僕と幼馴染と友情物語 (sata-165)
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プロローグ&設定
プロローグ


小説の投稿は初なのでいたらない点も多いと思いますが、生暖かい視線で見守って下さい


明久Side

 

高校一年の終業式間近の今日

ここ文月学園では他の学校には無い進級時の「振り分け試験」が行われている。

僕こと吉井明久は今日体調が悪いのにも関わらず無理をして試験を受けに来た幼なじみのことが心配でテストに身が入らずにいた。

 

ガタッ

 

その幼なじみが突然倒れてしまった。

 

「明梨(あかり)!!大丈夫⁈」

 

僕はすぐに彼女に駆け寄り声をかけた。

 

 

「藤崎、試験途中の退席は『無得点』扱いとなるがいいか?」

 

「はい...退席します...」

 

すると先生は事務的に試験に関する注意事項だけ告げ、試験の監督をするために教卓へと戻って行った。

 

「先生!!明梨一人で保険室まで行かせる気ですか」

 

「煩いぞ吉井!!それ以上するとカンニング行為とみなし無得点にするぞ!!」

 

(ちょっと待てよ。確かに先生は試験の監督があるのは分かるが、付添いの人も寄越さないで明梨一人で保険室まで行かせるなんて)

 

「明梨、保険室まで行くから掴まって」

 

「明君...でも...明君まで...無得点に....」

 

明梨はそこまで言うと限界だったのか気を失ってしまった。

 

「吉井!!さっさと席に戻らんか!無得点にするぞ!」

 

「どうぞご勝手に」

 

俺はそういうと明梨の体を抱き上げいわゆるお姫様だっこをして保健室へと向かった。

 

Side end

 

雄二Side

 

「あの屑のせいで私のクラスで二人も無得点者が...」

 

明久が教室を出ていくと教師にあるまじき発言をした。

 

(明久を屑だと...)

 

ガタッ

 

俺がこのカス教師を社会復帰できないようにしようかと思ったときに突然誰かが立ち上がった。

 

「なんだ高瀬、お前も無得点にされたいのか」

 

「ちょっと黙ってろ」

 

ゴスッ

 

「高瀬一輝 気分が悪くなったんで退席します。」

 

そいつはカスに近づくと顔面を殴り飛ばし、そのまま教室から出て行った。

 

(誰だか知らんがおかげでいくらか冷静になれたな。明久たちがFクラスなら俺はFクラスの代表になって下剋上でもしてやるか。)

 

俺はそう決意して点数を調整することにした。

 

Side end




初投稿なのでいい長さなどはよくわかりませんが、本編からはもっと長くなる予定です。
コメント、指摘などありましたら、お気軽にお願いします。


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キャラ設定(原作)

キャラ設定です。



 

試験科目

 

現代文・古典・数学・世界史・日本史・物理・化学・生物・英語・英語W・保健体育の通常科目11科目の総合点

が総合科目の点数。

その他に家庭科(調理の方法、裁縫、掃除など)・美術(画家や絵画の名前、○○を描けなど)・書道(字のうまさ)・技術工作(おもに物作り、プログラミングや配線なども)・体育(武道)・一般常識の6つの特殊科目があり、これら科目は総合科目や振り分け試験に影響を与えないため基本的に勉強する人がいない。

 

 

吉井 明久

 

・容姿

 

原作通り

 

・学力

 

Aクラス上位並

 

得意科目 日本史(平均では750ぐらい悪くても600点台、調子がいい時には900点台を出す。)

     世界史(平均は550ぐらいで、悪くても400点越え、一度だけ700点台をとったことがある)

     英語・英語W(平均では450ぐらい、悪くても350以上)

     家庭科(平均850ぐらい。常に700点越えで学年トップ調子がいいと1000点とる。)

     体育(平均700点。体育ではオールラウンダーなので点数がぶれない)

 

苦手科目 理科系(全て平均300点ぐらいでひどい時には200点台前半しか取れない)

     一般常識(たまにとんでもないバカな回答をして職員会議の議題に上がるほどで点数のブレ幅がすごい100~400ほど)

     美術(平均250点。絵のセンスが絶望的にないが本人は無自覚のため知識面のみで点を取っている)

     

     他の科目は平均350点ほど、書道と技術工作は300点ほど総合は4500点手前。

 

英語は玲や一輝がアメリカから英語のままでメールや電話をし返事が英語でないと玲の場合仕送りを止められ、一輝の場合『明梨にアキの秘密をバラすぞ』と言われたので上がった。

 

 

・性格

 

基本的にみんなに優しいが、理不尽なことと料理を侮辱されるとキレる。

明梨に恋心を抱いてるのを自覚してからは明梨との仲を進展させたいと思いつつも、今の関係が壊れることを恐れ積極的になれないでいる。

原作ほどではないが鈍感。

親の勧めで父の知り合いが道場主をしている無流派総合道場『無銘道場』に5歳のころから通っていて、人間離れした身体能力を持っていて、基本的に全ての武道を習得しているが、相手のスタイルに合わせて戦うため全力を出したことはない。

中学時代は不良狩りのようなことをしていて、一度相手を倒してから、不良になったわけなどを聞き、更生するように努力して、多くの不良を更生させた。

その際に『悪鬼羅刹』と呼ばれていた雄二もいて、雄二が更生してからは共に不良狩りをし親友になった。

更生した元不良からは年齢問わずに『兄貴』と呼び慕われている。

また、不良狩りの際の武術を用いた強さから『長月の武神』の二つ名がつけられていた。

康太、秀吉、一輝とは親友。優子とは友人ではあるがあまり関わりがない。

他人のためなら自分を顧みないため、明梨や雄二達を心配させることが多い。

仕送りは十分に貰っていて、趣味に使っても余裕のある生活を送れるが、困っている人を見ると黙っていられないため、よく明梨の家にお世話になっている。

 

 

 

 

坂本 雄二

 

・容姿

 

 原作通り

 

・学力

 

Aクラス上位並

 

得意科目 数学(平均850点。調子がいいと1000点取れる、苦手分野でも600点は取る)

     物理(平均600点。調子がいいと700点越え、悪くても500点ほど)

     家庭科(平均500点。母が梱包材で家事をしない時がありいつの間にかうまくなっていた)

     体育(平均450点。運動神経が良いため)

     技術工作(平均500点。頭の回転が速く何をすべきか思いつくため)

     

苦手科目 生物(平均270点。良くても350は超えない、悪いと200点すら取れない)

     日本史・世界史(平均300点)

     古典(平均250点)

 

     他の科目は平均340~350点。総合では明久に劣るが4000点は超える。平均4300点

 

・性格

 

明久とは『悪鬼羅刹』時代に出会い、悪鬼羅刹と呼ばれるようになって初めて負けた。

その際に翔子を守れなかったから強くなろうとしたことを打ち明け、その後、翔子に「お前を守る自信がつくまで待ってくれ」といって明久に紹介された『無銘道場』に通い始め、そこから勉強も再開し文武両道を実現した。

翔子を守る自信がついてから、翔子に自分の思いを告白し付き合い始めた。

そのことを恩に思っている(明久は無自覚な行動)ため明久が幸せになれるように協力している。

ただし、明久はからかうと面白いため度々明久をいじる。

 

 

 

 

木下 秀吉

 

・容姿

 

原作通りだが髪型は原作9.5巻のもの。

 

・学力

 

得意科目 古典(平均450点。演劇の題材で使われるため)

     美術(平均350点。画家を演じる)

     書道(平均600点。書道家を演じる)

 

     苦手科目は特にないが演劇に力を入れているため他は250点ほどで総合科目は3000点ほど。ただし家庭科だけは150点ほど

 

・性格

 

明久と同じ長月中学校の出身で1年のころに女とみられて困っていたが、明久は一目で男だと気付き、明久のアドバイス(髪型を変える、筋力をつけるなど)を受けてからはいくらかは改善された。それからは明久と仲良くなり、親友にまでなった。明久にあったころは優子に演劇のことをバカにされていたが、明久が秀吉の努力を見せてからは優子も演劇のことを認めるようになったが「勉強をおろそかにするな」と言われてからは優子と明久の努力の甲斐もあり、Aクラスに入る程度には学力も上がった。

振り分け試験の休憩時間に雄二にFクラスから下剋上をすることを伝えられ、それ以降の問題を無記名で出したためFクラス

 

 

 

 

土屋 康太

 

・容姿

 

原作通り

 

・学力

 

得意科目 保健体育(平均700点。調子がいいと900点を超える。貧血時でも600点を下回ったことはない)

     家庭科(平均500点。メイドやウェイトレス見たさで料理店に通ううちに腕前が上がり料理系では明久に近いが他の部分で明久に劣る)

     技術工作(平均600点。盗聴器やカメラなど扱ううちにプロ並みの知識を持っている)

     体育(400点。運動神経はいいが力があまりなく速さに偏っているため)

 

苦手科目 一般常識(平均200点。欲望のまま行動することがあるためグレーゾーンの解答が多い。一応犯罪にはならないぐらい)

 

     他の科目は250点ほど。総合では3200ほど。

 

・性格

 

原作通りのエロさは持っているが、一応常識(犯罪の線引き)はある。

ムッツリ商会はやっているが被写体の人に売る前に許可は取っているが、部活動や体育(体操着や水着)の場面に突然現れるためあまり女子に人気はない、写真を買う人はその人に興味のある人が多い(明久は明梨の写真を買っているが明梨は「明君になら…」と言っているので持っているのは明久のみ)。写真の販売だけでなく写真の撮影も引き受けており写真の腕前は有名でよく新聞部の記事や個人が記念にと依頼される。

 

その他変更点

 

•明久は理不尽な暴力を振るう島田を不思議に思ってる。

•姫路は他の教室で受け、途中退席した

•鉄人は雄二が道場に通っている時に師範が勝手に門下生(明久と雄二のみ)の相手をさせた。高校で再会してからは、明久と雄二は鉄人に組手の相手をしてもらい、そのお礼をしたいと明久は観察処分者に志願し、雄二はその手伝いをよくしているため、事情を知らない教師からは、問題を起こして鉄人にしごかれていると勘違いしているため、明久と雄二は問題児と思われている。



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キャラ設定(オリキャラ)

オリキャラの設定です


藤崎 明梨(ふじさき あかり)

 

・容姿

 

赤身のかかった茶髪をポニーテールにしているがそれでも腰のあたりまである長髪(ポニーテールにしたときに明久が「綺麗だ…」と呟いたのを聞いたため。)眼の色は吸い込まれるようにきれいな水色。胸はDに近いCカップ。腰はくびれていて理想の体型のような容姿。明久曰く「神様に愛されている」

 

・学力

 

得意科目 世界史(平均450点。明久に教えてもらったため。300~500点)

     日本史(平均600点。同上。550~650点)

     家庭科(平均800点。母親に花嫁修業をしたいと頼み身に付けた)

     上の科目は明久に勝てない。ただし家庭科で負けるのがかなり悔しい。

     書道(平均450点。花嫁修行の一環で字もうまくなった)

 

苦手科目 生物・保健体育(平均300点)

 

     他の科目は400点超えるか超えないくらい。総合は4500点ほど。

 

・性格

 

明久とは幼なじみで家は明久の住むマンションの隣の部屋に家族と共に住んでいる。小さい頃から何度も明久に助けられていてそのから明久のことが好き。しかし、明久は基本的にみんなに優しく、自分もその中の一人だと思っているため、明久が明梨に特別な感情を抱いてることには気づいていない。今の関係が崩れるのが怖くて告白はできないでいる。基本的には優しいが、わりとハッキリとものをいう。玲とは仲が良くて、明久の趣味などを教えてもらっている。

 

高瀬 一輝(たかせ かずき)

 

・容姿

 

黒髪・黒目で髪は肩のあたりで切りそろえ、ゴムで束ねている。前髪は掻きあげて額を出している。

 

・学力

 

得意科目 英語・英語W(平均700点。基本的にぶれない。アメリカに留学していたため。)

     技術工作(平均900点。アメリカ留学中にロボット工学を学んだため)

     体育(平均650点。明久と同じくオールラウンダー)

 

苦手科目 現代文(平均100点。本人いわく「作者やキャラの気持なんか知るか!!」とのこと)

     古典(平均100点。本人いわく「昔の言語には興味ない」)

     日本史(平均300点。アメリカに留学していたため)

 

     その他は平均430点で、総合では霧島よりも高く4700点ほど

 

・性格

明久とは『無銘道場』で出会いその後ライバル兼親友のような間柄。明久との勝負は基本的に勝ち越し。

基本的に物事に無関心だが友人を侮辱されるとキレる。

道場での鍛錬がない時は明久と遊んでいた。たまに明梨も一緒に遊ぶため明梨とも幼馴染。

『無銘道場』に明久と同じころに入門した。道場主の親戚にあたり、親父に進められて入門し、その後小学校卒業まで道場に住み込み状態でいた。腕前は明久よりも上であったが、中学に上がると同時にアメリカに留学したため、そこからは自主トレのため今ではやや劣る。

明久曰く「本気の一輝には勝てない」らしい。

振り分け試験の際は教師を再起不可能にして、途中退席したためFクラス。

 

 

 

 

 

鬼薙 龍司(おになぎ りゅうじ)

 

・容姿

 髪は白髪交じりの黒髪で髪型はオールバック。常に無償髭を生やしている。あまり身なりに気を使わないのか古びた道着をいつも着ている。一応40過ぎらしいが身なりを整えれば20代前半にしか見えない。

武道家のため無駄のない筋肉が付いているが細身。

 

 

・性格

 計画的な放浪癖があり、放浪の間に門下生がすることを事細かに指示した書置きを残してから放浪の旅に出る。

ただし旅自体は無計画で歩いていたら戦場のド真ん中に立っていたことがあったが素手だけで両軍を無力化した。

そのことから両軍の訓練を依頼され訓練したが1日でかなり全兵士が強くなったため、世界中の軍隊から訓練の依頼が来るようになった。

兵士からは『センセイ』『マスター』『ショーグン』などと呼びしたわれているが裏ではその訓練の過酷さから来るのを恐れている者もいる。

 

 訓練や鍛錬の時にはかなりのスパルタで怖いが、根は優しく子供が好き。そのため明久や雄二、一輝のことは自分の子供のように思っている。

 

 

 

『無銘道場』の現道場主、しかし放浪癖のせいで門下生を激減させてしまった。そのため軍隊の訓練依頼を引き受けその依頼料で生計を立てている。

完全装備の一個師団を投入してもかすり傷さえ負わせることができないために多くの軍事衛星に監視されている。

 

 

鬼薙 龍彦(おになぎ たつひこ)

 

龍司の息子。18歳。

 

・容姿

 黒髪の長髪で首のあたりでまとめている。全体的に細いがかなりの怪力。眼は細いがキレると釣り目になる。

 

・性格

 普段は温厚だが、間違ったことや他人に迷惑をかけている人間を見るとオシオキをする。12歳になったときに父に「そろそろ修行に行って来い」と言われて世界中を旅した。振り分け試験の前には帰ってきていて3-Aに所属。帰ってきた理由は父が言った条件の「5つぐらい内戦を治める」ことを済ませたから。

 明久と一輝は「龍兄」と呼び慕っている。

 

 

鬼薙 龍見(おになぎ たつみ)

 

 龍司の父

 ボサボサ白髪で白髭を20cmほど伸ばしている。本人いわく「切るのが面倒」らしく伸びてしまっている。

気に入っているのか還暦の時に貰った赤いちゃんちゃんこをいまだに着ている。

世界中を旅しているため家族ですら居場所をつかめていない。ただし世界中から手紙は届くのでおそらく無事でいる。また一年に一度は家に帰ってくるため、明久や雄二、一輝のことはよく知っている。

 門下生のことを孫のように思っており、毎年お年玉やクリスマスプレゼントやらを送っている。

 

 

鬼薙 龍馬(おになぎ りょうま)

 

 龍見の父。龍司の祖父

 90近くになるがいまだに現役軍人よりも強い。今は無人島に住んでいるらしいがその場所はよく変えるので連絡をすることは家族でも困難。ただし世界中から手紙は飛んでくるのでおそらく無事でいる。また一年に一度は家に帰ってくるため、明久や雄二、一輝のことはよく知っている。

 龍見と同様にお年玉やらプレゼントを送ってくるが基本的に『無銘道場』の場所に投げる。

 

 

吉井 昭斗(よしい あきと)

 

 明久の父

 龍司と同い年らしいがやはり20代前半にしか見えない。細身でメガネをしていてどこにでもいるサラリーマンのようにも見える。

 本人いわく『世界を平和にする仕事をしているただのサラリーマン』らしいが何故か大統領など世界中のトップの人と電話をよくしている。

 龍司とは親友で子供のころに龍見に鍛えられたのでかなり強い。

 明梨のことを気に入っており「明梨ちゃんを家にくれないか」と透に酔った勢いで言ったことがある。

 

 

藤崎 透(ふじさき とおる)

 

 明梨の父

 龍司、昭斗と同い年らしいが20代前半にしか見えない。髪は赤みががった茶髪を短く切り立たせている。顎髭を少し伸ばしている。普段から柄物のシャツにスーツを着ているためによくヤクザと間違えられて職質される。

 本人いわく『ただの貿易商』らしいが昭人同様に世界中のトップと電話をしたりしている。基本的には家にいないことが多い。

 龍司、昭斗とは幼馴染の親友でかなり強い。昔は三人で『長月の三羽烏』と恐れられていた。

 明久のことを気に入っており「明久君になら明梨を任せられる」と昭斗に話したことがある。

 

 

その他

・久保は中学の頃不良に脅されて宿題などを見せていたが、その不良が明久によって更生して誤ってきた際に明久の名前を聞き、文月学園で出会ったときにその礼を言ったが本人は「気にしないで」とだけ言ってなんでもないことのように流す姿を見て明久に憧れた。

 

 

 

 

 

 

追記

 

久遠 日向(くおん ひなた)

・容姿

 黒髪のセミロング。瞳の色は緑。胸は隠れ巨乳でEカップ後半

イメージは『SAO』の『サチ』

・性格

温和で優しいが気弱で引っ込み思案な性格。

中学二年のころに不良に絡まれているところを不良狩り中の明久によって助けられて以来明久のことが大好き。明久のそばにいる明梨に自分の想いを伝えたときに『明梨ちゃんも明久君のことは好きなんだよね。ねぇ明梨ちゃんとは仲良くしていたいから、協力しない?明久君が選んでくれるように二人で。もちろん恨みっこなし。抜け駆けもOKってことで』と言ってからは明梨とは親友になった。

ほんとは…明久の相手と3馬鹿(姫路・島田・清水)専門の鎮圧を得意とする

・学力

得意科目 生物(平均500点)

     家庭科(平均750点。明久の料理に撃沈後母親にならった)

     書道(平均500点。字は元からうまい)

 

     苦手科目は特になく、他は平均390点ほど。総合では4400点ほどだが振り分け試験では親友の明梨が気になってしまい3000点ほどしか取れなかった

 

 

 

神谷 紫織(かみや しおり)

・容姿

 長身に綺麗な亜麻色の長髪ストレート。眼は勝気なつり目。胸はDカップ

・性格

 よく人のことを見下した態度をとるが、相手の長所に本人よりもよく気付き、相手のことを思いやることもある。かなりのサディストで人のことをからかうのが好き、ただし時と場合は弁える。1年のころに演劇に力を入れる秀吉の姿を見て「あのこの泣き顔が見てみたいわ」と一目ぼれ(?)。以来事あるごとに秀吉のことをからかっている。しかし、秀吉が演劇で悩んでいるとアドバイスなどもするため秀吉との仲は良好、ただし秀吉は『原作における明久と雄二』のように悪友程度に思っている部分もある。

・学力

得意科目 保健体育(平均500点。効果的に相手を泣かせるため)

     生物(平均500点。保健体育と同様)

     家庭科(平均600点。ワサビ入りなどのお菓子や料理を作るため。普通に作れば美味い)

 

苦手科目 古典(平均300点)

     一般常識(平均100点。泣かせる、いたぶるなど正解にできない回答をするため)

 

     他の科目は400点程度で、総合では4500点ほど、振り分け試験時は調子が悪く4000点ほど

 

 

 

 

 

 

追記

 

柳浦 瑠璃香(やぎうら るりか)

 

柳浦道場の師範代 17歳

 

肩のあたりで切りそろえられた黒に近い茶髪をツインテールにしている。胸はBカップ半ば。身長は平均より少し高いくらい、無駄な肉は付いていなく、筋肉もあまり付いていないが力の使い方がうまいために強い。

 

龍彦とは子供のころからの付き合いで、お互いに好印象だったため許嫁になった。柳浦道場で合気道を習得した後に龍彦が自分を置いて海外に修行に行ったため今度からは連れて行ってもらえるようにと截拳道(ジークンドー)や極真空手を体得して、龍彦と同程度の強さを持っている。

 

明久と一輝は『瑠璃姉』と呼んでいる

 




コメント、指摘などありましたら教えて下さい。
次回から本編突入予定です
2/10 一樹の苦手科目に日本史を追加
2/14 オリキャラ2人追加
3/11 オリキャラ1人追加


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設定(召喚獣)

召喚獣に関する設定です


★設定(召喚獣)

 

吉井明久

・服装

 黒い改造学ラン。

・武器

 ベルトのところに日本刀を刺している。

・腕輪

 自分の好きな武器(近接戦闘用に限る)・服装にすることができる。消費点数は武器の強さによる。日本刀と同程度だと50点。(例、メリケンサック→10点、サバイバルナイフ→20点、鎖鎌→50点、斬馬刀、大太刀→80点、日本刀の数本→50点×本数)

 

 

坂本雄二

・服装

 白い改造長ラン。どこから見ても不良の一言。ババア長の仕業

・武器

 メリケンサック。

・腕輪

 拳を突き出すと衝撃波が起こる。

 

 

木下秀吉

・服装

 袴姿。

・武器

 薙刀。

・腕輪

 腕輪の能力まで知っている召喚獣の武器・戦い方をトレースする。正確には戦い方は秀吉が操作者の演技をすることでトレースしている。秀吉でも感情的になっている人物の演技はかなり疲れるためあまり多用はできない。

 

 

土屋康太

・服装

 忍者装束。

・武器

 小太刀二刀流。

・腕輪

 加速。召喚獣の動き全てが速くなる。直線状の動きだけでなく3次元的な行動すべてが速くなる。

 

 

高瀬一輝

・服装

 ジーンズにロングTシャツ。ミリタリージャケットを羽織っていて、太腿にはポーチが付いている。

・武器

 ジャケットの胸ポケットにサバイバルナイフ、背中にはアサルトライフル、ジャケットの中に仕込みトンファーとヌンチャクが入っている。他にも太腿のポーチやジャケットの中にも武器は入っているが召喚者の一輝でさえ把握しきれてはいない。

・腕輪

 アサルトライフルを他の銃火器(拳銃やロケットランチャー、手榴弾や爆薬など)に変換させる。消費する点数はその武器の強さによって変化する。(例、リボルバー銃→20点、自動拳銃→30点、サブマシンガン→50点、バトルライフル→70点、ロケットランチャー、対物ライフル→100点)。弾丸のリロードには通常1発5点計算でリロード。ただしロケットランチャーは1発で100点、対物ライフルは5発1セットで100点。

 

 

藤崎明梨

・服装

 巫女装束

・武器

 弓矢

・腕輪

 他の召喚獣に祈祷によって加護をつける。加護を受けた召喚獣は戦死しても1度だけ点数が100点の状態で復活する。ただし、祈祷の間は無防備になってしまう。

 

 

久遠日向

・服装

 ナース服

・武器

 大きな注射とメス

・腕輪

 自分の点数を消費して、その分他の召喚獣の点数を回復させる。元の点数以上にはならない。

 

 

 

神谷紫織

・服装

 Tシャツに黒いジャケットを羽織ってホットパンツをはいている、靴はヒールのついた黒いブーツ

・武器

 鞭

・腕輪

 未定

 

 




今後追加予定です。
2/19 紫織の召喚獣と秀吉の召喚獣の設定に追記
4/27 明久と一輝の腕輪の設定を変更。文字稼ぎもあって詳細を追加


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もう一人の幼馴染

明久の日常風景です。
まだ本編には入ってないですね。


明久Side

 

Pipipipi Pipipipi

 

「もぅ朝か…」

 

目覚ましの電子音と共に僕は目を覚ました。

現在時刻は午前3:30。こんな時間に起きる人なんて…あ、僕の知り合いはほとんど起きてるや。

 

「今日からまた道場に行けるな」

 

僕は5歳のころから『無銘道場』に通っている。昨日までは龍司さんに「明久を驚かせたいから始業式の日まで自主錬ね」と言われたのでマンションの1階にある父さんが作った家族用のジムで自主錬をしていた。でも父さんはなんでこんなスポーツジム顔負けの設備を整えられたのだろうと毎日のように思うが考えたら負けだと自分に言い聞かせた。だってあの人は「僕は普通のサラリーマンだよ」って言いながら大統領と話をするくらいだ。ほんと何者なのか息子の僕ですら分からないよ。

そんなことを考えている間に僕は着替えを済ませて道場へと向かった。え、朝ご飯はまだだよ。食べた後にあれはさすがにきついから水を少し飲んだだけだ。

 

「おはようございます。師範<せんせい>」

 

「おはよう。明久」

 

AM4:00 僕は道場に入ると同時に龍司さんに挨拶をした。しかし、道場に小さなクレーターがあるのに気づいた。

 

「龍司さん、また投げてきたんですか」

 

僕が呆れながらそう聞くと、龍司さんは

 

「あぁ、またあの爺さんだ」

 

とこちらも呆れながら返事をした。

 

「龍馬さんもそろそろ他の方法考えればいいのに…」

 

「まぁ、善意だから拒否もできないしな・・・」

 

ハァ

 

僕と龍司さんが同時に溜め息をついた。龍馬さんとは龍司さんのおじいさんで、この道場の2代前の主だ。もう90歳近くなのに素手で大陸間弾道ミサイル並みの飛距離で物を投げるすごいお爺さんだ。

 

「っと、明久にはこれだな。進級祝いだそうだ」

 

そう言って龍司さんは懐から出したものを僕に渡してきた。

 

「あ、ありがとうございます。これは…ボールペン?」

 

『明久君へ』と書かれた手紙とボールペンだった。

とりあえずボールペンの芯を出そうと押してみると、

 

バァン(ボールペンから銃弾が出る音)

 

サッ(銃弾を龍司さんがかわす音)

 

「あっぶねぇ。あの爺さん何考えてんだ!」

 

うん、やっぱり龍馬さんの常識はどこかずれてる。日本の高校生にボールペン型の銃を送ってくるなんて。

ただ1mも離れてないのにあの銃弾を避ける龍司さんも相変わらずだな。

 

「明久、ちゃんと手紙を読んでから扱ってくれ」

 

「はい、すみませんでした」

 

正直龍馬さんが普通のものを送ってくるはずないんだった。ただ毎回銃だの日本刀だのサバイバルナイフだの送ってくる人が突然ボールペンなんか送ってきたら「改心したのかな?」って思っちゃうじゃん。

手紙を読んでみたら「明久君が携帯しやすいような銃を選んだよ」とだけ書いてあった。なんの気遣いですか・・・

 

「そういえば、僕が驚くことって何ですか?」

 

僕が話を龍馬さんのことから逸らすと龍司さんもそのこと思い出したらしく、奥の部屋に僕を連れてった。

 

「彼が帰ってきたんだよ」

 

そう言ってドアを開けると、そこには僕のライバルの幼馴染がいた。

 

「一輝!!久しぶり」

 

「おうアキ!!ほんと久しぶりだな」

 

彼の名前は高瀬一輝。僕のライバルで親友だ。す

 

「いつから日本に戻ってたの?」

 

僕が最初に疑問に思ったことを一輝に聞いてみた。一輝は親の仕事の都合でアメリカに留学してたからだ。

 

「振り分け試験の前日だ。オレも文月学園に通うから、またよろしくな!!」

 

「うん!!よろしく一輝!!」

 

また一輝と一緒に学校生活を送れると知って僕はとても嬉しかった。

 

それから僕は一輝と一緒に組み手をすることになった。前は一輝には全く歯が立たなかったが向こうではあまり鍛えられなかったらしく、なんとか五分の戦いができた。

 

AM 7:00

 

「明君、龍司さん おはようございます。」

 

明梨が道場に入ってきて、挨拶をした。もう7時か、一輝との勝負は時間を忘れるな。

 

「おはよう明梨」

 

「おはよう明梨ちゃん」

 

「はよぅ明梨。あと久しぶり」

 

「えっ一輝君?」

 

明梨も一輝が帰ってきていることを知らなかったらしく驚いていた。

 

「あぁ最近こっちに戻ってきたんだ。」

 

「そうなんだ。久しぶりだね。」

 

明梨も一輝が帰ってきたのが嬉しいのか笑顔で挨拶をした。やっぱり明梨の笑顔は可愛いな。

 

「っと明梨ちゃんが来たってことはもうご飯の時間か」

 

龍司さんの言葉で時間のことを思い出した。いつも僕はここで朝練をしてから、明梨が作ってきたお弁当を3人で食べている。明梨が来ると朝ご飯って感じだ。

 

「んじゃ俺はコンビニで何か買ってくるわ」

 

龍司さんがそう言って出て行こうとしたが明梨が止めた。

 

「えっ、いつも多めに作ってきてるんで、一人分くらい大丈夫ですよ。」

 

「いいっていいって。久しぶりの再会なんだし飯食いながら、若い奴だけで話しな。オジサンはちょっと買い物ついでに散歩してくっから」

 

そういうと龍司さんは出て行ってしまった。

 

「若い者同士って。あの人も見た目はかなり若いよな」

 

一輝の一言に僕らは同意した。なぜだか知らないがあの人は会ったときから年をとっていない。いや年はとっているんだけど見た目が変わらない。まぁ僕の周りには大学生くらいに見えるオジサンは多いから驚かないけど。

 

その後僕たちは、三人で一輝が留学している間の出来事や昔の思い出を話しながら明梨の作ったお弁当を食べた。

 




本当はこの後振り分け結果まで書こうと思ったのですが、長くなりそうなので分けました。
あの教師は多分次回に処分が判明します。


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試験召喚戦争編
クラス分け


やっと振り分け結果が出ました。
あの教師は教員免許剥奪だけでは気が収まらなかったので、社会復帰できないようにしました。
あと教師の名前に意味はありません。なんとなく浮かんだ単語に田を付けて変換しただけです。



明久Side

 

「そろそろ、学校に行こうか」

 

僕がそう言うと二人も腰を上げて準備をしだした、今は7:30ここから学校までは30分はかからないから、かなり余裕がある。

 

「はぁ私のせいで明君もFクラスかぁ」

 

登校中に明梨は振り分け試験のことを思い出し表情を曇らせた

 

「そんなの気にしなくてもいいって。だからいつもみたいに笑ってよ」

 

僕は明梨のそんな表情を見たくない、明梨は笑顔が一番似合うんだ。

 

「そうだぞ。アキは明梨の笑顔が好きなんだから」

 

「うん。そうだyって一輝!!突然何言いだすのさ」

 

確かに僕は明梨の笑顔が一番好きだけど明梨の前でそんなこと…

 

「えっそうなの明君?(明君が私のこと好きなの?)」

 

「う、うん明梨は笑顔が一番似合うよ」

 

明梨のことは好きだけど告白して振られたら今の関係も崩れちゃうし誤魔化せたかな

 

「そうなんだ。うん、もう気にしないよっ」

 

明梨は少し残念そうな顔をしたかと思うと、いつものような笑顔になった。

 

「やっぱ明久は明久のままか(この二人完全に両想いじゃねぇかよ)」

 

呆れながら一輝がそう呟いたが、僕が僕のままなのは普通じゃないかな。

 

 

その後は普通にいつも通りに会話をしながら学校へと向かった。

 

 

「「西村先生、おはようございます。」」

 

「アキ、この人は警備員か?」

 

僕と明梨が校門のところに立っている筋骨隆々の男性教員、西村宗一に挨拶をすると、一輝はそう聞いてきた。

まぁ無理もないよね、この人の筋肉ボディビルダー並だもん。

 

「うむ、おはよう。吉井、藤崎。それと高瀬、俺は警備員ではなくここの教員の西村だ。」

 

「なっ。失礼しました西村先生。あと、おはようございます。」

 

「あぁ、おはよう高瀬」

 

「なぁアキもしかして、この人が龍司さんが連れてきた格闘家か?(ボソッ」

 

西村という名前で思い出したのか僕にそう尋ねてきた。

 

「うん、そうだよ。僕も何度も組み手をお願いしているからね。」

 

西村先生は龍司さんが無理やり道場に連れてきて僕と雄二の組み手の相手をしてもらった。あのときは知らなかったがこの学園に入って再会した時は驚いたよ。てっきり格闘家か傭兵あたりかと思っていたからね。

再会してからは西村先生が暇なときは僕や雄二の組み手の相手をしてもらっている。

 

「西村先生、オレも組み手の相手をお願いします。」

 

西村先生の実力を龍司さんに聞いていたのか一輝は西村先生に頭を下げた。

 

「お前もあの道場に通っているのか?」

 

「はい!!」

 

「そうか。なら今度暇なときに道場まで行くから楽しみにしていろ」

 

西村先生はそういうと嬉しそうに笑った。

 

「はい。よろしくお願いします!!」

 

一輝も嬉しそうに西村先生に礼を言った。

 

「ところで西村先生はなんでここにいるんですか?」

 

僕は疑問に思っていたことを聞いてみた。

 

「ん、それはこれを渡すためだ」

 

そう言って先生は僕らの名前の書かれた封筒を渡してきた。

 

「振り分け試験の結果ですか?まぁ結果は分かってますけど」

 

僕は明梨に付き添って途中退席したのでFクラスだ。

 

「結果は残念だったが、吉井、俺はお前の取った行動は人間として誇るべきものだと思うぞ。藤崎はもう体調は良さそうだな。俺個人としては再度試験を受けさせたいがお前たちだけ特別扱いするわけにもいかないんでな」

 

先生はそういうと苦虫をかみつぶしたような顔をした。

 

「僕は気にしてないからいいですよ」

 

「体調管理をしっかりとしなかった私の責任ですから」

 

実際僕はどのクラスでも勉強はできると思っているから設備自体には興味がない。その気になれば青空教室でも勉強はできるくらいだ。ただ明梨にはちゃんとした設備のAクラスに行って欲しかったのはあるけど過ぎたことを考えたって仕方がない。

 

「お前らがそう言うなら俺がこれ以上言うことでもないか。それよりも高瀬!!」

 

「なんですか?」

 

「試験監督を殴るとは何事だ!!」

 

「「えっ?!」」

 

僕と明梨は同時に声を出した。留学中に一輝の身に何が起きたんだ。教師に暴力なんて。

 

「だってアイツが明久のことを屑って言ったんですよ!!そんな奴に教師の資格なんてないでしょう。」

 

「確かに四方田教諭の発言には問題があったが、暴力に訴えるのは違うだろう」

 

「そうですね。オレももっと冷静に対処すべきでした。」

 

西村先生は呆れながら一輝のことを諌めた。

四方田 冴晴<よもだ さえはる>親が有名な資本家のためエリート教育を受けていたらしいが、そのため人を見下すことが多く生徒からは嫌われている。

 

「まぁ今は四方田 元教諭と言うべきか」

 

「どうゆうことですか?」

 

僕は先生の一言が気になったので聞いてみた。

 

「今回の問題発言のことを学園長に直訴した生徒がいてな、その証拠を集めて教育委員会に持って行ったところ四方田の教師免許の剥奪が決まったらしい。」

 

証拠を集めるってもしかして…

 

「…康太の盗聴器ですか?」

 

「あぁ証拠に関しては土屋が設置していた盗聴器に録れていてな、それ以外にも多くの問題発言が録音されていたので教育者として不適切だと判断されたようだ。」

 

康太の盗聴器は学園中に設置してあるけど、あれって犯罪行為じゃないのかな…

 

「まぁ四方田が他の職に就くことはもうできないだろうがな」

 

「それってなぜですか?」

 

ただ教師免許を剥奪されたくらいで就職できないなんてあるのかな

 

「あの問題発言を昭斗達が聞いたらしくてな、『生き地獄を味わってもらう』そうだ」

 

父さん・・・本当にあんたの職業が知りたいよ。どんな権力を使えばそんなことができるんだか。

 

「さすが昭人さんだな」

 

なんか一輝は父さんを讃えてるし

 

「あはは・・・」

 

明梨は苦笑いだし

 

「っと話が長くなってしまったな。遅刻しないように早めに教室へ行けよ」

 

そう言うと西村先生は他の生徒のところに試験の結果を渡しに行った。

 

「僕らもそろそろ行こうか」

 

「だな」

 

「そうね」

 

僕らは自分たちの教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

吉井明久 Fクラス

 

藤崎明梨 Fクラス

 

高瀬一輝 Fクラス

 




やっと原作のゾーンに入った感じです。
書き溜めなしでやるので、大変です。
自分はガチガチの理系人間なのでこんな長い文を書いてると頭がおかしくなりそうです。
自分からしたら、小説家や作家って宇宙人みたいな感じです。
一応は一日一話目標にします。
大学が完全に休みだからこそですね。


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AクラスとFクラス

今回は明久の武力の片鱗が見れます。
優子は優等生を演じてるのではなく優等生です。
ただ、本音を話す時は少し毒舌な感じにするつもりです。
活動報告にてオリキャラの案を募集しています。ご協力お願いします。


明久Side

 

「HRまでまだ時間あるしAクラスを見ていかない?」

 

HRまであと30分ほどある。Aクラスに寄って行っても10分もあればFクラスには着くので僕はそう提案した。

 

「オレはどっちでもいいぜ」

 

「せっかくだから行こうよ」

 

明梨が賛成したので僕達はAクラスへと向かった。

 

「あれ...」

 

Aクラスの前に立っているのは

 

「霧島さん?」

 

「・・・あ、吉井に明梨。おはよう」

 

去年の学年主席だった霧島翔子さんだ。

 

「おはよう。翔子ちゃん」

 

「おはよう霧島さん」

 

「ん、明久たちの知り合いか?」

 

そうだった一輝は転校してきたばかりだから知らないんだったな。

 

「そうだよ」

 

「そうか。オレは高瀬 一輝だ。明久たちとは幼馴染だ。よろしく」

 

「・・・霧島翔子。吉井の親友の坂本雄二の妻。よろしく高瀬」

 

「霧島さん。まだ恋人でしょ」

 

「・・・そうだった」

 

霧島さんはときどき大胆発言をする。中学生のころから雄二と付き合っているがまだ雄二は結婚できる年ではない。まぁ両家公認だから婚約者って感じかな。

 

「そういえば、霧島さんはなんで固まってたの?」

 

僕は霧島さんがAクラスの前で立ち止まっていた理由を聞いてみた。

 

「・・・ここの代表だから。教室の設備に驚いてた」

 

やっぱり霧島さんがAクラス代表か

 

「設備に驚くって…」

 

言われて設備を見てみると、普通の教室の5倍はある広さ、黒板のあるべき場所には壁一面はある大型プラズマディスプレイ、教室には有名な絵画まで飾ってある。さらに生徒ごとにノートパソコン、エアコン、冷蔵庫、リクライニングシート、お菓子まである。

 

「確かにこの設備は異常だね」

 

「金の無駄遣いだな」

 

「うん、他のクラスに分けてあげればいいのに」

 

一輝と明梨の意見ももっともだ。

 

「・・・吉井たちもAクラス?」

 

霧島さんが突然そんなことを聞いてきた。まぁ彼女は僕達の成績を知っているからね。でも

 

「いや、僕たちは途中退席したからFクラスだよ」

 

「・・・そう。私はそろそろクラスに入るけど吉井たちは?」

 

「僕達もそろそろFクラスに向かうよ。霧島さんAクラスの代表は大変だろうけど頑張ってね」

 

「翔子ちゃんファイト!!」

 

「負けんなよ霧島」

 

僕達が霧島さんに激励の言葉をかけると

 

「・・・うん。吉井たちも頑張って」

 

そう言ってAクラスへと入って行った。はて僕達は何を頑張ればいいんだ。そんな事を思っていると。

 

「あれ、明久君こんなとこでどうしたの?」

 

「ふぇっ、優子さんか」

 

突然声をかけられたので間抜けな声を出してしまいながらも相手を確認すると秀吉のお姉さんの木下優子さんがいた。

 

「確か明久君たちは途中退席だからFクラスのはずでしょ」

 

「うん、ちょっとAクラスの設備を見に来ただけだよ」

 

「明久達の知り合いか?」

 

優子さんにここにいる理由を説明していると一輝が話に入ってきた。

 

「うん。優子さんとは同じ中学校だったからね」

 

「そうか。オレは高瀬 一輝。明久の幼馴染だ」

 

「アタシは木下 優子よ。よろしくね。あと双子の弟がいるから優子でいいわ」

 

「そうか。ならオレも一輝でいい。よろしくな優子」

 

そう言うと一輝は微笑んで握手を求めた。

 

「う、うん。よろしく一輝君」

 

優子さんは頬を染め恥ずかしそうに握手した。まぁイケメンの部類に入る一輝の笑顔なら仕方ないか。

 

「ところで一輝君って試験監督を殴ってたわよね」

 

優子さんも同じ教室で試験を受けていたため一輝のことを覚えていたみたいだ。

 

「い、いやあれはアイツがアキのことを屑呼ばわりしたからであって」

 

西村先生に指摘され自分に非があるのを自覚したからなのか、慌てて言い訳をしている。

 

「はぁ、その気持ちもわかるけど、あのタイプの人間にあんなことしても無駄よ。ちゃんとした方法で対処しなくちゃ」

 

優子さんは溜め息をつくと、一輝を諌めた。さっきも西村先生に同じようなことを言われたため一輝は呆けてしまった。

 

「あれ、アタシ何か変なこといった?」

 

「あはは…さっき校門のところでも一輝君、西村先生に注意されたからね」

 

明梨が苦笑しながら優子さんに説明する

 

「ちゃんとした方法って言ってたけど学園長に直訴したのってもしかして」

 

「えぇアタシよ」

 

さっきの優子さんの発言に引っ掛かっていたので聞いてみると、優子さんはそう答えた。

 

「優子さんがそんなことをするなんて意外だな」

 

「まぁあの先生は自分が一流大学出のことを鼻にかけていて、嫌われていたからね」

 

知らなかったな下位クラスを見下すだけじゃなく上位クラスも見下してたなんて、そんな人がなんで教師になんかなったんだろう。他に行くあてがなかったのかな。

 

「話はこのぐらいにしましょ。もうすぐHRよ」

 

「えっ…ほんとだ。じゃあ僕達はFクラスに行くね。またね優子さん」

 

優子さんに言われて時間を確認するとHRまであと5分しかなかった。

 

「ほら、一輝も行くよ」

 

ガスッ

 

「痛っ、お、おう、またな優子」

 

「またね優子」

 

僕は一輝を軽()()小突くと二人も優子さんに別れを告げた

 

「またね、明久君、一輝君、明梨」

 

 

 

 

 

 

 

「僕達はいつのまに異世界に紛れ込んだんだろう」

 

「アキ、目を逸らしたい気持ちは分かるが現実だ。諦めろ。」

 

「ここは教室なのかしら」

 

明梨の疑問ももっともだ。だって廊下から見ただけでガラスは割れてるし、教室のプレートは外れかかっている、壁も穴や割れ目があり隙間風が入りそうだ。寺子屋の方がマシに思えるよ。

 

「まぁここに立っていたってしょうがないから入ろうぜ」

 

「「そうだね(そうね)」」

 

一輝がそう言うので僕らはクラスに入ることにした。

 

ガラッ

 

ヒュン   ビュン    カタカタッ

 

多数のカッターが飛んできたので僕は蹴りの風圧ですべて落とした。別に避けられないわけじゃないけど、避けたら後ろにいる明梨が怪我をしちゃうかもしれないしね。

 

『『『『チッ』』』』

 

どうやらあの覆面集団(たぶんFクラスの生徒)がカッターを投げてきたみたいだ

 

「君たち、カッターを投げるなんて危ないじゃないか」

 

一応注意してみるが

 

『『『『黙れ異端者め。貴様が我らの血の掟に背いたから罰を与えたまでだ』』』』

 

「で、何が言いたいの?」

 

『『『『女子と一緒に登校するなんて妬ましい!!!!!』』』』

 

「人間の言語は通じねぇみたいだな!!俺に歯向かったことを後悔させてやる」

 

そう言うと俺は覆面集団の元に一歩で近づき手前の奴をぶん投げた。投げられた奴は他の覆面を巻き込み10人ほどが気絶した。

 

『こっちの方が多いんだ。数で攻めろ!!!』

 

リーダー格の覆面がそう叫ぶと10人ぐらい一斉に飛びかかってきたが俺は近い奴から順に鳩尾に掌底や拳、膝蹴りなどを叩きこんで潰した。あと20人くらいか。俺はその後も覆面集団を潰していった

 

「遅かったじゃないか。明久」

 

覆面集団をボロぞうきんにし終わると、赤髪をたてがみのように逆立てた長身の男子生徒、坂本雄二が何事もなかったかのように教壇から声をかけてきた。って

 

「なんで雄二がここにいるんだよ!?」

 

雄二は中学時代『悪鬼羅刹』と呼ばれていたが、僕と出会ってからは勉強も再開し今では学年トップクラスの学力を持っているからFクラスのはずがない。

 

「明久達が途中退席するのを見たからな、点数を調整してここの代表になったんだ。お前らと一緒の方が楽しいしな」

 

「坂本君、翔子ちゃんと一緒のクラスじゃなくてもよかったんですか?」

 

「あぁ翔子にはちゃんと説明したからな」

 

まったくこいつの行動はたまに分からないことがあるよ。だけど

 

「『代表になった』ってことは何か考えてるんでしょ」

 

意味のないことはしない男だ。

 

「まぁなそれはあとで話すとして、明久そこの黒髪のことを紹介してくれないか」

 

一輝のことを指しながら僕に聞いてきた

 

「うん。彼は高瀬一輝、僕とは幼馴染で龍司さんの親戚だよ。ついでに『無銘道場』の門下生だよ」

 

「そうか。俺は坂本雄二、雄二って呼んでくれ。明久とは親友だ。ついでに俺も門下生だ。よろしくな」

 

「なるほどお前が『悪鬼羅刹』か。オレも一輝でいい、よろしくな雄二」

 

そう言うと二人は握手をした。やっぱりこの二人は何か通じるものがあるのだろうか。

 

「一輝がカス教師を殴ったときはスッとしたぜ。あのパンチは良かった」

 

「そうか?オレはもっと殴ってやりたかったがアイツを視界に入れたくなかったからな」

 

二人が意気投合して怪しい会話をしてるが無視して、クラスの様子を見ることにした。

 




自分のパソコンはなぜかハーメルンにログインできないため、毎回パソコンからスマホにメールを送り、スマホで投稿しているので誤字報告などありましたら、お気軽にコメントして下さい。
オリキャラの案も活動報告の方でもこちらのコメントでも構わないのでお寄せください。


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Fクラスの環境と自己紹介

今回は原作を読みながら、再構成しました。
島田に明久が変な言葉をかけたシーンは完全に変えました。
明久は10カ国くらいは喋れます。


改めてFクラスを眺めてみると酷い有様だ。

ボロぞうきんのような覆面集団(クラスメイト)、40人ぐらいいたが全員(呻き)声が男だった。

設備はちゃぶ台と座布団か。まぁ最低クラスだから仕方ないか。

問題は…

 

 

 

 

一部以外腐っている畳、隙間風の入る割れた窓や壁、こんな衛生環境は教育機関として問題になるはずだ。

いくらあの学園長でもその辺の問題は理解してるはずだし……一応は学園長に直に報告しといた方がいいな。

 

「HRを始めますので席についてもらえますか?」

 

教室を眺めながら考え事をしていると後ろから覇気のない声をかけられたので振り返ると、寝癖のついた髪にヨレヨレのシャツを貧相な体に着た、いかにも冴えない風体のオジサンがいた。どうやらこのクラスの担任のようだ。

 

「は~い」

 

「うーっす」

 

「ふぁ~い」

 

僕達は返事をすると空いている席へとついた。ちなみに僕の席は廊下側からの2番目の一番後ろの席で廊下側には明梨、僕の前は一輝で、窓側に雄二だ。

 

「え~、おはようございます。二年F組担任の福原 慎(ふくはら しん)です。よろしくお願いします。」

 

福原先生は薄汚れヒビの入った黒板に名前を書こうとして、やめた。もしかして

 

「ねぇ雄二、先生が名前を書かなかったのって」

 

「あぁ教壇に立った時に見たが、どうやらチョークすらまともに支給されてないみたいだ」

 

やっぱり最低クラスとはいえ何かおかしい。学園長は誰かに設備の件は任せていたのか?明らかに問題だらけだ。まぁFクラス入りするようなバカは疑問にすら思わないようだが。早めに学園長には報告をしておくか。

 

「次に設備の確認をします。ちゃぶ台と座布団は支給されていますか。不備のある人は申し出てください」

 

『せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入ってないです!』

 

「あー、はい。我慢してください」

 

『先生、俺のちゃぶ台の脚が折れています』

 

「木工ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」

 

まぁ最低クラスとなると設備の改修は無いんだろうな。方針だからこれは仕方のないことだ。こんな設備になりたくないんだったらもっと勉強をすればいいんだし。

 

『センセ、窓が割れていて風が寒いんですけど』

 

「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」

 

やっぱり衛生環境がおかしいなこれは誰かが意図的にやっているようだな。雄二も何か考えている、たぶん僕と同じようなことだろう。

 

「では、廊下側の人から自己紹介をしてください」

 

そんなことを考えていると連絡することはもうないのか自己紹介の時間になったようだ。廊下側の一番前の生徒が立ち上がる。ん、あれは・・・

 

「木下 秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」

 

やっぱり秀吉だ。秀吉もAクラスに行けるはずだけど、雄二が誘ったのかな。一見女子にも見えるほど小柄な体に女顔の童顔で髪も肩にかかる程度の長さに切りそろえられている。そのため、中学のころはよく女子と間違えられて困っていたっけ。その時に僕がいろいろとアドバイスをしたから今では男子に見られるようになった。髪は演劇のために短くしたくないそうなので髪型を工夫し、男らしく見せるために少し筋肉もついたからね。まぁ一部の女子に餓えたバカはまだ秀吉のことを女子として扱っているらしいけど。

 

『『『木下、俺と付き合ってくれ~!!!!』』』

 

「わしは男じゃ!!」

 

『『『バカな!!!』』』

 

うん、その一部のバカはこのクラスに集結しているようだ。秀吉が男だということに絶望しているのが40人以上いるよ。

 

『待て、木下は男だと言ったが、女でないとは言っていない。つまり、男でも女でもある第三の性別【秀吉】なんじゃないのか』

 

『きっと、そうだ。お前は天才だな』

 

いや、とんでもないバカだよ。だいたい第三の性別ってなんだよ、人間には2つしか性別は無いに決まっているじゃないか。漫画や小説の世界じゃないんだし、現実と虚構の区別もつかないバカなのか。

 

「じゃから、わしは女でも【秀吉】という性別でもなく男じゃ!!!」

 

『『『『なら、問題ないな!!!木下~付き合ってくれ~!!!』』』』

 

やっぱり、あの覆面集団はバカの集まりだな、秀吉の言葉が耳に入ってないよ。あ、秀吉は呆れながら席に着いた。うん、あのバカに理解させようとするのは無駄な努力だからその対応が一番だね。しかも、40人以上が全く同じ台詞を言うなんて。

 

「・・・・・・土屋 康太」

 

康太も雄二に誘われたのかな。秀吉もそうだけど康太はある教科のおかげでAクラス中堅程度の成績だからね。しかし、相変わらず無口だな。運動神経も良いし、結構モテそうなんだけど、やっぱりあの癖のせいか一部以外の女子には避けられているからね。しかし、最低クラスとなると男子ばっかで女子がいないのか、女子が明梨一人というのは居心地が悪いだろうな・・・

 

「――です。海外育ちで、日本語は会話はできるけど読み書きは苦手です。あ、でも英語も苦手です。育ちはドイツだったので。趣味は―」

 

そんなことを考えていると女子の声が聞こえてきた。でもこの声は

 

「趣味は吉井明久を殴ることです☆」

 

やっぱり島田さんだ。なぜか僕に暴力を振るってくる野蛮な女子だ。女子とはいえ明梨はあまり彼女に近づかない方がいいだろう。なんど注意しても僕の話を聞かないからな、そろそろ体に教えた方がいいかもな。

 

「ちょっと、何無視してんのよ吉井!!あんたのことを言っているんだから反応しなさいよ!!」

 

何か言っているが置いておこう。彼女は島田美波。1年のころに彼女が日本語が良く分からないために暴言を吐いてしまっていたので、僕がなんとか誤解を解いてあげてから、やたらと僕を殴ってきたり、関節技を掛けてきたりする。あの誤解の解き方が悪かったのかな?僕は確かに彼女のドイツ語の言葉を正確に訳したはずなんだけど。ドイツ語は父さんの仕事に何度かついていくことがあったから覚えていたんだよね。他にも英・仏・露・中・伊語は日常会話程度ならできるんだよね。父さんは世界中に仕事に行っているし。

 

「島田さん。静かにしてください。今は自己紹介中です」

 

バンバン

 

先生が教卓を叩きながら島田さんの注意をするが

 

「先生!!あれは吉井が…」

 

ガラガラッ

 

島田さんが言い訳をしていると教卓が音を立てて崩れた。叩いただけで崩れる教卓って。

 

「あはは…」ケホッケホッ

 

明梨は苦笑いしながらも埃を吸い込んだのかせき込んでいた。やっぱすぐにでも設備を良くしないとな。となると雄二にアレをするように提案するかな。

 




タグにはアンチ島田と書いてますが、試験召喚戦争編が終わると余り出番は無い予定です。
あの暴力は殺意にしか見えないですね。
引き続きオリキャラの案を募集しています。よろしくお願いします。


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戦争の引き金

ついに雄二が戦争の引き金を引きます。
バカテストはある程度余裕が出て来たら書く予定です。
オリキャラの案の募集しています。ご協力お願いします。


「替えの教卓を持ってきますので、少し自習をしていてください」

 

先生はそう言うと教室から出て行ったので、僕は雄二と話すことにした

 

「雄二、話があるんだけど」

 

「俺からも話したいことがあったんでな、廊下でいいか?」

 

「うん」

 

雄二から話?もしかして雄二も仕掛けるつもりだったのかな

 

 

 

 

「で、話ってのは試召戦争についてだろ?」

 

やっぱり雄二は分かっていたか

 

「うん。流石にこの設備で勉強するのはつらいからね」

 

「嘘だな。お前なら青空教室だろうが集中して勉強できるだろう。誰かのためなんじゃないか?」

 

「なっ、べ、別に明梨は関係ないよ」

 

「俺は藤崎のことだなんて言ってないぞ」

 

くそっ嵌められた雄二はニヤニヤと野性的な笑みを浮かべている。コイツはいつも明梨のことでからかってくる

 

「はぁ そうだよ。明梨にこの衛生環境は流石に問題があるからね」

 

雄二に嘘を言ってもしょうがないので僕は正直に話すことにした。

 

「確かにあの環境は問題があるからな。誰かが意図的にしたとしか思えないしな」

 

「やっぱり雄二もそう思うんだ」

 

「あぁたぶんババァは気付いてないだろうな。まぁ予定外だがとりあえず今日中にEクラスと設備を交換するか」

 

やはり雄二はだいぶ計画を立てているみたいだな。まぁ調整して代表になったくらいだ、振り分け試験からかなり時間もあったし、いろいろと計画したんだろうな

 

「俺に任せとけ、必ずAクラスまで連れてってやる」

 

「うん。頼りにしているよ」

 

こいつがこんな自信満々に言うんだ。全ての可能性を考えているんだろうな

 

「お、先公も帰ってきたみたいだし戻るぞ」

 

「うん」

 

僕らは教室へと戻った。

 

 

 

「え~それでは、自己紹介を再開してください」

 

先生がそう言うと自己紹介が再開された。どうやら、明梨からみたいだ。

 

「藤崎明梨です。よろしくお願いします。あと明君と一輝君とは幼馴染です」

 

シュッ パシッ ヒュン

 

明梨がそう言うと僕と一輝のところに大量のカッターが飛んできたので僕達はそれを全部受け止めて持ち主の元に返してあげた

 

『『『『うわぁっ』』』』

 

皆大げさに避けたけど

 

「当たらないように投げたのに動くと当たっちゃうじゃないか。それとカッターは投げるものじゃないって習わなかったのかな?」

 

『『『『いえ、習いました。すみませんでした!!!!』』』』

 

皆即座に土下座した。でも、こいつ等は反省しないだろうな。のど元過ぎれば熱さ忘れるタイプだし。一輝は呆れているのか面倒なのか、もうこいつ等には無関心だ。まぁ今日はこのくらいにしとくか

 

「―です。よろしくお願いします」

 

その後も名前を告げるだけの作業が続く。っと次は一輝の番だ

 

「高瀬一輝だ。特には無いが一言だけ、オレの友人をバカにしたら覚悟しとけ」

 

『『『『(コクッコクッ)』』』』

 

一輝がそう言うとさっきの恐怖を思い出したのか、小刻みに震えながら頷いていた。

 

次は僕か

 

「吉井明久です。趣味は料理と鍛錬、特技は武道全般です。よろしくお願いします」

 

ガラッ

 

僕が席に着くと同時に扉が開いた。そこには少し息を切らした女生徒が立っていた。

 

「すみません。保健室に、行って、いたら、遅れ、ました」

 

『えっ』誰からというわけでもなく、教室全体から驚嘆の声が上がった。まぁ、入ってきた人物を見れば理由は察しが付く。

 

「ちょうどよかったです。いま自己紹介をしている最中なので姫路さんもお願いします」

 

先生は冷静に姫路さんに自己紹介をするように言った。

 

「は、はい!あの、姫路瑞希といいます。よろしくお願いします」

 

小柄な体をさらに縮こまらせるように声を上げる姫路さん。まぁ確かに男だらけのFクラスに女生徒が来たことも驚きだが、皆が驚いた理由はほかにある。

 

『はいっ!!質問です!!』

 

すでに自己紹介を終えた男子生徒が勢いよく手を挙げる。

 

「あ、は、はいっ。なんですか?」

 

まぁいきなり質問されたら驚くよね。質問の内容は僕も予想がつくけど

 

「なんでここにいるんですか?」

 

出ました。バカ発言、質問の仕方を知らないのか、かなり失礼な言い方だ。まぁ質問したい気持ちもわかるけど。彼女は本来学年次席クラスの実力を誇り、その実力も有名だからAクラスは確実のはずだ。

 

「そ、その・・・振り分け試験の最中に高熱を出してしまいまして…」

 

姫路さんも途中退席で『無得点』扱いか。姫路さんの言い分を聞き、クラス中から言い訳の声が上がる。

 

『そういえば、俺も熱(の問題)が出たせいでFクラスに』

 

『あぁ化学だろ?アレは難しかった』

 

それだけでFクラスになるんなら出てなくてもここに来てるだろう

 

『俺は弟が事故に遭ったと聞いて実力が出し切れなくて』

 

『黙れ一人っ子』

 

『前の晩、彼女が寝かせてくれなくて』

 

『『『『今年一番の大嘘をありがとう』』』』

 

これは、想像以上のバカの集まりだ。よく高校に受かったな

 

「で、ではっ、一年間よろしくお願いします」

 

そんななか逃げるように雄二の隣の席に座る。見た感じではもう体調は良さそうだな。

 

「姫路」

 

席に着いた姫路さんに雄二が声をかけた。試召戦争をするから、体調のことを直接聞くのかな?見た目だけじゃ万全かどうかは分からないしね。

 

「は、はいっ。何ですか?え~っと」

 

「坂本だ。坂本雄二。よろしく頼む」

 

「あ、姫路です。よろしくお願いします」

 

深々と頭を下げる彼女。挨拶も丁寧だし、育ちがいいんだろうな。

 

「ところで、体調はもういいのか?」

 

やっぱり体調のことだった。彼女はこのクラスの主戦力になるし当たり前か

 

「あ、はいっ。もう大丈夫です。ってそこにいるのは吉井君!」

 

僕を見つけてびっくりする姫路さん。なんでビックリしたのだろうか。まぁ

 

「体調はいいみたいだね。安心したよ」

 

流石にこの衛生環境で体調を崩した人が過ごすのは問題だろうしね

 

「あっ、はいっ。吉井君も一年間よろしくお願いします」

 

「うん。よろしくね、姫路さん」

 

姫路さんが僕に挨拶をしてきたので僕も返事を返した。

 

「坂本君、君が最後の自己紹介ですよ」

 

姫路さんと話している間に雄二の番みたいだ

 

「了解」

 

先生に呼ばれて雄二が席を立つ。ゆっくりと教壇に歩む姿は演説前の人間のような雰囲気を出している。やはり雄二には人の上に立つ者の資質を持っているようだ。とても高校生とは思えない貫禄がある

 

「坂本君はFクラス代表でしたよね」

 

福原先生に問われ、鷹揚と頷く雄二。別にクラス代表といってもFクラスなら学年の最下位レベルだから誇ることではないが、雄二には何か考えがあるのだろう

 

「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも好きに呼んでくれ。・・・さて皆に問いたい」

 

そこで一旦言葉を区切る雄二。間の取り方がうまいのか皆の視線が雄二に集まる。みんなの視線が自分に向いたのを確認すると雄二は教室を見渡す。その視線を辿るように皆の視線も移動する。

 

カビ臭い教室、古く綿の入ってない座布団、薄汚れて足がガタつくちゃぶ台

 

「Aクラスは個人用エアコンにリクライニングシート、お菓子も食べ放題…etcらしいが―」

 

一呼吸おいて静かにFクラスの皆に問いかける

 

「―不満は無いか?」

 

『『『『おおありじゃあっ!!!!!』』』』

 

クラスの想いが一つになった。やはり雄二は人を乗せるのがうまいな。安土桃山時代や中国の春秋・戦国時代に生まれていたら必ず名軍師として後世に名を残していただろう

 

「だろう?俺だってこの現状には大いに不満だ。代表として問題意識を感じている」

 

『そうだそうだ!!』

 

『いくら学費が安いからといって、この設備はあんまりだ!改善を要求する!』

 

うん。教育環境として問題があるからね。適当な機関に訴えればある程度は改善されるだろう

 

『そもそもAクラスだって同じ学費だろう?あまりに差が大きすぎる』

 

堰を切ったかのように次々と上がる不満の声

 

確かにAクラスとの差は大きいがB~Eクラスのことも考えるとそのぐらい差が出るのは仕方のないことだろう。それにAクラスにいる人たちはそれだけの努力をした人たちだ。自習時間にゲームをしたり漫画を読んだり寝ていたりする君たちが同じ待遇を要求すること自体間違っている。

 

「皆の不満ももっともだ。そこで」

 

雄二はクラスの反応に満足したのか野性たっぷりの笑みを浮かべた。あの顔をするときは何か企んでいる時だ

 

「これは代表としての提案だが、FクラスはAクラスに『試召戦争』を仕掛けようと思う」

 

Fクラスの代表は戦争の引き金を引いた

 



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戦力紹介

第5話からは予約投稿で一日一話更新しています。
楽しみにして下さる方には申し訳ないですが、自分の執筆スピードの関係です。


Aクラスへの宣戦布告。それはFクラスにとって現実味と乏しい提案にしか思えない

 

『勝てるわけがない』

 

『これ以上設備を落とされるなんて嫌だ』

 

『姫路さんがいたら何もいらない』

 

『藤崎さんの近くに居れればそれだけでいい』

 

そんな悲鳴が教室のいたるところから上がる。最後の2つはちょっと違うが、明梨にラブコールした奴は後でじっくりとオハナシしないとな。だが学年の最底辺のFクラスと最高峰のAクラスではここにいるバカでも気づくほどの大きな差がある

 

 

 

文月学園に点数の上限のないテストが導入されてから4年。このテストには1時間の時間制限と無制限の問題数が用意されているため、実力次第で点数はどこまでも取れる。また、化学とオカルトの偶然によって生まれた『試験召喚システム』はこのテストの点数に応じた強さを持つ『召喚獣』を呼び出すシステムだ。

学力低下が嘆かれる昨今、生徒の勉強に対するモチベーションを高めるためにこの学園では、その召喚獣を用いた試召戦争で設備の向上ができる。ただし、これはクラスごとに行い勝てればランクアップ、負ければランクダウンって感じになるためクラス同士の戦力によって決まる。だからこそこのシステムは勉強に対するモチベーションの向上になるのだ。

とはいえ振り分け試験直後のこの状況だとクラスの差がそのまま戦力の差になる。もちろん最底辺と最高峰には圧倒的な差があり、文字通り点数の桁が違う

 

『何をバカなことを』

 

『できるわけないだろう』

 

『何の根拠があってそんなことを』

 

このクラスの人でもそれは気付いている。でも君たちにはバカ呼ばわりされたくないな

 

「根拠ならあるさ。このクラスには試召戦争に勝つための要素が揃っている」

 

雄二はそのためにこのクラスに入ったようなもんだ。もう作戦も立てているんだろう。

 

「それを今から説明してやる」

 

そう言うと雄二は教室の一角に目を向け呆れたような顔をした。なんでだろう…あぁアイツか

 

「…康太…畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に来い」

 

「・・・・・・!!(ブンブン)」

 

「は、はわっ」

 

即座に否定する康太。姫路さんはやっと気付いたのかスカートの裾を押さえ遠ざかる。康太は顔についた畳の跡を隠しながら壇上へと歩き出した。まったく。恥も外聞もなくあんな行動をするなんてさすが・・・

 

「こいつがかの有名な、寡黙なる性識者<ムッツリーニ>だ」

 

さすがムッツリーニってか?明梨のスカートを覗いていたらオハナシするとこだけど

 

「・・・・・・事実無根(ブンブン)」

 

土屋康太は有名じゃないけどムッツリーニは別だ。突然プールや体育館などに現れるのでほとんどの女子からは軽蔑され、女子の様々な写真を撮り販売することから男子からは畏敬と畏怖を持ってその名は挙げられる。まぁ写真の腕でも一部の人には有名だ。新聞部とか放送部とか

 

『ムッツリーニだと・・・』

 

『馬鹿な、ヤツがそうだというのか・・・』

 

『だが見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠をまだ隠そうとしている』

 

『あぁ。ムッツリの名に恥じない姿だ・・・』

 

恥じるべきことだよそれは。

 

「???」

 

唯一姫路さんだけはその名を知らないのか疑問符を浮かべている。まぁ知らないのもしょうがないか

 

「姫路と藤崎のことは説明するまでもないだろう。皆もその実力は知っているはずだ」

 

「「えっ、わたし(私)ですか?」」

 

「あぁウチの主戦力だ期待している」

 

姫路さんも明梨も学年次席争いをするほどの高得点者として有名だ

 

『あぁ俺たちには姫路さんと藤崎さんがいるんだ』

 

『彼女たちならAクラスにも引けを取らない』

 

『姫路さんがいれば何もいらないな』

 

『藤崎さんサイコー』

 

また明梨にラブコール送っている奴がいる。O☆HA☆NA☆SHIが必要かな

 

「木下秀吉だっている」

 

秀吉はAクラス並みだが学力で有名なわけじゃない。

 

『おぉ演劇部のホープの・・・』

 

『確かAクラスの木下優子の……妹』

 

そう、秀吉といえば演劇部のホープだ。さらに双子の姉の優子さんの学力はAクラス上位なので有名だ。もう諦めたのか妹発言に秀吉は反応してない。ドンマイ秀吉

 

「それに…」

 

雄二は視線を巡らせると島田さんと目が合ったようだ。島田さんは自分も戦力として紹介されると思い目を輝かせているが

 

「俺だって全力を出す」

 

「ちょっとウチは?!」

 

島田さんが抗議の声を上げる

 

「お前の得意教科は数学だったか」

 

「そうよ数学ならウチはBクラス並みは…」

 

『『『おぉ!!』』』

 

「戦力外だ!!」

 

島田さんの発言を雄二が遮る。Bクラス並みと聞いて歓声を上げた人もいるが

 

「ちょっ何でよ!!」

 

「俺たちの目標はAクラスだBクラス並みの戦力は当てにできん」

 

そう、僕達の目標はAクラスなのでBクラス並みでは意味がない

 

『確かにそうだな』

 

他の人も納得したみたいだ

 

『坂本ってなんだかやってくれそうだな』

 

『あぁそう言えば小学校の頃『神童』とよばれていたような』

 

『なら振り分け試験の時は実力を出し切れなかったのか』

 

『実力はAクラス並みが3人もいるってことじゃないか』

 

有名じゃないけど秀吉や康太、僕もAクラス並みだ。転校生だから知らないだろうが一輝もトップレベルだし。

いつの間にかクラスメートの士気は最高潮に達していた。

 

「それに、吉井明久だっている」

 

 

―――シーン―――

 

 

あそこまで上がっていた士気が一気に下がった。

 

『誰だよ吉井明久って』

 

『このクラスにいたか?』

 

おい、さっき自己紹介したじゃないか

 

「雄二、僕は有名じゃないんだから名前出さなくてもいいんじゃ」

 

僕が呆れながらそう言うと雄二は視線で『俺に任せとけ』と言ってきた。まぁ任せるけど

 

「そうか。知らないなら教えてやる。こいつの肩書は『観察処分者』だ」

 

『それって、馬鹿の代名s(ビュン)うわっ』

 

「オレの友人をバカにするなって警告したよな?」

 

僕のことをバカ呼ばわりした人の頭の上を一輝の蹴りが通り過ぎた。あれ当たってたら首飛んでただろうな

 

『すいませんでした!!!!!』

 

即座に土下座する。なんど土下座すれば反省するんだろうか

 

「確かに『観察処分者』は学校内での素行が悪い生徒に下される処分だが、明久は自分から志願したんだ。」

 

そう僕は自分から観察処分者に志願した。普段お世話になっている西村先生に恩返しするために

 

「『観察処分者』の召喚獣には物理干渉能力がある。これは戦争においても役立つ力だ」

 

そう、観察処分者の召喚獣は物に触れる。他の召喚獣は床に立つことしかできないけど

 

『おぉっ確かに便利そうだ。召喚獣の力ってすごいって言うし』

 

『あれ、でも観察処分者ってフィードバックがあって本人がつらいから、簡単には戦えないんじゃ』

 

「確かにフィードバックはあるがこいつの操作経験は学年トップだ。明久何回ぐらい召喚獣を操作したことがあるか言ってみろ」

 

「え、数えたことは無いけど雑用だけで100回は召喚しているよ」

 

そのたびにフィードバックがあるけど生身でやるよりは疲労も少ない

 

「皆も聞いただろう。こいつの操作能力は学年トップだ」

 

なんか雄二に褒められると照れくさいな

 

『これならほんとにAクラスに勝てるんじゃないのか』

 

「皆、この境遇には大いに不満だろう?」

 

『『『『当然だ!!』』』』

 

「ならば全員筆<ペン>を執れ!!出陣の準備だ!!」

 

『『『『おおーーっ!!』』』』

 

「俺たちに必要なのはちゃぶ台ではない!Aクラスのシステムデスクだ!!」

 

『『『『うおおーーー!!』』』』

 

「お、おー……」

 

クラスの雰囲気に圧されたのか姫路さんも小さく拳を握り挙げていた。無理をしなくてもいいのに

 

「頑張ろうね。明君」

 

「うん、頑張ろう明梨!!」

 

早く明梨をこの教室から解放してあげないとな

 




Fクラスの戦力紹介です。島田ファンの方には申し訳ないですが、戦力外です。
とりあえず、書き留めていく予定なので次の更新は遅れるかもしれません。


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宣戦布告と明久の父親

今回は、宣戦布告と明久の父親についての話です。
やっと謎の多い昭斗の謎が…


「須川にはEクラスへの宣戦布告の死者になってもらう。開戦は午後からだ。無事大役を果たせ!!」

 

使者の字が変だったことにはツッコまないぞ

 

「……下位勢力の使者ってたいてい酷い目に遭うんじゃなかったか」

 

須川君の言うとおり、下位クラスからの宣戦布告は拒否できないため宣戦布告に来た人はその怒りのはけ口になるはずだ

 

「大丈夫だ。たかが学生の戦争ごっこでそんなことにはならない」

 

「本当か?」

 

「あぁ、俺の言うことを信じろ」

 

嘘だろうな。だって雄二が人を騙すときの顔をしている

 

「それにEクラスはイケメン好きが多いらしいから、お前が行けば―」

 

「よし、分かった」

 

雄二の言葉を最後まで聞かずにEクラスへと向かってしまった。

 

「―血祭りにあげられるはずだ」

 

雄二はしてやったりといった笑みを浮かべていた。

 

「雄二よ。お主、存外鬼畜じゃな。よりによって血の気の多いEクラスとは」

 

秀吉が雄二に歩み寄りながらそう声をかけた。でもあれは仕方がないと思うよ、だって

 

「あの覆面集団の指揮を執っていたのが須川だったからなその罰だ」

 

あの覆面集団(FFF団というらしい)の団長だったからね。

 

 

 

EクラスSide

 

ガラッ

 

勢いよくドアを開けて一人の男子生徒が入ってきた。他クラスの生徒が来る用事の見当がついたのか数人の男子生徒が自分の席から腰を上げる。

 

「Fクラスの須川亮だ。Fクラスの使者としてEクラスに宣戦布告に来た。開戦は午後からだ」

 

須川がそう告げるとEクラスの全男子生徒が襲ってきた。

 

『最下位クラスがなめてんじゃねぇぞ!!』

 

『補習のせいで部活の時間が減るじゃねぇか!!』

 

彼らにとっては、部活>>勉強、のようだ

 

ガスッ ボゴッ メキョッ

 

雄二の言った通り須川は血祭りにあげられた

 

Side end

 

 

 

「坂本ぉぉお!!騙したなぁぁ!!」

 

ボコボコにされた須川君が雄二に抗議するが

 

「何を言っているんだ。お前が俺の話を最後まで聞かないから悪いんだろ。俺はお前が行けば血祭りにあげられるって言おうとしたのに」

 

「なっ」

 

雄二の言った通りだ。話を最後まで聞かなかった須川君の責任だ。雄二の言い分は正論なので須川君はしぶしぶ自分の席へと戻った。

 

「さて、宣戦布告も済んだし、明久と秀吉、康太。あと藤崎と一輝は一緒に来てくれ。話があるから屋上で一緒に飯を食おう」

 

「「「「「(……)了解(じゃ)(です)」」」」」

 

雄二の言葉に頷いて僕達は屋上へと向かった

 

 

 

 

ガチャッ

 

雄二が屋上に通じるドアを開けると、春の日差しが差し込んできた。眠気を誘うような温かな日差しが気持ちいい。

 

「さてと、話はさっき話した試召戦争についてだが」

 

「あの、坂本君と明君は試召戦争について話してたんですか?」

 

僕と雄二が廊下で話していたのを知っていたからか明梨が雄二にそう尋ねた

 

「あぁ明久が藤崎のために『試召戦争がしたい』って言ってきたんでな」

 

「ちょっ雄二なにバラしてるんだよ」

 

そんなことを言ったら明梨のことが好きだってばれちゃうじゃないか

 

「本当、明君?」

 

「う、うん。また明梨が体調を崩したら大変だからね」

 

「そう…(やっぱり、明君はみんなにやさしいからなぁ)」

 

なんとか誤魔化せたみたいだけど明梨はなんか落ち込んでいる。どうしたんだろう

 

「(なんであれで気付かないんだ)」

 

「(明久も自覚したみたいだが関係は相変わらずか…)」

 

「(明梨も報われんのう)」

 

「(……鈍感)」

 

なんか雄二達が失礼なことを考えている気がする

 

「っとまぁそのことは置いといて本題に入る前に明久に聞きたいことがあるんだが、いいか?」

 

「僕の分かることなら答えるけど」

 

何を聞きたいんだろう

 

「お前の親父って何をやっているんだ?」

 

「どうしたの急に?」

 

突然僕の父さんがなにをしてるか聞いてくるなんて

 

「いや、朝、鉄人にあのクソ教師の処遇について聞いてみたら『吉井の父親が二度と職に就けないようにしたから安心しろ』って言われたんでな。そんな権力持っているのか?おまえの親父は」

 

鉄人というのは生徒の間での西村先生のあだ名だ。趣味がトライアスロンで年中半そでを着ているのがその由来らしい。

 

「いや僕も父さんの仕事については知らないんだよ。本人は『世界を平和にするただのサラリーマン』って言っているけど」

 

実際あの人は謎だらけだ。先週も家にWHOの人が来たし

 

 

 

 

~回想~

 

ピンポーン

 

僕が部屋でゲームをしていると突然玄関のチャイムが鳴った。誰だろう今日は特に約束は無かったはずだけど

 

「は~い」ガチャ

 

返事をしながらドアを開けると、スーツ姿の秘書のような女性が立っていた。僕の知らない人だけど誰だろう

 

「突然の訪問で失礼します。私はWHOのものですが、吉井昭人さんは御在宅でしょうか?」

 

「父なら今はいませんが急用ならば連絡しましょうか?」

 

今父さんは家にいない。急用ならば電話なりメールなりすべきだろう

 

「いえ、お気遣いなく。御在宅ならばお話を伺いたかっただけですので。ご帰宅なさいましたらよろしければこちらにご連絡いただけますか」

 

そう言って彼女は僕に名刺を渡してきた。ほんとにWHOの人間のようだ

 

「はぁ、分かりました。そう伝えときます」

 

「では、私はこれにて失礼します。お時間をとらせてしまい、申し訳ありませんでした」

 

彼女は丁寧にお辞儀をすると帰って行った

 

 

 

Prrrr Prrrr

 

ガチャ

 

『ん、明久かどうしたんだい?何か問題でも起こした?』

 

僕は一応父さんに連絡をすることにした

 

「僕が問題児みたいな言い方はやめてよ」

 

僕は観察処分者だけど問題児ではないのに

 

『ははっ、まぁ親にとっては子供の心配は普通のことだよ』

 

父さんの言うことはもっともだけどそんなこと話しても仕方ない。本題に入ろう

 

「ところで父さんは今どこにいるの飛行機の音が聞こえるけど」

 

さっきから飛行機のエンジン音が聞こえる空港にでもいるのかな?

 

『父さんは今エアフォースワンの中に居るんだよ』

 

エアフォースワン――アメリカ大統領専用の飛行機。一般人の乗れるものではない

 

うん。今の会話に変なところは無いはずだ。エアフォースワンってのは僕の聞き間違いだろう。

 

「で、父さんは今何をしているの?」

 

この質問でさっきの言葉が聞き間違いかどうかわかるだろう

 

『大統領と世界の平和について語り合っているところだよ』

 

おかしい

 

「どうして、あんたは大統領と平和について話なんかできるんだよ!!」

 

『それは、父さんの仕事が世界を平和にするためだからだよ』

 

だめだ、『なぜできるのか』と聞いたのに『なぜしてるのか』という回答が来た

 

~回想end~

 

 

 

 

いつも父さんに仕事に関することを聞いても、適切な回答をしてくれないからな。あの時もひたすら無駄な時間を過ごしてしまったよ

 

「……『世界を平和に』…….明久、お前の父親の名前は?」

 

康太が何かに引っ掛かったのか父さんの名前を聞いてきた

 

「えっ、昭斗だよ。吉井昭斗」

 

「……やはりか」

 

「どうしたんだ、康太」

 

何か父さんのことを聞いたことでもあるのかな

 

「……10年ほど前に米ロの全面核戦争の危機を救った日本人がいるという噂を聞いたことがある」

 

「まさかっ」

 

雄二も気付いたみたいだ

 

「……あぁその男の名は“Akito Yoshii” というらしい。たぶん同一人物」

 

「まぁ昭斗さんならそのぐらいできるだろうな」

 

「うん。昭斗さんなら出来そうね」

 

一輝と明梨は納得している。まぁ父さんの体力はすごいからね。蛇のコードネームを持つエージェント並みのこと出来てもおかしくは無いけど

 




昭斗の謎が少し分かり、さらに謎が深まりました。
昭斗については作者である自分も何者なのか把握できません。
引き続きオリキャラの募集をしています。ご協力お願いします。


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作戦会議とEクラス戦

今回は話の切れ目が少し変です。すみません。
さらに話が長めになっています。


「話がだいぶ逸れたな。本題に戻そう」

 

雄二がやっと話を本題に戻した

 

「どうやってAクラスに勝つかだったよね」

 

僕も父さんのことを考えるのをやめ試召戦争のことへと切り替える

 

「あぁ、流石にAクラス相手にふつうに戦ったのでは勝てないからな」

 

雄二がここまで言うんだ、作戦ではどうにもできないのだろう

 

「では、わしらの目標はBクラス当たりにするのかの?」

 

「いや、目標はAクラスに勝利することだ」

 

廊下で話した時にAクラスに連れていくって言ってたもんな。しかし『ふつう』では勝てないってことは

 

「一騎打ちにでも持ち込むのか?」

 

一輝もその考えが浮かんだようだ

 

「あぁそうだ。俺はAクラスと7VS7の一騎打ちを申し込もうと考えている」

 

やはり一騎打ちを申し込むのか、しかし

 

「でも、Aクラスにとって負けるリスクの高い一騎打ちなんて引き受けてもらえるんでしょうか」

 

明梨の言うとおり一騎打ちは手軽に戦争を終わらせられるが負ける、つまりは設備ダウンの可能性が高い方法だ。 でも雄二なら何か考えがあるんだろうな。

 

「普通ならば応えないだろうが、Bクラスを利用するのとこちらが勝った時の要求を変えるからうまく交渉すれば引き受けてくれるだろう」

 

「……Bクラスを使う?」

 

「たぶんだけど、雄二はBクラスに設備を交換しないことを条件にAクラスに宣戦布告をするように指示して、その後にウチが攻めるとか、考えているんでしょう?」

 

「ビンゴだ。明久」

 

「なるほど。従わなければFクラスの設備。いや、Eクラスか。従えばAクラスが一騎打ちに応じれば設備に変化なし、応じなくってもCクラスの設備になるからな」

 

「なるほどのぅ」

 

「……納得」

 

みんな雄二の作戦を理解したみたいだ。っともう一つ気になってたことが

 

「雄二、設備のことはいつ報告する?」

 

「今日は試召戦争があるからな。明日は一日補充にあてるつもりだから明日の放課後でいいだろう」

 

「うん、わかったよ。康太、Fクラスの設備を写真に撮っておいてくれる?」

 

「……わかった」

 

僕らは話すことはもう済んだので、後は雑談しながらお弁当を食べた。もちろん、僕は自分でお弁当を作ってきた よ。塩と水で生活なんてしてるわけないじゃないか。     ・・・・・・最近は

 

キーンコーンカーンコーン

 

午後の授業開始のチャイムが鳴る。

 

「よし、お前ら逝ってこい。EクラスにFクラスの底力見せつけてやれ!!」

 

『『『『おぉーーーー!!!』』』』

 

雄二の掛け声と同時に近衛部隊と僕達補充組(僕、明梨、一輝、秀吉、康太、姫路さん)以外のFクラスの生徒全員がEクラスへと駆け出した。

 

『最底辺クラスなんかに負けるかぁ~!!』

 

『力の差を見せてやるぅ~!!』

 

Eクラスもやる気十分だ。Eクラスとは隣り合っているためその境目が戦場になり、そこで勝った方のクラスに相手が流れ込んでくるだろう。さて僕は補充試験を受けないと

 

戦場Side

 

EクラスとFクラスの間の廊下では両クラスの召喚獣が戦闘を行っていた。

 

『『『『試獣召喚!!(サモン)』』』』

 

Eクラス 園村 俊哉  VS   Fクラス 君島 博

 

現代文   63              46

 

Eクラス 三上 美子  VS   Fクラス 田中 明

 

日本史   58               38

 

Eクラス 藤村 頼長  VS   Fクラス 縁 勇樹

 

物理    53               62

 

Eクラスとはいえ、やはり格上、1VS1で は負けてしまうが廊下が狭くその状況を変えるのは難しい、このまま行けばFクラスが押し切られるだろう

 

しばらく戦闘が続いていると

 

Fクラス 田中 明

 

      戦死

 

「戦死者は補習!!」

 

『ぎゃぁっ!!やめてくれ!!補習室だけは勘弁を!!』

 

「黙れ!!捕虜は全員この戦争が終わるまで補習室で特別講義だ!終戦まで何時間かかるかわからんが、たっぷりと指導してやるからな」

 

『た、頼む!!見逃してくれ!!あんな拷問耐えきれる気がしない!!』

 

「拷問?そんなことはしない。これは立派な教育だ。補習が終わるころには趣味が勉強、尊敬する人は二宮金次郎、といった理想的な生徒にしてやろう」

 

『お、鬼だ!!誰かHelpu mi(ガチャ、バタン)』

 

英語で助けを呼ぼうとするも、流石Fクラスあの程度の英単語すらできないとは。西村先生によって戦死者が補習室に監禁されてゆく。両クラスとも減っているが流石に実力に差があるため、Fクラスの方が減りが早い

 

Side end

 

僕が補充試験を開始してから1時間半

 

「っと、そろそろ僕は行こうかな」

 

「えっ、吉井君はもう終わったんですか?」

 

姫路さんが驚いて聞いてくる。姫路さんには言ってなかったもんな

 

「いや、僕は雄二に1,2教科受けたら時間稼ぎのために戦場に来るように言われたからね」

 

ほんとは全教科受け終わっているけどね。Aクラス戦まで僕達の実力は隠しておくつもりらしい

 

「そうなんですか。吉井君、頑張ってくださいね」

 

「明君ファイト」

 

「アキ、ガンバ」

 

「武運を祈っておる」

 

「……しくじるな」

 

姫路さんに続いて他のみんなも僕に声をかけてきた

 

「うん、なんとかみんなが試験を受ける時間くらいは稼ぐよ」

 

雄二の作戦では僕が代表を倒す予定らしいけどね

 

 

 

ガラッ

 

「Eクラス川平健人がFクラス代表に―」

 

僕が教室に入るとFクラスの生徒がいなくEクラスの生徒が雄二に勝負を申し込んでいるところだった。ってやばい!!

 

「させるか!!Fクラス吉井明久が受けて立つ」

 

僕は<縮地>を使い一瞬で雄二と川平君の間に入ると川平君の勝負を受けた

 

走法<縮地>重力を利用し倒れこむように一歩を踏み出す移動方法。地面を縮めたと錯覚するほど早く、一瞬にして相手の懐に入り込む

 

「くっ、まだいたのか」

 

「明久か、助かった。他の奴らは皆戦死したからな」

 

どうやら、Eクラス代表の中林さんもいるのでこのクラスに居る人で全員のようだ

 

「危なかったね。でも僕が来たからには安心してよ」

 

雄二は補充できてないからFクラスの点数のままだ、このまま戦っていたら負けていただろう

 

「あぁ観察処分者の力見せてやれ」

 

「そうするよ。試獣召喚!!」

 

僕が召喚獣の召喚ワードを言うと、僕をデフォルメしたような召喚獣が現れる。僕の召喚獣は改造学ランにベルトのところに日本刀を刺している

 

「誰かと思えば観察処分者の吉井か。Fクラスのジョーカーが観察処分者とはな。笑わせてくれる。試獣召喚!!」

 

Eクラス 川平 健人  VS   Fクラス 吉井 明久

 

現代文   61              52

 

川平君の召喚獣は足軽鎧に槍の装備だ。これなら刀を使うまでもないな

 

縮地

 

僕の召喚獣は縮地で川平君の召喚獣に近づくと

 

骨法・徹し【心振】

 

鎧の上から心臓のあたりに掌底を当てた。普通だったら鎧に衝撃を吸収されるけど

 

ポンッ

 

Eクラス 川平 健人

 

       戦死

 

『『『『へっ』』』』

 

川平君と他のEクラスの人は何が起きたのかわからないのか間抜けな声を出した

 

「戦死者は補習~!!」

 

まだ呆けている川平君を西村先生が連行していった

 

骨法・徹し 鎧の上からでも衝撃波を相手に伝える技。その中でも【心振】はその衝撃波を心臓に直接伝えるため、不整脈や心不全、心停止などを起こさせるため普通なら使えない技だ。ただし召喚獣は基本的には人体を参考にして点数が減って行くので即死級の技はかなり便利だ。

 

「くっ、数で攻めてさっさと倒しなさい!!」

 

代表の中林さんが残りのEクラス生徒全員に指示を出す。残りは10人ほどか。まぁなんとかなるだろう

 

『『『『試獣召喚!!!!!!!!!!』』』』

 

召喚されるデフォルメされた各人の召喚獣

 

Eクラス 村上 美和 67

 

現代文  谷中 伸一 61

 

     豊本 美鈴 72

 

     長田 源策 58

 

     柴 哲也  50    VS   吉井 明久 52

 

     柿木 雅美 64

 

     渡辺 佑作 57

 

     園田 綾  68

 

     白波 源十 48

 

     榎本 長治 52

 

11体もの召喚獣がいる光景はすごいな

 

「「やあぁ!!」」

 

「甘いよ!」

 

僕はすぐに剣を大振りにしてきた白波君と柴君の攻撃を避けるとガラ空きの首にダブルラリアットを叩きこみ、そのまま肋骨と鳩尾に掌打を叩きこみ戦死させた

 

Eクラス

 

白波 源十  柴 哲也

 

     戦死

 

「補習~~!!」

 

『『ぎゃ~っ』』

 

「くっ、これならどうだ!!」

 

榎本君が鎖分銅の錘部分を僕に投げてきたが

 

ヒョイ パシッ

 

「よっと」

 

軽く避けて鎖をつかみ引っ張った

 

「うわっ」

 

突然引っ張られたので榎本君は体勢を崩し前のめりになった

 

「隙あり!!」

 

僕は榎本君の顎にアッパーを入れようとするが

 

「させないよ!!」

 

シュン

 

「危なっ」

 

横から矢が飛んできたので縮地で後ろに避ける。矢の飛んできた方を見ると豊本さんが次の矢を番えていた

 

榎本 長治 31

 

榎本君の召喚獣は僕が避けるときに放った蹴りで少し点数が減った

 

「大丈夫?榎本君」

 

「あぁ、豊本さんのお陰で戦死は免れたよ」

 

やっぱり集団相手だとつらいな。そうだアレをしよう

 

走法<縮地>

 

僕は縮地で村上さんの召喚獣に近づくと鳩尾に肘鉄を食らわし、そのまま縮地で谷中君に近づき肋骨に3回正拳突きを一瞬で叩きこんだ。さらに縮地で長田君の召喚獣に近づき首をひねる、また縮地で柿木さんの召喚獣に近づき眉間、人中、鳩尾に正拳をいれる

 

「えっ消えた?」

 

「なっ俺の召喚獣が戦死してる」

 

「俺もだ」

 

「私のも」

 

みんな驚いてるなぁ、そんなに早かったかな?(今までの行動は0.2秒ほどですんでます)

 

村上 美和 4

 

谷中 伸一 戦死

 

長田 源策 戦死

 

柿木 雅美 戦死

 

村上さんの召喚獣は戦死しなかったか。これだけ減ればだいじょぶかな

 

ヒュン パシッ ビュン サクッ ポン

 

豊本 美鈴 戦死

 

「えっ」

 

なにが起こったって顔してるけど、簡単だよ。僕を狙ってきた豊本さんの矢を掴んで彼女の方に投げ返したらそのまま胸に矢が刺さって戦死しただけだ

 

「喰らえっ!!」

 

渡辺君の召喚獣が竹刀で袈裟切りを放ってきたので、僕は頭を右下にもっていくように体を回転させると、その勢いのまま右足で蹴りを放つ。僕の踵は渡辺君の顎にクリーンヒットして

 

渡辺 佑作 戦死

 

渡辺君は戦死した

 

「今だっ!!」

 

榎本君が鎖分銅を投げて来る

 

パシッ ヒュン

 

また鎖を掴むと榎本君は学習したのか鎖を手放す。僕も鎖分銅を投げ捨てた。 

・・・・村上さんのいる方向に

 

 ゴツッ

 

「えっ」

 

鎖分銅は綺麗な弧を描いて村上さん召喚獣の頭に直撃した

 

村上 美和 戦死

 

これであと二人

 

「私もいるよっ」

 

ビュン ヒョイ ガンッ

 

園田さんが斧を縦に振るってきたので僕は横に避け、ガラ空きの頭に踵落としをいれた

 

園田 綾 48

 

「そらよっ」

 

鎖分銅を拾ってきた榎本君がまた鎖分銅を投げてきた

 

ヒュン ビュッ ガスッ

 

僕はそれを避けると縮地で近づき顔面に正拳突きをした

 

榎本 長治 戦死

 

あとは園田さんだけだ

 

「やあぁっ!!」

 

園田さんが斧を振りかぶって近づいてきた。僕は屈んで避けると足払いをして園田さんを転ばせ、首に手刀をいれて戦死させた

 

園田 綾 戦死

 

さて、これで残りは…………

 




次で終戦と戦後対談。余裕があれば明久の放課後を描く予定です。
活動報告の方にてオリキャラの募集をしております。ご協力お願いします。


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終戦と鼎談

タイトルの鼎談(ていだん)は3人の話し合いです



「後は君だけだよEクラス代表さん」

 

残るはEクラス代表一人だけだ

 

「Fクラス吉井明久。Eクラス代表に数学で勝負を申し込みます」

 

「承認します」

 

数学の長谷川先生が承認すると数学のフィールドが形成される

 

「試獣召喚!!」

 

「くぅ観察処分者なんかに負けるもんですか!!試獣召喚!!」

 

掛け声とともに二体の召喚獣が現れる

 

Eクラス 中林 宏美 VS Fクラス 吉井 明久

       83           62

 

中林さんの召喚獣はテニスウェアにプロテクター、武器はテニスラケットのようだ

 

「食らいなさい!!」

 

中林さんはラケットを振りかぶると手元にあったボールを投げてサーブを打ってきた

 

「ほいっと」

 

僕は鞘でボールを打ち返す。ボールは高くうちあがり中林さんの方へと向かう。テニスで言うロブだ

 

「このっ」

 

中林さんは帰ってきたボールをスマッシュする

 

「かっ飛べ~!!」

 

僕はそのボールをバットのように構えた鞘で打ち返した。・・・・・中林さんの召喚獣の顔面めがけて

 

「えっ」

 

僕の打球はかなりのスピードのため中林さんは反応できず

 

ポン

 

Eクラス代表 中林 宏美

        戦死

 

打球を顔面に食らった召喚獣は戦死した

 

 

 

 

 

「お疲れさん。明久よくやったな」

 

雄二が僕に労いの言葉をかけてきた

 

「雄二こそ、よく耐えたね」

 

「あぁ、あと数分遅かったら負けてたな」

 

僕が来たときに雄二は勝負を申し込まれかけていたからギリギリだった

 

「さて、中林だったか。戦後対談をしたいんだが」

 

雄二はまだ落ち込んでいる中林さんに声をかける

 

「えぇ、Eクラスはあなた達に明け渡すわ」

 

「あぁすまんな。あとこの環境に関しては俺が学園長に言っとくから改善されるだろう」

 

「えっ設備の差は方針なんだから改善なんてされないんじゃ」

 

確かに設備の差は方針だが

 

「設備は方針だがこの衛生環境は教育機関として問題だからな。改善されるだろう」

 

「そう、ありがとね。あなた達には関係のないことなのに」

 

「いや気にするな。知っちまったら黙っていられないしな。じゃ悪いがさっそく交換作業に入ってくれるか」

 

「えぇ、わかったわ」

 

 

 

 

 

―― 補充試験会場 ――

 

『Eクラス代表の戦死により試召戦争はFクラスの勝利で終結されました』

 

「やはり明久が勝ったようじゃのぅ」

 

「……当然の結果」

 

「アキが負けるとこなんて想像出来ねぇからな」

 

秀吉、康太、一輝がそう漏らすと

 

「えっ吉井君ってそんなに強いんですか?」

 

「明君は一輝君以外に負けたことがないですから」

 

姫路の疑問に明梨が答える

 

「さて、俺らも設備の交換に行くか」

 

一輝の言葉に同意し5人が教室へと向かう

 

 

 

 

 

「よし、設備の交換も済んだな。明日は補充試験にあてるから、今日はこれで解散だ。ちゃんと勉強してこいよ!!」

 

雄二の声でFクラスの生徒はバラバラと帰っていった

 

「僕達も帰ろうか」

 

「いや明久は俺と一緒にババァのとこに来てくれ」

 

僕が明梨や一輝に声をかけると雄二が僕を引きとめた

 

「えっ学園長に報告するのは明日じゃなかったっけ」

 

「そのつもりだったんだが、思ったより早く終わったんでな今から行こうと思う」

 

確かに今は4時前で時間はあるか

 

「わかったよ。悪いけど明梨と一輝は先に帰ってくれる?」

 

「そんなに時間もかからないでしょ?明君が来るまで待ってるよ」

 

「オレは鈍ってる分鍛えないといけないからな先に道場に行ってるぞ」

 

「うん、じゃあさっさと用事を済ませてくるよ」

 

 

 

 

 

―― 学園長室前 ――

 

コンコンコンコン

 

あんな無礼な人間でも礼儀が必要な相手なので4回ノックする

 

『だれさね』

 

「吉井明久です」

 

「坂本雄二だ」

 

扉の向こうからの質問に答える

 

『吉井と坂本かい。入りな』

 

ガチャ

 

僕は扉を開けて挨拶をしようとし――

 

「失礼し…なんでここに妖怪がいるんだ!!」

 

――罵倒した。なんか盗聴されている気配がしたからね。あの観葉植物が怪しいな

 

「明久。なに失礼なことを言っているんだ。確かに妖怪のような見た目だが、よく見れば老いぼれたババァ長じゃないか」

 

雄二は僕の意図に気付いたのか話を合わせてくれた。僕はその間に観葉植物の方へと近づく

 

「あんたらはいつからそんなに失礼なクソガキになったんだい。一度この学園の最高権力者がだれかってのを教える必要があるのかい?」

 

学園長は気付いてないだろうが、その反応ならば問題ない。僕は観葉植物のそばまで行くと

 

「とりゃ」

 

蹴り倒して、その中からあるものを取り出す。やっぱり在ったか

 

「何をするんだい。っつ、それは?」

 

「盗聴器のようですね。他にはもうないみたいですが」バキッ

 

言いながら僕は盗聴器を壊した

 

「先程は失礼しました学園長。盗聴されているような気がしたので一芝居打ちました」

 

「失礼しました学園長。明久に話を合わせました。仕掛けたのは竹原あたりだと思いますが」

 

僕と雄二は学園長に謝罪する

 

「盗聴されていたのなら仕方ないさね。そうさね…この部屋に入って怪しまれないのは竹原ぐらいだろうさね」

 

とはいえ証拠となるものは無い

 

「ところであんたらはここに何の用さね」

 

「あぁFクラス、今はEクラスの設備に関することで話があってきました」

 

「学園の経営に関することなら教頭の竹原に言いな。私は召喚システムで手いっぱいなのさね」

 

やっぱり竹原が原因だったのか

 

「学園長は(元)Fクラスの設備の確認はしたんですか?」

 

「いや、竹原から問題なしって報告を受けたから確認はしてないさね」

 

「あの環境は問題ありですよ」

 

僕は呆れながら質問をし学園長に問題があることを伝えた

 

「どういうことさね?」

 

「畳はほとんど腐っていてカビ臭い、壁や窓はひび割れていて隙間風が入ってくる。あんな衛生環境じゃいつか訴えられるぞ」

 

「そ、そんなはずはないさね」

 

「これが(元)Fクラスの教室の写真です」

 

呆れながら説明する雄二の言葉に学園長は反論したので僕は康太に撮ってもらった写真を学園長に見せる。

 

「これは…竹原は虚偽の報告をしてたってことかい。わかったよ、さっき盗聴器を壊してくれた礼に(元)Fクラスの設備は改善してやるさね」

 

「「ありがとうございます」」

 

「それと学園長にお願いがあるのですが」

 

僕達が礼を言い、僕は帰ろうとすると雄二が話を続けた。お願いって何だろう?

 

「再度Fクラスの生徒に振り分け試験を受けさせてほしいのですが」

 

「あんたらの頼みでもそれは無理さね。特別扱いはできないよ」

 

「いや特別扱いはしなくていい。ただ俺たちがAクラスとの試召戦争に勝ったら、設備の交換の代わりに振り分け試験を受けさせてくれればいい」

 

「なるほど、それならいいさね。ただしこれは貸しだよ。後でこっちの頼みも聞いてもらうさね」

 

「わかった、それでいい。邪魔したな」

 

「わかりました。では失礼します」

 

僕らは挨拶をして学園長室を後にした

 




なかなか筆が進みません。
オリジナル展開の辺りなので会話の骨組みから作る必要があり、考えるのに時間がかかります。
なぜかAクラス戦やその後の展開・学祭のアイディアはだいぶ出ているので、一気に書きたいと思います。


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いつもの帰り道

今回は明久達の日常(下校風景)です。
だいたいはこんな感じです。
今回は新キャラ(龍夜様よりいただいたオリキャラ)久遠 日向が登場します。
日向に関する設定は「キャラ設定(オリキャラ)」の方に追加しました。


「明梨待たせてごめんね」

 

「すまない藤崎。明久を借りちまって。思った以上に時間がかかった」

 

僕と雄二は教室に入ると同時に明梨に謝った

 

「ううん。待っているって言ったのはわたしだし気にしないで。お疲れ様、明君、坂本君」

 

明梨は僕と雄二に労いの言葉をかけてくるけど、あれ

 

「…雄二、お疲れ様」

 

「あ、明久君。お、お邪魔しています」

 

霧島さんと日向が明梨と一緒にいた。3人で話していたみたいだ

 

日向とは、久遠 日向。綺麗な黒髪をセミロングにした娘で中学二年のころに不良に絡まれているところを僕が助けてから、よく明梨と3人で遊んでいる娘だ。明梨とは違って気弱で守ってあげたくなる感じがする、僕は彼女にも好意を持っている。二人を好きってのは不純なのは分かるけど僕にはどちらかを選ぶなんてできない。もっとも、二人みたいな美少女が僕に好意を寄せているはずはないんだけど、たまに僕に気があるんじゃないかと誤解させるような行動や発言を二人ともするので困っている

 

「あれ、日向と霧島さんもいたんだね。二人とも待たせちゃってごめんね」

 

「悪りぃ翔子、こんなにかかるとは思わなくって」

 

二人も待っていてくれたみたいなので、とりあえず謝罪する

 

「い、いえ。私は勝手に待っていただけなので気にしないでください」

 

「…夫を待つのも妻の務め」

 

「誰が夫だとっ!!」

 

「そうだよ、霧島さん。来年になるまで雄二は結婚できないんだから『夫(仮)』でしょ」

 

「ちょっと待て明久。その言い方だと俺は来年には結婚することにならないか?!」

 

「…雄二は私と結婚したくないの?」

 

「いや、したくない訳じゃないんだが男としてはちゃんと養ってやりたいから俺が仕事に就くまで待ってくれないか?」

 

「ん?雄二は仕事に就けるなら結婚するの?なら透さんに話せばすぐにでも仕事に就けるよ」

 

「明久、その『透さん』ってのは誰だ?」

 

「明梨のお父さんでいろんな会社に顔が効くんだよ。ねぇ明梨」

 

「うん、お父さんに話せばどんな仕事にも就けると思いますよ」

 

「明久の親父も藤崎の親父も何者なんだよ!!」

 

「『世界を平和にする普通のサラリーマン』って言ってたよ」

 

「お父さんは『ただの貿易商』って言ってました」

 

「『ただの貿易商』が企業に顔が効くって…それに自分の力で仕事に就かないとダメだろ、いろいろと」

 

「うん、分かってるよ。ちょっと雄二をからかっただけだから、もうこんな時間だしみんな帰ろうか」

 

ほんとはもっと雄二のことをからかいたかったけど時間も時間だし勘弁しておこう

 

「そうだな、女子を暗い中帰らせるわけにもいかないしな」

 

「…わかった」

 

「うん、もう4時半だしね」

 

「そうですね。帰りましょうか」

 

僕達は帰宅の途に着いた

 

 

 

 

 

―― 帰り道 ――

 

「…雄二。今日の試召戦争はどうだった?」

 

「まぁ最初は苦戦したが明久のお陰で無事に勝てたな」

 

「それほどでもないよ。観察処分者の分みんなより操作に慣れていただけだからね」

 

「Fクラス並みの点数で無傷で12人も戦死させるのは相当だと思うぞ」

 

「12人って、流石ですね明久君」

 

「やっぱり明君は強いな~」

 

「…流石吉井」

 

「み、みんな褒め過ぎだよ」

 

そんなに褒められると恥ずかしい

 

その後も僕らはとりとめもない話をしながら帰って行った

 

 

 

 

「ねぇお姉ちゃんたち、こんなバカそうな男と居ないで俺たちと遊ばない?」

 

「楽しい時間を過ごさせてあげるからさぁ」

 

「二度と忘れられない思い出作らない?」

 

みんなで話しながら歩いてるといかにも不良といった風体の男たちがいた。数は・・・6人か

 

「3人は下がっていて」

 

「「「(…)うん(はい)」」」

 

3人は僕の言った通り下がってくれた

 

「こいつら見た目通りバカみたいだな。6人も相手に勝てると思うのかよ」

 

なんか言ってきてるけど相当のバカだな。更生させる気もしないよ

 

「はぁどっちが馬鹿面だよ」

 

「全くだ。相手の力量も判断できねぇとはな」

 

雄二も同じ考えのようだ

 

「なめてんじゃねぇぞ。クソガキが!!」

 

手前の二人が僕達に殴りかかってくるが僕らは

 

ボゴッ

 

避けずに受ける

 

「これで」

 

「正当防衛成立だな」

 

殴られたにもかかわらず僕らは微動だにせず告げる

 

「な、何だよこいつら」

 

「さ、さっさとたたんじまえ、数ではこっちの方が有利だ!!」

 

なんか動揺してるけど、まずは

 

ダンッ

 

右足で地面を強く踏み振脚を行う

 

「う、うわっ」

 

僕の正面に居た男が体勢を崩す、その顔面に膝蹴りを入れて気絶させる

 

「この野郎!!」

 

後ろから殴ってこようとするが、僕は身を屈めてかわし相手の腕を掴むと

 

「せいっ」

 

背負い投げを行い、倒れた男の鳩尾を肘で打ち

 

「ぐはぁっ」

 

気絶させる。雄二の方も二人気絶させたみたいだ

 

「な、なんだよこの二人さっきの奴並みに強いじゃねぇかよ」

 

「さてと、君たちもこうなりたいのかい?今ならこいつ等を連れていけば見逃してあげるけど」

 

僕は残った二人に声をかける

 

「お、思い出した。こいつら『武神』と『悪鬼羅刹』だ」

 

「なぁっ、あの『烏天狗』の息子と『武者烏』の弟子だと!!勝てるわけねぇじゃねぇか!!」

 

そんなことを言いながら二人は気絶した仲間を抱えて逃げて行った。しかし父さんと龍司さんはいまだに恐れられているんだな。烏天狗と武者烏か…透さんと三人で『三羽烏』って呼ばれていたらしいしな

 

「お疲れ様、明君」

 

「…雄二、お疲れ様」

 

「坂本君も明久君も流石ですね」

 

「そ、そんな大したことじゃないからそんな風に言われると恥ずかしいよ」

 

ほんと僕達は大したことはしていない、ただあいつらが弱かっただけだ

 

「さ、さっさと行くぞ。また絡まれたら面倒だからな」

 

雄二も恥ずかしいのか話を逸らして先に行ってしまった

 

 

 

 

 

「それじゃ、日向。またね」

 

「じゃあな、久遠」

 

「…日向、また明日」

 

「ヒナちゃん、またね~」

 

僕達は日向の家まで来ると日向に別れを告げた。日向の家は学校から『道場』までの道からちょっと外れたところにあるので、遠回りしてみんなで送ってきたのだ

 

「あ、あの明久君!!明日も一緒に帰っていいですか?」

 

「もちろんいいよ」

 

「ありがとうございます!!ではまた明日会いましょう」

 

 

 

 

その後僕達四人は『道場』へ行き、僕と雄二は鍛錬を、その間霧島さんと明梨の二人は自習をして、いつものように龍司さんの家でみんなで夕食を食べた。食事を作るのは僕と明梨と雄二と霧島さんの4人で交代で作る感じで、今日は明梨が作ったよ。相変わらず明梨の料理はおいしくてつい「毎日食べたいくらいだよ」と言ってしまった

 

 

 

 

 

 

―― 一輝の下校風景 ――

 

一輝Side

 

オレはアキ達に別れを告げると昇降口へ向かった。すると視界に見知った姿が目に入った

 

「あれ、優子?おまえも今帰りか?」

 

「え、一輝君。うん、そうよ今から帰るとこよ」

 

確か優子はアキと同じ中学って言ってたな

 

「確か長月中だったよな、帰り同じ方向だし一緒に帰らないか?」

 

「え、ええお願いします」

 

なんか優子の顔が赤いが風邪か?

