IS×Fate(笑) 衞宮家の非日常的な生活 (カズノリ)
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IF話
IF 篠ノ乃束の結婚騒動 1


『ハロハロー! 私、篠ノ之束さんはぁこのたび結婚しまーす!』

 

 ある晴れた日のこと歓声上がる競技場、世界で最も盛んに開発されているIS(インフィニット・ストラトス)を学ぶ専門学校、IS学園のIS用グラウンドで使用されている安全装置用のバリアーが破壊し突如として現れた未登録IS機。 大会の途中であったため、観客席で座っていた生徒たちはざわめきを隠せない。

 また対戦途中であった赤と白のIS機もまた驚きを隠せななかった、しばらくの間未登録のIS機が止まっていると頭上から光が現れた、それはまるでレーザーのように上空に数メートルほど伸びると、今度はレーザーで円を描いた。

すると空間映像が出てきたのだ。映像には天才にして災害とも呼ばれるIS作成者である篠ノ乃束だった。 その第一声がコレとは誰も思わなかった。

 篠ノ乃束に慣れているはずの実の妹篠ノ乃箒や織斑姉弟でさえもその言葉が何の意味なのかさえ分からなくなったほどだ。

 

『むぅー! みんなテンション低いぞー!』

 

 いや、テンションが低いんじゃなくて信じ切れずにショック受けてるだけです。ってナレーターの私が突っ込んでどうする。コホン。

 篠ノ乃束の言葉は観客席、コントロール室にいた人さえも石化させるほどの威力だったとは言うまでもないだろう。だが、この中でも自力で石化を解いた人物がいた。

 

「束、冗談や寝言は布団で寝てからしろ。あと邪魔だからサッサと去れ」

 

 世界最強にしてブリュンヒルデの称号を持つ我らが織斑千冬だった。だがその言葉にはやさしさというものがない。にもかかわらず千冬さんの声を聴いた束はさん逆にテンションが上がったようだ。

 私にもわからない人種の為、SMについては何ともわからないものだ。

 

『あ! ちーちゃん!  あのね!あのね! 私結婚するんだよー!』

「はぁ、相手は夢の世界の住人とかいうんじゃないだろうな?」

『もー! ふんだ! いいよ、じゃあ証拠を見せてあげるねー! クーちゃん! ソレ映して―!』

『ハイ』

 

 そういってカメラが動き、ソレを見せた。

 いうならば赤い芋虫というべきか。 赤い布で全身ぐるぐる巻き状態で床に転がっている人物に対して何といえばいいだろうか。とりあえずはご愁傷さまというべきだろう。ついでに言うならば髪は赤銅色で短髪だ。

 さてこんな映像を見た アンタはアイディアロールです。1d6でロールしてください。

 失敗したあなたはぐるぐる巻きにされた人物をまるで「ああ、明日この豚はお店に並ぶのね」的な憐みの目を持って見つめることになるでしょう。 成功した千冬さんは「ああ、また束の犠牲者か。成仏しろよ」と思いました。

 

『へっへーん! いいでしょー! ちーちゃん!!』

「いや、私はむしろ可哀そうにと思っているのだが?」

『ぶー! ぶー! いいもん! ちーちゃんより早く結婚できるし、子供も作っちゃうもんねー!!』

「ああ、結婚式のブーケは私に渡せよ」

『うん。 絶対にブーケはちーちゃんに渡すよ』

 

 どこか子供っぽいテンションが一気に大人の雰囲気を醸し出す篠ノ乃束のギャップに観客席の生徒たちは驚いてばかりだった。

 そう、見た目は大人! 中身は子供! その名も! というべきだろうか。

 

『あ、そうだ。この映像とそこの競技場のカメラなんだけど、ちょっとハッキングして全世界に翻訳付きで流してるからね!』

 

 はっ? なに言っているの? この人。

 まさにその場の先生、生徒たちの思いは一つになった瞬間であった。ついでに箒と千冬さんはため息をつき、織斑一夏は苦笑いだ。

 さて、そんな時映像に移っているデカ赤芋虫が突如として動いだした! あと鳴き声としてむー!むー!という声も出ている。 

ビタン! ビタン!と暴れているのは新鮮ですねと思うべきか、元気がいいですねと思うべきか。

 

『あ、やっと気が付いたみたいだね! えっとちょっと待ててね!』

 

 束さんがそういうと映像は突如として3分クッ○ングが始まった。

 タタタタータ。タタタタータ。タラタラタラタータータ。

 今回の料理は豆オムライスでした。

 

 っと茶番が終わり、映像が元に戻った。そこには芋虫の姿はなく、赤銅の短髪の男性が木製のイスに座っていた。いや、座らせられていた?というべきだろうか。男性はイスに座らせながら、両腕両足の首ところに先ほどと同じ赤い布のようなものが巻かれているようにも見える。

 あと、口元にも赤い布が……。 男性を見たとき織斑姉弟と2人の生徒は見覚えがあった。そう、とても優しく、とてもおいしい料理を作ってくれる、篠ノ乃箒と凰鈴音の初恋相手でもある……

 

「ああ、衛宮か。 がんばれよ」

『ムー! ムムム! ムムムムムー!』

『あはははー! さすが私の旦那さまだね! 元気みたいでよかったよかった!』

『束様、そろそろパパの口元にある赤い布とったほうがよろしいのでは?』

『えー、まークーちゃんがそういうなら仕方ないっかー』

 

 そういって束さんはイソイソとイスに座っている男性に近づき、男性の膝に座り素敵なお胸様を無理矢理に男性の顔に当て、両手で赤い布を取り始めた。1分、20分たってようやく赤い布がとれたのか、束さんは男性から離れていい仕事したぜ!的に汗を拭いた。 ついでに男性は反応がない。顔が真っ赤になりながら下向いている。

 っと突然顔をあげた。 顔を真っ赤にしながら。

 

『束! いきなりなに拉致って来るのだよ! しかも自転車に乗っている最中! 危ないじゃないか! 束にケガができたらどうするんだ!』

『うん、私が言えることじゃないけど、そこで自分のことじゃなくて私なんだねー』

『ん? なんでさ。男の俺がケガしても勲章程度だけど、束は女の子だろ? 女の子にケガをさせるのはダメだって爺さんが言っていたからな』

 

 男性はそういって束さんの方、つまりカメラの方へ微笑んだ。

 束にケガがなくてよかったという心からの微笑みはフツメンの男性であっても強力な威力を発揮する。その微笑みを見てしまった女性諸君。 君たちはSANチャックを受けてもらうことになるだろう。

 

『さて! 挨拶はここまでにして、ほうきちゃん! いっくん! ちーちゃん! 私『海外』へ『ハネムーン(跳ね月)』しにいくよ!』

「ほう、海外にハネムーンとはまた束に会わない言葉が出てきたものだな」

『へっへーん! 私はただの束さんじゃないもん。 私はスーパータバーネさんだからね!』

「そうか、どこに行くか決まっているのか?」

『うん! あ、いっくん! 競技場のグラウンドから離れていてねー!』

『おい! 束! 俺は聞いてないぞ!?』

 

 なぜかそういう束さんに不安と確信を持った千冬さんの行動は早かった。後ろにいる後輩に指示を出しマイクを片手に持ち息を吸って一言。

 

「全員離れろ!!!」

 

 

『すりぃー!』

『パパ、ご安心ください、藤村さんにはちゃんとご説明しました』

 

 妙に篠ノ乃束の声がグラウンドに響き渡る。

ゴゴゴゴという音を立ててグラウンドが4つに分かれ、どんどんと下へ下がっていく。この時、グラウンドにいた2機はギリギリで退避に成功した。

 

 

『つぅー!』

『なんで藤姉ぇなんだよ!? 俺にも説明してくれ!』

 

地面の底からウサギ型のロケットが現れた。 通常のロケットの先がウサギの鼻あたりといえば創造しやすいだろうか。 手と足は模様として描かれている。

 

 

 

『わん!』

『ではパパの説明はあちらに行った後に』

 

 ウサギの眼あたりに手を振っている束さんといまだ椅子に縛られている男性、クーちゃんと呼ばれた女性がいるのを確認できた。

 

 

『いってきまーすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』

『あははは、なんでさ……』

 

 

 こうして、人類初。 ハネムーンで月へ向かったという今回の出来事は歴史に刻まれるようになった。

 帰ってくるのは一体いつになることやら。

 世界中は篠ノ乃束の後を追い、お零れを手に入れるためISの開発を戦闘から宇宙へと急遽方向転換し、今年から毎年1年に10回世界中からロケットが打ち上げられ、天才博士である篠ノ乃束を捜索することになり、ISの開発をより一層に宇宙開発がすすめられた。

 

 しかし、この出来事から1人、実の妹である篠ノ乃箒は一週間ほど「あのコミュ症の姉さんに先を越された」という衝撃のショックにより寝込んだようだ。しかし起き上がってからはより一層に積極的になったのは言うまでもない。

 

 




「私、織斑千冬は結婚します」の感想にて「束さんバージョン」を希望されて
作ってみたのがコレです。 束さんのイメージがとりあえずハチャメチャなので
ハチャメチャみたいにしてみました。
キャラ崩壊してますよねー。たぶん。

誤字脱字やご意見ご感想お待ちしています。

あとIF話として簡単な連載にします。
これもまた気分(ネタ)が良き次第にしますので申し訳ございませんが
お待ちください。

ネタを提供してくださってもいいですよ(笑)


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IF 篠ノ乃束の結婚騒動 2 タイプ・ムーン

 

 

〚さぁ! 今年もやってきました。 第25回 キング・オブ・バトラー! 最優の執事は誰か!』

 

職場であるIS学園から帰って来て、ビールを一本飲みテレビをつけるとそんな言葉と同時にかつて同じ学校で学んだ1人の女性の姿があった。同じアイツの犠牲者として懐かしさを感じながらテレビに映る場所を見る。

どこかで見たことがある武家屋敷が映っており、ため息を吐く。年末にテレビ越しとはいえバカの顔を見る嵌めになるようだな。

夜空に浮かぶ『タバネ月』を見ながらかつて学園で行われた学園祭やIS(インフィニット・ストラトス)を作り上げ、『月』を買い上げた現代に残る超有名人にしてする事が全て災害の様な事を仕出かすバカを思い出しながら織斑千冬はビールを飲みほし、コンビニ袋からもうビールを1本開ける。

 

『司会はこの私、葛城颯がお送りいたします』

 

 今日の月は『タバネ満月』。

 自宅のリビングから見える夜空に浮かぶ月にデカデカと書かれた『タバネ』と言う字に6年前に結婚と同時にIS学園のグランドからハネムーン(跳ね月)へ出かけたと思いきやその次の日にはテレビで衛宮束(旧名、篠ノ乃束)が『月を購入!?』というニュースには飲んでいたコーヒーを副担任の顔に拭いてしまったのは仕方あるまい。

 相変わらずあのバカがやることはやり過ぎだ。

 

『さて! 皆さん! 今回の舞台はなんと! ISを世に広げ、月を購入という偉業を成し遂げた衛宮束さんのご自宅です!』

 

 葛城颯はそういうとカメラが横へスライドする。

 そこには元気そうなニコニコとしているバカ――衛宮束とその夫であり、あいつの心を射止めるという偉業中の偉業を成し遂げた衛宮士郎。

 そして束と衛宮の手を握っている小さな子供が写っていた。

 

「束のやつが月に人を呼ぶなんてな。人も変わるものだな」

 

 と言っても横にいる衛宮士郎の存在が大きいと言えるがな。

 

『今回は当番組をご自宅に上がらせていただき、誠にありがとうございます!』

『ふふん。ダーリンに感謝するんだね、これでも全国からスパイとか面倒なのが来てるんだからね!』

『そ、そうなんですか!?』

『えっと、俺はあまり知らないけど、束が言うにはそうみたいだな』

『すぱい!すっぱい!』

 

 まぁ今でもISコアは作ることはできない様だしな。

 それにしても、なんで月にいる筈なのにカメラには大空が見えるんだ?

 バカ、またなんかやったな。

 

『さて! ところで皆さん! 今私たちがいる場所は月じゃなくて、地球でしょ!? と思っている方は多いと思います。

ですが! ここは本当に月なのです! 束さん。お願いします!』

『仕方ないね、まぁ束さんが嘘つき呼ばわりされたくないし、ポチ! っとな!』

 

 束がなんかのスイッチを押すと、大空がまるで屋根付きドームの様にゆっくりと動き始めた。

 そこから見えるのは、青い星と宇宙の闇と星々の明かりが照らされた景色が写っていた。

 

『なんと! ここはただの月ではなく! 月の内側に衛宮束さんが直々に改装し、人が住めるようになったのです! 詳しい事は衛宮束さん、お願いします!』

『ふふん! いいだろう! 私が、この私が10年の月日をかけて月にISコアを2000個と特別巨大ISコアを組み込んで月自体に住む場所には重力を付けることで、住むのに支障が無いようになったのさ!』

『まぁ、住むなら浮いているよりは地面に足が付いている方が料理にも支障が無いから、俺が束に無理を言ったんだけどな』

『さらに! さらにさらに! 地球のスパコン百万台なんて目じゃない程の演算力、ISコアによる人工頭脳と人間の10000倍以上の自己進化が可能になったのさ!』

『主に優菜の面倒と家庭教師、束の助手、今はいないけどクロエのサポートをして貰っている』

 

 衛宮の補足説明とビールを飲み過ぎたのか頭が痛くなってきた。おかしいな。ビールを10本しか飲み干してないのだが、というより、なぜここには居ない筈のバカにここまで頭を悩まされなければならないんだ。

 これは明日、いや今日からIS開発会社の株は急上昇だろうな。ISコアを複数使用する事で従来のスパコン以上の性能を持つことが証明されたからな。

 あのバカの娘とは思えないくらいに優菜は元気そうだな。おそらく衛宮に似たのだろう。そのままお父さん譲りに育ってくれ。主に私の心臓の為に。

 

『ふぁ、すごいですね。他には何かあるんですか?』

『んー、そうだね。 正式名所として『束さんのインフィニット・プレゼント・ザ・ムーン』っていうんだけど、長いから『タイプ・ムーン』って呼んでるくらいかな?』

 

 長いわ! バカ! この場に居ればビール(中有)を投げつけてやるものを! いくら昔に比べれば人見知りが無くなったとはいえ、機嫌が良すぎて秘密にするべきところを喋るな! これは全世界に知れ渡るんだぞ!

 

『ザ・プレゼント、ですか』

『ふふん! 私が士郎に何かを上げたくてね!』

『俺はそんな事しなくていいぞって言ったんだけどな、束が邪魔されずに一緒に居たいって言われたらいつの間にか頷いてた』

『だってー、士郎の家に居たらバカはいっぱい来るし、新婚10年は静かにしたかったんだもん。 あ、ついでにこの場で警告するよ。

私たちのタバネ月にアポ取らないで来た礼儀知らずはどんな地位を持っていても迎撃して大気圏に突入させるから。

もちろん、ちーちゃんたちは例外ね!』

 

 礼儀知らずはどっちだ。前に天皇家からの食事会を迎えに来たやつに一言で断ったお前が言うな。

 それとも毎回偽装パスポートとIS技術を応用した変装で飛行機にファーストクラスで乗っているだろうが。

 もっと前には呼んでもいないのに修学旅行に来て4日間、お前と居るハメになったのは未だに恨んでいるぞ。お前が居なければ一夏を篠ノ乃達から守る事が出来たんだからな!?

 

『あ、ありがとうございます。 で、では会場となる場所を案内してもらってもよろしいですか?』

『ああ、俺が案内するよ、颯』

『あんない! なんない!』

 

 ああ、優菜と衛宮に癒されている時点で私は疲れているのだろう。

 今日はもう、寝よう。

 

 

 私は知らなかった。

『うむ! 死の淵に置いて恐れを抱き、怖れを飲みながらなお、戦うか!』

 

 タバネ月はすでに魔術的な物体であるという事を

 

『見事だ! よくぞ言った、名も知らぬ路傍の者よ!』

 

 複数のISコアと巨大なISコアの人工頭脳と融合してしまい、

 

『その願い、世界が聞き逃そうとも余が確かに感じいった』

 

 ISコア自体が持っている魔力吸収機能によって

 

『拳を握れ、顔を上げよ!』

 

 あの聖杯30個分の魔力出力を持つ事で

 

『命運は尽きぬ!』

 

未来では「ムーンセル・オートマン」と呼ばれ

 

『なぜなら』

 

あらゆる事象をコントロールできる力を持ち

 

『そなたの運命は……今、始まるのだから!』

 

 霊子虚像世界「PE.PA.PH」へアクセスすることで

 

『では、改めて問おう』

 

 冬木市で起こった聖杯戦争が再び『月』で行われるという事を。

 

『答えよ、そなたが余の奏者か?』

 

 今、私が束を止めていればその様な事は起こらないだろう。

 

 たぶん。

 




仕事が忙しくなかなか 書けない作者です。

今月はこの作品だけです。
エクストラとISをコラボしたいなぁと思ったら
たばえもんがやってくれました。
流石天災。


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IF 篠ノ乃束の結婚騒動 3 タバネ月

 

 

さて、テレビ中継は続いて見覚えのある我らが母校「穂群原学園」があった。

 ふぅ、流石に飲みすぎたようだな、タバネ月に学校がある筈が無いだろう、私の飲み過ぎによる理解力低下が原因だな

 

『あ、あの~、束さん? なんで学校がるのでしょうか!? しかも私たちの母校!!』

 

 ああ、頑張れ颯、お前だけが頼りだ。

 そこのバカ(天才)にもっと言ってやれ、非常識な事をするなと!

 

『ふっふ~ん! 今回のイベントの為に会場として作ったのさ!

 外見は学校だけど、IS技術を応用すれば中をダンジョンみたいな事も出来るし、ゲームの敵モンスターなのも出来る! まさにISの無限の可能性を秘めた「学園」なのさ!』

 

 いや、意味が解らん。 なぜダンジョンにする必要があるんだ? 敵モンスターを出現させてどうする! お前は学園の中で聖杯戦争でも起こす気か!

 ISの技術応用、おそらくは武具の収集機能と巨大なISをアクセサリーに変換する変換機能が主に使われているのだろうが、ダンジョンにする必要性が見いだせないぞ。

 

『な、なるほど。 で、では参加者の皆様を案内してもよろしいでしょうか?』

『そうだね~。もう少しいろいろと喋りたかったけど』

 

 いや、しゃべるな。お前の口は最新技術の秘話を語ろうとしているのが目に見えているぞ? それ以前にその技術応用がマネされれば戦争が起こった時に何が起こるかわかっているのか?

 

『あ、そうだ。 もしこの応用を見て悪事に使う輩を見つけたら……』 

『な、なにがあるのですか?』

『う~ん。まぁそいつらはきっと東京湾でボンベ無しダイビングを一生する羽目になるだろうから、気を付ける事だね。

 この、衛宮束さんの目から逃げられると 思 う な よ ?』

 

 お前は急な警告をするな! 小さな子供も見ているかもしれないんだぞ!?

 優しく言ってやれ! 私なら首脳らを全員の目の前でビル1つを破壊して、脅すがな。

 頭を脅せば下がバカをしようとすれば全力で止めるだろうからな。

 

『え、え~。全国の悪役さん、どうかバカなマネをしないようにしてくださいね~』

『束さんにめんどくさい事させないでね~』

 

 ナイスフォローだ。楓、だが束、お前はアウトだ。

 ええい、この調子では寝たくても気になって眠れん! 主にバカ発言の怖い!

 

『あれ? 束さん、あそこのベンチに座っている人はお友達ですか?』

 

 楓の言葉と同時にカメラが移動し、学園のベンチに座っている悪魔のコスプレをしている女性と思われる人物とその膝枕で寝ている赤いジャケットの青年の姿が写った。

 うむ、見覚えがない、ならば束の新しいモルモットか?

 

『ああ、彼らは別世界から来た人たちだよ。なんでも『破滅の光』とやらと大戦争して、故郷の星を守ったらしんだけど、地球に戻るには疲れたからココで休んでいるのさ』

『は、はぁ~……別世界……、べ、別世界!!? え、うそ、本当にあるんですか!?』

『そりゃああるでしょ、このタバネ月だって、別世界の私『達』を呼んで作り上げたんだからね! 流石に1人だけじゃあ、60年くらい使う設計だしね!』

 

 悲報、最近まで束は複数いた。

 IS学園にいてよかった! 行ったら私の胃が大穴開けるところだ!

 

『そ、そうだったんですね、では旦那様の士郎さんは辛くなかったですか? 同じ束さんが複数いて……』

『ん? なんでさ、例え束が10人いても、俺が好きな束は1人だけだ。なら、何も迷う必要はないだろ?』

 

 このアホは全国中継でなに告白しているんだ。後ろにいる束を見てみろ、見た事が無いくらいに乙女の顔をしているぞ。

 楓も可哀そうに、あのアホの笑顔は爆弾並みの威力だってことを忘れていたな、顔を真っ赤にして、未だに付き合っている奴がいないのか?

 

『そ、そそそそうですよね! で、では束さん、あそこの二人に近づいている水色の皮膚をして頭に黄色の角が生えた小学生くらいの男の子(?)はどなたでしょうか?』

 

 うむ、しかも髪と眉毛もない。明らかに人外のように見える。

 

 ああ、本当に高いな、腕があんなに伸びるとは、束、お前は月で何をしているんだ!!

 

『た、たたた束さん!? う、腕が腕が伸びましたよ!? ゴムゴムですか? ゴムゴムの実なのですか!?』

『う~ん。彼は田中太郎君っていうんだけど』

「田中太郎!? なんだその日本人染みた名前は!?」

『た、田中太郎ですか、』

『そそ、彼はね今度親友が欲しいからって日本の学校へ入学する宇宙人なんだよね~』

 

 あ、やはり宇宙人だったか。

 オイ、全国放送で宇宙人の事を話してもいいのか!?

 

『し、士郎さんは彼の事はどうなんですか? う、宇宙人ですよ!? 宇宙人!!』

『最初は驚いたけど、料理とか手伝ってくれるし、優菜の遊び相手にもなってくれている位に優しいやつだよ。ネジ巻かないとダメだけどな』

 

 相変わらずのようだな、衛宮は……

 そんなところが私の荒れた胃に癒しとなってくれている。

 

『お~い! 十代、ユベル! 手伝ってくれないかー!?』

 

 衛宮の声にベンチで座っていた悪魔のコスプレイヤーと赤いジャケットの青年が起きて優菜を田中太郎から受け取り、こちらの方まで歩いて来る。

 しかし、衛宮が言った「ユベル」という名前はどこかで聞いたことがある様な気がする。

 

『どうしたんだい、衛宮』

『いや、悪いんだけどさ、今日最強の執事は誰かっていうテレビ放送を生中継しているんだけど、参加者を1―Aまで連れて行ってほしんだ』

『わかった。衛宮さんには世話になっているからな。これ位のことはさせてもらう』

 

 十代という青年とユベルという女性(?)に連れられ、参加者たちは校舎の中へ入っていく。

 

 ああ、私はここでも気が付かなかった。

 昔、小さい頃にやっていた遊戯王G○の主人公にそっくりだという事を

 まさに二次元からやって来たという事実に世界中の大きいアホゥ共が騒ぎ出し、

 世界は科学的にさらに発展し始めるという事を

 

 そして、来年には束が子供のころに作り出したソリットビジョンデュエルディスクが販売され、「遊戯○」は子供たちの間では喧嘩の勝ち負けは全てデュエルで決めるという

 所謂「デュエル脳」になってしまう事を。

 この時はまだ知らなかった。

 

 




お久しぶりです。

仕事で疲れてなかなか投稿できないカズノリです。
束編の続編投稿、
なるべく、大会までは書きたかったのですが、力尽きました。


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私と士郎との出会いが知りたいの?1

 

「士郎との出会い?」

 

跳ね月(ハネムーン)で月に行き餅つきをして帰ってから1週間立って、天災の篠ノ乃束改め、超天才(すーぱー)衛宮束は宇宙にダミーを出して、本人たちは地球に戻っていた。夫である衛宮士郎の家で共に安らかな生活をしていたのだ。ある日、妹の篠ノ乃箒と親友である織斑千冬の弟である織斑一夏が衛宮邸に来たのだ。

 織斑一夏は戻ってきた衛宮士郎に料理を教えてもらいに、箒もまたそれに着いて行き、ついでとばかりに姉の衛宮束に聞くことにしたのだ。何時の日か生かせれるように。

 

「はい、正直姉さんは結婚できないと思っていたからな」

 

 正座して淡々と答える篠ノ乃箒に少し心を槍で貫かれる思いだった衛宮束は少しため息をついて、部屋に置いてある「俺がガンダムだぁ!!」と大きく書かれてある段ボール箱からガサゴソと何かを探していた。

 ちなみに「俺がガンダムだぁ!!」というのはKC社の若い社長が言っている名言であり、社員は全員朝礼で共に叫ぶという変わった社内ルールがある。ちなみに女性は「私がガンダムだわさ!!」というらしい。

 

「あ、あった! 私と士郎はね? これによって出会ったんだよ!」

 

 そういって取り出したのは変哲もないただの「デッキ」だ。妹である篠ノ乃箒は覚えているというか懐かしさを覚えていた。

 

「デュエルモンスターズですか、懐かしいですね」

「ふっふふふふ! 私は小さい頃(7歳)に1人で冬木市に来たことあるんだよ!」

 

 と言ってゆっくりと思い出していく

 

 

当時、冬木市の大き目の公園に散歩しに隣市から来た小さな女の子がいた。桃色の髪は誰もが注目しており、寂しがりやで当時はまだ素直であり目立ちたがり屋の彼女はそれを見て少し喜んでいた。

自分で考えて作った「蛙くん(変える君)3号」で自分の髪の色を変えられて上機嫌。しかし見る人が居なければ寂しいだけなので冬木市まで来たのだ。みんなが黒色の髪をしているけれど、私だけは違うという優越感もあるだろう。

 しかしそれは冬木市の公園に来てから変わった。いるのだ。自分以外にも髪の色が黒じゃない子供が。その事に驚き嬉しくなった当時の篠ノ乃束はスグにその子供がいる公園に入った。何時の頃か自分でもわかるくらいに急に頭が良くなり物事を調べる事や作る欲求にかられ、様々なモノを作った。

 例えばコンビニやスーパーから貰ったダンボール箱で40/100スケールのリアルストライクフリーダムガ○ダムを作り上げたり、ごみ収集所から家電品を持ち帰りダンスロボットを作ったりと色んな事をした。

 しかし、彼女は1つだけ、悩みがあった。

 いろんなことが出来る頭脳をもってしても、これだけは出来なかったのだ。

 

 友達が。

 

 当時を思えば寂しかったのだろう、だからモノを調べる、作る事に夢中になって時間を忘れていた。色んなことが出来る分、公園で遊んでいる子供たちを見て、自分とは違うと決めつけることで、その事を忘れようとしていたと思う。

しかし、今目の前にいる赤い髪の男の子が他の男の子と遊んでいたのだ。自分と同じで髪の色が違うその男の子の元へ、束ちゃんは嬉しく思いつつも、自分と同じはずなのに友達と一緒に遊んでいる、それをみた束ちゃんはむぅーとした。けれど友達になれるかもしれないという欲求に負け、束ちゃんはその男の子に近づき……

 

 

「おい、デュエルしろよ」

 

 

「「「はぁ?」」」

 

「いいぜ!!」

「「「はぁ!!?」」」

 

遊んでいた男の子たちは完全についていけなかった。行き成り女の子が来たと思ったらデュエルを申し込みがきて、それに答えるコイツ(士郎)も分からなかった。

と言っても、流石にデッキは持ち歩いていなかったのか、スグには出来ないが、赤毛の男の子は一言入れてから走って公園に出て言った。そして、一緒に遊んでいた男の子たちはただただ茫然と立ち尽くすしかなかった。2人の様子を見るだけまだマシなのかもしれない、

男の子がデッキを持って帰ってくると早速2人のデュエルが始まったのだ!

たばねちゃんのデッキ「メカメカ封ちゃん」が勝つのか、しろうくんのデッキ「ひーろーさいこー、でゅえるさいこー」が勝つのか。

 

 

「それで、どっちが勝ったんですか?」

「ふっふふ、私の完封勝利!」

「か、完封?」

「うん! いやぁ! 当時どうやれば絶対に勝てるかな? って研究したことがあるんだけどね?」

 

 衛宮束は再び当時の事を思い出していく。

 

 

 そう、束ちゃんの場にいるサイバー・エンド・ドラゴン(パワー・ポンド融合)、人造人間サイコ・ショッカー、ホルスの黒炎竜LV8、D-HEROBloo-D、王虎ワンフーという恐怖のモンスターゾーン。

 強者の苦痛×2枚につまずき、電脳増幅器、最終突撃命令の魔法・トラップゾーン、とどめにフィールド魔法はブラック・ガーデン。

 

 知らない人に説明しよう。

 まずライフ(体力的なモノ)は互いに8000だ。サイバー・エンド・ドラゴンは攻撃力4000と言う、ライフ半分の攻撃力なのだが、パワー・ボンドというカードのお陰で攻撃力を倍、つまり8000。うわぁ、ライフと同じだね!

 あと、貫通能力を持っているため、防御しても差し引いたポイント分ダメージを与える。

 では次にこのカードゲームにはモンスター以外に魔法とトラップのカードがあり、それらを駆使してコンボにつなげたりするわけだが、人造人間サイコ・ショッカー、トラップを。ホルスの黒炎竜LV8は魔法を封じてしまう。つまり使えない。

 また束ちゃんは人造人間サイコ・ショッカーに電脳増幅器を装備させているため、自分だけトラップが使えるという鬼畜使用。

 モンスターには効果を持つ者がある。サイバー・エンド・ドラゴン、人造人間サイコ・ショッカー、ホルスの黒炎竜も効果を持つモンスターだ。D-HEROBloo-Dとは相手の場にいる効果モンスターの効果を封じる。しかし、墓地、手札、デッキにいるモンスター効果は使用できる。

 この時点で魔法、トラップ、効果モンスターの効果が使えないことになる。

 では次にコンボを見てみよう。

 王虎ワンフーはある一定の攻撃力以下になるとモンスターを破壊する効果を持っている。

 そして、強者の苦痛とはモンスターのLV1につき100ポイントダウンする。それが2枚、つまり効果が2倍になるのだ。そして、最終突撃命令とは強制的にモンスターを攻撃の状態にする。

 

 つまりだ。

 現在男の子は魔法、トラップ、モンスター効果をほとんど封じられ、またまともにモンスターを出しても王虎ワンフーの効果で破壊されながら、最強の敵として攻撃力8000のサイバー・エンド・ドラゴンがいるという状態だ。

 (この状況を潜り抜けられる! と言う人は感想で教えてください。)

 

 まさに絶望。 子供がやるにしてはおかしすぎるデッキ構成によって可哀そうな男の子は少し涙目だ。

 




なかなか更新しなかった 束さんルートです。
頭脳派の束ちゃんは当時デュエルモンスターズにはまった結果です。
名も知れない男の子は犠牲になってしまいました。



誤字脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします
またアドバイス等も募集しています!


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第1章ーFate/stratosー
プロローグ 私、織斑千冬は結婚します


 

 

「私、織斑千冬は結婚します」

 

日本の東京での行われた記者会見、「ブリュンヒルデ」と名高く孤高の存在とまで思われていた織斑千冬が開いた会見は文字道理世界中の人々テレビに注目し、海外でもテレビの前で翻訳者がスタンバイしており、アナウンサーと共に陽気な会話をしている。誰もが「ブリュンヒルデ」の重大発表に耳を傾ける。現在日本中の学校では全校女子生徒が校長先生、会長、PTAに意見し、見られないのであればストライキを起こすという脅しをするほどだ。

その学校は生徒の熱い熱意(ストライキ)と想い(脅し)により全校生徒がその時間は自習になった。後日、とある新聞で『日本女子生徒ストライキ寸前!? 清く正しい記者が行った学校の真相』という記事が電車に乗る大人たちに読まれるのはごく自然な事であろう。

 

さて、記者会見開始まで1分を過ぎるとテレビのアナウンサー達やゲスト達はごくりと唾をのむ。

 

記者会見が始まった、会場に織斑千冬が入場し挨拶をする、席に着き織斑千冬は問答無用で放ったこの言葉は数秒全世界の人々は止まった。

 この時全世界中で車に乗り運転している人たちは赤信号でもないのに全く同時にブレーキを踏みこんだおかげで全く交通事故が発生しなかったという奇跡があったのだが、それは置いておこう。

 

 10秒? 1分? もしくは1時間かもしれない、再び人々が機会を起動させるがごとく一人の記者が起動ボタンを押すように質問をした

 

「け、結婚、ですか……?」

「ああ」

 

世界最強(ブリュンヒルデ)の短い返事にその場にいた記者たちはカメラを連続撮影のように何十、何百枚もとっていた。そんな訓練された記者たちとは別に世界中の翻訳者たちは隣いるアナウンサーに揺さぶられながら続きを翻訳するように言われているのは訓練されてない証なのだろう。どういった訓練なのかは知りたくもないが。

 さて今現世界中は女尊男卑である。

 女性はIS(インフィニット・ストラトス)と呼ばれるガ○ダムのような機械を身に纏うパワースーツが使えるがゆえに上であり、使えない男は下という思考、及びその考えに基づいた制度が作られているのだ。

それもこれもISが女性しか使えず、尚且つ今まで使っていた従来の機械兵器を多く上回っているからだが、そんなことはどうでもいい。最も素晴らしいのは人が空を飛ぶことができる。という事だ。

 世界最強とはIS乗りが目指す称号「ブリュンヒルデ」を持つことを認められる者のことであり、織斑千冬はその称号を持っている、世界中の女性達にとっては『英雄』であり憧れでもあり目指すべき頂点というべきだ。

 

ではそんな目指すべき頂点が世界中女尊男卑なのに、男と結ばれる。ということは今の今まで全く、誰もが考えも思ってもいなかったことだった。

例えるのならば成人し立ての王族、皇族が突然にコンビニでバイトをしている女性と結婚します。というところか。

または誰もが知っているイケメン俳優が突如家に来て結婚指輪を出して「結婚してください」と告白してくる。

 

「い、一体どこの誰とご結婚されるのですか!?」

 

 記者の女性は叫ぶような悲鳴を上げながら質問をした。この時男性、女性問わず誰もがテレビ又はラジオに耳を傾けていた。

 多くの女性は「一体どこの馬の骨だ」と思っているのだろう。

そいつはブリュンヒルデというだけで選んでいるに違いない! 絶対に騙されているのだ!とも考える女性もいるかもしれない。だが、織斑千冬は無常にも何時もの声色で答えた。

 

 「中学から付き合っているやつだ」

 

 絶句した。

淡々とした態度で記者の質問に答える織斑千冬は記者の態度にため息を1つついた。そのため息には様々な思いがあったという事をしているのはこの会場には2人しかいなかった。

 

「ちょうどいいからこの場を使って言うが、私は女性が上、男性が下という考えを一度もしたことがない」

 

 ドカーン! という漫画やアニメの効果音が出た、いや出たに違いない。

 まさに爆弾発言なのだ。 まさかブリュンヒルデが女尊男卑ではないなんて!!

 女性達はISが動かせられる! これだけが誇りである。

 軍にも強い兵器はISの前では形無し、ISを動かせられる女性は強い! と考えるものもいる。 

 

「そもそもだ。世界で流行している「女尊男卑」だが、ほとんどが男性を奴隷のように使っているのが問題だ。 そして、奴隷のように使っている女性はレズか結婚を諦めている者なのだろうと私は考えているし思っている。」

 

またまた爆弾発言だ。確かに近年、日本でも女性がウィンドショッピングで散らかした衣服を他人の男に任せ、否定したら警備員を呼びチカンしたなどと冤罪をかけるという事があり、しかもそれは有罪として片づけられている。

これには政府も頭を抱えているが、政府の中にも「女尊男卑」の女性がいるとこれに対する法律はすべて否定され、不成立となる。

また選挙でも公平で無ければならない役員たちや、男性に脅しをかける女性達によって政府内に「女尊男卑」の女性が急増し、今では男性49%女性51%まできている。

 

「なぜならばそんな事をしていれば男は確実に女性不信になるだろう、当たり前だ。冤罪なのに有罪にされるのだからな。ソイツは一部の女性としか関わろうとはしないだろう。

むろん、それが広がればその分女性不信の男が増えるは言うまでもないな」

 

女性で埋め尽くされている会見場で確かに。と思う記者たちは多かった。

誰も無罪が有罪にされては嫌な気分になるだろう、それが今なら女性と関わりたくないと思うのは当たり前だろう。

 

「この会見を見ている又は聞いている女性達に言っておく。

 お前たちは自分で産んだ子を腕に抱きたくないから、男が嫌いだから男を奴隷のように扱っていることをわかっているのだな?」

 

その言葉は女性にとって衝撃的な言葉だった。

自分の子供を腕に抱くというのは女性の特権ともいえるだろう、この会見を聞いている特に16歳以上20代未婚の女性は耳を疑い、さらに集中して会見に耳を傾ける。

 

「さすがに小学生はともかく中学高校大学生は特に、彼氏がいない者が多いのではないか?」

 

 まさに電光石火のごとく、ブリュンヒルデの言葉の矢が彼女たちの胸に突き刺さる。

 学校の授業を自習にして聞いている女子生徒は胸を抑える、そして周りをよく見渡すと男子が座っている位置と女子が座っている位置の間に明確に幅があることに気が付いた。

ついでに、男子達は静かに駄弁っている者もいれば寝ている者、勉強している者もいる。いや殆どテレビを見ていないのだ。

 

「そして諦めていき、どんどんと男を奴隷のように扱い、それが噂となり男が寄り付かなくなるだろうな」

 

 今度は20,30代の女性達の胸に巨大な矢が突き刺さった。

 事実、モテない女性達は憂さ晴らしとして男性に強く当たる正社員が多い、男性とは違い女性は精神的攻撃な為、関わり合いなれば恐ろしいことになるだろう。

 

「それにだ、子供を持っている女性がそういうことをしているとは思いたくもないが、

一応言っておく。お前たちは子供に対して立派な姿を見せていると確信できるか?」

 

 どこかでドキっとおもった女性は多いか、少ないか……。

 この際置いといて、どうやらまだまだ続きそうだ。

 

「私は、弟に対して大会前でも後でも立派な姿をと頑張ってきた。

両親が死んで、どんなに生活が苦しくなっても、どんなに睡眠時間を削りバイトに励んでも一夏だけには立派な姿を見せ続けているつもりだ。だから私は言える。

織斑一夏には立派に育ってほしいと!」

 

 この時織千冬は瞼を閉じると、妹と織斑一夏が生まれてから今日までの日々が浮かんできた。初めてできた弟。両親から立派なお姉ちゃんになるのだよと言われたあの日。

 突然の生活の一変、心からバカができる親友。

そして―――。

 

「すまない、少し熱くなったな。子供を持つ女性、弟妹をもつ女性に言っておく。汚い姿を見せるな。女は綺麗な方がいいだろう?」

 

 その言葉には何が含まれているのか。

 何が汚いのかは心打たれた女性にしかわかるはずがないだろう。人は解釈の違いで感情を怒りにも泣きにもできるのだから。

 

「これで言って変わらない者には……まぁいい、私には関係ないからな」

 

 よくないです!と思った世界中の未婚の女性達は心の中で叫んだ。

 なにかアドバイスをくれぇぇ!と思った女性もいるかもしれない。

 

「それにだ、私は前でも今でも変わらん。 むしろISが出来たがゆえにブリュンヒルデという称号を得ることができた。 だが、昔のままなら私は道場の師範かOLだろうな。

しかし変わらないこともある、結婚相手と私の態度だ。

 特に私の態度は意識してなければ相手を見下すように言ってしまう。今でも直そうとしているがこれがなかなか治らんのが現状だ」

 

 いや、ため息を吐かれても私たちの胸の矢はとれないッスよ。

 思いっきり刺さって、むしろ貫通ッスよ?

 

「む? もうこんな時間か。 では質問に入ろうと思うが……ではそこの方」

「清く正しい文々。新聞社の射命丸文です。早速ですが、お相手は誰なのでしょうか!?」

 

 文々。新聞社の記者の質問にその場にいた人々は静まり返り耳を傾けた。

 誰もが知りたいのだ、ブリュンヒルデを射止めた相手を、一体どんな人物なのか。ヒョロ系? ガチムチ系? インテリ系?  いやいや!ショタ系だろ!! と思ったアナタはブリュンヒルデ直々に校舎裏へ連れていかれるだろう。 ん? ああ。屋上ッスか。

 ふふふ、いいですね、物凄く震えてきました。

 

 織斑千冬は文々。新聞社の記者を見て、微笑むように見ながら答えた。

 この微笑む写真は全女性の宝物となることになろうとは織斑千冬は思いもしなかった。知っていたら世界中を回って焼け野原にしている。絶対に。

 

「相手はISとは無関係の仕事をしているとだけ言っておこう」

「つまり一般の方で中学の同期なのですね!?」

「ああ、私も結婚をすれば苗字が変わる、出来れば結婚後までは静かにして欲しい」

「ほうほう! ではもう1つ質問をよろしいでしょうか!」

「ああいいぞ」

「では織斑千冬さんには1人弟さんがいますよね? 弟さんからは反対とかはあったのでしょうか?」

「いや、無かったな。 むしろ一夏は喜んでいたぞ」

「そうですか! ありがとうございます! これで文々。新聞社の質問を終了させていただきます」

 

 それからほかの記者からの質問はあったが、すべて結婚のことではなく女尊男卑のことばかりだった故省略する。

 

 数か月後、織斑千冬は衛宮千冬になったことで中学生の同期や先生方から驚きの声が上がったのは言うまでもない。

 

 




タイトル決定。
ジルさん提督さんとNCドラゴンさんのタイトル意見をフュージョンしました。

誤字脱字があれば感想で教えてください。
お願いします。


また、どんな意見、ご用件でも構いませんご感想お待ちしております。


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結婚記者会見(裏)

 

 

「で? 一体どう言う事かしら?」

 

 

衛宮邸のリビングで机を囲むように女性達が座っていた。その中の赤い服を着たツインテールの女性、遠坂凛が向かい側にいる織斑千冬を睨み付けながら言う。それに便乗する。

 まるで裁判所のような状態だ。しかもこちらには弁護士がおらず、明らかに不利な状況で、アカイアクマ最高裁判長は罪人チフユに優しく問う、

 

「さて、一体何のことか」

「惚けるのは必要ないじゃないかしら? だって」

 

 っと、遠坂凛は突然にテレビをつけ、ニュース番組に変える。

 そこには昨日行われた結婚記者会見での事をニュースキャスターが真剣なまなざしで語っていた。

 

『いやぁ、驚きましたね、まさかブリュンヒルデがご結婚されるとは!』

『世界中でデモも起こっていますよ、『ブリュンヒルデを騙した男を牢に入れよ』っと言う』

『それはそれでおかしな話ですね、しかし中学時代から付き合っている男性がいるというのは初耳でした』

『全くですね、ブリュンヒルデと言えば孤高、最強という文字が似合う女性。こういっては何ですが、孤高であるが故に結婚はされないと思っていました。』

『他にも』

 ピッ!

 テレビを消す、そして再度遠坂凛は織斑千冬を睨み付ける。

 遠坂凛の後ろにはタバコを咥えたデフォルメのリンと額に三日月のマークが有る黒猫がにらみ合う、どちらも劣らず譲らず、あるのは一瞬の隙のみ。

 

「これはどういう事かしら? 条約10条の1つに反すると私は思うけど?」

 

 衛宮士郎条約! それは力を持った複数の女性達が衛宮士郎を獲得しようと行った『士郎戦争』が冬木市で勃発された。それぞれが己の力(サーヴァント有)を使い他の者を蹴落とすという赤い騎士のサーヴァントの髪に白髪が10本以上出来た苦労と嫉妬と八つ当たりとくすくす笑ってゴーゴーな戦争を一時的に条約を結ぶことで冬木市に平和が戻ったモノだ。

 条約1! 衛宮士郎を独り占めしない!

 条約2! 士郎戦争は3ヶ月に1回行う!

 条約3! 諦めるのは自由! ただし、他の人にも言う事!

 条約4! 士郎戦争が行われるまでは戦闘はダメ!*1

 条約5! 決着をつけるまで相手の領分を取らない!

 条約6! 勝手に士郎と子供を作ろうとしない!

 条約7! 勝手に決めつけるようなことを言ってはいけない!

 条約8! 戦争中以外は士郎の事でウソはダメ!

 条約9! 士郎を拉致・監禁しない!

 条約10! 略奪愛有り*2

 *1 駆け引きはあり

 *2 誰かが結婚してもOK

 

 3日3晩寝ずに考えた10つの条約だ。ちなみに最初の条約1~3以外は誰かが

その行為をしようとした結果、作られていった。

 全く、一体ダレガヤッタノデショウネ? シラナイデスヨ?

 

「全くですわね、野蛮人が言う通りミス・オリムラ、これはどういう事か

教えていただきますわよ?」

「そ、そうです! 私はまだ先輩を諦めてないのですから!」

「そーだー! そーだー! お兄ちゃんはイリヤを結婚するだからー!」

 

 周りに座っていたドレスを着た貴族、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト、珍しい紫の髪をした腹黒そう(ペシッ!!) ゲフン、ゲフン、心優しそうな間桐桜、いかにも小学生な銀髪ロリっ子、 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンが騒ぐ、しかし織斑千冬は動じない。

 むしろ、勝ち誇ったかのようにニヤリと笑う。

 

「甘いな、遠坂。悪いが中学で付き合っていた。と言う噂は流れている、マスコミは中学の同期に聞きまわっているだろう」

「クッ!」

「ですが、アナタが条約に反していたのは事実、これはどうする気ですか?」

「ムッ」

 

 せんべいを食べていた騎士、セイバーのサーヴァントであるアルトリア・ペンドラゴンの言葉に織斑千冬は止まった。いや止まるしかない、下手なことを言えば簡単に覆されるし、事実織斑千冬は条約を破っている。

 この条約を作るのに、何度衛宮士郎がタイガー道場へ行ったかは解らない。たぶん60回くらいかな? うん。

 

「うむ、確かになぜアナタは条約を破る様な事を?」

「まさかとは思うけど、アンタ士郎と……!」

「い、いや! そ、そこまではしていない!」

 

 遠坂凛の言葉に慌てて否定する織斑千冬の顔は真っ赤だ。もしこの場にブリュンヒルデファンクラブ日本本部のメンバーが居ればカメラ連写であっただろう、ただしカメラもろとも叩き潰されるのは確定済みだが。

 しかしこの場にいるメンバーは見慣れているためその様な事はしない。なぜならば、その様な事をすれば次に自分が晒されるだろう、束印の超高性能自動3D撮影搭載80テラバイトの最小カメラで撮られるのがオチなのだから。

 全員が全員の人質ならぬ、写真質を撮られているのだから、そのような行動は取れない。だが、どこぞのあかいあくまやきんいろのあくまの様に交渉して交換すれば弱点となる写真は消えるが。

 

「し、仕方ないだろう」

「あら? 何が仕方ないのかしら?」

「わ、私は、レズなんかになりたくないんだぁぁぁ!!!」

 

 織斑千冬の心からの叫びであった。

 何があったのか? それは至って簡単だ。1年以上も女性からのラブレター、お見合い写真(女性)がどこに居ても届くのだ。軍なら平気か? と一時期軍にいたが、無駄な行動に終わり、むしろ余計に増やしてしまったのだ。

 最初こそは無視をしていた。だが、どんどんと来るようになり、最終的には一ヶ月に2山出来るほどの量に……。

 ストレスと衛宮士郎の言葉に正常ではなくなった織斑千冬がとった行動、それが今回の事件なわけだ。

 己は男(衛宮士郎)が好きだ! だから同性愛になど芽生えたくない! そのような扉を開きたくない! ならばどうするか? 異性(衛宮士郎)と結婚すればいい!

 織斑千冬の心からの叫びはこの場にいた女性全員に察しられた。学生時代から多かったのだ。おねぇさまぁぁあ! と呼ぶ後輩や 貴方を殺して私も死にます! な同級生が、まぁ、全て衛宮士郎の言葉巧みな話術によって、同性愛の後輩は異性愛(衛宮士郎)にし、ヤンデレ同級生は男の良さ(衛宮士郎)に気が付かせたのだ。

 

「ああ、うん、そうだったのね」

「これは大変失礼しましたわ」

「チフユ、大変でしたね」

「織斑先輩、今回は見逃してあげます」

「……ガンバ」

 

 みんなからの視線が織斑千冬の心を傷つけていく。

 こうして、第23回士郎争奪戦会議は無事終了した。

 

 

 

 その夜、今回の事を織斑千冬が思い出していると、衛宮士郎が2つお茶を持ってきた。

 そっと、お茶を置いて

 

「な、なぁ千冬、結婚しないか?」

「……え?」

 

 

 




記者会見では冷静であった千冬姉、しかし本当はかなり焦っていた。
というのであれば面白いなぁと
この続きを書くのであれば、甘くしたいですね、



誤字脱字やご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。
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なんでさ

「なんでさ」

 

新しい教室。それはどこか初々しい思いと新しい気持ちが交差する、この教室もまた笑い声や嬉しそうな声が沢山であり、誰も恐怖の声色や悲鳴など聞こえはしない。ただ、1人を除いて……。

 

 織斑一夏。この教室で唯一の『男子生徒』であり、他の生徒は全員『女子生徒』というギャルゲー過ぎるにも程があるだろう! と言いたくなるような状況に置かれている。またから見ればまるで『女子学院』に間違えて入学してしまった男子生徒である。 または変質者。

 しかし、今回はまるで違う。彼は一応真ともで誠実であり、抜けた所や鈍感で鈍い所もあるが、立派な姉や信頼できる兄のように慕っている人の後ろ姿を見て育った彼は罪という覆面を被る変質者ではないし、マスクをかぶり、バレンタインデーやクリスマスにはしゃいだりはしない。ただちょっと変わった友人や虎の様な初恋相手がいたりするだけだ。

 

 ではなぜ、彼がこのような状況に置かれているのか、それはあれこれ4ヶ月ほど前まで遡る。

 

 高校受験。それは悲しみと努力と苦しみの勉強し、よりよい高校へ行くための地獄期間である。中学3年になった織斑一夏もまた近くの高校にあり、候補としては姉や義兄が通っていた「穂群原学園」に行くか隣の市、海鳴市にある「私立風芽丘学園」のどちらかが希望となっている。友達である五反田弾や御手洗数馬、そして3バカことバカリーダー兵藤一誠、バカスカウター元浜純、バカパパラッチ松田誠司と共にバカしたりはしゃいでいた中学時代。今もまだ中学生だが。

 今回「私立風芽丘学園」の受験に来たのだが、カンニング対策として別の場所で行われることになったのだ。すでに「駒王学園」へ入学できる自慢する3バカには後で鉄拳を食らわしてやると意気込みながら乗り込んだ高校受験。

 早めにと30分で到着したが、知らない場所であったために迷子になってしまった。ため息をつきながら、取り敢えず我が道を行くの如くただひたすら真っすぐ、右に曲がる! を繰り返すうちに1つの部屋へ行き止まった。

 ノックして返事を待つ……。

 

「ん……。まずい、いないのか?」

 

 誰でもいいから人を求めている彼に救いの女神が現れた。ノックしたドアから緑色のボブカットの女性が出てきたのだ。ただ服装だけはスーツとかではなくぴっちりサイズのタンクトップ(黒)を着ていて下はズボン又はスカートらしきものがなかった。

 

「ふえ? ああ次の方ですね! 早くそちらの扉に入って着替えてください! 時間がありませんよ!!」

「え、あ、はい」

 

 とたとたとそのまま扉の中へ戻っていく女神、まるで湖に出てきて、すぐ戻る童話のようだった。指をさされた方を見ると壁がある、しかしよく見ると引きドアになっていることに気が付いた。織斑一夏は部屋の中に入るとふと思う。

 

「なんで着替えないといけないんだ?」

 

 受験なのにと思いながらもよくわからないスーツに着替え、文房具を出す。さて教室はどこだ? と思いながら部屋を見渡すと奥の方にさらに部屋があった。しかし、そこへ入ると部屋は暗く、受験用の部屋とは到底思えない。

 とりあえず中に入るとパッ! とライトが1つついた。ライトがつけられた箇所には大きな置物が置かれていた。

 

「これ、なんだ?」

 

 興味津々に近づき軽く触れる。しかしながらこういう言葉があることを織斑一夏は忘れていた。「好奇心は猫を殺す」まさにこの状況の織斑一夏といえよう。

 触れた瞬間、彼の目線は高くなっており、不思議な違和感があった。ふと周りを見渡すとなんか浮いている。武者の鎧にある様なモノが浮いているのだ。それですら驚きなのに、頑張って覚えて来た頭に何かが入り込む感覚がする。頭痛がしながらよくわからない情報がさらに織斑一夏を混乱させていく。

 

『コア・ネットワーク□□○○○○の接続確認□□□□。マイスタープロジェクト○○○○大活躍はーと遂行成功となり○○た。これ○○No.326はマイスターへメッセージを送ります』

 

 誰かがしゃべる声、今までに聞いたことがない声に驚きながらも未だに終わらない流れ込む情報による頭痛と戦う織斑一夏。

 ようやく頭痛が終わり、今の状況がわかった織斑一夏はただただ茫然としていた。

 

「ああ、ISってやつだ」

 

 昔姉である織斑千冬が世界一となった大会を行われた時に使用されたIS。世界中で開発されており、幼馴染の姉が開発したという事だけは覚えている。しかしながら1つ疑問があった。

 

「これ、女しかだめじゃね?」

 

 そう、なぜか分からないが性別女性にしかISは装着できない。パワードスーツのようだったのでよく友人たちとどういう装備とかロマンとかで語り合っていた。3バカはISを着た女性の方に興味があったようで写真などで叫び声をあげていた。

 ゲーム界でも会社TPTという無名会社がISVs ISシリーズが販売された。ゲーム機がなかった織斑一夏は友達の家によく行きスマ○○と共によくやったのは覚えている。

 そして、後ろから光が入り込む、いや、シャッターが開かれて光が織斑一夏を包み込むようだった。見えたのは外の景色。

 まるで中世のコロシアムの様にまわりに観客がいる。何なんだ、これはと思いつつも外へ歩く、不思議なことにちゃんと『歩く』ことが出来た。よくわからない状況に置かれつつも外へ出た織斑一夏に待ち受けている者とは一体!?

