本格的♂ガチムチ・インフィニット・ストラトス (ヌオー来訪者)
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本格的♂ガチムチ・インフィニット・ストラトス
だらしねぇ文章ととびとびな展開。許してや城之内……
少年、織斑一夏は現在訳有って女性しか居ない学園、IS学園に入学する事となった。これについては1から10まで説明し出すとそれなりに長くなるので掻い摘んで説明させていただくと、ここ最近インフィニットストラトスなる史上最強のパワードスーツ型兵器が開発されたのである。だが、ISは致命的欠陥を持って居た。男性には扱う事が不可能なのである。
その結果、女尊男卑という風潮が生まれてしまう事になる。IS自体はえらく強いのでまぁ致し方ないのかも知れないが、女性でも扱えない人間も居るのでやや納得いかないよなぁ、なんて一夏は思うのだが、一度身に付いた風習を無くす事は中々難しいのである。そんな肩身の狭い世界の中、一夏含め野郎どもはこの世の中を生きている。
だが例外が二人現れた。その一人が織斑一夏なのである。それで以て忽ち話題の人と化した。
さてさて、四方八方から奇異の視線に晒されあたふたせずには居られない。朝礼に入ったのは良かったものの、視線が痛い。今後このような視線を受けながら数少ない野郎がこの学校を生きると言うのは辛い。しかも追い打ちを掛けるように、この学校、全寮制なのである。
だが、そんな中で一つ希望があった。一夏自信ノンケだが、この状況下で同性が居ると言うのは精神的に楽になるというものである。ソイツに視線を向ける。
ソイツは外国人ではないかと思える金髪に筋骨隆々でがっしりとした体型。本当に未成年かと疑うようなその男は明らかにサイズが合っていない席に座っている。取っ付きにくい感じがするが、彼が一夏以外でIS学園に在籍する唯一の男子生徒なので文句は言えない。それに思いの外良い奴かも知れない。
人間見ただけで判断してはいけないのだ。
もう一つ、希望はあった。幼馴染の篠ノ之箒という長い黒髪をポニーテールで結った少女だ。だが彼女は一夏の幼馴染であるのだが……ふと一夏が彼女に視線向けると箒はぷい、とそっぽを向いてしまった。
「(俺が一体何をしたんだ……)」
一夏は愕然とした。それが久々に再会した幼馴染への態度かと心の中で抗議する。だが、そんな心の声なんぞ誰にも聴こえる訳もなく虚しく一夏の胸の奥でつっかえる。
そんな中で、自己紹介とやらが始まった。副担任である山田真耶先生がその男子生徒に声を掛ける。だが―――
「あぁん?」
男子生徒はどう見てもガン飛ばしているようにしか見えない声を上げたのである。それに山田先生もびっくり、そして生来の性格もあってかあたふたし始める。
なにコイツは教師にガン飛ばしてんだ。一夏は思わず突っ込んだ。
凄まじく嫌な予感を一夏はひしと感じていたが、結果的にある意味それが正解だったと後々思い知らされる事となる。
怯えて謝る山田先生を他所に男子生徒は立ち上がってから口を開いた。
「どうもすみません。これは僕の癖でして……僕は阿仁木陽生です。尊敬する人物はマサシ=ミヤモトです。よろしく、お願いします」
おぉ、意外にも優等生な自己紹介だ。所でマサシ=ミヤモトって誰だ。
しかもその直後黄色い歓声が湧いた。
体格がしっかりしている筋肉モリモリマッチョマンであるが故か、割と顔立ちは整っているし、美形とも言えなくも無い。まぁイケメンと言うよりは『男前』の部類だろうけれども。
考え事をしていると、山田先生が心配げにこちらの顔を覗いていた。
「……織斑一夏君?」
「あっはい!」
もう俺の番か。よくよく考えたらあいうえお順なので考え事をしている場合ではないでは無いか。一夏は慌てて立ち上がり、自己紹介を始めた……
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阿仁木陽生という男は休み時間開始時にすぐにHRと一時間目の授業と姉が教師をやっていたと言う事実を知らされて疲れ切った一夏のもとへとやって来た。
本当に高校生とは思えない程に背が高く、身体がしっかりしている。と言うかこの男本当に高校生なのか。
一夏阿仁木陽生を見上げ怪訝な顔をする。
「どうも、織斑さん……先ほど自己紹介しましたが、阿仁木陽生です。東京都
「あぁ、ご丁寧に」
HR時のガン飛ばしが嘘みたいに、非常に丁寧な物腰だったので一夏は戸惑いながら対応する。あのガン飛ばしは本当になんだったのか。
「所で織斑さん、君は何かスポーツでもやっているんですか? こう、しっかりした体つきですね」
―――お前ほどじゃねぇよ……
一夏自身、小学生時代剣道はやっていた。だがそれは小学生時代までの話。中学生になってからは知人の店の手伝い(お代有り)とかをやっていたので剣道はそれっきりだ。
まぁ実際身体は良く動かしていたので体力には自信はあるつもりだ。
「昔剣道やってたぜ」
「ほう、ケンドーですか。歪みねぇな♂……所で織斑さん―――」
