愉快な邪眼は月輪を越えて異世界に飛ぶ (きりがる)
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第壱話 邪眼はまだまだこれからだ

この作品は邪眼は月輪に飛ぶという作品のミネルヴァを主人公としますが、中身はまぁ…本文で。
がちりんをどうしても変換出来ないからつきりんって打ってます…意味的には月のことらしいです。多分。

この作品はシリアスなんて無く、東方憑鴉録と同じような作風なので文才には期待しないでください。変わらず駄文なので。
暇つぶし程度に読んでくださればと思います。

では、少ないですがどうぞ!


 

 「むかしむかし……」、美術史家エルンスト・ゴンブリッジが書いたように、全ての物語は「むかし むかし」で幕をあける。

 

 故に、今から語るこのお話もむかしむかしで始まるのだ。

 

 ――むかしむかし、あるところに恐ろしい鳥がおった。

 

  それは、一羽のフクロウだったそうな。

 

  どこで生まれてなんでそんなことになったやらわからんけど、それに()()()()生きモンはみな死んでしまうのじゃった。

 

  それを撃ち殺そうとした猟師はみんな死んじまったが、中に一人だけ………

 

  ………その男の名は鵜平。鵜平に撃ち落とされたフクロウの名は『ミネルヴァ』と名付けられた。

 

「え、えー…ちょっと待ってくれ、これまさかのまさかで……あれ? なんで……」

 

  『ミネルヴァ』の飛ぶ速さときたら、常識を完全にくつがえしとった。

 

  瞬間速度、時速三四〇キロメートル。それは動物の中で最速を誇るハヤブサの落下速度と同じじゃった。

 

  『ミネルヴァ』は姿形こそフクロウに似ておっても、もはや鳥という動物ですらなかったのかもしれんて。

 

「おいおいおいおい、冗談じゃねーぞ! マジでどうなってやがる! ありえねーだろこれ!」

 

  『ミネルヴァ』はただ「殺意」の方向を()()()()んじゃ。

 

  そしてただのひとにらみ。その目のひとにらみでどんな生き(モン)も死んでゆくんじゃ。

 

  全ての物語は「むかし むかし」で幕をあける。

 

  では幕切れは……? この邪眼の鳥と老猟師の戦いの幕切れは……

  

  最後にフクロウはこんなことを思ったそうな。

 

  ……ああ、こわいよ。こわい目がくるよ。――

 

「そうだ、どう◯つの森とでも思えばいいんだ。あいつらも動物のくせに人型してるからな。俺も人型に…………」

 

 月に向かって、どこまでも上がっていったフクロウのお話はおしまい……のはずだった。

 

 なぜ頭を穿たれた邪眼の鳥が生きているのか、どうやって生き返ったのかすらわからない。しかし、ただわかるのは……

 

「………なれねえ! 目からなんか垂れてるし……え、呪毒? 記憶が…猟師?ミネルヴァ? うわなにこれ怖い…欠陥品ですかコノヤロー!」

 

 此度はさぞ、愉快なフクロウになるじゃろうて……。

 

 儂が話せるのはここまでじゃ。ここからこのフクロウのお話は、みなが見て語り継いでおくれ。

 

「早く人間になりたーいッ!!」

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 駄目だ、どうしても俺はどう◯つの森の住人にはなれないらしい…あそこにもフクロウ居たじゃねえか。なんで俺だけ駄目なんですかねぇ? 教えて! グー◯ル先生!

 

「キエエ……」

 

 はぁ…と小さくため息を吐く。

 

 お前らにいいこと教えてやろう。俺は実は人間でした! あ? いいことじゃないって? うるせー、俺がいいことだと思ったらそれがいいことなんだよバッキャロー。

 

 まぁ…俺は死んだはずだったんだけどな。普通に交通事故ってやつなんだが……気がつけばこんなことになってたのさ。

 

 身体はフクロウ、しかも中二病よろしく邪眼持ちのフクロウとか……笑えねえんだよ、これがな。

 

 この邪眼、ひと睨みでどんな生き物も殺してしまう。写真越しなら大丈夫なんだが、テレビ越しだとアウトらしい…どうやって呪毒送り込んでんの?

 

 しかも右目が疼く……! なんてこと言えないほど恐ろしい見た目であり、大きく開いた両目から呪毒を血涙のように無限に溢れ出させ、目を合わせるどころか此方が一方的に見ただけで殺すことが出来るんだから質が悪い。

 

 直死の魔眼とかのほうがまだ優しいよ…見ただけで殺すわけじゃねーんだろ? 殺したくなくても殺しちまう俺の目って……ていうか色々おかしいから!

 

 この体の持ち主も頭撃ち抜かれて死んだはずなのになんで生きてんだっつ―話だ。頭に穴は空いてないし…俺が入ったから?

 

 というかこの森何処だよ!! お家返してーー! …あ、死んでたんだから家ねぇわ。じゃあこれからどうしろっていうんだよ……

 

 この山の中で目を覚ましてから辺りを見渡しただけで小動物は目と口から血を吹き出して死んだ。その悍ましい光景と血の匂いに慣れてしまっている俺はおかしい訳じゃない。ミネルヴァが慣れているから仕方ねーの。

 

 もう一度、辺りの惨劇を見渡した時、一枚の紙切れが綺麗な状態で落ちているのに気がついた。

 それは俺の近くに落ちていた。それにこんな森の中に人工物が落ちてるのも不自然だよな。ふむ…いっちょ見てみますかね。

 

 バササっと地面に降り立って覗き込んで見ると、そこには文字が書かれていた。

 

『いきなりフクロウになって戸惑っているだろう霧軽空那ちゃんへ』

 

 オーケー、これ俺宛だわ。霧軽空那って俺のことだもん。つーかちゃんじゃねーよ、男だよ。男の娘してたけど男だよ。胸がなくて息子がある以外は女にしか思えなかったけど男だよ!

 

 あれだ、胸のないあきつ丸だった。友人とか学校の奴らがうざかった件について。

 

『そのフクロウ、ミネルヴァは君の新しい身体だよ。死んだ君の魂がミネルヴァの体に引かれて、止める間もなく融合しちゃったんだよね。ミネルヴァは面白い体してたから回収して調べようと思ってたんだけど…ま、もう諦めたからいいけどね』

 

 名も知らぬお前のことが気になりだしたよ。神様とか言わねえよな?

 

『で、せっかくだからその体で新しい人生を楽しんで欲しいんだけど…流石に邪眼で生活するのは酷だろうと思って……』

 

 邪眼無しにしてくれたのか!?

 

『他の転生者がクジで引かなかった余った力をあげたよ! 安心して、そこそこいいものだから! あ、邪眼はそのままね』

 

 そのままなのかよッ!? そこは邪眼があると生活できないだろうから消してあげるね。とか、オンオフ可能にしてあげるね。とかだろうが!!!!

 

 あーもう、なんだかなーッ! …いや、待てよ? その能力とやらに期待すればいいんじゃ? 

 

 というわけで続きを覗くことにした。

 

『能力は、え~っと……何がいいかな?』

 

 何がいいかな?じゃないだろうが! そこは事前に決めておくところなんじゃねーのかよ!

 

『そこは事前に決めておくところなんじゃないのとかツッコミを入れてるだろう姿が目に浮かぶよ』

 

 ………出てこい、睨み殺してやる。

 

『まあ冗談は程々にしておいて…能力だけど本当に邪眼があると世界の敵認定されかねないから…目を瞑っても生活できるようにしておいたよ! やったね!』

 

 やったね!

 

 いやまて、その眼を瞑った状態がどのようなものかが知りたい。よくある気を探って気配を得るのか、それとも目を閉じていても開けている時と同じような視界が得られるのか。

 

 断然後者がいいです!!

 

 早速閉じ閉じ…………………………………………なんか、仙人になった気分だぜ。周りの気というか生命力というか…そういうのが見えるし、それらが物の形を象っているのもわかる。

 

 無機物の石でさえ何かを小さく出しているが…もしかしたら生命力や気以外の何かかもしれない。二次創作とかである魔力とかな。いや、しらねーぞ?

 

『まあこれは所謂応用ってやつさ。本当は魔力や気を与えて自在に扱えるようにしたんだよ。無機物から出ているのは魔力だね、多分!』

 

 多分なのかよ…でも魔法が使えるようになるのか…いいな、おい。気? あっちは仙人よろしく気配察知とか治癒とかに使うわ。かめはめ波はまた来週! ドラゴンボール知らねえし! マジ恋くらいしか知らねー。後は仙人よろしく仙術でも頑張るか? 長生きできるし。

 

『もう話すことはないかな~。第二の人生は大変だろうけど楽しんでみてね!  神様より』

 

 結局神様かよてめーは! 

 

 そんなツッコミを最後に目の前の紙は燃えていき、跡形もなく無くなってしまった。これから邪眼持ちのシロフクロウ、ミネルヴァとしての人生か…上手くやっていけんのかよ、俺。

 

 




相変わらず文字数が少ないのは気にしないでください。
まあいつも通りのこのテンションでいきます。

こんな感じのミネルヴァで良かったらこれからもお付き合いのほど、よろしくお願い致します。

あ、漫画は単行本一冊だけなので知らない方はぜひとも読んでみてください!
絵が少し古めかしいですが気にならないほど面白いので!


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第弐話 邪眼は小さな化け物の痴女にストーカーされている

とりあえず二話ほど投稿しておいて、次からは何書くか今から考えるスタイル。


 

 

 さて、それから此処にいても仕方がないというのが分かったのでどこかに行くためにこの山を出ることにする。

  

 早速目を閉じて飛んでみたんだがあら不思議。木も形がわかるから簡単に避けれるんだわ。何なら小動物や虫なんかもわかるから、割りと探知能力としては優秀なんじゃねーの?

 

 それを抜きにしてもミネルヴァは他のフクロウとは違うから、聴力も視力も更に上がっている気がする。

 にしても、これって気なのか? 生命力なのか? とりあえず無機物から出ているのは魔力かもしれないといわれたから、この独特の紫色の揺らぎは覚えておこう。

 

 木の上を飛び、山を超えるなんて訳無いんだが、空の上なら目を開けていても問題ないよな? ということで開眼!

 

 目を開けた瞬間、丁度遠くから殺意や殺気を見ることが出来てついついそちらを向いてしまった。

 

 ミネルヴァは殺気を見ることが出来るんだよ。その道の向こう側を見れば相手がいるんだが…見ちまったぜ。しまったな……。

 

 何やら神社に居た変な集団を見てしまったらしく、そいつらが思いっきり遠方で目と口から血を吹き出して仰け反るようにして悲鳴を上げて死んでいきやがった。

 

 わ、わざとじゃなんだぜ? そんなにわかりやすい殺気を出しているから、今までのミネルヴァの経験のせいで咄嗟に見ちまったんだって!

 

 おっと、これ以上目を開けている訳にはいかないな。

 

 目を閉じて近づいてみるんだが、とりあえず少し離れた神社の鳥居の上に止まって目を瞑ったまま見てみると、生きている二つの気配がある。

 

 それにしても死んだ死体は灰色のオーラみたいなのが見えるのか。これも覚えておこうか。

 

 生きている気配は一つは小さな女の子で、もう一つは女性のもの。もしかしたら襲われていたのはこいつらで、あいつらに隠れていて運良く俺に見られずにすんだのかもな。

 

「母さま……」

「こ、これは一体……朱乃も私も無事よね。じゃあなんで…?」 

 

 なんでだろうねー、何処のフクロウのせいなんだろうねー、俺じゃないからねー。……俺だよ。わざとじゃねえんですよ。

 

「あ…見て見て母さま! 白いふくろう!」

「あら、本当ね。シロフクロウなんて珍しい…なんでこんなところにいるのかしら?」

 

 朱乃と呼ばれた小さい女の子が俺を指差してはしゃいでいるが、お前さん…血だらけの恐ろしい死体の側でよくはしゃげるな。将来立派な子になりそうですね、お母さん。

 

 このガキもそうだが、女性の方も耐性ついているとか…この世界はどうなってんだ……。む、もう一つでかい魔力と生命力の塊が高速でやってきた。

 

「朱璃! 朱乃! 大丈夫か!!」

「あなた…ええ、大丈夫ですけど、いきなり相手側が血を吹き出して死んでしまったのよ」

「なに? …これは一体。分からんが、こいつらだけということは何か疫病にかかっていたか呪われていたかだ。影響を受けないうちに消滅させておこう」

「ええ、そうね。朱乃、近づいちゃ駄目よ」

「うん……」

 

 呪毒だからね、触っちゃ駄目だぞー。ばっちいから手を洗ってうがいをしてからおやつは食べなさいねー。

 

 じゃあお兄さんはもう行くけど、達者でな。

 

「あ、ふくろうが……」

 

 音もなく飛び立って目を瞑ったまま街へと飛ぶ。かつての東京のように地獄の七日間なんて作りはしないさ。

 

 とりあえず、腹ごしらえにノネズミでも探しますかねぇ…喰わなくても仙人並みに生きていけるけど。霞どころか周りの生命力や気を少しずつ貰ってっからな。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 ……割りと美味いと思ってしまったノネズミを食っ霧軽空那でございます。探すこと自体は楽に見つかったが、食うまでに時間がかかった。

 

 葛藤がね、長かったのが原因だわ。いやだって、お前らいきなり生のネズミ食えって言われたら食えるか? 無理だろ? なにせネズミは細菌保有者(バクテリアホルダー)だからな。

 

 そう考えるとお前らの大好きなハハッな黒い夢の国の住人のあいつも危ない気がしてくるだろ? ネズミーランドの奴らは何時でもバイオハザード出来るかも知れねーぞ。

 

 何が夢の国だ、悪夢の始まりじゃねーかコノヤロー。可愛いと謳われる雌のピンクネズミも腹に一物抱えてるどころか二物も三物も収めてっからな。寄生虫に寄生されてるかんな。

 

 これ以上は規制されそうだからやめとくけど、今度からもっと食えるもん増やしとくわ…この超鳥的な肉体なら別のものも余裕で食えんだろ。パフェとか。

 

 とまあそんなこんなで一ヶ月程度経って今日もネズミを公園で食っていたんだが……

 

「おかーさん、鳥さんのお口が真っ赤だよー」

「見ちゃいけません! あんな汚らわしい物……」

 

 ………お前の顔を真っ赤にして汚らわしい物に変えてやろうか……!!

 

 おっと、子供に罪はないんだから自重しようか。だが母親、テメーは駄目だ。お前みたいなのに育てられたら子供が歪んじまうかもしれん…それより何より俺を侮辱したことに切れてんだけどな……!!

 

 目でも開いてやろうかとか思ったけど、それより口を洗いに行くことにした。まあ、幸い此処は公園だからすぐに洗うことが出来たけど、それにしてもこの公園は可怪しい。

 

 どうも気違いが出るようだ…紙芝居でおっぱいのことを子供に聞かせている奴が出るほどだもん。あ、警察来た。

 

 よく見てみればさっきの女が電話してたっぽい…なんだ、やるじゃねえか。

 

「ほら、行くぞ。まったく、こんな真っ昼間からこんなものを子供に見せるなんて」

 

 全くだ、どうかしてるぜ! にしても、おっぱいの絵、めっちゃ上手いなこのおっさん。

 

「おっちゃん! おっちゃん! どうして! どうして!」

 

 どうかしたのはお前のほうだ、クソガキ。この年からおっぱい大好きとは…いや、俺も好きだよ? でもな、ここまで狂信的じゃねえから!

 

 タバコが大好きな奴が乳首依存患者のように、胸が大好きな奴は乳房依存患者という称号を与えてもいいんじゃないだろうか。

 

 あとおっさん、ガキに向かって、警察の前でよくもおっぱいを揉めやら吸えやら言えたな。呆れるぜ……。

 

 パトカーが去って行くと同時に俺もその場を去る。それにしても毎日暇だな…山奥で魔力や気の使い方を練習する以外何もすることがないのだ。

 

 今日も練習していたのだが、最近誰かに見られている感じがするのだが…一体何だっつ―の。俺のストーカーか? それにしては化け物みたいなやつだが…。

 

 まるで地球の何処にいても分かってしまうくらい大きな生命力と魔力は化け物としか言いようが無い。なのに無限とも言えるほどの量を収めている器は小さな女の子程度の大きさだ。

 

 それが空間の間?から覗いてくるのだが…最近頑張って覚えている途中の仙術を使った簡単な幻術で逃げているが、日が経つといつの間にかバレているという始末。自在に操れるから仙術も割りと早めに扱えるようになったんだよ。

 

 極めたら色々出来そうだし、今は出来ない変化の術とかも使えるようになったら人間になれるし! 頑張るしかねーだろ。

 

 ストーカーだが、姿を見せたら睨んでやる…果たしてこの強力すぎる猛毒の呪毒すら効くのかすらわからないほどの化け物を殺せるのか。

 

 ……無理な気がしてきた。一回見て直ぐに逃げよう。急いで空間操作出来るようにならないと…! 空間転移で逃げたり異空間に逃げこんだりするしかないじゃない!

 

 小さなフクロウに何させる気ですか、俺以上の化け物相手に何かできるわけないじゃないですかやだー! 

 

「…見つけた。変な鳥……」

 

 ファッ!? 

 

 こいつ、いつの間に……!! 俺の後ろを取るとは、やるな! 

 

 伸ばされた手が尋常じゃないほど速い件について、誰か何か言いたいことある? 俺はあるね、なんで残像すら見えないほどの速さで動かせるんだよ気持ち悪いよ意外と可愛い子だったよ!

