深海棲艦になった。夢だと思った。 (ガンタンク風丸)
しおりを挟む

観測弾【ぷろろーぐ】
俺は降り立つ海原に


短めです。大丈夫、次は3000はって心の中で決めてっから。


深海棲艦の話をしよう。

突如太平洋に現れた未確認生物。その身体は現代兵器による破壊を受け付けなく、攻撃を与えられるのは艦娘だけ。真っ白い肌に黒く塗らりと光った艤装。 カットインする奴はは鬼……まあそんなんじゃない奴もいるけど。

まあ所謂『敵役』だ。深海棲艦、ファンとかいるけど。

実際俺も艦これをやっていたが今濃く頭の中に残っているのはPT子鬼群。あいつらを見たら条件反射で涙が出てくる、本当に嫌だ。

あとあれだ、その後出てきた駆逐水鬼。四スロって…四スロって…。そんでもって軽巡に駆逐しか連れてけない。夕立ほんとお疲れさん。

 

 

……まあ俺が何を言いたいかと言うとだ。

 

 

なんか俺。深海棲艦みたいに黒く塗らりと光った艤装つけて白い肌して胸があってポニテでビキニで太ももまである長靴っぽいの履いて背中の方に鋭角的なブラスターみたいな艤装がくっついている新手の深海棲艦になっとった。

 

 

 

「ナンジャコリァアァァァァァッーーー!!??」

 

 

 

そのまま海原の下、空に向かって叫んだ反動で滑って海に頭から落っこちて溺れそうになった。

 

 

 

 

 

 

数分後。

 

 

 

 

 

 

「…………俺、男……」

 

そう呟きながら自らの意思で動く身体をこの海原にたって二度目となる見下ろしにかかる。

形の整った黒いビキニに……じゃねえなよく見れば、サラシじゃん……に守られた胸、白い肌下腹部を隠す黒いちっさいビキニ。足はニーソックス並の面積で艤装っぽいブーツが隠してくれているが男として言っておこう。恥ずかしい。再度言おう、恥ずかしい。

 

なんか防空水鬼みたいだわぁ~おそこまでグラマスじゃないけどな、俺スレンダー。

 

「……頬引っ張ってみっか」

 

ギュー。

 

「痛い……」

 

夢じゃない、俺は再度確認する。あとついでに現実を受け止める。

 

あれだ俺はさっきまで艦これしとったんだ秋イベで嵐掘ってて飽きて浦風に癒されて寝落ちしてたんだ『浦風に会いてぇー』と思いながら。

 

前言撤回。つまり夢だ。これは夢。俺が包容力MAXの浦風似合いたいとばかり思ったからに起こった俺のレム睡眠が起こした奇跡。素晴らしい、俺は浦風に会わねばならないな。夢だし、浦風好きだし、あの胸に飛び込んで癒されたいし。夢でぐらい許されるだろう。

 

 

「ふっ、つまり俺が向かうはどっかの(浦風のいる)鎮守府又はドロップの野良浦風!」

 

 

 

しかしふと思った。

 

「ドロ艦ってそこら辺にいんのか?」

 

 

確か深海棲艦割ったら出てくるような話を聞いたことがあったよーななかったよーな。

 

「いやそもそも浦風がドロップする海域が限られているわけでそこら辺の深海棲艦が居ると仮定しても叩き割ってたら出てくるか?」

 

悩みは尽きない、しかし、腹は決まった。

 

 

 

 

「俺は、浦風の胸に飛び込む」

 

 

 

 




皆さんはPT小鬼群をどう思いますか?駆逐水鬼の装甲破壊システムどう思った?俺諦めた。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

引っ付き航行

お気に入りありがとうございます。眠いです。


 

 

俺は海を滑っている。

カモメ一羽として空を飛んでないがらんどうな青空の下でだ。

白い肌が日に焼けそうで怖いがそんなことはないのだろう、なにせ俺深海棲艦だし、深海棲艦クオリティはパネェはずだ。

 

容姿は良くわからんが、きっと美少女だろう、165cmぐらいの身長っぽそうだし、きっとスポーツ系。

 

にしてもまったくもって島らしきものが見えてこない。まあ地球の七割が海だしな。当たり前か。

 

そんな海原で俺は初めて動く影を見つけた。

よく見てみれば漁船だった。

とりあえず近づいてみた。

 

「お、おい……」

 

緊張で声がどもる。

しかし俺の姿を見た漁船の上にいたおっちゃんが。

 

「で、でやがった!?深海棲艦!ここら辺にはいないんじゃなかったんかよ!?」

 

その恐怖の色が混ざっ悲鳴に一瞬動きが止まる。

見た目は深海棲艦。怖がられることは覚悟していたにしてもあの恐がりようはリアルすぎね?おい?

 

「お…あ、あの……」

 

「ヒ、ヒイィィ!?く、来んじゃねえ!」

 

そのままエンジン全開で逃げてしまった。

幾分か放心する俺。

 

「……えっと……まじ、か……」

 

り、リアルすぎる……さすが俺の夢、リアリティに追求しているな。

 

「……あれ?ちょっと待て」

 

そこでふと俺は気付いた。

 

「あの船追ってったら艦娘に会えんじゃね?」

 

そう、漁船に乗っていたのは人。つまりは絶対に彼の行く末には陸に行き着くまたは人がいるということは艦娘(浦風)がいる!

