魔に魅入られた少年の話 (新参者基本読み専)
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英霊召喚

初心者で初投稿です 正直不安しかありません
未熟者ですが、頑張りますのでよろしくお願いします



 

      目覚めはいつも唐突にやってくる。

 どんな夢を見たのか、挙句の果てにはついさっきまで何をし、誰と何を話していたのかさえ思い出せない。

 

 頭痛はとてつもなく酷く、気を抜けばその場に倒れ込む程の激痛だった。だが、そんな事とは関係なく足は/体は先に進んでいく。まるでそうプログラムされたロボットの様に決められた道を通り、決められた場所を目指して歩いていく。

 今が何月の何日で何曜日なのか思い出そうとすると眩暈で気を失いそうになる。

 そんな訳の分からない何かと葛藤しながら周りを見るといつもと変わらない/変わることのない風景が目に入る。そんな風景にさえ違和感を感じながら進むと、校門の前で足が止まる。

 

 「おはよう!今日はとてもいい天気だ」

 

 声をかけられた瞬間、頭痛がさらに酷くなり、視界がノイズで覆われる。

 

 「さて、今日は抜き打ちで風紀チェックを行う。チェック違反の内容によっては遅刻も覚悟しておけ。」

 

 目の前にいる誰かがそう話し続けるが、こっちはそれ所じゃない。容態はさっきよりもさらに酷くなっていく一方だ。ここに居てはいけない。そう直感が告げるまま、その横を走り去った。

 

 「髪の長さ、爪、服装、生徒証、よしオールクリアだ。実にすばらしい」

 

 後ろの誰かはまるでそこに誰かが居るかの様に話し続けていた。その姿はまるで操り人形の様だ。そう確信した瞬間、さらに確信できる事があった。もうここは知っている世界ではないと。

 

 早く見つけ、そして目覚めなければ何もかもが手遅れになると直感が、本能が、何もかもがそう告げる。

 

 でも--- どこに行き、何を見つければ良いのだろうか?

 

 

 

 

 身体を蝕む嫌悪感はさらに増してゆく。

 だが、これを治す術も分からず、状況を打破できる何かを掴めぬまま、放課後になってしまった。

 

 朝のノイズに塗れた視界は治らず、さらに耳にノイズの音が聞こえてきた。教室にいる誰かが話す声がとぎれとぎれで何を話しているのかまるで理解できない。

 

 そうだ、一度校門に行こう。あそこで悪くなったのだから、もしかしたら戻す何かがあるかもしれない。

 そう思い、ふらつきながら教室を出て、靴箱を目指した。

 

 階段の手すりを掴みながら一階に着くと、二つの違和感を感じた。一つは詳しくは分からないが、もう一つは人とは思わせないほどの気配だ。

 この気配を知っている。そう、これは転校してきたレオだ。

 

 この二つの気配が同じ場所に向かって行ったのが分かると、頭の中に声が聞こえた。

 

 〝目を背けるな”と

 

 その声に背を押され、二人の向かった場所へ壁にもたれ掛りながら足を進めた。

 

 そして、やっとの事で二人の近くまで行き、休んでいると、急にレオの気配が完全に消えた。後を追うようにもう一つの気配も完全に消えた。

 驚いてその先を見ると、そこは壁だった。

 だが、そこには今までよりも強い違和感を感じた。

 

 崩れ落ちそうな体に鞭を打ち、その壁の前に立つ。

 その場で蹲り、そのまま倒れそうなまでの頭痛に何とか耐えながら、今まで感じた違和感を思い出す。

 

 同じことを永遠に繰り返し続ける、変化のない世界。

 だから決意し、選ぼう。この世界から出ると

 〝立ち向かえ、そして、真実に目を凝らすんだ”

 

 そう決意し、目を開けると壁から扉が現れた。

 どこに繋がっているかなど分かりもしないが、それでも進もう。偽りの日常、偽りの全てに別れを告げ、その扉を開き、先へ進む。

 

 

 

 進んだ先は学校のどこでもある用具室のような場所だが、空気は異界そのものでまるで別の世界だ。

 少し進むとつるりとした肌の人形が立っていた。

 

 これは、この先で、自分の剣となり盾となるもの....。それを連れて進むがいい。

 

 どこからか分からないが、そんな声が聞こえた。

 その人形をよく見ると手の部分が刃の様に鋭かった。それを見てはっきりした。この先に戦いが待っていることを。

 

 だが、進むしかない。そう自分が選んだのだから。

 そして知ろう。この先に何があるのかを。

 そう決意し、先へ進むと人形が後を追うかのように付いてきた。

 

 

 

 地下迷宮でのレクチャーを受け、何かジャンケンみたいだなと思いながら進むと、息苦しさすら感じる荘厳な空間に出た。そして、目の前には三枚の扉の様なステンドガラスがあった。ふっと横を見ると、誰かが倒れていた。顔を見ても分からないが、レオを追っていた生徒だろう。

 何があったのか、何で倒れているのかを聞こうと体に触れた瞬間、手を引き戻した。異常に冷たかったからだ。

 その現実に困惑していると、彼の傍らに崩れていた人形が動き始め、立ち上がった。そしてこちらに振り向くとそのまま突進してきた。慌てて人形に指示をし、迎撃した。レクチャーされた通りに人形に指示を送っていたが、圧倒的にこちらが不利だ。状況を打破するためにどうしたら良いか考えてると、相手の人形の一撃でこちらの人形が崩れ落ちてしまった。そして相手の人形の斜め下から振り上げる攻撃を受け、膝から崩れ、横になるように倒れた。

 その時、

 

 「ふむ、君も駄目か。そろそろ刻限だ。君を最後の候補としてその落選をもって今回の予選を終了しよう。」

 

 何の感情がこもっていない、ただそう言っている声の最後の言葉と目の前の景色に恐怖を感じた。

 

 「さらばだ。安らかに消滅したまえ」

 

 その声がそう言い放った瞬間、いくつもの塊が見えた。そこには幾重にも重なり果てた月海原学園の生徒が倒れていた。どうやら彼だけではなく、他にも多くの生徒がここにたどり着いたのだろう。だが、どうすることも出来ず、消滅していった者たちばかりがそこにいた。

 

 恐怖のあまり、体を起こそうと力を入れようとしたがとてつもなく激しい激痛が走り、まるで動かせなかった。意志とは逆で体はこのまま楽になろうとしていた。

 だが、このまま終わるのは許されない。

 そう思い、激痛なんてものじゃない痛みに抗いながら何とか体を起こそうと必死に力を入れ続けた。

 自分の中にあるのは恐怖しかない。痛み、感覚の消失、周りの死体と同じになることへの恐怖。

 そして何よりも最も恐怖を感じるのは、このまま無意味に消え去ることだ。

 

 立ち上がらないと。恐いままでもいい。痛いままでもいい。何の覚悟が決まってなくても、それでも立ち上がってその上で考えないと。

 

 だってこの手は/俺自身は、まだ一度も、俺自身の意志で抗い、戦っていないのだから。

 

 そう思い、やっとの事で仰向けになると

 

 「ほう、その様な状態で、恐怖に支配された心で尚を抗い、立とうとするか。中々肝が据わっておるではないか。」

 

 声が聞こえた。その声は女性だが威厳を感じさせるような声だった。

 

 「是非もなし。その声、その思い、その魂に免じてわしが特別に力を貸してやろう。さぁ、体を起こすがいい。そして、お主の生き様をわしにみせてみよ。」

 

 その声に従い、体を起こす。先程よりも痛みは薄れたが、それでも痛む体を腰を下ろした状態にまで起こす。すると

 三枚のステンドガラスのうち左右の二枚が音を立てて壊れていった。そして、部屋全体に光がともった。

 光がともった後、中央に一人の人が立っていた。その人物は黒と赤を基調とした軍服とマント。黒髪のロングヘアーで前髪ぱっつんの髪型に帽子には何らかの飾りがあった。

 その外見は普通の人間と何も変わらない。だが圧倒的に違っていた。人間を超越した力、触れただけでも蒸発してしまいそうな程圧倒的なものだ。驚きでその女性を見つめていると、その女性は近づいてきて

 

 「では、疾く答えよ。お主がわしの主だな?」

 

 正直何が何だか分からず付いて行けていない。というか最後確定形だったよね?だが、その声は先程の女性の声だ。

 その時、力を貸そうと言っていたのを覚えている。マスターという単語がどういう意味を指しているか分からないが、立ち止まってはいられない。

 

 「俺が・・・マスターだ!」

 

 そう言うと目の前の女性は笑みを浮かべ

 

 「やはり美しい声だ。良かろう。お主にはわしの主になる権限と名誉を特別に与えてやろう。」

 

 そして彼女は手を差し伸べて来たので、その手を握った。すると左手に鈍い痛みが出て来たので左手を見ると、三つの模様が組み合わさった奇妙な何かが刺青のように皮膚に刻まれていた。

 それを見ていると彼女がこちらをじろじろと顔を見ていたので 何?と聞くと、

 

 「いや、お主中々良い顔立ちをしていると思ってな。一集団の上から三番目が妥当だろう。顔立ち、声、そして魂。どれも良いものを持っている。まだ未熟という所が惜しいところだが、まぁこれからに期待しよう。」

 

 そんなやり取りをしていると、背後でカタカタカタと音が鳴ったので振り返ると、先程戦い、そして敗北した人形が攻撃態勢に入っていた。思わず後ずさりすると

 

 「そう身構える程ではなかろう。わしが付いておるのだ、あんなからくり人形如き恐るるに足らんぞ。さっさと片付けて予選を突破しようではないか。」

 

 そう言って彼女が身構えるといつの間にか両手で銃を持っていた。拳銃といった片手で持つようなものではなく、両手で持つタイプで火縄銃の様なものを構えていた。

 

 そして人形を見た時、その人形がスケートのスタートを切るかの様な構えをとった直後、こちらに突進してきた。

 危険だと思い、彼女に回避をするように言おうとした瞬間、彼女は引き金を引いた。ダーンと破裂音に驚き、人形の方を見ると人形の眉間に穴が開いた状態で仰向けに倒れていた。

 

 「もろすぎるな。全然歯応えがなさすぎる。こんなものでわしに傷一つつけられると思ったのか。うつけめ。」

 

 人形を倒し、彼女が何かつぶやいていると、

 

 「手に刻まれたそれは令呪。サァーヴァントの主人となった証だ。使い方によっては限界を超える程にまで強化し、あるいは制限、束縛する三つの絶対命令権だ。分かり易く言うと使い捨ての強化装置みたいなものだ。ただし、同時に聖杯戦争本線の参加証でもある為、全てを失えばマスターは死ぬ。よく覚えておくことだ。」

 

 その声を聞いていると、左手から令呪と呼ばれるものからの発熱、そして先程まで治っていた頭痛がまた出てきた。何とか意識を手離さない様に必死に耐えながら聞いていると

 

 「おめでとう。傷つき、迷い、辿り着いた者よ。ここがゴールだ。君ほど未熟で無防備なマスター候補は初めて見たよ。だが、君代機転は臆病ではあったが、蛮勇だった故に見応えがあったよ。」

 

 文句の一つでも言いたいが、言った所で何の意味のないなと 思い黙っていると、

 

 「君はどうも異例が多いな。何者からか祝辞が届いている。〝光あれ”と。」

 

 〝君に期待する”と、短くても祈りの様な言葉に胸を打たれた。

 その言葉を聞いた後、痛みにこらえられず、その場に倒れ、意識を手放す一瞬前に聞いた言葉は

 

 では、これより聖杯戦争を始めよう。

 いかなる時代、いかなる歳月が流れようと、戦いを持って頂点を決するのは人の摂理。

 

 月に招かれた、電子の世界の魔術師たちよ。

 汝、自らを以て最強を証明せよ―

 そして― 存分に―  殺しあえ

 

 

 

 

 これは月の世界で語られる一人の少年の物語

 少年の歩む道の終着にあるのは

 誰にも分からない

  




感想、コメントお願いします
まだまだ分からない事ばかりなので色々と教えて頂けると嬉しいです
更新は不定期ですが完結を目指して頑張ります


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開幕と探索

正直結構無理やりの所が多々あります まぁこれからの話でも無理やりの所がありますのでご了承を


目が覚めた。

 開けた視界の情報から察するに、ここは保健室なのだろう。体を起こし、傷があった場所を確認するとそこにはまるで最初から傷など無かったかの様だった。

 

 あれは夢だったのか? でも、ドールとの戦闘や火薬の破裂音などが頭にしっかりと焼き付いている。それにこの保健室だってどこか異質な空気を放っている。状況を整理しようとしていると

 「やっと目を覚ましたか まったく、わしを待たせるなどいい度胸じゃな」

 

 正面に突然人影が現れた。

 あぁ、あれはやっぱり現実だったんだ。

 現れた人物の姿を見て思う―

 

 軍服に黒髪のロングヘアーの女性 頭の中に焼き付いている人物その人が立っていた。何度見ても外見は人間だが、あの圧倒的な力を思い出してしまう。いらない心配は不要なのかもしれない。彼女の言葉は怒っている様だったが顔は笑っていた。不思議に思い首を傾げていると、

 

 「もうそろそろ(いくさ)の始まりじゃ。それに間に合ったのだから特別に許す。さて、お主は聖杯戦争を理解しているか?」

 

 聖杯戦争・・・正直聞いたことすらない。 だが、あの声が最後に殺し合えと言っていたのを覚えている。それに彼女は戦と言っていたから聖杯というのをかけた勝負事だろうか? そう思い、彼女の問いに答えた。すると

 

 「概ねその通りじゃ。まぁ付け足すなら128人のマスター達が争い、最後の一人が聖杯を得るというルールという事までしかわしは知らんがな」

 

 128人もいるのか!? そして自分以外が敵という事に寒気を感じた。とりあえず、生き残るには全員を倒さなければならないのかと思い、ため息が出てしまう。それを見て彼女は

 

 「詳しいことは運営のNPCに聞いた方が良かろう。奴らは基本中立ゆえ、質問をすれば答えてくれよう。次に、サーヴァントとは何か理解しているか?」

 

 サーヴァント・・・これも聞いた事がない。なので分からないと正直に答えた。

 

 「これを知らんと申すか。よくそれで聖杯戦争に参加しよったな。だが嘘を言わなかった事は評価しよう。是非もなし、ならば特別にわしが教えてやろう」

 

 最初は呆れた表情をしていたが、特別にの所から笑顔になった。もしかしたら人に何かを教えるのが好きなのかもしれない

 

 「まぁ、確かに嫌いではないがな。サーヴァントとは過去に名をはせた英雄や神話に登場する者達を聖杯の力によって再現した者たち、英霊を言う。そしてサーヴァントは呼び出した魔術師を守り、導く存在だな。 そしてサーヴァントは7つのクラスのどれかに属しておる。時にイレギュラーな者もおるが、それは一握りゆえ気にする必要はない。クラスには騎士(セイバ―)弓兵(ア―チャ―)槍兵(ランサ―)騎兵(ライダ―)魔術師(キャスタ―)狂戦士(バ―サ―カ―)暗殺者(アサシン)の7つだ。最良だの最弱だの言う奴らがおるが無視せよ。クラス名がそのままそのサーヴァントの特性に直結する事を覚えておくがよい」

 

 成程。良く理解できた。それと何気にこっちの考えを読まないでくれないか

 

 「お主は顔に出て分かり易いだけだぞ?だが例え隠してもわしは見抜くがな!!」

 

 ふんっと胸を張った。てかそんなに顔に出ていたのか?

 

 「顔だけでなく目と声にも出て分かり易いったらないがな。それとわしのクラスは弓兵(ア―チャ―)だ。これからはわしの事をア―チャ―と呼ぶがいい」

 

 そこまで分かり易いか!! 驚きを隠せないが彼女、ア―チャ―は人を率い、導く立場にあった人物なのだろう。人を見る目は確かという事はこの短い対話で理解できた。しかし、ア―チャ―が英霊というならいったいどんな英雄なのだろうか?

 

 「え? わしの真名知りたい? 知りたい? やっぱり!? え―? でも、わし有名だしなぁ」

 

 なんかノリノリな返答が返ってきた。さっきまでは威厳ある雰囲気だったが、今はそれがない。しかしコロコロと表情が変わってなんか可愛いな。そんな所も彼女の魅力なのかもしれない。

 

 「コホン。わしの真名はもう少しお主を見極めた後、教えよう。敵に漏れてしまいかねんからな だが、わしはお主の味方だ。そこは安心せい」

 

 そういうと、ア―チャ―は姿を消した。敵に見られて正体を悟られない用心なのかもしれない。それとそろそろ保健室を出よう。いつまでも居てはいけないなと思い、立とうとすると

 

 「それと忘れておったが」

 

 うお!! 急に姿を現した。何かあったのか?

 

 「白衣を着た女子(おなご)から渡す物と伝言があったのを忘れておった。まずはこれじゃな」

 

 と言って何かを渡してくれた。これは・・・端末?

 

 「この端末から運営等からの色々な連絡が来るようじゃ。後、分からない事があれば言峰神父に聞いてくださいって言っておったな」

 

 言峰神父・・・神父というからには相当目立つだろうな。よし、まずはその人物を探そう。そう思い、保健室を後にした。

 

 

 

 

 

 大まかに探してみたが見つからなかった。他のマスター達やNPCに聞いても見ていないと言われた。まだ屋上を探していなかったなと思い屋上も探して見ることにした。屋上に出ると、

 

 「一通り調べては見たけど、大まかな作りはどこも予選の学校とたいして変わらないのね」

 

 何か呟いている美少女が居た。あれは多分遠坂 凛(とおさか りん)だろう。容姿端麗、成績優秀で月海原(つくみはら)学園のアイドル。男女問わず人気で噂も絶えなかった。だが今の彼女の眼には強い意志と覚悟が見受けられる。実力はカスタムアバターを使ってる点で自分より格上という事もすぐに分かる。目的の人物はいなかったがもしかしたら何か情報が得られるかもしれないと思い話しかけようか悩んでいると、

 

 「・・・ん? ねぇ、そこのあなた」

 

 急に声をかけられたので少しビックリした。一応周りを確認したが誰もおらず、自身に指をさして俺?と尋ねると

 

 「そう、あなた。そういえばまだキャラの方はチェックしてなかったわね。 ちょうど良かった ちょっとそこ動かないでね」

 

 そう言って近付いて来て自分の頬に手を伸ばしてきた。その手は細く、そしてやわらかい感触だった。そして目の前にいる人物がまだあどけなさの残る少女であることがはっきりと理解した。

 

 「NPCにも体温を設定するなんてムーンセルも凝ってるわね。あれ?顔、赤くなってきてないかしら?」

 

 そう言って少女は顔をぐっと近付けてきた。正直近すぎないかと感じたが緊張のあまり声を出せなかった。目の前の少女はこちらへの気遣いはせずぺたぺたと触り続けていた。 どうすべきか悩んでいると

 

 「成程。想像以上ね 見かけだけじゃなく感触も人間そのもの。ここまで精密に造れるなんて流石ムーンセルね」

 

 「小娘。いつまでわしの(マスター)を触り続けておるのだ?まだ続けるのであれば相応の手段を取らせてもらうが?」

 

 隣にア―チャ―が姿を現した。ちなみにその目は目の前の少女に対し冷めた視線を送っていた

 

 「うそ!?サーヴァント!あなたマスターだったの?じゃ、じゃあ今調査でべたべた体を触ってたわたしっていったい――― くっ、恥ずかしいったらありゃしない。そこ、痴女とか言うなっ!」

 

 「痴女か。的を射た発言じゃな」

 

 彼女のサーヴァントが茶々を入れたのだろう。でも痴女は酷・・・くはないか。第三者から見ればそう見えてしまうのだからどうしようもないな。

 

 「魔術師(ウィザード)の職業病の様なものだから仕方ないじゃない。ここまで精密な仮想世界なんてほとんど無いに等しいんだから調べなくてなにがハッカーだっての」

 

 そう言った後、こちらに振り返り

 

 「あなたもよ。マスターなのにそこらの一般生徒(モブ)キャラと同等の影の薄さってどうなの。まさか記憶がちゃんと戻ってないんじゃないでしょうね?」

 

 紛れもない事実ゆえ返答できない。サーヴァントを従えた魔術師(マスター)という事だけしか分かっておらず、それ以外は何も思い出せないのだから。

 

 「・・・ウソ。本当に記憶が戻ってないの?それってかなりまずい状況よ。けど・・・ま ご愁傷様とだけ言っておくわ」

 

 彼女が言わんとしている通り、自分が勝ち残る自信がない。それは自分自身が痛感していた。

 

 「隣のサーヴァントと違って戦う姿勢が取れていないのね。覇気と言うか緊張感と言うか・・・全体的に現実感が無いのよ。記憶のあるなし関係なくね」

 

 そう言うと彼女は自分の眉間に指を置いて

 

 「まだ夢を見ている気分なら改めなさい。そんな足腰定まらない状態で勝てる程甘い戦いじゃないわよ」

 

 戦士の顔をして自分に言った。だが、その言葉には自分を心配しているかのような思いが見え隠れしていた。

 

 「そういえばまだ名前を言ってなかったわね。わたしは遠坂凛。あなたは?」

 

 唐突に名前を教えてくれた。とりあえず自分も名乗らないとと思い

 

 「岸波白野だ」

 

 と答えた。それと言峰神父を見なかったかと聞くと

 

 「言峰神父?さぁ、見てないわね。一階の方はちゃんと見た? もしかしたら居るかもしれないわよ?」

 

 そう教えてくれた。それを聞いて一階に行こうと思い、屋上を後にしようと扉まで来た時、まだ遠坂にお礼を言ってなかったことを思い出し、遠坂に声をかけると、彼女は振り向いてくれたので

 

 「さっきは気遣ってくれてありがとう。嬉しかったよ」

 

 笑みと共にそう言って屋上を後にした。さて、とりあえず一階に向かおうと階段を降りようとした時、隣から視線を感じたので見るとア―チャ―が軽蔑した様な目で

 

 「お主、案外女誑しなのかのう?」

 

 なんでさ!?

