ハッカドール 私たちどこでも誰でも捗らせます! (ショックラン)
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プロローグな一幕

 パーソナルエンタメAIとして、悩める人類を捗らせる為に開発された素晴らしき存在、【ハッカドール】

 これは、次世代型でありながらも非常にポンコツな三人のハッカドールの物語。

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 妙に幾何学的な模様が飛び交う白い空間で、銀髪のハッカドール0号は高級そうなリクライニングチェアに深く腰掛け今までの三人の活動記録と映像を見て頭を抱えていた。

 

(はぁ・・、ここまでポンコツだったとわ・・・)

 

 机の上に無造作に置かれていた紙切れを人差し指と中指で挟み見据える。そこには、

 

【ハッカドール、1号、2号、3号の三名は度重なる失態を招き捗らせるべき人間達に多大な迷惑をかけてきた。よってこれ以上の失態はそれ相応の処分が下される。・・・・・追伸、4号についても追々辞令を下す】

 

 簡単に言ってしまえば、今以上にやらかせばアイツら(4号を含む)を消去(デリート)するぞという最終警告みたいなものだ。

 だが、当人達は・・・・

 

「2号ちゃーん! ヘーイ!」

 

 この元気にバトミントンのラケットを降る金髪の彼女は1号。メンバーの賑やかし担当のような感じ。ポンコツである。

 

「はーい。アレ?」

 

 1号が打ったシャトルを空振りおっぱいがそれに合わしてぷるんと揺れるピンク髪の彼女が2号。メンバーのお姉さん的存在。ポンコツである。

 

「・・・zzz」

 

 ソファの上に身体を沈めて眠っている青紙の子供っぽいのが3号。どっからどこを見ても女の子だが、男だ。男の娘である。ポンコツである。

 

「おい、お前ら!」

 

 この辞令を知らないとはいえあまりにも危機感がない三人を見てイライラが蓄積された0号はつい声を荒げて三人を呼ぶ。急に呼ばれた1号2号はバトミントンを止めてその場で固まり1号の頭にシャトルがコツンと当たる。3号も今の声でノソノソと起きる。

 何だ何だと頭にハテナマークを浮かべたような顔した三人に、0号は辞令を目の前に見せつける。三人は辞令書と0号の顔を交互に見ると、マジ!? って顔をする。

 

「その顔はちゃんと理解したって顔だな」

 

 コクコクコクと三人同時に首を縦にふる。まるで壊れた赤べこのようだ。

 

「では、もう一度言っておく。これ以上の失態をすればお前たちは間違いなく消去(デリート)される。それを防ぐ為に今一度、地上に行って人間を捗らせろ! 質問はあるか!?」

 

「はい! 質問です!」

 

 青い顔をした1号が震えながら手を挙げる。それを見た0号が顎で質問を承諾する。

 

「あと、何回失敗できますか!?」

 

 とんでもなくズレた質問をした1号に肩をガクッと落とす。だが、すぐに立ち直り、

 

「0回だバカ」

 

と一言告げると、三人をモニターへ蹴り込んだ。

 

 




今回はプロローグだから短めな内容ですが次話からもう少し長めに書いていきたいです。

作者は地の文が苦手なので、その辺を容認してくれると非常に助かります!


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黄金色のハッカモザイク

「カレーン、重大発表ってなに?」

 

目は青でウェーブのかかったツインテールをした金髪の小さな女の子が、同じく金髪のロングヘアーでややツリ目な灰色の瞳をした女の子に話しかける。

その二人を恍惚とした表情で片手に通訳の参考書を片手に持って見つめるおかっぱ黒目の女の子がいた。

 

「フッフッフッ〜。アリス、しの、それは後の祭りデース」

 

ドヤ顔で人差し指を立てて左右に小刻みに振る。

 

「祭りじゃくて、踊りだろ〜カレン」

「・・・楽しみよ陽子」

 

濃い青髪のツインテールの女の子と茶に近い赤髪のショートヘアと八重歯が特徴的な女の子がカレンのセリフにツッコミを入れさらにツッコミを重ねて教室に入ってくる。

 