こういうのは定番だ。物語が始まったら何かしら重要人物に会うのだ。それかフラグ建築用のモブ。

 

「フッ、浦風。今行くぜ!」

 

俺は豆粒程度の大きさとなっていた漁船を追い出した。

 

 

 

 

 

 

漁船『鉈丸』。コイツの最高速度は22ノット。それで陸に向かって全速航行しているわけだ、俺は。

そんな俺は必死に舵をつかみながら後ろを見て叫びそうになってしまった。なんと後ろにあの深海棲艦がついてきていたのだ。

 

「クソがッ!?」

 

深海棲艦に通常兵器は通用しない。あの悪魔共に牙を突き立てることが出来るのは『艦娘』だけ。常識である。

彼はそれを信じずに一度ロケットランチャーを今は衰退した陸軍横流しから手に入れ深海棲艦にぶちかましたことがあった。結果、効かなかった。それ故に彼は理解していた、自分は逃げる以外に手は無いと。

先程など単に幸運が重なっただけであろう。いつの間にか現れた深海棲艦、しかもほぼ完全なヒト型だ。漁業組合などでは異形の深海棲艦よりも深海棲艦はヒト型に近くなるにつれ驚異度が増すと言われている、つまりはクソ強いというか確か鎮守府の提督さんが言っていた『棲姫』とかの類だろう。

 

あの艦娘を指揮する提督が「強敵だ。出会ったら大和の弾着観測射撃でワンパンすることにしてる」とまで言っていたのだ。いや弾着観測射撃って何かはわからんがすごい事だとわかる。つまりは強敵であり逃げるべし。

それ以外できないし他の術は無い、しかし彼は再度後ろを振り向き違えずその白い姿があるのを見て吐き捨てるように再度言うのだった。

 

「クソがッ!」

 

俺は祈った。どうか死にませんようにと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なあ、今こっち向いてスゲエ忌々しそうな表情で「クソがッ!」って言われなかった?言われたよね。やばい、心が傷ついた……身体はオールグリーン。精神が大破ですわ、でも浦風のことを思えばなんのその!ああ待っててね浦風今会いにいくからさ!

やばい、笑いがこみ上げてきた。しかしもそれをどうやら見ていた漁業のおっちゃん「ヒッ!?」て言ってたし好感度最悪だよ。きっと白い肌の深海棲艦が笑ったらかなり怖がられたはずだ。俺は浦風と会うために人間とは友好にしたいのにたとえ今俺が深海棲艦でも!

 

「にしてもおっちゃんさっさっと陸地つかないのかよぉ……」

 

ちょっと疲れてきた、深海棲艦に燃料とか補給とかその類が必要かは分からないが何かが減っていく感覚がある。形容し難いな、なんだろうこれ、きっと燃料かな。

 

深海棲艦としての攻撃手段はきっと俺の後ろにふよふよ浮いている鋭角的なスラスター的なのだろう。三角柱で先端が尖っており攻撃的で鋭角的なフォルムだ。三つ面の部分から先端に並列して砲門らしきものがあるからきっとこれだ。ここから弾をポンポンだすのだ。にしても陸まだかよぉ。

 

「まだつかないのかよ……たっくもう」

 

しかし自分にはついていく以外陸地を目指す手段がない、海のどこにいるかもわからないので太陽の位置で方角を測ったところで徒労に終わる可能性が高いし直に接触してなお怖がられたら面倒だ。

でもそういえばあのおっちゃん「で、でやがった!?深海棲艦!ここら辺にはいないんじゃなかったんかよ!?」とか言ってたよな。つまりここって攻略済み海域?

しかし周回している可能性もない訳では無いが、まあ遭遇率は低の上あたりだろう。ほんとどないしよ。

 

そんな感じで俺は漁船を追いかけてた。うおおここからでもエンジン音が聞こえてくる。震えるねぇ。

何馬力ぐらいだろうか…あの漁船の種類覚えておいて夢から覚めたらググろう。

それよりも浦風だ。浦風。浦風に会いたい。

 

 

「ってあれ?」

 

 

浦風浦風念じてたら陸が見えてきた。よっしゃ!

 

後は沿岸を沿っていけばいつかは鎮守府にたどり着くだろう。あえてもし浦風がいなかったらとは考えない、フラグになりそうだからだ。

 

そんなわけで俺は漁船の尻に引っ付くのをやめて左に舵を取るのだった。

 

 

「面舵いっぱーい!てな。……あれ、左に曲んのって面舵だったっけな…」

 

 

浦風への道は近い―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

何故だかはわからんが陸が見えた瞬間唐突に後ろに引っ付いていた深海棲艦が消えた。本当に唐突だった。ずっと後ろを向いて訳では無いのでその内に曲がったのだろうが俺が気づいた時には港まで来ていた。

 

俺の漁船の異様なスピードで迫ってるのに気付いていたのだろう、港には四人の同僚達がいた。

 

「おいおいどうしたんだそんなにあわててよ?」

 

俺は転がるように漁船から降りる。そこに四人の同僚達は集まってきて俺の様子にに首をかしげながら言う。俺はそれに息切れの言いにくさに加えて恐怖を混ぜた声で言う。

 

「……んがいた」

 

「あ?何がいたって?」

 

「深海棲艦がいたんだよォォ!」

 

「な、ほ、本当か!?」

 

「ああ!しかもヒト型だ!完璧と言っていいぐらいのだった!」

 

俺はあの付け回されていた時の恐怖を思い出しながら言う。

 

「よ、よく生きて帰れたなぁ…」

 

「……わかんねぇよ……ただいきなり現れて、逃げたら追われたから逃げたんだ……」

 

その恐怖は漁業をやるものなら誰だってわかるものだった。遠目でもわかるあの異様さ、異形さ、それだけで恐怖の念がこみ上げてくる。

 

「………ちょっとまて、追われてたっつーことはソイツは今どこにいんだ……?」

 

「わからねぇ。陸が見えたら消えてたんだ…」

 

「おいまてそりゃあ一大事じゃねえか!?」

 

同僚の一人がそう叫んだ。そうだ、そうではないか。

陸が見えるほどの近海にヒト型の深海棲艦が居場所もわからないまま航行している。なんとも危険極まりない状況だ。

 

