錬鉄と騎士王のduet (氷結cool)
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プロローグ

お久しぶりの方はお久しぶりです。初めましての方ははじめまして。氷結coolです。暇潰しに緋弾×fateに手を出してしまいました。
文章がメチャクチャな所が多くありますがお楽しみ下さい


 

 

少年は言った

 

"かつて己と同じものだった、しかし私とは異なった少年"

 

 

死んでいく人を見たくない

 

助けられるものなら苦しむ人々全てを助けることは出来ないかと

 

"そんなものは夢物語でお伽噺の中の話だ"

 

 

少年が切り伏せようとしていたものは自分自身

 

信じていくもののために剣を振るった

 

"夢を諦め、夢を偽善と断じた私を奴は打ち負かそうと剣を振るった"

 

 

 

戦いは終わり、引き返す道などもはや存在しない

 

"結局私は負け、愚かな己殺しを諦めた"

 

 

 

ただ、答えは得た

 

後悔はある

 

やり直しなど何度望んだかわからない

 

"その果てに己を殺そうとしたのだから"

 

 

この結末を未来永劫、エミヤは呪い続けるだろう

 

だがそれでも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は間違えてなど......いなかった」

 

"私が夢見、その夢に向かって駆け抜けた日々は努力は決して無駄ではなかった、間違えてなどいなかったと今ならそう思えるのだから"

 

 

 

 

 

 

▼ ▼ ▼

side エミヤ

 

 

あれから一体どれ程の時間が流れたのだろうか

 

それすら解らぬほど戦い続けた

 

アラヤの奴隷ー守護者ーとして様々な世界に赴き、人を殺し続けた

 

守護者は私の願った"人を救う"などというものではなかった。人類の滅亡を回避する為にその原因となったもの全てを皆殺しにして起きた事をなかった事にするー掃除屋ーに過ぎなかった。

そして私は磨耗の果てに理想に裏切られ、絶望した。

 

そんな私が願ったのはかつての己の殺害。無駄だとわかってはいたが、私はそれだけを希望とし自分のー守護者ーとしての役割に徹してきた。

 

そして、ついにその機会はやって来た。

 

ーー聖杯戦争ーー

万物の願いをかなえるという"聖杯"

 

聖杯を求める七人のマスターと、彼らと契約した七騎のサーヴァントがその覇権を競った。

他の六組を排除し、最後に残った一組のみが、聖杯を手にし、願いを叶える権利が与えられる。

それはかつて私がマスターとしてセイバーと共に挑んだ戦い。

私はサーヴァント、アーチャーとして魔術の師であった遠坂 凛によって召喚された。

 

私は当然、かつての自分ー衛宮 士郎ーの殺害をなそうとした。しかし、マスターである凛はこともあろうに魔術師としても戦士としても未熟な衛宮 士郎と組み始めた。

ゆえに私は凛との契約を切り、凛を裏切った。

 

凛を拐い、凛を救うためにやって来た衛宮 士郎を殺そうとした。

 

しかし、私は負けた

 

奴が戦っていたのは私などではなかった。奴が戦っていたのは自分自身。己が信じているもののために戦っていた。

奴は戦いの最中、叫んでいた。

 

 

"この夢は..決して、間違いなんかじゃないんだから!"

 

 

 

私がかつて夢見、間違いだと断じた養父から受け継いだ"正義の味方"となる夢を奴はそう言った。

 

私は敗れ、散り際に元マスターであった凛が再契約を申し出た。

しかし、私はもう聖杯戦争を続ける目的がなかった。未熟者の私を凛に託せば、奴は私のようにはならない。私の戦いは終わったのだ。

 

私は凛に告げた。

「答えは得た。大丈夫だよ、遠坂。俺もこれから頑張っていくから」

 

そう、答えは得た。私が今まで間違いだと断じて来た正義の味方になるという夢は間違いなんかじゃなく、正義の味方になるためにやって来たことは無駄などではなかった。

"俺"は間違えてなどいなかった。

 

ならば、私はこの夢を張り続けられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の戦いは幕を下ろし、再び"守護者"として霊長を守るため多くのものを殺し、救ってきた。

 

 

あの日、得た答えは今もこの胸にあるが心が魂が磨耗している。私はもう長くはないだろう。アラヤも魂が磨耗した英霊など必要としない。

そんな自分の世界を見渡し、己が最後の時を待ち続けた。世界が端から崩れていくのが感覚として分かる。

 

 

目の前に広がるのは私の固有結界ー無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)ーと同じ空間だ。燃え盛る炎と無数の剣がまるで墓標のように一面の荒野に突き刺さっていた。荒野に刺さっている剣はどれも名剣、魔剣といってもいいものだがここにあるものは全てが贋物"偽物"だ。本物は何一つとしてなく、オリジナルに比べ性能が悪い。

空には巨大な歯車がいくつも浮いている。

 

私の心の在り様を移した世界とももうすぐお別れだ。世界はついに私の周りまで崩壊を進めてきた。

 

私は最後に黄金に輝く剣ー勝利すべき黄金の剣(カリバーン)ーを手に持ち撫でつけた。

結局、この剣を完璧に投影することはできなかったがそれでよかったと今では思える。この剣は私には過ぎた代物なのだ。

 

 

 

 

 

そしてついに私の世界は崩壊した。

もう何も私の視界には映らず、永遠に続く暗闇があった。

 

その暗闇に体を預け私は覚めぬ永遠の眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”・・・シロウ”

 

 

最後に懐かしい声を聴いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

side セイバー

私には信じられなかった。

私を救ってくれたシロウが抑止の守護者に至り、かつての私と同じ願いを持ってしまっていることに。

しかし、これを嘘と断じることはできない。この話を持ってきたのは遠坂 凛なのだから。

リンは涙ながらに私に言ってきたのだ

 

