灰かぶりは舞踏会の夢を見る? (焔勅)
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その1
とりあえず公開。
リアルの都合と他の作品の関係で更新速度は激遅です。
【本編】
アイドル。それは、特別な存在。
アイドル。それは、夢を与える仕事。
アイドル。それは、選ばれた者だけがなれる。
目の前の男は私にそう語ると、どう思うかと尋ねてきた。
私の名前は茂庭
都内の私大に通っている。
実家が自営業なため、跡を継げばいいと考え、就活などしてはいない。
既に、卒論も口述のみとなり、暇しているところを、この男性に呼び止められた。
男性はスーツを身に纏い、体育会系のがっしりとした体格をしている。
彼は、名刺を取り出しながらスカウトしに来たと言う。
名刺には小昏芸能株式会社 社長 小昏 洋志とある。
聞いたことのない会社だが、両親と面識があるようで、手紙を持っているらしいため、近くの喫茶店で話を聞くこととなった。
そして、席に着くなりアイドルというものについて尋ねられたのだった。
「芸能界には詳しくはありませんが……。
実力が無ければ仕事が来ないのですから、ある種、間違っていないのでは?」
そういうと、あからさまに落胆した様相を見せる。
「確かに、カリスマを含む実力は必要だ。
しかし、実力というものはレッスンで身に着くものだと思わないか。
ともすれば、特別で選ばれた存在などというのは間違いではないかね!」
大仰に腕を広げて熱弁すると、周りの席から注目を浴びていることに気が付き、咳払いをして落ち着いた口調で言葉を続ける。
「ワタシはだね、どんな女の子でもアイドルになれると思うのだよ。
そこで、アイドルというお姫様に憧れる女の子をシンデレラにする、シンデレラプロジェクトを立ち上げようと思うんだ。
このプロジェクトで重要なのは女の子たちをシンデレラに導く魔法使い……プロデューサー。
飛李くん。君をプロデューサーとしてスカウトしたい。」
「なぜ、私なのですか?」
小昏社長の話を聞いている間、同時に手渡されていた両親からの手紙を読んでいた。
確かに両親と旧知の仲らしく、自分のことを知っていたとしてもおかしくはないが、実際に会ったのは今日が初めてだ。
芸能関係の勉強もほとんどしていないのに、何故この人は自分をスカウトするのだろう。
「……この業界は、基本的に恋愛はご法度なんだよ。
だがね、恋する乙女は美しいという。ワタシは恋愛を禁止したくないんだ。
そこで、スキャンダルを完全に封じる方法を考えた。
倫理的にはあまり認められることではないが、所属するアイドルたちには決して報われない恋をしてもらいたい。
聞いたところ君は、その容姿で幼いころから、女性に囲まれていたのに誰とも交際していないらしいね。」
これも、両親から聞いたのか、確かに交際の経験は一度もない。
モテている認識はあった。告白されたこともある。
しかし、中高の時は自分が、ハーフだということに劣等感があった。
大学で留学生や、他のハーフと接するうちに解消されたが、当時はこんな自分が、とその気にならなかった。
大学で、劣等感が解消された後は、好きなヒトが居たがフられてしまった。
だから、交際経験がない。
「身持ちが固く、悪い噂もない。
その話を聞いた時、アイドルに惚れてもらう役には君が適しているとワタシは考えた。
それに……さっき君を実際に見たとき、何というか。直感が働いたんだ、これは運命。
偉大な先人の言葉を借りるのならば、ティンと来たんだ。
どうだね、君とアイドルには辛い思いをさせることになるだろうが、受けてはくれないか。」
「……正直、あまり気が乗りません。
社長の言い分は自分勝手ですし、親の紹介があっても、あまり信用できません。
ですが、私もその運命を信じたいと思います。
是非とも私を雇ってください。」
これから何が起きるか。
どんなアイドルをプロデュースすることになるか。
私は笑みを隠しきれず、互いに笑いながら握手を交わす。
「ああ、所属アイドルなんだが、一人しかいないからね。
めぼしい人が居れば、スカウトしてくれ。」
……え?
