一色いろはは宣言する。 (材木島)
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1話

メインヒロインいろはす。

八幡が総武高卒業するまでの物語をオリジナルで書きます。

八結厨、八雪厨はブラバ推奨。

原作既読推奨。



「どーしよー、先輩にメールしてみたいけど、先輩返してくれなさそうだしな、いつからこんな先輩好きになってたんだろう」

一色いろはは自宅で小さく独り言を呟く。

それは自分の想い人には届かない言葉だった。

いろはの先輩というのは1個上の比企谷八幡である。困ってる時はいつも助けてくれる人だ。

目つきと性格悪いけど…

「ちょっとメールしてみよ」

時刻は午後22時。

 

『先輩へ、明日の昼休み、生徒会室集合です☆

生徒会主催の新しいイベントをやるんですけど、その書類整理で仕事が溜まってまして仕事が片付かないんですよー

生徒会長にさせられた可愛い後輩がお弁当作って待ってますよ♪』

 

文を打ってからいろはは送るのを躊躇った。

「どうしよう…送ろうかな。えい!」

携帯には送信完了の文字が書かれている。

「なんて返してくれるかな、え!?返信早い!」

 

『それを言われたら手伝うしかないだろ

それと文面があざとい。

返信不要。

じゃーな、早く寝ろ』

 

『そーゆー事言うんですかー?

うぅ…本物が欲しい…』

 

『わかりました、手伝わさせていただきます。おやすみなさい。一色さん』

 

『はーい♪おやすみでーす♪』

 

「なんやかんやいって先輩は心配してくれるし、あざといのは先輩だよもう

早く寝て早く起きて明日のお弁当の準備しよ!

早寝早起き大事!」

そう言っていろはは布団に潜り瞼を閉じ眠りについた。

 

〜朝〜

「体がだるい…これは学校行きたくない症候群ってやつだなうん」

そう言いながら目つきが悪い比企谷八幡は起きた。正確には起こされた、と言うべきか。

小町が部屋に入ってきて八幡の上に乗ってきたのだ。

「小町に起こされるならどんな起こされ方でも許すまである」

「何馬鹿な事言ってるのお兄ちゃん…早く起きてご飯作ってあるから一緒に食べよ?って小町は小町はあざとい笑顔を武器にお兄ちゃんを誘惑してみる!」

「どこのちっちゃい妹達だよ、いや可愛いけど、小町がやるとちょー可愛いけど。今の八幡的にポイント高い」

「はいはい、お兄ちゃんは小町の事好きなのわかったから早く行くよー」

うちの天使小町にここまで言われたら起きるしかない。台所に行くとパンとトマトとスクランブルエッグとレタスが置いてあった。

「俺、トマト嫌いなんだけど知ってるよね?わざとなの?」

「何好き嫌い言ってるのお兄ちゃん」

「好き嫌い言って何が悪い、人間好き嫌いで生きてるんだ、俺は人間が嫌いだけどな」

「こんなお兄ちゃん持って小町悲しい……」

というやりとりをして、朝ご飯を食べる八幡はいろはとの約束をすっかり忘れていた。

朝ご飯を食べ終わり支度をして2人は学校に行く。小町は朝礼があると早めに出て行った。

「寒い…今何月だよ……あ、2月後半か」

「せーんぱい♪」

その声がする方を向くと一色いろはが笑顔で立っている。

「あ、これはあれだ、不幸だー」

「なんですかそれどゆーことですか?」

「いいんだよ、そんな事は。何だ用か?」

「先輩、今日の約束忘れてませんよね?♪」

「約束?知らん」

「ひどいですー!生徒会の仕事手伝ってくれるってメールしてくれたじゃないですかー!」

そうだった、こいつから昨日メールが来て眠いから適当に返したのをすっかり忘れていた。

「あーわかったよ、生徒会室に行けばいいんだろ」

「そーです♪それでいいんです♪」

「その笑顔と仕草が可愛いけどあざとい、俺じゃなかったら好きになってるぞきっと」

「先輩に好きになって欲しいのに」

いろはのその声は、か細く聞こえないくらいの声であった。

「え?なんだって?なんか言ったか?」

「なんでもないでーす」

2人は話してる間に学校の門についた。

「それじゃお昼休みよろしくです♪」

「はいはい、わかったからもう行け」

八幡はそう言いながら一色いろはの姿が消えるまで見ていた。

 

〜昼休み〜

「(ふぁーあ…よく寝た。そういや今日はベストプレイスにいけないんだな。さっさと終わらせて寝よう)」

八幡は生徒会室に行く前に自販機に寄り、マックスコーヒーを2缶購入した。これ八幡的にポイント高いなうん。

〜生徒会室〜

「(ひゃぁぁ、先輩来ちゃうよ、髪とか顔とか大丈夫だよね?)」

コンコン…

「ひ、ひゃい!」

「なんでお前噛んでんだ」

「べ、別に噛んでないですよ!先輩来るの遅かったじゃないですか!」

「ここに来る前にマッカン買ってたからな、ほらよ」

「ありがとうございます、先輩これ好きですよね」

「まあな、人生は苦すぎるから

コーヒーくらいは甘いほうがいいだろ」

「何言ってるんですか全く、ほら、手伝ってくださいよー!次のイベントについての資料まとめなくちゃいけないんですー!

あ、それとお弁当です♪」

「飴と鞭が一気にきたな…俺がまとめるまでもない量じゃないか?とりあえずお弁当いただきます」

鮮やかな色が入ってるいろはのお弁当箱に八幡は驚いた。

「これお前が作ったのか?すごいな」

「はい!頑張っちゃいました♪」

「うまい…?うまいぞ一色。小町と母ちゃん除いたらお前が1番まであるぞ」

いろははその場で顔を真っ赤にしている。

「先輩、ずるいです、あざといです」

「なにがだよ、俺は素直な意見を言っただけだろ、すげーうまい卵焼き」

なんやかんやで食べ終わって2人で作業をしている。

「(ここで言わなかったらいつ言うの、一色いろは、勇気を振り絞って)」

「せ、先輩!ってえ?」

「ほら終わったから俺帰るぞ」

資料は纏められて置いてある。

だが一色いろはは逃さない。自分の気持ちを伝えるのが今一瞬しかないのなら今伝えるのだ。

「先輩……待ってくださいよ…」

一色は袖を引っ張り上目遣いをしてこっちを見ている。

「一色……?(こ、こいつやばい、かわいい、だけど変な期待をしてはダメだ)」

「先輩…私先輩の事好きなんです、胸が痛くなるくらい好きなんです……」

「一色、俺は……」

「だから宣言します!私一色いろはは先輩の事、卒業するまでに彼氏にしてみせます!」

「は……?」

「まずこれは第一歩です!」

そう言うといろはは八幡の襟を掴んで背伸びをして唇と唇を重ねた。

「なっ……!?お前…」

「もう止まらないんです…先輩覚悟してくださいね♪」

いろははそう言うとその場から立ち去った。

八幡は少しの間思考が停止をしていた。

一色が…俺の事を好き?なんかの罰ゲームか冗談だろ。

彼の心の声は誰にも聞こえない。




初めて書いたんで最後まで読んでくれた人ありがとうございます。まだ続きがあるので付き合ってもらえたら幸いです。

>>それと文面があざとい
お前の方があざとい。ヒロインよりあざとい主人公さすが八幡

>>小町は小町は
>>どこのちっちゃい妹
打ち止め(ラストオーダー)。学園都市第三位のクローン

>>え?なんだって?
難聴系主人公。結局日和って完結した小鷹は死((ry



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2話

5時間目が始まっていろははずっと机で伏せていた。

「(はぁー、やっちゃったー私…いきなりすぎたかな、でも先輩が好きなんだもん。

でも……)」

だがしかし、いろはには少なくとも強敵が2人いる。雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣だ。

「(この前3人で出掛けて結衣先輩が雪ノ下先輩に宣戦布告のような事をしたって、結衣先輩言ってたし、先輩は気づいてるようでな気づいてないし…)」

「(でも、あの2人には負けてられない!だから宣言したんだ!)」

などと1人心の中でやり取りをしているうちに

5時間目、6時間目は終わっていた。

「(今日も奉仕部行って先輩と話そ…)」

 

〜放課後〜

「よう」

「あら今日は早いのね」

いつものように雪ノ下は3人分の紅茶を淹れておいてくれて、教室内はいい匂いがする。

「まあな、由比ヶ浜は?」

「さあ?すぐ来るんじゃないかしら」

「やっはろー!」

「おう」

「こんにちは」

「ヒッキーこの前はありがとー」

「こっちこそありがとな、クッキー。由比ヶ浜にしてはうまかった」

「なんかバカにされてる!?」

「いやだって今までのお前の料理センスからしたらあんなまともな食べ物初めてだろ」

「そうね、由比ヶ浜さんが珍しく人が食べられるものを作ったようね」

「ゆきのん〜ひどいよ〜」

奉仕部のいつもの会話だ。中身がない話をしているかもしれないがそれがどことなく落ち着く自分がいる。この関係がいつまで続くのだろうと不安を抱えながら。

「こんにちわー♪」

「あ、いろはちゃんだ!やっはろー!」

「こんにちは」

「何しに来たんだよ、お前は」

「むー、先輩その態度はひどいです!」

頬を膨らませてそっぽを向くいろは。

(あぁ…本当あざとかわいいなこいつ)

「今日は何の用かしら?」

「生徒会主催のイベントで相談がありましてですね、先輩を借りたいと思いまして」

「え、やだよめんどくさい」

「なんですぐそーゆーこというんですかー!

誰のせいで生徒会長になったと思ってるんですかー?」

それを言われると弱る。八幡がいろはを生徒会長にしたのも同然なのだからそれを言われると手伝うしかない。

「昼休みやっただろ。まだ資料あんのかよ」

「そんなところです!それと相談したいことあるんですってー」

「ちょっと待ちなさい、あなた達昼休み会っていたの?」

「ヒッキー昼休みいないと思ったらいろはちゃんのところにいたんだ!いろはちゃんになにしたの!ヒッキーきも!」

「一色さん、何か弱味でも握られて何かされたのかしら?警察を呼びましょう」

「なんで俺がこいつに手を出したって事になってるんだよ。生徒会の手伝いをさせられてただけだ」

「そうなんですよー、先輩にそんな度胸あるわけないじゃないですかー」

「だよねー!ヒッキーがそんなことするわけないって信じてた!」

「お前思いっきりきもいって言ってたよね」

「でも比企谷君にばかりいつも任せてられないわ。だから一色さん今回は私と由比ヶ浜さんが手伝うわ」

「そーだよ!いつもヒッキーに任せてばかりだと大変だし!」

2人の勢いにいろはは圧倒されている。

「じゃ、じゃー今回はお2人にお願いしますね」

「というわけで比企谷君、今日は帰っていいわよ。」

「いや俺も手伝う「いいの!ヒッキーは今日は帰って!」

「お、おう、わかった帰るよ。じゃーな」

その状況が読めない八幡はとりあえず帰ることにした。

「ではでは、生徒会室にお願いします!」

「なんか最近扱い雑だな、不幸だ…」

 

〜生徒会室〜

「いろはちゃんー、この資料はここでいいのー?」

「あ、はい!そこでおっけーです!」

「大体終わったわね」

「後は生徒会主催のイベント第2弾を何にするかって事なんですけど、わたしはバレンタインもやったんで、ホワイトデーもやりたいな!って思ってるんですけどー」

「お、いいじゃん!でも男の子達くるかなー」

「比企谷君はともかく葉山君やその隣のうるさい人とか来てくれそうじゃないかしら」

「戸部先輩ですか、そうですね、来させますよー」

「後は優実子と姫菜も呼んでみるね!」

「内容としては男の子がホワイトデーで女の子に作るってことでいいですよねー?」

「でも作ってくれるかなー、ヒッキーやらなそー」

「あの男は無駄口を叩いてやらなそうだけれど、でもやらせるわ、大丈夫よ」

「じゃーこれで決まりにしますねー、それとお2人に大事なお話があります」

2人は珍しく真面目な顔をしたいろはに驚いている。その眼差しはとてもまっすぐで純粋だった。

「わたし、先輩に告白したんです」

真剣な眼差しを2人に向ける。その眼差しはとても強い物を感じる。

「え!?」

「……」

「でもまだ返事はもらってなくて、わたしが卒業するまでに好きにさせて彼氏にするって宣言をしたんです。結衣先輩からこの間の話を聞いて決心したんです、だから先輩にいっちゃいました」

この間の話とは水族館に行ったときのことだ。

あの雪の日、

由比ヶ浜と雪ノ下がはっきりとは話さなかったあの会話。奉仕部最期の依頼は奉仕部の未来について、雪ノ下と八幡の依頼、雪ノ下と由比ヶ浜の八幡に対する好意の事だ。それを知った上でいろはは八幡に想いを告げたのだ。

いろはは潤んだ瞳を我慢し言い続ける。

「先輩達にはわたしは負けたくないです!だから雪ノ下先輩と結衣先輩には言っておきたかったんです」

 

「今日はありがとうございました!イベントについての詳細はまた奉仕部にいって報告するんでよろしくです!では!」

いろはが胸の内を教えてくれた時、2人は何も言えなかった。こうして改めて気持ちを再確認すると不安がある。雪ノ下と由比ヶ浜の関係はこのままでいられるのか。3人のこの関係は無くなってしまうのではないか。

生徒会室から奉仕部の教室に戻ってきた2人。

「いろはちゃん、すごいね」

「ええ」

「私にはあんなことできないなー、あんなにまっすぐで素直な気持ち」

「そうね」

沈黙が2人を包む。

「由比ヶ浜さん、私、比企谷君のこと好き」

「……」

「でも、それくらい由比ヶ浜さんの事も好きよ」

「ゆきのん」

雪ノ下の放った言葉はとても優しさがあり、それと同時に彼女の何かが変わったのを感じた

「ずっと迷ってた、由比ヶ浜さんが比企谷君の事好きだと気づいていたから、私は気持ちを我慢していれば3人のこの関係は続くんだって、だけど一色さんが素直になっているのを見てそれは違うと思ったの」

雪ノ下が自分の気持ちを話してくれたのは初めてではないのか。昔の、今までの自分を否定し、戒めるかのように呟く。

「ゆきのん、私があの雪の日言ったわがままなこと覚えてる?私はねずるい子なんだ本当に。ゆきのんもヒッキーも欲しいと思った。だけどそれは無理だと思ったから勝負の事を言ったんだよ」

「ええ、わかってるわ、だけど由比ヶ浜さん、どちらがどうなっても私たちは友達よ、それは変わりないわ」

「うん…!だから私も遠慮はしないからね!」

2人は笑顔でそう言いあい、他愛のない話でその後も話して帰っていった。いろははその2人の姿を見ながらこの2人の先輩に話して本当に良かったと思った。

 




今回も見てくださってありがとうございます。
いろはと奉仕部の2人といろはを絡めて書いてみたかったので書きました!雪ノ下と由比ヶ浜の八幡に対する気持ちについても自分なりに書いてみました。
「不幸だ」某ツンツン頭の少年のネタを入れて普段の八幡らしくない事を入れてみました。


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3話

「小町ー風呂上がったぞ早く入れ」

「うん!わかった!」

小町は洗面所の戸棚から入浴剤を取り出した。

「え、お前いつも俺が入った後それ入れてるの?」

「だってお兄ちゃんの後だよ?残り湯だよ?

これくらいするよ!」

「小町ちゃん、地味に傷つくからそゆこと本人のいる前で言うのやめてね」

小町にそう言うと自分の携帯に目をやった。

メールが来ている。

 

『先輩ー!