”私では衛宮君を止められなかった”と。

 

私はリンを責めることはない。これはシロウが悪いのだから。

シロウは自分の夢に向かって一人で勝手に進んだのだ。だから私たちも勝手にシロウを助けることを決めた。

 

 

 

"待っていてください、シロウ"

 

 

 

 

 

 

それから私は亜種の聖杯戦争に参加した。聖杯戦争は冬木にあるものだけではないのだ。

召喚されたときに目の前にいたのは当然ではあるがシロウではなかった。そのことを残念に思ってしまうが願いをかなえるためだ。贅沢は言っていられない。

 

 

 

 

 

そして激闘の末、私は召喚された残り6騎を倒した。すべての英霊を倒し目の前に現れた黄金の杯ー聖杯ーに私の願いを述べた。

 

 

 

 

 

「・・聖杯よっ、私の願いは・・・・・・・・」

 

その願いを最後に私の視界は暗闇に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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武偵殺し
武偵高帰還


どうも、氷結coolです。
今回は三人称視点でお送りします。
では、お楽しみ下さい。


あたりはすでに日が落ち、この路地裏には深い闇に包まれていた。

表通りは日が落ちても店の明かりや街頭の光で日中と変わらぬ明るさがあった。

 

しかし、路地裏には光が存在せず辺りにごみが散乱し、ネズミやゴキブリが走り回っている。普通の人ならこんなところには入らないだろう。

 

そんな路地裏に一人の男。

男は服の上からでもわかるような体格のいい男で、そこら辺にいるチンピラなら一睨みで追い返すことができるだろう。しかし、そんな男が今額に汗を浮かべ頻りにあたりを見回していた。周りを伺いつつさらに路地裏の奥に足を進めていく。

 

ガサッ

 

後ろからの些細な音に反応し振り向けばごみをあさるネズミがそこにはいた。なんだ、ネズミかと安堵の息を吐いたが。

 

 

「・・・ずいぶん、遠くに逃げたものだ。だが貴様の逃走劇もここまでだ。このままおとなしく捕まるというのなら手荒なことはしないが抵抗するというなら手荒になってしまうがどうするかね」

 

 

そのような言葉が上から聞こえてきた。男が上を向けば建物の屋上には白い髪の男が立っていた。

その男は防弾チョッキを着用し、手には見たこともないような奇妙な剣を両手に持っていた。

 

男はこの男を知っている。

 

なぜなら男はこの男から逃げてきたのだ。ここら辺の地理には精通しているので人通りが少なく、入り組んで人に見つかりにくいここに逃げ込んできた。簡単に見つかるはずはないと思っていた。

 

 

「・・なんでここに」

 

 

「教えるわけがないと言いたいところだがまあ、いいだろう。簡単に言えば貴様の考えが単純に安直だっただけだ。犯罪を犯した犯人というものはなぜか、人通りの少なく入り組んだ場所に逃げ込みやすい。故にこの近辺にある人通りが少なく入り組んだ場所ここを探しに来たのだが、まさかこんなに簡単に見つかるとは思っていなかったがな。貴様のような男は安直なところに逃げ込むということだな。」

 

 

「・・なんだとてめえ。俺を馬鹿にしてんのか。・・・武偵だろうが何だろうがここで殺してやるよっ」

 

 

そういった男がズボンに差し込んでいた拳銃を取り出した。拳銃を構え、撃鉄を起こしいまだに屋上にいる男に向かって発砲する。

 

 

しかし、拳銃から放たれた弾丸は男にあたることはなかった。あろうことか、男は弾丸を体を軽く傾けることでよけたのだ。

銃を撃った男はあり得ないとさらに銃を撃ち込んでいく。

 

 

拳銃は簡単にはよけることなどできない。確かに拳銃は一発であれば一般人でもよけることは可能であり、武偵の上位の者は、撃たれた全ての弾をよけることもできる。しかし、一般人はほとんどまぐれであり、武偵は発砲される前に弾道の軌道を予測し、弾道から距離をあけてよけているのだ。

 

 

 

 

間違っても、男のように紙一重のようにぎりぎりで必要最低限でよけることはできない。これが男が知る常識だった。

 

 

「なんで当たらないんだよッ!さっさと死にやがれッ!」

 

 

更に銃を撃ち込んでいくが遂にカチッカチッと引き金を引いても弾が出なくなった。

 

弾切れだ。

 

それを確認した男は屋上から飛び降り、手に持った剣を振るい拳銃を切り裂く。

 

縦に切り裂かれた拳銃が男の手を離れ、ガチャッと音を立てて地面に落ちたが男は意に関せずに剣を男の首筋に押し当てた。

 

 

「ここまでのようだな。おとなしく罪を償え。」

 

 

「・・・がッ!?」

 

 

男の首に剣の柄を叩き込むと苦痛の声をあげ、崩れ落ちた。

 

 

それを確認すると懐から赤を基調とした携帯を取り出しあるところに電話をかける。

 

 

プルル・・プルル・・プルル・ガチャッ

 

『・・シロウ、こちらは残念ながらまだ見つかっていません』

 

 

「いや、こちらで発見した。無力化も完了し、後は警察に引き渡すだけだ。ポイントαで合流しよう」

 

 

『さすがですね、シロウ。分かりました。先にポイントαに行かせてもらいます』

 

 

それを言うと電話が切れた。

切れたのを確認すると、男ーシロウーは今度は警察に連絡を入れ男の身元を引き取ってもらう事にした。

 

 

 

10分後

 