 

「キエエエエッ!!」

「む……」

 

 魔力と気を体中に巡らせて、直感で羽ばたいて避けると羽と羽によって円になった間を手が通り抜けていった。

 

 それと同時に首を180度ぐるりと回転させて真後ろを向き、ひと睨み。一瞬で確かに呪毒は送り込まれた……はずだった。

 

 そのゴスロリ美少女?は確かに呪毒を目と耳から送り込まれて大量の血を吹き出した。頭だけ仰け反らせるようにして噴水のように出血したが、倒れることはない。

 

 マジか…こいつ、呪毒が効かないほど強いのかよ……。

 いや、効いていることは効いているが、死ぬことはないってことか? 

 

 口からも滝のように血を流して胸元を濡らしているが……なんで胸をテープで隠してんの? 痴女?

 

 目も白いところが血で黒くなってしまっているが、なんてことはないように見える。不死身か、こいつは……!!

 

「呪い…毒? 我にここまでするなんて……欲しい」

「クエッ!?」

 

 驚いて変な声出た! いやいや、それよりこいつなんて言いやがった? 俺が欲しい? 捕まったら呪毒を調べるためにどうするでしょうか! 正解は解剖だ!

 

 そりゃ無限に出続けるこれほどまでに強力な呪毒はないだろうぜ。というわけで逃げるかね。

 

 一回羽ばたいただけで時速三四〇キロを優に超える。ただ空を飛ぶだけではいい的なので山に向かって飛び、木の間を縫うようにして飛んだ。

 

 それなのに気づけば奴は追いついてきて隣を走っている。逃走中のハンターですらここまで大人げないことはしねえよ!? ちょっとは逃走させてくれや! 

 

「速い…やはり、普通じゃない…?」

「キエエッ」

 

 気分は第三部に出てきた犬猫が売られている店の名前の、パズドラに出てくるホルスによく似ているあの鳥さん。

 魔力弾と気弾を右横に出現させて撃ちだした。しかしそれは手で弾くようにして防がれてしまった。

 

 嘘だろ、これでもデカいクレーターを余裕で作るほどの威力なのに……ならッ、自然からも取り入れた攻撃をするだけだ!

 

 気分はあの魔法少女! 仙術によって自然の気をかき集めて収束し、自身の気も注ぎ込んで行く。何かされる前に睨みつけて呪毒で殺す…事はできなかったので足止め。なんで死なねえんだよ……。

 

「キエエエエエエエッッ!!!」

 

 スターライトブレイカーって叫んだつもり。もしくは気分的にマスタースパークとかでもいいや。どっちも魔力なんだけどな! 

 

 あ、かめはめ波でどうだ!? かわかみ波とかでもいいぞ! 

 

 連なる山を幾つも抉り、吹き飛ばし、削り取ったビームに呑まれた少女はどうなったのかは知らないが、今のうちに逃げさせてもらうことにした。

 

 いつの間にか街からかなり離れて山が沢山の所に来てしまっていたが…まあ、明日の朝刊やニュースになるのは確実じゃねーかな。

 

 少し気怠い体に周りから集めた気を送り込んで、元のようにしたところで三百キロ程の速度で飛んで帰った。

 あれで死んでたらありがたいんだけど……。にしても気を集めすぎたな。今度からは手加減して集めよう。

 

 

 




呪毒で死なないオーフィスマジチート。ある意味凄いですね(笑)
あ、イッセーのちっこい頃の話だけど、時系列おかしいのはわかってるから!
あれだよ、あれ……書くこと無くてたまたま読んでいたその話をちょうどいいと思って書いただけだから突っ込まんといて!ね!?


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第参話 邪眼は非常食に負ける

動物の世界は弱肉強食。弱った被食者を腹を空かせた捕食者が食べるのは自然の摂理。食物連鎖だから仕方ないね。

そういう感じで読んでください。大丈夫、被食者は死なないから!


 

 

 

 

 あー疲れた……あれから帰って寝ても精神的に疲れが残ってるわ。

 ちなみに、朝刊に載るどころじゃなくってテレビで放送もされていたぜ。今朝ヘリで行ったらしいんだが、なんともマスコミは野次馬根性がおばちゃんより凄いな。

 

 商店街のテレビから見てみたんだが、なんつーか……あれだ、これは俺のせいじゃねえ! あの痴女のせいだ! そうさ、俺のせいじゃないもんね!

 

 たとえ山が数個消し飛ぼうが関係ないったら無いんだよ! 

 

 イヤァ、スゴイネー。ヤマガキエチャウジケンカー。ナンデコウナッタンダロウネー。

 

 ………宇宙人の仕業かとか言われてるけど、俺は宇宙人じゃねえから俺の仕業じゃねえってことになるよな? ほら、俺は人じゃないから真っ先に犯人対象外だ。なにせ人じゃねえからな。

 

 空を飛んで獲物を探しながら今朝のことを考えていると、丁度いい餌を発見した。大きさは猫ぐらいだが、気が雀の涙くらいになっていて死にかけだ。もうすぐ死ぬんじゃないかってくらい弱いんだから、食っても構わねえだろ。

 

 相手が死にかけなので音を消すひつようもないからバササッと降り立った。傍らで傷だらけの獲物を嘴で突いてみるが反応はない……では、いただきましょう!

 

 全ての食材に感謝を込めて…いただき「やった! 一ヶ月探してやっと見つけたぞ!」……ガキが近づいてきやがった。

 

 やたら魔力が多い子供だが、なんでこっちに来るのか……あ、もしかしてこの獲物? もう死にかけだから諦めな。

 

「ッ!? フクロウ…お前ッ! 俺の黒歌から離れろ! 一番好きで助けたいキャラなんだよ!」

 

 キャラ? 何言ってんのかわかんねーけど、こんな五月蝿いところで食事なんて出来やしねえ。さて、こいつ持って他のところにでも行こうかね。

 

 首を脚で掴んで飛び立つ。空までくればこっちのもんだからなー、じゃあな少年! いい夢見ろよ! 

 

「逃がすか…! 悪いけど……離してもらうよ」

 

 その瞬間、俺は殺気を感じ取った。そして後ろから高速で飛翔してくるのは矢…なんでこの時代の少年が弓矢なんて持ってんの!? しかも上手いじゃねえか! 

 

 バサリと羽ばたいて身体を斜め下に向けて避ける。

 

「あっ…!」

 

 そのまま人通りの多い道にゴー! 驚く人々の声と後ろから少年の声が聞こえてくるが、次第にそれも無くなった。撒けたようだな…じゃあいつもの山で食べるとしようか。

 

 俺が初めて見たあの山の場所で獲物を下ろす。ここらへんの死んだ小動物は食われたのかもう居なくなっていた。

 

 後はそうだな……ここで仙術や魔力の練習をしているからパワースポットみたいになっていることくらいか? 魔力の扱いより気の扱いの方が多いので此処は凄い綺麗で力強い場所。聖域? それは知らね。

 

 ここらへんの山菜や木は育ちがいいけど、山菜は俺の腹の中へ行ったから結果オーライだよな。俺が育てた。

 

 それにしても、猫は初めて食べるな…一説によると猫は美味しいらしい。そんなことをちょっと頭の可怪しい奴が言っていたのを覚えている。

 

 今夜は猫鍋(物理)だ!とか言いながら野良猫をバレないように捕まえに行っていた。あいつ、マジで食べたのかな?

 

 まあ食うか。柔らかい腹に嘴を押し付けた時、獲物の黒猫が目を開けたようの感じるが…目を開けただけ。抵抗もできないほどに弱っていたのか。関係ないけどな。

 

 ぶちりと腹を噛み千切って咀嚼する。なるほど…猫はこんな味がするのか、美味い…のか? 鍋にしたら美味しくなりそうだけどな。

 

 そろそろ内蔵にでも…と食べ進めていた時に、黒猫が泣いているのを見つける。あれ、猫ってこんなにボロボロ涙流すっけ……自分の腹が食われてるの見ながら、死にたくないよとか小さく呟くっけ!? 

 

 あれだよな、餌食べてマグロ美味いにゃ~とか言うのは知ってるけど、死を感じて死にたくないとかこっち見ながら懇願するっけ!? あれ、俺の常識が可怪しいの? これが普通なの? 

 

 いや待て…この世界には魔力とか痴女みたいな存在が居るわけだし…これが普通、なの、か……? なんか解せぬ。

 そしてMK5。マジで、くたばる、5秒前みたいになっている俺の獲物だが…なんか、食欲が失せてきちまったよ。どうしてくれんだよ、全く。

 

 はぁ…いいよ、いいさ、いいだろう。助けてやんよクソヤロー! はいはい、誰しも死にたくないもんね、俺の優しさに感謝しながら生きていけよ……()()()ッ!!!

 

 え? 逃がすわけ無いだろ? 俺が途中まで食べてた獲物なのに…これからは非常食として持ち歩くことにした。やっぱ生物として食事は必要なわけよ。

 

 仕方ないので膨大な気を使った仙術でこいつを治していくことにする。急速に塞がる腹の食い痕と他の傷。それを驚いたように目を見開いただろう獲物だが、猫もこういうことには驚くんだな。

 

 ついでに睡眠作用もつけといて…俺の住処であるこの大きくなった樹の穴に入れておく。中は街から取ってきた柔らかいものとかが入っているのでいつも安眠だぜ。

 

 俺はフクロウにしては珍しい昼型である。なにせ今まで昼に動いてたからな…夜は眠くなっちまって。

 

 よし、こいつが逃げるまでに首輪取ってこよう、首輪。非常食なんだから繋いでおかないと……よし、行くとすっかね。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 取ってきた首輪を頑張ってつけようとすること三十分…付けれなくてイライラしたので気とか魔力とかフルに使って付けてやって一息ついた。

 

 この首輪はどこかの家の庭に落ちてたから拾ってきたんだけど、猫につけようとして嫌がられて諦めたんだろうから問題ねえよな? 

 

 赤い首輪で小さな鈴がついており、リードが伸びている。散歩させたかったのか…ドンマイ! 安心しろ、俺が別の猫でその夢、叶えてやるよ! この餌が暴れなければだけど。

 

 リードの手持ち加えながら住処の中でクッションに埋もれながら起きるのを待つ。あれから二時間…一向に起きる気配はありませんことよ。…噛み付いて起こしてやろうか。

 

 そして更に一時間。俺は暇だったので魔力で木の壁に盤を作って一人オセロをしていた。暇人とか言うんじゃねーよ…なにせ人じゃねえk…って、これはもういいか。

 

 これでも気の扱いと魔力の扱いの練習してんだよ。魔力を細く木に貼り付けて気で固定。魔力の碁石を創り出して壁にくっつけて白黒変えまくる。

 これがまた繊細な作業で…オセロしながらこれするのは凄い疲れるけど、いい練習になる。

 

 一人二役並列思考による対戦…あ、端っこ取られた。あ、ちょっとまって俺! そこに置かれたら白がぁぁぁぁぁ……待てって言っただろうに!

 

「キエエッ!」

 

 スココココッ! っと嘴で黒を上から怒りのままに連続で突きまくる。別々で思考しているために負けた俺は激おこなのだ。はたから見ればひとりオセロして怒っている阿呆にしか見えねえけど。

 

「にゃぁ……」

 

 その時、背後から呆れたような猫の声が聞こえた。後ろを首だけ回して見てみると、首だけ動かしたことに驚いた猫が首を縮めていた。

 

 どうやら起きたようで俺のオセロを見ていたらしい。その眼には戸惑いが色濃く映り込んでいる。俺の存在に、オセロに、自分の首輪とリードを見ているのだ。

 

 だがそんなの関係ねえ! 一人でやって怒っているのを馬鹿にしてんなら喋れるほど賢いであろうお前が相手しろや!

 

「うにゃっ!?」

 

 リードをぐいっと引っ張ると、猫はこっちまで引っ張られて俺の横に倒れた。怯えたように俺を見る猫だが、別に取って食おうってわけじゃない。今はな。

 

 右の翼に羽先で盤を指す。そして撫でるように一振りすると石は消えて新しく両側に白黒の石が魔力によって作られた。それにさらに驚く猫だが、俺は魔力を操作して動かしていく。

 

 よし、お前もやれ。そんなに言うなら相手してみろや。顎で指すように嘴で促すと恐る恐るという風に動かした。

 この猫からも魔力が溢れでて石を動かしているようだし…お前も痴女みたいな存在なんだなぁ…世の中すごい。

 

 フッフッフッ…元人間に猫如きが勝てると思うなよ! コテンパンにして泣かしてやんよ!!

 

 

 

 

 

 

 

「にゃんッ!」

「……キエエエエッ!!」

 

 負けた、完膚なきまでに負けた………ッ!!!

 

 この猫、ただの猫じゃねえ…只者じゃないぞこいつ!! 一時間の激戦が遂に終決した。

 

 この非常食黒猫、強えぇッ!! 

 

 

 




黒歌登場。しかし食われかけているというね。これから幸せになるから大丈夫だよね!


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第四話 黒猫は邪眼を想い続ける

いやはや、いつの間にやらお気に入りや評価が増えていて嬉しい限りでございます。この調子でこれからもよろしくお願いします!
もう一つの作品?なんか局所的スランプ…不安定な周期で来る突発性書けない症候群にかかりました。こっちは書けるのになんでだろう……。

あ、それと最後にもう一言。

黒歌sideなんだけどね、この黒歌……誰……?


 

 

 

 白音を助けるためにゲスな主を殺し、他の悪魔に追われて死に物狂いで我武者羅に逃げまわっていた私は、いつの間にか死にかけの状態で倒れていたらしい。

 

 私と白音の力を狙っていて危なかったから殺したとはいえ、これで私も立派な主殺しのはぐれ悪魔だ。だけど後悔はしていない…ただ、置いて来てしまった白音の安否だけが気がかりだけど。

 

 そんな私は気づけば本当の意味で死にかけだった。痛みすら感じなくなったお腹に物凄い違和感を感じて目を覚まして見たら、力切れで猫の姿になっていた私のお腹を食べているフクロウの姿があった。

 

 何故か目を瞑ったままの白いフクロウは、嘴を私の血で赤く染めて私を食べている。

 恐らく、死体だと思ったのかもしれない。そのせいで住処に持って来られて餌になっているのかも。

 

 あぁ…お腹を啄まれる感触すら、分からなくなってきちゃった……。

 

 動物の世界は弱肉強食、瀕死の姿だった私は恰好の獲物だっただろう。この状況も仕方がない…仕方がないんだけど………

 

「死にたくないよぉ………」

 

 声すら出ないと思った喉から絞り出すように、自然に声が出てきた。

 フクロウを見ながら勝手に溢れでた涙を流しながら、そう呟いた私の脳裏には白音の顔が浮かび続けている。こんな終わりは嫌だなぁ………。

 

 そして、この呟きが私の命を救い、これからの人生を変える一言であり……私が愛し、尽くす相手との出会いだったなんて思いもしなかった。

 

 私の呟きを聞き取ったのか、フクロウが食べるのをやめて何やら驚いた雰囲気で此方をじっと見つめてくる。でもなぜ目を瞑ったままなのだろうか…もしかしたら盲目なのかもしれない。

 

 そしてフクロウの首が動いたと思った次の瞬間、信じられない光景を目にした。

 

 それは白いフクロウが仙術を使って私のお腹を治す光景だった。仙術の腕前はまだ拙いものであったが、それをカバーするように自然から膨大な気を吸収して治療していた。

 

 いやいやいや、普通のフクロウが仙術とか使えるわけないじゃない! え、もしかして私が知らないだけで、実はいろんな動物が仙術使えてるとか?

 

 あれ、私の常識がおかしいの? 実はこれが普通なの? いや待って、世の中には不思議な事が沢山ある。なにせ悪魔とか天使とか色々あるからおかしな事じゃないのかも知れないじゃないだから落ち着くのよ私!

 

 体は動かないけど頭の中は大慌てな私だったけど…体の中の気でも操られたのか、凄く眠くなってきたのだ。

 

 食べられなくても本来死ぬしかなかった負傷した体、色々あって摩耗した精神にこの安心感やリラックス効果は抗い難いもので…なぜかふわふわの寝床で私は寝てしまった。

 

 そして次に目を開けた時はまたまた驚くべきことがあった。絶対にこのフクロウがおかしいのだ、断じて私がおかしい訳じゃない!

 

 魔力と気の、本来なら反発しあうであろう二つを器用に扱い、くっつけ、碁盤と碁石を作って遊んでいたのだ。

 

 しかし、余程集中しているのか、私が起きて座りながら見ているのにも気づかない。それに操作に集中しているようにも見えるし…なるほど、練習してるのかしら? 

 

 それと、この首輪とリードは何なのかしらね……リードの先はフクロウが咥えてるし。もしかして逃げないように付けられた?

 

 えー、私ってフクロウに飼われることになるの? なんか解せぬ…人型になって逃げてもいいけど、助けてもらったし、なんかこのフクロウが滅茶苦茶気になりだしたので、暫く飼われてみようと思う。

 

 このフクロウに治してもらって起きてから、とても穏やかで心地いい気分だし……フクロウとはいえ感謝はしてるから、少しは恩返しでもしようか。

 

 餌でも獲ってあげれば喜ぶかもしれないわね。

 

 そんなことを考えていると、突如フクロウが鳴き声を上げながら奇行に走りだした。

 

「キエエッ!」

 

 スココココッ! と嘴で黒い石を突きまくるフクロウは怒っており、執拗に突きまくっている。

 

「にゃぁ……」

 

 呆れた感じで声を出した瞬間、突然ぐりんッとフクロウの首だけが回転して、その光景にびっくりした私は首を縮こまらせる。

 

 いや、普通驚くに決まってるじゃない! 体は動かさずに目を瞑った顔をいきなり向けられたのよ? 誰でもビビるわ!

