超次元ゲイムネプテューヌmk2++ LastGoddess (神奈月 椎菜)
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Chapter0 -from From to someone-
0-1 リピートリゾート偵察


ただの書き直しなのでにじふぁんで見たことある人には申し訳ないと思います。
投稿スピードは(ただの書き直しのくせに)遅めですが頑張っていきたいと思うのでよろしくお願いします。

尚、Re;Birth2要素がないのは作者がやってないからです。持ってます。起動してません。


私は傭兵である。名前はフロム。いつから傭兵などということをしているかは全く覚えていない。ただ十になる頃には既に銃を持ち何かを殺し続けていると記憶している。

私はこの時女神というものを見た。まぁ、遠目ではあるが。

 

その時に私がいたのは黒の国ラステイションの本都の近く、閉鎖されたリゾート地域だ。昔は結構な人気のあるリゾートだったようだが今となっては荒れ果て、化物(モンスター)が闊歩する化物(モンスター)専用のリゾートと成り果てていた。

私がここに来た目的はその化物の討伐。傭兵らしい、至極ありふれた内容だ。

 

私がリゾートに足を踏み入れた時、何とも言えぬ異臭が私を襲った。咄嗟に鼻と口を覆って辺りを見渡すと、通路のあちらこちらに人間の残骸のようなものが散らばっていた。細かくちぎられ、食い荒らされたように腕、足が棄てられている。

私が残骸の1つを手に取ろうと触れた瞬間、その残骸は跡形も無く崩れ去った。その時、私は合点がついた。こんなにも大量の残骸が散らばっていること、私のような傭兵に依頼が来たことにだ。

 

 

三年前ほど前、この世界ゲイムギョウ界にあるツールが広まった。

【マジェコン】と呼ばれるそれは、スキャンしたものの寸分違わぬコピーを作り出すことができた。ただし、その代わりに【マジェコンヌ】という怪しげなものを崇拝しなければならない、というものだ。

これに食いついたものが大勢いた。それもそうだ、スキャンしたものと寸分違わないコピー。それは食料品、生活雑貨、娯楽品の上にそもそも金、紙幣すらコピーできてしまい、マジェコンヌの信者が爆発的に増加すると同時に世界の経済は崩壊した。

各国に存在する二大政務機関【教会】と【政府】のうち教会は直ちに取締を開始し政府へも協力を要請するも四国全ての政府はこれを無視、それどころか教会に対して圧力をかけたという。事実上マジェコンを認める形となった。

 

これにより経済の理念は崩壊し、世界は混迷の時代へと両足を突っ込むことになったが、教会は諦めていなかった。各国に1人存在する事実上の統治者にして最高戦力【女神】を投入。マジェコンの一斉摘発、根絶を狙った。

だが、ある時を境にぱたりと女神の話を聞かなくなった。一説では女神は自分のコピーと相討ちとなり全滅した、とも言われていた。

 

最高戦力であり最高権力者を一瞬で失った教会は失墜。だが政府も女神を失ったことには思うことがあったのか、女神に代わる戦力補充法を見出した。マジェコンによる人間のコピーだ。

本物に比べればいくらかスペックダウンするものの、使い捨ての戦力としてこれ以上の適任はなかった。

ノーコストで生まれる戦力に政府、それどころか民衆も教会以外は諸手を挙げて喜んだという。

 

 

今現在、そのコピーだったものが私の目の前に残骸としてばら蒔かれていた。

少なくとも、その残骸の残り方から人間同士の争いではない。数の暴力を薙いで食い荒らすことができるモノの仕業であるということ。私は愛用の銃を握り、走り出した。

 

走るにつれ残骸が人間だったものの残骸が大きくなっている。食いながら移動しているのか、それとも逃げる途中なのか。バリケードらしき残骸も見え、少しずつ足の踏み場がなくなっていく。肉の道というのは感触から何から悪いことしかないが、諦めて走り続ける。

1分ほどした時だろうか、銃声が聞こえた。どうせコピー兵隊連中の生存率なんざ誰も気にしやしないだろう。屈んでそのへんの残骸に身を隠しながら音に近づく。

 

そっと顔を出し音の方向を見ると、目的のものと思われるイルカの姿をしたドルフィン種モンスターと、数人の人間、女が戦っていた。よく動き回っているところを見るに、コピーではないようだ。

 

一人は紫色の軽装に片手剣、戦いに来たとはとても思えない。

一人は黒色の軽装に体躯より大きな銃。アンバランスすぎる。

 

どちらも一見モンスターと戦いに来たようには見えないが、コピー兵隊が何十人いようと一蹴するドルフィン種相手に善戦している辺り只者ではないことがわかる。さてどうしたものか。

そもそもあのモンスターの撃破が目的であり、あれの撃破が証明されれば私が止めを刺したものでなくても構わないわけだ。とすれば私が手を貸す理由はない。残骸のバリケードに隠れながら様子を見続ける。死臭が鼻につく、マスクでも持って来ればよかったと今更後悔した。

 

様子を見ていると、紫の方の女が突然発光し始めた。

一瞬目が眩み、身を隠す。発光する武器自体は多いが人間そのものが発光するとはどういうことだと混乱しながら、光が収まったのを見計らって再度覗き込むと、紫色の女の姿が変わっていた。

薄紫の翅を広げ、腰周りに何か盾状のようなものが浮いており、それどころか女本人が浮いている。個人携行できる無重力装置なんて存在しない以上、考えられるのは1つしかない。【女神】だ。

 

一説では三年ほど前に絶滅したと言われていたが現存していたとは思わなかった。

これは、ある意味大発見だろうな。そう思い銃をバリケードに立て掛けてカメラを取り出す。偵察依頼用だったのだが功を奏した。

飛び上がって上空から手に持つ銃剣らしき武器からレーザー弾が放たれ、着弾し砂煙が起こる。馬鹿げているとしか思えない。単体飛行は人類の夢と言われているが実物を目の前にすると心なしか興奮を覚える。

