ヴェールヌイと過ごす日々 (交響)
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ヴェールヌイは天使


 グラーフ掘りの暇な時間に書いてたらこうなった小説です。

 人によってはヴェールヌイのイメージがあってないかもしれないので、無理だと感じたら迷わずブラウザバックすることをおすすめします。

 長いので、全部読んでられないわ! 
 てなるかもしれないので、途中で嫌になった人用に簡単なまとめ3行が後書きにあるので、面倒になったら後書きまでどうぞ。
 


 

 

 目が覚めると、そこは暗闇だった。

 ……まだ夢を見ているのだろうか。

 それにしてはやけに意識がはっきりしているようにも思える。

 

 

「んん?」

 

「起きたんだね、司令官」

 

「お、おお……」

 

 

 彼女《、、》の声がして、視界が明るくなっていく。どうやら彼女が気を利かせて、帽子で明かりを防いでくれていたらしい。

 眩しい光に顔をしかめていると、彼女の顔が視界に入った。

 暗闇の中でも明るく照らすことができるような輝きを持つ銀色の美しい髪。

 俺の視線をつかんでやまない薄水色の瞳。

 白を基調とした服と合わさり、彼女の姿がまるで天使のように見えるのはまだ起きたばかりだからだろうか。

 

 

「……おはよう、ヴェールヌイ」

 

「おはよう司令官。でももうお昼だよ」

 

「……なんだって」

 

 

 まだ少し気怠るい身体を起こし、周りを確認するとそこはいつも寝ている自室ではなく、食堂隣の大部屋だった。

 ……昨日の記憶がない。

 

 

「ヴェル」

 

「司令官は昨日みんなとお酒を飲んで倒れたんだよ。確か1杯目の半分も飲めてないんじゃないかな」

 

「なんで昨日の俺はそんなことをしてしまったんだ……」

 

「大型建造がうまくいって気分が高揚してたからじゃないかな。司令官は周りにのまれやすいからね」

 

「あー……思い出してきた……。だからって酒に手をつけちゃ駄目だろ俺……」

 

 

 ぐるぐると肩を回しながら改めて大部屋を見渡すと、あることに気が付いた。

 

 

「もう片付けてくれてたのか」

 

「司令官が寝てる間にみんなで。わたしは司令官の専用枕だったけど」

 

「……それは悪かった。足は大丈夫か?」

 

「わたしは艦娘だよ。司令官の重さくらいじゃびくともしないさ」

 

 

 そう言いながらヴェールヌイは立ち上がり、こちらに近付いて来る。

 昨日は宴会だったというのに、ヴェールヌイの服に乱れは無い。折角の宴会だったというのにあまり騒げなかったようだ。

 彼女を縛りつけてしまった自分が腹立たしい。

 

 

「わたしのことは気にしなくていいよ司令官。みんなと騒ぐのも好きだけど、司令官と触れ合ってる方が好きだから」

 

「っヴェル!」

 

 

 感極まって思わずヴェールヌイを抱きしめてしまった。わわ、と驚く彼女の小声が微笑しい。

 とはいえ長い間抱き合っているわけにも行かないので、非常に残念ではあるのだがヴェールヌイから離れる。

 その時に、彼女のふわりとした匂いが感じられたような気もするが……、いけない。これ以上考えてしまうと変態に思われてしまう。

 

 

「なんだい? もう終わりかい?」

 

 

 少し残念そうな声音で言われただけで、何時間でも抱きしめていたくなってしまうのだから、彼女の魅力は凄まじい。

 

 

「……ほら、もう昼なんだろ? 遅いと思うけど指示出しておいた方がいいだろ?」

 

「ああ、そのことかい? それなら一通りわたしが指示を出しておいたから問題ないよ」

 

「うーん、この手際のよさ。もう俺いらなくね」

 

「そんなことはないさ」

 

 

 そう言いながらヴェールヌイは俺の脇を抜け、大部屋の出入り口へと向かって行く。

 

 

「それにしても司令官。司令官は白馬の王子様のキスで目覚めるお姫様のように、不死鳥のキスでしか目を覚まさないのかい?」

 

 

 そう言い残すと、ヴェールヌイは小走りで部屋から出て行った。

 キスで目覚めるお姫様のように……?

 不死鳥のキスでしか目が覚めない……?

 この言葉が俺の中で反芻され、やがて意味を理解した俺は、

 

 

「ちょ! ヴェル!? 寝てる間は反則だろ!?」

 

 

 そう叫びながら彼女を追いかけることしかできないのであった。

 ふと、俺の横を通り過ぎる彼女の横顔を思い出すと、少し赤くなっていたような気がしたのはそういう理由があったからなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 大部屋から出ると意外にもヴェールヌイは大人しく待っていた。

 特に彼女から何か言われるわけでもなかったので、先ほどの言葉はもうなかったことにされているようだ。

 

 

「皆にはどんな指示を出したんだ?」

 