 

 

 

 

―― 下校中 ――

 

「確か、今日Fクラスは試召戦争をしたのよね?一輝君は何をしたの?」

 

優子が試召戦争について聞いてきた。でも

 

「オレは補充試験してただけだ。アキが12人も戦死させたらしいがな」

 

「そうなんだ。さすが明久君って感じね」

 

「あぁ、アイツは普通の喧嘩じゃ負け知らずだしな」

 

「でも、一輝君も強いんじゃないの?」

 

「まぁオレは…」

 

オレが優子の質問に答えようとすると

 

「ねぇお姉ちゃん、こんな間抜けな男と居ないで俺たちと遊ばない?」

 

「楽しい時間を過ごさせてあげるからさぁ」

 

「二度と忘れられない思い出作らない?」

 

バカそうな不良どもが声をかけてきた。はぁ面倒くせぇな6人もいるじゃねぇかよ

 

「優子、下がってろ」

 

とりあえず優子を下がらせると

 

「ギャハハこいつ馬鹿じゃねぇのか?」

 

「俺達6人相手に勝てると思ってんのかよ」

 

「馬鹿が何人いようと変わらないだろ」

 

オレは相手を挑発する

 

「ちょっ一輝君。そんな挑発なんかしちゃ…」

 

優子が止めてくるが

 

「なめてんじゃねぇぞ。クソガキが!!」

 

馬鹿が4人殴りかかってくる、が…

 

ゴスッ ガッ ドン ガツン

 

その4人にそれぞれ顔面、鳩尾、こめかみ、顎に掌底や肘鉄、裏拳や拳などをいれて気絶させる

 

「ひっひぃ化け物」

 

「な、なんだこいつ」

 

「おい、そこの二人!!こいつら連れてさっさと失せろ」

 

怯えている馬鹿二人に怒鳴ると

 

「す、すみませんでした~!!」

 

「お、覚えていなくて結構です~!!」

 

馬鹿どもを抱えて消えていった

 

「やっぱり一輝君もかなり強いのね(ちょっとカッコよかったじゃない)」

 

優子が顔を赤くしながら言ってきた

 

「そ、そんなことねぇよ。あ、あいつ等が弱かっただけで」

 

オレは恥ずかしさからそっぽを向きながら答えた、なんか優子と居ると調子が狂う

 

その後オレは優子を家に送り届けてから『道場』へと向かった

 




一樹が優子に小さなフラグを立てました。


馬鹿な不良6人は懲りてなかったみたいですね。同じ日にまたナンパするなんて。
次回は補給試験のため試召戦争は無いです。
明久達のいつもの学校風景をお送りします。


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Fクラスの日常と息抜き

Fクラスの日常風景です。



Eクラス戦の翌日、僕はいつも通りに一輝と明梨と登校し、元Eクラスの教室に着くと

 

ヒュン ビュン カタカタッ

 

昨日と同様カッターが飛んできたので僕は蹴りの風圧で落とし、襲ってきた覆面集団をボロぞうきんのようにした。

 

「お~っす、って今日もまたか」

 

雄二は教室に入ると同時に挨拶をし、ボロぞうきんを見て呆れていた

 

「おはよう雄二、まただよ」

 

「おっす雄二、こいつらは学習能力がないらしいな」

 

「おはようございます坂本君、こんなことしてるからモテないんだろうね」

 

明梨ってこういう時自分の考えをハッキリと言うんだよね。相手を傷つけるような発言の時もあるけど、明梨は意味もなく相手を傷つけないし、その場合は相手の自業自得なんだよね。さっきのもあの覆面集団が理不尽な暴力を振るったのが悪いんだし

 

「しかし、Eクラスになって良かったね」

 

まぁ今は元Fクラスの教室の改修のために空き教室をEクラスの生徒が使用しているらしい。ちなみにEクラスの設備は田舎の公立学校のような設備で、少し古くなった机と椅子、黒板といったありきたりの学校設備って感じだ。壁や窓は古めだが隙間風とかが入ることは無い

 

「あぁAクラス戦まではこの設備で戦うつもりだからな」

 

「次はどこを落とすつもりなんだ?」

 

「それは康太が情報を集めてきてから考えるつもりだ」

 

一輝の問いに雄二はそう答えた。康太は昨日2教科補充できたのでみんなが総合科目を受けている間に2時間ほど空き時間がある、その間に他のクラスの情報を集めてくることになっているのだ

 

「藤崎と一輝に関しては全力で試験を受けてもらうからな、頑張ってくれ」

 

「あぁ分かってるよ」

 

「任せてください。坂本君」

 

僕達と違って明梨の成績は有名だし、一輝は転校生なので成績が良くても不思議ではないからね

 

 

 

 

―― 昼休み ――

 

「よ~し昼になったし話があるから明久、秀吉、康太、一輝、藤崎は屋上に来てくれ」

 

「「「「「(……)了解(じゃ)(です)」」」」」

 

 

 

 

 

「さてと話ってのはAクラス戦についてなんだが」

 

屋上に着きみんなが腰を下ろすと雄二が口を開いた

 

「次にどこを落とすかってこと?」

 

「……いや、まだ情報を集めている途中」

 

僕の質問に康太が答えた

 

「ならばAクラス戦自体ってことかのぅ」

 

「だろうな一騎打ちの順番やメンバーか?」

 

「ビンゴだ一輝!!」

 

一騎打ちのメンバーか、僕らを呼んだってことは僕らは決定なのかな。後は点数的に姫路さんあたりだろうな

 

「メンバーはここに居る6人と姫路で戦うつもりだ」

 

やっぱり

 

「順番はどうするんですか?」

 

「相手の出方次第の部分もあるが一輝と藤崎は苦手科目の点数はどれくらいだ?」

 

「オレは国語系が100点ぐらいだ」

 

一輝はバツが悪そうに答える

 

「わたしは生物と保健体育が300点ぐらいですね」

 

「一輝は他の科目なら最低何点ぐらいだ?」

 

「まぁ平均で300は行くな」

 

「そうか…」

 

雄二は何か考え始めるいろんな可能性をシミュレーションしているんだろう

 

「よしっ、コレで行こう」

 

雄二は作戦が決まったのか声を上げる

 

「どうするのじゃ?」

 

「Aクラス戦では7戦するとは言ったよな?」

 

「そうですね、7VS7の一騎打ちをするって言ってましたね」

 

「あぁその7戦だが科目の選択でハンデとしてこっちに4回選択権を貰うつもりだ」

 

「まぁその位のハンデは交渉次第で貰えるだろうな」

 

一輝も雄二の作戦がわかったようだ

 

「じゃあ科目の選択は交互になるだろうね」

 

「まぁ選択権の順番はどうでもいいんだが、相手次第だな」

 

「…こっちは誰が選択権をとるんだ?」

 

「それは秀吉と康太と俺だ。あと一人は相手の出方次第だな」

 

「え、一輝はいいの?」

 

「一輝の国語の点数は酷いが他が当たる可能性も高いしな、その点康太と秀吉は1点集中型だし俺は翔子に苦手教科も把握されているからな」

 

「確かに雄二の言うとおりだな」

 

「…俺は生物もできる」

 

「康太、1科目も2科目もあまり変わらないよ」

 

「面目ないのじゃ」

 

「相手はAクラスの上位生徒だからしかたないよ秀吉君」

 

僕らは雄二の作戦を理解し、その後は雑談をしながら昼食を食べた。

 

 

 

 

 

 

―― 放課後 ――

 

「ごめん日向、霧島さん、待った?」

 

「すまん翔子、久遠、ちょっとHRが長引いてな」

 

「ごめんねヒナちゃん、翔子ちゃん、遅れちゃって」

 

昨日の約束通りいつもの4人と日向とで帰るのだが、Aクラスに僕らが行くのは問題だしFクラスに二人が来ると、また覆面集団が現れるだろうと二人とは校門前で待ち合わせしていたのだが二人の方が先に着いていたみたいだ

 

「…大丈夫、雄二のことなら何時間でも待つ」

 

「そんなに待ってないから大丈夫ですよ(ニコッ」

 

霧島さんはほんとに雄二のことを愛しているんだな。日向の笑顔はやっぱり癒されるなぁ

 

「この後ゲーセンでも行かねぇか」

 

「…雄二が行くなら行く」

 

「わたしも行こうかな」

 

「私も行きたいです」

 

「ちょっと龍司さんに聞いてみるよ」

 

僕は携帯を取り出して龍司さんに電話をかけて確認をした  ピッ

 

「なんだって?」

 

「1時間ぐらいならいいってさ雄二もあんまサボらないようにって」

 

「そうか、まぁ偶の息抜きだと思って楽しもうぜ」

 

「そうだね」

 

「そうだよ明君楽しもう!!」

 

「そうですよ明久君!!息抜きも必要です」

 

 

 

 

 

―― ゲームセンター ――

 

「明久、これで勝負しねぇか?」

 

雄二が指したのはゾンビ系のガンシューティングゲームだった

 

「OKこういうのは得意なんだよね」

 

「じゃあ負けた方は明日から1週間ジュースを奢るってことで」

 

「ちょっと賭けをするなんて聞いてないよ」

 

START!!

 

僕が抗議の声を上げるがゲームが始まってしまったので仕方なくゲームに集中する

 

バン バン バン バン

 

GAME CLEAR!!

 

ゲームが終了し得点が表示される

 

PLAYER1(僕)   PLAYER2(雄二)

56090       56200    NEW RECORD!!

 

どうやら新記録が出たみたいだけど

 

「うっし、俺の勝ちだ!!」

 

「くそっ、1週間ジュースを奢ればいいんだよね?」

 

「あぁそうだ悪いな明久」

 

「もういいよ。それよりほかのゲームでもしよう」

 

その後僕達は男子VS女子でエアホッケーをしたり、UFOキャッチャーで明梨と日向に僕がキーホルダーをとってあげたり、雄二とレースゲームをして今度は僕が勝ったので今日の夕飯の当番を雄二に代わってもらったりなどした

 

「もう結構経ったし次で最後にしようか」

 

僕は腕時計を見ながらそう告げる

 

「そうだな、外も暗くなっちまうし」

 

「…わかった」

 

「そうだね、最後は何にしようか」

 

「あ、アレなんかいいんじゃないですか?」

 

日向が指さしたのは プリクラ だった

 

「そうだね、記念にもなるし」

 

僕らが同意すると皆でプリクラを撮った。1枚目は普通に撮ったんだけど2枚目のときに雄二の腕に霧島さんが抱きついて、それを見た明梨と日向が僕の腕に抱きついてきて大変だったよ、いろいろと。だって二人の柔らかい膨らみが僕の腕に当たるわけで。撮ったプリクラを見た僕らはみんな赤面して日向を送ってから『道場』まで行ったんだけどその間会話は無かったよ。しかしあの二人の気持ちがわからないよ

 




今回は、補充試験のため日常風景と作戦会議、明久達の学生らしい一面を描きました。
この話はストーリー上割と意味のある話です。


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Dクラスへの宣戦布告

やっと原作のストーリーに近づきます。
バカテストに関してはバカがいないので難しいですね。
一般常識を中心にしていこうかと考えています


僕はいつも通りに一輝と明梨と登校し、元Eクラスの教室に着くと

 

ヒュン ビュン カタカタッ

 

昨日と同様カッターが飛んできたので僕は蹴りの風圧で落とし、襲ってきた覆面集団をボロぞうきんのようにした。

 

「お~っす、って今日もまたか」

 

ここまでテンプレ

 

『坂本雄二、吉井明久、貴様らは我らの血の盟約に反したため特一級異端者として死の鉄槌を下してやる』

 

「俺らはお前らと約束事をした覚えはないが…」

 

「それに僕らが何をしたって言うんだよ…」

 

僕と雄二が呆れていると

 

『ふっここに動かぬ証拠があるわっ!!』

 

そういってリーダー格らしき覆面(声からして須川君)が写真を取り出す。これは

 

『『『『貴様らはAクラスの才女、霧島翔子と久遠日向、我がクラスのアイドル藤崎明梨と娯楽施設で逢引をするなど死が相応しい』』』』

 

僕と雄二、霧島さんと日向と明梨がゲームセンターに入っていく姿が写されていた

 

「吉井君、久遠さんと随分と仲がいいんですね?」

 

「吉井、どういう関係かボッキリ話を聞かせてもらおうじゃないかしら」

 

なんか島田さんと姫路さんまで釘バットとか構えてるけど

 

「君たちに説明する必要はないだろう」

 

クラスメートに僕の交友関係を話す義理は無い

 

「(なぁ雄二、久遠って娘はアキにアレなのか?)」

 

「(あぁ久遠は明久にアレだ。ちなみに明久は藤崎も久遠も両方アレみたいだぞ)」

 

「(なるほど、アキらしいな)」

 

雄二と一輝がなんか話しているけどアレってなんだろう

 

「なら、説明させてやるんだから!!」

 

「説明してもらいます!!吉井君!!」

 

島田さんが釘バットを姫路さんが金属バットを振り下ろしてきた

 

キンッ ゴン

 

僕はバットの持ち手付近を思いっきり蹴り抜いた、蹴りの衝撃はバットを伝うので、彼女たちの右腕は暫くしびれて使えないだろう

 

「ちょっと女子に暴力を振るうとか何考えてんのよ!!」

 

「そうです。ひどいです!!」

 

なんか喚いているけど

 

「人に暴力振るってるやつが何を言っているんだ?!」

 

さすがに俺も我慢の限界だ。俺は覆面も軽く動けなくした後に

 

Prrrr prrrr

 

「もしもし、署長ですか?はい….ちょっと暴行罪で取り調べお願いします….はい….お願いします。では、失礼します」

 

とりあえず、暴行罪に当たる行為の取り調べを文月署にお願いした

 

 

 

 

 

「…各クラスの代表とDクラスの戦力がわかった」

 

HRが終わると康太が雄二に声をかけて、集めた情報を雄二に伝えた

 

「そうか…よし、まずはDクラスを落とそう」

 

雄二は何か考えついたのか頷いていた

 

 

 

 

 

―― 昼休み ――

 

昼休みのチャイムが鳴ると雄二は教壇へと向かった

 

「皆、試召戦争について話があるから席に着いてくれ」

 

雄二の言葉にみんなは席に着いたいくらか設備が良くなったとはいえ、まだ不満があるため戦争自体へのモチベーションが高い

 

「次はDクラスと戦うことになる、ただし設備交換はしない」

 

雄二の言葉にみんなから不満の声が上がるが

 

「落ち着けお前ら!!俺らの目標はAクラスだ!!途中の設備で妥協する気はない!!」

 

雄二の言葉でみんなは静かになったBやC程度いければいいと思っている奴らもいたんだろうな

 

「島田!!Dクラスの宣戦布告はお前が行け。時間は午後からだ」

 

「いやよ!!Eクラスの時須川がボロボロになってたじゃない」

 

「島田よく考えてみろ、男子が女子に暴力を振るってくると思うのか?」

 

「わかったわよ。午後からでいいのね」

 

島田さんの問いに雄二は頷いて答えると、島田さんはDクラスへと向かった

 

「―――女子から襲われるかもしれないがな」

 

雄二はまた重要な事を後から言った、まぁ島田さんだし問題ないか

 

 

 

 

 DクラスSide

 

ガラッ

 

「FクラスはDクラスに試召戦争を仕掛けます!!開戦は午後から――」

 

「美波お姉さま!!美春に会うためにわざわざDクラスまで来てくださったのですね!!」

 

「み、美春!!違うわ!!ウチはFクラスからの使者で――」

 

「美春に会うために使者になってまで、そこまで美春のことを愛して――」

 

「だからウチは普通に『男』が好きな――」

 

「嘘です。お姉さまは美春のことを愛しているから――」

 

その後も島田と清水の痴話げんかはしばらく続いたとか

 

 

 

 

「さて、お前ら簡単に作戦を説明する」

 

島田さんがDクラスに行くと雄二は作戦の説明に入った

 

「まずは前線部隊で切り込み隊長だが…」

 

「雄二、僕と一輝が引き受けるよ」

 

「そうか、なら頼む。前線部隊の指揮は明久と一輝だ、部隊員は島田、須川、横溝、田中―――で計15人の部隊だ。お前らの活躍次第で戦線が変わる、戦死したくなければ勝て!!」

 

『『『『おぉーーーっ!!』』』』

 

「次に中堅部隊だが、これは秀吉に指揮を執ってもらう。部隊の人数は前線部隊同様15名だ。主な役割は前線部隊の援護だ、前線部隊と教室の中間に待機だ」

 

『『『『了解!!』』』』

 

「次は諜報・伝令部隊だ!!指揮は康太に執ってもらう人数は10人だ、最後に近衛部隊だ、これは主に俺の警護に着いてもらう。あと姫路と藤崎は近衛部隊だが作戦の要となるんで俺の指示があるまで戦闘には加わるな!!以上で説明は終わりだ!!詳しい部隊配置は黒板に張っておくから確認するように!!では解散だ!!戦争開始5分前にまたここに集まっているように!!」

 

雄二が説明を終えるとみんなは昼食をとったり学食へ向かったり自分の所属部隊の確認をしたりとバラバラと動き出した

 

「………坂本、騙したわね!!」

 

島田さんがなんかやつれた様子で雄二に怒鳴ってきたけど

 

「俺は『男子が女子に暴力を振るってくると思うのか?』といっただけだ、それに話は最後まで聞くんだな俺は『女子から襲われるかもしれないがな』と言ったんだからな」

 

「くっあんたろくな死に方しないわよ!!」

 

「どんな死に方だろうと俺の勝手だろ、それより、戦争の所属部隊の確認はしとけよ!!文句は受け付けないからな!!」

 

雄二がそう言うと島田さんは部隊の確認をし「なんでウチが吉井と高瀬の指示なんて受けなきゃいけないのよ!!」と雄二に文句を言ったが雄二は全く取り合わなかった

 




島田が清水に襲われましたね。
基本、清水の扱いはあんな感じで行きます、アンチになるかは自分でも判りません。


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Dクラス戦

今回はDクラス戦を一気にいきます。


 

開戦5分前雄二は激励のため教壇へと上がる

 

「よし、間もなく開戦だ!!みんなやる気は十分か?!」

 

『『『『おおおーーーー!!!』』』』

 

「作戦はさっき説明したとおりだ!!各自部隊長の指示に従え!!」

 

『『『『おおーーーーーー!!!』』』』

 

キーンコーンカーンコーン

 

「よし、前線部隊・中堅部隊行って来いDクラスへの血路を開け!!」

 

「よし前線部隊、俺に続け!!敵の出鼻をくじいてやれ!!」

 

『『『『うおぉーーーーーっ』』』』

 

一輝の号令に僕ら前線部隊はDクラスへと向かう

 

 

 

 

 

―― Bクラス前の廊下 ――

 

今僕ら前線部隊はBクラス前の廊下でDクラスの前線部隊と戦っている。ここはE教室とD教室の中間にあり、僕らの背後には新校舎の階段があるためDクラスはここで僕らを倒すか後退させないと奇襲どころかFクラス代表の前に行くことすらできない。敵の前線部隊は10人ほどのためこちらが有利に思えるが

 

『『『『『『試獣召喚!!!!!!!!!!!!』』』』』

 

Dクラス モブ11人   VS  Fクラス

化学  平均130点      高瀬 一輝 497点

               吉井 明久  62点

               島田     57点

               モブ12人  平均50点

 

「おい、なんだあの点数、学年主席並みじゃないか」

 

「本陣に応援を要請しろ!!」

 

「ちっ応援を呼んだか。おい伝令、こっちも秀吉達に応援を!!」

 

Dクラスが応援を呼んだので僕らも応援を要請する

 

「よし、敵を引きつけてから一気に道を開く!!それまで耐えろ!!」

 

一輝の号令にFクラスの面々は時間稼ぎに徹した

 

 

 

 

「塚本!!応援に来たぞ!!」

 

「一輝よ、応援に参ったぞい!!」

 

両クラスの増援部隊が来て両陣営共に30人ほどになった

 

「よし、俺が切り込む、お前らは他の奴らを押さえて血路を維持しろ!!」

 

『『『『おぉーー任せとけっ!!』』』』

 

「行くぜ!!」

 

一輝はアサルトライフルを構えると走りながら敵を撃っていった。ただ精度はあまり高くないので

 

「隙あり!!」

 

撃ち漏らした敵が一輝を狙うが

 

「させないよ!!」

 

僕が敵を食い止め、鞘で首を叩き折る

 

「しまった!!」

 

Dクラス

阿僧田 孝造

   戦死

 

『美波お姉さま~!!』

 

『ちょっ美春!!なんでアンタがここに居るのよ』

 

『愚問ですわ、お姉さまのあるところ美春ありですわ!!』

 

『いつも言っているでしょウチは『男』が好きだって』

 

『安心してくださいお姉さま、美春はお姉さまの男らしい胸板が大好きですので』

 

キンッ キンッ ヒュン 島田の喉元に剣をつきたてる

 

『い、いやぁ~補習室はイヤ~』

 

『補習室?ふふっそんなとこには行きませんわ。今なら保健室は空いていますので美春と大人への階段を上りましょう』

 

『イヤー誰か、助けなさいよっ!!』

 

『『『『俺たちは死にたくないから早くその子と消えてくれ!!』』』』

 

『薄情者~~!!』

 

誰かの悲鳴が聞こえたが戦死でもしたのだろうか?

 

「アキこのまま代表までの道を作るぞ!!」

 

「了解!!みんな、敵を押さえて血路を維持するんだ!!」

 

『『『『おぅ!!』』』』

 

「秀吉はここで指示をお願い!!」

 

「心得た!!」

 

僕は一輝と二人で敵を消耗させつつDクラスへの道を開いていった

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ何とかDクラス前まで来たぞ、ただ代表を打ち取るのは難しそうだ」

 

僕らはDクラス前の廊下でDクラス代表と近衛部隊を相手にしていたがここまで来るのに僕らも消耗してしまい

 

Dクラス 近衛部隊4人  VS Fクラス 高瀬一輝 102点

数学    平均105点         吉井明久  32点

 

なんとか戦死しないで近衛部隊を引きつけるのがやっとだ、雄二の作戦はこれでいいはずだけど

 

「戦線を抜けて道を作ったのには驚いたが、流石に君たちもここまでのようだな」

 

代表の平賀君は余裕が出てきたようで笑っている。まぁ僕らを倒せば他に戦力は無いと思っているんだろう

 

「そうだね、僕らでは近衛部隊を相手にするのがやっとだよ」

 

「あぁ代表を討ち取る余裕はないな、だから」

 

「「姫路(さん)、明梨、後は任せる(任せたよ)」」

 

「へっ」

 

平賀君は「何言ってるんだこいつら」といった顔をしている。すると

 

トントン

 

平賀君の肩が申し訳なさそうに叩かれる、平賀君が振り向いた先には

 

「あれ、姫路さん、藤崎さんAクラスの人がこんなとこでどうしたんだい?」

 

平賀君は姫路さんと明梨がAクラスだと思っているのか油断している

 

「あ、あのFクラス姫路瑞希です。よろしくお願いします」

 

「同じく藤崎明梨です。平賀君に現代文で勝負を挑みます」

 

「は、はぁどうも」

 

まだ状況が理解できていない平賀君

 

「試獣召喚!!」

 

「試獣召喚です!!」

 

「えっ、あれ、サ 、試獣召喚」

 

姫路さんと明梨が召喚をしたのに驚きながら召喚する平賀君

 

Dクラス    VS  Fクラス

現代文 代表 平賀 源二     姫路瑞希 339点

       129点       藤崎明梨 407点

 

「これも勝負だからごめんなさいっ!!!」

 

そう言いながら平賀君の眉間、心臓、鳩尾に同時に矢を放つ明梨

 

ポンッ

 

平賀源二 戦死

 

平賀君の召喚獣はあっけなく戦死した

 

 

 

 

 

 

 

―― Dクラス ――

 

「まさか、姫路さんと藤崎さんがFクラスだなんて………信じられん」

 

「あ、その、さっきはすみませんでした!!」

 

肩を落としている平賀君に謝る明梨

 

「いや、謝ることは無い。全てはFクラスを甘く見ていた俺たちが悪いんだ」

 

これも勝負だから騙し打ちや奇襲などは戦略の内、明梨が謝る必要はない

 

「ルールに則ってこのクラスを明け渡そう、ただ交換は明日でいいか?皆も戦争で疲れているし」

 

「いや、俺らの目標はAクラスだから交換はしなくていい。俺が指示した時にアレを壊してくれればな」

 

「アレはBクラスの室外機か、わかったその提案を呑もう」

 

「あぁタイミングは後日話す。うまくやれば教師に睨まれる程度だろう」

 

「ああ、ありがとう。お前らがAクラスに勝てるように願っているよ」

 

「ははっ無理をするなよ。勝てっこないって思っているだろう?」

 

「いや、今日の坂本君の策士っぷりを見て、大きな戦力差でも作戦によっては勝てるかもしれないと思ったよ」

 

じゃあ、と手を挙げて平賀君は去っていった

 

「さて、皆!!今日はご苦労だった!!明日は消費した点数の補給を行うから、今日のところは帰ってゆっくり休んでくれ!!解散!!」

 

雄二が号令をかけると、みんな雑談をしながら自分のクラスへと帰っていった

 

「雄二、一輝僕らも帰ろうか」

 

僕達は教室に戻るといつものメンバー+一輝と優子さんで帰った、一輝と優子さんはEクラス戦の日に一緒に帰り、その帰り道で一緒に帰る約束をしていたそうだ。優子さんは一輝と二人で帰りたいだろうから明日からは一輝とは別に帰るかな。

 




今回は戦闘描写をだいぶ省きました。
島田と清水がどうなったかは『神のみぞ知る』です。


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戦争の合間の休日・前篇

やっと休日のストーリーを書けてきたので投稿します。
長くなってきたので前篇後篇に分けて投稿します。
今回は前篇(土曜日)の話です。


土曜日

 

Dクラス戦の翌日、今日は土曜日なので朝『道場』に行くと一輝が西村先生と組み手をしていた。どうやら西村先生は昼ごろまで時間が空いていたようなので、その後僕も組み手の相手をしてもらい、11時ごろにやってきた雄二も西村先生と組み手をした。

 

 

AM 11:45

 

「俺はそろそろ行かないといけないんで失礼する。お前らも鍛錬を怠るなよ」

 

「「「はいっ、ありがとうございました!!」」」

 

西村先生は予定があるらしく去っていった。

 

「ふぅ相変わらず鉄人は強いな」

 

「全くだ鉄人の名に恥じない強さだな」

 

雄二と一輝がそう漏らした

 

「二人とも本人がいないからってちゃんと西村先生って呼ばないと」

 

全く敬意を感じられない二人に僕が呆れていると

 

「「何を言っているんだアキ(明久)オレ(俺)らは敬意を持って鉄人と呼んでいるんだぞ」」

 

「もっと失礼だよっ!!」

 

「まぁ宗ちゃんもいないんだしいいんじゃねぇか」

 

西村先生を宗ちゃんなんて呼べるのは世界でも西村先生の肉親か父さん達ぐらいだろう

 

 

 

「「「「すいませ~ん」」」」

 

僕らが雑談していると道場の入口の方から女性の声が聞こえてきた。聞き覚えのある声だけど誰だろう?

 

「あれ、明梨、日向、優子さん、霧島さん、どうしたの?」

 

「あの、ヒナちゃんと二人でお弁当を作ってきて」

 

「明久君に食べてもらいたいんです」

 

「一輝君がここにいるって聞いたからお弁当を持ってきたのよ」

 

「…雄二に差し入れ」

 

4人はお弁当を作ってきてくれたみたいだ

 

「そういえば、もうすぐ昼だったな、サンキュ翔子」

 

「わざわざ持ってきてくれたのか、悪いな優子」

 

「二人の料理は美味しいから楽しみだよ。ありがとう明梨、日向」

 

僕らは4人にお礼を言う

 

「じゃあ皆で昼を食ったら今日は解散だ!!明日も休みにするから学生らしく青春を謳歌してこい若造ども!!」

 

「え、いいんですか?」

 

「あぁいつもこんな道場にいたんじゃつまらんだろ、俺も明日は一日遊んでくるから、お前らも気にせず遊んで来い!!」

 

「「「はい、ありがとうございます」」」

 

僕達は龍司さんの気遣いに礼を言った

 

「気にすんな!!とりあえず昼飯を食おうぜ!!」

 

龍司さんの言葉で僕達はお弁当を食べることにした。

 

 

 

 

 

「うん、このだし巻き卵、だしが良く効いてて美味しいよ」

 

「本当?それはわたしが作ったんだよ明君」

 

「明梨の料理はいつ食べてもおいしいよ」

 

「あの、明久君。私が作った生姜焼きも食べてください」

 

「日向が作った生姜焼きか。うん。ショウガが程よく効いてて食欲が増すね。日向も料理上手だね。二人ともいいお嫁さんになれるね」

 

「「お、お嫁さん」」

 

二人は赤くなって俯いてしまった。やはり『お嫁さん』発言は問題だったか、僕まで恥ずかしくなってきた

 

 

 

 

一輝Side

 

「お、優子の唐揚げ、美味いな」

 

「本当?!…よかった。料理は苦手だから不安だったのよね(ボソッ)」

 

後半聞き取れなかったが、何を言っていたんだ?

 

「一輝は昔から唐揚げが好きだったよね」

 

アキがオレの感想を聞いたからか話しかけてきた

 

「まぁアメリカにいた分、日本食が懐かしいってのもあって前よりも好きになったな」

 

向こうでは自分で作らない限りろくな日本食が食えなかったからな

 

「そうなんだ。他に好きな食べ物ってあるかしら?」

 

優子はなぜメモ帳片手に聞いてくるんだ?好きな食い物か…

 

「きんぴらとか煮物系はわりと好きだな。向こうじゃ醤油が不味くてな、あまり食えなかったからな」

 

オレが住んでいた地域は日本人がいなくて和食用の調味料が手に入らなくって和食を作る機会もあまりなかった

 

「そうなんだ。苦手なものとか嫌いなものは?」

 

優子はメモをとりながら聞いてくる

 

「オレの好みなんて聞いてどうするんだ?」

 

「あ、いや、その~、今度お弁当でも作ろうかなって、そのついでに一輝君の分も、って考えていたからで深い意味は無いのよ」

 

「それなら気にしないでくれ。特に好き嫌いは無いし作ってきてくれた物なら何でも食うから」

 

わざわざ作ってきてくれるというのに残すなんて失礼なことはしない

 

「そ、そうなんだ。じゃあ、作る時は一輝君の分も作るわ。…今日からでも練習しなきゃ(ボソッ)」

 

また何かつぶやいてたな

 

「サンキュな。今日の唐揚げも美味かったから期待してるよ」

 

「あ、あんまりハードル上げないでよ。…唐揚げだって、かなり失敗したんだから(ボソッ)」

 

そうは言うが期待せずにはいられないんだがな

 

Side out

 

 

 

 

雄二Side

 

「翔子、また料理がうまくなったな」

 

昔は『栄養バランスを考えて』料理していたので、翔子の料理はほとんどが青汁のように苦みや青臭さなどの残る野菜が中心の料理だった。しかし最近は『味のバランスを考えて』料理するようになり、どんどん料理がうまくなっている。もともと記憶力が高く『一度覚えたことは忘れない』翔子は記憶の中から味の相性なども分かるのだろう

 

「…雄二が褒めてくれるから頑張っている」

 

頬を赤くしながら言う翔子。やばい可愛すぎる

 

「そ、そうか。まぁ頑張ることは大切だからな」

 

つい恥ずかしさから顔を逸らしてしまった

 

「…照れている雄二はカワイイ」

 

「それは男としてどうかと思うのだが」

 

翔子の発言に頭を抱える

 

「…?」

 

何のことか分からないのか首をかしげている翔子。かわいいがコイツはいまだにどこか抜けている。頭がいいのは分かるが、天然でもあるんだよな

 

Side end

 

 

 

「さて、これから俺達は暇になったんだが、どうする?」

 

食事が終わると、雄二が話を切り出した

 

「明梨たちはこの後予定はある?」

 

とりあえず4人の予定を聞いてみる

 

「わたしは予定は無いから大丈夫だよ」

 

「私も特には無いです」

 

「…雄二と居れるなら用事があっても気にしない」

 

「アタシも暇よ」

 

やはり霧島さんは雄二一筋なんだな。4人とも暇なのか

 

「なら、7人でどこか行かないか?」

 

一輝がそう言った

 

「一輝、どこかって言うけど当てはあるの?」

 

「無い。皆どこか行きたい所とかないか?」

 

一輝の質問にみんな悩みだす

 

「でも、今日は予定外だから、あんまり時間は無いぞ」

 

雄二の言葉の通りだ。今は午後1時だ、遊びに行くとなると僕らは着替えなくてはいけないので、あんまり遠いところや時間のかかるところには行けない

 

「明日なら時間はあるが、優子達は明日は暇か?」

 

「「「「(…)大丈夫(です)(よ)」」」」

 

4人とも特に用事は無いみたいだ

 

「なら、明日も一緒にどうだ?」

 

一輝の言葉に4人とも賛同してくれた

 

「さて、じゃあ明日は隣町に行くか。そうだな…映画でもどうだ?その後に飯食って買い物でもするのは?」

 

一番近い映画館は隣町まで行かないとないからね

 

「僕はそれでいいと思うよ」

 

「いいんじゃねぇか一日遊ぶなんて久しぶりだな」

 

「今からワクワクしてきますね」

 

「私は一日遊ぶなんて初めてです」

 

「…一日、雄二と一緒」

 

「楽しくなりそうね」

 

その後、僕の家で明日の予定について詳しいことを決めながらトランプやUNO、人生ゲームなど、みんなで出来るゲームをして夕方に解散となり、僕は日向を、雄二は霧島さんを、一輝は優子さんを送っていった。

 




今回は龍司さんの気遣いで完全な休日です。


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戦争の合間の休日・後篇

日曜日

 

僕は9時に駅前集合と昨日決めていたので、8時半に明梨と一緒に家を出ることにしていた

 

ピンポーン

 

僕は明梨の家の呼び鈴を鳴らす

 

「は~い。おはよう明君」

 

すぐに明梨が出てきた。服装は白いキャミソールにオレンジのジャケットを羽織っていて、明るい赤のスカートを履いている。正直すごくかわいい

 

「おはよう明梨。その服似合っているね、明梨らしいよ」

 

元気な明梨らしい服装だ

 

「あ、ありがとう明君も似合っているよ」

 

僕はジーンズにTシャツ、パーカーを羽織っている。動きやすさで服を選ぶので、あんまり見た目を気にしたことは無い

 

「じゃあ日向の迎えに行こうか」

 

昨日、日向を送ったときに一緒に行く約束をしていたのだ。家から駅までだと日向の家は少し回り道になるので、15分くらい余裕を持って出てきた

 

「そうだね。遅れるとみんなに迷惑になっちゃうもんね」

 

 

 

 

ピンポーン

 

日向の家に着いたので呼び鈴を鳴らす

 

「は~い。おはようございます、明久君、明梨ちゃん」

 

「おはよう日向。その服、日向によく似合っているよ」

 

日向は白のロングワンピースに薄ピンクのカーディガンを羽織っている。日向もすごくかわいい。この二人は素がいいから、何を着ても似合うのだが、日向っぽい落ち着いた服装だ

 

「おはよう、ヒナちゃん。その服かわいいね」

 

「ありがとうございます、明久君。明梨ちゃんの服もかわいいですね」

 

やっぱり女子の方が服とかには興味があるのだろうか?僕も少しは気にした方が良かったかな、ここから駅まで二人と一緒に歩くわけだ。絶対に僕の服装は浮くだろうな

 

「じゃあ二人とも駅に向かおうか、遅れると大変だし」

 

今は8時35分駅までは10分くらいなので余裕はあるが、何があるかは分からないので余裕を持って出てきた

 

「そうだね」

 

「そうですね。ここで時間をかけても仕方ないですし」

 

 

 

 

―― 駅前 ――

 

一輝Side

 

「時計台の前だったよな」

 

オレは早く目が覚めて一通り自主錬をしてから家を出ていた

 

「つってもこんな時間じゃ、まだ誰も来てないだろな」

 

今は8時半、待ち合わせまでは30分もある

 

『よぉお姉ちゃん。これから俺らと遊ばない?』

 

『すいません。待ち合わせがあるんで』

 

オレが待ち合わせ場所に近づくと男の声と優子の声が聞こえた。何か言い争っているようだが内容までは遠いので聞き取れない

 

『そんなの無視して行こうぜ』

 

『は、放してください!!』

 

近くに行くとチンピラのような坊主頭の男が優子の腕を掴んでいて、優子は嫌がっていた。ナルホド

 

「嫌がっているだろ。放せよ」

 

オレは坊主頭の手首を 軽く 掴んだ。今は虫の居所が悪いからな、軽くじゃないと骨を砕いちまう

 

「い、いででででっ」

 

痛みからか優子の腕を放した

 

「か、一輝君?!」

 

突然オレが現れたからか優子は驚いて目を見開いている。驚いている顔もカワイイな

 

「テメェ、ガキがカッコつけてんじゃねぇぞ」

 

坊主頭の連れなのかモヒカンのチンピラが殴りかかってくる。後ろにいる優子に当たると大変なのでオレはそれを受け止め、関節技を極める

 

「い、いでででで」

 

「お前ら、オレは今虫の居所が悪いんだ。さっさとオレの視界から消えろ」

 

オレは怒気を放ちながら、チンピラどもに言い放つ

 

「「は、はい。お邪魔してすみませんでした~~~~」」

 

チンピラどもは震えながら走り去った

 

「ありがとうね一輝君。助けてくれて」

 

「いや、気にすんなよ。当たり前のことしただけだから」

 

落ち着いたので優子の服装を見ると、ライムグリーンのシャツに山吹色のスカートだった。活発なイメージの優子にぴったりだ

 

「な、何よ。ひとのことジロジロ見て」

 

オレが優子の服装を見ていると優子は何か勘違いしたみたいで自分を隠すように腕を組んだ

 

「い、いや変なことを考えていたわけじゃなくて、ただその服似合っているなって」

 

実際、優子に見とれていた部分もあったのでオレはどもりながら言い訳をした。やべ、かなり情けない

 

「そ、そうだったんだ。あ、ありがとう」

 

優子は赤くなって俯いてしまった。かなり気マズいな、何か話題は…

 

「そうだ、優子は何時からここにいるんだ?オレもだいぶ早く来たつもりだったんだが」

 

思いついた話題を切り出してみた

 

「え、えっと一輝君が来る15分くらい前かな」

 

「随分と早く来たんだな。優子は早起きなのか?」

 

「ええ、まぁ早起きかな(楽しみで目が覚めたなんて子供っぽくて言えないわよ)」

 

「そうなのか」

 

そこで話は途切れてしまい気不味い空気のままアキ達が来るまで優子と二人で待っていた

 

Side end

 

 

 

 

「あれ、一輝に優子さん、もう来ていたんだね」

 

「優子、一輝君、お待たせ」

 

「優子ちゃん、高瀬君、お待たせしました」

 

僕らが駅前に着くと一輝と優子さんが微妙な距離で待っていた。日向の家から特に何もなくここまで来たのでまだ待ち合わせの15分前だ

 

「アキ、やっと来たか」

 

なんで一輝はこんなに神経がすり減った様子なんだろう

 

「明梨、日向、おはよう。助かったわ」

 

はて、優子さんは何が助かったんだろうか?その後、僕らは雑談をしながら雄二達を待った

 

 

 

 

「お~っす。ってもう皆揃っているみたいだな」

 

5分ほどして雄二が霧島さんと一緒にやって来た

 

「…皆、お待たせ」

 

僕らは軽く雄二達とあいさつを交わすと

 

「じゃあ少し早いが出発するか」

 

雄二の言葉に頷いて僕らは電車に乗って隣町へと向かった。電車は7人掛けの席が空いていたのでそこに座った、席順は雄二、霧島さん、日向、僕、明梨、優子さん、一輝といった感じだ

 

 

 

 

―― 映画館 ――

 

僕らは隣町に着くとそのまま映画館へと向かった

 

「さて、何を見るか」

 

今は10時前、映画は2時間ぐらいがほとんどなので見終わるとちょうど昼時だ。今の時間帯は結構いろいろな映画が待ち時間があまりなく見れる

 

「…これがいい」

 

霧島さんが指さしたのは『真・地獄の黙示録』(上映時間3時間42分)

 

「翔子、今日はこの後に飯と買い物をするんだから、そんな長い映画を見てると時間がなくなるぞ」

 

「…そうだった」

 

頭を抱えながら説得する雄二に霧島さんは従った

 

「これなんかいいんじゃないですか?」

 

明梨が指さしたのは『初めてのオモイ』(上映時間1時間52分)

 

「あ、これって今話題の恋愛映画ですよね」

 

「そういえば、この前テレビで紹介してたわね」

 

「確かにオレもタイトルは聞いたことがあるな」

 

日向や優子さん、一輝は聞いたことがあるようだ。そういえばこの前テレビで宣伝してたような気がする

 

「時間もちょうどいいしそれでいいんじゃない」

 

僕の言葉にみんなが賛成すると僕らはチケットを買いに向かった。僕らの予定に付き合わせてしまっているので映画代は僕が明梨と日向の分、雄二が霧島さんの分、一輝が優子さんの分も払った

 

「で、席はどうする?」

 

人気の映画のため2,2,3席と別れてしまったため、雄二が席分けをどうするか聞いてきた

 

「とりあえず、雄二と霧島さんでしょ。恋人同士なんだし」

 

「そうだな、雄二と霧島は決定だな」

 

僕の言葉に一輝も同意する

 

「そうか、なら後の5枚はどうする?お前ら希望は無いか?」

 

「僕はどこでも良いよ」「同じく」

 

「わたしもどこでも大丈夫です」「私もです」「アタシも特に希望は無いかな」

 

5人とも希望は無いようだ。まぁ場所はあんまり変わらないからね

 

「そうか、なら裏返して引いたチケットってのはどうだ?キャンセルはなしで」

 

雄二の提案に僕らは同意する。どこでもいいなら運に任せる方が早いもんね

 

結果 雄二・霧島さん   一輝・優子さん

       日向・僕・明梨

 

僕は明梨と日向に挟まれて恋愛映画を見るということになった。二人とは何度か映画を3人で見に来たことはあっても恋愛ものは初だった

 

 

 

 

「さてと、飯はどうすっか?」

 

「このあたりでメシってどこがある?」

 

「あ、あそこでいいんじゃない?」

 

僕は雄二と一輝の言葉で周りを見渡すと1軒のファミレスが目に入った。僕の言葉にみんなが同意すると、僕らはその店へと向かった

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

 

「7人だが席は空いているか?」

 

「申し訳ありません。当店には4人掛けのテーブルしかございませんので4名様と3名様に別れていただくことになりますが、よろしいでしょうか?」

 

「別にいいよな?分け方はさっきと一緒でいいか?」

 

雄二の質問に僕らは頷く

 

「では、ご案内いたします」

 

店員さんに案内されて僕達は席へと向かった

 

 

 

「では、ご注文が決まりましたらこちらのベルを鳴らしてください」

 

店員さんはそう言うと席を離れた

 

「結構いろんなメニューがあるんだね」

 

ここは和食・洋食・中華なんでもそろっているみたいだ

 

 

 

「皆決まったか?」

 

僕らは決まっていたのでみんな頷いたのでベルを鳴らして店員さんを呼んだ

 

「じゃあ俺はハンバーグシチューのセットとカレードリアとチャーハンを頼む」

 

雄二はいつも昼に多く食べるんだよね。朝は弱いからコーヒーしか飲まないみたいだし

 

「じゃ、オレはマルゲリータとシーフードドリアと唐揚げ定食」

 

「一輝君って結構食べるのね」

 

優子さんが驚いている。一輝は朝から自主錬をかなりするから昼に補給するんだよね

 

「僕は和風ハンバーグのセット」

 

「アタシは春野菜のパスタをお願いします」

 

「…和食御膳」

 

「わたしはカルボナーラをお願いします」

 

「私はオムライスをお願いします」

 

「あとドリンクバーを7つ頼む」

 

「かしこまりました。ドリンクバーはあちらになります」

 

店員さんは注文をとると去っていった

 

「じゃあ飲み物は俺らが取ってくるか、皆なに飲む?」

 

雄二がそう言って立ち上がる。俺らってのはたぶん僕と一輝のことだろう

 

「じゃあアタシはアイスティーを」

 

「…緑茶」

 

「わたしはアイスコーヒーをお願いします」

 

「私はウーロン茶で」

 

「了解」

 

僕らはその後、普通に食事をした。まぁ霧島さんが雄二に食べさせたり、いろいろとあったけど

 

 

 

 

―― ショッピングモール ――

 

食事を済ませてから僕らは駅前のショッピングモールへ来た

 

「さてと、まずはどこから見るか」

 

ここには服屋や雑貨屋、本屋など一通りの店が揃っている。ただ見ているだけでも一日を過ごせるくらいの規模だ

 

「…服を見たい」

 

霧島さんの言葉に女子3人は同意していて、僕らは特に見たいものは無いので彼女達に付いて行くことにした

 

 

 

 

―― 服屋 ――

 

「…雄二に選んでほしい」

 

「ちょっ翔子待てって!!…」

 

服屋に着くと霧島さんは雄二を掴んで店の中へと消えていった

 

「あの、一輝君、アタシも服を見てもらっていいかしら?」

 

「ん?オレでいいんなら構わないが」

 

一輝も優子さんに付いて入っていく

 

「あ、明君、わたしも服を見てもらっていい?」

 

「僕でよければ付き合うよ」

 

「明久君、私もお願いしていいですか?」

 

「もちろん。結局いつも通りの3人だね」

 

僕らはいつもの3人で服を見た。いつも通り二人が何着か試着して僕が意見を言って二人が決めていった。その後、僕達はしばらくいろんな店を見て雄二からのメールで集まってみんなで帰ったよ。久しぶりに一日遊んだよ。楽しかったな

 




やっと書き終わりました。
男子が飲み物を取ってくる間にお弁当の相談をしています。


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Bクラス戦①

今回はBクラス戦です。
この前に明久達の週末風景を描いていますが、あまり筆が進まないので後から投稿します。
戦争自体には関わらない話にするので、構わずに読み進めて下さい。


Dクラス戦から4日後、僕らは補充試験を終え昼休みと同時に雄二が教壇に立つ

 

「午後からBクラスと試召戦争を行うが、宣戦布告は……須川イッテコイ!!」

 

雄二が殺気を込めて須川君に言う

 

「断る!!もうあんな思いはコリゴリだ!!」

 

「そうか、なら俺とO☆HA☆NA☆SHIするのとBクラスへ宣戦布告に行くのとドッチガイイ??」

 

雄二が須川君にDead or Deadの質問をする。宣戦布告はボコボコですむだろうが雄二とO☆HA☆NA☆SHIとなると強化合宿が終わるまで病院生活になるだろう

 

「わ、分かった。宣戦布告しに行くから、行きますから~!!」

 

須川君は足早にBクラスへと宣戦布告に逝った、帰ってきた須川君はボロぞうきんのようだった

 

「Bクラス戦では渡り廊下戦を制するために前線部隊に中堅部隊と諜報・伝令部隊を加える。伝令部隊の日沼と久松は伝令として動け。前線部隊の指揮は姫路と藤崎に執ってもらう。お前らきっちり死んでこい!!」

 

『『『『おぉーーー!!』』』』

 

「「が、頑張ります!!」」

 

雄二の言葉にFクラスの士気が上がる。明梨や姫路さんと一緒に戦えるとあってかテンションが上がったようだ。

 

「作戦はBクラスを教室に押し込むだけだ!!開戦まで各自休憩をするように!!いつものメンバーは屋上に来てくれ!!」

 

 

 

 

 

―― 屋上 ――

 

「さてBクラス戦だが康太によると代表が『あの根本』らしい」

 

「根本って『根本恭二』君?」

 

「……確かに根本恭二が代表だった」

 

そう言って康太はBクラスの名簿を出してきた。どうやって集めたのだろうか

 

「そうなるとどんな手を使うかわからんのぅ」

 

根本君と言えばカンニングの常習犯で目的のためなら手段を選ばないらしく『球技大会で相手に一服持った』とか『喧嘩に刃物はデフォ』とか。そうなると用心が必要だろう

 

「根本君のいい話は聞きませんからね」

 

明梨もその点は同意のようだ

 

「そういうわけで明久と一輝、秀吉は戦線を乱したら島田あたりに指揮を任せて教室に戻ってくれ、藤崎は姫路と一緒に前線の後方でいざという時に備えてくれ」

 

「わかりました」

 

「雄二、俺は教室に残ってても良いんじゃないか?」

 

一輝はそう言っているけど雄二にも考えがあるのだろう

 

「いや、敵の前線部隊の出鼻をくじくためには一輝がいた方がいいんだ」

 

「わかった」

 

雄二の意見に納得したのか一輝がうなずく

 

「さて、飯にするか」

 

そう言って僕らはお弁当を広げると

 

「あ、あの」

 

明梨が申し訳なさそうに手を挙げる

 

「どうしたの?明梨」

 

「日曜日にヒナちゃんと優子と翔子ちゃんと話し合ったんですけど、明後日は皆さんの分のお弁当を4人で分担して作ってくるので迷惑じゃなければ食べてくれませんか?」

 

「もちろん、迷惑じゃないよ!!」

 

「翔子も一緒にか、楽しみだな」

 

「優子の弁当は美味かったからな」

 

「姉上が弁当とは」

 

「……楽しみ」

 

その後、僕らは食べ物の好みなどを話しながらお弁当を食べた

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

「よし、逝って来い!!目指すはAクラスだ!!」

 

『『『『サーイエッサー』』』』

 

雄二の掛け声とともに前線部隊40人が教室から飛び出す。今回は勢いが大事だ。だから

 

「「はぁ、はぁ、ま、待ってくださ~い」」

 

指揮官二人が遅れているのも気にしてはいられない。姫路さんは体が弱いし、明梨も男子の全力には付いていけないようだ

 

今回のこちらの主武器は数学だ。Bクラスは比較的文系が多いのと、なぜか長谷川先生の召喚範囲が広いのが理由だ。他にもライティングの山田先生と物理の木村先生もいる

 

「いたぞ、Bクラスだ!!」

 

「高橋先生を連れているぞ!!」

 

正面を見ると向こうからゆっくりとした足取りでBクラス生徒が歩いてくる、人数は15人程度あくまで様子見といった感じだ

 

「生きて返すなーっ!!」

 

物騒な台詞を皮切りにBクラス戦が始まった

 

Bクラス 野中長男 VS Fクラス 近藤吉宗

総合科目  1943        583

 

Bクラス 金田一祐子 VS Fクラス 武藤啓太

数学     159        63

 

Bクラス 里井真由子 VS Fクラス 近藤吉宗

物理     152        56

 

点数が文字通りけた違いだ

 

「みんな、数ではこっちが有利だ!!個人で挑まず2,3人で戦って」

 

「チームワークを重視しろ!!数でたため!!」

 

僕と一輝が戦線を維持するように指示を出していると

 

「す、すみません…遅れました」

 

明梨が遅れてやってきた

 

「明梨、悪いけど前線に行ってくれる?」

 

「うん、わかった明君」

 

「来たぞ、藤崎明梨だ!!猪瀬、臼井、頼む!!」

 

明梨のことを用心していたのか直ぐに指示が出される、彼が指揮を執っているみたいだな

 

「Bクラス猪瀬 響、Fクラス藤崎明梨さんに物理勝負を申し込みます。試獣召喚」

 

「臼井 鷹音も申し込みます。試獣召喚」

 

「は、はい、お願いします。試獣召喚」

 

3人の掛け声に応じてそれぞれの召喚獣が現れる。Bクラスの二人は西洋甲冑にショテルとハルバートといった装備だ。対する明梨は巫女装束に弓矢といった装備だが腕輪をしている。しかし明梨の巫女装束が見れたのはものすごい眼福だ

 

Bクラス 猪瀬響  167 VS Fクラス 藤崎明梨

物理   臼井鷹音 159         418

 

「ちょ、腕輪持ち相手に勝てるわけないじゃない」

 

「すみません、これも勝負ですから」

 

明梨がそう言うと思いっきり弓を引き絞り臼井さんの頭を吹き飛ばした

 

「鷹音!!」

 

「隙あり!!」

 

味方の戦死に動揺した隙を突き猪瀬さんの心臓に矢を放った

 

 

 

一輝Side

 

明梨が前線に加わるとすぐに

 

「お、遅れ、まし、た…。ごめ、んな、さい…」

 

息を切らしながら姫路がやってきた。全力疾走についてこれなかったのだろう

 

「来たぞ!!姫路瑞希だ!!岩下、菊入、頼む!!」

 

どうやらアイツが指揮をしているみたいだな

 

「姫路、来たばかりで悪いが頼む」

 

「は、はい、行って、きます」

 

そのまま前線へと向かう姫路

 

「長谷川先生、Bクラス岩下律子、Fクラス姫路瑞希さんに数学勝負を申し込みます。試獣召喚」

 

「あ、長谷川先生、姫路瑞希です。よろしくお願いします」

 

「Bクラス菊入真由美もでます、試獣召喚」

 

「試獣召喚です」

 

掛け声に応じてそれぞれの召喚獣が現れる。相手の召喚獣は剣と槍、姫路の召喚獣は騎士鎧に身の丈の倍近くある大剣。それに腕輪までしている。点数は

 

Bクラス 岩下律子   189 VS Fクラス 姫路瑞希

数学   菊入真由美  151        412

 

「う、腕輪って」

 

「私達で勝てるわけないじゃない!!」

 

「じゃ、行きますね」

 

そう言って姫路が手を握りこむと相手に向けた召喚獣の腕輪が光った

 

「ちょっと待ってよ」

 

「律子、とにかく避けないと」

 

そういって大げさに避ける二人の召喚獣、しかし

 

キュポッ

 

「「きゃーーっ!!」」

 

二人の召喚獣は姫路の放った熱戦によって戦死した

 

Side out

 

 

 

どうやら姫路さんも二人倒したみたいだな。なら僕は相手の指揮官を倒すか

 

「Fクラス吉井明久、Bクラス聖園 拓斗に物理勝負を挑みます。試獣召喚」

 

「くっ試獣召喚」

 

掛け声に応じてそれぞれの召喚獣が現れる

 

Fクラス 吉井明久 VS Bクラス 聖園拓斗

物理    74           153

 

「誰かと思えば観察処分者の吉井か、ビックリさせんなよ」

 

「戦闘中に気を抜くなんて余裕だね」

 

そう言いながら僕の召喚獣は聖園くんの召喚獣にアッパーをいれて軽く浮かび上がったところを蹴り上げる

 

「た~ま~や~」

 

まるで花火のように打ち上がった召喚獣、操作もできないはずだ。僕は着地地点で鞘をバットのように構えると

 

「吹っ飛べ~」

 

落ちてきた召喚獣を吹っ飛ばした

 

Bクラス 聖園拓斗

       戦死

 

「ホームラン!!ナイス、アキ!!」

 

一輝が僕に声をかけてきた

 

「じゃオレも、試獣召喚!!」

 

Fクラス 高瀬 一輝

物理     508

 

『な、姫路、藤崎以外にも高得点者がいるのかよ』

 

『聖園くん 早く指示を!!』

 

『おい、聖園はいねぇぞ』

 

『なら本陣に応援を!!』

 

『いや、それよりも後退をした方が…』

 

『こいつらを押さえられんっ…』

 

いい感じに混乱してきたな

 

「島田さん、僕らは教室に戻るから指揮をお願い」

 

「えっなんで戻るのよ?」

 

「Bクラスの代表が『あの根本君』だからだよ」

 

「根本って『あの』…分かったわここはウチに任せて吉井達は教室に戻って」

 

「うん、任せたよ島田さん。……一輝、秀吉、戻るよ。姫路さんと明梨はいざという時のために後方待機!!」

 

「は、はい」「分かったよ、明君」

 

「では戻ろうかのぅ」「そうだな」

 

僕らは島田さんに部隊の指揮を任せると教室へと向かった

 

なんか嫌な予感がする。教室に何かされているんだろうか?

 




Bクラス戦です。3話+αとなり長めになっています。


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Bクラス戦②

Bクラス戦の続きです。
今回は筆が乗ったので、2話投稿です


「雄二、大丈夫?!」

 

僕は教室に入ると同時に親友の無事を確かめようとしたが

 

「もぬけの殻か。しかしこれは酷いな」

 

「これでは補給もままならないのじゃ」

 

教室には誰もいなく筆記具の類は壊され、机や椅子は誰かが喧嘩でもしたかのように散らかってる

 

「保険で置いといた奴らは補習室送りにされたみたいだな」

 

雄二が教室に入りながら声をかけてきた

 

「だが気にするな、修復には時間がかかるが作戦はうまくいってる」

 

「雄二がそう言うならいいけど、なんで教室にいなかったの?」

 

「Bクラスが協定を結ぼうと言ってきてな、それの調印に向かっていた」

 

「協定の内容は?」

 

一輝も気になったのか会話に参加してきた

 

「午後4時になったら戦況をそのままに翌日午前9時に戦闘再開という内容だ。その間は試召戦争に関わる一切の行為を禁止している」

 

「なるほど、姫路と明梨のためか」

 

「今日の戦闘はBクラスに押し込んだあたりで終わるだろうからね。作戦の本番では総合的な戦力よりも二人の強力な戦力がカギになるってわけだね」

 

「なるほどのぅ」

 

ガラッ

 

僕らが雄二の考えに賛同していると突然教室の扉が開き

 

「代表、島田が人質にとられた!!」

 

血相を変えた 田中君が雄二にそう報告したが

 

「明久、部隊の指揮は島田に任せたんだよな?」

 

「うん、島田さんも『任せて』って言っていたよ」

 

「部隊長が人質とはバカじゃねぇのか?」

 

「確かにのぅ」

 

僕らは冷静に状況を整理する

 

「よし、田中。人質にとられた理由を聞いて自分勝手な理由だったら島田ごと補習室送りだ。正当な理由でも島田に気にせず相手を倒せ」

 

雄二は冷酷ともとれる判断を下す。まぁ自分勝手な理由なら自業自得だし、そうじゃなくても多少の犠牲は仕方のないことだ

 

後から聞いた話だと『吉井が瑞希と藤崎のパンツを見て鼻血が止まらなくなったと聞いてオシオキしに保健室に向かった』というのが理由らしい、たしかに明梨のパンツを見たら鼻血が止まらなくなるだろうけど、前線にいた二人のを教室にいる僕が見れるわけないのに

 

 

 

 

PM 4:00

 

「さて、こっちの被害も大きいが予想より少ないな、一輝と明久が前線を混乱させたからか。まぁBクラスを教室に押し込めたから作戦道理だな」

 

雄二が戦死者数などが書かれた紙を見ながらつぶやく。今は協定通り休戦中だ

 

トントン

 

雄二の背中が叩かれる

 

「康太か、どうした?」

 

今回康太は一人で情報収集をしていた

 

「……Cクラスの様子が怪しい。試召戦争の準備をしている」

 

「そうか、Aクラス相手は無いだろうし」

 

「漁夫の利狙いじゃないかな?」

 

今回の戦争で勝った方も連戦となればツラいからそこを狙うんじゃ?

 

「康太、Cクラスの代表は?」

 

一輝が康太に聞く、何か引っかかったのかな?

 

「……小山友香」

 

「根本と付き合っている性悪女か」

 

康太の答えに雄二が思い出したかのように呟いた。小山さんっていうとバレー部のホープらしいけど人望がないらしい。なんでも自分の方がうまいから他の部員をこき使っているとか

 

「つーと協定違反が狙いだろうな」

 

「だな、とはいえCクラスの生徒はあまり小山に付いてはいないだろうな」

 

一輝の言葉に同意し雄二は自分の考えを言った

 

「じゃな、わしらはBクラスの設備をとるわけじゃないしのぅ」

 

「……無駄な労力」

 

秀吉と康太もそう告げる

 

「でも、一応Cクラスに様子見に行った方がいいんじゃない?」

 

「そうだな、たぶん根本が待っているだろうからお前らも一緒に来てくれ」

 

「へいへい」

 

「分かったのじゃ」

 

「……了解」

 

そういって僕ら5人はCクラスへと向かった

 

 

 

 

 

ガラッ

 

「Fクラス代表の坂本雄二だ。代表に話があってきた」

 

Cクラスに入ると試召戦争の準備をしていたのかまだ生徒の大半が残っていた。根本君は…いた、ご丁寧に護衛と数学の長谷川先生まで引き連れているよ

 

「私がこのクラスの代表だけど、何かようかしら?」

 

そう言ってまじりっ気のない黒髪をベリーショートにした気が強そうな女子、小山さんが出てきた

 

「いや、お前じゃなくてBクラス代表の根本恭二に話があるんだ。出てこい」

 

雄二は根本君が隠れているあたりを指さしながら言った

 

「ちっなんでバレた」

 

忌々しそうに根本君が出てきた

 

「なんでBクラスの代表がBクラスの生徒と教師を連れてCクラスにいるのかを聞きたい。確かに協定には『試召戦争に関わる一切の行為を禁じる』とあったはずだが?」

 

「か、彼女の迎えに来ただけだ!!」

 

「ほう、教師を連れて彼女の迎えねぇ…長谷川先生は何と言われてここにいるんですか?」

 

根本君が認めないと分かったのか雄二は長谷川先生に聞くことにした

 

「Fクラスが協定違反をしているので確認してほしいと言われたのですが、どうやら違反しているのはBクラスのようですね」

 

「なら、その分俺たちが協定違反の行為を行っても問題ないですよね?」

 

「そうですね、先に違反したのがBクラスですので問題ないでしょう」

 

「くっ」

 

長谷川先生の言葉に根本君は顔を顰める。ここで一騎打ちでもさせられるとでも思っているんだろうがそうじゃない

 

「さて、Cクラスの生徒全員に話がある」

 

ざわざわ

 

雄二の言葉にCクラスの生徒がざわめき出す

 

「俺達FクラスはBクラスと設備交換する気はない、だから俺たちに宣戦布告する意味は無い!!」

 

「そんな言葉信じられるとでも思っているの?」

 

小山さんが反論するが雄二は無視して

 

「俺達の目標はAクラスでAクラスとの交渉でBクラスを使う。それにCクラスが俺たちに攻めてきても設備の向上はありえない」

 

『確かに』

 

『Eクラスの設備だもんな』

 

「話はこれだけだ時間をとらせてすまなかったな」

 

そう言うと雄二は僕達を引き連れてE教室へと向かい、僕らはいつもの5人で帰った。なんだか明梨に関して嫌な予感がするのだがなんだろう

 



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Bクラス戦③

Bクラス戦が3話になってしまいました。
長くなってしまいましたが、お付き合いください。


「ドアと壁をうまく使うんじゃ!!戦線を拡大させるでないぞ!!」

 

秀吉の指示が飛ぶ。9時になったためBクラス前から進軍を開始した。今回はBクラスを教室内に閉じ込めるのが目的だ。ただ姫路さんと明梨が戦線に参加しない、二人とも何かあったのだろうか

 

『後方出入り口押されている。だれか援軍を!!』

 

「姫路さん、後方をお願い」

 

「あ、そ、その…」

 

姫路さんはオロオロするばかりで召喚をしようとしない

 

「くっ明梨、お願い!!」

 

「あ、明君、その、ごめんなさい」

 

明梨は目に涙を浮かべながら僕に謝ってきた

 

「オレが出る、試獣召喚!!」

 

一輝が後方の援軍に行き余裕が出たので僕は明梨のもとに駆け寄る

 

「明梨、どうしたの?体調でも悪いの?」

 

見た限りは大丈夫そうだが何かあるのだろうか

 

「いや、そうじゃないんだけど、その、ゴメン明君」

 

一瞬Bクラスの方に目を向けたので僕がそっちを見ると根本君が可愛らしい手紙とキーホルダーをちらつかせていた。あのキーホルダーは前に僕がUFOキャッチャーで取ってあげたものだ、明梨がかなり嬉しそうにしてたから、よく覚えている。手紙の方は心当たりはないが姫路さんのだろう。明梨を泣かせるなんて根本め、カクゴシテオケヨ?

 

「明梨、安心しろ!!俺が何とかするから姫路と一緒に待機していろ」

 

そう言って俺は明梨の頭を撫でた

 

「あ、明君」

 

明梨は恥ずかしそうに俯く。まぁこの年で頭を撫でられるなんて恥ずかしいか

 

 

 

「一輝、話がある!!」

 

俺は戦線にいる一輝に近づき声をかけると一輝は近くの奴に任せ、こっちに来た

 

「アキ、話ってのはなんだ?」

 

俺の様子に気づいたのか一輝は理由も聞かずに俺の話を聞いてくれた

 

「あぁ実は・・・の・・・・を・・・・・して・・の・・・を・・・・・・・を有効にしてほしいんだ」

 

「なるほど、面白いな。しかしお前かなりキてるな」

 

「当たり前だろ?明梨を泣かせたんだ、あの屑には地獄を見せてやる」

 

「なら、オレはもういくぞ」

 

「頼むぞ、一輝」

 

「応!!」

 

さて次は

 

 

 

 

「雄二、話がある!!」

 

俺は教室に入ると同時に雄二に声をかける

 

「明久、話ってのはなんだ?」

 

雄二も俺の様子に気づいたのか話を聞いてくれた

 

「姫路と明梨を戦線から外してほしい」

 

「なるほど、しかし、二人の役目はどうする?」

 

「康太の分まで俺が引き受ける。あの屑には地獄を見せてやりたいんでな」

 

「わ、分かった。お前に任せる」

 

雄二は怯えながらも了解してくれた。そんなに俺の顔が怖いのか?阿修羅と般若、悪魔と閻魔を足したぐらいの怖さだと思うんだが

 

その4つのうち一つでも十分怖いのに足したら…(by作者

 

 

 

 

 

 

「Fクラス前線部隊は死にたくなかったら下がってろ!!」

 

俺は戦場に戻るとすぐにそう告げた

 

『『『『なっ、わ、分かりました~~~』』』』

 

前線部隊の連中は反論しようとしたが俺の顔を見た途端、すぐに引っ込んだ

 

「Fクラス吉井明久!!Bクラス前線部隊に勝負を挑む!!試獣召喚!!」

 

『くっ観察処分者が!!』

 

『なめてんじゃねぇぞ!!』

 

『『『『『『『『『『『『『『『試獣召喚!!』』』』』』』』』』』』』』』

 

Bクラス モブ15人  VS Fクラス 吉井明久

古典  平均200点          72点

 

『はっ所詮Fクラス点差が3倍もあるじゃないか』

 

なんか喚いているがどうでもいい

 

鷹式一刀流剣術 ― 鈴音天消 ―

 

チリン

 

どこからか鈴の音が鳴ると俺の召喚獣は敵の真後ろにいた。刀を抜いた姿で

 

Bクラス モブ15人

       戦死

 

相手の召喚獣は一切の傷がない状態で戦死していた

 

『な、なんで無傷なのに!!』

 

『どうして戦死してんのよ』

 

面倒だが説明してやるか

 

「鈴音天消(りんねてんしょう)。切るもの、そのものにあらず。天に消える鈴の音のごとく、その魂を切り消さん」

 

要は物理的な攻撃じゃなく殺せる技だ。本当は幽霊や邪念を殺すためにある技なんだが召喚獣は幽霊みたいなもんだからな。さて、後は屑と取り巻きだけか

 

「そこの近衛部隊に勝負を仕掛ける。さっさと召喚しろ」

 

『『『『『『『くっ、試獣召喚!!』』』』』』』

 

Bクラス 近衛部隊7人  VS Fクラス 吉井明久

古典    平均230点         72点

 

ほう、流石に近衛部隊の点数は高いな。

 

俺は召喚獣に居合いの構えをとらせる

 

『くっ油断するな。相手の操作技術は並じゃないぞ!!』

 

俺の様子を見て構えだす相手の召喚獣、だが、遅いな

 

鷹式一刀流剣術 居合 ― 七点抜刀 ―

 

俺は縮地で7体の召喚獣の正面に同時に現れると、同時に居合い切りをした

 

『なんなんだよ、この強さは!!』

 

『バケモンじゃねぇか』

 

『補習はいや~』

 

なんか喚いているが関係ない。俺は屑野郎に近づくと

 

「後はお前だけだ、根本。お前の罪を数えてやる」

 

「つ、罪だと?!お、俺が何をしたって言うんだ!!」

 

まだわからないのか

 

「なら、体に教えてやるよ!!試獣召喚!!」

 

「く、くそっ試獣召喚!!」

 

Bクラス 根本恭二  VS Fクラス 吉井明久

古典    242点         72点

 

「一つ、器物損壊。刑法261条、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

 

そう言いながら根本の召喚獣の右足を切り飛ばす

 

「いってぇ、なんで俺にまで痛みが?!」

 

一輝は上手くやってくれたみたいだな

 

Bクラス 根本恭二  VS Fクラス 吉井明久

古典    195点         72点

 

俺の攻撃で点数が補正される

 

「二つ、窃盗。第235条  他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」

 

今度は左腕を切り飛ばす

 

「がぁっう、腕がぁ」

 

Bクラス 根本恭二  VS Fクラス 吉井明久

古典    142点         72点

 

また補正される

 

「三つ、脅迫。第222条 。生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」

 

今度は右腕を切り落とす

 

「い、いってぇ。くそ何なんだよ!!」

 

Bクラス 根本恭二  VS Fクラス 吉井明久

古典    87点         72点

 

補正が加わる

 

「そして最後に 明梨を泣かせた罪だ(俺を怒らせた罪だ)」

 

なんか本音と建前が逆になってた気がするが、気にせずに根本の喉をかっ切った

 

Bクラス 根本恭二

      戦死

 

「ぎゃぁぁぁああ!!いってぇぇぇえええ!!」

 

根本が喚いているが自業自得だから仕方ない

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、戦後対談といこうか?負け組代表さん」

 

雄二がやってきていまだに放心状態の根本君に話しかける

 

「本来ならこの教室を明け渡してもらいお前らにEクラスの設備をプレゼントするんだが、お前らが条件を呑めば特別に免除してやる」

 

雄二の言葉に両クラスがどよめく

 

「落ち着け!!俺らの目標はAクラスだBクラスじゃない!!」

 

「…条件ってのはなんだ?」

 

やっと話せるようになった根本君が雄二に問いかける

 

「条件?それはお前だよ負け組代表さん」

 

「俺、だと?」

 

「ああ、お前には散々好き勝手やってもらったしな、正直去年から目障りだったんだよな」

 

「その上、今回の試召戦争で器物損壊に窃盗、脅迫と3つも犯罪行為を行ったんだから、当然だよね」

 

僕も雄二に賛同する

 

「Aクラスに行って、試召戦争の準備ができていると言って来い。ただし宣戦布告はするな。すると戦争は避けられないからな、あくまで準備と意思があるとだけ伝えてこい」

 

「…それだけでいいのか?」

 

「そうだな、それだけでも良いんだが…明久、お前が今回の功労者だからな、何か要求があれば言っても良いぞ」

 

う~ん、明梨のキーホルダーと姫路さんの手紙を取り返したいからな…そうだ

 

「今日のことを忘れないように『女装姿で』撮影会なんてどう?一生忘れられなくなると思うよ」

 

「ふ、ふざけんな。なんで俺がそんなことを!!」

 

『『Bクラス生徒全員で必ず実行させよう』』

 

『『『任せて!!必ずやらせるから!!』』』

 

『『『それだけで教室を守れるなら、やらない手は無いな!!』』』

 

「アキ、まだ怒っていたんだな。しかしアキに『召喚獣のシステムをハッキングして根本の召喚獣のフィードバックを有効にしてほしい』って言われた時には驚いたぜ」

 

「明梨を泣かせたんだから当然でしょ。あとハッキングの件ありがとうね」

 

その後、根本君はAクラスへ行き雄二の言ったことを伝えた後に空き教室で康太撮影による女装姿でのコスプレ撮影会を行った。その光景を見た人は暫く悪夢にうなされたとか。僕はすぐに根本君の制服を奪い、明梨のキーホルダーと姫路さんの手紙を取り戻した後に、根本君の制服をゴミ箱に入れといた。

 




やっとBクラス戦が終わりました。
手紙とキーホルダーのその後は次話のお楽しみです。


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Bクラス戦後とお弁当

今回はお弁当のくだりです。
アンチ姫路要素が含まれます、ご注意ください


―― 放課後 ――

 

僕は手紙を姫路さんの鞄にこっそり戻し、明梨を探していた。途中で霧島さんに会ったので雄二と先に帰ってもらった。日向は待っていると言ったので仕方がないのでAクラスで待ってもらっている。明梨がなかなか見つからないからね

 

「あ、明梨、ここにいたんだね」

 

明梨は屋上で空を眺めていた

 

「あ、明君。どうしたの?」

 

「いや、これを明梨に渡しに来たんだけど、明梨はこんなとこでどうしたの?」

 

僕は明梨にキーホルダーを渡しながら聞いてみた。一人で何か考えていたんだろうか

 

「あ、ありがとう。明君、迷惑かけちゃってごめんなさい!!」

 

「迷惑なんて思っていないよ。そんなこと考えていたの?」

 

「で、でも、わたしが戦争に参加できなかったせいでFクラスの皆にも迷惑をかけちゃったし、いつも明君に助けてもらってばっかりで…」

 

「僕は好きで明梨のことを助けているんだし、明梨が参加できなかったのは根本君が脅迫したからだしさ」

 

「それでも…」

 

「それでも納得いかないなら明日のお弁当、頑張って挽回すればいいよ」

 

「う、うん、分かったよ明君。ありがとね」

 

まだ納得してないようだが明梨はそう言うと笑顔になった

 

「やっと笑ってくれた。明梨は笑顔が一番かわいいよ」

 

「か、かわいいって、そんな…」

 

しまった本音まで口走ってしまった

 

「あ、日向が待ってるから早く帰ろう」

 

そう言って逃げるように僕は屋上を後にした

 

 

 

 

 

 

「日向、お待たせ」

 

「ゴメンね、ヒナちゃん待たせちゃって」

 

僕らは教室に戻り荷物をとるとAクラスに行って日向に謝った

 

「い、いえ。大丈夫ですよ、明久君、明梨ちゃん。そんなに待ってないですし」

 

そう言っているがもうAクラスに生徒が残っていないのを見ると結構待っていたんだろうな

 

「そう、じゃ帰ろうか。二人は明日必要なものとかある?買うものがあるなら付き合うけど」

 

「えっ明君、道場はいいの?」

 

「雄二が龍司さんに話したらしくてね、今日は休みだって」

 

さっき龍司さんから電話が来たときはびっくりしたよ。明梨を探している時に突然掛ってくるんだもん

 

「じゃあ、お願いします」

 

「わたしもお願いしようかな」

 

「了解、じゃあ帰りにスーパー寄れば大丈夫かな?」

 

「「うん(はい)」」

 

 

 

 

 

 

 

その後、僕達はスーパーによってお弁当の食材を買って日向を送り届けた後、明梨と一緒に帰った。もちろん僕が荷物を持ったよ。明日の昼食が楽しみだ

 

 

 

 

――――――

 

翌日、僕らはAクラス戦のために全教科の補充試験をしていた。今回は僕、雄二、康太、秀吉も本気で試験を受けている、そうしないとAクラスには勝てないからだ

 

 

 

そして、昼休み僕らは午前中に4科目も受けたのでクラスのほとんどが机に突っ伏している

 

「さすがに連続で本気で試験を受けるとなると疲れるのぅ」

 

秀吉が疲れた表情でこちらに来た。ただ、その髪型は

 

「秀吉、男として見られたいならその髪型はどうかと思うよ」

 

ポニーテールだった。まぁ男がポニーテールでも問題は無いんだけど、秀吉の場合はね

 

「そ、そうじゃったの。試験中に髪が邪魔だったので纏めたのじゃが」

 

そう言っていつもの髪型に戻す秀吉。教室から落胆の声が聞こえたのは気のせいだろう

 

「さてと、飯にするか。藤崎、場所は屋上でいいのか?」

 

「あ、はいヒナちゃん達も屋上でと言ってました」

 

まぁどちらかの教室ってのもアレだし今日は晴れているから屋上は気持ちよさそうだ

 

「じゃあ、行くとするか」

 

「あ、あの」

 

雄二がみんなをまとめて屋上へ行こうとすると、突然声がかかった

 

「姫路か、どうしたんだ?」

 

「私もお弁当を作ってきたので迷惑じゃなければご一緒しても良いですか?」

 

一輝の問いかけに姫路さんが答える

 

「……問題ない」

 

「みんなで食べた方がおいしいですしね」

 

「じゃあ行くとするか」

 

 

 

 

 

―― 屋上 ――

 

ガチャ  ガチャ

 

僕らが屋上の扉を開けるとほぼ同時に新校舎側の扉も開いた

 

「あ、明久君達も今来たんですね」

 

日向たちもちょうど来たみたいだ

 

「うん、ちょうどよかったね」

 

「さて、腹も減ったし早く食おうぜ」

 

雄二の言葉にみんながお弁当箱を広げる

 

「「「「「おぉっ!!」」」」」

 

みんなのお弁当を見た男性陣が驚嘆の声を上げる

 

「あの、あまり自信は無いんですけど…」

 

「が、頑張って作ったので食べてください」

 

姫路さんと日向はあまり自信がないようだが見た目は美味しそうだな。姫路さんのは知らないけど日向の料理はお店を出せるほどおいしいから楽しみだ

 

「わたしも頑張ったので、どうぞ」

 

うん、明梨のお弁当も美味しそうだ

 

「…雄二、いっぱい食べて」

 

「翔子、気持ちは嬉しいんだが今日はみんなで食べるんだからな。俺の前に置くのはどうかと思うぞ」

 

雄二と霧島さんは夫婦漫才を繰り広げている

 

「明久、今何か変なこと考えてなかったか?」

 

「いや~相変わらず夫婦仲がいいなぁって」

 

「だから、まだ結婚してねぇって」

 

こういう時は雄二をからかえるから面白い

 

「頑張ったんだからちゃんと食べてよね」

 

「姉上は昨日から張り切っておったからのう」

 

「ほう、それは楽しみだな」

 

優子さんは秀吉と一輝から期待の眼差しを向けられている

 

「それじゃ」

 

「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」

 

雄二の掛け声でみんなで食事前の挨拶をする

 

「さて、どれから貰おうかな」

 

ちなみにメニューは明梨がハンバーグ・一口とんかつ・ほうれん草のお浸し、日向がアスパラベーコン・春巻き・ポテトサラダ、霧島さんが卵焼き・コロッケ・小松菜の胡麻和え、優子さんが豚の生姜焼き・唐揚げ・きんぴら、姫路さんはエビフライ・ミートボール・ウインナー・ハムチーズカツ・肉じゃが、あとはみんなおにぎりや一口サイズの巻きずし、といった感じだ。僕がどれから食べようか迷っていると

 

「……(ヒョイ)」

 

康太が素手で姫路さんのエビフライをとり口に運んだ

 

「あっ康太、行儀が悪いぞ!!」

 

僕が康太に注意をすると

 

バタン ガタガタガタガタ

 

康太は頭から倒れ、小刻みに震えだした、何が起きたんだ。毒でも盛られたのか

 

「わわっ、土屋君!?」

 

姫路さんが慌てて、配ろうとしていた割り箸をとり落とす

 

「……(ムクリ    グッ)」

 

康太は起き上がり、親指を立てる。たぶん「美味かった」と伝えたいのだろう

 

「あ、お口に合いましたか。よかったです」

 

姫路さんに康太の意図は伝わったようだが、康太の脚はKO寸前のボクサーのようにガタガタだ。とりあえず

 

「フッ」

 

僕は康太の腹に拳を入れる

 

「ガハッ……ケホッケホッ」

 

康太はエビフライを吐きだすとせき込んだ。何とか命はあるみたいだ

 

「大丈夫、康太?」

 

「……危なかった。助かった明久」

 

「無理をしないで少し横になってて」

 

僕は康太を寝かしつけた。さて

 

「姫路さん、君はあのエビフライになにを入れたの?」

 

一応、作った本人が毒物を入れてないか確認してみる

 

「えっと、酸味を出すために硫酸を少々」

 

硫酸――濃硫酸は強い酸化力や脱水作用を持ち、希硫酸は強酸性を持つ劇物。毒物及び劇物取締法によって使用や売買について制限されている。食材や調味料ではない

 

「して、味見はしたのかのぅ」

 

秀吉が恐る恐る聞くと

 

「『味見をすると太る』と聞いたのでしてませんよ」

 

ブチッ

 

イマナンテイッタコイツ?コレハオハナシノヒツヨウガアルナ

 

「おい姫路、ちょっと向こうでハナシがある」

 

「えっ、よ、吉井君。なんかいつもと雰囲気が…」

 

なんか喚いているが気にせず連れて行った

 

 

一輝Side

 

あぁアキが完全にキレたな

 

「明久はなんであんなに怒っているんだ?」

 

雄二は知らないようだな

 

「明久君は料理を侮辱されるのが我慢ならないからね」

 

「そうなんですか」

 

優子の言葉に久遠は驚いている。まぁ普段温厚なアキがああなるんだもんな

 

「しかし、硫酸を入れるとはのぅ」

 

「姫路さんの常識力を疑いますね」

 

秀吉と明梨は姫路の常識はずれな行動に呆れていた

 

「…吉井の意外な一面、発見」

 

「……(グッタリ)」

 

霧島は見当違いなことを言っており、康太はいまだに倒れている

 

『姫路、劇物を料理に入れるとはどういうことだァ?』

 

『げ、劇物なんて、私はただ美味しい料理を作ろうと…』

 

『アレが料理だと?ふざけんな!!他人に食わせるモンの味見もしないで料理を語ってんじゃねぇ!!』

 

『そ、そんな私はふざけてなんて…』

 

『料理ってぇのはな、食材の命をより美味しくいただくためにするものなんだ!!だからこそ食事の前には料理人や食材に感謝の言葉も言うし、無駄のないように食うんだ!!なのにお前はその命をいただけないようにしたんだぞ?これでふざけてないなんてよく言えるな!!』

 

どうやらアキの怒りは沸点を軽く突破しているようだ。その後2,3分でアキは戻ってきたが、姫路は戻ってこなかった

 

Side out

 

 

「さて、気を取り直して食べるか」

 

「そうだね、待たせちゃってごめんね、みんな」

 

僕が戻ってくると昼食が再開された。結局誰も食べてなかったからな

 

「お、この卵焼き美味いぞ、翔子」

 

「…うれしい」

 

「うん、明梨のハンバーグも日向の春巻きも美味しいよ」

 

「ほんと、明君。ありがとう」

 

「あ、ありがとうございます、明久君」

 

「お、この唐揚げ俺好みの味だな」

 

「本当、一輝君。よかったぁ」

 

「康太、食べれるかの?」

 

「……なんとか」

 

 

 

 

 

「…雄二、戦争の調子はどう?」

 

みんなが食べ終わると霧島さんが雄二に話しかけてきた

 

「あぁ順調にBクラスまでは落としたからな。今日と明日補充をしてAクラスに戦争を仕掛けるつもりだ」

 

「坂本君は本当にAクラスに勝てると思っているの?」

 

雄二の返答に優子さんが問う

 

「まぁ普通の戦争では無理だがやり方次第って感じだ」

 

雄二の代わりに一輝が答える

 

「やり方って何ですか?」

 

「……一騎打ち」

 

日向の疑問に康太が答える

 

「でも、アタシたちはいいとしてもAクラスのみんなが納得しないんじゃ…」

 

「そこで優子に一芝居打ってほしいんだ」

 

「確かに姉上も演技は上手いからのぅ」

 

優子さんも秀吉ほどではないが人を騙せる演技ができる

 

「…芝居って?」

 

「簡単なことだ。俺らと交渉して試召戦争を7vs7の一騎打ちにしてくれればいい」

 

雄二は簡単というけどAクラス全員を納得させるとなると難しいはずだ

 

「でも、Aクラスのみなさんを説得できる条件でもあるんですか?」

 

「Bクラスが試召戦争の意思があると伝えに来ただろう?アレで連戦をチラつかせるのと勝ったときに設備を交換しないことだ」

 

日向の疑問に雄二は何でもないように答える

 

「えっ設備を交換しないんじゃ戦争の意味がないんじゃないの?」

 

「いや、俺たちが勝ったら設備交換の代わりに振り分け試験を再度受けられるようにしたんだ。Aクラスにはデメリットは無いだろう?」

 

「まぁ、そうね」

 

一輝の言葉に優子さんは納得する

 

「じゃあ、たぶん明日にでも宣戦布告に行くから、その時はうまくやってくれ」

 

そろそろチャイムが鳴るので僕らは屋上を後にした。姫路さんのことについては試召戦争に関わるといけないので署長にAクラス戦の翌日に話を聞いてもらえるように頼んどいた。『毒劇法に違反している女子生徒』と言ったら署長さんが「またか」と言っていた。署長さんが若い頃に父さんも同じような経験をしたそうだ

 




手紙は内容を知らないので、そっと返しておきました。
キーホルダーはやっぱり手渡しで、明梨が悩んでいて明久が励ますってのをやりたかっただけです。


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Aクラスへの宣戦布告

やっとAクラス戦です。
書いてみると、なかなか筆が進みません。


今日も朝からBクラス戦で消費した点数の補充を行っていて、今は昼休みに入ったところだ。すると雄二は教卓に立った

 

「さて、皆Aクラス戦について話があるから、聞いてくれ」

 

雄二がそう言うとFクラスが静かになる

 

「Aクラス戦だが、これは一騎打ちで決着をつけたいと思っている」

 

『どういうことだ?』

 

『それで本当に勝てるのか?』

 

『誰と誰が戦うんだ?』

 

「落ち着いてくれ、それを今から説明する」

 

雄二が教卓を叩いてみんなを静かにさせる

 

「やるのは当然、代表の俺と翔子だ」

 

試召戦争はどちらかの代表が戦死したら終わりなのが通常のルールなので代表が出るのは当然だろう

 

「バカな坂本が霧島さんに勝てるわけ―」ヒュン

 

須川君がそう言うと彼の近くをカッターが通り過ぎた

 

「なっ危ねぇじゃねぇか」

 

「ツギハミミダ」

 

抗議する須川君に雄二がカッターを構えて言う

 

「須川君、さっきの君の発言は侮辱罪に当たるよ。刑法231条、事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。それと雄二、君も脅迫罪だよ。刑法222条、生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。今回はお互い様ってことで目をつぶるけど、次は無いからね」

 

「「わ、わかった」」

 

僕の言葉に二人は怯えながら返事をする

 

「話を戻そう。確かに翔子は強いが俺も全力を尽くすから、教科次第では勝てる!!」

 

『『『おぉすげぇ流石坂本だ』』』

 

クラスから雄二を称賛する声が上がるなか

 

「ねぇ坂本」

 

島田さんが雄二に話しかける

 

「坂本と霧島さんってどういう関係なの?」

 

まぁ名前呼びしていれば気になるのも当然か

 

「あ~翔子と俺は……付き合っている」

 

恥ずかしいのか顔をそむけて答える雄二

 

『よし、今から異端者の処遇を決める』

 

『『『『『異端者には死の鉄槌を』』』』』

 

『よし、処刑!!』

 

『『『『『うおぉーーーっ』』』』』

 

覆面集団が雄二へと襲いかかる。仕方ない手伝ってやるか、と腰を上げると

 

「あれ、吉井君も霧島さんが好みなんですか?」

 

姫路さんが光を失った目で僕に聞いてきた

 

「いや、霧島さんは好みのタイプじゃないよ。僕が好きなのは明るい子で――ってなんで姫路さんは僕に攻撃態勢をとっているの?それと島田さん君はなんで教卓なんて持っているの?」

 

「吉井君、むやみにのろ気るのはどうかと思いますよ?」

 

僕がいつのろ気たっていうんだ

 

「吉井、あんたの腐った性根叩きなおしてやるわっ」

 

君に叩きなおされる理由がない。しかしこれでは雄二の援護は難しいな

 

「おい、お前ら雄二の話が終わってないだろ、座れ」

 

一輝がみんなを静かにさせようとするが

 

『『『『『『『『『黙れ高瀬!!異端者の処刑が優先だ!!』』』』』』』』』

 

「二度も言わせるなス・ワ・レ」

 

『『『『『『『『『『『『『『『は、はいっ』』』』』』』』』』』』』』』

 

一輝が殺気を込めて言うとみんな素直に従った。正直僕でも怖かったよあれは

 

「は、話がそれたな。そしてAクラスと一騎打ちにするためこちらは勝利時にAクラスとの設備交換はしない」

 

『なんでだよ』

 

『それなら戦争の意味がないんじゃないか?』

 

「話を最後まで聞け!!Aクラスに勝ったときにFクラスは再度振り分け試験を受けられるように学園長と交渉してきた。このままのメンバーでAクラスに行くよりもAクラスのメンバーと一緒の方が女子と関われるんだ。悪い話ではないだろう」

 

『確かにこんな男どもとAクラスに行っても…』

 

『うおぉぉぉAクラスの女子よ待ってろ~』

 

「よし、じゃあ宣戦布告に行くから明久と秀吉、康太、一輝は一緒に来てくれ」

 

「「「「(……)了解(なのじゃ)」」」」

 

 

 

 

 

ガラッ

 

「失礼する。Fクラスの代表としてAクラスに試召戦争について話があってきた」

 

「話ならアタシが聞くわ。どうぞ、座って」

 

「わかった」

 

優子さんに勧められて僕らはソファに腰掛ける

 

「で、試召戦争についての話ってのは何かしら?」

 

「あぁ戦争の方式を代表同士の一騎打ちにしてもらいたくて来た」

 

この発言にAクラスから驚嘆の声が上がった、まぁ最低クラスの代表が学年主席に一騎打ちを挑むならば仕方ないか

 

「一騎打ちならば手軽に戦争を行えるけど、代表一人にこの設備を賭けるわけにもいかないわ。これは戦争なんだし、坂本君なら何をするか分からないもの」

 

B,Dクラス戦でのことはAクラスにも伝わっていたようでクラス全員が優子さんの言葉に頷いていた

 

「いや、そちらは設備を賭けなくても良い、こちらが勝ったらFクラスの生徒が再度振り分け試験を受けるだけだ」

 

「それなら、こちらにはデメリットは無いけど…」

 

優子さんが渋る。まぁクラスの反応を見れば仕方ないか

 

「それに、BクラスはAクラスに戦争の意思があるらしいじゃないか。大丈夫なのか?」

 

「でも、Bクラスはあなた達と戦争をして負けたのでしょう?なら宣戦布告はできないはずよ」

 

「知っているだろう?実情はどうあれ、あの戦争は対外的には『和平交渉にて終結』したんだ。宣戦布告することはできる、Dクラスもな」

 

「それって、脅迫?」

 

「とんでもない、ただの『お願い』だよ」

 

雄二もAクラスを納得させるために悪役に徹している

 

「分かったわ、一騎打ちでいいわ。3回も戦争をするなんてたまったもんじゃないわ」

 

「お、物わかりが良くて助かるよ」

 

「ただし、こちらからも提案、代表者を選出して7VS7の一騎打ちならばいいわ」

 

本当はこちらは7戦と決めているが優子さんはまるでこちらに妥協させるように言ってきた

 

「なるほど、こちらから姫路や藤崎が出る可能性を考えてか」

 

「えぇ代表でも教科次第では姫路さんや明梨に負けるかもしれないからね」

 

「…わかった、その提案を受けよう。だが科目選択権はこちらが貰っても良いよな?」

 

「え、うーん」

 

科目選択権に関しては昨日話していないため優子さんは迷っている。まぁクラスを代表しているのだから仕方ないことだろう

 

「…雄二の提案を受けても良い」

 

優子さんの後ろから突然霧島さんが現れて言う、気配が薄いけど僕は気付いていたけどね

 

「えっいいの?代表?」

 

「…ただし、条件がある」

 

「翔子、条件ってのはなんだ?」

 

「…負けた方が勝った方の言うことを聞く。1試合ごとに」

 

「……(カチャカチャ)」

 

「康太、何しているの?」

 

僕がカメラを準備している康太に注意すると

 

「……条件反射」

 

どんな条件反射だよ

 

「康太は相変わらずじゃのう」

 

秀吉も呆れているよ

 

「わかった、その条件を呑もう」

 

「ちょっと待って、やっぱり科目選択権は3回はこっちにくれない?4回はそっちにあげるから」

 

Aクラスのみんながまだ納得していなかったので優子さんは妥協案を出してきた

 

「そうだな、それでいい。日時は来週の月曜でいいか?」

 

「…うん」

 

雄二の言葉に霧島さんが同意する

 

「それじゃ、俺らはもう戻るぞ。まだ試験が残っているからな」

 

雄二に続いて僕らはAクラスを後にした

 




ちなみに明久は昭斗に「騙されないように」と刑法をすべて丸暗記しています。


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Aクラス戦①

Aクラス戦の1回戦です。


Aクラスへ宣戦布告してから土日を挟み月曜日、僕らは最後の作戦会議をしていた

 

「さて、ついにAクラス戦まで来た。ここまで来れたのは皆のお陰だ。ありがとう」

 

「ど、どうしたのお礼なんて」

 

「そうだぞ、雄二らしくもない」

 

僕と一輝が雄二の素直なお礼の言葉に驚いていると

 

「確かに俺らしくないが、これは偽れざる俺の気持ちだ。ここまで来たからにはAクラスに勝ってFクラスの力を教師共に見せつけてやろうと思う」

 

『『『おぉーーっ俺らは最強じゃー』』』

 

どうやらE,D,Bクラスに勝ったのが自分たちの実力だと勘違いしているみたいだ。彼らは雄二の言葉を借りるなら『使い捨て装甲板』なのに

 

「それで、Aクラス戦は一騎打ちを7回行うことになったんだが、今からそのメンバーを発表する」

 

雄二の言葉にクラスが静かになる

 

「まずは代表の俺、そしてこのクラスの主戦力の姫路、藤崎だ」

 

「「が、頑張ります」」

 

二人は立ち上がり握りこぶしを作る

 

『『『『おぉーー彼女達ならばAクラスにも勝てるだろう!!』』』』

 

「次に保健体育の王者、康太!!」

 

「……(グッ)」

 

康太は立ち上がり親指を上げる。たぶん「俺に任せろ」と言いたいのだろう

 

『『『『『『ムッツリーニーーー』』』』』』

 

このバカどもはどんだけ『ムッツリーニ』を尊敬しているんだろう

 

「転校生なので知らないだろうが一輝の点数もAクラス並みだ」

 

「オレに任せろ!!」

 

やっぱり一輝は頼りになるなぁ

 

『『『『おぉーーーーー』』』』

 

Fクラスから感嘆の声が上がる

 

「そして、秀吉だ。秀吉は有名じゃないが古典に関してはAクラス上位並だ」

 

「わしに任せておくのじゃ」

 

秀吉も立ち上がりみんなを鼓舞する

 

『『『『『『『おぉーーーかわいい上に勉強もできるなんて』』』』』』』

 

なんか変な感想もあった気がするけど気にしない

 

「最後に」

 

雄二が言葉を区切ると島田さんの方をちらりと見る

 

「明久だ。お前の召喚技術と本気の点数を見せてやれ」

 

「ちょっなんで吉井なのよ!!ウチの方が点数高いじゃない」

 

「ほう、明久より点数が高いだと?なら数学は何点だ?」

 

「う、ウチは平均で170ぐらいとれるわよ」

 

「明久ならその倍はとれる。お前は論外だ!!」

 

「ウチが吉井より点数が悪いですって?」

 

「それにお前はEクラス戦ではすぐに負けて、Dクラス戦では途中から戦線を抜ける、Bクラス戦では偽情報に騙されて部隊を放り出したうえに人質になった。どう頼れって言うんだ?」

 

「うっ」

 

「対して明久はEクラス戦では代表を含む12人を戦死、Dクラス戦では一輝と一緒に代表までの血路を開いた、Bクラス戦では代表を含むクラスの戦力半分を戦死させた。操作技術だけでこれだけやったんだ。本気の点数が加わるとどうなるか」

 

「わ、わかったわよ!!吉井!!負けたら覚悟しておきなさいよ!!」

 

うわ、雄二に論破されたからって僕に八つ当たりだよ

 

 

 

 

 

 

 

―― Aクラス

 

「これよりAクラス対Fクラスの代表者による一騎打ちを行います。両クラスとも準備はいいですか?」

 

「あぁ問題ない」

 

「…大丈夫です」

 

今回の立ち会いは全教科の承認ができる学年主任でAクラス担任の高橋先生だ

 

「では、代表者は前に」

 

「秀吉、先に教科を選択してこい」

 

「分かったのじゃ、科目は古典でお願いするのじゃ」

 

「わかりました。古典、承認します」

 

秀吉が科目を選択すると高橋先生は頷いた

 

「あら、秀吉君が出るならAクラスからはあたしが出るわ」

 

そういって出てきたのは勝気なつり目をした神谷 紫織さん。長身に綺麗な亜麻色の長髪ストレートの女性で好きなものは秀吉の泣き顔らしい。よく秀吉をからかっているが時には演劇に関して秀吉にアドバイスなどもしているため秀吉と仲がいい

 

「神谷かのぅ、よろしく頼むのじゃ」

 

「ふふっ勝ったら何してもらおうかしら?」

 

秀吉はこの勝負負けられなくなったな、神谷さんのあの笑顔を見ると秀吉は泣くことになるだろうから

 

「ま、負けなければいいだけじゃ、試獣召喚!!」

 

「ふふっ可愛がってあげるわ、試獣召喚!!」

 

二人の掛け声に応じて二人をデフォルメした召喚獣が現れる。秀吉の召喚獣は袴姿に薙刀、腕には腕輪をつけている。対する神谷さんの召喚獣はTシャツに黒いジャケットを羽織ってホットパンツをはいている、靴はヒールのついた黒いブーツだ。武器は鞭を持っている

 

Fクラス 木下 秀吉  VS Aクラス 神谷 紫織

古典     457           320

 

「あら?秀吉君って古典が得意なのね、400点越えなんて」

 

神谷さんは驚いているが嬉しそうだ。……獲物を狙うハンターのように

 

 

 

秀吉Side

 

「わしの得意教科で負けるわけにはいかんのじゃ!!」

 

わしは召喚獣に突撃させ、薙刀を大きく振りかぶって振り下ろしたが

 

「そんな攻撃当たらないわよ。それっ!!」

 

神谷は大振りなわしの攻撃を避けて、わしの脛に鞭で脛に攻撃を加えると、わしの召喚獣は痛みからか涙目になる

 

「あら、召喚獣の泣き顔の方も可愛いわね」

 

どうやら神谷の標的はわしの召喚獣に変わったようじゃ

 

ビュンビュンビュンビュン

 

「くっこのっ」

 

神谷は鞭をしならせて召喚獣の脛や肝臓など痛みを強く感じる部位を狙い、わしは防ぐので手一杯じゃ。徐々に点数も減らされておる。

 

Fクラス 木下 秀吉  VS Aクラス 神谷 紫織

古典     214           320

 

「くっ仕方ないのじゃ」

 

わしは腕輪を使うために召喚獣を下がらせる。警戒しておるのか神谷は追撃はしない。するとわしの召喚獣の腕輪が強く光り、その光にわしの召喚獣は包み込まれる。そして出てきたときには

 

「あれ、僕の召喚獣の装備だ」

 

明久の召喚獣の装備をつけたわしの召喚獣が現れた

 

「それが、秀吉君の腕輪の能力?」

 

「そうじゃ、腕輪の能力まで知っておる召喚獣の装備を模倣するのじゃ」

 

あとはあの時の明久になりきるだけじゃ

 

「さてと、さっさと続きを始めようぜ」

 

わしはBクラス戦の時の明久の演技をする

 

「くっでも点数ならこっちの方がまだ有利よ」

 

そう言って神谷は鞭で攻撃をしてくるが

 

「遅い」

 

一刀流剣術 ― 鈴音天消 ―

 

チリン

 

どこからか鈴の音が鳴ると俺の召喚獣は神谷の真後ろにいた。刀を抜いた姿で

 

Aクラス 神谷 紫織

      戦死

 

「勝者‼Fクラス!!」

 

「鈴音天消(りんねてんしょう)。切るもの、そのものにあらず。天に消える鈴の音のごとく、その魂を切り消さん」

 

「あらら、負けちゃったわね。まぁ秀吉君に命令されるのも面白そうだしいいわ」

 

「ふぅ、やはりあの時の明久になりきるのは疲れるのじゃ」

 

やはり感情的になっておる者になりきるのは疲れる

 

Side out

 

 

 

神谷さんとの勝負を終え秀吉が帰ってくる。それにしても

 

「一度見ただけで鈴音天消をコピーするなんて流石秀吉だね」

 

「わしの唯一の特技じゃからのぅ。しかし明久の技とは雲泥の差であろう?」

 

「まぁアキはあの技の練習は毎日やっているからな」

 

まぁ剣術は1日もサボれないからね。すぐに鈍るし

 

「お疲れさん、秀吉。初戦で勝てたからこっちの士気が上がった」

 




とりあえず、1勝しました。
秀吉が何をさせるのかは戦後対談の時に、それまで楽しみにお待ち下さい。


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Aクラス戦②

多分、Aクラス戦は2戦ずつの投稿になります。


秀吉が勝ったお陰で現在こちらの1勝0敗

 

「次は誰を出す…」

 

雄二は相手を見てから次の代表を決めるみたいだ

 

「Aクラスからはアタシが出ます」

 

「優子か、なら俺が行こう。いいだろう雄二?」

 

「あぁ俺もお前に行ってもらおうと考えていたからな。負けても良いから気軽に行って来い一輝」

 

「あぁ勝ち数を増やしてやるよ!!」

 

そう言って教室の中央へと歩み出る一輝。なんか一輝に負けフラグが立った気がする

 

「雄二、なんか一輝に負けフラグが立った気が」

 

「俺もそう思う」

 

 

 

一輝Side

 

なんかアキと雄二に失礼なこと思われている気がする

 

「一輝君が相手なのね」

 

「まぁお互い頑張ろうぜ」

 

オレは優子と軽く言葉を交わす

 

「科目はどうしますか?」

 

高橋女史が聞いてきたのでオレはどうするか迷っていると

 

「日本史でお願いします」

 

優子が日本史を選択した。ヤバいな日本史は平均300くらいだし今回は手応えがなかったからな

 

「わかりました。日本史、承認します」

 

「「試獣召喚!!」」

 

オレと優子の掛け声に応えデフォルメした召喚獣が現れる。俺の召喚獣はジーンズにロングTシャツ。ミリタリージャケットを羽織っていて、太腿にはポーチが付いている、武器は背中にアサルトライフルを背負っている他に胸ポケットにサバイバルナイフ、ジャケットの中にはヌンチャクとトンファーが入っている。対する優子の召喚獣は西洋鎧に身の丈ほどのランスを片手で持ち、もう一方の手で盾を持っている

 

Fクラス 高瀬 一輝 VS Aクラス 木下 優子

日本史    287          378

 

「先手必勝!!」

 

オレは叫びながら召喚獣にライフルを撃たせるが

 

「甘いわよっ」

 

キキキンッ

 

優子の盾に弾丸は弾かれてしまった。あの盾は邪魔だな

 

「隙ありっ!!」

 

「くっ」

 

考え事をしていて無防備だったオレに優子が突きを放ってきて、オレは何とかライフルでいなしたが少し食らってしまい

 

Fクラス 高瀬 一輝 VS Aクラス 木下 優子

日本史    243          378

 

さらに点差が開いてしまった。オレはライフルを投げ捨て、懐からトンファーを出す。リーチでは不利だがライフルよりはましだ

 

「へぇ一輝君って他にも武器を持っているのね」

 

キンッキンッキン

 

なんどかトンファーでランスと切り結び

 

Fクラス 高瀬 一輝 VS Aクラス 木下 優子

日本史    126          307

 

くっこれじゃ点差が広がる一方だな

 

ダッ

 

オレはバックステップすると、トンファーを捨て胸ポケットからサバイバルナイフを取り出す

 

「まだ、あったのね」

 

やや、呆れ気味の優子。まぁオレも把握しきれてないぐらいだしな。さて決めるか、オレは優子に向かって突進すると

 

フッ

 

突然視界から消えた。これは腕輪の効果ではなく消えたように錯覚させただけだ

 

舞空【首狩】(ぶくう【くびかり】)――前方に走るように見せかけ、飛び上がり相手の視界から消えた後に背後に着地と同時に首を切り落とす

 

オレの召喚獣はナイフを振りぬいた姿で現れた――

 

――優子の召喚獣の正面に

 

しまった、生身の感覚でやっちまった

 

「えっ、隙あり!!」

 

その隙を見逃すことなく優子はランスで胸を突き刺す。もちろん

 

Fクラス 高瀬 一輝

       戦死

 

こうなる。あ~あカッコ悪りぃ

 

「勝者!!Aクラス!!」

 

高橋女史が勝ち名乗りを上げる

 

「おめでとう優子」

 

とりあえず勝者の優子に称賛の言葉をかける

 

「よく言うわよ、最後に一輝君が距離感を間違ってなければアタシの負けだったのに」

 

「要はオレの失敗だ、それに勝ちは勝ちだろ」

 

「そうね、これで一輝君に何かしてもらえるわね」

 

「その時はお手柔らかに」

 

オレは軽く手を振りアキたちの元に戻った

 

Side out

 

 

 

「お疲れさん、一輝。残念だったな、最後のが決まらなくて」

 

雄二が一輝に励ましの言葉をかける

 

「しょうがないよ、召喚獣の感覚には慣れが必要だし、一輝は転校生だからね」

 

「一輝君は1年のころの試験召喚実習を受けてないですからね」

 

僕の言葉に明梨も同意する。しかし1対1か…

 

「次は康太だったな。俺の分も頼むぞ」

 

「……任せろ(グッ)」

 

一輝の言葉に康太は親指を立てる。全く、こういう時には頼りになるよ

 

「次の代表者は前に」

 

「康太、勝って来い」

 

「……科目は保健体育(スッ)」

 

「分かりました。保健体育、承認します」

 

康太は前に出ながら科目を告げる。康太の最大の武器、『保健体育』を

 

「じゃ、Aクラスからはボクが行こうかな」

 

Aクラスからはライトグリーンの髪をショートカットにしたボーイッシュな女の子が出てきた。誰だろう?見覚えがないから転校生かな

 

「一年の終わりに転入してきた工藤愛子です。よろしくね」

 

笑顔で自己紹介をしてきた。元気な子だなぁ

 

「土屋君だっけ?それともムッツリーニ君?随分と保健体育が得意みたいだネ?」

 

工藤さんは康太の実力を知らないのか随分と余裕な様子で康太に話しかける

 

「でもボクだってかなり得意なんだよ?………キミとは違って、実技で、ね♪」

 

かなりの問題発言の後、僕の方を向いてニヤリと笑みを浮かべる、まさか

 

「そっちのキミ、吉井君だっけ?勉強苦手そうだし、保健体育でよかったらボクが教えてあげようか?もちろん実技で」

 

やっぱり僕に狙いを定めたのか

 

「いや、僕はそんなに勉強は苦手じゃないから―「明君にはわたしが教えてあげるから大丈夫です」―ちょ、明梨、何言ってるの?―「私は明久君に教えてもらいたいです」―ひ、日向まで何言ってるの?二人とも意味分かっているの?」

 

僕が丁重に工藤さんの提案を断ろうとしたら明梨と日向が爆弾発言をした。確かにとても魅力的な提案だが

 

『吉井には永遠にそんな機会なんて来ないから、保健体育の勉強なんていらないわよ!!』

 

『そうです!!吉井君には永遠に必要ありません!!』

 

『アキのこと馬鹿にしてんじゃねぇぞ』

 

僕が二人を落ち着かせて振り返ると姫路さんと島田さんが伏していた。何かしたのかな?

