ドラゴンクエストⅤ パパスと優秀な軍師 (寅好き)
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プロローグ

最初に書いたものですが、あまりに酷いものであったので手直しさせてもらいました。
二話との繋がりがへんかもしれませんが随時直していくのでご容赦ください。


まるで先ほどまで戦争でもあったかのような荒れ果てた城内、壁には人間の力では到底つけることが叶わないであろう穴があき、飛び散った血痕などもついている。元は教会であったろう場所では破壊されて砕け散っているステンドグラスの破片がそこらじゅうに散らばり、足の踏み場がないほどの凄惨な状況が広がっている。

そのような場で二人の男性が言い争っている。

一人は熟練の戦士とも言える風格を備えた男、もう一人は身なりはいいが、少し気の弱そうな男である。

「兄さん、こんな大事な時に城をほって出ていくというのですか。」

「たしかに私にとってこの生まれ育った城は何物にも代えがたいものだ。しかし比べることができないぐらいにマーサも大事な妻だ。

この城ならば、お前が治めていけば私が治めていた時と変わらずよい国であり続けられよう。

しかし、マーサはというと、私しか助けだせる者はいないのだ。分かってくれオジロン。」

気の弱そうな男、オジロンが必死の形相で男を説得しているようであるが、男は頑なに受け入れようとはしない。

いたちごっこの議論が続き、男は嫌気がさしたのか「ここまでだ。」といい城を出ようとした時であった、

「お待ちください。」

去っていこうとする男の背に待ったをかける声が広間に響き渡った。

その声は凛とし、また力が込められた声であった。

「レイシアお前も私を止めるのか。」

男は少し苛立ちを込めた声で待ったをかけた者、レイシアに尋ねる。

「はい、そうです。」

普通の者であれば、怒気のこもった男の問いにたじろいでもしょうがないほどのものであるが、レイシアは男に臆することなく淡々と答える。

「なぜ私を止める。」

「今パパス王が行かれたとしても、御本懐をお遂げになることは難しいと判断したからです。」

レイシアとパパスの口論が広間に響き渡る。

先ほどまで口論していたオジロンは入っていくことすらできずにオロオロしている。

「お前の言うことだ、理由もなしに言うとは思えん。理由を述べてみよ。」

「はい。では」

パパスは幾分冷静さを取り戻したのか、レイシアの止める理由を静かに聞き始めた。

「理由としてあげられることは主に二点あります。

一つ目は、パパス王の装備です。」

「私の装備?」

パパスは全く予期していなかった発言に戸惑いの表情を浮かべる。

さてパパスの今の装備はというと。

 

 

E パパスの剣

 

E 皮の腰巻き

 

以上である……。

レイシアでなくとも誰もが考え直してくださいと言うであろう装備である。

しかしながらとうの本人はなぜ装備が問題であるかまるで分かっていないのか困惑の表情である。

 

「はぁ、王はお分かりではないようですが、今の装備では王の技量を持ってしても、この城を襲撃した魔物には叶うことはないでしょう。

王であるからこそ、この周辺の魔物とは戦えていますが、一般的な兵士であれば、スライムナイトでも苦労するレベルの装備です。」

「そ、そうだったのか。」

パパスはたぐいまれなる力を持っていたこと、そして、王の身分で産まれたことが引き起こした悲劇であった。

パパスは信じられないといった様子でレイシアの話を聞いており、納得できないで隣を見ると、隣に来ていたオジロンがパパスの目を見て深く頷いた。

「えっと、では二点目にいかせてもらいますね。」

今にも崩れ落ちそうなパパスを気にしながらも仕切り直して、レイシアは話を進める。

「二点目は、王の強さです。」

「私の強さ。」

これには先ほど頷いていたオジロンも首を傾げる理由であった。

すでにパパスの強さは、人間の強さを遥かに越えていた、世界の中でも三本の指に入るといってもよい強さである。ならばなぜ?皆が思う疑問にレイシアは徐に口を開いた。

「王はたしかに大変なお力をお持ちになっております。

しかし、それが王の限界ではありません。

まだまだ強くなれる余地が残っています。

そして、このグランバニアの地が王をより高めるのにもうってつけの場所でもあるのです。」

パパスとオジロンはレイシアの力説をじっと聞き入っていた。

「まだ私は強くなれるのか?

強くなれればマーサを救い出すことができるのか?」

パパスは神に救いを求めているかのようにレイシアに弱々しく問いかける。

 

「勿論です。マーサ様の救出は少しあとになりますが、私の指示にしたがっていたたければ、王の御本懐は必ずお遂げになることができると断言いたします。」

レイシアの力強い宣言にパパスは希望の光が見え始めていた。

「明日から頑張りましょう。」

「ああ、頼む。」

パパスの再び力がこもった声に笑顔で返すレイシアであった。



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パパス強化計画

軍師と言ったら諸葛亮や司馬懿などのように男のイメージかあるので最初は男か老人にしようと思ったのですが、それではサンチョ、オジロン、パピンなどおっさんばかりの話になってしまうので女性にさせてもらいました。イメージとしたらⅢの女賢者でお願いします。


パパス強化計画

場所は二階の会議室に移っていた。

会議室にはパパス王、レイシア、小太りの男サンチョ、小柄の男であるパパス王の弟であるオジロン、そして兵士長のパピンが集まっていた。

まずはレイシアが話始める

「まずは、パパス王の強化を考えたいと思います。」

とただしそれに対して兵士長のパピンが疑問を投げ掛けた

「パパス王の強化は分かりますが、このグランバニアには王の練習相手になるような者は存在いたしません。

また兵士が何人束になっても王にとってはお遊びにしかなりません。

軍師殿はどのようにしてその王を強化しようというのですか?」

サンチョ、オジロンもパピンの疑問について頷いた。

その疑問に対してもレイシアは微笑みを崩さずに言った

「まず王の修行(レベル上げ)の場所ですが、このグランバニアの南にある洞窟で行うことになります。

そこでの修行により王のレベルを最低でも50ほどにまで底上げしたいと思います。もちろん、私たち、サンチョさん、パピン兵も共に修行をすることになります。」

その発言にまたしてもパピン兵士長が尋ねる

「我々はその洞窟で修行すれば少しは強くなると思いますが、パパス王にとっては弱い敵ばかりで修行にならないと思うのですが。」

パピンがこのように言った後にサンチョがハッとして何かに気づき

「はぐれメタルか」

と呟いた。その発言を聞いたレイシアはその通りといった顔をし、パパス王は

「そうか」

と呟き、パピンも

「そういうことかと」

合点がいったという感じであった。

しかしパピンとサンチョには新たな疑問が生じパピンが代表して口を開いた

「はぐれメタルを倒した後に強くなる感じは経験したことがあるので分かりますが、あのはぐれメタルは固い上に素早さが異常に早い。果たして効率よく修行ができるでしょうか?」

とサンチョもそうですと頷いている。

確かにこの世界では魔物は倒して初めて経験になる、過程などどうでもいい世界なのである。

レイシアはまたその疑問に対しても想定内といった感じで口を開く

「はぐれメタルは確かに固く、早いのですが、あまり打たれ強くないことと、パパス王の特殊能力を使います。」

そのようにレイシアが言ったのち皆の視線が一斉にパパス王にむかうが、パパス王自身にもわかっていないようである。

そこでそれまで沈黙状態で聞き入っていたパパス王が尋ねる

「私の特殊能力とはどのようなものなのだ。私自身には自覚がないんだが。」

とまあ見るものが見ればパパスの全てが特殊能力とも見えるのだかそれはいいとして、レイシアは答える

「王の特殊能力とは、人間キャラではまずできないキラーマシンのような二回攻撃と、アリーナ王女や高レベルの武道家なみの異常な会心率です。」

レイシアは当然桁が違うと述べているのだが、パパスと共に何度も戦ってきたサンチョとパピンは

「そういえばそうだった」

ともうそれが当然のように感じていた最近の自分たちの認識、対応力に驚き、パパスはパパスで言われても

「そうなのか、皆と同じだと思うのだが」

と納得していない感じである。

そんな空気を仕切り直すようにレイシアが続ける

「その特殊能力ではぐれメタルを集中的に狙います。

会心の一撃が出れば一撃で倒せますし、会心の一撃が出なくても王が二回叩き、私たちも上手くいけば三回叩けます。

はぐれメタルはだいたい7発当てればたおせるので1ターンで逃げなければ倒せます」

自信ありげに話すレイシアではあるが、聞いているパパスたちにとっては意味が分からないキラーマシンやアリーナ王女、1ターンといったことを言っているが、聞いてはいけないことなんだろうこの世界的にはと思い、あえて聞かないことにした。そのことについてはレイシアの過去に所以があるのだが…

まあそんなこんなでパパス、レイシア、サンチョ、パピンの強化計画の指針は定まった。

しかしここで今までいたのかどうかも分からないぐらいに空気と化していたオジロンが少し言いにくそうに切り出す、

「レイシア殿はメンバーのなかで唯一の女性なのですが、男ばかりのメンバーに不満や不安はないのですか。」

確かにレイシアは女性であり年の頃でいえば10代の後半からいっていても20代前半、また女性のなかでもかなり美しい部類にはいる。自分以外全て男性では不安ではないのかというオジロンの疑問も当然である。しかしレイシアは動じることなく言った

「大丈夫です。王はマーサさんを、パピン兵士長も奥さんを裏切ることはないでしょうし。サンチョさんも紳士ですから私は信じています。

それに私には少々殿方にも効果がある『ジゴスパーク』や『れんごく火炎』といったちょっとした護身用の魔法もありますから。」

と、そのときのレイシアの爽やかな笑顔はパパス、サンチョ、パピンには大層恐ろしかったらしい。

まあいいことではあるのだが、レイシアは賢者ではなく、賢者の上位職の天地雷鳴師だったようだ。



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パパス、レイシアの最強の武器を求めて

今回はパパスとレイシアの最強の武器を手に入れる話になります。まあドラゴンクエストⅤをプレイしたことある人なら容易に想像つくとは思いますが。まあ大いにバランスを破壊するあの剣です。


とある夜に真の姿を見せる街、その街に輝くばかりの光を放つ城と見紛うばかりの建物に入っていく男と女の二人組、男は何かマスクのような物をかぶり筋肉質な男。

女性の方はすれ違うとほとんどの男が振り向くであろう美貌を持つレイシアである。

この二人がこの建物のなかで狂乱の宴を行うことになる。

………

「ああ、凄いわ。

まさかここまで凄いとは想像していなかったわ。

でもまだよ。

まだ空になるまでどんどんいくのよ。」

レイシアが熱のこもった口調でいうと男も

「まだまだいけまさあ。

体力の続く限りなんラウンドでもいかせて見せまさあ。」

意気揚々にレイシアに語りかけた。

「ああ…。また、いけそうだわ…」

「いっちまえ、いっちまえ」

「ああ、きたわ、最高よあなた」

いつも冷静なレイシアも燃え上がる夜であった。

こうなることになる継起について見てみたい。

遡ること10時間前………

グランバニア二階会議室

集まるのはいつものとおりのパパス、オジロン、サンチョ、パピン、そしてレイシアである。

前日パパス一向のレベル上げについて指針がきまり、今回は装備についての話である。

現在のパパスの装備はパパスの剣と王者のマントに似たものであるが、パパスが旅立とうとした時はみるも無惨な姿だった。

王が皮の腰巻きとは…従者サンチョはステテコパンツとは…現代の町をその姿で歩いたら通報→逮捕→最後の鍵が必要な牢屋行きになりそうな姿である。

まあ戦いに赴く姿でもないが、それをただそうというのである。

レイシアが会議を始めるために話だす。

「まずは、王の剣の話からです。」

というと、オジロンが反論するように発言する

「兄上の剣は名高い刀匠に鍛えられた剣であり、兄上が生まれたときに与えられた守り刀だと言われています。

それを変えるというのには賛成致しかねます。」

確かにとサンチョ、パピンも思うがレイシアはそれについてもたんたんと発言する

「確かに王の剣は守り刀です。

しかしそれが問題なのです。

守り刀は主を魔や魔物から守るためのものであり、実用性の高いものではなく飾っておくなどの用途の高いものです。

そのため攻撃力は鋼の剣を少し強くしたぐらいです。

これではいかんせん心許ないのです。

王がふりっているのを見ると、王者の剣とも見紛うこともありますが、実際はそれほど強くないのです。」

レイシアにそう言われたことによりパパスは剣を抜いてみると確かに装飾は素晴らしく一流のものであるが、攻撃力に関してはグランバニアの一階にある武器屋にあるものより低い実用性には欠けるものであった。

そこでパパスはレイシアに尋ねた

「ではとうすればよいのだ?

グランバニアの御用達の武器屋で購入するのか?」

レイシアは待ってましたとばかりに答える

「いえ。王はこの世で最強の剣を手にしてもらいます。」

その言葉を聞いてオジロンは驚いたように

「まさか伝説に詠われる天空の剣でしょうか?」

と声をあげる。

そのオジロンの発言にパパス、サンチョ、パピンは驚かされる。

伝説の勇者しか装備できないという伝説の剣の名がでたので当然であるが。

しかしそれにたいしてもレイシアは微笑みながら

「違いますよ。

天空の剣よりも強く、しかも装備するものが限られるものではありませんよ。」

と答える。

その場のレイシア以外の者は

「そのようなものがこの世に存在するのだろうか?」

と思い考えこんでいる。

そこでまたレイシアは話だす

「その剣は私がなんとか入手します。

他の装備に関してはパピン兵士長に旅人に姿を変えてエルヘブンに買いにいってもらいます。

サンチョさん、パピン兵士長、そして私の装備もあわせてです。

この世で一番の鎧、楯、兜はあの町にありますから。

ただパパス王のあの時の一件からグランバニアの者には売ってくれないでしょうから変装していってもらいます。」

パパス王はすこし顔をしかめたていた。

パピンは

「分かりました。早速行って参ります。」

といってでようとしたところでレイシアが

「待ってください。私も行きます。」

とすこし焦りながら待ったをかけた。

レイシアは続ける

「今からエルヘブンに向かうには1ヶ月いや急いでも2、3ヶ月かかります。

それではこれからの予定が延びてしまうので私が一瞬でつれていきます。」

みなレイシアを信用しているが今の発言は全くもって何をいっているんだと思っていた。

そこで疑問に思いレイシアにパパスは尋ねた

「レイシアよ何を言っているのだ。

お前のことだからなにか方法があるのだろうとは思うのだがあの遠く離れたエルヘブンまでどのようにしていくのだ?」

レイシアは爽やかに笑い

「ルーラという魔法で行きます。」

小さな胸を張りイタズラな笑みを浮かべて答える。

「ル、ルーラ?」

やはりといった感じで、みな聞いたことがない魔法名を聞き疑問符を浮かべる。

レイシアは

「ルーラという魔法は失われた空間移動魔法で、行ったことがあるところであれば思い浮かべて唱えるだけで一瞬で行けるとても便利な魔法なんですよ。

ルラフェンという町におられる魔法研究家のおじいさんに教えていただきました。」

と嬉しそうに話した。

パパス、オジロン、サンチョ、パピンはもう呆然して聞いていたが、まあレイシアならあるかもなと自分に言い聞かせ納得した。

そこで話し合いは終わりおのおの行動に移すことになった。

レイシアはパピンをつれルーラでエルヘブンへパピンはエルヘブンについたときに呆然としていたがまあすこしたてば頭のなかで整理して気を取り戻すだろうと思い「いついつまた来ます。」という書き付けをおいてそっとそのままにしてきた。

レイシアにとってはこれからが本番である。

レイシアはグランバニアの一階の居住区にやって来た。そこで

「運のよさ、運のよさ」

と呟きながら住民を見ていた。いつもであれば、人気があるレイシアは皆に話しかけられるのだが今回はは普通の雰囲気ではなかったので話しかけられることはなかった。

そうして一時間ほど眺めているとレイシアの目に一人の男が映った。

「なんという運のよさ!私が探していたのはあの男性だったのね!」

嬉しそうに口許を緩め、レイシアは呟き男に駆け寄った。

レイシアに駆け寄ってこられたことにより驚いている男にたいしてレイシアは顔を赤らめて

 

「私と付き合ってください。」

と唐突に言い寄った。

美しいレイシアが声をかけてくれただけでも嬉しいことなのに、まさかそのようなことを言われるとは、男はニフラムいやザキでもかけられたように昇天しそうになっている男を見て、レイシアは言葉が足りなかったと男が正気に戻ってから説明を試みる

「突然ごめんなさい。

実はパパス王の剣を得るために、運の良い人を探していたの。

あなたは別格に運の良さが高かったので思わず舞い上がってしまい…言葉足らずでごめんなさい。

時間がありましたら私と一緒にオラクルベリーのカジノに行ってほしいのですが。

時間はかかりません、アルバイト代も奮発しますからお願いします。」

レイシアに美しい顔で頼まれその上尊敬するパパス王のためならと男は二つ返事で協力することになった。

そして10時間後の現在に戻る………

 

「やったまた当たったわ。」

日頃のクールな表情からは想像できないような満面の笑みを浮かべ喜ぶレイシアの隣で「ラックの種」でドーピングされた男が100枚コイン台をからにする勢いで当て続けていた。

 



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主要メンバーの装備がそろった!いざレベル上げへ(予定)

できれば今回からレベル上げという名の修行へ入りたいと思います。予定なのでいけない可能性もありますが入らなくてもご容赦ください。


レイシアと運の良い男Aがオラクルベリーのカジノの景品交換所にきてからというもの、景品交換所の中はバニーガールまでが動員されるほどのてんやわんやになっていた。

「え~と、エルフの飲み薬が……せかいじゅの葉が……メタルキングの剣が……グリンガムの鞭が……。」

遠く離れたところにいる男Aにも商品を読み上げる声がポツリポツリと聞こえる。

その声が聞こえたのだろうか周りにも人が集まり出した。

男Aは少し恥ずかしそうにしているが、レイシアは動じていなかった。

「合計で363000枚になります。」

バニーガールはたんたんと答えたが、周りの観衆はどよめいた。

周りに人が集まり沸いたのは先程男Aが100枚スロットで荒稼ぎしたとき以来である。

男Aはスロットの時は集中していたので気にならなかったが、今は恥ずかしさで早く帰りたいと思い始めていた。

レイシアは交換されたアイテムを見て少し黙って考えていた

「結構荷物が多いな。

店内でルーラを使う訳にもいかないし。

男Aさんにこれ以上お願いするのも悪いし…。」

そうしてしばらくたった後に

「そうだ」

と呟き呪文を詠唱し始めた。

「召還」

レイシアがそう唱えるといつの間にか神々しい神官のような男が立っていた。

「それではタッツウさんこの荷物を外までお願いしますね。」

レイシアがそう言うと

「なぜ戦闘ではなくこのような雑用を…」

とブツブツ文句をいいながら運び始めた。

この世界では身分が高い神官(しかも神々しい)が荷物を運ぶ姿はいままで以上に多くの人に注目されるようになった。

無事レイシアと男Aと荷物係のタッツウがグランバニアに帰還し、男Aに感謝の意と断られるがそうはいかないとアルバイト代を払い男Aと別れた後、そのまま休むことをせず再びルーラでエルヘブンに向かっていった。

パピンは次々と置かれる購入した防具を前にして呆然としていた。

それは先程あったレイシアと同じ問題であった。

魔法の鎧2、知力の兜4、ドラゴンシールド3、+サンチョの武器のウォーハンマー、数てきにはさほどではないが全てそれなりの大きさ、重さがあるため屈強な男であるパピンであってもどうすることもできなかったのだ。

幸い防具屋の外まではだしてもらったがそこから一歩も動けない状態であった。

まあもう少し少なくてもエルヘブンという町は岩山の上に作られた町になっているので持つことができる量であってもはかり知れない労力になるのだが。

そうして夕日が沈み周りが暗くなる時にレイシアがやって来た。

パピンにはレイシアが天使に見えたそうだがまあそれはどうでもいい話である。

「パピンさん申し訳ありません。

この量ではどうしようもないですね。

ただ防具屋の外までだしてあるのは幸運でした。

では帰りましょうか。

なにかしたいことはありませんか?」

→はい

いいえ

パピンはこれぞドラクエという対応を返したのちレイシアのルーラによって帰っていった。

 

翌日

全日集まっていたメンバー(オジロンは公務のため除く)と一階の防具屋の主人が会議室に集まっていた。

「では昨日購入してきた装備を振り分けます。

また知力の兜とグランバニア内の防具屋さんで購入したサンチョさん用の銀の胸当てはサイズを合わせるために防具屋さんのご主人さまにご足労をしていただきました。

サイズが合わないようでしたら仰ってください。」

レイシアがそのように言うと昨日購入した装備品が振り分けられた。

パパス

メタルキングの剣

ドラゴンシールド

魔法の鎧

知力の兜

 

サンチョ

ウォーハンマードラゴンシールド

銀の胸当て

知力の兜

 

パピン

メタルキングの剣

ドラゴンシールド

魔法の鎧

知力の兜

 

レイシア

グリンガムの鞭

賢者のローブ

知力の兜

 

以上のようになった。

パパスとパピンは愕然としていた。

『なんと素晴らしい武器だ。

今までここまで凄い武器は見たことがない。

さぞかしなのある刀匠が作ったのであろう。』

と二人は声を合わせて驚愕に満ちた表情で話している。

レイシアは

「カジノでてにいれました」

とはとても言えずに苦笑いをしながらお茶を濁すしかなかった。

しばらくたったのち

「では新しい武器に体をならすためにも3日後から修行に入りたいと思います。」

とレイシアがいうと、

「何故明日からではないのだ?」

パパス不思議そうな顔をして尋ねる。

妻が拐われたパパスからすると1日でも早くというのは当然である。

「王にはオジロン様に引き継ぎをしてもらわないといけないですし、パピン兵士長も同様に引き継ぎをしてもらわないといけません。

そのための3日後ということです。」

パパスとパピンは確かにと頷き納得して去っていった。

「さて私も仕事をできるだけ終わらせ、引き継ぎをしなくては。」

「わたくしめもリュカ様のお世話をしなくては。」

おのおの修行に向けてやるべきことを果たしにいった。




エルヘブンはルーラ使えたかどうかが忘れてしまったので使えると仮定して進めさせてもらいました。また修行にはいれなくて申し訳ないです。


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レイシアの力とはぐれ初戦

家庭学習日が続くのでできるだけ毎日更新できたらなと思います。他の作者さまと違い文字数が少ないのはご容赦ください。携帯で行っているので(汗)


朝の6時グランバニアの城門が開門される。

そしてまもなく、重武装した屈強な男三人と紅一点の華奢な女性が出てきた。

「さあ、皆さん行きましょう。

明日からはルーラで行きたいと思いますが、今日は新しい武器に慣れるためにも戦闘をこなしながら南の洞窟を目指しましょう。

目的地の洞窟までは約2時間ほどの道程です。」

レイシアがそのように言った。

そしてパパス王が

「行くぞ!」

と号令を飛ばし一行もそれに続いた。

この世界は町以外に安全な場所はないそのため一行は周りに気を配りながら歩く。

普段であれば死角が多い森を歩くことをパパスは嫌いきちんと避けて歩くのだが今日は信頼できる仲間もいる上なるべく早く目的地に着きたいために森を突っ切っている。

黙々とあるいていると一番先頭を歩いているパパスが急に足を止め、

「来るぞ」

と皆に呼び掛ける。

皆が戦闘体制に入ると同時に目前の木々が吹き飛んでいった。

舞い上がる埃がおさまると皆の前には見上げるほどの全長4、5メートルもあるだろう巨大な石像、ストーンマンが立っていた。

それを見たパピンは

「ストーンマンはもう少し北の地方にいるはずなのだが。

まあいい。

パパス王、私一人でやらせてください。

王の手を煩わせるまでもありません。」

と言うと、パパスは

「任せた。」

にやりと笑みを浮かべ一言だけ呟くように言った。

パピンはグランバニア1の戦士であり、パパスもその実力をかっているのでその一言だけであった。

パピンはパパスの許しを得て喜び勇んでストーンマンに突っ込んでいく。

ストーンマンは大きく振りかぶり右腕を降り下ろした。

降り下ろされたストーンマンの右拳は深々と地面に突き刺さっている。

しかしそこにパピンはいない。

ストーンマンが見失ったパピンを見つけた時にはストーンマンは真上から幹竹割りになっていた。

「見事。」

「やりますな。」

「凄いです。」

パパス、サンチョ、レイシアはそれぞれ感想を述べた。

ただパピンはメタルキングの剣をみて呆然としていた。

「まさか、これほどとは」

パピンは呟く。

パピンはメタルキングの剣が名剣であるのはわかっていた。

しかしあの石でできたストーンマンを豆腐を切るかのように両断できるとまでは全く思っていなかったためにその感触に驚き呆然としていたのだ。

ふと我に返りパパスに礼をいい、レイシアに

「凄まじい剣をありがとうございます。」

というとレイシアはフフと笑って頷いた。その後何度が魔物に遭遇したがサンチョがウォーハンマーで倒したり、前衛ではないが少し試すためにとレイシアもグリンガムの鞭を振るい魔物を討伐した。

そして予想通り2時間ほどで目的地にたどり着いた。

「さあここが目的地の修行場になります。

まずはぐれメタルを探すことになるのですが、はぐれメタルは隠れるのが上手く、速さが早いのでなかなか見つかりません。

そのためにサンチョさんに洞窟内でおもいっきり口笛を吹いてもらいます。

そこで驚いて出てきたところを皆さんに討伐していただきます。

パーティーを組んだメンバーの誰かがはぐれメタルを仕留めれば皆さん平等にレベルをあげることができます。」

レイシアがそのように言うと少し戸惑いながらサンチョが

「わたくしめの口笛は他の魔物も呼び寄せてしまうのですがそれでも宜しいでしょうか?」

と発言する。

レイシアは笑いながら

「集まってしまった魔物は私が全て引き受けますので、おもいっきりお願いします。」

とサンチョにいった。

ただパパスとパピンはレイシア一人に任せていいのだろうか?

確かにこの洞窟の魔物はさほど強くないといえ大挙して押し寄せたらパパスやパピンでも少し手間取るであろうからだ。

そのことを言おうとしたときに、空気を読まずサンチョはおもいっきり口笛を吹いた。

ピー、ピー、ピー、ピー、サンチョの吹いた口笛が洞窟内に反響する。

驚き飛び出たはぐれメタルと洞窟内から凄まじい数の魔物が飛び出してきた。

レイシアが

「今から私が魔物をいっそうしますので皆さんは一掃された後にはぐれメタルを倒してください。

というと呪文を詠唱し始め

「煉獄火炎」

と唱えた。

その瞬間レイシアの手からこの世のものではないのであろうと思われる荘厳で、神々しくもあるがどこか恐ろしげな蒼白い炎がとてつもない勢いで魔物を全て飲み込んでゆく、パパス、サンチョ、パピンはそのすさまじさに棒立ちになっていた。

炎がやんだ時にははぐれメタル以外の魔物は灰も残すこともなく消しとんでいた。

「今です。皆さん!」

レイシアの一声に茫然自失となっていたパパスたちは我に返りはぐれメタルに突っ込んでいく。

パピンがはぐれメタルに剣を降り下ろすと金属と金属がぶつかりあう音がして剣が弾かれる。

あの凄まじいまでの切れ味を誇るメタルキングの剣でも少しの傷をつけるまでしかできない。

続けてサンチョがウォーハンマーを降り下ろすがかすることもしない。

最後にパパスが袈裟懸けに剣を振るうが避けられる、そのままの流れではぐれメタルがパパスに覆い被さろうとする。

確かにどんな屈強な戦士であってもはぐれメタルに覆い被さられれば危機的状況に陥ってしまうがパパスは違った。

キラーマシンばりの二回攻撃、降り下ろしたままの状態である剣から逆袈裟切りを渾身の力を込めて行うとザシュッと凄まじい音がする。

見ると覆い被さろうと広がったはぐれメタルが真っ二つになっていた。

戦闘終了後、パパス、サンチョ、パピン、レイシアはみな体のそこから力沸き上がってくる感じに酔いしれた。

その余韻を十分に味わったあとパパス、パピン、サンチョはレイシアに視線を移しパパスが代表して

「あの煉獄火炎とはどのようなものなのだ?

