endless *** (赤神)
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000. Start"ed"
人は賢い生き物だ、とは誰の言葉だっただろうか。
独自の文明を築き、言葉を話し、社会を作ったのだからあながち間違ってもいないだろう。事実、未だに生活に苦しむ人がいるとはいえ全体的に楽な生活が送れているはずだ。
一一一そう、
父に母、妹との四人暮らしをしていた私は幸せ絶頂期だった。いつまでも新婚夫婦みたいに仲の良い両親に私を慕ってくれる妹。これ以上にないくらい充実した生活を送っていた。
それが今ではどうだろうか。
父を失い、母を失い、最後には妹の命まで奪われてしまった。生き残った自分には支えとなるものが何も無く、家も焼き払われ帰る場所も無い。何もかもを失ってしまった。
きっかけは間違いなく一人の人間による発明だ。それによって力を得た人々は自分達が全てを支配しようとした。
当然その上で危険分子となる私達一族を滅ぼそうとし、一族の集落は焼け野原と化し生き残ったのは私一人。
先程も言ったが何もかもを失った。文字通り
いや、すこし違うか。
私には、私達一族には力がある。それ故に攻撃を受ける対象となってしまったのだが私にはまだある。家族の死によって生まれた悲しみは憎悪へ、憎しみへ、復讐心へ…。様々な感情へと変化していった。
大多数の力ない者が力を得、少数だった力ある者を消そうとした。結果、力ある者は一人を残して滅ぼされた。
ならばこういうのはどうだろうか。
相手が誰であろうと、何人いようと関係ない。
私は私の家族を奪った奴らを絶対に許しはしない。
例えどこに逃げようとも必ずその息の根を止めてやる。
少し話がそれてしまったが初めの話に戻そう。
人は賢い生き物だ、というのは先に述べたようにあながち間違いでもないだろう。
人が宇宙へ行くためと
同族で争い続け、先へ進もうとしない。
だから私は先の言葉に反対はしないがこう言わせてもらう。
『人は賢い生き物だ。だが、それ故に愚かな生き物である』
短いです。ハイ。
こちらでの投稿は初めてとなります。
普段は別サイトでオリジナルものを書いていたのでふと二次創作書きたいとおもい投稿しました。
ぶっちゃけ続くかどうかはわかんないです。
最初でこんだけ短かったので引き出しがすぐに尽きるかも…。
バトルものも初めてとなります。ハイ。
因みにアニメは少し見たけど原作見てないです。
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001. Mission Start
「おい!どうなっているんだ!」
某国の某機関、その研究所では今突如としてあらゆる機材が爆発し警報が鳴り響いていた。
「わ、わかりません!システムが次々とダウンしていっています!」
この研究所ではいつものように、いつものメンバーでとある研究を行っていた。そんな時に起こった突然の現象。日常の
「くそ!まだ外と連絡は付かんのか!」
「無理です!何度やっても繋がりません!」
無論中には有能と呼ばれる人たち、つまりはこんな事態でも冷静に対処できる人材も存在する。だが存在すると言うだけだ必ずしもその場にいるわけではない。
「一体どうなってんだ!」
こうしている間にも爆発したものから発生した火の手は進んでおり、周りは火の海に覆われていた。
『
火の海に覆われているその場に似つかない透き通った、それでいてどこまでも冷たいと感じてしまうほどに感情がこもっていない声。
「な!?だ、誰だ!」
『答える義理も、必要もない。貴方の
次の瞬間にはその場も炎の渦に巻き込まれ、研究所は余すところなく火に埋め尽くされた。
◆ ◆ ◆
「お帰り、クロエ」
私をそう呼んだ彼女、金髪のおねーさんはスコール。フルネームは知らないが周りからはそう呼ばれていたため別に気にはならない。
「ん」
軽く返事をして彼女の方へ持っていた扇子を向けた。
「相変わらず凄いわねそれ。どこに売ってるのかしら」
スコールに向けられた扇子にはただいまの四文字。
「売っていない。欲しいなら自分で作るべき」
「貴女も作ったんじゃなくて貰ったんでしょう?それ」
今度は扇子を裏返した。そこにも勿論文字があって、覚えてないの五文字。
「恩知らずねぇ」
「そんなことは無い。貴女には感謝している」
「全くもう、急に真面目な感じ出さないでよ」
事実、私は彼女に救われた。こうして居場所の一つとしていてくれているだけで自分にとってはこれ以上ない大切な存在である。
「むっ。失礼」
私の携帯のベルが鳴り響いた。私の携帯のベルがなるということはほとんどの場合が
「何?」
『私だ。お前に頼みたいことがある』
「えっ?誰?」
こういった場合はちゃんと名乗らないと。
『…千冬だ』
電話の相手は千冬、フルネームは織斑千冬。モンドグロッソ?とかなんとかの初代王者だとか。よく知らないけど凄い人らしい。
チラッとスコールの方を見てから電話口へと意識を移す。
「ああ、久しぶり」
『毎度毎度なぜ名前を言わなければならないんだ。お前ならそれぐらいわかるだろう』
「名前を言うのは礼儀。例え名乗らない相手が誰だかわかったとしても名前を聞くまではそちらの話は聞かない」
嘘である。彼女の場合はいつまでたっても自分の名前を言うのを恥ずかしがるため聞いているだけで、基本は聞いたりしない。
『…よくわからんな。まあそれはいいとして頼みたいことがあるのだが3年と長いものになる。時間はあるか?』
3年、か。
そこそこに長い。
スコールの方へもう終わり?と書かれた扇子を向け、彼女からの肯定の返事をもらうとまた電話口へと意識を移した。
「大丈夫。ただそれに見合う報酬を用意できるかが問題」
『それはこちらについてからお前に決めてもらう。何でも出すぞ』
ふむ。
彼女はなんとかの初代王者だ。金を要求しても十分な額が期待出来る。
「わかった。それでいい。でも住む場所は?」
『心配するな、それもこちらで用意してある』
なんと嬉しいことか。お家大好き。
「ありがたい。それで内容は?」
『私の弟、一夏のお守りだ』
◆
あれから日取り等を決めて電話を切るとスコールがどこかむくれていた。
「どうしたの?」
「随分と楽しそうに話してたわね」
そりゃそうだ。何か言えば反応してくれるのだ。私の数少ない楽しみ。
「彼女は面白い。話していて飽きない」
「…私は?」
「貴女も彼女も変わらない。私が信頼出来る数少ない友人」
当たり障りのない答えに満足したのか呆れたのか、彼女はむくれて顔をいつもの様な笑顔へと変えた。
「それで向こうは何だって?」
「ある人物のお守り」
「ふふっ、お守りってそりゃまた楽しそうね」
返事の代わりに差し出す扇子。
やったねの四文字。
「今度はどこへお出掛け?」
「念願かなって日本」
「やったじゃない。クロエは日本大好きだものね」
そうである。私は日本が好きだ。まだロシアにいた頃に出会った日本人が影響している。言わずもがな扇子はその人からもらったものだ。
「でも今から日本ねぇ。とするとお守りの対象は織斑一夏かしら」
「それは言えない。秘匿義務がある」
とかいいつつも手元にはご名答と書かれた物が。
「あらあら、それならもう彼には手出しができないわね。貴女と敵対してまで彼を手に入れる理由がないもの」
クスクスと笑った彼女は少し残念そうだった。
「何かいるなら言って欲しい。問題がなければ代わりぐらいにはなる」
情が湧いた、とでもいえばいいのだろうか。彼女とは短くない付き合いでそれなりに気にかけることもある。無論、それは彼女が私にとって気に入るに値する人間なのだからなのだが。
「あら、じゃあまたお相手をお願いしようかしら。最近はご無沙汰になっちゃってね」
嬉しそうにする彼女は可愛らしい。コロコロと表情が変わるから本当に見ていて飽きない。
「貴女の相手なら喜んで」
普段は表情を一切変えない私もついつい笑がこぼれてしまった。
◆ ◆ ◆
「遂に来た。とうとう来てしまった」
あれから数ヶ月、すぐに日本に行けるのかと思いきやまだ少し時間はあるとの事で様々な国を転々としていた。行きたくていったわけじゃないけど。おかげで指定の日より少し遅れてしまい千冬に電話先で怒られてしまった。仕様がないことなのに。私は悪くないぞ。
それまあ置いておいて遂にやってきた日本。これからが楽しみ過ぎて身体が疼いて仕方が無い。
さて、早く次の
世間というものに興味が無かったし、学校というものにも通った事が無いのだから見逃して欲しい。