 




少し本編を作成。
衛宮士郎の口癖を受け継いだ氷の料理人イチカに待ち受ける者とは一体!?
曖昧な想定と都合のいいISの実技受験inコロシアム。

次本編はバトルからですかね。
よくわからないバトルになりますのでご注意ください。


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なんで、俺ここにいるのさ……

「なんで、俺ここにいるのさ……」

 

織斑一夏は今現在の現状に呟かずには居られなかった。身に纏うはIS(インフィニット・ストラトス)。本来女性しか着用出来ないはずが現役ぴちぴち男子中学生の一夏が付けられるはずがないのだ。そうでなければ今頃様々なテロやデモのニュースは無く、お茶の間の心安らぐニュースになっているはずだ。そう願いたい。

 

「それに、なんで俺がコロシアムでバトル(実技)しないといけないんだ」

 

 すでに目の前にいる女性はきわどい水着を着ながらISを付けて準備満タン、一歩この赤ラインを越えれば戦闘開始という鬼畜使用であった。コロシアムにはたくさんの人、人、人の群れ。よく見ればテレビ局ぽいのも来ており今の一夏の精神状態は……

 

「なんでさ」

 

 現実逃避状態であった。

 非情にも目の前にいる女性からスピーカーのようなモノだろう、声がこちらまで聞こえて来た。

 

『時間も一杯一杯なので、あと1分後に開始いたします。それまでに準備を整えてください』

 

 ああ、諸行無常。現実逃避はもうできないようだ。一夏は1度大きく息を吐いてから吸い込む。そして、ISの武装覧にある1つの武器を取り出す。タッチパネル式は楽でいい。無論これは初心者専用のプログラムであって、本来は掛け声か己の意思で取り出せるのだが、受験生にやれっと言っても可哀そうだ、という事で作られたシステムなのだ!

 取り出したのは1本の刀剣、近接用ブレード「葵(あおい)」。一夏はその刀剣の重さを感じながら両手に持ち、正眼に構える。

 

「ふぅぅぅぅ……」

 

 集中―――。

 ビィィィィィィッィィイィィ!

 

 開始の合図が鳴った。

 瞬間、一夏は構えを解き、走り出した。狙うは目の前のIS! コロシアムにある障害物を時に大きくジャンプし、時に大回りをし、時に横飛びで軽々と避けながら一気に近づく!

 しかし、予測をしていたのか敵ISはライフルをこちらに向けて――――放った。

 タァン! 銃から放たれる弾丸は一夏のISへ真っすぐに飛び、甲高い音を立てた。

 キィン! 弾丸は一夏が持っていた葵の腹で受ける。敵ISはそのことに驚き、ライフルから目を離してしまう、一瞬の隙であった。一夏は自分の足に力を入れて足指を立てながら走る、この時ISに関して素人である一夏には気が付かなかった、シールドエネルギーがISの足についているスラスターに集まっていることに、そしてそれが力を籠め続けるがごとくため続けている事も、今の一夏は知る由もない。あるのは目の前にいる敵ISを切り裂くのみ、己に気合いを入れ障害物を使い思いっきり蹴った。 

 

「うぉぉぉっぉぉぉぉぉぉ!」

 

 足に込めた力が抜ける感覚を感じながら、スラスターに貯められたエネルギーが一気に放出された事で一夏はまるで鉄砲から放たれた弾丸の様に勢いよく飛び出した。

 それは奇しくも『瞬時加速』、イグニション・ブーストと呼ばれるIS戦闘技術の1つであった。これにより一気に間合いを詰めた一夏は大きく振りかぶった切落による一撃を振り下ろす。

 

 

 

 

 目の前の敵ISは初心者が使うとは思ってはないかった行動によって思考が停止し、するべき防御、回避などの行動へ移ることが出来なかった。

 一夏の一撃は敵ISを切り裂く、がまだシールドエネルギーは大幅に減ったが、0では無い。切り裂かれたことにより、ようやく思考を動かし一夏をライフルで薙ぎ払った。

 

「クッ!?」

「はぁ、はぁ!(驚きました。まさか入学もしてない。代表候補生でもない娘がライフルの弾丸を弾き、イグニッション・ブーストを使うなんて! コロシアムのダミー観客による精神的テストは満点ですし、私相手に此処までできるなんて実技も100点満点あげちゃいますよ!)」

 

 敵ISを装着している試験担当の女性は心の中でそう考えながら距離を取りライフルを構える。本来ならこのまま追撃するべきなのだが、この場は試験。 そのような事は出来ない。相手の出方を見ているのだ。

 砂煙が晴れて女性は衝撃を受けた。 一夏のISスーツが破けていたのだ。上半身だけだが、びりびりと。一夏の逞しい筋肉を見てしまい、女性はハイパー・センサーでよく『観察』した。

 

「(顔、は男の子にも見えますね、上半身は、はわ! す、すごい筋肉です! か、下半身は……?)え?」

「いつつつ(クッ仕留めきれなかった! いや、なんかに遮られた感じがする。手ごたえが変だったしな)」

「あ、あああの!ひ、一つ質問よろしいですか?」

「え? ああ、なんですか?」

「あなた、性別は?」

「男ですけど?」

「……」

「……」

「えぇぇぇぇええええええええええええええええ!!!?」

 

 叫んだ。彼女は腹の底から隅から隅まで使わんと声を上げた。一気に気が抜けると言ってもいいだろう。だからだろう、移動のためにと背中に留めていたエネルギーが一気に噴き出しイグニション・ブーストをしてしまった。

 ドジマヤ。これは彼女の同僚からつけられたあだ名だ。原型はかの有名な三幻神の1つ、『オシリスの天空竜』の二つ名『ドジリス』から取られている。

 

結果――。

ドォォォォン!!!!

一夏の隣にあった障害物に思いっきりぶつかり少なかったシールドエネルギーは0となった。そして一夏の目の前に「WIN」の文字が現れた。

 

 

 

その後、一夏は受験担当者から責任者によって捕まってしまった。何とか衛宮邸に帰るも「鬼神千冬」よって尋問され衛宮士郎の心温まる料理によって救われたのであった。

 衛宮邸には一夏の体を狙って様々な組織が来日し、ライダー&セイバーのダブルサーヴァントによってすべて追い返されたのは言うまでもない。

 




すみません、かなり遅れました。
つい、友達とやるためのシナリオ作りに夢中になってしまい気が付けばクリスマス近い。
その間にもコチラのネタは着々と考えてます。
①本編 セシリア戦
②「アリサちゃん!すずかちゃん!私、サンタさんに会ったの!!」「ノッブー!」
③はやて、父の親友と会うの巻
④居候編第4話 悩み、ワカメの答え
⑤聖杯戦争、千冬「待たせたなぁ!」 
⑥束「ふっふー! これが私の旦那様さ!」

取りあえずこんな感じです。けれどマイペースに好きなやつを作っていきます。
③,④はシリアスにするつもりです。てかシリアスやってみたい。
⑤は哀れにも捕まってしまった犠牲者(旦那様)の馴れ初めです。

これはアンケートではないのでお気をつけてください。

誤字脱字、ご意見、ご感想は「感想」にてお願いします。


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まったく、面倒なことをしてくれる。

 

 

「まったく、何時まで経っても直せんか」

 

 私、衛宮千冬は目の前で起こっている弟、織斑一夏とイギリス代表候補生のセシリア・オルコットのIS(インフィニット・ストラトス)を使用した戦いを見つめていた。

 面倒な事を仕出かした一夏は本来ならば私と夫である士郎の母校である私立穂群原学園へ入学を果たすはずだったのだが、何が狂ったのか一夏はIS学園の試験を受けてしまった。無論、ISは女性しか使用出来ないので、男性が試験を受けることは不可能と思われていた。

 当時の試験官もボーイッシュの中学生だと思っていたそうだ。しかも一夏はセイバーに小さい頃から剣術を習っており、また才能が有ったのだろう、私とセイバー以下ではあるが、中々の剣の腕前に成長した。

 まぁ、アイツに憧れたからなのか剣を持つときは普通の状態ではなくなるのが欠点なのが残念だがな。

 しかし、クラス代表を決める戦いとはいえ、これでは可哀そうすぎるな。

 

「クッ、何でですの!!? なんでわたくしの射撃をいとも簡単にッ!!」

「お前の射撃なんか! ランサーの兄貴に比べれば! 避けるのは簡単すぎる!!」

「ッッ!! 男なんかに! 男なんかにィィ!! わたくしは負けられませんのよ!!」

「俺を沈めたけりゃあ、この3倍は持ってこい!」

 

 ああ、そういえば一夏、ランサーにも特訓を受けていたな、確かに槍の突きを避けるのは困難だろう。ランサーが手加減をしているとはいえ避けられる様になったこと自体おかしいとは思わないのか?

 それにしても、3倍も出来る筈が無いだろうが、セシリア・オルコットの顔を見ろ。手一杯で焦っているだろうが、相変わらず修練以外で剣を握ると性格が変わるな、直せと言ったはずなのだがな

 

「AAAAAAAAA!!!」

「『インター・セプト』! 『スターライトmkⅡ』!」

 

 ついに思考で武器選択が出来なくなったか、右手にインター・セプト(ショートブレード)左手にスターライトmkⅡを言語で取り出して持つ。跳躍し近づいてくる一夏の接近用ブレード「葵」を受け止める、いや受け流してレーザービットで一夏のガラ空きになっている背中を打つ。

 が、一夏はセシリア・オルコットを足場にしてその場で跳躍することでレーザーの攻撃を避け、落ちていくタイミングを見計らいながら再びセシリア・オルコットへ「葵」を振り下ろす。それを読んでいたようにセシリア・オルコットは左手に持っているスターライトを一夏に狙いを定め、放つ。

 一夏は咄嗟に「葵」を盾にし、レーザーの軌道を反らした。刀の刃を斜めにすることでレーザーの軌道を反らしたのだ。反らすには微妙な角度が必要なのだが、よく知っていたな。私も良くやるが大抵は切り裂いて終わりにするのだが、まぁ初心者にしてはよくやっているというべきだな。

 

「そ、そんな!? なんて非常識な……!」

「非常識? アホか、戦いに常識なんてモンはねぇよ、あるのは勝者か敗者か、この2つだけだ。そらそら、いくぜ!」

 

 お前は武器を持つと変わる性格を直せ、お姉ちゃん悲しいぞ。

 あぁ、ライフルを投げつけるな、ライフルは打つモノだ。決して投擲用ではない。

 

「まだですわ! わたくしはイギリスの代表候補生! このような所で、男のアナタに負けるなどとわたくしのプライドが許しませんわ!」

「ならばそのプライドを持ったまま墜ちていきなぁぁぁ!!」

 

 一夏がセシリア・オルコットのレーザービットを2つほど破壊した後、ブレードの「葵」を投げつける。セシリア・オルコットに命中している間に長い棒状のIS武器を取り出す。

 この私が見た事が無い形状だ。だとすれば在校生か卒業生の武器創作科のアホ(変態)が作ったモノだろう。この一週間で良く見つけられたな

 

「その心臓、もらい受ける!」

 

 一夏が棒状の武器を右手に持ち、振りかぶる。

 足を開き、腰を落とす姿勢を見る限り投げつけるつもりなのだろう、空に舞うセシリア・オルコットのブルーティアーズに視線を集中させている。

 

「ゲイ・ボルグ!!」

 

 放たれた棒状の武器「ゲイ・ボルグ」は一直線にセシリア・オルコットに向かい、直撃する。

 

 それはまるでランサーの宝具の様に鮮やかだったが、ランサーめ、一夏に此処まで仕込むとはな、今度士郎と相談して何かやるか。

 

「キャァァァ……」

 

 一夏の眼の前にWINの文字が現れ、ビーーという音がコロシアム内に鳴り響く。

 

『勝者! 織斑一夏!』

 

山本先生の声が場内に鳴り響く中、一夏は倒れたセシリア・オルコットに近づいている。

そして、気を失っている様子のセシリア・オルコットを横抱き、お姫様抱っこと言うべきか。ふむ、クラス生徒、上級生に見守られながら一夏はセシリアを横抱きしたままコロシアムから出ていく。

 あの様子ではやりすぎたと感じているだろうな、だから何度も直せと言っているのに、今度長期休暇はアイツの修行(調教)とするか。

 士郎もそろそろ大会があるし、数日は帰っては来られないからその時がベストだろう。なにかと一夏を庇おうとするからな。たく滝登りなど修行前のウォーミングアップにすぎんだろうが。

 




お久しぶりです。
なかなか面白そうなのをっと妄想し続けたらもう4月!
早いですね! 読んでくださっている方の中に入学生はいらっしゃいますか?
その方が居れば、一言。
ご入学おめでとうございます!


あ、今回オリIS武装「ゲイボルグ」のグは間違えではありません。

誤字、脱字、ご意見、ご感想があれば「感想」にてお願いします
またアドバイス等も募集しています!


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過去編ーこうして私は居候となったー
こうして私は衛宮邸で居候になった1


 

 衛宮士郎が今日の授業が終わり早めに食糧調達へ中学校から帰る途中にある誰も近づかない大きな公園がある、大人だけでなく子供たちでさえ大きなその公園では遊ばず、少し遠めの小さい公園へ行くほどであり、誰もが数年前に冬木市で起こった大火災による名残ある公園へは近づきたくないのだ、大火災から整備されたハズの公園は明るい色ではなく灰色であり空気が重く、空は暗く見える。

そんな誰もいない公園に立ち寄った衛宮士郎は普段ならば気が付かないであろう公園の風景の差に衛宮士郎は気が付いた。公園の木々に隠れて蹲っている人がいる。それに気が付いた。

 『正義の味方』、衛宮士郎が幼いころから目指しているモノであり、今もなおその夢を目指している。誰もが小さいころは必ず憧れた存在であり、いつしか諦める、覚めてしまう見えない職業。しかし中学生である衛宮士郎は今だに本気で目指している彼の瞼に残るのは赤い炎か、それとも誰かの悲鳴か。

 みんなが笑顔で暮らせる、災害で失った笑顔を取り戻す存在になる。衛宮士郎は常にそれを目標に、日々の生活を送っている、故に木々で蹲っている存在に衛宮士郎はどうしようもなく気になって仕方がない。そちらへ歩を進める。

 

 木々で蹲っているのは黒く美しいポニーテールを持つ者、女性だ。御父の教育により女性に対してちょっとした頑固なところがある衛宮士郎は助けになろうとすぐに考え、さらに木々へ向かう、今度は体が見えてきた。体操座りし、顔を隠している女性、いや女子は同じ制服の女子中学生のようだ。

 

「どうしたんだ?」

 

 衛宮士郎は言葉を投げかけた。

 同じ中学の女子であろう蹲っている者は1度ビクリと体を震わせ、衛宮士郎の方を見た。その顔に衛宮士郎は見覚えがあった、去年同じクラスメイトであり凛としていてどこか威圧感、またはカリスマというべきか、体から発するオーラのようなモノが有り、近づくとわかる。誰かと一緒にいるところを見たことがなく、一輪のバラのごとく気高い。

剣道では全国大会優勝した経歴をもち、その体つきには思えない身体能力と筋力があり1部のものからは『オーガ』と恐れられており、もう1部から『女王様』と崇められている。

 また中学で入学してから1位の成績を持ち、不思議な性格している『天災』と呼ばれる篠ノ乃束の親友――織斑千冬だった。

 しかし、いつもは凛としている彼女が今は瞳には力強かった光がなく、まるで枯れかけているバラのようだ。 正義の味方を目指している衛宮士郎にとってその光景は断固として許せなかった

 

「お前は……」

「士郎だ。 衛宮士郎、去年と同じクラスだっただろ?」

「ああ、束が言っていたブラウニーか」

「ブラウニーって……」

 

 少し、少しと話をし始めるが織斑千冬はしょぼくれたまま、瞳には光は戻らない。家で騒いでいるであろう大きな虎の世話は後にしておこう。今は目の前にいる織斑千冬についてだ。っと心に決め衛宮士郎は生徒会での仕事から始まり、機械いじりなどの様々な話をしていった。 1時間だろうか、2時間だろうか。ようやく少し瞳に光を宿した織斑千冬をみて、衛宮士郎はほっとした。

 

「フッ、しかしそれでは自分に得がないのではないか?」

「まぁ、それもそうなんだけど、趣味でしていることが誰かの助けになる。なんて思ったら受け取らなくてもいいかって思ってな」

「そうか、だが相手の気持ちを受け取らないのは可哀そうだ。少しは受け取ってやれ」

「俺はいらないんだけどな……」

 

 ふと織斑千冬の足元に雑誌があることに気が付いた。それを目にした瞬間――衛宮士郎はそれをすぐに拾い上げ、シャーペンで挟まれていたページを見る。織斑千冬は一瞬呆気に取られてしまった衛宮士郎に取られた雑誌に顔を青くする。体が震える。

 雑誌を取った衛宮士郎は雑誌から織斑千冬へ目線を変える、問い詰めるがごとく眼はきつくなり、目検に皺が寄るのがわかる。

 

「……織斑。俺はお前とは初めて話をした。だからあまり深く突っ込まない方がいいと思っていた。けどコレを見たらそうとは言えない、どうしたんだ? 何があったんだ? プライドが高い織斑がコレを持って、しかもシャーペンで目印されている箇所は」

 

 その問に織斑千冬は答えない。いや答えられない、少し前まで織斑千冬が持っていた雑誌は所謂、風俗系の18禁雑誌だった。そしてシャーペンで力を込めたのだろう、ゆがんだ丸で囲まれてしたのは風俗求人募集であった。どれも「100万!」など、それ以上の金額が描かれており、見えればお金に困っているのがわかる。

だが、今まで聞いた、見た織斑千冬という人物は借金などするタイプではないと確信していた衛宮士郎は雑誌を強く握る。織斑千冬は答えられなかった、その場で逃げることもできただろう、しかし動くこともできず震えながら顔を俯くだけ、そしてぽつり、ぽつりと話をした。

 

「今日、家に帰ったら、置手紙が、あったんだ」

「置手紙?」

「これだ……」

 

 力を失ったように織斑千冬はポケットからくしゃくしゃの手紙を取り出し、衛宮士郎に手渡した。

 受け取った衛宮士郎はそれを広げ、字を読んでいく。手紙にはこう書かれてあった。

 

『 千冬、一夏へ

 悪いけど、お母さんたちは借金で手が回らなくなりました。

 こんな人生、私にとっては最悪と言っていいわ。

 だからやり直すことにしました。

 お父さんはどっかに行きました。

 千冬、アナタは賢くて頼りになる子、私がいなくても大丈夫でしょう。

 私がいなくなっても頑張りなさい。

                母より』

 

「なんだよ、何なんだよ!? これ!」

「朝までは、笑顔だった、母さんからの、最後の手紙だ。 家の通帳には100万しか、無かった、しばらくは、大丈夫、だが今からでも、稼がないとって思ったら……」

 

 その雑誌を手に出していたと織斑千冬は語った。その瞳に涙が流れる。衛宮士郎はそれを呆然と見ていた。そして激しい怒りが彼の心に残った。

 何もかもが理不尽だ。 現在中学生の衛宮士郎と織斑千冬にとって100万はかなりでかい数字だ。しかしそれで生きていけるなどとは思っていない。 衛宮士郎でさえ保護者の藤村雷河になって貰い、娘の大河に通わせ世話になり(世話をして)月々にお金を貰っているのだから。

もしも中学の部活帰りに突然、両親が消え100万という貯金の中であとは勝手に生きろなどと言われたとき、アナタはどうする? 誰もが呆然とするだろう、1日は呆然とするかもしれない、2,3日目からは自覚が出て警察や区役所へ行くものもいるかもしれない。働こう、バイトしようと思うものは年齢を偽ってアルバイトを始めるかもしれない。 1人暮らしならば生きていけるかも、知れない。

 アナタは中学生のころに『生活保護』という制度は知っていましたか? 作者は知りませんでした。

 織斑千冬もまた知らず、働かなければという思いで一杯一杯だったのだろう、プライドを震えながら捨てこの雑誌を手にし、誰もいない場所を探しこの公園へ来たというところだろう。

 

「私、は別にいい、だが弟が、一夏だけは……!!」

 

 その瞳から流れる涙をみて衛宮士郎の心は決まった。

 

 守ろう。 どんなことからも、織斑が涙を流さないように

 

 この決意は新たなるFate。運命の神様がいるのか、サイコロのツンデレ女神様がいるのかはわからない、わかるのは今、この時、この場所で織斑千冬の心と体を守れるのは彼、衛宮士郎しかいないという事だ。

 衛宮士郎は涙を流す織斑千冬をそっと抱きしめる。そして離さないとばかりに力を強く、強く抱きしめる。 突然男性に、しかも涙を見られた相手に抱きしめられた織斑千冬は一度ビクッ!と震えたが、衛宮士郎の温かさとその力強さに安心感を徐々に覚え始める。

 そして、衛宮士郎の胸の中で一生に1度になる大量の涙と枯れるほどの声を上げた。

 




過去編です。

シリアス風味にしてみたかったんです。
ごめんなさい。


もう少し頑張って士郎らしくしたいです。



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こうして私は衛宮邸で居候になった2

 

 誰もいない公園の片隅、涙を流す女子生徒を男子生徒が強く抱きしめる。 男子生徒――衛宮士郎の温かさに女子生徒――織斑千冬はさらに涙を流す。 この場に2人だけしかいない空間が寂しいはずなのに、どこか温かい。

 

「す、すまない。衛宮」

「気にするな、俺は気にしてないから」

 

 あたりが暗くなったころにようやく二人は離れた。

グゥゥ~~。

 2人のお腹から鳴った、そんな些細な事なのにクスっと笑ってしまう。

 

「あ!? 一夏!!」

 

 織斑千冬は叫んでから公園においてある時計を見る、6時28分。 小学校は終わっているし、確実に家の前で立ち往生しているだろう。織斑千冬は急いでカバンを持って走ろうとする。

 衛宮士郎は走ろうとする織斑千冬の手首をつかんで静止させた。

 

「え?」

「なぁ織斑。今日は俺の家で食べていかないか? その、弟と一緒にさ」

「だ、だが迷惑じゃないか? それに弟はよく食べるし……」

「俺も今から作らないといけないし、どうせなら皆で食べたほうがおいしいだろ? 家はどっちだ?」

「……深山町だ」

「なら、俺も同じだし、なら弟を拾って一緒に商店街に行かないか?」

「……迷惑じゃないか?」

「迷惑なら話を持ち込まない。行こうぜ」

 

 衛宮士郎はそういって織斑千冬を引っ張ってバスに乗り込み深山町へ向かう。 織斑千冬はそれに戸惑いながらも着いて行く。

 その様子を見ていた衛宮士郎は学校で流れている『オーガ』なんて誰がつけたんだ?と想いながら、少し顔を赤くする。

 

 

 織斑家の前まで行くと織斑千冬の弟である織斑一夏は体操座りで家の扉前で座り込んでいた。それを見た織斑千冬は駆け出し、織斑一夏を抱きしめる、何度も謝る。

 冬木市は夏以外では寒い地方でいくら小さいころから住み慣れていたとしても風邪をひくのは当たり前だろう。織斑千冬は自分の計画の無さに軽いショックを受けた。あのまま衛宮士郎に見つかっていなければ確実に電話をかけ、身も心もそして弟の体調も壊していただろう。

 弟の織斑一夏には両親は急な予定が入り家にいないと説明し、織斑一夏から見て初めての姉が男の友達を連れて来たことに軽い興奮しながら、右手を姉と握り、左手を衛宮士郎と握りながら商店街を回る。

 のちに商店街の方々はこう語る。「アレは将来良い家族になる」と……。

 

 夜7時30分、中学生が帰るにしては少し遅い時間。衛宮士郎は初めて「クラスメート」を晩御飯に誘ったことに少し感動と美味しいものを出さねば! という使命感が心の中で浮いていた。すでに何通りのレシピが頭の中に出ては消え、出ては消えてを繰り返しながら、今現在衛宮士郎ができる最高の料理を考えていた。

 腹をすかせた虎のことなど忘れて……。

 

「ただいまー」

 

 そう、忘れていたのだ。腹をすかせた獣ほど恐ろしいものなどなく、諺にもあるだろう「食いの恨みは恐ろしい」と……。さて、問題です。

 

 お腹を空かせた腹ぺこ虎はあるとき、自分の家に来ました。しかし、自分には虎が来た事で驚いているばかり、お腹がすいているなどと知りません。ではどうなるでしょう?

 ①お腹がすいているのか!! スグに食べさせてやろう!

 ②大丈夫かい? ほら、これをお食べ

 ③あれ? なんでこんなところに虎がいるんだ?

 

 

「しぃぃぃぃろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

 

→④ 現実は無常

 

「ふ、藤姉ぇ!!?」

「こんな時間まで何をしているかぁぁ!!! 人中!!!」

 

 パァァァァンンンン!!!! 高い音を立てながら人型の虎に竹刀という名のキバを向けられた衛宮士郎(餌係)は哀れにも頭を守る時間もなく、バタンと倒れるのであった。

  完

 

 

 

 

 その後、衛宮士郎はなんとかザオリク(織斑千冬の膝枕)によって顔を真っ赤にしながら復活を果たし、調理場(戦場へ)に立った。

 衛宮士郎に見えるのは2人と1匹の虎の腹。彼らを制さねばならない。そう、これは戦争である、己が持つ力(料理術)と幾つもの刀(包丁)と防具(調理器具)を使い、満たすまで戦う。それ以外に生き残る道などありはしない。あとは己が信じるモノ(具材)を手に火を灯す(コンロに)。

 自然と体が動き出す、まるで自分の体が機械のように、全てを作り出すかのように頭には先ほど考えてあったレシピが複数同時に現れる。当たり前のように体はその様に動く、右手でフライパンを動かし、左手で魚を焼く。それも束の間、スグに火を弱め、蓋をしてからレンジで野菜を温野菜にできたのを確認し、フライパンの中へ流し込む。

 ピィィという音が鳴る、ご飯が炊けた、ならばあとは盛り付けるのみ!!

 衛宮士郎はこの時、限界を超えたと言っていいだろう。まさに炎の調理人エミヤとなったのだ!

 

 この様子を弟の織斑一夏が光り輝くような瞳で衛宮士郎の背中を見つめていることは織斑千冬と藤村大河しか知らぬことであった。

 これが冷徹に全ての物事を運ぶ料理人、またの名を氷の調理人イチカと称される事になる織斑一夏の最初にして始まりであった。

 

40分後、テーブルに広げられるのはまるで光り輝くようにな晩御飯。美味しそうな匂いを醸し出す焼き魚、ふっくらとしてなぜか輝いて見えるご飯、深い匂いに捕らわれそうになる味噌汁、普通は逆だろう! 男心を掴む肉じゃが。他にも煮物やきんぴら、漬物を用意され、織斑千冬は圧倒された。例えるならば攻撃力3000の青い目を持つ白竜が攻撃力300しかないはずのクリボ○が魔導士○力×2の3枚伏せによって攻撃力を越えられた驚愕の瞬間、又は月を見て大猿になった子供悟空を見てしまったブ○マ達といったところか。

 

 これには不機嫌だった虎も満足いったようで食後は大の字で横たわっている。織斑姉弟も満足の様で学校では見られないクールビューティーチフユの笑顔を見てしまった衛宮士郎にとって少し居心地が悪くなったのか、皿洗いに入る。なぜか弟の織斑一夏も手伝うことになったが。

 食後、30分ほどだろう、お腹が落ち着いたところで衛宮士郎は切り出した。

 

「織斑、送っていくぞ」

「い、いや、それは流石に申し訳ないから、いい」

「けど、女の子と一夏もいるんだ。送らせてくれ、じゃないと学校で顔見るまでは心配で眠れなくなる」

「け、けど……」

「千冬ちゃん! ここは士郎に送られなさい! それに何があったら士郎を盾にすればいいからね!」

 

 弟分である衛宮士郎を盾替わりとはこれは信用、信頼している証とみるべきか、からかっていると見るべきか。とまぁ、藤村大河の説得により、織斑姉弟は家まで士郎に送られる事になった。ちなみに織斑一夏は寝てしまっている。学校でよく動いたのだろう。今は衛宮士郎の背中でおんぶされ、夜の町を歩く。

 

 織斑千冬は申し訳なさと何故か熱くなる顔を見られたくないので顔を伏せる。衛宮士郎も深く聞こうとはせず、無言で歩く2人。それは気まずい筈なのだが、どこか安心できる時間でもあった。

 




居候編第2話です。
本当ならもう少し食い込ませる予定だったんですけど、
予想以上に長くなりました。
すこし、ほのぼのしてるかな?と思います。

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こうして私は衛宮邸で居候になった3

 

 

静かな満月の夜、暗い道を歩く衛宮士郎と織斑千冬は無意識ながらも静かなこの時間を楽しんでいた。しかし、衛宮士郎はふと思い出した。公園での織斑千冬の行動を。責めている訳ではない。弟のために一生懸命になろうとしたことだ。一体誰が責めることが出来ようか。たとえそれが他人に冷たい目で見られるだろうとも、織斑千冬は弟の織斑一夏の為に女性にとって一番の辱めとなる売春ですら躊躇なくやる。その覚悟はあるだろうと衛宮士郎は感づいていた。

 あんなに孤高のような美しさを持つ一本の赤いバラの様な織斑千冬が汚される。衛宮士郎の心の中で怒りが満ちる。今はまだ気が付いてないのだろう。まるで子供が大切なオモチャを壊された時と同じような想い、まるで『壊されて悲しい』という想いが『壊された』という怒りで塗りつぶされていることに。

 すでに衛宮士郎の心の中に織斑千冬という存在は無視できない程になっている事に頭(想い)では気が付いていても、己の中にある心(想い)は気が付いていないのだ。誰しも強い想いによって清い想いは気が付かないのと同じだ。

 今衛宮士郎の心の中では『織斑をあんな顔をさせる奴がむかつく』『織斑にあんな顔をさせたく無い』という気持ちが一番大きい。

 

 『正義の味方になる』―――。

 それは衛宮士郎にとって最も綺麗で、憧れで、夢で、養父である衛宮切嗣から受け継いだただ一つの『希望』。

 

 しかし中学生の衛宮士郎に出来ることなど無いに等しい。否、出来ないと言った方がいいだろう。そして自分もまた保護者が必要な年齢である。出来ることがない自分に腹が立って仕方なかった。

 けれど、何かしらしなければ織斑千冬は確実に今日のように雑誌を見て、探し、体を汚すだろう。それだけは絶対に嫌だ! させない! 静かな夜とは違い衛宮士郎の心の中は強い想いで一杯であった。

 

 気が付くと一軒の家に着いた、表札には『織斑』と書かれており、ここが織斑姉弟の家なのだなとわかる。

 

「今日はすまなかったな、衛宮。ありがとう、助かった」

「気にしなくていいさ、もし織斑さえよかったら、また来てくれ。俺が腕によりをかけるぞ」

「ククク、そうか、ありがとう。その時はまた行こう」

「ああ、それじゃあまた明日、学校でな」

「ああ」

 

 織斑千冬は衛宮士郎がおんぶで背をっていた織斑一夏をゆっくりと抱っこする。そして、家の中へ入っていき、衛宮士郎の視界から消えた。

 

 

 

 

 次の日、何時ものように藤村大河(虎)に料理(エサ)をあげて、学校へ来た。のだが、何時もより30分早く教室へ来てしまったようだ。その事に自分で自分に苦笑し、余った時間で織斑千冬に何ができるかを考え始めた。

 しかしどう考えても最大の問題点がどうにも出来ない。そう生活するうえで最も必要で大切なモノ、お金の問題である。織斑千冬は昨日100万の貯金通帳はあると言っていた。しかし100万で1年生活するとしても8万程しか使えない。他にも水道、ガス、電気はもちろん電話の通信料や食費がある。1人暮らしなら約7万で生活できるが、これ以外にもあの一軒家に家賃が必要ならばさらに掛かるだろう。

 衛宮士郎が出来る事と言えば共に食事をして少しでも食費を抑えるということぐらいしかできない。あとは織斑千冬次第であるが、共に暮らす事で電気、水道、ガス、通信、家賃の問題はかなり抑えられるが、そこは男と女だ。

 恥ずかしいという気持ちからこの事を切り出すことなどできない。

 

しばらくして、他のクラスメートが教室へやってくる。軽い挨拶をしながら衛宮士郎は織斑千冬が来るのを待っていた。授業開始30分前になるといつもの凛とした孤高の美しさを醸し出す織斑千冬が教室へやってきた。

 その様子に安堵しながら、この日1日の授業を迎える。

 

 学校が終わる頃にようやく衛宮士郎は1つ案が出来た。それは「衛宮士郎」にしては珍しい「他人を頼る」という答えだった。そう、衛宮士郎は織斑千冬の問題は解決策が思いつかなかった。そしてふと自分の保護者の役割をしてくれている「藤村雷画」のことを思い出したのだ。

 そして藤村雷画を頼るという解決策とは言えないが解決できるかもしれない案であった。

即行動、衛宮士郎は学校が終わり次第に藤村組へと直行した。

 

 

「で? 話ってのはなんでぇい、士郎」

 

 藤村組へ直行した士郎は顔見知りの人に案内してもらい、話そこそこに本題を切り出した。

 

「俺のクラスメートに昨日いきなり両親がいなくなったんだ」

「まぁ、よくある話だな」

「ソイツには弟がいて、昨日お金を稼ごうと、その、ふ、風俗の、バイトを、見てたんだ」

「いい嬢ちゃんじゃねぇーか。で? 士郎はソイツを助けてくれと言いに来たってわけか?」

「俺が出来る事を考えた、けど出来るとすれば一緒に住んで生活費を抑える位だ。お金の問題は解決できない。だから! お願いがあるんだ!」

「……フゥー。 なるほどなぁ、金を貸してくれってことかい」

「ああ、無論。少しずつ返していく。だから! お願いだ! 貸してくれ!」

 

 衛宮士郎はそう言って、頭を畳にぶつける勢いで下げた。その体はよく見ると震えている。藤村雷画はその様子をじっと見つめる。

 無言の時間が流れる。そしてふぅと藤村雷画はため息を吐いた。

 

「いいだろう」

「っ! 本当か!?」

「ただし条件がある」

「条件……」

 

「士郎、おめぇの夢を、「正義の味方」を諦めな」

 

 この時、衛宮士郎は自分自身の時が止まった様な感覚がした。何を言われたのかわからない。頭が真っ白になる感覚。それは中学生の衛宮士郎を谷底へ落とすような感覚だっただろう、しかし藤村雷画はそれを躊躇なく言った。

 

「な、」

「もう一度言うぜ、夢を、「正義の味方」を諦めな。そうすりゃあその嬢ちゃんたちの生活費ぐれぇは面倒見てやらぁ」

「な、え……」

「その嬢ちゃんたちを選べば、おめぇは「正義の味方」っつー夢を諦めるんだ。だが、嬢ちゃんたちを諦めりゃあ、「正義の味方」にでもなんでもなって、たくさんの人を救えばええ。

言い換えりゃあ。今救える嬢ちゃんたちを諦めるか。未来で嬢ちゃんたち以上の不幸なやつを救うか。どっちか選べ」

 

 重い。体がまるで石になったかのように衛宮士郎は自分の体が重くなるのを感じた。その状態で藤村雷画の言葉を聞いて、耳を塞ぎたくなるが、出来なかった。それは藤村雷画の真剣な瞳がそれを許さなかったからだ。

 考えが付かない。今衛宮士郎の頭の中は真っ白で何を考えようとしても何も出てこない。まるで真っ白の紙に黒が塗りつぶされた事で黒の鉛筆、又はシャーペン、ボールペンで何を書こうとも読めないという具合だ。

 

「流石に今答えを出せなんて言わねぇが、よく考えときな」

 

 それが藤村組を出た後の衛宮士郎が聞いた最後の言葉だった。

 




すこし暗いですかね? 衛宮士郎のよくある話
1を捨て、9を救う話を意地悪のように書きました。

中学生に夢を諦めろとか雷画さん鬼畜過ぎる。
(ごめんなさい)

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こうして私は衛宮邸で居候になった4

衛宮士郎が藤村雷画に話を持ちかけ、条件を突きつけられてから7日立った、未だ衛宮士郎の中では答えが出し切れていなかった。誰かを救いたい、あの人の様に綺麗な夢を持って見たい。『正義の味方』になって、みんなが笑顔でいられるようにしたい。

 けれど、その裏に1人でも犠牲があるのならば、一体どうすればいいんだ? 救える者と救え切れない者。二つを救おうとしても救えないのなら、『正義の味方』は一体どうやればみんなを笑顔にできるんだ?

 

「はぁ、織斑にあんな顔させたくない。けど救えば違う人が救えなくなる、かぁ」

 

 この問題に学校でも私生活でも悩んでいるためか、身に力が入り切れない。大掃除と同じようなモノだろう、完全に捨てるゴミ、大切なモノ、そして捨てきれない思いが籠ったモノ。捨てようか、いやこれは取っておきたい、が生活の中では完全に使わないモノであり、無くせば少し広く使える。そんな思いだった。

 こんな思いをみなさんはしたことあるだろうか? 

 

「すこし、散歩するか」

 

 衛宮士郎は気分転換として私服に着替え外へ歩くことにした。外の空気を吸えば何か変わるかもしれない。何かいいきっかけがあるかもしれない。

 衛宮邸を出て公園へ向かう。新都にある大きい公園だ。しかし誰寄り付かない公園だ。

ここで織斑と会った、いや見てしまったと言っていいか。

 

「え~みや、何してるんだよ」

 

 後ろから声が聞こえて来た。しかもかなり聞き覚えのある声だ。ゆっくりと振り向くとそこには同じ中学の同期で衛宮士郎にとっては数少ない友達の一人、間桐慎二だ。

 

「なんだ、慎二か」

「なんだじゃないさ、お前なんでこんなところに一人でいるんだ?」

「ただの散歩、悩んでたら気分転換したくなったんだ」

「ふぅん、衛宮にも悩みなってあるんだな」

「失礼だな、俺だって悩みの一つや二つはあるさ」

「へぇ、じゃあ最近変なんのは、その『悩み』が原因ってわけか」

 

 いきなり食い込まれた。少し、口が閉じると間桐慎二はニヤァと小ばかするように笑う、それを見て衛宮士郎はぶすっと口を閉じた。

 

「話してみろよ、このボクがお前の悩みを解決してやろうじゃないか」

「ン……」

「それに衛宮だって、気分転換、いや何かきっかけが欲しいんだろ?」

 

 それもそうだ。確かに何かきっかけが出来るかもしれない。衛宮士郎は閉じていた口を開けた。間桐慎二は少しクセがあり、人を見下すような口調だが、よくよく考えるとアドバイスとなることが有ったりする。

 まぁ、誤解されることが多数あったが。

 

「そう、だな。じゃあ、慎二、もし、自分の夢を叶えたかったら、大切なモノを諦めろ、って言われたらどうする?」

「……」

「……」

「バカだな、衛宮は……」

「え?」

 

 今一番悩んでいる事がなぜかバカにされた。衛宮士郎は何度も瞬きし、間桐慎二を見る。いつも通り、自信たっぷりで腕組んでニヤニヤとコチラを見ている。

 

「まぁ、衛宮なら仕方ないな。そうだね、ボクなら『大切なモノ(プライド)』を取る」

「じゃあ、夢を諦めるってことか!?」

「ハン! その程度で終わる様な夢なら余計にボクは『大切なモノ(プライド)』を取るさ、ボクにとっての夢ってのは『必ず叶える』モノ、だから『大切なモノ(プライド)』を取られる(汚される)位なら、夢を少し遠回りに行くだけさ」

 

 間桐慎二は自信満々に衛宮士郎の前で言った。そこには信念の様なモノを感じ、気迫すら感じる。衛宮士郎はこんな間桐慎二を見るのは初めてであり、少しうれしかった。

 

「そっか、ん、ありがとな慎二」

「気にしなくていいさ、でも、こんなので何時までも悩んでいるなんて、ダメだなぁ衛宮は」

「そうだな、けど、いいきっかけが出来た」

「当たり前だろ? このボクが悩みを聞いてやったんだからな、それじゃあな、衛宮。さっさと悩みなんて解決しちまえよ」

 

 間桐慎二は言うだけ言って、衛宮士郎の目の前から去っていく。公園を出ていき姿が見えなくなるまで、その後姿を見続けていた。

 衛宮士郎はよしっと、気合を入れなおし、改めて考えていく。

 

 あの日、『士郎』が生まれた冬木市で起こった大火災、生きなければと思いながら、他の生きていた人たちの声を呪いの様に聞きならがら火災の中を歩いた。倒れ、出会ったのは衛宮切嗣、その人の嬉しそうで、悲しみに満ちている顔はよく覚えている。けど、その顔はどこか、綺麗だったという事も覚えている。

 あの人の様に、誰かを救える『正義の味方』になりたくて、けど何をすればいいか分からなかった。

 この夢を叶えたい。あの人に「俺はじいさんの夢を叶えた」と胸を張って言いたい。

なら……

 

「お前だな、最近、ちーちゃんに会ったのは……」

 

 ……再び誰かの声がした。今度は聞き覚えの無い声で、うむ、俺じゃないな、ちーちゃんって誰のことだよ。っと思いながら再び没頭しようとする。

 

「無視するなんて、この束さん相手に言い度胸だね」

 

 ん? たばね? そういえば同じクラスにそんな名前のやつがいた気がするっと考えつつ、後ろを振り向く。が、スグに前を向いた。

 いや、絶対に違う、だって髪がピンクだし、ウサギの耳ぽいの付けてるし、なんかドレスだし。っと考えていると

 

 視界が急に回りだした、上が地面で、下が空で。体ごと回転していき、受け身も取れないまま、衛宮士郎は地面に激突した。

 

「いつつ……! い、一体何なんだ!?」

「ふん! この束さん相手に無視しようとするからだ」

 

 倒れた状態で衛宮士郎はよ~くその声の人物を見ることにした。

 青と白の不思議の国のアリスを思わせるようなゴシックドレスを着た女性、だがその髪はピンクで、カチューシャ……と言って良いのか分からないが、とりあえず、ウン。ウサギ耳を付けている。

 

「全く、この束さんがわざわざお前に話しかけてやっているんだ。答えるのが当たり前だろ」

「いや、それはめちゃくちゃじゃないか?」

「お前の答えなんか聞いてない。私の質問だけを答えてくれればいい」

「むっ」

「で? お前なんでちーちゃんに構ってるんだよ」

「いや、ちょっと待ってくれ。その前にお前は誰なんだ!? それにちーちゃんって誰のことだよ!?」

 

 衛宮士郎は目の前にいる女性に向かって叫ぶように言う、いや言わないと聞いてくれない気がしたのだ。今でも衛宮士郎を虫の様に見ているこの女性は初めてだ。こんな初めては嫌だが……。

 

「ふん、篠ノ乃束。ちーちゃんってのは織斑千冬のこと、で?サッサと答えろよ」

 

 な、なるほど、この女性、篠ノ乃束は慎二と同じで面倒な性格をしているようだと衛宮士郎は語った。そして、地面から起き上がり、体に着いた砂を払う。

 

「え、えっと俺は衛宮士郎」

「お前の名前なんか聞いてないよ、サッサと私の質問に答えろ」

「むっ、自己紹介は大切だろ? はぁ、織斑に構ってる、っていうのは助けたいからかな」

「助けたい? ちーちゃんを? 私にも勝てないお前が?」

 

 織斑千冬――中学でも身体能力は群を抜いており男子生徒はおろか教師も勝てはしない。まるで武の神に愛されているかのように、柔道部、剣道部では個人大会優勝確定、野球部ではホームランは確定事項、バスケット部では一人無双、テニス部ではリスク無し片手波動球は当たり前、バレーボール部ではボールが地面にねじ込み、陸上部ではオリンピック記録を更新させ、サッカー部ではまさに少林サッカーといった具合だ。

 その美貌と凛とした雰囲気が孤高の存在と決めつけ、高校生ヤンキーをボッコボコにした生徒は彼女を『鬼人(オーガ)』又は『姐さん』と親しめられている。

 

「確かに、勝てない。けど……」

 

 衛宮士郎が思い出すのはこの公園で見てしまった彼女の弱った姿。

 

「手を貸すことなら出来る」

 

 




新年あけまして、おめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

っと、かなり遅れましたが、居候編第4話でした。
信二の名前が出てこなくって、なぜか間桐ワカメとしか、思い出せず、
悔しくて、思い出すまで書くもんか!っとおもってたらかなり遅れました。

仕事中も、信二を思い出し
「えっと、間桐、なんだっけ、ワカメじゃなくて……」
という日々。ようやく終わりました。

誤字脱字、ご意見、ご感想は「感想」にてお願いします。


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こうして私は衛宮邸で居候になった5

 

「手を貸せる? ちーちゃんはお前より圧倒的に強いんだよ? なのになんでお前が手を貸すことが出来る?」

「確かに俺は弱いさ、織斑は俺よりずっと強い。けど、織斑が弱っている部分を助けることぐらいなら、俺は助けることが出来る」

「ハン! だったら私がちーちゃんのその『弱っている部分』を助ければ良い事だ!」

「じゃあ、最近、織斑が弱っている姿を篠ノ乃は見たのか?」

「ッ!」

 

 この時篠ノ乃束は体を大きく揺れ、言葉が詰まった。最近篠ノ乃束は学校でもプライベートでも衛宮士郎が言う『弱った部分』を見た事が無いし、その姿を想像することは出来なかった。

小さい頃から共に分かり合いながら育ってきた2人であったが、最近は最低限の接触しかしていなかった。篠ノ乃束が最近見つけた『人体にある不思議な力』の解明に勤しんでいたのもあるが、『小さい頃からの夢』を叶えるのにも必死であったからだ。

 衛宮士郎の事を知れたのも、昨日の事だ。篠ノ乃家に遊びに来ていた織斑一夏を迎えに来る際に夕食に来ていた織斑千冬がぽつりと呟いた言葉からだったからだ。

 嫉妬、一言でいえば今の篠ノ乃束の心の中に占めている感情だ。誰よりも知っている、どんな表情を出すかも知っている篠ノ乃束にとって、衛宮士郎の存在はまるで自分のパートナーが取られたかのように思いであり、見逃せない存在であり、裏があるとしか思えなかったのだ。

 

「俺は織斑が弱っているところを見た。そんな姿を見たら、必ず助ける」

「……なんでお前はそんなことをするんだよ」

 

 泣きそうになる。篠ノ乃束は目の前にいる格下であるはずの衛宮士郎がなぜか自分と同じどこか狂ったような存在に思えて来た。

 『普通の人』とは違う、それは誰から見ても差別される。拒絶される。遠ざける。嫌がられる。篠ノ乃束は今までその様な扱いしかされなかった。ただ織斑千冬と織斑一夏そして自分の妹以外は居なかったのだ。だからこそ彼らを篠ノ乃束は大切にする、守ろうとする。物語に出てくるような悪の存在から隠そうとする。

 しかし織斑千冬は篠ノ乃束と同じく『普通の人』とは違う、自分以上の身体能力を持ち、冷静沈着。いずれは隠しきれない。だからいずれが来る前に『アレ』を作るかオリンピック選手になって貰おうと考えていたのだ。

 目の前にいる衛宮士郎は徹夜して徹底的に篠ノ乃束は調べ切った。

 冬木で起こった大火災によって生き残った者、引き取った男は裏ルートの様なモノを持っていた事しか分からなかったが。しかし、成績は上の中であり身体能力は普通より少し上、趣味で機械いじりが好き、評判は調べるほどでもない。勝手に耳に入ってくる。だから自分と同じ狂った存在では無いと確信していた。

だが。

 

「目の前で涙を流している奴を見過ごすことなんて出来ない。悲しんでいる姿を放っておけない。死にそうになっている奴らを見たなら、俺は助けたい! 俺は!『正義の味方』になるんだから……!」

 

 唖然とした。しかしそれ以上に篠ノ乃束は

 

「は、ハハハ、アハハハハハ!!! なんだよソレ! せ、正義の味方って! ハハハハハハハハ!!」

 

 笑う、嗤う、哂う。

 衛宮士郎の夢を哂い、その姿を嘲笑い、同じ『普通の人』ではない者を見つけうれしそうに笑う。すでに篠ノ乃束の瞳には涙が流れており、その表情は嬉しく、悲しく、バカにするような表情であった。

 

「ハハハハ、あー。笑わせて貰ったよ」

「むっ、そんなに笑う事か?」

「当たり前じゃん。この年になって「ぼくのゆめはせいぎのみかたです!」だよ? 笑うしかないよ!」

「むっ……」

「まぁいいさ、衛宮士郎、キミ、ちーちゃんを助けるんだっけ?」

「ああ」

「やってみなよ、けどね、覚えておくといい。お前がちーちゃんを悲しませたら、私は全てを使ってお前を潰す」

 

 衛宮士郎は篠ノ乃束の瞳には先ほどの様な侮辱したような瞳ではなく、ただ真っすぐに、真剣な瞳であった。

 

「わかった」

 

 ただ一言だけが、篠ノ乃束に返す言葉。それだけで十分だろう。

 

「それじゃあ、頑張りな。『正義の味方』」

 

 篠ノ乃束はそういって衛宮士郎の横を通り過ぎ、公園から出ていく。衛宮士郎はその姿を見届けてから、行動に移ろうとした。

 

 

 こうして、天災☆女性☆篠ノ乃束は『正義の味方』衛宮士郎に投げキスをし、その場をその姿はまるで不思議の国のアリスのごとく、柔らかい表情で妖しく華麗に去ったのであった。公園に一人残された衛宮士郎は投げキスに手を当て、何を考えたのか、自ら頬を赤くさせながらも、右手をグッっと空へ伸ばし叫んだ。ただただ、大きく、誰もが聞けと言う様に、己に気合を入れ衛宮士郎は頼もしい足取りで公園を出ていく。行くのは「鬼神」織斑千冬が居るであろう、彼女の自宅! その先に衛宮士郎を待ち受ける者とは一体!?

彼女の自宅に着いた衛宮士郎が迎えたモノは剣か槍か、いや弓が待っているのか!

 次回! 文々。新聞 「漢、ただ助けるために」 来週はこれで決まりですね!!」

 

「おい」

「はい? なんですか? あ! ギャラについてでしたら再来週お待ちくださいね? 私たちも部活動とはいえ真剣にやっているんです。これ以上部費が無くなればキツイですから! 大丈夫! 売れた新聞×100円出しますから!」

 

 衛宮士郎の後ろにいたのは同じ中学校の生徒であり、同じクラスメートでもある。藤田文、記者としての名前は射命丸文。パパラッチであり、記事全てがほとんど出鱈目だ。

 この同じクラスになったならば己の幸運値を恨むしかないだろう。幸運値Eぃ……。

 




はい、とりあえず、居候編そろそろ終わらせたいですね。
おかしいです。コレで少なくとも終盤に近づけると思ったらまだまだになった。

あ、藤田文さんは士郎君と同じクラスメートです、
可哀そうに。度々手伝わされたりします。

誤字、脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。


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こうして私は衛宮邸で居候になった6

突然現れた美少女、衛宮士郎は顔を赤くしながら彼女に近づく。しかし、彼女はただの新聞記者(部活)ではなかった。そう、彼女はスーパー美少女☆記者 文様であったのだ」

 

「おい」

「もう、度々なんですか? ギャラですか? ギャラなら再来週ですからね!」

「違う! なんでここにいるんだよ!?」

「そりゃあ、公園だからですよ? 衛宮君大丈夫ですか?」

 

 話が通じない。ああ言えばこう言うというのはまさにこの状況を言うのだろう。しかし衛宮士郎は諦めない。なぜならば藤田文が持つあの手帳に書かれているネタを晒されるわけにはいかない! そう! あれは去年の夏休みの頃! と衛宮士郎が回想に入っているころ、藤田文は手帳で口元を隠しながら、衛宮士郎を見つめていた。表情全てが見られていたならば、何時もとは違う藤田文に衛宮士郎は戸惑っていただろう。

 

「(果たして、衛宮君は何処までやってくれますかね。この際私は最後の切り札として今回は見てあげますよ)」

 

 藤田文は衛宮士郎の回想を強制終了させる呪文を唱えた。

 

「そういえば先ほど、織斑さんを見ましたよ?」

「本当か!?」

「ええ、街の方で」

「街の方だな、分かった!」

 

 そういって衛宮士郎は走りだろうとした。が、それを藤田文は止める。足払いで。

 衛宮士郎は地面と猛烈なキスをして、その場で痛みを堪えつつもゆっくりと立ち上がり、藤田文を見る。その表情は満面な笑顔だ。そう、例えるのならば「この笑顔、守りたい」というところか。

 

「もー。衛宮君ってば、地面さんと猛烈なキッスなんてして、私の前ではしないで下さいよー」

 

 クネクネと恥ずかしそうに衛宮士郎を見る。がその程度でごまかされない。

 

「行き成り何するんだよ!」

「だってー。待ってください! な~んて言っても止まってくれないじゃないですかー。だからちょっと冷静になって貰おうと決意して行動に移しただけですよ?」

「だからて!」

「織斑千冬さん、今のままだとやばいですよ」

「え?」

 

 藤田文の急に冷徹な表情に衛宮士郎は固まった。次いで、言われた言葉が頭の中で山彦の様に何度も響いた。冷静になり、言葉の意味が分かってから衛宮士郎はゆっくりと問う。

 

「どういうことだ? 何か知っているのか?」

「はい、まず先ほどの街で見かけるというのは誤りです、どれほど真剣か試させてもらいました」

「なんで試す必要が」

「聞きたいのなら、必ず助けてあげてくださいね? 『正義の味方』」

「わかった」

 

 即答であった。いや、「助けて」の時点で衛宮士郎の中では答えは既に決まっていたのだ。自分が目指す「正義の味方」とは自分を救い、育ててくれた衛宮切嗣(じいさん)の為にも、叶えるべきモノだ。

 

「では教えましょう、先ほど織斑さんの自宅で私、見て、聞いてしまったのですよ。自宅前でスーツ姿の男性が織斑さんに援助交際の取引する様子を、ね」

「!!?」

「衛宮君、アナタに問います。今織斑さんがお金に困っていることは知っています。その上で、援助交際という手段を取った織斑さんを辞めさせるのですか? 正直私は自分の為ではなく、弟さんの為にやろうとしている織斑さんを辞めさせるというのは、あまり感心しません。それとも衛宮君が全て養うのですか? 1人暮らしをしているあなたが。」

 

 ゆっくりと、淡々とした言葉で、衛宮士郎を追い詰める様に、責めるように言う。どうやって止めるのか、お金はどうするのか。現実的に一体、なぜ、どうやって、どのように、最も効率がよく、犠牲がなく、皆が笑顔になれる為に、お前は何をするんだ?

