バルト海の秘宝を狙え (S.K)
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バルト海の秘宝を狙え

※声優陣※
ルパン三世:山田康雄
次元大介:小林清志
峰不二子:増山江威子
石川五エ門:井上真樹夫
銭形幸一:納谷吾朗
(敬称略)


2019.04.11 訃報「モンキーパンチ先生逝去」ご冥福をお祈りいたします。今までありがとうございました。


小さな電球がただ1つポツリとついた、薄暗くこじんまりとしたバーの店内。

そこにグラスを傾ける一組の男女がいた。

「ねぇルパン?」

ルパン そう呼ばれた男はシャープに整った顔立ち、お宝と女に関しては絶対に見逃さないと言わんばかりの目、そしてなんといっても顔の輪郭に合わせて生えるもみ上げが特徴的な中背の男。

「なんだ、不二子?」

ルパンは答える様に女の長いブロンドの髪に触れる。

不二子 そう呼ばれた女は肩を派手に露出させた鮮やかな赤いドレスに身を包み、細いしなやかな指先でじゃれる様にルパンの首を擽る。

「盗ってきて欲しいお宝があるの....」

猫なで声でそう囁く

「もちろん不二子の為なら何でもするぜ?」

ルパンは声を大きくし、嬉々とした表情で言う。

「ふふ..ありがとう…♪」

「で,その宝ってぇのは?」

「バルト海に沈む海賊のお宝,特に530カラットのダイヤの指輪よ。

18世紀前期から中期にかけてバルト海を中心に荒らし回った女海賊,アルビダ。彼女の指についていたとされる超大粒のダイヤなの」

「で,そいつは今どこにあるんだ?」

ルパンはグラスを傾け,紫色の液体を流し込む

「ロンドン塔の展示室,それも厳重警備よ。でもルパンなら簡単よね?」

「なぁるほどな… 任せとけっての… ほんじゃそうと決まれば早速ロンドン行くか…」

2人は液体を流し込み,バーを後にした

 

 

 

 

 

半日経ち,ここは英国ロンドン警視庁

その警視総監室で焦げ茶色のトレンチコートを着込んだ目つきの悪い中年男性が総監と向き合っている。

「私,フランスから出向してきました、ICPOの銭形です。ルパン三世の予告状が届いたとの事ですが…」

「おぉミスター銭形,まぁお座りになって紅茶でも…」

「いや,直ぐにでも特殊部隊をおかしください!」

「まぁまぁそんなに慌てることはない。まず紅茶でも…」

悠長な総監に相対して銭形は顔を真っ赤にして言う。

「いかんのです!きゃつは既にロンドンに入っているのですぞ…!」

「まぁまぁ…まだ犯行時間まで暫くあるのでね…」

総監は相変わらず悠長に紅茶を淹れる。

ダージリンの芳醇な香りが部屋いっぱいに広がり,今までしかめ面で頬を真っ赤に染めていた銭形の顔をも和らげていった

「そうですな…まだ時間はありますな…」

「うむ…では紅茶飲むかね…?」

総監のやわらかな表情に負け,目の前に出された紅の液体に一口。

「さてミスター銭形,どのようにしてルパン三世を掴まえるのですかな…?」

「お任せ下さい,総監。私は…」

滔々と語り出す。その口調はルパン逮捕という並々ならぬ熱意が満ち満ちてあったが…

「ふぁぁ…」

珍しく大欠伸をする

「おや,ミスター銭形?どうされましたかな…?」

「いや…いやなに…長時間の移動で疲れが…」

言葉を発しかけたままソファに倒れ込んで高いびきをかく。

「ミスター銭形!ミスター…」いくら揺さぶっても起きる気配のない銭形を一目見て,にやりと口角を上げる。

「…油断大敵だぜ…とっつぁん…」

総監は自らの顔に手をかけると思い切り引き剥がす

「暫くここで総監と共におねんねしててちょうだい…」

ルパンは二ヒヒと笑み,部屋を後にした。

 

 

 

