東方トライアングル (幻想郷のトラウティスト)
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第1話

「咲夜、花子のところに行ってくるわ。」

 

「いってらっしゃいませ。お嬢様。」

 

咲夜に見送られて紅魔館ではなく一時滞在先の幻想郷の外、現代社会の別荘のテラスから夜空に飛び立つ。

 

なぜ、幻想郷の外にある別荘なのかというと。

2週間前、八雲紫が何時のように突然現れて結界維持の為に紅魔館の地下にある霊脈の調整をするから用意した宿泊先にひと月移動してほしいとの要請があったから。

その要請を受けた私は、古明地こいしと一緒に幻想郷巡りに行く予定だったフラン以外の紅魔館の全員を連れて今は紫が用意した別荘に滞在している。

 

今日は美しい紅い満月の夜だ。

パチェは太陽と地球と月の位置とか光の屈折とかなんか理屈っぽい事を言ってけど、月が美しければそれで良いのよ。

 

空を駆けること暫らく別荘のある山の麓の人間達の街、間宮市の上空に出る。

そろそろ日付が変わるころ。

眼下の駅前通りを見る、こっちに移り住んで2日目の昼間にここに来た時は人の多さに辟易したけど、今はずいぶん閑散としているな。

早苗が『東京だと丑三つ時でも蛍光灯の明かりで外でも新聞が読めるんですよ。』なんて言っていたけど、この街がそうじゃなくて良かったわ。

あの蛍光灯の光は気に入らないのよ。

 

そんな駅前通りから少し離れた小高い丘の上にある間宮美園中学校に向かう。

 

こっちに移ってから4日目の夜、以前早苗が宴会の席で話していた『学校の七不思議』とか言う現代の妖怪達の事を思い出し、深夜の学校を幾つか訪ねたところ、この学校で出会ったのが「トイレの花子さん」こと花子だった。

力は大人の人間より少し強いくらいで能力も持っていないが、その明るく物怖じしない性格、彼女の妖怪としての存在の在り方、そして一緒にいると何となく心が和む彼女の雰囲気が気に入った私は何度か彼女に会いにこうして夜の学校を訪れ、今では新しい友人の1人になっている。

 

花子も妖怪の数がめっきり少なくなってしまった中で新しい妖怪の友人が出来て喜んでいた。

友人と言えば人間の友人がいるとか言っていたな。確かレナちゃんとか呼んでいた。

何でも、夜遅くに中学校に中学生よりも歳が上の女の子が1人で居たので、興味を引かれトイレで脅かしたら反撃されて捕まったらしい。

なんと言うか、霊夢や魔理沙に勝て、なんて言わないから、せめて普通の人間には勝ちなさいよ花子。

それにしても、力が弱いとはいえ妖怪に立ち向かって勝利したなんて少し興味があるから今度紹介してもらおうかと考えたが、吸血鬼の友人がいるなんて知ったらその人間が怯えて花子との関係にヒビを入れる事になるかも、うーん、でも気になるんだよなぁ。

なんて、悩んでいたら学校に到着してしまった。

 

「あら?珍しいわね。」

 

校舎の上空まで来ると何時も屋上で出迎えてくれる花子がいない。

そして、何時もは暗闇に包まれている体育館からは明かりが漏れていた。

 

「体育館に居るのかしら。」

 

私は体育館まで飛んで行き天井の窓から中を見ると、

 

「え!?」

 

花子が人質に取られていた。

 

体育館の真ん中に二本足で直立しているトカゲの様なのが1匹、そいつは右腕で花子を抱えて左手の爪を花子の首に突きつけている。その前に真っ白な手品師の様な服に顔を真っ白な仮面で隠した人間が1人、いや、人間じゃないな。

こいつ人間では無いけど妖怪でもない、何者だ?

手品師の前にもう1匹トカゲがいる。

 

そして手品師の正面には1人の小娘が、歳は10代後半、亜麻色の髪をピンクのリボンでポニーテールにして、胸元が大きく開いたドレスの様な体にピッタリとフィットした服にロンググローブ、ミニスカートは咲夜より丈が短くニーソックスに少し低めのヒール履いて、手にレイピアの様な剣を持っている。

顔立ちは十人が十人とも美少女と言うだろう。

まあ、咲夜には劣るけれどね。

 

「さあ、武器を捨ててもらいましょうかセイバーナイト・レナ。」

 

レナ?花子の人間の友人か?

 

どうやら、手品師は花子を人質にレナを脅しているようだ。

状況が見えない中、介入するべきではないのだろうけど友人が傷物になるのを黙って見ている程、私は大人しい性格ではないんだよ。

私が介入しようとした瞬間。

 

『カシャン』

 

レナが剣を捨てた。

 

「武器は捨てたわ。その子を解放しなさい。」

 

あら、あの子少しは見所があるわね。

 

「いえいえ、まだ解放できませんね。彼女にはまず観客になっていただきます。貴方の凌辱劇のね。

その後で、彼女にも劇に加わっていただきましょうか。」

 

あら?

