クロスアンジュ 蒼き自由と紅き騎士 (ライダーGX)
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プロローグ 飛ばされるふたりの英雄

新しいクロスアンジュを作りました。

8人の戦士達がどうも伸びないので、今度はタスク不在の物を作りました。

どうか見て行って下さい。


コズミック・イラ70…、血のバレンタインの悲劇によってナチュラルの地球、コーディネーターのプラント本国との戦いは本格的に武力衝突へと発展した。

誰もが思わなかった数で勝る地球軍の勝利、だが戦況は大きく崩れ、状況は混乱したままやがては11ヶ月に及ぶザフトとの戦闘が大きく続いた。

 

そしてコズミック・イラ72、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦にいてジェネシスの破壊、停戦によって戦争は終結したかに見えた…。

 

しかしコズミック・イラ73…、ユニウスセブンのコロニーを地球に落とすブレイク・ザ・ワールド事件で再び戦争は開戦された。

これによりブルーコスモスは一気にプラントを叩こうとした。しかし予測は大きく崩れ、戦争はコズミック・イラ74にて終結し、二度と戦争が起こらないようにと皆で大きく誓い合った。

 

メサイア攻防戦でオーブを守り抜いた英雄…『キラ・ヤマト』と『アスラン・ザラ』はザフトとオーブの司令官になって、部下である『シン・アスカ』と『ルナマリア・ホーク』、『メイリン・ホーク』と共に平和へと道を守り続けていた。

そしてコズミック・イラ75、現在キラ達はある宙域での調査に向かっていた。

 

キラが操る『ZGMF-X20A ストライクフリーダム』とアスランが操る『ZGMF-X19A インフィニットジャスティス』が先行し、共に行動している母艦『アークエンジェル』。

その中でシンとルナマリアは『ZGMF-X42S デスティニー』『ZGMF-X56S インパルス』に搭乗したまま待機をしていた。

 

その中でアスランがキラに話しかける。

 

「キラ、どうだ?」

 

「うん…どうも怪しい所は見当たらないね。報告にあった妙な電磁波も観測されていないし…」

 

そう言うキラにアスランは少々考え込む、現在キラ達は一週間前に部隊から聞いた謎の電磁波があると報告を受け。それの調査をしにやって来たのだ。

アスランは考える中でシンが通信して来た。

 

『アスラン、そっちはどう?』

 

「シンか、今の所何も観測されない」

 

『そうか…」

 

シンがそう言うと、ルナマリアも通信をして来る。

 

『でも部隊からの報告では確かに観測された筈なんですよね? 何もないなんてあり得ないと思うけど…』

 

「ルナマリア。僕も同じ考えだよ、もう少し調べて見るから、もう少し待機しててくれる?」

 

『『了解です!』』

 

シンとルナマリアは通信を終わらせ、キラとアスランはもう少しだけ調査を続けることにした。

そしてアスランがある事を聞いてきた。

 

「キラ…少し良いか?」

 

「えっ?何?」

 

「…もうすぐだよな。“彼女の命日”は」

 

っとアスランの言葉を聞いて、キラは言葉を閉じてしまう…。

アスランが言った言葉、それはラクスの命日であった。

 

半年前、プラント本国最高議長に就任していたラクスは突如原因不明の病に侵されてしまった。その病の原因を突き止める事が出来ず、治療法も分からずのままラクスはこの世を去ってしまった。

最愛の恋人を亡くしてしまったキラは心に深い傷を残したまま、どん底に落とされる前にラクスがキラに言った言葉があった。

 

《キラ…、どうか…強く生きて下さい…私の分まで…》

 

その言葉が今のキラを何とか立ち直らせるきっかけを作らせた、しかしまだ心に大きな傷を残したままであった。

 

「…うん、でも大丈夫だよアスラン。僕はラクスのあの言葉通りに強く生きて行くつもりだから」

 

「…そうか」

 

アスランはキラの言葉を聞き、再び調査を開始した。

しかしその時、彼等の周囲にある反応が起きた。

 

突如強烈な電磁波が現れ、彼等の計器に異常が起き、それにキラとアスランはそれに目を奪われる。

 

「っ!?」

 

「これは!?」

 

二人が原因を調べる中でシンとルナマリアは慌てた様子で通信を繋いで来た。

 

『キラさん!アスラン!!』

 

『そっちで異常な重力場が発生しています!!何が起きたのですか!?』

 

「分からない!こっちも今調べる所!!」

 

キラが調べている中でアークエンジェルから『マリュー・ラミアス』が通信をして来た。

 

『キラ君!!アスラン君!!』

 

「マリューさん!」

 

「くっそっ!!操縦が利かない!どうなってるんだ!!」

 

すると彼等の後ろに謎の穴が現れ、彼等を飲み込もうとしていた。

 

『二人共!!謎の穴があなた達を飲み込もうとしているわ!!速く脱出を!!』

 

「分かってます…!」

 

「ですが機体のコントロールが利かないんです!!」

 

そう言ってる間に二人の機体は徐々に穴に引き込まれて行き、その様子を見たキラとアスランは覚悟を決める。

 

「……マリューさん。もう無理の様です」

 

「艦長…カガリにこの事は伝えないでください…」

 

『何を言ってるの二人共!?』

 

『キラさん!!』

 

『アスラン!!』

 

皆の通信を繋いだまま、キラとアスラン吸い込まれて行く穴に飲み込まれてしまい、その穴は閉じて行ってしまう。

 

 

この後、オーブ軍とザフト軍は二人を捜索するも、中々見つからず、キラとアスランはMIAとなってしまうのだった。

しかし彼等は“別の世界”で生存していた事が後に分かる事となる。

 



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第1話 異世界

キラとアスランが登場する場所は約5話当たりです


謎の重力場によって穴に吸い込まれてしまったキラとアスラン、二人は穴を抜けてある島へと落ちてしまう。

その島は無人島で、だれも住んでいない島であった。

 

二人はその島に落ちるが、すぐにスラスターで空中を飛び、地面に叩き付けられることなく着地する。

 

「危なかった…、アスラン!」

 

「こっちは大丈夫だ!キラ」

 

お互いの無事を確認した二人は辺りを見渡すと、無人島である事をに気付き。

一度膝を付いてMSから降りる二人。

 

「此処は一体…」

 

「分からない、見た限りでは無人島の様だ」

 

キラとアスランはその様子を一度見た後に通信を試みようと再びMSに乗り込み、通信を開こうとする。

 

「こちらザフト軍ヤマト隊、キラ・ヤマト。アークエンジェル応答せよ」

 

「こちらオーブ軍アスラン・ザラ、誰か応答してくれ!」

 

二人は通信を行っても誰も通信が帰ってこらず。その様子に二人は今の状態に参る。

 

「どうなってるんだろう…」

 

「分からない。でも確かなのは此処は俺達とは全く知らない場所である事だけは確かだ」

 

そう二人は一度降りて海を見ながら考える。これからどうすればいいのか…アークエンジェルとの通信が繋がらない以上此処に留まって救助を待つのかと考える。

しかしそんな事に待っている二人ではない、キラとアスランは一度MSに乗り込みこのあたりの島を見渡す事にした。

 

スラスターを作動させて、空中を飛んで島の周りを見て確かめる。

彼等の目に写ったのは大きな島で、ゴンドワナ級約5隻分ほどの島であった。

 

二人は一度島に降りて、小銃と自動小銃を持って森の中を捜索する。

 

キラとアスランは一日中森の中を捜索すると、海の近くに大きな洞窟があって、そこに誰かが住んでいた形跡があった。

それを二人は一度調査して見ると、そこに日記がある事が分かり、それをキラとアスランはそれを調べて見る。

 

『今日モーガンが死んだ…最後の古の民は私一人となった…。しかしこの私も謎の病に侵されてしまい、残された命はあと数日程度だ。そこで生き残った古の民の仲間がこれを読んでいたのなら是非この隠れ家を使ってほしい。

寝所も食料もあるし、この近くにパラメイルも隠してある。これで『ノーマ』と共に『エンブリヲ』を倒し、この嘘塗れ…汚れた世界を解放して欲しい。我が命に代えて頼む…』

 

その日記を見たキラとアスランはそれに思わず顔を合わせる。

 

「古の民…パラメイル?」

 

「ノーマに…エンブリヲ? どうも俺達の知らない場所に来たみたいだ…」

 

アスランは日記に書かれてあるノーマとエンブリヲの意味に考え、キラは日記に書いてあるパラメイルの隠し場所へと向かう。アスランもキラの後を追いかける。

 

二人はパラメイルの隠し場所に到着し、その扉を開けると小さな機体、パラメイルが置かれてあった。

キラとアスランはそれを見て思わずつぶやいてしまう。

 

「凄い…小型化なのにこんなに綺麗な機体があるなんて」

 

「ああ、しかもこの形状は俺が乗っていたセイバーと少し似ている。よくこんな小さな機体を創り上げたものだな」

 

二人はパラメイルの感想を言った後に一度あの洞窟に戻り、銃を置いてストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを洞窟近くに置く為に取りに戻り、洞窟の近くに置いた。

そして夜となり、キラとアスランはここで一晩過ごす事とする。

 

「今日はここで野宿だね」

 

「ああ、取り合えず明日はこの島を出て外がどんな様子なのか調べてみよう」

 

アスランの言葉にキラは頷き、二人は此処で夜を過ごした。

 

そして翌日、キラとアスランはここを出る準備を終え、MSに向かおうとしたその時二人の目にある物が映った。

それは白いパラメイルの機体で、頭に女神の像を乗せ、間接部が金色の特徴を持つ機体であった。

 

キラとアスランはそれに目を奪われる。

 

「キラ!」

 

「うん!」

 

二人はすぐに機体の元に行く、機体に着くと二人はコックピットを開ける場所を探していて、キラが胴体部にコックピットのボタンらしきスイッチを見つけて押すと、コックピットが開いて二人は中を見る。

機体の中には金髪の『美少女』が気を失っていて、更に身体が海水によって濡れている事に気付き、キラとアスランは頷いて、コックピットから美少女を出してすぐに洞窟へと連れて行った。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

キラとアスランが美少女と出会う前の少しばかり時間は遡る。

 

ある時…少女は思った。世界はどうしてこうも醜く、そして残酷なのだろうと。

 

海に浮かぶ島…『アルゼナル』である空域でこの世界にたびたびやって来るドラゴンが居る空域に向かう為にある部隊が出撃した。

 

その中に一人の少女、『アンジュ』が居た…。

 

アンジュはミスルギ皇国の第一皇女で本名『アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ』、幼い頃からノーマである事を親が密かに隠して育てて来たが。彼女が16歳の誕生祭に彼女の兄である『ジュリオ・飛鳥・ミスルギ』にノーマの事を暴露されてしまい。

この軍事施設であるアルゼナルへと送られた。最初は現実を受け止めるのも否定続けていたが。ヴィルキスとドラゴン、そして自分の行いにより仲間の死と辛い現実を突きつけられてようやく自覚して。

アンジュはこの残酷な現実と向き合う事となる。

 

今いる彼女の第一中隊はドラゴンの元に行く為に現隊長である『サリア』が皆に言う。

 

「総員騎乗!」

 

サリアの掛け声に皆はパラメイルに乗る。

アンジュが自分の専用機であるヴィルキスに乗り込んだ際に尻に何か痛みを感じる。

 

「イッタっ!」

 

アンジュはすぐさま調べると、画鋲が置いてあって、それに舌打ちをする。

 

「チッ…!ゴミ虫が!」

 

画鋲を捨てるアンジュはすぐさま起動準備をし、そこのパラメイルの整備班である『メイ』がアンジュに問う。

 

「アンジュ!出撃前に最終確認を!」

 

「ああ~もう! 問題ありません!!」

 

イラつきながらもアンジュはすぐさま確認をしてクリアである事を言う。

 

しかしその時に気付いてなかった…。

ヴィルキスのファン部に“何かが”つまっているのを…。

 

各機の発進体制が整った。

 

「サリア隊、発進します!」

 

最初にサリアが発進して、その次に中隊の仲間である『ヒルダ』や『ヴィヴィアン』が発進する。

 

「サリア隊、アンジュ機発進します!」

 

アンジュのヴィルキスが発進してその後に他の仲間の『エルシャ』と『ロザリー』に『クリス』の機体が発進する。

そして『ココ』と『ミランダ』、そして『ナオミ』の機体も発進して、全機発進完了して目的地へと向かった。

 

 

戦闘空域に入って、空間に次元のゆがみは発生した。

 

「ドアが開くぞ!」

 

サリアの掛け声にアンジュ達は気を引き締める。

そして空から空間が割れて、そこからドラゴンの群れが大量発生する。

 

「ファイヤ!!!」

 

サリアが叫び、第一中隊は攻撃を開始する。

キャノン砲を装備しているエルシャ達が先に攻撃し、ドラゴン達の動きをかく乱していった。

 

するとアンジュが突如前に出て、突撃していく。

 

「アンジュ! 勝手に突っ込むな!」

 

サリアはアンジュ勝手な行動に怒鳴るも、アンジュはそれを無視して突っ込んで行く。

アンジュはドラゴンを次々と倒して行き、そして一体のドラゴンに集中する。

 

「はあああああああああ!!!」

 

っと突入した時にヴィルキスに異変が起き、煙が上がる。

 

「あ!アンジュが!!」

 

ヴィヴィアンが落ちて行くアンジュの異変に気付く。

 

『何をやってるの!早く立て直すしなさい!』

 

ヴィルキスの異常に気が付かないサリアはアンジュに命令する。

サリアの叫びにアンジュは五月蠅く思うも必死に体制を立て直そうとする、その時にだった…。

 

「助けてやろうか?」

 

アンジュの元にヒルダがやって来て助けを言いに来て、しかしアンジュはヒルダ達の事を嫌っていて。勿論ヒルダ達もアンジュの事を嫌っている。

 

「ッ…! 失せろゴキブリ!」

 

無論アンジュはヒルダの助けを拒否して、すぐさまアサルトモードに変形するも一体のドラゴンがアンジュに体当たりしていき、失速して海へと墜落して行った。

 

「ヴィルキス!!」

 

サリアは堕ちたヴィルキスに向かってコースを取る。

しかしその時にエルシャからの通信が来る。

 

『どこ行くのサリアちゃん!デカいのが出て来たわ!今は殲滅が最優先よ!』

 

っとその事にサリアは海で戦っているヴィルキスを見て悔やみ、そしてすぐさま前線に戻ろうとする。

それにナオミはその様子に思わず驚く。

 

「えっ!?サリア!? アンジュはどうするの!?」

 

『…今は殲滅が最優先だ!』

 

「そんな…!」

 

サリアの通信にナオミはそれにあまりにも決断に疑問を持つも、しばらく考えてアンジュの事を考えながらも最前線へと戻って行く。

海で戦っているヴィルキスはドラゴンと戦闘が続き、そのまま海へと沈んで行って、コックピットに海水が入り込んだ際にアンジュは覚悟を決めた…。

 

「(く!クソ…!!)」

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

「う…」

 

アンジュは意識を取り戻して薄らと目を開ける、アンジュの目の先には天井が見えて、それにアンジュは気づいて起き上がる。

その中は洞窟であって、アンジュはベットで寝かされていて、ライダースーツを脱がされて裸にされていたのに気付く。

 

「キャア!!」

 

すぐさまアンジュは身体を隠して、状況を確認する。

 

「私…一体どうして…?」

 

アンジュは回りを見ると、机の上にライダースーツが置いてあって、アンジュはそれを取って着て、洞窟の外に出る。

すると外には二人の男が居て、一人の男がアンジュに気づいてもう一人の男に話しかける。

 

「ん? キラ」

 

「どうしたの…あっ」

 

キラとアスランはアンジュが起きたのを見て振り向き、アンジュはキラとアスランを見て唖然とするのであった。

 



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第2話 出会い

キラとアスランは目を覚ましたアンジュを見て、キラは笑顔で問う。

 

「良かった、君もう大丈夫?」

 

アンジュはその事に少しばかり唖然としていたが、すぐにさっきの事を思い出した。

先ほど彼女はついさっきまで裸の状態で寝かされていた。もしかしたら…っとアンジュはキラの言葉を無視して、キラを突き飛ばしてその場から走り出してしまった。

 

「うぁ!」

 

「キラ!」

 

アスランは突き飛ばしてしまったキラを起こし、キラはアスランの方を見ながら言う。

 

「大丈夫だよアスラン」

 

「そうか…しかしあいつ、いきなり何をするんだ?」

 

そしてアンジュは走りながら周りの景色を見て考え込む。

 

「(何なの此処…、私…どうして…はっ!)」

 

アンジュはようやく自分のしていた事を思い出す。戦闘中にヴィルキスが異常を起こし、そこで海に落ちたって事を。

海岸の方まで走ると砂浜にヴィルキスがあった。彼女は直ぐに乗り込んで発進しようとするが何も起きない。

 

「…? どうして動かないの?」

 

アンジュは原因を調べると、ファン部が少し焦げている部分があって。アンジュはすぐに調べて様とする。

 

「壊れて動かないぞ。その機体は」

 

っとアンジュは外を見ると、キラとアスランがアンジュの元にやって来て、アスランがある物をアンジュに見せた。

 

「その機体のファンにこんな物が詰め込まれていた」

 

アスランがアンジュに見せた物は少し焦げていた大量の下着であった。

大量の下着を見たアンジュはすぐに犯人が分かった。大量の下着を入れた犯人はヒルダであった事を…。

 

「この…!このこのこの~!!」

 

アンジュはアスランから下着を奪い取り、悔しながら下着を破り捨てて踏みつける。

 

「しかし災難だね君? 本当に大丈夫?」

 

キラがアンジュに近寄ろうとした時、アンジュはすぐさま銃を抜いてキラの足元を撃つ。

 

「!!」

 

それにキラは思わず後ろに下がり、アスランはとっさに銃を抜いてアンジュに向ける。

 

「何をするお前!!」

 

「それ以上近づいたら撃つわ…」

 

アンジュは目覚めた時の事を考えながらキラとアスランに警戒心を持っていた、アスランはアンジュに対し睨みつけていたが、キラがそれを落ち着かせるように話す。

 

「落ち着いて、僕達は君に危害を加えるつもりはないよ。だから安心して」

 

「安心してですって…!人を裸にさせておいて!?」

 

「あの時の君は海水に浸かっていて身体が冷えていたんだ。あのままだったら君は低体温症で死んでいたんだよ?」

 

キラは冷静に対応しながらアンジュを落ち着かせようとする。しかしアンジュの怒りの炎は消えない。

 

「嘘よ!!もし目覚めなかったら、私にもっと卑猥で破廉恥なことをするつもりだったんでしょう!」

 

「…誰がお前の様な奴にそんな事をするか」

 

アスランはアンジュの暴走発言に思わずつぶやいて、キラは少しばかり冷たい目線でアンジュを見る。

 

「それじゃあ…君はあのまま海の中で死んでいた方がマシだと…そう言うのかい?」

 

「っ…それは」

 

アンジュはキラの言葉に思わず詰まらせる。

 

「僕は困っている人を放っておけないんだ。だから落ち着いて」

 

「…う。五月蠅い!!!私に構うな!!」

 

アンジュは銃をキラに向けた時、アスランが銃を撃ち、アンジュが持つ銃を弾き飛ばす。

 

それにアンジュは右腕を抑えながら二人を睨みつける。

キラはアスランの方を見て呆れる風に見る。

 

「アスラン…」

 

「キラ、こいつには何を言っても──」

 

「僕に任せてよアスラン。お願いだから…」

 

「…分かった。しかし妙な事をしたら見逃さないからな」

 

そう言ってアスランは銃をしまい、キラはアンジュの元にく。

 

「大丈夫?」

 

「触らないでよ!」

 

っとアンジュは差し伸べるキラの手を強引に払い、すぐにヴィルキスの元に行く。

それにキラはアンジュの方を見て唖然とし、アスランはもう我慢出来ずにキラの腕を引っ張る。

 

「おいキラ、もうあんな奴は放っておけ」

 

「でも…」

 

「何時まで関わっても、あっちがあんな風な状態じゃあ何時まで経っても同じだ」

 

そう言ってアスランはキラを引っ張って行き、アンジュは一目見ただけですぐさまヴィルキスの中を調べるのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてアルゼナルで、ドラゴンを撃退した第一中隊は戦闘の最中にヴィルキスが消息不明となり、執務室上官たちに話して問い合っていた。

その中でアルゼナルの司令官である『ジル』、医者の『マギー』、最年長の『ジャスミン』、そして隊長のサリアとメカニックのメイが居た。

 

「ヴィルキス落ちたようだね? やっと乗りこなす者が現れたと思ったのにね…」

 

「機体の調子は良かったのにどうして…!」

 

メイは拳をぶつけながらあの時の事を悔やむ。もっとアンジュに見ていておけば、あんな事には鳴らなかった筈だと。

 

「考えるのは後よ、今は機体の回収が最優先よ」

 

「分かってる!すぐに回収班を編成させる!」

 

「アンジュもだ」

 

っとサリアとメイはジルが言った言葉に振り向く。

 

「アンジュも回収しろ、最悪の場合…、死体でも構わん」

 

ジルの言葉を聞いたサリアは納得いかない様子。うしてそこまでアンジュにこだわるのか、その理由を聞いても決してジルは答えてはくれなかった。

 

 

サリアとメイはヴィルキスを回収するヘリに乗り込んだ際にある者達がやって来た。

 

「メイち~~~~ん!」

 

っとサリアとメイは振り向くと、ヴィヴィアンとエルシャ、そしてナオミとココとミランダの五人がやって来たのだ。

 

「回収に行くんでしょ?アタシ達も手伝う!」

 

「皆、さっき戻ったばかりじゃない?」

 

メイは皆に休めと言おうとするが、それをヴィヴィアンが言う。

 

「早く見つけないと死んじゃうから!」

 

「「??」」

 

サリアとメイはヴィヴィアンの言っている言葉の意味が分からず、ヴィヴィアンは元気よく答える。

 

「アンジュ生きてる!分かるもん!」

 

「早く見つけてあげないとね、きっとお腹空かしてるわ」

 

エルシャはサンドウィッチを入れているバスケットを持ってて、すでに準備万端だった。

 

「それにアンジュさんが居ないと、何だか落ち着かなくて…」

 

「それ、実は私も同じなんだよね~…」

 

ココとミランダはアンジュに安否を感じてヴィヴィアン達と同行していた。

サリアは呆れながらもナオミの方を見る。

 

「ナオミ…」

 

「ごめんなさいサリア、私もアンジュが心配だから…」

 

「そんじゃレッツゴー!」

 

ヴィヴィアンを先頭に乗り込み、エルシャ達も続き。

サリアとメイはヴィヴィアン達の行動に少々戸惑いながらもアンジュとヴィルキスの捜索へと向かった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてキラとアスランはアンジュをほったらかしにして、フリーダムとジャスティスの調整を行っていた。

 

「良いのかな…彼女を放っておいて」

 

「アイツが関わるなって言ったんだ。ほっとけばいい」

 

そうアスランが言いうも、キラはどうしても放っておけない様子だった。

 

一方アンジュはヴィルキスに非常食がないか調べていたが一向に見つからなかった。

 

「どうして非常食がないの?!」

 

っとアンジュは前にサリアやジャスミンの言葉を思い出す。

 

『私達ノーマの棺桶よ』

 

『パラメイルはノーマの棺桶』

 

そう思い出しながらヴィルキスを見る。

 

「ノーマの棺桶か…」

 

アンジュは目を細めていると、海水が増している事に気付く。

どうやら満潮が来たらしく、アンジュは急いでその場を離れる。

 

そしてキラとアスランの方にも雨が降り出す雲行きを見て、キラは手を止める。

 

「雨が降って来るね…」

 

「ああ、取り合えず準備が出来た事だし、そろそろ『ごめんアスラン』」

 

っとキラは何処かに向かって行き、それにアスランは振り向く。

 

「キラ!」

 

 

そして空が薄暗くなり、嵐の雨が降って来た。

雷鳴がとどろく中でアンジュは雨宿り出来る所を探していた、すると大木の穴を見つけて雨宿りする。しかしそこにある物がゆっくりと忍び寄っていた。

 

飢えと雨の寒さで体が震える中で、アンジュはある痛みを感じる。

 

「痛っ!」

 

アンジュは下を見ると、どうやら蛇が噛みついていて、急いで振り払い、その場から走り出す。

彼女はどのくらい歩いたのか分からないが、だんだんと体力が低下してきた。

そして先ほどの蛇に毒があったのか、徐々に身体がだるくなり。おまけに雨による体温低下にアンジュは倒れてしまう。

 

「…だれか」

 

助けを呼ぼうにも、彼女を助けにくる仲間はいない。

 

「…誰も、来る訳…ない」

 

助けが来ない事に涙を流すアンジュは、自分は皆の嫌われ者…自分を助けに来るはずは決してない。

起き上がろうとするもぼんやりとしていて上手く立ち上がれない。

 

そこへ丁度キラがアンジュを探して来て、アスランもその後を追いかけていた。

 

「おいキラ!」

 

「居た!」

 

キラは見た先にアスランは振り向くと、アンジュが倒れているのを見て、キラは駆け寄り、アスランもすぐに駆け寄る。

 

「君!大丈夫!?」

 

「おい!」

 

キラとアスランがアンジュに問いかけるも、既でに気を失っていて意識が無かった。

 

二人はすぐに容体を調べる、太腿に蛇にかまれた所を見つけ、蛇にかまれたことを知る。

 

「毒蛇に噛まれてる…」

 

「ここじゃあ処置も出来ない、すぐに洞窟に行くぞ! …本来ならこいつを放っておいても当然なのに」

 

アスランはそう言いながらアンジュを背よい、キラと共に洞窟に向かうのであった。

 

そして洞窟に到着したキラ達は医療箱を取り出して、アンジュに血清を注射して毒を浄化させる。

キラはアンジュの身体中に付いている泥を布で拭きとり、アスランはため息を付く。

 

「はぁ…、全く…世話のかかる奴だ」

 

「本当だね。でもこんな強引さを見ると…カガリに似てるね?彼女」

 

「えっ? ……そうかも知れないな」

 

アスランはキラの一言を聞いて驚く表情をするも、その言葉に一理ある様な顔をしながらアンジュを見るのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてアンジュとヴィルキスを捜索中のサリア達はヘリで上空を飛び回って探していた。

 

その中でヴィヴィアンは鼻を使い“匂い”をかぎながらアンジュを探していた。

 

「そっちはどう?」

 

「駄目…見つからない」

 

サリアがエルシャに問う掛けるも、エルシャも見つからない事を言い、サリアはそれに黙り込む。

っとメイがある事をサリアに言い出す。

 

「サリア、そろそろ燃料が無くなって来たよ」

 

「そう、分かったわ、それじゃ一度戻りましょう」

 

そう言ってサリアは一度燃料補給の為ぶアルゼナルに戻るのだった。

 

 

夜となり、アンジュが目を覚ます。気が付くと、最初に目覚めた洞窟だ。

アンジュが身体を起こそうとした時、キラが言う。

 

「まだゆっくりしていなきゃ駄目だよ」

 

「っ!?」

 

アンジュはキラとアスランが居た事に驚き、そしてライダースーツの上にある上着を着せられているのを見てアンジュは二人を見る。

 

「これって…」

 

「ここに住んでいた人の物を借りただけだ、勝手に使ってしまったがな」

 

「勝手にって…あなた達ここの人じゃないの?」

 

「僕達も昨日此処に来たばかりなんだ」

 

アンジュはキラとアスランの言葉を聞き、思わず唖然とする。

そしてアスランはアンジュにコーヒーを渡す。

 

「ほら、これを飲んで少し休んでろ。今食事を作っている所だ」

 

「…いらないわよ」

 

ぐぅ~~~

 

っとそう言うってもアンジュのお腹が鳴り、それにアンジュは思わず顔を赤くして恥ずかしがる。

それにキラとアスランは思わず笑い出す。

 

「はははは♪」

 

「何だ、やっぱり空いていたんじゃないか」

 

「……」

 

ますます顔を赤くするアンジュに、キラは煮込んでいたスープを器に盛り付ける。

そしてアンジュの元に行き渡す。

 

「はい、熱いから気を付けて」

 

「…」

 

アンジュは恥ずかしそうにしながらそれを受け取り、それを食べる。

 

「少しは安心した?」

 

「…ちょっとだけ」

 

そう言ってスープを食べるアンジュ。

キラとアスランはアンジュの様子をそのまま見届け、そして自分達もスープを食べるのであった。

 

その時、ヴィルキスにある海に“ある奴”が忍び寄って来るのをキラ達はまだ知らなかった。

 




活動報告にアンケートを出しています。

アンジュの人に付いてはそこで。


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第3話 互いの世界の話

アスランのヒロインはアンジュに決定します。

まさにアンジュはカガリと被ります。


キラ達が孤島で居る間、アルゼナルではサリア達が乗ったヘリが帰還して燃料の補給をしていた。

 

「ヘリの補給完了まで30分です」

 

「遅い!15分でやれ!」

 

メイの言葉に皆はすぐに行動を開始して15分以内で給油を終わらせようとする。

 

その様子を遠くから休憩しているエルシャが居て。そこにヒルダがやって来た。

 

「晴が出る事で」

 

「あら?ヒルダちゃん」

 

「わっかんないね~、何であんな女を助けようとしてんのか、エルシャお得意のお節介な奴?」

 

その事にエルシャは一度目を閉じて、そしてヒルダの方を見てからある事を言う。

 

「…ヒルダちゃんたちがアンジュちゃんを許せないのは分かるわ。“機体を落としたくなる”程にね…」

 

「フッ」

 

ヒルダはその事に笑った、と言うよりもエルシャは薄々感じていた。アンジュの墜落は事故ではなく完璧な細工によく墜落の原因だと言う事に、しかしエルシャはそれをサリア達には言わなかった。

それはアンジュ同様、ヒルダ達も仲間だからこそ言わなかったのだ…。

 

エルシャはそう感じつつヒルダに思っている事を言う。

 

「でも誰かが受け入れてあげないと、彼女はずっと独りぼっち。そんなの寂しいじゃない、同じノーマ同士なのに」

 

そう笑顔で話すエルシャの言葉に、どうも納得ができないヒルダ。

 

「それにね、アンジュちゃんと似てるのよ。昔のヒルダちゃんに、だからお姉さん放っておけないの」

 

エルシャは笑顔でヒルダに言い、それにヒルダは笑いながら言う。

 

「あはは!似てる?あのクソ女と? 殺しちゃうよ~、あんたも…」

 

そうエルシャに脅して言い聞かせて、その場を去って行くヒルダ。

 

「補給~補給っと♪ってあれヒルダ?」

 

入れ違いにサリア達は去って行くヒルダの方を向き、ヴィヴィアンは振り向いて頭を傾げ、サリアはエルシャに問う。

 

「何かあったの?」

 

「ううん。何でもないわサリアちゃん」

 

そうエルシャは笑顔でサリアに言い、サリアは頭を傾げながら考えるのであった。

しかしその中でナオミは薄々ながらもエルシャの考えに気付きいていた。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

孤島で一晩が経ち、キラ達は朝食を取っていた。

アンジュは二人が作ったサンドイッチとコーヒーを貰っていた。

 

「よく食料があったわね?」

 

「まあ…確かにね。此処にあったのが奇跡的だったけど…」

 

キラはそう言いつつ、自分のコーヒーを入れていた。

するとアスランがある物を見つけた。

 

「キラ」

 

それにキラはアスランの方を見て、ある物を見た。

 

そしてキラとアスラン、アンジュはヴィルキスの前まで来てキラとアスランはある道具を置いた。

それは工具の物だった。

 

「アスラン、出来るの?」

 

「ああ、見た所壊れかけはあのファン部だけだから、それを修理して通信機さえ直ればこの世界の情報を手に入れる事が出来るだろう」

 

「直せるの?」

 

アンジュが二人にヴィルキスの修理の事を聞き、それに二人は言う。

 

「うん、見た限り案外難しい所じゃないし」

 

「複雑な構造じゃないから修理出来ない程じゃないしな、しかし海水の近くじゃあ何時電気系統にショートしてもおかしくないな。キラ、フリーダムを持って来てこの機体を海面から浜辺に移してくれ」

 

「分かった」

 

そう言ってキラはその場から離れて行き、アスランは工具を取って修理に必要な物を見る。

アンジュはアスランが先ほど言った言葉に妙に引っかかっていた。

 

「ねえ、さっきあなたが言ったフリーダムって?」

 

「ああ、それは…おっと、言うより直接見た方がいいな」

 

アスランが後ろを見て言い、アンジュが見ると、後ろからキラのストライクフリーダムが歩み寄って来て、それにアンジュは驚きを隠せない。

 

「嘘!?何あれ!!?」

 

「MSだ、見て分からないか?」

 

「分からないわよ!!」

 

アンジュがアスランにそう言いつつ、キラがヴィルキスを海面から浜辺まで移動させて、フリーダムから降りてくる。

 

「アスラン、移動し終えたよ」

 

「ああ、それじゃあ始めよう」

 

そう言ってキラとアスランはレンチやスパナを使ってヴィルキスの故障部を直し始め、その様子をアンジュは先ほどの戸惑いを忘れてしまいながら見ていた。

キラはドライバーを使ってネジを外して見ると、あるレンチを使って外す部分があって、それを見たキラはアンジュの方を見て言う。

 

「ねえ、そこのトルクスレンチを取ってくれる?」

 

「これ?」

 

アンジュがトルクスレンチを取って、キラに渡して、キラはそれを受け取り作業を続けるとアンジュが二人にある事を問いかける。

 

「『マナ』で動かせばいいじゃない」

 

「マナ?」

 

「何だそれは?」

 

「えっ?マナを知らないの? 人間がよく使う魔法みたいな技術よ、手を使わずにマナを使って物を浮かせたり、車を動かしたりするの、大半の人間はこれを使うのよ?」

 

アンジュはマナを知らないキラとアスランにマナの事を話す。

 

マナ。人類が進化の果てに得た幸なる技術。意志の力で物理現象に干渉し、手を触れずに物を動かしたり、光や熱を発生させられる他、統合システムとアクセスすることによって大多数の人間と情報を共有することが可能となった。

その結果、人々は互いに繋がることによって相互理解を深め合い、差別や戦争などの諸問題を克服。貧困や格差の存在しない、平和で穏やかな理想郷を築き上げることが出来た。

 

「マナ…、そんながあったなんて…」

 

「ええ、でも…そのマナを使えない者達が居るの」

 

アンジュはマナの使えない人類の事を話し始める。

 

ノーマ。産まれながらにしてマナが使えない突然変異体。マナを否定する『退化した人間』と見なされ、社会システムを破壊しかねない危険な存在として人々から怖れ、憎まれている。何故か女性体しか発生しないが、その理由は一切解明されていない。

マナを受け付けないため、拘束できるのは幼少時のみ。そのため日々検疫官がその存在を取り締まっており、発見後は速やかに社会から隔離され、アルゼナルへと送られる。

 

「これがマナとノーマの話しよ、そのノーマはこの私…」

 

アンジュからそう聞かされたキラとアスランは思わずあの時の事を思い出す。

 

 

『コーディネーターとナチュラル』

 

 

その内容がまるでマナとノーマにどことなく似ていると感じていたのだ。

 

「……まるでコーディネイターがナチュラルを皆殺しに、ナチュラルがコーディネイターを皆殺しにしているのと同じだね」

 

「ああ、差別での戦争…」

 

「え?? コーディネイターとナチュラル?」

 

「うん、どうも似ているんだ、君が言うマナとノーマの話しが僕達のコーディネイターとナチュラルの内容に」

 

「ついでだから教えて置くか」

 

そうキラとアスランがアンジュにコーディネイターとナチュラルの話をする。

 

コーディネイター、遺伝子調整によってあらかじめ強靱な肉体と優秀な頭脳を持った新人類。コーディネイターはナチュラルよりも先天的に堅牢な肉体と優れた運動能力、優秀な頭脳を持っており、過酷な環境や重篤疾病に対する抵抗力も高い。

しかしそれは平均的水準が高いだけで、根本的にはナチュラルと同じ人間である。しかしコーディネイターの存在を許さない者も居た。

 

「それは何?」

 

「うん…『ブルーコスモス』だよ、反コーディネイターの信奉者って所かな」

 

キラはアンジュにブルーコスモスの事を話す。

 

ブルーコスモスは造りだされたコーディネイターを徹底的に嫌い、プラント本国を核で攻撃したりして、何度も戦争を起こした。

ナチュラルの地球軍、コーディネイターのザフト。その二つの勢力が何度もぶつかって争った。

 

その内容を聞いてアンジュはキラとアスランの方を見る。

 

「何よそれ…訳分からない。っと言うよりあなた達…一体何者?どうしてそんなの知ってるのよ?」

 

アンジュはその事を聞き、キラとアスランはアンジュの方を見ながら敬礼をする。

 

「ザフト軍ヤマト隊隊長、キラ・ヤマト!」

 

「オーブ連合首長国、オーブ軍准将、アスラン・ザラ!」

 

「ざ、ザフト軍に?オーブ軍??」

 

アンジュはキラとアスランの放つ言葉に戸惑いながら混乱していて、キラとアスランは行った後に再び作業を開始しようにも、アンジュの戸惑いと質問攻めにどうにも集中出来なかった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして次の日、キラとアスランは再びヴィルキスの修理をしようとした時に、アンジュが二人に言う。

 

「もういいわよ、その機体」

 

「えっ?」

 

「通信機を直しても…私を歓迎してくれる人は誰も居ないもん」

 

「どうしてそう思う?」

 

アスランがそうアンジュに聞き、アンジュは自分の事を考えながら間を空けて話す。

 

アンジュはアルゼナルに来たとき、現実を受け入れられずにいて、ずっと現実逃避ばかりしていた。

それが理由で仲間の一人を死なせ、更に仲間の危機に陥れてしまった、それでもアンジュは現実を受け入れる事が出来ずに逃げようとするも、アルゼナルの司令官であるジルにヴィルキスを与えられ、それで敵を倒してようやく事実を受け入れた。

 

しかし一人で戦う事ばかり考え、仲間の事を考えずにしていて、アンジュはその仕返しを受けて仕舞い、今この島に居ると話す。

 

それを聞いたキラとアスランは思わず顔を見合い、アスランはため息を付いて言う。

 

「それはお前がそう思っているだけだ」

 

「えっ?」

 

「実際お前の話しがそうでも、実際お前を心配してくれる奴も居る筈だ」

 

その事にアンジュはフッと考える、いつも気にかけてくれるヴィヴィアン、そして心配してくれるナオミ、危険な目に合わせてなお接してくれるココとミランダ。

アンジュはそれを考えると、確かにそうかも知らない…しかしそれは人見知りのだけかも知らないとアンジュはそう思うのだった。

 

「本当かしら…」

 

「当たり前だ、嫌いなら誰も話しかけたり、接したりしないさ」

 

そう言い残しながらアスランはヴィルキスの修理に取り掛かり、キラは「素直じゃないね」と思いながら作業を進め。

アンジュはアスランの方を見ながら思う、何かと言いながら、実際は気にかけてくれるっとそう思うのだった。

 



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第4話 世界の敵

これで今年最後の投稿です。




キラ達がアンジュと共に無人島で過ごして初めて数日間、キラが内部のソフト面を修理して、アスランがハード面を修理しながら通信機を何とか復旧させていた。

 

そしてキラ達が魚を取ろうした時に、アスランが洞窟内である物を見つけた。それは釣り竿だった。

 

「キラ、これで魚は獲れるぞ」

 

「本当? ならやろう」

 

そう言ってキラ達は釣り竿で魚を釣り、アンジュも一緒に来た。

アンジュが一度キラ達の方を見て、それにキラとアスランはそれに笑みを浮かべる。すると竿に魚がかかった事をアンジュが知らせ、キラ達はすぐに吊り上げて大物を釣り上げる。

 

大きな魚をアンジュは驚きながらも受け止め、キラ達はその魚で今晩の夕食にした。

 

そして魚を初めて食べたアンジュはその上手さに頬がとろけそうな感じになったと言った。

 

次の日にアンジュが初めて朝食を作り、その様子をキラとアスランは見ていた。

 

「大丈夫かな…」

 

「分からん…だが嫌な予感がする」

 

そうアスランが言っていると突如アンジュが煮込んでた鍋が急激に異常を起こし、それを見たアスランがはすぐさまアンジュを鍋から引き離して、鍋が爆発した。

キラが思わず顔を横にして爆風を耐え、すぐに二人の元に行く。

 

「大丈夫!?」

 

キラは二人の様子を見たら、その際にアスランとアンジュは鍋が爆発した際に中身の具が二人にかかり、それにキラは掛かった様子を見て思わず笑い、アスランは呆れた様子で言う。

 

「お前、今後食事を作るのは禁止だ」

 

っとアンジュはその事に思わず頬を膨らませる。

 

 

 

また次の日、雨が降っている中でキラとアスランは修理を行い、それをアンジュは大きな葉っぱでキラとアスランに傘代わりをして修理をするのを手伝っていた。

 

「ねえ、私に出来る事はある?」

 

「うん、出来ればそのまま葉っぱの傘をさしたままにして欲しいな」

 

そうキラはアンジュに言い、アンジュは頷いたままそのまま傘を差し続けた。

 

 

また洞窟で細かい作業をしている最中でキラとアスランは疲れたのか途中で居眠りをし、それにアンジュは二人に優しくシーツを掛けて、優しい目で見守っていた。

 

その時に彼女の心に何時しか凍りついていた心が少しずつ溶けていく様な感じがしていた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

そして夜、ヴィルキスの修理がかなり進み、キラ達は川岸で座り込み、夜空を見上げていた。

 

「うわぁ…、こんなに星が見えるなんて」

 

「これまで見なかった?」

 

「ううん、空なんて、ずっと見てなかったの…」

 

そう言うアンジュは夜空の星を見て、流れ星が流れる。

 

「綺麗…」

 

「…そうか」

 

アスランはアンジュの様子にそう言って再び空を見る、っと何かを感じ取ったキラとアスランはアンジュをすぐに押し倒す。

アンジュは突然の事に驚いて戸惑う。

 

「えっ?!あの…」

 

「シッ!」

 

「静かにしろ…」

 

そう言って皆は静かにしているとすると空にある物が見える。

 

「っ!? アスラン!!」

 

「なっ!」

 

キラとアスランの目にある光景が映る。それは身体中に氷漬けにされてしまっているドラゴンが輸送機で運ばれる様子を二人の目に映ったのだ。

 

「何だあれは…!?」

 

「あれって…凍結されたドラゴン?」

 

「ドラゴン?」

 

キラはアンジュが言った言葉に耳を傾ける。

 

「連れて行くの? ねえ?何処に?!」

 

「俺達が知りたい、それは」

 

っとそう言った途端、スクーナー級ドラゴン一体が森から現れた。

 

「あれは…!」

 

アンジュはスクーナー級に見覚えがあった、それはアンジュと戦っていたドラゴンの一体だった。

 

スクーナー級に襲われ、輸送機は反撃するもむなしく全て撃墜されてしまい。ガレオン級を輸送していた機体は全滅し、島の奥へと墜落した。

 

「不味い!キラ!!」

 

「うん!逃げるよ!」

 

そう言ってキラはアンジュの手を握り、その場を逃げようとしたが、目の前にスクーナー級が落ちて来た。

スクーナー級はボロボロだが三人を睨み襲い掛かってくる。キラとアスランとアンジュはハンドガンを取り出して攻撃をするも全く効果はない。

 

「くっ!駄目か!」

 

「はっ!そうだわ!パラメイルがある!!」

 

「でもあの機体はまだ修理が終わっていない!!」

 

「直して!早く!!」

 

キラとアスランはその事を聞いて黙り込むが、キラはアンジュの願いを聞く。

 

「分かったよ」

 

「キラ!?」

 

「今はそうするしかないよアスラン」

 

そう言ってキラ達はヴィルキスがある海岸へと向かう。

ヴィルキスに着いた三人、キラはすぐに修理に取り掛かり、アスランは近くに置いてあったライフルを取り、アンジュはナイフでスクーナー級と立ち向かう。

 

「なっ!無茶はよせ!!!」

 

「はあああああああああ!!!!」

 

アスランが言うのもしばし、ナイフではスクーナー級にはあまりにも分が悪く、翼で弾かれてしまいナイフを落としてしまう。

 

「チッ!」

 

その様子にアスランはすぐに攻撃を仕掛け、スクーナー級に浴びせる。

 

「これを!!」

 

キラはヴィルキスにあったアサルトライフルをアンジュに投げ渡し、それをアンジュはキャッチする。

 

「お願い急いで!」

 

キラは急いで修理を進める、すぐに直さなければアスランとアンジュは喰われてしまう、焦ってしまうが落ち着きながら修理を進めるキラ。

 

そしてアスランとアンジュはアサルトライフルで攻撃するも、スクーナー級の尾で弾きながらムチの様に振る。

その際アスランはかわす事が出来たが、アンジュは吹き飛ばされてしまった。

 

「っ!!逃げろ!!」

 

アスランが叫び、スクーナー級が喰いにかかろうと時にアンジュの指輪が光を放ち、ヴィルキスが起動して、持っていたライフルがドラゴンへと発砲する。その時の異変にキラとアスランは気付く。

 

「え!?」

 

「勝手に動いた!?」

 

不意をつかれたスクーナー級が怯み、アンジュがこの隙に近くに落ちていたナイフを拾い、ドラゴンに立ち向かって行く。

 

「はぁぁあああああ!!!」

 

アンジュはドラゴンにナイフを刺して倒し、そのまま刺し続けた。

 

「この!この!この!この!!この!!このおおおおおお!!!!」

 

っとその様子にアスランが止めた。

 

「もう死んでいる、やめろ」

 

っとアンジュはそれにようやく止まり、その場から少し離れて震え出し、ナイフを捨てて自分の身体をゆする。

それにキラとアスランは何とも言えない様子になっていた。

 

「……彼女、怖かったんだね。あの様子だと」

 

「ああ…、しかし妙な機体だこいつは」

 

アスランはヴィルキスを見て、乗ってもいないのに急に動き出した事に疑問を感じていた。

っとその時。

 

 

 

「ギャアアアアアオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

 

キラ達は突然の叫び声に思わず森の方を見ると、森の方からガレオン級ドラゴンが起き上がって来て飛び立つ。

 

どうやら凍りついていた氷が解けて、動ける様になったドラゴンはそのままキラ達の方を見て向かって行く。

それにアンジュがヴィルキスに向かって乗るが、燃料がない事に気付く。

 

「っ!燃料が!」

 

「ここに居て!!」

 

っとキラとアスランはすぐにストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの元に行き、乗り込んで空を飛ぶ。

 

「キラ!」

 

「うん!」

 

二人はビームライフルを構え、ガレオン級はストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに向かって行った。

キラとアスランはスラスターを使い、高機動の動きで動き回って、ガレオン級にビームライフルを放つ。

 

それにガレオン級は受けてしまうも、すぐに魔法陣で光線を放ち、それを二人は再び回避をする。

 

「何だこれは!?」

 

「でも動きはそんなに早くないみたい。一気に片付けよう!アスラン!!」

 

「ああ!!」

 

キラとアスランはビームライフルをサイドスカートとリアスカートにマウントし、『MA-M02Gシュペールラケルタ ビームサーベル』を抜いて、キラは二刀流で、アスランは連結させて『アンビデクストラス・ハルバード』にする。

まず最初にキラが出て、ガレオン級はキラに向かって光線を放つ。

 

しかしキラは光線と光線の隙間を縫うように回避し、二刀流で高速の動きをしながらガレオン級を切りつけ、そしてその後にアスランが華麗なる剣さばきで逆手から上手に持ち替える様に右に振るい。

ガレオン級の身体を目にも止まらぬ動きで切り裂いていく。

 

それにガレオン級は雄叫びを上げながら海に落ちて行き、海面に激突して海が赤い血に染まる。

 

キラとアスランはその様子をジッと見つめて、アンジュはその光景をただ見つめていた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

朝日が昇り、一筋の日差しが照らす。スクーナー級の死体は海へと襲われて、そのまま流されて行く。

三人は光景を静かに見届けていた。

 

「この世界って…あんな物が居たんだね…」

 

「俺達の知らない敵…か」

 

キラとアスランはその様子をジッと見つめ、アンジュは二人の方を見る。

 

「ねえ、あなた達これからどうする?」

 

っと二人はアンジュに今後の事を問いかけられ、二人がその事に考えていると。ヴィルキスからヴィヴィアンの無線が入って来る。

 

『アンジュさ~ん聞こえますか~? もう死んじゃってますか~?死んじゃってるな死んじゃってるって言って下さ~い』

 

それにキラ達は振り向き、アンジュはヴィルキスの元に行き、通信回線を開く。

 

「こちらアンジュ、生きてます」

 

『うそ!アンジュ!本当にアンジュなの!?』

 

「救助を要請します!」

 

『りょ!了解!!』

 

ヴィヴィアンはそう言って通信を切り、アンジュはキラとアスランの元に行く。

 

「ねえ、もし行く所が決まってなかったら…私と一緒にアルゼナルに来ない?」

 

「「え?」」

 

「あそこは…ノーマの住む場所だけど、あなた達ならきっと歓迎してくれると思うの。それに私…あそこに戻ってやり返さなきゃいけない事があるし」

 

アンジュの提案にキラとアスランは考えるも、他に行き先が無い事に目を合わせる。

 

「そうだね…」

 

「他に行き場もないからな。そうしよう」

 

キラとアスランがそう言った時にアンジュは優しく微笑み自分の名前を名乗る。

 

「アンジュ」

 

「えっ?」

 

「私の名前はアンジュよ、キラ、アスラン」

 

「アンジュか。良い名前だな」

 

キラとアスランはアンジュの名前を聞いて頷き、互いの名前をようやく分かった。

 

そして数分後、サリア達の輸送ヘリが到着して、サリア達はキラ達の姿を見て思わず驚いた。

 

「アンジュ!誰その人達!?」

 

「心配しないで、私を助けてくれた人達よ」

 

「(アンジュを助けた…?)そう…、アンジュを助けてくれたことに感謝するわ。私はサリア、あなた達は?」

 

サリアがキラ達の名前を聞き、キラとアスランは敬礼をして名乗った。

 

「自分はザフト軍ヤマト隊隊長、キラ・ヤマト!」

 

「同じくオーブ連合首長国、オーブ軍准将、アスラン・ザラ!」

 

「……はぁ?」

 

その事にサリアは思わず唖然とし、そしてヴィルキスを詰め込んで輸送ヘリに乗り込もうとした時にキラとアスランがストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを持ってきた。

それにはサリア達は思わず驚きを隠せず、ヴィヴィアンが大はしゃぎする。

 

「うおおおおおお~~~~~~!!かっけぇぇぇぇぇ~~~~~!!!!」

 

「(何あれ!? あんなの見た事ない!?)」

 

サリアは驚きを隠しきれずに騒然とし、そして数分後事情を聞く為にアルゼナルに同行させる事を言い、二人はそれに頷いて了解し。

キラ達はMSでアンジュ達が乗る輸送ヘリの後を追いかけるのであった。

 




最後に活動報告にある作品のアンケートがありますので、見て下さい


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第5話 説明

クロスアンジュをかなり遅らせてしまいすいません、投稿します。


キラとアスランはアンジュ達を乗せた輸送機の後を追いかけ、そのまま進んで行くと、ある島が見えて来た。

その島はある軍事施設で、あちらこちらに銃座らしきものが見えた。

 

そしてカタパルトらしきデッキが見えて、それにキラはアスランに話しかける。

 

「アスラン…あれが」

 

「ああ、アンジュが言っていたアルゼナルだな。見た目は小さい軍事基地らしいが、どうも別の施設も考えられるな…」

 

そう言いつつ、アンジュ達が乗る輸送機はカタパルトに着陸し。キラとアスランはストライクフリーダムとインフィニットジャスティスをカタパルトに着陸させる。

そしてキラとアスランはフリーダムとジャスティスを降りると、数名のセキュリティ―ガード数名がキラ達を囲み、ライフルを構える。

 

キラとアスランはそれを思わず目を細めて見渡す。

 

「武装を下ろせ!」

 

っと司令官のジルと眼鏡をかけた女性がやって来て、セキュリティーガード達に命令をして、セキュリティーガード達は銃を下ろす。

キラとアスランは向かって来るジルを見て、目の前まで来たジルはキラとアスランに話す。

 

「すまんな、いきなり無礼な事をして、私はジル、このアルゼナルの最高司令官だ」

 

ジルの挨拶にキラとアスランは敬礼をする。

 

「ザフト軍ヤマト隊隊長、キラ・ヤマト!」

 

「オーブ連合首長国、オーブ軍准将、アスラン・ザラ!」

 

それにジルは目を細め、その後ろに居た眼鏡の女性は頭を傾げながら見ていた。

 

「(ザフト…オーブ。聞いた事ない組織だな…?)うむ、どうも軍の者だな? 監察官殿、彼等は私が直接話をします」

 

「ええっ!?そんな勝手にされては困りますよ!?」

 

「大丈夫です。私にお任せを…こっちだ、付いて来い」

 

そう言ってジルはキラとアスランを連れて行き、監察官のエマは目を開けたまま唖然とするのだった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

キラとアスランはジルに連れられたまま司令室に入ると、そこにはジャスミンとマギー、メイと先ほどいたサリアの四人が居た。

 

二人は司令室の椅子に座るジルを見て、ジルは煙草に火を付けて、一服をして話す。

 

「それでお前達、サリアから無線で聞いたが…お前達がアンジュを助けたのか?」

 

「ええ、我々があの島に着いた時に機体の中で衰弱していたアンジュを見つけ、助けました」

 

「なるほど、それでお前たちは…一体何者なんだ? ザフトやらオーブやらの軍隊など我々の知る限り全く存在しないぞ?」

 

「…出来たら今から話す事を、信じて貰いたのですが」

 

っとアスランの言葉にジルは眉を動かし、それにジャスミン達は頭を傾げる。

 

そしてキラとアスランは今までの事を話す。

 

自分達が此処とは全く別の世界、C.Eの世界から来た事を話し、その世界ではコーディネイターとナチュラルが戦争している事を話す。

 

その話しを聞いたジルは黙って聞いていて、サリアとメイはあり得ない顔をしながら唖然としていて、ジャスミンとマギーは黙って聞いて流す。

ジルは煙草を吸いながら考え込む。

 

「(様子を見る限り…どうも嘘を言っている素振りはなさそうだ、それにあの機体も証拠にもなる…、丁度良い…)そうか…、聞く限りでは嘘は言っていない様だ。それともう一つ聞きたい事がある、お前たちが居たあの島…あそこにはだれかいたのか?」

 

「はい、この日記がありました」

 

キラは孤島にあった日記をジルに渡し、それを受け取ったジルはその日記を読む。

その日記の内容を見てジルは目を細める、ジルの様子をキラとアスランは見逃さなかった。

 

そして日記を見たジルは日記を閉じ、灰皿に置いている煙草を取る。

 

「成程な…、よろしい、お前たちの件は後に考える、今はアンジュを救ってくれた英雄を歓迎するとしよう。サリア、案内してやれ」

 

「イエス・マム」

 

サリアはキラとアスランを連れて司令室を出て行き、四人となったジル達は集まる。

 

「…なかなか面白い連中だね」

 

「ザフト軍やらオーブ軍とか、知らない軍隊の事を話されても聞く耳を持つこっちも大変だよ」

 

ジャスミンとマギーはそう言う事にジルは何事も気にしない風な顔をしている。

 

「それでジル、あの日記には何が掛かれているんだい?」

 

「ああ、あの日記か…」

 

ジルは掛かれていた日記の内容を話す。

 

「あの日記には…古の民の最後の日記が掛かれていた、もう古の民は完全に滅んでいるようだ」

 

その事を聞いたジャスミンとマギーは驚く。

ジルは義手を握りしめ、メイはあり得ない表情をしながら問いかける。

 

「ね!ねえ! 本当に皆は居ないの?まだ生きている仲間は居る筈だよ!!」

 

「残念だが、掛かれている内容が約1年前とかかれている、もういないと確信して良いだろう」

 

「そんな…」

 

その事を聞かれたメイは思わず頭が下がる、しかしジルは煙草を灰皿に押し付けて火を消す。

 

「だがまだ望みはあるぞ、あいつ等だ…」

 

「あの男どもかい?」

 

マギーが言った言葉にジルは頷く。

 

「ああ、あの機動兵器…あれを我々の物にすれば、我々の“リベルタス”の成功を成し遂げる事が出来る。それにはまずあいつ等をこちら側に引き入れる必要がある」

 

「それで考えはあるのかい?」

 

ジャスミンはジルにその事を問いかけ、ジルは再び煙草を取り出しながら答える。

 

「ああ、それには考えがある、それまでは決してあやつ等には気付かれるなよ、そして監察官にもな」

 

それにジャスミン達は頷き、ジルは煙草に火を付けながら再び一服するのであった。

 

果たしてジルたちの目的は何か、キラとアスランに何をするか、後に明らかになって行く。

 



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第6話 死の第一中隊

クロスアンジュを久々に更新します。

遅れてしまって申し訳ありませんでした。


ジルからの説明を終えてサリアに案内されているキラとアスラン、キラ達の様子をチラチラと見るサリアにキラは問う。

 

「どうしたの?さっきからこっちを見て」

 

「…いえ、所で聞きたい事があるのだけど…」

 

「何だ」

 

アスランがサリアの問いを聞き、サリアは思っていた事を聞く。

 

「あなた達、さっき言っていたザフト軍とオーブ軍って本当にあるの? 私から見たらどう見ても嘘の言葉しか思えないのだけれど」

 

「それはまずない。俺達は真実を話したんだ、それとも本当に嘘だと言いたいのか?」

 

「それがどうも信じられないのよね、私は…」

 

サリアのズバッと行く言葉にキラとアスランは目を合わせ、少々ため息を付く。

彼女がそう思うのも無理はない、あの場所で話しても信じる者は絶対に少ない筈。

 

そう思う中でサリアがまず最初に食堂の方にたどり着く。

 

そこには数多くの女性たちが食事をしていて、その中に一人の少女がサリアとキラ達を見て駆け寄る。

 

「おお!サリア!!ねえねえ!その人達が例の!?」

 

「ヴィヴィアン、ええそれがどうしたの?」

 

「さっきのパラメイルじゃない大きなロボに乗っていたあれ! あれって君達のだよね!」

 

「うん、そうだよ」

 

キラはヴィヴィアンの問いに答え、それにヴィヴィアンはまたしても大興奮する。

 

「うお~~!!やっぱりあれってカッケェェェ! ねえ!今度あれに乗せてくれない!」

 

「駄目だ、MSはおもちゃじゃない」

 

「おお!あれってモビルスーツって言うんだ!やっぱりパラメイルとは違うんだ!」

 

興奮しまくっているヴィヴィアンに対し、キラとアスランは思わず苦笑いをしてしまう。

こんなに大はしゃぎする女の子は滅多にいないからだ。

 

「ほらヴィヴィちゃん、もうその辺にして置きなさい。彼等も困ってるわ」

 

っとそこに長身の少女がヴィヴィアンの肩を抑え、ヴィヴィアンはようやく収まる。

 

「ほえ?エルシャは気にならないの?」

 

「気にはしているけど、そんなに気にしていたら彼等も困るじゃない」

 

「…分かってくれている子が居て助かる」

 

アスランは話の分かる少女が居てくれて、少しばかりホッとした。

エルシャはキラとアスランの方を見る。

 

「自己紹介がまだだったわね、私はエルシャ」

 

「あたしはヴィヴィアン!よろしくね! ねえ二人の名前は何て言うの?」

 

「僕はキラ・ヤマト」

 

「俺はアスラン・ザラだ」

 

「わお~!覚えやすい名前♪ よろしくねキラ、アスラン!」

 

すぐにヴィヴィアンに名前で呼ばれ、それにキラとアスランは彼女の堂々差に押されそうになる。

 

「たくっ、うるせぇな全くよ」

 

っと別の声にキラ達は向くと、赤い髪の少女がオレンジ色の髪の少女と水色の髪をした少女と共に食事をしていて、赤い髪の少女が睨むような眼で見て来る。

 

「此処は飯を食う所なんだよ、喰わねぇならどっか行きな」

 

「ヒルダ」

 

サリアはすぐに注意をするも、ヒルダは鼻で笑いを飛ばして、トレーにある食事を食べる。

その様子をキラとアスランは目を細める。

 

「あの子…」

 

「俺達を敵として見るような目だな」

 

小声で話すキラとアスランはヒルダ達の方を見ていて、それにため息を付くサリアはキラ達の方を向く。

 

「ごめんなさい、彼女達が嫌な風な物を見せて。でもこれは事実でもあるの。外から来た人間…私達ノーマを怪物や差別する存在、本当なら私もあなた達をここまで案内させないのだけど」

 

「…そう」

 

キラはその事に少し表情を暗くする。

それを見たエルシャは少々慌てながらある事を思い出す。

 

「あ…!そうだわ! キラ君とアスラン君もまだヒルダちゃん達の事を知らないわよね? そこに居るのがヒルダちゃんにロザリーちゃんにクリスちゃんよ」

 

「フッ」

 

「んだよ?」

 

「…やあ」

 

エルシャが紹介してもヒルダは明後日の方を向き、ロザリーは睨みつけ、クリスは一言だけ言って後はくすくすと笑っていた。

なんともふざけている様子にキラもアスランも呆れかえる。

 

「これ…」

 

「ああ、馬鹿にしているか。あるいは…」

 

そう思うキラとアスラン、っとそこに。

 

「あら、キラにアスランじゃない」

 

っとキラとアスランは後ろを振り向くと、アンジュが食堂にやって来て、ヴィヴィアンとエルシャがアンジュの存在に気付く。

 

「おお!アンジュ!」

 

「あらアンジュちゃん、アンジュちゃんも食事?」

 

「ええ、お腹空いたから」

 

そう言ってアンジュがヴィヴィアンとエルシャの横を通り過ぎ、キラとアスランの方を振り向く。

 

「付いて来たら、食事一緒に出してあげる」

 

「えっ?」

 

「良いのか?」

 

「当然よ、助けられたお礼…これしか出来ないけど」

 

そう言ってアンジュは照れ顔を隠す様に逸らす、それにキラとアスランは少々笑いを堪える。

 

「おやおや、痛姫様が人間様相手を誘ってるよ」

 

っとヒルダが挑発的な態度をアンジュに向けながら言い、ロザリーとクリスも同じる様に笑いながらアンジュを見る。

それにアンジュはヒルダ達の挑発を完璧無視し、呆れながら言う。

 

「あら、何時までも変わらないのね、そのバカげた言葉は」

 

「…ノーマだかね」

 

「おい!てめえ調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

 

ヒルダが言った直後にロザリーが立ち上がって、アンジュに殴りかかろうとした時。

 

「そこまでだ」

 

グシッ!