「今すぐ呉提督の所にこのことを知らせねぇと!?あとここら辺の漁業組合にもだ!クソッ!稼ぎ時っつー季節なのによぉ!!」

 

「命には変えれんだろう、さっさと知らせに行くぞ!」

 

「ああ。あの悪魔どもめがァッ!俺の生活費代わりに稼げやゴラァ!」

 

俺達はその後、呉鎮守府に行き、そのことを伝えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




浦風の夏グラをもう一回拝みたい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ながもんに会った。鎮守府があるそうだ。

この小説は一人でも浦風のことを好きになってくれる人がいて欲しいから書いてます。浦風素敵!ハグして癒して!俺に駆逐水鬼とPT小鬼群にボコボコにされた心を癒してぇ…


 

 

青い空、白い雲、そして、ポケモンた―――なわけないです。

 

俺は今。沿岸の建物がかろうじて見えるぐらいの遠さのところを移動している。深海棲艦クオリティか、目をカッぴらいて陸地の方見てみたら視覚が拡大化された時は驚いた、ついでに『このラーメンは世界一ィィィ!』という名のラーメン屋の看板があって驚いた。著察権侵害だろあれ。

ということで、あの看板から分かる通りここ日本でした。つーか漁船のおっちゃんも日本語話してたしな。当たり前か。

そんな訳で、俺が浮かれて鼻歌歌っていることは別におかしくもなんともないのだ。

 

「うっらかぜうっらかぜー♪」

 

ああ、浦風よ。愛しの浦風よ待ってておくれよ浦風ぇい!

 

「ふふふふ…世の浦風勢は羨むだろうなァ夢とはいえここまでリアルな夢で浦風と会えるのだ。絶対に抱きつく」

 

そんでもってナデナデして……。

 

ヨダレがたれてきた。ヤバイヤバイ落ち着け俺。こういう興奮した時に限って第四艦隊を開けたいのに持ってる霧島が出たりするんだ。ほんとなぜあの時出てくれなかったのだ霧島ぁ…。

 

湿っぽいのはやめよう、どうせ大半の提督がぶち当たる壁だし、あの四姉妹集めんの。

そんな感じでふと顔を上げた瞬間。

 

 

「敵艦発見っぽい!さあ、素敵なパーティしましょ!」

 

 

……え?

 

なんか夕立の幻聴が聞こえたなって思ったら身体の左側面に衝撃が走った。

 

「痛っ!?」

 

俺は痛みの方向にバッと振り向いた。そこには夕立改二がこちらに砲塔を向けて肩幅に立っていた。砲身の先からは煙が立ち上っている、きっと撃ったのは夕立だろう。

そして、その後、なんか長門さんいるんですがどうしてこんな鎮守府正面海域と言ってもいいような場所にいるんですか!?貴女主力艦でしょうが!?あれか!?もしかしてそこまで駆逐艦と一緒にいたいんか!?このロリコンめ!

 

ガルッ!と歯をむきだしにして唸りながら心中叫んだ。因みにほかの編成は……え?

 

金剛改二に大鳳改、龍驤改二、時雨改二…………!?ガチ編成やん!?

 

だがしかし、この編成なかに浦風はいない。レベリング途中なのかそれとも持ってないのかは定かではないがもし持ってたら提督に向かって叫ぼう「何故浦風を育てん!?育てろよ!」と。

 

そんなことよりもそれより現状だ。目の前のガチ編成、ヤバイですわぁ。

長門は大和型に次ぐ高火力持ち、被弾したら夕立の比では済まないだろうことは容易に想像できる。しかしここで逃げても逃げれ切れるだろうか?アニメでは長門と同じ射程が『長』の大和さんが敵艦載機が爪サイズにも満たない大きさのを綺麗に撃ち抜いていた……いや、徹甲榴弾だったかな?

そう考えるとピンポイント射撃とかは無理なのかも、弾着観測射撃は枠に入れないが。

ヤバイ……どうする?対話?いけるか?この格好で?嫌だがしかし俺のこの溢れる人の良さを発揮できれば行けるのでないか……!?

 

……どうやって発揮するんだか俺のバカァ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……動きがないな……?」

 

長門は新手の深海棲艦を見ながらそう呟いていた。

深海棲艦といえばだいたい皆攻撃的、姫クラスなどは人語を解することもあるが「シズメェ!」とかしかだいたい言わない。それが長門の深海棲艦に対する認識だ。

 

絶対的な敵。こちらを見たらすぐ襲ってくるし。まあ逆もまた然り。

そんな経験故からか、思ったのだ『この深海棲艦はどこか違う』と。

 

近くの漁船がヒト型の深海棲艦と遭遇したと言っていたがそもそも遭遇した時点で生きて帰ってこれること自体可笑しい、その面からもこの深海棲艦が『違う』と判断…否、思うことができる。というかアレはどう見ても姫クラス。提督が私達を送り出したのも納得がいく。

 

「長門さん、どうしたんですか?」

 

ふと、隣に大鳳がいた。

この大鳳は提督が大型建築をして二回目に出た艦娘だ。ちなみに一回目はまるゆ。中破しても艦載機を飛ばせる装甲空母の彼女はこの艦隊の大黒柱とも言えるだろう。

 

「いや、な……少しあの深海棲艦が『違う』と思ったのだ」

 

「『違う』…ですか?」

 

「ああ、現にこうして夕立が先制砲撃を行ったのにあちらは反撃してこない」

 

※ただガチ編成を相手にどう切り抜けるか考えているだけです。

 

「そうですね…。確かに私も違和感は感じます」

 

大鳳も同様に、温度差はあれど戸惑っていた。『何故敵は攻撃してこないのか?』と。

 