 

「くっ!彼女は関係ないわ。」

 

私の友人を・・

 

「おやおやおや、十分関係はあるでしょう。彼女は、あなたの、この世界に住む、人間以外のお友達なのですから。セイバーナイト・レナこと紫藤レナさん。」

 

傷つけると・・

 

「!なぜ、お前たちがそれを知っている。」

 

いい度胸をしてるじゃあない・・

 

「それは企業秘密ですよ。まあ、私達があなた1人で満足すればお友達には何もせず解放してあげましょう。」

 

こんなにも月が紅いのだから・・

 

『ガチャ!バン!』

 

サイコキネシスで体育館の全ての窓のカギを開けて、全ての窓を開く。

勢いよく開かれた窓からコウモリになった私が入っていく。

 

コウモリが体育館の真ん中、そう、立体的な意味での真ん中に集まり私を形作る。

最後の1匹が集った後、コウモリの群れは私へと変化する。

私はバサリと羽を打ち鳴らし、魔力と殺気を放出しながら眼下の者共を睥睨し宣言する。

 

「本気で殺すわよ。」

 




さあ!この続きがどうなるか!
続きを書いていない作者にもわかりませんwww


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第2話

飲みながら書きました。
泡盛サイコ―!


突然現れた私に狼狽える眼下の一同を他所に私は瞬間移動で花子を抱えているトカゲの真正面に移動すると花子に突き付けられた右手を握りつぶす。

痛みにひるんだスキに花子を奪い取るとトカゲの左胸に右腕を突き刺す。

トカゲの背中まで貫通した私の右腕がトカゲの心臓を鷲掴みにしている。

 

私は右腕を引き抜くと左胸に空いた穴から噴水の様に血を吹き出しながら私を血の色に染めつつトカゲが倒れる。

レナや手品師、残りのトカゲ達の居る背後に振り向いた私は、引き抜いた右手にある心臓を手品師の足元に放り投げる。

そこで初めて奴と目が合う。

 

「っ!」

 

手品師の体がビクリと跳ねる。

白い仮面の目は愉快に笑っている様に上に弧を描いているが、その奥底にある瞳に宿る恐怖は手に取る様にわかった。

 

「うふふ、あなた、私が怖いのね。」

 

「なっ、く、体が。なんだ。なんで体が動かない。」

 

私の魔眼にあてられた手品師が突然動かなくなった自身の体をなんとか動かそうとするが、無駄な努力だな。

私に恐怖を抱いている時点で魔眼に打ち勝つ事は出来ないよ。

 

私は花子をおろして。

 

「下がっていなさい。」

 

「えっ、あ、うん。」

 

花子が私の背後にある体育館の出入口に駆け込む。

 

「あなた吸血鬼の魔眼も知らないの?」

 

「吸血鬼だと、吸血鬼などこの世界の迷信のはずでは、下魔あの餓鬼を殺せ。」

 

トカゲがこちらに向かってくる。

纏めて片付けてもいいんだけれど、ちょっとお使いをさせないといけないから。

 

「ミゼラブルフェイト」

 

私の足元に現れた魔方陣から6条の先に楔の様な物が付いた鎖が現れトカゲに向かっていく。

慌てたトカゲは避けようとするが、鎖がその手足に巻き付き空中に拘束する。

 

「さあ、あなたの見窄らしい部下はもう当てにできないわよ。」

 

「くそ、な、なぜ化け物が人間の見方をする。」

 

私は手品師に近づきながら、

 

「お前みたいの多いのよね。有利な時は余裕見せて弱いのを甚振って悦に浸ってるくせに、不利になったら途端に動揺して口調すら「かかったな!」」

 

手品師の両手から大量のトランプが溢れ出る。

トランプが空中に張り付き、私を半球状に囲う。

 

「ははは、油断したな。死ねぇ!」

 

手品師が言うとトランプが急速にその包囲の輪を狭めて行く。

 

「身動きが出来ないからと油断したからだ。餓鬼が!」

 

勝利を確信した手品師が愉悦に浸るが、

 

「不夜城レッド」

 

『ドゴオォォォォン!』 

 

炸裂音と共に十字架の様な形をした閃光が迸る。

その閃光の中、私は空中で十字架に貼り付けにされるかの様に両腕を地面に水平に上げ、両足を揃える。

 

赤い閃光が収まると体育館の天井が吹き飛び、かろうじて残った屋根も外側に捲り上がり。床はすり鉢状にへこみ、窓ガラスは砕け散り外に向けて飛散していた。

 

あっ・・・・手加減、間違えちゃった。

 

手品師はトランプ諸共消し飛び、ミゼラブルフェイトで両手足を拘束していたトカゲは肢体が千切れてバラバラになっていた。

壊れたお人形さんにしてからメッセンジャーにしようかと思っていたのに。

 

花子を探すと体育館の出入口から入ってくるところだった。

 

「もー、レミリアさん手加減してよね。体育館が目茶目茶だよ。」

 

「これでもちゃんと手加減してるんだけどね。加減を間違えちゃったわ。怪我は無いわね。」

 

花子も妖怪なんだから人間よりは頑丈だけど、心配になる。

 

「うん、大丈夫。これでも妖怪の端くれだから。それよりレナちゃんは?」

 

「そこでのびてるわよ。」

 

私が指差す先でレナが気を失っている。

と、そこへ遠くからサイレンが複数聞こえてくる。

 

「あー、サイレンの音が聞こえるわよ。ここに居ると面倒な事になるわね。うん、花子、私の別荘に来なさい。」

 

「え、いいけど、私は空飛べないよ。」

 

「それは、こうすれば大丈夫さ。」

 

私は花子とレナを小脇に抱えて、飛び立つ。

 

「うわぁひゃあ!」

 

学校の屋上より高く上昇すると、花子が急上昇に変な悲鳴を上げて私にしがみ付いて来る。

 