「OH! あややに陽子やっと来たデスネー!」

 

今回、カレンに呼ばれたメンバーは明日のテスト勉強のついでにカレンの重大発表というやらを訊く為に忍の部屋に集合することになっていた。そして、綾と陽子が来たことで全員揃ったみたいだ。

待ちわびたぜ! とでも言わんばかりの顔でカレンが立ち上がる。四人は顔だけでカレンを追う。

 

「ジャジャーン! コレが私のニュウフォンネー!!」

 

カレンのジャケットから今最新の極薄スマホが登場する。このスマホはどこでもつながり今までにない楽しいを提供するをコンセプトに売り出されたもので、大人気であり手に入れにくい代物なのだ。それを見た陽子と綾は「おぉ!」と感嘆の声を漏らすがアリスと忍は今一凄さが伝わらなかったらしく頭にハテナマークが浮かんでいるような表情をする。

 

「スゴイじゃんカレン! コレ今なかなか手に入らないやつだろー!」

 

テンションを上げ上げの陽子の言葉に右手を頭でさすりエヘヘ〜と照れるカレン。

 

「でも、本当にコレどうしたの?」

 

「いや〜、何か『色々セリフを録音させて欲しい』って言われて、引き受けたらソレくれましター」

 

「「なにそれ!? こわい!!」」

 

綾と陽子が息ピッタリのツッコミを入れてる横で、忍は参考書を見ては逸らし、見ては逸らしを繰り返していた。

 

「シノそれ新しい通訳の本?」

 

「そうなんですよ〜。コレお姉ちゃんが買ってきてくれたんです」

 

忍がアリスに参考書の表紙を見せる、そこには『こけしでもジャンジャンバリバリ英語脳』というタイトルに金髪のこけしが表紙のど真ん中に写っていた。

 

(イサミ・・・どういうつもりで買ってきたんだろう?)

 

「で、効果はあったのか?」

 

陽子は笑いながら訊くと、忍は小さく「うっ・・」と唸ると、参考書を机に置く。その顔はどこか悲哀の表情をして窓の外の晴天の青空を見上げる。

この時点で四人は、あーあんまり効果出てないんだなぁと心が一致する。

 

「しのは英語を頑張ろうって思うだけ偉いわよ。それよりも陽子は明日の中間テスト大丈夫なの?」

 

綾が横目で陽子に問いかける。そう言われた陽子はふっと目を落とすと無言で綾に近づき両肩に手をかける。

 

(ええええ!? よよ陽子の顔がこんな近くにいいぃ〜〜)

 

突然の出来事で顔を赤らめてアタフタとする綾の顔をジッと見つめる陽子。

 

「私もヤバイ!!」

 

「・・・・ま、まぎわらしいのよ!!」

「痛い! 何で!?」

 

ヤバイの言葉を聞いた綾は、一呼吸置いて陽子の背中を結構強めに叩く。

この状況を見てたカレンは何か思い出したかのようにスマホを弄り始める。

 

「どうしたんですかカレン。突然スマホを取り出して」

 

「せっかくだから、このニュウフォンを使って勉強するネー!」

 

新しく手にいれたスマホをどうしても使いたかったらしく、パッパッパとスマホの画面をスライド操作をする。

 

「おお〜なんかカッコイイよカレン!」

「確かに何か様になってるよな」

「キャリアウーマンって感じね」

「カレンのOL・・・」

 

忍が妄想に浸り腑抜けた顔をする一方、カレンも褒められてスマホを見ずに操作をする。それのせいか、おかげかカレン自身も一度も試したことのないアプリを起動させてしまう。

 

「わわっ! 私のニュウフォンが光ったデース!」

 

スマホの画面が強烈に光だし、ひとりでにカレンの手を離れ宙に浮くとそこから三人の女の子が輩出される。

 

「いたた・・・、こんな乱暴に放り込まなくても・・」

「怒っていたからね。あんな質問をすればしょうがないかもしれないわね・・・」

「んぐーーっ! もが・・ごぐ・・・!! ・・・っ! ・・・」

 