今まで聞いたこともない魔法であるだけでなく、威力事態も従来のものとは桁違いであったのだが。」

と皆が思っているであろうことを聞いた。

レイシアは苦笑いしながら

「あれはこの世の炎ではありません。

この世のものがあの世に渡るときに穢れを帯びているとあの炎によって浄化されるという浄化の炎です。

あの炎によって倒された魔物は天に召されますが、殺生には代わりがないので少し気が引ける技ではあります。

ただメリットもありまして、一回あの魔法を使用するとそれ以降魔物が襲ってくることがめっきり減るということがあります。

あと魔法が効かない魔物には効果がないのですが、稀に炎を受けても残っている魔物がいます。

その魔物は邪気が全く感じられず仲間になりたそうに見上げてくることがあります。」

パパスは後半の話を聞いている時に頭の中ではマーサの姿が写し出されていた。

サンチョ、パピンはこのメンバーのなかではレイシアが一番強いのではと思い、レイシアだけは怒らせてはならないと心に誓っていた。

 




かなりオリジナルであり、ご都合的な解釈を織り混ぜてしまいすいません。Ⅴは魔物が仲間になるのが売りですが主人公が大人になってからということで、この話ではそこまでいくだろうか(パパスが主人公なのでリュカが大人になる前に終わる可能性もある)、それまで待つのは嫌だということでこのようにさせてもらいました。



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謎の老人とオジロンの嘆き

本日二回目の更新です。行けるとこまでいきます。


「当たれ―!これで七発目だ!」パピンの攻撃がはぐれメタルをとらえる。メタルキングの剣がはぐれメタルに当たるとはぐれメタルは溶けて霧散した。「やっと二匹目か。」はぐれメタル一匹目をパパスが会心の一撃で倒してからかれこれ7時間。はぐれ狩りは困難を極めていた。はぐれ以外の敵はレイシアが煉獄火炎を放った後にその威力に怖れたのか、炎により浄化された空気の中に入るのを嫌ったためか出てこなかったのだが、はぐれメタルもなかなか現れず、現れたと思ったらいきなり逃げ出したり、追い詰めたあと一、二発で倒せるというところで逃げられたりしていた。パパスの会心の一撃もまだ慣れきっていないメタルキングの剣では簡単にでるものではなかった。

 

「今日はまだ初日で疲れがたまるのも早いでしょうから、そろそろ帰りますか。」

とレイシアは皆に話し掛けるが、パパスもサンチョもパピンも

「まだいけます。

もう少し頑張ろう(頑張りましょう)」

ということでもう少し粘ることになった。

まあここでもう少しとなったのはレイシアにリレミトの魔法があることがわかったからであるが。

そうこうして周りではぐれメタルを探していると

「あそこにご老人がおりますよ。」

とサンチョが皆に話しかけた。

サンチョが指差すほうを見てみると、なにか不思議な感じがする老人がいた。

パパスはなぜこのような場所にいるのか?

という思いとこんなところにいると危ないなという思いで老人に

「この様なところで何をしているのですか?」

と問いかけた。

するとそのパパスの問いかけを無視するように

「このすごろく券はあなたたちが落としたのか?」

と逆に問いかけられた。

パパス達は疑問に思いながらも はい いいえ という選択肢が出ているような気がしたのでしぶしぶ正直に

「いいえ」

と答えた。

すると老人は続けて

「ではこの小さなメダルはあなたたちが落としたのか?」

と問いかけてくる。これにも

「いいえ」

と答える。

そしてまたもや

「ではこの水の羽衣はあなたたちが落としたのか?」

と問いかけてくる。

「そんなの落とすやついないだろ。

盗品じゃないだろうな。」

と思いながらも

「いいえ」

と答える。

するとにこりと笑った老人は

「あなた方は正直者だ。

これらすべてを授けよう。」

と言いパパスに渡すとそのまま姿がなくなっていた。

しばらく呆然としていたが、

「この頃呆然とすることが多いな」

と思いつつ気を落ち着けると、老人にもらったものを見てみる。

1 すごろく券

 

なにに使うのか分かったのはレイシアだけだった。

レイシアがいうにはこの後に旅に出た先で使うかもしれないのでとっておきましょうということになった。

2 小さなメダル

観光地によくあるメダルのようだが少し違う。

これについてはレイシアも知らず、その他の誰も分からなかったので保留ということになった。

3 水の羽衣

誰もが高価なものと分かるものであったが、装備できそうなのはレイシアぐらいなので

「レイシアよ。

これを装備してみたらどうだ。」

とパパスが提案する。

このなかで一番の常識人(初期装備の考慮はしないで)のサンチョは

「中古っぽいけどいいのかな?」

と思ったがこの世界では普通に使い降るされた鎧等も普通に売られている世の中なのでサンチョ以外は誰もそのようなことは思わなかった。

レイシアはパパスから水の羽衣を受け取り少し見てみる。

するとみるみるうちに顔を真っ赤にしてパパスに突き返した。

普段の落ち着いた感じと全く違うのでそのレイシアの行動にパパス達が驚いていると

「こんなの王の仰せ付けでも着ることはできません。

よく見てください。

この羽衣透明ですよ。

丸見えになっちゃうじゃないですか///。」

と真っ赤になりながら訴える。

パパス達が見てみると確かにシースルー(透明)だった。

その時3人はこれをレイシアが装備したらと想像し顔を赤くしたことで、想像したことがバレたことと誰か(名誉のために)が

「是非とも戦力強化のため装備を」

といったこともあり

「バカー」

とレイシアにグリンガムの鞭でしばかれたのはどうでもいい話であった。

使い道に困ったものであったが、羽衣はパピンがもらうことになった。

使い道は……まあいいだろう。

ピピンが生まれた要因か?

その後腹をたてたレイシアは一言も発することはなかった。

まあルーラで置いてかれることはなくみんなで共に帰ることはできたのでよかったが。

 

グランバニアに帰るてオジロンが走ってきた。

オジロンが言うには「城の猛者である、パパス、パピン、サンチョがいなくなると城の守りが薄くなり昨今魔物が強くなっているのでどうにかしてほしい」というのだ。

確かにと思うがこのメンバーの誰かを抜くことはマーサ救出を困難にすると悩んでいると、

「私にいい考えがあります。」

とレイシアがオジロンに対してだけ言い、呪文を唱える

「幻魔召喚」

というと羽をはやした綺麗な女性がたっていた。

「カカロンお姉さまお久しぶりです。

お願いを聞いてほしいのですが。」

とレイシアがカカロンと呼ばれた女性に話しかけると

「何でもいいわよ。私とあなたのなかじゃない。」

ということでトントン拍子に話が進み、カカロンが城の守りにつくことになった。

ただし幻魔とはいえ女性であることを疑念に思う者もいたために、その力を見せて欲しいということになり後日カカロンの力を見ることなった。

 




なんでここまで話がずれたのか。次回は幻魔カカロンの力試しということになります。修行も重要ですが国民のほうがより重要ということでご容赦いただきたい。


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カカロンとオジロン

ああ、原作がどんどん崩壊していきそう。まあパパスを存命させるだけでもうぶっ壊しちゃっているのだが。まあ今回はパパスの活躍の場はありませんので、悪しからず。


グランバニア二階の会議室。

なんどもこれからのことを協議した場所で今回はカカロンの力を試す方法を考えている。

「試練の洞窟とかが丁度いいと思うのだが、あの洞窟は王家の者しか入ることは許されない。

どのように試すのがいいのか。」

とパパスが呟きフッとため息をついた。

カカロンの力をみるにもよい策が浮かばない。

グランバニアの兵士と模擬戦をしたらどうかという提案もあったが女性とはいえ幻魔であることから誰もがしり込みをしその案は立ち消えになった。

裏ではパピンが戦ったらどうかという意見もあったが、パピンが女性には手を出せない(チェスなら誰とでも本気で戦いますとも言っていたが普通にスルーされた)。

というフェミニストぶりを見せたことと、パピン兵士長が見た目女性に負ける姿を国民に見せるわけにはいかないという理由があった。

(レイシアがいうにはパピンよりカカロンは圧倒的に強いというのでパパスも配慮した。)

会議室がため息に包まれている中、当の女性幻魔はグランバニアの食堂で舌鼓を打っていた。

「この料理を作ったのはあなたかしら。

私を満足させるとはやるじゃない。

人間にしておくにはもったいないわ。

ああそうだ、あなた私の専属のコックになりなさい。」

「いえ、あっしはグランバニアの料理人であり。

パパス王に惚れてここで働いているんで。

料理を誉めてもらったのは光栄だが。

それはお断りしますわ。」

「そう残念ね。」

と会議室の雰囲気とはかけ離れた穏やかな話が交わされていた。

もとに戻って会議室。

「「「「う~ん」」」」

と声が聞こえてくるなか、兵士が息をからしながら会議室に入ってきた。

会議中だぞとパピンはしかろうと思ったが、兵士の慌てぶりに報告を聞くことにした。

兵士が話すにはグランバニアの北西にある禍々しいデモンズタワーという建物に魔王の配下の魔物が派遣されたという。

今はまだ魔物の数は多くないが時間がたつほどに増えてくるのではないかという報告であった。

オジロン、パピン、サンチョはその報告を聞いてまずいなと顔をしかめたが、パパスはにやりと笑った。

「皆のもの決まったぞ。

カカロンにはデモンズタワーの魔物を討伐してもらう。

またその見届け人としてオジロンお前がついていけ。」

パパスが裁断を果たすとみるみるうちにオジロンの顔が青くなっていく。

「あ、兄上。

ぼ、僕では無理です。

力もないし。

行ったら簡単に殺されてしまいます。」

オジロンはそう反論するがパパスは

「お前はこれから私が旅立ったあとこの国をまとめなくてはならない。

そんな弱気でどうする。

これを契機に強い男になるんだ!」

と強い口調でオジロンを諭しもう決まったことだと会議室を出ていってしまった。

サンチョ、パピンは気の毒そうにオジロンを見、とても声を掛けられる雰囲気ではなかった。

レイシアもサンチョ達と同様に不憫に感じたので

「オジロン様お気をたしかに。

私がカカロン姉さんにしっかり守るように頼んでおきますので安心してください。

お姉さまは本当に強いですから。」

と声をかけるがオジロンの耳には全く届いていない。

レイシアはもう一声掛けようとしたが、パピンに

「そっとしといてあげよう。」

と制された。

サンチョ、パピン、レイシアはそっと会議室を出ていった。

ただ一人のこされたオジロンはメダパニをくらったかのように混乱していた。

まあしょうがないことである。

小さい頃から偉大な兄パパスと比べられできる兄、できない弟と周りも陰口を叩くような状態であった。

そのためオジロンは自分でも自分はだめだと思っていた。

それをパパスもしっていた。

それにパパスはオジロンはやればできると思っていたのでここで壁を乗り越えるようにオジロンを突き放したのだが、オジロンは全くといっていいほど気づいていなかった。

デモンズタワーの一件は猶予がないということで翌日攻め込むことになった。

パパス王の部屋パパスはオジロンをあのように突き放したのだがあれでよかったのかと悩んでいた。

オジロンは自分にとってたった一人の可愛い弟であった。

だからこそ周りを見返しと自信をもってもらいたいと思っての処置だった。しかし冷静に考えてみると全く剣術ができないオジロンがカカロンに守ってもらえれといっても大丈夫であろうかと今になって悩んでいた。

コンコンとドアがノックされレイシアが入ってきた。

「王がいまになって悩んでいると思い参りましたが、やはり悩んでおいでになりましたね。」

レイシアはオジロンが悩んでいるのは当然としてパパスも同様に悩んでいるのではとやってきたのである。

「今になって冷静に考えるとオジロンには過酷過ぎるのではと思ってな。」

パパスは心境を吐露する。

「オジロン様はああ見えてもやるときはやると思ます。

なんといってもパパス王の弟さんなんですから。

それにカカロン姉さんがついていますから大丈夫ですよ。

心配でしたらパパス王もそっとついていかれたらどうですか?」

レイシアの提案にパパスは少し思案したがオジロンのことが心配だったのでその提案にのることにした。

 

やっと正気に戻ったオジロンはいつまでも悩んでいても仕方がないと、見届ける相手であるカカロンに挨拶しに行くことにした。

オジロンがカカロンを探しているとすぐに見つけることができた。

オジロンのカカロンへの最初の印象はやはり人間とは違うなというものであった。

青い髪と肌、背中には羽がはえている。

ただ顔や体はほとんど人間とは変わらなかった(かなりの巨乳であることは別件である)

いや顔はかなり美人というか可愛らしいものであった。

少し見とれているとカカロンもオジロンに気付き声を掛けてきた。

「貴方が私の見届け人なのね。

明日は宜しくね。」

かなり打ち解けた感じなのでオジロンは安心して

「こちらこそ、よりょしくお願いします。」

緊張して噛んでしまい赤くなっていた。

カカロンのオジロンへの印象はただの気が弱い人間であった。

この出会いがこの後のグランバニア王家に大きな影響を与えるなどとは誰もが想像できるもではなかった。




次回カカロンとオジロンがデモンズタワーに突っ込みます。またもやパパス、レイシアの活躍出番はないと思います。


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いざ、デモンズタワー!

果たしてデモンズタワー攻略に入ることができるのか。無理っぽいです。事前に謝っておきます、すいません。


デモンズタワーまで歩いて3時間ほどの教会にレイシア、カカロン、シールドピッポいやシールドピッポのように重武装したオジロンがいた。

オジロン

ドラゴンシールド

ドラゴンシールド

魔法の鎧

知力の兜

 

これ以上ないというほどの重武装である。

これもパパスのオジロンを心配した結果である。

ただでさえ体力のないオジロンはもう既にくたくたではあるが、この装備を脱いだら命を落とすことになるのは自明の理なのでこらえている。

いつまでもつことやら。

ゲームのように簡単には着脱できるものではない。

この北の教会まではレイシアのルーラで送ってきてもらっていた。

「ではお気をつけてオジロン様。カカロン姉さんオジロン様をよろしくお願いします。」

「大丈夫よ。私がたかが魔物に遅れをとるとでも思っているのかい?」

「いえ思ってはいませんが。」

そのような会話をレイシアとカカロンが少しし北の教会を旅立っていった。

「王、もう出てきても大丈夫ですよ。」

とレイシアが言うと、

「わかった。」

と壺から声がした。

ツボックが現れた。

とはならずパパスが壺からでてきた。

「あ~、キツかった。

まさか壺にはいることになろうとは。

だがまあいい。では行ってくる。

グランバニアのことは任せたぞレイシアよ。」

と言うとパパスは気配を消し急いでオジロン達を追って出ていった。

「本当に心配なんですね。

兄弟、いや家族とはいいものなんですね…。私の姉も…」

という少し寂しそうな表情から自然とでたレイシアの呟きを聞く者はいなかった。

 

「ねえ、オジロンちゃん?」

「オ、オジロンちゃん!?」

「ダメ~?」

「いや、いいですけど…」

「よかった」

なんとも暢気な会話である。

これから血みどろの戦いをするとは到底思えないものである。

「オジロンちゃんは、兄さんのパパス王だっけ。

あの人のことどう思っているの?」

「えっ、突然どうしてですか?」

「いいから答えて」

「はい…」

終始カカロンの勢いに押されっぱなしのオジロンであった。

「やっぱり兄さんのことを嫌ってたり、恨んでたりする?」

「何故僕が兄さんを嫌ってたり、恨んでたりすると思うのですか?」

「だって兄さんとことあるごとに比べられて馬鹿にされて、今回はこんな危険な役目を押し付けられたんだものそう思っているんじゃないかなってね。」

とカカロンがオジロンを試すかのように問いかける。

(人間というものは弱いもの。

いやなことはすぐに人に押し付け、責任転嫁して保身をはかる。

果たしてこの人間はどうだろう?)などとカカロンが考えていると

「僕は兄上のことは嫌ったことも恨んだこともありません。大好きですし、尊敬しています。」

堂々と断言する。続けて

「比べられる馬鹿にされるのは自分が至らないだけですし、今回のことは僕が成長できるようにと考えてくれてのことです。

最初は呆然としましたが今まで兄上のことをそんなふうに思ったことはありません。」

あの気が弱そうなオジロンがそう言いきった。

カカロンはオジロンが発言した時に魂の輝きが眩しいほどまでになったことに驚いていた。

まったく濁りがなかった。

オジロンが嘘偽りを言っていないことがわかった。

そのオジロンの発言を聞いて自分の姉クシャラミのことを思い出した。

何でもできる姉。

自分よりも幻魔として2ランクも高くなにかと比べられてきたが、嫌いになるどころか慕い続けてきた。

そのことを急に思い出したカカロンはオジロンに共感し、親近感を感じるようになった。

「カカロンさん…?」

「なんでもないよさあ行くよオジロンちゃん」

「?」

カカロンの口調が変わったことにはまったく気がつかないオジロンであった。

(ああでもクシャラミ姉さんにはあの露出が高い格好だけはやめてもらいたい)と心の中で思うカカロン。

そのてんでもパパスはそっくりである。

皮の腰巻き一つで旅をしようとしていたのだから。

しかしこの二人などまだいい方である。

かの伝説の勇者ロトの父親はより凄かったらしい。

この世界(ドラクエ)の英雄は露出狂が多いようだ。

話は戻ってオジロンとカカロン。

「はあ、はあ、はあ、はあ、やっとついた……」

「大丈夫かいオジロンちゃん?」

「大…じょ…うぶ…で…す。」

大丈夫とはいうが死にかけのオジロン。

カカロンはしょうがないねとため息をつきながらオジロンにベホマをかける。

元来怪我につかう魔法であるが気休めにはなるだろうと思いかけたのである。

だが効果はあったようだ。

真っ青な顔をしていたオジロンが顔色よく元気になったのだ。

オジロンは何があったのかと疑問符をだしているがそれをカカロンは優しげな笑顔で見守っている。

なにかいい雰囲気である。

「じゃあそろそろ乗り込もうか?」

カカロンがそうオジロンに言うと、オジロンも覚悟を決めたように

「分かりました。」

という。

二人はデモンズタワーに突っ込む。

デモンズタワー一階

デモンズタワー内の魔物はまさか人間達が攻めてくるとはつゆとも思わず、酒を飲み人間の腕のような物を食べている。

そのようなゆったりした空気を破壊するかのごとき凄まじい爆音が響いてくる。

「グエ、グエエ(な、なんだ)」

とあわてふためくガーゴイル達

「グエエエエ(て、敵襲)「うるさい黙れ」…」

敵襲を伝えようと仲間の元にやってきたガーゴイルだが発言の途中で鮮血を撒き散らしながらバラバラになった。

それを見て何が起こったのか分からずうろたえていると、バラバラにした者が現れた。

「案外脆いのね。

いやレイシアに貸してもらったこの鞭が強いのか。」

もちろんカカロンだった。

仲間をバラバラにしたのが女だと分かると怒り狂いながら襲いかかるガーゴイル達しかしその数6体も鞭の一振りで終わることとなった。

あとから到着したオジロンが見ると一階は血の海になっていた。

デモンズタワー一階攻略




あ~今回は今までで一番の駄文かもしれない。上手くいかなくてすいません。


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頂上までひとっ飛びデモンズタワーのボス登場

デモンズタワーの謎解きを全て書くのはいくら話があっても終らない+私の文才不足なためかなりのチートをさせてもらいますご容赦ください。


パパスは驚きを隠せなかった。

レイシアにカカロンは強いと言われていたがここまでとは。

魔方陣でいく先いく先で魔物がまち構えていたがほとんどグリンガムの鞭の一振りで肉片になっていた。

つくづくグランバニアの兵士と模擬戦をやらせなくてよかったと心底思っている。

そのパパスであるがこのように尾行が上手くいっているのには理由があった。

今朝パパスが支度をしていたとき

「レイシアです。今お時間よろしいでしょうか?」

「大丈夫だ。」

とレイシアの問いかけにパパスが答えると

「失礼します」

とレイシアが部屋に入ってきた。

「今日王はオジロン様を影ながら見守ることになるのですが、塔の中では近すぎては見つかってしまい、遠すぎては見失ってしまいます。

なのでこれをお使いください。」

レイシアはなにかが入った袋をパパスに渡した。

「これは消えさり草といって一時的に姿を消すことができるというものです。

これを使用し、気配を消せばめったなことでは見つからなくなります。」

「なんとそのようなものがあるとは!ありがたく使わせてもらうぞ。」

 

というやり取りがあり、その消えさり草を使ったためここまでうまく尾行ができているのである。

だがその尾行も後に断念せざるを得なくなる。

カカロンとオジロンは順調にデモンズタワーを攻略していった。

途中ヤリが飛び出てくる場もあったが、オジロンをカカロンが抱えて空を飛びクリア。敵は依然としてカカロンのグリンガムの鞭の一振りで肉片と化していく。

順調に進んでいたがこの塔は終わりが見えない。

かなり高い塔だというのはぱっとみわかっていたが実際に登るとなるとここまで大変とは想像してなかった。

まあオジロンはあれだけの重装備をしているのでしょうがないといえばしょうがないのだが。

ふと見て見ると外に通じている扉があった。

あとどれくらいあるのか知っておきたくなったオジロンは

「少し外に出てあとどれくらい登ることになるか見ておきませんか。」

とカカロンを誘い、カカロンも

「ええ、そうしてみましょう。」

と応じてくれたので外に出て見てみることになった。

キィと鉄の扉を開け、外に出てみる。久しぶりにオジロンは綺麗な空気を吸うことができ満足していた。

先程まではタワーのなかの埃くさい部屋だったり、飛び散った血液の臭いなどで酷いものだった。

そのため今外に出てつくづくよかったと感じていた。タワーを見上げるまでは…。

そして本題。

オジロンとカカロンは頂上はどうだろうと見上げて見る。

「……」

「なかなか高いわね」

二人の想像以上だった。

これを塔のなかで戦闘をこなしつつ、あっちいったりこっちいったりしながら登ることを考えると、いや考えることすら苦痛であった。

呆然とするオジロンのよこで

「しょうがないわね。

オジロンちゃんわたしにしっかり捕まりなさい。」

とイタズラな笑みを浮かべてカカロンはいう。

なんだか分からないが言われた通りにすると、女性特有の柔らかさといい匂いがする。

そのため少しオジロンが夢心地になっていたが、数秒後恐怖に身を震わせることになる。

「しっかりつかまっているのよ。」

とカカロンがいうと同時にカカロンの背中の羽が羽ばたきを始める。

「いくわよ~」

と言った瞬間凄まじいスピードでカカロンは頂上を目指して飛び上がっていた。

グングンと高くなる高度オジロンは気が気でなくなっていた。

その恐怖の飛行体験はなんとか頂上の一階したの踊り場に到着することで終わりを迎えた。

 

パパスはその飛行ショーをみているしかなかった。

「もうこれではさすがに尾行は無理だ。オジロンのことはカカロンに任せるしかない。」

と祈ることしかできなくなっていた。

 

オジロンは恐怖から立ち直り息を整えていた。

すると上の階、つまり頂上から世にも恐ろしい雄叫びが聞こえた。

オジロンが竦み上がっていると

「大丈夫、あなたはわたしが守るから」

と優しい声でカカロンがオジロンにそう宣言した。

ある意味ホッとしたオジロンであるが急に情けなく感じてきた。

「大丈夫です。自分の身は自分で守ります。

あとすいません。

本当はこういう時は男である僕が女性である貴女を守ると言わなくてはならないのですが。」

と申し訳なさそうにいう。

カカロンはオジロンにそのように言われ少しあっけにとられていた。

自分は幻魔であり女性と見られたことなどなかった。

今までもレイシアに召喚される前までに召喚された時にはいつもある意味殺戮マシーンとして使われたり、召喚主の盾にされたりするなどで気遣われたことはなかった。

そう今の召喚主のレイシアに会うまでは。

そのためあっけにとられたのだった。

そして我に返ると顔が真っ赤になっているのに我ながら気付き。

「人間風情が何を偉そうに…。」

といいオジロンに見えないように顔を背けた。

「もういい!いくわよ。」

そのように続けカカロンはさっさと頂上への階段を登っていった。

頂上には考えられないほど大きく腕が四本足も4本あるライオンのような魔物そうキングレオがまち構えていた。



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幻魔カカロンVSキングレオ

カカロンが頂上の決戦の場に足を踏み入れる、遅れてオジロンが階段を登ってきた。カカロンにしろオジロンにしろキングレオは見上げるほどの大きさであり、その異様にすでにオジロンは動けなくなっていた。そんなオジロンに「あなたはここから入らないでね。見届けるという役割だけしてくれればいいから。」とカカロンが忠告する。いつもであれば「オジロンちゃん」というが今回はそうではない。カカロンでも緊張しているのかと少し心配になる。何か話かけようと思ったとき「貴様らがワシの部下をことごとく殺したという侵入者か。」恐ろしい重低音の声でありより凄みを増させた。「見れば分かるじゃない。そうよわたしたちが侵入者であり、あなたの命を狩りにきたものよ。」カカロンはいつも通りの口調でいうがその口調になにか底知れぬ恐ろしさをオジロンは感じた。「ワシを怒らせたいらしい。まあよい。軽く軽食といくか。」というと同時にキングレオは巨大な岩石と無数の岩をカカロンに向かって降らせた。カカロンは自分とオジロンに当たりそうな岩だけをグリンガムの鞭で砕いたり、打ち落とす。岩に少し気を向けていたことが災いとなり、キングレオの巨大な鋭い爪がついた腕がそこまで迫っているのに気づくのが遅れ回避行動を取るのが遅れた。「ウッ」カカロンが凄まじい勢いでキングレオに吹き飛ばされる。少し吐血するがその顔には背筋が凍るような笑みが浮かんでいる。「フフッ久しぶりに面白くなるかも」カカロンはポツリと呟く。なにもダメージがなかったかのように平然と立ち上がる「じゃあ行くわよ」というやいなや凄まじいまでの勢いでキングレオの懐に飛び込みグリンガムの鞭を振るう。三本の鞭が生きているかのようにキングレオに襲いかかり四本の腕の内の三本を切り落とす。キングレオは凄まじいまでの断末魔をあげるが反撃も忘れない。口から凍える吹雪を吐き出す完全にキングレオの間合いであるのでカカロンに直撃する。キングレオは痛みを堪えながらもにやりと笑う。カカロンは完全に氷ついたかに見えた。が「たいしたことないわね。少し涼しくなっただけじゃない。」軽く服を叩きながらキングレオにいい放つ。キングレオは恐怖を感じずにはいられなかった。今の凍える吹雪は自分の技のなかでも最強の威力を誇る。それをまともに受けても平然としている。キングレオはベホマを自分にかけることさえも忘れている。もうなにもできないだろうとカカロンは思い留めを誘うとキングレオに近づこうとする。キングレオが大声を上げた「今だかかれ!!」キングレオには最後の望みがあった。キングレオがいうやいなや瓦礫のなかから岩石いや顔がある岩爆弾岩がカカロンに向かって突っ込んでいく。キングレオが戦いの始めに投げた岩石のなかに爆弾岩を紛れ込ませておいた。普段ならこのようなことはしないがクランバニアという国の者の中には侮れない者がいるから戦いになるようならこのような仕掛けをしなさい。と上司にあたる魔物に言われていた。それがこうをそうしたのだ。「しまった」カカロンはそう思った。いくらカカロンであれ最強の事故犠牲魔法メガンテは耐えられない。一発ならわからないが爆弾岩は二体いる。「わたしとしたことがとんだドジ踏んじゃったわね」観念し目を瞑ったときカカロンは誰かに突き飛ばされた。突き飛ばしたのはオジロンであった。その時みたオジロンの顔は今まであった誰よりもかっこよくカカロンには見えた。

凄まじい爆音がなり、衝撃が周りの大地を揺るがした。




少し短いですがここで終わらせてもらいます。できれば夜に更新したいと思います。


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オジロン死す!?