1ページ当たりの長さがしばらく安定しないと思います。
台本書きのように【名前「」】のほうが良いですかね?
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その2
前書きは基本作者の愚痴なので読み流し推奨です。
小昏社長との話が終わり、正式に雇用契約を交わした翌日、私はとある人物に連絡し、会う約束をしていた。
会う場所として、指定したのは大学のゼミ室。
呼びだした相手は同じゼミに属している女生徒のため、ゼミの開講時間の少し前に来てもらうよう頼んだ。
相手は自分と同じく大学の人気者。
少しでも噂になると周りがうるさくなるため、共通するゼミを隠れ蓑として使う。
呼んだ相手は、東郷あい。
男性よりも、イケメンだと女生徒からの人気の高いクールビューティーだ。
「さて、私を呼んだのは、どういう用件かな。」
指定の時間のちょうど5分前になるとゼミ室へと入ってきた、彼女。
ずいぶんと余裕な態度をとってはいるが、意図的に接点を作らないようにしていた相手からの呼び出しだ。
心の中では、さまざまな憶測が飛び交っているだろう。
「来てくれてありがとう。
ゼミまで時間はあるが、単刀直入に言うよ。
君にアイドルになって欲しい。」
私の言葉がよほど、予想外だったのだろう、きょとんとした様相を呈している。
私の時は、前置きがあったため、スカウトされたときも冷静でいられたが、突然すぎる言葉に人は反応ができなくなるのだろう。
「……すまない。
私の聞き間違えだろうか。
君の口からアイドルという言葉が聞こえた気がしたんだが?」
脳が処理をしきれていないのか、それともよほど私のイメージに無かったのか、とぼけたように聞き返す。
当然、私は同じ言葉を放つ。
「君にアイドルになって欲しいと頼んでいる。
先日、就職先が決まってね。プロデューサーとスカウトを兼任することになった。
東郷さん。貴女は常々、自分に自信を持っていて、取り巻きの女の子に対して女性としての魅力をアピールしている。
アイドルに興味があるんじゃないか?」
「そうか、君がプロデューサーね……。
確かに私は、自分の魅力に自信を持っているさ。
しかし、女性であることをアピールした覚えはないね。
同性愛の気がないから、彼女たちにそれを示しただけのこと……。
でも、アイドル……か。どうやら君は思っていたよりも面白い人間のようだ。
いいだろう。私が皆を魅了させるために、君にも存分に働いてもらうから、覚悟するように。いいね、プロデューサーさん。」
よし、まずは一人目。
すんなりとスカウトに成功した。
「ところで、契約書を交わす前に会社の実績を知っておきたいのだが、まず所属人数は何人だい?」
「……一人。」
「もしかして、アイドル部門は新しく設立されたとかかい?」
こちらの言葉を冗談ととなったのか、笑顔で聞き返してくるが、所属アイドルは一人しかいない。
しかも、私もまだ会ってはいない。
こちらが無言でいるとこちらの事情を察したように顔がゆがむ。
「新しく開業したということか……。
だから、ロクな説明もせずにスカウトしたんだね。
まぁ、約束した以上は反故にする気はないけれど、詐欺まがいでは信頼されなくなると覚えておくといい。」
分かってはいる。
しかし、実績がない以上は、まずは人数だけでも増やして、実績を作らなければならない。
当然、契約書を交わすときには詳しい説明が必要なので、断られることも覚悟している。
しかし東郷さんを含めた、今日スカウトする3人ならば言質さえ取れば、断ることはないと踏んでいる。
「この後、まだ二人スカウトする予定だよ。
詳しい話はその二人と後日、事務所でしよう。
住所は名刺に書いてあるから確認しておいてくれ。」
昨日、小昏社長から支給された名刺入れから一枚を取り出し、渡す。
「……ふむ。
随分と自信があるようだけれど誰を誘うんだい?