 

 

 

 

 そんなやり取りがあるなか、屋上にいる少女、遠坂凛は顔を真っ赤にした状態で口をパクパクさせていた。

 

 「お嬢ちゃん、いつまでそんな状態でいるんだ?」

 

 そう言って青の装束をまとった青年が現れた。彼女のサーヴァントだろう 彼は口では呆れた様な言葉だが、顔はニヤニヤしていた。

 

 「う、うるさいわね!! まさか不意にあんな事を言うなんて思ってもみなかったんだからしょうがないでしょ!」

 

 そう顔を赤くしたまま反論し、ため息をつくと

 

 「あいつ、手間はかかるけど別に悪い奴って感じはしなかったなぁ。それに何かこう、かまってあげたくなる様な雰囲気だったし」

 

 「何だ、お嬢ちゃんあの坊主の事気に入ったのか?」

 

そう彼女がつぶやくと、青年が茶々を入れた瞬間、彼女はマシンガンの様に怒号を放ったがどこ吹く風の様に青年は聞き流しながら

 

 (しっかしあの坊主、他の奴らと違ってたな。未熟すぎるが他の奴らにはない〝何か”をもってやがる。ああいう奴程成長するからな。まぁ頑張んな坊主)

 

 そう彼に幸あれと願っていた。

 

 

 

 

 言峰神父に会い、一通りの情報とマイルームのコードを貰ったのでとりあえずマイルームに向かった。コードをかざして中に入ると、中は教室で机と椅子があり、他にはベッドが一つと長椅子があった。あの長椅子はア―チャ―専用だろうと思っていると、彼女はそれに座って

 

 「うむ、中々の座り心地だ。気に入った。さて、ここは何の干渉も受けてはおらん空間よな。何か話す際はここで話すべきであろう」

 

 他の誰にも聞かれないというならようやく落ち着ける。それと彼女に一つ質問をしよう。この聖杯戦争についてだ。言峰神父は負けると電脳死(ゲームオーバー)と言っていたが、あれは本当なのだろうか?

 

 「戦争だから敗北=死は当然よな」

 

 つまり、自分は7人と戦い、倒し、殺めなければならないのか。何の願いも持っておらず、何の覚悟も抱けぬまま、

 

 「先の事を今悩んでも意味はないぞ。それに願いがないなら探せばいいし、覚悟も今すぐ決めろとは言っておらぬ。今は目先の事だけ考えよ。 とにかく、今日はアリーナに向かって一日を終えよう。明日の事は明日考えれば良いからな」

 

 ア―チャ―がそう言ってくれたので、少し気持ちが軽くなった。そうだな、今はまだ生きたいという願いとは呼べないものだけど、これから見つけられる様頑張って行くしか今はないんだから。それに立ち止まってはいられないとあの時決めたんだから、それを貫こう。

 

 「それとアリーナに入ってしまうと学園に戻っては来れん。アリーナを出たら明日になってしまうので買い物や情報収集など、学園でやり残した事があればアリーナに入る前に済ましておけ。その日にしか手に入らない情報等あるからな。一日一日を大事に過ごす様気をつけよ」

 

 結構重要な事なのだからきちんと覚えておこう。とりあえず今日は購買の品を見て必要な分だけ買ってアリーナに入ろう。そう思い、マイルームを後にした。

 

 

 

 

 購買の品を見たが、財布の事情等で買わずアリーナに入ったが、周りは真っ暗で薄気味悪い。どことなく「死」を連想してしまう。

 

 「アリーナは自由に戦闘する事が許されておる。一種の鍛錬の場所だな。敵性プログラム(エネミー)と戦い、経験を積むとよい。今日の目標はあの蜂の敵の辺りまでよな」

 

 それを聞き、とにかく前に進もうと足を進めた 少し歩くと敵が出てきた。それを視認した時、軽く頭痛がしたので目を閉じ、また開くと目の前の敵の情報が頭に流れてきた。あの箱型の敵はKLEIN(クライン)というらしい。名前の他に行動パターン等色んな情報は分かった。行動パターンはまるで分からないので何回も戦う必要があるのだろう。それと多分、他の敵も同様なのだろうなと思いながら進むと急に敵が襲いかかってきた。

 だが、

 

 「遅い」

 

 敵の横を通り抜ける瞬間、居合の一閃で敵は消滅した。勝利したのだがア―チャ―は渋い顔をしていたのでどうしたのかと聞くと

 

 「いや、何となく感じていたがわしは本来の力を出せてはおれぬ。今のわしの力は最低ランクといった所だろうな」

 

 それを聞いて端末のステータスの欄を開くと、確かに全てのステータスの項目がEだった。自分のせいでと思い自責の念に駆られていると

 

 「別に自身を責める必要はない。それにどん底からのスタートというのは案外悪いものではないぞ?」

 

 不思議なことを言うので首を傾げる。

 

 「生まれながらに才能のある者はそれを頼んで鍛錬を怠る、自惚れる しかし、生まれつきの才能がない者は何とか技術を身につけようと日々努力する 心構えがまるで違う。 これが大事だ。 これはわしが言った言葉だが、お主によく当てはまる。それにお主は立ち止まるという選択を捨てた。それにより一戦一戦確実に強くなれようしどうやらお主は人に好かれやすい 色んな人にアドバイスを貰うなりすると良かろう あの痴女、いや小娘とかに聞けばある程度は教えてくれよう」

 

 一瞬、遠坂の事を痴女って言ったな。だけど、彼女の激励は嬉しかった。確かにその選択は捨てた。それは今も変わらない、ならば彼女の期待に応えられるよう努力しよう。

 そう心に決め、まだ敵がいるので一通り倒そう。そう足を進めた途中300PPTとエーテルの欠片を入手した。 正直ありがたいと思い、少し休憩しているとさっき倒した敵が復活していた。

 

 「どうやらある程度時間がたつと復活してくるようじゃな。だが、これでお主はさらに経験が積めるな」

 

 彼女は自分に笑顔でこう言ってくれた。地道だが確実に強くなれる、後は自分次第だな。そう考えをまとめ、範囲内の敵を全部倒しては休憩しまた倒すを何回かしてアリーナを出た。

 

 だが彼は知らない その決意、意志、覚悟とは呼べないが強い気持ちが本物かどうかが試されることを。

 

 対戦相手が発表されると端末にメールが届いてので指定された場所で確認した瞬間驚きを隠せなかった。何故ならそこには自分の名前と

 

 「マスター:間桐慎二

  決戦場:一の月想海」

 

 短い付き合いだが親友の名があったからだ。




感想、コメントお待ちしています(返せるかは分かりませんが)
誤字脱字があれば遠慮なく教えてください

ちなみにこの話で出てきた長椅子は西洋の王様とかが座っている椅子というイメージです


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初戦開始

投稿します~
お気に入りが六件に増えてました とてもうれしいです
未熟ですがコツコツと投稿させていただきます


 今、自分たちは購買部にいる。理由は簡単、アリーナで慎二との戦闘に備えてアイテムの購入と作戦会議をしている。

 これをする理由は少し遡る。慎二との対戦が決まった時、慎二が自分に何か話し、アリーナに向かって行った。ちなみに慎二を見てア―チャ―は

 

 「あやつ、とんだ小物だな」

 

 と辛口のコメントを放っていた。

 まぁ何であれ、対戦する以上格上であることは変わりない。

 それにア―チャ―は全てEなので今のままでは勝ち目がない。なのでアリーナに入る前に作戦を考えるため、購買部に行った。

 

 とまぁこんな感じだ。そして考え付いた作戦は至ってシンプル。「セラフの介入まで持ちこたえる」だ。暗号鍵(トリガー)の事を聞いてた際、アリーナでのサーヴァント同士の戦闘は禁止されていないが一定のタイミングで介入し、強制的に中止させられると言っていたのでそれをふまえた作戦だ。それにア―チャ―曰く

 

 「アリーナでのサーヴァント同士の戦闘は相手の情報を得ることを第一に考えておくと良い。学園側では手に入らない情報は手に入るからな。それにアリーナは一日一回しか入れないから見落としのない様気をつけよ」

 

 そう話し終えると準備を整え、アリーナへ向かった。

 

 

 「ふむ、あやつが居る様だな。というかトリガーを取ったのならすぐ引き返せば良いものを、奴は何を考えておるのだ?」

 

 アリーナに入った瞬間、慎二の気配を察知した様だが引き返した方が良いと言ったのはやはり情報を隠すためだろうか。

 

 「その通りじゃ。情報を隠し、入手していけばそれだけ優位になる。(いくさ)は情報戦よ。情報を制する者が戦を制するからな。だと言うのにわざわざこちらを待っておるのは不思議よな」

 

 それもそうだが、とりあえずここで考えても仕方ないから先に進もう。トリガーを取らない事には対戦を何をない。

 

 「そうじゃな。第一鍵(プライマリトリガー)を取るついでに情報を頂くか」

 

 よほど慎二が嫌いなんだな。そう思い先に進むと蜂の(エネミー)が居た所に慎二と顔の刀傷が目立つ女性が立っていた。慎二がこちらに気付くと

 

 「遅かったじゃないか岸波! あまりにもモタモタしちゃってるから僕はトリガーをゲットしちゃったよ!」

 

 と言い端末をこちらに自慢げに見せた。端末の中央にカードキーの様な物が入る穴が二つあり、左側にカードキーが刺さっていた。成程、トリガーを手に入れると自動的に端末に収められるのか。てかわざわざ自慢する為に残ってたの?それに順番なんて関係なかった様な

 

 「妨害するだけならまだ分からなくもないが自慢する為に残ってたならとんだ幼稚な発想じゃな。あやつの頭の中は空なのか?」

 

 等とア―チャ―は言っているが慎二は聞こえていないのか高笑いを続けてた。この中で空気を読めていないのは慎二だけだろう。

 

 「どうせ僕の勝ちは決まってるし僕のサーヴァントを見せてやるよ。トリガーを手に入れられないなら今ゲームオーバーになるのも同じことだしさ。遠慮なくやっちゃってよ!!」

 

 そう言い終えると隣の女性が両手に拳銃を持った状態で前に出てきた。ア―チャ―も刀を抜いて警戒していると

 

 「おや、もうお終いにしていいのかい?もったいないねぇ~ ほら、うちのマスターは坊やも知っての通り人間付き合いがヘッタクソだから坊やとは珍しく意気投合してたから平和的解決も考えてたんだがねぇ~?」

 

 「な、何僕の分析してるんだよお前!あいつはライバルに過ぎないんだから早く痛めつけてやってよ!」

 

 「あの二人はコントでもしておるのかのう?」

 

 うん、自分もそう思ってしまった。どうもあの女性と慎二はある意味良いコンビネーションなのだろう。姉弟という関係が意外と合いそうな感じがしてやまない。

 

 「まったく素直じゃないねぇ。だが自称親友を叩きのめす性根の悪さはアタシ好みだ。いい悪党っぷりだよ慎二、報酬をたっぷりと用意しておきな!」

 

 そう言って両手に持っていたクラッシクな拳銃を構えて引き金を引いた。銃声からして一発、こちらに向かって放たれた銃弾を

 

 「甘いな」

 

 ア―チャ―が抜いていた刀で弾き、地を蹴って慎二のサーヴァントとの距離を詰めようと突き進んだ。それに対して慎二のサーヴァントは接近を拒むかの様に銃で連射して対抗した。それでもア―チャ―は刀で自分に当たりそうな弾を弾きながら進み、刀の間合いに入ると

 

 「ふっ!!」

 

 と刀を慎二のサーヴァントに振り下ろしたが

 

 「危ないねぇ」

 

 その一撃を普通に両手の銃で受け止めて鍔迫り合いに持ち込んでいた。

 

 「中々いい腕をしているじゃないさあ。だがまだまだ!」

 

 鍔迫り合いから距離を置こうとア―チャ―に蹴りを入れようとしたがそれよりも早くア―チャ―が後ろに跳んでそれを回避した。そして着地すると

 

 「危ないのう。距離を空ける為蹴り等をしてくるだろうと思っておったおかげで対策出来たから良かった。来ると解れば怖くないものよ」

 

 「いいのかい? 距離を空ければあんたが不利になるだけだよ?」

 

 「その挑発には乗らぬよ。わしは来る弾を弾き続けるだけだがな」

 

 とア―チャ―が構え直した瞬間、空間が赤く染まり

 

 『これ以上のアリーナでの戦闘は禁止されています。継続するならペナルティを加え、強制的に戦闘を終了させます』

 

 無機質な声がアリーナに響いた。

 

 「と言う訳らしい。この場はこれにて終いにしよう」

 

 「チッ、セラフに感知されたか。てかお前、あいつにダメージを与えられてないじゃないか!やっつけろって言ったはずだろ!」

 

 「それについてはあっちの技術の高さと予想以上のセラフの介入の速さだからあたしに言われてもねえ。だが良いじゃないか!ここで倒しても明日から只々暇になるだけだ。それはそれでつまらないしねぇ」

 

 「まぁいい、僕の勝ちは揺るがないんだ。岸波、お前はごみの様に這いつくばっていればいいのさ!泣いて頼めば子分にしてやってもいいぜ?」

 

 さすがにイラッとしてしまい

 

 「確かに今この場(・・・・)では慎二、俺は君に勝てないだろうね」

 

 「なんだ分かってるじゃないか だっ「でも」・・・え?」

 

 まさか途中で遮られるとは思っていなかったのだろう。慎二は呆けた声と表情でこちらを見、二人のサーヴァントもこちらを見ている。次に何を言うか期待している目だった。正直人に注目されることが少なかったから少し緊張したが

 

 「勝負に約束された勝利はない。それを慎二、君に勝って証明するよ」

 

 これは慎二に対しての挑発でもあり、自分の意志宣言だ。それに慎二は自己中心的で他者を見下す性格にプライドが高いから挑発に乗りやすいと思っていたけど、どうやらその考えは当たってたみたいだ。現に慎二は顔を怒りで真っ赤に染めていた。

 

 「アッハッハッハ! なんだい慎二ィ!!あんたの親友、中々いい男じゃないさ。本当あんたにはもったいないくらいな相手だね」

 

 「ふん、最良のセイバ―(・・・・・・・)を引いたからっていい気になるなよ。いつだって勝利は僕に微笑んでいるんだからな。変えようのない現実ってやつを教えてやるよ」

 

 そう言ってアリーナから姿を消した。多分帰還用のアイテムを使ったのだろう。トリガーを取ったのでアリーナに居る必要はなかったようだし、そう思っているとア―チャ―がじーっとこっちを見ていたので首を傾げると

 

 「さっきの挑発は中々良かったぞ!流石わしが見込んだ男じゃ。胸がすっとした。今回はセラフの介入が早かったが次はこうはいかなかろう。今日は二つの良い収穫があったな」

 

 一つは慎二のサーヴァントの情報が少し手に入ったことだろうがもう一つは多分

 

 「ああ。あの小僧、わしをセイバ―と勘違いしておったな。剣が使えるからと言ってセイバ―とは限らんのにもう決めつけるとは気が早いのう」

 

 確かに慎二は最良のセイバ―を引いたって言っていた。これでこちらの情報は多少漏れにくいと思うが油断は出来ない。さて、トリガーを取ってエネミーを倒して経験を積まないと。情報戦で勝っていても実力差は経験でしか対応できない。

 

 「そうじゃな。トリガーを取れず、不戦敗は避けたい。トリガーを取ってマイルームで作戦を立てるとしよう」

 

 そうだね。そう言ってアリーナの奥へ進んだ

 

 

 トリガーを無事に獲得出来、他にも礼装鳳凰のマフラーと何故か竹刀を入手した。礼装は装備することでコードキャストという魔術が使えるようになり、戦闘でサポート出来るとア―チャ―から教えてもらった。

 詳しく調べると今回入手した礼装は回復ができるのですぐ装備した。竹刀に関しては全く分からないのでとりあえずNPCとかに聞いてみよう その後エネミーを倒しまくって経験を積むを数回繰り返してアリーナを出た。

 

 

 

 マイルームに戻り、今日得た慎二のサーヴァントの情報を振り返る。

 得た情報は二丁拳銃の使い手ぐらいだ。

 

 「これだけでもクラスをある程度絞る事は出来よう。セイバ―、ランサ―、キャスタ―、バ―サ―カ―はまずあり得ん。よってアサシン、ライダ―、そしてわしと同じア―チャ―の三つが候補なのだが、正直アサシンは微妙じゃな」

 

 「どうして?アサシンで二丁拳銃の使い手はいそうだけど?」

 

 「アサシンは名前の通り暗殺者、よって奇襲や不意打ちを得意とするから正面から戦うのは不利じゃし何よりあの小僧が見せびらかせた時、服装とか見たがアサシンらしい所は無かったからな。まぁとりあえずこの三つに絞っておこう。後は情報を手に入れてからじゃな。さて明日に備え今日は寝るとしようかの」

 

 分かった。今日は色々と疲れたのでア―チャ―にお休みと言ってベットに横になるとすぐ深い眠りに落ちた。




戦闘描写は難しいですね
感想、コメントお待ちしてます


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反撃開始

投稿します。
中々思うようには投稿出来ませんね。
少しずつ頑張ります。 それとコメント、アドバイスありがとうございます。


トリガーも無事にゲットでき、第一層のエネミーにもほぼ圧勝できる様になった。多分第一層は肩慣らしだと思うけど苦戦しなくなったのは喜ばしい。経験はものを言うとは本当だと心から思った。

 

 「今の所礼装を使う場面がないのは良いのか悪いのか分からぬところだがのう。しかし、昨日のあの小僧の阿呆さには笑ったものよな。こっちは楽して情報を手に入れられたが、あの小僧は自分で自分の首を絞めておることに気付かぬのか?」

 

 ああ、この間慎二と遠坂が話してた件だな。確かにあれは迂闊すぎると思う。あそこまで情報を溢してくれるとは思ってもいなかった。そこで得た情報は「無敵艦隊」、このキーワードで慎二のサーヴァントのクラスはライダ―の線が強くなった。

 

 「後は船の名前等が分かれば情報戦はこちらの勝利だが、そう都合の良い事は無かろう。焦らず地道に情報を集めよう」

 

 確かにそれが確実だね。とりあえず図書室に行って情報を集めてからアリーナに向かおう。そう話して図書室に行く途中、遠坂に会った。

 

 「あら岸波君、調子はどう?」

 

 周りは皆敵だというのにこうして気軽に話しかけてくれる存在は正直ありがたい。遠坂の問いには「何とか大丈夫」と答え、昨日の情報を引き出してくれた事へのお礼を言う。

 

 「あれは彼が緊張感が無いだけよ。礼を言われる筋合いはないわ」

 

 それでもお礼を言わないと。ア―チャ―の言っていた事が本当だという事が確信出来たのは遠坂のおかげだ。自分では理解していてもいざとなると不安が残っていたから昨日の件は大きなものだから。後、遠坂に質問しないと。

 

 「サーヴァントの能力を強化するにはどうすれば良いんだ?」

 