「ん。金剛さんたちは昨日の大型建造で来た大鳳さんを連れて出撃。駆逐艦、軽巡のみんなは大型建造で使った資材回復のための遠征に。重巡のみんなは演習だったかな。168(いむや)たちにはオリョール海周回と長距離遠征周回どっちがいいか聞いたら遠征が良いって言ってたからぐるぐる周ってるんじゃないかな」

 

「おいおい、昨日きたばかりの大鳳連れて出撃ってどうなんだよ。資材も建造で使った分回復できてないし、大破したら修復も危ないぞ」

 

「それについては問題ないよ。金剛さんたちには完全S勝利で帰って来たら、司令官に抱きつく権利をあげる約束をしているからね。例え何があっても小破未満で帰って来るさ」

 

「そうか。それなら問題な――大有りだわ!? なんで俺の許可なくそんなこと約束してるの!?」

 

「おや、駄目だったかい?」

 

「いや全然ヴェルのお願いならいいけど……て結局許しちゃうのが俺なんだよなぁ」

 

 

 ちらりと上目遣いされながらそんなことを言われると、駄目だと怒れる司令官は一体何人いるのか。

 少なくとも、ヴェールヌイとケッコンしている俺はどう足掻いても不可能である。

 

 

「そんなに金剛さんは苦手かい?」

 

「そんなことはない。少なくともうちの鎮守府で苦手な艦娘()たちはいない」

 

「……?」

 

「不思議そうな顔をするな。なぜ金剛の抱きつきが嫌かというとだな、彼女の抱きつきは俺には威力が高すぎる」

 

「ああ、金剛さんの勢いには力を感じる」

 

「……筋を痛めないようにだけは気をつけておくか」

 

「そんなに抱きつかれるのが嫌なら、抱きしめてあげればいいじゃないか」

 

「……ヴェルは良いのか?」

 

「どういう意味だい?」

 

 

 きょとん、とした瞳で見つめ返されてしまう。

 

 

「俺が、ヴェールヌイ以外の子を抱きしめに行っても良いと?」

 

「そんなことかい? 別に構わないよ」

 

 

 構わないのかよ!? と俺が心の中で嘆いていると、ヴェールヌイが左手に身につけている指輪を見せながら、

 

 

「その程度のことで関係が揺らぐほど、わたしと司令官の仲は浅くないよ。それに、わたしは司令官を信頼しているからね」

 

「……そうか。信頼の名を冠する艦娘(ヴェールヌイ)にそこまで信頼されちゃ、応えないわけにはいかないな」

 

「ふふ。そういうことだよ」

 

「……んじゃそろそろ朝飯食いにいくか。昼だけど」

 

「そうだね。昼だけど」

 

 

 立ち話を切り上げて、大部屋の近くにある食堂に移動を始める。

 というか、ヴェールヌイと話しすぎである。艦隊の指示を出してもらっているとはいえ、少々のんびり過ぎるのは問題だろう。

 それに、艦隊の指示を行っているとはいえ、まだ鎮守府内にいる艦娘もいるだろうし……。

 

 

「みんなおはよ――――て、誰もいないのか?」

 

 

 普段ならば、大抵2、3人は食堂に誰かいるものなのだけれど、今日は誰もいなかった。

 というより、鎮守府内のいつもの活気ある音がどこからも響いていないような……?

 

 

「あ、うっかりしてた。今日は昨日の宴会で使った食材とか、今まで消費してた物資を"本島"に暇している皆が買出しに行ってるよ」

 

「はぁ……つまり?」

 

「そう、今日は夜まで司令官とわたし。2人きりだよ」

 

「そういう重要なことはもう少し早く言って欲しかったぜ。まぁいいんだけど」

 

「ごめんね司令官」

 

「気にしてないから謝るな」

 

「うん、わたしも気にしてない」

 

「……そういえば、誰もいないなら昼どうしよう」

 

「間宮さんも本島に行っちゃったからね」

 

 

 いつもの食堂ならば適当に頼めば何か出てくるのだが、料理担当の人も誰もいないとなると、自分たちでどうにかするしかない。

 この鎮守府はとある特別な事情があり、艦娘以外の人間は俺以外誰1人としていないのだ。

 とある事情というのは、まぁ大して気にすることでもないので、ここでは割愛しておく。

 

 

「……何か残り物で適当に済ませるか。カップ麺とか残ってないかな」

 

「うーん……探して見るよ」

 

 

 食堂にある戸棚を開け閉めしながら、ヴェールヌイが探してくれているのを横目で見ながら俺はお湯を沸かす。

 カップ麺がなかったとしても、暖かいお茶が飲みたい気分なので、どちらにしても必要になる。

 

 

「うーん、見当たらないね」

 

「まじか。ぽいヌードルとかなのです弁当とかないのか?」

 

「何回も同じこと繰り返すけど、宴会で食材もほとんどなかったからね。みんなが食べちゃったのかも」

 

「乙女が朝からカップ麺でいいのかよ……」

 

司令官の艦娘(みんな)はこういう時は割り切ってくれるからね」

 

「はー……感謝はするけど、こういう時はタイミング悪いなぁ」

 

「どうしようか、司令官。わたしが沖合いに出て漁でもして来ようか?」

 

