カゲロウ・ストラトス (人類種の天敵)
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ひとりぼっちのIS学園

どうも初めまして人類種の天敵と言います(・ω・)
今回は天敵が大好きなガゲプロってそう言えば無えな、って事で書いちゃいました。後悔はしないと思う……
アニメの最後でアヤノ達の両親であるケンジロウとアヤカはカゲロウデイズに留まりますが、この作品ではカゲロウデイズを抜け出してます。そうしないと作品的に成り立たないので………ご了承下さい


「さよなら、なんだよね、これで」 

 

「また忘れちゃったりしないでしょうね?」 

 

「大丈夫だよ。こんな話、きっと忘れないよ」 

 

「どうだろうね。明日になったらすっかり忘れちゃってたりして」 

 

「良いんじゃないすか?もっと楽しい日々が来るなら」 

 

「でも、また何処かで逢うんでしょ?」 

 

「もちろんそのつもりだ。じゃあ、そろそろ帰ろうか」

 

「あぁ、それじゃあ、また」

 

 

 

 

 

 

カゲロウデイズ

 

ある夏の出来事。俺は、いや俺たちメカクシ団は「カゲロウデイズ」という永遠に終わらない世界に囚われたそれぞれの大切な人を助ける為に「目が冴える」蛇を倒し、そしてコノハは、先輩の……遙先輩の願いを叶える為に、「目が冴える蛇」と共にヒヨリという少女の命の代わりになった

……あの夏の出来事が。子供達の作戦が終わったあとも、俺の目には「目に焼き付ける」能力も、蛇も残っている。昔と同じで見たものは全て忘れないし、他の奴も、例えばエネこと榎本貴音も時々俺のパソコンに侵入してはやりたい放題しやがる。初めて俺のパソコン画面からあいつと出会った時からずっと悩みの種だ

 

アヤノとはカゲロウデイズ攻略作戦後、俺たちは…つ、付き合う事に……なった。きっかけはエネがアヤノにバラした俺の秘密ファイルの中の画像だ……じ、実はアレの中にあったのは。本当はエロ画像じゃなくて俺が今まで撮ったアヤノの写真だ。後は…メカクシ団全員の目の前で覚悟を決めてアヤノに告白した。アヤノはいつもニコニコと笑っていて、時々変な奴と思っていたが、「好きだ、付き合ってくれ」と言った瞬間。顔を真っ赤にさせた時は俺の方もドキッとしてしまった

 

あれからカノとアヤノの親父さんの妨害には手を焼いているが、アヤノがいなくなった夏から、またアヤノの笑顔を見れることになったからあまり気にならない。それに度がすぎるとキドが勝手に2人を連れて行くからな、流石メカクシ団の団長だ

それからはアヤノが俺の「自宅警備員矯正」って言って2人でデートしてる。その年のクリスマスでは2人でイブを迎えるはずだった………なのに

 

 

 

「うわ!シンタロー君マジでIS動かしちゃったねぇ……」

 

「おいおい、マジかよシンタロー。お前女だったのか?」

 

『うわぁ、ご主人キモいですね』

 

「お兄ちゃんが……女だったなんて」

 

「んなわけねーだろぉぉぉ!!??一体何がどうなってんだ!?」

 

事の次第はこうだ。アヤノの誕生日パーティーでアヤノとイチャイチャする気だったのにテレビで藍越学園試験場と間違えてIS学園試験会場に迷った中学生がうっかりISに触れて起動させた。とかいう漫画みたいな話が流れた際。カノとアヤノの親父さんが

「シンタロー君なら動かせるんじゃない?」

「おう、此処に昔ある縁で作ったISのプロトタイプがあるから触ってみろ」

と無理やり触らせた挙句、本当に動かしちまったんだ

 

「んー、でもシンタロー君がISを動かしちゃうなんてねえ……あ!良いこと思いついた……ね、お父さん」

 

「ん?なんだ?修哉」

 

「シンタロー君が偶然とはいえISを動かしちゃったからねえ……お姉ちゃんには悪いけど、IS学園に保護してもらわなくちゃね?」

 

ん?何言ってんだ?カノ?

 

「……おお!それもそうだな。万が一シンタローがどっかの国に誘拐でもされたらかなわんからな」

 

あ?それって……?

 

「「よし!IS学園に保護してもらおう♪」」

 

「ん、んなぁ!?な、何言ってんだよ!?カノ!親父さん!!」

 

「うるせえ!!俺をお義父さんなんて呼ぶんじゃねぇええええ!!!」

 

「誰も言ってねえええええ!!!??お、おいエネ!団長!モモ!」

 

『自宅警備員(笑)のご主人にとって良い環境じゃないですかぁ?wwwじゅ、18歳のニートが高校生活w』

 

「お兄ちゃん……あ、お姉ちゃんって言った方がいいかな?シンタロー…お姉ちゃん?」

 

「俺は男だぁぁぁ!!!」

 

「だがシンタロー。確かにカノと父さんの言ってることも一理あるぞ」

 

「う………」

 

「さっき撮った写真が政府にバレれば直ぐに各国がお前を攫いに来るかもしれん。ならIS学園に入学した方が良いんじゃないか?さっきテレビであったISを動かした奴もIS学園に入学するらしいしな」

 

「う………」

 

ガクッと肩を落とすと心配そうに俺を見るアヤノと目が会う

 

「シンタロー……」

 

「アヤノ……俺は……」

 

俺はもうお前のそばを離れたくない…

 

「俺はIS学園には行かなry」

 

「それも良いが攫われた時は覚悟しろよ?ISの人体実験か、女権団なら始末されるからな」

 

「…………」

 

い、いやいや。か、考えてみろシンタロー……あ、IS学園にいるのは「男は女の下僕」とかそんな奴らばっかだぞ!?そ、それに

 

「シンタロー………」

 

アヤノを置いていけるかよ………

 

「シンタロー……私なら大丈夫だから」

 

「………は、はあ?何言ってんだよ」

 

「シンタロー…」

 

「………分かったよ、たく」

 

アヤノの真剣な表情にため息をついて頭を掻く

 

「IS学園に入学する」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「地獄だ……帰りてえ……」

 

『今更何言ってるんですかぁ?ご主人!』

 

「うるせえよてかなんでおま……あんたエネになってんだよ」

 

『そりゃご主人のこんな面白いの間近で見ないわけにはいかないじゃないですか!』

 

「「はぁ………」」

 

今誰かと溜息がシンクロしたような感じがしたな……

 

『それよりご主人の担任。織斑千冬って人らしいですよ』

 

「織斑?あぁ確かブレードで世界一になったっていう奴か?」

 

『はい!ご主人と違って生身でも滅茶苦茶強いらしいですよ!しかも出席簿で叩かれるために入学する程痛くてハマるらしいですよ!ご主人試しに一発叩かれて下さいよぉ!』

 

「ふざけんなよ……てか視線が………帰りてえ……」

 

四方から視線が刺さる…めっちゃ怖い……アヤノ……帰りてえ……

 

『なら織斑千冬の試合ビデオでも見ますかー?幾分か気は紛れると思いますが?』

 

「そうだな、じゃあ決勝戦の奴を見せてくれよ」

 

♡数分後♡

 

「なんだよこれ……零落白夜?一撃でシールドエネルギー0とかチートすぎるだろ……」

 

『まあその代わり自分のエネルギーも減るらしいですけどね』

 

「『まあ勝てる相手だな(ですね)』」

 

まずブレード一本とかバカだろ。遠距離から撃っとけばその内勝てるだろ。なんでこんな奴が一位なんだ?

 

「相手も相手だな、ブレード一本なんだから距離を作れば間合いに詰められないだろ」

 

『まあ余程の射撃精度が無いと距離を作りながら当てられないんじゃないですか?』

 

「……そうなのか?」

 

『知りませんけどねっ!』

 

うぜえこいつ

 

ガラッ

 

『あ、誰か来ましたよご主じ………ん』

 

「な……なんだあれ………子供……?」

 

扉から入ってきたのはどう見ても体の比率があっていない少女。どうあっていないのかは、身長が小さいくせに胸がでかい

 

『妹さんみたいですね!』

 

「こっちの方が大きいけどな」

 

「はい、みなさんおはようございます。そしてIS学園にご入学おめでとうございます。私は副教科担任の山田まやです。よろしくお願いしますね!」

 

しーーん

 

「誰も反応しないな」

 

『しませんね』

 

「……え、えーと……で、では自己紹介にしましょうか!まずはこちらの席からお願いします」

 

「……自己紹介に逃げたな」

 

『ですね』

 

「はいはーい!私は相川清香です!部活動はハンドボール部!宜しく!」

 

『あ、そう言えば知ってました?ご主人。この学校、部活動もしくは生徒会に入らないといけないらしいですよ?』

 

「うげ、マジかよ……」

 

『ご主人体力ないですもんね!』

 

「はぁ………まあ、射撃だったらお前より上手いけどな」

 

『はぁ?何言ってるんですかご主人?またやります?』

 

「ああ、いいぜ……ゾンビ物以外でな」

 

「はい!それでは次は「お」の織斑君!織斑君お願いします!」

 

『あ、来ましたよご主人。もう1人の男の子』

 

クラス中の視線が前の席の織斑に向く、ああ、幾分か楽になった。ナイスだ織斑

 

「人懐こそうな奴だな、どっかの捻くれ者と違って」

 

『どっかのニートと違って爽やかで健康そうですねっ!』

 

「『あ?』」

 

「織斑君!!」

 

「ん?」

 

『あれ?まだ自己紹介してなかったんですかね?』

 

「みたいだな」

 

前を向くと「は、はい!」と慌てて織斑が席を立った

 

「う……織斑一夏です。え、えぇーと……」

 

『あ、やっぱりご主人と同類ですかね』

 

「うるせーよ、ほら見ろ。周りの視線に負けず深呼吸してるじゃねえか」

 

指をさすと織斑がすぅ、と深呼吸しているのが見える。頑張れ織むry

 

「以上です!!」

 

がたたーん!!!

 

あまりの展開に思わず机から転げ落ちてしまった

 

「あ……つつ……」

 

『ご主人!ナイスズッコケです!!』

 

「うるせえ!……たく「すぱーん!!」ん?」

 

「痛っ!!?げ、げえ!?関羽!!??」

 

「三国志最強の英雄が来たらしいぞエネ」

 

『どうします?逃げたほうがいいんじゃないですかね?ご主人瞬殺されますよ』

 

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

 

織斑の頭を叩いたらしき出席簿が煙を立てていた

 

「……………」

 

『ご主人試しに一発』

 

「ぜぜぜぜ、ぜ、絶対嫌だぞ!?」

 

あんな出席簿喰らったら最近まで自宅警備員だったニートの俺は死んじまうに決まってんだろ!?

 

「もう良い……おい、如月。お前がこの馬鹿者の代わりに自己紹介というものを教えてやれ」

 

「は、はひぃ…!?」

 

関羽(仮)から低い声と共に呼びかけられた為に俺のガラスのハートは震えまくり、ビクッと立ち上がった為に椅子がガタンと倒れるわ、声は上ずって裏声が出るわ。恥ずかしい

 

『ご……ご主人……す、少しは…落ち着いて……ぷふふ(震)』

 

「わ、笑ってんじゃねえよ……」

 

震える声で自己紹介をしようとすると、クラス中の視線が今度は俺に向く

 

(う………モモの能力を使ってるみたいだ……)

 

俺の妹、モモは「目を奪う」という能力を持っていて、これは自身の身の回りのものに注目を集める能力だ。あいつはこれを無意識に使っていて、今ではアイドルをやっている

 

「よ、よぉし…い、いくぞ……?」

 

『はい!ご主人!録音OKです!』

 

「き、ききき、如月ししん、しん、シンタロろろろ。じゅ、じゅじゅう、18歳。こ、こここここれから、よ、宜しく……」

 

『ブフッ!!!!ご、ご主人……』

 

「如月………」

 

「ひ、ひぃぃ!!??す、すみません!」

 

『〜〜〜〜〜っ!!!!ゴホッゴホ!!?(声にならない笑い声)』

 

「………もう良い、座れ如月」

 

ため息をつきながら関羽(仮)が言ったので席に座る

 

『ご……ごしゅ……ご主人……ば、バッチリ…録音しま…した……(震)』

 

「帰りてえよぉ……アヤノぉぉ……(泣)」

 




はい、という訳で一話でしたが、どうでしたか?主に口調が。天敵は全巻読んでるのですが……オカシイと思った方はその都度指摘して下さいf^_^;)この小説はアニメのオリ展開エンド後なのですが……これを書くにあたって12話全部見たんですけどやっぱり12話って少ないなと思いました。まあ、たった6話で天敵を泣かすポケ戦もあるのですが……


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二話 のほほんアテンション

つまり今回はのほほんのターン!!
ども、天敵です。今回はこんなタイトルですが、これからは「第何話 目〜の話」みたいにつけていこうと思います。のほほんアテンションと書きましたが、最初は「目がびびる話」とか「目も微笑む話」とか考えてました。まあ結局はのほほんだよね。とりあえず早く代表戦でセシリアボコりたい作者はモブ党(夜竹とか鏡ナギとか相川とか鷹月さん可愛い)あとはビッチと見せかけて純情に定評のある(作者的に)刀奈生徒会長派!!


「………はぁ、絶対自己紹介ミスった……恥ずかしい……帰りてえ……」

 

『ぷ……ぶふふふ……ご、ご主人……さっきの録音流しますか?ぷふっ……』

 

こ、こいつうぜえ……

 

「あ、あの」

 

「?…お前……確か」

 

顔を上げると俺ともう1人の男性搭乗者の織斑一夏がたっていた

 

「あ、はい。俺、織斑って言います」

 

「おう、俺は如月伸太郎。よろしくな」

 

織斑の方へ右手を出す

 

「はい!シンタローさん」

 

織斑は嬉しそうに笑ってその手を取った

 

「……にしても、織斑先生って、お前の姉かなんかか?」

 

声を小さくしてヒソヒソ喋るように織斑に耳打ちする

 

「あ……はい、千冬姉は俺の姉です」

 

「怖いなお前の姉ちゃん」

 

「はい」

 

コクコクと真剣に頷く織斑。小さい頃からあれなのか?

 

「あー、あと俺のことはさん付けじゃなくても別にいいぞ。後敬語もしなくていいから」

 

「ええと……うん、分かったシンタロー。俺も一夏って呼んでくれよ」

 

『イケメンですねぇ、ご主人と違って笑』

 

「うるせえぞエネ」

 

「? 誰と話してるんだ?シンタロー」

 

「ああ、これーー一「一夏!」うおっ!!??」

 

突然大声が聞こえたので思いっきり後ろに仰け反ってしまい。椅子を倒しながら落ちる

 

ガシャン!!!

 

「い……痛え……帰りてえよ……アヤノぉ(泣)」

 

頭を押さえてゴロンゴロンと左右へ転がる。頭がズキズキするし周りの女子に笑われてる

 

『ご主人(笑)笑わせないでくださいよぉwww』

 

エネの笑い声がイヤホン越しに聞こえる

 

「うお、びっくりした…って、箒?」

 

『ほら、見て下さいよご主人。爽やかイケメン君の一夏君のリアクションアレですよ!?それに対してご主人wwwリアクション芸人いけるんじゃないですかね?wwww』

 

「はぁ、たく。一夏、の後ろにいるあんた。誰だ?突然大声出されたら驚くだろ?」

 

一夏の後ろにいるポニーテールのつり目気味の少女にため息と一緒に話しかける

 

「む、これはすまない。私は篠ノ之箒だ。では行くぞ一夏」

 

「え?行くってどこに?なあ!箒?」

 

「屋上だ!」

 

「…………」

 

『ご、ご主人wなめられてますねwww』

 

エネの言う通り俺は少しこのクラスの女子になめられているようだ。確かに織斑先生に名前を呼ばれただけで裏声で返事したり。18歳の癖にコミュ障の如き自己紹介をするなんてバカにされて当然だろう。だからあの箒と呼ばれる一夏の知り合いにはただ「すまない」と言われただけで頭を下げることもしなかったし。周りの女子の中にはクスクスと俺を笑ってる奴もいる

 

「はぁ……」

 

ため息をついて右手で右目を覆う

 

『あ!ご主人「目に焼き付ける」能力使ってますね?アヤノちゃんを思い出すのも良いんですがほどほどにしたほうがいいですよお。周りから孤立しますよ』

 

確かに俺は今。俺の目に取り憑いてる「目に焼き付ける」能力を使って。輝かしきアヤノとの毎日を思い浮かべていた。そうでもしないともう寂しすぎて死ぬ。恥ずかしすぎて死ぬ。いっそ殺せ

 

「少しだけなら誰も見てないだろ」

 

右手を下ろすと、俺の目は真っ赤に染まっていた。そして目に浮かぶはアヤノの横顔、アヤノの笑顔。アヤノのーーー

 

「ねえー、たろー目〜真っ赤だよー?病気ー?」

 

「の゛ヴァ゛ッッッ!!???」

 

突如俺の目を覗き込む位置まで近づいていた謎の少女の声にびっくりした俺は先ほどのように背中を仰け反った

 

ガツン!!

 

「あぁ……!!痛ぅ……」

 

今度は後ろの席に後頭部を打ち付けてしまった

 

「大丈夫?たろー?」

 

「……だ、だれだよ……?」

 

俺はそう言って目の前の少女を見る。顔を緊張感のないのほほんとした笑顔。袖は余り余ってダボダボ。その手が俺の頭を撫でる

 

「えへへーこれで大丈夫だよ〜たろー?」

 

『ふふ、これでもう大丈夫だよ、シンタロー』

 

「…………」

 

今一瞬アヤノとこいつがダブって見えたような

 

「どうしたの?たろー?」

 

「た、たろー?」

 

「うん!如月シンタローだからーたろ!」

 

『ご主人w家畜同然の呼び名おめでとうございますwwww』

 

「う、るせえぞエネ!?」

 

「?エネネ〜?エネネ〜って誰〜?」

 

ズイッと女がスマホの画面を覗き込む

 

「エネネ〜?」

 

『はぁいエネネですよー』

 

「「「!!??」」」

 

どうやらイヤホンが取れていたらしい。エネの甲高い声が教室中に響いた

 

「エネネは一体何してるの〜?」

 

『う、ぅぅぅ(泣)実はこの悪い男に騙されてこのような姿に……』

 

「バッ!!ーーう、嘘言うんじゃねえよエネ!!」

 

ざわざわと周りが騒ぎ出す。ああ面倒なことになった!なんでこいつはこういう事しか嬉々としてやらないんだ!?

 

「き、如月君って……」

 

「あれ、女の声がするけど……エネ?」

 

「私先生に言おうかしらね」

 

(ああ!くそっ!!初日からこれかよ!?)

 

両手で頭を抱えてしまう。なんで俺だけこんな目にあうのか

 

「たろー?」

 

「………とりあえず、お前誰だよ」

 

はぁぁぁぁぁぁ、と長い溜息を吐きながら俺の眼の前の女に低く呟く

 

「わたしー?わたしーはねー。布仏本音〜よろしくね〜」

 

布仏……か

 

「あ、ああ。よろしくな」

 

キーンコーンカーン

 

良いタイミングでチャイムが鳴った。これ以上この子に構ってられない。この子もどうせ俺より織斑の方が良いだろう

 

(……ああ、なんだ…)

 

そこで無意識に、「目に焼き付ける」が発動し、あの頃の情景が思い浮かぶ

 

(クラスの奴が1人除いて女になっちまって………アヤノがいないだけだ)

 

これは、あの頃の俺だ。アヤノに会うまでの俺で……アヤノがいなくなってからの、俺だ

 

(ひとりぼっちの頃の、俺だ)

 

『ーーーーご主人?』

 

エネの声を聞いてイヤホンを拾ってスマホに刺し、大丈夫だとひとこと告げる

 

ガラッ

 

『あ、ご主人来ましたよ。三国志の英雄シュッセキボ関羽(笑)』

 

どうやら織斑先生のあだ名は関羽で決定らしry

 

ストン!!!

 

「『!!!??』」

 

スマホに残り2、3センチくらいの所で出席簿が机に刺さっ………ただと!!??

 

「如月……誰が三国志の英雄だと……」

 

「は、はひぃ!!!!!」

 

ガタッ!!と椅子から立ち上がって敬礼する。冷や汗はダラダラだ

 

『ご、ご主人必死すぎwwww』

 

「いや……違うな」

 

『!!???』

 

「如月」

 

「は、はい!」

 

「お前のケータイには何か……いるのか?」

 

『!!???』

 

エネの焦った感情が分かる。俺も焦ってるからだ

 

(なんで分かんだよこの人!?)

 

『ちょ、ご主人!この人はやばいです!!?人間じゃないですよ!!』

 

(お前はとりあえず黙れエエエエエ!!!)

 

「まあいい……如月。次は……分かっているな?そこにいる奴にも言っておけ」

 

イツノマニカ目の前に現れた織斑先生が机に突き刺さった出席簿を、スマホを睨みつけながら取った

 

「!!???い、イエスマム!!」

 

『!!???きょ、教卓から1番後ろまで一瞬で移動した!!?』

 

もうなんなんだこの先生は(泣)身体能力オーバースペックすぎて生きたチートだろ。なんでエネの存在に気づく+一瞬で教卓から俺の机まで瞬間移動してんだよぉぉぉ(泣)

 

「さて、山田先生。お願いします」

 

そしてまたイツノマニカ教卓へ瞬間移動し山田という先生にバトンタッチしていた

 

「は、はい!織斑先生」

 

『……ご、ご主人(震)な、なんなんでしょうかね?あの御方……』

 

「生身目を隠すか?」

 

『どっちにしろ人間業ではないですよね』

 

エネも心底びびったらしい。「目を覚ます」によって電脳世界の電子体となったこいつをここまで怯えさせるなんて……

 

「な、なあエネ」

 

『は、はいなんでしょうご主人』

 

「生身じゃあ絶対勝てねぇ」

 

『で、ですね。生身での戦いは諦めましょう。1秒もせずに存在を消されかねないです』

 

遙先輩の「目を醒ます」能力で作られた遙先輩の理想の体。理想のアバター「コノハ」……こいつは遙先輩の望みから生まれたために人外じみた力を持っていたが

 

「コノハでも勝てる気がしない」

 

『「目が冴える」蛇がコノハじゃなくてあの方に取り憑かなくて良かったですね!ご主人。もしそうなってたら勝ち目なかったですよ。一瞬でゲームオーバーでしたね!!』

 

なんだそりゃめっちゃ怖えぇ……

 

こうして俺とエネが内心かなりビビりまくりながら1時間目が始まった

 

 

 

 

 




オーバースペックすぎる人外と致命傷を負っても再生する「目が醒める」コノハ。果たして勝つのは一体………所で今シンタローのISの名前を考えてます。アヤノのISはACFAでアヤノにぴったりの名前があったので「マイブリス」を候補に入れてます。意味は至福らしいです。みんなの幸せを願う大天使アヤノにぴったりですね。シンタローの名前が少し思いつきません。設定としてはISコアにシンタローの「目に焼き付ける」蛇が取り憑きます。陽炎、カゲロウ、ヒーロー、スネ○ク、ジャ○ヌ、メカクシREDなどなど。カゲロウ、陽炎以外はぶっちゃけ適当。誰か良いのないかねー?