 

「いててててて!!」

 

アスランが素早い動きでロザリーの腕を後ろに回してロックし、それにロザリーは激しく痛がる。

 

「ろ!ロザリー!?」

 

クリスは思わず立ち上がり、ヒルダはそれに目を細めながらアスランを見て、食堂に居る皆は思わずくぎ付けとなる。

腕を絞められているロザリーは涙目でアスランを見る。

 

「な!なにするんだよ~!!」

 

「仲間同士で争いはやめろ、それに食堂で暴れるな」

 

そう言ってアスランは手を離し、ロザリーは腕を抑えながら睨みつける。

 

「うるせえ!!お前はあの女の本性を分かってねぇんだ!あのゲスな“皇女殿下”様にな!!」

 

「黙りなロザリー、行くよ」

 

そう言ってヒルダは自分のトレーを持って去って行き、それに慌てるロザリーとクリスは自分のトレーを持って、アスランを睨みながら去って行く。

そんな中でキラとアスランはロザリーが言った言葉に耳を疑う。

 

「皇女…?」

 

「誰が?」

 

「…アンジュの事よ」

 

サリアがその事を言い、それにキラとアスランは思わず振り向いて再びアンジュの方を見る。

アンジュは関係なさそうな表情をし、その様子をキラとアスランは見届けるしかなかった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてキラとアスランはアンジュが出してくれたお金で食事を貰えたのだが、食堂が気まずい空気になっていた為、別の場所で食事を取っていた。

当然ながらアンジュも一緒だった。

 

「キラ、アスラン、これがノーマである私達の日常を…」

 

「…まだそんなに分かった訳じゃないけど、差別は本当だって事だけは分かったかな」

 

「しかしアンジュ、お前が元皇女だって事は…本当か?」

 

アスランの問いにアンジュは少しばかり黙り込んで頷く。

 

「ええ、本当よ、私が16の誕生祭の時に兄に私がノーマである事を暴露されてね、お蔭で私はこのアルゼナルに飛ばされて…何もかもね」

 

「そっか…、でもお姫様だって事なら食事を作れなかったのも頷けるね」

 

「ああ、鍋を爆発させてしまうからな」

 

「う!うるさい!!!」

 

アンジュは真っ赤な顔になりながら怒鳴り、それにキラとアスランは笑う。

興奮状態になって居るアンジュは笑われながらも次第に笑って行き、そして三人で笑うのだった。

 

そして笑った三人は夜空の月を見て、アンジュは微笑みながら言う。

 

「…でもまあ、確かに私は料理には向いてないかもしれない」

 

「それを決めつけるのはちょっと早い気がすると思うよ、最初は料理が下手な人は練習して行けば上達していくし」

 

「ああ、アンジュも少しずつ上達して行けば何の問題は無い」

 

キラとアスランの言葉にアンジュは微笑み、三人は再び月を見るのであった。

 



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第7話 筆頭侍女

キラとアスランがノーマが居る軍事施設、アルゼナルに来てから約3日。

アンジュ達はシンギュラーと呼ばれるゲートからドラゴンが出現すると言う情報を得て、第一中隊は撃退する為出撃した。

 

その様子をキラとアスランは見届けていた。

 

「ドラゴン退治か…」

 

「ここに居る者達は、ドラゴンを倒してまで金を稼ごうとする…しかしそんな事で一体何の価値があると言うんだ」

 

アスランはアンジュ達の行動に考える様子をキラが見ていた。

 

「価値はあるよ」

 

っとメイが後ろから話しかけて来て、それにキラとアスランは振り向く。

 

「ドラゴンを倒して、その成果でここでの暮らしができるんだよ。それにあたし達もここでパラメイルの整備をして行けばいいし」

 

「それだけで…」

 

「うん」

 

メイの言葉にキラとアスランは少しばかり考え、メイはすぐに整備へと戻って行く。

 

そしてドラゴン狩りに出ている間に外部から補給物資が送られてきていた。

 

「食料良し、薬品類良し…」

 

エマが物資を確認している中、ジャスミンも同じようにコンテナを確認していた。

 

「下着用コンテナはウチの、下に回しておくれ」

 

そう言ってジャスミンは行ってる中である者がそこを通る。

 

そしてドラゴンを退治して、アンジュ達がアルゼナルへ戻って来る。

ヴィルキス達はハンガーへ固定され、メイによる掛け声で作業が開始される。

 

「さっさと作業始めるよ~!終わらせないと晩御飯抜きだよ!」

 

「「「イエス・マム!!」」」

 

それに作業員たちはすぐさま行動を開始する。

しかしその時、ある一人の少女が紛れ込んでいた事にメイ達はまだ気づいていない。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

アンジュ達がドラゴン狩りを終えて、更衣室に向かっている中でヒルダ達といるロザリーは嫌気がにじみ出ていた。

 

「クソ!またアイツだけ荒稼ぎしやがって!」

 

「あの男どものせいだよ…、生きて帰らせてくるから」

 

「どっちがゴキブリなんだか…」

 

アンジュの荒稼ぎに不満を持っている三人、ロザリーは胸からネジを取り出しアンジュの頭部目がけて投げ突けようとする。

 

「アイツの頭にネジ穴開けてやる!」

 

「だ!駄目だよ…司令に怒られる」

 

叱りを怖がるクリスの言葉にロザリーはちょっとやばいと表情をするが、それをヒルダが言う。

 

「バレなきゃいいじゃない」

 

「…それもそうだね」

 

ヒルダがそう言った事にクリスも悪乗りする。

 

「そういうこと、これでも喰らいな害虫女!」

 

ロザリーが投げようとした時、ロザリーの腕を誰かが掴む。

それをロザリーは振り向くと、アスランがネジを投げるのを止めていて、それにロザリーは驚く。

 

「うわあああ!!お前!?」

 

「感心しないぞ、そんな事をするなんてな」

 

「お!お前には関係ないだろう!!?」

 

アスランが掴んでいる腕を強引に離したロザリーがネジを投げようとした瞬間、基地中に警報が鳴り響いてロザリーは慌てる。

 

「ひえっ!?違います違います!私何もしてませんよ!?…ん?」

 

『総員に告ぐ!アルゼナル内に侵入者有!対象は上部甲板を逃走中!直ちに付近の者は侵入者確保に協力せよ!』

 

「侵入者!?」

 

それに驚くエルシャ、アスランもその警報を聞いて振り向き、キラがその場にやって来る。

 

「アスラン!」

 

「キラ! どう言う事だ!?」

 

「分からない。でも行ってみよう!」

 

キラの言葉にアスランも頷き、その場から走り出して行く。

 

「あっ!ちょっと私も!」

 

アンジュもキラとアスランの後を追いかけて行き、サリア達もその後を追いかけて行った。

 

そして上部甲板で一人の少女が警備員から逃げていた。

 

「いたぞ!!」

 

「この!!」

 

一人の警備員が警棒を振り下ろすも、その少女は『マナ』を使って弾く。

上部甲板に到着したキラ達、特にアンジュがその光を見て驚く。

 

「マナの光!?」

 

追い込まれた少女はその場にしゃがみ込んで叫ぶ。

 

「やめて下さい!!わたくしは!…わたくしはただ! アンジュリーゼ様にお会いしに来ただけなのです!!」

 

その少女の顔が明かりで照らされた事に、アンジュはそれを見て思わず…。

 

「モモカ!!?」

 

「え?」

 

その少女――モモカはアンジュの方を見てしばらく唖然とする。

 

「もしかして…アンジュリーゼ様?」

 

すっかり変わり果てたアンジュの姿にモモカは目に涙を溢れさせ、そのままアンジュの元に駆け寄る。

 

「アンジュリーゼ様ー!!!」

 

モモカはアンジュに抱き付いて泣きつき、それに戸惑いを隠せないアンジュ。

 

「ちょ、ちょっと…」

 

「アンジュ、知り合いなの?」

 

「……ええ、後で話すわ」

 

アンジュはその事を言っただけで、あとは何も喋らず。それにキラとアスラン互いの顔を見合うのだった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

モモカがやって来たことに司令部では…。

 

「モモカ・荻野目、元皇女アンジュリーゼの筆頭侍女です、はい…元皇女に世話を…えっ!? …はい…では」

 

エマは受話器で上司と話し合ってる中でとんでもない命令に渋々了解して受話器を置く。

隣で聞いていたジルは煙草を吸いながら問う。

 

「委員会はなんと? ふぅ~…予想通り…ですか?」

 

「…あの娘を国に戻せば、ドラゴンの存在にそれと戦うノーマ。最高機密が世界に漏れる可能性があると…何とかならないのですか? 彼女は“ただ”ここに来ただけなのに」

 

「ただ来ただけ…ね、っまノーマである私には人の作ったルールを変えられる力などありませんから、せめて一緒にいさせてあげようじゃないですか、今だけは…」

 

ジルはそう言って煙草を灰皿に消し、エマはそれにため息を付きながら背もたれにもたれるのだった。

 

そしてキラとアスランはアンジュの元にやって来たモモカの事をに付いて話し合っていた。

 

「モモカ・荻野目…、アンジュから聞いた話では彼女はアンジュの元筆頭侍女だって」

 

「筆頭侍女? どうしてその侍女が此処に?」

 

「分からない。でも理由は一つ、アンジュに会いたくて此処に来たみたいだよ」

 

「それだけか?俺にはどうも他にあるみたいだが…」

 

アスランはその事に少しばかり考え、キラもその事に考えるのであった。

 



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第8話 モモカの思い

今放送中のマクロスΔを見ているんですが。なんでマクロスシリーズは三角関係が多いんでしょうね?


アンジュ達が居るアルゼナルにかつてアンジュが皇女として彼女に仕えていた筆頭侍女、モモカがやって来た。

モモカはアンジュがアルゼナルに居ると情報が入り、その為密航してまでアルゼナルにやって来たと言う。

 

しかし本人のアンジュはと言うと…。

 

 

ガシャ!!!

 

 

「やめて!私に関わるな!!!」

 

アンジュはモモカを拒絶するかのようにモモカが用意した食事を投げ捨てるかの様に退かし、そのままその場を去ってしまう。

その事にモモカは落ち込む表情をする。

 

「アンジュリーゼ様…」

 

「ねえ君」

 

モモカは声を掛けられて振る向くと、キラとアスランがやって来る。

 

「さっき見ていたんだけど、どうして君はアンジュの事を気にするの?」

 

「それは…あっ!それはそうと!その呼び方は止してください!!ちゃんとアンジュリーゼ様っと言う名前があるんです!!」

 

「その事だが、そう呼ぶとあいつが嫌うからな。だから俺達はアンジュと呼ぶ」

 

その事にモモカは納得いかない表情をするも、キラは気になっている事をモモカに聞く。

 

「ねえ、どうして君は彼女の事を気遣うの?」

 

「それは…私はアンジュリーゼ様に一生付いて行くと決めているので、それに離ればなれになりたくない上に…アンジュリーゼ様は…」

 

どうも説明の意味が分からないモモカにキラとアスランは思わず顔を見合って、モモカはそのまま言い続ける。

 

「それにアンジュリーゼ様が此処に送られてしまったのは、ジュリオ様が勝手に…」

 

「ジュリオって…、もしかしてアンジュのお兄さんの事?」

 

「はい。アンジュリーゼ様の両親であるジュライ陛下とソフィア様が私にアンジュリーゼ様がノーマである事を隠す様に命じ、尽くす様にと言われたのですが、誕生祭の日にジュリオ様が…」

 

「アンジュをノーマだと暴露し、故郷を追放させてしまった…と言う事か。その所はあいつから少しきいた」

 

「でも僕達はどうして君がそこまで彼女の事を思うのかが、そこが気になるんだけど」

 

キラの言葉にモモカは重たい口を開かせる。

 

「それは……私が自らアンジュリーゼ様に仕えてるからです」

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

訓練場の射撃場で、サリアとエルシャが構えていて。最初にエルシャが撃った弾が的に当たらずに壁に当たった。

 

「あらら?」

 

次にサリアが撃った弾は綺麗に的の中心に当たり、エルシャはそれを見て感心する。

 

「ど真ん中、お見事~♪」

 

エルシャは胸元からハンカチで祝った。

 

「何時まで経ってもサリアちゃんの様にはならないね~? 何が足りないんだろ?」

 

「チッ(四次元バストが…)」

 

サリアはエルシャの巨乳を見てムカつき、舌打ちしながら嫌みを思っていた。

言うまでもないが、エルシャが外した訳はその巨乳が関わっている事は言うまでもなかった。

 

そしてアンジュがほふく状態でライフルを構えてると。

 

「うそ!マジ?!」

 

「しー! 声が大きいよ!」

 

何やらヒルダ達が話していて、ヒルダ達の話を聞いているとどうもモモカはこのままミスルギ皇国に戻されると、秘密保持の為に処刑される可能性が高いと聞かされて、それにアンジュは思わず手を止めてしまう。

 

「ほ~んと、アンタに関わる奴はみ~んな死んでいく。悪い女だよ、ほんと」

 

ヒルダがアンジュに向いて喋りながらロザリーとクリスを連れて何処か行き、それにアンジュは思わず目を細める。

そして引きがねを引くと、弾が的の中心を外してしまう。

 

その時に一発の銃弾が的の中心に命中し、それにアンジュは横を向くと、アスランがハンドガンを持って構えていた。

 

「アスラン…」

 

「…お前の事情。あのモモカから聞いた」

 

「…だから何? 私には関係ないわ」

 

「なら何故お前はそんなに指先が震えてるんだ?」

 

っとその事を突かれたアンジュは思わずピクリと指を動かしてしまう。

アスランはその様子を見て、気にしないままアンジュに問いかけ続ける。

 

「アンジュ、お前は自分を騙していたとそう勘違いしている。あの子…モモカはお前を一度も騙してなどいない」

 

「あなたに何が分かるのよ…!」

 

アンジュはその事を怒りを堪えるような言葉でライフルを構え続ける。

アスランはそんなアンジュを見て、ハンドガンを仕舞い、近くに置いてあるアサルトライフルを持って構える。

 

「アンジュ、裏切られた気持ちは俺は分からなくもない。だがモモカはお前に心から忠誠を誓っているんだ、お前はその事に必ず覚えがある筈だ」

 

そう言ってアスランはライフルを一発撃って、的の中心に当たり、アスランはライフルを戻してその場から離れて行く。

アンジュはそれに少しばかり考え、また一発撃って的に当てる。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

アンジュとモモカの件を話したアスランは少しばかり考えてると、キラが飲み物を持ってやって来た。

 

「アスラン」

 

「キラ…、お前はどう思っているんだ?あいつとモモカの事を」

 

「そうだね…、やっぱり大切な人の為に頑張ってここに来たんだもん。少しは彼女の気持ちを考えて良いと思うけどね…」

 

それにアスランも少し考えると出撃警報が鳴り響いて、それにキラとアスランは顔を見合う。

 

格納庫でパラメイルが上昇して来ている中、ロザリーがアンジュにやや意地悪を言って来たがそれをアンジュは無視する。

 

「総員騎乗!」

 

皆が各機体に乗り込んでいる中でアンジュの元にジルが居て話し込んできた。

 

「アンジュ、本日を持ってあの者の監視役を終了する。ご苦労だった」

 

そう言ってジルはその場から離れて行き、アンジュはその事に何か引っかかりを思いつめたまま各機ドラゴン狩りへと向かう。

 

その様子を見送ったキラとアスランはカタパルトで見ていた。

 

そしてアンジュはモモカと風呂に入っていた時にモモカが幼い頃から自分の為に忠義を尽くしていた事をようやく理解して、逃げろと言う物のアンジュのお側に仕えると言ってそれにアンジュはやや苛立ちを立っていた。

 

『ずっとおしたえしております。アンジュリーゼ様』

 

「(馬鹿…ずっと騙してきた癖に…。馬鹿…ほんと救いようのない)馬鹿!!」

 

そうアンジュのヴィルキスが皆よりも先に現場に向かい、到着した後にアサルトライフルを撃ちまくる。

 

「どうしようもない…馬鹿ああああああ!!!!」

 

叫びながらアンジュは戦闘を続行し続けた。

数時間後…。

 

「あんのクソアマァ…!! 戦闘中にアタシの機体をまた蹴っ飛ばしやがってえー!」

 

「邪魔って…私の事邪魔って…!」

 

ドラゴンを撃退しアルゼナルに帰投した第一中隊、しかしその中でロザリーはアンジュが戦闘中に蹴っ飛ばされた事にキレて、クリスは邪魔と言われた事に混乱していた。

そしてサリアとヴィヴィアンとエルシャは着替える為に更衣室に向かっていた。

 

「いや~今日のアンジュはピリッピりだったにゃ~!」

 

「何呑気な事言ってんの! とんでもない命令違反よ…あんなの!!」

 

サリアの怒鳴りに思わず引くヴィヴィアン、エルシャは落ち着かせる。

 

「まあまあ落ち着いて」

 

「これが落ちついていられる訳ないでしょう!? 一人でほとんどのドラゴンを狩るなんて…聞いた事ないわ!」

 

サリアは勝手な事をし、微妙な命令違反を起こしたアンジュに不満を隠しきれなかった。

 

「今回は大目に見てよ」

 

っとサリアはやって来たキラの方を向き、その事にサリアは言う。

 

「どうしてよ!?」

 

「今回のアンジュは…少し思いがあっての行動だから」

 

そうキラは上部甲板の方を見て言う。

 

そして滑走路でモモカが荷物を持って輸送機の所までやって来て、ジルとエマの前でお辞儀をする。

 

「お世話になりました、アンジュリーゼ様に『短い間でしたがとても幸せでした』宜しくお願いします」

 

「ええ…(これで良かったのかしら?)」

 

そうエマが思った所に。

 

「待って!!」

 

っと皆が振り向くと、アンジュが何やら大量の札束を持って来た。

 

「その子!私が買います!」

 

「は?…はあー!?」

 

アンジュの突然の発言にエマは驚き目を丸くしている。

 

「ノーマが人間を買う~!?こんな紙屑で…!?そんな事が許される訳が!」

 

「良いだろう」

 

「はい!?」

 

ジルの放った発言にエマはまたしても驚きを隠せない。

 

「移送は中止だ。その娘はアイツのものだ。それにここでは金さえあれば何でも買える、それがここのルールですから」

 

「そ!そんな! ちょ!ちょっと待って!」

 

エマはすぐにマナで札束を持って去って行くジルの後を追いかける。

そしてアンジュはモモカと向き合う。

 

「本当に良いですね?…私。アンジュリーゼ様の…お側に付いても宜しいのですね?」

 

「…アンジュ」

 

その事にモモカは唖然とする。

 

「私の名はアンジュよ」

 

「は…はい! アンジュリーゼ様!」

 

と喜びの笑顔でアンジュに付いていくモモカの様子に近くで見ていたアスランが呆れる様な目で見ていた。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そこは無数の孤島らしき島が浮かぶある場所で、ある長い髪の男性がマナで映し出されている映像を見て笑みを浮かばせていた。

 

それはキラとアスランが乗るストライクフリーダムとインフィニットジャスティスであった。

その二機を見て各国の首相達が映像越しで見ていた。

 

『こんな大きな物があるとはな…』

 

『アルゼナルが独自に開発した物か?』

 

『監察官の話しからでは、アルゼナルで開発した物じゃないらしい』

 

『何だと!? どうしますか?【エンブリヲ様】』

 

長い髪の男性…エンブリヲはその機体を見て言う。

 

「別にどうって事は無い。ただ大きいだけだ、ドラゴンと一緒だよ、気にする事は無い」

 

『はい!では…』

 

そう言って首相達は映像が消えていき、エンブリヲは椅子にもたれてストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを見る。

 

「ふふふ…、まさか“また”会う事になるとは…、不幸な宿命と言った所か? ……キラ・ヤマト、アスラン」

 

その言葉に何やら不吉な予感がしかねないのであった。



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第9話 繋がる絆

キラ達がこのアルゼナルに来て約数週間、キラ達はアンジュ達が居る第一中隊を見て疑問に思った事があった。

 

それはヒルダ達がアンジュに対し戦闘中攻撃を仕掛けていると言う事だ、アンジュはそれを知りながらも全く気にせずにドラゴンを倒していた。

戦闘中に隊長であるサリアはアンジュに叱るばかりでヒルダ達に全く注意をしなかった。その事にキラとアスランはどうも気になっている。

 

「アスラン…」

 

「分かっている、あのサリアがアンジュばかり叱っているのには俺もそろそろ言おうと考えていた所だ」

 

そうアスランはキラに言ってその場を離れて行き、アンジュに叱っていたサリアの元に向かう。

 

一方でサリアはアンジュに命令違反の事で問い詰めていた。

 

「アンジュ!貴女これ以上の命令違反をすると!」

 

「銃殺でも処刑でも好きにすれば?」

 

そう言ってアンジュはその場から離れて行き。サリアはアンジュの命令無視にイラつきを溜まりつつあった。

そこにアスランがやって来る。

 

「おいサリア、少し話しがある」

 

「何よ…」

 

「お前、どうしてアンジュばかり攻めているんだ。戦いの様子…明らかに他の隊のメンバーがアンジュに攻撃を仕掛けていたぞ」

 

「…それが何?貴方には関係ないわ」

 

それを言っただけでサリアはその場から去って行き、アスランは彼女を引き留めようとする。

 

「待て!まだ話は!」

 

「その辺にしろ」

 

後ろから声を掛けられたアスランは振り向くと、そこにジルが居た。

 

「これ以上の介入は無駄だ。部隊の問題は隊長であるあいつの務めだ」

 

「…俺にはどうもそれを無視しているかに見えますが」

 

「お前の思い込みだ、後の事はアイツの仕事だ」

 

ジルはそう言ってその場から離れて行き、アスランはその事にどうも納得行かなかった。

 

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 

そして翌日、食堂でキラとアスランはなんとか稼いだお金で食事を取っているとエマが何やら叫んでいた。

 

「ありえないわ!人間がノーマの使用人になるなんて!」

 

エマはアンジュがモモカを買い取った事にまだ納得していない様だった。

 

「ノーマは反社会的で無教養で不潔で、マナが使えない文明社会の不良品なのよ!?」

 

「はいはい」

 

アンジュは空になった器を置き、モモカが次の食事を差し出す。

 

「モモカさん! あなたはそれでいいの?!」

 

「はい!わたくし幸せです!」

 

満面な笑顔で言うモモカにエマは思わず呆れかえるのだった。

それを見ていたヴィヴィアンは飲み物を飲みながら言う。

 

「良かったねモモカン、アンジュと一緒に居られて」

 

っとその中でエルシャがため息をする。

 

「? どしたのエルシャ?」

 

「もうすぐフェスタの時期でしょ? 幼年部の子供たちに色々と送ろうか迷ってるんだけど…」

 

エルシャが自分の通帳を見て苦笑いしながら言い、それにサリアが聞く。

 

「アンジュのせい? 何とかしなくちゃ…」

 

「どんな罰でも金でなんとかするだろうねアイツ…聞きやしないさアンタの命令なんてさ」

 

アンジュの事を考えているとヒルダがサリアに何やら嫌みそう言い放って。

 

「何が言いたいの?」

 

「舐められてるんだよアンタ。ゾーラが隊長だった時はこんな事なかった筈だけどね現隊長さん?」

 

挑発行為の様な発言に聞いていたナオミがヒルダに向かって言う。

 

「ちょっとヒルダ、そこまで言わなくてもいいじゃない」

 

「あんたは黙ってな」

 

「そんな…!」

 

全く耳を貸さないヒルダにナオミは困り果て、嫌な空気を感じたのかサリアがその場を立って、食堂を後にする。

その様子をキラとアスランは顔を合わせながら少々困る。

 

「困ったね…」

 

「アンジュもそうだがあいつもだ…、どうにかしないとな…」

 

その事を考えるキラとアスラン。

 

そして翌日…。

 

「風邪?!アンジュが?」

 

第一中隊のヴィヴィアンがアンジュが風邪を引いた事に驚き、共に居たキラとアスランはその事に顔を合わせる。

 

「ええ、でもアンジュが居なくても隊の訓練は続けるわよ?」

 

「そう言えいやあ休んだら罰金が食らうんだっけ?」

 

「100万だっけな」

 

ヒルダが言ったその金額にキラとアスランは思わず驚きを隠せない。

 

「(100万って…)」

 

「(いくら何でもそれは…)」

 

いくら風邪を引いたぐらいで100万の罰金を出されることに納得いかないキラとアスランはすぐさまジルの元に行き、それをサリアは横目で見ていた。

 

そしてキラとアスランはジルが居る執務室に到着し、中に入ってジルに問いかける。

 

「失礼します」

 

「どうした、お前たちが来るとはな…」

 

「あなたにお話があって来ました。隊員の風邪の件に付いてですが、これは余りにも酷すぎるのでは」

 

「それはお前たちが気にする事じゃない。お前たちは何時からこのアルゼナルの管理役となった? お前たちはただの客だ、余計な心配事は無用だ」

 

その事に流石にキラとアスランは納得が行かずにいた、いくら客でも風邪ぐらいで罰金まで取られるのは余りにもやり過ぎだからだ。

 

「話は終わりだ。さっさと出て行け」

 

「待って下さい、まだ話は」

 

「終わりだ、行け…」

 

話を強制的に終わらせるジルに対しキラとアスランは納得しない表情をし、そのまま出て行くしかなかった。

二人が出て行ったのを確認した後、部屋の側で隠れていたジャスミンが出て来てジルに話しかける。

 

「ジル、アンタも流石に言い過ぎじゃないかい」

 

「部外者にあれこれと言われる筋合いはない、それに“人間”に我々を理解する奴などいない。あいつ等も例外ではない。利用対象である奴等でもな」

 

「(…あやつ等は他の違うと思うけどね)」

 

キラとアスランの事をそう思いこむジャスミンであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

アンジュが風邪を引いて数日間、ドラゴンの出現により第一中隊出撃が出たが、当然アンジュは出られずにいた。

そんな中で部隊の雰囲気が良くなったと思っているサリア、そんなサリアをあまりキラとアスランはよく思っていない。

 

 

そんなにアンジュが居なくて良いのか?

 

 

この思いはキラとアスランの心に引っかかってしょうがなかった。

 

そしてまた次の出撃にアンジュ無しの出撃が入った。

キラとアスランはこの際にアンジュの部屋に向かった。

 

その頃アンジュはまだ熱があって、身体が言う事を効かなかった。

アンジュの状態を見たモモカは扉の前で立つ。

 

「行けません!アンジュリーゼ様!お体を休めないと!」

 

「アンタを…ハァ…養うのに…ハァ…お金が…必要…ハァ…なの」

 

っとそう言った時に思わず膝を付いてしまう。

 

「ああ!アンジュリーゼ様!」

 

それにモモカは慌てて支える。

その時に扉が開いて、モモカが振り向くとキラとアスランが入って来た。

 

「あなた方は…」

 

「キラ…アスラン…」

 

「アンジュ、無理しなくて良いから、後は僕達に任せてくれない?」

 

「えっ…?」

 

頭の中が呆然とするアンジュはキラの言葉を聞いて、意味が分からなかったがそれをアスランが付け加える。

 

「お前の代わりに出撃してくる。その身体で動けないだろう」

 

「で…出来るの?」

 

「あの司令に頼んでくる。だから寝ていろ」

 

そう言ってキラとアスランはアンジュの部屋から出て行き、アンジュはそれを見つめるだけだった。

 

 

そして司令室でジルが第一中隊の出撃を見送った頃、キラとアスランが司令室にやって来る。

 

「失礼します」

 

「何だ」

 

「司令、お願いがあります」

 

その事にジルは目線を細めながら見て、エマはそれ何かと感じつつも見ていて、オペレーターの三人娘たちもキラ達の方を見る。

 

「俺達に…出撃許可を下さい」

 

「え?…ええっ?!」

 

エマはその事に驚き、当然パメラ達も驚く。

ジルは煙草を吸い、キラ達の方を向く。

 

「アンジュの事か?」

 

「このままじゃああいつは外に出て、弱った体で出撃してしまいます。俺達が代わりに出て、ドラゴンを撃退して行きます」

 

その事にジルは再び煙草を吸い、そして灰皿に煙草を押し付け消す。

 

「良いだろう、出撃を許可する」

 

「はっ?!本気ですか!?」

 

「本気だ、丁度良い機会だ、お前たちのあの機体…見て置きたいからな」

 

「ありがとうございます、では」

 

そう言ってアスランは礼を言い、キラと共に司令室を出て立ち去って行った。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてキラとアスランはストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの元に行き、システムを起動させて、コックピットでパイロットスーツに着替えてヘルメットを被りバイザーを下ろす。

 

「アスラン!」

 

「ああ!行くぞキラ!!」

 

キラとアスランが乗るストライクフリーダムとインフィニットジャスティスはアルゼナルから飛び出して行き、VPS装甲を起動させてサリア達が向かった戦場へと向かう。

 

その頃サリア達第一中隊は巨大な新種のドラゴンと対決をしていた。

しかしそのドラゴンは重力を操り、サリア達を高重力場に引きずり込み、押し潰そうとしていた。

 

「なっ!?」

 

「う…動けねえ…」

 

「一体何なの…コレ!? 助けて!ヒルダ!ロザリー!」

 

そんな中でサリアはこの状況をどうするかを考えていた。

 

「(どうする…、部隊の全滅だけは避けなければいけない、最悪我々だけでも機体を捨てて脱出…いえ、そんな事をすればこの重力場に!どうすれば…!)」

 

厳しい決断を迫られていると、一発のビームが大型ドラゴンに向けて放たれる、しかし重力影響で軌道が僅かにずれて、それにドラゴンは回避する。

 

「「「!?」」」

 

サリア達は振り返ると、空からストライクフリーダムとインフィニットジャスティスがやって来て、キラがビームライフルで撃ったのだ。

 

「あれは…」

 

「おお!!キラ!アスラン!!」

 

サリアはキラ達の登場に唖然し、ヴィヴィアンは喜びながら見る

そんな中でキラはビームを外した事に気になって居た。

 

「外れた?」

 

「キラ、あのドラゴンから高重力場が出ている、恐らくその影響でビームがずれたんだ」

 

「成程、それで…」

 

『あなた達!どうして!?』

 

キラ達の通信にサリアが入れて来て、やって来た事に問うとキラがそれに答える。

 

「僕達はアンジュの代わりに来たんだ、彼女何かと出撃しようとしてたから」

 

「後は俺達がやる、お前たちは下がってろ!」

 

っとそう言って通信を切り、それにサリアは慌てて言う。

 

「ちょ!ちょっと待ちなさい!こっちに来たら重力が!!」

 

そう言うサリアの言葉は全く届かず、キラとアスランはドラゴンが放つ重力場に突入する。

キラ達のMSは高重力でも全く怯むことなく飛び続け、ドラゴンの角から高重力が発生しているのをアスランが見つける。

 

「キラ!あのドラゴンの角から高エネルギーが出ている!」

 

「あそこから重力場が!分かった!!」

 

キラはMMI-M15E クスィフィアス3レール砲を展開し、ドラゴンの角にめがけて放つ。

レール砲はそのままドラゴンの両角に直撃し、ドラゴンの高重力場は消える。

 

そしてアスランが一気に急降下して、ビームサーベルをアンビデクストラス・ハルバードにして、ドラゴンの身体に切り刻みながら地面に着地する。

すぐにファトゥム-01のMA-6Jハイパーフォルティス ビーム砲を放ち、ドラゴンの腹部を狙い撃つ。

 

最後にキラがMGX-2235 カリドゥス複相ビーム砲をドラゴンに向けて放ち、アスランは一気に急上昇で退避し、ドラゴンの身体を貫いて、大爆発していった。

 

「凄い…倒しちゃった」

 

ナオミはキラとアスランが数秒でドラゴンを撃退した事に唖然としていた。

 

その様子をサリア達は騒然とし、ヴィヴィアンは大興奮していた。

キラとアスランはその様子をジッと見ていたが、キラは何故か心を痛く感じていた。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

大型ドラゴンを撃退し、基地へと帰投した皆、今回はキラとアスランが活躍していたが、二人は皆に戦闘配給を全て分けていた。

 

「うひょお~~!こんな大金!夢みたいだ!」

 

「ゆ…夢じゃないよ!」

 

ロザリー達は山積みにされたキャッシュを見て顔を綻ばせていた。

そして今回現れたあの新型ドラゴンはフリゲート級と新たに認定された。

 

そしてアンジュの方は…。

 

「…ちょっと、少し少ないんだけど」

 

「ああ、その事なんだが…どうも休んだ奴に大量に渡すのはおかしいと言われてな。今回はそれで我慢してくれ」

 

「…分かったわよ」

 

アンジュはしぶしぶと了解し、それにキラは苦笑いしていた。

サリアはそれに少々ため息を付いた後、コホンッと咳払いするサリア。

 

「どう?これで満足?」

 

サリアはヒルダ達にある事を言う。

 

「色々あったけれど私達はこのチームでやっていかなくちゃいけない。アンジュを後ろから狙うの…もうやめなさい」

 

その事に思わず身体をピクリと震えるロザリーとクリス。ヒルダは何ともない表情をしていた。

 

「アンジュも報酬独り占めやめなさい。アンタは放っておいても稼げるんだから。これは隊長命令よ」

 

「へっ、誰もアンタの言う事なんか聞きやしないって『良いわよ別に』!?」

 

「私の足さえ引っ張らなければね」

 

っとアンジュは予想外に肯定する。

 

「私も良い…かな」

 

いつも隠れがちなクリスがそう言う。

 

「ま、まぁ~…アタシはしばらく金がある内は‥‥良いかな」

 

クリスに釣られるようにロザリーも続けて言う。

 

「アンタ達何言いくるめられてるのよ!?」

 

「そ、そういうワケじゃないけど…」

 

「チッ…! 裏切り者」

 

唯一一人だけヒルダは納得できないのか立ち去る。

 

「ヒルダ…」

 

ロザリーはヒルダが立ち去ってしまったのを見て少し申し訳なさそうにしていた。

 

「それじゃあ!行きましょうか!」

 

っとエルシャ達はアンジュを連れて何処かに行ってしまう。

それにキラ達は顔を見合う。

 

「何処に連れて行くんだろう?」

 

「さあな」

 

アスランは手を上げてそう言い、キラは頭を傾げるのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

ある場所、ある玉座で数名の女性たちが何やら話し合っていた。

 

「何たること!偽りの民達があのような物を持っていたとは!」

 

「このままでは我らの真の目的が…!」

 

何やら悩み込んでいる女性たち。っとそこで一人の女性が…。

 

「皆さん、私に少しばかりお願いしてもよろしいでしょうか」

 

「何か策があるので?『サラマンディーネ』」

 

サラマンディーネと呼ばれる女性は皆の言葉に頷き、皆の方を見ながら言う。

 

「あの者達…私達が今何をしているのかを話そうと思っています」

 

「何ですと!?」

 

「正気なのですか!?」

 

それにサラマンディーネは頷く。

 

「はい、恐らくあの者達は自らやっている行いの事に気付いていない。話せばきっと分かる筈、ですので…私はこの蒼い翼の者を此処に連れてこようと思います」

 

サラマンディーネが見ているのは、大型ドラゴンを撃退したストライクフリーダムに乗るキラの映像だった。

 



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第10話 脱走 前編

昨日に引き続き更新です。

ここで分けているので短いでしょうがどうか見て下さい。


キラ達がドラゴンを撃退してからやく四日、この日はマーメイドフェスタと呼ばれる年に一度ノーマの休日である。

その日のアルゼナルは全員水着姿でマーメイドフェスタを楽しんでおり、キラとアスランは皆の水着姿に少々目を逸らすばかりであった。

 

「マーメイドフェスタって…ほとんど水着なんだね」

 

「皆女性ばかりだからな、目のやりように困る」

 

キラとアスランはサングラスを掛けてあまり人目につかない場所に居た。

無論女性の水着姿を見ない為、あまり見て行くと失礼だとおもったからだ。

 

「それにしても…」

 

「どうしたの?アスラン」

 

「今日のアンジュの様子、お前変だと思った事は無かったか?」

 

「変…そう言えばアンジュ、今日の朝から様子が変だったよね?」

 

キラとアスランは今朝からアンジュの様子がおかしい事に気が付いていた、アンジュは何やら思いつめた表情をしていて、それを二人が問いかけても全く返事をしなかったのだ。

 

その事に二人は少々思いつめる。

 

「おーい!キラ!アスラン!」

 

声を掛けられた二人は振り向くと、ヴィヴィアンとエルシャが何やら売店で買った物を持ってやって来た。

 

「こんな所に居た、探してたんだよ?」

 

「うん…、皆の水着を見ないようにって思って…」

 

「あらあら、流石に男の子だがら目のあたり所がきついのね」

 

「そうだ。分かってくれて助かるよ…」

 

アスランはそう言い、エルシャは思わずクス笑いする。

そしてヴィヴィアンが売店で買った食べ物を取り出す。

 

「ほい!これキラ達の分! ここに置いておくね?」

 

「ありがとうヴィヴィアン」

 

「それじゃあね」

 

そう言ってヴィヴィアンとエルシャは去って行き、キラとアスランは貰った売店の食べ物を取り出す。

 

たこ焼きに焼きそば、フランクフルトにイカ焼き、どれも海に合う物ばかりであった。

 

「凄いね」

 

「まさに海水浴に相応しいものばかりだな。まあここは海に囲まれた場所だからな」

 

そう言ってキラとアスランは再び海を見るのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

キラ達がのんびりして、すぐに夕日になった。

時間が過ぎるのが早く、キラ達は一度アルゼナル内部に戻る。

 

「もう夕日か…、早いものだね」

 

「俺達は昼寝をしていたからな、当然だろう」

 

そう言いつつキラ達はアルゼナル内に戻ると、何やら施設内は静かだった。

外は皆でわいわい騒いでいると言うのに、内部では静かすぎるからだ。

 

キラとアスランはその事に何やら不自然を感じていた。

 

「アスラン…」

 

「ああ、外から楽しみが聞こえるが中からは全くの静か…返って怪し過ぎる」

 

二人は顔を見合って頷き、銃を取り出して少しづつ通路を進んで行く。

 

そして二人はパラメイルのカタパルトデッキ付近にたどり着くと丁度飛行機のエンジンが鳴り響く。

キラとアスランはそれを聞いてすぐさま走り出して行く。

 

カタパルトデッキにたどり着くとそこには飛行機が飛び立とうとしていて、その中にアンジュと仲の悪いヒルダが乗っていたのだ。

 

「アンジュ!!」

 

「ヒルダ!?お前たち何をやっている!!」

 

アンジュがキラ達の声が聞こえると振り向き、申し訳なさそうな表情をして機内に入って行く。

そしてキラ達は慌てて追いかけるもアンジュ達を乗せた飛行機はそのまま飛び去って行き、キラとアスランは止まって棒立ちになる。

 

「アンジュ…」

 

「あいつ…」

 

「お前たち」

 

キラ達が振り向くとジルたちがやって来る。

 

「先ほどローゼンブルム王国の王女であるミスティ王女がアンジュに連れ去れたとの報告を受けた、あいつは何処だ?」

 

ジルがキラ達に問うと、キラ達は目線の先の方を見る。

それにジルは舌打ちをする。

 

「チッ、あいつめ…」

 

「簡単に買収されやがって、何のための番犬だ!」

 

ジャスミンは番犬であるバルカンに叱りつけ、その事にバルカンは落ち込む。

バルカンは先ほどアンジュ達に簡単に買収されて、その時に武器を大量に持ちこまれて行ったのだ。

 

キラ達が考えてる中でジルがキラ達に話しかける。

 

「お前たち、少しばかり頼みがある」

 

その事にキラ達は表情を鋭くする。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

キラ達は執務室に集まり、ジルがキラとアスランに言う。

 

「お前たちは今からアルゼナルを出てミスルギ皇国へと向かってくれ」

 

「ミスルギ皇国?そこって…」

 

「ああ、アンジュの故郷だ、恐らくアンジュはミスルギ皇国に向かったに違いない。探し出して連れ戻せ」

 

その事にキラとアスランは黙った頷くしかなかった。

 

キラ達が出発する前にアンジュの部屋へと向かう、彼女が何か手がかりを残したか確かめる為だ。

 

するとキラはベットにある封筒を見つける。

 

「キラ何か見つけたか?」

 

「うん。これ」

 

キラは封筒を開けて、中に入っている手紙を読む。

 

 

『これを見ていると言う事は、私はもうアルゼナルから居なくなって大慌てになっていると思うわ。まず最初にキラとアスランに謝らなければならないわ。

私はこれまであなた達に支えられて来たわ、でも私…行かなきゃ行けない所があるの。妹…シルヴィアが祖国で助けを待っているの。

裏切ったと思ってしまうかも知れないけれど…私は行くわ、モモカと一緒に、私はあなた達の恩を忘れないわ…。それと指輪を置いて行くわ、それで思い出してね』

 

 

それを読み終えたキラ達は封筒に中に入っている指輪を取り出す。

キラ達はそれに少々思いつめた表情になる。

 

「キラ…」

 

「うん…、アンジュの行動…まるでカガリにそっくりだよ」

 

キラはアスランに指輪を渡し、アスランは指輪を見る。

そして指輪を握りしめてキラと目を合わせる。

 

キラもそれに頷き、フリーダムとジャスティスの元に向かう。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

キラ達がパイロットスーツに着替え、フリーダムとジャスティスに乗り込むと。

 

「あの!」

 

後ろから尋ねられて、キラ達は振り向くとそこにはナオミが居た。

 

「君は…ナオミ」

 

「はい、あの…アンジュの事ですが」

 

「心配しなくてもいい、あいつは必ず連れ戻してくる」

 

アスランがナオミにそう言い、ナオミはそれにしばらく黙り込んでそして頷く。

キラ達がフリーダムとジャスティスに乗り込み、アルゼナルを離脱して行く。

 

「アスラン、ミスルギ皇国は何処に?」

 

「さっきジャスミンが俺達にミスルギ皇国へ行く地図を貰くれた、これをたどればミスルギ皇国に付く筈だ」

 

キラはアスランの言葉に頷き、アンジュが向かったミスルギ皇国へと向かった。

 

そしてそこでキラとアスランにとってとんでもない事実を知る事となる。

 



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第11話 脱走 後編

アルゼナルから脱走したアンジュとヒルダを探す為キラとアスランはまず最初にアンジュがモモカと向かったミスルギ皇国へと向かっていた。

この時キラとアスランは出発する前にジルからミスルギ皇国の話を聞いた。

 

 

アルゼナルを出発する前、キラとアスランに話しかけるジルはミスルギの事を話す。

 

「現在ミスルギ皇国と言う国は完全に崩壊した。“名前だけ”を変えてな」

 

「名前?どう言う事です」

 

「簡単な事だ、ミスルギ皇国と言う国を《新生ミスルギ皇国》に変えているだけの事だ」

 

その事を聞いたキラとアスランは思わず顔を見合わす、たった二文字を加えただけでミスルギ皇国を変えたなど誰も思わないからだ。

 

「お前たちはミスルギ皇国に向かい、アンジュを生きて連れて戻して来い」

 

「分かりました。それとヒルダの方はどうしますか?」

 

「そいつの事はいい、お前たちはアンジュの事だけを考えろ。それだけだ」

 

その事にキラとアスランはジルの言葉に素直に聞く他なかった。

 

 

 

そして再び時間は戻り、キラはマップを確認しながらミスルギ皇国に向かう中でアスランが何やら気になっていた。

 

「……」

 

「アスラン、さっきから黙り込んでどうしたの?」

 

「アンジュの事を考えていたな、あいつ…どうして危険と分かっている故郷に向かうんだ。妹が危機だからと言うが…俺にはどうもそれが不思議でたまらないんだ」

 

「罠だって言う可能性があるって事?」

 

キラの言葉にそれに頷くアスラン。

その事を言われると確かに妙に引っかかる点が大きい、まだこの世界の事になれてないとはいえノーマであるアンジュに助けを求めるのは妙におかしい。

 

それに気になって居るのもある。モモカだ、モモカがアンジュがアルゼナルに居たのを知った上で来るのが何かが引っかかる事がある。

 

キラとアスランはその事を感じつつも流していたが、薄々と疑問を感じつつであった。

 

「アスラン…。モモカってもしかして…」

 

「…いや、彼女の様子を見て違う思うな。彼女からの忠誠心は本物…嘘じゃないだろうな」

 

それにキラは言葉が止まり考え、アスランはキラに言う。

 

「キラ、今は考えても埒が付かない。今はアンジュを探すのを優先しよう」

 

「分かったよアスラン」

 

そう言いつつキラとアスランはスラスターの出力を上げて、ミスルギ皇国へと向かった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

アルゼナルから約数万キロの距離にある国、ミスルギ皇国へと到着したキラとアスランはまず情報を得る為にストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを隠して夜中になった時に街へ入った。

 

キラとアスランが街に入ると少しばかり静けさが広がっていて。それに何やら違和感を感じる。

 

「アスラン…、変だよ?」

 

「ああ…、どうも様子がおかしい…ん?」

 

アスランが近くのテレビにある者が映ったのを見て近寄り、それにキラは振り向く。

 

「アスラン?」

 

「キラ!」

 

突然叫ぶアスランの掛け声にキラは慌てて近寄って行くと、テレビに映っている映像を見てキラは驚く。

 

何とその映像にはアンジュがボロボロの服の処刑着を着せられ、腕を吊るされていた。そしてマナの電動車いすに乗っている少女『シルヴィア・斑鳩・ミスルギ』がムチでアンジュの身体に打ち付けて痛みつけ、それにアンジュが悲鳴を上げる。

 

『この野蛮なノーマ!!』

 

『ぐあああ!!』

 

それを見ていた国民達は喜びの声援を上げていた。

キラとアスランはその光景を見て思わず気がゾッとした、こんな卑劣な行動をしているのに対し民主は抗議する所がそれを楽しんでいる様にして、キラはアスランの方を向く。

 

「アスラン!」

 

「ああ!!」

 

すぐさまキラとアスランはストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの元に向かい、アンジュの救出へと向かった。

 

 

 

一方アンジュの方では絞首台に送られるアンジュに国民からは極悪非道な声援が送られて来る。送られる声援の中にはたまごをぶつける人も居て、それにはもう人間の欠片すらなかった。

 

「お止めください!!アンジュリーゼ様に乱暴な事をしないでください!!」

 

アンジュの筆頭侍女である『モモカ・荻野目』はその声援をやめさせようとするも、一向に収まる気配は無く、逆に声援が大きくなっていく。

 

『『『つーるーせ!つーるーせ!』』』

 

声援の中でアンジュは完全に泥沼に落ちているミスルギを完全に断ち切る事を決意する。

 

「(ようやく目が覚めた…、こんな世界…こっちから否定してやるわ…!)」

 

っとそう決意した途端にアンジュは歌い始めて、その場にいた者達は突然の事に静まり返る。

 

「それはお母様の歌!貴女の様な汚らわしい者が歌う物じゃありません!」

 

シルヴィアがそう叫ぶもアンジュは無視したまま歌い続ける。

しかし彼女の兄であるジュリオは近衛兵に目線を向き、それに頷く様にすぐさまアンジュの歌をやめさせて、強引に絞首台に首を輪を掛ける。

 

それをジュリオが笑みを浮かばせる。

 

「さらばだ、アンジュリーゼ」

 

それにジュリオは手を上げて、近衛兵がレバーを引き、アンジュがその場に吊るされる。

 

「アンジュリーゼ様ああああああああああああああ!!!」

 

モモカがアンジュが吊るされて叫んだその時だった。

アンジュ達の元にある二つの光が飛んでくる。

 

それはキラとアスランが乗るストライクフリーダムとインフィニットジャスティスがやって来たのだ。

 

二つのMSが来た事にジュリオとシルヴィアだけじゃなく、その場にいた国民の者達も驚きながら見ていた。

 

そしてジャスティスがMX-2002 ビームキャリーシールドのビームサーベルを展開し、アンジュを吊るしている絞首台を壊す。

絞首台が破壊された事によりアンジュは開放されて、モモカを捕まえている近衛兵は怯えてしまい腰が抜けてしまう。

 

その隙にモモカはアンジュの元に向かう。

 

「アンジュリーゼ様!」

 

「げほっ!げほっ…! あれは…キラ!アスラン!?」

 

アスランはアンジュとモモカの方を見て、すぐさまジャスティスの両腕マニピュレーターを使い、二人を救出したのを確認してキラに言う。

 

「キラ!!」

 

「うん!!」

 

すぐさま二人はスラスターを全開にして、急速離脱してミスルギ皇国を脱出する。

 

ジュリオはその事に怒りを爆発し、側で見ていたリィザは鼻で笑うのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてミスルギ皇国からかなり離れた孤島、キラとアスランは一度そこに降り立ってアンジュ達と対面する。

っがその時アスランは…。

 

パチッ!!!

 

「うっ!」

 

アスランはアンジュに向けて平手打ちをし、それにアンジュは全く抵抗もしないで受けていた。

いや…受けてしまうのも当然だと思ったのだ。キラはそれをジッと見ていた

 

しかしモモカはそれを許さない。

 

「アンジュリーゼ様!あなた!アンジュリーゼ様に何を」

 

「黙れ!!」

 

アスランの猛烈な怒鳴り声にモモカは思わず黙ってしまう。

モモカに言った後にアスランはアンジュの方を見る。

 

「どうして俺が手を上げたか分かるか?」

 

「…ええ、私が馬鹿な事をしたからよ」

 

「そうだ、それが分かっていながらあんな馬鹿な事をしたのか?」

 

「ええ、でもあの場にてようやく目が覚めたんだから…」

 

それにモモカはアンジュの方を振り向き、アンジュは海の方を見て呟く。

 

「私には、家族も仲間の故郷も…何にもないって分かったんだから」

 

「アンジュリーゼ様…」

 

「追放された時に気付くべきだったな」

 

っとアスランはまるで追い打ちを掛けるかのようにアンジュに言い、アンジュはその事に思わずピクリと反応する。

 

「ノーマと分かった時点で既に皆からの信頼、絆、関係は消えてしまうんだ。全ては結果が全てなんだ…」

 

「……ええ、貴方の言う通りよアスラン。私が馬鹿だったわ」

 

アンジュは皆に見えないように静かに涙を流し、それに気付いたモモカは思わずアンジュに近づこうとしたが近寄れなかった。

キラはアンジュに一枚のシャツを着せ、それにアンジュはシャツを見る。

 

「キラ…?」

 

「その格好じゃあ恥ずかしいでしょ? そのシャツはあの時のシャツだから大丈夫」

 

アンジュはあの孤島で着ていたシャツを再び着る事となり、それにアンジュは少々照れながらも着る。

っとその時キラとアスランのストライクフリーダムとインフィニットジャスティスのレーダーにある反応をキャッチし、アラートが鳴り響いて、キラとアスランはMSに乗り込む。

 

「一体何だ!?」

 

「これは?!」

 

キラ達がレーダーを見ると、レーダーに敵機が近づいている事が分かり、しかも一機のみでやって来た事にキラとアスランは見合う。

 

「アスラン!」

 

「ああ!アンジュとモモカはそこに居ろ!!」

 

二人はコックピットハッチを閉め、機体を立ち上がらせて上昇し、アンジュとモモカはそれを見届けるのだった。

 

そしてキラとアスランは迫って来る不明機に向かい合うと、そこで信じられない物を目にしてキラとアスランは思わず目を疑う。

 

それは嘗てキラがヤキン・ドゥーエ攻防戦であのラウ・ル・クルーゼと激戦を繰り広げたあの『プロヴィデンスガンダム』であった。

背中のバックパックであるドラグーン・プラットフォームはあのレジェンドガンダムに搭載されていたバックパックによく似ており。更にレジェンドの武装であるGDU-X7 突撃ビーム機動砲のドラグーンが左右二つ装備されていた。

 

「キラ!あれは!!」

 

「プロヴィデンス…!」

 

その機体を見てキラは思わず頭の中がフラッシュバックする。

 

 

 

 

知れば誰もが思うだろう!君の様でありたいと!!

 

 

 

もはや止めるすべはない!!地は焼かれ!涙と悲鳴は新たな争いの狼煙となる!!

 

 

 

 

キラの頭の中にクルーゼの言葉が蘇り、キラは頭を振って気持ちを切り替える。

 

「アスラン!!!」

 

「ああ!!!」

 

キラとアスランはすぐさまビームライフルを構えてプロヴィデンスを撃ち、プロヴィデンスはそれを軽々とかわして、右手に持っているビームライフルを構えて撃つ。

 

それにキラとアスランはそれをかわして、すぐにキラはMMI-M15E クスィフィアス3レール砲を展開して攻撃する。

プロヴィデンスはそれを逸らしながらかわしていき、ドラグーン・プラットフォームのドラグーンを展開させて攻撃を仕掛けて来て、それにキラとアスランは驚く。

 

ドラグーンはあちこち動きながらビームを撃って来て、それをキラとアスランはアクロバティックな動きで交わして行く。

その中でキラとアスランは大気圏内でドラグーンを使って来るプロヴィデンスに驚きを隠せない。

 

「馬鹿な!大気圏内でドラグーンを?!」

 

「あり得ない…!こんな事って!?」

 

通常では宇宙空間のみ使用できるドラグーンが大気圏内で使用できる事に驚きを隠せないキラとアスラン。

更にプロヴィデンスは次の攻撃に対し左手のマニピュレーターで左腰に搭載されているビームサーベルと取り出して構えて向かって行く、それに対してキラが左手に持っているビームライフルをしまい、ビームサーベルを構えて向かって行く。

 

そしてストライクフリーダムとプロヴィデンスは互いにすれ違うサーベルを斬りつけ合い、切り合う度に激しいスパークが飛び散る。

 

アスランはファトゥム-01のMA-6Jハイパーフォルティス ビーム砲をプロヴィデンスに向けて標準をし、トリガーを引いて放つ。

しかしプロヴィデンスはそれを気付いていたかのようにストライクフリーダムを蹴り飛ばし、難なくかわして離れて行く。

 

アスランはそれに舌打ちをし、一度キラの元に向かい、キラはプロヴィデンスを睨みながら少しばかり汗ばむ。

 

「キラ…」

 

「うん、あの機体のパイロット…相当の腕だよ」

 

そう言ってキラとアスランは構える、しかしプロヴィデンスは気が済んだのかその場から離れて行った。

突如プロヴィデンスの行動にキラとアスランは思わず武器を下ろしてしまう。

 

「何だ?」

 

「どうして…?」

 

キラとアスランは退却して行ったプロヴィデンスを理解出来ず、地上で見ていたアンジュとモモカも一体何が起きたのか全く分からなかった。

 

一度キラ達はアンジュ達の元に降り立ち、アンジュ達はキラ達の元に行く。

 

「キラ!アスラン!」

 

アンジュが声を掛けても二人はちょっとばかり黙り込んでいて、それにアンジュが再び声を掛ける。

 

「ちょっと?」

 

「…あ、ごめん」

 

「少しばかり考え事を…な。しばらくしたら出発する、それまでゆっくりしていろ」

 

そうアンジュに言うアスラン。

その事にアンジュはただ頷くだけあって、そして数分後キラ達はアルゼナルに向けて出発した。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

プロヴィデンスが帰投してる中で、その中にいたパイロットは僅かながら笑みを浮かべる。

 

「ふふふ…、やはりな…前より腕が上がっている。腕を上げたな…キラ君」

 

その中にいたパイロット…エンブリヲは何故かキラの腕を知っているかの様に言い、自分のアジトへと戻って行った。

 



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第12話 龍の姫 前編

キラ達がアンジュを連れ戻してアルゼナルに帰投してから約一週間が経過した。

 

アンジュはアルゼナルに戻ってすぐに独房へと連行されてしまった、当然と言えば当然である。彼女は文字通り脱走犯であるからだ。

そしてヒルダもアンジュが戻る数日前に捕まって、アルゼナルに戻されていた。

 

キラとアスランは一度ジルの元に呼ばれていた。

 

「よくやったなお前たち」

 

「……」

 

「…どうも」

 

「どうしたんだい?随分元気がないけど?」

 

マギーがキラとアスランの雰囲気が無い事に気付いて問い、それにキラは頭を横に振る。

 

「いえ、何ともありません。気にしないでください」

 

「…そうか、それとお前たちにまた新たな任務を引き受けてもらう」

 

「何ですかそれは?」

 

「まあ聞け、数日前このアルゼナルの近くに謎のエネルギーが発生している。お前たちはそこに向かい調査を頼む」

 

ジルはキラとアスランに謎のエネルギー数値が出ている場所に向かって調べてこいと頼んで来た、しかしキラはそれを疑問に思いながら問う。

 

「どうして僕達なんですか? 此処の部隊を動かせば良いのではないのですか?」

 

「お前たちが適任だからだ、文句言ってないでさっさと行って来い」

 

その言葉にどうにも気に入らない二人は今回ばかりは引き下がらなかった。

 

「ジル司令、少しばかり強引過ぎるのではないのですか? 最近貴方は強引に」

 

「黙れ、お前たちに発言する権利はない」

 

「それはこっちが決める事です。貴方じゃありません」

 

っとキラとアスランはジルを少しばかり睨むように見て、ジルもキラとアスランを睨むよう見る。

その雰囲気をジャスミンとマギーは黙って見つめていて、メイはその息苦しい空気を思わず飲み込む。

 

サリアはキラとアスランの態度に少しばかり納得いかない様な目で見る。

 

「フッ、忘れるな。お前たちは“ただの客”だが今はアンジュの後ろ盾がない“クズ”だ、お前たちをどうするかこっちが判断できる、アンジュを始末する事もな」

 

それにキラとアスランは見合い、ジルの方を見る。

ジルの目は嘘を言っていない事にどうも納得出来ずにいたが、アンジュの権利を向こうが握っているとなると手出し出来ない。

 

キラはそれにため息をし、アスランも渋々頷くしかなかった。

 

「……分かりました、やりましょう…今回は」

 

そう言ってキラとアスランはその場から立ち去って行き、ジルは鼻で笑いながら煙草を取り出して火を付ける。

ジャスミンはジルに話しかける。

 

「気を付けなジル、あの二人を舐めてかからない方が良い」

 

「どうかな、あの二人を舐めてかかっているのは向こうだ、私はあの程度の連中に負ける程の者じゃないからな」

 

そう言いながらジルは煙草を吸い、ジャスミンとマギーはジルの行動に少しばかり考えを見せ始める。

 

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 

キラとアスランは出発する準備の為格納庫に向かう途中。

 

「待ちなさい!」

 

キラ達は振り向くとそこにはサリアが立っていて、何やら殺意を抱え込んでいるかのようなオーラを出していた。

 

「どうした」

 

「……よくもジルにあんな態度を取った物ね…、殺す!!」

 

っとサリアは腰からナイフを取り出してキラ達に向かって行く。

だがアスランは目を鋭くし、走り出していき、一瞬にてサリアのナイフを奪い首元に当てる。

 

サリアは突然の動きに思わず目を大きく開かせる。

アスランはナイフを向けたままサリアに語る。

 

「お前の動きは良い、だがそれだけだ。お前の動きは教科書通り、動きが丸見えなんだ…」

 

「教科書…通り?!」

 

「それに殺意丸出しのオーラを出まくりじゃあ、せっかくの動きも台無しだ…」

 

そう言ってアスランはサリアを解放し、サリアは思わず足を躓きその場に崩れてしまう。

アスランはナイフをサリアの近くの置き、最後にこう話す。

 

「最後に言っておく。俺達を殺すと言うのならば…こっちもお前たちを全力で排除するぞ」

 

そう言い残してアスランはキラと共に格納庫に向かい、それにサリアは歯を噛みしめながらその後ろ姿を睨みつけていた。

 

 

そしてキラとアスランは格納庫に到着後、すぐに発進出来る準備をしていた。

 

「おーい!」

 

っとキラとアスランは声がした方を見ると、メイが何やらある装置を持ってやって来た。

 

「これ、これから調査する為の装置、持って行ってよ」

 

「ありがとう」

 

「すまない」

 

二人はメイから装置を受け取り、それを調査道具の中にいれる。

その様子をメイが何やら言いづらそうな雰囲気をしながら、キラとアスランに話しかける。

 

「あのさ…」

 

「何?」

 

「さっきの事なんだけど…、ジルの事を悪く思わないでほしいんだ」

 

「…どうして君達はあの司令の事を信じる? 何かと隠しているあの司令を」

 

アスランはどうも先ほどの様子が気に入らない事に根に持っていて、メイがその事を話す。

 

「…随分前の事なんでけど、ジルはある戦いの時に仲間を大勢失った事があるの、そのせいでジルは少しばかり無茶な事をする様になって…」

 

「少し?あれが少しと言える程度なのか?」

 

メイの言葉に引っかかりを感じるアスラン、メイはそれを否定するかのように言う。

 

「勿論あれがちょっとでもないって事は分かるよ! ただ…本当にやり過ぎって所もあるから…その」

 

「…代弁は言い、その事は直接本人の口から聞くとする」

 

そう言ってアスランは言い、二人はストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに乗り込んで行って発進した。

 

それを反省房の中にいたアンジュが外を見ていた。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

キラとアスランはジルが言っていたその謎のエネルギー発生源場所にたどり着く。

そこはとある孤島で、何もない場所だった。

 

「アスラン、此処が例の場所?」

 

「ああ…だが妙だ、発生元であるエネルギー源がこの孤島の上…つまり俺達の丁度このあたりに発生している」

 

奇妙な発生位置に違和感を感じるキラとアスラン、っとその時センサーに凄まじいエネルギー反応が払われて、そしてキラとアスランの正面にシンギュラーが現れた。

それにキラとアスランは驚き、二人は構えた瞬間だった。

 

突如キラの機体が吸い込まれて行き、それに慌てるキラ。

 

「機体が言う事を効かない!?」

 

「キラ!!そこから脱出しろ!!」

 

アスランが急いで離脱しているが、キラだけが離脱できない事に気付き、通信で呼びかけていた。

しかし機体のコントロールが効かず、徐々にシンギュラーに吸い込まれて行くのが分かる。

 

「駄目だ!吸い込まれる!うああああああああああああ!!!」

 

「キラ!!!」

 

アスランが慌ててジャスティスでフリーダムの手を握ろうとしたが、フリーダムはシンギュラーと共に吸い込まれてしまい、消えていってしまった。

 

「キラ!!」

 

急遽アルゼナルに戻ったアスランはこの事を知らせに言った。

 

「何?あの男が?」

 

「はい!俺はすぐに向こうに行きたいのです!どうかその方法を!『それがどうした』何?!」

 

アスランはジルの発言を聞いて驚きを隠せず、ジルは煙草を吸いながら椅子にもたれる。

 

「男が一人消えたくらいでどうしたと言うのだ。それにあのシンギュラーの向こうに行った所で既に奴はドラゴンに喰われてる筈だ、諦めるんだな」

 

そう言ってジルは去って行き、アスランはジルの発言を聞いて怒りが込みあがって来た。

 

「(ふざけるな…!!アイツは…アイツは簡単に殺される筈はない!! キラ!無事で居てくれ!)」

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてシンギュラーの向こうに飛ばされたキラ、飛ばされた際にキラは気を失ってしまいある場所に不時着してしまう。

不時着したフリーダムはVPS装甲を展開していた為傷は一つもなかった。

 

っとそこにある人影がフリーダムに近寄り、コックピットハッチを開いてキラを見つめるのであった。

 

そして数分後、キラが目を覚ますとそこはとある和室の一部屋であり、その布団で寝ていたキラは思わず身体を起こす。

 

「こ…ここは?」

 

「目が覚めましたか?」

 

キラは振り向くと、襖から三人の少女の一人がキラに問いかけて来たのだ。

その少女は長い黒髪で、目のあたりが悪いがピンクの和服を着ていた。

 

「お体の状態は?」

 

「え…と、君は?」

 

キラが状況が分からないまま事態が呑み込めず、分からないまま聞いて見るとその少女は一度頭をさげて、上げながら言う。

 

「申し遅れました、私は神祖『アウラ』の末裔にしてフレイヤの一族の姫、近衛中将サラマンディーネです」

 



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第13話 龍の姫 後編

サラマンディーネと名乗る少女に少しながら困惑するキラ、しかしさすがのキラも困惑しないのは分かるであろう。

何せ彼女達の背中には“ドラゴンの羽と尻尾”があるからだ。

 

サラマンディーネはキラの目線に気付く。

 

「気になりますか?」

 

「えっ?ま、まぁ…」

 

キラはサラマンディーネの発言を聞き、思わず頷きながら戸惑う。

 

「ふふふ、焦らなくても構いませんよ。戸惑いを隠せないのは分かりますが」

 

「姫様、本当にこの男を連れて来る必要があったのですか?」

 

っと後ろに居た青い和服を着た女性がサラマンディーネに問い、それには緑の和服の女性も同じように頷く。

 

「あります、その為にわざわざ“門”を使い、彼を私達の世界に連れて来させたのですから」

 

「えっと…、君達は一体何を?」

 

状況が全く飲み込めないキラは少しばかりサラマンディーネ達に問いかけ、それにサラマンディーネはキラの方を向く。

 

「すいません、まず最初に貴方を無理矢理此処にお連れして、ですがどうしてもあなた、そして向こうに居るもう一人の方に我々が行っている行動の真理を理解してもらいたいのです」

 

「真理?」

 

その事にキラは頭を傾げ、サラマンディーネはそれに頷く。

 

「はい、では私に付いて来て下さい」

 

「ほら立て!」

 

っと何やら青い服の女性はキラを強引に立たせるかのように言い、それにキラは少し戸惑いながらも立ち上がってサラマンディーネの後に付いて行った。

 

キラはサラマンディーネの後ろを付いて行く中で外の廊下に出た所で驚きの光景を目にする。

そこは大型ドラゴン、あのガレオン級とブリック級、そしてスクーナー級のドラゴンが飛び回り、更にそこは宮殿の敷地内である事が分かったのだ。

 

その光景をキラは思わず目にし、それをサラマンディーネは言う。

 

「驚きましたか?」

 

「え…ええ、でも少しばかり文明レベルが低い様な…」

 

「ええ、ここは貴方達が住む世界とは全く別の世界なのです」

 

サラマンディーネの言葉に振り向くキラ、彼女はこの世界に何か詳しいのかと思う。

そしてサラマンディーネの後に付いて行くキラは外に出ると、外で待っていたガレオン級が頭を下げながら待っていた。

 

キラは驚くもサラマンディーネは全く気にせずにガレオン級の頭に乗り、キラに手を伸ばす。

 

「さあ、どうぞ」

 

それにキラは戸惑いつつサラマンディーネの手を掴み、ガレオン級の頭に乗る。

 

そして付き添いの二人は頭を下げ、ガレオン級はキラとサラマンディーネを乗せて飛び去って行く。

 

ガレオン級は二人を乗せたままある場所に向かい、都市の方へと向かう。

そこでキラは驚くものを目にする。

 

それは荒れ果てた都市に壊滅した街、しかもスクランブル交差点や議事堂、まさに日本の物とする物ばかりがあった。

 

「これは…一体どうなって」

 

「驚きましたか。私達の世界は一度滅んでしまっているんです」

 

サラマンディーネの言葉に驚きを隠せないキラ。

 

「どうして?!」

 

「私達の世界は…戦争で完全に滅んでしまったのです」

 

サラマンディーネの言葉を聞いてキラは思わず言葉を失う。

そしてキラ達はあるタワーの場所に到着する。

 

着いたタワーにキラは問う。

 

「此処は?」

 

「ここは『アウラの塔』と私達は呼んでいます。ここは嘗て『ドラグニウム』と呼ばれるのエネルギータワーの制御施設です」

 

「ドラグニウム?」

 

初めて聞くエネルギーにまた頭を傾げるキラ、サラマンディーネはその言葉を頷きながらそのまま中へと案内する。

 

「ドラグニウム、この世界の22世紀末に発見された強大なエネルギーを持つ超対称性粒子の一種です」

 

そしてあるエレベーターの場所に着き、サラマンディーネがそれを操作して下へと向かって行く。

 

「そのエネルギーは世界を照らす筈だったものが、すぐに軍事兵器のエネルギーとして利用され、すぐに戦争へと投入されました」

 

「…(すぐさま戦争への投入…)」

 

その事にキラは思わず過去の出来事を思い出す。

かつて人類はコーディネイターとナチュラルの対立の為に核を使いユニウスセブンを破壊し、そしてそれを妨害するかのようにNジャマーを使って封じ地球を混乱、地球のプラントの戦争を激化させた。

 

それがこの世界に起きていたと知るキラ。

 

「そしてこの世界の環境汚染、民族対立、貧困、格差。どれ一つも解決しないまま人類社会は滅んだのです」

 

「……」

 

彼女が放つ言葉に言葉を失うばかりのキラ、実際にどの種族もすぐに巨大な力を利用し、兵器にする事を優先とする本質がある、しかし間違いだと知るのはいつも後になったり滅んだりして、後悔するばかりであった。

 

「そんな地球に見切りをつけた一部の人間たちは、新天地を求めて旅立ちました」

 

「新天地?」

 

キラはその言葉にどう言う意味なのかがまだ解らず、それにサラマンディーネはキラの方を振り向く。

 

「あの世界、つまりあなた方があの場所、アルゼナルと呼ばれる所のあるあの世界の事です」

 

「っ!?」

 

サラマンディーネの言葉を聞いてキラは一つ気付いた、つまりこの世界とさっきまで居たアンジュ達の世界は二つ存在していたと。

 

「残された人類は汚された地球で生きて行く為に一つの決断を下します」

 

「一つの…決断?」

 

「はい、自らの身体を作り変え、環境に適応する事」

 

「作り変える…っ!まさか!」

 