 

「なぁ、藤田」

「なんですか?」

「自分の大切なモノと自分の夢、どっちか取れないとしたら、お前はどうする?」

「愚問ですね。大切なモノですよ。

知っていますか?『大切』っていうのは『大』を『切』るのですよ」

「ッ!」

「『大』を『切』れば残るのは、限りない『小』」

「大切、か。ん、ありがとうな藤田」

「いえいえ、気にしなくてもいいですよ? それで? 私の問いはまだなのですが?」

「藤田、織斑がどこにいるか、教えてくれ」

 

 衛宮士郎はそれが答えだと、藤田文に応えた。そのことに藤田文もまた笑顔で1枚の紙を渡す、二つ折りにされた紙を渡された衛宮士郎は小さく、「ありがとう」と言って新都の方へ走り出す。

 

「全く、可愛げのないガキですね~。まぁ男としては合格と言ったところでしょう」

「あら? あなたがそう評価するのも珍しいわね?」

「……一体いつから見ていたのですか? 八雲紫さん」

 

 

 

 走る、駆ける、疾走する。

 二つ折りにされた紙を走りながら見て、場所を何度も確認しながら新都の街を走る。すでに周りは電灯が付いており、冬木市に相応しい冬の寒さだ。喉はすでに冷たく痛い。腹部も冷たくなっているだろう。脇腹もだんだんと痛くなってくる。

 それでも尚、己の信念と間桐慎二と藤田文の言葉を思い出すたびに歩こうとする足は力を取り戻す。

 

 メモに書かれていた場所に着いたが、そこには雑踏警備がいるほど賑わっている。確か今日はデパートのイベントで有名歌手やらバンドやらが来る日という事を思い出し、周りの人間に舌打ちをする。

 人、人、人。

 大勢の人の壁で背が低い衛宮士郎は探すのが困難になっていた。これほどまでに背が低い事を恨んだ事が無い。今度から毎日牛乳を飲もうと決意しながら、織斑千冬を探す。しかしながら、日本に置いて『黒髪』というのはごく普通の色であり、女性ともなれば髪が長い者などそこら中にいる。

 しかし、ながら彼女特有のオーラだけは、マネが出来ない。

 圧倒的な圧力のある「鬼神」とまで呼ばれた織斑千冬の『鬼気(オーラ)』は他人では出せない。

 

「いたっ!」

 

 顔ではなく、『鬼気(オーラ)』で織斑千冬を見つけた衛宮士郎は人込みをかき分けながらそちらへと向かう。

 かき分けていくと、そこには項垂れながら私服姿のミニスカートを履いている織斑千冬とスーツ姿の男性だった。スーツ姿の男性は織斑千冬に手を伸ばし、肩を掴もうと

パシっ! スーツ姿の男性の手は衛宮士郎によって弾かれ、唖然とする織斑千冬の手を引っ張り、人込みの中へ入り込む。後ろから織斑千冬を呼ぶ声はするが、すべて無視だ。

 

「お、おい、衛宮!? なんで、お前が、ここ」

「教えてくれたんだよ! なにをやっているんだ! 織斑がこんなことをする必要なんてない!」

「ッ!? だ、誰に教えて」

「今は黙ってろよ!!」

 

 衛宮士郎は自分に怒りながら人込みを通り、新都の街を離れていく。何も考えてはいない。ただ、織斑千冬をこの場から離すことだけしか今の衛宮士郎の頭の中にはなかった。

 織斑千冬はなぜ引っ張られるのか、混乱しつつも。どこか、嬉しいという感情が心の中から出てくる。先ほどまでは絶望だったのが、衛宮士郎が来てからこれほどまでに変わるモノなのか、自分の感情が解らなくなり、衛宮士郎に手を引っ張られながら走る。

 

 

 新都の丘にある言峰教会、2人は教会の前まで走ったのだ。

 そして、扉の前に2人して座り込む。

 

「衛宮、なんで、お前が来たんだ?」

「……織斑を、守りたかったから」

「わ、私を?」

「なぁ、織斑」

「な、なんだ」

「織斑は、大切なモノと自分の夢、どっちか取れないとしたら、どっちを取る?」

 

 衛宮士郎はこんな質問をする自分に少し苦笑する、この質問も今日で何度教えてもらっただろう、今まで考えた事が無かった。唯々、自分の夢を、衛宮切嗣(じいさん)の夢を叶えたかった。出来る事を出来る限りやってきたし、これからもするつもりだが。

 

「大切なモノと自分の夢か……。なぜ衛宮がこのような質問をするかはわからんが、私は、うん。「大切なモノ」を取る」

「そうだな、俺も、今回は大切なモノを取っただけだ」

「ッ!!?」

 

 この日、教会の前で2人して顔を赤らめながら、時は過ぎていくのであった。

 ただし、2人はそれぞれ別の意味で顔が赤いという事だけは変わりようのない事実である。

 




とりあえず、今日はここまで。
さて、ここで牧師を出すか、迷いますが、そこはおいおいやっていきます。

本編も書かないといけませんね……。

誤字、脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。


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こうして私は衛宮邸で居候になった7

 

 

教会の前に座り込む顔を赤くした2人の男女、一人は不良と思われる赤い髪をした中学の制服を着た男子、もう1人はデートの為に気合を入れました! と言わんばかりの私服を着ている女子、傍から見ればデート中の2人が2人きりになるために誰もいない教会へと足を運び言葉を交わせず、唯々、この時間が愛おしいとばかりの雰囲気だろう。

 例え2人がまだ付き合ってすらいないという事を除けば。

 さて、衛宮士郎が織斑千冬を連れて来てから、どれほど立っただろうか、衛宮士郎は少し横にいる織斑千冬を見る。

 

「(綺麗だ)」

 

 素直にそう言える。何時も中学の制服着ている所しか見た事が無いため、私服姿はより新鮮に見える、そして学校では凛としており、孤高の存在と思われているのに今はなぜか可愛く咲く花のようである。

 衛宮士郎は学校と今の激しいギャップに顔をさらに赤らめ、顔を反らす。

 

 一方織斑千冬は先ほどの衛宮士郎の言葉が頭の中にぐるぐると回っていた。

 先ほどの質問から、「大切なモノを取っただけだ」という答え、それはつい自惚れしてしまう妄想に捕らわれてしまう、織斑千冬はほんの少し、達人級でなければわからない程の視線を衛宮士郎に向ける、と

 

「(目が合った!?)」

 

 なぜか目が合った。そして超越した視力は衛宮士郎の顔が赤くなるのを見届け、反らされた。

 衛宮士郎が自分の事を見て、顔を赤くした。そして反らされたという現実はまるで少女漫画のようだな、と考える。

 すると、ふと気が付く。

 

「(そうなると、私と衛宮が……ッ!?)」

 

 織斑千冬は自分でも冷めていると知っている。しかし実は彼女の部屋にあるタンスの服の下の隠れている少女漫画があるという事は誰にも知られてはいけない秘密なのだ。

 こんな自分だけど何時か、好きになってくれる人が! と少し夢を見ている乙女な部分があるのだ。

 と言っても、今回の事で秘密裏に漫画は全て売り払い、彼女の部屋には木刀、家具、机、模擬刀、ベッド、20キロダンベル×2、本棚、バーンマシン、クーラー、パワーウエイトベスト10キロ、電気ストーブという当たり前の部屋しか無くなった。

 そのことを思い出し、織斑千冬は落ち込んだ。やはり自分の事を好きになって貰う事など出来ないなと考えてしまった。

 

「なぁ、織斑」

「ナッなんだ」

「明日、家に来てくれないか?」

「ふぇ!!?」

 

 お誘いがあった。なぜか行き成り異性の家に行くという織斑千冬にとっては高レベル過ぎる言葉だった。例えるのならばドラ○エⅢの女勇者オリムラチフユが光の玉無しで魔王ゾ○マならぬ、魔王(?)シーロウへ戦うようなモノだろう。

 倒せないことはないが難しい。行きたいが恥ずかしい

 

「ダメか?」

「い、いいいや。大丈夫だ、問題ない」

「そうか、じゃあ今日は帰ろう。送っていくよ織斑」

「い、いいいや大丈夫、大丈夫だ。問題ない」

「なにがさ。もう暗くなっているし、女の子を一人で歩くのはマズイだろ?」

「お、おおおお女の子!!?」

 

 衛宮士郎の的確な言葉にどんどんと織斑千冬のHPは削られていく。それと同時に心臓がバックバクと激しく動き、顔は真っ赤だ。

 

「? 織斑、もしかして熱あるんじゃないか?」

「いや無い! 夕日のせいだ!」

「そうか?」

 

 織斑千冬の顔は衛宮士郎が見る限り真っ赤で、とても夕日のせいとは思えないし、そもそも夕日自体すでに沈んでいる。心配になった衛宮士郎はどうするかと考え、

 そっと、織斑千冬に近づく、そしてゆっくりと織斑千冬の額に自分の額をくっつけて、熱を測った。

 ちなみに、急に衛宮士郎がおでこぴったんこしたおかげで、目をつぶる衛宮士郎の顔がよく見えた。あと少しで唇がくっつきそうな位近い衛宮士郎に織斑千冬の頭の中ではすでにショート寸前だった。

 

「ムッ……熱は少しあるな、織斑、早く帰ろう」

「ふぁ、ファイ……」

 

 衛宮士郎は織斑千冬をなぜか横抱き(通称お姫様抱っこ)され、新都の街を歩いた。それはもうサラリーマン、パパラッチ、アルバイター、フリーター、OL、パパラッチに見られ、激写される中織斑千冬は既に横抱きされた時点でショートし

 めのまえが まっしろ に なっていた。

 

 思いがけない事を言われてみたい言葉、されたい行動を連続でされた織斑千冬はショートする頭の中で疑問が1つだけ浮かんでいた。

 

「衛宮、なんでお前は私を助けるんだ?」

 

 言葉にすると現状は理解してはいないが心の中は落ち着きを取り戻していく。織斑千冬にとって衛宮士郎は周りの同期から『お手伝いさん』やら『シェフエミヤ』やら『スパナ』などしか思いつかず、衛宮士郎自身の事など知らなかった。

 だが、あの日に涙を見られたときからなぜか織斑千冬の頭には衛宮士郎の事を思い出すようになった。学校でもふと気が付けば衛宮士郎を見ることが多いと思う。

 

 しかし、衛宮士郎はどう思っているのか、先ほどの質問の訳は? 堕ちようとする私を何故助けたのか。疑問がどんどんと沸いてくる。

 

「俺は、俺の夢は『正義の味方』になることだ」

「正義の、味方?」

「ああ、皆を助け、笑顔になる存在に俺はなりたい」

「だから、私を助けたと?」

 

 織斑千冬の心がすっと冷めていく。

 夢の為に私を助けたのか、それだけなのだなと気が付いたのだ

 

「俺はさ、『正義の味方』になりたい。けれどそのために犠牲になる人を無くしたい、誰かが犠牲になるくらいなら、俺がその犠牲となりたい。そう考えている」

「それは……」

 

 危ない思考だ。自己犠牲してでも他の誰かを助けたいと考える衛宮士郎に織斑千冬は怖れを抱く、それと同時にわかった。

衛宮士郎という存在はとても純粋だったのだろう、しかし水に墨汁を入れる様に、透明だった心は『何か』によって染められているのだとわかる。その『何か』は分からないが、今の衛宮士郎は危険すぎる。

 織斑千冬はぎゅっと、自分の胸に手を当て、目をつぶる。

 それはまるで、何かを誓う様に……

 

 

 

 




居候編、一応中間?位だと思います。
なぜかどんどんともうs、げふんげふん。
んん、アイディアが浮かび長くなっています。

誤字、脱字、ご意見、ご感想があれば「感想」にてお願いします。
アドバイス等もお待ちしております。


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こうして私は衛宮邸で居候になった8

 

 

「織斑、一緒に帰らないか?」

 

それは学校の放課後、下校時間に起こった。誰もが耳を疑った。空耳だと何度も思った。だが、視線をそちらに向ければ真剣な眼差しで見る1人の男子生徒とどこか顔が赤くなっている女子生徒、しかも女子生徒はゆっくりと頷いた。

 さてこの中学校で二つ名を付ける一種の病気が流行っていた。

 剣道で大会優勝すれば『剣勇』と本人の了承なしで決められ、新聞部の一面に載る。

 柔道で大会優勝すれば『猛獣』と名付けられ、新聞部の一面に載る。

 

 では、剣道で大会優勝し、その美貌から数多の男子生徒からの告白を『断る』の一声で切り裂き、数多の年上のヤンキー、カモを狙った不良、女性を狙った未遂事件を起こした者、外国マフィアの部下と上司を捕まえ、助っ人として呼ばれた筋肉達磨の男を木刀一本で倒した者を何と呼ぶだろうか。

 答えは簡単だ。皆が憧れと恐怖と畏れを含めた二つ名『鬼神(オーガ)』。

 誰もがその性格は冷静沈着であり、顔を赤らめるなどという行為は妄想の中でしか行われていなかった。

 しかし、今、目の前で『鬼神(オーガ)』が顔を赤らめているのだ! しかも、頷いた後顔を伏せるように!!

 一人の勇者は立ち上がった。ポケットに隠し持ってきた携帯電話を取り出し、その光景を見つめる様に、「カシャ」と音を立てた。この日、彼は中学の歴史に『勇者』後藤の名は語り継がれるようになった。例え音を立てた瞬間にボゴォという顔に水筒をぶつけられ、一体いつの間に切り裂かれたのかは解らないが携帯電話は二つに切り裂かれてしまっても、彼の、『勇者』後藤の偉業はいつまでも語り継がれる。

 

「木刀を振り回したら危ないぞ?」

「す、すまない。少し鎌鼬の練習をしたくなってな」

「かまいたち?」

「あ、ああ。それより早くいくぞ」

「そうだな」

 

 二人はカバンを持ち、ゆっくりとクラスから出ていく。

 扉が閉められ、5分程であろうか、ようやくクラスの生徒たちは再起動し始める。

 そして、一言。

 

『えええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?』

 

『鬼神(オーガ)』の織斑千冬と『ブラウニー』の衛宮士郎が付き合っているという噂はものの30分で学校中に拾回り次の日には生徒、職員、校長、理事長ですら知っている事実となった。 これほどまでに広がりが早いのはたった1人の女子生徒のおかげだとも言われているが、『鬼神(オーガ)』から守るため、誰もが知らないと語る。

 そして、彼女の偉業はここから始まるのであった。 おお怖い怖い。

 

 さて、場面を移動し、2人で肩を並べ……ゴホン、同じスピードで歩いているが、どうやら会話が無い様子。

 

「……」

「……」

 

 このまま行っても面白くないので、少し心を読んでみましょう。

 まずは男子生徒、『ブラウニー』の衛宮士郎君から。

 

 やっぱり、一度織斑の家に行って一夏も連れてきた方がいいかもしれない。藤村のじいさんの話が長くなったら一人で家に居る事になる。

 

 おや、全く隣にいる織斑千冬さんの事を考えてないみたいですね。これは悲しい! それにしても私の見立て通り、朴念仁のご様子ですね。

 いやぁ! 仕g、ゲフンゲフン、見ごたえがありますね! これがゲームの主人公に与えられるというスキルですか! 見るのは初めてですよ。そうは思いませんか? ゲストの八雲紫さん?

 

 そうね、たまにはこういう甘酸っぱいのも見るのはいいけれど、私としても早く今回の異変を終わらせて、アナタ達を回収したいのだけれど?

 

 まぁまぁ! そう言わずに! それに私たちは解決するまでは一緒に行動(人生謳歌)

するのですから、見つけるのは容易いでしょ? それなら少しくらいこう言うのを味わってから戻りたいじゃないですか! 文々。新聞の為に!!

 

 はぁ、まぁ今のアナタは力を失っていることですし、手伝ってもらうことも限られる。仕方がないわね。

 

 それにしても、いいですね、『サトリの瞳』! まさかこの異変が能力を物体化するとは思いませんでしたよ?

 

 と言っても所詮は借り物、所有者以外には負担が有ります。無論、人間(・・)であればですけどね?

 

 助かります! これであの甘酸っぱいのを新聞に載せられますから! では、次は彼女をお願いします!

 

 はぁ……

 

 

 どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする

 え、衛宮と何を話せばいいのだ!? そ、それになぜ私と一緒に帰ることに!!?

 ま、まずい! 昨日のアレを思い出してしまう!

 

 ほうほう! 流石ブラウニー! オーガに横抱き、いえお姫様抱っこをするとは!! 私たちに出来ない事を平然とやってのける! そこに痺れる、憧れるうぅぅぅぅ!! よし、これも記事に書かなければなりませんね!

 おぉ! チラ見! チラ見! あのオーガがブラウニーにチラチラと見ながら顔を赤くするご様子が見られるとは! これは紅葉(もみじ)と颯(はやて)を連れてこればよかったですね!

 

 ふふふ、可愛いわね、それにしても現代にもあれほどの『  』を持つ者がいるなんて、ね

 

 ほう、流石はオーガ、いえ『  』を持っているのですから『ゴット・オーガ(鬼神)』と呼ぶべきでしょうか? あ! 見てください! チラ見をしていた織斑さんが、衛宮君とバッチリ目と目が合いました! どちらも目をそらさずに見つめ合う2人!

 

 ふふふふ、私にもあんな頃があったわね

 

え? うそでしy《ピチューン!》

 




ちょっと東方入れてみました。

出来れば今日中にもう1話作りたいですね、甘くしてみたいですね。
ガンバリマス。

誤字脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。
またアドバイス等も募集しています!


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こうして私は衛宮邸で居候になった9

 

 

眼と眼が合う、力強く、優しい瞳、けれどどこか盲目的で支えなければいけないと思い込んでしまう。昨日のお、お姫、いや横抱きされて彼の心の一部を聞いてから私はどこか上の空でこの日の授業を乗り越えてしまった。学校で『オーガ(鬼神)』と呼ばれている私が彼を、衛宮を見るとなぜか顔が熱くなる、伸ばされる両手はゆっくりと私の顎から、髪にそして髪を上げられ近づけられる彼の顔、先ほどの瞳は瞑られており、その仕草に私の心臓は爆発しそうな位に活発だ。

 

 この時、私は時が止まった気がした。重なる私の額と衛宮の額。間近で見る衛宮の顔にすでに売ってしまった漫画の一部を思い出してしまう。そう、唇と唇が重なり合う―――キス。

 瞬間、私は

 

 ドン!

 

 衛宮を突き飛ばしてしまった。 ああ、やってしまった。嫌われたなと自分の心がチクチクと痛みだす。だが時は戻らない。しかし心のどこかではこれで良いのだと思ってしまう、衛宮は純粋だ。だから穢れようとした私を助けたが、私は一夏に何かがあれば止められないだろう、交換条件など出されれば従ってしまう。

 

「いていて、スマン、少し近づきすぎたな」

「い、いや気にするな」

 

 なぜ突き飛ばした私を怒らないのだ? 距離を取ろうとしないのだ? 私に優しくしないでくれ、その優しさに勘違いをしてしまう。

 その後も衛宮は私との距離は離れなかった。再びゆっくりとして静かな時間が流れる。いや、何を話せばいいのかわからなくなる。私が考え込んでいると私の左手に触れる温かさを感じた。そちらを見れば幼い手が私の手を握られており、その手の持ち主はただ1人の肉親となった弟の一夏であった。

 

 一夏は何を思ったのか私と衛宮の真ん中に入り、私の左手を握り、反対を見れば衛宮の右手を握っていた。

 

「一夏?」

「ねぇ! ちふゆ姉! 今日学校で面白いやつと友達になったんだ! 名前がイッセーって言って、女の子になんか良く解らない事をやって、せんせいに怒られたりするのにいつもニコニコしてるんだ!」

「何か?」

「うん! えーっとちふゆ姉がきてる、そのひらひらをね? バサー!ってひろげてた!」

「そうかそうか。いいか? 一夏、絶対にマネするなよ?

 したら わ か っ て い る な ?」

 

一夏に一応脅しておく、全く誰がその男の子にスカート捲りなどを教えたのだ。もし見つけたらキン肉バスターとマッスルスパークをお見舞いしてやらねばならんな。全くどこのドイツだ、幼い子にそのような事を教え込んだ者は……。

 一夏はすごい速さでコクリコクリと頷いた。

 

「いいか? 女の子はそれをされるとイジメられてるって思い込むから一夏はやったらダメだぞ?」

「え!? そうなの?」

「ああ、そうだな、ズボンをいきなり下げられると嫌だろ?」

「うん」

「女の子にとってはソレと同じなんだ」

「そっかー、うん! わかった! しろ兄!」

 

 一夏が、衛宮に懐いていた。

 私は知らない事であったが、前に一夏を連れて行ったときに懐いて時々ではあるが衛宮の家に行くようになったらしい。ただ、私は忙しそうなので言わなかった様だ。衛宮は一夏が言っていると思っていたと後に解った。

 

「着いた」

 

 一夏と話している内に衛宮が目指していた場所に着いた様だ。ふと前を見ると大きな屋敷で『藤村組』と書かれた大きく立派な看板が飾られていた。

 

「へ?」

「おおぉ! おおきぃ!」

 

 藤村組、中学の私でも知っている冬木市で最も大きい極道、ヤクザで警察でも居場所は知られているのに手を出せないという力を持っている。

 

「む? おお士郎じゃねぇーか。どうした? ベッピンさんと子供連れて」

「爺さんに会わせてほしいんだが、今大丈夫か?」

「まぁ士郎なら大丈夫だろ? 虎の間に行きな」

「ありがとう、ていうか相変わらず虎の間が好きなんだな」

 

 ……衛宮が極道の部下と楽し気に話をしている。どこか笑いがこみ上げてくる気がした。なぜ衛宮が極道の人と仲がいいかは知らないが、滅茶苦茶すぎるだろうと思った。

 一夏は目がキラキラしながら家の中に飾られている壺やら絵やらに興味を持っているらしく忙しく目をキョロキョロさせている、なぜか虎が多いな

 

そして

 

「爺さん、少しいいか?」

『ぬ? 士郎坊か、入りな』

 

 私はこの時本気で衛宮が何者なのか知りたくなった。一般人である衛宮が極道の頭と知り合いというのは無理があるだろ!? 一体どういうコネなんだ!?

 

「ほう、ベッピンさん連れてついに色気づいたか?」

「織斑と俺はそういう関係じゃないぞ」

「そうかい、そりゃあ残念だな。それで?」

 

 その瞬間、私の体は勝手に動き、一夏の前に出てかばう様に構えた。いや、構えさせられた、この人から感じる気迫、いや殺気はそれほどのモノだ。しかし私が構えた事を目の前の老人はニタァと哂う

 この人は一体何なのだ、私が構えさせられるなど師匠と対峙する時だけなのに

 

「そう、身構えるな、安心しな。だが、子供に聞かせる話でもねぇな。オーイ! 誰か! 大河を読んで来い!」

『ヘイ!』

 

 しばらくしてドタバタと走る足音が聞こえ、襖を思いっきり開け、パーン!と言う音が響き渡る。襖を開けたのは年上に見える女性だった。大人しそうな雰囲気を出していて、いや前にモロあったことがある人だ。

 

「あれー? なんで織斑さんと一夏君がいるの?」

 

 藤村大河さんだ。以前衛宮の家で食べさせてもらったときに一撃で衛宮を葬った人物で結構面白い人だ。

 

「なんだ大河、知り合いか、ならええ、そこの子供とちょっくら遊んでやってくれ」

「む? 織斑さんと士郎は?」

「話し合いだ」

「! そっか、わかった。よし! いくぞ! 一夏君!」

「うん!」

 

 

 あれ? なんか一夏が行っちゃうことになってないか? 後ろにいた一夏が藤村さんと出ていき、ずっと立って構えていた私は急に恥ずかしくなり、元の位置に戻って座る。

 

 




お、終わらない。 
本来なら上中下で終わらせる予定がどんどんと長くなってしまいました。


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こうして私は衛宮邸で居候になった10

 

 

大河さんが弟の一夏を連れて行き、部下の人だと思われるスーツ姿の男性が私たちにお茶を出して数分、しばし静寂がわたしたちの間にあった。チラっと横を見ると私たちをここへ連れて生きた同級生、衛宮の瞳は瞑っており、よく見ると深呼吸をしている。

 なぜ、私たちをここへ連れて生きたのかは解らない。だが私たちをここへ連れて生きた以上は私たちに関する事で間違いはないだろう。

目の前にいる老人は私の師匠並みの覇気を感じさせる。極道である藤村組の長と言うのは伊達ではない様だ。

 

「それで? 呼吸は落ち着いたか? 士郎防」

「……ああ」

 

 問われた衛宮がそっと瞳を開ける。衛宮の容姿は日本人とは思えない赤銅の様な髪は何時もバカをしている私にいろいろと迷惑をかけてくれる親友(一応)であり、様々なモノを作り上げる天才、篠ノ乃束がよく学校から出た瞬間に使う発明品の「神! からーりんぐくん52号」で髪を黒から桃色へ変えている姿をよく見る。

が、衛宮は天然モノ、いつも髪色を変えている束とは全く違う。面もまぁなかなかなモノではないかと自分では思っている。

(あの日から織斑千冬が衛宮士郎の事をチラチラと見ている姿をクラスメートはニタニタとした表情で見ているという事を彼女は知らない。また、賭け事でいつカップリングになるかと言うのもやっている。)

 

「爺さん、織斑に援助してくれないか?」

「……それを言うつー事は、諦めるんだな?」

「……」

「待ってくれ、援助とはどういうことだ? それに諦める? すまないが1から説明してくれ」

 

 コッチが考えているときに勝手に進まないでくれ。衛宮を見れば再び目をつぶり、呼吸を落ち着かせている。藤村組の長を見れば覇気は増し、殺気すらにじみ出ている。

 

「なんでぇ、士郎坊、嬢ちゃんにはまだ言ってなかったのか?」

「言えば、断られると思ったからな」

「ほう、なら「けど」

 

 藤村組の長の言葉を衛宮は遮り、瞳を開け、私の方を見る。己の意思と決意が籠った力強い瞳だ。その瞳に私の心臓は一瞬止まったと思った。それほどまでに力強い衝撃を受けたのだ。あの日以来たまに衛宮を見ているが学校では見た事が無い衛宮の姿になぜか顔が熱くなる。

 しかし嫌な予感が私の脳内でベルの様に鳴り響いている。言わせてはいけない。後悔するぞっと。

 衛宮は私から再び藤村組の長へ向き直る。

 

「爺さん、オレは『衛宮切嗣』から貰ったモノを捨てる事は出来ない。例えそれが『呪い』だったとしても、『衛宮切嗣』が大切に持っていたモノを受け継いだ以上、オレはコレを捨てる事は出来ない」

「……なら、嬢ちゃんを諦めるってわけか?」

「それも出来ない」

「士郎坊、それは我がままってやつだぞ?」

 

 急展開で着いて行けない織斑千冬です。 え? どういうことだ? 真剣で真面目な話だという事はハッキリとわかるのだが、何が私を諦めるのだ? 何でエミヤキリツグという人、おそらくは父か祖父だろうが、受け継いだものを捨てないといけない?

 タイム、待ってくれ。私にもわかるように状況整理してから話を進めてくれないか? しかしこの2人が真剣に話している以上、いきなり展開を変えれば今流行りの「KY(空気読めないやつ)」というモノになるだろう、それにはなりたくない。

 しかし、止めなければ進むだけだ。ならば内容的に考えるしかないな。

 ①衛宮は藤村組の長と何か約束をしていた。

 ②約束については私に援助に関する事

 ③私を諦める=援助

 ④衛宮が受け継いだモノを捨てる=私の援助

 

 むぅ、なぜ援助に衛宮が受け継いだモノを捨てなければならない?

 

「我がままっていうのは解ってる。けど、目の前で不幸になろうとする人を見捨てる事なんかできない!」

「……はぁ、士郎坊。オメェは気づいてねぇ、その先に道なんざねぇんだよ。あるのは崖だけだ」

「爺さん、「大切」っていう漢字は「大を切る」んだ。残った限りない「小」は俺にとって皆や織斑、衛宮切嗣から受け継いだモノなんだ。これだけは斬り捨てる事も見過ごすことも出来ない!」

 

 気迫の籠った声に、力強い瞳に、決意した譲れない心に、目の前にいる藤村組の長に衛宮は獣の咆哮の様に言い放った。何かに動かされるようにただ真っすぐな姿はさながら物語に出てくる王に魔王討伐の使命を心に刻んだ勇者の様だった。

 『魔王討伐』という使命だけを胸にひたすらに旅をし仲間を連れず1人で試練を乗り越えて、魔王を討伐する。姫と結婚するというハッピーエンドが王道だが、私はなぜかその勇者が衛宮に見えて仕方なかった。

 誰の力も借りず、1人で成そう。人の為になろうという姿はまるで現代に蘇った勇者ではないか。思いついた瞬間から勇者の姿は青い鎧を着こんだ衛宮士郎になっていた。

 

「そう、か。儂じゃあ止めきれん、か」

 

 藤村組の長は項垂れる。悲しそうに、衛宮を見つめる。その姿を見て私は口走ってしまった。

 

「ならば私が衛宮を止めよう」っと。

 なぜこの様なことを言ったのかは未だ自分でもわからないが、衛宮が道を外そうとするのならば私が剣で切り裂いてでも道を戻させればいい。2度も道を外そうとした私を救ってくれたんだ。それくらいは良いだろう。

 

「嬢ちゃん、士郎坊は固いぞ?」

「ならば叩き割ろう」

「士郎坊は頑固だぞ?」

「なら切り裂いてやろう」

「……士郎坊を頼む、代わりに嬢ちゃん、お主たちを援助してやる」

 

 む? 良く解らんが援助してもらえるようになった。

 




久々の居候シリーズ更新。
千冬さんを少しでも可愛くかけたかな?っと自分では思います。

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こうして私は衛宮邸で居候になった11

 

藤村組の長に衛宮を任され、援助をしてもらうことになったのだが、私、織斑千冬と弟の織斑一夏は衛宮の家に居候することになった。理由は簡単で藤村組の長に言われたからである。

 援助してもらっている身に断る術なんぞない。了承すると藤村組一同が私たちの家に詰め寄った。こちらも理由は簡単、引越し屋の変わりだ。

 申し訳が無いという気持ちはあるが、なぜか部下の方々は生き生きとしておりみなさん笑顔で運んでいる。黒スーツの黒サングラスを付けている極道の方々がしていると思うとものすごくシュールだが。

 

「なんでさ」

 

 ちなみに私の部屋は衛宮横にある部屋で一人部屋だ。まぁ一夏はまだ小さいから寝るときは一緒だがな。

 

「諦めろ、それにお前が長に私たちの援助をしてもらうように言ったのだろう?」

「いや、それはそうだけど、まさかその日のうちに引っ越しから書類やら全部やってくれるとは思わなくってさ」

 

 それは確かにそうだ。早い方がいいからと言っても早すぎである。

 しかし前に比べると家と学校の距離が短くなっているし、何気に道場からも近い。いいこと尽くしだ。無論、高校生になったらバイトをしなければならんな、いくら一夏が成人するまでと言っても早めに返済して行かなくては私の気が落ち着かん。

 

 む、そういえばこれからは一緒に住むことになるのだ。何時までも名字呼びもいかんな。

 

「し、ししししししっっっ!!」

「行き成りどうしたんだ?織斑」

 

 恥ずかしい。

 なぜ名字から名前呼びに変えるだけなのにこんなにも恥ずかしいんだ!? だが、ここはやらねばならん! そう! 敵を切り込むが如く、素早く喉を切り裂く様に!

 冷静になれ、頭が冷静でなければすべては敗北へつながるのだ。頭は冷やせ! 体は熱くしろ! 対峙する者を観察しろ、一瞬たりとも眼を離すな。あるのは1体1の戦い、戦闘だ! 目の前にいる敵に一瞬で距離を詰め、刀を振るう! 狙うは喉元! 一瞬で切り裂き、血が噴き出す前に距離を取る! 

 タイミングを計れ、瞬時にできる瞬間を待つのだ! 最高の瞬間を―――!

 

「士郎!」

「お、織斑?」

 

 おぉ! 言えた! ふむ! やはり戦闘論が一番正しいようだな。敵(士郎)は戸惑っているが、気にすることはないか。

 先ほどなぜあれほどまでに恥ずかしい気持ちになったのかはわからんが、気にする必要は無いな。一夏も衛宮、いや士郎の事を気に入っているし、高校生になれば私もバイトをするだろう。家に一夏を一人だけ残すなんて可哀そうなことは出来ないと思っていたんだ。

 士郎の家に居候するという手は恥ずかしいが良い一手だったのだな、としみじみに思う。

 

「なんだ。士郎」

「いや! なんでいきなり名前呼びなんだよ!?」

「何を言う。これから一緒に住むのだぞ? 何時までも名字呼びではいけないと思っていな」

「それは、そうかもしれないけど」

 

 怯んだ。この隙を見逃すな、殺るのは一瞬の出来事だ。攻めるときに攻め込め、一撃離脱をし続ければ倒せれるだろう。

 

「確かにいきなりで私も少しばかり恥ずかしいと思うところも有るが、これもそれもお前が私たちにしてくれたのだ。ならばコチラも仲をよくするのが普通ではないか?」

「むっ……」

「それに、私も一夏も『織斑』なんでな、私に『織斑』と言えば一夏も反応するだろ?」

「それは、そうだろうけど」

「たかが名字読みから名前読みになった程度だ。それに……」

「それに?」

 

 この時、私は何も考えずに言ってしまったのだ。遠くない未来で柱に頭を叩きつけて何本もダメにしてしまった私が言うのだから間違いはあるまい。

 だけど、そう、この時にはすでに『衛宮士郎』という一人の男を信頼してしまったからだろうな。今の私の周りにいる男性と言えば士郎を除けば家庭を持つ篠ノ乃道場の師範代位しかいない。

 流石に篠ノ乃家にお世話になるわけには行かん。アイツに借りを作るのも癪に障るしな。

 だから、士郎。 お前だけは

 

「お前の事を『信じている』からな」

 

 信じさせてくれ。

 

「――わかった。なら俺も『千冬』って呼ぶよ。これからこの家に一緒に住むんだし、俺たちは『家族』みたいなものだろ」

 

 ああ、どうしてお前はそう欲しい言葉をくれるんだ。

 その事が嬉しくも有り、私の事を知られているという恥ずかしさがある。

 

 急に失踪した両親の事は解らない。普通の人だと思う、どのような借金をしたのか、なぜ「私たち」を置いて行ってしまったのか。

 今の私には探す術も調べる術もない。もう、『家族』はバラバラになったのだ。

 けれど一夏だけは、何も知らない私の可愛い弟だけは何をしてでも守ろうと決意をしたし、立派な大人にしてやろうと心に決めたのだ。

 例え、私が穢れ切ってでも……。

 

「ち、千冬も何かあったら言ってくれ、俺はお前の助けになりたい」

 

 あの時、あの公園で見つけてくれたのが、お前で本当によかったと思える。

 お前は真剣に私の事を考え、バカなマネをしようとした私を引っ張り上げて、私が考え付かない方法で私たちを助けてくれた。実行してくれた。

 だから……

 

「ありがとう、士郎」

 

 流れ出る涙は今日で最後だ。

 私はもう涙を流さない。あるのは私なりの笑顔にしよう。

 私はお前に助けられた。だからお前がバカな事をしようとするならば、私はお前を助けよう。

 





居候編一応完結です。
おまけでもう少し書きます。

我らが千冬姉様はこの様な感じで衛宮家に居候することになりました。
最初に投稿したのが去年の11月の6日、現在6月の23日。
長かったですね、いろいろと書いてたらこんなにかかるもんなんですね。

皆さんの感想で書き続けることが出来ました。
本当にありがとうございます。
他の章、過去編なども完結していこうと思いっきり妄想していく所存です(笑)

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この様な作品で良ければ読んでくれるとうれしいです。
感想をくれるとさらに嬉しいです。


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過去編ー聖杯戦争―
運命の夜


「問おう、アナタが私のマスターか?」

 

土蔵に現れた一人の女性は俺に問いかける、けれど俺は問いに答える前に彼女に見惚れてしまった。

月光によって照らされたその凛とした姿は決意と覚悟という銀色に輝くドレスアーマーを身に纏い、エメラルドグリーンの瞳は綺麗な美しさを持ちながらもどこか寂し気に、月光に照らされた金色の髪は儚げで、彼女はまるで孤高に咲く一本の青いバラの様であった。

 バラ、彼女を花に例えていいのかは解らないけれど、力強い気迫が彼女から伝わってくる。

 

「サーヴァント・セイバー、召喚に従い参上した」

 

 セイバーと答えた彼女の事は良く解らない、解る事と言えば俺はこの夜、運命が変わる瞬間である事だけは解った。

俺は心の奥底で願っていたのかもしれない。爺さん、衛宮切嗣の夢を叶える事が出来るかもしれないと『思ってしまった』。

 

「マスター、指示を」

 

 『正義の味方』になるという夢を。 千冬と会ってから、守ると誓ったのに。

 俺はこの時『喜んでしまった』のかもしれない。彼の様に、俺を炎から救い出してくれた爺さんが諦めてしまった夢を代わりに叶える事が出来るかもしれない。

 

「これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある」

 

 それは自分自身でも解ったはずだった。教えてもらったはずだった。

 『正義の味方』と言うのは歪な存在であるという事を、彼女達から教えてもらった。

 

「ここに、契約を完了した」

 

 『正義の味方』になるという事は己の心すら殺し、忍ばなければならない。より多くの人々を助けるという事は、『人間』を数字で見なければいけない。

 すべてを助けることが出来ないという事は『知っている』、犠牲の上に人々は生きているのだから

 自分を犠牲に他の人を助けるという事は崖に堕ちそうになっている人の代わりになるという事だ。だが、それが一人ならば投げる要領で助ける事ができるだろう。それが2人なら? 3人なら? どうやって助ければ良い? 救うことが出来る?

 

『バカだね。お前、全知全能神様じゃないんだから出来る筈が無いだろ?』

 

 あぁ、そうだ。何でも出来る神様と犠牲しなければ行動できない人間とでは出来る範囲が違う、それでも諦めたら聞こえてくるんだ。

あの時の声が、「助けて」という人の声、「この子だけでも」という子供を助けて欲しいという親の声が、「一緒に連れて行ってくれ」というあの地獄から抜け出したい。生きたいという意思を持った様々な声が俺を攻めてくるんだ.

 

『愚問ですね。大切なモノですよ。

知っていますか?『大切』っていうのは『大』を『切』るのですよ』

 

 本当に守りたいモノが有るなら、何かを捨てなければいけない、切り捨てなければ守ることが出来ない。

 

『ならば、私が守ってやろう、衛宮には助けられたからな。衛宮が捨てなければいけないモノを私が守ってやる。 無論、お前もな』

 

 あの時の千冬の言葉が脳裏に走った。

 それだけで俺は安心した。 呼吸を落ち着かせることが出来た。

 今は目の前にいる彼女の事とか召喚だとか解らない事を埋めていかなければならない。一体俺はどういう状況なのかを、解る事と言えば非日常的であること。それはつまり『魔術』が関連する事だけは解る。

 けれど俺はこの土蔵で魔術の訓練には使っていたけれど、物語に出てくるような儀式とか魔術の術式を書き込んだりしたことはない。

 一時期中二病を拗らせた友人の一人がここで詠唱をするところを見てしまっただけだ。

 

「外にサーヴァントの気配、マスターはここにいてください」

 

 セイバーと名乗る彼女はそういうと何かを構えながら土蔵の外へと走り出した。止める暇なく出て行くセイバーを追う様に俺も土蔵の外へ走り出す。

 やはり魔術が関係している! 俺より年下だと思われる少女があんな速く、いや圧倒的に速く走れるわけがない。いたらオリンピックを6連勝以上はしている……!

 

 

 土蔵の扉の前に出て俺はようやくその光景を目の当たりにした。俺をマスターと言ったセイバーと名乗る少女と赤い槍を振り回し、神速の突きを繰り出す青い男の攻防。どちらも引かぬゲームや漫画に出てきそうな風景が今、俺の目の前で起こっていた。

俺には何本にも赤い筋しか見えない青い男の赤い槍を目には見えない何かで防ぎ、反らすセイバーの姿であった。

 セイバーの戦っている姿はまるで踊るかのようでドレスアーマーを着ている所も有り『姫騎士』と呼ぶに相応しく、可憐で儚い姿なのに戦乙女(ヴァルキリア)のように勇ましい。

 む、慎二の影響が残っているみたいだ。セイバーを見てスグに姫騎士とかヴァルキリアとか思ってしまったのは悪くない。慎二が悪い、と言うことにしよう。そうしよう。

 

 剣と槍の金属同士がぶつかり合う甲高い音、擦れる音が繰り返されながら凄まじい砂煙が舞い振るわれるたびに地に堕ちることなく、どちらかが避ければ庭の地面は走る跡や斬りつけたような跡が付けられる。

 俺がその光景に目惚れてしまうところで両者が距離を離し、武器を構え直していた。

 

「卑怯者めッ! 己の武器を隠すとは何事かッ!!」

「止まっていてはランサーの名が泣くぞ? それに見えぬのなら暴けばよかろう。貴様にできるのであればな。ランサー」

「ハッ、ここで札を切る気はねぇなぁ……!」

 

 

 激高し吼えるランサーと呼ばれた青い獣の様な男の問いにセイバーはただただ冷静に返す、ランサーはセイバーの表情を見ると激高していたはずが一気に先ほどと同じ様に冷静に槍を構える。

 

「なら一つ教えろ、テメェの『それ』は剣か?」

 

 ランサーの言う『それ』、セイバーが持つ目には見えない何かの事であろう、やはり武器が見えないというのはそれだけでも『武器』になるのだろう、姿かたちが見えるというのは情報の一つだからな。

 ……藤田にどれだけ「見えるけど見えないもの」と言う名の『情報戦』で奢らせられたかわからない。お返しに目隠しさせた状態で世界的に有名な某麻婆豆腐を奢ったけどな。

 あの時の貸しを一つ消費したけれど藤田の絶望に満ちた顔をしながら食べている姿に満足した。ああ、おそらくアレが愉悦と言うやつなのだろう。

 

「さてな、剣か、槌か、槍か、いや弓かもしれないぞ?」

「ハッ、ぬかせ『セイバー』」

 

 セイバーとランサーは互いに軽口をしながらじりじりと距離を詰めていた。二人から感じるプレッシャーはまるで大太鼓を鳴らすかのようにジリジリという振動が伝わってくる様であった。

 

「フッ!!」

「ハッ!!」

 

 再びぶつかり合うランサーの赤い槍とセイバーの目には見えない何かがぶつかり合う。金属同士がぶつかり合うたびに俺の方へ振動と突風が吹き荒れ、バランスを保つのも難しい。

 だが、中心で戦闘をしている二人は台風の目にいるかのように何も感じずにいる様にも見える。

 

 セイバーは長い槍を持つランサーを相手に見えない何かで槍を受け流し、弾くがランサーは瞬時に槍が届く距離を取りつつ攻めてくるセイバーが両手持ちで持っている何かを見つめていた。

 

 2人が同時に距離を取ったところで砂煙の嵐が一旦途絶える。

 

「セイバー、ここは一旦休戦と行こうじゃねぇか。どうやらテメェのマスターはコレ(聖杯戦争)の事知らねぇみてぇだしな」

「断る、ランサー。貴殿はここでリタイアせよ!」

「そうはいかねぇ、なにせウチのマスターはこのオレに諜報まがいな事をさせてやがるからな。テメェとは全力で戦いたいんだよ」

 

 ランサーがそういうと後ろを軽く飛ぶ、いや人間とは思えない長距離飛びを発揮させ、俺の家の屋根の上へ着地する。

 学校の時といい、一体あいつは何なんだ。 人間の様な化け物としか思えない。

 

「待てッ!」

「追いかけるなら追いかけて来い、セイバー。

だが、決死の覚悟を持って来い。今度の俺は手加減する気はねぇ……!」

 

 ランサーが俺達を睨み付ける様に言い放つ、その赤い眼光は嬉しそうにも見えた。けど俺にはもし今ランサーを追いかければその手に持つ赤い槍によって胸を貫かれると思い込んでしまった。

 2度も胸をあの赤い槍に貫かれたくはない。

 屋根の上から飛んでいき、ランサーの姿は消えた。セイバーもしばらくは構えた状態だった。

 

「大丈夫ですか? マスター」

「あ、あぁ俺は大丈夫だ。だけどお前たちは、一体、何なんだ……? 俺をマスターだっていうなら教えてくれないか? こっちは何が何だかわからないんだ」

「……自ら望んで参加したわけではないということですね、質問に答える前に新たなサーヴァントが着ました。マスターはここでお待ちください」

 

 セイバーはそういうと外壁を飛び越えて言った。俺が止める暇すら与えず。

 次に聞こえてくるのは金属同士がぶつかり合う音、ランサーとセイバーが戦っていた時と同じような音だ。

 

「勝手に戦うのは良い、いや良いってわけじゃなけど、巻き込むなら説明してくれッ!」

 

 取りえず、俺は戦闘を行っているであろう家の外へ行く、門をくぐり、外壁を辿っていくと学校で見た。いや俺がランサーに殺される原因、それは戦いを見てしまったからだ。

 そして、ランサーと戦っていた相手、それが今セイバーと対峙する赤い外套に漆黒のボディーアーマーを身に着けた白髪のオールバックヘアーをした褐色系の男であった。

 校庭で見たランサーとこの赤い外套の男の戦いは目に焼き付いて離れない。まさに神懸った戦いの様で神話の世界が現実に飛び込んできたと錯覚するほどだ。

 

 ランサーの槍による突きは速度が尋常出会い程に早く遠くで見ていた俺はまるで赤い光の筋が通っているようにしか見えなかった。

 逆に赤い外套の男は手に持つ双剣で赤い光の筋をすべて受け流し、回避しきったのだ。

 目の前で戦うセイバーと赤い外套の男の剣戟はランサーとは違い剣と双剣だがそれでも目が離せない。

 

「チッ!」

「フッ!」

 

 今度は赤い外套の男が黒と白の双剣を振るい、セイバーが見えない何かを振るう。赤い外套の男はランサーとは違い目には見えない筈のセイバーが握る何かを受け止めることはせず、反らし、回避していた。

 

「……」

 

 俺は赤い外套の男の双剣を使う剣技が見惚れてしまうほどに見つめていた。良くは解らないけれど、見れば見るほど俺の中で『できる』と思わせる。

 冷静に考えればあんな剣速ほど振るう事は出来ない。

 けど、『剣を振る』ことは出来る。

 

「ハァァァ!!」

 

 セイバーのと赤い外套の男の剣戟はセイバーの一撃で終わりを告げる。

 赤い外套の男が持っていた双剣がセイバーの見えない何かによって砕かれ、そのままボディーアーマーを大きく切り裂いた。

 

「ッ!!」

 

 赤い男は直ぐにセイバーと距離を取るがセイバーは取られることは分かっていた事だったのだろう。そのスピードを持って再び赤い男へ剣を振るう。

 すでに赤い男の両手には先ほどの剣を持ってはおらず、無手。このままセイバーによって切り裂かれる。そう考えたとき、ドクンっと心臓が高鳴る。脳裏に思い浮かぶ炎と連鎖される声と焼きただれる人々の姿。

 間違っていることは分かる。おそらくはあの赤い男も敵なのだろう。けれど止まられずには居られなかった。

 

「やめろーーー!! セイバーー!!」

 

 今まで出した事が無いほど声を張り上げる。

 考えるのはただ1つ、『セイバーを止める』ことだ。

 

 右手が熱い。 右手と言うより甲が火傷したかのように熱い。そして俺には金属の甲高い音とは違う、不思議な音と共にセイバーは急に動きを止めた。

 




お久しぶりです。
長らくお待たせしてすみません。

ちょっと書き方を考えながらFateを書いてたり、リリカルの方の設定を考えてたりしたら一ヶ月過ぎていました。


どうですかね? なるべく自然かな?とおもうとは思うのですが……。
書き方が安定しない作者の実力に申し訳なく思います。


誤字、脱字。ご意見ご感想は「感想」にてお願いします。
またアドバイス等もお待ちしております。


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始まりの夜

 

 

「やめるんだ! セイバー!」

 

衛宮士郎の声は停止するセイバーと赤い外套を纏った男、そして衛宮士郎には見えなかったが、赤い外套の男の後ろにいる1人の少女は良く聞こえた。

 

「なぜです。マスター。彼はサーヴァントとそのマスター! わたしたちの敵です!」

「俺をマスターだっていうならまず状況をちゃんと説明してくれ!」

「それは後程改めて説明します! ですが今は目の前の敵を排除が最優先です。停止を解いてください!」

 

 セイバーは震える体でその両手で持ちながら見えない何かを構えながら先ほどまで戦っていた赤い外套の男から視線を外さず衛宮士郎に停止解除を求めた。

 セイバーも召喚されてから近くにいたランサーが居たために『聖杯戦争』の事を何も知らないマスターに説明する暇が無かったのだ。しかもランサーが去った後に今度は別のサーヴァント―――目の前にいる赤い外套の男とそのマスターが居たのだ。

 説明するよりもまずは敵の排除に動くのはマスターを守るサーヴァントをしては当たり前の行動であろう。寧ろ説明しようとするサーヴァントだったことに衛宮士郎は感謝するべきだろう。自分勝手なサーヴァントならば衛宮士郎をマスターとして認めず、いずれは殺されるだろう。

 

「俺と同じマスターがいるってなら、ます俺が話をするから。戦闘は後にしてくれ」

「……正気ですか? 何も知らないマスターが交渉するなど、歴戦の軍師と無学な民が戦局を話し合うようなモノ。 アナタには無理な話です」

 

 はっきりとした声でセイバーは言う。歴戦の軍師と無学な民、それはまさしくセイバーと衛宮士郎を指している。歴史の中で無学な民が戦略を練るなどと言うのは不可能と言っても良い。なぜならば『知らない』のだから。

 知っている事と言えば自分たちが日常の生活に役立つ事、農家ならばその売値と野菜の価値、鍛冶師ならば打つ金属の性質と火加減、料理人ならばレシピと料理の事柄。

 さらに簡単に言えば素人がプロの仕事に口出しをするようなモノ、何も知らない素人にプロは嗤う、怒るかはプロの性格次第と言える。

 だが、プロとしては「知らない癖に仕事に口出すな」と言うだろう。今の状況も同じ事だとセイバーの言葉には詰まっている。

 

 衛宮士郎はセイバーの言葉に厳しさと優しさに感謝した。

 

「ありがとう、セイバー。だけど俺をマスターだって言うなら、今は俺に付き合ってくれ」

 

 はっきりとした言葉、甘さがある覚悟、そして衛宮士郎の真っすぐとした性格。その全てがセイバーは感じ取った。

 記憶に残るマスターと違いを比べれば考え方、覚悟、魔術師としての実力、全てが明らかに劣るだろう。だが、真っすぐとした性格だけは好めるとセイバーは少しだけ思った。

 

「……いいでしょう。今は貴方がマスター、私はそのサーヴァントです。その指示に従いましょう」

「すまん、セイバー」

「ですが、この停止だけは解除してください」

 

 セイバーとしてはマスターである衛宮士郎との会話中という隙だらけの状況で目の前にいるマスターである少女が赤い外套の男のサーヴァントに指示をしなかった事も踏まえながら衛宮士郎の指示に従うことにした。

 

「あー、もういいかしら? 衛宮君?」

 

 敗北寸前で敵のマスターの衛宮士郎に助けられ、戦闘中にも拘らずサーヴァントと話し合うという隙だらけの状況に白けてしまった。マスター、サーヴァントの両方とも。

 

「お前は、遠坂!? 何で遠坂がこんなところに?」

「はぁ、もうなんていうか。アーチャー、今日のところはセイバーと衛宮君との戦闘は禁止。いいわね?」

 

 衛宮士郎が通う穂群原学園の同期であり文武両道、容姿端麗でありマドンナ的存在だ。衛宮士郎としても実は憧れている所があるのだが、某友人が遠坂凛の事が嫌いな為、口に出したことはない。

 疲れ気味に赤い外套の男、アーチャーに指示を出すと、アーチャーはヤレヤレといったポーズをして消えた。

 

「衛宮君が何も知らない事が解ったわ。セイバー? 今日のところは一時休戦しない? 私としてはルールを知らない素人を甚振る趣味は持ってないしね」

「……いいでしょう。今日のところは信じましょう。アナタは優秀なマスターの様だ」

「あら、最優のサーヴァントにそう言われるのは嬉しいわね。さて、衛宮君? 家に上がらせてもらうわよ」

「え? あ、あぁ」

 

 衛宮士郎とセイバーの間を通り過ぎて遠坂凛は衛宮士郎の武家屋敷へ入っていった。衛宮士郎とセイバーは少し茫然としてから慌てて家の中へ入っていった。セイバーとしてはいくら休戦したとはいえ拠点となる場所を勝手にされては困る。衛宮士郎としては客に茶を出さなきゃと思いながら弟分がまだちゃんと寝ているかを見るため。

 

 この夜から始まる聖杯戦争――7人のマスターと7体のサーヴァントの生き残りをかけた戦いが始まろうとしていた。

 果たして、生き延びるのは「誰」か? 誰が死にぬのかはまだ誰も知らない事。

 手に入れる『聖杯』はただ1つ。また手に入れるマスターとサーヴァントのコンビもまた1つ。

 

 汝、聖杯を欲するのならば――『最強』を持って証明せよ。

 




お久しぶりです。
とりあえず、気が向かない限りはFateの方を書いて行こうと思います。
次はバーサーカーとイリヤまでは書きたいですね。

ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。
評価の1をされる方へ。
出来ればどこが悪いのかを指摘してくださると助かります。
またアドバイス等もお願いします。


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ちふゆ姉!おれ、サーヴァントしょーかんした!