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目を背けたくなる話

ども、天敵です。今回は背きたくなる話、シンタローの辱め会です
あんま辱めてないのはご愛敬


 

「ーーーであるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられーーー」

 

『ちょっと!ご主人!授業はちゃんと受けないと分かりませんよ?』

 

「……もう覚えたに決まってんだろ…」

 

左手で頬杖を突いて政府の関係者から渡されたISの参考書をパラパラパラとめくる

 

『ご主人の目に焼き付ける、使えるか使えないかっていうと、微妙ですよねー。何でも忘れないのは良いんですが、たまには忘れたい記憶だってあるんじゃないですか?』

 

イヤホンからエネの甲高い声が響く、因みに授業前に山田先生から。授業中はイヤホンを外して下さい。と言われたが「これは、楯山研次朗が自分用に作ったISサポート用のAIで、分からないことがあればこれに教えてもらってる〜〜」と言うと、「わ、分かりました」と言ってくれて、授業中の使用を許可された

 

(ふふん、どうだエネ。俺だって喋れるんだ。何もコミュ障ってわけじゃねーよ)

 

(とか思ってるんですかねーご主人)

 

スマホの中の電脳世界。そこにいるエネが手に取った動画、そこには

 

「え、とかわこ、これはわは、た、てた楯やみゃ……た、楯山研次朗って研究者がお、おおお、俺用に作ったISサポートのIAでわわ、わ分からないことがあたら、こ、ここれに教えてくぁwせdrftgyふじこlp(^q^)」

「わ、分かりましたので落ち着いてください!し、シンタロー君!?」

 

(ぶふっ!!こ、これはぁ!ご主人動画の中で1、2を争う面白さですねぇ!!www)

 

「えー、ではこの中で分からないところがある人はいませんか?」

 

『ご主人、もう1人の男の子はどうですかぁ?』

 

「あ?ああ、織斑か……」

 

織斑を見ると、キョロキョロと首を動かして左右の女子の教科書を盗み見てるような気がする

 

「ダメみたいだな」

 

『みたいですね』

 

1番前の席の織斑がそれをしているために、山田先生が織斑をみて

 

「織斑くん、何か分からない所がありますか?」

 

にっこりと笑ってぶるんと胸が震えた。エネがブチ切れたような気がしたな

 

「あ、えっと……」

 

微妙な空気がクラス中に広がる。頑張れ織斑負けるな織斑

 

「分からないことがあれば何でも聞いてくださいね。何せ私は先生ですから!」

 

『……チッ……』

 

ドンっと胸を叩く山田先生、完璧エネが舌打ちをした

 

「わかりません!!」

 

ズルッ……

 

頬杖していた手がズレて机に顎をぶつける

 

「あ……痛つ……」

 

顎を手でさすさすと撫でる。スパァーン!どうやら織斑が叩かれたらしい

 

「織斑、入学前に渡したIS参考書は読んだか」

 

『IS参考書ってなんですか?ご主人』

 

「馬鹿みたいに延々と難しい単語単語単語を書き連ねたアホでは分からない分厚いだけが取り柄の本だ。書いたやつは読むやつのこと考えてねえな」

 

『へえ、それ全部覚えたんですよね!ご主人!』

 

「ああ、流石に半日で覚えるのはキツかったな」

 

『え』

 

「?何変な顔してんだ?」

 

「って!俺だけじゃなくて!シンタロー!シンタローも分かんないだろ?な?な?」

 

ざわっと周りの視線が集中する。俺を休憩時間に笑っていた女子は全員、プッと笑っていた

 

「何言ってんだ一夏。あれ、単語が多すぎるだけで、覚えられるだろ?」

 

「!!??」

 

「ほう、ならば如月。瞬時加速とは何だ」

 

瞬時加速なら確か

 

「スラスターから本体に向けてエネルギー放出させて、空間にエネルギーの流れを溜めてからそれを一気に点火させて、 急加速をおこなうもの。 外部から推進力を取り込むことで更に加速する技法だ」

 

『お!流石ですね!ご主人』

 

「なるほど、如月は参考書を捨てずにちゃんと読んで覚えたらしい……織斑、貴様と違ってだ」

 

「う……」

 

「織斑、後で再発行してやるから一週間で全て覚えろ。いいな」

 

「え゛……い、いや、一週間でこの厚さはちょっと……」

 

「私がやれと言っている。いいな!」

 

「う……はい……」

 

「織斑……大丈夫だ。1日もあれば覚えられるだろ」

 

『それはご主人だけだと思いますがね』

 

その後は織斑が隣の席の女子に参考書と一緒に読ませてもらい、何とか授業も終了した

 

キーンコーンカーンコーン

 

「ふぅ、終わったか」

 

『ご主人の面白動画の編集だけで授業が終わっちゃいました!』

 

何してんだお前

 

「おま……そんなもん作ってたのか!?」

 

『はい!メカクシ団のメンバー全員に送る予定ですよ?』

 

「消せ!!??いますぐ!」

 

「なあ!シンタロー!!」

 

「『ん?』」

 

俺の机の前に一夏がいた

 

「俺に!ISの事を教えてくれないか!?」

 

「…なんでだよ」

 

「え、いや、シンタローは全部覚えたんだろ?なら教えてくれたって良いだろ?」

 

「…………」

 

腕を組んで考える

 

『ご主人、なんで迷ってるんですか?一夏少年に気軽に教えてやれば良いんですよ!』

 

(いや、一夏の後ろからくるんだよ。オーラが)

 

『?』

 

(カノやアヤノの親父さんみたいな……なんだ?手ェ出すんじゃねえよ…的な?)

 

『……ああ!はいはい前の休み時間にご主人に謝りもしない舐めプの少女ですね!うわぁ!本当にご主人の事睨んでますよwwwお疲れ様ですご主人w』

 

なんで周りには面倒な奴しかいないのか、俺は、はぁ。とため息をついて織斑を見た

 

「悪いが他をあたってくれ。理由は聞くな」

 

「そんな!!」

 

「その代わり、お前の後ろの…知り合いに教えてもらえ」

 

後ろに向けて指をさす、一夏もそれにつられて後ろを向く。当然一夏の後ろには一夏の知り合いがいて、目を丸くしていた

 

「ほ、箒!」

 

「な、なんだ一夏」

 

「頼む!ISの事を俺に教えてくれ!」

 

「な、何を馬鹿事を…」

 

プイッと箒と呼ばれた女がそっぽを向く

 

『あれ?一夏少年のことが好きなら二つ返事でOKと思うんですが』

 

「あれが世に言うツンデレって奴なんだろ」

 

『あー、損する系のやつですか〜』

 

「俺の先輩にもああいう奴が居たんだよな……」

 

『ア゛ァ゛!?』

 

「………なんでもねーよ」

 

遙先輩も結構苦労してるみたいだしな

 

「シンタロー!本当に教えてくれよ!箒もダメだし!もうシンタローしかいないんだ!!」

 

「な!い、一夏!?」

 

一夏が俺の手を握って涙ながらに言った

 

「お、落ち着け一夏」

 

「きゃ!織斑くんったら大胆!!」

 

「根暗な如月を織斑君が襲っちゃう一×シンかしら?それとも織斑君の前では凶暴化しちゃうシン×一かしら!?」

 

『一×シンwwwww』

 

「織斑!手を離せ!」

 

「し、シンタロー……」

 

はあ、アヤノという最高の彼女がいるのにホモ疑惑なんて持たれてたまるか

 

「……!そうだ、確か鷹月……て人いたよな?髪の両側にヘアピンを付けた……」

 

そう言って周りを見渡す

 

「え、あ、鷹月なら私だけど?」

 

右手をひらりと挙げた少女は自分の記憶通りの、委員長みたいな感じだった

 

「悪りぃけどこいつにISについて教えてやってくれないか?」

 

人差し指で一夏を示す

 

「ふふ、良いわよ、如月君。けど織斑君に教える代わりに、こちらとしても何か対価が欲しいわね」

 

ふふん、と片目を瞑ってお金サインをする鷹月

 

「で、デザートでいいか?」

 

「OKよ」

 

ふ、ふぅ。ここなら確かデザートが安かったはずだ

 

「な、い、一夏!お前は私ではなくこの女に教えてもらう気か!?」

 

このままで終わってれば良かったが、急に一夏の知り合いが暴走した。鷹月をこの女呼ばわりして喚き出した

 

「え、でもお前教えてくれないんだろ?」

 

「お、お前がそこまで言うなら私が教えてやらんこともない」

 

腕組みをしてふん!と鼻息荒くする一夏の知り合い

 

『なんかうざくないですか?ご主人』

 

「気にすんなよ……ええと、悪いな鷹月。この埋め合わせは……デザート奢りでいいか?」

 

「ええ、まあ、仕方ないわね」

 

さしもの鷹月も苦笑いを浮かべた

 

「ありがと〜タロー私のためにデザートを奢ってくれるんだね〜」

 

「ああ、無理だ」

 

「そんなー!!」

 

図々しく自分の分も奢らせようとしてきた布仏を突き放す

 

「鷹月には…俺が頼んだために失礼な事になっちまったっていう事に対する詫びだからな」

 

「なに?」

 

俺の声を聞いて眉を顰める女

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

その時、エネの甲高い声に負けず劣らずな、高飛車のような声が聞こえたーー

 




ぶっちゃけ全体を通して背きたくなる話とわかった自分笑
セシリア戦では閃光の舞姫(笑)エネを出す予定です。全国第2位の実力を、高飛車金髪縦ロールに見せつけろ!!(そしてあの胸の脂肪をもぎ取れ!!巨乳生かす慈悲はない!!)
そして全国第1位は思い出す。閃光の舞をーーーー
(次回予告じゃないし、後2、3話先なんだよなぁ……)


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セシリア・オルコット

お、お久しぶりーですー、天敵です。いや、マジでお久しぶりですねw
ついつい書くのを忘れてまして……今日まで書かなかった始末でございますw申し訳ないですw


「ちょっとよろしくて?」

 

不意に聞こえた甲高い声

 

「あ?」

 

「へ?」

 

俺と織斑が発したのは「はい」とか「分かった」でもない単純な言葉、まあそれでも一応は返事してるとは思うが……この女はそれが気にくわない様だった

 

「まあ!なんですの?そのお返事は?わたくしをイギリス代表候補生でIS学園主席セシリア・オルコットと知ってのお返事ですか!?」

 

「……なに言ってんだこいつ」

 

ボソッと呟いた筈だが勘が良いのか耳が良いのか、このセシリアとかいう女は俺を睨みつけた

 

「あなた!代表候補生の私を知らないのですか!?常識ですわよ!常識!!」

 

「代表候補生ぐらいは知ってるに決まってんだろ……(ドン引き)」

 

セシリアとかいう奴の憤りにぶっちゃけ引いた

 

「ほう?男にしては随分優秀ですわね」

 

(何だこいつ?男だからってバカにしすぎだろ……俺だってモモとISの試合を観戦したり某動画サイトに投稿されたIS操縦者に愛あるコメントを日夜投下したりしてるわ!!)

 

『いやぁ〜ご主人!なめられてる男を代表してこの方に一言ガツンと言っちゃって下さいよ!』

 

うるせえよ、エネ。俺はそう呟こうとしたが、幸か不幸か……この場合は不幸だろう。なめられてる男を代表して一言爆弾を投下したのは、俺ではなく、織斑の方だった

 

「なあ、代表候補生って、何だ?」

 

驚異の発言に俺はまた頬杖をついていた手から顎が外れ、机に顔をぶつけてしまった

 

「ブッ!!!お、おま!一夏!お前代表候補生を知らないのか?」

 

「え!シンタローは知ってんのか?」

 

本当に驚いた様にびっくりする一夏

 

「まあな……と言っても他の国には興味がないし…俺だって代表候補生で知ってるのは日本の人だけだ」

 

ケホケホと、咳き込みながらそう言うと、金髪縦ロールがはぁ、と盛大にため息をつきながら肩を落とした

 

「常識である代表候補生も知らない猿に知ったかぶりの低脳の猿ですか……やはり男ですわね……それにこの国にはテレビがないのでしょうか?……常識ですわよ、常識。いえ、ですがここまで低脳の……東洋の猿にこれほどの難問を問いかけたわたくしも悪いのでしょう……ええ、きっとそうですわ」

 

『いやぁ、この女かなりうざいですね!ご主人!流石IS学園です!』

 

「流石じゃねえだろ……はぁ」

 

「まあ良いですわ、そんな常識も何もない貴方方にこのセシリア・オルコットが直々にISについて教えて差し上げましょう。これはきっと貴方方の人生の中で1番の幸せですわよ?」

 

幸せ。俺はセシリアという女の言う言葉は、あいつの、アヤノの好きな言葉とは…全く別物の様な気がした

 

「え、別に良いぜ、俺は箒が教えてくれるらしいし」

 

「な!いつの間にそんな話にまで進んだのだ!一夏!」

 

「え?教えてくれるんじゃなかったのか?」

 

「ん、ま、まあそこまで言うなら教えてやらんことない……ふふふ」

 

「『うわあ……』」

 

篠ノ之の発言にマジでドン引きした。俺以外にも鷹月や他の奴もドン引きしてる様だ

 

「そうですか、貴女には教えてくれる人がいるのですか、ならそこの貴方、わたくしがISについて教えて差し上げますが?」

 

ビシッと俺の鼻先へ人差し指を突きつける金髪

 

「別に、俺はISなら教えられなくても問題ないからな」

 

「ほう?でしたら貴方にIS動作を教えましょうか?わたくしはイギリス代表候補生ですので、そういった指導も辞さなくてよ?」

 

面倒な奴だ、俺そう思い小さく溜息を零すと、俺を見てお疲れ様、と苦笑しながら、我関せず、といった風に腕を組んだ鷹月と目があった

 

「………いや、俺は鷹月に教えてもらうから良いぞ」

 

「な!」

 

「え!ちょ、如月くん!?」

 

「良いじゃねえか、織斑の代わりに俺を教えるだけだし、デザートは奢るから」

 

頼む、と言うと、鷹月も仕方ないわね。と了承してくれた

 

「な、な、な……」

 

金髪女の顔が赤に染まる

 

「あ、貴方たryキーーンコーーンカーーンコーーン」

 

大声で叫ぼうとした瞬間チャイムが鳴る。鷹月や織斑も席に帰る様だ、グッと堪えた金髪女はまた来ますわ、と言って自分の席に帰って行った

 

「はぁ」

 

『お疲れ様ですご主人!ていうか代表候補生なんてコアなファンや人気急上昇中の超新星とか、自分の国の候補生以外なんて見ることないと思うんですけどね!』

 

「まったくだ。それに、日本の代表候補生の……更識簪だって、お前がネット回線を弄ってなきゃ目につかなかったしな」

 

以前俺が知識ゼロから始めた音楽同人誌活動中にエネが『これは見たほうが良いです!ご主人!!』と無理やりISの試合の中継に接続させやがって強制的に見せやがったのだ

 

「てか、お前。なんで更識簪ってISの代表候補生を知ってたんだよ」

 

『え?……いや、それは……ま!色々とあるんですよ!ご主人』

 

「何慌ててんだこいつ……」

 

柄にもなく大層慌ててるエネの声を聞いて、頬杖をつきながらボソッと呟く。その時ガラッと扉が開いて織斑先生が入って来た

 

「それでは授業を始める……と、言いたいところだが、先にクラス代表生を決める」

 

「うげ、クラス代表ぉ?」

 

織斑先生の言った言葉に眉を顰める

 

「クラス代表は、まあ、クラスの委員長みたいなものだ。クラス代表は自推他推構わん」

 

『これって私にも他推権があるんですかね?あったらご主人を迷わず選ぶんですがね!』

 

やめろ、それだけはマジでやめろ

 

「はいはーい!私は織斑君を推薦しまーす!」

 

「私も私もー!」

 

「やっぱコミュ障より爽やかイケメンよね!」

 

『ぶふっ、コミュ障…w…』

 

「笑ってんじゃねえよ!」

 

「納得がいきませんわ!!」

 

ワイワイと教室が騒ぐ中で、突如、バンっと机を手で叩きつけて金髪が立ち上がった

 

「そのような選出は認められません!!大体、男がいるだけでも我慢ならないというのに、ましてやクラス代表だなんてとんだ恥さらしですわ!!わたくしに……このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと申しておるのですかっ!!??そもそも!!クラス代表になるのはこのクラスで1番の実力を持つ者!そしてそれはわたくしですわ!!」

 

「す、すげー自信だな……」

 

『ご主人もあれぐらいのコミュ力待ってたらイケニートなんですけどね!』

 

「あんぐらい喋れても俺はニートなのか……ニートの運命は避けては通れないのか……」

 

『な〜に言ってるんですか!ご主人。ご主人以外に妹さんの収入にしがみつくヒモ野郎の自宅警備員職のニートがいるわけないじゃないですか〜』

 

「ぐく………」

 

何も言い返せねえのがめちゃくちゃ悔しい……

 

「〜〜それを物珍しいからとISについてなんの知識もない猿にクラス代表をされては困ります!!わたくしはこのような島国までIS技術の授業に来てあげているのであって!サーカスをする気は毛頭もございませんわ!!」

 

「うわぁ……あいつには関わらねえ方がいいな……プライドが高すぎてそこら中に敵を作るタイプだぜ……」

 

『ですよねえ……周りの女の子も睨んでますよ?ってかwイギリスも島国なwんwでwすwがwwwwwwwあの子の頭はボケてるんでしょうか?www』

 

「………それほど頭にキてんじゃねーのか?」

 

てかエネの奴バカ笑いしてるけど、これめちゃくちゃキレてるし、織斑先生の負のオーラがドス黒くなってるし……願わくばこれ以上何も起きな

 

「大体、文化としても更新的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛でーーー「イギリスだって大したお国自慢なんてないだろ!世界一不味い料理で何年制覇だよ!!」」

 

『よく言いました!!一夏少年!!!』

 

「ああああ!!やめろ!エネエエエエエエ!!!!???」

 

突如エネが教室のスクリーンを乗っ取り、画面分割状態で『イギリスの食生活』というロゴで始まったイギリスのお手製料理の数々。食リポ?らしき男性と女性がその中の一つに口をつけて

 

『あ、あ、う、うまオロロロロロロロロロロロロry』

 

『きゃぁぁ!?う、うぷ……ウオロロロロロロロロロロロロロロロロry』

 

食リポの男性と女性が吐いた瞬間『見せられないよ(^p^)』という文字が出てきたが、音声はそのまま流れていて、クラスの女子も数人が顔色を青くして顔を伏せていた。中には口を両手で防いでる子もいる

 

ーーーかくいう俺も

 

「うっぷ………」

 

『ちょ、ちょお!?ご主人!!??吐くんですか!?いや、ちょ、吐かないでくださいよ!?』

 

「う、だ、だったらあんなの見せんじゃ……おっぷ………うぷ……や、やべえ……うっぷ、朝飲んだコーラが………うぷ」

 

『ご主人はすぐ吐くんですからコーラなんて飲まないでくださいよ!!!』

 

「お、俺にコーラを飲むなだと……?うぷ、お、織斑先生………と、トイレに行っても良い……ですか……?オエっ……」

 

片手で口を閉じてプルプルと震える右手を挙げて、織斑先生に訴えかける

 

「………」

 

しかしあの鬼は腕組みをして俺をただ見つめていた

 

「織゛斑゛先゛生゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!?」

 

「し、シンタロー君!!わ、私が許可をしますので早くトイレに……」

 

山田先生がかなり慌てて叫んだと同時に俺は椅子から立ち上がって教室を出る

 

「あ゛……男子用のトイレってどこですか!?ウエッ……」

 

「わ、私も一緒に行きますので!!!も、もう少し我慢してくださいいいいいい!!?」

 

山田先生に片腕を思いっきり引っ張られて教室を出る。廊下に出た後でも『これは侮辱ですわっ!!!我が国とこの!!イギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットに対する!!!ゆ、許せませんわぁぁぁ!!!如月シンタロー!!!!』やら『あ!お前!!日本をバカにした挙句今度はシンタローまでバカにするのか!?』とか聞こえた……聞こえたくなかった………聞こえてしまった………そして何でセシリア・オルコットの怒りの矛先が俺に向いたのか理解が出来なかった

 

「山田…先生……こんな俺に優しくしてくれてありがとうございます………途中で力尽きた時は俺の事は見捨てて下さい……」

 

「何言ってるんですか!?シンタロー君!!先生は教え子を絶対に見捨てませんよ!!そして私の教え子の中にはシンタロー君もいるんですから!!私は見捨てません!!!」

 

「山田先生……」

 

山田先生の叱咤に胸が熱くなる。思わず涙ぐんでしまい、それを乱暴に片手で拭う。そして俺氏シンタローは山田先生に連れられて意識も朦朧の中、何とか男子トイレ(仮設)へ到着。こんな姿は絶対にアヤノには見せられないと思いつつも口から「ピーーーー」を延々と垂れ流し続けた

 

 

 

 

 

♡ 数 分 後 ♡

 

ガララララ………

 

「む、帰ってきたか、如月」

 

「あ゛………はい……ありがとう……ござい…ます………」

 

やっとあの地獄から帰ってきたっていうのにその言葉はねーだろ………

 

と、内心織斑先生の対応にげんなりしつつ、席に着くと、織斑先生の声が響く

 

「それでは如月も帰って来た事だし、勝負は一週間の月曜日!放課後、第3アリーナで行う!織斑とオルコット、そして如月はそれぞれで準備をするように!!以上」

 

「…………………………………………………………………………………………………は?」

 

理解出来ずに山田先生を振り返るが、どこか同情するように、哀れみのような瞳で俺を見つめる山田先生に俺は考える事を放棄した

 

帰りてえ……そしてあの生活に戻りてえ……ただそれだけを呟いて

 




山田先生ェェェとの間にフラグが芽生える感じでしょうか?アヤノを差し置いてこれはこれはwリア充爆死しろ
とりあえずあと2話くらいで戦闘に行くと思います。ボッコボコにしてやりたいですね!(黒笑)
とりあえず相部屋を誰にするか迷ってます。会長にするか、鷹月さんにするか……


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どう見ても変態痴女な話

どーも、天敵です。あけおめです。ことよろです。と言うわけでタイトルからシンタローの同室がワカッタヒトハドミナントーーー!
まあ、あの人は天敵が思うにビッチぶった清純。いや、可愛いよ、ショートヘアは正義。うん。アヤノは天使。これ確定な


授業が終わり。俺にとって長すぎる1日が終了した

 

「はぁぁぁ、やっと終わった……とりあえず帰るか」

 

荷物を持って椅子から立ち上がる、廊下を出ると、俺の姿を見つけた山田先生が声をかけてきた

 

「あ、如月君!」

 

「あれ、どしたんすか?山田先生」

 

「いやぁ、えっと実はかくかくしかじかでして……」

 

山田先生が言うには俺と織斑は各国による人攫いなどの人的被害の行動を警戒してIS学園の寮で生活する事になったらしい。そして山田先生は職員室へ俺たちの鍵を渡すために離れる、と

 

「………IS学園の寮か………」

 

げんなりとした表情で教室へ来た道を戻る

 

『いいじゃないですかぁ、ご主人。男にとっちゃパラダイスみたいなもんじゃないですか?』

 

「同室が女だったら色々気にしないといけないだろ……逆にこっちが疲れるわ……」

 

にしても、同室が女だったら………か

 

『アヤノちゃんと同室になったらいいなぁ!とか!おもってぇ?wwませんよね!?wご主人www』

 

「ブッ!?バッ、んなこと……」

 

『ご主人の気持ちもわかりますよぉ〜?女の子と同室ですと、抜けませんもんねー?その点アヤノちゃんでしたら微笑ましく見守ってくれるかも……いやいや!毎晩ご主人のために頑張って……ハッ…!仕舞いには妊……娠』

 

「おいエネ、バカなこと考えてねーでブルーティアーズの情報よこせ」

 

これ以上のさばらせておくとその内カノや親父さんとよからぬことしでかしそうだな。こいう

 

『あーはいはい。でもこの機体つまんないですよぉ?中距離射撃レーザーライフル一丁とレーザービットが4基にミサイルビットが2基。近接用のショートブレードが一振り。これだけです』

 

エネが表示したブルーティアーズの動画を見ながら顎に手を置く

 

「意味、わかんねえな。なんで中距離射撃型なんだ?見る限り、移動しながら撃つより止まってから撃ってる方が射撃の精度は高いし、長距離からの狙撃の方が相性いいと思うんだが」

 

『あー、それはですね!ブルーティアーズがBT兵器、ビットを使った機体の試作機だからですよ!ご主人』

 

ビットか、とエネがハッキングしてパクってきたブルーティアーズの稼働試験動画を見ながら首を傾げる

 

「………ビット使ってる時止まってんだが?」

 

動画の中のセシリアの挙動に、ますます顔を顰める。これがフェイクなのであれば凄え演技力だが、見る限りそんな気はしない

 

『イギリス代表候補生(笑)の実力がそれほどにもないって事ですよ、ご主人。ご主人の得意な長距離狙撃だけで勝ちますよぉ!』

 

「………ふーん、そういえば俺の機体にもビットがあったよな……ええと」

 

『カゲロウ・アイズですかぁ?あのダメ人間から完成したとは聞いてますよー?』

 

もう出来てんのかよ、アヤノの親父さん。本当研究者としては優秀なんだけどな

 

『人間としてはクズのクズですからねぇ!あれはもうTHE人間のクズですよ!!』

 

「分かった分かった。少し落ち着け」

 

未だにアヤノの親父さんにされた事を根に持ってるらしい。まあ、当然か?