でもおかげで学校というものには興味が湧いてきた。スコールも楽しんで来なさいって笑顔で言っていたけどそれと並行して日本語を教えてくれていたので勉強はしたくないと思った。間違えてはいない。もう一度言う、勉強はしたくないと思った。綺麗な笑顔であんなスパルタ教育されてしまっては誰でも思うことだと断言できる。いくらそのおかげで日本語が上手くなったとしてもあれはいただけない。隣にいた千冬そっくりの子の方が優しかった。普段イジメていたのだけれどあの優しさは心に染みた。これからは彼女に優しくしよう、そう心に誓った。結婚しても不倫する人が結婚式で誓う安い誓いじゃないぞ。人が水分を必要とするレベルで確かな誓いだ。
閑話休題。
そうこうしている間にIS学園が見えてきた。何でも世界最先端の学校らしいが基準がわからないため凄さがわからない。でも、あえて学園に何かを言うとするならば…。
「綺麗だな…」
私が今まで生きてきたのと同じ世界とは到底思えない程に和だ。綺麗な水があり、緑が生い茂る自然。これはまた良いところに来たものだ。
それからはお客さん着きましたよ、と運転手の人が声を掛けてくるまではこの和な地に身も心もを預けていた。身は車にだけど。お駄賃を払い車を降りると目の前には学園の門。と、その前に立っている鬼。
「遅かったな」
これは確実に怒っている。私は悪くないというのに。
主人公の容姿を未だに決めかねている今日この頃。
悩むなぁ。
ロリか、スレンダーお姉さんか。
ボンッキュッボンッなのは初めから除外されてますけど。
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002. Food is GOD
あと、今更ながらですがこの物語の千冬さんは別人です。この物語の千冬さんは別人です。大事なことなので二回言いました。
※11/24 02:39脱字修整
学園について一番はじめに見たのがどこのマフィアだと疑ってしまうほどのガンを飛ばしてくる千冬と言う大変よろしくない始まりだったが、持ち前のスルースキルで事なきを得ることが出来た今はこれから私が通う事となる教室へと向かっていた。
「久しぶりに会ったというのにお前は本当に変わらんな」
そう言う千冬の目線は明らかに私の胸を向いていた。喧嘩売ってんのかこいつ。でも私は気にしない。あんな物はあるだけ無駄であって、俗に言うマナイタの方が絶対にいい。邪魔にならないし。うん。
「千冬と違ってまだ
千冬がショックを受けたような顔をしていた。
ささやかな復讐…ではない。イヤミを言っただけ。だから私の胸をもう見るな。そろそろ視線をそらせ。
「それで私は何をすればいいの?」
「…そうだな。その話をしようか」
日本に来て怒られて、怒られて、なんかバカにされてからの本題。
それで千冬が言うには彼女の弟、織斑一夏は本来男が動かすことの出来ないISを世界で初めて動かした男らしい。それからは、一人動かすことが出来たなら他の男も出来るんじゃね?でも他の男には使えなくね?じゃああいつ調べればなんかわかるんじゃね?といった具合で世界中の野郎どもがこぞって彼を誘拐してバラして秘密を知ろう。みたいになっているらしく、千冬としてはたった一人の家族となった弟にそんなことはさせたくなく何としてでもそれを阻止したいらしい。家族は大事だ。血の繋がりとは限られた極小数にしか当てはめることが出来ない。家族とは何物にも替えがきかない本当に、大切な物だ。そこで私を個人の護衛、場合によっては学園全体の護衛として雇ったというわけらしい。
あれ?ならスコールと一緒にいたソックリさんは誰?
これなんてホラー?あ、ドッペルゲンガーとやらか。二人を合わせたら死んでしまうんだろうか。
「大体はわかった。いつも織斑弟についていればいいの?」
「いや、そこまでする必要は無い。此処は仮にも外から来た奴らには厳しいところだからな。お前がでる事になるのはそれこそ一夏だけでなく学園全体に被害が出るときだろう」
ふむ。ならば普段は自由というわけか。休みと変わらないでわないか。時間があるならば日本という国を知ることも出来るだろう。ビバホリデー。
「それと学園内では私のことを織斑先生と呼べ。一応は教師と生徒と言う立場だからな」
あ、なんかイラッときた。少しドヤ顔気味のせいで重増しでうざい。と言うかその部分だけがうざい。普通に言えばちゃんとした教師に見えるのに。見えるだけだけど。
◆
「ここがお前のクラスだ」
やっとついたのは私が所属することとなる1年1組。言わずもがな織斑一夏と同じクラスだ。ここに来るまでに千冬の話を永遠と聞かされ疲れていた。重要なクラスの担任を任されるほど偉いんだぞ、とかお前の担任は誰だ?私だみたいなの一人でやってたし、弟の方も異端なんだと思うけどコイツもコイツで色々とおかしい。織斑家はどこかおかしい奴らの集団なんだなと思った。思っただけでけして口にはしない。千冬に何されるかわかったもんじゃないからね。
呼ぶまでここで待っていろとか言われちゃったけど休めるならありがたい。待つのはあまり好きじゃないけど取り敢えずは感謝しとく。
建物の中だが日当たりが良く気持ちいい。ああ、寝そう。
…だったのに中で凄い音がしたよ。大きな音だったけど何があったんだ。騒がしくなってきたぞ。静かなところ探しに行こう。
「おい、どこに行くんだ」
「静かなところを探して寝てくる」
「…これから授業だぞ」
そうだった。でもなんでわかったんだろう、扉越しなのに。
「入ってこい」
仕方ないからお家に帰ってから寝よう。せっかくの学校なんだから起きてないとね。さっきまで忘れてたけど。
ドアを開けて…閉めた。
なんなのあれ。何あの緑のメガネ。胸にシリコンでもつめてんのか?ついさっき千冬に言われてたのに。いや別にいいんだけど?大きさとか気にしてないし?どうせあれシリコンだし。そうだ、気にせずいこう。
「どうした?」
「ちょっと逆光が眩しくて」
「そうか、取り敢えず自己紹介しろ」
自己紹介って何話せばいいのかな。名前だけでもいいよね。
「クロエ・アヴドーチヤ。言いにくいだろうからクロエでいい。訳あって1日遅れたけどこれからヨロシク」
「聞いての通りアヴドーチヤは遅れての入学となったがコイツも専用気持ちだ。なれておくに越したことは無い、と言うよりも此処はIS学園だ。貴様らを使い物にするための場所だからな。何かわからないことがあればコイツに聞けば大体のことは分かるだろう」
そういうのって教師に聞くのが普通なんじゃないの?さっき自慢してたのに学生任せなのかコイツ。
というかさっきからキャーキャーうるさいよ。なんで?
「さて、これでクラス全員揃ったな。今日は授業に入る前にクラス代表を決める。誰かやりたいやつはいないか?推薦でも構わん。拒否権はない」
それ推薦とは言わない気がする。
と思っていたら織斑弟への推薦が沢山。クラスの大半は声を上げているんじゃないのかな。私は織斑弟のお守りが優先だからあまり時間をさくことは出来ないから関係ないのだけどね。
おっと、私にも推薦が。
「アヴドーチヤは都合上任せられない。まだ日本へ来たばかりでいろいろと複雑でな」
やっぱりダメなのか。コチラとしてはその方がありがたいけど。
クラスの中から落胆の声が聞こえる。ゴメンネ。
「他はないか。ならば織斑で決定だな」
「待ってください!納得いきませんわ!」
もう決まる勢いだったのに寸前で言い出すとはまた面倒くさいのが。
「男がクラス代表だなんて恥曝しもいいところですわ!このセシリア・オルコットにそんな屈辱を1年間も味わえとおっしゃるのですか!?」
ちょっと何言ってるのかわからない。誰か分かる?何となく男を馬鹿にしてる感じはするけれど。なんか腹立つなあ。
「大体、文化としても後進的なこんな国で暮らさなくてはいけない事自体、耐え難い屈辱だというのに……!」
コイツ今日本をバカにしたのか?どこの国の人か知らないけれど日本は良いぞ!まだ来てから何もしてないけど!
「……イギリスだって、大したお国自慢は無いだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ?」
「なっ!美味しい料理だってたくさんありますわ!!貴方私の祖国を侮辱してますの!?」
素晴らしいブーメランが投げられましたよ今。というよりあの人イギリスだったのか。あれは酷い国だった。高飛車なお嬢様ばかりだったからすごいやりにくかった。織斑弟が言ったようにご飯もあまり美味しくなかったし。金髪縦ロールがイギリスの人だって知って思わず笑ってしまった。鼻で。
ああ、和食食べたいな。
「なっ!?なんですのあなた!今笑いましたわね!?」
言い合っていたのに気付いたのか。よく見ていらっしゃる。
「気のせい」
「いいえ、絶対に笑っていましたわ!私の耳には確かに聞こえましたもの!」
「そう思っているのならそうなんだと思う。あなたの中ではだけど」
一度言ってみたかったセリフだよこれ。言えてよかった。普段なら絶対に言う機会は無いからどうにか言えないかと思ってた。棚からぼた餅?ちょっと違うかな。ヤブヘビ?これも違う気がする。あ、ヤブからぼた餅でどう?