 

「……工藤。ふざけ過ぎだ」

 

「ふざけるって、こういうこと?(ピラッ)」

 

工藤さんがスカートの裾を軽く上げる。もちろん見えない程度だが

 

『『『『『ふおおぉぉぉーーー』』』』』

 

馬鹿どもはそれだけで興奮し

 

「……(ポタポタポタ)」

 

康太は鼻血を押さえていた

 

「さっきは言わなかったけどボクの特技はパンチラなんだよネ」

 

「……これは今朝チョコを食べ過ぎたから(ポタポタ)」

 

まだ滴り落ちる鼻血を押さえながら苦しい言い訳をする康太。工藤さんはそんな康太に対して

 

「ふ~ん、ならコレならどうだ(ダキッ)」

 

工藤さんは康太の反応が面白いのか、今度は康太の腕に抱きついた。たぶん胸が当たってるだろう、康太は

 

「……グハッ」

 

吐血した。まぁ康太なら仕方ないか

 

「……これはさっき飲んだトマトジュース」

 

「あはは、やっぱり面白いねムッツリーニ君」

 

「工藤さん、そろそろ試合を始めてくれるかな?」

 

僕は康太を軽く介抱しながら工藤さんにお願いする

 

「ホントはもっと遊びたいけど、分かったよ。試獣召喚っと」

 

「……試獣召喚」

 

二人の呼びかけに応えて召喚される召喚獣。康太の召喚獣は忍者装束に小太刀二刀流。対する工藤さんは

 

『な、なんだあのバカでかい斧は?!』

 

『あんなのに切られたら一溜まりもないじゃねぇか?!』

 

セーラー服に身の丈ほどある大斧を持ち、腕輪までしている。保健体育が得意と言うのは嘘ではないようだな

 

Fクラス 土屋 康太 VS Aクラス 工藤 愛子

保健体育   657          528

 

 

 

康太Side

 

「じゃあバイバイ。ムッツリーニ君」

 

『『『『ムッツリーーーニーーー』』』』

 

工藤が大斧を構えて飛んでくる。腕輪を使っているのか、その斧は帯電している。…勝ったら名前で呼んでもらおう、あの名で呼ばれるのは嫌だからな

 

「……加速」

 

俺は腕輪を使いガラ空きの工藤の胸元に切りかかるが

 

「くっ」

 

とっさに武器を前に構えた工藤は戦死は免れたようだ

 

Fクラス 土屋 康太 VS Aクラス 工藤 愛子

保健体育   598          342

 

点数が補正される。どうやら帯電した斧に触れた分俺の召喚獣もダメージを受けたようだ。コイツのことを甘く見ていた罰だな。気合を入れなくては

 

「隙ありっ!!」

 

俺が考え事をしているのが隙に見えたのか、工藤がまた帯電した斧で切りかかってくるが

 

「……加速」

 

俺は腕輪を使う

 

「二度も食らわないよっ」

 

工藤はまた斧を盾のように構えるが、俺の腕輪の能力は単純に高速移動するのではない。俺は召喚獣を工藤の後ろに回り込ませてから、工藤の背中を切り裂く

 

「えっ、何で後ろに?!」

 

俺の召喚獣が突然後ろに現れたのに気づいたようだがもう遅い

 

「……加速終了」

 

Aクラス 工藤 愛子

       戦死

 

「勝者!!Fクラス!!」

 

「そ、そんなボクが保健体育で負けるなんて」

 

相当ショックだったのか工藤は膝をついて落ち込んでいる。仕方ない

 

「……工藤、お前の敗因は分かるか?」

 

「実力の差、でしょ?」

 

どうやら分かってないようだな

 

「……確かに点数では俺の方が勝っていたが、それだけではない」

 

「え、じゃあ何?」

 

「……慢心。お前は保健体育なら負けないと思っていただろう?」

 

「うん、だから点数で負けていた時には少し焦ったよ」

 

「……俺もお前が格下だと思って油断していたからな。だが、あそこまで点数が近かったのは初めてだ」

 

「え?」

 

「……これからもお互いに頑張ろう」

 

そう言って俺は工藤に握手を求める

 

「うん。ありがとうムッツリーニ君」

 

工藤は俺の手をとってきたが

 

「……土屋康太。勝ったから名前で呼んでくれ」

 

「あ、ゴメンね。…康太君」

 

「……(プイッ)」

 

工藤が笑顔で名前を呼んできてドキッとしてしまい顔を背けてしまった。しかし笑顔がカワイイな

 

「……もう、戻る」

 

俺は逃げるようにFクラス陣営に戻った

 

Side out

 

 

 

康太は工藤さんに惚れたのかな工藤さんと握手してから顔が真っ赤だ

 

「……勝ったぞ」

 

「お疲れさん。だいぶ楽になったぞ」

 

康太はそっぽを向きながら雄二に報告した。たぶん赤い顔を見られたくないのだろう

 

「康太、随分と工藤さんのこと気にかけているんだね?惚れた?」

 

「……当然のことをしたまで、惚れてはいない」

 

「ふ~ん、じゃ僕が告白しても良いの?」

 

「……(クワッ)」

 

康太が目を見開いてこちらを見た

 

「冗談だよ。やっぱり惚れたんだね」

 

「……工藤はカワイイ(コクッ)」

 

「応援するよ。頑張って」

 

「……助かる」

 

どうやら康太にも春が来たようだ。さてこれで2勝1敗、まだ勝負は分からないな

 




康太が愛子に惚れました。
愛子も康太にアドバイスを受けたので好印象です。


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Aクラス戦③

Aクラス戦3話目です。



さて康太が勝ったから2勝1敗だが、4勝するまでは勝負は分からないからな

 

「次は藤崎、頼む」

 

雄二は明梨を出すみたいだね

 

「わかりました。行ってきます」

 

「明梨、頑張ってね」

 

「うん、行ってくるね明君」

 

明梨は笑顔でそう言うと教室の中央へと向かう。相手は誰だろう?

 

「Aクラスからは私が出ます」

 

日向か

 

「明久。久遠の成績はどのくらいだ?」

 

「日向は明梨と総合だと変わらないけど、日向の方が得意不得意があんまりないんだよ。教科次第では明梨はツラいかもね」

 

「そうか」

 

雄二はあまりこの試合の勝敗は気にしてないようだ。今のところは雄二の予定通りなのだろう

 

「科目はどうしますか?」

 

高橋先生が二人に科目を聞く

 

「生物でお願いします」

 

日向が生物を選択した

 

「あちゃ~生物か。これはツラいね」

 

「そうなのか?」

 

雄二は二人の詳しい点数は知らないので僕に聞いてきた

 

「うん、生物は日向の得意科目で、明梨の苦手科目だからね。平均点だと200ぐらい差があるよ」

 

「そうか、科目選択できなかったし負けても仕方ないな」

 

「まぁ戦争でも明梨はあまり出番もなかったから、操作技術で補うのも限界があるだろうね」

 

明梨はDクラス戦の時とBクラス戦の時に少ししか召喚してないから操作技術が少しいいくらいだろう

 

「わかりました。生物、承認します」

 

高橋先生が承認すると生物のフィールドが展開された

 

「「試獣召喚!!」」

 

二人の掛け声に応じて現れる二人の召喚獣、明梨は前に見たときと同じで巫女装束に弓矢、日向のはナース服に腕ぐらいの大きさの大きな注射器。やばい二人ともかなりカワイイ

 

「グハッ」

 

僕は軽く吐血してしまったが

 

『『『『うおぉぉぉ~巫女さんにナースさ~ん』』』』

 

「うるせぇ!!黙ってろお前ら!!」

 

不愉快な声が聞こえたので(物理的に)黙らせた。勝手に体が動くことってあるよね

 

「「明君、なにやってるの?!(明久君、なにやっているんですか?!)」」

 

「えっごめん。こいつらに二人の召喚獣を見せたくなくて」

 

こいつらの目に触れさせたくないからだ

 

「「あ、ありがとう(ございます)」」

 

はて、お礼を言われるようなことをしたっけ?

 

Fクラス 藤崎 明梨 VS Aクラス 久遠 日向

生物     326           492

 

やっと二人の点数が表示された。やはりかなりの点差だ

 

 

 

 

明梨Side

 

明君って素であんな発言をするから卑怯だよね。わたしもヒナちゃんも顔が赤くなっちゃったよ

 

「そろそろ試合を開始してください」

 

「「は、はい」」

 

高橋先生に促されてわたし達は返事をする。そうだった試合中なんだからちゃんと集中しないと、ヒナちゃんの点数はわたしの約1.5倍。明君ならばこのぐらいの点差は何とかなるだろうけど、わたしは召喚した回数はあまり多くは無いから気をつけないと

 

「行くよっ」

 

わたしはヒナちゃんの胸に向かって矢を放った。胴体なら大きく避けないといけないから、その後の隙を狙うために次の矢を番える

 

「わ、わっ」

 

ヒナちゃんはわたしの予想通り大きく避ける

 

「そこっ」

 

避けて体勢を崩しているヒナちゃんに向かって矢を放つ

 

「きゃっ」

 

体勢を崩していたため避けきれずに腕に当たる

 

藤崎 明梨 VS 久遠 日向

 326       463

 

少しだけ点数が補正される。やっぱりこの点差じゃそんなに削れないか、

 

「やりますね、明梨ちゃん。なら、こうですっ」

 

ヒナちゃんはメスを3本投擲してくる

 

「あ、危ないっ」

 

判断が一瞬遅れたわたしは足に掠ってしまう

 

藤崎 明梨 VS 久遠 日向

 264      463

 

あちゃ~ちょっと掠っただけでこんなに減っちゃうんだ

 

「これで終わりですっ」

 

ヒナちゃんは飛び上がって注射器を刺してこようとするが

 

「甘いよっ」

 

わたしは避けながら矢を3本纏めてひき絞り、着地と同時に矢を放つ

 

藤崎 明梨 VS 久遠 日向

 264       327

 

強くひき絞ったのでかなり効いたみたいだ

 

「やりますね、明梨ちゃん。でも、これからが勝負です」

 

ヒナちゃんはメスを数本投擲してきて、わたしは躱わしながら矢を放つ。しかしお互いに少しずつ被弾して

 

藤崎 明梨 VS 久遠 日向

  53       72

 

わたし達の点数は残りわずかとなった、たぶん次の攻撃で勝敗は決まるだろう

 

「次で最後です」

 

「それはお互い様でしょ」

 

わたしが矢を放つと同時にヒナちゃんもメスを投げてくる

 

サクッ サクッ

 

点数の減った召喚獣では避けきれずに二人とも被弾する

 

藤崎 明梨 VS 久遠 日向

 戦死       24

 

「あ~あ負けちゃったか。良い勝負だったね、ヒナちゃん」

 

「そうですね。あの点差でここまで追い詰められるとは思いませんでしたよ」

 

わたし達はお互いの健闘を讃えて自分のクラスの陣地へと戻っていった

 

Side out

 

 

 

 

日向との試合を終えた明梨が帰ってくる

 

「明梨、お疲れ様。負けちゃったけどいい勝負だったよ」

 

「あぁ正直、俺もあそこまで粘るとは思っていなかった。お疲れさん藤崎」

 

僕と雄二は明梨に労いの言葉をかける

 

「結局負けちゃいましたけどね」

 

明梨は少しバツが悪そうな感じだ。あんないい勝負をしたんだから試合の結果なんて気にすることじゃないのに

 

「次の代表者は前に!!」

 

明梨を慰めていると高橋先生から指示が出される

 

「Aクラスからは僕が出よう」

 

Aクラスからは久保君が出るようだ

 

「来たか、学年次席。姫路、頼む」

 

雄二はもともと姫路さんを当てるように決めていたので姫路さんに出るように言う

 

「は、はい。頑張ります」

 

姫路さんは緊張しながらも前に出る

 

「さて、この試合どうなるか」

 

「二人の点数はほとんど拮抗しているからね」

 

僕は雄二の言葉に同意する。二人は学年次席争いをするくらいなので点数に大きな差は無い

 

「科目はどうしますか?」

 

「総合科目でお願いします」

 

姫路さんが総合科目を選択した。しかし、総合科目だと確実に点差は無いだろう

 

「「試獣召喚!!」」

 

二人の召喚獣が現れる。姫路さんは西洋鎧に身の丈の倍ほどの大剣、対する久保君は袴姿に甲冑を着ていて武器は二振りの大鎌

 

Fクラス 姫路 瑞希  VS Aクラス 久保 利光

総合科目   4498           4102

 

あれ、結構点差があるな。これなら

 

『マ、マジか!?』

 

『何時の間にこんな実力を!?』

 

『この点数、霧島翔子に匹敵するぞ』

 

至る所から驚きの声が上がる。まぁ姫路さんの実力は有名だから仕方ない

 

「ぐっ……!姫路さん、どうやってそんなに強くなったんだ……?」

 

久保君が悔しそうに尋ねる。やはりこれだけ点差がつけられるときになるのは仕方ないだろう

 

「……私、このクラスの『皆』が好きなんです。人の為に一生懸命な『皆』のいる、Fクラスが」

 

人の為に一生懸命?人の幸せを許さず、人の不幸に喜ぶ奴らのどこがいいのだろうか

 

「『Fクラス』が好き…?」

 

「はい。だから頑張れるんです」

 

姫路さんは腕輪の能力で熱戦を放つが

 

「そうか…なら僕は負けられないね」

 

久保君はギリギリで避けてガラ空きの姫路さんの胴を切る

 

姫路 瑞希  VS 久保 利光

 3548       3998

 

どうやら久保君の一撃は浅かったようで、そこまで点数は減らない。ただ久保君も掠ったようで少し点数が減る。しかし、久保君の目つきが変わった

 

「これは負けたな。明久、後がなくなっちまったが頑張ってくれ」

 

「アキ、負けんなよ」

 

「明君、頑張ってください」

 

「明久、しっかりのぅ」

 

「……頑張れ」

 

みんなは諦めモードで僕に声援をかける

 

「ちょっと、みんな、まだ姫路さんの試合が…」

 

あ、久保君が姫路さんの胴を切り払って一閃した

 

「…終わったな。頑張れよ明久」

 

僕は自陣へと戻る姫路さんを横目に見ながら教室の中央へと向かった。さて、これで僕らは2勝3敗、7戦だから僕が負けたらFクラスの負けだ

 




姫路は負けましたね。
隙もないのに、大技を使えば普通はああなりますよね。


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Aクラス戦④

お待たせしました。ついに明久の出番です。
今回は少し短めですがご容赦ください。
ではAクラス戦4話目をお楽しみください。


僕が負ければ雄二が出ることなく負けてしまう。ギリギリの状態だけど、僕は同時にワクワクもしている

 

「Aクラスからは佐藤が出ます」

 

Aクラスからはボブカットにメガネをかけた女子、佐藤さんが出るようだ

 

「なぜ、笑っているのですか?」

 

佐藤さんは僕の様子に疑問に思ったのか尋ねてくる。なぜって簡単なことだ

 

「こんなギリギリの勝負って愉しいじゃん」

 

 

 

 

一輝Side

 

「アキの奴、悪い癖が出たな」

 

「明久の癖?それは何だ?」

 

雄二は知らないのか聞いてきた

 

「アキは勝負事ではギリギリを楽しむギャンブラー気質なんだよ」

 

「なるほど、俺と喧嘩した時も俺に合わせて戦ってたな」

 

雄二はアキに負けて不良から更生したんだったな

 

「でも、負けたことは無いから安心してくれ」

 

「俺もその心配はしてねぇよ」

 

「そうか」

 

Side out

 

 

 

 

ん?なんか一輝に変なこと思われている気が

 

「科目は何にしますか?」

 

高橋先生が聞いてきた

 

「佐藤さんが選んでよ」

 

こっちは雄二に選択権を残しておかないとね

 

「いいんですか?あなたが負けるとクラスの負けになるんですよ?」

 

佐藤さんは随分自信があるようだ。それもそうかAクラスの上位の人とFクラスの観察処分者なら結果は目に見えている

 

「それはそうだけど。こっちは代表に選択権を残さないと、雄二が霧島さんに負けて終わっちゃうからね」

 

「そうですか、後悔しないでくださいね。高橋先生、科目は世界史でお願いします」

 

「わかりました。世界史、承認します」

 

「試獣召喚!!」

 

佐藤さんが召喚ワードを言うと召喚獣が現れる

 

「それじゃ僕も、試獣召喚!!」

 

僕の方の召喚獣も遅れて現れる

 

Aクラス 佐藤 美穂

世界史   408

 

『な、400点越えだとっ?!』

 

『そんなの吉井が勝てるわけないじゃねぇか!!』

 

Fクラスから驚嘆の声が上がる

 

「世界史は私の得意科目なんです」

 

佐藤さんは自慢げに語る

 

「へぇ確かに高いね。でもさ、よく言うじゃん」

 

Fクラス 吉井 明久

世界史    506

 

「上には上があるって」

 

『なっ500点越えだと』

 

『ウチの代表よりも高いんじゃないの?』

 

今度はAクラスから動揺の声が上がる

 

「吉井君があんな点数なんてありえません」

 

「カンニングでもしたんでしょ。正直に言いなさい吉井!!」

 

『観察処分者があんな点数取れるわけがない!!』

 

なんかFクラスからも変な声が上がっている

 

「僕も世界史はわりと得意なんだよね」

 

ちなみに佐藤さんの召喚獣はカンフー服に鎖鎌を持っている

 

「じゃ、まずは」

 

僕の召喚獣の腕輪が光ると刀が光に変わり手の中に収まり

 

「私と同じ武器?!」

 

光がはじけると僕は佐藤さんと同じ鎖鎌を持っていた

 

吉井 明久

 456

 

腕輪を使ったので点数が消費される

 

「それでも、私は負けません」

 

佐藤さんは錘部分を投げてきた

 

「遅いな~」

 

僕は鎖の部分を掴むと、そのまま自分の方に引っ張った

 

「きゃっ」

 

佐藤さんはバランスを崩し、僕はすれ違いざまに佐藤さんの腕を切りつける

 

吉井 明久 VS 佐藤 美穂

 456       363

 

軽く切りつけただけなので、あまり点数は変化しない

 

「鎖鎌ってのは、こう使うんだよ」

 

僕は錘部分を投げて、佐藤さんの足に巻きつける

 

「えっ」

 

突然のことに佐藤さんは声を出す

 

「ほいっと」

 

僕は鎖を引くと佐藤さんの体はバランスを崩し前のめりになる。その隙を逃さずに、腹に掌底をいれる

 

吉井 明久 VS 佐藤 美穂

 456       301

 

「このっ」

 

佐藤さんは鎌を振り、僕はそれを避けて距離をとる

 

「それっ」

 

僕はまた錘を投げて、佐藤さんの腕を拘束しようとするが

 

「二度も同じ手は食らいません!!」

 

佐藤さんは避けると逆に僕の右腕に鎖を巻きつけてきた

 

「良い反応だけど、次の動作までが遅いよ」

 

僕は右腕を引っ張り逆に佐藤さんを引っ張る

 

「えっ、きゃっ」

 

なにが起こったのか分からないのか、佐藤さんは指示が遅れる。もちろん僕はその隙を見逃さないで

 

ザシュッ

 

佐藤さんの首を切りつける

 

佐藤 美穂

  戦死

 

急所に当たったため佐藤さんの召喚獣は戦死した

 

「負けてしまいましたか」

 

佐藤さんは肩を落とす

 

「試召戦争の経験もないんだから仕方ないよ」

 

僕はそんな佐藤さんを慰める

 

「ありがとうございます。先程は失礼な発言をしてすみませんでした」

 

立ち直った佐藤さんが僕に謝ってきた

 

「いや、僕は観察処分者だし、Fクラスだったし仕方ないから気にしないでよ」

 

僕は恥ずかしくなったので自陣へと戻っていく

 

 

 

 

「勝ったよ雄二。後はキミだけだ」

 

「おう、お疲れさん明久。後は任せろ」

 

僕は試合会場へと向かう雄二とハイタッチをしながら言葉を交わす

 

「お疲れ~アキ」

 

「流石じゃのぅ明久よ」

 

「……良い勝負だった」

 

一輝達から労いの言葉をかけられる

 

「吉井、アンタ佐藤さんになにをしたのかしら?」

 

「そうですね。じっくりとオハナシしましょう」

 

女子二人は釘バットやら持って問い詰めてきた

 

「なにってただ落ち込んでいた佐藤さんを励ましただけだよ」

 

『『『『女子と言葉を交わすなど万死に値する!!』』』』

 

また覆面集団が現れた。これってなんてRPG?

 

「オマエラ、アキに手を出したらどうなるか、ワカッテイルノカ?」

 

『『『『「「ひぃっ」」』』』』

 

一輝が殺気を放ちながら軽く言葉を発したら、覆面集団+2がおとなしくなった

 

「現在は3勝3敗で同点となっています。次の代表戦でこの試召戦争は決まります」

 

「ああ、わかっている」

 

「…大丈夫です」

 

どうやら、もう代表同士の試合が始まるようだ

 

「科目は何にしますか」

 

「数学でお願いします」

 

選択権は僕らにあるので雄二が選択する。数学は雄二の得意科目だ、対して霧島さんは暗記系の方が得意なので

 

Fクラス 坂本 雄二 VS Aクラス 霧島 翔子

数学     803           367

 

こんなに差が出るとは思わなかったな

 

 

 

 

雄二Side

 

やっぱ、数学ならばかなりの点差があったな

 

『坂本ってあんなに頭が良かったのか?』

 

『神童の名はだてじゃないな』

 

『吉井と同じでカンニングをしたんじゃないか?』

 

Fクラスからどよめきが起きる。しかし、最後の奴、明久も俺もカンニングなんてしてないぞ。後でO☆HA☆NA☆SHIが必要かな?

 

『なっ代表の倍以上だと?!』

 

『なんでそんな人がFクラスにいるのよ!?』

 

『今年のFクラスはおかしくないか?』

 

Aクラスからも動揺の声が上がる。まぁこのFクラスは途中退席者4人、名前の無記入2人、点数を落とした奴が1人いるんだ。おかしいのは仕方ないだろう

 

「…流石、雄二。でも、私は負けない」

 

翔子も本気でくるみたいだな。俺も本気で相手をしないとな。ちなみに俺の召喚獣は白い改造学ランにメリケンサック、対する翔子は日本鎧に日本刀。凛とした姿に少し見惚れてしまった

 

「応、本気でかかってこい翔子!!」

 

まさか、翔子と拳で語り合うことになるとはな。これは戦争とか関係なしに面白くなって来たぜ

 

To be continued

 




やっと明久の本気の点数が判明しましたね。
佐藤にはフラグ立っていませんよ、一応。勝手に明久がフラグを立てそうで怖いです。
今回は切れ目が少し変ですが、次で決着+戦後対談となります。
思っていたよりも長くなりそうなので、代表戦は次話に持ち越しました。


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Aクラス戦⑤

今回はAクラス戦の終戦と戦後対談、勝者権限の実行・前篇です。
雄二の健闘をご覧ください。
現在、活動報告にて清涼祭編の召喚獣の衣装を募集しています。ご協力お願いします。


雄二Side

 

Fクラス 坂本 雄二 VS Aクラス 霧島 翔子

数学     803           367

 

点数では倍近くあるとはいえ油断はできないな。相手を格下とみて戦うと酷い目にあうからな

 

「…雄二が来ないなら、こっちから行く」

 

翔子は刀を下段に構えて突進してくる

 

「…そこっ」

 

翔子は俺に近づくと、刀を下段から上段に斜めに切り上げる。俺は掠りながらも避けると翔子の腹に蹴りを入れようとするが、翔子は後退して、俺の蹴りは少し掠っただけだった

 

坂本 雄二 VS 霧島 翔子

  772      359

 

お互いに掠っただけだが、俺は頬に刀が、翔子は鎧に蹴りが掠ったので、ダメージは相当違うようだ。これは受けの姿勢じゃ負けちまうな

 

ダッ

 

俺は攻めに転じるために翔子に向かって走り出した

 

キンッ

 

突進の勢いを乗せたパンチは翔子が両手で構えた鞘に弾かれてしまう。だが俺はその程度ではあきらめない

 

「まだ、終わらないぞ!!翔子」

 

キンッ キンッ キンッ キンッ キンッ

 

俺はパンチや蹴りなどでラッシュをするが翔子は鞘で受け止めてあまり有効打は入らない

 

ダッ

 

翔子はバックステップで距離をとる。何かあるかもしれないので俺は追撃はせずに点数を確認する

 

坂本 雄二 VS 霧島 翔子

  772      284

 

どうやら、少しは点数を減らせたみたいだな

 

「…わかった」

 

まさか

 

「…雄二の行動パターン、攻撃の癖。全部覚えた」

 

「くっ」

 

やはり翔子の記憶力は半端ない。その後しばらく戦闘を続けるが、俺の攻撃はほとんど当たらず、当たったとしてもカウンター気味の攻撃が掠るくらい。これでは負けてしまう

 

坂本 雄二 VS 霧島 翔子

  542      252

 

まだ点数に差があるとはいえ、このペースだと俺の負けだな

 

「なら、やり方を変えればいい」

 

俺は喧嘩の時の構えを解いて、拳を顔の高さまで上げてボクシングの構えを作る。翔子が覚えたのは喧嘩の仕方だけだ、なら俺の知っている他のスタイルで戦えば良い

 

シュッ シュッ

 

俺のジャブやフックが翔子に当たる

 

「…くっ」

 

焦ったのか翔子が大振りな攻撃をしてきたので、俺はそれを躱わして

 

ゴスッ

 

ガラ空きの顎にアッパーカットを入れる

 

坂本 雄二 VS 霧島 翔子

  542      194

 

「…その戦い方も分かった」

 

その言葉の通り、また俺の攻撃が効かなくなって

 

坂本 雄二 VS 霧島 翔子

  420      181

 

開いた点差がまた縮まった

 

ダッ

 

俺は距離をとると構えを解いて、腕をクロスさせる

 

「今度はコレだ!!」

 

ゴスッ バキッ ドン

 

俺はまた距離を詰めて勢いを殺さずに中段に回し蹴りを入れ、その勢いのまま上段に回し蹴りを当てる

 

坂本 雄二 VS 霧島 翔子

  420      151

 

翔子は反応しきれずに2発ともまともに食らう。俺は距離をとって助走をつける。翔子はさっきのを覚えたのか鞘を中段に構えて防御の姿勢をとる

 

「甘いぜっ!!翔子」

 

俺は飛び上がると体をひねり翔子の頭上から縦の回し蹴りを当てる

 

坂本 雄二 VS 霧島 翔子

  420      121

 

助走をつけて翔子に突進させるが、今度は俺が翔子に近づく前に刀を振り、突進の勢いを殺され、翔子に斬られる

 

坂本 雄二 VS 霧島 翔子

  389      121

 

また、スタイルを変えないとな。俺は拳を腹と胸のあたりに構える

 

「しっ」

 

俺は裏拳打ちを翔子のこめかみに当てる

 

坂本 雄二 VS 霧島 翔子

  389      110

 

やっぱ、あまり点は減らないか。俺は今度は鎖骨打ちをする

 

坂本 雄二 VS 霧島 翔子

  389       96

 

このぐらいならいけるか?ちょうど翔子も動けないようだしな

 

「これで、終わりだ!!」

 

俺が翔子に突きを出すと同時に腕輪が光り

 

ドォン

 

俺の拳から衝撃波が起きる

 

結果はどうだ?

 

坂本 雄二 VS 霧島 翔子

  319      戦死

 

腕輪を使ったため、少し点数が減ったが、なんとか勝てたようだな

 

「翔子、良い戦いだったな」

 

正直、あの点差でも負けると思っていたからな

 

「…やっぱり雄二は強い。私の自慢の夫」

 

「だ、だれが夫だ」

 

俺は翔子の言葉に恥ずかしくなり、さっさと自陣へと戻っていく。明久がニヤついているがまた、からかわれそうだな

 

Side out

 

 

 

 

雄二が霧島さんとの試合を終えて帰ってきた。顔が真っ赤だし、少しからかってやるか

 

「夫婦喧嘩、お疲れ様」

 

「だ、誰が夫婦だ」

 

「夫婦喧嘩は犬も食わぬと言うしのぅ」

 

「……夫婦喧嘩なら他所でやれ」

 

「坂本君、奥さんを大事にしないとダメですよ」

 

「雄二、末永く幸せにな」

 

みんなも僕の意図が分かったのか雄二をからかう

 

「だ、だから夫婦じゃねぇって言ってるだろうが」

 

雄二がオロオロしている。面白いけどこのくらいにしておくかな

 

「じゃあ、戦後対談に入ろうよ」

 

「おい無視かよ!!」

 

仕方ないじゃん、夫婦なのは誰が見ても当然なんだし

 

「まぁいいか。学園長、これで良いんだろ?」

 

雄二がAクラスの入口の方に声をかける

 

「わかったよ。ただ今日はもう時間がないからね。Fクラスの再振り分け試験は明日にするさね」

 

「わかった。さて、戦後対談は特になしだ。『一つ言うことを聞く』って話については各自行ってくれ」

 

 

 

 

僕は佐藤さんのところに行き

 

「僕は特に何もないから、別にいいよ」

 

「そんな、さっき失礼なことも言ってしまったのでお詫びに何かさせて下さい」

 

まだあの事を気にしているみたいだな

 

「ん~じゃあ僕がAクラスに行ったら仲良くしてくれる?」

 

「え?そんなことで良いんですか?」

 

「まぁ何かさせるってのも僕は好きじゃないからね」

 

「分かりました。ではAクラスに入れるといいですね吉井君」

 

「うん、ありがとうね。佐藤さん」

 

 

 

 

秀吉Side

 

わしは雄二の言葉を聞くとAクラスの神谷の方に向かった

 

「あら、秀吉君。私に何をさせるつもりかしら?」

 

なにやら嬉しそうに聞いてくる神谷

 

「ちょっと、勉強を教えて欲しいのじゃ。わしは古典以外はあまり点数が取れないのでな。神谷ならば全体的に点数が高いであろう?」

 

「あら、そんなことで良いの?もっとすごいこと期待していたのに」

 

こやつは何を期待していたのじゃろうか。考えるのは止めた方がよさそうじゃ

 

「あたしは古典以外なら400ぐらいとれるものね。いいわ秀吉君がそこまで言うなら教えてあげる。ただ、これからは、あたしのこと名前で呼んでくれる?」

 

「わかったのじゃ、神..紫織よ。よろしく頼むのじゃ」

 

「ふふっ、それでいいのよ。さてと秀吉君と勉強会かぁ、愉しそうね。たっぷりと扱いてあ・げ・る」

 

なにやら紫織はスイッチが入ったようじゃの。頼むべきではなかったかの、しかし紫織と二人きりというのも悪い気はしないのは、なぜじゃろか?

 

Side end

 

 

 

 

康太Side

 

俺は工藤のところへ向かった

 

「あっ、康太君。ボクに何をさせたいの?」

 

何を期待しているのか工藤はニヤついている

 

「……さっき言った名前で呼んでくれるだけで良い」

 

俺は工藤にはあの名で呼ばれたくない。理由は分からないが

 

「う~ん、じゃあボクのことも名前で呼んでよ。それでチャラってことで」

 

コイツは何を言っているんだ

 

「……工藤、ふざけるのはよせ」

 

「愛子。ボクの名前は愛子だよ、康太君。そう呼んでくれないと返事しないよ」

 

「……工藤………」

 

「(プイッ)」

 

工藤は顔を背けてしまった。なぜか胸が締め付けられるような感じがした

 

「……愛子」

 

つい愛子の名前を呼んでしまった。俺の顔はおそらく真っ赤だろう

 

「やっと呼んでくれた。よろしくネ康太君」

 

「……(ポタポタ)」

 

愛子の笑顔に俺は鼻血が出てしまう

 

「ちょっ康太君、大丈夫?」

 

「……これは愛子がかわいいから(これはチョコを食べ過ぎたせい)」

 

俺は本音と建前が逆になっていることにすら気づけない状態だった

 

「か、かわいいなんて、そんなこと初めて言われたよ」

 

工藤は顔を赤くしているが、俺は止血と輸血で手一杯で工藤の台詞は耳に入ってこなかった

 

「じゃあ、康太君。負けたから今度、康太君にボクの写真を撮らせてあげるよ。もちろん二人きりでね。あ、なんならポーズとか衣装の指定をしてくれても良いよ」

 

こいつはなんて問題発言をしているんだ

 

「……お願いします」

 

俺は条件反射で土下座でお願いしていた

 

「うんうん。素直でいいネ!!康太君の為なら何でもしちゃうよ」

 

どうやら俺は愛子には勝てないようだ。それと俺は愛子のことが好きになったみたいだ。自由奔放な感じだが明るくてかわいいし、何より俺は彼女に惹かれているようだ

 

Side out

 




なんとかAクラス戦が終戦です。
康太は愛子に惚れました。優子、日向、久保、雄二は次回のお楽しみです。


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Aクラス戦⑥

今回は勝者権限の実行・後編です。アンチ島田です。
現在、活動報告にて清涼祭編の召喚獣の衣装を募集しています。ご協力お願いします。


一輝Side

 

「あのっ、一輝君、ちょっといいかしら?」

 

優子が突然声をかけてきた

 

「あぁ、問題ないが何か用か?」

 

戦争も終わったし、後は帰るだけだと思うのだが

 

「用って言うか、試合で勝ったからお願いを聞いてほしいんだけど」

 

「そういえば、そんな話していたな。お手柔らかに頼むよ優子」

 

負けたから何を言われても実行する気だけど

 

「じゃ、じゃあ、あの、今度の日曜日にアタシに付き合って」

 

「へ?そんなことでいいのか」

 

言い渋っていた優子から出た言葉にオレは聞き返してしまった

 

「いいのよっ!!」

 

優子がそう言うなら従うけどオレなんかと一日一緒にいて何か得でもあるのか?

 

「あら?優子ってもしかして、ふふっ」

 

「し、紫織!!アタシが何だって言うのよ?!」

 

神谷が突然現れて優子のことをからかいだした。仲がいいなぁ

 

「やっぱり優子ってからかい甲斐があるわね。秀吉君をからかうのも面白いけど、優子の慌てた様子も可愛いわよ。さすが双子ね」

 

まぁ優子がカワイイってのには同意だな

 

Side out

 

 

 

 

明梨Side

 

わたしはヒナちゃんの所に、要求を聞きに向かった

 

「ヒナちゃん、わたしは何をすればいいの?」

 

「い、いえ、なにもしなくても良いですよ。勝ったのも私が科目を選択できたからですし」

 

「遠慮しなくていいから、何でも良いよ。わたしも何もしないってのはなんか気持ち悪いから。ね?」

 

「じゃ、じゃあ日曜日に明久君と3人で水族館に行きませんか?」

 

「なんかいつも通りな気もするけど、わかったよ。明君の予定を聞きに行こっか」

 

「は、はいっ」

 

わたし達は明君の予定を聞きに明君のとこに向かった

 

Side end

 

 

 

 

Other Side

 

久保は姫路の元に向かうと

 

「姫路さん、勝者権限の行使をしてもいいかい?」

 

「は、はい。大丈夫です」

 

「ならば、今後、吉井君に危害を加えないでくれ」

 

「き、危害なんて私はそんなことしていません!!」

 

「そうかな?吉井君が試合を終えてFクラスの陣地に戻った時に、君は釘バットを持って吉井君に襲いかかろうとしていたように僕には見えたが」

 

「あ、あれは吉井君が佐藤さんに迷惑をかけたからです」

 

「僕には吉井君が落ち込んでいる佐藤さんを励ましているようにしか見えなかったが」

 

「そ、それは…」

 

姫路は言葉に詰まってしまう

 

「とりあえず、君は今後吉井君に危害を加えないでくれ」

 

久保はそれだけ言うと立ち去った

 

Side out

 

 

 

 

雄二Side

 

さて、勝ったのはいいが、翔子に何を頼むか。翔子の常識外れの行動は付き合いだしてから、矯正してきたので今では、朝起きたら俺の隣に翔子が寝ていたり、飯に睡眠薬を入れられて翔子の家に拉致られたり、スタンガンで気絶させられて遊園地に着いていたり、といった行動は全く無くなったしな

 

「…雄二、私は何をすればいい?」

 

俺が悩んでいると翔子が尋ねてきた

 

「あ~何にするか考えているところだ」

 

「…雄二の為なら裸エプロンでも溶ける水着でも着る」

 

非常識な行動は無くなったが、やっぱ翔子は記憶力はいいがバカだな

 

「翔子、その発言をこんな場所でするな。俺の人間性が疑われる」

 

まだ、教室には多くのAクラスの生徒が残っている。こいつらに誤解されると再振り分け試験でここに来たら白い目で見られてしまう

 

「…私はどんな雄二でも愛してる」

 

「待てっ翔子!!その発言は俺が変なやつだと認めているようなものだぞ!!」

 

いくら付き合っているとはいえ彼女に裸エプロンや溶ける水着を強要していたら、完全に変態だ。根本以下の生命体だと噂されてしまう

 

「翔子、願いが決まったぞ。明日弁当を作ってきてくれ」

 

これなら普通のお願いだ。誤解を招くことはないだろう

 

「…わかった。じゃあ裸エプロンは今夜?」

 

「翔子、話を聞いてなかったのか?弁当を作ってくるだけだ。他に願いはない」

 

「…雄二は私のことが嫌い?」

 

「それは関係ないだろう!?」

 

「…私は雄二にいろんな私を見て欲しい」

 

「その気持ちはありがたいが、時と場合を考えてからにしてくれ」

 

俺達はまだ高校生だし、結婚しているわけでもないんだから、ちゃんと線引きを教えておかないとな

 

Side out

 

 

 

 

「「明君(明久君)」」

 

僕が対談を終えて、他のみんなが対談を終えるのを待っていると、声をかけられた

 

「明梨に日向、二人はもういいの?」

 

「そのことで明君に聞きたいことがあるんだけど」

 

「僕に聞きたいこと?」

 

「あの、明久君って日曜日に予定は入っていますか?」

 

「日曜?特に予定はないから『道場』に行くつもりだけど、何かあるの?」

 

僕は予定がないとほぼ道場で自主トレしているからな

 

「明梨ちゃんと3人で水族館に行きませんか?」

 

「わかったよ。日曜日は空けとくね」

 

日曜日が楽しみになったな

 

トントン

 

誰かに肩をたたかれた

 

「ん?」

 

振り向くと

 

「さぁ吉井、試験は明日なんだし今からウチにつきあってもらうわよ」

 

島田さんが勝手に予定を決めてきた

 

「君につきあう義理はないよ」

 

島田さんと二人きりなんて何をされるか分かったもんじゃない。僕は彼女にとってサンドバッグかなんかのストレス発散材料のようだからな。

 

「吉井の癖に口答えしているんじゃないわよっ!!」

 

島田さんが僕の腕を極めようとするが、僕はそれを躱わす

 

「ちょっと勝手に避けているんじゃないわよ!!」

 

「明日は試験があるんだから腕を折られたりしたら大変じゃないか」

 

「文字が書けようが書けまいがアンタはFクラスなんだから関係ないでしょうが」

 

ポン

 

島田さんの肩に大きな手が置かれる。その主を見てみると

 

「島田、お前は暴行に侮辱と罪を重ねたからな。特別に今から補習をしてやろう」

 

西村先生が島田さんの放課後の予定を埋めた。まぁ自業自得だから仕方ないな

 

「また島田は鉄人に捕まったのか。あいつも懲りないな」

 

雄二も対談を終えたのか僕達の元にやってきた

 

「バカにつける薬はないと言うからのぅ」

 

「……バカは死んでもバカとも言う」

 

秀吉と康太も来た。しかしみんなキツイこと言うねぇ、事実だけど

 

「しかし、雄二の戦い方はすごかったね」

 

「あぁ喧嘩にボクシング、マーシャルアーツそれと空手も使ってたからな」

 

一輝も同意見のようだ

 

「まぁ翔子にはああするしか無いと思っていたからな。しかし、あの戦い方はもうできないな。俺の知っている戦い方は使いつくしたからな」

 

でも、もう霧島さんと戦うことはないから問題ないだろう

 

「それも明日の試験で尽力すれば問題なかろぅ」

 

「……明日は頑張る」

 

「そうだな、今日はもう帰って明日の試験に備えようぜ」

 

雄二の言葉に頷くと僕は雄二と日向、明梨、霧島さんと一緒に、一輝は優子さんと、秀吉は神谷さんに引っ張られて、康太は工藤さんと帰路についた。明日は試験なので龍司さんに話して今日は勉強に集中することにした

 




水族館の話は書いていません。後から追加するかもしれませんが、期待せずにお待ち下さい。
たぶん、3人はイチャついていたでしょうね。


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新しいクラスと新たな火種

新しいクラスでの明久達の日常…のはずが
試召戦争編はもうすぐ終わりです。

現在、活動報告にて清涼祭編の召喚獣の衣装を募集しています。ご協力お願いします。


Aクラス戦の翌々日、僕らはいつも通り3人で登校していた。今日はFクラスの再振り分け試験の結果が出る日だ。1日で採点が終わる裏には高橋先生が人間とは思えないスピードで採点しているとか何とか、やはりあの先生は底が知れないな

 

「おはよう、吉井、藤崎、高瀬。今日も元気そうだな」

 

学校の校門につくと西村先生が小箱を抱えて立っていた。また手渡しするようだな

 

「「おはようございます。西村先生」」

 

「おはようございます。西村鉄人」

 

「高瀬、鉄人と呼ぶのは止めてくれ」

 

「えっオレは先生にぴったりだと思ったのですが」

 

「合っているかどうかではなく、ちゃんと敬意をもって接しろと―」

 

「大丈夫です。敬意を持って鉄人と呼んでいるので」

 

「そういう問題では…はぁもういい」

 

西村先生、お疲れ様です

 

「これがお前らの試験結果だ」

 

西村先生が僕らの名の書かれた封筒を差し出す。

 

「「「ありがとうございます」」」

 

僕らは封筒を開き中身を確認する

 

「3人とも流石だな。学年トップクラスだ。特に高瀬は学年最高得点だ」

 

 

吉井明久 Aクラス

 

藤崎明梨 Aクラス

 

高瀬一輝 Aクラス

 

 

一輝は流石だな。そうだちょっと聞いてみよう

 

「西村先生、他の人はどうなりました?」

 

「あんまり言うべきではないだろうが今回の結果には俺も少し呆れているんでな」

 

「へ?どんな結果だったんですか」

 

呆れるような結果?何だろう

 

「お前ら3人と坂本、木下弟、土屋の6人を除いて、全員が再度Fクラスだ」

 

僕達6人以外全員?あれ

 

「先生、姫路さんもFクラスなんですか?」

 

「あぁどうも無記名で出したらしい」

 

Fクラスの皆が好きって言ってたし、自分からFクラスに入れるようにしたのかな

 

「そうですか。つまり彼らは戦争中に勉強はしなかったんですね」

 

何度も補習室で勉強する時間はあったはずなんだが

 

「そうなるな。あいつらは懲りてないようだから特別に担任を俺に変えてもらった」

 

西村先生が担任とあっちゃあいつ等も自由にはできないだろうな

 

「じゃ、オレたちは新しいクラスに向かうんで」

 

「お前らもしっかりと勉学に励むんだぞ」

 

「「「はい」」」

 

 

 

 

―― Aクラス

 

しかし改めて見ても、この設備は異常だな

 

「アキ、ボケっとしてないで入るぞ」

 

「う、うん」

 

正直、観察処分者の僕がこのクラスに入るのは周りの目が気になるんだよね

 

ガラッ

 

僕の心配をよそに一輝がAクラスの扉を開けて入っていったので僕と明梨も続く

 

「あら、一輝君、明久君、明梨。やっぱり3人ともAクラスに入れたのね」

 

僕らが教室に入ると優子さんが話しかけてきた。このクラスで僕の事情を知っている人物の一人だから少し安心した

 

「まぁ今回は本気で試験を受けたからね」

 

「オレも久しぶりに本気で勉強したな」

 

「わたしも体調が万全だったからね」

 

僕らは軽く雑談をしていると

 

「お~っす、お前らはAクラスに来たようだな」

 

雄二がやってきた。ちょっとからかってやろうかな

 

「そうだね。雄二も奥さんと同じクラスになれてよかったね」

 

「あぁ、翔子と同じクラスになれてよかったよ」

 

あれ、反応が薄い

 

「明久、お前がからかってくるのは毎度のことだからな、いちいち反応しねぇよ」

 

ありゃ、面白かったのにな

 

「おはようなのじゃ」

 

「……おはよう」

 

秀吉と康太も来たみたいだ。僕らは軽く雑談しているとHRの時間が近くなったので自分の席についた。しかしこのシステムデスクはいくらするんだろう?

 

「これよりHRを始めます」

 

Aクラス担任の高橋先生は教室に入ってくるとHRを始めた

 

「まず始めに、昨日行われたFクラスの再振り分け試験によりAクラスに入った人たちの自己紹介から始めましょう。最初は元Fクラス代表の坂本君お願いします」

 

「はい。俺は元Fクラス代表の坂本雄二だ。趣味は鍛錬、特技はスポーツ全般と料理だ。あと『なんでAクラスに観察処分者がいるんだ』と思っている奴がいるかもしれないが、明久は教師の手伝いをしたくて自ら観察処分者になったんだ成績や授業態度には問題はない」

 

「坂本君の言うとおり吉井君は志願して観察処分者になりました。彼の成績や授業態度は模範的なものです」

 

雄二の言葉に高橋先生も同意してくれた。模範的と言われるのは恥ずかしいが

 

『そうだったのか』

 

『誤解してたわ』

 

『自分から志願なんて、むしろ見習うべきだな』

 

高橋先生の言葉にAクラスのみんなも納得してくれたようだ。これなら普通に過ごせるな

 

「では、話に上がった吉井君。自己紹介をお願いします」

 

「はい。え~と僕の名前は有名だと思いますけど、吉井明久です。趣味は鍛錬と料理、特技は武道を含めたスポーツ全般です」

 

僕は無難に自己紹介を終える。その後4人の自己紹介が終わると

 

ガラッ

 

Aクラスのドアが乱暴に開けられた

 

「吉井!!なんでアンタがこんなとこにいんのよ!!」

 

髪を逆立てそうな勢いの島田さんがいた

 

「なんでって昨日の振り分け試験でAクラス並みの点数をとったからだよ」

 

なんでそんな当たり前のことを聞くんだろう

 

「嘘おっしゃい。どうせカンニングでもしたんでしょ」

 

「島田さん、我々教師がそのような行為を見逃すとでも思っているんですか?」

 

普通の先生ならともかく、あの時は西村先生と高橋先生がFクラス全員を監視していたから無理だろう。それ以前に誰のカンニングをすればここに来れるのだろうか。あの時僕の周りはFクラスレベルの人間しかいなかったのに

 

「っつ、で、でも吉井がFクラス以外に入れるわけ…」

 

「島田さん、君がどう思おうと僕がAクラスなのは事実だよ」

 

すでに決定したことだ、いちゃもんをつけられても仕方ない

 

「な、ならウチたちFクラスはAクラスに試召戦争を仕掛けるわ!!」

 

「島田、そういうのは代表と相談すべきじゃないか?」

 

雄二の意見ももっともだ

 

「ウチがFクラスの代表だから問題ないわよ!!」

 

姫路さんは無得点だし、Fクラスじゃ点数の高い方だからそうなのだろうな

 

「…わかった。開戦は午後からでいい?」

 

霧島さんがそういった。まぁ下位クラスから布告されたら断れないしね

 

「それでいいわよ!!吉井覚悟しときなさい!!」

 

島田さんは捨て台詞を言うとAクラスを去っていった。ドアを開けっ放しにして

 

「ったく、島田の奴、常識がねぇのか?」

 

雄二がドアを閉めてからそんなことを呟く

 

「まぁFクラスの人に常識を求めるのは間違いだと思うよ」

 

「全くだ」

 

一輝も同じ意見のようだな。やっぱり気が合うよね

 

「まぁそれは置いといて。翔子、作戦はどうする?俺も協力するか?」

 

雄二はそう言うけど

 

「作戦なんていらないよ。僕と…一輝、手伝ってくれる?」

 

「アキの頼みなら付き合うぜ」

 

「ありがと。なら、みんなに迷惑をかけたくないし僕と一輝で終わらせるよ。みんなは自習でもしてて」

 

島田さんの目的は僕だけみたいだし、迷惑はかけたくないからね

 

「あれは島田の方が問題で、明久には非がない気がするんだが、俺も手を貸すが何かないか?」

 

「まぁ原因は僕だからね。雄二は代表の霧島さんを守っていて、奇襲なんて考えつかないだろうけど一応ね」

 

雄二と言う指揮官を失ったFクラスなら姫路さんぐらいしか気にする戦力はないけど

 

「そう言うなら俺は翔子の守りに徹するか」

 

「うん、みんな本当に迷惑をかけちゃってごめん」

 

僕はAクラスのみんなに頭を下げた

 

『吉井が気にすることじゃないだろ』

 

『そうよ、島田さんがおかしいんだから』

 

『それなのに俺達に気を使うなんて』

 

ほんとAクラスのみんなは優しいな

 

 

 

 

―― Fクラス ――

 

Other Side

 

「みんな聞きなさい!!」

 

島田はAクラスから戻ると教壇に立ち怒鳴る

 

『なんだ?今ゲームがいいところなんだが』

 

『今は自習だし寝たいんだが』

 

どうやらFクラスには勉強しようという殊勝な人間はいないようだ。当然と言えば当然だが

 

「さっきAクラスに行ったら坂本と吉井と土屋と高瀬がAクラスの女子とイチャついていたわよ!!」

 

島田はFクラスの連中を戦争に参加させるために嘘の情報を流す

 

『『『『『あいつ等は異端者か!!異端者には死の鉄槌を!!』』』』』

 

島田の発言に覆面集団が現れる

 

「ふふふ、吉井君、きちんとオハナシしてもらいますよ」

 

怪しい煙の出ている弁当箱(?)の横で姫路は黒いオーラを出している

 

Side out

 




次回は最後の試召戦争です。この後は、清涼祭の予定です。


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A対F

今回は明久と一樹が無双します。お楽しみに。

現在、活動報告にて清涼祭編の召喚獣の衣装を募集しています。ご協力お願いします。


キーンコーンカーンコーン

 

午後の授業開始のチャイムが鳴る。これからAクラスとFクラスの試召戦争が開始される

 

「じゃあ、一輝行こうか、雄二ここは頼んだよ」

 

「おう」

 

「任せとけ」

 

「明君、頑張ってね」

 

「明久君、頑張ってください」

 

明梨と日向の声援を受けて、僕達はFクラスへと向かった

 

 

 

 

『異端者の吉井と高瀬を発見!!横山先生、英語のフィールドを展開してください』

 

渡り廊下に着いたところで覆面集団と遭遇した、数は20か

 

「英語、承認する!!」

 

どうやら彼らは英語を主武器にしているようだ

 

『デーーース!!(試獣召喚)』×20

 

召喚ワードが変なのにはつっこまないぞ

 

「一輝、ここは僕がやるよ」

 

「了解、アキ手加減するなよ」

 

召喚獣に手加減なんてしないよ

 

「試獣召喚!!」

 

Aクラス 吉井 明久 VS Fクラス モブ男20人

英語     492          平均52×20

 

召喚と同時に7人が襲いかかってきたが

 

ゴスッ×7

 

僕は手前の召喚獣の鳩尾にパンチをして、次に襲いかかってくるのを顎にアッパー、横から来たやつの頭に踵落とし、正面から来た召喚獣は人中に裏拳打ち、飛びかかってくる召喚獣の肝臓に掌底、走ってくる足を引っ掛けて転んだところで肋骨にひじ打ち、最後は横蹴りを脇腹に入れる

 

モブ男7人

   戦死

 

「戦死者は補習~~」

 

『『『『『『『ぎゃあぁぁぁ~~~』』』』』』』

 

西村先生が7人を同時に連れ去った。どんな技術があれば7人も抱えられるんだろう

 

『な、七人を同時にだと?』

 

『俺らが勝てるわけないじゃねぇか』

 

『それにあの点数は何だよ』

 

さっきの戦闘で少し冷静に判断できるようになったようだけど

 

「戦闘中に気を抜くなんて余裕だねっ!!」

 

動揺して操作できていない召喚獣の首に手刀を入れる。その両脇の召喚獣に同時に手刀で頸椎を強打する。その後も鳩尾や首、肋骨、人中、眉間に拳やハイキック、掌打、突きなどを叩きこむ

 

モブ男 8人

    戦死

 

「戦死者は補習~」

 

『『『『『『『『ぎゃあぁぁぁ~~~』』』』』』』』

 

またしても、同時に8人を抱えて行った。これで後は5人か

 

『くっならば』

 

一人が我武者羅に突っ込んできた。僕は冷静に避けるとガラ空きの背中を蹴り飛ばす

 

モブ男 戦死

 

『一斉にかかれ~』

 

掛け声に応じて4人が同時に飛びかかってくるが僕は冷静にいなして急所を攻撃すると

 

モブ男 4人

    戦死

 

「戦死者は補習~」

 

『『『『『ぎゃあぁぁぁ~~~』』』』』

 

また5人を連れ去った

 

「さすがアキだな」

 

一輝が称賛の言葉をかけてくるが

 

「大したことじゃないでしょ。僕の操作技術は高いんだし」

 

点数が低くて、操作技術も拙い彼らなんか相手じゃないよ

 

「そりゃそうか。じゃあ次はオレにやらせてくれよ。手伝うって言って何もしないのは気分が悪いからな」

 

一輝って結構義理堅いよね

 

「わかったよ、次の部隊は一輝に任せるよ。僕は見学させてもらうよ」

 

「おう、アキみたいに操作はうまくないけどな」

 

「それは問題ないでしょ。一輝は点数も高いし、戦い自体には慣れているんだから」

 

「そうだな」

 

一輝が頷くと僕らはFクラスへと向かった

 

 

 

 

一輝Side

 

『異端者の吉井と高瀬を発見!!鵜藤先生、生物のフィールドを展開してください』

 

旧校舎に着いたところで覆面集団と遭遇した、数は20か

 

「生物、承認します!!」

 

今度は生物を武器にしているのか

 

「一輝、頑張ってね」

 

アキが声をかけてきた

 

「俺を誰だと思ってんだよ。試獣召喚」

 

『キルユーーー(試獣召喚)』

 

また、コイツらは召喚ワードが変になっているな。どうなってんだここのシステムは

 

Aクラス 高瀬 一輝 VS Fクラスモブ男20人

生物    472         平均58×20

 

今回はまじめに勉強をしたからな、いつもよりもできている

 

『『『『『『異端者には死を~~~!!』』』』』』

 

バカが6人飛びかかってくる。オレは冷静にライフルを構えて

 

バン バン バン バン バン バン

 

6体の召喚獣の眉間を正確に打ち抜く。落ち着けばこのくらいの操作なら出来るようだな

 

「戦死者は補習~」

 

『『『『『『ぎゃああああぁぁぁぁぁ~~~』』』』』』

 

鉄人が軽々と6人をドナドナする。流石伝説の傭兵

 

『くっ、一斉にかかれ~~』

 

バン バン バン バン

 

14人が一度に襲いかかってきたのでオレは手前の4人の急所を撃ち、次の攻撃に備えて懐からトンファーを取り出して構える

 

ビュン

 

まず棒を振ってきたやつの攻撃を避け、顎を攻撃する

 

モブ男5人

   戦死

 

「戦死者は補習~」

 

『『『『『ぎゃああああぁぁぁぁぁ~~~』』』』』

 

また5人ドナドナされる。見事な手際だな

 

『焦るな、まだ9対1だ。数で攻めろ』

 

バカだな。質が圧倒的に違うのに

 

『覚悟!!』

 

後ろから、スコップで攻撃してきたので

 

キンッ

 

オレはトンファーで受け止め

 

ガンッ

 

もう一方のトンファーで強打する

 

『隙あり!!』

 

逆方向から竹刀で攻撃してこようとするが、オレは体を捻って躱わし、竹刀を振りぬいて無防備になった顔面を殴りつける。あと7人か

 

『今だっ』

 

誰かの掛け声で3方向から攻撃が来るが、オレは1撃目を避けて、2撃目をいなしながら3撃目ももう一方の武器でいなす。大振りな攻撃でガラ空きになった顔面や胴をトンファーや蹴りで戦死させる

 

『今度こそっ』

 

今度は4方向から同時に攻撃が来る。オレは敢えて全てを同時に1本のトンファーで受け止める。やはりこの点数差なら4人ぐらい片手で防げるな。

オレはその体勢のままもう一方のトンファーを後方に引き後ろの奴の鳩尾を攻撃する。それで1体倒すと、今度は横の奴の腹に蹴りを入れる。

残り2体なら力で押し切れるので防いでいた手に力を入れて、武器を弾くと相手は無防備になったので両手のトンファーを突き出して鳩尾を強打する。すると2体は戦死した

 

「戦死者は補習~」

 

『『『『『『『『『ぎゃああああぁぁぁぁぁ~~~』』』』』』』』』

 

またドナドナされる。しかし9人を連れて行くって

 

「鉄人はどうやって9人も抱えられるんだ?」

 

「多分西村先生はそういう訓練を積んでいるんじゃない」

 

アキの言葉は合っているかもしれないな。そうじゃなければあんなこと出来るはずない

 

Side end

 

 

 

 

ガラッ

 

一輝が後続部隊を倒したら、もう戦力はないのかE教室までそのまま来れた。

 

「さてと、もう残りの戦力はないみたいだね」

 

僕らがE教室に入ると残りのFクラス生の須川君と横溝君、それと代表の島田さんがいた。姫路さんは補充試験かな、無記名なら0点だし

 

「ふん、ウチが吉井に負けるはずないわよ。長谷川先生、数学のフィールドをお願いします」

 

「数学、承認します」

 

数学は島田さんの唯一の得意科目だからしょうがないか

 

『『試獣召喚!!』』

 

「「試獣召喚」」

 

僕らは召喚ワードを唱えるとお馴染みの召喚獣が現れる。点数は

 

数学

Aクラス  VS Fクラス 

吉井 明久 374   島田 美波 175

          須川 亮  72

          横溝 浩二 78

 

数学が得意な人を近衛にしたのかなFクラスにしては高得点だ

 

『み、美波ちゃん。遅れてすみません、長谷川先生―』

 

『悪いな、姫路。アキの邪魔はさせねぇ。遠藤先生、高瀬が姫路瑞希に英語勝負を挑みます』

 

『承認します』

 

『試獣召喚』

 

『さ、試獣召喚』

 

どうやら姫路さんは一輝が相手をしてくれるようだな

 

「なっ吉井、なんでアンタがそんな点数をとれるのよ!!カンニングをしたに決まっているじゃない」

 

「「貴様!!Aクラスでハーレムとはいい度胸だな!!」」

 

どうやらFクラスの生徒は島田さんの虚言に騙されているようだな。事情なんて関係ないけど

 

「異端者には死の鉄槌を」

 

「■☆♪▼◎ΦΘ●□△◆」

 

嫉妬化した須川君と狂人化した横溝君が飛びかかってくるが

 

「遅い」

 

僕は飛びかかってきた須川君の武器である棒を奪い取ると、横溝君の顎を強打し、須川君の頭を叩くと2体の召喚獣は戦死して、同時に僕の持っていた棒も霧散する

 

須川・横溝 戦死

 

「戦死者は補習~」

 

「「ぎゃああああぁぁぁぁぁ~~~」」

 

「さてと、後は君だけだよ。島田さん」

 

姫路さんを戦死させた一輝もいつの間にか横にいた

 

「数学でウチが吉井なんかに負けるはずないじゃない」

 

島田さんはまだ事実を受け入れないのか、サーベルで僕に突進してくるが

 

「ほいっと」

 

僕は足をかけて、転ばせるとサーベルは僕の足元に転がってきた。僕はそれを拾い上げると、まだ倒れている召喚獣に向かって投げて戦死させた

 

 

 

 

「終わったようだな、二人ともお疲れさん」

 

島田さんを倒して少しすると雄二がE教室に来た

 

「あれ、雄二一人?」

 

代表の霧島さんはいないんだろうか

 

「翔子に俺が戦後対談してくると言ってきたからな」

 

なるほど、こういうのは雄二の方が適任だろうな

 

「さてと、戦後対談に入るが」

 

そこで雄二は話を区切ってFクラスの生徒を見渡す。島田さんが戦死したので補習室から彼らは出てきたのだ

 

「Fクラス全員に提案がある」

 

『提案?』

 

『いい話か?』

 

雄二の言葉にFクラスから動揺の声が上がる

 

「設備のランクダウンをしない代わりに『学校行事以外でAクラスに関わらない』ことをFクラスが守ってくれというものだ」

 

『それで設備が維持できるのか?』

 

『なら呑むべきじゃないか?』

 

「そんな勝手な話呑むわけないでしょ!!」

 

「そうです!!そんな条件認めません!!」

 

どうやら女子2人だけは反対のようだ。何が不満なんだろうか

 

「ほぅ、準備期間を無くして、Aクラス以外になら宣戦布告は自由にしてもいいのにか?どうだ?Fクラスの男子諸君。この話に乗る者は手を上げろ」

 

雄二の言葉にFクラス男子全員が挙手する

 

「さて、これがFクラスの意見だが?これを無視して3ヶ月間過ごすのか?」

 

「わ、わかったわよ。その条件でいいわよ!!」

 

これでAクラスは平和になるな

 

「さてと我がFクラスはこれから平日に3時間の補習、土日に4時間の補習をするぞ!!」

 

『『『『『『『『『『『『『『『『な、なんだって~』』』』』』』』』』』』』』』』

 

突然現れて西村先生は宣言する。まぁ試召戦争でだいぶ授業が遅れているから仕方ないことだろうな

 

 

 

 

―― 一輝VS姫路 ――

 

一輝と姫路が召喚したあたりまで遡ります

 

一輝Side

 

オレが召喚すると、敵前逃亡にならないように姫路も召喚する

 

Aクラス 高瀬 一輝 VS Fクラス 姫路 瑞希

英語    853           429

 

へぇ400点越えか

 

「な、何ですか。その点数は?!」

 

「オレはアメリカに留学していたからな」

 

といっても今回はわりと出来がいい方だが

 

「それでも、私は負けません!!」

 

姫路の腕輪が光る。おいおい隙もないのに大技とかバカだろ

 

キュポ

 

熱線が来ると同時にオレはその影を利用して姿を隠しながらジャンプし

 

舞空【首狩】

 

姫路の首を掻っ切る。優子との勝負の時は距離感をミスったが今回は寸分違わず狙い通りの場所に着地する

 

姫路 瑞希

  戦死

 

「えっ、なんで高瀬君の召喚獣が戦死しないで私のが」

 

「戦死者は補習~」

 

鉄人がまだ状況の理解できていない姫路を連れ去る。あ、姫路は体が弱いからか少し扱いが丁寧だな

 

Side out

 




やっと試召戦争編が終わりました。
次回からは清涼祭編に突入します。お楽しみに。


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清涼祭編
Aクラスの出し物


今回から清涼祭編です。
活動報告の方でも募集していますが、召喚大会での召喚獣の装備を募集しています。
装備についてはRPG風をイメージしていますが、その職業らしいものならばジャンルは問いません。例を挙げるならば、アサシ○クリードの衣装で暗殺者など。
現在、召喚大会の所で詰まっていてなかなか筆が進まないので、何か案がありましたら活動報告か感想の方にコメントお願いします。
現在のところ、登場予定は明久と雄二、明梨と日向、翔子と優子、屑と性悪女(根本 小山)、変態コンビ(常夏)、毒兎と無胸、あとBクラスのモブ娘ぐらいです。


Other Side

 

葉桜になった桜並木を二人の男女が歩いている。文月学園2年Aクラス代表の霧島翔子とその夫(誰が夫だ!!)の坂本雄二である

 

「…雄二、『如月ハイランド』って知ってる?」

 

「あぁ、たしか今建設中の巨大テーマパークだろ?たしか月末にプレオープンだっけか?」

 

「…そう。雄二と一緒に行きたい」

 

「とはいえ、プレオープンチケットは入手困難だし、オープンしてからだとかなり込み合うだろう?少し落ち着いてからなら行ってもいいが」

 

「…じゃあプレオープンチケットが手に入ったら一緒に行ってくれる?」

 

「一緒に行かないって言った覚えはないが…そうだな。入手困難らしいが手に入ったらな。プレオープンなら混まないだろうし、早め行きたいのは俺も一緒だからな。俺も手に入るように努力するよ」

 

「…ありがとう、雄二」

 

「彼氏として当然だろう」

 

雄二は恥ずかしいのか顔を背ける

 

「…じゃあ手に入ったら」

 

「一緒に行く。約束だ、俺はお前との約束は破ったことないだろう?」

 

「…うん」

 

Side out

 

 

 

 

桜の花びらが散り、新緑の葉桜が通学路に並ぶ時期になった。

僕らの通う文月学園では新学期最初の行事である『清涼祭』という名の学園祭の準備が始まりつつある。

そんな中、僕らAクラスが何をするか相談をしていると

 

キンッ

 

グラウンドの方から金属音が聞こえてきた。この時期は気温がちょうどいいのでAクラスでも窓を開けて、エアコンを使わないで過ごしている。僕らが音の出所を見てみると

 

『勝負だ!!近藤、お前の球なんか場外に飛ばしてやる』

 

『行くぞ!!須川!!お前なんかに打てるものか!!』

 

Fクラスのバカどもが野球をしていた。たぶん何をするかも決めてないだろうな

 

「あはは、やっぱりFクラスの人って面白いネ」

 

「……愛子、面白いと思っているのはお前くらいだ」

 

「そうね、愛子、アレはバカって言うのよ」

 

「紫織は厳しいのぅ」

 

Aクラスに入ってから約2週間、康太と工藤さん、秀吉と神谷さんはだいぶ仲良くなったな

 

「お、鉄人が出てきたぞ!!すげぇ全員を担いでる。流石だなぁ」

 

「一輝君、変なとこに感心してるわね」

 

一輝と優子さんもだいぶ仲良くなったよな。もともと悪かったわけではないけど、なんていうか恋人同士みたいな感じだな。なんでこの3組は付き合ってないんだろうか

 

「とりあえず、何をするか意見を出してくれ」

 

議事進行は一輝が補佐として優子さんがしている。本来なら代表の霧島さんがするべきだが、彼女はあまりこういうのは向いていない。雄二も他に何かすることがあるのか、あまり清涼祭に乗り気ではないようだ

 

「一輝君、アタシも言っていいかしら?」

 

「あぁ意見が多い分には構わないから思いついたら言ってくれ」

 

「じゃあ、メイド喫茶とかどう?」

 

「メイド喫茶か、そうなると男子が余るからメイドと執事ってのでどうだ?」

 

「そうね、そのほうがいいわね」

 

そう言うと優子さんはパソコンを操作してプラズマディスプレイに『メイド&執事喫茶』と表示される

 

「他に意見のある奴はいるか?」

 

「衣装とか用意して康太君に写真をとってもらうってのはどうカナ?」

 

工藤さんが意見を述べる

 

「なるほど、写真館か、康太の写真の腕前ならそれもいいかもな。優子、頼む」

 

今度はプラズマディスプレイに『写真館(写真撮影)』と表示される

 

 

 

 

その後もいくつか案が出され現在プラズマディスプレイに表示されているのは

 

『メイド&執事喫茶』

『写真館(写真撮影)』

『演劇』

『漫画喫茶』

『お化け屋敷』

『映画上映』

『遊技場(ビリヤードやダーツ)』

 

「案はこのぐらいにして、少し出た案について話し合おう」

 

一輝の言葉にみんなが自分の意見を述べる

 

『写真館じゃ土屋が大変じゃないか?』

 

『どうせならみんなで参加できる方がいいんじゃないの?』

 

『遊技場だとあんまり人が来ないんじゃ?』

 

『映画上映や漫画喫茶だとやることが少ないような』

 

 

 

 

パンパン

 

ある程度話し合うと一輝が手を鳴らす

 

「そろそろ皆の意見も伝わっただろう。今からこの中のどれにするか挙手してくれ。話し合っていても決まるまで時間がかかるだろうから多数決で決める。まずはメイド&執事喫茶」

 

一輝が手を上げた人の数を数える。その後もそれぞれの挙手数を数えディスプレイに表示すると

 

『メイド&執事喫茶』         24

『写真館(写真撮影)』          4

『演劇』               11

『漫画喫茶』              4

『お化け屋敷』             8

『映画上映』              3

『遊技場(ビリヤードやダーツ)』     2

 

「さて、多数決の結果、メイド&執事喫茶になった。不満のある奴もいるかもしれないが、それを聞いていると話がまとまらないから我慢してくれ。じゃあキッチン班とホール班に分けるが、キッチン班は料理の腕が必要だし、ホール班はある程度客を惹きつける力が必要だな」

 

一輝の言うとおりだね。料理がうまくないとキッチンで役に立たないし、お客さんの相手をするホールの人は魅力が必要だからね

 

「そうだな。ある程度簡単なメニューに絞ったらどうだ?メニューを考えてからでも役割分担は遅くないだろ」

 

「そうだな。じゃあメニューを決めるか。皆、案を出してくれ」

 

雄二の言葉に一輝も同意しメニューの意見を聞き始める

 

 

 

 

『シフォンケーキ(プレーン・ココア)』

『チョコレートケーキ』

『チーズケーキ』

『サンドウィッチ』

『ピラフ』

『オムライス』

『パスタ(ナポリタン・ミートソース・カルボナーラ)』

 

こうして見ると簡単なメニューばかりだな

 

「よし、このぐらいなら普通に料理ができる奴ならレシピがあれば作れるだろう」

 

一輝も同じ考えのようだ

 

「チョコレートケーキとチーズケーキなら前日に仕込めるしね」

 

チョコやチーズケーキは冷やすものだから、前日に作っておいても大丈夫だ

 

「ならケーキ類は前日に料理の得意なやつが作ればいいか。そうだな…」

 

一輝は考え込む

 

「家庭科で400点超えてる奴ならいいんじゃないか?」

 

雄二が助け船を出す

 

「よし、じゃあ家庭科が400越えの人は手を上げてくれ」

 

僕も400点越えなので手を上げる。あとは明梨と日向、雄二、康太、神谷さん、霧島さんと一輝か。

 

「ふむ、8人なら問題ないだろうな。じゃあ悪いが今手を上げた7人は前日に仕込みをするのを手伝ってくれ」

 

 

 

 

その後、役割分担をしたら僕、雄二、秀吉、一輝、明梨、日向、優子さん、霧島さん、神谷さんはホール班、康太はキッチン班になった。ちなみに僕と雄二、一輝は厄介な客の対応も担うらしい。高校の学際程度にそんな客が来るんだろうか?

 



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Aクラスの準備と学園長との約束

活動報告の方でも募集していますが、召喚大会での召喚獣の装備を募集しています。
装備についてはRPG風をイメージしていますが、その職業らしいものならばジャンルは問いません。例を挙げるならば、アサシ○クリードの衣装で暗殺者など。
現在、召喚大会の所で詰まっていてなかなか筆が進まないので、何か案がありましたら活動報告か感想の方にコメントお願いします。
現在のところ、登場予定は明久と雄二、明梨と日向、翔子と優子、屑と性悪女(根本 小山)、変態コンビ(常夏)、毒兎と無胸、あとBクラスのモブ娘ぐらいです。


Aクラスの出し物も決まり、現在Aクラスの教室は喫茶店用に模様替えをしているのだが

 

キュイイイイン ガガガガガ キンキンキンキン

 

雄「高校の学祭に業者を呼ぶか?普通」

 

雄二の言うとおり現在、工事業者が来ており厨房の設営などを行っている

 

一「全くだ、金の無駄遣いだな」

 

「Aクラスだからってここまでしなくてもいいのにね」

 

一輝と僕も呆れながら同意していると

 

ピンポンパンポーン

 

『Aクラス坂本雄二君、高瀬一輝君、吉井明久君、至急学園長室まで来てください』

 

「呼び出し?」

 

なんだろう?学園長室ってことは重要な話だろうか?

 

一「アキ、雄二、面倒だがさっさと行こうぜ」

 

「ちょっと待って。康太、盗聴器を探す道具って持ってる?」

 

康「……備えあれば憂いなし(スッ)」

 

康太は僕に機械を渡してきた

 

康「……操作は―――」

 

「わかった。ありがとう康太」

 

康「……気にするな」

 

助かったけど、康太はなんでこんなものを学校に持ってきてたんだろうか?

 

「雄二、一輝、お待たせ。さ、行こうか」

 

僕は康太に借りた機械を持って二人と学園長室に向かった

 

 

 

 

―― 学園長室 ――

 

コンコンコンコン

 

ノックをしてから挨拶をしようとして

 

「失礼しま・・・おかしいな、なんで学園長室に山姥がいるんだ?」

 

罵倒した。なんか既視感。僕は康太に借りた道具を使い周囲を探る

 

雄「何を言っているんだ、明久。確かに見てくれは山姥のそれだが、よく見れば辛うじて人間だぞ」

 

一「そうだぞアキ。いくらバケモノじみてても年長者には敬意をもって接しないと」

 

雄二と一輝は話を合わせてくれている。

 

ピ   ピ   ピ  ピ  ピ ピ ピ ピピピピ

 

このあたりだな

 

学「アンタらにはアタシの力ってもんを見せつける必要がある用だね」

 

学園長が雄二達と罵倒し合っている間に僕は本棚から本を取り出して

 

ビリッ

 

背表紙をはがした。その中にあったのは

 

学「また、盗聴器かい」

 

盗聴器だ。僕はそれを握り潰すと学園長に向き直り

 

「先程は失礼しました。前回もあったので一応で一芝居打ったんですが、やはり仕掛けられてましたね」

 

雄「失礼しました。こんな短期間で仕掛けられるとなると、やはり竹原でしょうね」

 

一「何か弱みでも握ろうとしていたんでしょうね。学園長何か問題のある発言をここでしましたか?」

 

雄二と一輝がそれぞれの意見を述べる

 

学「そうさね……しまった。ちょっと不味いかもしれないさね」

 

学園長は何か思い当ったみたいだ

 

「何か心当たりでもあるんですか?」

 

学「清涼祭の召喚獣大会の賞品を知ってるかい?」

 

雄「確か、賞状とトロフィーと召喚獣に関する腕輪だったか?」

 

学園長の問いに雄二が答える

 

学「その腕輪に不具合があってね、アンタらに取ってもらいたかったんだよ。この前の借りとしてね」

 

雄「それで俺たちを呼び出したわけか」

 

一「あれ?ならなんでオレまで呼ばれたんだ?」

 

一輝はあの時いなかったから言うことを聞く必要もないはずだが

 

学「アンタは召喚獣のシステムをハッキングしたみたいだからね。黙っていてやる代わりにアタシの言うことを聞きな」

 

とても教育者とは思えない言葉だ

 

一「なるほどね。わかったよ。ところで腕輪の不具合ってのはなんだ?」

 

そういえば聞いてないな

 

学「使用者のテストの点数が高すぎると暴走してしまうんだよ。腕輪は二つあるんだが一つに関してはBクラス並みで暴走してしまい、もう一つはDクラス程度でね」

 

それは大変だな

 

雄「なるほど。本来ならデモンストレーションでもして見せつけるつもりが、低得点でしかも優勝可能性のある生徒なんていないから俺らに頼んだってわけか」

 

学「そうさね。アンタらなら優勝するだろうし、アタシの言うことを聞くからね。教頭に付くかもしれない生徒とかには頼めないしね」

 

なるほど技術を披露する機会を失うよりは、とりあえず現物を披露して誤魔化そうと

 

一「それでも披露できないとなると信用は失うな。学園長、その腕輪を見せてくれますか?」

 

一輝はプログラミングとか学んできたし直してみるのかな?

 

学「何をするつもりか知らないが、腕輪はこれだよ」

 

学園長が机から腕輪を出し一輝に差し出す

 

一「ちょっと待ってくれ。なるほど…これがバグの部分か……これを……」カタカタ

 

そう言うと一輝は学園長室にあるパソコンや端末を使い始める

 

一「無理か。学園長、清涼祭までだと直すのは無理ですが暴走の条件を変えることなら出来そうですね」

 

学「どんな条件にだい」

 

一「総合点数が『4000点未満だと暴走する』ぐらいになら」

 

雄「俺と明久なら問題ないな」

 

学「そうかい。なら高瀬、アンタは腕輪の設定を変えればハッキングの件は水に流すよ」

 

一「へ~い」

 

一輝は腕輪をいじりながら気の抜けた返事をする

 

学「吉井と坂本は召喚大会で優勝しな。言っとくが優勝できなければ、別の事をさせるからね」

 

僕・雄「「はい」」

 

さてと、これで僕と雄二は召喚大会で優勝しなくてはいけなくなってしまった。でも、召喚大会はタッグの戦闘になるから試召戦争とはまた違った愉しさがありそうだな

 




現在執筆が滞っているため次話はいつ投稿するか分かりません。
なるべく早く投稿するつもりですが実家に帰るため、自由な時間がとれるか不明です。
楽しみにしている方には申し訳ありませんが、たぶんお待ちいただくことになると思います。文才がない自分ですみません。


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妖怪との鼎談と清涼祭前日

本当にこれ以降書けてません。一旦こっちは筆を休めて、番外編・過去編の方を書くつもりです。
活動報告の方でも募集していますが、召喚大会での召喚獣の装備を募集しています。
装備についてはRPG風をイメージしていますが、その職業らしいものならばジャンルは問いません。例を挙げるならば、アサシ○クリードの衣装で暗殺者など。
現在、召喚大会の所で詰まっていてなかなか筆が進まないので、何か案がありましたら活動報告か感想の方にコメントお願いします。
現在のところ、登場予定は明久と雄二、明梨と日向、翔子と優子、屑と性悪女(根本 小山)、変態コンビ(常夏)、毒兎と無胸、あとBクラスのモブ娘ぐらいです。


★妖怪との鼎談と清涼祭前日

 

召喚大会規則

 

・召喚大会は二人一組で行う。

・教科に関しては試合ごとに異なる。ただし、本大会は通常科目11種と特殊科目6種の計17種から試合の直前にルーレットで決める。

・召喚獣の装備および腕輪に関しては大会独自の設定が適用されるため前日に召喚練習の舞台を設ける。この練習に参加義務はない。

・試合ではどちらか一方の召喚獣が2体とも戦死した時に敗北とし、一体でも生き残っている方を勝者とする。ただし、双方ともに2体戦死した時は1体目が先に戦死した方を敗者とする。1体目も同時の場合、引き分けとし両者ともトーナメント敗退とする。

・他の規則に関しては基本的に試召戦争に準ずる。

・優勝者には賞状とトロフィー、白銀の腕輪、副賞として如月ハイランド プレオープン プレミアムペアチケット2組を贈呈する。

 

 

 

 

「結構色んなルールがあるんだね」

 

一「勝敗のあたりは明確にしとかないと大変だからな」

 

確かにそのあたりはいちゃもんつけられそうだな

 

雄「審判によって判定に差が出たりしても困るしな」

 

「こうなると優勝するのは大変そうだね」

 

明「え?明君達も大会に出るの?」

 

明梨が僕達の会話が気になったのか話しかけてきた

 

「うん、ちょっとね。も、ってことは明梨も出るの?」

 

明「うん。ヒナちゃんと出るんだ」

 

明梨と日向のコンビか随分と手ごわいな

 

日「明久君達は優勝狙いなんですか?」

 

日向も気になるのだろうか

 

「まぁ出るからには勝ちたいからね」

 

さすがに明梨と日向が相手でも、教室で話すのは危険だから曖昧な答えをしてしまう

 

明「そうなんだ。お互いに頑張ろうね明君」

 

日「敵同士ですけど、お互いに頑張りましょうね明久君」

 

「そうだね。悪いけど僕も二人と戦う時は手加減しないで本気で行かせてもらうよ」

 

ピンポンパンポーン

 

『二年Aクラス、坂本雄二君、吉井明久君、至急学園長室まで来てください』

 

「また、呼び出しか。今度は何だろう?」

 

雄「まぁ行けば分かるだろう」

 

そうだね。考えても仕方ないか

 

「じゃ、行ってくるよ」

 

 

 

 

今僕らは学園長室の前にいるのだが

 

「はぁ、雄二多分またあるよ。どうする?」

 

雄「3回も俺らが来たときに不具合が起こるってのも不自然だし、バカを装うか」

 

「そうだね。じゃあ」

 

僕は持っていた手帳のメモ部分に『盗聴器があるので芝居につきあってください』と書き破り取る

 

バンッ

 

雄二が乱暴に扉をあける

 

雄「邪魔するぞ。学園・・・妖怪ババァ長」

 

雄二は入ると学園長を罵倒した。まぁバカならこんな感じかな

 

「雄二、いくら妖怪山姥長とはいっても目上の人に失礼だよ」

 

僕も軽く罵倒しながら、学園長にさっきのメモ用紙を手渡す

 

学「本当に失礼なガキどもだね。普通はノックをしてから返事を待つもんだよ」

 

雄「そっちが呼んだんだ。来てやっただけありがたいと思え。で、何のようだ?」

 

雄二が横柄な態度で聞く。さすがは元不良

 

学「まったく。学力はあっても流石は最低クラスに入っていただけはあるさね」

 

「学園長!!何ですかその『こいつらに頼んでもいいのか』って顔は!!」

 

雄「おっ、さすがに明久でも気づいたか」

 

学「まぁ仕方ないさね。アンタらは召喚大会の賞品について知っているかい?」

 

まぁ出るから知っているんだが

 

雄「確か賞状とトロフィー、白銀の腕輪と副賞のプレオープンチケットだったか?」

 

学「実はそのチケットに問題があってね」

 

チケット?何かあったんだろうか?

 

「チケットがどうかしたんですか?」

 

学「話は最後まで聞くもんさね。『慌てるナントカは貰いが少ない』って言葉を聞いたことがないのかい?」

 

「そのぐらい知ってますよ!!『慌てる個人は貰いが少ない』でしょ?」

 

本当は乞食だがバカらしく間違っておこう

 

雄「知っていたのは驚きだが間違っているぞ、明久。それで問題とはなんだ?さっさと話せ」

 

学「全く礼儀がなってないね。実は如月グループがそのチケットについてよからぬ噂を聞いてね、回収してほしいんだよ」

 

「回収?なら出さなければいいじゃないですか」

 

学「企業同士が結んだ契約はそう簡単に反故にはできないんだよ」

 

雄「ったく、契約する前に気づけよ。最高責任者」

 

学「煩いガキだね。こっちは白銀の腕輪の製作で手一杯だったんだよ」

 

「だったら学園長なんてやめればいいのに」

 

学「アタシの金で建てたんだからそんなことはしないさね」

 

教育者にあるまじき発言だな

 

学「話を戻すよ。その噂ってのが如月グループが如月ハイランドに1つのジンクスを作ろうとしているのさ。『ここを訪れたカップルは幸せになる』ってジンクスをね」

 

「それのどこが悪い噂なんですか?」

 

何となく話は読めるけど一応聞いておこう

 

学「そのジンクスを作るためにプレミアムチケットで来たカップルを結婚までコーディネートするつもりらしいんだよ。企業として多少強引な手を使ってもね」

 

これは透さんが聞いたら黙っていないな子供をアピール戦略の道具に使うなんて

 

雄「なるほどな。だからうちの学校にプレミアムチケットを賞品に付けたのか。うちはなぜか美人揃いなうえ、試験校としての話題性も十分。さらに学生から結婚までとなるとジンクスとしては申し分ない。如月グループが目をつけるのも当然か」

 

学「さすがは神童と呼ばれていただけのことはあるね。頭の回転はなかなかじゃないか」

 

「つまりは学園長はそのチケットを僕らに回収してもらいたいと?」

 

学「そうさね。本人の意思を無視して、うちの可愛い生徒の将来を勝手に決めるってのが気に食わないのさね」

 

雄「なんで俺らにそんなこと頼むんだ?俺らにはアンタの指示に従う義理はないはずなんだが」

 

学「設備の改修をしてやったんだ、改修工事だってかなり金がかかるのさ。だからアンタらは少しぐらいアタシに対して恩返ししてくれてもいいと思うんだがね」

 

雄「わかった。引き受けてやるよ、これで貸し借りはなしだぞババァ」

 

「僕らが優勝して見せますよ、山姥長」

 

そう言って僕らはドアを開け放って出ていった。これぐらいすれば教頭は僕らを疑わないだろう

 

学「最後まで失礼なやつらさね!!」

 

学園長の怒鳴り声なんて聞いてないぞ。うん

 

 

 

 

雄「しかし結婚までコーディネートか。どうすっかな翔子とは行くって約束しているし」

 

教室への帰り道に雄二がそんなことを呟き出した

 

「結婚まではいかないと思うよ。透さんは子供を道具のように使う企業は嫌いだから」

 

雄「透さんってのは藤崎の親父だったか?企業に顔が聞くって言う」

 

「うん。あの噂を聞いたら、たぶん透さんはその計画を潰すからね」

 

雄「随分と物騒な人だな。助かるが」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

あれから順調に準備を進めて今日はもう清涼祭の前日だ

 

一「さて、いよいよ明日から清涼祭だ。準備はもう済んだからケーキ作り担当の奴以外は帰ってもいいぞ。あと、召喚大会に出るならばケーキ作りは後回しでも構わないからな」

 

一輝の言葉で多くのAクラスの生徒はバラバラと帰り始める。今は午後2時、わりと早く準備が済んだのは業者のお陰だろうな

 

一「ん?アキ達は練習をしなくてもいいのか?」

 

今は召喚大会用の召喚練習が体育館で行われている。でも僕らは教室でケーキ作りの準備をしている

 

「まぁ僕は操作自体には慣れているからね」

 

雄「1,2戦やれば慣れるだろう」

 

翔「雄二のそばにいる」

 

やっぱり霧島さんは雄二一筋だな。少し羨ましいよ

 

明「わたしはどんな召喚獣か本番まで楽しみにしてたいからね」

 

日「みなさんが頑張っているのに私だけ抜けるのは気がひけますので」

 

召喚獣の装備がイベント用に一新されるからな、明梨はどんな装備になるんだろうか。日向は気を使わないでもいいのに

 

一「ところで、優子と秀吉はなんで残っているんだ?ケーキ作りは結構時間かかるから先に帰った方がいいと思うんだが」

 

優「アタシは料理は得意じゃないけど、手伝いくらいなら出来ると思ったからよ」

 

秀「わしも及ばずながら手伝いをしたくてのぅ」

 

一「手伝ってくれるのか。助かるよ」

 

ケーキ作りって結構大変だからね

 

紫「あら?秀吉君が手伝ってくれるの?ならお礼にワサビ入りのケーキでも作ってあげようかしら」

 

秀「紫織よ。後生じゃから普通のケーキを」

 

紫「ふふっ冗談よ。ちゃんと美味しいケーキを作ってあげるわ」

 

秀「あ、ありがとうなのじゃ」

 

やっぱり神谷さんと秀吉ってカップルみたいだよね

 

一「それじゃ、さっそく取りかかるとするか」

 

一輝の一言で僕らはケーキ作りに取り掛かった。どのぐらいの客入りかが予想できなかったから、とりあえずチーズケーキとチョコレートケーキを100個ずつ作って帰った。明日と明後日の清涼祭は楽しみだな。

 




今話以降は暫く休載予定です。再開についてはアイディアが思い浮かぶか寄せられたら再開する予定です。
今後は過去編・特別編にて明久達の過去(出会い)を書いて行こうかと思っています。


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清涼祭開催と召喚大会1回戦

召喚大会の装備についてある程度そろってきたので、投稿を再開します。
やっと清涼祭当日になりました。
召喚大会の装備については頑張って考えますが、執筆時までに思い浮かばない場合はまた一時的に投稿停止するかもしれませんが、ご容赦ください。


清涼祭当日

 

僕は朝早めに登校してくると昨日ケーキを焼いている間に仕込んでおいた、オニオンスープとミネストローネ、じゃが芋のポタージュを仕上げていた。

 

「よしっこんなもんかな。明梨、そっちは大丈夫?」

 

僕がスープの準備の為に早めに家を出ようとしたら明梨も手伝うと言って一緒に登校してきたんだよ。気を使わずにいつも通りの時間に来ればいいのに

 

明「こっちもオッケーだよ」

 

 

 

 

雄「さて、今日から2日間は清涼祭だ。学校行事とはいえ祭りだ!!その間は勉強のことなんか忘れて楽しもうぜ!!」

 

『『『『『おぉーーーっ!!』』』』』

 

いくらAクラスとはいえ高校生だ。雄二の言葉にAクラスのみんなも賛同する

 

一「召喚大会のことを考えてシフトは組んであるが何か都合とかがある奴は遠慮せずに言ってくれ、なるべく調整するから」

 

雄「じゃあ皆、自分の仕事は忘れずに祭りを楽しんでくれっ!!」

 

『『『『『おぉーーっ!!!』』』』』

 

 

 

 

「お帰りなさいませ。お嬢様」

 

僕は来店した女性客に恭しく頭を下げる。今僕は燕尾服を着て髪をオールバックにしている、正直似合ってないと思うんだが。さっきからやけに視線を感じるんだが、そんなに似合ってないかな?ちなみに店名は『執事&メイド喫茶 Welcome home』となっている

 

「では、こちらにお掛け下さい」

 

僕はテーブルに案内して椅子を引く

 

『あ、はい(なんかこの人カッコイイな)』

 

さっきから顔を俯いているけど、僕なんかが案内しているから嫌なのかな?悪いことしちゃったな

 

「何か御用がありましたらこちらのベルをお鳴らしください」

 

僕は再度頭を下げてからお客様の前から立ち去る。やっぱり接客って疲れるな、常に笑顔を貼り付けているような感じだ。しかし

 

一『それでは、わたくしは失礼させていただきますが、お嬢様はごゆっくりお寛ぎ下さい』

 

雄『こちらが『ふわふわシフォンケーキのプレーン』と『アイスティー』になります』

 

あの雄二と一輝が普通に執事をやっているのには違和感があるな

 

明『お帰りなさいませ。ご主人様』

 

日『お席はこちらになります』

 

明梨と日向のメイド姿を見れたのはすごい眼福だ。あやうく冥土を見そうになってしまったが

 

雄「明久、幸せそうなところ申し訳ないが、試合がもうすぐだから行くぞ」

 

「うぇっ、ぼ、僕は二人のメイド姿に見とれてなんかいないよ」

 

雄二に突然声をかけられ僕は驚きながらも反論した

 

雄「俺は『幸せそう』としか言ってないんだが」

 

雄二は呆れているようなニヤニヤしているような表情で告げる

 

「そ、そんなことより、もうすぐ試合なんでしょ?早く行こうよ」

 

僕は雄二との話を切り上げて召喚大会の会場へと向かった

 

 

 

 

西「では、これより勝負科目を決める。3回戦までは一般公開は無いから気軽に戦え」

 

西村先生はそう言いながらルーレットを回す。ハッキングなどの裏工作を無くすためにルーレットはアナログな仕様になっている。また、直前まで科目が分からないため召喚大会の審判は高橋先生と西村先生の二名のみになっている

 

カタタタタタタ タ タ  タ  タ   タ

 

ルーレットが止まり科目が決まる

 

西「科目は生物。承認する」

 

先生がそう告げると生物のフィールドが広がる

 

菊「頑張ろうね、律子」

 

岩「うん」

 

相手は仲が良さそうな女子のコンビだ。どこかで見たことがあったと思ったらBクラス戦で姫路さんに旬殺されていた二人だな

 

岩・菊「「試獣召喚!!」」

 

二人の呼び声に応えて二人のデフォルメした召喚獣が現れる

 

雄「ん?いつもと頭身が違くないか?」

 

雄二の言うとおりだ。普段は2頭身ぐらいだが、今回の召喚獣は5頭身ぐらいある

 

「たぶん、これが大会独自の設定ってやつなんじゃないの?」

 

良く見ると召喚獣の装備もいつもよりもしっかりとしている。菊入さんの召喚獣は紺色のフード付きのローブを羽織っていて本を持っている、岩下さんは軽装の騎士鎧に片手剣だ。魔道士とナイトってところか?今回の設定はRPGみたいだな(ファイアーエ○ブレムの魔道士とラグナロクオ○ラインのナイト)

 

西「吉井と坂本も早く召喚しろ。いくら一般観覧がないとは言っても大会の進行を妨げると失格にするぞ」

 

「すいません、西村先生。試獣召喚!!」

 

雄「すまん、西村戦士(誤字ではないです by作者)。試獣召喚!!」

 

西「坂本…はぁ、もういい」

 

西村先生お疲れ様です。僕らの呼びかけに応えて現れる召喚獣、見た目はと言うと、僕は紫のマントに山吹色のアンダーシャツとアンダーパンツ、青色の裾の長いシャツ、それと革製のブーツとグローブ、ベルト、武器は長剣だ。

雄二は胸のあたりまで白でそこから下は黒いフード付きのローブ、ローブの下には何も着ていなくて胸をはだけている、下はジーンズを履いていて、武器は右手に数珠、左手にオープンフィンガーグローブを付けている。勇者とモンクってところかな?(ドラク○3の勇者の服とラグナ○クオンラインのモンク)

 

西「よし、では試合開始」

 

岩「行くわよ!!コスプレコンビ!!」

 

菊「律子、違うよ。執事コンビだよ」

 

僕らの服装は喫茶店での燕尾服のままだ。着替えを何度もする手間を考えてそのまま来たんだがそんな風に思われるとは、ちょっとショックだ。まぁ後で喫茶店の宣伝ついでに説明すればいいか

 

生物

Aクラス 坂本雄二 289点 VS Bクラス 菊入真由美 179点

Aクラス 吉井明久 267点    Bクラス 岩下律子  163点

 

少し遅れて点数が表示される

 

菊「行けっ」

 

菊入さんの持っている本が光ると僕の方に火球が飛んできた。大きさはサッカーボール程度だが、スピードがあるな。僕は軽く側転して避ける

 

岩「隙ありっ!!」

 

側転で少し体勢が崩れているところに岩下さんが切りかかってくる。いい連携だ。試召戦争では出番があんまりなかったけれども、昨日の練習時間に操作に慣れたのかな

 

雄「させるかっ」

 

キンッ

 

雄二が間に入り右手で剣劇を防ぐ。攻撃を防がれた岩下さんはすぐに距離を開けて菊入さんと合流する

 

「ありがと雄二、助かったよ」

 

雄「お前がアレでやられるとは思わないが、作戦はさっき言った通りでいいな?」

 

「もちろん、じゃあ僕は一人を放すよ。雄二は残った方をお願い」

 

雄「了解だ。しくじるなよ」

 

僕と雄二は軽く言葉を交わすと、僕は相手に向かって疾走させ、相手に近づいたところで

 

「秘発砂塵(ひはつさじん)」

 

僕は剣を地面に叩きつけて大きな砂塵を巻き起こす

 

菊「な、なに?見えないんだけど」

 

岩「落ち着いて、真由美。見えないのは相手も同じなんだから」

 

確かに見えないけど、僕の召喚獣はフィードバックの分少し感覚が伝わってくるんだよね。僕は砂塵の中を歩いていると何かにぶつかった。僕はそれを掴むと

 

「それっ」

 

投げ飛ばして、僕も投げた方向に走る

 

菊「えっ、私の召喚獣?!」

 

僕が投げたのは菊入さんの召喚獣の方だったようだ。普段は戦えないようなタイプだから愉しみだな

 

「仲が良いのにゴメンね。でもこれも戦略の内だからね」

 

Aクラス 吉井明久 267点 VS Bクラス 菊入真由美 165点

 

さっき投げたときにうまく着地できなかったんだろうな、少し菊入さんの点数が減っている

 

菊「点数で負けてても、勝負では負けないんだからっ」

 

本が光ると風が吹き荒れて僕の方にやってくる、たぶん大量の鎌鼬だろう

 

「ふぅ~」

 

僕は息を吐いて意識を集中すると、

 

ヒョイッヒョイ

 

全ての攻撃を見切って菊入さんに肉薄する。このぐらいなら避けれるな、キリンさんの修行で体得したからな。あの人は見切りの天才らしいし、あの修行は為になったよ

 

菊「なっあ、当たらない?!」

 

攻撃が全く当たらないことに動揺する菊入さん。でも、今そんな余裕はないよ

 

「隙ありっ!!」

 

僕は長剣を横薙ぎにして胴を切り払った

 

Aクラス 吉井明久 267点 VS Bクラス 菊入真由美 戦死

 

菊「はぁ、負けちゃったか」

 

負けて落ち込んでいる菊入さん、試合とはいえなんか罪悪感を感じるな

 

「あ~なんかゴメンね」

 

菊「いや、気にしないで。真剣勝負なんだし」

 

 

 

 

時は少しさかのぼって 雄二Side

 

明久が起こした砂塵がはれてくると、そこには岩下の召喚獣だけがいた

 

岩「あれ?真由美は?」

 

岩下は菊入の召喚獣が消えていることに戸惑っている

 

「悪いがお前の相手は俺だ」

 

Aクラス 坂本雄二 289点 VS  Bクラス 岩下律子  163点

 

岩「そう、点差はかなりあるけど、負けないんだから!!」

 

岩下は思いっきり切りかかってくるが

 

バシッ

 

俺は左手で岩下の剣を白刃取りする

 

岩「えっ?」

 

片手で白刃取りされたことに驚き動きが止まる岩下

 

「悪いが、俺は勝たなくちゃいけないんでな」

 

俺は右手を思いっきり引いて力をためてから、正拳を撃ちぬく

 

Aクラス 坂本雄二 289点 VS  Bクラス 岩下律子 戦死

 

岩「あ~あ、負けちゃった」

 

「なんだ、あんまり悔しそうじゃないな?負けたって言うのに」

 

岩「さすがにあの点数差じゃね」

 

なるほど、俺の点数はAクラス上位並だったし仕方ないか

 

Side out

 




自分はラグナ○クオンラインを全く知りません。
なにか良さそうな装備がないかと探していた時に、攻略系のサイトに載っていた職業のイラストが気に入ったので召喚大会の装備に多用しています。


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クレーム処理

明久が常夏変態をセッキャクします。
クレーマーって面倒ですよね。


西「勝者、吉井・坂本ペア!!」

 

西村先生が僕達の勝ち名乗りを上げる

 

「で?康太はいつまで気配を消しているの?試合はもう終わったんだし邪魔にはならないよ」

 

僕は気配を消して試合の途中から来ていた康太に声をかけた

 

康「……なぜ、気付いた?気配を消していたのに」

 

雄「うぉっ、康太か。突然現れるんじゃねぇ!!心臓に悪いだろうが」

 

雄二は気付いてなかったみたいだな

 

康「……すまない。試合の邪魔になると思ったから気配を消していた」

 

「空気とかにも気配ってあるからね。勘の鋭い人なら気配を溶け込ませないと気付けるよ。それで?店に何かあったの?」

 

わざわざ会場まで来るってことは面倒事かもな

 

康「……少し面倒な客がいて困っている」

 

雄「わかった。歩きながら話そう」

 

僕らは教室へ向かいながら話を聞くことにした

 

「で?面倒な客って言うのはどんな客なの?」

 

康「……クレーマー。スープに虫が入っていたと言っている」

 

雄「衛生管理はしっかりとしているからそんなはずはないな」

 

「たぶん、自分で入れたんじゃないかな?康太は監視カメラでその映像探して」

 

康「……わかった」

 

雄「そういえば一輝はどうしたんだ?クレーム処理とかはあいつの仕事だろ」

 

康「……トイレ休憩」

 

なるほどな。クレーム処理担当の人間がいない時だったのか、それで康太は僕達を呼びに来たんだな

 

一「アキに雄二、一回戦は終わったみたいだな。康太はなんでこんなとこにいるんだ?」

 

噂をすれば影ってか、一輝が後ろから声をかけてきた

 

「どうもクレーマーがいるらしくてね。康太は僕らを呼びに来たんだよ」

 

一「そうか、すまんな。オレが抜けなければ問題なかったのに」

 

雄「いや、トイレなら仕方ないだろ。っと着いたな」

 

話しているうちに教室まで着いたようだ

 

?1『だから、なんで虫が料理に入ってんだって聞いているんだよ!!』

 

優『そんなものが入っているわけないでしょ!あなたが入れたんじゃないの!?』

 

?2『そんなことするわけねぇだろうが!!この店は接客がなってねぇなぁ!!』

 

優子さんとモヒカン頭&坊主頭のチンピラ、よく見るとこの学校の制服を着ている。タイの色からすると3年生だろう

 

「一輝は優子さんのフォローをお願い、僕が対応してくるよ。康太はさっき言ったことをお願い」

 

一「りょ~かい」

 

康「……わかった」

 

雄「なら俺は他の客のフォローに当たるか」

 

一輝は優子さんの元へと向かった

 

一『優子、ちょっといいか?』

 

優『あ、一輝君。でも、この人たちが』

 

一『そいつ等の対応は明久に任せてあるから大丈夫だ』

 

優『わかったわ』

 

優子さんは一輝に促されてスタッフルームへと向かった。その姿を見送りながら僕はチンピラクレーマー先輩の席に近づく、康太が証拠を探す時間を稼がないといけないからね

 

「先程は当店のスタッフが失礼しました」

 

僕は怒りを押さえながら頭を下げる

 

モ「まったくだ。この店はあんな奴に接客させてんのかよ」

 

「申し訳ありませんが、お客様のお話をわたくしにお話しいただけませんか」

 

僕は怒りと殺気を押さえてチンピラ先輩に尋ねる

 

坊「さっきも言ったんだが、このスープに入っている虫は何だって聞いたんだよ」

 

坊主先輩が自分のオニオンスープに入っている虫を指さす

 

「この虫でございますか」

 

僕はその虫をよく見てから

 

「動物界、節足動物門、昆虫網、鞘翅目、多食亜目、コガネムシ下目、コガネムシ上科、コガネムシ科、スジコガネ亜科、スジコガネ族、スジコガネ亜族、コガネムシ属のコガネムシという昆虫で食性は草食性――」

 

モ「ちょっと待て!!お前は何を言っているんだ?!」

 

モヒカン先輩が僕の話を切って抗議してきた

 

「お客様が『この虫は何だ』とお尋ねになられたので、その虫についてご説明させていただいたのでございますが、何かご不満でも?」

 

もちろん、そんなこと聞いてないのは知っているけど、目的は時間稼ぎだからな

 

坊「俺はなんでこのスープに虫が入っているかって聞いたんだよ!!」

 

「つまり、お客様は当店のスタッフがこの虫の存在に全く気付かずにご提供したとおっしゃりたいんですか」

 

僕は怒りを押さえながら坊主先輩に聞く、たぶん殺気は少し漏れているだろうな

 

坊「そ、その通りだよ」

 

坊主先輩がやや怯えながら頷く。どうやら、康太の方も済んだみたいだ親指を立ててこちらに合図をしている

 

パッ

 

プラズマディスプレイに坊主先輩がスープに虫を入れている姿が写し出される

 

モ「な、なんであの姿が写されているんだよ」

 

坊「おい、常村、さっさと逃げるぞ」

 

その映像を見て逃げ出そうとするチンピラ先輩

 

「逃がすかよっ」

 

俺は逃げる前に襟首をつかむ

 

「お前らは営業妨害だけじゃなく、食い物を粗末にしたからな。じっくりと話を聞かせてもらうぞ」

 

常「虫を入れたのは夏川だから俺は見逃してくれ!!」

 

夏「なっ常村、お前だけ逃げようとするんじゃねぇ」

 

「連帯責任だ。じっくりとその腐った性根を叩きなおしてやる」

 

俺は常村と夏川と呼び合う先輩を連れてスタッフルームの奥へと消える。どうやら優子と一輝はもうここにはいないようだ、ちょうどいいな

 

 

 

雄二Side

 

さて、あのクレーマーは明久が処理してくれるだろうから、俺は他の客を落ち着かせるか

 

「先程はお見苦しいところをお見せしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。現在当店にいらっしゃいますお客様方には全商品を半額でご提供させていただきますので、ご容赦ください」

 

その言葉で満足したのか客はまた落ち着きを取り戻した

 

常「お、覚えていろよ!!」

 

夏「夜道には気をつけるんだな!!」

 

明久に連れて行かれたチンピラ先輩が飛び出してきた。頭にブラジャーを引っ掛けて

 

明久「モブの変態先輩のことを覚えておくなんて無駄な事はしませんよ」

 

たしかに明久の言うとおりだな、あんな奴ら覚えるよりも英単語を一つでも覚えておく方がいい

 

Side out

 

 

 

「雄二、あの二人についてどう思う?」

 

僕はチンピラ先輩について雄二に尋ねる

 

雄「大方、俺らの邪魔をしたかったんだろうな。教頭の差し金ってとこだろう」

 

雄二も同じことを考えていたようだ。高校の学祭程度で営業妨害するなんて暇な事をする人はいないだろうからね

 

「しかし、あんなことやっても大会には支障ないのにねぇ」

 

雄「俺らのことを過小評価しているんだろう。っと、話はこのへんにして仕事に戻ろうぜ」

 

「そうだね」

 

僕らは接客へと戻っていった

 




たぶん清涼祭編では試合と営業妨害への対処をそれぞれ1話ずつ投稿すると思います。


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召喚大会2回戦

2回戦目です。ちょっと不愉快な描写があるかもしれません。



明「ただいま~」

 

日「ただいま戻りました」

 

僕らが接客を再開するとすぐに明梨と日向が帰ってきた

 

「お疲れ様。その様子だと勝てたみたいだね」

 

明「うん、相手はBクラスだったけどね」

 

日「教科が現代文だったので勝てました」

 

二人とも現代文は400点近く取れるからBクラス程度なら余裕だろうな

 

雄「二人とも戻ってそうそう悪いが接客を頼む」

 

チンピラが帰ってから、また忙しくなったから喋っている暇はあまりないんだよね

 

明・日「「はい、わかりました」」

 

 

 

 

雄「明久、そろそろ2回戦だ。行くぞ」

 

しばらく接客していると雄二に声をかけられた。いつの間にか1時間ほど時間がたっていたみたいだ

 

「了解。一輝、ここは任せたよ」

 

一「おう、アキ達も頑張れよ」

 

僕は一輝の言葉を聞きながら大会会場へと向かった

 

 

 

 

「雄二、2回戦はどっちが勝ち上がると思う?」

 

雄「性悪コンビだろうな。相手はDクラスのコンビらしいから」

 

性悪コンビとはB・Cクラスの代表の根本君と小山さんのことだ。確かにあの二人性格は悪いが、成績はある程度いいからDクラス程度なら勝てるだろうな

 

雄「やっぱりか」

 

根「げっ、吉井に坂本!!」

 

雄二は対戦相手を見て呆れを含みながら納得し、対する根本君は僕らを見た瞬間に顔色を悪くした。あの時のステキな思い出を思い出したんだろうな

 

小「恭二、こんな奴らに何ビビっているのよ?」

 

小山さんは彼氏の情けない姿に呆れている

 

高「では、科目を決定します」

 

今回の審判は高橋先生のようだ。高橋先生がルーレットを回す。止まったのは

 

『体育』

 

高「では、体育実技、承認します」

 

高橋先生が承認すると体育実技のフィールドが広がる

 

根「なっ特殊科目だとっ」

 

根本君は特殊科目に自信がないのか動揺している

 

小「落ち着きなさい恭二。私はバレー部のホープなんだから負けるはずないわ。試獣召喚」

 

根「そうだったな友香。それにあの二人だって特殊科目なら点は低いだろ。試獣召喚」

 

なんか酷い言われようだな。二人の呼びかけに応えて現れる大会使用の召喚獣。小山さんのは青いローブを着て、つばの付いた黄色い三角帽を目深にかぶっている、武器は杖のようだ。黒魔道士かな。相方の根本君はと言うと

 

僕・雄「「うぷっ」」

 

僕と雄二は根本君の召喚獣を見て、吐き気を催す。だって、根本君の召喚獣はメイド服を着ているんだもん

 

根「お前ら、俺の召喚獣を見て吐きそうになってんじゃねぇ!!こっちだって勝手に決まって迷惑しているんだ!!」

 

雄「確か、今回の設定は召喚者の本質に影響を受けるらしいが」

 

「なるほど、腹黒と女装癖か」

 

そうなると、雄二のは破壊僧ってところかな。元不良だし、改心したって考えるとぴったりだ。しかし、僕のは?