雨の街らしく雨の降りしきるロンドン。

窓の外には、沢山の武装警官や王室の護衛兵らがネズミ一匹通すまいと周囲に向けて鋭い目を光らせている。

「凄い警備だぜ…さぁすが王室の財産だな…」

ルパンはにやりと笑み,彼らを見渡す。

「で,どう攻める?ルパン」

次元が傍にならんで煙草を咥える。

眼前には11世紀の面影を残す2つの塔がそびえ立っている。

「…行き当たりばったり,いつもの手で行きますか…?」

ルパンは暫く考えた後,ゆっくりと口を開く。

「けっ…バカを言うな。相手は銭形隊,加えて護衛兵までいるんだぞ…?」

次元は呆れてため息をつく

「なぁに俺に任せておけっての…」

そういうと塔を見上げつつにやりと笑んだ。

 

 

 

 

昼間の雨が嘘の様に止み,水たまりに満月がくっきりと写っている。

ロンドン塔の警備も夜が耽るに連れてどんどん減っていきしまいには護衛兵と警官隊がまばらに立っているだけとなった。

そんなロンドン塔のてっぺんに怪しく蠢く2つの人影。

その人影はホワイトタワーから内部へ侵入する

 

「さぁてと…お宝ちゃんはどこにあるのかね…?」

ルパンは掌をすり合わせてにやにや。

「油断するなよ…?とっつぁんの罠かもしれねぇからな…」

次元は冷静に分析しルパンを嗜める。

「けっ…分かってらぁ…」

「それならいいんだが」

ルパンはブツブツと言いながら懐から懐中電灯を取り出して点灯させる。

建物内は当時のゴシック様式の髄を結集したイギリスイチの建物であった事が伺える

しかし今は闇と寒風が支配する巨大な城だ。

そんな中を暫く歩いていくと

「おっ…あったあった」

大胆にもガラスケースを破り,直接手に取る。

「長居は無用だ,ずらかる…」

突然スポットライトが当てられ2人は目が眩む。

暫くして目が慣れてくると,まわりの状況が取れるようになってきた。

我々は警官隊と護衛兵に囲まれていること、各々の兵はライフルや矛を我々に向けていること、その中心には見覚えのある男がいること…

「ガハハハ…ルパン,遂にお縄を頂戴する時が来たようだな…!」

「あんれぇ…?総監室でおねんねしてたんじゃなかったっけかぁ…?」

ルパンは茶化す様に言う。

「あの時,ワシはお前の作戦にまんまと引っかかるフリをしただけなのだ…!」

「けぇっ…!そりゃないぜ…汚ぇぞ…!とっつぁん…!」

「なんとでも言え…!お前はムショ行きなのだからな」

その間にも包囲園はじりじりと狭まり,次第に各々の持つライフルや矛の先がギラギラと妖しい輝きを放つ。

「遂に大人しくお縄につく決心がついた様だな」

「しょうがねなぁ… なぁ五エ門」

その時,石の天井にぽっかりと大穴が開く。

そしてその屋根であった部分は見事,銭形の頭を直撃,銭形は下敷きになって動けない。

「また…つまらぬ物を切ったか…」

名刀斬鉄剣を鞘に収めると,警備兵らの武器も一刀両断されていたことが判明

これには護衛兵らも驚きを隠せず,腰を抜かし誰一人としてルパンを捕らえられなかった。

「ほんじゃ,とっつぁん」

そんな動揺を他所に,一味は大穴から脱出しそそくさと逃亡するのだった…

 

 

 

「ほれ,不二子ちゃんのお望みの品だぜ…?」

「本当に盗ってきてくれたのね…!嬉しい…!ありがとう…!ルパン

!」

アジトで合流した不二子に,ルパンはそっと彼女の薬指に指輪を嵌める。

「綺麗…まるで海の覇者になった気分…」

不二子はうっとりとダイヤを見つめる。

「折角不二子の願いを叶えたんだ…」

ルパンはその様子を見ながらニタニタと笑み,うしろから不二子の胸を揉もうとするも…

「じゃあね…♪ルパン…♪」

一足早く単車に跨り,そそくさと去ってしまう

「不二子…!」

逃げられた男はその様子を見守り,にやりと口角を上げた

 

Fin.



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