今日結衣先輩と雪ノ下先輩と話し合った結果、

生徒会の主催イベントはバレンタインに引き続き、ホワイトデーに男子が女子にチョコかクッキーを作ることに決定しましたー!そんなわけで後2週間くらいしかないので手伝ってくださいね、先輩♪』

 

『え、俺が手伝うの?葉山とか戸部に頼めよ』

 

『可愛い可愛い後輩が先輩にお願いしてるのにそーゆーこと言うんですかー!むー!』

 

『はいはい、メールでもあざといろはすありがとう』

 

『いいですよー、生徒会のアンケートで本物が欲しい人がどれだけいるから聞いちゃいます♪』

 

『わかった、俺は何をすればいいんだ』

 

『先輩さすが優しいです♪じゃー明日放課後に生徒会室集合で♪ではでは〜!』

 

なぜ後輩との連絡でこんなに疲れるのだろうか…と八幡は内心思っていた。

「(あいつ、あんな宣言しておいて俺と普通に会えるのか…やっぱり罰ゲームではないのか)」

彼の過去の黒歴史を考えればこれほどの人間を信用しない人がいただろうか。

「とりあえず明日また生徒会室か」

意識が朦朧としていた八幡はそこで瞼を閉じた。

 

〜次の日の放課後〜

奉仕部……

雪ノ下はいつも通り紅茶を入れ、由比ヶ浜と楽しそうに話している。

生徒会選挙の時と話してる事は変わりないが、ぎこちない感じがない。

八幡はそれを見て自分が恥ずかしい宣言をした事は正解だったのかもしれないと思い始めていた。

「今日は俺が一色の手伝い行ってくるから」

「あらそうなの、じゃーこちらは勝手に終わらせて解散してるわ」

「頑張ってね、ヒッキー!」

2人は笑顔で送ってくれた。あの2人の関係は本物なんだろうなと八幡は感じている。

どの関係が本物でどれが偽物なんて俺にはわからない。だが馴れ合いや上辺の関係、欺瞞に満ち足りた関係を排除し、それを超えた関係を築ける事が本物なのではないか、間違えるたびに問い直そう、自問自答して答えを模索するんだ。彼の考え方は変化し続けている。

「ほら、きてやったぞ」

「ありがとうございますー!それでメールの件なんですけど…」

「具体的にはどうするんだ?バレンタインの時みたいに試食会みたいにするのか?」

いろは手元の書類を片付けながら困った顔をしている。

「試食会だけだとつまらないので、何か他もやれればいいと思うんですけど」

「それを俺に聞くか?由比ヶ浜や雪ノ下の方が企画とかすぐ出てくるだろ」

(なんで先輩はこの間宣言したのに私の気持ちわかってくれないんだろ)

いろはは落胆してしまっている、こんなに鈍感だと思っていなかったのだ。

「だって先輩いつも助けてくれるから今回もいい案出してくれるかなって思いまして♪」

(こんないい笑顔を毎日男子に向けて期待させてるんだろうな…それこそジャグラーばりに。期待させて落とすやつだな。あれ、あざといろはす怖い)

八幡はいろはを見てそんなことを思いつつ、手は動かして資料を整理している、

「あーーー!こんなのどうですか?日頃の感謝を告白するって!しかも男子から女子に!」

いろは目を輝かせながら熱烈に語っている。

男子から女子、というのがネックなのだろう。

「絶対やだぞ、バレンタインの試食会はやってもらったから俺も何か返さないとは思ったがそこまでする必要性を感じない」

「なんでですかー、恥ずかしいんですか?」

いろは自分の席から立ち上がり、八幡に寄ってきて袖をツンツンしだした。

「はいはい、あざとい行動はいいから早く決めるぞ」

「むー!これでいきますよ!」

「本当にやるのかよ。第一葉山や戸部は良いとして俺が感謝を伝える相手がいない、いやいるけど、戸塚とか戸塚とか戸塚とか平塚先生とか小町とか小町とか小町とか」

キメ顔で言う八幡にいろははすごく冷たい視線を送っている。

「何言ってるんですか先輩、とりあえずこの案でいきます!」

「なんで俺がやらなきゃいけないんだ」

その日の生徒会の活動はそれで終わった。

「せーんぱい♪いっしょに帰りましょ♪」

ニコッと笑顔を浮かべるいろは何かを企んでるようにも思える。

「どうせお前はにけつして駅まで送ってもらいたいだけだろ、あざといし、俺の家と真逆なんだが」

「たまにはいいじゃないですかー、いきますよー」

八幡の腕を強引に引っ張り、駐輪場間で来させた。

「結局送ることになるんだよな俺…」

「先輩優しいですもんねー」

「それよく小町に言われるからお前に言われても嬉しくないな、早く乗れよ」

「本当シスコンですね」

よいしょ、といって八幡の後ろに乗り、背中に抱きついた。

「な!?おま!!」

「なんですか、もしかして抱きつかれたからって体の関係許したとか思ってるんですかまだそれは許してないので手出さないでください警察呼びますよ」

「毎度毎度お前よく呂律が回るよな、そして毎回俺が不審者みたいな感じだけどお前の中の俺の像はそんな感じなの?泣くよ?」

いろははいつもの八幡とのやり取りに笑顔を浮かべている。

この時はまだ気づかなかった。通りかかった一台の車が俺たちの事を見ていた事を。

 

「先輩にけつしなれてますね、誰か乗せてるんですかー?」

「妹だよ、たまに中学校まで乗せてやってるんだよ」

「うわ、本当シスコンですね」

「小町がいつも先に俺の自転車に荷物載せて待ってるんだよ。本当にあいくるしい、妹いれば充分だと思うまである」

いろはは溜め息をつく。なんで先輩の事を好きになったんだろうと。

駅の近くの信号に差し掛かったところで彼女は降りた。

「ここからは歩きます。それと先輩。嘘かと思ってるかもしれませんけど、この前生徒会室で話したことは本当ですからね!」

「いや…うん、わかってるけど」

「信用できませんか?私のファーストキスもあげたのになー」

「お前、ファーストキスだったのかよ、まあ俺もだけど」

2人は顔を赤らめて黙り込んでしまった。

「だから本当の本当に覚悟してくださいね♪」

「へいへい、わかったよ、あざといろはす」

「むー!その呼び方やめてください!」

と色々やりとりしているうちに駅に着いていた。

「今日はありがとです♪またお願いしますねー!」

「おう、わかったから早く行け」

いろはがホームに行ったので八幡も帰ろうと自転車に乗って再度ホームを確認したら彼女がこちらを見て笑顔で手を振っている。

「本当にあざといな」

八幡はそう言い少し表情を和らげ自転車に乗った。彼の姿が消えるまでいろははその背中を見つめていた。

彼女は想いを絶対に届かせると改めて決心したのだった。




いろははやっぱりあざとい方がいいですねー。
今回も見てくださった方ありがとうございます!
感想も良かったら書いてください!


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4話

次の日からいろは、八幡はイベントの準備に取り掛かった。ホワイトデーまで後10日。

「参加するやつだが葉山とその周りのやつと戸塚と呼びたくないけど材木座でいいよな」

「おっけーです!」

「それで材料とかどーするんだ?お前が買いに行くか?」

「んー、今週の日曜買いに行きます」

それを言うといろはは目を輝かせて八幡を見ている。彼はいろはと目を合わせないようにしていた。

「いや、俺今週の日曜日は予定があってだな」

「何があるんですかー?」

「寝て小町と遊ぶ」

「何言ってるんですかもう…おーねーがーいーでーすーよー」

いろはは八幡の体を揺らして駄々を捏ねている。

「わーかったーかーらー揺らーすーのやーめろ」

「はい♪よろしくです♪」

(本当こいつの笑顔かわいいな、いやまあ好きじゃないよ?好きじゃないけどね?ほ、ほら妹属性だから小町と重ねるところもあってだな、いやでも小町のほうがかわいいまである)

「あれ、こーゆーイベントって学校からお金が支給されるよな?」

「そうですねー、多分5000円〜1万円くらいですかね」

「お、そんなに買えるのか」

「というわけで今週の日曜日13時に海浜幕張駅でお願いします♪では今日はもう終わりで!」

「おう、またな」

生徒会室から出ると平塚先生と呼ばれる国語の教師であり、奉仕部の顧問が立っていた。

「比企谷、ちょっと個別相談室まで来い」

「えー、俺これから帰るんですけど」

「いいから、来い!」

無理矢理その教室に連れて来られた八幡は珍しく真面目な顔をした先生の顔を見て驚いている。

「比企谷、昨日の帰り何をしていた?」

「昨日ですか?昨日は…自転車で帰ってましたよ」

そう八幡は言うと先生は携帯を出して写真を見せてきた。

「比企谷…じゃーこれはどーゆー事だ?」

「あの先生、昨日は一色に一緒に帰れと命令されてですね、仕方なく一緒に帰ったんですよ、そんな羨ましそうな顔されても俺は全然楽しくなかったんですよ本当に」

平塚先生は下を向いてブツブツ何かを言っているが聞こえない。

本当、早く誰かもらってあげて!!

「べ、別に羨ましくなんかないぞ!こんな青春みたいな事してたって全然腹ただしくないからな!」

「先生、そして車乗ってる時は事故起きたら大変なのでいじるのはダメですよ」

「そ、その通りだな比企谷。はぁ…この間の合コンも失敗した私だ…八当たりすぎたな…あはは…」

本当に早く誰かもらってあげて、可哀想、後10年経っても誰も貰ってなかったら俺がもらうまであるぞ。

「話はそれだけだ、私も今から帰るところだから送ってやろう比企谷」

「あ、はい」

八幡はお言葉に甘えて送ってもらう事にし、先に校門の前で待っている。時刻は18時なのでそんなに遅くはないのだが平塚先生が珍しく早く帰るという事で乗せてもらう事にしたらしい。

 

〜車内〜

「先生の車って綺麗ですよね」

「そりゃ私が綺麗だからな、それより比企谷。最近何かあったか?」

海辺沿いを通り、綺麗な景色を見ている八幡に平塚先生は問いかけてきた。

「心なしか少し悩んでいるようにも見える」

八幡が心をちゃんと開いて相談できる相手は

小町か平塚先生だけだ。

「いや、なんにもないですよ」

「そうか?私の勘違いならそれでいいがな。君はもう少し人を頼るべきだ。大人を信頼するべきだよ」

遠くを見つめる八幡は何かを吐き出すように呟く。

「……人の好意を素直に受け取れないんですよね。友人関係でもそうなんですけど。何か裏があるんじゃないか、裏切られたり、騙されたり、利用されたりするんじゃないかって」

先生に八幡が本音を零したのはこれが初めてなのではないか。その声はか細いが弱さを感じられる声だ。

「俺は…色々経験してきてるので素直に信用できないし、それを受け取れません。嘘を付いて、騙されるくらいなら最初から1人でいいと思ってしまうんです」

「ほう…」

「正直、雪ノ下と由比ヶ浜が羨ましいですよ。

互いを理解して信用しあえる関係。上辺でも欺瞞でもない関係。あの2人を見てると幸せそうだなと思いますよ。そりゃ話が合わない時もあるけど、なんて言うんですかね」

今まで弱音を吐き出す事などなかった八幡に平塚先生は驚いている。

「君も、人間関係や人に向けられる好意を考えれるように、迷うようになれたのか。私は嬉しいよ」

赤信号で止まっている時、平塚先生は八幡の頭を撫でてそう言った。

先生は近くの公園の駐車場に車を置き、話を続けた。

「いいか、比企谷、人と言うものはね、騙されて嘘をつかれて、だけど信用しての繰り返しなんだよ。友達と言うものは裏切られて、壁にぶつかって、でも信じ続けていれば大事な仲間に出会える。君が安心して身を置ける環境に出会えるはずさ」

子供に言い聞かせるように、宥めるように先生は八幡に語っている。

「好意の事についてだが、それも私が今言ったこと同義だよ。勘違いもするし、思わせぶりもされる。だがな、それを経験してる君だから本当の気持ちが考えられるんじゃないか?

昨日の君と一色を見ていたらわかるよ。彼女は君の事が好きなんだな」

「……そうなんですかね、まあ生徒会室で卒業するまでに俺を好きにさせる宣言もされましたし」

(あれは嘘だと思っていた。勘違いだと思っていた。罰ゲームだと思っていた。だがそれは違うんだ、最初からわかっていたことだろ、だから俺は怖い)

「俺に関わったばかりにあいつの株を落としたり、相手の発する言葉が全部嘘だったら?だったら最初からそんな欺瞞な関係はいらないと思ったり、自分がその気持ちに応えられる自信がないんです」

優しい目で八幡を見ている平塚先生。

八幡のそれを聞いて彼女は笑っている。

「君は優しいな。だかな、比企谷、傷つけないことなんてできないんだよ。大切に思うからこそ傷つけてしまう、迷惑かけてしまう。だがそれでいいんだ。一色だって君を傷つけまいと模索して勇気を出して告白をしたのだろう。それに1年という猶予付きで。それは彼女の優しさだと思うがな」

平塚先生は優しい声で、けれど強い何かを感じる声で八幡に語っている。

「まあいい、後一色が君を変えてくれる。そんな気がする。後1年ある学校生活を謳歌するといいさ。そしてまた迷っていたら、悩んでいたら私に話してくれ、私の暇つぶしにもなるからな」

八幡はこれまで見せたことない笑みを浮かべて先生を見て頷いている。

「先生、ありがとうございます」

「生徒が悩んでいる時、一緒に考えるのが教師というものだ」

そう言うと車のエンジンをかけ、八幡の家まで走った。

八幡の心の中で何かが変化している。それは彼すら気づいてない。

 

「ただいま」

「おかえり、お兄ちゃん」

平塚先生は八幡を家に送った後、「これから呑みに行くんだ」と言ってすぐ去ってしまった。

「お兄ちゃん、珍しく遅かったね」

「まあな、先生に説教されてたからな」

「え、まさかお兄ちゃん、女子に痴漢したの……」

「何で怒られたら俺が女子になんかしたと思ってるんだよ、風呂入るぞ」

八幡は風呂に入った後、すぐベットで横になった。

「(大切なものだから傷つけたくない…か、雪ノ下や由比ヶ浜の事もそう思ってるのか俺は、一色の事も)」

そう心の中で呟くと瞼が自然と閉じ始めた。今まで積もった感情を少しは吐き出せ、楽になったのだろう。彼はそのまま深い眠りについた。




今回も見てくださってどうもありがとうございます!
平塚先生は本当にいい事を言う。原作から一言持ってきました。
後、投稿が早かったり遅かったりするのですいません。


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5話

それから1週間が過ぎ、ホワイトデーイベントまで3日となった。

その日は奉仕部の教室に八幡、雪ノ下、由比ヶ浜、いろはがいた。

「あと3日だねー!楽しみだね、ゆきのん!」

「ええそうね、私達はこれといってやる事はないのだけれど」

「なんで俺がやるんだよ、いやまあお返しができて楽なんだけど」

「せんぱいがどんなの作るか楽しみです♪」

と、4人は3日後の事を話して盛り上がっている。若干一名テンションガタ落ちしているが。

「そういえば材料は?一色さんが買いに行くのよね?」

「はい!明日せんぱいと買いに行ってきますー」

「「え!?」」

雪ノ下と由比ヶ浜は八幡を睨んでいる。

「あのな、一色が来いって言うから行くだけだぞ。それと一応依頼を受けてる立場だしな」

「で、でもなんかデートみたいじゃん!」

「そうね、一色さんこんな男と街を歩いてたら通報されかねないわよ」

「大丈夫ですって!せんぱい頼りになりますし、何より私が先輩と行きたいんです♪」

その場の空気はとても殺伐としている。

「(え、何この空気。みんな仲良くして!!)と、とりあえずだ、明日こいつと俺が行って材料買ってくるってことで異論はないな?」

「異論だらけなのだけれど…まあいいわ」

「い、いろはちゃん楽しんできてね!」

2人はいろはを見て笑顔でそう言った。

彼女もまた目を合わせて笑っていた。

「じゃ、明日よろしくです!私はまだ生徒会でやることあるので生徒会室戻ります!ではでは〜!」

 

「じゃー俺らもそろそろ終わりにするか」

「ヒッキー!い、一緒に帰ろ?」

由比ヶ浜が上目遣いをしてこちらを見てきている。

「は?」

と八幡は言いつつ、顔を赤くしている。

(こいつ…かわいいな、本当にゆるふわ系ビッチだな)

「なら私も一緒に帰るわ、平塚先生に部室の鍵渡してくるわね」

「お、おう、わかった、校門で待ってる」

そう言うと由比ヶ浜と八幡は校門に向かった。

 

「ヒッキーはさ、いろはちゃんの事どー思ってるの?」

「あざとい後輩」

「本当にそれだけ?」

そう言うと八幡の顔つきが少し変わったようにも見えた。

(俺はあいつの事どう思っているんだろう、いつも考えないようしていたが)

「ああ、それだけだ。あいつも俺の事都合のいい先輩としか思ってないだろ」

「……告白されたのに?」

由比ヶ浜は真面目な顔をしてそう問いかける。

「なんでもお前それを」

「いろはちゃんから聞いたんだー。この間先輩に告白して宣言しましたって」

声が震えている由比ヶ浜。口にしてしまったらどうなるかわからない。だが彼女は決心した。

「あのね、ヒッキー。私もヒッキーの事好きだよ」

「……」

彼女の目は潤んでいる。だがそれと同時に強い瞳が八幡を見ている。

「でも私もいろはちゃんみたいに頑張りたいと思った!だからヒッキーこれから覚悟してね!」

「なんで俺の事…」

最後の言葉は風に掻き消されて由比ヶ浜には聞こえなかったであろう。

八幡は平塚先生に言われた事を思い出す。

だがやはり彼は怖いのだ、好意を向けられるのが。

「ヒッキー、私も卒業まで頑張るから、それがどう転ぼうが私たちは友達だからね?」

「……ああ」

「約束だからね!」

そう由比ヶ浜が笑顔で言うと八幡は何か心に決心したように、覚悟を決めたように、彼は頷いていた。

「お待たせ」

「あ。ゆきのん!お疲れ様!」

「…早く帰りましょうか」

雪ノ下は何かを言おうとしていたが言わなかった。彼女は自分の本当の気持ちをまだ整理できないでいた。

春という季節にまだ冬を感じながら彼らの雪解けはいつになるのだろう。

 

〜次の日〜

 

「せんぱいー!遅い〜!」

「いやいやまだ15分前だからね、お前がいるのがびっくりだわ」

いろはの提示した集合時間は13時。2人とも15分前には駅に着いていたのだ。

「なんでですか?10分前行動は当たり前です!」

「お前にしちゃまともなこと言うな」

「そんな事より早く行きましょ!」

そう言うといろはは八幡の腕を引っ張って走り出した。

「お、おま!俺運動してないから走りたくないんだけど!」

「ほーらー♪さっさと行きますよー♪」

本当に迷惑だ、迷惑なのだが、こいつといるといつの間にか笑ってる自分がいる。今日の買い物も悪くないかもしれないな。

 

「おい、一色……もう疲れた…」

「もう着きましたよ!てか、少し走っただけでこんなに疲れるなんてせんぱい男ですか?」

と小悪魔めいた悪表情で八幡を見て笑っている。

「うるせ、俺は文学系男子なんだよ、言うならば秀才なんだよ、だから運動なんてしない」

「はいはい、わかりましたよ、早く行きますよー」

いろはと八幡は某有名なショッピングモールに入った。

「せんぱいー、このハートマークの型いりますか?」

「いやいらないだろ、男からハートマークの食べ物貰っても需要がないだろ。ただし葉山みたいなイケメンは別だが」

「私はせんぱいにもらったら嬉しいですよ?♪」

「はいはい、あざといろはすご馳走様」

そんなやり取りをして材料や飾り付けを買って2人は昼食をとる事にしたらしい。

「せんぱい〜お腹空きました〜」

「だな、なんか食うか」

「せんぱいの手料理!」

「あそこにサイゼあるし、サイゼでいいか」

いろはは、口を膨らまして拗ねていたが

八幡は無視して歩いて行った。

「なんで先に行くんですか!」

「いやだってこうしないとお前ついてこないだろ」

むーーーと言って八幡を叩くいろは。

「わかったよ、悪かったなんでも言う事聞くから許してくれ」

「今言いましたね?♪」

「あ…」

目を輝かして八幡を見るいろははとても嬉しそうにしている。

「一色さん…?俺が聞ける範囲にしてね」

「じゃあー、今日からいろはって呼んでください!それとお昼食べたらプリ撮りますよ♪」

「お前な…名前を呼ぶってのはちょっと」

「せんぱいは嘘つくせんぱいなんですね。

わかりました、強姦されたって警察に被害届出してきます」

「わかった、俺が悪かった、い、いろは」

八幡が否応なしにいろはの名前を呼ぶと彼女は顔を真っ赤にして硬直している。

(うわぁぁ……せんぱいに名前で呼ばれちゃった……)

「な、なんだよ」

「な、なんでもないですよー早く行きましょー」

サイゼに入るまで2人は無言で気まずい雰囲気が流れていた。

 

「ふぁー美味しかったです!ごちそうさまです♪」

「おう、さて、帰るか…ぐへっ!」

「返すわけないじゃないですかあ、プリ撮りに行きますよ♪」

「はぁ……本当に行くのかよ、撮った事ないぞ俺」

「大丈夫です!私がリードします♪」

「何その言い方お前もゆるふわ系ビッチなの」

「せんぱい、女の子にビッチなんて言えるんですね…」

嫌々プリ機の前にきてお金をお金を払わらされ、中に入る、いろはと八幡。

「ほら撮りますよー」

「あ、ああ」

3.2.1.パシャッ

「せんぱい表情硬いですよ、いつも通りです!」

「いやだって知らんし」

「ほら次きますよ」

3.2.1パシャッ

「なんで斜め上向いてるんですか!」

「いやいつも通りのつもりなんだけどな」

いろはは次の写真が撮られる前に

八幡に近づいた。

「は!?」

「ほらほら、可愛い後輩が近くにいますよ♪」

3.2.1

「今日の……お礼です」

「ん?」

パシャッと音ともに体は傾いていた。

何が起こったかわからない。わかったのは一色が手を回してほっぺにキスしてきた事だ。

 

プリ機から出てきて

「しちゃいました♪」

「そのラブホの後に出てきたカップルみたいな台詞やめて」

「どうでした?嬉しかったですか?」

八幡は無言でやり過ごすつもりだったが

「……まあそりゃ可愛い後輩にこんな事されたらな」

とボソッとつぶやいた

「え?」

「なんでもねーよ、早く写真とって帰るぞ」

「せんぱいー!なんて言ったんですかー!おーしーえーてーくーだーさーいーよー」

いろはは笑顔で八幡の姿を追いかけた。

「やだな、何にも言ってないですよ」

「誰の真似ですかー!教えてください!」

好意を受け取ることは怖い事だ。裏切られ、利用され、笑い者にされる。だけどまあ、好意を受け取るのもいいのかもしれない。

幸せな事もたまにはあるものだと青春の1ページに刻んでおこう。

 

 




少し八幡らしくない八幡を描いてみました。下手ですいません!
感想などよろしくです!