キラはサラマンディーネの言葉にようやく気が付き、それにサラマンディーネは頷く。

 

「はい、遺伝子操作による生態系ごとです…」

 

「…まさか僕達と同じ様に遺伝子操作を受けていた者が」

 

っとキラの言葉にサラマンディーネは振り向く。

 

「貴方もですか?」

 

「うん、正確には…人口子宮から生まれた…と言うんだけど」

 

その言葉にサラマンディーネは思わず目を見開いた。

そして目的地へと到着したエレベーターは止まり、サラマンディーネは降りて、キラは巨大な空洞が広がる場所を目にして問う。

 

「ここは?」

 

「ここは…アウラが居た場所です」

 

「アウラ?」

 

それにキラは傾げるとサラマンディーネはキラの手を握り、それにキラは思わず見ると目の間にある物が映る。

それは巨大でガレオン級よりも大きい、見た事もないドラゴンだったのだ。

 

「アウラ、汚染された世界に適応する為、自らの肉体を改造した偉大なる子孫」

 

「これが…」

 

「はい、私達は全能であるアウラを助けるべく、あの世界に進出している理由の一つです」

 

それにキラはサラマンディーネの事を聞いて思わず見る。

 

「理由?」

 

「はい、もう一つはあの世界に潜む邪悪なる者を打ち倒し、アウラを連れ去った元凶、エンブリヲを倒す為に!」

 

「エンブリヲ…?」

 

っとキラは初めて聞くその男の名に頭を傾げ、それにサラマンディーネは頷く。

 

「はい、私達の世界を滅ぼし、アウラを利用している奴を私達は許す事は出来ません。その事をあなたに知って欲しかったのです。貴方からは優しさを感じますから」

 

その事にキラは黙り込み、サラマンディーネはキラを連れて宮殿へと戻る。

 

その場に待っていた『ナーガ』と『カナメ』はサラマンディーネの帰りを待っていて、その時キラは気になって居た事を問う。

 

「あの、フリーダム?」

 

「あれなら今私達があずかっております、貴方にはもう少しだけこの場所に居て貰いたいのです、まだ話す事がありますから」

 

そう言ってサラマンディーネはキラを再び部屋に案内し、キラは少しばかりアスランとアンジュの事が心配でたまらなかった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

一方アルゼナルの方ではアスランは独房に居るアンジュにキラの事を伝え、それにアンジュは驚きを隠せない。

 

「キラが!嘘でしょ!?」

 

「本当だ。キラはあのシンギュラーの先に飲み込まれてしまい、消息をたった。本当なら俺は今すぐキラを探しに行きたいんだが、あの司令は…」

 

アスランは当時ジルに言われた事にとてもイラだっていた、素直に諦めろっと言われても簡単に諦める訳がない。

 

「…それでアスラン、貴方はどうするの?」

 

「それはこれから考える、アンジュ、お前は出られるまでジッとしていろ」

 

「アスラン、分かったわ」

 

そう言い残してアスランはその場から離れて行き、アンジュはその場に座り込む。

っがそれをジッと見ていたヒルダが言う。

 

「おいおい、あんな奴の言う事を信用するんのかよ?」

 

「当たり前じゃない、私が唯一信用出来る者だもん」

 

「あんな奴のどこがだよ。男って奴は皆自分勝手だよ」

 

「そのぐらいにして、あんまりキラやアスランの事を悪く言うと許さないわ」

 

っとアンジュはヒルダに少しばかり目線を向き、ヒルダは少し気まずそうな表情になってしまう。

 

 

そして翌日、サリアはアルゼナルの上部で何やら花を集めていた。

ある程度集め終えたサリアが紐で花の枝を結ぶ。

 

「あ~、サリアお姉様だ」

 

サリアが呼ばれた方を見ると、幼年部の子供たちとその担当員が居た。

 

「サリアお姉様に敬礼~」

 

子供たちがサリア達に敬礼をし、サリアも子供たちに向かって敬礼をして、子供たちは「サリアお姉様綺麗~」「おっきくなったら第一中隊に入る~!」とそう言って去って行き。担当員も挨拶をして子供たちの面倒を見に行った。

そんな中でサリアは幼い頃の自分を思い出す。自分もかつては当時司令官ではなかったジルの様になりたいと幼い頃からの夢であった……。

 

『私、絶対お姉様の様になる~!』

 

昔の事を思い出しつつも、サリアはそのまま墓地へと向かう。

そしてその場にメイも居た。

 

サリアはメイの元に来て、結んだ花を出す。

 

「これ、お姉さんに」

 

「毎年有難う、サリア」

 

メイがサリアに花の礼を言い、サリアは墓に花を置く。サリアは立ち上がって微笑みを浮かべていて。

それにメイが問う。

 

「どうしたの?」

 

「幼年部の子供たちに、お姉様って呼ばれた。私…もうそんな年頃?」

 

「まだ17じゃん」

 

「もう17よ…、同い年になっちゃった…『アレクトラ』と」

 

誰かの名前を言うサリアは昔の事を再び思い出す。

 

 

それは約10前、アルゼナルの海岸に、後部から煙を上げるヴィルキスが降下して来た。

ヴィルキスはそのままアルゼナルの海岸に着地する、そしてそこに乗っていたのは当時メイルライダーとして戦っていたアレクトラであるジルだった。

 

「アレクトラ!!」

 

そしてアレクトラの元に、当時司令官であったジャスミンがと部下のマギーと一緒に部下もやって来た。

ジャスミンはアレクトラの右腕が無い事を見て、すぐにマギーに命令する。

 

「マギー!鎮痛剤だ!! ありったけの包帯を持ってこい!!」

 

「い!イエス・マム!!」

 

その様子を上のデッキにいる、まだ当時幼かったサリアとメイが居た。

 

「あれは…お姉様の?」

 

サリアが見ている中で、ジャスミンはアレクトラをヴィルキスから下ろす。

 

「しっかりしろアレクトラ! 一体何があった!?」

 

ジャスミンはアレクトラから事情を聞く、しかしアレクトラはある者からメイに伝言があると言うばかりであった。

それを却下するジャスミンは何があったかと事情を問う。

 

ところがアレクトラは突然ジャスミンへと謝る。

 

「ごめんなさいジャスミン、私じゃあ使えなかった…。私じゃあ…ヴィルキスを使いこなせなかった…!!」

 

っと涙ぐんでジャスミンに謝り、それにはジャスミンは何も言えなかった。

 

「そんな事ないよ!」

 

そこにメイとやって来たサリアが居て、サリアはアレクトラの弱さを否定し、最後に「わたしが全部やっつけるんだから!」とアレクトラに向かって言う。

アレクトラはそれにサリアの頭に手を置いて撫でる。

 

 

サリアはその時の事を思い出し、メイはそれに呟く。

 

「全然覚えてないや」

 

「仕方ないわ、まだ3だったもの」

 

サリアは当時3歳のメイに覚えてない事に仕方ないと言い、メイと共に墓地を離れる。

っがサリアはこの時に思った。その時から数年がたち、司令となったジルはサリアにヴィルキスの搭乗を許さない事にかなり不満感が抱いていた。

 

アンジュに出来てサリアに出来ない事は何か…。

サリアは格納庫に付いて、ヴィルキスを見る。

 

「(一体私に何が足りないの…? アンジュと私に一体何が違うって言うの…? あの子に…ヴィルキスは渡さない!)」

 

そうアンジュに悪意を持つサリアはよりヴィルキスの思いが強くなっていくのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてキラは部屋で昨日サラマンディーネが言った事を考えていた。

今の服装はサラマンディーネが用意した和服で、何やらしっかりとした服装であった。

 

「世界…、ドラゴン…、そしてエンブリヲ…、どれも話が分からなくなって来た」

 

そう考えてると何やら外が騒がしく、それにキラは外に出ると、大量のドラゴンが空に向かって舞い上がっていた。

 

キラはそれを目にしてると、そこにサラマンディーネがやって来る。

 

「キラ殿」

 

「っ、サラマンディーネさん。これは…?」

 

「今から私達はアルゼナルに向けて出陣し、『龍神器』のテストしに行きます」

 

その言葉にキラは驚きを隠せない。

 

「な!何で!?」

 

「あそにはアウラ奪還の脅威となる存在が居ます。それを排除してアウラ奪還の道を切り開きます。申し訳ありませんがキラ殿には此処に居て貰います」

 

そう言い残してサラマンディーネはその場を去って行く。

 

「待って!あそこには僕の友達が!!」

 

キラが慌てて呼び止めても、既にサラマンディーネは去って行き、キラはそれにただ棒立ちするしかなかった。

そしてサラマンディーネが操る龍神器、『焔龍號』はナーガ達の龍神器と共に空に舞い上がり、ドラゴン達と共に門へと向かうのであった。

 



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第14話 アルゼナル襲来

キラがシンギュラーの向こうに消えてから翌日後、アルゼナルの司令室で本を読んでいるパメラに編物をしているヒカルに爪の手入れをしているオリビア、っとヒカルが担当するレーダーに何かをキャッチした。

 

「これは…シンギュラー反応です!」

 

「場所は?」

 

ジルが出現地を特定しろと命令を言い、それにパメラが急いで特定する。

 

「それが…アルゼナル上空です!」

 

何と出現場所はアルゼナル上空、そしてアルゼナルの上空にゲートが出現し、そこから大量のドラゴン達が現れる。

 

「スクーナー級、数は…20…45…70…120…、数特定不能!」

 

「電話もなっていないのにどうして?!」

 

エマが司令室に到着して、電話が鳴らなかった事に疑問を感じていた。しかし今はそんな事を考えてる場合ではない。

ジルはするに基地全体放送で、アルゼナルの皆に言う。

 

「こちらは司令官のジルだ、総員第一戦闘態勢を発令、シンギュラーが基地直上に展開、大量のドラゴンが効果接近中だ。パラメイル第二、第三中隊全機出撃。総員白兵戦準備、対空火器重火器の使用を許可する、総力を持ってドラゴンを撃破せよ」

 

その放送を聞いて、廊下を歩いていたアスランは耳を疑う。

 

「アンジュ達じゃない…? いや…今のあいつ等はまだ独房…こうしてはいられない!」

 

そう言ってアスランはアンジュが居る独房へと向かった。

同時に放送を終えたジルにエマはそれに抗議する。

 

「そんな!全員出たらアルゼナルは誰が護るのですか!?」

 

っとヒカルがエマにライフルを投げ渡し、それに思わず受け取って唖然とする。

 

そしてアルゼナルの対空火器が展開して上空から迫って来るドラゴンを撃ち落として行く。

しかし数が多いのか一向に数が減って行かない。そして一体のドラゴンが司令室へと向かって行き、そのまま突っ込んでいく。

 

パメラとヒカルは慌てて離れて行き、ドラゴンは司令室へと突っ込んだ。

 

「ひっ!!」

 

エマは怯えながら後ずさりをするも、ドラゴンは吠えた時にエマの瞳のハイライトが消えて、エマはマシンガンを構える。

 

「悪い奴…死んじゃえ!!」

 

そのままマシンガンを撃ちまくり、辺り構わずばらまいていく。今の彼女は意識が飛んで行ってしまって暴走している状態。このままではドラゴン以外の被害が増える。

それにジルはエマに手刀で首を打ち、気絶させて、マグナムを構えドラゴンの頭部に撃ちこみ、それによりドラゴンはそのまま絶命する。

 

すぐさまパメラがコンソールを調べる。

 

「司令!通信機とレーダーシステムが!」

 

その事にジルは考えて言う。

 

「…現時刻を持って司令部を破棄、以降通信は臨時司令部にて行う」

 

「「「イエス・マム!」」」

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして格納庫ではサリア達が率いる第一中隊がライフルでスクーナー級を撃ち、格納庫の侵入を防いでいた。

ドラゴンの数が徐々に減って来て、一度銃を下ろす。

 

「大分減って来たみたい」

 

「エレノア隊とベティ隊に感謝ね」

 

クリスとエルシャが第二中隊と第三中隊に感謝し、ロザリーはその逆だった。

 

「アタシ等の分も稼ぎやがって!」

 

っとその時に歌が聞こえて来る。

 

 

『♪~♪~♪』

 

 

「「「っ??」」」

 

そしてドラゴン達が突如アルゼナルから離れて行く光景が目にして、それにヴィヴィアンが指をさす。

 

「あれ? 逃げるよ?」

 

「どういう事でしょう?」

 

ココがドラゴン達の行動に疑問を感じる中、パイロットスーツに着替えアンジュ達の元にアスランがその歌を聞き、独房に居たアンジュも聞こえて来た。

 

「何だ…?」

 

「…歌?」

 

そして上空に居るドラゴン立はゲートの回りを飛び回ると、そのゲートから三機のパラメイルがゆっくりと降下してきた。

その内の一機の紅いパラメイルはヴィルキスと同じ間接部が金色のパラメイルであり、そこから歌が流れていた。

 

その光景を臨時司令部にいるジルが双眼鏡で見ていた。

 

「パラメイルだと…」

 

同じ様にアルゼナルの上空で戦っている中隊の隊長のエレノアもその機体に目を奪われる。

 

「何こいつ? 何処の機体?」

 

皆が見ていると、その機体がいきなり金色の染まり始め、そしてその両肩が露出展開し、そこから光学兵器が発射されてそれにエレノアを含め第二中隊と第三中隊の数名を含むメンバーは消し炭へとなっていた。

中隊を消し去った光学兵器はそのままアルゼナルに直撃し、強烈な光が包み込む。

 

そして静まり返り、サリアは身体を起こし立ち上がらせると目の前に驚きの光景を目にする。

そこには半分ほど削られたアルゼナルを目にした。それをチャンスとしたドラゴン達は一斉に向かって行った。

 

丁度アスランもその衝撃で地面に倒れ込んでいて、気が付いて立ち上がる。

 

「いつつ…、何だったんだ今のは?」

 

「アンジュリーゼ様~!!」

 

っとアスランは前を見ると、モモカが慌てて走って行くのが見えた。

 

「モモカ!」

 

「あっ!アスランさん!」

 

「君もアンジュの所に?」

 

「はい!アンジュリーゼ様が心配で!」

 

息を整えるモモカを見て、アスランは頷く。

 

「よし、俺も今からアンジュの元に向かう、一緒に行こう!」

 

「はい!」

 

そう言ってアスランはモモカと一緒にアンジュとヒルダが居る独房へと向かって行く。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

アスラン達が向かう場所の独房に居るアンジュとヒルダは先ほどの衝撃で体制を崩していて、頭を押さえながら立ち上がって来る。

 

「いっつ~…! んだよ!何が起きんだよ!?」

 

ヒルダは外を見渡そうとすると、目の前にある物が来る。それは突っ込んで来たドラゴンだった。

 

「い!?」

 

ヒルダは慌ててその場を離れると同時にその場所にドラゴンが突っ込んできて、そのまま檻を突き破って死んでいく。

して到着したアスランとモモカはアンジュとヒルダの安否を確かめる。

 

「アンジュ!」

 

「アンジュリーゼ様!ご無事ですか?!」

 

「アスラン!モモカ!」

 

二人の姿を見たアスランは一安心し、モモカが二人の牢獄の錠前の鍵を開ける。

 

「解除!」

 

モモカが檻の鍵を解除した事により、アンジュとモモカは外に出る。

 

「助かったぜ!」

 

「はい!…っ」

 

するとモモカは突如鼻を抑え、モモカの行動にアンジュとヒルダは見る。

 

「モモカ?」

 

「あっ!いえ何も…!」

 

アンジュの問い掛けに慌てて返すモモカ、しかしアスランは分かっていた、流石に一週間も風呂に入っていないアンジュ達の身体は体臭が出ていて臭っていたのだ。

 

「もう~!誰よアルゼナルを襲ったのは!?」

 

「それを調べる為に格納庫に行くぞ、俺に付いて来い!」

 

アスランがそう言ってアンジュ達も向かう中で…。

 

「その前にお風呂に!」

 

「あっ、そうね…」

 

「って!そんな事言ってる場合かよ!!」

 

モモカにお風呂を進められたことにアンジュがそれに頷いたところをヒルダに怒鳴られてしまう。

 

 

謎のパラメイルの光学兵器の攻撃で、戦場の戦況は変わり始めていた。

 

「第二中隊全滅! 第三中隊!隊長と部下四名以下ロスト!」

 

パメラの報告を聞いたジルはすぐさま次の指示を出す。

 

「残存部隊を後退!第一中隊のサリア達に集約。サリア達を出せ!」

 

「了解!」

 

パメラはすぐに通信し、ジルは上空のパラメイルを見ながら思った。

 

「(あの武装…まさかな…)」

 

そして格納庫内でドラゴンと戦っているサリア達に命令が下る。

 

「了解! 皆!パラメイルに騎乗!」

 

「「「イエス・マム!」」」

 

サリア達が自分達のパラメイルに搭乗し、そしてサリア達のパラメイルはデッキへと上げる。その時にジルからサリアに通信が来る。

 

『サリア、もう説明しなくても分かってるな?』

 

「はい」

 

『よし。それとあの敵はアンジュでなければ倒せない。アンジュを出せ』

 

「っ…」

 

その事にサリアは黙り込み、そして思いつめた表情で言う。

 

「なら…私がヴィルキスで出ます!」

 

『黙れ! 今は命令を実行しろ』

 

その事に口出しをされたサリアはとうとう我慢していた事を言う。

 

「どうして…どうしてアンジュなの!? 逃げ出して…命令違反して…勝手なことするアンジュが適任だと言うの!? 私じゃあ無理だと言うの!!!?」

 

『そうだ』

 

っとその事にサリアはショックを受け、ついに我慢袋に穴が開く。

 

「馬鹿にして…!!」

 

するとサリアはアーキバスから降りて、ヴィルキスの方に向かい。それにメイが思わず振り向く。

 

「え!ちょっと!サリア!!」

 

サリアはメイの静止も聞かずにそのままヴィルキスに搭乗して皆に言う。

 

「サリア隊!出撃!!」

 

「「「イエス・マム!!」」」

 

デッキから発進したヴィルキスを含むパラメイル隊はドラゴン迎撃の為に出撃していった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして上空では生き残っていたパラメイル残存隊がドラゴンの攻撃から必死に逃げまくっていた。

内の一体がドラゴンに追われていた。

 

「うわあああああああああああ!!!」

 

っとその時に味方が来てくれて難を逃れる、第一中隊のサリア達がドラゴン達に向けてマシンガンを撃つ。

 

「皆!一度下がって補給を!」

 

「ここはアタシ等が引き受けたなり~!」

 

エルシャとヴィヴィアンが残存隊にそう言って、その部隊は頷きながら撤退して行く。

臨時司令部では発進したのをパメラが確認する。

 

「第一中隊、出撃しました!」

 

「よし…」

 

ジルはパメラの報告を聞いて、無線機を取り話す。

 

「アンジュ、聞こえているな? お前の敵はあの所属不明機のパラメイルだ、未知の大出力破壊を搭載している。注意してかかれ」

 

『…分かっているわ、ジル』

 

っとその音声を聞いたジルは驚いた、何とヴィルキスに乗っているのはアンジュではなくサリアであった事に。

 

「サリア!? 何をしているサリア!降りろ!命令違反だぞ!」

 

『黙ってて!!』

 

それにジルはサリアの異変に気付く。サリアはハンドルを握りながら言う

 

「分からせてあげるわ…、私がアレクトラの代わりに慣れる事を!!」

 

っとそう言って通信を切り、それにジルは舌打ちをする。

 

「チッ、馬鹿が…」

 

一方格納庫ではアスラン達が到着して、アンジュがヴィルキスが無い事に驚く。

 

「ない!?どうして!?」

 

「どう言う事だ?」

 

ヴィルキスが無い事を近くにいたメイがやって来て言う。

 

「実はサリアが勝手に!」

 

メイの指さす方向にアスラン達は見ると、ドラゴン達が居る場所でサリアがヴィルキスを操って戦っていた。

それにアスランは舌打ちをする。

 

「チッ、アンジュ来い!!」

 

アスランがアンジュを呼び、アンジュはアスランの後を付いて行き、それにヒルダは何やら気に入らなかった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして戦場ではサリア達がドラゴンを撃ち落として行く中で、サリアは単体で不明機のパラメイルへと向かう。っが出力が上がらない事にイラ立ちを現す。

 

「もっと!もっと早く飛べるでしょ!?」

 

その時にドラゴンがやって来て、それにサリアは追い払おうとヴィルキスで蹴る、だが逆に弾かれてしまい飛ばされる。

何とか体制を整えて、呼吸を整えながらもヴィルキスの性能に驚きを隠せない。

 

「嘘よ…ヴィルキスがこんなにパワーが無いなんて…(アンジュの時はもっと…!)」

 

サリアが考えてる中でドラゴンが攻めて来る。

その時アスランが乗るインフィニットジャスティスの機銃がドラゴンを撃ち落とし、それにサリアは振り向く。

 

「え!?」

 

『アスラン!もっと近づいて!』

 

『分かっている!落ちないように捕まっていろ!!』

 

「っ!?」

 

「アンジュ!!」

 

ヴィヴィアンがアンジュがやって来た事に喜びの声を上げ、ジャスティスはヴィルキスの横に付く。

アンジュはジャスティスの手の上に乗って、サリアに叫ぶ。

 

「サリア!私の機体返して!! アイツは私がやるわ!」

 

「私のヴィルキスよ!! アンタは基地に帰ってなさい!!」

 

そう言ってサリアは不明機へと向かって行く。

不明機と向かって来たサリアに向き合い、サリアはヴィルキスのライフルで攻撃するも不明機は遊んでいるかの様にかわし、それにはサリアは怒りが溜まる。

 

「馬鹿にして…!」

 

そんな時にジルの言葉を思い出す。

 

《どんなに頑張っても出来ない者は出来ないのだ》

 

それにサリアは否定するかのように頭を横に振る。

 

「そんなはずない! 誰よりも頑張って来たのよ!!私!!」

 

《無駄だ》

 

っと目の前に不明機が現れヴィルキスを蹴り飛ばし、海へと落ちて行き、それに皆は見る。

 

「はっ!アスラン!!」

 

「ああ!行くぞ!!」

 

アスランは急降下してヴィルキスの元に行って、左手でヴィルキスを捕まえて、アンジュはヴィルキスに乗り込む。

 

「さあ退いた!」

 

「えっ?うあああ!!」

 

アンジュはサリアを海にめがけて投げ飛ばすも、それをアスランがジャスティスで上手く受け止める。

 

『馬鹿野郎! 落とす馬鹿があるか!』

 

「馬鹿馬鹿言わないでよ! さ~てやりましょうか!」

 

アンジュはヴィルキスをフライトモードからアサルトモードへと変形させて、不明機へと突っ込んで行く。

不明機もそれに対し右腕のブレードを展開し、ヴィルキスに向かって行き、交互しながら飛んで周り、剣を切り合ったり、銃を使って行った。

 

その光景をアスランは思わず目にしてある事を思い出す。

 

それはかつて戦争時、キラとアスランが互いに殺し合っていた時の事だ、互いの親友の死を元にストライクとイージスが激しい戦闘を繰り広げ…。

 

 

 

《アスラァァァァァァァン!!!》

 

《キラァァァァァァァァァ!!!》

 

 

 

その光景が今の状況と似ているのだ。

 

そしてアンジュはその不明機を蹴り飛ばして、不明機は距離を取り、歌を歌いだす。

 

「♪~♪~」

 

その機体の色は赤色から金色へと変わる。それにアンジュは気づく。

 

「これは…」

 

それは永遠語りと似ていて、それにアンジュは同じように歌いだす。

 

「♪~♪」

 

するとヴィルキスの色が金色に変化して両肩が露出展開し、それを見たアスラン達、そして臨時司令部のジルも目にする。

 

「あれは…!」

 

ヴィルキスと不明機から光学兵器が発射されて、同時にぶつけ合う。

そして強烈な光が包まれて行き、アンジュが目を開けると不思議な空間へと居た。

 

『偽りの民が、何故『真なる星歌』を?』

 

すると目の前に不明機が現れて、そしてその不明機からコクピットが開かれて、中に入っていたサラマンディーネが姿を表す。

 

それにアンジュも負けずに出て来て問いかける。

 

「あなたこそ何者!? その歌は何!!」

 

するとアンジュ達の回りに不思議な光景が広がる、それはアンジュ達が学生の姿や古代の戦士の姿をして、そしてレーサーの姿をしていて、アンジュとサラマンディーネは目を奪われる。

っとサラマンディーネの機体にある警報がなり、それにアンジュは向く。

 

「時が満ちる…か」

 

そう言ってサラマンディーネは機体に戻り、アンジュはそれに慌てて言う。

 

「ちょっと!!」

 

『真実は『アウラ』と共に』

 

そう言いってその機体は残りの機体とドラゴン達と共にゲートの先へと消えていった。

アンジュはその事に唖然とし、見ていたアスランは少しばかり考えていた。

 

「(あれは…どう言う事だ?)」

 

そしてアルゼナルで見ていたジルは納得の表情をする。

 

「なるほど、最後の鍵は『歌』か」

 

っと煙草をくわえ、火をつけるジルはそう呟く。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

その頃キラは宮殿の和室でただ黙って座っていて考えていた。

 

「(どうして…彼女があんなことを?)」

 

っとその時襖が開いて、キラは振り向くとそこにはサラマンディーネが立っていた。

 

「サラマンディーネさん!」

 

「キラ殿、つい先ほどに出陣した先であなたと同じ機体をした物と会いました」

 

サラマンディーネが言った言葉にキラは思わず振り向く。

 

「アスラン!?アスランと会ったの!?」

 

「いえ、ただ見かけただけですので、それでお話があるのですが…」

 

サラマンディーネがキラにある事を話しかけ、それをキラはただ黙って聞いていたのだった。

 



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第15話 奇襲 前編

ある場所にミスルギ皇国から各国の首相達が集まっていて、彼らの回りにはアルゼナルを襲撃しているドラゴンの映像が映し出されていた。

 

「ドラゴンが自ら攻めて来るとは…」

 

「それにこのパラメイル、まさかドラゴンを引き連れて?」

 

一人の首相の目に映る映像にはあの不明機が映し出されていた。

 

「シンギュラーの管理はミスルギ皇家のお役目、ジュリオ…いえ陛下。ご説明を」

 

女性の首相がジュリオにシンギュラーの発生に付いて聞いてきた。

しかしジュリオは頭を傾げながら言う。

 

「それが…『暁ノ御柱』には起動した形跡が全くないのです」

 

「馬鹿な!あり得ん」

 

肥満な首相がジュリオの説明に納得が行かない事に拳をテーブルに叩き付ける。

 

「直ちにアルゼナルを再建し、力を増強せねば」

 

「だが、そうも行かんのだ」

 

っと年老いた首相がマナで次の映像を映し出す。すると光学兵器を発射するヴィルキスの映像が映し出された。

 

「この機体…まさか!」

 

「ヴィルキスだ」

 

それにはジュリオを含め各国の首相達は言葉を詰まらせていた。

 

「前の反乱の時に破壊された筈では?」

 

「アルゼナルの管理はローゼンブルム王家の役目。何故放置していた?」

 

それにはローゼンブルム王家の首相は表情を歪めながら黙る。

 

「監察官からは異常なしと報告を受けていた…」

 

「まんまとノーマにあしらわれていたと言う事か、無能め」

 

そう肥満体の首相は腕を組んで呟く。

 

「これではローゼンブルム王家の娘がノーマに連れ去れてしまうのも無理もない」

 

「ぬ!ミスティの事を愚弄するならば、お主とはいえ容赦せん!」

 

するとそれをジュリオが間に入る。

 

「二人共お気を静かに」

 

「黙れ小僧!そもそも我が娘を攫ったのはお主の妹であろう!」

 

その事にジュリオはもう関係ない顔で言う。

 

「あれはもう私の妹ではありません」

 

「そんな言い訳が通じるか!この罪人の一族が!」

 

「お止めなさい! 今はどう世界を守って行くかを話し合うべき時では?」

 

女性の首相が皆にそう言い聞かせ、一人の首相が言う。

 

「ノーマが使えない以上、私達人類が戦うしかないのでしょうか?」

 

っとその事に各国の首相達は思わず戸惑いの声が上がる、そして木の裏で聞いていた一人の男性が立ち上がる。

 

「どうしようもないな…」

 

「え、エンブリヲ様?!」

 

一人の首相が思わず言う。

エンブリヲは呆れた様子で髪を指でなぞる様に回す。

 

「本当にどうしようもない…」

 

「し、しかし…ヴィルキスがある以上アルゼナルを再建させるには…」

 

「なら選択権は二つだ」

 

それに皆はエンブリヲに目線が行く。

 

「一、ドラゴンに全面降伏する」

 

「「「!!?」」」

 

それには思わず息を飲む首相達、エンブリヲは構わず言う。

 

「二、ドラゴンを全滅させる…」

 

「そ!そんな…!」

 

「だから…三、世界を作り直す」

 

っとそれにはジュリオが反応する。

 

「え?」

 

「全部壊してリセットする、害虫を殺し土を入れ替える。正常な世界に」

 

エンブリヲは肩にのって来た小鳥をなでながら言う。

 

「壊して作り直す…、そんな事が可能なのですか?!」

 

ジュリオは理論上不可能の事を問いかけ、それにエンブリヲは笑みを浮かばせながら言う。

 

「すべての『ラグナメイル』とメイルライダーが揃えばね」

 

「素晴らしい!!やりましょう!! そもそも間違っていたのです!いまいましいノーマと言う存在も!奴らを使わねばならないこの世界も!」

 

「馬鹿め!今までの文明を捨てろと言うのか!?」

 

他の首相が反対意見を出すも、それをジュリオは問う。

 

「他に策がありますか?」

 

っとその事に皆は口が止まってしまう。

 

「他に…どうする事もないな」

 

その様子を見てエンブリヲは笑みを浮かばせ、ジュリオを呼ぶ。

呼ばれたジュリオはエンブリヲからある物を渡される。

 

「これは私が自ら創り上げたコレクションの物の鍵だ、扱いには十分気を付けてくれたまえ、期待しているよ」

 

「お任せ下さい!エンブリヲ様!!」

 

ジュリオはそう言い、エンブリヲと他の首相達は消えていき、そしてジュリオはマナを解いてミスルギの部屋へと戻っていた。

 

「出るぞリィザ!」

 

リィザと共に出るジュリオ、彼等はアルゼナルに向かい、忌々しいノーマを消しに向かった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてアルゼナルでは損害が大きかった外壁はどうにもならず、そのままの状態だった。

その場所でジャスミンがドラゴンの死体を大きな穴に落としていく。格納庫ではメイが必死にパラメイルの修理を当たっていて、医務室ではマギーは負傷者の手当てをしていた。

 

格納庫ではジルがメイルライダー達を集めていた。

 

「生き残ったのはこれだけか…、おいお前」

 

ジルに呼ばれたアスランはジルの方を見る。

 

「何でしょう」

 

「お前は以前軍に入っていたと言っていたな? そこで部隊の指揮を取った事は?」

 

「今もですが…、司令になってからはずっとです」

 

「…では残存部隊の隊長をアスラン、一時的だがお前に命ずる。副隊長はヒルダ、エルシャとヴィヴィアンは補佐に付け」

 

その事にロザリーとクリスが抗議を始める。

 

「はぁっ?!こいつ脱走犯ですよ!? しかも男が隊長って!」

 

「サリアで良いじゃないですか!」

 

「あいつなら、命令違反で反省房の中だ」

 

サリアは命令違反によって反省房の中に居る、そしてヴィルキスに乗りこなせなかった事とジルの嘘にショックを受けていた。

 

その事を黙って聞いていたヒルダがロザリーとクリスの方を向く。

 

「文句あんならあんたやれば?」

 

「べ!別に隊長と副隊長はこの二人で良いよな!?なっ!」

 

それに思わずクリスも慌てて頷く。

ジルはそれを無視するかのように残存部隊に命令する。

 

「パラメイル隊は部隊編成後、警戒体制に入れ」

 

「「「イエス・マム!!」」」

 

アンジュ達は敬礼をしてその場に離れて行き、ジルは一度煙草を吸い出す。

アスランはジルに近寄り、問いかける。

 

「お聞きしてよろしいでしょうか」

 

「何だ?」

 

「…貴女は、ヴィルキスの隠された能力をご存知だったのですか? 前の戦闘で現れたあの姿…貴女は知っていた筈」

 

「フッ…」

 

しらを切るジルにアスランは再び問いかけようとした時だった。

 

「ねえ、私の謹慎…終わったのよね?」

 

「アンジュ」

 

アスランの横にアンジュがやって来て、モモカがその後ろに控えていた。

 

「ああ、そうだ」

 

「なら…全部教えて…、この世界の真実を」

 

「何?」

 

「このクソ忙しい時にか?」

 

ジルはタイミングを間違えてると言いたいが、それをアンジュは全く聞こうとせず、すぐにも聞きたがっていた。

 

「皆助かったの、誰のお蔭?」

 

「…良いだろう、ただし侍女はなしだ」

 

「待って下さい!俺の話は終わっていません!!」

 

アスランが問いかけようとするも、ジルは無視して行き、嫌気が出て来る。

 

「くっ!」

 

「アスラン、私が聞いてくるわ。あなた達が聞きたがっている事、私も知りたいし」

 

アンジュが横を通り過ぎる際に小声で話しかけ、その事にアスランは渋々頷くしかなかった。

 

「…分かった、気を付けろよ」

 

「分かってるわ」

 

そう言ってアンジュは向かい、残されたモモカは同行できない事に涙を流したのは定かではない。

 

ヒルダはアンジュがどこかに向かった事に振り向く。

 

「おい何処に行くんだアンジュ!!たくっ!クソ忙しいってのに!」

 

「アイツの事はいい、それよりもヴィヴィアンの姿は?」

 

「あら?そう言えば何処に?」

 

エルシャもようやくヴィヴィアンの存在に気付き、いない事が分かった。

丁度その頃、部屋で寝ていたヴィヴィアン。

っと寝ているハンモックが急に落ちて、それに痛がる。

 

「いった~い、落ちてる~?何で…?うわ!寝過ごシング!」

 

ヴィヴィアンは慌てて皆の所に向かう。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

ドラゴンの世界では、キラがパイロットスーツに着替えサラマンディーネの後に付いて行った。

 

地下格納庫で保管されているストライクフリーダムの元に付き、キラはコクピットの元に向かい際にサラマンディーネと向かい合う。

 

「あの…、本当にいいんですか?」

 

「はい、貴方なら私達の約束を守って頂けると信じてます。それに貴方を返すのも理由が貴方の目的があっての事ですからね」

 

「…ありがとう。必ずアスランやアンジュ達に話してみる」

 

そう言ってキラはコクピットに向かい、乗り込んでフリーダムを起動する。

起動したフリーダムは地下格納庫から出て、上空へと飛んで行く。

 

見送るサラマンディーネは別の場所で待機しているナーガ達に通信を入れる。

 

「ナーガ、カナメ」

 

『はい!』

 

『特異点開放します!』

 

キラの目の前にシンギュラーが開き、キラはそこを通ってアスラン達の元に戻って行く。

 

 

 

そしてシンギュラーを出たキラの戻った先に丁度アルゼナルがあって、そこを見るとアルゼナルの半分がえぐられていて、それをキラは言葉を失くしつつアルゼナルへと戻って行く。

 

丁度アルゼナルにまたシンギュラーが出たと放送が入ったのを聞いたアスラン達。

 

「何だよ!またか!?」

 

「仕方ない、行くぞ!」

 

っとアスランが言った時に放送が流れる。

 

『シンギュラーから出たのは…フリーダムです!!』

 

「っ!キラ!?」

 

アスランはその事を聞いて驚き、すぐさま格納庫へと向かう。

 

格納庫でキラがフリーダムから降りて来て、整備班達はそれに慌て、メイもキラがシンギュラーから無事戻って来た事に驚いていた。

 

「キラ!!」

 

キラはアスランが駆け寄って来るのを見て、アスランの方を見る。

 

「アスラン」

 

「キラ!無事だったのか!? 今まで何をしていたんだ!?」

 

「…その事でアスラン、話があるんだ。今時間ある?それとアンジュは何処?」

 

アスランがそれを聞くその時だった。

 

『総員!第一種戦闘態勢!ドラゴンです!基地内にドラゴンの生き残りです!!』

 

それにキラ達は振り向き、アスランと向かう。

 

「どうやら今はその時じゃない様だ」

 

「…本当だったら今すぐ話をしたいんだけど…。行こうアスラン…でも出来ればその……ドラゴンを撃たないでほしいんだ」

 

キラの言葉に耳を疑うアスラン。

疑問を感じつつ二人はすぐにその場から離れて行った。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

それはかれこれ数分ほど前になる、ヴィヴィアンは自分の目線が高い事に違和感を感じていた。

 

「何か…背が伸びた気がする? 成長期かな?」

 

そこにエマが通り過ぎて、ヴィヴィアンは気づく。

 

「あ!エマ監察官だ! おーい!」

 

「っ!? え!エマ監察官だーー!!!」

 

悲鳴を上げながらエマはそのまま気を失い、慌ててヴィヴィアンは駆け寄る。

 

「うわ!大丈夫…って!うわ!」

 

ヴィヴィアンは自分の手を見て驚く、それは全く自分の手じゃない何かの手だった。

 

「何じゃこりゃ?! …うえ!」

 

っとヴィヴィアンは目の前にあった鏡を見て驚く。今のヴィヴィアンは人ではなく『ドラゴン』だったからだ。

 

「これあたし~!!?」

 

「なに?今の」

 

偶然に近くに居たパメラ達が駆け寄り、ドラゴン態のヴィヴィアンを見て悲鳴を上げる。

 

「「「うわあああああああ!!!」」」

 

「うわ~~~!!!」

 

ヴィヴィアンも慌ててその場を離れて行き、パメラがすぐに無線で基地内に知らせた。

 

そして今の時間帯となり、臨時司令部で指揮を暫定副隊長のヒルダは各自に指示を与えていた。

 

「ロザリーとクリスは居住区、ココとミランダは整備区、エルシャはサリアを出してジャスミンモールを捜索」

 

「イエス・マム」

 

「他は此処で警備、ヴィヴィアン?ヴィヴィアンは何処?」

 

ヒルダはヴィヴィアンが居ない事に問い、エルシャはそれに答える。

 

「それが部屋にも居なくて…」

 

「ヴィヴィアン…」

 

ナオミは心配しつつも、丁度そこにキラとアスランがやって来る。

 

「あっ!キラ!」

 

「お前!良い所に帰って来たな…」

 

「キラ!」

 

キラが振り向くとアンジュも丁度やって来て、キラの元に近寄る。

 

「何処に行ってたのよ!!」

 

「アンジュ、後で説明するから…今は」

 

っとそう言ってキラはアスランと向き合い、それにアスランは頷いて命令を下す。

 

「よし!ヒルダとナオミは海岸部を探せ!俺とキラとアンジュはアルゼナルの上部だ!」

 

「了解」

 

「「「イエス・マスター!」」」

 

その事にアスランは何やら違和感を感じるも、気にせずにそのままキラとアンジュと共にアルゼナル上部へと向かう。

この時アスランはキラにある事を聞く。

 

「それよりもキラ、お前ドラゴンを撃つなとはどう言う事だ?」

 

「えっ?どう言う事?」

 

アンジュがその事を聞き、キラがそれを言う。

 

「実は…」

 

 

 

その頃ヴィヴィアンは何とか食堂の方に逃げ切っていた。

 

『はぁ~お腹空いた~…、う~…何でこんな事に?』

 

すると厨房からなにやら良いによいがし、それにヴィヴィアンはつられて行く。

目の先には土鍋にカレーが入れてあった。

 

『やっぱりカレーだ~! いっただっきま~す!』

 

っが土鍋を持った瞬間につぶれてしまい、それにヴィヴィアンは頭を傾げる。

 

『あれ? どうなってるの? あっアタシ今この状態だった』

 

「見つけたわ!!」

 

っとある声が聞こえ、ヴィヴィアンは振り向くとそこにサリアとエルシャがライフルを持って構えていた。

 

「『サリア!エルシャ!!』クワアアアアア!!」

 

サリア達がドラゴン態のヴィヴィアンに向かってライフルを撃ち、それに慌てて逃げるヴィヴィアン。

 

『うわ~~~!!』

 

「追うわよ!!」

 

サリア達がその後を追いかけ、外へ逃げたドラゴン態のヴィヴィアンは丁度アルゼナル上部に出て来たキラ達と出会う。

 

「いた!!」

 

キラが指先をヴィヴィアンに向け、それにアスランとアンジュは見る。

その時にドラゴン態のヴィヴィアンが何かを歌い出し、それを見たアンジュは聞いた事歌だった。

 

「これは…」

 

その歌はアンジュが歌っていた『永遠語り』によく似ていて、それにアンジュは歌い出し歩き出す。それにドラゴン態のヴィヴィアンも同じように歌い出しアンジュの元にゆっくりと行く。

キラとアスランはアンジュが歌いだしたのを見て、様子を見ていた。

 

っとそこにヒルダ達もやって来る。

 

「何やってんだよお前!」

 

ヒルダ達がライフルを構えた瞬間、アンジュがヒルダ達の足もとを撃ち、それに思わずロザリーは驚いてしまう。

 

「うわっ!! 何すんだよお前!!」

 

アンジュは歌い続け、そのままドラゴン態のヴィヴィアンに近寄る。

 

その時にサリア達が来て、サリアがライフルを構える。

 

「離れなさい!!」

 

っがその時にジルがサリアのライフルを下ろさせて、それにサリアは見る。

 

「えっ?ジル?!」

 

そしてアンジュはドラゴンと向き合い、アンジュが触れた瞬間ドラゴンは一瞬に霧状になって行った。

 

「ここでクイズです!人間なのにドラゴンなのってなーんだ?」

 

元の人間に戻ったヴィヴィアンにアンジュは唖然とするしかなかった。

その時キラとアスランは顔を横に向けて、ヴィヴィアンの今の姿を見ないようにしていた。

 

「あっ違うかドラゴンなのに人間…? あれれ…意味分かんないよ…!」

 

自分がドラゴンだった事に戸惑うヴィヴィアンは泣いて混乱している中で、アンジュは優しく声を掛ける。

 

「分かったよ私は…、ヴィヴィアンだって」

 

「あ、有難う…アンジュ」

 

っとヴィヴィアンはアンジュに抱き付いて泣きつき、後からやって来るナオミとモモカ達は今の光景に目を奪われる。

 

「アンジュリーゼ様…」

 

「どうなってるの?」

 

「今ドラゴンからヴィヴィアンが出て来た様に見えたけど」

 

そこにマギーがやって来て、ヴィヴィアンに麻酔を撃ちこみヴィヴィアンを眠らせて、マギーはヴィヴィアンを抱いてその場から去って行く。

 

見送ったキラ達はアルゼナルの抉られた場所に捨てられているドラゴンの死体の山を見る。

それにキラは慌ててその場から去って、ドラゴンの死体の山に行く。

 

「キラ!…っ!」

 

アスランが叫んだその時にヴィヴィアンの言葉を思い出す。

 

『人間なのにドラゴンなのってなーんだ? ドラゴンなのに人間…?あれれ?』

 

「っ!? まさか…キラが“言った言葉”は本当に!!」

 

アスランは思わずあの場所に行き、アンジュもアスランの後を付いて行く。

 

「アンジュリーゼ様!」

 

そしてジャスミンが死体を集めた所でガソリンをまき、ライターに火をつける、っとバルカンがキラ達に向かって吠え、それにジャスミンは振り向く。

 

「待ってジャスミン!!!」

 

「来るんじゃないよ!」

 

キラの制止を無視し、ジャスミンはライターを死体の山に投げ、死体を燃やし始めた。

 

「っ!遅かった…!」

 

遅かったキラは燃えている死体の近くで止まり、アスランもアンジュその場に来て驚きの光景を目にする。ドラゴンの死体の中に人間の姿も紛れていた。

それにはアスラン達は言葉を失う。同時にヒルダ達も来る。

 

「おい!一体何が…!?」

 

「何…これ?」

 

「ドラゴンが…人間に」

 

「そう…ドラゴンは人間だったんだ」

 

キラの言葉にヒルダ達は向き、キラは悲しい表情で言葉を語り続ける。

 

「僕は…向こうの世界で知ったんだ…。ドラゴンは…元は人間だって」

 

その言葉と光景に驚きながら皆がくぎ付けられてる中で煙草を持っているジルが来る。

 

「よくある話だろ?『化け物の正体は人間でした』…なーんて」

 

「っ!!貴方は知っていたんですか!!!? ドラゴンの正体を!!!」

 

「ああ、勿論だ」

 

キラはジルの言葉を聞いて息を飲みにアンジュは驚く表情をして再びドラゴンを見る。そして今までの事を思い出す。自分がドラゴンを殺し……そして倒していく光景に。

っとアンジュは思わず口を抑え、地面に向けて嘔吐する。

 

「う!うえぇぇぇぇ!?!」

 

「っ!!? アンジュ!!」

 

「アンジュリーゼ様!!」

 

ヒルダとモモカが心配する中でアンジュの頭の中は混乱していた。

 

「私…人間を殺していた…? この手で…?この手で…人間を?」

 

それにジルは煙草を吸い、吹かしながら言う。

 

「気に入ってたんだろ?ドラゴンを殺して金を稼ぐ、そんな暮らしが」

 

「っ!!貴方は…!!!」

 

キラとアスランはジルの言葉を聞いて怒りが込みあがり、そしてアンジュはジルを睨みながら怒鳴る。

 

「くたばれクソ女!!!もうヴィルキスには乗らない!!ドラゴンも殺さない!!! 『リベルタス』なんてクソくらいよ!!!」

 

その事にサリアはアンジュが知らないリベルタスを知っている事に思わず反応する。

 

「『神様』に買い殺されたままで良いなら、そうすればいい」

 

そう言い残してジルは去って行き、キラはジルの残忍なやり方に納得出来ないばかりであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

ジルが臨時司令部に戻って行く所だった。

 

「『神様』か…」

 

っと誰かの声が聞こえ、ジルは足を止めて振り向くと、そこにはエンブリヲが立っていた。

 

「私は自分から名乗った事は一度もないぞ? まあ~『創造主』と言う意味であれば…正解かもしれんがな」

 

世界最高指導者がアルゼナルに居た事にジルはすぐさまマグナムを取り出してエンブリヲに撃ちこむ、しかし弾丸はエンブリヲの身体をすり抜ける様に後ろに木に当たり、ジルはエンブリヲを睨む。

 

「エンブリヲ…!!!」

 

「怒った顔も良い表情だなアレクトラ…、今は司令官のジルか…ん?」

 

エンブリヲは何かを感じ取って上を見る。

 

「来たようだ…」

 

エンブリヲの見る方向にルも同じ方を見るとマナの映像が映し出される。

 

『こちらはノーマ管理委員会直属、国際救助艦隊です。ノーマの皆さんドラゴンとの戦闘──』

 

っと気を取られたジルは前を見ると、既にエンブリヲの姿はなく。それに舌打ちをしてその場から離れて行く。

その放送をキラ達も見ていたが、キラとアスランの心の中では何やら嫌な予感しかしなかった。

 

 

その中でアルゼナル付近の海域で、ミスルギ艦隊がアルゼナルへと進攻していた。

その艦の中で旗艦『エンペラージュリオ一世』に乗艦しているジュリオが笑みを浮かばせていた。

 

「さあ、最後の再会と行こうじゃないか。アンジュリーゼ」

 



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第16話 奇襲 後編

アルゼナルに突如流されるノーマへの救援放送、その放送を聞いていたモモカは嬉しながらアンジュに言う。

 

「アンジュリーゼ様!助けです! 助けが来ましたよ!」

 

それにアンジュは嬉しくなさそうな表情をし、聞いていたキラとアスランは何やら違和感を感じていた。

 

「アスラン…」

 

「ああ、何か嫌な予感がするな」

 

「えっ?どう言う事」

 

アスランの言葉にアンジュは振り向き、キラとアスランはアンジュの方を向いて言う。

 

「アンジュ、君は体験したはずだよ。ミスルギ皇国で君が受けたあの仕打ち…残忍な裁きを」

 

「それにノーマと言う存在を否定し続けていた者がいきなり助けに来るのはおかしい、これはきっと罠だ」

 

っと二人の言葉にアンジュだけじゃなく、モモカやヒルダ達が思わず息を飲み、放送されている映像を見て。ジャスミンはキラとアスランの推理を聞いて感心する。

 

「ほぉ~、なかなかいい推理じゃないか」

 

「考えれば分かる事ですよ。アスラン」

 

「ああ、アンジュ。お前たちは中に戻れ! もうじき此処は本格的な戦闘になるぞ!」

 

そう言ってキラとアスランはその場から走って行き、格納庫へ向かう。

 

「ちょっとキラ!アスラン!」

 

アンジュは二人の後ろ姿をただ見つめるだけであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして臨時司令部でパメラ達がその放送を見ていた。

 

「耳を貸すなよ、たわ言だ」

 

っとパメラ達が振り返るとそこにジルがやって来て命令を言う。

 

「対空防御態勢!今すぐだ!」

 

「「「イエス・マム!」」」

 

ジルの命令と同時にアルゼナルは対空防御態勢へと入る。

アルゼナルの動きを知ったミスルギ艦隊、その事を兵士はジュリオに報告する。

 

「アルゼナル、対空兵器を起動しました!」

 

「やれやれ、平和的に事を進めたかったが…」

 

ジュリオは呆れると言わんばかりにマイクを取り、全艦艇に流す。

 

「旗艦エンペラージュリオ一世より全艦艇へ、たった今ノーマはこちらの救援を拒絶した。

これは我々…いや全人類に対する明白は反逆である、断じて見過ごすわけには行かない、全艦攻撃開始!そして“あれ”を出せ!!」

 

命令と同時に全艦隊からミサイルが発射されて、後方に控えていた大型艦からハッチが開く。

その中からフリーダム達と同じサイズ…MSの『ウィンダム』と『ディン』が数十機現れて、ウィンダムは『ジョットストライカーパック』を装備していて、それを使い空中に飛び立ち、ディンもその後を追い飛んで行く。

 

それにいち早く察知したバルカンが吠え、ジャスミンが皆に言う。

 

「小娘共!来るよ!」

 

「え?」

 

ジャスミンが逃げて行くのをモモカは何が来るか分からず、アンジュはモモカの手を引っ張って行く。

アルゼナルにミサイルが降り注ぎ、それに対空兵器が撃ち落とすも、一部は防ぎきれずにアルゼナルに直撃する。アンジュ達は何とか爆風に巻き込まれずにアルゼナル内部へと退避した。

 

そしてストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを発進させたキラとアスランはすぐさま迎撃に入る。

 

キラはマルチロックシステムを使い、ビームライフル二丁とレール砲二門と複相ビーム砲を使って連射し、次々襲い掛かって来るミサイルを撃ち落として行く。

アスランも同じ様にビームライフルとファトゥム-01のビーム砲を使って撃ちおとして行った。

 

すると一発のビームが襲い掛かって来て、それにキラとアスランはかわして撃って来た方を見ると、ウィンダムとディンの連隊がやって来るのをキラとアスランは驚く。

 

「MS部隊!?」

 

「あの時プロヴィデンスが出て来たと考えれば、この世界にMSが存在して間違いないと思っていた。やはりここには俺達以外にも誰か来ている!」

 

そう言いつつキラとアスランはMS部隊を迎撃する為、武器を構えるのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

基地内に避難したアンジュ達はアルゼナルを攻撃してくる艦隊にロザリーはその事に驚く。

 

「本当に攻撃して来やがった!」

 

「救助なんて嘘だったんだ…」

 

クリスは予想通りの事に思わず言葉を漏らす。っとそこにジルの放送が流れる。

 

『諸君…これが人間だ。人間は我々を助ける気などさらさらない上に完全に使い尽くして切り捨てるのが本心だ、よって我らは人間の監視下を離れ、反攻作戦を実行する。作戦名『リベルタス』』

 

っと聞いたサリア、メイ、マギー、ジャスミンの四人はそれに表情を硬め、それにアンジュは嫌みが出て来る。

 

『共に来るものは、アルゼナルの最下層に集結せよ』

 

放送を終え、ジルは最下層へと続くエレベーターでパメラ達に向いて問う。

 

「お前たちはどうする」

 

「私達も参加します!」

 

それに二人は頷き、着いた先に何やらブリッジらしき場所に着く。

 

「いつの間にこんな…?」

 

「パメラは操縦席だ、ヒカリはレーダー席、オリビエは通信席へと座れ」

 

ジルはそう三人に命令し、ジルはすぐにサリアに通信を入れる。

 

「サリア、何がなんでもアンジュを連れて来い」

 

『ええ、分かってるわジル』

 

そう耳にインカムで小さな声で話すサリアはアンジュを見てジルに言った。

 

そんな中でロザリーが問い掛けて来る。

 

「反攻ってどう言う事だよ!?」

 

「指令に従って死ぬか、人間共に殺されるか選べって事でしょう? こちらヒルダ了解、指揮下に入ります」

 

「「えっ?!」」

 

ロザリーとクリスはヒルダの言葉に驚き、ヒルダは笑みを浮かばせて言う。

 

「人間達には恨みにも憎しみもある、反旗を覆すには良い機会さ」

 

『ヒルダ、現在あの二人が外で攻撃を食い止めている。合流して迎撃しろ』

 

そうジルが通信をして来て終わらせ、その時にエルシャが来る。

 

「私も行くわヒルダちゃん、守らなくちゃね、大切な物を…」

 

それに対しクリスが反抗する。

 

「人間に歯向かって、生きて行ける訳ないでしょ!?」

 

「やってみないと分からないさ、なあアンジュ…?」

 

ヒルダがアンジュの方を見ると、アンジュの姿がどこにも居なかった。

 

 

 

一方アルゼナル外の方では、キラとアスランがウィンダムとディンの手足と頭をを撃ちおとし、アルゼナルに近づけないようにさせていた。

 

「数が多い!」

 

「一体どれほどのMS部隊がいるんだ?!」

 

そう言っているとヴィンダム一機がキラとアスランの横を通り過ぎ、それにアスランは振り向く。

 

「不味い!一機向かった!」

 

「アスランは行って!!ここは僕が何とかするから!!」

 

「分かった!!」

 

アスランはキラの言葉に甘えてアルゼナルに向かい、キラは迎撃を続ける。

すると下から攻撃をうけ、キラは見ると大破したはずのウィンダムとディンが攻撃をしていて、それにキラは引っかかっていた。

 

「大破したはずなの…どうして? …まさか!」

 

キラはすぐに熱センサーでコクピットを確認する。するとコクピットの内部に熱反応がなかった。

 

「やっぱり!無人機!? いつの間にこんな物を!?」

 

敵のMSが無人機だと知ったキラはすぐさまアスランに連絡を取る。

 

「アスラン!敵のMSは無人機だよ!」

 

『何だって!?俺達の所でもそんな物は開発されていない!』

 

「恐らくこの世界で創り上げたんだと思う! 直接破壊するしかない!」

 

『分かった!無理はするな!』

 

そう言って通信を切り、キラはすぐにビームライフルを構えて撃ち、ウィンダムの腹部とディンの胴体を撃って爆破させる。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

外で戦闘が繰り広げられてる中で格納庫ではパラメイルの移送が進められていた。

 

「ヴィルキスが最優先!弾薬の装填は後回し!非常用エレベーターに載せるんだ!!」

 

メイが整備班を最優先に動かし、ヴィルキスを最下層に送らせようとしていた。

そこにヒルダがやって来る。

 

「メイ、発進準備は?」

 

「うん!いつでも行けるよ!」

 

っと電力が突如落ちて、それに驚く皆。

 

「何だ?!」

 

そして最下層にある船の中に居るジルはすぐさま聞く。

 

「砲撃による損傷か?」

 

「侵入者による攻撃です!」

 

マナの特殊部隊にアルゼナルの電力を落とされた事に、放送が流れる。

 

『アルゼナル内に侵入者があり、敵の目的は不明!総員退避!!』

 

それを聞いたエルシャはその場から離れる。

ヒルダはエルシャの行動を見て問う。

 

「おいエルシャ!」

 

「ゴメン!!すぐ戻るから!!」

 

そう言ってその場を離れて行く。その時にジルから放送が来る。

 

『デッキ上の各員に告ぐ、敵の狙いはヴィルキスだ、デッキ上の下層へと運搬を最優先事項とする!』

 

聞いたメイはすぐさま整備班達に言う。

 

「整備班集合!ヴィルキスは手動で下ろす!」

 

「「「イエス・マム!!」」」

 

整備班の一人が手動で動かそうとした時に頭を撃たれてしまう、それにヒルダ達が振り向くとマナの特殊部隊が現れて攻撃を仕掛けて来た。

 

 

同時に医務室の方でも特殊部隊がやって来て、マギーが応戦していた。

 

「重傷者の搬送が最優先だ!ちょっとぐらい内蔵出ても我慢しろ!」

 

マギーが指示を出していると隠れていたエマが出て来る。

 

「助けて!私ノーマじゃな『馬鹿!!』うわっ!!」

 

マギーがエマを押し倒し、エマの帽子が撃たれて穴が開く。

 

「殺されたいのか!? チッ、此処はもう駄目か。撤退する、ヴィヴィアン!」

 

ヴィヴィアンを運ぼうとマギーが部屋に入ると、既に特殊部隊が中にいて、端末を開いて確認していた。

 

「該当アリ、メイルライダーです」

 

「その子、どうする気だ!」

 

マギーが銃を向けた瞬間、特殊部隊がすぐさま撃って来て、マギーはすぐさま出る。

 

「ヴィヴィアン!!」

 

マギーが返事をしても、今のヴィヴィアンは気を失っていて返事がなかった。

 

 

そしてアンジュはサリアに連れられて最下層へと向かわされていた。

アンジュの他にジャスミンも居て、モモカを担いで向かっていた。

 

「良いの?この基地が大変なんでしょ?」

 

「言ったでしょ、貴方には大事な使命があるって」

 

「関係ないわそんな事…、それにあんた達の使命なんて分かりたくもないわ」

 

リベルタスには協力する気はないアンジュ、それを言い聞かせようとするサリアも何とかするも駄目だった。

 

「では息を止めて下さい、アンジュリーゼ様!」

 

するとモモカがこしょうを振りまき、それに辺り一面こしょうまみれとなり、息が出来なくなった。

 

「アンジュ!何処なの!くしゅん!!」

 

その隙にアンジュとモモカは何とか逃げ出した。

モモカのとっさの行動にアンジュは感心した。

 

「随分大胆な事をするようになったわねくしゅ!」

 

「アンジュリーゼ様の影響でくしゅ!」

 

鼻をかみながらもその場から何とか逃げるアンジュとモモカ。

 

そしてジルがサリアに連絡を取っていた。

 

「アンジュは?」

 

『逃げれたくしゅ!』

 

「連れ戻せ…!!」

 

サリアの報告を聞いたジルは歯を噛みしめ、アンジュの捕獲の命令を与えるのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして食堂に付いたアンジュとモモカ、モモカはマナの光で灯りを照らしていた。

 

「こちらですアンジュリーゼ様、ここから行けそうです」

 

灯りを前に向けた途端二人は息を飲む、そこには焼け焦げた人が沢山いた。それにアンジュはまたしても嘔吐し、それにモモカは駆け寄る。

 

「アンジュリーゼ様! み!水!!」

 

すぐさま食堂のキッチンに向かったモモカ、アンジュはあたりを見渡していると。

 

「大切な物は失ってから気づく、何時の時代も変わらない心理だ。全く酷い事をするのだな、私はこんな事を許した覚えはないんだが」

 

そこに謎の男が居て、それにアンジュは振り向いてみる。

 

その男こそエンブリヲだった。

 

「君のお兄さんだよ、この虐殺を命じたのは」

 

「えっ?!」

 

その事にアンジュは驚き、エンブリヲは言い続ける。

 

「北北東14キロの場所に彼は来ている、君を八つ裂きにする為にね。この娘たちはその巻き添えを食ったようなものだ」

 

バン!!

 

「きゃあああああああ!!」

 

その瞬間キッチンから銃声がし、モモカの悲鳴が聞こえてアンジュはすぐに向かう。

 

向かうと二人の特殊部隊がモモカを狙っていて、モモカは左肩を撃たれていたが、動ける右手でマナの光を出して防御をしていた。

アンジュは銃を取り出し、一人を撃ち殺して、もう一人は両肩を撃ち抜く。

 

「あなた達がやったの? お兄様の命令で?」

 

「貴様…アンジュリーゼ!」

 

すぐに銃を構えるも、アンジュに手を撃たれてしまう。

 

「う、撃たないでくれ…我々は…隊長とジュリオ陛下の命令で『バン!!』

 

問いにアンジュは撃ちまくり、弾切れになっても引き続けていて、それを見たモモカは慌ててアンジュを止めた。

 

「大丈夫です!モモカはここに居ます!!」

 

アンジュはすぐに後ろを見る、あの場所に居たエンブリヲの姿は無く、それにアンジュは決心する。

 

「行かなきゃ…!」

 

「えっ?」

 

モモカはその事に意味が分からずだった。

 

 

そしてアスランはアルゼナル上部に降り立ったMSを撃破していた。

ウィンダムとディンを撃破しても次々と出て来る。

 

「クソ!どれだけ出て来るんだ! ん?」

 

アスランが下を見ると、ヴィヴィアンを連れて行く特殊部隊が見えて、特殊部隊の一人がジャスティスがこちらを見ているのに気が付く。

 

「て!敵襲!!!」

 

すぐさまアスランはヴィヴィアンを捕まえている敵を排除した後、ヴィヴィアンを手に乗せ、残りの特殊部隊の者達を機銃で倒す。

そしてすぐにヴィヴィアンをアスランはコクピットに居れる。

 

 

そしてパラメイル格納庫ではマナの特殊部隊との銃撃戦が続いていた、すると敵が投げたグレネードがエレベーターシャフトに直撃して、シャフトが崩れる。

 

「エレベーターシャフトが!」

 

「これではパラメイルを下ろせません!」

 

部下の言葉にメイは歯を噛みしめ、不味い状況になって来る事にロザリーが問いかける。

 

「どうするんだよ!ヒルダ!?」

 

「くっそ~…!」

 

ヒルダが舌打ちをした時、特殊部隊の一人が頭を撃たれて死に、その方向を見るとアンジュとモモカがやって来ていた。

 

「アンジュ!!」

 

「何処に行ってたんだ!このバカ!!」

 

「モモカをお願い!」

 

アンジュがモモカをヒルダに任せたと言ってそのままヴィルキスに乗り込む。

ヴィルキスを起動して飛び立つも目の前の通路がふさがれていた。

 

「おい!滑走路は使えねえぞ!!」

 

「だったら…」

 

アンジュはヴィルキスのアサルトライフルに搭載しているグレネードランチャーを起動させて撃ち、滑走路を塞いでいる瓦礫を撤去する。

 

「進路クリア!」

 

そう言ってアンジュはヴィルキスを発進させる。

そして後からやって来たサリアが辺りを見て、外の方を見てヴィルキスが出た事に表情を歪ませる。

 

「行かせない…!」

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

一方外のMSの大半を片付けたキラ、そこにアスランが合流してくる。

 

「キラ!」

 

「アスラン、大丈夫…ってあれ?」

 

キラはアスランのコクピットの中にヴィヴィアンが居る事に気付く。

 

「どうしてヴィヴィアンがそこに?」

 

「さっき特殊部隊の連中がヴィヴィアンを連れ去ろうとして、俺が救出した」

 

それを聞いたキラは納得する。

っとそこに。

 

『キラ!アスラン!』

 

キラとアスランは呼ばれた方を見ると、アンジュがヴィルキスに乗ってやって来たのを見えた。

 

「アンジュ!」

 

「二人共!少し来てほしいの!お願い!!」

 

そう言ってアンジュはそのまま進み、それにキラとアスランは一歩遅れる。

 

「えっ?!」

 

「おい!何処に行くんだ!!」

 

二人が問いかけようとした時に二人の横を何かが通った。

キラとアスランは通ったのを見ると、サリアのアーキバスがアンジュの後を追いかけていた。

 

「戻りなさいアンジュ!!戻って使命を果たして!!」

 

それを聞いたキラとアスランは顔を見合う。

 

「使命?」

 

「あいつ…一体何を言って──」

 

っとその時に二人に残りのウィンダムとディンがやって来て、それに二人は見合う。

 

「アスラン!」

 

「ああ!」

 

二人は残りのウィンダムとディンを撃ちおとす為迎撃に向かう。

 

そしてサリアはアンジュに銃口を向け停止させる。

 

「何が不満なのよ!貴方は選ばれたのよ!アレクトラに! 私の居場所も全部奪ったんだからそのくらい──」

 

『好きだった』

 

っとアンジュの言葉を聞いたサリアは思わず動きを止める。

 

「私…ここが好きだった。最低で最悪で劣悪で何食べてもクソ不味かった。好きだった…此処の暮らしが」「

 

するとアンジュの指輪がうっすらと光始める、

 

「なのに壊された…あいつに!」

 

そしてサリアのアーキバスの両腕と推進器を切り落とす。

 

「邪魔をするなら…殺すわ!」

 

っとその事に答えるかの様に指輪が光、端末も光を放つとヴィルキスは赤色に変化する。

落とされたサリアはアンジュを睨みつける。

 

「許さない…勝ち逃げなんて許さないんだから! アンジュの下半身デブーーーーーーーー!!!」

 

そのまま落ちて行くサリアは叫びながら海へと落ちて行く。

 

アンジュは敵艦隊を攻撃して行く中で一発の砲弾がアンジュに突き刺さろうとする、っがアンジュのヴィルキスに光の障壁がある事に気が付く。

 

「光の障壁? これなら!!」

 

アンジュはその障壁を利用して敵艦隊へと突っ込んで行き、その障壁で次々の敵艦隊を撃破して行く。

その光景をウィンダムとディンを撃破したキラとアスランは思わず目を奪われる。

 

「アスラン…!」

 

「あれは…?!」

 

その様子をエンペラージュリオ一世に居る兵士たちはジュリオに報告する。

 

「ヴ!ヴィルキス!! こちらに突っ込んできます!!」

 

「何をしている!相手はたったの一機だぞ!」

 

っとそう言った途端にブリッジの半分が割れて、ジュリオの前にヴィルキスに乗ったアンジュが現れる。

その隙にリィザはその場から離れて行く。

 

「あ!アンジュリーゼ!」

 

バン!!