 

「あ、如月君……それに織斑君も!まだ教室にいてくれたんですねっ!!」

 

「ああ、はい、シンタローが教室に残ってろって言ってたから」

 

山田先生がはあはあと肩で息をしながら入ってきた。まさか職員室からここまで走ってきたのか?仮にも教師だろ?廊下走っていいのかよ

 

「とりあえず、寮の部屋が決まったのでそのお知らせと、部屋の鍵を渡しにきました」

 

「え?俺の部屋はまだ決まってないから、入学してからしばらくは自宅からの登校って…前に聞いたんですけど……」

 

「それについても話しておきたいのですが………」

 

驚いた一夏と、真剣な表情の山田先生、その中で片手を挙げる

 

「悪いけど、俺は事前に山田先生から話は聞いてるし、鍵をもらって早速部屋に入っていいっすか?」

 

「あ、はい!如月君は2007ですね!織斑君とは違う部屋になりますので気をつけてくださいねっ!」

 

「…………はあ、そうっすか。分かりました」

 

「ええ!?俺はシンタローと同室じゃないんですか?……はぁ……ってシンタロー!おれを一人にするのかよー」

 

机に突っ伏した一夏が拗ねたように口を尖らせる

 

「悪りーな織斑。俺はもう疲れたんだよ……」

 

ぐったりした表情で鍵を受け取って教室を出る。教室から「え、ええ!?お、織斑君!女の子に興味がないんですかっ!!??」と、大音量で山田先生の声が響いたので思わず足を止めて教室を振り返ってしまった

 

『あー……ご主人。お尻の処女を掘られないように気をつけて下さい……ね?』

 

珍しくエネまで俺の心配をしてきた

 

「あ、ああ。そうだな……い、一夏がまさか……」

 

ホモなのか。と呟こうとすると、ドンっと誰かにぶつかったので尻餅をついた

 

「い痛……誰だよ……って、織斑先生!?」

 

上を見上げると、織斑先生がわなわなと震えていた

 

「い、一夏………めっきり会わなくなってから……お前はホモになっててしまったのか?……いや、そんな事はない……。私は信じてるぞ一夏………」

 

『うはぁ……IS学園にはろくな人がいないですねぇご主人……』

 

この言葉を聞いて、お前もな。と思ったが口には出さずに記憶の通りに学生寮へと歩みを進めた

 

 

 

 

 

「ええーと、番号は……2007か……」

 

『にしても!ご主人の同室って一体誰なんですかねえ!?気の合う人だったらいいんですけど!!』

 

「……お前と同じような奴がもう一人なんて頭痛がするぜ……はぁ………」

 

部屋の前でコンコンと叩く………事はせずにそのままガチャッとドアノブを回して扉を開く

 

「入るぞー」

 

「え!?も、もう来てるの!?きゃっ!?」

 

女特有の高い声と共に俺の前に現れたのは……………

 

「……………………」

 

「あ………え……あはっ…?」

 

目の前にいたのは、一見痴女ビッチ丸出しの裸エプロン女だった………しかも俺が来ることを予期していなかったのか、上半身までエプロンを着ていないので、両手で胸を隠すように抑えていた

 

「…え……あ………ええと………その………」

 

「う……な……お、お前………うぬ…の……」

 

こちらも軽くパニック状態だが相手もかなり混乱しているようだ

 

『ご主人んんんんん?あ、アヤノちゃんを差し置いてこんな胸がでかいだけのファッキン痴女ビッチの胸を何ジロジロ見てんですかぁっ!!!??こんなっ!!!胸がでかいだけの!!!変態女のおおおおおお!!!!!』

 

「え、エネッ!?ちょ、おまっ!落ち着けっ!?」

 

エネの指摘にハッと目線を女の胸から顔まで上げる。女は白い肌に青い髪の毛をした、同じ日本人とは思えない奴だった

 

「き、如月君……た、確かに私も胸をそんなにジロジロ見られるのは……は、恥ずかしいかな………」

 

女の方もなにやらモジモジしだし、頰も紅潮している

 

『あ゛あ゛ん゛!!?な!に!が!恥ずかしいだぁぁぁ!!?このクソビッチがぁぁぁ!!??胸かっ!?そんなに自分の胸が大きいのが嬉しいか!?ぁぁぁ!!??』

 

頭に血が上りすぎてブチ切れたエネは口調も荒くなり。貴音本来の本性が現れた

 

「え、えええ!!??」

 

「え、エネッ!?おまっ!?貴音が出てるぞ!?」

 

『ア゛ーーーーー!!!ア゛ーーー!!!もーーいーーですぅ!!!こんなファッキン痴女ビッチも!!そいつの胸に視線釘付けのご主人ももう知りません!!!この際大騒ぎして織斑先生呼んでやりますからっ!!!以前ご主人をビビらず時に使ったあの爆音アラームをパワーアップした奴使ってやりますよぉぉ!!!!』

 

「はぁ!!??おまっ!?アレのパワーアップ版だと!?バカかお前!?織斑先生が速攻で来るだろ!?」

 

「え?え?え?一体何のこと!?ねえ!?如月君っ!!?」

 

「そ、そう言えば元はと言えばお前のせいだっ!!これはお前が持っとけっ!!?」

 

「ええっ!!?ちょっと………」

 

言うなり持っている携帯を目の前の女に投げつける。反射的に受け取った女は焦りながらそれを持っているが、俺はその時にはもう部屋の外に出ていた

 

「ちょ、ちょ、ちょっと………」

 

バタン

 

『ーーーーーーーーーッッッ!!!!!!ーーーーーーーーーーーッッッ!!??』

 

『キャァァァァァーーーーーーーッッッ!!!???』

 

「う、うおっ………」

 

以前よりパワーアップしているというのは伊達じゃなかったようだ。あまりのうるささに思わず両手で耳を塞いだ。中にいる女は気の毒だな……

 

「き、如月君、これ。なに?」

 

「……お……あ……た、鷹月…か……」

 

カチャッという音がして向かいの部屋から現れたのはクラスメートの鷹月だった。他にもちらほらと部屋から女子がたくさん出てくる

 

「わ、悪い。起こしちまったか……?」

 

「え?あ、別にまだ眠る時間じゃないから良いけど……急にアラーム?が響いたから本当驚いたわよ?」

 

「そ、そうか………悪い……」

 

気まずくなって頭をかく。すると、遠くから「さっきの一体誰だ!?馬鹿者共がァッーーーーーーーー!!!!」という織斑先生の怒鳴り声が響き渡った

 

「おわ、や、やべえ……織斑先生ガチ切れじゃねえか………お、終わった……確実に死ぬ」

 

今の織斑先生に何を言っても聞きはしないだろう。思いっきりぶん殴られる=自宅警備員の俺死

 

「た、頼む!鷹月っ!!い、一生のお願いだっ!!助けてくれっ!!?」

 

ガシッと鷹月の両肩を掴む。ビクッと鷹月が怯えるが、直ぐに腕組みをしてため息をつく

 

「し、仕方ないわね……」

 

「本当に悪い……だけど元はと言えば部屋にいる変態のせいなんだ………」

 

「馬鹿者共おぉぉぉぉおお!!!!!!」

 

「っ!!?や、やべえ!?鬼が来たっ!?」

 

「こっち!如月君っ!!」

 

ギュッと手を握られて向かいの部屋に連れられる。入った瞬間、初めてアヤノの部屋に入った時のような。女の子の部屋という感じの良い匂いがした

 

「さ、入って。如月君」

 

「お、おう……」

 

バタン、と扉を閉めると、廊下で

「楯無イィィィィィィィィイイイイイ!!! 貴様かぁぁぁ!!!良い度胸だ!キサマッ!!キサラギ共々八つ裂きに………んん!?貴様だけか……?まあ、いい。それでは貴様に地獄を見せてやろうっ!!」

 

その直後、あの女の悲鳴が何十秒も響き、突然途切れた

 

「……………うへ……あ、あそこにいたら今頃ヤバかったな……た、助かったぜ、鷹月」

 

戦々恐々して身震いをする。あの惨劇の間中ずっと全身の鳥肌が立っていたらしい

 

「ん、まあいいわよ。それより、これで貸し1ね如月君」

 

ふふん、とドヤ顔をしながらそう言う鷹月にマジかよ……と呟き、体を脱力させる

 

「それより、俺がいない間に何であんな話になったのか聞かせてくれよ」

 

聞くべきはそう。勝手にエントリーされたクラス代表決定戦の事だ

 

「あー、あれ?如月君がトイレに行ってる間に二人で勝手にヒートアップしちゃって、とんとん拍子に話が進んで何故か如月君も巻き込まれたのよ。あ、巻き込んだのは織斑君ね。災難だったわね、如月君も」

 

「織斑ェェェ……あの野郎……はぁ……ったく、マジかよ」

 

ニートは陽の光を浴びることは許されないのだ。などと中二的なことを考えていると、鷹月の目つきが真剣なものになった

 

「ね、如月君。私が言うのも何だけど、勝機はあるの?」

 

「……なんでだ?相手のスペックは把握したし。何も問題はねえよ」

 

「何も問題はって……仮にも相手はイギリスの代表候補生よ?実力も経験も……稼働時間だって違すぎるわよ!?下手したら……3秒も経たずに負けるかも……むぐっ……」

 

ーーしれない。そう言おうとした鷹月の口を塞いで、呆れるようにこう呟いた

 

「それはねーよ……その逆、俺が3秒であいつを叩きのめす事は在っても、俺が負ける事はねえ」

 

悪い、長居したな。と言ってスッと立ち上がる。扉に手をかけたところで、鷹月が呟く

 

「……根拠はあるの?ううん、一週間後、如月君がイギリス代表候補生のセシリアに勝てるだけの勝率が如月君にはあるの?」

 

キィィ、と扉を開けて、外に出る。そこで首だけを動かして目線を鷹月に合わせる。目と目が合った時。俺はこう言った

 

「悔しいけど……100パー」

 

ポカンとする鷹月を置いて扉を閉める。自分の部屋に戻ると青い髪の女が正座していて、織斑先生が恐ろしい殺気を放っていた

 

「あっ!如月君!!!貴方も私が悪いんじゃないことを織斑先生に言ってちょうだい!!」

 

「はぁ?」

 

何言ってんだこいつ。お前があんな格好してるからエネが面倒くさい事したんだろ?と呆れ気味にため息をつくと

 

「如月、楯無はこう言ってるがお前はどうなんだ?」

 

織斑先生が俺へと殺気の矛を向けてきた

 

「そそそそそそそそ、そそ、そ、そうですねねねねれねねね」

 

瞬時に汗が噴き出してきてダラダラと冷や汗が溢れる。体がガタガタと震え。歯もガチガチと鳴って口が回らない

 

「そそそ、そ!そいつです!!全部そいつが悪いです!それじゃあ俺はこれで!!」

 

「ちょ!?如月君っ!!?」

 

「楯無、それじゃあ後の話は職員室でゆっくり聞こうかァ………」

 

「如月くーーーーーーーーーーん!!!!!」

 

ドナドナドナァと聞こえそうな感じで首を掴まれて織斑先生に引きずられていく楯無。それを見て俺はエネに向かってこう言った

 

「本当にアレがこの学園最強のIS搭乗者だなんてびっくりだよな」

 

『そうですねぇ……最初はムカつく女だと思いましたが、ブルーティアーズの前に見た動画でのあの女の動きは格段に違いましたからねえ……実質最強も頷けます』

 

エネがいつものおちゃらけた感じとは違う神妙な雰囲気でそう言ったので、俺はつい笑ってしまった

 

「へえ…お前が素直に褒めるなんて珍しいな……なんかウイルスにでも引っかかったか?それともバグか?」

 

『んなっ!?ご主人!?それ酷すぎません!?だからご主人にはデリカシーが無いって妹さんからも言われるんですよォッ!?』

 

うるせえな、と呟いて部屋の中にある自分の荷物を整理する。一応持ってきたパソコンの中へエネに入ってもらって、あの女や別の誰かがなんらかのバグやウイルス。仕掛けなどを工作した形跡が無いか見て貰う。その後エネ専用ゴミ箱の中に大量のトラップが注ぎ込まれていく。それらは後でエネが分析し、そのまんま相手の元へ帰っていく。しかも自動で相手のパソコンに感染する。と言うかエネに見つかった時点で場所は特定され。エネのバックアップがそこで繁殖。大量のエネが大暴れする。かく言う俺のPCの中は、エネのバックアップだらけなのだが

 

『これどうします?ご主人』

 

「適当に誰のか特定しといてくれ。後で織斑先生に報告するから」

 

『分かりましたー!』

 

それだけ言って画面が黒くなったPCをパタンと閉じて部屋の電気を消す。そしてベットへダイブしてその日の疲れを癒すために目を閉じた

 

(ああ、疲れた……今度織斑先生から許可貰ったら家に帰って殿をこの部屋に連れてこよう……こんな地獄の中で織斑はホモで油断出来ない………今はもう殿だけが唯一の癒しだ……はぁ……)

 

 

 

ーーーーこの日は、初めて穴倉から出たニートにはとても辛い1日だったーーーー




はい、今回なんか長えなーとか思いました?デスです。なんか書いてたら6,000次ピッタシでした。結構嬉しい。それより早くセシリア戦が描きたい。ボコボコにしたい。カゲロウ・アイズは今の所。目を隠す 目を欺く 目を醒ます 目を覚ます かな?使うの。機会に乗り移れる覚ますと自身の望みに反映して変化する醒ます。この醒ます覚ますはコンビで使ってこそ真価を発揮するものだとセシリア戦で教えてやろう!ふふふふふふふふふふ!!


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kagero eyes

お久しぶりです!天敵です!長かった!!やっとあのクソアマをぶちのめすぜええええ!!ヒャッハーーーーーー!!!って言うのが次話。まあ、今回の話も多分楽しんでいただけると思います。多分ね


一週間まで割愛

 

「……タローく………ローくん……」

 

「ん………」

 

ゆさゆさと誰かに身体を揺すられて名前を呼ばれる。一体誰だよ……俺は眠いんだ…寝かせろよ……

 

「シンタロー……シンタローくん…シンタローくん!」

 

う……なんだ?…朝か………

 

「くぁ……ふぁーあ………」

 

「やっと起きたわね、シンタローくん」

 

「あぁ、変態か……」

 

「その呼び方はちょっと不名誉なんだけど?」

 

「じゃあ一週間前にであんな格好してんじゃ……ブッ!!!!」

 

楯無という名の同居人に毛布を剥ぎ取られたため、文句を言ってやろうと思って顔を上げると、剥ぎ取った毛布で肌の露わな胸などを隠す楯無が目の前に………いた

 

「バッ!!?な、ななな、何やってんだお前は!?へ、変態だ!!」

 

ひええええ!?と情けない悲鳴をあげながら両手で顔を隠す。ただ、指の間が少し開いているのはご愛嬌

 

「えー?そんな事言ったって、昨日のシンタロー君が」

 

「は、はあ!?俺!?」

 

「ええ、シンタローくんって、結構……その、乱暴さんなのね」

 

ポッた顔を染めて頬を手で覆い隠す楯無に、俺は冷や汗がダラダラと零れ落ち、オロオロとする

 

(やべえやべえやべえやべえやべえやべえやべえやべえやべえやべえやべえやべえやべえやべえやべえやべえやべえ!!??)

 

何がやべえかっていうとこれがエネにばれる事。それの何がやべえかっていうとあいつは必ずアヤノに言っちまう可能性が高いって事

 

(え、えええ、エネは!!?)

 

キョロキョロと顔を回すがエネは何処にもいない。ホッと一安心する、が

 

『ごっしゅじーんwwwwwみんなのアイドルエネちゃんはここですよーーー!!!』

 

「んなっ!!?えええ!エネェ!?」

 

「ふふふ、エネちゃん大成功ね」

 

見ると楯無の手に、録画モードの俺の携帯が握られていた

 

「お、お前ら……」

 

『あ!おはようございますご主人ww』

 

「おはようシンタローくん」

 

よく見ると楯無は裸エプロンだった。何だ。裸エプロンか、裸エプロンならだいじょう

 

「な、わけねえだろっ!バカか!?お前は!」

 

「む、し、シンタローくんの頭脳だったら周りの子みんなバカに見えちゃうかもしれないけど」

 

唇を尖らせて不平不満を吐き散らす楯無に怒る気力も湧かない

 

「俺は今現在のお前の格好を言ってんだよ………はぁ」

 

頭を押さえて軽くため息をつく。今の時間は……まだ5時じゃねえか……

 

「もう少し寝かせろよ………」

 

「ダメよシンタロー君。少しふざけちゃったとはいえ目は覚めたでしょ?ほら、今日はシンタロー君が使う専用武器の受け取りの日で、その後織斑君とオルコットさんとの試合なんだから」

 

「試合……?…あぁ……あったな……そんなのが……」

 

一夏とオルコットが勝手に俺を巻き込んだ奴だろ?……面倒くせえな……

 

「ほら!先方はもうIS学園に着いてるんだから、支度して!シンタロー君」

 

『あ!そうでしたご主人。実は今回ダメ人間が作った専用武器を持ってきてるのに妹さんも付いてきてるので早めに行かないと』

 

「ちくしよおおおおおおおお!!!」

 

ガバッと毛布を剥ぎ取って支度をする。モモの奴がIS学園に来てる?あいつ、今でも偶に能力が暴走するからな……

 

『あ!あとアヤry』

 

「アヤノおおおおおおおおおおおあおおおおおおお!!!!!」

 

制服に着替えてドアを開けて一目散に受け取り先のアリーナへ突っ走る。待ってろ!アヤノ!今行くぞっ☆

 

「は、早………」

 

『はぁー、ご主人はぁ相変わらずアヤノちゃんラブですねぇ……かいちょーさんも行きましょーか』

 

「そうね、エネちゃん」

 

 

 

 

 

アリーナ

 

「あら?」

 

『どうしたんですかぁ?かいちょーさん』

 

アリーナの入り口で立ち止まり、キョロキョロと辺りを見回す楯無

 

「先に行ったはずのシンタロー君がいないんだけど……?」

 

もしかして誰かに襲われた?不穏な気配を予感した楯無をよそに

 

『なるほど!これは事件ですね!!』

 

自重しない電子体ははしゃぎまくる

 

「え、エネちゃん?」

 

『ふむ、ふむふむ。まずはじめにご主人がここに来ていない要因を整理しましょう!』

 

携帯画面では探偵の格好をしたエネが電脳世界を歩き回っていた

 

『要因1、ご主人がここへ至るまでの道を知らない。これはご主人の記憶力……目の能力を考えればありえませんね。続いて要因2、アヤノちゃん(笑)と何処かへ逢いびき……ブフッ………これもあのアヤノちゃんだからありえないとして……最後の要因3』

 

ううむ、とエネが顎に手をやる

 

『元ニートのご主人の体力がなさすぎてここに来るまでに力尽きている。まあ、これですかねぇ……』

 

「え?ここに来るまでに?そんな……」

 

ありえないと言おうとする楯無の後ろで誰かがザッとアリーナに入ってきたようだ

 

「お、お前ら……ぜぇ…ぜぇ……は、速えじゃねえか……ぜぇぜぇ」

 

!!?ーー衝撃を受けた楯無と腹を抱えて電脳世界を転がりまくるエネ。彼女たちの目の前にいたのは、アリーナにたどり着く道中で体力が尽きてコーラを飲んだ挙句、アリーナ入り口のトイレで先ほどまでゲロっていたシンタローである

 

「し、シンタロー君?」

 

「お、おう……ぜぇぜぇ……で?あ、アヤノは……何処だ?……ぜぇぜぇ」

 

『アヤノちゃんwでしたらアリーナの真ん中ですよ!ご主人wwww』

 

シンタローが顔を上げれば、アリーナの真ん中、コンテナにISのコンソールを接続してPCで尋常じゃないスピードでカタカタとキーボードを叩く男の隣、赤いマフラーを首にかけry

 

「アヤノおおおおおおおおおおおあおおお!!!」

 

「シンタロー君!!?」

 

先程までげっそりした顔でよろよろと歩いていたシンタローの目がカッと見開き雄叫びを上げて赤いマフラーをした黒髪少女の元へ駆け出した

 

「あ、アヤノ!」

 

「!」

 

シンタローが声をかけると、今までPCこ画面を覗いていた少女がパッと顔を上げ、シンタローの顔を見てニコッと笑う

 

「シンタローっ!」

 

「アヤノ!」

 

そして二人共抱きつくかと思われたが……

 

「ほんっとに…久し振りだねぇ、シンタロー」

 

「?……アヤノ、能力を使ってんのか?目が赤く………」

 

「うふ、ぷぷぷ………やあ!シンタロー君!ひっさしぶり〜」

 

ぐにゃぁ、とシンタローの視界からアヤノの姿が変わっていく

 

「なっ、お、お前……!」

 

そして赤いマフラーをたなびかせる黒髪の少女は、いつの間にか。猫のように大きなつり目と、人を食ったようなニヤリという顔で嗤う、黒いパーカーを羽織った少年に変わっていた

 

「カノっ!!」

 

「俺もいるぞ、シンタロー」

 

「私もだよ!お兄ちゃん」

 

今度は何もない空間から突如二人の女性が現れた

 

「キドに…それにモモ!それによく見ればアヤノの親父さんもいるじゃねえか……」

 

PCを尋常じゃないスピードでキーボードを叩いてるのはアヤノの親父さん。楯山研次朗だった。てかキーボード叩くスピード速えぇ

 

「って、お前ら何でここに来たんだよ?」

 

「んー?いやぁ、久々にシンタロー君に会えることだし?」

 

「ついでだからな。メカクシ団の団長として団員がちゃんとやってるのを見とかないとな……それと、セトはバイトだ。マリーは家で母さんとお留守番……姉さんは…まあ、あとで分かるだろ」

 

フフンと得意げな顔のキドにアリーナを興味深そうに見渡すモモ。俺を見てニヤニヤしているカノ

 

「はぁ、それで?それが俺の専用武器か?」

 

「あぁ、父さん」

 

「キードっ、父さんは今集中してるから話しかけても意味ないよ〜」

 

試しにカノがPCとアヤノの親父さんの間を手をスカスカさせても何の反応もしない

 

「……そうだったな。シンタロー、試合は何時からだ」

 

「いや、わかんねえけど……見てくのか?」

 

「ん、姉さんにも報告しようと思って…な、頑張れよシンタロー」

 

「了解だ、団長」

 

「お兄ちゃん!頑張ってね!応援してるから!」

 

「いや、お前が応援すると周りが騒ぐからほどほどにしとけよ?」

 

最悪試合中止もあるからな

 

「え?大丈夫だよ?お兄ちゃん」

 

「はあ?お前は目を奪うが……」

 

わいのわいのと話し合いをする。そういえば楯無からはどう見えてるんだろうか?

 

「………………」

 

「ああ、それと、姉さんが頑張ってね。と」

 

「僕たちも応援してるからね頑張ってね〜シンタロー君」

 

「お、お「……しゃぁぁぁぁ!!終わったぁぉぁぁぁ!!!」」

 

PCから顔を上げたアヤノの親父さんが雄叫びを上げた

 

「お疲れ父さん」

 

キドが冷えたドリンクを親父さんのおでこに当てる

 

「おう、ありがとな。つぼみ……っと、シンタロー。これがお前の専用武器だ……使い方は貴音が知ってる……」

 

「父さん、シンタロー君には後からエネちゃんが言うとして少し休んだほうがいいんじゃないの?」

 

「おお、そうだな……ちょ、ちょこっと保健室で休ませて貰うぜ……」

 

よろよろと立ち上がった親父さんを、IS学園指定の制服を着たIS学園女生徒が手を引っ張っていく

 

「おい、カノ!……仕方ない。俺たちは保健室で父さんを休ませて、試合が始まってから目を隠すを使って見に行くからな」

 

「分かった…じゃあ、また」

 

「ああ、行くぞ、キサラギ」

 

「あ!はい!団長さん!」

 

アリーナを出て保健室へと向かうご一行の後ろを見送り、俺は今更ながらこう思った

 

「……モモの奴。学校はどうしたんだ?」

 

あと、あいつとキドも何故かIS学園の服装をしてたな……何でだ?

 

「シンタロー君!私とエネちゃんが話してた時、一体誰と喋ってたの?」

 

「ああ…楯無武器についてな……エネはいるか?」

 

「ええ、エネちゃんならここに」

 

『ごっしゅじ〜ん!アヤノちゃんwには会えましたー?ブフッ…』

 

分かった。こいつ完璧確信犯だな

 

「はぁ、とりあえずこいつの名称と使いかたを教えろ。楯無、ここは何分ぐらい使える?」

 

『了解です!ご主人』

 

一夏とオルコットとやるとしても少しでも使いこなしとかねえとな

 

「ええと、今が5時40分だから、1時間ぐらいやってても大丈夫よ」

 

よし、と呟くと目の前にホログラムの画面が飛び出てNo.0から9までの武器の名称とスペックが詳細にわかる

 

「…!………これは」

 

『はい!ご主人。これが今回のご主人の切り札とも言える専用武器』

 

そこには相手のハイパーセンサーを惑わして使用者及び使用兵器の存在を消すことができるものや、相手のISコアネットワークにハック…もといアクセスして相手の思考を読み取るもの。さらにじぶんの思い描くモノへ姿を変えることができる兵器まであった

 

「これ、控えめに言ってチートじゃねえか?」

 

『ですよねぇ……変な所で張り切るんですよねぇ、あのクズ人間』

 

「それの名前は何ていうの?シンタロー君」

 

ヒョイっと顔を覗かせた楯無へ俺とエネは声を合わせてこの兵器の名前を言った

 

 

「それぞれがNo.0から9までのある能力を使う目のチカラ」

 

『その名前は……』

 

「『ーーーカゲロウアイズ』」

 

「よし、大体こいつの事も分かったことだ。練習するぞ、エネ」

 

赤いISスーツに着替えて今回使用するIS、ラファール・リヴァイブを起動する

 

『はい!ご主人!あの金髪縦ロールのイギリス女をボッコボコにしてやりましょう!!!!』

 




フフーフ。って事でキドとモモが……フフーフ。セトがバイトね……うん!バイト大事よ、本当に(意味深)っつーわけで次話で!本当に次話でオルコットフルボッ……セシリア戦となります。楽しみにしてね!