やってきた警察に男を引き渡し、依頼人に連絡を入れた。依頼人はご苦労だったなと言い、その後も簡単な確認事項を確認し電話を切った。

 

 

 

 

 

これで、シロウが請け負った依頼は完了した。

今回シロウが請け負ったのはイタリアに拠点を持つマフィアの逮捕。本来この仕事はイタリアの警察が負うべき仕事であるが海外にも知名度を持つシロウの実力を信用してイタリア政府が依頼を出したのだ。これが表向きの依頼の概要。ただ当然これがすべてではない。シロウは知らないがイタリア政府の狙いはシロウの実力を測るものではなく、パートナーの実力を測るものだった。イギリス屈指と言われたシロウのパートナーの実力を。

 

 

この依頼を受けて早3か月。マフィアの拠点は早く割れたのだが、問題はなかなかマフィアの仲間の全体像が判明しなかったのである。どれだけの規模があるのかを調べるのに時間が掛かった。2か月かかってようやくすべてのメンバーを確認し、今日万全の準備を整えてマフィアの一斉逮捕を行った。シロウはリーダーを含め、ほぼ全員を捕まえられたが一人だけ取り逃がしたのだ。それが先ほどの男。

 

事後処理も完了し、シロウはパートナーの待つポイントαに向かった。

 

 

 

ポイントαはシロウが泊まっているホテルのことだ。このホテルはイタリアでも有名なホテル。依頼主が政府だということだけあって宿泊場所もいいところをおさえてくれた。

流石に三か月の宿泊しているので慣れた様子で宿泊している自室に戻る。

 

自室の戻ると部屋には一人の女性。肩まである美しい金髪の女性がベットの腰かけ、シロウに背を向けていた。

 

 

「アルトリア。ただいま」

 

 

シロウは金髪の女性ーアルトリアーに話しかけた。アルトリアは声に反応し、シロウの方を向いた。

 

 

「シロウ、おかえりなさい。けがは特にないようですね、安心しました。」

 

 

「私があの程度の小物に傷などつけられはせんよ。とりあえず、依頼人に連絡をいれ完了の報告をしておいた。今日で任務は完了だ。急で悪いとは思うが明日の便で日本に戻るとしよう。」

 

 

その言葉にアルトリアは安堵の表情を浮かべた。

 

 

「それは良かった。ここの料理も素晴らしいのですが私としてはそろそろシロウの料理が食べたいと思っていたところです。・・・それにしても三か月ぶりの日本ですか。ずいぶん長いことこの任務をしていましたね。任務のせいでクラス分けの結果をまだ見ていませんのでシロウと同じクラスになれているのか心配ですね」

 

 

このようなマフィアの逮捕といった危険を伴う任務を行っていたのだがこの二人はまだ高校生なのだ。高校生がこのようなことはできはしないがシロウたちが行っているのは通っている学校が普通ではない。

 

 

 

 

 

東京武偵高校

 

凶悪化する犯罪に対抗するために新設された国家資格として”武偵”というものができた。武偵免許を持つ者は武装を許可され、逮捕権を有するなど警察に準ずる活動が可能になる。しかしあくまで武偵は金で動き、金さえ貰えれば武偵法の許す限りどんな仕事でも請け負う「何でも屋」の側面がある。

 

東京武偵校はこの武偵を養成する学校であり、二人はここに通っている。今回の依頼もこの東京武偵高校を通して、二人に依頼されたものだ。

 

通常の学校であればこのように3ヶ月もの長期の休みなど取れはしないがそれは武偵校。任務のレポートを提出さえすれば特に問題なく休むことが出来るし、本来は受けなければいけない定期テストも免除される。

 

それでいいのか武偵校。

 

そのお陰で東京武偵校は東京でも底辺に位置する偏差値を叩き出している。

 

「別にクラスが別になっても構わないだろう。授業は午前中しかないのだし、午後は強襲科のメニューを一緒にこなすのだから。」

 

その言葉にアルトリアはため息を溢した。相変わらずこの男は鈍いと思った。確かに授業は午前中しかないとはいえ、好きな男と同じ教室で授業を受けたいと思うものだ。それをこの鈍感男は気づいていないのだ。

 

 

未だに理解できていないシロウに再びため息を溢し、帰り支度を始めるアルトリアであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

シロウとアルトリアが今いるのはレインボーブリッジ南方に浮かぶ南北およそ2キロメートル・東西500メートルの人工浮島だ。二人はイタリアから飛行機にのり、東京にある人工浮島に戻ってきた。

 

そのまま二人はその足で東京武偵校の教務科に向かった。長期任務で休んだので書類を届けに来たのだ。

 

教務科はその名の通り教職員が所属しているところで前歴が自衛隊、警察OB、特殊部隊、傭兵、マフィア、殺し屋らしき人物まで多数在籍している。強襲科、地下倉庫と並ぶ東京武偵高の「3大危険地域」と呼ばれている場所のため生徒はほとんど近づくことはない。

 

そのため、教務科に近づくにつれ、先程までとはうってかわって生徒の姿が見えなくなった。

 

 

 

ただしそれは静かになることと同義ではない。

生徒の話し声ではなく、教師たちの騒ぎ声が教務科の部屋から響いてくる。

 

その声が聞こえる部屋まで歩いていき、扉を叩く。

 

 

「失礼します。衛宮 士郎とアルトリア・ペンドラゴン入ります。」

 

 

その声と共に部屋にはいるとそこは一般の職員室とは全く異なる異界だった。

 

まず目を引くのは長いポニーテールの女性。

 

名前は蘭豹

 