まさか、君のハーレムメンバーか?」
ハーレムを形成した覚えはないが、いつのまにかその名で知られるサークル。
当然、健全なサークルで、正式には第二文芸サークル『テ・セル・スカープ』。
「まぁ、そんなところ。
さて、そろそろ、ゼミの時間だ。
今日も噂が立たないよう、離れて作業をしようか。」
お互いカバンからノートパソコンを取り出して、作業を開始する。
論文は完成しているので、アイドル業界に関する情報の収集だ。
スカウトマンとしてのスカウトに関する常識。
プロデュースする上での暗黙の了解。
伝説とまで言われる765プロのプロデューサーが書いた書籍など。
プロデューサーとして最低限、必要な知識を取り入れる。
……気が付くとゼミが終わっていた。
次回は、キュートとパッションを一人ずつで、二人スカウトの予定です。
キュートは決定済み。
パッションが3人から悩み中……。
プロデューサーの口調が安定しない。
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その3
卒論もどうにか提出でき、残りは口述のみ!
……心配だらけですけどね!!!!
ゼミが終了した。
本日の講義は、これ以外にはない。
卒業に必須な単位は取得済みなので、受ける講義は資格系統だけで暇な時間が多くある。
こうした暇な時間には、サークルに顔を出すことにしている。
私の所属する第2文芸サークル【テ・セル・スカープ】には、お茶会という意味がある。
主な活動内容は第1文芸サークルと同じく、文芸作品の制作。
しかし、【テ・セル・スカープ】では、優雅にお茶を飲みながら、という条件がつく。
研究という名目で読書に勤しむメンバーもいるため、修羅場の第1、楽園の第2と呼ばれている。
女性メンバーばかりということもあり、ハーレム扱いされるのも仕方がないのかもしれない。
サークル用に充てられた教室に着くと先客がいた。
相原雪乃
一年下の後輩ではあるが、【テ・セル・スカープ】のサークルリーダーでもある。
そして、スカウト予定の二人目だ。
「あら、いらっしゃいませ。
フェイさんも紅茶で良いかしら?」
雪乃さんは作業を一時中断し、席を立つ。
大きな白い円形のテーブルには、飲みかけの紅茶と栞の挟まった本、お菓子の乗ったティートレー、プリティーピンクの薔薇が生けられた花瓶が置いてある。
茶葉の準備が終わった雪乃さんは順番に、卓上IH調理機、小型のヤカン、陶磁器のティーポットを運んで来た。
お湯は、沸騰直後の100℃。
3分程の蒸らし時間が、過ぎるまでは話かけてはいけない。
カップは注ぐ直前に保温庫から取り出す。
以上が雪乃さんが決めたルール。
一度、破った時にはしばらくの間、話を聞いて貰えなかったので、待たなければならない。
と、その時。
「おはよーございまーっす!!」
教室の扉が開き、大きな声の挨拶が響き渡る。
入ってきたのは、仙崎恵磨。
ショートの銀髪、ピアスにチョーカーとパンキッシュなファッションが目立つ後輩だ。
サークルのメンバーではないが、縁があって遊びに来るようになった。
「恵磨ちゃん、いらっしゃい。
お湯が沸く前でよかったわ。一緒にお茶しましょう。」
「あざっす!って、あれ?