「むきー!あなた私を馬鹿にしていますの!?」
「そんなつもりは無い。貴方が勝手に盛り上がっているだけ」
この人ちょっと面白い。初めは苦手な人かと思ったけどなかなか好感がもてる。
「お前らいい加減にしろ。オルコットと織斑は模擬戦をして勝った方がクラス代表だ。もうそれでいいな」
千冬がお怒りのよう。仕方ない、金髪縦ロールはまた今度弄り倒そう。
「俺はそれでもいいけど、あいつらはどうなんだ?」
「織斑先生!この人とも模擬戦をさせてくださいまし!」
二人とも私を指さすんじゃない。人に指の先を向けるなんて失礼だぞ。
「ダメだ。そいつにそんな時間は無い。やりたいなら別の機会にお前らで勝手にしろ」
つまりいつかは相手をしてやれってことなのか。面倒なことこの上ない。
金髪縦ロールも渋々了承したようで、模擬戦は1週間後に行うと決まった。そこからは学校生活というのを送れたはず。織斑弟が千冬に叩かれたり、金髪縦ロールが何かと睨んできていたり、授業中メガネシリコンが泣きそうになったりといろいろあった。ついでにメガネシリコンは山田真耶って名前だと知った。途中、金髪縦ロールに例の扇子を向けると顔を赤くしてぷりぷり怒っていた。あの人はやっぱり面白い。何が書かれていたのかは想像におまかせする。それと隣の席に座っていたロリシリコンにクロちゃんってあだ名をつけられた。どこのサーカスの団員?
他にも気になったのがあるけど、まあ気のせいだろう。
◆
「どうだ?IS学園は」
時は過ぎて今はその日の授業が全て終わり放課後。住む場所が寮らしいけど部屋がわからないから千冬を待ってた。部屋番教えてくれればいいのに聞いたら私も行くとか言われて断られたから泣く泣く教室に残っていた。日本の人は放課後みんなでお茶するってどこかで聞いたから行きたかったのに。なのに待たせた本人が教室に入ってきての第一声が先の言葉である。
「まだ、よく分からない」
「そう、か。まあこれから知っていけばいい。お前がどこにも行く気がないのならば3年間はここで過ごす事になるのだからな」
何だかんだで千冬は嫌いじゃない。時々キモチ悪いけど。強引に割り込んできたり表面だけの言葉を並べるやつと違って、こうやって親身になって話してくれるのは本当に嬉しい。でも口には絶対出さない。キモチ悪くなるから。
「じゃあ部屋まで案内してやる。クロエは2人部屋だ」
「2人部屋?ルームメイトがいるの?」
おい、聞いてないぞ。どういうこってい。
「学年は一つ上のやつだがな。お前の事知っていたみたいだぞ」
なんで千冬が不機嫌になっているの。舌打ちとかして。それ私がやりたいぐらいなんだけど。なんか会長権限がどうとかぶつぶつ言っているけどなんなの。
でも私を知っているってことは
「名前は?」
「更識楯無。
楯無!忘れもしない扇子の人だ!彼女もIS学園に通っていたなんて。人の出会いってのは本当にすごい。
ロシアにいた頃、更識の家にはお世話になっていたから仲は良かった。また会えるなんて嬉しい。
「楯無と相部屋なんて嬉しい。彼女と会うのが楽しみ」
「知り合いなのか?」
「千冬と初めて会ったあと、ロシアに一度戻ったときに出会った。私に日本の良さを教えてくれた人。でももう何年もあってなかったから覚えてくれててよかった」
「そうか。因みに私は隣の部屋だからな。いつでも来ていいぞ」
ちょっと怒気が含まれた声で部屋に来てもいいなんて言われても行きたくはならない。けれどこれは来いってことなのだろう。後半は全部、というか最初以外はすんごい強調されてたし。
「わ、わかった。今度行く」
「ならいい」
ちょっと嬉しそうになった。表情が柔らかくなったよ。それでも傍から見れば堅いけど。
「そうだな、時間も時間だし待たせてしまった詫びに夕食でもご馳走しよう。寮に食堂があるから先に食べてから部屋まで案内する」
食べ物で釣ろうなんて千冬やるじゃないか。喜んでついていこう。和食、楽しみ。
「それは…更識が持っているものと同じものか」
歓喜のあまりつい出してしまった。和食食べたい、の六文字。
「彼女にもらった。これがキッカケで楯無とは仲良くなった」
あの時は嬉しさのあまり1週間ぐらいはこれだけで会話してたっけ。なつかしい。
お、見えてきた。あれが寮だよね。いい匂いがする。
隣で千冬がまた何か考え込んどいたけれどいいのかな。いいよね。ノープロブレム。
私は千冬を置いて匂いのする方へと向かった。
主人公設定
クロエ・アヴドーチヤ
長身、銀髪紅眼。ショートカットのボーイッシュな感じ。
ってまあ細かくは決めてません。容姿は上記の感じでイメージしてください。ヒンヌーです。スレンダーさんです。
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003. ago...
結論から言う。あの食堂は素晴らしかった。和食はもちろんの事、祖国の料理であるボルシチも美味しかった。他はまた今度食べようと思う。因みにメニューはお米に味噌汁、それと卵焼きに何かの魚だった。足りなかったからボルシチも頼んだ。次はもう少し多めにしてもらおう。食堂のおばちゃんは優しかったからおまけもしてくれるはず。事実してもらったのだから。
あ、千冬は後から来てちゃんとお金を払ってくれた。良い奴だ。
◆
千冬といたからか視線感じてながら食べていた夕食を終え、今は待ちに待ったマイホームならぬマイルームへ移動中。と言っても食堂からは目と鼻の先のためもう部屋の前にいるのだけど。
「ここが私の部屋だ」
え?普通私の部屋を紹介して隣は自分の部屋だ、見たいな風に言うものじゃないの?どれだけ自分の部屋好きなの?別にいいけど。
「じゃあ私の部屋はここ?」
「そっちは物置だ。お前の部屋は逆」
間違えた。テヘペロ。
ここが私の部屋か。
「…久しぶり」
「何がだ?」
「一定の場所に寝床があるの。長く泊まることはそんなにないから」
そう言うと千冬は察したようで暗い顔になったが、すぐさまいつもの鉄仮面に戻った。
「お前に何かあるなんてのは到底思えんが今日からはここがお前の
「…ありがとう」
さあ、我が家と御対面だ。寮の一室だけど帰る場所があればそこはホームだ。異論は認めるが受付けはしない。
と、その前に。
「トイレはどこ?」
◆
お花を摘みに行って帰ってきてから部屋に入るとそこには机とベッドが二つずつにシャワールームがあった。
あれ?楯無は?
「ああ、あいつなら家の用事だとかで暫く帰ってこないぞ」
マジか、マジなのか。
「入学式の日に来れていたら会えたのにな」
たった1日の差じゃないか。イヤラシイ顔をこっちに向けるんじゃない。
ともかく居ないのであれば仕方ない。大人しく彼女が帰るまで待っていよう。
と、ここで朝の時の疑問。言うほど気になるわけでもないけど。
「そう言えば、なんで私はクラス代表なれないの?」
「馬鹿者。お前が出たら初めから勝負は決まっているも同然だ。あいつらじゃクロエには触れることさえできんだろう」
私の評価が高いのか、それとも彼らの評価が低いのか。果たしてどうなのやら。
「それに…いや、何でもない」
いやそこは言うべき。思わせぶりな言い回しは腹が立ってくるよね。
「言いかけて言わない人は嫌い」
ドストレートに言ってやった。千冬には変に言葉を変えずに言った方が効果がある。
「い、いや、あのな」
ほら、ちょっと揺らいでる。どんどん追い詰めるぞー。ずいっと顔を近づけて
「ねえ」
壁に追いやったところで一言。
「教えてよ」
千冬よりも私の方が背が少し高いから必然的に彼女を少し見下ろす形になっていたが、こうみると千冬も可愛いものである。
再三言うがそんなことは彼女の前では消して言わないけど。
まあ、それは置いておいて。
私がそうやって詰め寄ると彼女は話し始め…無かった。あれ?気失ってる?やりすぎちゃったかな。
◆
千冬はベッドに寝かせておいた。多分奥側のベットが楯無のやつだからそっちに。意外と軽かったのには驚いてしまった。胸にあんな脂肪ぶら下げてるのに。
因みに彼女の胸がシリコンじゃないのは確認済みだ。不公平だと思う。私の周りには大型しか居ないのか。現実とは無情なものなのか。少しぐらい分けてくれたっていいのに。
…別に無くてもいいんだけどね?本当にね?
千冬も寝たまま起きないから荷物を整理し、軽くシャワーを浴びてからその日は眠りについた。翌朝は当然の様に怒られてしまい代償として朝食を付き合わされた。ぼっちなんだね。彼女と静かに朝食を取りながら過ごす朝も悪くない。これからは誘ってあげよう。じゃないと私もぼっちになってしまう。人は喋らないと老化が進むと聞いたことがあるし、なるべく誰かと居たいものだ。ぼっちには慣れてるんだけどね。
朝食を取った後、千冬は仕事があるからと部屋に戻って学校へ行った。早速ぼっちである。
仕方が無いので千冬が用意してくれたであろう勉強用具を鞄に入れて私も学校へと向かった。
「あ、あなたは!」
登校中にどこぞのヒーローさん、ヒロインさんですかと言いたくなる様なセリフを敵意丸出しで投げかけてきたのは昨日の金髪さんだった。名前はなんて言ったっけ。確かオ…オ、オ?