この近辺に響く大声を出しているのは主にこの人。

椅子に座ってはいるが足を机にのせながら昼間にも関わらず酒を飲んでいる。言っておくが現在の時刻は午後1時。間違っても職員が酒を飲む時間ではない。

 

更にこの女性は未成年なのである。年齢は19歳だったとシロウは記憶している。

 

口癖は死ね!と殺す!の二つ。

 

 

香港の「貴蘭會(グイランフィ)」というマフィアのボスの愛娘で、かつて香港で無敵の武偵と恐れられた女。そのあまりの凶暴さ故に香港では出入り禁止となり、各地の武偵高をクビになりながら転々としている。

 

そして、蘭豹の隣にいる女性が綴 梅子

常にラリっているようなダルそうな雰囲気を出しており、口には違法物だと思われるタバコを吸っている。

蘭豹とは違い、騒いではいないがこの女性も普通ではない。この人、タバコで根性焼きをやるなど真正のサディスティックなのである。なので、蘭豹と合わせて危険人物に認定されている。

 

 

そして、その隣にいるのが今回シロウ達が用のある教師である

 

高天原 ゆかり

 

東京武偵高校で探偵科の教諭。22歳。

シロウ達の元クラスの担当であり、笑顔を絶やさない穏やかな性格の持ち主だ。この変人奇人だらけの武偵校でまともな人のため、多くの人は高天原先生を頼る。

 

 

「高天原先生、お久しぶりです。長期任務での欠席書類を持ってきましたので確認をお願いします。」

 

 

そう言ってシロウとアルトリアの書類を一緒に差し出した。高天原はそれを笑顔で受けとる。

 

 

「お帰りなさい。衛宮君、ペンドラゴンさん。・・・はい、書類は確かに受けとりました。特に不備もありませんので問題ありませんよ。明日から新学期が始まりますので二人とも遅刻せずに来てくださいね。」

 

 

「・・・よお!お前ら帰ってきたのか。それならちょうどいい!いまから、殺ろうぜっ!」

 

 

高天原に書類を提出し、さっさと立ち去るつもりだったが蘭豹が話しかけてきた。

 

(最悪だ)

(最悪です)

 

蘭豹は二人のことをいたく気に入っているので暇そうなときを見計らって何時もこのようなことを言ってくるのだ。

 

 

「・・・蘭豹先生、お久しぶりです。すいませんが明日の準備が私もアルトリアもありますのでまた後日にしてもらえないでしょうか」

 

 

「あ?明日の準備?そんなものどうでもいいんだよっ!さっさと準備しなっ!準備しないならここで死ねっ!」

 

 

教師としてあるまじき発言だがこれは日常茶飯事なのでそこまでシロウもアルトリアも動じない。二人は揃って扉の方へと駆け寄り廊下に飛び出した。その勢いのまま、廊下を駆け抜け外に出る。

 

その途中で蘭豹の叫び声を聞いたが無視。捕まれば強制的に地獄の死合が始まるのだ。止まるわけがなかった。

 

数分の鬼ごっこの末なんとか蘭豹の追撃を逃げ切り、各々の自室に戻っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字、脱字等があればご連絡ください。
次回からは一人称視点に戻します


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新学期最初の朝

どうも、こんにちは。氷結coolです。
今回から本編を開始していきます。

注意点
なるべく、原作のキャラと同じ感じに書いているつもりですがこのキャラはこんな事は言わないだろう、こんな事はしないだろう、と思うような事が出てくると思います。
それについては訂正するつもりはございませんのであらかじめご了承ください。
この世界に長くいるため、性格、考え方が変わっていったとお考えください。

無理な場合はご遠慮ください。

では、それでも構わないと言う方のみお楽しみ下さい。



・・・・ピン、ポーン・・・

 

 

 

慎ましやかな音が聞こえてきた。

どうやら、音から察するに星伽がやって来たらしい。

 

私が開けても構わんのだがその場合、星伽は明らかにがっかりしたような表情を浮かべるのだ。

 

人の顔を見てがっかりするのはどうかと思うが...

 

ここは朝の7時だと言うのにも関わらず未だに眠っているキンジにでも開けてもらうとしよう。

 

それに私は今朝食の準備で手が離せん。

 

 

「キンジっ、私は今手が離せんっ!代わりにお前が出てくれ!」

 

 

大声を出せば寝室から微かに服を着る音が聞こえてくるので確りと起きてきたようだ。

 

玄関の扉が開く音と共にキンジと白雪の話し声が聞こえてくる。時々、キンジと白雪の大声がここまで聞こえてくるが近所迷惑になるからやめてほしいのだが。

 

ご近所付き合いと言うものは非常に重要なのだ。それをあいつらはわかっておらん。

 

 

「・・・おう、シロウおはよう」

 

 

「衛宮君、おはようございます」

 

 

リビングの扉の方を向けばキンジと星伽が立っていた。

星伽は確りとしているがキンジの目はまだ開ききっていない。

 

 

「ああ、二人ともおはようと言いたいところだが玄関で騒ぐのはやめたまえ。近所迷惑だ。それに早朝から星伽の様な美人を自室に連れ込んでいるのだ。隣人のやっかみで教務科にでもチクられるぞ。蘭豹のことだ、無事ではすまされないだろうな」

 

 

ここは一応男性寮なのだから、女性があまり出入りするものではない。教務科にばれれば指導という名目で蘭豹のリンチに合うことは避けられんだろう。

 

その言葉にキンジは真っ青になっているが逆に星伽は顔を赤らめている。

 

熱でもあるのだろうか。

 

 

「そんな・・美人だなんて・・・き、キンちゃん。わ、私って美人さんなのかな」

 

 

「というか、シロウ。何で俺に出させたんだよ、折角気持ちよく寝てたのに」

 