約束よりも早いけど、先輩もいたんだね!」
そう、彼女はスカウト予定の三人目。
講義が終わってからの約束だったが、休講にでもなったのだろう。
ちょうどいいので、紅茶が淹れ終わるのを待って、二人にスカウトの話をする。
話をする内容は東郷さんの時とそれほど変わらない。
まずは直球で、アイドルにならないかと誘う。
勿論、名刺もしっかりと渡す。
「私たちをアイドルにスカウト……ですか?」
私の言葉を確認するように、聞き返す雪乃さん。
肯定の意味で首を縦に振ると、悩むそぶりを見せる。
雪乃さんは、来年の卒業後に実家のある秋田に戻り、花嫁修業をすると聞いていた。
あと一年あるとはいえ、実家に戻ってしまえばスカウトは難しい。
なにより、彼女は私に好意を持っていて、実家に戻るのを良く思ってはいないことを知っている。
しかし、悩む雪乃さんとは対照的に、恵磨は悩みもせずに即断する。
「いやー……アイドルとかムリじゃね?アタシこんなだし。
それこそ、雪乃さんみたく清楚で可憐なカンジじゃないとダメじゃないのー!?」
まさか、これほど早く断られるとは思ってもみなかった。
恵磨にしても、異性として好意を持たれていると感じていたため、すこしは悩むものと思っていた。
しかし、断る理由からして説得の余地はあるだろう。
だからこそ、ここから畳みかける。
まずは、断る形になっている恵磨の説得からだ。
相手のココロに真摯に訴えかけるには、目をしっかりと見据えることが重要である。
私は恵磨の肩を掴むと、恵磨の瞳をひたすらに見つめ、自分の想いを告げる。
「……私は、いつも元気な恵磨が好きだ。
恵磨の元気さは周りの人間も元気にできる。それは、他人から好かれる才能でもあるんだ。
アイドルという仕事は、いかに好かれるかが重要なんだ!
だから、恵磨の才能はアイドルとして適してる。
それに……、パンクなアイドルってのも、いいと思うよ。」
「あー……なんてか、こっぱずかしいね!
うん。先輩がそんだけ言うんなら、アタシやってみるよ!」
恵磨はこれで良い……。
こぶしを握り、笑顔でガッツポーズをしているあたり、ヤル気に満ちているのだろう。
次は雪乃さんだ。
雪乃さんの説得はどうやって行おうかと考えながら、視線を雪乃さんへと向ける。
雪乃さんは既に悩むことを止めて、穏やかの表情で紅茶を飲んでいる。
「雪乃さん?」
意図が掴めず、眉をしかめた私に雪乃さんは語る。
「紅茶が冷めてしまいましたわ。
……お仕事のお話もいいですけれど、まずはお茶に時間にいたしませんか?」
こういった時の雪乃さんには逆らわない方が良い。
紅茶を一口飲むと、確かに既に冷え切ってしまっていた。
冷えているのに、苦みはそれほど強くなく、さわやかな香りがする。
紅茶を飲みきったところで、雪乃さんの方から話を切り出す。
「この茶葉は春に摘んだダージリンですの。
茶葉が悪くなってしまう直前の物ですが、冷めてもおいしくいただけます。
話があるとのことでしたので、この茶葉を選びましたが……。
恵磨ちゃんも私もまだ20を超えて1年2年ですが、アイドルにとっては、もう20を超えた状態。
でも、恵磨への説得が私にも響きましたわ。これでも容姿に自信はあるのです。
だから、私もアイドルになってみたいと思います。
その代り……両親の説得もありますし、行き遅れたらよろしくお願いしますわ。」
彼女の一言にドキリとさせられる。雪乃さんの方からこの段階で言われるとは思っていなかった。
彼女たちの感情を弄ぶようで申し訳なく感じるが、事務所としては都合が良い。
自分の行為が最低な行為であることを自覚し、胸の奥がチクリと痛むが、そのあたりの説明は後日東郷さんを含めてしっかりとして、納得してもらうほかない。
だから、私が今、言えることは一つだけだ。
精一杯に表情を造り、にこやかに言う。
「これからも、よろしく!」
アイドルたちの描写が無さすぎる。
次回はそこに気を付けます。
とはいえ、まだ何一つとして書いてませんが……。
次は3人を事務所に呼んで、所属アイドルの出番になると思います。
最近のアイドルは平均年齢が高めですが、シンデレラガールズは中高生多めなので、
世界観としては、14~17くらいが適齢期です。
まぁ、30越えのあの人も、いずれはアイドルとして所属しますが……。
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その4
ことごとく就職に失敗。正直こんなことしている暇があったらダメなんですが、専門職のため一つ募集に落ちると次を探すのに時間がかかるので……。
次回もかなり更新が遅くなりそうです。
東郷あい、相原雪乃、仙崎恵磨。
スカウトに成功した3人の予定を摺合せ、その週の日曜日に事務所を訪れた。
事務所は都内にある、二階建ての小さな建物で一階部分が受け付けや商談を行うスペース。二階がスタッフの執務室兼アイドルたちの待機場所になっているらしい。
早速、建物に入ると受付の事務員が居た。
一風変わった、緑色のスーツに身を包む彼女は、アイドルとしても十分に通用するように見えるが、受付業務をしているということは違うのだろう。
近づいて行って、挨拶を交わす。
「はじめまして!茂庭プロデューサーですよね。
私、この事務所で総合的なサポートを担当しています、アシスタントの千川ちひろです。」
どうやら、私のことは社長から聞いていたらしい。
「事務所に来るのは初めてですよね?