 

高「吉井君、坂本君。そろそろ試合を開始したいので召喚してください」

 

「「試獣召喚」」

 

僕らも召喚をする

 

体育(実技)

Aクラス 坂本雄二 486点 VS Bクラス 根本恭二 203点

Aクラス 吉井明久 703点   Cクラス 小山友香 289点

 

高「では、試合始め!!」

 

点数が表示されたのを確認すると高橋先生が開戦を告げる。さてと

 

根「な、なんだよあの点数」

 

小「700点とかどうやったら取れるのよ!!」

 

何か喚いているが、俺は早く視界から不愉快なものを除けたかったので

 

「さっさと失せろ!!」

 

俺は腕輪を使って、汚物に斬りかかる

 

ドゴォォォン

 

ものすごい爆音とともに土煙が上がる。そういえば腕輪の能力を確認してなかったけど、大丈夫だよな?

 

雄「ど、どうなった?」

 

Bクラス 根本恭二 戦死

 

煙がはれると汚物は塵になっていた。この威力は半端ないな、エクスカリバーか?

 

根「なぁ?一発で戦死だと?!」

 

小「ちょっと恭二!!何やられてんのよ!!」

 

雄「余所見とは余裕だなっ!!!」

 

小山が根本に対して文句を言っていると雄二が小山さんに近づいて右手を引いて力をためる

 

小「えっ、このっ」

 

小山さんはそれに反応して攻撃しようとし杖が光り、雷が落ちるが

 

サッ

 

慌てていて的が絞れていない攻撃が雄二に当たるはずもなく、軽くサイドステップをして雷を避ける

 

雄「食らえやっ」

 

引いていた拳を思いっきり前に突き出す

 

ドンッ バタッ

 

小山さんの召喚獣は壁まで吹っ飛んで倒れた

 

Cクラス 小山友香 147点

 

さすがにあんまり点数差がなかったから戦死させるには至らなかったか

 

 

 

雄二Side

 

小「点数が高いからって調子に乗るんじゃないわよっ」

 

小山は吹っ飛んで距離が開いたのをいいことに遠距離から火球や氷塊、落雷といった様々な属性の魔法で攻撃してきて距離と詰められない

 

明久「大変そうだね~手伝おっか?」

 

他人ごとのように明久が話しかけてきた。あいつ俺の倍以上の攻撃が向かっているのに全て紙一重で避けてやがる。しかも、のんきに話しかける余裕があるって、最初に会ったときから思っていたが、あいつって何者なんだよ!!

 

「いらん世話だ!!俺にも活躍させろ!!」

 

さっき変態屑のことを一気に潰していたがあの破壊力は何だよ

 

小「このっ、ちょこまかと動くんじゃないわよっ」

 

じれったくなったのか小山が杖を大きく振ると隕石が降ってきた。だが狙いが甘くなったな

 

明久「すごいねぇ、隕石が降るなんて」

 

あいつの言葉を聞いていると力が抜けるから無視しよう

 

小「くっ来るんじゃないわよっ!!」

 

俺は隕石を避けながら距離を詰めて、腕輪を使う。変化は見られないが、永続系か?

 

スッ

 

俺は懐まで潜りこむとラッシュを叩きこむように操作する

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダッ

 

俺が指示したのよりも攻撃の勢いがあるな、回数も威力も。たぶんこれが腕輪の能力なんだな

 

Cクラス 小山友香 42点

 

俺はラッシュの最後に腕を大きく引いて

 

ドン

 

打ち抜く

 

Cクラス 小山友香 戦死

 

ふぅ、なんとか勝てたな。操作にも慣れたし、次からは2対2で戦うか

 

Side out

 

 

 

高「勝者、吉井・坂本ペア!!」

 

高橋先生が僕達の勝ち名乗りを上げる

 

「お疲れ様、雄二」

 

僕は雄二に労いの言葉をかける

 

雄「おう、勝ったぞ。操作にもだいぶ慣れたし、次からは2対2で行くぞ」

 

「そうだね。たぶん次の相手はサシで戦うのはつらいからね」

 

トーナメント表を見る限りはあの二人と戦うことになるんだろうな。あの教科になったら雄二だけが置いてけぼりになりそうだ

 

雄「確かに、あの二人が相手だとこっちも連携をとらないといけないだろうな」

 

「じゃあ、教室に戻ろうか。一輝がいるとはいえ忙しいだろうし」

 

僕らは教室へと向かった

 




明久の一撃必殺 エクスカリバー。根本には塵になってもらいました、フィードバックをつけたかったなぁ
あの二人については次々話でわかります。


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また営業妨害?!

妨害行為2回目です。
常夏コンビも懲りないですね。


★また営業妨害?!

 

「あれ?随分と空いているね」

 

僕らが教室に戻ると、広い教室に対してお客さんは2組しかいなかった

 

雄「一輝、あれからクレーマーとかは来たか?」

 

一「いや、そういう輩は来てないな」

 

優「明久君達が試合に行って少ししてから、お客さんの入りが悪くなったのよ」

 

一輝の言葉に優子さんが補足する

 

「つまり、このクラス以外で悪評を流しているのかな」

 

雄「たぶんな。そうなると、他のクラスにまで迷惑をかけていることになるな」

 

人の迷惑というのを考えないんだろうか?

 

秀「まったく、どうしようにもない連中じゃのぅ」

 

秀吉も呆れているよ

 

康「……度し難い」

 

康太、キミの気持ちもわかるけど、たまに君の行動も度し難い時があるよ

 

雄「ここで話してても仕方ないし、手分けして噂の出場所を探すか」

 

?・?『『ぎゃああああっ』』

 

雄二がこれからの行動の指針を決めると、どこからか聞き覚えのある声で悲鳴が聞こえてきた

 

一「この声って…」

 

秀「さっきの二人組じゃな」

 

やっぱりあの変態コンビか、たぶん悪評を流しているのもあの二人だろうな。今の悲鳴は迷惑をかけた先で制裁でも受けたのかな

 

「さっきの声ってあっちからだよね?」

 

一「あぁ、オレもそうだと思うぞ」

 

雄「誰かが成敗してくれたのか?」

 

秀「あの辺りに人混みができておるのぅ」

 

僕らが教室から出て悲鳴の出所を探しているとDクラスの前に人だかりができていた。たしかDクラスはタコ焼きや焼きそばの屋台と、その場で食べる人用の座席が用意してあるらしい

 

?『自分のクラスの仕事をサボったうえに、他のクラスの悪評を大声で話すなんてな!!』

 

人だかりから聞こえてきた声には聞きおぼえがあった

 

一「なぁアキ、この声に聞きおぼえがあるのはオレだけか?」

 

「一輝、僕も聞きおぼえがあるよ」

 

たしか、あの人は3-A所属だから、変態チンピラコンビとも同級生のはずだしな

 

夏『や、やめてくれ鬼薙。も、もう許してくれ』

 

常『お、俺達が悪かったから』

 

鬼薙…やっぱりか

 

鬼『じゃあ、今から迷惑をかけたところに謝りに行くぞ。お前らに拒否権は無いからな』

 

常夏『『迷惑掛けてすみませんでした!!』』

 

変態チンピラコンビは即座にDクラスに謝罪しているようだな

 

鬼『次はAクラスだ!!おい常夏コンビ、早く来い!!』

 

常『い、いててええ。お、鬼薙、自分で歩けるから放してくれ。いや、放してください』

 

夏『ギブギブギブ、鬼薙、俺の首極まっている。放してください』

 

変態チンピラコンビがあの人に連れられて人ごみから出てくる

 

鬼「あれ?アキにカズ、どうした?」

 

「やっぱり龍兄だったんだ」

 

この人は鬼薙龍彦さん、龍司さんの息子で去年の振り分け試験の前日まで海外を転々としていたらしい。その間もある程度の勉強はしていたため今は3-Aに所属している

 

一「外が騒がしかったから見に来たんだよ。まさか龍兄がいるとは思わなかったけど」

 

雄「さすが龍彦さんですね」

 

龍「ん?雄二もいるってことはここにいるのは2-Aの生徒か?」

 

「うん、そうだよ」

 

確かにここにいるのはAクラスの生徒ばかりだけど

 

龍「なら、ちょうどいいな、お前ら、さっさと謝れ」

 

チンピラコンビを前に突き出す

 

常「わ、分かったから、その手を放してくれ」

 

夏「あ、謝るから、頼みます」

 

しかし、龍兄を怒らせるとは、自業自得とはいえ哀れだな

 

常夏「「すいませんでした!!じゃあ、俺らはもう行くぞ!!」」

 

謝ると同時に駆け出す常夏変態コンビ。龍兄の雰囲気を見たら、その気持ちもわかるけど

 

龍「ったく、あいつ等は…あとでO☆HA☆NA☆SHIが必要かな」

 

龍兄のO☆HA☆NA☆SHIか…三途の川を渡る方がいい気がする

 

龍「すまんな、うちのクラスの奴らが迷惑をかけちまって」

 

そう言って頭を下げる龍兄

 

「や、やめて下さいよ龍兄」

 

一「そうだぜ龍兄」

 

雄「龍彦さんは悪くないんですから」

 

秀「頭を上げて欲しいのじゃ」

 

その様子を見て慌てる僕ら

 

龍「そこまで言うなら、まぁいいか」

 

渋々といった感じで納得する龍兄。怒りも収まったみたいだ

 

龍「そういや、アキと雄二君は召喚大会に出てるんだよな?結果はどうだ?」

 

「順調に勝っていますよ」

 

雄「次は3回戦ですけど、ちょっとキツそうっすね」

 

僕らが少し雑談をしていると

 

?「龍彦、なに仕事サボって、こんなとこで油売っているの?」

 

ツインテールの美女が龍兄の肩を掴んで話しかけてきた

 

龍「る、瑠璃香?!いや、俺は他のクラスに迷惑をかけていた常夏コンビを叱りに…」

 

瑠璃姉の登場に慌てる龍兄。彼女は柳浦 瑠璃香(やぎうら るりか)さん。柳浦道場の一人娘で、道場で学んだ合気道の他にも截拳道(ジークンドー)や極真空手などを体得している。龍兄とは道場同士の付き合いもあり幼なじみであり、許嫁でもある

 

瑠「常夏コンビなんていないじゃない。サボってないで仕事に戻るよ。明久君たち、迷惑かけちゃってゴメンね」

 

瑠璃姉は片手で龍兄を引っ張っていった。龍兄をあんな風に扱えるのは瑠璃香さんぐらいだろうな

 

「相変わらず龍兄は瑠璃姉に弱いね」

 

一「いや、瑠璃姉が強すぎるんだろ」

 

雄「明久、一輝、さっきの人は誰だ?」

 

雄二は瑠璃姉とは面識ないんだったな。瑠璃姉は無銘道場にはあんまり来ないからね。柳浦道場は学校の反対側にあるし

 

「瑠璃姉は龍兄の許嫁で柳浦道場の師範代だよ」

 

一「ついでに龍兄の弱点でもあるな」

 

その後僕らは教室に戻って接客を再開した

 




龍彦と許嫁の瑠璃香が出てきましたね。
一応で作ったキャラですので、龍彦も瑠璃香もあんまり出番は無いと思います。
瑠璃香の設定については『設定(オリキャラ)』に追加しておきました。


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召喚大会3回戦

召喚大会3回戦です。前回言っていた『あの二人』が出ます。



「ただいま~」

 

僕らが戻ってみても店は空いていた

 

明「おかえり、明君」

 

日「おかえりなさい、明久君」

 

明梨と日向が出迎えてくれた。メイド服で接客っていいなぁ、一度お客さんとして二人に接客してもらいたいと思ったのは黙っておこう

 

雄「すまんな抜けたりして」

 

秀「迷惑をかけたのじゃ」

 

紫「気にしないでいいわ。あんまりお客さんもいないから」

 

軽く謝ってから、僕らは仕事を再開した

 

 

 

 

雄「明久、そろそろ試合だから行くぞ」

 

接客をしていると雄二に声をかけられた。あれから少しずつ客足が戻ってきて、今は7~8割方の席が埋まっている

 

明「え?明君達も試合の時間なの?」

 

やっぱり明梨と日向が勝ち上がってきたか

 

「うん、次は明梨と日向が対戦相手みたいだね」

 

日「明久君達が相手ですか…手強そうですね」

 

日向も僕達の所に来て会話に加わってきた

 

「二人には悪いけど、手は抜かないからね」

 

明「本気の明君か…でも負けるわけにはいかないんだから」

 

日「そうです。私たちが勝って見せます」

 

二人のやる気がすごいな。賞品狙いなのかな?

 

 

 

 

西「これより召喚大会三回戦の科目を決める」

 

そう言って西村先生がルーレットを回す。止まったのは

 

西「科目は『家庭科』だ。承認する」

 

西村先生の一言で家庭科のフィールドが展開される

 

「あちゃ~家庭科か。雄二ドンマイ」

 

僕は雄二を慰める

 

雄「明久、俺だって500ぐらいならとれるぞ。それにお前は家庭科ならいつも1番だろう?」

 

雄二は呆れながら反論する。うん、雄二は二人の点数を知らないんだな

 

僕・雄・明・日「「「「試獣召喚!!」」」」

 

僕らの呼び声に応えて召喚される4体の召喚獣。僕と雄二の装備は勇者とモンク。対する二人は

 

「ゴフッ」

 

二人の召喚獣を見て吐血する僕

 

雄「明久っ?!」

 

それを見て驚く雄二

 

「What’s up ? Yuuji.(どうしたの?雄二)」

 

そんなに驚いてどうしたんだろう?

 

雄「明久、動揺しているようだが、大丈夫か?」

 

動揺?何のことだろう?

 

「Ogni destra. Non avere problema(大丈夫だ。問題ない)」

 

雄「明久、何語かは知らんが、言いたいことは伝わったぞ。それと、それは大丈夫じゃない」

 

しまった、二人の召喚獣の姿に動揺してイタリア語になってしまった。だってしょうがないじゃないか、二人の召喚獣の装備が刺激的なんだもん。明梨は踊り子の衣装を着ていて、武器は短弓を持っている。日向はファーのついた深紅のローブにホットパンツと網タイツ、武器はダガーナイフと投げナイフのようだ。(ラ○ナロクオンラインのダンサーとローグ)

 

明「あ、明君、そんなに見ないでよ」

 

日「は、恥ずかしいです」

 

二人は自分の召喚獣の装備を見られるのが嫌なようだ。あんな刺激的なかっこうなら仕方ないか。しかし、二人の召喚獣を見る限りは『召喚者の本質の影響を受ける』っていうのは一部だけなのかな。学園長もスポンサーへのアピールで設定をいじったみたいだが、システムの設定はまだ上手くいかないんだろうな

 

家庭科

Aクラス 坂本雄二 525点 VS Aクラス 藤崎明梨 860点

Aクラス 吉井明久 962点   Aクラス 久遠日向 813点

 

やっとのことで表示される点数。うん、二人とも流石だね、いいお嫁さんになれそうだ

 

明「今回は自信あったんだけど、やっぱり明君には勝てなかったか」

 

日「さすが明久君ですね」

 

僕の点数を見て少し落ち込む明梨と感嘆する日向

 

雄「おい、明久。この二人ってこんなに点数高かったのか?」

 

二人の点数に驚いている雄二

 

「うん、家庭科ではいつも僕が1位で明梨が2位、日向が3位だからね。二人ともいいお嫁さんになれると思うよ」

 

明・日「「お、お嫁さんって」」

 

二人は僕の言葉で赤くなって俯く、女の子だし結婚した時のこととか考えちゃったのかな

 

雄「お前ってやつは…(なんでこんな発言を本人の前で臆面もなく言えるんだ)」

 

隣で額を押さえている雄二。僕がどうしたんだろう

 

西「はぁっ…お前ら、そろそろ試合を始めてもいいか?」

 

なんで西村先生まで疲れているんだろうか。僕は西村先生の言葉で気持ちを切り替える

 

西「ではっ、試合始めっ!!」

 

僕らの様子を見てから西村先生が試合の開始を宣言する

 

日「行きますっ」

 

日向が僕達に投げナイフを投げてくる

 

雄「うぉっ」

 

雄二は大きく横に回避するが僕は日向の方に突っ込みながらかわしていく。キリンさんの暇つぶしでやらされた『燃えろ バットマン』と比べたら飛んでくる方向もわかるから余裕だな

 

ヒョイッ

 

日「今ですっ」

 

僕がナイフを軽くかわした時に日向の腕輪が光る。やばいっ

 

ボンッ

 

僕が大きく横に飛んで回避すると、日向の投げた投げナイフが爆発する。あれが、日向の腕輪の効果のようだな

 

明「隙ありっ!!」

 

横に飛んだ所に明梨が矢を放ってきたので

 

「危なっ」

 

僕は上に飛んで避ける。ん?空中じゃ身動きが取れないな…どうしよう

 

明・日「「今度こそ当たれ(当たってください)」」

 

身動きが取れない僕の所へ大量の投げナイフと矢が飛んでくる。これはフィードバックが痛そうだ

 

ボンッ

 

日向の腕輪の効果で投げナイフが爆発する

 

日・明「「えっ?」」

 

煙がはれると僕の召喚獣は剣を盾のように構えて、なんとか攻撃を防いでいたが

 

Aクラス 坂本雄二 525点 VS Aクラス 藤崎明梨 860点

Aクラス 吉井明久 821点   Aクラス 久遠日向 773点

 

爆風や防ぎきれなかった攻撃の分点数が減っている。日向も腕輪の効果の分、点数が減っているようだ。フィードバックで手足が少し痛むな

 

雄「俺がいるのを忘れんなよっ」

 

さっきの攻防の間に距離を詰めたのか明梨の前には雄二がいた

 

明「えっ?!きゃっ」

 

雄二のガゼルパンチが明梨に当たり

 

Aクラス 坂本雄二 525点 VS Aクラス 藤崎明梨 737点

Aクラス 吉井明久 821点   Aクラス 久遠日向 773点

 

クリーンヒットしたが点数差が激しいからか、あまり点数は減らない。二人には手は抜かないって言ったし僕も本気になろうかな

 

「僕も行くよっ」

 

僕は剣を背中にしまうと

 

拳闘術 虎伏撃上(こふくげきじょう)

 

地面に伏せるように走って日向に近づくと

 

日「きゃっ」

 

走りの勢いを拳に乗せてアッパーを繰り出す

 

Aクラス 坂本雄二 525点 VS Aクラス 藤崎明梨 737点

Aクラス 吉井明久 821点   Aクラス 久遠日向 520点

 

顎に当たったし、点数差もあったから、かなりのダメージだ。手を抜かないと言ったとはいえ、やっぱり心が痛むな

 

明「えいっ」

 

明梨が矢を放ってくるが、僕はそれをかわして一本掴むと

 

ビュン

 

明梨に向かって走りながら投擲した

 

明「きゃっ」

 

明梨は何とか避けるが

 

拳闘術 究場双拳(きゅうばそうけん)

 

その間に僕は明梨の所に近づいて、両の拳で攻撃する。……腹と胸を。やばいフィードバックで召喚獣とはいえ明梨の胸の感触が…

 

Aクラス 坂本雄二 525点 VS Aクラス 藤崎明梨 424点

Aクラス 吉井明久 821点   Aクラス 久遠日向 432点

 

点数が補正される。雄二も日向の点数を削っているみたいだな。鼻血が出そうなのを押さえながら、僕は召喚獣に剣を構えさせる。これ以上の刺激があると倒れてしまいそうなので一気に終わらせよう

 

「雄二!!退いてっ!!」

 

僕は日向の相手をしている雄二に下がるように言う。このままだと巻き込んじゃうからね

 

雄「お、おうっ」

 

雄二は突然の指示に驚きながらも日向から距離をとる。今の位置関係は僕から見ると明梨と日向が一直線上にいる。これなら一発で決められる

 

鷹式一刀流剣術 ― 瞬花終刀 ―

 

僕は一気に駆け抜けると同時に縦横無尽に切りつける

 

ポンッ×2

 

藤崎明梨 久遠日向 戦死

 

明・日「「え?」」

 

二人はいまだに何が起こったか分かっていないようだ

 

西「勝者、吉井・坂本ペア!!」

 

西村先生が僕達の勝ち名乗りを上げる。なんとか勝てたな

 




明久の必殺技『無自覚のろ気』が発動しました。
それと、明久は二人の誘惑には弱いので直ぐに壊れてしまいました。


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問題解決?!

今回は妨害ではないです


明「やっぱり明君には勝てないか」

 

日「負けちゃいましたか」

 

二人は負けてしまって落ち込んでいる様子だ。真剣勝負とはいえ悪いことしちゃったかな

 

「二人とも、ほんとゴメンね」

 

僕はひとまず二人に頭を下げる

 

明「謝らないでよ明君」

 

日「そうですよ。これは試合でしたし、明久君が謝ることないですよ」

 

うぅ、二人の優しさに僕の良心が痛むよ。でも優勝しないと学園長に何を頼まれるか分からないからな

 

明「それよりさ、明君。一つ聞いてもいい?」

 

突然話題を変えてくる明梨。聞きたいこと?

 

「うん。答えられるものなら答えるよ」

 

特に二人に隠したい事は無いし、二人に対する気持ち以外は

 

明「その、明君は誰と如月ハイランドに行きたいの?」

 

日「あ、それは私も気になります」

 

おずおずと聞いてくる明梨と日向

 

「ほぇ?」

 

予想もしていなかった質問に間抜けな声を上げてしまった。誰と行きたいか、か…あれ?考えてなかったな

 

よし、ちょっと整理してみよう

 

確かチケットってペアチケットだよね。

それで、そのチケットは『カップルで行くと幸せになる』ってジンクスを作ろうとしている施設のチケット。

僕は二人と幸せになりたい。

二人は僕が誰とペアで行くか聞いてきた。

 

やばい。これは僕の返答次第ではとんでもない誤解を生みそうだ

 

 

 

雄二Side

 

藤崎と久遠に質問されてから明久は頭から煙が出そうなほど考え込んでいる。この二人は自分の思い人が『誰が好きなのか』が気になっているんだろうな。

他の奴の名前が出ても悲しみはするだろうが、嫉妬とかはしないだろう

多分、明久はこの二人のことが好きなんだろうがな。さて、明久はなんて答えるんだろうな

 

明久「……………戦略的撤退!!ごめん二人とも!」

 

明久は俺が見たこともない速さで逃げていった。ソニックブームが起きたのは気のせいだろう

 

藤・日「えっ明君(明久君)?!」

 

明久の突然の行動に驚く二人。ちょっと待て、俺を置いて行くなよ

 

「すまん、明久は俺が連れ戻すから二人は先に店に戻ってくれ」

 

俺は二人に店に戻るように伝えてから明久の逃げた方向に駆け出した

 

 

 

 

?「はぁ~」

 

少し走ると物陰から溜め息が聞こえてきたので、その出所をみると

 

「明久、こんなとこにいたのか」

 

明久がいた

 

Side out

 

 

僕が悩んでいると雄二が声をかけてきた

 

「雄二か、ビックリさせないでよ」

 

雄「突然走り出したお前が言うセリフではないと思うんだが」

 

「うっ」

 

そこは追及しないでほしかったな

 

雄「大方どっちを誘うかで迷っているってところだろう?」

 

なんでコイツはこんなにも的確に当てるんだろう

 

雄「『なんでわかるんだ?』って顔だな。お前との付き合いも長いからよくわかるんだよ」

 

「雄二に隠し事はできないね。雄二の言った通りだよ。普通のチケットならもう一人分を僕が払って二人を誘えばいいんだけど、プレオープンだとそうはいかないからね」

 

プレオープンのチケットは入手困難らしいしね

 

Prrrrrr Prrrrrrr

 

そんなことを考えていると僕の携帯が鳴った

 

雄「俺に気にせずに出てくれ」

 

雄二にそう言われたので僕は携帯を取り出して着信元を見ると

 

『父さん』

 

僕は軽く項垂れてから電話に応答する。父さんから電話なんて碌なことがないんだが

 

ピッ

 

昭『久しぶりだね、明久』

 

いつも通りの元気そうな声が聞こえてきて僕はちょっと鬱になる

 

「うん、久しぶり、父さん。何のようなの?」

 

電話口の向こうで飛行機のエンジン音が聞こえるのは無視しよう。聞いてみるだけ無駄なのだから

 

昭『そっけないねぇ。久しぶりの親子の会話なのに』

 

「どこにいるのか知らないけど、海外でしょ?長電話すると通話料が大変なことになるよ」

 

僕の家族はところどころ常識外れで異常な家族愛があるから困る

 

昭『そうだね。これ以上言っても無駄だと思うから本題に入るよ』

 

この感じからすると重大な話ではないのかな。呑気なままだし

 

昭『明久、今悩んでいるでしょ?』

 

「なんで知っているの?」

 

反射的に聞いてしまった

 

昭『明久が召喚大会に出るって聞いたからね』

 

「それで、なんで僕が悩むの?」

 

昭『召喚大会の賞品にペアチケットがあるでしょ?明久は明梨ちゃんと日向ちゃんのどっちを誘うかって悩んでいるんじゃないかなって』

 

召喚大会の話だけでそこまで思い至るのか、父親だししょうがない……か?

 

昭『そんなわけで明久に朗報があるんだけど』

 

そこで言葉を区切る父さん

 

「もう何かしているんでしょ?だったら早く話してよ」

 

昭『明久はせっかちだね』

 

「そっちが勿体ぶるからでしょ」

 

父さんと話していると疲れるよ。話のペースが独特だし

 

昭『あのペアチケットで3人まで行けるようにしといたよ。3人で幸せになってきなよ』

 

は?何をやっているんだ?

 

昭『いやぁ~、透に話したら喜んで手配してくれたよ。ついでに結婚の話だけはキャンセルにしといたらしいから安心してね』

 

ピッ

 

言いたいことだけ言うと父さんは一方的に通話を切った。これで問題解決か?なんかあっさりしすぎていて怖いんだけど

 

雄「電話、親父さんか?随分と苦労してそうだが」

 

電話が終わったのを見て雄二が話しかけてきた

 

「父さんは自分のペースで話を進めるからね。それと、ペアチケットで3人まで行けるようにしたって」

 

雄「随分と突拍子もない話だがもう突っ込まないぞ」

 

雄二も父さん達の非常識さを理解したのかな

 

「ついでに結婚の話だけはキャンセルにしたらしいよ」

 

雄「随分と早く話が済んだな。なにかあるのか?」

 

「透さんは色んな企業に顔が効くからだと思うけど」

 

あまり深いことは聞かない方が疲れずに済むから話は軽くしか聞かないんだよね

 




果たして明久は『3人で幸せ』になるんでしょうか、乞うご期待。


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チンピラの妨害

原作通りにチンピラの妨害が入ります。
明久達がAクラスの為一部設定を変更しています。



雄「戻ったぞ」

 

翔「…おかえりなさい、アナタ」

 

僕らが戻ってくると霧島さんが手早く雄二の上着を脱がそうとする。アナタって

 

雄「待てっ翔子、なんで俺の上着を脱がせようとするんだ?!」

 

雄二は慌てて霧島さんを止めているが

 

翔「…仕事帰りのお約束」

 

霧島さんはたまに常識外れの行動をすることがあるな

 

雄「仕事帰りではないんだが…」

 

雄二は額を押させている、雄二ドンマイ

 

一「アキ、やっと戻ったか。どうした?なんか疲れているみたいだが」

 

「あ、ゴメン。ちょっと父さんから電話があってね」

 

一「そうか。っと話している場合じゃなかったな。アキ、康太と一緒にケーキを作ってくれないか?思ってたよりもケーキの売れ行きが良くってな」

 

お客さんの入りも予想以上だし、冷やすのとか考えると早い方がいいな

 

「了解」

 

 

 

 

「康太、ケーキの材料ってある?」

 

僕はキッチンに近寄り声をかける

 

康「……ない。すまないが手を離せないから持ってきてくれ」

 

「わかったよ」

 

僕は教室の隅に作られた倉庫の方へ向かった

 

 

 

 

?「君、ちょっといいかな?」

 

僕が倉庫へ向かっていると突然声をかけられた

 

「なんでございましょうか?ご主人様」

 

そちらを向くと竹原教頭がいた。鋭い目つきとクールな態度でごく一部の女子生徒に人気があるそうだが、裏では学園長の失脚を狙ったり、学園の設備費などを着服したりしている嫌な教師だが丁寧に接客する

 

竹「このクラスに吉井明久君がいると思うんだが、どの人かな」

 

「わたくしが吉井明久でございますが、何か御用でしょうか?」

 

あの営業妨害はこの人の指示だろうけど、本人が何かすることは無いだろうな。どの程度効果が出ているかを確認にでも来たのかな

 

竹「あぁ、君が吉井(馬)君か(この社会の屑め)。いや特に用があったわけじゃないんだが」

 

こういう人って本音が読みやすいよね。吉井(馬)って…建前ぐらいなんとかすればいいのに

 

「そうでございますか。ではわたくしは用がありますのでこれで失礼させていただきます」

 

竹「そうか。すまないね、引き止めてしまって」

 

僕は軽く頭を下げて倉庫へと向かう

 

 

 

 

「え~と、卵と生クリーム、チョコレートと……」

 

僕は倉庫にある業務用冷蔵庫から必要なものをとりだしていると

 

?「おい」

 

「うん?」

 

突然声をかけられたので振り向くと僕と同年代らしきチンピラ3人組がいた。迷って入るってこともないし多分教頭の差し金だろうな

 

「なんでございましょうか?ここは関係者以外立ち入り禁止ですのでお立ち去り願います」

 

一応は丁寧に応対する

 

チ1「そうはいかねぇ。吉井明久に用があるんでな」

 

そう言って後ろ手で扉を閉めるチンピラ1号。出入り口はあそこしかないので僕は閉じ込められた

 

「わたくしに、でございますか?なんでしょう」

 

チ2「お前に恨みはねぇが、ちょっとおとなしくなれや!!」

 

言うや否や拳を固く握り殴りかかってくるチンピラ2号

 

パシッ

 

僕はチンピラ2号の拳を掴み

 

チ2「痛てててててて」

 

捻り上げると2号は情けなく声を上げる

 

チ3「テメェなめてんじゃねぇぞ!!」

 

仲間がやられて逆上して殴りかかってくるチンピラ3号

 

「ほいっと」

 

僕は2号を3号に向かって蹴ると

 

チ3「おい、こっち来んじゃねぇ!!」

 

チ2「うわ、どけっ!!」

 

ガラガラッ

 

二人はぶつかって転がり棚にぶつかる。後で片付けないとな、仕事を増やさないでほしいよ

 

チ1「隙ありっ!!」

 

さっきから一人忘れている気がしてたけど1号が後ろから羽交い絞めにしようとするが

 

「ちぇいさっ」

 

僕は前屈の要領で上体を下げるとその勢いで足を蹴り上げる

 

チ1「ぐはっ」

 

僕の踵が1号の顎に当たったようだ

 

チ2「くそっ、これじゃ割にあわねぇぞ」

 

金で雇われたのかな。こんなチンピラじゃ本気になる必要もないのに

 

チ1「お、覚えてろっ!!」

 

チ2「てめえの顔、忘れねぇからな!!」

 

チ3「夜道には気をつけるんだな!!」

 

チンピラどもは何とか立ち上がると負け犬らしい捨て台詞を吐いて走り去る

 

ガラッ

 

チンピラが扉をあける前に外から扉が開けられる

 

明「明君、土屋君が早く…えっ」

 

日「明久君、何か手伝…えっ」

 

明梨と日向が入ってきながら声をかけてくるが、走ってくるチンピラに驚いて言葉が詰まる

 

トンッ

 

明・日「「きゃっ」」

 

チンピラに軽くぶつかり二人がバランスを崩して倒れそうになる。って

 

「危ないっ」

 

ドンッ

 

僕は二人を支えようと思ったが、間に合わずに3人とも転んでしまう

 

「二人とも、大丈夫?」

 

二人に怪我がないか尋ねる

 

明「う、うん」

 

日「だ、大丈夫です」

 

二人とも無事なようだな。僕は安心したので自分の体の方に意識を移すと手に何か温かくて柔らかいものが当たっているのに気づく。僕は二人を抱えるようにして倒れこんだはずだ………あれ?温かくて柔らかい物って…

僕は軽く首を動かして手元を見ると

 

 

 

僕の右手は明梨の、左手は日向の胸部に当たっている。うん、両手に花だ。フィードバックで感じたよりも柔らかいな……現実逃避するのは止めよう。僕は二人の胸を触ってしまった

 

サッ

 

すぐに僕は二人を起こして正座すると

 

「二人ともすみませんでした!!」ゴンッ

 

僕は床に頭を打ちつけながら土下座する

 

明「あ、明君。そんなことしないでよ。さっきのは事故なんだし」

 

日「そ、そうですよ。明久君は私たちを庇おうとしただけですし、頭を上げてください」

 

二人が申し訳なさそうに言ってくるので僕は仕方なく頭を上げる

 

「でも、二人に悪いことをしてしまったし…そうだ。なんでも言うことを聞くよ!!」

 

このままでは僕の気が治まらないのでそう言う

 

明「そんなことしなくってもいいよ(むしろ嬉しかったし)」

 

日「そうですよ。私たちは気にしませんから(恥ずかしくはありましたけど)」

 

気にするなといわれても乙女の胸を触っておいて、何もなしって都合いいことしていいわけないじゃないか

 

「それじゃ僕の気が治まらないんだよ」

 

わがままを言っている気がするけど、何かさせて欲しいのは確かだ

 

明「じゃあ、一つだけ質問していい?」

 

明梨も僕が折れないと思ったのだろう

 

「うん。答えられるものならなんでも答えるよ」

 

僕の知っている範囲ならば答えるつもりだ

 

明「二回目になるけど、明君はペアチケットで誰を誘うの?」

 

日「私もそれは聞きたいです」

 

どうしよう。誘うのは二人に決まっているのだが

 

「え~と、答えなきゃダメ?」

 

明「明君、さっき『なんでも答える』って言ってたよね」

 

「ヒ・ミ・ツ」

 

日「明久君、真面目に答えてください」

 

うっ日向に怒られてしまった。仕方ない

 

「わかったよ、話すよ。僕が誘おうと思っていたのは君たち二人だよ」

 

僕は逃げ場がないので正直に話した

 

明「えっ?わたし達二人?(明君はあの噂を知っているのかな?)」

 

日「明久君、ペアチケットだから3人は入れないんじゃないですか?」

 

日向の疑問ももっともだが

 

「父さんが透さんに話したらしくてね。3人で行けるように手配してくれたらしいんだ」

 

明「はぁ~、お父さん。何やっているんだか(お父さんは何を考えているんだろう)」

 

日「あはは」

 

透さんの行動に明梨は額を押さえていて、日向は苦笑している。あの人たちはやることが極端だからね

 




明久に『ラッキースケベ』なイベントを設けました。
原作ではラッキースケベ(偶然の幸運)は無いので作ってしまいました。
深夜に書いていたので冷静になって見ると・・・すいません。


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召喚大会4回戦

召喚大会4回戦です。



「そういえば、二人はどうしてここに来たの?」

 

僕は話題をそらすために二人が来た理由を問う。あの噂の話とかになったら大変だからね

 

明「土屋君が早く材料を持ってきてくれって伝えるために来たんだよ」

 

日「私は明久君が一人だと大変だと思って手伝いに来たんです」

 

教頭やチンピラの相手をしていたからな、時間がだいぶ経っていたみたいだ

 

明「あ、わたしも手伝うよ」

 

「二人ともありがとうね、じゃあこれをお願い」

 

僕は二人にお礼を言って少し荷物を渡す。重いものとか持たせるわけにはいかないしね

 

 

 

 

「康太ごめん。ちょっと野暮用で遅くなっちゃって」

 

僕はキッチンの康太の下に行きながら謝る

 

康「……問題ない。早く作ろう」

 

康太に促されて僕らはケーキ作りを始めた

 

 

 

 

雄「明久、そろそろ行くぞ」

 

僕がキッチンでケーキ作りをしていると雄二がホールから声をかけてきた

 

翔「…雄二達も大会?」

 

雄二の言葉を聞いて霧島さんが声をかけてきた

 

雄「あぁ、次は翔子達とだったな」

 

翔「…雄二には負けない」

 

霧島さんはやる気十分のようだな

 

「雄二、準備もできたし行こうよ」

 

僕はケーキ作りを康太に任せてキッチンから出ると霧島さんと話している雄二に声をかける

 

優「代表、アタシたちも行きましょう。遅れたら大変ですし」

 

優子さんも霧島さんを促して、僕らは試合会場へと向かった

 

 

 

 

「次からは一般公開されるんだっけ」

 

優「そうね。見られるって思うと緊張するわね」

 

雄「ちょうどいいし宣伝でもするか」

 

翔「…わかった」

 

僕の言葉にそれぞれ意見を述べていると大会の会場が近付いてきた

 

「じゃあ、僕らはこっちだから、またね。優子さん、霧島さん」

 

優「えぇ、アタシ達はこっちだから、お互い頑張りましょうね」

 

僕らは別の入口になるため優子さん達と別れる

 

 

 

 

高『それでは、これより召喚大会第4回戦1組目の試合を行います。出場者は前へ』

 

高橋先生の言葉に従い僕らが会場の中央へと出てくると反対側から優子さんと霧島さんが出てきた

 

高『出場者も出揃いましたので、これから対戦科目を決定します』

 

高橋先生がルーレットを回す。対戦科目は…

 

『化学』

 

高『対戦科目は『化学』に決定しました。では、承認します』

 

高橋先生が承認すると化学のフィールドが展開される

 

「「「「試獣召喚!!」」」」

 

フィールドが展開されたのを確認してから僕らが召喚ワードを唱える。それに反応して僕らの召喚獣が現れる。この様子だけで会場からは歓声が上がる。一般公開はこの試合が初めてだから、召喚獣を見るのも初めての人も多いのだろう。

現れた召喚獣は僕らの召喚獣は今まで通りで、優子さんの召喚獣は大きくスリットの入った黒い修道服を着ていて、武器は権杖を持っている(ラグナロク○ンラインのプリースト)。霧島さんはというと

 

雄「ガハッ」

 

雄二が吐血した。霧島さんの召喚獣は胸元が大きく開いている白を基調に赤で縁取られた忍び装束を着ていて、武器は小太刀を一振り持っている(Dead ○r Aliveのか○み)。自分の彼女のそんな姿を見たら雄二の反応も仕方ないのかな。僕も彼女ではないが思い人の召喚獣を見て動揺したし

 

「雄二…」

 

僕は呆れながら雄二に声をかける

 

雄「☆●□◆△?○▼(どうしたんだ?明久)」

 

コイツは…

 

「雄二、大丈夫?」

 

一応聞いておこう。すでに次世代語を話しているけど

 

雄「◎▲□◇ ★∀♪♯(大丈夫だ 問題ない)」

 

なんでだろう、次世代語なのに言いたいことが伝わってくる

 

「雄二、その回答は大丈夫じゃない、よっ」

 

僕は観客に気づかれないように雄二の腹を 軽 く 殴る

 

雄「はっ俺は何をやっていたんだ」

 

なんとか正気に戻った雄二

 

化学

Aクラス 坂本雄二 363点 VS Aクラス 霧島翔子 446点

Aクラス 吉井明久 283点   Aクラス 木下優子 364点

 

遅れて会場の大型ディスプレイに表示される点数。僕は苦手科目なので点数が低い

 

高「準備はいいでしょうか?」

 

点数が表示されたのを確認してから僕らに確認をとる高橋先生。そこで雄二が手を上げる

 

雄「すみませんがマイクを貸してもらえますか?」

 

高「わかりました」

 

雄二の言葉に高橋先生はマイクを雄二に差し出す。それを横目で見ながら僕は優子さん達を手招きする

 

雄『清涼祭にご来場の皆様、こんにちは』

 

雄二がマイクを利用して会場の観客に挨拶をする。その間に二人は僕らの横に来る

 

雄『ここにいる僕ら4人は2-Aにて軽食やデザート類を提供する喫茶店で働いています。よろしければお越しください』

 

そう言って頭を下げる雄二

 

「「「よろしくお願いします」」」

 

それに従って僕ら3人も頭を下げる。ついでに召喚獣にもお辞儀をさせておく

 

雄「進行を妨げてすみませんでした。マイクをお返しします」

 

雄二は高橋先生に謝罪をしてマイクを返す

 

高「いえ、構いませんよ」『――ということだそうです。ご見学の皆様、お時間に余裕がありましたら、出場選手たちのいる2-Aにお立ち寄りください』

 

雄二からマイクを受け取ると高橋先生も宣伝をしてくれた。担任だし協力してくれたのだろう

 

雄「明久、作戦は事前に伝えていた通りだ。頼むぞ」

 

試合開始前に雄二が声をかけてきた。作戦とは僕が霧島さんの相手を、雄二が優子さんの相手をするという単純なものだ

 

高『それでは宣伝も終わりましたから、いよいよ召喚大会の開始です。Aクラスの4人ともいい試合をお願いします』

 

「行くよっ」

 

鷹式一刀流剣術 ― 真空剣 戈蝶風刖(しんくうけん かちょうふうげつ) ―

 

僕は剣を横薙ぎにして真空の斬撃波を二人の真ん中に放つ。少し避ければかわせるが二人を分断するのが目的なのでこれで十分だ。案の定二人は横にかわしたので二人は距離が開く

 

「雄二!!」

 

雄「応っ!!」

 

雄二に声をかけると意図が伝わったのか直ぐに答えて二人の間に入り、優子さんの方を向く。僕も雄二に従い雄二と背中合わせになるように霧島さんに向かい合う

 

翔「…邪魔っ」

 

僕に斬りかかってくる霧島さん。僕はその剣閃を捌いき横薙ぎをして霧島さんを後方に吹っ飛ばす。剣術の基本『パリィ』だ

 

「相手が雄二じゃなくて悪いけど、手加減はしないよ」

 

Aクラス 吉井明久 283点 VS Aクラス 霧島翔子 402点

 

さすがに1.5倍も点数差があったから点数があまり減らない

 

翔「…わかった。吉井を倒して雄二と戦う」

 

霧島さんの標的は僕に変わったようだな。さて、僕も本気にならないとな。僕は剣を左手で逆手に構えると

 

走法<縮地>

 

縮地で懐に潜り込んで柄頭で霧島さんの鳩尾を突いて、体を捻って後ろ回し蹴り、さらに回転の勢いに乗せて逆手に持った剣で袈裟切りをする

 

翔「…っくっ」

 

Aクラス 吉井明久 283点 VS Aクラス 霧島翔子 217点

 

さすがにあれだけ攻撃すれば点数も減るか

 

翔「…吉井の攻撃のパターンと癖は覚えた」

 

霧島さんには悪いけど、僕はわざと癖を出したんだよね

 

縮地

 

僕はまた縮地で霧島さんに近づいて柄頭で鳩尾を狙うが

 

翔「…(サッ)」

 

霧島さんは鳩尾の所で小太刀を両手で構え防御の体勢をとる。僕はそれに構わず柄頭で付くと同時に脇腹に右ひざ蹴りを当てる

 

翔「…えっ?!」

 

霧島さんは同時攻撃に驚くが、僕が体を捻ったのを見て、攻撃に備えるために上段の守りを固めるが、僕は後ろ回し蹴りと同時に腹部に肘鉄を当てる

 

翔「…っく」

 

霧島さんは距離をとるためにバックステップで距離をとるが

 

「甘いよっ」

 

僕は剣を中段で水平に構え突進する。霧島さんは反応が遅れて腹を串刺しにされた召喚獣は霧散する

 

霧島翔子 戦死

 

僕が剣をしまうと会場から大きな歓声が上がる。雄二の方を見ると優子さんの召喚獣が消えるところだった。雄二も勝ったみたいだな

 




雄二君にも壊れてもらいました。
またやったことのないゲームから衣装を持ってきました、色々とすみません。
雄二と明久は何かと上手くやっていけそうですね。


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召喚大会 準決勝

4回戦の雄二Sideと準決勝です。


少し時間が遡ります

 

雄二Side

 

明久「雄二!!」

 

「応!!」

 

俺は明久の声に応えると翔子と木下との間に入ると木下の方を向き、翔子の方は明久に任せる

 

優「あら?坂本君、代表の相手じゃなくていいのかしら?」

 

俺に対して木下が声をかけてきた

 

「普通ならばそうするんだがな、今回は負けられないから」

 

俺は木下の疑問に答えると木下に殴りかかる。不意打ち気味だが試合はもう始まっているからな

 

優「そう…でもアタシも負けられないんだから!!」

 

俺の回答に納得すると杖を前方に構えた。俺は構わずに拳を振りぬくと

 

ガキンッ

 

木下に当たる前に何かに阻まれる。どうやら魔法のようなものでバリアを張ったようだな

 

Aクラス 坂本雄二 353点 VS Aクラス 木下優子 364点

 

少し点数が減る。バリアを殴った時の反動でダメージを受けたようだ。俺は警戒してバックステップで距離をとる

 

優「そこっ」

 

木下がジャンプしながら杖を上段から振り下ろしてきたので、俺は攻撃をかわしてからジャブをしようとするが

 

ガキンッ

 

またバリアに阻まれる。クソッ本人の周りにバリアがあるのか

 

Aクラス 坂本雄二 347点 VS Aクラス 木下優子 364点

 

軽く攻撃したのであまり点数は減らない。一気にバリアを破らないと辛いな。俺は拳を大きく引いて力をためる。これでカウンターを決めればかなりの威力になるはずだ

 

優「そっちが来ないならこっちから行くわよっ!!」

 

さっきのでこっちの攻撃が効かないと思ったのか、また大振りな攻撃をしてくる。俺はその攻撃を最小限の動作で避けて懐に潜り込むと、木下の攻撃の勢いに合わせてカウンターを決める

 

バキン  ドンッ

 

何かが割れる音と共に木下の召喚獣が吹っ飛ぶ

 

優「えっ」

 

Aクラス 坂本雄二 300点 VS Aクラス 木下優子 152点

 

こっちもダメージが大きいがなんとかバリアを壊したみたいだな。木下の方は何が起こったのか分かってないようだが、俺は構わずに近づいてから鳩尾にガゼルパンチを当てる

 

木下優子 戦死

 

ポンッ

 

その攻撃で木下の召喚獣は霧散した。それと同時に歓声が上がる、明久の方を見ると既に翔子を倒したらしく剣を収めてこちらの様子を見ていた

 

Side out

 

 

 

 

高「勝者、吉井・坂本ペア!!」

 

高橋先生が僕らの勝ち名乗りを上げる

 

翔「…残念…」

 

雄「そんなに落ち込むなって、俺が優勝して賞品とるから」

 

落ち込んでいる霧島さんを励ます雄二

 

優「やっぱり明久君達には勝てなかったわね(チケット取れたら一輝君を誘いたかったんだけどな)」

 

「ゴメンね優子さん。こっちにも負けられない事情があってね」

 

優子さんには悪いことしちゃったな。透さんに頼んでプレオープンのペアチケットを用意してもらおうかな

 

優「気にしなくていいわよ(明久君はどっちを誘うのかしら)」

 

優子さんが気にするなと言うので、その話は切り上げて僕らは教室へと向かった。気にするなと言いながらも何かを気にしていたのはなぜだろう

 

 

 

 

「ただいま~」

 

雄「今、戻ったぞ」

 

優「お客さんもいっぱいいるわね」

 

翔「…大盛況」

 

さっきの試合を見た人もいるのか店内は満席状態だった

 

一「お、試合は終わったのか。戻って早々で悪いが人手が足りないから4人とも手伝ってくれ」

 

僕らに気付いた一輝の言葉で僕らはまた接客をし始めた

 

 

 

 

「雄二、そろそろ時間だよ」

 

接客をしていると時間が経っていたので雄二に声をかける

 

雄「っと、もうそんな時間か」

 

翔「…雄二、頑張って」

 

霧島さんが雄二に声援を送る

 

雄「おう、任せとけ。店の方は頼んだぞ」

 

喫茶店の方は明梨たちに任せて僕らは召喚大会の会場へと向かった。次はいよいよ準決勝だ

 

 

 

 

「雄二、相手は誰だっけ?」

 

会場へ着く前に僕は雄二に対戦相手について聞いた

 

雄「俺の予想だと相手はFクラスだな」

 

Fクラスで準決勝まで残れる人って…

 

「姫路さんと島田さんのペアだっけ?」

 

雄「そうだ。あっちのブロックには高得点者があまりいなかったから、姫路の大火力があれば勝ち上がるのは難しいことではないだろう」

 

確かに姫路さんは得意不得意があまりないし一人でもなんとかなるだろうな

 

「もしそうなら作戦はどうする?」

 

一応、雄二に何か作戦があるのかを聞いてみる

 

雄「科目にもよるが明久が姫路を押さえてくれれば、俺が島田を戦死させてから2対1の状況を作るって感じだ。これならいけるだろう?」

 

確かにその作戦なら勝てるだろうけど

 

「それでもいいけどさ。僕が二人の気を引くから、その間に雄二が島田さんを倒して」

 

雄「姫路はどうするんだ?やっぱり2対1か?」

 

「いや、島田さんがやられたら動揺するだろうから僕が一気に決めるよ」

 

雄「わかった。その作戦で行こう」

 

雄二と話をしているうちに会場に着いていた

 

 

 

西『これより召喚大会準決勝1組目の試合を行う。出場者は前に!!』

 

少しすると西村先生の合図があったので僕らは前に出る。対戦相手は

 

島「吉井に坂本。ここまでよく勝ち上がってきたわね。でもウチらに勝てるとは思ってないでしょ?」

 

正直、勝てるとしか思っていないよ

 

雄「はっお前らなんか眼中にねぇよ!!」

 

姫「私たちの邪魔をしないでください。吉井君、坂本君」

 

姫路さんは優勝狙いなのかな?でも

 

「悪いけど、こっちも負けられない事情があるんだよね」

 

プレオープンチケットで明梨と日向を誘うんだから負けるわけにはいかない

 

西『出場者も出揃ったので科目を決める』

 

僕らが規定の位置に着いたのを確認すると西村先生がルーレットを回す。今回の科目は

 

『物理』

 

雄「(明久、物理なら俺が姫路の相手をした方がいいんじゃないか?)」

 

科目を見て僕にアイコンタクトを送ってくる雄二

 

「(問題ないから、作戦通りでいいよ)」

 

確かに物理は僕の苦手教科だが姫路さんぐらいなら問題ない

 

西『対戦科目は物理。承認する』

 

「「「「試獣召喚!!」」」」

 

物理のフィールドが展開されたのを確認してから僕らは召喚ワードを唱える。島田さんの召喚獣はボロボロの黒いローブに大鎌、姫路さんの召喚獣はガスマスクに白衣、黒い厚手の手袋をしていて手にはフラスコや試験管を持っている。なるほど、死神とマッドサイエンティストか

 

雄「嫉妬と毒料理か(ピッタリだな)」ボソッ

 

雄二が小声でそう呟いた。毒料理は分かるが、嫉妬?なんのことだろう

 

物理

Aクラス 坂本雄二 628点 VS Fクラス 姫路瑞希 398点

Aクラス 吉井明久 299点   Fクラス 島田美波 102点

 

やっぱり雄二は計算系の問題が得意だから物理もかなりの点数だな。島田さんも物理は図とかがあるから解けるのかな

 

島「300点って、吉井、アンタまたカンニングしたんでしょ!!」

 

『また』って僕は一度もカンニングしたことは無いのだが

 

西『召喚大会準決勝、試合開始!!』

 

僕らが呆れていると西村先生が試合の開始を告げる

 

ダンッ

 

開始と同時に僕は地面を蹴って高く飛ぶ

 

島・姫「「えっ?」」

 

島田さんと姫路さんは僕の行動に驚いて、注意がこっちに向く

 

雄「余所見とは余裕だなっ!!」

 

ポンッ

 

島田美波 戦死

 

気が逸れていた島田さんを雄二が戦死させる

 

島「えっ?!」

 

島田さんは何が起こったのか分かってないようだ

 

姫「み、美波ちゃん?!」

 

島田さんが戦死したことにより姫路さんは雄二の方を見て、僕から視線が逸れる。ちょうど姫路さんの真上だし、今なら隙だらけだ。僕は剣の鍔を足にかけると、剣を蹴り出す

 

舞空【天落】(ぶくう【あまおとし】)

 

剣はそのまま姫路さんの召喚獣を二分する

 

西「勝者、吉井・坂本ペア!!」

 

西村先生が勝ち名乗りを上げるのを背中で聞きながら、僕らは会場を後にした。少し嫌な胸騒ぎがしたからだ

 




準決勝はあっさりと終わってしまったので4回戦の雄二Sideを付けました。


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誘拐騒動

原作の誘拐騒動を一部変更してます。
今のところ予約投稿で更新していますがストックが切れそうです。
投稿日時が1時でなくなったらストック切れです。
書き溜めも筆が進まないのであまりありません。
どのくらいの人が見てくださっているかわかりませんが、更新速度が遅くなる事をご容赦ください。


「ただいま~」

 

僕らは早足で教室に戻ってきたが、教室に入ると違和感に気付いた

 

雄「ん?翔子達がいないな?」

 

雄二の言うとおりだ。明梨、日向、優子さん、霧島さん、工藤さん、神谷さんの6人が見当たらなかった。6人とも仕事中のはずだし、6人全員が席をはずすとも思えない

 

康「……手遅れだったか」

 

そんなことを考えていると康太が息を切らしながら入ってきた

 

「康太、どこに行ってたの?」

 

『手遅れ』という言葉も気になったが、まずはどこに行っていたのかを聞いてみる

 

一「オレの手伝いをしてもらっていたんだ。康太、監視映像の確認を頼む」

 

一輝も康太に続いて教室に入ってきた

 

「手伝い?」

 

なんの手伝いだろう?

 

一「あぁ、竹原の悪事の証拠を掴もうと思ってハッキングしようとしたんだが外からはアクセスできなくってな、教頭が不在の時間を狙ったんだが」

 

雄「なるほど、だから教室にいなかったんだな」

 

一「あぁ。時間も限られるから康太に手伝ってもらったんだ」

 

「それで?証拠は手に入ったの?」

 

一「だいぶセキュリティが厳しかったがオレが解除してメールとか見てみたら色々と見つかったぜ。着服とか収賄とかな」

 

その証拠があれば捕まえるのは簡単だな

 

雄「セキュリティを解除って一輝、お前は何者だ?(身体能力は明久と同レベルだしコイツら人間か?)」

 

一「ん?アメリカの大学で習ったんだが、何かおかしいか?」

 

「一輝はマサチューセッツにある工科大学に行っていたからね」

 

一輝は国語以外ならかなりの高得点だし、飛び級で大学まで行ったらしい

 

雄「マサチューセッツってアレか?」

 

「雄二の思っている大学だと思うよ」

 

すぐに思い当る工科大学なんて一つしかないしね

 

一「そんなことよりも続きを話すぞ。そのメールの中にアキ達を妨害するよう依頼するものがあってな」

 

雄「なるほど、白金の腕輪を暴走させるためか」

 

「暴走なんて起きれば学園長の失脚や学園自体の経営に影響が出るもんね」

 

一「内容自体は『アキと雄二の邪魔をするように』って内容だったんだが」

 

そこで一輝は話を区切る

 

雄「翔子達がいないことと関係があるのか?」

 

康太が『手遅れ』と言っていたし何か掴んだのかな

 

一「『女子を誘拐して弱みを握る』って書いてあったから、オレが後始末をして康太を先に向かわせたんだが、どうやら誘拐されていたようだな」

 

一輝が悔しそうに告げる

 

秀「む?お主らはこんなとこで固まってどうしたのじゃ?紫織たちの姿も見えんが」

 

一輝の説明を聞いていると秀吉が戻ってきた

 

「おかえり秀吉。秀吉は休憩時間だったっけ?」

 

秀「うむ、ところで何ゆえ紫織たちがおらんのじゃ?」

 

康「……あった」

 

秀吉の質問に答えようと思ったら康太がノートPCの画面を見せてきた。その画面を僕らが覗くと男が3人1組で同時に6人を力づくで押さえて連れ去っていた

 

「康太、メイド服にはGPSを付けていたよな。6人の場所はどこだ?」

 

俺は康太に明梨と日向たちの場所を尋ねた。一応の用心として制服にはすべてGPSが付いている

 

康「……少し待ってくれ」

 

「カズ、全速力で行くから準備しとけ」

 

一「応(アキがオレのことを『カズ』って呼ぶってことは完全にキレているな。気持ちはよくわかるが)」

 

場所の特定には少し時間がかかるようなので俺はカズにも声をかけてから、予備の外靴に履き替えて軽くストレッチをする

 

康「……わかった。ここからだと西に800m、北に1.2km行ったところにあるカラオケ――」

 

ガラッ

 

俺とカズは場所を聞くと同時に窓を開けて

 

ダッ

 

飛び降りた。3階ぐらいなら着地も気にしないですむ

 

ドンッ ダッ

 

俺らは着地すると同時に縮地で走り出す

 

走法ノ奥義 縮地【千里行(せんりこう)】

縮地を連続で使うことによって音速以上のスピードを出す。縮地を極めなければできない芸当だ

 

 

 

雄二Side

 

ガラッ ダッ

 

康太が場所を伝え終わる前に明久と一輝は窓を開けて飛び降りた

 

「おい、ここは3階だぞ」

 

俺は二人が気になって窓際に駆け寄る。康太と秀吉も窓から二人を見ているが

 

ドンッ ダッ

 

アイツらは着地と同時に走り出した。って

 

「今、ソニックブームが出ていなかったか?」

 

秀「あの二人は謎が多いのぅ」

 

康「……そんなことよりも、店に急ぐぞ」

 

俺と秀吉が呆れていると、康太が一足早く我に返り、俺たちを急かす

 

「そうだなっ。あの二人に任せれば大丈夫だろうが翔子達が心配だしな」

 

あの二人なら相手がヤクザだろうが何だろうが問題ないとは思うが、翔子を不安な気持ちにはさせたくないからな

 

Side out

 

 

 

 

「ここだなっ」

 

俺と一輝が走り出してから10秒ほどで目的の店に着いた

 

ウィーン

 

店「いらっしゃいませ」

 

俺らが店に入るとカウンターに店員が一人いた

 

一「おい、ここにメイド服を着た女子を連れた男たちが来なかったか?」

 

一輝が店員に聞く

 

店「他のお客様の情報は教えられない決まりになっておりますので――」

 

マニュアル通りの回答なんだろうな。だが

 

「ほぅ。そいつ等は誘拐犯なんだが。言っておくが、犯人蔵匿は重罪だぞ。見たところアルバイトの様だが罰金20万も払えるのか?払えないと2年以下の懲役だが」

 

店「3階の突き当りにあるパーティールームです」

 

俺の言葉を聞いた途端に誘拐犯の居場所を話した。俺らはその言葉を聞くと一気にその部屋に向かった

 

バンッ

 

「明梨、日向、無事か?!」一「優子、大丈夫か?!」

 

件の部屋に着くと俺はドアを勢いよく開け、俺と一輝は部屋に入りながら皆の無事を確かめる

 

「「「「「「?!」」」」」」

 

俺が部屋に入ると誘拐された6人が目を見開いて驚いていた。6人は手足を縛られて猿轡を噛まされているが見たところ怪我などは無いようだ。俺は明梨と日向、一輝は優子に近づいて手足の縄と猿轡を外す

 

明「明君、ありがとう」

 

日「怖かったです、明久君」

 

二人は俺に抱きついてきた

 

「二人とも離れてくれ、皆の縄も外さないと」

 

二人は自分の行動に気づいて赤くなりながらも離れてくれた。惜しいことをしたが今は状況が状況だ

 

優「助かったわ、ありがとうね一輝君」

 

一「気にするな、当然のことをしただけだ」

 

俺と一輝はすぐに残りの3人の縄を解いた

 




犯人がどうしているかは次話で分かります。
明久と一輝は音速の壁を突破しました。


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無事救出

康「……愛子、無事、か?」

 

雄「翔子、大丈、夫か?」

 

秀「紫織、怪我、は、無い、かの?」

 

俺たちが着いてから3分ほど。俺が明梨と日向を落ち着かせると雄二達が息を切らせながらやってきた。たぶん全力で走ってきたんだな

 

翔「…大丈夫、雄二のことを信じていたから」

 

霧島は雄二に抱きついていた。ひゅ~、お熱いねぇ

 

愛「康太君、怖かったヨ~」

 

工藤は康太に抱きついていた。怖かったのは確かだろうが、康太に抱きついたのは反応を楽しむのも目的だろうな。案の定、康太は必死で鼻血を堪えている

 

紫「秀吉君、心配してくれたのね、ありがと~」

 

神谷も秀吉に抱きついた。秀吉の顔が神谷の胸に埋まっているのは気にしないでおこう。秀吉を困らせるのが狙いだろうからな

 

「明梨、日向、誘拐犯はどこだ?」

 

俺は落ち着いてきた二人に質問した。怪我とかはしてないようだが乱暴をしたのは確かだし、誘拐までしたんだからオハナシしなくちゃいけないからな

 

明「あの人たちなら逃げたよ」

 

「は?」

 

俺は明梨の言ったことが理解できずに聞き返した。なんで誘拐をしたのに逃げるんだ?誘拐しかしていないのに

 

日「明久君の名前を口にした途端逃げて行きましたよ」

 

翔「…うん。犯人の一人が『吉井と坂本をおとなしくさせる』って言った途端に逃げていった」

 

日向の説明を聞いていると霧島が補足してきた。なるほど、一部の奴らしか話を聞いていなかったってわけだな

 

 

 