 

キンジ、貴様はもう少し星伽に優しくしてやったらどうだ。無視されて落ち込んでいるではないか

 

 

「戯けが。ただでさえお前は成績が悪いのだ、始業式に出ておかんと成績に響くぞ。それに私がいない3ヶ月がどうだったかはしらんがこれからはそのような不真面目な生活態度がとれるとは思わんことだな」

 

 

始業式に出なくても成績にはほとんど関係ないが、先生方の心象は少しは良くなる。多少の成績不振は目をつぶってくれるようになるのだ。

 

 

「分かったよ、出りゃいいんだろ。・・ところで白雪、何しに来たんだよ」

 

 

「こ、これ」

 

 

星伽は持っていた和布の包みをほどいた。

出てきたのは漆塗りの重箱。中には柔らかそうな玉子焼き、向きの揃えられた海老の甘辛煮、銀鮭、西条柿といった豪華食材が並んでいた。

 

 

「ほう、また腕をあげたようだな。すべての品が確りと下拵えも出来ているし、食べる人のことをよく考えてある良い品だ」

 

 

「ほ、本当?ありがとう、衛宮君が色々教えてくれたお陰だよ。・・キンちゃんのために作ってきたけど衛宮君も食べますか?」

 

 

「いや、有難い申し出だが今回は遠慮させてもらおう。既に朝食を作ってしまった後なのでな」

 

 

「そう言わずに食べたら良いではありませんか、シロウ。白雪の料理も美味しそうですし」

 

 

後ろを振り返ればアルトリアがそこにいた。

純白のブラウス。臙脂色の襟とスカート。

 

シミひとつない武偵高のセーラー服をきて、テーブルの上に並べてあった朝食をいつの間にか食べている。しかも、5人前はあったはずだが半分の皿が空っぽになっている。

 

別に朝食を食べるのは構わん。元々、アルトリアの分も作ってあるのだ。問題は...

 

 

「アルトリア、君は何時からそこにいた?」

 

 

「シロウが『近所迷惑だ』といった辺りからですね。それにシロウの食事があるところに私ありです。キリッ」

 

 

いや、キリッではない。

 

しかもほとんど最初からではないか。全く気がつかなかった。

ここはリビングだがそこまでの広さはない。しかも、キンジ達がリビングの入り口付近で立っているから尚更入ってきたら気がつくはずだ。

 

それが全く気がつかなかっただと...

 

 

アルトリアには気配遮断のスキルでも付いたのだろうか

 

 

キンジと星伽も驚いている

 

 

「白雪、3ヶ月ぶりですね。かわりないようで何よりです。あ、シロウお代わりお願いします」

 

 

いや、あたり前のように茶碗を差し出さないでほしいのだが

 

アルトリアから茶碗を受け取りご飯をよそっていく。昨日の晩に炊いた筈なのに炊飯器のご飯が半分になっているのは気のせいだろう。

 

 

「アルトリアさん、お久しぶりです。お変わりないようですね。あっ、キ、キンちゃん、これも食べて」

 

 

星伽、おまえもマイペースな気がするがもはや何も言うまい

 

さて、では私も朝食を食べることにしよう。早く食べなければアルトリアに食べつくされてしまうからな

 

 

「・・・えっといつもありがとな」

 

 

「えっ。あっ、キンちゃんもありがとう・・・ありがとうございますっ」

 

 

「なんでもお前もありがとうなんだよ。ていうか三つ指つくな。土下座しているみたいだぞ」

 

 

「だ、だって、キンちゃんが食べてくれて、お礼を言ってくれたから」

 

 

星伽が嬉しそうな顔を上げ、蚊の鳴くような声を出す。

全く星伽は何故そんなにオドオドするのだろうか。

 

私と話すときはそうでもないのだがな

 

 

それにしてもあのキンジが珍しく食事の礼を言うとはな。こいつは食事には頓着がないのか何時も適当なのだ。放置していれば、この寮のしたにあるコンビニでカップ麺か出来合いの弁当しか食わんからな。あれは栄養が偏るからやめておけといっても私がいないときは食べているのだろう。今日からは確りと栄養管理をしなければ...

 

「ご馳走さまっ」

 

 

突然キンジが勢いよく立ち上がった。

いきなり立ち上がるとはキンジの奴、いったいどうしたのだろうか。

そう思った私は...つい、見てしまった。

 

 

 

 

私がいるのはキンジの丁度真後ろ。そしてキンジの目の前には星伽が座っている。その星伽は三つ指をついておりセーラー服の胸元が緩んでいる。

 

そこには深い胸の谷間と黒いレースの下着が...

 

 

 

(・・・・黒だとっ)

 

高校生らしからぬ、けしからん下着から急いで目をそらす。

 

 

「・・・シロウ、どうかしたのですか」

 

 

「・・っ、いや何でもないさ。アルトリア」

 

 

「そうですか。それならよかった」

 

 

それだけ言うとアルトリアは食事を再開した。

 

ふう。どうやら不可抗力とはいえ、星伽の下着を見たことはばれなかったようだな

 

 

「それにしても、白雪はまた一段と凄い下着をしているものですね」

 

 

「ああ、まさか黒とは・・・あ」

 

 

「・・・シロウ。やはり貴方は白雪の下着を見たようですね」

 

 

しまったッ

 

当たり前の様にいわれたせいでつい普通に返してしまった

 

アルトリアの目から光が消えている

このままでは不味いッ

 

「いやっ、待ってくれアルトリア!あれは不可抗力であって私は断じて自分が意図して見たわけではない!」

 

 