「ちふゆ姉!おれ、サーヴァントしょーかんした!」

 

「はぁ?」

 

 突然、私織斑千冬の弟である織斑一夏〈小学4年生〉はこんな状況の中、ありえない言葉を聞いてしまった。私の後ろで荷物を降ろしている遠坂と衛宮もその動きを止めたのがわかるほど、周りはしんと静まりこんだ。

 

 私たち姉弟はこの聖杯戦争中、衛宮の家で安全確保をしている。巻き込んでしまった一夏には悪いが、一夏のためだ。学校も家庭の事情により休みを取らせている状況だ。とはいえ食糧調達のために私、衛宮、遠坂とサーヴァントのアーチャー4人で商店街へ買い出しに行っていた。一夏はセイバーと共に留守番をさせていた。

 ふむ、やはり聞き間違えか。

 

「一夏。もう1度教えてくれるか?」

「だから! おれ、サーヴァントしょーかんしたんだって!」

 

 聞き間違えではない。

 ギギギギギという古い機械が出す音をだしながら私は一夏の後ろで下向いているセイバーを見る。顔を上げない。どこか恥ずかしそうにしている気もしている。

 

「ど、どどどどういうことよー!!?」

 

 あ、遠坂が噴火したか。

 荷物を放り投げて遠坂は一夏の両肩に手を置き、物凄い勢いで一夏の頭を揺らす。見て入れず、私が止めようとしたとき、赤い人、アーチャーが遠坂を止めた。

 

「まぁ落ち着け凛。今は情報が最優先だ。一夏、そのサーヴァントはどこにいる?」

「いま? 今はえんがわだっけ?そこでお昼寝しているよ!」

「では居間へ行くぞ」

 

 私はアーチャーの指示に従い、一夏の手を握り衛宮家の居間へと向かう。

 居間にて、見慣れない桃色の髪に金の瞳、ドラ○もんのような赤い首輪と黄色の鈴をつけ赤い着物、だが脇を出しており花魁のような服装だ。しかも上だけであり下は私には到底着ることができない短すぎるミニスカートに黒のストッキング。

 その光景に少しイラつくがそこは置いておく。この雰囲気の中居づらそうにしているセイバーから話が始まった。

 

 私たちが買い物へ出かけた数分後のことだったらしい、それまでテレビを見ていた一夏が紙に何かを書き始めていたようだ、それをセイバーは見守っていた。

 

「できたー!」

「む? 何ができたのですか?イチカ」

「まほーじん!」

「え?」

 

 一夏はその時見ていた「0の使い魔」というアニメを見ていたようだ。プロローグからのようで、登場人物たちが魔法陣を使い、動物を召喚しているところを見ていた一夏は自分も動物を召喚したいと思い、そのアニメで使っていた魔法陣を見様見真似で書いたらしい。

 セイバーもそのことを聞いて一夏を微笑ましく見ていたようだ。小学生の考えであり、魔術師でもない一夏ができるわけがないと思ったからだそうだ。

 ふむ、私も一理ある。だが現実起きている。 話を続けよう。

 

「ふふふ、そうですか。では早速召喚するのですか?」

「えっと、えっと、あとは動物のしゃしんがいるんだ!」

 

 そう言って一夏は家から持ってきた動物図鑑を部屋から持ってきてセイバーと一緒にどんな動物がいいかを見ていたようだ。

 一夏は偉いのか、もし家の中で大きな動物が出てきたら大変!っと考えたらしく、庭で作った魔法陣の紙をしいて、上に動物図鑑を猫のページで開きおいた。

 

「えっと、わがな?は織斑一夏! 五つの力を司るペンドラゴン!われのうんめいに、した、がいし使い魔をしょーかんせよ!」

 

 当然出るわけがない。当たり前だ、そんなので出たら世界中で子供たちが召喚している。

 だが、一夏は諦めなかったようで家中で同じことをしたそうだ、無論セイバーも付き合ってみていた。どうせ出るわけがないのだから好きにやらせればいいと考えたとのこと。

最終的に土蔵で同じようにくしゃくしゃになった魔法陣の紙と動物図鑑をしいた。

 

「わがなは織斑一夏! 五つの力を司るペンドラゴン!われのうんめいに、したがいし使い魔をしょーかんせよ!」

 

 起きるはずがない、ハズだったのだ。

 一夏が作った魔法陣から魔力があふれだすのではなく

 紙の魔法陣の下にあったサーヴァント召喚に使う魔法陣から魔力があふれだしたのだ。

 魔力が渦を巻きながら一夏の動物図鑑がその影響でペラペラと捲れだした。

 キィィンという音が耳に入ったところでセイバーは正気に戻った。

 

「イチカ!」

 

 すぐさまセイバーは一夏を抱えて魔法陣の外へ連れ出し、剣を構えた。

 驚いたのはあふれだした魔力が人の形へと顕現した。

 

「ふふふ、まさか我を呼び出したのがこんな幼子とはな。

我こそはタマモナインの一角、野生の狐タマモキャット! ご主人、よろしくな」

「うわぁぁぁ! せいばー姉さん! 出てきたよ! 成功だよ!」

「すまない、イチカ。少し待ってください。 アナタはサーヴァントですね?」

「サーヴァントかどうかは気配でわかると思うが?」

「ッ! 失礼した、ではクラスはなんですか?」

「バーサーカーのクラスをもって顕現したようだな」

「イチカ! 体は大丈夫ですか!?」

「ほへ? なんともないけど」

 

「ちょ、ちょっとまちなさい! ば、バーサーカーのサーヴァントなの!?」

 

 話の途中、と言っても殆ど終わっているが遠坂が身を乗り出して一夏とサーヴァントを見つめる。

 後で聞いた話だがバーサーカーのサーヴァントは弱い英霊を強化するためのクラスだという。あの時戦ったバーサーカー、ヘラクレスは思いっきり例外中の例外だそうで、狂化という理性を消し本能のままにすることでランクを上げる。代わりに制御が難しく、マスターは体に影響があるほどだという。

 

「一夏、本当に体は何ともないんだな?」

「フッ、安心するがいい。召喚されたのがこの私でよかったと喜ぶがいい」

 

 膝枕されて頭を撫でられていたサーヴァントが身を起こして私たちの方を見る。

 バーサーカーのクラスのはずなのに、ヘラクレスとは大違いだ、理性があるように見えるし、狂っているようにも見えない。

 

「お前たちにも自己紹介しておこう。

我こそはタマモナインの一角、野生の狐タマモキャット!

好きな者はご主人! 嫌いな者は他のナイン共だ」

「……まさかタマモって「玉藻の前」のことかしら?」

「ふっふふふ、その通り!」

「なぁ、遠坂「玉藻の前」って、九尾の妖狐だよな?」

「その通りよ、けど彼女のしっぽは一尾。一体どういうことなのかしら?」

「今回はご主人のことだから答えてやろう! 私は自分に必要魔力はご主人であるイチカから受け取っておらん! ついでに言っておくが他人からも取ってないぞ。

大気の魔力ですべて補っているだけだ」

「……大気から魔力を? そんなことできるわけ、ないんでしょうね。いえ出来ているからこそ一夏君は生きているだし」

「ふっふふふ~感謝するがいいぞ! バーサーカーではあるが、玉藻から分かれた私は魔術が使えるのだ!」

 

 そう、だな。魔術とかはわからん。だが、タマモが一夏から奪うはずの魔力をすべて補っている。これは喜ばしいことだ。一夏は死ぬことがないだろう。あとでもう少し確認するべきだな。だが、問題は……

 

「タマモ、お前は聖杯に何を願う?」

 

 聖杯だ。聖杯戦争中に味方が一騎増えたのは喜ばしい、だがそれは聖杯を願うものが増えたという事でもある。 もし、タマモの願いがそれ相応の事柄ならば今すぐにでも一夏から引き離し、消す必要がある。

 

「聖杯だと!? それは伝説に聞く、ゴールデン猫缶なのか!?」

「「「「はぁ?」」」」

「ゴールデン猫缶はどこにあるのだ!? 山か? 海か? 川か? ええい!早く答えろ!」

 

 なんだか怒り出した。

 うむ、タマモは大丈夫だな、喜ばしいことだ。どこか束に似ていることを除けばだが。

 

「タマモおなかすいたの?」

「む、そうなのか? よし、イチカ一緒に作るぞ」

「うん! シロウ兄!」

「あんたらねぇ、状況わかってんの?」

「なんでさ。もう夜の6時になるし、それに今から作らないと藤ねぇが突撃してくるんだぞ?」

「シロウ、今日の晩御飯は何ですか?」

 

 ああ、警戒していた私がばかだったと思うほどいつもの日常に戻っていく。だれか、私にお茶をくれ、それで落ち着くから。タマモをちらりと見ると尻尾をぶんぶんと振っている、その姿につい、頭を撫でる。

 あ、ごろごろ言っている。 かわいい。

 

 夕食までの間、私はこうして癒された。いや、聖杯戦争中タマモを撫でるという癒しを見つけた私は急速にタマモと仲良くなっていった。

 




時間列めちゃくちゃすぎて笑える。

はい、すんません。

聖杯戦争がどうとかという感想改めて読んでいたら
アイフォンを見ました。
グランドオーナー起動→サーヴァント見た→リリィはダメだしなぁ。→あタマモ。
という感じで決まりました。

また書くときは時間列はどこになるかは私にもわかりません。
幻の藤ねぇルート書くかもですね


誤字脱字があれば感想で教えてください、お願いします。


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ご主人! 私と共にハロウィンパーティーにゆくぞ!

「ご主人! 私と共にハロウィンパーティーにゆくぞ!」

 

 10月31日、今日は土曜日という学生にとっては嬉しい曜日だ。次の日は日曜な為、遅くまで起きていられるし、なにより学校がないと感じられる曜日でもあるのだ。そんな土曜日の休日それは突然のことであった。

 冬木市にある日本の武家屋敷である衛宮邸、現在この家には家主以外に織斑家が居候している、と言っても家主である衛宮士郎は家族と住んでいる意識であるが。

 しかしながら現在は居候中の弟、織斑一夏とサーヴァントのタマモキャットのみである、それはなぜか、家主の衛宮士郎が居候中の姉である織斑千冬、魔術の師の遠坂凛、学校の後輩である間桐桜、サーヴァントのセイバーと共に新都の方へ遊びに行っているのである。

 衛宮士郎が断言しているので間違いなく、例え4人が黒いオーラだしていたり、真っ赤なオーラだしていたり、剣気を出していたりして戦闘するかのような気迫を放っていたとしても、様々な手を使い2人きりになろうと策を練っていたとしても新都へ遊びに行ったのだ(大事なことなので2度め)

 ちなみに姉の織斑千冬は弟の一夏が一人になることに不安を覚え、悔しながらも遊びに行くのをやめようとしたが、あまり話が通じないタマモによってそれは防がれた。

 よって現在織村一夏は部屋で漫画を読んでいたのだが、突然、襖がバーン!と開けられた! そこには一夏のサーヴァントであるタマモキャットだった。手には黒い手紙を持っており、ニッと笑っていた。

 

「タマモ、ハロウィンパーティーってどうしたのさ」

「うむ! ニンジンが食べたいと思った私は電話をかけ、ハロウィンパーティーに参加することにしたのだ!」

「そっか、でもそのパーティーってボクも参加してもいいの?」

「むっふふー! 安心するがいいご主人! すでに迎えはチャーターしているぞ!」

「え!? 本当に!?」

「報酬になでなでして欲しいんだワン!」

「うん、いつもありがとうね、タマモ。ほらおいで」

 

 一夏はそういって態勢を変えてタマモキャットの頭を膝の上に乗せた。そう膝枕というやつだ。そして、ゆっくりとタマモキャットの頭を撫で始める。お日様のような香りとさらさらとした桃色の髪がどこか一夏はゆったりとした気持になっていった

 

「むっふふー! ほかのナイン共と駄狐にはマネ出来ないこの優越感! サイコーだワン! ご主人! もっと撫でて撫でて!」

「うん、いいよ」

  一夏はタマモキャットの要求に応えて30分ほど撫でていく。

 そんな時だ、どこからか音楽が鳴り始めた。

 

 ○○○○歯ごたえ欲しいし! 甘酸っ○○のもそそられる~わ!

デザートは別ピッ!

 

 そう、タマモキャットが持っているボタンが下に1つしかなく、板状で折れやすそうなケイタイだった。また一夏はこの様なケイタイはCMですらあっておらず、本当にケイタイかと疑うときもある。

 とくにメールや電話するときなど、画面をタッチするそうだが、一夏はその姿を見たことがない。

 

「むぅ~~! せっかくのご主人堪能タイムがぁ~!!

誰なのにゃ! こんなタイミングで~!! 

ハイハイ! もしもし!? 誰なのにゃ!? こんなさいっこう!のタイミングで電話をかけて来やがったのわ!!?

ん? おお! 妲己ちゃん! 元気にしてたー? おお!忘れていたのだ! 行く! 行くぞ! 行こうぞ! ゆくぞ! んではよろしくな!

というわけでハロウィンパーティーに行くぞ! ご主人!」

「うん、でもそのチャーターしたって言っていたけどまだきてないよ?」

「む、それもそうであるな、ちょっと待っているのだ!

えーっと、る、るる……、あ違うにゃん、カ行だった、あ、あったあった。

オーイッス! うん! そ! ん! 待ってるぞよ!」

 

 タマモキャットの電話をしているのか、してないかよくわからない会話が終わり、電話を切った瞬間、一夏の部屋にある障子が破けた。いや何かが飛んで来て破けたといった方がいいだろう、『それ』は一夏のベッドの中に入り込んでしまったが、スグに飛んで正体がわかった。

 まるでステッキ、棒のところはピンク、先端には○の中に☆があり、両端には天使の羽のようなモノが付いている。例えるなら魔法少女が使うような可愛らしい杖。そう、魔法の杖が体(?)をぐにぐにさせ、宙に浮かんでいるのだ。そして、タマモキャットのところへ飛び……。

 

『おひっさしぶりですねー! キャットちゃん!」

「おうさっ! 何百年ぶりかにゃー! ルビー!」

『そうですねぇ~、一万の二千年ほどでしょうか?』

「では行くぞ! ルビーよ!」

『ええ! 良くわかりませんが行きましょう! 無限の彼方へ! さぁ!いくぞ!』

 

 話がよく分からないまま進もうとしているのだ。読者の皆様は知っているだろう、ssモノでうっかりやはっちゃけ爺さんの次いで使われている便利な魔法の杖であり、最近では主人公に使われるようになった存在するだけで災害でもある『カレイド・ルビー』である。 主にエミヤやうっかり凛が被害にあっているのは言うまでもない。

 そんな魔法の杖であるカレイド・ルビーの力により、着いた先は姉である織村千冬が意外にも大っ嫌いなホラー映画で出てきそうな黒いお城であった。

さらに詳しく言うならゼルダの伝説 時○オカリナに出てくる7年後ハイラル城といえばいいだろうか、ただし現在の城下町は大変にぎわっている。

空にはコウモリが飛び交い、少し怖い音楽と陽気な音楽が流れている。

 

「うわぁ、ここがハロウィンパーティーの会場なのだ!」

『ええ! イチカ君でしたよね? 私はカレイド・ルビー、ルビーちゃんと呼んでくださいね! ではではー! ようこそ! イチカ君! カボチャと幽霊が沢山いる世界一のハロウィンパーティーへ! あちらをご覧くださーい!』

 

 そういってカレイド・ルビーは手(羽根)を門の方へ向ける。門にはたくさんの幽霊ぽいものとかかぼちゃを被ったスケルトンが並んで行列ができていた。普通では見られない幽霊やカボチャのスケルトンに一夏は大興奮になる。

 

「ねぇねぇ! あのスケルトンやお化けってどうやってるの!? CG!?」

 

 本物の魔物です、などと言えるはずがない状況を脱してくれたのは過激な衣装を身にまとった女性だった。

 オレンジ色の露出が多い衣装に一夏は驚きながらも花飾りを付けた女性を見る。

 

「あらあら、可愛らしいボウヤね。 ハロウィンパーティーに来たのかしら?」

「うん、そうなんだ。 お姉さんは?」

「うふふ、私はパーティーのお手伝いしている。アナタ名前は?」

「織斑一夏!」

「そう、私の名はマタ・ハリよ。招待状はお持ちかしら?」

「むっふふー! それならば我が持っているぞ! さぁ! 見るがいいワン!」

 

 いつの間にか一夏の隣に立ったタマモが黒いカボチャが描かれている招待状をマタ・ハリに見せた。

どこかのドラマでのシーンにそっくりだ。そう、「この紋所が目に入らぬか―!」という有名なシーンに……(ちなみに作者は2代目が好きです)

 

「招待状は本物ね、では今宵一夜限りのお祭り騒ぎ。どうか楽しんでくださいませ」

「うん!」

「おうさ!」

『ではではー! いっきますよー!』

 

 マタ・ハリとタマモキャットはお化けたちを押し退けて一夏を門まで通した。

 街はハロウィン一色だ。いたるところにカボチャやランタン、お化けになっている人たちで一杯であり、おいしそうな小さいケーキやコウモリのクッキー、キャンドルのお菓子、カボチャのランタン等といった沢山の面白そうなのがある。

 

「ご主人! お城に行くぞ!」

「そうだね! 招待状をくれた人がいるんだよね?」

「むっふふー! その通りだ! あとゲスト達もいるみたいなんだワン!

この世界には私がいるみたいだしな!」

「ん? タマモがいるって?」

『簡単なことですよー! イチカさんがいた世界とは別世界』

「ゆえにこの世界にはご主人がもう1人いても普通なのだ! 平行世界ってやつだな」

「えっと○ングダムハ○ツみたいなかんじでいいのかな?」

「そうだな。考え方としてはそれでいいぞ。今はな」

「?」

 

 たまに真面目なことをいうタマモキャットに話についていけるカレイド・ルビーに一夏は少し戸惑いながらも街を抜け、城の中へ入っていく。城の中はなんだかハロウィンの怖さがあり、わざわざ血糊(?)で置いてある拷問器が使ったばかりと表現してあった。

 

「うわぁ! これがこの世界でのハロウィンなんだね! 窓もないし、まるでみっしつ殺人事件が起こりそう! ハロウィンパーティーって初めてだけどこんな風なんだ、来年は鈴と弾達一緒にやろう! 箒があと1年引っ越ししなかったら誘えたのになぁ~」

『ではその時はこのルビーちゃんがサイコーのハロウィンパーティーにしてあげましょう!』

「うむ! キャロットケーキつくるぞ!」

 

 一夏達が城の長い廊下を歩いていると、まさに貴族的なドレスを着た女のひとがモップを持って廊下を拭いていた。しかし、その動きにヨタヨタとしており、腰が入っていないのがわかる。

 

「こんばんわー!」

「ええ、忌々しい小娘……って、誰?この子ブタは」

「ブタ? ボクは織斑一夏! お姉さんは?」

「ふん! わたくしはこの城の主であるカーミラよ。で?子ブタはなぜこの城にいるのかしら?」

「タマモに誘われたから来たんだよ! お姉さんはなんでハロウィンパーティーなのにお掃除しているの?」

「お、お姉さん!? 子ブタにしては可愛い事いうわね、」

「おお! デレてるぞ! しかしそろそろニンジン不足、ご主人ニンジンをくれ」

 

 一時間もニンジンを食べてないタマモキャットに拍手しよう。しかし彼女が暴れればただでは済まないのは間違いない。一夏もそのことに気が付いているのか辺りをキョロキョロと見渡す、しかしあるのはモップで掃除しているカーミラのみ。

 

「ねぇ、カーミラのお姉さん。ニンジンが欲しいんだけど貰えない?」

「そうだー! 寄こすのだ―!」

『そうですねぇ~私としてはニンジンよりも可愛らしい(面白味がある玩具のような)少女を要求いたします! 例えるなら魔法少女的な子を!』

「(変な杖は無視するとして)あそこを曲がってキッチンに行きなさい、そこならニンジンの100本や10000本位はあるでしょう」

「おぉぉぉ!! ではサンキュー! サンクス! ゆくぞ! ご主人! まだ見ぬ理想郷へ!」

「た、タマモ~引っ張らないでぇ~!」

 

 キッチン、曲がって真っすぐ。この言葉を聞いた瞬間、タマモキャットは一夏を引っ張りながら走っていく、彼女の突き動かすのは少し卑猥な形をしてオレンジ色している野菜、ニンジンだ。ちなみにルビーは一夏の服の中でおとなしくしている。

 時たまにルビーの手(羽根)が変なところを触り、笑いをこらえる一夏であった。

 

 キッチンにたどり着くと白地に黄色ヒヨコが数匹ついているエプロンを着ているダンディな男の人がカボチャに穴をあけて中身を取り出していた。近くにはボウルやコンロなどもあり、何やら調理しているのがわかる、

 

「こんばんわー!」

「む? まさか君のようなゲストが来るとはな。 もう少しお菓子を用意しておくべきだったか」

「タマモに誘われたんだ! ボクは織斑一夏! おじさんは?」

「余はヴラド・シェペシュだ。ボーイ」

「ニンジンだ! ニンジンを用意せよ!」

「さて、そこのサーヴァントはなぜニンジンを所望する?」

「ニンジン、キャロット。それは我が癒しにして力となるものなるのだ。わかったか! 悪魔候!」

「そのような話は初めて知ったが、うむ、世界は広いという事か。

しかし、悪いがこの城で使う食材についてはエリザベートに聞け、この部屋を出てまっすぐ行けば着くだろう」

「よし! わかった! 聞いた! 行くぞ! 出てまっすぐだぞ! ご主人!」

 

再びというかニンジンがそれほど食べたいのだろう、一夏を抱えるように持ち走る、走る、走る。すべてはニンジンのため。長い廊下を走りぬく。どんどんと魔力が高まるのもわかる。

 そして、1つの扉の前へついた。

 

「ココだな、さっさとエリザベートから許可をもらって(ニンジン)ハントするワン!」

『そうですねぇ~では行きましょう! 突撃~!』

 

 タマモキャットとカレイド・ルビーが部屋の中へ突撃するとそこには可愛い女の子がお部屋にハロウィンの飾りつけをしていた。この時、一夏は静電気が体中に走ったのがわかった。そして眼は彼女から離せない。

 タマモキャットとは違う赤み残る桃色の気品がある長い髪、好奇心旺盛そうなエメラルドの瞳。柔らかそうな桃色の唇、エルフのような耳、角のようなリボン、少し大胆な服装、リボンが付いたトカゲのような可愛い尻尾。

 そう、一夏はこの時ぼーっと彼女を見続けていた。しかし部屋に入ってきた彼らを見た彼女はその唇を開いた。

 

「アナタ、誰かしら? 私のファンとか?」

「ふえっ!? え、えっと、ボクは織斑一夏、今日はタマモに連れられてきたんだ」

「ふぅん。まぁいいわ、アナタ私の手伝いをしなさい!」

 

 そして、一夏は体の中に残るシコリに首を傾げながらも彼女、エリザベートと共に部屋の飾りつけを手伝い、タマモキャットと共にデザートを作り(タマモキャットはキャロット系専門)その間カレイド・ルビーはタマモキャットと同じ機種のケイタイでゲームをしていた。エリザベートは部屋の奥にあるステージの準備に勤しんでいた。テレビで見るマイクの調整や音量の調整、ステージの台を歩いてみたりと。

 

 ふと一夏はタマモキャットを部屋の中で探すが見つからなかった。

 

「ルビー、タマモどこに行ったか知らない?」

『タマモさんなら、他のゲストの方々をお迎えに行きましたよー!』

「そうなんだ。」

 

噂をすれば影が差す。ドアの向こう側からタマモキャットの声が聞こえ始める。

また知らない声も聞こえる。

 

「ご主人(真)! マスター(雇い主)! ゲストのやつらが来たぞ! 準備はいいか―!?」

「ちょ、ちょっと待ちなさい!

イチカ、アレとソレは大丈夫!?」

「うん、大丈夫だよ」

「あーかーと―かーげ―! 早くキャロットケーキ食わせろ!」

「誰が赤トカゲよ! 竜よ! 竜でしょ! 竜なの! 敬いなさい! だからちょっと待ちなさい!」

「エリザベート、大丈夫だよ。タマモ、開けていいよ」

 

 一夏がそういうと聞きなれない2つの声が聞こえた。突撃とかなんやらと。瞬間――ドアがバーン!と開けられ入ってきたのは複数の男女。 緑の着物を着ている角の生えた女性、大きな盾を持った露出が多い女性、なぜかいる遠坂凛のサーヴァント、アーチャー、上半身着物?下半身はパンツのみの侍、一度一夏達を襲ってきたランサー、どこから見ても幼くなっているセイバー。 そして赤みのかかったツインテールの女性が部屋に入ってきた

 アーチャー、セイバー、ランサーを見た一夏は驚きながら彼らを見ていた。特にランサーとは敵同士のはずなのに、チームの一員としているのだから。

 

「ふっふふふ、よく来たわね! 子ジカども! ってアンタ達も来たの?」

「やはり君だったか、エリザベート、全く面倒なことしてくれたな」

「全くです、さぁその後ろにある食事を渡しなさい!」

「おいおい、ここまで来たならもう1体倒すってーのはどうだ?」

「こ、こら! 今は敵方の話中なんだからさえぎったらダメだよ!」

 

 上から順にアーチャー、セイバー、ランサーが勝手に話し始めたのをツインテールの女性が止める、それを見たエリザベートはゴホンと1度咳払いをして何事も無かったかのように話し始めた。

 

「ごほん、あなたたちも来たの?」

「ええ。同じセリフを2度吐くとは相変わらず芸のない方ですわね」

「それにしても、ココ先輩の個室じゃないですか」

「あ! 本当だ! ってかカボチャだらけだ!?」

「ふふふ! 驚いたようね! 子ジカ! そう! あなたたちが戦っている間にチョイチョイ聖杯の力で改装させてもらったわ!」

「え? あの飾りつけって聖杯だったの?」

 

 一緒に飾りつけをしていた一夏が呟く、その声に反応してタマモキャット以外の男女がようやく一夏の存在に気が付いた。

 と同時にもう1人研究服を着たオレンジ色の髪をもった眠そうな男性が入り込んできた。

 

「現場は会議室で起きているんじゃない! 現場で起きているんだ―! ってあれ?今どういう状況だい?」

「あ、Dr.ロマン!」

「うむ、ロマン殿、少し落ち着かれよ」

「いやいや! 落ち着いている場合じゃないから! どうなってるんだい!?」

 

 うむ、物凄く人数が増えてきたな。 新しく入ってきた男性に侍っ娘が説明をしている間、大人しくしていたタマモキャットはいつの間にかキャロットケーキホール3個攻略に勤しんでいる。一夏はエリザベートの隣に立って見知らぬ人物たちに驚きながら見ている。

 ボッチになったエリザベートから一言

 

「ね、ねぇ? 驚かないの?」

「はい?」

「何がでしょう? 旦那様の部屋に繋がっていた事ならかなり驚きましたが……」

「むー! ちーがーうー! 名前のない謎の招待状を送ったのはこのアタシ!

ハロウィン特別使用の鮮血魔嬢のキャスターにしてアイドル! エリザベートバートリー!

ま、まぁアイドルとしてはまだまだ新人だしぃ? 将来有望だしぃ? 歌にドラマに絶好調(になる予定)だしぃ? そう、ブレイク寸前と言っても差し支えのないビッグアイドルの登場に驚天動地してもいいくらいなのよ?」

 

 エリザベートはそうニコニコと笑みを浮かべながら入ってきた人物たちを見つめる。しかし帰ってきたのは驚きの声! ではなく、共通してため息だった。侍っ娘と盾を持った女性が簡単にぱちぱちーと拍手をし、犬? のような動物は言葉がわかるのか相槌を打っていた。

 一夏はエリザベートがアイドルということに初めて知ったらしく、1人で「おぉぉ」と驚いていた。

 

「ちょっと、なによその気の抜けた返答は! もっとほら! イチカみたいに驚くところじゃないの!?」

「いや、だって予想通りすぎて驚く要素がかけらもなくて……」

「ガーン! ノーサプライズ!? ここまで正体をひた隠していたのに!? シルエットだったでしょ!? 声も変えていたのよ! アタシ!」

「無様ですわね、監獄城チェイテを舞台にした時点で13割バレていますわ」

「あ」

「やっぱり気が付いてなかったんですね」

「ねぇねぇ、お姉さんチェイテってなぁに?」

 

 エリザベートが顔を赤くし俯いている間に一夏は緑の着物を着た女性のところまで歩いて着物の裾を少し引っ張りながら聞いた。

 ようやく一夏のことに気が付いた清姫は少し驚きながら目を同じ位置にして頭を撫でながら答えた。

 

「ふふふ、監獄城チェイテはこのおバカさんがもつこのお城のことですわ。 アナタも自分の部屋でサプライズをしようとしてシルエットと声を変えても誰が誰なのかわかってしまうでしょ?」

「あー、なるほどー」

「アナタお名前は? わたくしは清姫と申します」

「ボクは織斑一夏! 今日はタマモに連れられてハロウィンパーティーに来たんだ!」

「あら? そうでしたの。あそこにいるタマモキャットはあなたの何なんですの?」

「えーっと、サーヴァントとマスターなんだって! ほら見てみて! ここにれーじゅがあるんだよ!」

 

 そういって一夏は自分の首筋を見せた。 そこには複雑な模様……というよりタマモキャットの似顔絵が描かれていた。ちなみに1度も使われて無いようだ。それを見た清姫は苦笑い。

 

「おぬしは何故ここにいるのですか?」

「ん? お姉さんだれ?」

「む、失礼した。私は牛若丸だ。よろしくな」

「うん! ボクは織斑一夏! よろしくね、牛若丸のお姉さん!」

 

 ぽつんと1人になった一夏に話をかけてきたのは上半身着物、下半身パンツ?の侍っ娘である牛若丸であった。しかし牛若丸も1人だ。一夏があたりを見渡すとセイバーは周りのお菓子をタマモキャットとランサー達と食べており、アーチャーは部屋の隅にあったコンロを使いパンケーキを焼き始めている。

 不思議な光景である。清姫と盾を持った女性、ツインテールの女性はエリザベートと話し込んでいる。

 

「みんなあんなに仲がいいんだね」

「そうですね、皆違う時代、国々から来ているのにアンナに仲がいいなんて、うらやましいです」

「え? 牛若丸のお姉さんは?」

「え、ああ違いますよ。私も彼らとは仲がいいでしょう。しかし、私は兄上ともっと……」

 

 そうつぶやき暗くなる牛若丸に一夏はおろおろして始めた。そして意を決し牛若丸の頭を撫で始めた。背伸びして

 その様子に牛若丸は少し瞳から光るものを流し、スグに拭く。

 

「ありがとうございます、一夏君。わたしは

「エリザベート・バートリーが子ジカの部屋で歌う、ワンサイトコンサート!

 

 牛若丸の声を遮るほどのボリュームでエリザベートの声が部屋の中に響き渡る。 お菓子を食べていたタマモキャットもセイバーもランサーもそして一夏と牛若丸もエリザベートへ注目する。

 

「今宵この日のためだけに! アタシが! 歌うの! 声高らかに!!」

「おぉぉ」

 

 一夏驚いて声に出るが、他はなぜか無言。

 氷づいたと言っても過言でもない部屋でテクテクとタマモキャットが一夏の隣まで来て一言言った。

 

「皆の衆、ぐっとこらえず、ドッカーンと吐き出したまえ」

「あ、あのエリザベートさん? 少しいいですか?」

「ん? 何よ?」

「それでしたらわざわざこんな事しなくても、普通にカルデアに来て頂ければよかったと思うのですが……」

「え、そんなのダメに決まってるじゃない。良い? アイドルのライブっていうのは一世一代のお祭りよ! 面白くなければダメなの! 夏の暑さにも負けず、冬の寒さにも負けずチケットのために並び、グッズを買うためだけにやっぱり並んでいるのよ?

隣の人と方がぶつかり合うほどの満員のコンサート会場でぎゅうぎゅう詰めになりながらもそれでも歌姫の奏でるセレナーデに絶頂し狂乱し、夢のような無我夢中になるのがファンの本懐なのよ!

 

つまらないコンサートなんか誰も来やしないわ、アイドルたるもの、ファンに驚きと感動を与え続けなければならないのよ!」

 

 エリザベートは握りこぶしを作り、力説する。 素直に聞けば「そうかも」と思ってしまうアナタは魔力耐性Aランクですのでご注意を。 いやいやと反論できる方は魔力耐性Sランクでしょう。 

 周りにいた一夏を除いた男性陣はなるほどと頷き、女性陣はため息を吐く。

 

「うん、わかるわかる。まさにその通りだ。エリザベート嬢は実に正しいと言える。そもそもアイドルという職業はですね、ボク達ファンに夢と希望を与えると言っても過言ではない。ただただああ、あの子可愛いなとかのやつはファンCランクのやつらだ。

Bランク以上のボク達が求めているのは歌って踊って驚き、笑い、感動を与えてくれるアイドルであって、」

「ドクター、ノートパソコン没収されたくなければ黙っていてください」

「はい、ごめんなさい黙ります。 エリザ嬢! 続きをどうぞ!」

「え、あいいの? それじゃあ――こほん。

とにかくアイドルはファンを焦らすのが大切なのよ、いきなり子ジカの部屋で歌ってもそれはただの目玉焼き過ぎない、けど焦らすことでそれは素敵な料理へと変わるの!

そんな最ッッッッ高のご馳走を取り上げるなんてアタシには出来ない!」

 

 エリザベートは嬉しそうに、そして希望を胸に抱え語る。一夏はそんな姿に「可愛いな」と思い始めたのは時間の問題であった。 しかしそれは一夏のみである、タマモキャットを除いてツインテールの女性と共に入ってきたサーヴァントたちは正直に言うとボロボロの状態なのだ。

 そうなった目的の元凶がご馳走だなんて何を言ってい(セイバーを除いて)

 

「で、ではチェイテの招待状もハロウィンパーティーの為ではなく、きのこ先輩にエリザベートさんの歌を聴かせるためだったのですか?」

「ええ! アタシの歌を心地よくリラックスした状態で聞いてもらうための過酷な試練だったの! 素敵でしょ!?」

「ふふふふふふ! 私の中の切れてはいけない何かが切れてしまいましたわ。 まとめて燃やし尽くして差し上げましょう!! 塵も残さず! 灰すら残しませんわ!」

「え? え? え? なんでアタシ、怒られているの? ってステージに火を吐かないで―!

 

 清姫のなってはいけない表情からの口から図れる炎とは優しい表現、火炎。 そう例えるなら火遁豪火球の術といったところか。さらに言うなら火影級の威力とだけ言っておこう。 むろん、感知器が作動しスプリンクラーが起動する。

 それに察知したのは他でもない。聖杯戦争で最優のサーヴァントであるセイバーであった。彼女はすぐさま料理をスプリンクラーが当たらないところへ避難させることができた。その時間は3秒もかからないだろう。

 

「お? やる気(バトル)か? それじゃあしょうがない。

リバースカード発動! 「者どもであえ」 このカードの効果により! すべてのパンプキンヘッド、幽霊共、ほかもろもろ(デーモン種、キメラ種)を特殊召喚するぞ!

これで会場は満員御礼札止め! さぁ!ラストライブのはっじまりだー!」

「おぉぉぉ! すごいよ! タマモ!」

「いいわ! 素敵じゃない! 予想していたものとはだいぶ違うけどこれはこれで盛り上がってるじゃない! ノッテきたわ! 今ならアタシ、この歌で世界を救うこともできる!! 

さぁ! みんな行くわよー! キャスター、エリザベート・バートリー、ラストステージ! 本気で歌うわよ~~~!!!!」

 

 曲名 ドラクル・ミラクル

 作詞作曲 エリザベート・バートリー

 

 エリザベートが歌い始めると彼女は赤いエネルギーを身にまとう。 それは遮断。どんな攻撃も炎もこの赤いエネルギーの前では無力、例えかの英雄王全力を持った一撃でさえも軽々と耐え抜くだろう。

 清姫の炎による一撃も、セイバーの剣撃も、ランサーのマシンガンのような突きによる攻撃も、アーチャーの複数の宝具も、牛若丸の素早い一撃も彼女の前では無意味であった。

 

「マシュ!」

「ハイ! きのこ先輩!」

 

 ツインテールの女性、「きのこ」が盾を持った女性、「マシュ」へ指示を出し、空からの一撃を加えた。しかしそれはエリザベートのマイクスタンドによって跳ね返される

 

「エ・リ・ザ! エ・リ・ザ! うぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

 

 観客席にはきのことDr.ロマンがいつの間にかあるペンライトを振っている。サーヴァントたちの攻撃も空しく、エリザベートの35曲を歌いきるまで続いた。

 

「ああ……! 歌い切ったわ……! アタシ……だ・い・ま・ん・ぞ・く……!!」

「はぁ、はぁ……聖杯、確認、回収します!!」

「歌い切ったわー! やっぱり歌は至高の芸術! アイドルは星を作り出した幻想ね!」

「お姐さん、お姉さん大丈夫?」

「……」

 

 ダメージはないのに疲れているサーヴァントたちとは別に元気満々のエリザベート、そして初めてコンサートに参加した一夏は目がキラキラだ。(歌はやばい表現盛り沢山だが)

 Dr.ロマンは習慣なのか自分の財布を開いてお札を数えている。

 

「マスターが期待していたものとは違いましたが、ともあれ聖杯の欠片を拐取しました。コレをカルデアに持ち帰れば貴重な魔力資源として再利用できるでしょう。

ですのであとは帰還するだけです、あ、でもココは先輩の部屋ですからすでに帰還しているのでしょうか?」

「ねぇ、ねぇタマモ、このお姉さん大丈夫?」

「うむ、「みねうち」でHPを1にされた状態で「悪あがき」寸前の状態だな。

おーい、皆の衆! 先ほどからマスターがちょいヤバ系の痙攣の仕方をしているのだが大丈夫か?」

 

 きなこの瞳から光が消え、肩は上下に、顔は横に、体は前後に震えていた。この様な症状については作者自身知らないし、あったらすごいと思う。 恐ろしい震え方に一部を除いて一同唖然からの驚愕、そして恐怖へ変わるのもすぐのことである。

 このことは歴史に「さいきょうの歌声」として残されることになるとは思いもしない。またこの事をきっかけに一夏は『歌』というものに興味を持つのは自然的なことであろう、例え友達に「一番のお気に入り以外を歌え」と言われるほど上手になりプロ級になったとしても……

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「うむ、今帰ったぞ!」

 

 タマモキャットと一夏が衛宮邸に帰ってくるとそこには織村千冬が扉の前で正座しており、扉を開けてきたタマモキャットの頭を片手で握りしめ、アイアン・クローによる連行で外へ連れられ、宙へ投げられそこからの筋肉バスターが爆発する。そして逃がさぬようにコブラツイストで体を痛めつけ、ジャーマンスープレックスによる攻撃で怯ませ、最後はジャンピングドロップによる一撃がタマモキャットに与えられた。

 

 ふぅと爽やかな汗をぬぐいとった千冬は一連の惨劇をみて震える一夏の元へ歩き、右頬を打つ。 パン!という音が響き渡った。

 

「私がどれだけ心配したと思っているんだ! 電話もなく、置手紙もない! こちらから電話をかけても繋がらない! 私が今日一緒にいなかったことだけは謝ろう、だがお願いだから心配させないでくれ……!」

 

 一夏を力強く(一夏が耐えられる程度)抱きしめた。 一夏は普段見ることがない姉の姿に涙をながし「ごめんなさい」と何度も謝った。

 そんな姉弟による感動の姿に衛宮邸の人々は涙をそっと拭き、タマモキャットは犬塚家のようになっていることをアウト・オブ・眼中とした。

 

 その後、一夏による1日の長い冒険話は衛宮邸を盛り上げ、記念に取った写真にセイバーは顔を赤くし、アーチャーはアチャーとしていた。




今回はいつもより長く書いてしまいました。

一夏君とタマモキャットを中心とした冒険話でした。
少し無理があるかな?と自分でも思います。
これで特にタマモキャットのしゃべり方に似てるかな?と思います。

またこの作品は少しづつですが前編、中編、後編へと変えます。

誤字脱字、ご感想、ご意見もろもろをお待ちしております。





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天狗たちは駆ける。罪袋達は追いかける。

コツ、コツと歩く1人の黒髪の美少女、なぜか来ている服は制服ではなく、烏天狗の様な恰好、修験者の恰好に背中には真っ黒な烏の様な羽が生えていた。そして右手にはマイクを持ち、左手には団扇の様な扇を持っている。

 美少女はピタリと真ん中で立ち止まり、右方向、いや観客がいる方を振り向きながら真剣な顔つきでゆっくりとマイクを口元へ近づける。

 

『第34回、穂群原学園 学園祭。メインイベントを開催いたします!!』

 

 その言葉に同調するように美少女の前にいる観客は大声を出す、それは一体何を現すのだろうか、男どもは歓喜の声はどこか、と言うよりかなりうるさい。

 

『さぁ! 今回のメインイベント『新聞部』主催で行われる『ミッション:鳥天狗を捕まえよ』です!』

 

 美少女はニコニコとどこか「おぉ怖い怖い」と言うようなニタニタとした笑みを浮かべながらルール説明をしていく。後ろにコロコロと同じ服装をした新聞部の2人の部員(1人は幽霊部員)がプロジェクターを持ってきて、1枚1枚を舞台の壁に当てながら観客に見える様に見せていく。

 

『基本的なルールは至ってシンプル! 『烏天狗』となる我ら新聞部を捕まえる事です! フィールドはこの穂群原学園内! た だ し ! 校舎内はダメです! 入ってショートカット、待ち伏せする参加者はその場で失格! 1ラウンド1時間のゲームとなります! しかーし! それだけでは簡単すぎて物足りない! だからと言って難しすぎても面白くない! ならばどうするか! 私たちは(主に私)は考えました。その結果!』

 

 マイクから口を離し、司会の美少女はホワイトボードを持ってきた部員たちを見る。その笑みはまさに「越後屋、お主も悪よのぉ」「いえいえ、お代官様には敵いません」的な悪の笑み。

 ちなみに見られた部員たちは寒気を覚えさせるその笑みに嫌な予感がしてならなかった。彼女たちはこの日までメインイベントの主催なのにこの美少女新聞部部長、藤田文からなんにも説明が無かったのだ。

 

『 捕 ま え た 鳥 天 狗 は お 好 き な よ う に (R18未満のお手付き)』

 

 その瞬間、誰もが言葉を失う。いや、誰もが聞き間違えだろう、そうに違いないとしか考えられなかった。特に男子生徒諸君。

 しかし後ろにいた部員たちは顔を真っ赤にして部長へ詰め寄ろうとする。その様子は観客も見て取れる。いや、むしろ前を向いている美少女新聞部部長よりも早く解る。

 だが、美少女新聞部部長である藤田文は詰め寄ってくる部員の行動すら予想していたかのように自然な動作で自身のポケットから2枚の何かを取り出し、2人に見せる。

ハガキサイズからおそらく写真だろうと勝手に推測する。観客からは見えないが部員の顔が赤から一気に青くなり数度、藤田文を見ると、藤田文は2度ほどコクリと頷く。

すごすごと後ろに下がっていく様子から取られてしまったのだろう。

 弱みを取られてはいけない相手に。写真付きで。 藤田文とはそういう人間だ。

 藤田文はくるりと観客の方へ再び向いた。

 

『さて! 我ら烏天狗を捕まえることが皆さんの勝利条件です! ですが、穂群原速さランキング一位である私を捕まえる無理だろう! そう思われる方! 今、私たちが着ている恰好をよく見てください!』

 

 そういわれて観客は藤田文の恰好をみる。

 修験者の様な恰好に下はミニスカートをはいており、足には……何も履いていない。

 観客はここであれ? っと不思議がった。後ろにいる部員はちゃんと靴を履いているのに司会をしている藤田文は何も履いてないのであろうと。

 

『ふふふふふ、皆さん。今回私たちは烏天狗です。 よって!!』

 

 今度は後ろの部員がある2つで1つのモノを持ってきた。

 高下駄だ。しかも1本足で通常の高下駄より3倍ほど高いという一種の竹馬じゃね? 的なモノだった。

藤田文はゆっくりと高下駄を付けて立ち上がる。

 

『ふっふふふ、お分かりいただけたでしょうか?』

 

おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!

 

 歓声が学園中に、いや街全体に届くが如く。野太い男たちによる歓声の声が鳴り響く。

 観客にいる男たちは解ったのだ。例えこの日の為に練習を積んだとしても高下駄で走ろうとなれば難しいという事に、そして頑張ればあの『ミニスカート』の中を見ることが出来るという事を!!

 戦争だ。一心不乱の大戦争だ。

 すでに男たちの眼は獣の如くバーサークしており、司会の説明を心に刻み付ける様に聞いている。

 

『では女性の方々はどうするか。 女性の方に関しては希望者に対して私たちと同じ『鳥天狗』をすることが出来ます。これはあくまで『希望』ですので無理矢理はダメですよ?

 さて、とここでスペシャルゲストを紹介しましょう』

 

 藤田文が観客にもわかる様なまっくろくろすけな笑みを浮かべながら舞台袖を見つめて数分、渋々来る者、顔を真っ赤にする者、顔を赤くする者などなどがやってきた。

 この穂群原学園の学生生徒はやってきたスペシャルゲストの姿に驚く。いや、分かっていた人もいるかもしれない。スペシャルゲスト達は藤田文と同じ格好をしているのだから。

 

『皆さんも知っているかもしれませんが私の右隣順からご紹介しましょう! 

パーフェクト・オブ・パーフェクト! 遠坂凛さん!

文武両道! 我らが姉御! 美綴綾子さん!

切り捨て御免! IS日本代表生! 織斑千冬さん!

陸上部部長にして自称『穂群の黒豹』! 蒔寺楓さん!

同じく陸上部未だ高跳びトップ1! 氷室鐘さん!』

 

 藤田文による簡単の紹介される当人たち、いろんな意味で顔を赤くする者が多いが無表情な方もいる。

 外部から来た観客は美少女揃いで喜び、生徒たちは「なぜ!?」と思うところもあるが、参加しようという意欲を増している。

 さて目の保養とされているスペシャルゲスト達の皆さんは顔を未だに顔を隠しながらも考えている事は完全に一致している。シンクロしていると思っていいほどだ。

 

(アレさえ撮られて無ければ!!)

 

 スペシャルゲスト、いや藤田文に弱みを握られた哀れな生贄達。

 観客と生贄の表情にご満悦な藤田文はニコニコしながら再び声を出す。

 

『さて、皆さん! いきなりゲームを開始してもいいですが、念には念を、まずは模擬戦を見てもらい改めてルールを確認してもらいたいと思います! カモン!』

 

 パチンと指ぱっちんをすると、後ろの方で爆発音が鳴り響く。全員がどの音の方を向くとそこには3人の男たちが腕を組み、足を少し広げた状態で立っていた。

 しかし、その姿は異様である。

 3人とも『罪』と書かれた覆面を被り、それぞれA、B、Cと書かれた正体不明の男の顔つき! 次に褌を付けており、男の象徴の場所には大きな葉っぱが付けられた男の美学! 紳士的であるジェントルメーンとして赤、黒、青のネクタイをそれぞれ付けていた。

 しかし、覆面、褌、ネクタイ、靴以外は何も着ておらず、鍛えているその体つきは割れており女子生徒たちはキャーという黄色い声を張り上げる。

ふっ見るがいい。これが真の男である戦闘服だ。

 

『皆さん! あれが今回イベント用衣装! 『罪袋』です! 参加者はあの恰好をして1ラウンド中、我ら鳥天狗を捕まえてください! 今回は皆さんに見せるという意味からあらかじめ罪袋たちが作り上げた円状のフィールドでゲームしようと思います。』

 

 そういわれて、フィールドの方をよく見ると小さいカラーコーンが円状に並んでおり、藤田文の説明からあの中でゲームをするのだろうと解る。

 

『とまぁ、これでルール説明は終了として、まずは罪袋さん達に意気込みを聞いてみましょう! あ、本人特定防止の為罪袋さん達にはヴォイスチェンジャーをお渡ししていますので探さないでくださいね! では紅葉行きなさい!』

 

 藤田文に言われて後ろでプロジェクターを操作していた1人の鳥天狗姿の女子生徒、立川紅葉はため息を吐いてから予備マイクを持って罪袋たちの方へ走っていく。

 その姿、いや後ろ姿には不憫としか言えない。

 

『では、意気込みをどうぞ』

『ふん、まぁこの僕が参加する以上、勝利は確実だね。さっさと終わらせてようか』

 

 青色のネクタイをしたCの罪袋がそう答えて隣にマイクを渡す。隣にいた黒色のネクタイをしたBの罪袋はため息を吐き、気だるげに応える。

 

『屈辱だ。この様な事をせねばならんと思うと己が情けなくなる。だが、これも精神鍛錬と思いやりとのみ』

 

 どこか固い口調で嫌々ながらも応えてマイクを隣にいる赤いネクタイをしたAの罪袋に渡す。

 

『意気込みはともかく、藤田! 少し聞きたい事がある!』

『あや? なんでしょうか!? 罪袋Aさん!』

『捕まえられたら、「アレ」は本当にネガごと渡してくれるんだろうな?』

 

 ああ、なるほど。この罪袋達は弱みを握られていたのか。っと観客、新聞部部員、スタッフ、スペシャルゲスト達は憐みの瞳で見つめる。

 特にスペシャルゲスト達は自分と同じ境遇だと思い。仲間だと判断した。AとBのみ。Cはなんかえらそーだから抜き。

 

『フフフフ、無論ですよ? この『模擬戦』で捕まえられればアナタ達罪袋さんの「アレ」はネガごとお渡しいたします』

『わかった。それだけ聞ければ大丈夫だ。早くやろう』

『おやおや、では早速やっていきましょう!』

 

 




ネタとして作りました。
次は模擬戦ですねぇ、ねったりと作りますよー。
一体この罪袋達は何者なんだ(笑)


誤字脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。
またアドバイス等も募集しています!



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罪袋は青春の一ページを飾ったようです

 

ゆっくりと舞台の上から舞い降り立つ1人の美少女、彼女は3倍ほどの高さを持つ高下駄を履いる状態にも関わらず、まるで普通の靴と同じように歩くさまはまるで現代に蘇った天狗。 それほどまでに練習を積んだのだろう。全く危なげもなく着地から彼らが待つフィールドに行くまでの間、全く問題が無かった。

 フィールドで待ち受けるのは3人の男たち、罪と書かれている覆面で素顔を隠し、紳士にネクタイを着用し、これが男の象徴だ! と言わんばかりの大きな葉っぱを付けた褌と学校指定の靴だけというまさに正々堂々とかかってくるがいいと言わんばかりの男の戦闘服。

 そんな様子を同じ部の後輩たち、呼ばれた援軍は全力で男たちを応援する。

 いや、がんばれ! お前らが頑張れば私たちの『アレ』も消すことが出来るかもしれん! 死んでもいいから勝て。いや勝てるまでやり続けろ! と言わんばかりの心温まる瞳は男たちの背筋を凍らせるほどであり、少し集中力が乱れたカナー?