ついに原作キャラをてにかけてしまう。いいのだろうか。


オジロンは走った。

爆弾岩を見たら勝手に足が走り出していた。

爆弾岩のことを知っていたのは一年に一度グランバニアに訪れるおじいさんによく魔物の話をしてもらい。

地獄の殺し屋と呼ばれるキラーパンサーすらも恐れないおじいさんが唯一恐れているという話を聞かせてもらい。

なぜ恐ろしいかも教えてもらっていたからだ。

それでも出口にではなく、爆弾岩に近づくように走っていた。

なぜだ?当然カカロンを救うためにだ。

今までオジロンは馬鹿にされることばかりだった。

しかしそんな自分に対して優しく気遣ってくれた、優しい言葉をかけてくれた。

それが本当に本当に嬉しくて。

その大事な人を救うために。

たとえ自分の命をかけたとしても……。

 

デモンズタワー頂上は二体の爆弾岩がメガンテをしたため荒れ果て、砂煙で周りが全くといっていいほど見えない状態である。

そんな中カカロンは全く怪我をおっていなかった。

カカロンの前に全ての攻撃を一身に受けようとした男がいたからだ。

グラッとその男は倒れる。

カカロンは必死になってその男を抱き止める。

「よ、よかった……、カ、カカロンさんが…無事…で。」

苦しそうだが本当によかったという感じでオジロンはカカロンに言った。

「な、なんであんな…あんな無茶したのよ。」

カカロンが怒りと他にもなにか感情がまじった声でオジロンに言う。

「グ、グランバニアの為…か…な。いや、違…いま…す。大事な…あな…たを……守るため…です。言った…でしょ。…男は…女性…をまも…るものだって。果た…せ…ました。」

と本当に嬉しそうな笑顔を見せた。だがそれだけ言うとオジロンはなにも言わなくなった。

持っていたドラゴンシールドが地面に落ちた瞬間役目を終えたように砕け散った。それと同時に持ち主のオジロンの命の灯火も消えた。

「………」

カカロンの目からは涙がとめどなく流れている。

今までこのような経験がないのでなぜか分からない。

 

その光景を見ながらキングレオは悔しそうに歯噛みをした。

しかしこれはチャンスではないのかとも思っていた。

大事な男を亡くし涙を流している今なら間違いなく勝てる。と。自分にベホマをかけ完全に怪我を癒し襲いかかろうとした。

その時。

カカロンはスッと立ち上がった。

自分の流した涙の理由がわかった。

けっして悲しみなどではなかった。真逆の喜びであった。

なぜか?オジロンは死んだ。しかし魂の入れ物である体は二つのドラゴンシールドと魔法の鎧のおかげでしっかりと残っているからだ。そうであればあの魔法が使える!そのことに気づいたことによる喜びの涙であった。

「でもね、落とし前だけはつけてもらわないとね」

可愛い顔がより可愛いく笑ったが、見るものが見れば震えあがるような笑顔であった。

「オジロンちゃん。少しここで休んでいてねこれから起こることはあなたには少し刺激が強すぎちゃうから」

そのように語りかけキングレオの方をふり返った。

「そこのけものさん。簡単に死ねるとは思わないでね。なぶり殺しにしてあげるから」

とだけ宣言すると第二ラウンド。一方的な蹂躙が始まる。

「ハリケーン」

カカロンが冷淡な声で言うと巨大な竜巻が起こる。

瓦礫を巻き上げ、キングレオをも巻き上げる。

巻き上げられた瓦礫がキングレオに襲いかかる。

キングレオの体に突き刺さる、切り裂く数分たったのちに空から落ちてきたキングレオは無数の瓦礫が突き刺さり、切り裂かれた傷もあり血まみれで落ちてきた。

「はあ。つまらないわ。じゃあ最後にはいい声でないて欲しいわね」

まだ息があるキングレオは早く殺してくれと思うしかなかった。

「何故こうなった。何故こうなったんだ。

あの上司のゆうことなど聞かなければよかった。」

と思うとキングレオの脳裏にはフードをかぶりいやらしい笑みをうかべ「ホッホッホッホ」と笑う上司の顔が浮かんでいた。

 

「じゃあ最後はベギラマでいこうかしら。

ベギラゴンじゃ一瞬で終わっちゃうし、オジロンちゃんの痛みも味わってもらわないと。ゆっくりと身を閃光に焼かれながら悶え死になさい。」

とだけ言うとキングレオは青ざめたがカカロンは気にせず呪文を唱える。

「ベギラマ」 閃光がキングレオに襲いかろうとしたその時

「メイルストロム」

どこからか呪文が聞こえる。

するとキングレオを守るようにして襲いかかる閃光の前に凄まじい水柱がたつ。

ベギラマとメイルストロムがぶつかり周りは水蒸気だらけなっていた。

中級閃光魔法ベギラマと上級水魔法メイルストロムがぶつかり相殺と言うだけでもあり得ないことであるのにカカロンは不満そうな顔をしていた。

「なんであんたがいるのよ。レイシア。

あんたは尾行してた王様にグランバニアを頼むとかいわれてたじゃない。」

「よく知っておられましたね、お姉さま。」

「わたしの耳はにんげんのそれとはできが違うのよ」

「それはそれは」

どこかの魔族がいうようなことを言ったのはどうでもいい話であった。

さてレイシアが来た訳とは。

レイシアが魔法を使ってまでキングレオをかばったのは何故なのか。次回に続きます。




レイシアは海賊も経由してました。パパス最強というよりオリキャラレイシア魔法チートというタグのほうがよかったかも。


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キングレオ戦終了

来週忙しくなり更新が厳しくなるので今日できれば今回と夜しようと思います。


「レイシアさんは果たして大丈夫でしょうか?」

「オジロンちゃんもまだまだね、ああいう女は案外ドSだったりするのよ。オジロンちゃんも女を見る目を養わなくちゃ。いやいいや。オジロンちゃんはわたしだけを見ていれば」

オジロンとカカロンが話している。

オジロンは椅子に座りながら、カカロンはそのオジロンに後ろから抱きつきながら。オジロンは赤くなりながらも、周りからの突き刺さるような視線(主に男)に耐えながら話をしている。

死んだオジロンがいるということはここは天国ということであろうか?いや違う。

 

かれこれさかのぼること18時間ほど前。

「で、なんでここに来て挙げ句のはてにあんなけものをかばったのよ、レイシア。」

ギロリとカカロンはレイシアを睨み付けながら問いただす。

「今からその事については説明しますが、その前にオジロンさんを。あのままでは浮かばれません。」

「わかったわ。でも浮かばれないというのは許せないわね。

これからは生きてわたしと共に生きていくことになるんだから。」

と言いオジロンに

「ザオリク」

と魔法をかける。

だがそこでレイシアは驚愕していた。

人間なんて虫けら同然のように思っていたのに、何があってこんなにベタぼれしているのかと。

とレイシアが考えているうちに緑色に包まれていたオジロンがむくりと立ち上がった。

「ここは天国なのか。

あれカカロンさん。

も、もしかしてカカロンさんもお亡くなりになったのですか?」

「おはよう、オジロンちゃん。でなに言ってるのよ。幻魔のわたしが天国行けるはずないでしょ。あなたは生き返ったのよ。」

カカロンから驚くべき言葉が発せられた。

オジロンは驚きながらどういうことですかと尋ねる。

この世界では寿命で亡くなるのではなければ、魂の器つまり体が残っていればザオリクという高等魔法によって蘇生することが可能なんだという。

驚愕の事実である。

だがそのことがあまり知られていないのは、ザオリクという高等魔法を体得した者が少ないからなだけである。「じゃあ、オジロンちゃんも起きたことだし先ほどの話の続きを聞こうかしら。」

「ええ、その事なんですが。

お姉さまは知らないと思いますが、このグランバニアのお妃様のマーサ様が魔物に先日拐われたのです。

そのマーサ様を救出すべく色々準備をしている訳なんですが、マーサ様の情報は全くといっていいほどないんです。」

とそこまで言うと

「あのけものに聞こうという訳ね。」

とカカロン

「はい。あの魔物はこの塔に派遣されたことを考えると高位な魔物だということが分かるので、少し情報をお聞きしようということです。」

レイシアは笑いながらそのように言った。

「では、明日尋問することと、事後処理、それにオジロン様が疲れているようなので帰りましょうか。」

と言い、皆と虫の息のキングレオを連れてリレミトとルーラを使ってグランバニアに帰還した。

ということがあって現在に至る。

 

「でもなんでレイシアさんはキングレオを外で拷問するというのでしょう。たしかに大きいですが城のなかでもできると思うのですが。」

「なんでも城の中だと色々と被害がでるかもしれないって言ってたわ。レイシアのことよりオジロンちゃんはわたしを見ていればいいのよ。」

「あの…。いつから僕たちはそのような関係になったのでしょうか?嬉しいのですが皆の視線に耐えられなくなってきました。」

「なに言ってるのよ。デモンズタワーで「愛するカカロン様を助けれて良かった。ぼくと永遠に添い遂げてください。」って言ったじゃない。」

としれっとかな~り誇張と脚色をして言うと、

「えっ、僕はそんなこと言いましたか。」

「言ったわよ。悲しいわ。忘れてしまったの。」

とカカロンは続け泣きまねをする。

オジロンは女性に対しての耐性が低いのでオロオロしながら

「すいません。

忘れてしまい。

泣かないでくださいカカロンさん」

と必死に謝りつづける。

そうすると、泣き止んだふりをし、目を袖でぬぐい

「ゆるしてあげるもしかしたらザオリクで生き返る前の記憶が少し混濁しているのかもしれないから。」

というとオジロンは

「そうだったのか。」

と簡単に言いくるめられてしまう。

グランバニアは次の王がこのようで大丈夫なのだろうか。

ところ変わってグランバニア近くの野原

鎖でぐるぐる巻きにされ、動きを拘束されたキングレオとレイシアがいた。

「では、今からあなたにお聞きしたいことが多々ありますので、素直に答えてくださると助かります。」

「…」

にこやかにレイシアは話すがキングレオは黙して語らない。

「やはりそうですよね。では気はすすみませんが、お体にお聞きすることにしましょうか。」

レイシアは冷笑する。

 

ところまたまた変わり何処かの塔の一室

「…様。デモンズタワーのキングレオが捕らえられたということです。」

「そうですか。まあ、いいでしょう。キングレオも腐ってもわたくしの配下。死んでもなにも話すことはないでしょう。ホッホッホッホッ」

とローブの男と馬?が話している。

「ほっておいてもよいでしょうか。たしかにキングレオはどんな目にあってもなにも話さないとは思いますが。」

「たしかに、キングレオが捕らえられたことと、グランバニアの近くということは気になりますが、今は伝説の勇者を誕生させないほうが重要ですよ。

まあいづれ挨拶には出向こうとは思いますがね。」

とローブの男?が歪んだ笑みを浮かべまたお決まりね笑い声をあげた。



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哀れなキングレオ

今回の更新したのち少し間が空くかもしれません。すいません


パパス達の修行はまだ再開されないということなので、パパスは朝から王としての勤めを部屋にこもって行っていた。

カリカリカリカリとペンの音が部屋の中に響いている。

そんな静寂を簡単に打ち破る凄まじい音がグランバニア近くの平原から聞こえてくる。

それと同時に兵士が王の部屋に情報を伝えに急いでやって来る。

「はあ。またか…一体何度めだろう…今度は何が起こったのだ。」

パパスは疲れた様子で部屋に入ってきた兵士に問いかける。

「は、はい。今度は無数の隕石が平原に降り注いだようです。」

「わかった。下がってよい。」「はっ」

兵士が部屋からでていくのを見て、パパスは大きなため息をついた。

あれは、レイシアがキングレオを連れて平原にいってから少したった時のことだった。

平原からなにかでかいものが破壊されるような音が聞こえてきたり。

山のように大きな巨人が突然現れたり。

はたまた、メタルスライムが大量に発生したり。

医務室で治療を受けていた兵士を含め城じゅうの怪我人の怪我がすっかり治癒するなどの、なにか計り知れないことが度々起こっていたのだ。

その度にパパスは頭を抱えていた。

まず間違いなく、ここまでの一連の珍事はレイシアが起こしているだろうということが、容易に想像できた。

「あと、何回このようなことが起こるのだろう。」

と呟いてため息をはくパパスであった。

 

平原

平原は凄まじい状況になっていた。

クレーター状の穴が無数に空いていたり、巨大な足跡が残っていたりともう平原だったということが分からない状態である。

その場にいるレイシア、キングレオも同様に酷い状態であった。

レイシアの着る賢者のローブは高い防御力を誇っているはずなのに、ボロボロになっており、それを着ているレイシアも見る影がないほどにボロボロになっている。キングレオも同様に傷だらけになっている。

レイシアは自分にベホイミをかけ回復する。

「しぶといですね。

まだ本命の効果が出ていませんが、まだ口を割らないとは。

さすがに魔物の大将をこなしているだけのことはありますね。」

「ふん。この後にどんなことがあろうと口を割ることはない。」

レイシアが送った賛辞を受け流し口を割ることはないと断言するキングレオ。それを聞いたレイシアは

「今度こそ本命の効果出てくださいね。パルプンテ」

レイシアが呪文を唱えると急に、快晴だった天気が曇りだし、周りは暗闇に包まれる。

「やった今度こそ本命の効果だ。」

レイシアが喜ぶと。

なにかが遠くからやって来る。

なにかとてつもなく恐ろしく、威圧感が半端でなく形容し難いなにかが。

キングレオはその底知れね恐ろしいものに身震いをし逃げ出そうとするが、体は鎖で何重にも拘束されているので動かすことができない。

「いつみても凄いですね。

何て言ったって、邪神が尻尾を巻いて逃げ出すほどのものですからね。

マーサ様のことを話したくなったらいってくださいね。

まああと少しで来てしまいますから、時間はそうありませんよ。」

レイシアは顔面が蒼白になり、今にも発狂しそうなキングレオに笑みを浮かべながらそのように告げた。

今まではどんなに傷つけられようが(流星群や巨人の踏みつけ)口をわることはなかったが今回のものは桁、いや次元が違う。

心や精神がズタボロにされ、金色の体毛も底知れね恐怖によって白くなっていく。キングレオの心が折れた。

「お前達の聞きたいことはすべて話す。頼むからあれを消してくれ。」

キングレオが懇願すると、レイシアは満面の笑みを浮かべた。

 

城内でもいきなり天気が悪くなり、暗闇が訪れ、強烈なプレッシャーていうか威圧感、底知れね恐怖に全国民が動くことすらできなくなっていた。

その呪縛のような状態から解き放たれ、約一時間ほどたつとレイシアが帰ってきた。

パパスはレイシアが帰って来るなり

「マーサの情報はどうだった?」

と聞くと、レイシアは笑みを浮かべて頷いた。

パパスは喜び勇んでいつものメンバーを会議室に召集した。

 

おまけ

「レイシアよ。先程この城がなにか、底知れね恐怖に包まれることがあったが、あれはなんだったのだ?」

「あれがなかなか口を開かないキングレオから情報を聞き出すための最終手段です。

邪神でさえも恐れおののき逃げ出すほどのものを。

逃げられない状況にして眼前につきだしたのです。

キングレオの顔はたいそう見ものでしたよ。」

とクスクスと笑う。

その黒い笑みを見て、そこまでの話聞いたパパスはレイシアが恐ろしくドSだと思ったが、恐ろしくて声にはださなかった。そして確信に踏み込む

「でその正体とはなんなんだ。」

「さあ、私にもわからないのですよ。

まあ推測するに、〈現実に訪れた悪夢〉というのがちょうどいいんではないでしょうか。」

笑いながら話すレイシアを見てなにもいえないパパスであった。



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マーサの行方と絶望感

ついつい忙しい合間に書いてしまった。片手間に書いたのでできばえはとても悪いですが読んでもらえたら嬉しいです。


会議室に阪神パパスと召集を受けた、レイシア、サンチョ、パピン、オジロンそして…。

皆の視線が一斉にオジロンに、いやオジロンの背中に当然のように抱きついているカカロンに向いた。

「お姉さまはなぜここに?」

「確かにカカロンのおかげで得られた情報ではあるが…」

「わたくしめはここにいることよりも、なぜオジロン様の背中に抱きついているのか、というほうが気になりますが。」

「なんとも、うらやましい。そして妬ましい。あんな、あんな巨乳に…」

レイシア、パパス、サンチョ、パピンがそれぞれカカロンにたいしての疑問を口にするが、カカロンは全く気にせず

「わたしはオジロンちゃんと一心同体なのよ」

オジロンは苦笑いをし、場が静まりかえる。

「ど、どういうことですか。お姉さま!?」

「お前が女をつくるとは。嬉しいが、幻魔とは……。」

「オジロン様。おめでとうございます。」

「一心同体だと…あの豊満なメガボディーが…」

またそれぞれがバラバラの反応をするが、カカロンはまたも気にせず。

「たしかに、このことは後々のグランバニアのことに関わることであるので、また次の時の議題とする。

他言無用で頼む。」

パパスがそのようにオジロンとカカロンのことは保留するという決を下した。

「え~と。場を仕切り直しまして。

キングレオから聞き出した状況を話したいと思います。」

場は静まりかえり、レイシアの次の言葉を待った。レイシアはかなり苦々しそうな表情をし

「現状は最悪としか言えません…」

その一言で場が凍りつく。パパスがいてもたってもいられずレイシアに詰め寄る。

「そ、それは…マ、マーサとはもう会うことができないということか!」

「王の想像しておられるであろう最悪の状況ではありません。

マーサ様は生きておられます。しかし…会うのが絶望的だと言うことは同じです。」

パパスはマーサが生きているということを聞いた時は安堵したようであったが、会うことが絶望的ということを宣言された時は、奈落の底に落とされたかのようなとても痛ましい表情をした。

しかし、生きているのならば希望がないわけではない。

そのように自分に言い聞かせ、震える声を無理やり落ち着かせてレイシアに確信を問う

「では…マーサは今どこにいるのだ?」

レイシア少し考えた後、覚悟を決めたように口を開く

「魔界です…」

レイシアから出た言葉〈魔界〉は皆を絶望の底に叩きこんだ。

魔界とは魔王が住まう魔物の世界と言われている。

しかしその存在は確かめられていない。書物に書かれた内容でしか知られていない。

「……」

皆が絶句する。

「それなら魔界に行けばいいじゃない。」

静まりかえった場に当然のように投下されたカカロンの率直な答は皆に希望を与えたが同時に一番の問題をも提示したことになる

〈どのように行くのか?〉である。

「そんなの、こっちの世界から連れていかれたなら、行く方法があるってことじゃない。」

カカロンの言葉は当然のことであり。魔界という言葉で止まっていた皆の思考を揺り動かした。

「カカロンのいうとおりだ。」

パパスはカカロンに感謝をするように皆に言う。

『そうですよ。カカロンさん(様)の言うように魔界に乗り込みましょう。」

サンチョ、パピンにも希望の光が見えた。

普段であるば解決案を練るはずであったレイシアであるが、レイシアでさえもキングレオの口から魔界という言葉がでてから思考が停止していた。それを打破してくれたカカロンに感謝した。

「マーサ様を拐い魔界に連れていった魔物はゲマという魔物であるようです。そしてその魔物の居場所もわかっています。」

そこまできけばその場にいるメンバー全てが何をすればいいのかわかっていた。

『ゲマとかいう魔物(クソヤロウ)に制裁をくわえ魔界への生き方を聞き出す』

至極簡単なことであった。

意気揚々になる皆の気を諫めるようにレイシアが

「道が見えました。

しかし、ゲマという魔物はかなりの実力をもっており、部下となる魔物も同様にかなり手強いということです。

道が見えた以上王はいてもたってもいられないとおもいますが、まずは先の戦い見据えて修行を再開することにしましょう。」

と提案すると皆が同意した。

会議はお開きになり、皆は希望が出てきたことにより明るい表情で去っていった。

会議で全く声を出さず、いたのかさえも分からなくなっていたオジロンがまだ背中に張り付いているカカロンに

「ありがとうございます。」

とだけ満面の笑顔でいった。

「勘違いしないでよね。あなたのためじゃないんだからね。」「???」

「あれ?オジロンちゃんなんで喜んでくれないの?こう言うと男は萌えて喜ぶってシスターがいってたのに」

カカロンは人間界で変な知識をつけ始めていた。

それとともになかが良い者もできたようだ。

(シスターと幻魔というのはどうかと思うが。)

今まで幻魔ということで皆遠目で見ていたが、だんだんそれが払拭され始めているということでもある。

それがオジロンには嬉しく思えた。

 




ゲームどうようゲマには宿敵として頑張ってもらおうと思います。まあこのままでは某ヤ〇チャのように出落ちの噛ませ犬のようになりそうで困りますが。まあいつになったら登場するかさえまだわかりませんが。


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ムツゴロ〇さんか!?いやモンスターじいさんだ。

久しぶりの更新です。いつも通りへたで短いですがよろしくお願いいたします。


グランバニア周辺の平野だったところ

 

「はあっ」《パパスのかいしんの一撃 はぐれメタルに194のダメージ》というメッセージが出そうなほどの力強い一撃ではぐれメタルを両断した。

タタタタトッタット~パパスのレベルが上がった。

というようには現実にはいかないが、はぐれメタルを倒すと、体の中から力がみなぎってくる感じは、皆が実感していた。

「今日の収穫ははぐれメタル2匹とメタルスライム5匹ですか…。」数字から言えば全く収穫がないという訳ではないが、パパス一行には元気がない。少し行き詰まっているという感じだ。なぜなのかというと、以前レイシアが唱えた呪文〈パルプンテ〉によって生態系が乱れる程にメタルスライムが増殖いや、そこらの魔物がメタルスライムに変化した(といったほうが良いが)、そのようになったことにより、メタルスライムの群れからはぐれることにより出来上がる珍しいはぐれメタルもかなりふえ、レベル上げが容易になったように思われた。確かにはぐれメタルとの遭遇はました。しかしやはりはぐれメタルはよく逃げる、こちらが回り込むことができないほどのスピードで逃げまくった。そのようなことから一日中戦っても2匹しか倒せず、パパスたちは行き詰まったと考えざるをえなかったのだ。

「皆さん今日も疲れたと思うので帰りましょう。」レイシアが皆に提案するが、パパスは頭ではわかっているが、体が動かない。マーサが魔界にいるということを聞いてからはずっとこんな感じだ。焦りがある。またその焦りが剣筋を鈍らせることもはぐれメタルをなかなか倒せない要因ではある。

レイシアはなんとかパパスを納得させると、ルーラで帰還する。

 

夜更け

誰もが眠る静かな城内をレイシアは歩く。レイシアは城の中庭にやって来ると空を飛び何処かに去っていった。

「あれはどうしたのかしら…。まあいいや。オジロンちゃんに夜這いをかにいこっと」カカロンは見ていたがどうでも言いようだった。

暗転

テトテトテットッテ~

夜が明けた。昨夜はお楽しみでしたね。ていうようにいかなかったのがよく分かるほど不機嫌な顔をしてカカロンは昨夜見たことをレイシアに問い詰めにいった。

「昨日の夜どこいってたのよ。まさか男の所なんじゃないでしょうね?」

「そうですよ。とても素敵な魅力溢れる男性の所です。」

あっさりと答えるレイシアにカカロンは驚かされた。今まで男の影など全くといってなかったことから、冗談半分で言ったのにまさか「そうだ」と言われるとは予想だにしていなかった。問い詰めようとした所にパパス達がやってきた。「こんな朝早くになんだというんだ?」

「はい会って頂きたい人がおりまして。入ってください。」

そう言うと一人のおじいさんが入ってきた。パパス達がよくしっている人物であった。今はいないがオジロンに爆弾岩のことを教えた人物でもある。

「久しぶりじゃの。パパス坊。オジロンはいないのか?」

「いきなりそれですか。私はもう一国の王ですよ。モンスターじいさん。」

「わしにしたらまだヒヨッコじゃ。」カッカッカと笑いながら話す。

「しかし、レイシアはなぜモンスターじいさんを連れて来たんだ?」

「モンスターおじいさんは、魔物についてはプロフェッショナルです。もうおわかりですね。」パパス、サンチョは気づいたようだが、パピンはまだのようなので、

「はぐれメタルについての対策をたてるためにおいで願いました。」とつけ加える。頷くパパスとサンチョ。やっとパピンも理解した。

「お知恵を拝借させてもらえたら、これからの効率があがると思いまして。またこれ以上のかたもいられません。」レイシアが賛辞の言葉を並べるとモンスターじいさんは年甲斐もなく顔を赤らめて喜んでいる。

「モンスターじいさん、酔っぱらってないで教えてくれ。」

「礼儀がなってないの。坊や。頭を下げるのが礼儀というもんじゃないのか?土、下、座でもよいぞ。」

睨みあう二人、なんとかレイシアがその場を収め本題に入る。「なに、はぐれメタルを逃がさない方法じゃと?」魔物の話になるとモンスターじいさんの目が真剣になった。

「簡単じゃ。はぐれメタルは群れからはぐれたメタルスライムじゃ。ということは腹を空かせておる。この霜降り鉱石を与えれば逃げなくなるわい[ゲーム本編ではあり得ないことです。フィクションです。]」

と簡単に解決法を教えてくれた。

「流石はモンスターじいさんです。」サンチョがモンスターじいさんを称える。

「本当だ。年の功だな。」いがみ合っていたパパスも褒める。「ふん。当然じゃ。」まんざらでもないモンスターじいさん。レイシアは連れてきてよかったと安堵した。

「じゃあわしはオジロンにでも会ってくるかの。少し滞在するから宴会の支度でもしといてくれんかの。」パパスの返事も聞かずに出ていった。

「まあいい。杞憂なことがモンスターじいさんのおかげで解消されたことは覆しようがない事実だ。レイシア宴会の手配をしてくれ。」

「分かりました。」

その夜宴会が開かれることになった。

 

おまけ

「わくわくするわね。ついにオジロンちゃんと……。ああ嬉しくてイオナズンとなえたいぐらいだわ。」おっかないことを言いながらオジロンの部屋に向かう。

「つ、ついにオジロンちゃんの部屋についたわとつげき~」しかしドアが開かない。

「何で?」

オジロンの部屋のドアは牢獄と同じドアになっていた。カカロンは絶対に暴走すると踏んだレイシアが、普通の扉から最後の鍵でしか開かない扉に変えていたのだった。ゲームの仕様じょうパパス以外には力でこじ開けることができないことから夜明けまでねばっても、カカロンにはどうすることもできなかった。よって今日もオジロンの貞操は守られたのであった。




モンスターじいさんの性格はこちらのオリジナルです。また「アバカム」は失われた魔法とします。後々ブオーンは出したいので。あしからず。


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剣王と新幻魔登場!