「オリゴ糖?」
「オルコットですわ!」
そうだったそうだった。申し訳ない。見るからに呆れてる。あれ?怒ってるだろって?気にしちゃダメ。絶対。
でもこのノリ、やっぱりこの人は好きになれそうだ。
「それでオルコット、何?」
「な、何って、と、特に何もありませんわ」
おい。何も無いのに人を呼び止めるのだろうかコヤツは。
「そう」
そこからは無言でオルコットと並んで登校するという外野からしたら気味悪い状況を暫し過ごした。途中隣の席のロリシリコンちゃんに会って背負って登校する事になったのと、妙に話しかけられることが多かったこと以外は何もなく登校出来た。これが普通なのかな?イベント多すぎる気がしなくもないけど。
教室に入ってからロリシリコンちゃんを下ろしてオルコットからではと挨拶されたのに驚いたのも束の間、千冬がやってきて強制的に席に座らされた。
◆
その日の放課後、ロリシリコンちゃんこと布仏本音ちゃんにお茶しようと誘われた。やっぱり放課後はそういうものだったのか。嬉しい誘いだったけれど他にやることがあるため泣く泣く断った。本当に泣きそうだったのは多分バレてないと思う。というよりそう思いたい。因みに彼女の名前は朝知った。そう、背負っている時に聞いたのだ。本人曰く
「好きに呼んでくれていいよー」
とのことで、彼女のことはその着衣から心の中ではマスコットちゃんと呼ぶことにした。可愛いでしょ?口に出す時は本音と呼ばさせてもらうことにした。
マスコットちゃんと別れてからは校内を歩き回っていた。校内の案内図を見ながら学園長の部屋とか各クラス、施設等の位置を確認しているとある施設を見つけた。
「射撃場…?」
読んで字の如くな場所なんだろうが使う人なんているのだろうか。アリーナがあったし練習するならあちらで対人戦をした方が練習にはなるから特殊な人しか使わないのではないのだろうか。例えば遠距離での戦闘に特化した人とか。まあ、せっかくだし寄ってみよう。
中に入ってみるとなかなかの広さだった。ISを学ぶ学園だけあってIS専用なのか射程距離は一番短いのでも人が狙い撃ちできるのかと疑う程の遠さだった。
という訳で早速千冬に電話、射撃場使用の許可をもらいスナイパーライフルを借りて挑戦することにした。無論、IS用のライフルのため腕と脚にISを部分展開させた。流石にIS用狙撃銃の反動を生身で受けきる自身はない。
…あれ?これってもうIS展開させて撃つのと変わらない?
「あ、あなたは!」
片付けていると聞こえてきたこの声、このセリフは本日二度目だ。声の招待はあいつだよ。甘味成分たっぷりなのに全然私に甘くないあのオリゴ糖ちゃん!
「オルコットですわ!」
心の中まで読めるとは一体何者なんだろう。千冬とかスコールである程度は慣れたから驚きはしないけどあの二人は色んな意味で人やめてるからオルコットもどうなのか気になる。同じ人種なのだろうか。
「貴女は私の名前を覚える気がありますの?」
「セシリア・オルコット。ちゃんと覚えてる」
気に入った相手の名前は誰でも覚えるものだろう。ましてや同じクラス。名前を知る手段なんてものは沢山ある。
「はあ、まあ覚えているのならばいいですわ」
いいのか。これからも間違い続けていいのか。
「オルコットこそ私のこと貴女、貴女って言ってるけど名前覚えてくれてる?」
「も、勿論ですわ。クロエ…、クロエ…、クロエ…」
覚えてくれていないのか。何だか悲しいぞ。
「アヴドーチヤだ」
「お、織斑先生!?」
ここでお呼ばれしていないゲストの登場。けど来てくれたのは嬉しい。
「全く、クロエが射撃場を使わせてくれなんて言うから来てみたがオルコットと喋っているだけなのか」
「もう仕事は終わったの?」
「ああ、急いで終わらせてきた」
何とまあ。まあまあまあ。出来る女だったんだね。お姉さん感激。
「あ、あの!」
「どうしたオルコット」
「その、織斑先生はアヴドーチヤさんと随分親しそうに見えるのですが…」
私が千冬と仲良くしていたら問題でもあるのだろうか?
「コイツとは昔からの知り合いでな。色々と世話を焼かされたが世話になったやつでもあるからな」
へへ、なんか照れるね。
「それでクロエは撃たないのか?」
「IS武装のライフルしかなかった。人が生身で使えるスナイパーライフルが欲しい」
「そういうことか。ではまたドイツの知り合いに頼んでおいてやろう」
千冬さん本当にいい人。惚れちゃいそう。自分の代わりに銃を用意してくれたなんて物騒な理由で惚れはしないけど。
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!」
さっきから聞きに徹していたオルコットがまたしても声を荒らげた。
「何故ISに乗っていながらISの武装を使わないんですの?アヴドーチヤさんも専用機持ちですわよね?」
アヴドーチヤって呼ばれるのは何だかむず痒い。オルコットもクロエって呼んでくれないかな。
「専用機はあるけどあまり乗らない。今日も乗る予定は無かった。色々あって結局腕と脚は展開させたけど結局何もしないで止めた」
だから今手元にあるこの
と、ここで千冬が口を挟んできた。
「そこから先は私が説明しよう」
何でだよ。何でだよ!別にいいけれども!
「その前にオルコットに忠告しておく。自分のサシでコイツを図ろうとしないほうがいい」
「…わかりました」
あれはよくわかっていない顔だ。かくいう私も分からん。
「あともう一つ、いきなり説明しても多分信じることは出来んだろう。だから先に昔話といこう。クロエもいいか?」
私の恥ずかしいの暴露されちゃうの?
…どんとこい!
「うん。オルコットは信用するに値する人」
ってのは冗談で、結構真面目な話。
「…良かったなオルコット。お前はクロエに気に入られたようだ」
「ふぇ!?」
だったはずなのになぁ。目の前には怒ってますオーラを出している千冬と顔を赤くしてこっちを見てくるオルコット。なぜ怒っているのか分からないしなぜ顔を赤くしているのかも分からない。不思議な人たちだ。あ、オルコットも千冬と同類だったのか。
「…まあいい」
なぜ千冬が許してやるみたいになっているのか理解に苦しむが例のスルースキルを発動させ話の続きを催促した。
すると千冬も頷き、オルコットも真面目な顔になって話が始まった。
あれはーーーーー
気付けば前回から随分とたってしまいました。時の流れってのははやいですな。
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004. Party Night !!!
クロエの過去はいずれ出します。
今回は後半にレズ表現あります。
R15、GLタグをつけているので無理な方はいないと思いますが、もしいたら後書きまで飛ばしてください。
3行でまとめます。
千冬の話が始まってしばらくするとお腹が痛くなってきた。今すぐウォータークローゼットへと駆け込みたいのだがそんな事が言える雰囲気ではない。だが日本のお侍さんはこんなことを言っていたと聞いたことがある。
――――推して参る!
推して参った結果、無事その場を脱出出来た。私あんまりお腹強くないんです。オリゴ糖がどうとか言ってないでヨーグルト食べようかな。凄いよね、自ら菌を送り込んで抗体作ろうなんて。
射撃場に戻るとオルコットが可哀想なものを見るような潤んだ目で見つめてきた。そんなにトイレに行くのは許されないことなのだろうか。
「クロエか。大体の話は終わった」
どうやら私がウォーターなクローゼットにこもっている間に話は終わってしまったようだ。
「それでこれからは?」
「私とクロエの馴れ初めはある程度話した。私からは言いたいことを言ったがお前は何かないか?」
そうだな。私から彼女へ何か言うのならばどんな言葉がいいのだろうか。オルコットの事は既に知っている。両親が既にこの世にいないことも、父親を憎んでいることも。それが原因で女尊男卑の考えになり、強くあろうとすることも。ならば彼女にはこの言葉を贈ろう。イギリス出身の彼女なら意味を理解してくれるだろう。
―――There is nothing either good or bad, but thinking makes it so.
◆ ◆ ◆
それから織斑弟との模擬戦までの間、オルコットはなんと言うかこう、凄まじかった。何があったのか男だからといって相手を侮ることをやめ、放課後は毎日射撃場とアリーナへと通っていた。もちろん一人ではない。何故か私もだ。特訓に付き合ってくれとのことだったが自由な時間は殆ど彼女に費やしていた。呼ばれ方もクロエにいつの間にか変わっていた。イギリス人はティータイムを大事にすると聞いたことがある。他人のティータイムはどうでもいいのだろうか。
…はっきり言おう。私にもティータイムとやらを下さい。
そして現在、お茶なう。いただきましたティータイム。
「There is nothing either good or bad, but thinking makes it so」
お相手はオルコット嬢。正直言うとマスコットちゃんとほんわかした空気を味わいたかったです。それに現在の時刻は放課後ではない。午後ですらなくまだ午前中だ。
「〝物事に良いも悪いもない。考え方によって良くも悪くもなる〟でしたっけ?」
「大事なのは
「そう、ですわね。帰国した時に一度お墓参りに行ってみますわ」
それが良い。オルコットは私と違い優しい人間だ。憎しみなんて感情を抱えて生きているといつか潰れてしまうだろう。
「それであの、そのときは一緒に来ていただけませんか?」
え?なんで?
「その、一人だと心細いのでクロエさんに側に居ていただけたら、と思いまして」
モジモジしながら言うんじゃない!可愛いじゃないか!つい承諾してしまいそうになってしまう!