「あら?今夜は随分と積極的じゃない花子。」

 

「ちょっと、そんなんじゃないってば。私、高いところ苦手なの。」

 

「宙返りとかやってみる?」

 

「ダメ!絶対にダメ!やったら絶交だからね!」

 

やってもいないのに干渉涙目になって言われた。

そんなに高いところが苦手だなんて。妖怪としてどうなのよ、花子。

 

 

 



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第3話

暫く飛び続けると、

 

「うっ・・・・え!?」

 

左腕で抱えていたレナが目を覚ましたようだ。

 

「おはよう、ご気分は如何かしら?」

 

「あっ、レナちゃん大丈夫、痛いところとかない?」

 

現状を理解できないのか目をパチパチさせて、私と花子を交互に見ながら。

 

「えっ、ええと。私は・・・・あっ!エスクローグは!!ちょっと放して。」

 

エスクローグってのは、あの手品師の事か?

突然大声をだした後、解放しろと暴れだすが結構な高度を取っているのだからそうはいかない、レナの胴体にまわした左腕にさらに力を込める。

 

「うぐ、痛い。」

 

「よく周りを見なさい。」

 

「レナちゃん落ち着いて下を見て。」

 

「えっ、ええええええ!」

 

私と花子に言われたレナが下を見て更に大声を上げる。

やっと自分が何処にいるのかわかった様ね。

 

「わ、私、空を飛んでる。」

 

「正確には飛んでいるのは私で、あなた私に抱えられているだけよ。

で、どうしても放してほしいっていうなら放してあげても良いけど、どうする?」

 

「だ、ダメダメダメ。放さないで。」

 

そう言って花子の様に私にしがみ付いてくると、

 

「うぷ。」

 

身長差があるせいかレナが割と豊かな胸に私の顔を埋める様に抱きしめてくる。

うむ、なかなかだな。咲夜より少し上か。パチェや美鈴には劣るな。

んっ・・何だ、今悪寒が・・

 

「前が良く見えないから放しなさい。ちょっと聞いてるの。」

 

言ってもしがみ付いて放そうとしないのでもう一度左腕に力を込める。

 

「いたた。ちょっとやめて。痛いってば。」

 

「痛いのなら放れなさい。」

 

「は、はい、わかりました。放れます。」

 

力を緩めると放れるが。私の腕を痛いくらいに握りしめてくる。

 

「いったぁー。あっ、そうだエスクローグだ。花子ちゃん、エスクローグ、ってわからないか。ええと私と戦ってた真っ白な手品師はどうなったの。」

 

「あの手品師ならレミリアさんが倒してくれたよ。」

 

「えっ、この子が?」

 

「気付いているでしょうけど、私は人間ではないわ。外見だけで判断するのは止めておきなさい。」

 

「やっぱり。あなたも花子ちゃんと同じで妖怪なんですか?」

 

「あら、名乗りもしないでその質問?礼儀のない娘ね。」

 

「うっ・・ええっと。」

 

レナが何か言いかけて、すぐに口を閉じる。

 

「まあ、こんな状況じゃ落ち着いて話も出来ないでしょうから、ちゃんとした自己紹介は別荘に到着してからにしましょうか。」

 

「はい、あっ、その、助けて頂いてありがとうございました。」

 

レナが律儀に頭を下げてお礼を言ってくるけど。

 

「別に気にしなくていいわ。私は花子を助けただけで、あなたを助けたわけではないし。それに、あのエスクなんたらとかいう手品師の言動は鼻についていたから。」

 

「えっ・・」

 

「レナちゃん、レミリアさんはこういう人、じゃなかった妖怪だから気にしない方がいいよ。」

 

「う、うん。」

 

「さて、着いたわよ。」

 

眼下には別荘が見える。

私につられて2人も下をみるので、急降下で高度を一気に落として着地の瞬間、急減速してゆっくりとテラスに舞い降りる。

捲れ上がったスカートが花弁が舞い落ちるようにフワリと戻っていく。

途中「ひぃ」とか「きゃっ」とか聞こえたので思わず顔がにやける。

 

「もー、何するんですかーレミリアさん。」

 

着地と同時に私の右腕から脱出した花子がポカポカと両腕で私の事を叩いてくるので体の左側に引っ付いてい放れないオプションで防ぐと。

 

「いた、いたたた。花子ちゃん痛いってば。」

 

「ああっ、ごめんレナちゃん。大丈夫。」

 

「うん、大丈夫。それより、レミリアさん私を盾にするなんて酷い。」

 

私から放れたレナが文句を言ってくる

 

「いつまでも引っ付いてるのがいけないんだよ。」

 

「うわ、開き直っt「おかえりなさいませ。お嬢様。」うひゃあ。」

 

私の正面、レナは後ろに突然現れた咲夜に奇妙な声を上げて、飛び上がらんばかりに驚く。

花子は何度か別荘を訪れて慣れたのか今ではレナを驚き様を見て笑っている。

 

「ただいま、咲夜。妖精メイドに2人を応接室に案内して頂戴。あと、着替えを用意して。」

 

「かしこまりましたお嬢様。」

 

咲夜が小さな金色のベルを2回鳴らすと1人の妖精メイドが入ってくる。

 

「私は着替えるから、先に応接室に行って待っていて頂戴。」

 

「はーい。」

 

花子が間延びした返事を返し、レナは軽く頷くと妖精メイドと一緒に退室していく。

 

「レミリアお嬢様。」

 

「ん?なに咲夜。」

 

「お楽しみも結構ですが。洗濯をする側としましては、あまりお汚しにならない様お願いします。」

 

あらら、怒られちゃったわ。

 

「何を言っているのよ咲夜、私の完全で瀟洒なメイドならこれ位の方がやり甲斐があるでしょ。」

 

これなら何も言い返せないだろう。

そんな笑顔の私に咲夜は、

 

「・・レミリアお嬢様なら、そうおっしゃると思いましたわ。それではお風呂場に移動いたします。」

 

咲夜は軽く溜息をついた後、半分呆れたような暖かい笑顔で私を見つめる。

ん?以前同じ笑顔を見た事があるような?