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6話

〜ホワイト〜デーイベント当日〜

 

「えー、今日はみなさんお集まりいただきありがとうございます!学期末最後のイベント楽しみましょー!」

いろはがそう言うと1人を除いてやる気を出している。

「いやーまじやばいでしょぉー隼人くん!ホワイトデーとかぁ!やる気出るわぁ!」

「そうだな、今日はがんばるか」

戸部と葉山隼人。

この2人はサッカー部で教室でも一緒にいる仲間である。

「あれ、いろはすじゃん!ぱねー、俺が作ったの食わせてあげるべ!」

「いやいやいらないですから」

いろはは冷たい視線を送り、その場から離れ、八幡のところに走って行った。

「せんぱーい♪どうですかー?」

「あ?まあ作った事あるし、なんとかなるんじゃね」

手際よく作業をこなしていく八幡にみんな驚いている。

「比企谷君、あなた料理できたのね」

「ヒッキー!すごい!」

雪ノ下と由比ヶ浜の2人は八幡の手際の良さを見て感動している。

「八幡〜!すごーい!僕も頑張らないとね!

「おう、戸塚、俺頑張っちゃうからな」

(やばい戸塚は男だ。俺は何を理性を失いそうになってるんだ。「小町より、女っぽいかな?戸塚君」。あぁ、これは病気ですね俺)

「何考えてるんですかせんぱい、気持ち悪いんですけど」

「なんでもねーよ、お前は俺のところじゃなくて色んな奴のところ行ってこい」

「いやでーす!せんぱいのそばにいます♪」

色んな面々がいる中、いろは八幡の腕に軽く抱きついた。

「お前、あざとさに磨きがかかってきたな、作りにくいから離れろよ」(こいつのあざとい攻撃にも耐性がついてきたな俺)

あわわわ、と由比ヶ浜は口をパクパクさせている。雪ノ下は冷徹なその瞳でいろはを見ている。

「は、八幡…な、なんだその戯れは…お主は女子との縁がないんじゃないのか!比企谷八幡!」

「はいはい、五月蝿いから自分の所いけよ」

「ふっ、我に下々の食べ物が食べられるか!

だがしかし、貴様のは別だ!貴様のを美味しくいただきに参上した」

材木座義輝、とりあえず、俺の知り合いで厨二。ただそれだけ。

「へー、比企谷も料理できるのかすごいな」

「お前に褒められても皮肉にしか聞こえねーよ」

隼人が近くに寄ってきて八幡に話しかけた。

彼が動いたせいか彼の周りにいる女子までが八幡の近くに寄ってきた。

「へぇ〜、ひきお料理できるんだ、案外やるじゃん」

三浦優美子。クラスカースト上位にいる案外優しい所もある女の子。

「うわぁー比企谷君すごいね〜、え!?比企谷君の隣に葉山君!?これははやはちが!?ブッハ!」

「もー姫菜ってばー」

由比ヶ浜が優しく介護して上げてるのは

海老名姫菜。とりあえず変態。

(なんで俺の周りに集まってくるんだよ、何、一種のぼっちを虐める企画なの、ライフポイントじわじわと削るのやめようね)

「隼人くーん、ちょ、早く焼かなきゃ時間なくなるっしょ!」

「そうだな、仕上げにかかるか、じゃーな比企谷」

「おう、てか、お前は離れろよ、なんでみんな突っ込まねーんだよ」

「えへへへ、せんぱいの腕暖かったです♪」

(あ、本当にこいつかわいいな…)

「うるせえ、早くどっかいけ、俺も仕上げるから」

「はーい♪ではではー!」

いろはが何処かに行くと、雪ノ下と由比ヶ浜が寄ってきた。

「相変わらず一色さんには甘いのね」

「ヒッキー、ニヤけててきもい!」

「いやニヤけてねーだろ、そしてすぐきもいとか言うな」

 

そうこうしている内に時間が過ぎ、

八幡のクッキーも隼人のも戸部のも出来上がっている。

「せんぱい!これ私が最初食べてもいいですか?」

「ああ」

いろははそれを摘んで食べると

「ん〜!せんぱい、美味しいです!」

「そうかい、そりゃーよかった」

(なんでだろ、普通のクッキーなのにすごく美味しく感じる。せんぱいのだからかな?やっぱり…)

いろはは八幡の側に寄り、耳元で囁いた。

「せんぱいのクッキー美味しいですよ、やっぱり好きな人が作った物ってなんでも美味しんですね♪」

「それをよく恥ずかしがらずに言えるな…お前に羞恥心はねーのかよ、でもありがとな」

「べ、別にお礼が言われたくてこんなこと言ったんじゃないですもん!素直な気持ちを伝えただけです♪」

小悪魔めいた表情を見せるいろは。

八幡は少しずつだが変わってきている。

彼女も少しはそれを感じ取っていた。

「比企谷君、私たちも食べていいのかしら?」

「ヒッキーの食べたい〜!」

「ああ、お前らにはバレンタインの時貰ってるしな、ほれ」

雪ノ下も由比ヶ浜も八幡のクッキーを食べて美味しいと絶賛している。

 

八幡は周りを見て思っていた。

(雪ノ下や由比ヶ浜が見せる表情、一色の素直な気持ち、葉山達のグループの雰囲気。どれを見ていても本物の解はそこにはない。だが俺がもし葉山達のように互いに理解をし合い、あんな笑える関係を築けるとしたら…やはりあいつらしかいないのではないか。いや止めておこう。もし、の事を考えたらキリがないな。一色の事はちゃんと自分の気持ちを言おう)

八幡は小さな溜息を吐いた。だがしかし、何かを心に決めたような、そんな感じがする。

「よー、比企谷」

「平塚先生、何でここにいるんですか?」

「君が気にすることじゃない、お?これ君が作ったやつか?1個もらうぞ」

平塚先生は八幡のクッキーを食べて笑った。

「優しい味だ、君はこんなに優しい物を作れるのになんで性格がそんなに曲がってるんだ?」

笑いながら八幡に言う先生は優しく彼を見ている。

「余計なお世話ですよ」

「まあいい、楽しそうで何よりだよ」

「これが楽しそうに見えますか?よくわかんないイベントですよ」

「それでいいんだよ、よくわかんない輪に混ざって楽しくやれたらそれでいいんだ」

平塚先生と他愛ない会話をして楽しそうな八幡。少しでも彼が表情を和らげたことがあっただろうか。この表情を見せるのは平塚先生と小町ともう1人くらいだ。

 

「今日はこれで終わりですー!皆さんありがとうございました!」

いろはが前でみんなにそれを告げると

「いやー隼人君のクッキーまじ美味しいでしょぉ!やばいわぁ!」

戸部が騒いでいる隣であーしさん(優美子)がご立腹でいる。

「戸部ぇぇぇ、うるさい。隼人この後みんなでご飯でもいかない?」

「あはは、そうしよっか、ゆきのちゃ…雪ノ下さんと結衣もどうかな?」

戸部と優美子とのやり取りに引きつって笑っている隼人。

「私はいいよー!ゆきのんは?」

「行かないことはないのだけれど……あなたが行くなら行くわ」

やった!といい雪ノ下に抱きつく由比ヶ浜。彼女は由比ヶ浜には甘いのでちょっと嬉しそうにしながらあしらっている。

「僕と材木座君は帰るね!」

「ケプコンケプコン!我は帰還するとしよう!」

「わかった、いろはと比企谷はどうする?」

「俺は帰「私たち残って片付けするんで葉山先輩達は先に行っててください♪」

いろはが笑顔でそう言うと隼人が何かを悟ったような顔をしてみんなを連れて教室を出た。

「なんで俺を巻き込むんだよ、片付けは元々手伝うつもりだったが」

「いいじゃないですか!可愛い後輩1人で行かせるんですか?」

「自分で言ってる時点でどーなのよそれ」

「むー!う、うるさいですよ!早くやっちゃいましょ!」

2人は片付けを始めて、他愛のない会話をして時間が過ぎていった。

「せんぱい、これここでいいんですよね?」

「多分な、でもそれ上の段に入ってるやつだな。お前の背じゃ届かないし、危ないから置いておけ」

「大丈夫で…す!ほら!でき……きゃっ!」

「馬鹿!」

いろはが脚立に乗って器具をしまっていたら、バランスを崩して脚立から落ちて怪我をしそうになった。しそうになったというのは八幡が身を挺して庇ったからである。

「いった…せんぱい平気ですか!?」

「いてえ……ん?ああ平気… あ」

「え?」

八幡が変な声を出してしまったのも無理はない。どんな事が起こったのかいろはの胸を触ってしまっているのだ。

「せ、せんぱいの変態!!!!」

「ちょっと待て、これは事故だ、断じて故意的ではない」

「ちょっと先生呼んできますね」

「待って、一色さん、本当に待って…あ」

「なんですか!また!あ」

2人がそう言うと教室に平塚先生がいたのだ。

「そ、そうか、お前らそう言う関係だったのか。ひ、比企谷先生に報告ないなんてひどいぞー」

(なんでこの人この状況で落ち込んでるの!先生

!落ち込まないで!早く誰かもらってあげて!いやそれ以前になんでここにきてるんだよ)

「じゃ、じゃーな、邪魔したな、でも続きは家でやるんだぞ」

「せんぱいのバカーーーーー!!もう先に自転車置き場で待ってますから!!!!今日は葉山先輩達のところ行かないで言うことまた聞いてもらいますからね!!!!」

(ひゃーーーーせんぱいに触られちゃった……胸の鼓動聞こえてないよね…?でも恥ずかしすぎるーーーーーーーーーー)

そう言うと、いろはは恥ずかしがりながらか怒りながらか、教室から出て行った。

「はぁ……」

(こんな事あって良いわけがない…やっぱりラブコメの神様って俺を見放してるんだな、ったくやってくれる、ラブコメの神様)

夕日が教室を照らす中彼はそれを見て遠くを見つめていた。

 




更新遅れてすいません!
今回は登場人物が多めでちょっとややこしくなってると思うんですけど、すいません。
更新は2〜3日くらいでしますね!
感想とかよろしくです!


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7話

どうしてこうなったのだろうか。

今一色とカラオケに来ている。

正確には来させられたという感じだが……

あの後「カラオケに行きたいです♪それと先輩今日も名前呼びですからね♪」とか言ってくるんだもん。一種の脅しだよねこれ。

しょうがないじゃん、あれは不可抗力じゃん?

いろはす許して……

「探しに行くんだー♪そこへ〜♪」

と、いろはすこと総武高校生徒会長はご機嫌でノリノリなご様子。

 

葉山や雪ノ下達に当然のように色々突っ込まれた。特に雪ノ下と由比ヶ浜。

「なんでいきなりいろはと2人でどこか行くって言い出したんだ?」

「引き篭もり君、ついに犯罪を犯すのね、失望したわ」

「ヒッキーいろはちゃん襲うつもりなんだ!まじきも!私もそっち行く!」

何言ってんだこいつら。

由比ヶ浜は結構興奮状態にあるようでそれを三浦たちが宥めていた。

「いや、あのこれには深い訳があるんだ。てなわけで俺はそっちに合流できないからよろしく」

「お、おい、まて比企谷」

俺が電話している横では一色が笑顔でこちらを見ている。その笑顔はまるで女神のような悪魔のような…いろはす怖い、助けて小町。

「本物と呼べる〜場所を〜♪探しに行くのはきっと〜♪いーまなんだ!」

といろはは上機嫌で歌って満足したようだ。

「せんぱいー、この歌せんぱいの言ってたことみたいですね、本物が欲しいって♪」

「そういえば歌詞で出てきたな、つか、恥ずかしくなるからやめようね」

とは言え、八幡はこの雰囲気に悪い気はしていなかった。決して心地良いとは言えない。だが、何か温もりを感じている彼だった。

「せんぱいも歌いましょーよー」

「やだよ、俺にレパートリーは存在しない」

「じゃー今日の事雪ノ下先輩や結衣先輩にバラしますね」

「お前ってほんと俺をいじめるの好きなのな…」

「せんぱい、お前って誰ですかー?」

「……い……ろは(なんで名前で呼ばされてるの俺)」

「はい、せんぱい♪」

ピッピッと言っていろはは曲を入れた。

「えー、これかよ、お前よく知ってんな」

「まあなんか知ってました!」

 

「「陽の満ちるこの部屋ー、そっとトキを待つよ」」

 

「あー!いっぱい歌いましたねー!」

「俺は完全に無理矢理歌わされた感があるがな」

「いやいやノリノリじゃなかったですか?楽しかったですよねー!」

「んー、微妙」

「なんですかそれ!」

いろははそう言いながら八幡を軽く叩き始めた、

周りの人はそれを見て(リア充うるせえ……)と思っていた。

2人はカラオケを後にすると、駅まで歩き出した。

「なあ」

「せんぱい、名前」

照れ隠しのように目線を彼方此方に逸らす八幡。

「い、いろは、今日はもう遅いから送ってやる、駅までだがな」

「えーほんとうですかー?♪でも大丈夫ですよ」

「そうか?まあお前がそう言うならいいか、俺すぐ帰れるしな」

「せんぱい、普通は強引にも付いてくもんですよ……」

「ふっ、俺に男らしさを求めるだけ無駄だな。俺は最小限の事しかしないんだ、超エコ。地球に優しい人間まであるな」

「何言ってるかわからないですよ……」

そんなやり取りを続けていていろははとても楽しそうにしていた。無邪気に笑うその姿は八幡の瞳にどう映っているのか。駅の近くに行くといろはが立ち止まり、

「ここでいいですよ、今日はありがとうございました。せんぱいの美味しかったです♪

「おう、じゃーな」

「せんぱいなんか冷めてません?!」

「いやだって彼氏じゃないし」

(まあそうですけど少しくらい素直にお礼言ってくれたってー……せんぱいのバカ、鈍感、八幡)

「なんだよその何か言いたげな顔して、ほら早く行けよ」

「ふん!わかりましたよーだ!さようなら、せんぱい♪」

八幡はその場で振り返り、後ろ向きで手を振っていた。いろははその姿を見て微笑んでいた。

「さて、帰りますかー!」

と意気込んだところによく駅にいる不良ぶっている高校生がいた。

 

「マジパネーあの子かわいくねー、話しかけちゃおうぜー、つか、俺らが話しかければ落ちないわけないっしょー。パネー。」

 

(うわうっざ、話し方も誰かに似てるし、早くどっか行こ)

 

「ねーねー、これからどこいくのー?」

「いやー塾の帰りでこれから帰らなきゃなんですよー♪」

「俺らとカラオケ行かないー?まじちょーかわいいじゃん」

マジパネー、と後ろの1人は騒いでいる。

人数は全員で5人。

「いやーでもーお金ないってゆーかー早く帰らなきゃなんですよー♪親も心配しますしー」

(自分達がかっこいいと思ってるのかな、全然そうでもないんだけどなー、てか、こーゆー人達にマシな人いないし)

「いいじゃん、いこーよ!友達呼んでもいいからさー!」

いろははそこで黙り込んでしまった。

黙り込めば不良集団がどこか立ち去ってくれると思ったいろは。だがそうはいかなかったのだ。

「え、えっと……」

いろははそこで次の言葉に詰まってしまった。困惑してしまった。

(なんでだろう、こーゆーのには慣れてるのに少し怖い…)

