から山の縁に広がる町の半分、海側が燃え尽きて黒炭になり、残りの半分に燃え広がって二次災害が起こっている。

海側で起きた火災なら、消防車なりなんなり駆けつけてきて消火に回ってすぐに鎮火するはずだ。

近隣の住民たちも黙ってないだろう。

すぐに海水でバケツリレーを始め、火など種も残さないはずだ。

そう、ただの火災なら。

 

「間に合わなかったかぁ…」

 

ここまでの大被害を起こしたのは深海棲艦で間違いないだろう。

深海棲艦に人間の市街地を破壊させてしまった。

俺の行動は間に合わなかったのだ。

 

「…いや、まだだ」

 

まだ、ここしか煙が上がっていない。

つまり、これから被害を防ぐことはできるはずだ。

火事に関しては消防士さんたちに任せて、今は深海棲艦を追いかけないと!

…でも、北と南とどっちに向かったんだ?

 

「んー…あ、人がいる」

 

周りをぐりっと見渡しながら考えていると、山の下の方にこちらへ向けて歩いてくる集団が見えた。

多分現地の人だろう、もしかしたら有用な情報を得られるかもしれない。

さあ、オッズ教官に叩き込まれた英語力を発揮する時間だ。

 

「おーい、大丈夫ですかー?」

 

片手で飛行ユニットを抱え、もう片手を大きく振りながらゆっくり近づくと、山を登ってきていた人たちは過敏になっているのか少々ビクビクしながらこちらに近づいてきた。

俺がある程度彼らに近づくと、先頭に立つ兵士っぽい人が俺にハンドガンを向けて警戒してくる。

 

「フリーズ!」

「ああはいはい、ちょっと待ってくださいね」

 

俺が飛行ユニットを下ろして両手をあげると、兵士さんが近づいてきて凶器とか持ってないか検査してきた。

男に体弄られるとか罰ゲームでしかないんじゃが…。

 

「…よし、何もないな。この機械はなんだ?」

「飛行ユニットです」

 

今さっきブライトマンさんとコンタクトした時、オーマについての情報開示はどうするか聞いたら、「もうそこは上層部に掛け合い済み、皆新兵の時にそこで苦労したから一発で分かってくれた」と言っていた。

上層部の人達は新兵の時に別世界の警察団体と接触して一悶着起こしたことがある人達ばかりらしく、ある程度オーマの人間を政治に食い込ませている世界ならばオーマの情報を開示してもいい感じに世界の動きを調整してくれるらしい。

簡単に言うと、オーマの事をこちらの一般人の前で話しても上手い事情報を操作して「オーマは世界警察の上位版!」みたいな感じにしてくれるようだ。

安心してオーマに直接繋がる話ができるわけである。

心に余裕を持って、飛行ユニットだと明かした。

 

「飛行ユニット…どこから飛んできた?」

「ユタ州の端っこからです」

「なんでそんなとこから?」

「深海棲艦が動いたとの情報を得たから、1番の近道を使って飛んできたんです」

 

深海棲艦の単語を聞いて、兵士さんが青ざめる。

やっぱりこの人も俺のニュースを見てたのかな?

 

「深海棲艦…なぜあれがその『深海棲艦』だと分かる」

「襲撃の様子は見ていませんが、世界のアメリカが抵抗もできずに町を壊滅させている時点でそれしか思いつきません」

「へえ、お前さん何処の物知りだ?」

「『提督』ですが何か」

 

兵士さんの質問にバリバリ答えていくと、俺が自分を『提督』と言ったところでまたピタリと兵士さんの動きが止まった。

もしかしてこの人、日本のコミュサイトとかに出入りしてた?