 

『では模擬戦を始める前に確認としてフィールドの範囲はこのカラーコーンの内側のみ、勝利条件はこの私、清く正しく美しい『鳥天狗』藤田文を捕まえられれば勝利となります。時間制限として30分とします。第1ラウンドが有りますからね。

わかりましたか? つ・み・ぶ・く・ろさん?』

 

 藤田文の悪戯をするかのような笑みは男たち、罪袋達のこれから起こる未来をすでに解っているかの様であり、見方を変えれば勝利宣言している様に思えてならない。

 だがその様な事は男たち、罪袋達には無意味だ。男たちもまた勝利の文字を手に入れるためにこの場に立っているのだから。

 

「それくらいわかっておる。コッチはさっさとやって終わらせたいのだ。こちらの勝利でな」

「全くだね、今回は取られた僕が悪いと言っても折角の文化祭で時間を取られたくないんだ。藤田、ネガごと渡してもらうぜ?」

「おやおや、ゲームはまだ始めってませんよ? ふふふ、そんなに焦っては勝てるとこで「うっかり」してしまいますよ? ねー? 遠坂さん?」

 

 なぜか飛び火した遠坂凛はその言葉で『アレ』のことを言っているのだとすぐに理解し、怒鳴りたくても怒鳴れないというジレンマ。右手はすでに握り潰してくれる! とばかりに手をぐーっと力を込めながらこの時ばかりは「優等生などにならなければ良かった」っと後に語る。

 そんな様子を見て藤田はさらに面白がりながら持っていたマイクを後輩の女子生徒に渡して、扇でパタパタと優雅に、エレガ~ントに扇ぐ。

 

「今回ばかりは本気でやるぞ、フィールドも限られるし、3対1だ。囲えば勝てるぞ」

「甘いね。さっき見ただろ? コイツ高下駄なのに普通の靴のように歩いていたんだ。それに元々藤田は足が速い。囲むじゃなくて逃げる場所を限定させていけば捕まえられる」

「ふむ、それには一理有りだな」

「むぅ、ならどうする?」

「作戦Dで行くぞ」

「今回は付き合ってやるよ」

「わかった。ならやるぞ!」

 

 男たちの作戦会議は終わりそれぞれ藤田あy、ゲフンゲフン。今回の元凶である烏天狗を捕まえ己の弱点を過去、現在、未来から消し去るため、今ここに仲が悪い2名が手を組んだ同盟、『藤田いい加減にしろ同盟』は今か今かと開始の合図を待つ。

 観客は面白そうに見つめ、生にe、ゲフンゲフン。スペシャルゲスト達は殺す様な眼差しで清く正しく美しい鳥天狗を見つめ、男たちには絶対零度の様な冷たさの眼差しで『勝て』と言う意味を込めて込めて込めつくした眼差しは外部からの観客からは「なんて熱い眼差しだろうか」「誰か好きな人がいるのかな?」と思わせ、生徒からは「生贄にささげられる瞬間の子羊の様だ」と男たちに不憫な想いを込め、ひそかに「ドナドナ」を歌いながら正体が解ったら優しくしようと決心した。

 

「そ、それでは模擬戦を始めようと思います、審判はこの私、剣道部兼新聞部幽霊部員の立川紅葉がいたします。タイムリミットは30分なので罪袋さん、頑張ってください。ぜひとも部長の鼻をへし折って全部のネガを燃やし尽くしてください。いいですね?

それでは、と、『鳥天狗を捕まえろ』模擬戦、開始いぃぃぃぃ!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 生贄の1人、立川紅葉の開始宣言と共に罪袋Aが鳥天狗を捕まえる為、疾走する。その速さは通常の1.5倍ほどであろう。見ている体育専門教師もびっくりの走りだが、藤田文はそれをニヤニヤとする笑みを扇で隠しながら近づいて来る罪袋Aを待つ。

 罪袋Aが手を伸ばし捕まえようとする、しかし当然ながらその手は空を切る。

 この時、驚いたのは罪袋達だけではない。観客も生贄達も驚きの眼差しで『鳥天狗』を見つめる。

 

「おやおや、どうしました? 何をそんなに驚いた顔をしているのですか?

 

 早い。

 いや、ただ早いのではない。この女、鳥天狗はバック走で後ろへ走って逃げたのだ。

 流石の罪袋達も予想外過ぎて唖然としてしまった。

 これでは普通に走るときはどれほどまでに早いのか見当がつかない。絶望が心の中で広まりながらも、罪袋達は駆けるしかない。

 それしか道がないのだ。

 

 そこからはたった30分という短い時間なのにも関わらず一本の青春映画の様に体中が綱だらけになりながらも美しく、男の意地、諦めないど根性があった。

 

「ふはははは!! アナタ達に足りないもの! それは! 友情、努力、熱血、知性、筋力、体力、夢、憧れ、脚力、そして速さ! さらに何よりも!! 『決意』が足りなぁぁい!!」

「ハン! 構わないね! 足りない? ならボク達3人で補うだけだ!」

「全くだな、お前の言葉でむしろ、諦めるという言葉はとうの昔に無くした」

「憧れならある! 夢もある! 『正義の味方』になると、俺は爺さんに言ったんだ。例え全ての人たちが救えなくても良い。俺には守るべきものがあるんだぁぁぁ!!」

 

 無駄に煽ってくる鳥天狗に人中を下すため、男たちは吼える。諦めない。諦めたくない。

 無駄になる? 構わない!

 この身がズタボロになろうとも友の為に戦おう、男として、いや『日本男児』として誰かのために戦い、死んでいった過去の英雄たちの様に。

 今、男たちの頭はただ真っ白に、余計な事を考えず真っすぐ鳥天狗を捕まえる為に走るのだ。

 

 だが、刻々と短い、とても短い時間は減っていく。

 

「もう、ダメだ……! おしまいだ……!!」

「何を寝ぼけたことを言っておる! 不貞腐れている暇があるのならば走れ!」

 

 1人の罪袋が絶望の淵に追われ、体中の力が抜ける。だが忘れてはならない。自分が弱くなるほど、他の者が力を貸してくれるのだ。戦ってくれるのだ。ならば諦めてはいけない。

絶望に堕ちるものには手を差し伸べる。例えその手が傷つけられても、彼は歩むことを忘れないだろう。

 その姿はさながら『正義の味方』の様に。

 

「慎二はそこで休んでいてくれ。俺がお前の分まで戦うから……」

「……!」

「行こう、一成」

「ああ、衛宮。必ずあの悪の元凶を捕まえるぞ」

 

 この時置いて行かれた、いや諦めてしまった間桐慎二の心は何を思っただろうか?

 追わなくていいという重圧から免れてよかったと思うだろうか?

 諦めてしまった自分を恥じて終わるのか?

 

「僕はまだ、諦めるわけには、行かないよな」

 

 こうして男は再び立ち上がる。

 何かを思い出したかのように、あるいは観客に『彼女』が居たからだろうか? 『彼女』の前でこの様な姿は見せられない。見せてはいけない。

 今立ち上がったその姿は屈辱という砂を落とした1人の騎士の様にかの鳥天狗を捕まえるべく、再び走り出す。

 

「衛宮ぁぁ! 右から攻めろ! 柳洞! お前はプランAだ! 僕はプランBで行く!!」

「わかった! 任せろ!」

「やれやれ、ようやく来たか、遅いぞ!」

「ふん、悪かったね、少しばかり体力を回復させていたのさ」

 

 不貞腐れながらそう答えながら走る。

 

 そして……彼らは

 

 

 

「試合終了~!

 

 

 

 鳥天狗の勝ちです!」

 

 

 負けた。

 




お久しぶりです。
なかなかアイディアが纏らずずるずると伸びてしまいました。
学園祭は上中下となりますので、あと1話書きます。

誤字、脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。
またアドバイス等も募集しています!


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学園祭の交渉と秘策 

 

 

模擬戦は罪袋達の敗北で終わった。ただの敗北ではない。

 

「いやぁぁ! 楽勝でしたね!」

 

 圧倒的敗北だ。

 すでに罪袋A,B,Cは大地と仲良くなりながら荒い呼吸を整えている。その様子を見ながら鳥天狗、藤田文は外d、げふん。心優しくもパシャパシャと青春の一ページを1枚1枚大切に手ぶれしない様に部費で買った高級カメラで撮っていた。

 おそらく明日か明後日の新聞部の活動として一面を張るのであろう。名前付きで。さてさて、ではその様子を見ていた生贄もといスペシャルゲスト達は顔を真っ赤にしていた。

具体的に言うのであれば罪袋達が自ら相手の名前を発言した時位からだ。スペシャルゲスト達はまるで自分の好きな相手のほぼ全裸を見てしまって キャ! でも見ちゃう! といった表現が良いだろうか? しかし罪袋の覆面は取れていないので同姓の可能性があるため相手は不明だ。一体誰なのだ!!?

 

無論――スペシャルゲスト達の嬉し恥ずかしい様子を藤田文に見られてしまった事はまさに最悪、不運であろう。誰にも見せられないような真っ黒な笑み、まるで「良いこと閃きました!」さぁ!やりましょう!」といった女の子がやれば可愛いなと思う笑顔も今この時は某漫画の「 計 画 通 り 」と同じだ。

見てしまった幽霊部員はなぜかお尻に両手を当ててガクガクブルブルと震えながらゆっくりと後ずさりをし始める。キミは一体何を取られたんだい?

新聞部幽霊部員である立川紅葉の様子を気にもせず藤田文は哀れな後輩からマイクを取り上げる。

 

『さて! ルールは解りましたか? では! 罪袋さんになりたい方は』

 

 と言って一度マイクから口を離して小さな段ボールで作られた神社の賽銭箱を取り出した。本来なら『賽銭箱』と書かれているハズのところになぜか「サーセン箱」と書かれている。

 なぜ、賽銭箱? と参加意欲が満々な体力馬鹿、筋力馬鹿達が思っていると藤田文は倒れている罪袋達のところへ行く。

 すると、倒れながらも罪袋達は各々財布から千円札を取り出し賽銭箱へ入れる。

 誰もが意味を理解した。

 

『ハイ、ありがとうございます! では! 参加希望の方はこちらに参加費1000円をいれてくださいね!』

 

 キラキラとしたスマイスで参加費の存在を突きつけて来た。

 ここで参加しようと思っていた観客は大きく解れる。

 大体は「バーロー、おんにゃのこといちゃらぶ出来るんだ! オラがやらなくて誰がやるんだ!」と意気込み懐の財布の紐を緩くし千円札を取り出すものもいれば愚かにも5千円札を取り出し「漢ならば千円ではなく、五千円だろ?」と恰好を付けるバカ、ごほん。アホもいる。所謂脳筋系派男子、腹、割れていますね!

 次に多いのは「馬鹿どもめが、千円使わずともここから己の武器(カメラ)で戦えばいい話ではないか。これだから脳筋は困る」と嘆く自称現実派男子。先ほど藤田文が持っていたカメラを超えるであろう高級品のカメラを使う者、脚立を使い、一瞬の隙も捕らえる者たち。だが、哀れ。

 ここに藤田文がいるのだ。同業者は排除するのがふつうである。

 

『あ、参加者以外の方はカメラ禁止で~す! 取るのであれば1万円をここにお願いしますね!』

 

 藤田文の『滅びの呪文』によって渋々と一万円札を次々に入れ行く自称現実派男子達。

 さて、最後に残るのは「いや、可愛いけど、こんな形で知り合ってもマイナスなだけだしなぁ」の彼女欲しいヘタレ系草食派男子。

 そんなヘタレたちにも藤田文の魔の手が迫る――

 

『さぁ! 皆さんも参加して彼女を作りましょう! 時代は嫌よイヤよも好きのうちです! 男ならばその手で彼女(鳥天狗)を捕まえましょう!』

 

 こういわれては1度くらいはやってみるかーっとヘタレ共は課金、げふん、募金。いえ参加費を入れていく。会場にいた男性は全員参加するというスペシャルゲスト達を含め、鳥天狗たちにとっては悪夢の様な光景を目の当たりにする。

 絶望に苦しむ鳥天狗たちの中に厳しい目で敵を見据える織斑千冬、そんな彼女に藤田文はニッコニッコと微笑みながら近づいていた。近づいて来る藤田文を睨み付けながら頭の中では必死にどうするべきかを模索する。

 脳筋系である織斑千冬が考えても出る答えは限られているのであきらめましょう。

 

「おっりむらさ~ん!」

「……」

「あやや、無視とはひどい」

「なんのようだ」

「いえいえ、私も鳥天狗なんですよ? つまりこの状況は私にとっても良くはありません」

 

 煽っておいて何言ってやがる。 この鳥天狗。

 

「なので、秘策を用意してあります」

「秘策?」

 

 ええ、っと笑う藤田文に織斑千冬は身近な人物を見ているかのように思えて仕方がない。それにその秘策とやらをタダで教えてくるとは思ってはいない。ならば思い当たる行為はただ1つである。

 

「交渉か」

「Exactly(そのとおりでございます)。どうです?」

「そちらの条件次第だな」

「コチラの条件はただ1つ、それは織斑千冬さんが一人だけでもいいので誰かに捕まってください」

 

 織斑千冬の顔は先ほどとは違う意味で一気に赤くなる。目の前にいるバカを思いっきりぶん殴りたいと強い衝動を感じるが、落ち着けと自分で言い聞かせることで自身を落ち着かせる。

 だが、目の前にいる藤田文はニヤニヤと哂う一方だ。この交渉、成功しても、失敗してもどちらでもいいのであろう。失敗しても人数差がある。捕まる可能性は高い、自分が捕まらなくても他の者は捕まり哀れな姿をさらすに違いない(R18以下の行動だけです)。

 交渉に成功すれば織斑千冬は誰かに捕まらなければならなくなる。自分の身と他人の身、どちらを優先するか、と考えたとき――ふと身近にいる、少し自分が気になる人物を思い出してしまった。誰かの為に頑張る姿、それによって自分も助けられ、その背中は自分より身長が低いにも拘らず大きく思える。だからだろうか。

 

「いいだろう、私が一人だけ捕まればいいんだな?」

 

 いつもなら断固として断るはずなのに、この様な答えを出してしまった。

 藤田文はあっさりと条件を飲んだ織斑千冬に対して驚いていた。プライドは高いが、自分より大切な者の為ならば涙を流して屈することは知っていた。だが、今生贄の中に彼女の友達はいるが、そこまでするとは思わなかったのだ。

 

「で? 秘策とやらを教えろ」

「あ、は、はい。いいですか? 秘策とはーー」

 

 藤田文が秘策の内容を話していくにつれて、織斑千冬の顔は恐怖の大王がニヤァァと嗤う顔へと変わっていく。

 

「――という事です」

「なるほど、確かに秘策だな」

「はい。では織斑さんも条件守ってくださいね?」

「……ああ」

 

 頷く織斑千冬を見て藤田文はゆっくりとその場を後にする。今の彼女にはやることが沢山あるのだ。

次に向かうのは更衣室だ。

 




お久しぶりです
中々更新できず申し訳ありません。

キーボードが壊れた為直す、買い直すなどしないといけなくなったのでまだ遅れます。

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ラストイベント 上

 

校庭に集まるは己の信念を掛けた熱き思いを胸に抱く者たち――罪袋――。

 

 己の顔を『罪』と書かれし白き覆面を被り、上半身は男の肉体美を晒しだし、下半身は男の勝負下着である褌、ただし大きな葉っぱ付いている。首には紳士の様にキュっと綺麗に結ばれたネクタイを付ける。まさにダンディー。今宵(夜ではないが)、男たちは戦場へと踊りだす。

 己の欲、男としての思い、感情……それらすべてが彼らに訴えるのだ。

 

 『捕まえよ、そしてイチャつくのだ』っと――。

 

『ふふふ、では始めましょう……』

 

 静かく、落ち着いた声がマイクを通して大きく聞こえる。

 舞台の上に立つ烏天狗・藤田文は真剣な顔つきで罪袋達を見下ろす、傍から見ればその光景はまるで女王と愚民の様な光景に見えて仕方がないのはどういう事だろうか。

 罪袋達から離れて立つ数人の鳥天狗たちはこれから起こる、いや起こってしまうイベントを阻止できなかったことに己に対し悔しさを覚え、「アレ」を取られてしまった自分に対して殴りつけたい思いで一杯であった。寧ろ過去に戻り藤田文を殴りたいし、終わり次第殴る予定があることは当然ともいえる。

 

 そんな姿を藤田文は見ながら心の中で思う、『成功してくださいね』っと。

 でなければ何のためにこのイベントを起こしたのか解らないし、アソコへ戻ってもあまりネタにはならないだろう。

 故に藤田文は思う。

 

『罪袋達よ、汝ら己の奇跡を欲するのなら、自らの力を以って、最強を証明せよ』

「「「「「ウォォォォォォォォォ!!!!」」」」」

 

 『お願いだから成功してください』っと。

 歓声が鳴り響く中、心の中の声はどこか寂しそうに、けれども神様や仏さまに願う。もし失敗すれば変わらないかもしれないし、例え成功しても変わる事は無いかもしれない。

 しかしこうでもしなければ少しも変わることはないと確信できる。

 

『では、レディィィィィィ・ゴォォォオォ!』

 

 一番罪袋達から近い藤田文はその言葉を最後に先ほど模擬戦で戦った罪袋の2人に解説と実況を任せてステージをゆっくりと降りようとする。だが、藤田文もまた鳥天狗という事を忘れてはいけない。

 すでに舞台へ上がってくる罪袋達、約20人が藤田文という鳥天狗を捕まえるためにスタート開始と共に詰め寄り包囲網を作り上げたのだ。逃げ道を作らせはしない。

 罪袋達は女の子とイチャつきて―――!! という本能を止める事すら見せず、全員で両手を広げながら二重、三重に円状の陣形で詰めよれば逃げる事は出来ない。文鳥天狗へ掴みかかる。

 

 

「「「「ぬぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」

「「「「藤田文覚悟おぉぉ!!」」」」

「あやや、こちらに来ますか」

 

一斉に襲い掛かってくる罪袋達を見ながら藤田文はフッと罪袋達に笑いかけニヤッっと哂い、己の最高の最速を魅せる。

一歩、たった一歩踏み出しただけなのだが、二歩目にはフルスピードで罪袋へ走り出していた。向かってくる藤田文に罪袋達も負けじとタイミングを計り捕まえようとする。

だが、罪袋達は知らなかった。藤田文と言う存在がどれほどまでに理不尽か。いや、情報力は鬼畜だろう。しかしそれを上回るほどに藤田文という人間は過去、鳥天狗として歴戦の戦士と言っても過言ではないほどに『経験』と『場数』を踏んでいるという事を。

 

藤田文は鳥天狗として数百年生き、そして現代へ来て早十数年、人間の妄想は幻想をも超えるという事を藤田文はつくづく思い知った。まさか過剰表現されている行動が本当に出来るとは自身も思ってはいなかったほどだ。

 

たかが漫画、たかがアニメだと己に笑った。だが、現実として出来てしまった。

己が最も自信に持つ最速のスピードと現代でスポーツとして作り上げられてきたステップの組み合わせ技―――名を『疾風:黒き幻影の翼(ブラックバートゴースト)』という。

 

 

 

 

 捕まえ様と飛びかかってくる罪袋達には藤田文の姿は瞳にすら捕らえきれない。その眼に映るのは背中についている作り物のハズのカラスの黒い羽根が空から舞い散る幻想的な美しき光景。

それは本能と煩悩の塊である罪袋達でさえ一瞬、足を緩めてしまうほどの美しさに力を抜いてしまう。

だが、気が付く頃にはもう遅い。すでに目の前にいる筈の藤田文の姿はなく、自分たちの後ろ御走り去っているのだから。

 

「な、なんだったんだ、今のは……」

 

『ふむ、我々から見ればただ避けながら走り切ったように見えたが、罪袋達はそうではないようだな。どう思う?』

『さぁね、ただ解るとすれば藤田は走りながら難しそうなステップを踏んでいた。何が起こったかはあとで藤田か罪袋に聞けばいいだろ』

『えっ!? 罪袋さん見えたんですか?』

『ふん、僕にかかればあれくらい見切れるさ』

『先ほどの模擬戦では使わなかったのはこの本番の為か……』

『文のやつ、何時の間にあんなこと出来る様になったのかしら?』

 

 各場所にセットされているカメラによってイベントを見ている観客たちは驚きの声を上げながら実況に耳を傾ける。

 なぜか罪袋Aが居ない事に不思議に思いながら学校で使うもんじゃないだろっと思う位の大きさをもつテレビを見つめながら各場所にセットされているカメラの映像をスローモーションにし解説を罪袋CとB。あと同じ鳥天狗なのに解説席にいる葛城颯と立川紅葉は実況し始める。

 

 

 私こと藤田文は『速さ』が好きです。

雨雲を追い越し、嵐を切り裂きながら空を飛びながら様々な光景を見ることが好きでした。今は飛べないので仕方ありませんが、もし飛ぶことが出来るのであれば現代の都市にあるすべてのビルの間を通り抜くという事をしたいですね! 飛ぶことが出来たとしても私は『現実の常識』によって私自身は消え去るでしょう。

昔は一日中飛び回り全速力で山の木々を避けながら木に当たると言うスリルを味わいながら飛ぶのが好きでした。

海の水面ギリギリで飛びながら潮風と波に当たって体を濡らすことが好きでした。

空を飛び他の天狗たちを追い越し雷雲の中で雷に当らずに飛ぶのが好きでした。

激しい雨の中を視界も悪い中、飛びながら現代のシャワーの様に体を濡らすことが好きでした。

上空から勢いよく湖の中へ飛び込み、落ちるスリルを味わいつつ魚を取ることが好きでした。

人里で突風と共に一目に見つからず子供を攫い、いろんな空の景色を見せるのが好きでした。たまに弟子にしておくれと言う強引な子がいますが今のところはほぼ100%断っているので問題ないでしょう。

天狗として大幅に力を失いましたが、それでも速さだけは誰にも負けたくはない。

何が言いたいかと言うと私は『速さ』を愛しているという事ですね。

だからこれが出来たとき、私は新たな『スリル』を感らじれる。いかにして人に体を触られず避けきれるか。『飛ぶ』とは違い『走る』という新しい『速さ』が私にはドキドキワクワクで一杯あるのです。

妖怪としては力を90%失った事で『妖怪の魂を持つ人間』という99%人間になりましたが、新しい『速さ』を見付けられるチャンスであり、改めて『人間』の事を知る事が出来るでしょう。

例外を除いて肉体的、精神的に貧弱な人間は妖怪にとってはただの餌であり、存在理由。

しかし時代が進めば人間は妖怪を『倒すこと』が可能になった。

面白い、同じ人間というステージの上でどれだけ出来るか楽しみでならない。

 

ならば『人間』のステージで『速さ』がどれほどまでに差が出来るのか。

 思えば幻想郷に新聞が来て以来、『速さ比べ』をとすることはせず情報の取得を誰よりも早く得る事が趣味になった。

 

 今回の異変に巻き込まれて良かったと思いながらいずれ幻想郷へ戻ればあと200年はつまみにしながら楽しめる。

 

 幻想郷の賢者にも接触出来た今なら機械類以外なら幻想郷へ持っていける。ふぅ、霊夢さん。先代巫女様、ありがとうございます。

 貴方達の寝顔写真と鏡の前でコンプレックスに悩むお姿や幼い頃の写真のお陰で私は現代で好きなことが出来ます。それもこれも霊夢さん達の写真のお陰です。

 これを機に幻想郷へ戻った際には差し上げた写真以外は火につけて燃やす、事はしませんが、アルバムに載せて河童技術で永久保存して思い出として残させてもらいますね。

 




藤田文の速さとしてのプライドぽいの書いてみました。
学園祭としてはイベントラスト、
出来ればあと中、下で終わらせたいですね。

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ラストイベント 中

 

 

 

とある鳥天狗が会場で逃げ回り、同じ鳥天狗であり生贄要員の2名が罪袋のBとCと共に実況、解説をするという なぜこうなった? というべき状態である頃、イベントにまとも参加し逃げ回っている生贄要員たちは校内のある場所で隠れていた。

 

「それで? 一体どうするわけ? 時間制限があると言っても相手が多すぎるし、このままここに隠れていてもいずれ見つかるわ。とは言っても全員がバラバラに逃げても追い詰められて捕まってゲーム・オーバー」

「確かに、しかし我々にできる事と言えば『捕まらない』事だ。遠坂嬢が言ったようにココにいてもいずれ見つかり逃げ切れなくなるだろう」

 

 遠坂凛と氷室鐘は打つ手が無いことに少しばかり絶望感を味わいながらため息を吐く。

 蒔寺楓は2人の様子を見て罰ゲームは目前である事を悟り、藤田文にブツブツと呪いの呪文を唱え始める。

 

「アヤノヤツ、ゼッテーニアトデヨワミニギッテショウテンガイノスイーツゼンシュオオメデオゴラセテヤル」

「手伝うぞ、蒔寺。アイツは束並に逃げるのが早いからな」

「タノンダゼオリムラ、ブンカサイガオワッテアイツガガッコウニキタラツカマエテヤラァ」

「そうだな、それでだ。皆が無傷でゲームをクリアするための作戦が1つある」

 

 織斑千冬の言葉に全員が顔を向ける。

 全員驚きの顔をしながらも頭のどこかでは不可能の文字が浮かんでいるのは当たり前だろう。

 しかし織斑千冬はゆっくりと先ほど藤田文から教えてもらった秘策を語り始める。話すたびに顔色が悪くなってはいくが、藤田文が作ったイベントでそのクリア方法を語る様なもの、勝率は高いと織斑千冬は思っている。

 

「それは流石に難しいんじゃないか? いくら織斑でもそんな漫画みたいな事出来るのか?」

「やろうと思えばやれる。寧ろ剣道、剣術での対決の際には必須技能と言ってもいい」

「なるほどね。確かに出来ればあとは場所の確保だけで済むけど、場所はどこにするのかしら?」

「1年と図書室の所にするつもりだ。ここからなら遠くはないし、最悪見つかっても逃げ切れるだろう」

 

 織斑千冬の言葉に遠坂凛は少し考え始める――とは言ってもすでに答えは出ているようなものだ。なにせ隠れるを選んでも大人数の中隠れきれるとは限らない。校舎なら兎も角、外なら尚更だ。

 逃げるを選ぶとすればそれは時間と体力がモノを言う、織斑千冬ならば逃げ切れるだろうが、他のメンバーはそうでもない。確かに運動神経が良い生徒ばかりだが、それは相手も同じ。

 逃げ切れず、大人数に囲まれればゲームセット。隠れるより勝率は低いと言えるだろう。

 

「私は織斑嬢の案に賛成だ。正直他に手はないと思っている。逃げる隠れるよりは確率は高いだろう」

「おいおい! 出来なかったら全員ゲームセットで罰ゲームだぜ!? 他に良いのが有るかもしれねーしさ!」

「無いでしょうね。さっきも言ったと思うけど、逃げるなら隠れるより勝率は低いし、隠れるとしたら見つかれば最後、さらに言えばあの大人数の中で隠れきれるとは思えないわ」

 

 真剣な顔で語る遠坂凛の言葉に蒔寺楓は肩を落としながら大きくため息を吐いた。

 そして全員が顔を見合わせて頷く。ここにドリームチームが完成し、ゲームの攻略へと足を動かす。

 

 茂みから全員が飛び出し、グラウンドへ向かえばそれは当たり前のように見つかる。参加者の誰かが大声で声を張り上げても、実況者と解説者が戸惑いの声で話し合って今後の展開に期待させ、テレビを見ている見物人がおぉと驚きの声を出してしまうほどに彼女たちはグランドを突っ切り、真っすぐ目的地へ向かっている。

振り向けば文鳥天狗を追いかけている罪袋以外が集まっており、その光景はまるでコッコに追いかけられる某緑の勇者の様である。あの恐怖はやった者にしかわからないだろう。

 

彼女達が向かう先はこの穂群原学園では1年A組と図書室は学園の真上から見れば凹の様な形をしており、座れるようにベンチがいくつか置いてある。影もできるので涼みながら男子の弁当組はそこで持参の弁当を食して部活へ向かう生徒が多い。女子生徒は昼休憩時に行くことが多い。

そう。凹の様な形、織斑千冬一行は自ら追い込まれるように走っているのだ。鬼ごっこと同じ様なルールのイベントでは正気とは思えない選択である。それでも彼女たちは助かる唯一と信じながら、走っている。

 

 

 全員が奥にあるベンチまで付く頃には罪袋達は歩みをゆるやかにし両手で己のネクタイを締め直しながら余裕な雰囲気を醸し、哀れな子羊の元へ向かおうとしていた。

 そんな中、1人織斑千冬は立ち上がり、

 

「あとは任せろ」

 

 そう言って罪袋達の方に少し歩み、すぅーっと息を吸い込み―――

 

「覇ッッッ!!」

 

 気合を入れる。だが、ただの気合ではなかった。気合の籠った声は罪袋達の歩みを完全に止めた。いや、止まらせたのだ。

 今、彼ら全員の背中は冷や汗で冷たくなり、覆面が無ければ彼らの顔に大量の汗が流れている事を知れただろう。

 恐怖――。それは唐突に現れる格上の捕食者に出会う時、己の生命が失うだろう瞬間に現れる。それは地球上のどの生物にも言える事だ。食い、食われる。食物連鎖の頂点に立つものでさえも免れきれぬ心の奥底に眠る原点の感情。

 それは誰もが足を止め、体を震わせるほどに、彼らの目の前に立つ『織斑千冬』という絶対者は格上という事を明確に表していた。

 

「す、すげっ「シッ!」

 

 その後ろで蒔寺楓はその凄さに声を出そうと瞬間、隣にいた氷室鐘によって口を押えられ、自分の口元に指を当てジャスチャーの「しゃべるな」をしながら歩みを止めた罪袋達を見て、腕時計の時間を見ながら冷静に事の次第を見守る。

 

完全に罪袋達の足は止まった。いやむしろ後ずさりする者すらいる。中には地面に倒れこみ『死んだふり』をする者もいれば片手を上げて気絶する者すらいるほどだ。

 

時間が刻々と進み、この場にいる罪袋達にはすで『時間』の事すら考えられない。あるのはこの恐怖とどう立ち向かうかだ。

 

氷室鐘は安堵のため息吐く。時間はすでに秒読み、あとは藤田文にO・GO・RA・SE・RUだけだ。

そう、油断をしたのだろう。真正面ではなく、横の壁側から走ってくる者がいるとは思わず、集中し殺気、ごほん。気合を入れていた織斑千冬は気が付かなかった。いや、気が付いてはいたがそちらを無事は出来ないし、藤田文との『約束』があったからだ。

 

残り1秒で織斑千冬は罪袋にタックルの要領で捕まえられた。

 

「ぬわーー!」

 

『ピィィィィィ!! ゲームセットで~す!! 参加者と鳥天狗は会場にお戻りください!』

 

こうして捕獲された鳥天狗は1名という驚異の数字は今後の文化祭では罰ゲームも簡易になり、第1回でのイベントは『伝説』と呼ばれ鳥天狗たちの事を天狗の上位である天魔からとり『ザ・ミス天魔』と呼ばれる様になるとは今の彼女たちは知らぬことである。

 

 




学園祭でのイベント終了です。
捕まったのは我らが姉御、ちふゆ姉でした。

あと1話で学園祭編終了予定です。


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ラストイベント 下

 

 

文化祭が終了し、捕獲された鳥天狗――織斑千冬は1人、制服に着替えた後、罰ゲーム用の教室へとやって来た。少しため息を吐きながら先ほどのイベントで捕まったことに関して嫌な気持ちになりながら、自分を捕まえた罪袋の参加者の到着をイスに座り、ただじっと待ちながらこうなって、本当によかったのか? と考え始める。

 

 隠れれば大人数故に時間の問題、逃げれば体力と時間の問題という逃げる側としては無理難題のイベントであった。藤田文の写真により参加をほぼ強制的に行われた事が悔しさを覚える。いや、なぜ「アレ」を取られてしまったのかと何度も思うほどだ。

 私が、織斑千冬が3年前にデパートのテディベア売り場で人形をギューっと抱きしめながら微笑むというイメージ崩壊間違いなしの場面を取られてしまうとは……!!

 いや、むしろなぜあの場に居た? 見られない様にデパートを1階から屋上まで顔見知りが居ないかを隈なく探し周り、安全を確認したはずなのに……!

 

 そういえばなぜ藤田はあの時、私に交渉を持ちかけたのだろうか?

 ふと思い込めば考えてしまう。アイツはこう言っていた。

 

『いえいえ、私も鳥天狗なんですよ? つまりこの状況は私にとっても良くはありません』っと。

 だが、普通に考えても参加者に花を持たせるのが普通ではないか? 正直我々スペシャルゲスト達は生贄のようなモノだったのだから。人数が多すぎてスグに捕まると呆気ないから?

 いや、だとしてもだ。それならば半数は捕まる様な策にするだろう。

 

『いいですか? 秘策とはーー。

 アナタが殺気を出して参加者の足を止めてしまえばいいのですよ』

『なに?』

『ふっふふ、だから殺気で相手を威圧するんですよ、威圧ならばルール上、問題ありませんから!!』

『ふむ……』

『とは言っても、後ろからくる相手には難しいですから、1年生と図書室の、ほら凹字になっているところがあるじゃないですか、あそこを使って背水の陣でやればOKですよ!』

 

 ああ、問題はないだろうな。剣術での試合も殺気を使ったモノが多いし、慣れている。

しかし、あの時に聞けばよかった。「そんなことをして大丈夫なのか?」と。

 実際、私はアイツの要求通りに1人に捕まり、ゲームセット。他のメンバーは無事だ。イベントを盛り上げるのならばもっとギリギリを要求するだろう。

 しかし、なぜ?

 

 っと考えている時、ガラガラと教室の扉が開く音がした。ソチラを向くと赤い髪に見なれば顔をした男子生徒。意外と背が低くそこがコンプレックスらしいが、それを上回るほどにコイツの料理は美味い。

 

「え、みや?」

「えっと、罰ゲームの教室ってここでいいよな?」

 

 士郎はそう言って少し恥ずかしそうに後頭部を掻きながら私にそう言って来た。私は「あ、ああ」としか言えず、呆然とした。

 なぜ、士郎がここにいる?  なぜ、罰ゲームの教室の事を知っている?

 

「士郎、なんでお前が、此処に?」

「何でって、俺がお前を捕まえたからだろ?」

 

 捕まえた? TU・KA・ME・TA? 士郎が私を? 

 私の頭が理解し始めると同時に顔がだんだんと熱くなるのが解る。あのタックルのような捕まえ方をしたのが、士郎だとは知らなかった。あの時はこれでイベントが終わりだなという事しか考えて無かったし、模擬戦の後に士郎が参加するなんて思ってもいなかった。

 

「それで、罰ゲームなんだけどさ」

 

 む、そういえばここには罰ゲームで来ていたんだったな。

 相手が士郎だと思うとなんだか気が抜けるというか、肩の力が抜けた気がした。

 士郎は扉を閉めて、私の前にあるイスを反対にして座った。机一個分が私と士郎との距離だ。そう思うと恥ずかしくなってくるな。

 

「えっとさ。最近あんまり話出来なかったから、話でもしないか?」

 

 ああ、捕まえてくれたのが、お前で良かったよ。他のやつだと文字道理罰ゲームの要求をしてくるだろう。だけど、士郎なら安心できる。

 

 私たちはこの日 あの日以来話せなかった事を喋り尽した。すでに私の頭には藤田の事は忘れて……。

 

 

 

「あやぁぁ~、いやぁ上手くいきましたね」

 

 校舎の屋上で望遠鏡でとある教室を見ながら藤田文は2人の男女を微笑ましく思いながら事の次第を伺っていると隣に立っている2人の女性が未だに鳥天狗の服装を着ながらため息を吐いていた。

 

「文、アンタが変な事をするなぁとは思ったけど、まさかあの2人の為?」

「おーいえーす」

「そのために遠坂さん達を脅したんですか?」

「あははは~。仕方ないじゃないですか。なぜかあの二人、距離が離れたみたいで学校では話をしてないんですよ? プライベートでは中々会えないのでわかりませんけど」

 

 

 藤田文は織斑千冬に作戦、策をしえた後、更衣室へ向かった。『男子更衣室に』。

 そこにいるのは模擬戦が終わり制服に着替えようとしていた衛宮士郎が1人。残り2人には前に実況、解説として写真をコストにしてお願いしていたので、衛宮士郎だけがこの時間に制服へ着替えようとするのは解っていたことだ。

 無論、衛宮士郎が更衣室に入る直前に彼を止めたのは言うまでもない。

 

「えっみやく~ん!」

「藤田? なんでここに?」

 

 衛宮士郎は急に現れた藤田文を怪しみながら問いかけると藤田文はニコニコとした普通ならば「ぶひっぃぃぃ!! もえもえだぁぁ!!」と言うべき愛らしい顔なのだが、散々振り回された衛宮士郎にはただの怪しい顔にしか思えない。

 

「いえいえ、衛宮君にお願いがありまして」

「お願い?」

 

 そして藤田文は織斑千冬に伝えた作戦を衛宮士郎に言った。無論、条件の事も伝えて。

 衛宮士郎は条件を聞いたとき、怒りながらも藤田文の「お願い」に乗った。いや、乗るしか衛宮士郎の中には存在しない。

 

「ありがとうございます。あ、織斑さんを捕まえるのはタイムオーバーギリギリにしてくださいね?」

「解った。代わりに」

「交換条件として成功時にはゲストの全員に写真をネガごとお渡しするってのはどうです?」

「ああ、それでいい」

 

 こうして衛宮士郎と藤田文の交渉と言う名の話し合いは終わった。そして見事に恐怖にかられながらも衛宮士郎は織斑千冬を捕まえることに成功し、後日ゲスト達+罪袋ABCにはポストに写真とネガが入っており、各家の家族に見られたとか無いとか。

 

「アンタ、馬鹿じゃないの? アンタがあの2人にそこまでする必要あるの?」

「ふふふ、ほたて。あの2人はお互い意地っ張りなんですよ。だから外野が動かないとあの2人は動きません」

「織斑先輩に関しては意地っ張りとは思えません。衛宮先輩は意地っ張りと言うより優しい人だと思いますけど」

「あやや、紅葉もまだまだ洞察眼が甘いですね。意地っ張りですよ。あの2人は」

 

 立川紅葉は首を傾げ、葛城はやては微笑む藤田文を見ながらため息を吐く。

 3人は教室から2人が出て行くまでその場にとどまり、次の日3人は風邪で寝込むこととなる。

 




学園祭編終了です。

とりあえず、学園祭で書きたいことは書き終わりました。

誤字脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。
またアドバイス等もお願いします。


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第2章ーFate/ A'sー
私、衛宮千冬の子供たちが3年生になった


「私、衛宮千冬の子供たちが3年生になった」

 

 日本らしい武家屋敷、衛宮邸で私こと衛宮千冬、旧名織斑千冬は呟いた。一夏がIS学園を卒業してから10年ほどたった。あの頃はいろいろな事件があり今思い出すだけでも頭を抱えたくなることばかりだった。

 特に親友である旧名篠ノ乃束が急に結婚しハネムーンと称して月へ新婚旅行に行ったことで悩みの種が減るかと思いきや何のそのすぐに戻っては悩み事ばかりを増やしていた。

 

 ふと庭先を見れば私の息子たちとラウラが楽しそうに戦闘訓練をしているのも見慣れたものだ。ラウラは一夏に振られてからは私たちと共に住むようになり心の余裕を取り戻している。今ではあのように子供たちの師匠をしているくらいだ。

 

「千冬、お茶飲まないか?」

 

 後ろから声をかけてきたのは中学から現在、そして未来まで私を支えてくれている、い、愛しの……。ゴホン、私の旦那である衛宮士郎がお茶をコップに入れて持ってきてくれた。私はコップを受け取ると、士郎は横に座った。

 

「うむ、いただく」

「おう。 おーい! そろそろ休憩しないかー?」

 

「む? ああ、そうだな。よし30分ほど休憩にしよう、水分補給は大切だからな、ちゃんと飲んでおくんだぞ」

「「はーい!」」

 

 さすが私の旦那だな、人数分用意しているとはラウラと子供たちもこっちへ来て冷たいお茶を飲む、と士郎がタオルをラウラに1枚渡し、もう1枚で子供たちの汗を拭いてあげた。 ふふふ、一夏も小さいころは剣術に励んだり、外で遊んで泥んこになったりするたびに私が拭いてあげるんだが、そのたびに一夏は嫌がっていたが、子供たちは嫌がらずにむしろ嬉しがっている。

 

「ラウラ、2人はどうだ?」

「む? そうだな、流石教官とお前の子供だというところだな、なんでも吸収するし、覚えも早い。これならば今すぐ軍に入れても心配の種は無いというところだな」

「軍って、2人を入れるつもりはないぞ」

「わかっている、例えの話だ。このまま成長すれば全盛期の教官に匹敵するのではと私は思っている」

 

 確かにラウラの言う通り、私の眼から見てもあの子たちはかなりの速度で成長し続けている。いずれは私を越すこともできるだろう。しかし実戦経験が無いのでは何度やっても私には勝てないだろうがな。

 ようやく一夏が私の手から離れてから感じる体の衰え、まぁ日々鍛えなければ筋肉は衰えるもの、それは仕方がない。こうやって士郎と、子供たち、ラウラと共にこの家で過ごす日々に不満など一切ない。むしろ喜びしかないというところだな、あの天災である束も旦那によってコントロールされているみたいだし、このまま時が止まればいいのにと思っていいほどだ。ただ……。

 

「母さん! 昨日もすずかとアリサが絡んできてさ。なのはが悩んでるみたいだから熱を測っただけなのに」

「もー! 聞いてよお母さん! 兄ちゃんってばなのはちゃんにオデコとオデコを合わせて熱を測ったんだよ! むしろなのはちゃんの熱が上がるし、すずかちゃんとアリサちゃんは怖くなるんだよ!」

 

 はぁ、冬士は士郎の変なところばかり受け継いだみたいだな。話を聞いていると一夏と同じ、いやそれ以上に鈍感みたいだ。2人して機械いじりが好きみたいだしな。 チラと秋菜をみると頬を膨らませているところはかわいいのだが、どうもお兄ちゃん好きなところがIS学園にいた一夏達を見ているようでこれから頭が痛くなりそうだ。

 

「なんでだよ。なのはのやつ頭抱えてただろ? だから熱がないか見るためだったんだぞ」

「女心がわかってないよ、兄ちゃん。とりあえず! 私以外の女の子にそういうことしちゃダメなの!」

 

「なぁ千冬なんで冬士があんなに怒られるんだ?」

「はぁ、お前ってやつは……」

 

 私まで頭痛くなりそうだ。確実に受け継いだみたいだな冬士。頑張れよ、お前の未来は修羅場だらけだ。

 

「ハッハハハハハ! なんだか2人を見ていると学園にいたころの一夏を思い出すぞ!」

「え? 一兄に?」「一夏兄さんに?」

「ああ、秋菜はわかると思うが冬士の鈍感さは一夏そっくりだ。学園にいたころは私を含めて7人はいたからなぁ~」

「へぇ、一夏兄さんもそういうことがあったんですか……」

 

 いやいや違うぞラウラ、本家本元は私の横にいる士郎だとは言えないな。なにしろあの頃は一夏をここに預けている時間が長かったからな、士郎に憧れていた一夏は変に鈍感になったのは懐かしい。

 一時は預けるのをやめようと思ったからな。8人ほどのそれぞれ強力な力(フェチ)を持ったライバルがいたからな、一位に輝くには「モンド・グロッソ」での優勝が簡単に思える位に壮大で壮絶な戦いだった。

 魔術を扱うツンデレ系赤い悪魔、大和撫子のようでヤンデレな黒の後輩、姉のようなロリ系白い小悪魔、格闘技では私並みのダメット、MでありS系のシスター、大人の魅力を引き出す蛇女、魔術を扱うお嬢様系黄色の悪魔、気品気質を揃えた騎士系バカ食い女。

 ああ、今思うとよく勝てたな。特に赤い悪魔と黄色の悪魔と白い小悪魔が手を組んだ時は負けを覚悟したな。 よくバーサーカーに勝てたなと何度も思う。

 だから思う。

 

「一夏の鈍感さの元は士郎からだ」と。

「え、そうなのですか!? 教官!」

「そうなの? お母さん」

「ああ、私とて何度やられたことか……」

 

 だが、あの聖戦に勝ち抜いたのはこの私だ。士郎の隣は私が貰うがあとは知らん、と言ってもあいつらは聖戦を共に戦った強者(とも)だからな、今でも連絡を取るし、この家はたまり場になっているから年に5度は集まってバカ騒ぎをする。

 そのたびに士郎を押そうとするバカもいるのだがなぁ!!

 だが、そのたびに思う。 私は幸せなのだなと。

 




士郎と千冬の子供たち登場。

双子の兄弟で 兄 冬士くん 妹 秋菜ちゃんです。
二人の学校は少し遠いためバス通学です。

誤字脱字もろもろ、ご感想をお願いします。


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束さんは夢の1つを叶えました。

薄暗い部屋の中、ISを作り出した天災篠ノ乃束はソレを作っていた。魔法陣のように複雑な文字を円の中に打ち込み、複数のISとよく分からない機械を組み込まれている。よく見れば未来的魔法陣、それもISを使った機械的魔法陣だ。

 

「ふぅ、ようやく出来る、ね」

 

 IS(インフィニット・ストラトス)を作り出した篠ノ乃束は中学生の頃に人の体には不思議な力があることに気が付いていた、化学では証明しきれない力だ。一時的に篠ノ乃束はこの力のことを『気』と呼び、性質を調べていくが、その際人間の体内以外に大気にも『気』があることに気が付きそこからは『魔力』と呼ぶようになった。そしてオカルト本を読み漁り、それに応じて『オド』と『マナ』と使い分けた。中学生の篠ノ乃束はそれはもう夢中になってその力を使えるように様々な方法を使った。しかしそのどれも難しく、肉体は傷つけやすく、精神的にも異常があることに気が付いた。故に考えを変えその力で動かせられるモノを作ることにしたのだ。

 

それがIS。

 膨大の(魔術師から見れば微量の)魔力を人間の体から流れる様に引き出し魔力エネルギーを循環させ、さらにエネルギーを増幅させる。これによって篠ノ乃束はISという魔術師から見れば聖杯の様なモノを作り上げることに成功した。しかし天災と言えど分からないことは沢山あった。

 魔力の性質、資質、なぜ魔力は人にあり、外にもあるのか。調べれば調べるほど時間が過ぎ、ISは完成に近づく。

 

「さぁってと、リーちゃんのこの動画道理なら出てくるはずなんだけどなぁ」

 

 そういって部屋の中にあるテレビをつける。

 

 移るのは今より少し幼い遠坂凛の姿。そして場所は彼女の家にある地下室。そしてこれから起こるのはまさにファンタジー、魔術師ではない篠ノ乃束が6年の歳月かけて作ることを決意するきっかけ、天災の名をかけて作り出したIS式召喚陣。

 

『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。

  降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

みたせ  みたせ みたせ みたせ みたせ

 閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

  繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を破却する

      セット

 ―――――Anfang―――告げる

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 誓いを此処に。

  我は常世総ての善と成る者、

  我は常世総ての悪を敷く者。

  汝三大の言霊を纏う七天、

  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!』

 

 魔術師遠坂凛の詠唱と共に血の一滴が落ち、魔法陣は輝きを増して……!

 光が消えるとそこにはナニもいなかった。しかし遠坂凛を見張っていた複数のカメラには映っていた。いや、壊された。上空にあったカメラが何かにぶつかったかのようにカメラDはザー! と地面へ落下したのだ。そしてカメラGは捕らえていた。

 天井を突き抜けて赤い塊が部屋をめちゃくちゃにしながら現れたことを。ソレをみた篠ノ乃束は歓喜していた。長年見張っていた存在がついに魔術を使う姿を捕らえたのだ。すぐさまに全てのカメラを帰還させ、魔法陣の模様を映し出し、解読に励んだ。

 そしてわかったのはこの赤い人を召喚するには膨大な魔力が必要であり、数値にするならば1億8千21万と出た。しかし篠ノ乃束の魔力は20、これでは召喚の足しにはならない。ISを使ったとしても一体何年になる事やら、

 しかし、そこで閃いたのだ。なければ集めればいい。456個のISは魔力を持った者しか反応しない。また自分と織斑千冬しか調べた事が無いため、女性しか乗ることが出来ない。だが、魔力を増幅させるISが複数の人間に毎日バレない程度に集めればスグに集まるのでは?

 そう考えた篠ノ乃束の行動は早かった。ネットワークを使いデータをアップロードし、篠ノ乃束の秘密基地☆に置いてある特殊ISへ集めることに成功したのだ。だが、喜んだのも束の間、世界各国のISは候補生以外全て研究などに使われるようになったのだ。しかしバレるわけにもいかない。

 しぶしぶ妥協し、時を待った。

 

 そして、今日、必要魔力の3倍を用意し、IS式魔法陣を作り上げた。

 

「うー! ドキドキするなぁ!!」

 

 篠ノ乃束はISを起動させ、魔法陣に魔力を流す。中心には『媒介』を置いて。

 

「よーし! いっくよー!

ええっと、素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 私の名前は篠ノ乃束!

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 みたせ!みたせ!みたせ!みたせ!みたせ!

 閉じよ!閉じよ!閉じよ!閉じよ!閉じよ!

  繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を破却するぅ!

     

 セット!―――告げる!

  汝の身は私の下に、私の命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えて」

 

 膨大な魔力によって魔法陣は稲妻を発生させながら光りだす、ここに遠坂凛が居ればすぐにわかっただろう、膨大な魔力というごり押しでさらには魔法陣はめちゃくちゃ、媒介はバカらしいもの、これでは失敗は必然であり、スグに止めるべきであることに。

 しかしそんな止めるべき存在は誰もいない。あるのはまさに破局だろう。だが、彼女は止めない。

 

「誓いを此処に! 

 私は常世総ての善と成る者、

  私は常世総ての悪を敷く者。

  汝三大の言霊を纏う七天、

  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 魔力は暴走をはじめ、部屋にあるモノを破壊し尽くす、まるで爆発寸前のように。

光が全てを包み込み――――――――――。

 

 篠ノ乃束が瞼を開けるとそこにはテレビで見た、真紅のような赤い外套を纏った浅黒い肌の男性がそこに立っていた。

 

「まさか、こ「やったー!!!!!」

「おい、おちつk「さっすが! 束さんだね!! ほんとに成功するなんて!!」

「人のh「やったー! やったー!」

「ええい落ち着きたまえ!!」

 

 そこから30分後、疲れ切った男性と正座する篠ノ乃束の姿があった。

 

「ふぅ、まさかこの私を召喚するとはな」

「ふっふふ!! その通りだよ! ブラウニーのサーヴァント!」

「信じられんよ、このアー……すまない、今何といった?」

「その通りだよ!」

「いや、その先だ」

「ブラウニーのサーヴァント?」

「……」

「……」

「な、なんでさぁぁぁ!!?」

 

 ブラウニーのサーヴァントは叫んだ。もう心の先から叫んだ。

 しかし、そんなブラウニーのサーヴァントにとどめを刺すかのように篠ノ乃束は行動を起こす。

 

「だって、アナタの媒介、アレだよ?」

 

そういって指さすモノ、

 

 ホウキ、チリトリ、ブラウニーの絵本。

 

「なんでさ」

 




すまない。やりたかったんだ。

とりあえずアーチャー……いやブラウニー召喚です。
ブラウニーは今後ISから十分すぎるほどの魔力を貰うことで維持が出来る設定。

やったね! 束さん! お部屋がきれいになるよ!

ブラウニーのクラススキル

キレイキレイ
奇麗にするので敏捷をSランクまであげる。
重いものを持つ場合もあるので筋力をSランクまで上げる。

単独行動
主が居なくても掃除が出来る様に1ヶ月は一人だけでも行動できる。

誤字脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。


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私の幸せ 早朝

 私、衛宮千冬、旧名織斑が朝目を覚ますと一番初めに感じるのは美味しそうな匂いとアイツの匂いだ。ゆっくりと起き、布団の隣を見るが、やはり彼がいない。そのことに少しため息を1つ。

私は置いてある鏡を何気なく見る、上半身パッジャマ、下半身パンツ。まぁ私のいつも寝るスタイルだ。どこも変わりはない、あたりを見渡すが寝室には今私がいる布団以外は木刀や真剣が壁際や掛け軸の前に飾られており、侵入者が来てもウェルカムスタイル以外何もない。

私も彼も余りモノを置くタイプではない故に部屋にも必要最低限のモノしか置いていない。 欠伸を1つしてから立ち上がり、障子を開けると冷たい空気が流れ込み、私の体を冷やしてくる、特に下半身。廊下へ出て薄暗い空を見上げながら思う。

 

 今日は晴天になるな、と。

 

 すっかり住み着いた武家屋敷の廊下を歩き、リビングへ向かう。この間にも肉の焼ける美味しそうな匂いが私を刺激する。少し小走りになる。障子をあけると見覚えのある後ろ姿に安堵した。朝の私はどこか寝ぼけているようだ、こんな姿で安堵するなど。

ゆっくりと障子を閉めて、キッチンで調理している彼に近づく。

 

私と同じ身長。 中学高校では私の方が上だったのだが、いつの間にか同じになってしまった。いや少し抜かれているのか? それはそれで少し癪に思う。

日本人にしては珍しい赤銅色の髪。 束は何とかという機械で髪を染めているからな、高校卒業前までは黒髪だった。

 腕からわかる、鍛えられた筋肉。 この腕に何度私は助けられただろうか、そしてそれと同じくらい強く抱きしめられただろうか。少し顔が熱くなるのを感じる。

 がたいの良い体。 やはり男だからだろう、私が羨ましいと思うところだ。私自身も少しだけがたいは良いが、男と比べると、な。

 

 なんだか顔が熱くなってくる、マズイ。このまま気が付かれれば私が気まずい。コイツは私が赤くなっていることに気が付く、それは嫌だ。故に行動することにした。

 キッチンで調理しているコイツに気配を消しさらに近づく。 そして一言。

 

「士郎」

 

 コイツは、士郎は気が付いたようで私の方を向く。 I・MA・DA! 私の手がぶれる様に素早く、男のくせに可愛らしいエプロンを付けている士郎の襟首を強引に掴む! そして少し引っ張った!