「い、いやー友達もダメだと思うんですよーだから…今日はごめんなさい」

「えーいいじゃん、いこーよ」

一色いろはの心は強い。いや強く見せているのだろう。弱さを見せたらそこに付け入れられる。弱さを見せたら自分の今ままで作ってきたイメージを崩してしまう。嫌な事があっても笑顔で我慢してきたのだろう。顔に出すタイプでも愚痴も言うタイプでもない。だか本当は脆いのだ。少しの事でも気にしてしまう繊細な女の子だ。話しかけられても上手く躱すいろはだが何故か言葉が上手く出ずに涙ぐんでいる。

無理矢理連れて行かれるいろはの腕を何かが強く引き寄せた。

「お前こんなところにいたのか、探したぞ」

「え?お前だれ?」

「あ?か、彼氏だよ、文句あんのかよ」

その目つきはとても悪く、友達や知人すらいなそうな、人馴れしていない雰囲気を出しているその男が彼らに向かってそう言い放った。

「なんだよー彼氏待ちかよー行こうぜー」

「マジパネーー、それはやばいっしょ〜」

彼がそれを言うと男達は立ち去っていった。

 

「………っ!……せ…ん…ぱい………っ!」

涙ぐむいろはの目の前に比企谷八幡が現れたのだ。

「なんで絡まれちゃってるのお前、なんで俺が上条◯麻さんばりのヒーローっぷりを発揮してんの…俺はぼっちで目立ちたくないんだけど」

「あれだな、あざとかわいいってのも不幸なもん…」

八幡の声がここで途切れたのはいろはが彼に抱きついてきたのだ。

「おま!?一色さん?!あざとすぎませんか!」

「わぁぁぁぁぁん……!こわ…かったです…!いつもなら平気なのになんか…っ!なんか……」

そう言うといろはは八幡の胸で泣き始めた。

(こいつも1人の女の子だもんな、強い強いと思っていてもあの場では不安にもなるだろう。いやまあだからってこの状況すごいドキドキするし、泣いてるあざといろはすかわいいし色々とやばいかも、小町、お兄ちゃん死ぬかも)

 

「へっくし!ふぅ…寒いな…誰か噂でもしてるのかな、お兄ちゃん帰ってこないなら先にお風呂入っちゃお!」

とベストタイミングでくしゃみをする小町ちゃん。

 

いろはが泣き止むまで駅近くのベンチで座らせて落ち着かせた八幡。

「…せんぱい、すいません、ご迷惑をおかけしました。てゆーか、なんで私が絡まれてるのわかったんですか!!」

泣き終わった後のいろはの顔は赤かった。

と同時にその顔はいつもより可愛くなっていた。

「さーな、たまたま小町に買い物頼まれて駅の方行ったらお前が困ってそうだったから助けたとかでいいんじゃね」

「なんで曖昧なんですか!」

「曖昧とか言葉知ってるんだなお前は」

「せんぱい、馬鹿にしすぎです。

それよりさっきいきなり抱きついてごめんなさい、でもせんぱいの鼓動すごい早くなってましたよ♪」

「うるせーよ、あれだよ、人を助けるなんて事したことねーからドキドキしてたんだよ」

「こんなかわいい後輩に抱きつかれて嬉しくないんですねー?」

「はいはい、自分で言ってる時点であざといから減点。ほら、それよりもう9時過ぎてんぞ、送ってやるから早く行くぞ、あ、これ八幡的にポイント高いな」

「(せんぱいこそあざといよ…本当にこの人は…)なんですかそれ、今日はせんぱいの言うことを聞いてあげます♪」

その後、八幡はいろはを最寄りの駅まで送って行き、 いろはの自宅近くまで来ていた。

「もう泣き止んだか?」

「さすがに泣き止んでます!みっともない所をお見せしてすいませんでした」

「おう、早くもう帰れ」

「はい!ではでは!」

そう言うといろはと八幡は同時に後ろを向いて歩き出した。

「あ、せんぱい!」

「あ?なん……ん!!?」

八幡が振り向いた先にあったのは背伸びしていたいろはだ。そして唇と唇が重なった。

「今日のお礼です♪」

「ばっ!何してんだ!?」

「別に2回目なんだからいいじゃないですかー♪気にしない気にしない、ではでは!また明日学校で会いましょう」

八幡は何が起きたか状況を整理できずにいたが

いろはがそう言うと走って自宅まで帰るいろはの背中を彼は見つめていた。

しっかり玄関に入った事を確認し彼は歩き出した。

(さっきもそうだった、あいつの背中が消えるまであいつを見ていた。それが何故かはわからないが。俺も甘くなったもんだな、でもあいつの弱さが見れたのは意外だったかもな……平塚先生の言う通り俺は何か変わっているのかもしれない)

その気持ちを理解する日は来るのだろうか。

彼はマッ缶を買ってその場所を後にした。

 




更新遅れてすいません。
八幡が八幡らしくない事をさせてみました。かっこいいですねー、

上条◯麻=とある魔術の禁書目録の主人公。不幸体質のヒーロー。


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8話

ーーー数日後ーーーーー

 

「はぁ…ねみ、もう3月も終わりか」

(今日も疲れた、主に生きる事に。そしてあのあざとい後輩に入学式の日程やらなんやらあるからって手伝わされたからな)

そういう八幡は学校から家に帰宅した時にそんな事を心で嘆いていた。

(そういえば俺のマイエンジェル小町がいないぞ、どこ行ったんだあいつ)

 

プルルルルル……

八幡の携帯が鳴っている。

名前表記がされてないので誰なのかわからない。

「そもそも俺が番号教えたやつなんていないはずなんだけどな」

ピッ

「はい」

「せんぱ〜い〜!きいてくださ…」

そこで八幡は電話を切った。

「…人違いだよな、俺あんな誰にでも甘えてきそうな後輩の声なんて知らないし、よし寝よう」

プルルルルルル……

「……お掛けになった電話番号は現在」

低い声でそういう八幡に対していろは笑っていた。

「せんぱい、なに言ってるんですか」

「うるせーよ、なんで番号知ってんだよ」

「葉山先輩から聞きました♪」

葉山ァ……てか、なんであいつも俺の番号知ってるの、教えた覚えないんだけど、何俺の番号絶賛流出中なの?人気者なの?

「んで、何の用だよ」

「もうすぐ春休みじゃないですかー、だから入学式の準備手伝って欲しいなとか思ったり」

あざとかわいい声でいろはは八幡にお願いする。

「悪い、春休み全部開いてねーや、全部小町と遊ぶまである」

「妹さん大好きなんですね、でも来月から一緒に登校できるからよかったじゃないですか」

そう、小町は総武高校に受験し、合格したのだ。受かってお兄ちゃんも嬉しい。だから来月から一緒に通う事になる。

「まあな、じゃ、そういう事で」

「ちょっと待ってくださいよー!手伝ってください〜、いいんですか、私の胸触った事校内でバラしますよ?♪」

「……わかったよ」

「ありがとうございます〜♪使え…頼れるせんぱいいると違いますね♪じゃ、明日の修了式の後に生徒会室に来てください、ではでは〜」

あいつ絶対使える先輩って言おうとしたよな、絶対そうだよな、仮にもお前の好きな人に使えるとか言っていいのかな?

……自意識過剰だな、うん。

 

ーーーー修了式後ーーーーーー

奉仕部部室……

 

「来月から私たちも最上級生か〜実感無いねーゆきのん!」

「ええそうね、受験もあるのだし、気を引き締めましょうか」

「受験かー、嫌だなあ…この3人が離れるのはやだよ」

今までの思い出を思い出して由比ヶ浜は少し笑っている、と同時に少し切なくもある。

「気持ち伝えたけど、まだ何にも行動してないよ…」

「由比ヶ浜さん…私、校門で由比ヶ浜さんが告白してるの聞いてしまったの、ごめんなさい」

由比ヶ浜は驚きはしなかった。奉仕部で2人で話していた時、心の内を見せ合った。そして2人はあの男の事を好きだと自覚した。だから雪ノ下には逆に知っておいて欲しかった。

「私、知ってたんだ」

雪ノ下は顔を上げ由比ヶ浜を見つめた。

「私、みんなが思ってるほどいい子じゃないって言ったでしょ?あの場でゆきのんに見せて起きたかった。私が本当に本気なんだってところ」

唇を噛み締め、思った事を全て吐き出そうと、本物の友達だからこそ全てを言おうとする彼女を見て雪ノ下は覚悟した。

「だからゆきのん、もう一回言うね、遠慮はしないよ!」

雪ノ下は何も答えなかった。答えられなかった。本心は遠慮をしているのではないか、彼女に対して引け目を感じているのではないのか。雪ノ下は自問自答を続ける。そして彼女が出した答えは由比ヶ浜の思った通りだった。

「由比ヶ浜さん、私はーーーーー」

 

同時刻 生徒会室

 

ガラガラガラ

 

「おーそーいーでーすーせーんぱーいー♪」

「お前そゆこと男子全般にやってるだろ、勘違いするんだからやめてあげてね、俺はしないけど」

「すぐそーゆー事言うんですから、大丈夫です、せんぱいだけですよ♪」

八幡はそれに、はいはい、と答えると席に座った。

「んで何を手伝えばいいんだ?」

「いや…特に手伝いはないんですよね」

少し困ったような顔をして八幡に言った。

「せんぱい理由がないと来てくれないじゃないですかー、せんぱいと2人でいたかったので呼び出ししちゃいました♪」

ビシッ!っと軽く敬礼をしてウインクをして八幡を見る。

「わかった、帰る」

「ちょっーーーーと!待ってくださいって!可愛い後輩とで2人で居られるんですよー!」

「うるせえ、俺は雪ノ下に呼ばれて部室に顔出さなきゃいけねーんだ」

(でないとあいつに何言われるかわからない、「比企谷くん、あなた約束も守れないの?ゴキブリの方が生きる価値はあるわ、ゴミ谷君に改名したらどうかしら?」とか言われかねない。怖い怖いよゆきのん)

「えー!後15分だけ…だめですか…?」

そう言うと八幡の袖を引っ張り上目遣いをしている。

「せんぱいに会いたかったんです、あんな事があったから…」

あんな事とは不良に絡まれた時のことだ。

「お礼をしたりないし、言い足りなかったんで呼んじゃいました♪」

いろはは笑顔を浮かべているが、心の奥底ではまだ傷が癒えてないのではないか、そのような雰囲気が感じ取れる。

「いやだなーそんなお礼言われることしてないですよー」

「誰の真似してるんですか、オネエみたいで気持ち悪いです」

「誰ってお前だよ」

いつも通りの一色との会話だ。何の他愛もないくだらない会話だ。そういえば平塚先生にも言われたな。そのくだらない事の積み重ねが大切な物を作っていくとかいかないとか。

「むー!!そーゆーわけで今日は夕方まで返しませんからね♪」

「待て俺は雪ノ下のところへ行かなきゃいけないんだ、本当に殺されちゃう俺」

いろはは力を込めて八幡の腕を引っ張っている。(なんで今日に限ってこんなに面倒臭いんだこいつは、いや面倒なのはいつもだけど…しょうがない、お兄ちゃんスキルを発動させるしかないな)

「うーーー!……へ?」

いろはが驚いたのは何故か。それは八幡が自分の頭を撫でてきたのだ。

「……ま、また今度な」

慣れない事をして八幡はその言葉を発する時、噛んでしまったので格好がつかなかった。

「…せ、せんぱい噛んでてカッコ悪いです」

腕を引っ張るのをやめ、ぽかんと彼の事を見上げている。

「じゃーな、またなんかあったらメールしろよ、めんどいけど」

そう言うと八幡は生徒会室から出て行った。

いろははその場から動けなかった。今自分が何をされて何を言われたのか覚えてないのだ。

「(せんぱいこそあざといじゃん…後輩の頭撫でるとか…もーーーーーーー)

いろははその場に撫でられた頭を抱えて座り込んでいた。

 

 

ーーー奉仕部ーーーーーーー

 

ガラガラガラ

 

「うぃーす」

「あら、ゴミ谷くん遅かったじゃない」

「ヒッキー、やっはろー!」

(あいつ今ゴミって言った?明らかにゴミって言ったよね?あれ?俺の予想当たっちゃった?八幡の予想ドンピシャ!)

「もう人間ですらないのかよ」

「嘘よ、戯れよ」

「なに?どこの時代の人間?」

雪ノ下がそう言うと八幡はいつも通りに反応した。

「んでお前の言ってた用ってなんだよ、早く帰りたいんだが」

雪ノ下は一つ咳払いをして、答えた。

「明日から春休みでしょ?……そ、その由比ヶ浜さんが今日家に泊まりに来るのだけれど、あ、あなたもどうかしら?」

八幡は耳を疑った。彼女が自分を遊びに、いや家に呼ぶなんて今迄なら考えられなかった。

(なんだ!?どーゆー風の吹き回しだ?こいつ何か企んでやがるのか?)

「い、いや俺帰って寝たいしいいよ、お前らで遊べよ、しかも泊りなんて男が行けるわけないだろ」

(常識的に考えればわかるはずだ。

ましてや俺なんて誘うなんて何か企みがあるとしか思えない)

「えー、ヒッキーも行こうよー!ゆきのんに勉強も教えてもらうしさ!」

由比ヶ浜が笑顔で八幡に言う。

「嫌ならいいのよ来なく、きゃっ!!」

由比ヶ浜が口を塞いで雪ノ下を教室の外に連れやった。

(ゆきのん!!!なんですぐマイナスの方向に言うの!!!!)

(いやその…私は由比ヶ浜さんじゃないんだし、こういうの初めてなのよ)

 

「なんなんだ?あいつら」

そう八幡が言うとと2人は戻ってきた。

「ひ、比企谷君、勉強するためだと思ってきてもらえるかしら…?」

「だから俺はいかな「なんですかー!それー!」

聞き慣れた声が奉仕部の部室内に響いた。

一色いろはが興味津々にその事について尋ねてきた。それもとびっきりの笑顔で。

「雪ノ下先輩!結衣先輩!なんの話ししてたんですかー?」

「今日ゆきのんの家で泊まりで勉強会しよーって言ってたの!」

「そうなんですかー!せんぱいが行くなら私も行きたいです!」

「ええ構わないわ、だけれど一色さん、私の教えは甘くないわよ?」

言葉とは裏腹に雪ノ下の表情は和らいでいる。

「はいー!せんぱいにも教えてもらいますね♪」

「ちょ、待てよ俺まだ行くなんて一言も言ってねーだろ」

本当に面倒臭そうな雰囲気を漂わせている八幡。

(こいつら3人がいる空間になんていたくない、何が起こるかわからない、化学反応で毎日が実験みたい〜♪ってなっちゃうだろ、まあいい、誘われた以上、ここで行かないわけにもいくまい。いやもうほんと全然行く気とかないし、リトさんばりのハーレム空間に乗り込む気ないし、勉強教えて欲しいわけでもないし。ただ。ただね?なんか行かないと氷の女王が目線で俺の事殺しにかかってるからね?ほら人の善意は受け取っておけって母ちゃんによく言われただろ?しょうがない乗り気じゃないけど行くしかない)

「わ、わかったよ、風呂入って飯食ったら今日の夜いけばいいんだろ」

「決まりね」

「やったー!楽しそうだね!ゆきのん!いろはちゃん」

「そうですねー結衣先輩!」

そう言ういろはは何かを企てている表情をしている。雪ノ下と由比ヶ浜は目を合わせて微笑んでいる。

彼と彼女達の春休みが今始まろうとしている。

 




更新遅れてすいません。
八幡らしさがどうしても欠けてしまいますね…
もっと原作読んでおきます。


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9話

ーーー八幡家ーーーー

 

「疲れた、主に精神的に」

「どうしたのお兄ちゃん、本当に死んだ魚みたいになって、目なんて特に」

「いや目は元からだから弄るのやめようね、あれだ、あざとい後輩と氷の女王とゆるふわ系ピッチがだな……」

めんどくさそうな口調で八幡が小町に今日学校であった出来事について話した。

「お兄ちゃん…よかったね、ハーレムだよ!小町お兄ちゃんに女の人ができて嬉しいよ!」

「いやいや小町ちゃん?女の子3人だよ?誰得なの?俺は家で小町といる方が8万倍いい、これ八幡的にポイント高い」

「お兄ちゃん…」

少し冷たい目で八幡を見る小町。

あれ?小町も冷たくなってる?なんで?これは俺のライフポイント削られますね。

「さっさと準備して行かないと雪乃さんと結衣さんとあざとい後輩さんにぐちぐち言われちゃうよ、でも帰って来て悄げてたら小町がまた聞いてあげるから」

やばい、俺泣きそう、マイエンジェル小町、妹が居ればもうなにもいらないのではないだろうか。

「おう、さんきゅー、じゃあお兄ちゃん準備してもう行くわ」

足取りが重くなる八幡。何が起こるかわからないお泊り勉強会in雪ノ下家。

彼の春休みが始まるのであった。

 

 

ーーーいろは家ーーーーーーー

 

「勢いで言っちゃったけど…先輩とお泊りなんて…でも雪ノ下先輩と結衣先輩に負けないために自分から言ったんだからがんばらないと」

あの2人に負けたくない一心でいろはは動いていた。自分が八幡の中で一番存在になるためならなんでもすると決めたのだ。

「そうだ、せんぱいと一緒にいこーっと!

メールしなきゃ」

 

『せんぱ〜い〜!雪ノ下先輩の家わからないので一緒に行きませんか?♪

こんな可愛い後輩と一緒に行けるなんて幸せですよ♪』

 

『迷惑メールならやめてもらえますかね?』

 

『どうしていつも素直じゃないんですかね…』

 

『バッカお前俺は素直すぎて困るくらい素直だぞ、素直の化身とか出るからな、……19時に海浜幕張駅な』

 

『最初からそういえばいいんですよ!もー!あざといのはどっちですか!』

 

『やだなー、そんな事ないですよ〜、あざといろはすさんには敵いませんって〜』

 

『むー!会った時パンチします!ではではー☆』

 

(あいつも本当はこの間の事があって不安なんだろう、プライド高いから感情を表に出さないが、まあ俺も紳士だ、女の子が困ってたら少しは力になろうと思う、小町とか小町とか戸塚とか戸塚とか、いや待て戸塚は男だ。でもな、小町と戸塚が困ってたら全て投げ出してでも助けちゃうな、あーこれは重症ですね。まあとりあえず後輩だし、自分のこと可愛いとか言ってるけど、まあ可愛いしな、たまには…な)

 

 

「せんぱい、本当に素直じゃない…さっ!用意していかなきゃ!」

ただメールのやり取りでも好きな人と連絡取れるというのは誰でも嬉しいものだ。

いろはの心は踊っていた。

 

ーーーー由比ヶ浜家ーーーーーーー

 

「ゆきのんもいろはちゃんもすごいなー……

私らしさか……」

奉仕部で過ごしてきた日々を思い出す。

「笑って怒って泣いてって、だけど今が一番楽しいよね……」

由比ヶ浜は誰もいない部屋で自分でも聞こえないような声で呟いた。

「………全部欲しい…」

「早く用意しないとゆきのんに怒られちゃう!