 

数秒枚に写真を撮り続け、モンスターが倒れたのを見てワンテンポおいてモンスターの死体を撮る。これで任務も終わり、偶然とは言えボロい商売だ。そう思った時、油断からかカメラをしまおうとした時肘に銃が当たり、壁をすり落ちて肉の道の間にあった本来の道に落下し音を立てた。

 

「っ誰!?」

 

まずい、最後の最後でやらかした。と銃を拾いながら私の脳内は混乱していた。

ここで出て行くのも怪しい、隠れ続けるのも厳しい。そもそも飛ばれたらこんなバリケード何の意味もない。どうにかしてここを離脱する方法を考えようとしている間にも気配が徐々に近づいてくる。警戒しているのか足取りは遅いが幸いにして最悪。方法が思いつかない。何か挽回の一手がないかとアイテムの入ったポーチを漁っていると、1つのボタンがこぼれ落ち、私の目に入った。これだと、私は確信した。

落ちたアイテムはイジェクトボタン。押すことで押した者を瞬時に離脱させる不思議アイテム。

片手でボタンを押し込むと同時に反対側、あいつらが来る方向に銃を構える。私の視線の先には黒い軽装の女がその巨大な銃を私に突きつけており、その瞬間だった。

だが私も、奴も言葉を発する暇なく視界がブラックアウトした。

 

 

次の瞬間、私はリゾートの入口にいた。離脱はできたようだ。

ふうと息を吐き、背を向けて走り出す。アレに捕捉されないうちにさっさと帰ることにしよう、見つかったらがことだ。街中では流石に見つからないだろうと、願いながら。



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0-2 ブリーフィング

書き直しってなんだろう(哲学)


ラステイション本都。

黒い壁に包まれた階層都市、外から見れば要塞か何かと思うだろう。事実上層部以外は太陽の光を受けず人口の光しか知ることはできないし、コピーか否かを徹底して識別させている分コピーにも人権を、と言い出す輩も増えているとか。そんな住む場所と言うにはまさしく監獄都市ではあるが、物理的な防備に関しては恐らく四国最硬だろうとどこかで聞いた。

コピーに人権はない。人間コピーが開始された頃から言われ続けてきた常識だ。そうでもなければ大量の人型を捨て駒として使えるわけがない。だが、意思を持つ人間のコピーもまた意思を持ってしまう。戦力増強、労働力増強のために増やしすぎたコピーは自らの人権を要求。現状大掛かりなぶつかり合いこそ起きていないものの、いつ武力衝突が起こってもおかしくはない状況だ。

 

今、私はラステイションの最上層にいる。

別に私の住処がここというわけではない。最上層は言わば行政区、お偉いさん方が集う場所だ。一介の傭兵が本来来る場所ではない。

私がラステイションに戻り、ドルフィン種モンスターの死体の写真を使い報酬を貰い、意気揚々と住処に戻ったら一枚の手紙が扉に貼られていた。その手紙には、こう書かれていた。

【この手紙を読み次第、教会に来て欲しい。詳しい話はそこでする by姉代わり】

破り捨てたい衝動に駆られた。

誰が姉代わりだとかこっちの都合お構いなしかとか言いたいことは多かったが、対面しなければ言いたいことも言えない。文句を言うにも結局行かなければならない。無視すればいいことではあるが、失脚しているとはいえ相手は一応行政機関だ。何されるかわからない以上、結局行くしか選択肢は残されていなかったのだ。

 

助走を付け、無駄にデカい扉にドロップキック。接触と同時に大きく蹴り跳ね帰って着地。バンと大きな音と共に扉は開き、入り込んで私は言った。

 

「待たせたな!」

「普通に入ってこれないのかい君は」

 

そんな私に冷ややかな視線を送る少年、神宮寺ケイ。

恐らく、私に手紙を送りつけた本人だろう。呼びつけておいて随分な態度だと不満だったのが顔に出ていたのか、ケイはため息をついて再度私に目を向けた。

 

「久しぶりだねフィオ……そういえば君はフロムと名乗っていたかな?」

「誰のことか知らんが私は一介の傭兵フロムだ。今や落ち目の教会の教祖様が何の御用で?」

「傭兵を呼ぶ用ならば1つしかないだろうね。奥で話をしよう」

 

そう言われ、教会の内部を歩き連れられた先は最上階の一室。妙に手入れはされているが年単位で使われてはいないだろう、要は生活感がない部屋だった。横長の机を挟んで座るとケイが口を開いた。

 

「改めて久しぶりだね。9年ぶりかな?」

「さてね、私は刹那主義なんだ。それぐらいもあれば忘れる」

「……そうかい。では話をしよう。傭兵フロム、ラステイション教会教祖神宮寺ケイが君を雇いたい」

 

意外とすぐに本題に入ったことに若干驚きつつも、私は銃を抜いて机に置く。

 

「金という概念が崩壊し、コピー品が当たり前とすら言われるこの時代に契約や約束を重んじる私やあんたのやり方はゴミみたいなものだ」

「だが、それが正常だ。少なくともそれが横行しているからといって自ら愚に落ちるつもりはないよ」

「老害思考にならないといいが……まぁいい、それで?雇うっつっても私に何をさせるんだ?」

「簡単だよ。入ってくれ」

 

後ろの扉が開き、二つの足音が近づいて音と共に私の後頭部に円筒上のものが当たる感覚がした。

突然銃を突きつけられる覚えはないとケイに非難の目線を送るが首を振られる。お前が招いたのだろうがと言いたいが口を開けば撃たれそうなので黙ることにした。

数分が経過するも誰も口を開かない。私は単に迂闊に開けないだけなのだが、何度もお前なんとかしろという思いを込めてケイを睨むもののどこ吹く風。お前はなにがしたいんだ。