 

「ちふ、むぐ!」

「んっ!」

 

 重なる唇と唇。マウス・ツー・マウス、キス、ヴェーゼ。士郎の驚く顔が見られたことで少し冷えるのがわかるが数秒たってから思う。この方が恥ずかしくないか?と……。

恥ずかしい、私からやっておいてなんだがかなり恥ずかしい。 そして気まずくなってくる、これでは本末転倒、意味がない。どうする? 今私にできる状況は何かないか?

 

1.美人な千冬さんは一度離れて倍プッシュ。

2.綺麗な千冬さんは赤らめながらそそくさと離れる。

3.奥様な千冬さんは子供たちを起こしに行く。

4.現実は諸行無常だ。ラウラにみられる。

 

1、私のキャラではないぞ。それにこれこそ考えることに意味がないか?

2だと士郎に赤らめる顔を見られるではないか! 見られたくないか行動したのに、これも意味がない。

3が一番妥当だ。たとえいつもはラウラが起こすにしても理由としては一番理に適っている。

4はマズイ。マズ過ぎる、ラウラは私と同じくらいに起きるはずだ、だとすれば時間をければ……! 

決まりだ、3だ!

 

「こ、子供たちを起こしに行ってくる!」

「あ、ああ」

 

 顔を背けながら小走りでリビングを出て障子を開け、思いっきり閉める。パーン!という大き目の音がしたが気にすることはない。むしろ気にするな。 障子の前でため息を吐いて、子供たちを起こしに行こうと右の廊下を見る。

 そこには下半身パンツ、上半身だぼだぼのTシャツという良くわからないパジャマスタイルをする少女、いや今では女性になったな。

背中まで伸びた銀色の美しい髪が風に靡いており、右眼の燃え上がるような瞳と左眼は来ていな金の瞳が眼帯で隠されているのが特徴的で高校までは身長が小学生か中学生くらいだったのが今では私の胸辺りまでに伸び、胸も確かCに最近なったとうれしそうに報告する今でも私を慕っているラウラがいた。

 

「ら、ラウラ」

「教官! おはようございます!」

「あ、ああ。 おはよう。ラウラ、今日は私が冬士たちを起こしに行ってくる、着替えておけ」

「はっ!」

 

 その場で綺麗な敬礼するラウラをほっておいて、二階へ向かう。少し急な階段も慣れたが、来た当初は足を踏み外すことがあったな。 二階へついて冬士がいる部屋へノックする。

 トントン。 反応がない。

 

「起きろ、冬士」

 

 仕方ないので秋菜の部屋へ行き、ノックする。

 

トントン。 同じく反応がない。

仕方がない。 一夏も昔は寝坊助だったなと思いながら、昔一夏を起こした方法で殺ることにした。これならば冬士と秋菜は一気に起きるし、面倒がない。

 

ハァーと一度息を吐いてからスゥーと息を肺へ入れ、深呼吸し『殺気』をだした。

瞬間――ドタ! バタ!という騒がしい音を立てながら両端の部屋からドアを開けて私似た黒い髪に士郎の顔立ちに似た、冬士が転がるように出てきた。次に出てきたのは士郎に似た赤銅色の肩まである髪にどことなく私に似た顔立ちをした秋菜が正座して出てきた。

 

「ん。おはよう、冬士、秋菜」

「「お、おはようございます」」

「しかし出てくるのが5秒遅かったな、次の土曜日は覚悟しているがいい」

 

 私の心温まる言葉に冬士と秋菜は涙を流す。

 

「30秒で着替えろ、いいな」

「「は、あひ!」

 




千冬さんのシリアスは少し置いておいて、
ほのぼの書けるかな?と思いながら書いてみました。


誤字脱字があれば感想にて。

またご意見、ご感想等も感想で書いてくれるとスピードアップです(笑)




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私の幸せ 早朝~朝

 子供たちを起こした私は自分の部屋へ向かう。青のジャージに着替えて廊下を歩いていると士郎が家で飼っている白い狼の白野威(シラヌイ)(命名:千冬&士郎)に餌を上げて頭を撫でていた。

 白野威は中学のころに士郎が拾ってきた雌犬、いや雌狼でネームセンスゼロの私たちが考えた末に公園で拾ったという事で白(体が白いので)野(公園で拾った)威(士郎がカッコイイ漢字が良いとのことで)という名になった。

 

「士郎、白野威!」

「ち、千冬か、さ、散歩か?」

「ああ、白野威、リードと袋持ってこい」

〈ワン!〉

 

 白野威は頭がよく、リードや芸などもすぐ覚えた。犬かきも得意で夏に海日和の際には必ず連れていく。 狼のくせに人が好きみたいで人懐きがよくぶつかってスグに顔をなめるのが欠点だな。

 しかし、士郎はなんで顔が赤いんだ?

 

「かーさん! とうさん!」

「おかあさん、おとうさん」

 

 冬士と秋菜、ラウラがそれぞれ黒、赤、ウサギのジャージを着て来た。白野威もリードを持ってきたみたいだ。3人が士郎に朝の挨拶をしている間に私は白野威にリードを付ける。

 

「おとうさん、おはよう!」

「おはよー! とーさん!」

「ん。今日も元気だな、毎朝こんな早くに散歩行くのはつらくないか?」

「「んーんー。平気!」」

「おはようございます、士郎殿」

「ああ、ラウラもおはよう」

 

「よし、今日も朝の散歩(ランニング)にいくぞ。行ってくる、士郎」

「ああ、行ってらっしゃい、いつもの時間に帰ってくるんだろ?」

「ああ」

 

 門を4人で出る。

 そして3人に振り向いて言った

 

「今日は海鳴山公園まで行くぞ」

 

 そこからは話すことなどない、走るだけだ。最近秋菜と冬士は藤村さんから音楽プレイヤーを貰ったようで、ヘッドホンやイヤホンを付けて走る、このことに関しては別にいい、むしろ聴覚が防がれているから嗅覚と視覚が鍛えられるだろう、その内に聴覚を鍛え始めるが、な。

 早朝だからか、道に人はほとんどいない、いるのは散歩しているおじいさん、おばあさんか、ランニグしている若者、あとは車が数台ほど通るだけだ。

冷たい風が喉を冷たくし、お腹も冷たくなる感覚がする、冬木市は冬のように寒い気候だ。10月にもなれば初雪が降るほどで4月まで食い込むほどだ。しかし、寒いからこそ、鍛えれば『心』は鍛えられ、『体』は締め上げられ、『技』は鋭くなる。後ろをふと見ればまだまだ余裕そうな冬士と秋菜の姿がある。ラウラは言わずともわかる、5分もたてば新都の大橋へ着く、まだまだ体力も余裕そうだ。

 

 

新都の大橋を越えて冬木市、新都へ入る。っといっても今日は隣の市にある山公園の為、新都は横断するように走る、海鳴市に入るころには冬士と秋菜は息を少し切らしつつある、ラウラはまだまだ大丈夫だな、白野威は狼だからか余裕の表情だ。

 

 海鳴市の小さな公園まで走ってくると、横断歩道で信号が赤になった。一時休憩だなと思っていると、見覚えのある3人がこちらへ走ってくる。

 

「おや、おはようございます。衛宮さん。みなさんもランニングですか?」

「ええ、高町さん、犬、いえ白野威の散歩ついでに。高町さんたちもランニングですか?」

 

 海鳴市で有名な洋菓子店を経営している高町家のみなさんだった。大黒柱の高町士郎さんは士郎と同じ名前の為、間際らしい。しかも料理の腕もなかなかのモノ。私には遠く及ばないが、かなりの戦闘能力を持っており、ラウラだけでは倒すことはできないだろう。

 

「冬士くんに秋菜ちゃんも、朝から凄いな。隣の市からここまで走って来ているんだろ?」

「はぁ、はぁ……うん! だけどラウラ姉ちゃんに勝ちたいから!」

「むっ? 私に勝とうなどあと10年たってから言うのだな」

「はぁ、はぁ……高町のお兄さんも朝からランニングで疲れないの?」

「俺は鍛えているからな、大切なものを守れるように」

 

 高町家長男の高町恭也、戦闘能力は士郎さんにはまだ追いついていないが、伸びしろはかなりある。将来有望の剣客だ。現在私立風芽丘学園の3年生で家では家業を手伝いながら、「古武術」の師範代であるが、高町さんに鍛えてもらっている。足を怪我しているのだろう、重心が少しぶれているのがわかる。

 

「冬士君、ウチのなのはとは仲良くしてくれている?」

「なのは? なのはとは友達だけど?」

「美由希のお姉さん、冬士はとうさんと同じくらいぼくねんじんっていうのだから、わかってない」

「あははは~、まぁまだ小学生だし、わからないよね~」

「むぅ、秋菜、なんだよ、僕年神って」

「ないしょ。なのはと約束したからね」

 

 高町家長女の高町美由紀、恭也の妹で私立風芽丘学園2年生。「古武術」を現在学んでおり戦闘能力はなかなかで才能もあるが、覚えが悪い。しかしこのまま成長すれば高町さんを超えるだろう。恭也の腕次第といったところか。ラウラとは互角の実力を持っているし、あと2,3年もすれば冬士と秋菜の組手相手にちょうどいいだろう。

 

「衛宮さん、今日はどこまで?」

「ええ、冬木山公園まで行こうと思います」

「そうですか、おろしければ一緒にどうです?」

「うむ、少しスピードを上げますがいいですか?」

「ほう、いいでしょう。 恭也、美由紀いけるな?」

「ああ」

「うん、わかった」

 

「冬士、秋菜。スピードを上げるぞ」

「おかーさん、どれくらい?」

「3倍だ」

 

 冬士と秋菜の瞳から涙が出ているようにも見えるが気のせいだろう。チラっと白野威を見るとワンという心強い鳴声を出した。

 高町家を含み、我々は走り出した。途中で自動車を数台越したがのろのろとした運転をする者もいるものだ。と想いながら山を走り、登る。

 

 公園の高台へ到着してゆっくりと歩く。走ってスグに座るより歩く方がいい。クールダウンして、自動販売機に硬貨を投下しスポーツドリンクを全員分出し、投げ渡す。白野威には持ってきた犬用のスポーツドリンクを器に流しいれる。待ての状態でハァ、ハァと言っている白野威によしと言うと素早く飲み始めた。

 

「すみません、衛宮さん」

「気にしなくていいですよ」

 

 ふと見ると冬士と秋菜はもうダウン状態だ。時間を見ればもうすぐで朝食の時間だ。このままでは間に合わない。白野威のリードを外し、バッグに入れる。ちょうど飲み終わったようで器も片づける。

 白野威はなぜか家以外では糞尿はしない、医者にも相談してもわからないとのことだ。まぁ、おそらく家がテリトリーだと思っているからではないか?という回答だったが。

 

「すみませんが高町さん私たちはそろそろ」

「そうですか、私たちはもう少し上ってからにします」

「では、恭也、美由紀またな」

「はい、千冬さんもまた」

「千冬さん! また今度士郎さんに教えてもらいに行くのでお願いしますね!」

「ああ。 行くぞ。ラウラ冬士をおんぶしろ」

「はい! 教官!」

「よし、では5倍で行くぞ」

 

 ラウラに冬士をおんぶしてもらい、秋菜は私がおんぶする。

 ん、また重くなったな。 この重みがなぜかうれしく思う、一夏はおんぶしたがらなかったからな。さて私とラウラ、白野威は走り出した。先ほど走った時の半分以下の時間で家に着くのは当たり前だろう。

 家に着くころには冬士と秋菜は復活した。

 

「ただいま」

「ああ、お帰り、ほらシャワー浴びて来いよ。タオルと着替えは置いてあるからな」

「すまない」

「気にするな、朝食もできてる、早く来ないと虎が全部食べるぞ?」

「ふっ、そうだな」

 

 冬士と秋菜を先にシャワーさせてから私とラウラがシャワーを浴びる。描写? 何故その様な事をしなければならない。私たちが上がるころには冬士と秋菜は藤村大河さんを挟むように横に座ってしゃべっていた。

 

「あ、遅いぞー! 千冬! 士郎! もういいよね? んじゃ! いっただきまーす!」

 

 藤村大河さん,士郎と同じく私の恩人の一人で極道藤村組の一人娘であり教師。どこかのドラマにあった「ご○せん」と同じような境遇だが、ドラマとは違い極道の一人娘だとしても警察からも商店街からも生徒からも信頼されている。

 私がここに居座りつく前からここで朝食、夕食を士郎と共に食べている腹ペコであり、士郎にとっては姉のような存在だ。また冬士と秋菜が懐いている相手でもある。

 ちなみに左手の薬指には銀色に輝くシンプルな指輪がある。

 

「藤姉ぇ、がっつくのはやめろって前から言ってるだろ?」

「むっふふー! 士郎の料理がおいしいのがいけないのだ! ねー? 冬士くん、秋菜ちゃん!」

「うん! とうさんの料理はうめぇー!」

「おいしいよ! おとうさん」

「むっ、そ、そうか」

 

 こんな風に朝をみんなで食べられるというのは心が晴れやかになるのだな。

 

「士郎、お代わりだ」

「ああ。ほら」

 

 今日も士郎の料理は美味い。

 




お散歩から朝ごはんまでの時間でした。
衛宮家は士郎以外体を鍛えるためにみんなで散歩へ出かけます。

誤字脱字等があれば感想にてお願いします。

またご意見ご感想お待ちしています。


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私の幸せ 朝~昼

私の幸せ 朝~昼

 

 朝食が終わりふと時間を見るとそろそろIS学園へ行かなければならない。また冬士と秋菜は隣の海鳴市にある学校へ行かせているのでここからでは時間がかかる。

 

「士郎」

「ほら、弁当。ラウラの分もあるからな。冬士と秋菜もちゃんと持って行けよ。前みたいに忘れて腹ペコになるんじゃないぞ」

「「はーい」」

「すまない、士郎殿」

「気にすんな」

 

 ラウラが冬士と秋菜の手伝いをしている間に私は白野威に餌を上げる。なぜか白野威は私たちが食べた後でないと食べないのだ。子供たちが準備できるまで白野威の頭を撫でる、撫でられることが好きな白野威は私の手を擦り付ける。

 ふわふわとした毛並みにどこか干した温かい布団のような落ち着く匂い。そういえば聖杯戦争中は白野威とタマモの頭を撫でることが私にとって癒しだったな。タマモは一夏に着いて行ったから少し寂しいが。

 

「おかーさん準備できたよ」

「そうか。門の前で待っていろ」

「はーい!」

 

 秋菜が準備できたことを告げに来た。白野威が食べ終わるのを見て、頭を一撫でする、そしてキッチンへ向かった。

 

 キッチンでは士郎が食器を片づけて、洗っている。いつも同じ風景に少しニヤけてしまう。食器を洗っている士郎に一言いう。

 

「士郎」

「ん。どうしたんだ、ちふっ。むっっ!」

「んっっ」

 

 なぜかデジャヴを感じるが、私は士郎が振り向いた瞬間、襟首を掴み少し引っ張る。私も士郎の頭へ近づき、交わす唇。

 士郎にはいつも助けられている、私が力になれないところ全てが、だ

 

「……いつもありがとうな、行ってくる」

「あ、ああ」

 

 呆けている士郎の顔を見られた私は意気揚々と門へ向かう。夜にまた士郎を弄れるだろう。門の前では私立聖祥大附属小学校の白い制服を身に纏った冬士と秋菜、そして私と同じビジネススーツに着ているラウラがカバンを持って待っていた。

 現在時間7時15分、私たちは歩いて新都へ向かう。散歩していた時とは違い、人や車は断然に多いが東京と比べれば少ない方だがな。冬士と秋菜の体力は回復したようだし、これなら来週から牛乳を毎日飲ませて少しでも早く成長させ筋肉をつけさせよう。

 ふとビルのテレビを見ると「モンド・グロッソ」で日本専用機持ちが優勝したというニュースが流れていた。ふむ、『第二ブリュンヒルデと名高い篠ノ乃箒選手が愛用IS『紅椿』は第4世代型にもかかわらず現在の5,6世代型にも負けない性能を』

 ほう、ようやくISに振り回される事無く乗っているようだな、全く結局卒業後も振り回されていたのにな。あとで電話でもしてやるか。む? はぁ、一夏のやつ、4位とはどういうことだ。相変わらずのようだな。マドカはうむ、2位か映像を見れば接戦だという事がわかるが、銃を壊されてからは流れる様に敗北となる姿、今度会ったとき棒術でも仕込むか?

 っと、駅前に着いたか。

 

「よし、ラウラ。またあとでな」

「ハッ! よし、行くぞ。冬士と秋菜」

「うん、ラウラ姉!」

「はーい、ラウラ姉さん」

 

 私は駅へ入り、定期券で地下鉄電車に乗り込む。行先は『IS学園前』だ。

 私が結婚して衛宮邸に暮らすようになってから1年で作られたこの鉄道は私がIS学園を去ると恐れたIS協会のやつらが工事用IS偽機を使い作った。無論それだけでは利益にならん。途中下車として冬木市から海鳴市を繋いでおり、結構な数の人が乗車する。

 終点であるIS学園まではまだまだ時間があるな、長椅子に座ることにしよう。ゴトン、ゴトンという音と振動が私の眠気を誘う。

 

 眠気と戦いIS学園へ着いた。10分後にラウラと合流し共に朝礼に出る、雑談として先ほどの大会のことを話すと一夏のことは苦笑い、箒のことは喜びの笑み、マドカのことには少しうねる。ラウラも軍にいたころとは大違いに表情をコロコロと変えるようになった。

 喜ばしいが、ラウラもいい年だ。良いやつが見つかると良いなと想う。

 

 今日も今日とて出席簿を振るう。力加減をしながらなるべくいい音が出る様に。

 勉学に実技授業で教え、バカやっている生徒に出席簿で黙らせ、最近後輩となった更識簪がノートを書きながら着いてくる。山田先生は再び会えた元生徒が後輩になったことで舞い上がっている。IS開発、装備想定、機械兵器整備、IS整備、IS作成プログラミング等に関しては圧倒的に山田先生を越えているのだがな。

 

 昼になった。我々教師も昼食になる、ラウラ先生、山田先生、新米の簪先生と共にランチルームへ向かう。全生徒、教師が使うこのランチルームはかなり広い、我々も空いている席を見つけ、座る。

 山田先生と簪先生は食券なので長い行列に並ぶ。3分もあればとって来られるだろう。私とラウラ先生は共に士郎特性弁当をつっつく。覚めているのにもかかわらず美味しいこの弁当は一夏でも難しいだろう。一夏のも美味しいのだが、士郎には負ける。師匠の面目は保たれているといったところか。

 

「うわぁ! 今日も美味しそうですね! 衛宮先生!」

「本当、おいしそうです」

「うむ! 士郎殿の料理は天下一品だからな! かなり美味しいぞ!」

「羨ましそうに見るなら相手を見つけることですよ」

「むぅ~! こんな料理抜群、家庭の味方の優しい男の人なんてそうは居ないんですよ!」

「一夏は家事万能だが?」

「士郎さんと一夏君に関しては特殊なんです! そうなんです!」

 

 私としてはそうは思えないのだがな、うむ、この肉汁がたまらないな。

 そういえば、今日の料理会はどうなっているか。八神さんと美由紀以外は出来るのになぜかあの2人だけは爆発寸前か普通の料理になるのかの2分の1の確率。 今回はうまくいくと良いのだが、夕食に一品加わるか、無いかはそれ次第だ。

 




お昼編です。 できれば今日までに夜編を書いてしまいたい! 
せっかくの休みをパぁにしてやるぞ!

誤字脱字、またはご意見、ご感想に関しては感想にてお願いします。

感想がパァウァーになります(笑)


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私の幸せ 昼

私の幸せ 昼

 

 昼食を終えて次の授業の準備をする、ISを使った実技の授業だ。入学したての1年生は知識でしかISのことは知らん、感覚派、理論派といろいろあるが、私に言わせれば論より証拠、ISを使ってやった方が早いと思っている。だからと言ってただ動かすのでは意味がない、体に覚え指すようにしなければならず、尚且つ面白い授業でなければ1年は覚える。

 

「これより、チームに分かれろ。人数規制以外はこちらからはなんも言わん。各自1チーム5人に素早く分かれろ、良いな? 出来たチームから固まって座れ。では3分間だけ待ってやる」

 

 私がそういうや否や、キャーキャーと言いながら7チームに分かれて座った。余っているやつはいない。私は7チームにA、B、C、D、E、F、G、Hと決める。

 

「これより、「氷鬼」を始める。 ただの「氷鬼」ではなくISを乗ってやる。ステージはこのグラウンド内すべてを使って良い。地上、空中逃げ切れるだけ逃げ切れ。

「氷鬼」のルールは知っているか?

捕まえる鬼と逃げる子と別れるが、鬼がタッチしたものはその場で止まる、この場合は「凍った状態」と言うが行動不能とする。ただし仲間からタッチされれば再び行動できる。

鬼は捕まえられるだけ捕まえろ。捕まった者はその場で待機。たとえ空中であっても動くな。

鬼の勝利条件は時間制限までに全員凍った状態か、3人以上を凍った状態だ。

子の勝利条件は10分まで3人以上が行動できることだ。凍った状態での通信はありとする。

ISの機能すべて使って良い。作戦を立てるのも妨害も有りだ。ただし武具の使用は禁止。また格闘も禁止。

制限時間は10分いいな?」

 

 ルールの説明をして残りは簪先生に任せる。時間を測るのも開始、終了宣言も簪先生だ。

 単純な「氷鬼」だが、ISを使うとなるとそれは難易度が増す。離れた状態で出来るコア・ネットワークによる作戦に加え空中を含む視界を広く持つハイパーセンサーによる相手との距離感覚を含め上下左右警戒し、警戒している相手を追い詰める。時間制限もあるとなれば時間が経つにつれ安心感や切迫感が押し終える。元々の技術力にも左右される。特に瞬時加速(イグニッション・ブースト)はこの遊びでは有利になるだろう。

また、学園で所有している訓練用ISは30個、昔と比べて多くなりさらにはアメリカの第3世代「ファング」シリーズ、ドイツ第3世代「シュヴァルツェア」シリーズ、フランス第3世代「ラファール」シリーズ、中国第3世代「龍」シリーズ、イギリス第3世代「ティアーズ」シリーズ

そして簪先生が生徒だったころに作り出した「打鉄弐式」がこの学園に置いてある。機体の差をどうカバーしどうやって生かすか、全く持って見ものだ。

 1回戦で負けたチームはただの遊びと侮っている奴らだ。次回からは気合を入れなおすだろう。

 

『1回戦 鬼Aチーム対子Hチーム ルールを守って試合、開始!』

 

 始まる「氷鬼」早速空中へ飛び上がるISもいれば走るISもいる。中には3人で追い詰めたり、タッチしたりと技術がなってない生徒が四苦八苦しながら逃げ、追い詰める。

 行き来とした様子がどこか微笑ましい。

 

『10分経過! 試合終了! 5人全員が行動可能な為、Hチームの勝ち!

次の試合をします、次の準備をしてください』

 

 1回戦を見た生徒たちは遊びから本気になった。Aチームは落ち込んでおり、涙を流すものもいる。その様子にため息が出る。ゆっくりとそちらへ向かう。

 

「難しかったか?」

 

 声をかける、私に気が付いてなぜかさらに涙を流す。 相変わらず私は言葉選びが下手だ。

 

「ISに乗ってどうだった?

「難し、かったです、ヒック、ただの、「氷鬼」だと、思って、ました」

「そうだな。今回は「氷鬼」だが、相手を追い詰める、逃げるといった距離感覚は難しい。

ほらみろ」

 

 私が指をさす、そこにはクラスにいる専用機候補生の生徒がタッチされ凍ってしまった様子だった。そのチームはその場に一気に固まってしまい、鬼のチームに追いつめられる。

 

「武器の使用禁止をすれば必然的に距離を詰めなければならない。あの子は遠距離型だ。行き成り追い詰められれば立ち向かうことを禁止されれば逃げるしかない。だがどうやって?」

「……」

「私はコア・ネットワークとは仲間と繋がるためのモノだと思っている。凍ったならば助ければいい、どうやって相手を出し抜けられるかを考えればいい」

「……」

 

 鬼がついに4人凍らせた。残り1人を全員で追い詰めるようだ。この場にいる生徒たちは決着がついたと思っているようだ。だが、あの生徒の瞳にはまだ闘志がある、諦めていない。

 

「お前たちは残り数秒で、ほとんど動きが鈍くなった。諦めたのだろう?」

「……」

「だがみろ、あの子を。ランクCの子が1人で逃げて頑張っているんだ」

 

 すると、その子は凍っている子を通り過ぎながらタッチした。専用機候補生の子に。生徒たちがざわめく、ランクCという最低ランクが専用機候補生を助けた。これで2対5。

 

「ある漫画にあった言葉だが、今のお前たちにはちょうどいいだろう。

「諦めたら、そこで試合終了ですよ……?」。どうだ? 心に響くか?」

「「「「「ばい゙!!」」」」」

 

 候補生とランクCのコンビが全員を助け、試合終了した。

 




夜にするつもりだったんです、書いてるうちについ。
すんません。次は夜です。夜にします。

誤字脱字、ご意見、ご感想があれば感想にてお願いします。


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私の幸せ 夜

私の幸せ 夜

 

「では、また明日」

「はい、今日もありがとうございました。衛宮先生」

「簪! また明日!」

 

 本日の授業がすべて終了し、部活動も終わり現在9時。簪先生と別れラウラと共に家に帰る。

 

 

「ただいま」

「ただいま!」

 

「お帰り、ラウラ。千冬。 お風呂と食事どっちにする?」

 

 士郎の出迎えだ。相変わらず帰るたびにこの言葉を聞いて少し拭きそうになる。普通は逆だろう、そしてその言葉の後には……。ククク。

 そのことを言葉に出して言えば士郎の機嫌が下がるし、料理のクオリティーも下がるから言わんが。

 

「風呂だ、ラウラ入るぞ」

「はい!」

「んじゃあ温めておくから」

 

 風呂に入り、今日1日の疲れをいやす。5年前までは狭かった衛宮邸は耐震等の理由で増築を含め工事が行われた。その際なかなか家に来ないセイバーと凛の要望により風呂は4人までなら足を延ばして入れる程の大きな風呂となった。

 セイバーがすっかり風呂好きになったのは仕方がない。しかし凛に関してはよくわからない。なぜか私の方を見てニヤニヤと笑っていたのはよく覚えている。

 桜とイリヤは資金提供者権限で部屋を多く作ることを要求され、通った。なぜか地下室も出来て使ってない部屋が多い。たまり場になっているこの家に泊まりに来る連中が全員来ても空きがあるほどだ。

 

 風呂を出てパジャマに着替える。と言っても私は上半身パジャマの下半身パンツだが。しかし、誰がラウラに上半身Tシャツ、下半身パンツという変着かたを教えたんだ? いまだもって不明だ。

 

 リビングへ行くと士郎が料理を温めてくれたのだろう、料理から湯が出ている。

 

「子供たちは?」

「もう10時前だろ? とっくに寝ているよ」

「そうか」

「仕方ありません! 明日も早く起きるのですから!」

 

 それもそうだ。しかし帰って子供たちの顔を見られないのも少し寂しく感じる。すると、トンとテーブルに2本のカンが置かれた。

 ビールだ。それもア○ヒスーパ○ドライとのど越し○だ。コレにニヤけながらプシュとカンを開ける。

 

「「かんぱい」

 

 ゴク、ゴクと喉が鳴らす、外国では下品というが知らん。ここは日本だ。私はこの飲み方が好きだ。ぷはぁぁ! うまい!

 食事を始める、秋刀魚の焼き加減が絶妙でごはんが進む。赤みそを使った濃い味のワカメ入り味噌汁はすべて飲み干したい位だが、それでは偏ってしまう、弁当のあまりだろう、小さめのハンバーグが士郎特性ソースを掛けられている状態で3つもある。食べているうちにご飯がなくなる。当然のごとく、士郎にお代わりの要求をする。

 はぁ、これではセイバーのことは笑えないな、高校のころよりもさらに腕を上げた士郎の料理は冬木市では知らぬ者はいない。週3でやっている「主夫士郎の料理教室」も希望者がお金を持ち寄って部屋を借りて、器具を買った状態で頼み込むほどだ。基本お人よしの士郎だ。そこまでされれば断らないし、凝り性だ。腕を上げた主婦と共にさらに料理の腕を上げる。出来たら、今度は外国の料理に挑戦し、料理の腕を上げる。まさにプラスの連鎖だ。終わるところを知らない。

 おかげで冬士と秋菜のお年玉の額が子供のお小遣いではないほどになっている。しかし断ろうとしても料理教室でお世話になっていると言われれば断れないし、1つ1つは小さな額なのだ。

 数十分で食事が終わる、ラウラも同じだ。そしてビールもなくなる。

 

「士郎、2本目良いか?」

「ああ、あとほら御つまみ作っておいたぞ」

「おお! 士郎殿! ありがとうございます!」

 

 士郎の許しを得て2本目のビールと軟骨のから揚げを食べる。コリコリとした触感がたまらない。流石士郎、私の好みをわかっているな。

 

「今日はどうだったんだ?」

「ああ、士郎の案、「氷鬼」を授業に組み込んだ」

「え? あれをやったのか?」

「無論、使えるものは使うのが主義だ。遊びという形でISを知ってもらうのは有効的だ。それに集団戦にもなるからな」

「えっと士郎殿が考えたのは「氷鬼」と「ボールあて」と「雪合戦」「チャンバラ」ですね!」

 

 そう、「氷鬼」は士郎にISで出来る遊びの案から私なりに考慮し変えた遊びだ。他にも「ボールあて」ならぬ「IS風銃弾あて」や「雪合戦」ならぬ「IS風銃撃戦」がある。戦闘向けなので次の授業でやる「氷鬼」の次にするつもりだ。

 特に「雪合戦」は有効的だ。あえて勉学でしか教えない銃の特性だけ教えてからやれば、距離感覚がわからず混乱するだろう、信頼するISの機能を使わなければならず、授業の内容を覚えているかを確かめることもできる。一石二鳥だ。

 

 「チャンバラ」に関してはそのままだが、それでは面白くない。チーム分けされた後に全員にランダムで武器を渡せばいい勉強になるだろう。

 

「おい、千冬悪い顔になっているぞ」

「ひどいぞ。生徒のことを考えているのに」

「あまりいじめるなよ?」

「大丈夫です! 士郎殿! 教官はその様な事はしません!」

「むぅ。そうか。わるい千冬」

「ふん、わかればいいんだ」

 

 おっと、2本目ももうなくなったか。しかしまだ軟骨はある。

 ならば

 

「士郎」

「だめだ」

「……まだ言ってないぞ」

「1日2本まで。前に飲みすぎて遅刻しただろ?」

「むぅ」

 

 そういわれると仕方なく感じる。 目の前にいるラウラはおろおろしているが助けにはならん。クッ、ここまでか。どうにかして回数を増やさなければな。

 すると、頬に冷たいのが当たる。勢いよくそっちを振り向くと士郎が冷たいビールを持っている姿だった。

 

「今日は特別だからな、いいか? 明日からは2本までだ」

「あ、ああ!」

 

  プシュと開け、一口飲む。

 

 ああ、私は幸せだ。

 




掛け切れて満足しました。
自分的にはほのぼのと書いたつもりなのですが、如何だったでしょうか?

「ほのぼのたりねーよ!」という方がいればアドバイスください。

精進します。


誤字脱字等、またはご意見ご感想をお待ちしています!
みなさんの感想が私の力です!


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お母さん! コレやってみて―!

「お母さん! コレやってみてー!」

「母さん! これやってみてー!」

 

 今日は土曜日、昼食が終わり冬士と秋菜は高町家へ遊びに行っている。ひと時の安らぎとして居間(リビング)で士郎が出してくれた温かいお茶をラウラと共に飲んでゆっくりしているとドタバタという足音が聞こえてきた。いつの間にか帰ってきた冬士と秋菜が紙袋を私に差し出してこう言ってきた。

 この時に私は思った。また面倒なことになったと。

 

「冬士、秋菜。帰ってきたならまずは手洗いうがいをして来い」

「じゃあお母さん!  手洗いしてくるから、これ読んでね!」

「絶対だぞ! やってほしいことがあるんだ!」

 

 私に紙袋(×2)を渡してドタバタと洗面器の方へ走っていく2人。その後姿を見ながらため息を1つ。仕方なく、お茶を置き、紙袋の中を見ると漫画があった。ん? やってほしい事とはなんだ? とりあえず、1巻をぱらぱら~と捲る。着物を着てこの家のような武家屋敷があるところから日本歴史の何かだろう。目の前で目をキラキラとさせているラウラに投げ渡し、お茶をすする。

 冬士と秋菜が戻ってくるとラウラと同じように目をキラキラさせている2人。

 

「で、私に何をしてほしいんだ?」

 

 まぁ私が出来る事ならやってやろう。何かを買ってほしいとかなら士郎に頼め。貯金のヒモはあいつが握っているからな。

 

「これをやってほしいんだ!!」

「これをやってほしいの!!」

 

 差し出された漫画、捲られたページには漫画特有のご都合主義剣術があった。なるほどな、これをやってほしいと。別にやるのは良いが、1つ気になることがある。

 

「お前たち、この漫画、誰から教えてもらったんだ?」

「恭也さん!」

「高町のお兄さん!」

「「お母さんなら絶対できるって言ってた!!」」

 

 ククククク、そうか、そうか。恭也が漫画を貸したのか。全く、この2人はまだ子供なんだぞ? スプラッタ要素がある漫画を貸すなどと……少し稽古を付けてやらんとな。しかし、2人の願いを聞いてやらねばならん。

 

「よし、いいだろう。だが、その代わりに漫画は没収だ。いいな?」

「「ええ~~」」

「では再現しなくていいな」

 

「恭弥さんに返してくる!」

「高町のお兄さんに返してくる!」

 

 素直でよろしい。では漫画を返しに逝くか。待っているがいい高町恭弥。私自らが稽古を付けてやる。安心するがいい。この漫画の様に生かしてはやる。

 

 

 高町家についてインターホンを押す。 すると高町家末っ子のなのはが出てきた。

 高町なのは。冬士と秋菜が通う学校のクラスメートでなかなか可愛らしいく根性がある。諦めない精神力はあるが、どこか心に闇を感じる。まるで昔の一夏のようだ。しかし、周りの友達や冬士と秋菜と一緒にいるからか最近では常に心は明るく見える。

 あと士郎から受け継いだ朴念仁冬士の犠牲者3号だ。

 

「はーい! あ! 冬士君! 秋菜ちゃん!」

「また来たよ! なのはちゃん!」

「あはは、さっき戻ったのにまた来ちゃった。悪いな」

「う、ううん! ぜんぜんいいよ! けどどうしたの? 忘れ物とか?」

 

 ああ、忘れ物というより稽古を付けに来たというべきだが、今ここでいうことはあるまい。

 

「ふっ、忘れ物ではなくて恭也に稽古を付けてやろうと思っていな。 恭也はいるか?」

「え? お兄ちゃん、ですか? 今道場にいると思いますけど……」

「そうか、なのはは今1人か?」

「すずかちゃんとアリサちゃんがうちに来てるんです!」

「そうか、そうか。実は冬士と秋菜に再現してほしいという要望があってな。稽古のついでに来たのだが、よければ見に来ないか?」

「え!? 再現してほしい技って、冬士君! 秋菜ちゃん!」

「おう! さっきのあれだよ!」

「一緒に見ようよ!」

「うん! じゃあ、先に道場の方に行っててね! 2人を呼んでくるから、待っててね!」

 

 嬉しそうな顔で家の中へ入っていくなのは。 私たちは道場の方へ行く。ガラガラと戸を開けるとなぜか冷や汗をかいてこちらを見る恭也と美由希。

 

「ち、千冬さん、い、一体どうしたん、ですか?」

「なに、恭也。お前に稽古(罰)をしてやろうと思ってな。漫画を返すついでに来ただけだ」

「ヒッ、ち、千冬さんの稽古!? 恭ちゃん! 千冬さんに何をしたの!?」

「い、いや待て、俺は何もしてないぞ!? ただ漫画を冬士たちに貸しただけだ!!」

「ああ。そうだな。 子供が読むには過ぎるグロイ表現の入った漫画だな。返しに来たぞ?」

 

 ニコォと笑う私、後ずさりをする恭也と美由希。冬士と秋菜はすでに靴を脱いで道場で正座している士郎殿の横に同じように正座する可愛い子供たち。私も靴を脱ぎ、一礼して入る。後ろからなのはとその友達のアリサとすずかが入ってくる。

 

「本当なのよね!? 冬士! 千冬さんが『アレ』を再現してくれるって!」

「ああ! 母さんが見せてやるって言っていたから恭弥さんの稽古中に見せてくれる!」

「すごいよね、『アレ』が出来るなんて。他はやれば出来なく無さそうだけど。」

「うん! うん! リアルだとどんな風なんだろうね! ね! ユーノ君!」

「きゅ?(アレ? なのは。アレってなんのこと?)」

「ふふふ、 見てからのお楽しみだよ!」

 

 うむ。子供たちも元気そうに見ていることだしそろそろ始めるか。

 

「恭也、位置に着け」

「は、はい(アレ? アレってなんのことだ!?)」

「美由希は審判だ。 開始の合図をしろ」

「は、はいぃ~!!」

 

 

 互いに位置に着く。先ほどから怯えていた恭也の表情は一気に真剣に変わる。二刀の小太刀(木刀)を持ち、足幅を広げる。対する私は家から持ってきた木刀を自然に持つ、構えるにはまだ恭也の力量は足らない。このままで十分すぎる。

 

「はじめっ!」

 

 美由希の声が響く瞬間――恭也は一気に距離を縮めて来た。その足運びは一級品というべきか。少し重心がズレている事さえなければさらに速かっただろうがっと。私は体を少し引きながら体制を取ると肩と脇腹のあたりに割りばしが数本飛んできた。

 ふむ、前よりはフェイントもうまくなっているな。

 

 一気に私に近づいた恭也が左手で持つ小太刀が上から振るわれた受け止めれば空いている小太刀からの斬撃が来るので半身右側によけると、右手の小太刀が左から一文字切り。

この斬撃は木刀で受け止めていると振り下ろした左の小太刀が木刀の方へ今度は下から襲う――。一旦後ろに飛び距離を取る。

 

が、再び割りばしが私の方へまっすぐに飛んできた。着地地点に飛んでくる割りばしを木刀で弾くと一瞬で回り込んできた恭也の小太刀による斬撃。一方を木刀で抑え、もう一方は左出て右手を抑える――。

 

すると今度は抑えていた小太刀に込めていた力を一気に緩め、私の体制を崩しつつ脇腹へ一発の蹴りを入れられながら距離を取られた。まぁこの蹴り程度では動きもしないのだが。

 

「ふぅ、相変わらずですね、短期戦と思って一気にここまでやったのに沈まないとは」

「これで沈むようならば私は高校のころに死んでいる」

「一体どんな生活していたんですか!?」

 

 居候の修羅場&聖杯戦争だ。

 

「次は私から行くぞ」

「ッ!!」

 

 今度は私から攻める――。正眼の構え。確かこんな感じだったな。冬士と秋菜が見せた漫画の箇所は……。1つ、深呼吸し目の前にいる恭也を見つめ、一気に体を動かす――!

 

恭也に一騎に近づきながら、木刀を振るう――。

 

----------壱--------

------捌------弐-------

---漆-----玖-----参------

------陸------肆 -------

----------伍---------

 

九つの斬撃、漫画ではどの防御方法もないと言っていたが、盾を使えばおしまいだな。しかし、相手が接近型ならばこれほど有効なものはない。二刀流でさえ2つの斬撃しか受け止められないのだから、切落、袈裟斬り、動、右斬上、逆風、左斬上、逆胴、逆袈裟。

そして刺突の一撃、うむ、明日は筋肉痛になりそうだな。久しぶりに筋肉を使った。

 ちらっと後ろで倒れている恭也を見る、ぽかんと口を開けたまま天井を見上げていた。冬士と秋菜、なのはやアリサ、すずかもぽかんと口を開けている。

 

確か漫画ではこの技は

「九頭竜閃」

だったな。

 

「恭也、これで許してやる。あまり子供に変なものを見せるなよ」

 

 瞬間――。子供たちが叫び始めた。悲鳴ではないからいいのだが。さてさっさと帰るか。

 




千冬さんならできる(確信)

リリカル組との会話要望があった気がするのでついでに入れてみました。
一応、自分なりのなのは、アリサ、すずか、美由希、恭也なのですが、
どうでしょうか?
そして、お粗末な戦闘シーン(笑) あっという間ですね~。
これ以上入れてもダメな気がしますけど。

誤字脱字ご意見ご感想は感想にてお願いします。


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兵藤一誠

兵藤一誠。

 生まれ冬木市、高校までは冬木市で育った。小さい頃、変質者と言っても過言ではない男との運命の出会いを果たし、「エロッセー」「バカエロ」のあだ名をみんなから貰った。ただ1つ、彼の人生において最も大切なモノ、それは「おっぱい」である。

 女性の夢と希望が詰まったモノ、それこそが兵藤一誠が最も感情を爆発させる事柄である。

 

 彼のターニングポイントが3つあった。

1つ目は幼い頃に出会った変質者との出会い。これにより本来なら真面であろう性格は一気に変わったと言ってもいいだろう。

2つ目はバカ騒ぎが出来る友達を得たこと。同じ性質を持つインテリ系バカスカウター元浜純と坊主系バカパパラッチ松田誠司の存在が彼の中で最も大きいだろう。

他にもひんぬー中華系ツンデレ娘凰鈴音、燃えるは赤い髪、心に思うはモテたいと思う。エロ同士五反田弾、爽やか系、インテリ御手洗数馬。

 そして、男の敵、鈍感?なにそれ、どうやれば習得できますか? 織斑一夏。

 3つ目、最後のターニングポイントは彼女に出会えたことであろう。

 

「ん? なにやっとるん?」

「あ、美紀先生」

 

 駒王学園社会教師 八神美紀。 兵藤一誠は彼女に出会えた瞬間、歓喜した。寮に戻り一緒に駒王学園へ来た松田誠司と元浜純と共に近くのカラオケボックスで叫んだ。喜んだ。語り合った。 素晴らしいOPPAIだ! 魔乳様だ! いいや! 女神乳様だ! お互いの意見をぶつけ合い、殴り合う青春の1ページ。

 その後なぜか八神美紀は何かと兵藤一誠に頼み事をすることになり親しくなるのは間違いない。同じくらい女子生徒から「なぜ!?」と思われるぐらい頼み事をするのだ。美人で優しいと評判の教師が女子生徒から嫌われ者『ずっこけ○人組』と名高い一誠が陰口されるのは当たり前のことであった。

 

 しかし、逆に兵藤一誠は「女子に噂されている!!」と喜び、他2人から熱い声援(物理)を送られ、より一層に頼まれごとを進んでするようになった。

 

 元々、エロを除けば真面目な一誠は八神美紀の頼まれごとをされている姿に女子生徒からは少し評判が良くなるのは当たり前だが、その後のアフターフォローにより1上がって2下がる状況の為意味がない。

兵藤一誠が駒王学園に入学してから1年間たったある日のことであった。何時ものように学校で居残りされ、毎日の日課というべきか、反省書を書いていた。書き終われば職員室へ行き担任の教師に渡し、下校する。同じ毎日であったのだが、この日ばかりは違った。

 

「イッセーく~ん! ちょっとええか?」

「あ、はい。 なんっすか?」

「いや~実はな? ちょっと手伝ってほしいや。ええか?」

「あー」

 

 兵藤一誠はこの時めんどくさいという気持ちで一杯だった。せっかく書きたくもない反省書を書き終わり寮へ帰れるのだ。何がうれしくて手伝わなければならないのか。何か良い言い訳はないか? と簡単に考え始めた。

 しかし、それは次の瞬間、手のひらを反すように変わる。

 

「で・き・へ・ん・か?」

 

 腕を組み、少し持ち上げる。まるでそれは女神さま級のおっぱいが降臨するかのような錯覚がした。目線はすでに顔ではなく胸、おっぱい、バストにしかない。 揺らせばそのように兵藤一誠の顔は動く。まるで猫がねこじゃらしに夢中になっているかの様に。

 

「できへん?」

「やります」

 

 すでに勝敗は決まっていた。兵藤一誠は下げていた白旗を上げキリッとしてまっすぐな瞳で八神美紀を見つめる。その様子に嬉しそうな八神美紀は兵藤一誠を連れていく。

 

 こうしていつもとは違う手伝いをする羽目になった兵藤一誠はこの日なぜか八神美紀の自宅まで連れられた。

 

 次の日、どこかつるつるとした八神美紀とげっそりとした兵藤一誠の姿に女子生徒はどこそこの化粧品か!? と問い詰め(聞いて)またげっそりとした兵藤一誠を直そうと松田誠司と元原純はエロ雑誌を見させたが、目もくれず寝ている一誠に驚きであった。

 むしろ、病気になった! と思われたが、女子生徒にとっては迷惑な存在が一日だけだろうが、少し平和だ! と生き生きとしていた。

 

 

 

『私、織斑千冬は結婚します』

 

 歴史上最も視聴率No.1、ギネス記録に乗ったこの記者会見。無論この2人も見ていた。裸で、ベッドの上でだが。

 

「あ、一夏の姉さんじゃねーか」

「……」

「へー、この日と結婚するんだー。 良いおっぱいだけど怖そうだから出来ないだろうなって思ってたのに」

「……」

「美紀さん?」

「アイエェェェェェ!! ブリュンヒルデ!? ブリュンヒルデナンデ!? ここハイスクールじゃないの!? Fateじゃないの!?」

 

 

 ……こほん、八神美紀はこの記者会見をみて今まで見たことがないほど混乱に陥っていた。ISの広告チラシなどあるのだが、八神美紀は割引のチラシ以外は捨てる主義のため、深く見ずに捨てていた。

 よって受れば補正でBランクだったのを見す見す見逃してしまったのだ。そんなことを知らない兵藤一誠は混乱している八神美紀を抱きしめ落ち着かせるという方法を取った。

 

 卒業後兵藤一誠は八神美紀の婿入りを果たし数年後1人娘を授かった。

 

 一人娘の名は 八神はやて と申す。

 




このために一誠を出したんです!
父、一誠の熱い情熱(おっぱい)と
母、美紀の莫大な魔力を受け継いだハイブリッドはやての誕生。

書けて良かった。

関西弁は何となくでしかできません。
もし、本場の方が読んでくださっていたなら、違う言い方があれば教えてください。


誤字脱字、ご意見ご感想があれば感想にてお願いします。


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小さな執事見習いと小さなお嬢様達

 

「それじゃあ母さん、父さん。秋菜と一緒にすずかの家に行ってくる!」

「ああ、ラウラ、送り迎え頼むぞ」

「了解です、教官!」

「悪いな、ラウラ。秋菜。コレ、向こうでみんな仲良くして食べるんだぞ?」

「うん! うん! ありがとう! お父さん!」

 

 玄関で秋菜は士郎から市販のケーキ箱を受け取り嬉しそうに笑う。ケーキ箱を持っていなければその場でジャンプしそうなくらいだ。確かに士郎の料理は美味い、一夏に料理に教えてくれたおかげで一夏がこの家を出るまでは料理の勉強という事で一週間に3度は豪勢な料理だった。

 さて本日は冬士と秋菜は同級生の月村すずか邸でティーパーティーだそうだ。ガキの癖に何ともまぁ……。ティーパーティーと言っても結局はゲームやお喋りで悪そうだ。冬士は月村邸にいる猫達と戯れているそうで、よく、いやかなりの頻度で猫の毛を大量に付けて帰ってくる。

 その度に全身ローラーをしてもらうがな。

 

「では、行ってきます! 士郎殿、教官!」

「「行ってきまーす!」」

「ああ、行ってらっしゃい」

「気を付けていくんだぞ」

 

 ラウラは秋菜の手を持ち、冬士は白野威のリードを持っていく。

 何故かは解らんが、白野威は他の犬は愚か鳥、猫、ネズミ、狐に人気の様で懐かれている、それがたとえ初対面でも目を離した隙に懐かれている様子を何度も見ている。一体何をしているのやら。

 

「さて、今日はゆっくりするかぁ」

「と言うのであれば、その手に持つ雑巾とバケツは離せ」

「……ハイ」

 

 久しぶりの2人っきりしかいない時間が流れる。

 

 

 

「やっと、来たわね! 遅いわよ! 冬士、秋菜!」

「悪い悪い。ちょっとゆっくりしすぎたみたい」

「ゴメンね、アリサちゃん、でも代わりにお父さん特製ケーキ持ってきたよ!」

「本当!?」

「うん、だからお兄ちゃんに頭を撫でられて眠りそうな、なのはちゃんもちゃんと起きなよ?」

 

 秋菜がそういうと俺に撫でられていたなのはがハッ! っと眼を開けて秋菜の方へ向かった、なぜか頭を押さえて顔を赤くしていたけど。

 すずかを見るとクスクスと笑っているから、別に変な事じゃないよな?

 俺は白野威のリードを離して自由にしてあげる。すずかの家にいる1○1匹ワンちゃんならぬ、1○1匹ニャンちゃんの様に猫が沢山居てみんな可愛いんだけど、犬なのに白野威は大人気でみんな寄っていくんだ。

 

「フフフフ、白野威君、いつもみんなに大人気だよね」

「ああ、何でかは解らないけど、鳥や狐、あとネズミにも人気なんだ」

「そうなんだ、じゃあ動物園に連れていけたらすごい事なるね」

「確かに」

 

「冬士君、秋菜ちゃんお茶を持ってきましたよー」

 

 っと、扉からファリンさんの声がした。ファリンさんはすずかの家にいるメイドの1人で面白くていい人なんだけど、たまにドジをするんだ。どこかうっかりする凛姉に似ているんだよなぁ……

 あ、そうだ。

 

「冬士君、秋菜ちゃん。紅茶は何が良い?」

「あの、ファリンさん。ちょっとお願い良いですか?」

「ほへ?」

「今父さんに紅茶の入れ方を教えてもらってるんです、だから実践してみたいなぁ~って」

「面白いじゃない! 冬士! 私の為に入れなさい!」

 

 いつの間にかアリサとなのはと秋菜がコッチに来てた、と言うかアリサ、俺はまだ習ってるばかりだからな!? 一応父さんにらくだいてんって言うのは貰ってるけど、たぶん、まだまだだからな!?

 

「冬士君、紅茶入れられるの?」

「そうなんだよ、お兄ちゃんてば、女心よりもそっちに行っちゃって……」

「別にいいだろ? 俺は男なんだから女心? は知らなくていいんだよ」

「「いや、冬士君は知ったほうがいい」」

 

 なんだよ、なのはもすずかも。声を合わせて言う事じゃないだろ? 男が女心を知っていたら、へんたいじゃないか! えーっと、おかま? とかいうのになるだろ!!? 俺は男で居たいんだ。なんで秋菜もアリサも女心を知れーなんて言うんだ?

 

「なんだか、冬士君大変ですね~、あ、ではコッチに来てもらってもいいですか?」

 

 そういって心優しいファリンさんはそういってアリサ達の魔の手から放してくれる。うん、ファリンさんはドジっ子女神さまだな。

 ファリンさんに連れられて厨房へ行くとファリンさんのお姉さんで、同じメイドをしているノエルさんが持ってきた父さん特性ケーキをカットしていた。

 

「あら? ファリン、どうしたの? 冬士君を連れて……」

「実はですね! 冬士君が紅茶の入れ方を習っていて、実践したいと言っているのですよ!」

「そうなの?」

「ハイ、一応父さんかららくだいてんって言うのは貰ってます!」

「あの炎の料理人から落第点を……。代わりに私も見てもよろしいですか?」

 

 それは別にいいけど、俺のなんか見ても何時も紅茶を入れているファリンさんやノエルさんが見ても面白くないと思うけど……っと思いながら、ファリンさんとノエルさんにきょかを貰って、ガラス製のティーポットを貸してもらう。

 蛇口から水を活きよい良く出してからヤカンに水を入れ、火にかける。

 えーっと、これでいいんだよな? 父さんは日本の紅茶は水に空気があると美味しくなるって言って、やり方もこうの筈……。

 次に、5円玉くらいのあわが出て来たら、火を切るっと、お湯をカップとティーポットに、注いで。よし!

 カップは温めておくと注いだ時に紅茶が冷めない! ポットも同じ、だよな?

 えーっと、俺、なのは、アリサ、すずか、秋菜だから5人分か。ポットのお湯を捨ててティースプーンで5杯を入れ、るっと! ヤカンのお湯を入れて、スグにフタで蒸らす!

 

「それじゃあ、行こう、ファリンさん」

「ほへ? まだ入れていませんよ?」

「ファリン? このまま続けたら、持っていくときに少し冷めてしまうでしょ?」

「あー! そうでしたー!!」

 

 なぜか、俺はファリンさんとノエルさんを引き連れて部屋へ戻ることに、なんだかどっかの執事みたい! 将来こういうのもいいかもなー!

 そんなことを思いながら部屋に戻ると、すずかの姉さんの月村忍さんとなのはのお兄さんの高町恭弥さんがいた。すずかの姉さんはなぜかビデオカメラで笑いながらコッチを撮っているけど……。あ! 今なのはの兄さんがさむずあっぷした!