 正直今のままでは勝ち目がない。何せ能力全部Eだから実戦に不安が残るしア―チャ―全力を出せていないことが心苦しかったからだ。

 

 「サーヴァントの強化?それなら教会へ行くといいわ。あそこで改竄を繰り返せばあなたのサーヴァントの本来の力を取り戻せるかもしれないわよ」

 

 教会か。確かにまだ行ったことが無かったな。今のうちに聞けることは聞こうと話していると、

 

 「ごきげんよう」

 

 声が聞こえたのでそちらを見ると一人の少年と騎士の青年が立っていた。少年の方は確か見覚えがある。名前は確か、

 

 「ハーウェイが来るとは知っていたけどまさかあなたが来るとはね。レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ・・・!」

 

 そう、レオだ。確か予選の時、転校生でクラスに来ていた。そして自分が本選に残るきっかけにもなった少年。

 

 「レオで良いですよ、遠坂さん。直接お会いするのは初めてですね。貴方ほどの人が参加しているとは楽しみです」

 

 「・・・いいわ地上での借り、天上で返してあげる。それに魔術師(ウィザード)としての腕前ならこっちに一日の長がある・・・!」

 

 二人はこの聖杯戦争で初対面だが、聖杯戦争関係なく敵対関係のようだ。そう考えていると、

 

 「あなたは岸波白野さんですね。この聖杯戦争で僕はあなたが最も興味深い。ガウェイン、紹介を」

 

 そう言うと騎士の青年が前に出てきて、

 

 「従者(サーヴァント)のガウェインと申します。以後、お見知りおきを。どうか我が主の良き好敵手であらん事を」

 

 そう青年は告げた。しかしガウェインはクラス名ではなく真名だろう。明かせるものは全て明かすというのが彼、レオのやり方らしい。

 

 「では、また。貴方と会える事を楽しみにしています」

 

 そう言ってレオはガウェインを連れ、去って行った。

 

 「上等!私も楽しくなって来たわ。じゃあ岸波君、またね」

 

 そう言って遠坂も去って行った。自分は取り残されてしまったが当初の目的通り図書室に向かうことにした。それに教会にもいかないと。そう思い、足を進めた。

 

 図書室に入るとそこには慎二が居た。こちらに気付くと見下した顔で、

 

 「やぁ君も情報収集かい。僕も君の情報はしっかりと集めているから、くれぐれも手を抜かないでくれよな。それとあの海賊(・・)女に関する本は残念ながらアリーナに隠蔽済みさ。最弱マスターの君に見つけられるかな?そろそろ一太刀ぐらい入れて僕を楽しませてくれよ」

 

 そう言って笑いながら退室していった。てか、今物凄い事を耳にしたが・・・アリーナに本を隠蔽したはともかく確か、

 

 「海賊女と言っておったな。小僧のサーヴァントはほぼライダ―と見て間違いなかろう。あの小僧の口の軽さは異常よな。まぁ反面教師には相応しいがな」

 

 とりあえず慎二のサーヴァントはライダ―として、ガウェインの情報を探しておこう。備えあれば憂いなしと言うし、

 

 「そうじゃな。いずれ戦う相手じゃ、知ってい置いても損は無かろう」

 

 ア―チャ―の同意もあったし、少し調べてみるかと本棚を物色した。

 

 

 

 一通り情報収集をし、教会へ向かおうと一階に降りると、

 

 「あ!岸波君、ちょうど良かった~」

 

 そう声をかけて来たのは藤村先生だ。何か用事だろうか?

 

 「私の竹刀を見なかった?どこかに落としちゃって探してるんだけど」

 

 竹刀・・・そういえば第一層で手に入れていたな、そう思って竹刀を出して手渡した。

 

 「これですか?」

 

 「そう、これ!あなたの所に在ったのね!!見つけてくれてありがとう」

 

 まぁ、喜んでくれたのは嬉しい。正直使い道が分からなかったので持ち主に返せるなら返しておこう。

 

 「それと、もう一つお願いしてもいい?みかんを探してきて欲しんだけど・・・駄目かな?」

 

 みかん・・・アリーナにあるのか?まぁ竹刀があったから可能性は高いけど、多分大丈夫だろう。

 

 「探索のついでで良ければ良いですよ」

 

 「それでも構わないわ。引き受けてくれてありがとう。それじゃ私は仕事があるからまたね~!」

 

 そう言ってどこかへ走り去って行ってしまった。ついでだから何とかなるだろう。さて、教会へ行こうとすると端末にメールが届いたのだろう、着信音が聞こえた。メールを開くと、

 

 「第二層にて第二鍵(セカンダドリガー)生成」

 

 短い文章だがどうやらアリーナに新しい場所が出来たのだろう。多分、慎二はこの第二層に隠したのだろうから妨害もあるし、エネミーも強くなっているだろうから強化は必須だ。端末をポケットに入れ教会へ向かった。

 

 

 

 

 教会の中に入ると得体のしれない何かと鮮やかな赤髪の女性と青髪の女性が居た。

 

 「はぁい、ようこそ教会へ。君も魂の改竄に来たのかな?」

 

 「君は確か・・・なんだったかな。ま、細かいことはいいだろう」

 

 魂の改竄・・・さっき遠坂が言っていたサーヴァントの強化の事で間違いないのだろうか?

 

 「まぁそんな所ね。少しは知っているって感じかしら」

 

 「君が強くなるだけサーヴァントの能力を引き出せると言った所だな」

 

 成程。これは利用しない手はない。今の自分は最弱、強くなれるなら使わなければ。それにア―チャ―は本来の力を出せていない。これで少しでも力を取り戻すことが出来れば良いが。

 

 「失われた霊格を取り戻す事位ならその女でも出来るさ。正直その女はこういう繊細な事は不向きだからな。そのくらいの事は不安が残るが可能だよ」

 

 「不安が残るとか失礼ね。何もしない人に言われたくないわ」

 

 なんか空気がギスギスしてきたぞ。と、とりあえずその改竄と言うのをお願いしよう。このままだと居心地が悪いし。

 

 「では、お願いします」

 

 「はいは~い。じゃあサーヴァントを中央の所に来させて」

 

 指示を出されその通りにすると、赤髪の女性の手元にキーボードが出現し、何やら打っている。何がなんやら分からないが、一先ず彼女を信頼しようと見守ることにした。

 

 

 

 

 改竄も無事に終わり、今は購買部にいる。目的は回復アイテムと帰還用アイテムの購入だ。それとア―チャ―の事も聞こう。

 

 「調子はどう?」

 

 「問題はない。むしろ調子が良すぎて困惑しておる状態だ。これであのライダ―に遅れは取るまい。お主の鍛錬の成果を見せつけてやろう」

 

 慎二のサーヴァントはライダ―確定なんだね。でもまぁ艦隊、そして海賊という情報からして確かにライダ―だろう。後は船の名前が分かれば真名や宝具の情報を得られるかもしれない。

 

 「そうじゃな。では第二層に行くとしよう」

 

 アイテムの購入も済んだし、行くか。

 

 

 

 

 

 第二層は景色はあるが、海の底の様な景色で沈没船ばかりでより「死」を連想してしまう。さて、慎二が隠した本を探すのとトリガーの収得、そして実戦での経験を積む等とやる事はたくさんだ。

 

 「エネミーも強くなっておろう。油断は禁物だぞ」

 

 そのアドバイスを受け、気を引き締めて先へ進んだ。

 

 今の所戦ったエネミーは、第一層にもいた盾の形の敵INSPIRE(インスパイア)、第二層で初めて見た魚っぽい形のVIPER(バイパー)、牛型のCLUSTER HORN(クラスター ホーン)を倒して進むと二手に別れた道に出たので右へ進んだ。理由は勘である。

 

 「何とも根拠のない理由よな」

 

 考えても分からないなら即決断した方がいい、時間も惜しいしね。そんな話をしながら進むと一つの沈没船の前で足が止まった。なんか目立つアイテムボックスがあるからだ。もしかして、あれか?

 

 「分からんが調べる価値はあろう。さっき見えない床があったから行く道があるかもな」

 

 確かに。目に見えるものが真実とは限らないとはこのことだろう。船が見える方の壁に手を添え、一つずつ歩きながら確かめると、ある壁で手が奥に入った。ここだ。

 

 「では進もう。しかしあの小僧、気配はあるが妨害に来ぬな。見つからない自信があるのか?だとしたら哀れよな」

 

 確かに妨害はなかったなと思いながら船の内部に乗り込み、アイテムボックスを開くと羊皮紙に書かれた何かの手記の本だ。開いてみると古すぎてなのか、それとも慎二が消去しようとしてなのか分からないが消えかかっていたが「黄金の鹿号(ゴールデン ハインド)」という船の名前が分かった。これは真名、宝具につながる情報をゲット出来た・・・いや、真名は分かったが史実とは違うことに疑問を感じてやまない。

 

 「食い違う事くらいよくあろう。さて、あの小僧がこちらに向かってきておるぞ。迎え撃つか?」

 

 当然。一太刀入れて欲しいというリクエストに応えるとしよう。ついでに近くにあるアイテムボックスも回収。中身は聖者のモノクルだった。効果は後で調べるとしよう。

 

 通路に出ると、慎二が走ってきた。

 

 「こんな所まで探すなんて随分必死じゃないか」

 

 「小僧、いつもの余裕はどこへ行った?まさか焦っている訳ではあるまいなぁ?」

 

 慎二の言葉にア―チャ―は挑発で返す。その挑発に慎二は焦りながら、

 

 「は、はぁ!!?何で僕が焦らなきゃなんないの!?い、言い掛かりも程ほどにしなよ。僕は何時だって余裕さ」

 

 「焦りが言葉や他の全てに出てきておるぞ小僧。しっかしこんな小物と契約するとは運が無いな・・・ライダ―?」

 

 「!!?」

 

 ア―チャ―がクラス名を言った瞬間、慎二は顔を真っ青に染めるが

 

 「アッハッハ!いやあーバレちまったか~いつかバレるとは思ってたけどねぇ~」

 

 ライダ―は豪快に笑い、まさに余裕だった。

 

 「さあ~てどうする慎二ィ~?状況はこっちが不利だよ?」

 

 「はっ情報がバレたってここで倒せば問題ないさ!やっちまえライダ―!!」

 

 「了解!!さぁ~て覚悟はいいかい?坊やたち!!」

 

 そう慎二が言うとライダ―は二丁拳銃を構え、銃弾を放った。初めて戦った時とは違い、ライダ―は油断しておらず、連射して来た。

 

 「ふむ、前回よりは此方を警戒しておるな。だが、わしらはその上を行くぞ!」

 

 そう言って抜いていた刀で銃弾を弾きながら前回同様ライダ―との距離を詰めていく。だが、前回と違うのは、

 

 「チッ!!前回よりも疾くなってきてるねぇ!」

 

 「油断、慢心は大敗を招く毒よ。貴様のマスターはそれを理解できておらぬな」

 

 そう言い合いながら距離を詰めると、

 

 「はっ!!」

 

 と言って、刃を横にした状態で突きをした。

 

 「甘いね!!」

 

 そう言ってライダ―はア―チャ―の左へ避けた。

 

 「甘いのは貴様だ、ライダ―!!」

 

 そう言うと刃を横に滑らせ、ライダ―に迫った。これはライダ―を含め、ここに居る全員が驚きを隠せなかった。

 

 「チッ!!」

 

 舌打ちをしながら後ろへ跳んだ。躱されたと思ったが、

 

 「浅かったか。運が良いな貴様」

 

 と言ったのでライダ―を見ると、腹部に切られた傷があった。

 

 「はっ!こいつは驚いた・・・。少し見ない間に随分成長したね。さて、こっちも使わせてもらうよ!」

 

 傷を片手で抑えながら立つと

 

 「砲撃用意!」

 

 そう言って横に避けると4門の大砲が出現した。それを見た瞬間、嫌な予感がしたので、念話を送った。

 

 (ア―チャ―!!後ろに跳ぶんだ!タイミングは任せて!)

 

 (分かった!信じておるぞ)

 

 その信頼に応えられるよう、タイミングを計る。

 

 「さあて・・・藻屑と消えな!」

 

 そう言って砲撃を始めた。まだ・・・まだ・・まだ・、そう思って計っていると、

 

 (今だ!!後ろに思いっきり跳べ!)

 

 そう念話で指示を送り、ア―チャ―が後方に跳んだ瞬間、大砲の弾が着弾した。

 

 「やったか!?」

 

 そう慎二が言った瞬間、煙が晴れ、現実を見せる。

 

 「そ、そんな・・・傷一つもないなんて!?」

 

 「へぇ~・・中々いい読みしてるじゃないさぁ」

 

 そこには傷一つなく自分の傍に立つア―チャ―の姿があった。

 

 「少し肝が冷えたぞ。だが・・・貴様らは連携も碌に出来ぬのか?さて、小僧さっき図書室で一太刀入れて欲しいと言っておったなぁ?」

 

 

 と、慎二を挑発する。

 

 「う、うるさい!!今のはマグレだ!ライダ―、さっさとあいつらを叩きのめせ!」

 

 そう慎二が指示をした瞬間、

 

 『これ以上アリーナでの戦闘は禁止されています。継続するならペナルティを加え、強制的に戦闘を終了させます』

 

 無機質な声がアリーナに響き、空間が赤く染まった。セラフの介入だろう。これ以上の戦闘は出来ない。

 

 「う、嘘だ・・・っ。この僕が傷を受けるだけじゃなく、岸波にダメージを与えられなかったなんて・・・!」

 

 「慎二ィ・・・今回はあたし達の負けだよ。しっかし予想以上の成長だ。これは次は本気(・・)でやらないとマズイねぇ」

 

 「ふ、ふん!!ここで負けたからって決戦では圧勝してやるよ!岸波!この程度で調子に乗るなよ」

 

 そう言って慎二たちはアリーナから姿を消した。

 

 「何と言うか。あの小僧、サーヴァント頼りで碌な連携も出来ぬとは。実力、才能はあってもそれを使えなければいみもない・・・。しかし」

 

 そう言って自分に笑顔を向けると、

 

 「あの砲撃のタイミングを見抜くとは驚いたぞ!今までの鍛錬のおかげかもしれんな」

 

 確かにそれもある。だけど何故かあのライダ―の砲撃が来る瞬間、何となく弾が来るタイミングが頭をよぎったし、弾の弾道も見えた。

 

 「案外感じる力と目が良いのかもしれんのう。今回はそれに助けられたな。これからもそれを磨いて行くと良かろう」

 

 そうだね。ア―チャ―の言った通り、今のままで満足せず磨きをかけよう。

 

 「それで良い。少なくともあの小僧の様にはなるな。さて、トリガーを取りに行くとしよう」

 

 了解。トリガーを取って、決戦に備えよう。そう話して、アリーナの奥へ進んだ。

 

 

 セカンダトリガーも無事に入手完了。そして礼装守り刀とみかんもゲット。守り刀の効果はダメージを与えるのとSKILLスタンと書かれてあった。(ちなみに聖者のモノクルはフィールド上にいるエネミーのレベルが分かるという正直微妙なものだった)

 

 「スキルはわしらサーヴァント全員がそれぞれ攻撃、補助をもっている。攻撃スキルはさっきのライダ―の大砲による砲撃といった所だな。それを封じるのは結構使えるぞ」

 

 よし、決戦で使う礼装は決まった。しかし・・・何でアリーナにみかんがあるんだ?いやまぁ、竹刀があったから他にもあるだろうなとは思ったけど・・・あれか?アリーナはどこぞのロボットのハイスペックなポケットか何かなのか!?

 

 「わしにいわれてもな・・・。さて後は決戦までいつも通り鍛錬あるのみ。情報収集も忘れずにな」

 

 そうだね。まあ慎二の事だから何かと妨害してきそうだし、その時に対処するのと油断しないこと。じゃあ、おやすみ。そう言ってベットに横になってその日を終了した。




お気に入りが十件突入!
正直これは驚きました。これからも頑張りますので感想、コメントなどよろしくお願いします。


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決戦と別れ

何とか十一月中に一回戦を終わらせて良かったです。



 今日が決戦日。今日、自分か慎二、どちらかが死ぬ。

 

 「決戦の時が来たな。お主は仮初であれ友とあ戦わねばならぬ。・・・つらいか?」

 

 ア―チャ―が声を掛けてくれた。そんなア―チャ―の気遣いに正直に答える。

 

 「つらいさ。これが夢であって欲しいなんて何度も思ったよ。でも、これは現実だし何より俺は立ち止まるという選択を捨てて前に進む事を選んだ。だから引くつもりはない」

 

 そうだ。あの時、前に進む事を選んでア―チャ―と契約し、この聖杯戦争に参加したんだ。だったら尚の事引く訳には行かない。

 

 「そうか。それを聞いて安心したぞ。決戦までまだ時間がある。マイルームで作戦を立ててから教会で改竄し、戦場へ向かおうかのう」

 

 ア―チャ―の提案で一度マイルームに戻った。マイルームに入ると、いつも通りの風景に一つ、新しい物が追加されていた。それは棚で、色んな茶器が飾られていた。ちなみに、これは藤村先生に頼まれていたみかんを渡したらくれた物で、ア―チャ―はとても気に入っていた。まあ、少し変わったがそれ以外はそのままなので決戦の作戦を話し合い、教会へ向かった。

 

 教会での改竄を終わらせ、一階に行くと言峰神父がこちらに気付くと、

 

 「ようこそ、決戦の地へ。扉は一つ、再び校舎に戻れるのも一組。殺し合う覚悟を決めたなら、闘技場(コロッセオ)の扉を開こう」

 

 声を掛けて来た。自分は迷わず、

 

 「問題ありません」

 

 そう答えると、神父は歪んだ笑みを浮かべ、

 

 「よかろう、若き闘志よ。決戦の扉は今開かれた。再びこの校舎に戻れる事をささやかながら祈ろう。---存分に殺し合え」

 

 そう言い横にずれると、扉はエレベーターの入り口に変わり、開いた。

 

 「勝つぞ、ア―チャ―」

 

 「無論じゃ」

 

 そう短い対話をし、扉の中に入った。

 

 

 何処まで降りるのだろうかと考えていると、中が明るくなり、視線を感じたのでそっちを向くと慎二とライダ―が居た。

 

 「何だ、逃げずにちゃんと来たんだ?ああ、そう言えば学校でも生真面目さだけが取り柄だったけ。でも、僕には勝てやしないよ。僕と僕のエル・ドラゴは無敵なんだからね」

 

 「まだ勝負は始まってすらいないよ。それに勝ち負けは戦いの最後に分かるものだ。始まってすらいないのに勝てないとか言わない方が良いと思うぞ慎二」

 

 「その通りじゃ。さて、貴様は運が良くても人との出会いの運はすこぶる悪いのうライダ―。・・・いや、フランシス・ドレイク(・・・・・ ・・・・)?」

 

 ア―チャ―がそう言った瞬間、慎二の表情は余裕から驚愕へと一変した。情報は完全に隠蔽出来たと思い込んでいたのだろう。

 

 「あたしは愉しく酔えればいいのさ。そもそもえり好みなんざあたしの趣味じゃないしね」

 

 「そうか。それが貴様のやり方ならわしは何を言うつもりはないが、つまらんとだけ言わせてもらおう」

 

 そう言って場が静かになったが、再び慎二がニヤニヤしながらこちらに話しかけようとしていた。内容は何となく考え付くが、

 

 「なぁ、この戦い「勝ちを譲れとかわざと負けないか?とかなら聞くつもりはないよ慎二」」

 

 もしやと思って行ったことだが、また当たってしまったようだ。慎二は口を開けてポカンとしていた。そんな中、ゴトンッと音が鳴り目の前の扉が開いた。どうやら決戦場に着いたようだ。

 

 「慎二、俺は全力で君を倒しに行くから」

 

 そう言って、先に扉の先へ進んだ。

 

 

 決戦場は沈没船なのだが、第二層にあったものとは比べもののない位の大きさだった。そして自分と慎二が互いに向き合うように立つと、サーヴァント達は臨戦態勢に入った。

 

 「はん、調子に乗りやがって。もうすぐ変えようのない現実ってやつを見せてやるよ。間違っても手を抜くなよエル・ドラゴ。この僕に歯向かった時点でかける情けなんて一つもないんだからな」

 

 「慎二、弱い犬程よく吠えるって言葉知ってる?第三者から見たらその言葉君によく当てはまってると思うんだけど?」

 

 「ハハハ!言われてるねぇ慎二。さぁて、この戦いを愉しむとしようか。正直あたしはあんた達を高く買ってたんだけどねぇ」

 

 「賊に高く買われても嬉しくないがな。この決戦にて貴様らという腐れ縁とやらを断ち切ってやるとするかの」

 

 「そいつは残念だ。さあ破産する覚悟は出来てるかい?一切合財派手に散らかそうじゃないか!---砲撃用意!」

 

 そう言うとライダ―は第二層での戦闘で見せた倍以上の数のカルバリン砲を出し勝負に出ていた。だが、今なら対応策が出来ているので問題ない。

 

 「藻屑と消えな!」「そうはさせない!」

 

 砲撃が始まる前に左手をライダ―に向けて構え、コードを紡ぐ。

 

 「CODE---hack(16)」

 

 その瞬間、左手から魔力の塊がライダ―に向けて放たれ、被弾した。

 

 「ハッ。こんなの痛くも痒くも・・・!?」

 

 ダメージが軽く、すぐに砲撃を始めようとしたが体が動かないことに驚いていた。それもそうだろう。このコードキャストは状況次第で相手の行動を妨害する術だからだ。そして、この一瞬を狙っていた。

 

 (ア―チャ―、いまだ!)