 

~~~~ 誘拐後すぐ ~~~~

 

Other side

 

ガチャ

 

チンピラ20人ほどがメイド服のままの6人を連れて部屋に入ってくる

 

チA「ふぅ~後はコイツらを餌にしておびき出せばいいわけだな」

 

チB「あぁ、しかしこのオネーチャン達美人揃いだな」

 

チC「まったくだ。ヤっちゃっていいか?」

 

『『『『ギャハハハハ』』』』

 

チンピラCの言葉に周りのチンピラが下品な笑いを上げる

 

チD「おいおい、まずは吉井と坂本ってヤツを呼んでからだろ」

 

『『『『『は?』』』』』

 

チンピラDの冷静な一言で多くのチンピラの動きが止まる

 

チD「え?吉井と坂本をおとなしくさせればいいんだろ?」

 

チE「それだけで500万ってチョろい話じゃねぇか」

 

チンピラDの言葉にチンピラEも同意するが

 

チF「おい、吉井と坂本ってフルネームは?」

 

チンピラFが自分の予想が外れていることを祈りながら尋ねるが

 

チD「え~と『吉井明久』と『坂本雄二』だな」

 

チンピラDはケータイのメールを見ながら答えると

 

『『『『『『『なんだって~??!』』』』』』』

 

多くのチンピラが叫び出した

 

チE「おいおい、どうしたんだよ?たかが高校生二人にビビってんじゃねぇよ」

 

チンピラEが呆れているが

 

『『『『ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ』』』』

 

一部のチンピラは精神崩壊気味になっている

 

チA「お前ら知らないのか?『長月の武神』と『悪鬼羅刹』の名を」

 

チD「知ってるけど、どうしたんだ?」

 

チF「『吉井明久』が『長月の武神』で『坂本雄二』が『悪鬼羅刹』だ」

 

D・E「「は?」」

 

チンピラFの言葉にDとEは固まるが我に返ると

 

チD「ちょっと待てよ。『長月の武神』ってあの『長月の烏天狗』の息子じゃねぇか」

 

チE「それに『長月の武神』も『悪鬼羅刹』もあの『長月の武者烏』の弟子って聞いたことがあるぞ」

 

自分の知っている話を口にした

 

『『『『『『『『『『『よし、すぐに逃げよう!!!!』』』』』』』』』』

 

二人の言葉に満場一致で『逃げる』のコマンドを選択したチンピラ達

 

Side out

 

 

 

 

―――――時間は戻って明梨たちの監禁されていたカラオケ店――――

 

紫「たしか、『烏天狗』とか『悪鬼羅刹』とか言っていたわね」

 

雄「なるほど、俺らの噂を知らない奴が依頼を受けたんだろうな」

 

「さてと、誘拐犯を見つけるか」

 

俺はケータイを操作してある番号にかける。呼び出し音の鳴っている時に一輝に『誘拐犯の画像を持ってきてくれ』とアイコンタクトで伝えておいた

 

Prrrrr Prrrrrrr ガチャ

 

暫く呼び出し音がなってから電話がつながった

 

?『はいっ、兄貴!!何の用ですか?』

 

電話に出たのは西風館 銀(ならいだて ぎん)。元暴走族だが今では鳶職をやっている。俺が更生させた不良の一人だ、同時にチーム全員に仕事を紹介したりと大変だったが、透さんも手伝ってくれたおかげで今では全員が仕事に就いている。その恩があるため、俺に協力してくれる

 

「銀か?今から送る画像の連中の居場所を見つけてくれ」

 

銀『は、はいっ、分かりました。チームの奴らにも連絡して探します』

 

「すまんな、仕事もあるのに」

 

銀『いえ、兄貴の為ならいつでも時間を作りますよ。それに兄貴には大恩がありますし』

 

俺は銀に謝るが、気にするなと言われ、通話を切る

 

一「アキ、画像手に入ったぞ」

 

電話を切ると一輝が監視カメラの画像を持って来たので、俺は銀の所にメールで送る

 

「カズ、誘拐犯(カスども)の場所を探させているが、見つけたらどうする?」

 

一「そうだな。ブタ箱と殴るのは決定として……場所によるが雄二達には一旦学校に戻ってもらうか。オレとアキならともかく雄二達だと遅いし、優子達のことも不安だからな」

 

「だとよ。雄二、秀吉、康太、悪いがお前らは先に学校に戻ってろ」

 

俺は霧島達の所にいる雄二達に声をかける

 

雄「お前らはどうするんだ?」

 

「カスどもをとっ捕まえる」

 

秀「わしらも同行したいのじゃ!!」

 

俺の返答に秀吉が抗議の声を上げるが

 

一「悪いが時間も時間だし、お前らの足じゃ足手まといだ」

 

もう夕方だからこれ以上時間をかけるのは危険だ

 

「それに、明梨たちだけで帰すのは危険だろ。3人は日向たちと学校に戻ってくれ」

 

康「…………………わかった」

 

渋々と言った感じで3人は了承してくれた

 

雄「なら俺達はもう学校に返るぞ」

 

雄二は腰を上げて女子たちに声をかける

 

翔「…わかった」

 

紫「わかったわ」

 

愛「わかったヨ~」

 

雄二に促されて霧島達は了解する

 

優「あれ?一輝君達は?」

 

俺らが腰を上げていないので優子が声をかけてきた

 

一「オレとアキは誘拐犯を捕まえてくる」

 

明「それは警察に任せればいいんじゃ?」

 

確かに明梨の言うとおりだが

 

「明梨や日向を誘拐した奴らを放っておくなんてできないからな」

 

日「わかりました。気を付けてくださいね」

 

明「無茶はしないでね」

 

優「一輝君も気をつけてね」

 

3人はそう言って雄二達の後を追った。俺達の心配をしているようだな

 




次回、明久と一輝が無双します。お楽しみに。


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犯人確保

地名はテキトーに考えたので実在していないことを祈ります。



Prrrrrrr Prrrrrrr

 

雄二達が立ち去ってから10分ほどで俺のケータイが鳴ったので出る

 

銀『兄貴、写真の奴らの場所がわかりました』

 

「場所はどこだ?」

 

銀『はい。場所は川那珂町の駅の東にある『カラオケ×◇』です』

 

あそこか。ここからだと20kmくらいか。全速力なら1分半くらいか

 

「わかった。ありがとうな、チームの奴らにも伝えといてくれ」

 

銀『わかりました。兄貴たちもお気をつけて』ピッ

 

俺は銀に礼を言うと通話を切った

 

一「アキ、場所が分かったのか?」

 

「あぁ、どうやら川那珂町にあるカラオケ店らしい」

 

話しながら軽くストレッチをする

 

一「了解、なら行こうぜ」

 

ストレッチを終えて、俺らは目的の場所へと向かった。音速以上のスピードで

 

 

 

 

「ここだな」

 

あれから1分ちょっとで目的地に着いた。怒りの分スピードが出たようだな

 

ウィーン

 

店「いらっしゃいませ~」

 

俺らが店に入ると店員がお決まりの台詞を言ってきた

 

一「この写真の奴らが来ているか?」

 

一輝は監視カメラの写真を店員に見せる

 

店「はい。先程ご来店されましたが、お客様はどういった関係で?」

 

銀の言うとおりここにいるようだな

 

「あぁ、俺らはソイツらの連れだ。部屋を教えてくれ」

 

店「畏まりました。お部屋は4階の突き当りにあるパーティールームですね」

 

 

 

 

チG「ふぅ~ここまで来れば大丈夫だろう」

 

チE「だな。さすがに隣町まで追ってこないだろ」

 

チK「一時はどうなるかと思ったぜ」

 

チM「なんとか逃げられたな」

 

チP「落ち着いたらションベン行きたくなっちまった」

 

チQ「あ、俺も行くわ」

 

チR「俺も、俺も」

 

チS「俺も付いてくわ」

 

俺らが目的の部屋に着くと中からそんな声が聞こえてきた。出てくるなちょうどいいな

 

ガチャ

 

「誰から逃げるって?」一「邪魔するぞ」

 

俺達は部屋に入りながら外に行こうとしていた4人の頭を掴み

 

ゴンッ

 

床に叩きつけた。一応は手加減したから軽傷で済んでいるだろう

 

チL「なっテメェら誰だ?!」

 

俺らの顔は知らない奴らもいるみたいだな

 

チN「こ、コイツは『長月の武神』じゃねぇか」

 

チJ「もう一人は誰だ?武神と同じことができるなんて」

 

カズの名前は知られてないみたいだな。特に暴れていないから当然か

 

チH「なんで俺らの場所が分かるんだよ」

 

チI「来るのが早すぎるぞ」

 

見事に動揺してくれているな

 

チO・T「「くそっ殺っちまえ!!」」

 

自棄になった二人がナイフで俺とカズに突進してくるが

 

キンッ ゴッ

 

俺はナイフを上に弾いてから

 

拳闘術 拳渾一敵(けんこんいってき)

 

腹に正拳を叩きこむ。カズの方も倒したか。これで6人か…まだ15人もいるな。憂さ晴らしにはちょうどいいな

 

「カズ、一人残すから7人ずつだ」

 

一「応」

 

チA「くっ、どうせやられるなら」

 

チN「一発ぐらい入れてやる!!」

 

手前の二人が殴りかかってくるが、俺は上体を軽く反らして避けると

 

拳闘術 究場双拳 ゴスッ

 

殴りかかってきたやつの鳩尾と下腹部に拳を叩きこむ。これであと6人ずつか

 

ヒュン

 

「痛っ」

 

さっき弾いたナイフが頬を掠めた。頭に血が上っていたせいで忘れていた

 

ツー

 

ナイフで切れた場所から血が滲む

 

チB「バ、バケモノ」

 

チR「こんな奴らに勝てるわけねぇ」

 

俺らの強さに動揺するチンピラども。面倒だし一気に終わらせるか

 

六翼転反(むよくてんたん)

 

まずは近くの6人の中央に縮地で移動し

 

チC「なっ」

 

俺が目の前に現れて驚いているが無視して、体を捻って顔面に左で肘鉄を叩きこんでから、その勢いのまま右手で腹に拳を叩きこむ。回転の勢いに乗せて後ろの奴の後頭部に左で肘鉄、右で肝臓のあたりに正拳、回転の勢いはそのままに両手を地面に着いて左右の奴に蹴りを脇腹と首に叩きこむ。

 

C・H・Q・S「「「「ぐふぅ」」」」

 

さっきので4人倒れたようだが、俺の攻撃はまだ終わっていない。俺は腕に力を入れて飛び上がると体を捻って踵落としを前方の奴の脳天に入れて、着地と同時にサマーソルトキックを決めて後ろにいたチンピラを巻き込んで気絶させる

 

B・E・F・J・K・L・P・R「「「「「「「「…………(チーン)」」」」」」」」

 

隣を見るとカズも6人気絶させていた。これで残り一人か

 

チU「お、俺らは依頼を受けただけなんだ。ま、まだ何もしていないし、た、助けてくれ」

 

何もしていないだと?ナニヲイッテイルンダ?

 

「ほぅ明梨や日向たちを無理やり押さえつけたうえに誘拐までしておいて『何もしていない』だと?」

 

一「いい度胸じゃねぇか。優子に手を出した以上カクゴハデキテイルンダロウナ?」

 

カズもだいぶキレているな

 

チU「た、頼む。竹原ってヤツから頼まれただけなんだ。何でもするから助けてくれ」

 

「被教唆者だろうと犯罪は犯罪だ。罪は償ってもらうぞ」

 

犯罪教唆は教唆者、被教唆者共に処罰されるからな

 

チU「わ、わかった。ちゃんと償う」

 

一「それと、竹原のことは警察に言え」

 

コイツらは警察に引き渡しておかないとな

 

チU「わ、わかりました。ほ、他には?」

 

他か…一つだけだな

 

「とりあえず」

 

一「一つだけだな」

 

カズも同意見のようだな。俺らはチンピラに近づくと

 

チ「な、なんだよ」

 

俺・一「「一発殴らせろ」」ゴスッ

 

腹に一発ずつ拳を叩きこむ

 

チU「グフゥ」

 

これで全員気絶したな。俺らはチンピラを放置して店を出ると警察に電話してチンピラを逮捕させた

 

一「そんじゃ、学校に戻るか」

 

「そうだな、雄二達も戻っている頃だろう」

 

一応は電話しておくか

 

Prrrrr Prrrrr…….ガチャ

 

コール音がしばらくなってから向こうが電話に出た

 

雄『もしもし、明久か?』

 

「あぁ、俺だ。誘拐犯達は気絶させて警察を呼んだから、もう大丈夫だ」

 

ひとまず要件を言う

 

雄『あれから15分ほどで片付けるとはな』

 

「そうか?場所の特定だけで10分近くかかったんだがな」

 

雄『………俺達は学校まで20分くらいかかると思うがお前らはどうする?』

 

20分か…

 

「警察の奴らが来るまで店の出入り口を見張るかな。事情聞かれたりするのは面倒だが逃がすわけにもいかないからな」

 

雄『わかった。なら学校で待っているぞ』

 

「おう、明梨と日向のことを頼む」ピッ

 

俺は雄二達との電話を切ると一輝と一緒に出入り口を見張った

 

 

 

 

「ただいま~」

 

一「戻ったぞ」

 

僕らは警察が誘拐犯を連行していくのを確認してから、学校へ走ってきたので雄二に電話してからは25分くらい経っていた。予想通り教室には雄二達が先に着いていた

 

明「あっ、明君おかえ…」

 

日「お帰りな…」

 

明梨と日向は僕の顔を見て言葉に詰まってしまっている。はて、どうしたんだろうか

 

明・日「「どうしたの(どうしたんですか)。その顔の傷」」

 

顔の傷?あぁ、ナイフで切れた頬か

 

「大したことないよ。もう血も止まっているし」

 

このぐらいの傷ならなんてことない

 

明「ちゃんと消毒しないとダメだよ!!」

 

日「そうです。治療するから保健室に行きますよ」

 

そう言って僕の腕を掴み保健室へ行こうとする二人

 

「だ、大丈夫だって」

 

明「『無茶しないで』って言ったよね。なのに怪我をしてきて」

 

日「私も『気をつけて下さい』って言ったはずですよ」

 

それを言われたら反論できない

 

雄「明久、俺達は帰るから二人の方はお前が守れよ」

 

保健室へ連行される僕に雄二が声をかけてきたので辛うじて「了解」とだけ答えた

 

 

 

 

―― 保健室 ――

 

「痛っ」

 

消毒薬の沁みる痛みに僕は動いてしまう

 

明「男の子なんだから我慢して」

 

普通の痛みなら我慢できるんだけど、沁みる痛みって反射で動いちゃうよ

 

日「はい、これで終わりです」

 

「二人ともありがとうね」

 

わざわざ手当てしてくれた二人にお礼を言うが

 

明「そう思っているんなら無茶しないでね」

 

日「私たちは心配だったんですからね」

 

お灸をすえられてしまった。僕は二人には頭が上がりそうにないな

 

「………はい。さ、二人とも遅くならないうちに帰ろう」

 

僕ははぐらかして二人に帰るように言って教室へと行く

 

明「ちょっと明君、話を逸らさないでよ!!」

 

日「待って下さい明久君。話は終わってませんよ」

 

結局逃げることはできずに帰り道では二人に説教されながら帰ることになってしまった

 




しっかりと捕まえてもらいました。懲役は3年ぐらいですかね。
もちろん透や昭斗が社会復帰はさせませんが


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学園祭デート(明久編・トライアングルデート)

清涼祭二日目です。
一日目は明久達に休憩がなかったので作りました。
三角関係なのでトライアングルデートと名づけましたがあっているのか分かりません。


ピンポーン

 

?『は~い』ガチャ

 

僕が日向の家の呼び鈴を鳴らすと返事をしながら制服姿の日向が出てきた

 

「おはよう日向」

 

明「おはようヒナちゃん」

 

昨日の帰り道に3人で登校する約束をしたので明梨と迎えに来た。昨日は何もなかったけど心配だからね

 

日「おはようございます。明久君、明梨ちゃん」

 

「その様子だとちゃんと眠れたみたいだね」

 

日向の顔色もいいし昨日のことは気にしてないようだな。よかった

 

明「明君、心配し過ぎだよ。女の子は明君が思っているほど弱くないよ」

 

幼馴染からのありがたい言葉が心に響くよ。明梨を迎えに行った時も色々と聞いて呆れられちゃったしな。しかし二人ともすごいね、誘拐なんてされたのに気にしてないように見えるもん。ただ僕としては二人を心配するのは当たり前のことなんだよね

 

「分かっているけど、あんなことがあったんだから心配するのは当然だと思うよ」

 

その後は普通に登校した。何もなかったのが逆に不気味な感じがするな

 

 

 

 

雄「さて、今日で清涼祭も終わりだ。昨日は色々とトラブルがあったから休憩のとれていない奴がいたら手を挙げてくれ。出来るだけシフトを調整するからな」

 

雄二の言葉に手を上げたのは明梨と日向、霧島さん、優子さん、神谷さん、工藤さんの6人だった

 

雄「ん?一輝と康太、秀吉はいいのか?」

 

一「オレは調べ物しに抜けたからな」

 

康「……同じく」

 

秀「それを言うならばお主らの方こそ大会の時以外店におったじゃろぅ」

 

あまり気にしていなかったが僕と雄二は教室と大会の会場しか行ってなかったな

 

雄「そうか…なら今名前が挙がった5人と手を挙げた6人は11時半まで休憩だ。さすがに昼時は店にいてもらいたいからな。今日のシフトを貼っておくから各自確認してくれ」

 

11時半か清涼祭は8時半から開始だから3時間休憩できるな。召喚大会の決勝戦は1時からだからそれまでは喫茶店の方も手伝えるな

 

明「あの、明君」

 

そんなことを考えていると明梨に声をかけられたので振り返ると明梨と日向がいた

 

「二人ともどうしたの?」

 

日「明久君はこの後どうするんですか?」

 

この後か…急に出来た休みだからな……

 

「特に決めていないけど…二人は?」

 

明「明君がいいなら3人で回りたいんだけど…どうかな?」

 

僕としては断る理由は無いな。二人と一緒にいられるし………昨日のこともあって心配なのもあるからね

 

「お供させてもらうよ。よろしくね二人とも」

 

明「うん。よろしくね、明君」

 

日「よろしくおねがいします、明久君」

 

結局いつもの3人で回ることになった。昨日は色々とあったから今日はのんびりと回れるといいな

 

 

 

 

「どこから回ろっか。二人はどこか行きたいところある?」

 

僕はパンフレットを見ながら二人に尋ねる

 

明「う~ん。わたしは喫茶店や召喚大会に力を入れていたからなぁ…」

 

日「私もあまり気にしてなかったです……明久君はどこかないんですか?」

 

僕も気にしてなかったからな…他のクラスか……

 

「そうだ、龍兄のクラスに行ってみない?」

 

知り合いのクラスって龍兄のクラスぐらいだからな…Fクラスに行くと大変なことになりそうだし……

 

明「龍彦さんのクラス?」

 

日「たしか3-Aでしたよね。何をやっているんですか?」

 

そういえば確認してなかったな。僕はパンフレットを開く。Aクラスは最初のページに見開きのカラーで載っているからわかりやすいな。写真とかも貼ってあるし。え?Fクラスはどうかって?………文字だけがパンフレットの端っこに載っているよ。…こんなとこでも格差があるんだね

 

「え~と、『迷路風お化け屋敷』だって。二人とも大丈夫?」

 

二人はお化けとかが苦手だった気がするけど

 

明「う、うん。大丈夫だよ…(文化祭のだしそんなに怖くは無いよね)」

 

日「は、はい。…頑張ります(明久君と一緒なら…)」

 

『頑張る』って無理しなくてもいいのに…

 

「二人とも無理はしないでね。他にも出し物はあるんだし」

 

二人が『大丈夫』と言うので仕方なく3-Aに向かうことにした

 

 

 

 

龍「お、明久に明梨ちゃんに日向ちゃん、いらっしゃい」

 

僕らが3-Aに着くと龍兄が受付をしていた

 

「おはよう龍兄。3人分お願い」

 

入場料は一人300円なので僕は千円札を一枚渡す

 

龍「はいよ。じゃあお釣り100円な」

 

明「明君、自分の分くらい自分で払うから」

 

日「そうですよ」

 

龍兄がお釣りを渡してくると明梨と日向が自分で払うと言ってきたが

 

龍「はいはい。明久は二人にカッコつけたいんだからそう言うことは言わないで、甘えちゃえ!!」

 

龍兄がそんなことを言って二人を止めた。って何をいっているんだこの人は……確かにあっているけど

 

「た、龍兄?!な、何を言っているの?!」

 

龍「まぁ『男は女の前ではカッコつけたい』ってことだよ」

 

僕の台詞をスルーして龍兄が話を締める

 

明「そう言うなら…」

 

日「お言葉に甘えさせてもらいます」

 

龍兄の言葉で二人も納得してくれたみたいだけど…うん、気にしないことにしよう

 

龍「じゃあ、3人とも楽しんでね」

 

バタン

 

龍兄はそんなことを言いながら僕らの背中を押して中に入れて扉を閉めた。中は外からの光が遮られていて壁が見えるぐらいの明るさしかない。さすがに本格的だな、壁もしっかりとしているし3年も業者が工事したのかな

 

「じゃあ行こうか」

 

明・日「「…う、うん(は、はい)……」」

 

やっぱり怖いようだな二人とも僕の服の裾を掴んで隠れるようにしているし

 

「無理なら言ってね、リタイアもあるみたいだし」

 

このお化け屋敷は非常口があって怖い人はそこからリタイアできるらしい

 

明「…だ、だいじょうぶだよ。……たぶん…」

 

日「…まだ何もないですし……」

 

これは限界が近そうだな……とはいえ二人が頑張っているんだから前に進むかな

そう思って僕を先頭に少し進むと

 

ガタガタ…….

 

日「きゃあっ」

 

突然壁が揺れて日向が驚いて僕の腕に抱きついてきた…柔らかい感触が腕に当たっているが気にしないようにしよう。……意識すると理性を保てなくなりそうだからな

 

ヒュン  ピタッ

 

明・日「「きゃあっ」」

 

ヒヤッとしたものが飛んで来て二人が同時に悲鳴を上げた。明梨は日向と反対側の腕に抱きついてきて、日向は抱きつく力を強くしてきたので胸の感触が…やばい『何か他のことを考えないと』と思い目を凝らして飛んできた物を見ると糸で吊るされたこんにゃくだった

 

「明梨、日向、無理しないで出ようか?」

 

これ以上は僕の理性が…と思ったのだが

 

明「だ、だいじょぶ…」

 

日「ら、らいひょうぶです」

 

日向は舌まわってないし……うん。二人とも出る気はないみたいだし、煩悩を払おう。色即是空、空即是色.....

 

 

 

 

ガラッ

 

瑠「ありがとうございました~」

 

出口の扉をあけると瑠璃姉が出迎えてくれた。しかし『迷路風』と言うだけはあるな……何度か迷いかけたからな

 

瑠「なんだ明久君か…」

 

客が僕だと気付いてから何故か僕の方を見てニヤつく瑠璃姉。…なんか嫌な予感がする

 

瑠「両手に華とはやるねぇ~色男」

 

両手に華?その言葉に僕は自分の両腕を見ると右に明梨が、左に日向が抱きついていた。…意識し出したら恥ずかしくなってきた

 

明・日「「ひゃっ」」

 

二人は自分の状況に気付いたのか飛び上がりそうな勢いで僕から離れ顔を赤らめて俯いている。…恥ずかしかったんだろうな

 

「瑠璃姉、からかわないでよ!!」

 

瑠「ゴメンね~。そっちの二人は明梨ちゃんと日向ちゃんかな?」

 

僕の言葉を軽く流して、二人について聞いてきた

 

明「あ、はい、藤崎明梨です」

 

日「久遠日向です。え~と」

 

瑠「私は柳浦瑠璃香よ、瑠璃香でいいわ。あ、コレわたしの連絡先ね。何かあったらお姉さんに相談してね。…恋愛のこととか(ぼそっ)」

 

明・日「「あ、ありがとうございます」」

 

瑠璃香さんは二人にメモを渡してそう言った。最後に二人の耳元で何か言ったようだが何だろう?言った途端に二人の顔が赤くなったんだけど…

 

 

 

 

そのあとは3人で出店を回りながら軽く腹ごしらえをしてクラスに戻った。……やっぱり二人と一緒にいると楽しいな

 




ちょっと龍兄と瑠璃姉を出してみました。
…次に出るとしたら召喚獣のお化け化の回だと思います。


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学園祭デート(一輝編)

学園祭デート二話目です。今回は一輝編です。



一輝Side

 

雄「そうか…なら今名前が挙がった5人と手を挙げた6人は11時半まで休憩だ。さすがに昼時は店にいてもらいたいからな。今日のシフトを貼っておくから各自確認してくれ」

 

自由時間が3時間ほどか…学祭なんて初めてだから色々と見て回っかな

 

優「一輝君はこの後どうするの?」

 

オレがそんなことを考えていると優子に話しかけられた

 

「初めての学祭だしブラついて見ようと思ってたんだが…優子はどうするんだ?」

 

優「迷惑じゃなければアタシも一緒に行きたいんだけど…」

 

「別に構わないが、いいのか?せっかくの自由時間なのに」

 

オレとしては優子と一緒にいると不思議と落ち着くからむしろ嬉しいことだが…

 

優「いいのよ。さ、時間も長くは無いんだから早く行きましょ」

 

そう言うと優子はオレの腕を掴んで引っ張って行った。…なんかデートみたいだな

 

 

 

 

「しっかし色んな出し物があるんだなぁ」

 

オレはパンフレットに書かれている出し物の種類に驚いた。喫茶店だけでも『コスプレ』や『和風』,『中華』など数種類あるし、お化け屋敷や屋台,召喚システムに関する展示など種類も様々だ

 

優「一輝君って転校してくる前はどこにいたの?…学園祭が初めてなんて」

 

「ん?言ってなかったか?オレは小学卒業してからアメリカの大学に行ってたんだ。親父の仕事の都合で」

 

そう言えば優子と昔のことを話すことは無かったな

 

優「小学校卒業してから大学ってスゴイわね…」

 

優子は呆れ気味だな。…それが普通の反応か

 

「だから学祭に関しては知識として知っている程度なんだよ」

 

優「そうなんだ。…じゃあ初めての学園祭を楽しみましょ。どこから行くの?」

 

優子に言われて改めてパンフレットを見て考える

 

「う~ん…お、『縁日風屋台』か。面白そうだな」

 

アメリカに行っている間はそういうとこに行けなかったからな

 

優「一輝君は縁日とか言ったことあるの?」

 

「小学までは日本にいたしよくアキと明梨と3人で行ってたな」

 

懐かしいなぁ~射的で目玉商品を落としたり金魚すくいで掬い続けたり……あれ?オレって店側からしたら迷惑な客だったな。………今度からは自重しよう…

 

優「じゃあ、いきましょ。場所はどこなの?」

 

「3-Bだな」

 

オレの手をとりながら尋ねてくる優子にオレは場所を答える

 

 

 

 

優「早く入りましょ」

 

優子に引っ張られる形で3-Bに入る

 

「懐かしいなぁ~。色々とあるんだな」

 

優「…え、あ、そうね」

 

優子はオレの台詞に少し遅れて反応したので優子の視線の先を見ると射的屋があった

 

「どうした?何か欲しいモンでもあったか?」

 

優「あのペンダントがキレイだなぁって思ってただけよ」

 

優子が指さしたのはハート型のペンダントだった

 

「アレか?あのぐらいなら取ってやるよ。すいません、一回分お願いします」

 

優「え?!いいわよ。取れないだろうし」

 

店「はいよ、お釣り700円ね」

 

1回5発で300円なのでオレは千円札を渡してお釣りを受け取る。優子は取れないって言うけどオレは得意なんだよな

 

「まぁ見てろって」

 

オレは優子に笑いかけてペンダントを見る。重心とか考えると2発でいけるだろうな

 

カチン バン   カチン バン

 

一発目を撃った後一発目の揺れを殺さないようにすぐに次弾を詰めて撃つ

 

グラッ コトン

 

ペンダントの入った小箱は大きく揺れて落ちる

 

店「あ、どうぞ。おめでとうございます」

 

メインの景品があっさり落とされて唖然としていた店員が我に返ってペンダントを俺に渡してきた。…悪いことしちまったかな

 

「ほい、優子」

 

優「ありがとう。一輝君って射的得意なの?」

 

オレが優子にペンダントを渡すとそんなことを聞いてきた

 

「まぁガキの頃から縁日ではよくやってたし向こうじゃ実弾射撃場とかにも行ってたからな」

 

優「実弾射撃場って…」

 

優子の反応は正しいだろうな。…中学生の年のガキが実弾なんて……

 

「それよりもまだ3発残っているがどうする?撃ってみるか?」

 

オレは話を切り上げて銃と弾を優子の前に出して聞いてみる

 

優「一輝君は欲しいのないの?」

 

「まぁ縁日の雰囲気も味わえたし満足したからな」

 

優「そう…じゃあ、やってみようかしら」

 

優子はすこし考えた後にオレの持っている銃を受け取った

 

優「えっと…この後はどうするの?」

 

優子はコルク玉を詰めた後にオレに聞いてきた

 

「なんだ初めてやるのか?」

 

優「う……縁日とかあまり行かなかったんだからしょうがないじゃない!!何か文句あるの?!」

 

「いや文句なんて無えよ。後はレバーを引いてから引き金を引くだけだ」

 

突然怒り出した優子に苦笑しながらオレは説明する

 

優「わかったわ。…レバーを引いて……」

 

  カチン

 

優子はレバーを引いてから狙いを定めて

 

優「…引き金を引く」

 

バン  コン

 

優子の撃った弾は外れて台の所に当たった

 

優「……当たらないわね。……どうやったら当たるの?一輝君」

 

当たらなかったのが悔しかったのかオレにコツを聞いてきた

 

「まず肩に力が入り過ぎだ、もっとリラックスして撃て。それと脇を締めろ」

 

優「脇を締めて、リラックスして……」

 

優子はオレの言った言葉を復唱してるが

 

「そうじゃなくて…もっと腕を体にくっつけて安定させるんだよ」

 

優「え?!きゃっ」

 

バン  コン

 

オレは優子を後ろから抱き締めるように姿勢を直そうとしたら驚いた優子が引き金を引いてしまった

 

「わりぃ。突然触っちまって…」

 

優「アタシこそ驚いちゃってゴメン。教えてもらっているのに…」

 

優子は赤くなりながらもオレに謝ってきた。……悪いのはオレだと思うんだがな。それと優子の驚いた顔可愛かったな

 

優「……それで、どうするの?」

 

「あぁ、脇を締めて…こんな感じで構えるんだよ」

 

オレは銃を持たずに構え方を示す。……さっきみたいなことになるのは嫌だからな

 

優「よくわからないから教えてよ…さっきみたいに驚いたりしないから……」

 

「わ、わかった」

 

優子に言われたので”仕方なく”さっきのように抱きしめる形で優子の姿勢を正す。……女子ってこんなに華奢なのか。オレは優子の姿勢を正しながらそんなことを考えていた

 

「後は少し下から中心より下の方を狙えばいいだけだ」

 

これ以上この体勢でいるとヤバい気がしたので姿勢を正してから直ぐに離れた

 

優「…わかったわ(もう少しあのままでいたかったのに)」

 

優子が落ち込んでいる気がするが何か悪いことしたか?

 

優「ふぅ~…よしっ」

 

バン コン コトン

 

優子は軽く息を吐いてから銃を撃つとキャラメルに当たって落ちた

 

店「どうぞ、おめでとうございます」

 

店員が優子にキャラメルを渡す

 

「おめでとう。一発で落とすとか才能あるんじゃないか?」

 

優「一輝君の教え方がうまかったのよ。ありがとうね」

 

「そりゃ、どういたしまして。お褒めに与り光栄の至りです」

 

オレが褒めると優子が笑顔でお礼を言ってきたのでオレは恥ずかしくなっておどけて返事をした。その後は焼きそばとかを食って他のクラスの展示物を見て回った。二人で回っていると優子が可愛いってことを改めて実感したな……優子って好きなやつとかいるのか?

 

…ウジウジしてるのはオレらしくないな。よし、学祭が終わったらダメ元で告ってみるか

 




やっと1話書き上がりました。最近やる気が絶賛低下中です。
雄二編のアイディアが沸いてきません。秀吉は喫茶店系、康太はお化け屋敷で決定しているのですが…
誰かオラに力とアイディアを分けてくれ~


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学園祭デート(秀吉編)

原作の最新巻が出たそうなので投稿します。
今回は秀吉編です。
なぜ書きにくいオリジナルストーリーを書いているのか謎です。そのせいで執筆速度が低下しているのに……
康太編と雄二編は短くなるかもしれませんが頑張って書いてみます。


秀吉Side

 

雄「そうか…なら今名前が挙がった5人と手を挙げた6人は11時半まで休憩だ。さすがに昼時は店にいてもらいたいからな。今日のシフトを貼っておくから各自確認してくれ」

 

むぅ3時間ほどか…いかにして過ごそうかのぅ

 

紫「ねぇ秀吉君は予定あるかしら?」

 

ワシがパンフレットを見ながら何処に行こうかと考えておると紫織がワシの予定を聞いてきた

 

「いま考えておる所じゃが、どうしたのじゃ?」

 

紫「ちょっと秀吉君と行きたい所があるんだけど、つきあってくれないかしら?」

 

紫織の誘いはあまりいい思い出は無いが付き添いぐらいなら何も起こらんじゃろぅ。そう思ったのが間違いだと気付いたのは直ぐじゃった

 

「別に構わんが」

 

紫「ありがと、じゃあ行きましょ」

 

紫織はワシの返事を聞くと同時にワシの腕を掴んで目的の場所へと向かった

 

 

 

 

紫「ここね」

 

紫織に連れられて着いた場所は

 

「…オカルト喫茶とな?紫織はこういうのが好きじゃったのか?」

 

1-Cの出し物の『オカルト喫茶』じゃった。紫織はこういうのに興味があるのかのぅ?

 

紫「店よりもメニューに興味があるのよ」

 

メニュー?何やら嫌な気配を感じるのじゃが逃げられないようになのかは知らんが、ワシの腕は紫織にしっかりと掴まれておる

 

紫「さぁ入りましょ」

 

ワシのことを気にせずにそのまま喫茶店の中に入って行く紫織。ワシも腕を引っ張られて店の中に入る

 

店「いらっしゃいませ。何名様でご来店ですか?」

 

紫「二人よ」

 

店員がマニュアル通りの対応をすると紫織はそれに答える。この店員はドラキュラじゃろうか?襟の立ったマントを羽織って口から犬歯見えておる。内装は普通の文化祭程度の内装じゃな。…1年の時は格差がないから当然と言えば当然かのぅ

 

店「では、こちらにお掛け下さい。ご注文が決まりましたらお呼びください。それでは今宵は満月になりますのでご注意を」

 

最後に不穏な言葉を残して店員は去って行った。しかし紫織が気になると言ったメニューが気になったので、ワシはメニューを開くと

 

紫「秀吉君は何を飲む?」

 

「む?飲み物だけかの?」

 

紫織が何を飲むか聞いてきた。時間的にあまり腹は空いてないのじゃから構わんが

 

紫「食べ物はあたしが頼むから飲み物だけ決めちゃって」

 

そう言われたので飲み物のあたりを見ると

 

『人間の血(濃厚完熟トマトジュース)』

『地獄の沼(20品目の野菜ジュース)』

『女郎蜘蛛の毒(グレープジュース)』

『エイリアンの血液(ジンジャエール)』

『キリンの血(サイダー)』…etc…

 

オカルト喫茶と言うだけあって名付け方が独特じゃった

 

「では『キリンの血』にするのじゃ」

 

紫「わかったわ。すいませ~ん」

 

店「はい、なんでしょうか?」

 

紫「『キリンの血』と『女郎蜘蛛の毒』と・・・・・・・・をお願い」

 

店「畏まりました。少々お待ち下さい」

 

ワシの注文を聞くと紫織は店員を呼び注文を告げる。最後は店員に耳打ちしておったが何を頼んだのじゃろうか

 

「紫織よ。何を頼んだのじゃ?」

 

紫「ふふっ、…出てきてからのお楽しみよ」

 

紫織は妖艶な笑みを浮かべてそう答える。……不穏な予感しかしないのじゃが、こうなっては逃げることもできんのぅ

 

 

 

 

店「ご注文のお品をお持ちしました」

 

あれから少し経って店員がお盆を持ってこちらにやってきた

 

店「『キリンの血』と『女郎蜘蛛の毒』と」

 

紫「説明はいらないわ」

 

店員がメニューの説明をしようとしたところで紫織が店員の言葉を遮る。見た感じではふつうのたこ焼きの様じゃが…

 

店「畏まりました。では、何かございましたらお呼びください」

 

店員は一礼して下がって行った

 

紫「さぁ秀吉君、食べてみて」

 

そう言って紫織はワシの方にタコ焼き(のようなもの)を置く。仕方がないのでワシは一つを取って

 

「では、いただくのじゃ」パクッ

 

口に入れる。む?普通の味じゃな……いらぬ心配じゃったか?

 

「うむ、美味しいのじゃ」

 

紫「……(まぁ6分の1だから当たらないのも仕方ないわね)」

 

紫織はワシの様子を見て思案顔になる。…いらぬ心配ではないのかのぅ………?

 

紫「じゃあ、あたしも食べてみるわ」パクッ

 

そう言って紫織はタコ焼きを一つ取り口に含む

 

紫「まぁ、普通においしいわね(これで確率は4分の1ね)」

 

なにやら安心したような顔の紫織。…絶対何かあるのじゃ

 

紫「はい、次は秀吉君の番よ」

 

そう言ってワシの方にタコ焼きを置く。……この感じじゃとロシアンルーレットの様なものかもしれんのぅ

 

「では、これを頂くのじゃ」パクッ

 

ワシは警戒しながらタコ焼きをとって口に含む。……どうやらハズレを引いたようじゃ

 

紫「(まだ当たらないようね……)次はあたしね。……これにするわ」パクッ

 

紫織は何か思案した後にタコ焼きを口に含むが

 

紫「~~~~~っつ!!」

 

紫織は鼻のあたりを押さえて悶絶する。……やはりロシアンたこ焼きだったようじゃのぅ

 

「紫織よ、大丈夫かのぅ?」

 

ワシはアタリを引かなかったことに安堵しつつも紫織に声をかける

 

紫「ら、らいじょうぶよ」

 

最初は舌が回らなかったようじゃが、なんとか普段通りを装っているようじゃの。…目は涙でうるんでおるが

 

「ひとまず残っておる物を食べようかの」

 

紫「そうね」

 

そう言って残り二つのたこ焼きを一つずつ食べる

 

 

 

 

紫「すいませ~ん」

 

食べ終わるとすぐに紫織は店員を呼ぶ

 

店「はい、なんでしょうか?」

 

紫「追加注文で『ロシアンたこ焼き』と『ロシアンたい焼き』、それと『ロシアンシュークリーム』をお願い」

 

紫織はメニューにある『ロシアン○○』を片っ端から注文して行く

 

店「か、畏まりました。少々お待ち下さい」

 

店員は紫織の行為に引きつつも注文を厨房へと通す

 

紫「絶対に秀吉君を泣かせて見せるわ」

 

紫織は変なスイッチが入ってしまったようじゃの……

 

 

 

 

あれから注文した品が届いて紫織と交互に食べたのじゃが……

 

紫「……舌が痛いわ・・・」

 

なぜか紫織ばかりがアタリを引いたために紫織は『ワサビ入りたこ焼き』『ハラペーニョ入りたい焼き』『からし入りシュークリーム』を食べて疲弊しておる

 

「あんなに頼むからじゃ…」

 

ワシは呆れて溜め息をつく。二度も追加注文したからのぅ

 

紫「……だって秀吉君の泣き顔が見たかったんだもん」

 

紫織が口を尖らせてそんなことを言ってきた

 

「ワシの泣き顔など見てもなんの得にもならんと思うのじゃが…」

 

紫「そんなことないわよ。秀吉君って可愛いし」

 

「『可愛い』は褒め言葉じゃないと思うのじゃが…」

 

紫織の思考は読みにくいのぅ

 

「しかし何故ワシだけなのじゃ?」

 

紫織はワシ以外をからかう事はあまりない

 

紫「そ、それは……」

 

そこで紫織は口を噤む。言いづらい理由でもあるんじゃろうか?

 

紫「……秀吉君のことが好きだからよ(ボソッ)」

 

紫織の言葉は小声じゃったが、ワシの耳には届いた

 

「い、今言ったことは本当かのぅ?」

 

ワシの聞き間違いかもしれないので確認して見ると

 

紫「本当よ。……それで、どうなの?あたしは秀吉君と付き合いたいんだけど」

 

…考えたこともなかったのじゃ。まさか紫織がワシの事をそのように思っていたとは……ワシは紫織の事をどう思っているのかを考えてみた

容姿は美人に違いないのぅ、性格は少しばかり難儀な所もあるが相手を思いやることもできるし、演劇のことで助言をもらったこともあったのぅ。

 

紫「はぁ~。やっぱりダメか…こんな話するつもりじゃなかったのにね…」

 

紫織はワシの沈黙を否定と取ったようで溜め息をついて落ち込む。…好きかどうかは分からんが紫織のそのような顔は見たくないのじゃ

 

「違うのじゃ。…ただ、ワシは恋愛事には関わりがなかったので『好き』という気持ちが良く分からないのじゃ」

 

ワシは素直な気持ちを紫織に告げる

 

紫「そう………なら、あたしの事は嫌い?」

 

紫織はワシの言葉を聞いて思案すると質問してきた

 

「嫌い…では無いのぅ」

 

好きかは分からんが嫌いではないのは確かなのじゃ

 

紫「わかったわ。秀吉君の気持ちがハッキリするまで返事は保留ってことでいいわ」

 

「すまんのじゃ」

 

紫「気にしないでいいわよ。自分の気持ちってのは気付きにくいことだし誰かに相談してみたら?」

 

そう言って席を立って伝票を持って行こうとする紫織

 

「ここはワシが払うのじゃ」

 

紫「そう…じゃ、ご馳走になるわね」

 

その後は紫織と他のクラスの出し物を見て回ったのじゃ。しかし誰かに相談か…明久にでも相談してみようかのぅ。……あやつは鈍感じゃが一番気心が知れておるし相談しやすいしのぅ

 




紫織が秀吉に告白しました。
合宿までに全カップル成立させる予定です。


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学園祭デート(康太編)

清涼祭デート4話目は康太編です。
今回は康太の想像(妄想力)力が大暴走します。


康太Side

 

雄「そうか…なら今名前が挙がった5人と手を挙げた6人は11時半まで休憩だ。さすがに昼時は店にいてもらいたいからな。今日のシフトを貼っておくから各自確認してくれ」

 

……休憩時間は3時間か……愛子を誘ってみるか。そう思い俺は愛子の所に向かった

 

 

 

 

「……愛子、ちょっといいか?」

 

愛「ん?何カナ?康太君」

 

……愛子は小首を傾げて俺に用事を訪ねてきた。…クッかわいい

 

「……………一緒に回らないか?」

 

俺は鼻血を押さえながらも、なんとか言葉を紡ぐ

 

愛「うん、いいヨ!エスコートよそしくネ、康太君」

 

愛子は俺の腕に抱きつきながら言ってきた

 

「……任せろ(ポタポタ)」

 

俺は鼻血を出しながら答える

 

愛「あはは、やっぱり康太君って面白いネ」

 

愛子は俺の事をどう思っているんだ……

 

「……早く行くぞ」

 

俺は止血を済ませると腕に抱きついている愛子を連れて教室を出た

 

 

 

 

愛「あ、ココ面白そうダヨ。入ってみようヨ」

 

今、俺達は一年のフロアにいる。一年の内は設備に差がなく広さはCクラス程度で設備はDクラス程度になっている。清涼祭などの学園行事でも普通の高校くらいの扱いなので出し物も普通だ。そして愛子が指さしたのは…

 

「……お化け屋敷?」

 

いかにも学園祭らしい出し物だった。見たところ暗幕で外からの光を遮っているようだが……普通はこんなもんか。……AクラスやFクラスが極端なだけだな

 

愛「二人分お願いしま~す」

 

ガラッ

 

俺がそんなことを考えていると愛子は二人分の料金を払って中へと入って行った。…俺の腕を引っ張って

 

「……愛子、自分の分くらい払う」

 

俺は中に入ると立ち止まって愛子に入場料を払うと言う

 

愛「え?気にしないでいいヨ。ボクが入りたくって入ったんだし」

 

「……そうだが。それだと俺の気が収まらない」

 

女子にお金を払われると男として情けない

 

愛「そんなに気にすることでもないと思うんだケド…う~ん、じゃあ康太君がお昼奢ってよ。それでいいでしょ?」

 

「……分かった」

 

俺は愛子の言う条件を飲む

 

愛「じゃあ、お化け屋敷を楽しもうネ」

 

愛子はそう言うと俺の手を取って歩き出す

 

 

 

 

『うらめしや~』

 

愛「あはは、やっぱり面白いネ」

 

井戸から出てきた白装束に長い髪で顔を隠した女子を見て愛子が笑う。……可愛いがその反応は間違っていると思う。さっきからお化け役の生徒が落ち込んで去って行くし

 

「……愛子、怖くは無いのか?」

 

俺は気になっていたことを聞いてみる

 

愛「うん、だって作りものだって分かっているからネ」

 

愛子は振り返って俺の方を見ながらそんなことを言う

 

「……なら、なんでお化け屋敷に?」

 

愛「う~ん、面白そうだったから…カナ?」

 

なんで疑問形なんだ…楽しそうだからいいけど

 

「……そうか」

 

愛「うん、それと暗いところってドキドキしない?」

 

そんなことを話していると

 

 ぴたっ

 

何かが正面から飛んできた。……感触からするとこんにゃく…か?

 

愛「ひゃっ」

 

愛子が可愛い悲鳴をあげて俺に抱きついてきた

 

「……大丈夫か?」

 

愛「…う、うん。ゴメンね康太君、突然抱きついちゃって。ボクって首筋が弱いんだよね」

 

俺が愛子に尋ねると愛子は涙目の上目づかいで説明してきた。…………抱きつき+涙目+上目づかい+好きな女子…………………

 

「………………………(プシューッ)」

 

そんなコンボを食らって俺は鼻血の噴水を作り倒れた

 

愛「わわっ、康太君。大丈夫…じゃないよね?!」

 

愛子は俺の様子に慌てだす

 

「……大丈夫だ。問題ない」

 

俺は何とか立ち上がろうとするが足に力が入らずに立ち上がることができないでいた

 

愛「その台詞は大丈夫じゃないよっ。それにそんなに血を出したら死んじゃうよ」

 

愛子はいまだに出血の止まらない俺を心配して俺のことを抱き寄せる

 

「……愛子の腕の中で逝けるなら、死して一片の悔いなし(クタッ)」

 

俺は愛子の腕の中で意識を手放した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ここはどこだ?」

 

俺が目を覚ますと目に映ったのは清潔感のあふれる真っ白な天井だった。………天国ではないようだな

 

?「あ、康太君気が付いた?」

 

横から声が聞こえたのでそちらに目を向けると愛子がいた。………なぜかナース服で

 

「………なぜそんな恰好を?(ポタポタ)」

 

俺はなんとか鼻血を抑えたが刺激的すぎて鼻血が垂れる

 

愛「あ、ココに来た時に置いてあったから着てみたんだ」

 

周りを見渡すとどうやらココは保健室のようだ。俺はベッドに横になっていて輸血されている。

……………保健室+ベッド→保健→保健体育→実技→××××―――――

 

「………(プシューーーッ)」

 

俺は今までにないほどの勢いで鼻血を噴出した

 

愛「ちょっと康太君?!何を考えたの?!」

 

俺は慌てた愛子の声を聞きながらまた意識を手放した

 

 

俺が意識を取り戻したのは11時ごろだった。愛子は俺が起きるまで看病していたらしかった。その後は軽く昼食を愛子と取ってから教室へと戻ったが俺のせいでほとんど愛子は休憩できなかったため申し訳なくなった。

 




康太が情けなくなってしまってスミマセン。
それと愛子の喋り方の表記が難しいです。


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学園祭デート(坂本夫婦編)

学園祭デートの最終話です。今回は坂本夫婦(雄「誰が夫――」<坂本雄二氏はログアウトしました>)編です。



雄二Side

 

「そうか…なら今名前が挙がった5人と手を挙げた6人は11時半まで休憩だ。さすがに昼時は店にいてもらいたいからな。今日のシフトを貼っておくから各自確認してくれ」

 

俺がそう言うと皆誰かを誘ったりしていた。俺も翔子と回るか、と思って翔子の下に行く

 

「翔子、一緒に回らないか?」

 

自惚れるわけではないが翔子は俺の誘いは断らない。そう思うが一応翔子に聞いてみる

 

翔「…わかった。行こう雄二」ガチャ

 

翔子は俺の誘いに頷くと直ぐに俺の手に手錠を……

 

「………翔子、なんで手錠をかけたんだ?」

 

それとどこから出したんだ?

 

翔「…雄二が逃げないように」

 

おかしいな。あれからは逃げるようなことをしてないんだが

 

「……翔子、逃げないから外してくれないか?手をつなげば問題もないと思うんだが」

 

翔「…うっかりしていた」

 

翔子は手錠を外して腕を組んできた

 

「じゃあ行くか」

 

俺は翔子を連れて教室を出た

 

 

 

 

「なぁ翔子、どこかに入らないか?」

 

あれから翔子と腕組みしたまま5分ほど歩いているのだが周りの男からの視線が痛い

 

翔「……うん。わかった。じゃあ、あそこに入る」

 

そう言って翔子が指さしたのは

 

「ん?『占いの館』?こんなのもあるのか」

 

そこは3-Dの占い屋だった。女子は占いとかに興味あるようだが翔子もそうだったとは意外だな

 

翔「……うん。雄二との将来を占ってもらう」

 

「学祭の出し物なんだし信じすぎるなよ」

 

街にあるような占い屋でも信用ならないのに……

 

翔「……わかった」

 

翔子は頷くと俺のことを引っ張って入って行った

 

 

 

 

占「いらっしゃいませ。今日は何をお望みで?」

 

中に入るとイスラム圏の女性が付けている目の部分以外が隠れている頭巾……ニカーブだったか?…をしている女性がいた。テーブルに水晶玉が乗っているし結構本格的だな

 

翔「…私と雄二の未来を」

 

翔子は恥ずかしげもなくそう言った。いや、よく見ると少し頬を赤くしているから恥ずかしくはあるんだな。……感情を顔に出さないから分かりにくいがな

 

占「わかりました。では……」

 

占い師は俺達の生年月日や名前を聞いた後に占い師は両手を水晶玉にかざしている。しかし占いなんて当たり障りのないことしか言わないんだろうな………どっちの方がいいかなんて確かめる方法もねぇし

 

占「………出ました。お二人はお早めに結婚すると良い気が廻ってくるでしょう。また――」

 

俺がそんなことを考えていると占い師は占いの結果を告げてきて

 

翔「…わかった。雄二、市役所に行こう」

 

翔子は俺の手を掴んで市役所に行こうとする。……って

 

「翔子、ちょっと待て!!俺はまだ16だから結婚できねぇし占いの結果ぐらい最後まで聞け!!」

 

俺は慌てて翔子を止める。……ったく結婚とかに関してだとよく暴走気味になるんだよな

 

翔「………うっかりしてた」

 

占「……続けてもよろしいでしょうか?」

 

占い師がやや引き気味に聞いてきた。……当たり前か目の前でこんな寸劇が繰り広げられたら

 

翔「…お願い」

 

占「わかりました。まずお二人の相性は文句のつけようがないくらい良いです。彼女さんは彼氏さんのことを信用していけばさらにお二人の仲は深まるでしょう――――」

 

占い師は翔子に促されると占いの結果を告げていく。………しかし、なんか占いの結果って言うよりも先輩としての恋愛のアドバイスの様な気もするが

 

占「――――時には意見の食い違いなどから喧嘩をすることもあるでしょうが、喧嘩というのは仲が良いからこそ起こるのです。その時には自分の非も認めて素直に謝れば更に仲は深まります。……お時間の方も残り少なくなってきましたので最後に一言」

 

気付けば占いが始まった時にひっくり返した砂時計の砂が残り少しとなっていた

 

占「これは先輩からのアドバイスになるけど」

 

そこで言葉を区切ってから言葉を紡ぐ

 

占「言葉にしないと気持ちってのは伝わらないからちゃんとコミュニケーションをお互いに取った方がいいわよ。気持ちのすれ違いってのは大きな亀裂になるから気をつけてね」

 

俺達は先輩に軽く礼を言ってから店を出た

 

「まぁ占いなんて当たるも八卦当たらぬも八卦って言うし気にすることでもないか…」

 

翔「…私は雄二を愛している」

 

俺が占いについて感想を言っていると翔子が突然爆弾発言をした

 

「……翔子、どうしたんだ?頭でも打ったか?」

 

翔「…『気持ちは言葉にしないと伝わらない』って言っていたから」

 

翔子はさっきの先輩のアドバイスを実行したらしいな

 

「……はぁ、気持ちは分かるが時と場所を考えろ」

 

翔「…わかった」

 

俺が翔子に注意すると翔子は頷いてくれた。……気持ちは言葉にしないと伝わらない・・・・・か。人の感情ってのは難しいよな

 

その後は屋台や喫茶店で腹ごしらえをしたり、他のクラスの出し物を見たりしてから教室に戻った

 




この学園祭デート編は書いている途中に何度も後悔と挫折をしかけました。
理由は自分にあまり学園祭での思い出がないからですね。そのためネタが思い浮かばないのでこんなに遅くなってしまいました。

それと来週あたりから大学が再開するので更新は週に2,3回ぐらいになると思います。


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召喚大会 決勝戦

やっと決勝戦を書き終わりました。
戦闘描写を期待している方には申し訳ありませんが戦闘は短めです。すみません

4/6 17:35 最後の部分を変更しました


「ただいま〜」

 

僕らが11時ちょっと前に教室に戻ってくると教室はお客さんでいっぱいだった。

 

雄「明久、藤崎、久遠、帰ってきて早々で悪いがすぐに着替えて手伝ってくれ」

 

僕たちに気づいた雄二が声をかけてきた

 

「早めに帰ってきたつもりだったけど、雄二達も戻ってたんだね」

 

てっきり彼女とのデートを楽しんでるのかと

 

雄「途中で様子を見たら人手が足りなさそうだったからな」

 

なるほど、確かに予想以上の来客だな

 

雄「話は後にして着替えてくれ」

 

「「「わかったよ(分かりました)」」」

 

僕らは雄二に返事をしてから更衣室に着替えに行った

 

 

 

 

一「雄二、アキ、ちょっといいか?」

 

僕らがホールで接客をしていると帰ってきた一輝が僕と雄二に話しかけてきた。真剣な様子だけど、また何かあったのかな?

 

雄「要件は何だ?できれば手短に頼む」

 

今は人手が足りているけどあまり余裕は無いので雄二は一輝にそう言った

 

一「あぁ、さっき学園長に会ってな。このクラスで決勝戦の映像を流すらしい」

 

雄「なるほど、学園のアピールか……会場に入りきらない客もいるしな」

 

「ウチのクラスの集客にも役立つね」

 

そんな事しなくても十分忙しいが……

 

一「まぁ勝手に決められてたがな」

 

学園長……

 

雄「話は分かったがそれだけか?」

 

一「いや、このチラシを配るように言われたんだ」

 

そう言って一輝が見せてきたのは、召喚大会の決勝戦を2-Aで生中継する、と言った内容のチラシだった

 

雄「それなら休憩に入る奴らについでに配ってもらうか」

 

一「そうだな。じゃ俺は着替えてくる」

 

一輝はチラシを雄二に渡して更衣室に向った

 

 

 

 

雄「明久、そろそろ時間だが行けるか?」

 

雄二がキッチンにいる僕に声をかけてきた

 

「ちょっと待って……オッケー。はい雄二」

 

僕は持っていた包みの片方を雄二に差し出す

 

雄「ん?これは?」

 

雄二は不思議に思いながらも受け取る

 

「親子丼風ライスバーガーだよ。休憩時間を切り上げたなら小腹が空いているだろうからね」

 

ホール担当の僕がキッチンにいたのはコレを作るためだ。オムライスの材料で軽く作った。…時間があれば手間を掛けるのだが今回は諦めた

 

雄「サンキュ、ちょうど小腹が空いていたから助かる」

 

雄二は僕にお礼を言って包みを開く

 

「どういたしまして。奥さんの手料理には敵わないだろうけど」

 

雄「だから、その『奥さん』って言い方は止めろっ‼」

 

僕が包みを開きながら返すと雄二が反論してきた。……今更否定されても無駄だと思うけど

 

雄「……ったく」

 

言っても無駄だと気づいたのか雄二はライスバーガーを食べ始めた

 

雄「ふむふむ、外のカリッとした食感と中のふわっとした食感が旨いな。それに食欲を刺激するこの香りはごま油と焦がし醤油か?それともう一つ嗅いだ事のあるのがあるんだが……」

 

雄二が味の感想を述べていく。まるでリポーターだな。…中の具は鳥肉をふわふわのだし入り卵焼きで包んで外のご飯はごま油とある調味料で焼いた

 

雄「分かった‼ニンニクだ‼」

 

「半分正解かな。正解はごま油とニンニク醤油だよ」

 

清涼祭で疲れているだろうからニンニク醤油を使ったんだよね

 

雄「なるほどな、しかし明久の料理の腕はプロ顔負けだな」

 

「それほどでもないでしょ。雄二だって料理上手いじゃん」

 

雄二の料理の腕前も一般家庭のレベルは十分に超えているし普通の料理店とかよりは美味いと思う

 

雄「………俺の母親は趣味の為に家事の手を休めていたからな………」

 

雄二は遠い目をしながら料理がうまくなった理由を言ってきた

 

「…………そうなんだ……僕の家は姉さんも母さんも家事が極端に苦手だからね……ウニとたわしを間違えたりするし………だから父さんが居ない時は僕が家事をやっていたからだよ……………」

 

僕も雄二と同じように遠い目をしているだろう

 

雄「……そうか、うちの母親もザリガニと伊勢海老を間違えていたな………」

 

雄二はその時のことを思い出したのか顔色が悪くなっていた

 

「……遅れると大変だから急ごうか」

 

このままだとトリップしそうなので大会の会場に行くように雄二を促す

 

雄「…………っと、そうだな」

 

雄二が僕の言葉に頷き僕らは少し早足で会場へと向かった

 

 

 

 

先「吉井君、坂本君、入場のアナウンスが始まるまでここで待ってて下さい」

 

係員の先生に言われて僕らは入場口の付近で待機している。わざわざ係員を用意するあたり決勝戦は相当力を入れているようだな

 

『さて皆様。長らくお待たせいたしました!これより試験召喚システムによる召喚大会の決勝戦を行います!!』

 

会場のアナウンスが聞こえてくる。聞いたことのない声なのでおそらくプロでも雇っているのだろう。学園長は変な事に金をかけるからね

 

『では、出場選手の入場です!!』

 

先「さ、入場してください」

 

雄「最後まで気ぃ引き締めていくぞ明久!!」

 

「おう、雄二!!」

 

僕らは拳を突き合わせてから会場へと入場する

 

『右手から入場してきたのは二年Aクラス所属の坂本雄二君と吉井明久君です!拍手でお迎えください!』

 

盛大な拍手の中僕らは胸を張って試合会場の中央へと向かう。客席は満席で立ち見の客も多い、たぶん僕らのクラスも繁盛しているだろう

 

『この二人は多くの高得点者相手にほぼ無傷で勝ち上がってきました。果たしてこの二人に勝てる相手はいるのか?!』

 

さすがにプロだけあって会場を盛り上げるのはお手のものって感じだな。僕は試合会場の階段を上がりながらそんなことを考えた。相手は……やっぱりか

 

『対するは三年Aクラス所属の夏川俊平君と常村勇作君です!こちらも拍手でお迎えください!』

 

反対側から出てきたのはチンピラ変態だった

 

『出場選手が少ない三年生ですが決勝戦まで勝ち上がってくるあたりは流石に最高学年。二年生の時の試召戦争などでの経験も活かして卓越した操作で相手を翻弄してきました!!』

 

司会者がチンピラ変態の紹介をする。あまり点数は高くないのか?

 

『では、これより試験召喚システムについての説明をします。試験召喚獣とは―――』

 

雄「ようモブ先輩方、もうセコい小細工はお終いか?」

 

司会者が召喚システムについての説明を始める中、雄二は先輩に話しかける

 

モブ1「誰がモブだっ!!」

 

雄二の言葉に坊主頭の方のモブ先輩が声を荒げる

 

雄「ならハゲ先輩とトサカ先輩か?」

 

ハゲ→坊主頭、トサカ→モヒカン……さすが雄二だな見事なネーミングだ

 

ハ「誰がハゲだっ!!」

 

ト「てめえらは先輩に対する礼儀ってもんを知らないらしいな?ってか作者、テメエ俺らの表記どうにかしろ!!」

 

今度はトサカこと常村先輩まで怒鳴っている。メタ発言もしているし

 

「それで?どうなんですか?」

 

夏「チッ良く考えてみればお前らに小細工なんて必要なかったんだ。問題児なんか相手にすらならないしな!!」

 

僕が尋ねると坊主先輩が舌打ちをしてからそんなことを言ってきた

 

常「まったくだ。コイツらを倒せば推薦を貰えるなんて楽な仕事だな」

 

モヒカン先輩も坊主先輩の発言に頷いている

 

雄「なるほど。教頭に手を貸しているのは推薦の為か」

 

常「あぁそうだ。面倒な入試をパスできるからな」

 

Aクラスに入れる学力があるのなら普通に一般入試でも中堅以上のレベルの大学なら入れると思うんだけど………無駄か。チンピラに勉強なんて似合わないし

 

『それでは対戦科目を決定します。対戦科目は………『日本史』です!!』

 

司会者がルーレットを回すと針は日本史を指して止まった。それを確認して審判の西村先生がフィールドを展開する

 

『では、試合に入りましょう!!選手の皆さん、どうぞ!!』

 

「「「「試獣召喚!!」」」」

 

司会者に促されて僕達は召喚ワードを唱える

 

常「へっ、お前らの貧相な点数が晒されるんだ」

 

夏「恥ずかしくて外に出ることもできないかもな」

 

チンピラ変態は僕らのことを過小評価しているみたいだが……

 

「雄二、ここは僕一人でやるよ」

 

僕は雄二を手で制して召喚獣に武器を構えさせる

 

雄「わかった。しくじるなよ」

 

雄二は僕の言葉に頷いて召喚獣を下がらせた

 

『おっと、これは吉井選手!!1VS2宣言か?!』

 

常「てめえ、本気で潰されたいみたいだな!!」

 

夏「俺等が礼儀ってもんを教えてやる!!」

 

チンピラ先輩が召喚獣に武器のてつの斧を構えさせる。常夏の装備は深緑(紺色)のタンクトップに焦げ茶色(赤墨色)のズボン(ボロ布)。常村は裸足、夏川はトゲトゲの肩当て。(ファイアーエムブレムのゴンザレス・ガレット)

チンピラだから山賊か……Aクラスなのに装備がひどいな

 

常夏「「おいっ説明が雑すぎるぞ!!」」

 

またメタ発言してる

 

日本史

二年Aクラス 坂本雄二 284点 VS 三年Aクラス 常村勇作 209点

二年Aクラス 吉井明久 938点   三年Aクラス 夏川俊平 197点

 

今回のテストは得意分野のところだったから高得点だな

 

『私はこの学園の試験の難しさを知らないんですが、吉井選手の900点台というのはどうなんでしょうか?解説の高橋先生、お願いします』

 

司会者が高橋先生に説明を求める。高橋先生が解説なのか

 

高『担当教科の教師でも700点を取るのがやっとですから、かなりの高得点ですね』

 

高橋先生はそう言っているがあの先生は普通に単教科で800点近く取るから恐ろしい

 

『なるほど。自分の得意科目だからこそ一人で行くと言っているわけですか』

 

常「なっ?!900点台だと?!」

 

夏「吉井って『観察処分者』だろっ?!」

 

『では試合開始ですっ!!』

 

チンピラ先輩が動揺しているが司会者は試合を開始させる

 

「さぁ、行きますよっ」

 

僕は戈蝶風刖を低めに放つ

 

常「そんな攻撃…」

 

夏「当たるかよ、っと」

 

チンピラ先輩は軽くジャンプして避けるが、ここまでは予想通り。僕は戈蝶風刖を放つと同時に前に出ていたので………

 

「この距離なら外しませんよ、っと」

 

腕輪を使って武器を強化してから近距離から戈蝶風刖を放つ。腕輪で強化された攻撃は召喚フィールドの端まで届くほどの斬撃になる。もちろん空中にいる先輩に防ぐ術は無く……

 

ポンッ×2

 

常夏  戦死

 

西『吉井、坂本ペアの勝利!!!』

 

『今年の召喚大会の優勝者は二年Aクラス所属の坂本雄二君と吉井明久君です!皆様、勝者の二人に盛大な拍手を!』

 

西村先生が先輩方の戦死を確認してから判定を言い司会者が僕らの優勝を告げる




明久の料理の腕前を披露したかったのですが伝わったでしょうか?
来週からは講義が再開するのでどの程度更新できるか分かりませんが頑張って行進する予定です。


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清涼祭 終了

久しぶりに連日投稿です。
今話で清涼祭(一般公開)は終了ですが清涼祭編はもう少し続きます。

前話のラストで明久達が帰る描写がありましたが訂正しました。


『それでは、これより優勝者、準優勝者の表彰と新技術のデモンストレーションを行います』

 

司会者に呼ばれて学園長が試合会場の壇上へと上がる

 

学『三年Aクラス所属 常村勇作 上記のものは今回開催された試験召喚大会において準優勝したことをここに評する。同じく夏川順平 以下同文』

 

学園長はチンピラコンビに賞状を渡す。さすがにチンピラコンビでもこういう場面では普通に受け取っているな

 

学『二年Aクラス所属 坂本雄二 上記のものは―――』

 

学園長は僕らに賞状とトロフィー、そして『白金の腕輪』を渡してきた。そういえば教頭の姿が見えないな

 

学『では、これから今回開発した『白金の腕輪』のデモンストレーションに移るさね。二人とも、頼むよ』

 

雄「起動(アウェイクン)」

 

学園長の言葉に僕らは頷いて雄二は腕輪を使う。雄二に渡されたのは『代理召喚』用の腕輪で効果は教師の許可なしで召喚フィールドを展開できるというものである。ただしデメリットとして教科の選択ができないこと、召喚フィールドの展開に50点、維持に10秒ごとに1点が展開しているフィールドの科目の点数から引かれること、腕輪の発動者は召喚ができないこと、などがある

 

「試獣召喚!!」

 

召喚フィールドが展開されたことを確認してから僕は召喚ワードを唱える

 

「そして、二重召喚(ダブル)!!」

 

僕は渡された白金の腕輪の起動ワードを唱える。僕に渡されたのは『同時召喚』用の腕輪で効果は召喚獣の分身を召喚するというものである。この腕輪のデメリットは点数が2体に等分されるために点数が半分になることと2体の召喚獣を同時に扱うために操作が難しいことである。操作が難しいからこの腕輪は僕が貰うことになった

 

世界史

2年Aクラス 吉井明久 246点&246点

 

二体の召喚獣が現れたことにより会場から歓声が上がる。僕は召喚獣を操作して軽く剣劇を始めると会場からは更に大きな歓声が上がる

 

 

 

 

― 教頭室 ―

 

Other Side

 

?「くそっ!!あのポンコツ共め!!あんな問題児なんかに負けやがって」

 

部屋のテレビで召喚大会の決勝の様子を見ていた男、竹原俊郎(たけはらとしお)が腹立たしそうに机をたたく

 

竹「まぁいい。何故かは知らんがあの屑共は高得点だ。腕輪が暴走すればどうとでもなる。クハハハハハ」

 

竹原が高笑いをする中、会場ではデモンストレーションの準備に入っている

 

竹「さぁ、暴走するとも知らずに使ってみろ。あの老いぼれババアは不具合のことを忘れてんだろうな」

 

竹原が下種な笑い声を上げているとテレビの中では雄二が腕輪の召喚ワードを唱えるが…

 

竹「なに?!暴走しないだとっ?いや、坂本は文系の点数が低かったからそのせいだろう」

 

暴走しないことに慌てるが雄二が文系科目が苦手だった事を思い出して冷静になる

 

竹「だが、吉井の方の腕輪は平均点ですら暴走するはずだ。日本史があの点数なら世界史も高いはず」

 

竹原の言うとおり一輝が修正するまでは明久の持つ同時召喚の腕輪はDクラス程度の点数ですら暴走するものだったが……

 

竹「なにっ?!500点近くなのに暴走しないだとっ?!これだと私の計画がっ!!」

 

コンコン  コンコン

 

竹原が頭を抱えていると教頭室のドアがノックされる

 

竹「誰だ?」

 

竹原は不機嫌そうに相手に問いかける

 

?「警察のものですが竹原俊郎さん。あなたにお話があってきました」

 

竹「(警察だとっ?!あの誘拐の件か?だが令状とかは無いはず。あくまで任意のはずだ)少々お待ち下さい」

 

竹原は相手が警察だとわかると焦った様子だったが直ぐに冷静になり書類(文月学園崩壊計画など)などをしまい、パソコンの電源を切るとドアを開けて相手を出迎える

 

竹「お待たせしました。どうぞお入りください」

 

竹原に促されて入ってきたのは警官3人だった

 

警1「本日伺ったのはあなたに誘拐と誘拐教唆の罪で捜査令状と逮捕状が出ているため我々に同行してもらうために来ました」

 

竹「誘拐?私がですか?それに逮捕状なんて何か証拠でもあるんでしょうか?」

 

警官中で一番年長だと思われる男が二枚の書類を机に出すが、竹原はあくまで冷静に対処する

 

警2「昨日逮捕した誘拐犯の証言とあなたのパソコンから送られたメールがあります」

 

20代前半の警官が竹原の送ったメールのコピーを差し出す

 

竹「教唆の方は分かりましたが、誘拐とはどういうことでしょうか?」

 

竹原は何とか罪を軽くしようとするが

 

警1「刑法60条に『共同正犯』というものがありまして、自ら実行しなかった行為から生じた結果にも刑事責任と言うのは生じるんですよ」

 

その一言で竹原は項垂れて抵抗をやめた。誘拐から1日で竹原が捕まった裏には明梨の父の透や警察関係者である日向の父が関係している

 

Side out

 

 

 

 

「ただいま~」

 

明「おかえり。明君、坂本君、優勝おめでとう」

 

日「1対2で勝つなんて流石ですね」

 

一「まぁ、あんなセコいチンピラに負けるわけないだろうが流石だな」

 

優「ほんと、その強さは反則よね」

 

僕達が教室に入るとそれに気付いた明梨、日向、一輝、優子さんがこっちに来て称賛の言葉を述べる。…面と向かって褒められると照れるな

 

翔「…雄二、おめでとう」

 

雄「あぁ、約束だからな」

 

雄二も褒められて顔を背けている

 

秀「お主ら、話は後にして接客をしてくれんかのぅ?」

 

紫「そうね。二人が優勝したから繁盛しているのよ」

 

愛「ネコの手も借りたいってこういう事を言うんだろうネ~」

 

秀吉と神谷さん、工藤さんに注意されて僕らは接客を再開した

 

 

 

 

『ただいまの時刻をもって、清涼祭の一般公開は終了しました。各生徒は速やかに撤収作業を行ってください』

 

「ふぅ~、やっと終わった」

 

秀「さすがに疲れたのぅ」

 

康「……(コクコク)」

 

流石にAクラス、しかも召喚大会で優勝したから客足は途絶えることが無かったのでみんな疲れているようだ。終了の放送と同時に座り込んでいる人もいた

 

雄「皆、疲れているところ悪いが食い物関係だけ後片付けだけしてくれ、その後は明日にやればいいから」

 

雄二の言葉に僕らはテーブルに残っている食器類やキッチンを軽く片付ける。後は明日の撤収時間で何とかなるだろう




竹原には監獄に入ってもらいました。
この作品を書いていると刑法について詳しくなりますね。指示をした場合などでも共同正犯になるらしいので皆様お気を付け下さい。


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清涼祭 その後

清涼祭が終わってからの話です。ちょっと優子のキャラが崩壊してます


一輝Side

 

雄「よし、片付けはこのぐらいでいいだろう。後は自由にしていいぞ」

 

雄二がそう言うとクラスの奴らは後夜祭へ向かう者や早々に帰宅の途につく者、教室で友人と話す者など反応は様ざまだった

 

「優子、ちょっと良いか?」

 

優「え?うん…一輝君、どうしたの?」

 

そんななかオレは工藤達と話している優子に声をかけると話を切り上げてオレの方を向いてきた

 

「あぁ、ちょっとここだと話しにくいから後で屋上に来てくれるか?暇になってからでいいから」

 

さすがに教室で告白なんてお互いにツラいから屋上へ呼び出すことにした

 

優「えぇ、わかったわ。屋上ね?」

 

「あぁ」

 

さて、オレは屋上に向かうとするか

 

 

 

 

―  屋上  ―

 

ガチャ

 

オレが屋上の扉をあけるとそこは後夜祭用の放送設備が設置されていた。放送は他の場所から操作できるのかここには誰もいなかった

 

 

 

ガチャ

 

?「これが流れりゃ俺らの逆転勝利だな」

 

?「あぁ、まさか負けるとは思ってなかったが、これで受験勉強ともおさらばだ」

 

オレが優子が来るのを待っていると出てきたのはムサいチンピラだった。告白の場にチンピラが来るってオレってついてないな……

 

モヒ「テメエは確か2年の…」

 

ってよく見たらいちゃもんつけてきた先輩か…確か……思いだせないからモヒカン先輩でいいか…教頭についてるんだっけ?さっきの台詞からすると推薦状でも書いてもらうのか?

 

坊「くそっ、また邪魔するつもりか。仕方ねえコイツを倒して放送するぞっ」

 

モヒ「お、おうっ!!」

 

坊主先輩の言葉にモヒカン先輩が頷く。ん?よく見たらあの裏門の方にいるのって

 

「先輩、あっち見た方がいいですよ」

 

坊「へっ!!そんな古典的な手に引っ掛かるかよ」

 

オレは攻撃を避けながら先輩に声をかけるが無視された。しかたねえな、優子が来る前に片づけないとな

 

ガシッ

 

「ほら、よく見て下さいよ。裏門に向かっている人を」

 

オレは坊主先輩の頭を鷲掴みにして裏門の方を向かせる

 

坊「なっ?!なんで教頭がポリ公と一緒にいるんだよ?」

 

モヒ「はぁっ?!」

 

坊主先輩の叫びにモヒカン先輩も裏門の方に顔を向ける

 

「昨日の誘拐騒動で逮捕状が出たんだよ。だから推薦の話も無しだな」

 

「「マ、マジかよ……」」

 

チンピラ先輩はオレの説明に項垂れて屋上から出ていった

 

 

 

 

ガチャ

 

チンピラ先輩が出ていってから少し経つと屋上のドアが開いた

 

優「待たせちゃったかしら?一輝君」

 

出てきたのは優子だった。チンピラ先輩のせいで台詞考える暇がなかったな

 

「いや、ちょっと考えたいこともあったし気にしないでくれ」

 

優「そう。それで、話ってのは何かしら?」

 

優子はオレの方を向いて要件を聞いてきた

 

「あ~、そうだな、うん」

 

今から考える時間もないし自分の気持ちを伝えるか

 

「木下優子さん。貴女のことが好きです。よければオレと付き合って下さい」

 

オレは自分の気持ちをそのまま言葉にして伝え頭を下げた。変に回りくどい言い方をするのはオレの性に合ってないからな

 

優「えっ……」

 

オレの告白に対して優子は驚いているのか言葉を詰まらせた

 

優「……えっと、アタシでいいの?」

 

「は?どういう意味だ?」

 

オレは優子の言葉の意味が分からずに聞き返してしまった

 

優「だってアタシって胸もないし、料理も下手だし……」

 

優子は俯きながらさっきの発言の意図を説明してくる

 

「オレは外見で判断なんてしねぇし、料理ならオレが教えてやるよ」

 

アキ達ほどじゃないがオレも料理は得意な方だ

 

優「でも、一輝君は知らないだろうけどアタシって家ではズボラだし」

 

バツが悪そうに言う優子

 

「それは知らなかったけど誰にでも人に言えない秘密ぐらいあるだろ」

 

優「……で、でも」

 

「はぁ~、優子。一つだけ聞くぞ」

 

なかなか告白の返事をしてくれない優子に溜め息を吐きつつも優子の方を向いて

 

「オレと付き合ってくれるのか、嫌なのか。どっちだ?」

 

一番聞きたいことを尋ねる

 

優「えっと……アタシでよければお願いします」

 

「あぁ、これからもよろしくな優子」

 

優子が頭を下げて手を差し出したのでオレはその手を握った

 

バタバタバタバタ………..

 

オレが優子と握手していると遠くからかなりのスピードでこちらに飛んでくるヘリコプターが見えた

 

ヒューーン  ダンッ

 

ヘリが屋上を通過するときに人が飛び降りて屋上に着地した。オレは人が飛ぶと同時に優子を守るために前に出た

 

?「ふぅ~、やっと着いたか」

 

その人物は赤みがかった茶髪を短く切り顎髭を少し伸ばしている。服装はアロハシャツにスーツを着ている。……オレのよく知っている人物だった

 

「透さん。どうしたんですか?」

 

藤崎透、明梨の親父でオレもお世話になっている人物だ

 

透「おぉ、一輝君と……君は木下優子さんかな?」

 

透さんはオレとオレの後ろにいる優子に気付いて優子に聞いてきた

 

優「はい。アタシは木下優子ですけど……」

 

優子は警戒しながら答える。透さんは見た目ヤ○ザだからしょうがないか

 

透「あぁ、俺は藤崎透だ。娘の明梨から君のことはよく聞いているよ。一番の親友だってな」

 

優「え?明梨のお父さん?随分若い気がするんですけど……」

 

優子は透さんが明梨の親父だと聞いて驚いているな……まぁ当たり前か見た感じ20代くらいにしか見えないからな

 

透「ははっ、嬉しいことを言ってくれるな。っと、あまり時間がないからな。ほい、一輝君」

 

透さんはオレに何かの券を渡してきた

 

「如月ハイランドプレオープンペアチケット?」

 

それは月末にプレオープン期間のあるテーマパークのプレオープンチケットだった

 

透「あぁ、明久君が『負けられなかったとは言え優子さんに悪いことしちゃったからプレオープンチケットを優子さんに用意してほしい』って言われたからな」

 

優「誰にでも優しい明久君らしいわね」

 

「まったくだ。透さんチケットありがとうございます」

 

明久の行動にオレと優子は呆れつつも透さんに礼を言う

 

透「どういたしまして」

 

バタバタバタバタ………..

 

透さんが返事を返すとさっき通り過ぎたヘリが戻ってきた

 

透「っと、もうこんな時間か。じゃあ優子ちゃん、これからも明梨と仲良くしてやってくれ。それと二人ともお幸せに」

 

透さんは言いたいことを言い終えるとヘリから下がっている縄梯子に掴まって去って行った

 

優「……なんか、嵐のような人だったわね」

 

優子の意見ももっともだろう

 

「あ~、優子。如月ハイランドに一緒に行くか?」

 

優「もちろん。恋人としての初デートなんだからエスコートよろしくね」

 

「あぁ、愛想尽かされないように頑張るよ」

 

優子に如月ハイランドに行くかと尋ねると即答したのでオレは苦笑しながら返事を返した。しかし優子の笑顔は可愛いな

 

Side end

 

 

 

 

秀「明久よ、少し話があるのじゃが?」

 

後片付けを終えて一休みしていると秀吉が話しかけてきた

 

「分かったよ。屋上でいいかな?」

 

秀吉の様子からすると聞かれたく無い話のようなので屋上に行こうと誘う

 

秀「うむ。それでいいのじゃ」

 

秀吉が同意してくれたので僕らは屋上に向った

 

 

 

 

「あれ?誰か屋上にいるみたいだな。どうする?」

 

僕は階段の途中で屋上に人の気配を感じたので秀吉に伝える

 

秀「む?ならばここでいいのじゃ」

 

ここは四階と屋上の間の踊り場なので人は滅多にこない。その上清涼祭の後で人の声で廊下は騒がしいので話を聞かれる事も無いだろう

 

「それで?話ってのは何かな?」

 

僕は階段に腰掛けながら秀吉に尋ねる

 

秀「む……実は……紫織に告白されたのじゃ」

 

秀吉は恥ずかしそうに小声で話し始めた。やっぱり神谷さんって秀吉の事が好きだったんだね

 

「それで?秀吉はなんて答えたの?」

 

秀「ワシは恋愛事にあまり縁が無いから『好き』という気持ちがよく分からないから返事は保留にしたのじゃ」

 

なるほど。確かに秀吉が同性に告白されるとこは何度か見たが秀吉が異性と交流してるのを見た事は神谷さん以外ではないな

 

「つまり、相談したいのは……」

 

秀「うむ。『好き』という事について明久の意見を聞きたいのじゃ」

 

「『好き』か、う〜ん……」

 

秀吉の言葉に僕は悩む。僕自身その感情を実感したのは最近なので言葉にするのが難しい

 

「秀吉は神谷さんのことをどう思っているの?」

 

秀「性格は少々難儀なところもあるが、演劇でスランプに陥っていた時に助言をくれたりと相手を思いやることもできると思うのじゃ」

 

う~ん聞いている限りだと相性はいいと思うんだけどな

 

「じゃあ、秀吉は神谷さんと居るときどんな気持ちになる」

 

秀「どんな気持ちとな……」

 

僕の質問に秀吉は顎に手を当てて考え込む

 

秀「上手く表現できんのじゃが……『楽しい』に近い感じじゃな。紫織と居るといつの間にか時間が過ぎているような感じじゃ」

 

「ねぇ、秀吉。告白って言ったけど、付き合うってこと」

 

僕は秀吉の答えを聞いてから確認の為に質問する

 

秀「うむ、紫織は『あたしは秀吉君と付き合いたいんだけど』と言ってきたのじゃ」

 

秀吉は神谷さんの声真似で神谷さんの言った台詞を伝えてきた

 

「それなら、付き合ってみたら?結婚みたいに契約ってわけでもないんだし」

 

秀「そんな軽い気持ちで決められるものではないじゃろっ!!」

 

僕の言葉に秀吉が声を荒げるが

 

「秀吉だって神谷さんと居て楽しいんでしょ?それに僕らはまだ高校生なんだし『一緒にいて楽しいから付き合う』ってのもアリだと思うよ」

 

秀「確かに明久の言うことも一理あるのぅ……」

 

僕が自分の意見を言うと秀吉は渋々と行った様子で納得する

 

「……秀吉は神谷さんが悲しむ姿とかを見た時はどう思う?」

 

秀「紫織が悲しむ姿など見たくないのじゃ」

 

僕は少し考えてから秀吉に質問したら秀吉はそう答えてきた

 

「なら付き合った方がいいと思うよ。その人を守りたいとかその人と居るのが楽しいってのが『好き』って感情だと僕は思うからさ」

 

秀「なるほどのぅ…………わかったのじゃ、紫織と付き合ってみるのじゃ」

 

僕の意見を伝えると秀吉は付き合うことに決めたようだ

 

「そうなったら早めに伝えた方がいいよ」

 

秀「うむ、明久よ。相談に乗ってくれて助かったのじゃ」

 

秀吉は僕にお礼を言うと直ぐに階段を下りていった

 




自分は優子って言えないことが多いのとか背徳的な趣味とかを持っているので自分に自信がないイメージがあるのでこんな感じになってしまいました。


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清涼祭 その後2

前回の投稿からだいぶ時間が経ってしまってすみません。
今回は前話の後の話になります。
これからは週一程度の更新になるかもしれません


ガチャ

 

秀吉が去ってすぐに屋上の扉が開いた。そういえば誰かがいたんだっけ

 

「あ、屋上にいたのって一輝と優子さんだったのか」

 

僕がドアの方を向くと一輝と優子さんがいた

 

一「ん?アキか、チケット サンキュな」

 

「僕は透さんに頼んだだけで何もしてないけどね」

 

一輝がチケットのお礼を言ってきたが今回は僕は何もしてないから苦笑しながら返事をする

 

優「それでも明久君が頼んでくれなかったらチケット貰えなかったし、ありがとね」

 

優子さんまでお礼を言ってきたので僕は気恥しくなり頬を掻く

 

「どういたしまして。それよりも、二人ともおめでとう」

 

これ以上謙遜するのもあれなので僕は返事をしてから、二人を祝福する。…………だって二人が手をつないでいるんだもん

 

優「へ?…………(ポンッ)」

 

優子さんは僕に指摘されて気付いたのか茹でダコのように真っ赤になってしまった

 

一「い、いや、待て、アキ。これは、そうじゃなくて……(照れてる優子も可愛いな)」

 

一輝まで動揺してどもっている。それと優子さんの顔に見惚れているな

 

「一輝、慌て過ぎだよ。別に隠すことでもないし」

 

一「そうだったな。まさかいきなり言われると思わなかったからな。アキはこんなとこで何してたんだ?」

 

「えっと……屋上にでも行こうかと思ったら誰かの気配を感じたからここで暇つぶししてたんだよ」

 

秀吉の相談に乗っていたのは一応隠しておく。本人の許可とかもないしね

 

一「……そうか」

 

一輝は僕がテキトーな事を言っているのに気づいたようだが深く追求はしてこなかった

 

「ところで一輝は屋上で何してたの?」

 

なんとなくは分かるが気まずい空気をリセットしたいから聞いてみた

 

一「あ~、オレが優子に告ったんだよ。一応結果を言うと付き合うことになった」

 

一輝は恥ずかしそうにそっぽを向きながら答える。へぇ~一輝から告白したんだ。てっきり優子さんからかと思ったけど

 

一「じゃあ俺らはもう帰るわ。お~い、優子~。帰るぞ~」

 

優「ふぇっ?あ、そうね。そろそろ帰らないと」

 

一輝が優子さんの肩を軽くゆすると優子さんは我に返って返事をした

 

一「じゃあな、アキ。また明日」

 

優「さよなら、明久君。また明日ね」

 

「うん、またね。一輝、優子さん」

 

僕らは別れの挨拶を交わして分かれた

 

 

 

 

「あれ?明梨に日向、二人ともまだ残っていたの?」

 

僕が教室に戻ると教室には明梨と日向だけが残っていて他の人は見当たらなかった

 

明「うん。明君と一緒に帰ろうと思ったからね」

 

日「明久君の荷物も残っていたので待っていたんです」

 

「そうだったんだ。ゴメンね二人とも、待たせちゃったよね」

 

待っているとは思わなかったので僕は屋上で少し風に当たっていた。あのまま教室に戻っていたら一輝と優子さんの邪魔になりそうだったからね

 

明「気にしないでよ明君」

 

日「そうですよ。私たちが勝手に待っていたんですから」

 

二人はそう言うけど待たせちゃったのは事実だしな。う~ん…………

 

「そうだ。待たせちゃったお詫びに公園にあるクレープ屋さんのクレープを奢るよ」

 

最近、帰り道にある公園にクレープ屋さんができたのを思い出した。確かあそこはよく下校中の女子中高生が買ってるのを見るから美味しいはずだ

 

明「だから気にしないでいいって。それにあそこのクレープって結構高いし」

 

日「そうですよ。朝だってお化け屋敷の入場料を払ってもらいましたし」

 

「まぁまぁ二人とも遠慮しないで。もうこんな時間だし早く帰ろうよ」

 

僕は反論する二人を軽くあしらって鞄を持って教室を出る。二人に言葉で勝てる気がしなかったからな

 

明「あ、ちょっと待ってよ、明君」

 

日「待って下さい、明久君」

 

僕が廊下で足を止めて待っていると二人が慌てて教室から出てきた

 

「じゃあ、帰ろうか」

 

僕達はそのまま帰宅の途に着いた

 

 

 

 

「あ、そういえば聞いてなかったけど、二人は一緒に如月ハイランドに行ってくれる?」

 

公園の近くまで来て僕は二人に聞き忘れていたことを聞いてみた

 

明「もちろんだよ。あそこは行きたかったしね」

 

日「私も行きますよ。色んなアトラクションがあるらしいですし楽しみです」

 

二人は快諾してくれた。よかった~、断られないか不安だったんだよね

 

「行くのは……再来週の日曜日で良いかな?」

 

僕はチケットのプレオープン期間を見ながら二人に尋ねる

 

明「うん。大丈夫だよ」

 

日「特に予定もないから大丈夫です」

 

二人とも予定は無いみたいだ

 

「あ、まだ開いてるみたいだね。なんでも好きなの頼んでいいよ。ちゃんと僕が払うから」

 

公園に着いたので中に入ってみるとクレープの移動販売車が目に入った。よかった、まだやっているみたいだ

 

明「だから気にしなくっていいって言っているのに」

 

「まぁまぁ、ひとの厚意は受けとっとくもんだよ。それに再来週付き合ってもらうんだから、そのお礼ってことで」

 

あんまり厚意を無碍にするのはいいことじゃないからね。その後の関係も気まずくなったりするし

 

日「わかりました。じゃあお言葉に甘えさせてもらいますね」

 

「じゃあ行こっか…………すいませ~ん」

 

二人の了解も得たので僕らはクレープ屋さんの所へ行って声をかける

 

店「いらっしゃい。何にしますか?」

 

「二人は何にする?」

 

中から顔を出したのは30代中盤ぐらいのバンダナをして顎ひげを生やしているオジサンだった

 

明「う~ん……じゃあストロベリーチョコ生クリームを下さい」

 

日「私はブルーベリー生クリームをお願いします」

 

「じゃあ、その二つをお願いします」

 

店「はいよっ、ストロベリーチョコクリームとブルーベリークリームね。お代は2800円だな」

 

「じゃあ、3000円でお願いします」

 

店「まいどありっ。ちょっと待ってな」

 

僕は二人が決めると店員さんに注文を告げて料金を払う

 

明「えっ?明君はいいの?!」

 

「うん。甘い物の気分でもないしね」

 

正直言うとクレープの値段が予想以上に高かったんだよね。1個1500円ぐらいするから3個も頼むと僕の主食が水になりかねない

 

店「ほいっ、こっちがストロベリーでこっちがブルーベリーだ」

 

「あ、どうも。はい、二人とも」

 

店員さんがクレープを渡してきたので受け取って二人に渡す

 

明「ありがとう、明君」

 

日「じゃあ、いただきます、明久君」

 

二人は僕にお礼を言うと僕らは近くのベンチに座り二人はクレープを食べ始める

 

明「あ、このクレープ美味しい」

 

日「そうですね。クリームもちょうどいい甘さですし」

 

二人はクレープを食べると美味しさからか笑顔になる。二人の笑顔が見れるならあの料金も高くないな

 

明「ねぇ、明君も食べる?」

 

僕が二人の顔を見てるそんなことを考えていると明梨がクレープを僕の方に向けて聞いてきた

 

「え?!いいの?」

 

明「うん。ちょっと大きいし」

 

日「あ、私のも良ければどうぞ。なんか明久君に悪いですし」

 

僕が聞き返すと日向までクレープを差し出してきた

 

「じゃあ、一口だけもらうね」

 

僕はまず明梨の方のクレープを一口かじる。生クリームは甘さ控えめでイチゴの酸味が程よいアクセントになっている

 

「うん。おいしいね」

 

日「明久君、私のもどうぞ」

 

「ありがとね」

 

日向がクレープを差し出してきたので一口貰う。こちらもブルーベリーの酸味で甘みがありながらもすっきりとした味わいになっている

 

「日向の方も美味しいよ。二人ともありがとね」

 

あれ?……今のって間接キスになるんじゃないか?……意識し出したら急に恥ずかしくなってきた。その後は恥ずかしさから僕はあまり口を開かなかった。二人もあまり喋らなかったから僕らの帰り道は静かだった

 




次回からは『如月ハイランド編』になる予定です。
GWあたりに過去編の日向編を書く予定です。


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如月ハイランド編
雄二の朝と一輝の朝


今話からやっと如月ハイランド編です。
ひとまず プロローグ的な話になっています


雄二Side

 

「…………………………んぁ?」

 

俺が寝ていると人の気配がしたので目を覚ました。今日は土曜だしお袋が起こしに来るはずもないはずだが……

 

?「…雄二、おはよう」

 

俺が寝起きで働きが悪い頭で考えていると聞き覚えのある女性の声がした。だが俺は朝が弱く、その人物が誰だか分らなかったので思い瞼を上げてその人物を確認することにした

 

「…………しょうこ?」

 

ぼんやりとした視界がとらえたのは俺の幼なじみで彼女でもある霧島翔子だった。……おかしいな。最近は不法侵入のような真似はしなくなったはずなんだが

 

翔「…うん。おはよう」

 

「あぁ、おはよう 翔子」

 

俺は上体を起こしながら翔子に挨拶をする

 

「ところで、どうしたんだ?こんな朝っぱらから」

 

俺は一番気になっていたことを翔子に聞いてみた

 

翔「…約束」

 

「約束?…………………あぁ!!如月ハイランドか!!」

 

俺は翔子の発言の意味が分からなかったが、いまだに働かない頭をフル回転してなんとか思いだした。そういえば今日は翔子と如月ハイランドに行く日だった

 

「ちょっと待っててくれ。直ぐに支度をするから……」

 

俺は寝巻を脱ごうとしながら時計を確認して動きを止めた

 

05:00

 

俺は寝坊したのかと思ったがまだ早朝で外からの光も東から差していた。どうりで目覚ましを10個もセットしたのに起きれない訳だ。7時半にセットしたんだからな

 

「翔子 なんでこんな時間に起こしたんだ?」

 

翔「…早く行きたいから」

 

俺が額を押さえながら翔子に聞いてみるとそんな回答をしてきた

 

「……翔子 開園時間は10時だから9時に出れば十分だと思うぞ」

 

いくら早く行ってもやっていないなら時間の無駄だ。如月ハイランドまでなら電車とバスで30分ほどで行けるらしいから1時間前に出れば十分だろう

 

翔「…雄二は朝が弱いから」

 

「……弱いと言ってもこんな早くに起こさなくても……」

 

飯とか準備の時間を考えても1時間もあれば十分のはずだが

 

翔「…ごめん」

 

俺の様子に翔子はしょげてしまった。あまり表情は変化してないように見えるからコイツの感情を読むのには苦労する

 

「いやっ、怒っているんじゃないんだ。俺が朝起きれないから気を聞かせてくれたんだろ?ありがとな」

 

翔「…ほんとう?」

 

「あぁ、本当だ」

 

翔「…わかった」

 

俺は何とか弁明をすると翔子は元気を取り戻した

 

「あ~、ちょっと一階で待っててくれ」

 

今までのやり取りで眠気も吹っ飛んだので俺は着替えるために翔子に部屋から出るように言うが

 

翔「…?」

 

翔子は首をかしげている。なぜだ?俺の発言がおかしかったのか?

 

「だから着替えるから一階へ行っててくれ」

 

翔「…なんで?」

 

「そりゃ恥ずかしいからに決まってんだろうが」

 

翔「…雄二の裸なら見慣れている」

 

「おい、翔子 さっきの言葉はどういう意味だ?」

 

確かに小学の低学年のころに一緒に風呂に入ったこともあったが

 

翔「…………………わかった。下で待っている」

 

そう言うと翔子は部屋を出て一階の居間へと向かった

 

「おいっ 翔子 さっきの発言の意味を」ガチャガチャ

 

俺が翔子を問いただそうと部屋のドアを開けようとするが外側からしめられてドアは開かなかった

 

翔「…ヒ・ミ・ツ」

 

まさかお袋が何かで翔子に俺の裸を見せているのか?

 

翔「…夫の成長を確かめるのは妻の務め」

 

俺は廊下から聞こえた声を空耳だと言い聞かせた

 

Side out

 

 

 

 

一輝Side

 

?「ねぇ・・・ちゃん・・と・・・い?」

 

?「何・・・よ!ア・・は人・待っ・・るんだから!」

 

?「じゃあ・・・・俺達とすごさね?」

 

オレが優子との待ち合わせ場所に向かっているとその方向から複数人の言いあっている声が聞こえてきた。声の一つは優子の声だ。ナンパでもされているのか?優子はかなりの美少女だからな。しかし、オレの彼女に手を出すとは……生まれてきたことを後悔させてやるか?オレはそんなことを考えながら走りだした

 

ナ1「いいじゃねぇかよ!少し位可愛いからって文句言ってんじゃねえぞ!」

 

優「きゃっ」

 

ナンパ男の一人が強引に優子の手を引っ張り優子が悲鳴を上げた。その瞬間オレの中で何かが弾けた

 

「テメェ オレの女に手ぇ出してんじゃねぇぞ」

 

バキバキッ

 

ナ1「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

オレが優子の腕を掴んでいる手の手首を握ると何かが砕かれる音とナンパ男の悲鳴が響き渡った

 

ナ2「てめぇヒロヤに何しやがるっ」

 

オレの後ろからナンパ男の仲間が殴りかかってくるが

 

ヒョイッ ダンッ カキョ カキョ

 

オレは少し横に避けてかわした後にその腕を掴んで背負い投げをして、そのまま肘と肩の関節を外した

 

ナ2「みぎゃああああああ」

 

関節を外された男は情けない悲鳴を上げた

 

ナ3「くそっヤスっ同時にかかるぞ」

 

ナ4「お、おぅっ」

 

二人が同時に俺に向かってくるが

 

ガシッ ゴン

 

そいつらの頭を掴んでぶつけ合う

 

ナ3・4「「ぐがっ」」

 

脳震盪でも起こしたのかそのまま倒れこむ

 

「ふぅ~片付いたか」

 

オレは倒れている軟派男どもを見下ろしながらつぶやく。先に潰した方も痛みで気絶したようだ

 

優「お疲れ様 一輝君。助けてくれてありがとね」

 

オレが一息ついている優子が礼を言ってきた

 

「別に礼なんていらねぇよ。彼女を助けるのは当然だろ?」

 

オレは素直な礼を言われて恥ずかしかったのでそっぽを向いてしまう

 

優「こっちが素直にお礼を言っているんだからこっち向きなさいよっ」

 

そう言って優子はオレの肩を掴んで俺を振り向かせて

 

ちゅっ

 

オレの視界いっぱいに優子の顔が広がり、唇に柔らかい感触が伝わってくる。なるほど、キスされているのか

 

「って、いきなり何してるんだ?!優子」

 

オレは優子の肩を掴んで離した

 

優「何ってキスに決まっているでしょ?」

 

「いや、そうじゃなくて どうしてキスなんか……」

 

優「さ、さっきのお礼よっ!!ベ、別に付き合っているんだから問題ないでしょ?!」

 

確かに俺らは付き合っているからキスぐらい問題ないんだが

 

「優子 少し周りを見てみろ」

 

待ち合わせたのは駅前の噴水前だったので休日の朝にはある程度の人通りがあり

 

ひゅーひゅー

 

こんな光景を冷やかすような奴もいる

 

優「へ………………(ポンッ)」

 

その事実に気付いた優子は一気に顔を赤くする。やっぱ恥ずかしがっている優子も可愛いな

 

「とりあえず移動するぞ」

 

オレはすぐに優子を連れて駅に入り電車に乗った

 

Side out




次のプール編は学校のプールにしようかプール施設にしようか迷っているんですが、どちらがいいでしょうか?展開はあまり変わらないと思いますが。

学校の場合は観察処分者の仕事として、プール施設の場合は福引きの景品にでもしようかと思っています


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到着と脅迫

なんとか書きあげました。この話を書き終わるまで寝ないようにしてたから眠いです。
今回はゲート前での場面です。

久しぶりに台本形式じゃなくしましたがどちらがいいんでしょうか?

分からないのでご意見ください


一輝Side

 

「ふぁ~あ、やっと着いたか」

 

「寝むそうだけど大丈夫?」

 

到着と同時に大欠伸をしたオレを心配して優子が声をかけてきた。道が混んでたから少しバスが遅れたので余計に疲れた。遅れたと言ってもまだオープン時間までは10分近くあってゆっくり行ってもオープン前には十分に間に合うが

 

「あぁ 大丈夫だ。興奮してたのか目が冴えちまって寝るのが遅かっただけだから」

 

正直言うと如月ハイランドのパンフを見て何をするか考えたりしてたのも原因かもな

 

「そうなんだ。無理はしないでね?」

 

優子が心配そうに俺の顔を見てきた

 

「心配しなくてもオレは割と自己管理はしっかりしてるから大丈夫だ」

 

「そう……」

 

オレが優子に心配かけまいと笑いかけると優子は赤くなって俯いてしまった。何か恥ずかしい事を言ったか?思い当たる事は無いが

 

「ん?一輝と木下姉じゃねぇか。こんなとこで何してんだ?」

 

「…優子と高瀬?」

 

気まずい空気になりオレと優子が互いに顔を逸らしていると後ろから声をかけられた

 

「なんだ雄二と霧島か、驚かせるなよ」

 

振り返ると雄二と霧島がいた。……腕を組みながら。やっぱこの二人は付き合いが長いだけあって、人目を気にせず堂々と付き合っているな

 

「代表と坂本君こそ、どうしたのかしら?」

 

優子は付き合っているとかデートとか言うのは恥ずかしいのか話を逸らそうとする

 

「…夫とデート」

 

「……だから夫じゃねぇって!!俺らは召喚大会の賞品のチケットを使いに来たんだよ。……そっちこそデートか?」

 

霧島のボケ?に突っ込んだ後に雄二がニヤニヤ顔でこちらに聞いてきた

 

「ふぇっ……(ポンッ)」

 

「あぁ、オレは彼女とデートに来たんだ」

 

オレは雄二の指摘に真っ赤になってしまった優子の肩を抱き寄せて雄二の質問に答えた

 

「…優子 おめでとう」

 

「あ、ありがとう 代表」

 

優子は霧島に祝福されて恥ずかしがりながらも嬉しそうに笑顔になる。やっぱ優子の笑顔は可愛いな

 

「ほぅ、いつから付き合っているんだ?」

 

雄二はニヤニヤしたまんま聞いてきた。面倒だから一気に話すか

 

「付き合い始めたのは清涼祭終わってすぐだよ。オレから優子に告ってOK貰ってそのまま付き合い始めたって感じだな」

 

「なるほどな。しかし知りあってひと月程度で付き合うとはな」

 

オレの説明に雄二は頷いた後に何か呆れたような目で見てくる

 

「そうか?別に好きなもん同士なんだから変でもないだろ」

 

優子の反応を見る限りお互いに最初の印象から割と好印象だったようだからな

 

「お互いに好きなのに何も発展しない奴もいるがな……」

 

あぁ……あのバカ久か

 

「まぁ1対2だから仕方ないんだろ……」

 

オレの知らない間に面倒な事になってて驚いたけどな

 

「はぁ、藤崎と久遠は苦労するだろうな」

 

雄二は溜め息をついてアキの性格に呆れる

 

「全くだな」

 

「そういやお前らはチケットどうしたんだ?」

 

オレが雄二の台詞に同意すると雄二が思い出したかのように聞いてきた。まぁ入手困難なチケットをどう手に入れたかは気になるか

 

「アキが透さんに頼んでくれたらしくってソレを貰ったんだよ」

 

「アイツは相当のお人よしだな。まぁ俺もそのおかげで助けられたんだけどな」

 

確かにアキは度が過ぎるほどのお人よしだな

 

「一輝君 そろそろ行きましょ」

 

「…雄二 私たちも」

 

俺らの話が一段落すると優子と霧島が声をかけてきた

 

「すまん。直ぐ行く」

 

「もうこんな時間か。少し急ぐぞ」

 

雄二の言葉を聞いて時計を確認するとオープン間近だった。ここから入場ゲートまでだとギリか

 

 

 

 

「話には聞いてたけどデカイな」

 

「そうね。プレオープンじゃなかったらかなり混みそうね」

 

オレの言葉に優子も頷き自分の意見を言う。たしかにこの広さなら集客効果は高いだろうな

 

「デカさは東○ドーム15個分らしいからな」

 

「…目玉になるようなアトラクションもたくさんある」

 

雄二の言葉に霧島が補足する。見事な連携だな

 

「いらっしゃいマセ!如月ハイランドへようこソ!」

 

オレらがゲート付近で感想を言っているとゲートの方から係員の青年が出てきて定番の挨拶をしてきた。その男は日本人でないのか若干訛りの混じった日本語で対応してきた。顔立ちはアジア系のようだが最近では向こうの人材を採用する企業も多いから日本人かどうかは分からない

 

「本日はプレオープンなのデスが、チケットはお持ちですカ?」

 

「あぁコレでいいんだろ?」

 

オレは持っているチケットを渡す

 

「拝見しマース。……はい、問題ありまセン。そちらの方々もお願いしマース」

 

オレのチケットを確認すると今度は雄二達のチケットを確認しようとする

 

「…はい」

 

霧島が係員にポケットから取り出したチケットを渡す

 

「拝見しマース」

 

係員はチケットを受け取って雄二と霧島の顔を見ると、笑顔のまま一瞬固まった

 

「…そのチケット使えないの……?」

 

霧島は係員の様子に顔を曇らせる

 

「イエイエ、そんなコトはないデスよ?デスが、ちょっとお待ちくだサーイ」

 

係員はそう言うと携帯電話を取り出し、オレらに背を向けてどこかに電話をし始めた

 

「――私だ。例の連中が来た。ウェディングシフトの用意を始めろ。確実に仕留める」

 

あぁ、そういえば雄二の持っているチケットって結婚させられるんだっけか。……透さんが止めたはずだが話が通っていないのか?

 

「おいコラ、なんだその不穏当な会話は」

 

雄二が係員の肩を掴んで聞く

 

「「(…)ウェディングシフト?」」

 

優子と霧島は如月グループの企みを知らないからか疑問符を浮かべている

 

「気にしないデくだサーイ。コッチの話デース」

 

取り繕ったように元の雰囲気に戻る係員。面倒な質問を流すための演技か。……雄二 詰んだかもな

 

「アンタ、さっき電話で流暢に日本語を話してなかったか?」

 

「オーウ、ニホンゴむつかしくてワカりまセーン」

 

わざとらしく肩をすくめる係員。見てるだけでムカつくな、たぶん雄二はもっとムカついてるだろうな

 

「ところで、そのウェディングシフトの詳細について聞こうか?」

 

雄二はなんとか怒りを抑えて詳細について聞く。まぁ結婚しない程度なら問題ないだろうな

 

「トッテモ豪華なおもてナシさせていただきマース」

 

全く具体性のない答えが返ってきたな

 

「俺は詳細と言ったんだが?具体的にはどんなもてなしだ?」

 

「それはお楽シみデース」

 

「それなら、そのウェディングシフトとやらはいらないぞ」

 

「そこをナントカお願いしマース」

 

「詳細が言えないなら不要だ」

 

「この通りデース」

 

「なんで詳細が言えないんだ?後ろめたいことでもあるのか?」

 

「…………断ればアナタの実家に腐ったザリガニを送りマース」

 

「やめろっ!そんなことをされたら我が家は食中毒で大変な事になってしまう!」

 

いったい雄二の家の台所事情ってどうなっているんだ?

 

「そんなことをすれば君の一族郎党がみんな路頭に迷うことになるよ?」

 

エセ外国人が雄二に脅迫めいた台詞を吐いたら、後ろから明るい茶髪の青年が現れて、エセ外国人の肩を抱いてそう告げる

 

「じょ、冗談デース。ウェディングシフトは写真撮影の後にウェディング体験をしてイタだいて、その後に結婚してもらいマース」

 

Prrrrr Prrrr

 

係員が説明を終えると同時に係員の携帯電話が鳴る

 

「ちょっと失礼しマース」

 

係員は電話に出るために少し離れたとこに行く

 

 

 

 

「君達は木下優子ちゃんと坂本夫婦だね?」

 

エセ関西人を脅迫?した青年が優子達の方を向いて聞いてきた

 

「え、えぇアタシは木下優子です」

 

優子は少し警戒しながらも答え

 

「…はい」

 

「ちょっと待て翔子!夫婦じゃねぇ!それとアンタは誰だ!」

 

お~雄二の突っ込みが激しいな

 

「おっと、申し遅れたね。僕は吉井昭斗 明久の父親だよ。いつも息子が世話になっているね」

 

昭人さんは思いだしたかのように自己紹介をする

 

「お久しぶりです。昭斗さん、どうしてここにいるんですか?」

 

「お、一輝君 久しぶり。仕事が一段落したし話が通っているか確認に来たんだよ」

 

確認に来てなかったら雄二は結婚してたな。……問題は無いけど

 

「明久の親父だって?」

 

「…若い」

 

「明梨のお父さんもそうだけど、いくつなのよ……」

 

雄二達は昭斗さんの見た目に驚いている。……確か40過ぎだよな?

 

「ははは、嬉しいことを言ってくれるね。お世辞でも嬉しいよ」

 

いや、お世辞ではないんだが

 

「お待たせしました。先程は失礼しました。社長からお客様がご希望されたプランのみ実行するよう言われましたので、先ほどあげた中からご希望を仰ってください」

 

やっと話が通ったみたいだな。しかし、さっきの態度とのギャップがすごいな

 

「じゃあ写真撮影とウェディング体験だけ頼む」

 

「畏まりました。カメラの用意があるので少々お待ち下さい」

 

雄二の言葉を聞いて係員はどこかへ消えた

 

「もう問題ないみたいだし僕は帰るね」

 

「ありがとうございました!」

 

昭斗さんが帰ると言うと雄二が昭人さんに礼を言った

 

「気にしなくていいよ。4人ともお幸せにね!」

 

そう言って昭斗さんは去って行った

 

「じゃあオレらも行くか 優子」

 

「そうね。二人の邪魔するのも悪いし」

 

優子もオレの意見に賛成のようだ。初デートだし二人きりになりたいってのもあるのかもな

 

「そうか。じゃ、そっちもお幸せにな」

 

「…またね 優子 高瀬」

 

オレらは雄二達と別れて中へと入った

 

Side out

 




次のプール編は学校のプールにしようかプール施設にしようか迷っているんですが、どちらがいいでしょうか?展開はあまり変わらないと思いますが。

学校の場合は観察処分者の仕事として、プール施設の場合は福引きの景品にでもしようかと思っています


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写真撮影と第一アトラクション

GWで執筆時間ができたので書きだめ中です。
どのくらい書けるか分かりませんが書きだめ分を利用できる範囲では週2回程度の更新をする予定です。

それと今回はバカテストを作ってみました



現代文

次の意味をあらわすことわざを書きなさい(各3点)

(1) 得意な人でも失敗すること
(2) 不運が重なること
(3) 少しも効果の無いことのたとえ

藤崎明梨・久遠日向の解答
(1) 弘法にも筆の誤り
(2) 泣きっ面に蜂
(3) 牛に経文

教師のコメント
『牛に経文』はあまり使われない言葉ですが、藤崎さんも久遠さんも流石ですね

吉井明久・坂本雄二の解答
(1) 猿も木から落ちる
(2) 弱り目に祟り目
(3) 馬の耳に念仏

教師のコメント
この解答でも正解です

土屋康太・木下秀吉の解答
(1) 河童の川流し
(2) 弱り目に祟る
(3) 馬の耳にお経

教師のコメント
 残念ながら少しだけ間違っていますね。今回は1点ずつ上げましょう。最近は二人とも点数が上がってきているのでこれからも頑張ってください。

高瀬一輝の解答
(1) Even homer sometimes nods.
(2) Misfortunes seldom come singly.
(3) A nod is as good as wink to a blind horse.

教師のコメント
 高瀬君は帰国子女でしたね。英語の遠藤先生に尋ねたところ意味としては合っているらしいので今回は2点ずつ上げましょう。

島田美波の解答
(2)泣きっ面蹴ったり
(3)吉井にオシオキ

教師のコメント
 あなたは鬼ですか。それとあなたにとって吉井君とは所有物か何かなのでしょうか?



雄二Side

 

「お待たせしました。カメラの準備が出来ましたのでお並び下さい」

 

「…わかった」

 

係員に言われて翔子は俺の腕に抱きついてきた。慣れてきたとはいえ人前で抱きつかれるのは恥ずいから顔を背けてしまう

 

「雄二 前向いて」

 

「あ、あぁ」

 

「では、撮りますよ~。はい、チーズ」カシャ

 

翔子に言われて前を向くとすぐにシャッターを切られた。おそらく俺の顔は紅潮していただろうな

 

「では、現像してきますので少々お待ち下さい」

 

そう言って係員はまた消える。なんか嫌な予感がするんだが

 

「――お待たせしました。こちらが写真になります」

 

程なくして係員が写真を持ってきた

 

「…ありがとう」

 

翔子は嬉しそうに写真を受け取った。コイツの笑顔が見れただけでも来た甲斐はあるな

 

「…雄二 見て。私たちの思い出」

 

翔子が俺にも写真を見せてくる

 

「……なんだ、この写真は」

 

写っているのは仲睦まじく俺の腕に抱きついている翔子と恥ずかしさから顔を赤くしている俺。そして――

 

「サービスで加工も入れておきました」

 

その二人を囲うようなハートマークと『私たち、結婚します。』という文字と祝福する天使

 

「これをパークの写真館に飾ってもいいですか?」

 

「いや、止めてくれ。この写真だけ記念に貰うから」

 

こんな写真を衆目に曝されでもしたらどうなるか分かったもんじゃない。特にFクラスのバカの相手なんか面倒だからな

 

「わかりました。それではウェディング体験まではご自由にお過ごしください」

 

そう言ってもう1枚写真を渡してくる。今度は加工されていない写真だった

 

『あぁっ! 写真撮影してる! アタシらも撮ってもらおーよ!』

 

『オレたちの結婚の記念に、か? そうだな。おい係員。オレたちも写ってやんよ』

 

偉そうな態度でチャラいカップルがやってきた

 

「すいまセン。こちらは特別企画デスので……」

 

係員はまたエセ外国人モードになって対応している。あの方が面倒な客には対処しやすいんだろうな

 

『あぁっ? いいじゃねーか! オレたちゃオキャクサマだぞコルァ!』

 

『きゃーっ。リュータ、かっこいーっ!』

 

男が下から睨みつけるように係員を威嚇し始める。絵にかいたようなチンピラだな。その姿を見て喜ぶ女も頭がイカレているんだろうな

 

『だいたいよぉ、あんなダッセぇジャリどもよりオレたちを写した方がココの評判的にも良くねぇ?』

 

チンピラが来るなんて評判は悪くなるだろうな

 

『そうよっ! あんなアタマの悪そうなオトコよりもリュータの方が一〇〇倍カッコイイんだからぁっ!』

 

確かに俺は頭良くは見えないかもしれんがそんなチンピラよりはましだと思うぞ

 

「…(ツカツカツカ)」

 

「っておい、翔子。どこに行くんだ?」

 

急に勢いよく歩き出した翔子の腕を掴んで引き止める

 

「…あの二人、雄二のことを悪く言ったから」

 

「あのなぁ……。その程度のことでイチイチ目くじら立てていたらキリがないぞ? それにせっかくのデートで無駄な時間を過ごしてもしょうがないだろ。あの係員に任せりゃいいんだよ」

 

あの手の連中に絡まれると面倒だからな。ヘタな酔っ払いより性質がわりぃ

 

「………わかった」

 

翔子は少し思案してから頷いた

 

「行くぞ、翔子」

 

気にするのは無駄だが見てて気分の良いものじゃないから俺はその場を後にする

 

「…うん。雄二の言うとおりにする」

 

翔子もその光景は嫌だったようですぐについてきた

 

『あぁっ!? グダグダ抜かすとマスコミにここの態度について投書すっぞコルァっ!』

 

『そーよっ! アタシたち、オキャクサマなんだからねっ!』

 

『オーウ、ニホンゴむつかしくてワカりまセーン』

 

後ろからバカの声と面倒になり対応すらしていない係員の声が聞こえてきた。如月ハイランドも宣伝用のイベントでクレーマーが来るなんてツイてねぇな

 

 

 

 

「さて、と……どこから回るか……」

 

ゲート近くの案内板を見ながら俺は考え込む。プレオープンで入場人数は限られているので目玉のアトラクションでも数分程度で乗れるだろう

 

「翔子は行きたいとこあるか?」

 

「…観覧車」

 

観覧車か……確か最高到達点が120mだかで日本一の高さらしいな

 

「今の時間よりも夕方の方がいいんじゃねぇか?夕焼けの方が綺麗だろ」

 

「…わかった」

 

「そうなると……ジェットコースターでも乗るか?」

 

「…うん」

 

翔子の同意も取れたので俺らはジェットコースターの所へと向かった

 

Side out

 

 

 

一輝Side

 

「さて、まずはお化け屋敷にでも行くか?」

 

オレはパンフレットを見ながら優子に尋ねる。昨日の内にある程度のプランは立ててきたが優子の意見を尊重しないとな

 

「えぇ、エスコートお願いね」

 

「お手柔らかに頼みます」

 

オレは優子の差し出した手を取って歩き出す

 

「ここか、流石に廃病院を移設して作っただけあってデカイな」

 

お化け屋敷の場所に着くとそこには5階建てほどの薄気味悪いコンクリートの建物があった

 

「そうね。ここでボーっとしててもしょうがないし早く入りましょ」

 

優子はそう言うと廃病院に足を向ける。優子ってこういうの怖がらないのか?

 

「そうだな。じゃ逸れないようにちゃんと手握っとけよ」

 

「子供じゃないんだから逸れたりしないわよ」

 

オレが優子に手を差し伸べるが優子は無視して中へ入ろうとするが

 

「ったく。男ってのは彼女の前ではカッコつけたがるんだよ。大人しく甘えとけ」

 

オレは少し走って優子の手を掴む

 

「へっ? ……あ、ごめん」

 

「い、いや。オレの我儘みたいなもんだから優子が謝ることじゃねぇって。……ただもう少し頼って欲しいっつうか何つうか」

 

優子が謝ってきたので俺は慌てて弁解する

 

「うっ。ごめん、アタシって男の人と付き合ったことないからどう接したらいいか分からなくて」

 

優子はバツが悪そうにそう言ってきた

 

「あ~、その辺は付き合っていくうちに慣れるもんじゃねぇのか? オレもあんま分かんねぇけど」

 

オレも優子が初めての彼女だから勝手がよくわかんねぇんだよな

 

「そうなんだ。なら無理してカッコつけなくてもいいわよ。アタシはそのままの一輝君が好きなんだし」

 

最後の方は小声になりながらも優子は自分の意見を言ってきた。言った後で直ぐに真っ赤になっちまったが

 

「そう言うんなら気をつけるよ。じゃ、中入ろうぜ」

 

オレは優子の手を引いてお化け屋敷の中へと入る

 

『グオォォォォォ』

 

『ぐわぁぁぁっ』

 

『クケケケケケケケ』

 

中へ入って歩いていると包帯だらけの人間や顔面血だらけの男、不気味な笑い声を上げながら走ってくる医者など色んなモノが来るが

 

「結構リアルね」

 

「あぁ、そうだな」

 

優子は冷静に感想を述べる

 

「随分と冷静なんだな。もっと怖がると思っていたんだが」

 

オレは気になっていたことを優子に聞いてみた

 

「う~ん。まぁ作りものだって分かっているしね」

 

なるほどな。割り切って見れば怖くは無いもんなのか

 

「だったらつまらなかったか?」

 

「そうでも無いわよ。結構楽しいわ」

 

優子の反応が薄かったから失敗かと思ったが楽しんでいるみたいでよかった

 

「お、やっと出口か」

 

案外長かったな。まぁ病院全体をお化け屋敷にしているんだから仕方ないか

 

「……もう少し居たかったわね(ボソッ)」

 

「ん?そんなに気に入ったか?」

 

優子が小声で呟いた言葉は周りが静かなお陰で聞きとれた。まぁ手をつないでいて近かったおかげでもあるんだろうが

 

「え?!う、うん。楽しかったからね(一輝君と二人きりなのが嬉しかったなんて恥ずかしくて言えないわ)」

 

「楽しんでくれたようでなによりだ」

 

薄暗かったから時間感覚が狂ったが1時間近くはかかったから退屈な想いをされたら申し訳ない

 

ガチャ

 

扉をあけると薄暗い光に慣れた目に外の日光が差してきて視界が霞む

 

「あ、こちらにいらっしゃいましたか。ちょうどよかったです」

 

オレらが出てくるとゲートの所にいた係員が駆け寄ってきた

 

「間もなく御友人のウェディング体験があるのですが良ければご参列ください」

 

友人と言うと雄二達のことか

 

「どうする? 優子」

 

「行きましょ。代表の晴姿も見てみたいし」

 

優子に聞いてみると直ぐに同意してきた。女子ってのはやっぱ花嫁姿とかに憧れんのか?

 

「それでは、式場までご案内しますので私についてきて下さい」

 

Side out

 

 

 

 

少し時間が遡ります

 

雄二Side

 

「ふぅ~結構凄かったな」

 

「…うん。速かった」

 

ジェットコースターは噂通りでかなりのスピードで回転やひねりが加わっていて絶叫マシンとしてはかなり高レベルな感じだった

 

「あ、ちょうどいいところに」

 

俺らがアトラクションの出口から出てくるとゲートで応対してくれた係員がこちらに駆け寄ってきた

 

「ウェディング体験の準備ができましたので私についてきて下さい」

 

俺らは係員の案内に従ってウェディング体験の会場へと向かう

 

Side out

 




過去編の日向との出会いは5/3に投稿予定です。


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ウェディング体験

今回は雄二と翔子のウェディング体験です。



雄二Side

 

「では、ウェディング体験の準備がありますので、霧島様はこちらのスタッフについて行っていただけますか?」

 

会場に入ると係員がそう言い、入り口付近にいた30前後の女性スタッフが前に出てきて頭を下げる。随分と礼儀正しいな、見た目はいかにも業界人といった風貌だが

 

「はじめまして。貴女のドレスのコーディネートを担当させて頂きます。一生の思い出になるようなイベントにする為、お手伝いさせてください」

 

そう言ってスタッフは翔子に笑顔を向けた。本物のスタイリストまで用意するとは如月グループはジンクスを作るために随分と力を入れているんだな

 

「ってことは、俺は長い間待たされるのか?」

 

ドレスを着てメイクをするってことは何時間もかかりそうなイメージだが、その間俺はどうすればいいんだ?

 

「ご安心ください。スタッフは熟練のスタッフを用意しておりますので、一時間弱で用意は終わります。坂本様の準備もございますので待ち時間はあまり無いはずです」

 

俺の疑問に係員が答えた。本物の披露宴とかってわけでもないから、ある程度で済ませるのか?まぁ他のアトラクションとかも見て回りてぇからちょうどいいか

 

「では、案内いたしますので私についてきて下さい」

 

俺は係員の案内について行った

 

 

 

 

「花嫁様の準備が整いましたのでステージの方でお待ち下さい」

 

「あぁ、わかった」

 

俺は係員の案内に従ってステージ裏へと向かう。しかし、時間を確認して見たが40分程度で支度はすんだようだ。慣れているとはいえ速いな

 

≪皆様、本日は如月ハイランドのプレオープンイベントにご参加頂き、誠にありがとうございます!≫

 

会場の方から大きなアナウンスが響いてきた。しかし見える範囲だけでもすごいセットだな、天井を覆いそうな量のスポットライトにバルーンや花火、電飾なんかはこの規模の会場に使うものとは思えないほどだ

 

Side out

 

一輝Side

 

≪皆様、本日は如月ハイランドのプレオープンイベントにご参加頂き、誠にありがとうございます!≫

 

オレたちが会場で豪華な料理を食べ終えたあたりで会場にアナウンスが響き渡る

 

≪なんと本日ですが、この会場に結婚を前提としてお付き合いをしている高校生のカップルがいらっしゃっているのです!≫

 

雄二も大変だな。こんな大衆の面前で曝しものにされるなんて、オレたちの席は会場の前側なので会場の全貌は分からないが、入った時の広さからすると数百人は入れそうだ

 

≪そこで当、如月グループはそんなお二人を応援するための催し物として【如月ハイランドウェディング体験】をして頂きます≫

 

『ちょっとおかしくな~い? アタシらも結婚する予定なのに、どうしてそんなコーコーセーだけがトクベツ扱いなワケ~』

 

不愉快な口調の頭が沸いてそうなチャラいカップルが司会者の方へ向かう

 

≪あ、あの、お客様。イベントの最中ですのでどうか――≫

 

『あぁっ?!グダグダとうるせーんだよ! オレたちゃオキャクサマだぞコルァ!』

 

茶髪で顔中にピアスを付けた男が司会者を威嚇する。Barking dogs seldom bite.(吠える犬はめったに噛まない)ってとこか、不愉快だな

 

「なんか見てるだけで気分が悪くなるわね」

 

「あぁいう輩は気にするだけ無駄だぞ」

 

優子も同意見のようだ。まぁ無視するのも難しいが

 

『アタシらも【ウェディング体験】ってヤツ、やってみたいんですけど~?』

 

≪―――わかりました。準備に時間がかかりますので席についてお待ちください≫

 

係員は対応するのが面倒なのか、それとも、イメージを悪くしたくないのかチャラいカップルの言葉に従った。

 

≪それではいよいよ本日のメインイベント、ウェディング体験です! 皆様、まずは新郎の入場を拍手でお迎えください!≫

 

園内全体に響き渡るような拍手が会場から起こり、スモークの中から白いタキシード姿の雄二が現れる

 

≪それでは新郎のプロフィールの紹介を―――――≫

 

ん?そんなことまでやるのか? 随分と本格的だな、と思っていると

 

≪―――省略します≫

 

手抜きだな。ステージ上の雄二もコケかけたぞ

 

『ま、紹介なんていらねぇよな』『興味ナシ~』

 

『ここがオレたちの結婚式に使えるかどうかが問題だからな』『だよね~』

 

最前列、オレたちの隣に座っている連中からそんな声が聞こえた。

オレが横目でその相手を確認して見ると……やっぱり、さっき騒いでいたチンピラか。しかし、最前列に座って大声で会話とか、公共の場でのマナーを知らねぇのか?

雄二も顔をしかめている

 

≪……他のお客様のご迷惑になりますので、大声での私語はご遠慮頂けるようお願いいたします≫

 

司会者から注意の声が入るが

 

『コレ、アタシらのこと言ってんの~?』

『違ぇだろ。オレらはなんたってオキャクサマだぜ?』

『だよね~っ』

『ま、オレたちのことだとしても気にすんなよ。要はオレたちの気分が良いか悪いかってのが問題だろ? な、これ重要じゃない?』

『うんうん! リュータ、イイコト言うね!』

 

調子に乗って下卑た笑い声が一層大きく響き渡る。いくら無視しようとしてもイラッとするな

 

≪―――それでは、いよいよ新婦のご登場です≫

 

心なしか音量の上がったBGMとアナウンスが流れ、同時に会場の電気がすべて消えた。スモークがステージに立ちこめ、否応なしに会場の雰囲気も盛り上がる

 

Side out

 

雄二Side

 

翔子とはかなり昔からの付き合いだが、まさか、こんな事になるとはな。俺が喧嘩に明け暮れていても、不良のレッテルを貼られても変わらずに俺のことを信じていてくれた

そんな翔子のウェディングドレス姿を見れる日が来るなんてな

 

カッ

 

俺が感慨に耽っていると、目が暗がりに慣れるより早くスポットライトが点された

 

≪本日のイベントの主役、霧島翔子さんです!≫

 

アナウンスと同時に更に幾筋ものスポットライトが壇上の一点のみを照らし出す。暗闇から一転して輝きだす壇上で、思わず目を瞑ってしまう

次に目を開けた時に見た光景に俺は目を疑った。……正直、異世界に飛ばされたと言われても信じてしまいそうなほど驚いた

その光景とは、幼いころから知っていて、その成長の過程も知っているような間柄でありながら、決して見た事もないような

…………そんな、幼なじみの花嫁姿だった。顔は確かに俺の知っている人物だが、その纏っている雰囲気が、その表情、しぐさまで俺の知っている翔子ではないように思えた

 

『…………綺麗』

 

会場の誰かから漏れ出たその声は、静まり返った会場で遮るものは無く俺の耳まで届いた。

よほど入念に製作されたのか、純白のドレスは皺一つない。スカートの裾も床に擦らない限界の長さに設定されているのかアイツがステージの中央に来るまで、一度も床に触れる事がなかった

 

「……雄二……」

 

ヴェールの下に素顔を隠し、シルクの衣装に身を包む幼なじみが、どこか不安げにこちらを見上げてくる。胸元に掲げている小さなブーケが所在なげに揺れた。

 

「翔子、か……?」

 

「……うん」

 

頭の中が真っ白になり言わずもがなな質問が口を突いて出た

 

「……どう……? 私、お嫁さんに、見えるかな……?」

 

「――あぁ、大丈夫だ。少なくとも婿には見えない」

 

俺は気恥しさから正直に感想を言う事が出来なかった。翔子は俺の心をお見通しなのかかすかに笑った後に

 

「……嬉しい……」

 

翔子は俯いてブーケに顔を伏せ、そのままかすかに震えだした

 

≪ど、どうしたのでしょうか? 花嫁泣いているように見えますが……?≫

 

言われて気付いた。肩を微かに震わせて泣いていた

 

「お、おい、どうした……?」

 

俺が翔子の様子にどうすればいいかオロオロしていると、静かだった会場もざわめきだす。そんな中、翔子は、小さな、だが、はっきりと聞き取れる声で呟いた

 

「……ずっと……夢だったから……」

 

涙まじりのかすれた声、だが、その涙は悲しみよりも嬉しさから来ているようだ

 

≪夢、ですか?≫

 

「……小さなころからずっと……夢……だった……。私と雄二、二人で結婚式を上げること……。私が雄二のお嫁さんになること……。私ひとりだけじゃ、絶対に叶わない、小さなころからの夢……」

 

口数の少ない翔子が懸命に紡ぐ言葉は、とても重みのある言葉で、俺の心に響く言葉だった

 

「……だから……本当に嬉しい……。他の誰でも無く、雄二と一緒にこうしていられる事が……」

 

会場から鼻の啜る音が聞こえてくる。貰い泣きだろうか? 随分と涙腺のもろい奴もいたもんだ

 

≪どうやら嬉し泣きのようですね。花嫁は随分と一途な方のようですね。さて、花婿は―――≫

 

『あーあ、つまんなーい!』

 

司会が何かを言っている途中で、観客席から大きな声が上がる

 

『マジ、つまんなーい。このイベントぉ~。人のノロケなんてどうでもいいからぁ、早く演出とか見せてくれな~い?』

『だよな~。お前らのことなんてどうでもいいっての』

 

どうやら今回の発言者も最前列のバカだったようだ。会場が静かな分余計に目立つ

 

『ってか、お嫁さんが夢です、って。オマエいくつだよ? なに? キャラ作り? ここのスタッフの脚本? バカみてぇ。ぶっちゃけキモいんだよ!』

『純愛ごっこでもやってんの? そんなもん観る為に貴重な時間割いてるんじゃないんだケドぉ~。あのオンナ、マジでアタマおかしいんじゃない? ギャグにしか思えないんだケドぉ』

『そっか! コレってコントじゃねぇ? あんなキモい夢、ずっと持っているヤツなんていねぇもんな!』

『え~っ!? コレってコントなのぉ? だとしたら、超ウケるんだケドぉ~』

 

ドン  ガシャガシャン

 

口々に文句を言い始める二人組に、ココの評判とか無視して懲らしめてやろうと思った矢先に何かを殴る音と、何かを巻き込む音が聞こえてきたのでそちらを見ると

 

「テメェらには霧島の夢を笑えるほどの夢があるのか? アァン」

 

『『ひ、ひぃぃぃ』』

 

鬼の形相でチンピラを睨む一輝と殴られたチャラ男と、それに巻き込まれたらしきチャラ女がいた

 

会場中がそんな光景に目を奪われている一瞬の間に

 

≪は、花嫁さん? 花嫁さんはどちらに行かれたのですかっ?≫

 

翔子は会場から姿を消していた。ブーケとヴェールを残して

 

「はぁ、やれやれ……」

 

俺はなんとなしにそのヴェールを拾い上げると涙で湿って重くなっていた。……また、仕事が増えたな

 

≪霧島さん? 霧島翔子さーん? みなさま、花嫁を探してください≫

 

スタッフがあわただしく翔子の行方を捜している

 

「さ、坂本雄二さん! 霧島さんを、一緒に探してください!」

 

スタッフの一人がこっちにやってくる。大方、数で探すつもりだろうな

 

「その必要はいらねぇよ。俺一人で十分だ。他の奴は下がらせろ」

 

「え、わ、分かりました」

 

スタッフは俺の言葉に耳を疑ったようだが頷くと他のスタッフに伝えに行った

 

「雄二、オレも手伝うか?」

 

一輝がステージの下から聞いてきた。さっきの騒ぎに紛れたのかチンピラカップルはいなかった。一輝の表情はよく見えないがいまだに怒りは収まっていないようだが……

 

「悪いがここは一人でやらせてくれ。済ませたら連絡はする」

 

「わかった。しくじるなよ!」

 

一輝は頷くと拳を突き出してきた

 

「応!! 任せとけ!!」

 

俺はその拳に拳を合わせて会場を後にした

 




一輝が怒った理由は少しあります。多分1,2話程度で書かれる予定ですが……
雄二・一輝編は1,2話で終わるはずです……


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後始末と意外な展開

なんか……優子のキャラが狂っている気がする。
…………まぁ学校では優等生を演じているから、意外と乙女チックでも問題は無いか、うん。

早く合宿編に進みたいのになかなか進まないもどかしさが……




一輝Side

 

「一輝君 代表は……?」

 

オレが席に戻ると優子が霧島について聞いてきたが

 

「ぷっ 霧島のことは雄二に任せとけば大丈夫だ」

 

優子の顔を見て少し吹き出してしまった

 

「ちょっと、なんでアタシの顔を見て笑ってんのよ!」

 

「悪ぃ悪ぃ、優子が兎みたいでかわいかったから、つい」

 

涙で赤くした目が兎のようで、保護欲のようなものが駆り立てられた

 

「だ、代表の話が良かったんだからしょうがないじゃない」

 

霧島の夢の話のあたりから優子は涙し始めたからな

 

「いやぁ~、優子にこんな一面があったとは思わなかったな」

 

学校での優子はどこか冷めているような感じだったから、こんなに感情を表に出すのは意外だったな

 

「な、なによ!コレがアタシなんだからいいじゃない!」

 

「いや、スマン。からかいすぎた」

 

優子がキレそうになったので慌てて謝った。せっかく付き合いだしたのに初デートで別れる、とか洒落にならねぇぞ

 

「とりあえず、顔を洗ってきたらどうだ? オレも頭冷やしたいし……それに、雄二と霧島のことが気になってデートって気分でも無いだろ?」

 

優子の顔を見たらだいぶ怒りが引いたが、雄二達のことも気になるのでそう提案してみる

 

「そうね……そうさせてもらうわ」

 

オレと優子はひとまず会場を後にしてトイレへと向かった

 

Side out

 

 

 

 

雄二Side

 

俺は一輝と別れると直ぐに会場から出た。まずはケリをつけないとな。会場から出て5分ほどで目的地が見えてきた

 

『イッテ~~。ったくいきなり殴ってくるとかあのジャリ頭おかしいんじゃねぇか?』

『うわっ、リュータ血ぃ出てるよぉ~。ビョーイン行った方がいいんじゃない?』

 

俺の視線の先にはさっき一輝に殴り飛ばされたチンピラがいた。確かに病院に行った方がいいかもな。……精神科あたりに

 

『ったく、あのガキ訴えてやるっ!』『キャーっ!リュータカッコいー』

 

翔子のこともあるし、さっさと済ませるか。そう思い俺は歩み寄って、背後から声をかける

 

「なぁ、アンタら」

 

『あぁ?ぁんだよ?』

 

二人組がまっ茶色の顔をこちらに向けてくる

 

『リュータ。コイツさっきのオトコじゃない?』

『みてぇだな。んで、その新郎サマがオレたちになんか用か、あァ?!』

 

「いや、大した用じゃないんだが――」

 

借り物の上着を脱ぎ捨て、タイを緩める。さて、久しぶりに

 

「――ちょっとそこまでツラぁ貸せ」

 

悪鬼羅刹に戻るか

 

 

 

 

「……ここにいたか」

 

ステージ裏の方を探していると翔子を見つけ声をかける

 

「……雄二」

 

翔子は俺の声に反応すると顔を上げた。泣いていたせいか目の周りが少し腫れていた

 

「……雄二、私の夢、変なの……?」

 

翔子は縋るような目で俺を見上げてきた

 

「まぁ、高校生であんな夢を持つのはあまり一般的ではないな」

 

俺は少し言葉を選んでから、翔子の問いに答える

 

「…………」

 

俺の言葉に黙り込んでしまう翔子

 

「ったく、お前の夢は他人に笑われた程度で諦めるようなものなのか?」

 

「……違う!」

 

そうだろうな。あの一件から俺に好意を抱くようになったのだから……7年か。そんな長い間抱いていた夢が他人に笑われた程度で揺らぐはずがない

 

「それに、誰がどんな事を言おうとも――」

 

俺はそこで一旦区切って翔子の目を見て

 

「――俺はお前の夢を笑わない。お前の夢は、大きく胸の張れる、誰にも負けない立派なものだ」

 

そう言って俺は会場で拾ったものを翔子の頭に載せる

 

「……これ……さっきの……ヴェール……」

 

「せっかくの体験なんだ。これくらい思い出として貰っても構わねぇだろ」

 

俺の言葉で翔子はやっと笑った

 

「腹も減ったしどっかで飯食って帰ろうぜ」

 

「……うん。雄二……ありがとう」

 

「気にすんなよ」

 

俺は一輝にメールを送ってから、飯を食って帰った。後で、また来た方が良いな。今回はロクな思い出がねぇし

 

Side out

 

 

 

 

一輝Side

 

Pipipipi

 

オレと優子が何をするでもなくベンチに座って時間を潰しているとオレの携帯電話が鳴った

 

「お、雄二からか」

 

メールの送信元は雄二だった

 

「坂本君? どうなったの?」

 

オレはメールを確認すると優子が結果をきいてきたので、オレは携帯電話を見せる

 

From 坂本雄二

To 高瀬一輝

無事解決

迷惑掛けてすまない

こっちのことは気にせずデートをしてくれ

 

「よかった。上手くいったみたいね」

 

優子は雄二からの簡素なメールを見て安堵した。かなり気になってたようだな

 

「それじゃ、オレらもデートの続きをするか」

 

「そうね。随分と時間かかっちゃったけど楽しみましょ」

 

オレが腰を上げて優子に手を差し出すと優子はオレの腕に抱きついてきた

 

「……随分と積極的だな」

 

「ホントはいつもしたいけど周りの目があるから我慢してるのよ」

 

オレが優子の行動に驚いていると意外な答えが返ってきた

 

「それなら、ちゃんとデートした方がいいのか?」

 

いつも学校で一緒だからあまり気にしていなかったが人目を気にするなら二人きりの時間を多く取った方がいいんだろうか?

 

「え? いいわよ。そんなに気を使わなくっても」

 

「さっきも言ったろ? 『甘えてくれて構わない』って。っても、白金の腕輪の調整があるから来週までは忙しいけどな」

 

学園長が作った白金の腕輪のデバッグに丸2,3日くらいはかかりそうだからな

 

「それなら、再来週でいいから買い物につきあってくれる?」

 

「それくらいお安い御用だ。じゃ、ひとまず今日を楽しもうぜ」

 

オレらはそのままアトラクションを回って行った

 

 

 

 

「帰りのバスを考えると後一つくらいか」

 

オレは腕時計で時間を確認しながら言う

 

「時間もちょうどいいし、観覧車に乗るか?」

 

「そうね。綺麗な夕焼けが見れそうね」

 

オレの提案に優子が賛成したので観覧車の場所へと向かった

 

『それでは、30分の空の旅をお楽しみください』

 

30分か……結構長いんだな。ゆっくりと景色が見れそうだ

 

「ねぇ一輝君の夢ってなに?」

 

「は?」

 

観覧車の扉が閉まって少し経ったときに優子が口を開く。突然の質問にオレは聞き返してしまった

 

「だって代表の夢をバカにされてかなり怒っていたみたいだし、一輝君の夢と関係があるのかな? って思ったから……」

 

優子はすこし言い辛そうに質問の理由を言ってきた

 

「あ~……なんて言えばいいんだ? 詳しい事情は知らねぇけど、霧島の夢って多分、子供のころからの夢だろ?」

 

「そうね……」

 

優子はオレの言いたい事がいまいち分からないのか続きを促す

 

「子供のころの夢ってのは、成長して現実を見ていくうちに諦めることが多いのに、それをいまだに諦めてないから、だからそれを笑うアイツらが許せなかったんだよ」

 

「なるほどね……それで、一輝君は夢を諦めたの?」

 

う……やっぱ聞いてくるよな

 

「『諦める』って言うよりも……『妥協』だな。オレの場合は」

 

「へぇ~。どんな夢を妥協したのかしら?」

 

優子が興味深そうに聞いてくる。仕方ねぇな、逃げ切れる気がしねぇから全部話すか

 

「ガキの頃の夢は『ヒーローになること』だよ。結局は全てを守るなんてできねぇから諦めたよ。そんで、今の夢は『大切な人……つまり、優子を守る』ってとこだな」

 

オレは恥ずかしくなって外に目を向けた。窓に映る俺の顔は耳まで赤かった

 

「ねぇ、今のってプロポーズ?」

 

は? オレが外に目を向けていると隣にいる優子から予想外の単語が出てきた。……プロポーズ?

 

「『アタシのことを守る』って言っていたけど……」

 

「い、いや、ちょっと待ってくれ。なんで、その話がプロポーズになるんだ?」

 

オレは夢の話をしただけだぞ? まぁ優子となら幸せな家庭が築けそうだが

 

「アタシのことを守るってことは、いつも傍にいるってことでしょ? それってプロポーズじゃないかしら?」

 

あぁ、なるほど。優子の言うとおりだな

 

「あぁ~なんか締まらねぇけど、……オレと結婚前提で付き合ってくれるか?」

 

オレは優子の目を向いて婚約を申し込む

 

「もちろんよ。これからもよろしくね」ちゅっ

 

優子はオレのプロポーズを受けると同時にキスをしてきた

 

「あぁ、これからも末長くよろしくな」

 

オレは優子の肩を抱きながら髪を軽く撫でた

 

「そういや、優子の夢は何なんだ?」

 

「へっ?アタシの夢?」

 

オレは優子の髪を撫でながら少し気になった事を聞いてみた

 

「あぁ。オレの夢は教えたんだから、優子のも教えてくれよ」

 

「う……あんまり夢とか考えたことないから、特にないのよ」

 

優子は目をそらしてバツが悪そうに答える

 

「あ~、なんかスマン」

 

オレは気まずさからひとまず謝る

 

「謝られるほどのことじゃないわよ。……今考えてみると、むかし秀吉のこと見下してたのは、自分と違って夢に向かっているのに嫉妬してたからかもしれないわね」

 

「夢を追っている奴ってのは眩しいからな」

 

どこか憂いを帯びたような表情の優子の言葉に同意する

 

「お、そろそろ頂上だぞ。ひとまず景色を楽しもうぜ」

 

いつの間にか観覧車は頂上付近まで来ていた

 

「そうね…………綺麗……」

 

優子もオレの言葉に頷いて外を見る

 

「あぁ……そうだな、いい景色だ」

 

オレも優子同様に一瞬言葉を失うが、景色に見惚れたわけじゃない

 

「ん? どうしたの? 一輝君 アタシの顔に何かついてる?」

 

「いや、夕日に照らされた優子が綺麗でさ……」

 

オレは優子の横顔に見惚れて言葉を失っていた

 

「へ、変な事言わないでよ!」

 

優子は真っ赤になりながらそっぽを向いてしまった。

 

それからは特に会話は無かったが心地よい時間を過ごしてから、家へと帰った

 




一輝がプロポーズをしてしまった……書くまではそんな予定なかったのに
深夜のテンションって怖いですね

やりたい事やってしまったので明久編は短く(多分1,2話)なります。
そのせいで内容は濃くなっていて急展開になると思います


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明久達の朝、そして あの人登場

これでGWの書き溜め分は終わりです。あまり書けなくてスミマセン。


やっと明久編に入れました。たぶん2話で終わります。
その後はプール編になります。


今日は待ちに待った5月の最終日曜日。明梨と日向と3人で如月ハイランドに行く日だ

 

ピンポーン  ガチャ

 

「おはよう明君 良い天気でよかったね」

 

チャイムを鳴らすとドアから明梨が出てきた。明梨の服装はオレンジのタンクトップに薄黄色の薄手の半袖シャツを羽織っていて、デニムのミニスカート。……露出が多いわけではないのだが少し目のやり場に困るな。すらっとした手足が眩しいよ

 

「おはよう明梨 その服似合っているよ」

 

活発な明梨らしい服装だ

 

「あ、ありがと……」

 

明梨は赤くなって俯いてしまった。え? 何か変な事言った? 服装を褒めるのは変な事じゃないし……恥ずかしがっているのかな?

 

「と、とりあえず、日向の家に行こうか」

 

「う、うん」

 

僕が歩き出すと明梨も付いてきた。……会話がないと、時間が長く感じるな

 

 

 

 

ピンポーン

 

歩くこと5分ほど、日向の家に着いたので呼び鈴を鳴らす。会話が続かなかったので1時間くらいに感じたよ

 

ガチャ

 

「おはようございます。明久君、明梨ちゃん」

 

日向の服装は薄青色のワンピースの上に白いレースのボレロ

 

「おはよう日向 その服似合っているよ」

 

大人しい日向らしい服装だ

 

「あ、ありがとうございます……」

 

日向もさっきの明梨と同じ反応をする。……なんでだろう

 

「おはようヒナちゃん その服カワイイね」

 

「あ、明梨ちゃんの服も似合ってますね」

 

明梨が日向の服装を褒めると普通に二人で服の話をし始めた。……同性か、異性かの違いかな? 僕の場合はどうだろう……う~ん、雄二に褒められても優子さんに褒められてもあまり差は無いと思うんだけどなぁ。……明梨や日向に褒められたら違う気がするけど

 

「明君 どうしたの? 難しい顔しちゃって」

 

「どこか体調でもすぐれないんですか?」

 

僕が考え事をしていると心配したのか二人が声をかけてきた

 

「大丈夫だよ。ちょっと考え事をしていただけだから」

 

「良かった~。じゃあ行こっか」

 

僕の返事に安堵の笑みを浮かべると明梨は僕の腕に自分の腕を絡めてきた

 

「そうですね。時間も限られていますし」

 

今度は反対側の腕に日向が腕を絡めてきた

 

「あの~、二人ともどうして僕の腕を掴んでるの?」

 

二人の柔らかな膨らみが腕に当たっているんですけど。……やばい理性がぁ~~

 

「あ、明君が誘ってくれたんだから、明君について行こうかなって」

 

「明久君にエスコートして欲しいんです」

 

そう言われたら仕方がない……理性が飛ばないように素数でも数えよう。2 3 5 7 11…………

 

 

 

 

……71437 71443 71453

 

「や、やっと着いたか」

 

あれから30分ほど、公共交通機関じゃなかったら理性が本能に負けていただろう

 

「疲れているみたいだけど大丈夫?」

 

僕の様子を見て明梨が声をかけてきた

 

「大丈夫。問題ないよ」

 

なんだかダメな返答な気がする

 

「無理はしないでくださいね」

 

「大丈夫だよ。早く中に入ろ」

 

僕は二人を促して入場ゲートへと向かった

 

「いらっしゃいマセ!如月ハイランドへようこソ!」

 

入場ゲートにいる係員は帽子を目深にかぶり、特徴のある訛り口調で定番の文句を言ってきたが、声が僕のよく知る人物の声だった

 

「何してるの? "父さん"」

 

僕は額を抑えながら目の前の男性に尋ねる

 

「一目で見破るとは流石は僕の息子だね」

 

そう言いながら帽子を取ると、僕の父親の顔が現れた

 

「あ、昭斗さん?! こんなところで何をしてるんですか!?」

 

「ん~、まぁアルバイトかな」

 

父さんは明梨の質問にテキトーに答えた

 

「あ、あの。明久君のお父さんですか?」

 

日向はおずおずと父さんに尋ねる。そういえば日向と父さんは初対面になるのか

 

「ん? 君は?」

 

「あ、私は久遠日向と申します」

 

日向は腰をかなり曲げて礼儀正しく父さんに挨拶をした

 

「日向ちゃんか。僕は明久の父親の昭斗だよ。よろしくね」

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

父さんが右手を差し出すと日向と握手をした

 

「それじゃあ、ちょっと話があるから明久を借りても良いかな?」

 

父さんの質問に二人は頷いた。と言うより頷くことしかできなかったんだろうな。突然だったし

 

「よし、じゃあ向こうの方に行こうか」

 

仕方ないので父さんに従った

 

 

 

 

「さてと、久しぶりに父子水入らずだね」

 

少し歩いて話が聞こえないくらいの距離になったところで父さんは立ち止まって話しかけてきた

 

「なんであんたがここに居るんだよ?」

 

僕は一番気になっていた事を聞いてみた。理由はアルバイトなはずがないからだ

 

「息子のデートが気になってね」

 

「デ、デートじゃないよ。だいたいなんで二人が僕なんかと」

 

父さんが嬉々として言ってきたので僕は食い気味で反論した。二人みたいな美少女が平凡な僕なんかと釣り合う気がしない

 

「いやぁ好きでもない男とテーマパークに来るかねぇ?」

 

「いつも一緒に遊んでるんだから変な事でもないでしょ」

 

「はぁ~、明久。お前は如月ハイランドの企みを知っているよな?」

 

「『如月ハイランドを訪れたカップルは幸せになる』ってジンクスを作る事でしょ?」

 

それがどうしたんだろう?

 

「その企みの一環としてほとんどの中高生はそのジンクスの噂をもう知っているんだよ」

 

「え? ほとんど」

 

明梨と日向はどうなんだろう? いや、僕と来てるって事は知らないのか?

 

「たぶん二人も知っているよ。文月学園に限ればほぼ100%の認知度らしいからね」

 

「え? じゃあなんで僕と?」

 

「はぁ~、ここまで言って分からないのか?」

 

「へ? う~ん……」

 

父さんの言葉に僕は考えてみる

 

バレンタインの時には二人ともかなり手の込んだ手作りチョコを渡してきた→あんなに手の込んだチョコは1つくらいしか作れない→本命チョコ  →イケる!

 

「あれ?! 意外と単純?!」

 

いやいや、明久よ。よく考えてみるんだ。ここで勘違いしたら大変な事になるぞ

 

 

 

 

「……ダメだ。どう考えても結果が変わらない」

 

128パターン考えても『イケる』以外の結果が出てこない

 

「二人が僕に惚れているって結果しか出てこないんだけど……」

 

もしかして僕はナルシストなのか?

 

「まぁ、二人は明久に惚れてるだろうね。さっき見たのでもわかるけど」

 

父さんは明梨と日向の方を向いて呟く

 

「明久は二人のどっちが好きなんだ?」

 

「そんなの選べるわけないじゃないか」

 

二人とも僕にとっては大切な人だ

 

「二人の悲しむ顔なんて見たくないよ」

 

僕は俯きながら答える。二人の人を同時に好きになるなんて親に胸を張れる事ではない

 

「そんな明久に朗報です。父さんは息子のために日本でも重婚できるようにしちゃいました☆」

 

そう言って父さんは僕に紙を渡してきた

 

『改正民法732条 配偶者のあるものは双方の同意のない場合、重ねて婚姻することができない』

『改正刑法184条 配偶者のある者が双方の同意なく重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする』

 

そうだった。僕の父さんはいくらか可笑しな人だった

 

「あんたは何日本の法律を変えているんだ!!」

 

僕は思わず叫んでしまった。民法と刑法を変えるなんて

 

「うん、ちょっと国会でオハナシしただけだよ」

 

うん"お話"のイントネーションがおかしかったのは気のせいだろう

 

「でも、二人と結婚なんて……」

 

いくら法律で問題なくなったとはいえ倫理観とか世間体とかいろいろと問題がある

 

「明久は二人とも好きなんでしょ? 悲しい顔を見たくないならそれしかないじゃん」

 

確かに二人を悲しませない方法はそれぐらいしか思い浮かばないけど

 

「まぁ、二人と話し合ってみることだね」

 

父さんは僕の肩を叩きながらそう言ってきた。二人と幸せになるか……考えた事もなかったな

 



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記念撮影(明梨編)

なんとか書き終わりました。暫くは週一の更新は難しくなると思いますがご容赦ください。
それと早めに切り上げるはずが写真撮影だけでこんなにかかるとは……

プロローグを入れるとこれが60話目になります。それと、しばらく見ないうちにお気に入り数が300件越えに……応援ありがとうございます


「お待たせ。二人とも」

 

「ゴメンね~。邪魔しちゃって」

 

父さんとの話が終わったので小走りで二人の元に戻った

 

「気にしないでください。久しぶりの再会なんですから」

 

「そうですよ。私たちはいつも明久君と会えますし」

 

二人ともちゃんと気遣いとかができて優しいよなぁ

 

「お詫びと言っちゃなんだけど、今日は僕が案内するよ」

 

「え?! 父さんが?」

 

父さんの提案に僕は耳を疑った

 

「今日の僕はただのアルバイトだからね。明久達のチケットはプレミアムチケットだったよね?」

 

「うん。コレだよ」

 

僕は父さんにチケットを渡す

 

「本来なら【ウェディング体験】があるはずだったんだけど、昨日ちょっと問題があって中止になっちゃたんだ。だから今日は写真撮影だけになっちゃったんだよね、ごめんね」

 

父さんは僕達に軽く手を合わせて謝ってきた

 

「明久君のお父さんのせいではないですから気にしないでください」

 

「そう言ってもらえると助かるよ。それと日向ちゃん、僕のことは名前で呼んでくれて構わないよ」

 

「で、では、昭斗さんで」

 

「うん。じゃあ、行こうか」

 

僕達は父さんの後に従っていった

 

 

 

 

「それじゃ、明久はこっちの人に、日向ちゃんと明梨ちゃんはそっちの二人について行ってね。僕はもう満足したから帰るよ、じゃあね~」

 

父さんは手を振りながら帰ってしまい、僕らは係員の案内に従って衣装に着替えに向かった

 

 

 

 

「それでは、準備が終わるまでこちらにお掛けになってお待ちください」

 

僕は着替えを終えて白いタキシードを着て撮影場所に用意されたソファに座っている。しかし、鏡で確認したが、プロの技はすごいな。本当に新郎みたいに見えたよ

 

ガチャ

 

僕が自分の服装を見ながらスタイリストさんの仕事に感心していると背中側にあるドアが開く音が聞こえたのでそちらに目を向けると

 

「お、お待たせ 明君」

 

僕の視線の先には天使がいた。いや、女神かもしれない

……その姿は、幼い頃からの長い付き合いで何度も見た事のある姿だったが、初めてあったかのように錯覚させるような幼なじみの晴姿だった

ものごころ付くころには一緒にいたので既に10年以上の付き合いだが、その純白のドレスに包まれた姿は神々しさや、美しさを際立たせて眩しいくらいだった

 

「え、えっと……このドレス変だったかな?」

 

僕が言葉を失って明梨に見惚れていると、明梨は不安そうに僕の意見を聞いてきた

 

「い、いや、すごく似合っているよ。つい見惚れちゃったぐらい」

 

「ふぇっ? あ、ありがとう。明君も、その……すごく似合っているよ(突然そんな事を言うなんて反則だよ。う~、絶対わたしの顔真っ赤だ)」

 

明梨は顔を赤くして俯いてしまった。そんな仕草もかわいいんだよね

 

「ひ、日向はまだなのかな?」

 

僕はこの場の雰囲気に耐えられずに話を逸らそうとする

 

「あ、ヒナちゃんは待ち時間がないように、わたしと明君の撮影が終わってからになるみたいだよ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「う、うん……」

 

「「………………」」

 

マズイ、いつもと違った服装のせいか緊張して話す事も出来ないよ。誰か、この空気をどうにかしてください

 

「お待たせして申し訳ありません。準備が整いましたのでこちらにお越しください」

 

僕の祈りが届いたのか係員の人から声がかかる。そちらに目を向けるとカメラマンの人がカメラをセッティングしていた

 

「では、カメラの正面にお並び下さい」

 

僕らは係員の指示に従いカメラの正面に移動する

 

「もう少し近づいてくださ~い。はい、撮りますよ~」カシャ

 

カメラマンの言葉に従って距離を縮めるとすぐにシャッターが切られた

 

「次は手を繋ぎましょうか」

 

「「ふぇっ?」」

 

カメラマンの指示に僕と明梨は同時に間の抜けた声を出してしまった

 

「どうしました? 早く手を繋いでください」

 

「は、はい!」

 

「きゃっ」

 

カメラマンに急かされて僕は明梨の手を勢い良く握ってしまい、明梨が軽く悲鳴を上げてしまった

 

「あ、ご、ゴメン」

 

直ぐに僕は手を合わせて明梨に頭を下げた。いきなり手を握っちゃったし驚くのも仕方ないか

 

「あ、謝らなくてもいいよ。突然だったから驚いただけだし」

 

「え、え~と、それじゃあ」

 

「うん」

 

僕がそっと明梨の手を握ると明梨も握り返してきた

 

「では、撮りま~す。(カシャ) 次は新婦さんが新郎さんの腕に抱きついてくださ~い」

 

カメラマンはシャッターを切り終えると、さらに過激な指示を出してきた。う、腕に抱きつくって……ダメだ考えただけでもおかしくなりそうだ

 

むにゅっ

 

僕が妄s、想像していると腕に柔らかい感触が伝わってきた

 

「あ、明梨?! な、な、な、なにしてるの?」

 

僕は突然の出来事にかなりどもってしまう

 

「え?! カメラマンさんの指示に従ったんだけど……イヤだった?」

 

「嫌なわけないよ。むしろ嬉しかったというかなんというか……ゴニョゴニョ」

 

明梨が不安そうに聞いてきたので、即座に返答するが本音まで出そうになって言葉を濁してしまった。明梨の胸が腕に当たっているのは気にしないようにしよう……僕の理性が崩れてしまいそうだからな

 

「こちらを向いてくださ~い。はい、いいですよ~」カシャカシャ

 

カメラマンの一言で僕らがカメラの方に向き直ると、今度は数回シャッターが切られた。もしかして、さっきまでのは練習みたいのでここからが本番なのか?

 

「次はお姫様だっこをお願いしま~す」

 

「えぇっ?!」

 

カメラマンのさらなる指示に僕は大声を上げてしまった

 

「どうしました?早くお願いしま~す」

 

「ど、どうする? 明梨」

 

カメラマンに急かされたので明梨の意見を聞くことにした。たぶん明梨なら断ってくれると思ったのだが

 

「わ、わたしは明君が良いなら……」

 

予想外の答えが返ってきた

 

「ちょっ、明梨。何を言ってるの?」

 

「せ、せっかくの機会だし。その……明君なら(ゴニョゴニョ)……」

 

最後の方はよく聞き取れなかったが、明梨はOKみたいだな

 

「そ、それじゃあ」

 

「うん、お願いします」

 

僕が明梨の肩に手を回すと明梨は僕の首に腕をまわしてきた

 

「よっと」

 

僕は少し屈んでから明梨を抱き上げる。明梨の顔が近くにあって恥ずかしいな

 

「あ、あの、わたし重くない?」

 

明梨が恥ずかしそうに聞いてきた。なんで女の人ってそんなに体重を気にするんだろうか?無理なダイエットとかは体にも悪いのに

 

「ん? ぜんぜん重くないよ」

 

僕は思っていた事を口にした。まぁ僕は鍛えているから多少重くても大丈夫だったんだけど、正直こんなに軽いとは思わなかった

 

「あ、ありがと……」

 

「ん? どういたしまして?」

 

なんでお礼を言ってきたのかは分からなかったけど、とりあえず返答しておく

 

「では、写真を取りますから、こっちを向いてくださ~い」カシャカシャ

 

指示に従ってカメラの方を向くと数回シャッターが切られた

 

「次は新婦さんをもっと抱き寄せてくださ~い」

 

「は~い」

 

「ひゃんっ」

 

流石にこの系統の指示にも慣れてきたので僕は指示通りに明梨を抱き寄せると、僕の左手に柔らかい感触が伝わると同時に明梨が小さく悲鳴を上げる。……また、やってしまった

 

「ご、ごめん。決してそんなつもりじゃなくて……」

 

「う、うん。大丈夫だから、そんなに謝らないで」

 

体勢が体勢なだけに土下座することもできないので、明梨を抱きかかえたまま謝ると、明梨は赤くなって俯きながらも許してくれた

 

「う~ん。初々しいですね~」カシャカシャ

 

そんな状況だったので、康太の連写スピードを超える連写をしているカメラマンにまでは気が回らなかった

 




次回は日向編になります。明久PARTがこんな長くなるとは……

PS:導入部分の案が思いついたので、合宿編の後に『暴走召喚獣編』を書こうと思います。
記憶が曖昧なので、おかしな点が出るかもしれないので、できればあらすじを教えていただけると助かります。


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記念撮影(日向編)と○○

今回でナンバリングは60話目です。
かなり長くなりましたがお付き合いください
今話は前回の続きと……ネタバレになるので言えません

ちょっと合宿で根本救済案が思い浮かんだのですが、どっちがいいでしょうか?

どちらにしてもストーリーの大本は変化しないんですが
一応アンケートして見ます


「これで撮影は終了です。お疲れ様でした」

 

あれからあの体勢のまま十数枚の写真を撮って明梨との撮影は終わりを告げた。肉体的にはあまり疲れてないが、あんな姿勢で数分間撮影したから精神的に限界が近いな

 

「よっと。明梨 お疲れ様」

 

僕は明梨を下ろして労いの言葉をかける

 

「お疲れ様 明君。……なんだか疲れているようだけど大丈夫?」

 

明梨は僕の顔色を見て不安そうに聞いてきた

 

「大丈夫だよ。ちょっと慣れない服装だから緊張しちゃってるだけだから」

 

さすがに欲望を抑えるのが限界だったなんて言えないからね……

 

「確かにこういう服装って緊張しちゃうよね」

 

明梨の言葉に僕も少し苦笑した

 

「じゃあ、わたしはこれで終わりだから着替えて待ってるね」

 

「うん。待たせちゃうかもしれないけどゴメン」

 

「時間は気にしなくていいから、ヒナちゃんともちゃんと写真撮ってよね」

 

「もちろんだよ」

 

こんな機会なんて二度とないだろうから忘れられないような記念を残さないとな。明梨は僕の言葉に満足したのか軽く挨拶をして部屋から出ていった

 

 

 

 

ガチャ

 

僕がソファに座り軽く精神統一していると背中側にあるドアが開く音が聞こえたのでそちらに目を向けると

 

「お待たせしました 明久君」

 

空から舞い降りた天使がいた。

……3年間という短い付き合いだが何度も見た事のあるその姿は、初めてあったかのように錯覚させるような晴姿だった

その純白のドレスに包まれた姿は美しさを際立たせて神々しさすら感じるくらいだった

 

「どうかしましたか? 明久君」

 

僕が言葉を失って日向の姿に見惚れていると、僕の様子を不審に思ったのか日向が聞いてきた

 

「い、いや、ドレスがすごく似合ってて、ちょっと見惚れちゃっただけだよ」

 

「あ、あの、ありがとうございます。明久君も、その衣装すごく似合っていますよ(明久君は無意識なのか分かりませんが、よく人が恥ずかしくなる発言をするから困ります)」

 

日向は顔を赤くして俯いてしまった。真っ赤な顔もかわいいな

 

「「………………」」

 

日向が俯いて黙ってしまったために場が静かになる

 

「準備はよろしいでしょうか? よろしければこちらにお越しください」

 

僕らの話が一段落したのを見計らってか係員から声がかかる。そちらに目を向けるとさっきまでスタジオから出てたカメラマンもカメラの調整を行っていた

 

「では、カメラの正面にお並び下さい」

 

僕らは係員の指示に従いカメラの正面に移動する

 

「もう少し近づいてくださ~い。はい、撮りますよ~」カシャ

 

カメラマンの言葉に従って距離を縮めるとすぐにシャッターが切られた

 

「次は手を繋ぎましょうか」

 

「ふぇっ?」

 

カメラマンの指示に日向は間の抜けた声を出した。僕はさっきのこともあったので落ち着いていられた

 

「え、え~と、大丈夫? 日向」

 

「はい、ちょっと驚いただけですから」

 

僕が手を差し出すと日向は僕の手を握ってきた

 

「では、撮りま~す。(カシャ) 次は新婦さんが新郎さんの腕に抱きついてくださ~い」

 

カメラマンはシャッターを切り終えると、さっきと同様に過激な指示を出してきた。やっぱり明梨の時と同じ風に撮るのかな? さっきのでも僕の鋼の理性は木の理性ほどまで強度が落ちたというのに大丈夫だろうか?

 

「日向 どうする?」

 

「え?! 明久君は良いんですか?」

 

日向は僕が平然としている事に驚いているみたいだ

 

「さっきもやったし、日向が良いなら僕は構わないよ」

 

「それじゃあ、失礼して」

 

日向は僕の言葉を聞くとおずおずと僕の腕に抱きついてきた。腕に当たっている柔らかい感触のことは忘れよう

 

「こちらを向いてくださ~い。はい、いいですよ~」カシャカシャ

 

カメラマンの一言で僕らがカメラの方に向き直ると、今度は数回シャッターが切られた。明梨の時と同じようだな

 

「次はお姫様だっこをお願いしま~す」

 

「ふぇっ?!」

 

カメラマンのさらなる指示に日向は赤くなってしまった

 

「どうしました?早くお願いしま~す」

 

「日向 大丈夫?」

 

カメラマンに急かされたので日向に声をかける

 

「あ、あの明久君が良いなら私は構いませんよ……」

 

日向は顔を真っ赤にしながら答えてくれた

 

「ちょっ、日向。大丈夫なの?」

 

「せ、せっかくの機会ですし。その……明久君ならむしろ嬉しいですし(ゴニョゴニョ)……」

 

日向が真っ赤になったままなので気になったが、記念に残したいのは僕も一緒なので指示に従おう

 

「そ、それじゃあ」

 

「はい、お、お願いします」

 

僕が日向の肩に手を回すと日向は僕の首に腕をまわしてきた

 

「よっと」

 

僕は少し屈んでから日向を抱き上げる。明梨の時も思ったけど恥ずかしいな。二度目だから慣れるってことでもないし

 

「あ、あの、私 重くないですか?」

 

日向が恥ずかしそうに聞いてきた。明梨の時も思ったけどなんで女の人ってそんなに体重を気にするんだろうか? 確かに太り過ぎだと体にも悪いけど、二人とも痩せていると思うんだけど……確かに二人の胸は少し平均よりはあると思うが、っとコレはセクハラになりそうだな

 

「ん? ぜんぜん重くないよ」

 

僕は思っていた事を口にした。まぁ僕は鍛えているから多少重くても大丈夫だったんだけど、なんで女性ってこんなに軽いんだろう? 僕はそんなことを思いながら華奢な二人を守ろうと心に誓った

 

「あ、ありがとう、ございます……」

 

「ん? どういたしまして?」

 

なんでお礼を言ってきたのかは分からなかったけど、とりあえず返答しておく

 

「では、写真を取りますから、こっちを向いてくださ~い」カシャカシャ

 

指示に従ってカメラの方を向くと数回シャッターが切られた

 

「次は新婦さんをもっと抱き寄せてくださ~い」

 

「は~い」

 

「ひゃっ」

 

流石にこの系統の指示にも慣れてきたので僕は指示通りに日向を抱き寄せると、今度は胸を触らないように注意して。ところが、日向は小さく悲鳴を上げた。……また、やってしまったか?

 

「日向 どうしたの? 大丈夫?」

 

「は、はい。大丈夫です。突然だったから驚いただけで……(こんなに近くに明久君の顔が……)」

 

原因がいまいち分からなかったので日向に聞いてみると赤くなりながらも理由を教えてくれた。う、日向の顔が近いからこの体勢は恥ずかしいな

 

「う~ん。初々しいですね~」カシャカシャ

 

僕らが赤くなっている姿を、連写しているカメラマンにまでは気が回らなかった

 

 

 

 

「はい、以上で撮影は終了で~す。お疲れ様でした~」

 

「「ありがとうございました」」

 

それから数分間の撮影の後、カメラマンの一言で撮影は終了したので僕らはスタッフの人たちにお礼を言った

 

「よっ。お疲れ様 日向」

 

「明久君もお疲れ様でした」

 

日向を下ろしてからお互いに労いの言葉をかけた

 

「さ、明梨も待っているだろうし早く着替えようか」

 

「そうですね。明梨ちゃんを待たせるのも悪いですしね」

 

僕らは別れて更衣室へと向かった

 

 

 

 

「明梨 お待たせ」

 

僕は着替え終わってロビーへと向かうとソファに腰掛けてパンフレットを眺めている明梨に声をかけた

 

「お疲れ様 明君」

 

僕に気付いて明梨は手元に落としていた視線を上げる

 

「日向はまだ来てないんだね」

 

僕は軽く周りを見てから言葉を告げる

 

「うん。ウェディングドレスは色々と手間がかかるからね」

 

確かにあのドレスは着付けとか大変そうだもんな

 

 

 

「お待たせしてすみません。明久君 明梨ちゃん」

 

明梨と少し雑談していると着替えを終えた日向が小走りでやってきた

 

「気にしなくてもいいのに」

 

「明君の言うとおりだよ。ドレスの方が時間かかるのは仕方ないんだから」

 

僕と明梨がそう言うと日向も少し安心したようだ。そんなに気にすることでもないのに

 

「さて、揃ったことだし行こうか」

 

「そうだね」

 

「次はどこに行きましょうか?」

 

僕の言葉に二人は同意してパンフレットを見始める

 

「二人に大事な話があるから観覧車に乗らない?」

 

僕の気持ちを伝えるには誰かに話を聞かれない場所が良い

 

「大事な話?」

 

「観覧車……ですか?」

 

二人は僕の言いたいことがいまいち分からないのか頭に疑問符を浮かべている

 

「で、どうかな?」

 

僕の問いに二人は頷いてくれたので僕らは観覧車へと向かった

 

 

 

 

「それで明君 大事な話って?」

 

観覧車に乗って直ぐに明梨が聞いてきた

 

「うん、君たち二人に伝えたいことがあるんだ」

 

「私たち二人に……ですか?」

 

僕の言葉に明梨と日向は首をかしげる。ものすごく可愛いな……っと、これから一世一代の告白なんだ。心を落ち着かせなくっちゃ、こういうときは深呼吸を

 

ひっひっふー ひっひっふー

 

「あ、明君どうしたの?!」

 

「明久君は男の子なんですからラマーズ法は意味ないですよ?!」

 

思っていたよりも動揺していたようで二人に注意されてしまった

 

「スーハー スーハー………………よし。藤崎明梨さん、久遠日向さん、僕は貴女達のことが好きです。僕でよければ結婚を前提にお付き合いして下さい」

 

深呼吸をして心を落ち着かせてから二人に向き合い交際を申し込む

 

「ふぇっ、け、け、け、け、け、結婚?!」

 

「あ、あの、明久君、日本では重婚はできないはずですけど」

 

僕の言葉に明梨は真っ赤になりながら口をパクパクさせて日向はおずおずと聞き返してきた

 

「あぁ、それに関しては」

 

僕は父さんに渡された紙を二人に見せる

 

「それで、二人の返事を聞きたいんだけど……」

 

僕が渡した紙を見て固まっている二人に問いかける

 

「わ、わたしはいいよ。……やっと気付いてくれたんだし(ボソッ)」

 

「私もいいです。……鈍感にもほどがあります(ボソッ)」

 

よかった、二人ともOKみたいだ。しかし、この狭い空間のせいか小さなつぶやきも聞こえてしまったが

 

「え~と、二人の最後の言葉の意味って……」

 

僕は恐る恐る二人に尋ねる。今日気付いたことだけど二人っていつから僕のことが好きだったんだろう?

 

「えっと……わたしは小学生のころから明君のことが好きだったんだけど……」

 

「私は明久君に助けてもらってから……です」

 

二人は少し迷ってから口を開く。………………え~と、つまり二人はずっと僕に思いを寄せていてくれたわけで、僕は二人の思いに気付かずに乙女の純情を弄んだわけで…………

 

「すみませんでしたぁぁぁ!!」

 

僕は自分のしていた事に気付いて観覧車の中で土下座をする。観覧車に乗ってからしばらく経つのでたぶん今の高度は地上3,40mぐらいになっているだろう。こんな高さで土下座するなんて多分人類初だろう

 

「頭を上げてよ明君」

 

「そうですよ、結果的には気付いてくれたんですし」

 

二人に言われて僕は頭を上げる

 

「そうは言っても僕が二人の気持ちを無碍にしていたのは事実だし、気が済むようにしてください」

 

うん。何年も気持ちを無視してきたんだから何をされても文句は言えない

 

「だ、だから気にしなくっていいって」

 

「それじゃあ僕の気が収まらないんだけど……」

 

明梨の言葉に僕は気まずく告げる

 

「あ、あの、明梨ちゃん。それだったら……(ゴニョゴニョ)」

 

「えっ?! そ、そんなこと……」

 

日向が明梨に耳打ちすると明梨は真っ赤になって動揺する。動揺するようなことはある程度想像がつくけど、赤くなることって何だろう?

 

「でも、明久君にこんなこと出来る機会なんてそう来ないと思いますし」

 

「う、うん。そうだね」

 

日向の説得で明梨も納得したようだ。……何をされるんだろうか?

 

「じゃ、じゃあ、明君、目を瞑って」

 

「は、はい……」

 

明梨の言葉に僕は素直に目を閉じる。二人なら無いと思うけど僕がやったことを考えて衝撃に備えて歯を食いしばる

 

「じゃあ、せーので」

 

「そうですね」

 

二人の会話が耳に入ってきて自然と体にも力がこもる

 

「「せーのっ」」

 

ちゅっ

 

二人の掛け声の後に唇に柔らかい感触が伝わってきたので反射的に目を開けると視界に二人の真っ赤な顔が広がっていた。唇に伝わってきた感触と併せて考えると二人にキスをされているようだ

 

「え~っと、今のって……」

 

二人が離れてから俯いている二人に尋ねる。たぶん僕の顔も真っ赤だろう

 

「そ、その、ファーストキス……だよ」

 

「わ、私も初めて……です」

 

二人は俯いたまま答えてくれた

 

「え~っと、ごちそうさまです」

 

とりあえず、お礼? を言う。そんなこともあってその後はお互いに会話は無く観覧車から景色を眺めた

 

 

 

 