・・・・・・ああ、以前人里で走り回って泥だらけになった子供を見る母親と同じ様な笑顔だ。

あれ?子供扱いされてる。

 

「どういう意味よ。それに、その笑顔はやめなさい。」

 

両手を腰に当てて咲夜の目を見ると。

 

「レミリアお嬢様。こればかりはご命令であっても承服いたしかねますわ。」

 

相変わらず笑顔のまま能力を使いお風呂に移動して、私の服を脱がしていく咲夜。

 

「だからその笑顔やめなさい。」

 

と言っても咲夜は笑顔のままで私の服を脱がしていく。

気付けば全裸だ。

 

「では、新しいお洋服をご用意いたします。」

 

笑顔のまま一礼して消える。

残されたのは全裸の私。

 

解せぬ・・



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第4話(改訂)

血を流し、着替えを終えた私が咲夜と応接室の中に入ると部屋の中央にあるソファに2人は並んで座っていた。

花子が立ち上がるとレナもつられる様に立ち上がる。

私は2人の前でカーテシーの後に。

 

「私の名はレミリア・スカーレット。これでも500年以上の年月を得た吸血鬼よ。人間共からは紅い悪魔、永久に幼き紅い月などと呼ばれていた事もあるわ。

私の後ろに居るメイドは十六夜咲夜、私専属のメイドであり私の治める紅魔館のメイド長を任せているわ。」

 

「十六夜咲夜と申します。以後お見知りおきを。」

 

咲夜が一礼する。

 

「私は紫藤レナ、19歳です。聖マリアンヌ女学院に通っている高校2年生をしながら魔法騎士をしています。」

 

咲夜の様に優雅に、とは言えないが丁寧さは十分に伝わる礼を返してくる。

 

花子が妖怪だと知って付き合っているから慣れているのか。それとも私の紅い瞳と背中の羽からある程度予想していたのか。

私が吸血鬼だと言っても大して驚かず自己紹介をする。

 

「座って頂戴。」

 

2人の目の前に座り、咲夜が私の右斜め後方に控える。

 

「魔法騎士ねぇ、500年以上生きているけどそんなのがいるなんて初めて知ったわ。そもそも、貴方、人間なの?あの、エスクなんたらとかトカゲ擬きは何者なのかしら?ああ、先に言っておくけれど私に嘘や誤魔化しは通用しないから、そのつもりで答えなさい。」

 

右腕で頬杖をつき、足を組みながら威圧感を放ち聞くと。

レナがしっかり私を見ながら説明を始める。

あら、意外と度胸あるじゃない。

 

「魔法騎士とは、・・

・・・・・・少女説明中・・・・・・

・・と、いう事なんです。」

 

成程ねぇ。要約すると、レナは地球出身の人間では無く異世界エーテルフィアにあるグローリアス女王国の王宮騎士団所属の魔法騎士とやらで、壊滅した反女王国組織ゴルドが日本の間宮市にアジトを作った事が判明したので捜査の為に派遣されたと。

 

「なるほど、で、連中はこの街で何をしているのかしら?当然調べはついているんでしょ。」

 

「それは、捜査上の秘密事項にあたるので。」

 

「あっ、レナt「少し怖い思いをしないとわからない様ね。」

 

『パチン』

 

花子の声を遮って私がそう言って指を鳴らすと。

レナは危険を察知してか。ソファを後ろに倒す様にばく転して立ち上がり剣の柄に手をかけたが抜刀出来ず。

金縛りにあったかのように微動だにせず、目の焦点が合っていない顔を青白くさせ、滝の様に汗を流し始める。

さて、どれぐらい持つかしら?

・・

・・・・

・・・・・・

普通の人間なら持って1分なのに、3分程待つがまだ根を上げない。

 

「おや、意外と頑張るわね。」

 

「ちょっと、レミリアさん。レナちゃんにはあまり酷い事はしないで。」

 

「はいはい。」

 

『パチン』

 

もう一度指を鳴らすと。

レナの目の焦点が合い、膝をつきそうになったが何とか踏みとどまる。

 

『パチパチパチ』

 

ソファの背もたれに体を預けレナの健闘に拍手を送る私を彼女は鋭く睨みつけると今度こそ抜刀しようとするが花子が慌てて止める。

 

「レナちゃんじゃレミリアさんには絶対勝てないよ。だから、それだけはダメだよ。」

 

柄を握った手に自分の手を添える花子を見ずに相変わらず警戒を続けるレナに私は右腕で頬杖をつきながら。

 

「安心しなさい。脅かしはするけど危害は加えないわ。」

 

「あれは脅かすなんてレベルではないわ。」

 