案内します。着いて来てください。」
ちひろさんは、そう言うと受付の隣にある階段を上っていく。
受付が無人になってしまうのは良いのだろうかと、尋ねれば、ほかに来客の予定は無いという。
通常、来客者はアポイントを取ってから来るので、予定に無い客というのは現状あり得ないと笑顔で教えてくれた。
と、そんなことを言う間に二階の執務室へと案内が済む。
執務室とは名ばかりで、事務デスクが二つあるだけで、奥には3人掛けのソファーが一つ。
給湯室と思しきミニキッチンと小型の冷蔵庫。
そして、社長室の札の掛かった扉の部屋がある。
「随分とシンプルな部屋だね」
苦笑気味に話すのは東郷さんだ。
芸能事務所に入るのはこれが初めてだが、名前のイメージから、華やかなものを想像していたため、どうにも……残念としか言えない。
「皆さんにはこれから、社長室で契約書を交わしていただくことになります。
プロデューサーさんからの説明は十分ですか?」
ちひろさんから、確認の言葉が入る。
アイドル候補の彼女たちに質問が無いかと訊ねているが、まだ話しきっていないことがある。
まずは、それを言わねばならない。
「説明に不十分なところがあるので時間が欲しいです。」
社長からの要望、アイドルとして活動するうえで重要な条件。
交際は厳禁、ただし恋愛は推奨。
恋愛の対象としては、
勿論、私は好かれるように最大限の努力をする。
説明を終わると、その表情は様々。
「何とも、愉快な発言だ。
とは言え、努力するから好きになれとは、かなり情けないな。
惚れさせてみせるくらい言いきって欲しいよ。」
眉を顰めながら言うのは東郷さん。
愉快というのは当然皮肉だろう。バカにするなということだろうが、その後に続く言葉はキツイ物ではない。
「実家からは煩く言われそうですが……。
そのあたりは一緒に説得していただきたいですわ。」
雪乃さんは、片目を瞑り小悪魔的な表情で私のことを見ている。
実家への挨拶となるとかなりハードルが高い。アイドル引退後の責任をとって欲しいという意味があると思うのはさすがに意識過剰だろうか?
「アタシは、普通に先輩のこと好きだし良っけど、交際禁止で恋愛推奨とかヤバヤバじゃん!」
明け透けに好意を隠さない恵磨の言葉に、不覚にもときめく。
どうやら三人とも、納得してくれているようだ。アイドルとして誘った以上、恋愛禁止は当然として考えていたのだろうか。
これで、すべての説明は終わっただろう。後は社長から直接、契約書を受け取り、サインをするだけだ。
社長室につながる扉をノックし、入室。
社長に一言、挨拶を交わせば契約に関する書類を複数枚渡され、記入。
これといって変わったことはなく、記入が終われば社長が歓迎の言葉をかけてくれ、順調に終わったところで、誰かが階段を昇ってくる音が聞こえてきた。
ちひろさんは、壁が薄いんですよね。と恥ずかしそうに微笑む。
「たぶん、みくちゃんです。
ちょうど良い時に来ましたね。」
ちひろさんは足音のヌシを知っているようだ。
察するに元から所属していた唯一のアイドルだろうか。
「おはようございます。
あれ?ちひろさん、いないのかな?」
この業界は年齢よりも芸歴を優先することが多いと調べた情報にはあった。
であれば、早く挨拶をしたほうが良いだろうと、扉を開けて挨拶を返す。
「おはようございます。」
「あ、社長室にいたんですか……って誰にゃあ!!」
扉を開けた先にいたのは、制服を着た、中高あたりの学生だった。
アイドルにふさわしく、可愛らしい容姿はしているが、赤い眼鏡と真面目そうな雰囲気以外は特徴が無いようにも見えた。
しかし、こちらの姿を認識するや否や頭にネコミミをセットし、語尾には『にゃ』とつく猫言葉に変化を遂げる。