 

ジュリオの足に銃弾を撃ち込むアンジュ、それにジュリオはもがく。

 

「今すぐ虐殺をやめさせなさい!! 死にたくなければ!!」

 

それにジュリオはすぐにマナの通信で部下達に虐殺をやめるように指示を出す。

命令を言ったジュリオはすぐにアンジュに言う。

 

「辞めさせたぞ!!早く医者を!」

 

するとアンジュはヴィルキスに乗り込み、サーベルを上に構える。

 

「ま!待ってくれ!! ど!どうか!!どうか命だけは!!!」

 

「生きる価値のないクズが! くたばれーーーーーーー!!!!!」

 

アンジュがサーベルを振りかぶろうとした、その時彼女の目の前にプロヴィデンスが現れて、左腕のビームシールドを展開しアンジュのサーベルを防御する。

それにアンジュは目の前のプロヴィデンスが出た事に驚く。

 

「あれはこの前の?!」

 

そしてプロヴィデンスの胸部のコクピットが開いて、そこからエンブリヲが現れる。

 

「貴方…さっきの?」

 

「エンブリヲ様!! そいつを!アンジュリーゼをぶっ殺してください!! 今すぐ!!!」

 

「エン…ブリヲ?」

 

アンジュはその男がエンブリヲだと知って呟く。

 

「アンジュ、君は美しい…“もう一人の者”と同じ。君の怒りは純粋で白く何よりも厚い。理不尽や不条理に立ち向かい…焼き尽くす炎の様に、気高く美しい物。つまらない物を燃やして、その炎を燃やしてはいけない」

 

アンジュはエンブリヲが何を言いたいのか意味が分からず、ただ唖然としていた。

 

「だから…私がやろう」

 

「え?」

 

「この者は…私が裁く」

 

するとエンブリヲはプロヴィデンスに乗り込み上昇させて、エンブリヲは何かを歌いだす。

 

「♪~♪」

 

その歌にアンジュとジュリオは聞き覚えがあった、その歌は『永遠語り』だった。

 

「あれは…!?」

 

「永遠語り!?」

 

キラとアスランもその歌が聞こえ、振り向くと上空にプロヴィデンスが居た。

 

「アスラン!あれ!!」

 

「プロヴィデンス!?」

 

同時の外に出ているリィザは【謎の翼】を出して飛んでエンブリヲを睨む。

 

「エンブリヲ…」

 

そしてエンブリヲが操るプロヴィデンスのプラットフォームにあるドラグーンが飛び立ち、プラットフォームが露出展開されて、ヴィルキスと同じものが出て来る。

 

「ヴィルキスと同じ武器…!?」

 

アンジュが驚いてる中でプロヴィデンスは光学兵器『デスペラード・フェザー』を発射し、ジュリオが乗っている旗艦へと直撃する。

 

「う!!うう!!うわあああああああああああああああ!!!!!!」

 

アンジュが目の前の光景に驚きを隠せず、ただ跡形もなく消え去った旗艦を見て唖然する。

その光景はキラとアスランも見ていた。

 

「っ…!キラ!!」

 

「うん!!」

 

すぐにキラとアスランはストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの推力を全開にしてアンジュの元に飛ぶ。

そしてアンジュがコクピットハッチを開き、エンブリヲも出て来て、アンジュがエンブリヲに問う。

 

「何なの!貴方!? その歌は何!?」

 

「フッ…、ん?」

 

エンブリヲはある方を見ると、キラとアスランがやって来るの見る。

 

「アンジュ!!」

 

「キラ!アスラン!」

 

キラとアスランはアンジュの横に付き、キラとアスランはエンブリヲの姿を見て唖然とするも、すぐさまコクピットを出る。

 

「貴方は一体何者ですか!!?」

 

「フフフ…、君達はもう知って居る筈だよ…キラ君、アスラン」

 

っとキラとアスランの名を知っている事にキラ達は驚き、エンブリヲは思い出しかの様に手を頭に載せる。

 

「そうか…“この姿”での私と会うのは初めてだったね…」

 

「その姿…?」

 

キラはエンブリヲの言っている事が分からず、エンブリヲは髪をなぞりながら己の正体を明かす。

 

 

「私の名はエンブリヲ…、そしてまたの名…いや、前世の名は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        「ラウ・ル・クルーゼ」

 

 

 

 




エンブリヲの正体が判明!!

何とキラがかつて倒したあのラウ・ル・クルーゼであった!!

この事にキラとアスランはどう対等するかをお楽しみを!


そして感想を待っています!


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第17話 因縁

「ラウ・ル…」

 

「クルーゼ…?!」

 

アスランは嘗ての上官、そしてキラは嘗てフレイ・アルスターを目の前で殺したあのラウ・ル・クルーゼがエンブリヲと言う名で、別の人物となって現れた事に騒然としてしまう。

 

「ラウ・ル・クルーゼ…?」

 

アンジュはエンブリヲが自らラウ・ル・クルーゼだと言う事に頭を傾げ、頭を振りながら言う。

 

「何よそれ!!訳分かんない!『どうして…』キラ?」

 

言葉を開くキラにアンジュは振り向き、キラは同情を隠しきれないまま叫びながらエンブリヲに問う掛ける。

 

「どうして貴方が!! 貴方は僕が!!」

 

「殺した筈…っと言いたいのだろう?キラ君」

 

っとエンブリヲが言った言葉にアンジュは驚きを隠せない。

 

「殺した?!キラが!?」

 

「そうだともアンジュ、それよりもキラ君…驚くのも無理はないだろうな…」

 

「どうして!!どうして貴方が此処に居るんですか!?」

 

キラがエンブリヲ…ラウ・ル・クルーゼがこの場に存在している事に信じられずにいて、エンブリヲは理由を語り出す。

 

「良いだろう…教えてやろう。私が君に倒されジェネシスの爆破に巻き込まれた時だ。私はその時あの爆風で一度死んだはずだった…、だが私の魂はその時謎の時空跳躍により別の空間へと飛ばされてしまったのだ。

丁度その魂には私の記憶は意識が備えれていて、誰かの身体に移りたいばかり願っていた。丁度その時にこの体…エンブリヲが現れてその身体に乗り移り、エンブリヲとなったのだよ!」

 

「そんな…!そんな事がありえる訳!」

 

「ないだろうな…普通はな、だが私は出来た!この身体で思い通りの事が出来たのだ!死体を蘇らせ、在る物を呼び出し、機械を自在に作り出す。そしてさらに相手の身体の機能さえも操る事が出来るようになったのだ!!」

 

「何…!?そんな事が出来る訳が!」

 

アスランはエンブリヲの放つ言葉に同情を隠しきれないまま唖然とし、エンブリヲは不気味な笑みを浮かばせながら言う。

 

「言った筈だぞアスラン、今の私には出来ない物がないのだ! さて…お喋りは此処までにしよう…。キラ君、アスラン。少しばかり遊ぼうじゃないか」

 

そう言ってエンブリヲはプロヴィデンスに乗り込み、プラットフォームにマウントしているビームライフルを取り出して構える。

 

その様子を見たキラはアスランに叫ぶ。

 

「アスラン!!」

 

「ああ!! アンジュ!お前はヴィヴィアンを連れて下がってろ!!」

 

アスランはヴィヴィアンをアンジュに渡し、アンジュは受け取って二人を見る。

 

「キラ…アスラン」

 

その様子を見たエンブリヲは微笑みを浮かばせる。

 

「さあ…キラ君、アスラン。君達の更なる実力を見せてくれたまえ!!」

 

するとエンブリヲはプラットフォームのドラグーンを展開させながらビームライフルを撃ち、キラとアスランはそれをかわしてビームライフルを撃つ。

 

「ふええええええいいっ!!!」

 

「はあああああああああああ!!!」

 

キラとアスランはビームライフルを撃ちまくり、それをエンブリヲは分かっていたかの様にかわし、そしてドラグーンを操作する。

 

ドラグーンはさまざまな動きをして動き回り、キラ達の回ってビームを撃ちこむ。

 

「くっ!」

 

「しつこい!!」

 

回避を続けながらビームライフルやビーム砲を撃ち込み、ドラグーンを落として行くキラとアスラン。

しかし撃ちおとされたドラグーンはすぐさま回復して、再び突撃して行く。

 

キラとアスランはドラグーンの回復したのを見て驚く。

 

「そんな!?」

 

「どう言う事だ!?」

 

「どうだねキラ君!アスラン! これが私の力だ!もはや君達では私を倒すなどと不可能なのだよ!ふはははは!!」

 

エンブリヲは笑いながらドラグーンを攻撃しつつけ、キラとアスランはそれに歯を噛みしめながらドラグーンをかわしていく。

 

「不味いぞキラ!いくら撃ちおとしてもこれではきりがない! それに推進剤がもうそこを付き始めている!」

 

「くっそおお!」

 

その様子を見ていたアンジュはとうとうしびれを切らす。

 

「もう見ていられないわ!!」

 

アンジュはヴィルキスを動かし、キラとアスランを攻撃しているエンブリヲに向かって行く。

それをエンブリヲは察知する。

 

「ん?」

 

「食らいなさい!!!」

 

アンジュはアサルトライフルをプロヴィデンスに向かって撃ち込む、しかしプロヴィデンスはそれを避けようとせず、堂々と受け止めていた。

しかも傷跡一つも付かないままで。

 

「ええっ?!何で!?」

 

「フッ、実体弾でこの【トランスヴァリアブルフェイズシフト(TVPS)装甲】を打ち破れるなどあり得んのだよアンジュ。さて…折角だ。先ほどとは違う物を味わうがよい…歌は好きではないのだがな」

 

エンブリヲは先ほどジュリオを消し去った光学兵器を起動させる為、永遠語りを歌い出す。

 

「♪~♪~」

 

それを聞いたキラ達は振り向く。

 

「あれは!?」

 

「不味い!!」

 

「はっ!キラ!アスラーン!!」

 

っとアンジュが慌てて飛んで行き、エンブリヲは歌を歌い終えて、光学兵器であるデスペラード・フェザーがキラ達へと向けられる。

 

「「っ!!?」」

 

「だ!だめええええええ!!」

 

その時アンジュが必死に向かう際に叫んだ時、アンジュの指輪が反応する。

するとヴィルキスが青くなり、キラとアスランのストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの前に出ると消えていき、光学兵器は通り過ぎて行く。

 

「ほう?」

 

光学兵器はそのまま海へと直撃して、そのまま海に大きな渦が出来た。

 

「つまらない筋書だが…悪くないな? しかしキラ君…君への贈り物はまだまだたくさんあるのだよ」

 

そう呟くエンブリヲはその場から飛んで去り、崩壊したアルゼナルを後にするのだった。

 

 



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第18話 龍の世界 再び

エンブリヲの光学兵器から逃れたキラ達、アスランとアンジュ見知らぬはキラとは全くの別の場所に飛ばされていて、見知らぬ廃墟の場所に倒れていた。

インフィニットジャスティスはVPS装甲はキャンセルとなって灰色となっており、ヴィルキスは一部破損している部分があった。

 

コクピットに居るアンジュにある【舌】が伸びて来て、アンジュの頬を舐める。

 

それに目を覚ましたアンジュはその方を見ると、ドラゴンが見ていた。

 

「うわっ!?」

 

アンジュそれに驚くが、そのドラゴンは自分に指を指しながらジェスチャーする。

 

『アタシアタシ!』

 

「え? その声…ヴィヴィアン?」

 

『そうそう!』

 

再びドラゴン態へとなっているヴィヴィアンは「キュ~イ!」と吠えた、アンジュはヴィヴィアンを見ながら微笑む。

 

「貴女…またなったの」

 

そう言ってアンジュはヴィヴィアンの頭を抱きしめる。

 

「アンジュ、起きたか」

 

アンジュが振り向くと、パイロットスーツのファスナーを半分開けているアスランの姿が見え、ジャスティスの状態を見ていた。

 

「アスラン…、あれ?」

 

アンジュはコクピットから出てバイザーを外し、アンジュは辺りを見渡す。

 

「え? 此処…何処?!」

 

 

 

そしてキラの方は、山奥の山頂付近でストライクフリーダムは倒れており、キラはその中で気を失っていて、その付近に“何かが”やって来て、キラのフリーダムのコクピットを開き、キラの姿を覗く。

 

その者はキラを外に連れ出して、ヘルメットを外してキラの素顔を確認するのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてアスランとアンジュは通信機でアルゼナルに通信を入れていた。

 

「こちらアンジュ、アルゼナル応答せよ。…ヒルダ!モモカ!誰か返事しなさい!」

 

しかし何度も通信を試みるも誰も出ない。

 

「どうなってるのよ!」

 

通信が繋がらない事に腹を立てるアンジュに対し、アスランは冷静に通信チャンネルを繋ぎ、キラと通信を試みていた。

 

「…キラ、聞こえるか? キラ返事をしてくれ」

 

しかしアンジュと同じ先ほどから全く通信が繋がらず、おまけに何かの磁場によって通信が時々乱れる。

それにため息を付く。

 

「はぁ…。駄目だ…チャンネルが繋がらない。おまけに半径100mぐらい通信範囲が届かないか…、限界にしても結果は同じか…」

 

アスランはコクピットから出て、インフィニットジャスティスの手の上に座る。

その際にアンジュはアスランに問う。

 

「ねえ!貴方はこの場所を知ってる? これは私の推測だけど大昔の廃墟じゃないかしら? 人類がまだ戦争していた頃の」

 

「知らないなそんなの。それにここは俺やお前の知る場所とはかなり違っている」

 

そうアンジュに言うアスランは立ち上がり、落ちている鉄骨の柱の破片を拾う。

 

「それじゃあ、私達はまだ誰も知らない未知の世界に飛ばされたって事?」

 

アンジュの言葉にアスランは考え込み、そしてヴィルキスを見ながら呟く。

 

「お前の機体なら…可能性はあるな」

 

「えっ?!」

 

「あの時エンブリヲ…いや、ラウ・ル・クルーゼが放ったあの攻撃にアンジュのヴィルキスが青く変化してこの場に飛ばされてしまった。ヴィルキスは俺達の知らない何かを持っている、それが特別の意味も含めてもな」

 

アスランはヴィルキスの特殊機能の事を呟き、それにアンジュは目線をそらす。

 

「特別…、そうよね…どうせ私は特別なのよ」

 

っとアンジュが言った言葉にアスランは振り向く。

 

「どうした?」

 

「別に、直せそう?」

 

修理可能かと問いかけられたアスランはヴィルキスの損傷を確認し、それに頭を横に振る。

 

「無理だ。通信機ぐらいは直せるが、腕やその他の部分は整備班の者達に頼まなきゃ駄目だ」

 

「…そう、分かった」

 

そう言ってアンジュは何処かに行こうとする。

アスランはどこかに行こうとするアンジュに問う。

 

「待てアンジュ、何処に行く?」

 

「偵察よ、まだ敵がいるかもしれない」

 

「この近くに敵が居る気配は無い。少しは冷静になれ」

 

「なってるわよ!うっさいわね!」

 

注意された事に苛立つアンジュ、それにため息を付くアスラン。仕方なくアスランは持っているライフルをアンジュに渡す。

 

「分かった行け、ただしあまり遠くへは行くな」

 

「分かってるわよ」

 

そう言ってアンジュはライフルを持って行こうとする。

っとヴィヴィアンがアンジュに話しかける。

 

『アンジュ!アンジュ! アタシに乗って』

 

っとヴィヴィアンが後ろを向いてアンジュにそう言って、ドラゴン態のヴィヴィアンの言葉が分からないアンジュだが、何となく理解で来た。

 

「えっ…乗れって事?」

 

『そうそう!』

 

ヴィヴィアンはその事に頷き、アスランがアンジュとヴィヴィアンに言う。

 

「お前たち、気を付けろよ」

 

「ええ」

 

『ガッテン!』

 

そう言ってアンジュはヴィヴィアンに乗って上空を飛んで行った。

見送ったアスランはジャスティスの元に行き、推進剤の残量を確認する。

 

見た所飛べるのは約一時間足らずと見て、ため息を付くアスランはジャスティスから降りた時にある物を見つける。

 

アスランはそれを拾って見ると、日本語で書かれてた文字があって、アスランは目を細めるのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてアンジュが戻って来て、この場の事を話す。

 

「ミスルギ皇国…」

 

「ええ、宮殿も街も綺麗さっぱり無くたっていたけど。あれは暁ノ御柱だった、見間違えるはずがないわ」

 

アンジュは此処がミスルギだと言う証言にアスランは黙って聞いていた。

 

「でもおかしいの、暁ノ御柱も街もずっとずっと大昔の前に壊れたって感じだった」

 

そうアンジュは言うが、それをアスランはすぐさま訂正する。

 

「アンジュ、水を差す様にで悪いが…ここはミスルギ皇国じゃない」

 

「えっ?どう言う事よ!」

 

自分の言ってる事が間違ってると言う事にすぐさま反論するアンジュ、アスランは先ほど拾った小さい看板をアンジュに渡し、それをアンジュは見る。

しかしアンジュでは分からない文字、日本語で書かれている。

 

それをアスランはアンジュに言う。

 

「それはこの国の文字、日本語と言うものだ。俺達の世界にも存在する文字だ」

 

「え?てことは此処は…あなた達の世界?」

 

「いや…、文明レベルが余りにも低すぎる。もっと文明が発達していると思うんだが…」

 

アスランが考え込んでるとそこにある物が聞こえて来る。

二人はそれを聞いて隠れて武器を構える。

 

すると謎の小型ロボットがある放送を流しながら横を通り過ぎて行く。

 

『こちらは首都防衛機構です、生存者の方はいらっしゃいますか? 首都第3シェルターは今でも稼働中、避難民の方を収容───』

 

通り過ぎて行く小型ロボットを見て、アンジュはアスランの方を見る。

 

「アスラン」

 

「ああ、行こう」

 

アスランはそう言って、その小型ロボットが言った首都第3シェルターへと向かった。

 

 

 

一方キラの方では、キラが目を覚ますとまた見慣れた部屋で寝ていて、それにキラは思わず身体を起こす。

 

「此処は…宮殿?」

 

「はい。そうですよ」

 

キラは声がした方を見ると、そこにサラマンディーネとナーガにカナメが居て、サラマンディーネはキラの寝ていた布団の近くまで寄って座る。

 

「気分はどうですか? また派手に現れて落ちたとナーガやカナメから聞きました」

 

「落ちた…そうか、僕はまたここに…」

 

そう考えてると、頭の中であの時の出来事が思い出す。

 

 

エンブリヲ…。いや、ラウ・ル・クルーゼが生きて居た事を…。

 

 

すぐさまキラはこの事をサラマンディーネに問う掛ける。

 

「あの…、エンブリヲの正体…サラマンディーネは知っていたの?」

 

「え?いいえ、素性を全て知っている訳では…それがどうしたのですか?」

 

それにキラは少しばかり暗い表情をし、重たい口を開く。

 

「エンブリヲ……、あの人は嘗て僕が倒した筈の男…ラウ・ル・クルーゼだった」

 

「えっ…?」

 

サラマンディーネはキラが言った言葉に思わず時間が止まり、キラの様子を見て嘘じゃないと確信したのだった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてアスランとアンジュは第3シェルターでの出来事から終えて戻っていた。

しかしアンジュの表情は暗いものだった。

 

それはあの第3シェルター内である物を見たからだ。

 

 

アスランとアンジュはシェルターの中の人々達が白骨化した死体を見て、アンジュは思わず口を抑える。

すぐさまアスランは白骨化した死体に向かい、死亡時刻を確かめる。

 

「…死後300年か400年、いやそれ以上だ」

 

アスランの言葉を聞いたアンジュはすぐさまモニター画面に向かう。

 

「そこのあなた!居るんでしょ!! 出て来なさい!!」

 

アンジュの問いに答えるかの様に、画面上に女性が映し出される。

 

『管理コンピューターひまわりです。ご質問をどうぞ』

 

「やはりコンピューターか…」

 

アスランは向かい入れてくれた女性がコンピューターだった事に薄々気付いていたらしく、アンジュは怒鳴りながら問う。

 

「一体どうなってるの!?生きている者はいないの!? 一体何があったの!!?」

 

『ご質問を受け付けました、回答シークレンスに入ります』

 

すると辺りが暗くなり、何かの映像が映し出される。

それはあたりが戦争している映像だった。

 

「何…これ? 映画?」

 

『実際の記録映像です。統合経済連合と汎大陸同盟機構による大規模国家間戦争「第七次大戦」「ラグナレク」「D-War」などと呼ばれる戦争により地球の人口を11%まで減少』

 

それを聞いたアスランとアンジュは息を飲みながら映像を見続け、すると目の前にある機体が目に映る。

 

『その状態を打破すべく、連合側は絶対兵器『ラグナメイル』を投入』

 

それはアンジュが乗るヴィルキスと全く同じ機体が6機も映し出され、さらに全く別のラグナメイルも映し出される。

 

「あれは…黒いヴィルキス?!」

 

アンジュはそれに驚いた、更にラウ・ル・クルーゼが乗るプロヴィデンスガンダムも映し出され、それにアスランは目がくぎ付けとなる。

 

「プロヴィデンス!?」

 

そしてプロヴィデンスとラグナメイルと黒いヴィルキス達は光学兵器を発射し、暁ノ御柱を壊す映像が映し出される。

 

『こうして戦争は終結、しかしラグナメイルの次元共鳴兵器により地球上の全ドラグニウム反応炉が共鳴爆発。地球は全域に渡って生存困難な汚染環境となり全ての文明は崩壊しました。以上です、他にご質問は?』

 

「世界が…滅んだ? ふふふ…ふはははは! 何よそれ!バッカみたい!何時の事よ!?」

 

アンジュは目の前の映像に信じられない事に問いかけ、それにコンピューターは答える。

 

『538年前』

 

「えっ?」

 

『538年193日前です、世界各地2万976ヶ所のシェルターに、熱、動体、生命反応なし。現在地球上に生存する人間はあなた方2人だけです』

 

それを聞いたアンジュはただ呆然とし、アスランは映し出された映像を見て少しばかり考え込む様な表情をしていた。

 

 

そして今に時に戻り、アンジュは銃を磨きながら黙り込み、アスランは映し出された映像に違和感を感じていた。

 

「(あの映像…俺達の戦争には統合経済連合と汎大陸同盟機構という軍はなかった。あるのは地球軍やザフト軍にオーブ軍。この3つだが…)」

 

「ねえアスラン……、あんな紙芝居信じてる?」

 

っとアンジュは先ほどの事をアスランに問い、アスランは顔を上げて、その事を問い返す。

 

「何だ?お前は信じてるのか? さっきの映像を」

 

「っ!!信じられる訳ないでしょう!! 私はこの目で見た物しか信じない!!」

 

「ならそれでいいじゃないか、今は考えてもしょうがないだろう」

 

「それは…でも心配なのよ!!アルゼナルが!!モモカ達がどうなったか! あの女が本当に死んだのか…」

 

苛立ちを隠せないアンジュの様子を見たアスランは少々ため息を付きながらも再びこの世界の事を考える。

 

「(今のこいつは言ってもしょうがない、それよりもこの世界は…ん?)」

 

するとアスランはある事に気が付いた、この世界のパラメイル…前に襲って来たアルゼナルの三機と似ている事に。

 

「(まさか…あの機体はこの世界の?!)」

 

その時に二人の上空にある影が現れて、それに二人は上を見上げるとそこにはストライクフリーダムが飛んでいた。

 

「キラ!!」

 

「無事だったのね!!」

 

『アスラン!アンジュ!』

 

キラはすぐさま着陸し、アスランとアンジュの元に寄る。

 

「二人共無事?」

 

「キラ!お前無事か!」

 

「良かった…っ!?」

 

アンジュの目の先にある物が映る。それはガレオン級のドラゴンが降下して、こっちにやって来るのだった。

 

「アスラン!!」

 

「っ!行くぞ!『待ってアスラン!!』っ!?キラ?!」

 

キラに腕を掴まれたアスランは振り向いて驚き、そしてガレオン級が降りて来て、頭の上に乗っていた二人の女性…ナーガとカナメが言う。

 

「キラ殿、その者達か?」

 

「ええ」

 

その事にアスランとアンジュは驚きを隠せない。

 

「「だ!誰だ!?(誰!?)」」

 

その事に問い返さないナーガはアスランとアンジュに向かって言う。

 

「ようこそ、偽りの民達よ。我らの世界…『本当の地球』へ」

 



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第19話 戦う訳

この世界の地球へとやって来たキラ達はキラが連れて来たナーガとカナメにアスランとアンジュは驚きを隠せなかった。

 

そして宮殿に戻る際にガレオン級二体がキラとアスランのストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを運び、アンジュのヴィルキスはスクーナー級二体が運んでいた。

一方でキラ達はコンテナの中で入って居て、アスランがキラに少しばかり問い詰めていた。

 

「キラどう言う事だ」

 

「ごめんアスラン、アンジュ。本当はこんな形になるつもりはなかったんだけど…」

 

「どこがよ! それにドラゴンを連れて来るなんて!」

 

「それはごめん…、でも前に言ったよね?アルゼナルで言った言葉を…ドラゴンを攻撃しないでって事を」

 

キラのその事にアンジュは思わず押し黙ってしまう。

 

実はアルゼナルでドラゴン態となったヴィヴィアンを探す際にキラがアスランとアンジュに言ったのだ。

 

 

『実は…ドラゴンは人間なんだ』

 

『何だって!?』

 

『っ!?』

 

キラの言葉から聞いたアスランとアンジュは驚きを隠せない、キラは少しばかり暗い表情をして、二人の方を見て言う。

 

『だからドラゴンを見つけたら決して攻撃しないでほしいんだ。お願いだから…』

 

 

 

そうキラの言葉を思い出しながら黙り込むアンジュは頭をかりかりする。

 

「ああ~もう!何が何だか分からなくなって来たわよ!!」

 

その様子を見てアスランは少しばかりため息を付く。

 

「はぁ…、キラ。過ぎた事はもう仕方ないとして俺達は一体何処に連れて行くんだ?」

 

「それはこれから向かう場所“アウラの民”が居る宮殿へと向かうんだ。そこで大事な人が話したい事があるんだって」

 

「その前に此処は何処なのよ!」

 

「ここは地球だよ、アンジュ」

 

キラのその言葉にアンジュはすぐに答えられた事に納得が行かず、またしても頭をかりかりするのであった。

 

そして宮殿内では、玉座の間でアウラの民の近衛達がこれからやって来るキラの仲間の事に付いて語り合っていた。

 

「本当にこの場所に来るのですか?」

 

「私は少しばかり納得が行きません」

 

「そう言うな」

 

っと玉座の大座に居る者『大巫女』が近衛達にそう落ち着かせる。

 

「あの者達、キラ殿と共に来たあの者達がどうやってここに来たのかを聞く為だ。疑問がある者はこの場から去るがいい」

 

大巫女がそう言うと、この場に居る近衛達が黙り込んでしまい、その様子を見た大巫女は近くにいるサラマンディーネに問う。

 

「サラマンディーネ、あの者達の事に付いてはお前に任せる。良いな?」

 

「はい、大巫女様」

 

サラマンディーネはそう言い、キラ達の到着を待つのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてナーガとカナメが宮殿に到着して、キラ達が入っているコンテナを吊るしているガレオン級はその場にコンテナを下ろし、キラとアスランは体制を平然と保っていて。アンジュの方は少しばかり倒れていた。

 

「何…?」

 

「着いたみたいだよ」

 

っとキラの言葉にアスランとアンジュは顔を見合う。

そしてコンテナが開き、ナーガとカナメが刀と薙刀を持って構えていた。

 

「着いたわ、出なさい」

 

キラはそれに素直に従い、アスランとアンジュは少しばかり警戒しながら外に出る。

目の前に宮殿らしき建物が建てられていて、周りは滝に囲まれた場所だった。

 

「大巫女様がお会いになる、こちらへ」

 

そうナーガはアスランとアンジュにそう言い、それにアスランは目を細める。

 

っとヴィヴィアンの背中に麻酔弾が撃ち込まれ、それにヴィヴィアンは気を失う。

ヴィヴィアンの異変に気付いたアスランとアンジュはヴィヴィアンの方を向く。

 

「ヴィヴィアン!?」

 

「ヴィヴィアンに何をしたの!?」

 

アンジュが問うとナーガとカナメは警戒するかの様に構え、その様子に黙り込むアンジュ。

アスランは自分がやれば何ともないのだが、キラのメンツも在り、下手に動けなかった。

 

そして玉座の間に着いたキラ達とナーガとカナメ、そこに数人の近衛達がその場に座っていて、すざれに隠れていた。

 

ナーガとカナメが前に出て言う。

 

「「連れて参りました」」

 

頂上に居る者、大巫女が頷く。

 

「ご苦労であった。キラ殿。その者達がお主のもう一人の仲間と異界の女か?」

 

それにアンジュは大巫女を睨みつけるも、大巫女はそれを無視しながら続ける。

キラは大巫女の問いに答える。

 

「はい、僕の親友のアスランに彼女がアンジュです」

 

「その前に人の名前を聞く時に、まずは自分から名乗るのが礼儀って言うでしょう! 答えなさいよ!!」

 

っとアンジュが怒鳴り声で叫び、それに他の者達はざわつく。

ナーガとカナメはアンジュに睨みつける。

 

「大巫女様に何たる無礼!」

 

その様子にキラとアスランは顔を見合い、アスランはアンジュに問う。

 

「おいアンジュ」

 

しかし大巫女はアンジュの問いには全く答えずに言い続ける。

 

「『特異点』はこちらでは全く開いてはおらぬ、どうやってここに来た」

 

大巫女はアンジュ達に問う、それに対するかの様にアンジュも黙り続ける。

 

「大巫女様の御膳ぞ! 答えよ!」

 

「どうしてシルフィスと共に居た?」

 

「あの見慣れぬ物はお前たちのか?」

 

他の者達がなりふり構わず問いかけにアンジュはとうとうキレた。

 

「うるさい!!!こっちは何があったかさっぱり分からないのよ!! さっきキラから此処は地球って聞いたけどまだ確信はないのよ!!一体此処は何処!!何時!? 貴方達一体何者!?」

 

「いい加減にしろ!!アンジュ!!」

 

アスランが怒鳴り声でアンジュを抑え、それにアンジュはアスランを睨むように言う。

 

「黙っててよ!!」

 

「お前が黙れ!! 話が前に進まん!!!」

 

その事を言われたアンジュは納得出来ないまま睨みつける。

 

「ふふふ…、威勢の良い事で」

 

っと別の女性の声が聞こえ、そのすざれからサラマンディーネが出て来た。

アンジュはサラマンディーネの登場に思わず驚く。

 

「あなた!」

 

「神祖『アウラ』の末裔にしてフレイヤの一族の姫、近衛中将サラマンディーネ」

 

そう自分の名を言うサラマンディーネに対し、アンジュはサラマンディーネを睨みつけていた、アンジュはアルゼナルを潰した事を根に持っていた。

 

「ようこそ真なる地球へ、偽りの星の者達よ」

 

「知っておるのか?」

 

大巫女がサラマンディーネに問いかけ、それにサラマンディーネが答える。

 

「この者ですわ、先の戦闘で我が機体と互角に戦った、ヴィルキスの乗り手は」

 

「あの者が…」

 

大巫女がアンジュをそう見て呟き、そして他の近衛達が大巫女に言いだす。

 

「他はともかく!あの女は危険です! 生かして置くわけにはなりません!」

 

「早急に処分を!!」

 

その事に対しアンジュは平然とした態度で言う。

 

「やれば、死刑には慣れている、ただし…やるからにはただで済む事は思わない事ね」

 

「いい加減にしろ! 勝手に進めるな!」

 

アスランの叱りにアンジュは顔を逸らし、アスランは思わず呆れてため息を付く。

 

「お待ちください皆さん、この者はヴィルキスを動かせる特別な存在。あの機体をよく知る為にもここは生かして置く方が得策かと…」

 

その事に他の者達はただ黙って聞いていた。

 

「この者達の命…私におわずけ頂けませんか?」

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして玉座の間からキラが居たあの和室に案内されて、アンジュは周りを見渡していた。

サラマンディーネは護衛のナーガとカナメの方を振り向く。

 

「貴女方は外にいて下さい」

 

「なっ!しかし!」

 

ナーガが食いつこうとするも、サラマンディーネの圧倒的な鋭い目線にナーガとカナメは思わず黙り込み、すぐさま退室して行く。

アンジュはその際に部屋の事を問う。

 

「随分と立派な牢獄ね」

 

「ここはキラ殿が使用している部屋です」

 

っとサラマンディーネの言葉に思わずアスランとアンジュは驚き、アスランはその事に問う。

 

「キラが使っている?」

 

「ええ、キラ殿がここに来た際に使わせているのです。それに貴方達はキラ殿のお仲間、それを親切にしない訳がありませんから」

 

「…お前」

 

アスランは呆れる様子でキラの方を見て、キラはアスランの様子に思わず苦笑いする。

 

「あはは…」

 

キラが苦笑いする中で、サラマンディーネはキラ達に言う。

 

「そして貴方方と共にしていたシルフィスの娘とは治療が済めばすぐに会えます。皆さんの機体は我々が責任を持って修理しますので、ご安心を。さあこちらへ」

 

サラマンディーネはそう言ってキラ達に畳の間へとお連れし、サラマンディーネは皆に抹茶を注ぎ、皆に渡す。

 

「何の真似?」

 

アンジュはサラマンディーネの行動に理解が出来ずにいて、それにサラマンディーネは答える。

 

「長旅でお疲れでしょう、どうぞお飲みください」

 

その事に甘んじて、キラとアスランは抹茶を飲み、その様子をアンジュは思わず目を奪われる。

 

「ちょっと!」

 

「大丈夫だ。飲んでみたが問題ない」

 

「アンジュも飲んでも大丈夫だから」

 

そう言う二人に対し、アンジュはやや納得が行かなかった。

そしてアスランは気になって居る事をサラマンディーネに問う。

 

「…俺はアスラン・ザラと言います。質問してもいいですか?サラマンディーネさん」

 

「ええ、なんなりと…アスラン殿」

 

「キラが言っていた地球…、此処は本当に地球なのか?」

 

「ええ」

 

アスランの問いにサラマンディーネは頷く。

それにアスランは目線を少しばかり細目、次の質問をする。

 

「それじゃあ君達は…?」

 

「人間…ですわ」

 

「人間…、だがこの世界の地球は俺達のC.E.とはかなり違っている。文明レベルも低いし、おまけに…」

 

アスランがその事を考えると。サラマンディーネはある事を言い出す。

 

「アスラン殿、ここは『全くの別の地球で、地球が二つある』っとしたら?」

 

「「…えっ!?」」

 

サラマンディーネが言った言葉にアスランとアンジュは驚き、キラは黙ったまま聞いていてサラマンディーネが続けて答える。

 

「並行宇宙に存在したもう一つの地球、一部の人間がこの星を捨てて移り住んだのが、別宇宙にあるもう一つの星、それがあなた達の地球なのです」

 

「地球を…捨てた? 誰がそんな事を!何の為に!」

 

「あの廃墟で見て来たのではないのですか?この星で何が起きたのかを」

 

「この世界の戦争…環境汚染」

 

アスランはその事を言った時にキラはそれを耳にして、環境汚染の事はまだ聞いても居なかったのだ。

 

「ええ、あとの事に付きましては、直接見せた方が納得しやすいと思いますわ」

 

「直接?」

 

その事にアスランはなんの事か分からず、その事をキラが言う。

 

「この世界でのエネルギー源の源の所に行くんだよ」

 

っとその事にアスランとアンジュは思わず顔を見合った。

 

 

 

キラ達はサラマンディーネが呼んだガレオン級の頭に乗ってある場所へと向かった。

 

「着きましたわ」

 

サラマンディーネが見る先にアウラの塔が見えて来た、それをアンジュがそれを呟く。

 

「暁ノ御柱が…ここにも?」

 

「アウラの塔とわたくし達は呼んでいます。嘗てのドラグニウムの制御施設ですわ」

 

その事にアンジュはそれを聞いて驚き、施設に入りながらこの世界の全てを話す。

 

前にキラに話した前世紀末に発見されたドラグニウム、その力を悪用した人類は戦争へと投入、その代償に人類社会は崩壊、環境汚染、どれもこれも解決しないまま滅んだ事にアスランもアンジュも黙り込んだまま聞いていた。

 

「そんな地球に見切りをつけた一部の人間たちは、新天地を求めて旅立ちました」

 

「似たような話、聞いた事あるわ」

 

っとアンジュはその事をサラマンディーネに言い、それにキラとアスランはアンジュの方を向く。

 

「聞いた事ある? どう言う事」

 

「あのクソ司令官から聞いたのよ」

 

その事を聞いたキラとアスランはすぐさま顔を合わせ、ジルの事を考える。

 

あの司令は一体何を考えているのか…今までの行動を見て徐々に見え始めていた。

 

そしてサラマンディーネはアウラが居た場所にたどり着き、アスランとアンジュにアウラの映像を見せ、それにはアスランとアンジュは驚きを隠せなかった。

 

「アウラ、汚染された世界に適応する為、自らの肉体を改造した偉大なる始祖。あなた達の言葉で言うなら、『最初のドラゴン』ですね」

 

その事を聞いてアンジュはまたしても驚きを隠せない。

 

「私達は罪深い人類の歴史を受け入れ、贖罪と浄化の為に生きる事を決めたのです、アウラと共に。男達は巨大なドラゴンへと姿を変え、その身を世界の浄化の為にささげた」

 

「浄化…?」

 

アンジュがその事を問い、それをサラマンディーネが説明する。

 

「ドラグニウムを取り込み、体内で安定化した結晶体にしているのです。

女たちは時に姿を変えて、男達と共に働き、時が来れば子を宿し産み育てる、アウラと共に私達は浄化と再生へと道を歩み始めたのです。ですが…、アウラはもういません」

 

景色を元に戻し、少しばかり暗い表情になる。

 

「どうして?」

 

「連れていかれたのです。ドラグニウムを発見し、ラグナメイルを生み出し、世界を壊し捨てた全ての元凶…エンブリヲによって」

 

「エンブリヲ!?」

 

アンジュはその事に驚き、アスランもその事に驚きを隠せなかった。

 

あのクルーゼがそこまでしていたとはと…。

 

「あなた達の世界はどんな力で動いているか、知っていますか?」

 

「えっ…マナの光よ」

 

「そのエネルギーは?」

 

「マナの光は無限に生み出される…って、まさか」

 

その事にアンジュはようやく気が付く。

気が付いた事にサラマンディーネは答える。

 

「マナの光、理想郷、魔法の世界。それを支えているのはアウラが放つドラグニウムのエネルギーなのです。

ですがエネルギーは何時か尽きる、補充する必要がある…ドラゴンを殺してドラグニウムを取り出し、アウラに与える必要があったのです」

 

それを聞いたアンジュ達は大きく目を開き、キラとアスランは黙って聞いていた。

 

「それが…あなた達の戦い、あなた達が命を懸けていた戦いの真実だったのです」

 

「なっ!!?」

 

サラマンディーネが言った真実の言葉にアンジュは言葉を失うばかりであった。

真相を付き付けられ、今までやって来た事がまさに嘘の戦いであったことに驚きを隠せない。

 

「あの世界のエネルギーを維持する為、私達の仲間は殺され、心臓をえぐられて、結晶としたドラグニウムを取り出された…」

 

それを聞いたアンジュはある事を思い出す。

 

「(あれってそう言う事!?)」

 

あれはキラ達と共に居たで無人島で見た、凍結されたドラゴンの事を運ぶ輸送機の事を…。それをマナの者達はそれを知っていた事にアンジュは心の中で怒りが渦巻いてくる。

 

「分かって頂けましたか? 偽りの地球、偽りの人間、そして偽りの戦いと言った意味が…、それでもあなたの世界に帰りますか? 偽りの地球へ」

 

「当然でしょ! 貴方の話が全部本当だったとしても私達の世界はあっちよ!」

 

その事を聞いてキラとアスランはアンジュの度胸に少しばかり呆れる、この状況でよく言えたものだと。

 

「そうですか…では貴方だけを拘束させて頂きます、これ以上私達の仲間を殺させる訳には参りませんから」

 

「やれるものならやって見なさい!私が大人しく捕まると思ってるの!?」

 

「無論思っていません」

 

っとサラマンディーネが言うと背中にある翼が大きく広げられ、アンジュは勿論の事、キラとアスランもサラマンディーネの羽を見て目を開く。

 

「すごい…」

 

「この世界の人間はこんな事が…」

 

その様子を見てアンジュは笑みを浮かばせる。

 

「本性を表したわね! トカゲ女!!」

 

っとアンジュはサラマンディーネに殴り掛かるも、いとも簡単にかわされる。

すぐさまキラが言おうとしたがアスランに止められる。

 

「アスラン…」

 

「今は放っておけ、懲りるまではな」

 

そう冷たい言葉を言うアスランにキラはそれに目を細める。

そしてすぐさま後ろに回り込み、アンジュに腕を掴む。

 

「殺しはしませんよ、私達は残虐で暴力的なあなた達とは違います」

 

「アルゼナルをぶっ壊して置いて、何を!!」

 

アンジュが強引に振りほどくも、すぐに間合いと取られる。

 

「あれは【龍神器】の起動実験です。あなた達はアウラ奪還の妨げになる恐れがありましたから」

 

「それで何人死んだと思ってんの!!」

 

「貰いは請いません」

 

アンジュは再び殴り掛かるも、すぐにかわされて空に浮かぶ。

 

「私の世界を護る為です、あなたも同じ立場なら同じ選択をしたのではありませんか? 皇女アンジュリーゼ」

 

「えっ!?」

 

「貴方の事はよく聞いていました、『リザーディア』から。近衛長官リィザ・ランドックっと言えば分かりますか?」

 

その言葉を聞いたアンジュは見開く。

 

「リィザ…? あいつ…あなた達の仲間?」

 

ようやく分かった事に気が付いたアンジュはサラマンディーネの方を向くと、サラマンディーネはそれに笑う。

それを見たアンジュは馬鹿にされた事に怒りが爆発する。

 

「バカにして!!あんたはそうやって見下して面白いの!! 何がこの世界を護るよ!!こんな滅びた世界を護って何が良いのよ!!!」

 

「では貴女はなんの為に戦っているのですか?」

 

っとその事にアンジュは言葉を失い、キラとアスランもその事に目を向ける。

 

「偽りの戦いをし続け、偽りの世界で暮らし続ける、そんな嘘の世界で貴女はなんの為に戦うのですか?」

 

「そ…それは…!」

 

言葉を詰まらせるアンジュにサラマンディーネは呆れかえる。

 

「情けないですね、貴女は自分の事だけしか考えていません、それに比べて彼等は…キラ殿とアスラン殿は立派な考えをお持ちです。違う世界の者でも目的があって戦っている。そんな貴女とは違いましてね…」

 

するとサラマンディーネは一気にアンジュの距離を詰め、それにアンジュは驚いて対応するも反応が遅れてしまい、すぐさま足を掴み投げ飛ばす。

 

「キャッ!!」

 

投げ飛ばされたアンジュは起き上がろうとした時にサラマンディーネに足で首元をロックされる。

 

「貴女は何も知らなかっただけ」

 

そう言って彼女はアンジュの首元を絞め、それに苦しむアンジュは睨みつける。

 

「馬鹿にして…!馬鹿にし…て」

 

そしてアンジュは気を失い、サラマンディーネは足を離して立ち上がる。

 

「無事なのか?そいつは」

 

アスランがその事を問い、それにサラマンディーネは頷く。

 

「ええ、気を失っただけですから」

 

そう言ってキラとアスランは胸を下ろす。するとサラマンディーネはある事を聞き出す。

 

「お聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「何?」

 

「あなた方はエンブリヲをラウ・ル・クルーゼとお呼びします、もしエンブリヲがあなた達を消しに向かい、どうしますか?そして何を目的に戦っていますか?」

 

それを聞かれたキラとアスランは上を見上げて言う。

 

「僕達は…またクルーゼを倒す事を考えます、そして僕達は平和な世界と…また綺麗な花を植える為に戦い続けると思います」

 

そうキラはサラマンディーネに話し、それにサラマンディーネはキラを見つめるのであった。

 




少しばかり活動報告であるアンケートを出しています。

期限はないですので、気楽にどうぞ。


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第20話 誘い 前編

サラマンディーネがアンジュをなぎ倒して、アンジュを連れて帰るキラとアスラン。

ガレオン級に乗って宮殿に戻り、アンジュを医務室へと連れて行く。

 

「医務室はこの先です」

 

「ありがとうサラマンディーネ」

 

「この馬鹿を止めてくれて感謝します」

 

二人はサラマンディーネに礼を言い、それにサラマンディーネは頭を横に振る。

 

「言っても聞かない者にはこうする事が良いかもしれませんが、正直戦いでは何も解決しませんので、では私は少しばかり用事がありますので」

 

サラマンディーネはそうキラとアスランに言い、キラとアスランは頷いてアンジュは医務室へと連れて行った。

そしてサラマンディーネは地下格納庫へと降りて、現在急で作り上げた固定ハンガーに固定させているストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを見る。

 

「…キラ殿達には勝手なことで申し訳ありませんが、エンブリヲに勝つために少しばかりいじらせて貰います」

 

そうサラマンディーネは呟きながらストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに近寄り、スパナを持って何やら改造し始めた。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして医務室へと着いて、アンジュを横に寝かせたキラとアスランはアンジュが目覚めるのを待っていた。

 

その間アスランがキラにこの後の事を聞く。

 

「キラ、この後はどうするんだ?」

 

「うん、僕もその事に少しばかり考えていたんだけど…まだ何も考えてなくて」

 

そう考え込むキラ、すると…。

 

「おーい! キラ!アスラン!」

 

キラとアスランは聞き覚えのある声が聞こえて、その方を振り向くとアウラの民の服装を着たヴィヴィアンがやって来た。

 

「ヴィヴィアン!」

 

「元に戻ったんだな。安心したよ」

 

「うん!そうだよ!」

 

っとそう言ってると…。

 

「うわあああああっ!!!」

 

アンジュが大声を上げながら勢いよく起き上がって来て、それにキラとアスラン、そしてヴィヴィアンが驚く。

 

「「っ!?」」

 

「ひぃ~~! ふぅ…ビックリした」

 

「あれ? ヴィヴィアン!」

 

アンジュはヴィヴィアンが元に戻ってることに驚き、それにヴィヴィアンは笑顔でアンジュの方を向く。

 

「オイッス!」

 

「えっ?ヴィヴィアン…どうして?」

 

「さあ~ここでクイズです、私はどうやって人間に戻ったでしょうか!」

 

っとここでヴィヴィアンのお得意のクイズが出て来て、それにアンジュは少々困った表情になる。何も知らないのにどうやって人間に戻ったか分からないからだ。

 

「ぶ~!残念! 正解は…え~と~…何だっけ?」

 

その事に呆れるアスラン、っとそこに医者の『ドクター・ゲッコー』がやって来る。

 

「D型遺伝子の制御因子を調整しました、これで外部からの投薬なしで人間の状態を維持出来る筈です」

 

「って事でした~♪」

 

「っ~…君が言ったんじゃないだろう」

 

アスランはヴィヴィアンのお調子の事に少々呆れかえり、それにキラは苦笑いするしかなかった。

 

「身体の具合は?」

 

「え? え…ええ、何とも」

 

「それは良かったです、姫様が“手加減”して下さったようで」

 

その事にアンジュだけじゃなく、キラもアスランも思わず反応する。

 

「えっ?手加減…?!」

 

「サラマンディーネさんが?」

 

「ええ、せっかくのお客ですもの、怪我をされては申し訳がないですもの」

 

そう言ってドクター・ゲッコーがその場を離れて行き、キラ達は互いの顔を見合うのであった。

 

 

 

そして外に出て、一度顔を洗うアンジュ、そこに…。

 

「その様子ですと、もう大丈夫の様ですね」

 

キラ達は声の主の方を向くと、そこにサラマンディーネ達と一人の女性が居て、アンジュはサラマンディーネを睨みつけ、それキラは苦笑いし、アスランはまたしても呆れた様子になる。

そんな中でサラマンディーネが一人の女性の方に話しかける。

 

「ラミア、彼女です。遺伝子照合で確認しました、貴女の娘で間違いありません」

 

その事にキラ達はヴィヴィアンの方を見て、ヴィヴィアンも自分に指を差しながら傾げる。

 

「行方不明になったシルフィスの一族、貴女の子『ミィ』よ」

 

「ミィ…ミィ!本当にミィなの!?」

 

ラミアと呼ばれる女性はすぐさまヴィヴィアンの方に向かい、そして泣きながらヴィヴィアンに抱き付く。

 

「ミィ…!」

 

「いや!アタシはヴィヴィ…ん?」

 

するとヴィヴィアンは突如匂いを嗅いで、少しばかり唖然とする表情となる。

 

「この匂い…知ってる、エルシャの匂いみたい、アンタ誰?」

 

ヴィヴィアンはラミアにその事を聞き、ラミアはヴィヴィアンを見て言う。

 

「お母さんよ…!」

 

「お母さん…さん? 何それ?」

 

ヴィヴィアンはそれに問い、それをサラマンディーネが答える。

 

「貴女を産んでくれた人ですよ」

 

サラマンディーネの言葉にキラとアンジュは気づく。

 

「えっ?てことは…」

 

「ヴィヴィアンのお母さん?」

 

「ええ、彼女のお母さんを追って、あちらの地球に迷い込んでしまったのしょう」

 

その事を聞いてキラとアスランとアンジュは納得し、サラマンディーネはすぐにナーガとカナメに言う。

 

「皆、祭りの準備を。祝いましょう、仲間が10年ぶりに帰って来たのですから」

 

それを聞いていたキラ達はただ黙って見つめるのでのあった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして夜になり、アウラの塔で皆が集まっていた。そこにサラマンディーネが儀式用の蝋燭を手に持ち、皆の前に姿を現す。

 

「サラマンディーネ様よ!」

 

「サラマンディーネ様ー!」

 

蝋燭を持っているヴィヴィアンが隣に居るラミアに聞く。

 

「何をするの?これから」

 

「サラマンディーネ様のマネをすればいいだけよ」

 

ラミアがそうヴィヴィアンに言って微笑み、キラ達はその様子を人混みの中で見ていた。

 

「殺戮と試練の中、この娘を悲願より連れ戻してくれたを感謝いたします」

 

そう言った後にサラマンディーネは儀式の蝋燭を空へと舞い上げ、それに皆も同じように舞い上げる。

 

「アウラよ!」

 

『『『アウラよ!』』』

 

ラミアも同じように舞い上げ、隣に居るヴィヴィアンも同じように舞い上げる。

その光景をキラとアスランは呟く。

 

「良い光景だね…」

 

「ああ、中々めったに見られない光景だ」

 

「…良かった」

 

っとアンジュの言葉にキラとアスランはアンジュの方を向く。

 

「えっ?」

 

「何がだ?」

 

「ヴィヴィアンが人間で良かった事よ」

 

アンジュの言葉を聞いて、キラとアスランは納得した表情をする。

 

「あ~、そっか…」

 

「そうだよな」

 

っとキラとアスランは楽しむヴィヴィアンを見て少しばかり微笑む。

するとアンジュは先ほどとは違って少しばかり不安に思っている事を言う。

 

「これからどうなるの? 私達、こんな物を見せて、どうするつもり?」

 

「知って欲しかったそうです、私達の事を」

 

っとそこにナーガとカナメがキラ達の元に来ていて、カナメがキラ達に話し続ける。

 

「そしてあなた達の事を知りたいと、それがサラマンディーネ様の願い」

 

それを聞いたアンジュは振り向いて言う。

 

「知ってどうするの? 私達はあなた達の仲間を殺した。あなた達も私達の仲間を殺した、それが全てでしょ?」

 

アンジュがそうナーガとカナメにそう言うも、カナメは頭を横に振る。

 

「怒り、悲しみ、幸福。その先にあるのは滅びだけです、でも人間は受け入れ、許す事が出来るのです。その先に進むことも…全て姫様の請け売りですが、どうがごゆるりとご滞在下さい…っと姫様の伝言です」

 

二人は頭を下げて、その場から離れて行く。

 

「あっそうだった」

 

っとカナメは何か思い出したかのようにキラの方を向く。

 

「あのキラ殿、サラマンディーネ様がこの祭りを終えたら会いに来てくださいとおっしゃってました」

 

「サラマンディーネさんが?」

 

「はい」

 

「くれぐれも姫様に無礼の無いようにな」

 

そう言って二人はその場から離れて行く。

 

「ごゆるりとだって」

 

「そうのんびりとしている訳にも行かないんだがな」

 

そう呟くキラとアスラン、するとアンジュが…。

 

「帰っていいのかしら」

 

「「ん??」」

 

「リベルタスの事を考えると…本当に帰っていいのかなって思い始めて…」

 

アンジュにその事を聞いたキラとアスランは少しばかり考える表情をして、空に浮かぶ月を見るのであった。

 



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第21話 誘い 後編

キラ達は祭りが終えたその夜、アスランとアンジュは先に部屋に戻り、キラはサラマンディーネの元に行っていた。

呼ばれた先は地下格納庫で、そこにサラマンディーネがストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの前に立っていた。

 

サラマンディーネはキラがやって来るのに気付いて振り向く。

 

「キラ殿」

 

「サラマンディーネさん、僕に何か?」

 

「これの事です」

 

サラマンディーネは上を見上げると、ストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの方を見て。キラもフリーダムとジャスティスを見る。

 

「フリーダムとジャスティスにどうかしたのですか?」

 

「この二機を少しばかり改造させて貰いました」

 

っとさらりと言った発言にキラは思わず驚きを隠せない。

重要な機体であるストライクフリーダムとインフィニットジャスティスをいじった事に少しばかり問う。

 

「いじったってどう言う事ですか!?」

 

「この機体を調べて見ましたが、ドラグーンと言う中々面白い武装があったのを見つけましてね。ですがこれは特定の場所以外使えない様なので、私がどこでも使えるよう改造しておいたのです。

勿論アスラン殿の機体も同じ様に改造をしています」

 

サラマンディーネは自らキラ達のストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを改造した事に自慢げに話し、そればかりはさすがのキラも呆れるばかりであった。

 

「キラ殿、アスラン殿にも謝罪するつもりですが、勝手に触っていじってしまった事に申し訳ありません」

 

っとサラマンディーネはキラに許可なく勝手に改造した事を頭を下げ、それにキラは少しばかり戸惑いを見せながら慌てて言う。

 

「そ、そんな…、頭を上げて下さい。もうしてしまった事は仕方ありませんし…」

 

「キラ殿…、これは貴方方エンブリヲに勝つためにも必要な事と感じてやった事なのです。ですがその言葉を聞いて、少し安心しました」

 

サラマンディーネはキラの言葉を聞いて少しばかり安心し、それにはキラはただサラマンディーネを見つめるのであった。

 

 

 

そしてその深夜、宮殿の玉座の間で大巫女とサラマンディーネ、そしてアウラの民の巫女たちが集まっていて、彼女達の前にリザーディア事…リィザがホログラムで通信回線を開き話していた。

 

「何と…! 真かリザーディア!」

 

『はい大巫女様、新生ミスルギ帝国の地下。アウラの反応は確かに此処から』

 

リィザの報告に巫女たちは思わず声を上げ、大巫女は頷きながらリィザをほめる。

 

「よくぞやってくれたリザーディア、時は来た。アウラの子よ、これよりエンブリヲの手から全能の母、アウラを奪還する。リザーディア『特異点』解放のタイミングは手筈通りに」

 

『おおせのままに…』

 

そう言い残してリィザは通信を終えて消える。そして大巫女は皆に言う。

 

「これはこの星の運命を掛けた戦い、アウラと地球に勝利を!」

 

『『『勝利を!』』』

 

大巫女の声と同時に皆も頭をさげる。

頭を下げるサラマンディーネは自分の中で何か思いつめる表情をしていたのを誰も気が付かなかった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして翌朝、アンジュは目を覚ますと近くで寝ていたキラとアスランの姿が見えない。

アンジュは気になって居たがそのままベランダへと出て外を見る。そこは同じ様な景色が広がるドラゴンの世界である。

 

「ドラゴンの世界…」

 

そしてアンジュは襖を絞め、近くに置いてある花瓶を見る。

昨日サラマンディーネに言われた事を思い出す。

 

 

 

──偽りの戦いをし続け、偽りの世界で暮らし続ける、そんな嘘の世界で貴女はなんの為に戦うのですか?