 

「うにゃっ!?」

 

 今度はリードを引かれて引き寄せられ、フクロウの横に転がされる。痛たたた…いきなり引っ張るから首が締まった。

 そんな私にフクロウは顎で指すように嘴で碁盤を指す。

 

 これは…私に相手をしろってことなのかな? 多分そうなんだけど……

 

 羽の一振りで消された石が再び創造され、おずおずと魔力で作られた石を魔力で操る。あれ? 何気に魔力で物質作るのって高等技術じゃ……

 

 んで、一時間…遂に勝負がついた。

 

「にゃんッ!」

「……キエエエエッ!!」

 

 圧倒的勝利! 完璧なる勝敗! ほぼ真っ黒! 

 

 にゃははと高笑いを上げると、フクロウは悔しいのかスココココッ! と碁盤を突き出した。なんて人間らしいフクロウなのだろうか…知能高すぎでしょう。

 

 あと私もなんかキャラ崩壊してきてるというか…あれ? 私ってどんな性格だっけ? 

 短時間でここまでするフクロウなんて世界で一匹だけよ怖いじゃないですかやだー!

 

 にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃー………コホン。 

 

 にゃーっ! もうちょっと落ち着く時間を頂戴ッ!!!

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 あれから一年ほど、私にとっては驚きの連続と楽しい日々だった……とか言ってるけど、別にこれから死ぬってわけじゃないわよ? 死亡フラグでもない。

 

 あれから数日経った時にミネルヴァこと空那はストーカー被害に遭っていることを知った。

 

 不覚にも、犯人と出会って何故か驚いて怯えている空那に萌えた私ガイル。……圧倒的コレジャナイ感。

 

 しかも犯人は超大物有名龍のオーフィスだった。私が驚いて警戒する前に空那が私を掴んで逃げ出してしまった。

 

 速い強い怖い。なんでオーフィスから逃げれるのよありえないでしょうフクロウ強い目を瞑ってるのに空中戦闘機動ってちょっとかめはめ波は駄目だってばもう!

 

 逃げきった後に私がゲロったのは言うまでもない……ゲロインとか言われたくないよー!

 

 とまあ今ではオーフィスは二等身で私達の愛の巣に住んでいる。梟の巣だけに! 

 

 …………キットカット! 今のは無かったことにしてもらってもいいかしら? 完璧に黒歴史だわ………orz

 

 ま、まあいいとして……この一年で私は何もしなかったわけじゃない。まずは空那に念話というものを覚えさせて話ができるようにした。

 少し時間がかかったけど空那と話せるようになった時は嬉しかった。

 

 そんな空那の頭の中は結構愉快な感じだったけど……貴方、何時も何処に念話送ってるのよ。相手いないのにちょっと怖いわよ?

 

 それからはずっとおしゃべりを毎日していた。互いのことを教え合い、色んな事を知った。空那は面白いから話のネタが尽きない。

 それはそうと事故で記憶を覗いちゃったけども……あれは、なんて言えばいいのかしらね……

 

『悪夢の七日間in東京~邪眼が来りて目で睨む~ …完璧に黒歴史ですね有難うございます』

『なに悪魔が来りて笛を吹く的なことを…歴史の教科書にも乗るような黒歴史にゃ!』

『邪眼だよ! 全員集合ッ!』

『した結果が溢れる死体よ!? 集合しちゃ駄目!』

『もう終わったことなのに、なに言ってんだ? お前さん』

『うにゃ~ッ!!』

 

 猫パンチした私は悪く無い!!

 

 それでも番も死んでしまう邪眼のミネルヴァはかなり辛い過去だと思う…私と比べることすら出来ないだろう。

 

 だけれど空那は過去とは違うミネルヴァ人生を歩んでいる。目を瞑り、視界を犠牲にすることで殺すことを防いでいた。

 

 仙術や魔力の感知でどうにかなってるらしいけど、私が目となり手足になろうと思うのだ。白音関係を話して救われ、それ以外でも惹かれていった。

 

 もうただのフクロウじゃないとわかっているし、何れ私のように人化もするつもりらしいので好きになっても問題ないはず。

 

 オーフィスはよくわからないけど、ミニオーフィスとしていつもくっついて羽に埋もれているからねぇ…なんか住み込みで働いてる。

 

 主に空那の世話面で。貴女何しに来たんだっけ……え? 気にするな? まあいいわ……。小さいのに凄いわね…家事スキル高ッ!? 私より高いとか…落ち込むわ。

 

「ぶい」

「にゃー(ぐぬぬ)……」

「キエエ(m9。゚(゚^Д^゚)゚。プギャーッハハハハヒャヒャヒャヒャ)」

「その一言の中でどんだけ笑ってるにゃ!? 笑うにゃ!」

「クァ(おっと危ねえ)」ドスッ

「うっ!? う…ぁ……おぇぇ…」

 

 反撃喰らって吐いた……げ、ゲロインじゃないんだってばー!! 

 スタイル抜群の美人な私がアルアル言うチャイナ娘と同列になんて見られてたまりますか! 吐くのはまだ二回よ! それ以外は女として完璧なはず。

 

 猫だけど。

 

 他には魔法や仙術の扱いの練習とかかしらね。変化の術とか空間操作してる時点で使えるはずなのに変化しようとはしないのはなぜなのか聞いてみたら、割とくだらない理由だった。

 

『男らしい姿が想像できねぇんだよ…あきつ丸はもう嫌だー!』

『わけがわからないよ…』

『いっそ、人以外になればいい』

『『それだ(にゃ)!』』

 

 まあ結局小動物とか虫とかになって死にかけたんだけどね…虫は無いわー。私もあれから人化してないから不思議な猫としか思われてないけど、出来るなら空那が人化した時に一緒になりたい。

 

 理由は…まぁいいじゃないの。空那がちゃんと変化するまで何年でも待つわ。できれば早く触れ合いたいし、人化したらほぼ人間だからその…色々できるし、ね?

 

 私の姿も見て欲しいけど邪眼があるから……これもオーフィスと相談してどうにか対策を立てなきゃね。結界をすり抜けた時はびっくりしたわ。

 

『黒歌ー、餌取りに行くけど来るか~?』

『今日は店に忍び込む……我、きっと大活躍』

『行くから少し待つにゃー!』

 

 じゃ、今日のご飯でも取りに行きましょうか。店に忍び込むって…あのオーフィスがなんでこんなことに……色々教え込んでいる空那のせいだわ…。

 

 まったくもう…少しだけおかしい、こんなに毎日が楽しくて幸せなんて、昔の私は思いもしなかったでしょうね。

 

『お、飛行機だ。並んで飛んでみようじゃねえか!』

『おー!』

『にゃ~!! 高い高い寒い高い怖いにゃーーッ!!』

 

 白いフクロウに乗った小さな人形と掴まれて空飛ぶ猫が都市伝説に追加された瞬間だった。

 

 

 




だが、私はこんな黒歌が大好きだ!
あ、キャラ崩壊注意です…って、遅すぎたね。すまん。


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第五話 邪眼は皆とお喋りに興じる

リアルが忙しいからストレスがたまる…息抜きに書いてみました。
気がつけばもう12月です…早いものですね。今年は一年経つのが異様に早く感じました。

これが、年か…………。

ああ、温かいお茶が美味い……。ちなみに緑茶派。
ぶっちゃけるとお茶より珈琲派。食後の珈琲はジャスティス! レモンティーでも可!

うん、どうでもいいですね。


 

 

 

 

 俺の羽に埋もれてミニミニサイズのねんどろいどオーフィスがカリカリと胡桃を齧っている中、俺は電話相手と話をしていた。

 

 まあ、簡単にいえばオーフィスのフィアが遂にストーカーをやめて俺の側に居続けるという選択肢を取った結果だけどな。小さくなるとか、お前ガチャのカプセルとかに入るか?

 

 300円位で開○倉庫とかに売ってそうだよな。顔は知ってるが今の状態は見てねえけど可愛いに違いねえさ。なんか言動が可愛いもん。

 

 後はあの非常食の黒歌が電話を一生懸命教えてくれたことか…電話番号要らないし、適当に話しかけて電波放ってたら世界の誰かとボイスチャット出来るようになっちまった。

 

 これがWi-Fiによる通信か……!! そんなことを叫んだら黒歌に心配されてずっと肉球で撫でられたけど…猫のくせに多芸だな、お前。

 

 背中からフィアが差し出してくる胡桃を食べながらチャット再開。いやね? これがもう本当にチャットみたいになってて…俺を含めた四人くらいで喋ってるんだわ。

 

『……というわけなんだけど、良い案ないかな?』

『オーケイ、林檎ちゃん…このミネルヴァ、全力で助けてやろう! 林檎ちゃんは俺が育てた』

『強ち間違ってないところがなんとも言えないよ…最近大人びてきたねとか、冷静さが~~とかなんか驚かれてるから、私は考えました』

『ふむふむ、その心は?』

『わざと演技すればいいじゃないと! だってね、子供なんだから無邪気にやってればなんとかなると思うんだ! 少し傲慢に我儘に、成人するまでプライド高く演技してやんにょ!』

『おー、オスカー賞も目じゃねえな! 女優賞貰えんじゃね? でも噛んだから無理か』

『うぅ…/// 絶対にやってやるもん! 目指せ陰で呼ばれる無能なんちゃら! 辿りつけ実は狡賢い狡猾な私!』

 

 今話している相手は林檎ちゃんといい、この名前は林檎ちゃんが紅いものってなに? って言ってきたから、俺は赤いもので林檎って答えたらこうなっちまった。

 

 俺? 勿論ミネルヴァの名前ですがなにか? ちゃんと神じゃないって言ったから問題ないさ! 邪眼とは言いづらかった…ほら、こいつ厨二じゃね?とか思われそうで怖かったんだよ。

 

『おーっす、お前らお疲れさん。いや~、疲れたぜ』

『おっさんか、お疲れー』

『あ! おじさんお疲れ様ー!』

『おう、お疲れさん。少し休憩するからこっちに来たぜ。此処で話すのが一番休めるんだよなー』

『皆様、お疲れ様です。何のお話をされていらしたのですか?』

『メイドさんだ! 乙乙~』

『メイドさんもお休みかな? お疲れ~』

『メイドも来たのか、そういやなんでミネルヴァはメイドが来た時は何時もハイテンションで挨拶してんだよ』

『なぜって…俺の心の中のメイドだからに決まってんだろ! メイドさんに彼氏ができたら死ぬ。勿論、お前らも道連れな』

『怖ッ!? メイド、結婚すんなよ! 死にたくねえ!』

『ミネルヴァお兄ちゃん、どこまでも着いて逝くよ!!』

『林檎様はノリが良すぎですよ…安心してください、ミネルヴァ様。私は主が居てもそっちの意味ではフリーです』

『っしゃ! ワンチャンある!』

『オフ会しねえ限りねえよ』

 

 オフ会は無理だなぁ……でもメイドさんの声聞くと癒やされるしな。で、これで全員集まった。このメンツでいつも話しているんだが、林檎ちゃんの話忘れてたぜ。

 

 フィアは…寝てんのか? こいつ寝ること知らなかったからこの状態になるのは凄いことなんだぞ。心から安心しきってるってことだ。

 

 黒歌? 彼奴は今山に餌探しに行ってっから此処には居ねえぜ。今日は果物パーティーらしい。何処に生息してんの?

 

『そうそう、林檎ちゃんの話だけどな? なんか勉強がつまんないから面白く出来ないかって話だ』

『あ~、確かに遊び盛りのガキに勉強は詰まんねえもんなぁ~…よし、いっちょ考えてやっか!』

『私もお嬢様などに勉強を教えてますが…参考になりますかね?』

 

 さすがメイドさん、勉強を教えることも出来るのか。俺なんて赤ペン先生に頼りっぱなしだったけどな…コメントが辛辣すぎて泣けた。

 

 ――実に残念な脳みそです。貴女の灰色の脳細胞を赤ペンで染め上げてしまいたいくらいです――

 

 これ、88点のコメントだぜ? どうなってんだよ、泣いてもいいだろこれ、ねえ! アハト・アハト取って喜んだ俺が恥ずかしいよ!

 でもな、それに対してコメント書きながら続けていったら最後は点数が上がるごとに遠回しに誉めてくれているということがわかってきた。なるほど、赤ペン先生はツンデレと…。

 

 友人は69点取って下ネタ叫んでた(ガチ)けど、わけわかんねえから無視した。

 

『で、問題はなんだよ?』

『えっとね~……ん~、簡単にいえば文章で出された割り算問題?』

『割り算ですか…小学生くらいの林檎様には問題によっては難しいですね』

『まぁ、これは簡単なんだけどね…「50個のドーナツがあります。このドーナツを10人で均等に分けたとき、一人何個になるでしょう?」…一人で沢山食べたいよね。でも馬鹿にしてるよねー』

『確かになぁ…これは簡単すぎんぜ』

『問題なさそうですね。ですが、面白くするのでしたよね?』

『うん、そうだよ! 面白おかしく解きたいんだけど……あれ? ミネルヴァお兄ちゃん?』

『あん? あいつどうしたんだ? 落ちたか?』

 

 ふむふむ、なるほど…これはあれだな……

 

『なるほど…なかなか難しい問題だな』

『はぁ? お前さん、これを難しいと思ってんのか? そうだとしたら結構やべえぞ』

『お兄ちゃん…もしかして私より馬鹿だったの?』

『テメエら好きかって言ってんじゃねえよ! これでも医学関係を学んでたわ! ったく、確かに普通に考えたら簡単だろう…しかし、此処は面白く解くところ! そう考えれば難易度は跳ね上がる! 全くもって怖い問題だ…』

『ミネルヴァ様は何を恐れてるのですか…』

『何って…これは一人が大量のドーナツを得るために殺し合い、勝者だけがその甘い勝利という名の甘露とドーナツを味わう問題だろう?』

『『『はいっ!?』』』

『うむむ…どうすれば殺しきって独り占めできる? ドーナツに血が飛ばないように考えながら戦う…武器は何だ? フォークなのか? 九人を殺して一人で食べるには…』

 

 まずは隣の奴らをフォークを後ろから首に刺して不意打ち。そしてそれに驚く更に隣を別のフォークで目を刺して押し倒し、フォークを踏む。こっからどうするか…

 

『…ということで、こっから案はある?』

『いやいや! お前ガキにどんなこと教えようとしてんの!? 問題解けてねえじゃねえか!』

『何言ってんだよ、おっさん。汚い大人の考えを教えてやってるだろう? 林檎ちゃんも一人で食べたいって言ってたじゃん。それに問題は解けてるじゃねえか…残った一人が全て貰う。な?』

『な?じゃねえよ!? 子供の夢のために綺麗なこと教えてやれよ!』

『阿呆! 何れ世界や大人がどれほど汚いかなんて嫌でも知ることになる…それを今から教えておけば、将来落ち込むことがねえだろ! 俺なりの優しさだバカヤロー!』

『時間が経てば精神も強くなって耐えられるから! 今はキラキラした夢でも見させてやろうぜ!』

『そうですよ! お友達の方々と分け合って楽しく食べられたらいいじゃないですか!』

『何言ってんの! どうせあっちの味がいいーとか、もっと食べたいよーとかで喧嘩になって取り合うだけだ。そしたら仲も何もそっから亀裂が入って、以来遊ぶこともなく無視しあい…』

『ストップ温暖化! ストップだやめろそれ以上言うな! おじさんも汚いところはかなり見てきたけど、子供の汚いところはいいじゃねえか!』

『喧嘩するほど仲がいい、ですよ! 喧嘩して、謝って、仲直りしていい友人関係を築くんです!』

『フンッ、そんなの他の奴の前だけの演技だ。どうせ心の中や一人になったら妬み恨みを吐きまくって枕に写真貼って殴りまくんだよ!』

『捻くれすぎだろ!』

 

 結論、ぼっちが最強。八幡嘘つかない、何時も嘘つくのはリア充なのさ。リア充爆発。リア充は死ね。

 

『おい、林檎もなにか言ってやれ!』

『さ……』

『さ……? なんでしょう…』

 

 林檎ちゃんは一言だけ呟いた後、少しだけ溜めて驚いたように叫んだ。

 

『さすが50歳…ッ!!』

『失敬な! 俺はまだおっさんみたいに加齢臭香る糞野郎じゃないっつーの!』

『俺もしてねえわ! って、そうじゃねえよ! なに褒めてんだよ!』

『いやぁ、まさかの答えに私も脱帽だよー。流石ミネルヴァお兄ちゃんだね! 次はコップのジュースを掛けて怯んだ時に襲いかかればいいと思うよ!』

『おお、その手があったか!』

『色々おかしいですよ! 割り算なんですから割ってください!』

『何言ってんだメイドさん…割ってるだろう? 机の角で人の頭を』

『そうじゃないです! ミネルヴァ様ったら、もう……もう!』

『メイドさんに萌えた俺ガイル…可愛い声でそれはヤバい』

『悪いな、俺も思っちまった』

『メイドさんは可愛い…メモメモ』

『しないでください! ミネルヴァ様も何言ってるんですか!///』

『なんでこうなっちまったんだよ、林檎…』

『林檎ちゃんは俺が育てた!』

『私はお兄ちゃんに育てられた! お兄ちゃんLOVE! 結婚して! あ、今の林檎的にポイント高い!』

『はいはい高いね―。大きくなったらいいぞー』

『言ったね? 私はいつまでも覚えてるからな!』

『真面目に問題解きましょうよ……』

 

 という感じでずっと話し合っていた。結局、林檎ちゃんは答えは真面目に書くようだし…まあここでこうやって楽しく出来るんだから問題ねえよな!

 

「ただいまにゃ~」

「ん……おかえり」

 

 黒歌も帰ってきたし、落ちるとすっかね。じゃあなお前ら、いい夢見ろよ!