 

「……あんたが、フィオネ・ジャーネフェルト?」

「誰だそりゃ。私はフロムだ、ただの傭兵だよ」

「ユニ。そろそろ話を進めたい」

「……」

 

銃が下げられる音が聞こえた。

緊張が解けて大きく息を吐く。流石に後頭部に銃を突きつけられてはビビって話もできない。

文句の一言でも言おうと後ろを振り向くと

 

「……」

「……よぅ、今日ぶり」

 

旧リゾートでモンスターを狩っていた二人組、脱出の瞬間私に銃を突きつけた女がそこに立っていた。後ろには、もうひとりの紫の女が呆れ顔をしている。

そりゃあ、そうか。ここは教会なんだ、女神が現存していたのなら教会に住んでいるはずだ。

 

「依頼内容は簡単だ、フロム、いやあえてフィオネと呼ぼう。ユニのお守りをしてくれないかな?」

 

「「は?」」

「はぁ……」

 

私と黒女の声と、紫女のため息が漏れた。

子供のお守りに傭兵だと?と文句を言いたかったがそれ以前に女神だ。お守りが必要な年齢にも見えないしそもそも女神にお守りが必要なのだろうか?

 

「弾代を全て教会で負担、教会での居住許可。これでどうだい?」

「乗った」

「安っ軽っ!?」

 

立ち上がり握手する私たちを見てツッコミを入れる黒女。

教会は政府に並ぶ最高機関だ、当然施設も最高峰となる。アパート暮らしが高級ホテルのスイートルーム暮らしになるようなものだ。最高の一言だろう。

そんな理由で受け入れた私が何か不満なのかもしれんが私は知らん。

 

「ともかく、その依頼承った。教会の施設で暮らせるってんなら万々歳だ、その日暮しともおさらばってなもんだ」

「中層部の暮らしが気になってきたわ……」

「どこも同じようなものだよユニちゃん、見てきたでしょ?」

「戦力が増えたのは嬉しいことだ。君の住んでいる場所には話を通しておくから、適当な部屋に案内してくれないかな?ユニ。ネプギア君もモンスター討伐ご苦労だったね」

 

紫女、ネプギアは表情1つ変えずにいえ、と一言呟いて部屋を出て行く。

無愛想な奴だ、というのが私の感想。あれが女神とは、世も末といったところだろうか。

 

「ネプギアのことは気にしない方がいいわ、ちょっと色々あっただけ。あたしはユニ、ラステイションの女神候補生よ。フィオネ・ジャーネフェルト」

「だからその名前やめろっつの私はフロムだ」

「なんでもいいわ。部屋案内するからついてきて」

 

私の文句も聞かず早足気味に退室する黒女ことユニ。なんなのあいつという意味を向けてケイの方向を向くと

 

「ああいう子だ」

 

と言われるだけに終わった。

仕方なく、私もユニの後を追い部屋を出た。



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0-3 コピー部隊殲滅 前

昨年末までに間に合いませんでした。

あとこれR-18あったりするかもしれないので注意してください。
問題があればR-15外してR-18にします。


ユニに連れられて来た部屋は、期待を真正面から打ち抜いてくれた。

飛び乗れば跳ねそうなベッドもある、無駄に容量がありそうな収納スペースがある、色々使えそうな机がある。私が欲しいと思っていたものは全てあった。

 

「使ってない部屋だから色々足りないだろうけど我慢して」

 

これだけあれば十分だろう、と言いたくなったが飲み込んだ。本気でそう思っていそうだったし自前で用意するものも多いと言えば多い。

一度荷物を持って来ようかと思っていたらいつの間にかユニがベッドに座っている。若干抗議の目を向けるが気にする節はない。

 

「……ねぇ、フィオネ・ジャーネフェルト」

「フロムだっつってんだろ」

「じゃあ、何でケイはあんたをフィオネって呼ぶの?」

「知るかんなもん、本人に聞いてくれ」

 

私の対応が冷たかったのかユニは黙ってしまう。

これのお守りとか早まったかなと今更後悔しはじめたがもうどうにもならない。仕方なく無視して荷物を取りに行こうと扉に手をかけ開き外に出ようとしたら

 

「やぁフロム君。早速だが仕事を持ってきたよ」

 

無駄に爽やかな教祖様が待っていたかのように書類を片手に立っていた。出待ちしてたのかこいつは、ストーカーか何かなのだろうか。

考える暇もなくケイに書類を渡される。軽く目を通してみるが、その内容のえぐさに一瞬息が止まった。

 

「おいケイ、私の役目はアレのお守りだよな?連れてけってのか」

「必要なことだ。ノワールがいない以上ユニに可能な限り働いて貰わなければ国の存続も危ないからね」

「なによ、あたしがお荷物になんてならない事ぐらいあんたらも知ってるでしょ!」

 

流石に聞こえていたようでユニが私の手から書類を奪い取る。即座に読み始めるが、数秒もしない内に青ざめてケイを見た。

 

「け、ケイ……?これ、本当にやるの?」

 

いくらなんでもヘタレるのが早すぎやしねぇか、と言いたくなる気持ちすら失せる。

私が受け取った書類には、こう書かれていた。

【ラステイション領に存在する町の1つがコピー集団に乗っ取られた。これを殲滅せよ。なお、街の被害については一切の遠慮を不要とする】。

やること自体は単純だが、言いたいことが多すぎる。

大きく息を吐いて、私はケイに向かい直した。

 

「1つ、コピー集団ってのは、そういうことでいいんだな」

「ああ。人間のコピーだ」

「2つ、見分ける手段はあるのか」

「先ほどユニにあるシステムをいれておいた。それで判別できるはずだ」

「3つ。アレに人間撃たせるのか」

「その必要があるというだけだよ」

 