しかし考える暇はなかった。突如あの深海棲艦が剥き出しの殺気をこちらに向けてきたからだ。

歯をむきだしにして唸る深海棲艦。若干中腰で彼女の背面に浮いている艤装の先端がこちらを向いている。

 

「ッ!?」

 

「どうするネ!?」

 

「とりあえず複縦陣で行く!艦隊、戦闘準備!」

 

長門は咄嗟に叫んだ。攻撃してくるのか?やはり同じなのか?そう心の中で問答しながら。

 

「…………」

 

「…………」

 

長門達は新たな姫クラスであろう深海棲艦を警戒の色をもって見つめる。

 

しかし、攻撃はいつまでたっても来なかった。

 

逆に、攻撃態勢を崩してこちらに近寄ってきたのだ。

 

艦隊一同いつでも攻撃できるような臨戦態勢のまま、彼女はこちらに滑って来て言った。

 

「あー…うん。君らの鎮守府にさ、浦風っているか?」

 

その質問に思考がフリーズした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤバイなんか臨戦態勢なっとるよどうしよう逃げれるこれ逃げれるのか俺!?いやもうダメもとで行ってみようかな…話しかけに。

俺の知性あるこの顔を見ればわかるだろう。おれが理性を持った深海棲艦だって!

 

いやだがしかしだ。話題はどうする?どう切り出す?どうしようというかながもんさん臨戦態勢じゃんヤバイって俺が攻撃態勢なってんじゃんヤバイ直そう自然体自然体だ。つーかおれヤバイ言いすぎじゃね?「ぽい」みたいにそれだけ入力したら予測変換で夕立が予測変換で来る時代とか来らやだなぁ……無えな、うん。

 

にしても本当にどうしようoh淀!おせーて!

………今のは無かったな、なんだよ『oh淀』って。やっぱもう話しかけにこう、そうしよう男なら決めたらやらなくてはいけない時が来るんだそれが今だッ!!

 

俺は緩やかなスピードで彼女達に歩み寄る。

 

うわーん。みんな臨戦態勢、怖いやめてくださいちびりそうです。そうだな、こんな時こそ解体要員である那珂ちゃんの『4・2・11』を脳内再生しながら行こうじゃないか。

 

カンカンカカカン…

 

………あれ?でも話題は?どう切り出すかまだ考えてねーじゃんヤベェよもうヤダこの夢でも浦風に会うまで覚めるなこの夢!

 

………あ、そうだ浦風のこと話せばいいんじゃんそうだよ。共通性もあり無害度もアピールできるかもしれん。たぶん。

 

故に、この発言となる。

 

 

「あー…うん。君らの鎮守府にさ、浦風っているか?」

 

 

言った瞬間、五mほど前にいる長門達がフリーズした。

 

……え、なんか俺おかしい事言った?浦風の話題やばかった?まじでどうしよう逃げる?逃げるか…!?

 

俺がにこやかな笑顔の裏側で内心自問自答していると長門が言った。

 

「……い、居ないが…それがどうしたんだ……?」

 

「な……!?い、居ない、だと……!?」

 

まじ?まじかる?ラスカル?え、居ないのマジかよハズレかよちくせうッ!!!

俺はあまりの衝撃に海に四つん這いになって崩れ落ちた。半場存在を忘れていたポニーテールが肩口から垂れる。

 

「……居ないと、なにか問題があるのか?」

 

おずおずとした様子で聞いてくるながもん。

 

「……いや、いいんだ……それより浦風のいる鎮守府って何処にあるか分かるか?」

 

「いや。私は分からないが提督なら、知っているだろう」

 

「え!?マジ!?」

 

そうだ提督いたじゃん。こんだけのガチ編成をこんな俺なんかにカマしてくる暇人だ、あとガチ勢だ。どうせ結婚カッコカリだって重婚してるんだろう?え?どうなんだよ俺は浦風一直線だったが文句あるかいリアリィ?レベ99艦作ってる時に浦風に出会った衝撃は凄まじかったな。金剛には失礼だが本当に浦風と結婚カッコカリしてよかたとです。

 

しかし提督、長門の言い方からよるにどうやら情報網あるようだな。どうする、ついて行くか?その場合は浦風に限りなく近づけるだろう。が、罠の可能性もある。陸地に上がった瞬間捕獲とか敵わんからな。

というか俺って陸上型……じゃねえな。もし捕まったらこの海にいる港湾水鬼よ、ヘルプミー。顔合わしたことないけどなんか助けてくれそうな気がする。

 

「よし、じゃあ俺を鎮守府に連れてけ。そんでもって浦風紹介してくれ」

 

「あ、ああ…」

 

「なんだ長門よ?その変な生き物を見るような目は?」

 

ムズかゆいです、やめてください。正直俺は君に撃たれないかとヒヤヒヤしているんです。真面目にやめて、試しうちとかしないよね!?

俺がそんな心配をしていると、長門一瞬フッと笑ってから言った。

 

「…いや、貴様のような深海棲艦もいるのだなと思っただけだ」

 

俺はその言葉に一瞬瞠目した。

 

「…当たり前だ。俺をあんなアンチ艦娘のような奴らと一緒にするな。というか本当に浦風と会えるの?ねえ?」

 

「提督なら分かるだろう」

 

そうか、提督ならか。提督への信頼度たけーなぁおい。

 

 

……にしても、罠とかないよね?