 

 

 




林檎ちゃん、メイドさん、おじさん…イッタイダレナンダロウナー。
わかってても言わないでくださいね? いやぁ、私もワカンナイカラ。

この四人の会話は書いてて楽しいし、凄く息抜きになりました。なんか止まらなくなるので無理やり切ったけど……今度は会話だけで一話分書いてみたいものです。



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第六話 邪眼は龍神の案内で観光する

暇な時に投稿! 今くらいだよ…鴉も一話くらいそろそろ上げれるかな?


 

 

 

 

 

 さて、今日は俺達は冥界という所に来ているのだが…空が変な色してんだけど、大丈夫なのかこれ……。

 

 というか冥界なんてあったのね…つか、悪魔なんて居たのか! 昔の人の黒歴史かと思っていたら、実際に存在していたっていうな。

 悪魔の他にも天使や堕天使なんて言うのも居るらしい…あ、黒歌も悪魔だったわ。忘れてたぜ!

 

 フィアが次元の狭間という所に連れて行ってくれてそこからミネルヴァ御一行は冥界に来たのだが…目的? 別に観光ですがなにか?

 

 まぁ、観光といってもぶらり冥界旅行、夢心地みたいなもんだ。この観光が終わったら温泉行くから。俺って浸かっても大丈夫なのかね? まあ為せば成るやろ!

 

 いやぁ…それにしてもフィア、出るとこ間違ってんぜ……なんででっかい猪みたいなのの真ん前に降りることになったのかな? 教えてみな、お前の身体を弄ぶから。

 

「たまたま…かな」

『そうかそうか、たまたまか……お前の身体を練りに練って玉々にしてやんよ! 魚の餌にすっぞ!』

『それ練り餌! 練り餌のことにゃ!』

「我、これ以上小さくなったら、一寸法師より小さくなる…3.03cm如きに負ける気はしないけど」

『小さくなっても無限の力秘めてるからね! というか痛くないの!?』

「マッサージ。空那にやられているっていうのが……良い!」

「あっれー!? いつの間にかフィアがMになってるにゃ!!」

 

 嘴で地面と挟むようにしてグリグリしてたら、無表情が恍惚とした表情になってきた…うわ、引くわ。

 

 小さくなってもこいつの服はテープだったのでまずは服を変えさせた。ふりふりが少ないゴスロリにニーソ。靴? 俺の上で過ごしてるのに履かせてたまるかっつーの!

 

 おかげで遠慮無くゴリゴリ出来るって言ったら出来んだが……遠慮なくやったらこうなっちまったんだよなぁ…元の痴女服に戻したら直るかね? 無理? 俺もそう思うぜ!

 

 それよりあのブルル…と唸りながら後ろ足を何度も蹴っている猪の魔物をどうにかして欲しいんだが、撃っちまう? なあ、撃っちまおうか! 

 

 今日が豪勢に猪の肉じゃー!

 

 ドドドドドッ! と迫り来る猪に、俺は気を変換して作り出した氷の杭を浮かべるが…ここまでできると、俺は第三部の世界に行ってもいいと思うんだよ。

 

 近くに来た時に射出しようと思い…

 

『霧軽・M・空那…狙い撃「えい」……えー』

 

 俺の頭の上から飛び出したミニフィアが平手一発。猪はそれだけで死んで星になった…あー…俺の飯が~……。

 

 ぽすっと俺の頭に戻ってきたフィアは、やはり小さくなってもフィアだった。無えよ…こんな小さな姿で巨体である乙事主様並みの猪星にするなんて…ワンパンマンか。フィアパンマン。

 

 なにより、俺が準備していた氷杭が消えていくのが哀れすぎて…泣きたくなってきた。俺のやる気と飯を返せよ!!

 

 黒歌が慰めるように擦り寄って舐め続けてくれるのが心に染みるぜ…張本人はよく分かってない顔で俺の頭撫でてるけどな! テメエのせいだよこんちくしょう!

 

「ま、まあ来たばっかりにゃ! 次行きましょう! 次! ね!?」

「ん…我、案内する。少しだけど冥界は見てきた」

『なら頼むわ』

 

 いつものように黒歌の身体を脚で掴んで飛翔し、フィアの指示に従って進む。それにしても日本じゃ見ることが出来ねえ植物や光景があるな。うわ、でけえ蜘蛛…寒気がやべえな。

 

 かなり飛んだんだが…一体どこまで行きゃいいんだ? 山も何個も越えたし…いや、疲れたりはしねえんだけどな? 飽きてきたというかなんというか……

 

「そろそろ着く……あそこ」

『何も見えないにゃ……』

『ん~…そこの湖みたいなところか?』

「そう。誰も知らない秘境…秘境?」

『いや、聞かれても知らないわよ…』

 

 気配や力からして空間を把握できるが、街も何もない山が連なる山脈のようなとこに来て、その中の山が複数連続であるとこの丁度真ん中に大きな湖らしき気配があった。恐らく、そこで良いと思うから飛んで行く。

 

 そしてパササッと降り立ったんだが、なるほど…これはかなりの絶景じゃねえか……こんな美しい光景は初めて見たぜ。

 

 証拠に黒歌も呆然としていて声すら出ていない。それほどまでに美しかった。あれ? 俺たちいつの間にジ◯リの世界に入りこんだっけ? ここだけRPGや狩りゲーの世界みてえなんだけど…。

 

「次元の狭間から偶然見つけた…ぶっちゃけると、ここが静寂でいいんじゃないかな、とか思ったり」

『お前の意思弱すぎんだろ!? いや、確かに何もない次元の狭間よりこっちのほうがいいかもしんねえけど…せめて俺達のいることのできる日本にしようぜ』

「今は、空那と黒歌の二人が居る…もう何もいらない」

「フィア……」

『……嬉しい事言ってくれるじゃねえか』

 

 さて、そんなことを言ってきたがお前らに重大発表だ。忘れてると思うが………

 

 俺、目を瞑って生活してっから絶景だの何だのは見えてねえんだぜ? いや、雰囲気壊したくなくって黙ってたけどさ……周りに誰もいないし、久しぶりに開眼でもしようか。

 

『お前ら、悪いんだが…俺の視界に入る所に居ないでくれ。できれば俺の後ろから光景を眺めて欲しい…特に黒歌は絶対にな。フィアは死なねえけど痛いのは嫌だろ』

「あ、そっか…空那目を瞑ってたから…ごめんね、ちょっと待って頂戴」

 

 黒歌が背後に行ったのを確認してから俺は久しぶりにゆっくり開眼する……そして目の前の光景に見惚れた。

 

 そこには大きな美しい湖と、その湖の真ん中の小さな陸地に一本の巨大樹が生えていた。湖の周りは丸い小石があり、その周りにはこの湖を囲むように木が生えている。山で囲まれてんだよ。

 

 ここに陽の光でもあればキラキラ輝いてんだろうけど…それがなくても文句なしの美しさだ。邪魔なものがないシンプルだからこそ、ここまで綺麗で神秘的だな。

 

『へぇ…綺麗だな』

「空那、気に入った?」

『ああ、気に入った。ありがとよ、フィア』

「ん……」

 

 暫く三匹で眺めていたが…あの巨大樹、なんかおかしいんだよな……生命力というか気というか、魔力やらが多すぎるっつーか……もしかして世界樹とかですか? まあ無えだろうけど。

 

 あの葉っぱとか薬にしたら万能薬になりそうだよな~。この湖の水、飲んだら知恵を身に付け、魔術を会得することができねえかな…片目を失いたくないけど。

 

 邪眼だけどこれでも大事なお目目様なのだよ。暫くそこでワイワイガヤガヤしてから次の目的地に向かうことにした。

 

『次どこだっけ?』

「温泉にゃ。まあ場所は知らないけれど…フィア、知ってる?」

「言い出しっぺの法則というのがある……任せて」

「『ヒューヒュー! 流石フィア、頼りになる!』」

「……えへへ、それほどでも」

「あのフィアが照れたにゃ!?」

『なに!? 顔見て見たかった……!!』

「ん、空那が望むなら…我の全てを曝け出して見せてもいい」

「全て曝け出したら黒いドラゴンとかになっちゃうんじゃないかしら?」

『え…期待してたのにその事実はショック…』

「大丈夫…ちゃんとこの姿で」

『神は此処に居た…いや、女神だ!』

「んにゃ大袈裟にゃ……」

 

 ロリコンじゃないけどフィア位だったら全然大丈夫…めっちゃ美少女だし。

 

 いやいや、今はそれどころじゃない…なんでまた山を何個も超えなきゃならねぇんだ? なぁ、フィア…お前さん、次元の狭間に自由に行き来できるよな? それで行こうぜ。いやマジで。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 さて、やって来ました野生の温泉。ところで野生の温泉ってなんだ?

 

『う~ん、野生の○○が現れた! みたいなポケットなモンスター的なあれでいいんじゃない?』

 

 なるほど、さすが林檎ちゃん…俺と同じことを考えている。将来が怖いよ…主に俺みたいな考えになりそうで。まぁ、なんだ……誇れ。

 

 空飛ぶのが飽きてきたのでチャットしながら飛んでいたんだが、メイドさんもおっさんも仕事で忙しいのか、チャットに入ってくることはなかった。

 

 俺の生活の基本は羽繕いとチャットだから基本入ったままなんだが…二人は夜遅くに入ってくることになりそうだな。社会人ってスゲェ。頑張れ社会人! おっさんはともかくメイドさんはメイドしてるから余計に頑張れ!

 

 いいか、お触りは禁止だぞ? セクハラされたらちょっと嫌だけど誘うようにして人目の付かないところに行き、そこで殺してしまえ。証拠隠滅はその手の業者に頼めばいい。あるかは知らんがな!

 

 それにしても不思議なもんだぜ…湯気にも気のようなものが纏わりついてるのか。恐らくだが、温泉から共に湧き出た地脈からの気が湯気に纏わりついて居るのかもしれねぇな。

 

『いいなー温泉…私もミネルヴァお兄ちゃんと入りたいよ~』

『馬鹿野郎、整備されてない野生の温泉だから入っちゃいけません。どこぞのお嬢様な林檎ちゃんは尚更駄目なの。お分かり?』

『NO』

『こんな綺麗にスッパリ断るNOを、未だかつて聞いたことはあるだろうか…いや、無い!』

 

 即答で答えられたでござる。解せぬ…俺の言うことは両親並みに聞いてくれるという林檎ちゃんなのに…どうでもいいけど、林檎ちゃんって一存に出てくる林檎を思い出して仕方ないよね。

 

 ……うちの林檎ちゃんは兄に向かってあんな事言わないよね? ね? 

 

 頑張ってお兄ちゃん大好きっ子の賢いブラコンに仕立て上げます。やられはせん…俺のガラスの心はやらせはせんぞ! 

 

『そういえばね、私は今こっそりと秘密の特訓っていうのしてるんだけど…』

『ああ、あの俺が頭だけじゃなくって身体も鍛えろって言ったやつ?』

『うん。今のところバレてないから問題ないんだけどね…今は剣術頑張ってるんだけど、なんかしっくり来ないんだよね~。なんでかな?』

『ふむ…ちなみに今は何使ってんだ?』

『えっとね…ショートソードの模造刀だよ!』

『にゃるほどにゃるほど…じゃあ別の使えばいいじゃん。ロングソードや刀とか。オススメは刀…なにせアニメとか漫画でよく使われてるから参考映像が多いし格好良い!』

『ミネルヴァお兄ちゃんが好きなのは刀? じゃあ刀にするよ! 絶対に我流で達人の領域までは食い込んでみせるんだから! 目指せ斬鉄!』

『おお! いいじゃんいいじゃん! 俺も助言とかするから頑張ろうぜ! こっそりアニメとか見ておけよ!』

『うん! じゃあ頑張るねお兄ちゃん!』

『ガンバ!』

 

 そう言って林檎ちゃんは落ちて練習しに行った。子供のうちに一生懸命頑張っておけば、吸収しやすい子供の頃だから直ぐに上達するだろうし…色々調べるでしょ。

 

 天翔龍閃とかしてくれないかなぁ…最近では片車輪とか蟷螂坂とか八岐大蛇。そういやご令嬢ってレイピアという印象があるんだけど、お前らはどうよ?

 

 ぶっちゃけナイフとかでいいじゃん。ナイフは近接戦最強武器。なにせどこにでも隠せるし、狭い場所でも振るえる。頑丈で斬れ味もあって使用用途も数多とある…ただ、リーチが短くて間合いを詰めないといけないことが難点だけどな。

 

 それに比べてレイピアって…チャリオッツくらいしか思いつかないけど……あれ? そう考えるとレイピア強くね? チャリオッツ強いし…点で速度出したら最強やん。

 

 いや、そんなことより温泉だよ温泉! 温泉に入るけど俺は目を開けて呪毒を入れる訳にはいかないから、お目目閉じて入るけど。

 

『黒歌、降ろすぞー……どんな感じ?』

「真っ白にゃん」

「湯気凄い……」

 

 らしい。俺も気配的には前方がモヤモヤ過ぎてよくわからないんだよ。仕方ないので魔力を翼に通して、バサリと一振りした時に魔力を飛ばして湯気を飛ばす。

 

 どうせ直ぐに元通りになるんだろうけど、まあいいじゃねえか。汚いかとか知っておきてぇし。

 

『で、綺麗なのか? 俺たち動物だから落ち葉とか位なら汚くても構わねえんだけど』

「割と綺麗にゃ」

『そうか。じゃあそれぞれ温泉に入る準備して、終わったら此処に集合!』

「「おー!」」

 

 解散!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び集まった俺達は湯に浸かることにした。熱さは確かに熱いことは熱いが、火傷する程でもないのでこのままにすることに。

 

「んっ……熱いわね……」

「でもいい感じ…」

 

 ちゃぷっと水面が二人の足先によって波紋を作り出し、少しずつ脚を湯につけていく。その肢体を湯で濡らし、得も言えぬ美しさを醸し出す。

 

『へぇ…やっぱり浮くんだな』

「そうね。入るときは重さを軽減できて楽じゃない?」

「我は上手く浮かない……」

『なら、俺が浮かせてやるよ』

「お願い…んっ……!」

 

 水気を含みしっとりと濡れたフィアの髪は美しく、黒歌も同じように綺麗な黒となり、まるで黒曜石のように輝いているようだ。

 

 二人共身体を湯によってほんのり赤くし、濡れていることもあって妖しげな色気を出し、目を細めて吐息を吐く姿はぞくりとするような妖艶さである。

 

 その中でもフィアは俺によって黒歌より頬を朱に染め、艶やかな声音で小さく喘ぐ。いくら小さくても周りが静かなのでこの場では大きく響いて、聴覚の良い俺は敏感に聞き取る。

 

「空那の下…どうなってるか、我知りたい…」

「私も気になるにゃ…」

『へぇ…いいぜ、来いよ。好きにさせてやるが…俺も好きにするから覚悟しろよ? 俺もお前らの下がどうなってんのか気になるしな』

 

 湯気で見えなくなりそうだが、俺達はくっつくほど近くにいるので、黒歌とフィアのことはよく見える。

 

 そして二人の覚悟に俺は応えてやることにした。

 

『…なにそんな声出してんだよ。少しは耐えろや』

「だって…我慢、出来ない……あぁ…ッ!」

「フィア…そんなにまで…」

 

 また、喉の奥から絞り出したような声を出し、もぞもぞと動いて抵抗してくる。だが、抵抗を許さないかのように、無理矢理にも俺がその体を押さえつける。

 

 俺によってソレに溺れそうなフィアは俺の身体に爪が食い込むほどしがみついて来て耐えるが、長くは持たないらしく、形の良い脚を俺の身体に回して身体を震わせた。

 

 フィアだけというのは可哀想なので、俺は黒歌も構ってやることにした。その体を引き寄せ、無理やり押し込んだ。

 

「あっ!? だ、駄目ッ!! 空那…やめてぇッ」

『いいじゃねえか…お前さんはまだまだ余裕そうだ。多少無茶してもお前らは頑丈なんだから……好きなようにさせてもらうわ』

「だ、駄目だって…突いちゃやだ…!」

「く、空那…激しい…! わ、我もう……!!」

「わ、私も激しすぎてもう耐えられない…!!」

『おらよッ、さっさと…イけやッ』

「「あーーッ!!!」」

 

 二人一緒に抵抗を無視して無理やり突き込むと、大きく叫んで身体を暴れさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「がぼがぼッがぼがぼぼッッ……!!」」

『さっさと沈めっつーの!』

 

 バシャバシャと暴れまくる二人は溺れまいと頑張るが、俺が更に湯に突き入れて脚で下に下にと突き、更に奥へと押し入れた。

 

 いやぁ、この温泉ってどうも底が深いらしく、何メートルもあるらしいんだよな! それで俺は羽毛とかによって浮くし、黒歌もどうにか猫掻きみたいなので浮いてるけど、小さいフィアが上手く浮けないらしくて……。

 

 俺がわざわざ羽で浮かせてやったのに今度は下が気になるとか言い出したので、手伝ってやることにしたんだよ………無理やり溺れさせて。

 

 沈めよう沈めようするけど、なかなかに抵抗が強くてなぁ…まあこいつは殺しても死なないだろうし無理やりやっちまおうってことに……な?

 

 そしたら此処冥界だし、温泉の中に住んでる魔物でも居るんじゃないかって言ったら、更に抵抗してきて食べられたくないって…確かにフィアは餌になりそうだからな!