Prrrrrr Prrrrrr

 

僕らが観覧車から降りると僕の携帯電話が鳴ったので二人に許可を取ってから電話に出る

 

「はい、もしもし。どうしたんですか? 透さん」

 

電話の相手は透さんだった

 

『あぁ、明久君、娘のことを頼むよ』

 

は? なにをいっているんだ?

 

「どういう意味ですか?」

 

僕は言葉の意味がいまいち分からなかったので聞いてみた

 

『ははは、照れるなって。プロポーズでも済ませているんじゃないか?』

 

「なんで知っているんですか?……」

 

僕は半ば呆れながらも聞いてみた

 

『昭斗から話を聞いて、明久君の性格を考えればわかっただけなんだが……』

 

「もういいですよ」

 

僕は額を抑えながらも答える

 

「すみませんが、透さんに謝らないといけない事があるんですが……」

 

日向のことはちゃんと伝えないといけないからな

 

『ん? 日向ちゃんのことか? 明久君のことだから二人と付き合うんだろう?』

 

「実は、ってなんでわかるんですか!?」

 

僕が告げる前に透さんが僕の言いたい事を当ててきた。なんでそこまで分かるんだ?!

 

『まぁ話を聞けばわかるさ。別に俺は明梨がいいなら構わないさ。それに、明久君なら明梨のことを幸せにできると思うしな』

 

「随分と放任主義なんですね……」

 

『まぁ娘を任せられるような人間もいたし、その点では安心だったからな』

 

「はぁ、まぁ任されました。明梨を幸せにしますよ」

 

『おっ、色男は言う事が違うな。じゃ、またな~』ピッ

 

透さんは要件が済んだのか通話を切った

 

「えっと……今のってお父さん?」

 

二人の元に戻ると明梨が聞いてきた

 

「うん、『明梨のことを頼む』ってさ。まぁ、今度ちゃんと挨拶に行くよ。もちろん日向の方にもね」

 

その後は夕暮れになるまでアトラクションを回った後に日向と明梨を家に送ってから家に帰った。

はぁ、今日は長い一日だったな。でも、二人と付き合う事になるなんて……夢みたいだな

 




ついに明久のカップリングが成立しました。次回はプール編の前に軽くイチャつかせようかと……

アンケートは合宿終盤までストーリーに差は生まれないので書くまでとります。


明「なんで根本君を救済しようと思ったの?」
個人的には根本は嫌いではないからです
明「あんな卑怯な変態なのに?」
変態なのは雄二と君のせいでしょ。それに卑怯ってのは生きていくうえで有能だと思いますよ。時と場合さえ弁えれば
明「それで、どっちの方を書きたいの?」
基本的にどちらでも構いませんよ?合宿中に問題行動を起こすのは確定ですから
明「ちょっと、それってネタバレなんじゃ?」
キノセイデスヨー


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閑話①〜平穏な休日〜
眼福と本音


予告通りのイチャイチャ回……にはまだ入ってません。すみません

アンケートは引き続き取っています
根本は改心するか、否かです。
現在の所、改心√が有力になっています


「すぅすぅ……明君の匂い……」←僕の右腕に抱きついて寝ている明梨

 

「すぅすぅ……もう離しません……」←同じく左腕に抱きついて寝ている日向

 

どうしてこうなったんだろう? 僕は緊張で眠れないからこうなった経緯を思い出すことにした

 

 

 

 

今朝

 

ピンポーン

 

如月ハイランドで僕が明梨と日向に告白&プロポーズをしてからちょうど1週間、今日は日曜日なので部屋を隅々まで掃除をしようと準備をしていると玄関のチャイムが鳴った。誰だろう? 今は朝の9時だし誰かが尋ねてくる予定は無いはずだけど

 

ガチャ

 

「は~い。どちらさ……ま」

 

僕は玄関を開けて絶句してしまった。そこにいたのは

 

「お、おはよう明君」

 

「お、おはようございます明久君」

 

僕の彼女であり婚約者でもある明梨と日向だった。ただ二人の服装が

 

「二人ともよく似合っているよ(どうしたのさ?! その服装は!!)」

 

メイド服(学園祭で使用したもの)だった。あれ? 本音と建前(?)が逆だったかな

 

「「あ、ありがとう(ございます)」」

 

二人は赤くなってしまった。あ、かわいいな

 

「じゃなくて、なんでメイド服を着てんの?!」

 

「え、えっと……イヤだった?」

 

「嫌じゃないです」

 

明梨が上目づかいで聞いてきたので食い気味に答える

 

「そうじゃなくて、メイド服を着ている理由を聞きたいんだけど……」

 

「えっと、紫織さんに『清涼祭の時は接客できなかったんだし、休みの日にでもしてみたら?』ってアドバイスされたんです」

 

神谷さんグッジョブb。二人の着ているメイド服は清涼祭の出し物で使ったものだ、オーダーメイドで記念という事で僕の家にも燕尾服がしまってある

 

「まぁ立ち話もなんだし、上がってよ」

 

「「お邪魔します」」

 

僕は心の中で神谷さんに感謝しながら二人を家へと上げる

 

 

 

 

「ところで、二人ともなんでそんなに大荷物なの?」

 

ひとまず居間に案内してから気になっていた事を聞いてみる。日向はともかく明梨は家が隣だからすぐに取りに行ったりできるはずだが

 

「えっ? お父さんから聞いてないの?」

 

「私もお父さんが連絡を入れて置くって言っていたんですけど」

 

ピロリン

 

タイミングを見計らったかのようにメールの着信音が鳴ったので僕は携帯電話を操作してメールを確認すると

 

From 久遠 義史

To 吉井 明久

法事で今日は帰れないので日向のことを頼むよ

 

From 藤崎 透

To 吉井 明久

茜と二人きりで旅行に行くから明梨のことヨロシク

 

透さんと義史さんからのメールだった。二人ともなんでこんなに放任的なんだ。昨日婚約の挨拶に行った時も思ったけど……重婚に関して話しても普通に『娘のことを頼む』的な事を言われたぐらいだ。正直反対されると思っていたから拍子抜けしてしまった。

ちなみに茜さんは明梨のお母さんで見た目はかなりの美人で20代くらいに見えるほどだ。明梨と二人で並んでいると少し年の離れた姉妹にしか見えないくらいである

 

「……つまり二人は今日家に泊まるってこと?」

 

「「うん(はい)」」

 

僕が状況を整理してから二人に質問すると二人は頷いた。なるほど、なるほど、二人がうちに泊まるのか……

 

「Really?」

 

「「リ、Really.」」

 

つい英語で聞き返してしまったけどほんとのようだ。いくら付き合い始めたからといっても未成年の男女が一つ屋根の下っていうのは問題があるんじゃないか?

 

「そ、それで、明君の家にお世話になるんだし」

 

「そのお礼にご奉仕しようと思ってメイド服で来たんです」

 

二人は少し俯きがちで説明してきた。『ご奉仕』って言葉だけで僕の友達は昇天しそうだな。かく言う僕も込み上げてくる熱いものを抑えるのに必死ではあるが

 

「明君 部屋の掃除をしてたの?」

 

明梨は部屋の中を見ながらそんなことを聞いてきた

 

「うん、天気もいいからちょうどいいと思ってね」

 

改めて部屋を見渡してみると掃除機やはたきなど掃除用品が表に出ている

 

「掃除は私たちがしますから明久君は休んでて下さい」

 

「休んでてって言われてもすることも無いから僕も手伝うよ」

 

そう言いながら立ち上がる二人に続いて僕も腰を上げる

 

「わ、私たちだけで十分ですから休んでて下さい」

 

「そう言うわけにもいかないよ。二人に任せて僕が何もしないってのは気分が悪いし……」

 

「はぁ~、分かったよ。じゃあ3人で掃除しようか。(明君はこういうときは頑固だもんね)」

 

明梨は僕の性格を分かっているからか諦めたようだ

 

「さ、それじゃ、掃除を始めようか」

 

意見も纏まったので掃除を開始した

 

 

 

 

ピーー

 

「あれ? 誰か炊飯器使ったの?」

 

僕は炊飯器の音に気付いて二人に聞く

 

「うん。もうすぐお昼だしご飯炊いたんだけど、ダメだった?」

 

「いや、気になっただけだよ。そういえば、もうお昼か」

 

明梨の言葉に時計を見てみるともう11時半、3人で作業をしていたため粗方掃除は済んでいた

 

「じゃあ、わたしとヒナちゃんでご飯作っちゃうから明君はそこで待ってて」

 

「僕も手伝うよ」

 

「だ、ダメです。明久君は休んでて下さい」

 

「いや、でも……」

 

「明君はわたしとヒナちゃんの腕が信じられないの?」

 

「そんなことは無いよ。二人の料理はすごい美味しいよ」

 

「そう思っているなら、ここは任せて明久君は休んでて下さい」

 

さすがにこう言われては仕方がないので僕は大人しくソファで休むことにした

 

 

トントントントン

 

キッチンから軽やかな包丁の音が聞こえてきたのでそちらに目を向けると明梨が野菜を切っていた

 

「ん? 明君 どうかした?」

 

僕の視線に気づいたのか明梨が手を止めてこちらに顔を向けてきた

 

「何でもないよ。ただ、幸せだな~って思ってさ」

 

先週まではこんなことになるなんて夢にも思ってなかったからな

 

「突然どうしたんですか?」

 

僕らの会話が気になったのか、食器の準備をしていた日向も会話に混ざってきた

 

「いやさ、こんな可愛い娘と付き合えて、手料理まで食べられるなんて僕は幸せだってことだよ」

 

二人とも可愛くて、料理も出来て、優しくて、ほんと理想的なお嫁さんって感じだよね

 

「そ、そんなにストレートに言われると恥ずかしいよ」

 

「付き合い始めてから明久君が大胆になった気がするんですけど……」

 

二人は恥ずかしいのか顔を赤くして俯いてしまった

 

「赤くなってる二人もかわいいよ。それに、付き合っているんだし想いは言葉にしないと伝わらないからね」

 

今までは変な事を言って嫌われたりしたらと考えて口にしなかった言葉もあったからね

 

「「想いは言葉にしないと伝わらない……か(ですか)」」

 

明梨と日向が僕の言葉を反芻するように呟く

 

「わたしも明君みたいにカッコよくて、強くて、優しい人と付き合えて幸せだよ」

 

「私も明久君と付き合えて幸せです。……家事スキルが高かったのはちょっとショックでしたけど」

 

「うん、あれはちょっと自信をなくしちゃうよね」

 

二人が少し冷たい視線を向けてきた

 

「ふ、二人だって家庭科で高得点だし、家事スキル高いよね」

 

僕はこの言葉でこの視線から逃れられると思ったが

 

「「明君(明久君)の料理にショックを受けたから努力したんだよ(努力したんです)」」

 

どうやら地雷を踏んでしまったようだ

 

「なんかゴメンなさい」

 

「こっちこそゴメン。なんかムキになっちゃって」

 

「私こそ余計な事を言ってしまってすみませんでした。家事が得意なのはいいことなのに……」

 

「いや、日向は悪くないよ。思っている事は言ってくれた方が助かるし」

 

……………………………

 

気まずさから沈黙に包まれる

 

「と、とりあえず、ご飯作っちゃおうよ」

 

「そ、そうですね。お腹もすいてきましたし」

 

「じゃあ僕はテーブル拭いとくよ」

 

明梨の言葉で僕らはやっと動き始めた

 




次話にはイチャイチャが見られる……はずです。


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手料理と耳搔きと思い出

やっとの投稿です。お待たせして申し訳ありません。
お詫びと言っては何ですが今回はかなり長めになっていますのでお付き合いください。
イチャイチャってこんな感じでいいのか疑問ですが、イチャついています。
深夜に少しずつ書き加えていたのでかなり暴走してると思います。反省は……していません(キリッ)

プール回でのイベント(イチャつき)があまり思い浮かばなくて本気で悩んでいます。思いつかなかったら淡白な話になりそうですので、何かアイディアがあったら感想を送ってください。

それと、基本的にはどんな感想(カオスや無茶ぶりも可)にも返すつもりなのでドンドン感想を送ってください。

PS:軽いアンケートなのですが、この後の展開で
いつもの11人5組は
①名前で呼び合う(例:明久→愛子「愛子さん」)
②いままでどおりの呼び方(例:明久→愛子「工藤さん」)
どちらが良いでしょうか? この作品の時系列だと1ヶ月ほどの付き合いで交流も多いので名前呼びにしても違和感はないと思っているのですが


カチャカチャ

 

「いただきます」

 

「い、いただきます」

 

明梨と日向は料理や取り皿を並べると僕の両隣に座って手を合わせる。メニューはチャーハンとサラダ、それとスープだ。一人暮らしであまり買い置きは無いのにこれだけ作れる辺り二人は余り物とかの扱いも上手そうだ

 

「ちょっと待って、なんで僕のスプーンやフォークがないの!?」

 

これは何かの当てつけか?

 

「え、えっと……あ、あ~ん」

 

「うぇい?!」

 

僕がそんなことを考えていると明梨が顔を赤くしながらチャーハンを乗せたスプーンを僕の口元に持ってきたので、僕は素っ頓狂な声を出してしまった

 

「あれ? 明君ってこういうの嫌いだった?」

 

「いや、明梨と日向がしてくれることなら何だって嬉しいけど、突然だったから驚いただけだよ」

 

明梨が不安そうに聞いてきたので即答する

 

「じゃ、じゃあ改めて、あ~ん」

 

「うん、いただきます。あ~ん」

 

明梨がスプーンを差し出してきたので僕は口を開けてチャーハンを口に含む

 

「ど、どうかな? 美味しい?」

 

「うん。すごくおいしいよ」

 

嬉しさと恥ずかしさから味覚はあまり働いてないけど『美味しい』というのは分かった。明梨が食べさせてくれたというだけで100割増しぐらいに美味しかった

 

「明久君 サラダもどうぞ。あ、あ~ん」

 

日向も赤くなりながらサラダを勧めてきた

 

「う、うん。あ~ん」

 

「ど、どうですか?」

 

「とっても美味しいよ」

 

細かい味なんてわからないけど、彼女に食べさせてもらうということでこんなにも美味しくなるとは

 

その後も二人に(半強制的に)食べさせてもらい、嬉し恥ずかしい昼食は終わった

 

 

 

 

「ふぅ~。二人ともお疲れ様。それと手伝ってくれてありがとうね」

 

掃除をし終えてソファに腰をおろしながら手伝ってくれた二人に労いと感謝の言葉を述べる

 

「お疲れ様。手伝ったのはわたし達がしたんだから気にしないでよ」

 

「お疲れ様でした。お茶をどうぞ」

 

いつの間に淹れていたのか日向がお茶の入った湯呑を出してきた

 

「ありがとう日向」

 

「ヒナちゃん ありがとう」

 

ふぅ~。お茶を飲むと心がなごむな~

 

「あ、そうだ。明君 ちょっと横になって」

 

「横に? わかったよ」

 

明梨に言われるがままソファに横になると

 

ぽふっ

 

柔らかい感触が頭に伝わってきたので反射的に頭を上げようとすると

 

「あ、動かないで、耳掃除するから」

 

明梨に動きを制されてしまった。明梨の方に視線を向けるとその手にはいつの間にか耳かきが握られていた

 

「じゃあ、お願いします」

 

拒否する理由もないので大人しく従う事にする。彼女に膝枕で耳掻きしてもらうなんてラッキーイベント回避する理由も思い浮かばないけど

 

「はふぅ」

 

「ふふっ。明久君 気持ちよさそうですね」

 

思わず息が漏れたのを日向に指摘されてすごく恥ずかしくなる

 

「えっと……どうかな? 気持ちいい?」

 

明梨が確認してくる

 

「極上の気持ちよさです」

 

「そうなんだ。よかった」

 

明梨は少し安心したような声を出す

 

 

「よしっ、これでこっち側は終わりだね。反対側はヒナちゃんお願いね」

 

しばらく耳搔きしてから明梨は日向に耳かきを渡す

 

「はい。じゃ、じゃあ、明久君 どうぞ」

 

「う、うん」

 

僕は日向の太腿に頭をうずめる。さっきは膝枕するなんて思ってもなかったから自然とできたけど膝枕されると分かっていてするのは恥ずかしいな

 

「じゃあ、失礼します」

 

「うん。よろしく」

 

僕が返事をすると日向は耳搔きし始める

 

「どうですか?」

 

「うん。極上の気持ちよさだよ」

 

他人に耳搔きしてもらう事がこんなにも気持ちいことだったとは。僕は気持ちよさからゆっくりと意識を手放した

 

Side out

 

 

明梨Side

 

すぅすぅ……

 

「ふふっ、寝ちゃいましたね」

 

「こうやって寝顔を見てると昔の明君の面影が残ってるのがわかるなぁ」

 

わたしは昔の明君の顔を思い出してしまった。だって明君の寝顔が子供の寝顔みたいなんだもん

 

「確かにどこかあどけなさがある感じがしますね。昔の明久君ってどんな感じだったんですか?」

 

明君の寝顔を見ながらヒナちゃんが思い出したかのように聞いてくる。そういえば、あんまり昔の話はしたことなかったなぁ

 

「どんなって言われると表現するのは難しいけど……性格は今と変わらないかな」

 

「『今と変わらない』ですか……」

 

ヒナちゃんはいまいち分からないといった様子で聞き返してきた

 

「うん。『自分のことは二の次で他人の為に一所懸命な所』とか」

 

「確かに明久君って自分のことは気にしてない感じですよね」

 

明君は昔から自分の体のことも考えないで無理ばっかしていて心配ばっかりしてたよ

 

「そうだ。昔の写真なら家にあるから取ってこようか?」

 

「でも、勝手に明久君の写真を見るのは……」

 

ヒナちゃんってこういう時遠慮深いよね

 

「じゃあ、明君が起きてから皆で見ようか」

 

「そうですね。それなら」

 

「明君も寝ちゃっているし晩御飯の材料でも買いに行こうか」

 

「明久君の寝顔を見ていたいですが、あまり遅くなると大変ですし、行きましょうか」

 

わたし達はまだ眠っている明君にタオルケットをかけて、お父さんから預かった鍵でドアを閉めてから買い物へと向かった

 

Side out

 

 

 

 

明久Side

 

カタ カタッ

 

「うぅん?」

 

僕は何かの物音で目を覚ます。あれ? いつの間に寝ていたんだ? 確か日向に耳搔きをしてもらって……そうだ。耳搔きの気持ちよさで寝ちゃったんだった

 

「あ! 明久君 目が覚めたんですね」

 

僕が目覚めたのに日向が気づいたようだ。日向の手元を見てみると食器類を手にしているからもう夕飯時のようだ。だいぶ寝てしまったみたいだな

 

「うん。だいぶ寝ちゃったみたいだね。夕御飯の支度が終わってるみたいだけど、食材ってあったっけ?」

 

商店街の特売日を考えてあまり買いだめは無かったはずだし、昼ごはんもあったからあまり残っていないはずだけど

 

「ううん。ヒナちゃんと二人で買い物に行って来たんだよ」

 

明梨が料理を手にキッチンから出てきた。二人でって

 

「大丈夫だった? ナンパとかされなかった?」

 

「ふふっ。心配し過ぎですよ明久君」

 

「いや、二人の可愛さを考えたら心配するのは彼氏として当然だよ」

 

一人でも目を引く美少女なのにそんな娘が二人で歩いていたら

 

「そんなに心配なら明君の彼女だって分かるように首輪でもつけようか?」

 

「∇∑∝∀∂∆な∫∮εν?!?!?!!」

 

「お、落ち着いてください明久君。日本語が不自由になってますよ」

 

「あはは。明君 冗談なのにとりみだし過ぎだよ」

 

明梨はいたずらに成功した子供のような笑みを浮かべていた

 

「ご飯の準備もできたから明君も席について」

 

僕は明梨の言葉に従って席に着いた。しかし、首輪はナシだけど婚約したことだし二人に指輪でもプレゼントしようかな? アルバイトでもして自分のお金でプレゼントできればいいけど

 

 

 

 

「へ? アルバム?」

 

「うん。ヒナちゃんは昔のこと知らないからみんなで昔の写真を見ようって話になったんだけど」

 

「明久君が嫌なら見なくてもいいんですが……」

 

夕飯を食べていると昔の写真の話になった

 

「別に嫌ってわけじゃないけど、面白いものでもないと思うよ?」

 

「そういう理由で見たいんじゃないと思うよ」

 

「私も昔の明久君を知りたいんです」

 

ん? つまり自分だけ知らないから疎外感みたいのを感じているのかな?

 

「わかったよ。じゃあ食べ終わったらアルバムを探すよ」

 

「それとは別の話なんだけど……」

 

「あの……明久君って今週末の土曜日って暇ですか?」

 

明梨と日向がもじもじしながら週末の予定を聞いてきた

 

「う~ん……特に遊びの予定とかは入ってないけど。それがどうかしたの?」

 

「実は商店街で福引きがあって2等が当たったんだよ」

 

「2等ってすごいね!! 何が当たったの?」

 

「これです」

 

日向が差しだしてきたのは

 

「『水無月プールパーク セミオープンチケット』?」

 

如月グループと並ぶ規模の水無月グループが今度オープンさせる複合型のプール施設のセミオープンチケットだった。確か日本最長のウォータースライダーや様々な波を再現できる波のプール、一周2kmの流れるプールなど大規模な施設があるらしい

 

「うん。そのチケットが4枚当たったんだよ」

 

明梨が同じチケットを3枚出してきた

 

「それで、明久君と3人で行きたいんですけど……」

 

「勿論いいよ。断る理由もないしね」

 

それを聞いた二人は笑顔になって、また夕食を食べ始めた

 

 

 

 

「っと。あった、あった」

 

夕食後、一段落してから本棚を探しているとアルバムを見つけた

 

「うわぁ~。懐かしいね」

 

「小さいの頃の明久君って可愛いですね」

 

「今でも可愛い時あるけどね」

 

「二人とも、『可愛い』は男にとって褒め言葉ではないと思うけど」

 

僕は二人の言葉に少しショックを受けた。可愛いなんて思われてたなんて

 

「でも、明君の寝顔は可愛かったよ」

 

「そうですね。赤ちゃんみたいでしたよ」

 

そう言って日向はケータイの画面を僕に見せてきた

 

「寝顔撮られたの?!」

 

「あ、嫌だったのなら消しますけど」

 

「消さなくていいから、悲しそうな顔しないでよ」

 

僕の反応を見て日向は残念そうな表情を浮かべたので日向の案を却下した。まぁ寝顔の一枚くらいなら良いか

 

「あ、コレって明君がヒーローショーで悪役を倒しちゃった時のだ」

 

アルバムを捲って出てきたのは7歳くらいの時に近所であったヒーローショーの時のものだった

 

「え?! あの時の子って明久君だったんですか!?」

 

「日向もこのとき居たの?」

 

「はい。家の近所だったので行ったんですけど、呼ばれた男の子が悪役の人を倒した時は驚きましたよ」

 

あの時は張り切っていて勢いで倒しちゃったからなぁ

 

「あの時には普通に明君は強かったからね」

 

あの時には『無銘道場』に通っていたし相手の力を利用すれば大人相手でも勝てたからなぁ。その後も思い出を話しながら3人でアルバムを見ていった

 

 

 

 

「ふぅ~。後は寝るだけか……」

 

僕はシャワーを浴びながら今日のことを振り返っていた。二人が泊まると言いだしたときはどうなるかと思ったけど後は寝るだけだし二人には僕と姉さんのベッドを使ってもらって僕はソファででも寝れば問題ないな

 

「あ、あの、明久君」

 

「日向? どうかしたの?」

 

日向の声が聞こえたのでシャワーを止めて用を聞く

 

「あ、あの、その……」

 

「ん? 何かあったの?」

 

「お、お背中、流しましょうか?」

 

ガシャーン

 

日向の爆弾発言で僕はコケてしまった

 

「あ、明久君?! だ、大丈夫ですか?」

 

まぁ、あんな音をたてたら心配するのも当然か

 

「大丈夫だよ。それより突然どうしたの?」

 

僕は体を起こしながらドアの向こうの日向に問いかける

 

「何か明久君のお役に立てることがしたかったんですが……ダメですか?」

 

「じゃあ、日向の厚意に甘えさせてもらうよ」

 

正直言うと今日はもう理性の限界が近いが折角の機会だしと思って許諾してしまう

 

「し、失礼します」

 

「よ、よろしく」

 

僕は日向の恰好を見て、すぐに日向に背を向けて椅子に座る。バスタオル1枚のせいか胸が強調されていて……これ以上は理性が崩壊しそうだ

 

「明久君の背中って大きいですね」

 

「そ、そうかな?」

 

僕って小柄な方だからそんな風に言われることってないからな。雄二なら別だろうけど

 

「あっ、この傷……」

 

日向は労わるように僕の腰のあたりに手を当てる。僕が日向を助けた時にできた傷のあたりだ

 

「私に関わらなければ、明久君が怪我をすることもなかったのに……」

 

日向は悔やんでるような暗い声を出す

 

「日向……『気にしないで』ってのは無理かもしれないけど、僕はあの日のことは後悔してないよ。もし、あそこで日向のことに気付いていなければ何が起こってたか知らなかったし、日向に出会う事もなかったかもしれないからね」

 

僕は自分の素直な気持ちを日向に伝える。あの日のことに日向が負い目を感じる必要もないし、あの時気付かないで後から知っていたら僕は後悔していただろう

 

「……ふふっ、明久君はどこまでいっても明久君なんですね」

 

日向は静かに僕の言葉を聞いた後に微笑した

 

「その『どこまでいっても僕』ってのはどういう意味?」

 

少しバカにされているような言い方が気になったので聞いてみた

 

「どこまでもお人よしで、他人想いで、誰よりも優しいって意味ですよ」

 

そんな風に思われてたなんて知らなかったな

 

「そんな大したことした覚えは無いんだけどね、僕としては自己満足でやっていることだし」

 

「それでも明久君に助けてもらってる人は多いんですよ」

 

「そんなもんなの?」

 

「そういうものなんです。背中お流ししますね」

 

日向がそう言うならそうなのかな? 助けた覚えはあんまりないんだけど

 

「私は出ますのでゆっくり体を温めてくださいね」

 

「うん。ありがとうね日向」

 

「こちらこそありがとうございました。お陰で気持ちが楽になりました」

 

 

 

 

「それじゃあ、二人は僕と姉さんが使ってるベッドを使ってね」

 

「明久君はどこで寝るんですか?」

 

「僕はソファで寝るから」

 

「それじゃ体に悪いから一緒に寝ようよ」

 

「い、いくらなんでも男女が一緒に寝るっていうのは問題があるよ」

 

主に僕の理性とか

 

「付き合っているんだし問題ないでしょ?」

 

「いや、付き合っているといっても僕の理性にも限界が……」

 

「あ、明久君になら何をされても大丈夫です……」

 

「わたしも明君になら……」

 

二人ともそう言いながら頬を押さえて赤くなってしまう

 

 

 

……僕は無力だ

 

結局、二人のお願い(上目づかい+涙目)に屈してしまい、僕のベッドには僕を中心に右側に明梨が、左側に日向が寝ている。ダブルサイズ(先週、如月ハイランドから帰るとシングルサイズから変わっていた)とはいえ3人で寝るには少しきついので密着する形になっている

 

 

 

 

そして、話は前話(第61話 眼福と本音)に戻る。その後の展開は読者の想像に任せます(※R18な行為は一切行っておりません)

 




感想には全部返信するつもりなのでお気軽に感想を下さい。
それと、この後は一輝と優子、霧島夫妻、康太と愛子、秀吉と紫織の休日を書くのですこし日常編が続きます。
次話は土日で書いて月曜までには投稿するのでお待ちください


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手解きとお袋の味

ひとまず、昨日までに上げるつもりだったのに遅くなって済みませんでした。
今回は全篇 一輝Sideです。あまりイチャついては無いですが、なんか新婚みたいな感じになってます。
それと、一輝が優子との約束を果たします。作者も忘れかけてましたが(汗

PS
この後「秀吉・紫織」「康太・愛子」「霧島夫妻」の3つの日常(休日)を書くんですが、順番が決まってないのでアンケートを取ります。
あくまで参考なのでアンケートの結果とは違うかもしれないですが 


Prrrrrr Prrrrrr

 

オレは白金の腕輪のデバッグが済み明日が暇になったので優子に電話をかけている

 

ガチャ

 

『もしもし? 一輝君?』

 

「優子か? 悪りぃな、こんな時間に電話しちまって」

 

今は11時 電話をするにしては少し非常識な時間帯だ

 

『気にしないでいいわよ。アタシも起きていたし』

 

「もしかしてこんな時間まで勉強か?」

 

『いや、ちょっと趣味の本を読んでたら読み耽っちゃって……ところで、急に電話なんてどうかしたの? 今週末くらいまでは忙しいんでしょ?』

 

「それが思ったよりも早く終わったから明日が暇になったんで優子の予定でも聞いておこうと思ってな」

 

『そうなんだ。アタシは明日の予定は特にないわよ』

 

「そうか。じゃあ明日買い物でも行かないか?」

 

『いいわよ。じゃあまた明日ね』

 

「あぁ、駅前に10時でいいか?」

 

『そうね。それじゃ一輝君、おやすみ』

 

「おぅ、おやすみ。Have a good night.」

 

ガチャ

 

 

 

 

「ふぅ~。早く着きすぎたか?」

 

オレは駅前のベンチに腰掛けながら備え付けの時計に目をやる。今は8時50分、待ち合わせまでは1時間以上ある

 

「ま、彼女を待たせるわけにも行かねぇから仕方ねぇか」

 

そんな事を思いながら持参したメモ帳に今考えている腕輪の設計を書き始めた。学園長が作った白金の腕輪の応用でFクラス(馬鹿共)制圧用のものだ

 

 

 

「ゴメン一輝君。待ったかしら?」

 

オレが設計に集中してると優子が小走りでやってきた。時計を見たら9時半、いつの間にか30分以上経ってたみたいだ

 

「いや、オレが早く来すぎただけだ。それに時間まではまだ余裕があるしな」

 

「ありがと。……それは?」

 

優子はオレの持っているメモ帳を指さす

 

「学園長の作った白金の腕輪の応用品のアイディアだ」

 

「そんなのまで考えられるなんて一輝君ってスゴイわね」

 

「まぁ伊達に大学に行ってたわけじゃねぇからな。それよりも、そろそろ行かないか? 少し人通りも多くなってきたし」

 

「そうね。行きましょうか」

 

そう言うと優子はオレの腕に自分の腕を絡めてきた

 

「じゃあ、さっそく行くか」

 

 

 

 

「この後はどうする?」

 

あれから服屋や雑貨屋を見て回り、今は昼時。服屋で優子に『アタシに似合う服を選んで』と言われた時には困った、正直オレは見た目とかあまり気にした事は無いし服装だって基本実用性重視で動きやすいものを選ぶからだ。とはいっても彼女の頼みを無碍にするわけにもいかず自分の感性で優子に似合う服を選んだら喜んでくれたので何よりだ

 

「う~ん、お昼を食べてからはどうしようかしら。だいたい見たいとこは見て回ったのよね」

 

「そうか……そうだ。付き合う時に『料理を教えてやる』って言っただろ? 結局教えること出来てないし昼食ってから材料買って練習しないか?」

 

「え? いいの?」

 

「あぁ、オレも言っておきながらやらないってのは気分が悪りぃからな。忘れかけてたくせにデカいこと言えないが」

 

「じゃあ、お願いします」

 

「おう、じゃあ昼飯は……あそこでいいか?」

 

オレは軽く周りを見渡して近くのファストフード店を指さす。デートでファストフードってのは変な気もするが彼女に良い姿見せようとして変にカッコつけるのも間違ってる気がするしな

 

「えぇ、いいわよ。しっかりと教えて欲しいから早く済ませちゃいましょう」

 

 

 

 

「それで? 何作るんだ?」

 

「ん~? 一輝君は何を食べたい?」

 

帰り道でスーパーに夕飯の材料を買いに来てる

 

「そうだな……優子が作ったものなら何でもいいが、肉じゃがなんかどうだ? 家庭料理の定番だしちょうどいいんじゃないか?」

 

「そうね。確かにそれはいいかもね」

 

「そうなると材料はじゃがいもと人参、玉ねぎはいいとして肉はどうする?」

 

「えっ? 肉じゃがのお肉なら牛肉じゃないの?」

 

オレの問いに優子は驚いて聞き返してきた。優子の家だと牛肉を使うのか

 

「まぁ元はビーフシチューを日本で作ろうとしたのが始まりだから牛肉が多いのかもしれないが、家庭によって豚肉や鶏肉を使ったり、白滝を入れたりとか色々あるんだよ」

 

「へぇ~、一輝君ってホントに詳しいのね」

 

「それほどでもねぇよ。アメリカ(向こう)では両親が仕事で飯は自分で作ってたし日本(こっち)でも何度も作る機会があったからな、レシピを調べるうちに詳しくなったんだよ」

 

「一輝君のご両親って何の仕事をしてるの?」

 

「親父は……医者でお袋は看護師だ」

 

親父の職種は医者で問題ないよな? 今は病院に勤めているし

 

「なんでお父さんの仕事で言い淀んだのよ?」

 

「いや、親父は医師免許の他にも獣医師免許やら管理栄養士やら医療系の免許を多く持っていて、前は動物病院に勤めてたからな。なんて答えればいいのか迷ったんだ」

 

聞いた話だとアメリカで飛び級して獣医師免許取った後に日本で昭斗さん達と同じ大学の医学部に入り従兄弟の龍司さんと再会したらしいけど

 

「なんかスゴい人ね……」

 

「あぁ、オレはもう気にしない事にしてるがな……そんなことよりさっさと買い物済ませようぜ」

 

「確かお肉の話だったかしら……一輝君の家ではどうしてたの?」

 

「家は普通に牛肉と白滝を入れてたな」

 

そう言えばお袋の肉じゃが食ったのって1年ぐらい前か?

 

「じゃあ一輝君の家の作り方を教えてくれる?」

 

「ん? 家のでいいのか?」

 

普通は自分の家の作り方でやるもんだと思うんだが

 

「一輝君は家の味を知らないでしょ? それに家の味だったら後でママに教わるからいいわよ」

 

「そうなると買うものは――」

 

オレはお袋の肉じゃがを思い出しながら材料を籠へと入れていった

 

 

 

 

優子の家に着いてから直ぐに肉じゃが作りへと取りかかった。秀吉は神谷と出かけているらしい

 

「次はコンソメを加えてから少し煮てから味付けだな」

 

「コンソメ? だし汁じゃないの?」

 

「あんま出汁の素とか無かったからな。簡単な代用品だとコンソメが良いんだよ」

 

遠出をすれば日本食材やとかもあったけど親父もお袋も忙しくって買いに行く暇がなかったからな

 

「それにしても手際いいな。ホントに料理下手なのか?」

 

オレは鍋にコンソメを入れている優子を見ながら思った事を口にする

 

「さすがに今のままじゃマズイって思ってから練習したからね」

 

「ふぅ~ん。短期間にしてはかなりの腕な気がするが、っと煮えてきたから醤油と砂糖で味付けしてくれ。煮物の場合は煮汁を飛ばすから少し薄味にすることに気をつけろよ」

 

優子はオレの指示を聞くと味見しながら味を整え始めた

 

「このぐらいでどうかしら?」

 

「おっバッチリだ」

 

優子が小皿に煮汁をよそって渡してきたので味を確かめてから親指を上げる

 

「後は煮汁が少なくなるまで煮て最後に隠し味でバターを入れれば終わりだ」

 

「仕上げにもバターを入れるのね」

 

「あぁ、バターを入れるとコクが増すからな」

 

 

 

 

「ふぅ~ご馳走さん。美味かったぞ」

 

肉じゃがを作った後に味見という事もあって夕飯を一緒に食べた。優子によると両親は共働きで夕食は基本秀吉と二人で喰うらしい

 

「お粗末さまでした。味はどうだった? 一輝君の家の味に近かったかしら?」

 

「あぁ久しぶりにお袋の味が楽しめた気がしたよ。ありがとな」

 

オレは優子に礼を言うと優子の肩を抱き寄せる、優子もオレの意図に気付いたのか目を閉じ、二人の距離が段々と縮まり

 

ガチャ

 

「ただいま帰ったのじゃ~」

 

ガタン

 

玄関を開ける音と秀吉の声が聞こえてオレ達は直ぐに距離を取って椅子に座りなおす。付き合っている事は知られているがそういう行為を見られるのには抵抗がある

 

ガチャ

 

「姉上~、遅くなっ、邪魔してすまなかったのじゃ!! わしは外に出ていくのじゃ!!」バタン タタタッ

 

秀吉はリビングのドアを開けると同時にオレの存在に気付いて直ぐに外へ出ていった

 

「あんの愚弟(ひでよし)め~。久しぶりにヤラないといけないみたいね」

 

優子はオレの知らない黒いオーラを纏っている。正直ハンパ無く怖い

 

「まぁ秀吉だって悪気があったわけじゃないんだしさ」

 

「悪気がなくっても許せないわ」

 

かなりキレてるな。仕方ない

 

チュッ

 

「これで許してくれないか? 怒ってると可愛い顔が台無しだ」

 

オレは優子に口づけして軽く頭を撫でた

 

「ふぇっ? ちょっ、何が?!」

 

「じゃあな。晩飯ご馳走さん。それとまた明日学校で」

 

オレは恥ずかしくなり混乱してる優子に早口で別れを告げ優子の家から出た

 

『ちょっと一輝君!!』

 

優子の声が聞こえたが戻るのは怖いな

 

ピロリン

 

お、メールだ

 

From 優子

To 高瀬 一輝

Title 明日

Text 覚えてなさい!!

 

ははは、明日学校休もうかな?

 




基本的にはどんな感想(カオスや無茶ぶりも可)にも返すつもりなのでドンドン感想を送ってください。

PS:軽いアンケートなのですが、この後の展開で
いつもの11人5組は
①名前で呼び合う(例:明久→愛子「愛子さん」)
②いままでどおりの呼び方(例:明久→愛子「工藤さん」)
どちらが良いでしょうか? この作品の時系列だと1ヶ月ほどの付き合いで交流も多いので名前呼びにしても違和感はないと思っているのですが


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俺と家族と甘い休日

休日の康太編です。今回は康太をいじり倒しました。
それと今回のタイトルは少しバカテス風のタイトルにしてみました。

次は霧島夫妻にするか秀吉×紫織にするか、悩みどころです。

ロゴーンで文章診断して文が長いと出たので句読点を多くしてみましたがどうでしょうか?
今までのとどっちがいいか教えてください

昨日の深夜(今日の早朝?)に日間ランキングを覗いてみたら、この作品が16位に!!
今まで気にした事がなかったのですがランキングに乗ってたのには驚きました。

それとお気に入り数がなんと350を突破しました~!!

それでは本編をご覧ください。


Prrrrr Prrrrr

 

俺が休日を利用して学園や街で撮った写真の整理をしていると俺の携帯電話が鳴った。俺は作業を中断して携帯電話の発振相手の表示を確認し、

 

【工d】ピッ

 

即座に受話ボタンを押す。

 

『あ、康太君? 今って大丈夫カナ?』

 

電話の向こうから愛子の明るい声が聞こえる。この声を聞くだけでこっちまで元気になる。まさか、休日にまで愛子の声が聞けるとはな。

 

「…………問題ない。それよりもどうしたんだ?」

 

いきなり電話をしてくるなんて、しかも、今は9時だ。

 

『うん。実は突然今日の部活が中止になっちゃって暇なんだよネ。』

 

愛子は水泳部所属だったな。一年のころに大会の記念写真の撮影を依頼されたが、競泳水着の……(プシュ)……いかん、愛子との電話に集中しなくては

 

『それでなんだけどサ……』

 

愛子は何か思い悩むように口ごもる。なにか言い辛い事なのか?

 

「…………なんだ? 俺にできることならするが。」

 

『康太君が暇ならちょっと買い物に付き合ってくれないカナ?』

 

「…………何時にどこに行けばいい?」

 

『って、えぇっ?! 即答?! そこまで暇だったノ?』

 

「…………今日は特別。」

 

愛子の為だったらいつでも時間を作るがそれを言うわけにもいかない。幸い今日は特に予定もなく暇だったのは事実だが

 

『へぇ~、それじゃ駅前に10時でいいカナ?』

 

「…………問題ない。」

 

『それじゃ、待ってるヨ~♪』

 

「…………わかった。」ピッ

 

俺は通話を切るとすぐに着替えて出かける用意をして、家を出かけることを家族に伝える為に一階の居間に入る。

 

「…………ちょっと出かけてくる。昼飯はいらない。」

 

「ふぅ~ん、康太。もしかしてデートか?」

 

「ほぅ、康太にもついに春が来たか。」

 

「…………(ブンブン)」

 

父さんまで颯兄の冗談を真に受け始めた。確かに女子と二人きりにはなるが付き合ってはいないしデートではない……と思う。

 

「そこまで否定するってのは怪しいんじゃない? 康兄ってそういうこと慣れてなさそうだけど。それに陽兄だって付き合い始めたのは高校からだったじゃん。」

 

「ふふふ、若いってのは良いわねぇ。」

 

陽向は俺のことをニヤついた顔で見てきて、母さんは頬に手を当てて微笑んでいる。ちなみに颯兄は一番上の兄で陽兄は二番目の兄、陽向は妹だ。颯兄は結婚を前提に付き合っている彼女がいて、陽兄も高校時代から付き合っている彼女がいる。今日は陽兄は朝からデートに出かけている。

 

「…………行ってくる」

 

俺はこれ以上弄られないように家を後にして駅へと向かった。ものすごく生温かい視線を背に感じたのは気のせいだろう。

 

 

 

 

「あれ? 康太君早いネ。ボクも早めに出たつもりだったんだケド。」

 

俺が駅前に到着してから少し経つと愛子がやってきた。よかった、紳士として女性を待たせるわけにはいかないからな。

 

「…………紳士として当然のこと。」

 

「もしかして、待たせちゃったカナ?」

 

「…………俺も今来たところだから問題ない。女性を待たせるくらいなら何時間でも待つ。」

 

愛子が少し申し訳なさそうな顔をしたので俺は直ぐに否定する。それに待ち合わせは10時で今は9時45分 十分に早い時間だ。

 

「へぇ~、康太君って女のひとにやさしいんだネ。少し見なおしちゃったカモ。」

 

愛子はそう言うと微笑んだ。その笑顔はいつもの元気で可愛い笑顔とは違い、どこか美しい綺麗な微笑みだった。俺はその笑顔に少し見惚れてしまった。

 

「ん? 康太君 どうしたのカナ? もしかしてボクに見惚れてたのカナ?」

 

愛子は俺の様子に気づいたのか今度は小悪魔系の笑みを浮かべていた。今更ながら愛子の服装を確認すると、黄色い半袖Tシャツに空色のプリーツミニスカートを履いている。TシャツはVネックで胸元が少し開いている。

 

「…………そんな事実は確認されていない。」

 

愛子の(俺にとっては)刺激的な服装で体からこみあげるものを押さえる為に鼻を押さえる。

 

「ふぅ~ん。本当カナ?」

 

愛子は少し前屈みになり俺の顔を覗き込んでくる。もちろん開いた胸元から見える範囲も広がるわけで、

 

ポタポタ

 

水着による日焼け跡の境界が目に入り押さえている鼻から比重の重い液体が滴り始める。

 

「こんなことをしてみたり」ピラッ

 

プシューーーー

 

愛子がスカートを上げたことにより薄ピンクの布が見え。それと同時に炭酸飲料の缶を開けたような音とともに俺の鼻から赤い噴水が飛び出る。

 

「わわっ、康太君?! あっ、そういえば今日はスパッツを履いてなかったの忘れてた。」

 

愛子は俺の反応に慌てた後に、真っ赤になって自分の行動に後悔しているようだった。俺は出血のせいで意識がもうろうとし始めてしまった。

 

 

 

 

「ホンット~にゴメン。からかい過ぎちゃって」

 

あれから、近くの公園にある木陰のベンチで休んでいる。さすがにあの状態で街中を歩くわけにもいかず、愛子が買ってきたジュースを飲みながら回復を待っている。明久達ほどではないが俺も回復力は人並み以上には自信がある。

 

「…………気にしなくていい。もう大丈夫だから行くぞ。」

 

「本当に大丈夫? まだ顔色があんまりよくないように見えるケド?」

 

再び愛子が心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。また、胸元が……

 

「…………問題ない。それよりも、どこに行くんだ?」

 

俺は倒れないように視線をそらして歩き始める。

 

「あ、実は授業の録音用に使ってるICレコーダーが壊れちゃったから、機械に強そうな康太君に新しいのを選んで貰いたかったんだヨ。」

 

「…………壊れた方は持っているか?」

 

「うん。参考になるかと思って持ってきたヨ。」

 

愛子はスカートのポケットからレコーダーを出して俺に渡してきた。

 

カチッ ピッ ピッ カチッ

 

俺は渡されたレコーダーを少し操作する。なるほど、確かに壊れているが、

 

「…………これぐらいなら直せる。」

 

「え? 康太君直せるの?」

 

「…………ただ、この機器は壊れやすい。壊れにくいのを買うか?」

 

「う~ん、ちょっと今月は厳しいからレコーダーの価格次第カナ~。」

 

「…………なら、電気屋に行くか。」

 

「うん。アドバイス宜しくネ。」

 

「…………機械ならまかせろ。」

 

俺らは大型電気店へと向かった。

 

 

 

 

「…………コレなんかどうだ?」

 

俺はレコーダーの中から耐久性の高い物を選んで愛子に勧める。

 

「1万円か~。ちょっと手を出すのは難しいカナ~。」

 

「…………あんまり安いものだと壊れやすい。結果的に高い買い物になる。」

 

「確かにネ~。ボクの使ってた物も3カ月くらいで壊れちゃったからネ。」

 

結構使いこまれているように見えたが3カ月しか使ってなかったのか。そうなると愛子は相当勉強を頑張っているのだろうな。レコーダーが無いと苦労することも多くなりそうだが。

 

「…………それなら、前のを俺が直すか?」

 

金に余裕があれば俺が買ってあげたいが、今月はカメラの部品を買ってしまったのでそこまでの余裕はない。

 

「直すのってどれくらいかかるの?」

 

「…………1日もあれば十分。月曜には渡せる。」

 

「そうなんだ。それじゃあ、康太君の言葉に甘えさせてもらうヨ。」

 

「…………お安い御用。このあとはどうする?」

 

できれば愛子との時間をもっと楽しみたいが用が済んでしまったのなら仕方ない。

 

「そうだなぁ。康太君さえよければ今日のお礼にご飯奢ってあげたいんだけど。」

 

「…………食事するのは構わないが女性に奢られるのは紳士として――」

 

「わざわざ直してもらうのに何もしないってのはこっちも気分が悪いんだけど。」

 

俺が食事代の代金を払おうと提案する前に愛子に言葉を遮られてしまった。確かに修理するにはある程度の手間と少しばかりの部品代がかかるからな。

 

「…………わかった。ただ、高い店は俺も気が引ける。」

 

「あはは、さすがにボクもその辺は分かってるよ。ファミレスあたりなら良いでしょ?」

 

「…………あぁ問題ない。」

 

「じゃあ、あそこの店に行こっか」

 

愛子は言うが早いか俺の腕を掴んで店へと歩き出した。俺の腕を掴む愛子の腕は柔らかくて、温かくて、肌はなめらかで……危なかった。これ以上考えていたら朝の二の舞になるとこだった。

 

 

 

 

「…………ごちそうさま。」

 

ファミレスで注文した料理を食べ終えて愛子に礼を言う。愛子と食べれたおかげか何度か味わったことのあるはずのチェーン店ならではの味も一層おいしく感じた。

 

「そんなに畏まらなくていいのに。」

 

「…………これぐらい当然の礼儀。」

 

親しき仲にも礼儀ありと言うし奢ってもらったのに礼を言わないのは失礼だ。

 

「どういたしまして。……康太君って少し硬いとこあるよね。」

 

「…………紳士として当然の振る舞い。」

 

「なんか違う気もするけど、男の子に優しくされるのも悪くないネ。それじゃコレの修理お願いね。」

 

愛子は俺にレコーダーを渡しながら頼んできた。

 

「…………任せろ。紳士に二言は無い。」

 

「それと……康太君ってこの後暇?」

 

愛子は少しもじもじとした様子で尋ねてきた。なにか言い辛いことでもあるのだろうか?

 

「…………今日は偶然予定がない。」

 

「それじゃ、この後も買い物付き合ってヨ。」

 

「…………喜んで。」

 

「じゃあ、まずは夏物の服でも選んで貰おうカナ。」

 

愛子はファミレスの席を立ってから嬉しそうに歩き出した。家族には否定したがこれはデートかもしれないな。神に感謝などした事は無いが今日は神に感謝しよう。こんな素敵な休日を与えてくれた事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、康太は試着室の前で赤い水たまりを作ることになり、愛子が康太の看病をしたのは別のお話である。




今回は康太の得意分野である家電(特にカメラと盗ty、レコーダー)というのを利用しました。
まぁ試着室の前で何があったかは……………………

康「…………昼食を食べ過ぎただけ」
いつもより少なかった気がしますが……
康「…………飲んだココアのせい」
お茶を飲んでましたよね?
康「…………あの日は暑かった」
店内は冷房が効いていたはずですが
康「…………記憶にない」
折角のデートなのに?
康「…………一生の思い出」
まぁ、本人は言いたくないようですが康太の名誉の為に言いますと"愛子さんが試着した服が可愛くて康太君が反応してしまった"だけです
康「…………そんな事実は確認されていない」
それじゃあ、次はどっちにしようかなぁ~


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儂と歌舞伎と衝撃の帰宅

秀吉編のデートです。
イチャイチャはあんまないです。

6/24
雄二編のデートプランが出てこない。
水着はみんなで買いに行こうかと思ってるので出せないし……
何かアイディアないですかね



「ねぇ秀吉君。日曜日って暇かしら?」

 

紫織との帰り道、突然日曜日の予定を聞かれたのじゃ

 

「む? 特に予定は無いのじゃが、どうしたのじゃ?」

 

「父さんの知り合いが歌舞伎役者でチケットを譲ってくれたから一緒に行かないかしら?」

 

「歌舞伎とな?! 喜んで行くのじゃ。して、演目は何じゃ?」

 

「ふふふ、喜んでくれたのは嬉しいけど、興奮しすぎよ」

 

「す、すまんのじゃ」

 

儂は思わず興奮して紫織の肩を掴んでしまっていたようじゃ。普段ならば持ち前の演技力で平静になれるのじゃが、生の歌舞伎が見られるとあって素になってしまったようじゃの。

 

「演目だったわよね。えっと、勧進帳ね」

 

紫織はチケットを確認しながら演目を告げる。

 

「勧進帳じゃと!! それは真かのっ?!」

 

「え、えぇ、そう書いてあるわよ」

 

紫織はチケットを儂に見せてくる。確かに演目の欄には『勧進帳』と書いてあり

 

「しかも、1等席ではないか!!」

 

座席を見ると1等席の一番前の席だった。知り合いが歌舞伎役者とは言ったが、まさかこんな良い席で見れるとは思ってなかったのじゃ。

 

「そんなに喜んでもらえると、こっちまで嬉しいわ」

 

「喜ぶのは当然じゃ!! 勧進帳と言えば歌舞伎十八番の中でも一、二を争うほどの人気じゃし、『読み上げ』や様々な『見得』など見どころも多いのじゃ。なにより儂の好きな『源氏物語』の内容なのじゃ」

 

儂が古典を学ぶようになったのは源氏物語に魅せられたからじゃ

 

「ふふふ、ほんとに好きなのね。(少し無理を言ったけど)チケットを貰ってよかったわ」

 

「当然じゃ。勧進帳を始め歌舞伎はDVDで何度も見た事はあるのじゃが、生で見るのは初めてじゃからの」

 

歌舞伎のチケットとなると高校生が買うには少し高いし、あのような所に一人で見に行くのも気が引けるのじゃ。

 

「それじゃ、日曜日の9時頃に駅前でいいわね。」

 

「わかったのじゃ。楽しみにしておくのじゃ。」

 

儂は早くも日曜が楽しみで胸が躍り始めていた。

 

 

 

 

「あら? 秀吉君 早いわね」

 

「うむ。今日は早く目が覚めてしまったからのぅ。」

 

昨日は姉上が乙女小説を読み始める前に寝付いたから確か9時頃だったはずじゃ

 

「ふふふ、じゃ少し早いけど行きましょうか」

 

「そうじゃの。早い分には問題なかろぅ」

 

待ち合わせの時間には10分以上早いが電車やバスなどで存外時間を使う場合もあるので儂らは電車に乗り目的地へと向かった

 

 

 

 

「ふぅ~、移動だけで疲れたのじゃ」

 

やはり文月市は少々交通の便が悪いのぅ、都心まで来るのに1時間近くかかってしまったのじゃ

 

「そればっかりは仕方ないわね。もう少しで着くはずなんだけど……あったわ。」

 

紫織が指さした先には

 

「おぉっ、本物の歌舞伎座なのじゃ!!」

 

テレビや雑誌で見たことのある歌舞伎座の建物があった。

 

「感動しているところ悪いんだけど、早めに入ってお弁当を買っちゃいましょう。」

 

儂らは歌舞伎座へと入り幕の内弁当を買ったのじゃ。無論、誘ってくれた礼と言う事で儂が代金は払ったのじゃ

 

 

 

 

―――『して又、修験に伝わりしは』

 

『阿羅邏仙人より照普比丘に授かる金剛杖は、かかる霊杖なれば、我が祖役の行者、これを持って山野を経歴し、それより世々にこれを伝う。』

 

『仏門にありながら、帯せし太刀はただ物を嚇さん料なるや。誠に害せん料なるや。』

 

『これぞ案山子の弓に等しく嚇しに佩くの料なれど仏法王法の害をなす、悪獣毒蛇は言うに及ばず、たとえ人間なればとて、世を妨げ、仏法王法に敵する悪徒は一殺多生の理によって、忽ち切って捨つるなり。』

 

『目に遮り、形あるものは切り給うべきが、モシ無形の陰鬼陽魔、仏法王法に障碍をなさば何を以て切り給うや。』

 

『無形の陰鬼陽魔亡霊は九字真言を以て、これを切断せんに、なんの難き事やあらん。』

 

『して山伏の出立は』

 

『即ちその身を不動明王の尊容に象るなり。』

 

『頭に戴く兜巾は如何に。』

 

『これぞ五智の宝冠にて、十二因縁の襞を取ってこれを戴く。』

 

『掛けたる袈裟は』

 

『九会(くえ)曼茶羅の柿の篠懸(すずかけ)。』

 

『足にまといしはばきは如何に。』

 

『胎蔵(たいぞう)黒色のはばきと称す。』

 

『さて又、八つのわらんづは』

 

『八葉の蓮華を踏むの心なり。』

 

『出で入る息は』

 

『阿吽(あうん)の二字。』―――

 

今、舞台では勧進帳の見どころの一つ、弁慶と富樫の『山伏問答』が繰り広げられておるのじゃ。やはり、本物を見ると迫力が違うのじゃ。儂はおもわず身を乗り出してしまいそうになるぐらい興奮していた。

 

――『これなる山水の、落ちて巌に響くこそ、鳴るは瀧の水、鳴るは瀧の水。』

 

弁慶が白紙の勧進帳を読み終え、義経達を先に行かせて、富樫に一礼する。いよいよ、勧進帳もクライマックスなのじゃ

 

ドン ドン ドン ドン ドン ドン

 

パチパチパチパチパチ

 

飛び六法で弁慶が花道を引いてゆき幕が下りると、会場中から拍手が巻き起こった。

 

「さすがにこの距離で見ると迫力が違うわね。物語の世界に引き込まれるような感じだったわ。」

 

「うむ、見得の切り方といい、声の張り方と言い、とても参考になったのじゃ。」

 

「それじゃ、演目が終わったら舞台裏に行ってみる?」

 

「よいのかの? 役者の方々も忙しいと思うのじゃが。」

 

舞台裏に入れるとは紫織は何者なのじゃ?

 

「えぇ。ちょうどチケットのお礼もいいたかったから話は通してあるわ」

 

「ならば、同行させてもらうのじゃ」

 

その後、儂らは幕間を利用して弁当を食した後に演目を最後まで見終わったのじゃ

 

 

 

 

「すいません。春麻さんはいらっしゃいますか?」

 

「ん? 紫織ちゃんか。いらっしゃい」

 

紫織が楽屋に入り名前を呼ぶと奥から30代後半と言ったところの男性が出てきた。よく見ると先程の舞台で義経を演じていた人のようじゃ

 

「先日は無理を言ってチケットを譲っていただきありがとうございました」

 

「あ~、そんなに気にしなくていいよ。俺の分のチケットが余ってたしちょうどよかったからね。それよりも昂史さんは元気にしてるかい?」

 

「えぇ。父は相変わらず元気にしてます。」

 

「少し良いかの?」

 

儂は紫織と春麻さん(?) の会話に区切りがつくのを見計らって話しかける

 

「あ、紹介してなかったわね。こちらが倉崎 春麻さん、父さんの友人で今回チケットを譲ってくれた方よ。それと、この人があたしの恋人で木下 秀吉くんです。」

 

「木下秀吉なのじゃ。よしなに。」

 

「へぇ~、君が紫織ちゃんの彼氏か。確か演劇部のホープって言われてるらしいね。倉崎はうちの屋号でいっぱいいるから俺のことは春麻って呼んでくれ」

 

春麻さんが手を差し出してきたので儂は春麻さんと握手を交わす。

 

「ならば儂も秀吉でよいのじゃ。ところで、春麻さんはさっきの義経を演っておった方じゃよな?」

 

「まぁ今回はうちの家が主催だから、ほとんどうちの役者だよ。それよりも歌舞伎好きなんだろ? 今日の舞台見てどうだった?」

 

「うむ。見得の切り方といい、飛び六法といい、歌舞伎の世界に引き込まれるようで凄かったのじゃ。」

 

「感動してくれたならこっちとしても嬉しいよ。紫織ちゃんに聞いたけど秀吉君は写しが上手いんだってね。ちょっとさっきの舞台の写しをやってくれないか?」

 

写しと言えば模写のことじゃったな。折角じゃし春麻さんの演っておった義経の台詞を写してみようかの

 

「ふふっ、秀吉君の腕前は相当ですから、驚かないでくださいね。」

 

「その自信を見ると期待できそうだね」

 

「いかに弁慶。道々も申す如く、行く先々に関所あっては、所詮陸奥までは思いもよらず、名もなき者の手にかからんよりはと、覚悟は疾に極めたれど、各々の心もだし難く、弁慶が詞に従い、斯く強力とは姿を替えたり。面々計らう旨ありや。」

 

儂は勧進帳にある義経の台詞を言い終えると

 

「ど、どうじゃったかのぅ?」

 

春麻さんに感想を聞く。儂の技術は本職の役者にはどう映っているんじゃろうか?

 

「いやぁ~驚いた。自分の声を生で聴く機会なんてないからな。」

 

ガチャ

 

「春麻 勧進帳の稽古か?」

 

儂らの後ろのドアが開き50近くの男性が出てきた。誰じゃろう?

 

「あ、おやっさん。実はかくかくしかじかで」

 

「ほぅ、演劇部か。ボウズ 女声は出せるか?」

 

「う、うむ? お主は?」

 

「この人は宗司郎さん。うちの家の家長だよ」

 

儂が目の前の人物に困惑しておると春麻さんが紹介してくれた

 

「女声じゃったな。あ、あー、あー、ゴホン。これでどうじゃ?」

 

「これなら女形も立役も出来そうだな。ボウズ 興味あったらうちに来て歌舞伎やらないか?」

 

「うむ。実に魅力的な誘いではあるのじゃが、少し考える時間が欲しいのじゃ。」

 

儂は宗司郎さんの誘いを断った。さすがに仕事となると一生に関わるものじゃし、そう簡単に決めるわけにもいかないのじゃ

 

「そうか。まぁ気が向いたら連絡をくれ」

 

そう言うと儂に連絡先の書いてある紙を渡してきた

 

「うむ。今日はありがとうございました。」

 

 

 

 

「それで、秀吉君は将来についてどう考えているの?」

 

歌舞伎座を後にしてから買い物などをして暗くなってきたので家へと帰る途中に紫織が口を開いた

 

「歌舞伎は魅力的だとは思うのじゃが、まだ具体的なイメージがないのぅ。演劇で培ったものを活かせるものにしたいとは思っておるのじゃが。」

 

「好きな事を活かせるなら一番よね。秀吉君がやりたいと思うなら、あたしはそれを応援するわ」

 

「ありがとうなのじゃ。」

 

「気にしなくていいわ。あたしは一所懸命な秀吉君の顔が二番目に好きだから」

 

「……一番は何じゃ?」

 

なんとなく嫌な予感がするが一応聞いておく

 

「勿論、笑顔よ」

 

「よ、よかったのじゃ。てっきり泣き顔と言うのかと……」

 

「それは3番目よ。4番目は困ってる顔で――」

 

「もういいのじゃ。それより、もう家に着いたぞい」

 

「あら残念ね。今日は楽しかったわ。……ありがとうね。」

 

「うむ。儂も有意義な時間を過ごせてよかったのじゃ。」

 

 

 

 

「ふぅ~。いつの間にかこんな時間になってしまったの。」

 

ようやく自分の家に着いたころには日も落ちて外套の灯りだけが頼りのような状況となっていた

 

ガチャ

 

「ただいま帰ったのじゃ~」

 

玄関を開け帰ってきたことを知らせる為に挨拶をする

 

ガチャ

 

「姉上~、遅くなっ――」

 

儂が部屋に入りながら姉上に声をかけようとしたら、隣り合って座っている姉上と一輝が居て、お互いにそっぽを向いている。なにやら入る時を間違えたようじゃ

 

「――邪魔してすまなかったのじゃ!! わしは外に出ていくのじゃ!!」バタン タタタッ

 

儂は直ぐにドアを閉めて外へと駆け出す。後ろから姉上の怒気を感じながら

 

「これは、悪い事をしてしまったのぅ。姉上の折檻を受けるのは仕方あるまい。久しぶりじゃが儂の体はもつかのぅ」

 

儂は家から離れながら姉上から受けるであろぅ罰を考えていると

 

Prrrrr Prrrrr

 

儂の携帯電話が鳴る。儂にとっては死刑宣告のように感じながら発信相手を確認すると

 

『姉上』ピッ

 

儂にとっては悪魔に感じたので反射的に拒否ボタンを押してしまう。

 

Prrrrr Prrrrr ピッ

 

直ぐに掛かってきたので今度は受話ボタンを押すと

 

『秀吉~。さっきはなんでお姉ちゃんの電話を拒否したのかしら?』

 

姉上は怒りを押さえたような声で聞いてきた

 

「そ、それは姉上が怒っていそうじゃったから」

 

『余計に怒るとは考えなかったの?』

 

「あ、姉上さっきはすまなかったのじゃ。だから折檻だけは止めて欲しいのじゃ」

 

『はぁ、いいわよ。もぅ済んだことだから。それよりもお腹空いているんじゃないの?』

 

「む? 確かに夕食はまだ食べておらぬが……」

 

『夕飯も用意してるから早く帰ってきなさい。こんな遅くにうろついてると危ないわよ』

 

姉上から優しい言葉をかけられる。どうやら本当に怒っていないようじゃの

 

「うむ。分かったのじゃ」

 

 

 

 

「姉上、肉じゃがの味がうちの味と違う気がするのじゃが……」

 

家に戻って食事をして肉じゃがの味に違和感があったので姉上に尋ねる

 

「アンタが気にする必要はないわ」

 

「そ、そうじゃの」

 

何やら触れてはいけない気がしたので話を切り上げる

 

「そうだ秀吉。アンタと紫織って次の土曜日 暇?」

 

姉上が突然思いついたように儂に話しかけてきた

 

「紫織の予定は分からぬが、どうしたのじゃ?」

 

「デパートの福引でプールのチケットが当たったのよ」

 

姉上は懐からチケットを出す

 

「む? ならば一輝と姉上が行けばよいのではないか?」

 

「4枚だからアンタにあげるって言ってるのよ」

 

姉上は出したチケットを広げて見せる。確かに4枚あるのじゃ

 

「わかったのじゃ。紫織の予定を聞いてみるのじゃ」

 

「よかったわ。チケットが無駄にならなくて」

 

「ありがとうなのじゃ」

 

「姉弟なんだから気にしなくていいわ」

 




歌舞伎の台詞を転用しているんですが、問題ないですよね?
問題があったら指摘してください。
書くのに時間がかかった割には酷い出来でスミマセン


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俺と映画と水族館

今回は熟年夫婦(雄「誰が夫婦だ!」)のデートです。
夫婦漫才あり(雄「まだ夫婦じゃねぇ」)定番の甘い(?)展開ありです。
話の中で出てくる『空飛ぶペンギン(原題:Mr popper's penguins)』は日本では劇場未公開の作品ですが、最近見て個人的に気に入った作品なので入れちゃいました。
笑いあり、感動ありの作品なので動物好きの方は見る価値ありだと思います。

ある獣医漫画を読んで知ったのですがペンギンの飼育は大変なようですね。


Pipipipipi Pipipipipi

 

「んあ? もう朝か」

 

俺は目覚ましの電子音で目を覚ます。今日は休日だが朝飯の用意は俺がしないと良くて食あたり、最悪の場合は考えたくない結果になるので、朝が苦手でも起きなくてはいけない。

 

♪~♪~~~

 

俺が二階から降りて一階のリビングのドアに向かっているとリビングの方向、正確には台所から女性のものと思われる鼻歌が聞こえてくる。まさかっ

 

「♪~。あら? おはよう雄二。今日も早いわね~。」

 

おふくろがゴルフボールを持って台所に立っていた。

 

「おふくろ なんで朝っぱらから台所に立っているんだ?」

 

おふくろは料理ができない、いや、正確には材料を間違えるから人間が消化できる物を作れない。そんなおふくろが台所にいる理由は料理以外のはずだ。

 

「いつも雄二に料理を任せちゃっているからお母さんも料理をしようかと思ったのよ」

 

「あんたはゴルフボールで何を作る気だっ!!」

 

「あらやだ。ゴルフボールと玉子って似てるから困っちゃうわ~」

 

は? どこが似てるんだ? 共通項が色しか思いつかないんだが

 

「はぁっ……朝飯は俺が作るから大人しくしててくれ」

 

この母親に何を言っても仕方がないのでおふくろを台所から追い出し、冷蔵庫から朝飯の準備を始める。今日は冷蔵庫に入れて水分を少し飛ばしたフランスパンでフレンチトーストを作るつもりだ。しかし、なんで明久は冷蔵庫に入れて水分を飛ばすとか考えつくんだ?

 

ジュウ~

 

「おふくろ。出来たから先に食ってくれ。」

 

「あら。いつも悪いわね~。」

 

俺は先に作った分を皿に乗せてお袋の所にもっていき、台所へと戻る。俺は朝は弱いから軽めの朝食を摂りながらおふくろと親父の分の昼食を作り始める。

 

 

 

 

ピンポーン

 

「……雄二 お父さんから映画のチケットを貰ったから行こう。」

 

俺が昼食の準備をしていると呼び鈴が鳴ると同時に翔子に話しかけられる。毎度のことで慣れてしまった自分が怖い

 

「あら。翔子ちゃんいらっしゃい。」

 

「……おじゃましてます。」

 

おふくろはおふくろで翔子がいる事に気にせず挨拶をしている。

 

「ちょっと待ってくれ。すぐに昼食の用意ができる。」

 

「……何か手伝う。」

 

「後は仕上げだけだから大丈夫だ。」

 

「……わかった……。」

 

翔子は渋々といった様子で引き下がる。なぜそこで残念がるんだ? うちの事情なんだからうちで解決すべきなのに……

 

 

「よしっ。翔子 飯の準備ができたから行くか?」

 

「……わかった。」

 

昼食の準備まで終えたので翔子に声をかける

 

「そういうことだから、おふくろ 俺は出かけるぞ。」

 

「あ、雄二ちょっと待って。」

 

俺が部屋を出ようとしたところでおふくろに呼び止められた。

 

「なんだ? 昼飯ならいつもと同じように電子レンジの上に置いてあるから、温めてくれ。」

 

「そうじゃないわよ。これを渡したかったのよ。」

 

そういっておふくろは戸棚の引きだしから何かを取り出して俺に渡してきた。

 

「このチケットがどうかしたのか?」

 

「実はお母さんたち主婦仲間でそのチケットでプールに行くんだけど、3枚だけ余っちゃったから雄二と翔子ちゃんに使ってもらおうと思ってもらってきたのよ。一枚は友達にもあげてちょうだい。」

 

俺は軽く礼を言ってから部屋を出た。

 

 

 

「ところで場所はどこなんだ?」

 

駅へと向かいながら翔子に映画館の場所を聞く。ここから行ける映画館は限られてるが貰い物のチケットなら少し遠い場所の場合があるからな。

 

「……隣町の映画館。」

 

翔子は持っていたチケットの一枚を俺に渡してきた。『空飛ぶペ●ギン』か……タイトルだけ見ると明らかにB級映画だし自腹で見ようとは思わないだろうな。

 

 

 

 

「……雄二 いい映画だった。」

 

「あぁ、そうだな。思っていたより感動したな。」

 

タイトルだけでは分からなかったが見てみるととんだB級映画だが、仕事人間の主人公が父の遺言で送られてきたペンギンと過ごすうちに大切なものに気付くという何とも心温まるものだった。特にペンギンの行動が笑えて思ったよりもいい映画だった。

 

「……ペンギンがかわいかった。」

 

「そうだな。笑える行動ばっかりだったもんな」

 

「……私もペンギンが飼いたくなった。」

 

「ワシントン条約もあるし無理じゃないか? それにペンギンの過ごしやすい環境を整えるだけでも大変だろ。」

 

映画の中にもあったがペンギンは極度に暑さに弱いから氷点下近くをキープしなくちゃいけないらしい。前にテレビで見たが普通の水族館なんかでもカビに弱いペンギンを守るために空気清浄機やら浄水設備やらを使って数十分置きに空気の殺菌や水の濾過をしてるから設備の維持費がバカにならないらしい。

 

「……じゃあ、雄二を飼う。」

 

「あのなぁ、俺は人間だから『飼う』って表現自体間違っているんだが」

 

「……大丈夫。ちゃんと散歩と餌はあげる。」

 

「小学生が親を説得する言い訳みたいな事を言うんじゃねぇ!!」

 

「……雄二の好きな首輪とリードを買ってあげる。」

 

「そういう話をしてるんじゃねぇ!!」

 

「……冗談。」

 

「疲れる冗談を言うんじゃねぇ。つうかどこから冗談だったんだ?」

 

「……『ペンギンを飼う』ってところから。」

 

「ほぼ最初じゃねぇか!! 今までの会話はほとんど意味がなかったのかよ!!」

 

「……意味はある。」

 

「ほぅ、どんな意味があったんだ?」

 

「……雄二の慌てる様子が見れた。」

 

「結局お前は何がしたかったんだよ……」

 

俺は翔子の謎の行動に少し頭を抱える。

 

「……夫婦生活には刺激が必要。」

 

「はぁ~。もういいから次行くぞ。」

 

これ以上翔子に付き合っていても仕方ないと思ったので俺は足を速めた。

 

 

 

 

「で? なんで水族館に来たんだ?」

 

映画館を出てから昼食を終えた俺達は今、何故か水族館の前にいる。

 

「……ペンギンを見たくなったから。」

 

「はぁ。わかった。さっさと行くぞ」

 

今からだと帰りの電車など考えると長居はできないがコイツの為なら仕方ねぇだろう。

 

「……待って雄二。」

 

「ほらよ。」

 

翔子に呼び止められたので手を差し出す。コイツがこういう時にしたい事はだいたい分かるようになった。

 

「……うん。ありがとう雄二。」

 

翔子は顔を赤らめながらも俺の手に自分の手を絡めていわゆる『恋人繋ぎ』をしてきた。たまに見せる一面が可愛く見えてしまうのは惚れた弱みってやつだろう。

 

「時間もねぇんだし逸れないようにしっかり掴まってろよ。」

 

「……わかった。」

 

俺の言いたいことが伝わったのか俺の手を握ってる手とは逆の腕を俺の腕に絡めて抱きついてきた。

 

 

 

 

『ねぇカノジョ~。休日に水族館に一人って誘ってるの~?』

 

『……一人じゃない。』

 

水族館を回った後に、俺が翔子に『トイレに行く』と嘘をついて土産物を買って翔子のもとへ向かっていると、翔子に絡んでいる軟派野郎がいた。

 

『強がっちゃって~。ホントは一緒に来てくれる人がいなかったんでしょ~。』

 

『……知った口を利かないで!!』

 

『それじゃ、これから君のこと教え――』

 

「おい、テメェ俺のツレになんか用か?!」

 

俺は殺気を放ちながら軟派野郎の肩を”軽く”掴む。

 

「痛てててててて。ちっ男連れかよ。萎えるわ~。」

 

俺が掴んでた手を離すと軟派野郎は舌打ちをして去って行った。

 

「……雄二 ありがとう。」

 

「気にすんな。ほらよっ。」

 

翔子が礼を言ってきたのを軽く流して、土産物屋で買った物の入った紙袋を翔子に投げ渡す。

 

「……?」

 

「開けてみろ。」

 

ガサガサ

 

翔子が首を傾げていたので開けるよう指示すると翔子は紙袋を開けた。中から出てきたのは、

 

「……ペンギン?」

 

「流石に本物を飼うのは無理だからな。それで我慢してくれ」

 

翔子が映画を見て飼いたいと言っていたペンギンのぬいぐるみだ。

 

「……冗談って言ったのに。」

 

「はっ、何年お前と付き合っていると思ってんだ? あれが嘘なことぐらい分かってるよ。」

 

言葉で表現するのは難しいが翔子が嘘をつくときには何か違和感があるからな。

 

「……ありがとう。」




なんか思っていた以上に甘い展開になってしまった。
甘い話が続いていたのでサッパリとした作品を書きたかったのですが、雄二の野郎がそうさせてはくれませんでした。

ISの二次創作読んでいたらバトル物を書きたくなってしまったので、もしかしたらISの作品を書くかもしれません。
まぁ書くかは分からないですが書いた時にはこの作品でも宣伝するのでそのときはよろしくお願いします。


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水無月プールパーク編
チケットの行方


今回は余りのチケットに関しての話です。
ISの二次創作を始めてしまったので更新速度が遅くなります。
楽しみにして下さる方には申し訳ありません。


「う~ん。どうしよう……」

 

「うーっす明久。どうしたんだ? 珍しく難しい顔をして。」

 

水無月プールパークのチケットを持ちながら考え込んでいると雄二に声をかけられた。

 

「おはよう雄二。ただ『珍しく』は余計だよ。」

 

「いや、俺も突然頭に浮かんだ台詞を言ったんだが、しっくりこないな。スマン。ところで何を悩んでんだ?」

 

雄二に挨拶を返した後に雄二の発言を少し怒気を出しながら咎めると、雄二は謝罪してから僕が悩んでる理由を聞いてきた。

 

「実はこのチケットで悩んでるんだけど……」

 

僕の分のチケットと預かっている余りのチケットを見せる。別に隠すほどの事でもないし、こういうことは雄二の方が頭が回るからね。

 

「なんだそのチケットなら俺も持っていて、1枚余ってるからやるぞ。藤崎と久遠と行けばいいじゃねぇか。」

 

雄二は財布からチケットを取り出して僕に渡してきた。

 

「違うよ。二人にはチケットを渡していて、これは僕の分と余りなんだよ。雄二こそそのチケットとこのチケットで霧島さんを誘ったら?」

 

「いや、俺もこのチケットは余りなんだ。」

 

雄二が何か勘違いしていたようなので、僕は雄二にチケットを返し説明した。ちょうどいいと思い雄二にチケットを渡そうと思ったが雄二も余りのチケットのようだ。

 

「おーっすアキ、雄二。」

 

僕らがチケットの使い道に悩んでいると一輝が話しかけてきた。ちょうどいいから一輝にも聞いてみるか。

 

「おはよう一輝。このチケットいる?」

 

「ん? 水無月プールパークか、そのチケットなら持ってるぞ。」

 

「となると、秀吉にでも渡すか……」

 

「いや、秀吉たちには優子が渡したはずだ。」

 

雄二が秀吉に渡す事を提案するが優子さんが渡してるらしい。

 

「じゃあいつもの僕と明梨と日向、雄二と霧島さん、一輝と優子さん、秀吉と神谷さんがチケットを持っているってこと?」

 

「そうなるな。」

 

「それなら康太と工藤に渡して、いつものメンバーで行けばいいんじゃねぇか?」

 

雄二が僕の言葉に同意すると、一輝が康太達に渡すように提案してきた。なんかいつものメンバーな気がするが気にする事でもないか。

 

「そうと決まれば、お~い康太。」

 

「…………なんだ?」

 

雄二が康太の名を呼ぶとすぐに康太が現れた。もう毎度のことなので誰もツッコミはしない。

 

「今度の土曜日にプールに行くんだけど、康太も来る?」

 

「…………メンバーは?」

 

「オレと優子、秀吉、神谷、雄二、霧島、アキ、明梨、久遠が確定で、後は工藤を誘おうと思ってる。」

 

「…………行く。」

 

キーンコーンカーンコーン

 

「余鈴か。工藤は休み時間にでも誘うか。」

 

康太も行くことが決定した所で余鈴がなりクラスの皆が席に着いたので僕らもそれに倣う。後は工藤さんか……

 

 

 

 

「工藤さん ちょっと良いかな?」

 

休み時間に入ったので僕は明梨や日向たちと話している工藤さんに近づいて声をかける。

 

「ん? 何カナ? もしかしてボクに告白でもしてくれるのカナ?」

 

「ちっ違うよ。僕はそんなつもりで声をかけたわけじゃないよ。それに皆の注目を浴びちゃいそうな教室で告白するってどんな勇者なの?!」

 

「あはは、冗談ダヨ。ホント吉井君ってからかい甲斐があるヨネ~。」

 

工藤さんの心臓に悪い冗談に僕は声を荒げながら反論する。明梨と日向のジト目と康太の殺気のせいで本当に心臓に悪い。

 

「それで? ボクに何の用カナ?」

 

工藤さんは僕をからかったことで満足したのか話を進めるよう促してきた。

 

「今度の土曜日にみんなでプールに行くんだけど、チケットが1枚余っているから工藤さんも行かない?」

 

「ふ~ん。その『みんな』ってのは誰なのカナ?」

 

「僕と明梨と日向、雄二と霧島さん、一輝と優子さん、秀吉と神谷さん、それと康太だよ。」

 

「そのメンバーなら面白そうだし、土曜日は部活も無いからボクも行くヨ。ところで~」

 

工藤さんは参加すると言った後にイヤらしい笑みを浮かべて。

 

「優子が行くのは高瀬君目当てカナ~?」

 

その笑顔のまま優子さんに行く理由を問い始めた。良かった僕じゃなくて。

 

「そっ、そうよっ!! 付き合っているんだから別にいいでしょ!!」

 

優子さんは顔を真っ赤にしながらも大声で工藤さんの言葉を肯定する。うん、クラスの皆の視線が集まったね。

 

「優子 事実だから否定はしねぇけど少し周りを見てみろ。」

 

「周りを見ろ……って……」

 

一輝に言われて周囲を見渡す優子さん。その視界に入ってきた光景は

 

『きゃ~、木下さんって大胆なのね~。』

 

『優等生の木下さんが付き合ってるなんて意外ね~。』

 

『みんなの前で交際宣言なんてカッコイ~。』

 

何やら盛り上がっている女子たちと

 

『くそっ、木下さんなら浮いた噂を聞かないから狙い目だと思っていたのに。』

 

『やけに仲がいいと思ったら付き合ってたのかよ。』

 

『高瀬相手じゃ勝てる気がしねぇ。』

 

なぜかorz状態の男子達。若干一輝から苛立ちを感じたけどすぐに収まった。たぶん男子が諦めモードに入ったからだろう。

 

「ありゃりゃ~。からかうつもりだったのに付き合ってたなんて驚きダネ~。しかもクラスのみんなに交際宣言なんて、ビックリだね~。」

 

工藤さんは心底意外そうな顔をしている。

 

「じゃあ、吉井君は明梨と日向の水着が目当てなのカナ~?」

 

工藤さんは優子さんから僕に標的を変えたようだ。でも、その質問なら問題ないぞ。

 

「もちろん。日向と明梨の水着を見てみたい(プールに行くのが目当て)に決まっているじゃないか。」

 

「あ、明君 本音と建前が逆だよ。」

 

「さ、流石に明久君ですね。」

 

僕の言葉を訂正する明梨と呆れている日向。二人とも顔が真っ赤だ。照れてる顔もかわいいな~。

 

「えうぇ? 逆だったの? でも、事実だから否定する必要も無いか。付き合っているんだし。」

 

赤くなりながらも事実なので訂正はしない僕。

 

「あ、あれ? なんで否定しないの?!」

 

「無駄よ、愛子。 3人は付き合ってるわ。それと付き合ってないのはあなたと土屋君ぐらいよ。」

 

僕の反応に意外そうな顔をして混乱してる工藤さんに神谷さんが説明する。

 

「えぇっ?! なんでボクが知らないのに紫織が知っているの?!」

 

「あなたの口が軽そうだからじゃないかしら?」

 

「ボクってそんなに信用ないカナ~?」

 

「そういうところがわざとらしいから信用されないのよ。」

 

神谷さんの言葉にわざとらしく落ち込んだ工藤さんを優子さんが咎める。

 

「う~。もういいよっ!! 康太君 ボクたちも付き合おう!」

 

意を決した様子で工藤さんは立ち上がり、康太の所に行くと交際を申し込んだ。康太はと言うと

 

「…………何を世迷言を(ポタポタポタポタ)」

 

言葉では工藤さんの台詞を正そうとしているが、体は正直なようで折り目正しい土下座と赤い水たまりを作っている。康太 キミは『付き合う』という言葉だけで何を想像したんだい?

 

「え~っと……OKでいいのカナ?」

 

「OKだとは思うけど、康太 ちゃんと言葉でいわないとダメだよ。」

 

工藤さんもどうしたらいいのか戸惑っているので康太に助言する。

 

「…………こんな俺でよければ付き合ってくれ。」

 

「うん。これからも宜しくネ。康太!」

 

「…………よ、呼び捨て。」

 

「せっかく付き合い始めたんだし、もっと関係を深めていきたいからネ。」

 

「…………か、関係を深める。」プシューーーーーーーーーーーーーーー

 

康太が赤い噴水を作ったので僕らが鼻血の掃除をして、工藤さんは康太に輸血をした。ただ、工藤さんが膝枕をしながら輸血をしていたので康太の鼻血が収まりはしなかったが。

 




今回の話で名前呼びか名字呼びか決める予定でしたが、特に意見が集まらなかったので名字呼びのままにしました。
そして、お約束の康太の鼻血〆です。



次回は水着を買いにでも行こうかと思います。希望の水着とかがあったらご意見をお寄せ下さい。
ただ、危険な水着は(彼氏達が)却下します。
特に意見がない場合は俺の独断と偏見で決めます。


6/29

活動報告にて水着のアンケートを取っています。ご意見は活動報告にお願いします。


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水着選び・前篇

書いているうちに長くなってしまいそうだったので、とりあえず前編と後編に分けることにしました。


「本日は教員の研修会がありますので授業は以上で終了です。皆さんは心配ないとは思いますがあまり羽目を外し過ぎないように注意してください。」

 

高橋先生の号令でクラスのみんなは帰り支度を始めたり友達と会話をし始めた。今日は午前中しか授業がないのでこの後は自由だ。試召戦争で授業が遅れているクラスは補習があるらしいけど。僕はどうしようかな……

 

「明久 このあといつもの面子と飯食いにでも行かねぇか?」

 

「いいね雄二。康太と秀吉、一輝は大丈夫?」

 

「…………問題ない。」

 

「うむ。儂も今日は部活がないから大丈夫じゃ。」

 

「オレも特に用事は無いぞ。」

 

みんな大丈夫みたいだな。

 

「明君 ちょっといいかな?」

 

「うん? 大丈夫だよ。どうしたの?」

 

明梨が話しかけてきたのでそちらを見ると明梨、日向、優子さん、工藤さん、神谷さんがいた。霧島さん? いつの間にか雄二の隣にいるよ。

 

「この後って暇ですか?」

 

「飯食いに行く話をしてただけだから、その後は暇だな。」

 

「ちょっと買い物に付き合ってほしいんだけど……」

 

日向の言葉を継ぐように優子さんが説明を入れる。

 

「む? 買い物とは何を買うんじゃ?」

 

「水着よ。」

 

「プールの話が突然だったから用意する暇がないんだよネ~。」

 

「…………み、水着。(プシュ)」

 

康太、水着という単語だけで鼻血を出すのか……

 

「……雄二に選んでほしい。」

 

「なるほどな。それなら断るわけにはいかないな。」

 

「じゃあ、みんなでお昼を済ませてから水着を買いに行けばいいんじゃない?」

 

僕が話をまとめたらみんな頷いて肯定してくれた。

 

 

 

 

「あ、そうだ。康太 お前これ飲んどけ。」

 

ファストフードで食事を済ませ、デパートへ向かっている時に一輝が康太に2本の小ビンを渡した。

 

「…………これは?」

 

康太は渡された小ビンをいぶかしむ様に眺めながら尋ねる。

 

「親父に作ってもらった薬だ。赤いのが増血薬、青いのが賢者薬。効果は増血薬は名前の通りで血液を増やす。賢者薬はドーパミンやアドレナリンなどの興奮性感情ホルモンの生成を抑止して、血圧の上昇や脈拍の上昇を妨げる。要するに興奮を抑える薬だ。」

 

「…………なぜ俺に?」

 

「流石に店ん中で流血騒ぎは避けたいからな。」

 

「…………血なんて流さない。」

 

「ほんとカナ~?」ダキッ

 

「…………」プシュー

 

工藤さんが康太の腕に抱きついただけで赤い噴水が出来上がった。相変わらずだな~。

 

「ほらな。工藤、さっき渡した蓋の赤いビンを飲ませてやれ。言っておくが親父の薬は、効果は保障できるが、味の方は保障しないぞ。」

 

「え、え~と、じゃ、じゃあ、飲ませるよ。」

 

工藤さんは真っ赤になりながら小ビンを開けて中身を口に含む。あれ? なんで彼女が飲んでいるんだ?

 

「…………」ゴクッ

 

そう思っていると工藤さんは康太に口づけした。あ~、口移しで飲ませたのか。

 

「あ、コレ、シュークリームの味だ。高瀬君があんなこと言うから覚悟してたんだけどな~。」

 

工藤さんは顔を赤くしながらも薬の味に驚いている。司さんはまだ変な味の薬を作っているんだな。

 

「…………愛子何をするんだ。」

 

顔色が戻った康太が工藤さんに抗議する。

 

「だって康太ってキスもしてくれないから、こっちからするしかないじゃん。」

 

「…………だからと言って口移しは……」

 

ちゅっ

 

康太がなおも反論しようとしたところで工藤さんが康太の口をふさぐ。彼女の唇で。

 

「もうっ、男のくせに細かいこと気にし過ぎダヨ。い、いいでしょ。ボクたち付き合っているんだから。」

 

「…………すまない。」

 

「あ~、桃色空間作っているところ悪いが、もう着いたぞ。康太、青い方もさっさと飲め。」

 

二人だけの世界を作り始めた康太と工藤さんに一輝が忠告する。康太と工藤さんも周りの視線に気づいて慌てて離れる。康太も気まずかったからか青いビンを開けて一気に飲み干す。

 

「…………麻婆豆腐味。」

 

またとんでもない味だな……

 

「じゃあ、30分ぐらい経ったらこの辺に集合ってことでいいか?」

 

水着売り場の近くのベンチで雄二が皆に聞くと皆が頷く。

 

「明君よろしくね。」

 

「よろしくお願いします。明久君。」

 

「うん。期待に応えられるか分からないけど、頑張るよ」

 

皆がバラバラに別れて水着コーナーを回り始める。もちろん僕は彼女である明梨と日向と一緒に。

 

 

「う~ん……どうしよう。」

 

僕は女性用水着を見ながら悩んでいる。隣に明梨と日向がいるから問題ないけど、女性用水着コーナーに男が一人でいたら店員に事情を聞かれそうだな……

 

『ちょっと吉井! 何女物の水着コーナーに入っているのよ!?』

 

『そうです。そんな悪い子な吉井君にはオシオキが必要です!』

 

『貴様ら、俺の補習から逃げるとはな。今日は特別に本来の補習に加えて社会の常識を叩きこんでやる! 覚悟しておけ。』

 

『『いぃぃぃやああああぁぁぁぁぁ!!!』』

 

『そうだ。プール掃除が残っていたな。特別にプール掃除を任せてやろう。』

 

なんか悲鳴が聞こえたけど変質者でも出たのかな?

 

「あ、これとかは明梨に似合いそうだな。こっちのは日向に似合いそうだな。……どうかな?」

 

僕は3着ずつ水着を選んで二人に渡す。明梨には水玉模様のセパレートタイプ、黒のホルタ―ネックタイプのビキニ、オレンジのパレオ付きの水着の3着。日向には青のビキニ、空色のセパレートタイプ、白のスカートの付いたワンピースタイプの水着の3着だ。気に入ってもらえるといいけど……

 

「明君はどれが一番似合うと思う?」

 

明梨が水着を順番にあてがいながら僕の意見を訊いてきた。う~ん……これは

 

「……甲乙つけがたいね。どれもよく似合ってるし。」

 

「明久君 わたしの方はどうですか?」

 

日向も水着を順に体にかぶせるようにして訊いてきた。

 

「二人とも元が可愛いからどんなものを着ても似合っていて迷うよ。」

 

二人とも超がつくほどの美少女なのでどんな服や水着でも似合っている。ただ、それぞれに印象が違う感じだけど。

 

「明君って、よく恥ずかしい台詞を言うよね。」

 

「明久君だから仕方ないですね。」

 

二人が真っ赤になりながらそう言ってきた。

 

「そ、それで、どうするの?」

 

僕は指摘されて恥ずかしくなったので話題を変えようとした。

 

「う~ん。ここの水着思っていたよりも安いし3つとも買おうかな。」

 

「わたしもそうします。せっかく明久君が選んでくれたんですから。」

 

二人とも、3着とも買うみたいだ。

 

「じゃあ僕が半分出すよ。」

 

「そんなことしなくていいよ。ちゃんとお小遣いはあるから。」

 

「そうですよ。わたし達が着るものなんですから自分で払いますよ。」

 

「選んだのは僕なんだし、気にしないでよ。彼氏からのプレゼントってことでさ。それにお金の事なら心配いらないよ、今月は父さんから仕送りを多く貰ったからね。」

 

今月は父さんから数万円多く仕送りが振り込まれていた。なんでなのか訊いたら僕が付き合い始めたから、そのお祝いと言っていたけど……。

 

「そこまで言うなら……」

 

「お言葉に甘えさせてもらいます。」

 

二人はしぶしぶと言った感じで納得してくれた。




今回はみとぅー様、龍夜様、ノンキ者様、るーみゃ様の意見を取り入れながら水着を決めました。皆様、本当にありがとうございました。
ひとまず、二人は3着ずつ買う事にしました。何を着ていくかは本編のお楽しみという事で。

感想・コメント・指摘などありましたら、お気軽にどうぞ。


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水着選び・後篇

水着選びの後篇です。今回は一輝・康太・秀吉・雄二たちです。

気付いたらUAが8万近くになっていてビックリです。


         ☆

 

「優子はどうするんだ?」

 

アキ達と別れてオレと優子は水着コーナーをうろついている。

 

「一輝君に選んでほしいんだけど……ダメかな?」

 

「構わないが、何がいいかとかサッパリ分からないんだが。」

 

正直、普通の服ですらよく分からないのに、水着なんか分かるわけがない。しかも、タイプや色が様々で種類が多すぎるだろ。

 

「じゃあアタシが何着か選ぶから、その中から選んでくれる?」

 

「ああ、それぐらいなら任せてくれ。」

 

オレは優子が水着の物色をするのを少し離れながらついて行った。

 

「う~ん……これぐらいかな。どうかしら?」

 

優子は水着を数着持ってオレに見せてきた。名前はよく知らないが白地に暖色の花柄のワンピースタイプで、背中が開いている物、これは露出が少ないな。ライムグリーンで下がトランクスタイプにショートパンツが付いていて、上は胸の下あたりまでの丈のタンクトップのようなもの(要は原作3.5巻で秀吉が着てた物)、これは健康的な感じがするな。最後は薄いピンク色でゆったりとしたフリル付きのワンピースタイプ、これは可愛いな。

 

「そうだなぁ。そのライムグリーンのなんかいいんじゃないか? 優子のイメージにも合うし。」

 

「そ、そう? ならこれにするわ。ちょっと待ってね。他の戻してくるから。」

 

「んじゃ、オレはこれ買ってくるよ。」

 

優子が他の二着を戻すと言ったのでオレは優子の持っていたライムグリーンの水着を受け取って会計に行こうとする。

 

「え!? いいわよ。そんな時間もかからないし。」

 

「オレの自己満足だから気にするな。たまには彼女にプレゼントしたいだけだから。」

 

彼氏らしいこととか分からねえし、出来ることから、したいことからしていくのが一番だろ。

 

「あ、ありがと。」

 

「ん。どういたしまして。」

 

優子は恥ずかしかったのか顔を赤くして、俯きながら礼を言ってきた。オレも恥ずかしかったんで軽く返事をしてすぐに会計へと向かった。……店員に彼女へのプレゼントかとか聞かれた時はもっとはずかったが、折角なのでラッピングをしてもらった。

 

         ☆

 

「ねえねえ康太。こんなのどうかな?」

 

雄二達と別れて俺は愛子に連れまわされていた。

 

「…………お前には早い。」

 

愛子が持ってきたのは所謂超マイクロビキニと言われる物。胸の部分の布など500円玉ほどしかない。誰がこんな物考えたんだ。一輝に貰った薬が無ければ俺は鼻血の海に沈んでいただろう、現に今でも鼻の奥が熱い。

 

「むぅ~。ボクだって高校生なんだから早いとは思わないんだケド。」

 

愛子は頬を膨らませて反論してきた。その姿がものすごく愛らしかった。

 

「確かにボクはあんまり胸ないし、康太の言う事も分かるけどサ……」

 

愛子は自分の胸に手を当てながら落ち込んでしまった。

 

「…………気にすることじゃない。俺は貧乳派だ。」

 

「康太。セクハラだよ。それと、ボクの胸だって少しは成長する……はず。」

 

「…………胸の大きさで決まりはしない。俺は愛子の事が好きだ。」

 

「康太……。ありがと。」

 

「…………気にするな。これなんかどうだ?」

 

俺は赤の三角ビキニを取って愛子に渡す。無論、サイズの確認も忘れずに。

 

「へえ~、康太ってこういうのが好みナノ?」

 

「…………愛子に合いそうだったから。」

 

「でも、すぐに取った割にサイズがピッタリなのはどうしてカナ?」

 

「…………不思議な事もある。」

 

「まあ、ボクもこの水着は気に入ったからコレにするヨ。」

 

「…………分かった」サッ   サッ

 

俺は愛子から水着を取ってすぐに会計を済ませて愛子に渡す。

 

「あれ? いつの間に買ってきたの? それにお金は?」

 

「…………一般技能。金なら気にするな。初めてのプレゼント。」

 

「じゃ、これはプレゼントのお礼ダヨ。」ちゅっ

 

愛子は俺の頬に軽く口づけをした。

 

「…………」ポタポタ

 

どうやら一輝に貰った薬の効果が切れ始めたようだ。鼻から赤い液体が垂れ始めた。

 

「さっ、集合場所に行こっか。」

 

俺は愛子に手を引かれて集合場所へと向かった。

 

         ☆

 

「あ、コレなんか秀吉君に似合うんじゃない?」

 

雄二達と別れた後、儂が紫織と店内を回っていると紫織がトランクスタイプの水着を進めてきおった。

 

「儂は男じゃっ!!!」

 

……女物の

 

「ふふっ、わかってるわよ。やっぱり秀吉君の反応は面白いわね。」

 

「頼むから、普通に買物をせぬか?」

 

「そうね。他の人たちを待たせちゃ悪いものね。」

 

紫織はなんとか分かってくれたようじゃの。良かったのじゃ。

 

「秀吉君はどれが似合うと思う?」

 

「なにゆえ、さらしがあるんじゃ!?」

 

紫織が見せてきた水着の内の一つを見て儂は思わず声を荒げてしまったのじゃ。

 

「さあ? この店の人の趣味じゃないかしら?」

 

「そのようなものは公共の場にはそぐわぬと思うのじゃが……」

 

「ふふっ、そうね。」

 

儂は考えることも馬鹿馬鹿しくなったので他の水着を見ることにした。他の水着はストラップレスの赤いビキニとダークブルーの胸元の大きく開いたタンキニと呼ばれるタイプのビキニじゃった。

 

「う~む。色はこちらの方がいいと思うのじゃが、少し露出が多くは無いかのぅ?」

 

儂はダークブルーの水着を指しながら紫織に尋ねる。あまり、露出し過ぎなのもどうかと思うのじゃが。

 

「最近はこのぐらいが普通よ。」

 

「む? そうなのかの? しかし、これでは変な男が寄ってきそうなのじゃが……」

 

「ふふっ、心配してくれるのはありがたいけど大丈夫よ。あたしは秀吉くん以外興味ないから。」

 

「随分と大胆な告白じゃな……」

 

演劇で培った演技力で平静を装っておるが、おそらく儂の顔は真っ赤じゃろうな。

 

「だって、秀吉君の泣き顔が一番そそるもの。」

 

「儂の感動を返してほしいのじゃっ!!」

 

「でも、秀吉君が一番なのは本当よ。まぁ優子も面白いけどね。」

 

「ふ、複雑な気分なのじゃ……」

 

儂は判然としない気持ちのまま集合場所へと向かった。

 

         ☆

 

「……雄二、少しこっちを見ないで。」

 

俺は明久達と別れて翔子と店に入ると、翔子が俺の方を向いてそう言ってきた。

 

「ん? 俺が選ぶんじゃなくていいのか?」

 

「……私が選んだ中から選んでほしい。」

 

「わかった。なら、決まったら言ってくれ。」

 

俺は翔子に言われたので反対方向を向く。ん? あれは明久達か……。さっき赤いポニーテールとピンクのウェーブがかった髪と浅黒いガチムチのスーツの男が見えたが幻覚だな。Fクラスは鉄人の監視の下で補習を行っているはずだ。

 

『今日は特別に本来の補習に加えて社会の常識を叩きこんでやる! 覚悟しておけ。』

 

幻聴まで聞こえるとは……今日はしっかりと休まないといけないな。

 

「……雄二、決まった。」

 

「お。決まったか、どれだ?」

 

少し頭を抱えていると後ろから翔子に声をかけられたので振り返る。

 

「翔子、見せてくれないと選べないぞ。」

 

「……あっち。」

 

翔子が指さした方向は試着コーナーがあった。

 

「着た姿を見比べろってことか。わかった。」

 

「……ちょっと待ってて。」

 

翔子は水着を持って試着室に消えた。

 

シャッ

 

少しして翔子が試着室のカーテンを開けた。

 

「……どう?」

 

「ѱуᐁ∝∑∀∠ぬ∬∂∇㓛㓖」

 

「……落ち着いて雄二。日本語が不自由になっている。」

 

「あのな! 翔子。プールってのは公共の場なんだからそんな物を着るな!!」

 

翔子が着ていたのは首の所から細い布が2本繋がっているだけの紫色の水着だった。(所謂ブラジル水着)他の男にそんな姿見られたくねぇ。

 

「……わかった。じゃあこれは自宅用にする。」

 

そうだった。コイツの家には自家用プールがあるんだった。まあ、あそこなら塀もあるし見られる心配はないか。

 

「……そのときには雄二も誘う。」

 

「わかったから他の見せてくれ。」

 

シャッ

 

「……どう?」

 

「あ、ああ、似合っているぞ。」

 

翔子が着ていたのは真っ赤なバンドトップタイプのビキニだった。

 

「……次。」シャッ

 

シャッ

 

「……これは?」

 

「まぁ、似合っているが、さっきの方が良かったな。」

 

次に着ていたのは白のビキニに水着用のミニスカートだった。翔子の白い肌に似合っているが個人的にはさっきの水着の方が好きだ。

 

「……わかった。さっきのにする。」

 

翔子が赤いビキニを買うのに付き添った後に集合場所に向かった。少しして全員がそろった後に軽く雑談しながらそれぞれの帰路に着いた。

 




水着の試着ってどうなんですかね?しばらく水着買う事も水着着ることも無かったので分かりません。
雄二の方の感想は書いているうちに疲れて手抜きになってしまいました。申し訳ありません。

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水無月プールパーク 到着

投稿が遅くなってすみません。
プール編本編です。冗長になりそうなので2話で終わらせるつもりです。

僕と幼馴染と友情物語(過去編・番外編)
に『七夕』の話を追加しました。良かったら見ていってください。


あれから何事も無く今日は週末、待ちに待った土曜日だ。僕らは各自、といっても各カップルだけど、で現地、水無月プールパークのゲート前に集合することになっている。

 

「あ、雄二、霧島さん。もう来てたんだ、おはよう。」

 

「翔子ちゃん、坂本君、おはよう。」

 

「おはようございます。翔子さん、坂本君。」

 

僕らがゲート前に着くと雄二と霧島さんが待っていた。

 

「うっす。明久、藤崎、久遠。」

 

「……吉井、明梨、日向。おはよう。」

 

僕らは雄二達と軽く挨拶を交わす。

 

「雄二達はいつ来たの?」

 

もしかして待たせちゃったかな? 他の人たちもまだみたいだけど……

 

「5分くらい前だな。翔子に急かされて出てきたからな」

 

「……一分でも長く楽しみたい。」

 

霧島さんは相変わらず一途だな~。

 

         ◇

 

「ん? もう揃ってたのか。」

 

「儂らが最後じゃな。」

 

「紫織がちょっかい出してくるからよ。」

 

「ふふっ、だって秀吉君と優子の反応が可愛いんだもの。」

 

しばらく待っていると、一輝と優子さん、秀吉、神谷さんが来て全員がそろった。ちなみに康太は

 

「…………一輝。赤い薬を……」

 

着いた時には顔色が青く、ずっと輸血をしている。ただし、少しでも楽なようにとベンチで工藤さんが膝枕をしているので康太の鼻血は治まることがない。

 

「ホレ、両方飲んどけ。」

 

一輝はその光景に少し呆れながら例の二つの薬を康太に渡す。

 

「…………すまない。」グビッ

 

康太は薬を受け取ると一気に飲み干した。すると康太の鼻血は直ぐに止まり、顔色も元に戻った。

 

「さて揃ったし、中に入るか。着替えたら……このイルカのモニュメントの場所に集合でいいか?」

 

雄二が案内図の一部を指しながら尋ねるとみんなが肯定の意を示した。

 

         ◇

 

「明久の時も思ったが一輝もあんま筋肉は付いてないんだな。」

 

着替えながら雄二がそんなことを言い出した。

 

「ようは使いようだ。余計に筋肉付けると動きに無駄が出るからな。」

 

「秀吉もあった時と比べると肉付きが良くなったよね。」

 

「そ、そうかの。」

 

秀吉は恥ずかしいのか顔を赤くする。

 

「うん、最初会ったときなんか女の子みたいに小柄で柔らかい体つきだったからね。」

 

「……あまり思い出させんでくれ。儂の黒歴史じゃ。」

 

「そういや、康太はどうしたんだ? やけに静かだが……」

 

「…………」カチャカチャ

 

一輝の言葉で気になって周りを見てみるとカメラをいじっている康太がいた。

 

「康太、何をしているんだ?」

 

「…………カメラの準備。」

 

雄二の問いに見向きもせず答える康太。真剣だ。

 

「康太。他人に迷惑はかけるなよ。」

 

「…………愛子以外は撮らない。」

 

「康太は工藤にゾッコンじゃの。」

 

「記念にもなるしいいんじゃないか?」

 

「そうだね。後で皆で記念写真も撮ろうか。」

 

         ◇

 

「お待たせしました。」

 

「ど、どうかな? 似合っている?」

 

「……雄二。お待たせ。」

 

僕らが待ち合わせ場所で待っていると明梨たちがやってきた。

 

「■★○▽◆△×♡☆♪(二人ともよく似合っているよ。)」

 

「明君、ここは日本だよ。」

 

「明久君、大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫だよ。二人ともよく似合っているよ。」

 

明梨は黒のホルタ―ネックタイプのビキニ、日向は青のビキニを着ていた。この前買いに行った水着だ。二人とも胸元が開いているため僕も動揺してしまった。確かに一緒に買いに行って、似合うかどうか考えながら選んだけど、実際に来ている姿を見ると別モノだ。

 

「●▽×ぬ〒に☆÷っ†¥(彼女を待つのも彼氏の務めだから気にするな。)」

 

「……雄二。日本語が不自由になっている。」

 

「あんまり待ってないから気にするな。」

 

雄二も霧島さんの胸元が帯状になっている真っ赤なビキニ姿に動揺していた。

 

「まったくお主らは相変わらずじゃの。」

 

「あら? 秀吉君はあんまり反応しないのね?」

 

「公共の場であのような姿を晒――」

 

「それじゃ面白くないわね。」

 

ぼふっ

 

秀吉の反応が不満だったのか水着の空いている胸元に秀吉の顔が挟まるように抱きしめた。

 

「紫織、そのぐらいにしときなさい。秀吉が苦しそうよ。」

 

「……ぷはっ、あ、姉上のお陰で助かったのじゃ。」

 

「優子、その水着よく似合っているぞ。」

 

「あ、ありがとう。」

 

ライムグリーンのトランクスタイプの水着を着た優子さんは一輝に褒められて頬を染めて俯いてしまった。

 

「い、いきなり何をするのじゃっ!!」

 

「秀吉くんったら顔を真っ赤にしちゃって可愛い。」

 

神谷さんの言うとおり秀吉は顔を真っ赤にして慌ててる。秀吉にしては珍しい反応だな。

 

「康太、に、似合っているかな……」

 

「…………すごく似合っている。」パシャパシャ

 

「い、いきなり撮らないでよ。は、恥ずかしいよ。」

 

「…………すまない。あまりにも綺麗だったから。」

 

「そ、そう? えへへ、嬉しいな。」

 

赤い三角ビキニを着た工藤さんはいつもと違って少し恥ずかしそうだ。

 




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水無月プールパーク らぶらぶスライダー

今話で終わりにするつもりがある漫画の特装版についてるDVDを見て思いついてしまい1話分の追加をしてしまった。
暑さと疲れで執筆速度が遅くなっているのに余計な事をしてしまった。


「ねえねえ、アレ乗ってみようヨ。」

 

工藤さんが指さした先には

 

「カップル限定スライダー?」

 

「らぶらぶスライダー……だと?」

 

雄二と一輝の言うとおりそこにはピンクのハートやらLOVEやら愛やらliefdeやらaimerやらさまざまな言語で『愛してる』などを意味する言葉で飾られたゲートに『【カップル限定】らぶらぶスライダー』と書かれていた。

 

「……彼氏が彼女を抱きしめるらしい。」

 

「それは良さそうね……」

 

霧島さんが案内図を見ながら言うと優子さんは頬を赤らめる。うん、考えただけで恥ずかしくなる。

 

「逆の方が楽しめそうだけど、面白そうね。」

 

神谷さんは何を想像したんだ? 逆……神谷さんが秀吉を抱きしめるのか? つまり、胸が当たる……ああ、なるほど。

 

「ならば明久達が一番じゃな。」

 

「え!? なんで!?」

 

「…………明久は2回滑る。連続というわけにもいかない。」

 

確かに康太の言うとおりだね。ウォータースライダーって滑るだけなのに結構疲れるよね。

 

「じゃ、じゃあ明梨、日向。どっちから滑る?」

 

「えっと……ヒナちゃん、先に滑ってきなよ。」

 

「私は後からでいいですから明梨ちゃんこそ、先にどうぞ。」

 

僕が聞くと二人はお互いに譲り合ってなかなか順番が決まらなくなってしまった。

 

「じゃあ、じゃんけんで決めよっか。このままじゃみんなを待たせちゃうし。」

 

「そうですね。それなら平等ですからね。」

 

お互いに納得したのか二人はじゃんけんをする。

 

「あちゃ~、負けちゃったか。ヒナちゃん楽しんできてね。」

 

「あ……じゃあ、明梨ちゃん、お先に。」

 

日向が勝った。

 

「じゃあ行こうか。日向。」

 

「よ、よろしくお願いします。」

 

日向は僕が差し伸べた手をおずおずと掴む。

 

「…………写真は任せろ。」

 

これは恥ずかしい姿を残されることになりそうだな……

 

         ◇

 

「では、彼氏さんはここに座ってください。」

 

スライダーの乗り口の所に行くと係のお姉さんが指示してきた。今日は人数を限定したセミオープンだったためか待ち時間が無く入口まで来れた。

 

「えっと……こうですか?」

 

「それでですね、彼女さんは彼氏さんの脚の間に座る感じです。」

 

「こ、こう……ですか?」

 

係員さんの指示に従ってスライダーのところに僕が座ってその間に日向が腰掛けた。こんなに密着するなんて恥ずかしいな。

 

「あとは彼氏さんが彼女さんを後ろから抱き締めてください。お腹を抱きしめる感じですね。」

 

「は、はい。日向、準備いい?」

 

「ど、どうぞ。」

 

僕は日向のお腹のあたりを抱きしめる。当たり前だけどさっきよりも体が密着して日向のすべすべの肌から体温まで伝わってくる。

 

「ふふっ(若くて初々しいカップルね。私も彼氏が欲しいな。)」

 

「え、えっと、もう大丈夫ですか?」

 

「はい、いってらっしゃい。」

 

係員さんが笑っているのが恥ずかしくなったので行っていいか尋ねると、背中を押されて滑り始めた。

 

バシャーン

 

しばらくスライダーを滑ると出口が見え、流されている間もしっかりと抱きしめていたので、僕は日向を抱きしめる形で水中へと飛び込んだ。

 

「へっ? あ、明久君!? な、何をしてるんですか!?」

 

「え? お姫様だっこ。」

 

ちょうど抱きしめていたので、そのままお姫様だっこをしてプールから上がる。

 

「あ、明久君。みなさんも見てますから、恥ずかしいです。」

 

あ。見てみると雄二達がこちらをニヤついた顔で見ていた。

 

パシャパシャ

 

康太はいつも通りものすごい連写をしていて、明梨は羨ましそうにこちらを見ていた。

 

         ☆

 

明久は俺達が見ているのに気付くと急に顔を赤くした。やっぱ、あいつの反応は面白れえな。

 

「よう、らぶらぶカップル。」

 

「見せつけてくれるじゃねえか。」

 

俺がプールサイドに歩いてきた明久に声をかけると一輝も声をかけた。

 

「なっ、ゆ、雄二、一輝。からかわないでよ!」

 

「じゃあ、翔子。俺達も行くか。」

 

「……うん。」

 

明久達が行った後にじゃんけんで順番を決めて、俺らが二番目に決まっていたので翔子と手を繋いで乗り口の方へと行く。

 

         ◇

 

「では、彼氏さんはここに座ってください。」

 

スライダーの乗り口に行くと女性スタッフが居て丁寧に説明してくれた。しかし、宣伝のためとはいえ客に対するスタッフの人数が多いな。お陰で待ち時間とかなく楽しめるがタダでここまで楽しめるのはかなり得だな。

 

「これでいいのか?」

 

「それでですね、彼女さんは彼氏さんの脚の間に座る感じです。」

 

「……わかった。」

 

スタッフに言われたとおりに翔子が俺の目の前に座る。付き合い始めてからくっつく機会は多くなったが水着でここまで密着するのははずいな。

 

「あとは彼氏さんが彼女さんを後ろから抱き締めてください。お腹を抱きしめる感じですね。」

 

「あ、ああ。」

 

俺はスタッフの言うとおりに翔子の腹のあたりを抱きしめる。翔子も恥ずかしいのか陶器のように透き通った首筋がほんのり赤くなっていた。

 

「はい、いってらっしゃい。」

 

「うおっ。翔子、ちゃんと掴まってろよ。」

 

「……大丈夫。一生離さない。」

 

「一生は困るだろ。いろいろと。」

 

スタッフに背中を押されたので離さないように抱きしめている腕に少し力を込める。

 

バシャーン

 

翔子も俺もしっかりと掴まっていたので離されることなく出口まで着いた。

 

「翔子。手を離してくれ。このままじゃ歩きづらい。」

 

「……抱っこ。」

 

「してやるから離せ。」

 

水から上がっても翔子が手を離さなかったので仕方なくお姫様だっこをしてやる。思った通り、明久がニヤついてこっちを見てやがる。

 

パシャパシャ

 

康太はあんなにシャッターを切って大丈夫なのか? データの容量にも限界があると思うんだが……

 

         ☆

 

「さすが熟年カップルは違うね。」

 

「堂々とした感じだな。」

 

「なっ!? 一輝まで何言いやがるんだ!!」

 

オレとアキがプールサイドに上がってきた雄二をからかうと真っ赤になった。やっぱ雄二の反応はおもしれえ。

 

「…………いい写真が撮れた。」

 

「相変わらず仲が良いのぅ。」

 

「一輝君、次はアタシたちだから行きましょ。」

 

「おう、エスコートさせてもらうぞ。」

 

         ◇

 

「では、彼氏さんはここに座ってください。(この子たちが終われば休憩ね。シングルの男でも探そうかな。)」

 

上に行くと女性の係員が乗り方を教えてきた。どうでもいいが、この人は大変だなカップルだけを相手にするって……

 

「それでですね、彼女さんは彼氏さんの脚の間に座る感じです。」

「じゃあ、失礼します。」

 

係員に言われて優子がオレの前に座る。恥ずかしいのか優子の首筋は赤くなっていた。

 

「あとは彼氏さんが彼女さんを後ろから抱き締めてください。お腹を抱きしめる感じですね。」

 

「これでいいですか?」

 

オレは係員に言われたように優子を後ろから抱き締める。優子ってこんなに華奢だったのか、見てるようでちゃんとは見てなかったんだな。

 

「はい、いってらっしゃい。」

 

係員に背中を押されてスタートする。オレは優子を離さないように腕に力を込める。

 

「ちょっと、一輝君。あんまり力入れないでよ!」

 

「ちゃんと掴まってないと危ないだろ? それと、喋っていると舌噛むぞ。」

 

「う~。」

 

優子はまだ何か言いたそうな感じだったが、スピードが上がってきたので大人しくなった。

 

バシャーン

 

しっかりと優子を抱きしめていたのでそのまま着水する。せっかくなのでオレもアキや雄二を見習って優子をお姫様だっこをすることにした。

 

「ちょっ、一輝君。恥ずかしいから止めてよ!」

 

「あんまり暴れるなよお姫様。」

 

「お、お姫様……」

 

暴れる優子に恥ずかしい台詞を言ったらおとなしくなった。やべえ、冷静になるとかなりハズいな。プールサイドにいるアキ達がこっち見てるし。

 

パシャパシャ

 

康太は相変わらずシャッターを切りまくっているし。

 




次話こそ終わらせよう。考えていたイベントを消化しないと……

感想・コメント・指摘・誤字報告・その他、お待ちしてます。
初コメントなどもお気軽にどうぞ


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らぶらぶスライダーとチキンゲーム

今回でプール編は終了です。
それと来週は試験三昧なので今週の更新はこれで終わります。
次回は来週の金曜か土曜(26か27)になると思います。


         ☆

 

「ひゅ~。貴公子は言うことが違うね~。」

 

「ひゅ~ひゅ~。お熱いね~。」

 

雄二と明久が一輝のことをからかっている。これは毎回やるのか?

 

「よかったのぅ姉上。」

 

「秀吉。久しぶりだから加減間違えるかもしれないわよ?」

 

「ご、後生じゃから許してほしいのじゃ。」

 

木下姉弟はなにをやっているんだ?

 

「…………いい写真が撮れた。」

 

「康太、そのカメラ寄越せ。」

 

一輝が手を出してカメラを要求する。これは危険な予感がする。

 

「…………」ブンブン

 

「次はお前らの番だから撮ってやるって言ってるんだよ。」

 

「…………頼む。」スッ

 

さっきまで入っていたメモリーカードを抜いて新しいカードを入れてから渡す。折角のベストショットを消去させるわけにはいかない。

 

「ったく、用心深えな。覚悟しとけよ。」

 

何か嫌な予感もするが仕方ない。早く終わらせよう。

 

「…………行くぞ。愛子。」

 

「うん。エスコートよろしくネ。康太。」

 

カシャ

 

愛子が俺の腕に抱きつくと同時に一輝がシャッターを切った。さっきのはそういう意味か……

 

         ◇

 

「では、男性の方はこちらに座ってください。」

 

上まで行くと男の係員が指示してきたので俺はそれに従ってスライダーに腰掛ける。

 

「女性の方は男性の脚の間に座る感じです。」

 

「こうかな? って康太 大丈夫?」

 

「…………問題ない。」

 

愛子が俺の前に座ったことによって、さっきまで気づかなかった背中の日焼け跡が目に入る。水泳部に入っているためか健康的な日焼け跡が目に眩しい。一輝の薬で抑えられているが、鼻血が出そうで余裕が無い。

 

「あとは男性は後ろからお腹を抱きしめる感じで抱き締めてください。」

 

「…………もう、いいか?」

 

俺は言われるがままに愛子に抱きついて係員に聞く。このままじゃ薬が切れて鼻血のプールを作ってしまいそうだ。

 

「はい、いってらっしゃい。」

 

係員に背中を押されて滑り始める。

 

「きゃっ!?」

 

思っていた以上に流れが強く、愛子を離してしまったので慌てて腕に力を込めたが、何を間違ったのか愛子の胸を掴んでしまった。

 

「…………すまない。」

 

「ベ、別にいいんだけど……いきなりだから驚いちゃって……」

 

「…………本当に――」

 

バシャーン

 

俺が再度謝ろうとしたら出口に着いたらしく俺は愛子と共に水に飛び込む。

 

「…………本当にすまなかった。」

 

俺は立ち上がるとすぐに愛子に頭を下げる。顔が水に浸かっているが関係ない。

 

「か、顔をあげてよ康太。皆も見ているしサ。」

 

顔をあげて周りを見るとなんとも気まずそうな明久達が居た。

 

         ☆

 

「康太、君は何をしたの?」

 

「工藤が顔を真っ赤にしてたな、何があった?」

 

「正直に話せば楽になるぞ。」

 

明久達がプールから上がってきた康太に詰め寄る。確かに工藤はどこか嬉しそうな、恥ずかしそうな様子で顔を赤らめておる。何かあったのは丸わかりじゃ。

 

「…………あれは事故。」

 

「何があったのじゃ……」

 

「…………話したくない。」

 

「さ、秀吉君。次は私たちだから行きましょ。」

 

紫織は儂の腕を掴み腕を組んでくる。

 

「し、紫織よ! む、胸が当たっておるんじゃが!?」

 

「もちろん当ててるのよ。」

 

儂の腕は紫織の腕と胸にしっかりと挟まれておりとても抜け出せそうにないのじゃ。

 

         ◇

 

「すいません。これって私が後ろでも大丈夫ですか?」

 

紫織は担当の係員らしき男性に尋ねる。何がしたいんじゃ?

 

「え? ああ、大丈夫ですよ。ただ、離れると危ないですから、ちゃんと掴まってくださいね。」

 

「じゃあ、秀吉君。いらっしゃい。」

 

「儂の尊厳が……」

 

紫織は先にスライダーに座ると儂のことを手招きする。本来ならば男を見せたい所じゃが、紫織はスライダーのギリギリの所に腰掛けており後ろに回ることはできそうにないのじゃ。そう思いながら紫織の前に腰掛けると、

 

もにゅっ

 

儂の後頭部のあたりに柔らかい感触の物が押しあてられる。

 

「ΓΠΣΨΦΞΛΚζδ!!」

 

「ほら、暴れると危ないわよ。もう行っても大丈夫ですか?」

 

「はい。じゃあごゆっくりどうぞ。」

 

当てられたものが胸だと分かったので離れようとしたのじゃが、しっかりとホールドされており係員に押されて滑り始める。

 

バシャーン

 

流石に滑っている間に暴れるのは危ないので仕方なく後頭部を紫織の胸に挟まれたまま滑り出口まで至る。やはり男としての尊厳がズタズタなのじゃ……

 

         ☆

 

「…………いい写真が撮れた。」

 

康太がカメラを確認しながら呟く。僕らとは違う滑り方だったけど何となく秀吉と神谷さんらしい感じだったな。

 

「……男としての尊厳が無くなったような気分じゃ……」

 

秀吉はそんなことを言っているけど、関係性は変わらない気がするな。なんだかんだ秀吉もそこまでいやそうではないし。

 

「明梨、最後になっちゃったけど行こうか。」

 

「うん。よろしく明君。」

 

明梨は僕が差し出した手に自分の手を絡めてきた。いわゆる恋人繋ぎと言う奴だ。

 

         ◇

 

「では、男性の方はここに座ってください。」

 

上に来るとさっきいたお姉さんはいなくってお兄さんが居た。よかった、変な目で見られたりしていたかもしれないもんね。一応は公式に重婚が可能になったってニュースでやっていたけど……世間体とか考えるといいイメージはなさそうだ。

 

「女性の方は男性の脚の間に座る感じです。」

 

僕が座ったのを確認してから明梨にも指示を出す。

 

「じゃあ、明君。お邪魔します。」

 

「あとは男性は後ろから抱き締めてください。お腹を抱きしめる感じで。」

 

「失礼します。」

 

僕は明梨に断りを入れてからお腹のあたりを抱きしめる。日向の時も思ったけど、女の子ってこんなにも柔らかいんだな。

 

「これでいいですか?」

 

「はい、いってらっしゃい。」

 

バシャーン

 

しばらくスライダーを滑ると出口が見え、明梨を抱きしめる形でプールへと飛び込む。

 

「よっと。」

 

「ひゃっ。」

 

日向にもしたのでお姫様だっこをしたら明梨が短い悲鳴を上げた。

 

「ご、ゴメン。変なとこ触っちゃった?」

 

「だ、大丈夫だよ。いきなりだから驚いただけで……」

 

一言断りを入れてからの方が良かったかな?

 

「じゃあ、上がろっか。」

 

「うん。よろしく。」

 

明梨は俯きながら答えるがその顔や首筋が赤くなっていたので恥ずかしがっているんだろうな。

 

         ◇

 

『ただいまより、本日のメインイベントである【高飛び込み度胸比べ】の受付を開始します。参加希望者はプールエリア東端の高飛び込み台前の参加受付までお越しください。なお、本イベントに参加される方は挑戦料として1,000円を頂きますのでご了承ください。』

 

僕らがお昼を食べてから一休みしているとスピーカーからそんな放送が流れる。

 

「ヘェ~、度胸比べだって。面白そうダネ~。」

 

「そうね。このメンバーで臆病なのは誰なのかしら?」

 

工藤さんと神谷さんは本当に楽しそうに笑う。

 

「ちょっと待ってよ。参加料って言われてもそんなにお金無いんだけど……」

 

お昼の分は持ってきているが、財布はロッカーにしまってあるし、ここからロッカーまで戻るには少し距離がある。

 

「……大丈夫。私が立て替える。」

 

霧島さんはどこからか1万円札を取り出しながら言う。

 

「ひとまず見てからでもいいんじゃない?」

 

「そうだね。詳しいルールとかも分かるだろうし。」

 

「大丈夫ですよ。明久君なら飛べますよ。」

 

         ◇

 

特に反論材料も無かったので受付会場の近くまできた。ルールをまとめると

 

・高飛び込みの高さは20m

・挑戦料は1,000円

・開始のホイッスルから10秒以内に飛びこむと挑戦料が戻ってくる。5秒以内ならさらに賞金として10万円が貰える。

 

というものらしい。

 

「挑戦料が戻ってくるなら参加してもいいか。」

 

「あの高さは相当なモンだがなんとかなるだろ。」

 

「むぅ。男ならば度胸を示さねば……」

 

「…………あのぐらいの高さなら……いけるか?」

 

「なんとかなりそうかな。」

 

「……受け付けは済ませた。」

 

僕らが飛び込み台を見ながら感想を言っていると霧島さんが腕章のようなものを持ってきた。

 

「……翔子。誰もやるって言ってないと思うんだが……」

 

「……大丈夫。雄二ならいける。」

 

もう受け付けは済ませてるらしい。しょうがない、飛び込むか。あのぐらいの高さなら飛び降りても力の逃がし方を間違えなければ怪我しないで済むし……なにより彼女の前ではカッコいい姿を見せたい。

 

「土屋君、双眼鏡か何か持っているかしら?」

 

「これでいいか?」

 

「ありがとう。(これで秀吉君の姿がよく見れるわ。)」

 

         ◇

 

『今のところ誰も時間以内に飛び込めた方はいませんね~。次はエントリーナンバー18番 吉井明久さんです。高校生ですが、彼の度胸はどれほどか。』

 

あれから少し時間が経って、イベントが開始された。目玉イベントの為か飛び込み台の近くには観客席が設けられていて明梨たち女子組はそこから観覧しているようだ。

 

『それでは始めましょう』ピーーーッ

 

「ひゃっほーーいっ!」

 

僕はホイッスルと同時に飛び込み台から飛び降りる。下手に時間をかけると怖くなるから、一気に飛び込んだ。

 

バッシャーーーンッ!

 

流石に20mの高さとなると落下時間も水しぶきも相当なものだった。

 

『……っと、吉井さんの記録は0.3秒です! なんといきなり1秒を切る大記録が出ました!』

 

         ☆

 

アキが飛んだ後に康太と秀吉の出番があったが、二人とも飛び込もうとしたところで思いとどまって、そのまま飛べずじまいだった。そして次はオレの番だ。

 

『現在の所飛び込めたのは吉井さんだけです。果たして20mの高さを恐れない今日心臓の持ち主は再度現れるのか?! 次はエントリーナンバー21番 高瀬一輝さん、またしても高校生の挑戦です。』

 

20mつーと落下時間は2秒くらいか。アキも合図と同時に飛んだしオレもそうするか。

 

『それではどうぞ。』ピーーーッ

 

「よっ」

 

オレはアキと同様にホイッスルと同時に飛びおりる。

 

ジャポーン

 

落下中に姿勢を整えていたのでアキの時ほどは水しぶきは立たなかった。

 

『……っと、高瀬さんの記録は0.2秒です! なんと更に記録が更新されました!』

 

司会係はオレの記録に驚いていたようだがすぐに我に返りオレの記録を発表する。

 

「っし!」

 

アキの記録に勝てたことに軽くガッツポーズを作る。競っているわけじゃないがやっぱり勝ちたいと思うのは性だろう。

 

         ☆

 

一輝と明久はすげえな。ここからじゃ高さの確認はできないが20mとなるとビル5~6階分の高さのはずだ。

 

『これで飛び込めたのは2人になりました。さてさて、次も高校生、エントリーナンバー22番 坂本雄二さんの挑戦です。』

 

司会に呼ばれて飛び込み台の所へと足を進める。思わず下を見てしまったがその高さに背中に冷たい物を感じる。喧嘩とかで度胸はあるつもりだったがこれは別モノだ。

 

『それではどうぞ。』ピーーーッ

 

「っつ!!」

 

明久みたく開始と同時に飛びこもうとしたがその高さに思わず尻ごみしてしまった。

 

『5秒経過~。残り時間は5秒です。』

 

司会の言葉が会場に流れる。

 

『3,2,1――』

 

「くそっ!」

 

こうなりゃ自棄だ、と思って飛び込み台から飛び降りる。

 

ザッパーーーンッ

 

『坂本さんの記録は9.1秒です。残念ながら賞金は出ません。』

 

仕方ねえか。あの高さから迷いなく飛び降りれるのは命知らずかよっぽどの体力自慢、命の危険が分からない馬鹿ぐらいなものだろう。あいにく俺はそれらのどれでも無い

 

         ☆

 

「優しいお兄ちゃん!」

 

「ん? ぐっ……」

 

賞金を受け取って明梨たちの所へ向かう途中に正面からツインテールの小さな女の子が走ってきて、僕の鳩尾にその子の頭が当たった。

 

「優しいお兄ちゃんカッコよかったです!」

 

「え~っと……確か葉月ちゃんだったよね? どうしたの?」

 

「葉月はお姉ちゃんが葉月の相手をしてくれないからお友達とここに遊びに来たんです。それで優しいお兄ちゃんにお祝いを言いに来たんです。おめでとうです。」

 

「ありがとうね葉月ちゃん。」

 

僕は葉月ちゃんの頭を撫でながらお礼を言う。

 

「葉月ちゃ~ん、早く次に行こうよ~。」

 

「あ、お友達が待っているので葉月は行くです。またです。星斗くん、待って下さ~い。」

 

葉月ちゃんは僕に頭を下げると声の聞こえた方にかけていった。

 

「アキ、お前ロリコンだったのか?」

 

「明久、遅くは無いから警察に行こう。」

 

「…………実刑は免れない。」

 

「友人として警察までは付き添うのじゃ。」

 

「ち、違うよ! あの子がぬいぐるみを買うお金に困っていたからお金をあげただけで――」

 

あの子にお金をあげて生活費が無くなっちゃったから、その後で何度か明梨の家で晩御飯を食べさせてもらったりしたんだけどね。

 

「冗談なのに慌て過ぎだ。大方アキが助けたんだろ?」

 

「明久は極度のお人よしだからな。」

 

僕の周りには他人をからかうのが好きな友人が多すぎるよ。まあ僕もみんなと馬鹿騒ぎするのは好きな方ではあるけどね。

 

僕らは明梨たちと合流してからプールを楽しんでそれぞれ帰宅した。やっぱりみんなで遊ぶのって楽しいよね。

 




書きたかった内容をなんとかかけた……
葉月に関しては無理やり入れた感が強くなってしまいすみません。
次からは合宿編に入る予定で多分導入部を書きます。


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学力強化合宿編
脅迫状と合宿前


来週(8/3)から教習所に通う都合で更新が遅くなるかもしれません。
今週中に何話か書く予定ですがどうなるかわかりません。

週一話は更新するつもりですので勘弁してください。


ガサッ

 

「ん? 何だこれ? ……手紙?」

 

朝いつも通りに明梨と日向と一緒に登校して、下駄箱から上靴を取り出そうとしたら音がした。不思議に思って奥に手を突っ込むとピンク色の封筒が出てきた。

 

「明君それって……」

 

「ラブレター……ですか?」

 

横から覗き込むようにして二人が聞いてきた。二人とも少し不安そうな顔色だな、僕が告白を受けるって思っているのかな?

 

「う~ん、確かにそんな風に見えるけど違うと思うよ。それと、もしラブレターだとしても断るからそんな悲しそうな顔しないでよ。」

 

そう言って僕は二人の頭を撫でると二人は恥ずかしいのか顔を赤くする。確かに一見するとラブレターにも見えるが、なんでだろう、何か嫌な予感がする。それに嫌な予感ほど当たるんだよね。

 

「手紙の確認もしたいから、早く教室に行こうか。」

 

「そうだね。ここにいても仕方ないし。」

 

「のんびりしていてHRに遅れたら大変ですからね。」

 

二人は恥ずかしかったのかそそくさと階段の方へと行ってしまった。

 

「やっぱり可愛いな。」

 

僕はそんな二人の行動に頬を緩ませながら二人の後を追って教室へと向かった。

 

         ◇

 

ビリッ

 

教室に着いて席に着くと僕は封を破って中身を取り出す。その内容は――

 

『あなたの秘密を握っています♡

Fクラスに近づかないこと。

 もしこの忠告を受け入れなければ同封した写真を学校新聞に載せます。』

 

なんで嫌な予感って当たるんだろうか? しかしFクラスに近づかない、なら簡単だな。でも同封した写真って何だろう?

 

カサッ

 

そう思って封筒の中を探ると一回り小さい封筒が入っていた。僕は誰も見ていないのを確認してから中身を確認する。一枚目は……

 

『僕の女装写真(メイド服)』

 

こんな服を着た覚えは無かったので、よく見てみると服の影と髪の影の向きが違うので合成であることが分かった。なんだ合成写真で脅しなら何とかなりそうだな。二枚目は……

 

『僕の女装写真(チャイナ服)』

 

脅迫犯は女装好きなのかな? この写真も合成写真だな。さてと、次で最後か……

 

『僕が明梨と日向の胸に手を当てて倒れこんでいる写真(清涼祭)』

 

な、な、な、なんであの時の写真が!? それになんで一枚だけ合成じゃないの!? 

 

「おーっすアキ。朝っぱらから顔色が悪いがどうした?」

 

ササッ

 

「Quoi de neuf?  Ce n'est pas grave (どうしたの? 何も問題ないよ。)」

 

一輝に声をかけられたので慌てて脅迫状を隠して何事も無かったように振る舞う。

 

「何があったか知らないがフランス語になっているぞ。……それで、何があったんだ?」

 

一輝が肩を組んで小声で訊いてきた。気を使ってくれたんだろう。

 

「実はこんなものが……」

 

隠し通せるとも思えないので素直に脅迫状を渡す。

 

「なるほどな……この条件なら楽だがこれだけで済むとは思えないな。一応康太と協力して犯人を――」

 

「一輝!! ちょうどいい所に! 助けてくれ!!」

 

一輝が何か言おうとしたところで雄二が教室に入るなり駆け寄ってきた。手に僕のとこに来た手紙と同じ模様の封筒を持って。

 

「なるほど、大体は分かった。雄二も脅迫されたんだろ?」

 

「も、ってことは他に入るのか? とりあえず何とかしてくれ。そうしないと俺は恥ずかしさで死にそうだ。」

 

一体何で脅迫されているんだろうか? いや、傷を抉ることになりそうだから黙っておこう。

 

「アキのとこにも来たからな。康太と協力して犯人を探して元のデータは消しとくから安心しろ。」

 

「助かる。しかしそう簡単に見つかるのか?」

 

「条件は絞られているからな。データ消すためにも雄二の脅迫材料を教えてくれるか?」

 

「実は翔子とキスをしている写真が十数枚……」

 

確かにキスシーンを不特定多数の人間に見られたら恥ずかしいよね……

 

「なるほどな……わかった。探しておく。」

 

「ありがとう、それとよろしくね。康太にもありがとうって伝えといて。」

 

「マジで助かった。今度何か奢るぞ。」

 

「気にすんなよ。ダチが困ってたら助けるのは当然だろ?」

 

一輝は面と向かってお礼を言われたのが恥ずかしかったのかそそくさと自分の席へと戻った。

 

         ◇

 

「来週に行われる『学力強化合宿』ですが、だいたいはこのしおりに記載されている通りです。Aクラスの皆さんは問題ないと思いますが学習道具を忘れないようにしてください。基本的には自習となりますので重点的に学習するのも、バランス良く全体的に学習するのも効果的です。それと各クラスによって集合場所と時間が異なりますので注意してください。――」

 

う~んAクラスってなるとリムジンバスってところかな?

 

「Aクラスは自宅から専属のハイヤーでの集合となりますので持物を整理して自宅で待っていてください。」

 

は? 全員分のハイヤー? いくらかかるの?

 

「すいません。友達と一緒に行くのはダメでしょうか?」

 

僕は明梨と日向と3人で行きたいんだけどな……

 

「Aクラスの待遇を他に示す目的もありますので許可できません。」

 

「なら数人の為にバスを用意したりするので代用はできないか?」

 

雄二が手を挙げて高橋先生に尋ねる。なるほど、それなら十分に特別扱いだね。

 

「私には判断できませんので学園長に伺ってみます。」

 

「お手数掛けてすみません。」

 

「Aクラスは出来るだけ要望に答えるクラスですので気にしないでください。他に何か要望のある人はいますか? いないようですね。それでは今日も一日勉学に励んでください。」

 

高橋先生の一言でSHRは終わりを告げた。

 

         ◇

 

「学園長に伺ったところ私が引率するという条件で許可が出ましたのでバスで合宿上に行きたい方は挙手をお願いします。」

 

休み時間の内に相談していたのでいつものメンバー11人が手をあげる。

 

「バスで行く方は吉井君、坂本君、木下君、土屋君、高瀬君、藤崎さん、久遠さん、霧島さん、神谷さん、工藤さん、木下さん、以上でよろしいでしょうか?」

 

高橋先生が確認のために教室を見渡す。

 

「いないようですね。では先程の11名は来週の月曜日朝8時に学園の正門前に集合してください。他の皆さんも朝8時までには準備を済ませて自宅で待機してください。」

 

高橋先生の言葉にクラスのみんなが返事をすると解散になった。

 




やっと合宿編に入りました。



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学力強化合宿 開始!

今回から合宿編が本格的に始まります。

最近暑さのせいかダルさのせいかかなり遅筆になってます。
何かやる気が出るいい方法ないでしょうか?
この話も3日ぐらいかけて書いたものです。

なんか愚痴みたいになってしまいすみません。遅ればせながら本編どうぞ。


「UNO!」

 

手札が1枚になったので宣言しながらカードを出す。僕らは今、避暑地としても有名な卯月高原へと向かっている……僕らように用意された高級バスで。高橋先生に言われたとおりに待っていると大きなバスが来てビックリしたよ。しかも中に入ったらジュースとお菓子が備え付けられていて、シャンデリアまで設置されている。卯月高原までは交通事情が良くっても4時間かかり暇だったので持ってきたUNOを男子組でやっていて、女子組は隣のテーブルでトランプをしている。

 

「くそっ、ドロー4。色は赤だ。」

 

「スキップじゃ。」

 

「…………助かった。」

 

「赤のドロー2だ。残念だったな明久。それとUNO。」

 

一輝、秀吉、雄二がカードを出していき僕の手番に戻る。あがるために手札は数字しか残してないので僕は6枚のカードを山札から取る。

 

「ワイルド! 色は緑!」

 

さっき引いたカードの中からワイルドカードを出して色を変える。色を変えれば雄二も簡単には上がれないだろう。

 

「緑の3。」

 

「くっ、ないのじゃ。……緑の9じゃ」

 

手札が少なかった秀吉は山札から数枚とってからカードを出す。

 

「…………2。」

 

地味にスキップやリバースで飛ばされていた康太が多めの手札からカードを出す。

 

「フッ……青の2。あがりだ。」

 

雄二はニヤリと笑ってから最後のカードを出す。

 

「…………他のカードを出すべきだったか……」

 

康太は手札をテーブルに置きながら言う。見ると緑の他の数字や赤の9などがあった。

 

「雄二以外の順位は2番がオレで3番が秀吉、4番がアキで康太がビリか。よし、もうひと勝負しようぜ。」

 

一輝は僕たちの手札の数を数えてからカードを切りなおす。

 

「次こそ上がってやる。」

 

「儂も負けんのじゃ。」

 

「…………もうビリは勘弁。」

 

「次も上がってやる。」

 

「じゃあ始めるか。」

 

一輝がカードを配り終えるとテーブルに山札をセットする。二回戦開始だ。

 

         ◇

 

「渋滞で到着時刻が大幅に遅れることになりそうです。」

 

高橋先生に言われて外を見ると連休というわけでもないのに車が多くバスはほぼ止まっている状態だった。バスの中はジュースやお菓子が大量に用意されているうえ空調も完璧なので快適に過ごせるから何も問題は無いね。

 

「…………もう昼か。」

 

「もうそんな時間か。意識し出したらお腹空いてきたかも。」

 

康太に言われて気付いたが既に短針は12時を過ぎていた。さっきまで気にならなかったけどお腹がすいてきた気がする。

 

「あ、それだったら」

 

「お弁当を作ってきました。」

 

「……私も。」

 

「あんまり自信は無いけどアタシも作ってきたわ。」

 

「あたしも持ってきたわよ。」

 

僕の言葉で女子組がバスの中に持ち込んでいた荷物からタッパーやお弁当箱などを取り出す。

 

「折角だから皆で食べない? ボクはあんまり自信無いけどサ。」

 

工藤さんの言葉で高橋先生も混ぜて皆でお弁当を食べることになった。工藤さんや優子さんは自信がないと言っていたけど十分においしい料理だったよ。たぶん二人とも彼氏のために努力したんだろう。

 

         ◇

 

「ふぅ~、一日目は自習時間が無いとはいえこんな時間になるとはね。」

 

「まったくだな。なんでこんな時期に渋滞に捕まるんだ。」

 

合宿場の旅館に着いたのは4時。各クラスごとに集合方法が違うので今回の合宿は1日目と最終日が移動だけになっている。遅れたAクラスが揃ってから合宿での注意事項や学年主任高橋先生の話、生活指導の西村先生の話などを済ませてから早めの夕食を取った後に自由時間となった。

 

「…………高速の整備工事があったらしい。」

 

「一輝は何をしておるのじゃ?」

 

白金の腕輪と似た腕輪が繋がれたパソコンを操作している一輝が気になったのか秀吉が近づきながら問いかける。

 

「白金の腕輪を直した時のデータを利用して腕輪を作ってみたんだ。まあ、常人では扱いきれないような代物になりそうだけどな。」

 

バンッ

 

「全員手を頭の後ろに組んで伏せなさい!」

 

突然僕らの部屋のドアが開け放たれて女子がぞろぞろと中に入ってきた。

 

「木下はこっちへ! そっちの馬鹿どもはおとなしくウチらに従いなさい!」

 

「なんでテメエらの言うこと聞かなきゃいけねえんだ?」

 

島田さんの高圧的な態度に一輝はキレ気味のようだ。

 

「仰々しくぞろぞろと、一体何の用だ?」

 

雄二が心底面倒くさそうに尋ねる。わざわざ3階まで来て何の用だろう?

 

「よくもまあ、そんなシラが切れるものね。あなたたちが犯人だってことくらいすぐに分かるというのに。」

 

島田さんの後ろから高圧的な態度で出てきたのは性悪女ことCクラス代表の小山さん。後ろに控えている大勢の女子も腕を組んで頷いている。

 

「犯人? 犯人ってなんのことさ?」

 

「コレのことよ。」

 

そういって小山さんが出してきたのは

 

「…………CCDカメラと小型集音マイク。」

 

「かなりの安物だな。」

 

そういった機器に詳しい康太と一輝が答えた。しかしCCDカメラと小型マイクの用途なんて……あれしか考えられないよね?

 

「女子風呂の脱衣所に設置されていたの。」

 

「一体誰がそんなことを――」

 

「とぼけないで! アンタ達以外こんなことするやつがいるわけないじゃない!」

 

「土屋君がいるから否定できません!」

 

僕の台詞を遮るように島田さんと姫路さんが叫ぶ。

 

「俺たちは部屋から出てないんだそんなこと出来るはずがないだろう。」

 

雄二の言うとおり僕らは部屋から出ていっていない。そんな状況で女子更衣室なんていけるはずがない。

 

「まさか、吉井君達がこんなことをしていたなんて……」

 

「ウチも信じていたのにこんなことをするなんて……」

 

島田さんと姫路さんが拷問器具を持ちながら辛そうに言う。信じているんなら拷問器具なんて必要ないだろうし、そもそも話を聞こうとしていない彼女たちは信頼という言葉を辞書で調べた方がいいと思う。

 

「もう怒りました! よりによってお夕飯を欲張って食べちゃった時に覗きをしようなんて……! い、いつもはもう少しその、スリムなんですからねっ!?」

 

「う、ウチだっていつもはもう少し胸が大きいんだからねっ!?」

 

彼女たちは何を言っているんだろうか? そもそも体型の維持は自分の不摂生が原因なわけだし……

 

「はぁ~」

 

「皆、やっておしまい!」

 

僕が呆れて溜め息を吐いたら何を勘違いしたのか島田さんが周りの女子に指示して僕たちに襲いかかってきた。

 

「ったく、女に手上げるわけにもいかねえし面倒だな。っと」

 

「…………いい迷惑。」

 

「無駄な時間だな。」

 

「でも、どうするの?」

 

僕たちは女子の攻撃を避けながら会話をする。秀吉は別だけど僕たちだけなら普通の女子の攻撃を躱すことくらい訳ない、といっても女子に攻撃するわけにもいかないので躱すことしかできない。

 

「(適当に時間を稼げば先コーが気づくだろ。それまでなんとかしろ。)」

 

雄二に指示を仰いだら女子に気付かれないようにアイコンタクトで指示してきたので僕は静かに頷いた。周りを見ると康太と一輝も頷いていたので雄二の指示は二人にも届いたのだろう。

 

「貴女たち! 何をやっているんですか!」

 

僕らが女子たちの攻撃を避けていると入口の方から女性の声が響いてきた。あれ、この声って……

 

To be continued...

 




最後に出てきた声の主は!? そして脅迫犯、盗撮犯は誰なのか!?

一気に話を進めたかったのでバスの中での出来事は少し割愛しました。
ホントはもっといちゃつかせたかったんですがやる気が起きずに本編に早く入りたくなってこんな形になってしまいました。

メンタルが単純なので檄を飛ばしてくれたらやる気が出ると思います。

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初めての方も気にせずにコメントくれると嬉しいです。
コメ返しなどしているとアイディアが生まれることもあるので


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意外な助っ人

少し時間に余裕ができたので更新します。
今回は声の正体が明らかに+オリキャラの教師を出します。
それと移動中に書かなかった心理テストの回答を書いておきます。なんとなくのイメージなので緑とオレンジの境目はあいまいです。






心理テスト:次の色で思い浮かぶ異性を答えよ。(青 オレンジ 緑)

明久「青が明梨と日向でオレンジは優子さんと工藤さん、緑は神谷さんと霧島さんかな。」

雄二「青が翔子でオレンジは思い浮かばん、緑は藤崎、久遠、工藤、木下姉、神谷だな。」

秀吉「青が紫織でオレンジは姉上、緑は霧島と藤崎、久遠、工藤じゃな。」

康太「…………青が愛子、オレンジは……思い浮かばない、緑は霧島、藤崎、久遠、神谷、木下姉。」

一輝「青は優子でオレンジが明梨、緑は霧島、神谷、久遠、工藤だな。」

明梨「青は明君、オレンジが秀吉君と一輝君、緑は坂本君と土屋君かな。」

日向「青が明久君、オレンジは思い浮かびません、緑は坂本君と土屋君、高瀬君、木下君です。」

翔子「……青が雄二、オレンジは吉井、緑は土屋と高瀬、木下。」

紫織「青が秀吉君、オレンジが吉井君と土屋君、緑は高瀬君と坂本君ね。」

愛子「青が康太君でオレンジは吉井くん、緑は坂本君と木下君と高瀬君カナ。」

優子「青は一輝君、オレンジが秀吉と明久君、緑は坂本君と土屋君ね。」


「貴女たち! 何をやっているんですか!」

 

部屋の入り口から響いてきた大声で僕たちを襲っていた女子たちと僕たちの動きが止まって入口の方に顔を向ける。そこにいたのは

 

「日向?」

 

僕の彼女の日向だった。彼女と知り合ってから3年ほどになるけどこんな大声は初めて聞いた。

 

「何をしているんですか、って聞いているんです!」

 

「こ、コレを仕掛けた犯人に罰を下してるのよ。」

 

日向は入口の近くにいた小山さんに詰め寄る。

 

「明久君達がやった証拠でもあるんですか?」

 

「しょ、証拠は無いけど島田さんが『こんなことするのは吉井たちぐらいしかいない』って言って……」

 

日向の迫力に押されながらもなんとか答える小山さん。

 

「私たちAクラスは渋滞で到着が遅れたんですよ。」

 

「そ、そんなのいつ着いたかなんて分からないじゃない!」

 

今度は島田さんに詰め寄る日向。危ないな、一応助けに入れるように備えておくか。

 

「それは引率してくださった高橋先生に尋ねれば分かるはずです。」

 

「悪知恵の働く坂本がいるんだから須川たちでも使ったんでしょう。そう思ってFの馬鹿達の方は今頃罰を受けているわよ!」

 

~その頃のFクラス男子の居室~

 

「ふぉぉぉぉぉおおおっ! 女子が俺の元にやってきた~~!!」

 

「ハァハァ。もっと罵ってくれ~~!」

 

「もっと痛みをくれ!」

 

「むしろご褒美さーーーーっ!!」

 

石畳やロープなどで拘束されている男子は何かに目覚め始めていた。

 

「な、なんなのよっ。こ、コイツら頭おかしいんじゃない?」

 

「コイツらに罰なんて無理なんじゃ……」

 

「そ、そうだ。西村先生に報告しに行けば……」

 

「ちょっと待って。なんて報告するの? 証拠も無いんだし西村先生の説得なんて……」

 

「こ、このままじゃ私たちの方が危険だからお、襲われそうになったって言えば……実際に襲われかけたし……」

 

事実Fクラスの男子は女子が入ってきて、早々に襲いかかろうとしたが咄嗟に扉を閉められて扉にキスすることになっていた。

 

「そ、そうね。私たちは被害者なんだし、西村先生に報告しましょ。」

 

彼女達は扉を外側から閉めて男子が出れないようにしてから鉄人の所へ向かった。

 

~戻って明久達の居室~

 

「試召戦争の戦後対談で『学校行事以外でAクラスに関わらないこと』と言ったのは坂本君ですよ。こっちから関わるのはおかしいことですよ。」

 

島田さんの妄言を次々と論破していく日向。追いつめられると何をするか分からないので僕は少し腰を上げた状態で様子を見る。

 

「そ、それは……」

 

「それに、鍵は西村先生と高橋先生の持っていらっしゃる鍵を合わせないと開かないんですよ!? どうやって女子更衣室まで入るんですか?」

 

「う、うるさいわねっ! アンタに文句を言われる筋合いはないわよっ!」

 

ダッ パシッ

 

島田さんがキレて日向に手を上げようとしたので僕は日向を守るように二人の間に割り込むと、島田さんの手が誰かに掴まれた。その方向を見ると

 

「ふぁ~あ、なんだこの状況は?」

 

とても寝むそうで面倒くさそうな顔をした黒髪短髪で長身の男性数学教師 照沼 崇治(てるぬま そうじ)がいた。試召戦争ではお世話にならなかったけどこの人も僕らの学年の教師だ。噂では担当教科よりも高い点数の教科があるらしい。

 

「離してください! ウチはコイツらに罰を与えなきゃいけないんです!」

 

「言っている意味が分からん。高瀬、端的に事実だけを話せ。」

 

テル先(照沼先生の呼び名)は島田さんの言葉に溜め息をついて近くにいた一輝に説明を求めた。

 

「女子更衣室で小型カメラとマイクが見つかって、土屋康太がいるからという理由だけで邪推した女子が押し掛けてきた。それだけです。」

 

一輝はつまらなさそうに告げる。たぶん行動とかもろもろに呆れているんだろうな。

 

「なるほどな。はぁ~……召喚許可を出すから召喚獣でケリつけろ。」

 

テル先は僕らと女子の様子を見て溜め息を吐いた後にサイコロのようなものを指で上に弾いて出目を確認した後に召喚許可を出す。

 

「言っておくが戦死したら補習室行きだ、自分の行動に責任を取れないなら召喚するなよ。」

 

「補習室に行くのは……」

 

「やったって証拠も無いしね……」

 

「覚悟が無いんなら自分の部屋に帰れ。」

 

テル先に促されて島田さん達に付いてきた女子たちは帰って行った。

 

「フン、数学でウチが負けるわけないわ! 試獣召喚!」

 

「吉井君には補習室に行ってもらいます! 試獣召喚!」

 

テル先の忠告を無視して召喚する姫路さんと島田さん。島田さんは前の試召戦争で僕に負けたことを忘れているのかな? そんなことを考えながら僕も召喚をしようとしたら一輝が前に出てきて

 

「オレ一人で十分だ。試獣召喚。」

 

召喚獣を召喚した。

 

物理

Aクラス 高瀬 一輝 529点  VS Fクラス 島田美波 122点

                  Fクラス 姫路瑞希 369点

 

あれ? なんで数学じゃないんだろう?

 

「な、なんで数学じゃないのよ!? こんな点差じゃどうしようにもないじゃない!」

 

島田さんが慌ててテル先の方を向いて説明を求める。

 

「誰も教科選択してねえからな。そういう時は賽の目で決めるようにしてんだ。」

 

だからサイコロを弾いたのか。

 

「余所見とは随分と余裕だな?」

 

一輝が腕輪の能力を使うと背中のライフルが光になって霧散して、腰にホルスターに収まった小銃が現れた。

 

Aクラス 高瀬 一輝 509点

 

腕輪を使ったことによって一輝の点数に補正が入る。

 

「っ!!」

 

島田さんは一輝に視線を戻して武器のレイピアを構えなおそうとするがその行動はもう遅い。

 

「遅えっ!!」

 

ドォォン

 

一輝の召喚獣が右手で銃を引き抜くと同時に撃鉄に親指をかけて、銃を島田さんに向けると同時に親指を離す。親指を離したかと思ったら次に左手の五指で次々に撃鉄を叩いたかと思ったら小銃からとは思えない銃口炎と銃声が響き渡り、島田さんの召喚獣の眉間、心臓、両肩、両腿から同時に血が出て光に包まれて消えた。

 

Fクラス 島田美波 戦死

 

「戦死者は補習~~~!」

 

「いやあぁぁぁああっ!」

 

島田さんが戦死すると同時にFクラスの男子を数名小脇に抱えた西村先生が島田さんを掴んで去って行った。たぶん合宿場にある特別補習室に連れていったんだろう。

 

「み、美波ちゃんっ!?」

 

「…………」カチャカチャ

 

島田さんが連れていかれたのに動揺している姫路さんと静かに銃弾のリロードをする一輝。

 

Aクラス 高瀬 一輝 479点

 

リロードした分の点数が引かれる。

 

「ボーっとしてんじゃねえよ。」

 

ドォォンッ!

 

再度轟音が響くと今度は姫路さんの召喚獣の鎧の心臓のあたりにだけ銃弾くらいの穴があいてそのあと霧散した。

 

Fクラス 姫路 瑞希 戦死

 

「戦死者は補習~~~!」

 

「いや~~~~っ!」

 

容赦なく西村先生が連れていく。また小脇にFクラスの男子を抱えていたのはなんでだろう?

 

「あ~、面倒かけちまって悪いな。お前らが盗撮なんてできないのは分かってるんだがそう言って聞きそうにも無かったからな。」

 

テル先が軽く謝ってきた。

 

「俺達に盗撮ができないってのはどういう意味だ? 確かに俺ら自身には無理かもしれないが他の人間を使う可能性だってあるだろう?」

 

雄二がいぶかしむ様に聞く。

 

「簡単な事だ。お前らならそれぞれが抑止力になるからな。」

 

「抑止力……なるほどな。」

 

「確かにできないね。」

 

テル先の言葉に少し考えてから納得した一輝と僕。

 

「む? どういう意味じゃ?」

 

「…………意味が分からない。」

 

さっきの説明ではまだ分かっていない様子の秀吉と康太。

 

「例えばお前らが自分の彼女の裸を除く奴を見つけたらどうする?」

 

「その者の声を使って校内放送などであることないことを全校生徒に向けて発するのじゃ。」

 

「…………そいつの弱みを握って社会的に消す。」

 

「そういうことだ。お前らなら互いに気付かれないで行動するのも無理だし、バレたら下手したら退学だからな。」

 

例を挙げられて納得した様子の秀吉と康太。まあ僕も明梨や日向に何かあったらソイツになにするか分からないけどね。それに透さんや義史さんが知ったらもう……

 




軽くオリキャラの設定

名前:照沼 崇治(てるぬま そうじ)
容姿:黒髪のスポーツ刈り、常に半目で眠そう、身長はやや高め、体は引き締まっている。
性格:面倒くさがりなところもあるが基本的には生徒思い
成績:国語と書道が150点前後で苦手科目
   歴史・生物・英語はどちらでも無く350~400前後
   体育(実技と保健)は550点前後、化学は600点前後
   担当科目の数学は650点前後
   実は一番の得意科目は物理と技術工作で物理は950点前後で高橋先生よりも高い、技術工作に関しては4桁を記録することが過半数。
詳細:文月学園では担当科目以外の召喚許可には単科目500点以上必要なので召喚許可を出せるのは、数学、物理、化学、保体、体育、技術工作の6科目。科目の指定が無く許可を求められた時にはサイコロで決める。


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覗き? 西村先生お疲れ様です

76話目ですね。こんなに書いているなんて……文章力は上がっているのかな?

今回は後半が……ナンデモナイデス

休みに入ったって言うのに昼まで寝て夜までゲームやって、で時間が無いです。それでも罪ゲーが消化できないって……


「じゃあ俺は仕事があるからそろそろ帰るわ。何かあったら学習室か教員の部屋に来てくれ。」

 

「あ、そうだ先生。個室風呂ってどの位の広さなんですか?」

 

照沼先生が部屋から出ようとしてたので呼びとめた。この合宿場には大浴場が二つと個室風呂が5つあるらしい。皆と入るのが恥ずかしい人などが教師に言えば鍵を貸してもらえるらしい。

 

「確か家族風呂を改装したものとかって聞いたから4人が入れるぐらいの広さじゃないか? 個室風呂に入るのか?」

 

「いや、入るかは分からないですけど保険……ですかね。できれば2部屋分用意してほしいんですけど。」

 

「保険? 2部屋分? アキ、何を考えてんだ?」

 

「うん……島田さんがFクラスに罰を与えたって言ってたでしょ。」

 

「確かに言っておったのぅ。じゃがあやつらの普段の行いを考えたら罰を受けても仕方ないと思うんじゃが……」

 

「…………むしろ普通の罰では生ぬるいくらい。」

 

「まあ罰がどうこうってのは置いといて、罰を受けたからって覗きをするんじゃないかって思って……」

 

「いくらあいつらでもそこまでは――」

 

「無いって言い切れる? 今までの行動とか考えても?」

 

一輝の言葉を遮るように言葉を挟む。何度も彼らのおかしな行動を目にしている僕としては彼らの行動の理由や思考回路が理解できないものだって分かっているので少しでも可能性があるものは潰しておきたい。

 

「確かに分からないな。あいつらは犯罪とか考えねえだろうし、学習能力もねえからな。」

 

雄二が右手を額に当てながら言う。ホント何度体に教えても忘れるから困ったもんだよ。

 

「俺ら教師陣がなんとかする予定だが……騒がしかったら落ち着けねえか。わかった、入浴時間までには鍵を持ってきてやるよ。」

 

「お手数掛けてすみません。」

 

「気にすんな。どうせ学習室での監視くらいしか仕事が無いからな。それにAクラスならこの合宿中でも必要なものを用意してもらえる権利があるしな。」

 

照沼先生はそう言うとドアを開けて出ていった。

 

「それじゃ私も部屋に戻りますね。」

 

「あ、ちょっと待って日向。明梨たちに個室風呂を使ってもらうこととその時の分け方を決めといて、って伝えてくれる?」

 

「わかりました。」

 

         ◇

 

「しかし、マジで覗きなんてするとは……」

 

「でも、先生方に召喚獣で負けて補習室行きになったんでしょ?」

 

女子組と一緒に個室風呂へ向かう中、呆れた様子の一輝に尋ねる優子さん。まさかと思いながら対策をしていたけど僕ら前半組がお風呂に入っている間にFクラスの男子が女子風呂を覗こうとして警備をしていた西村先生含めた教師陣の召喚獣に試召戦争で敗れて合宿場の補習室に連行されたらしい。

 

「……明日まで補習を受けるらしい。」

 

「アイツらがその程度で懲りるとは思えないがな……」

 

「でも、なんで明久君は覗きをするってわかったんですか?」

 

「深く考えもしないで欲望のまま行動する姿を何度か見たからね。普通に常識的に考えてたら予想なんてできないよ。」

 

「あはは、確かに常識が通用しない感じだよね。」

 

「さっきから静かだけどどうしたの、康太?」

 

さっきから何かを考えているような様子の康太に声をかける工藤さん。そういえばお風呂に入っている時も何かを考えていたけどどうしたんだろう?

 

「…………たぶん今日見つかったカメラはダミー。」

 

「む? それはまだカメラが設置されておるということかの?」

 

秀吉の問いに首肯で答える康太。僕はあんまり詳しくないから分からなかったけど、今日女子が見つけたものは安物で音質や画質が悪いと一輝が説明してくれた。

 

「そんな人が同じ学校に居るなんて気味悪いわね。」

 

少し顔色を悪くする神谷さん。確かに同じ学校、しかも同学年に犯罪者がいるのは良い気はしないね。

 

「その辺は康太とオレで妨害と改竄するから安心してくれ。」

 

あれ? 一輝と康太から犯罪臭が……気にしたら負けかな、うん。

 

「じゃあアタシたちは向こうだから行くわね。」

 

話していると1番と書かれた個室風呂の前まで来ていた。借りた鍵は個室風呂の1番と3番で少し離れているので優子さんと霧島さん、神谷さん、彼氏である一輝と雄二、秀吉が3番の個室風呂へと向かった。

 

「わたし達も入ろうか。」

 

「明久君、お願いしますね。」

 

「任せてよ。誰も通さないから。」

 

僕と康太は3人が個室風呂のドアを開けて中に入るのを見送る。工藤さんがドアを閉める前に「覗くなら、バレないようにネ♪」なんてことを言ってドアを閉めたので

 

「……………………」プシューーーッ

 

案の定康太が鼻血を噴出し、一輝に渡されていた薬を飲ませた。その後、僕と康太はドアの両脇に背を壁に預けるようにして座っているのだが

 

『ヒナちゃんって着痩せするタイプだよね。』

 

『うんうん。胸も大きいし男の子が好きそうなスタイルで羨ましいヨ~。』

 

『そ、そんなこと、明梨ちゃんや愛子さんだってカワイイしスタイルも良いですよ。』

 

ドアが薄いせいか中の話声、ガールズトーク(?)が聞こえてきて落ち着かない。さっきから康太がぴくぴくしているのは気のせいだと信じたい。……それと赤い水たまりも幻覚だろう。

 

『じゃあ折角だから男の子の意見を聞いてみようヨ。』

 

何かものすごい嫌な予感がするんだけど……

 

『ちょっと愛子さん!?』

 

『あ、愛子ちゃん、恥ずかしいから止めてよっ!』

 

『ねえ康太、吉井君? ボンッ、キュッ、ボンッ! って感じの年上美人と幼女体型の年下の女の子とどっちが好みなのカナ?』

 

日向と明梨の制止をものともせず少し大きめの声で聞いてくる工藤さん。そんな質問の答えなら決まっている。

 

「何を聞きたいのか分からないけど、そういうのは外見だけじゃ判断できないよ。外見は遺伝と生活習慣に影響するからね。それに、その人の良さとか内面とかいろいろと分からないと何とも言えないよ。それに僕の好みは明梨と日向だけだからね。」

 

テレビとか雑誌に出ている人で綺麗な人や美人は多いけど中身までは見れないし惹かれることは無い。いくらか格好付けたりはすることはあっても自然体でいられて、一緒にいるだけで楽しい明梨と日向は僕にとっては理想の女性だ。恥ずかしいから口には出せないけど。

 

『『あ、明君(明久君)……』』

 

『さすが吉井君ダネ~。聞いてるこっちの方が恥ずかしくなってくるヨ。明梨と日向なんか真っ赤ダヨ。』

 

うっ……指摘されたら恥ずかしくなってきた。

 

「…………俺も明久の意見と同じだ。容姿なんて気にすることじゃない。それに胸のことは気にするな。自分を飾ろうとする必要はない、俺はそのままの愛子の方が好きだ。」

 

康太は恥ずかしそうにしながらも、ちゃんと自分の気持ちを彼女に伝える為にハッキリとした口調で告げる。傍から見てるとこんなに恥ずかしいものなんだ。康太は俯いていてその顔はよく見えなかったが多分真っ赤になっているんだろうな。

 

『こ、康太。恥ずかしいヨ。そ、そんな風に言われたら……』

 

『ふふっ、愛子さん、顔真っ赤ですよ。』

 

『土屋君も大胆だね。そんな台詞を言うなんて。』

 

『ちょっ、二人ともからかわないでヨっ!』

 

ドアの向こうから聞こえてくる女子の言い争いを聞きながら僕は頬が緩むのを感じた。なんだか幸せだな。

 




後半はほっこりとした感じの話でしたね。うん? 惚気なんて聞きたくないって? 非リアの自分も聞きたくないですよ。チクショーッ

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強化合宿一日目 終了

長かった強化合宿の一日目がやっと終わります。
今話は前話で書けなかった一輝達の方の話を載せました。

それでは第77話をお楽しみください。


         ☆

 

「それじゃアタシ達が入ってる間警備お願いね。」

 

「おう、任せとけ。誰も中には入れさせねえよ。」

 

「……雄二。一緒に入りたい。」

 

「あのなあ……学校行事なんだからそんなことするわけにはいかねえだろうが。」

 

霧島の言葉に額を押さえる雄二。あの言い方だと普段なら一緒に入っても良いってことか? それとも、もう入ったことがあるのか?

 

「秀吉君は……まぁ、無茶はしないで、ねっ。」

 

「う……うむ。一輝や雄二には劣ると思うが頑張るのじゃ。」

 

悪鬼羅刹って呼ばれてる雄二や無銘道場で鍛えたオレと比べたら力が無いからな。秀吉も自覚があるようだが何か護身術でも教えておくか? 龍司さんに頼むと着いていけないだろうし暇な時にでも教えておくか。

優子達が中に入ったのを確認するとオレたちは壁に背中を預けてドアの両サイドに座る。

 

『……優子、入らないの?』

 

『あ! もしかして優子は胸のこと気にしてるの? 別に女同士なんだし気にする必要はないわよ。』

 

壁が薄いからか中の会話が筒抜けで聞こえてくる。できれば聞き流したい会話なんだが……

 

『ち、違うわよ! 代表と紫織の胸が大きいからって羨ましいって思ったわけじゃ――』

 

「くくっ。」

 

慌ててる優子を想像したら、おかしくて声を殺して笑ってしまったが壁が薄いせいで中に聞こえてしまったようだ。

 

『ちょっと、今笑ったの誰よ! さっきの話聞いてたの!?』

 

「わりぃわりぃ。ただ、話聞こえてるから声抑えてくれ。」

 

『ならちょうどいいわ。高瀬君。』

 

オレが優子に謝ると神谷がドアの向こうから話しかけてきた。ものすごくイヤな予感がするが逃げることは……できないな、警備している以上はここから離れられねえし。

 

「なんだ?」

 

『優子の好きなとこを話してくれない? 優子が胸が小さいから高瀬君が不満があるんじゃないかって不安みたいだから。』

 

『ちょ、ちょっと紫織!? 何を言ってるのよ!』

 

なんでそんなことを、と言いたかったが優子のことを出されたら反論することができない。

 

「そうだな。いい機会だし話しとくか。」

 

壁にもたれて目を閉じ優子のことを考えながら話す。

 

「優子と最初に会ったのはアキ達とAクラスを見に行った時だったろ?」

 

『そ、そうね。』

 

「あの時に優子がアキを馬鹿にしてた教師のことを直訴した、ってのを聞いて自分の為じゃなく友達の為に怒れる優しい子だなって思ったんだよ。」

 

『でもアレはアタシもあの先生には呆れていたというか苛立つところもあったからで――』

 

「確かにそうかもしれないが一緒にいると優子が優しくて良い奴だってのはよく分かったさ。それにコレは惚れた弱みみたいなものかもしれないが……優子の反応がすべて可愛く見えんだよ! それに優子と一緒にいると楽しくて時間の流れすら忘れるし……なんつーか今は優子がいない生活なんて考えられないくらい当たり前の存在になってんだよ。」

 

言おうか言うまいか迷ったがこの機会を逃したらいつ言えるか分からねえから思い切って言葉にする。

 

『か、可愛いって……』

 

『……優子、顔が真っ赤。』

 

『ほんと優子の反応って面白いわよね。それにしてもずいぶんと大胆な告白ね。』

 

霧島や神谷の言葉からすると優子は真っ赤なんだろうが恥ずかしくてそんな事に気が回らない。

 

『……雄二は私のことをどう思っている?』

 

「な、な、な、何を言いやがる!?」

 

霧島の言葉で分かりやすく動揺する雄二。オレだけこんな思いをするのは不公平だしいっそ聞いちまえ。

 

「雄二、正直に思ってることを話すんだ。簡単だろ?」

 

雄二の肩に手を回し逃げられないようにして問いかける。

 

「な、何が簡単だっ!?」

 

『……雄二は私のこと嫌い?』

 

「嫌いだったら付き合うかよっ! ああっ畜生!」

 

雄二は頭を掻き毟った後に息を一気に吐いて喋りだす。

 

「俺も一輝と同じで翔子がいない生活なんて考えられねえよ。だいいち十何年も一緒に居るんだいまさら言うことでも無いだろ。」

 

「雄二そんなことで逃がすと思ったか? 思ってること話すまで逃がさねえぞ。」

 

それっぽいことを言いながら逃げようとする雄二に対してオレは雄二の肩に回した腕に力を込める。

 

「わあったよっ! 俺はまだガキだから愛なんて言葉は分かんねえけど翔子のことが大好きだよ! 少し天然なところも常識知らずなことも可愛く見えるくらいにな!」

 

雄二は破れかぶれといった様子で答える。

 

『……やっぱり雄二は自慢の夫。』

 

「だから“まだ”夫じゃねえって!」

 

まだってことは(ry

 

『さすが代表ね。あんなこと言われてもいつも通りなんて。』

 

『そうね。さ、本音も聞けたしお風呂に入っちゃいましょ。』

 

『何を言ってるのよ紫織。秀吉が残ってるじゃない。』

 

「そうだな。秀吉、仲間はずれは悪いから話しちまえ。」

 

優子の言葉に賛同し秀吉の近くに行って肩に手を回して逃げないようにする。

 

『ゆ、優子!? あたしは気になってることなんてないからいいわよ!』

 

「紫織もああ言ってることじゃし別に儂らのことはよかろう。」

 

『何を言ってるのよ? 『こんな面倒な性格で迷惑じゃないかしら?』ってこぼしてたのはどこの誰だったかしら?』

 

『あ、あれは言葉の綾で――』

 

『何が言葉の綾よ。思いっきり本音だったじゃない。秀吉、アンタが話さないなら代わりにアンタの恥ずかしい秘密をバラすわよ。』

 

「は、話すのじゃ。じゃからアレだけは止めて欲しいのじゃ。」

 

秀吉はオレの腕を強引に離すとドアに向かって土下座して頼んでいた。一体何があったんだ?

 

「確かに性格は少しばかり難儀な所もあるが相手を思いやることもできるし、演劇のことで助言をもらったこともあるくらい儂のことを思ってくれておる紫織は儂の自慢の彼女じゃ。」

 

秀吉は観念したといった様子で言葉を紡いでゆく。

 

『そ、そう。あ、ありがとうね。』

 

『……紫織、顔が赤い。』

 

『これに懲りたら他人をからかうのは止めなさい。』

 

『そうね、考えとくわ。』

 

その後は女子が風呂に入り、オレたちは警備をしたが特に何もなく部屋へと戻った。まあ問題になりそうなFクラスは全員が臨時補習室に行っていたのが要因だろうな。

 

         ☆

 

「なあ、みんな起きてるか?」

 

消灯時間になり布団に入っていると急に一輝が声をかけてきた。

 

「起きてるぞ。」

 

「儂もまだ寝ておらんぞ。」

 

「…………起きてる。」

 

「起きてるけどどうしたの?」

 

雄二達も起きてたみたいだ。一体どうしたんだろう?

 

「いや大したことじゃないんだが修学旅行とかだと好きな女子の名前言いあったりするのが定番なんだろ? そういうのやらないか?」

 

「皆付き合ってるんだから意味ないでしょ。」

 

「そうだったな。じゃあ彼女の好きなところを言うってのはどうだ?」

 

「なんだ一輝、さっきの続きをしたいのか? なら言い出しっぺの一輝から話してもらうぞ。」

 

さっきの続きって何があったんだろう? 好きなところを言いあったのかな?

 

「この話は無かったことにしてくれ。そうだ、アキ、雄二。いい知らせがあるの忘れてた。」

 

「いい知らせ? 一体何のことだ?」

 

「…………脅迫状の犯人を見つけて写真を処分した。」

 

「ついでにアキと雄二、それといつものメンバーの分の写真が保存できないようにしといたぞ。」

 

「脅迫状とはお主らは問題に巻き込まれることが多いのぅ。」

 

「ははは、否定できないね。」

 

「全くだ、面倒事は勘弁してほしいぜ。」

 

秀吉の言葉に僕と雄二は苦笑することしかできなかった。

 

「とりあえず一輝、康太ありがとうね。今度何か奢るよ。」

 

「サンキューな。今度飯でも奢るぞ。」

 

「どういたしまして。」

 

「…………当然のことをしたまで。」

 

こうして長かった強化合宿の一日目は終わった。

 




お気に入り件数が400を突破したのを記念して今回から後書きで座談会のような質問回答コーナーを初めたいと思います。

※このコーナーは台本形式で進んでいきます。


さあ始まりました。『沙汰の部屋~』今回は初回ということもあるので主人公の明久君と親友の一輝君を呼んでみました。
明久「どうも~、この小説及び原作の主人公、ちょっぴりおちゃめな16歳。吉井明久で~す。」
一輝「アキの幼馴染、兼 親友の高瀬一輝だ。本編では世話になってるよろしくな。」
こんな作品で読者さんに気にいってもらえてうれしいです。
明久「なんだかんだでこの作品も半年以上続いているんだね。」
一輝「飽きっぽい、面倒くさがりな性格のくせに続いてるな。」
なんだか思いついたら書いちゃうんですよね。集中力が続かないことも多いんですけどね。
明久「確かに作者さんって昼まで寝ていてゲームやって夜になってるよね。」
一輝「ダメ人間だな。」
だって大学って暇なんですよ。特に夏休みなんかは宿題も無いですからね。
まあ、世間話みたいなのはこのぐらいにして……早速ですが、今回は初回ということもあって、しかも告知も何もしていないので質問は何もありません。
明久「仕方ないよね。計画性が無い作者さんだから。」
一輝「まったくだな。そのせいでオレの召喚獣の腕輪の設定も変えられたしな。」
すみません思いついたままに書いてるんでその時々のテンションで執筆スピードもばらばらで……というわけで! 今回は作者の自分が質問します!
一輝「自分の作品なんだから設定くらい知ってるだろ?」
明久「一輝、突っ込んじゃ駄目だよ。ほら、作者さんが地面にめり込み始めてるもん。」
~~~~作者の心を修復中~~~~
見苦しい姿見せてすみません。質問ですが『一輝君が姫島を撃ったのは特殊な弾ですか? 手の動きは明久君が見ていたようですが。』
明久「そういえば撃鉄を何度も叩いてたけどあれって何していたの? それに姫路さんと島田さんでやられ方が違っていたのはなんで?」
一輝「基本的な原理は二つとも同じなんだがアキが説明したようにトリガーを引きながら撃鉄を持ち手の親指ともう一方の手の五指で叩くんだ。
オレが使ってた銃はコルト・シングルアクション・アーミー、通称『ピースメーカー』をモデルにしたリボルバー拳銃でな、トリガーを引きながら撃鉄を叩けば連射できるんだ。」
自分は銃器に詳しくないのである漫画を参考に書いてます。間違いがあるかもしれませんが気にしません。
一輝「それで島田を撃った時のはゲット・オフ・シックスショットって言って銃を引き抜くと同時に6発も照準を合わせなくちゃいけねえから面倒なんだ。
姫路を撃ったのはスポット・バースト・ショットって言って一箇所に全ての銃弾を当てるんだ。こっちは照準は一か所だが片手で銃を同じ位置に抑えなくちゃいけないから反動を抑える為に力が必要なんだ。」
明久「ん~説明されてもよく分からないな。」
自分でもなんで説明しようと思ったのか謎です。
明久・一輝「「おいっ」」
説明したかったのに説明したらgdgdに……すみません。