 

「ちょっと、あなた『提督』さん?」

「へ?あ、はいそうです」

「どうしてもっと早く来てくれなかったの!?私の家、間違いなく全焼してるわ!いいえ、家どころか町が焼けちゃったわよ!」

「俺の家もだ!ローン払い終わってないのに…一体どうしてくれる!」

「ウチは犬を飼ってたのに、置いて来ちゃったのよ!もう多分、間に合わないわ……」

「はい、こちらの不手際です。済みません…」

 

俺の言葉を聞いて町人の人達が突っ込んできた。

おじいさんやおばあさん、家を買ったばかりだというサラリーマン姿の男性が俺にガンガン文句をつけて来る。

俺は黙って頭を下げた。

こう言った声まで全てオーマに押し付けるわけにはいかないと思う。

実際遅れたのは俺の方だ、俺はこの人達の声を聞く義務がある。

てかなんで皆俺の呼称を知ってるんだ…。

 

「ていうか君がここに来てるってことはアレを止めるためなんだよね!?」

「はい、ほんとすんませ」

「なにやってんの、こんなとこで頭下げてる場合じゃないわ!」

「ぬおっ!?」

 

いきなり肩を掴まれて無理やり起こされたと思ったら、町人たちの中にいたティーンエイジャーの1人だった。

おおう、ウチにも外国風の美貌を持つ愛宕がいるから慣れてると思ってたけど、やっぱ外国の女の人って綺麗だわー…。

天然の褐色金髪美女、顔の距離が近すぎてドキがムネムネしとります。

 

「とにかく、今キミは深海棲艦を止める仕事をしないといけないの!分かった!?」

「あぁ…あぁ、それもそうだ!先に奴らを止めてこい!」

「そうだな、急げ!奴らは北に向かったぞ!」

「弁償もして欲しいけど、被害をこれ以上増やしたらもっと許さないからね!」

 

目の前の女の子が俺に叱責すると、他のティーンエイジャー達も同調してアツい言葉をかけてきた。

大丈夫ですよ、オーマ側でしっかり町を修復しますので。

 

「ありがとう、俺は急いで北に向かいます!皆さんお気をつけて!」

「お前もなー!」

「あ、おい!まだ話は終わって…」

「じいちゃん、今は被害の縮小が先決!」

「そっちこそ気をつけろよー!」

 

彼らがまだまだ文句を言いたがるおじいさん達を抑えてくれている間に、飛行ユニットで北に飛んだ。

文句を聞くだけでいいなら、また聞きに来るかな。

あ、あと待機中のみんなにも一声かけとかないとね。

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

一方そのころ、鎮守府内・間宮の甘味処。

 

「暇だクマー」

「提督がいないと面白くないニャン」

「こら、提督は仕事中!そんな事言っちゃダメよ」

「まあそう怒らずに、コーヒーおかわりいかがです?」

 

皆それぞれの注文した甘味を食べ終わり、リラックス中である。

そしてそんな中球磨と多摩がこぼした不平を愛宕が聞き、注意して間宮に宥められた。

 

「だって、今日は提督ずっと外出してばっかりなのだクマ」

「遊んで欲しいニャ〜、『弾幕よけ』したいニャ〜」

 

実は、時々克哉手づからゲームと称した訓練を行うことがある。

オッズ教官に教えられたファンタジー由来の魔法の数々、それらを組み合わせた『弾幕ゲーム』だ。

ルールとしては、艦娘を離れたところに立たせて合図でスタート、水の針、炎の弾丸、土の球、それらを使った弾幕をレベルに応じた放出速度と艦娘たちに当たった時点で弾幕を消すように設定して張り、自分に接近させる。

触られたところでレベルクリア、また離れたところに行かせて次のレベルを始める。

もちろん複数人艦娘が集まってるなら順番を守らせる。

そして、一定レベルまで達した艦娘にはご褒美が与えられるのが、何より彼女たちの心を掴んだ。

ある時は「一緒に買い物」、ある時は「モーニングコール(というより起こしに行く)」、ある時は「なんでも一個言うこと聞く権」…確かに克哉が大好きな艦娘たちとしてもご褒美だが、克哉はどうやらご褒美にかこつけて頼みごとをしていることが多いようだ。

その頼みごとが艦娘たちにとってしっかりご褒美になっているのが微妙にムカつく。

 