 

 

 

「…もう!何なのよ!」

 

そしてアンジュは近くにあるソファに座る。

すると襖が開き、アンジュは見るとキラとアスランが和服姿で入って来た。

 

「あっアンジュ、おはよう」

 

「遅い起床だな」

 

「…二人が起きるのが早いだけよ」

 

アンジュはそう嫌みながらもキラとアスランに言い、そしてサラマンディーネがナーガとカナメを連れて入って来る。

 

「おはようございます。あら?もう起きていたのですね」

 

「おはようございます」

 

キラがサラマンディーネの方を向いて挨拶し、アスランがサラマンディーネの方を向く。

 

「おはようございます、…キラから俺達の機体の改造の事を聞きました」

 

「その事につきましてはもう一度謝罪をさせて貰います。ですがこれはエンブリヲを倒す為の事で」

 

「過ぎてしまった事はいいです、今後は必ず俺達に一声を掛けて下さい」

 

「分かりました。ではこちらへどうぞ、朝食にしましょう」

 

そうサラマンディーネがキラ達に食事の間へと案内し、キラとアスランは向かい、アンジュはすぐさま着替えて二人の後を追いかけて行った。

 

そして食事の間にヴィヴィアンがラミアと共に朝食を食べていた。

 

「おかわり♪」

 

「もう…ちゃんと噛まないと駄目でしょう?」

 

ラミアはご飯を噛まないで食べるヴィヴィアンに注意をしながら言い、ヴィヴィアンは笑顔のまま頷く。

 

「うん♪ お母さんさん♪」

 

サラマンディーネ達に案内されているキラ達、アンジュはヴィヴィアンの姿を見つける。

 

「あれ?ヴィヴィアン」

 

「おお~!おやようさ~ん!」

 

「サラマンディーネ様」

 

「よく眠れましたか?」

 

サラマンディーネはラミアと会話をし、それにラミアは少々笑いながら言う。

 

「それが、ミィと朝まで喋りしてまして」

 

「だから寝不足~」

 

それを聞いていたキラ達は微笑みながら見ていて。そしてキラ達は出された朝食を食べようとするも、アンジュは何故か手を付けなかった。

 

「どうかしたアンジュ?」

 

「注意して、何か毒が入ってるかもしれないわ」

 

「お前な…」

 

「毒なんて入って居ませんよ」

 

っとサラマンディーネの言葉を聞いてアンジュは思わず睨みつけるが、隣に居るヴィヴィアンがアンジュの方を見て言う。

 

「アンジュアンジュ、大丈夫だって!アタシ食べても何ともならなかったよ」

 

アンジュはそれに何とも言えない風な感じになり、アスランはそれに少しばかり呆れ返る。

そしてサラマンディーネの方を見ると、彼女は何やらうっすらと微笑みながら見ているのを感じて、アンジュは何か引っかかり、当然その事にはキラもアスランも感じていた。

 

 

 

 

朝食を終えたキラ達はパイロットスーツに着替え、宮殿の外でラミアがキラ達に言った言葉にキラが頭を傾げる。

 

「家に帰る?」

 

それに頷くラミアはヴィヴィアンを抱き付いて言う。

 

「この子が生まれて家を見せてあげよかと思って」

 

「おお~!見る見る!」

 

っとそれに賛同にするヴィヴィアン、そしてラミアはヴィヴィアンを連れて飛んで行った。

その時にヴィヴィアンはキラ達に手を振った。

 

「そんじゃ行ってくるね~!」

 

ヴィヴィアン達を見送ったキラ達、それにアスランは頭を下に下げて呟く。

 

「親子の水入らずか…」

 

「アスラン…」

 

キラはアスランの様子に少しばかり気遣いをする。

アスランの母親は血のバレンタインの悲劇で亡くしており、その為母親への気持ちも理解できる。

 

そんな中アンジュがムスっとしているのをキラが問う。

 

「どうしたの」

 

「気にくわないのよ。何もかも…」

 

「またか…」

 

その事にキラが呆れ、そしてアンジュはサラマンディーネに問う掛ける。

 

「それで、茶番はもう十分よ。あなたの目的は何?私達をどうする気なの?」

 

「ふふふ、腹が減っては戦は出来ぬと申します。お腹はいっぱいになりましたか?」

 

「え? ええ…」

 

その事にアンジュは戸惑いつつも頷く。

サラマンディーネはそれを確認したのち言う。

 

「では、参りましょう」

 

そうサラマンディーネがガレオン級を呼んで、キラ達と共にある場所へと向かう。

そしてある建物「HUSTLE1」へとやって来る。

 

「此処は?」

 

アンジュはこの建物を見て問い、それをサラマンディーネが答える。

 

「古代の闘技場ですわ、嘗ては多くの者達が集い、強さを競い合ったそうです」

 

サラマンディーネの説明を聞いて、キラとアスランは途轍もなくイメージが違っていたのだ。

ここは紛れもなく闘技場ではなく、ある遊び場の施設であるからだ。

 

イメージがかけ離れている、その事を言うとややこしくなるからキラとアスランは黙っておくことにした。

 

「驚いたろう、これは全て姫様自ら復元されたのだ」

 

「サラマンディーネさんが?」

 

キラの言葉にナーガは頷きながら言う。

 

「そうだ!サラマンディーネ様はその頭脳を持って旧世界の文明を研究し、様々な遺物を現代まで甦らしたのだ!」

 

「ほぅ」

 

「我々の龍神器も、サラマンディーネ様がっ?!」

 

っとカナメがナーガの横腹を突き、小声で注意する。

 

「それ、機密事項でしょ?」

 

「あっ!御免なさい!」

 

ナーガはそれに気づいて、慌てて謝る。

そんな中でアンジュが前に出て問う。

 

「それで、此処で何するの?」

 

「…共に戦いませんか? 私達と」

 

サラマンディーネの言葉にアンジュは思わず「はっ?」と言葉をこぼし、キラとアスランが聞く。

 

「それってもしかして…」

 

「君達と共闘しようっと言う事か…」

 

「はい。あなた方もお解りの筈、あなた達を戦わせ、マナを創り上げた元凶…エンブリヲ、そしてその正体は貴方方が知っている者。我々は我ら全能の母アウラの奪還するのが願い、目的が違えど願いは同じ───」

 

「フフフ…ははは」

 

っと突然アンジュが笑い出し、それにキラとアスランはアンジュの方を向き、キラがアンジュに問う。

 

「アンジュ?」

 

「な~んだ、そう言う事、結局は私を利用したいだけなの…戦力として。知って欲しかっただの、解りあえただの、良い人ぶっていたのも全部打算だったじゃない」

 

アンジュは利用する為だと言い張る事にサラマンディーネは笑みを浮かばせて言う。

 

「その通りです、私達と戦う意思があるキラ殿達は兎も角として。あなたはそれなりの利用価値がありますから」

 

っとサラマンディーネの言葉を聞いたアンジュは思わずキレる。

 

「っ!? ふざけるな!私はもう!」

 

「“もう…誰かに利用されるのはウンザリ”…ですか?」

 

その事を聞いてアンジュは思わず拳を握りしめる。

 

「そう言うと思いまして此処へお連れしたのです、アンジュ。勝負しませんか?」

 

「はっ?勝負??」

 

「はい、貴女の未来を掛けて。私が買ったあかつきには貴女は私の所有物となって頂きます、無論貴女が勝てば貴女は自由ですわ」

 

その会話を聞いたキラとアスランは少しばかり考える。

 

「要するにアンジュに未来を掛けた勝負って事になるね」

 

「これをこいつはどう受け止めるかだ」

 

そう二人はアンジュの方を見る。

サラマンディーネの言葉にアンジュはそれに拳を再び握り締める。

 

「それをどうするかは自分で決める…か、良いわ!やってやろうじゃないの!」

 

「そう来なくては…!」

 

話が纏まってアンジュとサラマンディーネが勝負する為の闘技場…もとい戦いの場へと向かうのであった。

 



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第22話 和解 前編

アンジュの自由の為、サラマンディーネと勝負する事となったアンジュ、それを見守るキラとアスラン。

 

二人は最初に勝負をするテニスで、テニスコートの外でジッと見ていた。

 

「要するにその玉を打ち返して、枠の中に打ち込めばいいのね?」

 

「その通り、では始めましょう」

 

「サービス!サラマンディーネ様!」

 

試合が始まり、アンジュは構えるとサラマンディーネの強烈なサーブが一気に決まる。

それにアンジュは驚いてしまう。

 

「なっ!?」

 

強烈なサーブに思わず驚くアンジュ。

 

「15-0!サラマンディーネ様!」

 

「くっ!」

 

「あら? 速すぎました?手加減しましょう…か!!!」

 

サラマンディーネが再びサーブを放つ、っがそれをアンジュはレシーブをする。

 

「結構…よ!!!」

 

それにサラマンディーネは驚いてしまい、反応が遅れてしまう。それを見たナーガとカナメは驚く。

 

「なっ!!?」

 

「ふぃ!15-15!」

 

カナメが慌ててポイントを言い、アンジュとサラマンディーネはお互い睨み合いながらも笑みを浮かばせながらゲームを続ける。

 

そんな中でキラが黙ったまま見ているアスランに問う。

 

「どうしたのアスラン」

 

「どうもない、ただ呆れてるだけだ」

 

「どうして?」

 

っとのん気な事を言うキラにアスランは思わずこけそうになるが、呆れた様子で言う。

 

「どうしてって…お前な、これが普通に勝負だと思えるか?」

 

「まあ…違うって事だけは確かだけど」

 

そう言うキラもこの勝負は決闘じゃなく、完璧なスポーツ対決だと感じる。

 

「でもねアスラン、よく見ると二人楽しんでいるみたいだよ」

 

キラがアンジュとサラマンディーネの方を見てると、二人は火花を散らしながらもどこか楽しんでいる風に見える。

それにアスランは呆れながらもため息を付き、そのまま二人の勝負を見守るのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてテニスの後に野球、未来的なレース?的なマシン、ゴルフ、卓球、クレーンゲーム、そしてツイスターゲームまでやり続けていた。

勿論ツイスターゲームは水着を着ながらやっていた為、キラとアスランは少しばかり目線を反らす。

 

カナメがキラとアスランの様子に気付き問う。

 

「どうしたのですか? まだ勝負の真っ最中ですよ?」

 

「そうなんだけど…」

 

「少し…な」

 

二人は顔を少しだけ赤くしながら顔を逸らして、ナーガはその様子に気付いて言う。

 

「お前たちの言いたい事も分からんでもないが、今はこれに集中してもらいたい」

 

そう言ってナーガは勝負の方を向き、キラとアスランは困った表情をしながらもルーレットのボタンの前まで来る。

 

カナメがルーレットの色をと位置を教える。

 

「サラマンディーネ様、右手、緑」

 

カナメの指示にサラマンディーネは言う通りに手を指定の位置に置き、次にキラがルーレットを押す。

そして色と位置が表示されて言う。

 

「アンジュ、左手、赤」

 

アンジュも言われた通りに手を位置に置く。

苦しみながらサラマンディーネはアンジュに言う。

 

「予想以上ですわ…アンジュ」

 

「何が…?」

 

「少し…楽しみだったのです。今まで私と互角に渡り合える者などいませんでしたから」

 

そしてカナメが次のルーレットの色と位置を言う。

 

「サラマンディーネ様、左足、赤」

 

「ですから…すごく楽しいのです」

 

「あらそう…!」

 

っとアンジュがサラマンディーネを転倒させようとするが、サラマンディーネの尻尾がそれを抑える。

それに『反則よ!』と言ったアンジュは思わずサラマンディーネの尻尾を噛みつき、それに悲鳴を上げるサラマンディーネがアンジュを巻き込んで転倒し、それに皆は唖然とする。

 

「尻尾を噛むのは反則です!」

 

っと起き上がったアンジュが突如笑い出して、それにはサラマンディーネも見ていてしばらくすると笑い出す。

 

「姫様が…笑った?」

 

「姫様が笑う所、初めて見た…」

 

ナーガとカナメはサラマンディーネが笑い出した様子を初めて見て唖然とし、キラとアスランはその様子を見て笑みを浮かばせるのであった。

そしてこの時キラは一瞬サラマンディーネの姿がラクスの姿に重なり、それにキラは思わず目を疑う。

 

「えっ?」

 

「どうしたキラ?」

 

アスランがキラの方を向いて問いかけ、それにキラは少し戸惑いながらも頭を横に振る。

 

「い、いや…何でもないよ」

 

キラのその事にアスランはさっぱり訳が分からなかったのだった。

 

 

そしてアンジュとサラマンディーネは勝負でかいた汗を流し、サラがアンジュの方を向く。

 

「流石ですわねアンジュ、この私とまともにやり合えるとは」

 

「私、これでもエアリアで優勝してきたんだもん」

 

「成程…、では今度はそのエアリアと言うもので勝負しませんか?」

 

サラマンディーネがそれを聞くも、アンジュはそれを拒否する。

 

「無理よ、あれはマナが必要よ。私達…ノーマには出来ないから」

 

その事を聞いたサラマンディーネはそれに頭が下がってしまう。

 

「ノーマ、マナを持たぬ者として差別されるもの。何て侮辱なんでしょう。私達はどんな苦しい時もアウラと共に学び、互いに思う絆を結んできました…」

 

「……それ、キラ達も同じだと思うわ」

 

サラマンディーネはアンジュが言った言葉に振り向き、アンジュは思う事を言い続ける。

 

「キラ達の世界は…私達の世界よりもっと残酷よ、コーディネイターとナチュラルの戦い…戦争に虐殺を聞かされた。それを思うと私の世界よりもずっと酷いわ」

 

「…そうですか、キラ殿達の世界はそんなに…」

 

そう二人は重い空気に包まれながらシャワーを浴び続ける。

 

キラとアスランはナーガとカナメと共に外で待っていて、二人は先ほどの二人の様子を見て思う。

 

「良い雰囲気だったね、二人共…」

 

「…そうだな、アンジュのあの表情、今まで見た事がなかったな」

 

二人は先ほど笑ったアンジュの表情を思い出し、満足した様な気分をさせて貰ったサラマンディーネに感謝している。

っとアスランは先とは違う事をキラに問う。

 

「キラ、お前さっきサラマンディーネさんの方を見て何かあったか?」

 

「えっ?何で…?」

 

「お前、彼女を見て何かあると思ったんだ」

 

アスランの鋭い所にキラは苦笑いして、少々困り果てていた時だった。

 

その時突如地震が起きて、それを感じたキラ達は驚く。

 

「っ!?これは?!」

 

「何だ!?」

 

そしてシャワー室に入っているアンジュとサラマンディーネはそれに気付き、ナーガとカナメは入り込む。

 

「サラマンディーネ様!」

 

サラマンディーネはそれに頷き、アンジュと共に着替えてキラとアスランの元に向かう。

そしてキラ達は外に出るとアウラの塔から何やら異変が起きていた。

 

それはアウラの塔に竜巻が発生し、そこからある空間が変化して行く様子で、それにキラ達は目を奪われる。

 

「何だあれは…?」

 

「っ!アスラン!!」

 

キラが指を指す方にアスランは目を向けると、そこから数機のヴィンダムが現れて来る。

 

「モビルスーツ!!」

 

「まさか…ラウ・ル・クルーゼが?!」

 

そしてアンジュはその空間の様子にある光景が映し出される。それはアンジュがまだ学生だった時に試合した事がある試合会場であった。

 

「あれは…エアリアのスタジアム!?」

 

そして町にいるヴィヴィアンはラミアと共に逃げて行き、その光景を目にする。

異変の空間はその人々を飲み込み、街を崩し、がれきと共に生き埋めにさせて行く光景を…。

 

「うわっ!街が!皆が!!」

 

異変の空間を目にしたキラ達、そしてサラマンディーネはある物を呼ぶ。

 

「焔龍號!!」

 

すると額の宝玉が光り、空から焔龍號がやって来る。

サラマンディーネはすぐさま焔龍號に乗り込み、起動準備をさせる中で言う。

 

「カナメは大巫女様に報告! ナーガは皆さまを安全な場所に!」

 

「「はい!!」」

 

そう言ってサラマンディーネはアンジュに向かって言う。

 

「アンジュ、決着はまた今度で。キラ殿、アスラン殿」

 

二人はサラマンディーネの方を向くと、サラマンディーネは二人に向かって話す。

 

「もし出撃なさるのでしたらどうかお早く、お二人の機体は既に出撃可能です」

 

サラマンディーネはキラとアスランにそう話した後にコックピットを閉め、異変の空間へと向かって行く。

 

「サラマンディーネさん…」

 

「キラ」

 

キラはアスランの方を向き、キラはアスランの言いたい事を理解して頷き、アンジュ達と共に宮殿まで戻って行く。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてヴィヴィアンはラミアと共に避難をしていたが、道がふさがれてしまって孤立してしまう。っと真上のがれきが二人と他の者達に目がけて落ちて来るが、そこにビームが飛んで来てがれきを破壊する。

 

皆が上を見るとサラマンディーネの焔龍號がやって来た。

 

「皆さん!すぐに宮殿に避難を!!」

 

それに皆はすぐに避難をし始めて、サラマンディーネは落ちて来るがれきを次々と破壊して行く。

 

「急いでください!…!?」

 

っとサラマンディーネは気配に気づく。迫っている異変の空間が止まり、彼女の目の前にある黒い空間が現れて、その黒い空間からある機体が『3機』現れた。

 

一機目は両肩にキャノン砲を背負い、右手にバズーカに砲口があるシールドを構えて、胸にエネルギー砲らしき物が付いていた。

 

二機目は鳥形の機体をしていて、腹当たりに鉄球らしき物体を搭載して、さらに顔にはエネルギー砲が備えられていた。

 

三機目は独特の形態をしていて、手には巨大鎌を手にしており、飛行しながら進んでいた。

 

「あの機体…!キラ殿達と同じ!?」

 

現れた三機をサラマンディーネが驚く中で、その三機の機体のコックピットに居る『ある三人』が話す。

 

「おいここだぜ」

 

「あのおっさんが言った通りだね、変な所」

 

「…ウザい」

 

っとその時ビームが飛んで来て、三機は回避する。

三機はビームが飛んできたその方向を見ると焔龍號がやって来る。

 

「何者かは知りませんが…都を滅ぼす訳には行きません!!」

 

そう言ってサラマンディーネは右腕にの収納ブレードを展開して向かって行く。

 

それを見た三機は思わず鼻で笑い飛ばす。

 

「おい見ろよ!ちっせぇ!」

 

「あんなので向かって来るなんて無防備すぎるね!」

 

「あ~ウザい…!」

 

その三人『オルガ・サブナック』『クロト・ブエル』『シャニ・アンドラス』が機体を動かして、彼等が乗る『カラミティガンダム』『レイダーガンダム』『フォビドゥンガンダム』がサラマンディーネの焔龍號に向かって行く。

 

そして宮殿に戻ったキラ達が都の人達がストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを地上に出していてくれて、それに感謝する。

 

「どうぞお早く!」

 

「ありがとうございます!」

 

「助かります!」

 

キラとアスランはすぐにストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに乗り込み、アンジュもヴィルキスに乗り込む。

それにナーガがアンジュに気付いて向かって叫ぶ。

 

「おい!何を!?」

 

「ヴィヴィアンを助けに行くのよ!」

 

そう言ってアンジュはキラ達より早くヴィルキスを出して飛び出し、それにナーガが慌てる。

 

「待て!!それはまだ修理が!!」

 

ヴィルキスが飛び出したのを見たキラとアスラン。それに思わず呆れる。

 

「えっ…」

 

「くっ!アイツ!」

 

アスランは舌打ちをしながら急いで機体を起動させて、VPS装甲を展開させて飛び出す。

そして二人はサラマンディーネが向かった場所に急いで向かうのであった。

 



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第23話 和解 後編

サラマンディーネが焔龍號でオルガ達が乗って戦っているカラミティ達に苦戦していた。

言うまでもないがあまりにもサイズが違い過ぎていて、レイダーの機動力や、フォビドゥンの対ビーム防御システム『ゲシュマイディッヒ・パンツァー』にビームを曲げられてしまっているからだ。

 

「くっ!!」

 

サラマンディーネは苦しみながらも攻撃をし続け、それにオルガ達は容赦ない攻撃をし続けた。

 

「おらおらおらおらおらおらおらおらおら!!!」

 

「そりゃああああああああああ!!滅殺!!」

 

「うらあああああああ!!」

 

三機の同時攻撃により、サラマンディーネは徐々に苦しくなって行く。

っとそこに一発のビームが三機の間を通り、それに三人は驚く。

 

「ぬっ!」

 

「ふっ!」

 

「ぐっ!」

 

サラマンディーネも一発のビームを見て目を見開く。

 

「あれは…もしや!」

 

彼女は振り向くと、キラとアスランが乗るストライクフリーダムとインフィニットジャスティスがやって来て、すぐ飛んで行ったアンジュが先を越されながらもサラマンディーネに言う。

 

「何やってるのよ!サラマンドリル!」

 

「おいアンジュ…お前な『アスラン!!』ん? っ!!」

 

キラとアスランは目の前を見て驚きを隠せない、彼等の目の前に嘗て戦って撃破したあのカラミティガンダム、レイダーガンダム、フォビドゥンガンダムが目の前に居るのだから。

 

「アスラン!間違いないあの三機だよ!」

 

「ああ…! しかし何故あの三機が此処に!?」

 

驚きを隠しきれないキラとアスラン、それは乗っているオルガ達もそうだった。

 

「おいおいあれを見ろよ!」

 

「あの二機…!!形は違ってもあいつ等だ」

 

「あいつ…あいつあいつあいつ!!」

 

今にも怒りを爆発させようとするシャニ、そんな中でアンジュは皆の目に異変の空間が人々を飲み込んで行く様子を驚きながら見ていた。

 

「何なの!?」

 

アンジュがそれに言葉をこぼす中でサラマンディーネが言う。

 

「あれは恐らくエンブリヲです!」

 

「ええっ!?嘘でしょ!?」

 

「いいえ!あの様な力を持つ者は奴の他には居ません!」

 

その言葉を聞いたアンジュは唖然としていると、アンジュがヴィヴィアンとラミアの姿を見つけた。

映像にはラミアがエアリアのバイクに下敷きになっていた。

 

「ヴィヴィアン!!」

 

『アンジュ!サラマンディーネさん!君達はヴィヴィアンの所に!』

 

『あの三機は俺達に任せろ!!』

 

「えっ!キラ!アスラン!?」

 

突然の事にアンジュとサラマンディーネは少々慌て、キラとアスランはスラスター全開でカラミティ達に向かって行く。

勿論オルガ達も向かって来るフリーダム達を見て行動を開始する。

 

「来るぜ!!そらあああああ!!」

 

「はあああああ!!!」

 

「うらああああ!!」

 

三機も『125mm 2連装高エネルギー長射程ビーム砲 シュラーク』や『2連装52mm超高初速防盾砲』や『誘導プラズマ砲「フレスベルグ」』を撃ちながらストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに向かって行った。

 

その様子を見てアンジュはサラマンディーネの方を向く。

 

「サラマング!こうなったらキラ達の言う通りにするしかないわ!」

 

「アンジュ…、分かりました!」

 

そう言って二人はヴィヴィアンの所に向かい、救助に向かった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

ヴィヴィアンは自分を庇ってくれたラミアを心配していた。

 

「何でこんな危ない事をしたのさ! アタシだったら訓練を受けてるからへっちゃらだったのに!」

 

「子供を守るが…お母さんのお仕事だからよ」

 

その事にヴィヴィアンは目に涙を浮かばせてしまう。

 

「お母さんさん…」

 

「ヴィヴィアン!!」

 

ヴィヴィアンが後ろを向くと、アンジュとサラマンディーネがやって来て、ヴィルキスと焔龍號から降りる。

 

「大丈夫!?」

 

「アンジュ!」

 

サラマンディーネがラミアが下敷きになって居るがれきを退かそうとするがビクともしない。

 

「くっ!こうなれば!」

 

そう言ってサラマンディーネはすぐに焔龍號に戻る。

サラマンディーネはすぐに焔龍號を動かし、下敷きになっている瓦礫を退かす。

 

自由になったラミアはアンジュとヴィヴィアンに支えられて立ち上がろうとする。っがラミアは立ち上がろうとした瞬間足を痛める。

 

「うっ!!」

 

どうやら下敷きの際に足を怪我した様だ。

 

『大丈夫ですか!?』

 

サラマンディーネがスピーカーで問いかけ、それにラミアが言う。

 

「ええ…大丈夫です、ミィ!貴女は姫様達と共に逃げなさい!」

 

「行かない!!」

 

っとその事にラミアは唖然とする。

 

「えっ?」

 

「私!『お母さん』と一緒じゃなきゃ行かない!!」

 

ヴィヴィアンがラミアの事をお母さんと言った瞬間、ラミアは思わず嬉し涙を流す。

 

「ミィ…!」

 

「ヴィヴィアン」

 

アンジュはヴィヴィアンの表情を見ながら呟き、そして飛んで戦っているキラ達の方を見る。

するとヴィヴィアンがある事を言う。

 

「アンジュ!行って!」

 

「えっ?」

 

「私!お母さんと居るからこの騒動を何とかしに行って!」

 

「ヴィヴィアン…。…分かったわ!」

 

そう言ってアンジュはヴィルキスに乗り込み、上昇して焔龍號もその後に続く。

 

 

 

一方キラとアスランはカラミティ、レイダー、フォビドゥンの三機を相手に互角以上の戦いを繰り広げていた。

 

キラがビームライフルでフォビドゥンに先制攻撃し、シャニがゲシュマイディッヒ・パンツァーでビームを曲げて防御し、その時にキラがレール砲を放ってフォビドゥンを吹き飛ばす。

 

「ぐぅっ!!この!」

 

シャニはバックパック両側に設置されている可動式レールガン『88mmレールガン「エクツァーン」』を攻撃して、かわして行くキラ。

 

クロトのレイダーが『破砕球「ミョルニル」』を使ってアスランのインフィニットジャスティスに向けて攻撃をする。その際にアスランはファトゥム-01を分離して、MR-Q17Xグリフォン2ビームブレイドを展開させて向かわせる。

その隙にビームライフルを撃ち、それに交わした時にファトゥム-01が突進して来て、それをギリギリで回避する。

 

「ぐっ!!こいつ等前よりも強い!?」

 

カラミティがファトゥム-01に向けて125mm2連装高エネルギー長射程ビーム砲シュラークを使って撃ち、それを難なく回避して行くファトゥム-01。

 

「くっそ!相変わらずだぜおい! だがこんな所で終わらねぇぞ!!」

 

オルガはそう言って125mm2連装高エネルギー長射程ビーム砲シュラークと同時に『337mmプラズマサボット・バズーカ砲 トーデスブロック』『115mm 2連装衝角砲 ケーファー・ツヴァイ』を使ってインフィニットジャスティスに攻撃して行く。

三機の攻撃を回避して行くキラとアスラン、その際にキラがカラミティ達に通信を入れる。

 

「そこの三機聞こえるか!!」

 

「あっ?!」

 

「何だ!?」

 

「ウザい!!」

 

オルガ達は攻撃をし続け、攻撃を返しながらキラは疑問に思っている事を問う。

 

「君達はどうして此処に居るんだ!? なんで死んだ筈に君達が此処にいるんだ!?」

 

「答えろ!!何故お前たちはいるんだ!?」

 

「そんな事を聞いてどうするんだよ!! それに生き返らしてくれたのはラウ・ル・クルーゼだ!!!」

 

答えたクロトが『100mmエネルギー砲「ツォーン」』を撃ち、それをキラがビームシールドで防御しながら驚く。

 

「クルーゼが?!」

 

「そう言えば前に死んだ人間を蘇らせると言っていたな、まさかあの三人を蘇らせたと同時にあの三機も!?」

 

そう言いながらキラとアスランは攻撃をし続け、オルガ達も反撃と言わんばかりに攻撃をし続けた。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

キラ達が戦闘を続けてる中でアンジュとサラマンディーネが異変の空間と向かい合いながらも、どうすればいいか迷っていた。

 

「ちょっとどうするのよ!?」

 

「事態を何とかしようにも方法が分かりません!」

 

その事を考えようにも方法が思いつかない、その時アンジュの頭に何かがひらめいた。

 

「そうだわ!あれよ! アルゼナルをぶっ飛ばしたあれが! あれを使ってあの竜巻を消してしまえば!」

 

「…それは駄目です」

 

拒否をするサラマンディーネにアンジュは納得出来ず、すぐに問い返す。

 

「どうしてよ!?」

 

「収斂時空砲の破壊力では都はおろか、神殿事消滅してしまいます!」

 

「そんなの三割引きで撃てばいいじゃない!」

 

アンジュの無茶苦茶の要求にサラマンディーネはすぐに反論する。

 

「そんな都合よく調節出来ません!」

 

「そんな事を言ってる場合じゃないでしょう!!キラ達を見なさい!!」

 

アンジュは別の場所で戦っているキラとアスランを見て言い、サラマンディーネはキラ達の方を向く。

 

「アンタの国を護る為に必死に戦っているのよ! 少しは意地を見せなさいよ!」

 

「ですが!」

 

「もう~!はっ!そうよ!別に三割引きじゃなくても良いじゃない! 前にアルゼナルでやった時に様に貴女が撃って!私が撃ち消せば良いのよ!!」

 

「あれをですか?!しかし!」

 

それをやると都を消してしまいそうな考えになってしまうサラマンディーネは抵抗していまうが。それをアンジュが言い返す。

 

「いい加減にしなさいよ!サラマンルージュ!危機を止めて民を救う!それが人の上に立つ者の使命よ! それにキラやアスランをこれ以上戦いを任せ続けられるのも大変なのよ!!」

 

「っ!キラ殿……、分かりました…やりましょう!」

 

そう言って二人は歌を歌い出す。

 

 

「「♪~♪♪~♪」」

 

 

その歌はヴィヴィアン達だけじゃなく、オルガ達と戦っているキラ達にも聞こえた。

 

「この歌…?」

 

「まさか」

 

二人は振り向くと、アンジュとサラマンディーネが異変の空間に向かいながら歌い、アサルトモードに変形する。

 

 

「「♪~♪♪~♪」」

 

 

「アンジュ、サラマンディーネさん」

 

そして二人の機体が金色に変化して行き、それを見たオルガ達は…。

 

「あれを消す気だぜ!!」

 

「させないよ!!」

 

「ウザい!!」

 

「させるか!!!」

 

オルガ達が攻撃をしようとする際にキラ達が攻撃をして止め、オルガ達は舌打ちをしながら回避する。

 

そしてサラマンディーネの焔龍號が収斂時空砲を放ち、異変の空間に直撃する。

 

「アンジュ!!」

 

それにアンジュは頷き、撃とうとした際に機体が爆発してコックピットハッチが吹き飛んでしまい落ちて行く。

 

「アンジュ!落ちてますわよ!!」

 

「見れば分かるわよ!!」

 

「なら早く立ちなおしなさい!!」

 

「分かってるわよもう!!こんな時に!!あなた世界を破壊した兵器何でしょう!? 気合い入れないさよヴィルキス!!!!」

 

するとアンジュの指輪が反応し、ヴィルキスの負傷部が直って行き、更にコックピットハッチも直ってしまう。

そしてアンジュのヴィルキスが『ディスコード・フェザー』を放ち、収斂時空砲と共に直撃して、大爆発して行き、異変の空間は消滅した。

 

「やった!!」

 

「やりましたわ!!」

 

空間が消滅したのを見たオルガ達は歯を噛みしめる。

 

「くそっ!!やられちまった!!」

 

「撤退だね!!」

 

クロトがそう言ってレイダーをMA形態に変形させ、黒い空間を創り出して三機は穴に入って撤退して行った。

 

撤退して行った三機を見て、キラとアスランは武器を下ろす。

 

「キラ…」

 

「うん。まさかクルーゼが…」

 

「あの三人を蘇らせたと言う事はもしや…」

 

アスランは嫌な予感がしてならない事にキラも頷く。

 

「うん、僕も嫌な予感がする…。途轍もなく嫌な予感が…」

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして事態が収まり、キラとアスランはアンジュとサラマンディーネの元に行き、アンジュとサラマンディーネはキラとアスランの元に行く。

 

「キラ!アスラン!!」

 

「お二人共無事ですか!」

 

「うん、何とかね」

 

「お前たちも無事か?」

 

それに二人は頷き、サラマンディーネはキラ達に礼を言う。

 

「あなた達のお蔭で、民は救われました。本当に感謝しますわ、キラ殿、アスラン殿、アンジュ」

 

「いえ、そんな…」

 

「私はヴィヴィアンを助けたかっただけよ」

 

そう意地を張るアンジュ、それにアスランは少しばかり呆れる。

 

その中でもサラマンディーネは自分でも少しばかり信じられない表情をする。

 

「それにしても、まさかあの歌に助けられるとは」

 

「えっ?」

 

「どう言う事?」

 

キラとアンジュはサラマンディーネが言った言葉の意味が分からなかった。

 

「貴女が歌ったのは、嘗てエンブリヲがこの星を滅ぼした歌…。貴女はあの歌を何処で…?」

 

「お母様が教えてくれたの、どんな時でも進むべき道を照らす様にって」

 

アンジュは自分の歌を教えてくれた母の事を言い、それにサラマンディーネは言う。

 

「なるほど、わたくし達と一緒ですね?」

 

「えっ?」

 

「【星の歌】…私達の歌もアウラが教えてくれた物ですから。…何て愚かだったのでしょう、貴女は私の所有物だなんて…」

 

「サラマンディーネさん」

 

キラはサラマンディーネの表情を見て呟き、サラマンディーネはアンジュの方を見て言う。

 

「アンジュ…私はあなたのお友達になりたい、共に学び…共に歩く友人に───」

 

「長いのよね~、サラマンデンデンって…」

 

「えっ?」

 

っとその事にキラ達はアンジュの方を振り向き、アンジュはサラマンディーネの方を向きながら言う。

 

「『サラ子』って呼んで良いなら構わないわよ」

 

「っ…」

 

「アンジュ、お前ふざけるのもいい加減にしろ」

 

「何よ!文句でもあるの!?」

 

アンジュは文句があるアスランを見て睨みつけ、呆れた様子で見るアスラン、サラマンディーネはそれに少々困り果てる様子になった。

っとその時にキラがある事を言う…。

 

「『サラ』ってのはどうかな?…」

 

「「「えっ?」」」

 

「ほら、アンジュのサラ子って言うのも可愛そうだし、それにサラの方が良い名前で呼びやすいと思わない?」

 

キラのいつも通りの能天気が出てそれにアスランは手を頭の手に置き、ため息をする。

 

しかしサラの方はキラの一言と優しさに思わず心を揺さぶられ、微笑みながらキラの手を掴む。

 

「ありがとうございます…キラ」

 

その言葉にキラは一瞬驚いてサラの方を見て、またラクスの面影が浮かび上がって来る。

 

「っ…ラクス」

 

「えっ?」

 

サラはキラの言葉に一瞬振り向き。それにキラ話慌てて訂正する。

 

「あっ!いや!何でもないよ!ごめん!本当に…!」

 

慌てて謝るキラにサラは思わずクスッと笑い、アスランは眉を顰め、アンジュはジド目の感じでキラを見るのであった。

 



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第24話 心の傷

今回の最後辺りは少々悲しい物です。

どうか優しく見ていて下さい。


キラ達がサラの世界を救って翌日、キラとアスランとアンジュはサラからある事を聞いた。

 

「ミスルギ皇国に侵攻…?」

 

「はい、リザーディアの話しではミスルギ皇国の機密区画の地下でアウラを発見したと」

 

「っ!皇国の地下…?!」

 

それを聞いたアンジュは驚きを隠せない。

故郷であるミスルギの地下にアウラがいる事を聞いて、驚かない者はいない。

 

「私達は明朝、アウラの民の総力を集めて、ミスルギ皇国へ進行し…アウラを奪還いたします」

 

その事を聞いたキラ達は少しばかり言葉を失くすも、アンジュが少々間を空けてそれに問う。

 

「それを聞かせてどうするの? 私…私達に戦線に加われっとでも言うつもり?」

 

アンジュの問いにサラは微笑みながらいう。

 

「…まさか、貴女は自由ですよ?アンジュ。この世界に暮らす事もあちらの地球に戻る事も…。勿論我々と共に戦っても貰えるとなればそれ程心強い物はありませんが。明日の出撃の前に貴女の考えを聞いて置きたくて…」

 

「私の…?」

 

アンジュはそれに頭を傾げ、それにサラは頷く。

 

「あなた達は、民を救っていただいた恩があります。出来る事なら何でもお手伝いしますわ」

 

アンジュはそれを聞いて少しばかり考えいた。

無論キラ達も例外ではない、これから自分達はどうすべきなのか、どうするのかを…。

 

 

その頃撤退し戻って来たオルガ達は秘密格納庫で修理を行っているカラミティ達を見上げていた。

 

「どうしたんだね君達」

 

っと後ろから声を掛けられた三人は振り向くと、そこにはエンブリヲが立っていた。

 

「んだよ、突然後ろからやって来てよ」

 

「いやいや、僕は君達の様子を見に来ただけなんだがね、しかし君達も少々ガッカリさせて貰う物だね。何にも手柄を得ずに帰って来るとは」

 

「仕方ないだろう!!あっちにあいつ等が居たんだからよ!!」

 

「超ウザい奴等が…」

 

その事を聞いたエンブリヲはそれに笑みを浮かばせる。

 

「ほう~? キラ君達が向こうにか…、まあ気づいてはいたがね」

 

「はぁ!?」

 

「知ってて送ったって言うのか?!」

 

怒りを隠せないオルガ達、それにエンブリヲは清々しい表情で言う。

 

「まあ落ち着きまえ、言わなかった事に付いては謝るよ」

 

そう言ってエンブリヲはその場を去って行く。

オルガ達は心のない謝罪に納得行かないまま怒りが溜まりつつあった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして宮殿の外でキラ達は今後の事を話し合っていた。

 

「悪くはないと思うんだがな…俺は」

 

「アスラン、そう言える?」

 

「…今のところはな、あの世界のエネルギーを断つためにアウラを救出すれば、恐らくクルーゼの影響に支障を得る筈だ」

 

すると壁にもたれてるアンジュがある事を言う。

 

「それでいいのかしら…」

 

っとアンジュのその言葉にキラ達は振り向く。

 

「えっ?」

 

「信じられないのよ…」

 

「何をだ?」

 

「聞いて来た事全ての事よ」

 

アンジュは空を見上げながら言い、それにキラとアスランはアンジュの方を見る。

 

「ドラゴンが人類世界に侵攻してくる敵だって言うのも嘘、ノーマの戦いが世界の平和を守るってのも嘘…あれもこれも嘘ばっかり。もうウンザリなの」

 

そう言ってアンジュは壁から離れて後ろを向き、キラとアスランはアンジュの方を見続ける。

 

「ドラゴン達と戦って、それが間違いだったとしたら…。それにだいたい元皇女がドラゴン達と一緒にミスルギ皇国に攻め入るなんて…悪い冗談みたい」

 

その事にキラとアスランは顔を合わせて黙り込み、そしてアンジュは自分の腕を掴みながら言う。

 

「…分からないわ、何が正しいのか…」

 

「誰も分かりはしない、何が正しいのかもな」

 

っとアスランが言った言葉にアンジュは振り向く。

 

「結局の所、どんな結末になるかは自分で見つけるしかないんだ。それが間違いであっても…な」

 

アスランの言葉にアンジュは心をゆさぶられ、キラも頷いて言う。

 

「うん、僕達はどんな悪い方向に行こうと突き進むんだ。アンジュ…いくらでも迷ってもいいんだ」

 

その事を聞いたアンジュは少しばかり戸惑いながらも髪をいじくる。

 

「もう…二人共馬鹿ね、そんな簡単な理屈が通じる訳がないじゃない」

 

「通じないと思ったら通じるまであがくんだ、どんなに汚されてもな」

 

更に言うアスランの言葉にアンジュは少々黙り込んでしまう。

 

するとヴィヴィアンがやって来た。

 

「皆!皆! お母さんがお礼したいって!」

 

「お礼?」

 

「うん!だから早く早く!」

 

そう言ってヴィヴィアンはアンジュの腕を掴んで行き、それに慌てるアンジュ。

キラとアスランは肩をくすねながら二人の後を追いかけて行った。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして夜となり、町の人々がバーベキューをしてくれて、ラミアがキラ達にお礼を言った。

 

「本当にありがとうございました、街と私達を護って頂いて」

 

「いえ、僕達は出来る事をしただけですから」

 

「ええ、それに…」

 

アスランは崩壊している街の一部を見て、辛い表情をしてしまう。

 

「俺達は守れなかった者がたくさんあります…」

 

「それでも、私達を護ってくれた事には変わりありません。さっ、どうぞ冷めない内にどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

そうお礼を言うキラ。そして二人は一度落ち着く場所に座って、街を見つめていた時だった。

 

「どうしたの二人共」

 

っとそこにアンジュがやって来て、キラとアスランはそれに呟く。

 

「…良い街だなって思って」

 

「ああ、そう思っていた所なんだ」

 

「そう…、でも本当に良い所、皆助け合ってる生きている…あっ、そっか」

 

「ん?どうしたアンジュ」

 

アスランがアンジュが何かに気付いて問い、アンジュはそれに答える。

 

「アルゼナルみたい…なんだ」

 

アンジュが自分が居た場所の事を呟き、それにキラとアスランは顔を見合う。

そしてアンジュは立ち上がる。

 

「私…帰るわ。モモカが待ってるわ!」

 

「…そっか」

 

その事にキラが呟き、そこにサラ達がやって来る。

 

「それが…貴女の選択なのですね。また…戦う事になるのですね? 貴女と」

 

「サラ子…」

 

「やはり危険です!この者達は我々の事を知り過ぎました!」

 

ナーガは後ろにある刀を手を伸ばしてアンジュ達を警戒する、それをカナメは止める。

 

「でもキラさん達は都の皆を救ってくれたわ!」

 

「それでもこの間まで殺し合っていたんだぞ? 拘束するべきだ!」

 

ナーガとカナメの言い合いを聞いていたアンジュ達、アンジュは決意を決めた表情で言う。

 

「…私は、もうあなた達とは戦わないわ」

 

「ほら!私達は…えっ?!」

 

その言葉にナーガは思わず驚き、アンジュはその事を言う。

 

「私達はもう殺し合わないし、戦いもしない。分かり合わなければいけないもの」

 

その言葉を聞いたサラは微笑みを浮かばせて言う。

 

「では明日開く特異点により、あちらにお戻りください。必要ならばカナメとナーガを護衛に付けましょう」

 

「さ!サラマンディーネ様!?」

 

ナーガはそれに問うも、そこにアスランが言う。

 

「大丈夫です。俺達が付いています、護衛の必要はありません」

 

「そうですか…、お達者でアンジュ。戦いが終わりましたら、何時かまた決着を付けましょう…」

 

「ええ、今度はカラオケ対決でね」

 

っとアンジュとサラは握手をして、それをキラとアスランは苦笑いをしながら見届けていた。

そしてサラがキラの方を向いて問う。

 

「キラ、貴方に少しお話があるのですが宜しいですか?」

 

「僕に?」

 

キラはそれに首を傾げ、その様子にアスランは目を細めながら見て、アンジュはジド目で見る。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

キラとサラは二人で都の高い場所に上り、その様子をアスラン達がこっそりと付いて来ていた。

 

「あの二人がこんな場所まで来て、何をするのかしら」

 

「もし姫様に何かあったら…!」

 

今にも襲い掛かろうとするナーガ、それをカナメが抑える。

アスランはキラの様子を見て、まさかと思いながら見つめていた。

 

そしてキラはサラに訪ねて来た事を聞く。

 

「それでどうしたのサラ? 僕に話しって」

 

「キラ、あの時どうして私の事をラクスっとお呼びしたのですか?」

 

っと一番痛い所を突いてきたサラにキラは思わず心を痛める。

 

「貴方が言ったラクス殿、一体どう言う人物なのですか? 気になって仕方ないのです」

 

その事にキラは少し張りうつむいてしまい、それにサラは見る。

 

「キラ?」

 

「……ラクスは、僕の恋人“だった”人なんだ」

 

「えっ?貴方の? それにだったとは」

 

サラはキラの言っている言葉の意味が分からず、キラは一度夜空を見上げながら言う。

 

「ラクスは…ある病気で亡くなってしまったんだ」

 

「っ!」

 

キラの言葉にサラは思わず口を抑えてしまう。更に言い続けるキラは目を少し細めながら話し続ける。

 

「ラクスの病気は突然の病で、全く原因不明の病で何の病名かみつける事が出来なかったんだ…、それに苦しむラクスの姿を、僕は見るに耐えなかった…」

 

悲しむキラの表情にサラはただ見つめることしか出来ず、密かに聞いていたアスラン達は黙ってしまう。特にアンジュはキラの事情を知り、ただ唖然とするしかなかった。

まさか彼の心にそんな悲しい過去を背負っているとは知らなかったからだ。

 

アスランは少々うつむいて黙り込み、辛そうにしたままキラの様子を見つめるしかなかった。

 

サラはキラの姿を見て、少し戸惑いを隠せない。

 

「…大切な方だったのですね。ラクス殿を」

 

「うん…、ラクスが亡くなる前に彼女は僕に『強く生きて下さい』と言ってくれた…、でも…彼女がそう言っても…時々彼女の面影が出て来て…」

 

するとキラの目から涙が流れ出て来る。

 

「僕は…彼女が居ない世界で…どう生きて行けば…」

 

それに見つめるサラは、キラの頭を持って優しく抱き寄せる。

キラはそれに一瞬驚きを隠せず、サラはキラの頭を優しくなでながら言う。

 

「キラ、貴方は悲しい事を背負い過ぎです…、悲しみは悲しみを生み出すだけ…そして涙を流さなければ辛いだけです。泣いていい時は泣いても良いのですよ」

 

「う、う…うわあああああああああ!!」

 

その事にキラはとうとう我慢が出来ず、泣き崩れてしまう。

聞いていたアンジュ達はそれに悲しみながら見ていて、アスランは辛そうな表情をしたまま顔を逸らすしかなかった。

 

そしてサラは泣き崩れるキラを優しく抱きしめながら見つめるのであった。

 



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第25話 行きつく先は

早朝…、アウラの民がアウラを奪還するべく総力を持って進攻する為、戦力を集結させていた。

その様子に外に居たキラ達、その中でヴィヴィアンはドラゴンの総力を見て感心していた。

 

「うお~!ドラゴンのフルコースなり~!」

 

「これは驚いたな…」

 

こればかりは流石のアスランも驚いていた、そんな中キラにアンジュは何やらゆっくりと近づいて来て、それにキラが気付く。

 

「どうしたの?」

 

「あのさ…キラ、その…ごめん」

 

っと当然アンジュが謝り出したのを見て、キラは頭を傾げ、それにアスランも振り向いて見ていた。

キラは突如謝罪してきたアンジュに問う。

 

「どうしたの? 急に謝り出して…」

 

「実はね…昨日聞いちゃったの…貴方とサラ子の会話を…」

 

するとキラはその事に少しばかり黙り込んでしまい、アスランの方を見るとアスランも申し訳なさそうな表情をしていた。

 

「何かと気にならない貴方が、まさかあんな辛い過去を背負って居たなんて…、それも大切な…」

 

「……アンジュ、出来ればあまり気にしないでほしいんだ。僕だって何時までも…ラクスの事を引きずる訳には行かないって昨日サラに教えられたから」

 

キラは昨日の事で少しばかり吹っ切れた感じになって、これ以上ラクスの事を考えないようにしたと決めた。

それにアスランは心配そうな表情をするも、今のキラの様子を見て見届けようとした。

 

そしてそこにサラがやって来て。

 

「アンジュ、貴女にはこれを差し上げます」

 

するとヴィルキスに焔龍號と同じ銃剣付きビームライフルが装備させられる。

 

「何よこれ…」

 

「これは私の焔龍號と同じ武装のバスターランチャーです。これがあれば心細くありませんよ」

 

そう言ってサラはその場から去って行く前に、キラの近くに寄って言う。

 

「キラ、あまり無理をなさらないでくださいね」

 

「うん。ありがとう…もう大丈夫だから」

 

サラに微笑みながら話すキラに、サラは心配そうに見つめるも、その様子に答えるかの様に頷いてその場から去って行く。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてドラゴン達が集結して、大巫女が皆の前に現れる。

大巫女はアウラの民達に宣言をする。

 

「誇り高きアウラの民よ、アウラと言う光を奪われ幾星霜…ついに反撃の時が来た。今こそエンブリヲに我らの怒りとその力を知らしめる。我らアウラの子!例え地に落ちてもこの翼は折れず!!」

 

その言葉にドラゴン達は雄叫びをあげて、それにヴィヴィアンもつられるように興奮しながら吠えた。

宣言が終えてサラは焔龍號に乗り込み、皆に告げる。

 

「総司令!近衛中将サラマンディーネである! 全軍出撃!!」

 

焔龍號が発進して、それに続くかの様にナーガとカナメの蒼龍號と碧龍號が続き、ドラゴン達もその後を追いかけるように出撃した。

 

キラ達も機体に乗り込んで行き、アンジュの後ろに乗っているヴィヴィアンが見送っているラミアに言う。

 

「行ってきまーす!」

 

そして空に舞い上がったキラ達はサラ達の後を追いかけながら飛行する。

そんな中でアスランがキラに通信を入れる。

 

「キラ、本当に大丈夫なのか?」

 

「うん、もう大丈夫だから…気にしないで」

 

それにアスランは黙り込み、聞いていたヴィヴィアンが問いかけて来た。

 

「ほよ?一体何の話?」

 

「うん、少しね…」

 

「ほよよ…? あっそうだ、ねえねえ、ドラゴンさん達が勝ったら戦いは終わるんだっけ?」

 

ヴィヴィアンがこの戦いが終えた後の事を語り出し、それにキラ達は考え込む。

 

「…どうだろうね」

 

「まだはっきりと分かった訳じゃないが…」

 

「でも終わるんでしょ?」

 

「え、ええ…多分ね」

 

「そしたら暇になるね、そしたらどうする?」

 

っとヴィヴィアンの言葉にキラ達は振り向く。

 

「どうするって?」

 

「実はね、私戦いが終わったら皆をご招待するんだ。あたしん家に♪ねえ皆は?」

 

その事を尋ねられたキラ達、キラとアスランは少しばかり考えて…。

 

「僕達は…分からないな。元の世界に戻っても軍の仕事が山ほど残ってるから、皆の様に遊んでいられないな」

 

「ああ、内戦状態にある俺達の世界はな…」

 

「ほよよ…」

 

キラとアスランの言葉に納得するヴィヴィアン、それに対してアンジュはキラとアスランの考えに少し黙り込んでしまう。

 

「ねえ!アンジュは?」

 

「え? 私は…」

 

問いかけに中々答えられないアンジュ、するとカナメが皆に言う。

 

「特異点開放!!」

 

すると皆の目の前にシンギュラーが解放されて、それにヴィヴィアンが見開く。

 

「おお~!開いた!」

 

開放と共にサラがドラゴン軍に向かって叫ぶ。

 

「全軍!我に続け!!」

 

その言葉と共にとドラゴン達はシンギュラーに突入して行き、向かっている中でアンジュはある光景を想い描いた。

それはモモカと共にある喫茶店を作り、皆に笑顔たっぷりの喫茶店を描いていた。

 

「(これが良いかもしれない…、名前は…喫茶アンジュ。なんてね)」

 

そう思いながらも皆はシンギュラーに向かって行き、シンギュラーを通って行った。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてシンギュラーを抜けてキラ達は見渡す。

するとヴィヴィアンがある事を言い出す。

 

「ここでクイズで~す! 此処は一体どこでしょうか!クンクン…正解は!あたし達の風、海、空でした~!」

 

アンジュは自分の世界に戻って来た事に思わず嬉しさが出る。

 

「戻って来た…戻って来たのね」

 

一方サラは座標が違っている事にすぐに問う。

 

「到着予定座標より北東4万8000…?! どうなっているのですか!これは!」

 

「分かりません…!確かに特異点はミスルギ上空に開く筈…!」

 

っとその時サラの機体のレーダーに警告熱反応が表示され、それにサラは前方を見る。

 

すると目の前にミサイルが無数に飛んで来て、それにドラゴン達は光の盾を展開し防御する。

 

「何事!!」

 

煙が晴れた途端に無数のドラゴン達が海に落ちて行き。

ガレオン級が吠えた途端に緑色のビームがガレオン級の頭部を吹き飛ばして撃ち落とす、それにサラは目を見開く。

 

「あれは…!」

 

サラが目にしたのは、五体のヴィルキスに似た機体とカラミティ、レイダー、フォビドゥン、そして更に『カオスガンダム』『アビスガンダム』の二体の機体も混じっていた。

 

その機体を見たキラ達は驚きを隠せない。

 

「あれは!?カラミティ!レイダー!フォビドゥン!?」

 

「それにあれはカオスにアビス?!」

 

「黒い…ヴィルキス?!」

 

キラ達が驚く中で、カラミティ達と黒いヴィルキス達は手に持っているビームライフルを構えてドラゴンに攻撃を開始する。

 

「へへへ・・・!ほらほら行くぜ!!!」

 

カラミティに乗っているオルガがホバリング状態で撃ち。

それにドラゴン軍達は散開し、ナーガとカナメはサラに通信を入れる。

 

「サラマンディーネ様!これは!?」

 

「待ち伏せです…!」

 

サラが言った言葉にナーガとカナメは驚きを隠せない。

 

「待ち伏せ?!」

 

「では!リザーディアからの情報は…!?」

 

「今は敵の排除が最優先です!!」

 

そう言ってサラ達は龍神器達をアサルトモードに変形させて、ドラゴン達に言う。

 

「全軍!!敵機を殲滅せよ!!」

 

サラが先頭に進み、その後にナーガやカナメもあとに続く。そしてある拷問部屋で吊るされているリザーディアにカラミティ達と黒いヴィルキス達がドラゴン達との戦闘の映像を見ているエンブリヲが居た。

 

「どうだい、君が流した情報で仲間が虐殺される様を。リィザ…いや、リザーディアか?」

 

「ぅ…」

 

それにはリザーディアはただ悔しがるだけであり、エンブリヲはそれに笑いながら再び映像を見ると同時にエンブリヲの表情が急に変わる。

彼の目にストライクフリーダムとインフィニットジャスティス、そしてヴィルキスの映像が映り、それに笑みを浮かべる。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

戦闘を行っている中、ドラゴン達が次々と落とされて行くのをヴィヴィアンが見て、大声で叫ぶ。

 

「ああ!!やめろーーーーー!!!!」

 

「っ!」

 

するとキラがバーニアを吹かして加速し、アスランが問う。

 

「キラ!?」

 

「サラ達を助ける!!放って置けない!!」

 

「私も行くわ!ヴィヴィアン!しっかり捕まってて!」

 

「おう!」

 

そう言ってキラの後に続くアンジュ、アスランは舌打ちをした後にキラ達の後を追いかけて行った。

 

そして戦闘は膠着状態へとなり、サラ達の軍は次々へと落とされて行く。

サラは黒くて蒼いヴィルキス『クレオパトラ』と収納ブレードで戦っていた。

 

「戦力!消耗三割を超えました!!」

 

「早くも戦況が維持出来ません!!」

 

「相手はたったの10機ですよ! くっ!」

 

サラは噛みしめながらも左腕に装備されているビーム砲を撃ち、それをクレオパトラは難なくかわす。

 

「速い!!」

 

そしてクレオパトラはサーベルをサラの焔龍號に振りかぶろうとした時に、アンジュのサーベルが受け止める。

 

「大丈夫!サラ子!」

 

「アンジュ!」

 

「!?」

 

っとクレオパトラに乗っているライダーは思わず反応し、一度離れてヴィルキスを見る。

 

「ヴィルキス。アンジュ…?」

 

クレオパトラのライダーが唖然としてる中で、アンジュはサラに言う。

 

「ボケっとしてないでさっさと退却しなさいよ!!」

 

「出来ません!エンブリヲからアウラを取り戻すまでは!」

 

『無理を言っちゃだめだ!!』

 

っとキラの無線を聞いたサラが振り向くと、キラ達がカラミティ達に向けて攻撃をする。

そんな中でキラがドラグーンを展開させて、カラミティ達に向けて攻撃を行い、それにオルガ達は驚きながらかわす。

 

「何だよこれ?!」

 

「この間はなかったぞこんなの?!」

 

「ああ~ウザい!!」

 

そしてキラがサラに向かって言う。

 

『サラ!! 周りを見るんだ!!この状態ではアウラを取り戻すのは不可能だ!!』

 

っとサラはキラの言う通りに周りを見渡すと、戦況が混乱状態であり、とてもじゃないが進攻するのは不可能であった。

それにサラは歯を噛みしめながら見つめ。キラがサラに言う。

 

「サラ!君は今は司令官なんだ! 今は戦力を立て直すんだ!」

 

その事を言われ、少し頭を冷やして操縦桿を握りしめて皆に言う。

 

「アウラ…全軍!撤退する!! 戦線を維持しつつ特異点に撤退せよ!」

 

それによりドラゴン達は特異点に撤退を開始する。

それに緑のヴィルキス『テオドーラ』がビームライフルで追撃していた。するとアンジュがテオドーラに気付いてアサルトライフルのグレネードランチャーを撃ち、それにテオドーラはビームシールドで防御するも、強烈は爆風と吹き飛ぐ。

 

「ぐっ?!!」

 

そして再び攻撃しようとした時にライフルの弾が切れた事に気が付く。

 

「くっ…!」

 

『アンジュ!先ほど渡したバスターランチャーを使ってください!!』

 

っとサラの言葉に思い出したアンジュはアサルトライフルを仕舞って、バスターランチャーを構える。

そしてサラはナーガ達に通信を入れる。

 

「ナーガ!カナメ!後の事は頼みます! 私は…キラ達と共に残ります!」

 

「「えっ!?」」

 

「えっ!?サラ!?」

 

キラ達はサラの通信を聞いて驚き、アンジュは呆れながら怒鳴る。

 

「馬鹿!!貴女何を考えてるの!?」

 

「いくらキラ達が頑張ってもこの数では無理です! 私も残ります!」

 

そう言ってサラは自分のバスターランチャーを構えて攻撃し始める。

 

こう言ったからにはいくら言っても聞く事は無いと判断をするキラ。すると目の前にフォビドゥンがやって来て、鎌を振り下ろして来る。

それをビームシールドを展開して防御し、それに後ろからカオスがビームライフルで攻撃してくる。

 

キラはそれに気付いてかわし、フォビドゥンもそれをかわす。

 

アスランはビームサーベルをハルバートモードにして、レイダーに攻撃しながら迫りくるアビス

 

そしてアンジュは迫るクレオパトラに驚きながら回避し、フライトモードになってその場を離れようとするがそこにクレオパトラが追跡しながらアンジュとヴィヴィアンの姿を確認する。

 

「やっぱり…」

 

「?…」

 

アンジュはクレオパトラの方を見ると、クレオパトラがフライトモードになり、そのライダーのバイザーが透通って素顔が現る。

その人物はサリアだった事に…。

 

「どうしてあんたが…それにヴィヴィアンも」

 

「!? サリア…!?」

 

「およよ?!」

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして画面を見ているエンブリヲはヴィルキスを見て、笑みを浮かばせて近くにある受話器を取る。

 

そんな中でアンジュがサリアに問う。

 

「あなた!そこで何やってるの!?」

 

「質問してるのはこっちよ、どうしてあんたがドラゴンと共に戦って…、それにヴィヴィアンもどうして…」

 

すると『レイジア』とテオドーラが近くにやって来る。

 

「アンジュちゃん、それにヴィヴィちゃんも」

 

「うわ、マジビックリ」

 

「っ!? エルシャに…クリスも!?」

 

三人が敵側になって居る事にアンジュは驚く、するとサリアの元に通信が入る。

 

「こちらサリア…えっ? 分かりました…エンブリヲ様。アンジュ、貴女を拘束するわ、色々と聞きたいことがあるから…二人共、良いわね?」

 

「「イエス、ナイトリーダー」」

 

そう言って三人はアサルトモードに変形し、それにアンジュは驚いて慌てて逃げる。

 

それに逃がさんとサリアがビームライフルを構える。

すると空からビームが飛んで来て、三人は回避する。

 

空から焔龍號が飛んで来て、アンジュの元に寄る。

 

「アンジュ!!」

 

「サラ子!?」

 

『サラマンディーネ様!撤退完了しました!』

 

『どうか…お気を付けて』

 

そう言ってナーガ達は特異点を閉じ、サラはそれに見つめていたが事態は急変していた。

 

「アンジュ!今すぐこの空域から離脱しましょう!!」

 

「分かってるわよ!!キラ!アスラン!!」

 

その通信にキラとアスランは振り向く。

 

「アスラン!」

 

「ああ!」

 

アスランはビームライフルを撃って後退し、キラは再びドラグーンを使って攻撃して行き、オルガ達は舌打ちしながらかわし、カオスとアビスの『スティング・オークレ』と『アウル・ニーダ』もその攻撃に舌打ちする。

 

「何だよこいつは!!」

 

「邪魔だよ全く!!」

 

そしてアンジュ達が逃げ回ってると、サリアがビームライフルを撃って、アンジュとサラの機体のバーニアを撃ち抜かれてしまう。

 

「しまった!!」

 

「落ちる!!」

 

ヴィルキスと焔龍號が落ちると思いきや、アスランのインフィニットジャスティスが二機をキャッチする。

 

「間に合った!!」

 

「アスラン!」

 

サリアはアスランの妨害に舌打ちをし、更にビームライフルを撃って来る。

それをキラがビームシールドで防御して行き、エルシャとクリスもビームライフルを撃とうとするも、キラがビームライフル二丁を使って二人のビームライフルを撃ち抜く。

 

撃ち抜かれたビームライフルは爆発して、それにエルシャとクリスは少し歯を噛みしめる。

 

そしてキラがアスラン達の元に行き、炎龍號を掴む。

 

「このまま不味い!」

 

「いくら俺達でもアンジュ達を抱いたまま戦うのは困難だ!」

 

そしてカラミティ達がやって来て、ビーム砲を構える。

 

「もう逃げられないぜ!!」

 

「観念なさい」

 

それに黙り込むキラ達、するとピンク色の粒子が少しキラ達の目の前に通り過ぎ、それにキラとアスランが感じ取る。

 

「えっ?」

 

「今のは…?」

 

異変を感じる二人、するとアンジュのヴィルキスが急にアサルトモードに変形し、それに驚くアンジュ。

 

「えっ!?何!?」

 

驚くアンジュに対しヴィルキスは蒼い色に変化して行き、ストライクフリーダムとインフィニットジャスティス、焔龍號を包み込んで何処かに消えていった。

 

それに驚きオルガ達とサリア達、サリアは消えていったヴィルキス達を見て唖然とする。

 

「何処に行ったの…アンジュ」

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてどこか別の場所に飛ばされたキラ達はそのまま飛行していき、目の前に砂浜がある事に気付き、慌てて足を付かせる。

しかし間に合わなかったのか、体制を崩してしまい、倒れ込んでしまう。

 

「ぐあっ!」

 

「いたたた…って…ここ、何処?」

 

アンジュは周りを見ると砂浜が広がり、そして近くにはある教会が見えた。

 

そんな中でキラとアスランはすぐその教会に目が映り、それに思わず目を大きく開かせる。

 

「此処って…」

 

「まさか…!」

 

すぐさまアスランは地図を調べて見ると、そこには『オーブ』と書かれていて、それに驚きを隠せない。

 

「キラ!此処はオーブだ!!」

 

「えっ!?」

 

それに驚くキラに対し、アンジュとサラ、そしてヴィヴィアンは初めて聞く言葉に頭を傾げていた。

すると…。

 

『キラさん!!アスラン!!』

 

突然の通信にキラとアスランは振り向くと、空からデスティニーとインパルスが飛行して来て、後方にアークエンジェルがやって来る。

 

『無事だったんですね!!』

 

『キラ君!!』

 

「シン!ルナマリア!」

 

「マリューさん!」

 

キラとアスランは再会出来たシン達に思わず喜び、アンジュ達はただ唖然とするのであった。

こうしてキラ達はアンジュ達の世界からコズミックイラに帰って来たのだった。

 




はい、キラ達はアンジュとサラとヴィヴィアンの三人と共にコズミックイラに着きました。

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第26話 帰投 前編

キラ達がコズミックイラに戻って来てすぐにシン達とアークエンジェルに発見されて、アークエンジェルの中に収納された。

そしてすぐに機体から降りたキラ達は待ってくれているシン達の元に行く。

 

「皆…ただいま」

 

「キラさん、アスラン。無事で良かったです」

 

「すまなかったシン…」

 

「本当、MIAになって皆で必死に探したんですよこの数ヵ月。そしたらいきなり現れるんですから」

 

ルナマリアが呆れる風に言いながらキラとアスランに言い、それにキラとアスランは苦笑いしてしまう。

そこにマリューと『ムウ・ラ・フラガ』がやって来て、キラ達は振り向く。

 

「キラ君、アスラン君。無事で良かったわ」

 

「マリューさん、ムウさんも」

 

「ようお前等、散々迷惑させやがって、何処に行っていたんだ」

 

その事にキラ達は頭に手を置き少々困り果てる表情となる。

そこにキラの元にミリアリアとある一人の男性が…。

 

「キラ」

 

「あっ、ミリィ…え」

 

「やあキラ」

 

何とそこに居たのは『サイ・アーガイル』であった、除隊したサイがアークエンジェルに乗艦している事にキラは驚き、すぐさまサイに問いかける。

 

「サイ…どうして君が?」

 

「キラが行方不明になったと聞いて、俺…アークエンジェルに捜索の協力を申し出んたんだ。何もしないまま…見ているのは出来なかったから」

 

その言葉にキラは思わず嬉しさがあふれて来て、それに微笑みが出る。

 

そんな中ですっかり蚊帳の外に置き去りになってしまっているアンジュ達。

ヴィヴィアンはその様子に思わず言葉がこぼれる。

 

「おお~、キラ達は歓迎されてるね~?」

 

「此処はキラ達の世界、心配されていた者達が歓迎されるのは当然だと思われます」

 

「それはそうだけどなんか置き去りされて嫌な感じ…ってサラ子! アンタ羽と尻尾は?!」

 

アンジュに問いかけられたサラはその事に振り向いて見ると、サラの特徴である羽と尻尾が綺麗さっぱりなくなっていて、それにサラは驚く。

 

「羽が…!いつの間に」

 

するとシンがアンジュ達の方に気付き、キラに問いかける。

 

「キラさん、彼女達は一体…」

 

「えっ? ああ…彼女達はアンジュとサラとヴィヴィアン。僕達が向こうの世界で出会った人達なんだ」

 

「向こうの世界?」

 

キラの言葉にルナマリアは頭を傾げ、それにマリューは分からずまま問う。

 

「どう言う事なのキラ君」

 

「理由を説明します。僕達が体験して来た事を全て…」

 

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 

アークエンジェルのブリッジでキラ達はマリュー達にアンジュ達の世界に付いて話した。

 

ノーマとマナ、アルゼナルとドラゴン、そして二つの地球にエンブリヲの正体…、その事を全て話した事にマリュー達は思わず言葉を失くす。

 

「そんな事が…」

 

「いかにも信じられない話ではあるがな…しかしまさかクルーゼが…、あいつめ!」

 

ムウは拳を握りしめて、黙り込んでしまう。

その様子にサラはムウにその事を問う。

 

「貴方はエンブリヲの事をご存知なのですか?」

 

「ん?…ああ、エンブリヲって名前じゃなく奴の名はラウ・ル・クルーゼだが、奴は因縁があってな…まさか奴が生きていたとは」

 

ムウはそう言って再び黙り込み、その様子をマリューは見つめる。

 

「ムウ…」

 

「しかしそんな中でキラさん達はよく無事でしたね?」

 

シンがその事をキラ達に言うと、キラはシンの方を向いて頷く。

 

「うん、まあね、アルゼナルの方で何とか身を置いていたから、でもその司令官は何かと隠し事が多くてね…、ドラゴンが人間出会った事を隠していたり、アンジュに嘘をの言葉を伝えていたり…」

 

「何ですかそれ? 司令官としては駄目じゃないですか」

 

ルナマリアの隣に居る妹『メイリン・ホーク』がその事に思わず呟き、それにキラとアスランは頷いて言う。

 

「うん、その後にマナの人達がアルゼナルを襲い掛かり、皆を抹殺して行ったんだ…」

 

「それって、まるでロゴスがコーディネイターを抹殺しようとしてるのとですか?」

 

「ああ、その時にクルーゼが現れたんだ。プロヴィデンスに乗って」

 

それを聞いたマリュー達は少々黙り込んでしまい、それをアンジュはキラ達に向かって言う。

 

「ねえ!いつまでここで話をするのよ、私は急いで戻らないと行けないのよ? アルゼナルに」

 

「気持ちは分からなくないけど、ヴィルキスがどうやってワープ出来たのかも分からないのに無理に戻ろうとしたら駄目だよ」

 

「っ~~!」

 

その事にアンジュは歯を噛みしめるが、それをサラが言う。

 

「アンジュ、今はキラの言う通りです。下手に戻ってはあの者達に掴まりにいく様なものです。此処は素直に辛抱するのも大事です」

 

「っ~!もう!分かったわよ!!」

 

そう言ってアンジュは渋々しながらも納得し、その様子をシン達はただ唖然としていて、キラとアスランは呆れて見てるだけであった。

 

 

 

そしてアンジュ達はライダースーツとアウラの服からオーブ軍の服装を借りて着て、ルナマリアに食堂に案内された。

ヴィヴィアンは出された食事を食べていて、笑みを浮かばせながら言う。

 

「うま~い!いや~ここのご飯は美味いね!不味いノーマ飯が懐かしく思える~!」

 

のん気に食べているヴィヴィアンに見ているルナマリアはただ呆れる感じになって来る。

 

「この子…何てマイペースなのかしら」

 

「ヴィヴィアン、いつもそんな感じよ」

 

そうアンジュは水を飲みながらルナマリアに話し、それにルナマリアはまたしても呆れる風に感じるしかなかった。

アンジュは軍服の事をルナマリアに話す。

 

「でもいいの? 服まで借りちゃって」

 

「良いの良いの、あんな露出度の高い服着てたらこっちが恥ずかしくなって来るから、でもよくあんなHな服を着てられるわね?おへそ丸出しで」

 

「べ!別にあれは好きで着ている訳じゃ!」

 

ルナマリアの言葉にアンジュは思わず顔を赤くしてしまう、サラはさっきから気になって居る羽と尻尾の事を考えていて、それに隣に座るメイリンが問う。

 

「どうかしたのですか?」

 

「いえ、別に大した事はありません(やはり妙ですわね…どうして羽と尻尾が無くなってしまったのでしょう…不思議ですね)」

 

そう考えるサラ、そしてそこにキラ達がやって来る。

 

「どう皆、楽しんでる?」

 

「キラ…あれ?」

 

アンジュ達はキラとアスランの服装を見て思わず目がくぎ付けとなる。

 

キラの服装は白い服にシンとルナマリアが来ている物に似ていて、アスランはオーブ軍の軍服を着ていた。

それにアンジュとサラが問う。

 

「キラ、アスラン、それがあなた達の服装?」

 

「まあ、何とも素敵な服装です事」

 

っとサラの言葉にルナマリアとメイリンは思わず振り向いて仕舞う、キラはサラの言葉に苦笑いしながらもアンジュの言葉に頷いて言う。

 

「うん。これが僕ザフトの軍服だよ、アスランのがオーブの軍服さ」

 

「ようやくパイロットスーツから脱ぐ事が出来て安心したがな」

 

アスランは椅子に座りながら言い、それにキラは納得した風に頷いてアンジュ達に言う。

 

「そうだアンジュ、サラ、ヴィヴィアンにも紹介しておくね、彼女はルナマリア・ホーク、ザフト軍のヤマト隊に所属しているんだ、そして彼女の妹のメイリン・ホーク。

あともう一人シン・アスカと言う男の子居たでしょ?彼も僕の隊の仲間なんだ」

 

「よろしく!ルナマリア・ホークよ」

 

「メイリン・ホークです」

 

二人の挨拶に最初にヴィヴィアンが言う。

 

「やっほ~!アタシはヴィヴィアン!よろしくね?」

 

「アンジュよ」

 

「私はアウラの末裔にしてフレイヤの一族の姫、近衛中将サラマンディーネです」

 

三人は挨拶した後にサイとミリアリアがやって来る。

 

「キラ」

 

「ん?どうしたの?」

 

「艦長がお呼び出そうよ。今後の事で話があるって」

 

「話?うん分かった」

 

そう言ってキラは食堂から出て行き、その際にアスラン達に言う。

 

「アスラン、ルナマリア。アンジュ達に艦内を色々見せて回ってよ」

 

「ああ、分かった」

 

「了解です」

 

そう言い残してキラは艦長室へと向かった。

 

 

艦長室へと到着したキラは早速マリュー達と話をして、マリュー達の言葉に耳を傾ける。

 

「えっ?アンジュ達をオーブへ?」

 

「ええ、これから本艦はオーブに向けて発進し、あなた達の帰投報告に向かいます、それに彼女たちも一緒ね、いくら艦内でも狭苦しいのも耐えかねないかもと思ってね」

 

「成程、分かりました。カガリにも心配を掛けましたから、謝りに行かないと」

 

そう言ってキラは艦長室を出る。

 

その様子をマリューは何やら心配そうに見ていた。

 

「…大丈夫そうねキラ君、ラクスさんを亡くしてからどうなのか心配だったけど」

 

マリューはそう言ってコーヒーを取り、安心して飲むのであった。

 



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第27話 帰投 中編

今回は短めです。

後あとがきに報告があります。


キラ達を回収したアークエンジェルはオーブに到着し、港へと入港する。

アンジュ達は入港するオーブの港を見ていた。

 

「おお~!すげぇぇぇ!」

 

「此処がこの世界の国?」

 

「見事なものですね、文明レベルも私達の世界よりも相当上です」

 

サラがそう言ってオーブの街を見る。

その頃港にはオーブの代表『カガリ・ユラ・アスハ』が待っていて、アークエンジェルが停泊して、橋が延ばされる。

 

アークエンジェルからキラ達が降りて来て、その際にすぐさま駆け寄る。

 

「お前等ー!!」

 

「カガリ」

 

「あっ…」

 

カガリはすぐさまキラとアスランに抱き付き、それにアンジュは何やら不機嫌そうになる。

 

「何あいつ…、気に入らないわね…」

 

「アンジュ、どうも違うみたいだよ?」

 

ヴィヴィアンの言葉にアンジュは振り向き、その様子を見るとカガリがキラとアスランに心配した表情で話しかけていた。

 

「お前等今まで何処にいたんだ!! 本当に心配したんだぞ!!」

 

「ごめんカガリ、心配かけちゃって」

 

「すまなかったカガリ」

 

キラとアスランはカガリに謝り、目に涙を溜まらせるカガリは涙を拭きとり、鋭く睨みつけながら言う。

 

「今度勝手にいなくなってみろ! 今度は許さないからな!」

 

「うん、本当にごめん」

 

キラは頷きながらカガリに謝る。

そしてその際にカガリは後ろに居るアンジュ達の存在に気付き、アスランに振り向く。

 

「アスラン、あの女達は誰だ?」

 

「ああ、彼女達は俺達と共に行動しているアンジュ、ヴィヴィアン、サラマンディーネだ」

 

「サラ達は僕達が遭難した先の世界で知り合って、行動しているんだ」

 

キラ達の言う言葉にカガリは意味が分からず、頭の中がゴチャゴチャになっているのであった。

 

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 

オーブ政府の施設の中でキラとアスランはカガリにこれまでの事を話した。

向こうで起きた全ての出来事を話、それにカガリはジッと聞いていて目を瞑る。

 