だが彼女には何故IS学園へ来たのかは伝えていない。織斑弟がいる限りは
「申し訳ないけれどそれは出来ない」
「…そうですわよね」
シュンっとなったぞ。なんと言うか護ってあげたくなる。これが母性というやつなのか。
「でも、色々と調整してみる」
口が滑った。口は災いの元なんて言うらしいし仕方ないよね。そう、仕方がないことだ。一日ぐらいあけても大丈夫だろう。
ほら、オルコット嬢も嬉しそうにしているしノープロブレム。当分先の話になるだろうし、またその時にでも考えればいい。
「オルコット、そろそろ時間」
「わかっていますわ。でもその前に私のことは“セシリア”と読んでくれないでしょうか?」
「…行ってらっしゃい“セシリア”」
負けはしないと思うがヘマはするんじゃないぞオリゴ糖ちゃん。
「オルコットですわ!」
しっかり返しつつもセシリアはアリーナ中央へと向かった。その目には
◆
結果は言わずもがなセシリアの勝利で終わった。まあ当然の結果だろう。軍人と一般人に銃を持たせて闘わせたようなものである。ただ、時々
クラス代表については結局、織斑弟へ譲ったようだ。何でも弱いから経験を積ませた方が良いとかなんとか。なりたくもないものに強制的になる事になった織斑弟には一応同情しておく。
そしてここからが重要な点だ。織斑一夏クラス代表就任記念パーティーなるものをおこなうらしい。パーティーだよパーティー。これがセシリアだったら失礼だがパーティーまでに発展はしなかっただろう。グッジョブセシリア。パーティーには美味しいものが必ずついてくる。これは行くしかないようだ。食べ物の恨みは凄いって言うでしょ?執着も凄いからね。
「はいはいみんな飲み物は行き渡った?」
進行役の人の掛け声にあちこちから聞こえる肯定の声。特に織斑弟の辺りからが多い。八割ぐらいは多分。残りの二割は私とオルコット、マスコットちゃんとそのお友達二人。と、何故か千冬。彼女いわく監督役だそうで派手なことをしない限りは干渉しないとのこと。パーティー自体が派手なものな気がしなくもないが中止になってはたまらないので言わない。
でも、本当は弟を祝いたいんだと思う。ツンデレさんめ。
「それじゃあ、織斑一夏くんクラス代表就任を祝って!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
ジャパニーズスタイルでパーティーが始まると同時にその場は賑やかになり始めた。場所は寮にある食堂のため、この場にいない寮生には少し迷惑かもしれない。因みに現在の時刻は夕食の時間外で千冬が食堂使用の許可をとった。
「千冬は、まあまだ分かるけど皆はあっちに行かなくてもいいの?」
「私はこちらでかまいませんわ」
「おりむーよりクロちゃんの方がいい〜」
マスコットちゃんやそれはどういうこってい。だが嬉しいぞ私は。
マスコットちゃんフレンズは、
「人が密集してる所はあんまり好きじゃないから」
「写真は中にいるより外にいた方が撮りやすい」
とのことだった。
そしてお目当てのご飯の味は十分なものだ。あ、こっちの唐揚げもいい。
「おいしい」
「本当か?それはよかった」
突然の乱入者は織斑弟である。あれ?こいつさっきまであっちでハーレム築いてたのにいつの間に来たんだろう。
「うん。これは貴方が作ったの?」
「ああ、何種類かはな。喜んでくれてるなら嬉しいよ」
主役が作るってのはいかなるものなのだろう。それだけお人好しなのかな。私としては美味しいなら誰が作ろうが文句はない。
「一夏か。あっちはいいのか?」
顎でクイッと女子たちが群れている方を指す千冬。
確かに彼女らは織斑弟目当てで集まったのにいいのだろうか。
「あはは、ちょっと疲れてね」
なるほど。ハーレムの主にも苦労する点があるのか。でもいい思いしてるならそれでいいんじゃないのかな。漫画でしか見たことのないからリアルでは初めて見たけど羨ましいね。あんなに可愛い子達に囲まれてるのに何が不満なんだろう。
「でも、こっちに来ても彼女らがこっちに来たら変わらない」
むしろ迷惑なまでである。羨ましいが今は食が最優先事項だ。
「いや、こっちは千冬姉がいるからさ」
んん?千冬は嫌われ者なのか?だからぼっちなのか?
「違うよ〜クロちゃん。せんせえは皆の憧れの人だからね〜。なかなか近づけないんだよ〜」
よくわからんが嫌われてはいないようだ。良かったな千冬。
それよりも遂にマスコットちゃんにまで心をよまれた。が、気にすることは何も無い。マスコットちゃんならどんどんよんでくれて構わないぞ。可愛いから許す。
「クロエ、後で私の部屋に来い」
…この場にはもう二人ほど同じような芸当ができる人物がいたのを忘れていた。千冬さんゴメンナサイ。
セシリアの方をチラ見するとそっぽを向いていた。私は関与しませんと言っているようだ。
「クロエ?千冬姉とクロエって仲良かったのか?」
「まあ、随分と古い付き合いだからな。それに一夏、お前だってこいつの事をクロエって呼んでいるではないか」
「そうですわ!私だって先日やっと呼べるようになりましたのに!」
ええ?そこなの?そこ問題なの?
「いやだって自己紹介の時に言ってたろ。クロエでいいって」
確かに言ったような言ってないような。あまり覚えていない。
だがセシリアの反応を見る限り言っていたのだろう。膝から崩れて床に四つん這いになっている。何やら失念がどうとか言っているけれどよく聞こえない。
「そっか、千冬姉の知り合いなのか。これからよろしくな」
「ん」
すっと出された彼の手を、私はフライドポテトを口いっぱいに含みながら握った。
「おっと、口にケチャップついてるぞ」
その際に気づいたのか織斑弟が私の口についていたケチャップを指でとってくれた。イイヤツだ。なんか周りがキャーキャーうるさくなってきた。
「なななな、何してますの!?」
「何って、クロエの口についてたケチャップとっただけだけど」
その通りだ。セシリアは何をあんなに焦っているのだろうか。私も首を縦に振り頷く。
なんか千冬の方からも凄い怒気が伝わってくる。マスコットちゃんはずっとこちらを見つめているようだ。
「そういうことではありませんわ!そんなに軽く女性の、それもクロエさんの唇に触れるなんて!」
私だと何か特別なのかな。まあ言われてみれば確かに男の人が気軽に女の人の口に触れるのはどうかと思わなくもない。デリケートな部分だしね。私は別にいいけど。
「ああ、そっか。ごめんなクロエ」
「別に気にしなくていい。拭いてくれてありがとう」
何やらセシリアがぷりぷり怒っているようだが大丈夫だろう。礼を言うのは悪いことではないはず。
「いいな〜おりむー。私もクロちゃんの唇さわりた〜い」
お?そうかいマスコットちゃん。いつでもウェルカムだよ。
「本音なら別に好きにしてくれていい」
「ほんと〜?じゃあ〜」
そう言ってだぼだぼのパジャマ姿でのそのそと私の前まで近づいてきた。本当にマスコットだ。
「よいしょっと」
そのまま私の膝の上にのぼり、向き合うかたちとなった。どうするんだろうか。
「えへへ〜」
顔をふにゃっと歪ませ、笑った。これはヤバイ。いろんな意味でヤバイ。
いつの間にか周りも静かになっており、皆本音の行動に注目しているようだった。
「それじゃあ〜」
そう言いつつ彼女は私の胸にその胸部にあるシリコンを押し当ててきた。
絵面的には、そうだな。俎に蒲鉾を逆さにして軽く圧力をかけた感じだろうか。
「いただきま〜す」
後頭部に手を回され、そのまま彼女は自分の唇を私の唇に重ねた。
「「「「「なっ!?」」」」」
「ごちそうさま〜」
流石にこれには驚いた。キスされるとは思ってもみなかったから。
でも許す。私の目の前の彼女は顔を赤らめながら舌をだし、テヘッと笑っていたからだ。可愛いは正義。日本の言葉にあったよね?
「布仏さん!何やってますの!」
「流石にここまでくれば私も見逃せんな」
だがセシリアと千冬はお怒りのようで。間近で見ていたマスコットちゃんフレンズと織斑弟は驚いたまま固まっていた。因みにその他の女子達は何やら盛り上がっていた。
今夜は夜どうしで説教かな。でも美味しい料理も食べれたし、マスコットちゃんに癒されたし、別にいいか。
それから暫くはその時間の幸せを感じながら、周りの声に耳を傾けつつヨーグルトを食べて過ごした。
クロエ
セシリアと
仲良くなる
の巻!
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005. Diary
年末年始と随分間が空いてしまいました。
今年1年はどんな年になるのか楽しみです。
千冬のありがたい説教を小一時間程マスコットちゃんと共に千冬の部屋で受けた後、マスコットちゃんは睡魔に襲われ限界が近いようで既に船を漕ぎ始めていたから彼女を背負って部屋まで運んであげた。その後は千冬の部屋からかっぱらってきたお酒を片手に学校の屋上へと向かった。IS学園のある施設が半島ということもあり、周りには学園ほど高い建物が無いため微かに香る潮の香りと風が心地良いのだ。まあ、未成年がお酒を飲んでるところを見られるのはまずいから来てるだけなんだけどね。だがここはIS学園。国の法など知らんよ!