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叩きのめす話

お久しぶりです。今回はオルコット戦ですが、楽しみにしてたほどオルコットをボコボコにできなかった気がすry
一夏戦は何も出来ないほどボコボコにしてやる


『ご主人大丈夫ですか〜?』

 

「だだだ、だ大丈夫ぶぶたぞぞ、えええ、エネ?」

 

「あら、如月さんは私と同じスナイパーライフルですの?ほほほほほ。これはもう勝ったも同然ですわ。如月さん?わたくしは優しいので今ここで土下座しながら泣いて謝れば許さない事もなんとかかんとか」

 

『泣いて謝って土下座してそのまま住処に帰れニート野郎だそうですよ〜ご主人!』

 

「えぁ?悪い、何言ってるか聞いてなかった。あと、俺別に何もして無くねえか?……つーか、何で俺が1番最初なんだよ……織斑先生の話だと一夏が先だって話じゃ……」

 

『あ、始まりましたよご主人』

 

エネののんきな声を皮切りに目の前をレーザーが通って行った……って

 

「うおっ!?『始まりましたよご主人』じゃねーよ!避けるのはお前が担当だろ!?」

 

『えー?仕方ないですね〜それじゃーいっきますよー!』

 

「はぁ……たく、やるぞ。エネ」

 

 

 

 

遡る事数時間前

 

『カゲロウアイズの使い方もバッチリですし!あの金髪縦ロールをぶっ潰しましょうね!ご主人』

 

「ああ…」

 

『あれ?いつにも増して顔が陰気臭い引きこもり野郎の顔してますよ!ごーしゅーじーんー』

 

「うるせえよっ!」

 

ラファール・リヴァイブとカゲロウアイズ軽い慣らしの後、まず初めに織斑対オルコットの試合だから俺とエネは観客席までの廊下を歩いていた

 

『もしかして今朝の慣らしでバテたんですか〜?ご主人は本当にひ弱ですね〜』

 

「あれが慣らしかよ……」

 

 

 

☆今朝☆

 

『もっとかっ飛ばしますよ!!ご主人ーー!!』

 

「ぅげっ!…お、おい…も、もう少しスピード落とせこのバカッ!!う!?」

 

『ジェットコースターのようなエネちゃんの超高速機動を見せてやりますよ!ご主人ー!』

 

「おぼろろろろろろろ(ry」

 

 

 

 

「あれが慣らしだと思うのはお前だけだこのバカ!」

 

『ご主人があの後飛びながら吐いてたのは長さんも思わず苦笑いしてましたからねー!虹が出来てましたよ!虹がwwww』

 

「はぁ……」

 

このバカの所為とカゲロウアイズの負担が思ったより強かったのもあって俺は少し気分が悪い

 

「あ!如月君!」

 

「?山田先生?どうしたんすか、そんなに慌てて」

 

山田先生が慌てて走ってきたように息を切らせて立ち止まった

 

「………」

 

『ご・主・人〜?』

 

「な、何だよエネ!」

 

少し山田先生の胸の方をちょっとだけ見てしまったが……驚かすんじゃねえよ

 

『どこ見てんです?』

 

「べ、別にどこも見てねえよ」

 

た、ただ山田先生のって、モモの奴と同じくらいあるな……とか……

 

『アヤノちゃんにちくりますよぉ?まったく』

 

「う、うるせえな……で、話ってなんすか?山田先生」

 

話を逸らすように山田先生に話を聞く。

……内容は、試合前なのに織斑の機体が届いていないらしい。それで、ラファール・リヴァイブですぐに出れる俺を探してきたそうだ

 

「すみませんが如月君。今から織斑君の代わりに先にセシリアさんと戦ってもらえないでしょうか?」

 

「………はぁ、分かっ…分かりましたよ、山田先生、織斑の代わりに出るんで、顔上げてもらえないっすか?」

 

ペコペコと餅つきバッタよろしく頭を下げまくる山田先生が、俺の一言で目を輝かせた

 

「ありがとうございます!如月君!!……あぁ、良かった……これで織斑先生にアイアンクローを喰らわずに済みます………」

 

「…………」

 

織斑先生の凶暴性に俺の警戒度が1……いや、ハザードランク1,000にまで到達したところで、エネを介して団長たちに連絡を取る

 

「……ああ、団長か?」

 

『どうしたシンタロー。何か問題でもあったのか?』

 

いつもと同じキドとの通信だが、キドの口調がどこか弾んでいるような気がする……こいつ、もしかしてIS学園に来て少し興奮してないか?……いや、違うな……?

 

「お前今何してんだ?」

 

『い、いや……クク……何でもないぞ…うん、何でも…ない……ぷ……』

 

「?」

 

『ちょ、ちょっと!キド!笑ってないで助けてよーー』

『あ!ちょっと逃げないで!カノちゃん!!』

『ぐへぇ…!?』

『やーん!カノちゃん可愛いーー!!お肌すべすべーー!!!』

 

「???」

 

一体どんな状況だよ…

 

『で、で?そ、それで一体なんだ?…クク…し、シンタロー……』

 

「……俺の試合の時間が変更になったからそれを言っとこうと思ってよ…」

 

『そ、そうか!ぷ……な、何時からだ?』

 

「今からだ」

 

『今から?そうか、分かった。メカクシ団員の晴れ舞台だ、楽しみにしてるぞ』

 

団長の言葉を最後に通話をブツっと切った。

そして部屋に入ると、目の前には織斑と織斑先生と山田先生、そして何故か篠ノ之がいた

 

「あ!シンタロー」

 

俺にいち早く気付いた織斑がブンブンと手を振り、その後ろから篠ノ之が親の仇を見るような目つきと殺気で俺を並んできた……帰りてえ……

 

『篠ノ之って娘、目つき悪いですよねぇ!ご主人っ、まあ、ご主人みたいに目が死んでるよりかはマシですけどねっ♪』

 

「ああ、そうだな。どっかの誰かさんみたいに誰彼構わずガンつけるような目よりかマシで良かったな」

 

エネとの会話は何時も売り言葉に買い言葉だ

 

「如月、準備は出来ているな」

 

「え?いや、ここに着いたのさっきなんでこれからですけど…「で・き・て・い・る・な?」………………………………………………はい」

 

なんだよこの人マジで怖えええよ。う、やべぇ……この人にまで殺気向けられて吐きそうだ……

 

「あ、ISの起動の仕方は分かりますか?如月君。まずISを自分にーー」

 

山田先生が何か言ってるが織斑先生(とオマケに篠ノ之)の殺気を浴びている今の俺には残念ながら聞こえない。さっさとラファールを起動させる

 

「……ほう、以前にもISを動かしたことがあるのか?如月」

 

「い、いや。朝も動かしたし、別に初めてってわけじゃね……ないです」

 

スナイパーライフルを展開、グリップを握ってカタパルトに腰を下ろす

 

「シンタロー。頑張れよ!!」

 

「ん?ああ」

 

一夏が俺を応援するが、篠ノ之の目つきがもっときつくなるので俺はさっさとカタパルトから発射した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

「おや、どこかで試合が始まったようですね、では私たちも行きましょうか、セトくん。今日は基本的な用務員の仕事を教えますよ」

 

「了解っす、轡木さん。」

 

「ははは、それにしても、楯山君から君を紹介された時は、どんな子が来るかと思いましたが、真面目で素直そうですね」

 

「ええ!お父さんはなんて言ってたっすか?」

 

「いえいえ、楯山君の紹介では、君はとても明るくて活発な自慢の息子だそうですよ」

 

「そうっすか!…そういえば、お父さんと轡木さんはどこで知り合ったんすか?」

 

「ああ、それはですね、彼は昔私の教え子だったんですが……すこしばかり手のかかる子だったんですよ…。そんな彼がこんなに立派な子を持つなんて………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……っくッ……うぅぅ…は、吐きそうだ………」

 

『ご主人本当に激しい運動苦手ですねー。ISの操縦者向いてないんじゃないですかー?www』

 

エネの声にマジで向いてないから勘弁してくれよ。と悲痛な声を叫びたかったが、オルコットの第二射がそろそろくるので横にずれる

 

「は、外した?…」

 

「悪りいけど、お前が開幕狙ってんのは目に見えてたからよ」

 

オルコットの間抜けな声にスナイパーライフルのスコープを覗きながら小さく呟く。そして、立て続けにトリガーを6回引いた

 

「あっ……!くっ!?当てた!?男の分際で!?」

 

「止まってる相手を当てるだけだろ……なんでそんな驚くんだよ……」

 

6発全てヘッドショットを決めてブーストを使うと、なぜかオルコットが驚いているので眉をひそめる

 

「射撃戦で!こんな!!男なんかに!!!」

 

「……………」

 

オルコットから発せられたレーザーが真っ直ぐ俺に向かってくる。その真っ直ぐすぎる射線を既に読んでいた俺は、軽いブースト噴射で回避しながらトリガーを引く

 

「な!きゃぁあ!!?」

 

「いい的だぜ、オルコット」

 

スコープをガン見しながら機体を後ろへ動かす。エネがサポートしているおかげでこの辺はスムーズに動くことができる

 

『ご主人、こっちが有利なんですから少しは嬉しそうにしたらどうです?これじゃあ陰気野郎が金髪縦ロールを虐めてる図にしか見えないですよー?』

 

エネの言葉にむすっとした顔でスナイパーライフルを撃ち続ける

 

「うるせえよ!……それより、お前の方こそ準備は良いのか?来るぞ」

 

片目を瞑り、もう片方の目で覗くスコープの向こうには、スナイパーライフルを構えるのをやめ、射撃を中断したオルコットの姿が映っていた

 

「わたくしは!負けるわけにはいかないのですわ!!!お行きなさい、ブルーティアーズ!」

 

俺はまずオルコットからターゲットをブルーティアーズに変更する。1発、1番下側のビットを撃つ。2発、反動で銃身が跳ね上がったのを利用してその上のビットを狙う。3発、4発、5発…………

 

「……ち、やっぱ硬えな。そろそろ使うぞ」

 

スコープから目を離して手に持ったフラッシュバンを投げて目眩しをする

 

『了解です!No.3「目を欺く」起動!』

 

フワッと、白い蛇の頭のような細いビットが、次第に黒へと変色していき。まるで人をからかっているようにクネクネと変則的に動きながらオルコットへ突っ込む

 

「おほほほほほ!どうしたのですか!?わたくしのブルーティアーズに突っ込むなど、血迷っているとしか言いようがございませんわ!!!」

 

オルコットのビットであるブルーティアーズが、「目を欺く」ビットへ火線を集中する

 

「目隠し完了……か」

 

「目を欺く」ビットに踊らされ、偽物を相手にビットを撃ちまくるオルコット

 

『続いてぇーー!!No.9「目を醒ます」No.6「目が覚める」発動!!じゃ、ご主人行ってきますねー』

 

新たに現れた白いビットの内、片方が黄緑色に染められていき、もう片方のビットが青色に変わって、黄緑色のビット「目を醒ます」へと合体する

 

『接続状態……94...95...97...99...100%!接続完了、エネちゃん!いっきまーーーーす』

 

黄緑色の「目を醒ます」ビットがグニャグニャと形を変形させていき。遂に人のような姿に変わっていく。

 

 

 

黒いツインテールに耳元にはヘッドフォン。口元……首には悪趣味なガスマスクを付け、黒くダボついたジャージを羽織った目付きの悪い女。「閃光の舞姫・エネ(笑)」が顕現した

 

「おい(笑)閃光の舞姫(笑)、気分はどうだ?」

 

『んー、そうね。……っておい!アンタ、何笑ってんのよ』

 

ギロリと睨み付けるエネ……もとい榎本貴音にプルプルと首を振りながら口元を隠す……だが、既に俺の腹筋は限界だ

 

「ぶっ……!」

 

『あーー!!!笑ってんじゃないわよ!!このクソ童貞!うるさい!笑うな!死ね!』

 

閃光の舞姫(笑)が拳をブンブンと振り上げて喚く。その手には二対の拳銃が握られている

 

『アンタ、後で覚えときなさいよ?』

 

「いいから早く行けよ(笑)」

 

『ったく、行くわよ。金髪縦ロール……その胸もぎ取ってやるーーー!!』

 

私怨全開のエネが手に2丁拳銃を持って突き進む

 

「!?新手!?て、ティアーズ!!」

 

オルコットのビットがエネを囲むが、エネは縦横上下などの変則的な動きでビットの弾幕を避ける

 

「…しっかし、まだまだ無駄があり過ぎなんだよな………」

 

スコープから目を離さずタン、タンと小気味好くビットを狙い撃ちしながら呟く……その後、ドン、と爆発音がして、エネを囲んでいた4機のビットが墜落していく

 

『閃光乱舞……決まった』

 

「………ぶふっ……」

 

なにやらドヤ顔でそう呟いたエネの声を、ISのハイパーセンサーか何かが拾ってしまったのでつい吹き出してしまった

 

『………なに笑ってんのよ?』

 

ギロリとこちらを睨み付けるエネから顔を逸らす。今あいつの顔を見るのは危険だ

 

「そ、そんな……ブルーティアーズが……わ、わた、わたくしの…………」

 

「残念だったな、オルコット」

 

「!?…如月……さん!?何故そこにーー」

 

自慢のビットの撃墜と、俺が2人いる。という事実にオルコットが残りのティアーズを動かせないほどの動揺を表す。そこへスナイパーライフルの弾倉全てヘッドショットする。最後の弾丸が直撃したあと、試合終了のブザーが鳴った

 

「………終わったか、鷹月が言うほど代表候補生って、強くなかったな……」

 

ふぅ、吐息を吐いて観客席を見渡す。キドの「目を隠す」で姿を消しているか?と思ったが、観客席の隅っこに、キド、モモ、アヤノの親父さん、あと肩で息をする女装カノがいた

 

『ごっしゅじーん。というわけで試合も終わったことですしぃ?ご主人のエロ画像フォルダをネット上にばら撒いて良いですかぁ?良いですよねぇ?分かりました!今すぐばら撒ーー』

 

「やめろ!!?」

 

目を醒ます・目が覚める、によって精製された閃光の舞姫(笑)エネから抜け出し、俺のラファールのハイパーセンサーに戻ってきたエネが、ハイパーセンサー上に俺の画像フォルダの写真を次々と出しては消し出しては消しを繰り返す

 

『あ、これなんてどうです?ご主人が何時間もの末見つけ出したアヤノちゃん似のエ○画像』

 

「ぐはっ…………そ、それだけは………」

 

『えー?なんででーすかー?あー、確かにwwwこんな画像持ってたなんてアヤノちゃんに知られたら二度と口聞いてもらえませんもんねーwwwwwwあぁ!それとも、あなクズ人間と吊り目さんにバラしますぅ?ご主人w晴れて社会から抹殺』

 

「ぐふっ!?や、やめ……『如月!とっとと戻れ!』……はい」

 

 

鼓膜をぶち破るほどの大声で怒鳴られたあと、しょんぼりと帰っていく。その後、オルコットのビット修理をすこし挟んで、オルコット対一夏となった

 

 

 

 




最初の方の轡木さんと一緒にいた人って誰なんだろうーね……
あと今回はエネちゃんの姿は1号の方でしたが、次からは黒歴史封印って事で今のエネちゃんの姿になります。コンボとしては目を醒ます×目が覚めるーーー遥貴と同じで相性良いと思います


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更識簪

ども、天敵です。
今回はコミックスの8巻祝いに。ぶっちゃけ8巻ほありとあらゆる意味で訳がわからなかった。早く続きが読みたいですな……


「一夏ぁ!!この私が教えてやったというのに!なんだあの無様な負け方は!?」

 

「うっ……」

 

「………一夏の奴、あんなに息巻いてた割にはあっさりセシリアに負けちまったな」

 

『ブッ………!!!』

 

一夏対セシリアの戦いーーー結果を言えば勝ったのは、イギリス代表候補生セシリア・オルコットだった

 

「そこまでにしておけ、篠ノ之」

 

「千冬さ…織斑先生」

 

「千冬ね…ズパァーーンッ!!……織斑先生……」

 

「存外、代表候補生というのはあんなものだ。それをIS稼働数時間足らずの素人が、それも白式なんて欠陥機を使って勝てるはずが無いだろう」

 

しょんぼりと肩を落とした一夏に篠ノ之が容赦なく追い打ちを掛け、織斑先生がとどめを刺す

 

「………なあエネ、俺の聞き間違いかもしれねえけど、今織斑先生、一夏のISを欠陥機って言ったか?」

 

『はい!バッチリ聞こえまたしたよ!ご主人!!』

 

………なんだか織斑が可哀想になってきたな。イギリス女に突っかかられて簡単に挑発に乗った挙句俺がいない内に勝手に俺を巻き込んだのはムカついたけど、同じ男としてこんなに散々言われるのは同情するぜ

 

「あ、そうだ!じゃあ千冬ねryスパーーンッ!!……織斑先生、シンタローはどうなんだ?…ですか?」

 

「ふむ、如月に関しては私も驚いたぞ」

 

「ゑ………?…おい、エネ。聞いたか?あの織斑先生が…“あの”織斑先生が、だぞ?俺を褒めるなんて……やばいんじゃないのか?」

 

『しかも驚いたとか言ってましたよ?ご主人!“あの”世界最強のブリュンヒルデが!!ファンに知られたらご主人完璧死にますねwwww』

 

縁起でもねえこと言うなよ………やべえ、マジで殺されそうな気がしてきた

 

『基本ニジオタ・コミュショー・ヒキニートのご主人ですからその辺の小学生にも瞬殺されますよっ!』

 

いや、それは流石にねーよ

 

「……そう言えば、確か如月にはサポート用のAIがあると言っていたな…」

 

「え、サポートAI?」

 

「それだけで勝ったわけではないにせよ、有るのと無いのでは違いはあるだろうな」

 

『いやー、流石織斑先生ですっ!この私、エネちゃんに目を付けるとは!』

 

「なに言ってんだバカ、お前が担当したのは避けるだけだろーが」

 

最後の方でちょっぴり怨念の混じった弾丸を飛ばしてたけど、実質俺の狙撃だけで勝ったようなもんだろ

 

「サポートAIかぁ……」

 

ん?織斑の奴なんだか欲しそうな目をしてんな………

 

「織斑、こいつが欲しいならやろうか?」

 

「え?良いのか!?シンタロー!」

 

『ご、ご主人!?』

 

「なっ!い、一夏!」

 

スマホを持って織斑に見せる。キラキラとした織斑の無邪気な瞳には好奇心とウザさと邪気で染まったエネの奴も直視出来ないようで、目を横目に泳がせて織斑と目を合わせないようにたじろいでいた

 

「よろしくなっ!エネ」

 

『え?ご、ご主人?いやまさか、え?ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待って下さいよ弟さん!』

 

「一夏っ!!」

 

戸惑うエネ、爽やかスマイルの一夏、そこへ不機嫌な顔の篠ノ之が割って入った

 

「こんなニジオタが好きそうな物に惑わされおって……!!」

 

「ゴフッ………」

 

『あっーと!ご主人にクリティカルヒットの精神的ダメージきましたー!!』

 

篠ノ之の言葉が俺の体に、いや、取扱注意のガラスのハートに突き刺さった。

 

「え?いや、シンタローがニジオタだとかは関係無いだろ!取り消せよ箒」

 

「ふん!こんなコミュ障の持ってるサポートAIなんて使わなくても私が教えた通りにやれば十分だ!」

 

『こ、コミュ障……wwwww』

 

「…………(白目)」

 

もう俺のプライドと体力とガラスのハートのSAN値はゼロだ……もう誰か俺を殺してくれ………

 

「……教えた通りにって……箒は剣道だけでISの事は何にも教えてくれなかったろ?」

 

「う……!!」

 

「おい、聞いたかよエネ。ISについて教えてくれない癖に自信満々に私が教えたから大丈夫だってよ」

 

「うぐっ……!!」

 

『凄く自意識過剰ですねぇー。今の女尊男卑の現代を象徴してます。つまりご主人は女の奴隷なのでこれからは私にご主人様って呼んでくれませんか?』

 

「なんで周りの女はこういう奴らしかいねえんだ?」

 

結構本気で頭を抱える。こんなはずじゃなかった……あのクリスマスにカノとアヤノの親父さんのあの言葉に乗せられなければ、今頃……今頃………

 

「分かったか!一夏。お前にあんな物はいらん!」

 

「俺の事だろ、なんで箒が決めるんだよ?」

 

「…はぁ、とりあえず俺はあっちの控え室に行くから、後でな、一夏」

 

こいつらの喧嘩には付き合ってられない俺は2人に声をかけて部屋を出た

 

「………はぁ、ったく、篠ノ之の奴、想像以上に面倒くせえな……」

 

『ああいうタイプに多いんですよねぇ、好きな人に想いを打ち明けられないっていうwwザマァwww』

 

「…………………」

 

『…………………』

 

(………………???……あ?え?エネの奴、いや、貴音の奴、まさかの自虐ネタか?)

 

『(…………おかしいですねー、あの目つき悪い木刀さんと同じ共通点を持つご主人が私の言ってる事に気付けないなんて………)』

 

(………まあ、可哀想だから言わないでおいてやろう)

 

『(ご主人があまりにも可哀想なのでノーコメントにしておいてあげましょう)』

 

変な所で同じ思考の2人だった………

 

「………ん?」

 

『?どうしました?ご主人』

 

控え室まで歩いていると、目の前に誰かが立っていた。そいつの髪は内跳ねの青い髪だった

 

(青い髪……染めてんのか?……)

 

『(…………ん?あ、あれは……いや。あの子はまさか………)』

 

「………如月シンタロー…で、合ってる?」

 

「え、あ、ああ……お前は誰「4組の更識簪」」

 

更識?目の前の女生徒の名前に、記憶を辿るシンタロー。そしてそれは苦もなくすぐに回答へ辿り着いた

 

「ああ、楯無の妹か何か……か……」

 

閃いたように呟いたシンタローだったが、直後に目の前の女生徒、更識簪から鋭い目つきで睨まれてちょっぴり逃げ腰になる

 

(はぁぁ!?なんで俺が睨まれるんだよ!?)

 

『ご主人…何か失礼ないことでも言ったんじゃないですか?』

 

(俺は何も言ってねえだろ!?)