「あら、貴方の故郷ではそうなのね。フフフ・・よく考えなさいなレナ、貴方は私の友達である花子の友達で、命の恩人でもあるのよ。そんな貴方を手にかけると思う?」

 

「レナちゃん、私はレミリアさんとレナちゃんが戦うのなんて見たくないよ。」

 

花子の一言が決め手になったのかレナが剣の柄から手を放す。と、気配を察知したのか慌てて後ろを振り返ると、そこには目の前にいたはずの咲夜がいた。

能力を使ってレナの後ろを取った咲夜が突然の事に唖然としているレナにすれ違いざまに呟く『命拾いしたわね』と、一瞬だけど瞳も赤かったわね。

何事もなかったかの様にレナが倒したソファを元に戻した咲夜。

花子は昨夜の呟きに気付いていないのかお礼を言っている。

 

「?どうしたのレナちゃん。」

 

花子が相変わらず後ろを向いているレナに話しかけると。

 

「えっ、あ、えっと、なに?」

 

「なにって、それ私の台詞だよ。早く座ってよレナちゃん。」

 

「あ、うん。」

 

レナが定位置(レミリアの右斜め後ろ)に居る咲夜を警戒しながらソファに座る、やれやれ、ちょっと脅かしすぎちゃったわね。

 

「さてと、捜査で知りえた情報は職務上安易に公開出来ない。とういう事だったかしら?」

 

「はい、その通りです。」

 

「では、取引をしましょう。」

 

「取引ですか?」

 

困惑気味のレナに私は笑みを浮かべると。

 

「ええ、貴方は先程学校で私に助けられたでしょう。」

 

「はい。そうです。」

 

すこし悔しげな表情のレナに私は続ける。

 

「つまり、貴方は私に借りがあるって事になるわよね。」

 

「えっ、そ、それってもしかして。借りがあるんだから情報を開示しろってことですか。」

 

「察しが良いいわね。その通りよ。」

 

レナが私の言葉に悩み始める。私の提案を即座に拒否しなかったのはさっきの事が影響しているのかしら。

 

「レナちゃん、レミリアさんは500年以上生きた吸血鬼で紅い悪魔なんて呼ばれる程だから、借りを返せるなら返しちゃった方がいいよ。

本人の前でこんな事言いたくないけど、借りなんてあったら後で何を要求されるかわかったもんじゃないし。」

 

「ええ、本人の前でいう事ではないでしょうけど花子の言う通りね。今のところ私が興味を持っているのは情報だけど、この先貴方の何に私が興味を持つかなんて私にもわからないしね。」

 

花子に続いて私はそういった後、少しばかり目を細め、かすかに牙を見せながら舌先で唇をなめるとレナはビクリと身を震わせた後、少し考えて。

 

「わ、わかりました。私が得た情報でしたらお話します。」

 

「取引成立ね。じゃあ最初の質問だけど。ゴルドの目的は何なのかしら。」

 

「ゴルドの目的は、組織の復活です。先程お話したとおりゴルドは壊滅しましたが、我々騎士団の動きを察知して異世界へ移動する転移術を使い組織の本拠地をこの間宮市に移設中だったのです。ゴルドの本拠地を強襲して得た資料からその事を知ったのは一部の幹部と、かなりの量の資材、設備が移転した後でした。」

 

「組織の復活が目的として。彼等は具体的にどんな事をしているのかしら。」

 

レナの答えを受けて続けて質問する。

 

「具体的な行動については、現在の調査結果では2つ判明しています。1つは設備を稼働させるエネルギー源の確保です。

エーテルフィアにあった本拠地と同様、地中を流れるエネルギーが集中して、抽出しやすい場所を選んでいると思われるのですが。

正確な場所はまだ不明です。もう1つは、戦力の増強です。ゴルドの戦力は大きく分けて2種類です。1つは下魔と呼ばれている二足歩行するトカゲの様な魔物です。

もう1つは下魔より高い身体能力や知能をもった魔物で現在十数種類確認されています。これらはエクリプスと呼ばれています。先程レミリアさんが倒されたエスクローグもエクリプスです。」

 

「地中を流れるエネルギーが集中して、抽出しやすい場所ねぇ。霊脈みたいなものかしら。それにしても、エクリプスだなんて名前負けもいいところね。」

 

思わず嘲笑が浮かぶ。

 

「連中が戦力を増強するのはわかったけど、どんな方法で増強しているのかしら。」

 

「エーテルフィアでは下魔やエクリプスを増やす為に人間や妖精の女性を攫っていました。ここから先は言わずともお分かりになるはずです。」

 

「えっ、ちょっとまってレナちゃん。じゃ、ここ最近の女性失踪や私がさっき攫われそうになったのって、もしかして。」

 

「ええ、そう。最近頻発している深夜の女性の失踪は下魔やエクリプスを増やす為。花子ちゃんが攫われそうになったのは、妖怪が妖精の代用と成りえるかの実験の為だと思う。」

 

「えぇ、なにそれ!」

 

花子が自分の体を抱きしめてブルブルと震える。

 

「大丈夫、花子ちゃんは私が絶対に守って見せるから。」

 

レナが震える花子を抱きしめているけどねぇ。

 

「さっき花子を人質に取られて窮地に立っていたのは誰だったかしら?」

 

「うっ・・」

 

言葉に詰まるレナ。

 

「まあ、貴方の失態はどうでもいいわ。」

 

頬杖をついていた右腕を解いて、右手と左手を軽く組み、目を瞑る。

 