「では何故、先程は誤魔化したのですか。不可抗力なら私もとやかく言うつもりはありませんでしたよ。誤魔化したと言うことは少しでも欲があったということ。それは覆されない事実です。確かに白雪は同性の私からみても魅力的な女性ではありますが、そんなに胸が良いのですか、そうですか。大きくない胸は胸ではないと言いたいのですか。私の胸では満足できないということですか。そんなことを思っているシロウには少し指導が必要な様ですね」

 

 

 

なんでさっ

 

そう叫ぶ余裕さえなかった。

アルトリアが突如として私の前から姿を消し、直後に首元に激痛が走った

 

 

 

何が起こったのか理解できぬまま私の視界は暗闇に包まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

「・・ウ・・・・ロウ・・・・シロウ、起きてください」

 

 

体を揺さぶられているのを感じて目を覚ました。

どうやら、私は寝てしまっていたらしい。

 

 

「・・・アルトリアか、私は一体・・くっ、なんだ。首が痛い」

 

 

「さあ、寝ていたようなので寝違えたのかもしれません。後で湿布を貼っておきましょう。それにしても、シロウがうたた寝をするとは珍しい。やはり任務の疲れが完全に抜けきっていないのでないですか。今日は始業式の後にはHRくらいしか授業はありませんし、ゆっくりと過ごすとしましょう。いえ、無理矢理にでも過ごしてもらいます。貴方は昔から休むということを知らなすぎますから。」

 

 

私は寝てしまっていたのか。

不甲斐ない。疲れが完全に抜けきっていなかったことに気がつかんとは。アルトリアには無用な心配をかけてしまったか

 

 

それにしてもこの首の痛み

 

寝違えというより強い衝撃を与えられたような感じの痛みなのだが気のせいか?

 

それに何かを忘れているような?

 

 

「気のせいですよ、シロウ」

 

 

「いや、普通に思考を読まないでほしいのだが」

 

 

「それよりもシロウ。そろそろ出た方がいいのではありませんか」

 

 

時計を確認すれば、時刻は7時35分

 

7時58分のバスには乗らなければ遅刻してしまうのでそろそろ出ないと不味い

 

 

白雪はもう学校に行ったようだな

キンジはパソコンでなにかやってるがメールのチェックか

 

 

「はい、シロウのグロック17と防弾制服です」

アルトリアから受け取った防弾制服を羽織り、ベルトにホルスターごと帯銃する。

 

校則で『武偵高の生徒は、学内での拳銃と刀剣の携帯を義務づける』というものがある

 

普通ではないが荒事専門の高校だ。常に武装は整えておけと言うことだろう。

校則ならば従う他ない。

違反をして蘭豹に授業の一環で動く的扱いされたくはない

 

 

「さて、そろそろ出るとしよう。どうせ、武偵高の生徒のことだ。時間ギリギリで学校に向かうだろうから、早目に行かなければな」

 

 

「そうですね。では、一緒に行きましょう」

 

 

「ああ、キンジ。メールのチェックをするのは構わんが遅刻するなよ。確りと戸締まりをするように」

 

 

 

PCでだらだらしているキンジに戸締まりを頼み、アルトリアを伴って学校に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はこの時、キンジをおいて学校にいったことをどう思えばいいのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜなら、今日この日が後に『(エネイブル)』と呼ばれ、世界で恐れられた遠山 キンジと

 

 

 

後に『緋弾のアリア』と呼ばれ、世界中の犯罪者達を恐怖させる神崎・H・アリアの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出会いの日となる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私とアルトリアも巻き込まれるのだが、これについては別に怒っても構わんのだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字、脱字等があればご連絡ください。


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神崎・H・アリア

どうもこんにちは、連休体調不良でぶっ倒れた氷結coolです。
お風呂掃除を下着一枚でやるものじゃありませんね。

後、感想の方ですが返信はしておりませんがしっかりと読ませていただいております。ありがとうございます。

では、錬鉄と騎士王のduetをお楽しみください


「先生、あたしはアイツの隣に座りたい」

 

 

そういって指を指した先にいたのは呆然とした様子の遠山キンジがいた。

指を指したのは先ほど高天原先生が「うふふ、じゃあまず去年の3学期に転入してきたカーワイイ子から自己紹介してもらっちゃいますよー」と紹介をうけた桃色のツインテールが特徴的な少女だ

 

 

 

名前は神崎・H・アリア

 

 

 

私も含めこれから一年間授業を共にするクラスメイトが一瞬絶句し、私とアルトリア以外の全員が

 

わぁー!と歓声をあげた

 

ズリッと、キンジが椅子から転げ落ちる

 

その拍子に、椅子に後頭部をぶつけているが大丈夫なのだろうか

 

「な、なんでだよ!」

 

 

「よ・・・よかったなキンジ!なんか知らんがお前にも春が来たみたいだぞ!先生、オレ、転校生さんと席代わりますよ!」

 

 

そういったのは190㎝に近い男ー武藤 剛気ー

乗り物であればスクーターからロケットまでなんでも乗りこなせるといった特技を持つ車輌科の優等生だが時々理解ができんことがある

 

 

神崎がキンジの隣に座りたがっているのはわかるのだがなぜそれいいことなのだろうか

それに春が来たと言っているが春ならもうとっくにきているはずだが

相変わらずアイツの言っていることはわからんな

 

 

「キンジ、これさっきのベルト」

 

 

いきなりキンジの名前を呼び捨てだと...

それに何故彼女がキンジのベルトを...

 

 

「理子、分かった!分かっちゃった!--これフラグバッキバキに立ってるよ!キーくん、ベルトしてない!そしてそのベルトをツインテールさんがもってた!これ謎でしょ謎でしょ!?でも理子には推理できちゃった!」

 

 

峰か...