「んなことしたら晩御飯レベルになっちゃうだろ。……仕方ないから昼は抜くか」

 

「何かあれば良いのだけれど……。ふむ、こんなのはどうだろう?」

 

 

 ヴェールヌイが取り出したのはカップスープの元。

 お湯を入れてかき混ぜるだけで完成する、お手軽スープだ。

 

 

「なんでそんなのがあるんだ?」

 

「間宮さんのお気に入り……なんだけど、たまにわたしも貰うんだ。昼を抜くよりは多少ましになるんじゃないかな」

 

「スープねぇ。お茶飲もうと思ってたんだけどな」

 

「それは後でわたしが淹れて上げるよ。別にわざわざ食堂でお茶だけっていうのもなんだろう?」

 

「いや、そうだけどさ。てか間宮さんのお気に入り飲んじゃっていいのかよ」

 

「わたしは勝手に飲んで良い許可もらっているからね。問題ないと思うよ。それに、今日は本島まで買出しに行っているんだ。カップスープも追加で持って来てくれるよ」

 

「全部憶測だけどな」

 

「それを言っちゃ駄目だよ司令官」

 

 

 というわけで昼はカップスープとなったわけであるが、お湯が沸くまで暇な時間を過ごすことになる。

 椅子には座ってぽやっとしていると、正面にヴェールヌイも座る。

 皆がいたら騒がしくて暇がない鎮守府も、2人きりになるとここまで静かなのか、と改めて実感していると不意にヴェールヌイが微笑んだ。

 

 

「どうした?」」

 

「いや、大したことじゃないんだけどね」

 

「どうせお湯が沸くまで暇なんだ。遠慮しないで話してくれよ」

 

「……司令官と初めてここに来た時のことを思い出していたんだ」

 

「……なるほどな。確かに、最初ここに来た時もヴェルと2人だったもんな」

 

「あの時の司令官は今とは大違いだったよね」

 

「おい、その話はやめるんだ。やんちゃしていた俺に効く」

 

「ふふっ。でも、その司令官のおかげでわたしはこうしてここにいることができているんだよ?」

 

「……俺とヴェルだけの思い出ならいいんだけどなぁ……。うちの鎮守府の皆はそこらの事情知ってるから厄介だ……」

 

「いいじゃないか知られているくらい」

 

「んー……艦娘(おまえたち)の感覚だとこういうことはな……」

 

「??」

 

 

 それから数分間、話し込んでいると丁度お湯が沸く音がした。

 2人でカップにスープの元を入れそれぞれお湯を淹れる。くるくるとスプーンでかき混ぜてかカップに口をつける。

 2同時に一口飲んで一言、

 

 

『悪くない』

 

「…………」

 

「…………」

 

「司令官、わたしの真似?」

 

「同時に言った。つまり真似をすることは不可能である」

 

本当に(Правда)?」

 

「おい、いきなり俺が理解できない言葉を使うな」

 

「失礼、言い直す。それは真かい?」

 

「理解できるけど変な言葉になった!?」

 

 

 ヴェールヌイと話していると変な調子になってしまうのは日常的なことだ。特に2人きりだとそれは顕著に表れる。

 姉妹艦の前だと猫をかぶるというのか、キリっとした姿でいることが多い。 

 ちなみに俺は、今のように冗談を言い合える状態も好きだが、姉妹艦の前でキリっとしているヴェルも好きである。

 というよりどんな状態のヴェールヌイでも好きなのであった。

 

 

「……? どうしたんだい?」

 

「なんでもない。久しぶりにヴェルしかいないからこれからの業務ものんびりしようかなって考えてただけだ」

 

「えぇー……」

 

 

 何言ってるんだコイツ……?

 みたいな顔で見られてしまった。おかしいなぁ、ヴェルちゃんが優しくない。

 

 

「司令官……。司令官は昨日のうちに、明日はゆっくりしたいからって言って今日の分の業務まで全て終わらせたのを覚えていないのかい……?」

 

「あっ…………」

 

 

 ……訂正。惚けていたのは俺だったらしい。

 そうだった。昨日宴会をやった翌日に仕事をする気なんて出るわけがないだろ! とか豪語しながら仕事全部終わらせたんだった……。

 宴会が楽しくて記憶が吹き飛んだのか、それとも俺が馬鹿だから忘れていたのか……。

 

 

「司令官は変なところで抜けてるね」

 

「……平和だからな」

 

 

 深海棲艦という敵はいるものの、ここの鎮守府では脅威になる程の存在ではない。なぜか本島の方では重要視されているようだが。

 ここで暮らしているだけならば、本当に平和そのものだった。

 

 

「そうだ、風呂に入ろう」

 

「……お風呂?」

 

 

 スープを全て飲み、一息ついていたヴェールヌイが首をかしげながら尋ねてくる。

 

 

「ああ。昨日は宴会でそのまま寝落ちして入ってないし、今日は夜までみんな帰って来ないだろ? だから俺が風呂入ってても気にする奴がいない。というか、俺が気にする奴がいない」