「気に入らない。」

 

開いた目は瞳孔が爬虫類の様に縦に裂けているのだろう。

 

「古来、人々は夜の闇を恐れ。その恐怖が妖怪を生んだわ。それも昔の話、今や夜の闇は人口の光に掃われ妖怪達は人々から忘れ去られていき。花子の様にひっそりと存在するか。私の様に幻想郷に流れ着くかしかない。」

 

私の魔力にあてられたか花子とレナは何も言わずに続きを待っている。

 

「そんな主を失った夜を我が物顔で余所者が我が物顔で闊歩し、あまつさえ妖怪にすら手を出すなんて、お前はどう思う紫。」



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第5話

今回は短めです。


私はそう言うと何もない空間に目を向ける。

私が見つめる何もない空間にピンクのリボンが現れたと思ったらそれが左右に分かれて空間にスキマを作り上げる。

 

「こんばんは、いつから気付いていたのかしら?」

 

「私がレナを脅したあたりだよ。」

 

「あらら、残念。私はお風呂場で貴方がそこのメイドに裸にひん剥かれるところから見ていたわよ。」

 

藪蛇だったか!

無言でギロリと睨みつけるが。

 

「うふふ、そんな怖い顔しちゃったら可愛いお顔がもったいないわよ。」

 

ちっ、そういやコイツはこんな奴だったわね。

 

「あっ、お久しぶりです。紫さん。」

 

「ええ、久しぶりね。花子。」

 

挨拶をする花子と紫。

なんだ?こいつ等、知り合いなのか?

 

「あんた達、知り合いなの?」

 

私の問いに花子が。

 

「うん、私と紫さんは友達なんだ。レミリアさんも紫さんの友達なんだね。友達が友達だなんて嬉しいな。」

 

純真な笑顔で花子に言われると否定しづらい。

 

「えっ、ええ、そうね。」

 

まあ、事実こいつとの仲は悪いわけでは無い。

むしろ良い方だ。

とは言え、幻想郷の一勢力の長である私があからさまに仲良くするのは色々と問題があるので、それを公言するのも憚られるわけだけど幻想郷の外なら公言しても問題ないか。

 

「あらあら、何時になく素直じゃない♪」

 

紫が嬉しそうに私を抱きしめて頭をなでる。

 

「おぶぅ、ちょっと、やめなさい!」

 

身長差から紫の豊満な胸に顔を埋めることになる。

割とでかいなコイツ。

 

「咲夜。たすk、え!」

 

咲夜に助けを求めるが。

何故か涎を垂らしながら咲夜はカメラを私に向けていた。

コイツ何やってんだ。完全で瀟洒はどこに行った。

紫はあいかわらず聖母のような笑顔で私を抱きしめて頭をなでる。

なんなんだこのカオスは!

 

「花子たす・・」

 

花子に助けを求めたが。

その笑顔を見て私は諦めた。

美鈴を呼ぶべきか悩んだけれど咲夜と同じ行動を取りかねないと思いあきらめる。

 

解せぬ・・

 

 

-数分後-

 

 

「話を元に戻すわよ。」

 

何とか場を収めた私が言うとレナが苦笑いをして、花子の純真な笑顔が私の心に突き刺さる。その笑顔はやめろ!

 

「紫、貴方はレナの話を聞いてどう思っているのかしら。」

 

「私はレミリア、貴方と同じよ。ゴルドとか言う連中は気に障るわね。」

 

パチンと右手に持った扇を開き口元を隠しながら紫が言う。

 

「そうか、なら。ここは夜の闇を支配するモノとして礼儀のなっていない後輩に教育的指導をするなんてどうかしら?」

 

「ふふふ、教育的指導ね。いいわね、最も指導の結果が反映されるのは来世になるでしょうけど。」

 

「まあ、そういう事になるでしょうね。」

 

「ふふふふふ」

「ははははは」

 

「何する気なのレミリアさん、紫さん。」

 

花子の問いに私は答える。

 

「簡単な話さ。ゴルドとか言う連中を叩き潰すんだよ。」

 

「えっ・・なんで」

 

私の答えにレナが呟く。

どうやらわかっていないようだ。

 

「そうだな、例えて言えば。素敵なディナーを前にしてフォークとナイフを手にした瞬間に目の前を蠅がこれ見よがしに飛び回ったら思わず叩き殺してやりたくなるだろう。つまりは、そんな事さ。」

 

「ええっと、つまりそれって。ゴルドが気に入らないから叩くってことですか?」

 

レナが確認するように効いてくる。

私が紫に視線を送ると。

 

「ええ、その通りよ。身の程を弁えない連中にはお仕置きが必要でしょう。」

 

咲夜が淹れた紅茶のカップを片手に悠然と微笑む。

 

「ああ、そうだ紫。幻想郷にいる普段暴れたりない連中を誘ってみたらどうかしら?」

 

「あら、いいわね。帰ったら心当たりにを回ってみるわ。」

 

「そう、じゃあ、お願いね。」

 

私の提案に紫が答える。

まあ、来る面子は大体は想像つくけれど。

花のとか、鬼とか、ね・・

 




緋想天のゆかレミの会話を聞く限り、作者はお前ら絶対仲良いだろって思うんですが。
皆さんどう思います?