涼しい顔でいうケイ。その徹底ぶりから冷血教祖の異名を聞いたことがあるが、まさしくその通りだ。まがい物とはいえ人間を撃てだ、この女神様にできるのか非常に不安だ。できない時のための私なのだろうが……

 

「ケイ……」

「いずれ君にやらせることを今やらせることになった、それだけのことだよ」

「人、よね……」

「詳しい説明は省くが、コピー人間に人権は認められていないため社会的には人間ではない。ユニ、本来ならば君にはまだこの経験をしてもらう予定はなかった。しかしノワール始め四女神の敗北、コピーによる信仰の低下、政府の台頭から脱するにはもはやこれしかない。これは残った女神の責務だ」

 

ユニは俯いて何も言わない。何も言えない。

何かを言い返そうと必死に頭を回して、それでもなお何も言い出せないのだろう。私は最初から口を挟む気もないので部屋の隅でできる分の支度をしていたが、ケイの視線がこちらに向いた。

 

「フロムくん、依頼内容は先ほどのとおりだ。やり方自体は、君に任せるよ」

「へいへい、今ちょうど作戦を思いついたところだ。今から出発する」

「バイクなら用意するよ」

「いんや。もっといい移動手段がある」

 

笑みを浮かべる私にユニもケイも首を傾げた。

 

 

 

「……ねぇ」

「んだよ」

 

広い空の下、目的の街に向かう途中でふとユニが口を開いた。

これから人型殺しをするというのだから少しでも清々しい気分を続けていたいというのに、なんと空気の読めない奴だろうか。

 

「聞こえてるわよ、というか……なんでアタシは移動手段役なのよぉぉぉぉ!!」

「うおぉぉぉ揺らすな落ちる!落ちる!!」

 

ブンブンと乗っている私を振り落とそうとするユニからおちまいと必死にしがみつく私。

そう、私達は現在、空を飛んでいる。

正確に言えば、女神化して飛行するユニに私が乗っている。

ただでさえデカイ銃を持っているから人一人ぐらい乗っていけるだろうと考えた結果、本当に乗れたのだ。狭いのは仕方ないとしても、なかなか快適だ。基本的に平べったい体型してるのもあって思ったよりも安定している。

 

「それで?なんでバイク使わずアタシに乗るって言ったのよ、帰りの分シェア持つかわかんないのに」

「なぁに、行きはよいよい帰りはこわいだ。正確には空からの奇襲をするわけだな」

「はぁ……ラステイションの女神がラステイションの街を壊すだなんて」

「膿は摘出しなけりゃなんねぇってことだよ。見えてきた見えてきた」

 

ラステイション程ではないにしろ、地階層を壁で覆った街が見えてくる。中心には高い塔が建てられており、一見すれば黒いプラネテューヌ本都にも思えるほどだ。

あそこではいま、コピー人間どもが人間様に成り代わって生活しているのだろう。そう考えればまだやりやすいというものだ。

 

「ユニ、中央の塔、屋上に着陸できるか」

「少し昇るわ、落ちない……やっぱ落ちちゃえ」

「ははは絶対落ちてやんねぇ」

 

女神化しているユニは何かと掴む部位が多い。肉体には顔の両側にあるドリル状の髪ぐらいしかないがプロセッサユニット、周囲に浮かぶ女神装甲は掴めるためか意外と安定感はある。流石にこのツインドリルは掴むのが気が引けた。髪を物理的に引かれる辛さはよく知っているつもりだ。本音を言えばケイに言いつけられるのが怖かっただけなのだが。

 

壁の内(上空だが)に入ると、工場街といった感じの灰色がほとんどを締め、ところどころに人らしき色も散らばっている。上空から見てみると蟻でも見ている気分だ。

しかしまぁ、黒い光まき散らしながら飛んでる人影をスルーとは、見張りは無能なのだろうか。それとも上は見ていないとかか?

 

「はー、やっとついた」

 

ユニの声ではっと現実に戻り、塔の屋上に着陸してカバンを開いて二丁の銃を取り出す。

私が背負える程度のカバンだというのに私程度に長い銃が入るというのも不思議な話だ。ラステイションはこういう実用性に関しては他国よりかなり秀でていると思う。

 

「さてやるか。手は出さなくていいぞ、私が全部やる」

「……あたしは、バイク替わりってわけ?」

「さてな、少なくともこの街を脱出するのと、見分ける程度の役割はあるが」

 

辺りを見渡して見つけた扉から塔内に侵入。身を隠しながら階段下の様子を伺っていると、コツンコツンと階段を登る音が聞こえ咄嗟に隅に隠れた。

 

数秒後、二人の男女が私に気づくことなく外に出ていく。私達に気づいた様子はなく、はぁと息を吐いた。

とりあえずあの二人からどうにかするかと外に出ようとした時、何かに引っ張られ立ち損ねる。後ろを見ると私の服の裾をユニが掴み、微かに震えていた。

まだ殺しすらしていないというのに、明らかに異常な様子だった。放っておく訳にも行かずどうした、と小さく聞いた。

 

「あ、あの二人……真っ赤だった……」

「真っ赤?」

「肌から、髪から、全身真っ赤で……あれ、人間なの……?」

 

ケイが言っていたあるシステムとはこういうことなのだろう。

私が見る限りさっきの人間たちは両方黒髪だった、それに肌が真っ赤ということなら私だって驚いている。私としては便利なことこの上ないが、ユニ本人にとっては気色悪いという問題ではなさそうだ。さっさと終わらせることにして、ユニは大人しくさせ私は先ほど屋上に出たふたりの後を追った。

 

隠密の邪魔になる銃は全て置いていき、両袖に仕込まれたレーザーブレードだけが武器の状態でゆっくりとその二つの背に近づいていく。

 