スマホから現れた1号、2号、3号。だが、蹴り込まれたのが原因で着地に失敗して組体操が崩れたかのように体勢になっており、3号は2号の胸に押しつ潰されて窒息寸前になっている。

突然現れた三人に呆然としてしまう忍たちに、何事もなかったかのように立ち上がり、

 

「私たちは、パーソナルエンタメAI・・・ハッカドール! 私たちが来たからにはマスターのアレコレ捗らせちゃいます!」

 

「そして、私がハッカドール1号!」

「2号です」

「・・・・」

 

3号の声が聞こえてこなかった為、1号が肩を掴んでガシガシ揺らす。

 

「もー3号っ! ちゃんとやってよー!」

「さ・・3ご・・・う」

 

ガクリと息絶えた3号を見てようやく頭の処理が追いついたのか陽子が口を開く。

 

「こ、コレが最新の機能かスゲー・・・」

 

「いや違うでしょ!!」

 

綾の今日一のツッコミが部屋に響いた。

 

 

 

 

 

 

 




ハイ。こんな感じで色々な作品とクロスしていきたいなぁと思ってます。
では、ネタが思いつき次第また


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黄金色のハッカモザイク2

綾のツッコミで全員それなりに冷静になったのでハッカドールについてアレコレ説明を受けていた。

 

「つまり、ハッカドールは私たちの悩み事とかを解決して捗らせてくれる存在ってことね」

 

「そうです! さぁ、何でも言ってください。捗らせちゃいますよー!」

 

1号が胸を張って宣言するのを、ウズウズしながら忍が手を伸ばして1号の髪のトンガリの部分を触る。

 

「わわっと! いきなりどうしたんですか!?」

「アリスやカレンとはまた違うタイプの良い金髪ですねー」

 

忍が1号とじゃれつくのをどこか納得のいかない表情をしたアリス。それを2号が陽子を見て説明を目で訴える。

 

「あぁ、しのは重度の金髪オタクだからなぁ」

 

「ええ!? 私ってそんなに金髪の子に見境いなく見えますか!?」

 

心外だと言いたそうな顔をするが、手は1号の髪を撫でるのを止めない。

 

「いや、今現在の状況を見るとそうとしか見えないんだけど・・・」

 

陽子の言葉にアリス、カレン、綾がウンウンと頷く。

 

「いえいえ、いくら私でも金髪の好き嫌いぐらいあるんですよ」

 

「金髪に好き嫌い?」

「初耳だよぉ」

 

2号とアリスが首をかしげる。それを見た忍はハッと、慌てた顔をする。

 

「大丈夫ですよアリス。アリスやカレン、1号ちゃんのように純金髪美少女は別格なので何があっても嫌いになったりしませんので!」

 

「じゃあ、どんな金髪が嫌い何ですか?」

 

忍の手からようやく離れられた1号が質問をすると、右手を顎に乗せて少し考える素振りを見せる。

 

「そうですねー。強いて言うなら『中途半端に黒髪を残した金髪染め』ですかね」

 

「確かに金髪2黒髪8の人とか街で見かける事もあるわ」

「中途半端って事だと金が取れて微妙に黒髪が戻るのもアウトか?」

 

綾と陽子の言葉に大きく頷く。

 

「アレ? でもシノ前に金髪に染めようとしてなかったっけ? ・・・・似合わないから絶対にやらなくてイイけど」

 

最後の方の言葉は忍に聞こえていないようだ。

 

「はい言いましたね。でもあの時は、金髪に染める事にたいしてまだまだ覚悟も勉強も不測してました。徐々に金色が抜けて黒に戻ってしまうのは私にとっても不本意です。だから・・・」

 

少し溜めて語気を強める。

 

「アリスかカレンの髪を私に移植する案を提案します!」

 

忍の自信満々の提案を聞いた直後、カレン未だ気絶している3号以外の全員が二歩ほど後ずさる。

 

「「怖いよ! 突然ホラーな話に〔しないでください〕するなよ!!」

 

1号は髪をおさえ、陽子は忍を指差して怒鳴る。

 

「そうですか? 私は色落ちしない金髪を手に入れる。カレンかアリスとは髪を通じて永遠に繋がる。・・・Win–Winです」

 