 

 

 

 

 




この主人公、重巡棲姫とでも仮名しておこうかな。

……そのうちイベででてきそーな名前やわー。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キショい腕が生えた

お気に入りありがとうございます。これを読んで少しでも浦風に興味を持ってくれる人が増えることを祈ります。マジで夏グラ素晴らしいからというかあの包容力がたまらん。


 

 

「ほうほう、大和はそんなに強いのか」

 

「そうデース!まあワタシも負けてはいませんがネー。だけどやっぱり大和は強いデース」

 

「そうだね。時雨もそう思うな」

 

「にしてもこれが本隊じゃないとか衝撃……」

 

長門の後ろで行われている会話、新種であろう深海棲艦、おそらく姫クラスと金剛と時雨が話している。

 

長門は思う。にしてもこの深海棲艦は何なのだろうか。近寄ってきたかと思えば「浦風って居る?」とか聞いてくる。彼女はそんなに浦風に会いたいのだろうか?そのためなら敵陣のど真ん中に行くのも躊躇わないほど……?

もしや騙しているのでは、という疑念も生まれた。しかし彼女の表情は本当に浦風と会いたそうだった。アレが嘘には到底思えないし、そもそもあの表情で嘘をつけるよえな奴がわざわざ敵陣に突っ込むような愚行をすまい。

 

多分、信用しても良いのだろう。深海棲艦だが、ほかのに比べれば遥かに『人らしい』。

提督の事だ、苦笑いしながらも許してくれると思う。

 

とりあえず伝令を送ろう。

 

 

イチサンサンヨン(1334) ショウメンカイイキニテ(正面海域にて) シンカイセイカンヲロカク(深海棲艦を鹵獲)

 

 

今頃大淀が変な声をあげてるに違いない。 そう思うとふと笑いがこみ上げてきて、長門の固くこわばった心を幾分かほぐしてくれたように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は現在鎮守府観光ツアーに来ております。…まあ道のりですが。左をご覧ください、見渡す限りの大海原です。右をご覧ください、高知県です。はいありがとうございマース。

俺が行くのは呉鎮守府。つまり兵庫県…………では無かった。

なんか一言に『呉鎮守府』と言っても第二やら第三やらと複数あるようなのだ。俺が行くのはそのうちの一つである高知県沿岸部にある呉鎮守府だった。

あと新事実、俺って太平洋の日本の真下にいたらしい。カンで北に行けばよかったな。その方が早かったし、わざわざ漁船のスピードに合わせなくて良かったのだ。当たり前だろう。

……最高速度なんて出したことないからこの身体がどんぐらいのスピードを出せるかわからないが。

 

「浦風ー♪」

 

「そんなに会いたいのかい?浦風に」

 

時雨が首をかしげながら言ってくる。俺はそれに食いつかん限りに迫って言った。

 

 

「ああ!会いたいさそのために俺はここにいるようなものだからなッ!俺の存在意義!」

 

 

ああ早く浦風に会いたい。ちなみに時雨は若干引き気味だった。

俺はまだかなまだかなと心踊らせながら……あ、そうだ提督が知ってるつっても今すぐ即答できるとは限らないじゃん。

 

そう思うと萎えてきた……。

 

ふと、背中を見てみた。相変わらずスラスター的な艤装が浮いている。

 

………これ、乗れんじゃね?

 

そうだよ空母水鬼とか女王様座りで艤装に乗ってんじゃん。もしかしたらこれ…できる、できるぞ!

疲れたし丁度いい、俺の燃料的なのが三分の一下回った感覚があるしな。スラスターで食われるかもしれんが。

俺は思念でスラスターを太ももあたりに移動させる。

わあ……時雨達がすげえこっち見てるよ撃たないでね?

 

「よっと」

 

そう言って腰掛ける。そんでもってスラスターに浮けと思念を飛ばす。ちなみにもう一つあるスラスターは手持ち無沙汰ですごめんなさい。

スラスター型の艤装に横に腰掛ける俺。ふむ、座り心地はそこそこ……とゆうかなんかしっくりくる。不思議だ。

 

「やっぱ楽ちんだなこれ」

 

「そんなことも出来たんだ…」

 

「すごいデース」

 

「ふふん。どうよこれが深海棲艦クオリティ。まあなるのはおすすめせんな、無作為に敵意向けられるだけだし。深海棲艦って」

 

リアルすぎる夢で思ったことだ。後今思った。俺ってもしかして姫クラス?

でも姫とか鬼とかの区切りがよくわからんのだよな…俺。語感的に姫で。水鬼とかだったらどうしようでもあのキショい腕とか生物くっついてないから違うだろう……あり?確か水母棲姫って腕はやしてなかったか?もしかして姫鬼関係無いの!?

いやいやまてまて俺の艤装はスラスター的なののみ、こいつから腕なんか生えてないし生えるわけないよな。

チラッと座っているスラスターではなく頭上左をふよふよ浮いているスラスターの方を見てみる俺。

 

「………」

 

『………』

 

無言、しかしなんか意思的ななんかを感じるゥゥッ!

 

「どうしたんデスかー?」

 

その様子を見た金剛改二が近寄ってきて言う。ちなみに今は真ん中に俺がいる変則輪形陣をとっている。いや一応深海棲艦だし?信用されてないのはわかるんだけどさ包囲って……完璧罪人護送じゃね?これ。それともこういう形取らないとヤバイことでもあるのか?というかさっきから夕立が全然話しかけてこないんだが夕立ちゃーん俺に心を開いておくれー。

 

「いやさ。時たま姫とか鬼のあいつらがさ艤装から腕生やしてたりキショい生物従えてたりすんじゃん。それが俺には無いなぁと安心と確認を込めて艤装を見つめてたんだ」

 

「あー……確にないネー。でも生やしてたりするのも一部デスヨ?確認する必要があるには思えないネー」

 

「いや、艦娘の艤装みたいに妖精的なのがいて反応してくれたりーとかないかなと思って」

 

「……いるのデスか……?」

 

「いや確認してみる。なあスラスターよ……えーっとまあ左の方だからレフトよ。お前腕生やすこと出来るか?」

 

斜め上を見上げながら言ってみる。

その三秒後、スラスターの一辺から突如ニョキッ!と豪腕が生えた。

 

「ひいゃ!?」

 

俺はそのまま驚きで腰が抜けて海に頭から落っこるハメとなった。言わなければよかった。また溺れそう。あれかな、俺は海で滑ったり驚いたりすると溺れかける呪いでも付いてるのかな?