 

 脚にしがみついて来たから黒歌も行かせることにしたんだよ。いや、フィアみて笑ってたから余裕そうだと思ってな。

 

 で、今に至る。バシャバシャと水が吹き飛ぶほど激しく暴れまくるので、俺も押しこみが激しくなっていっちまって。

 

『あ…フィアが沈んでいった』

「がぼっ!? ふぃあー!! げぼっ、く、空那…フィアに任せて私は助けて! もうういいじゃにゃい!」

『チッ…しゃあねえな、許してやんよ』

「舌打ちされたにゃ! 私悪いこと何もしてないのに!?」  

 

 ぶくぶくとフィアが底に沈んでいったので黒歌は引き上げ。疲れてるのか魔力で浮かんでぐったりしてるが…そんなに暴れるから。

 

 それから五分位ゆっくりしていたんだが…フィアのやつ、遅ェな。本当に魔物が居て食われたのかもしれん。

 

 そんなことを思っていたら、フィアが底から浮かんできて何事もなかったかのように頭だけ出してきた。

 

「ただいま」

『お帰り』

「どうだったにゃ?」

「ん、なんか宝石が落ちてた」

 

 そう言って持ち上げた網の中には数個の宝石が入っていた。ダイヤ? それとも水晶? よく分からんけどとりあえず貰っとこう。どうせ周りの岩盤から転がったのが落ちたんだろうよ。

 

 仙術で作った空間倉庫に仕舞おうと思ったが、その前にフィアが自分の倉庫に入れたので閉める。どうせ俺達の倉庫って繋がっていて共同倉庫だから誰が入れても関係ねーし。

 

 よし、フィアも戻ってきたことだし、もう少しゆっくりしてから帰りますか。

 

 

 

 

 




無理、それっぽい文章なんて書けない!もう書かない!


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第七話 邪眼の家が劇的ビフォーアフター

今年はこれでおしまいです。
皆さんはコミケに行ってほとんど読まれていないでしょうが……私も行きたかった…!!
ごほんっ、まあそれはいいとして、皆様良いお年を!


 

 

 

 

 

 キング・クリムゾンしてまたまた数年。そういえば今は俺がミネルヴァになって何年くらいなのか…林檎ちゃんが大人びてきて、恐らく綺麗な女の子になっただろうと思われる。

 

 ということは、もう十年は経っているのか? わからんが、林檎ちゃん、現在高校二年生でございます。賢く強いがチャットでは何時も通り昔と変わってない。

 

 俺といえば黒歌とフィアとのんびり何も変わらない生活を送っているが、少し前にフィアが暇つぶしとか言って組織経営し始めたらしい。

 

 なんだっけ…表向きはグレートマジンガー?を倒して静寂を手に入れるとかなんとか……。

 

 さよならと黒歌と二人で笑顔で見送ろうとした時のフィアは忘れられない…初めて泣きました! その日はフィア成長記念日として記録しているぜ。

 

 俺も時間経過とともにすっかりマイルドになっちゃって……マイルドミネルヴァは砂糖たっぷりの練乳増し増しだぞ。マッ缶みたいになってんぞ。孫を見るおじいさんみたいになってるんだぞ。

 

 いや、まぁ冗談だけどな? 世界一周とかしてきたし、世界遺産とか見てきたから。おかげで疲れたけどな! 途中からフィアをタクシーにしてたぜ。黒いトカゲになるから此処ぞとばかりに。

 

 で、今は帰ってきた山で追いかけっこ中なう。

 

『やばいよやばいよ! どれくらいやばいかってマジでやばい!』

「ねえ泣いていい? 泣いてもいいよね!? 誰にゃ! こんな乙事主様生み出したのは!!」

「マジワロス。ガンバ」

「『…ッ! テメェが食われてこいや!』」

「あーッ!」

 

 俺の上から振り落としたフィアを黒歌が魔力の篭った猫パンチで、背後の化け物に弾き飛ばす。すると、小さなフィアは鼻先でぺしりと弾かれてどこかに行った。

 

 哀れミニフィア! だがお前さんが苛つくようなこと言うからわりぃんだよ! 死んで詫びろ!

 

「死ぬかと思った……」

「ピンピンにゃん」

『汚れ一つ付いてねぇ、流石無限気持ち悪い』

「我の心、熱した針で刺された時のように傷ついた…」

「うわ、地味に痛いにゃ」

 

 そんなコントを繰り広げているが、後ろは凄いことになってるからね!

 

 俺の頭の上にフィアが戻ってきたが、そのまま首をグリンと後ろに向けるとあら不思議。いつか見たような猪の気配があるじゃありませんか! 

 

 ちなみに完璧に別物となっておりますですよ。気配が全然違うから。

 

 それよりこの山なんなの、どうなってんの!? 俺達が居ない間に何があった!? 山がジャングルってるんですがねぇ!

 

 植物が異様に成長し、動物が何やら変形している。特にボスらしい猪なんてシャバドゥビタッチヘンシーン!してるからな! マジで何がどうなってこうなりやがった!

 

 あれだよな? 俺の帰りを何年もこの山で待っていたというあの有名な忠犬のハチ公のような感じなんだよな? 嬉しくて襲い掛かってくるんだろう? なあ!? そうだと言ってよ!

 

『おい、シシ神様は何処にいんだよ! あの有り余った生命力吸い取って大人しくしてもらえよ!』

「それ死んじゃうパターンじゃにゃい!?」

『いいんだよ、あいつは死ぬくらい吸い取ってもらったほうが借りてきた猫のように大人しくなってくれんだから!』

「……ちなみに、今の状況、どう思う?」

「『凄く…危ないですッ…緊急回避ッ!』」

「あーッ!」

 

 倒れてきた木を避けたらフィアが余波で吹き飛んだ!? どうせ無事なんだから無視しようか。それがいい。

 

 しかしここで俺には作戦があるのだ! これを黒歌に伝えるために飛びながら念話する。

 

『黒歌、作戦がある!』

「ッ!? にゃに!?」

『まずはこうだ…お前はこのまま走り続けてくれ』

「わかった! それで次は何するのよ!?」

『お前はそのままでいい…俺が後は全部やる! 三秒数えるからそのまま走ってろ!』

「りょ、了解にゃ!」

『行くぜ…三…二…一ッ! そらよ!』

 

 バササッ!と翼を広げる。

 

 ここでお前らに聞いてほしいことがある。

 

 とある技術に『コブラ』という空中戦闘機動…ACMがあるのだが、これは水平飛行中に進行方向と高度を変えずに身体をピッチアップし迎角を90度近くに変え、そのまま水平姿勢に戻る機動を指す。これで失速出来るのだ。

 

 んで、クルピットとはコブラで失速してから身体を前に戻さず、そのまま後方に一回転させる。つまり、失速して止まり、そのまま自重と重力に任せて向きを変えるっつーわけだ。

 

 翼と身体の内側を前に向け、顔を上に向けることにより身体の腹のほうで風を受けて失速し、止まった所で後方に回転して今来た方に向き直り、ポテリと猪の背中の上に着地した。

 

『作戦成功! 頑張れー! 気張れ―!』

「空那!? アンタ何やってんのよ!? 私囮にして自分だけ楽したわね!?」

『何言ってんの? 俺はちゃんとこいつに接触して戦ってんじゃねーか』

「何もしてないじゃない!」

『よく見ろよ、テメーの目は節穴か? ほら、攻撃してるだろ? 足踏みして』

「それは攻撃とは言わないのよ!」

『ほら、化け物猪、頑張って追いかけろよ! 餌だか遊び相手だか知らないが、獲物は目の前だぞ!』

「ブルアァァァァァッ!!」

「どこぞの若◯みたいな叫び声出しちゃって…!! と言うかこの外道!」

『わはは! 最高の褒め言葉よ!』

 

 胸張って威張り散らすと、黒歌は叫び声を上げながら更にスピードを上げた。なんだ、やればできるじゃねえか。

 最近、お前は運動してなくて太ってきたとか言ってたからちょうどいいんじゃないか? 猫も太れば動き難くなろうさ。

 

 そして山中を駆けまわりながらついに黒歌が立ち止まってこっちに振り返る。

 

「こうなったら…やってやるにゃ!」

 

 そして二本脚で立ち上がったと思ったら、何を思ったのか尻尾の二本のうちの一本を掴み……ブチィッと根本から引き千切った。そして勢い良く血が吹き出すが、なんてことないような顔をして構えている。

 

『ちょ、お前何してんの!? 尻尾千切れてんぞ!? 血が出てますけど!』

「二本もあるんだから一本くらいいいじゃない。推して参るにゃ!」

『なんでブォンってなって直立してんだよ! どこのライトセイバー!? というかその理屈はおかしいことに気づけ!』

 

 切羽詰まって頭がおかしくなってんじゃねーの、あいつ! 尻尾を構えたと思ったら居合い抜きのように振りぬいて…

 

「ハァッ!」

「ブモォッ……!!」

 

 ズバンッと猪を正面からたたっ斬りやがった……何あの尻尾、何でできてんの? 最強じゃねえか…俺も欲しいわ、あの尻尾。

 

「また、詰まらぬものを斬ってしまった……」

『今回初めてだけどな!』

 

 血払い的なことをしてから尻尾をそのまま後ろに持って行き、血を止めるかのように刺した。

 

 こいつ、何事もなかったかのように尻尾を元の場所に差し込んでんですけど!? あれでくっつくn…くっついてやがる! 元通りゆらゆら揺れてるじゃん!

 

 何年も黒歌と付き合ってきて初めて尻尾が取り外し可能だと知った一端だった。しかも刀になるらしい。これは武器になるので覚えておこうか。

 

 そう言えばフィアの奴は何処に行きやがった? それよりこの猪どうするか…食べたいけどデカすぎるしな。とりあえず空間倉庫に突っ込んでおくことにする。

 

 空間が歪み、そこに目がけて魔力で身体強化をした足で蹴り入れる。鈍い音を立てながら猪は収納されたので空間を元に戻す。これでオッケー。

 

 ふむ、動いたせいなのか腹が減ったな。足元の小動物でも食べるか。

 

 咥えてもごもごしていると、黒歌が背後から来てなにやら話しかけてくる。

 

「空那、何食べてるにゃ?」

『ん? ちょっとネズミでも食べようかと思って』

 

 くるりと振り返って見せてやる。

 

「そ、それフィアにゃ! ちょっと、ペッしなさい、ペッ!」

『エーボクシラナカッタナー。割と美味しい味がする不思議』

「我、空那に舐められてる…///」

「フィア!? なんでそんなに変態になったのよ! いつから!? いつからにゃ!?」

 

 黒歌は元気だなー。あんなことがあったというのに疲れていない。

 それにしてもこれはフィアだったのかー、吃驚だー。

 

 人化した俺がもしペロリストになってフィアを舐めた時はきっと歓喜するだろう。出来ることならそんな変態性は喚起して欲しくねーけどな。フィアprpr? んにゃ、むしろフィアmgmg。 

 

 黒歌に言われたとおりに唾を吐き出すかのように、噛み終えたガムを吐き捨てるかのようにペッと斜め下に吐き出した。

 

『そんなことより、この山の原因を見つけ出さねーとな』

「それもそうね…気配を探って大きな気のところにでも行くにゃ」

「ん、向こうに大きな生命力がある…」

『奇遇だな、俺もそう思っていたところだ』

「私もよ。でもなんでかしらね…あっちは私達の愛の巣のような気がするんだけど…」

「気のせい」

『ああ、気のせいさ』

 

 そう思っていた頃が、俺達にもありました。

 

 草を掻き分けて飛ぶこと数分、俺達の懐かしの我が家に辿り着いたんだが、そこは信じられないことになっていた。

 

『成る程…樹のせいか』

「ん…樹のせい」

「寧ろ大樹のせいね…」

『おおきって誰だよ、ビビる大木か』

「三丁目のおっぱい大好きお爺さん」

『本気で誰だよ』

 

 俺達が住んでいた木が、何倍にも太く、高くなって凄まじいことになっていたのだから。しかも内包する力が凄い…もはや俺並みに持っているかもしれん。

 

 なんだろうなぁ…神樹と言っても過言じゃないくらいの雰囲気なんだが。

 

『この~樹何の樹、気になる樹』

「不思議な山の樹ですから」

「不思議にした原因はこの樹なのね……」

 

 黒歌を掴んで高くなった俺達の巣穴まで飛んで行く。地上から既に数十メートルは離れているが、なんか入り口の穴がでかくなってんだけど……。

 

 中に入ってみて更に吃驚。穴は随分と広くなっていた。例えるなら1DKが1LDKにビフォーアフターしたみたいに。ぶっちゃけよう…人が暮らせるくらいに広い! ツリーハウスか。

 

 内装も何故か変わっているんだが…これ、成長にともなってこうなったのか? いや、成長とか言えるものじゃねえよ、これ!

 

 樹の床から丸太のような大きな机が真ん中に瘤のようにできていて、その周りには三つほど椅子がある。壁は滑らかに曲線を描いており、つるつると光沢を放っている。

 

 そして棚のように窪みが幾つかできており、その中に俺たちが今まで巣の中に入れてきたものが収まっている。他にも台とか本棚のようなものとか色々あるけど…。

 

 なにより目立つのが天井から生えている綺麗な球状の瘤と枝を上手く使って作ったシャンデリアのようなものに、以前拾ってきたダイヤだか水晶だかの宝石が五つ埋め込まれて光っていることだ。これだけで光が確保されている。

 

 おや? 向こうの窪み、小さな扉の向こうに水が流れてる気配がしない?

 

 これ、外見に似合わない広さだよな。まじで1LDK位ありそう…というかそれ以上ある。あれ? 俺って空間弄って広げちまったっけか? 最近ボケが激しくてなぁ…。

 

 …………………………………………………。

 

「「『なぁにこれぇ……?』」」

 

 我が家は何処へ? この劇的ビフォーアフターをしてくれた匠はどこに居るんだ? 出てきなさい、怒らないから。

 

 

 

 




思い出したかのように申し訳程度のACM。
来年もよろしくお願いしますね~!


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第八話 邪眼が動くと世界も動く

 

 

 

 

 

 

 新しくなった巣に入った俺たちだが、それを歓迎するかのように、そして喜んでいるかのように木が少しだけ震えて、抑えられていた光量が部屋を照らすほどまで明るくなる。

 

 ぶっちゃけ変化の術を使えるようになった今でさえたまにしか変化しない俺には広すぎるな。三匹…というか小さい俺達にこれは飛び回れて駆け回れるくらいまで広い。

 

 そんな綺麗になった住処を見ている俺に、フィアが羽を引っ張って話しかけてくる。

 

「空那、あの光の宝玉…多分、神器」

『あん? 神器だと? っつーと、なんだ? あの宝石はこの樹に適合しちまったってのか?』

「多分そう」

「えー…樹が神器持つなんて初めて聞いたにゃ」

 

 俺達が住み続けてたから、やっぱりこの樹もおかしくなってたのかね? 流石にいろんな力を吸い過ぎたのだろう。不思議なものだな…でもなんでこんな部屋?

 

 いや、神器だから何があってもおかしくないんだろうけどよ。気になんだろ?

 

 ということで仙術で意思を感じ取ってみることに。じんわりと浸透する俺の気が樹の生命力やら気に溶け込んで意思を伝えてくる。俺、植物と話ができるんじゃない?

 

 なになに…俺が住み始めてから少しずつ力をつけてきたこの樹は、ついには意思を持ち始めたと。で、そんなときに神器が無造作に俺たちによって放り込まれ、なんやかんやで適合したと。

 

 こんな自分にしてくれた俺。ついでに残り二名の役に立ちたいと思って頑張った結果、此処を基本にこの山を神器で支配し、根を伝って活性化。あとは部屋を作ってこの樹自身もいろいろできるようになったらしい。

 

 ………めっちゃいい子じゃないですかー。

 

 つまりはこの樹を基本に山全体が神器所有者になってると。でもあくまでここまで強い意志があるのはこの樹だし、神器があるのはここだから中心部ね。

 

 慌てて結界を張ろうと思ったが、どうやらこの樹が既に神器発動当時に張ったらしいのでバレてないっぽい。なんとなんとの、俺達の技術を受け継いでいるというな。

 

 この大樹…強い!(確信)

 

 まあ戦うことなんてあるのかという感じだが…まあいい住居になったと喜んでおこうじゃねえか。

 

 それにしても綺麗な住処になったものだ………やっほい! 全部樹で出来た綺麗な巣だー! 俺の家ーッ!

 

 気分上々↑↑でバサバサと飛び回る。ちょっと隣に何かあったのか、バシリと吹き飛ばしてしまったが気にしない方向で。なぜなら気分が上々だからな! 

 

 喉が渇いていたので水の気配と音がするところに行ってみたら、なんか樹の上から水が流れ落ちてきてんだけど、どうなってんのこれ? お前、水樹だっけか?

 

 落ちてくる所に水が溜まる窪みがあったので飲んでみる。これが本当の美味しい水ってやつか! 疲れが消し飛んで体が軽くなったんだけど! 

 

 しかも美味いと言うな。ジュースより断然この樹の水だわ。これ売ったら絶対に高いだろう…回復薬になるやも知れん。現代に現れた水界の超新星! とか言われたりして。

 

『ミネルヴァお兄ちゃんの上機嫌を感知して登場! ついでに銃入手なう』

『ッ!? いきなりどうした林檎ちゃん!? 銃入手って何?』

『ちょっとストーカーがうざかったからこっそり撃退したら銃持ってたの。それをネコババ、今に至る』

『ストーカーだと? おいおい、林檎のところも物騒だな』

『あ、おじさん来てたのね』

『おっさん、来たのか。それよりも林檎ちゃんは死体の処理をちゃんとしましょうねー』

『殺してないから! で、此処で相談…気絶した男をどうするか。いい案を募る!』

 

 ここは俺達の腕の見せどころ……!! 安価じゃないけど任せろ!