時間があれば二回ぐらい更新しようと思います。


モンスターじいさんの助言を受けた後のはぐれメタルとの戦いは、想像以上に上手くいった。

生態系も正常に戻るぐらいにまで討伐を行い、それにともないパパス達のレベルも軒並みあがるというように、まさに一石二鳥という状態であった。

 

~1ヶ月後~

 

「皆さんレベル上げ本当にご苦労様でした。

私たちのレベルもかなり上がりました。数値で言うと50~60ぐらいと幅はありますが、最初と考えると雲泥の差です。

ただ皆さんははぐれメタルとばかり戦っており、まともな戦いはこの間行っていないことも問題です。

ゆえに明日は王とパピンさんにちょうどよい相手を用意いたしますので楽しみにしていてください。」

「久しぶりに骨のある相手と剣を交えることができるのは嬉しい限りだ。身体能力がどれだけ上がったのかも試したいしな。」

「私も同じ気持ちです。パパス王。腕がなります。」

レイシアの提案にパパスとパピンは喜んで同意する。サンチョは主に補助係なのでパパスとパピンに実践は限られた。

 

グランバニア

「それはどういうことよ。レイシア。わたしに愛するオジロンちゃんと別れろっていうわけ?」

恐ろしい剣幕でカカロンがレイシアをまくし立てている。

「いえそういうわけではなく。少し里帰りをしたらどうかと提案しただけで…」

その剣幕に圧されたじたじになりながらもレイシアは言い訳をならべる。

額にはうっすらと冷や汗がとめどなく流れている。レイシアをも恐れさせる幻魔のなせる技かはたまた、愛する者から離されることが彼女をここまで熱くさせるのか。

「わたしの居場所はオジロンちゃんの隣だけなの。帰るつもりはないわ。本当は厄介ばらいしたい訳じゃないの?本当のことを言いなさい。」

レイシアとカカロンの言い合い(カカロンが一方的だが)に周りはハラハラするばかりで、恐ろしくて仲裁できる者はいなかった。

「カカロン姉さんは本当のことを言わないと納得してくれそうにないので真実を話します。実は………」

レイシアは一転真剣な表情で話始めた。

「はぁ、しょうがないわね。わたしの義兄になる人のためだったら。まあしょうがないけど、終わったらすぐにこちらに呼ぶこと!いいわね!」

納得してくれたのはよかったのだが、最後の部分にはかなりの威圧が込められていたのでレイシアは何も言わずいや、言えずに、頷くしかできなかった。

 

次の日

パパスとパピンは兵士の訓練場に来ていた。

「よくきてくださいました。今から相手をお呼びしますので少しお待ちください。」

どういうことだろうか。

まだ相手は来ていないのかという疑問はパパスもパピンも持ったが、レイシアのことは信頼しているので、静かに待つことにした。レイシアは集中しつ

「召喚」、

「幻魔召喚」

と立て続けに二度となえた。

するとその場に二つの影が現れる。姿がはっきりし、見てみると、神々しい鎧に身を固め剣を携えた剣士と、屈強な鍛えぬかれた体をもち、人間と違う緑色の肌を持ち、かなり大きな大剣を構えた剣士がいた。

パパスとパピンはレイシアのおかげで¸もう大抵のことでは驚かなくなっていた。

そのため冷静に自分の相手になるであろう者に¸鋭い視線を向けた。

「こちらの鎧に身を包んだ方は、剣王と呼ばれるサムシンさんです。そしてこちらの大剣を構えた緑の方は幻魔でバルバルーさんといいます。

サムシンさんはパピンさんの、バルバルーさんは王のお相手となります。」

レイシアがこのように説明すると、

「よろしく。パピンさん。思う存分力の限り戦おう。」

「最初は俺の相手は人間と聞いてつまらんなと思っていたが、相手を見て考えが変わったぜ。こりゃあ楽しい戦いになりそうだ。楽しもうぜ王様よ。」

サムシンは礼儀正しく、バルバルーはぶっきらぼうに自分の相手になるパピンとパパスに挨拶をする。

「剣王と呼ばれる方と戦えるなんて光栄です。しかし負けるつもりはありません。正々堂々と戦いましょう。」

「まさか幻魔の剣士と戦えるとは。久しぶりに熱く楽しい戦いが出来そうだ。これもレイシアさまさまだな。よろしく頼むよ。バルバルーさん。」

パピン、パパスもそれぞれ挨拶を返す。

サムシンとパピンはともに礼儀正しくはあるが臨戦態勢に入っている。

パパスとバルバルーはともにこの先の戦いが楽しみでしょうがないようで笑顔ではあるが、お互いの気迫には凄まじいものがある。

「訓練場なので思いっきり戦ってもらって構いません。それにしっかりと回復魔法用に魔力(MP)もあるので安心してください。

ただし、回復させることはできますが、いいものではないので殺しあいには発展しないようにしてくださいね。」

レイシアがそのように四人に訓練の説明をするが誰も聞いていないのは明白なため、大きなため息を一つはき、呆れながらも

「始め!!」

という。そのレイシアの声と同時に剣と剣のぶつかり合う凄まじい金属音と爆風のような衝撃波が伝わってきた。

「訓練場は無事ではすまないだろうなぁ。まあ訓練場だけならましかもしれないかも。」

とレイシアが人知れず呟くのであった。




次回戦いの本編に入ります。


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パパスVSバルバルーとついでにパピン

拙い文才により戦いは上手く書けていませんが読んで頂けたら幸いです。


訓練場ばかりでなくグランバニア城をも揺るがすのではないかとも思われる剣の打ち合いが、パパスとバルバルーの間で行われている。

「なんという重い打ち込みだ。今まで味わったことがない素晴らしいものだ。」

とパパスが痺れた手を見て苦笑いしながらバルバルーの攻撃を称賛する。

「それはどうも俺としてもあんたほどの剣の使い手を相手したのは二度いや、三度めだ。ワクワクするぜ!」

バルバルーもパパスを手放しで称賛する。

共に剣の達人だからこそ少し剣を交えるだけで相手の力量を見抜いてしまう。

そして、共に強き者と戦うことが楽しくてたまらないという戦闘狂だからこそ話すことを止め剣で語り合うことにする。

パパスが強靭な脚力を使いバルバルーの懐に踏み込み横に一閃する、バルバルーはその速さにめを見張るが冷静に大剣で防ぐ、つばぜり合いになるがそこはやはり幻魔であるバルバルーの方強く少しずつパパスは押され始める。パパスはふっと力を抜き後ろに一歩下がりバルバルーが少しよろけたところを渾身の力で切りつける。決まったとパパスは思った、しかしその攻撃もすんでのところで防がれる。

「危なかったぜ。以前戦った人間も同じようなことをしてきたからどうかと思っていたが。やはり力押しだけじゃダメだな。」

というと大圏剣士を上段に構えた。何かくるとパパスは中段に構える。

「さみだれ切り」

バルバルーが叫ぶと同時にパパスに数十いや数百とも思える斬激が襲いかかる。

身の丈ほどある大剣で何故これほど早さで剣を振るえるのかという思いはあるが、考える余裕はない。かわせるものはかわし、かわせないものは剣で受けるが手数が多すぎて対処しきれない。パパスの体はみるみるうちに傷だらけになるが、バルバルーの攻撃はやむことがない。たった一分。

しかしパパスには一時間ぐらいではというほどに感じた攻撃はパパスが吹き飛ばされたことによって幕を閉じた。

「ぐっ。」

パパスはボロボロになった体に鞭をうち立ち上がる。体からは出血が激しい。

「まさかさみだれ切りを受けて立ち上がるとはな。驚きだ。この攻撃は多人数相手に使うものでその斬激を一人浴びせて立ち上がったやつはあんたで二人目だぜ。」

とバルバルーは素直にパパスを認める。

「私以外にも耐えた者がいるというのは驚きだ。しかし今は傷を癒さなくては。」

パパスは冷静に判断し初級回復魔法のホイミを唱える。

すると急速な勢いでパパスの体の傷がふさがり完全に回復する。

「おいおい。剣士だっていうから回復魔法なんてないと油断してたら。まさかベホマを修得していたとは。」「いや、ホイミだが。」

「嘘をつくな。今の回復具合はどうみてもベホマだろ。あの傷を完全に直すのはどう考えてもベホマだ。」

「いや、どういわれてもホイミなんだが。」

この言い争いは終わりそうにないのでレイシアが会話にはいる。

「バルバルーさんがベホマと判断するのは当然なのですが。王の魔法はホイミです。

私も最初はその異常さに驚いたのですが。また回復能力以外にも王のホイミにはキアリーの効果もあるようで。規格外で常識はずれなんですがホイミなんです。」

「マジかよ。」

レイシアが苦笑いをしながら説明するとバルバルーも驚愕するしかない。

今後このパパスのホイミにはザオリクの効果があると判明しレイシアが絶句することになるがそれはまたずっと先の話である。

驚きから立ち直ると

「こりゃあ魔法(MP)切れに追い込むか殺すきでいかないといけないらしいな。」

バルバルーはまた上段に構える。

パパスはなにを思ったか、バルバルーと同様に上段に構える。

『さみだれ切り』

二人の声が重なると同時に凄まじい剣の打ち合いがパパスとバルバルーの間で交わされる。

一般人の目には何が起こっているのか判断できないほどの早さで打ち合う。

始めはほぼ斬激の数は同じであった。

パパスは初めての技であり、バルバルーにとっては二回目ということで少しの疲労があることでのことであった。

以上のことからバルバルーが段々パパスに押され始めるのは自明の理であったが、バルバルーは冷静ではいられない。たった一回技を見ただけで技を身に付け、挙げ句の果てには返してくるのだ冷静でいられるほうがおかしい。

しかし。バルバルーは何度も死闘を乗り越えてきた猛者である。気を落ち着かせる。その間もパパスの猛攻は続く。パパスの斬激がバルバルーのそれを上回りバルバルーに次々と傷を刻み込む。

(このままじゃじり貧だ。こうなりゃ肉を切らせて骨を断つ。)

覚悟を決めたバルバルーは剣を下段に構えたままパパスの斬激に突っ込んでいく。そして

「魔神切り」

とバルバルーは叫びパパスを切り上げる。バルバルーの一閃はパパスの斬激とともにパパスのメタルキングの剣を凄まじい勢いで弾き飛ばした。

『ぐわっ』

パパスは自分の手から吹き飛ばされた剣を見て負けを宣言しようとバルバルーの方をむく。バルバルーは清々しい笑顔を浮かべ気絶していた。

バルバルーの異常なHPを削りきったのだ。

「なんとか勝った?いや負けも同じだ。剣士が剣を弾き落とされるようでは。」

パパスは負けたと判断した。

しかし普段であれば負けたことに悔しがるはずであるのに何か嬉しさをも感じる自分に驚きをもっていた。

パパスには今まで並び立つ者がいなかったが、今回初めて好敵手を見つけた瞬間であった。

 

おまけ

パパスとバルバルーが激しいぶつかり合いをしている横ではパピンと剣王サムシンが静かにしのぎ合っていた。パパス達が剛であれば、パピン達は柔である。洗練された剣で切りあい、受け流し、身をかわしというように。パパス達の戦いとは一閃をかくし、舞いを舞うようであった。

しかし永遠にその同格の舞いが続くと思われたが突如として終わりを迎えることになる。どこからか凄まじい勢いで飛んできたメタルキングの剣の風圧により二人は仲良く吹き飛ばされ、仲良く目をまわし戦いは終わることになった。

 




戦いを書くのがこれほど難しいとは。戦いを上手く書く作者さをたちを尊敬しなおした今回です。


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友か義妹か。

あの訓練場の模擬戦からパパスとバルバルーは暇があれば自らを高めるため、ともにより高みを目指すために剣を交えるようになっていた。まあ城中に度々爆音のような衝撃や、音が鳴り響いていることに、頭を抱えているクレーム受け付け係のオジロンには不憫なことだが。それは良いとしても、パパスとバルバルーは今では好敵手であり親友とも言える仲になっていた。それはとりもなおさず、今までパパスと全力で戦える者がいなかったため全力で剣を交えることができた喜びからでもある。しかしそのような中で頭を抱えている者がいた。レイシアだ。確かにレイシアはカカロンにパパスとバルバルーの模擬戦が終わったら、すぐに召喚しなおすように言われていた。しかし、パパスがまだまだバルバルーと戦いたい。学びたいことがあるというのでバルバルーの送還を延ばしていたのである。それは剣王のサムシンも同様であるのだが。そしてそれは送還の延期だけでは終わらなくなってきていた。

「俺にあのつまらないところへ帰れというのか。帰ることなんかできるか。俺は俺の親友を助けるときめたんだ。困っている親友を見捨てて帰れって言うのかよ。できるはずねえだろ。」バルバルーの怒号が響き渡る。横ではパパスが目を潤ませて、いや熱い汗を目から流していた。そして抱き合うパパスとバルバルー。なんという暑苦しさだとレイシアは感じながらもバルバルーを説得する。

「私はあなたと王が模擬戦が終わったらすぐに召喚しなおすと約束しました。それにあなたの王を思う気持ちはよく分かりますが、私達も全力で王を助けますので安心して帰ってください。」

「カカロンの我が儘なんか知ったこっちゃねえ。俺はテコでも帰らねえぜ。帰らせたいなら力ずくでこい。」全くもって話にならない。召喚主に喧嘩を吹っ掛けてくる始末である。凍てつく波動をしようかとも思ったレイシアであったがパパスのことを考えるとすることができなかった。

悩んでいるレイシアにオジロンは「召喚は二人までしかできないんですよね。」と問いかける。

「はい。二名までしかできません。」とレイシアは丁寧にかえす。

「では、剣王さんにお帰りになってもらえばよいのではないでしょうか?」「!」レイシアともあろうものが、そんな簡単なことも忘れていた。バルバルーとのやりとりで暑くなっていたことと、剣王の影の薄さから思い付かなかったのである。ということで剣王にはお帰りにいただいた。そしてカカロンの召喚にうつる。「幻魔召喚カカロン」唱えたレイシアにかなりの負荷がかかる。レイシアだからこそ幻魔召喚と召喚をあわせてできるといった規格外のことができたのだが、今度は召喚より消費魔力が大きい幻魔召喚の二重召喚。負荷がかからないはずかない。だがなんとか召喚することには成功した。「オジロンちゃ~~~ん。合いたかったよ~」召喚されてすぐにオジロンに飛び付くカカロン。今まで召喚が遅れた理由を言うとカカロンとバルバルーが睨み合う場面もあったがなんとか収めることができた。ただ一つ問題があり、召喚されたカカロンの能力が半減していたのだが。今までが強すぎたためまあいいんじゃないかということになった。

そしてパパス達が十分に力をつけたこと。バルバルーという強力な仲間が加入したこと。グランバニア城の守りにも目処がたったことにより旅立ちの予定を明日から話あうことになった。「マーサ様。やっとあなたを助け出す目処がたちました。私の命にかえてもあなたは必ず助け出します。この絶対に返すことのできない御恩をかえすためにも。」レイシアは誰にも聞かれないように、しかし力強く呟いた。

翌日

これからどこへ行けばいいのか?今までえた情報から考えるとマーサを拐った魔物に会えばよい。そして魔物が住む場所もわかっていたのど簡単だと思っていた。しかしそんなに簡単なことではなかった。世界地図を広げてキングレオが言っていた、魔物の居場所を見てみると岩山に囲まれた場所であり、船では行けない所であった。

「これでは気球などのような空を飛べるものがないと無理ですね。」『気球?』レイシアがいう気球というものについては誰も分からなかったが、空からということは理解できた。しかし空からとはどうすれば?全く思い付かなかった。

「これでは埒があきませんので、私に少し時間をください。」とレイシアが言うのでパパス達はレイシアを信頼して解散することになった。

夜 レイシアの部屋

「まさか、ここまできてまた昔のように占いをすることになろうとは…。昔の私とは決別したはずなんだけどな。でもマーサ様の為に。」と独り言をいい。どこからか大きな水晶玉をもってきて精神集中をし、この先のことを占いだした。

 



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決まった!これからの行き先とメンバー。

どこかの城の玉座の間

そこで相対するはどこかで見知った下卑た笑みを浮かべるローブを着た魔術師のような男と、見た目は人間に近いがどこか違う、かなりの威圧感のあるこの城の主であるかのように玉座に座る男。

「ホッホッホッホ。やりますねぇ、この城を主の〇〇〇〇〇〇〇〇が外出中に手にいれるとは。」

「ふん。この城についてはやつより、私のほうが知っている。勝手知ったるというやつだ。それにこの城にいればまた強い者と戦うことができるからな。」「貴方はここで静観という訳ですか?」

「お前は裏で暗躍だろ。」

「さあどうでしょうね。」

「食えぬやつだ。」

「お褒めの言葉ありがとうございます。ホッホッホッホ。」

二人の男はのどかに話をしているようではあるが、玉座の間にはピリピリとした空気が漂っている。

玉座に座る男が話を再開する。「お前の仮の上司のワニと、新入りのお前に似た何を考えているか分からない神官風の男は今何をしているのだ?」

「仮というのは解せませんが、教祖様は着々と建てられている神殿の地下で我らが神に祈りを捧げているようです。貴方と同じ新入りは何をしているのやら。私でも把握できていません。ところでこの城の元の主はどこへ行ったのでしょう?」

「やつは人間の姿で人間界をさ迷っているのであろう。ほうっておけばいいだろう。」

「そうですか。そういえばもう一つこの城にもう少ししたら来客があると思います。盛大におもてなししてあげてくださいね。」

「ほう。楽しみだ。」

「それでは。」と魔術師風の男は言うと姿が消えた。

「久しぶりに楽しめそうだな。クックック。」

 

グランバニア会議室

レイシアが召集したいつも通りのパパス、オジロン、サンチョ、パピン、ついでにオジロンにくっついたカカロンとバルバルー。

「これからの指針が決まりましたのでお伝えしたく王を含め皆さんをお呼びしました。」

「さすがレイシアだ。でこれからはどのようにすればよいのだ。」レイシアに対してパパスが急かすように尋ねる。

「はい。これから世界を旅することになるのですが、まずはじめに向かうのは、天空の塔という場所です。ここを経由して天空城に参ります。」

『天空城?』

パパス、サンチョ、パピンは疑問符を浮かべる。

『あの城か。わたし(俺)は好きじゃないわ(ないな)』どうやら幻魔の二人は知ってはいるが嫌な場所らしい。

「天空城!一度書物で見たことがありますが。まさか実在するとは!」オジロンは驚きを隠せないでいた。

少々会議室はざわついたが、収まったのをみてレイシアは話を続ける。

「この城の主に協力を求めます。少し間の抜けたところはありますが。魔王の存在を危惧しているお方なので助力してくれると思います。」「レイシア、お前はその主という者を知っているのか?」

「…ええ。以前少々面識がありまして…。」あまり聞いてほしくないようにレイシアが話すのでパパスはそれ以上聞くのはやめた。少し空気が変わった感じがしたので、サンチョが話を元に戻す「では。その旅には、パパス王、レイシア様、バルバルー様、パピン兵士長そしてわたくしめになるのでしょうか?」とレイシアに問いかける。

「はい。そ「すまないがそれに私の息子のリュカもいれてはくれないだろうか?」えっ」

パパスが急にレイシアが話すのに割って入り話したことに皆は驚かされる。まだ1歳に満たない自分の子供をとても危険な旅に連れていきたいというのだ。驚かないほうがおかしい。

「待ってください。リュカ様はまだ1歳にもなられていません。危険すぎます。」

「坊っちゃんには苛酷過ぎます。」

レイシアとサンチョが反対する。

「しかしやはりリュカも家族がいない城にいるより、危険とはいえ兄上といるほうが幸せかも知れませんね。」

「いいじゃねえか。俺たちが守ってやりゃあ。」

「レイシアあんたアストロン使えたじゃない。それにこのメンバーで危険になることはないんじゃない。」

「パパス王のおっしゃることに従います。私にもピピンという不肖の息子がいますので気持ちは大いに分かります。うちは嫁がいますが、リュカ様には王もサンチョもいなくては寂しくてしょうがないでしょうし。」

オジロン、バルバルー、カカロン、パピンはそちらのほうがいいのではとパパスに賛成する。多数決で5対2となりリュカも旅に連れていくことになる。レイシア、サンチョは多数決に負けしぶしぶといった形になるが認めることにした。

そしてメンバー、これからの行き先が決まり近日中に旅立つことになった。

会議が終わり皆が去っていくなかでレイシアの元にカカロンがやって来た。

「いいの?」

「え?何がです…」

「あんたはあいつに会っても。」

「はい。まあ何とかしますから…。」

「そう。」

楽観的なようでいつも自分にきをかけてくれるカカロン。昔いたあの人に似ている彼女に感謝するレイシアであった。

 

 




次回から進行はやはり遅いと思いますが、ばんばん原作を破壊していきます。まあ敵キャラもⅤ以外からも介入させて少し増やし強化しようと思います。


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ポートセルミで船を探せ。

グランバニア城門

「ではオジロンあとは任せたぞ。カカロンもオジロンのことを支えてやってくれ頼んだぞ。」「わかりました。兄上、グランバニアのことは気にせず安心してお旅立ちください。」

「よかったわね、オジロンちゃん。わたしたちの仲を義兄様が認めてくれたわ。オジロンちゃんのことはわたしが守りますし、浮気などさせませんから安心していってらっしゃい。」

少しパパスは心配になったが、いつまでも別れを惜しんでいる訳にもいかないのでレイシアに、ルーラを使うように促す。

「ルーラ」レイシアが唱えるとパパス一行は光に包まれ空に舞い上がり見えなくなった。

「兄上。頑張ってください。」オジロンは心の中でパパス達の無事を祈っていた。

パパス一行がやって来たのは大きな港があるポートセルミである。天空の塔には船でしか行くことができないためにまずは船を手にいれようということになった。そのためポートセルミにやって来た。レイシアは一度ポートセルミに来たことがあったのでルーラが使えたのである。「大きな街だな。街の活気だけならグランバニアに負けず劣らずだな。」

「本当にそうで、いやそうだな。」パピンの答え方が変なのはグランバニアから旅立つ前に皆で約束したことによる。

「旅ではグランバニアの王という身分を極力隠していこうと思う。そのために皆には私のことはパパスと呼び捨てにして、またため口で話をしてもらうことにする。」とパパスが宣言したことによる。そのためにバルバルー以外のメンバーは戸惑っているところであった。

「私とパパスさんで乗せてもらえる船を探して来ますので皆さんは自由にしたいと思います。夜に宿屋で待ち合わせということにしましょう。」

「わたくしめもお供いたします。」

ということでパパス、レイシア、サンチョは船着き場に向かった。

「じゃあ俺達は酒でも飲みにいくか。パピンよ。お前は意外と酒に強そうだしな。」

「いいだろう、その勝負のった。」

と二人は意気揚々と宿屋の備え付けの酒場に向かった。

 

「いやあ。大きな船がこれほどあるとは。リュカよ見てみよ。お前の初めての船旅だぞ。」

「パパスさん。少し気が早いです。」

「悪い。久しぶりの船旅でついつい私も嬉しくなってしまい。船に乗るのもエルヘブンに行った以来だからな。」

「あのときマーサ様を連れて船まで帰ってきて「船をすぐに出せ」と言われた時には度肝を抜かれましたよ。」

「すまないなサンチョ。あのときは若気のいたりで。」

「まああのときのエルヘブンは大変な騒ぎになりましたからね。マーサ様が拐われたと。」

「レイシアお前まで。この話はここまでにしよう。あまりいい思い出ではないのでな。」

という話を三人でしていると目的の場所にやって来た。

「では私達を乗せてくれる船を探しましょう。数が多いので手分けして探すことにしましょう。」

とレイシアが言うので手分けして乗せてくれる船を探すことになった。

一時間後

「サンチョよどうであった?私の方は乗せてくれる船どころか、出港する船すらなかったぞ。」

「こちらも同じです。魔物の出現が頻繁になり、襲われる船が多くなったと言うことで出せないと言われました。」

「やはりお前の方もそうか。しょうがないレイシアに期待するしかないな。」更に30分後

「お待たせして申し訳ありません。何とか一隻だけのせてくれそうな船を見つけることができました。ただその船のオーナーに了承を取って欲しいということなので、今から向かいたいと思います。」

「さすがだな。私達が見つけられなかった船を見つけて来るとは。その船のオーナーとはどのような人物なのだ?」

「どうもルドマンという大富豪だそうです。サラボナという街に住んでいるようです。」

パパスとレイシアの話を聞いていたサンチョがサラボナという言葉に反応する。

「サラボナはここからではかなりの距離があります。少し遠回りになってしまいますね。」

とサンチョは危惧するが、いつも通りレイシアがどうするかを話す。

「私もサラボナという街は知りませんが、サラボナに近いルラフェンという街には行ったことがあるのでそこまではルーラで行けます。そこからは歩いて行くことになりますが。」

「よしそれでいこう。では宿に向かうとしよう。」

 

ポートセルミの宿屋兼酒場

「おい。聞いたか。なんでもルドマンさんが腕のたつ者を高値で探してるっていうぞ。」

「ルドマンさんとはお近づきにはなりたいのはやまやまだが、腕に自信がない俺たちには無縁の話だな。」

バルバルーとパピンのとなりからそのような話が聞こえてくる。

かなりの勢いで大ジョッキを空にしながらバルバルーが

「時間があれば面白そうだから行きたいんだがな。」

「そうだな。少し興味深い話ではあるな。」バルバルーと同じように大ジョッキを空にしているパピンもそのように返す。

「だが我々の旅は時間をかけていられないものだがらしょうがないな。諦めよう。」

「ああそうだな。パピンよパパス達が帰ってくるまでまだまだ飲むぞ。」

「ああ。」

 

その後パパス達が宿屋につくと大ジョッキに囲まれて酔いつぶれて寝ている二人を見ることになる。この二人が次の目的地が興味を引かれたルドマンのところだというのに気づくのは、二日酔いに悩まされる次の日になる。

 

 




サラボナでは時期は早すぎますが皆さんが苦しめられたあいつを出そうと思います。


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破られるか封印。ルドマン絶体絶命か!?