 

「ふっふふふふ、待っていたわよ? 冬士。それで? 出来たのかしら?」

「楽しみだよね! 冬士君の紅茶!」

「そうだよね、きっと美味しいよ」

「……(がんばれ、冬士)」

「……(はい)」

「うん、いい風に取れているわよ~。あとで執事服貸してあげるわ~」

 

 ちょっと恥ずかしいけれど、入れてすぐにひっくり返した砂時計を見る、砂がもう落ち切る、ニヤニヤとこっちを見ているみんなを無視してティースプーンで軽く、1回混ぜる。

 次に、カップのお湯を大き目の器に捨て、乾いた白いタオルでてばやく、拭く!

 最後は茶こしで茶ガラをこしながら、濃さとみんな同じにするんだよな? 

 うん、こんなモンかな? 茶ガラからももう出ないみたいだし、ウンこれでいいことにしよう!

 

「で、出来たぞ」

「ふ、ふーん、「ベスト・ドロップ」までやるなんて、本格的じゃない」

「お父さんとお兄ちゃん凝り性だから……いいもん、私はいい人が出来てからで」

「そうだよね、お父さんもコーヒーだと凝り性な所あるんだよね」

 

「おい。出来れば早く飲んでほしいだが」

 

 じゃないとせっかく入れた紅茶が冷めるじゃないか。午前の紅茶以外の冷たい紅茶は美味しくないぞ。

 ようやく、みんなが紅茶を飲むのを見て、俺も紅茶を飲む。

 むぅ、父さんやなのはの母さんが淹れる紅茶を思い出すと全然だなぁ……。

 

 

 

「くぅ、なかなかやるじゃない……鮫島の少し下ってところね」

「うん、でもノエルと同じくらいかな」

「お父さんと同じくらいだ……」

「ゴメンね、皆ウチのバカなお兄ちゃんが……」

 




ハイ、久々の無印です。原作通りには行かず、場面を飛ばしたりします。

一応ユーノは猫たちと共に白野威の元で寝てます。
追いかけられてませんよ、てか普通なら食い殺されてますし。

さて、衛宮家の執事教育の場面を見せれてよかったと思います。

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アドバイスも待ってます!


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登場、不思議生物

 

 

その場にいた少女、女性達は心に、いや「女のプライド」に多大なダメージを受けていた。少女たちは自分の同級生が、女性達は自分より年下に、衛宮冬士の紅茶を飲んだ瞬間に『負けた』と確信してしまったのだ。認めてしまったのだ。

 自 分 よ り も で き る ! っ と (料理が)

 

「冬士、アンタ士郎さんに「落第点」って言われたのよね?」

「ん? そうだけど?」

「えっとね? 及第点の間違えじゃないのかな?」

「いや、父さんは結構真剣な顔でらくだいてんって言ってたから間違いないけど?」

 

 瞬間、その場にいた女性達は一気に距離を取り、ひそひそ話をする、その中に妹の衛宮秋菜がなぜか何度も頭を下げている。しかし行き成り距離を取られたことに疑問を持ったのか、近づこうとする。

 すると、

 

「待った。今は行かない方がいいぞ」

「なのはの兄さん」

「いいか? 女性達がああいう風にひそひそ話をしたら、絶対に聞いたらダメだ」

「? なんで?」

「……地獄をみrッ!!! いや! そう! 男に聞かれたくないからだ!」

 

 なぜか一瞬だけ高町恭弥は体を震わせ、早口で衛宮冬士に言う。距離を取った女性陣から高町恭弥へりゅうおうのいてつくはどう級の威圧感を襲ったという事実はない。

 ないったら、無いのだ。女性がそのような威圧感など出せないのだから! うん!

 高町恭弥の説明に未だ解らない衛宮冬士は衛宮士郎から伝えられる「漢の心得 その3」に記されている事を思い出した。

 

「えーっと、確か。じょせいは、りふじんな事が沢山ある。けれどそれを認め、口をとじよ。だっけ?」

「む? なんだ? その言葉」

「父さんから教えてもらった「漢の心得」の1つ!」

「ほう、そういえばうちの父さんも男の心得が言っていたな、今度聞いてみるか」

 

 男は男で話しているとひそひそ話を終えて女性陣が元の位置に戻る。そして、ようやく再開するティーパーティー、皆話すことがあるのだろう、和気藹々と最近の出来事や昔の話をする中、突然、月村邸に設置されている防犯道具の数々が起動した。

 

 

 タタタタタタというオート式連続弓矢が気に刺さる音

 どーん!という小型爆弾という爆発音

 どぉぉぉんんんという金タライが落ちる音

 ほかにもぼぉわーん、ばよえぇぇん! やら、鼻毛真拳! ばたぁん、きゅぅぅやら摩訶不思議な音が鳴り響いた。全員が緊張の中に包まれる中、高町恭弥はゆっくり立ち上がり、音がする方向、月村邸の森を見つめる。すると、様々なワナを通り抜け、ここまで来たのだろう、森の方からガサゴソという木々をかき分ける音が聞こえる。

 

「みんな、此処にいてくれ、此処は俺がっ!!」

 

 木々をかき分け、1人の影が森から出て来た。

 

 

 

 ただし、とっても小さい。

 しかも高町恭弥は物凄く見覚えのある姿であった、全体的に黒い軍服のようなモノを着て、赤いマント、そして装飾の花飾りがよく似合うつばのついた帽子をかぶった数年前から高町家にいる人間? いや人間ではないだろう、だって

 

「ノブノブ―!!」

 

 とても小さく、成長の兆しはないのだから

 

「の、ノッブ!? なんでここにいるのぉぉぉぉ!!?」

 

 高町なのはの叫び声は緊張を一気に消し去り、ノッブと呼ばれた不思議生物は高町なのはに飛びつく。

 初めて不思議生物、ノッブを見た月村すずかとアリサ・バンニグス、衛宮冬士と衛宮秋菜はノッブをただ茫然と見ている事しかできなかった。

 

 その後30分の時間をかけて全員が落ち着くことに成功し、衛宮冬士が淹れた紅茶を飲んでいる。そのおいしさはとてもとても落第点とは思えない。

 

「で? この子はなのはは知ってるのよね?」

「う、ウン……」

「なんで、私たちに教えてくれなかったのかしら?」

「え、えーっとね?」

「まさか私たちが好き勝手にしゃべると?」

「だ、だからね?

「ああ、悲しい、悲しいわね。まさかこんな事でアンタを裏切るとか思っていたのかしら?」

「そ、そうじゃなくてね!?」

「さっさと答えなさい」

「ハイ」

 

 まるで尋問の様なティーパーティーで無事なのはアリサ・バンニグスの膝の上で座り焼き菓子を美味しそうに食べているノッブと高町なのはの方に乗っているフェレット、そしておろおろと2人を見る月村すずか、給仕の様にお茶を足す衛宮冬士、すでにこの場を離脱している衛宮秋菜、部屋に戻りバカップルとかしている2人だけである。

 

 ちなみに離脱している衛宮秋菜な1人で特製ケーキを食べている。

 

ティーパーティーのテーブルの上にかつ丼が乗っているようにも見えるが見間違いだろう、外にいる筈なのに、取調室の様な部屋の中にいるのも勘違いに違いない。 

なぜかアリサ・バンニグスの服がいつの間にかスーツになり、高町なのはの服はなぜか囚人服になっているのも、たぶん気のせい。

さて、取調室には刑事のアリサ・バンニグスがタバコ(シガレット)を口に含みながら目の前で目を背けている囚人、高町なのはを見る。目をキョロキョロさせている。

アリサ刑事は一度、タバコ(シガレット)を口から離し、ため息を一つ吐いて、タバコをもう1度口に含み、高町なのはをにらみつける。

するとどうだろう、今まで渋っていたのに、ゆっくりと口を開き始めた。

 

「え、えーっとね? 私がノッブと初めて会ったのはクリスマスの時だったの」

 




ハイ、ちょっと変えてノッブの登場です。
これからこの章でノッブが出るでしょう、頑張ります。目指せ闇の書解決!

さて、衛宮家の執事教育として紅茶を淹れるのは当たり前です。
しかし、その壁は遥かに高いという設定です。

落第点は間違ってません、合格点がはるかに高いと言うだけです。


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クリスマスは不思議な出会いなのパート1

クリスマス。それは年に1度の聖夜の日である。恋人たちは互いに愛を語り、子供たちはサンタさんのプレゼントに歓喜し、独り身は、いつもと変わらぬ仕事の日だろう。

 海鳴市にある洋菓子兼用の喫茶店、「喫茶翠屋」ではこの日の為に予約ケーキ11月初めから取っており、12月20日で予約締め切りとなっている。そのため10月中旬から忙しくケーキを焼き、ナッペし、飾りつけをする日々。

 高町家+バイト達で仕事、学校へ行き、帰りは「喫茶翠屋」でケーキや接客など忙しい日々を送っている中、1人家でポツリと家族がいないテーブルの前に座り、レンジで温めた料理を食べる小さな姿があった。

 高町家次女、高町なのは。

 高町家で一番幼く、まだ小学校へ行っているため仕事を手伝わせられないという事で最近では朝、昼、晩と1人で食事をする日々だ。

いや、最近ではなく高町家の大黒柱である高町士郎が大きなケガで入院したからだろう。母の高町桃子は朝食、弁当、夕食、晩食を作ってあげれども「喫茶翠屋」があるために一緒にいてあげることが出来ない。兄の高町恭也も学校に「喫茶翠屋」での手伝い、鍛錬と忙しい。姉の高町美由希もまた学校、「喫茶翠屋」、兄との鍛錬で学校でも寝てしまうくらいだ。

 大変、忙しいと幼いながらも嫌々に納得している高町なのはは1人だけの食事、手伝いえない自分に悲しみながらもただただ、クリスマスが過ぎるのを待つ。この時の高町なのはにとって、クリスマスというのは好きなイベントではなかった。

 たとえ、枕元に欲しいものがあっても、1人だけの生活は嫌だったのだ。この日も夕暮れに帰ってしまう友達の後ろ姿を見ながら1人で公園のブランコに乗る。

 キィ、キィと少し古いブランコは音を上げる。たとえ夜に帰っても家族はどうせ居ない。だから一人で家にいるよりは公園の中、1人でいた方がまだ知っている子が通るかもしれない。

 誰かと一緒にいたい。 その気持ちが強かった。

 寂しいのは嫌だ。 その感情が心から嫌がっていた。

 誰かに迷惑をかけるのもしたくない。 素直な心は誰かの力になりたいと思った。

 

 だからだろう、高町なのはがこんなことを考えたのは

「サンタさんに、お願いできるかな……?」

 

 毎年欲しいものは必ず置いて行ってくれるサンタさんだ。今年もくれるに違いない! 幼いなのはにとって、それは『希望』の様に思えて仕方なかった。公園から飛び出し一直線に家に帰宅し、折り紙に自分のお願い事を書いた。 綺麗とは言えない字だが力強く一文字一文字に心を込めて書いた。

 最後に二つ折りにし、去年と同じように兄の机に置いてポストに出してもらうのだが、今回は自分で出しに行こうと決めた。早く出せば、早く来るかもしれない。早くサンタさんに会いたい。今のなのはにはそれしかなかった。

 しかし、近くのポストへ行くも……

「ん~!! ん~!!」

 入らない。

 

名一杯背伸びをしてもポストの口には入らない、いやポストの口にこれでもか!というぐらいの手紙が詰まっているのだ。『リア充爆発せよ!』『アベックに制裁を!』『しっとマスク参上』とかいう紙がぐちゃぐちゃに入れられている。

なのはの眼尻に手紙が入らないという事とサンタさんに会えないという悲しさから涙が少しづつ出て来た。

 

「なぁ、どうしたんだ?」

 

 高町なのは1度ビクッ! としてから後ろを振り向くと赤毛の男の子が両手を頭の後ろに組みながら立っていた。その顔は不思議そうになのはのことを見ており、頭にはハテナマークがあっただろう。

 高町なのはは初めて見る男の子に少し驚きながらも少しづつ話す。

 

「あの、ね。 このてがみを、サンタさんにだしたいの」

「てがみ? あ、なんでポストあんなに入れてあるんだろ? じゃあ、ちょっと待ってて!」

 

 男の子はそういうと走ってどこかへ行ってしまった。少し経つと1人の大人の人を連れて来た。

 

「冬士、この子がさっき言っていた子か?」

「そう! いちにぃ! てがみを入れてあげてくれないか!?」

「ああ、いいぞ」

「やったな! いれてくれるってさ!」

「うん! えっと、えっとありがとうございます!」

「ハハハ、気にするな。たく、こんな日にこんなイタズラをするなんてなぁ」

 

 男性はポストから捻じり込められた手紙(と思われる紙束)を取り出し、1枚1枚見ていき、数枚をポストへ戻した。そして、高町なのはから手紙を受け取りポストへ入れる。

 

「よし、これでいいな」

「ありがとう! いちにぃ!」

「ありがとうございます! いちにぃさん!」

「気にしなくていいぞ。お礼なら冬士に言ってあげてくれ、コイツが連れて来たんだからな」

「は、はい!」

「おれも、べつにおれはいらないぞ? こまってたからてつだっただけだし! それじゃあな!」

 

 冬士と呼ばれた男の子は満面の笑みを浮かべ、いちにぃと呼ばれた男性の手を引っ張りなのはから離れていった。なのはと冬士は寒いからか顔が赤くなっているのをお互い見ることはなく、冬士については織斑一夏の発言により女性陣に餌を見つけた獣の様な笑みを浮かべさせた。

 




クリスマス変です。

仕事から帰ったらパート2を上げます。
冬士となのはが初めての出会った時ですね。
なかなか出てこない一夏を出しました。ちょい役だけど。

では良い夜を。

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クリスマスは不思議な出会いなのパート2

 

 

手紙を手伝ってくれた男の子と男性が居なくなってから、なぜか高町なのははそこに居づらくなり、ピュー!と効果音が出そうなくらいな速さで家へ戻る。そこからはいつもと同じ出会った。多少お風呂の入浴時間が長くなってしまったのはポストの件を思い出したからだろう。その際お風呂で顔が火照っても仕方がない。

 

 高町なのはは少し後悔したことがあった。

 

「おなまえ、ききそびれちゃったなぁ」

 

 冬士と呼ばれた男の子の名前だが、いちにぃという男性が言っていたので間違いはないだろうが、自分で聞き出したかったという思いが強い。そして無理矢理に考えを変える。

 

「まだ、みょうじ、きいてないもん。だからおなまえきいてもいいよね?」

 

 先ほどまでサンタのことばかり考えていたとは思えない。しかし手紙と冬士の名前はどちらも大切なのだ、と言い聞かせるように自分をごまかしていた。

 

 ベッドに入って目をつぶっても、眠れずにいた。それほどまでに男の子とサンタのことが気になって仕方がなかった。ベッドの中でごろごろと態勢を変えて寝よう、寝ようとするも眠れない。

 

 そんな時、コンコンという音が聞こえて来た。なのははベッドから起き上がり、ドアの方を見る。またコンコンという音が聞こえた、だが音の方はドアではなく窓のある方からであった。なのはは少し恐怖心を覚えながら恐る恐る後ろを振り向くと金色の瞳に綺麗な髪をしたサンタ服を着た女性が窓の前に立っていた。

 

 なのはは歓喜しながらすぐに窓へ行き、開ける。女性は浮いているソリからなのはの部屋へ入り、次いで赤い髪をした女性が入ってきた。きっちり靴を脱いで。

 

「ふむ、次の子はこの子で合っているようだな」

「あの! あの! サンタさん、ですか!?」

「む? その通りだ。年に1度の聖誕祭、子供たちにプレゼントを配る「サンタ・オルタ」だ」

「うわぁぁぁあ!!!」

「ほら、キミの手紙だろ?」

 

そう言ってサンタ・オルタは懐から手紙を出した折り紙で二つ折りにされた、なのはが書いたサンタへの手紙を。

 子供のなのはは知らなかった。真実のサンタクロースは子供にとっては残酷な事であるという事を。しかし今の高町なのはにとってはどちらでもよかった。今まで会おうとしても会えなかったサンタに会えたのだから。けれど分からないことは分からない。

 

「あ、あの! サンタさん! そちらのおんなのひとは?」

「あ、私のことか。私は「トナカイだ」

「え?」

 

→ウン、トナカイデスヨー

 え、やっぱりトナカイなの?

 

「ウン、トナカイデスヨー」

 

 瞬間――。なのはのサンタクロースに関する夢が崩壊した。

 

「えぇぇぇぇぇぇ!!? トナカイさんって! 女の人だったの!? サンタさんも女の人だけど!」

「む? 何を言う、人が男と女に分かれているのならば、サンタも男と女で分かれているのは当たり前だ。それに私は今回、ヤツから仕事を奪ってきたしな」

「え、じゃあ、サンタさんのおふくが黒いのは?」

「フッ、簡単だ。赤い服で空を飛べば、スグにサンタだとわかってしまうだろ?」

「う、うん」

 

 真剣な顔で話すサンタ・オルタにドキドキしながら見守るトナカイ。それはまるで母親が子供を見守るようでもあった。

 

「すると、だ。私のこの袋の中身を奪おうとする者が現れ、撃ち落とされるのだ」

「撃ち落とされるのぉぉぉ!!?」

「ああ、だが私はサンタ。子供たちの為に撃ち落とされることなど出来ぬ。故に夜の闇に紛れるために黒いのだ」

「そ。そうだったんだ!」

 

 子供のなのはにサンタを疑うという事を知らない、全てが真実だと思い込んでしまう。たとえサンタ・オルタの後ろでトナカイが頭を抱えていたとしても、子供の味方であるサンタは疑うことはない。

 

「じゃ、じゃあ! なんでサンタさんは剣を持っているの?」

「これか? これはな、袋を狙ってくるやつらを撃退するためのものだ」

「じゃあ、なんで寝ているときに来るの?」

「フッ、例えば良い子が2人、悪い子が4人の6人兄弟の家に起きているときに行けば1VS6だ。親も来れば二人プラスされる。そうなれば袋を取られるだろ? だから子供のプレゼントは余程でない限り寝ている時に行くのだ」

「そ、そうなんだ。よほどってなぁに?」

「むぅ、そうだなものすごくよい子にしか行かないのだ」

 

 その言葉を聞いてなのはは驚いた。自分自身良い子だったのかと思って仕方なかったのだ。しかし、それを見越してサンタ・オルタは続けて言った。

 

「タカマチナノハ。 お前は幼いながらも迷惑を掛けまいとし友達にも親にも心の内を離さず、ただひたすらに自分自身の孤独と耐えて来た。だがな、キミは女の子だ。幼子だ。まだ親に頼れ、甘えろ。名一杯迷惑をかけてやれ」

「で、でも! お父さんはにゅういんしてるし、お母さんはおしごとでいそがしいもん。お兄ちゃんもお姉ちゃんもおてつだいしてるし……」

「親に迷惑を掛けまいをする心は良い事だろう。だが、それは子供の仕事ではない。子供の仕事は甘え、迷惑をかけ、学び、成長するのだ。明日にでも抱き着いてやれ、目の前でいて見せろ。そうすればやつらもお前を視界に入れ悩みを聞き、一緒に時間を過ごすだろう」

「ほんとうに……?」

 

 高町なのはの言葉にサンタ・オルタは右手をなのはの頭にのせ、優しく撫でる。冷たい雰囲気とは違い優しくて、温かい。サンタ・オルタは膝をつき、持っていた剣と袋を床に置き、なのはを優しく抱きしめる。

 サンタ・オルタに抱きしめられたなのはは優しく撫でられて、泣き始める。今までの全てを晴らすかのように涙を枯らさんばかりに。

 サンタ・オルタも冷たい雰囲気とは裏腹に冷たいながらも優しく微笑みながらなのはが泣き終わるまで抱きしめ、撫でていた。後ろではトナカイがグスンと涙を少しばかり浮かべていたのは置いておく。

 




パート2! 次はサンタ・オルタ登場です。後ろにはトナカイさんもいます。

25日まで残り約2時間! 頑張ってパート3書いていきます!

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クリスマスは不思議な出会いなのパート3

 

高町なのはがサンタ・オルタに抱きしめられ、頭を優しく、壊れ物を扱うかのように優しい手つきで撫でられ、ドクン、ドクンというサンタ・オルタの心臓音を聞きながらしばらくの間静かな時間をゆっくり、ゆっくりとうれしさと恥ずかしさが交じり合いながらも楽しんでいた。喜んでいた。

 

「落ち着いたか?」

「ウン……」

「そうか、だがこれからは私ではなく家族にしてもらえ」

「ウン……」

「自分では出来ない事など山の様にあるのだ。相手のことを考えるのは良い事だ。世の中には相手の心を利用する奴が多い、よく話し合え。でないと昔の王様のようなことになるだろう」

 

 なのはは不思議に思った。なぜ、この人は悲しそうに言うのだろうと、けれどそれを口には出来なかった。痛々しい笑みをこれ以上見たくないから、後ろにいるトナカイの女性も何かを知っているのだろう、難しい表情でこちらを見つめるだけであった。

 パン! とサンタ・オルタは両手を叩き、なのはの前に立ち上がった。

 

「さて、霜っぽい話は終わりだ。なのは、お前は自分で書いた手紙の内容を覚えているか?」

「う、うん!」

 

 なのはは自分の左手を胸に当て、深呼吸する。呼吸を落ち着かせて、ゆっくり、ゆっくりと自分の気持ちを手紙に込めたように、この口に出る言葉も気持ちを込めて、サンタ・オルタも折り紙の手紙を取り出し、読み始める。

 

「わたしは、」

「私は」

「ずっといっしょにいられるともだちがほしいです」

「ずっと一緒に居られる友達が欲しいです」

「どんなときでもいっしょにいられるともだちが。」

「どんな時でも一緒に居られる友達が……あぁ、上げよう、なのは。お前にはコイツをやる」

 

サンタ・オルタは袋に手を突っ込み、何かを掴む。そしてそれをなのはの方へ軽く投げた。なのはは行き成り投げられた事で驚きながらもそれをキャッチする。 

小さい、なのはが抱える位の人形のようであった。しかし、驚いたのは……

 

『ノッブーー!!』

「え!? きゃぁ!」

 

 人形と思っていたモノが動き出したことだ。なのははそれを放り投げてしまうが、空中3回転半を決めながら華麗に着地した。そしてどこからともなく現れた同じような人形たちがプラカードをひっくり返していく。 10点 10点 10点 10点 10点 合計50点!

 同じ人形たちが3回転半を華麗に決めた人形に集まり始め、胴上げをし始める。ここでようやく高町なのはは正気に戻った!

 

「え? え? えぇぇぇぇ!!? なんでお人形さんが動いてるのぉぉ!!?」

「お、オルタ? なんでノッブが袋の中にいるのぉぉぉ!?」

「簡単なことだ。 魔人アーチャーの目を盗んでくすね……ゴホン、拾ってきただけだ。ただし、1体だけの筈だったのだが……」

「あぁ、助けてマシュ。 私じゃあツッコミが足りないよ」

 

 ふと人形の様なモノ、ノッブを見ると今度は全員でなのはを胴上げしていた。掛け声は「ノッブ! ノッブ!」だ。胴上げされている本人はどこかしらうれしそうである。数十分ほど胴上げされ、飽きたのかなのはを下ろしたらみんなでトランプをし始めていた。

 胴上げから解放されたなのははサンタ・オルタに笑顔で振り向いた。

 

「サンタさん! ありがとう! ノッブちゃんとお友達にしてくれて!」

『ノーッブ! ノーッブ!』

「フッ、なに、気にすることはない。ノッブたちならばなのはも仲良くできるだろう」

「いいのかなぁ(ぼそぼそ)」

 

 なにも問題はないだろう、あるとすれば今ノッブを取り上げればなのはの可愛らしい笑みが無くなってしまうことだ。一応言っておくが、この場にいるノッブは元々1人である、分裂、分身などしているのはこちらでも把握できていないが、分かって居る事は分裂が8人(匹?)しかできず、それぞれがクラスサーヴァントになるという事だけだ。

 そして、1つになるという事も出来る。

 

『ノブ?』

「どうしたの? ノッブちゃん!」

『ノブ~。ノッブノッブ!』

「え? ちゃんづけ嫌なの?」

『ノッブ!』

「そっか、うん。じゃあノッブって呼ぶね?」

『ノ~ッブ!』

 

 訂正、高町なのははノッブと話しが出来るようだ。それも正確に。

 しかし、この時はなのははもちろん、トナカイやサンタ・オルタすらもまだ知らなかった。ノッブに隠された能力が発動されることも、哀れにもそれを食らった敵がいるという事も……

 

 

『これは一体!? なんで私とノッブが合体してるの!? フュージョンなの!?』

『なんでじゃあ!? 口調がおじいちゃんになっちゃのじゃあ!!』

『ほほう、何やら惹かれると思っておったが、よもやノッブがいるとはな、よかろう!

この第六天魔王、織田信長が力になってやろうぞ!!』

『三千世界に屍を晒すがよい……天魔轟臨! これが魔王の三段ディバインバスター撃ちじゃあ!!』

 

 

 衛宮邸で篠ノ乃束のイタズラに嵌められ、一日中髪が赤になっている冬士も巻き込まれるという事は誰も、誰も知らない事であった。

 




間に合った!! とりあえず、これでクリスマス編終了です。
さて、ノッブと友達になったなのは。これでさらなるFateが待ち受けるのか。

何時も道理マイペースにやっていきます。
あ、余談ですが、ノッブはステータスオールEです。
しかし、分裂することで
セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、キャスター、バーサーカー、アサシン
シールダー、ルーラーになることが出来ます。
クラスチートですが、オールE。

誤字脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。


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ノッブは黒いサンタさんに貰ったの!

 

 

「と、いうことがあったの」

「ふぅん、なるほどね、黒いサンタさんと赤毛で普通のお姉さんのトナカイが来て、このノッブをくれたと……」

「そう!」

「んなわけないでしようがぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 K.O。

 アリサ・バンニングスの咆哮は一生懸命に当時の事を話して疲れていた高町なのはの体力を削り切った。

 だが、アリサ・バンニングスも含め月村すずかや衛宮冬士、衛宮秋菜も「ありえない」としか考えれなかった。寧ろ高町なのはのオデコに手を当てて熱を測っている。ちなみに衛宮冬士もしているが、前回妹に怒られたため手で測っている。

 

「大体! なによ! なんでサンタさんが女の人で黒い服なのよ!? 撃退用に剣って、なんなのよそれ!! それにトナカイが普通のお姉さんっていったいどうなってるのよぉぉぉ!!!」

「クリスマス の 法則 が 乱れる」

「お兄ちゃん、何ってるの?」

「でもなのはちゃんの事を聞くとお約束が歪んでいるよね」

 

 叫ぶアリサ・バンニングス、何となく行ってみる衛宮冬士、それを突っ込む衛宮秋菜、頷く月村すずか、ぽけーっとしているユーノ・フェレット。 

 この時、高町なのはとユーノ・フェレットは気が付かなかった。いや、高町なのはは説明する事に集中し気が付かず、ユーノ・フェレットは自分の知らない話を聞くために夢中で気が付かなかった。

 運命が少し変わりそこからズレていくのは必然であろう。

 

『ヌァァァァァァゴォォォォォ!!』

 

 月向邸の森に巨大がぬこが現れる。

 巨大なぬこを目撃するであろう住民たちは夢中になってカメラを取るだろう、自転車で駆けるだろう、身近にいる人は逃げるだろう、警察へ、マスコミへ連絡する者もいるだろう。

 では、お茶会を開いている者たちは?

 

「なぁぁにぃぃよぉぉぉこれぇぇぇ!!!!」

「マリア!?」

≪マスター、ジュエルシード反応です≫

「……」

「仕舞った! こんなところに!?」

「「ユーノがしゃべった!!?」」

「ハッ! しま、いやいや! 今は結界を張らなくちゃ!!」

 

 まさにカオス、結界が貼られ住民から巨大なぬこが一瞬で消える姿を目撃したことで一気にマスゴミ、げふんマスコミが騒ぎ立て月村邸へ数十台の車が押し寄せてくるのは確定だろう。

 ちなみに

 

「大丈夫か!? なのは!」

「すずか! 大丈夫!?」

 

 部屋から巨大なぬこを目撃した戦闘民族はメイド2人を置いて月村邸の主を横抱きしながら神速の速さでお茶会へやってきていた。そして、全員はいつの間にか外の景色が少し緑掛かった色になっている事に驚き、ユーノ・フェレットに緑色の魔法陣がくるり、くるりと回っている事で魔性のモノと判断した。

持っている小刀で攻撃を仕掛ける前にさらに複雑な事が起こった。

 

「なのは!」

「う、うん! レイジングハート! セットアップ!」

≪セットアップ≫

 

 高町なのはが首からぶら下げていた赤い玉のネックレスが光りだす、それは見えない程ではないために、高町恭也はいきなり妹が全裸になった!? っと慌てて目をそらす。

 例え反らした方に彼女である月村忍がじとーっと見ていたとしても、だ。

 

 光がやむと高町なのはには白いドレスの様な服を着て白い柄、金の装飾、赤い玉のついた杖を持っていた。

 

「キャァァァァ!!!」

「ぐわぁ!」

 

 ハッっと衛宮秋菜が正気を取り戻した瞬間、隣にいた兄の衛宮冬士をぐーで殴りつける。

 無防備の状態で殴られたことで衛宮冬士は正気を取り戻しながらも吹っ飛んだ。さて、いきなり殴ったことで全員が衛宮兄妹を見る。

 

「お兄ちゃんのバカ! 何見ているの!!?」

 

 その言葉に高町なのはの顔は赤く染まり、高町恭也の顔は黒く染まった。

 アリサ・バンニングスは顔を赤くしながらも衛宮冬士を殴ろうとし、同じく顔を赤くしている月村すずかによって止められていた。ガンバレ、すずか。キミが頑張らなくては誰がやるのだ! アリサは力の限りオラオラオラオラオラオラオラオラを繰り返すだろう。いや、アタタタタタタタタタタタタタタかもしれないが。無駄無駄無駄無駄無駄無駄ではない事は確かだが。

 

「なのは! 早くジュエルシードを!!」

「う、うん……」

≪Flier Fin≫

 

 未だ若干顔を赤くしている高町なのはは足に桃色の小さな羽を出して空を舞う。

 ちなみに、フッ飛ばされ、倒れた衛宮冬士が起き上がろうと目を掛けた瞬間、高町なのはのスカートの中が見えてしまったのは仕方ない事だろう。

 ギュピ、ギュピ、ギュピと近づいて来る死の気配を感じながら衛宮冬士は思う。

 

「なんでだよ……」

 

 頑張れ、衛宮冬士。

 キミには父から受け継ぐ血(鈍感)と母から受け継ぐ血(ラッキー・スケベ)がある。

 キミに成せない事はないだろう。だがそれは近づいて来る二刀の小刀を持つ死の気配の持ち主から生き延びなければならない。

 高町恭也の背中に見えるだろう、圧倒的絶望、圧倒的恐怖、圧倒的暴力の根源を。

 誰もが使えばラスボス? 何それ美味しいの? ボタンを連打するだけです。というべき存在が高町恭也の背後霊の如く、巨大で8字の様な大剣を持つ剣士、鬼神の強さを持つ その存在の名は

 

鬼神リンク

 かの者から逃げる事は出来ない。かの者に敵う者は誰も存在しない。

 

 

 

 

 




戦闘シーン……
つ、次は戦闘シーンだと思います! たぶん。

普通にバリアジャケットに着替えるとき、同じ異性が居ればこうなるかな?的な
妄想から始まり、シスコン万歳戦闘民族なら巨大ぬこをみたらこうなるだろうと
思いながら書いてみました。

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クリスマス「では、士郎。 私と共にこちらへ、こい」

 

 

 クリスマス、それは年に1度のこ、恋人同士があ、あ、愛、を囁き合う日と言われている。

時間は午後17時であり、私、織斑千冬は現在、こ、恋人である衛宮士郎の家で茶を飲んでいるところだ。

熱すぎず冷たくも無い、それでいて上物の茶葉を使用しているかのような濃さと味は落ち着かせるどころかなぜか私の頭にさらなる熱を与える。

 なぜだ! し、衛宮! どうせなら冷たい水をくれ!

 まるで風邪を引いたかのように体がポツポツと熱くなっている今、水をがば飲みして冷ましたい、むしろ水風呂に入りたいぐらいだ!

 私の心からの叫びとは別に目の前にあるのは 茶。

 声に出せばいいだろう、水をくれないかっと、衛宮なら頷き水を一杯出してくれる。

 だが、なぜか言葉は出ず、顔がどんどん熱くなってくる……気がする。

 朝はいつも通り衛宮と弟の一夏、藤村先生にイリヤ、間桐桜と遠坂凛の姉妹とセイバーとバーサーカーのサーヴァント達と共に朝食を頂き、道場でセイバーと竹刀を振るい、腕を磨いた。

 互いに剣(竹刀)と剣(竹刀)の衝撃、セイバーの一撃はまるでIS(インフィニット・ストラトス)でミサイルを撃ち落とす時に発した爆発力を超える。

 私の一撃もセイバーには通じず、それがどこか心地よかった。いや、嬉しかったんだ、篠ノ之道場より剣を磨き、大会に出ても大した者(男含む)はおらず、ミサイルもIS(インフィニット・ストラトス)があれば衝撃以外は危険とは思えなかった。

 セイバーがいる頂―――

 英霊の座に辿り着くほどの力量を持った者たちが存在するという山頂――

 私はセイバーと手合わせをしてから是非とも逝きたくなった。

 私の全てとは、どこまで通じるのか、サーヴァントという枠に縛られた者達よりも低いのか、それとも同じ頂に行けるのか。

このまま、剣の道を究め続ければいけるであろう、だがそれは……

 

「一夏を見捨てることになる」

 

 それだけは避けなければならない。

 たった一人の家族、たった一人の肉親。最愛の弟にして愛すべき者、一夏の前で弱気姿を見せるわけにはいかない、大地にひれ伏した姿を見せるなど、私は絶対に見せない。

 

「どうしました? チフユ、それまでですか?」

 

「そんな筈が無かろう、まだまだ、いけるぞ!」

 

 一夏の為ならば私は何度でも立ち上がろう、強敵を倒そう、くそったれな屑(彼女とか言い張るくそ女)共を薙ぎ払って見せよう

 まだまだ、一夏に彼女とかいうのは要らん! 特に要注意なのは束の妹の「篠ノ之箒」と最近仲が良くなったと一夏から聞いた「凰鈴音(ファン・リンイン)」という子も要注意人物(ブラックリスト)として登録しよう。

 一夏に近すぎてみろ、

 

「ふっふふふふふ」

「なるほど、まだまだ余裕の様ですね、チフユ。上げていきますよ!」

 

 

 この様に鍛錬自体も特に調子は悪くなく、むしろ絶好調で「クリスマス」という言葉を忘れていたくらいだ。

 むしろ、凛と桜がニヤニヤとコチラを見て嗤っていたのが気に食わなかったが

 

「どうしたんだ? 千冬」

「ふぁっ!?」

 

 行き成り声をかけるな、武士たるもの、常に戦場にいるかの如く気を体に纏わなければならないのだぞ?

 変な声が出たのはただ、気が散っただけだ。

 後ろを振り向けば、家主である『衛宮士郎』がそこに立っていた。

料理中なのだろう、エプロンを付けているが、これ程までにピンクの地に黄色のヒヨコのプリケが付いているエプロンを着こなせている男性は居るのだろうか? と思わず考えてしまいそうになる。

 後ろには桃色の長髪は後ろで結び、今にも飛び込んできそうな元気溌剌とした雰囲気はまるで猫、だが尻尾は狐であり、語尾は基本的に「ワン」と犬のように吼える赤色の気崩した着物を着こんだバーサーカーのサーヴァントがいた

バーサーカーの料理の腕は和食に限り聖杯戦争時にいた赤い外套のアーチャーをも超える程の美味い料理を作り、セイバーや藤村先生の舌(私や一夏もだが)を満足にした

しかも家事万能とかいう一家に1台は欲しい所だな。

 いつも思うが、あの猫の手でどうやって衛宮並みの料理が出来るのかが不思議だ。

 だが、バーサーカーには助かっている、学校で一夏と居られない時間は共に遊んだり、意外にもその豊富な知識で勉強を教えるなどと家庭教師の真似事までしてくれるので、最近の一夏の成績はぐんぐん上り、とても助かっている。

 

「いや、なんでもない。だがいきなり後ろから声をかけるな、驚く」

「悪い、千冬がぼうっとしていたから、風邪でも引いたんじゃないかって思ってさ」

「そ、そうか」

 

 うむ、そういう事なら仕方あるまい。

 後ろでニャニヤと嗤うパーフェクトメイドバーサーカーは切り込みたいところだが、衛宮の前だ。

 後で覚えておくがいい。

 

 月のない夜には背中を気にしているがいい、どこぞの木刀を持った者が襲い掛かってくるかもしれんからな。

 

「だが大丈夫だ、問題ない、束特製の栄養ドリンクを飲んだからな」

「そうか、篠ノ乃の栄養ドリンクならすぐ元に戻るか、でもそればかり飲んで栄養補給をするのは良くないぞ」

「ああ、解っている」

「なら、よし。

じゃあ、俺は買い物に出かけるから留守番していてくれ」

 

 ふむ、留守番か。

 という事はバーサーカーと二人きりになるという事だな、ちょうどいい先ほどの事もあるし、少々話をするとするか。

 たまにはセイバー以外で剣を振るうのもまた経験となるし、バーサーカーとはまだ戦ったことは無い。

 

「むっ! これはどこから嫌な気配がするとみた! HEY! 家主よ!」

「ん? どうしたんだ?」

「買い物はこのバーサーカーがするので家主は千冬(戦闘凶)と留守番をするが良い」

「いや、女の子一人で買い物に行かせるのはマズイ、そろそろ日も落ちてくるから俺が行くよ」

 

 相も変わらず、衛宮はサーヴァントだとしても女性扱いするな、これだから質が悪い。

 堅物であったセイバーも解されてしまったからな、落とすのはまだまだ油断は出来ん。

 バーサーカーよ、女の子扱いした衛宮を説得するのは骨が折れるぞ? 私が何度、脅し、恐喝し、抜刀し、峰内し、説得をしても扱いを変えず、意地になってしまう。

 そうなってはもう不可能だ。さぁバーサーカーよ、私をO☆HA☆NA☆SIをしようではないか。

 

「むっふふー、悪いが家主よ、食材のついでに私は買いたいモノが有るのでな、家主はお留守番だワン!」

「買い物? なら荷物持ちで行くぞ?」

「おや女性の湯文字を見たいとは家主も健全な男(おのこ)であるなぁ」

「湯文字? それって……」

 

 湯文字、私も知らぬ言葉だな。

 湯という文字を使用しているという事は風呂で使用する物の事か? ふっならば甘いぞ、バーサーカー。

 シャンプー、リンスは使用頻度が女性6名という事で消費が激しい、常に予備が2本おいてあるのだ、言い訳にはならん!

 

「おお、今の言葉で直すならば」

「ああ、昔の言葉か、で、直すと?」

「パンツだな!」

 

 その言葉は私の頭が理解した瞬間、横に置いておいた真剣を振るう

 

「士郎ぉぉぉぉ!!!」

 

 まさか、士郎がそのような大胆不敵な行動をとるとは思わなかった。まさか女性のランジェリーを堂々とした態度で見たいと言うなど、思いもしなかった。

 ならば日本の男(おのこ)としての根を直し精神を鍛え上げねばならなんなぁ!!

 

「待て待て待て待て!! 勘違いだ! 湯文字の言葉の意味が解らなっただけだ! そんなところに荷物持ちとして行ったら針の筵じゃないか!」

「今の貴様に何を言っても無駄だろう、だが、安心するがいい」

 

 そうだ、もうこの際、士郎を私好みに鍛え上げ夫にしてしまえば一石二鳥ではないか? 一夏も前々から士郎の事を兄として慕っているし、本当の兄にしてしまってもいいだろ? かの紫式部作の源氏物語にも自分の理想とした女性を育て夫婦になったではないか。

 

「では家主よ、買い物に行ってくるワン! 千冬もほどほどに家主を鍛え上げるとよいぞ?」

「ああ、そうしよう」

「まてまて! 俺は今から夕飯の準備を!」

 

 むっ、夕飯の準備ならば仕方あるまい。

 夕飯が食べられないとなるとライオンとトラが騒ぎ出し暴れ、原因(私)が解れば襲い掛かってくるだろう。

 

「あとは盛り付けだけであろう?」

「そうでしたーーー!!」

 

 そうか、そうか。

 夕飯の準備は盛り付けだけか。

 ならばよし

 

「ふふふ、ふふふふふ

では、士郎。 私と共にこちらへ、こい」

 

 

「な、な、な、何でさあああぁぁぁぁぁ……」

 

 

「あーあ。

 せっかくちーちゃんに興奮剤(媚薬入り)飲ませたのに稽古で発散しちゃったかー」

 

 機械仕掛けのうさ耳を付けた女性残念そうに呟き、ため息を一つ零す。

 空間投影型映像機に映し出されるは竹刀を振り回す織斑千冬から必死で逃げ回る衛宮士郎の姿があった。 ちなみに土間では女性陣がおいしそうに鍋を食べているがこの際気にしないでおこう

 

「仕方がないね、なら毎年贈ろう! 毎日だとさすがのちーちゃんにもバレちゃうだろうし……」

 

 こうして毎年、織斑千冬の元に栄養ドリンク(媚薬入り)が届けられるようになったが、そのたびに衛宮士郎にとっては騒がしい日になったのは言うまでもない

 




お久しぶりです。
仕事、仕事と疲れてしまい、なかなか書く意欲が薄れてました。
また気分で載せます。
ちょっとリハビリも含めてます。
元々駄文ですが(笑)
12月25日はメリークルシミマスで、一人寂しくケーキを食べてましたよ
皆さんはいかがでしたか?


では皆さま遅れながらメリークリスマス!


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闇、終焉の作戦会議

 

 

 

海鳴市の海上に存在するソレ、闇の書の『闇』にして数百年の間絶望と恐怖と悲劇を振りまいた魔本、元が魔法収集用の本型ストレージデバイスだとしても今が今、空に浮かぶ勇者達はその存在を改めて目にした。

 

 形状は丸いスライムの様にぐねぐねと丸いからだが唸り、数十本の生き物の顔が付いた触手が海より現れる。その中に1人の女性の様な姿をしたモノが現れた。下半身は埋まって見えず、上半身だけが見えていた。腰にまで伸びた髪は周りの触手と同じように唸り、その真っ赤な瞳は空に舞う勇者たちを見つめる。

 

「あれが、闇の書の、闇……」

「ああ、幾つもの次元世界を崩壊し人々に絶望を与え続けた闇の根源だ」

「けど簡単には行かへんよ、闇の書の闇には対魔法と対物理のバリアを重複させてるんや」

 

 闇の書、いや『夜天の書』の主である八神はやては厳しく、そして悲し気に闇の書の闇を見つめる、それは一体何を思っているのか。今まで歩けなかった原因を恨むのか、それとも知らずとも生活してきたことで愛着があるのだろうか、少なくともこの勇者たちの中で悲しみを覚えているのは八神はやて1人だけだ。

 

『うん、確かにSランク級のバリアがあるね、魔法と物理を交互に2ずつ、合わせて4つの対バリアだね』

「対魔法、対物理はこの際どうでもいい。少なくともこの場では関係はない」

「うん、問題はその後の事だね、無限書庫で資料を探していたからわかるけど、管理局は何度もこの闇の書の闇を破壊してきた。けれど止めることは出来なかった」

 

 そう時空管理局も闇の書の悲劇を止めようと事件に何度も関わったことがあった。しかし止める事は出来なかった。幾ら魔本『闇の書』にアクセスを掛けようとも主、マスター以外のアクセスを完全に封じられた。中には時空管理局員が主になったこともあり、その際に時空管理局は魔法技術で研究を繰り返したが、それすらもあざ笑うかのようにアクセスの道は閉ざされていた。結局時間切れとなり職員は自らの時空管理局員としての自覚と覚悟を持って自ら命を絶つ事で殉職した。

 こうして時空管理局が出した答えは不可能、破壊でしか救いはないと出た。主にすら崩壊寸前でしかアクセス権を与えないのでその数分を狙いアクセスしなければならない。またそれすらも時間制限があり完全に調べ切るのは不可能という事だった。

 

「ねぇ、もしこのまま破壊したらどうなるの?」

『私と分離している今なら自動防衛運用システム、闇の根源を滅することが出来るだろうが、難しいだろう』

「どうしてなん?」

『簡単に言えば砂場から1つの石コロを見つけるようなものだ。あの巨体にある小さな核を見つけ破壊することは難しいだろう、破壊できなければ再び復活するのは目に見えている』

 

 公園の砂場で考えてみよう、砂場は巨体で遊んでいる子供たちは触手だ。その中で1人色のついた石コロは砂の中にあり、どの深さにあるか、どの辺にあるかはわからない。その中で石コロを見つけるには相当な時間を掛けなければならない。装備品として大き目のスコップ1本だけだ。

 掘って探してまた掘ってを繰り返し一体何時間で終わるだろうか? 沢山いれば良いが1人だけでは探しきるのは難しい。もしかしたら、堀った砂の中に混じっていているかもしれないのだ。

 

「そっかぁ」

「エイミー、センサーで探すことは?」

『ダメだね、今もだが探しているけれど、エネルギー反応が高すぎて感知しきれない!』

「やはり今までと同じアルカンシェルで一気に破壊するしかないのか?」

『……このままだと、そう、なるね』

『……そうだな、それしか、方法はあるまい』

「ダメだ!」

 

 1人、夜天の守護者、ヴォルケンリッターの特攻隊長、鉄槌の騎士ヴィータは叫んだ。

 

「こんなところでアルカンシェルなんか打ったらはやての家までふっとんじまうじゃねぇーか!」

「え!? アルカンシェルってそんなにすごいの!!?」

「えっと、地球でのことを考えると、核爆弾っていえばわかる?」

 

 その時、高町なのはの頭はぷゅーっと煙を噴出して停止した。容量オーバーのことを言われ一時的に停止することで処理をしているのだ。

 

「えっと、カクバクダンは解らないけれど、私もアルカンシェルは反対」

「わたしやって反対や!」

「ボクだって反対だ。けれど何もできなければ打つしかない。出なければ他の人たちに、アルカンシェル以上の被害が出てしまう」

 

 クロノ・ハラオウンは俯く。その様子にフェイト・テスタロッサ・ハラオウンと八神はやては頭では理解しているが心では理解は出来ていなかった。

 誰も、人の家に他人が入り込み、部屋を全て破壊しつくしてから「こうしなければ他の部屋に被害が出ていた」と言われ大切な思い出、大切なモノすら残っていなければ理解は出来ないだろう。例え詳しい事情を言われたとしても出来る筈が無い。

 

「シャマル、何か手はないか?」

 

 夜天の書の守護者、ヴォルケンリッターのリーダー剣の騎士シグナムは同じヴォルケンリッターの仲間にして参謀の湖の騎士シャマルに問う。

 

「そうね、バリア自体はみんなでやれば大丈夫、邪魔な時はサポートとしてザフィーラとアルフちゃんがしてくれれば、私とユーノ君で核を探すわ」

「うん、僕もそれがいいと思います。では次に核を見つけてどうするか、見つけられたのなら核を転送しアルカンシェルで消滅させてもさせるのがベストだと思います」

「おぉ! そりゃあいいね! アタシとしても簡単でわかりやすい!」

 

 アルフは嬉しそうに笑う、隣いた夜天の書の守護者、ヴォルケンリッターの守護、ザフィーラも黙ってうなずく。

 

「リィンフォース、これならどうでしょうか?」

『そうだな、可能だ。ただしそこに我が主と高町なのは、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの三名による極大砲撃魔法で体積を削ればより核の探索をしやすいだろう』

 

 こうして、闇の書の闇、根源を消滅する話がまとまった。

 




ネタが思いついたので、一気にアスターズ、最終。
飛ばしまくりで、ほんとすんません。
けど、何時かは完結しますので!!

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桃色、それは絶望の色

「え? え? どういうこと?」

 

1人、高町なのはだけが着いて行けてなかった。作戦会議を終了させた時点でようやく復活した高町なのはが周りを見渡すと何やら決意を秘めた面々。うん、どうなっているの? ユーノ・スクライアだけが高町なのはが着いて行けてなかったことに気が付き、簡単なアドバイスをする。

 

「えっと、なのはは砲撃魔法でどーん! っと強力な魔法を打てばいいんだよ」

「あ、うん! わかった! ありがとう、ユーノ君!」

「え、あぁ、うん。 い、いいさ」

 

 少し顔が赤くなっているユーノ・スクライアから眼を離していると

 

「ノブーーー!!」

 

 不思議生物、ノッブが空から落ちて来た。高町なのはは声がした方向、つまり上を見上げてしまい、顔にノッブがくっ付いた。

 

「ん!? んんん!!?(え!? ノッブ!!?)」

「ノーノ! ノブノブ!」

 

 高町なのはは慌てて両手でノッブを顔から外し、改めてノッブを見る。にこー。

 うん、かわいい。

 笑顔になる。

 

「ノブノブ! ノッブー!」

「えっと? どうしたの?」

 

 高町なのはがノッブに問うと、ノッブは

 

 光りだした。

 

「え!? えぇぇぇぇ!!?」

 

 光は高町なのはを包み込む。そこでようやく他のメンバーが高町なのはの異常に気が付き、そちらを見る。強力な光があたりを満たす。

 

 

 光がやむとそこには、高町なのは1人だけだった。しかし、何時ものバリアジャケットではなく、ノッブが着ている金色に輝くブーツ、漆黒の長ズボンを履き、腰には漆黒のベルトで止め、また一本の刀が有った。漆黒のジャケットに真っ赤なマントが風に遊ばれ、白い手袋が良く目立つ。漆黒の帽子には金色に輝く紋章が付いており、輝かせるように、集中線の様な飾りがついていた。顔自体は高町なのはであり、ツインテールだった髪はストレートなり、その瞳は燃える炎の紅色だった。

 

「ふふふふ、まさかノッブを通じてこの様な事が起きるとは、是非もなし」

「な、なのは?」

「フフフフフ! なのはじゃと? いや違う、儂は」

 

 高町なのは(?)は自信を持った顔つきで周りを見渡し、腕を組む

 

「儂は信長! 第六天魔王! 織田信長! この場に参上じゃぁ!!!」

 

 しかし、この場に織田信長と言われてわかるモノはあまりいない。

 だって、ほとんどが異世界人だから仕方ないネ!

 

「えっと、どうしたの? なのは」

「いや、だから儂はなのはじゃなくてな」

「いや、アンタどう見てもなのはじゃん」

「だからな? 儂はなのはではなくて」

「意味解んねーよ! お前、前に自分で高町なのn、なのはって言ってだろうが!」

「だーかーらー! 儂はなのはじゃないと言っておろうが! 儂の事を知らぬのか!?」

 

 だんだんとぐだぐだしてきたところで、高町なのは(?)を知る者が驚きの声を上げた。さて、その人は誰の事であろうか。

 

 

「お、織田信長やって!!?」

「おぉ! お主! 儂を、儂を知っておるのか!」

「知ってるで―! 私から見て結構悪逆非道の事をした人やろ!」

「是非もないネ! はぁまぁいいや」

 

 お茶らけていた雰囲気を放っていた高町なのは(?)を改めて織田信長の雰囲気は一気に変わった。例えるのならばキノコの○とタケノコの○位に変わり、真剣な雰囲気が全員に伝わる。ヴォルケンリッターは全員八神はやての元に集まり武器を構え、織田信長の様子を見つめる。

 

「さて、高町なのはよ、お主がノッブと出会ったのも何かの縁、儂の暇つぶしを含めてお主に力の使い方を教えてやろう」

≪アナタは、一体何者、なんですか?≫

「儂か? 儂は、英霊と呼ばれる存在じゃ。まぁ詳しい内容なノッブに聞けばいいじゃろ」

「ちょ、ちょっと待って! 今なのはと会話しているんですか!?」

「むぅ? おぉ! そうじゃそうじゃ、他の者には聞けないが今なのはは儂の中におる。ノッブを通じて儂が出て来ただけじゃ」

「英霊、1つ、中、通じて、出て来た……。あ、そうか、ノッブをユニゾンデバイスと考えれば納得できる」

 

 ユーノ・スクライアが考え込んでいる間に織田信長は闇の書の闇を見つめる。それは一体何を思ったのか、その表情はすごく活き活きとしておりまるで玩具コーナーの前にいる子供のようであった。結局は親に連れて行かれるんだけどネ!

 

「あのような化け物を相手にするとは、なかなか無いが、しかし魔神以下じゃ。

 三千世界に、屍を」

 

 謡う様に、彼女は声を出す。誰もが何を言っているかどういう意味を持つのかわからなかった。けれども彼女から感じる高ぶるかのような魔力は高町なのは以上の魔力であることは間違いなかった。

 

「天魔、轟臨」

 

 その瞬間、彼女の後ろに、幾数百の火縄銃が現れた。カシャと狙うは海上にいる闇の書の闇。込められる弾丸(魔力)はすでに闇の書の闇を超える。

 

「その屍、晒すがよい。見よ! これが魔王の三段打ちじゃぁぁ!!」

 

 一斉に放たれる火縄銃は闇の書の闇を食らうかのようにバリアを突き破っていく。

 残るのは、すでにボロボロと化した闇の書の闇だけであった。

 圧倒的魔力

 圧倒的制圧力

 圧倒的カリスマ(笑)

 圧倒的な姿に回りの者たちは言葉が出ない。

 

「これが力の使い方じゃ、ふふふ、とどめを刺すという褒美をくれてやろう」

 

 織田信長が笑うと紅の瞳はいつもの高町なのはの瞳の色へ戻る。

 そして、どこか呆然としていた。いつの間にか左手にはレイジングハートが握られている(忘れたわけじゃないぞ!)