 

にしてもマジかあ……。腕、生えたわ、ということは俺が座っていたライトスラスターのほうも生えそうじゃん。何これマギの金属器ですかあれぐらいスラスターに比べて腕の大きさが釣り合ってなかったぞ。

 

とりあえずヘルプー。俺溺れそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕立は深海棲艦を鎮守府に連れていくことに反対していた。

鎮守府の艦娘は皆提督のことが大好きだ。そのことは変わりない、だがそれだからこそ提督に『もし』危害が加えられたらと思うと深海棲艦を連れて帰るのがとても抵抗があったのだ。

もちろん長門に抗議の意を示した。しかし「あの深海棲艦から有用な情報が手に入る可能性もある。少なくとも友好なら相手の条件を呑みそれに答えて誠意を見せ可能な限りの情報を引き出すのが得策だ」と言われてしまえば反対はできなかったのだ。

 

しかし、夕立は警戒を崩さなかった。無論長門もだが温度差が違う。

 

そんな折、深海棲艦が突如艤装を起動し始めた。現在は完全に包囲された状態だ。まさかこの包囲を崩す打開策があるのか?やはり攻撃するのか?

夕立達は腰を低くし警戒の色を持ってその一挙動を見る。

しかし、次に起こしたのは夕立の予想の一線を画す動作だった。

 

なんと自分の二つある艤装の一つに座ったのだ。

 

……え?

 

一気に毒気が抜かれる。というか10cm高角砲を構えていた自分が馬鹿みたいだった。

 

 

夕立たちはそのまま航行を続ける。深海棲艦は自らの艤装に座って宙を浮いているけど。

 

(長門さんの言っていた通り、友好……ぽい?)

 

少し敵愾心が薄まる。まあやはり警戒の念は崩さないが。

だが深海棲艦は次なる行動を起こした。

なんかいきなり艤装と見つめだしたのだ。

 

………なに、してるの……?

 

そう思ったのはどうやら夕立だけでは無かったようだ。金剛さんが深海棲艦に問を投げている。

そして深海棲艦はこう言った。

 

「いやさ。時たま姫とか鬼のあいつらがさ艤装から腕生やしてたりキショい生物従えてたりすんじゃん。それが俺には無いなぁと安心と確認を込めて艤装を見つめてたんだ」

 

ああ、あの腕……と頭の中で戦艦棲姫の姿が浮かび上がってくる。

黒いワンピースを着たクールな印象だったのを覚えている。あとその後に従える三倍近い巨体を誇る異形の化物も印象的だ。

 

そもそも私達は第二艦隊だが連合艦隊を組んだ際海域で見たことがあった。大和さんが弾着観測射撃していたっけ…。

 

 

「ひいゃ!?」

 

 

突然後ろから深海棲艦の声が聞こえた。なにかしら?

 

「え!?」

 

そこには深海棲艦のスラスター型の艤装から豪腕が生えた光景があった。あとついでに深海棲艦が海にひっくり返って落ちた。

 

「何だあれは…?」

 

長門が訝しんだ声をあげる。

 

「あの深海棲艦の艤装っぽい」

 

夕立は長門がどうやら前を見ていて一部始終を見ていなかったようなので説明する。……いや、自分も生える瞬間を見てはいないがまあ察しの悪い長門に予測を言う。そしてそれに大鳳も裏付けに言い添えてくれる。

 

「はい。長門さん、私も見ていました」

 

「お前達が言うからには間違いなのだろうが……あの深海棲艦はどこだ?」

 

「ウチは後ろから見とったで」

 

「先ほど海にひっくり返って落ちました。多分溺れているかと思います」

 

「なるほど、溺れて……って!?」

 

「や、ヤバイっぽい!?」

 

「深海棲艦が溺れてんか!?」

 

いまさらながら気づいた、というか溺れるとは思わなかった。何せ深海棲艦だ。深海棲艦が海で溺れるって……。

 

夕立が海に飛び込もうとする。しかし飛び込むことは無かった。その前に宙に豪腕を生やしたスラスター型の艤装がピクリと動いたかと思うといきなり海に突っ込んだからだ。

 

そしてブクブクブク……という気泡音と波の音が場を支配する。

 

「………艤装、さん?」

 

「ダイジョブデスかー?」

 

時雨と金剛が気泡のたつ海面をのぞき込みながら言った。

少し離れたところに立つ夕立と長門と大鳳と龍驤たちはそれをなんか不思議なものを見るような目で見つめていた。

 

なんというか常識を打ち破られたというか正直言って泳げない深海棲艦とか何なのだろうって。こんなのに世界の制海権を奪われかけたのか……。

そんな気持ちがあるのだから、だんだん深海棲艦を見る眼差しが生暖かいものになっていくのは仕方が無いことだったのだ。

しばらくして、深海棲艦が浮き上がってきた。

そして彼女達は吹き出しそうになるのだった。

 

なぜなら深海棲艦は地でさえ白い顔が真っ白に染まってプルプルと震えていたからだ。

 

たくましい豪腕の二の腕に引っ掛けられてかなり矮小な雰囲気を醸し出して、これが本当に姫クラスなのか?と首をかしげたくなる。非常に。

 

その後また進み出すか深海棲艦が起きるのを待つか迷ったが艤装から生えた腕がグッとサムズアップしてきたので進むことにした。実際ついてきてくれたのは良かった。

 

 

 

そして夕立達は呉鎮守府に帰還した。

 

 

 

 