 

「司令官が、なんだ……」

 

「ああ。ここの鎮守府で男は俺だけだからか、妖精さんは俺専用の風呂作ってくれないし、みんなはみんなで混浴でも気にしないというか逆に絡んで来るから風呂でゆっくりできないんだよ……」

 

「いつも何時くらいに来ているんだい? わたしは司令官をお風呂で見かけたことないんだけど」

 

「風呂は入渠ドッグと併用してるだろ? だから入渠が少ない時とかだな。時間は特に決めてない。ま、というわけで昼間から俺は風呂入ってくる。ヴェルはどうする? 入る?」

 

「わたしは誘うのかい……? 司令官が望むなら背中くらい流してあげても――――」

 

『っ!!』

 

 

 ヴェールヌイが言いかけた辺りで、俺とヴェールヌイにぞくりとした悪寒が走る。

 

 

「司令官」

 

「……そうだな」

 

 

 この悪寒は鎮守府内の半径5キロ以内に深海棲艦が現れたということなのだろう。

 なぜ5キロかというと、ヴェールヌイが警戒していない(、、、、、、、)状態で探知できる範囲が大体5キロ程度だからだ。

 提督と艦娘の力というか、俺とヴェールヌイだけの特殊能力なのか定かでないのだけれど、俺は特定の艦娘と感覚をリンクすることができる。

 普段はヴェールヌイと感覚を共有しているので、こうして敵襲に気付けたというわけだ。

 

 

「方向はどっちだ?」

 

「……西側かな。そっちからピリピリと嫌な感じがするよ」

 

鎮守府(ここ)まで襲撃とは面倒なことしてくれる……。ヴェールヌイ、行ってくれるな?」

 

「もちろん、ヴェールヌイ出撃する」

 

 

 そう言い切った後、ヴェールヌイは外に向かって走り出した。 

 敵の数もわからなく、1人の出撃だというのにその背中に迷いはない。

 ……まぁ1人だけの出撃を、俺は黙って見ているつもりはないのだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<・・・>

 

 この鎮守府は周りを海で囲まれている。

 それは元が無人島だからであって、深海棲艦に攻め込まれたせいというわけではない。

 そもそも周りが敵で囲まれる危険性がある所で、2人だけで鎮守府を作ろうとするなんて、当時のわたしと司令官は今考えるとおかしかったんだと思う。

 でも今こうしていられるのだから結果オーライだ。

 

 海上走行用の装置を付け、わたしは海上へ飛び出した。

 とりあえず敵影は見えない。

 

 

『ヴェル。聞こえるか』

 

「……司令官」

 

 

 わたしの耳元で司令官の声が聞こえる。

 なんだか耳元で囁かれているような感じで、少しくすぐったい。

 

 

『敵影は見えたか?』

 

「ううん、まだだよ。電探で大体の位置は掴めたけど、数まではわからない」

 

『そうか、敵の数がわかり次第報告してくれ。数によっちゃすぐに帰って来てもらわないといけないからな。あまりにも数が多かったら2人で鎮守府内を逃げ回ろう』

 

「考えがネガティブすぎだよ司令官……。一応わたしは最高性能(カンスト)だよ? 姫級がいないなら1人でなんとかできる自信がある」

 

『慢心はしないように。それに、後ろには俺がいるから1人じゃない』

 

「……そうだね」

 

 

 司令官はすぐこういうことを言うから困る。

 今は違うが、普段は面と向かったまま言われるので心臓に悪い。あとわたしの表情も崩れていないか心配だ。

 なんというか……司令官に照れている顔を見られるとくやしいのだ。

 

 

「――と、敵影発見。司令官、駆逐イ級1匹。それ以外見当たらないよ」

 

『……駆逐イ級……? なんでそんな奴がこんな所に。迷って来た間抜けさんかな』

 

「だといいね」

 

 

 そう言いながら駆逐イ級に向かって魚雷を発射する。

 故意に来たのか、迷って来たのか正直どうでも良かった。

 わたしと司令官の2人きりの時間を邪魔してくれた方が大問題だ……!

 

 遠方で爆発音が響き、駆逐イ級に魚雷が着弾したことを知らせる。

 イ級が燃え上がり、ゆっくりと水底に沈んで行くの確認。

 ……さて、

 

 

「いい加減、出てきたらどうだい?」

 

 

 わたしの言葉に応じるように、海から新たな深海棲艦が現れた。

 その距離は大体50から70メートルくらい離れた場所。現れた深海棲艦は、戦艦タ級2匹に、戦艦ル級1匹の合計3匹だった。

 最初からこの戦艦がいることに気が付いていたわけではない。ただ、駆逐イ級を倒しても、深海棲艦の気配が消えなかったから気付けただけだ。

 水中ソナーに反応はなかったので、潜水艦の可能性を省いていたため声をかけたのだ。

 

 

「やれやれ、これは入渠を覚悟しなきゃ駄目かな」

 

 

 そう被弾を覚悟して、突撃しようとしたところで、

 

 

『ヴェル、右にずれろ』

 