ヒ、ヒッキーと一緒に行こうかな……」

そう言うと携帯を取り出した。

 

 

『結衣だよーーー☆☆☆

ヒッキー、1人で行くなら一緒にいこー!!!!』

 

『出会い系とか宗教の勧誘とかその類はやめてもらえますかねえ…』

 

『なんかひどいこと言われてる!?!?』

 

『なんだよ、お前もかよ』

 

『え?お前も、ってことはいろはちゃんも??』

 

『ああ、海浜幕張駅に19時って言ってある』

 

『じゃー私も行くね!じゃー早く用意して出るね!じゃーまた☆☆☆』

 

『お、おう』

 

由比ヶ浜は携帯を確認して少しテンションが上がったらしい。鼻歌を歌いながら用意をしてる。

 

コンコン

 

「結衣ー、雪乃ちゃんの家に行くのよね?八幡くんも来るの!じゃーちゃんとした下着を「もーママ!うるさいよー!!あっち行って!!!!」

由比ヶ浜のお母さんは陽気で明るくてとても優しい。流石は彼女の母親である。顔や髪型、性格も全て似ている。

「はいはい、わかったわよ、八幡君と雪乃ちゃんによろしくね!何があったかちゃんとママに教えなさいよ〜!ママ結衣のこと応援してるわよ!それと持っていくお菓子ここに置いておくわよー」

そう言うと彼女の母親はリビングに戻っていった。

「もー、余計な事しか言わないんだから!言われなくても頑張るし!」

「ママ〜、お菓子ありがとう、行ってきまーす!」

外は寒さを漂わせた中に春という季節を感じさせる。由比ヶ浜はその中、目を閉じ何かを決心した様に目を開いた。

彼らと彼女の春休みが今始まる。




更新遅れてすいません。

八幡はやっぱりなんやかんやいって優しいんですよね。笑
書き方雑なところあったらアドバイスお願いします!


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10話

ーーー海浜幕張駅前ーーーー

 

「せんぱいそろそろ来るかなー……」

「いろはちゃーん!」

いろはが振り返るとそこには由比ヶ浜の姿があった。

「あれ?結衣先輩なんでここに??」

尋ねると由比ヶ浜は言葉を濁さずはっきり答えた。

「ヒッキーに連絡したらいろはちゃんと行くって言ってたから!」

「そうなんですかー!頼もしい先輩2人といけるなんてよかったです♪」

(せんぱい……こーゆー時は空気読んで2人で行くとかしてくださいよ〜!そりゃ結衣先輩もせんぱいの事好きって言ってたけど…対等って言ったけど…独り占めしたかった)

「お前ら早いな、まだ15分前だぞ」

いろはと由比ヶ浜が話しているところに聞き覚えのある声がした。

「普通ですよー、待たせるのは嫌いですからね私♪」

そう言うと八幡の近くに寄っていくいろは。

「お、おう、そ、そうなのか」

(こいつなんでこんな笑顔なの?その瞬きの速さったら「せんぱい空気読めなさすぎて死んでください」って言ってるみたいだからやめようね。瞬きで言葉がわかるようになっちゃったのな俺。って事はこれでぼっちではなくなるのか。え?ちがう?違いますね)

「ヒッキー遅いー!ゆきのん怒っちゃうよ!」

いつもの調子で由比ヶ浜が話しかける。

「そうだな、行くか」

雪ノ下の家は海浜幕張駅から徒歩で行ける距離にあるマンションに住んでいる。1人暮らしとはまたお金持ちだなあと八幡は改めて実感する。

 

 

ーーーー雪ノ下家ーーーーー

ピンポーン

 

「こんにちはー!結衣だよー!」

インターホンを押すと大声で由比ヶ浜が言った。まるで初めて家に遊びに行く無邪気の子供のように。

ガチャッ、っと音ともに雪ノ下が出てきた。

「こんにちは、由比ヶ浜さん、一色さん」

「俺もいるんだけど、何見えてないの?目を合わせたくないの?新手のいじめ?」

彼女はそれを聞いて笑みを浮かべている。

「冗談よ、その腐敗した目と視線を一緒にしたくなかっただけよ」

「はぁ…そんなに嫌なら呼ばなければよかったんじゃないですかねえ…」

八幡が皮肉のようにそう呟く。

「じょ、冗談よ、だから言ってるじゃない、戯れよ」

「だからお前は何を気取ってるんだ?」

玄関でそのようなやり取りをしている2人。そのやり取りが終わり全員家の中に入った。

「うわ〜!雪ノ下先輩の家って広いんですね!羨ましいです!」

「そんなに羨むこともないのだけれど、1人というものは楽ね」

「いーまーはそんなことないでしょーゆきのん!」

「ゆ、由比ヶ浜さん…ち、近いわ」

雪ノ下が何故戸惑ってるかというと、由比ヶ浜が抱きついてソファーに押し倒して頬ずりしているからだ。

(あれ、これって百合ヶ浜さんと百合ノ下さんじゃないですか、普通の男だったら喜ばしいのだろうが俺は嬉しくない。本当に別に嬉しくないんだからね!?雪ノ下の上に由比ヶ浜の胸が押さつけられてるとか見えてないからね!だが、氷の女王を照れさせるなんて百合ヶ浜恐るべし)

「せんぱい〜何見てるんですか??」

「なんも見てねーよ、勉強するんだろ?早く済ませようぜ」

怖いんだっていろはす…その笑顔で目をパチパチさせるのやめようね?「死んでくださいど変態せんぱい」って言ってるようだからね。

「じゃあ今紅茶淹れるわね、あとクッキーも作っておいたの」

美味しそうなクッキーが並んでいる。雪ノ下も彼女達が来る事を割と楽しみにしていたのかもしれない。

「お前準備良いな」

「やったー!ゆきのんのクッキーだー!」

「わー♪ありがとうございます♪」

「さ、勉強を始めましょうか」

 

 

雪ノ下&由比ヶ浜

 

 

「ゆきのんー!これはわからないー!なんでsinとかcosとかtanとか使うの!」

「貴方よく高校生やってこれたわね…」

呆れた顔で雪ノ下は由比ヶ浜を見て溜息をついた。

 

「ゆきのん!厳かってなんて読むの?早急ってそうきゅうって読むんだよね?」

手を顔に当てて困った顔をしている。

「由比ヶ浜さん、貴方毎日私の家来て春休みは勉強しなさい」

「よろしくお願いします…」

由比ヶ浜の落ち込み、自分の勉強のできなさを嘆いた。

 

八幡&いろは

 

「せんぱい、2次関数の方程式って…これで良いんですか??

「おー、そうそう、お前数学とか出来んのな」

「これくらい普通です♪」

高校1年生でも少し難しい感じの問題を難なく解くいろはは得意げな顔をした。

 

「せんぱい、国語の現文の漢字これであってます??」

「見せてみ…おー殆ど合ってる、お前頭悪そうに見えて割と頭良いのな」

「むっ!その言い方はなんですか!むーーー!!」

ポコポコと軽くパンチを繰り出すいろは。

八幡は何食わぬ顔でそのパンチを食らっている。

「はいはい、可愛い事はわかったから勉強しような」

 

〜3時間後〜

 

「もう21時になるのね、みんなはお風呂入るのよね?」

「いや俺は入ってきたから良いぞ」

「私は入ってないー!」

「私もです〜!」

勉強も一息つき、一同が眠そうにしていたので雪ノ下がそう提案した。

「そう、じゃあ、私は最後に入るから「えー3人で入ろうよー!」

「そうですよー!修学旅行みたいで楽しそうです♪」

由比ヶ浜といろはが雪ノ下にいうと彼女は照れていた。

「い、いえ私はいいわよ」

「そんな事言わずにー!「行きますよー!」

2人は雪ノ下を無理矢理風呂場まで連れて言った。1人になった八幡はというと本を読んでいる。

(1人になっちまった…はっ!いかんいかん、俺は独りで生きてきた人間だ…でもあいつらといると心地が良いと言うかなんというか)

本を読みながら本な事を思う八幡。

するとお風呂のほうから声が聞こえる。

「雪ノ下先輩、肌綺麗ですねー!」

「そんな事ないわよ、一色さんだって綺麗じゃない」

「2人とも綺麗だって!私少し肌荒れてきちゃって…しかも何故か肩も凝るんだよねー!」

由比ヶ浜のその発言が2人の何か癇に障ったのか、2人で彼女を凝視する。

「(結衣先輩…やっぱ大きいな…私は雪ノ下先輩よりある…よね?)」

「(……大きい……)」

「ど、どうしたの2人とも!」

2人は深く大きな溜息を吐いた。

それからは恋愛の話をしたり、勉強や学校の事等、極普通の女の子の会話をしていた。

「そう言えばーせんぱいって元からあんなに捻くれてて腐ってるんですか?」

「そうね、奉仕部に入部してきた時の目の腐り方と言ったら失笑だったわ」

「で、でもヒッキー最初から優しかったよ!少し不器用だけど」

3人で一瞬の沈黙があったがすぐ笑顔になった。

「まあでもせんぱいはせんぱいで良い所いっぱいありますもんね!まあまあ良い事言いますし」

「……まあそうね」

「……うん」

3人の思考回路が重なったのか、あのシーンの回想が浮かんでいるようだ。

 

 

「俺は……本物が欲しい……」

 

 

彼が初めて心の内をさらけ出した瞬間だった。

人との繋がりは麻薬だ、友達とは裏切られる事を許容しなければいけない、ぼっち最高等を口にした彼だが、この時は本当に自分の「本物」の気持ちを彼女達に伝えたのではないだろうか。

 

3人は思い出し、笑い、そして目を合わせてまた笑っていた。

「私、だからこそ2人には絶対に負けませんからね!」

「ええ、わかってるわ」

「わ、私だって負けないからね!いろはちゃん!ゆきのん!」

 

その笑い声を聞きながら八幡はくしゃみをしていた。

「な、なんだ、誰か俺の噂を?小町か戸塚だなきっと。俺ってば愛されてるなあ」

「まあいいや、あいつらが出てくる前にトイレいってくるか」

だがしかしここで八幡に思わぬ出来事があった。浴室の脱衣所のドアが開いていたのだ。

「なっ……」

(幸いまだ誰も出てきてないからハーレム展開はないぞ、よかった。だけど下着とかそこら辺に置いて置くなよ。俺も一応男なんだから興味あるんだよ?まあ流石に知り合いのを見るなんてゲスな事はしないけどな。浴室の横にトイレがあるので必然とそこは見えてしまう。面倒臭い状況に陥る前にドアを閉めておこう、俺ってちょー紳士)

ガラガラガラ……

「じゃー私先に出ますね!」

(なん…だと…

この状況であいつが出てきたら俺がドアを少し開けて覗き見してるみたいじゃねーか。

どうする、どうする俺!

1.堂々と覗き見だと言う

2.土下座で謝る

3.踏ん反り、お前らがドアを開けていたのが悪いという

あー、どれを取っても俺の死は免れないらしいですね。ここは潔く土下座しよう。媚びる時はプライドを捨てて媚びる。)

八幡が心の中で一人でやり取りをしていたら、

ガラガラガラガラ……

「へ?」

「あ…」

「っっっ!!!!せんぱいの変態ー!!!」

タオル一枚に包まったいろはが出てきたのだ。

八幡が自問自答を繰り返している時、ドアを開けて出てきたのだ。

「い、一色さん!?」

「どうしたのいろはちゃん!!」

2人も慌てて浴室から出てきたのでタオル一枚を包んでいるだけだ。

「「「あ」」」

この後の八幡の処遇は言うまでもなかった。

 

 

 

「で?ゲス谷君?弁解の余地はあるのかしら?」

「いや、待てちゃんと聞け、お前らが脱衣所のドアを開けていたから俺が閉めようと「ヒッキー最低…」

やっぱそうなるよね、八幡知ってた。なんでも知ってるお兄さんだよもう。

俺はキラじゃない信じてくれよ!

「せんぱい…わ、私の裸見ましたよね!万死に値します!死んでください!」

この子は直ぐ俺の事を三途の河を渡らせたがるんだから。地味に俺のライフポイントを削ってくる。そして誰の真似?慢心王さん?

「本当に信じてくれ、俺は無罪だ」

八幡が深々と頭を下げる姿を見ていろはが何を企んだのか、こんな事を言い出した。

「じゃーわかりました、今からする質問に答えてくれたらいいですよ」

「な、なんだよ」

「さ、3人の中で誰が一番お風呂上がり綺麗でした?」

「……は?」

八幡は不意を突かれた質問をされたのか声が裏返ってしまった。

「早く答えてくださいよ〜♪私の裸見ましたよね?ね?結衣先輩も雪ノ下先輩のも全部ではないけど見ましたよね?♪」

(こいつ悪魔だ、ドルマゲスかな?ラプソーンかな?

だがしかし俺がノーダメージ且つ奴らにもノーダメージで切り抜けられる方法がないなこりゃ。一番ダメージが少ないのは一色だ。だがしかし後ろの2人がどんな言葉を放ってくるかわらかない特に雪ノ下。どうするべきか…)

「答えられないんですか!もういいですSNSに投稿します!」

「……一色」

「え…?」

「お前が一番小町に似て綺麗だった」

そう言うといろは照れて黙り込んでしまったが、直ぐに

「な、なんで妹さんとに似てるで私なんですか!年下だからですかー!」

「いや本当に本当に綺麗綺麗、これでいい?」

その様子を見ていた雪ノ下と由比ヶ浜は笑っていた。やはり彼らしい、と。

「でも比企谷君、貴方が覗きをする勇気がないのはわかっているのだけれど説教よ、覚悟しなさい」

「私からも色々言わせてもらうからね!」

「私もです♪覚悟してくださいね、先輩♪」

(あーこれ面倒臭いくらい長々と文句言われて一方的に俺が責められる奴だ。この光景クラスで見た事あるな。苛めってやつ。もうやめて八幡のライフはゼロなのよ!)

4人で過ごす勉強合宿の夜はここで幕を閉じた。




地の文が凄い雑になっていてすいません。
書き方があまりよくわからないのでそこら辺把握して読んでくださいw
UA2万突破しました!ありがとうございます!
これからも宜しくお願いします!
感想やアドバイスもよろしくです!


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11話

それからと言うもの、ごく普通に勉強合宿が終わり、3月も終わろうしている。

一色、雪ノ下、由比ヶ浜の3人の仲は深まったようで、3人で買い物に出掛けたりしている。

その一方でこの男はというと…

「ねみー、明日から4月とか早すぎ、受験生無理ーやだー」

ソファーでゴロゴロしながら子供っぽく言う八幡に小町が

「なーに言ってんのお兄ちゃん、小町も受験頑張ったんだからお兄ちゃんも頑張らなくてどうするの?」

「小町がそう言うなら俺も頑張るしかないか…」

俺のマイシスターは何故こんなにも愛おしく、天使なのか。俺が兄貴じゃなかったら惚れてるまである。

「じゃーお兄ちゃん暇なら夕飯の食材買ってきて」

メモと財布を持ってきて八幡にお願いする小町。

「へーいへい」

外に出て自転車に乗ると風が少し冷たい。

だが、ほんのり暖かみを帯びているこの風は正に今の彼等を示している様であった。

 

 

 

「じゃがいも、人参、玉葱…こんなもんか、

あ、マッ缶を入れるの忘れてた」

そう言い野菜のエリアから離れようとした時、

後ろから強い力で引っ張られた。

「せーんぱい♪」

笑顔で八幡に話しかけるのはみんな大好き一色いろは。

「…だれ?」

「ひどいじゃないですかー!4日前くらいまで一緒にいましたよ!」

叩く仕草を見せている彼女を八幡が

「はいはい、あざといからその仕草。なんでここにいるのお前」

買い物籠に夕飯の用意だと思われる物が沢山積んである。それを見た八幡は手を出した。

「なんですか、手を繋ごうとしてるんですか2人きりでいるからって恋人気取りですか、私先輩の事好きですけど先輩から気持ち伝えてくれなきゃ無理ですごめんなさい」

「ちげーよ、何で一々俺を振るの?嫌いなの?

…その籠持ってやるって」

「……先輩こそあざといじゃないですか」

一色は頬を染め、籠を差し出す。

「重いな、お前1人か?」

「いやお母さんと来たんですけどタイムセールだからってどこか行っちゃって、それでウロウロしてたらせんぱいを見つけちゃったんです♪」

敬礼をしてウィンクをして八幡を魅了する一色。

(可愛いんだけどあざといんだよなあ…何だろう俺の中でこいつに対する感情変わったのか?そ、そんな事ねーし、べ、別に一万年と二千年前から愛してねーし)

「そういえばせんぱい…」

一色が背伸びをして八幡の耳元に囁いた。

「あの時私の裸を見た事についての誠意が示されてないんですけど?」

(ま、待て、声かわいいし、いい匂いするし、何こいつ俺をメロメロにさせる気?)

何かを思い出した様に、企みを露わにした様に、八幡に笑顔で、そして目で何かを訴える様に言った。

「いや…あれは不慮の事故だ。(エンカウンターかな?違うね)」

彼の耳元から離れ、泣き目になり少し大きな声を出す一色。

「せんぱいはあれだけの事をしておいて私を見捨てるんですか……?」

周りがガヤガヤとし出している。

 

なんだなんだ?喧嘩か?