 

 ついでにもうはしゃぐのは止めて休憩しよう。世界一周旅行から帰ってきて直ぐの出来事だからあいつらも疲れてるだろうし。

 

『黒歌、ふらふらして疲れてんだろ? もう休め』

「ええ、それもそうね……一緒に寝て?」

『仕方ねぇな…寝床寝床…ほら、入れ』

「あ、我も」

 

 二人まとめて寝床に寝転がして翼で包むようにしてやると、直ぐに寝息を立てて寝始めた。これでよし。

 

『たでーま』

『お兄ちゃん、いきなり反応しなくなったけど、どうしたのよ?』

『ちょっと連れを寝かせてた。で、案だけど……まずは全裸にして縛るのは普通だろjk。次おっさんな!』

『おっと、俺の番か。そうだな…そこまでしたらとりあえず次は何か着せてみるか。靴下、ネクタイ、褌ときて…』

『サングラス! 腹巻き! 軍手! 鉢巻といこうじゃねえか!』

『ここまで来たら最後にやることはわかっているな? 勿論、人目のつく所に放置して…』

『二度と表を歩けなくなるくらい辱めるのね! 生きてるのも嫌になるくらい辱めてやる! 汚いけど我慢だね!』

『ちゃんと軍手してマスク付けてしろよー。…はぁ、やれやれ、俺もすっかりミネルヴァに染まっちまったな』

『(`・∀・´)エッヘン!!』

『威張るな威張るな。にしても今はメイドの奴は来ねぇのな』

『そうだな…メイドさんは俺の癒やし、愛する心のメイドさんなのに』

『お前、メイド好き過ぎんだろ…向こうも向こうでお前のことそれなりに好きそうだからいいんじゃね?』

『長年のコミュニケーションがなせる技』

『うんしょ…うんしょ……』

 

 林檎ちゃんが頑張ってるな。なんか可愛らしくうんしょとか言いながら作業してる所に鼻血が止まらない…! 

 

 お、どうやらおっさんも林檎ちゃんの天然さに萌え殺されているようだ。ティッシュが少ねぇ…おーい、換えは何処だ―!とか叫んでるけど、チャット内でも叫んでるから。

 

 あと黒歌、尻尾首に巻き付けてくんなよ絞まるから死んじゃうから加減して!? なんとか緩めて首だけぬけ出すと、尻尾は体にしゅるりと巻き付いてきた。まあ、体ならいいか。

 

『できた…! 二人共、出来たよ! 今から人気の多い場所…う~ん、金閣テンプルとかに捨ててくるね』

『何それっぽく言ってんだよ。せめてスカイツリーの天辺に捨てて来なさい!』

『吊るすんですねわかります。じゃねえよ、何危ねえことさせてんだ!? 林檎の奴がそんなことできるわけ……』

『おk、吊るしてくるから!』

『行くのかよ!! そこは拒否れよ!』

『大丈夫大丈夫。ちょっと裏ワザ使うから問題ないもん。ミネルヴァお兄ちゃんの言うことだからそこにするよー』

『お前ってやつは…ミネルヴァの言うこと聞き過ぎだろ』

『ミネルヴァお兄ちゃんは私の心。とりあえず何でも言うことを聞く忠犬でありたいと思ってました!』

『うん? 過去形なのか? 林檎ちゃん』

『もうなってるからね! チャットでの一挙一動が全部可愛く思えて…普通に振る舞ってるけど悶え死にそうだから。うぅ…思う存分甘えて甘やかしたい…!!!』

『駄目だこりゃ。立派なミネルヴァ廃だぜ…』

『林檎ちゃん…立派になって…お兄さん、嬉しいよ』

『おいこら元凶! そりゃ子供の頃からお前みたいなインパクトあり過ぎのやつが居りゃ影響も受けるわな!』

『ミネルヴァお兄ちゃんは大切な物を奪っていきました。貴女(私)の心です………えへへっ///』

『それ言いたかっただけだろ、つか自分で言って照れんな。ティッシュ無くなりそうだぜ…』

『奇遇だな、俺も心の鼻血を拭くティッシュが無くなりそうだ』

 

 とりあえず、林檎ちゃんは汚物をスカイツリーに吊るしてくるらしい。お疲れ様だぜ。出来ることなら俺もそれを見たかった…! おっさんは見てくるんだとよ。既に林檎ちゃんは帰宅済みでバレてないらしい。いや、捕まってないらしい。

 

 ま、そんなヘマはしないよな。後おっさん笑いすぎィ…!! 俺も見たかったーッ!!

 

『安心して、ちゃんと写真に撮ってるからいつか会えたときに見せてあげるよ!』

『さっすが林檎ちゃん! 抜かりねえ!』

『ハハハハッ! こりゃ明日の新聞とニュースは確実だな! ネットが荒れそうだぜ!!』

 

 マジでか…それほどまでだなんて! これは明日街に行ってどこかのテレビで見てくるしかねえな。

 

『お疲れ様です。何のお話をされていたのですか?』

『乙~。ちょっと林檎がストーカー撃退してな』

『お疲れ様メイドさん! 色々恥ずかしい格好してスカイツリーに吊るしてきたんだよ!』

『メイドさんお疲れ! 最近入ってこないから寂しかったよ…俺はその声を待ってたぜやっふい!』

『そうなのですか、私も後から見てみますね。それとミネルヴァ様、お久しぶりです。私も貴方様のお声が聞けて嬉しいです』

 

 そう言ってくれてから小さな微笑みの声が聞こえてくる。

 

 どうやら最近忙しくてチャットに来てなかったから三人で心配してたんだが、元気そうでよかったよかった! これで風邪とか言われたら全力で探しだして看病しに行く所存である。

 

 生前?は一人暮らししてたから家事スキルはそこそこ高いから問題無いぜ! 今は頭がパーだけど医者だったから対処法もわかるしな。

 

 ………誰が頭がパーの馬鹿野郎だ!

 

『そう言えば最近、ちょっとした旅行に行っててさー』

『へ~、旅行か。いいじゃねえか、何処に行ったんだよ』

『それがさ、エジプトに行ってきたんだけど面白いことがあったんだ』

『ほうほう、なにかななにかな!』

『うむ、実はな…エジプトと言ったらピラミッドじゃないか。だから俺と連れはピラミッドに無断で侵入したんだよ』

『無断侵入!? なにしてるんですか!?』

『何って…不法侵入無断侵入。夜中にちょっと入らせてもらって……穴開けてきた』

『『『穴開けてきたぁ!?』』』

 

 いや、なんか地下から強い気配がしたからフィアに魔法で穴掘ってもらって落ちてみたんだよな。

 

『なんやかんやで地下444メートルまで掘ったんだが…そしたらよ、なんとそこには馬鹿でかい部屋があったんだよ! しかもそこには金銀財宝が盛り沢山!』

『ちょ、おま、マジで何してんだ!? 数百メートル掘るお前も凄えけど、掘ろうと思ったお前らの頭が何より凄いわ!』

『金銀財宝!? 宝石とか沢山なの!?』

『おう、その通りだぜ林檎ちゃん! 勿論発見した俺たちが根こそぎパクっゲフン! …貰って行ったんだがな。拾ったんだから俺のものだよな?』

『なんだ、拾ったんならしょうがねえな』

『拾ったのなら問題ありませんね』

『落ちてたものは拾った人のものだよね』

 

 俺が言うのも何だけど、こいつらも相当頭がおかしいと思うのは俺だけだろうか? 昔は林檎ちゃん以外は常識人だったはずなんだけど…二人も染まったか。

 

 メイドさんが俺に染まる…なんか良い響きじゃないか?

 

『さらにそこには宝物だけではなく信じられないものが眠っていた………』

『わくわく♪』

『何が眠ってたんでしょうか…』

『ファラオも吃驚の物だ! ぶっちゃけクフ王が埋めたのかは不明だけど、埋めた本人が吃驚っておかしいよな』

『そこでそんな話はいいからさっさと続……』

『おじさんは黙ってて! お兄ちゃんが話してるでしょ!!!!』

『ウィッス……』

 

 やだ、林檎ちゃんが怖い。おっさん縮こまっちゃったよ。

 

『ミネルヴァ様、邪魔が入りましたけど続きをどうぞ』

『メイドまで邪魔とか言ってきた…まあ気になるけどよ』

 

 続きね、続き。何だったかな……

 

『ああ、そうそう、眠っていたものだったんだけど、金銀財宝に埋もれるように一つの棺が力強い気配を放っていたんだがな? その中に面白いものが入ってたんだよ』

『躊躇いなく開けるミネルヴァに拍手三回』

『それがお兄ちゃんクオリティ』

『ミネルヴァ様の勇気に乾杯』

『そこにまず入っていたのが、パンドラの箱よろしく絶望という名の呪いで、それが俺たちに襲いかかってきたのだ』

『呪い!? 大丈夫なの!?』

『無事なのですか!? 身体を呪いに犯されているなんてことになったら、私は………!!』

『落ち着け、お前ら! 今こうして話しているということは大丈夫だったんだろうよ…大丈夫だったんだよな? 大丈夫って言え! 駄目なら俺が何をしても治してやる!』

『いや、大丈夫だから、連れが呪い弾いたから。こう、ペシッて』

『『ほっ……』』

『良かったぜ…呪いを弾くってどんな連れだよ……』

『あー…あれだ、土産で狩ったなんか気持ち悪い人型をした呪いを防ぐアイテムみたいなのが役に立ったんだよ。伝承では魔王の呪いも弾くとかなんとか…』

『何その土産凄えんだけど!? 俺も欲しい!』

『安心しろ、三人分狩ってある!』

『やったー! 愛してるよお兄ちゃん!』

『ミネルヴァ様…有難うございます。嬉しくて涙が出そうです』

『いつか渡すね!』

 

 ちなみに狩ったというのは誤字にあらず。あの店のおっちゃんは強かった……あれは戦士に違いない!

 

 まずは俺が空から奇襲を掛け、その好きに黒歌が呪いの人形…じゃねえ、呪いを弾く人形をごっそりパクる。

 俺が奇襲するのは上手く行ったんだが、なんとおっちゃんは俺の奇襲を防ぎながら黒歌の奇襲も防ぎやがったのだ! 

 

 横に置いてあった棒を巧みに操り、俺の足を弾き、黒歌を迫らないように高速で振る。この応酬だけで避ける身体捌きはかなる鍛えられたと言っても良い…強かった、ああ、強かったさ!

 

 結局はフィアがこっそり獲ってきたから狩れたものを…もう戦いたくねえぜ。

 

『勿論それだけじゃない。拾ってきた金銀財宝もプレゼントしちゃうからね! いくら沢山あるからってこれをあげるのは三人だけだよ! あ、べ、別に三人が好きとかじゃなくって沢山あったから処分に困ってただけなんだから! か、勘違いしないでよね!!///』

『『『( ゚∀゚)・∵. グハッ!!』』』

『男のツンデレとか誰得ぅ…って、どうしたお前ら!?』

『ミネルヴァのツンデレとか俺得ぅ……輸血用意、完了…輸血を開始する。輸血完了まで、凡そ五分……四分五八秒…』

『おっさん!?』

『あ、やばい…私イッちゃった……公園のトイレなのに』

『それやばいだろ!? 誰も居ないよな!? 居ないって言ってくれぇ!!』

『ちょっとお暇を頂きたく…ええ、大丈夫です、この血はあれです、愛です…前かがみ? ちょっと何言ってるのかわかんないです。失礼致します』

『メイドさん、声だけじゃなくってこっちでも言ってるから! というかお前さん主の前で血を噴出したのか!? 何してんの!?』

『メイドさん('A`)人('A`)ナカーマ』

『はい、林檎様( ´∀`)人(´∀` )ナカーマ』

 

 あれ、この二人何の仲間なのか気になってきたけど、それよりおっさんが何してんのか気になんだけど!

 

 何輸血って…ティッシュだけじゃなくって輸血パックも用意してたのかよ! 用意周到だなおい!

 

 お前は何処のムッツリーニだと凄く言いたいが……そんなんだから結婚できないんだよ。

 

『そ、それでだな…なんだっけ…あぁ、棺の中に入っていたものなんだが、それはミイラだったんだよ』

『ふぅ…落ち着いてきたぜ。って、棺の中がミイラだと? 在り来りじゃねえか』

『速攻で家に帰ったよー。ミイラってあのミイラ?』

『もしかして人型じゃなかったとか?』

『いや、人型だったぜ? ただミイラの骨が凄いものらしくてな…なんか人型なのに龍骨とか言うらしくて、砕いて煎じて飲めば龍に。加工すれば最強の武具。身に付けていたら力の源。連れ曰く、龍が人化したまま死んで弔われた結果がこれらしい』

『まじかよ…そんなのがあったとか……』

『龍なんて居るんだなー。ただの幻想かと思ったら昔は居たんだな…割と身近に不思議生物居るんじゃねーの?』

『そ、そうかもな…』

『そうだったら面白いね……』

『ゆ、夢が膨らむじゃありませんか。え、ええ、きっと色々居ますよ……』

『だろーな。まぁ、悪魔が居るんだから不思議じゃねえよなー。あ、悪魔とか実際に居るらしいぜ。嘘じゃないから』

 

 なんか無言になったけど、信じてないってパターン? 実は此処で話してないだけで頭の中ではこいつキチガイじゃねぇの?とか考えてるだろうか。

 

 もしそうなら泣くけど。ドン引きするくらい泣きわめきますけど、構いませんねッ!

 

 は、早めに話を戻そう。

 

『で、でだ、その骨も使い道ないけど拾ってその傍らにあった角とか鱗とか爪や牙を拾ったんだけど……頭の横に置いてあったものが問題のものだったんだよ』

『ふ~~…まあ此処で話してる時点で普通じゃねえか…………で、なんなんだよ』

『うわ、おっさんにキチガイ扱いされた。鬱だ、死のう……』

『―――おじさん何言ってくれちゃってんの? あ゛ぁ゛? 余程死にたいらしいね、いいよ私が殺してあげる。どうやって死にたい? 惨殺?銃殺?撲殺?圧殺絞殺呪殺刺殺毒殺焼殺爆殺…なんでもいいよ、好きなのを選んで』

『少し、OHANASIをしましょうか……遺言は書きましたか? トイレは済ませましたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備は、OK?』

『ひぃっ!? お、落ち着け! そういう意味で言ったんじゃねえ! 頼むから正気に戻ってくれミネルヴァなにか言ってくれよ頼゛む゛か゛ら゛さ゛ぁぁぁぁッ!』

『何ちょっと藤○竜也みたいに言ってんだよ似てねえよ。二人共落ち着け、冗談だからよ。な?』

『だよね! ミネルヴァ廃のおじさんがそんな事言うわけないよね! もう吃驚しちゃったじゃない』

『私は信じてましたよ、はい。おじ様がミネルヴァ様にそのようなことを心から言うなんてことはないですものね。冗談に決まってます』

『女って怖いと思った瞬間120%…』

『限界突破してるじゃねえか』

 

 どんだけ怖かったんだよ。そしてお前らはどんだけ俺の事好きなの? 嬉しいけどね! そんなお前らが俺も大好きだ!

 

『今お兄ちゃんのデレを感じた!』

『なんで感じ取れんの!? 怖いわ!』

『余裕です』

『この数年で影響を受けた俺達には余裕だぜ』

『なにそれ怖い…は、入ってたものなんだけどな? なんか小さなナイフみたいなものだったんだが…なんつーか、ナイフみたいでナイフじゃなかったんだよな』

『ん~? ナイフだけどナイフじゃない?』

『おう。そのナイフを連れが咥えた瞬間、そのナイフが独りでに浮いて胸に刺さったんだよ』

『刺さったのですか!? というか連れがナイフ咥えたってどういう状況ですか…持つのではなくて?』

『ああ、咥えた。そしたら連れが不思議な力を使えるようになったのさ』

『不思議な力…(まさか神器じゃねえだろうな?)』

 

 いやぁ、ぶっちゃけ神器だけど三人に話して信じてもらえるかはわからないから話さないけど。魔法を使える一般人だったら知らないだろうし。

 

 念話の魔法くらい初歩中の初歩だからどこかで切っ掛けがあれば覚えるでしょ。

 

『なんか想像したものを創造できるらしい。凄いよな、色んな物を創造できるんだぞ? 不思議チックだけど』

『不思議系なのね』

『不思議系ですか』

『不思議系なんだな』

『不思議系だ。この世界に存在するものと被るものは創造出来ない。何か一手間奇抜な想像による不思議を付け足さなければならない。キャベツに足が生えて走り回るとか。ちなみにキャベツは食えます』

『食べれるんだ……食べたくないね!』

『速攻燃やした』

『燃やしたのかよ!? つか、作ったのか!』

 

 部屋の中をおっさんの足を生やしたキャベツが走り回ったのはホラーを越えてた。フィアが上に乗ってたけど、俺は何も見なかったかのように気を炎に変換して燃やした!

 

 あんなのもずっと置いとけるか! 黒歌も黒歌で変なもの想像しやがって! 