 

『ご主人はデリカシーに欠けますからね!』

 

「………貴方の、さっきの戦いを見た」

 

更識簪が口を開くが、シンタローは既に先程の睨みで若干ビビっており、アッハイと冷や汗をかきながら頷いている

 

「それで、終盤で出てきた2丁拳銃の彼女を、貴方は知ってるの?」

 

「………ん?彼女?」

 

2丁拳銃の彼女?……簪が言ってるのは…もしかしてエネの事か?……

 

「とぼけないで、あの容姿、あの2丁拳銃を使った戦闘スタイル。彼女は閃光の舞姫エネの筈………!!」

 

「ブッ………!!!」

 

閃光の舞姫(笑)その単語が出てきた瞬間からシンタローの腹筋が崩壊し始めた

 

『あ?何笑って……笑ってんじゃないわよ!アンタアァ!!』

 

「ぶふふ……せ、閃光の…舞姫……くく、く、くく……は、腹が痛くなってきた……」

 

腹を抱えて蹲るシンタロー。彼にとって閃光の舞姫(笑)という言葉は危険タグ(笑)に分類されるようだ

 

「くっくっくくくく………ん?」

 

「…………(ゴミを見るような目)」

 

「………わ、悪い……」

 

顔を上げた瞬間、更識簪の氷よりも冷たい凍てつく波動を感じて目を泳がせるシンタロー。どうやら彼女は怒らせない方が良いらしい

 

「それで、彼女を知ってるの?」

 

「ああ…でも、それがアンタにとって一体何なんだ?」

 

「今は……言えない。それじゃあ次の織斑一夏との試合、頑張って。私は貴方を応援してるから」

 

「?????あ、ああ」

 

そして簪は体を翻して観客席の方へ歩いて行った。その後ろ姿を眺めていたシンタローは、手に持ったスマホの中にいるエネへ視線を向けた

 

「エネ、お前あの簪ってのとどんな関係なんだよ」

 

『え、えっと…それは、ですねぇ……』

 

「閃光の舞姫(笑)関連ってことは分かるぜ?」

 

『あんたいい加減にしときなさいよ?』

 

これは……俺は遂にエネを脅すネタを掴んだぜ。よし、このまま上手くいけば俺のPCからこいつを追い出せる日もそう遠くないかもな

 

『も、もう!あの子の事は今いいんで、とっととピッチに行ったほうがいいですよー!』

 

「急かすなよエネ」

 

黒歴史を探られまいとピッチに急がせるエネをほくそ笑む。これで、もうこいつに振り回されることはないな

 

 




簪と貴音は、全国大会でしのぎを削った戦友とも言えるべきライバルで、簪としては今回のセシリア戦で見た閃光の舞姫エネ(笑)は久しぶりに見た事でシンタローに問い詰めたのが今回になります。簪サンはこれからも度々と絡んでくると思います……タブンネ


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なんだあの機体!チートかよ!? 『ご主人も結構チートだと思いますよ?』

ども、お久しぶりです。やっと出せた。
これからちょくちょく出せるといいな、と思います………みなさんごめんね?あと一夏が非常に弱くて今回短め。いや、シンタローが強すぎるのか……


「お、来たか。さてと、団長に負けるな、なんて言われたからな……一夏には悪いが、捻り潰すか」

 

『ご主人の腕なら一夏少年の負けが決定してますけどね!どんまい弟さん!』

 

オルコットとの試合を終えた一夏が、織斑先生曰く、欠陥品と呼ばれた白式を纏ってアリーナの空を飛ぶ

 

「にしても、あいつエネみたいなサポートもなしに空を飛ぶのは上手いんだな」

 

その姿は決して姿勢をぶらさず、綺麗な放物線を描いてこちらへ向かってくる

 

『さっすがブリュンヒルデの弟さんって奴ですね!これから負けますけども!』

 

まあ、オルコットの遠距離からの攻撃に近接ブレード一本という相性最悪の状況で完膚なきまでに瞬殺された一夏だ、オルコットと同じで遠距離からの狙撃戦でやれば万が一にも負けないはずだ

 

「負けないぜ!シンタロー」

 

唯一の武器である近接ブレードを握った一夏が爽やかな笑顔でシンタローへ健闘の声をかける。

そんな一夏をシンタローは苦笑交じりに見つめて片手に握ったスナイパーライフルを一夏へ向ける。シンタローがスコープ越しに向けた標準は、すでに一夏の頭へポンイトされている、あとは、試合開始のブザーが鳴るだけだ

 

 

ビーーーーーーーーーーーーー

 

 

1発、ブザーと共にスナイパーライフルの引き金を引く。その大きな銃身から放たれた弾丸は真っ直ぐに一夏の頭へと伸びていき、甲高い音と共に一夏の機体のSEを著しく消耗させた。ヘッドショット

2発、体勢の崩れた一夏の頭へ同じ軌道を描いて突き刺さる。ヘッドショット

3発、このままではやられる、とブレードを振りかぶった一夏がこちらへ飛んでくる。しかし、3発目の弾丸がその出足を挫くように白式のウイングスラスターへ吸い込まれていく。

4発目、驚愕の顔を浮かべる一夏の顔へ吸い込まれる。ヘッドショット

5発目、ヘッドショット。6発目、ヘッドショット。7発目、ヘッドショット……………

 

「ぐあぁっ!?」

 

短い悲鳴と共に一夏が地面へと落下していく。それを追撃するためにスナイパーライフルを下へ向け、スコープ越しの一夏を狙い撃つ

 

「ヘッド・ショット」

 

『はぁー、ご主人が勝ちますとは思ってましたけどぉ…………弟さんにはガッカリですねー。ねえ、ご主人?』

 

空になった弾倉を交換しながらヘッドショットと呟くシンタローにエネが面白くなさそうにため息を吐く

 

「ブレードだけのFPS初心者に負けられるかよ」

 

ふぅ、と短く息を吐いてスナイパーライフルを肩に預けたシンタロー。

それを聞いて、それもそうですね。と納得したエネが一瞬間を置いて突然甲高い声を上げる

 

『?………ご主人!!弟さんのISから新しい反応が!?これは………!!一時移行……!?』

 

エネの悲鳴にシンタローがふと顔を向けると、底には地面にぶつかるスレスレで体勢を保つ、純白の白に体を包んだ織斑の姿があった。

その顔は底知れぬ自信の表れでもある満面の笑みであり、その手には何処かで見たような一本の剣が握られていた。

 

「あれは確か……雪片だったか?」

 

そう、思い出した。あの剣は動画で見た現役時代の織斑先生がモングロッソで使用していた一本の剣ではなかったか

 

『ブリュンヒルデを世界最強たらしめた近接ブレードですね!まあ、そんなサムライ装備でこの現状を打破できるわけないんですけどね!弟さん、乙でした!』

 

 

 

変化は突然だった。

 

「……?」

 

織斑が弱すぎて手応えがなかったから、油断していたのかもしれない。

 

「う、おおおあおおああおおおおあお!!」

 

だから白式と一夏のスピードに反応が遅れた。

 

「おおおおおおあおおおおおおおお!!!」

 

「っ!エネッ!回避だっ!!」

 

『へ!?な、ななな、なんですかこのスピードは!?は、速っ!!』

 

閃光の名を自称(黒歴史)するエネ……榎本貴音が慌てた声を上げる、と同時にラファール・リヴァイヴが急激な速度で横へずれる。直後、何かが空間を切り裂く音が響き、突風が顔面を打ち付ける。

 

「くそっ!外した!」

 

「…………」

 

後方で一夏の悔しそうな声が聞こえた。

瞬間、頭を切り替えスナイパーライフルの銃身とスコープの標準を一夏の頭へ合わせる。

1、2、3、4。立て続けに一夏のヘッドショット狙いで撃ち込んだ弾丸は、消えたと紛う程の速度で一夏が避けたためにかすりもしなかった

 

「ッ!くっそ!なんだあの速度、チートかよ!?」

 

『ご主人の狙撃も中々にチートと思いますけど?』

 

「シンタロオオオオオオオオオ!!!」

 

「ちっ!」

 

一夏が上段に構えた雪片から光が迸る。

いろんなアニメやゲームをやり続けた俺の頭に、アレはマズイ。と半ば強迫観念のような物が警告を発する。

数十メートル先の一夏にスナイパーライフルは不利、とスナイパーライフルをパージ。フルオートショットガンとサブマシンガンを一夏へ向ける

 

「うっ!ぐぅ、ぅ、おおおおおおおおお!!」

 

「なっ!」

 

両手で産みだす絶え間ない弾幕。それら全てを一夏の顔面へヘッドショットする。これなら一夏の勢いも弱まるとタカをくくっていたが、それは間違いだった。一夏はもう、目の前だ

 

「シン、タッ、ロォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

『ご主人ッ!?』

 

「……………」

 

スイカ割りのように真上から振り下ろされる雪片弐型。スピーカーから漏れるエネの焦った声。しかし、俺の目線はその2人にではなく、俺のラファール・リヴァイヴと織斑の白式の残SEを表す電子版にだけ向けられていた

 

「………」

 

そして、視線の向こうから一夏の雪片から迸る光ぎ俺の頭を触る………………

 

「…………へ?」

 

『…………え?』

 

「…………終わったか」

 

試合終了のブザーが甲高く鳴る。

一夏が振り下ろした雪片は俺に当たっていないし、さっきまで剣から出ていた光は見えない。そして、試合が終わった原因とは

 

『織斑一夏、SE全損!勝者、如月シンタロー!!』

 

織斑が自身のSEを全損させたことによる俺の勝利だった。

 




シンタローって、セシリアの超超超超超超超上位互換なんじゃないのか?と思いました。セシリア乙


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なんてバカな生命だ

ども、お久しぶりですね。
これまでの流れ!!
8月らへん?スマホなぜか死亡→データ吹っ飛び→復旧させたけどやる気が死亡→ズルズルずるずると…orz

最終的に失踪するかもしれないなぁと思ったけどお叱りのメッセージを受けて書きました、かなり駄文です。そしてシンタローやら黒さんやらのセリフが書けなくなっているように思えます。
あとなんかカゲプロ二期やるみたい?ですね!楽しみです。


一夏との試合が終わってカタパルトへ戻る。

誰もいない待機室でISを解除して、白いイヤホンを耳に当てるとスマホにメールが一通入っていた。

 

『いい戦いだったな』

 

キドからのメールだ、多分試合も見た後だからメカクシ団のメンバーは皆帰っただろう。

 

『ご主人、これからどうするんですか?』

 

「ああ、そういえばどうするか先生に聞いてなかったな」

 

というも、放課後の時間を利用して模擬戦を行っていたため帰るには丁度いい時間帯で終わっているため、帰っても叱られないだろうとエネと一緒にそのまま部屋にこもった。

 

『あー!またこの人ですかぁー!?先日ウィルス送ってエネちゃん大繁殖させたのに懲りませんね!』

 

エネちゃん大繁殖、言葉に表せば少し微笑ましいものだがその実態は恐ろしい。

まず朝でもない夜深夜にエネお得意のアラーム襲撃事件からなり何百何千と増殖したエネ軍団によるPC内のデータに掛けられているパスワードを解除、エネ直々に声に出して音読されたり勝手にネットに公表しますよ(笑)と脅されたりetc……。

というか四六時中エネが煩くて眠れないし苛ついてエネを削除しまくっても何百何千といるわけで、1人2人削除しても意味が無い。

俺のデータが欲しくてPCにウィルスやらの類を送り込んできたやつには悪いが、エネという喧しい存在に、手加減という言葉は辞書に載っていないようだ。

 

『仕方ないですねぇー。ご主人、私はちょっと大繁殖にいってきますね!』

 

「ああ」

 

気の無い返事を寄越してPCの中にダウンロードしているfpsゲームを選択、更にメッセージ欄から『ゲームの招待』をフレンドに送りつける。

数秒後に届いた『うん、分かった』の返事に頬を緩ませてゲームをプレイする。

 

「久しぶりです。遥先輩」

 

『うん、久しぶり。シンタロー君』

 

アバター『コノハ』と落ち合ったシンタローはボイスチャットで『コノハ』を操る九ノ瀬遥に挨拶をしてゲームプレイを選択する。

数ヶ月程やっていないが、それくらいで腕は落ちないだろうとイカやタコを撃ちまくるゲームモードの難易度を最高難度に設定して10秒カウントでスタートする。

 

『シンタロー君。IS学園はどう?』

 

遥の言葉に苦笑をしてかぶりを振る。

 

「どうも何も……、地獄としか言いようが無いっすね。周りはバカばかりだしエネは煩せえし」

 

『あはは、そっか。貴音も楽しんでるんだね』

 

「………そうかも知れないっすね…まあ、俺には分からないんすけど。……それより、先輩は最近どうっすか?その、調子とかは」

 

『心配してくれてありがとう。全然元気だよ。多分、来月頃にはまた外に出られるかな』

 

ピタリとシンタローが操るアバターは動きを止め、周りのタコやイカにタコ殴りにされてHPゲージを全損させた。ーーYour dead。

 

『……シンタロー君?』

 

遥のシンタローを心配する声がマイク越しに聞こえる。

 

「いや……なんでもないっす。ただ、先輩が元気になったのが、嬉しくて」

 

慣れない言葉を吐いたことでむず痒くなり、頭を乱暴にガリガリと力任せに掻いた後で、遥とは別の親友の顔が目に浮かぶ。

 

 

じゃあ、また。

 

 

子供達の作戦を終えて、最後のお別れをして。

彼との別れを惜しむメカクシ団や自分に言い聞かせるように、また逢えると、そう手向けた彼の顔が。

 

「……………先輩」

 

『うん』

 

「本当に、終わったん……すね。俺たちの戦いも、むし暑いあの夏の出来事も」

 

『うん、終わったんだよ。あの夏の出来事があったから……、だから僕たちは、今も前に進めるのかも知れないね』

 

画面上に現れた選択肢、コンテニュー?orゲームオーバー?

 

「夏が終わって、蝉もいないってのによ、コノハ。……俺の周りは、少しも静かにならねえよ」

 

ただ、それが嫌いじゃない自分がいる。

そんな独白を誤魔化すように、ポチッとクリックしたコンテニュー。

次々と現れるイカ、タコ軍団にスナイパーライフルを向けて弾丸を撃ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなんだよ、あいつ。いっくんにあんな酷いことしやがって」

 

パソコンの光が照らす部屋、その部屋の主は忌々しげに画面に映る赤い少年を罵った。

 

シュロロ……、頭の中に蛇の嗤い声が響く、ギリッと歯軋りをして奴に問いかける、「あの凡人は何者だ」と。

 

『アイツは最善策。ただの厄介なクソガキだ』

 

どうやら頭の中のこいつも、あの赤い凡人には煮え湯を飲まされたようだ。

頭の中のドス黒い感情が増幅し、一気に、目が冴える。

 

「あはっ♪束さんいーい事思いついちゃった!こいつ邪魔だから消せばいいじゃん!」

 

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ。

 

PCの画面がバグったかと思えるほどに数字が幾多も埋め尽くし、部屋内の無数のパソコンやモニターが狂ったように点滅を繰り返す。

そのうちの一つがある設計図を映し出し、それはやがて一機の無人機を形だった。

 

『ククク、なんてバカな主人だろう』

 

蛇は嗤う。

扱いやすいことこの上ない主人に恵まれて良かったと。

そして、自分の計画をご破算にしてくれたクソガキ共には何れ借りを返してやるとして、まずはこの頭は良いが、考えの幼稚くさい主人の「願い」を叶えてやることにする。

 

ゴーレム。

 

人を殺すには十分に高性能で、この機体に使用されているISコアというのがポイントだ。

どうにもこのISコアには人格が備わっているらしい、……こればっかりはこの天災(嗤)にも理解出来ないらしいが、このコアは、使い勝手良く『乗っ取れる』。

自分が直々にあの最善策のクソガキをブチ殺してやってもいいが、そうすればこの主人のお気に入りも殺してしまうかも知れない。

 

 

ああ、自身のお気に入りがもし、自分が作った物に殺されてしまった時、この愚かな主人はどんな顔をするだろうか!

 

嘆き、喚き、とても惨めに号哭し、赦しを乞うのだろうか!

 

それともその無駄に高い知能を使ってクローンを作り出し、それを「いっくん」などと呼ぶのだろうか?

 

ああ、愉しい、実に悦しい。

 

夢を叶えるために存在するのの身が愚図な娘の心臓代わりになる時、自身の欠片を保険として世界に飛ばしておいて、本当に良かった。

そしてその欠片を、偶然にも天災(嗤)の目に植え付けられて、本当に良かった。

 

このバカで天才でアホで純真な天災科学者は、実現不可能な夢を飽きもせずに求めるから本当に良い。

 

こいつの求める願いを叶えるには如何に『目が冴える』を使おうと、かなりの時間を費やすだろう、そしてこのバカはそのためなら自分の命の有限すら無限に変えてみせるだろう!

 

ああ!こんなことならあんなバカな男の願いを叶えずに、とっととこの主人に鞍替えするんだった。

手間のかかるループとは違って、この女の願いには自分の存在が何時までも必要になるだろう。

 

自身の消えたくない感情と主人の叶えなくてはならい使命の矛盾に苛立つこともない。

 

『ああ、本当に……』

 

 

 

 

 

 

 

『なんてバカな生命だ』

 




最後の束さんと誰だろうね。……こればっかりは分かんないよね。

とりあえずさっさとラウラのところまで行きたいなあーと思いますまる。そしてシンタローをパパとかアヤノをママとか言わせるんだあのロリ銀髪に!


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転校生

どうも、お久しぶりです。
今回は転校生です、皆さんわかりますね?


 

 

「おっ、シンタロー!………なんか随分と目が据わってないか?」

 

「………よう、一夏。別に…何でもねえよ」

 

朝、教室に入って来たシンタローを一夏は無邪気に迎え入れる。

対するシンタローは、ボサボサの黒い髪の毛がいつも以上に寝癖が跳ね、目の下の隈は一層に濃く、よろよろと自分の机に辿り着く。

 

「一体どうしたんだよ」

 

「………」

 

『ただの軽い筋肉痛ですよー。ま、年中自宅警備員のご主人にとっては耐え難い苦痛らしいんですけど(笑)』

 

「そうなのか?日頃からちゃんと体を動かさないとな」

 

こいつ……!お前こそカゲロウデイズ攻略作戦時に久しぶりに体を動かして翌日には重度の筋肉痛に泣いてたよな?

しかもその後やっぱりエネちゃんの方が生きやすいだのこれからは電脳世界で生きていきますねだの言ってたくせに、こっちが警備員始めて久しぶりの筋肉痛に悩まされてるとこれかよ!

 

「エネのやつ……」

 

恨めしい目つきでスマホの画面に映るエネを睨んでいたシンタローが、ふと扉に潜む小柄な影に気付いた。

高校生にしてはちんちくりんな身長に色々と改造を施された制服。

極めつけはハードボイルドを気取るカッコつけたポーズだ、ちっこい彼女が纏う雰囲気と身長が本当にマッチしてない。

そして大体こういう手の輩には、マトモな奴が1人としていない。

 

何十年、何百年もの記憶を目に焼き付けたシンタローならではの、経験則……いや、人生則による直感。

シンタローの脳が即座に“回答”と“対策”を弾き出した!!!

 

『こいつはマトモじゃねえ。絶対に目を合わせないようにするぞ』

 

バッと顔を背けて弄り出すのはスマホ。

エネのウザったらしい顔を無視して開くのは有名な某メールアプリーーーLI◯E。

もちろん相手は楯山アヤノである。

それまでのアヤノとの会話を眺めてニマニマニマニマと気味の悪い笑顔を見せるシンタローに周りの女生徒は若干引き気味になるが、セシリア・オルコットと喋っている一夏は気付いていないようだ。

 

また、今日もシンタローのボッチ進行度が彼の知らぬ間に更新されていく。

 

 

ご主人ぼっち度→現在46%

話しかけるな危険ですね!

 

 

『あ、そう言えば。ご主人。今日は二組に転校生が来るって知ってました?』

 

「あ?…そうなのか」

 

「え、二組と言えば、隣のクラスか。へぇ」

 

エネが速報というプラカードと一緒に転校生のプロフィールから顔写真も一緒にスマホの画面に表示していく。

………一応個人のプライベートな情報や各国のIS開発の機密もあり、当IS学園でも最高峰のプロテクトが掛けられているのだが………、シンタローが寝てる間にエネが暇潰しに解いてしまったらしい。

 

「あれ?こいつってもしかして……」

 

「あ〜!知ってる知ってる!それに二組のクラス代表もその転校生に変わったんだよね!」

 

「どこからだっけ?中国?」

 

スマホに映し出された転校生の顔に一夏が首を傾げて思考に耽る。

その周りでは女生徒がこの機会に一夏と仲を深めよう、他の奴に差をつけようと思い思いに転校生について言葉を発している。

そして、その中の1人が、一夏に対して笑いかけた。

 

「でもまあ、誰が相手でも織斑君なら絶対に勝てるよ!目指せ、クラス対抗戦優勝!」

 

「…………………………………え?」

 

 

バカヤロウッ!

シンタローは目の前の女生徒にそう怒鳴ってやりたかった。

だが、今のご時世は女性がヒエラルキーの頂点に立つ女尊男卑だ。

ここで一度怒鳴って仕舞えば一年一組のカースト最下位に属するシンタローの事である、教室の女生徒全員からガン無視を決め込まれる若しくはゴミムシ……いや、ニジオタコミショーヒキニートを見るような(と言っても半分以上事実だが)目に晒され、それらが段々陰湿な虐めや村八分のようなものにエスカレートしていくだろう。

そうなれば万年自宅警備員職に付いていたこの男のガラスのハートが耐えられるはずもなく、数日で寝込み、それが一ヶ月に一度学校を欠席、次いで一週間に一度……結果学校の寮に引きこもり出す事態を招きかねない。

 

またあの頃に戻るのか?そうじゃないだろう?如月シンタロー!お前は変わったのだ!アヤノとの幸せでいて安寧の日々をぶち壊すことはあってはならない!!

 

(考えろ、如月シンタロー!今俺に出来る最善策はなんだ……!)

 

グッと目の前の女生徒を叱りつけたい気持ちを抑え込み、サッと机に突っ伏して寝たフリを決め込む。

それが今のシンタローに出来うる最善策に他ならない!

さあ、一夏!いつでも来るがいい!俺はお前の要求に屈することは………、

 

「お、俺がクラス代表!?どういう事だよ!?シンタロー!」

 

「う、ぐ……お、落ち着け。一夏!」

 

寝たふり作戦失敗。

即座に一夏に肩を揺さぶられて体を起こす。

そして半ば狂乱状態の一夏に一年一組の代表事情について説明してやることにした。

 

「言っとくけどよ。これは(俺も一夏もハブいた)クラスの総意だからな?諦めろ」

 

「そ、そんなぁー……」

 

がっくりと肩を落とした一夏の顔には「クラス代表とか…面倒臭そうな予感しかしない、やりたくない」というのがありありと書かれている。

そんな一夏に心の中で合掌しつつ、またスマホの画面に視線を落とした。

 

「おほほほほ。大丈夫ですわ、一夏さん。これからはわたくしがISのことについて手取り足取り教えて差し上げますのでクラス対抗戦も……」

 

「おいお前、何を言っている。一夏にISについて教えるのはこの私だけで十分だ。お前は同じ遠距離で戦うあのヘタレとやっていろ」

 

どうやらオルコットはクラス対抗戦の一件から一夏に対して好意を抱き、一夏に対してアピールを行なっているが、同じく一夏が好きな篠ノ之が今のように妨害をして互いに牽制しあっているらしい。

篠ノ之はフンと鼻を鳴らして俺を睨み、腕を組んで酷い事をサラッと言ってのけた。

 

「如月さんがヘタレ野郎?あまつさえ如月さんと訓練をやれ?じょ、冗談じゃありませんわッ!!?篠ノ之さん。貴女、あんな戦い方をする如月さんと一緒に訓練しましょうだなんて頭沸いてるんじゃありませんこと!?わたくしは嫌ですわ!絶対に!!そんなに言うのでしたら是非貴女が如月さんとやれば良いのですわ!そうすれば篠ノ之さんも如月さんの異常性がよく分かりますわよ!」

 

「そ、そうか。いや、それは…すまなかった……?」

 

しかし篠ノ之の提案はオルコットが般若のような顔で逆ギレのように言い返した事でクリティカルのカウンターを喰らった。

オルコットの剣幕に顔をサッと青くし、次いで俺を見るや否や後ずさりをする。

 

「あ、じゃあ俺。シンタローと一緒に……」

 

「「それは絶対に(ダメだ!)(ですわ!)」」

 

「お、おう?」

 

猛反発の2人に頭を傾げて曖昧な返事をする一夏。

すると、教室の扉付近から「スパーン」という小気味好い音が聞こえて誰かが廊下を走っていく音が、

 

「廊下を走るな!馬鹿もん!」

 

鶴の一声……いや、この場合は鬼だな、鬼。

 

「何か、言ったか?如月」

 

「っ!い、いいい、いええええ!?な、なな、ななななにににもまもまあばばばばばばばばばば」

 

ギロリと織斑先生の睨みに晒されて無意識にガタガタと全身が震える。

目に涙が溢れ、今まで焼き付けてきた走馬灯が、アヤノとの幸せな日々が過ぎ去っていく。

 

「あ、死んだ………」

 

「誰が殺すか、馬鹿者」

 

「ぐはぇ!?」

 

パコッと頭を叩かれ机に突っ伏す。

どうやら俺を生かしてくれるらしい、良かった。

 

「……はぁ、もう良い。まったく、これがあんな一方的な試合を展開した男とは思えんな」

 

どこか呆れ果てた声で嘆息した織斑先生が周りの生徒に席に着くよう呼びかけ、教壇に立つ。

 

「昨日の試合結果を考え、一年一組のクラス代表生は織斑に決まった。織斑はクラスの代表としてこれから始まるクラス対抗戦を頑張るように。それと小娘共、放課後に織斑の就任パーティーを計画するのは良いが、羽目を外しすぎないようにしろよ。……以上だ」

 

ガクッと一夏の頭が下がる。

どうやら織斑先生の言葉で一夏もようやく諦めたようだ。

 

「それと、急遽転校生受け入れがあってな。今回は………2人だ。おい、入ってこい」

 

ざわ、ざわと教室内が騒がしくなる。

俺も、二組に1人だけじゃなかったのかとエネに聞くと、『まあまあ、誰が来るかは見てのお楽しみですようご主人』と軽く流された。

ガラッと扉が開かれて2人の転校生が入室する。

俺は、自分の目が焼き付けた2人の顔を信じられない目で凝視した。

 

「………………………は?」

 

「いや〜どうもどうも!カーノでぇ〜す」

 

1人目はおちゃらけた口調に長さがバラバラな癖っ毛、猫のような大きなつり目にだらしなく緩んだ口元。

色素が薄く、くすんだ金髪の少年。

 

「おい……………嘘だろ…?カノじゃねえか……」

 

俺が所属するメカクシ団メンバー。

No.3 カノ……鹿野修哉だ。

 

「ふざけてないでちゃんと自己紹介をせんか!馬鹿者」

 

「うわっ!…と。あぁ〜ごめんごめん。そんなに怒らないでよっ織斑センセあだぁ!?」

 

織斑先生に叩かれてニヤニヤと笑いながら改めて自己紹介をするカノを、ぽかんと口を半開きにしたまま見つめる。

 

なんでここにこいつが?他の奴は?

そんな考え方頭に残るが、それもじきに霧散した。

何故なら、

 

「って事で、これから宜しく頼むよ」

 

「……まあ、碌に自己紹介も出来んよりはマシか。次」

 

ニッと笑うカノ、その隣。

白い制服に身を包み、緊張した面持ちで、けれど俺と目をあった途端、ふっと優しく微笑んだ黒髪の少女。

 

「楯山アヤノです。色々な事情でIS学園に在籍することになりました。皆さんよろしくお願いします」

 

メカクシ団初代団長。

No.0 楯山アヤノが、恥じらうように笑いかけた。

 

「あ、アヤry」

「「「「「き、キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!?」」」」」

 

 

アヤノ!