 

 (うむ!了解じゃ!)

 

 そう念話をすると、ア―チャ―は左手を構え、ドール戦で使った火縄銃を出すと、

 

 「魔弾・火柱」

 

 そう言い、引き金を引く。破裂音と共に放たれた弾は次の瞬間、炎を纏い狙った所へ一直線に向かう。

 

「はっ!どこを狙ってるんだい?そんなんじゃ「慎二ィイイイ!!後ろに跳びな!!」・・・はぁ?」

 

 こちらに悪態をつこうとしたが途中でライダ―が慎二に警告したが慎二はその意味が返事をした瞬間、ライダ―のカルバリン砲を中心に大爆発は発生した。自分達は距離が空いていたので大丈夫だが、ライダ―は大ダメージ確定だろう。

 

 「ここまでは良い流れじゃな。だがここからが本番だぞ。気を引き締めよ」

 

 そうだ。ここまでは作戦で立てた対策で何とかなっているが、勝負はまだ分からない。そう思いながらしばらくすると煙が晴れた。

 

 「いやぁ、驚いた。まさかあたしのカルバリン砲が利用されるとは思ってもみなかった。しっかしあんた、やっぱりセイバ―じゃなかったみたいだねぇ」

 

 「いつわしがセイバ―と言ったかのう?そっちの勝手な思い込みであろう?」

 

 ライダ―が出て来たので見ると、予想通り大ダメージを受けたみたいだ。しかも左腕はさっきの爆風で骨折したのだろうか銃を握っておらず、左側を中心に火傷等のダメージが目立っていた。ちなみに慎二は爆風で飛ばされたのだろう、ライダ―から離れた所で尻餅をついていた。

 

 「お、お前、セイバ―のくせに銃を使うとか反則だろう!?それとエル・ドラゴ!何大ダメージくらってんだよ!それでも僕のサーヴァントか!?」

 

 「そもそもセイバ―じゃないし反則でもないよ。君の勝手な思い込みに過ぎないけどね。それと、何のサポートもしてないのに色々言うのはおかしいんじゃないか?慎二」

 

 「そうじゃな。この戦いは情報も大事じゃが連携も必須よ。小僧、貴様はただ見ているだけで何もしておらん。そんな貴様がライダ―を責める事など出来ぬよ」

 

 「う、うるさい!エル・ドラゴ、宝具の開帳を許す!僕の力の程ってやつを見せてやれ!」

 

 「了解!!さぁ勝ちをいただこうかねえ!!」

 

 「させると思うか!」

 

 宝具・・・サーヴァントそれぞれが持っている切り札。決戦前に作戦会議をしていた時、ア―チャ―が言っていたのを思い出した。ア―チャ―はそれを阻止しようと銃で牽制したが、それよりも早くライダ―が上に跳ぶと一隻のガレオン船、黄金の鹿号(ゴールデン ハインド)と艦隊が出現した。

 

 「あたしの名前を覚えて逝きな!テメロッソ・エルドラゴ、太陽を落とした女ってな!」

 

 そう言って右手に持っていた銃を放つと一斉砲撃が始まり、周りは煙に包まれ、炎の海と化していった。

 

 

 

 「ははははは!これが僕の力だ!岸波のくせに僕に勝つなんて不可能なんだよ!」

 

 黄金の鹿号の船首で炎の海と化した戦場を見下しながら慎二は高笑いをしていたが、隣にいるライダ―は、

 

 (さっきのダメージで本来の威力より落ちている。もしかしたら・・・)

 

 痛みに耐えながら冷静に状況を分析していた。すると、

 

 ストンッ

 

 背後に何か音がした。ライダ―はそれを確認しようと振り返ると目にしたのはさっきまで下の戦場にいたはずの岸波白野達だった。応戦しようと構えようとしたその時、

 

 「隙だらけじゃよ」

 

 その言葉と共に銃弾が貫いた。

 

 「やれやれ、これはしてやられたねぇ」

 

 そう言いながら仰向けに倒れた。

 

 

 倒れたと同時に黄金の鹿号は消え、景色は元の戦場に戻っていた。だがよく見るとさっきの一斉砲撃の傷跡が残っていたが、それ以外はそのままだった。

 

 「は・・・?おい、何してんだよ。立てよライダ―!何寝てんだよ!?それと何で宝具を消したんだ!?さっさとあいつらを叩きのめせよ!」

 

 「あ―それは無理だ。さっきの一発で心臓を打ち抜かれてるし。これ以上の戦闘の続行は出来ないよ。それにこの体もそろそろ消えるっぽいしね?」

 

 「ふざけるな!勝手に一人で消える気か!?僕はお前のせいで負けたのに!」

 

 「・・・・ああ、あたしのせいかもね。実力、天運、はたまた執念、こっちの油断。負けた原因はいくらでも口にできるが・・・ま、何でもいいさね。人生の勝ち負けに真の意味での偶然なんてありゃしない」

 

 数多の海を越え、幾度となく戦火を交えてきた彼女だからこそ言えるその言葉はとても重く感じた。多分、この言葉の重さを慎二は理解できていないだろう。

 

 「敗者は敗れるべくして敗れる。こっちの方が強いように見えても、きっと何かが劣っていたんだよ。あたしも、あんたもね」

 

 「な、なに他人事みたいに言ってんだよ!僕は完璧だった!誰にも劣ってなんかいない!くそっ、こんな筈じゃなかったのに・・・とんだ外れサーヴァントを引かされた!僕が負けるなんて・・・こんなゲームつまらない、つまらない!」

 

 「見苦しいのう。勝ちの分かった勝負程つまらんものはないというのに。見ていて吐き気がする。(マスター)さっさと校舎に戻るとしよう。ここに居る意味も価値もない」

 

 そう言ってエレベーターの方へ踵を返し、歩き始めた。自分もそれに続く。

 

 「あ、ま、待てよ、おい!お前に話があるんだ」

 

 慎二の声を聞いて自分は歩みを止め体ごと振り返る。ア―チャ―も歩みを止めているが背を向けたまま視線は慎二を見ている状態だ。

 

 「僕に勝ちを譲らないか?だだ、だってほら、君は偶然勝っただけじゃないか!二回戦じゃ絶対に、100%負ける。でも、僕ならきっと勝ってみせる」

 

 その提案にため息が出てしまった。やっぱりさっきのライダ―の言葉の重さを理解出来ていなかったらしい。それは偶然と言った時点で明らかだ。それにさっき自分が言った事すら理解出来ていなかった事に呆れてしまう。

 

 「慎二、俺は決戦前に言った筈だ、そういうのは聞かないと。それに二回戦じゃ負けるなんて根拠もない。絶対だとか100%とかそういう約束された勝利なんてないって俺は最初に言ったんだけどね」

 

 そう言って慎二に背を向け、エレベーターに向かって歩き出す。しかしア―チャ―はその場に留まっていたのが不思議だった。

 

 「あ、オイ待てよ!こんな簡単な計算も分からないのかよ!聖杯を分けてやるって言ってるのに!・・・ヒィ!」

 

 こちらに近づこうとしていたのだろうが、途中で悲鳴が聞こえたのでもう一度振り返ると慎二は顔を真っ青にしてその場で尻餅をついていた。答えは簡単。ア―チャ―が慎二の足元を銃で撃っていたからだ。

 

 「調子に乗るなよ餓鬼が。勝者に勝ちを譲れと?貴様どれだけ相手を見下しておるのだ?」

 

 普段自分に見せる彼女とは違い、その言葉と気迫には怒りと殺意が込められていた。自分もその気迫に恐怖を感じざるを得なかった。

 

 「それ以上はやめておきな慎二ィ。今更何をしようと勝敗は決してるし、何より惨めに見えるだけだよ?」

 

 「う、うるさい!僕はお前のせいで負けたんだ!」

 

 「いい加減黙れ。そして認めろ。貴様の敗因は貴様自身にあると」

 

 そう言うとア―チャ―は慎二に背を向け、自分の方へ歩み寄ってきた。

 

 「くそ!!良いか岸波!こんなゲームで勝ったからって調子に乗るな・・・・・ヒ、ヒィィィイ!な、なんだよこれっ!ぼ、僕の身体が崩れていく!?し、知らないぞこんなアウトの仕方!?」

 

 右腕が黒く変色した状態でそう慎二が言った瞬間、赤い壁が自分達と慎二達の間を遮った時、慎二達の側が赤く染まり、慎二の身体が右腕同様黒く変色し、紫の亀裂が慎二を蝕んでいった。これが敗者の末路、電脳死。今回は勝ったが、これからの戦いで自分が負ければああなるのか。

 

 「聖杯戦争で敗れた者は死ぬ。あんたもマスターとしてそれだけは聞いてたはずだよ慎二」

 

 そしていつの間にか立ち上がっていたライダ―も同じだが、慎二より蝕まれている個所も多く、浸食速度も慎二より早かった。

 

 「はぁ!?し、死ぬなんてそんなのよくある脅しなんだろ?電脳死とかそんなの本当なわけ・・・」

 

 「そりゃ死ぬだろうさ。戦争に負けるってことは普通死ぬだろ?戦争を舐めてんのかい?大体ね此処に入った時点でお前ら全員死んでいるようなもんだ。生きて帰れるのはホントに一人だけなんだよ」

 

 そう、慎二は気付くキッカケはたくさんあった筈だが、自己陶酔による現実逃避でそれらを見逃していた。それ故にこの結果を招いたと言っても過言ではない。

 

 「な・・・やだよ。今更そんな事言ってんなよ!ゲームだろ、これゲームなんだろ!?なあ!!?」

 

 「いいや、これは現実さ。仮想(ゲーム)だと思ってんのはあんただけだよ。あの坊や達でさえ死を覚悟していたんだしね」

 

 「う・・・嘘だ。嘘だよな?嘘って言えよ!!なあ!?ああ・・・止まらないよコレ!サーヴァントはマスターを助けてくれるんだろ!?何とかしてくれよ!」

 

 「無理無理。ルールは絶対だ、例外なんて無いよ。だが別に文句を言うような事じゃないだろ?最後は聖杯戦争とか関係なく全員あの世行きなんだからな!」

 

 そう言って豪快に笑うライダ―。そして現実を突きつける。

 

 「一番初めに契約した時言ったろう、坊や?『覚悟しとけよ、勝とうが負けようが悪党の最後は笑っちまうほど惨めなもんだ』てねぇ!」

 

 そう慎二に言った後、ライダ―は自分達の方を見た。もう身体のほとんどは蝕まれ、顔も半分以上亀裂が走った状態ゆえ、こっちを満足に見る事も出来ていないだろう。

 

 「しっかしあんた達には驚きだよ。この短期間でこれだけ強くなるとはね。うちの雇い主(マスター)の慢心も含め予想以上だ。それと、どうやってあたしの船に乗れたんだい?」

 

 「あれは運が良かった、そうとしか言えんな」

 

 そうだ。本当に砲弾に当たっていてもおかしくなかった。たまたま運が良かった、それ以外に言葉が見つからなかった。(方法が無かったので、ア―チャ―が自分を抱えて飛んで行ったに過ぎない)

 

 「ハハハ!そっちもそれなりの運を持っているってことかい。ともあれ、よい航海を。次があるならもっと強くなってあたしを愉しませてくれよ?それか坊やと契約するってのも案外悪くないかもねぇ?悪党とかは別に坊やは原石だから、その輝きがどんなものか見てみたいしね」

 

 最後の最後に、そんな話を笑顔で語りながらライダ―、世界一周を果たした海賊、フランシス・ドレイクは消滅した。そして慎二の未来もこれで確定した。

 

 「お、おい!何勝手に消えてんだよ!助けてくれよ!そんなのってないだろ!?そ、そうだお前!お前が助けろよ!お前が負けないからこんな事になったんだぞ!?責任とって早く助け・・・ひ、消える!やだ、やだよ!友達だろ?友達だっただろ!?助けてくれよぉ!」

 

 ライダ―の消滅を目の当たりにし、必死に助けを求めてくる。だが、

 

 「無理に決まっておろう?この壁はわしらサーヴァントでも壊せんからな。仮に貴様が助かってもサーヴァントがおらぬのにどうする気だ?どっちにしろ同じ結末に過ぎん。諦めるんじゃな。いくぞ主」

 

 そうア―チャ―は冷たく言い放ち、エレベーターへ向かう。自分も少し遅れて歩み始めると、

 

 「お、おい、待ってくれよ!助けてくれよ!!」

 

 「慎二、彼女がああいった以上、助けられるようなルール等は無いという事だ。俺に出来る事は何もない」

 

 そう言った後、少し間を空け、

 

 「君からの怒り、憎しみ、恨み等は甘んじて受けよう。でも俺だって死にたくない。・・・・さようなら、慎二。他の場所で出会っていたら、本当の親友になれたのかもしれないね」

 

 別れの言葉を告げ、ア―チャ―の待っているエレベーターへ歩き始める。

 

 「そんな・・・おい!待て、待ってくれよ!!あ、ああ、あああ---!なんで?おかしいぞこれ!こちら側の体にまで感覚が流れてくる。僕が死んでしまう!助けてよお!本当の僕はまだ八歳なんだぞ!?こんな所でまだ死にたくな」

 

 -消えた。間桐慎二という全てが、完全に。ひとかけらの痕跡もなく・・・・・残ったのは勝者のみ。

 

 こうして聖杯戦争の一回戦は幕を閉じた。

 

 

 校舎へ戻ってるエレベーターの中で、目を閉じると思い出すのは、

 

 「たすけてよお!本当の僕はまだ八歳なんだぞ!?こんな所でまだ死にたくな」

 

 最後に聞こえた慎二の悲鳴の声だ。背を向けていたから顔は見えなかったが、泣き崩れていたんだろう。そう思っていると、

 

 ポタッ

 

 何か水の様なものが落ちた音が聞こえたので目を開けると、目から涙が零れ落ちていた。戦う覚悟を決めたはずなのにと思いながら涙をふくが、とめどなく流れ始めた。

 

 「主、泣いておるのか?」

 

 ア―チャ―が心配するかの様に声を掛けて来てくれた。

 

 「覚悟はしたはずなのに、おかしいよね?自分でも分からないよ」

 

 涙を拭きながら答えると、ア―チャ―は優しい声で

 

 「良い。お主は友と殺し合うというつらい立場にいたのだ。涙が出るのも無理はない。校舎に戻るまでの間、存分に涙を流すが良い」

 

 「!!?」

 

 その言葉を皮切りに、一気に涙があふれ出た。ア―チャ―に背を向け、声を押し殺して泣いた。何故涙が出て来たのか、今なら分かる。理由は罪悪感と後悔だ。慎二を助けられなかった事への後悔、何も出来なかった事への罪悪感。それが一気に心を満たしたからだ。

 

 「その涙、悲しみは背負ってゆくが良い。勝者が敗者に出来る事なぞその人物がいたという事を忘れない、それぐらいしかないから」

 

 分かった。今の自分にはそれしか出来ないというなら、それを行おう。自分が負けるその時まで、自分が倒した相手を覚えておこう。そう決意すると涙が止まり、それと同時にエレベーターが止まった。

 

 「さぁ、マイルームに戻り、明日に備えよう。次も勝つぞ!」

 

 そう笑顔で言い、手を差し伸べてくれたので気持ちが少し軽くなった気がした。その手を握り、マイルームに向かった。




感想、コメントお待ちしてます。多分返すのが遅くなると思いますが・・・
これからも頑張って投稿していきますので応援宜しくお願いします。


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二回戦開始

久々にこちらの投稿。
更新していたからなのかこっちより短編の方が結構読まれていた。


慎二を倒した次の日、教室で待機していると端末に着信音が鳴ったので見てみると対戦相手の発表というメールが届いた。

 

 「ふむ、対戦相手が発表されたか。では見に行くとしようかの」

 

 それに肯き、指定された場所へ行き、自分の名前を探すと、

 

 「マスター:ダン・ブラックモア

  決戦場:二の月想海」

 

 「・・・ふむ、次の相手は君か」

 

 そう言い自分に声を掛けて来たのは老人だった。軍人らしい黒い衣服に緑の鎧、迷彩服の様なカラーリングに白い髪と髭が特徴だった。本来年を取ると衰えを感じさせるが、このブラックモアという人物からはそんなものは一切感じなかった。

 

 「若いな。実戦の経験等まるで無いな。だが相手の風貌に臆さない点とその覚悟を決めた目は評価できるが・・・、若干の迷いを感じるな。君の迷いが決戦日までに晴れるといいが」

 

 そう言ってダン・ブラックモアは去っていった。

 

 「今回の相手は老将か。前回の小僧なんかと比べものにならん相手じゃ。気を引き締めよ。お主との経験の差は天と地程あるが、勝ち目がない訳ではないからな」

 

 相手がカスタムアバターを使っている時点で格上なのは慎二も同じだが、相手は情報の重さを理解しているだろう。その点の違いだけで十分慎二よりも強敵という事は理解できた。でも、一つだけ気になる事を彼は言っていた。若干の迷いを感じる・・・これが何を意味しているのか今の自分にはまるで分からなかった。

 

 「分からん事を今考えても仕方なかろう。それにそういう事は戦いの最中に分かるかもしれん。今は目の前の事に集中せよ」

 

 それもそうだね。多分もう少ししたらトリガーの件のメールも来るだろう、今はそっちに重点を置くべきなのかもしれない。彼の言葉の真意はそれからだ。

 そう思いを固め、まず購買へ向かうため、その場を後にした。

 

 一階に降りると遠坂が話しかけて来た。

 

 「あなたの二回戦の相手、聞いたわ。もう現役じゃないけどダンは名のある軍人よ。西欧財閥の一角を担うある王国の狙撃手だった。敵の司令官を狙撃する為、匍匐前進で一㎞以上進む事なんて日常茶飯事。並みの精神力じゃ出来ない事よ。例えあんたのサーヴァントの宝具がどんなに強力なものだとしてもこのままじゃあっさりサー・ダンに殺されるわよ。対策は出来ているのかしら?」

 

 「一回戦の時と同じ様に情報を集めてから考えるよ。それと一回戦で慎二は宝具を使ってきたけど俺は使わなかったよ」

 

 遠坂の問いかけに答えると驚愕した表情で

 

 「宝具を使わないで実力で勝ったの!?私はてっきり宝具頼みでライダ―を倒したと思ってたわ。ちょっと見直した」

 

 そう遠坂は言って笑顔を見せた。正直ドキッとしてしまった。

 

 「遠坂は笑顔の方が似合ってるね。かわいいよ」

 

 そう言ったら遠坂は顔を一瞬で真っ赤にし、ア―チャ―は冷ややかな視線で此方を見、周りに居る他のマスター達はおおっ、と感嘆の声を出していた。何故?

 

 「と、とにかく一回戦の時と同じだと思ってたら大間違いだってこと!!それだけは肝に銘じておきなさいよね!」

 

 遠坂は顔を真っ赤にしたままそう言い放つと階段を走りあがっていった。何か変な事でも言ったかなと思い、

 

 「俺、遠坂に何か変な事でも言った?」

 

 「お主、将来大物になりそうじゃな」

 

 「?有難うって言えばいいのか?」

 

 「褒めておらぬよ」

 

 呆れた表情でため息をついていた。何でさ?とにかく当初の目的通り購買に行こう。そして教会前の花壇でこれからの事を話そう。そう言って足を進めた。

 

 

 購買の商品は少し増えていた。アイテムでは治療薬、礼装は癒しの香木というのだった。どちらも状態変化に対する物だった。そして今、教会前の花壇にいる。ここは殆どマスターやNPCが来ない所なので結構気に入ってる。

 

 「この二つからすると、これから先毒などを使う相手と当たる可能性があるってことなのかな?」

 

 「それは分からんが高かろう。備えあれば憂いなしと言うしな。だが今は目の前の敵の事だけを考えよ。目の前の敵さえ見えていない者がその先にいる相手を倒すことは不可能だからな」

 

 確かにその通りだ。今はダン・ブラックモアとの対戦での事を考えよう。先の事はその時々で考えれば良い。そんなやり取りをしていると、

 

 「ごきげんようよ」

 

 声が聞こえたので振り返ると紫の髪と褐色肌が特徴的な少女が立っていたが、表情は人形の様な感じがした。てかいつの間に背後に?