今回はルドマン側が主になると思います。


パパス達がまだはぐれメタル狩りにせいを出している頃。

 

どこかの祠

厳重な鍵で閉じられたはずの門が計り知れない力で壊され、屈強な門番は屍すらなく消し炭になっている。祠の中はというと長い螺旋階段が地下まで続いている。その螺旋階段を降りきったところには、蒼白い光を放つ大きく、奇妙な形の壺がある。その壺をいやらしく見つめる男。姿形は神に仕える神官や大僧正のようであるが、そのような清々しさ神々しさは微塵もなく、まさにその対極となる禍々しさが感じられる。顔も人間のそれではない。

「ほお、この封印を人間が施すとは大したものだ。だが人間にしてはというだけだ。復活したばかりでまだ本調子ではないがこれぐらいなら。」

と呟くと、おもむろに壺に手を触れる。

その手からも禍々しい力が強く感じられる。

するとそれまで静かな蒼白い光を放っていた壺がその男と同種の、いや警告を伝えるような赤色を発し始める。

「これぐらいまで封印を弱めておけばいずれ自分で出てこよう。出れたならばせいぜいうさを晴らすがいい。」と赤色を発する壺に語りかけるように呟くと満足そうな顔をして去っていった。

 

サラボナルドマン邸

「ルドマン様!」ルドマン家の兵士が血相を変えてルドマンの元に走ってきた。

「こんな朝早くになんなのだ?要件をいいなさい。」眠っていたところを起こされたルドマンは眠そうに目を擦りながら、不機嫌そうにそう言う。

「北の祠が何者かの手によって襲撃されました。」

「!!!」

それまで眠そうにしていたルドマンだが、兵士の報告を聞いたとたんに水をかけられたかのように意識が覚醒し、蒼白い顔をして取り乱している。ルドマンの隣にいる妻がなだめることにより少し落ち着くと、

「すぐに祠の中の壺の発する色を見にいかせなさい。」

と指示を飛ばすとその兵士は直ちにと言い走っていった。

ルドマンは兵士が帰ってくるまで祈るような気持ちで待っていた。ルドマンからはかなり深刻な感じがするので妻以外の誰もが近づけない感じが漂っていた。

約二時間後兵士が帰ってくる。ルドマンはいてもたってもいられず自ら兵士のところに赴き、尋ねる。

「どうであった?」

「あ、赤い光を発していました。」

ルドマンの願いは届くことはなかった。

愕然とし、呆然と立ち尽くすルドマン。誰も声をかけることすらできない。

立ち直り、意識を取り戻すまでかなりの時間を要したが、ルドマンお抱えの兵士を全て集めた。

「皆の衆よく集まってくれた。皆の働きに今後のサラボナの命運がかかっている。

皆は各地に赴き、いくらかかってもいいから腕のたつ者を集めてきてくれ。そして腕のたつ者の募集を各町でさせるのだ。」と指示を飛ばすと兵士達は急いで行動を起こす。

「何故今なんだ。まだ大丈夫なはずであったのに…」ルドマンの悲嘆にくれた呟きが口からこぼれていた。

 

そして今の時間軸に戻る。

 

「頭が割れるように痛え…。」「あぁ。頭がガンガンする。」「あれだけ飲めば当然ですよ。」

ポートセルミの宿を出ると、バルバルーとパピンが悲痛な声を上げ、レイシアがそれに返す。バルバルーとパピンは二日酔いに悩まされていたが、足を止めるわけには行かない。というわけでポートセルミの町を出るとルラフェンまで行くためにレイシアはルーラを唱える。

ルラフェンについた瞬間バルバルーとパピンは走っていき。もどしていた。二日酔いの上空を飛んだので当然といっても言い反応ではある。「レイシアよ。この町にお前の知り合いの魔法研究家がいるという話ではあったが、合いにいかなくてよいのか。」

「ええ。今はいいです。いずれ時間ができたらここにまた来ますので。」

パパスとレイシアはバルバルーとパピンを無視して話している。サンチョは二人の背を苦笑いをしながらさすっている。

少し収まったということでサラボナまで向かうことになる。

「パパス、わりいが今日は戦闘パスさせてくれや。ルドマンだかゴールドマンだか知らないが、そいつのところに着いたら今日の分まで働くからよ。」

「すいません。今回は、足を引っ張ってはいけないので私もパスさせてください。」

バルバルーとパピンが戦闘不能ということになった。

サラボナまでの道のりではミステリードール、キラーパンサーなどが現れたがパパスの威圧を受け逃げ去ったり、動けなくなったり、恐怖から襲いかかってくる魔物もいたがパパスが出るまでもないということで、サンチョが相手をすることになる。グランバニア周辺より遥かに弱い魔物なのでウォーハンマーを一振りするだけで吹き飛びいきたえていく。約6時間ほど歩き続け洞窟を抜けサラボナ周辺になると、よく兵士や腕に自信のありそうな旅人を見かけるようになる。

「ルドマンどのが集めているという兵士や旅人がたくさんいますね。」

「たいしたことねえやつらばかりだがな。」

「お前からすれば誰もがたいしたことなくなるぞ。」

サンチョ、バルバルー、パピンが話をしながら話している。

「なにか立て込んでいるようなのですぐに話をすることはできそうにありませんね。」

「ああ、気長にまつことになりそうだ。まあ暇潰しに参加してもいいしな。」レイシアとパパスも話をしている内にサラボナにとうちゃくした。



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男の思惑とブオーンの復活

サラボナ

サラボナの町はルドマンが各地で雇ってきた傭兵や、腕に自信のある者が金を求めて集まっていた。パパス一行はまずは宿をとりそれからルドマンとの面会を求めるようにしようということになった。

幸いにもルドマンの元に集まった兵士はルドマンが特別に用意した宿泊所にとまることになっていたようで、宿は問題なく確保できた。

「何故ルドマンさんがここまで多くの傭兵や腕のたつ者を集めているのか、少し町で情報を集めてみましょう。」

とレイシアが提案するので、今日いっぱいは役にたちそうにないバルバルーとパピンを宿に残して、パパス、レイシア、サンチョの3人が情報を集めるために町に出ることにした。ついでにいうとパパスは背中にリュカをおぶった状態である。

町に出て傭兵や兵士に理由を聞いてみるが給金がいいからきたという話ばかりでなんのために集められたのかは分からないという者がほとんどであった。なかには魔物の討伐に呼ばれたというものがいたが、ここまでの人数が必要なのかという意見も聞かれた。

町の人に聞いても噂ばかりで確実性のある情報は得られなかった。ただルドマンは屋敷にいるはいるが、誰も会うことはできないだろうという情報はありがたかった。

パパス一行は宿屋に戻ってきてこれからのことを決めることにした。

「このままてをこまねいていてもしょうがないので、いっそのこと私たちもルドマンさんに会えるかも知れないので傭兵として雇ってもらいませんか?」

「そうだな、このままルドマン殿が自由の身になるのを待っていたら、いつになるか分からないからな。いっそのってみよう。」

「それがよいとわたくしも思います。」

「いいんじゃねえか。」

「私もそれでいいと思います。」

レイシアの提案をパパスが了承し異論を唱える者もなく、皆が了承したので、明日皆でルドマン邸にいこうということになった。

 

次の日

パパス一行がルドマン邸に着くと既に多くの傭兵が集まっていた。どうやらルドマンが集まるように呼び掛けたらしい。ざっとみても200~300人ほどいるのではなかろうか。どうするべきかとパパスが考えていると、ルドマンが屋敷の二階のベランダにでてきた。

「皆さんよく集まってくれた。皆に集まってもらったのはある魔物を討伐してもらいたいからだ。」

ルドマンが今回集まってもらった理由を発表すると、場がざわつく。

「こんなに人数が必要なのか。」

「魔物の数が多いのだろう。」「俺一人で十分だ。」

等々色々な話が聞こえてくる。ルドマンが手を叩きざわつきを治めて話を再開する。

「今回討伐して欲しい魔物はブオーンという巨大な魔物だ。町一つ軽々と壊す力を持っている。集まってくれた者皆に5000ゴールドを与え、倒してくれた者にはなんでも望む物をあたえよう。」

町一つ壊せるという話にはかなりのインパクトがあったが、5000ゴールドということと、なんでも望みをかなえるということで恐怖よりも物欲のほうが勝ち場が盛り上がる。どの傭兵もやる気になったようだ。ルドマンが言うにはその魔物はいつ町にやって来るかはわからない。ただ2~3日中には必ず来るそのため待機していて欲しいということだった。そのため解散ということになった。

 

サラボナを一望できる丘

この騒動を引き起こした禍々しい男が邪悪な笑みを浮かべて見下ろしていた。「あの中にわしの意に添う者がいるといいが。居なければいないで人間の断末魔が聞ける。どちらに転んでも悪くない。」

と物騒なことを呟いている。

「このような所で何か悪巧みですか?」急にローブを纏った男が現れる。

「ゲマといったか。わしになにかようか?」

「貴方がなにやら面白そうなことをしているので少々気になりまして。」

ゲマと呼ばれた男がそう答える。

「お前はこそこそ人間の子供を拐う仕事があるのではないか?」

皮肉を込めた言葉を投げ掛けると、

「確かにそのような仕事が私にはありますが、それは部下の者が代わりに行っていまして。私は貴方の華麗な仕事を拝見して学ばせてもらおうと思いまして。」

「気にくわんやつだ。」

「よく言われます。ホッホッホッホ。」

ゲマのほうが一枚上手であった。

話が一時止み、禍々しい男とゲマは一点を見つめる。

「ほう、早かったな。もう少し時間を要すると思っていたが。」

男とゲマの視線の先には巨大な魔物が祠を破壊しながら立ち上がるところであった。

 

 



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VSブオーン

サラボナ

町の住民、そして集められた屈強な傭兵達でさえ驚愕に包まれていた。サラボナから約5キロ程離れた場所に突然とてつもなく大きな魔物が現れ、しかもそれが自分たちの討伐対象となる魔物であるからだ。

立ち上がった魔物ブオーンはサラボナに向かって歩き出す。

サラボナの住民はパニックになり大慌てで逃げ出す。まさに恐慌状態だ。それはなにも住民に限ったことではない。先程までは金に対する欲望で活気づいていたが、眼前にあのような化け物が現れれば気づくのである、叶うはずがない。死にに行くようなものだと。そうなると傭兵達も命あってのものだねだと一目さんに逃げ出した。

ブオーンを見たことにより9割程の傭兵が逃げ残りは、数える程である。

「まさかあれほどの大きさとはな。」

「ああ、ざっと見て5、60メートル程あるな。」

「どのように攻撃すればいいのだろうか。」

パパス、バルバルー、パピンはそれぞれ思ったことをいう。

パパス達は確かに強いが問題は大きさになる。あれほどの大きさでは攻撃を当てることすら叶わない。魔法は有効だがあいにくレイシア以外攻撃魔法は使うことができない。

思案にくれていると、

「大きさは変えることは流石にできませんが、相手を上半身ぐらいにまですることはできます。ただし少々時間がかかるので、時間稼ぎをお願いします。」「分かった。任せておけ。」レイシアが真面目な顔で話すのでパパス達は頷き時間稼ぎをすることになる。

ブオーンが歩みを進めるごとに大きくなるように感じる。

見た目は牛もしくは犬のようであり、二足ほこう。前足、後ろ足に蹄があり、目が三つあり体に似合わず意味がないような小さな翼があることぐらいか。

だんだん近づいてくるにつれて、残っていた傭兵も後退りし、しまいには逃げ出していく。

パパス達はサラボナに被害が出てはいけないということで外で迎え撃つことにする。

ついにブオーンがこちらにたどり着いた。見上げる程の巨体。もう残っているのはパパス達のみである。

「ル~ド~ル~フ~は~ど~こ~だ~?」やけにノンビリした話し方である。これなら時間稼ぎは簡単だなとパパス達は思う。どうやらルドルフとはルドマンの先祖のことらしいので、答える。

「ルドルフはもう亡くなっている。」「ル~ド~ル~フ~は~死~んだ~の~か~。」一瞬ブオーンの顔に悲しみが表れたように見られた。続けて時間稼ぎを試みる。

「なぜお前はルドルフを探す?」

「お~ま~え~た~ち~に~は~か~ん~け~い~な~い。」「イラつくしゃべり方だな。」バルバルーは本心を話すが、時間稼ぎがしやすい話し方ではある。

「ありがとうございます。もう大丈夫です。」レイシアが述べる。パパス達は少しは戦闘をしながら時間稼ぎをする必要があるかなと思っていたので、少し拍子抜けだった。

レイシアはかなりの魔力が込められているのが素人目にも分かる腕を振り上げ、地面を叩き「地割れ」という。レイシアが、叩いた地面が割れ初め、徐々に巨大な地割れになりブオーンに迫り、ブオーンを飲み込んでいく。

ブオーンは地割れに飲み込まれた。しかしやはり巨大なので予想通りに胸から上は残っている。

「う~。予想はしていましたが。少しショックですね。今までどんな魔物も飲み込んできたのに、ただ落とし穴にはまっただけのようなんて。挟まれてもけろっとしていますし。」

「いや充分だ。あとは任せてくれていい。」

「腕がなるぜ。」

「楽しめそうですね。」パパス、バルバルー、パピンはそう話ブオーンに突っ込んでいく。

レイシアは少し休んだ後に参戦する。それまではサンチョが守ることになる。パパスがその俊敏さでいち早く突っ込む、ブオーンもそれを迎え撃とうと蹄のついた前足?で殴り付ける。しかし、大振りな上動きが鈍いので容易に避け、地面に突き刺さった腕に乗りブオーンの眼前に走る。

「さみだれ切り」一撃一撃は弱いが、手数が圧倒的に多い斬激がブオーンに襲いかかる。的となる図体がでかいために面白いように技が決まる。

「俺にもやらせろよな。新しい技を見せてやる。」パパスと同じように腕をつたってきたバルバルーがパパスと入れ代わる。「つるぎのまい」バルバルーは大剣を振りながら舞う。バルバルーが舞うたびにブオーンを斬激が襲う。ブオーンは振り払おうと腕で殴ろうとするが、華麗に舞うバルバルーにはかすることもない。攻防一体の強力な技である。

「では締めは私が!美味しいところは頂きます。」そう宣言しブオーンに切りかかる。しかしブオーンは息を吸い込み、炎を吐き出す。激しい炎だ。巨大な炎がパピン、バルバルー、パパスを包みこもうとしたその時、「フバーハ」戦闘に遅ればせながら参戦したレイシアの魔法が、パパス達を炎より一瞬早く包み、ダメージを軽減する。

しかし炎が巨大であるために受けたダメージは大きく、三人は吹き飛ばされる。

やはりブオーンに一番近かったパピンの怪我(火傷)が酷いのでレイシアが近づいて治療をしようとする。だがブオーンの攻撃は終わってはいなかった。天に向かって咆哮をあげると、天から雷が降り注ぐ、受け身をとり地面に着地したばかりの三人を襲う。

『しまった。』三人が思った時には時すでに遅く、強烈な電撃による痛みが体全体を襲っていた。

最悪な事態が予想された。

軽減されたとはいえ、激しい炎、雷を受けたのだ。一般人であればどちらかひとつで即死しついるだろう。一般人であるならばだが。

ブオーンも勝ち誇ったかのような顔で見ていた。

「痛みはかなり強烈であったが、さほどダメージはないな。」「まったくだ。パパスの攻撃に比べたら屁でもねえ。」

異常な体力(HP)を持った二人はけろっとしている。

ただし、一般人よりかなり強いとはいえ彼らには及ばないパピンは気絶していた。レイシアはパピンにベホイミをかけ、パピンを治療したあと、パピンのことはサンチョに託し前線にたつ。

「お二方の攻撃を受けてもまだピンピンしているとは。流石に巨体なだけあってタフですね。」

「ああ、だが面白い。」

「パパスのいう通りだ。ゾクゾクするぜ。」

「戦闘狂だ…」『何か言ったか?』

「いえ何も。」三人は話終えると戦闘体制をとる。ブオーンはピンピンしている二人に驚いていたことにより攻撃してこなかっただけであった。

第二ラウンドが始まる。



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ブオーンとの決着。そして姿を現す元凶ゲマ。

第二ラウンドと言いながらブオーン戦はすぐに終わると思います。その後に少し原作ブレイクのオリジナルな展開を加えます。


サラボナが一望できる丘

「なかなかやりますね。さすがグランバニアの王とその一行ですね。ホッホッホッホ。」

「どうしてあの女が!?いや、まさか…」

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもない。だがあの女がもしもわしの思っている女であれば…面白いことになるな。」

禍々しい男とゲマは同じものを見ながら、別のことを考えていた。どちらも悪辣なことには変わりがないが。

ブオーンとの戦場

「皆さんは先程と同じようにブオーンの体力を削ってください。私が最後に強力なものを当てて終わりにします。早く終わらせないとサラボナに被害が出そうなので。」

「わかった。」「おいしいとこどりは納得できねえが、しょうがねえ。」

「ありがとうございます。」

パパスとバルバルーはまたブオーンに突っ込んでいく。しかしブオーンはもう間合いに入れさせまいと激しい炎を吐いて近づけまいとする。「二度も同じ攻撃が聞くと思うな。」

パパスはドラゴンシールドで完全に炎を防ぎながら着実にブオーンに近づいていく。

近づいてくるパパスに恐れを感じ天に咆哮をあげ雷を呼ぶ。

雷はスピードは早いが範囲は小さいので難なくよけることができた。そしてブオーンが気づいた時にはパパスはすでに間合いのなかに。

焦ったブオーンが巨大な蹄で殴りかかる。

「魔神切り」蹄と剣がぶつかり合う。体の大きさでは全く勝負にならないが。パパスの洗練された一撃は蹄を切り裂いた。

痛みでのけ反ったブオーンに対しパパスがさみだれ切りを、バルバルーがつるぎのまいを空いた胸部に浴びせかける。

『決まった、今だ!!』

パパスとバルバルーがレイシアに叫び、ブオーンの近くから退避する。

「ありがとうございます。煉獄火炎。」

地獄の赤黒い炎がブオーンを飲み込む。ブオーンが吐いた激しい炎とは異質であり、次元そのものが違う。ブオーンは炎に飲み込まれのたうち回るがり断末魔をあげると、その場に倒れた。

ブオーンが消し飛ばなかっただけでも驚くべきことであったが、より驚くべきことに、ブオーンが倒れたその場には、体調一メートルぐらいに縮んだブオーンとなにやら歪な鍵のようなものが落ちている。

戦闘が終わったと気を抜いたその時だった。

ブオーンの倒れるその横に突然現れたゲマ。

すぐにまた戦闘体制に移る三人。

「何者だ?」

「お初にお目にかかります。名前は知っていると思いますが、私はゲマといいます。」

ゲマという言葉を聞いた瞬間すぐさま激しい怒りに捕らわれパパスが切りかかり、レイシアが「メラゾーマ」と魔法を唱える。

強烈な斬激と魔法がゲマを捕らえたと思われた、しかしゲマの姿は蜃気楼のようにかき消える。

「いきなりとは恐れ入りますね。私は戦いに来たわけではありません。あなた方の戦いが素晴らしかったことと、この鍵を回収しにきました。」

ゲマの手には先程現れた鍵が握られている。

「この鍵はあなた方が持つには早すぎます。そのため回収しに来たのです。」そのようなゲマの話は、怒りに燃えるパパスとレイシアの耳には入っていない。「貴様がマーサを拐ったのか?」

「ええ。私が拐いました。」

怒りにもえるパパスにゲマは飄々と答える。

「まあ、顔見せもできましたし。鍵を回収することもできました。次はボブルの塔でお待ちしていますので、せいぜい死なずにお越しいただいて、再会したいものですね。」

『逃がすと思うのか(思いますか)。』

「やれやれ、仕方ないですね。私は戦う気にはなりませんのでジャミ、ゴンズ少しお手合わせしておあげなさい。」

ゲマが手を叩くと、大きなスパイクが付いた盾と大きな鉈のような剣を持ち、鎧を着こんだ豚?もしくは猪?のような魔物と筋肉質な馬のような魔物が現れた。

「ゲマ様。コイツら殺して食っていいですか。」

「ええ。構いません。では生きておられたら後程ボブルの塔で。」

とだけ言うとゲマの姿がかき消えた。

「くそ、逃がしたか。まずはあの魔物を退治することにするか。本当なら私一人でもいいのだが、レイシアお前も頭にきているようだからあの馬を退治してするがいい。」「ええ。お心遣い感謝します。」

「じゃあ俺は見学でもするとするか。」

パパスはゴンズと、レイシアはジャミと対峙する。

「オレヲヒトリデアイテスルダト。オッサンミノホドヲワキマエサセテヤルゼ。」

「ベラベラとうるさいやつだ。すぐにあの世に送ってやる。」「コロシテヤル。」

パパスとゴンズがぶつかり合う。

 

「ゲヘヘ、俺は女かついてるぜ。うまそうだ。せいぜい楽しんだあと食ってやる。」「あら、あなたは私が相手ということで後で後悔することになりますよ。まあもうすでに遅いですけど、あのゲマの配下ということで。」「俺はツンツンした女も好きだぜ。」

「……汚らわしい…。」

ブオーンに続きゴンズ、ジャミとの連戦となる。

 

 




ジャミ、ゴンズとの戦いです。もう原作を壊し始めていますが、次でしっかり壊れてしまうと思います。原作ファンの人には申し訳ありません。


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死亡フラグを立たせないために。ゴンズ、ジャミとの戦い。

色々とありえない戦いになりますがご容赦願います。


ゴンズの強烈な突進をパパスはひらりと最小限の動きでかわし、すれ違いざまに切りつける。「なに?」

パパスの一閃は確かにゴンズを捕らえていた。深く切りつけた筈であったが、固い手応えと、見た目から見ても小さな切り傷にしかなっていなかった。まさかという思いからでた一言であった。

 

「どうしたんだお嬢ちゃん。さっきからよけてばかりで、少しは攻撃をしたらどうだ。なんなら受けてやってもいいぞ。」

「べらべらとよく喋る馬ですね。」

ジャミとレイシアの戦いははたからみれば、一方的な防戦である。その戦いをパピンを抱えてやってきたサンチョが見てバルバルーに「レイシアさんは後衛タイプです。手助けしたほうがよいのではないでしょうか?」と問いかける。「大丈夫だ。あいつの戦いかたはよく見てから考えて攻撃する感じだからよ、今は考えている段階でこれからが本番だ。」

と言い余裕の表情で見守っている。

「それによ、この戦いに手を出したらあとでどうなるか。あの表情を見ればわかるぜ。」

確かにレイシアの表情はいつものように冷静そうには見えるが、ちらちらの表情が表れている。

「ふう。だいたいあなたの単調な攻撃は見切りました。」

レイシアはジャミの攻撃をかわした後にそう言い、グリンガムの鞭を振るう。三本の鞭が生き物のようにジャミに襲いかかる。的確に両腕、首に鞭の先端の刃が襲いかかり、薙いだ筈であった。しかし何かに弾かれ、全く無傷であった。

「どういうこと?」

傷つくこともなく、ジャミは痛がる素振りもなく、攻撃を繰り出してくる。その後もジャミの右、左の突きをかわしながら鞭を振るうがなにかに弾かれ全く有効打どころか、傷すらおっていない。

パパスの方はと見ると、レイシアと同様に何かに遮られているのか、ノーダメージではないが、あまり傷を負ってはいない。そこでレイシアは気づく。いくら固い皮膚を持っていたとしても、パパスのメタルキングの剣での攻撃であそこまでダメージをおさえられる筈がないと。

「パパスさん、この魔物達にはバリアのような者が張られています。今から解除します。」とパパスに呼びかける。

パパスは頼むというと思われたが、返ってきた答えは誰もが予想していなかった答えであった。いやバルバルーは言うのではないかと予想していたかのように微笑を浮かべている。

「いや、解除しなくてもいい。コイツらはバリアがあるから負けないと思っている。ならばあっても敗北を味わわせてやりたい。」笑いながら答える。

「しょうがないですね。私もお付き合いいたします。」

レイシアも苦笑いを浮かべながら自分も解除せずに戦うという。両者の発言を聞いたゴンズ、ジャミは怒り狂い『殺してやる』と襲いかかってくる。

「威力が弱いから攻撃が通らないというなら、バリアを破る威力の攻撃を加えるまでだ。」

ゴンズはバリアに任せて防御どせずに突っ込んでくる。鉈のような巨大な剣を大きく振りかぶる。そして降り下ろそうとしたときにはパパスはその場にいなかった。ゴンズの突進の勢いと、パパスの踏み込んで切りつける勢いが合わさりとてつもない威力の斬激になる。バリッという音とザシュッという音が交じりあって聞こえる。見るとゴンズの体に大きな切り込みが入っている。凄まじい痛みがゴンズを襲い吐血する。しかしパパスはそこで止まらない。

「これで終わりだ。魔神切り!」

パパスは凄まじい勢いで剣を降り下ろす。ゴンズの視界は互い違いになっていた。変だなと思った時には真っ二つになり、体が霧散していた。

 

レイシアもパパスに付き合うとは言ったが、もともと力の弱いレイシアは魔法で戦うしかないので、グリンガムの鞭をしまう。

「偉そうなことを言いながら諦めたか?」

ジャミは笑いながら蹄を降り下ろす。地面に深々と突き刺さる。レイシアは攻撃を低姿勢て避け、ジャミの懐に入り込む、ジャミの胸に手を当て「メラゾーマ」と唱える。ゼロ距離からのメラゾーマ。巨大な火球がジャミを押し上げるように天に上がりはぜる。

ゼロ距離からのメラゾーマにジャミのバリアは耐えられず、砕ける。だがジャミ本体にはダメージはない。

「まだです。イオナズン。」ジャミの頭上が爆発する。爆発の衝撃がジャミに襲いかかり、地面に叩きつける。ジャミが地面に叩きつけられクレーターが出来上がる。しかしレイシアの魔法は止むことはない。

「マヒャド。」ジャミの頭上から巨大な氷柱が降り注ぐ。その氷柱の内の二本がジャミの体を貫く。

「グア。」ジャミは痛みにもだえる。近づいてくるレイシアに対してジャミは「命だけは助けれくれ。助けてくれれば俺が知っていることは全てはなす。だから」

と命乞いをする。

「情報はもうキングレオさんから聞き出しましたからもういりません。だ·か·ら」レイシアは笑みを浮かべる。それはもう恐ろしい。その笑みを見たパパス達は何かを感じたのか緊急退避を行う。

レイシアは体から魔力を迸らせながら「ジゴスパーク」と唱える。地中から青黒い球体が浮かんでくる。その球体が収縮し、爆発すると同時に内包されていた地獄の雷が解き放たれ一体を、破壊し、焼き付くし、消滅させた。ジャミがいた場所から半径50メートルはなにも存在していなかった。唱えたレイシア以外は。この後地獄の雷が破壊し、焼いた場所には永遠に生命が根付くことはなかった。

 

サラボナ近くの丘

「ゲマの部下を圧倒か。あの女の素性は置いとくとして、これだけの力があれば十分にわしの力になってくれるな。フハハハハ。わしにもつきが回ってきたな。」

男は満足そうに呟くとどこかへ去っていった。

ボブルの塔の一室

「ほぉ、バリアごとあの二人を葬りさるとは、予想以上の強さですね。私もおもてなしの準備を念入りにしなくては。ホッホッホッホ。」

ゲマの不気味な笑い声がボブルの塔に響いていた。

 



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ブオーンの困惑

原作とは大幅に性格や過去を変えさせてもらいます。あしからず。


サラボナ外の戦場

「ゲマの手下を倒すことはできたが、ゲマを逃したことは痛かった。」

「居場所は情報通りということが分かっただけでもよしとしましょう。」

「そうだな。ではあれはどうすればいいのだろうか?」

「私の煉獄火炎を受けながらも、消滅せずに残っているということは、悪い魔物ではなくなっていると思うので、起こして話を聞いてみましょう。」

「分かった。そうしてみるか。」

ということで、縮んだブオーンを起こすことにした。

 

「おい、起きるんだ。」

パパスが呼びかけながら頬をペチペチと叩く。「う~ん。あれ僕は何をしていたんだろう。」ブオーンは目を覚ます。今まで戦っていたブオーンとは違い、つぶらな瞳には邪気など全くなく、純粋そのものであった。

(かわいい。)とレイシアは心の中で思って見とれていたが、パパスはそんなことには気づいてはいない。

「あれなんで僕は外にいるんだろ?ルドルフに封印してもらったはずなのに。」

ブオーンは首をかしげている。「おいおい、コイツ記憶を失ってんじゃないか。」

バルバルーがブオーンの発言からそう考える。みなも同じ考え方であり、戦っていたことさえも忘れていると思われた。

「いえ、記憶のこともありますが、今言った発言で『封印してもらった』という部分が気になります。」

とレイシアが気になった部分をあげる。もらったというのは相手に感謝の意を込めて使う言葉であるからだ。そのことも含めて聞こうとしたとき、

「おじさん達は誰?僕は何で外にいるの?ルドルフはどこ?」「まあ少し落ち着け。」

いきなりブオーンに怒涛の勢いで尋ねられたのでパパスが落ち着くように促す。

「ごめんなさい。少し混乱しちゃって、焦っちゃって。」

「落ち着いてもらえればいい。」

「なんか全くの別人になっていますね。」すんなり謝るブオーンに少し拍子抜けになるパパスにサンチョである。

「では私が説明しますね。」

「お願いします。お姉さん。」「はい。」

満面の笑みをレイシアは浮かべ説明する。

「一つ目の質問ですが。二つ目の質問とあわせて説明しますが、貴方が封印を破って出てきて、サラボナの町に襲いかかろうとしていたのを止めることを依頼された者です。

三つ目の質問ですが、ルドルフさんはなくなっておられます。」

「えっ………。」

レイシアの説明を聞いていたブオーンは、サラボナを襲おうとしていたということを聞いていた時には、顔色が青くなり、ルドルフがなくなっているということを聞いた時に、愕然とした表情になり。涙をボロボロ流し、悲痛な声をあげて鳴き始めた。

「ルドルフ~。なんで死んじゃったんだよ。また会いたかったのに。」

泣き叫んでいるブオーンにはかけられる言葉がなく、泣き止むまで待つことにした。

 

一時間後

「ごめんなさい。いきなり泣いちゃって。

それと、本当に僕はサラボナを襲おうとしていたんですか?」「大丈夫ですよ。

それと襲おうとしていたのは本当です。ルドルフさんの子孫の方に止めるように依頼されました。」

「そうなんだ。僕をルドルフの子孫に会わせてください。謝りたいんです。」ブオーンの言葉にみなは驚く。「お前を見ていると、真に謝りたいと言っていることは分かるが、町には連れていくことはできない。」

「えっ。どうしてですか?」

「町の者はお前を見れば恐れ、パニックを起こす可能性もあるし、お前も行けば嫌な思いをすることになるだろう。」

「そうなんですか…。」

パパスの説明を聞いてブオーンは悲しそうな表情をするが、納得はした。

「ええ。そうですが。ブオーンさんとルドルフさんの関係は話を聞いた限りだと良好な関係のようですので、町の人には見られないようにしてルドマンさんだけには会ってもらいましょう。」