そう言おうとした直後に教室中に轟く嬌声。

女特有の甲高い音が両の鼓膜をぶち破り、脳を揺さぶった。

あ、死んだ。

今日二回目の呟きを残してふらりと机に倒れ臥す。

 

「ぁぁぁぁ……!み、耳が………」

 

ふと横へ視線を向ければ一夏が耳に手を当てていた。

恐らく一夏はこの展開を予想して耳を塞いでいたのかもしれない。

あいつにとっても予想外だったのは、両耳を塞いでも尚嬌声をシャットアウトする事が出来なかった……………………か。

 

そこまで考えたところで視界がブラックアウトした。

 

 

 

 

 

「………………んぁ?」

 

目が覚めた。

思考を動かそうにも鼓膜がズキズキしていて回りそうにない程に痛え。

 

『あ、おはようございますご主人。と言ってももう4時間目が終わって昼食の時間なんですけどね!』

 

「…………」

 

マジか、もうそんなに時間が………。

 

『いやぁ、ご主人!それにしても流石はご主人ですね!女の子の嬌声で気絶するとはwwww凄過ぎ……w凄過ぎますよご主人!!ぷぷぷ』

 

「うるせえよ!?」

 

エネの中傷に俺も若干自分が自分で情けないと感じていたので両手をそっと顔に押し付ける。

 

「あはは。……変わらないなぁ〜シンタローくんは」

 

「……カノ」

 

指の間から見えるへらへらと笑った男、カノ。

 

「やあ、昨日ぶりだねぇ。シンタローくん」

 

いけしゃあしゃあと笑うカノにジト目で返し、その隣に立つ彼女……アヤノに目を向ける。

 

「アヤノ」

 

「ふふ、シンタロー」

 

ああ、生きてて良かった。

こうしてまたアヤノに会えるなんて……。

 

「よっ、俺、織斑一夏!えっと、カノって呼んでいいか?」

 

アヤノとの再会に感動していると一夏がカノに対して爽やかに挨拶していた。

まあ、俺と一夏と、3人目のカノしか男がいないわけだし、特別な事情もなければ仲良くなっとこうとは思うだろう。

 

「どうだ?これから一緒に食堂に行って昼食を取ろうぜ」

 

「な、一夏!今日は私と2人っきりで……」

 

「おっ、良いねぇ〜一夏くん。ほら、姉ちゃんとシンタローくんも一緒に行こうよ」

 

飄々とした受け答えで自然に一夏の肩を叩くカノ。

 

「きゃっ、一×カノ!?」

 

「カノ×一に決まってるでしょ!」

 

「ゆゆゆ、夢の3Pって事も………!!」

 

やめろ!?俺は男好きな趣味はねえ!しかもアヤノという超可愛い彼女持ちなんだぞ!

 

「ほーら、何やってんの?シンタローくん。早く行こうよ」

 

「そうだぜ、シンタロー」

 

「あ、ああ。悪い、今行く」

 

教室の腐女子率に頭を抱えつつカノや一夏達の後を追いかける。

ふと、隣を見ると、アヤノがはにかむような笑顔を浮かべつつ自分の手を差し伸べた。

 

『ヒューーヒューー。お熱いですねぇお二人共!』

 

「うるせえ……。行くか」

 

「うん。シンタロー」

 

エネの言葉に顔がカアっと熱くなる。

それはアヤノにも当てはまるようだ、耳の先っぽまで茜色に染めてニッコリと笑った。

そんな仕草に悶え死ぬと思った俺は、照れ隠しのようにアヤノの手を取った。

 




まんまと騙されてくれたな!
転校生は転校生でもその中身はメカクシ団メンバーだ!
ちんちく鈴?知らない子ですね。
とりあえずカノの口調が不安、アヤノは初対面の時は口調が丁寧だった希ガス。
あとシンタローはアヤノに対して非常にデレてます、まあ仕方ないよね!大天使が相手なんだし!


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なんというキドメン






「一夏!この女とは一体どんな関係なんだ!」

 

「そうですわ一夏さん!折角わたくしというものがいますにも関わらずこんな女性と親しくしているなんて!き、キィィィィーー!」

 

「あ!ダメだよシンタロー。食事中くらいイヤホン外さなきゃ」

 

「うぐ……わ、わかったよ」

 

「ま、待てよ箒、セシリア……あ、鈴!」

 

「一夏、それ頂戴、えへへもーらい!」

 

「ぶふっ、に、似合ってるじゃんキド〜(笑)ぶふふ、ま、まさかの女用と男用制服の発注ミスとか(笑)しかもそれを自然に着こなす現役JK(笑)ぐぶっ!?ちょ、あだっ!?き、キドっタンマ……」

 

「うるさい、カノ死ね」

 

「お、みんな楽しそうっすね!エネちゃんも元気だったっすか?」

 

『いや〜ほんとご主人の周りはカオスすぎて面白いですよ〜』

 

うるせぇよ、エネ。

つーかこの事態は俺がしたわけじゃねえだろ………舌打ち紛れに口一杯コーラを飲み込んだ俺は事の始まりを思い出す……………

 

 

 

 

 

 

お昼、食堂。

俺やアヤノ、一夏達は昼食を取るためにIS学園の食堂に行った。

食券を買うために列に並ぶと、カノと仲良くなりたい一夏が丁度共通の話題になる俺の話を始め、俺に興味のない篠ノ之とオルコットは話すことが何もないので一夏達の話の輪に入れず、結果俺を凄い目つきで睨んでくる、いやなんでだよ…。

まあ、そこら辺はアヤノと俺がIS学園に行ってる間に親父さんらに勉強を教えてもらったとか、遥先輩の話とかであんまり気にならなかったけどな。

そして列も徐々に減っていって、食券コーナーに辿り着く、所にそいつは現れた。

 

「一夏、遅かったじゃない!待ちくたびれたわ!」

 

「お前……鈴か?いや、やっぱり鈴だ!」

 

一夏と親しげに話す謎のツインテールチビだ。

 

「席とっとくから早く来なさいよ」

 

「おう、悪いな鈴」

 

一夏に笑顔で返されて機嫌良いステップで席を確保しにいったチビ。

それを殺意ダダ漏れで睨み付ける篠ノ之、オルコット。

そこでカノが気を利かせて一夏にあのチビについて聞き込んだ。

 

「あれ、一夏くんの彼女?」

 

「え?なんだよカノ」

 

バカかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

お前バカか!?カノ!?なんで火に油注ぐような真似してんだ!はぁ!?

 

「一夏、お前……私に何も言わずに」

 

「え?どうしたんだよ箒?」

 

「い、一夏さんんん……??」

 

「え?お、落ち着けってセシリア」

 

そして始まった昼食会、最初は様子見で篠ノ之もオルコットも大人しくしていたが一夏とチビの和やかムードを見て激怒しやがった。

 

「い、一夏ぁぁ!その女は一体、お前とどんな関係だというんだ!」

 

「あ、お!おおおおおおおおおおおあおあおおおあおおおおおおおおおあ!!?」

 

バシンと叩かれたテーブルから、俺の昼食が……俺のコーラが、俺の……俺の、

 

「大丈夫?シンタロー、はいティッシュ」

 

「………う、うう」

 

『wwwwごwご主人のwwご主人のだけテーブルから落とされるとかwwwww』

 

「しかも全部制服にぶちまけちゃったっていうねー(笑)それもコーラ」

 

現在俺は上の制服とズボンに思いっきりコーラがぶっかかってる状態だ。

そして当の篠ノ之はそれに気をかける仕草もなく一夏を問い詰めている。

 

「………」

 

「「ご主人様(シンタロー君)、ドンマイ(笑)」」

 

「お前ら、笑ってんじゃねーよ!」

 

カノとエネのうざうざコンビに苛ついてると、誰かに肩をポンポン叩かれる。

後ろ振り返るとそこには一夏を超えるイケメンフェイスの男が立っていた。

 

「うおっ……」

 

あまりの格好良さに思わず「うおっ」が「うほっ♂」になるとこだった、あ、危ねえ。

イケメンは俺をジロッと見ると空いてる席に腰を下ろした。

しっかし長髪をポニーテールにしたイケメンかよ、まあ、似合ってるけどな。

………………ん?あれ、こいつって。

 

「エネ、あいつ」

 

『あ、あのイケメンさんですか?ご主人、確かにカッコいいですよね!まあ、ご主人の顔面偏差値じゃどんだけ修正しても届かないと思いますけどね!』

 

うっせえよ。

 

「おい、カノ」

 

「うん、シンタロー君。彼、結構なイケメンだよねぇ?………くく(笑)」

 

カノ、お前が分からねえのか。

いや、違った、こいつ分かっててワザと知らないふりしてる、キリッとした顔してるけど顔が若干プルプル震えてるもんな、完璧確信犯だ。

それでイケメンの方はそのカノの仕草を見てますます不機嫌になっていくので意を決して俺が口を開くことになった。

 

「お前、キドか………?」

 

「……ああ、そうだ。シンタロー。……はぁ、なんで俺がこんな格好を。父さんめ……」

 

つまり、そういうことだ。

恐らくキド用のIS学園の制服が何かの手違いで女性用が男性用に間違えられていたわけだ。

………聞いてる限りじゃアヤノの親父さんがワザと間違えたって可能性もあるけど。

 

『ほぁ〜、これが団長さんですかぁ〜。すごく似合ってますねぇ〜』

 

「つぼみ、凄い。すごく似合ってる」

 

「ね、姉さん!」

 

エネとアヤノが男装キドに好感触の感想を言い、キドは少し照れた感じで……いや結構満更でもないなあいつ。

 

「……………!ぶふーっ!き、き、キド。男装似合いすぎでしょ!ぶふっ!あはははは!?あはっ、げほげほ!」

 

カノは堪えていた分が爆発したようで腹を抱えてヒーヒー笑っている。

キドを指差しして笑う姿に周りの女生徒がニヤリと笑って手に持ったメモに何やら書き付けて……これ以上は止めよう。

 

「うるさい、カノ死ね」

 

「あだっ!?いつつ……酷いじゃんかー、キードー君、あははははぁ痛゛っ!?」

 

カノの笑う様に耳まで顔を赤くしたキドがうざカノを黙らせるために武力行使に出た。

まず顔面をグーパン、更に腹パン×3連撃。

これにはカノも堪えたらしく、笑顔を貼り付けたまま顔中冷や汗だらけにして突っ伏している。

 

「ふん、カノの癖に生意気だ」

 

我らが団長、男装キドも昼食を取り始め、俺も代わりを貰いにアヤノと席を立つ。

………しっかし、篠ノ之の奴、俺に一言も謝らないんだな。

 

『凄いですねぇ、あの竹刀さん。ご主人がヘタレとはいえ謝ろうとする気もないんですね!まあ、ご主人に年上の威厳がないのが一番ダメなんですけど!wwww』

 

「うっせえよ、エネ!」

 

やめろ、人が気にしてることを言うな!

 

「ふふ、シンタローも貴音さんも、元気で良かったです」

 

『……ふぅ。アヤノちゃんもね』

 

俺とエネのやり取りを聞いてアヤノは楽しそうに笑う。

ここにあと1人、遥先輩が居ればまた違った掛け合いが観れたのか、つくづくそう思ってしまう。

 

「あれ、人だかり」

 

「ちっ、待つしかねえか」

 

『あれあれー?そんなこと言ってご主人随分と嬉しそうですねぇーぇ?あ、アヤノちゃんがいるからですかそうですかそうですかぁーwwwいやぁw随分とw幸せそうで何よりですぅ、えぇ、えぇwww』

 

ぐ、こいつ、調子に乗りやがって……!

しかしなんだ?食券買うだけにこんなに集まるのかってぐらいの人だかりは。

 

今、目の前に移るのは人だかりも人だかり、全てIS学園の女生徒で構成された謎の集団だった。

そして、その中からひょっこりと頭一つ分飛び抜けた人物が姿を表す。

 

「あ?おいあれ、セトじゃないか?あいつ、なんでここに?」

 

「あ、本当だ。幸助ー」

 

その正体はゴーグルのついた緑色のフード付き作業服を着こなす長身の男、メカクシ団No.2、セトだった。

女生徒はみんなセトを一目見ようと野次馬目的で群れをなしていたらしい……って、IS学園の食堂で何やってんだこいつ。

 

「あれ、姉ちゃんにシンタローさんじゃないっすか。良かったら一緒にお昼どうっすか?」

 

こっちに気付いたらしく、長身のセトがこちらを向いて昼食を乗せたトレーを持ってこちらへ来る。

セトがこちらへ向かってくるごとに人の海が割れていく、圧巻だった。

 

「お、おう。その辺にキド達もいるから先に行って来いよ」

 

「本当っすか!あー、良かったっす〜。1人で食堂は随分気まずかったもんで」

 

ニカッと笑うセトの笑顔に周りの女生徒は当てられたのかへなへなと腰を下ろした。

セト………恐ろしい奴。

 

「じゃあ、シンタロー。早く買って、みんなでご飯食べよ」

 

「……おう」

 

最初買ったのと同じ物とコーラを購入して席に戻ると、一夏、カノ、男装キド、セトを一目見るために食堂にいるほとんどの女生徒が一夏達の席の周りに屯っていた。

 

「うわぁ、すっごい人気だねー、つぼみ達」

 

「アヤノ、お前なに呑気に言ってんだよ……」

 

アヤノの能天気さに呆れるものの、目の前の女子の群れに俺は恐怖を覚えた。

これでも昨年まで立派な自宅警備員職に着いていたニジオタコミショーヒキニートだ、こんな膨大な数の人だかりを押しのけて席に着くなんて俺にはハードルが高すぎる。

 

『もう、ほんっとご主人ってヘタレですねぇー!はいはいみなさーんっ!電脳世界のアイドルこと超絶美少女のエネちゃんが通りますよー!道をあけてくださーい!』

 

「っ!?うぇ」

 

「「「「チッ、キモ」」」」

 

「ごふっ………!」

 

『IS学園が誇る女生徒の罵倒が茫然自失のご主人の心にクリティカーーール!!』

 

エネの声かけで女生徒達が道を開けるもその代償は計り知れない。

1人のニートのガラスのハートを粉々に打ち砕いたのだ、俺はもうダメかもしれない。

 

「し、シンタロー?どこか痛いの?」

 

「あ、アヤノ……特に胸が」

 

「胸?」

 

(((チックソが彼女持ちかよ。つって女の子の趣味わりーわ、マジニートは無いわー)))

 

アヤノに背中と胸をさすられながら一夏達のテーブルへ、その途中女子から、

 

「氏ねよクソオタ。元々おめえとその子じゃ釣り合わねーんだよこの死に腐れニートが」

 

「ごふぉっ、ごぶふっ…」

 

「シンタロー!?」

 

『ーーーーーーっ!!?wwwwwww!!ゲホゲホッ?ゴホ、ゴホッ!』

 

あ、もう無理だ、目の前がなんか真っ白に……。

 

「一夏ぁ!この馬鹿者!こんな女にデレデレと鼻の下を伸ばしおって!」

 

ブン!

 

「うおっ、危な!」

 

「いでぇっ!?」

 

「シンタロー!?」

 

『あーっと!IS学園の女生徒よりも運動神経の無いご主人に竹刀を持った剣道有段者による強烈な一撃ぃーーー!!ご主人、ノックダゥーーン』

 

頭に篠ノ之の竹刀が当たった。

頭が振られて脳が揺さぶられる。

倒れるかと思ったが、誰かが俺の体を抱き留めた……アヤノだ、心配そうな顔で俺を見つめている。

はぁ、くそ、俺……だせぇ。

 

「も、もう!我慢ならん!一夏ぁ!!」

 

「落ち着けって箒……!?」

 

篠ノ之がまた竹刀を振り下ろす、反射的に一夏はそれを避けて、竹刀の切っ先は俺の方へと勢い良く伸びていく。

俺に出来るのはアヤノが巻き添えにならないように突き放すぐらい……って、もう、無理か。

 

パシッ!!

 

「………はぁ」

 

「あ……?」

 

「おー、ナイスぅ〜キド」

 

「キドっ、大丈夫っすか?」

 

「ああ、問題ない。シンタローこそ大丈夫か?」

 

『流っ石!団長さんですね〜、ご主人とは大違いですよ!』

 

いや、俺に竹刀が当たる直前に目の前に来てそれを受け止めた奴がいた。

現メカクシ団団長、キドだ。

長いポニーテールがゆらゆらと揺れてキドは男の俺から見てもカッコいいと思ってしまうキドメンさながらに篠ノ之を睨んだ。

 

「うっ」

 

それを受けた篠ノ之は今更ながらに自分のした事に気付いたようだ、俺とキドと自分が握る竹刀を交互に見ると気まずさから後ろに後ずさる。

 

「うちの連中に手を出したんだ。覚悟は出来てるんだろうな?」

 

キドカッコイイ!いやイケメン過ぎるだろ。

 

「よ、避けない如月が悪い!」

 

自宅警備員に剣道有段者が何言ってんだか。

 

「食堂の場で竹刀を振り回しておいてそんな言い訳が通用すると思うのか?……もういい、俺たちは別の席で昼食を取らせて貰う。おい」

 

キドはそう言いトレーを持って席を立つ、カノはやれやれと肩を竦めて、セトはうんと頷き、アヤノは俺の手を引いて。

 

「団員を守るのは団長の役目だ、いくぞ、シンタロー」

 

「「「「あぁ、キド様……♡」」」」

 

俺を見ながらフッと笑うキドメンに周りの女生徒が全員ハートを撃ち抜かれた。

そして怒りと恥辱でプルプル震える篠ノ之を無視して別のテーブルを陣取った俺たちは、メカクシ団メンバーで気兼ね無い昼食を取った。

 

 

 

 

「しっかし、篠ノ之はどうにかなんねえのか」

 

「私もあれはどうかと思うなぁ。シンタロー、本当に大丈夫?」

 

『無理ですねwご主人!まあ、その分アヤノちゃんに甘えられますし逆に嬉しいんじゃないですか?ご主人の笑い慣れてない引き攣った笑顔頂きましたwwwww』

 

「おおい!?」

 

エネの奴も篠ノ之とどっこいどっこいだろ………………。




アヤノとキドの口調ががが、小説8巻出ないかなー


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一騒動

ども、一ヶ月ぶりくらいです。
今回はシンアヤハアハアで酷い内容になってるのでご注意下さい。


 

 

「ーーーだから瞬時加速は一度スラスターに取り込んだエネルギーを圧縮して……って、おい。聞いてんのか、アヤノ」

 

「うぅー。全く分かんないよ。シンタロー」

 

「……ったく、ほんとどうしようもねえバカだな。お前は……ちゃんと勉強して来たのか?そんなんでよくIS学園に入って来れたな」

 

アヤノ達が転校してきた日の授業が終わって、放課後。

俺は今、今日の授業の内容を一切理解していなかったアヤノに対して個人的な補修をしている。

あ?なんでそんなの分かるって?当たり前だろ授業中ずっとアヤノの事見てたんだからな(ドヤッ)

 

「別にそんな言い方しなくても…もう。シンタローは意地悪なんだから」

 

いじけた顔をするアヤノを見て悶えそうな感覚に襲われるが此処は今までの「如月シンタロー=無職(笑)のニジオタコミュ障ヒキニート」という図式、イメージをISの事についてなんでも知ってる超絶頼りになるアヤノの彼氏ーーーに塗り替えるため、いじけた顔をするアヤノを見て悶えそうな感覚に襲われそうになるが……(大事な事なので二回言いました)。

つまり、今だけ教えて如月せんせーをやろうというわけだ。

 

「(アヤノ可愛いアヤノ可愛いアヤノ可愛いアヤノ可愛いアヤノ可愛いアヤノ可愛いアヤノ可愛いアヤノ可愛いアヤノ可愛いアヤノ可愛いアヤノ可愛ry)だったらさっさと覚えろよ。いいか?ほんとに簡単な基礎なんだからな。最悪、お前が覚えるまで付きっ切りで教えるからな。アヤノ」

 

「えへへ。じゃあ、ずっと一緒だね。シンタロー」

 

(うおおおおおおおおォォォォォォォォォーーーー!!!可愛いいぃぃ!!可愛い過ぎんだろアヤノおおおおォォォォォォォォォーーーー!!!!?ウオーー!!なんだこの可愛い生き物は!?あ?アヤノ!?俺の彼女でしだぁ!!ウオオオオオオーーーー!!!)

 

今すぐにでも手に持ってる参考書をぶん投げて気持ちを押さえつけるためにこの頭を机か壁にぶつけまくりたい。

……痛そうだからやめとく。

 

「(あぁぁぁぁぁぁもう無理もう無理もう無理もう無理アヤノ可愛いぺろぺろハァハァry)あ、そういやお前。寮の部屋は?」

 

強靭な精神(ガラスのハート)で暴走する本能を押さえつけた俺はアヤノの頭の休憩も兼ねてちょっとした話をすることにした。

ただ、それもアヤノ関連の話題なわけで、俺のアヤノ依存ともいうべき?が重症になっている……かもしれない。

 

「私はね〜。つぼみとだよっシンタロー」

 

「へぇ、キドか。ならカノは?あとセトは何処で寝るんだ?」

 

昼食時に図らずとも再会したセトだが、あいつはどうやらキド達のようにIS学園に途中入学したわけではなく、IS学園の用務員職に就いたらしい。

今までのアルバイト業を活かすっす!だとか言ってたが、用務員か…俺には無理だな。

気力的に1日も持つ自信がない、逆に言えば1日も持たずに職場を辞める確信がある。

まあ、そんな奴は面接の時点で落ちるだろあけど。

 

「修哉は幸助と一緒なんだって。まあ、2人ともそういう年ごろだし、思春期の女の子と一緒は気まずいだろうしねぇー」

 

「ふぅん。まあ、大体そんな部屋割り……だ、よ……………な?」

 

あれ?俺ってそう言えば自称IS学園最強(笑)と同部屋じゃね?

 

「?シンタロー?」

 

あれ?これアヤノにバレたらヤバくね?

『もうシンタローなんて大っ嫌い!』ルート直行じゃねえか?