先ほど読んでいた参考書を開きWin−Winのページを開き皆に見せる。

 

「んなわけあるか!!それに・・・」

 

力強いツッコミをいれる陽子だったが、キュイーンと妙な音が耳に届き言葉を止める。

今まで黙りを決め込んでいた3号が、右手に回転したドリルと左手にハンマーを持ち白衣を着て立っていた。

 

「じゃあ、帰りたいからさっさとやろう・・・」

「え! ちょ!? ええええ! どうなってるのコレ!?」

 

よく見ると3号の顔に斜めの縫い跡っぽいシールが貼ってあり隣の2号は黄色い服と赤のオーバオール、四つのリボンを付けて立っていた。アリスは手術台にベルトでぐるぐる巻きに捕まっている。

 

「うわキツ・・・ってストップストップ! 3号、2号! 何をしてんの!?」

 

3号を羽交い締めにする1号。

 

「もう、夜も遅いし帰りたいんだよ〜。これが捗りたい願いでいいじゃん」

 

「いや、いい訳ないでしょ!?」

 

「オー、アリス! ショッカーになるデスかー!」

 

カレンがショッカーポーズをとり、綾が吹き出す。アリスは1号に救出され、忍はヘアカタログを眺め、2号は鏡を見て小さくまだイケると呟いている。

 

「何だこれ・・・」

 

あまりにもカオスな状況で陽子は溜め息を吐く。

 

 

 

 



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黄金色のハッカモザイク3

「だあああっ!! もう何なんだこの無駄な時間は!?」

 

陽子が今現在のカオスな状況にシャウトする。

 

「だいたい、アリスの髪をしのに移植したらアリスが尼さんになるだろ!!」

 

「はっ!」

 

しまったと驚いた顔をする忍。そして、そのままアリスを抱き締める。

 

「ごめんなさいアリス! 私が間違っていました。確かに金髪は欲しいですけど、アリスがハゲになるのは駄目です!!」

 

「 大丈夫だよシノ。私はハゲになったりしないから」

 

「そうデース。ハゲは駄目なのデース」

 

「うんうん。ハゲにならざる心を通して深まる友情、美しイイね」

 

「・・・君たちハゲハゲ連呼するのはやめない?」

 

熱いハゲディスに3号が冷や汗をかきながら苦言を呈する。

 

「それより、本当に捗りたい依頼ってなんなの? 」

 

2号の改まった質問に対して、綾が慌てて教科書を取り出す。

 

「テストテスト! 私たち、しのの家に来たのはテスト勉強をしにきたのよ! もう、明日まで時間もないじゃない!」

 

「え〜よりにもよって勉強〜? 面倒だからアニメ見ようよ〜」

 

テレビのリモコンを取り電源をつけようとする3号だったが、ダメですの一言で綾に主電源ごと切られる。

 

「じゃあ、4話目にして遂に私の最大の特技を披露する時だね!! 【成分分析っ!】」

 

「「「「「成分分析?」」」」」

 

決めポーズを取りながら、五人をじっくり観察する1号を見て忍、アリス、綾、陽子、カレンが首を傾げる。

 

「成分分析は、皆の身長、体重、趣味や能力に苦手科目、隠し事なんかも分析できちゃうのよ」

 

「プライバシーの侵害も甚だしい能力だな!?」

 

2号の説明にツッコミを入れる陽子。そうこうしている内に分析が完了したのか目をシパシパさせながら1号が息をはく。

 

「わかりましたーっ! おもに【英語】がヤバいみたいですね。次点で【数学】」

 

おおーっと五人から感嘆の声がもれる。実際、忍、陽子は英語はまずいし、カレンも微妙に下がってきている。綾、アリスは数学が若干下がってきてるのを見破れて驚いている。

 

「じゃあじゃあ、その分析結果で私が将来通訳者になれるか分かりますかー?」

 

ピシッと表情が固まる1号。だが、すぐに忍の手を握り暖かい笑顔を向ける。

 

「わ、私は未来は不確定な物だと思うんです。ハァイッ!」

 