レイシアの提案に皆は驚く。

「町の人の大半は避難していますが、まだ残っている人もいますし。帰る時には絶対に目撃されてしまいますよ。」

サンチョがレイシアに反論する。

「大丈夫です。パパスさんはもう知っていますが、これを使います。」

「ああ、これか。これなら行けるな。」

レイシアが取り出した物は、以前パパスがオジロンを尾行するときに、使用したものであった。

「消え去り草といいます。これをふりかけると姿がきえるというものです。」「そんなものがあるとは。」

レイシアの話にサンチョは驚きの声をあげる。「悪用されてはならないので、この草のことを知っている人はあまりいません。まず論より証拠使ってみせますね。」

レイシアが消え去り草の粉をブオーンにふりかけるとブオーンの姿は見えなくなった。

サンチョは驚くことしかできなかった。レイシアの言うことを信じていなかった訳ではないが、やはり半信半疑であった。しかし、目の前でブオーンが本当に姿を消したという事実を見せられたことにより驚きが込み上げてきた。

今気を失っているパピンが見たら同じように驚き、不埒なことを考えるだろうなと思うサンチョであった。

「では行きましょうか。しっかりついて来てくださいね。ブオーンさん。」

「はい。よろしくお願いします。」

「では行こう。」

パパス達はブオーンを連れてルドマン邸に向かった。



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ブオーンの過去

ルドマン邸大広間

大きな部屋で、豪華な調度品や、素晴らしい盾が飾られた部屋に家の主のルドマンとその妻、パパス、レイシア、ブオーンがいる。サンチョはパピンを宿に連れていき、宿に預けたリュカを迎えに行ったためにここにはいない。バルバルーもあらたまった場は苦手ということで宿屋にいるということであった。ルドマン邸は今でこそ落ち着いているが、パパスがやって来てブオーンの消え去り草の効果が消え、姿を現した時には騒然となりルドマンはパニックを起こし気絶したりした。今落ち着いているのはパパスとレイシアがルドマン達にブオーンの意思を伝えたことと、ブオーンの純粋な目を見たルドマンの妻が、ルドマンをなだめブオーンの話を聞いてあげましょうと言った為だった。

ルドマンの前に立ったブオーンは頭を下げ、

「ごめんなさい。サラボナの皆さんに迷惑をかけてしまい。」と誠実に謝った。

謝られたルドマンは目を丸くして驚いていた。確かに姿を現したブオーンは純粋な目をしていおり、パパス達にも話は聞いていたが、ここまで別人のように変わっていたとは思わなかったのだ。

ルドマンは意を決したようにブオーンに尋ねる。

「君のこれほどまでの変わりようと、我が祖先ルドルフとの関わりについて、パパス殿に簡単には聞いたが、君自身の口から聞きたいのだが、話てくれるかな?」

「はい。僕も聞いて欲しいです。」

「では、お願いする。」

「はい。」

 

過去 ブオーンの話ーーーーー「~~てことがあってよ。本当に大変だったぜ。」

「ルドルフらしいね。」

「そうか。ブオーンお前ならもっと上手くさばけると思うがな。」

「そんなことないよ。」

ああルドルフと話すのは楽しいな。少し前まで人間とこんなに仲良くなれるとは思わなかったな。

「おい、ブオーン?」

「なに?」

「いやボーッとしてたからな。前に話たことなんだが、急なんだけどよ、明日お前にサラボナのみんなに会って欲しいんだが。」

「エッ、そんな急に、心の準備が。」

「関係ない。明日だ。来いよ。」

「うん。」

ルドルフはいつも急に話を進めたり、思いつきで行動を起こしていたけど、いつもそれが上手くいっていたから僕はルドルフを信頼していた。僕は魔物ということで、ルドルフ以外の人間とは仲良くなれないと思っていたけど、ルドルフが上手くまとめてくれて仲良くなることができた。本当に嬉しかった。

 

サラボナの人とブオーンが仲良くなって数ヵ月後

 

「ルドルフさんブオーンさん、大変だ。町の東門からメタルハンターの群れが、町の南門からは突撃兵の群れがやって来て門番だけじゃ耐えきれない。助けてくれ。」

「分かった。俺は南門に行く。ブオーンお前は東門に向かってくれ。」

「うん。分かった。ルドルフも気を付けてね。」

「誰に言ってやがる。」

町の東門

「ブオーンさんが来てくれたぞ。」

「これで大丈夫だ。」

僕は町に被害が出ないようにするために、激しい炎や雷を使わずに、一体一体踏んだり、殴ったりしながら倒していきなんとか、メタルハンターが町に侵入するのをおさえることができた。最近は世界的にも闇の力が感じられるようになり、弱い魔物が凶暴化し、普段は町を襲うことなどないのに、今では襲われることが増えてきた。

「ありがとよ。お前がいてくれて本当に助かったぜ。」

「いいんだよ。僕もみんなの役にたてて嬉しいんだ。」

そのような幸せな時は長くは続かなかった。

日増しに闇の力が強くなっていくと、僕の記憶が抜け落ちることが起こり始めた。気がつくと僕のいる周りが荒れ果て、近くにいるルドルフが辛そうな顔をしていた。

僕はルドルフや町のみんなに聞いてみたけど、誰もが「何でもないよ。大丈夫。」と弱々しく笑いそう言った。その後、記憶がとぶことが頻繁になった。そうするといくら鈍い僕でも気づいた。僕もあの魔物達と同じように暴れているのではないかと。みんなは僕を気遣って本当のことを隠していると。僕は記憶がないときとはいえ、サラボナのみんな、そしてルドルフに迷惑をかけているということに胸が張り裂けそうなほど苦しんだ。そして決意した。

「馬鹿いうなよ。なんでお前を封印しなくちゃいけないんだ。」

「もうこれ以上みんなに、そしてルドルフに迷惑かけたくないんだよ。」

「迷惑なんて。」

「僕は知っているんだ。記憶がないときに暴れまわっていることを。」

「……。」

「僕は親友を記憶がないときにに傷つけたりしたらと思うと…うう…ぐす。」「ブオーンお前…。」

「お願いルドルフ。僕を友達と思ってくれるなら、今のうちに封印してよ。」「…。分かった。お前の意思が固いことを。世界の闇の力が少しでも弱くなったらすぐに出してやるからな。それとこれを。」

ルドルフは鍵を僕にくれた。

「この鍵は俺とお前の友情の証だ。この鍵を使えばいつでも俺の家に入れる。」

「僕の大きさじゃ、入らないよ。」

「うるせえ。話の腰を折るな。この鍵があるかぎり俺とお前は親友だ。」

「うん…。じゃあお願い。」

「分かった。さよならは言わねえ。また必ず再会するんだからよ。またな…親友!」

そうルドルフは言うと僕に封印をかけた。僕が最後にルドルフを見たのは、今まで見たことがないルドルフの泣き顔だった。そこで僕の記憶が途切れた。

 

皆がブオーンの話を黙って聞いていた。話を聞き、ルドマンの妻とレイシアは涙を流している。

そんな中、ルドマンがなんとか口を開く。

「ありがとう。こんな辛い話をさせてしまいすまなかった。ルドルフと仲が良かったのなら私達とも仲良くしてほしい。」

「えっ、いいんですか。」

「当然だよ。それに良ければルドルフとの思い出のつまったこの町にずっと住んでくれないか。」

「ありがとうございます。本当に嬉しいです。でも今はパパスさん達についていきたいんです。僕はルドルフと僕を別れさせ、ルドルフを泣かせたやつを許せないんです。それに友情の証の鍵も持っていかれちゃったみたいなので、取り返さなくてはならないので。」

「分かった。仕事が終わったらいつでもこの町に帰ってきておくれ。」

「はい。」

ルドルフはなくなってしまったが、子孫のルドマンとは仲良くやっていけそうだった。

「ああ、そういえば、パパスどのの願いも叶えなくてはな。このように最善の方法で解決してくれたのだから。」

「では、ポートセルミの船を貸して欲しいのだが。」

「なんとそんなことでいいのか。貸すなんて言わずに、差し上げよう。」

「本当にいいのですか。」

「ああ、構わんよ。それと今夜は宴会をしたいと思うので、宿屋にいる仲間も連れて今夜またきてくれないか。」

「喜んで参加させてもらいます。」

ということでルドマンからパパス達は船を譲渡してもらえることになった。

 

おまけ

「おお、パパス殿いける口ですな。」

「ルドマン殿もそのように見えますな。」

二人はかなりよっているように見られた。

「ところで、パパス殿。貴方には御子息がおられるようで。うちにも娘がおりまして。わしはあなたたちを気に入ってしまった。良ければうちの娘フローラを許嫁にしてほしいのだが。」「おお、構いませんぞ。」

「いいのですか。ああ、いい日だ。ハッハッハ。もっと飲んでくだされパパス殿。」

「おおっとっと。ハハハ。朝までいきましょう。ルドマン殿。」

リュカ、フローラの意思は関係なく、酔った父親同士で許嫁の約束がかわされてしまった。その後、パパスはレイシアにこっぴどくそのことについて叱られることになる。

 




私はビアンカをゲームでは選びましたが、この物語ではリュカの嫁がフローラになってしまいました。ルドマンさんならこういうこと言いそうだと思いまして。すいません。
またブオーンの過去についてはフィクションですのでゲーム本編とはまったく関わりはございません。


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番外編 戦士の休息

今回はパパスはかなり性格もろもろを改悪して書かれているので、パパスファンは見ないことをオススメします。


パパス一行はブオーンを仲間にし、サラボナから北東に位置する山奥の温泉にやってきた。

これはルドマンが教えてくれたところであり、美人の湯ということで山奥でありながらも人気が出始めたところであるようだ。

「では、宿をとるとするか。」「はい。さあパパス様急いでいきましょう。さあさあ。」

ルドマンになにかこそこそと教えてもらっていたパピンが仲間達を急かす。ルドマンと話たあとからなぜかハイテンションになっていた。

「なんでパピンさんはあんなに元気なんだろう?」

「あまり気にしない方がいいですよ、プオーンちゃん。」

「ちゃんは恥ずかしいよ。お姉さん。」   「いいの、プオーンちゃんは可愛いんだから。」パピンのハイテンションを疑問に思うブオーン改めプオーンに若干キャラが変わったレイシアが話す。プオーンはもうかなり仲間達に馴染んでおり、特にレイシアのお気に入なっていた。

宿屋

「な、なぜだ。何故なんだーー。」

パピンは宿屋の主人に話された事実を受け止められず、片を落として宿屋を飛び出していった。

「お連れ様は大丈夫ですか。」「ああ、ご主人は気にしないでくれ…。」

「はあ。」

宿屋の主人が告げ、パピンがショックを受けたことは、混浴ではなくなったということだった。そう以前までこの温泉は混浴であった、しかし最近は人気が出て若い女性も増えたことにより、配慮して混浴をやめ、時間を区切って分けるようにしたようだ。

宿屋に荷物を置き、パパス達は温泉を満喫していた。

「そう落ち込むなパピンよ。」「そうだぜ。人間の裸なんて見て何が楽しいんだ。」

「まあ、幻魔には分からんだろうが。いやいい、さあ後で酒を飲んで楽しもうじゃないか。」「お、分かってるねえ、パパス。」

「飲むのはいいですが、あまり無茶はしないでくださいねパパス様。」   「パパス様、バルバルー、サンチョ気を遣わせて悪い。もう大丈夫だ。」  「パパス様、坊っちゃんも湯を満喫したみたいです。」   「そうか。よし、じゃあそろそろあがって飲んだり、食べたりするか。」

『おう!』

 

「ああ、いい湯だったぞ。」

「そうですか。それは楽しみです。後で女湯になりますので、後程入ってきます。プオーンちゃんも一緒に入りましょ。」

「僕はいいです。お湯が汚れちゃうし、お客さんは僕を見て怖がると思うから。」

寂しそうにプオーンが言うので、パパスが後で宿屋の主人に頼むということで話はまとまった。

 

「上手い酒だな。レイシアお前も飲んだらどうだ?」

「いえ、私は未成年なのでいただけません。」『エッ』

レイシアが未成年だということに皆が驚く。

「一体何歳なんだ。」

「女性に年を聞くのは失礼ですよ。まあ私は構いませんが。

私は永遠の17歳です」

『………』

「さあ、飲むか。」

「おう。」

レイシアは顔を赤くしてうつむいていたが、そこに少し違和感を感じたのはプオーンだけだった。

 

一時間後

三人は酒によって〈返事がない。ただのしかばねのようだ。〉状態になっておりサンチョはリュカの面倒を見ながら苦笑いを浮かべている。「サンチョさん。申し訳ないのですが、今から温泉に行ってくるので後のことは頼んでよいですか。」

「はい。任せてもらっていいですよ。ゆっくり日頃の疲れをとるといいですよ。」

「ありがとうございます。」

と言うとレイシアは部屋を出て行った。

「うう飲みすぎた。少しトイレに行ってくる。」

「では私も行くか。」

パピンが起き上がりトイレに行くというので、パパスもついて行くといい、部屋を二人で出ていった。

「なぜパパス様もついてくるので?」

「お前のしたいことはなんとなく分かるからな。そちらはトイレではないぞ。」

「ではパパス様も一緒に行きましょう。」

「さすがに若い時にはよかったが、この年で覗きはいけないだろう。」

「いえ、断じて覗きではありません。社会見学です。若い女性の肉付きを見て、食料問題について考えるということです。」「そうか。そういうことにしておくか。」

パパスはパピンに続いて宿屋を出て、少し歩く。壁をに囲まれた行き止まりまできた。壁を隔てて温泉があるのが分かる。

「ここです。この壁に穴がありますので、ここから見学します。」

「パピンお前、宿屋を出てこのような場所を探していたのか。」

「ええ。ぬかりはありません。」

 

「パパス様、あの赤髪の女の子いいからだしてますよ。」

「たしかに、しかし私はあそこまで胸はなくてもいいと思うが。」

「そうですか。私は巨乳が大好きです!ああそういえばマーサ様も控えめでしたね。」

「何を言う。マーサはちょうどよかったぞ。」パパスとパピンの姿は決してマーサやリュカに見せられるものではなかった。「レイシアさんいませんね。」「レイシアを見たいのか?」

「ええ。男であったらレイシアさんは当然見たいものです。」「レイシアはお前の好みの体型ではないと思うが。」

「美人、いや美少女だから見たいんです。たしかに、体型は、かな~り控えめですが。貧乳とか微乳というか。あと物に例える言い方もありましたね。」

「まな板や洗濯板ですか…。」「そうだったな。昔の者は上手いこと例えたな。……?。パピンお前誰と話しているのだ?」「エッ、何をいっているんですか。パパス様に決まっているじゃないですか。」

「いや私は喋っていないぞ。」『まさか!』

二人は背後からなにか寒さというか、凍えるような殺気を感じた。まさに冷たく輝く息である。恐る恐る二人は後ろを振り向く。

鬼がいた。満面の笑みを浮かべながら、凄まじい殺気と威圧感を体から放つレイシアという名の鬼がいた。

「ずいぶんお楽しみだったようですね。」

「なぜお前がここに?」

「お二人が外に出ていくのを見ましたので。変だなと。」

「では最初から。」

「はい最初から。お二人が私をどのように見ていたかもしっかりと。今夜はじっくりとお二人とお話ししなくてはなりませんね。」

『!』

「さあ、お話ししましょうね。魔法も交えながら」

 

「ぬわーーっっ!!」

「うぎゃーー!!」

パパスとパピンの断末魔が山奥の村に山彦としてこだました。




次回から本編の旅に戻ります。


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天空の塔を目指して。船旅始まる。

天空の塔にいたるには魔法のじゅうたんが必要になりますが、魔法のじゅうたんがあれば船いらないじゃんということになるので、魔法のじゅうたんがなくても天空の塔にはつけるようにしました。ということでこの物語には魔法のじゅうたんは出ません。


ポートセルミの港

「これは凄い。」

「大変よい船を頂きましたね。ルドマンさんに感謝しなくては。」

「これほどの船をくださるとは、ルドマンさんは本当に喜んでおられたんですね。」

「ただの成金じゃねえのか。」

「ルドマンさんは成金じゃないよ。いい人なんだよ。」

「いったいいくらぐらいの船なんだろうか。」皆がルドマンにもらった船を見て思い思いの感想をこぼした。それほどルドマンがくれた船が立派であったからだ。

「皆さん、わしがこの船の船長を勤めるボルカノといいます。よろしくお願いします。」

皆が船に見とれていると、その船からすさまじくガタイがいい男が降りてきて自己紹介した。この船長のボルカノと船員は、全て優秀なメンバーで、ルドマンがお金をかけて集めてきた精鋭であった。

「こちらこそよろしくお願いします。私はパパスと言います。このメンバーのリーダーを勤めているが、気軽に話して欲しい。互いに敬語なしで話そうじゃないか。」

「おお、そっちのほうが話しやすい。他のお仲間さんもよろしく頼むよ。」

「よろしくお願いします。私はレイシアと言います。」

「俺はバルバルーだ。」

「私はパピン。」

「わたくしめはサンチョと言います。」

「僕はプオーンです。」

皆自己紹介をする。あまり些細なことを気にしない男たちであるから人間以外がまじっていても気にしなかった。

「ではボルカノ船長。天空の塔までよろしく頼む。」

「よし、出港するぞ、てめえら配置につけ。」

船はポートセルミ港を出航する。

 

「うわ~凄いな。僕は初めて船に乗ったよ。」「まあ確かにお前は初めてだろうな。あの図体じゃあな。」

「幻魔の世界には海ってないのか?」

「まああるが。俺もプオーンと同じく初めて船に乗ることになったんだけどな。」

プオーン、バルバルー、パピンはノンビリと船旅を楽しんでいる。

パパスとレイシアは地図を見ながらボルカノと話ている。サンチョは船室でリュカの面倒を見ている。

まあ、船の中では、パパスたちは、出てくる魔物と戦うだけしか仕事がないので、このようなことになっている。

「皆さん。ボルカノさんから話を聞きましたが、天空の塔がある大陸までは約1ヶ月ほどかかるようです。なので皆さんはゆっくりしていてください。手強い魔物が出たら及びしますので。

「僕はここで海を見てるよ。」

「俺は少し寝てくるかな。」

「う、なんか私は気分が悪くなってきたんで休ませてもらいます。」

ということで各々行動することになる。

プオーンは鼻唄を歌いながら熱心に海を見ている。

「楽しそうですね、プオーンちゃん。」

「うん。とても楽しいんだ。いつまで見てても飽きないよ。」

「じゃあ私も、船旅を楽しみましょう。横いいですか。」

「うん。僕もお姉さんと一緒に海を見ていたいから。」

ゆったりと時間が過ぎていく。しかし、そのゆったりとした船旅は長くは続かない。

「魔物だ。パパスさんたち、頼むぜ。」

「よし、行くぞ。」

「体を動かしたくてウズウズしてたぜ。」

「私には遠くの敵を任せてください。」

パパス、バルバルー、レイシアで敵を迎え撃つ、プオーンは小さくなってからあまりにも弱くなりすぎていたので後衛もしくは待機ということになっており、強さが戻ってきたら戦うということになっている。

「乗り込んでくるぞ。」

船員が言うと同時に幽霊船長が船に這い上がってきた。船の前方には巨大な深海竜、船の周りには痺れクラゲが大群で取り囲んでいる。

「よし私は幽霊?船長を。(幽霊というより機械だな。)」

「じゃあ、俺は深海竜だな。」「では、私はクラゲを相手します。」

幽霊船長は船員もよく遭遇する敵ではあるが、意外と強く、たった一人で船の船員が全滅することもある。

深海竜は恐怖の対象でよく船ごと沈められるということが度々ある。

痺れクラゲは一匹一匹はたいしたことはないが大群で襲ってくると、船が進めなくなり困る程度である。

やはりそれぞれの魔物に苦戦するのではと船員は思っていた。しかしそれは杞憂であった。

「はあ!」

パパスの洗練された剣の一振りで両断されて動かなくなる。

深海竜はバルバルーの剛剣で首を落とされ即死、痺れクラゲの群はレイシアの上級閃熱魔法ベギラゴンで一匹残らず消し飛んだ。

もう戦いというより虐殺とでもいうような戦いであり、船員は呆然としていた。

「お前らすげえな。これで安心して船を動かすのに専念できるぜ。」

ボルカノがそう言うと我に返った船員達が同意する。

「おう任せてくれ。」

パパスがボルカノに答える。

しっかりと役割分担がなされ、船は進んでいく。



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遥かなる頂上を目指して、天空の塔を登れ?

船旅も約3週間ほど経ち、パパス達の奮闘もあり、航海は順調に来ていて、予定より早く目的地に着くのではないかということであった。

ただ航海が進みごとに敵もいくぶん強くなっていた。ただしパパス達にとってはほとんど一太刀で終わる相手ばかりではあったが。

「最初は船旅もよかったが、だんだん飽きてきたぜ。」

「まあ、もう少しで着くとボルカノも言っていたから、あと少しの辛抱だ。」

「ああ~。強い奴とやりあいたいぜ。パパスどうだ。」

「おお、面白そうだ。では「やめてください。お二方が戦ったら、船はただではすみません。そんなに体を動かしたかったら、掃除でもしてください。」…すまない。」

というように暇をもて余している者もいれば、「あ~。魚が空を飛んでる。僕も空飛びたいな~。」と小さな羽を動かす者、

「坊っちゃん、海鳥が飛んでいますぞ。」

「ああ~。う~う~。」

「はい。うみどりですぞ。」

と航海を楽しむ者。

 

「ぎ~も~ぢ~わ~り~い~。ウプ」

と初航海に参っている者と皆様々である。

 

そうこうしているうちに、暇をもて余している者たちには幸いで、船員には最悪のことが起こる。

「グ、グ、グロンデプスだあ~。」

「なんだと、なぜこんなところで。」

魔物の襲来しかし、船員、ボルカノのうろたえぶりは普通ではない。

グロンデプスとは、深海竜の上位種である。深海竜でさえ、船を沈めることがあるのに、このグロンデプスは深海竜より遥かに強く、会えば必ずそこで航海の終了を告げる、死神とでも言える存在であった。しかし、目撃例はあまりないので、都市(海)伝説ではとも言われていた。その魔物が姿を現したのだからうろたえないほうがおかしかった。

「おお、やっと骨がありそうな奴がでやがったぜ。パパスよ、どちらの攻撃でコイツを倒せるか勝負しようぜ。」

「よかろう。私からいかせてもらう。」

というやいなや、グロンデプスに斬りかかるパパス、グロンデプスは巨体を船にぶつける、船が大きく揺れるためなかなか狙いが定まらず、パパスの攻撃はあたらない。そこを狙いグロンデプスはパパスを飲み込もうと襲ってくる。

「くっ。」

なんとかかわすが、かすっており、魔法の鎧がかける。その攻撃力の高さを見せるが、グロンデプスの攻撃はそれで終わることとなる。

グロンデプスはパパスに噛みつこうと首を伸ばした。それに漬け込み、バルバルーはグロンデプスの首のしたに潜り込んでいた。

「行くぜ、そして逝け。新技ギガスラッシュ。」

雷を纏った剣で軽々とグロンデプスの硬質な皮膚を貫き、前進しグロンデプスの巨体を両断する。

「うっしゃー。今回も俺の価値だ。」

「負けた。また修行のしなおしだ…。」

とバルバルーとパパスがやり取りしているなか、船員たちはまたもや驚愕の表情で凍りついている。

「あんたら本当に普通じゃないな。こりゃあ世界が平和になるのも近いかもな。」

船員はまだ誰も立ち直れていないが、さすがは船長、ボルカノはパパス達の強さに素直に感心している。

その戦いが今回の航海の最後の戦いになった。航海最後の晩は、グロンデプス料理で締めくくった。(スタッフがおいしくいただきました。である。)

 

「やっと陸地ですか。」

大陸について一番喜んでいたのはパピンであり、プオーンは名残惜しそうであった。

「ここから北に進んだ所に天空の塔があります。目的の塔はかなり高いために早くに見つけられるとは思いますが、到達するにはかなりの時間を要すると思います。気をつけて行きましょう。

レイシアの言う通り、少し歩いただけで目的の天空の塔を見つけることができたが、たどり着くまでに約1日、初の野宿をしながらいくことになった。魔物が全く出なかったのは、レイシアのトヘロスが効いていたからだということは、誰も知らなかった。

 

『………。』

誰もが言葉を失っていた。なぜか、天空の塔があまりにも高すぎるからだった。デモンズタワーを生で見たパパスや、登ったレイシアでさえも言葉を失っていた。

「……。行きましょうか?」

「ああそうだな。」

魔物以上に厳しい戦いになるのは容易に想像できた。

「中も広いですね。もうめげそうです。」

「陸にあがれたのですから、頑張りましょう。」

ヘタレかけているパピンをレイシアが励ます。「おい、皆来てくれ。」

周りを警戒しながら先を歩いているパパスが皆を呼ぶ。皆がたどり着くと凄まじい光景が広がっていた。

魔物の死体がそこら中に散らばっている。体がバラバラの魔物、穴だらけの魔物、焼け焦げた魔物という凄惨な光景であった。

「こ、これは…。」

「ああ、私たち以外にも何かがいるということだ。それもかなりの手練れが、ゲマの差し金かもしれん。気をつけていくぞ。」

『はい。』

魔物がかなり殺されていたために、ほとんど遭遇することなく登ることができた。

「皆さん、あちらを見てください。何者かが戦っています。」

皆が目を凝らして見ると、確かに何者かが戦っていた。以前戦ったジャミという馬の魔物の色ちがいと、なんとバーデンのような姿のオッサンである。

「助けなくては。」

「いや待て、少し様子を見よう。危なくなったらすぐに出ていけばいい。」

サンチョが呼び掛けると、パパスがそう制した。

 

「ウガー。」

ケンタラウスが太い前足で突きを繰り出す。

「ほう。なかなかの突きだ。しかし、まだまだですな。」

オッサンは余裕をもってかわす。

「足下がお留守ですよ。」

オッサンが足払いを繰り出す。ケンタラウスはまともに受け倒れる、そこに流れるような動きから拳を繰り出そうとして…こける。拳ではなく強力な頭突きを繰り出す。「あら~」ドガ、「ウゲ。」

なんとも間抜けな終わりであったが、オッサンが勝利を収めていた。




グロンデプスは青年後期に出る魔物ですが、パパスというかバルバルーの強さを示すために出させてもらいました。
あと、今回最後に出たオッサンはそうです、何年間もトロッコに乗っていたあの人です。


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怪しい男プサン登場。

どこかの城の玉座の間

 

「報告いたします。天空の塔に何者かが侵入したもようです。天空の塔との接続は断ったほうがよいでしょうか。」

「よい。そのままにしておけ。」

報告をした魔物に対し、大きな玉座に座る男が愉快そうに指示する。魔物は男の指示に分かりましたとだけ言い玉座の間を去っていった。

「あいつの言っていた通りになったな。あいつは信用できんが、あいつの情報はどうやら信じても良さそうだな。久しぶりに腕がなる。」

と一人言を呟き、侵入者が来るのを心待ちにしているようであった。

 

天空の塔

 

「あの者は何者であろう。興味はあるが、話掛けてもいいものだろうか。」

「いいんじゃねえか。かなり胡散臭い感じはするが、ただ者じゃねえことは確かだ。知り合って置いて損はねえ。例えそれが剣を交えることになってもな。」

「あのぉ…。」パパスの問いかけに対し、バルバルーが独自の考え方を話すと、誰かが話掛けてくる声が聞こえた。

「こんにちは。」

『!!!』

パパス達が振り返ると先程までケンタウラスとかなり離れたところで戦っていたはずのオッサンが目の前に立って挨拶をしてきていた。

(いつの間に私達の後ろに!)