 

「あ、ああ。いや、なんでも……」

 

あっぶねー、今気付いてよかった!アヤノに言わないようにエネの奴にも言い含め……、

 

『あっ、ごっしゅじーん。同じ部屋のかいちry』

「あっ、あぁぁーーー!!よ、よーし!それじゃあ次の単語行くか!アヤノ!ちゃ、ちゃんと覚えて帰れよ!今日は!?そ、そんで寮に帰ったらキドと一緒に復習でもしろ!お前は繰り返し復習しねえと暗記しないタイプだからな!」

 

バシバシとISの参考書を叩いて強引に補修を再開する。

エネもアヤノもびっくりしてるが今そんなのは関係ねえ、このままエネが余計なことを言いだす前にアヤノの補修を続ける方が先だ。

 

『うわ!?なんですか〜?急にぃ〜。まあイイですけど。それで、かいちょーry』

「つ、次ィ!!?これっ!だ!ISの……か、かかか、拡張領域ィィ!!ちゃ、ちゃんと覚えろよ!?」

 

「う、うん。でも、大丈夫?シンタロー。それに、貴……エネちゃんも何か言って」

 

「バッ、な、何も言ってねーし!エネの奴なんか無視して補修だ、補修!お前のためにやってやってんだからちゃんと真面目に……」

 

『あぁーーーー〜〜ッ!!!この私が珍しく真面目に連絡してやってるっていうのにそんなこと言うんですね〜ご主人!はっ、イイですよーイイですよー。そんなご主人には秘蔵のフォルダの中身をネットの海にぶち撒けて』

 

「俺が悪かったからやめろおおおおおおーーーーー!!?」

 

 

この後アヤノに同室がIS学園の生徒会長、更識楯無だってのがバレた。

けどアヤノはその前からエネの奴から聞かされていたらしい。

それよりも俺の秘蔵フォルダにアヤノの関心が行って誤魔化すのに一苦労だった。

あとエネは終始笑っていやがった。

……エネの奴覚えてろよ。

 

 

 

 

 

「今日はこんなもんだ。明日はテストに出そうな範囲を教えるからな」

 

「うんうん。やっぱり、シンタローは頼りになるねぇ〜。……あれ?」

 

「どうした?」

 

アヤノに頼られて少し良い気分の俺はアヤノがそっと指をさした場所へ目を向ける。

そこにはーーIS寮の一室で、ちび女と篠ノ之が互いに口争いをしていた。

 

「今日からここは私の部屋よ!」

 

「ふざけるな!」

 

「ま、まあまあ。落ち着けよ、2人とも……」

 

部屋争いか、下らねえ。

見ると、あのバカ2人を諌めてるのは意外にも一夏だった。

……いや、諌めてるんじゃなくて実は一夏の奴がこの騒動の原因じゃないか?多分あのちび女は見るからに一夏が好きっぽいし、大方一夏と同じ部屋になりたいから篠ノ之に部屋を代われとでも交渉して、同じ一夏大好きの篠ノ之が切れたんだろう。

……凄え、下らねえ。

 

『命短し恋せよ乙女って奴ですかねぇ〜?で、どうします?ご主人。止めたほうが良くないですかぁ〜?』

 

「お前な、アレのどこにどう入れって言ってんだよ。べ、別に怖いってわけじゃねえけど……」

 

『誰もそんなこと言ってないんですけどそれをご主人が言ったら怖いって認めてるようなもんですよぅ〜?』

 

「止めなきゃ、シンタロー」

 

言うが早いかアヤノは低レベルな言い争いを続ける2人の間に入って話を聞き始めた。

突然の闖入者にちび女と篠ノ之はギョッと驚くが聞き役に徹するアヤノに対して、やれこの女が部屋を立退かないだの、やれこの女の動機は不純すぎるだの言いたい放題だ。

 

『あのひんぬーさんは自分に部屋替えの権利がない事も分からないんですねぇ〜。竹刀さんは不純だどうの言ってますけどぉ、エネちゃんってば一夏少年の下着をスーハースーハー匂い嗅いでるのバッチリ見ちゃったんですよねぇーww写真も撮ってますしw』

 

エネを敵に回してはいけない。

改めてそう思った。

 

「ダメだよ?鳳ちゃん。織斑君の事が好きでも、簡単に部屋を代われって言われても篠ノ之ちゃんが困っちゃうよ?」

 

「う、で、でもあんた!男と同じ部屋って嫌なんでしょ?だからその代わりに私が一夏と同じ部屋になってあげるわよ」

 

「う、う、うるさーい!うるさいうるさいうるさい!!」

 

「わ、おお、落ち着けって、箒!」

 

「離せ、一夏!お前はこの失礼な奴の味方なのか!?」

 

「そう言うわけじゃないけど……」

 

「なによ一夏。久しぶりに幼馴染に会ったっていうのに、嬉しくないわけ?」

 

「一夏の幼馴染は私だぁぁぁぁぁ!!」

 

ふんがー!とゴリラのように猛り暴れる篠ノ之に流石の一夏もアヤノもかなり引いていた。

 

「それに、鈴。折角千冬姉や山田先生が部屋割りを決めてくれたんだからそれを勝手に替えるのはダメな事じゃないか?」

 

「むぐっ……それは…そうだけど」

 

「ほら見ろ、お前のように動機が不純な奴は一夏にも嫌われるのだバーカバーカ」

 

うぜぇ……篠ノ之とことんうぜぇ。

人の話は聞かねえし、うるせえし……それにしても、あいつ……どっかの誰かさんを思い出すな。

 

『……なによ』

 

「いや……」

 

微妙な顔でエネを見た俺は何も悪くないはずだ。

 

「一夏のバカ!」

 

「痛っ。あっ……鈴」

 

エネに気を取られていると、ちび女が泣きながら廊下を走り去っていった。

原因は、一夏。

去り際にビンタされたのか、あいつの頰は真っ赤に染まっている。

 

「一夏が何かしたのか」

 

「うっ、そ、それは」

 

「一夏が悪い」

 

「うーん。あれは…一夏君だねぇ…」

 

「そんなっ!箒!?楯山さん!?」

 

篠ノ之とアヤノに責められた一夏は悔しそうな声を出す。

ああ、それと、一夏がアヤノの事を楯山さんと呼んだが、それにはある理由がある。

最初は一夏もフレンドリーにアヤノの事を「アヤノって呼んでも良いか?」と言ってきたが、昼食の前にトイレに連れ出して一夏と少しお話ししたのだ。

そのお陰で一夏はアヤノだけは苗字読みのさん付けだ。

なんの接点もねえ奴が彼女に馴れ馴れしく話しかけるのを見ると苛つくよな。

誰だってそーする 俺だってそーする。

 

「何言ったんだよお前」

 

「いや……ちょっと言い合いになってさ。最後に…ひん、にゅう…って」

 

『チッ、死ねば良いのに』

 

おいエネ、お前の逆鱗にも触れたのは分かるがとどめを刺すのはやめて差し上げろ。

 

「はぁ、言い合いの原因はなんだよ」

 

「あ、じゃあシンタロー」

 

呼びかけたアヤノと目を合わせる。

瞬時にアヤノの目が赤くなり、俺の中にアヤノの記憶がなだれ込む。

 

 

 

『一夏、覚えてる?昔した約束』

 

『え?ああ。覚えてるぜ。俺に「毎日酢豚を奢ってくれる」んだよな!』

 

『え』

 

『え?』

 

 

 

(く、下らねええええええええ)

 

なんだよこれ、酢豚!?酢豚を毎日奢る!?

いやちげぇだろ、「味噌汁を毎日作る」の酢豚バージョンだろどんだけ鈍感なんだよ一夏ェ。

 

「……でもこれはあのちび女も悪いと俺は思うけどな」

 

「なに?」

 

「そ、そうだよな!シンタロー!」

 

まず、酢豚を毎日とかなんだよ、流石に飽きるだろ。

味噌汁だったら日本人としては朝の定番だし毎日食っても飽きないだろうけど、酢豚を毎日は結構ハードじゃないか、きっと胃もたれするぞ。

 

『確かに今回はあのツインテールさんのフレーズが紛らわしいのが原因ですけど、それでも貧乳はダメに決まってますよぉ〜!?分かってますかぁー!?』

 

「うぐっ、はい。反省してます…」

 

画面向こうのエネに叱られては反論する気力もないのか、一夏は項垂れて反省の句を口にした。

しかし、それでもエネの言葉は止まらない。

やれ貧乳は希少価値だの、貧乳はステータスだ!だの。

 

『とにかくツインテールさんに今度あったら謝っといた方が良いですよ!………想いも伝えられずにお別れなんて、辛いですからね』

 

エネ、お前……

 

「それよりも一夏!あの女とはどんな関係だったのだ!会話からナニをしたかまで話して貰うぞ!」

 

「は、はぁ!?会話って、覚えてるわけないだろ…。それに、何って何だよ」

 

「な、ナニ……う、うぅ、破廉恥だ!お前はぁぁ!」

 

「はっ!?ちょ、まっ……」

 

 

「あいつら全然聞いてないぞ」

 

『私はもう知りませんよっ!』

 



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クラス対抗戦!

ども、最近リボルブ?リボルヴ?ってスマホアプリにハマっちゃいまして、1週間前くらいに書き終わるつもりがズルズル長引いてしまいました、ごめんなさい。
全部リボルヴのデスサイズちゃんが可愛いのがいけない。
あと300体集めてF-2まで31体分進化させてF3に進化させるんだ……。


 

クラス対抗戦当日。

マリー、モモ、ヒビヤ、ヒヨリ、遥先輩以外のメカクシ団メンバーで観客席を固め、一夏と凰の対戦を観戦する。

 

『それにしても弟さん勝てますかね〜。ま、私は酢豚さんを応援しますけど』

 

エネがハックした情報によると、凰の使用する専用機 甲龍は近接戦闘向きのパワーファイターに加え、IS自体の燃費も良いと長期戦にも向いてる。

更に甲龍には空気を圧縮して衝撃を砲弾に変えて発射できる超威力の衝撃砲が搭載されているらしい。

見えないだけでも厄介なのに射出角度も制限無し。

対策がないわけじゃないが、今の一夏じゃかなり厳しいと筈だ。

更に凰自身の経歴も、ISに触れてたった一年で候補生にまで上り詰めるなどと、かなりの努力が見られる。

中学生活の三年間を帰宅部で過ごしたという一夏に凰の相手が務まるか?

 

「一夏の奴、結構厳しいんじゃないのか」

 

「楽しみだね〜。ねえ、キド?」

 

「ああ、だが見るだけじゃなくて俺も実際に飛んで見たいんだが」

 

「ISで飛ぶの、楽しそうっすもんね」

 

思わず、楽しそうだと言うセトと、その言葉に頷くことで同意したキドの顔をまじまじと見つめる。

こいつらはジェットコースターよりも早い速度で空を飛ぶISを、言うに事欠いて楽しそうと言ったわけだ。

ジェットコースターでも吐きそうな俺はこいつらが本当に人間なのか疑わしくなってきた。

 

「みんな。そろそろ始まるよー」

 

アヤノの間延びした声が響く。

観客席からアリーナを見渡してみると、一夏と凰が顔を見合わせて何事か騒いでいた。

どうせお互いに下らないことでも言って口喧嘩を始めたんだろう。

 

「一夏、始めましょう。殺すわ……貴方を」

 

「り、鈴。悪かった。貧乳って言ってほんと悪k」

 

「死ィィねええええええええええええ!!」

 

凰の物騒宣言を皮切りに試合が始まる。

先ず互いに近接タイプの二人は武器の届く範囲まで高速で近付き、刃と刃のぶつけ合いを開始した。

 

「ふっ、はっ、あぁぁ!!」

 

セシリア戦の時よりかはマシになった一夏の剣…いや、昔の剣道をやっていた時の感覚が戻ったってことか?疾く鋭い斬撃を鳳へ斬り込んでいく。

 

「ふふん。やるじゃない!一夏!」

 

対する凰はそれらを一本の青龍刀を使って余裕で捌き切る。

流石に一年で候補生まで上り詰めた経歴は伊達じゃないってことか。

これが経験の差だろう……一夏よりも凰の方が安定した動きを見せている。

ただ、二人ともまだまだ動きに無駄があり過ぎるけどな。

 

「うおおおおおお!!」

 

一夏が青龍刀を強引に弾き上段に構える。

その時凰がニヤッと笑って、一夏の体が吹き飛ばされる。

 

「なっーー!!?」

 

「これからよ、一夏!」

 

突然の衝撃にたたらを踏む一夏。

そうか、今のが甲龍の切り札か。

 

「…………地味だな」

 

『地味ですねぇ〜』

 

思わずエネと一緒に呟いた言葉を、キドが興味深くこちらを覗き見る。

大方、“見えない”特徴に親近感を覚えたキドが俺とエネの地味って言葉に疑問を覚えたんだろう。

 

「そうなのか、シンタロー。砲弾が見えないだけでも俺は脅威と思うが、お前とエネは違うのか」

 

「ああ、単純に見えないだけならキドの目を隠す能力の方が厄介だ。いいか、あの砲弾は圧縮された空気の衝撃弾だ。それを遠くに飛ばそうとすればする程威力も密度も小さくなる。だからあくまで有効な射程は近距離から中距離までしかない。俺やオルコットとかの遠距離からの狙撃には滅法弱いんだよ」

 

かいつまんで説明してやる。

エネもいつ作ったか分からない図解入りで解説していて、キドやカノ達は成る程と頷いていた。

 

「???」

 

アヤノは俺の隣で首を傾げていた。

 

「アヤノに分かりやすく言うと、俺やオルコットは凰の手が届かない所から攻撃出来るから引き撃ちに徹して距離を詰められない限り敵じゃないんだよ」

 

『つまり、こういうことですね!ご主人!wwww我ながら完成度高いと思うんですがww』

 

ちんちくりんの凰の頭を片手で抑える俺、そして俺に頭を抑えられながらも「うわぁぁん」と泣きながらグルグルパンチを披露する凰のデフォルメされた動画がスマホの画面を流れる。

 

俺は片手で凰の頭を抑えながらもう片方の手で凰を叩けば言いわけで、凰の攻撃を喰らう事はない。

 

アヤノもそれでようやく分かったのか、手のひらをポンと叩いて頷いて俺を見た。

 

「こら、女の子をいじめちゃダメだよ。シンタロー」

 

「誰がするかよ、そんなもん………はぁ」

 

やっぱりアヤノはアヤノだった。

その事にどこか安心しつつも、今度はアヤノの誤解を解くために頭を悩ませるのだった。

 

 

 

 

 

 

「くっ、どうすればいいんだ!」

 

「悪いけど、これでも候補生なんだから、イギリスの縦ロールと違って遠慮なんてしないわよ!」

 

「へへ、望むところだ!鈴」

 

一夏と凰の試合はヒートアップしている。

持ち前の感と反射神経で凰の龍砲をなんとか避け続けている一夏。

凰の方は上手く距離を取りながら、時には青龍刀で攻め、時には龍砲を使って一夏の攻撃のタイミングを外したり体勢を崩したりとそれなりに技術はあるらしい。

 

「このままじゃジリ貧だ!……っ!そ、そうか!分かったぞ!」

 

閃いた一夏の動きが格段に良くなる。

凰の龍砲を、姿の見えない衝撃弾をまるで見えているかのように完璧に避け始めた。

これにはさしもの凰も驚愕し、余裕そうな表情を引き締めた。

 

「あれはどういう原理なんだろうね。シンタロー君」

 

「明らかに見て避けてる動きだが、ISのハイパーセンサーにそんな機能がついてるのか?」

 

「ああ?…あぁ、ISのハイパーセンサー自体に衝撃弾を可視化して捉える機能は無えよ」

 

「?じゃあどうやって避けてるっすか?見えない限りあの衝撃砲の攻撃は俺やキド以外避けられない気がするっすよ?」

 

相手の思考を読むことが出来る“目を盗む”を持つセトが、当然の疑問をぶつけてきた。

確かに、衝撃の塊が見えない以上、当てられないように避けるにはセトの“目を盗む”を使って相手の攻撃するタイミング、撃ってくる場所を確信した上で避けるか、キドの“目を隠す”で自分の姿を見えなくする以外ない。

 

ただ、空気の砲弾にも弱点くらいはある。

それは、撃ち出した際に空間の歪みと大気中の流れが変わってしまうこと。

これらをISのハイパーセンサーで確認していれば龍砲を撃つタイミングや狙っている場所を知ることが出来る。

 

「まあ、ISのハイパーセンサーがどれだけ優秀だっていっても、それを実戦でいきなりやって理解出来る奴は極僅かだ」

 

『私は出来ますけどぉ、弟さんの場合は半ば無意識にやっちゃってますね!これぞ主人公補正ってヤツですか!ご主人より主人公やっちゃってますねぇ〜ww』

 

う、うるせえよエネ。

あんな女関係でややこしい主人公なんてこっちから願い下げだっつーの。

 

「りぃぃぃんんんんんん!!」

 

「一夏ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

エネのからかい文句なんて露知らず、一夏と凰は互いに激しく切り結んでいた。

途中既に一夏に対して龍砲が効果を成さない事に気付いた凰は青龍刀を二本ひっ掴み、二刀流で持って一夏に近接戦闘を臨んだのだ。

それよりも、一夏の白式は一撃必殺チート「零落白夜」を持っているが、燃費が最悪という欠陥兵器なんだから長期戦向きの機体特性を生かしてチマチマ粘ってればいいのに、なんで凰はわざわざ近接戦闘を選んだのか理解できない。

 

『あ〜れぞ脳筋って言うんですねぇ〜!ご主人』

 

「ああ、バカだな」

 

このまま粘っていればワンチャンスくらいはあっただろうに。

頭の中で凰を織斑姉弟筆頭の脳筋連中リストに明記しつつ、適当に凰との対戦シュミレーションをしてみたが、100パーセント瞬殺出来たのてそれ以上はやめた。

 

『………あれ?何かIS学園に接近する反応がありますよぅ?ご主人!』

 

「はぁ?何かってなんだよエネ」

 

『うーん。IS学園の防衛設備をハックして調べてますけどイマイチ良くわかんないですねぇ〜。この際人工衛星でも監視カメラでも使って直接………へ?回線が切れちゃいました?』

 

「へえ、珍しいな。お前が電子戦で負けるなんて。相当な腕前なんじゃないか、IS学園のハッカーは」

 

『え、ええ……?いや、これは。私と同じようにIS学園をハックした相手から強制的に切断されたような〜?ーーーっ!?ご、ご主人!上!上から、上から来ますよぉーーー上ぇぇぇ〜〜!!』

 

ドドゴォォン!!!

 

「な……はっ!?はぁっ!?」

 

エネの絶叫と被るように、それはIS学園のアリーナを覆う膜を突き破り、そいつは遥か上空から現れた。

今のISには見られない全身を覆うフルスキンタイプの装甲。

両腕は気味が悪いほどに長く、その目はどこを見ているかも知れない。

謎のISに対して一夏は雪片弐型を構え警戒する。

 

『………』

 

「なんだ、こいつ」

 

「気をつけて一夏!こいつ、何かしようとしてるわよ!」

 

凰に注意されてハッと我に帰る一夏はすんでの所で敵IS?のレーザー光線を避けた。

そして、一夏が避けたレーザーはぶつかる障害もなく真っ直ぐ一直線にアリーナ観客席へ飛んで来た。

 

 

 

 

 

「………げほ、げほっ。…………マジかよ。シャレにならねえだろ。これは」

 

ISを展開して『カゲロウアイズ』を射出、壁にした事で減ったSEを睨みつけ、内心では死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬーー!!と冷や汗たっぷりだった俺は、深く息を吐いた事で生の実感を感じていた。

 

『ご主人!IS展開ナイスすぎますよぉ〜〜!ナイスです!ナイス!』

 

カバーしきれずに直撃を喰らい、ガラガラと音を立てて崩れる観客席、飛び散った瓦礫と椅子の破片がバラバラになって飛び散って行く。

俺のすぐ傍にいるアヤノに降りかかるそれらを即座に庇う。

そして、この騒動の犯人を睨みつけた。

 

『………』

 

『未登録のIS……!?お騒がせな天災さんですか!』

 

ISの生みの親、天災 篠ノ之束。

ISの心臓ともいうべきISコアを独力で開発し、世を女尊男卑に至らしめた張本人、と世間一般では言われている。

 

だが、実際には違う。

なんでもISコアは当初、アヤノの親父さんやアヤカさん、篠ノ之束が共同で開発したものらしい。

理由は、考古学者として崩壊しそうな遺跡など危険な所に調査などを行うアヤカさんが心配すぎてアヤカさん専用のパワードスーツとしてプロトタイプが作られた後、篠ノ之束の宇宙に行くという途方も無い夢を叶えるためにISは生み出されたとか。

 

そもそもアヤノの親父さんは世界一の変人と呼ばれる篠ノ之束とブリュンヒルデこと織斑千冬に教鞭を執っていた時期があったらしく、3人の開発は順調に進み、宇宙への第一歩を示す初号機が完成した。

 

しかし、ここで事件が起こる。

突如日本に向けて多数のミサイルが飛ばされたのだ。

 

篠ノ之束によるISの戦闘能力を示すためのデモンストレーション、天災の自作自演と言われているが、これは亡国機業と呼ばれる組織がISの性能を知るために行ったテロだとアヤノの親父さんは語っている。

 

結局の所ISは表向きはスポーツの道具として、実際には各国の軍事目的に使用されることになり、篠ノ之束は世間から姿を消した。

次に姿を現したのは、アヤノの親父さんがアヤカさんとカゲロウデイズに巻き込まれ、冴える蛇に取り憑かれて現実世界に戻って来てからだった。

 

そのあとは冴える蛇の凶行を止めるためにアヤノが飛び降り自殺をしてカゲロウデイズに留まり、冴える蛇に取り憑かれたアヤノの親父さんの外見に騙された篠ノ之束は、アヤノとアヤカさんの死因の裏にはキド、カノ、セトの3人を操っているメカクシ団の存在があると唆され、冴える蛇の計画通りに100以上のISコアを量産した。

 

そしてカゲロウデイズ攻略作戦時には大半の無人型ISがメカクシ団の妨害を行ってきたが、その悉くをコノハやモモのファンクラブ会員達に破壊されて楯山家に封印された。

 

これによって、漸く事件の終わりを迎えたと思っていたが、篠ノ之束は「まだ終わっていない」と残して、誤解を解く暇も無いまま再び姿を消した。

 

「束さんの最近は減って来たと思ったんだけどねぇ〜」

 

『あぁ〜〜!!周りの出口まで閉まっちゃってますよ!どど、どうするんですかご主人!?』

 

「エネもみんなも落ち着け。カノ、エネ、シンタロー、姉さんは周りを落ち着かせて脱出経路の確保だ。セトはあのISの動向に気を配れ。いくぞ、作戦開始だ」

 

「了解っす!」

 

キドが迅速に命令を飛ばし、メカクシ団メンバーが動き出す。

カノが生徒会長の楯無に姿を変えて周りの生徒を落ち着かせるとISを展開した俺が出口を閉ざす分厚い壁を強引に開く。

後はエネが生徒の持つ電子機器をハックして避難誘導の注意喚起をしたり、アヤノが「目をかける」を使って生徒一人一人に逃げる手順と気持ちを落ち着かせることでパニックや騒動はそこまで大袈裟に発展しなかった。

 

「…ふふ、すっかり団長さんだねぇ。つぼみ」

 

「……」

 

目をかけるを使いながら、一人満足げに呟くアヤノの声は、やはり周りの声や一夏、凰と相対している不明ISの戦闘音に掻き消される。

 

だが俺は見た。

 

フードを目深くかぶり直したキドの口角がひくひくとニヤついていることと、キドの満面のドヤ顔を。

 

「うーん。さっきから盗むを使ってるけど。全然聴こえないっす」

 

「そうか」

 

「盗むが通用しないなんて、アレ、人じゃないんじゃない?」

 

『やっぱり無人型ですかねぇ〜』

 

あらかた生徒の避難を終え、メカクシ団メンバーが一箇所に集まり、不明ISの対策を考える。

それで出たのが、あのISに人は乗っているのかということで、エネがあのISのシステムをハックしてもし人が乗っていないのであればこちらで一夏を援護しつつあのISを撃破する。

 

『ハッキング完了!それでやっぱりアレ、天災さんの無人ISですね』

 

エネがハッキングを終わらせてあの無人ISの情報が全て解る。

名前はゴーレム、製作者は篠ノ之束、エトセトラ。

 

「そういえば、キドたちはまだISはもってねえのかよ」

 

「ああ、俺たちのはまだ調整が済んでないらしい。悪いなシンタロー」

 

「ほんっと、お父さんも心配性だよね〜。自爆システム(笑)のついてるシンタロー君のISならともかく他のISなら大丈夫だってエネちゃんも言ってたんだし大丈夫でしょ」

 

「おいカノお前今なんつった!!?」

 

自爆システム!?絶対今こいつ自爆システムっていっただろ!いや待て如月シンタロー。

これもまたカノのいつもの悪ふざけかも知れないんだぞ落ち着け、落ち着くんだ如月シンタ(ry

 

「おい!カノ。もしシンタローにバレたらどうするんだ」

 

「あはは。ごめんごめんキド〜」

 

「え、は……ちょ、お、おおおおい待てよ。自爆システムとか冗談だろ?な、なあ、団長……」

 

「………ぷぷっ」

 

「おおおおお、おおお俺は降りる!!今すぐこのISから降りる!!そ、そもそも!自爆システムとかシャレになんねぇだろ!なんで搭載してんだよ!ガ○ダムかよ!?意味分かんねーよ!」

 

『ご主人wwwwビビりすぎwww』

 

「はぁ?び、びびってねーし。勝手に自爆システムとかそんな……ぶ、物騒なもん載せられたことに納得いかないっていうか……」

 

『あーぁー。ご主人が嫌がるからコアNo.007ちゃんもしょんぼりしちゃってますよぉ〜?』

 

『………』

 

『謝ったほうがいいよ?シンタロー』

 

「はぁ…?なんで俺が」

 

『………(しゅん)』

 

「う、ぐ……」

 

ISを介してホログラフィック状に浮き出たエネの隣、肩までの黒髪に赤いマフラーと俺と同じだが、エネのジャージみたいにブッカブカの赤いジャージを着た、どこかアヤノに似た中学生程の少女ーーー俺が使っているISのコア……No.007だ。

彼女は全ISコアの中で一番俺に適合しているISコアで、俺やエネが使う時以外は彼女はカゲロウアイズを管理・操作している。

 

そしてNo.007の両側をエネと挟みこみ、どこか楽しげに、それでいて涼しげな表情を浮かべているのが『目に焼き付ける蛇』だ。

こいつは高校の黒に一部白のアクセントをしたセーラー服と黒いスカートを履いた高校生時代のアヤノの姿をしていて、その実態は冴える蛇と同じ自我を持つ蛇だ。

 

1週目の時に女王として覚醒したマリーが産み出し俺の目に宿らせた能力で、時に生まれた時から一緒の相棒として、時に良き理解者であり良き隣人として、時に夢の中で出会う誰かとして、今まで終わらない夏の日を俺と一緒に繰り返してきたこいつは、いつの間にか俺の目から抜け出してISの疑似人格の一つして潜り込んでいる時がある。

 

まあ、それはそれで別にいいんだが、No.007も目に焼き付ける蛇も、二人してアヤノの姿に似せなくても良いんじゃないかとメカクシ団メンバーに引き気味の視線を受けた俺は思う。

 

「ともかく、これが終わったら後でーーー」

 

『一夏ぁぁぁーーーーーーっ!!』

 

「おわっ…!あぁっ!?ななな、なに!?なな、なんなんだよ……一体……」

 

キィィン、とガランとしたアリーナに響く耳障りなマイク音に思わず首をすぼめて耳を塞ぐ。

音源は?そもそもこの声は誰だ。

 

『げ、またまた竹刀さんですよぉご主人!まったく、姉妹共々お騒がせさんですかぁ!?』

 

エネの言う通り、放送室でマイクを手に物凄い形相で篠ノ之は一夏に何事か喚き散らしていた。

 

「待て、あのIS。篠ノ之に対して攻撃する気じゃないか?」

 

「!?」

 

「まずいっす!あの子、声かけしか頭になくて無人ISも目に入ってないっす!」

 

確かにセトの言う通りだ。

篠ノ之はマイクを握りしめたまま恐らく一夏だけを見ている。

しかし無人ISは真っ直ぐに手のひらを篠ノ之のいる放送室に向けている。

あの無人ISの手のひらからアリーナに張られているSEを貫通するほどの一撃、放送室が直撃したら篠ノ之なんてーーー、

 

 

 

「助けなきゃ。お願い!ーーーシンタロー」

 

 

「ーーーーーー」

 

 

「箒ぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

ドン、ドン、ドンーーー。

 

 

『一夏ぁ!一夏、一夏ーーー!!?』

 

 

篠ノ之に向けて撃たれたビームは篠ノ之から右に大きくずれ、放送室の実に三分の一を壊滅させたが、当の篠ノ之に外傷は無かった。

そして時を同じくして一夏が無人ISの腕を切り飛ばした。

白式の残SEじゃ到底出し切れない出力だったので、多分は甲龍の龍砲を利用したんだろう。

 

「一夏さん!待たせましたわ!!」

 

「ナイス!セシリア」

 

更に続くレーザー。

そしてがら空きの胴を晒す無人ISへ突っ込む一夏。

容易く胴を断ち切られてアリーナに倒れ臥す無人IS。

そして敵を倒した一夏が顔を上げた頃にはもう、俺たちメカクシ団メンバーの姿は一夏の目から隠れていた。

 

後に残るのは無残に破壊されたアリーナの観客席と、アヤノの声に応えるように俺が撃った弾丸の空薬莢だけだった。

 




セリフが心配です。
ここの言い回しはこうだろうって思った方、修正おねしゃす。
そしてロリアヤノ、目に焼き付ける蛇(高校生アヤノver.)、嫁アヤノに囲まれて幸せなシンタロー爆ぜてくれ。もしくは駐車場裏に………。
あと割とどうでも良いけど時系列合わせが面倒臭かった。
なわか違和感あるかもしれないけど我慢してほしい…なぁ?(チラチラ)


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それぞれが、凝視めるーーー

 

 

side 織斑一夏

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

織斑一夏は幾つものクレーターの出来たアリーナで肩で息をするように立ち尽くしていた。

 

目の前には胴体を切り裂かれて活動を停止している全身装甲型のISーーーしかしその中に人間の姿は無い。

一夏の考え通り、やはりクラス対抗戦に突如乱入した正体不明機は無人型のISだったようだ。

 

しかし、誰が一体こんなことを?