 

 司令官が言い終えた頃には、もうわたしは右方向に移動し終わっていた。

 瞬間、何かが戦艦ル級の額を撃ちぬいた。

 ル級は何が起こったかわからないまま命を終わらせ、その場に崩れ落ちるように倒れ込み海に沈んで行った。

 それを見た戦艦タ級たちはうろたえているようで、こちらに戦意を向けてくる様子がなかった。

 

 

「随分と無茶をするね、司令官」

 

『言うな、大分肩を痛めた』

 

「そんな無茶をするから、だよ。近いとはいえ、陸から深海棲艦を撃ち抜くなんて……。一体、何を使ったんだい?」

 

『対深海棲艦用、超超長距離射撃用連装砲改二(人用)だ。明石の奴、いい仕事するな。肩痛いけど!』

 

「次は反動を軽減した改三が必要そうだ、ね!」

 

 

 本気を出した最高性能(わたし)の移動速度は、文字通り消えるような速さを誇る。

 その速さでこちらに砲口を向けていたタ級に接近。下から蹴り(、、)上げることによって、その照準を大幅に狂わせることに成功する。

 タ級が驚愕するのと、わたしが通った跡が海上に現れるのは同時だった。

 左右に海が割れ、音を立てて波が立つ中、わたしは魚雷を2つタ級の目の前に投げつける。

 それが命中したかどうかを確認しないまま、わたしはもう1匹のタ級に狙いを定める。

 狙いを定めると言っても、主砲を構えて狙う時間は1秒にも満たない。

 

 そして牽制目的に主砲を放つと、タ級の片目に命中。

 意識をこちらからはずすために相手の顔を狙ってはいたが、眼球を狙ったわけではなかったので運良く(、、、)当たったというわけだ。

タ級との移動距離は魚雷で沈めたタ級の時よりは短いので、簡単に背後まで移動することができた。

 

 

「さようなら(До свидания)

 

 

 手に持った錨を一閃。

 為す術もなく戦艦タ級はその一撃で沈んだ。

 駆逐艦の主砲では少し火力不足であったし、魚雷は最初のタ級で使用したため装填に時間がかかってしまうので、物理攻撃に頼るしかなかったというわけだ。

 魚雷叩きつけたタ級はどうなったかと後ろを振り返って確認する。

 ……どうやら沈んだようだ。

 

 

『ヴェル今すぐそこから離れろ!』

 

 

 ふと気が緩んだ瞬間、司令官の声が聞こえて、わたしはその場を蹴って離脱する。

 2秒程送れて、わたしが元いた場所に水柱が立った。

 

 

「……!」

 

 

 突然の出来事に頭が混乱する。

 周りにもう深海棲艦の気配はなかったし、ましてや水中からの攻撃だなんてわけがわからない。

 予想できなかった事態に反応が送れ、もろに水柱の飛沫を浴びてしまった……!

 

 

「なんてことだ……服がびしょ濡れじゃないか……!!」

 

 

 帰ったら入渠(おふろ)は回避不可能のようだ……。

 それにしても、

 

 

「……よく水中からの砲撃なんて読めたね」

 

『……戦闘中は常に最悪を考えてるからな。水中からの攻撃もその範囲内だ』

 

「流石司令官。頼りになる」

 

『任せておけ。それに、来るぞ』

 

 

 司令官の言葉が終わると、水中から先ほど沈めたはずの戦艦タ級が再び現れた。

 こいつは魚雷を叩きつけた方のタ級のようだ。丁度魚雷を当てた胸の辺りに、黒く焦げたような痕がついていた。

 

 

「……素直に海に帰ることをおすすめるするよ」

 

「…………」

 

「といっても姫以下は話すこともできないんだったね。だったら、このままやるしかない、か」

 

 

 主砲を構えると、タ級もこちらに砲口を向けてくる。

 このまま砲撃戦を開始するとなると被弾は免れないが、タ級はこの場でもう1つの銃口が向けられていることを忘れているようだ。

 

 

「……司令官」

 

『任せろ』

 

 

 遠方から放たれた弾丸が、タ級の右肩に当たる。

 司令官の狙いは外れてしまったようだが、問題はない。

 

 

「ypaaaaaaaa!!」

 

 

 気合と共に、タ級の向かって走り出す。

 肩を貫かれた衝撃でタ級の体制は崩れているので、その状態でわたしを狙い撃つこと不可能だ。

 主砲を直撃させ、さらに畳み掛ける。

 後ろに倒れ掛かっているタ級に対し、魚雷で追い討ちをかける。

 狙いは一度当てたど真ん中。

 手に持った魚雷を叩きつける!