腕が妖精さんさ!(多分!)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

次弾【呉鎮守府編】
呉の提督


お気に入り有難うございます。呉鎮守府編です。前話でもありましたがまだ浦風は出てきません。2話で『浦風への道は近い―――』とか打ってたのにね。


 

あれだな。アニメそっくりだ。

 

 

 

 

俺は呉鎮守府の港に降り立ちながら思った。

赤いレンガ、赤いクレーン。でかい工蔽。そして木造製の学校のような建築物に校庭、管理の行き届いた木々達。

 

「……鎮守府だな」

 

「そや。正式名称は第三呉鎮守府っちゅーがまあそこら辺は置いといてもかまわんやろ」

 

「ふーん…」

 

悪いが龍驤の言葉は耳に入ってこない。久しぶりに感じる大地を踏みしめる感覚になんとも感慨深いものを感じているからだ。なんか夢だからか普通に海面滑ったりしてたもんな。夢だから当たり前か、深海棲艦なんだし俺。深海棲艦は海滑れるものだもんな。溺れたけど。

ちなみに港には沢山の艦娘がいた。まあ当たり前だろう、深海棲艦が自分らの本拠地に入り込んでくるのだから。

まあだがその中にやはり浦風は居なかった。本当にこの鎮守府には浦風が居ないようだ。ちぇっ、わかってたけど残念すぎる。血反吐吐きそう。

にしても艦娘多いなぁ、100人以上はいるぞこれ。課金したな?しかしなんで雲龍までいるのに浦風居ねえんだよ。

 

イライラします。そんな中、目の前に二十代後半と見れる白い将校服を着た男が歩み寄ってきていた。腰には護身のためか軍刀が刺してあり、マスケット式の古銃が収められている。カッコイイな。古美術商とかで売ったら相当な高値つくんじゃないかな?それ?

 

「長門、彼女が?」

 

「ああ提督。いきなりですまないが……」

 

「ああ別に気にしては無い。こういう唐突なイベントはなれているからな」

 

おーおー気苦労が絶えなさそうな顔しちゃってぇこの色男が!

俺がムッとしたデフォルトの表情で提督を見ていると提督はこちらに向き直り手を出してきていった。

 

「私は呉提督だ。よろしく頼む」

 

「………」

 

えっと…ど、どうするっ。俺!?名前とかないんですが!?本名を答える……無いな。偽名を作ろう。というか一人称『俺』でこのまま行くか!?『私』にしておいた方がいいんじゃないか!?あと深海棲艦らしくカタコトの方がいいんじゃ……!?

 

「…どうした?」

 

「ッ!…い、いや。なんでも、無い。すこしまっててくれ」

 

俺は一歩下がり適当な場所にいた時雨に駆け寄る。

 

(な、なあカタコトのほうがいい?深海棲艦らしくカタコトのほうがいいかな?というかどんなふうに話し切り出そう……!?)

 

(ま、まずは落ち着こうよ。提督は優しいからどもったって受け入れてくれるよ?)

 

(そういう問題ちがうんだってばー!)

 

(?? よくわからないけどカタコトは別に大丈夫だと思うよ?ああでも一人称の『俺』は違和感あるかな?『私』に直そう)

 

(そ、そうだな!一人称は『私』……私っとおぉ……!)

 

自己暗示、自己暗示ィ……。私は深海棲艦!

夢ぐらいいいだろう?馬鹿みたいなことだってわかってる。自らは深海棲艦だなど念じるなど。だがしかし!俺は浦風に会うんじゃあァ!

俺は提督に近づく、背丈的には俺が少し小さいぐらいだ。この深海棲艦の身体って女性にしては結構背が高いと思うんだがそれより提督は背が少しばかり高い。凛々しいではないか、え?お前今まで何人落としてきた?

 

「お…わ、私は………深海棲艦だ。名前は無い。浦風の居場所をおしえろ」

 

やばい、咄嗟に名前が出てこなかったよ!?名前は無いって大丈夫かな?

やばい、というか沢山の人に見られているこの今の現状で既に心セメントで塗り固められたかのように緊張しているんですがなんか問題あるかギョラアアァァ!!??

 

チラッと提督の様子を見てみると、なんか戸惑っていた。おん?

俺と後ろの長門達を視線を入れ違いさせてなんかを求めている。ああ、補足な。確かに俺の今の一言じゃ全てを理解することは出来ないだろう。多分浦風の事が好きになれば九割型俺のことを理解できると思うんだがなぁ…。

 

 

「……ま、まあ取り敢えず中に入ろうか?」

 

 

苦笑い混じりの提督の言葉。俺には酷くそれが板について見え、吹き出しそうになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?キミはいったい?」

 

「浦風に会いに来た」

 

「………長門、頼む」

 

「つまりだ。コイツは浦風に会いたいばかりでついてきてこうやって囚われている。何でも聞いて答えてやるから浦風のとこ連れてけ。と言っているな」

 

お、おう!?俺そんなこと言ってないですぜい!?

 

金剛のティーセットのテーブルを跨いでいる提督と大和の前、俺は長門のその言葉に慌てる。いや別に俺には損なんて無いんだけどさ、勝手に決めちゃうの!?いや別にいいんだけどさ!?

 

(な、長門っ!?いったいどこでそんな話進めたんだよ!?)

 

(フッ、嬉しいだろう?)

 

長門は大体でこの深海棲艦のことを理解してきていた。彼女はアレだ。深海棲艦でありながら平和的思考を持ち、その行動原動力は『浦風に会う』というとても、少なくとも殺すことを前提に考えない平和的欲求のある『人らしい』深海棲艦だ。もしかしたら自分たち艦娘よりも『人らしい』心を持っているかもしれない。そして彼女は浦風に会うためなら何だってするだろうと長門にはこの短い時間の中でそれを確信していた。

故に深海棲艦の反応も予測範囲だった。

 

(いや浦風と早く会えれば越したことないんだけどさこっちの心構え的なのを考えてよ!?)