 

 「私はラニ、あなたや他のマスター達と同じ聖杯を求めて参加した者です。警戒しないで下さい。私は対戦者でないので大丈夫ですよ」

 

 そう言ったので少し緊張を解く。だが今は対戦たいてではないがこの先戦うかもしれないので最低限の警戒はしておこう。

 

 「あなたを照らす星を見ていました。他のマスターも同様に詠んだのですが、あなたの星だけが霞に隠れて詠めませんでした。こんなことは初めてです」

 

 そうは言われてもなあ・・・。自分の名前以外まるで思い出せないのにそんな事言われてもそれがどういう事なのかピンと来ない。

 

 「では単刀直入に聞きます。どうか答えて欲しい、あなたは何なんですか?」

 

 うん、こっちにはお構いなく進めるのね、何となく分かってたよ。それはともかく何者なのかと聞かれている以上、答える事は決まっている。

 

 「岸波白野、一人のマスターだ」

 

 他の事は思い出せないがこれだけは言える。なのでそう答えた。

 

 「確かにそれ以外わしらが言える事は無いな。小娘、それを聞く必要性があるのか?」

 

 ア―チャ―がラニに質問した。確かに何かあるのか?

 

 「師は言いました。『人形である私に命を入れる者がいるのか見よ』と。師の言った事の意味を知るためにはもっと人間を知る必要があるのです。他のマスター達やブラックモア・・・そしてあなたの事を」

 

 (ラニは自身を人形って言ってるけど、パッと見た感じそんな風には見えないけどなぁ)

 

 (それだけ精密に造られたという事だろう。驚きを隠せんな)

 

 そんなやり取りを念話でしているとラニが

 

 「協力を要請します。蔵書の巨人(アトラス)の最後の末として私はその価値を示したい。ブラックモアの星を私にも襲えて下さい。いかがでしょう?彼の星を詠み、知る事はあなたにも有益だと思いますが?」

 

 (どう思う、ア―チャ―?)

 

 (うむ、こちらの情報がこの小娘から漏れる可能性が無きにも在らずだが、対戦相手の情報が知れるのは大きい。それとお主はまだまだ弱い。向こうが協力を要請してくれるならそれを受けた方が良いな)

 

 ア―チャ―の言う通り自分はまだ弱い。一回戦はほぼ慎二の自滅の様なものだから運が良かったに過ぎない。まあ運も実力の内というが、これから先はそうは行かないだろう。

 

 「分かった。でもどうすればいいんだ?」

 

 「何か彼の遺物を見つけたら私に見せて下さい。星の巡りの良い晩に詠み、あなたに情報を提供出来ると思います」

 

 彼の遺物、ブラックモアのサーヴァントの何かなのか?少なくとも自分は彼のサーヴァントを見ていないのでどう入手するかが問題だな。

 

 「では、ごきげんよう」

 

 ラニが別れの言葉を告げ終えた直後、突然風が吹き荒れ彼女のスカートを捲りあげ、衝撃の光景が目に入った。

 

 「」

 

 「」

 

 あまりの衝撃に絶句してしまった。それは隣にいるア―チャ―も同じだった。

 

 「・・・ごきげんよう」

 

 だがラニは気にした様子もなくもう一度告げると校舎へ戻っていった。

 

 「・・・ア―チャ―」

 

 「・・何じゃ?」

 

 「・・・・世界って広いんだね」

 

 「・・・・そうじゃな」

 

 そんなやり取りを暫く呆けていた。

 

 

 その後、アリーナに向かう途中、トリガーが出来たというメールを確認し、アリーナの入り口近くまで行くと話し声が聞こえた。一つはダン・ブラックモアだが、もう一つの声は初めて聴くな。

 

 「奴のサーヴァントかもしれん。情報を話してくれるやもしれんから耳を澄ませ、息をひそめよ」

 

 ア―チャ―が小声で話したのでその通りにした。

 

 「二回戦の相手を確認した。まだ若く、未熟な少年だったが戦士に相応しい者だった。一回戦のようにはいかんぞ。油断はするな」

 

 「へいへい、分かってますって。どんな相手だろうとやる事は変わりませんよ。シンプルかつ手加減なしで殺りますよ。ま、ともあれ一回戦で戦った連中より精神的にマシなんじゃないすかね」

 

 「戦場でそんな考えをしていると足をすくわれるぞ。この戦いは連携が肝要だ。私の指示に従え」

 

 「はいはい、分かりましたよ」

 

 そう言ってアリーナに入っていった。

 

 「今の会話だけじゃどのクラスか分からなかったね」

 

 「そうか?少なくとも正攻法を得意としている感じはせんかったぞ。どうする?入ると鉢合わせるが」

 

 トリガーとか鍛錬などの事もあるから入らない訳には行かないだろう。いざとなったら全力で耐えて何とかやり過ごすしかないな。そう話し、アリーナに入った。

 

 

 アリーナに入った瞬間、纏わり付くような空気に直感が告げた。

 

 立ち止まるな、早くここから離れろ。

 

 「毒を仕掛けて来るとはな。しかもこのアリーナ全体となると奴の宝具によるものであろう。このくらい大規模であれば基点がある筈じゃ。それを見つけ破壊するぞ」

 

 了解。しかし即効性の毒じゃなくて良かった。全身に行き渡る前に早く見つけよう。でも視界の景色は白、黒、紫という何とも不気味で恐怖を煽る。だがアリーナの壁から向こう側が見えるから事細かに探す必要が無いのが幸いだ。これならすぐ見つけられそうだ。

 

 少し進むと矢が刺さった樹が見えた。

 

 「あの樹が基点だろうな、さっさと壊すぞ」

 

 奥の方でなくて助かったけど、少なくともダンとあのサーヴァントがいるかもしれない。警戒しておかないと。

 

 一の月想海の一層にいたKLEIN(クライン)と色違いのMEBIUS(メビウス)を倒して先に進むと壁越しでダンと彼のサーヴァントであろう青年が見えた。何か口論をしているように見えなくもないが・・・

 

 「気づかれぬうちに近付いて情報を得るとしようかの」

 

 その意見に賛成だ。話が聞こえる場所まで移動しよう。息をひそめて二人の近くまで足を進めた。

 

 「これはどういう事だ?」

 

 「へ?どうもこうも旦那を勝たせる為に結界を張ったんですが?」

 

 ダンの詰め寄った質問に緑色の外套を羽織った青年は何の悪びれもなく返答した。

 

 「決戦まで待ってるとか正気じゃねーし?奴らが勝手におっちぬんなら俺らも楽で万々歳しょ?」

 

 「誰がそのような真似をしろと命じた。死肉を漁る禿鷹にも一握りの矜持はあるのだぞ」

 

 ダンの怒気が強くなった。この二人は自分が望む戦い方が極端と言っても良い程正反対だ。

 

 「イチイの毒はこの戦いには不要だ。決して使うなと命じた筈だが・・・どうにもお前には誇りと言うものが欠落しているな」

 

 「誇りねぇ・・・・・、俺にそんなもん求められても困るんですけど。ってか、それで勝てるならいいんですけど?ほーんと、誇りで敵が倒れてくれるならそりゃ最強だ!だが悪いね、俺はその域の達人じゃねぇ訳で。きちんと毒を盛って殺すリアリストなんすよ」

 

 「あ奴の言い分は分からんでもないな。戦は常に正々堂々と戦うものではない。奇襲も勝つ為に必要よ」

 

 ア―チャ―の言う通り現実とはそういうものなのだろう。ダンもその事は理解しているのだろうが騎士足らんと戦うことを望んでいるからこそ揉めているのだろう。

 

 「ふむ、成程な。条約違反。奇襲。裏切り。そう言った策に頼るのがお前の戦いか」

 

 ダンの声のトーンが一段低くなった。それを表すとしたら侮蔑、落胆等を感じた。

 

 「今更結界を解け、とは言わぬが次に信義にもとる事があった時はー」

 

 「はいはい」

 

 ダンの疑念の籠った言葉に渋々返事をする声を最後に二人の気配が消えた。退出したのだろう。さて、今のうちにあの樹を破壊しよう。

 

 

 

 基点を壊し、一回戦の時と同じ様にトリガーの入手とエネミーを倒しての鍛錬をしてキリの良いところでアリーナを出てマイルームへ戻り、今日の事を振り返る。今回の相手は主従関係に亀裂が生じていた。

 

 「毒を使いこなす相手か。まだクラスを絞れる段階ではないな。だが焦らずに行くとしようかの」

 

 ア―チャ―がそう言った後、明日する事等の確認をし、少し喋って横になった。毒を受けた影響で体が思った以上疲弊していたのだろう。すぐに深い眠りへと落ちて行った。




少しずつ頑張って更新していきますので応援お願いします。

ちなみにセミラミスと組んだらどうなるのか興味はありますが多分自分では書けないと思います。FGOでも実装して欲しいですね。


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奇襲

新年おめでとうございます。
今年も頑張って投稿していきますのでよろしくお願いします。


またもや大河先生からお願い事をされ、アリーナでの鍛錬をしながら探すと、お願いされていた柿一箱が普通にあった。本当何でもありだなおい。そしてアリーナを探索していると、あの樹があった所に一本の矢が落ちていた。これは何だろう?

 

 「あのサーヴァントの物かもしれん。入手しておいた方が良かろう」

 

 ア―チャ―の言葉を信じ、その矢を入手した。そしてキリの良い所だったので、マイルームへ戻り、一日を終えた。

 

 

 

 次の日、教室から廊下へ出ると

 

 「(マスター)何やら嫌な気配がしておる。気をつけよ」

 

 ア―チャ―が姿を隠したまま助言してくれた。自分には分からないが、彼女の言う事だ、注意しておこう。とりあえず情報を集めよう。

 

 一階に降りるといつもは人がいるはずなのに、誰一人居なかった。

 

 「変じゃな、何人かはおる筈じゃが。もしやこの嫌な気配と関係あるのか?・・・まさか!?」

 

 そう言って姿を現し、戦闘態勢に移行した。それにつられて自分も端末から礼装を使用出来るよう構えた。

 すると突然、いや最初から出していたであろう敵意、殺意を強めた。その殺意に自分は飲まれ、呼吸すら出来ない状態まで追い込まれた。

 

 「しっかりせんか!!気を落ち着かせよ!」

 

 いつもなら彼女の叱咤で冷静になれるが今回はまるで駄目だった。こんな恐怖を、殺意をいつも感じていたのかと今考えさせられる。相手がどこに居るか分からないがア―チャ―に見える様小さく指をアリーナの方へ向けた。これには理由がある。さっき情報を集めている時、一成がこんな事を言っていた。

 

 「敵から逃げる様な場合があった場合、敵が狙いにくい場所へ行くのが基本だ。場所によって色々あるから覚えておけ」

 

 こんな事を言っていたからだ。今まさにこの状況にあっていた。てか一成、予知能力でもあるのか?ア―チャ―もその事を思い出したのだろう、こちらの意見に従ってくれた。

 

 「分かった。早く行くぞ!!」

 

 そう言ってこちらの手を握り、アリーナへと走り出した。突然の出来事ゆえ転びそうになったがすぐ立て直し、ア―チャ―に引っ張られるまま走り、アリーナへ向かった。

 

 

 

 アリーナに入り、ア―チャ―が手を放してくれた時、さっきまで自分に向けられていた殺気がほんの少しだけ緩んだ事で幾分か冷静になれた。今のうちに状況を再確認しておこう。

 

 「ア―チャ―、敵は?」

 

 「まだこちらに狙いを定め続けておるな。殺気で分かる。じゃがどこにおるか分からん。厄介じゃの」

 

 つまり、まだこちらが不利な状況に変わりないらしい。だが、こちらも只々やられる訳には行かない。こちらにも打破出来る事は可能だ。それは自分たちはこの階層を隅々まで歩いているのと、ア―チャ―の存在だ。

 

 「ア―チャ―、もしこの階層で奇襲を仕掛ける場合どういう場所を選ぶ?」

 

 「わしじゃったら柿の箱があった広間じゃな。退路も確保でき、四方八方から狙えるしな。多分相手もそこでこちらを狙うだろうな」

 

 彼女の視点での戦法等が自分にとってはとてもありがたかった。何せ自分は何も分からないんだ。彼女の助言で何回助けられた事だろう。

 

 「どうする?学園に戻る事は不可能だと思うけど?」

 

 「敵の策に嵌められるというのは非常に腹が立つが広間へ向かい、返り討ちにしてやろう。運が良ければ相手にペナルティを課せられよう」

 

 了解。とにかくそこへ向かおう。 そして足を進めた。

 

 

 

 相手の奇襲予想地点へ到着。ア―チャ―が警戒心を今までよりも強くしていると

 

 「予想通り来たな。飛んで火に居る夏の虫ってのはまさにあんたの様な奴の事を言うぜ」

 

 その言葉が聞こえた瞬間、ピッ、と何かが引き絞られ、放った物が風を切る音が聞こえた。

 

 「ふん、分かり易いものだな!!こんなもの防げと言っておる様なものじゃぞ!」

 

 その矢をア―チャ―が弾き落とした。だが、自分の腕に僅かながらの傷が一条刻まれていた。どうやら相手は矢を二本放ったのだろう、自分はそれに気づけなかった故避けられなかった。ただそれだけだ。

 

 「ごめん・・・ア―チャ―、足、引っ張っちゃって・・・・」

 

 そう言って倒れた。だがこの時相手は思いもしなかっただろう。このやり方で攻撃した事を後悔する事を。

 

 

 

 

 (よし、一丁あがり。今回も楽な作業だったぜ。さーて、とっとと帰るとしましょうか・・・・!!?)

 

 いつも通りの事をこなし、アリーナから出ようとした瞬間、気味の悪い感覚が自身を襲った。まるで絶対的捕食者に睨まれた獲物になったかと思うほど濃い殺気が自身に纏わりついていた。

 

 (ちょ、洒落になんないでしょこの殺気!!!!・・・まさか!!!?)

 

 自分達と相手の二人組しかこのアリーナに入れないのは知っているが、まさかここまでの殺気を出す奴だとは思ってもいなかったからだ。その相手を見る為振り返ると、アリーナの広間に居るエネミーが端に逃げていた。その殺気を出している少女が見えているかどうか分からないがこちらを見ていた。

 

 「成程、それほどまで死に急ぎたいか、そうかそうか、ならば―――」

 

 そう呟きながらこちらに両手に二丁、銃を構えると

 

 「決戦まで待つまでもない、今この場で死ぬが良い!!!」

 

 そう言って連射して来た。

 

 (ちょ、マジか!!?)

 

 幾ら当たる可能性は低いとはいえ銃弾が飛んで来たら誰だって驚くものだ。だが驚くのはまだこれからだった。

 

 「魔弾・黒炎」

 

 そう呟いた瞬間、放たれた銃弾に黒い炎が纏わりついてこちらに迫ってきた。

 

 (はぁ!!!?マジかよ!!)

 

 回避しながらそれに驚き、転げるようにその銃弾から逃れていたが銃弾が衣服を掠ったのだろう、黒い炎が自身に迫ってきた。それを消そうとその外套を地面に投げつけた。

 その瞬間、今まで誰も居なかった筈の場所から突然人影が現れた。その人物は炎を消そうと靴で踏み消していた。

 

 「ようやく姿を現したか。では、この場でその首をはねてやろう」

 

 そう言ってさっき銃を連射していた少女が見方次第では魅了させるような笑顔を向けていた。

 

 (こりゃヤベーな)

 

 そう思っていると、それとは別に驚くことが目に入った。

 

 

 

 少しの間、意識を失っていた。全身がさっき受けた毒に対してアラームの様に警報を鳴らしていてた。こみ上げる嘔吐感は堪えられない程じゃない。何とか立ち上がると

 

 「おいおいおい!!マジかよ!!」

 

 「主!!!大丈夫か!!」

 

 前見た青年が信じられないものを見るかのように驚き、ア―チャ―が心配そうに声を掛けて来た。

 

 「正直きつい。早く学園に戻ろう。相手のクラスが分かっただけでも良いと思う。このままだと、もう動けなくなる」

 

 その言葉を受け、ア―チャ―が視線を一時迷わせ、相手をキッ、と睨みつけると

 

 「貴様の顔は覚えたぞ、今回は見逃してやるが決戦にてその首を必ずはねてくれるわ!!」

 

 そう言ってア―チャ―はさっきと同様自分の手を握って出口へ走って行った。敵が攻撃してくると思ったがどうやら警戒しているのだろう、すんなり出口へ行け、アリーナを出た。

 

 

 相手の二人組がアリーナを出るのを確認するとどっと疲れた。

 

 (ったく、今回の相手は本当に驚かされてばかりだ。何せ銃を使ってくるわ、炎を操るわ、そして俺の毒を受けたのに立ち上がる奴らだったとはねぇ・・・・・)

 

 そんなことを考えながらふと自身のマスターの事を思い浮かべる。

 

 (あ~あ、本当何で俺なんかが旦那のサーヴァントに選ばれてのやら、だが負ける訳には行かねぇしな)

 

 そう心で気持ちを固めると、アリーナを出てから来るであろうマスターの説教を受けにマスターの元へ戻った。

 

 

 

 マイルームに戻るとア-チャ-が申し訳なさそうに声を掛けて来た。

 

 「すまん主、わしの至らぬばかりにお主に負担をかけてしもうた。この雪辱、必ずや晴らして見せよう」

 

 「いや、ア-チャ-のせいじゃないよ。恐怖で動けなかった俺の方が申し訳ない。それとあのサーヴァントのクラスはア-チャ-だ。まさか同じクラスのサーヴァントと当たるとは思いもしなかったな。しかも毒をメインに使ってくる相手だって事も分かっただけでも良い方だから」

 

 「そう言ってくれると助かる。明日は朝一番に保健室へ向かうとしよう。保険医がおるから何とかしてくれよう」

 

 明日するべき事を話して自分はすぐベットに横になった。だが横になってすぐ寝たから分からなかったが、ア-チャ-がこちらに申し訳なさそうに頭を下げていた事に気付かなかった。




短編の方が連載作品よりも読まれている事に複雑な心境を抱えている作者です。
本当文才が欲しいと思っております。それと一応考えているだけですが、白野をサーヴァント化させてEXTRAを書こうと思っていますが、マスターは誰にしようか考え中です。女性が良いなと思っていますが。



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先人の教え

久しぶりの更新です。仕事が忙しくて中々更新が出来ませんでした。
今回は短めになっています。


 

今日は朝から驚くことがあった。昨日受けた毒の治療の為保健室へ向かい、保健医の間桐桜の治療を受けている時、敵マスターダン・ブラックモアが保健室を訪ねて来たのだ。アーチャ-が警戒して姿を現したが彼は自分に謝罪をしに来たと述べたのだ。そして彼は自分のサーヴァントに何と令呪を使い行動の制限、そして宝具であろう名を述べそれを決戦以外での使用を永久に禁じたのだ。そして彼はこちらに頭を下げ保健室を去っていった。

 

 「ふむ、あ奴とは違い、あの老将は真の武人であったか。そして令呪を使い、なおかつペナルティでステータスを下がっている状況で尚勝つ覚悟が十分にあるという事か。この戦いはお主にとっては重い相手であろうな」

 

 アーチャーにここまで言わせたのは凄いとしか言えない。でも疑問が残る、何故令呪を使ったのかだ。これについてはお互い分からなかった。そして治療が終わると桜から

 

 「今日一日は安静にしてくださいね。たった一つしかない身体なんですから大事にしてくださいよ」

 

 と言われ、今日はマイルームに戻り、休むことにした。

 

 

 

 一日休むを身体を蝕んでいた毒は完全に消えていた。その事に驚きを安堵していると端末から電子音が鳴った。見てみるとトリガーが生成されたので第二層で取得する様にという事だった。昨日は治療で何も出来なかったのでこれが昨日じゃなくて良かったと内心安心した。後でアリーナに行くとして情報収集をしようとアーチャーに言ってみたらアーチャーも納得したのでマイルームを一緒に出た。