上ずった声が余計に悲しい。そんな光景である。

 

「と、とにかく赤点だけでも回避しないと!」

 

なんとも言えない空気を察してアリスが口を挟む。

 

「ん〜、でも勉強してると意識が飛ぶのですが〜」

 

「あー分かる分かる! アレ何なんだろうな」

 

「不思議だよね〜。僕も0号の説教が気づいたら終わってたりするし〜」

 

忍と陽子それに3号が勉強あるあるで盛り上がる。

 

「それ知らない内に寝てるだけだよね!? 後、3号は確信犯だよねそれ!」

 

1号がツッコミを入れる中、綾が溜息をついて教科書を置くと、忍と陽子に心配そうな顔をする。

 

「二人共寝てる余裕ないでしょ。こないだも赤点ギリギリだったじゃない」

 

うぐっと声を合わせてヘコむ二人。だが、忍は胸に手を当てながらすぐに立ち上がる。

 

「綾ちゃん私の座右の銘を忘れたのですか。そう! ケセラセラ『なるようななるですよ〜』」

 

「なってないでしょうが!!」

 

机をそれなりに強く叩き、忍の8点と書かれた英語の小テストを握り潰す綾。ちなみに、50点満点です。

しかし、皆このまま一夜漬けをやっても正直どうにもならないだろう・・・と諦めかけた空気になる。

 

「ワタシに良い考えがありマース!」

 

そんな暗い空気を打ち壊す様にカレンが元気よく手を上げる。

 

「おっ、何か良い勉強方でも思いついたのか?」

「何か準備が必要なら私達に言ってくださいねー!」

 

「アヤヤのテストを後ろや横から覗くデース」

 

全員フワフワと想像してみる。綾の横の人は横目にテストを覗き、後ろの人は身を乗り出してテストを上から覗き込む・・・陽子を。

 

「それはダメなんじゃないかしら〜・・・」

「ちょっと待て! 何でイメージ映像が私なんだよ!!」

 

2号が柔らかな口調でダメ出しをし、陽子が全員の悪意ある想像にツッコミを入れる。

 

「あうぅ・・・このままじゃシノがまた赤点とっちゃうよぉ・・・」

 

アリスが震えながら頭を抱える。そんな中で3号が数字の掘られた鉛筆をドヤ顔で皆に見せるが、ちらっと見られただけで、何事もなかったかのように華麗なスルーを全員からくらい、orz状態になる。

 

「こうなったら最終手段しかありません!」

「やん♡」

 

1号が2号の胸に手を突っ込み、インカムを取り出す。

 

「何ですかそれ?」

 

「コレは【超記憶一夜】です」

 

超記憶一夜・・・インカム型の記憶増幅装置。ポンコツ三人が、ロクに依頼内容を覚えず脱線する事が多かった為、0号に持たされた装置。

長期の記憶は不可だが、名の通り一夜漬けの為だけにある装置である。

 

「物は試しです。付けてみてください!」

 

1号が素早く忍の背後にまわり、頭にインカムをセットする。

その瞬間、バリバリっと雷が走ったかのように全身が震える。

心配になったアリスが忍の顔を覗くとかつて見た事ないほどキリッとした顔になり、まるで、東大だろうが何だろうが受かりそうな雰囲気を纏った顔になり、気のせいか絵柄も変わる。

 

((出来る女みたいな顔になってるー!?))

 

綾・陽子が心の中でツッコミを入れる。そんな二人を尻目に忍が単語帳をパラパラっと一読する。

 

「アリスさん。適当に単語問題を出してみてください」

 

「う、うん。じゃあ・・・」

 

アリスもパラパラと単語帳を開く。

 

「activity」 「活動」

「difference」 「違い」

「fact」 「事実」

「truth」 「真実」

 

アリスの出す単語に間髪入れずに日本語で返す忍。普段だったら絶対にありえない光景に三人は感嘆の声をもらす。

 

「・・・ねぇ2号。超記憶一夜(アレ)って僕たち様に造られた道具だけど、人間が使っても平気なのかなぁ〜?」

 

「た、多分大丈夫じゃないかしら?」

 