「これからどうなるのかなぁ」

「なるようにしかならないわ、こうして生まれちゃって、こんなことしちゃったんだもの」

 

二人は私に気づくことなく愚痴るように話す。

会話の内容からして、コピーは自分がコピーだということを知っているようだ。やはり、この街はコピーに文字通り占領されたのだろう。

 

「使われるだけの皆を集めて、こうやって勝ち取る。いつだって、そうするしかない」

 

息を殺し、手が届く距離まで近づく。

無警戒な奴らだ、苦手な私でもここまで気づかないとは。

 

「始めてしまった。ああ、始め―――ぐぅっ!?」

 

男の背、心臓部に右手を付けレーザーブレードを起動。現れた光の刃は男の肌、骨、内蔵を焼き切って貫通する。

 

「どうし―――っ!?」

「Freeze.(動くな)」

 

女の顔面に手を向け、鼻先まで刃を伸ばしながら止める。もう少し手を伸ばせばスっと顔面を通り脳まで焼き切るだろう。それがわかっていたのか女は黙った。

右手の剣を消し、そのまま殴るように男の背を押す。

心臓を焼き切られた上に数十mはある塔の頂上から、しかも頭から落下だ。助かりはしないだろう。

悲鳴をあげようとした女に手を突き出して黙らせる。命は惜しいのだろう、それがコピーされた人間でもだ。

 

「いいか、私の質問に正確に答えろ。さもなければ、今の奴の所に逝くことになる」

「……!!!」

 

震えながら何度もうなづく女。

一種の優越感に浸りながら、剣を一旦消して向きなおした。手は向けたままで、いつでも突き刺せるということをアピールしておく。

 

「1.貴様はコピーされた人間か」

 

女は静かに頷く。いや、声を出したくても出せないのだろう。わたしの機嫌を損ねないようにしているのだろうか。

 

「2.貴様らは何故この街を占領した」

「つ、つくられた私達を、ど、道具としか見ていないひとたちからにげだして、私達の町を作るため……」

 

「3.その目的は、こうして元の住民を殺してまですることか?」

「に、人間たちは、私達コピーを、人とは認めない、から……!」

 

途切れ途切れながら私に訴えかけるようにいう。

同情でも誘っているのだろうか。まぁ、確かに同情の余地はあるかもしれない。

 

「4.この街には、コピー人間しかいないのか」

「あなた以外は、いないでしょうね……」

 

その情報が聞きたかった。笑びが浮かびかけたがぐっと我慢して手を下ろす。

女も私を不安げに見ている。

 

「質問は以上だ。よくちゃんと話してくれた」

「そ、それじゃあ……!」

「ああ。死ね」

 

女の首をつかみ剣を出す。

首をつかみながら剣を出した結果、必然的に女の首を焼き切った。首をまるごと切ったためか頭だけが残り床に体が崩れ落ちる。

 

「ど………し……」

「答えなかったら殺すとは言ったが、答えたら殺さないとは一言も言っていない。来世はれっきとした人間に生まれて、約束事はきちんと詰めることだな」

 

頭を崩れた胴体の脇に転がす。首なし騎士なんてものは未だ見たことないが、化けて出られても面倒なので一緒に置いておく。

どうやら遠慮はいらなさそうだ。誤ってまともな人間を殺してしまったら面倒になるしな。

久々の大きな仕事だと思うと心が昂ぶる。楽しくなってきたと思いながらまだ震えているだろうユニの元に戻ることにした。



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0-4 コピー部隊殲滅 後

暫く間が空いてしまったのでノリと勢いで投稿です。
やっぱR-18にしたほうがいいかな……


扉をくぐると、銃を構えた音が聞こえた。

その方向を向くと先ほどよりは多少マシな顔色になったユニがこちらに銃口を向けていた。

大方さっき出て行った連中かと思ったのだろう。

 

「なんのつもりですかコノヤロー」

「ふぃ、フィオネ。脅かさないでよ、さっきの人かと思ったわ」

「ま、かるーくひねって情報を聞き出してやったさ。とりあえずちょいと作戦会議だ、出てこい」

 

銃を回収して、ユニを連れ屋上に出る。既に死体は消滅していたようだ。

レーザーブレードの利点はレーザーで焼き切っているため出血が少ない点だ。よってこうして死体が消えるなら隠滅が容易い。

扉を閉めユニと向かい合って座る。

 

「とりあえず、手に入れた情報を整理する。この街には私たち以外のオリジナルは存在しない。それと、どうやらオリジナルに対する革命を画策してるみたいだな」

「コピー人間には人権は認められていない……だからなのね」

「まぁ、少なくともお前はこれから真っ赤な人間を一人残らず殺して回る懲役刑のようなことをさせられるわけだ。ご愁傷様」

「言わないでよ、考えないようにしてたんだから」

 

口を押さえるユニに流石にまずったと私、反省。

全身真っ赤の人間とか流石に私は見たことがないので想像上だが、想像の時点で相当に気持ち悪い。それを間近で見たのだから私にはわからない感覚だろう。

 

「とにかく、ここの人間は皆殺しって方向で決定した。さてお前ならどうする?」

「……?どうする、って?」

「お前ならどうやって、この街の人間を皆殺しにできる?」

 

考え込むユニ。そりゃあそうだ、何百いるかわからないこの街のコピー人間共をたかが個人携行できる火器数個で皆殺しにしろ、という方が無理難題である。

ということを言い出して欲しかったのだが、根が真面目なのか本気で考え込んでいる。ほっとくと何か思いつくまでやっていそうだからとりあえず軽く脳天に手刀でも落として目を覚まさせた。

 

「なによぉ」

「時間をかけていいことはない。手段は既に考えてあるからこの塔を探し回るぞ」

「壊しながら?」

「隠れながら。さて、いくぞ」

 

ユニに構わず銃、小回りの利く短機関銃を両手に一丁ずつ持って再度塔内に突入。手摺に身を隠しながら階段を下りていく。ユニも私を追ってきた。

壁を背にして通路の様子を見る、人影はない。この階段は通路の端にあるようで後ろの心配がないのは比較的安心できる要素だろう。

 

姿勢を低くし、窓を避けて通路を進む。覗き見る度にユニが目を逸らすのを見る限り誰も彼もコピーとして真っ赤に見えるのだろう。もう少しマシな判別方法はなかったのだろうかとか言いたくはなるが、終わったあとに文句でも言おう。視覚的に吐き気を催すような状態にするのはどうなのだろうか、奴ならこれも経験だとか言いそうだ。

数個部屋の前を通り、階段を下りていく。妙に通路に人が少ないが気のせいだろうか?