「いいじゃない、レベル23まで行ったんでしょ?私はまだ10よ、修行が足りないわ」

「私はまだ5デース!」

「2人ともそんなデッカい脂肪つけてるからニャ、こうスッキリしてた方が避けやすいニャ」

「それは関係ないんじゃないデスカー!?」

「そんな脂肪なんかついてないのにレベル3の私って一体なんなんだっぽい…」

「むぅ……」

 

まだ低レベルの弾幕ステージしかクリアできてないと残念がる愛宕と金剛に高レベル達成者の多摩がアドバイスと見せかけて棘のある一言。

何も実害の無い金剛はともかく、実際弾幕が胸部装甲に横から当たってゲームオーバーになった事のある愛宕としては何も言えない。

女性として生まれ変わり、この大きな胸も自分の個性であり提督に対する武器であると思っているが、それでも表面積が広がり敵の弾に当たる可能性が上がる点で、『戦う者』たる艦娘としては無い方がいいのかとも思い始めているのだ。

地味に1番落ち込んでる夕立はそっちのけである。

 

「…ごめんなさいニャ、ちょっと羨ましかったのニャ」

「ううん、いいのよ」

 

ちょっと嫉妬の毒を混ぜた冗談が想像以上の失言だった事に気づいた多摩がすぐに謝り、悪気はなかったのだと分かっていた愛宕が謝罪を快く受け入れてその場が治った所で、通信室にいた大淀が持ち込んでいた餡蜜の皿を片手に飛び込んできた。

 

「皆さん、戦闘準備です!すでに深海棲艦があちら側の町を破壊、次の町に向かっている所を提督が追跡中とのことです!」

「「「「「「!!」」」」」」

 

スイーツ完食後のゆる〜い雰囲気から一気にキリッと引き締まった克哉の艦娘たち。

克哉の現状を大淀がもう少し詳しく説明、一戦交えねばならないのは間違いない事を聞いて装備を整え始めた。

 

「主力部隊は金剛・飛龍・愛宕・那珂・球磨・如月…支援部隊を、人数が足りませんが足柄・多摩・夕立という編成でお願いします」

「支援が必要な程なの?もう総力戦と言うに近いわよね」

「今回の戦いの後、すぐに帰ってきてもらって仲間の建造をしてもらおうクマ」

「さあ、まずは一合!飢えた狼のごとく食らいついていくわよー!」

「足柄さん、私たち支援部隊だからそんながっつく勢いは要らないっぽい…」

「那珂ちゃんがセンターじゃないのはちょっと不満だけど、提督のために頑張るもん!」

 

さあ、世界のアメリカに我ら日本の底力を見せつける時が来たと言わんばかりに艦娘たちの士気が高まっていく。

かつての戦争では惨敗した強豪国の危機、そこにかつて彼らが自ら沈めた戦艦(いくさぶね)の魂を受け継ぐ自分達が救援に向かう。

彼女達の士気がこれまでに無いほど高いのは、艦娘としての使命とカツヤ提督にええカッコ見せたるという情熱の他にもう一つ、アメリカを助けるという事に対して少し黒い感情が胸の内に生じていたからでもあった。

 




ボッコボコのベッコベコにされた相手がボロクソにやられてる所に、今度は自分たちが助けに行くという軽い愉悦シチュエーション。
「ねえどんな気持ち?かつてボコボコにしてた相手に助けられてどんな気持ち?wwww」

書いててすんごくテンション上がりました。()

誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、是非感想までどうぞ。
それでは、またー(^ ^)ノシ


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戦闘開始!そして混沌の掲示板

どもー、トマト中毒です!
少しネタとか思いつきが集まるとすぐに新しいの書きたくなる悪癖が抜けません。
ついこないだも、ダンまちの本を無くしたと思ったら書くだけ書いてた一次創作をアルファポリスとカクヨムとなろうに投稿してました。
なんかもう、自分でもどうにかならないものか悩み中です…。
ああ、そんなことより本編をどうぞ。


「よし、いた!」

 

飛行ユニットを駆ること数分、遂に俺は深海棲艦に追いついた。

とはいえ攻撃が始まってるのは見えちゃってるんだけど。

彼女たちは砲撃や艦載機で家屋を破壊している、恐らく屋内に逃げ込んでいる人々をあぶり出してるんだろう。

 

「ビーチへ…!」

 

出撃を始める為に、なにか大きな鉄の塊が等間隔に並ぶビーチへと急降下する。

1番近くて棲艦にとっても狙いやすかったからなのか、もちろん破壊されて鉄屑になり煙を吐いてる…なんだろアレ?