そして、仮にもし正体不明機が無人型ではなく、女性操縦者を乗せた本来の有人型ISであったならば、自分はこのISを切ることができただろうか?

 

一夏は、織斑一夏は実はうすうす勘付いていた。

この騒動の張本人が誰なのか、この無人型のISを乱入させたのが誰なのか、そもそも、ISの心臓であるISコアを量産出来るのは1人しかいないではないかーーーーー。

 

「一夏さん!」

 

「っ、セシリア。っと、鈴も大丈夫か?」

 

「当たり前じゃない。っていうか、あの篠ノ之箒って女!ほんと危なっかしいわよ!」

 

「はは、箒に悪気はなかったんだって」

 

篠ノ之、その名前にギクリと肩を震わせて、一夏は頭をを振って、辿り着きそうだった思考を放棄した。

 

「だってそうだろ。束さんがこんなことするわけない」

 

「?どうしたの?一夏」

 

「もしかして!どこか怪我をなさいましたの!?一夏さん!」

 

「あ、いや、なんでもない。それにISのお陰で怪我は無いってセシリアも分かってるだろ?ISは先生たちに任せて早いとこ戻ろうぜ」

 

この時、考えることをやめた代償を、織斑一夏はいずれ知ることになるだろう。

しかしそれは、まだ、先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

side メカクシ団

 

「作戦完了、だな」

 

「いぇーい。みんなお疲れ〜」

 

「お疲れ様っす。あ、俺、ジュース持って来るっす」

 

「おう、悪いなセト」

 

クラス対抗戦に突如乱入した正体不明の無人IS。

それに対する生徒たちの避難や一夏への援護を終えた俺たちメカクシ団メンバーは、一足先に作戦成功の打ち上げ会を始めていた。

と言っても現在避難勧告のようなものが出ていて、全校生徒は部屋で待機、更に今回の事は絶対に外に漏らす事はないようにと箝口令も敷かれている。

別に言いふらす気は無いので俺と楯無の部屋にみんなで集まってお菓子やジュースを片手にワイワイ騒ぐ。

 

「ほんとみんな今日はお疲れ様!全部私の奢りよ」

 

「………楯無?お前、いつの間に…って、来てたのか」

 

当然、と書かれた扇子で口元を隠しつつ、楯無がニコニコと笑う。

そしてコソッと俺の隣に来るが、キドやカノの目が怖いので本当にやめてくれ。

あとアヤノ、いつもの笑顔を更にニコニコしながらこっちを見るのはやめろ、シャレにならんほど怖えから!

 

「流石、メカクシ団ね…ってとこかしら?No.7 如月シンタロー君。ふふ、私は事後処理があるからお暇するわね。楽しんじゃって!エネちゃん?」

 

「楯無……お前は」

 

扇子で口元を隠した楯無の目は笑っていた。

ただ、その奥に見える“目”は、とてもじゃないが笑っているとはいえず、俺は薄気味悪い寒気を感じた。

 

(お前は一体、何者なんだよ)

 

「ふふふふ」

 

『あ、そういえばご主人。かいちょーって日本の暗部の当主なんですよぉ〜!知ってましたか!』

 

「「ぶふっ!?ゲホッゲホゲホ!?」」

 

エネの衝撃のカミングアウトに楯無と顔を見合わせながら同時のタイミングで噴き出し、咽せる。

 

「は?…え、おま……楯無。暗部?…え?」

 

「あー、えー、……おほほほほ。またね!シンタロー君!エネちゃん!他のみんなも楽しんじゃって!おほほほほほほほほほ」

 

「あ、おい!楯無!待てって、おい!」

 

制止の声を振り切った楯無の姿はもう見えない。

はあ、と溜め息を吐き、マジかよ……と呟く。

 

「エネ、さっきの話は本当なのかよ」

 

「だよね、もし本当だとしたら僕らの活動全部知られてるって、結構ヤバいんじゃない?」

 

『まあ、今はまだあっちも様子見だと思いますよぅ?動き出すとしても政府から送られる通信はエネちゃんがバッチリ傍受してますので大丈夫です!」

 

「そうか、分かった。みんな、今は作戦成功を素直に祝うとしよう」

 

キドに言われて、先ほどの楯無の事はすっぱり頭から排除して楽しむことにする。

と言っても、遊ぶ為の道具は全てアヤノが部屋から持って来た人生ゲームやトランプだ。

特に人生ゲームでは何故かアヤノと俺が同時に結婚マスに止まり、突然のエネルール(?)によって俺のとアヤノが結婚、その後は一つの車を2人ずつでサイコロを振るのでポンポン進んでいき、見事優勝したり。

ツイストゲームでキドが目を隠すを使ってカノの指定されたポイントを消して勝ちを拾ったり。

トランプではセトの「目を盗む」が炸裂していつしか対セト連合が出来上がっていたり。

某ゾンビのfpsゲームでキドとペアを組んだらキドがゾンビにビビりすぎて全部俺が相手をする羽目になったり(その間キドは壁に向かってダッシュコマンドを連打していた)と楽しい時間過ごしていた。

 

「ん。そろそろ時間か。おい」

 

「あはははは。シンタロー君面白すぎ……はぁ、楽しかった。じゃあセト。僕らも部屋に戻ろうか」

 

「そっすね。シンタローさん。お疲れ様でしたっす」

 

キド、セト、カノ、アヤノの4人が部屋を出る。

しかし、最後にアヤノが耳元で、

 

「…………浮気は、ダメだからね」

 

「お、おう?」

ヤバい、アヤノヤバい、マジヤバい。

アヤノにしては珍しく、照れと羞恥と嫉妬と笑顔と、複雑な表情の困り顔で俺を上目遣いにいじらしく見つめてくるもんだからキョドッてしまった俺はアヤノを安心させられるような言葉も言えないまま、顔を耳まで真っ赤に染めてコクコクと頷くだけだった。

 

「うん。じゃあ、おやすみっ、シンタロー」

 

満開に咲いた美しい花。

彼女の笑顔を形容するなら、きっとそれしか無いだろう。

 

「あ、う、おおう…」

 

つっかえつっかえなんとか返事を返した。

それに対してもアヤノはまた、嬉しそうにはにかんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ???

 

「…………」

 

『シュロロ、おお、どうした我が主人よ。端正な顔を歪めて随分と不機嫌そうじゃないか。シュロロ』

 

「……うるさい」

 

『シュロロ。どうせ、あのクソガキ共を舐めてかかったんだろう?ああ、そうか。我が主人は学園のガキ供を人質にすればそう簡単には動かないとタカをくくっていたのか。クックック』

 

「っ、うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」

 

ガン!

 

女性が打ち付けた拳がパソコンのキーボードをいとも容易く破壊する。

しかしそれでは抑えられない衝動に動かされ、女性ーーー篠ノ之束は狂ったように部屋の中の設備を破壊していく。

 

「なんでだよ!なんでだよ!束さんの計算に狂いはなかっただろ!なのに!なんであいつなんかに邪魔されなきゃいけないんだよ!ふざけんなよ!」

 

大半が破壊されたパソコンの内、辛うじて生き残っていたパソコンの画面に写り込んでいるのは、赤いジャージを着た気怠げな少年の他、ポニーテールに結った髪の男装少女、ニヤニヤ笑う癖毛のつり目少年、緑色のツナギを着た体格の良い少年、赤いマフラーを巻いた黒髪の少女達だ。

 

「なんで?なんで邪魔をするの?アーちゃん。キーちゃん。カーくん。セッくん?束さんの言う通りにすればみんな幸せになるんだよ?なのに、なんで束さんの邪魔をするの?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?」

 

狂ったようになんで?を繰り返す篠ノ之束を、巨大な蛇のような黒い影は嘲笑する。

なんて馬鹿な生命だ、なんて馬鹿で扱いやすい女なのだろう、と。

そうして彼女の耳元でこう囁く。

 

「次が。そう、次があるではないですか。我が主人よ。シュロロ。貴女の頭の中には既にハッピーエンドへのシナリオが出来上がっている。後はその為の準備をするだけですよ。シュロロ」

 

ピクリと、篠ノ之束の表情が動く。

そう、蛇の言う通り、既に篠ノ之束の計画は始まっている。

蛇の狡猾な企みを篠ノ之束が考え付いたのだとじっくりと囁き続けた、歪な計画が。

 

「あは、あはは、あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!そう!そうだよ!束さんにはみんなが幸せになる為のシナリオがある!あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ。

天災がキーボードを叩く度、部屋中のパソコンがチカチカチカチカと点滅を繰り返す。

ストロボのフラッシュが壊れた彼女を映し出す。

篠ノ之束の目からハイライトは見えない。

歪んだ希望と、欲望のまま、蛇の“目”を植え付けられたまま、篠ノ之束は動き出す。

 

「あはは、次はどうしようかな?いっくんの実力は学園中の生徒が思い知っただろうし。ああ、そうだ、そう言えばちーちゃんのデータを再現しようとどこかの馬鹿達ができもしないことをやってたっけ」

 

VTシステム。

ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

天災による壊れたハッピーエンドへのお膳立てが整えられていく。

それはやがて全てを壊し、亡き者にし、終わらない夏へ向かう。

 

ーーーカゲロウデイズ計画。

 

二度目の終わらない夏を、終わらない世界を。

一度目が攻略されたなら、またもう一度最初からやり直せばいい。

次はもっと狡猾に、老獪に、狡賢く立ち回り、クソガキ共を舐り、その目に宿った蛇をくり抜いていく。

 

シュロロ、蛇は嗤う。

もう一度、終わらない夏を繰り返せば、愚か者達はまた自分を求めると。

それが最高に笑えて、嗤えて、嘲笑えて仕方がない。

 

「あは!あははは!あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」

 

狂ったように嗤う。

口の端から涎を垂らしながら嗤う。

そして篠ノ之束は嗤う。

自分の体を動かしているように勘違いをしているが、その体の全てを蛇に乗っ取られている彼女は、

 

妙に頭の冴える頭で考えていた。

 

ああ、このどうしようもなく愚かな世界が、どうか幸せで溢れますように、と。

 

 

 

 

自らがその世界に終わりをもたらす鍵であることに、未だ気付かずにーーーー。





束さんはドンドン壊れていくドン!
このまま終わらない夏ーー福音戦まで頑張るドン!
次からは黒兎が出てくるけど実は黒兎編が作者的に楽しみだドン!


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悲劇はまだ終わってないんだよ

劇場版カゲロウデイズのRED、最初の「段々目が回って」の部分で既に惚れました。




 

 

 

「……ここは」

 

赤いジャージを着た青年、如月シンタローは目の前の光景に軽く眼を見張る。

彼が時計台から見下ろすのは無味乾燥を帯びた透明な街並みだった。

 

「やあ、シンタロー。寝る前ぶり……かな?」

 

シンタローの背後から現れた少女、いや、目に焼き付ける蛇の髪がシンタローの鼻孔をくすぐる。

背後にいる少女のにんまり笑顔を頭に思い描いたシンタローは一度目を瞑り、彼女に向け、口を開く。

 

「カゲロウデイズは終わったはずだろ。それに、なんだってこんな場所で」

 

「うん。そうだよ。君たちの作戦によって冴える蛇の計画は潰えた。……それに良いじゃないか。此処はシンタロー、君と二人っきりになれる唯一の場所なんだし」

 

じゃあ、なんで今更。

 

「シンタロー。冴える蛇は、まだ生き残ってる。本体の尻尾みたいな分身がまた、世界をやり直そうとしてるんだ」

 

「…………………なんで、それを知ってるんだ。お前」

 

頭のどこかで理解した。

それでもシンタローは背後にいる目に焼き付ける蛇の顔を見つめた。

楯山アヤノの素顔と瓜二つの彼女は、シンタローと目を合わせた赤い目をゆっくりと細め、彼女としては珍しく、泣きそうな顔を浮かべた。

 

「まだ思い出せないよね。でも信じてる。きっと君が思い出してくれて、最後の悲劇を止めてくれるって。……信じてる。信じて、待ち続けるよ」

 

目に焼き付ける蛇はシンタローの両頬を優しく両手で包み、微笑んだ。

何万回、何千回の世界を、彼が忘れてから、思い出してから、そしてまた忘れてから。

そうやって何時迄も共にした青年。

 

最初は自我なんてなかった。

他の蛇と同様に、ただ宿っている能力者の意思によって振るわれるだけの〝目〟だった。

だけど、世界を何度も繰り返す度に彼の想いを聞いた、知った、その度に焼き付けた。

 

いつしか、能力者と〝目〟という関係には不釣り合いな感情を、目に焼き付ける蛇は抱いていた。

この感情が何か、彼女は知らない。

知っていたとしても、もしかしたらはぐらかしてしまうかもしれない。

 

いつだって肝心な時に彼の力になれない。

目に焼き付けるしか出来ない自分は無力だと独り涙した。

そしてまた、彼の最後を焼き付ける。

彼女の胸を締め付けるのは、決まって彼が最期に決まり悪く謝るからだった。

 

 

「俺はまた、忘れてしまう。この世界のことも、あいつらのことも、お前のことも」

 

 

「またお前を独りぼっちにさせてしまう俺は……情けねえよな」

 

 

不意に細めていた目を見開き、彼の自分の目と合わせた。

彼の外見年齢は18歳だ、しかしその中身はいつも見ていた18歳の初々しい彼でない。

何千、何万歳と積み重ね積み重ね、熟成された精神を持つ彼は、目に焼き付ける蛇と目を合わせるくらいでは動じない。

 

(まあそれも、他のクラスメイトだとすぐテンパっちゃうのが可愛いんだけどなぁ)

 

クスッ、彼女が笑った。

また俺のことで笑ってるのかとシンタローはムスッと不満顔。

 

「じゃあ、そろそろ」

 

「ああ、またな…」

 

此処でお別れしたとして、シンタローが目を覚ませばまた顔を合わせるだろう。

そんな事に気付いていたシンタローは、自然と、笑顔で言葉を交わした。

 

 

 

「あの夏が来る前に、絶対に思い出して」

 

 

最期に彼女はなんと言ったのか。

シンタローの目は暗闇に覆われた。

 

 

 

 

 

『ごっしゅじーーーーん!朝ですよぉーーーーーー!!!』

 

「だっ!?っーーーー!!!?耳が……」

 

『朝起きないご主人が悪いんですよぉ〜!ほらほら、早く着替えて学校いきましょうよぉ〜!』

 

青いジャージを着た少女の笑顔に悪態を吐き、如月シンタローはハンガーにかけてあったIS学園の制服に着替えると、朝食を食べてアヤノの部屋に行く。

トントン、とノックをして部屋の向こうからアヤノとキドの、準備にかかる時間を聞くと、昨日見た夢を思い返す。

 

(あいつ。結局何が言いたかったんだ)

 

目に焼き付ける蛇の残した言葉の数々。

まるで、シンタロー達はまた繰り返す事を知ってるかのような口ぶり。

目に焼き付ける蛇を介してシンタローは今まで繰り返された世界の記憶を保持している。

だからこそ、彼女の『まだ思い出せないよね』『最後の悲劇』という言葉の羅列が引っかかる。

 

まるでシンタローにはまだ、思い出せていない日々があるかのような。

 

まるでメカクシ団にはまだ、残された悲劇が幕を開こうとするような。

 

言いようのしれない不安、目に焼き付ける蛇はまだ顔を出す気配は無い。

考えても仕方ないとスマホを操作してネットサーフィンを始めるシンタローに、部屋から出たアヤノが「おはようっ、シンタロー」と満面の笑顔。

 

「おう。おはよう」

 

それに釣られたか、シンタローもだらしなく

頰を緩めた。

 

 

「姉さんは先行ってて。俺はカノを連れて行くから」

 

 

ニヤニヤニヤニヤとシンタローのキモ笑顔を見て心底楽しそうにしている団長から気まずいの一心でアヤノと離れたシンタローは、いつの間にかアヤノと手を握っていることに気付き、赤面した。

 

だが、それはアヤノも同様だった。

いつもの彼女から想像もしないような赤ら顔で握られた二人の手を見つめ、シンタローと目を合わせ、嬉しいような、気恥ずかしいような、そんな複雑な表情でカチンコチンに固まっている。

悪りぃ、と一言謝り、アヤノから手を離す。

すると彼女は「あっ…」と消え入りそうな声で呟いたと思えばさっきまで繋いでいた右手を見つめ、「えへへ」幸せそうに笑った。

 

(なんだこの生き物なんだこの生き物なんだこの生き物なんだこの生き物なんだこの生き物なんだこの生き物なんだこの生き物なんだこの生き物なんだこの生き物)

 

シンタローの表情筋は崩壊寸前。

今アヤノと目を合わせてしまえば俺が俺じゃなくなる気がする、とシンタローはアヤノから顔を背けて歩き出した。

 

「………///」

 

「………///」

 

互いに無言、互いに赤面、互いに…ソワソワ。

 

嬉しくも恥ずかしい、しかし其処には、そんな甘酸っぱい青春を、幸せな恋を、夢のような高校生活(二度目!)をぶち壊す悲しき哀戦士が独り。

 

『なーにデレデレ鼻の下伸ばしてんですかぁ!ご主人!!ていっても、アヤノちゃんもだよ!?』

 

スマホの中の舞姫の閃光(笑)エネである。

 

普段の媚びた顔から想像出来ないような憤怒の形相でシンタローを呪い殺すかのように睨みつけていると思えば、今度はアヤノに対して嫉妬の色を帯びている。

 

何よりも恐ろしいかなこのツンデレ女子の恋は、人の恋路には酔っ払いオヤジの如く絡んでくる根性の癖して自分の恋に関しては非常に奥手。

実質九重ハルカに誘われなければデートにも行けないという………実はシンアヤよりも発展していないウブな女なのである。

つまりこれは、悲しき先輩の、イチャラブこいてる後輩二人に対するせめてもの妨害工作であった。

 

 

 

 

 

 

「お、おはよ!シンタローに、アヤノさん!」

 

「おっす。一夏」

 

「おはよう。一夏くん」

 

教室に入ると一夏が真っ先に挨拶をしてくるので、俺とアヤノも一夏に返事を返す。

席に着くと授業で使う教材を引き出しの中に突っ込んだり、エネがアヤノにスマホ内の要らん情報を教えようとするのを慌てて阻止していると、眠たげに欠伸をするカノとキドも教室に入ってきた。

 

「いや〜、一夏君はいつも元気だねぇ。その愛想の良さを少しでもいいからキドに分けてあげたら良いのに。ねえ?キド」

 

「………(怒)」

 

「いだぁー!?痛い痛い痛い!ギブギブ!キド!?ギブーーー!」

 

ゴスッと1発、鳩尾に正確に拳骨をかまし、更にはアイアンクローまで極めてきた。

 

「俺、キドが将来織斑先生みたいになると思う」

 

「シンタローもか。実は俺も……キドが千冬姉ぇみたいになりそうで心配だぜ」

 

『狐目さんの今後にファイト〜!ですねぇ』

 

などと雑談していると、織斑先生と山田先生が入ってきて朝のHRが始まる。

 

「ん、それと転校生が2人入ることになった。おい、入って来い」

 

まるでヤクザか何かのような「おい」の物言いに、やはり織斑先生とキドは似ていると確信。

直後、扉から入ってきた転校生の姿に目を奪われた。

何故なら入って来たのは銀髪の眼帯少女と金髪の男だったからだ。

 

「は?」

 

「へ?」

 

「どうも初めまして。シャルル・デュノアです」

 

どうやら金髪の男はシャルル・デュノアというらしい。

コイツは俺と一夏、例外でキドの様に男物の制服を着用していた。

驚きに目を見張りつつシャルル・デュノアの外見を見ると、こいつ?は女のように長い髪を後ろで三つ編みにし、肌は色白、身体つきは華奢でほっそりしていて、声も女のようでギリギリ……男か?これ、変声期過ぎたのか?

 

そんなこんな、デュノアの容姿に驚いていた俺は、来たる、一年一組女子による音波攻撃に備えることが出来なかった。

 

「「「「男ォォォォォォォォ!!!?」」」」

 

「うおっ゛!!?」

 

耳がキィィーンと鳴る。

一時的に周りの音が聞こえず、涙目で両耳に手を当てる。

ええええーーー!?だとか、きゃぁぁぁぁ、だとかの大音響はその後、織斑先生による「静まらんか!この馬鹿ども!」という鶴の一声が出るまで止むことはなかった。

 

「え、ええと。シャルル君はあちらの席にお願いしますね」

 

「は、はひ」

 

デュノアは女生徒の音響テロリズムのおかげで思いの外ビビってるらしく、舌足らずに返事をした。

それを聞いてまた別のグループが舌なめずりをするんだが……。

 

「次。ラウラ、挨拶をしろ」

 

「はっ、教官」

 

織斑先生の威圧感付き命令に、軍人を思わせるキビキビとした返事を返す銀髪の眼帯少女。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「……………え、もう終わりですか?」

 

「そうだが」

 

……………なんだよこの、間。

俺より酷くねえかこいつ。

 

ラウラ・ボーデヴィッヒのキッパリとした発言に織斑先生が頭に手を当て溜息をつく。

 

「もういい、席に着け」

 

「はっ、教官」

 

「ラウラ。私はもう教官ではない。以後、此処では織斑先生と呼べ」

 

「ですが、教官」

 

「織斑先生だ。次は無いぞ…良いな?」

 

「……はっ」

 

さしものあの眼帯少女も織斑先生の不機嫌マックスオーラに当てられては太刀打ち出来ないらしい。

悔しげに顔を歪めるとそのまま席に着くーーところで一夏と目を合わせてワナワナ震え始めた。

 

「貴様、貴様が……!!」

 

「ひでぶっ!」

 

「うお……あれは痛い」

 

スパーン!!

思い切り振りかぶって振抜かれたグーパンを喰らった一夏が痛みに呻く。

 

「うわ〜いったそ〜。キドの腹パンとどっちが痛いだろうねぇ〜(笑)」

 

あはは、と笑うカノ、キドがお前を射殺す様な目で見てるの気付いてるか。

 

ーーーカノ、アトデ、コロス。

 

キドの口がパクパクと動いていたのでようく注目していると、「カノ、後で、殺す」と言っていた。

 

「キドの腹パンと良い勝負(笑)ひー、お腹痛い………」

 

お腹痛い…………この後でカノの腹筋がどうなるか、その結末を思い浮かべた俺は一人身を震わせたのだった。

 

 

 

 

 

 

カノシネエエエエエエエ

 

ギャアアアアアアアアアアアアア!!! ネエチャァァァァァァァァン



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