「成程な…、とても信じられない話ではないが、そいつ等の機体…パラメイルと言う物を持っているとなれば信じるしかないな。しかし…」

 

「どうしたのカガリ?」

 

キラはカガリの突然の様子に問いかけ、カガリはジド目でキラとアスランを見ながら言う。

 

「お前等、あの女たちのどちらかの尻に巻かれたんじゃないだろうな?」

 

「えっ!そ!そんな事は無いよ!」

 

「そ!そうだ!当たり前だろ!」

 

「どうかな、お前等の今の様子じゃあやりかねないと感じるんだがな」

 

カガリの言いがかりに戸惑うキラとアスラン、その様子をマリューがくすくすと笑いを堪えながら言う。

 

「カガリさん、その様な事はないと思うわよ私は、でも一応気になるわよね」

 

っとマリューも気になるかのようにキラとアスランを見て、それにキラとアスランは困り果てる表情をする。

 

「ちょっとマリューさん!」

 

「貴女まで何を…!」

 

「フフフ、ごめんなさい。でも少し気になる所はあるのよ?」

 

「そんな…、別にサラとは」

 

「そこだ!!」

 

カガリが思いっ切り指を指して来て、キラはそれに思わず後ずさりをする。

 

「そのサラと言う言葉! どう見てもお前はあのサラマンディーネと言う女に惚れている感じに見えるじゃないか!! 」

 

「そ!それはアンジュが彼女の事を当てずっぽで言うから、それで僕サラって言う風に言っているだけで…!」

 

「良い訳するな!! それがどう見てもそう言う風に見えるじゃないか!!」

 

その事にキラは少々困り果てる様な表情をしてしまう。

そして次にアスランの方を向く。

 

「アスラン!お前はまた女を誑かして来たんだろう!!」

 

「ち!違う!何を言ってるんだ!」

 

「何が違うんだ!!さっきの様子を見てどうも怪しいぞお前!!」

 

言い訳をするアスランに怒鳴る風に言うカガリ、その様子にキラもそれには何とも言えない状況になり、その場を去ろうとした際にカガリに首根っこを掴まれる。

 

「おい!何処に行くんだお前! まだ話は終わってないぞ!!」

 

「カガリ…勘弁してよ~」

 

 

 

 

そしてその頃アンジュ達の方では…。

 

「うおお~!あれかっけぇぇぇ! ねえねえアンジュ!こっちに来てよ!」

 

ヴィヴィアンが近くの施設内で外に止めてあるムラサメを見て言い、それにアンジュはただ呆れながら見ていた。

 

「ヴィヴィアン本当に飽きないわね…」

 

「いえ、彼女の言いたい事も分かります。キラ達の世界の機体は素晴らしいです。私が創り上げた龍神器よりも優れた機械ですから」

 

「へぇ~、貴女達の小さな機体って貴女が作ったの?」

 

ルナマリアがサラに焔龍號の事を聞き、それにサラは答える。

 

「はい、私が創り上げた焔龍號はアウラ奪還の為に用意した切り札なのです。ですが…」

 

「ですがって…何?」

 

「エンブリヲがあのような機体を用意していたとは…、もしかしたら私達の機体では歯が立たないと感じまして…」

 

「ふ~ん、成程…」

 

そう頷くルナマリア、っとそこに少し疲れ果てたキラとアスランがやって来る。

アンジュとサラがキラとアスランに気付いて声を掛ける。

 

「キラ、アスラン」

 

「どうかしましたか?」

 

「え? うん…ちょっと…」

 

「カガリにあちこち聞かれてな…、それで」

 

っとその事にアンジュはアスランにジド目で見る。

 

「へぇ~…、アスランあんな女にいろいろ聞かれたんだ」

 

「ん?何だいきなり」

 

アスランは突如何かを言い出したアンジュに呆れる風な目で見て、それにルナマリアはアンジュの考えが理解し、アスランに言う。

 

「アスラン、あなたもいい加減自分で気づいて下さいよ」

 

「はぁ?何をだ?」

 

「…はぁ、もういいです。そうだわ!皆で少し街に出る気はない? 私が色々連れてってあげる」

 

ルナマリアがアンジュ達を連れて話し、それにキラとアスランが目を合わせる。

 

「一体何だ?」

 

「さあ…(う~ん…この場合は言っちゃってもいいのかな? でも言わない方が良いかも…)」

 

そう思いつつキラは椅子に座ってると…。

 

『トリィ!』

 

『ハロハロ!マイド!マイド!』

 

っとキラの元に小型ロボット『トリィ』と『ハロ』がやって来て、キラの肩や手に乗る。

 

「あっ、トリィにハロ…」

 

「ハロが来るって事は…キラ、今日は」

 

アスランの言葉を聞き、キラはすぐに思い出した。

 

「思い出した…今日はラクスの命日」

 

その事にキラは少しばかりうつむきながら考え、そして立ち上がる。

 

「アスラン、僕少し出掛けて来る」

 

「ああ、分かった…」

 

そう言ってキラはその場を去って行き、アスランはキラの後ろ姿を見て考え込む。

 

「(キラ…、命日の日だけは無理はしてるな、きっと…)」

 

アスランはそう考え自販機のコーヒーを買うのであった。

そしてキラは私服に着替えて。トリィとハロを連れてある場所へと向かうのであった。

 




実はアンジュとサラとヴィヴィアンの私服に付いて考えてるのですが、女の子の服はどれを選べばいいのか分かりません。

活動報告に書いてありますので、どうかアンケートをお願いします。


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第28話 帰投 後編

オーブ軍付近のホテルで、ルナマリアがアンジュ達にこの世界の服を着させていた。

 

「よし! これでいいわ。案外似合ってるわよ?」

 

「そお?」

 

アンジュは着せられた服は黒の肩だしトップスに白のミニスカート、更にヒールを履いた服装、ヴィヴィアンの方は青と白のストライプのシャツにショートパンツ、そして赤のハイカットスニーカーを履いている。

そしてサラの方はピンクの着物を着て、更に頭の髪を整えた和服に着替えていた。

 

その様子を見てルナマリアは。

 

「う~ん…、あなた達って意外に合ってる物って多いわよね? 軍服もそうだけど、他の服も来て意外だし」

 

「およ?そうかいな? でもこれ結構いい!皆にも自慢したい!」

 

ヴィヴィアンは嬉しながら飛び跳ねて、周りを動き回り、アンジュは服装を見て思った。

 

「(これ…アスラン見たらどう思うんだろう…可愛いかな…って!何考えてるのよ私!!)」

 

っと頭をカリカリするアンジュにルナマリアはそれを見て頭を傾げる。

 

サラは手鏡を取り出して、今の自分の髪を見て確かめる。

 

「問題ないですわね、では行きましょうかルナマリアさん、どちらに向かわれるのでしょうか?」

 

「え?あ~、街に言ってショッピングって所、さあ行きましょう」

 

そう言ってルナマリアはアンジュ達を連れて街へと連れて行った、そして車で街へと向かった様子をマリューとムウが外で見ていた。

 

「良いのか?あいつ等を外に出して」

 

「良いのよムウ。彼女達だって何時までも艦内やホテル内で居らせる訳にも行かないもの、此処におらせるよりはマシよ」

 

「そうか、しかしまああの子も大胆な服を着るな? ピンクの髪のお姫様と似た物を」

 

「ええ、あれを見ると何だかラクスさんを思い出してくるわ…」

 

そう言いつつマリューは街へと向かって行くアンジュ達の様子を見るのだった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

アークエンジェルのMS格納庫ではマードックがアンジュとサラのヴィルキスと焔龍號の修理に取り掛かっていた。

 

モビルスーツとパラメイルの設計が全く違う為、マードックがイラつきが溜まって来ていた。

 

「だああああ!!どうなってんだよこれはよ! 組み込みも全く違うし、間接部分も小さなもんで出来てるし、どうやって動かしてんだよこれは!!」

 

「落ち着いてくださいよ!班長!」

 

整備班のスタッフがマードックを落ち着かせようとしているが、イライラが増すマードックの耳には入って来ない。

 

「たくっ!!あの小娘共め!こんなちっこいメカをどうやって操ってんだ!」

 

「彼女達、これを乗るのは訓練をしているから慣れているんですよ」

 

っとマードックが振り向くと、アスランが説明しながらやって来て、マードックが耳を指でほじくりながら言う。

 

「訓練で慣れてる? こんなちっせいを使って何すんだよ?」

 

「あちらの世界で色々です、色々とね」

 

そう言うアスランの言葉にマードックはため息を付きながら渋々と修理に取り掛かるのであった。

シートを取るとある物を見つける。

 

「んあ?何だこりゃあ?」

 

マードックがヴィルキスのシートの裏側である本を見つけた。

それをめくるとパラメイルの設計図やヴィルキスの図をみつけた。

 

「こりゃあ~…この機体の設計図じゃねえか! 丁度良かったぜ!これならこいつ等の修理が出来るぜ!」

 

っとそう言うマードックであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてアンジュ達は街で色んな物を見て回っていた。

 

特にヴィヴィアンは街の風景に圧巻されながらも大はしゃぎしていた。

 

「うおおおおおお!すげぇええ!ねえアンジュ!あっちの方を見て見ようよ!」

 

「ちょっとヴィヴィアン!」

 

っとアンジュの腕を掴んで連れて行くヴィヴィアン。

その様子にサラとルナマリアは見る。

 

「ヴィヴィアンはすっかりこの世界に慣れましたね」

 

「あの子って意外に親しみやすいって感じなのかな? 色んな物に興味深々出し」

 

ルナマリアはヴィヴィアンの様子を見ていい、それにサラは微笑みながら言う。

 

「ええ、でもここに来るのでしたらキラもお誘いしておけば良かったですね」

 

「えっ?キラさんを?」

 

「はい、彼と回ったらどんなに楽しい事やら」

 

サラは少しばかり頬を赤くして嬉しながら周り、それに呆れるルナマリア。

 

「あのね…、キラさんも忙しい事あって…あら?」

 

ルナマリアの目にある者が映る。

それはキラが花屋から出て来て、近くに止めてある車に乗って何処かに向かって行く様子が映った。

 

それにアンジュ達もキラの姿を見る。

 

「あれってキラよね?」

 

「およ?何でキラ花屋から出てくんの?」

 

「う~ん、これはもしかして…」

 

ルナマリアが何かを感じ取ってると、サラがアンジュとヴィヴィアンに話しかける。

 

「アンジュ、ヴィヴィアン。追いかけましょう」

 

「はぁ?」

 

「えっ何で?」

 

「キラの様子が気になります。行きましょう!」

 

そう言ってサラは向かい、アンジュとヴィヴィアンもその後を追いかける。

ルナマリアがそれに気付き、慌ててしまう。

 

「ちょっと!相手は車よ! こっちに戻って来なさい!」

 

 

 

 

そして車でキラの後を追うアンジュ達、運転するルナマリアは呆れるばかりであった。

 

「もう…どうしてこうも追跡する様な事ばかりするのかしら…」

 

「まあまあ良いじゃん、それよりもさ、キラ何処に行くのかな?」

 

キラの車を付いて行っている時にヴィヴィアンが言い、それにアンジュも頷く様に言う。

 

「そうね、キラ一体何処に向かうのかしら」

 

「(はぁ…キラさんに何て言い訳をしたらいいか)」

 

ルナマリアがため息を付く中で、キラの乗った車が止まり、それにサラが言う。

 

「止めて下さい!」

 

「えっ!」

 

その事に慌てて急ブレーキを掛けるルナマリア、車から降りるキラに付いて行くように車から降りるアンジュ達、三人が出て行くのを慌てて追いかけるルナマリア。

 

そしてキラは花束を持ってある浜辺の海岸に来ていた。

その様子をアンジュ達がこっそり見ていて。ルナマリアはその場所に見覚えがあった。

 

「此処って…もしかして」

 

「ご存知ですの?」

 

サラの言っている事に頷くルナマリア、アンジュとヴィヴィアンもそれに振り向いていると、キラがある場所に到着してヴィヴィアンが気づく。

 

「おっ!キラなんか墓地みたいなとこに着いたみたいぞ?」

 

「えっ?」

 

アンジュはそれに振り向き、サラもキラの方を向くとある人の墓の前に立っていた。

 

ルナマリアがその墓地を見て思い出す。

 

「あっ!思い出した!此処はラクス様のお墓だ!」

 

「えっ?ラクスさんの?」

 

サラの言葉にルナマリアは頷く。

そしてキラはラクスの墓に花束を置き、しばらくラクスの墓を見つめる。

 

その時肩に止まっているトリィが反応して飛び立つ。

 

『トリィ!』

 

「あっ!トリィ!」

 

キラが振り向いてトリィを追いかけようとしたら、トリィが木の影で隠れているアンジュ達の方に行き、トリィはサラの肩に止まる。

それにキラは驚く表情をする。

 

「皆…」

 

「す、すいませんキラさん。勝手な事をしてしまって…」

 

「ちょっと、これ勝手なことなの?別に勝手なことじゃないじゃないの」

 

「十分勝手なことよ!」

 

アンジュの言葉にルナマリアは怒鳴る風に言い、キラはそれに少しだけ苦笑いをしてしまうが、すぐにラクスの墓を見る。

それにサラはキラの近くまで寄って、ラクスの墓を見ながら言う。

 

「キラ、これが貴方が言っていた」

 

「うん、ラクスの墓だよ」

 

サラは墓に書かれてある『ラクス・クライン、此処に眠る』の文字を見て、それにサラは彼女の墓の前にしゃがんで手を合わせる。

それにアンジュは見つめていて、ヴィヴィアンも同じように見つめていた。

 

するとそこに。

 

「やはりここに居たかキラ」

 

っと声がしてキラ達は振り向くと、アスランやカガリ、シンとメイリンが来ていた。

 

「アスラン、カガリにシン達も」

 

「今日はラクスの命日、絶対にお前が来ない訳じゃないからな」

 

そうカガリが言い、キラは頭に手を置いてかき、サラが立ち上がって思っている事を問う。

 

「キラ、貴方から見てラクスさんはどんな方でしたか?」

 

「ラクスの事? 優しくて、綺麗で、そして…」

 

キラはラクスのあの歌声を思い出す。

 

とても美しい歌声で、まるで天使の様な女性だった…。

 

「彼女の歌、それが僕にとって癒される歌だった」

 

そう感じるキラ、キラの様子を見るアンジュ達はただ見つめるだけであった。

そして夕日が沈んで行く中で、カガリがある事を言い出す。

 

「キラ、アスラン。実はまだお前たちに話して無い事があったんだ…」

 

「えっ?」

 

「離して無い事?何だそれは」

 

カガリ言葉にキラとアスランは頭を傾げながら見るのだった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてエンブリヲがサリア達を呼び出していて、サリアが前に出て言う。

 

「エンブリヲ様、一体何の御用で?」

 

「これを君達に此処に向かわせようと思ってね」

 

っとエンブリヲはある端末を操作して、壁のモニターにある映像を映し出す。

それはオーブの映像が映し出されていて、それにサリアは問う。

 

「エンブリヲ様、あれは…」

 

「あれはオーブ、別世界にある国でね。そこにアンジュが居る」

 

エンブリヲの言った言葉にサリア達は振り向き、エンブリヲは笑みを浮かばせながら振り向く。

 

「君達はそこに向かい、アンジュを連れてきてほしい、勿論邪魔も入ると思うが、失敗した時は戻って来ても構わん」

 

「分かりました、アンジュを必ず連れて参ります」

 

そう言ってサリア達はその場を去って行き、サリア達が部屋を出た後、笑みを浮かばせながら呟く。

 

「ふふふ…、アンジュ、君にはどうしても話がしたくてね。そしてキラ君。君だけはどうして…潰しておきたくてね」

 

っとエンブリヲは持っているグラスを握り割り、手から血が流れるのであった。

 



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第29話 襲撃 因縁再び 前編

キラとアスランはカガリからまだ聞かさせていない事を告げられ、その事を聞く為にオーブ政府の部屋に行き、そこである事を聞く。

 

「異常現象?」

 

「ああ、お前たちが行方不明になった後にある物が出現したんだ、キサカ」

 

カガリの元側近でオーブ軍一佐のキサカがリモコンを使って画面にある映像を映す。

それはアウラの民がシンギュラーを通ってキラ達の世界に迷い込んでしまう映像でだった。それを見たサラは思わず立ち上がって驚く。

 

「我が同胞!?何処でこの映像を?!」

 

「一週間前の映像だ、当時私達はこれらを見て一時警戒していたんだ、最初は監視をしていたんだが突然こちらに攻撃を仕掛けて来て、仕方なく攻撃を…」

 

その事にサラは息を飲み込む、キラはサラの方を向き心配そうに見る。

しかしサラは状況を知らないこの世界の事を考えると、仕方なく思えて来る。

 

「…いいえ、あなた達は悪くありません。我が同胞もこの世界が偽りの世界と思って行動してしまった事、やもえなかったでしょう…」

 

「サラ」

 

キラはサラの方を見て、サラもキラの方を見ながら微笑むが、その微笑みは無理がある微笑むであった。

 

そんな中でアンジュは画面に映し出されているニュースを見て、何だか辛そうな表情で見ていた。

 

「ねえ、貴女達が落としたドラゴンは一体何処に居るのよ?」

 

「実は回収しようとした時に謎の飛行物体がやって来て、ドラゴンを回収して行ったんだ」

 

カガリは新たに画面を見せると、謎の飛行物体がオーブ軍やザフト軍の包囲網を簡単にくぐり抜け、ドラゴンを回収して行く映像が映し出されていた。

 

その映像にアンジュは見え覚えがあった、その機体はミスルギ皇国が保有する輸送機なのだ。

アンジュはそれを見て思わず立ち上がる。

 

「あれってミスルギの輸送機じゃない!」

 

「ミスルギの?」

 

「ええ!どうして私の国の輸送機が此処に…?! 何で!?」

 

「これは何か関係がありそうだね」

 

っとそう言っていると、端末から緊急通信が鳴り響き、それにキサカが出る。

 

「どうした?」

 

『キサカ一佐!大変です!すぐに国防本部に来て下さい!!』

 

その通信を聞いたキサカが表情を歪ませ、キラ達もそれに振り向いて見る。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

国防本部へと来たキラ達はすぐさま状況報告を聞く。

 

「一体何事だ?」

 

「これをご覧ください!」

 

部下からある映像を見せると、オーブ付近にシンギュラーが発生し、そこから三機のパラメイルが出て来る。

更に三機のMSが現れて、それはカラミティ、フォビドゥン、レイダーの三機であった。

 

それにキラ達は驚きを隠せない。

 

「あの三機!!」

 

「およ!サリアだ!」

 

「またあいつなの!?」

 

アンジュがしつこく追いかけて来たサリアに嫌気が出て来る。

そんな中でクレオパトラに乗っているサリアがオーブを見て通信機を使い、オーブ軍本部に向かって話す。

 

『こちらはダイヤモンドローズ騎士団、騎士団長サリア、そこにアンジュと言う女がいるでしょ、今すぐに渡しなさい。さもないと攻撃を仕掛けるわ、これは脅しじゃないわよ』

 

その通信を聞いて部下が振り向く。

 

「キサカ一佐!」

 

「落ち着け、あんな脅し簡単に通じると思っているのか相手は」

 

「…くっ!」

 

するとアンジュがどこかに向かおうとするのをアスランが止める。

 

「待てアンジュ、何処に行く気だ?」

 

「決まってるじゃない!! 出て追い返してやるのよ!」

 

「無理だよ、アンジュの機体の同型機じゃまず勝ち目は薄いよ」

 

「やってみなくちゃ分からないじゃない!!」

 

アンジュが怒鳴る風景を見て、シンが少しアンジュを睨むように言う。

 

「少しは自分の身の程を知ったらどうなんだよ、すぐに出て行っても落とされるのがオチだと思うね」

 

「はぁ!?何か言った!」

 

「言ったさ!落とされるのがオチだってな!」

 

「やめなさいよシン!!」

 

ルナマリアがシンとアンジュの間に挟み、言い合いを止める。

そんな様子にサラが頷くように言う。

 

「アンジュ、キラ達の言う通りです」

 

「何でよ!!」

 

「あの者達の機体はかなりの高性能、貴女の機体では互角の勝負になるかも知れませんが、数では相手の方が上です。簡単に捕まるよう物、ここはキラ達に任せてはいかがでしょう」

 

「じゃあこのまま黙って隠れていろって事!出来ないわよ! 今すぐ出て行ってあの馬鹿を引っ叩いてやるんだから!!」

 

「いい加減にしろアンジュ!!」

 

アスランの怒鳴りにアンジュは思わずビクッとし、アンジュは振り向きながらアスランの方を向き。

カガリはアスランの方を見ながら呟く。

 

「アスラン…」

 

「アンジュ!お前のわがままもいい加減にしろ! 怒鳴れば何でもいいとは限らないのだぞ!!」

 

「でも!あの馬鹿をこの手で!!!」

 

「お前もその馬鹿の中心だろう! 少しは理解しろ!!」

 

アンジュはそれを聞いて黙り込んでしまい、ヴィヴィアンはアンジュの側に近寄る。

 

「アンジュ、アンジュの言ってることも分かるよ、でも確かにあたしも出ない方がいいと思うな」

 

「ヴィヴィアン…」

 

「今のサリア達すっごく強くなってるよ? 今のアンジュじゃあ絶対に捕まっちゃうて」

 

ヴィヴィアンの言葉にアンジュは拳を握り、歯を噛みしめながら黙るしかなかった。

 

その様子を見たキラは画面の方を見て通信をする。

 

「こちらオーブ軍国防本部、そちらの要求は受け入れる事は出来ない、直ちに停止して武装を解除せよ」

 

そう通信を送り、キラはアスランに目を向ける。

 

「アスラン」

 

「ああ」

 

「キラさん、アスラン。俺も行きます」

 

っとシンが間に入って来て、キラがシンの方を見る。

 

「行ける?シン」

 

「はい、何時でも行けます!」

 

それにキラとアスランは頷き、すぐさまアークエンジェルの方に向かって行くのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

キラの通信を聞いたサリア達は目を合わせる。

 

「何て馬鹿な選択…キラって案外頭が脳なしね。聞いたわね?」

 

「うん」

 

「ええ」

 

サリア達はパラメイルをオーブに向けて加速し、その後方を見ていたオルガ達。

 

「おいおいあいつ等行っちまったぜ」

 

「まっ、どうせ落とされるだろうけどさ」

 

「早く行こう…」

 

そう言ってオルガ達も機体を加速させて向かって行く。

 

 

そしてアークエンジェルは地下ドックから発進して浮上し、カタパルトハッチが開いて発進体制に入る。

 

『X-20Aストライクフリーダム発進どうぞ!』

 

「キラ・ヤマト! フリーダム行きます!!」

 

キラのストライクフリーダムはリニアカタパルトからスキージャンプの様に発進して、次にアスランのインフィニットジャスティスが配置する。

 

『X-19Aインフィニットジャスティス発進どうぞ!」

 

「アスラン・ザラ! ジャスティス出る!!」

 

アスランのインフィニットジャスティスが発進し、最後にシンのデスティニーがカタパルトに付く。

 

『X-42Sデスティニー発進どうぞ!』

 

「シン・アスカ! デスティニー行きます!!」

 

シンのデスティニーが発進されて、三機は飛行して行く。

 

その様子をアークエンジェルのブリッジで見ているアンジュはただ何にもできない自分に腹を立てていた。

同行しているカガリがその様子を見て、アンジュに話す。

 

「アンジュって言ったな。アスランがああ言ったのには訳がある。それは──」

 

「今は聞きたくもないわ」

 

「聞け、アスランは守る物の為にあえて厳しい言葉を放つんだ、決して嫌っている訳じゃない」

 

その事にアンジュは顔を逸らし、その様子にカガリは少しため息を付く。

 

 

そしてキラ達がやって来るのを見たサリア達。

 

「キラ達ね」

 

「ねえ、もう一機のあれは何?」

 

「もしかしたらキラ君達の仲間?」

 

「かも知れないわね、行くわよ!」

 

サリア達は一斉に散らばって行き、オルガ達はキラ達の機体を見て嬉しがる。

 

「あいつだ…」

 

「あっ?おいおいもう一機多いぞ。なんだありゃ?」

 

「知らないね、やっちまおうぜ?さっさとさ」

 

そう言ってまず最初にオルガがエネルギー砲を放ち、それにキラ達はかわして行き、サリアがキラに向かってビームライフルを撃ち込む。

キラはそれを軽々とかわし、サリアに向かって通信を入れる。

 

「サリア、キラだよ」

 

「聞こえてるわ、キラ。悪い事は言わないわ、さっさとアンジュを渡しなさい」

 

「それは無理な相談だよ。君達はクルーゼの人形じゃない、今でも遅くはないから戻って来て」

 

「クルーゼじゃないわ、あの方はエンブリヲ様…そう言うお方よ、それにエンブリヲ様の侮辱は許さないわよ、貴方でもね!」

 

サリアはキラに向けてビームライフルを連射して狙い撃つ、それにキラは軽々とかわしながら距離を取り、それにキラは困り果てる。

 

「この様子じゃあ聞いて貰えないかもね、サリア…仕方ない、落とされても文句言わないでね」

 

そう言ってキラはサリアに向けてレール砲を展開して攻撃を開始するのであった。

 

丁度ミスルギ皇国で、その様子をマナの映像で見ていたエンブリヲが笑みを浮かばせる。

 

「ふふふ…良いぞサリア…君は最高だね、しかしキラ君とアスランを相手にどこまで戦えるか、それにあの機体…あれがデスティニーか。少々手間取るかも知れんな」

 

そう言ってエンブリヲは立ち上がる。

 

「これは私も出向いた方が良いかもしれんな」

 

エンブリヲは格納庫に向かい、プロヴィデンスを起動させて飛び立ち、サリア達が通ったシンギュラーの元に向かうのであった。

 



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第30話 襲撃 因縁再び 後編

アンジュを連れて行こうとするサリア達をキラとアスラン、そしてシンの三人が迎え撃っていた。

 

キラはサリアに向かって容赦ない攻撃を仕掛け、それにサリアは攻撃をする暇もなく逃げ続けていた。

ストライクフリーダムのカリドゥス複相ビーム砲とクスィフィアス3レール砲を使って攻撃し続け、サリアは攻撃出来ない事にイラつきを覚える。

 

「少しはこっちも攻撃させなさいよ!」

 

「ゴメンね、戦闘は手加減出来ないから、それにこれは命を懸けた戦い、文句はなしだよ」

 

そう言いながらキラは攻撃をし続け、サリアはビームシールドを展開しながら歯を噛みしめる。

 

 

アスランはエルシャと戦い、ビームサーベルをアンビデクストラス・ハルバードにして斬り込んで行く。

それをエルシャはかわしてビームライフルを構えて撃つ。

 

無論アスランはビームをサーベルで切り落として行く。

 

「やるわねアスラン君。敵ながらお見事ね」

 

「褒められても何も出ないぞ、出るとしたらそれは撃ち落とされる事だ」

 

アスランは容赦なくビームライフルを構えて撃ち、エルシャはそれに驚きながらもかわして撃ち返して行く。

 

 

そしてシンはクリスと対決していて、クリスがラツィーエルで攻撃を仕掛ける。

シンはそれをアンチビームシールドで防御し、それに対してクリスが脅し掛けて来た。

 

「何よアンタ、それだけしか出来ないの?よっわ」

 

「へぇ~?言ってくれるじゃん。大した腕もないくせに」

 

「何を!!」

 

その事に怒りを覚えるクリスの隙を付くシンはアンチビームシールドで一気に押し返し、クリスは思わず飛ばされてしまう。

 

シンはデスティニーの背中に搭載している対艦刀『MMI-714 アロンダイト ビームソード』を構えて、ビームを展開させる。

 

「見せてやるよ!お前と俺の格の違いって奴さ!」

 

そう言ってシンは背部のウイングユニットを展開し、光の翼を使って高速移動を仕掛けて行く。

クリスはそれに驚いて舌打ちをかましながらビームライフルを構えて撃つ。

 

シンはそれを軽々とかわして行き、アロンダイトを一気に振り下ろして行く。

 

その際にクリスのビームライフルを切り裂かれてしまい、それにクリスは舌打ちをしながら後ろに下がる。

 

「くっ!!」

 

「ほら見ろよ!やっぱ大した腕持ってないじゃないか!」

 

「言わせておけば!」

 

クリスが声を上げた瞬間だった。

 

「おいおい!俺達の事忘れてねぇか!」

 

「「「っ!!」」」

 

後方に回り込んでいたオルガの言葉に振り向くキラ達、オルガがエネルギー砲を撃って来て、それをかわすキラ達。

その時にクロトのレイダーがMA形態となって突っ込んで行き、そのままシンの方に向かって行く。

 

「くっ!!」

 

シンはそれをギリギリでかわし、クロトは笑みを浮かばせる。

 

「へぇ~やるじゃん、この僕の攻撃をかわすなんてさ」

 

「(こいつ等はまさか!あの研究所の資料にあった!)」

 

そう思いながらシンはアロンダイトを構えてレイダーに向かって行き、アロンダイトを振り下ろし、クロトはビーム砲を盾にして防御する。

 

「シン!!『お前の相手は俺だよ』っ!」

 

アスランが前を向くと、海からフォビドゥンが出て来て、鎌を使って攻撃してくる。

 

それをアスランはビームシールドで防御し、それを近距離でハイパーフォルティス ビーム砲を放とうとする。

しかしシャニはそれを足で蹴り飛ばし、ゲシュマイディッヒ・パンツァーでビームの軌道をづらしてかわす。

 

「この!!」

 

すぐさまシャニはアスランに向かって攻撃を仕掛けて行く。

 

最後にキラはオルガとサリアの二人組と対決していて、オルガが武装全てを使って攻撃をしていたのをサリアが怒鳴る。

 

「ちょっとあなた!!こっちも攻撃しているのよ! こっちの事を考えなさい!!」

 

「うるせぇー!! お前邪魔なんだよ!!小さい奴はどっか行ってろ!!」

 

「何ですって!!」

 

戦闘中にも関わらずサリアとオルガが言い合いを初めてしまい、その様子をキラは見逃さなかった。

 

「今だ!!」

 

キラはすぐにドラグーンを展開して、オルガとサリアに向かって攻撃をする。

それをオルガとサリアは振り向いて、ドラグーンがビームを放ったのを見て、二人は回避して、サリアはドラグーンを見て驚きを隠せない。

 

「何これ!?キラの機体にこんな物が?!」

 

サリアだけではなく、エルシャとクリスもそうだった。

 

「キラ君の機体にあんなものが!?」

 

「嘘!?」

 

しかしその中で一番驚いていたのは戦闘中のシンと、様子をモニターで見ていたアークエンジェルクルー全員だった。

 

「ええっ!?」

 

「大気圏内でドラグーンを!?」

 

「あれは無重力空間のみしか出来ない筈…」

 

「あれは私が改造したのです」

 

っとサラの言葉にマリュー達は振り向き、サラはマリュー達の方を見ながら言う。

 

「キラとアスランの機体を少しばかり改造させて貰ったのです」

 

「少しばかりって…、これはもう少しばかりとは完全にかけ離れてる様な…」

 

マリューはサラの言っている事に唖然とするばかりではなく、呆れるばかりとなってしまう。

無論カガリもそれには手を頭においてため息を付いてしまう。

 

「おいおいすげぇなぁ…」

 

そうムウが言っていると。

 

 

キュイイイイイイイイン!!!

 

 

 

「っ!!?」

 

「ムウ? どうしたの?」

 

突如何かを感じたムウにマリューが問いかける。ムウはマリューの問いにも答えずに何かを感じていた。

 

「この感じ…まさか!」

 

そう言ってムウはブリッジから出て行き、それにアンジュ達は思わず目を追いかける。

 

「えっ? 何?」

 

「およよ? 一体何の騒ぎ?」

 

「あの方、何やら急いでいた様な気が…」

 

その事をアンジュ達は後分かる事となる。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

キラ達が何とか六機を相手に戦えているものの、小さいパラメイルはMSより一回り小さく少々狙いにくかった。

 

一度キラとアスランとシンは後方に下がり、オルガ達も後方に下がって行く。

キラはアスランとシンにある提案をする。

 

「アスラン、シン、こうなれば一か八かだけど、一気に終わらせるよ」

 

「速攻でやるのか? あまりにも強引だがやるしかないな」

 

「分かりました。では!」

 

シンがアロンダイトを構えた瞬間、シンギュラーから一発のビームが飛んで来て、アロンダイトに直撃して爆散する。

 

「っ!!」

 

それに驚くシンはアンチビームシールドを構えて爆風を凌ぎ、キラとアスランはそれに振り向く。

 

「今のは?!」

 

「まさか!」

 

キラとアスラン、そしてシンはシンギュラーの方を見ると、シンギュラーからプロヴィデンスが出て来て、オルガ達の前に止まる。

 

「やあキラ君、アスラン。元気にしていたかね」

 

「「ラウ・ル・クルーゼ!!」」

 

「「「エンブリヲ様!(さん!)(君!)」」」

 

「おっさん!」

 

「何しに来てるんだよおっさん」

 

「ていうか邪魔」

 

プロヴィデンスの登場にアークエンジェルで見ていたアンジュ達も驚きを隠せない。

 

「あいつ…!」

 

「エンブリヲ!!」

 

シンはプロヴィデンスに乗ったエンブリヲを見てただ唖然とする。

 

「アイツが…エンブリヲ、でもあの機体はクルーゼ隊の物だって聞いてるし」

 

エンブリヲは笑みを浮かばせながらキラとアスランを見ながら、近くにいるシンの方を見る。

 

「ほう?君がキラ君の部下か 随分と可愛い部下を持ってるじゃないか」

 

「貴方に褒められてもうれしくもありませんよ」

 

冗談でもない事にエンブリヲを睨むキラ、その事にエンブリヲは思わず笑いが出てしまう。

 

「あっはっはっはっはっは!全く面白いな君は、さて…お話はこれまでだキラ君、アスラン。大人しくアンジュと『ドラゴンの姫』をこちらに渡してくれるかね」

 

「っ!?サラを?!」

 

サラを差し出せと言う言葉に驚きを隠せないキラ、その事にアスランも驚きを隠せない。

 

「どう言う事だ!!」

 

「それは君達が知る必要はない」

 

エンブリヲが撃とうとしたその時だった。

 

 

 

キュイイイイイイイイン!!!

 

 

 

 

「ぬっ!?」

 

気配を感じたエンブリヲはとっさにかわすとビームが飛んで来て、それにキラ達だけじゃなくオルガ達やサリア達も驚く。

 

「エンブリヲ様!!?」

 

「これは…ふふふ…! まさかな!」

 

不気味な笑い声でビームが飛んできた方を見ると、『ORB-01 アカツキガンダム』が飛んで来てキラ達の前に止まり、アカツキに乗っているムウがエンブリヲを睨みながら叫ぶ。

 

「久しぶりだな…クルーゼ!!」

 

「ムウ…! まさか君が生きているとはね…」

 

「地獄が満員だったんでな、そのまま帰って来たんだよ!」

 

ムウがそう言うと、エンブリヲが不気味に笑い始めたのを聞いてムウは警戒する。

 

「ふふふ……ふはっはっはっはっはっは!! これは好都合だよ…ムウ。予想もしていなかったよ…まさかキラ君だけじゃなく、また貴様と戦えるとはな!!!」

 

そう言ってエンブリヲはビームライフルを構えて撃ち、アカツキはそのまま避けずにアカツキの対ビーム防御・反射システム「ヤタノカガミ」を利用して、エンブリヲが放ったビームを反射する。

 

「ほう!」

 

エンブリヲはそれをビームシールドで防御し、上空に上昇して行き、ムウもエンブリヲを追いかけるように上昇する。

 

「エンブリヲ様!!」

 

サリアが向かおうとするが、キラがビームライフルで攻撃し、それにサリアはかわし、オルガ達がそれを見て攻撃を再開する。

一方ビームの攻防をする中でムウとエンブリヲは互いに話し合っていた。

 

「そのモビルスーツ!なかなか面白い装甲を持っているじゃないか!」

 

「俺も驚いてるよ!この機体の装甲には!!!」

 

そう言い合う中で、ムウはビームサーベルと取り出して向かい、エンブリヲもビームサーベルを取り出して攻撃を仕掛け、互いに交差する様に斬りあいながら激しいスパークが飛び散り合う。

 

「嬉しいよムウ…! キラ君を倒しに来たはずが君をも倒す事が出来るとはね!」

 

「クルーゼ!お前何故キラを狙う! キラがお前を倒したからの仕返しか!」

 

「ふふふ…それも一理あるが、もっと別の事もある。それは君が知る必要はないがな!!」

 

そう言ってエンブリヲは一旦離れてビームライフルを撃ちながらドラグーンを展開させ、それにムウは避けずのヤタノカガミを利用してドラグーンが放ったビームを全て跳ね返して破壊する。

 

しかし破壊されたドラグーンがすぐさま回復して行き、それにムウは驚きを隠せない。

 

「何!?修復した?!」

 

「どうだねムウ!これが私の力の一部! まだまだこんな物じゃないぞ!!」

 

そう言ってエンブリヲはビームライフルを構えた瞬間、一発のビームが飛んで来て、プロヴィデンスのビームライフルを撃ちおとす。

 

「っ!?」

 

それにエンブリヲは驚き、ムウも突然の爆発に驚いた。

 

「何!?一体何処から!?」

 

ムウはあたりを見渡すと、エンブリヲが出て来たシンギュラーとは別のシンギュラーが現れ、そこから二体のMSが出て来て、その内の一体が『ZGMF-X666S レジェンドガンダム』であり、そしてもう一体はエターナルに格納されている筈の『ZGMF-X88S ガイアガンダム』であった。

それにオルガ達と戦っているキラ達も振り向いて驚きを隠せない。

 

「あれは!!」

 

「レジェンド!?」

 

「あれはガイア…!でもガイアはエターナルに! どうして?!」

 

一方エンブリヲはレジェンドの登場に少しばかり舌打ちをする。

 

「チッ、良い所で…。オルガ、サリア、引き上げるよ」

 

「えっ!?エンブリヲ様どうして!?」

 

「あぁ?!ここまで追い込んで何言ってんだてめぇ!!」

 

「厄介な者達がやって来た、あの者達が居るとこの私の“能力”が発動出来ん。引くぞ」

 

そう言ってエンブリヲはすぐさまバーニアを全開にして、シンギュラーに向かい撤退し、サリア達もそれに続いて行く。

オルガ達は舌打ちをして後を追いかけ、シンギュラーを通って行く。

 

エンブリヲ達が通るとそのシンギュラーは消えてしまい、それにキラ達は唖然としてしまうも、すぐさまレジェンドとガイアの方を見る。

 

レジェンドもガイアもキラ達の方を向き、レジェンドのパイロットから通信が入って来る。

 

『危ない所でしたね、キラ・ヤマト、アスラン。そして久しぶりだな…シン』

 

「レイ!?」

 

シンは通信して来た人物が、あのメサイアで死んだ筈の『レイ・ザ・バレル』であった事に驚きを隠せない。

無論この通信にはキラ達も驚いていた。

 

そしてガイアからも通信が入って来る。

 

『シン…』

 

「っ!!! この声…まさか!」

 

シンが画面を見ると、通信画面からは『ステラ・ルーシェ』が映し出され、それにシンは驚いていた。

 

「ス!ステラ!!」

 

『シン、また会えた…!』

 

レジェンドとガイアに乗っていたのはレイとステラの二人であった事に驚きを隠せないキラ達、そしてアークエンジェルの皆もその様子を見て驚きを隠せずにいて、アンジュ達は状況がどうなっているのは全く理解出来ずにいたのであった。

 



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第31話 レイからの言葉

先の戦闘でアークエンジェルに戻って来たキラ達は一度フリーダム達から降りて降りて来るレイとステラを見る。

死んだはずの仲間とシンの大切な人が蘇った事に言葉をシンは言葉を失くしていた。

 

そして格納庫にやって来たマリュー達、その中でルナマリアはレイの姿を見て思わず言葉をつまらせる。

 

「(っ!!レイ!?)」

 

アンジュとサラとヴィヴィアンは二人の様子を見つめる。

 

「あの二人が…あれの?」

 

「あの機体、エンブリヲの機体と似ていますね、どう言う事でしょう」

 

サラがレジェンドの姿を見てやや警戒心を抱いていた。

 

「おお~!!かっけぇぇぇ!!」

 

っとのん気に興奮しているヴィヴィアンに、隣に居るサイトミリアリアとメイリンはやや呆れてしまう。

そんな中でレイとステラは機体から降りて来て、レイはキラ達と向き合う。

 

「こうして顔を合わせるのはメサイア以来ですね、キラ・ヤマト、アスラン」

 

「レイ…」

 

「君…確かにメサイアで」

 

キラとアスランの言葉にレイは頷きながらシンの方を向く。

 

「シン、またこうして会えたな」

 

「レイ、どうして」

 

「…それは後で全て説明する、今は俺よりも彼女の方がお前に用があるみたいだぞ」

 

「えっ?」

 

レイの言葉にシンは頭を傾げていると。

 

「シン!!」

 

するとステラがシンに抱き付いて来て、それにシンは思わず驚く。

 

「ス!ステラ!」

 

「シン!また会えた!」

 

シンに抱き付いたままステラは喜びまわる、そんな様子にルナマリアは不機嫌な様子になっていた。

 

「(あの子確かあの時のパイロット…何よあの子、シンに馴れ馴れしく!)」

 

ルナマリアはシンに向かって殺意の目を向ける。

するとシンはルナマリアの気配に気付き、ビクリとしながらステラに言う。

 

「あ!あのステラ! ちょっと離れてくれない?」

 

「何でシン? ステラと話したくないの?」

 

「いや…そう言う意味じゃなくて」

 

どう言う風に言えばいいか迷ってしまうシン、そんな様子に痺れを切らしたルナマリアがシンに近づいて腕に抱き付き、ステラに向かって怒鳴る。

 

「ちょっとあなた!いい加減にしてくれる?! シンが困ってるじゃない!」

 

「邪魔しないで」

 

ステラはシンの腕に抱き付きながらルナマリアと睨み合い、ルナマリアも睨み返す。

そんな二人の様子にシンは冷や汗をかきながら落ち着かせようとするが、二人の様子に中々止める事は出来ない。

 

そんな様子をレイは放っておいて、キラ達に向く。

 

「キラ・ヤマト、あなた達には今から説明する必要があります」

 

「えっ…何を?」

 

キラがレイの言葉の意味が分からず問い返し、それにアスランだけでなくアンジュ達もその事を聞いて振り向き、レイはゆっくりと言葉を放つ。

 

「我々の事とあなた達が遭遇したあの世界、彼女達…アンジュリーゼ達の世界の事に付いてです。ラウが今彼女達の世界を更なる混乱に導こうとしているのです」

 

その事にキラ達だけではなくアンジュ達もその事に驚きを隠せない。

一方ステラの方はまだルナマリアと睨み合っていて、シンはそれにやや困っていた。

 

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 

アークエンジェルのブリッジでレイがキラ達にアンジュ達の世界の本当の真相を話していた。

レイがある真相を話した事にアンジュは思わず怒鳴る。

 

「はぁ!?どう言う事よそれ!! 私の世界が単なる前座の舞台って!」

 

アンジュは納得できるどころか、全く訳の分からない言葉に怒鳴る風に叫ぶ。自分の世界が前座の舞台とか言われたら当然分かる筈がない。

それをレイはちゃんとした説明をする。

 

「あの世界はラウが己の目的の為だけに利用している世界なのです、アウラを使ってマナのエネルギーを使い人々に快適な世界をもたらした…しかしそんなのは単なる表向き。

ラウは人々の心を持て遊び、あの世界を簡単に切り捨て、新たな争いと破壊の世界を創り出そうとしているのです」

 

「争いと破壊!? まさか…あの人はこの世界と同じ様な事を…!?」

 

「はい、ラウは繰り返そうとしているのです。また同じような悲劇を…」

 

レイの言葉を聞いてキラ達は言葉を失くしていた。あの悲劇がまた繰り返されそうな事に、しかしアンジュは。

 

「そんな事知ったこっちゃないわ!」

 

その言葉にキラ達は振り向き、アンジュは堂々とした態度でレイに向かって言う。

 

「貴方がどう言おうと、あの世界は私の帰る世界なの! だから!──」

 

「だから関係ないと言うのですか? 貴女は…」

 

「当然でしょ!私の世界だもの! それに私にはヴィルキスがあるし、あんな奴等なんか!」

 

「言葉を返す様ですがそれは無理ですよ」

 

っとレイの言葉にアンジュの言葉が止まり、レイはそのまま言い続ける。

 

「ラウはラグナメイルやパラメイルなど単なる前座に過ぎません、ラウが求めているのはMSのみ…」

 

「ラグナメイル?」

 

サイがレイの言った言葉に頭を傾げ、レイがそれを説明する。

 

「アンジュリーゼが乗っているヴィルキスの機体、あれがラグナメイルです。そこの女性の乗っている機体、龍神器はそのコピーに過ぎませんし」

 

「コ、コピー…」

 

レイが言った言葉にサラは思わず心が痛む、アンジュは歯を噛みしめながらレイを睨みながら言う。

 

「そんな事は無いわよ!!あの世界にはモモカが…みんなが!」

 

「アンジュ」

 

キラとサラがアンジュを慰めようとするが、アンジュがそれを拒む。

その様子にしばらくそっとしておくことにして、キラは再びレイの方を向く。

 

「あの世界の事は分かったけど、君達はどうして生き返ったの? 死んだ人間は蘇る事は出来ない筈なのに…」

 

「まさかラウ・ル・クルーゼが蘇らせたのか?」

 

アスランがそれを問うと、レイはそれに頷く。

 

「ええ、ラウはまず最初に私を蘇らせました。しかも死んだ当時の記憶をそのままにして、私を部下にしようとしたのです。ですが私はキラ・ヤマトの言葉を思い出し、ラウからの誘いを拒絶して、そのまま逃げだしました。

幸いにラウはレジェンドも蘇らせていたので、それに乗って私は逃走しました。だがラウは私を捕まえようとステラを蘇らせ、追跡にあたらせたのです、しかしステラも当時の記憶を受け継いでいて、シンに会いたいと思っていたのです。

その時こう言ったのです、私といればシンに必ず会えると…、そう信じてステラはラウを裏切り、私と共に行動する様になったのです」

 

「成程な…、しかしアイツは一体何を企んでいるんだ? あいつはキラを目の敵をしているみたいだが」

 

ムウが言った言葉にアンジュとサラも振り向き、無論アークエンジェルクルーもその事に目を向く。

 

しかしレイはそれを頭を横に振りながら言う。

 

「残念ながらラウが何故彼を憎むのか分かりません、ですが何か目的があるのかは確かです」

 

「……」

 

それにキラはただ黙り込むだけであって、その様子をサラはただ見つめるだけであった。

その様子をレイはそのまま言い続ける。

 

「しかしラウがあの世界を争いと破壊の世界にして、次にサラマンディーネの世界を同じ様にして行くでしょう」

 

「何ですって!我が民をもですか!?」

 

「ラウならやりかねません」

 

その言葉にキラとアスランは互いに見合って、それに頷く。

そしてキラがレイの方を見て振り向く。

 

「ねえ、君はシンギュラーを開けるの?」

 

キラの言葉に皆は振り向き、レイはキラの方を向いて頷く。

 

「はい、ラウは私に異世界の扉を開かせる事が出来る様にしてあります」

 

その言葉を聞いてキラは皆の方を向く。

 

「皆さん、アンジュ達の世界に向かいましょう」

 

「キラ君?」

 

「キラ、お前…奴を止めるに行くのか?」

 

ムウの言葉にキラは頷く。

 

「はい、あの人を止めないと…アンジュ達の世界やサラの世界をを彼の思う通りの世界にさせる訳には行かない」

 

「キラ…」

 

「キラ…ありがとうございます」

 

アンジュはキラの思いを聞いて見つめ、サラは自分の手を握りながらキラを見つめるのであった。

 

「ですがキラ・ヤマト、気を付けてください。ラウは私やステラだけではなくあの五人を蘇らせた。恐らくは他にもよみがえらせた者も居る筈です。無論モビルスーツも大量に投入してくる筈です」

 

その言葉にキラは頷いて、アスランと顔を合わせ、アスランも同じ様に頷くのであった。

 

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 

一度戻って来たエンブリヲは自分の個室に戻り、椅子に座って紅茶を飲んでいた。

 

「(…やれやれ、まさかレイが現れるとは、彼の裏切りには参る…。しかしステラを蘇らせたのは間違いだったな、あの娘が居ると“私の力”が上手く発動出来ん)」

 

そう考えながら紅茶のカップを置き、椅子から立ち上がって窓の外を見る。

 

「(まあいい…、いずれにせよ彼等は此処に来る他にない。今は待ってみようか…そして二人のお嬢さんを手に入れ、キラ君を…フフフ……)」

 

そう心の中で笑いながらエンブリヲは窓の外から見える『ある工場』を見ていた。

 

それはモビルスーツを大量生産していて、他に『戦艦』さえも建造をしていた。

まさに戦争を始める事が出来る程の大規模な部隊を今彼は作り上げようとしていたのであった。

 



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第32話 アークエンジェル 異世界へ

キラとアスランが再びアンジュ達の世界に向かう事を決意して、同時にアークエンジェルも向かう事となった事を聞き付けたプラントに停泊しているエターナルの艦長『アンドリュー・バルトフェルド』が通信でキラ達と話し合っていた。

 

『全くいきなり居なくなって帰って来たと思いきや、またどこかに向かおうとするとはお前も大胆なことするな』

 

「すいませんバルトフェルドさん、でもこれは僕達が向かわなければいけないのです。あの人を野放しにして置く訳には行きません」

 

『ラウ・ル・クルーゼ…、奴が別の人物になり替わってまでも混乱を招こうとするとはな…。止められるのか?』

 

バルトフェルドの言葉にキラは頷きながら言う。

 

「止めて見せます。あの人を必ず止めて見せます!」

 

『……分かった。ただしお前たちだけ向かわせる訳には行かない。こっちからイザーク達を向かわせる、その方が戦力があっていいだろう』

 

「イザーク達をですか?」

 

アスランがバルトフェルドの言葉を聞いて頭を傾げ、バルトフェルドは頷く。

 

『そうだ、あいつ等が居れば大丈夫だ。あとイザークとディアッカの機体なんだが、放置された地球軍の基地からちょっと面白い物を取り出したんだ』

 

「面白い物?何だよそれ?」

 

『それは見てからのお楽しみだよムウ、イザーク達は今夜には出発して、明日の朝には到着する予定だ』

 

バルトフェルドはムウにそう言い、ムウの隣に居るマリューが頷く。

 

「分かりました、彼等の事は任せて下さい」

 

『頼むぞラミアス艦長、ではキラ…健闘を祈るぞ』

 

そう言って敬礼をするバルトフェルドは通信を切り、キラ達も敬礼をして下ろす。

アンジュ達はその様子を見ていて、アンジュが問う。

 

「ねえ、イザークって誰よ?」

 

「アスランの元仲間だよ、ディアッカもそうだけどアスランは元ザフトの軍人で、スクールアカデミーとは一緒だったんだ」

 

「ほえ?元はそっちなの? ねえ何でオーブに渡ったの?」

 

ヴィヴィアンがその事を聞くと、アスランはそれにうつむきな、そして顔を上げて言う。

 

「俺が…ザフトを裏切ったからだ、戦争時に当時俺の父と口論し、その後決別してしたんだ…」

 

「それがどうしてなのよ?」

 

「今はこれで勘弁してくれないかアンジュ、俺にもまだ話せる状態でもないんだ」

 

アスランがそう言い、アンジュはそれに少々納得が行かないまま黙り込む。

そしてキラは少しばかり外の景色を見て、サラがその様子を見るのだった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

夜、オーブ軍はアークエンジェルに弾薬や物資と燃料を詰め込めるだけ送り、皆は最終確認の準備に取り掛かっていた。

 

一方でキラはもう一度ラクスの墓に向かっていて、ラクスの墓の前に立っていた。

 

「……ラクス」

 

キラがそう呟いていると…。

 

「キラ殿」

 

っと声を掛けられて後ろを振り向くと、サラがゆっくりと歩み寄って行き、キラの隣に立ってラクスの墓を見つめる。

キラはサラを一度見た後、またラクスの墓を見る。

 

二人が墓を見ている中、サラがある事を言い出す。

 

「キラ殿はこの世界は好きですか?」

 

「…うん、争いばかりの世界だけど…守って行きたいくらい好きだよ」

 

「そうですか…、人はどうして争うのでしょうか。私達の世界はエンブリヲに滅ぼされた世界とは言えど、諦めずに生き続ける為に共に立ち上がって来ました…」

 

「人には…人の考える力と言う物が在るんだ、それがどんな結果になろうともね。でも…」

 

キラの言葉の続きにサラは振り向き、キラは夜空の星を見て言う。

 

「どんなに残酷な世界になろうとも…。僕は…僕達は歩み続けて行く…、それが…僕達の戦いでもあるんだ」

 

その言葉にサラの心がグッと来て、キラを見つめる。

キラの真っ直ぐで強い心、サラはそんなキラを徐々に思うようになって行くのをまだ彼女は気づかなかった。

 

 

 

 

そして翌日、早朝にザフトの輸送機が滑走路に到着し、キラとアスラン、そして付いてきたアンジュ達が居た。

 

輸送機の扉が開き、扉から『イザーク・ジュール』と『ディアッカ・エルスマン』、そして部下の『シホ・ハーネンフース』の三人が出て来る

イザーク達は階段を降りて行き、待っていたキラ達が出迎える。

 

「イザーク、ディアッカ」

 

「ようキラ、アスラン。久しぶりだな?無事で良かったぜ「アスラン貴様!!!!」おっと…また始まったぜ」

 

ディアッカはイザークが突如アスランに突っかかって行くのを見て呆れ、アスランは突っかかって来たイザークに驚く。

 

「イ!イザーク!?」

 

「貴様よくもおめおめと戻って来られたな!! 連絡も寄こさないで!!」

 

「離せイザーク!! お前はどうしてこうも突っかかるんだ!?」

 

「うるさい!!」

 

その様子を見ていたアンジュは二人の異常な威圧感に少々下がりながらサラに話す。

 

「なんかすごいわね?あれ」

 

「そうですか? 私にはとても仲良くしていると思いますわ」

 

っとその言葉にアンジュは呆れてしまう、そしてディアッカはアンジュ達の存在に気が付き、キラに耳元で問う。

 

「おいおいキラ、何だよ可愛い子ちゃんたちは?めちゃくちゃイケてるじゃねぇか」

 

「彼女達はアンジュとサラとヴィヴィアン。僕達が行方不明先に知り合ったんだ」

 

「へぇ~? なあキラちょっと「駄目だよディアッカ、声を掛けちゃ」…お、おう」

 

キラのスマイルな表情にディアッカは何故かとても声が掛けずらかった。

 

そんな中でヴィヴィアンが輸送機から降ろされる機体を見て興奮する。

 

「うお~~~!何あれかっけぇぇぇ!!」

 

っとキラ達が振り向くと、キラとアスランは思わず目を大きく開く。

それは嘗てイザークとディアッカが乗っていた『GAT-X102 デュエルガンダム』と『GAT-X103 バスターガンダム』であった。

しかしその機体は改造されていて、『GAT-X1022 ブルデュエルガンダム』と『GAT-X103AP ウェルデバスターガンダム』の二機であった。

 

「デュエル!バスター! まさかバルトフェルドさんが言っていたのはこれ?」

 

「しかしこの外装はどう見ても違う設計だ、同型機か」

 

「俺達も見て驚いたぜ、まさかかつての機体とまた乗る事になるなんてな」

 

「OSの方は俺達が既に乗れる様にしてある。誰も乗れないようにな」

 

その事を聞いてキラとアスランはただ見上げる事しかなかった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そしてアークエンジェルの格納庫で、選び抜かれた精鋭揃いのクルー全員が集められ、出発の前にカガリの言葉を聞いていた。

 

「諸君、君達はこれからまだ見知らぬ世界に足を踏み入れる事となる、そこは魔法の国と呼ばれるマナを扱う人間がそれを扱う事が出来ない人間の事をノーマと呼ぶ人を差別する世界だ、言わずとも分かるがあの世界は我々の世界と似ている。

ナチュラルがコーディネイターを嫌い、コーディネイターがナチュラルを邪魔者扱いとする、本当に似ている世界だ。

しかしそんな世界を混乱に導こうとする者が居る、その者は嘗てこの世界で生きて死んだはずの者だ。世界を混乱し、破壊の世界に変えるつもりでいる、そんな世界を我々が見過ごす訳には行かない!

この艦はオーブ軍第一次元派遣艦として扱う事となる、当然ながら厳しい戦火も予想される。どうか無事の生還を祈る!」

 

そう演説したカガリは皆に敬礼をし、クルー一同敬礼をする。

 

敬礼を終えたカガリが下ろすと隣に居るマリューがクルー一同に向かって言う。

 

「これより本艦は10.00時により、別世界に向けて発進する!各員は持ち場に付くよう!」

 

『『『了解!!』』』

 

すぐさまクルーは自分達の持ち場に向かい、カガリがマリューと向かい合う。

 

「ラミアス艦長、無事の健闘を祈る」

 

「はい」

 

その様子をアスランは遠くから見ていて、キラが寄る。

 

「アスラン」

 

「…大丈夫だ、あいつに言わなくても伝わるさ」

 

そうアスランは言い、キラもその事にただ見つめるしかなかった。

 

そしてアークエンジェルは発進準備が整い、操縦桿を握るノイマンがマリューに報告する。

 

「艦長、発進準備完了!」

 

マリューはそれに頷き、レイの方を向く。

 

「ではお願いしますね」

 

「分かりました、浮上した直後に門を開かせます」

 

「では、アークエンジェル発進!!前進微速!!」

 

アークエンジェルはゆっくりと進みだし、外に出ていたカガリ達が敬礼をしながら見送り、浮上して行き、レイが手を前に出すと同時にアークエンジェルの前にシンギュラーが現れる。

丁度アークエンジェルが通れるほどの大きさで、アークエンジェルはそのままシンギュラーに通って行く。

 

 

そしてシンギュラーを通ったアークエンジェルはアンジュ達の世界にやって来て、ブリッジに来たアンジュ達は再び外の光景を目にする。

 

「また…帰って来たんだ」

 

「おう!この匂い確かにあたし達のだ!」

 

そうヴィヴィアンが言っていると、ミリアリアが報告する。

 

「艦長、前方にある施設らしき建物の島が見えます」

 

「映像出せる?」

 

「はい!」

 

ミリアリアが映像を前方のモニターに移すと、そこはアンジュとヴィヴィアンにとって見覚えのある島だった。

 

「あそこは…アルゼナル?」

 

丁度キラがやって来てその映像を見て呟く、完全に基地機能を失ったアルゼナルを見て呟き、それにアンジュはただアルゼナルを見て呆然とする。

 

そして夜、アルゼナルの付近の海に着水して停泊するアークエンジェルはクルーを数十名向かわせて探索を開始させた、少し経って数十体の死体が運ばれて来て、その様子にマリューは気の毒な表情をする。

 

「酷いわね…黒焦げにするなんて」

 

「本当に似た物だな、俺達の世界と」

 

ムウは運ばれる遺体を見ながらそう呟き、オーブ兵士がマリューの元にやって来る。

 

「艦長、遺体はこれで全ての様です、後の物は瓦礫に埋もれていて…」

 

「そう…分かったわ、後で埋葬するから皆にも伝えておいて」

 

「分かりました」

 

兵士はそう言ってその場から離れて行く。

 

そんな中で海辺の近くに座っているキラ達、イザークとディアッカとシホは海辺の付近を捜索していていなかった。

その中でアンジュは暗い表情に包まれていた。

 

「帰って来たんだ…アルゼナルに」

 

アンジュはアルゼナルを見上げて言い、悲しみの声で言う。

 

「皆…何処に行ったの? まさか…」

 

「大丈夫だと思うよ、皆…簡単にやられる訳ないから」

 

キラの言葉にアンジュはただ頷くしかなかった。

 

「それにしてもサラ、羽と尻尾、結局戻らなかったね?」

 

キラはサラの特徴である羽と尻尾が戻らない事に問い、それに頷くサラ。

 

「ええ、一体何が如何なっているのでしょう。戻って来ても戻らないとは…」

 

「ほよ?何あれ」

 

っとヴィヴィアンの言葉にキラ達は振り向く、すると海の方に緑色の光の玉が浮いて、そこから三人の人影が現れる。

 

「っ!アスラン!」

 

「ああ!シン!レイ!!ルナマリア!!」

 

「「「はい!!」」」

 

キラ達はハンドガンを取り出し、アンジュは少し下がり、サラは刀を構えていた。

 

そして海から上がって来る謎の三人、その中で一人がアンジュの姿を見て。

 

「あ…あ…アンジュリーゼ…様?」

 

「えっ?どうして私の名を?」

 

アンジュは自分の本名を知っている事に反応し、キラとアスランとヴィヴィアンもその事を聞いて反応する。

するとその人物はマスクを外すとモモカが現れる。

 

「モモカ!?」

 

「アンジュリーゼ様ー!!!」

 

モモカはアンジュに駆け寄って抱き付き、アンジュもモモカが現れた事に嬉しながら抱き付く。

そしてヴィヴィアンはその他の者達を見た時にマスクを外したヒルダとロザリーを見て驚く。

 

「うわ!みんなだ!!」

 

「ん?うわっ!ドラゴン女!?」

 

ロザリーはヴィヴィアンを見てビビって引いて、ヒルダは笑みを浮かべてアンジュに駆け寄る。

 

「本当に…アンジュなの?」

 

「勿論よ、ヒルダ」

 

それにヒルダはまた笑みを浮かべる。

 

そんな様子にキラとアスランは銃を下ろし、シン達にも言う。

 

「皆、銃を下ろして」

 

「えっ?でもキラさん」

 

「大丈夫だよ。味方だから」

 

「シン、キラの命令だ」

 

キラとレイの言葉にシンは頷き、ルナマリアと共に銃を下ろす。

そしてヒルダとロザリーはシン達の存在に気付く。

 

「あんた等…何者」

 

「心配しないで、僕達の世界の仲間たちだよ」

 

「はっ?!キラ達の?!」

 

ロザリーはキラの言葉に驚き、その事にヒルダは思わず眉を歪ませる。

 

すると崖から二人の影が飛び出して来て、ヒルダとロザリーの動きを拘束して二人の首元にナイフを突き付ける。

突き付けたのはステラとシホの二人で、その様子にキラ達は驚く。

 

「えっ!ちょっと!」

 

「お前たち何をしている!」

 

「何をって敵を拘束してるじゃないのですか」

 

「何者…」

 

「いてててて!!!何すんだよ!」

 

「離せって!!」

 

突然の拘束に戸惑うヒルダ達、そしてその叫びに駆けつけたマリュー達。

 

「どうしたのキラ君!!」

 

「あっ?何だこの光景は?」

 

ムウが拘束されているヒルダ達を見て呟き、キラとアスランが慌ててステラとシホに誤解を解かせるのであった。

 



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第33話 決別の時

アークエンジェルを連れてアンジュ達の世界に再びやって来たキラ達、一度完全崩落したアルゼナルにやって来た時にモモカとヒルダ達に再会して喜ぶアンジュとヴィヴィアン。

そこでヒルダは自分達の旗艦である『アウローラ』を呼び、一度アークエンジェルの隣にならばせて、通路を連結させた。

 

アウローラのブリッジに居るオペレーター三人娘達は周囲を警戒していた。

 

「レーダー敵機無し、周囲に問題なし」

 

「それにしても、まさか生きていたとはね」

 

ヒカルはアークエンジェルに居るアンジュとヴィヴィアンの事を言いながら呟き、オリビアもそれに同意する。

 

「ええ、ヴィヴィアンもアンジュも、そしてキラとアスランもてっきりロストしたかと思ってました」

 

「今まで何処にいたんだ?」

 

ヒカルがそれを言うとパメラがそれを言う。

 

「シンギュラーの向こうだって、その後はキラ達の世界にも行ってたんだって」

 

っとパメラが言った言葉にヒカルとオリビエが思わず驚きを隠せない。

 

「「うっそ~!?」」

 

「本当よ。だってあれが証拠だもん」

 

パメラはアークエンジェルを見ながらそう言う。

そしてアークエンジェルの作戦会議室にアンジュ達がジル達を此処に呼んで、自分達が今まで見て来た事を話す。

 

「並行宇宙ともう一つの地球…、ドラゴン、いや…遺伝子改造した人間の世界。そして最後にはこいつ等の世界にも…か」

 

そうジルは呟きながら煙草を取り出す。

 

キラはそうに頷きながら言う。

 

「はい、それとあなた達の世界を動かしているクルーゼがあなた達に意味のない戦いをさせ、この世界を混乱に導いている事をこれからどうするべきかを考える時です」

 

「ええ、それが最も良い決断だと思うの」

 

キラの言葉にアンジュも頷き、ヒルダ達はアンジュの言葉を聞いてただ唖然とするしかなかった。

そしてサラがキラの前に出て言う。

 

「まずやるべき事はこの世界に捕らえられているアウラを奪還する事です。我々アウラの民の目的はアウラの奪還、上手くアウラを取り戻せば全てのエネルギーが立たれ、人間のマナも世界も停止する筈です。

そこでどうでしょうか皆さん、私達…そしてキラ達共に手を組むのは?」

 

っとサラの言葉にヒルダ達は驚きを隠せず、その中でジャスミンが納得した表情をする。

 

「ほお~、敵の敵は味方か、成程~…」

 

「はい、ご理解していただきありがとうございます」

 

サラの言葉を聞いて、ロザリーが思わず抗議する。

 

「じょ!冗談だろ!?人間は兎も角!あいつ等は沢山の仲間を殺してきた化け物なんだぞ!! ドラゴンと協力~!?在りあねっつーの!!」

 

「ロザリー、少し口を慎め」

 

アスランが少々睨みつけながらロザリーに少し叱り、それにロザリーは思わず後ずさりする。

そんな中でヴィヴィアンが思わず頬を膨らませてロザリーを睨み、アンジュがそれに言う。

 

「ちゃんと話せば分かるわ、サラ子達は話せば分かるもの」

 

「無駄だ、奴らは信じるに値しない…」

 

「何故、そう思えるのですか」

 

サラがジルの言葉に振り向きながら問い、それにジルは携帯灰皿を取り出して煙草を消しながら言う。

 

「信じられんからだ、アウラなんだか知らないがたかがドラゴン一匹助けただけでリベルタスが終わると思っているのか?