 

探偵科のAランクと能力的には問題ないのだが彼女も武藤とは少し違うが話が少しわかりにくいうえに調子が狂わされることが多いので苦手な部類に入っている

 

 

「キーくんは彼女の前でベルトをとるような何らかの行為(・・・・・・)をした!はっきり言うとエッチなことをした!そして彼女の部屋にベルトを置いてきた!つまりーーー二人は熱い熱い恋愛の真っただ中なんだよっ!」

 

 

ほう・・・・

 

つまりキンジは神崎と会っていたから始業式に遅れたと・・・

 

クラスが盛り上がる中、私はキンジの後ろに立ち、頭にグロックを突きつけた。

 

 

「・・・キンジ。貴様、朝に始業式には確りと出るようにといっておいたはずだが。それを貴様は神崎と会うために休んだと。・・・・・・キンジ。言い訳があるのなら聞こう。無いのなら、

 

 

 

劣情を抱いたまま、溺死しろ」

 

 

 

 

まぁ、こうは言ったものの、おそらくこいつはなにもしていないのだろう。神崎となにかはあったにしろ峰がいっていたようなことはないと断言できよう。

 

 

こいつは極度の女嫌いだからな

それに、そんなことをする度胸もあるまい

 

 

「おいっ、シロウっ!?何で俺の頭に銃を突きつけるんだよっ!俺はなにもしてないっ、朝にチャリジャックに会ったときに助けて貰っただけだって!」

 

 

チャリジャックか

 

先ほど教務科から送られてきた周知メールでの自転車爆破事件の被害者はこいつだったのか

 

色々と事件に巻き込まれるものだ

 

 

「ほぅ、では何故、お前のベルトを神崎が持っている。ベルトなど、落とすものではあるまい」

 

 

「それは神崎のやつのホックが壊れてたからベルトを貸してやっただけだっ!」

 

 

「なるほど、では貴様は一切やらしいことは無かったと言えるのだな」

 

 

その言葉にキンジは言葉に詰まった。

 

 

「言葉に詰まったな、キンジ。ということはなにかしらあったということだな。正直に言え、さもなければ星伽にこの事を言うがどうするかね」

 

 

この言葉にキンジの顔が青くなっていく。

恐らく、頭の中では星伽からの制裁がよぎっているのだろう

 

 

 

神崎の方を見てみれば顔を真っ赤にしながらプルプルと震えている。

 

どうやら、少しふざけすぎたようだな。キンジのお仕置きもここまでにした方が良さそうだ

 

 

 

しかし、遅かったか

 

 

ずぎゅぎゅん!きんっ!

 

 

突然、鳴り響いた二発の銃声がクラスを一気に凍りつかせた。

 

神崎がガバメントの2丁を抜きざまに撃ったのである。

 

 

「れ、恋愛なんて・・・くっだらない!それにあんたもいちいち検索なんてしてんじゃないわよ!全員覚えておきなさい!そういうバカなこと言うやつや聞いてくるヤツには・・・」

 

 

これが神崎・H・アリアご武偵高の生徒達に発した最初の言葉だった

 

 

 

 

「ーーー風穴開けるわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ、風穴を開けるのか、貴様は。しかし、妙だな。私は今、先ほどの条件に当てはまっていなかったようだが、何故貴様は私の大切なものに風穴を開けた?

 

 

 

 

 

ーーーーアリア」

 

 

風穴を開けるといった神崎の後ろに黒いオーラを纏ったアルトリアがそこにはいた

 

口調も変わっている

 

 

手には私が昼食にと持たせたサンドイッチの欠片が...

 

 

 

 

とりあえず、何故彼女が早くも弁当を食べているのかは置いておくとして

 

 

アルトリアの机を見ると机には弾痕が一発あった

 

私は全てを悟ってしまった

 

 

 

恐らく、先ほど神崎の撃った弾が跳弾しアルトリアの食べていたサンドイッチを貫いたのだろう。

なんという偶然。少しずれればアルトリアが死んでいた。

 

 

 

まぁ、当たる軌道なら直感で避けていただろうが

 

 

 

 

「・・・・あ・・・アルトリア!な、何であんたがここにいるのよ!イギリスにいるはずじゃ!?」

 

 

「いつの話をしている。私は去年からここに通っているが...ああ、そう言えば貴様には言っていなかったか。まぁ、それはいい。それよりも、貴様のせいで台無しになった昼食をどうしてくれる!シロウが私のために作ってくれた昼食を!」

 

 

「そんなもの知らないわよーー!」

 

 

そんな神崎の声が武偵高中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

あれからアルトリアを宥め、なんとか一日を乗り越えた。

私は両手に数日分の食料を入れたビニール袋を持ち、学校では聞けなかった神崎のことをアルトリアに聞くことにした。

 

 

「そういえば、アルトリア。君は神崎と面識があるような会話をしていたが、いつ会ったんだ」

 

 

「アリアとですか。アリアとあったのはイギリスにいた時ですね。イギリス武偵高での任務で一緒になったのが始まりです。その任務のあとにしつこくパートナーになりなさいと迫られて大変でした」

 

 

なるほど。イギリスに居たときにあったか

 

それにしても、アルトリアをパートナーとして選ぶということはあの神崎は相当な実力者ということになる。

 

武偵というものはパートナーを探すとき、なるべく自分と同等の実力を持つ者を選ばなければならない

 

動きが違いすぎるのだ

実力が離れすぎると動きに差が出てきてしまい、両者とも本来の実力が発揮できない

 

ゆえに武偵は実力が同等のものと組む必要がある

 

 