 

(え、何このよくあるあるのラブコメの展開。しかも演技で泣けるとかあいつ本当にあざといな!策士か!)

八幡はそれを見かね、一色の手を握り場所を移動した。移動したと言ったと言っても数メートル先の食品コーナーだが。

「お前何やってんだよ…俺の買い物籠置いてきちゃったじゃんかよ」

「てへ☆やっちゃいました♪」

頭にコツンと拳骨を自分でやる一色。

「んで、何をさせたいんだお前は」

「明日私とデートしてください!」

「嫌です勉強します」

うぅ…裸…うぅ…本物が…頭が…と言って先程の様に泣き出す真似を見せる彼女は八幡が困るのを見て心で高揚していた。

「こいつ…わかったよ」

「やったー♪じゃー幕張のイオンで私の買い物に付き合ってください♪」

八幡の腕を取ってぎゅーっと抱きついてくる。

(待っていろはす、当たってる当たってるから!やばいから!俺はそんな耐性ついてないのよ!)

彼女を引き離し、冷静さを取り戻す。

「わかった、詳しい事は夜メールしてくれ、早く買い物済ませてゴロゴロうだうだしたいんだ俺は」

「何言ってるんですか…て、てゆーかせんぱい、いつまで手を握ってるんですか…?」

一色がそう言うと漸く気付いたのか、すぐに手を離した。

「いや違う、これはさっき焦ってたからそのままでというか」

すると背後から知らない声が聞こえてきた。

「いろはー、何してるの?」

「あ、ママ〜」

(ママ……だと…?こ、これはマズいんじゃないか)

「こんばんは、いろはが迷惑かけてしまってごめんなさいね」

「こ、こんばんは」

そこで八幡が怖かったのはニヤリと笑って彼を見る一色だ。

「ママ〜この人は私のかれ「同じ高校の1つ上の先輩です」

一色が良からぬ発言をすると同時に彼がその言葉を遮った。

「あらーそうなの!いろはがいつもお世話になってます」

一色は顔を膨らませて八幡を見ていた。

(馬鹿かお前、俺がお前の恋人って設定にしたら完全にお母さんに幻滅されちゃうだろ、顔膨らませるのは可愛いのはわかったからやめようね)

「お世話なんて、では俺はこれで失礼します」

一色の表情を見て何かを悟ったのか彼女の母親は

「これからもいろはをよろしくね、うちにいつでもいらして」

「マ、ママ!?」

困惑する娘を見て笑う母親。

「せ、せんぱい?」

何にも動揺を見せない八幡に話しかけた。

「い、いやいろはさんとは何もないですよ、ただの後輩と先輩の関係です」

「いいのよ、いろはが珍しく気に入ってる男の人っぽいしね」

「ママー!余計なこと言わない!」

親子のやり取りを苦笑いしながら見ていた。

「じゃ、じゃー機会があったら伺わせていただきます」

「ふぇ!??」

(大体返す言葉はこれだなうん。機会がないから行く事もないだろうし。しかも一色のふぇ!?ってこれ素なんだろうな…。一色が20年くらい経ったらこうなるんだろうな…と思うくらい彼女と母親は似ていた、しかも発言がやばいって、うちにいらしてとかなに?結婚候補にされてるのかな俺?勘違いしちゃうよ!)

一色の母親に会釈すると彼はすぐにレジに向かった。そして今買い物を済ませ自転車を漕いでいる。

 

 

「お兄ちゃんどーしたの」

帰って来て早々にソファーにへたり込んでる兄を思い心配している小町。

「お兄ちゃん精神的に疲れた、あざとい後輩のせいで」

(しかもメールのやり取りも、

『せんぱい!本当にうちに来るんですか?本当に?』と頑なにその話題ばかり振って明日の外出については12時に駅と言われて帰って30分くらいうちに来るんですか!?やり取りしかしてない、これ未読無視していい?苛めにならない?先生に怒られない?)

「いろはさん?だっけ?でもお兄ちゃんにそこまで好意向けてくれる人は珍しいと思うよ?ゴミいちゃんだよ?ゴミいちゃん」

顔を抓り、引っ張りながら小町は話しかける。

「いふぁい(痛い)、はわせないばろーば(話せないだろうが)」

「お兄ちゃんの気持ちはどーなの?」

「は?そんなの小町一筋だし」

はぁ…と溜息をつく妹。どうしたらこの様な答えが返ってくるのか。

「そうじゃなくて一色さんの気持ちだよ、

もう受験なんだし、会う事も少なくなっていくんだよ?よく考えてあげなよ!お兄ちゃん!」

「………平塚先生みたいこと言うなよ」

「まあいいよ、ご飯作っちゃうから待ってて」

 

 

ご飯を食べ終わり、彼は自室でベットで小町に言われたことを考えていた。

 

(さあ、自問自答だあ。

俺の中でのあいつはの気持ちは「本物」なのか、だが人の関係など薬物と一緒だ。依存し合い、馴れ合い結局最後には裏切る。経験して来た事だからわかる…分かるが、あいつの想いは「本物」なのではないか、本当に俺と居たいと想ってる…んだろうな。俺が恋愛で悩む日が来たなんて神様、面倒臭い悩みをくれるぜ。

俺が本当に…欲しいの…は…)

余程疲れたのかそれとも普通に眠かったのか定かではないが、彼の意識は闇の中に沈んでいった。




今回も見てくださった方々ありがとうございます!
いつも長くてすいません!
八幡本当に素直じゃないですね〜、素直にならないところもまたいいんですがw
いろはがすごいかわいいからいろはにはこれからも頑張って欲しいですね!


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12話

次の日〜海浜幕張駅にて〜

 

待ち合わせの12時より15分も早く来てしまった…なんでだろうな、遠足行く前の小学生の気持ちなのか!これは!だとしたらあいつと会うのが楽しみたいじゃないか!

小町め、俺を悩ましてくれる事を言ってくれるぜ……

 

今から90分前……

 

「ごみいちゃん、ちゃんと財布持った?お金多めに持った?ハンカチいっぱい持った?ティッシュ持った?」

「ATMに使われて尚且つ振られて泣いて帰ってくる俺のイメージをしてるのかお前は。寧ろ俺が泣かすまであるな」

うわ…と真面目に引かれてしまったので八幡はここで訂正に入った。

「嘘だよ、ま、まあ1日あいつに付き合うだけだからな、荷物持ちかなんかだろうよ」

「お兄ちゃん…人の気持ちに敏感なくせして都合のいい時だけ自分のいいように解釈するのは小町違うと思うなー」

彼より年下なのに、彼より生きている人生は短いのに、それでも彼よりずっと分かっている。

妹であり家族であるから、比企谷八幡と言う1人の人間をこうも指摘できる。

「人の想いに答えるのが、応えるのが、怖いのはわかるよ。しかもそれが勘違いだったりしたらそれこそ嫌だし、だけど小町はお兄ちゃんがその状況から目を背けて逃げ出してほしくないな」

「それじゃ、お兄ちゃんの嫌いなウェ◯系とやってる事一緒だよ?期待させて、遊ぶだけ遊んでって…小町はお兄ちゃんにそうなってほしくないなー」

八幡は黙って小町を見ている。その眼差しはとても熱くとても切ないものであった。

「……行ってきます」

「はい、いってらっしゃい!お兄ちゃん!」

背中をバシッと叩かれた彼の表情はいつもより前を向いていた。

 

 

朝の出来事を思い出しながら彼が少し周りを見渡すとそこにはよく知っている顔が二つあった。

 

ゆ、雪ノ下と由比ヶ浜……だと…!?

見つかったら面倒くさいな、隠れてやり過ごそう。ハイドスキル高いヒッキーなめんなよ。

 

物陰に姿を潜めやり過ごした八幡の横にはもっと見知った顔があった。

「何してるんですかせんぱい……」

どんよりした顔で彼を見る彼女の目線はとても冷たかった。

「い、いや違うんだよこれは。ほら見知った顔がいると隠れたくなるぼっちの習性があってだな」

「そんな事より♪せんぱいが私より早くに来てるなんて珍しいですね♪そんなに楽しみだったんですか〜?」

小悪魔めいた可愛い笑顔をみせるいろは。

「ちげーよ、早く起きちまってやる事ねーからいつもみたいに罵倒されないように早く来たんだ、俺優秀」

「はーいはい、楽しみだったんですね〜♪ほら、行きますよ!」

「お、おい……」

八幡が動揺するのも無理はない、いきなり手を繋いできたのだ。

こうして彼らの1日デート?は始まった。

 

 

〜ショッピングモール内〜

「せんぱいー!これどーですか!似合いますかね?」

ニットセーターを着てその姿を見せてる。

「(これ由比ヶ浜と来た時にあいつが着てたやつじゃねーか、意外に体型に関わらず一色にも似合うんだな…」

「ふぇ!?な、何言ってるんですか!」

「え?あ…」

八幡は気付くのが遅かったが、一色の耳は敏感に反応していた。

「俺どこから声漏らしてた?」

「意外に…からですぅ…」

余程恥ずかしかったのか彼と目を合わそうとしない。

「ほ、ほら次行くぞ、買うなら買っちゃえよ」

「なんでせんぱいは女心がわからないんですかね!!!!」

 

だって俺女じゃないもん…助けて小町…

そういえば朝あんな事言われたばっかだった。

小町に頼ってちゃダメだなうん、多分。

 

一色の買い物も少し落ち着いたようで

とあるカフェに入って軽食を取っている2人。

時刻は午後5時近く。

「てか、お前と買い物に来るのも二度目だな」

「そうですね〜♪懐かしいですね〜!」

「もう3年生か、受験だるいわ」

と言いサンドイッチを口に頬張る。

「お前も2年生か、せんぱいって呼ばれる立場には見えないけど」

「むっ!なんですと!私は立派な先輩ですよ♪」

えっへんと腕を組み自信満々な一色を見て八幡は小町の言葉が頭をよぎる。

 

目を背けて逃げ出してほしくないな…か。

俺はこいつの事を見ているようで見ていないのか、一色だけじゃない、雪ノ下も由比ヶ浜も見ているようで見ていない。逃げる…か…

 

「せんぱい?どうかしましたか?」

「いや、別になんでもねーよ」

遠くを見つめ、一色を見つめ、八幡の目に浮かぶ物とは一体何なのだろう。

彼は苦悩し、自問自答をし続ける。それしか「本物」を見つけ出す事は出来ないのだから。

「せんぱい、この後行きたいところがあるんですけどいいですか??」

「……どうせ拒否権ねーんだろ?」

「わかってますね♪ちょっとだけお願いしますね♪」

「はいはい、あざといろはす可愛いですねー」

「その言い方やめてくださいよー!」

そんなやり取りをして2人はそのカフェを後にした。だが、八幡はまだ知らなかった、この後控える質問攻めと起こる出来事を……

 

「って来たの屋上かよ、寒いんだが」

「まあまあー見てくださいよー♪」

午後5時30分くらいともなると辺りは暗くなり、黒い波が雲を覆い隠す。

そうして八幡はは辺りを見ると、ビルの明かり、噴水などの綺麗な景色に見惚れている。

「すげー…屋上って侮ってたけど普通にすごいわ、そこら辺の夜景のスポットの方が綺麗だろうがな」

「う…それを言われるとあれですけど、でも綺麗ですよね♪」

「まあな、普通に綺麗だ」

 

一色は俺の事を想ってここに連れてきたり、遊びに誘ったりしてくれてる。

それから目を背けるのは…ちょっと違うか…

 

「一色」

「なんですか??」

純情無垢なその顔が八幡を見ている。

「その、今日はありがとな」

「え、えぇ!?せんぱいがお礼!?」

「た、たまにはな、別にいいだろお礼くらい」

確かに彼の今までを考えるとお礼の1つもまともに伝えらなかった。そう考えると少しは進歩したのではないか。

「…いえ、私も、ワガママ聞いてもらってすいませんでした」

「そんなの毎度の事だろ?」

「そこは、そんな事ないよ!とか言うんですよ!本当に乙女心わからないダメダメせんぱいですね…」

「俺お前に何回見捨てられなきゃいけないの…」

いつも通りの彼らの会話。だけど、ほんの少し違うのは八幡の気持ちの変化。少しずつだけど彼は変わっている。一色もそれは気付いているいる。だから、だからこそ彼女はまたワガママを言うのだ。

「せんぱい…また私とこーやって遊んでくれますか…?夜景見に行ったりしてくれますか…?」

答えるのに躊躇いを見せている八幡。

答えてしまえば全てが決まってしまうから、これからの関係性など考えて彼が出した答え。

「…ああ、まあまたオトモとして付いて行ってやるよ」

一色が求めていた答えとは違う言葉が返ってきたが、気を利かせたのかそっぽを向きながら

彼女の頭に手を乗せている。

 

うわぁ…俺きも…

……俺にはまだ考えが纏まらないし、ちゃんとした「本物」の答えが見つからない、だからもっと模索するんだ。

 

「はぁ…せんぱいあざといです…。しかも、はぐらかすし…これは始業式の手伝いしてもらいますからね!絶対に!後、夜景も絶対に行ってもらいますからね♪」

「はぁ……なんで外に出なきゃいけないんだよ…さみーよ、しかも始業式の手伝いとか生徒会でやれよ…」

普段通りの会話に戻り、一色も八幡もいつも通りにしている。

「じゃーもう帰りますか!」

「だな、早く帰らないと小町が作った夕飯がなくなる」

「なんですぐ妹さんなんですかね……」

彼女の想いはまだ届かず、また新たなスタートを切る。

 




どうも皆さんこんばんは!
更新とても遅くなってすいません!
バイトやらテスト勉強やら風邪やらであまり考える暇がありませんでしたw
やっぱりいろはすは可愛いですね、ずっといろはす推しです!
小町もいい事言うなー。これから冬休みなのでちゃんと更新していくつもりなのでよろしくお願いします!
書き方や何か指摘するところがあったら教えてください!
ではではー!


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13話

「お兄ちゃん、もう起きなよ!小町が同じ学校入って登校時間同じだからって余裕かましてたらダメだよ、兄とってゴミって呼ぶよ」

自分の妹の声がこれ程まで怖いと思ったことは無い。最後のゴミなんて低い声でいうもんだから怯えてしまう。

「ふっ、俺が起きてないと思ったのか小町。寧ろ7時から起きてゲームしてたまである」

「なんで起きないの!馬鹿なの!あほ!八幡!」

八幡は悪口なのか、と思いつつベットから起き上がり洗面所に向かった。

「今日も生徒会の手伝いか?」

洗面所からリビングに出てきて朝食を食べる。

「そうだよ、お兄ちゃんもでしょ?いろはさんに誘われちゃって〜」

「別にいつも通りに都合のいい先輩で使ってるだけだろ」

そういってパンを口にくわえる。

彼女の気持ちを理解しているのにこの言い草は照れ隠しなのか、それとも信用したくないのか、はたまた、自分の気持ちを殺しているのか。

入学式、始業式と終わり高校も終わりの3年生になった。それから1ヶ月も経ち、小町は小町で生徒会というか一色に憧れを持ち、知り合いという事で生徒会で手伝いをさせてもらい、彼女を陰ながら支えていた。だが一色も一色でちゃっかりできる女の子なのでちゃんと生徒会の仕事も回っている。

生徒会長に無理矢理と言うか、八幡の策略により生徒会長になったが半年経った今となってはやりがいもあるらしく張り切っている。

「だからってなんかある度に俺を呼ぶのやめような」

学校も終わり放課後、初夏が感じられるこの5月半ば。今日も生徒会の手伝いをしている八幡。

「だってー、せんぱい勉強なんてしないじゃないですかー」

「ふっ、違うな。しなくても頭いいんだよ。つまり俺は天才」

「はいはい、わかったから口ばっか動かしてないで仕事してよお兄ちゃん」

割と量の多い書類を席に置かれた。

「これ目を通してハンコよろしくね」

「おう、任せろ小町。お前の頼みなら何でも聞いてやるぞ」

珍しくやる気で乗り気な彼を見て落胆している生徒会長。

「今日3人だからそんな態度取れますけど、他の人いたらせんぱいアウトですよ?」

「いやいや他のヤツいたら俺は出向かねーよ。こんな兄がいるって知れたら小町が可哀想だからな」

「シスコンも程々にしてくださいね……

ところでせんぱい?」

一色の声がか細くなったと思ったら八幡の耳に小声で話している。

「せんぱい、この後って空いてたりしますか……?」

 

可愛いいいいいい、なんだこの破壊力は……

小町より可愛いだと……?前にも電車でこんな事あったような。そうだよね!責任取らなきゃだよね!よし!八幡頑張る!