 

「ね、ねぇ、フィオネ……」

「さっきから思ってたがさらっとフィオネ言うな、んだよ」

 

ユニが直立し、青い顔をして自分達が居る前の部屋を見ている。一瞬何立ってんだお前と叫びたくなったが、そうしたら寧ろその声のせいで気づかれかねないからだ。仕方なく立ち上がり、部屋の中を見る。

 

「……うわぉ」

 

思わず声が出た。

子供、子供、子供。託児所か何かのように数歳程度の子供が入れられていた。

だが問題はそこじゃない。その子供が全て、全員、どれもこれも同じ顔をしていることだ。

十中八九コピーだろうが、わざわざ手のかかる子供をコピーするぐらいなら、最初から労働力として使える大人をコピーしたほうがよっぽど手っ取り早く、コストもかからないからだ。

 

「ユニ、全員か」

「……ええ、皆、真っ赤」

 

理由はわからんでもないが、これら纏めてある一人の子供のコピーなのは間違いないだろう。

そして私がこの場合にするべきことは……

 

「よーし次行くぞー」

 

ガン無視。それ一択だ。

別に保護しに来たわけでもなし、生存能力もない子供ならば大体終わったあとに勝手に野垂れ死ぬか巻き込まれるかの二択だろう。余計なことをして騒げば、見つかる危険も増える。目当てのモノも未だに見つからず仕舞だ。根気よく探す他ない。

 

探し始めて時間単位で経つが未だに接触、発見共にない。というか本当に人が少ない。先ほどの子ども部屋を除けばではあるが、全く人型を見ないのだ。十数階建てならばそれなりに人がせわしなく行き来するものだと思っていたがそうでもないのだろうか。

屋上から始めて既に一階に到達しようとしていた。

 

「やってらんねー……何か撃ちてぇー……」

 

こう愚痴りたくもなるものだ。やはり私は潜入より強襲の方が性に合う。次こんなことやるときは何も考えずにやりたいものだ。

 

「そもそも、なんでここを探索しているの?わざわざこんなやってらんないことするなんて」

「一番何も考えずにするならそれでいいんだが、撃ち漏らしが怖いんでね。一番後腐れない方法を選ぶ」

「撃ち漏らしの心配のない、後腐れない方法……?」

 

首を傾げるユニをよそに、さらに下りていく。

地下に差し掛かったところで、今まで全く見当たらなかった警備らしき人影を発見した。

銃についてる消音器を確認し、ユニを止めて息を潜め待つ。

銃を構え、今か今かと待ち構え―――

姿が見えたと同時に引き金を引き、警備の脳天を打ち抜く。

パスッと気の抜けた音がするが弾丸は確実に貫通し、反応する暇もなく頭から血を噴き出して警備は倒れる。

死体を蹴っ飛ばし、粉微塵にするのも忘れずに行い、再度隠れて様子を伺う。今思ったが、本当にユニは移動手段にしかならない気がしてきた。

 

隠れて数を確認し、使い切ったマガジンを音源にして射線内に誘い出し、一発で眉間をぶち抜く。

警備がツーマンセルだのやらない無能共でとても助かる。

コピーの限界とは言わないが、戦力として使えるであろうコピーは今現在も使い捨てとして生産、使用、廃棄されているしここの連中は言ってしまえばみようみまねでやっているんだろう、と推測。

現在懸念があるとすれば後ろのユニに何もさせていないが、後で文句を言われないかどうかだ。数人撃たせた方がいいだろうか。

 

数個部屋を探し回るものの、警備が多少いるだけで目当てのモノは見つからない。

何もない部屋の警備をわざわざ始末しても弾の無駄だ、バレない限りは無視が安定行動。

このデカい塔のどこかにあるはずなのだが……

 

「……みぃつけた」

 

十数個目の部屋で、ようやく目当てのモノを見つけた。

部屋の半分以上を埋めるほどの大掛かりな装置、その中央部では紅い宝石のようなものが光っている。そして排出口と書かれた箇所からは十数秒起きに瓶のようなものが出されていた。

 

「何、これ?」

「マジェコン。中型の」

「これが目的のもの?」

「ああ、街一つ制圧できるほどの数のコピーが出てこれるなら間違いなくあると思ってな。まぁ人間コピーするならこれより大型のが必要だがこれで十分だ」

 

マジェコン自体は非常に操作が楽にできるよう作られている。万人向けというだけあるが、その結果がこれだからある意味計画通りなのだろう。私や教会連中からすれば迷惑なことこの上ない。なにせ銃弾はコピーできないからだ。いや、出来るにはできるが確実に不良品になる。弾丸は消耗品だが、少しの劣化で弾詰を起こしてくれるためマジェコンでのコピーに適さない。

そんな私にとっちゃ不倶戴天の敵……とまではいかないが商売の敵であるマジェコンだが、利用価値うがないわけではない。コピー元らしき瓶を引き抜き、代わりに爆薬を置く。タイマーを10分後にセット。ついでにコピー速度を最速にして準備は完了だ。

 