 

(つまり反対ではないんだろう?)

 

(む、むう…ぅ)

 

論破。だんだんとこの深海棲艦が可愛くなってきた長門だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……話は纏まったか?長門」

 

提督が苦笑い混じりに言う。もうほんとそれデフォルトだなぁ、あんたは。にしても長門に言い含められるとか……浦風にして貰いたかったァ!!!あの優しい語りがけ口調で「アンタはウチに任せてドーンとしておけばいいんやよ~」って言われたかったァ!!!

そんな俺の荒れた心中知らずに横にいる長門はうなづいて肯定の意を示す。

 

「それでキミのことなんだが……なんて呼べばいいかな?少なくともこの鎮守府に数日は滞在することになるんだ。名称があった方が呼びやすいし便利だ」

 

「いや、さっきも言ったが私には名前っつーか名称がまだ無いんだよ」

 

こんな感じに言えばよろしくって?というかどこから来たとか絶対問われそうだな。どう言おうか……俺あそこでスポーンしたっつーことにしとくか。

 

「……ふむ。ではこちらで呼称をつけてもいいかな?」

 

「おう?いいぜ?お前のネーミングセンスを試さしてもらおうじゃないか。ふふふふ…気に入らなかったらどうなるか、わかっておろうなァ?」

 

あえてプレッシャーをかけてみる。

提督の顔が引きつっている、フフフ、俺にSの気はないがおもろいぞこの提督。

 

「……とまあそんな冗談は置いといて、私のことは……あー、うん。多分艦種は重巡だな。重巡棲姫ったところかな?」

 

これななんとなく分かっていたことだ。直感的な事だがこの身体は『重巡洋艦』のものだなと理解していたのだ。姫はカン、もしかしたら水鬼かもしれんけど面倒な区分けは好まん、語感的に姫がいい。

 

「よし。早く浦風の居場所を教えろ」

 

「いや…教えるのは可能だが。どうするんだ?教えたとして?」

 

「抱きついて癒される」

 

「…………」

 

俺の即答に提督が言葉を発せないでいる。

フッ、どうだ俺の浦風への想い。ビシビシ伝わってくるだろう?もっと戸惑っていいんだぜ?そのぶんキサマが浦風に染まっていくのだからなァ…!キャッヒャッヒャッヒャッヒャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大和はこの第三呉鎮守府の第一艦隊旗艦だ。同時にこの鎮守府最大の戦力であるし、そうだろうと理解し自負しているし、そう周りも認めていた。

そんな折、なんと長門が深海棲艦を鹵獲したという知らせが入った。近海の漁業組合が付近で「ヒト型の深海棲艦を見た」というのだから彼女達第二艦隊を出撃させ迎撃させようとしていたのだがまさか鹵獲するとは。今まで鹵獲と言っても精々軽巡ハ級が関の山だった過去を見ればこれは大きな戦果と言えるだろう。

 

 

………そう思っていた時期も私にもありました。

 

 

なんか提督は最初から察していたようだったが私は最初どう見ても姫クラスの深海棲艦が港に降り立つのを見て驚愕していた。実際周りの艦娘達も皆目を見張っていたし、私だけが驚いたのではないことは確か。

 

キョロキョロと鹵獲された深海棲艦は周りを見ている。少し身体が強ばる。まあ致し方ない事だろう。それにしてもあの深海棲艦、捕虜的な扱いなのだろうか?先程から疑問が尽きない。

 

深海棲艦を殆ど睨むと言っても過言ではない眼力で睨んでいると突然ポンッと肩に手を置かれた。ハッと後ろを振り返ると提督が立っている。どうやら緊張を和らげてくれたようだ。流石私たちの提督、艦娘たちのことを考えているし目を配っている。でももう少し危機感を持って欲しい。前など艦娘に排他的意識を持つテロ組織の陸軍横流しであろうAK12を私たちを庇ってその身に受けた事だってあったのだ。危機感を持つというかもう少し………いや、もっと自分の身体を大事にして欲しい。こちらの身にもなって下さいホント。

 

「はあ………って!?」

 

そう思っていた矢先、あの深海棲艦に近づいて……というか近づきすぎですよ!?何するつもりで!?

 

「呉提督だよろしく頼む」

 

提督がそう言って手を深海棲艦に差しのべる。つまり握手だ。

 

ああなんだ握手ですか……。

 

……………って直に接触するんですか!?提督!?危ないですよ!?

 

私の心境はもうざっくばらん。提督後ろ見てください皆ハラハラしてみてますよ心臓に悪いんですから本当にやめてくださいっ!

 

「…!……っ!…ッ!」

 

そう私が声にならない声を発していると後ろからため息を付きながら大淀が来て言った。

 

「………大和さん。落ち着きましょう?流石にそこまでハラハラしているのは貴女だけですよ……?」

 

「で、ですが提督がっ!」

 

「提督なら大丈夫ですから」

 

そう言ってまたため息を吐く大淀。何故そんなにも落ち着いてられるのですか!?深海棲艦ですよ深海棲艦!それが提督と接触しているんですよもしあな深海棲艦が攻撃とかしたらどうするんですか!?

 

大和の心はもうメチャクチャ、しかしもしそう大淀が問われてたらこう返していた事だろう。「貴女の慌てようを見てれば誰だって反面教師にして落ち着きます」と。

 

 

 

 

 





【挿絵表示】


重巡棲姫ですね。こんな感じです。感想で「イメージは矢矧」って言ってましたがコレは…………うん。わかる人ならわかるでしょう、絵自体ネタバレですな。もしイメージと違ってたらスミマセン。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。