「もしかして、ちひろチャンの言っていた、プロデューサーとアイドルかにゃ?」
どうやら連絡はしっかりとしてあったらしい。
「はい、よろしくお願いします。」
「じゃあ、みくのことをしっかりプロデュース頼むにゃ。
それと、一応みくの方が先輩なんだからそのあたりは……。」
まずは上下関係をしっかりとしようとしたところで、社長室から出て、広いスペースへ移動する。
すると、後ろに隠れるような状態になっていた三人が、みくさんに見える位置へと変わる。
まずは、恵磨。複数のピアスとトゲの付いた革の腕輪、大胆にも肩を出したファッションでパンクな仕上がりは、見る人によっては危険なチャラさがみられる。
次は、雪乃さん。小さなフリルの多い、着る人を選ぶ服は傍目にも高級なのが見てわかる仕上がりで、普段のように紅茶を飲んでいれば、まさに良家の令嬢といった佇まいが出ている。
手に持った鞄も、服装に合わせてリボンとフリルをあしらったブランド物のバッグでセンスが良い。
そして最後は、東郷さん。契約を意識してか、スーツスタイルの姿はクールでボーイッシュな魅力を感じさせられる。同性からの告白が多いのも頷けることだろう。
手に持った鞄は、楽器ケースのようで特有の形状をしている。
その姿はさながらヴィジュアル系のバンドマンだろうか?
「」
個性的な魅力にあふれる三人を前に、みくさんは絶句し、二の句が継げないでいた。
ちょっと終わり方が微妙ですが、逆に長引きそうなので区切ります。
もう一つのデレマス二次と設定を共有したいんですが、本編への盛り込み方が難しい(文章にすると矛盾が生じる?)なので、もし良ければそちらもご覧ください。
短編シナリオを掲載予定ですが、簡単な設定資料になっています。
ただし、あちらも更新が止まってます。
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その5
内容はとっくに決まっていたのに、残り2文ほどのところで全然、指が動かなかったです。
「こ、濃すぎるにゃ!
パンク、お嬢様、イケメン!これじゃあ、みくが目立てなくなるにゃ!
しかも、みくより年上しかいないし!」
我を取り戻したみくさんが叫ぶ。
先輩として後輩を牽制しようとしたら、ネコミミの自分よりも濃いキャラクターが三人もいたのだ。叫びたくなるのも仕方のないことかもしれない。
「あら?可愛い猫ちゃんですわ。」
「ぐぅ……しかも、バリバリ余裕にゃ。
こ、こうなったら、勝負にゃ!みくが先輩として、ギョーカイの厳しさを教えてやるにゃ。」
ふんすふんすと鼻息荒く、勝負を挑むみくさんだが、三人はそれほど本気にしてはいない。
「ふ……イケない子猫ちゃんだ。」
特にあいさんは、いつものキメ顔と顎クイのコンボで明らかに口説きにかかっている。
口説くといっても同性愛者ではないため、本人としては茶目っ気たっぷりのジョークらしい。
「あ……、ってみくは本気にゃ!」
どうにか正気を保てたようだが、小さくあぶないと繰り返しているあたり、本気で堕とされかけていただろう。
さて、どうやら勝負を受けなければ納得しない様子だが、こちらはまだ素人。
どのように戦うかも分からない。
どうすればよいかと考えていると、こちらの困惑に気が付いたちひろさんが提案をする。
「では、わたしと社長が審査をするのでLIVEバトルをしたらどうでしょうか。」
LIVEバトルとは。
ちひろさんによる説明によると、一種のゲリラLIVEでダンスや歌、特技の披露、ポージングなどアイドルのパフォーマンスに対して、観客が評価をし、どちらのファンになるかを決める戦いらしい。
最近のアイドルはファンサービスとアピールの一環で、ステージの使用許可さえ下りれば頻繁に行われるとのこと。