「よし、帰るか」

「今入れたの爆弾よね、まさか……」

「依頼書に街の被害に関しては一切の遠慮を不要とすると明記されてるからなぁ、一人一人撃ち殺すなんて弾と時間と精神の浪費だ」

「人を撃つ云々ってのはどこに行ったのかしら」

「知るか」

 

部屋が爆薬で埋まる前に部屋を後にする。その瞬間だった。

 

『侵入者検知、警備は侵入者の排除を実行せよ』

 

スピーカーから侵入者を発見した旨を聞かされる。やっと気づいたのか、到着してから既に一時間は経過しているが。

そして場所もわかっているのか遠くから多くの足音が聞こえた。

 

「あのマジェコンに細工でもされてたのかね」

「え、どうするのよこれ。もう起動しちゃったし」

「んなもん決まってる。爆薬を撃ち抜かれず、10分以内にこの街を脱出する。戦法は正面突破ァ!」

「結局こうなるー!」

 

マジェコンが入っていた部屋の扉を閉め、そのへんに積んである机なり何なりをバリケードにし、銃を構え待ち構える。

制限時間は10分、それ以内にこの街を脱出しなければ私らもろとも木っ端微塵だ。せめてこの建物さえ脱出できれば、あとはユニに乗っていけばいい。事実上この建物を10分以内に脱出できればいいわけだ。

 

「来るぞ、構えろユニ。3、2、1……」

 

ユニも自前のライフルを構える。私のカウントダウンと共に足音も近くなっていく。

私も両手のマシンガンを前に向ける。どうせ元々狙う武器ではなく後ろを撃たせたら大惨事になる位以上撃たせずに制圧することが何よりの優先事項だ。

 

「0いらっしゃいませェェェェ!」

 

私が叫ぶと同時にトリガーを引き銃弾をばらまく。顔を出したコピー人間がその顔面を銃弾で埋め尽され消し飛ぶ。流石にそれを見ただろうコピーどもは引っ込む。

 

「グレネード!」

「え、ちょっとフィオネ!?」

 

引っ込んだのを確認し、バリケードを跳び越え階段より前の角に近づき叫ぶ。

グレネード、手榴弾を投げたわけじゃない。ただグレネードと叫んだだけだ。だがこの場面でこちら側が投げない通りはなく、グレネードと聞こえたら警戒しなければ自分が木っ端微塵になる可能性がある。そしてその警戒のために、一瞬気が割かれる。

角から飛び出し銃を乱射。どうせ狙わずとも撃てば当たる距離、気にせずばら撒いて血しぶきを量産する。

グレネードと聞いて伏せていた奴もいてこちらを迎撃する暇もなく次々と打ち抜かれていく。

壁が近づいてきたので軽く回転して壁を蹴っ飛ばして跳んだ道を戻る。

 

「クリア、行くぞ!」

 

ユニに声をかけ、階段を駆け上がる。死体は踏むと滑ることなく微塵となる。がまぁ血しぶきが若干邪魔をする。

階段を駆け上がり角を曲がる寸前、銃弾が目前を通り過ぎた。

咄嗟に下がり角を背にする、角の先からは銃弾が幕か何かと思うレベルで降り注いでいる。顔を出せば一瞬で蜂の巣だなこれは

 

「どうするのよ、腕出す暇もないわよ」

「なぁに、コピー連中が使ってる銃なんて所詮欠陥だらけのコピー銃だ。じっくり行こうや」

「そんな暇ないからどうするのって聞いてるのよ!」

「まぁ見てろって」

 

数秒待つと、急に弾の数が減ってきた。

そら見たことか、少しの大きさのズレで動かなくなる精密機器の銃が劣化だらけの銃弾で使い続けられるわけがない。

今度こそ、虎の子の手榴弾を角奥に放り込む。

数秒後に炸裂し、白い煙が通路を覆った。白煙手榴弾、視界を削ぐことを目的とした煙を出すだけのもの。だが、視界がなければ銃は照準をつけられない。

 

「行くぜオラァ!」

 

跳び出して壁を蹴り、また跳んで距離を詰める。白煙の中に銃弾をばらまいてさっさと片付けようとした所、後ろから大きな銃声と共に銃弾が私の目前を通り過ぎ白煙に突っ込んでグチャっと嫌な音が鳴った。何の音もしなくなり、物陰に隠れてユニを手で呼ぶ。

 

「あの煙の中でよく当てる」

「紅い人影としては、見えてるから」

「質のいいサーモグラフィーをお持ちのようで」

 

コピーの何かを赤く見ているコイツからすれば、目くらましは効果が薄いと。もっと白煙手榴弾持って来ればよかった。

地上は近いが、銃の弾切れも近い。一旦手頃な部屋に入り身を隠す。

 

「ここは、既に突破されている」

「戻って、報告を」

 

様子を見に来たであろうコピーの声が聞こえた。

今の戦闘での死体を発見されたんだろう。軽く十人は超える量を隠せるわけがない。

階段を一つ登れば地上、しかしそこはあちらにしてみれば最終防衛ライン。階段を囲んで待っていても不思議じゃない。

軽く時計を見る、五分が経過していた。残り五分。長いようで短い時間だ

 

「ここが正念場だ、腹括れよ」

「人を撃った感覚もなにもありゃしないわ、もう」

「そうやって慣れるもんだ」

 

銃をカバンに突っ込み、新しく取り出したるは散弾銃二丁。散弾で眼球でも喉でもかすってしまえば変わらない。ユニも覚悟は出来たようで。こっそり扉を開け周囲を警戒しつつ地上を目指す。

といってもすぐ近くにある階段を登るだけなのだが、その先はどう考えても死地だ。どうやって突破したものかね。

ともかく姿勢を低くしつつ様子を伺いながら階段を登っていく。

 

「……ん?」

 

いない。誰もいない。さっきの連中もだ。最終防衛ラインのはずの一回に誰もいないなんてことがありえるのだろうか?