◆
屋上へと続く扉を開けると、そこには見知った人物がいた。人のことは言えないけれどいいのだろうか。私の場合はバレると千冬に怒られる。他の人はどうなるのかは知らない。私が何をしているのか、と言うよりも私の正体を知っている人は学園長と千冬、楯無ぐらいだと思う。もちろん学園内に限った場合でだけど。他にも国家代表が居れば知っているかもしれないしね。学園外でいればもうちょっといる、と思う。ロシアとドイツ、フランスにアメリカの大統領さんと国家代表の人達ぐらいかな。ロシアとドイツの人達はいい人達だ。頼めば何だってしてくれる。あとはスコールの組織の一部。因みに知り合いもこれで全員。友達はその内の何人か。学園で友達百人できるかな?
話を戻してその学園の屋上にいたのは数少ない友達の一人、
「スコール?」
ぱつきんねーさんだ。
「あら、偶然ね」
「偶然でここに居られたら困る」
偶然なんかで学園に侵入されたら困る。しかも警報も鳴っていないため気付かれずに入り込んだということだ。
もしかしてここの警備頼りにならない…?
「ふふっ、心配しなくても大丈夫よ。私も学園の関係者になったから」
「関係者?」
「そう、関係者。亡国機業は織斑一夏を狙っているからその偵察役として送られたのよ。彼らは貴女がここにいる事は知らないから仕掛ける気満々だったの。だから私が買って出たってわけよ。IS学園の教師としてね」
先生とな。彼女なら学園側も喜ばしい事なのだろうが組織で動かれ、こうも簡単に潜り込まれてはたまったものじゃない。
「スコールは手を出さないと言っていたはず」
「ええ、私は手を出さないわ。勿論エムとオータム、と言うよりもモノクローム・アバターはね。私はただここへ来ただけよ」
「何故?」
エムって誰だろう?オータムはよく覚えているけど。
「貴女がいるからよ」
何ヶ月か前、彼女と最後に行動を共にした時のような笑顔でクスクスと笑いながらそういう彼女はどこか寂しそうだった。
「貴女は傭兵。仕事なのだから各地を回るのは仕方の無いことなのだけど、やっぱり好きな人と離れるのは寂しいものだわ」
「好きな人?」
「あら、体も重ねたことがあるのに気付いてないなんて言わないでよ。お姉さん泣いちゃうわ」
何それいい。美人の涙は見てみたい。でも本気で泣くことは無いだろうから残念だ。そういえば涙の成分でなぜ泣いてるのか分かるとかなんとか。うろ覚えだが感情による涙はタンパク質が二十パーセント程多かったのかな?よく分からないが分かる人が彼女の涙を調べたら嘘泣きだということが一発で判明するはずだ。
それと…いや、これは言わない方がいいか。主に私の身のために。女性とは年齢を男性よりも気にするものだからね。
えっと、スコール姉さん目が怖いです。
「人によく思われないのには敏感だけど好かれるのには鈍い。自覚はしている。でもスコールが好いてくれているのなら嬉しい。でもそれとこれとは別」
美人の涙は綺麗だろうから見てみたい。だが人が泣く顔というのはどこまでも悲しいものだ。あまり見ていて良い気分にはならない。泣かれるのは困る。
「まったくもう、つれないわね。私の告白をすんなり流すなんて」
私もスコールは好きだが面倒ごとを増やされてはたまらない。
「心配しなくても大丈夫って言ったでしょう?私は貴女に会いたくてここへ来ただけよ。亡国機業か貴女か、選ぶまでもないわ」
「それは何もしないと捉えても問題は無いの?」
「そう思ってくれていいわ。なんとなく属している組織と惚れた相手じゃどちらの側につくかなんて決まっているわ」
「何だか照れる」
敵じゃないと分かれば何だか急に恥ずかしくなってきた。今までは敵対するかもしれないという方に意識がいっていたがそれが消え去ると別の方に意識が移ってしまう。
「そう言いつつも表情は全く変わってないわね」
「このぐらいで変えてちゃスコールの相手なんて出来ない」
「ふふ、よく言うわ。それはそうと、仮にも私はこの学園の教師。貴女が手に持っているそれを見逃すわけにはいかないわね」
そう言いながら指を向けた先には私の手に収まったお酒。千冬の部屋から拝借したものだ。すっかり忘れていたが、千冬にさえ見つからなければいいと思っていたのにこんなところに伏兵がいるとは案外IS学園も侮れないのかもしれない。
「私も戦場に身を置く人の一人。軍人の給与がいいのと同じでいつ死ぬのかわからないからそれなりの褒美は欲しい。スコールも元軍人なんだからわかるはず。見逃してほしい」
「貴女はそう簡単に死なないでしょ。長生きするためにやめときなさい」
「なら私の部屋で一緒に飲もう」
「どうしてそうなるのかしら」
彼女もかなり飲むほうだから誘えば乗ってくれるかと思ったのに。
「私はスコールと飲みたい」
久しぶりの再会なのだから少しぐらいハメを外してお酒なんかでぱーっとやりたかったものだ。千冬の場合はそんな事言ったら大変なことになりそうだから言えなかったけど。何しろ生徒も住んでいる寮内にお酒をもちこんでいるぐらいなんだから。
仕方なしに手にしていたお酒を持ってスコールに渡そうと彼女の下へと行き、差し出した。
「じゃあこれは私が貰うわね」
「飲まないでとっておいて」
「それは約束できないわ」
こいつ飲む気なのか。
「あ、今日クロエの部屋に泊めてくれる?私まだ部屋がないのよね」
こいつ私の部屋で飲む気なのか!
◆ ◆ ◆
夢を見ていた。
辺り一面は炎の渦。
地には誰のものかすらわからない血の海。
耳に聴こえてくるのは木々が焼かれる音。
────そして、愛する者の悲鳴
その中で私は走り続けていた。
ただひたすらに、前へ、前へ、と。
生かされた命と、託された命を手に前へ進み続けた。
耳に聴こえてくるのは悲鳴、だが頭の中で再生されるのはあの言葉。
愛する者が私に最後に言ったあの言葉。
“お姉ちゃんは生きて、生きて、生き抜いて。誰にも負けない、私の憧れの強いお姉ちゃんのままでいて”
だから、私に敗北の二文字は許されない。
何よりも、私の希望だから、と。
彼女は、彼女達は立ち向かった。
例えそれが勝ち目の無い勝負だとしても。
生かされた私の命。
託された
彼女の為にも、みんなの為にも、私に敗北は許されない。
◆ ◆ ◆
不意に感じるヌクモリ。私はそれによって目を覚ました。
「んぅ…?」
「あら、起きたのね」
現在は昨夜の出来事から時がたち翌日の朝。マイホームであるマイルームのマイベッドの上。何故か全裸のスコールに抱き締められていた。脂肪が鬱陶しい。
「…スコール?」
「泣いていたみたいだから、ね」
「そう…。ありがとう」
またあの夢。忘れることは出来ないであろう出来事。まあ、忘れるつもりなんてないのだがたまに見る夢。夢にまで出て来ないで欲しい。まるで自分自身に拷問されている気分だ。思い出せ、忘れるなってね。
「もう少しこのまま」
「いつまででもいいわよ、ふふ」
歳がいっている分母性も出てくるのだろうか安心する。甘えたくなるような見惚れる笑顔で返されたため朝食までの少しだけの時間、顔全体でやーらかい脂肪の感触を楽しむことにしよう。自分から彼女の方へ寄り添おうと少し体を動かした。のだが気がついてしまった。
なんで私も裸?