 

「三千世界に、幸せを……」

 

 呆然としたまま、レイジングハートを掲げ、謡う。

 フェイト・テスタロッサ・ハラオウンとユーノ・スクライアはいつもとは違う雰囲気に声をかける事は出来なかった。

 

「天魔、轟臨……」

 

 その声は止まることはなかった。

 今、高町なのはにあるのは先ほどの圧倒的な力、そしてそれを使ってみろと投げ渡された『力』のみ。

 

「これが、私の、全力全開!!!」

 

 力が入る、悲しみの連鎖を断ち切らんと天まで届くように、彼女は叫ぶ。

 織田信長と同じように後ろに幾数百の火縄銃、違う点と言えば銃身が桃色と言う点だ。

 

 スターライト・ブレイカー ・

「『 星 々 を 砕 く 』」

 

 レイジングハートに強烈な魔力が集う、あたり一面の魔力を吸うように、貪欲に、強欲に。

 

 三 段 打 ち

「『桃色の絶望』」!!!!」

 

 

 放たれる咆哮、全ての悲しみを、恐怖を、絶望を、負の連鎖を止めるべく、彼女は、高町なのはの1つ覚悟を持って放つ。

 

『キャァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!』

 

 目の前から聞こえる甲高い女性の様な声、闇の書の闇の悲鳴だ。だが、そのような声に騙されはしない。 高町なのはは自身の魔力をさらに使い、威力を上げ、とどめを刺そうとする。

 たとえ、周りにいる全員にドン引きされたとしても

 

 

 

3分後。

 

『ギャァァァァァァァァァァァアァァァァァァ!!!!』

「……ねぇ?ノッブ」

《なんじゃ?》

「これ、何時まで続くの?」

《んー、ちょっと待っておれ、ググってくる》

 

 ……こほん、高町なのは闇の書の闇に負の連鎖を繰り返させまいと魔力を込める、誰もが笑顔で居てほしいから、皆を笑顔にするため、高町なのはは真剣な眼差しで闇の書の闇に砲撃する。

 

3分後

 

『ゴメンサナイ、ゴメンサナイ、ゴメンサナイ、ゴメンサナイ、ゴメンサナイ、ゴメンサナイィィィ!!!!!!!』

《おーい、分かったぞー》

「なに!?」

《うむ! 元々儂の宝具『三千世界』は三千丁の火縄銃をぶっ放すわけなんじゃがな。》

「うん!」

《でな? 三段打ちとは元々一発しか打てぬ火縄銃をどうにかし様とした儂が考えたモノで、撃つ、掃除する、弾を込めるの3つの作業を3人が全員で繰り返しながら撃つ事じゃ。》

『モウヤメテ、モウヤメテ、モウヤメテ、モウヤメテ、モウヤメテ、モウヤメテ、モウヤメテ、モウヤメテェェェェェ!!!!』

「ウン!ウン!」

《この、スターライト・ブレイカーとやらは、レーザーの様なものであろう?》

「ウン!ウン!ウン!」

《一発の玉と、レーザーでは違いが有りすぎての、この場合一発はレーザーのエネルギーが切れるまでなのじゃ》

「え?」

《お? なのはよ、後ろを見てみるがよい》

 

 高町なのははゆっくりと後ろを振り向く、そこには『一発』が終わった火縄銃の姿であった。そこに希望が持っていた高町なのはであったが、希望は絶望へ。

 『2番目』の火縄銃が、闇の書の闇にスターライト・ブレイカーを放つ、しかも1番目よりも極悪非道な威力を放った。

 

『モウイイコニナルカラ、モウイイコニナルカラ、モウイイコニナルカラ、モウイイコニナルカラ、モウイイコニナルカラァァァァ!!』

「え?」

《2番目が始まったようじゃな、しかもスターライト・ブレイカーの特性である魔力収集によって、一番目に撃った魔力によって威力を増しているようじゃな》

「なのはぁぁ!! もうやめてぇぇ!! とっくに闇の書の闇のライフはゼロだよ!! もう、勝負はついているんだよ!!」

 

 ~止められない♪ やめられない♪

 

 高町なのはが撃ったスターライト・ブレイカーは元々、周りの魔力を集める事で威力を増す、今回、元々が宝具となった為、威力が倍以上になっている。これだけならばまだよかったのであろう。

 しかし、三段打ちという事で、1番目よりも2番目が、2番目よりも3番目がと言う風に威力をどんどん増していくのだ。三番目が一周し終わるまでは、この宝具は止まらない。いや、未熟にも使ってしまった高町なのはに止める術はなかった。

 

 一時間後

 

 ようやく、三番目が一周したことで、高町なのはの宝具『星々を砕く桃色の絶望』は終わった。周りにいる人々に恐怖と絶望を振りまいて、

 

『闇の書、反応、ロスト、消滅を確認、うん、完全に消え去ったよ……』

「おわった、ようやく終わった……」

《む? 終わったようじゃな、よし、勝鬨は儂に任せよ》

「え?」

 

 一瞬で再び、高町なのはの瞳は紅色になる。

 

「儂こそが! 第六天魔王! 高町なのはじゃ!」

 

 

『第六天魔王録』の一部より

 時空管理局所属、第97管理外世界生まれ旧名高町なのはが初めて周りに恐怖と絶望を与えたのは『闇の書事件』からである。それからは何度も恐怖と絶望を周りに与えながら様々な事件を解決していったエース・オブ・エースではなく、ジョーカー・オブ・ジョーカー。

圧倒的な魔力、圧倒的制圧力、圧倒的カリスマの前にこの時代の犯罪者は旧名高町なのはを目にするとスグサマ武器、防具を捨て降参し出頭することから、裏世界でもかなり有名だと思われる。

しかし普段はジョークが好きなようで、インタビューでも「夢は何かありますか?」という問いに「素敵なお嫁さん」というジョークを言って周りの人たちを笑わせるなどと言う場面が何度もある。

また泣き脆い所もあるようで、インタビュー後にはいつも泣いている姿を見られる。

こういうところも人間らしくてよいのではないかと作者は思う。

  作者:ユーノ・スクライア

 




ノッブをクリスマスの時に出してから、ずっとやりたかった場面です。

これからノッブはデバイスではないけれどなのはと融合できる
ユニゾンデバイス的な位置になります。
可愛いからいいよネ!

第六天魔王 高町なのは 爆誕の巻でした。


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連鎖の破壊、それは終わり

闇の書の闇を倒す事に成功した高町なのは(新・魔王)とその配下たち(フェイト、ユーノ、はやて+その他)は世界を守ったことによる安堵(と畏怖)による緊張から一部魔力コントロールを誤り空から落ちる者(絶望の末に逃亡する者)などがいたが無事に長年次元世界の間で恐怖と絶望、破壊と殺戮を繰り返したロストロギアの魔本、闇の書は消え去った。 たった一人の少女の未来(かよわいおんなのこ)を破壊しつくし、違う未来(魔王誕生)が確定してしまったのは致し方ない事であり、1を捨て9を救う為だったのです。

 

 そう、少女の悲しみの涙(魔王確定)が悲しみに染まる少女と騎士たちを救ったのです。ここで終わればすべてはハッピーエンドになるでしょう、しかし何かを得るには何かを捨てる様に、1を捨て9を救う様に、結末には必ず何かを捨てなければいけなかった。

 

「それは、本当なの?」

「ああ、私が生きている限りあの闇は私を媒介に復活するだろう」

「けど、それは今すぐってわけじゃないのよね?」

「そうだな、今は力尽きているかのように眠っているが、じわじわとわかるのだ。『私』という権限が乗っ取られていることに、と言っても爪の伸びる速さより遅いがな」

 

 次元航行船アースラ内にある艦長室で艦長のリンディ・ハラオウンと『夜天の書』のリィンフォースがソファーに座りながら今後の事について話し合っていた。

 闇の書は消滅、ロストの確認は出来ただろう、だが、コップに水を入れ捨てる様に小さな水滴がコップの中にあるように『夜天の書』の中には『闇の書』の残骸と言うべき小さな、ほんの小さな残骸が生き残っていた。

 そしてそれは意思が無いプログラムであるが故に忠実に「無限再生機能」を起動させていた。しかしながら小さな残骸故に再生機能は圧倒的に遅かった。だが先延ばしにすれば必ず復活する。

 

「はぁ、『闇の書』の事件がまだ終わってない、なんてね。この事はやてちゃんには?」

「言っていない。それに我が主には悲しみの顔を作ってほしくない」

「そう、時空管理局員として現在も闇の書が残り、再生しようとしているのであれば、今度こそ完全に復活しないよう、消滅させたい。けど……」

 

 消滅させたいと言ったとき、リンディ・ハラオウンの脳内に夫のクラウド・ハラオウンの微笑みが彼女の言葉を止めさせる。しかし時空管理局員としての『正義』が彼女の中でせめぎ合っていた。ここで消滅させれば八神はやては確実に自分と同じ思いをする、けれど野放しにすれば……。

 悩むリンディ・ハラオウンの姿にリィンフォースは安堵した。確信したのだ。

 リンディ・ハラオウンなら、彼女ならば我が主を、八神はやてを託せると。

 

「大丈夫だろう」

「え?」

「我が主の周りにはあの小さな勇者たち、ヴォルケンリッターもいる。1人ではない。それに」

 

 お前も我が主を守ってくれるのであろう? と微笑むリィンフォースにリンディ・ハラオウンは強くうなずく、その表情は先ほどとは違い悩む姿はなく、1人の平和を守る者、時空管理局員としての姿と1人の「親」としての姿があった。

 悩む事など出来ない。何時、どこで『闇の書』が復活するか、10年後か? 5年後か? 5か月後か? いや、明日かもしれない。残骸だからと言って油断は出来ない。犯罪者に対して捕獲したからと言って油断するという愚かな行為をしないように。

 常に考えることは最悪の事態。

もし、ここで説得し時空管理局の研究者に調べ解決するようにとしたとして、誰が彼女を強制的に主の席替えさせないとわかる? いや闇の書の残骸を盗み新たな『闇の書』が生まれないという事がわかるというのだ? 人は『人』だ。

脅し、恨み、好奇心、悪意が時空管理局の中で渦巻いているのに「誰も危険だからしないであろう」と考え、思考を停止させるのは最も最悪な事だ。

その判断が自分の家族を、身近な人に害を振りまいたとき、自分自身を恨むだろう。自分だけならまだいいかも知れない。だが、それはありえない。必ず彼女の家族に対して強い風当たりがある。

それを家族に言われれば自ら命を絶つかもしれない。世界を破壊する、幸せを絶望に変える『闇の書』を残すというのは絶対に出来ない。

 

「わかったわ。『夜天の書』のリィンフォース、貴方を消滅させる事にします。

 これは、1人の親としての温情として何かやりたい事や希望はあるかしら?」

 

 1人の親として子供に悲しみの表情をさせたく無い。リンディ・ハラオウンは最後に主の八神はやてとヴォルケンリッターと過ごさせたい思いで出来る限りの事はしようと考えていた。

 リィンフォースはリンディ・ハラオウンの思いを感じ取り、小さく頭を下げた。

 本来ならばスグにでも消滅させるのがベストの筈だ。しかし家族として最後を過ごさせたいという思いを、何かを残させてくれるという気持ちに感謝した。

 

「ならば、私は………………。」

 

 その言葉はリンディ・ハラオウンにとってありえない言葉であった。しかし良く考えればリィンフォースは最後の八神はやての表情を悲しみで終わらせたくないのであろう。

 

「そう、わかったわ、時間を考えて明後日の深夜に行いましょう」

「ありがとう」

 




アスターズほとんど書いてないのに、終盤とか。
すんません、物凄く書きやすいんです。
気分次第ですがナノハ編は無印から完成させたいですね。

今回はシリアス風味(?)にしてみました。(最初以外)

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第3章ーFate/ StrikerSー
プロローグー聖杯戦争ー


 コツ、コツという足音を立てながら、少年から青年へと成長したユーノ・スクライアはとある図書館の中を歩く。「無限書庫」と呼ばれる時空管理局の大図書館の司書長にも関わらず、休みの日にはミッドチルダにある図書館で本を読むという、おい休日位本から離れろ! と言ってもいい筈なのだが、彼は用事がない日は大抵図書館にいるというへんt……ゴホン、本好きなのだろう。

 ならば「無限書庫」でもいいだろ? と言いたいのだが、休日なのにそこで本を読んでいれば、それはそれで他の司書員たちによって放り投げられてしまう。肉体系の司書員が沢山いる中、軽く運動しかしていないユーノ・スクライアではバインドで固め続けるしかないが、それは彼の本意ではない。

 さて、今回ユーノ・スクライアが来た図書館は人がほとんど来ていない寂れた場所にあった。司書員は駄弁ってばかりで仕事しているところを見てない。そんな中ユーノ・スクライアはあるコーナーへと来た。

 

 

 子供が読むおとぎ話がある童話コーナーだ。

 ユーノ・スクライアはその中にある1冊の絵本を取り出し、立ったまま、読み始める。

 

 

昔々、遠い昔の話。世界に混沌しかなかった。過去、現在、未来が入り交じり崩壊し、違う過去、現在、未来が想像され、崩壊されていた。

 そんな時、天から黄金の三大神がこの地、ハイラルへ降り立った。

力の女神ディン、そのたくましき炎の腕をもって地を耕し、赤き大地を創る。知恵の女神ネール、その英知を大地に注ぎ、世界に法を与える。勇気の女神フロル、その豊かなる心により、法を守りし全てのいのちを創造した。

三大神はその使命を終え、天へと帰っていった。その去りし後に、触れた者の願いを叶える黄金の聖三角「トライフォース」を残し、そこは聖地となった。

 

古の賢者たちは、心悪しき者から「トライフォース」を守るために時の神殿を造り、時の神殿は地上から聖地への入口は、時の神殿にある時の扉という石のカベで固く閉ざした。

 

 幾百年の時が立ち、1人の巨悪がハイラルを手に入れようと城を滅ぼし、時の神殿へ侵入した。巨悪は強悪な魔力でハイラル全土を支配し、様々な魔物を出現させた。

 

 すべての人々が絶望の淵に落ち居ていた。その時であった。どこからともなく緑衣をまとった若者がどこからともなく現れ、退魔の剣をふるって悪しき者を封じハイラル中にいた力強い魔物達は倒されていき、悪しき者によって封じられていた七賢者を復活させた。

 青年は七賢者と共に悪しき者と戦い、闇の世界へと封印し、ハイラルに光を取り戻しました。

 悪しき者を封じた青年は姿を消し、人々は時を超えて現れた若者を『時の勇者』と呼び、称えました。そしてその話が語り継がれていた時、ハイラルに再び災いの嵐が吹き荒れました。

『時の勇者』よって封じられた悪しき者が、大地の底より這い出てきたのです。

人々は『時の勇者』が再び現れてくれると信じていましたが、勇者が現れることはありませんでした。王は神々に願い、ハイラル共々悪しき者を海の底へ封印したのでした。

 

 

パタン。とユーノ・スクライアは絵本を閉じた。ユーノ・スクライアはいつも不思議に思っていた。小さい頃からこの絵本を、『時の勇者の伝説』を読むたびに涙が流れる。それは大人になった今でもだ。だからと言って、この物語が嫌いというわけではない。むしろ好きな方だ。考古学者でもあるユーノ・スクライアはこの物語が真実かどうかを何度も調べたことがある。

しかし、全て空振りで終わり、他の考古学者と同じ「真実味がない」結果に終わった。久々にこの絵本を読み、蓄えられた知識で考えてもやはり同じ答えなのだが、なぜか心の中では「違う、この物語は真実だ」と訴える。

最近では夜も眠れない程に心が騒いでおり、仕事中でもマルチタスクを使って、「伝説の勇者」に関する事柄を調べている。

毎日仕事の片隅で調べているが無限書庫でも出てこない。

 

昔から語られる物語には意味がある。昔の人の知恵の結晶と言ってもいい事柄があるのだ。しかし、『時の勇者の伝説』だけは何も出てこないのだ。まるで本などの媒介ではなく、ある一族のほんの一部しか語られていないかのように……。

 

 外へ出ると綺麗な青空が広がりを見せていた。

 ふと、となりに話しかけた。

 

「それで、本当なのかい? このミッドチルダで始まるっていうのは……」

「本当だ。間違いない。俺とはしては願いを叶えて欲しいし、勝ち残りたいんだ」

「でも、願いを叶える願望器、『聖杯』か。それをめぐる戦いが、ミッドチルダに起こるなんてね……」

「俺がわかることといったら、魔術師の誰かがこの世界に持ち込んだのだろうな、じゃなきゃ、こんなこと有るはずがない」

 

 ユーノ・スクライアはため息を1つ吐き、横に並ぶ白い鎧を身に纏った騎士を見詰めながら言った。

 

「できれば、なのは達に知る事が無いように終わらせたい。それに、ボク自身、叶えたい願いは無い。けど」

「マスターだけじゃあ、無理ってことはわかってる。だから俺と組む。まぁ俺も必要なこと以外蹂躙したくねーし、この世界が荒らされるところも、あんまり見たくない」

「これからよろしく頼むよ、セイバー」

「おう。よろしくな。マスター」

 

 ユーノ・スクライアは右肩を抑えて言う。服の下で隠れている赤く光る剣の様な模様を抑える様に。

 




考えていたストライカーズ編です。

メインをユーノにします。
ユーノ好きなんですよね、あの不遇さ。
ちなみに私は なのは×ユーノではありませんので物語にそれっぽいのは無いと思います、たぶん。

ちなみにユーノのサーヴァント、この時点でわかった人、います?
なるべくわからないようにしたつもりなのですが……。
あ、もしわかった人がいたら
感想で
サーヴァント名と出してほしいサーヴァントを募集します、
1人1回のつもりなので、よろしくお願いします。
マスターはすでに決まっているので募集できません。



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初戦闘、VSバーサーカー

ユーノ・スクライアは1人、誰も住んでいない廃墟の中を歩いていた。いや見えてはいないが、そばには鎧姿の騎士、サーヴァント:セイバーと共に歩いている。

 廃墟の開けた場所へ着く、昔は広場か公園だったのであろう、ベンチやブランコ、さらには出張アイスクリーム屋の車が転がっていた。中央まで歩き、一言言った。

 

「ここで、いいだろ? 出てきなよ」

 

 その言葉と共に、セイバーは姿を現し、剣を構える。ユーノ・スクライアもゆっくりと歩いてきた方向を見つめる、廃墟の陰から出て来たのは小さな子、銀色の長い髪は風にふわりと遊ばれているが、それより目にひくのは右目にしてある黒い眼帯とコートの下に来ている青のぴっちりとしたスーツだった。

 

「管理局の無限書庫司書長、ユーノ・スクライアだな?」

「そうだけど、キミは?」

「今から死ぬやつに言う者に名を言っても仕方がないとは、思わないか?」

 

 左目の金色の輝く瞳が閉じられる。

 

「その頭脳、此度の聖杯戦争で使われてはこちらも死傷が出るかもしれん、悪いがここでリタイアさせてもらう(死んでもらう)。ゆけ! バーサーカー!」

 

 少女が叫んだその瞬間、ユーノ・スクライアは大きな影に包まれる、上を見るとそこには巨人の様な存在が巨大なナニかを振り上げていることが分かった。そして次に来るのは視界が一気に流れていく様子であった。

 セイバーだ。セイバーがユーノ・スクライアをその場から一気に離したのだ、そしてユーノ・スクライアが先ほどまでいた場所はまるで隕石が落下してきたかのように強い衝撃と共にクレーターを作りだした。

 

 

「大丈夫か? マスター」

「うん、助かったよ、セイバー」

「気にすんな。が聖杯戦争での初戦がバーサーカーなんてな」

 

 改めてユーノ・スクライアは落ちて来たその存在を見る。

 離れたこの場所からでも見上げるほどの巨体であり上半身は裸だが全身に刻まれたその傷跡がその凄まじさを物語っており、真っ白な髪の毛はまるで羊の様に毛が多い。その巨体に似合う槍。まるで血の様な赤い瞳は見る者を恐怖させ、人ではない者の象徴として頭から生えた2本の真紅の角は見る者を圧倒させるだろう。

 

「こ、ろ、すっっ!!」

 

 バーサーカーが動いた。まるで建物が襲ってくるような巨体は槍を振り上げ、ユーノ・スクライアとセイバーに向かって薙ぎ払った。

 しかし、セイバーはユーノ・スクライアを抱え、大きく飛んで廃墟の屋上へ降りた。

 

「さぁてと、んじゃあ行ってくるぜ」

「うん、コッチも出来る事はしておくよ」

「ああ」

 

 そこからはセイバーとバーサーカーがぶつかり合った。力任せに振るわれるその二槍はセイバーの剣によって受け流されながらも廃墟を破壊し、クレーターを作りだす。ユーノ・スクライアはその場で結界を作り出し、この戦い、戦争を見られないようにしてから先ほどのマスターと思われる少女を探す。

 すると背筋が凍る感覚がした。そこからは体が勝手に動き、その場から離れ宙に浮いた。先ほどまでユーノ・スクライアがいた場所には一本のナイフが突き刺さっており、投げた方向にはマスターと思われる少女が立っていた。

 

「ほう、まさかあのタイミングを避けるとは、だが所詮は結界魔導士、後方支援しか出来ない者にこの戦争を勝ち抜けると思えるか?」

「確かにボクは攻撃系の魔法は不得意だけど、こんな事も出来るんだよ?」

「なに?」

 

 少女はユーノ・スクライアが言った言葉に頭を傾げると、同時に少女の体に緑色のヒモ、相手を捕らえ、動きを封じる魔法『バインド』がかけられた。破ろうとしても、その頑丈すぎるバインドに完全に動きを封じられてしまった。

 その様子を見たユーノ・スクライアは先ほどいた所に降り立つ。

 

「さてと、悪いけどサーヴァントに自害を命じてもらえるかな?」

「……なるほどな、結界魔導士もバカには出来んという事か、だがこの程度では……」

 

 少女は呟くように言うと刺さったままのナイフが光出し、爆発する。

 

 ドガーン!! と大きな音を立てビルが完全に崩壊し、一時的にバーサーカーとセイバーは戦いをやめ、そちらを見る。

 ゆっくりと粉塵から出て来た少女はナイフを両手に持ち、キョロキョロを見る。

 

「さて、セイバー。お前のマスターは死んだ。このまま消えるかバーサーカーに殺されるか、どちらがいい?」

「あん? 俺のマスターが死んだ? バッカじゃねぇーの? この最強のサーヴァントである俺のマスターだぞ? この程度で死ぬもんか」

「ほう、だが見ろ、先ほど張った結界は自然消滅しているぞ?」

「ハン! それがどうした! 俺は」

『そこの3人! 武器を捨て、動きを停止しなさい!』

 

 

空から声が聞こえた。3人はそちらを見ると金色のツインテールで白のマントを身に着けた女性が手に持っているインテリジェントデバイスを構えながらコチラに来る。隣には白い服を着た杖を持っている女性と帽子をかぶり、本を持った女性がいた。

 

「チッ、管理局か」

「ちんく、どう、する?」

「そうだな、ユーノ・スクライアは殺した。この場にいる必要はないな」

「おいガキ。俺のマスターは死んでないって言ってるだろうが!」

「サーヴァントが、まぁいい。いくぞ、バーサーカー」

「わか、った。ちんく」

 

瞬間、バーサーカーはその場で消え、少女は廃墟の中へ消えていった。女性の1人が少女を追っていく。

 




感想でセイバーが即バレしたのでリクエスト方法を変えます。
とりあえずすでに埋まっているクラスは

セイバー、キャスター、バーサーカー、アサシンなので

リクエストはライダー、ランサー、アーチャーになります。
サーヴァントでストーリー的にダメなのは

エミヤ、ギルガメッシュ、メデューサ、
カルナ、アルジュナ、スカサハ、エウリュアレ、オリオン、
アン・ボニー&メアリー・リードです。
前半はすでにいる予定なので召喚はちょっと困ります、後半は強すぎ乙という事で。
あとは性格とか口調が、あまりわからないので……。
おひとり1回1体でお願いします。

最後に召喚に必要な媒介も含めてリクエストをお願いします。

サーヴァント:モードレッド
媒介:○○


「活動報告」に作るので、そちらにお願いします、


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規格外の騎士、見えない絆の象徴

「おい、待やがれ!」

 

セイバーの言葉も空しくバーサーカーとそのマスターちんくと呼ばれた銀色ロングヘアーの少女は廃墟の中へ入っていき、視界から消える。それを追うように金髪のツインテールの女性が追う。

 ちらっと降りて来た2人の女性を見る。1人は白の帽子を被り短髪で深い青の瞳、服は白のジャケット、下には黒いワンピースの様な服。左右にある金の草摺。右手には十字架のような杖、左手には本を持っていた。まさに変わった格好だ。

 もう1人は茶色のツンテール、白いジャケットに白のワンピース、そして、白のスカートの様な草刷、右手に赤い宝玉のある杖、いや恐らくは槍だろう。

 

「(さてと、マスターからの念話もねぇし、変な奴らは来るし、面倒だし帰るか)」

「コチラ時空管理局の者です。さあき程の戦闘について詳しく聞きたいのでご同行してもらいます」

「それと、その質量武器、コッチに渡してもらえんか? コッチとしても無駄な戦闘はしとうない」

「ハン、俺の剣を取ろうなんざ100年はえよ。わりぃがコッチとしては口を封じさせてもらうぜ」

 

 セイバーは2人に向かってニィと笑いかける、その態度に2人は瞬時に距離を離し己の武器を構えながら念話で互いに話し始める、口に出さないというのは相手にバレないという事だ。声掛けをしないというのは相手にタイミングを計られないという事だ。

 2人は過去の戦いに置いて口に出すという事がどんなに相手にとって有利にさせてしまうかを知っている。Bランク試験会場で起こった大きな結界、それが破られたと思いきや今度は巨人の様な大きい男が二槍を持っている、目の前にいる女性、セイバーが剣を持っている。それだけならまだいい。だが、持っている武器は管理局では忌避されている『質量武器』だという事だ。

 

「《はやてちゃん、やっぱり簡単にはいかないみたいだね》」

「《そうやね、見た感じ、シグナムと同じベルカ式騎士みたいやけど、油断は出来へん、むしろうち等は後衛型、真面にやりやったら切られてしまうわ》」

「《でも、逆に言えば》」

「《後衛は後衛らしく、相手を寄せつかせない! ってところやね!

あ、そや、フェイトちゃん。そっちはどうや?》」

《ダメ、完全にロストした。今からそっちに戻るから前線は任せて》

「《了解や、時間かせぎするから、早めに戻って来てやー》」

 

「おいおい、黙ったままかよ。ふん、まぁぞれじゃあ蹂躙するかぁぁぁ!!」

 

『「《来る!》」』

 

 剣を構えたセイバーは走り出す、砂煙が舞いながらも走るその姿はまるで猛スピードで走る一台の車。距離を離していたとはいえ2人の女性はセイバーの速さに驚いていた。なぜならそのスピードは時空管理局の中でもトップ3内に入るだろう、そしてその1人は先ほど追いかけていった『心優しき金の閃光』と名高いフェイト・テスタロッサ・ハラオウンを超えるか、その速さに驚きながらも条件反射で2人は防御系魔法プロテクションによるボール型で周りを守り、ラウンドシールドによって前方を守るという自身を守る態勢に入った。ラウンドシールドで攻撃を防ぐ気だったのだろうとセイバーは一気に横へ飛びこむ。

 急な事で2人にはセイバーの姿が消えたかのように思った。周りを見渡そうとしたとき、茶色のツインテールの女性、高町なのはのプロテクションに強烈な衝撃が走った。そちらを見るといつの間にかセイバーは足元にこぶし大の石を複数転がっているのが見えた。

そして、セイバーは石を拾い、振りかぶり、投げつける。

 

「きゃあ!? な、なんや!?」

「はやてちゃん! あsk『Round Shield』

 

 3撃目の投擲による攻撃は高町なのはのインテリジェントデバイス、レイジングハートが張ったラウンドシールドを貫通し、プロテクションに当たるが先ほどよりは威力は落ちており、防げると確信できた高町なのはだが、逆にこのままプロテクションを張っていないと危険という事もわかってしまった。

 

「《はやてちゃん! プロテクションをもっと強力に! じゃないといずれ破けちゃう!》」

「《なんつーバカ力なんや! リィンを置いてきたのは間違いやったな》」

「《うん、私もノッブを置いてくるんじゃなかったよ、まさかこんなにも強いだなんて》」

 

「へぇ、アレを防いだか、ちょっとばかし力入れたんだけどな」

 

 セイバーはそういって、石を拾い、投擲、石を拾い、投擲、石を拾い、投擲、石を拾い、投擲、石を拾い、投擲、石を拾って投擲、石を拾って投擲、石を拾って投擲、石を拾って投擲、石を拾って投擲、石を拾って投擲、拾って投擲、拾って投擲、拾って投擲、拾い投擲、拾い投擲、拾い投擲、拾い投擲、拾い投擲拾い投擲、拾い投擲石石石石石石石石石石石石石石石石石石石石石石石石石石石投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲。

 まさに雨、いやマシンガンの様にサーヴァントの身体能力を使う石の投擲は高町なのはと帽子をかぶった女性、八神はやての行動を封じ、ラウンドシールドを貫いていく。そのたびに新たなラウンドシールドが貼られ、破かれる。

 一方的な攻撃に移動することも防御する事もままならない。しかし、2人は同じ思いで石の雨を防いでいた。

 

「「(これが騎士のやる行動!?)」」

 

 しかしそう思っていても、これほど原始的で空中に浮いている者に対して現在有効なモノはない。

 

 その時――。石の雨が、止んだ。

 よく見るとそこにはセイバーへザンバーで攻撃を仕掛けているフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの姿があった。セイバーは己の武器を振るい、攻撃を防ぎながら不利な体勢を直そうとしているが、セイバーを少し超えるほどの速さを持つフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの行動がそれを防ぐ。八神はやてと高町なのははすぐにその場で魔力をチャージし始める。終わらせるのは一瞬、ようやく石の雨が終わり、仕掛けた本人もコチラに攻撃できていない今がチャンス。

 

「《フェイトちゃん! もう少し抑えてて!》」

「《うん、だけどこの人ものすごく強い、このまま攻撃していても14手で倒されちゃう》」

「《なら残り3手になったら、離脱してや! このままなのはちゃんとウチで魔法砲撃で終わらせる!》」

「《わかった! 残り10手!》」

 

 そのままフェイト・テスタロッサ・ハラオウンのカウントが始まる、9手、8手、7手、6手、5手,4手と念話で高町なのはと八神はやてにタイミングを計りながら、離脱の機会を狙う。

 

 だが、それは熟練にして規格外の剣の騎士の前では意味はなかった。

 

「そんなに離脱したきゃあ、させてやるよ」

「なに?」

「おらよぉ!!」

 

 セイバーは己の剣投げつけ、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの隙を突き、右手でフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの左腕を取り、体勢を崩させてからそのまま、左足による、蹴りが食わられる。

 フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは背中にセイバーの蹴りが加えられ、体がクの字の様になりながら、空へ打ち上げられた。高町なのはと八神はやてがいる方向へ。

 急にフェイト・テスタロッサ・ハラオウンがこちらへフッ飛ばされた事でチャージをやめ、高町なのははフェイト・テスタロッサ・ハラオウンを受け止める。

 

「大丈夫!? フェイトちゃん!」

「クッ……! ア……!」

「ハッ、しもうた! ターゲットは!?」

 

 八神はやては先ほどまでセイバーがいた場所を見る、がそこには誰もいなかった。そのまま前後左右探すが、見つからない。

 

 こうして、高町なのは、八神はやて、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンはミッドチルダで起こる事件と聖杯をめぐる戦いが絡まりあおうとしていた。

 

「たく、なんだって一般人の口封じは当たり前だぜ? じゃなきゃ無駄な犠牲が出るだけだからな、マスター」

「うん、それは分かっているよ。けれど。彼女たちだけは見逃してくれ」

「……まぁいいさ、オレは最強の騎士、モードレッドだからな。たとえこの聖杯戦争、一般人に犠牲出さずに終わらせやるよ」

「頼りにしているよ、セイバー」

 

 

 たとえそれが

 

「いたっ!?」

「どうしたの? フェイトちゃん、ケガ?」

「さっきの騎士にすごい蹴りやったからなぁ、背中大丈夫?」

『ノブ? ノーブ?』

「ううん、それは大丈夫だけど、なんか左手の甲が急に痛くなって」

「見せてください! フェイトさん! 私が治してあげますよー!」

 

 命を取り合う戦いの始まりだとは

 

「あれ? なんだかコレ、ケガというより、模様になっていますよ?」

「あ、本当だ。なんだろ? コレ」

「まさかフェイトちゃん、タトゥー入れたの?」

「入れてないよ!? そんなの!」

「けどこの模様、不思議やね」

 

 今はまだ、知るはずがなかった。

『フェイト』

 




お久しぶりです。
リクエストをいただいて、ありがとうございます。
色んなサーヴァントが候補にあがりました。
ランサー
ヘクトール、アルトリア・ペンドラゴン(オルタ)
アーチャー
ニコラ・テスラ アテランテ
ライダー
フランシス・ドレイク エドワード・ティーチ
ありがとうございます、まだまだ募集中です。
そこから出していこうと思います。
リクエストは「活動報告」でリクエスト版を出していますので、ソチラにお願いします


誤字脱字、ご意見、ご感想があれば「感想」にてお願いします。


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再会―消えない絆―

「あん?」

 

その日もセイバーとそのマスター、ユーノ・スクライアは街中を歩いていた。目的は他のサーヴァントもしくはマスターを探すためである。しかし、結果は順調とはいえない。今日で3日目となるが、未だに発見できていない。

 だがある昼下がりの頃、「女扱い」されるのが嫌いなのに来ている服は露出が多いセイバーが呟いた。

 

「セイバー?」

「……」

「居たのかい?」

「(ニャァ) ああ、これはたぶん召喚されてスグだろうな、アッチの森の方だ」

 

 セイバーが指をさした方向は、ユーノ・スクライアの眼からしてもほんの少し緑が見える位しかない森を指さした。見るだけわかるその遠さにユーノ・スクライアはため息をつく。

 

「これは、仕方ないね……」

「ん? ってことは」

「運転任せるよ、安全運転でお願い」

「よっし、そうこなくっちゃな!」

 

 嬉しそうにユーノ・スクライアの魔力エンジン改造地球産軽自動車『ベントレー・ユーノディエール』の運転席へ乗り込む。

 そして、窓を開けて

 

「おい、マスター? いーくーぜー!」

「わかっているよ。安全運転にね? この車気に入っているんだから」

「まかせな、俺の趣味はドライブなんでな!」

 

 ユーノ・スクライア助手席に乗り込み、シートベルトをする。と同時に車体が動き出し、スピード規則? 何それ美味しいの? と言わんばかりにアクセルを踏み込みトップスピードで街中を走りだした。

 その速度はミッドチルダスピード法で定められている速度を3回りほど上回っておりユーノ・スクライアはこれほどまでに魔力エンジン改造型Z-ONにしなければ良かったと思うほどだ。ちなみに魔力エンジンはガス欠ならぬ魔力欠になった場合、運転手の魔力をエンジンと使用できる為、最近の魔力車のカーレースでは人気のエンジンなのだ。

 セイバーのドライビングテクニックはプロも真っ青な腕前で見ている分には映画の撮影と思うであろう。しかしこれは現実なのだ、例え何台もの車を追い越し、車体がなぜか空中右2回転し、追ってくる魔導士を追い払い、車体がなぜか空中左2回転し、追っ手の管理局魔導士を完全に振り切りったとしても、現実、映画ではないのだ。

ユーノ・スクライアの愛車はタイヤを大きく擦り減らしながらセイバーの直感に従いはるか遠くの森へと向かった。

 

 1時間ほど立ち、ようやくユーノ・スクライア地面に生還した。そして、思った。

 

「(もう、セイバーの車には乗りたくない)」

「さぁって、こっからが本番だぜ?」

 

 そういうや否や、セイバーの服装は一気に白い鎧に包み込まれた。ユーノ・スクライア深呼吸で呼吸を落ち着かせ、脳を働かせる。

 

「セイバー、サーヴァントは森のどの辺にいる?」

「ん~。コレだと大体真ん中ってところか、マスターはこの森には居ねぇみたいだが」

「そうか、なら罠があるかもしれないn「なら、罠ごと踏みつぶすだけだな!」

 

 自身満々に言うセイバーを羨ましく思いながらもユーノ・スクライアは必ず、この戦争に勝つと自分に活を入れ、セイバーと共に森の中へと入った。

 

森へ入ってからはセイバーもユーノ・スクライアも口を固く閉じ、周りを警戒し進む。森の中を何時間ほど歩いただろうか、ふとセイバーの足が止まった。ユーノ・スクライアはスグに目の前を見る、目の前にいたのは真っ黒な鎧で身も、顔も隠した騎士がその場に立っていた。しかしその騎士は女性だとわかるほど、胸当ての部分は盛り上がっていた。

しかし、不思議に思うのはなぜかセイバーの様子がおかしいからだ。目の前にいる黒騎士を見た途端に子供が友達と会ったかのような嬉しそうであったからだ。

 

「この聖杯戦争、出てきてよかった。今ここで感謝するぜ、マスター」

「セイバー、あのサーヴァントは……」

「ああ、知っているやつだ。俺が最も会いたかったやつだ。なぁ! 顔隠してねぇで見せろよ! アーサー王!!」

 

 ユーノ・スクライアはその言葉を聞いて理解した。確かに彼女が最も会いたかった人物であろう。

 ――モードレッド卿、アーサー王伝説に出てくるアーサー王の不義の子であり、アーサー王に仕えた精鋭の騎士たち『円卓の騎士』の1人である。また当時の反アーサー派や敵戦力を纏め上げアーサー王へ叛逆し、相打ちという形でアーサー王よって倒された。

 叛逆の理由は、自分を息子と認めて貰えなかった。だという。

 

 そんなセイバー、いやモードレッドは自ら兜を取り、アーサー王へ投げつけた。しかしそれはアーサー王がいつの間にか持っていた黒い槍によって防がれ、片手で兜を外す。そこにはモードレッドとよく似た顔をした女性だった。

 

「まさか再び会うとはな、モードレッド卿」

「ハン! 俺も驚いたぜ、だが父上は召喚されて1日もたたずにリタイアだ」

「それはどうかな?」

 

剣を構えるモードレッド、槍を構えるランサーのサーヴァント:アーサー王。それは『アーサー王伝説』の再現であろう、両者がにらみ合い、静寂がこの森を包み込む。

 

 まるでここだけが切り離されたかのように木々の音も、風もすべてが聞こえなかった。しかし、1枚の木の葉っぱが両者の前に落ちたと同時に両者は互いに駆け出し、己と相手の距離を詰める。

 

「おらぁぁぁ!!!」

 

 セイバーの咆哮と共に剣(つるぎ)は振りぬかれる。上から振り下ろされた一撃をアーサー王は槍で防ぐ。

 

 ガキィィィィン!

 

 高い金属同士が当たる音が森の中が響かせる。ギチギチという剣と槍による力の均衡は続く。モードレッドは加えられている力に笑みが浮かぶ。

 

「叛逆の続きと行こうぜ! 父上!」

「ならば私はお前の叛逆を終わらせよう」

 

そこから始まる黒騎士と白騎士の激突、互いの武器のぶつかり合い、互いに武器を振るう。

 

 

 

 




大幅に変更しました。前回は感情入れすぎた。反省します。


今回、ランサー枠でリクエトしてくださったのは「メタルギア」さんです。
メタルギアさん、ありがとうございました。

あとライダー枠、アーチャー枠があるのでリクエスト希望の方は「活動報告」にある
「サーヴァントリクエスト」までお願いします。


誤字、脱字、またはご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。



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戦いは極限まで

 

剣と槍が交差する。

 甲高い剣と槍のぶつかり合いは森中に知らしめるが如く。

 されど2人は互いを潰し合う、己が生き残るが為に、願いを叶える『聖杯』を手に入れるために。

 

「おら、おら、おらぁぁぁ!!!」

「フッ! ハッ! タァ!!」

 

 黒騎士と白騎士、2人の戦いを見つめる1人の青年、ユーノ・スクライアは複雑な想いでこの光景を見ていた。

 ユーノ・スクライアは聖杯戦争に参加を決め、召喚したサーヴァント、セイバーから真名を聞いてスグに地球にわたり、三日かけてセイバーの過去、即ちモードレッド卿が生きていた時、つまり生前の事をスクライア式の魔法を使い調べつくしたのだ。

 第97管理外世界、通称『地球』。

 この世界には魔法が存在しない。時空管理局は『魔法文明』がある世界のみを管理する、いや、管理という名の搾取だろう、管理することでその魔法文化を取り入れ、危険な魔法や質量武器と呼ばれる魔法を使わない武器をすべて廃止させる。そして管理するために人材が必須、その人材は魔法が使える者しか出来ない故に管理した世界から人材を奪う。

 質量武器で補っていた所を奪われれば一気に平和は崩れるのは当たり前だ。

 しかし、管理しなくても良い世界。つまり『魔法文明』がないと判断された世界には旨みがない。

 

 だが、ユーノ・スクライアはセイバーを召喚してから知った。第97管理外世界:地球には『魔法文明』があるという事に、そして危険なロストロギアと言っても過言ではない『聖杯』、そして『聖杯』をめぐる『聖杯戦争』。

 数十年前、海鳴市の隣の市で起こった『聖杯戦争』では街全てが炎に包まれるという大火災を起こし、当時子供たちが行方不明になったという。その数年後にはガス漏れという事故で次々に人が倒れ、長物による武器で殺されると言った事件があった。

 考えてほしい、もし『聖杯』が魔導士(いや地球では魔術師というが)によってミッドチルダに持ち込まれたら、中途半端な魔力文明を持つミッドチルダでは混乱するだろう。

 それに、

 

「(それに、サーヴァントがなのは達を襲うことになれば、僕は後悔するだろう。)」

 

 だから今は手助けを要らないと言ったセイバーとランサーとの闘いを見つめるだけしかできない。下手に手出ししてサーヴァントとの関係が崩れればこの先戦い抜くのは難しいだろう。

 それこそ、サーヴァント自身を『物』として見ぬ限り。

 

「(だけど僕にはセイバーを物として見ることは出来ない。だって)」

 

 ガキィィィンと、先ほどよりも甲高い音を立てながら、セイバーはいつの間にかユーノ・スクライアの横に立っていた。その表情は悔しそうで、眉間をゆがませている。

 

「チッ、ラムレイまで来るなんてな、ランサーなのかライダーなのかどっちかにしろってーの!」

 

 先ほどまでセイバーと斬り合っていた黒騎士はユーノ・スクライアが考え事に没頭しているうちに黒い馬に乗っている姿はライダーと思われても仕方がない事だろう。

セイバーの直感は魔法を超える、目の前の黒騎士がランサーというのならば、ライダーでは無いのだろう。

 

「悪いが、モードレッド卿、お前はここで敗退だ」

 

 その言葉と同時にラムレイと呼ばれた馬は大きく鳴き、セイバーへ猛スピードで走り出す、こちらに来る馬のスピードに驚きながらも、どこかラムレイという馬が、大きな黒いトラックの様に思えて来た。

 

「マスター!」

 

 セイバーが叫ぶ。返事をする前にセイバーに襟首を持たれ

 

「邪魔なんだよ!!」

「へ?」

 

 空へ、放り投げられた。少しの間呆然としていたが、ユーノ・スクライアはすぐに浮遊魔法を使い空へ舞う事で戦争に巻き込まれず、状況の確認が出来る様になった。この時ユーノはふと思った。

 なぜマスターがこの場に居ないんだ? っと。

 無論、サーヴァントの戦いにマスター自身はいらない。単純に言えばマスターは魔力タンクとしてサーヴァントを現世に留めているだけなのだ。しかし戦争の場に居なければ状況に応じて『令呪』を使うことは出来ない。

 ユーノ・スクライアが見る限りではサーチャーの類は見当たらない。また魔法を使っているようにも見えなかったのだ。

 

マスターが戦闘を見ないで補助など出来る筈が無い。

 ならばサーヴァントと感覚を繋げているしか方法はなく、そうなればユーノ・スクライアが見つけることは出来ない。

 しかし、なぜだろうか。背中に流れる汗は油断するなと言う様にユーノ・スクライアに言っているようで『いない筈なのに敵がいる』という直感があるのだ。

 ユーノ・スクライアは自身の周りにバリアを纏いながらセイバーとランサーの戦いを見ながらサーチャーで森の中を探索させる。

 

「ふふふ、拍車をかけてやろう、耐え切れるかな?」

「ハン! この、オレを舐めるんじゃねぇぇ!!」

 

 戦いはさらなる境地へ導かれる。

 セイバーの邪剣はさらに速く、重くなり、ランサーの槍は適格にセイバーの体を捕らえる。

 ラムレイと呼ばれた黒馬は戦車の様に、ランサーの槍は矢の様に、2つは合わさりその突きは神速の槍の如く。

 

「チィィ!!」

 

 ギリギリで躱し、地面を転がりながらもセイバーは頭の中では冷静に状況を見極めていた。いや、セイバー自身が知っている事なのだ。

 目の前にいるランサーのサーヴァント、アーサー王と名馬であるラムレイによるコンビの力はセイバーが、モードレッドが良く解っている。

 

「だから諦めるなんざ、オレらしくない。アーサー王はオレの敵なんだ。ならラムレイごと蹂躙するまで!」

 

 セイバーは立ち上がり、剣を両手で持ちながら、肩に乗せる様に構える。生前から騎士道を、剣術を見て学びながらも変わらない構えは他人から見ればふざけており、バカにしていると思うだろう。

しかしセイバーにとってはこの構えは剣を肩に乗せる事で無駄な力を抜き、剣の重さが安心感を与える。精神集中の構えであった。

目の前で反転しながらやってくるアーサー王の槍を紙一重で避け、自身の渾身の一撃を与える。この山での戦いではこのやり方が一番いいだろう。

この山に森が一部無いのだから

 

セイバーとランサー、互いの集中力が極限に高まった瞬間―――。

 

「武器を捨てなさい! こちらは時空管理局機動六課、ライトニング隊隊長、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです」

 

1人の女性の割り込みによって集中力が切れてしまった。

 

 




セイバー対ランサーの初戦 ラストです。
リリカルな非日常生活ではここまでまず書きたいです。

誤字脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします
またアドバイス等も募集しています!


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あなたがわたしたちのおかあさんですか?

 

 

「フェイトちゃん、子供を攫ってくるのは流石にあかんで?」

「違うよ!!?」

 

時空管理局機動六課、今フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは正座中です。

 

「でもなぁ? なぁそこの子、キミにとって、フェイトちゃんはなんや?」

「おかあさん」

 

 隣には銀髪のショートヘアー、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと同じ赤い瞳を持つ子供がちょこんと正座していた。

 そして、2人の前にいる上司である八神はやては1つため息を出す、ちなみにスターズ部隊長である高町なのはは事件処理を部下に教えているためこの場には居ない。

 

「で、でもこの子いきなり転送魔法で出て来たんだよ?」

「そういってもなぁ、コッチにはそんな転送魔法の魔力感知しとらんよ?」

 

 2人が言い合っている中銀髪の子はフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの服を恐る恐るくいくいと引っ張る。

 

「おかあさん、わたしのこと、要らないの……?」

 

 今にも泣きそうな顔に慌てるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンと、それを見ている八神はやてであった。

 

 事は数時間前までに戻る。

 

 スターズ部隊とライトニング部隊の初任務としてロストロギア:レリック回収するためにリニアモーターカーでレリックを狙う機械兵器:ガジェットと戦闘を繰り広げていた。各隊長は空にいるガジェットを破壊して行き、地上では部下4名のチームで対処させていた。

 戦闘終了後、森の方で戦闘の様なものを見たフェイト・テスタロッサ・ハラオウンはスグに急行したのだ。森は木々が折れて円状に広場が出来ていたことから、かなりの戦闘が行われたことが推測される。

 そして、戦闘を行っていたのは、前回見た白い鎧を着た騎士で兜を被っておらずその素顔を確認できた。白い騎士に対峙するかのように黒い馬に乗り込んだ槍を持った黒騎士がその場にいた。だが、それよりもフェイト・テスタロッサ・ハラオウンはもう1人見知った人物がいた事に驚愕した。

 

「なっ!? ユーノ!?」

「「!!?」」

「!」

「セイバー! 離脱するよ!」

「チッ、今回は俺の負けにしといてやるよ、だが覚えておきな、次は俺が勝つ!」

「ふん、ならばその次はありえないと言っておこう」

「しまった!」

 

 その人物はユーノ・スクライア、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンとは友達と言える仲であり、頭が良いが攻撃系の魔法は不得意、しかし補助系に関しては天才とも言えるほどだ。現在では時空管理局無限書庫司書長をしている。

 驚きのあまりに声が出てしまったことで、ユーノ・スクライアは白い騎士と共に転移で移動され、黒騎士にはいつの間にか消えてしまうという失態を犯した。

 すぐさま上司の八神はやて部隊長に連絡を取りユーノ・スクライアが白い騎士と関係がある事を伝えると、その場で何があったのかを探るように命令されたのだ。

 執務官としての実力を発揮しその場から3メートル先の森の奥に魔法陣の様なモノを確認したのだ。

 

「これは、ミッド式でもベルカ式でもない?」

 

そっと、魔法陣に触れると魔法陣はフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの魔力を吸いみ始める。突然の事で体を動かそうと思うが、行動に移れない。しかし魔力がどんどんと失われていき、ついにはバリアジャケットを形成する魔力をも奪い取られた。

すでにフェイト・テスタロッサ・ハラオウンは嫌な予感しかしない。それに魔力が無い時点で様々な要素から逃げなければいけない。

どんどんと思考を重ねていく中で魔法陣が光りだす、その光はフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの視界を奪っていく。

 

「こ、今度は一体!?」

 

 目を開けると、そこには

 

 

黒い塊があった。

 いや、黒い布が丸くなっているのだ。しかもモゾモゾと動く。

 恐る恐る、布を取ると、少女がその場で眠り込んでいたのだった。

行き成りの出来事の多さに暫くボケーとしていると、少女はゆっくりと起きる。

 

「ふぁぁぁ、むぅぅぅ。あ、アナタがわたしたちのおかあさん(マスター)ですか?」

「え?」

 

 と、言うところを現在目の前居る八神はやて部隊長に報告する、なぜか生暖かい瞳で見らているが、たぶん気のせいであろう。

 

「フェイトちゃん? 疲れておるんやろ? 明日はゆっくり休んでええから」

「疲れてないよ!?」

「そういってもなぁ」

「えーっと、おかあさん、聖杯戦争の事知らないの?」

 

 おっと、ここで気になるキーワードが出て来た。八神はやては「せいはせんそう?」と目の前にいる少女に問いかけると、少女はこくりと頷いた。

 

「うん、聖杯戦争、わたしたちはそれに参加するの」

「えっと、なんで参加するの?」

「え? 聖杯戦争は、聖杯を手に入れるために参加するの、だからわたしたちサーヴァントはマスターの資格を持つ人と一緒に参加するの」

 

 その言葉に八神はやては考える。

聖杯とはキリストの聖杯でいいのか? いやだとしてもココはミッドチルダ、地球じゃああらへん、ミッドチルダにも『聖杯』のがあって、それをめぐる『戦争』? 解らへん、この子が『サーヴァント』と呼ばれる存在は解ったけど、そもそも『サーヴァント』とは? この子から感じる魔力は低い、もし本当に戦いに参加しないと行けないのならば

と考えていると、ふと先ほどの言葉にあった『資格』についてまだ何も知らない事を思い出した。

 

「ちょいまち、つーことはや、フェイトちゃんにはそのせいはいせんそうっつーのに参加できるんやな? その資格は一体何なんや?」

「資格はサーヴァントを縛る『令呪』の事だよ」

「なるほどなぁ、で、フェイトちゃんはその令呪はどこにあるんや?」

「ん? じゃあ服脱いで? おかあさん」

 

 突然の少女の言葉に2人の乙女は凍る、なぜ、いきなり脱がないといけないのか! しかもここで!?

 

「な、なんで脱がへんとあかんの?

「だって、令呪は体のどこかに赤い印で出来ているもん」

 

 その言葉にふと2人は思い出す、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの左手の甲にある包帯、身覚えない赤いタトゥーが入っていることを、隊長という事でタトゥーはマズイと言われ、今現在は包帯で隠している。

 フェイト・テスタロッサ・ハラオウンはゆっくりと包帯を取る。そこにはやはり見覚えのないタトゥー。しかし、目の前の少女はそのタトゥーを見ると笑みを浮かべる。

 

「やっぱりおかあさんに参加の資格あるね!」

「これが、参加の資格なの?」

「うん!」

 

「はぁ、こんな時に面倒な事になってしもうたなぁ」

「ご、ゴメンね? はやて」

「まぁ仕方あらへん、キミ、なんていうや?」

 

「アサシンのサーヴァント、ジャック・ザ・リッパー!」

 

 嬉しそうに名を語る少女、ジャック・ザ・リッパーに八神はやては口元を引きつかせ、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンはジャック・ザ・リッパーの頭を撫でて、自己紹介を行う。

 

 こうして、聖杯戦争inミッドチルダに新たなチームが完成した。

 

 

『フェイトをよろしくね?』

「うん!」

 




ちょっと無理矢理?ぽいですかね?
流れ的にはこんな感じです、いいネタ思いついたらチョイチョイ修正します。

フェイト隊長のサーヴァントはアサシン。
ジャック・ザ・リッパーです。

フェイトの母性におかあさんを求めるジャック・ザ・リッパーをイメージ。
戦闘を外したので、次は書いていきたいです、ヘタだけど。

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