 

 

「……撃沈確認。今度は大丈夫そうだね。ヴェールヌイ、帰還する」

 

『了解。気をつけて戻って来い』

 

 

 さて、早く戻って着替えたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

<・・・>

 

 

 

「司令官」

 

「なんだヴェル」

 

「いや、その……なんで司令官がわたしの髪の毛を洗っているんだい?」

 

 

 無事帰って来たヴェールヌイではあったが、その身体はずぶ濡れになっていた。

 艦娘は強いが、だからといって風邪を引かないわけではない。

 なので、深海棲艦が現れる前に予定していたお風呂に直行したというわけである。

 

 

「……いや、だからなんでわたしの髪を洗ってるんだい?」

 

「何か問題あるか? 昔はこうやって俺が洗ってたじゃないか」

 

「うう……昔のことをいうのは卑怯だよ司令官……」

 

「ふふふ」

 

 

 わしゃわしゃーとヴェルの髪の毛を洗いながら昔のことを思い出す。

 あの頃のヴェルは色々と無頓着でなぁ……でも割愛。

 

 

「……恥ずかしいけど、司令官に頭を洗ってもらうのは嫌いじゃない」

 

「俺はヴェルの髪洗うの結構好きだな。綺麗な髪の毛をいじるのは癖になる」

 

「司令官は髪フェチって奴かい?」

 

「ヴェルフェチって奴かな。おまえのことで好きにならない要素がどこにもない」

 

「……べた褒めされるのも、嫌いじゃない」

 

「嘘つけい。大好きの間違いだろ?」

 

「……むぅ」

 

 

 ぷすーと頬を膨らませているヴェールヌイを見ていると、ついつい笑みがこぼれてしまう。

 両手の指で頬を膨らませたヴェールヌイの頬を萎めて、髪を纏めて洗髪はおしまいだ。

 

 

「時間もあるし、ゆっくりお風呂(にゅうきょ)にしようぜ」

 

「修復の必要はないけどね」

 

「俺の肩が痛いんだ」

 

 

 鎮守府の風呂は広い。

 入渠用の浴槽4つ。入浴用の浴槽も4つ。

 入渠用よりも入浴用の浴槽の方が大きいので、数は同じでも広さは入浴用の方が大きいのだ。

 普段の浴場では入渠艦が居たり、単純にお風呂に入り来ている子たちがいてここも騒がしいところなのだが、今はその限りではない。

 ちなみに、普通のお風呂でも疲労回復等の効果がある。妖精さん様様だ。

 

 

「はぁー、肩の痛みに効くわぁ……。それにしても、みんないない時に限って攻めてくるなんてツイてないな」

 

「……流石に予想外だったよ。ここに着任してから鎮守府に攻められたのなんか、最初の頃くらいじゃないかい?」

 

「最初だけだな……。今度から多少の戦力は残しておいた方がよさそうだ」

 

「……ダー……」

 

 

 湯船に浸かりながら注意しているので、説得力はあまりなさそうだ。

 ……深海棲艦が攻めてきたばかりなのに暢気だって? たまにしか来ないから問題ないのだ。

 

 

「なぁヴェルよ」

 

「なんだい?」

 

「こんなに浴槽が広いのに、なぜわざわざ俺の隣にいるんだ?」

 

 

 今の俺とヴェルの距離は言葉通り0距離。

 肩と肩が触れ合い、ヴェールヌイの柔肌の感触が直に伝わってくる。

 

 

「……そんなこともわからない?」

 

 

 やれやれと言ったような口調で、

 

 

「離れて入っていたら司令官が私の身体を凝視してしまうだろう?」

 

「――いやしねぇよ!?」

 

 

 流石にお風呂では(、、、、)人の身体を凝視なんてするわけない。風呂はゆっくりするところであって、他の人の身体を見る場所ではないのである。

 俺が風呂は言っている時に凝視してくる艦娘の子もいるが……名前は伏せておこう。

 

 

「……そこで否定されると傷つくよ? 司令官」

 

「え、見ろと? ヴェルが見ろっていうなら喜んで見るが……?」

 

「…………えっち」

 

「うばばばばばばば……」

 

 

 なんだろう、自爆した気しかしない……。

 でも好きな子の身体を見たくない奴なんていないっすよヴェルさん……。

 

 

「ふふ、冗談だよ司令官。司令官にならいくら見られても構わないさ……」

 

「そこは構って欲しいところだぜヴェルさん」

 

「司令官以外には見せないから」

 

「ここには俺しか男はいないだろ……」

 

 

 隣で寄り添いながらしばし無言でいると、おもむろに俺の手を取り、抱きしめるような形で手を組んできた。

 

 

「……こんなに引っ付いてたらすぐにのぼせてしまいそうだな」

 

 

 あえて腕に触れる柔らかさ諸々のことはスルーする。

 

 

「今すぐじゃないなら……良いんじゃないかな」

 

「あと2分くらいかな……」

 

「はっやーいー……」

 

「……全然似てない……」

 

 

 イントネーションをあわせてない時点で、似せる気がないのはわかり切っているのだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっぱりした」

 

「ん」

 

 

 昼風呂に入った俺とヴェールヌイはやっと執務室にまで足を進めていた。

 時間はヒトロクくらい……だろうか。

 ……今日の業務はもう終わりでいいんじゃないでしょうか。

 

 

「実際やることないよな」

 

「……遠征も出撃も、誰も帰って来てないからね」

 

「……明日やることでも考えておくか」

 