 

キュンッ

 

「うおっと!」

 

深海棲艦もこちらを視認したのか、今度はこちらに向けて砲撃を開始してきた。

更に、俺が上空から降りてきたからか町の方に向かっていた艦載機までこちらに戻ってくるようだ。

棲艦側の編成は戦艦ル級・正規空母ヲ級・重巡洋艦リ級・軽巡洋艦へ級・駆逐艦イ級とロ級。

おおよそウチの第一艦隊と変わらないし、レベルが上なら勝てるな。

 

「おっと、効かねえよ?」

 

出撃用意の合図として通信機能を開いた腕時計を指でコツコツ叩きながら、棲艦達が撃ち込んできた砲撃を空中に開いた『穴』で撃ち返す。

我ながら腕時計の使い方にも慣れたもんだな。

5秒程で向こうからも準備完了の合図がきた。

前方、波打ち際に穴を設置、皆がいるであろう間宮さんのお店に繋がるように設定!

さあ、張り切ってカッコよく参りましょー!

 

「第一艦隊、出撃開始!暁の水平線に勝利を刻むんだ!!」

「提督のハートを掴むのは、私デース!」

「よしっ!二航戦、出撃します!」

「愛宕、抜錨しま~す♪」

「那珂ちゃん、現場はいりまーす!」

「球磨、出撃するクマー!」

「如月、出撃します!」

 

決まったーー!!

俺の出撃開始の声に返すように、皆が各々一言言いながら穴を潜り抜けてきて出撃!

以前自然にこのやり方で出撃開始してから次にどのタイミングでやろうかと思ってたけど、何も言わずぶっつけ本番でやってみたら皆アッサリ応えてくれた!

もしかして、ゲーム内の提督が始める出撃って毎回こんな感じなのかな?

まあ、ここからの戦闘は艦娘達の本分。

俺は大人しく、火消しや瓦礫撤去に人命救助をやっておこう。

 

「俺、ちょっと人命救助してくる!皆も頑張れよー!」

「分かったクマー!頑張るクマー!!」

「そちらもお気をつけて!第一次攻撃隊、発艦っ!」

 

海に繰り出していく我が艦娘達に一声かけて、戦闘が始まったところを見てから町に『擬似縮地』で走って向かった。

まずは生きている人が残ってるか確認、次に火消しと瓦礫撤去!

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

ちょうどその頃。

夕食の席にテレビをつけるが故にテレビ視聴率が大幅に上がる謂わばゴールデンタイムの時間になっていた日本では、『アメリカが深海棲艦に襲われている』という情報がツイッターや現地の記者からの通信で伝わり、ゴールデンの特番やバラエティ番組の最中にテレビ画面上方に流れるニュース速報も加わって全国に『深海棲艦の再来』が拡散していく。

そしてその情報に全国のお茶の間が騒然とした一方で、こちらでは彼らがまた一段とお祭騒ぎになっていた。

 

 

【提督少年】提督少年の謎を追うスレ 9回目【増殖!?】

ここは、この世界に現れた深海棲艦や艦娘などの生態や、提督少年に関する事、こっそり調べてみた『棲艦襲撃の日』に関するアレコレを報告しあい、ひいてはかの提督少年にお頼みして、我らが嫁艦を愛でさせてもらいたいという願望スレです。

誹謗中傷などは遠慮してください。

皆同じ志を持つ同志なので。

 

 

ーーーー(中略)ーーーー

 

29、無名提督

んー、最近スレがゆっくりだな

皆だいぶ熱が冷めてきた?