「なるほど。では何故、アリアとパートナーにならなかった?流石に君ほどの実力は無いにしろ、相当な実力者なのではないか」

 

 

「確かに彼女は優秀ですね。確か、強襲科のSランクの筈ですから。CQCや拳銃の扱い、剣術も大したものでした。しかし、私のパートナーはシロウ。貴方をおいて他にはいないと出会ったときにもいったはずですが」

 

 

アルトリアが真摯な瞳で私の方を見てくる。

その瞳には一切の迷いはなく、心からそう思ってくれているのが感じられる。

 

 

 

あの戦いで私はアルトリアと共に戦えなかった

 

いつも足手まといにしかならず、実力が無いことを嘆いた。

だが、この世界でアルトリアはパートナーは私だと言ってくれた。アルトリアに追い付こうと足掻き、夢を果たすために親しい人を置き去りにして、果てに絶望した私を彼女は認めてくれた。

 

それが嬉しくもあり、恥ずかしさもある

 

 

私がやって来たことは無駄ではなかったとそう思えるのだから

 

 

つい、アルトリアから目をそらしてしまう。

そんな私を見て、アルトリアはクスクスと笑っている。

 

 

「何かね?人の顔で笑うとは君はいつからそんな失礼なことをするようになったのかね」

 

 

「すいません。やはり、何時まで経ってもシロウはシロウなのですね」

 

 

「・・・私はもうかつての私ではないと思うがね」

 

 

それだけ言うとアルトリアの顔を見ずに寮へと歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

「いいえ、貴方は変わってなどいませんよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方は私が愛した貴方のままです、シロウ。」

 

 

 

風にのって、そんな言葉が届いた気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

私に割り振られた寮の部屋に戻るとまず目についたのは見に覚えのないトランクが鎮座していた

 

ブランド物のストライプ柄のトランクだ

 

誰のものだ?

 

この部屋に来るものは限られている

この部屋の住人である私とキンジを除けば、アルトリアと星伽のみ

 

来客でも来ているのか?

 

疑問に思ったが取り敢えず、食材を冷蔵庫に入れねばならないので、リビングの扉を開くと

 

 

 

「ーーーキンジ。あんた、あたしのドレイになりなさい!」

 

 

耳を疑う声が聞こえた。

 

 

リビングには窓付近にいる神崎とテーブルにいるキンジ

 

すると、神崎が私に気づいた。

 

 

「あっ、あんた。朝にキンジの後ろにいたヤツね。あんたもこの部屋なんだ」

 

 

「そうだが、どうやらお取り込み中だった様だな。すまないが食材を冷蔵庫に入れねば、痛んでしまうものもある。少しだけ失礼させてもらう。何、用事が終われば直ぐに部屋から出ていこう。君達が何をしていようが私は関与はしない」

 

他人の性癖にとやかく言うのは筋違いだ。キンジがどの様な性癖を持っていようと私は気にはすまい。

 

 

「おいっ、シロウ!何か勘違いしているだろう、お前!」

 

 

「そんなことよりもキンジ!あんたはお茶のひとつも出さないつもり!無礼なヤツね!」

 

 

キンジが非常に不服そうな顔をしている。しかしそれでもコーヒーを淹れるためなのか台所に来た

 

 

「キンジ、結局これは一体どのような状況だ?ああ、それとコーヒーは私が淹れておこう。どうせお前のことだ、コーヒーの種類などわかるまい」

 

 

「ああ、サンキュー。それと理由なんて知るかよ。いきなり押し掛けてきてドレイになれって言われただけだ」

 

 

「そうか、まあこのあと彼女が説明してくれることを祈るとしようか。・・コーヒー出来たぞ。お前の分もあるから飲むといい」

 

 

キンジはありがとと言いながら神崎の分のコーヒーも持っていった

 

神崎はキンジから受け取ったカップを両手で持ち鼻を近づけ匂いを嗅いでいる

 

 

「へぇ、いい匂い」

 

 

「シロウが淹れてくれたんだ。有り難く飲めよ」

 

 

「ずず・・・・美味しい。日本でここまで美味しいコーヒーが飲めるなんて思わなかったわ。シロウって言ったわね、中々やるじゃない」

 

どうやら私のコーヒーは彼女のおきに召したらしい

コーヒーはここ最近淹れていなかったから不安だったが大丈夫のようだ

 

 

「そうか、それはよかった」

 

 

「それよりだ、今朝助けてくれたことは感謝してる。それにその・・・お前を怒らすような事を言ってしまったことは謝る。だからって何でここに押し掛けてくる」

 

 

「わかんないの?」

 

 

「分かるかよ」

 

 

「あんたならとっくに分かってると思ったのに。んー・・・でも、そのうち思い当たるでしょ。まあ、いいわ。ねぇ、そんなことよりお腹すいた」

 

 

キンジと神崎の話を聞いているが話が全く噛み合っていない。

神崎の自分主体の話し方のせいだろう。自分が分かっていることを他人に強要している、この手の人物は大抵人の話を聞かない。故に知りたければ自分で考えるしかないだろうな

 

 

「なんか、食べ物ないの?」

 

 

「知らねーよ」

 

 

「知らないってことはないでしょ。あんた普段なに食べてんのよ」

 

 

「シロウがいるときはシロウが作ってくれるものを食べてる」

 

 

「へぇ、あんた。料理もできるんだ。じゃあ、私の分も作りなさいよ。そろそろ、夕飯の時間でしょ」

 

 

何故、神崎に命令されているのか謎だがまあ構わんか。

アルトリアがいるから、多目に作るということに慣れている。一人増えたところで手間はたいして変わらん

 

 

では、神崎にも満足のいく夕食を作るとしよう

 

 

 

 




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