スコールが全裸なのは百歩譲ってまあ、まだ分かる。分かりたくはないけど。だが私までそうなっているのがわからない。昨日の夜は確かに服を着たまま眠りについたはずだ。
「ああ、それならうなされていたから暑いのかと思って脱がせたわ」
何故そうなる。
「…そう」
よく分からないがまだ眠かったので眠りにつくことにし────ようかと思ったのだが、ガチャッという音が聞こえた。
「おはようございまーす」
そう小声で言いながら部屋に入ってきた声の主。
「セシリア?」
「起きてらしたんで…す…ね?」
入ってきたはいいのだがこちらを見てかたまるセシリア。目線の先には私ではなく隣にいるスコールだ。
「な、な、誰ですの!?」
早朝に似つかわしくない大声。隣の部屋は千冬なんだぞ。怒られるのは私なんだぞ。
「淑女に有るまじき叫びね。初めましてセシリア・オルコットさん。私はスコール・ミューゼル。新しくココに赴任した教師よ。宜しくね」
「え?あ、はい。よろしくお願いしますわ」
「それじゃあ客人も来たようだし私もそろそろ行くわ。またねクロエ」
いつの間に着たのか、さっきまで全裸だったのに服を着ていた彼女はそう言い残して部屋を後にした。どうしたんだろうか。
「それでどうしたの?」
「えっと、朝食を御一緒させて頂ければ、と思いまして」
そのためにわざわざ部屋まで来たのだろうか。寮長の隣の部屋だけあって彼女の部屋からはそれなりに距離はある筈だ。
「いいよ。ちょっとまってて」
布団から出て、顔を真っ赤にしたセシリアを横目に行方不明の服を探しながら気付いた。
「まだだいぶ時間ある」
◆
いつものメンバーである私と千冬、そこにセシリアが加わった朝食は違和感が凄かった。今までは千冬と二人で食べ、千冬が放つ威圧感に耐えられないからか近寄ってくる人すらいなかったのにいきなり一人増えたのだ。
変化というのはどんなものでも人に何かしらの影響を与えてくれる。私もそうだが、例えばそう千冬だ。違和感にいつもの五割増ぐらいの威圧感を重ねてきた。そこまで教師に徹しなくてもいいと思うのだが、そこまでして威厳ある教師でいたいのだろうか。
でも、せてめご飯中はやめて欲しかった。
そんな時間も過ぎ去り、遂にやってきた実習授業。専用機持ちはアリーナさえ使えればIS操縦の練習が出来るが他はそうもいかない。彼女達にとって待ち遠しかった授業だろう。
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット試しに飛んでみろ」
「俺達だけなのか?クロエも専用機持ちだったよな」
「三人も要らないだろう。お前とオルコットが完璧にこなせば問題は無い」
それ言ったらセシリアだけでもいい気がする。織斑弟にも実際にさせるあたりやっぱりブラコン千冬。分かりにくいツンデレさんだ。
おっと、千冬がこちらを睨んでいる。
「でもクロエの専用機がどんなのか見てみたいな」
すると彼の後からわマスコットちゃんの私もと言う声が上がり、徐々にそれが広がっていった。団結力って凄い。群れてるだけとも言う。
「静かにしろ馬鹿どもが。…アヴドーチヤ、お前もやれ。加減はしろよ」
そこは折れて欲しくなかった。正直面倒くさい。
「…
「では織斑、オルコット、アヴドーチヤ、まずはISを展開してみろ」
「分かりましたわ!」
千冬に言われ最初に動いたのはセシリア。流石は代表候補生と言ったところなのか、なかなかの速さで展開を完了させた。千冬も満足そう。
だがセシリアとは対照的に織斑弟は苦戦中。まだ慣れていないのだろう。
周りの期待の目が怖いので私も足の付け根にさして合った例の扇子取り出し展開。
────
全身が真赤に塗装されている私のISの名は
「クロちゃんの何だかスッキリしてるね」
そう、マスコットちゃんが言う通り
色々と他と違うのは
「かっこいいでしょ?」
「うん!」
うん。マスコットちゃんは可愛い。
それにしても織斑弟はまだ展開出来てない。
「あとはお前だけだ織斑。アヴドーチヤを見ただろ。熟練した操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」
「もうちょっと!」
むむっとしながら何やら力を込め始めた。
あれで出来るのかと思ったがどうやら出来たようだ
────白式
篠ノ之束が直接手掛けたらしい第三世代のIS。御本人様登場である。
「よし、では飛んでみろ」
「はい!ではクロエさん、お先に行きますわ!」
セシリアが飛び立ち、織斑弟が飛び立つかと思いきや地面に平行に飛んでからセシリアを追っていった。千冬に加減しろと言われているため、私も後からまったりと追いかける。
『遅い!スペック上の出力では白式が一番だぞ』
「そう言われても。自分の前方に角錐を展開させるイメージするんだっけ?」
「イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」
「だいたい、空を飛ぶ感覚自体があやふやなんだよ」
『織斑、オルコット、アヴドーチヤ、急降下と完全停止をやってみせろ』
経験の問題だろう。数をこなせば織斑弟も慣れてくるだろう。
「了解です。ではお先に」
セシリアが先頭を切って急降下、完全停止を完璧にこなした。綺麗なもんだ。
「上手いもんだな。クロエ、先に行くぜ」
半分ぐらいフラグを立てて降りていった織斑弟だが、見事失敗。グランドに穴ができた。
「痛そう」
普通に痛そうだ。
人だかりも出来ていたため、私はゆっくりと降りていった。
オリジナル機体の設定は追々出しながら進めていきます。
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006. a premonition
とまあそれはおいておいて気付けばもう2月ですね。
そんでもって今日はバレンタインです。
リア充の皆さん爆散して下さい。
織斑弟が芸術的なクレーターを作成した後日、私は学園に入学したことを改めて喜んだ。
それは何故か────
「貴女とは仲良く出来そう」
「奇遇ね、私もそう思うわ」
同士と巡り合えたからだ。
遡ること数秒前。最近部屋に住み着いているスコールに少し、いやかなり手を焼いていた。
目の前でお酒を飲む、これは許せる。
愚痴って愚痴って愚痴りまくる、まあこれも許せる。
問題はここからで、部屋では基本的に衣類を身にまとわず常に引っ付いてくるし、身体中をいじくり回される。もちろん性的な意味合いでもだ。いじられている間に眠ってしまい朝起きたら全裸の美女が隣に眠っていた、なんてものは大半の人にとって夢のような話なのかもしれない。だが私にとっては忌まわしき脂肪の塊を見せつけられている気がして気が気ではないのだ。何度もぎ取ってやろうと思ったことか。
触るぶんにはいい、だが見るのは嫌だ。
今朝もそうだ。目が覚めたら脂肪が。一度叩いてやった。そしたら眠っているにも関わらず色っぽい声を出すもんだからなんだか悔しくなってしまう。
少し時間的にも早かったのだが気分転換にはいいと思い部屋を出た時だった。
目の前には私よりも頭一つ分程背が小さいツインテールちゃん。一目見て仲良く出来そうだと思った。本能、とでも言うのだろうか。とにかく説明は難しい。
あちらも私に気が付いたようで、目が合った瞬間ビビットきた。
で、これが今。
「貴女とは仲良く出来そう」
「奇遇ね、私もそう思うわ」
説明は難しい、とはいったがあえて言うならば胸部がとても、そう、本当にとても似ているからだろう。
似たような人がいれば仲間意識を持つのも不思議ではない。類は友を呼ぶ、という奴だろうか。
「私は凰鈴音。貴女は?」
「クロエ。クロエ・アヴドーチヤ」
「そ、宜しくねクロエ。私の事はリンでいいわ。知り合いにもそう呼ばれてるから」
「わかった。こちらこそ宜しく、リン」
そこからは何を言うでもなく二人並んで散歩をした。道中はお互いのクラスなど、自分達の事を話した。特に熱く語りあったのはバストについてだという事もここに記しておく。
胸なんて気にしないと言っても、やはり背に腹は変えられない。
◆ ◆ ◆
今日も今日とて何もなく過ごしていた。
朝教室に行くと早朝に出会った同士リンが千冬にボコされていたぐらいで本当に何も無かった。
そして待ちに待った昼食タイム。いつもならマスコットちゃんと他二名もいるのだが今日は用事だとかで別々に昼食をとることに。セシリアはいつも通りいる。稀に千冬とかスコールもいたりするが大体がこのメンバーだ。
「あらクロエじゃない」
「リン?」
食堂で列んでいるとラーメンを持ったリンに声を掛けられた。中国出身だから中華が好きなのかな?あれ?ラーメンって中華だっけ?
「一夏見なかった?」
「後ろの方にいると思う」
「そ、ありがと」
そっけない気がするがあれがデフォルトなのだろうか。人の事は言えないけれど。
「クロエさん、今の方は誰ですの?」
「凰鈴音。今朝知り合った。中国の代表候補生らしい」
因みにあれは明らかに織斑弟にほの字である。見ていればわかるほどにあからさまだ。と言うか口にする話の大半が彼の事なので気づかない、というか察するなという方に無理がある。
「今日は何食べよう」
「リンさんがラーメンを持っていましたし、ラーメンなんてどうです?」
セシリアと話しながら待っていると自分たちの番が回ってきた。言わずもがなリンが織斑弟に好意を寄せているのは話した。何かあった時は協力してあげて欲しい、と。
いつも一緒にいる篠ノ之も恐らく彼に好意を寄せているのだろうが私がリンにつくのは必然的であると言える。
いや、もうこの際気にしてないとか言わない。実は物凄く気にしている。
まあそれについては今はいいだろう。
「ラーメンは食べたことがない。色々あるみたいだけどどれがいいの?」
「そうですわね、日本らしく味噌味なんてどうでしょうか」
日本らしく、か。いい響きじゃないか。
「ならそれにしよう」
「私も同じものにします」
すいません味噌ラーメンを二つ、とおばちゃんに言ってからどういう仕組みなのかものの数秒で出てきたラーメンをもち、席についてセシリアと談笑しながら味噌ラーメンを味わった。
セシリアはまだ箸の使い方に慣れておらず、途中食べさせてあげたりした。
私はだてに日本好きをかがけているわけではない。形だけでも、という事で以前から箸を使っていたためある程度熟れている。
味について美味しかったとだけ言っておく。
それ以上の言葉は要らないでしょう?