 

30、無名提督

だってさ、彼に腕輪をもらわなきゃ艦娘に会う事はおろか鎮守府にも行けないんだろ?

直接コンタクトしなきゃいけないだけでなく、企業秘密を要求して渡してもらえるくらいまで仲良くならなきゃいけないわけだし、大体の面倒くさがりはその時点で萎えるよな

 

31、無名提督

なあ、ツイッター見たか!?

今度はアメリカが襲われてるぞ!

 

32、少年A

ツイッターを見ろ!

アメリカが深海棲艦に襲われて1つ町が壊滅した!

 

33、無名提督

ダニィ!?

ちょっと見てくる!

 

34、無名提督

それが本当だとしたら、恐らくいなくなってた奴らも帰ってくるぞ

 

35、スペア提督

アメリカとか遠杉ww

アイツが間に合わなかったのも分かるわwwww

 

36、無名提督

アメリカが襲撃されたと聞いて戻ってきましたー

てか提督増殖って何wwww

 

37、無名提督

孤独飯の最中にスマホでヤホー開いたら『深海棲艦、アメリカ襲撃』の速報が出てて麦茶吹いた

 

38、補欠提督

てかお前、いつまで『少年A』なんだ?

お前もアイツに補助戦力を頼まれたクチだろうに

 

39、無名提督

テレビの速報見て飛んで来たぬ

 

40、無名提督

ツイッター見て来たよ

それにしても、あんまり進んでなかったんだねぇ

 

41、無名提督

提督少年、現場に行ってるのかねぇ?

なんか既に一つ町が破壊されたそうだけど

 

42、無名提督

てかスペアとか補欠とかどういう事?

増殖ってのと関係してるの?

そこんとこkwsk

 

43、無名提督

港町が壊滅して燃えてるんだとよ

提督少年、お仕事頑張れー

増殖のインパクトよww

 

45、無名提督

日本がダメだったからアメリカに行ったのね

 

46、無名提督

戻って来たん

何か進展してるのかと思ったけどそうでもないみたいだね

して、増殖とはwwww

 

47、無名提督

今北

 

48、補欠提督

すぐ前のスレにも書いたんだけど、ちょっと前に体育館裏に呼び出されたと思ったら補助戦力として力を貸してくれと言われて腕輪を渡された

コレ使うと空間に穴を開けるとかどうとかで鎮守府に行けるのです

俺ら勝ち組ww

 

49、スペア提督

突然腕輪を渡されたと思ったら、マイ鎮守府への切符だった

すぐさまヴェルたんを愛でましたとも、ええwwww

 

50、少年A提督

こないだ、アイツに呼び出されたと思ったら、補助戦力として力を貸して欲しいと言われた

アリューシャン列島上空の黒雲を危険視していたらしい

俺はアニメを見てないんだけど、どうやらアニメ内設定では深海棲艦の棲地上空には黒雲が漂っているらしい

てかこないだウチの艦娘達に聞いてみたら、棲鬼がいるレベルのステージは本当にそうなってたみたいだぞ

 

51、無名提督

なるほど、今すぐその腕輪をよこすんだ

 

52、無名提督

では俺が君らの代わりに補助戦力に…

 

53、無名提督

さあ、その腕についているモノをこっちに…

 

54、無名提督

俺が提督少年君と戦う!

さあ、早くその腕輪を貸すんだ!

 

55、無名提督

前スレでも見た光景がwwww

 

56、補欠提督

こんな凄いブツを渡すほど信用してくれたのに、ここで裏切る訳が無かろうて!

 

57、スペア提督

せっかく思う存分艦娘達hshsできるのに、こんな重要なのを渡す訳ねぇだろうがwwww

 

58、無名提督

なるほど、アリューシャン付近の黒雲って棲地の特徴だったのね

って、え?

今ウチの姉貴、旅行会社の日本語通訳ガイド役でアリューシャンに働きに行ったまんまなんだけど!?

 

59、無名提督

補欠、熱血?