「はい?」
「レスリングには―――興味ありませんか?」
「……すまん、あんまり」
「そうですか……」
阿仁木陽生はとても気落ちしたかのように図体のデカさとは不釣り合いなしょんぼりとした顔をした。
悪い事を言ってしまったか。嘘でもいいから興味があると言った方が良かったか。
ちょっと後悔している所で、幼馴染の箒が一夏のもとへとやって来て、阿仁木陽生と別れて暫く屋上で久々に会話するのだった……
/
3時間目の授業。
「さて、授業を始める前に再来週実施するクラス対抗戦に出るクラス代表者を決めないとならない……諸君の殆どは知っているだろうが、クラス代表者とは名前の通りクラスの代表者だ。具体的に何をするのかと言うと、生徒会の開く会議や委員会への出席……要するにクラス長としての役割も果たす。……ただのISを使った競技、模擬戦とは思わん事だ。力と信頼ある者にはそれ相応の権利とそれを振るう責任、背中に受ける期待がある。一度決まると一年間変更が無いのでそのつもりで。自薦他薦は問わない」
授業担当は一夏の姉である千冬。IS関連の座学が始まったと思いきや、突如としてクラス代表を決めるなどと言う展開になってしまった。そして次の瞬間―――女子たちの声が湧いた。
「はーい! 織斑君が良いと思いまーす」
「賛成!」
「阿仁木君のほうが強そうだから阿仁木君に一票!」
「アワ、アワワワ……どういうことなの?」
「どうしてこうなった」
阿仁木と一夏は想定外の展開に眼を回していた。二人とも碌にISに乗った事が無いのにどうしてこのような展開になるのか。半ば面白半分でやっているんじゃないのかこの推薦して来る女子生徒は。
一夏が抗議するものの、千冬は「他薦された者に拒否権は無い。責任を果たすが良い」と突っぱねた。
「と言う事で、このままでは阿仁木と織斑のどちらかになるぞ?」
―――救いは無いんですか!?
一夏の心の叫びが木霊した。
千冬が他薦はもうないと判断した矢先クラスメートの一人がバンと机を叩き声を上げた。
声を上げたのはブロンドの如何にもお嬢様な風貌の少女だった。
「こんな結果、納得がいきませんわ!」
そらそうだ。一夏だって納得していない。こんなおふざけ結果無効だ無効。一夏も心底同意してお嬢様な少女と一緒に抗議しようとした。だが次の発言がいけなかった―――
「大体男がクラス代表なんて良い恥さらしにも程がありますわッ! このクラスを笑いものにさせたいんですか!? 実力からしてこの私、イギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットが選ばれるのは必然ではありませんか!?」
その少女―――セシリア・オルコットはよくいるタイプの少女だった。
インフィニット・ストラトスとは、現行最強の兵器であり、戦車や戦闘機ですら手も足も出ないという史上最強の兵器である。だが、女性にしか扱えないのと、扱える女性が少ないと言う事実もあって国が女性を優遇する政策を取り、結果的に女尊男卑の風潮を生んでしまった。
特にセシリアのようなタイプがわりかし増えており、一夏の頭痛の種となっていた。
尚、代表候補生と言うのは名前の通り国家代表のIS操縦者のエキスパートであり、最新鋭の専用機を与えられている。
「私はこんなおふざけを、茶番をするために態々こんな辺境の島国に来た訳ではありませんッ! 大体文化として後進的な国に暮らす事自体耐えがたい屈辱だと言うのに―――黄色い猿にサーカスをやらせる場では無いんです!」
そこまで言うか。一夏の苛立ちが溜まって行く。そろそろ反論しても良いだろうかと一夏が腕をまくったその時である。
「あぁん? お国批判だらしねぇな!?」
阿仁木が先に声を上げた。
「僕を批判するのは結構だ。僕が未熟な所もあるのも自覚している、批判されるのも仕方ないね♂ しかし国まで批判するのは英国淑女としてはだらしねぇな。本格的♂英国淑女の振る舞いの植え付けを行う♂」
阿仁木は怒っていた。……多分。生まれてきた国を馬鹿にされたのだ。新日暮里とは恐らく字面からして日本の場所だろう。それにセシリアは少し気圧されつつ、負けじと返す。
「貴方のようなゴリラのような人に教えられるものなんてありません! 歯向かうなら叩きのめさせて貰いますわ!」
だが、そんなセシリアを見て、阿仁木は逆に肩の力を抜いて少し苦笑いで返した。
「見せかけで超ビビッてるな?」
「びびびびびびってなんかいませんわよッ!! 決闘ですわ!」
セシリアは阿仁木に喧嘩を吹っ掛けた。恐らくIS同士のファイトをやるつもりなのだろう。一夏は片隅で阿仁木とセシリアの喧嘩を見て酷く疲れ切っていた。もうやだこの一年一組……
そして一夏は意を決して手を上げた。
「先生」
「何だ」
「……頭痛いんで保健室行っていいですか」
「……行ってこい」
もうやってられるかと一夏は憔悴し切った顔で教室を辞した。
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