 

 

 特に何かを思った訳でもないが、教会前の花壇に足を進めたらそこには緑色の服に身を包んだ軍人、ダン・ブラックモアがそこにいた。彼がこちらに気付くと

 

 「君か。昨日はすまなかったな。あの傷が君の命に関わらなかったことが不幸中の幸いなのだろうが」

 

 そう話しかけて来た。そしてアーチャーが姿を現し、昨日自分たちが感じた疑問を彼に尋ねた。

 

 「老将よ。昨日の行為は人として立派ななものと言えよう。じゃが何故令呪を使ったのじゃ?使ってもこれと言って其方には何の得も無いのじゃぞ?」

 

 すると彼はこう答えた。

 

 「そうだな。自分でも昨日の事はどうかしていたと思っていた所だった。だがな、あの時はそれが当然だと思ったのだ。この戦いには女王陛下からたっての願いという事もあったのだが、わしにとっては初めての個人的(プライベート)な戦いだからな。昨日は当然の事の様にそうしたのだ。これが軍務として与えられたというのならばアーチャーのやり方を良しとし、あのような事はしなかったであろう。だが・・・今のわしは一人の騎士なのでな、そう思った時、不思議と妻の面影が頭を過ったのだ。彼女はそんなわしの行為を喜ぶのだろうか、とな」

 

 「ほう、妻子がおったのか」

 

 「子はいないさ。そしてわしは妻の顔や声、面影すら思い返す事が出来ん・・・・。少し考えれば当然であった。軍人として今まで行き、軍規に徹して来たのだからな。そこに(ひと)としての人生(こうふく)等立ち入る余地はないのだ。・・・・・・君も気を付けたまえ。結末は全て過程の産物に過ぎん。後悔は轍に咲く花の様なものだ、故に、だ、少年。己に恥じぬ行為だけが後頭の憂いから自身を開放する鍵なのだよ、その事をこの戦いを見て識るといい」

 

 誤りだったと感じた過程からは何も生み出さない。あるのは後悔だけ。誇れる過程の先にこそ聖杯を掴む道がある・・・・という事か。

 

 「らしくないな。つまらない話に付きあわせてしまったな、老人の独り言と笑うが良い」

 

 そう言って彼は去っていった。・・・自分はさっきの話を彼なりの助言として受け止めていた。彼ときちんと決戦を迎えられるようにしなければならないなと思い、アリーナへ向かおうとした時、

 

 「(マスター)、あの褐色露出娘にあの矢を見せてはどうだ?何か得られるかもしれんぞ?」

 

 褐色露出娘・・・・・ラニの事か。フォローしようと思ったけど・・・・・無理だな、うん。あれを見たら百人中百人がこんな評価を彼女にするだろう。彼女の師に常識ってものを教えるべきだと自分は思った。それは置いておくとして、それもそうだな。彼女も何か遺物を見せて欲しいって言っていたし、問題はないだろう。情報を得る為ラニを探すことにした。

 

 

 

 

 

 ラニを見つけ情報を得、アリーナでの鍛錬の後(もちろんトリガーとメガネは収得済み)マイルームへ戻った時、ラニから得た情報を思い出す。

 

 「時に汚名も負い、暗い闇に潜んだ人生。賞賛の影には自らの歩んだ道に対する苦渋の色が混じったそんな色が見えます。緑の衣装で森に溶け込み、陰から敵を射続けた姿・・・・・・・だからこそ憧憬が常に有るのかもしれませんね。陽光に照らされた偽りのない人生に」

 

 「道化を演じるしかなかった男、か。わしはわしなりに色んな人物を見て来たがあんな者はいなかったのう。じゃが、少しばかり奴の事が分かった気がするな」

 

 アーチャーはそんな事を言っていた。彼女もまた苛烈な人生を歩んだのだろう。だが、今の自分は彼女の事をまだ知らない。これから勝ち進んで行ければ分かるのだろうか。

 

 「しかし、奴が自分の口から自身に関する情報を発した事は嬉しい誤算じゃったな。そして奴のもう一つの宝具も分かったし、これで情報は揃った。後は鍛錬をきちんとし、作戦をしっかり立てて勝ちに行くかのう」

 

 シャーウッドの森、そして顔のない王(ノーフェイス・メイキング)、これらが当てはまる英雄は一人しかいない。・・・ロビンフッド、それが彼の真名だろう。決戦の日は確実に近付いて来ている。死にたくない・・・・・願いなんて持っていない自分がこのまま勝ち進められるか、いや、そもそもこの決戦に勝てるかどうかも分からないのだ。

 

 「…」

 

 サーヴァントは問題なくても、マスターに違いがありすぎる。ペナルティーの影響で本来のサーヴァントの力を引き出せない彼と違い、こっちは元から引き出せていないのだ。彼女は気にするなと言っていたけど、どうしてもその現実が頭の中から離れない。彼女に相応しいマスターになろうと心に決めていたけど、こうまで不安になるとは思わなかった。覚悟を決めたつもりだったけど今だ不安しかない自分が忌々しい。

 

 「スター、主!」

 

 アーチャーの呼び声にビクッと驚くと彼女はため息をつきながら

 

 「お主、また自分を責めておるだろう。それは気にするなと何度も言っておろう。それとお主は何でも一人で抱え込もうとする癖が有るな、お主にはわしが居るのだ。つらいことはわしに話せ、っと言ってもお主の場合は分かり易いがな。お主の鍛錬のおかげでわしも少しずつ力を取り戻してきておる。それで良いのだよ。だから今後己を責める事を辞めよ、良いな」

 

 本当に自分は分かり易いんだなと改めて思った。でも、彼女の言葉で少しだけ軽くなった気がする。まだ頼りないかもしれないけど、いつか彼女に相応しいマスターになってみせると改めて心に誓った。本当、彼女には助けられてばっかだな。

 

 「分かった、有難うアーチャー」

 

 そう言ってベットに横になった。負けるわけには行かなくなった。彼女のため、自身の心に誓った誓いの為、この決戦も勝つと思い、そのまま眠りに落ちた。




久々なのでちょっと変わった所があるかもしれませんがご了承ください。
さて、FGOの次のイベントは空の境界みたいですね。式はtypemoonで一番好きなキャラなので結構楽しみです。イベントで手に入ってほしいと心から思っています。

仕事が忙しいので更新もまちまちになりますが、頑張りますのでこれからも応援お願いします。
コメント、感想歓迎ですので宜しくお願いします。


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決戦と覚悟

久々の投稿です。


人との出会いは何とも不思議なものだ。その出会いによって多くを得、学び、進む事が出来る。さて、彼はこの戦いで出会った老騎士との出会いで何を得、学ぶのだろうか?

 

 

 今日が決戦日。また、自分は誰かを倒さなければならない。でも、足を止めようとは思わない。それは自分が倒した慎二の為なのか、それとも死にたくないからなのかは分からない。でも、今はそれに従おう。

 

 「準備は出来たか、主?トリガーも揃っておるし問題は無いな。さて、決戦の地へ向かおうとしようかの」

 

 アーチャーの声を聞き、マイルームを後にした。

 

 

 

 

 エレベーターが決戦の地へ向かってる途中、ダン・ブラックモアとそのサーヴァント、アーチャーが姿を見せた。

 

 「また会ったのう狙撃手よ。前に言った事を覚えておるか?決戦にてその首をはねると。あの時の宣言通り勝たせてもらうぞ!」

 

 「ハッ!上等!!随分と上から目線じゃねぇか。良いぜ、これは餞別だ、持ってる矢全ててめぇに打ち抜いてやるよ!!」

 

 「冷静になれアーチャー、お前らしくもない」

 

 「そうは言われてもねぇサーの旦那。俺の素性良く分かってるだろう?相手は何か王様っぽいんすよ、俺はそれを討つ側なんでね。だがまぁ、オーダーには従いますよ」

 

 そう言ってアーチャーは自分を見て

 

 「しかし少年、おたくは大変だねぇ。清々しい程王様気取りな奴が相方とは同情するよ」

 

 「大変だと思った事はない。今の自分があるのは彼女がいたからだ。彼女の助言などがあったから今、この場に立ててるんだ。俺は彼女を信じてるよ」

 

 「・・・へぇ~、そっちは大変仲が宜しい様ですね。まぁ如何でも良いか。どうせおたくらはここで消えるんだしな」

 

 「消えるつもりはない。俺は全力で勝ちを取りに行く」

 

 「その意気だ少年、わしもわしの流儀で全力で戦わせてもらおう」

 

 そうお互いが宣言し終えた時、エレベーターがゴトンッと音を立てた。決戦の地に着いたことを意味する。  さぁ、殺し合え。

 

 

 

 

 決戦の場所は塔の頂上だ。本来は地上にある物が海中、又は海底にあるとどこか不気味さと儚さを感じる。一回戦と同じ様に向かい合うように立った瞬間、サーヴァント達は武器を構えた。

 

 「ここで決めるぞアーチャー」

 

 「ああ、そうしようか。テメェもろとも(ひなどり)も射殺してやりますか。テメェにはキッツイお仕置きをしてやるよ」

 

 「仕置きを受けるのは貴様じゃ道化師。貴様の矢なぞ全てわしの炎で燃やし尽くしてくれるわ!!そしてわしの主を侮辱した罪は重いぞ!」

 

 「ってそこかい!怒るのは!!テメェどんだけマスター大好きなんだよ!?」

 

 「何を言っておる?わしは才ある者を愛する。そしてこの者はまだ未熟ながらもその才を磨こうと切磋琢磨しておるのだぞ?その行為は賞賛すべきであろう。それに今はひなどりでもいずれは大鳥となって飛び立つのが道理なのだからな。それに比べ、貴様の主はどうだ?死にかけ、嫌もう殆ど死んだ黒烏、この差は大きいぞ?」

 

 「成程、確かにそうだな。返す言葉が無いとはこの事か」

 

 「そりゃ違うぜ旦那、アンタの願いは人間として正しく全うなものだ。その願いを笑う権利なんて誰にもありゃしないんだよ」

 

 「別に貴様らの願いなんぞ如何でも良い。今重要なのは勝つか負けるかのどちらかよ。主を想うのなら見事、わしの首を取って見せよ!」

 

 そう言うとアーチャーは距離を詰めようと地を蹴った。相手も矢を放って応戦した。

 

 「チッ、銃を使うだけじゃなく接近戦も出来るとかお前、俺と同じアーチャーかよ!?」

 

 「貴様とわしを一緒にするな!たとえクラスが同じでもそれぞれ違いはあろう?それに弓なぞ時代遅れじゃ!!これからは銃じゃよ銃!」

 

 「それ絶対アーチャーじゃねーだろ!!?もう別のクラスになってんじゃねーか!」

 

 うん、声だけ聞いていたら何か仲の良い二人の口げんかをイメージ出来るんだけど、実際は片方は矢を放ち、片方はそれを弾くといった事をしてる。一回戦でも彼女はライダーの銃弾を刀で弾くといった事を普通にやっていたから今回も出来るだろうなぁと思っていたが、実際見ると言葉が出ない。

 

 「チッ、本当調子が狂うぜ、だがな!」

 

 そう言うと緑衣のアーチャーは突如こちらに矢を放つことをやめ、右腕を地面につけた。そして自分の魔力を地面に流し込んでいる。

 

 「何をする気か知らんが隙を見せるとは愚かじゃぞ!」

 

 そう言ってアーチャーは相手との距離を詰めようと地を蹴ったが、

 

 「何の策もなく突進して来る方が愚かなんだよ!そんじゃ、死にな」

 

 拳を地面を殴るかの様に叩きつけた。その瞬間、ここ何度も感じた嫌な予感がした。

 

 (アーチャー、何か来る!!後ろに思いっきり跳ぶんだ!)

 

 そう念話を送ると、アーチャーは一旦止まり、後ろに跳んだ。すると、

 

 

 ドォン、

 

 

 さっき後ろに跳ぶ時蹴った地面から何かが爆発したかの様な音がした。さっき魔力を流していたのはこの奇襲の為だったのか。

 

 「チッ、いい勘してやがるぜ。だが、今この状況はこっちの好機だぜ!」

 

 そう言って自分に弓を構え、矢を放とうとしていた。確かに今、アーチャーは上に跳んでいる為、たとえ銃で防ごうとしても撃ち漏らしがあれば自分たちの負けなのだ。

 

 「貴様の相手はこのわしじゃ!!よそ見をするとはいい度胸じゃのう!」

 

 その声を聞き、上に跳んでいるアーチャーにここに居る全員が目を向けた。するとアーチャーは両手に銃を持ち、緑衣のアーチャーに狙いを定めると、

 

 「魔弾・黒炎」

 

 そう言って銃を連射した。その瞬間、銃弾に黒い炎が纏わり、雨あられの如く緑衣のアーチャーに襲い掛かった。

 

 「クソッ、またあの技かよ!!」

 

 緑衣のアーチャーは舌打ちをしながらそれを横に逃げる事で回避しようとした。後ろには彼のマスターが居るので当たらない様にしたのだろう。だが、それだけでは彼女の攻撃からは逃れる事は出来ない。アーチャーは時に緑衣のアーチャーの行く先に撃ち、行くところを制限した。そんな中でも緑衣のアーチャーは回避しようと足掻く。だが、それもつかの間だった。銃弾の内の一発が彼のマントに当たり、黒い炎がマントを、そしてその持ち主を飲み込もうとした。

 

 「あーもうクッソ、またやられたぜ!」

 

 そう言ってマントを脱ぎ捨てた瞬間、数発がマントを貫き、それによって勢いを増した黒い炎によってマントは消し炭になった。

 

 「さて、これで貴様は身をひそめる事は出来なくなった。どうする?このままで終わりではなかろう?」

 

 着地し、それでも緑衣のアーチャーに狙いを定めたままアーチャーを挑発する。その挑発に緑衣のアーチャーは顔をしかめた。それもそうだろう、自分が最も得意とする戦い方を封じられたのだから。いまなら、

 

 「ダン・ブラックモア、俺はあなたに正面から勝負を挑む!!俺は、後悔したくない!」

 

 彼の流儀、それは騎士足らんとする戦い方だ。それで全力で戦うと言った。だからこそ自分もその流儀をにのって全力で戦う!!

 

 (迷いを捨てたか、岸波白野)

 

 「良いだろう。アーチャー、接近戦の準備は出来ているな?」

 

 「旦那、正気か!?あんたはどうしても勝ちたいんだろう!!?」

 

 「冷静になれアーチャー。お前の技量はわしが良く知っている。だがわしのサーヴァントである以上一人の騎士として振る舞って貰いたい。信頼しているよアーチャー」

 

 そう言って彼は自分のサーヴァントにコードキャストをかけた。彼は心から自分のサーヴァントを信頼している。例え戦い方が真逆であっても、でなければこんな言葉は出ない。それはアーチャーも分かっているだろう。

 

 「・・・・へっ、令呪を使う必要はないぜ、旦那(マスター)

 

 そう言ってナイフを両手に持って構えた。その行為にアーチャーは感心した様子で銃から刀に持ち替えた。

 

 「これでようやくわしらは対等になった。今はどんな気分じゃ?って聞くまでもないか」

 

 「酔狂なマスターにあてられた結果だけどな。だがまぁ、これはこれで楽しいぜ!」

 

 「であろうな。そういう顔をしておるぞ。誇りの為に誇りを捨てた皐月の王よ、今ここで雌雄を決しようぞ!!」

 

 「ハッ、上等!」

 

 互いにそう言い合うと、一緒のタイミングで地を蹴り、剣戟を始めた。緑衣のアーチャーは二本のナイフを生かして手数で攻めていたが、アーチャーはそれをいなし、受け流してカウンターをするという戦法で戦っていた。だが、長くとも短くてもとれた剣戟は唐突に終わりを向かえた。アーチャーが緑衣のアーチャーが持っているナイフの一本を弾き飛ばした。緑衣のアーチャーはすぐさま予備のナイフを取り出そうとした瞬間、

 

 「呪刀・黒魔」

 

 そう言った時、アーチャーが持っていた刀が黒い炎を纏った。先程銃で放った炎と同じだろう。そして、

 

 「消えい!」

 

 その叫び声と共に一閃が放たれた。緑衣のアーチャーも防ごうとしたが時すでに遅し。その一閃をモロに喰らった。

 

 

 これにより、この決戦の勝敗は決した。

 

 

 驚きとどこか天啓を見た様な面もちで自らを倒した自分達を見つめ、

 

 「・・・いや、そうか。そうだったな。わしもまだまだ未熟だったみたいだな。この聖杯戦争は普通の戦争とは違い、意志の強さではなく意志の質こそが問われ、進む力になるという事か」

 

 そして彼、ダン・ブラックモアはこう続けた。

 

 「わしが聖杯に願うのは亡くした妻を取り戻す・・・か。何とも愚かな勘違いをしていたのだろう。自らの生涯を軍に捧げ、軍人として生きる為に冷徹になったのだが、そんな男が・・・今までの事を捨て、個人の願いに固執していた。棚の奥の奥にしまいこんでいた騎士の誇りを持ち出し、一人の男として戦いに挑むなどと・・・・・本当に愚かだ」

 

 遺言の様に自分の事を話していた。・・・・・緑衣のアーチャーの言う通りその願いは全うなものだった。人は失って初めて大切な者等が分かる、という事だろう。

 

 「迷いながらも生きるが良い、若者よ。その迷いはいずれ敵を穿つ(うが)ための意志になる。努々(ゆめゆめ)忘れぬことだ」

 

 そして彼は自分のサーヴァントに顔を向け、

 

 「すまなかったなアーチャー。わしの我儘ゆえに戦い方を縛り、お前の矜持を汚してしまったな」

 

 「あー、別に良いっすよ。どうせ勝っても負けても最後には消えるんだしな。そりゃ願いらしきものはあったけど、楽しけりゃ基本オッケーなんすよ俺は。けど・・・」

 

 向き合っていた顔をそらし、わずかに照れたような表情をして

 

 「生前縁は無かったけど一度くらいは格好つけたかったんだよ、俺もな。・・・だから謝る必要なんかねぇんだ。十分、良い戦いだった。恥じる所何かどこにもねぇよ。生前の俺は大抵の物は手に入ったけどさ、どうしても手に入らなかったものがあった。最後にそれを掴ませてもらったさ。・・・・ありがとうよ旦那」

 

 感謝を述べ、彼はこの世界から完全に消失した。だが、その顔には悔いなど無かった。それを見届け、彼は自分に話しかけた。

 

 「白野君、最後に年寄りの戯言を聞いて欲しい。これから先誰を敵として迎えようとも誰を敵として討つ事になろうとも、必ずその結果を受け入れて欲しい。迷いも悔いも消えないのなら消さずともいい。ただ、結果を拒む事だけはしてはならない。それは、それまでの過程で得、培ってきた事を否定する事だ。全てを糧に進め。覚悟とはそういう事だ。それを見失ったまま進めれば、君は必ず未練を残す。だが君はある程度それを理解していた。君のサーヴァントが教えてくれたのだろう。大事にしなさい」

 

 「当然じゃ。サーヴァントは主を一人前にするのも役目よ」

 

 「ダン・ブラックモア卿、あなたは初めて出会った時、迷いがあると言っていました。それは何ですか?」

 

 彼の言葉にアーチャーはは胸を張り、自分は今まで疑問に思っていたことを訪ねた。

 

 「そんな事も言ったな。・・・・・君はまだ戦いに意味を見いだせていなかった。何のために戦うのか、何のために負けられないのか、その答えを見つけられていなかった。これからの戦いでその答えを模索し、最後まで勝ち続けた責任を果たすのだ。いいかな未来ある若者よ、それだけは・・・絶対に忘れるな・・・・・」

 

 そう言って彼は天を仰ぎ、手を伸ばした。まるで誰かが差し出した手を掴むかのようだった。

 

 「さて・・・ようやく会えそうだ。長かったな・・・アン・・・・ヌ・・・」

 

 呟いたのは女性の名前・・・。奥さんの名前なのだろう。それを口にした時のダンの顔には未練も後悔も無かった。彼は静かな答えを胸に抱いたままゆっくりと消失していった。

 

 

 

 

 

 「迷いも悔いも消えないのなら消さずともいい。全てを糧に進め。覚悟とはそういう事だ」

 

 

 「ダン・ブラックモア卿、俺は貴方と出会えた事を誇りに思う。・・・・貴方の言葉から色々な事を教えてもらいました。俺の在り方を・・・・信念を」

 

 そう言って校舎へ戻るエレベーターに向かった。戦った過去に、命を奪った相手に恥じない戦いをすると誓って。

 

 (うむ、良い面構えになったのう。初めはどうなる事かと思ったが少しずつ強くなってきておる。そなたはまだまだこんなものではなかろう?もっとそなたの事をわしに見せてくれ。期待しておるぞ?)