スペアの欲望丸出しすぎんだろwwww

 

60、無名提督

56の姉貴に合掌

 

61、無名提督

( ̄人 ̄)

 

62、無名提督

( ̄人 ̄)

 

63、少年A提督

( ̄人 ̄)

 

64、スペア提督

( ̄人 ̄)

 

65、無名提督

( ̄人 ̄)

 

66、補欠提督

( ̄人 ̄)

 

67、無名提督

▂▅▇█▓▒░(’ω’)░▒▓█▇▅▂うわああああ

 

68、無名提督

いや、補欠は嫁艦と『初めて』交換したって前スレで言ってたぞ

多分それだwwww

 

69、無名提督

憲兵さん、あいつです

( `・ω[+])▄︻┻┳═一

 

70、無名提督

死に晒せ

__(⌒(_ ´-ω・)▄︻┻┳══━一

 

71、無名提督

そこ替われ

__(⌒(_ ´-ω・)▄︻┻┳══━一

 

72、無名提督

死んで俺に腕輪寄越せ

_(⌒(( `・ω・)▄︻┻┳═一

 

73、補欠提督

ふはははははは!!!

我が鎮守府に憲兵など最初からおらぬ!

時々なぜかアイツの上司さんが覗きに来るけど一週間に一回らしいのでちょっと考えれば問題ない

てかその子も可愛い女の子wwww

 

74、無名提督

今北産業

てかカオスだwwww

 

75、スペア提督

ほどほどになー

俺ちょっと母ちゃんに呼ばれたから行ってくるー

 

76、無名提督

補欠、欲望の塊疑惑ww

行ってらーノシ

 




誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら是非感想までどうぞ。
最近禁則処理なるモノについて知りましたが、ここまで長ーく書いてしまっていて処理当てんの辛いので、この作品は禁則処理無しでこれからも参ります。
これからも、どうぞよしなに。

それでは、またー( ̄∇ ̄)ノシ


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じゃんけん大会、そして克哉のいない教室

よ、ようやく書けたぞー!

どうも、遅筆に定評のある私です。
受験戦争をなんとか生き抜きまして、活動再開しました。
活動再開から2ヶ月、ようやっと1つ書き終わるとかいう。

これからも、宿題やら簿記の勉強やらTOEICの勉強やらバイトやらで大変ながらに少しずつ書いていきたいですね。
ではまあ、久々に書いた本編をどうぞ。
久しぶりなのでだいぶカス文になってるかもしれませんが、お許しを。


「こんにちは!『アメリカンモーメント』の者ですが、インタビューよろしいですか?」

「え?今はダメです、人命救助中ですよ」

「貴方が連れてきたあの女性達、彼女達が瓦礫を持ち上げている所を見ましたが、明らかに常人では無いですよね。彼女達に何が起こっているのですか?」

「だからダメですって、救助作業に集中できないじゃないですか。それとも、他人の人命よりスクープが大事ですか?」

「日本には人体実験を禁止する法律があったはずですが、」

「そうですかスクープが大事ですか。大方、どう答えても俺に対するヘイトが溜まるように記事書いて出すんでしょう?」

「そんなつもりは……」

「だけど……」

「ですが……」

 

 

 

 

 

「ただーいまー」

「お帰り、また活躍したわね!」

「あー、そーだねー」

 

母さんの労いの言葉にまともに返す気力も失った俺は、リビングのソファにダイブして脱力する。

結局、人命救助も中断せざるを得なかったし、駆逐艦達の報告も明日にまわして、即刻帰ってきてしまった。

全てはあの、『アメリカンモーメント』とかいう新聞社の記者のせいだ。

 

「あら、お疲れ?」

「現地の方々のおかげでね……」

 

あの女性記者、いきなりこっち来たと思ったら人命救助そっちのけで取材を受けろだなんだとほざいたので縮地(劣)で逃走し、途中で死角に一気に跳んで撒いた。

大方あそこでインタビューに応じれば『人命救助はそっちのけでインタビューを受けた唯の目立ちたがり屋』として、そうでなければしつこく付きまとって苛立たせ、少し手を出した所で『あんな野蛮なガチンチョにあんな戦力を持たせていいのか』とか書くつもりだったんだろう。