 

「い、いやこの後は奉仕部行って由比ヶ浜と帰る約束しててだな」

口を膨らませてあざと可愛いアピールをしていふ一色に対して八幡はいつものように素っ気ない態度をとっていた。

「はいはい、いつものあざといろはすご馳走様。まあ明日なら空いてるかもな」

「本当ですかー!?じゃー美味しいパンケーキ食べに行きましょ♪」

生徒会室でイチャイチャする2人の姿を温かい目で小町は見守っていた。

 

 

生徒会の仕事も一段落して奉仕部へ。

「やっはろー!あれ?ヒッキーゆきのんと一緒じゃなかったの?」

扉を開けた先にはいつも通りの頭の悪そうな挨拶をしてくるビッチ系女子、由比ヶ浜結衣さんがいた。

「なんで俺がアイツといると思うんだ。平塚先生の所じゃねーの?」

「そっかー!ね、ねえヒッキー今日どこいく……?」

GWの話になるが、彼女と雪ノ下と出掛けるという約束をしたのだがそれを破ってしまい1人1人にお詫びをするという事になった八幡。

「無難にサイゼでいいだろ」

「それを女子にいうなんて女心分かってなさすぎ!」

何故かぎこちなさが香る八幡の言い方に彼女は気付いていなかった。

 

女子と2人で出掛けるとか全然ないからって声が裏返ったわけじゃないからね!ん?一色とはどうなんだって?知らんな。絶対葉山とか戸部とか得意だろ。マジそれ面白すぎでしょ〜、っべー!……。

 

「ま、まあそれは後で……ね?」

「お、おう」

少し色っぽさを出した言い方され、八幡はドキドキしている。普段一色といる彼だが、由比ヶ浜は彼女とはまた何か違った高揚感がある。

そんな時にガラガラ……っと扉が開く音がした。

「あら、女ったらし下衆谷君。今日は誰と何処で何をするのかしらね」

冷静な口調且つ冷徹な目で八幡を睨み殺すような目つきをしている雪ノ下。

「俺がいつ女ったらしな事をした。寧ろ女子の思わせぶりな行為に甚だ迷惑だと感じてるまである」

「あはは、ヒッキーは見かけによらず純粋だよね!」

「純粋なのかしら?この男の目腐ってるのだけれど?性格なんて黒一色じゃないかしら」

笑いあって3人で話し合える時間なんていつ以来だろうか。笑顔で他愛もない事を語り、いつものように罵りあっている日常。雪ノ下も八幡も由比ヶ浜も、この3人は自分の欠点をわかり己の足りない所を補う、性格や趣味は違えど型に嵌るのはこの3人しか居ないと思う。

 

それから依頼も皆無で1時間が過ぎ、今日の部活は終わり、雪ノ下は何かを察して一人で帰って行く。

「……と、とりあえず歩こうか!」

「そうだな、お前何か見たい物とかないの?」

彼なりに気を使い、一色に言われた事を思い出しながら質問をする。

 

せんぱい!女子は繊細なんですからね!少しの事でも男性がリードしてあげないとですよ♪

私の事も……ってここで振り返りエピソードおわりですかーーー!!?!?!

 

たまには、と八幡が由比ヶ浜の鞄を持ってあげた。

「ヒ、ヒッキー……今日なんか優しいね?」

「いやそんな事ないだろ、いつも通りのスペック高めの比企谷八幡だ」

「それはきもいよ」

「何その雪ノ下みたいなツッコミ、あいつに言われたみたいで不愉快だわ」

あはは、と由比ヶ浜の笑い声が囀る。2人は駅チカのデパートで買い物することにした。

彼女が天真爛漫でどっかのあざとい後輩に似てる部分もあり、八幡としてはとても気が疲れる買い物となった。無駄に露出度高い洋服を着たり、胸を強調したニットやあざといくらいに可愛いうさぎの耳など。もちろん荷物を持つのは彼で楽しく?デートしているようだ。

「お前……こんなに見るの?女子って面倒くさいな、一色もそうだが」

「いろはちゃんと買い物行ったりするんだー、

羨ましいな……」

「は?なんて言った?って言うかあいつと買い物行くと俺なんて荷物持ちの奴隷みたいなもんだぞ。今もさほど大差ねーけど」

「え、ごめん……」

何故かいつものように単調なツッコミはせず、落ち込んでしまった。

 

お、俺なんかした!?八幡はいつも通りの行動を取っただけなのよさ!

 

「……んじゃそのお礼、えい!」

八幡の口に何か冷たい物が入った。さっきから彼女が食べていたアイスだ。

「う、うまい……でもお前これ「さーて!まだまだ行くよ!ほらヒッキー!」

言いたかった事が言えずに無理矢理連れていかれる。その姿はまるで本当に、執事の様であった…

 

 

「ふぁーあ、楽しかったねー!」

「楽し……うん、まあ」

そうすると由比ヶ浜が荷物の中からゴソゴソと何かを取り出した。

「はいこれ!今日というか、まあ今までのお礼みたいな!」

そこには八幡に似合わないぬいぐるみがいた。

しかも目に傷をつけて目付きが悪いクマのぬいぐるみが。自分がぬいぐるみになったらこうなるんだろうなと思いつつそれを手に取った。

「お、おう、これ反応に困るわ」

「ヒッキー……あのさ、ヒッキーはいろはちゃんが好きなの?」

「は?」

反射的に声が漏れてしまった。何故か少し焦り気味である。

「いろはちゃんといると楽しそうだし、私達が知らないヒッキーも見れてるんだって、あんなに楽しそうなヒッキー見た事無いから…」

あんなに楽しそう、とはこの前、一色と八幡が海浜幕張で遊んだ時のことであろう。それを由比ヶ浜は目撃していた。

「私は……やっぱりヒッキーが好き。ゆきのんもいろはちゃんも好き。だから全部欲しい」

言ってしまった。言葉を濁してあの時3人で話した中身のない会話の核心を突いてしまった。

「あの時も言ったよね?私はそんなに優しくない。ずるい子なの」

「……。」

八幡は何も言葉が出なかった。というより頭が回転しなかった。この状況にはいつかなると思っていた。だが事が起こってからだと対処しようにもすぐには案が出て来ない。

「だけどね、今このままでも充分楽しいんだあ。ゆきのんとヒッキー、2人といる時間がすごい楽しい。後もう1年もないくらいで卒業だし、思い出もいっぱい作りたい。それでこの件もはっきりさせたい」

由比ヶ浜らしいと言えば由比ヶ浜らしい。他人を気遣い、自分の事は二の次のような性格である彼女が心の内をこんなに顕にしている。それに八幡は男としてこれからも……として応えなければいけない。

「由比ヶ浜、悪い、少し時間をくれ。すぐに答えが出せるほど簡単に考えたくない」

「うん……わかった!待ってる!」

いつもの満面の笑みを浮かべて八幡から荷物を取った。

「今日はありがとう!私反対の電車だからもう行くね!」

その小さな背中にどれだけ笑顔をもらったか、どれだけ救われたか、八幡の方が面倒を見ていた部分は多いが肝心な時に重要な役を担っていた彼女だからこそ考える猶予が必要だ。

だが彼の心の中では否定している気持ちが1つある。その気持ちも彼は応えなければいけない。

「俺は……」

その後の言葉は何を言ってるか分からなかったが、由比ヶ浜の姿が消えるまでその背中を見ていた。

 

 

 

「結衣先輩、告白したんですかあー!?」

甲高い声を出し、驚きを隠せない後輩の一色いろはちゃん。

「う、うん。一応ね、でもあの様子だといろはちゃんのこと好きそうだっけどねー……」

「いやいやそんな事ないですよ、せんぱい私に冷たいですし、たまにしか優しくないですよー!」

「でもそこがヒッキーの1番いい所だよね!」

「……はい、そうですね♪」

2人は笑いあって彼の事を話している。どちらがどんな結果になってもこの先輩後輩の関係が崩れない、固い絆が窺える。

「あはは、じゃ、また明日ね!いろはちゃん!」

「はい!結衣先輩おやすみなさい!」

プツっと電話が切れて布団にくるまった。

何かソワソワしている様子だ。

「せんぱい……貴方の気持ちは誰なん……ですか……」

疲れていたのか一色の意識は海底の底に埋まっていった。枕に一滴の綺麗な涙を垂らして。




皆さんお久しぶりです!
更新相当遅くなってしまい申し訳ないです!
グタグタって終わっていたので放置していました……
すいません。
今回は由比ヶ浜メインです!一途だなー由比ヶ浜泣
でもいろはが一番ですけどね!!
これからはちゃんと更新していくのでよろしくです!
メインは最近俺ガイルとアリアのクロスオーバーなのでこっちの更新少し遅れますけどちゃんと続けます!
誤字脱字やアドバイスがあったらよろしくお願いします!
ではでは〜!


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特別編!いろはの日!

特別編!いろはの日!

 

 

「あー……やらかした」

ムクっと起き上がり、携帯を見てみたらメールが168件きていた。

今日は4月16日金曜日。メールの主は大方予想がついている。

 

4月15日木曜日

23:59分

比企谷先輩

 

まさか寝てませんよね♪

 

せんぱいーせんぱいー、寝てませんよねー?明日はかわいい後輩の誕生日なんですよーーーー

もしかしてサプライズとかやってくれたりしますか♪

でも私、プレゼントにはうるさいですからね♪

それと……

 

ここで彼は読むのをやめた。この手の内容のメールが168件受信されていた。いろはなりに考えたのであろう。

「だからって自分の名前に因んだ数字までメール送る必要ないだろ、あのアホ後輩」

八幡はそう言うと電話をかけ始めた。

 

プルルル…

 

「せんぱーーーーーーい!昨日寝ましたね!!」

「いや寝るつもりはなかったんだけど、ほら、俺って夜遅くまで起きてると目付き悪くなるじゃないですか〜」

ちょっとオカマ口調でいろはに話しかけると彼女は素で引いていた。

「せんぱい、ちょーきもいです」

年頃の女の子にキモイなど言われると男は本気で死にたくなるか、本気で喜ぶかのどちらかである。八幡は小町にいつも罵倒され、そこに喜びを感じているのでいろはには全くと言っていいほど感情がなかった。

「はいはい、わかったよ、誕生日おめでとう、一色いろはさん」

「んじゃあ、今日の放課後奉仕部に顔を出すので色々と期待してますね♪ではまた学校で〜!」

「は?ちょっと待て……」

という頃には電話は切れていた。

大きな溜息を一つして彼は自分の部屋を出た。

 

 

「おはよー、ゴミーちゃん」

「お前今どさくさに紛れて自分の兄の事ゴミって言ったよな?言ったよね?小町ちゃん?」

仲良く洗面台に立って歯磨きをしている。

ボサボサな髪の毛は兄妹のつながりを感じられるものがあり、よく似ている。

「で、お兄ちゃんはいろはさんになにか上げるの?」

「なんでお前があいつの誕生日知ってるんだ、まあ……何も上げるつもりない」

「何今の変な間は、もしかして買いたいけど結衣さんと雪乃さんとは全くタイプが違うから何を上げていいかわからないんだ」

視線を逸らすお兄ちゃん。

 

そう、一色のあのキャラは作って出来ているのでぬいぐるみやら何やらを上げたところで「ありきたりですね、先輩は……」とか言われかねないし、第一なんで俺がこんな事で悩んでんだ。

 

「むっふっふー!だと思って小町が用意しました!」

ばん!と机の上に置かれたチケットが2枚。

「は?これディスティニーランドのアフターシックスじゃん、どうしたんだこれ」

「いや昨日ね、お父さんが貰ってきて小町に彼氏とでもいけって渡してくれたんだけど彼氏いないし、行く人いないからさー」

「小町に彼氏ができたらお兄ちゃんに紹介するんだぞ、どんなやつか見極めてやるから」

真顔でそんな事言うシスコン兄貴を見て落胆している。

「そんな事より……ちゃーんといろはさんと行ってきなよ!」

チケットを胸に殴られるように押し付けられた。

「お前、俺は人混みが嫌いだし、あいつが嫌がるだろ」

「本当に鈍感だよね……いやまあ気づいてるんだろうけど」

聞こえない声でボソッと呟いた。

いろはは1度八幡に告白している。そして答えを出さずに待たせているのだ。

「はぁ……わかったよ、ありがとな小町。それと親父」

「あいあいさー!」

シュビッと敬礼してウインクをするあたり小町はあざと可愛いと言える。

 

いやまあ俺の中じゃ天使なんだけど。ウリエル、ガブリエル、コマチエルだからな。

 

二人は食事を済ませて、ちょっと時間を遅らせて八幡は家を出た。

 

 

 

 

〜放課後〜

「(もう放課後かよ!!小説って便利!!!)」

とまあ訳のわからないことを言いつつ、奉仕部の部室前に着いていた。

ガラガラ……

「うぃーす」

「こんにちは」

「ヒッキーやっはろー!」

「お先に来てます♪」

全員勢揃いだった。

 

う、うわぁぁぁぁぁぁぁ、い、言いにくい!!!!一色一人な可能性は皆無だったけど、ここまで仲良くやってるところ見るといい辛い!!!!助けて!!!小町!!!!!

 

いろはは早速キラキラと目を輝かせて八幡を見ている。彼はどうにか上手く躱していたが……

 

「雪ノ下先輩も結衣先輩も誕生日プレゼントありがとうございましたー♪」

その言葉に八幡が一番反応する。

「いいえ、別に大した物じゃないのだからいいのよ」

「うん!私のも気に入ってくれたら着てくれればいいからね!」

二人は笑顔でいろはに答える。

ニヤニヤした表情でこちらを見ている。

彼女の狙いは……

「ヒッキーはなんかないの?」

「比企谷君、もしかして買ってきてないのかしら?」

この二人を動かして俺にプレゼントを出さざるを得ない状況にするためだった。

「……はぁ、わかったよ、渡せばいいんだろ」

ぽいと置かれたそれを全員が注目した。

「なんですか?この薄っぺらい紙は?」

「なんだろー!食事券かなー?ヒッキーやるねー!」

次の瞬間、彼に光と闇が見えた。

「うわぁぁぁぁ!ディスティニーランドのアフター6じゃないですかー!!!!すっごい嬉しいです♪先輩ありがとうございます♪」

一人はこんなに子供のように大喜びではしゃいでおり、

もう二人は私達の誕生日は2人で出掛けるようなものじゃなかったよね?なんでいろはちゃんはいいの?と言わんばかりの目線を送ってきている。

「せんぱい!今日いきましょ!という訳でこの人借りてきますね〜♪また明日です!結衣先輩!雪ノ下先輩!」

と八幡の腕を引っ張り、彼の有無を確認せずにその場から連れ去った。雪乃と結衣はその場にぽかんと残されていた。

 

「お、おい、一色。別に俺とじゃなくてもいいだろ」

駐輪場まで引っ張り出され、そんな事を言う八幡に彼女は笑顔で答えた。

「何いってんですかー、もう!さっさと行きますよ!(好きな人と行くのが一番に決まってるじゃないですか、馬鹿なんですか先輩は……)」

「今なんか言ったか?」

キョトンとして答える彼を見て落胆した。

「もー!いいからいきますよー!」

学校の鐘が鳴る。ごく普通に鳴り響いているそれが彼を後押ししている、そんな感じがした。

 

 

 

 

「冬きたのとは全く違いますねー!うわぁー!」

子供のように目を輝かせているいろは。

人混みを面倒くさそうな感じをしている八幡。

「早く行きましょ♪」

何気なく彼の手を繋いでいる彼女。

「お、おい……」

「へ?あ!す、すみません……でも嫌じゃなかったらこのままが……いいです 」

顔から目を逸らし火照っているいろはは八幡から見てこれ以上にないくらいあざといけど可愛らしい姿だった。

「別に嫌じゃないけど……」

「じゃあ、いきましょ♪」

 

今日はこいつにとって特別な日だしな。少しくらいのわがままなら聞いてやっても悪い気はしないしな。俺のお兄ちゃんスキルを発動しまくっちゃおうかな!?別にこの状況ドキドキしてないからね!?!?!

 

 

18時から来たのでもう時間はとっくに21時を回っていた。乗り物にいくつか乗り、パレードを見て少し疲れて高台にあるベンチに座っている。ここなら人が少ないと思ったらしい八幡。

 

「あー、不幸だーーー」

彼が上条〇麻のセリフを言うのも無理はない。

人混みにつれて来られた挙句、乗り物には並ばされ、荷物は持たされ、おまけにいろはが食べていたアイスを食べさせてもらって「間接キスですね、せーんぱい♪」と人前で言われていた。

 

いやあの最後のだけ見るとすごい羨ましく見えるだろうけど、地獄だからね……?ぼっちにとってリア充が来る場所というのは体に毒でしかないのだ。

 

とそんな事を思っていると、ほっぺたに冷たい何が触れた。

「はい、これどうぞ♪」

そう言われて渡されたのはボトルの部分にミッ〇ーが着いたお茶だった。

ちなみにいろははミ〇ーちゃん。

「なんだよ、お前トイレいってたんじゃないのかよ、悪いな、いくらだ?」

「いいんですよー、今日のお礼ってことで!」

「ばっか、お前ここで貸し作ったら何されるかわかったもんじゃない」

そう言うと財布から小銭をだし、彼女に渡す。

「むぅーー、素直じゃないですね、先輩は」

「はいはい、あざといそのプク顔ちょーかわいいのは分かったから」

そう言うといろははもっと顔を膨らませて怒った表情をしてそっぽを向いてしまった。

 

え?俺なんか今悪い事した?ここは夢の国じゃないの?夢なら覚めて?

 

「せんぱい!せんぱい!見てください!」

「ん?お、おー……」

言葉にならなかった。そこから見た風景は数多の星が見え、灯りで照らされている乗り物やショップ、それらと夜空が合わさってとても綺麗な物が彼等の目に写っている。

 

「……せんぱい、今日は本当にありがとうございました♪すごいいい思い出です……」

いろは声が震えていた。その笑顔の先には一滴の綺麗な涙がこぼれていた。

「お前泣くなよ、こっちまで泣いちゃうだろ」

「ち、ちがいますよ!泣いてません!こ、これはあれです!風が強すぎて目から涙が……」

ここでいろはの言葉が切れたのは何故かと言うと、八幡がハンカチを取り出していた。

「本当は葉山とかじゃなきゃ格好つかないけど……一応」

彼も照れていながらいろはを気遣っていた。

「ほ、本当ですよ!第一、せんぱいじゃ葉山先輩に勝てませんよ!!(何でこんな余計なこと言っちゃうんだろ……)」

顔が火照ってちょっと大人っぽく見えるいろは。八幡はそんないろはを見て言いたいことがあったが、心の奥底にしまった。

「はいはい、そんなことわかってるからさっさと行くぞー」

荷物を持ち階段を下っていこうとする彼の後を追いかけてきた。

「せんぱーい!待ってくださいよー!」

「早くし……え?」

「今日のお礼です♪」

彼も何が起きたかわからなかった。

いきなり自分の頬に柔らかい何がが触れたのだ。それは他の誰でもない、いろはの唇だった。

「この事は2人だけの秘密ですよ?♪もしバラしたらその時は、責任……取ってくださいね……♪「 」

小悪魔めいた表情をして上目遣いをして八幡を見るあざといろはす。

彼は何も反応できずにただただ、ボーッとしていた。

「さ、早く帰りましょ♪せーんぱい♪」

「……うるせえ、あざといんだよ」

「ちょ!何怒ってるんですか!せんぱいってばー!」

気持ちと態度とは裏腹に八幡は少し冷たい態度をとっているが、いろははお構い無しに笑顔で彼のあとをついていった。

 

彼の心がざわつく。彼女といる自分に安心感を覚えている。だがそれが彼は怖い。いつ裏切られるか、いつ嫌われるかわかったものじゃないから。

だが、彼は気付くべきだ。もうそんな関係ではないと。上辺じゃなく、欺瞞ではない関係性が築き上げられていると。

 

「(今日見たこいつは今まで見た中で一番の笑顔を浮かべていた。楽しんでくれてよかったと思う。そしてこいつの気持ちに……)」

「?せんぱい?どうかしました?」

「何でもねーよ、ほら帰るぞ」

いつも通りの感じで面倒くさそうにしている八幡の後を彼女がついてきていた。

「一色」

「はい?」

「誕生日おめでとう」

少しぎこちないが八幡が照れくさそうに言った。

「なんですか改まって……こっちも照れるじゃないですか、ばか……でも、ありがとうございます♪」

満面の笑みを見せるいろはを見て八幡も笑顔になるかと思ったら一言だけ、「おう」と言って歩き始めた。

夢の国のこの時間がいつまでも続きますように、と彼女は心の中で願うのであった。




どうもお久しぶりです!
4月16日はいろはの誕生日って事で書いたのですが、少し遅れてしまいました、申し訳ないです。今書いてる本編の特別編と言うことで書かせて頂きました!是非ご覧下さい!
誤字脱字やアドバイスや感想お待ちしています!
ではでは〜!