それに奴はエンブリヲだ、神気取りの支配者エンブリヲを抹殺し、この世界を壊す…それ以外にノーマを解放するすべはない」

 

ジルの硬い意思にアンジュは思わず黙り込む。その事にキラが言い返す。

 

「ジル司令、貴女の言っている事…僕はどうも信じられません。クルーゼを倒すだけで終わるとは限らないと思うのですよ」

 

「フッ、お前の言うクルーゼだが何だが知らなんが、奴はエンブリヲ…他の奴でもない…私はエンブリヲをよく知っている」

 

っとそう言いかせ、その言葉を聞いたキラとアスランは思わず顔を合わせる。

 

どうしてこうも耳を傾けてくれないのか、それがどうも疑問に思えて来る。

 

「アンジュ、そのドラゴンの娘に洗脳でもされたのか?」

 

「せ!洗脳!?」

 

「失礼ですが、我々アウラの民は決してその様な事はしません! まして貴女の様な野蛮な事を考える人に!」

 

サラはジルの発言に対して言い返すも、ジルはそれを無視するかのように顔をそむける。

その様にアンジュは歯を噛みしめるが、アスランがアンジュの肩に手を置き、前に出て言う。

 

「前々から思っていたのですが、貴女は俺達の言葉を全く聞こうとしないのは何故ですか? 自分の理念を言い聞かせて思い通りの事を指せているつもりなのですか?」

 

「そんな事お前が知ってどうする? お前が知る必要はない」

 

その事に対し聞いていたマリューやムウ達は少しジルの態度に目を光らせ始めた。

重苦しい空気をジャスミンが割って入る。

 

「しかしジル、キラの言葉の一理あるぞ。現にわたし等の戦力が心持たないのも事実だ」

 

「サリア達が寝返っちまったからね…、おまけにキラ達と同じサイズの機体も現れるし」

 

っとその事を聞いたキラ達は顔を合わせる、どうやらヒルダ達はもう既にMSとの戦闘は開始していた様だ。

そしてジャスミンはキラ達にある事を問いかける。

 

「アンジュ、そこの姫さんとの世界にコンタクトは取れるかい?」

 

「ええ、此処に居るレイって人がシンギュラーを開かせる事が出来るの。そうすれば自由に出入り出来るわ」

 

「それは凄いな、そしてキラ、あんた等がやって来たこいつ…アークエンジェルって言ったかね? このまま此処に残るのか?」

 

「はい、クルーゼを止める為に僕達はこの世界再びやって来たんです。クルーゼはとても危険な男ですから」

 

キラの言葉を聞いたジャスミンは頷く。

 

「成程。ジル、ドラゴン達との共闘。そしてアークエンジェルとの共同…考えてみる価値はあるんじゃないのかい」

 

「おお!」

 

ジャスミンの提案に聞いたヴィヴィアンは思わず嬉しがる。

しかしジルは黙ったまま返答せず、それにアスランは厳しい表情で見ていた。

 

「…ジル」

 

ジャスミンが再び問いかけ、それにジルはようやく口を開く。

 

「…よかろう。情報の精査の後、こん後の作戦を通達する。以上だ、私はアウローラに戻る。此処に居ると気がまぎれん」

 

そう言ってジルは作戦会議室から出て行き、ヒルダ達は敬礼をし、キラ達は何やら重苦しい雰囲気にのまれながら呟く。

 

「ジル司令…どうしてそこまでクルーゼじゃないと言い聞かすんだろう? 現に僕達は本人から聞いたのに」

 

「あの司令、俺達に隠し事をしているに違いない」

 

「それはないよ」

 

っとジャスミンがそれを言い、キラ達はそれに振り向く。

 

「あの子はただ嬉しさを隠しているんだよ、本当はこんなにも援軍が来てくれて、アンジュが帰って来たのがさ、その子はアタシが保障するよ」

 

「申し訳ないがそれは保証できないと思います」

 

その事にレイが言い、ジャスミンは振り向く。

 

「あの女性は絶対何かを隠している、私はラウを長年共に居た者です。あのラウを知る人物は絶対にいません」

 

「そんな事は無いさアタシを信じてみな」

 

そう言い聞かすも、レイはそれを無視して部屋から出て行く。

レイの様子を見たジャスミンは不機嫌そうになり、マギーが嫌みったらしに言う。

 

「何だよあの坊主、可愛くないね」

 

しかしレイの言葉にはキラ達も同じだった。ジルはきっと何かを隠している、絶対にそうなんだと思うキラ達だった。

 

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 

そしてアークエンジェルの食堂でキラ達が少し水を飲んでいた、マリュー達はブリッジでジャスミンと少しばかり話をしていた。

ヒルダとロザリーの他にナオミやココやミランダにモモカ、そしてアウローラからある三人が付いて来ていて、アークエンジェルの艦内を見ていた。

 

「すげぇな」

 

「アタシ等のアウローラとは全く違うね」

 

そしてヴィヴィアンの方は出された食事をのん気に食べていた。

 

「はむ!もぐもぐ…美味~い! いや~!やっぱりアークエンジェルの食事は美味い!」

 

「ヴィヴィアン、久しぶりに会えたのに相変わらずだね…」

 

ナオミはヴィヴィアンの様子を見て苦笑いしながら見ていて、その様子にココ達も呆れかえるしかなかった。

するとマギーがヴィヴィアンの身体をあちこち触りまくり、それに擽られて笑ってしまうヴィヴィアン。

 

「ぷははははっ!く!くすぐったい!」

 

「本当に…キャンディーなしでもドラゴン化しなくなったのかい?」

 

「そう…らしい!」

 

「大した科学力だね~」

 

マギーはサラ達の世界の科学力に感心する。

 

「あ!そうだ! 向こうの皆は羽と尻尾があったんだけど、アタシなんでないの?」

 

「バレるから切ったよ」

 

「うわっ!!ひでぇ~!!」

 

ヴィヴィアンの様子にナオミ達は呆れかえってしまい、聞いているキラ達もそれに呆れてしまう。

 

「それじゃあアタシはアウローラに戻ってるよ、さっさとこっちに戻って来なよ」

 

そう言いながらマギーは戻って行き、キラ達はその後ろ姿を見送った。

そしてモモカがアンジュの元に近づく。

 

「アンジュリーゼ様、本当にご無事で良かったです!」

 

「心配してゴメンねモモカ」

 

「全くその通りだぜ」

 

っとヒルダが間に割り込んできて、アンジュを少し睨みつける様に言う。

 

「いきなり戦場からロストして、帰ってきたら大勢の人間を連れて来るわ、いきなりぶっ飛ばされるわ。もう無茶苦茶だぜおい」

 

「最後のそれ、貴女が弱すぎ、自業自得」

 

「あぁ?!」

 

ステラの言葉を聞いたヒルダはステラを睨みつけるも、ステラはそれを無視して飲み物を飲む。

ヒルダがそれに悔しそうにしている中でキラが問う。

 

「ねえ、君達はMSとはどう言う風に戦闘していたの?」

 

「どう言う風にって、アタシ等はただパラメイルに乗って戦っていただけだ、でも相手には全く効かずいとも簡単に遊ばれたぜ」

 

ロザリーの言葉を聞いたアンジュは意外そうな表情をしていた。

 

「よく無事だったわね?この艦」

 

「喧嘩売ってんのか!てめぇは! こいつ等が頑張ってくれたからな」

 

そうロザリーは指を指して、三人の若い少女たちの方を向かせる。

 

「ノンナ、マリカ、メアリー。キラ達が不在の中で戦力不足でライダーに格上げされた新米たちさ」

 

「私達の後輩なんだよ」

 

ナオミが自慢そうに言い、それに納得するキラ達。

 

「まあともあれ、このアタシがみっちり扱いたお蔭で何とか一著前に───」

 

するとメアリー達が一斉にヴィヴィアンの方に向かって行き、それにはロザリーも流石に突然過ぎて戸惑った。

 

「あの!お会いできて光栄です!」

 

「えっ?アタシ???」

 

ヴィヴィアンは自分の事を言われて、何が何やら分からなかった。

 

「第一中隊のエース、ヴィヴィアンお姉様ですよね!」

 

「ずっと憧れていました!」

 

「大ファンです!」

 

「そっかそっか♪ よし喰え喰え~!」

 

ヴィヴィアンは自分の食器の具をメアリー達にも分け、その様子にロザリーはやや悔しがる。

 

「ちょっとあんた等!!アタシにはそんな事一言も!?」

 

そんな賑やかな空気の中でアスランが何やら思いつめた表情をして、それにキラが問う。

 

「どうしたのアスラン?」

 

「キラ、ジル司令…おかしいと思わなかったか?」

 

「……うん、僕もそう考えていた。明らかに何か企んでいる様子だった」

 

「そうですね」

 

その事にはサラも同意するかの様に言い、アンジュがそれに黙っていると。

 

「アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ…だっけ」

 

「えっ?」

 

「誰だ?その人は」

 

キラとアスランがその事をヒルダに問うと、それをヒルダが答える。

 

「司令の事だよ、司令が全部ぶちまけたからね。自分の正体も…リベルタスの大義の事も」

 

ヒルダはジルが自ら正体を証し、リベルタスの全て、そして自分達の最大の敵であるエンブリヲを倒す事を宣言した事を話していた事を聞き、キラ達は少し思いつめる表情をする。

 

「なるほどね…」

 

「意気込みは分かるけど。ガチ過ぎてちょっと引くわ…」

 

ジルの宣告をあまり気が乗らない事を言うヒルダにキラ達もその事を少しばかり考え込む。

 

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 

そんな中でアークエンジェルの艦長室では、マリューとムウが二人っきりで話し合っていた。

 

「どう思うんだ?艦長」

 

「どうって?」

 

「あのジルって言うアルゼナルの司令官の事だ、あまりにも『私はお前達の事を信じていない』って感じだったぜ」

 

ムウのその事を聞いてマリューも少しばかり考え込む。

 

「その事に付いては私も感じてはいるわ、挨拶の時も無視していた感じだったし」

 

マリューはジルと対面した時に手を差し伸べたも、ジルはそれを無視していった事にマリューは少し戸惑いの気持ちを持ってしまった。

 

「だよな、それでどうするんだ? キラ達の事もあるし、ここは少し様子を見るか?それともこっちから少し動いて見るか?」

 

「……」

 

ジルに対し少し対応を考えようとしているマリュー、っとそこにドアのコール音が鳴り、それにムウが出る。

 

「誰だ?」

 

『私です、レイです』

 

レイの出向けにムウは向くと、マリューはそれに頷く。

ムウは入室を許可を出し、レイが艦長室に入って来る。

 

「どうしたの?」

 

「艦長、少しばかり私に自由行動の許可を頂きたいのです」

 

その事を聞いてマリューとムウは顔を合わせ、レイの話を聞き、その後驚きを隠せないのであった。

 



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第34話 ジルの真相

真夜中のアークエンジェルでキラがストライクフリーダムの調整に向かう為に格納庫に向かっていて、格納庫に入ると。

 

「おいお前!!何してやがる!」

 

マードックの怒鳴り声が響き渡っていた。

それにキラが振り向くと、格納庫にまだあったヴィルキスの元にメイが何やらスパナを持っていた。

 

「何って、ヴィルキスの調整に決まってるじゃん」

 

「もう夜中だぞ!ガキがさっさと戻って寝ろ!」

 

「子ども扱いするな!」

 

その事にメイが反論して、再びヴィルキスの整備を再開する。

マードックはその事に対しまた怒鳴ろうとした所にキラがやって来る。

 

「マードックさん」

 

「おお坊主じゃねか、丁度良い所に来たぜ」

 

「あっ!キラ! この人どっかやってよ!作業に集中できないよ!」

 

「黙れってんだ!おい坊主!このガキをさっさと退かせ!」

 

二人のやり取りにキラは苦笑いするしかなく、落ち着かせようとキラはマードックに言う。

 

「まあまあマードックさん、少し多めに見て下さい。メイはこう見えてパラメイルの整備班長なんですよ」

 

「はぁ?このガキがか? まさか嘘だろ」

 

「嘘じゃないもん!ちゃんとアルゼナルの整備士として任せれた事もあるんだから!」

 

メイは胸を張る様に威張り、それに呆れる風になるマードック。

 

「こんなガキがか~? たくぅ!勝手にしろ!!」

 

そう言ってマードックは去って行き、メイは「べ~!」と舌を出しながら嫌みを出していた。

キラはそんなメイに注意するかのように言う。

 

「メイ、マードックさんはこのアークエンジェルの整備班長なんだ、だからあんまりいがみ合っちゃだめだよ。それにヴィルキスはもう整備されてるから」

 

「そうはいかないよ、素人整備にはこのヴィルキスは任せられないって、それにヴィルキスがなきゃリベルタスは続けられないから」

 

メイはそう言ってヴィルキスを整備して、キラはそんな事を聞いてすこし思いつめる表情をする。

 

「よし、終わった」

 

「それじゃあもう遅いから早く戻ったら?」

 

「言われなくてもそうするよ、それじゃあ」

 

そう言ってメイは道具箱を持って格納庫から去って行く。

キラがそれを見送った後フリーダムの整備に行こうとした時にマードックが。

 

「おい坊主、少し甘いんじゃないのか?」

 

「えっ?何をですか?」

 

「あの嬢ちゃんの事だ、少しあの機体を整備出来るからって調子に乗りやがって、おまけになんだ?素人整備には任せられないだ~?俺を誰だと思ってやがるんだあいつは!」

 

「まあまあ。でも僕甘いですか?」

 

「完全にな! まあもう過ぎちまった事を悔やんでもしょうがねぇ、フリーダムの整備しに来たんだろう?あんまり無茶すんじゃねぇぞ」

 

そう言い残してマードックは格納庫を去り、キラは少しばかり立ちつくしてしまう。

 

「あまい…僕が、…少し甘いのかな」

 

キラがそう呟きながらフリーダムの整備をしようとした時。

 

「キラ・ヤマト」

 

「っ!」

 

突然の呼び声にキラは思わず後ろを振り向くと、そこにはレイが立っていた。

 

「レ、レイ…ビックリするじゃないか」

 

「すいません、ですが今あなたにお伝えしておきたいと思いまして」

 

その事にキラは思わず頭を傾げ、レイの話しに耳を傾けていた。

 

 

そして同時にアウローラでは、ヒルダが艦長室の側を通る時だった。

 

『うっ…!』

 

「ん?」

 

部屋から唸り声にヒルダは振り向き、少し覗いてみるとベットで寝ているジルが何かに苦しんでいた。

 

「(司令…?)」

 

その後ジルが放つ言葉を聞いて、ヒルダは思わず息を飲むのであった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

そして翌日、キラ達はアウローラにやって来て作戦会議を開いていた。

 

「よく眠れたか?」

 

「ええ…」

 

ジルがアンジュに眠った感想を聞き。

アンジュはそう答え、ジルが笑みを浮かばせる。

 

「それは結構…、ではお前たちに任務を与える。ドラゴンと接触、交渉した後お前たちの軍との共同戦線の構築を要請」

 

それにアンジュとサラは驚きの表示を隠せず、キラ達はそれに顔を合わせる。

 

「どうした?お前の提案通り、一緒に戦うと言っているんだ」

 

「…本気?」

 

「リベルタスに終止符を打つには、ドラゴンとの共闘…それがもっとも合理的で効率的だと判断した…」

 

それには流石のジャスミン達も驚きを隠せずだった。

その話しを聞いたサラはアンジュの方を向く。

 

「アンジュ」

 

「ええ!」

 

そんな中でキラ達は何やら真剣な表情を保ったままジルの話を聞く。

 

ジルによる作戦は、エンブリヲが率いるMS部隊が居る場所、暁ノ御柱にエンブリヲが居ることが判明し、そこにドラゴン達と共にミスルギ皇国に進行すると言う作戦。アークエンジェルとアウローラはドラゴン達の後方支援にあたり、ミスルギに向かうと言う説だ。

 

その作戦を聞いている中でアンジュがある事を問う。

 

「ねえ、そう言えばサリア達はどうするの?」

 

「何?」

 

「サリア達も撃つ落とすつもり?」

 

その事にジルは思わず鼻で笑う。

 

「フッ、持ち主を裏切る様な道具はいらん」

 

「道具って…!だってサリアよ!?」

 

ジルが道具と言った言葉にアンジュはそれに反応して言い、ジルは言い続ける。

 

「全てはリベルタスの為の道具に過ぎん。ドラゴン共も、アンジュも、私もな…」

 

「えっ?!ドラゴンも…!?」

 

「貴女…一体何をするつもりですか? 我が民に何をするつもりで!」

 

サラがジルを睨みながら言い、それをジルは少しばかり目を瞑り、キラがジルの方を見ながら言う。

 

「ジル司令、一体何を企んでいるんですか? 答えて下さい」

 

「ドラゴンと共闘…?ふはははははは!! アウローラの本当の浮上ポイントはここだ!」

 

っと机の画面にアウローラだけが浮上ポイントが違う場所であり、それにキラ達はそれに目を奪われる。

キラ達が驚いてる中で、ジルがアンジュに言う。

 

「アークエンジェルとドラゴン共がラグナメイルとモビルスーツ部隊と交戦している間に、アンジュ…お前はパラメイル隊と共に暁ノ御柱に突入…エンブリヲを抹殺しろ!」

 

「はぁ~!?」

 

アンジュはジルのとんでもない作戦に驚きが隠せず、サラは思わず立ち上がる。

 

「貴女!!我が民を捨て駒にするつもりですか!?」

 

「切り札であるヴィルキスを危険にさらす様な真似はできんからな…」

 

「司令官殿、貴女は間違っています」

 

マリューの言葉にジルは振り向き、マリューは真剣な表情でジルを見つめる。

 

「貴女は兵を捨て駒にすれば何でも勝てると思っている、でもそれでは何も勝てない。兵士は司令の命令は絶対でもこんな無謀でいい加減な作戦にはだれも従わないの」

 

「フッ、貴様等に教えておいてやる、この作戦の指揮権は私だ!私がこの命令を出したからには従え!!」

 

「断ります」

 

マリューの強い言葉にジルは一層目線を強める。

そんな中でアンジュは拳を握り締めながらジルを睨む。

 

「冗談じゃないわ…!こんな最低な作戦!協力出来るわけないわ!!それにキラやサラ子達を死なせる事なんで出来ない!!」

 

「ならば、協力する気にさせてやろう」

 

っとジルはコンソールを操作して、壁のモニターにある映像を映す。

それは手足ロープで縛られ、口をテープで縛られたモモカの映像だった。

 

「モモカ!?」

 

「減圧室のハッチを開けば侍女は一瞬で水圧に押しつぶされる」

 

キラ達はモモカが捕らえられている映像を見て驚き、ジャスミン達はジルの行動に驚く。

 

「ジル!あんたの仕業かい?!」

 

「聞いてないよ!こんなの!!」

 

ジャスミン達が口論している中でムウはジルを睨む。

 

「お前、司令官としてやっちゃいけない事をしてしまったな」

 

「フッ、これが私のやり方だ、それにアンジュは命令違反の常習犯、予防策をとっておいたのさ。侍女を救いたければ作戦を全て受け入れ!行動しろ!」

 

「貴女が何をしているのか分かっているですか!!」

 

アスランがそれを問うと、それに笑いながらジルは言い続ける。

 

「リベルタスの前では全てが駒であり道具だ。あの侍女はアンジュを動かす為の道具、アンジュはヴィルキスを動かす道具、そしてヴィルキスはエンブリヲを殺す究極の武器! 」

 

『そこまでです』

 

っと当然のモニターの声にキラたちは驚き振り向くと、減圧室の扉が開き、そこからレイとヒルダがやって来てモモカの拘束を解き、それにジルは驚く。

 

「お前たち!?」

 

『聞いちゃったよ司令、随分大胆な事をしますね~。それにこの会話…もう艦内中すべてに流していますから、皆驚いてますよ~』

 

「な!何!?どうやって!?」

 

ヒルダの言葉に驚きを隠せないジル、その事をレイが説明する。

 

『盗聴器を仕掛けさせてもらったのです、夜中にヒルダに話してその部屋に盗聴器を。それと貴女の秘密を彼女から聞かせて貰いました』

 

「秘密?」

 

キラがレイがジルの秘密の言葉を聞いて、レイは頷きながら言う。

 

『はい、ジル司令は昨夜部屋で魘されている所をヒルダが聞いたようです。それも『申し訳ありません、エンブリヲ様』と』

 

「!!!!???」

 

その言葉を聞いたジルは目を大きく開き、それにキラ達は驚いて振り向く。

 

「ジル!それは本当かい!?」

 

「どうなんだいアレクトラ!!!」

 

マギーとジャスミンに問いかけられるジルはただ唖然とするだけで、レイは少しばかり冷たい目線を向ける。

 

『さあ…全てを話して貰いましょうか。ジル司令官殿』

 

もうなすすべもないジルは観念したかのようにうつむいて仕舞い、そして語り始める。

 

「…ああそうだ、私は…エンブリヲの人形だった」

 

ジルの言葉にキラ達は驚き、レイの近くにいるヒルダも驚きを隠せない。

 

「…私はあの時、リベルタスを行い…エンブリヲを殺そうとした。だが奴に身も心も憎しみ…全てを奪われた。誇りも使命も純潔も…。

ああ…怖かったよ。リベルタスの大義…ノーマ解放の使命…仲間との絆、それが全部…奴への愛情、理想、快楽へと塗り替えられていった。何もかもあいつに踊らされていると感じたんだ…。全て…見抜かれていたかの様に」

 

それを聞いたキラ達はただ唖然とし、マギーはジルを見ながら問う。

 

「何で黙ってたんだ…」

 

「フッ、どう話せばよかったのだ? エンブリヲを殺しに行ったが…逆に見も心も奪われましたと言えばいいのか? 全て私のせいさ…リベルタスの失敗も仲間の死も全部…、こんな汚れた女を救う為に皆死んでしまった…!!」

 

「そんな…そんな!!」

 

メイはとても残酷な事実を知って、自分の姉の死がジルに当たる事に困惑していた。

 

「私に出来る償いはただ一つ…エンブリヲを殺す事だ。奴を殺して…全ての償いを受け継ぐ」

 

「ジル司令、それはただの現実逃避に過ぎません」

 

っとキラがその事を言い、それにジルは振り向く。

 

「何?!」

 

「仮にラウ・ル・クルーゼを殺しに向かっても、今の彼がそう簡単に死ぬかどうかも分からないのです。全てを捨て駒にしても帰って来るのは虚しさと憎しみのもです。何も変わりません」

 

「ジル…私もキラと同意見よ。それじゃあ貴女はただ逃げてるだけよ」

 

その事を言われたジルは歯を噛みしめるしかなかった。

そしてマギーがジルの近くにより、ジルがマギーを見た瞬間。

 

パンッ!!

 

ジルの頬にマギーの平手打ちが放たれ、それにジルはただ黙ったままマギーを見る。

 

「私はあんただから一緒に来たんだ、あんたがダチだからずっと付いて来たんだ…それを利用されていただなんてさ…!」

 

利用されて怒りを隠せないマギーは拳を握りしめ、ジルは何も弁護なく黙った。

 

「何とか言えよ!アレクトラ!! なあ!!!」

 

「そのくらいにしときな、マギー…」

 

「…チッ!」

 

マギーは舌打ちをし、ジャスミンはジルと面と向かい合う。

 

「知っちまった以上、この作戦とあんたをボスにはして置けない。指揮権を剥奪する…いいね?」

 

「…ああ」

 

ジルはジャスミンによってアウローラの指揮権及びノーマ達リーダーの座を失い、それをキラ達はただ黙って見つめるしかなかった。

 

そしてアークエンジェルのブリッジではサイとミリアリアとメイリンがレーダーで監視体制に入っていたその時だった。

 

突如レーダーに機影が映り、それにサイがすぐさま報告する。

 

「レーダーに機影を6機確認!そして後方には戦艦クラスと思われる機影も!!」

 

「「「「っ!!!」」」」

 

そしてすぐさまこの事をミリアリアがキラ達に報告するべく、アウローラに通信を入れる。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

アウローラの作戦会議室でミリアリアの通信が入って来る。

 

『艦長!!緊急事態です!!』

 

「っ!どうしたの!?」

 

突然の通信にマリューは立ち上がり、キラ達もミリアリアの通信に振り向く。

 

『レーダーに敵の機影を確認!距離4.500!』

 

「数は!」

 

『6機です!撃ち3機をあの小型の機体と確認! そして残り3機をカラミティ!レイダー!フォビドゥンと確認!!』

 

「分かりました!総員第一戦闘配備!!」

 

マリューの言葉にすぐさま戦闘準備に入るアークエンジェルクルー、その様子にキラとアスランは振り向いて頷く。

 

「僕達も行きます!」

 

「ええ、お願いね」

 

そう言ってキラとアスランはすぐさま作戦会議室から出て、アークエンジェルに戻って行く。

アンジュとサラはそれに頷いてその後を付いて行く。

 

「アンジュ!」

 

ジャスミンはそれに気付いて呼び止めるもすでに向かってしまった。

 

 

アークエンジェルに戻ったキラとアスランはすでにパイロットスーツに着替えたシンとルナマリアに命令する。

 

「シン!ルナマリア!先に出撃してて、僕達もすぐに向かうから!」

 

「「了解!!」」

 

シンとルナマリアはデスティニーとインパルスに乗り込み発進し、急いでパイロットスーツに着替えるキラとアスラン。

そしてストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに乗り込み、システムを起動してベルトを絞める時にアンジュ達から通信が入って来る。

 

『キラ!アスラン!私達も行くわ!』

 

「アンジュ!?」

 

『キラ達だけに任せて置く訳には行きませんから』

 

「お前たち…」

 

キラ達がヴィルキスの方を見ると、もう既に起動状態に入っており、何時でも出撃できる雰囲気になっていた。

止めてもついてくると感じたキラとアスランは諦めて頷く。

 

「分かったよ、でも無理はしないでね?」

 

『ええ、分かって居ますわ』

 

そう言ってアンジュとサラは通信を切り、キラ達の機体がカタパルトに付く。

 

「キラ・ヤマト!フリーダム行きます!!」

 

「アスラン・ザラ!ジャスティス出る!!」

 

キラとアスランのフリーダムとジャスティスが出て、アンジュとサラのヴィルキスと焔龍號が位置に付く。

 

「ヴィルキス、行きます!」

 

「焔龍號、参ります!」

 

二人の機体がスラスターを点火させて飛び立ち、フリーダムとジャスティスの後ろに付く。

 

そしてカラミティ達とクレオパトラ達は出て来たフリーダム達を見て、クレオパトラに乗っているサリアは笑みを浮かべる。

 

「アンジュ、今度こそ捕まえるわ」

 



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第35話 二人の姫 拉致

他の作品に夢中で遅れました。

更新です。


アークエンジェルとアウローラに攻めて来たサリア達とオルガ達、それに迎え撃つ為に先に出撃したシンとルナマリア。

 

シンのデスティニーは背中の『M2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲』を展開させ、目標をサリア達とオルガ達に向けて撃つ。

 

「いっけえええええええええ!!!」

 

デスティニーから放たれる高エネルギー砲がサリア達とオルガ達に向かい、それを六機はかわす。

 

「くっ!」

 

「外したわねシン、でもこれで左右に別れたわ! 互いに戦いやすいよう別れましょう!」

 

「ああ! そっちは任せたルナ!」

 

「ええ!」

 

そう言ってシンとルナマリアは戦いやすい相手に別れ行く。

攻撃をかわし。やって来るシンの機体をクリスは見て怒りが湧いてくる。

 

前に言われた事をまだ根に持っていた。

 

「あいつ…!」

 

クリスが出て行くのを見たエルシャは慌てる。

 

「クリスちゃん!駄目よ勝手に行っちゃ!」

 

「別に良いんじゃない?」

 

っとシャニがエルシャが言ったのを見て言い、それをエルシャはシャニを睨むように見る。

 

「どう言う事なの?」

 

「死にたい奴はさっさと死ねばいいだけの事だよ」

 

そう言ってシャニは前に出て行き、エルシャはシャニの言った言葉を聞いて歯を噛みしめる。

 

「なんて人なの…! 仲間なのに…!」

 

「エルシャ、今は戦闘に集中して」

 

そうサリアの言葉にエルシャは気に入らないまま今の戦闘に集中する。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

そしてアークエンジェルから発進したキラ達はすぐさま戦闘空域へと入り、先に戦闘しているシン達を見る。

シンはオルガ、クリス、クロトの機体を相手にし、ルナマリアはサリア、エルシャ、シャニの機体を相手にしていた。

 

「二人共、三機を相手にしてるの?」

 

「いくら何でも、無茶すぎます」

 

アンジュとサラが思わずそう言い、それにキラは言う。

 

「大丈夫、シンとルナマリアも腕の良いパイロットだよ。前の大戦で生き延びて更に腕が上がっているから」

 

「キラ、その事アンジュ達に言っても分からないぞ」

 

「ははは、そうだった」

 

そう言うと、アンジュは何だか不機嫌な表情をする。

 

「何よその言い方、何だか腹立つわ」

 

「ごめんごめん、それじゃあ行くよ!」

 

そう言ってキラはビームライフルを構えて撃ち、アスランもビームライフルを構えて撃つ。

アンジュとサラもバスターランチャーを構えて撃ち、それに気付いたサリア達はそれをかわして避ける。

 

「アンジュ…!来たわね!」

 

「サリアちゃん!」

 

「分かってるわ! あんた達!アンジュと例の女を捕まえるのを手伝いなさい!!」

 

サリアがその事をオルガ達に言うと。

 

「へっ!てめぇ等で勝手にやってろ! 俺達はあの連中を潰すんだよ!」

 

そう言ってオルガ達はキラ達に目標を変え、その様子にサリアは苛立つ。

 

「くっ! やっぱりあの三人は言う事を聞かないわ! 皆!アンジュ達を狙うわよ!」

 

「「イエス!ナイトリーダー!」」

 

そう言ってサリア達はアンジュとサラに狙い始めると、横からルナマリアがビームライフルを構えて攻撃し、それにサリア達はかわす。

 

「っ!」

 

「あんた達!アンジュ達だけじゃなく私も忘れない事ね!!」

 

そう言ってルナマリアは再びビームライフルを撃ち、それにサリア達はまたかわす。

 

「くっ!あの機体…!」

 

そして女同士の戦いが交戦を開始した。

 

 

キラ達もオルガ達と対立し、キラがビームライフル二丁を合体させてロングビームライフルにして、クロトに向けて撃つ。

それにクロトは防御し、返しにビームを放つ。

 

アスランもシャニに向かってビームブーメランを投げ、それをシャニは弾き返す。

戻って来るビームブーメランを取り、シールドに戻してアンビデクストラス・ハルバードにしたビームサーベルを構えてスラスターを噴射させて、シャニに斬りつけて行く。

 

シンもオルガに向けてビームライフルを撃ち、それをかわしてオルガはビーム砲やエネルギー砲をシンに向けて乱射する。

 

「おらおらおらおら!」

 

乱射してくるオルガの攻撃をかわして行くシンは、無茶苦茶な様子に呆れる。

 

「たくぅ、こんな奴見た事ない。でも俺はこんな奴に!」

 

シンはアロンダイトを構えてスラスターを噴射し、それをオルガはシールドで防御しながら再び離れて攻撃を開始する。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

そしてその様子をアークエンジェルのブリッジで見ているマリュー達、ジルは拘束されて独房に居る。

 

「皆…」

 

「でもなんかこの数だけで来るなんて、何か気になります…」

 

ミリアリアの言葉を聞いたマリューは少々気になる風な表情をする。

その様子をムウが見る。

 

「気になるか?」

 

「ええ…」

 

そう言っていると。

 

 

キュイイイイイイイイン!!!

 

 

「っ!!!」

 

ムウは何かを感じ取り、それにマリューは見る。

 

「どうしたの?」

 

「この感じ…ラウ・ル・クルーゼだ!!」

 

っとその言葉を聞いたマリュー達は驚きの表情をする。

 

「本当!?」

 

「ああ…しかも居場所は…此処だ!!」

 

そうムウの言った言葉にマリュー達はまたしても驚く表情をし、ムウはすぐさまブリッジを出る。

 

 

 

ムウが感じた同じ時期に、アークエンジェルに居たモモカがイザーク達と一緒にパイロットの待機場でモニターを見ながらアンジュの事を心配していた。

 

「アンジュリーゼ様…」

 

「大丈夫だって、あの子なら平気だよ」

 

っとディアッカの言葉にモモカは少し安心する。

 

「そ、そうですね…」

 

するとその時、モモカの後ろにエンブリヲが突如現れ、モモカの口をふさぐ。

 

「っ!!ん~~!!」

 

それに気付いたイザーク達が振り向く。

 

「ん!?お前は!!?」

 

「まさか!?」

 

「久しぶりだなイザークにディアッカ」

 

その言葉を聞いたイザークとディアッカは驚きの表情をする。

 

「クルーゼ隊長…!!」

 

「どうやって此処に!?」

 

二人は銃を構え、シホも同じ様に銃を構える。

そしてムウが待機場に到着する。

 

「クルーゼ!!」

 

「おやムウ、遅かったな。時間がないんでまた会おう」

 

そう言ってエンブリヲはモモカと一緒に姿を消し、それにイザーク達は驚きを隠せない。

 

「消えた?!」

 

「何?!」

 

そしてムウの後ろにやって来たレイが歯を噛みしめる。

 

「くっ…!ラウ!」

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

キラ達とアンジュ達がサリア達とオルガ達との戦闘が続いている中、キラがドラグーンを展開させて攻撃し、それにオルガ達とサリア達は慌てて回避する。

 

「ちっ!あの攻撃にはイラつくぜ!!」

 

「何で落ちないんだ!!」

 

「むかつく~!」

 

オルガとクロトとクリスはイラ立ちを隠せず。

キラの攻撃にサリアは焦りを始める。

 

「キラの攻撃がとても厄介ね…、どうやって攻めるか」

 

「サリアちゃん、なんとかしてアンジュちゃんとあの紅い機体の女をなんとかして捕まえないと」

 

「分かってるわよ!どうしたらいいか…『その必要はないよサリア』っ!?」

 

サリアがその言葉を聞いて驚いて前を見ると、アンジュとサラの後ろにプロヴィデンスが現れ、そしてアンジュとサラを捕まえる。

 

「「っ!!」」

 

「なっ!!ラウ・ル・クルーゼ!!」

 

「やあキラ君、アンジュやドラゴンの姫を貰って行くよ」

 

そう言ってエンブリヲは機体を動かし、そのままサリア達の元に行く。

 

「待て!!!サラとアンジュを返せ!!!」

 

キラがスラスターを点火させて向かおうとすると、それにエンブリヲは笑みを浮かばせ、ドラグーンを展開させる。

更にそのドラグーンは数が徐々に増えて行き、数が50基ぐらい現れ、キラはそれに驚きを隠せない。

 

「なっ!!」

 

「残念だがキラ君、今は君に遊んでいる訳には行かないんでね」

 

そう言ってエンブリヲはドラグーンを動かし、キラに向けて攻撃をし始める。

 

それにキラは慌てて回避を取ろうにも、ドラグーンの数が多く、更にビームの数が多くて避けきれずに機体に当たり始める。

 

「ぐぅうう!!!」

 

ドラグーンがキラのストライクフリーダムを大破寸前まで追い込み。それにアスラン達はキラを見る。

 

「キラ!!」

 

「「キラさん!!」」

 

「「キラ!!!」」

 

そしてドラグーンがストライクフリーダムの頭部を破壊して、フリーダムは機能停止して海に落ちる。

コンソールの一部は爆破して、その破片がキラの身体に襲う。

 

「うわああああああああああああああ!!」

 

悲鳴を上げながらキラは落ちて行き、アンジュとサラは落ちて行くストライクフリーダムを見て、目を大きく開く。

 

「「キラ!!!!」」

 

「キラ!!ラウ・ル・クルーゼ!!」

 

アスラン達が向かおうとするも、エンブリヲはドラグーンを動かしてアスラン達の動きを止め。

そしてサリア達に言う。

 

「ふふふ…、では諸君。引きあげようとしよう」

 

「エンブリヲ様…、はい」

 

「けっ!結局てめぇが美味しい所取りかよ!」

 

そう言ってエンブリヲ達はアンジュとサラのヴィルキスと焔龍號を捕まえたまま撤退し後方に待機していた艦へ向かう、足止めを食らってしまったアスラン達は連れ去られるアンジュ達を見る。

 

「アンジュ!!!くそ!!!」

 

そして海に落ちたキラは意識が薄れて行く中で炎龍號に手を伸ばす。

 

「さ、サラ…」

 

キラはそのまま意識が途切れ、気を失い機体は徐々に浸水し、アスラン達はすぐにキラの回収に向かう。

 

アンジュとサラはエンブリヲに連れ去られてしまい、キラは機体を大破させられてしまう。

 

果たしてエンブリヲはアンジュとサラをどうするのか…。

 



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第36話 立て直し

キラのストライクフリーダムが落とされてすぐに回収に向かったアスラン達、回収後、アスラン達はキラをすぐに医療室に送りキラの治療を開始した。

 

その様子を外で待っているアスラン達、そこにマリュー達がやって来て、アスラン達に問う。

 

「アスラン君。キラ君は?」

 

「キラならまだ治療中です、まだ何とも…」

 

「そうか…、クルーゼの野郎…!」

 

ムウは拳をぶつけながらエンブリヲに怒りが溜まり込む、そしてヴィヴィアン達がやって来る。

 

「アスラン!キラは?」

 

「医療室の中だ」

 

アスランが医療室の方に目を向け、それにヴィヴィアン達は向く。

 

「まじかよ…あのキラがやられたるなんて…」

 

ロザリーがキラがやられた事に驚きを隠せず、ヒルダは壁にもたれる。

 

「あいつ、あの程度にやられるなんて、ざまぁねえな」

 

っとその事にシンが反応する。

 

「…お前、今なんて」

 

「はっ、ざまぁねえなって言ったんだよ。文句あっか?」

 

「…お前!!」

 

その事にシンは怒りに火が付き、ヒルダに向かって首根っこを掴み、シンはヒルダに殴りかかろうとする。

それにルナマリアが止める。

 

「やめてシン!」

 

「何でだよルナ!? こいつは!」

 

シンは今だに暴れようとするが、アスランがそれを止める。

 

「やめろシン、ヒルダには何言っても無駄だ」

 

「でも!」

 

「シン、今は堪えろ。ヒルダ、お前も少しは口を慎め、現にお前は何もやっていないだろう」

 

「うっせぇ! アンジュを奪われたんだぞ…、それなのに落とされたあいつが悪いんだよ!取り戻しに行ったくせに落とされやがって!」

 

その事を言うヒルダに対しイザークが歩み寄って、ヒルダの頬に向けて引っ叩く。

 

 

パンッ!!

 

 

「っ!!!何しやがる!!」

 

「黙れ!! お前はあいつの事をどうとか言う必要はない!!」

 

「チッ!!!」

 

舌打ちするヒルダに去って行くのをロザリーは一瞬見て、その後すぐに追いかけて行く。

 

その様子をアスラン達はただ黙って見て、そしてナオミが少し戸惑いながら頭を下げる。

 

「ご!ごめんなさい!何て言ったらいいか…」

 

「いや、お前が謝る必要はない。あいつの一言の問題だ」

 

そうイザークは言い、その事に黙り込むナオミ、そして医療室のランプが消え、医師が出て来てアスラン達が駆け寄る。

 

「先生、どうですか?」

 

「大丈夫、破片は全て摘出、命に別状はありません」

 

その事を聞いたアスラン達は一安心をし、医療室から医務室へと移されたキラの病室へと向かう。

 

「あ、皆」

 

丁度キラは起きていて、その回復ぶりにヴィヴィアン達は驚く。

 

「ほえ?もう起きてるの?」

 

「回復早くないですか…?」

 

その事にキラは苦笑いをし、アスランがキラの元による。

 

「大丈夫かキラ、まだ動ける状態じゃあ…」

 

「大丈夫だよアスラン。のんびり寝てもいられないから」

 

「お前…、そう言う問題じゃないだろう」

 

アスランの言う事にシンとルナマリアが頷く。

 

「そうですよキラさん! だってフリーダムが…!」

 

「クルーゼに壊されたんですよ…」

 

その事に黙り込むキラ、エンブリヲがドラグーンを大量に出され、圧倒的にストライクフリーダムを大破までさせていったエンブリヲの能力。

元々あのストライクフリーダムはファクトリーが作ってくれた物なのだが、渡されたのはラクスからであり、彼女から貰ったのも同然、その剣をエンブリヲに砕かれた事に黙り込むキラ。

 

「…フリーダムを壊された僕に一体どうしたら…」

 

その様子を見ていたレイがある事を言い出す。

 

「キラ・ヤマト、提案があります」

 

「えっ?提案?」

 

「レイ、何かあるのか?」

 

シンがレイにそれを問うと、レイは頷いて言う。

 

「ああ、俺とステラがラウから離れた際に隠れ家として使っていた秘密のアジトがあります。そこにはある物があるんです」

 

「ある物? それは一体何?」

 

「それは行けば分かります。艦長頼めますか?」

 

レイはその事をマリューに頼むと、マリューはそれに少々悩む。

 

「そうしたいのはやまやまだけど、アンジュさん達を早く助け出さないと行けないから難しいわね…」

 

「なら私が一度隠れ家に戻って、キラの新たな機体を取りに行きます。そうした方が効率が良いです」

 

「そ、そう…ならそうして貰おうかしら」

 

マリューの許可を得たレイは頭を下げて、そしてキラの方を向く。

 

「キラ、貴方の新たな機体を持って行きます。きっと気に入りますよ」

 

「う、うん。ありがとう」

 

そう言ってレイは病室から出て、すぐさまレイ達が居たアジトへと向かった。

 

「さて…どうするんだキラ?」

 

「決まっています。サラやアンジュを救います、ラウ・ル・クルーゼが二人に被害を加える前に助け出さないと」

 

「その状態でも、行くつもりねキラ君は…。分かったわ、彼女達の行き先は恐らくミスルギ皇国よ。良いキラ君?」

 

それにキラは頷き、マリューとムウは互いの顔を見て頷き、すぐさまブリッジに向かった。

病室を出たマリューとムウを見届けたヴィヴィアン達、ヴィヴィアンとナオミはキラの近づいて、キラの身体を心配する。

 

「キラ、何かあったら言ってね?」

 

「すぐ駆けつけるから!」

 

「うん、ありがとう」

 

そう言ってヴィヴィアン達はそのまま病室を出るのであった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてアンジュとサラ、モモカの三人はミスルギ皇国へと連れて来られ、アンジュの部屋に閉じ込められていた。

 

アンジュの服装は白いドレスで、サラは赤いドレスを着ていた。

扉には鍵がかかっていて、当然脱出は不可能。

 

「…キラ、無事でしょうか」

 

「きっと無事よ、キラがそう簡単にやられる筈はないわ」

 

心配するサラにアンジュがそう言い、それにサラは頷く。

 

「ええ、そうですね」

 

「果たしてそうかしら」

 

っと突如誰かの言葉に振り向くアンジュ達。そこには扉から軍服の様な制服を身にまとったサリア達が部屋に入って来ていた。

 

「もう彼は死んでいる筈よ、エンブリヲ様が倒したのだから」

 

「…元気そうねサリア、一体何があったの?あんなに司令好きのあなたが…」

 

「別に、目が覚めたのよ…エンブリヲ様のお蔭でね」

 

話しによると、サリアはアンジュに落とされた後、エンブリヲに助けられ自ら迎えてくれた事に感謝をしていた。

 

当然ノーマであるサリアが人間に処分されると思っていると思っていたが、それをエンブリヲがやめさせてくれて。そして自分を全く必要としていないジルからエンブリヲへと鞍替えした。愛するジルからエンブリヲへと…。

 

サリアは頬を少し赤くしながら、エンブリヲから貰った指輪を見る。

 

「そして私はエンブリヲ様の直属の親衛隊『ダイヤモンドローズ騎士団』、騎士団長のサリアよ」

 

「ダイヤモンドローズ騎士団…、変なお名前ですわね…あの無粋な者に忠実になるなど」

 

っとサラが言った途端サリアが表情を変えてサラに近づき、引っ叩く。

しかしそれをサラは軽々と受け止め、更に投げ返したのだ。

 

 

ドスッ!!

 

 

「ぐっ!!」

 

「「騎士団長!!」」

 

後方に居たターニャとイルマが銃を抜こうとした瞬間、アンジュが間合いを取って、二人の銃を奪って、手刀で気を失わせる。

 

「ターニャ!イルマ!」

 

サリアが身体を起こそうとするが、先ほどのダメージが効いていて上手く動けない。

そんなサリアの様子をサラは上から目線で言う。

 

「鈍いですわね貴女、此処に居るアンジュより弱いですわ」

 

「ちょっと、どう言う意味よ!」

 

その事に思わず怒鳴るアンジュ、それにサリアは怒りが溢れ込み歯を噛みしめる。

 

「もう少し武術の基礎を学ぶべきですわ、さあ行きましょうか」

 

「ちょっと!もう!」

 

無視するサラにイラつくアンジュ、そんな様子を苦笑いするモモカであった。

 

っがその時、モモカに後ろに誰かが回り込み、モモカの腕を取る。

 

「うぅ!!」

 

「モモカ?!」

 

アンジュが振り向くと、そこにはオルガ達がモモカを捕えていて、スティングがアンジュとサラに言う。

 

「お前等、あんまり抵抗するな。じゃないとこのメイドがどうなっても知らねぇぞ」

 

「くっ!」

 

「卑怯な…!」

 

「うっせぇよ、おめぇ等。さっさとどっか行けよ!」

 

オルガの文句に歯を噛みしめるサリア達、サリア達はその場を去って、スティングが二人に手錠を掛ける。

 

「来いよ、クルーゼがお前たちを呼んでいる」

 

「エンブリヲ…、あいつが」

 

「忌々しい男、此処で落としたい所ですが、下手に動けばモモカ殿が危うい」

 

何も出来ないアンジュとサラ、二人は大人しくしながらオルガ達にエンブリヲの元に連れて行かれるのであった。

 



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第37話 動き出すクルーゼ

お待たせしました。更新です。


ミスルギ皇国で捕らえられ身となったアンジュとサラ、二人はオルガ達に連行されてながらある部屋へと着く。

オルガ達が中に入り、中にはエンブリヲが居た。

 

「おいおっさん、連れて来たぞ」

 

その言葉にエンブリヲは振り向き。それにアンジュとサラは睨みつけながらエンブリヲを見る。

 

「ご苦労、下がっていいぞ」

 

そう言ってオルガ達はその場から立ち去る。

残されたアンジュとサラはエンブリヲを睨みつけ、その様子をエンブリヲは鼻で笑う。

 

「フッ、そんな目で私が怯むとでも思っているのか?」

 

「思わないわよ!!」

 

「あなたをここで倒して、アウラを取り戻したい…何がなんでも!」

 

アンジュとサラの度胸を聞いたエンブリヲは思わず笑いが出て、それにアンジュとサラは更にエンブリヲを睨みつける。

 

「何が可笑しいのよ!?」

 

「いやいや、この私を倒そうなどと言う言葉に思わず笑いが出てしまったよ。君達では私を倒す事などで出来んよ」

 

「やって見ないと分からないわ!そんなの!!」

 

「いや、分かるさ。君達には分からないだろうがこの身体は特別な身体でね。エンブリヲが面白い物を入れてくれたのだよ…」

 

その言葉にアンジュとサラは何か引っかかりを感じつつその事を聞いて見る。

 

「何なのよそれ…」

 

「それは教える事は出来ないな、これはキラ君をこの手で完全に消し去る時にな」

 

「キラを? どうしてそこまでキラを殺そうとするの? 貴方はなんのために?」

 

アンジュはそれをエンブリヲに聞くも、エンブリヲはそれをスルーするかのように流す。

それにアンジュはイラっと来る。

 

「ちょっと!!答えなさいよ!!」

 

「すまないがこれも答える事は出来ない。キラ君が来るまでは答える気はないのでね、さあ…付いて来たまえ、良い物を見せよう…」

 

っとそう言ってエンブリヲは歩き出して、それにアンジュとサラは目で見合いながら頷き、今はエンブリヲの指示に従うしかなかった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

アークエンジェルでレイがレジェンドガンダムに乗り込み、嘗てステラと自分が隠れていた隠れ家に向かう為、すぐにブリッジにいるマリュー達に通信を入れる。

 

「では行ってまいります艦長」

 

『ええ、気をつけてね』

 

「はい、レイ・ザ・バレル レジェンド発進する!」

 

レイが乗るレジェンドガンダムがリニアカタパルトから発進して、隠れ家に向かった。

その様子をマリュー達はブリッジで見送り、マリューとムウは一度顔を見合って再び飛び去っていくレジェンドガンダムを見るのであった。

 

そして医務室の方ではキラがすぐに起き上がり、軍服を着て、ブーツを履く。

まだ頭の包帯は残っているが、そんなことをキラは気にもしていない。

 

そこにアスラン達がやって来て、キラが軍服を着込んでいるのを見て、思わず驚く。

 

「おいキラ。お前もう少し休んでいろ」

 

「まだ完治していないのに、そんな無茶して…」

 

「アスラン、シン。どうしても無茶しなきゃいけないんだ、僕はなんとしてもサラやアンジュを助けたいから」

 

その言葉にアスランは少し言葉を詰まらせそうになる。

 

「キラ…、気持ちはわからなくもないが、お前はクルーゼにやられて、おまけにフリーダムは…」

 

「それはレイがあるものを持ってくるって言ってたよね? それを信じてみようと思うんだ。ダメかな…」

 

その事にアスラン達は言葉を詰まらせ、ルナマリアとメイリンは顔を見合いながら少し心配そうになる。

丁度そこにヴィヴィアンとナオミがやって来る。

 

「ねえ皆、格納庫でマードックおじちゃんが呼んでるよ」

 

「え?マードックさんが?」

 

「うん、見せたいものがあるって」

 

ヴィヴィアンの言葉にキラ達は頭を傾げ、キラ達はすぐに格納庫へと向かった。

 

 

そして格納庫に着き、マードックがキラ達が来た事に振り向く。

 

「おう坊主、わざわざ来てくれてすまないな、大丈夫か?」

 

「はい、それと貴方が僕達を呼んだ理由は?」

 

「おう、これなんだが…」

 

マードックが見上げる先をキラ達が見ると、そこには完全に大破したストライクフリーダムだった。

その様子にキラは少しばかり重苦しい目で見て、マードックがその状態の事を話し始める。

 

「この機体の状態を見た結果、動力炉の方は問題が少々問題が浮き出て来てな、出力が上がらず全く動かず状態になっている。おまけに各部の部品の損傷が酷く、修理するのも不可能だ。完全に直すのは無理だ

あのレイの坊主が機体を持って来る他ないだろうな」

 

「そうですか…」

 

キラはその事を聞いて黙り込んでしまう。

 

前に聞かれた事に分かってはいたが、修復は不可能と言われてた事に更に落ち込んでしまう。

 

「キラ、今は無理をしてもしょうがない、今は──」

 

「アスラン、さっきも言ったけど僕はジッとしておくなんて出来ないよ」

 

っと先に言われてアスランはそれに黙り込んでしまう。

キラの意思は相当強いらしく、ため息を付く。

 

「はぁ…、分かった、好きにしろキラ」

 

「アスラン!」

 

「ルナマリア、キラがここまで言い出したら聞かない。諦めよう」

 

その言葉を聞いて、ルナマリアはその事に黙り込むしかなかった。

 

「じゃあレイがキラさんの機体を持って来るのを待っているんですか?」

 

「いやシン、レイが戻るの待ってられないよ。今からアンジュ達の救出任務をマリューさん達に頼んでみる」

 

「ああ分かった。こっちはある程度の準備はしておく、あまり無理するなよ」

 

「うん、勿論だよ」

 

そう言ってキラはその場からブリッジに向かい、アスランは銃器保管室へと向かった。

 

その様子をシン達とヴィヴィアン達は見合うのだった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてその頃、アンジュとサラはエンブリヲに連れられて暁ノ御柱に連れられていた。

 

エンブリヲと共にエレベーターで最下層に降りて、アンジュとサラの目にある光景は映る。

 

「アウラ…!」

 

「アウラ!!」

 

アンジュとサラの目の前にアウラがドラグニウム発生器らしき物を付けられて幽閉されていた。

その様子を見たエンブリヲは笑みを浮かばせながら言う。

 

「どうだねアンジュ、龍の姫よ。あれがドラグニウムだ。この世界の源であるマナは此処から発せられている、エンブリヲはこれでこの世界を全て色々な事を楽しんでたんだよ」

 

「なんてことを!!我が神聖なるアウラをこのような事に!!!」

 

「貴方…!アウラを発電機扱いにしてるのね!?」

 

サラはかつてない怒りが込みあがり、アンジュはエンブリヲ睨みながらアウラを発電機扱いしている事に怒鳴る。

だがエンブリヲはその事に全く動じない。

 

「ふふふ…、恨むのならばこの身体エンブリヲを恨むがいい。私はこの世界のエネルギーなど全く興味はない。だが少々手を加えるのもちょっと面白くてね」

 

その事にアンジュとサラは歯を噛みしめ、エレベーターは止まってエンブリヲは歩き出す。

 

「リィザの情報のお蔭でドラゴン達の待ち伏せは成功し、大量のドラグニウムが手に入った」

 

「リィザ? リザーディアの事ですか!? 彼女は今どこにいるんですか!?」

 

「彼女かい?彼女なら今は別の場所で拘束されているよ。さあ…もうじきだ、キラ君を殺す為の大舞台を作る為の大舞台を」

 

っとその時、アンジュが自力で手錠を解除して、エンブリヲの腰に隠している銃を見つけ、アンジュはエンブリヲの銃を奪い、頭に銃を突きつける。

 

カチャ!

 

「アウラを解放しなさい、今すぐ!」

 

「アンジュ!」

 

銃を構えているアンジュに対しても余裕をかましているエンブリヲ。

 

「おやおや、そんな物で私を殺せるとでも思っているのかい?」

 

「やって見ないと分からないでしょ? 貴方は何時までもその余裕が続くと思っているのかしら?」

 

アンジュの言葉を聞いてそれに鼻で笑うエンブリヲ。

 

「フッ、やって見るがいい。直截な」

 

「ええ、お言葉に甘えて」

 

バッーーーン!!!!

 

アンジュが持つ銃がエンブリヲの頭部を撃ち抜き、エンブリヲは血を流しながらそのまま倒れる。

 

そしてアンジュは銃を下ろすが、それをサラが言う。

 

「アンジュ!まだ下ろしてはいけません!!」

 

「えっ?」

 

「その姫の言う通りだ」

 

っとその事に驚いて振り向くアンジュ、そこに撃たれた筈のエンブリヲが居て、アンジュは倒れた方を見るとエンブリヲの死体が無く、それにアンジュはエンブリヲを睨みつけて再びエンブリヲの頭を狙い、エンブリヲの頭を撃つ。

それに抵抗せずにエンブリヲは頭部を撃たれて倒れる。しかしまた別の場所からエンブリヲが現れる。

 

「どうだいアンジュ、これで分かっただろう」

 

「あ…貴方、一体…?!」

 

「この身体ね、この世界では死なないようにされているのだよ。エンブリヲがある事で不老不死の能力を得て、それを私が今使っているのだよ」

 

「な!何なのよそれ…!?」

 

その事実を知ったアンジュは驚きを隠せず、サラはエンブリヲを睨みつける。

 

「エンブリヲ!アウラを今後どうするおつもりですか!」

 

「どうするって? どうもしないさ、あると言うならばもっと面白い事を使うまで…」

 

「アウラを開放しなさい!!エンブリヲ!!」

 

「違うな」

 

っとその事にアンジュとサラは目を開き、エンブリヲは顔の右半分が焼け跡の様なアザが現れて、エンブリヲは自分の名を言い出す。

 

「我が名はラウ・ル・クルーゼ! 世界を破壊し、全てを破壊する者。よく覚えて置きたまえ…!」

 

自らの名を名乗りあげるエンブリヲ事クルーゼ、その名を聞いたアンジュとサラは少しばかり恐怖を覚える。

 

そしてその様子を見て聞いていたサリアが唖然とするのであった。

 

「エンブリヲ様…」

 

 

遂に自らの名を語り出したクルーゼ、アンジュとサラの危機が迫りゆく。キラ達はどうやって二人を助け出すのだろうか。

 



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第38話 悪夢の真実 前編

ミスルギ皇国で暁ノ御柱でアウラが幽閉されているのをエンブリヲ事クルーゼに聞かされたアンジュとサラ、二人はまた再び部屋に戻された。

部屋にモモカが椅子に座っていて、アンジュ達が戻って来たのを見て立ち上がる。

 

「アンジュリーゼ様!!ご無事ですか!?」

 

「ええ、何とかね」

 

その事を聞いてモモカはホッと胸を下ろす。

 

「良かったです、アンジュリーゼ様にもしもの事があったら、モモカはどうしたらいいかと迷いました」

 

「ごめんねモモカ、それよりもサラ子。どうやってアウラを助け出す?」

 

アンジュはその事をサラに聞き、それにサラは考える。

 

「そうですわね…、どの道此処に居てもエンブリヲ…いえ、あのクルーゼが言った言葉を聞いていたら一刻も早くここを抜け出す他ありません」

 

「あの言葉…、キラを殺す事ね。どうしてそこまで根に持つのかしら…」

 

「分かりません。ですが何としてもキラ達にこの事を知らせなければ、一刻も早く…」

 

「そうね、モモカ。ここを出るわよ」

 

「はい!アンジュリーゼ様!」

 

モモカは頷いてアンジュに付いて行き、アンジュは部屋の隠し扉を開いて部屋を出る。

サラはその様子を見て感心する。

 

「よく隠し扉がありましたわね」

 

「此処は私の家なのよ、逃げ道の為の隠し通路がそこら中にあるんだから」

 

そう言ってアンジュ達はその隠し扉を使って抜け出し、その時に見張りに来たクリス達がやって来る。

 

「っ!! アンジュが居ない!!」

 

「あらあら、困った子ね」

 

そう言ってエルシャ達はアンジュ達を探しに向かい、サリアはその様子を見ていて、少々考えながらその場を後にする。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そして一方、キラ達はアークエンジェルとアウローラを潜航させながらミスルギ皇国へと向かっており、アウローラのパラメイル隊をアークエンジェル艦内に移して準備を進めていた。

 

マードックが整備班達に怒鳴りながら叫ぶ。

 

「お前等!!!もたもたするんじゃねえぞ!!!遅れた者は腕立て150回だからな!!!」

 

『『『『おう!!!』』』』

 

整備班達の掛け声に準備を進めているパラメイル整備班達はその気迫に思わず目がくぎ付けとなる。

メイがその様子に声を掛ける。

 

「ほら皆!ボーっとしないで手を動かせ!」

 

「「「はい!」」」

 

その言葉にすぐに作業を再開するパラメイル整備班達、メイはすぐに自分の作業に戻る。

 

そしてアスランはジャスティスの準備をしながらもキラの様子を見ていた。

キラはフリーダムが使いない今、応急処置の機体であるムラサメを使おうとしていて、すぐにOSの書き換えを行っていた。

 

そんなキラの様子をアスランは歩み寄る。

 

「キラ、本当にこの機体で出るのか?」

 

「うん、フリーダムがない以上この機体で出るしかないよ、それにレイがどんな機体を持って来るか分からないし、仮にフリーダムと同じ機体だったとしても僕の操縦にどこまで対応できるか分からないし」

 

「それもそうだな…」

 

キラの言葉にアスランもそれに納得するかのように頷く。

 

そしてシンがやって来て、キラとアスランの元に来る。

 

「キラさん、アスラン。機体の調整終わりました。何か手伝える事はありませんか?」

 

「ありがとうシン、実はスラスターの出力調整がまだ出来てないんだ。それをちょっと見てくれる?」

 

「分かりました。やって置きます」

 

すぐにシンはスラスターの調整を行い始め、キラはすぐに作業を再開しようとした時に。

 

「わっ!」

 

「「「っ!」」」

 

ヴィヴィアンが突如前に現れて、キラ達は思わず驚いて手を止めてしまう。

 

「驚いた?」

 

「お、驚くよ…。どうしたの?」

 

「いやさ、アタシも何か手伝おうと思ってさ。アタシのパラメイルもう終わったから」

 

「手伝う? こいつはお前たちの機体とは全くぞ?」

 

アスランはモビルスーツとパラメイルの機体整備の違いをヴィヴィアンに言い、それにヴィヴィアンは頷きながら言う。

 

「分かってるって、後でナオミも手伝いに来てくれるって言ってたよ」

 

「ナオミも? 何だか悪いね…」

 

その事にキラは申し訳なさそうにして、ヴィヴィアンは笑顔で言う。

 

「いいって♪ アタシ等はキラ達の為にやっている事だから」

 

ヴィヴィアンはそう言ってキラの機体の調整を手伝い始めた。

 

その様子を見て、キラ達は少々苦笑いしながら見るのであった。

 

 

 

そしてレイの方は、アジトに到着して、レイが隠してある機体のハッチを開こうとしていた。

 

「…っ!」

 

その時レイはハッチの中を見て、思わず言葉が失くしてしまった。

 

隠しある筈の機体が完膚なきまでに破壊されていたのだ。それも修復不可能の状態に。

 

「どうして…ん?」

 

レイは近くにある制御盤の元に行き、そこにメッセージが残されているのを見て再生してみる。

すると映像にはエンブリヲ事、クルーゼが映し出された。

 

『やあレイ』

 

「ラウ!」

 

『君が隠してあった機体を見たかね? 中々面白い機体ではあったが、ここに置いてあると返って面倒になって来るので破壊させて貰ったよ。形から見てフリーダムのコピー品と見た。

そんな物をキラ君の代用機としてしようと思ったが、そうはいかない。彼をもっと苦しめさせるためにも妨害させて貰ったよ…ではまた』

 

そう言ってメッセージは終わり、それにレイは拳を握りしめる。

 

「先回りしていたのか、ラウ…!」

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてアンジュ達は何としても脱出しようとアンジュの屋敷から出ようとしていた。

しかし、アンジュ達は外に出ようにも、全く別の場所に出てしまう。そこは牢獄の様な場所だった。

 

「アンジュ、外に出る筈だったでは?」

 

「わ!分かってるわよ!(おっかしいわね…、確かにこっちの筈…)」

 

昔の事を少々忘れかけているアンジュの様子にサラはそれにため息を付く。

 

パシュ!!