明久「このように作者に任せるとロクな質問すら浮かびません。」
一輝「今更感のある試召戦争編の所の質問でも構わねえから質問をくれ。」
作・明・一「「「このコーナーを続けられるように質問を下さい!」」」

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二日目 自習時間

合宿も二日目! いったい何が起こるのか!?
特に書くことも無いので本編どうぞ。


「……雄二。一緒に勉強できて嬉しい。」

 

「待て翔子、当然のように俺の膝の上に座ろうとするな。俺も集中して勉強したいから止めてくれ。」

 

「……わかった。」

 

強化合宿二日目、今日の予定はA・Fクラスの合同での勉強会。

内容は自習、分からないところは周囲の生徒や教師に聞いても良いので、席は基本自由で長テーブルで生徒同士が向かい合う形で座っている。

当然のように雄二の膝の上に座ろうとした霧島さんは雄二の頼みで雄二の横に座った。……ただ、体が完全にくっついているので集中は出来なさそうだな。

 

「しかし、自習であ奴らに意味はあるんじゃろうか?」

 

「無いでしょうね。」

 

ちらりと秀吉が視線を向けた先には

 

『異端者め! 女子とくっつきおって。』

 

『殺っちゃうよ~。』

 

『殺殺殺殺殺殺殺殺。』

 

『呪呪呪呪呪呪呪呪。』

 

『オンマキャラーヤーソワカ・オンマキャラーヤーソワカ。』

 

『貴様らはAクラスを見て何も思わんのか!』ドグシャッ

 

『『『『『女子と会話をするなんて妬ましい!!』』』』』

 

『貴様らはそんなことしか考えられんのか!』バキャ

 

呪いの呪文か何かを唱えてるFクラスと、彼らに鉄拳制裁(教育的指導)をしている西村先生がいた。

 

「……本来の合宿の趣旨は、モチベーションの向上だから。」

 

「…………どういう意味だ?」

 

「要は学園側はAクラスはFクラスを見て『ああはなるまい。』と、FクラスはAクラスを見て『ああなりたい。』と思わせて学習意欲の向上をさせようとしたんだろう。」

 

「確かにあんな風にはなりたくないよネ。」

 

言葉が足りなかった霧島さんの代わりに雄二が説明する。こんな姿を見ると二人がお似合いだって再認識させられるね。

 

「学園側もこんなことになるとは思ってなかっただろうがな。」

 

「むしろこの状況を予想できる方が怖いわよ。」

 

「Aクラスの人たちへの効果は抜群ですけどね。」

 

「少し前まであのクラスにいたってのが恥ずかしいね。」

 

「というか、僕らがいた時よりひどくなってない?」

 

僕がそういうと元Fクラスのメンバーは複雑な表情をしてしまった。うん、気持ちはよく分かるけど。

 

         ◇

 

「……雄二。この問題はこれでいい?」

 

「ん? ああ、これで問題は無いがこの辺の式の展開は省いても問題ないぞ。教科書の例題では説明のために書いてあるが分かりきってることで時間を無駄にする必要はないからな。」

 

「…………愛子。ここの問題なんだが。」

 

「『侍り』はラ行変格活用だから未然形は『侍ら』で、この場合は『侍らむ』になるんだヨ。変格活用の動詞は少ないけど重要だから暗記しないとダメだヨ。」

 

「秀吉君。ここは化学とは違って同じものを省かないわよ。光合成の化学反応式は『6 CO2 + 12 H2O → C6H12O6 + 6 H2O + 6 O2』でいいのよ。」

 

「む。そうじゃったのか。どうりで反応前に水が出んと思ったのじゃ。」

 

「一輝君。ことわざの問題よ、『本当の名人は、道具の善し悪しなど問題にしないというたとえ。』って意味のことわざは?」

 

「『悪い職人はいつも道具をけなす。』じゃないのか?」

 

「それって英語のことわざ? 正解は『弘法筆を選ばず』よ。一輝君は日常会話は問題ないんだから言い回しとかを覚えれば国語の点数は上がると思うわ。」

 

一つの机でいつものメンバーで、というより恋人同士で教えあっている。秀吉と康太はほぼ一方的に教えてもらっている感じで、後のメンバーはそれぞれ得意な科目を教えあっている。

 

「明久君、この問題なんですけど……」

 

「えっと……ゾロアスター教か。宗教は少し難しいんだけど、表にして関連のある宗教を一度に覚えた方がいいよ。ゾロアスター教の場合は祆教、ネストリウス派の景教、マニ教の明教、この三つが唐代三大夷教って呼ばれていて……ここに載っているでしょ?」

 

「あ、明君。ここは生成熱だから生成物を1モルにして他の物質の物質量を合わせないと。」

 

「本当だ、ありがとうね。」

 

また間違えちゃったよ。化学の反応エネルギーって何を基準にするかが、ややこしくなるよね。

 

「ちょっと吉井! なんでアンタが女子とくっついてんのよ!」

 

「そうです! エッチなことしか考えてない吉井君にはオシオキが必要です!」

 

僕が彼女である明梨と日向に挟まれて勉強をしていると、突然、島田さんと姫路さんが変な言いがかりを付けてきた。

 

「姫路さん、島田さん。僕がどこで、誰と勉強しようが君たちには関係ないでしょ。」

 

「アンタが女子と近づくなんて100年早いのよ!」

 

「吉井君は一生、女の子とくっつく必要はないんです!」

 

なんでこんなこと言われなくちゃいけないんだろう?

 

「君たち、今は自習時間なんだ。そんな大声で皆の迷惑だから、勉強をしないならここから出ていってくれないか?」

 

島田さんと姫路さんが大声を出したのが迷惑だったのか横から注意されてしまった。そちらに目を向けるとクラスメートの群雲 影汰(むらくも えいた)君がいたのでひとまず謝ろうとしたら

 

「あ、群雲君、ゴメ――」

 

「ウチたちのどこが迷惑って言うのよ!」

 

島田さんのせいで止められてしまった。

 

「姫路、島田! 貴様ら自習時間ぐらい大人しく勉強せんか!」

 

「西村先生! 吉井君にオシオキするんで召喚許可を下さい。」

 

「貴様らの私怨の為に召喚許可なんか――」

 

「西村先生、僕からもお願いします。」

 

西村先生は姫路さんの要求を断ろうとしたが、このままだと皆の迷惑になるので僕からお願いする。

 

「吉井……はぁ、仕方ない。」

 

「数学でお願いします。」

 

「数学。承認する。」

 

後から島田にイチャモンをつけられたくもないので数学のフィールドを展開してもらう。今回の数学は結構解けたはずだが……

 

「「「試獣召喚!!」」」

 

お馴染みのワードとともに召喚される3体の召喚獣。召喚と共に頭上に点数が表示される。

 

数学

Fクラス 島田美波 253点

     姫路瑞希 389点

 

「どうよ! もとから得意だった数学を勉強したから吉井に負けるはずなんてないわ。」

 

無い胸を張って自慢げに点数を披露する島田。なんでそんな点数で自慢するんだか意味が分からん。

 

Aクラス 吉井明久 401点

 

どうやら腕輪は取れたようだな。

 

「な、何よ!? その点数は!? カンニングに決まってるじゃない!」

 

「吉井君! そんなことをするなんて失望しました!」

 

なんでコイツらは他人の努力を認めようともしないで、勝手に決め付けんダ? いい加減に俺もキレルゾ? ヒトノコトヲバカニシテリフジンナボウリョクヲフルウナンテ。

 

「もういい。貴様らには容赦しない。」

 

「訳わかんない事言ってないで大人しくなさい!」

 

「オシオキです!」

 

馬鹿の一つ覚えのごとく正面からレイピアの突きと大剣の振り下ろしをしようとしてくる。

 

陰派 孔雀流剣術 ― 斬ノ型 ―

初之太刀(そめのたち) 旋閃怯凶(せんせんきょうきょう)

 

カキキン

 

左手で柄を掴み、右手で鞘を構えたまま左回転をして鞘でレイピアと大剣を弾いて太刀筋を閃く。

 

「「えっ!?」」

 

島田と姫路が驚いている隙を見逃さずに抜刀して、刀を水平にして切っ先を相手に向けるように構える。

 

継之太刀(つぎのたち) 弔戎麒牙(ちょうじゅうぎが)

 

姫路の方は鎧の隙間を突くようにして二人の召喚獣の肩、肘関節、膝関節に連続して刺突を繰り出す。

 

カラン カラン

 

「な、なんでウチの召喚獣が武器を落としてんのよ!?」

 

「吉井君! ズルをしないで正々堂々と戦って下さい!」

 

「何言ってるんだ? 俺は小細工なんかしてねえぞ。」

 

相手の実力も見切れねえレベルのくせに何を言ってるんだか。

 

「面倒だ。終わらせる。」

 

惨之太刀(さんのたち) 刃即戈断(じんそくかだん)

肆之太刀(よんのたち) 疾戯殴刀(しつぎおうとう)

 

姫路の召喚獣に近づいて上段の水平切りで首を飛ばした後に、刀から手を離し拳を引いてから柄頭を殴りつけて島田の召喚獣の心臓を貫く。

 

Fクラス 島田美波 戦死

     姫路瑞希 戦死

 

「戦死者は補習~!!」

 

「ウチにこんなことして覚えときなさい!」

 

「絶対に吉井君のズルを証明します!」

 

西村先生に抱えながらも捨て台詞を吐いていった。いい加減に認める気は無いのか?