 

 とは言っても、やることはあまり変わらないのですぐ終わってしまうのだが。

 提督用(秘書官兼用)の椅子に座り、パソコンを起動させる。

 ちゃちゃっとデータ表でも作って……、

 

 

「なぁヴェールヌイさんや」

 

「なんだい司令官さんや」

 

「……なぜ鎮守府(うち)の資金がこんなに増えてるんだ?」

 

 

 パソコンの起動画面で見れるものが複数ある。

 1つは資材の量。

 1つは資金。

 あとは艦娘の要望メールの数等がある。

 それで今現在の資金額を見ると、なぜかわらないが宴会をやる前よりも桁が1つ2つ増えているように見えるのだが……。

 一体何があったというのか。

 

 

「ああ、それかい……。それはわたしが宝くじで当てたのを振り込んだだけさ」

 

「何さらっとすごいことやってんの!? しかもいつの間にそんなの買ってたんだよ!」

 

「司令官がみんなと遊んでいる間にこのパソコンで買ったのさ。まぁわたしの運にかかればわけないさ」

 

「……運も最高性能(カンスト)だったもんなぁ。頼りになる秘書さんで提督情けないぜ……」

 

 

 通常雪風よりも運高いもんなこの子……。

 改めて最高性能(カンスト)の恐ろしさを感じたぜ……!

 

 

「というわけで。司令官は何の心配もしなくていいよ。なんなら近いうちにもう1回宴会でもしようか?」

 

「なに祝いでやるんだよ。しばらくはそんなことしなくていいよ。はぁ、もう何かするにしてもみんなが帰って来てからでいいか」

 

「……どうしようか、夕食の準備でもしてようか」

 

「私の料理の腕前は比叡級です」

 

「うん……」

 

 

 今言った通り俺の料理の腕前は酷い。

 自覚しているからまだ救いはあるかもしれないが、料理をしようとしたら言葉通り比叡級である……。

 

 

「……ふぅ。料理下手な司令官を動かないように拘束する必要がありそうだ」

 

 

 ため息をつく振りをしながら、ヴェルは自然な動きで俺の上に座った。

 ……。

 

 

「……今日はえらく誘惑してくるな? 司令官は自分を抑えるのが大変なんだが?」

 

「今日はこうしていたい気分なんだ。わたし達以外誰もいないなんて、本当に久しぶりだから」

 

「……独占欲の強い困った秘書官だ」

 

 

 優しく両手で抱きしめると、ヴェールヌイも俺に寄りかかるようにして背中を預けてきた。

 お風呂から上がったばかりなので、今のヴェールヌイは帽子を被っていない。

 ヴェールヌイの頭を手で優しくなでると、まだ少し髪が湿っぽかった。あとでもう少しドライヤーをかけて上げた方がいいだろうか。

 髪が長いと綺麗ではあるが、綺麗な状態に保つには手入れが大変だ。

 

 しばらくヴェルの髪の毛を触っていると、ヴェルがこちらを見上げていることに気が付いた。

 じー、とこちらの目を見ていることに気が付いた。

 

 

「どったの」

 

 

 その問いに答えないで、ヴェールヌイは俺の上に座ったまま、器用に一回転して俺と向き合うような形となった。

 そして、俺の首に両手をまわして……、

 

 

「……司令官」

 

「……好きにするといい」

 

「司令官からはしてくれないのかい?」

 

「……今は業務中だからな」

 

「……ふーん」

 

 

 頬を染めながら、ヴェールヌイとの距離が段々と縮まっていく。

 それに抵抗しないで、距離が0になろうと――――

 

 

「司令官! 遠征から戻ったわよ……」

 

『あっ……』

 

 

 ……なんというか、間が悪いなぁ……。

 丁度、遠征から帰って来たであろう第六駆逐隊の暁、雷、電が司令室に入って来てしまったのである……。

 

 

「ひ、ひびき? 何してるの……?」

 

「え、あと、そのこれは司令官がどうしてもしたいというから……」

 

 

 俺の首に手を回した状態で、俺からどうしてもというのは無理があると思うよヴェルさん……。

 

 

「はわわ、ひびきちゃん大人なのです」

 

「ちょっとひびき! いくらなんでもこんな時間からはやりすぎよ!」

 

「あ、あうううう……」

 

 

 雷と電に言われて、ヴェルが茹蛸のように真っ赤になっていく。

 ……助けてやるか。ヴェルも俺がどうしても(、、、、、)もしたいって証言してたしな。

 

 

「暁、雷、電。遠征お疲れ様。悪いけど少し違う所で休憩して来てくれないか?」

 

「司令官?」

 

 

 暁が疑問の声を上げるが、あえてそれを無視してヴェールヌイの方を向く。

 顎を手で持ち上を向かせて、そのまま唇を奪う。

 

 

『――――!!!』

 

「っ~~~~!」

 

 

 ヴェルの頭に手を添えて、逃げられないようにする。

 ……少し恥ずかしいが、これでヴェルの尊厳は守られるだろう。……俺の評価は下がりそうだけど。

 