 

 彼はエレベーターの方を見ていたので表情を見ていなかったが、彼女の顔は期待に満ちた目とまるで初恋をした純粋無垢な笑みを浮かべていた。




なんだかんだでお気に入り件数が50件超えました。本当にありがとうございます。これからもゆっくりですが更新していきますので応援宜しくお願いします。
後から知りましたがextraシリーズの新しいのが発表したそうですね。extraシリーズのファンとしてとても嬉しいです 今年となってますが延期するかも知れない( -_・)?ですかね


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三回戦開始

久しぶりの投稿です。
地震恐いですね、一応地震の影響はあまりありませんがいつ来るか分かりませんから大変です。


昨日は本当に大変かつ酷い思いをした。何気なく廊下を歩いていたら急にアリーナの様な決戦場に似た場所に引きづり込まれ、そこにいたサーヴァントと戦わざるを得なかった。相手はカンフー着の様な服装をしていたのが特徴的だった。戦ったアーチャー曰く、

 

 「あんな化け物の様な英霊がいるとはな、今のわしらでは勝てる可能性はほぼない。次で当たらなければいいのだが」

 

 だそうだ。確かにあの濃密な殺気からしてかなりの強敵な事は容易に分かる。それとこっち側に戻る時、

 

 「お主らとはまたいずれ闘りあう事になるだろうな。楽しみにしておこう。それまで生き残っておいてくれよ?」

 

 と言っていた。そしてこっちに戻ったら戻ったでユリウスというマスターに目をつけられ息が詰まりそうだ。本当に生きた心地がしない。

 

 さて、端末にいつも通り対戦相手の発表というメールを確認し、いつもの場所に向かい自分の名前を探すと、

 

 「マスター;ありす

  決戦場;三の月想海」

 

 「今度の遊び相手はお兄ちゃんなんだ」

 

 声がしたので振り返ってみたら白いフリフリの服を着た少女が立っていた。年齢は10にも満たなさそうだった。

 

 「お兄ちゃん・・・あたし(ありす) の事覚えてる?もしかしたら気付いてすらいなかったかな。あたし(ありす)はただ見つめてるだけだったから・・・・あたし(ありす)、お兄ちゃんならお友達になってくれそうな気がしてたの。やっとあたし(ありす)にもお友達が出来るって・・・・・。だからお兄ちゃんが行っちゃったとき、かなしかったし、さびしかった。でもね、ここに来る途中であたし(ありす)あたし(アリス)に出会ったの。あたし(アリス)あたし(ありす)のただ一人のお友達。やっと、やっと出来たあたし(ありす)だけのお友達。だからお兄ちゃんの事はもういいの。あたし(アリス)さえいれば、あたし(ありす)はまんぞくだから。でも、次の遊び相手はお兄ちゃんなんだよね。・・・・・・しょうがないから遊んであげるね」

 

 そう言って自分の目をジッと見て

 

 「だから、すぐに消えないでね?あたし(ありす)はかなしいし、あたし(アリス)はつまんないから」

 

 そう言ってどこかへ去っていった。・・・・あれが次の対戦相手。

 

 「あの様な外見で二人も倒してきているのだから油断は禁物じゃぞ?と言っても、年端もいかない相手程やりづらい事もまた事実じゃがな」

 

 そうだ。ここまで勝ち残っている時点で実力は確かな事は明学だ。でも、アーチャーが言っていることも分かる。今までの相手は自分よりも強大だったからこそ、必死に戦えたのだ。だが、今回は逆だと言っても良い。

 

 「あの(わらべ)に負けたら死ぬのはそなたじゃ。あの時死にたくないという強い願いを聞いてわしはそなたと契約した。・・・その事を忘れるでないぞ?」

 

 彼女はそう言って姿を消した。・・・・本当にこの時ばかりは己の運を呪いたいばかりだ。でも、負ける訳には行かない。色々と心はぐちゃぐちゃになっているが、このまま何もしないっていう選択はしない。それは今までの自分を否定してしまう様な気がしたからだ。とにかく何かしようと思い、購買へ向かった。

 

 

 

 「ふっふっふっ、さてあの童を捕まえるとするかのう。わしを鬼と罵ったからには相応の罰を与えるとしよう!!」

 

 アーチャーが何か黒い殺気に近いものを出しながら今にも飛び出しそうな勢いの彼女をどうどうと宥めていた。何故こうなったかというのかは少し遡る。

 

 購買で色々と商品を見ている時、端末にトリガー生成のメールが届いたのでアイテムと礼装を買い、アリーナに向かっている途中、ありすが現れ、自分達と鬼ごっこがしたいと言ってアリーナへ走って行った。最初はアーチャーは乗り気ではなかったが、アリーナで自分達を鬼と言ってありすが逃げた時、(多分)鬼と言われた事が気に入らなかったのだろう、やる気を出し始めたのだ。・・・・・ただ、このやる気が殺る気でないことを心の中で祈った。

 

 といった事があったので、アーチャーはありすを捕まえる気満々なのだ。この鬼ごっこでありすの情報が得られると良いのだが。

 

 

 

 アリーナの奥へ進んでいくと、トリガーが入っているであろうアイテムボックスの前にありすがいた。

 

 「あーあ、見つかっちゃた。でも、楽しかったよお兄ちゃん!!!ねぇ・・・・あたし(ありす)のお話・・・・聞いてくれる?」

 

 そう言ってありすは自分の話をしているのだが、それよりも目の前で起きた出来事に驚きを隠せなかった。今まで一人だったありすが二人に増え、自分に話しかけているのだ、双子と言ってもおかしくない程、目の前の二人はソックリだったのだ。

 

 「ねっねっあたし(アリス)!『あの子』も呼んでみない?」

 

 「そうねあたし(ありす)!いい考えだわ」

 

 あの子?・・・・本来なら何の変哲もない単語なのだが、その一言にとてつもない寒気と嫌な予感がした。

 

 「「お兄ちゃーん、わたしたちのお友達を紹介するね(わ)!」」

 

 そう言って二人は手を振り上げ、

 

 「「おいで、ジャバウォック」」

 

 そう呼びかけた瞬間、二メートル以上はあるだろう巨人の様な怪物が出現した。

 

 あれから全力で逃げろ!!!・・・そう本能が呼びかけていた。

 

 「アーチャー、一時撤退だ!!あれを相手にしても意味は無さそうだ!」

 

 「同館じゃな。何の策もなく闇雲に戦うのは愚策じゃ。一旦引いて情報を集める方が良かろう。そのくらいなら今のわしでも可能じゃから令呪を使うなどと言わなくても良いぞ」

 

 意見が一致したのでこの場から逃げ出すことにした。怪物がこちらに襲い掛かろうとするのをアーチャーが威嚇射撃等をして動きを封じながらこの場を後にした。

 

 

 

 全力で逃げた事で体力を消耗し、息が上がっているのと先程目のあたりにした出来事への混乱で酷く疲れた。ありすが二人いる事と彼女たちが呼び出した凶悪な怪物、ジャバウォック。まったく頭が付いていけていない。あの怪物、ジャバウォックがありすのサーヴァントなのか?

 

 「あれがサーヴァントとするなら、クラスはバーサーカーかもしれんな。何とも厄介極まりない」

 

 バーサーカー、狂化する事で恐ろしいまでの性能を手に入れる事が出来るクラス。だが、それ故に他のクラスと比べて魔力の消費が激しい等と、マスターへの負担が大きい。だがありすはそれを普通に呼び出した。それから逃げている時に、

 

 「この子は分けてあげた魔力が無くなるまでここに居るからね」

 

 と言っていた。消費が激しいはずなのにありすは分け与えられるほどの魔力を持っているのか等と考えていたが、どうしても気になる事があった。それは、

 

 「何故ありすは二人もいるんだ?(・・・・・・・・・・・)

 

 そう、この点だ。マスター一人にサーヴァント一体。これが基本と聞いている。だが、現にありすは二人いたし、ジャバウォックを呼び出した。だからこそ混乱しているのだ。

 

 「アーチャー、双子のマスターっていうのはあり得るのか?」

 

 「稀にその手の特例がいるというのは一応知っておるが・・・・・きちんと調べた方が良かろうな」

 

 そう話し終え、アリーナにいるエネミーを倒してアリーナを出た。

 

 

 

 マイルームに戻ると、疲れがドッと出て来た。ベットに腰かけると、

 

 「無垢にしか見えない童が相手とは本当に運が無いのう。そしてあの尋常でない力の持ち主と来た。あれをどうにかせんことにはトリガーを取る事も出来ん。対策、手段を考えなければならんな」

 

 そうアーチャーの考えを聞き、明日はすることが多いなぁと思いながらベットに横になった。




ついにジャンヌオルタが実装されましたね。多大な犠牲を払ってゲット出来ました。ちなみにザビ男礼装とアストルフォもゲット出来ました。後はセミラミスとメルトリリスが実装して欲しいです。

お気に入りが70件になりました。自分の様な者の作品を面白いと言ってくれて本当に嬉しいです。これからも頑張りますので応援、アドバイスなど宜しくお願いします。

ありすは書くのがとても大変だなと書きながら思いました。


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怪物とのかいごう

 「主、昨日の怪物の事を調べるぞ。他の奴らはともかく、そなたの知り合いに相談するも良し、図書室で調べるも良しじゃ」

 

 そう、確かジャバウォック・・・・それがありす達の呼んだ怪物の名だ。あれをどうにかしない事には勝負すらならない。最初は自分で調べて見てから考えよう。

 

 マイルームを出て図書室に向かう途中、

 

 「お兄ちゃん、みーつけた。ねぇねぇ、今日も遊ぼう!今日はこの学校内でかくれんぼがしたいな。じゃあ、あたし(ありす)は逃げるからちゃんと探してね。じゃないと泣いちゃうから」

 

 そう一方的に言ってきてどこかへ走って行ってしまった。

 

 「……そなた、よほどあの童達に気に入られておる様じゃの。だが、むしろ好機よな。遊びに付き合いながら童達やあの怪物の事を探って見ればよかろう」

 

 情報を得ながらありす達を見つけ、運が良ければジャバウォックへの対策やありすのサーヴァントの情報をさらに得られる。はたしてそんなうまく事が進むだろうか?けど、かくれんぼと言っていたし、この校内のどこかに隠れている事は確かだ。探して見るのも良いが、その前に少し調べ物をしよう。そうして図書室へ足を進めた。

 

 

 『荒ぶる思いで歩みを止めれば

  燃え滾る炎を瞳に宿したジャバウォック

  鼻息荒々しくタルジの森を駆け下り

  眼前に嵐の如く現れる』

 

 『一撃、二撃!一撃、二撃!

  ヴォーパールの剣で切り裂いて

  悪たる獣が死するとき

  その首をもって、意気揚々と帰路につかん』

 

 

 

 図書室のNPCにジャバウォックに関する事を調べていると言ったら教えてくれた。ヴォーパールの剣・・・・これがあの怪物に対する有効打になるのだろうか…。だがNPCは嘘は付かない。信用するしかないだろう。さて、他の調べ物は後でも大丈夫だろう。さて、ありすを見つけるとしよう。

 

 

 あちこち探し回って一階のアリーナへ続く道を見た時、フリルの広がったドレスに三つ編みの髪が見えた。向こうはこっちに気付いていない。

 

 「見ーつけた」

 

 近くまで行ってありすにそう声を掛けるとありすは驚いて

 

 「あ!みつかっちゃった。あーあ・・・・あたし(ありす)のまけだね。じゃあね……お兄ちゃんのお願い事何か聞いてあげる!何が良い?」

 

 首を少し横に傾けながら俺に質問してきた。それなら

 

 「あのジャバウォックっていうお友達をどかして欲しいんだけど」

 

 「うーん、それはあの子に聞かないと分からないなぁ。でも、お兄ちゃんなら良いっか。ヴォ―パールの剣っていうのを見つけられたらあの子もどいてくれるよ。それと特別にヒントをあげる!さっき言った物はアリーナにはないよ。どこにあるとも知れない架空の剣・・・・・・じゃあどうやって見つけたらいいでしょうか?ヒントはここまで!じゃあ、ばいばいお兄ちゃん!また遊んでね!!」

 

 そう言って目の前から消えた。

 

 「よもや正面からどけろと願い出るとは予想外じゃった」

 

 「遠回りで言うよりは堂々と言った方が良かったかなと思って行ったんだけど、駄目だったかな?」

 

 「策士としてはどうかと思うが、わしは嫌いではないぞ?さて、あのNPCの情報も確かじゃったし、ヴォ―パールの剣とやらを探すとしようかのう」

 

 ありすの証言によりNPCの提示してくれた情報は真実だったし、後はどうやって見つけるかだ。しかし、アリーナには無いのは分かっても、当てがないのにはかわりない。さて、どうしたものやら等と考えながら来た道を戻っている最中、

 

 「あら、どうしたの岸波君?難しい顔をしてらしくないわねぇ。それと、聞いたわよ。小さい女の子と遊びまわってるって」

 

 遠坂に会って早々声を掛けられた。・・・・・とりあえず弁明はしておいた方がいいかな。

 

 「無垢な瞳で見つめられたら断りにくいと思うよ。それと、らしくないってなんなのさ、俺だって悩む事くらいあるさ」

 

 「ふ~ん?で、何に悩んでいるのかしら?悩みの内容次第では手を貸してあげても良いけど?」

 

 (遠坂の方から手助けを申し出て来てくれるなんて失礼だけど驚きを隠せないんだが)

 

 (本当失礼じゃな。まぁわしも一瞬思ったが・・・・。申し出て来てくれるならありがたい。ちょうど聞きたいことがあるからな)

 

 「一瞬何か失礼な事考えてなかった?」

 

 遠坂がすごい笑顔で聞いて来たので、首を横にブンブンと振って否定した。女の勘は地味に恐ろしい。そんな事を終え、質問しようとした時、

 

 「ごきげんよう」

 

 その声のする方へ顔を向けると、ラニがこちらに歩いて来た。

 

 「あら岸波君、彼女とは知り合い?」

 

 「ああ、二回戦の時手を貸してもらったんだ。彼女の占星術のおかげで何とかなった所は大きかった」

 

 「占星術・・・・・貴女もしかしてアトラス院の・・・・」

 

 「はい、確かに私はアトラス院に所属していますが・・・・・何か?」

 

 「いや、何で手を貸したのかなって思っただけよ。貴女にとって彼はどうでも良い存在じゃないのかしら?」

 

 「……彼は他のマスター達と違っていたからです。星を詠んでも彼だけは霞に隠れた存在の為気になったからです」

 

 ・・・・普通に見ていたらただの会話なのにこう、空気が何かギスギスしてるんだよなぁ。何でだろう?

 

 (ってそんな事思ってる場合じゃないか)

 

 「遠坂、ラニ、二人に聞きたいことがあるんだけど・・・・良いか?」

 

 自分にとって数少ない知り合い二人がいるこの時こそ、昨日の疑問とさっきのヴォ―パールの剣の事を聞くべきときだろう。こんなチャンスを逃がす訳にはいかない。

 

 「何?」「何でしょう?」

 

 同時に返事とこちらに振り向いた時、この二人案外仲良くなれるかもと思ってしまった。そんな事はさておき、今自分が悩んでいる事を二人に話した。

 

 

 

 「岸波君の相手のありすって子が双子のマスターっていうのはまずあり得ないわ。そもそも聖杯戦争は一対一が絶対だもの。手を組むにしてもアリーナでは共闘は不可能だから」

 

 「そうですね。それと本当に『二人』と数えていいのか疑問です。私もその子供を見たことがありますが、生気、電脳的揺らぎが全くと言っても良い程感じられませんでした」

 

 「サーヴァント二人を使役する事は可能なのか?」

 

 「システム上不可能ね」

 

 これでありすが双子という線は消えた。・・・・でも本当に心強い。アーチャーの助言等もありがたいけど、こうやって相談に乗ってくれる相手がいるのはとても嬉しかった。いずれ戦わなければならない相手だというのは分かっているけど、どうしてもそう思ってしまう。

 

 「じゃあヴォ―パールの剣はどうやって手に入れるんだ?」

 

 「それは錬金術(アルケミー)の領域だから私には無理だけど」

 

 「錬金の素材があれば錬成も可能です。ただ、ヴォ―パールの剣の錬成にはマカライトが必要です。・・・・・・残念ながら私は持ち合わせていませんが」

 

 マカライト・・・・孔雀石とも言われる宝石だ。自分も持ってる訳ない。情報がそろってきてもこのままじゃ意味がない。さて、どうしたものか。そんな事を考えていると遠坂が何やらポケットの中から何かを取り出した。

 

 「マカライトならあるわ。これだけあれば何とかなる?」

 

 何とマカライトを差し出してくれたのだ。これにはラニを除く自分達は驚きだ。

 

 「ここまで協力したんだからこの三回戦、絶~対勝ちなさいよ!!これが条件だから!分かった!!?」

 

 「ああ、全力を尽くす」

 

 そう言うと遠坂はラニにマカライトを渡し、ラニはそのマカライトでヴォ―パールの剣を錬成してくれた。これで何とかなる。

 

 「二人ともありがとう」

 

 そうお礼を述べ、アリーナに向かった。

 

 

 

 

 アリーナに入り、もう一度ヴォ―パールの剣を端末から取り出した。見た目は西洋のロングソードだが、実戦で使うよりも飾りの方は自分としてはしっくり来た。

 

 「これがその剣か。南蛮の剣とはこういう物なのかのう」

 

 顎に手を置き、ジロジロと興味深そうにヴォ―パールの剣を見ていた。見た目は軽そうな感じだが、いざ両手で持つとずっしりと重い。

 

 「アーチャー、俺は剣って物を初めて持つけど、こんなにも重たい物なんだな」

 

 「・・・そうじゃ。その重みが人の命を奪う重みでもある。それは剣に限ったことでは無いぞ。さて、ではジャバウォックの元へ向かおうかの。効果がどの位なのかは行って確かめる他無いしな」

 

 そう言ってアーチャーは先を歩みだした。自分もヴォ―パールの剣を一度端末に戻し、後を追った。

 

 

 奥に近付くほどあのジャバウォックの魔力を強く感じる。エネミーを倒しながら進み、トリガーの入ったボックスの近くまで来れた。当然そのボックスを取らせまいとジャバウォックがいる。それを確認すると、端末からヴォ―パールの剣を取り出し、切っ先を向けた。すると、キィンと鋭い魔力がヴォ―パールの剣から発散されるのを感じた。すると

 

 「ガ・・・ガァァァァ!!」

 

 もがき苦しみ始め、ジャバウォックから出ていた気配が急激にしぼんでいった。

 

 「・・・即効性にも程があると思うんじゃが・・・・・・。しかもわしらが倒せる程にまで弱体化とは・・・。あの露出狂侮れんな。さて、さっさとあの化け物を始末するぞ」

 

 そう言うと刀を抜き、切りかかった。

 

 「ウォォォッ・・・・!!」

 

 ジャバウォックも苦しみながらも反撃しようとするが

 

 「遅い」

 

 すでにアーチャーの一閃によって倒れた。すると

 

 「あらら、本当にヴォ―パールの剣を手に入れるなんて」

 

 「ふふふ、本当ね。いったいどうやったのかしら?」

 

 「宝探しはお兄ちゃん達の勝ちだね」

 

 「そうね。じゃあ次は何して遊ぼうかしら?」

 

 「また考えなきゃね。じゃあお兄ちゃん、ばいばい」

 

 急に現われ、一方的に話をしてありす達は消えた。

 

 「むう・・・あの童達が現れたという事は向こうには何の致命傷にもいたらんという事か。だが、トリガーを取れるという事でよしとしよう」

 

 

 

 無事にトリガーを入手出来、マイルームに戻るとアーチャーはイスに座り、唸っていた。

 

 「どうしたの?」

 

 「いや、あの童達が何とも厄介だなと思ってのう」

 

 そう言ってまた唸り始めた。そしてふっと思った事をアーチャーに聞いた。

 

 「なぁアーチャー。怪物や化物を召喚出来るクラス(・・・・・・・・・・・・・・)ってあるのか?」

 

 「うーむ・・・キャスターぐらい・・そなた、今何と?」

 

 そう尋ねられたので

 

 「いや、だから怪物や化物を召喚できるクラスって」

 

 「・・・なんと。そういう考えがあったか。主、良きに計らえ。あの童のサーヴァントのクラスはキャスターかもしれん」

 

 

 「何で?」

 

 「まぁキャスター以外にも召喚出来る奴は居そうじゃが、少なくともあの童のサーヴァントはキャスターかもしれん。それにあの怪物はジャバウォック・・・・図書室のNPCの言っていた話のタイトルは覚えておるか?」

 

 「確か、『鏡の国のアリス(・・・)』・・・まさか」

 

 「そう、あれはあのサーヴァントの宝具の一つかもしれん。そうするとあれは物語に出てくるものを呼べるというのならつじつまが合う」

 

 そういうとアーチャーは自分に笑顔で

 

 「良くやった、これで真名に至る事が出来よう。そなた、今日は大活躍じゃな!!」

 

 そう褒めてくれた。それが、無性に嬉しかった。

 

 「さて、明日一番に調べなくてはならん事が出来た。今日はもう休んで、明日に備えよう」

 

 そう促されたのでベットに横になった。




何事もなく更新できました。
これからも少しずつ頑張って行きますので応援などお願いします。

感想や助言等待っていますのでお願いします。


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名無しの森

久しぶりの投稿です。今回はおまけも書かせていただきます。


今日はアリスの物語に関する事を調べる事にした。と言っても、真名に関する事なので、多分難航するだろうと予想していたが、その通りだった。物語の事は分かっても真名にたどり着くのは難しかった。どうしようと思っていると、

 

 「あら?岸波君、何してるの?」

 

 ・・・・ここ最近良く会うなぁ。ここでラニにも会ったらある意味すごいよね。まぁ無いと思うけど……。

 

 「ごきげんよう」

 

 ・・・・何?今日何かあるの?今ものすごい事起きてるのは俺の気のせい?