 

 あ、神器に適合したのは黒歌だった。色々面白いものが作れるようになったぜ。

 

『そうしたらもう一人の小さな連れも一緒に燃えちまってさ―。頭がチリチリになって出てきてやがんの。わはは!』

『燃やしたミネルヴァお兄ちゃんがいつも通り過ぎて安心したよ』

『燃やされた連れが出てきたことに疑問を持とうぜ……いや、些細な問題か』

『火炎放射器でも使ったのでしょうか。さぞかし愉快な頭になっていたことでしょう』

 

 アフロってたよ、メイドさん。

 フィアが髪を一撫ですれば元通りになってた。アイロンも吃驚の大変身だ。

 

『まあそんなこんなでバレることなく逃げ帰ったわけなんだが、穴埋めるの忘れちまったんだよな。テレビでもつけてみ? ニュースで大騒ぎになってんじゃね?』

『今からつけてみるね! ―――うわぉ、一晩で444メートルどうやって掘ったのか、そこには何があったのかとか凄い議論されてるよ』

『マジだ…なんで棺だけ残してきたんだよ。そのせいで中に居たのが生き返って地上に出たんじゃねえのかとか言われてんぞ』

『貴方は馬鹿ですか? あ、馬鹿でしたね。ご主人sゲフン! ミネルヴァ様がそのような重い物を持ったまま上がれるわけないじゃないですか』

『今とんでもないことが聞こえた気がしたんだが……まあいい、確かにそうだよな。棺担いでロープなんて登れやしねえか』

『いや、普通に棺とか要らなくね? 粗大ごみでしょ』

『『『異議なし!』』』

 

 マジでテレビでニュースになってたらしい。羽とかは落としてないから大丈夫だと思うけど、キャベツの滓は落ちてるかもな! 

 

 解析された時の反応が楽しみだ。意外! それはただのキャベツ! とか。

 

 まあ何はともあれ、この話は終わりだがまだまだ他の雑談は続くのだ。俺達のこれに終わりはないといえる。誰か用事がある時を切っ掛けに終わるくらいか?

 

 なんか割と疲れてるし、今回は寝落ちしそうだな~。前回寝落ちしたときに何やらメイドさんについて寝言を言ってたらしいけど、今回はなにもないといいぜ。

 

 メイドさんがまともに喋れなくなるくらいのこと暴露してたらしいし…何喋ってんだよ俺のバカ! 寝言で口説くってどんだけ!?

 

『あ、そう言えば友人にちょっとした仕返しをしたいんだけど、何かいい案はないかな? お兄ちゃん!』

『名指しかよ』

『その案件、俺が最良の一手を討つ! …………昼休みとかに下剤でも盛ればいいんじゃね?』

『割と単純な上に外道じゃないですか!』

『もしくは携帯の着信音をAV女優の喘ぎ声とかにして授業中鳴らすようにするとか。帰りに玄関上の階で待機して虫やらスライムやら汚物パイやゲテモノパイを落とすのとか定番じゃん』

『相手は女だからウホッな兄貴とかレスリングとかの声にしよっと! 全部するね!』

『逃げてー! 仕返しされる子超逃げて―!』

『不登校待ったなしのバッドエンドルートをマッハで一直線に駆け抜けてますよそれ!』

 

 こんな具合に話が終わらないんだよな。この話題もかなり面白かったけどな。

 

 

 

 




きっとこれから神器を受け入れちゃった黒猫が色んな場面をミネルヴァと荒らしてくれるはず…多分ね! 


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第九話 邪眼は可愛い堕天使と仲良くなる

遅くなりました。
むしろ遅くなりすぎてどんなキャラの性格や書き方だったか忘れている可能性が大。なんとか違和感なく書けたはず…!


 

 さてさて、今日はとある金髪シスターを尾行もとい観察していこうと~…思います! 金髪シスターっていうのはフィアから聞いた。

 

 エジプト事件?から一年ほど経った今だが、俺は相も変わらずのんびり過ごしていたんだけど、この街に初めて見る顔が最近増えてきた。なんで神父なんかが大量にいるんだよ、気持ち悪ィんだよ消えろ。

 

「空那、またどこか行った」

『おっと、マジか。しゃーねぇ、空から探しますか』

『ズルいにゃー。私も空那と一緒に居たかったわ』

『お前持って飛んでると目立つんだよ。大人しく猫ってろ』

『猫ってろってなに!? もう既に猫なんですけど!』

 

 黒歌は目立つのでお留守番であり、最近はお留守番が多いのでおこになりやすい。俺とフィアが二人きりで外に出てるからだろうな。

 

 仕方ねぇだろ、お前掴んでるとフクロウが獲物を獲ったようにしか見えなくなって騒ぎ出すんだから。あの黒猫何匹目だ!? てかなんで全部同じ黒猫なんだよ食われろよ! 

 

 という感じだ。それを聞いた黒歌は激おこで空中からダイブして猫ひっかき爆撃をそいつに仕掛けていた。一回食われたというのにな。

 

 さて、金髪シスターなんだけど、こいつはかなり天然な可愛い子でな…何度も転んでは素晴らしい脚とパンツとお尻を見せてくれるんだが(見えてないけど)、そんなことよりも心配で心配で……。

 

 これが孫を見る爺婆、我が子を見守る両親の心境か…! と恐れ慄いたものである。せめていかにも怪しそうな男に連れ込まれそうになるのは拒否ろうぜ! 俺が助けてなきゃどうなってたか分かったもんじゃない。

 

「きゃぁッ!」

「また転んだ……」

『忙しねぇな! これで十七回目だよこんちくしょう!』

「あ、ハンカチが…!」

『なんでハンカチ…わかった分かった分かりました! 俺が取ってくるから荷物とスカート直しておきましょうね!』

「空那、優しい」

 

 放っとけないんだよ!

 

 ちなみにバリバリ英語喋ってますが、俺は世界一周旅行で英語とか学んできたんで余裕で聞き取れるし、話すこともできる。通訳フクロウの出来上がり。

 

 飛んでいったものを俺が足でキャッチしてパササッと座り込んだ金髪シスターの側に降り立って差し出す。それをおずおずとだが受け取った。

 

 安心しろ、爪は気で保護して切れないようにしているから破れてねえよ。じゃないと黒歌を掴む時も大変なことになってるわ。人の肩にも乗れるくらい滑らかだぜ。

 

「あ、有難うございます、フクロウさん…」

「キェ」

「お、お返事を返してくれた…? もしかして、言葉がわかるんですか?」

「キェェッ」

「わっ、賢いんですね!!」

 

 そう喜んで笑顔で撫でてくる金髪シスターは可愛いのだが、早くこの場所から離れようよ…周りを見てみろ、ちょっと見られてるよ。

 

 ということで近くの公園の隅に飛んで行くと、金髪シスターも小走りでこちらに来た。フッ、計画通り……!

 

「あうっ! …っとと、えへへ、危なかったです」

 

 んなことを思っていたら早速転けそうになりやがりました。もうちょっと落ち着いて! なんか放っとけない保護欲が俺を侵食してきてるから。

 

 金髪シスターがベンチに座って俺を撫でてくる。なんでシロフクロウが居るんだろうとか、警戒しないのとかは頭にないらしい。

 

「可愛いもふもふフクロウさんのお名前はなんて言うんですか?」

 

 喋れないのに名前まで聞いてきやがった! ちょっと…いや、この子かなり頭が緩いらしいというかなんというか……天然過ぎて怖いくらいなんですけど!

 

 まあ此処で応えてやるのがフクロウを逸脱したミネルヴァだ! 答えてやろう、俺の名をしっかりその胸に刻んでいくが良い!

 

 

 ―――ミネルヴァ―――

 

 

「地面に爪で書くなんて…器用ですね~。ミネルヴァさんですか! ミネルヴァ様の知恵の象徴がフクロウですから、そこからでしょうか?」

『そうなのか? 教えて黒歌先生!』

『いや、私に聞かれても由来なんてわかんないわよ…アメリカの人に聞いてよ、会えないけど』

『全くだな。まあ多分あってるだろうけど』

『二人共、我の知らないことで話すなんて酷い…我、仲間はずれ』

『ざまあにゃ。私を差し置いて空那を堪能するからよ』

『むっ…星にする』

『マジすみませんでした!』

 

 何やってんだよお前ら。

 

 それよりそろそろ帰るかな~。夕暮れ時だし、餌でも…あ、神樹が用意してくれるから良いんだった。

 

 金髪シスターの側を離れて近くの電柱の上に止まると、下で金髪シスターが寂しそうな顔で見上げていた。

 

「もうお別れですか…せっかくお友達になれたのに残念です」

 

 俺は動物に何の躊躇いもなく友達と言えたお前さんの頭に残念だよ。もっと考えて!

 

「あ、教会…ど、何処にあるんでしょう」

 

 教会? そう言えば神父が増えていたけど、ここの教会は既に廃れていたから神父がいるのも、金髪シスターが居るのもおかしいな。

 

 なのにこいつは教会を目指している……なにか面白いことがありそうだな!

 

「ミネルヴァさん……」

『この野郎…涙目上目遣い(フィア談)は反則だろう!』

『なにそれ私もしたら萌えてくれる?』

『猫のお前がしたら寧ろ燃やしてやる』

『最近空那が辛辣にゃー! うわ~んっ!』

 

 はぁ…と二人分のため息を吐いて下に降りる。そして金髪シスターの肩に乗って翼で道を教えてやる。

 

「教えてくださるんですか!? ありがとうございます!」

 

 なんでお前は俺の言動に疑問を持たねぇんだよありがとうございます。近道教えちゃる。

 

 そこの裏道を通ってだな…あ~、違うからもう一個隣の曲がり角だから! 

 

 なぁ、なんで猫の真似して塀の上を歩き出したんだ? ん? 理由を言ってみなさい、お兄さん怒らないかr…バランス感覚凄いな! なんで平地で転けるのにここでは転けないんだよ!

 

 そのスカートでそこを乗り越えるのはやめようぜ? そこに行けって言ったのは俺だけどさ、その下の穴を見て見ようよ。上から行ったら引っかかって落ちるかr…なんで俺を下にふぎゅぅっ!!! 

 

 早く尻どけて潰れる潰れる! フィアが潰れ…あ、こいつは潰れても死なないから良いや。俺が潰れるからどけ!

 

「つ、着きました~」

「キェェ……」

 

 もうやだ僕お家帰る……。

 

『黒歌…お前が、恋しいよ……』

『なに死にかけてるnyげほぁッ……!!!』

『黒歌、血は拭いておいて』

『え、吐血したのか? 金髪シスターの尻に潰されたわけじゃないのに?』

 

 こっちは中身出しかけたのに。

 それにしても疲れに疲れた…天然マジで怖い、何するかわかんないんだけど、どうなってんの頭の中。

 

 げっそりしながらフィアに撫でられつつ教会の中に入ると、出迎えたのは一人の女の気配。こいつが金髪シスターを此処に呼んだ奴だろうけど、シスターの服の気配じゃないな。なにこれボンテージ?

 

 やだ、ここにも変態がいる! お巡りさんこいつです!

 

『フィア並に痴女な奴が出現した。応援求む!』

『痴女並みの痴女ですって!?』

『もう我のことを痴女としか呼んでいない件について、断固抗議する。全面戦争待ったなし』

『あ、間違えたわ……だって最初の頃のフィアなんて胸にテープ貼っただけとかありえない恰好だったわよ? そりゃ膨らみも見えるわよ』

『大きなお友達が歓喜する光景だったなぁ…着替えさせることに成功した俺たちに万歳三回!』

『ばんざーい!ばんざーい!!ばんざーい!!!』

『むぅ……』

 

 フィアがちょっと不貞腐れちまったがまあ良いとして、問題は金髪シスターのこれからである。誰かお友達居ないんですk……あ(察し)

 

 フクロウを友達というくらいなんだからきっとこの子はぼっちに違いない。すまねぇ…俺じゃぁどうすることも出来ないんだ、許してくれ!

 

「いらっしゃいアーシア」

「レイナーレ様!」

「長旅で疲れたでしょう、部屋に案内するわ。着いてらっしゃい」

「はい!」

 

 おや? 痴女だけど案外いい人だったりするのか? てかこいつ堕天使だよな…なんでこんな教会にいるんだよ。よし、ちょっと考察してみよう。

 

 まずは神父が増えて此処を拠点にしている…つまり、神父共は誰か上に収集されて集まってきた。ならば上のやつは誰か? もうここまでくればわかんだろ、堕天使だ。

 

 ん~、つまりはこいつが集めたってことか? ……いや、まだ堕天使の気配は複数あるな…こいつだけではないかもしれないということか。

 

 まあ俺にはどうでもいいよな! さ、中に入ってみましょ…う…わぁ~お……ぼろぼろやんけ。何をこうしたらぼろぼろになるの? 馬鹿なの?

 

 これはあれだ、きっとバーサーカー的な何かが居たんだようん。もしくは癇癪持ちの引きこもりが居たんだろう。た、大変だねぇ、此処に住んでる人。

 

「ここがアーシアの部屋だけど…私と一緒なの。それでもいいかしら?」

「はい! レイナーレ様となら嬉しいです!」

「……そう、ありがとうね」

 

 そういうレイナーレ?の体内の魔力は揺らいでいる。ふむ、何かアーシアに関して思うことがあるのだろう。……………後で少しお話でもするとすっかね。

 

「それはそうと、その肩の目を瞑ったフクロウは何なの?」

「ミネルヴァさんですか? 私が迷ってる時にたまたま近くに来たんですけど、話しかけたら此処の場所を教えてくれたんです! 賢いですよねー」

「へぇ……そうだ、アーシア。ミッテルトやカラワーナ達に挨拶してきなさい」

「あ、それもそうですね。では行ってきます!」

 

 そう言われてアーシアは部屋の外に出るが、俺は少しだけ羽ばたいてベッドの上に着地する。衝撃で埋もれたフィアがぽんっと出てきた。

 

『ん……何事?』

『あー、寝てたのか。いやね? なんか目の前の堕天使が用事があるみたいだから、今回はアーシアのために一肌脱ごうと思ってな』

『ふーん……こいつ、殺す?』

『おい待てやめろ…やめろ! お前が言うと洒落にならねぇ!』

『残念…星にするのに』

 

 サラッと何言ってんのこいつ…怖いんですけど! 俺ってよくこいつに敵対して生き抜いてきたな! 俺自身に吃驚だわ! 褒めてくれてもいいのよ? よくやった!

 

 バタンと扉が閉まると同時に俺はベッドに寝転がる。超人的な五感はベッドに染み付いたレイナーレの匂いを嗅ぎ取るが、凄く、いい匂いです……ハッ!? 意識とんでた!

 

 黒歌は猫の匂い、アーシアはふわっとした陽気な匂い、フィアは甘くふにゃっとする匂いだけどなんか目つきが危ない時は意識がクラッとする匂いで、レイナーレは甘くむらっとする妖艶な匂い……なーんて、冗談だよ冗談! 何むらっとって。フクロウ状態の俺に何求めてるんですかー(笑)

 

 ……ずっと嗅いでいたい、いい匂いだけどね。

 

 毛布の中をゴロゴロしていると上からレイナーレに話しかけられるが、そういえばフィアはどこ言った? なんか消えたんだけど……あ、組織(笑)のところに行ったのか。

 

「ミネルヴァだったかしら? あなた、何者なの? アーシアに近づいたのはなんでよ」

 

 フクロウに話しかける痴女、廃教会に出現。皆さん夜中に徘徊するのは控えましょう、いつ襲われるかわかったものではありませんことよ。

 

 まぁ、このままでは話せないので初公開の人化といきますか? 黒歌やフィアの前でも未だしたこと無いのに、こんな初対面のわけわからん奴に見せるとはな…やれやれ、困ったもんだ。

 

「ッ!?」

 

 いきなり俺が少しだけ光ったことに驚いたレイナーレはすぐさまベッドから離れて壁に背中を付ける。しかし、その頃には既に俺は変身終了しており、人型になっている。

 

 容姿としては胸のないあきつ丸でいい……とでも言うと思ったか? ヴァカめ! 人化はこっそり頑張りに頑張って七夜志貴…にしようと思って失敗してエルキドゥ…に胸ができてしまって完璧に女になったので、更に頑張ってアストルフォ。

 

 しかし、それすらも失敗して型月系は駄目だということで挑んだのが、なんとなんとの性別木下秀吉さん…が無理だったので戸塚彩加……が無理だった。ねぇ、何の呪い?

 

 他にも男の娘キャラ頑張ってみたけど無理だったから、お兄さん頑張っちゃったぞ! なんと戦艦長門になっちゃった! ……とでも言うと思ったかね? 結局落ち着いたのが生前通りのあきつ丸。

 あとなんでかおっぱいの付いたイケメンと呼ばれるのが違和感のないお空、の大きな大きなおっぱいが消えた感じ。

 

 ねぇ…作品違くない? 見た目鴉だとしたら、変身するのはあのコウヤさんの方じゃない? むしろ俺がコウヤさんになりたかった…! 

 

 服装としては黒いズボンに白いワイシャツとブーツ、胸元の赤いのはありません。緑のリボンは消えることがなく頭にあったけど、翼は出してません。

 

 で、目には開いても大丈夫なように布を巻いてるんだけど、イメージ的には月姫の最終巻の志貴が巻いていた布をイメージしてくれたらいい。

 

 これで俺も立派なイケメン…もとい、美女になってしまった。前よりましだと思いたい。思ってもいいよね? 胸消えて息子ができただけで何も変わってない体だけどな!

 

 ………………結局さ、男らしさを思い浮かべて人化しても意味なかったんだよな。ねぇ、なんでなの? 男らしくなっちゃいけなかったっていうのか!? 意味分かんないよ!

 

「だ、誰なのッ!?」

 

 そう言ってレイナーレは手に槍状のものを出現させてこちらに向けてくる。俺はゆっくり起き上がってベッドの上に座る。ゆっくりしていってもいいですかね?

 

「俺はミネルヴァだよ、レイナーレ…少し、話をしようじゃねえか」

「……話ですって?」

「ああ、そうさ。お前さんも俺と話をするつもりだったんだろう? まぁ、何もしねえからこっち座れって」

 

 ぽんぽんと俺の隣を叩くと、レイナーレは槍を持ったまま恐る恐るといった感じでベッドに座る。ん~、まあアーシアに何もしなかったってことが良かったんじゃね?