幸いあの記者が来た時には現地の救命隊も来ていたので、艦娘達は退避させ、自分は救命隊の人々を少し手伝ってから一声かけて帰って来た。

その時仲良くなった隊長さんに記者達に関してリークしといたから、恐らくあのバカ共が仕掛けて来た時も証言を求める事くらいはできるだろ。

結論、もう新聞には関わらない。

そうだな、『ラプター』の取材になら応じていいかも。

 

「……ん、今何時だっけか?」

 

ふと目線をあげると、窓の外から眩しい太陽の光が差し込んでいる。

時計を見ると、もう『朝食』が『ブランチ』に変わる頃になっていた。

艦娘達の報告も、『明日』じゃなくて『今晩』だったのか。

一眠りする前に朝どころか昼が来ちまったじゃねぇかよ…。

人命救助と救助した人々の愚痴聞き、果てはウザい新聞記者からの逃走、そんなこんなで徹夜というハードワークならぬ鬼畜ワークである。

 

「今日パート休みで良かったー、こんなに疲れ切った息子の世話もできないなんて親失格よね!」

 

今日は学校休む事にしてるからね、と笑う母さんに深く感謝しながら、炊飯器からよそったご飯とラップがかかってたおかずをもそもそ食べる。

白飯に味噌汁、アジのひらきにたくあん、典型的な和食メニューを全て食べきった後、母さんに促されてシャワーを浴び、部屋に上がってベッドにダイブした。

 

「しばらくお休み、克哉」

「ありが……とう…………」

 

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

 

 

ちょうどその頃。

カツヤ提督の鎮守府では、大仕事が終わった直後だというのに手に汗握る闘いが繰り広げられていた。

 

「じゃーんけーん?」

「「「ポン!!」」」

「あーいこーで」

「「「しょ!!」」」

 

時を遡り十数分前、克哉の様子を見に愛宕がリアルにやって来た事から始まった。

陸子(克哉母)から克哉がシャワーを浴びてる事とシャワー後の予定を聞いた愛宕は、『こっそり添い寝を……』という所まで考えた後、平等性を重視して鎮守府に帰って全員召集かけて状況を説明、我こそはとばかりに騒ぎ始めた艦娘達を抑え、克哉との添い寝権をかけたガチンコじゃんけん大会を始めたわけである。

 

「うぅ…レディだもの、約束は守らないとね…」

 

現在暁が闘いに敗れ、遂に最後の勝負となったようだ。

 

「絶対勝って、狼の様に提督をお…昼寝するわ!」

「いくら古参の艦娘が相手でも、私のLOVEの方が上デース!てか今絶対違う事言いかけてましたヨネ!?」

 

足柄と金剛の真剣勝負である。

片や古参の狼、片や最新参の提督LOVE勢筆頭、お互いに提督に対する愛だけは絶対負けないと燃えに燃えていた。

片方はどっちかというと色んな意味で貪る気満々だが、気にしてはいけない。

 

「じゃあ、いくよー?最初は…」

「「グー!」」

「じゃんけん!」

 

真っ先に負けた雷の掛け声と共に、最後の勝負が始まった。

結果は…………

 

 

 

 

 

⚓︎⚓︎⚓︎

 

 

 

 

 

またまた所変わって、克哉の通う学校。

朝のニュースでアメリカの騒動を知った生徒達は、皆克哉の話を楽しみに登校していた。

しかし、数時間前まではアメリカで活躍していたであろう当の本人が休みを取ったと聞いて、皆それぞれ動揺する。

 

「ありゃ、『提督』休みかよ」

「アメリカがどんな状況か知りたかったんだけどなー」

「結局戦闘に呼ばれなかったから、せめて話を聞きたかったな」

「ふはは、俺は克哉に頼まれて戦闘こなしたもんねー」

「ダニィ!?」

 

不平顔のクラスメイト達の中、1人ドヤ顔のオタハラに注目が集まる。

 