(コイツただのオヤジじゃねえ。)

(警戒は絶やしていなかったのに。)

前衛に立つパパス、バルバルー、パピンは驚き戸惑っていたが、唯一戸惑っていずに、純粋なプオーンが話かける

「こんにちは。僕はプオーンと言います。そしてこちらからパパスさん、バルバルーさん、パピンさん、レイシアさん、サンチョさんにリュカ君です。」

「これはこれは丁寧に、私はプサンと言います。皆さんはなぜこの塔に?」

落ち着きを取り戻したパパスがプオーンに感謝しながら、話を引き受ける

「こちらもあなたにその疑問を持ちましたが、こちらから答えさせてもらうと、事情は話せないが、この塔の頂上に行く目的があって登っている。ではあなたはなぜ?」

「私はこの塔の頂上から見た景色は絶景だろうなと思いまして。」

プサンは違和感なくそう答えたが、プオーンは「いい景色だろうな。」と本心から言っているが、他は誰も信じてはいない。「もう一つお聞きしたいんだが。」

「なんでしょう?」

「下の階に転がっていた魔物はあなたが全てしたことですか?」

「いえ、あんな恐ろしいこと、か弱い私ができるはずないじゃないですか。」「そういうことにしておきましょう。」

話せば話すほど胡散臭さが増すプサンであり。誰もが早く離れたいと思っていた。あのバルバルーまでもがである。

パパスもどのように話を切り上げプサンと別れようかと思案しているうちに、プサンから絶望的な言葉がでた。

「どうやら私達の目的地は同じようなので、袖すり合うも多生の縁といいます。また一人では、心細かったんですよ。ともに頂上に行きませんか。」

はい

→いいえ

パパスは勇気を持って断りを入れた。

「私をここに置き去りにするのですか、酷い、そんなことしませんよね。一緒に行きましょうよ。」

はい

→いいえ

「そんなこと言わないで、一緒に行きましょうよ。」

はい

→いいえ

「そんなこと………………………………………ドラクエ恒例の無限ループ、パパスは耐えられなくなり、

「分かりました。共に行きましょう。」

と答えるしかなかった。

皆が大きな溜め息を吐くなかで、いつもなら話をまとめるはずのレイシアがまだ一言も声を出していないことにパパスは気付き、レイシアを見てみると、レイシアはいるのだか、装備が「知力の兜→鉄仮面」に変わっており顔を見ることができなかった。まあなにか理由があってのことだろうと思いそっとしておくことにした。

プサンが仲間入りしてからはプサンが一人で絶え間なく話をしている状態であり、そのプサンの相手をプオーンが喜んでしていたので、今日ほどプオーンを心強く思った日はないほどであった。またどういうことか全く戦闘には加わることはなかった。

「魔物が来るぞ。バルバルー、パピン行くぞ。」

『おう。』

「頑張ってください」

(コイツは)魔物はガーゴイルやゴーレム、スライムベホマズンなどでパパス達の敵ではなかったが、戦いの中でプサンを見極めようと思っていたパパス達にしてみれば、宛が外れ、ただ単に腹がたつだけであった。ただいいこともあり、皆が黙々と歩きどんどん進むことによって予想以上に塔の消化率が良かったことはいうまでもないことであった。




ゲーム上では娘以外には受け入れられていたプサンですが、この物語ではプオーン以外には警戒されているようにしました。ゲームでもそうですが絶対に怪しい感じが漂っていましたからね。


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ついについたぞ天空城!

更新が滞っていて申し訳ないです。


「はあ、長い道のりだったな。」

「僕は楽しかったな。宙に浮く床みたいなのとか。」

「ああ、あれか。初めて見たものだったな。」

「わたくしめは、あの床に乗っていた時は、生きた心地がしませんでしたよ。」

パパス達+プサンは荒れ果てて、瓦礫が転がっている、開けた場所に出ていた。そしてそこが目的地でもあった。パパス、プオーン、サンチョが話をしていたようにここまでの道のりは、楽ではなく、かつ宙を浮いて移動する床などがありたいへんであった。こちらの世界でいうとエレベーターみたいなものである。まあ周りの壁がないので高所恐怖症の者にしてみれば、限りない苦行を呈するものであった。

まあ、それだけでなくプサンという精神的な負担があったのはいうまでもない。

「やっと、ここまで来ましたねえ。」

『はぁ。』

プサンが暢気に今までの感想を述べると皆が深い溜め息をつく。

しかし、なぜパパス一向には足を止めているのか。それは目的地である頂上にはついたが、なにもそこには存在しなかったためである。

「レイシアよ。どうすればいいのだ(天空城とやらに行くには)」

信用できないプサンがいるため色々とはしょりながらパパスは問う。

「皆さんは天空城に行きたいのでしょう。」

『!!!』

皆は呆気に取られる。信用できないプサンから天空城というほとんどのものが知らないであろう、そしてパパス達の目的地の名が出たからである。

「何故それを」

「この塔は天空城に行くためのものであり。天空城に行く者しか来ることはないので。天空城に行きたければついて来てください。皆さんの疑問については天空城についたあと話ますので。」

そのようにプサンは話すが、皆はついて行こうかどうしようか迷っていた。

「ねえ、行こうよ。プサンさん言っちゃうよ。プサンさんは悪い人じゃないよ。僕はなんとなくわかるんだ。」

プオーンはプサンと頂上につくまで話をしていたため、プサンを信用していた。そのためにこのような発言が出たのだか、皆は踏ん切りがつかない。

「皆さん、プサンさんを信じてもいいです。ついていきましょう。」

突然、鉄仮面を着け異様な姿をしてずっと黙っていたレイシアが口を開いた。

「レイシアが言うことは間違っていたことはないし、このままここに居てもどうにもならんついていってみるか。」

「ああ、それでいいぜ。罠に嵌めようとするなら返り討ちにすればいいしな。」

「私はパパス様について行きます。」

前衛の三人が同意を述べると、皆はプサンを追い出い走っていった。

「これは?」

プサンの後をついていくと、途中で途切れている階段についた。

「なんだこれ、ついてきて損した、と皆さんは思っていると思いますがここから天空城に行けるのです。私がまずは行きますので、安全だと皆さんが思ったらついてきてください。」

というとプサンは躊躇することもなく階段を登り、途切れたところから足を出そうとする、皆は落ちると思い目をそらす。

しかし、悲鳴や落ちる音などはない。目を向けると、プサンは宙に浮いている?、いや雲の上に乗っていた。

「これに乗って天空城に行くんです。大丈夫落ちることはありませんし、この雲はどんな邪な考えを持っている人も乗れますので安心してください。」

「わーい。」

プオーンは喜んで雲に乗り込む。

「わー、フワフワしてる。みんなも早くきなよー。」

無邪気に声をあげるプオーンに言われると、まだ疑っていた自分がバカらしく感じ、苦笑いをしながら皆は乗り込んだ。

「では、天空城へレッツゴー。」

プサンがいうと雲は天高く舞い上がっていった。

「つきましたよ。」

皆の目には雲が一面に拡がっており、中央には大きな城がたっている。かなりファンダジーな光景である。

もう大抵のことでは驚かなくなっていたが、これにはパパス達も驚いていた。

「さあ皆さん驚いていないで行きますよ。」

またもやプサンがどんどん歩いて行く。

「何がなんやら。まあいいプサンが言ったことは本当だった。行こうか。」

『はい。』

先を歩くプサンについていく。

「目の前にしてみると大きいな。」町ひとつが城の中にあるグランバニアと同じくらいの大きさである。

「皆さん、ぼうっとしてないで手伝ってください。」

プサンは大きな扉を開けようと引っ張っているが、びくともしていない。

ということで皆で引っ張りなんとか開けることに成功する。

「はあ、やっと帰ってこれた。」

プサンは誰にも聞こえないように呟いた。

天空城の中に足を踏み入れると、魔物がいた。

「何故、ここに魔物が。皆気を付けろ。」

パパスが声をあげ、皆先頭体制をとるがいつになっても魔物がかかってくる気配はない。

そうしてしばらく睨み付けていると、人間のような神官服をきた魔物、悪魔神官が前に出る。

「お客人、城の主がお会いしたいと言っているのでついて来てください。主とお会いになるまでは攻撃もしませんし、罠もありません。そのようなことをすれば我々が主に殺されてしまいます。」

と言うと背を向けて歩いて行く。他の魔物は道を開けている。

「ついていって見るか。」

「そうですね。城の主に会うのが目的ですし。」

パパスがいい、パピンが頷くと皆も同意し、悪魔神官について歩いて行く。




次回城の主登場です。


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天空城での戦い。第一回戦。

「ああ、素晴らしい戦いであった。もう思い残すことはない…しかし、望みが叶うならばもう一度、もう一度、あのような血がたぎる戦いをできたら…。」〈その望みを叶えてやろうか。わしに手を貸すという条件つきではあるがな。〉

「何者だ。本当に私の願いを叶えてもらえるのか。」

〈わしは〇〇〇〇〇〇。叶えてやる。さあ闇に手を伸ばすのだ。〉

 

「……ラン様。…ュラン様。」「うん。なんだ?」

「はい、例の侵入者達が城に入り込みました。」

「そうか、では私の前に連れてこい。誰も手を出さぬようにな。」

「はっ。」

「クックック。やっと待ちに待った、この時がきた。せいぜい私を楽しませてくれよ。」

男を中心に空気がガラリと変わり、ピリピリとした空気に充たされていた。

 

「ここで我が主がお待ちかねです。お入りください。」

玉座の間に続く大きく重い扉が音をたてて開く。

扉が開くと同時にパパス達は息を飲んだ。今まで感じたことがないほど凄まじい威圧感に気圧され、背筋に冷や汗が流れるのが感じられた。だがここで足を止めてはいられないと、意を決して玉座の間に入っていった。

玉座の間はグランバニアや他の城とさほど代わりはなかった。たった二つのこと以外は。

一つ目は、通常の3~4倍程の大きさの玉座であること。

二つ目は、その大きな玉座に座している者も人間場馴れした巨体で、先ほどパパス達が感じた圧倒的な威圧感を持っていることである。

「よくぞここまできた。私は新しくこの城の主となったデュランという者だ。お前達が会いにきたこの城の主はいないといったほうがよいのかな。」

デュランはそう言うとプサンに目をやり、ニヤリと笑う。プサンは少し眉間に皺を寄せたが、すぐにいつもの飄々とした顔に戻ったので、誰もプサンに対して言った言葉とは気付いていなかった。

「ではこの城の真の主はどこにいるのだ?」

「ほう、勇ましいな。私の威圧にも負けず声を発することができるとは。期待できる。私を倒すことが出来たならば、全てを話してやろう。だが、私と戦うに足る力があるかを確かめさせてもらうぞ。」

デュランが指をパチリと鳴らすと、目の前の空間が揺らぎニ体の魔物が現れる。

頑丈そうな機械の体を持ち、足にはトゲつきの球体という見たことがない魔物と、巨大な亀のような魔物。こちらも甲羅にトゲがついており、攻防ともにこなせそうな姿をしている。ともにどの魔物図鑑を見ても載っていないであろう魔物であった。以前でたモンスターじいさんが見たら興奮して突っ込んでいくであろう魔物であった。

「さあ、まずは第一回戦だ。この世界には存在しないであろう魔物のキラーマジンガとランドアーマーだ。さあお前達の力見せてもらうぞ。」

キラーマジンガとランドアーマーが臨戦態勢に入る。パパス達も先頭体制をとろうとすると、パパスの前にスッとバルバルーが前にでる。

「本当はあの男と戦いたいんだが、アイツはパパスお前にやるよ。その代わりこの二体の魔物は俺に任せろ。かなり楽しめそうだ。それに第一回戦ということはまだ後にも戦いがありそうだから、戦力は温存しといたほうがいい。」

というと、バルバルーは大剣を構える。

「ほう、幻魔か、珍しい。ではいけ。」

デュランが檄を飛ばすと戦闘が始まった。

キラーマジンガが剣と金槌を時間差で降り下ろす。バルバルーは剣をかわし、金槌を大剣ではらい、懐に飛び込み横一閃に切りつける。しかしいったかと思われたが横槍が入る。後ろにいたはずのランドアーマーがキラーマジンガの前に立ち塞がる。キン、金属と金属が激しくぶつかりあう音がする。

「チッ。」

バルバルーの大剣が弾かれ、バルバルーが後ろに下がるやいなや、キラーマジンガがランドアーマーの影から飛び出し、尻尾にあるボウガンを放つ、バルバルーは大剣で撃ち落とすがまだそれで終わりではなかった。丸く球体になったランドアーマーが転がりながら突っ込んでくる。なんとか横にステップし体当たりをかわす、そこにキラーマジンガの金槌が迫っていた。

「がはっ。」

バルバルーは金槌の一降りをまともに受け吹き飛ぶ。

体勢を入れ換え着地と同時に壁を蹴りキラーマジンガに大剣を振るうがまたもやランドアーマーに弾かれる。

「クソッ。コイツらのコンビネーションはなかなかだ。それにあの亀の硬さは半端じゃない。しょうがねえ、卑怯そうであまり使わなかったが、今回は使うか。」

何か自分に言い聞かせるように言うと

「バイキルト。」と魔法を唱える。

バルバルーの大剣と体を赤いオーラが纏う。

「ここからが本番だ。」

 

「バルバルーが魔法を使うことができたとは。であのバイキルトとはどのような魔法なんだ?レイシアよ。」

「バイキルトととは物理攻撃を二倍の威力にするという魔法です。バルバルーさんはあまり好きではないみたいですが。」

パパスとレイシアのやり取りが終わるかというときに、バルバルー対キラーマジンガ&ランドアーマーの後半戦が始まった。



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第二回戦 人類最強!?いやいや最強ドラ〇ゴ引換券だ!!

マジンガ好きな人申し訳ありません。なにぶん文才がないので上手く戦いが描けずあっさり終わってしまいます。


「まずはテメェからだ、亀野郎!」

キラーマジンガの怒涛の攻撃を掻い潜り、腹というか装甲に蹴りをいれ、後退りしたところでランドアーマーに向かっていく。振りかぶった大剣を降り下ろす、ランドアーマーは亀特有の首を引っ込めた状態で守りにはいる。二倍の威力の剣は今までのように弾かれることはないが、それでも甲羅を傷つけることしかできない。

「クソッ、大防御か。狙えば防御、狙わなければ横槍ふざけやがって。」

愚痴を溢している暇はなかった。少し戦線から離れていたキラーマジンガがまた攻撃に加わる、剣と金槌の攻撃は早い上に、一撃一撃が重い。

「そうか見えたぜ、お前らの倒しかた。」

バルバルーはバックステップをし、間をあける。大剣を下段に構え守りの体制に入る。

 

「ねえ、パパスさん。バルバルーさんは大丈夫なの?」

「大丈夫だ。アイツの狙いは分かった。」

毎日のように訓練を共に積んできたパパスには確信めいたものがあった。

 

 

下段に構えたバルバルーにキラーマジンガが襲いかかり、少し斜め後方にランドアーマーがいつでも割って入れるように控えている。剣による攻撃は斜め前に進みながら、大剣を斜めにし流す、次の金槌の攻撃を自分にあたるギリギリまで引き付け、すんでのところでさける。金槌はバルバルーではなくバルバルーのすぐ後ろにいたランドアーマーを捕らえた。いくら甲羅が硬くても、丸出しの頭に当たればひとたまりもない。ランドアーマーはキラーマジンガの金槌により頭を粉砕されいきたえた。霧散していくランドアーマーを見ながらバルバルーはにやりと笑った。

「次はテメェだ。ガチで勝負だ。」

キラーマジンガとバルバルーの攻撃がぶつかり合う、流石に機械であり、ランドアーマーがいなくなっても変わらずに怒涛の攻撃で攻めてくる。先ほどと同じ様に剣の攻撃は受け流し、迫る金槌を持った腕を掴み動きを止め、開いた脇腹を大剣で凪ぎ払うように一閃する。キラーマジンガもかなりの防御力を誇るが、二倍の威力を持ったバルバルーの攻撃の威力には耐えられず深手をおう、ぐらついたところに後ろに周る

「面白かったぜ。」

バルバルーがキラーマジンガに呟くと、キラーマジンガは真っ二つに両断された。

 

「敵ながら見事だ。素晴らしい戦いであったぞ。」

「ふん。テメェに見せるために戦った訳じゃねえが、賛辞だけは受け取っとくぜ。」

デュランの称賛を悪態をつきながらも受け取ったバルバルーはツンデレ属性を秘めていた。

帰ってきたバルバルーにパパス、パピンなどがハイタッチをし、プオーン、サンチョ、レイシア、プサンが労いの言葉をかける。バルバルーはまんざらではなさそうな表情をしていた。

 

「よし、次だ。第二回戦は、この私に魂を捧げし世界最強の男〈偽〉だ。」

デュランがそう言うと、黒いローブを目深に被った男がどこからともなく現れる。

しかし、パパス達は驚くことなく疑問符を浮かべる。純粋なプオーンがデュランに

「〈偽〉ってなに?」

と率直に聞く。「多分大人の事情だから聞かないであげるのが優しさなんですよ。プオーンちゃん。」

「そうなんだごめんなさい。」あわててレイシアが優しくプオーンをたしなめるとプオーンは素直に謝り場は治まったと思われたが武士道精神をもったデュランが遠い目をして話始める。

「〈偽〉というのは文字通り偽物と言うことだ。この男自体はは遠い過去に実在したものだ。純粋に力を求め生前の私に魂を捧げた人間だ。男の姿形、性格、言動、強さは私の記憶をもとにして、ジェリーマンにモシャスさせている。そのための〈偽〉だ。」

「正直者だ。敵であってもあっぱれだ。」

「本当ですね。ゲマのような嫌らしさが全くありませんね。」

デュランが正直に話したことにより、パパス達の好感度は大幅にアップした。

ジェリーマンもとい、男は黒いローブを脱ぎ去った。流れるような銀髪に、切れ長で涼しげな目付き、顔はかなり整い、かなりのイケメンであった。青を基調にした帽子、服に鎧を着て、背中に剣を携えている。

「俺の名前はテリー。俺の相手は誰だ。なんならまとめてかかってきても構わないぜ。」

自信満々に話すテリーに怒りを表す人物がいた。

「パパス様。私に殺らせてください。私はイケメンが大嫌いです。その上あの態度殺意が湧いてきました。」「あ…ああ。ではパピンよ頼んだ。」

「任せてください。あの面人に見せれないようにしてやります。」

パピンの気迫に押されてパパスは了承した。

「なんだ、俺の相手はお前か。かっこよさでは勝負にならないな。まあ強ければいいがな。」

「全力で殺す。(主に顔面を念入りにたたく)」

 

 

「大丈夫でしょうか?相当挑発に乗ってしまっていますが。」「ああ。パピンはグランバニア一の戦士だ。私は信じている。話は変わるが、レイシア、お前はイケメンは嫌いなのか。ああいう男であれば普通女であれば黄色い声をあげると思うのだが。」

「あまり趣味ではありませんね。まあその話はおいおい話しますよ。」

「分かった。」

チェス好きパピンVS引換券テリーの戦いが始まる。

 

おまけ

「坊っちゃんはああいう男になってはいけませんよ。

E大金槌

E鍋のふた

Eステテコパンツ

Eシルクハット

でも十分生きていけるのです。この世界(Ⅴ)ではかっこよさなんて関係ないんです。」

戦場の片隅でサンチョがリュカになにやら話をしていた。



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イケメンテリーがまさか、まさかのアレ装備。

テリーはDQMのテリー並みに強化されていますが許してください。レベル23のテリーが多分軽くレベル40超えのパピンと戦うなら強化しないと、ということです。


天空城の玉座の間に剣と剣のぶつかり合う音が響き渡る。

パピンとテリーのともに洗練された剣が音を奏でている。テリーの剣は[雷鳴の剣]といい、とある国の国宝であった剣である。雷を纏った雷鳴の剣がバチバチと音をたてながらパピンに襲いかかる、

「おっと!」

最初は剣で捌いていたパピンだが、剣と剣が交わる度に、メタルキングの剣から伝導した雷によってすこしばかりのダメージを受けていたので、パピンはやむなく、避けることにした。

「なかなかの剣技であるが、私もグランバニアの兵士長であり、剣王と訓練してきた。そこから言えばまだまだだ。もう見切ってしまったぞ。」

テリーの剣筋を見切ったパピンは全てあっさりとかわす、テリーはその現実を受け入れられずに焦り始める。

「なぜ俺の攻撃が当たらないんだ。」

焦りから剣筋が乱れる。

テリーは破れかぶれで付きを繰り出す。

「甘い!」

テリーの付き出した剣をパピンは剣で円を描くように巻きこみテリーの剣をはねあげた。テリーの剣は宙にうき、すこしばかり離れた床に突き刺さる。パピンは剣をテリーの喉元に当てた。

「勝負あったな。」

「まさか、テリーから一本取るとはな。テリーよ、奴はやるぞ。出し惜しみはやめたらどうだ。」

「カッコ悪いからしたくはなかったんだが。しょうがない。」

テリーはそう言うと、バックステップで距離を取る。そして懐から何かを取り出す。金色に輝く牙のようなものでおもむろに口に装着した。

「ほえはおいはうほんほひはほひふ。ほえはえふへへはおへははへん。」

「こいつなにいってんだ?」

 

 

「イケメンがだいなしですね。」

「ああそうだが、雰囲気が変わった。少し危険かもな。」

 

 

場が和むというか、しらけていたところで、デュランが

「テリーはこの本気の状態では話せない。ということで私が翻訳しよう。」

「お願いする。」

パピンも正直にデュランに頼む。

「うむ、『これはオリハルコンの牙という、これさえ付ければ俺は負けん。』と言っている。」

「オリハルコンの牙?」

「伝説の金属オリハルコンでできた牙だ。世界中さがしても、この牙を装備できるのはテリーだけであろう。選ばれし者なのだ。ハッハッハ。」

『………』

「カッコいいな。」

「例え誰か装備できる人がいたとしても人には装備できないと言いますよね。」

「いてえやつだな。ブフッ」

「坊っちゃんは見てはいけません。」

パパス、パピンは何も言えず、レイシアは可哀想なものを見るように見ながら呟き、バルバルーは笑いを堪えながら、サンチョは呆れながらそのように言った。

 

「私はこんなやつと戦わなくてはいけないのか。はあ、恥になりそうだから早く終わらせよう。」

というや否やパピンは斬りかかる。テリーは床に突き刺さった雷鳴の剣を抜きパピンを迎え撃つ。

テリーの降り下ろす剣を下からはねあげ、がら空きになったところを袈裟懸けにきりつける。

ガキン

「なに!?」

テリーをとらえたと思った剣はテリー、いや、オリハルコンの牙で噛みつかれ止められていた。

パピンは引き抜こうとしたがびくともしない。テリーの顎の力は想像以上に強く全く動かない。

テリーはメタルキングの剣を噛んだまま、雷鳴の剣でパピンに斬りつける。

「クッ。」

パピンはなんとかバックステップで後ろに後退する。

テリーは追い討ちを掛けると思ったがかけない、何故だと皆が思っていると、テリーは左手を後方に引き魔力を溜める。

「不味い。」

パピンは回避に移るが遅かった。

テリーが左手をつき出す。

「ひはへひん」『ギガデイン』デュランの通訳と同時にテリーの左手から凄まじい雷以前ブオーンが放ったそれとは桁違いのものが放たれパピンに襲い掛かった。

「――――」

叫び声もあげる事ができない。雷がやむころにはパピンは黒く焼けただれて地に伏していた。

「ぷっ。終わったか。俺にオリハルコンの牙だけでなく、ギガデインまで撃たせるとは正直恐れ入ったぜ。」テリーは噛んでいたメタルキングの剣を吐き出し、オリハルコンの牙を外しながら感想をもらす。

 

「まさかギガデインを使えるとは。」

「ギガデインとは?」

「勇者のみが使えるという強力な雷の魔法です。何故あの者が使えるのかは分かりませんが。」

「私が教えた。ついでにジゴスパークも遊び感覚でな。」ドヤッ顔

「…。いやいい。レイシアよパピンの回復を頼む。私がパピンの敵をうつ。」「待ってください。パパス様。」

『!!!』

ふらふらでありながらも立ち上がるパピン。

「なぜ俺のギガデインを受けながら立ち上がれる。」

「もう使い物にならないが、魔法の鎧が踏ん張ってくれたからな。」

パピンが身に付けていた魔法の鎧が崩れ去った。

「もう目の前はオレンジ色になっていますが、まだやれます。」

「分かった。だが無理はするな。」

「はい。」

パピンはパパスにまだ戦うと了承をとる。

パピンは剣も鎧もない状態で勝てるのか。次回決着。



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決着、パピンVSテリー。そして始まる天空城最後の戦い。

バリバリに後付け感満載の話になりますが、ご容赦ください。


テリーとパピンは相対しているが勝負はもう決まっているように思われた。

テリーは傷ついてはいるものの、戦うには支障はない状態、かたやパピンは魔法の鎧は崩れ去りなく、メタルキングの剣もなく素手という状態であり、体も魔法の鎧が身代わりになったとはいえ、ギガデインの威力がすさまじく体はすでに悲鳴をあげている状態であった。

「悪いなパピンとやら。剣を拾わせてやり戦いたいとは思うが、お前の剣の腕は、悔しいが俺より上だ。そして今俺は、なにより勝ちに飢えている。ということでこのまま葬りさってやる。まあ安心しろ魔法ではなく、牙でもなく剣で決着をつけてやる」

「構わない。こい!」

テリーの宣言にさも当然だという表情をしまたにやりと笑みをうかべ、徒手で構えをとる。

そのパピンの笑みに嫌な感じはしたが、もう何もできはしないだろうと思い、テリーは剣を構えパピンに突っ込む

「五月雨切り。」

パパスとバルバルーが得意とする技であり、一撃一撃はあまり強くはないが、手数がかなり多い技である。その名のとおり五月雨のように激しい斬撃がパピンを襲う。

「大防御。」

パピンは構えをとりぽつりと呟くと受けてたつ。五月雨のように激しい斬撃をパピンは浴びながらも、パピンは平然としている。しばらくパピンは斬撃を受けていると、一瞬斬撃の雨が止んだ。どんなに剣の達人であっても無限に剣を降り続けることなどできない、そのためにできた一瞬の隙をパピンは見逃さなかった。大防御をすぐに時、両手を前につき出す

「真空波。」

パピンの両手から風の刃が繰り出され、テリーは血を撒き散らせながら吹き飛ぶ、だが倒れることはなく踏ん張る、パピンは素早く間合いをつめる。テリーは間合いを詰められることを嫌い、剣を振るうが当たらない。

「前にも言ったが見切っている。」

つき出された剣を持つ腕をとり一本背負い、テリーは受け身をとることができず床に叩きつけられ、吐血する

「まだだ。」

パピンは床に伏しているテリーに対し腰を入れて、拳を放つ。〈せいけんづき〉を繰り出した。すでに一本背負いできまっているようにも見えたが。パピンは念には念をいれて、しっかりと止めをさした。

テリーの体が溶け始め、ドロヌーバのような姿になるやいなや、霧散した。

「やった…。」敵が霧散したのをしっかりと確認すると、ふっと息をはく。「すごいです。パパス様パピンさんは剣を使って戦うより、戦い馴れているというか、強く感じられたのですが。」「パピンは格闘技に精通していて、剣を扱うまでは、ずっと素手で戦い、格闘のスキルをマスターしたのだ。そのために剣を扱わなくても然程かわらない強さだったのだ。」パピンは安心して気が抜けたのか、グラリと揺めき、地に伏す直前にパパスがパピンを抱き止め

「素晴らしい戦いであったぞ。あとは私達に任せてゆっくり休んでくれ。ありがとう。」

とパピンを称えるように静かに語りかけた。パピンは聞こえてはいないはずであるが、パパスが語りかけると笑顔になっていた。

「レイシア、治療を頼む。」

「はい。安心して任せてください。」

レイシアがパピンの治療に入るのを見届け、デュランに目を向ける。

「まさか、あのテリーまで倒すとは、本当に畏れ入った。」

「さあ、次はどいつだ。」

「まあ、焦るな。以前であれば、この城とも戦ってもらったのだが、今回はそこまで用意ができていない。」

『城……?』

疑問には思ったがいい感じで進んでいるので、空気を読んで誰も聞く者はいなかった。

「よくぞここまできてくれた。私が相手をしよう。死力を尽くしてかかってくるがよい。」

デュランは玉座から立ち上がり、マントをはためかせる。

『!!!!!!!』

「キャーーー!」

「坊っちゃん見てはいけません!」

皆驚き声を失い、レイシアは悲鳴をあげ、サンチョはリュカの目を遮る。

なぜか?威風堂々としたデュランがマントを開くと、その中は、ビキニパンツ一丁でありあとは、鍛えぬかれた強靭な身体であるが、ビキニパンツ一丁という凄まじいインパクト、ある意味痴漢、露出狂と間違えられてもしょうがない姿が皆を混沌に落としいれたのだ。