 

「~~もう司令官! そんなはしたない真似れでぃの前でやらないでよね!! 雷! 電! いくわよ!」

 

「……いいなぁひびき」

 

「はわわ! 司令官さん大胆なのです!」

 

 

 暁は頬を赤くしながら声を上げ、雷は羨ましそうな顔でこちらを見て、電は……興奮しているようだ。

 ――と、暁が雷と電の手を引っ張り部屋から出て行ったのを横目で確認して、

 

 

「し、司令官……。みんなの前でこれは、流石に恥ずかしいよ……」

 

 

 といいつつヴェルは俺の手を掴み、くいくいと引っ張っている。

 これはもっとというサインなんだろう。

 ……不死鳥さんはどれくらいで満足してくれるのだろう。

 

 

 

 

 

<・・・>

 

 部屋を出た暁、雷、電は執務室にとある看板を立てかけて場所をあとにした。

 そのある看板には『不死鳥発熱中』という言葉と、紅いクレヨンで不死鳥らしき鳥(?)が描かれていた。

 

 

「暁。なんであの看板ひびきは気付かないのかしら?」

 

「え? そりゃあ司令官に夢中だからよ」

 

「でもでも! いくらひびきちゃんでもそろそろ気付きそうなのです」

 

 

 この不死鳥発熱中という看板は、要するに司令官とヴェールヌイがいちゃいちゃしているから入るなという鎮守府内では暗黙の了解なのであった。

 しかし、この看板のことをヴェールヌイは知らない。

 なお、司令官はいちゃつきが終わり次第片付けている模様。

 2人の姉妹の問いに暁は、

 

 

「いい? 不死鳥は何回でも蘇ることができるけど、復活するには時間がかかるのよ」

 

 

 とだけ答えた。

 意味がわからなかった姉妹艦2人は首をかしげるしかなかった。

 

 

<・・・>

 

 

 

 

 

 

 

「今日は疲れたな……」

 

「……ダー」

 

 

 結局のところ、出撃していた金剛や、本島まで買出しに行っていた間宮さんたちがあの後すぐに帰って来てしまったので、あまりこれといったことはしていない。

 艦隊のみんなが帰って来てしまえば、もう2人でゆっくりなんてできるわけもなく、今に至ったわけである。

 時刻はマルヒトマルマル。深夜だね(ヴェル風)

 

 

「昼まで寝てたけど、眠くなるもんだな」

 

「わたしたちは1週間くらいなら寝なくても平気だけどね」

 

「平気なだけで寝ることは可能だろ? だからこうして一緒に布団に入ってるんだし」

 

 

 執務室とは別に、提督用に自室が用意されている。

 この鎮守府以外のところは知らないが、基本的に提督の1人用なのではないだろうか。

 ……ここの鎮守府は俺とヴェールヌイで同室だけど。

 

 

「今日はゆっくりできたかい?」

 

 

 唐突にヴェールヌイが言った。

 

 

「ゆっくり……。まあ普段よりはゆっくりしてたな。深海棲艦が来たことは予想外だったけど」

 

「そうかい、それはよかった」

 

 

 隣で横になっているヴェールヌイを見る。

 服装は普段の白を基調とした制服ではなく、寝るようの柔らかい服になっている。

 要するに寝巻きだ。

 部屋の電気は消しているので明かりはないが、カーテンを閉めていても入ってくる月明かりでなんとなくヴェールヌイの姿が確認できる。

 ヴェルの頭を撫でていると段々と眠くなってくる。

 

 

「司令官が眠くなるのかい?」

 

「ヴェルの髪の毛は睡眠作用があるのさ……」

 

「ないよ」

 

「……うん」

 

 

 頭を撫でるのをやめて、ヴェールヌイの手をにぎにぎして遊ぶ。 

 その感触は、人間と何も変わらない。……何も。

 

 

「……司令官。わたしは1人でも眠れるよ?」

 

「俺が1人じゃ駄目なんだ」

 

 

 そう言うと彼女との距離が少し縮んだ気がした。





 最後まで読んでくださって皆様、ありがとうございます。そしてお疲れ様でした。

 長くて後書き見に来た皆様。途中までありがとうございます。簡単なまとめ3行です。
 
 司令官とヴェールヌイは恋人。
 カンストしているヴェールヌイは最強。
 司令官と2人きりのヴェルちゃんはちょっと積極的。

 以上です。

 以下どうでもいい設定。



Q.ヴェールヌイ強すぎない?

A.ゲーム内のレベルがほぼ意味を失くしているので、カンストしているヴェルちゃんを強いという設定で書いて見ました。駆逐艦でもカンストしたら戦艦くらいやっつけたいやん?


Q.この司令官おかしくない?

A.おかしいです。もしかしたら次話以降の話で詳しく書くかもしれませんが未定です。細かい突っ込みはなしの方向で納得して頂けるとありがたいです。


 次話投稿については未定です。
 もしかしたら次の艦これイベントくらいで書けるかもしれません。
 次は冬道でヴェルちゃん限定ボイスを言わせることを目標に!


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