 

『『『『『貴様! 我らの女神になんてことを! 試獣召喚!』』』』』

 

FFF団(ゴキブリ)が突然現れて、まだ残っていたフィールドを利用して召喚してきた。

 

FFF団 平均 62点×42

 

点数自体は大した事ねえが数が多いし面倒だな。こんな事に時間とられると周りの迷惑にもなるな。

 

「試獣召喚。アキ、手を貸すからさっさと片付けろ。」

 

Aクラス 高瀬一輝 524点

 

カズが俺の隣に来ると召喚獣を召喚して声をかけてきた。

 

『一人増えたくらいで何が変わる! 突撃ーっ!』

 

「正面からとか馬鹿だろ。」

 

高瀬一輝 424点

 

カズの召喚獣の腕輪が光ると両手に大型拳銃が現れ点数が補正された。

 

ズガガガガガガガ

 

「D.E.(デザートイーグル) LN弾。」

 

パキン パキパキ

 

『なっ!? 召喚獣が動かない!?』

 

カズが目にも止まらぬ速さで銃を連射した後には、足が凍りついた数十体の召喚獣がいた。

 

高瀬一輝 130点

 

「液体窒素で足は奪ったから後は任せた。」

 

「カズ助かった。」

 

終之太刀(ついのたち) 百禍猟嵐(ひゃっかりょうらん)

 

カズが俺の肩を叩くと同時に腕輪を使って、二本の刀を逆手に構えさせると、動けない召喚獣の間を縫うように走らせて首や腹、胸に斬撃を放ちながら駆け抜ける。

 

「戦死者は補習~!」

 

『『『『ぎゃあ~~鬼の補習は~~!』』』』

 

西村先生がFFF団を連行していくのを横目で見ながら、頭を冷やして外の空気を吸うために俺は学習室を後にした。

 




質問コーナーの前に今回の話について話しましょうか。

いや~今回は明久君無双でしたね。

明久「なんかチートな感じがするんだけど……」

一輝「無銘道場で鍛えた時点で人間スペックの限界は超えてるからな。仕方ないんじゃないか?」

自分でも書いててチート過ぎると思ってしまいましたが、他人の努力を認めようともしない人に明久君が手傷を負うのはちょっと……

明久「作者さんってあんなに二人のこと嫌いだったの?」

いや、何とも思ってなかったんですが二次創作やSSを読んでいるうちに嫌いになってしまいました。

一輝「平気で人を殺そうとするやつに好感を持てないのは仕方ないか。」

そうですね。しかしキレた明久君は怖いですね。アレって思いっきり殺人術じゃないですか。

明久「僕に剣を教えてくれた人が『自分の意思を貫く上で必要になるかもしれないから』って言って教えてくれたんだけど……マジギレした一輝の方が怖いよ。」

一輝「そうでもないだろ。アキの方が手のつけよう無くなるだろ。」

どっちもどっちです。彼女の力で止める以外押さえられないから困ります。本編では明久君の怒りも収まってないですし……

明久「なんとかするのが作者の仕事でしょ?頑張ってよ。」

さて


『質問コーナー』

を始めましょうか。

明久「あ、逃げたね。」

一輝「下手に喋るとネタバレしちまうからな。」

え~っと最初の質問は、ブッ

明久「えっ!? なんで鼻血吹いてんの!?」

一輝「イヤな予感がするな。」

とりあえず質問をする為にいつものメンバーどうぞ。

ワラワラ

集まったようですね。それでは
弧狗狸さんからの質問ですね『じゃあ真面目に質問しましょうか。じゃあ明日世界が滅亡するとしたら何をする? 彼女を襲う?』とのことです。

康太「…………おそ――」プシューー

愛子「ちょっと、何を考えたの!?」

明久「▽◆×○ΨΣ」

雄二「挐■鼾▲∵贋♡◎」

質問しただけでカオスですね。

一輝「いくらなんでも襲うってのは……なあ優子?」

優子「一輝君だったらされても……でも初めては優しくしてもらいたい気もするし――」

一輝「おーい? 聞いてるか?」

優子「ふぇっ? あの、初めてだから優しくお願いします。」

一輝「ちょっ、おいっ!?」

自主規制します。

秀吉「いくら世界が滅亡すると言っても儂らは学生の身分じゃからそのようなことは――」

紫織「襲う度胸がないんでしょ。」

秀吉「ど、度胸とかは関係ないじゃろ。そもそもこの小説は成人向けではないのじゃし。」

設定とか考えなくていいですよ。IFの話ですから。

紫織「だってさ。秀吉君から来ないなら、あたしが襲っちゃおうかしら。」

秀吉「な、なぜこっちに来るのじゃ!?」

以下自主規制

明久「さすがにそういう事はお互いの同意がないと……(チラッ)」

明梨「えっと……明君がしたいなら」スルッ

日向「私も明久君の為ならば」スルッ

明久「二人ともなんで服を脱ぎ始めてるの!? ほ、ほらっ、作者さんが見てるよ。」

作者権限で明久達を隔絶された空間へ
これで様子は見れなくなったけど本人たちに任せよう。

翔子「……こんなこともあろうかと雄二の好みは調査済み。」

雄二「ま、待て翔子。どこでそんな情報を!?」

翔子「……お義母さんから教えてもらった。」

雄二「あんの馬鹿親がーーっ!」

翔子「……大丈夫。痛くはしないから。」

雄二「それは逆だろうが!」

翔子「……痛くしてあげる?」

雄二「そこじゃねえっ! っていつのまに俺のズボンが無くなってるんだ!」

翔子「……何事も経験が大切。」

じゃあ、熱い初夜をお楽しみを! 作者権限

雄二「クソ作者がーっ!」

ああ、こんな事をしていたら康太君たちだけになってしまった。
ひとまず、作者権限で蘇生+耐性を付加。

康太「…………助かった。」

愛子「良かっタ~。船に乗るって言い始めた時はもうだめかと……あれ? 代表や優子たちはどこに行ったの?」

良い雰囲気だったので別空間に送ってあげました。もしかしたら今日、一線を超えちゃうかもしれませんね。

愛子「作者さんそんなことを言ったら康太が……」

康太「…………? 鼻血が出てこない。」

話が進まないので耐性をつけておきました。

愛子「本当に!? じゃあ康太、実はボク今日はノーブラなんだけど」

康太「…………(クワッ)」

目を見開いただけですね。

愛子「これなら、いつもは出来ない事も……作者さん、ボクたちも二人きりにしてネ。」

康太「…………まだ心の準備が(フルフル)」

愛子「大丈夫だよ。優しくするから。」

康太「…………それは俺が言うセリフだ。」

じゃあ、いってらっしゃ~い。

康太「…………あとで殺す。」

さてと、みんな居なくなったので次の質問。同じく 弧狗狸さん からですね。
『明久君の父親って本当に何物ですか? あと他の二人も』

と言う事で『長月の三羽烏』こと吉井昭斗さん、藤崎透さん、鬼薙龍司さんのお三方です。

昭斗「どうも~、明久の父の昭斗で~す。」

透「明梨の父親の透だ。よろしくな。」

龍司「無銘道場の道場主の鬼薙龍司だ。」

よろしくお願いします。しかし三人とも若いですね。大学生、いや高校生って言われても納得できそうです。

昭斗「嬉しい事言ってくれるね。」

透「だが貫禄が無いみたいで情けないな。」

龍司「睨み効かせりゃいいだろ。」

さっそくですが質問の答えを聞きたいんですけど……一応この部屋は防音でオフレコですので本当の事を教えてほしいんですけど。

昭斗「大きな声じゃ言えないけど、僕は国連のエージェントみたいなことをやっているんだよ。基本的には国家間のパイプとして国のお偉いさんと話をつけたり、戦争の原因を取り除いたり、表だって動けない問題を解決したりね。」

透「俺は昭斗と似たようなもんだがWTOのエージェントだな。国家間の貿易摩擦をできるだけなくすように企業の中での人件費とかにも口を出してるから企業に顔も聞くんだ。他にも株価の急な変動とか抑える為に報道規制とかもあるから報道機関にも顔を聞かせられるってわけだ。」

龍司「コイツらの後じゃ大したことは無いが、俺の場合は間違って紛争地帯を歩いていたら軍人が来たんで無力化したら、相手側の兵士に連行されそうになってそいつらも無力化してたら指導を頼まれてな、そこからは世界中の軍人が弟子みたいになっただけだ。」

……結局何者なんですか? 余計に謎が増えたような気がするんですが



質問・感想・コメント・指摘・誤字報告などありましたらお気軽にどうぞ。
質問は設定に関するものでも構いません。モノによってはネタバレにならないように言葉を濁すかもしれませんが。


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二日目 その後と教師の憂鬱

なんか書いていたら文字数が6000近くになってしまいました。
教師陣の奮闘を書こうとしたらこんな事になるとは……

とりあえず、長いですが本編どうぞ。


「1019 1021 ……1031 1033 ……。ん?」

 

合宿所から少し離れた丘の芝生で、あぐらをかいて目を閉じ素数を数えていると、誰かが近付いてくる気配を感じた。

 

「だ~れだ?」

 

その人物は僕の目に手を当てると明るい声をかけてきた。柔らかくって温かい感触に少し身構えてしまう。

 

「明梨、でしょ? それと日向もいるのかな?」

 

明梨の声だ、ずっと一緒に居て、しかも好きな人の声を間違えるわけがない。気配が二人分ってことは、たぶん日向と二人で来たんだろう。

 

「ふふっ、惜しかったですね。」

 

日向が軽く笑うと目に当てられた手が離されて、目の前にはいたずらを成功させた子供みたいな、無邪気な笑顔の明梨がいた。あれ? 手の向きからすると、この手は明梨じゃないな。

 

「目隠ししたのは私ですよ。」

 

そう思って振り向くと後ろには笑顔の日向がいた。あぁ、二人の笑顔を見たら心が落ち着いた。

 

「普通にやっても明君なら声でばれちゃうからね。」

 

「だから私が目隠しをして、明梨ちゃんに声をかけてもらったんです。」

 

「なるほどね。ところで二人は自習はいいの?」

 

まだ自習時間のはずなんだけど。

 

「うん、明君の事が気になって手に着かなかったから。」

 

「突然、出ていったから心配したんですよ。」

 

どうやら随分と心配掛けてしまったみたいだ。一輝や雄二達も心配してるだろうし戻ろうかな。

 

「二人に迷惑かけちゃったみたいだね。それじゃ、戻ろうか。」

 

「え? もういいの? わたし達のことは気にしなくていいから、落ち着くまで一緒にいるよ。」

 

「うん、大丈夫だよ。二人と話したらだいぶ落ち着いたからね。」

 

「そうですか、良かったです。それじゃあ、戻りましょうか。」

 

僕が歩き出すと日向が僕の右腕に、明梨が左腕に抱きついてきた。

 

「あの……二人とも、当たってるんだけど。」

 

女性特有の膨らみが腕に当たって、さっきとは違う理由で落ち着かない。

 

「明君が嫌って言うなら離すけど?」

 

「嫌じゃなくって、むしろ嬉しいです。」

 

「なら早く行きましょう。」

 

日向は顔を赤くしながら先を促してきたので、僕は腕に当たる感触を堪の……楽しみ……感じながら自習室へと戻った。まぁ着いた瞬間に雄二や一輝に指摘されて恥ずかしかったけどね。明梨と日向も神谷さんにいじられてたし。

 

         ◇

 

「ふぅ~食った食った。この合宿の料理を考えると、いつもの食生活に戻れるか不安だな。」

 

食事を終えた僕らは自室へと戻りながら話していた。ちなみに食事はA,Bクラスが高級ビュッフェ、C,Dクラスが普通のバイキング、E,Fクラスが定食といった形でこんなところにも格差がある。

 

「雄二は気にしなくてもいいんじゃないの? 霧島さん家に婿入りすれば食費を気にする必要ないし。」

 

「確かにのぅ。霧島の家ならばこの合宿での食事以上のものが出そうじゃな。」

 

霧島さんの家は年商数兆円といった大財閥で、その後継ならお金に心配はいらないだろう。

 

「…………羨ましい。あんな料理、一生に一度食えるかどうか。」

 

「普通の家だったら食えねえよな。」

 

康太や一輝も同意見のようだ。分かる範囲だけでもフカヒレに、ツバメの巣、金華ハム、干しアワビ、伊勢海老など高級食材のオンパレードで、普通だったら何人の諭吉さんが飛んでいくか分からないほどだった。ちなみに今日は中華だったが、昨日はフレンチだった。この学園はどこにお金を使っているんだろう?

 

「ん? アレって鉄人か?」

 

一輝の言葉で正面に目を向けると、廊下の先に少し疲れた様子の西村先生がいた。

 

「どうしたんだ鉄人? 体力だけが取り柄のアンタが疲れた様子で?」

 

雄二、少しは敬意を払おうよ。それにこの先生は体力だけが自慢のゴリラじゃないよ。

 

「坂本、何度言えばいいんだ。はぁ、まぁいいか。」

 

呼び方を注意しないなんてほんとどうしたんだろう?

 

「西村教諭よ。何があったのじゃ?」

 

「さっきまでFクラスの補習を行っていたんだがな……」

 

西村先生は話の途中で額を抑える。

 

「それで……どうしたんですか?」

 

「覗きの一件はお前らも知っているか?」

 

「…………当然。」

 

僕が促すと西村先生は疲れた様子で続きを話す。

 

「アイツらが一度や二度の失敗で諦めるとは思えなくてな。それを考えたら頭痛がしてきたんだ。」

 

なるほど、確かにあのクラスの粘り強さと諦めの悪さ、学習能力の低さ、欲望に忠実なところは並じゃないからね。尊敬も憧れもしないけど。

 

「手助けになるか分かりませんけど、よかったらこれ使って下さい。」

 

一輝は持っていたバッグから何か取りだすと西村先生に渡した。

 

「これは……腕輪か?」

 

西村先生が持っていたのは僕や雄二の腕輪より二回りほど大きい西村先生サイズの黒い腕輪だった。

 

「アキや雄二の『白金の腕輪』を参考に作った『漆黒の腕輪』です。詳しい説明はついてる紙を見てください。たぶん役に立つと思うので。」

 

「これは!? なるほど、助かる。だがいいのか? 俺に渡しても?」

 

西村先生は渡された紙を開くと目を見開いた。どんな能力なんだろう?

 

「まぁ、データを渡せば学園長から製作費ぐらい出ると思うんで大丈夫ですよ。」

 

「なるほどな。では、ありがたく使わせてもらおう。」

 

西村先生はそう言うと階段を下りていった。たぶん他の先生と覗き対策で何か話でもするのかな?

 

「一輝、さっきの腕輪ってなんだったんだ?」

 

「基本能力は強制召喚だな。使用者がいる召喚フィールド内の人間の召喚獣を、召喚者の意思に関係なく召喚して、その召喚フィールドへの出入りを禁止する。」

 

「それって一気に全員を相手しなくちゃいけないんだよね?」

 

「普通ならば囲まれて負けてしまいそうじゃな。」

 

「…………両刃の刃。」

 

「そうなんだよな。しかも暴走はしないが、召喚システムに干渉するせいか、いくつかのバグが出ちまったからな。」

 

なんか危険そうな腕輪だな。

 

         ☆

 

「西村先生。さすがに今日は現れないのでは? 昨日あれほど指導したんですから。」

 

「布施先生。あいつらを侮ったらいけませんよ。あの程度で懲りるようであれば私は何度も補習する必要はありません。」

 

「もし、あれで懲りるようだったら西村先生の補習を受けてる彼らは聖人君子のような人間になってるでしょうね。」

 

「確かに照沼先生の言い分ももっともですね。しかし、我々4人で何とかなるんでしょうか? 何か作戦でも考えてきたら一人ぐらい抜けられても……」

 

「照沼先生も大島先生も考えすぎじゃないでしょうか? いくらなんでもそこまで馬鹿な――あ、アレは!?」

 

――ドドドドドッ!

 

『おおおおおっ! 障害は排除だーっ!』

 

『邪魔するやつはぶちのめせ~っ!』

 

『理想郷(アガルタ)はこの先にーっ!』

 

『サーチ&デェース!』

 

「西村先生。大変です! 変態が編隊を組んでやってきました!」

 

「やっぱり懲りていなかったか。布施先生はここをお願いします! 照沼先生、大島先生! 警備位置へ急いでください! 私も定位置へつきます。」

 

「わかりました。」

 

「了解で~す。じゃあ、お先に!」

 

照沼先生は言うが早いか階段を使わずに飛び降りる。

 

「では俺も位置につきます。布施先生。ご健闘を。」

 

大島先生が階段を下りると、覗き目的のFクラス男子42名が布施先生の前に到着した。

 

「君たち! 覗きは犯罪です。今からでも遅くないですから止めなさい!」

 

『うおおおぉぉっ! 障害を排除ーっ!』

 

布施先生の説得もむなしく覗き魔は進撃を止めずに布施先生に飛びかかってきた。

 

「くっ! 仕方ありません! 試獣召喚!」

 

布施先生は教師用の物理干渉能力がある召喚獣を召喚して、若者の暴走を止めた。

 

『くそっ! 物理干渉か、卑怯な!』

 

『仕方ない! E班は柴崎と共に布施センを止めろ!』

 

『『『『サー! イエッサー!』』』』

 

「き、君たち待ちなさい!」

 

須川の指示で柴崎功を含む8名が布施先生を囲み、その間に残りのFクラスのメンバーが階段を駆け下りていった。

 

「仕方ありませんね。彼らの事は他の先生方に任せましょう。」

 

         ☆

 

『うおぉぉぉっ! 理想郷(アガルタ)はすぐそこだーっ!』

 

俺が女子風呂前の廊下で警備していると、Fクラスの男子が世界記録が出そうなスピードで突進してきた。人数は30人はいないな……部隊を分けて足止めでもしてるのか?

 

「おいお前ら。悪いが止まってもらうぞ。」

 

『くっ! 照沼まで邪魔するのか!』

 

本人目の前にして呼び捨てにすんなよ。

 

『C班! 森川の指示で照沼を止めろ!』

 

須川が指示をすると8人が俺を囲み、残りの20人弱が廊下の隙間を走り抜ける。なるほど、こうして布施先生と大島先生を抑えたのか。別に抑えるのは簡単だが面倒だし鉄人に任せるか。

 

「さてと、始めるか。」

 

俺はポケットから取り出したダイスを投げて、空中で掴み開いた時の出目を見る。コイツら運が無いな、ジョーカーだ。

 

「物理、承認する。」

 

『なっ!? 物理だと!?』

 

『数学教師じゃないのか!?』

 

確かに俺は数学教師として教鞭を振るってるが、高校の教員免許は数学と物理、化学を持っている。

 

『いや!? そんなこと気にするな! 担当じゃなければ点数も低いはずだ!』

 

『そ、そうだな。』

 

そういや一般生徒は知らないのか。担当科目以外の召喚許可は500点ないと出せないこと。

 

「試獣召喚。」

 

『『『『『『『『試獣召喚!』』』』』』』』

 

召喚ワードに応じて現れる召喚獣。俺の召喚獣は白い修道着に革製の腹巻き、前腕を覆うように革製の装具をつけている。早い話アサシ○・クリ○ドのアサシンの衣装だ。ゲーマーだから召喚獣の設定を少しいじらせてもらって自分好みにしてみた。対するFクラスの召喚獣は低得点を表すかのような貧相な木製の武器と、防具としての意味を果たさない柔道着や、制服。弱そうだな。

 

物理

数学教師        Fクラス

照沼崇司 1089点 VS モブ×8 平均50点

 

『な、何だあの点数!?』

 

『数学教師じゃなかったのかよ!』

 

遅れて表示された点数にうろたえる覗き犯。確かに担当科目は数学だが得意科目は物理だ。しかし1000点超えたのは意外だったな。

 

「驚いてる暇は無いぞ。」

 

俺は相手が止まっているうちに手前の二体の頭を掴んで

 

シュカッ

 

Fクラス

工藤 信也    戦死

西村 雄一郎   戦死

 

前腕の装具に隠されていた仕込みナイフを飛び出させて喉を刺す。やっぱ召喚獣の操作ってのはゲームみたいでおもしれえな。

 

「さあて、テメエら覚悟しろよ! 格の違いを見せてやる!」

 

愉しい殺戮(ゲーム)の始まりだ。

 

         ☆

 

「まさか、ここまで来るやつがいるとはな。正直、貴様らの執念には感服させられる。」

 

俺は目の前に現れた18人のFクラス男子を見て驚いた。この人数からすると足止めをしてきたようだな。こういう時に働く頭を勉強に使えばいい物を、なぜこんな事に使うんだ。

 

『くっ。やはりここには鉄人がいたか!』

 

「西村先生と呼ばんか!」

 

どうやら教育的指導が必要なようだな。

 

『最後の手段だ! B部隊! ネモ船長を抑えろ!』

 

「誰がノーチラス号の船長だっ! ぬおっ!」

 

Fクラス男子の中でも比較的ガタイのいいやつら8人が俺を抑える。俺も不意打ちに驚いて少しよろめいてしまった。

 

「貴様ら、少しなめ過ぎてないか?」

 

俺の横を通り過ぎようとする須川達に声をかける。いくらガタイが良いと言ってもたった8人で抑えられる俺ではない。

 

「うおおおおっ!」

 

俺は全身の力を振り絞って振り払おうとするが

 

「何!? 俺が力負けしてるだと!?」

 

『女子風呂ぉぉぉっ!』

 

『理想郷ぁぁぁっ!』

 

『下心なめるなぁぁっ!』

 

下心だけで俺の力を圧倒してるだと!?

 

『よしっ! 今の内に理想郷へ。』

 

俺の横を須川を含む10人が通り抜けようとする。

 

「くっ! 仕方あるまい。」

 

あまり使いたくは無かったがアレを使おう。

 

「『強制召喚(マスト)』!」

 

ポポポポポポンッ

 

俺が高瀬から貰った腕輪の起動ワードを唱えると、俺の横を走り抜けようとしていたものと、俺の周りにいた者、俺の足元に魔法陣が現れて、召喚獣が現れる。

 

『なっ!? 召喚してないのに召喚獣が!?』

 

『構うな! 召喚フィールドから出れば問題ない!』

 

『そうだな。シアーズ大統領の動きが止まっているうちに走り抜けるぞっ!』

 

「誰が第43代アメリカ大統領だ! くそっ! 離さんかっ!」

 

コイツらなんで声優ネタを多用するんだ!

 

『よしっ! これで召喚フィールドを抜ける! ぐべらっ!』

 

『なっ!? 出れない!? なら召喚獣だけでも……ぐべっ!』

 

フィールドから抜け出そうとした者と、召喚獣を抜けださせようとした者が額を抑える。

 

「この『漆黒の腕輪』はな、召喚フィールド内の人間の意思に関係なく、召喚獣を召喚して、召喚者、及び召喚獣をフィールドから出れなくするんだ。」

 

『な……ん……だと!?』

 

『スネークッ! なぜ俺にも痛みがあるんだ!?』

 

「誰が伝説の傭兵だっ! ちなみに言うと、このフィールド内では召喚獣にフィードバックと物理干渉が付与される。この意味が分かるな?」

 

俺は“自分の召喚獣”を下がらせて、拳を鳴らしながら、生徒たちの召喚獣に対するように前に出る。

 

『なっ!? プリスキン中尉、止めてくれ!』

 

『ムーミ●パパがそんな残酷な事をするはずはないですよね?』

 

『横溝警部! 体罰は問題です!』

 

「俺はそんな偽名は使っておらんし、謎の珍獣の家長でも無ければ、神奈川県警や静岡県警の警部でも無いわ! それと……召喚獣相手なら体罰にはならん!」

 

『なっ!? ブラックジャ●クが法律や世間体を気にするだと!?』

 

『黒ひげにそんな心があるなんて!』

 

「俺は無免許の医者でも無いし、ヤミヤミの実の能力者でも無いわっ! そんなに俺の指導が受けたいとはいい度胸だな。」

 

俺は更に一歩前に出て威圧する。逃げ場がないせいかフィールドの端にかたまっている。

 

『ライダーさん。大人しく補習を受けるんで体罰は止めてください!』

 

「俺はイスカンダルでは無いぞ。言っておくが命乞いは無駄だぞ。この腕輪はフィールド内の召喚獣が1体になるまで効果が消えないからな。」

 

『くっ、いくらパラダイスキングでも召喚獣には勝てないはずだっ! 行け!』

 

「誰が紫のアフロの猿人だっ! 鉄拳制裁!」

 

襲いかかってきた召喚獣に拳で応戦すると、召喚獣はまっすぐに壁にめり込んだ。

 

君島 博  戦死

 

『くっ……おの……れ。』

 

召喚獣が消えると同時に君島も気を失う。まったく、だらしがない。たった一撃で気絶するなんて……

 

「貴様らには道徳の補習が必要なようだな、安心しろ。俺の道徳の補習を終えれば『趣味は人助け、尊敬する人物はマザーテレサとナイチンゲール、将来の夢はNPO法人や青年海外協力隊』といった理想的な人間になるはずだ。」

 

『京楽隊長、それは洗脳というんでは……』

 

俺は死神の八番隊隊長じゃないぞ。

 




前回書き忘れましが、オリキャラの紹介です。

群雲影汰(むらくもえいた)(by疾風檜斗さん
正確 冷静沈着  
一人称  僕  
成績 Aクラス

以上です。疾風檜斗さん ありがとうございます。
他の方もオリキャラの案などあったら、出来るだけ出すようにします。


次は『質問コーナー』

まずは質問ではないですが説明してない返答を
『技が西○維新さんみたいな語呂合わせ的なあれですね』by十六夜の月さん

これは元ネタ知らない人しかいないと思いますが、漫画家の岸本聖史先生の『666【サタン】』といった作品の、キリンという人物の技を参考にしてます。
岸本聖史先生はNARUT●の作者の岸本斉史先生の双子の弟です。
宣伝はこのへんにしといて、『鈴音天消』、『戈蝶風刖』、『瞬花終刀』の三つは丸パクリです。他のは四字熟語を調べてその場に合った漢字を当てて作ってます。
そんな感じです。はい、次の質問行きましょう


『相手の好きなところを1つだけあげるとしたらどこ?』by月のうさぎ さん

じゃあいつもの11人に来てもらいましょう。

明久「一つだけか……明梨は明るいところで、日向は優しいところかな。」

明梨「一つって言ったら優しいところかな。」

日向「優しいところですね。そのお陰で私も助けてもらいましたから。」

翔子「……全部。」

雄二「一つって言われてんだろうが……俺は、一途なところだな。」

秀吉「相手を思いやれる所じゃな。」

紫織「可愛い所ね。」

康太「…………元気なところ。」

愛子「面白いところって言いたいとこだけど、紳士的なところかな。」

一輝「友達思いで優しい所だな。」

優子「強くって頼りになる所ね。」



明久「それにしても今回は声優押しがすごいね。」

何となく声優ネタをやってみたかったんです。

一輝「知りもしない物を調べてたもんな。」

元ネタが分かってるのは蛇ネタとパラダイスキングぐらいですからね。




今回はこのへんで終わりにします。
これからも質問コーナーは続きますので、ドシドシ質問お寄せ下さい。


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衝撃の起床と不穏な動き

ナンバリングとしては80話目です。まだ合宿が終わってない事に『いつ終わるのか』という不安感がありますがこのまま続けていきます。

今回は3日目から始まります。
2日目の夜は特にイベントはありません、書くのが面倒になったからではありません。



あ~朝か~。この合宿所にはあまり体を動かせる場所も無いし、もう少し寝てようかな。

 

「ん……」

 

そう思って寝返りを打とうとしたら、腕が動かず、横から悩ましい声が聞こえてきた。……この声は明梨の声だ。

 

「……すぅ……すぅ。」

 

なんとか首だけを動かして右の方を見てみると、規則的な寝息を立てている明梨がいた。……僕の右腕に抱きついて。なるほど、腕が動かなかったのはこのせいか。可愛い寝顔だなぁ。っと、危ない危ない、このまま見ていたら理性が崩壊してしまいそうだ。

 

「……すぅ……すぅ。」

 

明梨から視線を逸らして、左に顔を向けると……左腕に抱きついて規則的な寝息を立てている日向がいた。こっちも可愛いな。って、危ない! このままじゃ理性が崩壊してしまう。どうすればいいんだ!?

 

・にげる

・おそう

・アイテム

 

→にげる

 

ダメだ。両腕をホールドされているから逃げられない。……力ずくってわけにもいかないしな。

 

→アイテム

 

何も持ち物は無い。

 

『襲う』ってのはダメだし。……何かほかに手は無いかな?周りにあるものは……

 

・秀吉を抱き枕のように抱きしめている神谷さんと、少し苦しそうな秀吉

・真っ赤になりながらも康太に抱きついている工藤さんと、鼻血で真っ赤になっている康太

・首筋しか見えないが真っ赤な優子さんと、呑気に寝ている一輝

・雄二に抱きついて恍惚とした笑みを浮かべている霧島さんと、無意識なのか霧島さんを抱きしめている雄二。

 

なんでさ!! と叫びたい気持ちを抑えて今の状況を整理してみる。ここは僕達の部屋で男子部屋だ。彼女達の部屋は隣だったはずだ。

 

「……ぅん? あ……明君。おはよう。」

 

「ふぁあ……おはようございます、明久君。」

 

僕が動いたことで二人が起きてしまったみたいだ。寝起きでどこか抜けているような表情も可愛いな。

 

「あ、ゴメンね二人とも。起こしちゃった?」

 

まだ少し眠そうな二人に謝る。もしかして寝るのが遅かったのかな。

 

「ところで、なんで二人はここに居るの? 確か部屋は隣だったよね?」

 

「あ、あの、それは……」

 

「ちょっと言いにくいんですけど……」

 

二人は急にオロオロとした感じで、目を泳がせる。……いったいどんな理由なんだろう?

 

『し、紫織よ。苦しいから離してほしいのじゃ!』

 

『ん~。もうちょっと堪能したかったけど残念ね。』

 

『なんか騒がしいな。……って優子!? なんでお前がここに!?』

 

『お、おはよう。一輝君。』

 

『ちょっと!? 康太!? 大丈夫ナノ!?』

 

『…………ギリギリ。』

 

康太、そんな青い顔だと危険な気がするんだけど。

 

『……ふぁあ……ったく騒々しいな。まるで起きたら自分の彼女が添い寝していたような声を上げて……って翔子!? 訒ね◆ま○爻(何故ここに)!?』

 

雄二、君はエスパーなのか? そこまで正確に予測できていることに驚きだよ。

 

『……雄二と一緒に寝る為。』

 

みんなも起きたみたいだな。さて、この状況について説明してもらおうかな。

 

         ◇

 

「それで? なんで優子達がこの部屋で寝てたんだ?」

 

布団を片付けて、康太が輸血をしている状態で男女に別れて向き合っている。皆が座ったのを確認してから一輝が一番聞きたかった事を口にした。

 

「そ、それは愛子が『折角隣の部屋なんだしこっそり行って驚かせない?』って言いだしたのよ」

 

「ボクだけのせいにしないでヨ。代表や紫織だってノリノリだったじゃん。」

 

「……雄二が喜ぶならなんでもする。」

 

「秀吉君の驚く顔が見れそうだったからよ。期待通りの結果だったわ。それに、明梨や日向だって乗ってきたじゃない。」

 

「う~。どうしてあの時に止めなかったんだろう?」

 

「思い出したら恥ずかしいです。」

 

なんか明梨と日向が顔を真っ赤にして俯いちゃったな。それにしても……

 

「工藤さん! 魅力的な提案ありがとう。(なんでそんなことを言い出したの!?)」

 

「明久、本音と建前が逆になっているぞ。」

 

「お主ら余り騒がしくせんほうがいいぞい。」

 

「…………うるさいと教師が来る。」

 

ガチャ

 

「おい、お前ら少しうるさい……ぞ。っとスマン邪魔したな。」

 

ガチャ

 

康太が注意してきたときに、ドアが開いて照沼先生が注意してきたが、中の様子を確認するとすぐにドアを閉めてしまった。

 

「テル先! 待ってくれ俺達は何もしていない!」

 

『あ~、大丈夫だ。安心しろ。そういうことにしといてやる。』

 

「ちょっと待ってくれ! そう言う事にも何もオレらは何もしてねえ!」

 

『別に照れなくてもいいぞ。お前らぐらいの年ならそう言う事に興味もあるだろ。』

 

「確かに興味はありますけど、学校行事でやるって、そんなアブノーマルなことしないですよ!」

 

『ちゃんと、朝メシには間に合わせろよ。』

 

照沼先生は誤解したまま行ってしまったようだ。

 

「…………行ってしまった。」

 

「ひとまず、紫織たちは自室に戻ったらどうじゃ? この時間帯ならば朝げ前じゃし人も少なかろう。」

 

確かに、このままじゃ、さっきみたいに先生が来たり、いろいろと問題があるもんね。

 

「そうね、そうさせてもらいましょうか。じゃあ、また朝食の時にね。」

 

「……雄二。またね。」

 

「一輝君、また朝食の時にね。」

 

「康太、鼻血で迷惑かけないでネ。」

 

「またね明君。」

 

「お邪魔しました。」

 

         ◇

 

「しかし、夕飯の豪華さと比べると朝食がさびしく見えるな。」

 

雄二が中央のテーブルに並んだ料理を見ながら呟く。朝食は昼食や夕食と違って、A~Fが同じメニューでバイキングになっている。並んでいる料理はどれも一般的なもので、スクランブルエッグ、ソーセージ、ベーコン、パン類、ご飯、生卵、納豆など、和と洋のものが並んでいる

 

「でも、朝から重い料理ってのもつらいと思うよ。」

 

「確かにな。それに雄二の場合は朝はほとんど食わないだろ?」

 

朝が弱い雄二はスープ類とコーヒーだけをお盆の上に乗せている。

 

「儂はこっちのほうが落ち着いて食べれるのじゃ。」

 

「…………あんまり高級料理に舌が慣れても困る。」

 

確かに昼食や夕食は、初日がオマールエビや、トリュフ、フォアグラ、キャビア、などを使った高級フレンチ、二日目の昨日がフカヒレや、ツバメの巣、伊勢海老などを使った高級中華で食べたことも無い味だった。確かにどっちも美味しかったが、僕としては明梨や日向が作ってくれる手料理の方が大好きだ。

 

「なぁお前ら。女子風呂に興味は無いか?」

 

僕らが朝食をお盆に乗せて席に着こうとしたところで、元クラスメートの須川君が話しかけてきた。しかし、いきなり女子風呂に興味は無いかってどうなんだろう。

 

「俺らは昨日、一昨日の夜に覗きを決行したんだが、鉄人達の妨害によって出来なかったんだ。」

 

僕らの反応を無視して話を進めていく須川君。さっきの話と合わせて考えると、僕らの力で覗きを阻止している先生を倒してくれってことだろうか。

 

「お前らの召喚獣の点数と、操作技術なら鉄人達だって倒せるはずだ。鉄人さえ倒せばその先には理想郷(アガルタ)が待っているんだ!」

 

何故か力説し始める須川君。下心の為だけにここまで本気になれるなんて……呆れるね。

 

「そんなことに協力するわけないだろ。」

 

「それに覗きは犯罪だよ。たとえそこに人がいなくっても犯罪になるんだよ?」

 

軽犯罪だから罰金や懲役は無いけど、世間的な事を考えても悪い行為だ。

 

「くそっ! お前らは男の夢(女子風呂)に興味は無いのか! それでも男か!」

 

須川君の中の男の条件って何なんだろう?

 

「…………犯罪に手を貸すようなことはしない。」

 

「な!? ムッツリーニが断っただと!? 女子の裸に興味が無いのか!」

 

だから君たちは康太をなんだと思っているんだい?

 

「何度言っても無駄じゃ。さっさと立ち去るがよい。」

 

須川君は説得は無理だと思ったのか立ち去った。

 

「なんか面倒な事になりそうね。」

 

「ああ、多分仲間を増やせば行けると思ってるんだろうな。」

 

先に座っていた日向たちの近くに座ると優子さんが話しかけてきた。

 

「確か……更衣室の前には西村先生がいたわね。」

 

「西村教諭を倒さねば行けんのなら成功する事は無いじゃろうな。」

 

「……噂では素手で召喚獣18体を倒したらしい。」

 

「召喚獣を素手でだとっ!? 鉄人は人間か!?」

 

「えっ? でも召喚獣って触れないはずよね?」

 

「あ~、オレが渡した腕輪のバグでな……物理干渉とフィードバックが出ちまうんだ。」

 

「他の先生も8人ずつ倒したらしいね。」

 

「いくらFクラスの方が相手といってもすごいですね。」

 

「う~ん、先生たちは雑用とかのたびに召喚獣を使っているからね。それに自分の担当教科でフィールドを張るから点数も高いだろうしね。」

 

それからも僕たちは朝食を食べながら談笑をした。う~ん、嵐の前の静けさとでもいうんだろうか。なんか平和な事が不安になるようになってきたよ。……なにも無ければいいけど。

 



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強化合宿三日目 入浴

モンハンにはまって、後期の講義が始まって、投稿が不定期になってしまいすみません。
少しペース速めて進行していきたいと思います。

それと前回は操作ミスで後書きが書けてないのに投稿してしまいました。すみませn、


 

「ハートの8で8切り!」

 

夕食を食べ終わった僕らは、自室でローカルルールありの大富豪をやっている。今は入浴時間になったばっかりなので、混んでいるだろうから、と言った雄二の提案に従って時間を潰している。

夕食はトルコ料理で、ケバブなど羊や鶏の肉料理やムール貝やサバを使った魚介料理など、東西の交差点、と呼ばれるだけあり東西の文化が混じった不思議なものだった。

しかし、一昨日のフレンチ、昨日の中華と合わせて世界三大料理が揃ったけど、この学校は変なお金の使い方をしてるよね。

 

「ダイヤの4!」

 

僕の番で場が流れたので手札の中から最弱のカードをだす。

 

「ダイヤの6だ。これで縛り成立だな。」

 

「ダイヤの7じゃ。」

 

「…………9。」

 

「Jバックだ。」

 

「……パス。」

 

一輝の出したカードによって強弱が変わったので、仕方なくパスをする。

 

「ちっ、パスだ。」

 

比較的手札の多い雄二もパスをする。雄二の事だから何か逆転の手を残していそうだけど……

 

「10じゃ。」

 

「…………5。」

 

秀吉と康太はまだ残していたのか。でも、手札の少なさは僕が一番だね。

 

「3だ。さっきジョーカーは出たからコレは流しだな。それと……5だ。」

 

一輝が場のカードを脇に避けて新たにカードを出す。

 

「じゃあ僕は……7。」

 

「残念だったな明久。8切りだ。」

 

雄二がスペードの8を出してカードを脇に避ける。でも、残念だった、ってどういう意味だろう?

 

「Qを4枚で、革命だ。くははははは……さて、ここからは俺のターンだ!」

 

雄二は試召戦争の話をクラスに持ち出した時と似た、野性味たっぷりの獰猛な笑みを浮かべる。ゲームも終盤に差し掛かったところなので、僕の手札には上がるために強いカードしか残されていない、一輝達も表情からすると同じようだな。

そんな中で出た革命……雄二はこのタイミングを狙っていたのか。

 

ドバンッ

 

「全員手を頭の後ろに組んで伏せなさい!」

 

雄二が作戦成功、といった笑みを浮かべながら、カードを避けようとした時にすごい勢いでドアが開け放たれて、島田さんと姫路さんが中に入ってきた。島田さん、もう少しドアの開け方を考えようよ。

 

「ひとがくつろいでる所に一体何の用だ? あん?」

 

調子が出てきたというところを邪魔されて不機嫌な様子の雄二が島田さんに突っかかる。どこから見ても正真正銘の不良(ヤンキー)だ。

 

「どうせアンタらも覗きに参加するんでしょ! だからウチたちがオシオキに来たのよ!」

 

「そうです! 悪い人たちにはオシオキが必要です!」

 

「俺らは何もしてねえのにふざけてんじゃねえぞ!」

 

初日といい、昨日の自習時間といい、この二人はなんでこんなにも突っかかって来るんだろう?

 

「そんな事言っても騙されません! 男の子はエッチなことのためなら何でもするんです!」

 

姫路さんは何を言っているんだろう? そりゃ興味が無いとは言わないけどさ、やっていいことと悪い事の判断ぐらいつくよ。

 

「アンタと話しててもラチが明かないわ! 長谷川先生、召喚許可を!」

 

「わかりました。承認します。」

 

部屋の入り口で待機していた長谷川先生が召喚フィールドを張る。

 

「「試獣召喚!!」」

 

数学

Fクラス 島田美波 283点

     姫路瑞希 402点

 

フィールドが張られると同時に召喚された二体の召喚獣。また、点数が上がっているけど、このやる気を他の事には回せないんだろうか。

 

「俺の作戦を邪魔したんだ。この借りは高くつくぜ? 試獣召喚。」

 

Aクラス 坂本雄二 792点

 

「な、七百!? い、インチキしたんでしょ!」

 

「行きます!」

 

キュポッ

 

雄二の点数に驚いてる島田さんと、考えも無しに腕輪を使い熱線を出す姫路さん。

 

「はっ、隙もねえのにそんな大技当たるかよ!」

 

身軽な装備と高い点数のお陰で軽やかに熱線をかわす雄二の召喚獣、合計しても点数差があるのに連携が取れてないんじゃ雄二の圧勝かな。

 

「大技ってのはこう使うんだよ!」

 

雄二の召喚獣は、熱線を使っていて動けない姫路さんの召喚獣に近づいて、右手を引いて拳を作る。その手についてる腕輪が強い光を放つと

 

ドゴォォォン!

 

凄い轟音と共に吹き飛ぶ姫路さんの召喚獣。

 

Aクラス 坂本雄二 582点

Fクラス 姫路瑞希 戦死

 

「み、瑞希!?」

 

「おいおい、余所見とは余裕だなぁ?」

 

「くっ……」

 

キンッ  キンッ  キキンッ

 

雄二の召喚獣が近付いたことによって思考を切り替えたのか、何度か切りかかる島田ンさんの召喚獣。……しかし、点数差が激しい事もあり難なくいなされる。

 

ガキン

 

レイピアの細い刃では打ち合いに耐えられなかったのか、折れた刃が宙を舞う。

 

「これで終いだ。」

 

ガラ空きになった島田さんの召喚獣に対してラッシュを叩きこむ雄二の召喚獣。……邪魔されて機嫌が悪かったんだろうけど、見てて気分のいい光景じゃないな。

 

Fクラス 島田美波 戦死

 

程なくして島田さんの召喚獣は戦死した。

 

「戦死者は補習~。」

 

「「いやあぁぁぁ~!」」

 

西村先生に素早く回収された二人。嫌なら戦わなければいいのにな。

それにしても……

 

「今のってドップラー効果かな?」

 

「だいぶ低く聞こえたけど……どんだけ速えんだよ。」

 

西村先生の身体能力の高さにあきれる僕たち。

 

「まあ、鉄人のことは置いとくとして……島田達の言っていたのはどういう事だ?」

 

「…………須川達が自習時間に覗きの仲間集めをしていたらしい。」

 

雄二の疑問に答える康太。しかし、覗きの仲間集めか……

 

「なら、風呂場までの道は邪魔が多そうだし、さっさと行こうぜ。」

 

「そうじゃな。」

 

一輝の意見に賛同してお風呂の準備を始める僕達。

 

         ◇

 

「吉井、坂本! ちょうどいいところに、少し手伝ってくれ!」

 

入浴道具を持って1階に降りたところで声をかけられたのでそちらに目を向けると

 

世界史

Eクラス 長田源策  51点 VS Dクラス 赤羽理子 85点

     柴哲也   46点       袖村柚子 72点

 

大浴場へ向かう廊下の途中で、覗きをしようとしていると思われる男子と、阻止しようとしている女子が召喚獣で戦っていた。

 

「試獣召喚。」

 

世界史

Aクラス 吉井明久 453点

 

「え、Aクラスまで覗きに!?」

 

「ちょっと! 腕輪持ちとか私たちで勝てるわけないじゃない。」

 

「ふぅ、一時は補習室も覚悟したがなんとかなったな。」

 

「ああ、吉井! 理想郷(アガルタ)への道を切り開いてくれ!」

 

僕の点数を見て、動揺している女子と、勝機を見出して喜んでいる男子。

 

「邪魔だよ。」

 

長田源策  戦死

柴哲也   戦死

 

「お、おい! なんで俺達に攻撃してるんだよ!」

 

「裏切ったのか!?」

 

僕が召喚獣を二体の召喚獣に近づかせて、油断しているところを居合い切りで首を刎ねたら、僕の行動に対して長田君と柴君が抗議してきた。でも、裏切ったなんて言われても

 

「僕は君たちの仲間になった覚えなんてないよ。」

 

覗きに手を貸す気は無いので期待されても困る。さて……

 

「く、来るなら来なさい!」

 

「覗きはさせないわよ!」

 

僕が赤羽さんと袖村さんの方を向いたら戦う気なのか召喚獣に武器を構えさせている。

 

「僕らは普通に男子浴場に行きたいんだけど、通してくれないかな?」

 

僕は男子浴場へ続く廊下を指しながら二人に尋ねる。ここで戦う事になるとさらに入浴時間が減ってしまう。

 

「え……?」

 

「覗きじゃ……ないの?」

 

僕の言葉を聞いてキョトンとした表情になる二人。

 

「そんなことしないよ。それで……通してくれるかな?」

 

「あ、うん。どうぞ。」

 

「勘違いしちゃってゴメンなさい。」

 

もう一度たずねたら、召喚獣を消して道を開けてくれた。

 

「気にしないでいいよ。それと、大変だろうけど頑張ってね。」

 

僕らは彼女達に別れを告げて大浴場へと向かった。しかし……須川君達はあんなに大勢を巻き込んで責任はどうするんだろう?

 

その後は普通に入浴した後に、合宿での日課にもなってきた個室風呂の警備をしたが、覗きに加担していた人たちが特別補習室に行ってたからか問題なく3日目が終了した。




今話で3日目の日程が終了しました。さて、後は原作で覗きの成功した4日目ですね。
果たして須川たちは覗きを成功させられるのか!? 明久はどう行動するのか!?
次回からは4日目に入りますので乞うご期待。


『質問コーナー』

今回は

①『相手の可愛いと思うところはどこ?(体の部位、しぐさ、性格など。)』byアマデウスさん
②『FFF団』・『毒兎』・『絶壁』を『叩き潰す』なら『どんな方法?』by龍夜さん

の二つを訊いてみます。

②の回答は少し過激なものになるかもしてないので彼氏組だけを呼んでおきました。



『相手の可愛いと思うところはどこ?(体の部位、しぐさ、性格など。)』

明久「明梨は元気なところで、日向は一所懸命なところかな」

雄二「記憶力がいいのにどこか抜けているとこだな。それを指摘した時のキョトンとした顔も可愛いな」

秀吉「あの性格の割に自分のしたことを後から気にする所じゃな」

康太「…………行動すべて」

一輝「驚いたり恥ずかしくなった時の反応だな。普段見れないから余計にいい」

ちなみにですが他にあげられる点はありますか?

「「「「「全部だね(全部だ)(…………全部)(全部じゃな)」」」」」

あ、そうですか。……惚気は聞いてないのに

「「「「「何か言った?」」」」」



『FFF団』・『毒兎』・『絶壁』を『叩き潰す』なら『どんな方法?』

明久「西村先生に担任が変わったのに変化する様子も無いから、迷惑かもしれないけど龍司さんの『更生フルコース』を受けてもらおうかな。あれなら更生するだろうしね。」

雄二「鉄人の補習1週間マラソンでも受けてもらうか。鉄人なら1週間の貫徹ぐらいワケないだろ。」

秀吉「西村教諭と合宿でもしてもらう他の案はなかろう。」

康太「…………ゲイ疑惑やらが生まれそうな合成写真を学園中に流す。」

一輝「龍司さんの『更生フルコース』だな。あれならたとえ札付きの悪でも更生できるからな」

明久君と一輝君の言っている『龍司さんの更生フルコース』っていったい……

「「西村先生(鉄人)の補習の1000倍厳しいよ(ぞ)」」

考えないようにします。



アマデウスさん、龍夜さん、質問ありがとうございました。

質問・感想・コメント・誤字報告・指摘などお待ちしてます。


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四日目 最後の覗き騒動

なんだか展開が思いつかなかったので、いきなり覗きの時間になっています。
甘い展開が無くてすみません。次話にはなんとか砂糖を溶かした水飴くらい甘い展開を……

そんなわけで、第82話です。どうぞ……


「はぁ~、なんか今日は昨日よりさらに騒がしくない?」

 

前半組の入浴時間になると同時に、昨日以上の騒音が聞こえてきたので思わずため息を吐く。

 

「須川達が鉄人相手に奮戦したって噂が流れてたようだな。」

 

「昨日はEとDの男子が参戦してたんだろ? 今日はこの階も騒がしいからBも参加してんのか?」

 

「…………そうらしい。BクラスやCクラスの男子も女子の相手をしている。」

 

ノートパソコンを操作しながら一輝の推測を肯定する康太。監視カメラの映像でも見ているのかな?

 

「……儂らの学年は馬鹿ばかりじゃな。よもやBクラスまでそのようなことをしようとは……」

 

ヘタしたら……いや、普通に警察沙汰になるようなことなのに何を考えているんだろうか? D,Eクラスならともかく、Bクラスならどうなるか分かると思うんだけどなぁ……

 

「そうなると……翔子達がいない分、女子は少し分が悪いか。」

 

「そうだな。騒がしいといろいろと面倒だし、風呂行く前にBクラスのヤツぐらいは相手にしてやるか。」

 

「ちょっとお仕置が必要なようだね。」

 

雄二と一輝の後に続くように僕らも部屋から出る。

 

「へへへ、お前らを倒してアガルタへの道を開いてやる。」

 

「ひゃっは~っ! 誰も俺らを止められないぜっ!」

 

「2対1なんて卑怯よっ!」

 

現代文

Bクラス 吉田 卓夫 172点 VS Bクラス 真田 由香 42点

     鈴木 二郎 168点

 

廊下に出た途端に、いかにも雑魚っぽい笑い方をしている男子二人に、追い詰められている子がいた。……よい子には見せられない絵だなあ。

 

「卑怯、汚いは敗者の言い訳ってなぁっ!」

 

「誰も助けに来ないテメエの不運を呪うんだな!」

 

「いやっ!」

 

「「試獣召喚。」」

 

キンッ  パシッ

 

「だったら、テメエらは俺らに会った不運を呪うんだな。」

 

Aクラス 吉井明久 352点

     坂本雄二 364点

 

真田さんの召喚獣に迫っていた斧は僕の召喚獣の鞘に、刀は雄二の召喚獣が白刃取りしたことによって止められた。

 

「今日の僕らは甘くないよ。」

 

僕は召喚獣に鞘を傾けさせて攻撃を去なし、腰のを引いて抜刀の構えを取るとバランスを崩したままの召喚獣の首を切り落とした。隣を見ると雄二の召喚獣が右手を突き出した姿でいて、相手の召喚獣が霧散していた。

 

「吉井、坂本! お前ら裏切ったのかっ!」

 

「女子風呂を覗かないとかお前らほんとに男か!?」

 

やられると同時に康太に縛られた吉田君と鈴木君が何か言っているけど無視しよう。

 

「えっと……吉井君に坂本君……なんで?」

 

「まあ、彼女がいるのに女子風呂を覗くのはおかしいからね。」

 

いまだに状況が理解できていない真田さんに苦笑しながら答える僕。確かに女子からすれば男子は全員覗きに加担しているって思っているだろうしね。

 

「それにオレらにとっても騒がしいのはいいことじゃねえからな。」

 

「…………迷惑だから始末する。」

 

「して、教員の配置などは分かるかの?」

 

「えっと……確か、浴場前の通路に照沼先生が、扉の前に西村先生がいて、地下への階段前に高橋先生がいるはずよ。」

 

「なるほど……妥当な配置だな。その辺はセンコーに任せて俺らは上の残党でも狩るか。」

 

真田さんの言葉を聞いて少し思案した後に顔をあげる雄二。

 

「上ってことはC,D,E,Fクラスだね。」

 

「なら手分けして片付けるか。アキとオレで2階のC,Dクラス、雄二と康太、秀吉で3階のE,Fクラスでいいか?」

 

「…………わかった。」

 

「うむ。明久と一輝なら問題なかろう。」

 

「各自、始末をつけたら一度部屋に戻って再集合でいいか。……じゃあ解散だ。」

 

僕らは雄二の言葉に頷いて担当の階へと向かうべく階段の方へ向かった。

 

         ◇

 

くくくっ、作戦通りだな。俺が扇動したお陰でBクラスの連中まで覗きに加担して混乱してやがる。Aクラスも来れば文句なしだったが……贅沢は言ってられねえな。今日以外にチャンスはねえからな。

 

「後はあそこを抜けるだけか……落ち着け。今は女子の恰好をしているんだ、堂々と走り抜ければ疑われない。」

 

俺は物陰から地下への階段を確認する。そこにいるのは学年主任の高橋女史と学年次席級のFクラス、姫路。その周りには男子がいるが圧倒的な戦力差で抜けられそうにないようだ。まあ俺には関係ないか。あの混戦の中じゃ顔の確認なんてできない。

 

「すいません! 通りますっ!」

 

「えっ!? はい。どうぞ。」

 

「ありがとうございますっ!」

 

俺は裏声を使って高橋女史に声をかけると、一瞬俺を確認して道を開けた。俺はそのまま一気に駆け抜けて階段を下りる。

 

「まずは第一関門突破か……、ここまでで鉄人が居ない事を考えると、面倒な事になりそうだな。」

 

鉄人をどう抜けるか考えながら女子風呂への道を歩く。ここまで来たら引き返すわけにはいかない。

 

「根本……お前、女装趣味があったとは……」

 

考え事をしていたのでテル先が目の前にいる事に気付かなかった。ってヤバい。コイツは担当以外の科目も高得点って聞いたぞ。

 

「な、なんのことでしょうか? わ、わたしは根本君ではありませんよ。」

 

顔は見られてないはずだ……なんとか誤魔化して――

 

「まぁ、他人の趣味嗜好に文句をつける気はないが……俺は割とお前のことは評価してんだぞ。」

 

――いくのは無理なようだな。

 

「ちょっと待てっ! 俺は好きで女装してんじゃねえ!」

 

「あ~、そうか。女子の振りして混乱に乗じて抜けようと、そんなとこか。」

 

コイツ……俺の作戦なんてバレバレかよ。それよりも

 

「……さっきの言葉はどういう意味だ?」

 

「あん? さっき?」

 

「俺を評価してるって話だ……。俺は卑怯で有名なのにどこを評価してんだ?」

 

さっきコイツが評価してるっていったが、俺には心当たりがない。教師に罵倒される理由の方が心当たりがあるくらいだ。

 

「別に卑怯ってのは悪い事じゃねえだろ。自然界でも生きる為に策を講じる動物は多いし、……なにより、まっとうな生き方をしてる奴が得するほど社会は甘くねえしな。」

 

そんなことを言われたのは初めてだな。

 

「ただ……人の気持ちを踏みにじるような真似は解せねえなあ。試召戦争での敗因もそれだろ? そんなことをしてたら自分の周りに人がいなくなるぞ。」

 

「俺が好きでやってんだ。別にいいだろ!」

 

「俺にお前の生き方を指図する権限なんかないけどな、テメエ一人で幸せな気になっても意味ねえよ。」

 

「俺の何が分かるっていうんだよ!」

 

「なんも分かんねえよ。ただな……人ってのはいつでも変われる。覗きに加担した奴らは停学だろうから……その間に人の気持ちってのを考えろ。試獣召喚!」

 

「試獣召喚! 偉そうに指図してんじゃねえぞ!」

 

テル先が召喚したのを見て、俺も召喚獣を召喚して持っている大鎌で切りかかる。

 

「遅いっ!」

 

ヒュン  カラン  カシュッ

 

技術工作

Bクラス 根本恭二 102点 VS 数学教師 照沼崇司 1050点

 

投げられたナイフを腕に当てられ、召喚獣は鎌を落として、丸腰で突っ込んだ召喚獣は喉を刺されて戦死した。千点越えって……化け物かよ。

 

「ったく、説教くせえこと言っちまったな。……ガラでもねえ。」

 

負けたショックで、テル先の呟きは俺の耳には入ってこなかった。

 




なんかBクラスまで参戦しちゃいましたね。
彼女組が参戦してない理由は、夫(彼氏)が過保護だから、『補習室送りにさせたくない』って理由で大人しくさせました。

今回は遅くなったので『質問コーナー』は手早く済ますために1つだけお答えします。

①質問 彼女もちの彼氏さん(明久とその他)達、もし世界中を敵にして、膨大な敵に彼女を監禁されてしまったらどうしますか?
by疾風檜斗さん

ってことで、彼氏の5人をお呼びしました。

明久「そんなことになったら、まずは自分一人で助けに行くよ。それでダメだったら父さんたちに協力してもらおうかな。」

雄二「敵の戦力を把握して、自分一人でも助けられる作戦を考えて助ける。久しぶりに悪鬼羅刹の力を見せてやるよ。」

秀吉「儂の力では助けることはできんから、明久達に助力を仰いで行くのじゃ。無論、儂だって全力であたるのじゃ。」

康太「敵の隙を突いて、俺の速さと隠密性で助け出す。邪魔するやつはスタンガンで倒す。」

一輝「そんなことをするような奴がいるなら……血の海に沈めてやる。」


なんとも過激な発言がありましたね。……よかった、彼女を呼ばないでおいて。



っとまあ、こんな感じですね。

質問・感想・コメント・指摘・誤字報告などあったら、お気軽にどうぞ。お待ちしておりま~す。

質問は出来れば、回答者を選択してもらえると助かります。


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四日目 まだまだ続く合宿四日目

遅くなってすみません。こんな時間なので感想の返信は後日まとめて返します。

それと、今回は区切りがいいところで切ったので短いです、重ね重ねすみません。


ガチャ

 

「ふぅ~、疲れた。」

 

「…………骨が折れる。」

 

「まったくじゃな。お陰で余計な時間を使ってしまったのじゃ。」

 

「あ、おかえり。3人とも疲れてるようだけどどうしたの?」

 

一輝と二人で暇をつぶしていると、僕らから10分ぐらい遅れて雄二達が帰ってきた。疲れている様子だけど、3階はE,Fクラスだから僕らの担当した階よりも成績は下で、3人ならそんな苦労するとは思えないんだけど……

 

「その様子だと、Fクラスの連中がしぶとかったのか?」

 

「ああ、一輝の言うとおりだ。アイツらは召喚獣がやられても対抗して来たからな。俺がのして、康太がスタンガンで気絶させて、秀吉が縛ってでなんとか退治して来たんだ。」

 

退治って……ゴキ●リじゃないんだから。

 

「……あの生命力は異常。」

 

「まったく、あの気概を少しは勉学にも回せばよいものを。」

 

秀吉の言う事ももっともだけど、彼らにそんな発想は無いんだろうな。

 

「話はそのぐらいにして、そろそろお風呂に行こうよ。時間も無くなっちゃうもん。」

 

「そうだな、優子達の入浴時間とか考えるとのんびりしてらんねえな。」

 

「ちょっと待ってろ。すぐ支度する。」

 

ガチャ

 

「おっ、部屋にいたか。探す手間が省けたな。」

 

雄二達がお風呂の準備をしているとドアを開けて照沼先生が入ってきた。何の用だろう?

 

「僕らに何か用ですか?」

 

「ああ、お前らのお陰で覗きは未遂で済んだから、礼を言いにな。」

 

「その事なら気にしないでくれ。オレらが勝手にやったことですから。」

 

一輝の言うとおり僕らが勝手に判断して、勝手に行動したんだから、わざわざお礼を言われるほどの事はしていない。

 

「まあ、そう言うな。お陰でAクラス以外の男子は特別補習室に詰め込まれてるしな。何かやりたいが、さすがに金品を渡すと問題になるだろうからコレをやるよ。」

 

そう言って照沼先生が投げてきたのは――

 

「鍵?」

 

――3本の鍵だった。ん? この形は見覚えがあるけど……それに2,4,5と数字がふってある。

 

「2、4、5番個室風呂の鍵だ。どう使うかは勝手にしろ。……丁度お前らも風呂はまだみたいだしな。」

 

バタン

 

照沼先生は部屋から出る直前に不穏な言葉を残していった。

 

「どう思う?」

 

照沼先生の言動の意味がいまいち理解できない僕はとりあえず皆の意見を聞く。

 

「普通に考えればオレらも個室風呂を利用しろって意味だと思うが。」

 

「問題のある男子は補習室と言っておったし警備は不要じゃからの。」

 

「…………ひさびさにのんびりできる。」

 

「確かにこの合宿は落ちつける日が無かったよね。」

 

初日から因縁つけられて模擬試召戦争したり、勉強中に因縁つけられたり……厄年かな?

 

「ああ、あの言い方、それに5つの風呂……俺らに翔子達と入れってことか?」

 

何やら唸っていた雄二が突然飛んでも無い結論を弾きだした。

 

「何を言い出すん――」

 

プシューーーッ

 

「「「「康太ーーーーっ!!」」」」

 

突拍子もない発言をした雄二にそれはない、と言おうと思った矢先、康太が赤いアーチを描いてしまい、僕らはそろって康太の名前を叫んでしまった。

 

         ◇

 

「……で? 雄二、君はなんであんな事言ったの?」

 

康太の止血と輸血を済ませ布団に横にした後、僕らは固まって話す。一輝の話だと効果が弱くなるからあの薬はなるべく使わない方がいいらしい。

 

「いや、スマン。考えるのに集中してて康太の事を忘れてた。」

 

「謝るのはもういいから、説明してよ。」

 

雄二は本当に申し訳なさそうにうなだれる。少し気持ちが分かるから心が痛い。

 

「ああ、普通に俺らの分も含めて個室風呂を用意したとして、女子で2つ、俺らで2つで十分なはずだ。翔子達も3人でも広いぐらいだって言っていたしな。」

 

「確かにのぅ。大浴場も3クラスで使っておったのに十分な広さじゃったのぅ。」

 

「うん。広かったね。銭湯とかでも見ない広さだよね。」

 

「言われてみれば、あと一つ風呂が余るな。」

 

雄二の言葉で僕らは雄二の発言の意図が何となく分かった。

 

「しかし、そうなると……」

 

「うん。康太は問題だよね。」

 

「個室風呂とはいえ血まみれにするのは問題じゃな。」

 

僕らは少し離れたところで布団に横になりながら輸血されている康太に視線を集める。あの康太なら一緒の空間で着替えることでさえ三途の川を渡りそうなのに、そのままお風呂に入るなんて考えたら……

 

「しかたねえな。抗体ができるからあんま使うのはよくねえが、賢者薬を飲ませるか。」

 

「まあ、翔子達が断る可能性もあるし、そうなれば普通に男女別に入れば問題ないだろ。」

 

「だな。まあ、優子もいるし普通に男女別ではいる事になるだろ。」

 

確かに、いくら恋人関係だと言っても一緒にお風呂に入るっていうのは……あったな、うん。日向が背中を流しに来た事があったね。でも、あれは一緒にお風呂に入るのとは別だし……

 

「とりあえず明梨たちの意見も聞かなくちゃいけないし、呼びに行こうか。」

 

「そうじゃな。康太も少しは落ち着いたようじゃしな。」

 




一区切りついたところで話を切ったので短くてすみません。


感想・コメント・指摘・誤字報告などあったら感想欄にどうぞ。
引き続き質問もお待ちしてますのでそちらの方もよろしくお願いします。
できれば、誰への質問かも書いてくれると返信しやすいです。


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初めての混浴

なんだか筆が進まなかったのでこんな遅くなってすみませんでした。


それと『僕と幼馴染と友情物語(過去編・番外編)』の方に『ハロウィン』の話を追加しておきました。よかったら見てください。


「な、なんでこんなことになっちゃったんだろう……」

 

僕は個室浴場の湯船に浸かりながら、今起こっている事に頭を悩ませている。それは……

 

「……明梨たちまで一緒に入ることに賛成するとは思わなかったよ。」

 

霧島さんは迷いなく賛成するだろうし、神谷さんと工藤さんは面白がって賛成する事までは予想できたけど、明梨と日向が賛成して、優子さんまで賛成するとは思わなかったよ。

今はまだ脱衣所に居るから問題ないけど、明梨と日向とお風呂に入るって考えただけで鼻のあたりが熱くなってくる。

 

ガララ

 

脱衣所への引き戸が遠慮がちに開かれる音が聞こえたので、僕は反射的に扉に背を向ける。緊張のせいで思わず背筋が伸びてしまい、落ち着くはずの入浴時間が落ち着かないものになってしまった。

 

「「し、失礼します。」」

 

「う、うん。」

 

二人の緊張した声を聞いて、僕も更に緊張してしまう。

 

「明君、隣いい?」

 

「私もいいですか?」

 

体を洗う音がしばらくしてから、二人が声をかけてきた。

 

「うん。いいよ。」

 

僕の返答を聞いた二人が湯船に浸かる。うぅ~、やっぱり緊張するな。

 

「明君たちは今日も活躍したんでしょ?」

 

「う~ん、活躍って言えるか分からないけど、覗きをしようとしていた人たちは模擬試召戦争で倒したよ。」

 

「流石ですね。とても私にはまねできません。」

 

明梨が今日の事を聞いてきたので、ありのままを話すと、日向が尊敬のまなざしを僕の方に向けてきた。その際に肩が当たり少し恥ずかしくなる。

 

「日向も明梨も心配しなくていいよ。僕は大切な人を守りたいから力をつけているんだからさ。」

 

「やっぱり、明君はズルイな……」

 

「カッコよすぎです……」

 

「ぼ、僕だって恥ずかしいんだからあんま突っ込まないでよ。」

 

僕の台詞で二人は笑い、その後は少し緊張も解けたのでのんびりとお風呂を堪能した。この合宿で唯一のいい思い出かもしれないな。

 

         ☆

 

「……雄二と一緒に入れて嬉しい。」

 

俺が湯船に浸かっていると、翔子が俺の脚の間に入り、背中を預けるように湯船に入ってきた。

 

「待て翔子、なんで広い風呂場でそんな狭い場所に入ろうとするんだ!」

 

「……雄二は嫌?」

 

「嫌じゃねえし、むしろ嬉しいが、ただ何つうか……」

 

翔子が少し俯きがちに聞いてきたので即答するが、素っ裸の状態で密着されると、こっ恥ずかしい気持ちと邪な気持ちが出てくる。

 

「……雄二は照れ屋。」

 

「ったく、今日はそう言う事にしといてやるよ。」

 

自分で責任のとれない行動を取るのを押さえるので精いっぱいなので今回は反論する余裕が無い。それに、翔子の言ってる事もあながち間違いではない。

 

「……なんか変。熱でもあるの?」

 

「な、何でもねえよ!」

 

翔子が体をこちらに向けて来たので慌てて顔を逸らす。背中が密着していただけでも限界が近かったのに正面から裸見たらどうなるか分かったもんじゃない。

 

「……雄二、顔が赤い。」

 

「あ、アレだ。湯あたりしたんだ。俺はもう出るから翔子はしっかり温まるまで浸かってろよ。」

 

俺は矢継ぎ早に言いたい事を言ってそのまま脱衣所に直行してドアを閉めた。あのまま過ちを犯したらシャレにならなかった。昔一緒に入ったのとは全然違くってヤバかったな。

 

         ☆

 

「…………なんでこうなった。」

 

俺は脱衣所で服を脱ぎながら思わず呟いた。愛子は水泳部で着替えに慣れてるからか、先に入ってると言って風呂場の方に行ってしまった。

 

「…………とりあえず、コレを飲むか。」

 

一輝に渡された薬を手に取る。一輝は抗体ができて効果が弱まると言っていたが、今回はこれに頼るしかないだろう。

 

グビッ

 

「…………ハンバーグ味とたこ焼き味か。」

 

味は美味いのだが液状でこの味は無いと思う。

 

「…………行くか。」

 

戦場に行く気持ちで風呂場の扉に手をかける。果たして俺は今日という日を乗り越えられるのか。

 

ガラッ

 

迷っていても仕方ないので扉を開ける。

 

「あ、康太、やっと来たんダ。」

 

愛子はすでに湯船に浸かっていたようで、縁によっかかるようにしてコチラを見ていた。ひとまず、いきなり裸体を見て倒れる危険は避けられたようで良かった。

 

「…………ああ、少し手間取った。」

 

愛子に軽く返事をしてから軽く体を洗い、愛子から距離を取るように湯船に浸かる。

 

「なんで、そんなに離れてるの?」

 

「…………気のせいだ。」

 

俺は顔を逸らして愛子の質問を流す。風呂が広めで助かった。もし体を密着しなくてはいけないならば、風呂の湯を俺の鼻血で赤に染めていたかもしれない。

 

「ふ~ん……そう言うんダ?」

 

愛子から不穏な気を感じるが、そちらに目を向けたら、俺は赤い噴水を作る可能性があるので顔を逸らしたまま固まる。

 

ピトッ

 

「…………何を!?」

 

愛子が近寄ってくる気配がしたと思ったら、いきなり左腕に柔らかい感触が当たってきた。

 

「うん? どうかしたノ?」

 

愛子の方を見ると、少し口元に笑みを浮かべながら小首を傾げていた。

 

「…………いや、腕に何か当たって……」

 

「気のせいじゃないノ?」

 

愛子は何食わぬ顔をして、俺の左腕に抱きついてきた。

 

「…………っ!? 胸が……」

 

俺は反射的に空いている右手で鼻を押さえるが、その前に数滴の血が湯船に落ちた。

 

「ちょっ、康太! 血が……」

 

愛子が慌てて俺の前に回り込んできた。そのせいで愛子の裸体が俺の視界に映りこんでしまい……

 

プッシューーッ

 

俺はそこで意識を手放した。

 

         ☆

 

「康太はどうなっただろうな……」

 

オレは湯船につかりながら親父の薬を渡した康太の事を考えていた。

 

「土屋君? でも、一輝君のお父さんの薬を渡したんだから大丈夫なんじゃないの?」

 

隣でオレと同じように湯船に浸かっている優子が自分の意見を言ってくる。

 

「確かにそうなんだが……」

 

「そんなに心配なら男女別ではいればよかったんじゃない? 賛成したアタシが言うのもどうかと思うけど。」

 

後半は少し小さめに言ったが、肩が当たる程度の距離に居るのでなんなく聞き取れた。

 

「別に心配なわけじゃねえよ。ただ、他のこと考えていないと落ちつかねえんだよ。」

 

風呂でタオルはマナー違反なので優子もオレも全裸の状態で湯船に浸かっている。あいにく隣に裸の彼女がいて、大人しくしてられる神経は持ち合わせていない。

 

「そ、そうなんだ。……落ち着いているから気にしてないのかと思ってわ。」

 

「んなわけねえだろ。だから、少し気にかかった康太のこと考えてたんだよ。あの薬は親父の話だと、使えば抗体ができて効果が弱まるらしいからな。」

 

話を切り上げて話題を元に戻す。

 

「抗体ってそんなに簡単にできるものなの?」

 

「モノにもよるらしいが、基本的に連続で服用すると一般的な医薬品でも抗体ができるからな。康太の場合、鼻血吹いてるかもしれないな。」

 

「愛子も何するか分からないわね。」

 

確かに工藤ならわざとそういう行動するかもしれねえな。

 

「まぁ、考えても仕方ねえか。」

 

「そうね。」

 

オレらは考えても仕方ないと結論付けて、出来るだけ何も考えないようにして風呂に浸かった。

 

         ☆

 

「やはり風呂は落ちつくのぅ……」

 

儂は湯船につかりながら一日の疲れを取る。

 

「ふふっ、なんだか仕事を終えた父親みたいね。」

 

紫織が微笑しながら湯船に入る。

 

「FFF団の相手をしたんじゃから、一仕事したも同然じゃぞ。」

 

あやつらを始末するのは専門の業者でも雇いたくなるのじゃ。

 

「じゃあ、何かご褒美でもあげなくちゃいけないわね。」

 

「儂らが勝手にやったことじゃから、その必要は無いのじゃ。」

 

紫織の提案はありがたいが、儂らは特に対価を求めて行動をしてはおらんのじゃ。

 

「なら気にしなくていいわ。これは、あたしが勝手にやることだから。」

 

「なっ、何をしとるんじゃ!?」

 

紫織は儂の背後に回り込むと、後ろから抱きついてきた。

 

「男の子ってこういう事されるのが好きなんでしょ? それとも嫌だったかしら?」

 

「い、嫌ではないのじゃが。……儂らは付き合い始めて月日もあまり経っておらんし……」

 

そもそも同じ風呂に入ると言う行為自体あまりすべきではないと思うのじゃが……

 

「嫌じゃないならいいじゃない。疲れているんならしっかりと体を休めないと。」

 

「む、むぅ……」

 

何か言いくるめられたような気がするのじゃが、心地いいのは確かなので、儂は紫織の言葉に甘えて体を休めることにしたのじゃ。

 



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学力強化合宿 終了

スケジュールが空いていたので投稿します。

活動報告でちょっとしたアンケートをやっておりますので、よろしければご回答お願いします。

合宿編の最後ですが1500字すら行かないほど短いです、すみません。


★学力強化合宿 終了

 

合宿所からの帰り、僕たちは行きと同じ豪華なバスに乗りながら5人でダウトをやっている。

 

「しっかし、あのクラスは大人しくするってのを覚えらんねえのか? っと、5だ。」

 

「それが出来てれば鉄人も苦労しねえだろ、6だ。」

 

「そういえば康太よ、体調の方はどうじゃ? 7じゃな。」

 

「…………問題ない。8……」

 

「いや~、予想通りと言うか、なんというか。」

 

昨日、お風呂から上がり自室に戻ると工藤さんが康太の止血をして寝かせていた。

康太を一輝に任せた後に工藤さんに事情を聞いたところ、薬の効果が弱まっていたらしく彼女の裸を見て鼻血を出した、という予想通りの答えだった。

 

「っと……9。」

 

「ダウト!!」

 

手札に9が無かったので仕方なく3を置いたが、置く瞬間に一輝に見破られてしまった。

 

「……なんで分かったのさ?」

 

「おいおい、一体何年の付き合いだと思ってんだ? そんぐらい分かるっつーの。」

 

「しかし、一向に減らんのぅ。何か別のことをせぬか?」

 

確かに、カードが減らないのでダウトをずっとやってるもんな。

秀吉の意見にみんなが賛成したので、僕らは手札をテーブルの上に置く。

 

「この調子なら割と早く帰れそうだな。」

 

「平日の昼間ならこんなもんだろ。来る時も工事が無けりゃ普通についてただろうしな。」

 

窓の外を見た一輝の呟きに雄二が返す。

 

「…………あと1時間ほどで着くはず。」

 

「う~ん……1時間か……どうする?」

 

ぐ~~

 

僕がみんなに何をして時間をつぶすか聞いたところで誰かのお腹の音が聞こえた。

 

「そういえば、もう昼時を過ぎておったのぅ。」

 

バスに付けられた時計を見ると1時過ぎになっていた。

合宿所の食事は朝食だけだったし、仕方ないからバスにあるお菓子で我慢するかな……。

 

「あ、私たちでお弁当を作ってきましたが、食べますか?」

 

「ちょっと、合宿所の厨房を借りて皆で作ったんだよ。」

 

「本当に!? 僕はすっかりお昼の事忘れてたよ。」

 

そんなことを考えていたら女性陣が来る時にもっていたお弁当箱を持ってきた。

 

「いつの間にこんなの作ってたんだ?」

 

「朝食の前よ。あんまり時間が無かったから大したものは作れてないけどね。」

 

「んじゃ、そっちのテーブルもくっつけて皆で食おうぜ。」

 

二つのテーブルをくっつけて、カップルで隣同士になり、サンドイッチやおにぎり、おかずを摘まんだ。

大人数で食事をするのってやっぱり楽しいな。

 

         ◇

 

―――――――――――――――――――

 

「いや~、今日はやけに静かだな。」

 

「合宿所での騒がしさが嘘のようね。」

 

「ま、たまには静かなのも良いだろう。」

 

「……授業も集中できる。」

 

「合宿所ではあまり勉強できなかったからのぅ。」

 

「あんな騒がしい中じゃ集中できないわよ。」

 

「これで少しは懲りてくれるとセンセーたちも楽になるんだろうけどね。」

 

「…………Fクラスは無理だろうな。」

 

「他のクラスは合同授業らしいね。」

 

「ほとんどのクラスが半分になっちゃったから仕方ないね。」

 

「先生方も少しは休憩できそうですね。」

 

文月学園 第二学年

B,C,D,E,Fクラス男子生徒

総勢120名

上記の者たち全員を一週間の停学処分とする。

 

また、下記のものは二週間の停学処分に加え、観察処分者に認定する。

二年Bクラス 根本恭二

二年Dクラス 清水美春

二年Fクラス 島田美波

二年Fクラス 姫路瑞希

 

加えて、吉井明久の観察処分者認定を取り消す。

 

                         文月学園学園長 藤堂カヲル

 




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返信は遅くなるかもしれませんがご了承ください。


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暴走召喚獣編
学園長からの呼び出し


今話から暴走召喚獣編ですね。

少し暇があるので企業探しの傍らで執筆も頑張りたいと思います。


「全く……今年は面倒なことばっかり起こるさね。」

 

二年生の学力強化合宿の最終日、合宿所の鉄j、もとい西村宗一からの連絡を受けた老b、……妖k、……学園長 藤堂カヲルが試験召喚システム管理用の端末を操作しながらぼやく。

 

(進学早々の試召戦争のせいでカリキュラムの再編成をするのは別に構わないさね。)

 

試召戦争は文月学園の特徴の一つでもあり、そのために補習などで不足分の授業数を確保できるように調整されている。

 

(清涼祭では結果的にはスポンサーが減ったが、吉井たちのお陰でこの学園は存続できたし、厄介者払いもできたさね。)

 

管理職である竹原の逮捕により、一部のスポンサーからの融資が打ち切られた。

また、性格に問題はあったが、スポンサーを確保する能力に長けていた竹原が逮捕されたことにより、新たなスポンサーの確保は難航している。

 

「はぁ……、ただでさえ問題は山積みだって言うのに、覗きに盗撮・盗聴、脅迫、冤罪で騒ぎを広げるなんてね。」

 

前日に西村先生から送られてきたメールに視線を送り溜め息を漏らす。そこに書かれていた内容は

 

・Fクラスの男子が中心となって起こった覗き騒動の詳細

・Dクラス所属の清水美春が設置した小型カメラと盗聴器、吉井達に送った脅迫状などに関する証拠

・Fクラス所属の姫路瑞希、島田美波が合宿所で他クラスの自習を妨害したこと、教師に相談せずに独断で行動し結果的に覗き騒動のきっかけとなったこと

・Bクラス代表 根本恭二が今までに行った行為に関する証拠

・以上の事からAクラスを除く男子生徒の停学処分。および、根本恭二・清水美春・島田美波・姫路瑞希、以上四名の観察処分者認定を求む

 

報告内容を吟味した後、今朝の職員会議で処分が確定し、残る作業は観察処分者のデータを変更するだけ。

 

「まともなクラスがAクラスしかいないなんて嘆かわしいね。」

 

そう言いながらも端末を操作していき、観察処分者の設定に関する項目へと移る。

 

ERROR

OPERATION DENIED

 

「『操作拒否』? 一体どういう事さね。」

 

新たに観察処分者の設定を加えようとしたが、画面にはエラーメッセージのみが表示される。

 

「……なるほどね。……ちょっとシステム自体の方も確認して見るかね。」

 

藤堂は暫く調べた後、席を立ちあがり召喚システムの本体がある部屋へと向かった。

 

         ☆

 

ピンポンパンポーン

 

『二年Aクラス、坂本雄二君、高瀬一輝君、吉井明久君、至急学園長室まで来てください』

 

「あれ? 何の呼び出しだろう?」

 

合宿を終えて初めての登校日、月曜日のHRが終わり、みんなで談笑していたら突然放送で呼び出しされた。

 

「普通に問題があって呼び出しされるなら、職員室か進路指導室(鉄人の根城)だろ?」

 

なんか雄二の進路指導室の読みがおかしかったのは気のせいだろうか?

 

「わざわざ学園長室ってなると、召喚獣関連か。さっさと行くか。」

 

「そうだね。たぶん急ぎの用だろうし。じゃ、みんな行ってくるね。」

 

みんなに見送られながら僕は一輝と雄二の後を追った。

 

         ◇

 

「さぁ~て、学園長。呼び出した理由はなんだ?」

 

「召喚システムに問題でも起きたのか?」

 

学園長室に入るなり、一輝と雄二が机に手を置いて偉そうな態度で要件を聞く。

 

「そこまで分かっているなんて、賢しい奴らだね。」

 

学園長は感嘆のため息を漏らして呟く。

 

「アンタらの察しの通り、試験召喚システムに問題が発生して、教師の召喚獣は召喚不能、一般生徒の召喚獣は操作不能、システム設定の変更が不可になってるんだよ。」

 

「なんか随分大変な事になっている気がするんですけど、直すことってできないんですか?」

 

「そんなこと出来んならオレらを呼ぶ必要が無いだろ。」

 

「高瀬の言う通りさね。本来はコレで操作できるんだが、ケーブルが外れているようで操作できない。おまけに直接操作しようにも防犯システムが作動していて中に入れないんだよ。」

 

「だったら壁に穴開けりゃいいじゃねーか。工事費をケチる必要もねーだろ?」

 

「明日はスポンサーや研究者が見学に来るんだよ。客を招くのに散らかすわけにはいかないのさね。」

 

壁を壊して、システムを直して、工事をするってなると時間がかかりそうだもんね。

 

「だから、まだ観察処分者仕様のままの吉井の召喚獣に頼みがあるのさね。」

 

「はあ……それぐらいだったら――」

 

「ちょっと待て。引き受けるの自体はいいが、報酬でも出してもらわねえと割に合わねえんじゃねぇか?」

 

僕が引き受けようとしたところで、雄二に遮られてしまった。

 

「はぁ~、がめつい奴だねえ。」

 

「スポンサーや同業者の前で恥をかかないで済むんだ。安いもんじゃないか?」

 

溜め息を吐く学園長に口元に笑みを浮かべる雄二。ものすごく悪者っぽいな。

 

「わかったよ。……何かあったかねえ?」

 

諦めた様子で学園長は机の引き出しを漁る。なんか哀れだな、これでも学園の最高権力者なんだよな。

 

「ねえ、雄二。なんであんな事言ったの?」

 

雄二に近づいて小声でさっきの発言の意図を聞く。普通に引き受けるところだと思うんだけどな……

 

「別に大した意味はねえが、……なんとなく素直にうなづく気になれなかっただけだ。」

 

「あ~、何となく分かる。目上の人間でもタダ働きはな~。」

 

この二人は……

 

「お、コレなんかどうだい? 人数制限は15人だから、丁度いいんじゃないかい?」

 

「これって、皐月スパリゾートの入場券か。」

 

「隣町の銭湯を改装したってやつだよね。」

 

学園長が机の上に出したのは隣町のレジャー施設、皐月スパリゾートのフリーパスだった。

皐月スパリゾートは、主に首都圏で銭湯やプール施設を買収・改装・増改築しているSatsuki Water Worldsが手掛けた施設で、温泉やプールがあるらしい。

 

「ちょうどいいんじゃないか? 最近忙しかったしな。」

 

「それじゃ、頼んでいいんだね?」

 

「ええ、任せてください。」

 

どうすればいいか分からないが、雄二と一輝がいるし何とかなるだろう。

 




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作戦会議と作戦開始(10時35分ごろ後書き追加)

暴走召喚獣編の本編に入りました。
では、本編の方どうぞ。


「それじゃ、具体的な説明に入るが、コレは観察処分者である吉井にしかできない仕事だよ。他の召喚獣は使い物にならないからね。」

 

「それで? 俺らは何をすればいいんだ?」

 

「観察処分者の物理干渉を利用して、通気口から入ってもらうからね。そのサポートをして欲しいのさね。」

 

「それじゃあ、中の様子が分からないんじゃないですか?」

 

「その辺は康太にでも頼んでカメラを用意してもらえば良いだろ。」

 

「…………呼んだか?」

 

一輝が康太の名を出した途端、天井から康太がふってきた。なんでそんな所に居たんだろう

 

「康太、召喚獣が持てるようなカメラと、その映像を確認できるディスプレイ、……出来ればヘッドマウントタイプのは用意できるか?」

 

「…………教室に戻れば準備できる。」

 

「じゃあ、頼む。」

 

「…………了解。」

 

康太は頷くと、また天井に消えた。なんで普通にドアから出ていかないんだろう?

 

「ところで学園長、システムとセキュリティについて聞きたいんだが。いいか?」

 

「別に構わないさね。」

 

「随分と大人しかったけど、どうかしたの? 雄二。」

 

学園長と一輝が話しあうのを見て、僕はさっきから口を挟まないでいる雄二に話しかける。雄二の性格ならいろいろ聞きそうなものなんだけどな。

 

「いや、今回は俺は門外漢だからな。一輝の方が得意だろ? こういうのは。」

 

「なるほどね。」

 

雄二の言葉に納得がいったので、話しあっている二人に視線を戻す。話してる内容はよく分からないが、機械関係に強い一輝に任せればいいか。

 

         ◇

 

「アキ、雄二。教室に戻るぞ。」

 

「もう話は良いのか?」

 

「あぁ、大体の見当と策は決まったからな。優子たちや康太たちの力も借りる予定だ。」

 

「明梨や日向にも協力してもらうの?」

 

「そうだ、詳しい話はメンツが集まってから話す。だから、呼びに行くぞ。」

 

「分かった。」

 

一輝に促されて、僕と雄二は学園長室から出る。

 

         ◇

 

「それじゃ、それぞれの役割を説明するぞ。」

 

個人用のディスプレイと壁面に大型のディスプレイが設置された会議室で、大型ディスプレイの前に立って一輝が説明をする。

 

「まずは、オレと康太はシステム室の入口にある認証装置から侵入してシステムの権限を奪う。これに関しては防犯システムが作動してるから手間と時間がかかるだろう。」

 

大型ディスプレイにシステム室の入口と認証システムの拡大画像が表示される。

 

「優子と工藤にはオレと康太のサポートを頼みたいんだがいいか?」

 

「分かったわ。」

 

「モチロンOKだよ。」

 

優子さんと工藤さんが頷くのを確認して、話を進める。

 

「次にメインとなるアキの方だが、教師が作るフィールドは暴走状態で正常な動作ができないから、雄二の白金の腕輪でフィールドを作成してもらう。」

 

一輝が雄二の方へ視線を向けると、雄二は黙って頷いた。

 

「白金の腕輪の効果範囲を考えると、システム室の入り口付近でやってもらう事になる。アキの召喚獣にはカメラを持たせて、アキがヘッドマウントディスプレイをつけて操作する形になるが、」

 

一輝はそこで一度話を止めて、大型ディスプレイの映像を切り替える。

 

「召喚獣の位置を把握できるシステムとマップは、この部屋と学園長室にしか存在してない。その上、システムの権限を奪われてるから移行する事ができない。」

 

大型ディスプレイに映されたのは通気口のものと思われる地図だった。

 

「だから、久遠と明梨にはここに居てアキのナビとサポートを頼む。」

 

僕との相性とかも考えてくれてるんだろうな。二人なら安心して任せられるよ。

 

「秀吉と神谷は状況に応じて他のサポートを頼む。最初はここで明梨と久遠の手伝いをしてくれ。」

 

「承知したのじゃ。」

 

「分かったわ。」

 

「そんじゃ、皐月スパリゾートのフリーパスと、ついでに学園を守るために頑張ろうぜ。」

 

「ちょっと! 目的の優先順位がおかしくなってるよ。」

 

一輝の発言に思わず突っ込んでしまう。

 

「いいじゃねえかちょっとぐらい。Take things easy.(気楽に行こうぜ。)」

 

         ◇

 

「明久、準備は良いか?」

 

「僕は大丈夫だよ。明梨、日向、そっちはどう?」

 

『準備OKだよ。』

 

『いつでも大丈夫です。』

 

システム室の扉の前に立つ僕はインカムからの確認の声を聞き、気を引き締める。

隣ではすでに一輝と康太が入口の認証装置とケーブルで繋がったノートパソコンを操作している。一輝にいたっては二台を操作しているのに一台当たりが康太以上のスピードなのは驚きだ。

 

『悪いが……頼んだよ。』

 

「はっ。安心して見ていやがれ。起動(アウェイクン)!」

 

「試獣召喚!!」

 

雄二が起動ワードを唱えると、いつものように召喚フィールドが展開される。それを確認して僕の召喚獣を呼び出す。

 

「それじゃ、コレを持たせて……と。」

 

呼び出した召喚獣にカメラを持たせ、僕はヘッドマウントディスプレイを装着する。

 

「よし、ちゃんと映像が届いているな。それじゃ、よろしくね。」

 

『明君の召喚獣の位置が確認できたよ。』

 

『まずは、まっすぐ進んでください。』

 

「了解。」

 

召喚獣を通気口の高さまで持ち上げて、通気口の中へと入れ、指示に従って召喚獣を操作する。

 

(やっぱり、視界が狭いのと、客観的に見れないのは戦闘じゃ不利になりそうだな。)

 

「ん?」

 

『明君、正面から4体の召喚獣が来るから気をつけて。』

 

目の前の空間に魔法陣が浮かんだと同時に、明梨から通信が入った。なるほど、暴走っていっても防衛本能見たいのがあるのかな。

 

日本史

Eクラス 村上 美和 67点

     谷中 伸一 61点   VS   吉井 明久 683点

     豊本 美鈴 72点

     長田 源策 58点

 

『後ろからも3体来ます。注意してください。』

 

「まずは前のを倒す!」

 

狭い通気口で挟まれるのは危ないので、僕は正面の4体に向かって突っ込ませ、左から二番目の召喚獣に前宙の要領で踵落としを脳天に当て、刀で右隣の召喚獣の首をはねて、その勢いのまま前に行き振り向く。

 

Eクラス 村上 美和   67点

     谷中 伸一   戦死

     豊本 美鈴   戦死        Aクラス

     長田 源策   58点   VS   吉井 明久 653点

Dクラス 笹島 圭吾   92点

     阿僧田 孝造 123点

     鈴木 一郎   98点

 

召喚獣の様子がよく見えなくて、着地に失敗したせいで少し点数が減った。

 

『明久君、大丈夫ですか?』

 

「うん。問題ない……よっと。」

 

日向から通信が入ったタイミングで突っ込んできた召喚獣の脚を引っ掛けて、転ばせた後に胸を貫く。

 

Dクラス 笹島 圭吾 戦死

 

「こっちからも行かせてもらおうかな。」

 

僕は残る4体の召喚獣に向かって、走らせて、それに対応して振り下ろした剣を避けて、面打ちをする。

 

「痛っ……」

 

倒した召喚獣の後ろに居た、別の召喚獣が振り下ろした棍棒のフィードバックで肩に痛みが走る。

 

Eクラス  長田 源策   戦死   VS Aクラス  吉井 明久 607点

 

『明君!? 大丈夫!?』

 

「心配いらないよ。ちょっと油断しちゃっただけだから。」

 

『気をつけてね。』

 

(明梨と日向を心配させないためにも、注意して真剣にやらなくっちゃな。)

 

僕はさらに気を引き締めて、残る3体の召喚獣と対峙する。

 

「君たちに恨みは無いけど、ここは通してもらうよ。」

 

刀を投げさせて、奥に居た無防備な召喚獣を戦死させると同時に、相手の棍棒を奪い残る二体を思いっきり吹き飛ばす。

 

Eクラス 村上 美和   戦死

Dクラス 阿僧田 孝造  戦死

     鈴木 一郎   戦死

 

「ふぅ~。これでひとまず安心かな?」

 

『うん。近くに他の召喚獣の反応は無いよ。』

 

『あと5mほど進んだら右に曲がってください。』

 

「わかったよ。」

 

日向に指示されたとおりに、迷路のような通気口を召喚獣に歩かせる。

 




明久以外の出番は余り無さそうですね。

感想・コメント・誤字報告・指摘などありましたら、お気軽にどうぞ。お待ちしております。

――某所・停学中の文月学園二年所属のとある男子の部屋―-

「戦死者は補習~!」

「て、鉄人!? なんでウチに!? しかも戦死者って何!?」

「西村先生と呼ばんか! 戦死者とは召喚獣の点数が0点になった者の事だ。」

「俺は召喚獣を出してないのに何で――」

「口答えするな! 後が閊えてるから行くぞ。」

「鬼の補習は嫌ーーっ!」

――――――――――――――

こんなことがあったとか、なかったとか。


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第88話

なんだかんだで1年以上放置してしまい申し訳ありませんでした。
就活→卒研→研修 の3コンボで書く時間があっても書く気力がなかなか出ませんでした。

ブランクある上にちょくちょく書いていたのでおかしな点があるかもしれませんが、ひとまず書き上げましたので投稿します。
読んでくれる方がまだいるかわかりませんが、どうぞ


 

『明久君、突き当りを左に曲がってください。』

 

僕は日向の指示を頼りにして、迷路のような通気口を召喚獣に歩かせる。

 

『もう半分以上進んだから、もう一頑張りだよ。』

 

「結構歩いたのに、まだ半分か……」

 

かれこれ50分ほど操作しているが、暴走状態の召喚獣との戦闘などでなかなか進めない。

 

『無理はしないでくださいね。もう100体以上の召喚獣を倒しているんですから。』

 

「ありがとう。でも、まだ余裕だから心配いらないよ。一輝、そっちの調子はどう?」

 

日向の労いの言葉に感謝しながら、一輝の方の状況を確認する。

 

「システムの権限をこっちに戻そうとしてんだが、なかなか上手く行かねえな……」

 

「…………おそらく、ケーブルを繋がないと不可能。」

 

「そっか、やっぱ僕が何とかするしかないんだね。」

 

「一応、召喚獣の暴走をなんとかできないかやってみたんだが、一気に止めるのは無理みたいだな。アキの相手をするようになってからだいぶセキュリティがゆるくなったが。」

 

「…………今は個々に召喚獣の暴走を止められないか試している。」

 

『明君、正面に召喚獣の反応が、あ……』

 

明梨の声で召喚獣からの映像に意識を戻して、明梨が驚いた理由が分かった。僕の召喚獣の前に――

 

Aクラス 藤崎明梨 631点  VS  吉井明久 483点

     久遠日向 432点

 

明梨と日向の召喚獣がいたからだ。

 

ヒュン

 

「危なっ!」

 

飛んできたメスと矢を右に飛んで避けさせる。

 

「これはずいぶんきつい相手だね……」

 

ただでさえ、高得点で厄介な相手なうえに、召喚獣とはいえ彼女と戦うなんて精神的な苦痛もある。しかも、僕の召喚獣はここまでにダメージを受けていて、僕自身も長時間の操作で集中力が切れかかっている。

 

「っ!」

 

体勢を立て直そうとした時に右脚に痛みが走ったので、カメラで召喚獣の右脚を見たら矢が刺さっていた。たぶん回避先を読んで放たれたものだろうが、今までの暴走召喚獣はこんな戦い方をしなかった。

 

(もしかして、召喚獣の点数で動き自体もちがうのかな?)

 

今までの暴走召喚獣はせいぜい100点台後半程度の点数しかなかったから、そんな仮説が浮かんだ。ゲームでもステータスの高い敵の方が動きもいいしね。

 

ヒュン  タッ

 

再度、明梨の召喚獣が矢を放ったタイミングで、僕は召喚獣を走らせる。

 

「これでっ……!」

 

(……明梨を切る? いや、これは召喚獣だし、僕と違ってフィードバックは無いから痛みもない。でも、召喚獣といっても明梨は明梨だし……)

 

一気に間合いを詰め、召喚獣に刀を握らせた時に、カメラ越しに視界全体に明梨の召喚獣が映って、僕は迷いから動きが止まってしまった。

 

「痛っ!」

 

左腕の痛みで我に返って、召喚獣を後退させて左腕を確認する。左上腕が裂けていて、操作しても左腕はあまり動かなかった。

 

(かなり深く斬られたみたいだね。痛みも止まらないし。)

 

吉井明久 324点

 

召喚獣の体は人間の体の構造と似せて作られていると聞いていたので、左腕が動かないのはそれが原因だろう。実際に点数の方も100点近く減ってしまった。

 

『明久君! 私たちにはフィードバックは無いんですから、私たちのことは気にしないで攻撃してください!』

 

僕が回避に専念して攻撃していなかったからか日向の声がインカムから聞こえてきた。

 

「でも、戦死したら補習室に行くことになるし、それに……」

 

『明君。わたし達が補習室に行っても、指示は秀吉君と紫織さんに任せればいいし。何より他の人は何もできないんだから明君がやらないと。』

 

『それに、補習室に送られても明久君がすぐに終わらせてくれればいいんですよ。』

 

「うん。二人とも……ありがとう。」

 

二人の台詞からは何か覚悟のようなものを感じた。ここで僕が何を言っても二人の意見は変わらないと思うし、折角の覚悟を無駄にするわけにはいかない。

 

「はーー すーーーっ よしっ!」

 

一度深呼吸して再度二人の召喚獣と向き直る。もう心に迷いはない。少し補習室で我慢してもらいできるだけ早く片をつける、これが僕にできる最善手だ。

 

スッ

 

僕の心境の変化が伝わったのか、日向の召喚獣は構えてたメスを仕舞い背中の注射器を構える。

 

タッ

 

僕は召喚獣を走らせて日向の召喚獣の持つ巨大な注射器と、明梨の召喚獣の持っていた弓()()を破壊して二人の召喚獣の後ろに着地させた。

 

「おい明久。戦死させたくねえ気持ちはわかるが、せめて邪魔されない程度に攻撃しやがれ!」

 

「うるさい! そのぐらい僕もわかってるよ!」

 

横で僕が頭につけてるディスプレイと同じ映像を見てる雄二が注意してくるが、わかっていてもできないことなんていくらでもある。

 

「つっても逃げられるような相手でもねえぞ! どうすんだよ!」

 

雄二の言う通り、僕の召喚獣は点数が300点台前半まで下がっているうえに、連戦のせいもあって満足に走れるような状態じゃない。しかも、相手は二人とも400点越えで無傷なんだからどっちの足が速いかなんて考えるまでもない。

 

「アキッ! 二人の召喚獣のコントロールを取り戻すから、それまでなんとかしろっ!」

 

「なんとかって……そんな長い時間は保たない、よっ!」

 

バランスを崩して転びそうになったので、なんとか体をひねらせながら前転をさせて立ち直る。

 

「10分、いや、5分で済ます!」

 

「5分か、ギリギリ……いけるかな?」

 

僕の視界には投擲用のメスを構える日向の召喚獣と、数本の矢を弓につがえる明梨の召喚獣の姿が映る。

ふだんの試召戦争なら召喚獣の周りを確認できるが、今回は召喚獣の頭部につけたカメラからの映像だけ。しかも、二人そろって遠距離攻撃を得意としている。

いくら召喚獣の操作に慣れてる僕でも、こんな状態で挟まれたら1分持つかどうかだろう。

 

ヒュン  サクサクッ

 

飛んできた矢を伏せて躱したら、避けるのを予測したような位置にメスが飛んできたので、慌てて地面をたたくようにして横に跳ぶ。

 

「ここまで連携が取れてるなんて……」

 

行動パターンだけでなく、連携まで今までの召喚獣とは違う。

 

「点数だけでここまで変わるのか? いや、それとも召喚者自身の操作技術や召喚時間が影響してるのか? それにしてはFクラスは……」

 

横から雄二の思案するような声が聞こえてきたので、召喚獣のことを考えるのをやめて目の前の戦闘に集中するよう頭を切り替える。

 

「(全神経を相手の一挙手一投足を捉えることに集中させる。そうすればなんとかなるはずだ。)」

 

僕は今まで以上に集中して攻撃を避けることに専念する。一樹が一刻も早く二人の召喚獣を正常に戻すことを祈って。

 




展開的にはほぼオリジナル展開なので書くのがつらいです。
それと、ブランクのせいかサブタイトルが思い浮かばないのでしばらく(もしかしたら今後一切)サブタイトルつけないかもしれません


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第89話

ひさしぶりで前書きに書くことが思い浮かばない・・・

たぶん次かその次くらいまでには暴走召喚獣編は終わります。



 

「一輝! 俺の点数だとあと2分くらいしかもたねえぞ! 大丈夫なのか!?」

 

「2分あればなんとかなる。おい、アキ! そっちはどうだ?」

 

オレと康太が久遠と明梨の召喚獣のコントロールを取り戻す作業を始めてから4分ほど、作戦の開始からは1時間弱になる。確か起動時に50点、10秒ごとに1点消費だから単科目だと400点取ったとしても、350点×10秒で3500秒、教科を変更しないなら1時間もたない。

 

「こっちもっ、そのぐらいならっ、大っ、丈夫っ、だよっ。」

 

召喚獣の操作に集中してるためか途切れ途切れだが、問題はなさそうだな。

 

「そういえば、さっきから、二人の、召喚獣の、動きが鈍くなって、るようだけど」

 

「そうか……あらかた終わったからシステム側からの指示が遅れてんのかもな。」

 

さすがに8割がた作業が終わってるんだから、ある程度の成果が出てないと困る。

 

「雄二、フィールドはあとどのくらいもつ。」

 

「あと10点だから100秒くらいだ。」

 

「了解。康太、もうひと踏ん張りだ。」

 

「…………わかった。」

 

残り時間も少ないことだし、スパートをかけるか。

 

         ☆

 

「くっ!」

 

はじめのころから比べると明梨と日向の召喚獣の動きは鈍くなったが、それまでに点数が削られこっちも思ったように動けない。そのせいでさっきから他の召喚獣の攻撃がかすったりしていて徐々に点数が減っている。

 

『明君 もう点数が50点を切ったよ。』

 

『今の点数は42点です。』

 

召喚獣の操作に集中するために点数に補正されるたびに報告してもらうようにしたが、今では完全に点数を確認する余裕がなくなっている。最初から数十点の点数ならある程度の強さの召喚獣とも渡り合うことはできるが、今の状況は1時間弱の操作と数十分の戦闘、600点分以上のフィードバックと普通の操作ですら難しい状況だ。

 

「っ! こなくそっ!!」

 

正面の召喚獣の槍が迫ってきたので体をひねって槍を避け、()()()()()木刀を()()操って喉に突き刺す。

 

Cクラス 福上 英美里 DEAD

 

ここまでの攻防で僕の召喚獣の両腕が動かなくなり、腕輪の発動はもちろん体重のバランスがおかしくなっていて移動や回避すら難しくなってる。

 

「……雄二 あと6点。」

 

「あと1分か。一輝、康太 間に合うのか!?」

 

「…………あと数秒で終わる。」

 

「よっし! 終わったぞっ。」

 

「あれ? 二人の召喚獣が……」

 

一輝のセリフとほぼ同時に明梨と日向の召喚獣が――

 

「ん? どうなったんだ?」

 

「消え……た?」

 

召喚時に現れる幾何学模様と共に消えてしまったのだ。

 

「召喚者がフィールド内にいないから消えたのか? まあその辺はあとで考えればいいか。雄二!」

 

「ああ、わかってるよ。」

 

雄二が白金の腕輪の効果を切り召喚フィールドが無くなったので、召喚獣に付けていたカメラが落下して何もないダクトの様子を映すだけとなった。……って

 

「カメラ置きっぱなしにしてんじゃん!」

 

「ん? そんなの終わってから取りに行けばいいだろ?」

 

「別にダクトにカメラが落ちてても問題ないだろ? 特に何か写しちまうわけでもないし。」

 

「…………あのカメラは耐衝性もあるしカメラはまだまだある。」

 

「そ、そうなんだ……」

 

ツッコんだ僕の方がおかしいような感じになってしまったので色々な疑問は胸の奥にしまうことにした。

 

「この後はどうする? 科目変われば点数は戻るが連戦はきついよな。」

 

「だな。とりあえず会議室の方に戻ればいいだろ。」

 

雄二の意見に従ってその場の片づけを軽く済ませてから会議室へと向かう。

 

         ☆

 

「でだ。一輝、この後はどうしていく?」

 

「とりあえず、今の段階で残ってる召喚獣と倒した召喚獣の詳しいデータが欲しいところだな。その方がこの後の指針を決めやすいからな。」

 

「それなら、こっちで説明するさね。高橋先生。」

 

学園長の指示に高橋女史が答えると会議室の大型ディスプレイ、及び個人の席に設置されたディスプレイにABCDEFという文字といくつかの数字が表示される。

 

「システムはそれぞれの学年ごとに管理されていますので、現在稼働してるのは第二学年の召喚獣 計三〇〇体です。そのうち吉井君の召喚獣は除かれますので暴走してる召喚獣は二九九体です。

先ほどの作戦の間で戦死した召喚獣はAクラス5名、Bクラス10名、Cクラス24名、Dクラス15名、Eクラス30名、Fクラス30名、それに藤崎さんと久遠さんを加えると百十六体の召喚獣はもう現れません。」

 

CLASS   DEAD   REMAIN ALL

A    5(+2)   48    55

B    10    40   50

C    24    26   50

D    15    35   50

E    30    20   50

F    30    14   44

ALL   116    183   299

 

ディスプレイに表示された表をわかりやすく説明する高橋女史。

 

「単純に人数だけ考えれば同じことを3回繰り返せばっ……ってわけにはいかねえよな。」

 

「そうだな。高得点者の召喚獣はほとんど出てないからな。俺の見た感じだと点数の高い方が動きが良かったが、明久はどう思う?」

 

「うん。僕も同じだよ。確かに点数が高い方がスピードとかも高いけど、単純にそれだけじゃないと思うよ。」

 

雄二が会議室の側方に設置されたソファに横たわってる明久に確認を取ると、明久は体を少し起こして自分の意見を言う。

 

「そうなると残っている召喚獣の方が厄介なわけじゃな。」

 

「そうとも言えないんじゃない? 今回は吉井君が攻撃できない相手がいたわけだけど、もうその心配はいらないでしょ?」

 

「確かにそうね。それに今回の操作でいくらか慣れていることも考えればもう少し早く終わるかもしれないわね。」

 

「ん~、でも、ボク達の召喚獣はまだ出てきていないし、科目によっては吉井君でも難しいんじゃナイ?」

 

「……確かに。保健体育での土屋や愛子の相手は難しい。」

 

秀吉、紫織、優子、愛子、翔子とそれぞれが意見を交えながら次の作戦を考える。

 

「今の段階だと特に新しい案は出そうにないな。よしっ! それじゃあ昼まで休憩にして、午後になったらまた同じ作戦で再開だ。」

 

一輝がそう締めると全員がその言葉に答える。

 

「すまないがアタシは明日の準備があるから後のことはアンタらと高橋先生に任すよ。この会議室は今日一日開けとくから好きに使いな。それと吉井が休みたいなら保健室へ行ってもいいさね。」

 

学園長はそれだけ言い残して足早に部屋を去る。

 

「じゃあ、13時にこの部屋に集合してくれ。アキしっかり休めよな。」

 

明久に釘を刺してから一輝が部屋を出ると雄二たちもそれぞれ部屋を後にする。

 

「保健室行くの? 行くんなら手伝うけど。」

 

「いや、それほどじゃないからここで休んでくよ。」

 

「なら、私もここに残りますね。」

 

少し経った会議室には彼女に膝枕をされている明久の姿があったとかなかったとか……

 




しばらく更新してなかったせいか感想が少ない・・・と思いましたけど、過去の感想を見返してみると、そんな多かったわけではないっていう地味なショック受けました


PS.これからは感想の返信が次話投稿時になりますので返信が遅れます。
ご意見・ご感想・誤字報告などお気軽にしていただけると執筆の励みになるのでよろしくお願いします。


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