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第6話(改訂)

「私は調整の続きもあるから、もう帰るわね。」

 

紫が立ち上がりその場にスキマを開く。

 

「紫、貴方ちゃんと玄関から出ていきなさい。」

 

行儀が悪いと私が言えば。

 

「いいじゃない面倒臭い。2人もまたね。」

 

「はい、さようなら紫さん。」

 

「さよならー。また学校に来てね紫さん。」

 

2人に手を振りながら紫がスキマに入ると、すぐにスキマが閉じる。

 

「そうそう、花子、貴方この件が片付くまで別荘(ウチ)にいなさい。」

 

「え、なんで?」

 

「さっき攫われそうになったばっかりでしょう。危機感を持ちなさい、連中がまた貴方を狙ってくる可能性を考えれば私の元に避難した方がいいわ。」

 

「ああ、そっか。うーん、じゃあ、お邪魔しようかな。」

 

「ゲスト用の離れを用意させておくわ。」

 

「えっ、そんな悪いよ。隅っこの部屋とかでも十分だから。」

 

花子が日本人的な謙虚さを見せるがそうはいかない。

 

「駄目よ客人を無碍にするなど私の沽券にかかわる。しっかりとおもてなしさせてもらうわよ。」

 

「えっと、うん、わかった。暫くの間お世話になります。」

 

「ええ、我が家だと思って寛いで頂戴。それと、荷物を取りに戻るなら一声かけなさい、護衛を用意するから。」

 

「あっ、護衛だったら私がしてあげるよ。」

 

レナが手を上げて護衛役に立候補したけど。

 

「駄目よ。花子は私の客よ、であれば護衛も此方から出すのがスジでしょう。」

 

「うっ、わかりました。」

 

口ではわかったと言っているけど、心配なようね。

まあ、友人を心配する気持ちはわからないでもないけれど。

 

「そんなに心配する必要は無いわ。腕利きの護衛を付けるから。」

 

「はい。わかりました。」

 

「ありがとう、レミリアさん。誰が護衛してくれるの?」

 

レナを安心させるためでもあるのか花子が聞いてくる。

 

「そうね、私とフランクが護衛するわ。」

 

「えっ、レミリアさんとフランクさんが私を守ってくれるの。ありがとう。」

 

私が護衛に付くと思っていなかったのか花子が少し驚きの声を上げる。

 

「大丈夫だよレナちゃん。レミリアさんとフランクさん、あっ!レナちゃんは知らないか。咲夜さんの部下でフランシス・ヴィーゼさんっていう狼男さんがいるんだけど。とっても強くて優しい頼りになる人?がいるんだ。」

 

レナは、笑顔で言う花子を見て納得したのか。

 

「うん、わかった。レミリアさん、花子ちゃんをお願いします。」

 

「別に、友人として当然の事よ。それより、今日のところはここまでにしましょう。」

 

「うん、そうだね。もう3時過ぎちゃったし、レナちゃん今日も学校でしょ。」

 

「え、あっ!ああー、宿題まだ残ってるのに!」

 

レナが頭を抱えて絶叫する。

咲夜が咄嗟に私の耳を塞ぐが、それでもうるさい。

 

「うるさいわよ、静かにしなさい。」

 

「あ、ご、ごめんなさい。ええっと、じゃあ私は帰るね。」

 

レナは慌てて立ち上がり帰ろうとするけど、いやいや、ちょっと待ちなさい。

 

「レナ、貴方その恰好で街中を歩くつもりなの?」

 

「え、あっ、まだ変身したままだった。」

 

レナが右腕を上げると彼女の体が淡い光に包まれる。

光がおさまると彼女の服装は落ち着いた色合いのブレザーとスカートになっていた。

通っている学校の制服か?

しかし、光に包まれている間に体のラインが丸わかりなのは如何なものかと思うぞ。

 

「時間も時間だし。急いでいるんでしょう、こちらで車を用意するわ。」

 

「えっ、やったー。ありがとうございます。」

 

「じゃあ、車を用意するから待っていなさい。咲夜。」

 

「かしこまりました。レミリアお嬢様。」

 

「!?」

 

一瞬で咲夜の姿が消えるのを見てレナが口を半開きに、目を丸くして驚いている。

 

「えっ、えっ、どういう事。メイドさんが消えちゃったけど。花子ちゃん、あのメイドさんも妖怪なの?」」

 

突然の事に主である私にではなく友人の花子に聞いているけど。

 

「あははは、レナちゃんその顔ぐふふふっ、ゲホゲホ。」

 

レナの顔が笑いのツボにはまったたのか。両手でお腹を抱え涙目になって笑っている花子に答える余裕があるとは思えない。

 

「花子ちゃんヒドイ。」

 

取りあえず回復しない花子の事は放っておいて。

 

「主である私が話すわ。咲夜は時間を操る程度の能力を持っているのよ。」

 

「時間を操る程度の能力、ですか?」

 

「そう、録音した音楽を一時停止したり早送りする様に時間を停めたり、早めたりすることが出来るのよ。他にも時間と密接な関係にある空間も操れるわ。実際、この家の屋内も咲夜が能力を使って広くしているしね。」

 

「なにそれ・・」

 

咲夜の能力について説明してあげたらレナが絶句している。

 

「あっ、じゃあ花子ちゃんも何か特殊な能力とか持ってたりするの?」

 

「ひーひー、えっ、私?私は能力は持ってないよ。妖怪全員が持ってるわけじゃないし。」

 

回復した花子が涙を拭いながら答える。

 

「そうなんだ。レミリアさんは特殊な能力を持っているんですか?」

 