 

 「にしても、これあなたが調べてる物?全部子供向けの本じゃない」

 

 「あの子供にでも読み聞かせるのですか?」

 

 ……俺置いてけぼり?話が変な方向にとんでない?

 

 「違うよ。ありすのサーヴァントに関して調べてるんだ。ジャバウォックを宝具の一つと仮定して、それらの事を調べてるんだ。もしかしたら真名に関するヒントがあるかもしれないしね」

 

 とりあえず本当の事を伝える。変な噂でも出来たら何かめんどうだしね。

 

 「ふ~ん。にしてもこれ子供向けでも、どちらかと言えば女の子向けよね。あなたの対戦相手の子供ぐらいの年齢向けの本だし」

 

 「そうですね。何か得られましたか?」

 

 「嫌、何も。物語の中には無さそうだ」

 

 だからこそ難航しているのだ。情報が無い訳でもないのにこれといったものがない。けど、

 

 「これらに共通するのは誰かに夢を見させるぐらいかな」

 

 「まぁそうでしょ。小さい子供はファンタジーな話は好きだし」

 

 「そういうものなんですか?……私には分かりません」

 

 う~んと唸り始めるとアーチャーが現れ

 

 「しかしこれだけの数の本があると多くの人から愛されそう(・・・・・・・・・・・) じゃな」

 

 南蛮にはこんな物があるとはのうとアーチャーが言っていたが、その言葉を聞いた時、何か閃いた気がした。

 

 サーヴァントは信仰された者達がなる存在。だが、多くの人から愛された(・・・・・・・・・・)物語が英霊になってもおかしくない。

 

 「なぁ、架空の存在(・・・・・)が英霊になりうるのか?」

 

 そう聞くと三人は

 

 「「「可能(よ)(です)(じゃ)」」」

 

 そう答えた。

 

 「確かに英霊には名を馳せた英雄が多いけど、別にそれだけじゃないと思うわ。人気小説家だったりとか、正体不明の殺人鬼とかもいそうだし」

 

 「多くの人を驚愕させた等でその名を後世にまで語り継がれた結果、英霊になった人物もいそうですね」

 

 「また、名を明かさなかったか知られなかったが故に無銘の英霊だったり、多くの人々の願いが形となった英霊もいたような気がしたのう」

 

 その答えにある程度確信を得、聞いてみた。

 

 「これらの物語の総称(・・)は何ていうんだ?」

 

 その問いに遠坂達が答えようとしたその時

 

 「「あ~!!お兄ちゃんみっけ!」」

 

 自分の近くにありす達が出現したのだ。

 

 「お兄ちゃんも本を読むの?こんどあたし(ありす)に読んで欲しいな」

 

 「そうねあたし(ありす)。そのときはあたし(アリス)も一緒よ?お茶とお菓子は必要よね」

 

 「そうだねあたし(アリス)

 

 キャッキャッと自分にそんな事を言って来た。これが普通の生活での出来事なら微笑ましいが、殺し合う相手に言われるのは何とも不思議な感じと悲しい感じが混じって変な気分だ。

 

 「そうだ!!お兄ちゃん、あたし(ありす)あたらしい遊び考えたの!!新しい穴の中でならきっと見せられるわ!!だからぜったいきてね!」

 

 そう言ってありすは消えた。だが、アリスはじっと自分を見て

 

 「ふふ・・・・やくそく、だからね」

 

 そう言って笑って消えた。

 

 ただ笑顔を向けられて話しかけられただけなのに、冷や汗が出ている自分がいた。いや、ありすの方には何も感じなかったが、黒いアリスの方が最後に自分に向けた笑顔を見た瞬間、冷や汗が出たのだ。

 その時、端末から着信音が鳴ったので確認すると

 

 「第二暗号鍵(セカンダトリガー)を生成。第二エリアにて取得されたし」

 

 新しい穴というのは多分このエリアだろう。トリガーを取るためにはここに行かなければならないが

 

 「あの童達、多分何か仕掛けておるだろうな。じゃが行かなければトリガーを取れず不戦敗。そして今回童達が仕掛けてくるだろうものは前の化け物よりも厄介じゃろうな」

 

 「別に今日じゃなきゃ駄目って訳じゃないんでしょう?明日にするとかって手もあるわよ」

 

 「嫌、それじゃあいつまでたってもトリガーを取れないような気がする。それに、もしかしたら何か新しい情報が手に入るかもしれない。逃げてばかりじゃ勝てない。正直嫌な予感しかしないんだけどね」

 

 そう言って本を片付ける為立ち上がった。といっても同じ場所にあった本なので片付けにはそう時間を取らない。

 

 「さて、トリガーを取りに第二エリアに行くとしますか」

 

 「そうじゃな。虎穴に入らざれば虎子を得ずと言うしな。どんな罠だろうと何だろうとかかってこいじゃ!」

 

 そんなやり取りをアーチャーとしてから

 

 「じゃあ行ってくる」

 

 そう彼女たちに告げ、図書室を出た。さて、アリーナに行く前に教会へ行こう。少しでも何かがあったときに対して出来るようにしないと。

 

 

 

 アリーナの第二エリアに着くと、目の前は幻想的な世界だった。そこは氷海の中で、奥の方には洋風の城が見える。そして入り口から少し歩くと、

 

 「あ、お兄ちゃんきてくれたんだ!」

 

 「やっぱりお兄ちゃんは優しいね」

 

 

 「ちょっと待っててね、今新しい遊び場を作るから!」

 

 そう言ってありす達はお互いの逆手を握り、

 

 「ここでは、鳥はただの鳥」

 

 「ここでは、人はただの人」

 

 そして握り合っていた手を前に突き出すと、アリーナ全体に虹色の様な幕が張られていた。

 

 「「ようこそ、アリスのお茶会へ!」」

 

 「固有結界じゃと!!?」

 

 ありす達が行った事を見てアーチャーは驚愕した。

 

 「ここではみ~んな平等なの。アナタとかオマエとか、ヤマダさんとか、スズキさんとかいちいち付けた名前なんて、み~んな思い出せなくなっちゃうの。お兄ちゃんもすぐにそうなるわ」

 

 名前が思い出せなくなる・・・それだけなら何も怖くないと思うのだが・・・・。

 

 (まだ何かあるはずじゃ!!じゃが、それを話してくれるかのう?)

 

 アーチャーが念話で話しかけてきた。言われてみれば名前を思い出せなくなるだけなら何の脅威にもならない。

 

 「それだけじゃないよ」

 

 黒いアリスがまるで自分の考えていたことが分かったかのように話しかけてきた。

 

 「だんだん自分が誰だかわからなくなっていって・・・・最後にはお兄ちゃんもサーヴァントもなくなちゃうの!」

 

 「おもしろいでしょ!」

 

 「ちっともおもしろくないわ!!じゃが、貴様らを捕まえて解除させれば問題ないわ!」

 

 「じゃあ鬼ごっこをしましょう。お兄ちゃんはあわれな鬼の役ね」

 

 「いくよ~。よ~い、どん!」

 

 そういうとありす達はアリーナの奥へ走って行った。

 

 「ちっ、自我と共に存在そのものを削る固有結界・・・・何とも面倒で厄介なものを使いおったな!走るぞマスター!!さっさとあの童達を捕らえ解除させよう。アリーナの行き止まりに奴らを追い込めばこっちのものじゃ!」

 

 自分には今の所何が何やら分からないが、とにかくアーチャーの言う通りにしよう。アーチャーの助言に頷き、ありす達を追った。

 

 

 

 途中エネミーを倒しながらありす達を追いかけて行くと、ありす達が行き止まりへの道を進んで行った。

 

 「しめた!これで奴らを捕らえられるぞ!」

 

 自分たちもその後を追い、ありす達を追い詰めた。

 

 「追いかけっこも終いにさせてもらうぞ童。とっとと貴様らを捕らえて終いじゃ」

 

 「ふふふ、見つかっちゃったね」

 

 「すご~いお兄ちゃん!思ってたよりも素早いね!!」

 

 「でも、そろそろ自分の名前を忘れた頃じゃないかしら?」

 

 「「さぁ、あなたのおなまえは?」」

 

 ありす達が声をそろえて自分に聞いてきた。確か自分の名前は・・・・・・!?さっきまでは覚えていたのに、その部分が削り取られている!!?いや、そもそも、自分に確かな名前なんて、最初からあったっけ?

 

 「このうつけが!!しっかりせんか!」

 

 隣にいる少女がそうば声を自分に向けて言った。彼女はダレだったっけ?

 

 「さぁ、はやく捕まえないと次は身体も消えちゃうよ?」

 

 「うふふふ、さぁ、わたし達を捕まえられるかしら?お兄ちゃん?」

 

 そう言うと目の前からありす達が突然消えた。どこにいったのかとかくにんしようと思って後ろをみたら、おくへはしっていくしょうじょたちが見えた。

 

 「追いかけるぞ!!」

 

 そういったとなりのダレかははしりだした。じぶんもそれをおいかけた。

 

 あるていどすすむと、しょうじょたちが、たちどまっていた。また、イきどまりダッタみたいだ。コレはチャンスなのか?

 

 「ちょこまかと逃げおって!しかし、今度こそこれで終いにさせてもらおうかのう!」

 

 ソバにイるカノジョがジュウをしょうじょたちにむけていた。ドウやら、カノジョはゲキドしているようだ。

 

 「怖いよ、どうしてお兄ちゃん?・・・ひょっとして・・・・怒ってるの?」

 

 「どうして怒るの、お兄ちゃん?ああ・・・もしかして身体が消えかかっているからなの?」

 

 ジブンのてをミてみると、トウメイになっていた。

 

 「何と、身体まで消えかかっている程浸食されておるのか!ええい、さっさと結界を解け!」

 

 「怖いわあたし(アリス) 。何でお兄ちゃんは怒ってるの?」

 

 「わからないわあたし(ありす)。ただ遊んでいるだけなのにね」

 

 そういってまた、メのマエからキエた。デモ、ウシロからあしおとがキコエタ。

 

 「くそ、一度ならず二度までも逃がしたか。仕方ない、次で仕留めるぞ!!」

 

 ソウいって、メのマエにいるカノジョがテをひいてクれた。

 そして、まタイキドマリにツイたみたイだ。

 

 「終わりだ小娘。今すぐ結界を解け!!!解かぬと言うなら、貴様らに風穴を開けるぞ!」

 

 「なんで?・・・・・・・なんでそんなに怒ってるの?……ひっく……ただ、ただあたし(ありす)はお兄ちゃんと遊びたかっただけなのに」

 

 「ここはもう危ないかもしれないわね。さぁ、いきましょうあたし(ありす)

 

 「うん……。ひっく……うっく……ごめんなさい、お兄ちゃん」

 

 そウいっテ、メのマエのショうじょたチはキエた。ケハイをカンジないコトから、ココからデたのダろう。

 

 「ちっ、逃したか……。結界を解除出来なかったのは痛いが、今は早くここから出るぞ」

 

 トナリにイるダレかにイワレルまでもナい。はヤク、ココからタチさラないト、ナニもかモがワスレそうだ。

 

 

 

 

 何とかアリーナから出ると、アリーナの入り口の壁に寄りかかって座り込んだ。

 

 「マスター、まだ大丈夫か?自分の名、そしてわしの事を思い出せるか?」

 

 アーチャーが心配そうに自分の顔を見ていた。

 

 「ああ、大丈夫。問題はないよ、アーチャー」

 

 そう言うとアーチャーはホッとした顔をしていた。少し休んだおかげか、マイルームに戻ることも大丈夫な程にまで回復した。さて、対策をマイルームでアーチャーと話し合うために立ち上がると、

 

 カサッ

 

 ・・・・・?何やら紙の様な物が落ちた音がした。気になったので下を見ると、そこにはさっきまでなかったメモ紙が落ちていた。とりあえず拾って中身を見ると、

 

 「あなたのお名前はなあに?」

 

 

 「ふむ、名前。何とも矛盾しておるのう。あの結界はそなたの名前を消すもの。だというのにこの紙に書かれていることはそなたの名を問うもの。全くのあべこべじゃな」

 

 真っ先に名前を失ってしまう結界の中で、自分の名前を失わずに済む方法・・・・。とりあえず後は朝考えよう、それでも遅くはない。

 

 そう思ったのでアーチャーにそう話し、マイルームへ向かった。だが、この時は想像もしていなかった。

 

 自分の対戦相手、ありすの正体。それが、あまりにもきついという言葉では済まされない事を。

 

 

 

 

 

 おまけ FGOをやってると、このサーヴァントと白野が契約したらどうなるのかっていうことをよく考えてしまいます。その何人かを書かせていただきます。

 

 自分は今、血を流しながら倒れている。

 何故倒れているかって?・・・・そんなの簡単だ。自分は負けたのだ。ついさっきまで自分を案内していた声すらも終わりを淡々と自分に告げたのだ。

 自分はこのまま消えてしまうのか・・・・・・・・

 ・

 ・

 ・

 ・

 嫌、このまま終わるのは許されない。不思議とそう思ったのだ。

 それが何でなのか、自分にはわからなかった。でも、立たないと。

 恐いままでも、痛いままでもいい。そのうえで、もう一度考えないと。

 だって、この手はまだ一度も、自分の意志で戦ってすらいないのだから!!

 

 セイバー:1

 

 (待ってください!!その方をこのまま消してしまうのは私がいやです!私はまだ半人前ですが、この方を守りたいと心から思いました。だから、まだ諦めないでください!!私があなたを助けますから!)

 

 透き通った少女の声が聞こえた。そしてその声が聞こえなくなると、急に目の前に人が現れた。上半身は甲冑の様な物を着ているが、その下はスカートという何とも合わない服装をした金髪の少女が目の前に突然現れた。

 

 「はじめまして、私のマスターさん。私はセイバー・リリィ。これから、末永くよろしくお願いします」

 

 

 セイバー:2

 

 (うむ!どこの誰だか知らないが、その思い見事だ。他のサーヴァントは知らんが、余はそういう者は嫌いではない。大丈夫だ、お主は余が守ろう)

 

 声は女の子っぽいけど、どこか威厳を感じる声が聞こえた。その声が消えると、突然赤い服と赤い紙が特徴的な男の子?が現れた。

 

 「サーヴァント、セイバー。今ここに推参した。・・・お主が余のマスターか?」

 

 

 アーチャー:1

 

 (ふむ、面白いやつだな。死にかけだというのに、それでもなお立ち上がろうとするか。いいだろう、お前の生きざまを私に見せてみろ)

 

 凛とした女性の声が聞こえた。そして声が消えると、耳と尻尾が生えた綺麗な女性がそこにいた。

 

 「問おう、汝が私のマスターか?」

 

 

 ランサー

 

 (ああ、あの人と似た声が聞こえる。でも、あの人はもういない。でも、あの人と同じ心を感じる。確かめないと、あの人の生まれ変わりなのか、確かめないと)

 

 悲しげに、されど何故か恐ろしさを感じる声が遠ざかると、声と同じように悲しそうな顔をした長髪の女性が自分をじっと見ていた。

 

 「サーヴァント、ランサー。あなたはあのひとなの?」

 

 

 ライダー:1

 

 (ねぇ、どうする?)

 

 (どうするも、このまま見捨てるっていうのもあんまりですし、それに私は彼が少し気になりますわ。)

 

 (まぁ、悪い感じはしないよね。うん、君がそう言うなら僕もそれに乗ろう)

 

 何やら話し声が聞こえてきた。そしてその声が聞こえなくなると、自分を見ている二人の女性がいた。一人は小柄の、もう一人はスタイルのいい女性が声を揃えて、

 

 「「サーヴァント、ライダー。君が僕の(私の)マスター?)

 

 ライダー:2

 

 (その決定、暫し待たれよ!そのような純粋な方を消すなど、私が許しません!どうしてもというのなら、私がその方を守らせていただきます!!)

 

 自分の事を本気で心配してくれている声が消えると、そこに現れた人物に目を疑った。

 

 日本の鎧の一部をつけている?といった感じで素肌が多く露出しているのと、下着を丸出しにしているといった何とも突っ込みどころが多い尻尾の生えた女の子が自分の近くで膝をつき、

 

 「ライダー、罷り越しました。武士としてあなたに誠心誠意尽くさせていただきます」

 

 ライダー:3

 

 (フフッ、フフフハハハハ!死にかけの分際で、よく吠えたな!良いぞ!本来なら切り捨てるが、貴様のその足掻きと余を笑わせた褒美だ。特別に余が力を貸してやろう)

 

 その声はとても偉大で威厳なものだった。そしてまさしく王にふさわしいものだった。声が消えると、自分の近くに褐色肌の男性が自分の見下ろして聞いてきた。

 

 「貴様が余を楽しませるものか?」

 

 

 キャスター

 

 (ストップ、ストップ!!その子を消すのは駄目!その子はあたしが導くんだから!その子はあたしの弟子候補なんだからね、全く)

 

 ・・・・こちらのあずかり知らぬ内に弟子候補っていう話が斜め上に飛んだことを言った声が消えた瞬間、紫色の髪をした小柄な少女が自分を見つめていた。

 

 「良くってよ!このキャスターがあなたを導いてあげるわ!!さぁ、手を取りなさい!」

 

 

 アサシン

 

 (駄目、その人を殺しちゃ。その人は、わたしが助ける。すべて……すべて殺してきたわたしだけど、その人は死んでほしくない。そう、心から思えた。だから)

 

 消え入りそうな儚い声が遠ざかった時、髑髏の仮面をした黒い肌の女の子がそこにいた。

 

 「すべて、すべて、私はあなたに捧げます。だから、死なないで」

 

 

 バーサーカー

 

 (あらあら、何とも愛らしい子なのでしょう。その諦めない心を私は気に入りましたわ。さぁ、わたしの手を取って?)

 

 全てを包み込んでくれる何とも優しい声が聞こえた。その声が遠ざかり、聞こえなくなったその瞬間、様々な武器を身に着けたグラマスな女性が優しく微笑んで

 

 「はじめまして、愛らしい魔術師さん。いまだ至らない者ですが、どうかよろしくお願いいたしますね?」




久々の投稿なので少し前の感じと違うかもしれませんがご了承下さい。

皆さんは福袋ガチャ、どちらを回しましたか?作者はジャンヌ狙いで三騎士の方を回しましたが、何と獅子王が出ました!!でも勲章集めにものすごい苦労してます。

ついに水着イベントが始まりますね。そして師匠が☆4のアサシンでゲットできるチャンスはとてもうれしいです。ちなみに師匠のあの水着はビキニで良いんですかね? これからも頑張りますので応援や感想よろしくお願いします。
熱いので皆さんも熱中症等にお気をつけて。


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