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15話

「あーもう7月だよー、高校でほぼ最後のテストかー、面倒くさい×8万」

「朝から何言ってるのお兄ちゃん、そろそろつまんないよ」

不意を突かれた一言を言われ、泣き目で小町を見る。

「はぁ……それと小町、俺トマト嫌いなのになんでいつも入れるの?」

「お兄ちゃんまだ好き嫌いしてるの?最近人間の好き嫌いは直って来たと思ったら食べ物はまだダメなんだね〜」

「なんだそれ、人間怖いだろ、あれを好んで一緒にいるとかどこのキョロ充だよ、上辺で取り繕わなきゃ生きていかないとか俺にはできない、うん」

ダメだこの兄貴、と思いながら朝ごはんに手を伸ばす。二人とも高校が一緒であるがために登校時間も一緒だ。そのため朝ごはんも一緒であり、出ていく時間もほぼ一緒だ。

「でもお兄ちゃん、本物は離しちゃダメだよ♪」

そう笑顔で言い放つと、いってきまーす!と元気に家を飛び出して行った。

 

誰だよ、俺の情報リークしたやつ……

妹に知られるとかもう死にたい。

だが、俺の人脈の無さを舐めてもらっちゃ困る。大体誰に聞いたかなんて一目瞭然だぜ。

 

なんて事を思っている内に家を出る時間になっていた。するとインターホンがなり、

「せんぱーーいー ♪可愛い可愛い後輩が迎えに来ましたよ〜、起きてください〜!」

「すいません、セールスの勧誘なら断りしてますのでお引き取り下さい」

「ちょ!なんでそうなるんですかー!私ですよ!いろは!!一色いろはーーー!」

「いやなんで俺の家知ってるの?ストーカー?まあ大体検討つくけど」

小町が少し早く出たのも合点が合った。この妹キャラコンビは色々な意味で怖い。二人は二人で似通う何かがあるのだろう。

 

ガチャ、ガチャガチャ。

 

と八幡は鍵を閉めて一人で自転車に乗って家を出ていこうとしていた。

彼が彼女を見て何も声をかけないので、いろはは少し落ち込んでいるようにも見える。いつもの彼女ならツッコミを入れているであろう。

「なにしてんだ?行くなら早く行くぞ」

落ち込んでいた彼女の表情はたちまち笑顔になり、

「せんぱい〜♪割とツンデレなところあるんですね〜このこの〜♪」

「うっ……」

お腹の当たりをつつかれて八幡は少しもどかしそうにしていた。

「せんぱい……まさかくすぐり弱いんですか〜?♪」

小悪魔めいた表情で彼を見る。愛おしく思え、とても可愛らしい表情だ。だが、彼はそんな正直な感想を述べられるわけもなく

「お前なあ、もう二度と乗せないぞ」

「ごめんなさーい、もうしませんっ!」

その後、少しの沈黙が続き、いろはが八幡の事を抱きしめる力が強くなるのが、彼にもわかった。

 

 

〜放課後〜 奉仕部部室

「せんぱい♪せんぱい♪」

「あざと可愛い声を出して童〇をすぐ勘違いの地獄に落としてくるスタイルなの?」

彼女は心がピョンピョンしてる感じで八幡に近づいてきたが、彼が何を言ってるかわかんない状態になり?マークが頭に浮かんでいた。

「あ、それでなんですけどー、テスト勉強をですね、一緒にして欲しいなーなんて……?」

「……」

「一色さんテスト勉強というものはね……」

「いろはちゃんには私が教えるよ!!!」

声の出す方を見るとそこには前のドアから開いて出てきた由比ヶ浜がいた。

「あの由比ヶ浜さん、あなたはいつから教えられる立場になったのかしら……今日だってテスト勉強するというから部活がないのに奉仕部の部室に来たのよ」

「あはははー……ごめん」

雪ノ下もいたようだ。彼女達はここで勉強しようとしていたらしい。

「こんにちはー、結衣先輩♪雪ノ下先輩♪」

雪ノ下は表情を変えずいつものように「こんにちは」と返すだけであった。

由比ヶ浜は「やっはろー!」と小学生並みに元気良く挨拶していた。

3人の会話を身近で聞いていて、彼は何か安心をしていた。心地良さというのかそれとも。

 

あーかわいいなー……

あざとさがある一色を毎日見てる分、雪ノ下達と話してる時のあざとさのない純情無垢な笑顔、それを見ているとかわいいから見入ってしまう。一色さんも大人になったのな、八幡嬉しい。

 

「「「!??!?!」」」

 

としみじみして一人で頷いていると、三人の声がこれほどまでか、というほど息が揃っていた。

「せ、せんぱい……丸聞こえですよ……」

「ひ、比企谷くん、あなた、一色さんに対してその気持ち悪いことをよく言えるわね。軽蔑するわ」

「すヒッキーも本音で思った事を口にするんだね、ちょっと意外!」

「ちょ、まて、おい」

 

お、俺の心の声が漏れていただと……もうそれキモすぎて俺今この場で腹切れるよ。なんで俺がプリン頭した鈍感系主人公演じてんだ。この役は俺じゃない、間違ってる。

 

変な葛藤を入り交じりながら自分の中の何かと戦っている。彼もしどろもどろに弁解するが彼女達は聞く耳を持たない。

それどころか3人のうち1人は口角があがって口を塞いで照れ隠しをしていた。

それは無邪気で素直な一色いろはの姿がそこにはあった。そして彼女はその場から立ち上がり無理矢理彼を引っ張っていく。

「と、とりあえずですね、せんぱいを借りるのでよろしくお願いします!」

「は?結局俺は駆り出されるのかよ」

彼は何か浮かない顔をして遠くの方を見ている。

由比ヶ浜は笑い、雪ノ下は本を読んでいる。

八幡といろはがそこを出ていくと、二人は顔を合わせて溜息をついていた。

 

 

「どこまで連れて行くんだよ、一色」

「ひーみつーでーす♪」

いつも以上に面倒臭がってる八幡。それもそうだろう。何故なら……

「なんでお前が俺のチャリ乗ってるんだよ、そしてなんで俺が手を引っ張られてんだよ……俺はもう疲れたぞ」

 

これ俺の自転車なんだがな……なんで俺が走ってんのよ、勉強もしなくちゃいけないのよ一色さん!疲れたし、しんどいし、もう絶望、絶望のカーニバル。

 

「ふーんふーん♪」

八幡の発言にもお構いなしに一色は軽くだが、ペダルを漕ぐ。

学校から出て30分ほど時間がたった頃、

「あ、ここですよー」

「は……?」

そこにあったのは小さなホテルで大人の男性と女性が行くようなところで彼らが入れるわけもなく、八幡はとても動揺していた。そのホテルの側に駐輪場があったので自転車を止める一色。

「え、何期待してるんですか、この場に乗じて変なことを妄想して気持ち悪くてそんな変態な目をしている先輩とは付き合えませんすいません」

「お、お前何言ってんだ?つか、俺今振られた挙句に言われのないようなことばっか言われたよな、理不尽すぎないですかね」

視線を逸らし、いつもの口調でいう八幡だったが心臓は飛び出そうなほど脈を打っていた。

「こっちですよ、こ・っ・ち!」

彼女が指さす方向には小さな公園があった。

千葉駅の近くであった。人気が無く、静かな場所だ。

「なんだよ、勉強するんじゃなかったのかよ」

「しますよ、恋の勉強♪」

またまたポカンとしてしまった。

今日の一色の行動には八幡も驚かさせられる。

「まあまああそこのベンチに座りましょ、せーんぱい♪」

「はぁ……はいはい」

そこから八幡は恋の話題に持っていかせないため、いつも以上に話していた。他愛がない話、奉仕部のこと、平塚先生のこと。こんなに話したことがないくらいに話していた。そんな自分を嫌悪している八幡。それに対して一色が話す内容は決まっていた。

「せんぱい」

「……なんだよ」

「せんぱいは今3人の人間から好意を受けているっていう自覚がありますか?」

今まで笑っていたのが嘘のように真面目な顔付きになった。蝉の鳴き声がよく聞こえる夕暮れの中、一色が切り出した。

「私は先輩が好きです、結衣先輩も雪ノ下先輩も先輩に好意を寄せてます。その中で気づいているのに気づかないフリしているのもうやめませんか?」

「……見て見ぬ振りをしているわけじゃない」

「じゃーなんなんですか!!」

一色の叫びとともに地面が濡れた。彼女の瞳から涙が流れている。

「一色……」

「私は先輩が……好きで好きでたまらないです。でも結衣先輩や雪ノ下先輩がいる反面気持ちを抑えなきゃとも考えたんですよ。でも無理でした。やっぱり恋愛であの二人に負けたくありません」

彼女はこれまで言いたかったことが、伝えたかったことが漏れている。

「誰を選ばなければ誰も傷つかないって先輩は思ってますよね。優しいですけどそれは偽善です。先輩のせいで仲が悪くなったり、この絆が引き裂かれたりすると思いますか?」

彼は何も言えずに下を向いてしまっている。

言葉が出てくるが口に出ない。

本当のことを言ってしまって築き上げてきあ関係が消滅してしまう、本物の、八幡が求めたものがなくなってしまう。彼の考えて出た答えを聞かないままでこのまま卒業して欲しくなかったのだろう。卒業までまだ半年以上あるがちゃんとした答えを彼女は欲しがっている。

「先輩、私の思ってることはこれで全部、全部吐き出せませた。だから先輩の答えを教えてください」

彼女の瞳は真っ直ぐに八幡を見つめている。

逸らさずに、そして強い意志を持って。

「俺は……俺の答えは……」

 

 

 

その数秒後、一色は涙を浮かべたままその場を走って立ち去った。

7月、夏の夕方の風が透き通っている中、八幡は呆然と立ち尽くしていた。

彼等の高校最後の夏はもう始まっていた。




更新遅れて本当に申し訳ないです。
これからは書き溜めておいて1ヵ月に1.2回は投稿しようと思いますのでよろしくお願い致します!
ではではー☆


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16話

「もう11月か、早いな。もうすぐ俺も大学生だと思うと絶望するわ小町」

「なーにいってんのお兄ちゃん、どうせぼっちなんだから1人で、あ、独りで頑張ってね」

「ばっか、独りでいるからこそ何やっても迷惑かけない。そして一人の時間がとても有意義に過ごせるだろ?そんな楽園他にないぞ」

愛くるしい妹から笑顔でそんな事を言われても尚、ドヤ顔で熱弁する彼の姿を見て引いている小町。

 

 

あれから月日が経つのが速かった。

8.9.10月と無駄に過ごしていたのかもしれない。この3ヶ月間で色々あった、あの2人にもこたえをつたえたつもりだ。そして受験勉強はしていた。だが、心に空洞が出来たみたいに、何に対しても無気力な自分がいた。あの夏の7月。一色に全てを打ち明けられてそれに応えられない自分がいる。

そんな自分がどうしょうもなく嫌いで今になってもその事を考えてしまう。彼女が本心で、本音で語ってくれた嘘のない言葉。

今でも尚、俺は何も言葉が返せない。自分の中の本物の正体。この3ヵ月彼女とは話はしたが、彼女の方からその事については何も言ってこない。

 

「なあ小町、お兄ちゃんってダメ人間か?」

「どうしたの急に、当たり前のこと聞いてきて」

よく焼けた朝食のトーストを頬張りながら答える。小町も彼の気持ちをわかっていた。

「ダメなお兄ちゃんだけど、小町は好きだよ?だからそんな事言ってくれる小町のために今日洗剤と小麦粉買ってきてね♡」

返ってくる言葉はわかっていた。八幡はその返答に対して少なからず笑みをはこぼしてしまった。

「だいぶ雑な愛情表現だな、まあ俺も大好きだぞ小町、んじゃ俺先に行くな」

いつも通りの学校指定のバックを肩に下げ、スタスタと歩き出し、家を後にした。

「お兄ちゃん!またトマト残してる。全く……」

その後ろ姿を見た小町はブツブツと何かを呟き微笑んでいた。自分の兄の事を全てわかっているように。

 

 

〜生徒会室〜

 

「という訳でせんぱーい、またクリスマスイベントやりますよ♪」

「は?嫌だよ、また海浜高校と合同だろ?あいつらとはインセンティブが取れないし、トークの中身もないからなあ」

「何ちょっと玉縄先輩みたいな事言ってるんですか、気持ち悪いです」

「いやだからね、一色さん、本当の事をざっくり言うのやめようね、傷つくからね」

いろははいつもの様に笑っていた。

この3ヶ月彼女と彼の関係は進歩していない。

それどころか後退している様にも見える。

彼女は机の上に座り、2人でクリスマスイベントの話をしているが、そこには何か空虚のようなものが存在していた。

 

「それではせんばい、また放課後に!」

「んああ」

生徒会室から自分の教室に走っていく彼女の後ろ姿を彼はその背中をずっと追っていた。

静まり返った教室で彼が考えていたこと、それは「本物」についてだった。

 

 

〜放課後、奉仕部部室〜

 

「んで小町なんでもお前がいるの?」

教室入る前から笑い声と騒がしさで彼はわかっていた。

「小町はねー、今日雪乃さんと結衣さんに依頼をしに来たの」

「なんだそれ、俺だけぼっちかよ。まあいいんだけどな」

クスクスと由比ヶ浜と雪ノ下は笑っている。

もう小町から何かを聞いたんだろう。

表情から何かを企んでいるのがわかる、彼女達が何かをしようとしている。

「んじゃー小町はこれで!結衣さん!雪乃さん!あとはよろしくお願いしまーす!」

笑顔で走り出して、どこかえ消えてしまった小町。だが、去り際に「頑張ってね、お兄ちゃん」と言ったのが聞こえた。

 

 

 

「えーっと……なにから話そうか!」

いつも通りの由比ヶ浜の感じをだし、どうするべきか雪ノ下に委ねている。

「そうね、とりあえず比企谷君そこに座ってもらえる?」

言われるがまま、その2人の前に座った。

3人の目線が交差する中、話を切り出したのは雪ノ下だった。

「比企谷君、前に私にも由比ヶ浜さんにも言ったわよね。「俺の本物の答えは、お前達で、この関係を失いたくない。だからこそ俺には選ぶ権利はない」って」

そう、雪ノ下の強い目線の先の八幡は首を縦に振る。

「それで、私と由比ヶ浜さんはそれでもいいからと答えを求めた。でもそれが間違いだったのね。」

由比ヶ浜は静かに、八幡はどこか寂しげに話を聞いている。

 

 

「あなたが本当に求めている本物ってそんなに難しく考えることかしら?」

「そうだよ、ヒッキー。私達は互いの気持ちが一緒だってわかったから、わかったから話して話して、お互いが納得するまで話した。」

由比ヶ浜も雪ノ下も強い意志を感じる。

何かの覚悟を決めたように。

 

やめろ……と彼は心の中で何かを押さえつけるように感情が出てきている。

「だからあなたの本物の答えはここにはないのではないの?気持ちに答えることが出来ない、自分の気持ちがわからない、とそう逃げてただ自分の考えを強引に押し付けてるだけではなくて?あなたの中の本物のと言うのは簡単に壊れてしまうものなの?」

由比ヶ浜も何かを訴えかけているような眼差しで彼を見ている。

静まり返る教室、由比ヶ浜の涙、雪ノ下の決意、八幡の思い。色々が交差し合っている。

「……俺は……本物だと思ったから壊したくない」

「でも一色さんは?あなたは思いを告げられたのよね?それに対しての答えは?」

強い目線で八幡を見ている雪ノ下。

数秒の沈黙が続いた、その沈黙を破ったのは彼だった。

「……俺が何かを選んだら全部壊れてしまう。だから何も選ばなかった」

「それが逃げてるんじゃないの!?」

涙を浮かべながら訴えかけている由比ヶ浜。

「私は……私達は……そんな事で壊れたりしないよ!!!」

雪ノ下は黙って八幡を見つめている。

由比ヶ浜は涙を浮かべ、彼をずっと見ている。

八幡はいつもの様に目線を別の場所に送っている。

 

静寂の漂う奉仕部の部室。

彼は何も言わずにその場を立ち去った。

八幡の中にも葛藤が生まれている。

一色いろはを、雪ノ下を、由比ヶ浜をどんな対応していいのか、黙るしかできなかった彼の心を理解できるのは、雪ノ下、由比ヶ浜、そして……。

残り4ヵ月となった学校生活。彼らの本当の本物の答え、導き出すことが出来るのか、本物とは一体何なのだろうか。

 

 




投稿だいぶ遅れて本当にすいません!!!
サボっていたのは自覚しています!!!
本当にすいませんでした!!!
僕の書くもので楽しんでいただけたらと思います!
ではまた次の話で!


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