「ええ、持っているわ。私の能力は運命を操る程度の能力よ。」

 

「運命ですか・・何だか、凄いですね。」

 

繰り返し頷いているけど、この娘、絶対に理解してないわね。

 

「レナ、貴方ちゃんと理解していないでしょう。」

 

「あ、あははは・・」

 

私から目を逸らしながら笑って誤魔化そうとするレナ。

 

「仕方がないわね。」

 

私は意識をテーブルの上にあるメモ用紙と万年筆に向けると。

1枚のメモ用紙が私の目の前まで宙を移動して静止する。

万年筆は同じく宙を移動して私の右手に収まる。

空中で静止したメモ用紙に書き終えてレナを見ると、また口を半開きに、目を丸くして驚いている。

隣では花子が。

 

「あははは、またその顔ぶふっふうははは。」

 

また、両手でお腹を抱え涙目になって笑っているとレナが。

 

『ビシィッ』

 

無言でデコピンをする。

どうやら2度も笑われて頭に来たようね。

 

「いったーい。ヒドイよレナちゃん。」

 

「レミリアさん、あの、手を触れずに物を動かしてますけど、どうやって動かしているんですか?」

 

額を押さえて抗議の声を上げた花子を無視してレナが私に聞いてくる。

 

「テレキネシスよ。吸血鬼なんだからこれ位、出来て当然よ。」

 

「・・吸血鬼って凄いんですね。」

 

「ええ、凄いのよ。」

 

笑顔で言いながらメモをレナの目の前に移動させる。

メモにはこう書かれている。

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

花子がレミリアに石を投げつけた。

レミリアは、

 

右に避けた━┳━┳┳━┳━━┳┳━┳━┳レミリアの肩に当たった

      ┃ ┃┃ ┃  ┃┃ ┃ ┃

何もしない━┻┳┻┻┳┻┳┳┻┻┳┻┳┻レミリアの頭に当たった

       ┃  ┃ ┃┃  ┃ ┃

左に避けた━┳┻━┳┻┳┻┻┳┳┻┳┻━石は当たらなかった

      ┃  ┃ ┃  ┃┃ ┃

しゃがんだ━┻━━┻━┻━━┻┻━┻━━レミリアのお腹に当たった

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

「いい、このくじの様に人妖に拘わらず、選択肢を選ぶ事は出来ても結果を選ぶことは出来ないわ。でも、私の能力は運命を操る程度の能力を使えばこうする事が出来るの。」

 

『パチン』

 

私が指を鳴らすと。

メモが、

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

花子がレミリアに石を投げつけた。

レミリアは、

 

右に避けた━┳━┳┳━┳━━┳┳━┳━┳石は当たらなかった

      ┃ ┃┃ ┃  ┃┃ ┃ ┃

何もしない━┻┳┻┻┳┻┳┳┻┻┳┻┳┻石は当たらなかった

       ┃  ┃ ┃┃  ┃ ┃

左に避けた━┳┻━┳┻┳┻┻┳┳┻┳┻━石は当たらなかった

      ┃  ┃ ┃  ┃┃ ┃

しゃがんだ━┻━━┻━┻━━┻┻━┻━━石は当たらなかった

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

と、変わった。

 

「ええっ!そんなぁ、卑怯よ。こんなの。」

 

「レミリアお嬢様、お車のご用意が出来ました。」

 

「ひぁっ!・・あぁ、また。」

 

突然現れた咲夜にまたレナが驚いている。

 

「ありがとう咲夜。」

 

私がソファから立ち上がるとつられる様に花子とレナが立ち上がる。

 

「咲夜、急いでいるから全員玄関までお願い。」

 

「かしこまりました。レミリアお嬢様。」

 

次の瞬間、私達は部屋ではなく玄関に移動していた。

何のことは無い、咲夜が時間を止めて私、花子、レナを玄関まで運んだだけだ。

玄関の扉は既に開いていて、屋根付きのロータリーにはT○Y○TAの高級セダンが1台停車している。

 

「あれ?・・ああ、咲夜さんですね。」

 

花子は何がおきたのかわかったようだけど。

 

「はへ!?」

 

わかっていないレナは目を白黒させて周りを見ている。

 

「レナちゃん、咲夜さんが時間を止めて私達を運んでくれたんだよ。」

 

「えっ、そうなの。」

 

「うん、そうですよね。」

 

花子の問いに咲夜が。

 

「はい、お急ぎの様でしたので。」

 

「え、ええと、ありがとうございます。」

 

咲夜に、何と言っていいかわからない微妙な顔をしてお礼を言った後に表情を改めたレナは。

 

「じゃあ、私は帰るね花子ちゃん。ええと、レミリアさん助けて頂いてありがとうございました。おじゃましました。」

 

「うん、またねー。」

 

「別に貴方を助けたわけではないのだけど。お礼は受け取っておくわ。」

 

レナが花子には手をふって、私には一礼して車の後席に座ると咲夜がドアを閉め、すぐに車は夜の闇に消えて行った。

 

「私はもう寝るわ。花子はどうするの?」

 

「お風呂に入れるなら入りたいかな。流石にこのまま寝るのはちょっと。」

 

「わかったわ。咲夜、花子に誰かつけて頂戴。」

 

咲夜が呼んだ妖精メイドを1人、臨時の花子専属メイドにする。

 

「それじゃ、おやすみ。」

 

「ありがとうレミリアさん。おやすみなさい。」

 

 



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