◆ ◆ ◆
「クロエ、ISについて教えてくれないか?」
と言ってきたのは織斑弟。
なんでも近々学年別トーナメントだかなんだか知らないが、クラス代表どうしが戦う行事があるらしい。
らしい、と言うのはあまり興味がなかったため千冬が話していたのをよく聞いておらず知らなかった。
これで今年の新入生の実力をある程度見極めるらしく、実際にクラス代表として出場しない生徒にとってもそこそこ大事なものなんだとか。
私にはよく分からないが、取り敢えず強制参加なものらしい。
「どうして私に?」
「千冬姉と仲良さそうだしほら、最初いってただろ?クロエに聞けば大体のことは分かるって」
私は一体どういうふうに見られているのだろうか。ついでに千冬も。と言うかそんな覚えは無い。
「私なんかよりもリンに聞くほうがいい」
「リン?リンとも知り合いなのか」
朝会いましたから。ええ。
彼女に聞いてあげてくださいよ。二人きりで。
「そうしようと思ったんだけどクラスが違うからさ。一応ライバルになるわけだし」
「ならセシリアは?」
「セシリアに聞いたらクロエに聞けって」
なんなんだあのオリゴ糖は。押し付けられた気がする。後でお灸を据えておこう。ついでにセシウム・オリゴトウに改名してやろうか。
でもまあ彼自身も力をつけてくれると護る側としても楽になるからいいか。流石に素人相手に手加減しきれる気がしないので実技については何も出来ないけれど。
取り敢えずIS操縦者にとって基本的な事を彼に課する。
「────ISってなんだと思う?」
「は?」
「特訓には付き合うことが出来ない。でも、助言は出来る。今の言葉よく考えてみて」
百獣の王であるライオンは子を谷に落とすという。厳しい環境で育つのであれば力の付きが他と違う。人間だってそうだろう。
解は教えず式を教える。
当たり前のことなのだがその式をどこまで教えるかによってその後に大きく影響するだろう。
確にいきなり自分の知識外にある難解な問題をぽんっと出され、ヒントも無しにこれを解けなんて言われても誰も解けはしない。
だが、だからこそ今回は
ハサミはモノを切るためにある。ペンは何かを書くためにある。簡単なものだがこれらの道具だってそれが何か、どうやって使うのかを理解した上で使用している。でも最初から上手く扱えた訳では無い。
ISだって
その
彼がもしその
────化けるであろう
あれから部屋へと戻り、夕食時にはセシリアにしっかりとお灸を据えておいた。その結果が何故か今度お弁当を作ってるということになってしまったのだが心配だ。彼女の腕を信じるしかない。
もしやばそうだったら織斑弟に
因みにその際耳に挟んだ事なのだが、どうやら彼は私の質問の意図が分からず周りに聞いて回っているらしい。ISってパワードスーツだよな、と。
彼が化けるのはまだまだ先になりそうだ。
で、時は過ぎて当日。
見事に寝過ごした。これはまずい。受験日に受験票を忘れるぐらいにはまずい。
千冬に怒られてしまう。事前に興味が無くても必ず来いと釘を刺されていたために尚更だ。
こういう時に限って起こしてくれる人がいないのはぼっちの宿命なのだろうか。
スコールもタイミング悪く、教員用の部屋が用意されてそちらに移ったあとだ。
というかそもそもの原因はリンが泣きついてきて寝かせてくれなかったのである。何があったのかは知らないし、何を言っているのかもよくわからなかったがとにかく愚痴だけを聞かされた。
だが遅れてしまったのはもうどうしようもなく、仕様がないので何故か隣で寝ていたマスコットちゃんを起こして急いで準備を済ませてからまだ寝ぼけている彼女を着替えさせて背負い、会場であるアリーナへと足早に向かった。
◆
アリーナにつくと既にトーナメントが始まっており、本音を観客席の方に連れていき最初に見つけた一なんとかさんと二なんとかさん、三好さんの三人に預けた。三好さんだけ名前をちゃんと覚えているのは席が近く、何かとお世話になることがあったからだ。
頼もしく信頼出来る彼女らへマスコットちゃんを預けた後は千冬がいるであろう管制室に向かう。
そもそも私が千冬に釘を刺されたのが今回が織斑弟の公式戦の初陣であるからだ。
公式戦ともなれば各国を代表するような人たちも観戦に来るし彼の身に何か起こるかもしれないという事で先生としてではなく依頼主として釘を刺してきたのである。
…怒られたくないなぁ。
コンコン、と軽くノックし中から声が聞こえてきたのでドアを開けて中に入る。まあ中には当然千冬がいる訳で。
「ほう、アヴドーチヤか。どうした、えらく遅かったな」
怒っているのも必然な訳で。
「ん?何か言い訳とかは無いのか?んん?」
ウザイぐらいに教師ヅラを普通にする訳でもある。
取り敢えず謝った。彼女に言い訳など無意味に等しい。
だが驚くことにあっさりと許してもらえた。これは後が怖い。恐いじゃなくて怖い。
「それで、私がここに来る意味はあるの?」
「ああ、勝手に動かれては困るからな。こちらからの指示が出るまでは待機だ。一応オルコットも呼んで専用機持ちの見学会ということにしている」
チラッと先程から管制室にあるスクリーンに釘付けな彼女を見て、なんかあれだなと思った。あれとは形状しがたいあれである。要するに自分でもよくわからない。
「で、スコールがいるのは何故?」
今度は後ろから抱きついきている女性を見やる。背中に当たっているものに関しては気にしない。
「あら、私がいたら不都合なのかしら」
「気になっただけ」
だがいいのだろうか。スコールは私と千冬が知り合いであったことは知っている。でも千冬は私とスコールがどんな関係なのか知らないはずだ。国家代表でもなくどこかの国の重鎮でもないスコールが私と繋がりがあるとすれば“表”ではなく“裏”に限られる。千冬も気づかないわけがない。
「気にしなくてもいいのよ。何だか無害だと判断されたみたい」
とはスコールの言葉。
耳元で話さないで欲しい。擽ったい。
「良かった。千冬もスコールも仲良くしてね」
「ここでは織斑先生と呼べ」
相変わらず先生に凝る人だ。
その後は皆で軽く話しながらスクリーンを眺めていた。次々と勝敗がついていき遂にやってきた織斑弟の出番。相手はリンだ。
ボコボコにしてやる、とは本人の談なので手加減は一切しないだろう。本格的に織斑弟が可哀想になってきた。今度労ってやろう。
試合は終始リンが圧倒していた。
やはり専用機を持ったばかりどころかISに乗り始めたばかりの織斑弟では代表候補生ともなるリンには到底及ばない。
だが必死にリンにくいついていっているのは流石というべきだろうか。根っからの努力家である彼は諦めるなんて言葉を知らなそうだ。
リンが人の部屋にきて何時間も愚痴を零すだけ彼に入れ込んでいるのが何となくだが分かった気がした。
「一夏さんもなかなかやりますわね」
事実セシリアも彼と仲良くなっていた。
それだけ魅力のある人物なのだろう。
「あそこまで出来るなら相手をしてあげても良かったかな」
「それは私が許さん。あいつにお前はまだはやすぎる」
「どういう事ですか?」
「単純なことだ。織斑だけに限った話ではないがこの学園の生徒相手にアヴドーチヤは過剰過ぎる。オルコットも教をこいたのではないか?」
過剰過ぎるってなんだ過剰過ぎるって。
少し泣きそうだ。あ、暖かい。けど今その暖かみは要らないよスコール。その脂肪もぎ取ってやろうかこのやろう。
「ええ。ですが私が教えてもらったのは心構えですわ。模擬戦はしてもらっていません」
「そうか。まあいずれアヴドーチヤの実力は分かるだろう」
中途半端に話したせいでセシリアは不満そうに千冬に向けていた顔をこちらに向けた。
「ちょ、何をしていますの!」
と思ったら急に顔を真っ赤にぷりぷりと怒りだした。可愛いものだ。
何をしているかと言われれば私は何もしていない。むしろされている。
「何って豊胸マッサージよ、豊胸マッサージ」
とまあスコールが後ろから私の胸をさわさわされていた。
「今、と言うか貴女がやらなくても良いのではありませんか!?寧ろ何故貴女がやっているですか!私にもやらせてください!」
イギリスの貴族で淑女であるセシリアには刺激が少々強かったため本音がダダ漏れだ。
もちろんスコールのこの行為に反応するのはセシリアだけではなく千冬もだ。
「そうだな、ミューゼル先生がやる必要も無いだろう」
「あら、二人とも嫉妬かしら?クロエも抵抗してないことだし問題は無いでしょう?」
スコールもそこで煽らないで欲しい。そんな事をすれば後が面倒くさくなるのは目に見えている。
「ほうクロエ、お前はその女に身体をいじくり回されても抵抗しないと。体を許しているのか?」
「そうですわクロエさん!マッサージでもなんでも私がいたしますわ!」
何だか話が飛躍した気がするが聞こえない。あーだこーだと三人で言い合っているが聞こえない。聞こえないったら聞こえない。
それから暫くしてやってきたメガネシリコンであるやまだまやが部屋に入るまではずっと耳を塞いでいた。途中胸以外も触られた気がしたが気にしない。と言うかここにいる人が皆胸が大きいのは嫌がらせかなにかなのだろうか。
どうでもいいうえにかなり話が飛ぶのだが山田先生の名前は回文というものらしい。織斑弟が言っていた。どうでもいいことなのだが。
────その織斑弟なのだが絶賛ピンチ中である
バトルものなのにバトルがシーンが一切無いと言う事に気が付いた今日この頃。
次回はワンサマーに続いて主人公の初陣です。
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