 

 そして直ぐ様気の緩んでいる隙を狙ってレイナーレを押し倒す。両腕を腕で抑え、足を絡めて動かなくする。

 

「なっ!?」

「動くな、そして喋んなよー。騒がしくしたら誰か来るかもしれねえし……まあ、手荒な真似をして悪いが、忠告だけはさせてもらおうかね」

「……忠告ですって?」

「ああ、忠告。アーシアは少し触れ合っただけでも分かるほどに純粋でいい子だ。アーシアに変なことしてみろ…お前らを呪い殺してやるからな」

 

 言い放つとともに殺気をこいつだけに叩きつける。アーシアに何かあれば、この邪眼の封印を解くことも辞さない!

 

 ……なんかさ、邪眼の封印とか言ってると物凄く厨二病に見えてやばいんだけど……邪眼の封印(笑)。布巻いただけなのに封印とか何様というな。

 

 な? 草しか生えねえ…邪眼で何が悪いんだよー! 邪な眼じゃないだけましだろう!? 邪悪な眼的な感じの方がまだ格好良いじゃん! 

 

 格好いい…よね? 頼むからそう言って! 君の瞳に乾杯(白目) 君の瞳に恋してる(恋死てる)

 

 真面目な雰囲気の中、俺の頭の中は愉快なことになっていたが、レイナーレは怯え、汗を大量に流して怯んでいたが震えながらもキッと俺を見ながら小さく口を開く。

 

 呼吸も儘ならないまま、涙流して喘ぐように息をしているのに、頑張るものだ。どうでもいいけど、美女が汗で濡れてると物凄くエロいよねー。見えないけどー。

 

「わ、私も…アーシアはとても良い子だと思うわ…。で、でも、ドーナシークとか他の奴らがアーシアの神器を狙っていて……」

「へぇ…? だから?」

「アーシアを……アーシアを守りたいの! 優しいあの子をこんなくだらないことで死なせてたまるものですか!」

 

 そういうレイナーレは既に震えは止まっていたのだが、まあ俺が殺気を収めただけなんだけどな。

 にしても、こいつはアーシアに害をなす存在ではなかったのか…いい奴そうだな。

 

 こんな状況で演技ができるなら相当の役者だが、素人である俺程度の殺気にあんなに怯えていたこいつでは咄嗟の演技はできないだろうし、大丈夫じゃねえか?

 

 少しの間、こいつの中の気を観察していたら顔を背けられたが、それを合図に中を探るのをやめる。気や生命力が揺れてなかったから嘘ではないらしい。

 

「はぁ…嘘じゃないようだな。なら、これからも側に居てやれ」

「勿論よ」

「そうかよ…そのためにはお前は雑魚すぎるから強くならないといけないが、それはまたでいいとして…まさかレイナーレは百合だったとはな…」

「なっ!? そ、そんなわけないじゃにゃい! 純粋に心配なだけよ! 言うなれば姉が妹を見る感じで!」

 

 ほうほう、つまり親愛レベルで愛しているというわけですね。で、肉親じゃないから親が抜けて愛だけになると…百合じゃないですかやだー。

 

 そんな感じでからかっているとレイナーレは面白いくらいに反応を返してくれる。それからお互いのことを少し話し合っていたが…最後まで俺がベッドに押し倒したみたいな格好だったんだけど…。

 

 レイナーレは最後に顔の近さと脚の絡みに気づいて恥ずかしさに倒れたけど、割りと初心なんだな。可愛いやつめ!

 

 

 

 




・アーシア参戦!
 動物とお話がしたくなっちゃうお年ごろ。友達は…あっ(察し) この作品ではミネルヴァがお友達だと思ってる。仕方ない、お兄さんキェェしか喋れないけどお友達になっちゃる! 

・お巡りさんこいつです!
 お巡りさんで思い出した。変態仮面5月らしいから見に行きたいなー。あれ滅茶苦茶面白そう。まずは一作目を見るためにTS○TAYAまで次元の狭間通って行ってきます。フィアちゃーん、宜しくー。
フィア「WELCOME!」  おい馬鹿やめろ!

・おや?レイナーレの様子が……
 この世界線では綺麗でオネーサマなレイナーレさんがどこかに居ると聞いたけど…あれ?黒歌に痴女並みの痴女って言われてなかったっけ? アーシアたんを守るため、ミネルヴァ達に苛められてもへこたれない!鳥に負けるなんて悔しい…でも感じtyゲフン。頑張ってミネルヴァ廃にする予定。でも予定では修行面はカット!

・変ッ身ッ!
 初めての人化のお披露目が、我らがヒロインの黒歌やフィアを差し置いて初登場のレイナーレ。ぶっちゃけ面倒いからあきつ丸でいいやーとか思ってたけど、ぼんやり画像検索で色々見てたら、格好良いお空ちゃん見つけたお魚咥えた作者さん。URLとか追っかけて行くうちにくしゃみ連発。お空ちゃんは尊い犠牲になったのだ…そう、吐き出したししゃものな……PCが!メディック、メディーック!

・最後に一言
 こんなあとがきの書き方したのは初めて。いや、なんやかんやでノリと思いつきで書いたからお面白かったからいいけどね? それじゃあ、またいつか!


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第十話 邪眼と堕天使と神龍と時々黒猫&聖女

にゃあ。にゃん………助けて黒えもん……。


 

 

 

 

 

 戻ってきたアーシア、真っ赤になって煙を出すレイナーレを見る。

 

「火事ですか!?」

 

 その反応はおかしい。ギャグ漫画並に煙を出すレイナーレもレイナーレだが、アーシアもかなりズレた思考回路してるよね! お前が言うな?

 まあ俺が言えたことじゃないのはわかってるさ! 愉快な思考回路してるからな。

 

 とまあそんなことがあって数日、再びレイナーレの部屋に遊びに行っている。暇があれば念話じゃなくて今度はレイナーレの所に遊びに来るようになったのだが、レイナーレが分かるやつでよかった。

 

 猫が喋ったり小さな人形のようなのが喋ったりしても受け入れてくれたし。黒歌って人気なん? レイナーレがめっちゃビビッてたけど、一緒に部屋の外に出てからは別になんとも無かったが……。

 

 あれ? もしかしてレイナーレ…真っ青だけど大丈夫? 風邪なのか? という感じになったが二回三回と顔を合わせると元に戻っていた。

 

『ということで諸君、緊急会議だ! 事件は会議室で起こっているんじゃない、現場で起こっているんだ! そして俺はおこなのだ!』

「題して、~アーシアに男の影!? 気になるあいつはいいやつか?~ にゃ!」

「うぅ…アーシア、なんで私に黙って彼氏なんか…そうよ、きっと騙されてるのよ!」

「我のビンタ、食らわせる?」

「それ星になるやつにゃ。自重自重」

「我の辞書に、自重という言葉はない」

 

 啜り泣くレイナーレを羽で撫でて慰めながら今日の司会進行を努めさせていただきます、ミネルヴァこと空那です!

 

 いやぁ、やってまいりました緊急会議。この会議は我らが癒やし、天然アイドルのアーシアちゃんに男の影が発覚し、それをレイナーレが俺に教えてくれたことが発端であります。

 

『では今一度、私達に説明してもらいましょう。レイナーレさん?』

「ええ…少し前、アーシアはフリードとか言う糞野郎に犯されかけたらしいんだけど…」

『ちょっとそいつ呪い殺してくるわ』

「待つにゃ空那。それは後でもできるでしょう?」

「皆で腹パン&金的」

「ええ、貴方達が居れば怖くないわ」

 

 ちょっとした死亡フラグだけど確かに俺達が居れば怖くないな。

 

『ごほん、失礼しまいした…では、続きをどうぞ』

「こほん…クソフリードのことは置いておいて、実はアーシアは既にその男とデートをしたらしいんです。本人は遊びに行ったと言ってましたけど、男と二人で楽しそうに遊ぶ…デートしかないじゃないですか! アーシアに遊びを教えなかったクソ教会も悪いんですけどね…」

『なるほどなるほど、クソ教会とやらもいつか潰すとして……アーシアさんは既にデートも済ませていると。これはのせられて騙されたかもしれませんね』

「貞操は大丈夫なのかにゃ」

「ええ、それは大丈夫でしたね」

「…あれ? レイナーレ、男、騙してなかった?」

「あ、あれは! あれはあれよ…その、仕事だったから。全然タイプじゃなかったから。あの程度の男を落とすの簡単だったけど、タイプじゃないから! ここ大事よ!」

「大切なことだから二回言ったのね」

「タイプはもふもふした毛を持った白いフクロウだから大丈夫よ」

「「なかーま」」

 

 話がズレてるけど、俺のことタイプってペットにするならフクロウがいいってこと? 

 そして忘れてたけど、こいつも一人騙してつき合ってたな…そんなことを言っていたと思う。お主も悪よのぅ…しかも殺したんだろう? 

 

 やだ…ここの仕事ってまっくろくろすけくらい真っ黒じゃないですか! ブラック企業だ、危ないぞレイナーレ! お前とんでもなく美人だからそのうち身体でも売って金持って来いとか社員の慰めになれとか危ないこと言い出すぞ!

 

 殺しもさせる企業なんだから絶対にあるって! フリードが居るっていうのが何よりの証拠だぜ。

 

『仕事が終わったらレイナーレは貰うとして…話を戻しましょう』

「えッ…!?」

「何照れてるのにゃ。こんなブラック企業にずっと置けるわけないじゃないの」

「さよならブラック…ようこそホワイトへ」

『呼んだ?』

「シロフクロウだけに…?」

『「HAHAHAHAHAHA☆」』

「この二人はもう…くだらないにゃ」

 

 フィアの何でもない誘いに乗って返事をしてみればフィアもちゃんと乗ってくれた。そして二人で米式笑いをしたら黒歌に呆れられた。

 黒猫におすわり状態で溜息吐かれた。なんかショック。

 

 ゲフンゲフン、おやじギャグはここまでにしといて。レイナーレさん、いつまで赤くなってるんですか。起きてくだしあ。

 

「ハッ! あ、話の続きだったわね。だからその男を確かめましょうって話なの」

「悪ければ腹パン、良ければ金的、最悪であれば一夫多妻去勢拳にゃ」

『呪い繋がりで俺に任せろ! フクロウだけどな!』

「…我、ビンタから腹パンに変える」

「どっちにしても星になるにゃ」

 

 破裂させればいいんでしょ? 余裕余裕!

 

 そして立ち上がった俺達は確かめるために勢い良く立ったわけなのだが、俺の上にフィアが乗った時に、レイナーレが顔を俯かせてるのを発見した。

 それをみて黒歌が話しかける。

 

「レイナーレ? どうかしたかにゃ?」

「その…そういえば言わなければいけなかったことがあったの…怒らないで聞いてくれる?」

「……聞くだけ聞く。話して」

「じゃあ言うけどね……」

 

 神妙そうな顔で口をゆっくり開くレイナーレに、俺達はゴクリと喉を鳴らす。

 

「実はね…今日、これからアーシアを殺して神器を奪うという儀式が……」

「まさか…」

「………………」

『おいおい、まじかよ……無いんだよね? そうだと言ってよ…』

「儀式が……………ありますぅぅぅぅぅぅッ!!!」

「「『それを最初に言え馬鹿野郎ッッ!!!!』」」

「ごめんなさぁーーいッ!!」

 

 珍しくフィアまで怒鳴りつけた。と言うかこいつマジで何言っちゃってくれてるの? え? マジで? ウソダドンドコドーン!!

 

 いつも神父が居るからこの教会の気の多さはこれくらいなのかと思ったけど、騙されたわ。そう言えば今日はいつもより多いじゃないですかやだー!

 

 8時だよ! 全員集合ッ! ってか!? そうです、今は丁度夜の8時です! 

 

 急いでレイナーレの肩に乗り、黒歌が反対の肩に乗る。と、そこでここに向かって来ている気を複数発見した。

 

『黒歌!』

「ええ、悔しいけど…私はここで待ってるわね」

「え!? どうしてよ! 黒歌、貴女が一番の戦力じゃないの!」

「私がはぐれっていうのは知ってるわね? 妹とその仲間がこっちに向かってきてるのよ。だからいけないわ」

「そんな…」

「それに…私より空那とフィアの方が強いにゃ。私も前よりは二倍以上、空那の物になってから強くなっちゃったけど、束になっても敵わないにゃ」

「…本当なの?」

「にゃん。だから二人共、私の代わりに絶対にアーシアを連れて帰って来るのよ!」

「『任せろ!』」

 

 黒歌の代わりに絶対に助けだす…絶対にだ! 

 

 ………実を言うと、黒歌はアーシアに会ったことはない。しかし、俺の動きを見ているのか、遠見の術でアーシアを何回も見たことはあるのでよく知っている。

 

 なんならもうアーシアもレイナーレの顔も俺は知っている。直接見たり、テレビやレンズ越しで俺が見ると相手は必ず死んでしまうが、写真なら大丈夫だから撮ってもらって見た。

 

 アーシア? 見た目も笑顔も聖女でアイドルでしたが何か? 

 レイナーレ? 美人だしスタイル良すぎだった。生前の地球だったらモデルもアイドルも裸足で逃げ出すね。結婚して!

 

 いや、フィアも超美少女だよ? うん、だからその持ってる羽を離そうか。いや、話せば分かるって! なんか姿変えてスタイル抜群の絶世の美女になったけど、いつもの方がいいから!

 

 ばりばり毟られた。丸焼きにされるかと思った……。変身した美女のフィアに見惚れたのは内緒な。照れて毟られるから。

 

「レイナーレ、行って…」

「ええ! 私だけじゃ難しいから二人共頼むわよ!」

『任せないさい! 俺が殺せないのなんてフィア位だから!』

「え、なにそれ怖いにゃ……」

 

 黒歌を部屋に残し、扉を閉める瞬間そんな声が聞こえてきた。なんかガチでドン引きしてる声だったんだけど、そんなこと無いよな?

 

 で、ダッシュで教会の地下まで行こうとするが、行く途中で神父が居る。ここは任せようか。

 

「レイナーレ様! 急いでおられますが、どうなされたのですか?」

「通して頂戴。ここに敵が向かってるわ。だから貴方達は今から警戒をお願いね?」

「敵!? わかりました、ここは我らに任せてどうぞお行きください」

「ありがとう」

 

 そんな会話をしてレイナーレは地下に続く階段で地下へ向かう。レイナーレのくせになんか上司してたんだけど、ここは真面目にしてたレイナーレを笑うところ?

 

 アーシアの気がどんどん近くなるが、さっきからアーシアの近くに居る奴が面倒なんだよなぁ…誰だよこいつ、他の奴より気が少し大きいぞ。

 他がBB弾だとしたらこいつはビー玉だな。少しだろ?

 

「アーシア!」

「れ、レイナーレ様…」

「む……アーシア、片胸ぽろり」

『マジで!? 見た…目が開けねえ! 開いたらアーシアごと皆殺しじゃん!』

 

 フィアが小さく俺の羽の間からそんなことを呟く。どうやら肌着姿で吊るされていて、胸がぽろりというかもろりしているそうだが、俺は吊るされているのと服はどんなものかくらいしかわからん!

 

 なにせ気や魔力によって世界を把握しているから、どんな顔かがわからないように胸なんて膨らんでるなぁ、あ、この人巨乳だなぁとかくらいしか分かんないんだよ!

 

 そんな大きさわかったって興奮しません。服から覗くであろう谷間の肌色も見えないんだぞ? 下乳さんが次作で年齢上がって露出も多くなっても、下乳も見えないんだぞ? 

 へぇ、こんな服でここまで胸出してるんだな、くらいしか分かんねぇんだよ! 泣ける!

 

 例えるなら無修正だと思って見たら修正のモザイクがあった時くらいの萎え。そりゃ息子もがっかりして項垂れるわ。って、前世の思い出や男だったらあるんじゃないかっていう話はいいんだよ。

 

「あ、アーシア…立派に育って……うぅ」

「どこ見てるんですか!? ちょ、これ外してください! 若しくは私のおっぱい隠してください!」

「おっぱいなんて言うんじゃなありません! はしたない!」

『自分の姿見てー! お前さんボンテージだから! 凄まじい露出だから!』

「うっ…そういえば人のこと言えないわね」

 

 というかなんで一気にシリアスムードがぶち壊れちゃってるの? 元気なかったアーシアも元気いっぱいになってガチャンガチャンと抵抗している。そんなに隠したいんだね。

 

 ま、まぁレイナーレよりは小さいけど、フィアよりは大きいから良いじゃないか。

 

「…………………」

 

 

―――ブチィッ!――――

 

 

「キエェェェェッ!!?」

『ふにゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!!?? いきなり毟るなんて駄目ぇ!!』

「ッ!? 吃驚した! 何叫んでんのよ」

『痛い、痛いよぅ…フィアが思いっきり羽毟ったの……ローストチキンは嫌だ……』

「なんか嫌なこと思われた……」

 

 勘良すぎだろこいつ…しかも躊躇いないし。

 

 それと自分の姿を恥じたのか服を一瞬で変えたレイナーレ。服装としてはミニスカートにサイハイソックス、ノースリーブのタートルネックセーターだな。

 俺の足の爪当たってるけど痛くないの? と思ったけど、俺が気でコーティングしてるから痛くないんだった。

 

 よーし、アーシア今から助けるからなー!

 

 

 

 

 




やあ久し振りだね(´・ω・`)

そうさ、消えただろうと思われた私だ。書くことも書けなくてアイデアも全く思いつかないから読み専に戻ってしまった私だ。(´・ω・`)

長くは語るまい。ボロが出るからね。
じゃあ、またいつの日にかお会い……できたらいいね。


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