驚く三人とは別に二人はヒソヒソと不穏な話をしていた。

 

「それ、私も貸してくれよ!」

「ワタシも天才になりたいデース!」

 

「ちゃんと全員分ありますよー!」

 

「私は遠慮しておく・・・」

「シノー! カムバーク! なんか怖いからー!」

 

陽子・カレンがノリノリで装着して、忍同様バリバリと雷に打たれる。途端に二人は、イケメンへと早変わりすると、問題集を超高速で解き始める。

 

「うわーっ! 二人まで絵柄が変わったー!!」

 

あまりの状況の速さについて行けず涙目で叫ぶアリス。

 

「うおー! スゲー! テスト内容が次々と頭に入ってくるぞー!!」

「頭が熱いデース! ハッ! これが、知恵熱っ・・・!」

 

更にペースを上げて問題を解き、教科書を読み込む三人。

 

 

「お二人もどーです?」

 

未だ受け取らない二人に対して、一号は【超記憶一夜】を進める。だが、アリスは首をブンブン横に振り拒否の姿勢を見せ、イケメン化した陽子に見惚れてた綾もハッと意識が戻る。

 

「わ、私も遠慮しておくは・・・」

 

「よぉし!! コイツがあれば、明日のテストは間違いなく満点だぁー! 皆で百点取ろうぜー!!」

 

超記憶一夜を付けた三人は肩を組んで、おぉーっと雄叫びを上げて訳の分からない団結をみせる。

 

「じゃあ、私たちはもう帰るな。ハッカドールありがとなー!」

「また、明日デース!」

「じゃあ、アリス・・・頑張って」

 

未だイケメン状態の忍をチラッと見てから、綾はアリスにエールを送る。

 

「それじゃあ、私たちもお仕事完了ですね」

「そろそろ寝ないとお肌に悪いしね〜」

超記憶一夜(ソレ)、明日になったら自動回収されるから好きにしてイイヨ〜」

 

ハッカドール達もカレンのスマホから帰る準備を始める。

 

「えぇっ!? 皆帰っちゃうの! 待ってぇ! この状態のシノと二人っきりは嫌あああぁぁぁ!!」

 

夜の闇夜にアリスの嘆きが虚しく響いた。

 

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ーーーーー

 

テスト当日

 

「もおっ! 陽子のせいで遅刻寸前じゃない。どうして、朝来ないのよぉ・・・」

 

息を切らせて教室に入った綾は、辺りを見回す。見た感じまだ、カレン、陽子、忍は来ておらず、アリスが死んだ魚のような眼をして着席をしていた。

アリスに話しかけようかと思ったが、烏丸先生が教室に入ってきた為、止める。

 

「皆おはよ〜う。 それとね、最近インフルエンザが流行っててねぇ。このクラスからも三人でてしまいました。皆さん気をつけましょうね」

 

「三人・・・?」

 

綾はもう一度、教室を見回す。昨日一緒に勉強していたアリス以外がいない。この事から想像できる事実は一つ・・・。

 

(インフルエンザになってるー!?)

 

綾がツッコミを入れてる丁度同時刻。ハッカドールの三名も0号の前に並び正座をさせられていた。

 

「・・・で、お前らは道具で楽したと?」

「・・・ハイ」

 

超記憶一夜は確かに便利な道具だ。しかし、ハッカドール用である為、人が使えば記憶に全ステを振ることになり、身体の抵抗力が低下し謎のキャラ変や、テンションの暴走が起こってしまう。

だから、忍達は見事にインフルエンザにかかったのだ。

 

「こんの・・・バカどもがぁ!!」

 

「うわぁ! 二人共逃げはなっ!?」

 

三人は般若のような顔になった0号から逃げようとしたが、長時間の正座でまともに立てなくなっていた。

 

「「「アッー!!!」

 

ちなみに、一夜漬けでしかない記憶は休み明けで行われた別室のテストでは効力を発揮しないばかりか、ソレ頼みだった為三人は華麗に赤点を取りました♡

 

 

 

今回の総合評価・・・大失敗【あと数回大失敗を取れば彼女たちは容赦なくデリートです】

 

 

 



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