「ただし、わたしと社長は既にみくちゃんのファンですし、みくちゃんは経験者ですから、ハンデとして三対一でどうでしょうか。」
いきなりの話ではあるが、ハンデ戦ということもあり、十分に勝機はある。
例え負けたとしても、いい経験として励みになるだろう。
「なら私は、最初のプロデュースとして三人を支援しますね。」
私が勝負を受けると、即席のステージを作る――デスクを端に寄せ、スペースを広げる――ために10分間の準備時間が設定される。
小声で、三人にアピール方法を伝えるが、恵磨を除いた二人の士気はそれほど高くない。
どうやら、年下の必死な姿を微笑ましく思っているだけで、対抗意識はないらしい。
こんなモチベーションで負けたところで、何の経験にもならないだろう。
どうやら見通しが甘かったようだ。
いや、モチベーションを上げることもまたプロデューサーの仕事だということだろうか。
東郷さんも雪乃さんも、冷静で大人の印象が強いが、プライドが高い。
年下のみくさんを侮っている……あまり、LIVEバトルに真剣でないように見えるが、あるいは負けた時の予防線を張っているのかもしれない。
ならば。
「東郷さん、雪乃さん……。相手は年下とはいえ先輩です。
胸を借りるつもりで行きましょう。」
「ふっ、私が彼女に負けるとでも?
分かりやすい挑発だけど、敢えて乗るのも良しとしようかな。」
「……そうですね。
私は簡単には負けはしませんわ。勝ち星は私たちのものです。」
【グッドコミュニケーション♪】
「さて、準備はいいですか?
それでは、LIVEバトルスタートです!」
ちひろさんの開始宣言を聞いて、最初に動き出したのは、みくさんだ。
LIVEバトルは、ターン制ではない。
制限時間の中で、どれだけ相手よりアピールが出来るかによって評価が決まる。
先制すれば注目を集め易く有利に働く。
みくさんは、事務所に置いてあったオーディオから曲を流してダンスが始まる。
ネコを意識したポーズを随所に散りばめたダンスは魅惑的で、ちひろさんと恵磨は小刻みに体を揺らしてノり始めた。
恵磨の体の揺れは次第に大きくなっていき、少しづつ歌を口ずさみ始める。
声はだんだんと大きくなり、踊りも加わっていく。
これは、乱入だ。
不自然な形で行うと心象が悪くなってしまう高等テクとされる一つ。
恵磨の歌は、下手ではない。音程も間違ってはいないし、リズムも取れている。
しかし、あまりにも声が大きすぎて曲とはミスマッチだ。
だがそこにパワフルなダンスがマッチする。技術的には酷い出来だが、それすらも味になっている。
驚いたみくさんのダンスがぎこちないものへと変化する。
その隙を東郷さんが突く。
楽器ケースから取り出したのはサックス。まずは流れる曲に合わせた軽快なリズム。
そこへ特技アピールのためにと準備時間から給湯室に移動していた雪乃さんが戻ってきた。
案の定、紅茶である。
社長とちひろさんの二人に紅茶を淹れると、恵磨の動きが固まる。
紅茶を持った雪乃さんの前で騒いではいけないというサークルのルールが染みついているからだ。
そして、東郷さんの奏でる曲が徐々に落ち着いたジャズミュージックへと変移していく。
紅茶を口にした二人は、口元が緩み穏やかな表情のまま目を閉じる。
そして紅茶をすべて飲み干すころには、勝負の時間が終了していた。
次回はバトルの勝敗と、みくにゃんについての掘り下げ、になるのかな?
あぁ、早く担当アイドルを出したい……。
ちなみに、現在6人先までおおよそ決定していますが担当は入っていません。
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