 

「??」

 

何やらムチの音がしたのをアンジュ達は振り向き、その場に向かう。

その場には裸のまま吊るされたリィザの姿が居て、それをシルヴィアがムチでリィザを痛みつけていた。

 

「シルヴィア…!」

 

「リザーディア…!」

 

「全く!何て汚らわしい! そこで反省していなさい!!」

 

そう言ってシルヴィアはその場から離れて行き、アンジュはシルヴィアの様子を見て呆れる風景になる。

 

「馬鹿な子ね、自分が汚らわしい事に気付かないなんて」

 

「アンジュ、今はそんな事を言っている場合じゃありません」

 

「分かってるわ、モモカ」

 

「はい」

 

モモカはすぐさまリィザの元に行き、彼女を解放する。

下ろされたリィザはモモカに水を渡されて、それを飲み干すとモモカを見る。

 

「…お前は」

 

「リザーディア」

 

リィザはサラの声を聞いて驚いて振り向き見る。

 

「サラマンディーネ様…」

 

「リザーディア、貴女に何があったのかはまた今度聞きます、ですが今私達と共に脱出を手伝ってください」

 

「サラマンディーネ様…、しかし」

 

「リィザ様」

 

モモカの言葉を聞いてリィザは振り向き、モモカは真剣な目でリィザを見つめて言う。

 

「貴女がジュリオ様と一緒に、アンジュリーゼ様を貶めた事…忘れはしません」

 

「っ、モモカ…」

 

アンジュの誕生16年祭の時に彼女をノーマと暴露し、そして彼女に酷い仕打ちをしたことを忘れはしないと言うモモカ。

その事を聞いてアンジュは思わず息を飲んだ。

 

「だから…アンジュリーゼ様に謝って貰うまで、絶対に死んでは駄目です、そして手伝ってもらいます。それが私の今の願いでもあり、お願いでもあります」

 

「モモカ…」

 

っとアンジュに謝罪と協力を申し込むモモカ、それを聞いてアンジュは目を大きく開き、リィザはそれを目に涙が浮かび上がって来る。

 

「分かりました…、このリザーディア、何なりとご命令を」

 

それを聞いたアンジュ達はすぐに移動を開始するのであった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

ミスルギ皇国付近までやって来たアークエンジェルとアウローラは一度浮上して、ブリーフィングルームで作戦内容を確認していた。

 

「今回の作戦はミスルギ皇国へ入って、アンジュとサラ、そしてモモカの三人を救出する事です」

 

「へぇ~、アンタにしては大胆な行動だね。まあアタシもそれには同感だけどね」

 

ヒルダがその事を聞いて賛同するかのように言い、隣で聞いているロザリーが顔を傾げる。

 

そしてイザークがある事を聞く。

 

「おいキラ、お前の作戦なんだが、特効作戦と変わりないんじゃないのか?」

 

「そうだぜキラ、相手は元クルーゼ隊長だ。この作戦は相手側にも分かっちまうぜ」

 

「そう見せかけて囮をしてもらいたいんだ、皆に。僕達はその隙にアンジュ達を見つける」

 

「キラさん達だけで大丈夫ですか?」

 

心配をするシンにキラは笑顔で言う。

 

「大丈夫だよシン、僕も無茶はしないから」

 

「だと良いんですけど…」

 

キラの言葉に心配性なルナマリア、その様子にナオミが問う。

 

「私達も数名同行した方が良いのでは?」

 

「いや、帰って多いと見つかる可能性もあるから、救出は僕とアスランで行うよ」

 

それを聞いてヒルダは少し不満気な表情をする。

 

「じゃあ作戦を開始します。良いですか?」

 

キラの言葉に皆は頷き、すぐさま自分達の機体へと向かう。

 

キラも応急用のムラサメに乗り込み、皆に通信を入れる。

 

「それじゃあ皆、作戦通りに」

 

『了解!』

 

「キラ・ヤマト、行きます!」

 

「アスラン・ザラ、ジャスティス出る!」

 

キラとアスランが先に出撃して、その後にシン達も出撃をしてミスルギ皇国へと向かって行った。

 



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第39話 悪夢の真実 後編

この話で今年の投稿は終わりです。

そして最後に重大な結末が…。


皇宮から抜け出そうとしているアンジュ達は出口を探していると、一つの宝物庫を見つけ、そこにリィザが足を止める。

 

「お待ちを」

 

「何?」

 

「ここにサラマンディーネ様達の宝玉と指輪があります」

 

それを聞いたアンジュ達はすぐに宝物庫に入り、アンジュの指輪とサラの宝玉を探す。

するとモモカが二人の指輪と宝玉を見つける。

 

「アンジュリーゼ様!サラマンディーネさん!見つけました!」

 

「やったわねモモカ!」

 

「お見事です!」

 

二人はモモカに礼を言って、二人は指輪と宝玉を持つ。

そしてアンジュ達は宝物庫から出ると、リィザがアンジュ達に言う。

 

「皆さま、このまま出口まで進んでください」

 

「リザーディア? 急に何を言い出すのですか?」

 

「私は塔の送電施設に行き、私達の世界から救援を呼びます。サラマンディーネ様達が無事に脱出できる様にします。私はその後で…」

 

「さっき言った事もう忘れたの?」

 

アンジュがモモカに言われた事を忘れたのかと聞き、それにリィザは頭を横に振る。

 

「いいえ、私はあの言葉を忘れたりはしません、必ず戻りますので、どうか…」

 

その事を聞いたサラはリィザの目を見て、そして頷く。

 

「分かりました。では行きましょう」

 

「サラ子!?」

 

「アンジュ、私はリザーディアを信じます。彼女は決して裏切る真似はしません、さあ行きましょう」

 

そう言ってサラは先に進み、アンジュはそれにちょっと戸惑いながらも後を追いかけ、モモカも二人の後を追いかける。

 

リィザは見届けた後、すぐに制御室に向かった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてミスルギ皇国上空まで接近したキラ達、アスランはキラに通信を入れる。

 

「キラ、もうすぐミスルギ皇国に入る」

 

「了解、皆。準備は良い?」

 

『『何時でも』』

 

『こっちも良いぞ』

 

『OK、それじゃあ始めるか』

 

『了解』

 

シン達は陽動作戦に入る準備をし、キラとアスランは別ルートでミスルギ皇国への侵入を試みる。

 

するとキラとアスランの後方にヒルダが付いてくる。

それにアスランが気づく。

 

「ん?ヒルダ? お前何しに来た」

 

「アンジュを助けに行くんだよ。お前たちだけじゃ頼りなくてな」

 

「駄目だ。お前は陽動作戦の方に向かえ」

 

「ふざけんな!アンジュはあたしが「いい加減にしろ!! お前のワガママに聞いている余裕はない!!」っ!…チッ!」

 

アスランの怒鳴り声にヒルダは思わず舌打ちをして、その場から離れて行く。

 

その様子をキラは。

 

「アスラン…さっきのはいくら何でも…」

 

「キラ、俺はあのクルーゼにあいつ等が落とされるのを回避させただけだ。あいつらにお前の二度前を繰り返させたくないだけだ」

 

その事を聞いてキラは黙ったままアスランの方を見て、そして二人はミスルギ皇国へと向かった。

 

 

 

そしてアンジュ達は宮邸の外に出る出口を見つけ、そこを抜けて外に出ると。

 

『何処に行くの?アンジュちゃん』

 

「「「!!?」」」

 

三人は空からやって来た追跡部隊であるエルシャに発見されてしまう。

 

「エルシャ!?」

 

「エンブリヲさんがあなた達を探しているわ、戻りましょう」

 

その事を聞いたアンジュは顔をイラつかせながらサラとモモカに言う。

 

「行くわよ!モモカ!サラ子!」

 

サラとモモカはそれに従いながら付いて行き、それにはエルシャは困った表情になる。

 

「あらあら、仕方ないわね」

 

エルシャはすぐさまレイジアをアンジュ達の方に向かわせ、そして別の方向からクリスも現れる。

それにアンジュ達は逃げているとアンジュの指輪とサラの宝玉が光り始める。

 

暁ノ御柱ラにあるヴィルキスと焔龍號が起動して青色に変化する、そしてアンジュとサラの元にジャンプしてアンジュ達の目の前へと現れる。

 

それに追跡していたエルシャとクリスがヴィルキスの登場に驚く。

 

「「ヴィルキス!!」」

 

アンジュとサラはすぐさまヴィルキスと焔龍號へと乗り込み、すぐにモモカに言う。

 

「モモカ!乗って!!」

 

「はい!!」

 

「サラ子!行くわよ!」

 

「分かってます!!」

 

乗り込んだアンジュ達はすぐさまヴィルキスを動かして逃げ始める。

エルシャとクリスはすぐさま追いかけえる。

 

「クリスちゃん!!」

 

「分かってる!逃がさないよ…アンジュ」

 

そして二人はアンジュ達に攻撃を仕掛け、アンジュ達はその攻撃を何とかかわしながら逃げ続ける。

 

「アンジュリーゼ様!」

 

「しっかりとつかまってモモカ!」

 

「アンジュ!!横!!」

 

サラの言葉にアンジュは横を見ると、横からカラミティが現れて、エネルギー砲を放つ。

それにアンジュはかわして行き、エルシャはカラミティに乗るオルガに通信を入れる。

 

「待って!アンジュちゃんを捕えるのが優先よ!」

 

「知るか!俺の知った事かよ!!」

 

「うわっ!マジ最低だし…」

 

「最低なのはお前なんだよ!」

 

っとクリスの横にクロトが乗るレイダーが通り過ぎ、それにクリスは反応する。

 

「はっ!?」

 

「最低なのはお前なんだよって言ったんだよ! さっさと消えろうよ!そりゃああああああああああ!!!!抹殺!!!」

 

レイダーはミョルニルをアンジュとサラに向けて放ち、更にシャニのフォビドゥンもやって来る。

 

「うらぁぁぁ!!」

 

フォビドゥンもビームを撃って来て、それにアンジュとサラは慌ててかわす。

 

「くっ!」

 

「アンジュ!!」

 

三人が絶対絶命だと思いこんでいたその時、一発のビームが飛んで来て、それにオルガ達はかわす。

そして飛んできた方を見ると、そこからムラサメとインフィニットジャスティスがやって来て、キラがアンジュ達に通信を入れる。

 

「アンジュ!サラ!!」

 

「無事か!?」

 

「キラ!アスラン!」

 

「無事でしたのですね!キラ!」

 

キラの無事を見て安心するアンジュとサラ、オルガ達はやって来た機体を見て。

 

「おいおいあいつは!」

 

「何であいつが此処に居るんだよ!!」

 

「知らないわよ。それよりもアンジュよ」

 

「ええアンジュちゃんともう一人を連れて行かなきゃ」

 

アンジュとサラを捕えようとオルガ達が武器を構えた瞬間、別方向からまた一発のビームが飛んで来て、それを見ると陽動作戦に出ていたシン達が来た。

 

「キラさん!アスラン!!」

 

「シン!」

 

「敵が中々囮作戦に引っかからないもので、見に来たんです」

 

「すまないルナマリア、どうやら囮は無駄だったようだな」

 

「いや、それはまずない」

 

っとイザークが乗るブルデュエルがビームを放ち、それにオルガ達がかわすと、ディアッカのウェルデバスターが横に回ってエネルギー砲を放つ。

 

「こっから先が囮作戦の時間だ、キラ、アスラン。お前たちは先にお嬢ちゃん達を連れて逃げろ!」

 

「急いで!」

 

シホが乗る『グフイグナイテッド』が『M181SE ドラウプニル 4連装ビームガン』を放ちながら言い、ヴィヴィアン達も同じ様に攻撃を開始する。

 

「ここは任せたなり~!」

 

「皆…ありがとう、行こうアスラン!アンジュ!サラ!」

 

「ああ!」

 

「ええ!!」

 

「はい!!」

 

四機はすぐにその場を離れて行き、それにオルガが見てイラつく。

 

「逃がすかよ!!」

 

オルガがエネルギー砲を構えると、横からシンのデスティニーがアロンダイトを振り下ろす。

それにオルガはかわして、シンはアロンダイトを構えて言う。

 

「此処から先は行かせない!!」

 

「チッ!うっとうしいぜ!!」

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてミスルギ皇国付近まで接近したアークエンジェルとアウローラ、マリューはすぐさま皆に戦闘態勢を取らせる。

 

「総員第一戦闘配備、敵の接近に警戒しながら迎撃準備!」

 

「了解!」

 

アークエンジェルはすぐさま攻撃態勢に入り、アウローラも同じ様に準備をする。

そして格納庫でムウがアカツキに乗り込んでいた。

 

「ムウ・ラ・フラガ、アカツキ出るぞ!」

 

ムウが乗るアカツキが発進して、アークエンジェルの周囲を警戒して行く。

 

 

 

一方キラ達は追ってから何とか逃げ切っていた。

 

「後方に敵なし」

 

「今の所大丈夫か」

 

『そうとは限らないよ』

 

っと別の音声が聞こえ、それにキラ達は驚いて前を見ると。前にはプロヴィデンスが浮いていた。

 

「やあキラ君、君もしぶといね」

 

「ラウ・ル・クルーゼ!!」

 

キラ達はすぐに回避を始め、アスランはビームライフルを構えながら向かう。

 

「キラはすぐにその場から離れろ!俺が食い止める!」

 

「アスラン!」

 

キラが制止させるもアスランはすでに飛び出して行き、ビームライフルを撃ちながら迫る。

それをクルーゼは笑みを浮かばせながらかわし、そしてマルチドラグーンを放って無数の数で攻撃させる。

 

「っ!!」

 

アスランはそれをかわして行くも、無数の数の上に素早い動きでアスランを追い詰めて行き、徐々に手足を破壊され、更にファトゥム-01を破壊されて、飛行能力が低下して行く。

 

「ぐっ!!」

 

「ふっ…」

 

更にクルーゼは蹴りを放ち、アスランは蹴り飛ばされてしまい、そのままキラ達の元に飛んで行ってしまう。

キラ達が後方の気配に気付き、キラが後ろを向いた瞬間アスランのジャスティスと激突して、更にアンジュ達のヴィルキスへと激突してしまい墜落してしまう。

 

「「うああああああああ!!!」」

 

「「「きゃあああああああああ!!」」」

 

キラ達は近くの研究施設へと不時着してしまい、クルーゼはそのまま地上に降りる。

 

そしてキラ達は不時着しながらも意識は保っていて、キラが操縦桿を動かそうにも反応がなく、完全に壊れてしまったと確認する。

 

「駄目だ…!」

 

「キラ!俺の機体も動かない!此処は脱出だ!」

 

「分かった!アンジュ!サラ!君達も!」

 

「ええ!」

 

「はい!!」

 

すぐさま機体を捨てて脱出するキラ達は銃を持って近くの研究所へと逃げて行く。

その様子を見たクルーゼは目を細めながらコックピットから出て、銃を取ってキラ達の後を追いかけて行った。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてアークエンジェルではインフィニットジャスティスのシグナルがロストをしたのをミリアリアが確認する。

 

「っ!艦長!!ジャスティスのシグナルがロストしました!」

 

「何ですって!やられたの!?」

 

「分かりません!映像も確認できません!」

 

その事をサイが報告し、それにマリューは拳を握りしめるとムウが通信を入れる。

 

『俺が行く!! 俺が直接見に行く!!』

 

「ムウ!!」

 

ムウがすぐさま向かい、急いでキラ達の元に向かった。

 

 

一方でキラ達は研究所へと逃げ込み、クルーゼから身を隠していた。

 

「……」

 

キラ達が息を堪える中でクルーゼが中に入って来て、キラ達に向かって言葉を放つ。

 

「隠れてないで出て来たまえ、キラ君…折角また直接会えるのだ。少しは会話ぐらいも構わないだろう」

 

「…お断りです!」

 

キラが身を乗り出して銃を構えて撃つ。

それをクルーゼはかわして銃を構えて撃ち返し、それをキラはすぐにかわして身を隠す。

 

クルーゼはすぐさまキラが居た場所へと向かい、キラ達はすぐにその場を離れて、近くの部屋へと入って行く。

 

「やれやれ…キラ君も冷たくなったものだ。前は聞いてくれたものだったんだがな」

 

「勝手に決めないでください…!」

 

「しつこいわよ貴方!!」

 

アンジュがクルーゼに怒鳴りつけ、それに笑うかのような笑みを浮かべる。

 

「しつこいのが私のとりえでね、そうだキラ君、君に面白い話を聞かせてあげようか?」

 

「何を?」

 

キラが銃を構え、部屋に入って来るクルーゼはそのまま言い続ける。

 

「君がこの世で最も愛した女性…、ラクス・クラインが死んだ本当の理由を知っているかね?」

 

「っ!?」

 

っとその時キラの心の大きな衝撃が走る、何故クルーゼが病気で死んだラクスの死の理由を知っているのかを。

そしてそれはアスラン達も同じであった、その中で唯一ラクスを知らないモモカはアンジュに問いかける。

 

「アンジュリーゼ様…ラスクさんと一体」

 

「モモカ、今は後にして!」

 

モモカをちょっとばかし黙らせるアンジュ、キラはすぐにクルーゼに問いかける。

 

「どう言う事です!!貴方がどうしてラクスの事を!!」

 

「ふふふ…知りたいかねキラ君。知りたいだろうね…何故なら彼女は病気ではなく誰かの“意思”で殺されたのだと!」

 

「ど!どう言う意味ですか…!?」

 

戸惑いを隠せないキラにクルーゼは言い続ける。

 

「ある者は次元を操るだけでなく。ある人物の心臓を操作する事が出来る事である方法を思いついたのだ。それは残酷で最も苦しい殺しだ…」

 

クルーゼが放つ言葉にキラは思わず誰かを思い当たる。それは自分の身近で同じような出来事であり、目の前で死んでしまった女性を…。

 

「そしてその者はその者の人物を苦しめさせ、その人物の最愛の人物を徐々に苦しめさせようと思いついたのだ。更にそれだけその者の人物を殺そうとね…」

 

そしてその事にキラは目を大きく開く。

 

「…ま! ……まさか!?」

 

同時にアスランやアンジュ、そしてサラの目も大きく開かせながら聞いていて。

それにクルーゼは笑みを浮かばせ、不気味な表情をしながら言った!

 

「そう…! その人物…ラクス・クラインを病気と見せかねて、ラクス・クラインの命を奪ったのは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           この私なのだからな!!!!!

 

 

 

 

 

 




はい!これが真相です!!

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第40話 悲しみからの再会

半年間以上空いてしまって、本当に誠に申し訳ありませんでした!!

なかなかネタが思い浮かばず、ずっと手詰まり状態でした。

やっと更新し、最後にまた凄い展開になってるので、どうか見て下さい!


キラ達の機体のシグナルロストの場所にたどり着いたムウはすぐさま辺りを見渡す。

すると建物の近くにキラ達の機体が墜落して、ムウはそれを見つける。

 

「あれは! ん!?」

 

ムウはすぐに向かおうとした時にすぐ近くにクルーゼのプロヴィデンスが着陸していて、それを見たムウはすぐにアカツキを着陸させる。

 

着陸させたムウはすぐさま降りて、キラ達の機体を見る。

機体はボロボロになっており、アスランのジャスティスもボロボロになっていて、それを見たムウは「チッ!」と舌打ちする。

 

「機体が壊れてやがる! クルーゼめ…!やってくれる! それよりもキラ達は何処に…まさか!」

 

ムウはすぐ近くの建物の方を向き、キラ達が中にいる事と思い、ムウはすぐさま拳銃を持って建物内へと向かった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

「こ…殺した…、貴方が?」

 

キラ達はクルーゼが放った驚異的な真実に驚き、それにキラは同情を隠せなかった。

 

「ああそうさ! さそかし面白かったな…彼女の命、いや…心臓を思う存分操るのを」

 

「やめろおおおおお!!」

 

アスランが銃をクルーゼに向けて放ち、それをクルーゼはかわして物陰に隠れる。

 

「今だ!行くぞ!」

 

「ええ!」

 

アスランの掛け声にアンジュはすぐさま立ち上がって動く、しかしキラがただ動かないま唖然としてしまっていた。

 

「キラ!」

 

サラの掛け声にキラはすぐさま気を取り戻し、すぐに立ち上がろうとした途端。

 

「ふん!」

 

バンッ!!

 

「ぐっ!!」

 

クルーゼの撃った弾がキラの右腕をかすり、それに腕を抑えてしまう。

それにアスランが振り向く。

 

「キラ!! くっ!」

 

アスランがすぐさま撃ち返して、それにクルーゼはすぐさま隠れる。

その隙にアスランがキラに肩を貸して、その場から移動する。

 

「大丈夫か!キラ!?」

 

「う…うん…、なんとか……」

 

少し暗い表情をしてしまうキラだが少しだけ笑顔を見せながらアスランに平気な顔をする。

だがその様子をアスランとアンジュ、サラは心配そうな表情をし、アンジュは後ろの方を見ながら言う。

 

「それにしてもあの馬鹿男、なんて酷い事をする奴なのかしら!」

 

「キラの大切な人を殺し、それをキラへの復讐に使うなんて、外道な男!」

 

アンジュの言葉にサラも同じ考えであり、キラはまたしてもうつむいてしまう。

 

「キラ君よ、まだ話は終わってないぞ」

 

突如その言葉が前から聞こえて、キラ達は前を向くと、クルーゼが先回りしていて、銃をキラ達の方へと向ける。

 

「くっ!!」

 

アスランはすぐさま近くの扉の方へと飛んで、銃弾をかわす。

アンジュとサラも同じ様にアスランが飛び込んだ部屋に飛び込み、クルーゼはゆっくりと歩み寄る。

 

「アスラン、邪魔をしないでくれたまえ。良い感じになってきたに面白くないではないか」

 

「ふざけるな!! キラの心を…軽々しくもてあそぶな!!!」

 

アスラン達が入った部屋は何もない部屋で、出入り口が一つもない場所であった。

 

完全に入った部屋を間違えてしまったアスランにそれを考える暇もなく銃を扉の方に向ける。

そしてクルーゼがそこに入り、微笑みを浮かばせてキラ達の方を見る。

 

「これもキラ君への復讐なのだよ、まあ…これが済めば次のステップへと踏み出すのだがな」

 

「貴方って人は!どこまで残酷で外道で卑劣な事を考えるのですか?!」

 

サラがクルーゼにそう放ちつつ、クルーゼはそれを全く動じず止まる。

 

「いくらでも考えるさ、それが何が悪い?」

 

「この…!「どうして…」っ、キラ?」

 

アンジュが言おうとした所にキラの言葉が割って入り、それにアンジュは振り向き、キラは撃たれた腕を抑えながら立ち上がる。

 

「どうしてラクスを殺したんですか……、殺すなら直接殺しに来ればいいのに!」

 

「それでは何も面白くないのだよキラ君、私は君の大切な人を殺せば、よりも面白くなると考えているんだよ、君を殺す為に」

 

「ふざけるなああああああ!!!!」

 

キラの途轍もない怒りの叫びにアンジュとサラは思わず驚きながら見て、アスランはキラを見続ける。

 

「キラ!」

 

「ラクスは…ラクスは……、貴方の玩具じゃない!!! 命は…玩具じゃないんだああああ!!!!」

 

キラは怒りの言葉を放ちつつ目から涙を流し、クルーゼを睨みつける。

その様子をクルーゼは鼻で笑う。

 

「フッ!今さら怒りの言葉など私には無用な事、ここで消え失せるがいい…キラ君!」

 

クルーゼは銃口をキラに向け、アスランがそれを見てすぐに銃を向けるがすぐには間に合わず、クルーゼが引きがねを引こうとした時。

 

バンッ!!!

 

クルーゼの腕に一発の銃弾があたり、それにクルーゼは腕を抑える。

 

「ぐっ!」

 

「そこまでだ!!クルーゼ!!」

 

っとその言葉を聞いたクルーゼが後ろを振り向くと、そこにはムウが立っていて、銃をクルーゼに向けていた。

それにクルーゼは舌打ちをし、キラの方をへと向ける。

 

「良い所だったが、邪魔が入ってしまった。キラ君…君を殺すのは後に取っておくことにして置くよ。また会おう!」

 

そう言ってクルーゼはその場からホログラフの様に消えて行き、それにムウは慌ててその場を探すも居なかった。

 

「消えた…撤収したのか?」

 

「キラ」

 

ムウはキラ達の方を向くと、キラがその場にひざまついていて泣いていて、アスランとアンジュがその様子を近寄りながら見つめていて、サラがしゃがみながらキラの肩に手を置いていた。

 

「あんな……あんな事が…!」

 

「キラ…」

 

悲しむキラをアスランが何も出来ぬまま見つめていて、その場に居合わせなかったムウはキラの悲しみが痛いほど伝わって来て、そして通信機で応援を呼んだ。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

ミスルギ皇国上空で、激しい戦闘が続いているシン達とオルガ達。

 

その時ミリアリアから通信が入って来る。

 

『各機に告ぎます! ヤマト准将達の機体の回収の要請をフラガ一佐から受信しました。誰かそちらから数名向かわせてください』

 

「何?」

 

「キラ達が落とされていたのか? いつの間に」

 

イザークとディアッカがその事を呟いていると、シンとルナマリアが通信に答える。

 

「俺が行きます!」

 

「私も!」

 

「ちょ!おいお前等!何を勝手に!」

 

「すいません!キラさんが心配で! それじゃあ!」

 

そう言ってシンとルナマリアのデスティニーとインパルスは戦闘空域から離れて行き、それを見たヴィヴィアンは振り向いて言う。

 

「シン!ルナマリア!此処は任せて頂戴!」

 

「おいヴィヴィアン!」

 

ロザリーはヴィヴィアンが言った言葉を聞いて思わず驚き、ヒルダはその様子に何も面白味もなかった。

 

そしてオルガ達が二機がそのばから離れて行くの見て。

 

「逃がすかよ!!コラァ!!!」

 

オルガがエネルギー砲を構えた瞬間だった。

 

『全機、帰還しろ、撤収だ』

 

クルーゼの突然の通信にオルガ達はそれを聞いて驚く。

 

「何!?」

 

「はぁ~? どう言う意味だよそれは?」

 

スティングがその事に驚き、アウルがそれを問いかけるも、クルーゼがそれに答える。

 

『撤収だ、エルシャ達もだ。いいな』

 

「エンブリヲさん…」

 

「分かったよエンブリヲ君、引き上げるね」

 

そう言ってエルシャ達は引きあげて行き、その様子を見たオルガ達は舌打ちをしてエルシャ達の後を追いかける。

 

突如オルガ達が引いて行く様子にイザーク達は手を止める。

 

「おいイザーク、あれ」

 

「何だ? どう言う事だ」

 

「ほよよ? 何か引きあげて行くよ?」

 

原因が分からぬまま、イザーク達は一度アークエンジェルへ戻る事を決める。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてアークエンジェルへと回収されたキラ達。キラはすぐに医務室へと運ばれて行き。サラがそれに付きそう様に付いて行った。

 

アスランはその様子をただ見つめていて、ムウがアスランの側まで来る。

 

「良いのか?アスラン」

 

「今のキラに声を掛けてやれる言葉が何一つ見つかりません…」

 

その事にアンジュはアスランの方を見た後、キラの方を見て、ただ黙り込むのであった。

イザーク達が帰還してきた丁度にレイのレジェンドが帰還して来た。

 

それにシンとルナマリアが駆け寄る。

 

「レイ!」

 

「無事だった?!」

 

「ああ、だが…機体の方は駄目だった」

 

っとその事を聞いたシンとルナマリアは驚く表情をする。

 

「駄目ってどう言う事?」

 

「ラウが先回りをしていて…用意していた機体が完全に破壊されていた。これではキラ・ヤマトの代用機が…」

 

その事を聞いた二人は思わず落ち込んでしまった。

 

そしてキラは医務室で治療が済み、部屋で休んでいて、サラが側にやって来て、キラの隣に座る。

そこへアスランとアンジュがやって来て、アスランがキラの方を見る。

 

「キラ…」

 

「あんな…あんな…、くっそ…!!」

 

悔しさがあふれ出るキラに、サラは優しく手を取る。

 

「キラ、貴方が悲しめばラクスさんがもっと悲しんでしまいます」

 

「サラ…」

 

「貴方がしっかりとしなければラクスさんの無念は報われません、気をしっかりと持って下さい」

 

「サラ……」

 

その事を聞いてキラがうつむいてしまう時であった。

 

 

 

 

 

 

キラ…、悲しまないで下さい。

 

 

 

 

 

 

っと突如聞き覚えのある声にキラは思わず顔を上げて立ち上がる。

それにアスランとサラは見る。

 

「キラ?」

 

「どうしたキラ?」

 

「今のって…」

 

キラが周りを見渡すが、何もなく。それにキラが頭を傾げるばかりであった。

しかしキラの部屋の扉の前にある粒子が集まって来て、それを見たサラは驚いて言う。

 

「ッ!キラ殿!」

 

「!?」

 

キラ達が扉の方を見ると、ピンク色の粒子が集まって一体化すると、ある一人の女性が現れる。

その女性は髪がピンク色で、ピンク色のドレスを着込んだ女性にキラとアスランは思わず目を大きく開かせる。

 

「き…君は…!?」

 

「…お久しぶりですキラ、お元気でしたか?」

 

なんとキラ達の前に現れたのは病気と思われ、クルーゼに殺されてしまった女性、キラの恋人。『ラクス・クライン』であったのだ!

 




どうでしたか?

急展開でしたか?

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第41話 新たな自由と正義 前編

キラ達の前に突如現れたラクス、死んだ彼女が目の前に現れた事にキラは動揺を隠せなかった。

 

「ラクス…君なの?」

 

「ええキラ、私でございます。信じられないと思われますが」

 

その事を聞いたキラは思わず足を踏み出そうとすると、アンジュが腕を掴んで止める。

 

「ちょっと待ちなさいよ!」

 

「アンジュ?」

 

「いきなり向かうなんて何考えてるの?! ちょっとあなた!一体何者なの!?」

 

アンジュは警戒する構えをしながらラクスに言い、サラは少しばかり警戒しながらもラクスの方を見ていた。

それにラクスは微笑みながら答える。

 

「こんにちはアンジュリーゼさん、サラマンディーネさん。あなた達の事はずっと見ていましたわ、私はラクス・クラインです」

 

っと自分の名前を知っている事にアンジュとサラは驚きを隠せず、キラとアスランはラクスが二人の事を知っている事に驚きながら聞く。

 

「ふ、二人の事を知ってるの?!」

 

「ええ、ずっと見ていたのです。実体のない姿…魂となって」

 

それを聞いてキラ達は唖然としてしまうのだった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてキラ達は少しばかり落ち着き、ラクスと共にブリッジに行き、マリュー達と会う。

無論マリュー達はラクスがいる事に当然驚いた。

 

「ラクスさん!? 本当にラクスさんなの?!」

 

「ええ、お久しぶりです、マリューさん」

 

「何故だ!? 死んだ君が何故ここに?!」

 

ムウはラクスが此処にいる事に今だに信じられず、シンとルナマリアは驚いたまま唖然としていた。

一方レイは何やら思い当たる様な雰囲気を見せて、手を顎にのせながら考えていた。

 

そしてアークエンジェルに来ていたヴィヴィアン以外のヒルダ達は頭を傾げながら見ていた。

 

「何だよあいつ? キラ達の知り合いか?」

 

「あたしが知るかよ、そんなの」

 

ヒルダはそう言いながらアンジュの方を見る、アンジュはやや警戒しながらもサラと一緒にキラの様子を見ていた。

それにヒルダは気に入らない様な雰囲気をする。

 

そしてヴィヴィアンは何やら思い出して、手を『ポン!』と叩く。

 

「おお!思い出した! 確かオーブのお墓に書いてあった人物の名前だ!」

 

「えっ?!」

 

近くにいたナオミがそれを聞いて驚き、ラクスはヴィヴィアンの言葉を聞いて頷く。

 

「ええ、私は一度ラウ・ル・クルーゼに命を奪われ、この世を去った者。しかし魂は唯一残り、この世界に留まる事が出来ました」

 

「ええっ?! ラクス!殺されたって事を知ってたの?!」

 

キラの言葉を聞いたラクスはそれに頷く。

 

「はい、キラに黙っていた事に付いては申し訳ありませんでした。

残念ながら今の私は魂だけの存在、姿を出す事は出来ますがですがキラに触れる事すら出来ません、ですが私はただこの世界で留まっていた訳ではありません、此処である事をしていました」

 

「あ、ある事? それは一体何?」

 

「はい、ラウ・ル・クルーゼの陰謀を阻止する為の準備です」

 

ラクスの言葉を聞いてキラ達は驚く。

 

「クルーゼの陰謀の阻止!?」

 

「はい、ラウ・ル・クルーゼは皆様方が思っている以上に脅威な存在となりつつあります。あの者は次元を操り、1000年も生き続けていたエンブリヲと言う者の身体を手に入れました。

更には…あの力、ラグナメイルの力をMSに組み込み、より強大な兵器にして、この世界をより混乱と支配にしていきました」

 

ラクスの言葉を聞いたアンジュとサラはそれに思わず反応し、自分達が見て来たあの出来事を思い出す。

 

アンジュ達のマナの正当化と支配、そしてサラの地球の破壊と放棄、その二つの全てを当てはまる事に思わず黙り込んでしまう。

 

「そしてラウ・ル・クルーゼはキラを抹殺を目的としていますが、実はそれだけではありません。あの者はもっと恐ろしい計画を立てていたのです」

 

「もっと恐ろしい計画? それは何?」

 

キラがそれを聞いて問い、ラクスはキラの方を向いて言う。

 

「それは…私達の世界、コズミックイラの世界を破壊する事です」

 

「「「「「!!?」」」」」

 

それを聞いたキラ達は思わず目を大きく開いて驚き、聞いていたアンジュ達はそれに問う。

 

「どう言う事なのですか?! ラクス殿! あなたは何故あの者の目的を知っているのですか!?」

 

サラの問いにラクスはサラの方を向きながら答える。

 

「私は魂となった存在、ラウ・ル・クルーゼに気付かれぬよう見ていたのです。あの者はあの強大な兵器を使い、忌まわしき兵器に搭載したんです」

 

「忌まわしき兵器…それってあのプロヴィデンスの事?」

 

「恐らくは…、ですがその正体は私にも掴む事が出来ませんでした。ラウ・ル・クルーゼはきっと何かしらの方法で破壊する方法を見つけてる筈、それを何とかしなくては…」

 

「なあ…、ピンクのお姉さんよ。少し聞いていいかい」

 

っと黙っていたヒルダが横から割り込んでくる形で入って来て、それにアンジュはヒルダの方を向く。

 

「ヒルダ?」

 

「その何とかとかさ、アタシ等にももう少し分かる様に説明してくれるかい? そっちの話しばっかで訳わかんないんだけどさ、それに世界の破壊ってそう簡単に出来る訳ないじゃん」

 

「いいえ、あの者は出来ます」

 

ラクスのすぐさまの返答にヒルダは思わず驚き、ラクスはそれに気にせずに答える。

 

「世界の移動と空間、そして時間をも操る事が出来るんです、それを出来ない筈はありません」

 

「確かに…あのラウ・ル・クルーゼは元々エンブリヲの身体を使っています。それを使って出来ない筈はありません」

 

サラはラクスの言葉に頷きながら納得する、キラ達の世界でサリア達がやって来たとなれば考えられない話ではないからだ。

アンジュもその事に納得し、そしてラクスはキラの方のを向く。

 

「私ではあの者を止める事は出来ません…、どうかキラ、ラウ・ル・クルーゼの企みを阻止してください」

 

「ラクス…、でも僕にはフリーダムが…また君がくれた機体を僕は…」

 

「俺もだラクス、ジャスティスを奴に…」

 

ストライクフリーダムをラウ・ル・クルーゼに壊されてしまい、キラには対抗手段がない。

そしてアスランも同様インフィニットジャスティスをクルーゼに破壊されている。

 

「それならば心配はありません、実はあなた達の機体はあるのです」

 

「えっ? それはどう言う事?」

 

「私が案内します、マリューさん艦を出してください。私がキラとアスランの新たな剣を差し上げる場所まで」

 

「え、ええ…分かったわ」

 

すぐにマリューはノイマンに命令してラクスが言う場所までアークエンジェルを発進させる、無論アウローラにもこの事を伝え、共に向かうのであった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

ミスルギ皇国では、窓の外を見ていたクルーゼはある気配に気付く。

 

「ん? これは…まさか」

 

クルーゼがその気配を感じている中で、サリア達がやって来る。

 

「エンブリヲさん…、っ!エンブリヲさん…その顔」

 

「エンブリヲ君、その顔どうしたの?」

 

エルシャとクリスはクルーゼの顔の傷を見て問い、それにクルーゼはそれに答える。

 

「ああ、これかね。これは今まで隠していた古傷を出しただけだよ」

 

「古傷?だれの?」

 

「決まっている。キラ君だよ」

 

っとその事を聞いたサリアは思わず目を開き、クルーゼはそれに気付かないままサリア達に命令する。

 

「あーそうそう、君達に向かって貰いたい場所があるんだ」

 

「なんでしょう」

 

「なんでもその場所はかつて忘れ去れた島で、そこにアークエンジェルが向かっているのだよ」

 

クルーゼの言葉を聞いたサリア達はそれに反応し、クルーゼは言い続ける。

 

「その場所にはオルガ達と共に艦で向かって貰いたい、艦の場所はオルガ達が知っている、頼んだよ」

 

そう言ってクルーゼが去ろうとした時にサリアが問う。

 

「お待ちをエンブリヲ様…いえ、クルーゼ様」

 

「「?」」

 

「・・・」

 

突如サリアがエンブリヲの名ではなく、クルーゼの名を言い出し、それにエルシャとクリスは振り向き、クルーゼはサリアの方を向く。

 

「貴方の名前はラウ・ル・クルーゼなのですよね。アンジュとドラゴンの姫との会話を聞いていました…」

 

「…そうか、ではこの際だ。私はもうエンブリヲなのではない、ラウ・ル・クルーゼ。以後この名で通して貰いたい、では…」

 

そう言ってクルーゼはその場を去って行き、エルシャとクリスはサリアの方を見る。

 

「サリアちゃん、どうしたっちゃの?」

 

「サリア、何かあったの」

 

「別に…何でもないわ、オルガ達の元に行きましょう。その艦と言う物の場所に」

 

そう言ってサリアはエルシャ達を置いて行き、エルシャ達は互いに見合いながらサリアの後を追いかけて行き、オルガ達の元に向かうのであった。

 



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第42話 新たな自由と正義 後編

ようやくキラとアスランの新たな機体が登場します。

ご覧ください。


サリア達がオルガ達と共にキラ達の元に向かう際にガンダムとラグナメイルを持ってある艦に乗ることになった。

それにサリア達はそれを見上げることとなる。

 

「これは…」

 

それは紺色のカラーリングをした戦艦で、サリア達が見ている中でスティングが答える。

 

「こいつは『ガーティ・ルー』と言う艦だ。隠密行動を可能とする艦だから、あいつらに気づかれずに行く事が出来る」

 

「ほらさっさと来いよ」

 

アウルがサリア達を誘うように声をかけ。オルガ達は既に艦の中に入っていって、サリア達はそれに追いかける様にガーティ・ルーの中に入っていった。

 

そしてガンダムとラグナメイルをハンガーに固定し、ガーティ・ルーはサリア達を乗せて発進し、キラ達の元に向かうのであった。

 

その際にある二機がガーティ・ルーを見る。

 

「ねえ、あの船…」

 

「ああ…、あの船を追っていけば、もしかしたら彼らの元に行けるかも知れない。そうだな」

 

っと一人の女性がもう一人の女性に話しかけ、それにうなづく。

 

「ええ、間違いありません。このまま進んでください」

 

そう言って二機はガーティ・ルーの後を追いかけ、進んでいった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

その頃、キラ達がいるアークエンジェルはラクスの導きによりある島にたどり着いた。

キラ達は一度島の地形を確認したところ、小さな孤島であると分かった。

 

「ラクス、本当にこの島なの?」

 

「はい。この島は誰もが近寄らず、忘れ去られた島とされていて、地図からも存在しないままにされていました。ですがあれを作るのに隠れ家には絶好の場所でした」

 

「あれ? あれって何よ」

 

アンジュがそれを問うとラクスがアンジュの方を向いて、それに答える。

 

「はい、キラとアスランの新たな剣です」

 

「キラ殿とアスラン殿の剣…、まさか当たらな剣は!」

 

「はい。察しがよろしいですねサラマンディーネさん」

 

っとラクスはサラにそう答え、ラクスは島に入る方法をマリュー達に教え、マリュー達はラクスの教えられた場所に向かう。

そこに向かうと、島の崖が左右に開いて、奥に通じるドックが見えた。

 

アークエンジェルはそこに向かい、アウローラもそこに続く。

 

そしてドックに入った二隻は、停泊して、キラ達は降りて、アウローラに乗っていたジルたちも降り立つ。

 

「おい、この場所に一体何があるのだ。それにその娘はいったい誰だ?」

 

ジルがラクスの方を見て言い、それにラクスはジルの方を向いて言う。

 

「それはこれからお見せします。さあどうぞ」

 

ラクスはそう言って奥に進んでいき、キラ達はラクスの後についていく。

ジルは何やら気に食わない表情をする。

 

「なんだあの娘、随分と偉そうだな」

 

「そう言うもんじゃないよ、あんただって人の事は言えないんだ。それに付いていけば面白いもんが見れそうだよ」

 

っとジャスミンはそう言って付いていき、ジルは舌打ちをしながらあとを追う。

 

そして奥に進みにつれて、辺りには艦の修理の資材や食料、そしてMSの部品と機体が複数確認出来た。

 

「ラクス…、これは一体」

 

「ここにあるものは、全てキラ達が万一の為に用意した物ばかりです。魂だけの私には勿体無い物ばかりです、是非お使いください。さあ本命の物は奥です」

 

そう言ってラクスは奥に進んでいき、キラ達はラクスの後を追いかける。

 

追いかけて行くと、奥に厳重そうな扉があり、その前に立つとラクスがキラとアスランの方を向く。

 

「キラ、アスラン。この奥にはあなた達のこれからの戦いに必要な新たな剣があります。それは今後の運命を掛けた戦いの為のです」

 

そう言ってラクスは手を扉の前にかざすと、扉のセンサーがそれに反応して、それに扉は自動的に開いて行き、ラクスは奥に入って行く。

キラ達も奥に入って行き、真っ暗な部屋にアンジュは呟く。

 

「ちょっと、何もないじゃない」

 

そう言っているとラクスが近くにある台座の前に手を翳し、それに反応して、天井にある照明が点灯し、それに皆は目を瞑る。

アンジュ達が目を瞑る中で、キラとアスランは目の前に照らし出された物を見て、目を大きく開いた。

 

それはストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに似たガンダムが目の前に照らし出される、違いはフリーダムとジャスティスの胸部に宝玉の様な球がはめ込まれており、武装のかなり強力な物になっている。

フリーダムの腹部のビーム砲がカバーで覆われていて、ジャスティスのビームシールドも少しばかり大型になって居る。

 

アンジュ達はそれを見て思わず目を大きく開かせる。

 

「な、何よこれ…!?」

 

「フリーダムと…ジャスティス?!」

 

「うおおおおお!!すっげぇぇぇぇ~~~!!」

 

アンジュとサラが唖然とする中、ヴィヴィアンが興奮しながら新たなフリーダムとジャスティスを見る。

 

ラクスが新たなフリーダムとジャスティスを見ながら説明する。

 

「キラの新たなフリーダムの名は『ZGMF X-30A シャイニングフリーダム』です、アスランの新たなジャスティスの名は『ZGMF X-29A エクセリオジャスティス』です」

 

「シャイニングフリーダム…」

 

「エクセリオジャスティス…」

 

キラとアスランは目の前に出された新たな機体、シャイニングフリーダムとエクセリオジャスティスを見て呟き、ラクスは二機を見ながら説明する。

 

「この二機はお二人がこれまで戦って来たデータを元に、機体に新たな武装を施した、最新鋭の機体です」

 

「ラクス。君はこれを作る為に…?」

 

「はいキラ。これを貴方方に受け取ってもらう為にここにお連れしたのです、今のお二人にはとても必要な物ですから。キラ、改めて申し上げます。どうか、ラウ・ル・クルーゼの陰謀を止めて下さい」

 

その言葉を聞いたキラはそれにラクスの方を見た後、シャイニングフリーダムを一目見た後にラクスの方を向いて頷く。

 

 

 

ドッカアアアアアアアアアアアアアアアン!!

 

 

 

っとその時、突如衝撃が島全体に響き渡り、それにキラ達はそれに驚きながら見る。

 

「な!何!?」

 

「爆発!?」

 

アンジュとサラが言う中でラクスが近くにある端末を操作して壁にあるモニターを起動させる。

 

そして外にはガーティ・ルーが主力ビーム砲である『225cm2連装高エネルギー収束火線砲 ゴットフリートMk71』を六問同時発射しながら島を攻撃していて。その横にはサリア達のラグナメイルとオルガ達のガンダムが居た。

 

「ほらほらさっさと外に出てこいよ!」

 

「一気に潰してやるよ…」

 

「…出て来なさい、アンジュ。そしてキラ、…貴方があのクルーゼ様を苦しめる存在なら…貴方を消すわ」

 

サリアはコントロールレバーを握りしめながら二人を待っていた。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

敵の砲撃をモニターで見たキラ達、アンジュは拳を握りしめながら見ていた。

 

「サリア! あの馬鹿…!なんでここに居るのよ!」

 

「それにあの五機の機体も…、これは厳しいですね」

 

アンジュとサラがそう言っている中で、キラとアスランが互いを見合う。

 

「アスラン」

 

「ああ、行こうキラ」

 

そう言って二人はシャイニングフリーダムとエクセリオジャスティスの元に行き、それをラクスは見届けた後アンジュ達に言う。

 

「皆さん、フリーダムとジャスティスが出ます。ここを離れましょう」

 

「えっ? キラ達が?」

 

「いきなり出撃は無理なのでは?」

 

「大丈夫です、キラとアスランは慣れてますから」

 

そう言いながらラクスは再びキラとアスランの方を見て、アンジュとサラもキラとアスランを見るのだった。

 

そしてアンジュ達が部屋を退避した後、キラとアスランはシャイニングフリーダムとエクセリオジャスティスを起動準備させる。

起動の際にキラとアスランはシャイニングフリーダムとエクセリオジャスティスに搭載されているシステムを見て、少しばかり驚く。

 

「『ネオハイパワーデュートリオンエンジン』? 凄い…前のストライクフリーダムの八倍以上のパワーがある!」

 

「それにこの『マジック・オブ・キャンセラー』はクルーゼの能力を打ち消す能力があるのか…? これなら対抗できる!」

 

起動準備が整ったシャイニングフリーダムとエクセリオジャスティスは以前と同じのVPS装甲を展開し。二機の真上にある天井が開いて、ラクスがアナウンスする。

 

『ZGMF X-30A シャイニングフリーダム、および。ZGMF X-29A エクセリオジャスティス、発進どうぞ!』

 

そのアナウンスにキラとアスランが叫ぶ。

 

「キラ・ヤマト! フリーダム、行きます!!」

 

「アスラン・ザラ! ジャスティス、出る!!」

 

叫ぶと同時にシャイニングフリーダムとエクセリオジャスティスはスラスターを全開にして飛び立ち、外へと通じるルートに向かう。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

そして攻撃を続けている外では、中々出て来ない事にオルガは苛立っていた。

 

「くっそ~…!!何時まで待たせるんだ!!!」

 

「早く出て来てほしいね!」

 

クロトがそう言っていると、機体から警報音が鳴り響き、それにサリア達は見る。

 

「っ!何!?」

 

サリア達が島の方を見ると、島から二つの光が飛び出して行き、それにサリア達は目を向ける。

 

「あれは…!?」

 

サリアが目にしたのは、一度クルーゼによって壊された筈のフリーダムとジャスティスが姿を現し、それにエルシャは驚く。

 

「あれって…キラ君のフリーダム?!」

 

「それにあれはアスランのジャスティス!?」

 

サリア達だけではなく、オルガ達は二つの機体を見て、目がくぎ付けとなる。

 

「あれは…例の機体!?」

 

「はぁ~!?おっさんが壊したんじゃなかったのかよ!?」

 

「どうなってんだよ!スティング!」

 

「俺が知るか!」

 

オルガ達が混乱している中で、キラはウイングをハイマットモードにして、キラとアスランはSEEDを覚醒させて向かって行く。

 

それにサリア達はそれを見て言う。

 

「っ!来るわよ!!」

 

そう言ってサリア達は散開するも、オルガ達はサリアの命令を無視して突っ込んで行く。

 

「ちょっと!!あなた達!!?」

 

「うっせぇ!!!いくぜ!おらあああああ!!!」

 

オルガはエネルギー砲とビーム砲とロケットランチャーを乱射していき、それをキラは高速でかわしていき、猛スピードでその場を通り過ぎて行く。

するとオルガの機体がバラバラになり、それにオルガが驚く。

 

「何!?」

 

「オルガ!!」

 

アウルがすぐに向かって行くが、その前にアスランが立ちふさがり、アスランはシールドに付いているビームブーメラン『RQM78トライデントエッジ ビームブーメランⅡ』を取り出して投げる。

 

それをかわそうとするアウル、だがそのビームブーメランは余りにも早く、一気に通り越して行き、アウルの機体の右手足を斬りさいた。

 

「っ!!!」

 

「アウル!?」

 

すぐにスティングがアウルの方に行き、MA形態になってアウルをキャッチする。

 

そしてシャニがアスランの背後に回って、鎌を構えていた。

 

「うらああああああああ!!」

 

シャニが鎌を振りかました瞬間、アスランはシールドにもう一基付いてあるビームブーメランのビームを伸ばして、ビームサーベルにしてシャニの鎌を受け止める。

 

その隙に左足の『MR-Q18Sグリフォン ビームブレイドⅡ』を使って蹴り、シャニの機体の左足を切り裂く。

 

「ぐぅぅぅ!!!」

 

そしてキラがウイングに搭載されいているドラグーン『MA-120XR ハイパードラグーン ビーム突撃砲』を10基展開させて、両手の『MA-MN64LF 高エネルギービームライフル』二丁を構え、『MMIA-M29R クリアプス4レール砲』二門を展開して。

腹部のカバーに隠れている『MGX-2448 カリドゥス複相ビーム砲Ⅲ』を開かせて、サリア達に向けてロックオンして、マルチハイマットフルバーストを放った。

 

それにサリア達は避けようとしたが、そのビームは全て武器と手足に直撃して爆発し、サリア達は全ての攻撃手段を失う。

 

「なっ!(なんて攻撃!? 前とは全然違う…!!)ぜ!全機退却!! 母艦に戻るわよ!!」

 

『『『『イエス!ナイトリーダー!!』』』』

 

エルシャ達はすぐにガーティ・ルーに戻り、そしてオルガ達に向かって叫ぶ。

 

「あなた達も来なさい!早く!!」

 

「くっそ!!クロト!!」

 

「分かってるよ!くそっ!!」

 

唯一無事なクロトはすぐにオルガを回収して行き、オルガ達はサリアを連れられてその場から退却して、ガーティ・ルーに戻る。

 

ガーティ・ルーはオルガ達を回収した後、すぐに空域を離脱して行った。

 

撤退して行くサリア達をキラとアスランはその光景を見届けていた。

 

その光景をアンジュ達はやや唖然としていた。

 

「…な、何よあれ…。圧倒的じゃない…」

 

「これが…キラ達の新たな力の差」 

 

その様子をラクスは見守る様にキラとアスランを見ていたのであった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてアークエンジェルとアウローラは一度島の外にある港に置き、外に待機しているシャイニングフリーダムとエクセリオジャスティスの元にアンジュ達が行く。

キラとアスランは機体から降りて、フリーダムとジャスティスを見上げる。

 

「キラ、アスラン」

 

キラとアスランは目の前に現れるラクスの方を向き、アンジュ達もラクスの方を向く。

 

「どうかその力で、ラウ・ル・クルーゼの陰謀を…」

 

「うん、ラクス。必ず止めるよ」

 

「任せてくれラクス」

 

それにラクスは頷き、そしてラクスはサラの方を向く。

 

「サラマンディーネさん」

 

「え? あ、はい」

 

突如声を掛けられたサラは少々戸惑い、ラクスはサラの耳元で小声で話す。

 

「どうかキラの事を…よろしくお願いいたします。キラを手助けしてやってください」

 

「っ! …はい!分かりました」

 

ラクスはサラがキラに対し密かに思いを寄せている事に気付き、それに頷きながら答え。それにラクスは微笑む。

その様子にキラ達は頭を傾げるのだった。

 

そして…。

 

『姫様~!!』

 

っとサラは海の方を振り向くと、サラの世界の仲間であるナーガとカナメが操る蒼龍號と碧龍號がやって来る。

またカナメの碧龍號の上にリィザが乗っていて。サラは表情を明るくする。

 

「ナーガ!カナメ! リザーディア!貴女が連れて来てくれたのですね!」

 

サラの仲間が無事合流して、戦力が更に高まって行くキラ達。しかしこの後リィザからとんでもない話を聞くのであった。

 

 

 

そして一度戻って来たサリア達は一度クルーゼに戦闘の事を報告すると、クルーゼは目を大きく開かせて立ち上がる。

 

「なに!?」

 

クルーゼは何やら思いつめるよな感じでその場を去って行き、サリア達は見合う。

 

「クルーゼさん…どうしたのかしら?」

 

「さあ…」

 

その場を去って行ったクルーゼは拳を握りしめながら歯を食いしばんでいた。

 

「くっ…、…まさかフリーダムとジャスティスが、おのれ…ラクス・クライン!」

 

そう言ってクルーゼはある場所へ向かうのであった。

 




少しばかり戦闘が少ないと感じますが、今はこれで勘弁して下さい。

感想と誤字があればどうぞ


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第43話 崩壊へのカウントダウン

こちらの作品をちょっとばかし遅れましたが、久々に投稿します。


キラ達がオルガ達を退け、撤退下その日の翌日のミスルギ皇国、クルーゼはある部屋である事をしていた。

 

「ラグナメイルコネクターパージ」

 

そこへサリアが部屋にやって来て、入るとクルーゼが数々の端末のモニターを開いて、ある作業をやっていた。

 

「耐圧角展開、ドラグニウムリアクターエンゲージ、リーブレン共振器接続、全出力供給開始」

 

すると暁ノ御柱に保管されているラグナメイルが連動して光始め、エネルギーとして暁ノ御柱の頂上に向かいそして散布される。

その作業の様子をサリアは見て釘付けとなる。

 

その様子を映像で確認したクルーゼ。

 

「よし、準備はこれで整った。後は…」

 

クルーゼがその場を立ち去ろうとした時にサリアを見て、それにクルーゼは目を細める。

 

「どうしたかね?サリア」

 

「クルーゼ様…、一体何をするつもりなんですか?」

 

「ああ、私の計画の第二段階に行こうする為の準備だよ。そうだサリア、君たちダイヤモンドローズ騎士団に新しい『玩具』をあげよう」

 

っとクルーゼは指を鳴らすと。サリアの横にモニターが映り、そこにある機体が映し出される。

それはキラ達と同じ機体をしていて、顔の形は『ガンダムタイプ』そのものだった。

 

サリアはそれを見て思わず目を大きく開かせる。

 

「クルーゼ様…!これって!」

 

「そうだよサリア、君にはもっと頑張って貰わないとね…(さあ…もうじき別れの時はやってくるよ…キラ君)」

 

 

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 

 

そしてキラ達はシャイニングフリーダムとエクセリオジャスティスをラクスから受け継ぎ、隠れ家に保管されていた物資とMSの部品をアークエンジェルに運ばせていた。

その中でマードックが作業員達に怒鳴り散らす。

 

「ほらさっさっと積み込め!! ありったけの物資は詰めたあとはMSを積んどけー! もしもの時の為のだ!」

 

「「「「押忍!!」」」」

 

その気迫に同じように物資を積み込んでいたメイ達は唖然としていた。

 

 

その頃キラ達は医務室でなんとか回復したリィザからある情報を貰っていた。

 

「二つの地球を融合…!?」

 

キラの言った言葉にリィザはうなづく。

 

「制御装置であるラグナメイルとエネルギーであるアウラ、エンブリヲは二つの地球を時空ごと融合させ…新たな世界と破壊を行う…それがやつの狙いだ」

 

その事を聞いたキラ達は思わず言葉を無くす。

 

クルーゼがそんな事を考えてるとは思いもしなかった。

 

「おい待て、クルーゼはキラを狙っている。あいつはそんな事を望んでやるはずはない」

 

ムウが言った言葉にリィザは思わず目を向ける。

 

そんなはずはと思うばかりの顔をするリィザにサラが言う。

 

「リザーディア、彼らの言った言葉は本当です。エンブリヲは今はクルーゼと名乗り、キラ殿を狙っております」

 

「まさかそんな…!」

 

「事実です、貴女は今か身体を休めてください。良いですね?」

 

その事にリィザはただ頷き、キラ達は医務室を後にする。

 

そして別の場所でラクスが皆と話をしていた。

 

「もしクルーゼがキラと同じその様な事を目論んでいたら、この二つの世界だけじゃなく我々の世界もクルーゼに貪り尽くされてしまいます」

 

「そうなったら私がこの手でぶっ叩いてやるわ!」

 

そうアンジュが手を握り締めながら言い、それにサラもうなづく。

 

 

 

『おやおや? 随分と威勢がいいじゃないか』

 

 

 

っと別の場所から誰かの声が聞こえてきて、キラ達が振り向くと。扉の方を向くとエマ監察官がやって来た。

しかしバルカンは何故か警戒して唸りはじめ、そしてエマの様子がいつもと違う事にキラ達は警戒していた。

 

「監察官さん?」

 

ヴィヴィアンがそれに問うとサラがそれを否定する。

 

「違います、あれは…」

 

するとエマがマナの通信画面を開くと、そこにクルーゼの画面が映る。

 

「クルーゼ!」

 

「クルーゼお前!!」

 

『やあムウ、私はこの男、エンブリヲがこの世界の人間。『ホムンクルス』を使って人間を操る事が出来るんだ、最も…今回はある事を教えに来たのだがな』

 

「ある事…?」

 

キラはその事に耳を傾ける、その際にバルカンが思わず向かってしまい、それをエマが叩き落としてしまう。

 

バルカンはそれに悲鳴をあげ、ジャスミンが見る。

 

「バルカン!!」

 

「とうとう狂ったか!てめぇ!!」

 

ヒルダが銃を構えた瞬間、サラが刀を前に出してルダの銃の射線を塞ぐ。

 

「彼女は操られているだけです」

 

「はぁ?」

 

その事にヒルダは頭を傾げ、ラクスがクルーゼと向き合う。

 

「クルーゼ、貴方がこちらにこられるのは珍しいですわね」

 

『フッ、ラクス・クライン…また面倒なものを残しておいたものだな』

 

「キラ達の為に用意したまでです、あなたの野望は…必ず阻止します」

 

『出来るかな?この私を?」

 

「止めてみせる…あなたを!」

 

キラ言葉を聞いたクルーゼは思わず鼻で笑う。

 

『フッ、なら一つだけ良い事を教えてやろう。これからラグナメイルはただの飾りとなる。モビルスーツの時代だ』

 

っとその事を聞いたキラ達は思わず耳を疑い、クルーゼが微笑んだ際にサラは操られているエマに向かって叫ぶ。

 

「ラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

サラが叫んだ声によりエマのマナが不安定となって破壊され、エマは正気を取り戻して気を失う。

 

「監察官さん!?」

 

ヴィヴィアンが問いかけるも、その様子に無事である事が確認される。

 

そしてキラはラクスの方を見て問う。

 

「ラクス、クルーゼが言ったことって…?」

 

「…まさかと思われますが、クルーゼは既に別の手段も用意していると考えられます。これはアンジュさんとサラマンディーネさんに『あれ』を渡しておかねば行けません」

 

「あれって?」

 

「付いてきてください」

 

っとそう言ってラクスは歩き出していき、それにキラとアスラン、アンジュとサラ達はついて行った。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

そしてラクスに付いてきたキラ達はある扉の前に付く。

 

ラクスは扉の横の端末に手をかざすと、その扉が開き、中に入るとそこには数機の『ガンダムタイプ』が存在した。

 

その中にフリーダムとジャスティスの元をベースとした機体が二機並んでいて、胸部の中央に穴が空いておりそれを見たキラとアスランは目にする。

 

「ラクス、これは」

 

「これは万が一の時のために用意したものです。これはアンジュさんとサラマンディーネさんのものです」

 

「私たちの?」

 

アンジュとサラの事を問いかけられた事に振り向く二人、それにアンジュはうなづきながら見る。

 

「はい、これはあなた方の機体、ラグナメイルと龍神器を一つにする機能を備えているのです」

 

「私たちの機体をですか?」

 

「ええ、機体の方はそちらで調整して貰う事になりますが、それでもあなた達の助けになるはずです。そしてこの機体の名は『ヴィルスガンダム』と『コロナガンダム』と言います」

 

「ヴィルスガンダムにコロナガンダム…」

 

キラとアスランはアンジュとサラの機体を見上げながらつぶやき、アンジュとサラも同じように見上げる。

 

「ヴィルスガンダムの方がアンジュリーゼさんので、コロナガンダムの方がサラマンディーネさんの機体です」

 

「ヴィルスガンダムが…私の機体」

 

「…これでエンブリヲの…あの機体に対抗出来ると言う訳ですね?」

 

「はい、どうか…これであなた達の進む未来を守って下さい」

 

それにアンジュとサラはうなづいて、ラクスから再びアンジュとサラの新たな機体、ヴィルスガンダムとコロナガンダムを見つめるのであった。

 



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第44話 決戦の直前

ラクスから新たな機体、アンジュとサラのヴィルスガンダムとコロナガンダムを受け取ってすぐにアークエンジェルに運び、その様子をヴィヴィアン達が見ていた。

 

「すげぇええ! アンジュとサラサラさんの機体かっけぇええ!」

 

「チェ! アタシ等は無しかよ。つまんねぇな」

 

ヒルダはつまらなそうに呟き、それには近くで聞いていたルナマリアは苦笑いしていた。

そして出航準備が整ったアークエンジェルとアウローラ、ラクスがその場にやって来てキラ達と向き合う。

 

「皆さん、どうかお気をつけて、クルーゼは手強い相手です」

 

「大丈夫よ、あんな奴私がやっつけてやるわ」

 

「それが一番心配なんだがな」

 

そう意気込むアンジュにアスランが言う。

 

アンジュがその事を言われてイラっとするかの様にアスランを睨みつけ、それにアスランは軽く流している。

そんな中でキラはラクスと向かい合う。

 

「ありがとうラクス、色んなものをくれて…」

 

「いえ、これくらいした私の出来ることはもうありません。キラ…どうか無理をなさらずに」

 

「うん、分かった」

 

ラクスにそう言うキラ、ラクスは次にサラの方を見て、それに気づくサラ。

 

「(どうかキラをお願いします、サラマンディーネさん)」

 

「(はい、お任せを。ラクスさん)」

 

心の中で通じ合っているのか、目線で言いたいことが伝わったことに頷き、それを見たキラは頭を傾げる。

 

「??」

 

「どうしたキラ」

 

アスランに問いかけられたキラはアスランの方を向く。

 

「いや、別に…(ラクスとサラ、どうしたんだろう…? 何か別の物を感じるような…)」

 

っとそう心の中で感じていると、空が急激な変化を見せ始める。

それにキラ達は見て、風が吹き始め、それに海の方を見ると、海の向こうにぶ厚い暗い雲が現れる。

 

「あれは一体…?」

 

「始めましたねクルーゼ。混乱の世界の幕開けの時を…」

 

ラクスが言った言葉にキラ達は息をのむ。

 

「マリューさん!」

 

「分かったわ、総員乗艦! 本艦はこれよりミスルギ皇国へと向かいます!!」

 

それに皆はアークエンジェルへと乗り込み、アウローラにもすぐさま準備が入る。

 

ラクスがそれを見届け、アークエンジェルとアウローラはエンジンに点火が入る。

 

「アークエンジェル発進!!」

 

「アウローラ発進!」

 

二隻の艦はミスルギ皇国へと向かい、ラクスは手を合わせる。

 

「…どうか皆様に、祈りの光があらん事を…」

 

そう言い残し、ラクスの体はピンク色の粒子と共に空へと舞い上がっていった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

そしてミスルギ皇国では、クルーゼがアウラの状態を見ていて、その所にサリアが来る。

 

「クルーゼ様」

 

「どうしたかね」

 

「本当に良いんですか? あれを本当に貰って…」

 

「良いんだよ、私が直々作った物なんだから。好きに使っても構わんよ」

 

そう言ってサリアは少々思いつめた表情をするも、すぐに切り替えてその場を離れていく。

サリアが去ったのを見て、クルーゼはある物を取り出そうとした時にエルシャが子供達を連れてやって来る。

 

「クルーゼさん」

 

「おや、エルシャか。どうしたかね」

 

「あの…子供達を本当に連れてってくれるんですか? 前に言ったじゃないですか?『新しい世界の為に君達が必要だ。そして子供達の明るい未来の為にも、そして連れて行く為にも』って、本当なんですよね?」

 

その事を問いかけられたクルーゼは少し間を開けて、そして言葉をこぼす。

 

「すまないが出来なくなった」

 

「えっ…?」

 

クルーゼの言葉を聞いたエルシャは思わず言葉が止まってしまう。

 

「その子供達はこれからの新しい世界の環境に不要と判断となった。だから…」

 

パキン!

 

クルーゼは指を鳴らすと、子供達は糸が切れたかの様に倒れ込んでいき、それにエルシャ慌てて子供達を抱える。

 

「ああ!!!クルーゼさん!どうして!?」

 

「もう必要ないのだよエルシャ、どうか分かってほしい。これからの世界にはね」

 

「いや!いやああああ!!! あの子たちは!あの子たちは私の全てなんです!! 私はどうなっても構いませんから!!どうか子供達を!!!」

 

エルシャは混乱した状態でクルーゼにしがみつき、涙を流しながら必死に頼み込む。

しかしクルーゼはため息を付いた後に手を翳す。

それにエルシャは首に何かを掴まれた状態で浮かび、苦しみながらもがく。

 

そんな様子にクルーゼは細目で呟く。

 

「私はしつこい子は嫌いだ…」

 

そう言ってクルーゼはエルシャを離し、エルシャはその場で倒れ込んで咳こみ、クルーゼはそんなエルシャに冷たい言葉を放つ。

 

「これ以上手間をかけさせないでくれ。私は忙しい上に構っている余裕はない」

 

クルーゼはそう言い残してその場を去っていき。エルシャはその場で泣き崩れる。

 

その場を去っていくクルーゼはエルシャの考えに呆れる。

 

「(やれやれ、これだから子供と言うものは…、だが悲しい現実を見せるのも悪くないな)」

 

そう罪悪感は全く見せずに、自分の機体に向かうのであった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

ミスルギ皇国に向かう際にアークエンジェルのブリッジで現在各国の状態を見ていたキラ達。

 

時空融合の影響によって、人々が巻き込まれていく様子にキラ達は言葉を無くす。

 

「巻き込まれていく人たちが増えて行く…」

 

「このままマズイな」

 

「キラ、アスラン。まさか助けだすって事を言い出すんじゃないでしょうね」

 

っとアンジュがその事を言い出し、それにキラとアスランが振り向く。

 

「アンジュ」

 

「キラ達はやらなきゃ行けない事があるでしょ、それを放置してまで助けに行く余裕があると思う?」

 

「分かっているが…」

 

アンジュの言葉に考え込んでしまうアスランとその事に言葉が出ないキラ、そんな様子をサラが言う。

 

「お気持ちはわかりますが、今はクルーゼを止めなければ行けません。キラ達が助けたい気持ちは理解できますが、どうか分かってください」

 

サラの言葉に考え込むキラ達、確かに今はクルーゼを止めなくては世界の危機である。

 

「分かったよ。助けられないのは残念だけど…」

 

そう言ってキラはブリッジを出て行く。

その様子をマリューが言う。

 

「アンジュさん、少し言い過ぎじゃないかしら」

 

「そうだと言うけど、他に手はあるの?」

 

「じゃあお前はあるのかよ?」

 

ムウがその事を問うと、それにアンジュは言葉を詰まらせる。

そしてサラがその様子を見て、キラの後を追いかけるのであった。サラが探していると、キラは天窓の外を見ていた。

 

「キラ、大丈夫ですか?」

 

「うん…、僕は…やっぱり全員助けたい…。でもクルーゼを野放しには出来ない…、たまにアンジュの言っている事が正しいこともあるけど」

 

「キラ…」

 

サラはキラに歩み寄って背中からそっと抱きしめ、それにキラはサラの方を見る。

 

「サラ」

 

「キラ、私はラクスさんからあなたの事を任されました。見届けて欲しいと」

 

それにキラは驚いた表情をし、サラは言い続ける。

 

「私の代わりにキラを見守る、そう誓いました。だから私はキラを見守り、助けます…これからも」

 

「サラ…」

 

キラはサラの手を握り締め、サラはキラの暖かさを感じるのであった。

 

ビー!ビー!ビー!

 

すると警報音が鳴り響く。

 

『総員!第一戦闘配備!総員!第一戦闘配備!』

 

その放送を聞いて、キラとサラは向き合う。

 

「行こうサラ…、決着を付けに!」

 

「はい!」

 

そう言って二人は格納庫へと走り出すのだった。

 



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