 

「ユニ、行けるか」

「銃弾はあんま耐えられないけど……」

 

だが、いないなら好都合。ユニを女神化させて脱出の用意をする。今来ずとするならば、飛び立った時だ。誘導弾なんか持ってない……だろう。多分

うつぶせの状態でユニは浮き上がり、私は飛び乗る。一瞬ぐえっとか聞こえたが気のせいだろう。

浮き上がり窓に向かって飛び出し、乗っている私が散弾銃を撃ちガラスを撃ち抜いて突っ切る。

 

「一斉射」

 

飛び出した瞬間、こっちに大量の銃弾が飛んでくる。ユニが咄嗟に上に飛び上がるものの、追ってくるように銃弾が迫る。

 

「一旦上昇!つっきれないぞこれ!」

「あたしは多少耐えられるけど……フロムに当たったらがことよね」

 

塔の壁を沿うように登っていく。流石にここまでは届かないのか銃弾も迫ってこなくなった。

残り時間を見る、2分。脱出をユニに伝え、街の外に向かわせる。下を警戒していると、何やらこちらに向けて発砲するような光が見えた。流石に真上に撃って届く銃というのは少ないが……いや。違う。

それは間違いなくこちらに向かっている。携帯式防空ミサイル、そう、飛んで追ってくるミサイルだ。

 

「ユニ右に少し傾けろ!ミサイル来るぞ!」

「え、えぇっ!?」

 

ユニの胴に足をかけおちないようにしながら両手に持つ散弾銃を迫るミサイルに向ける。連射はそこまで効かないため一発、いや二丁で撃つから二発で撃ち落とす必要がある。失敗すれば少なくとも私は死ぬだろう。

だが銃弾ほど速くはない。それを迎撃することに集中すればいい。銃口を向け、重力と高度故の強風に耐えながら射程範囲まで待つ。

徐々に近づく。流石に私を載せて逃げ切れるわけもなく徐々に近づいていく。

目算で100、90、80と刻んで数えつつ、50mほどに近づいた瞬間、引き金を引き発射。ばらまかれた弾は拡散し広がっていくが、ほとんどは当たらずに通り過ぎる。だが一つ、拡散した中の一発がミサイルに当たりめり込む。その結果、爆発する。

 

本来飛行機や大型飛行モンスターを対象に使うものだ。その上遮蔽も何もない空中でのミサイルの爆発による風は私たちを大きく揺らすほどに襲う。

 

「ハァ……さんざんな目にあった」

「これ、本当に後腐れない云々って方法だったの?」

「すぐわかる。残り10秒」

 

9,8,7と一秒ずつ発していく。ユニも一旦飛行を止め、街の様子を眺める。

 

「5,4,3,2,1―――0」

 

カウントダウンが終わる、マジェコンに入ってたものが爆発し大量に複製されただろう爆薬が連鎖的に誘爆して行く。最速が確か1個/秒だったため600個ほどか。地下からとはいえ爆発からの爆発がつづき、塔の中から弾け飛んで炎の雲を生み出す。

キノコ雲でもでそうな勢いで火の手が上がり、壁の内側から爆発が広がって行く。おそらく革命用にでもあったであろう弾薬にも引火するだろう。爆発が爆発を呼び、塔は崩れる暇もなく粉々に消し飛ぶ。

 

「きたねぇ花火だ」

「後腐れない、っていうか、やりすぎじゃないの……?」

「なぁに、街への被害は気にしなくていいっつってたしな」

「なんか、いろいろありすぎて混乱する暇もないわ」

「いいことだ。戦闘中に混乱錯乱なんてされたら死一直線だからな」

「……帰っていい?」

「つか帰るんだよ今から」

 

ユニを急かし、反転してラステイション本都へ飛んでいく。

街一つ消し飛ばしたんだ、あれが一番確実で後腐れない。生き残りがいても、モンスターに襲われるだろう。

 

「ねぇ、フロム」

「んだよ」

 

ふと、ユニが口を開いた。そういえば人を撃つ練習とか結局有耶無耶のままだ。まぁ戦闘中に撃ってくれたんで十分だとは思うが。

そのことについての言い訳は十分用意してさぁこいと次の言葉を待っていたら

 

「あの子供たちも、全員吹き飛んだのよね」

「まぁ、仮に爆発自体では無事でも崩落だなんだですぐに死んだだろうな」

「……なんで、子供をコピーなんかするの」

「検討がつかないわけじゃないが……まぁ、子供は育てる以外にも用途があっちまうわけだな」

 

どういうこと、とユニが首を傾げる。

ユニは知らなくてもいいことだろう。私にはコピーされた子供の使い道に、数個思いつくものがあってしまった。そう、例えば子供にしか性的興奮を覚えられない人間がいたりする。または生物に暴力を振ることによる背徳感に浸ることを好む人間もいたりする。そういった異常者にも、寧ろそういう異常者のために、人のコピーが与えられたのかもしれない。少なくともそういう連中は、怪しげなものを信仰しない理由はないだろう。

マジェコンによって、人間の暗黒面というか、そういった本来押さえ込んでおくものが吹き出したことは間違いない。市場、社会は崩壊し世紀末が訪れるのもそう遠くはないだろう。

ユニやケイのような権力者であれば変えるために云々とできるだろうが、生憎私は一介の傭兵。銃を撃って殺すことが生業だ、社会に歯向かうことはできても社会を変えることはできない。できて使いっぱしりだ。

だがまぁ、望んでこの世を地獄にするつもりもなし。暫くは教会に協力するとしよう。待遇もいいしな。

 

ユニに乗って、ラステイションの空を往く。おそらく、これ以降経験することはないだろうから堪能するとしよう。




ケイ教祖、お許し下さい!


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