「昨日5chで駄弁ってる時に一度親フラで離脱しただろ?あの時な、アイツから連絡があったんだ」

 

 

 

 

 

「はー、まっさか何にも知らない親のとこに艦娘達が行くとは思わんかったなぁ」

 

ちょうどその時、オタ原は両親から雷を落とされた後だった。

オタ原は必要性を特に感じなかったため(notオタの親に1から説明するのがめんどくさかったとも言う)、両親に艦娘に関して何も知らせていなかったのである。

そんな状況でオタ原と同じく克哉に腕輪を渡された響が「提督に会いにきた」なんて母親の目の前にどこからか飛び出してきたら、驚愕やら困惑やらでいくらかタイムラグは発生すれど、遅かれ早かれお呼ばれは当たり前の話だろう。

克哉の判断で、1番練度が高い艦娘1人に艦娘全員を代表してもらって通信・移動用の腕輪を渡していたが、それが完全に裏目に出たようだ。

曰く、「お前がロリコンだとは思わなかった」「彼女まで作っておいてロリに手を出すとはどういう了見だ」「今はもう深夜だから明日、加奈子さん(オタ原の彼女の名前)に電話して真剣に話をしろ」などなど。

 

「加奈子には話したんだよなぁ」

 

もともと克哉が腕輪の譲渡時に、必要を感じた場合は信頼のおける第三者にも腕輪云々の事を話しても良いという事を話していたため(もちろん親関係の事を考えての事である)、オタ原は彼女であり良き|理解者(オタ友)である青柳加奈子には話していたのであった。

さて、もはや説教を飛び越えた罵倒の嵐からなんとか解放され部屋に帰り掲示板でダベっていると突然腕輪が鳴り始めた。

 

「もしもし?」

『もしもし、悪りぃ起こしちまったか?』

「いや、艦これ板でダベってたとこだ。仕事か?」

 

通信の相手は克哉だった。

その時点ではまだ大空に翼を広げて大火事の現場に向かっている状況だったが、偵察部隊の他に念のため日本を守ってもらうための戦力を呼んでもらう意味で通信を行ったのだ。

なお、最初に呼び出した相手がオタ原だったのは通信用電波の名前付けが1番前だったからである。彼の腕時計の電波帳機能には『オタ原』『ブライトマンさん』『ブルーツリー』『みたらし饅頭』『レイ』の5人、それと艦娘達全員の電波が記録されていた。

 

「まあそういう訳で頼む、編成を組んで深海棲艦を迎え撃てるように巡回しといてくれ」

「分かった、任せとけよ」

 

 

 

 

 

「親フラを騙ったのは、この世界での初戦闘を独り占めしたかったからさ!」

「お前羨ましいぞ!俺だって暴れたかったのに!」

「まあそういう訳で、俺は深夜の巡回任務を遂行し…」

 

そこまで言うとオタ原は続きのセリフを溜める。

周りの人々が皆自分に注目しているのを感じながら…

 

 

 

「何にも、駆逐型すら来なかった…orz」

 

机に頭を打ち付けたのを見て、聞き手達(オーディエンス)が笑い始めた。

 

「お前、もちろんガチ編成で固めて一晩中巡回してたんだよな?w」

「気合いの空回り激しすぎんかw」

「まあまあ、なんにも無くて良かったじゃないww」

「だよなー、またこないだのニュースみたいな襲撃が来たらシャレにならんもんなw」

 

クラス全員で笑いが巻き起こった所で、始業のチャイムがなった。

結局『提督』は来なかったものの、今日も和やかに授業が始まる。

 

 

 

 

 

 

そして、夜中に全員アメリカの状況なんか追っかけたりした影響により、催眠使いの鬼教師によって第1時限目の授業から阿鼻叫喚の図が展開されるのであった。

バロスww




なーんか、スマホからだと投稿できないんだよな…。
しゃーないんで、パソからの投稿だす。
これからはこれが主流になるんかね?

誤字・誤表現・改善すべき点などございましたら、ぜひ感想欄へどうぞ。

そいじゃーさいなら、さいなら、さいなら。


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