「なぜ驚く。我が鍛えぬかれた体に心を奪われたのか。フフフ、見たければ存分に見るがいい、そして脳に刻みつけるがいい。」

衝撃が強すぎて誰も我に返れずに、突っ込むこともできない。そのようなパパス達の前で自慢の肉体でポーズをとり続けるデュラン。それはまるで、戦いの場でステテコダンスを踊るか〇さまのようでもある。

少したち、やっと脳で整理でき我に帰る仲間たち、

「ふう、我が肉体を堪能したか。ではメインディナーとなる熱い血潮を飛ばす戦いをしようではないか。」

「皆手を出すな。私がデュランと戦う。」

「さあ、こい、強き人間の王よ。」

デュランが悦びに満ちた声でそのように言うと、弛んでいた空気がはりつめた物にかわり、部屋内の重力自体がはるかにましたように思われた。いや実感できた。

パパス対デュラン。想像を絶する戦いが始まる。

 

おまけ

「ふん、ふん。」

デュランが己の肉体を誇示するかのようにポーズをとる。その姿を参考にするように見つめる男が一人。サンチョである。

「坊っちゃんには見るなと言いましたが。あの動きは参考になります。わたくしめもステテコパンツ一丁で踊るステテコダンスを早く完成させなくては。」

パパスとは違い変なところにライバル心を燃やすサンチョであった。この後、かみ〇まさえも魅了するステテコダンスをサンチョが作り出したのはまたどうでもいい話である。




格闘スキルはドラクエⅧの物を使わせてもらいました。


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パパスVSデュラン

メタルキングの剣を構えたパパスと、巨大な刃のある槍を構えるデュランがじりじりと間合いを詰めながらにらみあっている。手にあせ握る状況である。ただ熱い戦いを望んでいるデュランは、間合いの詰め合いに焦れ突っ込む、といってもその速さは尋常ではない。この場でもその動きを追えているのは、戦っているパパスとバルバルーぐらいである。一瞬の内に自分の攻撃できる間合いに入りこんだデュランが、槍を横凪ぎに振るうが、パパスも冷静にバックステップをし避け、槍が過ぎたと同時に前にでて切りつけるが、捉えることができたのは、残像であり、本体にはかすることすらなかった。パピンとテリーの戦いでは剣を交えあう音が高らかに部屋内に響き渡っていたが、パパスとデュランの戦いは全く違い剣が空を切る音しかしない。

パパスとデュランは激しくうごきあい、剣や槍を振るうがかすることすらない。両者の攻撃はかなりの威力であり、一撃でも当たれば致命的な物であるが当たらなければどうにもならない。

「素晴らしいスピードと攻撃そして読みだ。だがこれはどうかな。」

デュランはまたもや一瞬で間合いを詰めると槍で突くがパパスは回避する。待ってましたとばかりに、目にもとまらぬ早業で拳を繰り出す。逃げ道を槍で防がれた状況から拳の連打を受けることになる。

「グハッ。」

今まで味わったことがないほどの痛みがパパスを襲う。少し後退したところに追撃の鎌鼬がパパスを襲う。なんとかしゃがみ回避したパパスは痛みをこらえ反撃に転じる。デュランは追撃の鎌鼬を放ったために一瞬の隙ができていた。「五月雨切り!」

少ない時間で発動できる技をパパスは選んだ。

「テリーと同じ技か。一度見た技であれば受けることなはい!」

デュランはそういい防御に徹しようとするができなかった。パパスの剣技はテリーのそれとは全く似て非なるものであり、斬撃の速さ、苛烈さ、威力は桁違いであり、デュランは回避することも叶わず五月雨のごときパパスの剣撃をその身に刻まれることになった。

『はあ、はあ。』

共に体は傷ついていたが。実質的に受けたダメージは同じであっても、人間と上級悪魔では体の作り、地力が違うことによりデュランのほうが有利であることはいうまでもないことであった。

「ああ、楽しいぞ。ここまで楽しい戦いは生前の勇者一行との戦いを越えるほどだ。永遠にこの愉悦を味わいたいが。お前もそろそろ限界のようだ。共に最大の攻撃を出し会おうではないか。」

「わかった。その提案に乗るぞ。」

デュランは華麗に宙に飛び上がり、螺旋状に回転しながらパパスに突っ込む、パパスはそれを新技で迎え撃つ。

「これが魔神切りから編み出した技だ。アルテマソード。」

とパパスが言うと、パパスの体から迸る闘気がデュランを取り囲む、そこへ全力で気を纏った剣を降り下ろす。

デュランも闘気の檻を突き破りながら突っ込む。

二人の攻撃が交錯する。

パパスとデュランは背を向けあった状態で立っていた。

数刻の後パパス、デュラン共に血を流し倒れた。

パパスは応急的な治療を受けたところで、デュランも共に治療してやってほしいといい、仲間達を困らせたが、パパスたっての願いであることから、話せるぐらいにまでパパスと同様に応急的な治療を施した。

「フフフ。パパスには感謝しなくてはならんな。私をこれ程までに熱くしてくれたのだからな。生前の勇者との戦いは4対1であったが。今回は1対1の真っ向勝負。ああ最高の時を過ごすことができた。私とパパスの戦いは引き分けであったが、お前達は先に2勝している。戦いの前に言ったとおりに、お前達の聞きたいことについては全て答えよう。」

キングレオから情報は得ていたが、デュラン程の地位の高い者であればより詳細な情報を得られるだろうとレイシアは考えていた。

「では、代表して私が聞かせてもらいますが、魔界への行き方、マーサ様を拐った意図、魔王の招待と弱点。答えられるだけでいいので答えて下さい。」

「あの方には多大な恩があるが、約束したことであり、口止めもされていなかったことであるから、私が知る限りのことを話そう。まず一目であるがー「裏切りですか?そうはさせませんよ。」

『!!!』

突如玉座の間に聞き覚えのある、不愉快な声が響き渡る。

「ゲマか。いつからそこにいた?」

「今まで水晶を通して見ておりましたが、だんだん話が悪い方へいきはじめたので、急いでここへ馳せ参じたので。丁度今着いたところですよ。」

「覗いていたか、趣味が悪いやつだ。早くここから出ていけ。お前の顔を見ていると今までの最高な余韻が、不愉快な気分になる。」

「そうはいきません。あなたは裏切りを働こうとしている。見逃すことはできません。ここで死んでもらいます。」

「できるものならやってみろ。」

「満身創痍な体でよくそのような大言が吐けますね。尊敬しますよ。ホッホッホッホ。」

デュランとゲマの話の進行を見守っていたパパス達であったが、レイシアがデュランに提案する。

「私達もゲマには恨みがあります。私達にも手伝わせてください。」

「普段であれば断るところだが、今回はこんな状態だ頼む。」

「はい。こちらこそよろしくお願いいたします。」

とレイシアは提案をのんでくれたデュランに満面の笑みを浮かべ答える。

「さすがに私でも皆さんを相手するのは荷が重い、ということで皆さんには黙っていてもらいます。」

ゲマはすうっと息をすい、部屋中に吐き出す。やけつく息をゲマは吐くと、回避手段がない、パパス達は麻痺し動けなくなる。

「では邪魔が入らなくなったところで、裏切り者に制裁を加えましょう。」

 



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ゲマVSデュラン 上級幹部同士の戦い。

パパス達はやけつく息により麻痺したためゲマとデュランの一騎討ちが始まる。ただし、ゲマは完全な状態であるのに対しデュランは手負いの状態でありふりであることは言うまでもない。もしこれが逆の立場であればデュランはゲマを回復して戦いになったかもしれないが、ゲマはそのようなことをすることは天地がひっくり返ってもない。

「さあ、反逆者は消し炭になりなさい。メラゾーマ。」

ゲマは直径3メートル代の火球をデュランに対し放つ。

「ふん、この程度か。」

デュランは迫るメラゾーマを槍で両断する。メラゾーマは真っ二つになり消し飛ぶが、メラゾーマが消えたと同時にゲマが死神の大鎌を振り上げて迫っていた。

「ホッホッホッ、メラゾーマは目眩ましですよ。」

ゲマは勝ち誇ったようにいい放ち、デュランの首を鎌で刈る、いや刈ったはずであった。首を刈られたデュランは残像であった。

「そのようなことも見切れない私と思っていたのか。ふん嘗められたものだな。」

残像が消えると同時にゲマの後ろからデュランの声が聞こえた。

「ぐはっ。」

ゲマは後ろに現れたデュランに槍で突かれ血を撒き散らしながら床に落ちる。

「これで終わると思うな。」

デュランは追撃にでる、ゲマに魔法を唱える時間も与えずに追撃にでるがゲマは焦ることはない。

「私は魔法だけではないのですよ。」

ゲマは下卑た笑みを浮かべ冷たく輝く息を吐き出す。

デュランはすでにゲマの間合いに入っていた為にもろに冷たく輝く息を受けることになる。デュランのスピードが裏目にでたことになる。

「くっ。」

急ぎゲマから離れるが、一足遅く防ぐためにあげた左腕が凍り付いており、着地した瞬間に崩れ落ちた。

「ホッホッホッホ、私は魔法だけではないのですよ。さすがに肉弾戦では貴方には勝てませんが。左腕を失った貴方ではもう肉弾戦でも私のほうが上でしょうがね。」

「まさかお前にここまでの怪我を負わされるとは。だが私は逆境には強いたちでね。終わりにさせてもらうぞ。」

「どうぞご自由に。メラゾーマ。」

またもやゲマは得意のメラゾーマを唱える。

「私も奥の手を見せてやる。」

デュランは槍を地面に突き立てる。

「ジゴスパーク。」

レイシアが以前に使った魔法でもある。デュランが槍を地面から引き抜くと槍先に青黒い球体がついている。その球体が収縮して弾ける。迫るメラゾーマを簡単には消し去り、地獄の雷が辺り一面に広がり、あたり一面を焼き付くし消滅させる。

「――――」

ゲマは断末魔をあげることすら許されない。

地獄の雷が辺りを焼き尽くすと満足したかのように消える。

パパス一行は、ジゴスパークの雷が迫る前に、レイシアが唱えたアストロンにより、鉄の塊になり難を逃れていた。

「ふう。助かったぞ、レイシア。まさかデュランがあのような技を持っていたとは。なぜ私には使わなかったのだろう。」

「パパス様とは魔法ではなく、力と力の戦いをしたかったのでしょう。」

アストロンがとけもとに戻り、麻痺しながらも話すことはできる状態であるので、そう話していると。

焼け焦げボロボロになり、多量の血を流しながらゲマは立ち上がる。

「私のジゴスパークを受けながらまだ立ち上がるのか。」

「まさか…、貴方に…このような奥の…手があった…とは。少々油断…が過ぎた…ようで…す。しかし、このま…ま去る…わけにはいき…ません。」

「逃がすと思ってか。」

立場はすでに逆転していた。もうゲマに勝ち目はないと誰もが思っていた。

「私の…最後…で最…強の魔法…です。くらいなさ…い。メラガイアー!!」

ゲマは体中から魔力を迸らせながら、魔法を唱える。メラガイアーはメラゾーマより上位の魔法で、最上級の火属性の魔法である。

だが、その魔法はデュランに向けて放たれたのではなく、パパスに向けて放たれていた。デュランは倒せなくとも、パパスさえ倒せればすべてが上手くゆくと思っての判断である。

「ここまでなのか。すまないマーサよ。私は力不足だったようだ。」

麻痺して動くことができないパパスに、メラガイアーが迫る、レイシアのアストロンも唱える時間がなく、パパスは観念し、目を閉じる。

メラガイアーが当たり爆風が吹き荒れ、巨大な火柱が立ち上った。

「ホッホッホッホ、綺麗…な花火です…ね。もう少…し見ていた…いのです…が、これ以…上ここにい…たら私…も命が危…う…い。残念…です…が。これだけで…もよしと…しま…しょう。」

ゼエゼエと虫の息のような状態のゲマはそのように呟くと、ゲマの回りの空間か歪みゲマは姿を消した。

 




デュランのジゴスパークはテリーがデュランに教えてもらった遊びでジゴスパークがでるということから、デュランはジゴスパークを使えるということにさせてもらいました。


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悲しき別れ

天空城の玉座の間は、それまでの戦いと、だめ押しのジゴスパークとメラガイアーで荒れ果てた状態になっている。

「なぜ、私はなんともないんだ。」

巨大な熱量をもったメラガイアーが迫っており、しかも動けないことから、パパスは死を間近に感じ、観念し潔く受け入れようとしていた。目を閉じていたが、メラガイアーの熱が近づいて来ているのはわかっていたが、それに飲み込まれることはいつまでたってもなかった。そして、今目を開けてどういうことか理解できた。目の前に黒焦げになった男がパパスの前に仁王立ちをした状態であった。

「どうして、私を庇ったのだデュランよ。もともと敵同士だったではないか。」

「さあ、なぜ…だろう…な。気がついた…らパパスお前の…前に立ち、メラガイアーか…らお前を守っ…ていた。まあ考…えるに、ゲマ…の思い通り…にしたくない…ことと、私に最…高の時間…を与えてくれた…ことに対する恩…義かもしれ…んな。」

パパスの問いかけに対し、ぽつりぽつりと苦しげに話す。

「レイシア頼む、我が恩人デュランを助けてやってくれ。」

「わかり―「いや…いい。私は…以前に一回…死んで…いる。そんな…私…が今回…もう全く思い残…すことのない…ほどの至福の…時間を味わう…ことができた。もう生に…しがみつくことも…ない。」そんな。」

デュランはパパスのレイシアに対する要望を断る。

「もし、転…生すること…ができたら、また…お前と剣を…交えたい…もん…だ。」

とデュランが最後に呟き息を引き取った。

ただデュランの顔には満足したかのような笑顔が浮かんでいた。

「クソッ、クソッ、クソッ、なんでこんなことになった。デュランよ。お前の敵は必ず私が討つ。待っていてくれ。」

パパスが涙を流しながらゲマを討つことを再度ここで誓った。

 

「パパスさんは落ち着きましたか?」

「はい。だいぶ落ち着いてきました。ところで、この天空城は動かすことはできましたか?」

「それはよかった。天空城のことなら大丈夫です。玉座の間はたいへんなことになっていますが、動かすことには支障はありませんよ。」

「そうですか。それはよかった。なら申し訳ないんですが、明日に向かってほしいところがありまして。」

「ゲマを倒しに行くんですか。」

「はい、聞きたいこともありまして。」

「ええ、分かりました。あと私も少ししてもらいたいことがあるんですが。」「はい、私達でできることなら。」

「よかった。では――――」

激闘が終わったあとで、プサンとレイシアが二人で話を進めていた。仲間たちはパパスを心配していたが、パパスが一人になりたいということで、各々個室を宛がわれ体を休めていた。

まあ、この場にいて、二人の話を聞いていても、ほとんど理解できない話であった。

 

次の日

「皆昨日は心配をかけて悪かった。もう大丈夫だ。」

パパスは皆に詫びたが、誰一人として攻める者はいず、誰もが痛々しいつくり笑顔を浮かべるパパスを不憫に思ったが、声に出すことはなかった。

「ええと。これからのことなんですが。」

レイシアが、空気を変えるために、話を本題に移行した。

「ああ、進めてくれ。」

「はい。これからプサンさんにお願いし、天空城をボブルの塔まで動かしてもらえることになりました。」

『動かして?』

皆レイシアが言った、城を動かすという部分に首をかしげる。

「たしかに、分かりづらいと思います。簡単に言えば、この城は空を浮かんで移動することができるということです。」

『!!!』

皆一様に目を丸め驚きを隠せないでいる。

「信じられないと思いますが、この城は飛べるのです。それについては後程実感してもらうとして、これからボブルの塔、つまりゲマのところに向かうことになります。」

レイシアがゲマという言葉をだした瞬間空気がピリピリとした物に変わった。「ただこの天空城の飛行スピードはあまり早くはないために、目的地までは少し時間がかかりますので、皆さんは体を休めてもいいですし、準備をしてもいいので、自由にしてください。私も色々と準備があるので少しお暇をいただきます。」

「うむ分かった。では解散とする。」

パパスは場を締めくくった。

「バルバルーよ少し付き合ってくれ。」

「ああ、分かった。」

 

 

ボブルの塔の一室

「まさか、デュランが盾になるとは。まあ情報が漏れることもなく、裏切り者も始末できたのでよしとしましょう。ただこれからあの者達もここにやってくるでしょうから、体の回復と出迎えの準備をしないといけませんね。」

ゲマは、いつもの人を不快にさせる笑いは出さずに、珍しく焦りをみせ、部下達を召集した。



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さあ、ボブルの塔へ。

天空城がボブルの塔を目指して1週間、パパス達は、思い思いに過ごした。

パパスはグランバニアにいた頃と同様にバルバルーと訓練を、ただグランバニアと違うことと言えば、

「キャー、パパス様頑張って~」

「パパス様、渋くてカッコイイ~。」

「バルバルーさんも頑張って~。」

等々、デュランが倒れ2日ほどたつと、封印されていた天空城の人々、天空人の封印が解け、目を覚ましたことにより、このような事態になっている。

「パパス、お前観客が増える度に弱くなっていないか?」

「ああ、ああまで応援されると逆に力が入ってしまって。」

「嘘つけ、顔がにやけてるぞ。」

「うっ……。」

「まあいいが、天空人の女にだけは手を出すなよ。」

「私にはマーサがいる…。」

「少しの間が気になるが、まあ聞け、昔天空人の女と結ばれた木こりの男が神の怒りに触れ、雷に撃たれて死んだことが昔あった。まあそういうことで禁忌であるということだ。」

「分かった。」このようなやり取りなども行われていた。それを遠く離れた所で、羨ましそうにパピンが見ていたのは、また別の話である。

別の場所では、「プオーンちゃんとリュカちゃん可愛い~。」

とプオーンとリュカが天空人の女性に囲まれていた。

「皆さん坊っちゃんの相手をしてくださってありがとうございます。」

「いえいえ、可愛いですし、いい子だから大丈夫ですよ。」

とサンチョも天空人とは良好な関係を築いていた。

レイシアは、あれこれボブルの塔への潜入の準備をしていた。そしてついにボブルの塔への潜入の日がやってきた。

 

ボブルの塔

ボブルの塔の前に、パパス、レイシア、パピン、サンチョが見上げる。リュカは危険だということで天空城に残してきた。

「大きな塔ですね。我々はつくづく大きな塔に縁がありますね。」

新しい魔法の鎧を着たパピンが気だるそうに呟く。

「まあそういうな。高所恐怖症は分かるが、我慢してくれ。」

パパスが励ます。

「皆さん、やはりというか、あの塔の門は鍵が掛けられていますから、頂上から潜入しましょう。」

レイシアは潜入方法を皆に伝えるが、それを納得しない者が1人、

「あのゲマのことだ頂上には罠があるかもしれん。この扉から入る。」

「しょうがねえな。俺も手伝ってやる。」

「私も登るのは嫌なので手伝います。」

「わたくしめも壊すのは得意です。」

パパスの一言によりレイシア以外のメンバーが各々の武器を持ち扉の前にたつ。

「待ってください。扉を―「ぬあ―。」「食らえや。」「ふん。」「はあ。」「がんばれ~」ああ~。」

皆が武器で扉を破壊する。

扉は大きな音を立てて破壊される。

レイシアは頭を抱えていた。

「こんな大きな音を立てたら、気づかれてしまいますよ。」

「ゲマへの挨拶がわりだ行くぞ。」

『おう!』

「おじいさんにもらった縄必要なくなってしまったな…。」皆はボブルの塔に入っていった。

 

「はっ。」

「ふん。」

「くらえ。」

「ベギラゴン。」

扉の破壊音を聞き付けてやってきた魔物達を皆で速やかに一掃した。

「たいしたことないな。これからどうするんだレイシア?」

「はい。まずは地下に潜りそこからゲマの元へ向かいます。」

「なぜこの塔の構造を知っているのだ。」

「はい。ある人にボブルの塔の地図を頂き、構造は全て頭にはいっていますので。」

「…。そうか。では案内頼むぞ。」

「はい。こちらです。」

レイシアが先頭を歩き皆がそれに続く。

出てくる魔物を倒しながら、迷路のような塔の内部を歩くこと約二時間、分かれ道にたどり着く。

「すいません。私もゲマと戦いたいのですが、少しやることがありますので、ここで私は別行動させてもらいます。終わり次第すぐに向かいます。あとこれを。」

レイシアは袋から何かが入った小瓶をパパスに渡す。

「これは?」

「世界樹の雫です。一滴垂らすことにより我々の傷を完全に治してくれます。ただし、一回限りですが。私がつくまでなんとか耐えてください。」

「お前がつく頃にはゲマはもう死んでいるかもしれんぞ。」

「頼もしいですが、しっかり聞くことは聞いてくださいね。」

「ああ。」

「あとサンチョさんを同行させてもらっていいですか。私1人では流石にきついので。」

「ああわかった。サンチョ頼むぞ。」

「はい。分かりました。」

パパス、バルバルー、パピン、プオーンはレイシアからゲマへの道を聞きゲマの元へ向かい、レイシア、サンチョは逆方向へ向かって行った。

 

レイシアサイド

「レイシアさん、私達は何をするのですか?」

「1つ手に入れないといけないものがありまして、そこで戦闘があるのでサンチョさんに着いてきてもらったということです。」

「そうですか。」

レイシア、サンチョがあるくこと一時間、

「あれは!?」

サンチョは突き当たりにいる魔物を見て驚きの表情をする。

宝箱の前に巨大な黒いドラゴンが佇んでいる。

「あの魔物はブラックドラゴンですね。あの魔物が守っている宝箱に私の目的とする1つのものがあります。少し手強そうですが行きましょう。」

レイシアはそのように言うと、サンチョにバイキルト、フバーハ、ピオリム、をかける。

「これは!!」

サンチョは自分の体の変化に驚く。

「サンチョさんの攻撃力、素早さ、ブレス攻撃への耐性を上げさせてもらいました。」

とにこりと笑顔で説明し、行きますよ。と言い、サンチョと共にブラックドラゴンに突っ込んでいく。




ゴンズはもうこの物語ではお亡くなりになっているので、ボブルの塔で苦戦したブラックドラゴンをゴンズの代わりにもってきました。


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因縁のゲマとの再会。

パパスサイド

パパス、バルバルー、パピン、プオーンはレイシア達と別れてから一時間ほど経っていたが、まだゲマのもとに辿り着けていないでいた。

「あれ、ここさっき通ったよ。」

「そうだったか。」

「うん。」

「おいパパス、お前迷ったんじゃねえか?」

「うっ。」

と言うようにパパス達は迷っていた。パパスは頼りがいがあるが方向音痴でもある。ある通路を抜け、おじいさんに話し掛けその後、また同じ道を戻るということをするぐらいである。

「パパス様、私は道を覚えています。差し出がましいかもしれませんが、ついてきてください。」

「頼む…。」

とパピンが先頭を歩くこととなった。

 

 

レイシアサイド

サンチョの振るうウォーハンマーがブラックドラゴンの背に直撃する、しかし固い鱗で守られたブラックドラゴンには致命傷には至らない。振り返り、激しい炎を吐き出すが、既にその場にはサンチョはいなかった。

「次は私です。マヒャド。」

氷属性の上級魔法マヒャドで生み出された氷柱が、ブラックドラゴンを襲う。

「グギャー。」

氷柱はブラックドラゴンの固い鱗を物ともせずに、切り裂きあるいは、削りとったりしている。ブラックドラゴンは襲いくる氷柱を、激しい炎でかきけす。

「今ですサンチョさん!」

「いきますぞ。はあっ。」

氷柱を消すべく、激しい炎を上に吐き出したため、ブラックドラゴンの腹部ががら空きになる。サンチョは全力で、ウォーハンマーを腹部に叩き込む。

ブラックドラゴンは声ならぬ断末魔をあげ、倒れると同時に霧散した。

「やりましたね、サンチョさん。」

「はい。レイシアさんの適格な補助があったからですぞ。」

「いえ、そんな。でも脳筋の他の方より大変組みやすかったですよ。」

「そんな、パパス様達に悪いですぞ。」

「私は誰とは言ってませんよ。フフフ。」

「これはご内密に。ハハハ。」

和やかに話した後にレイシアは宝箱を開ける。「それは?」

「これが私が探している物の1つです。さあパパス様の元に急ぎましょう。」

「そうですな。」

 

 

パパスサイド

パピンの正確な案内で大きな広間に出る。

「あからさまに怪しいとこだな。」

バルバルーが思った通りのことを言う。

「お前の考えは当たっていたようだ。皆来るぞ。」

パパスが皆に檄を飛ばす。

四方八方の空間が揺らぎだし、魔物が現れる。現れた魔物は黄金色に輝き、上半身が人間で、下半身が獣の半人半獣であり、長柄戦斧ハルバードを持っている魔物ゴールデンゴーレム。そして、前方の道を塞ぐように現れた魔物は、姿こそ同じであるが、それよりも一回り大きく、青緑がかった色をしている魔物、ゴールデンゴーレムの上位種セルゲイナスである。

それらの数は半端ではなく、かなり大きな広間(大体学校のグランドの半分ほど)にところ狭しと現れた。

「ゲマはここで我々を殺すつもりのようだな。皆いくぞ。」

「待てパパス。」

敵の群れに攻撃を仕掛けようとするパパスを、バルバルーがひき止める。

「お前は先に行け。ここは俺とパピンでなんとかする。お前はゲマの元へ急げ。」

「しかし、この数では。」

「お前は俺たちを信じられないのか?」

「分かった。ありがとう。必ず追ってこいよ。」

「ああ。それとプオーンお前もパパスについていけ。」

「え、僕も。」

「鍵を取り返しに来たんだろ。」

「うん。」

パパスとプオーンが、進もうとする前方に、セルゲイナスが立ち塞がる。

「お前の相手は俺だ!」

バルバルーがセルゲイナスが振るうハルバードを大剣で受け止め、鍔迫り合いに持ち込む。

「今だ!」

「行くぞプオーン。」

「うん。」

パパスとプオーンは走り、部屋を出ていった。「ふん。」

鍔迫り合いから、大剣で相手のハルバードを弾き、セルゲイナスを弾き飛ばす。

「パピン、大変だとは思うが、俺があの青緑の奴を倒すまで、あいつらの相手を頼む。」

「かなり骨が折れるな。まあ任せろ。」

「すまんな。あいつは他のやつらとは段違いだ。放っては置けんからな。」

バルバルーはセルゲイナスに、パピンは数えきれないほどのゴールデンゴーレムに戦いを挑んだ。

 

パパスとプオーンが次の部屋に入ると、気分が悪くなるような、憎しみや殺意に満たされた部屋に辿り着く。

「ホッホッホッホ。待ってましたよ、パパス王。どうやら死に損ないの邪魔者も一匹いるようですが。」

「気にするなプオーン。」

「うん…。」

「私が、こちらに来ると、分かっていたような口ぶりだな。」

「ええ。貴方のお仲間が足止めをし、貴方が一人で来ると予想していましたので。」

「そうか。マーサを拐かした件と、デュランを殺した件の覚悟は出来ているだろうな。」

「マーサの件は私ですが、デュランの件はご自分の力不足と、デュランの馬鹿さかげんが災いしたものだと思うのですが、ホッホッホッホ。」

「力不足は重々承知だが。デュランを馬鹿にするのは許さん。私があの世に送ってやる。」

「そうですか。それは楽しみです。私も今度こそは、貴方をあの世に導いてあげますよ。」

パパスはメタルキングの剣を抜き、今まで、ほとんど使っていなかったドラゴンシールドを、左手に持ち、構える。

ゲマは死神の大鎌を構える。

パパス対ゲマ因縁の戦いが始まる。果たしてパパスは未来を変えることができるのか。



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まさに死闘 パパスVSゲマ

大広間

「はっ。」

バルバルーの振るう大剣が、セルゲイナスのハルバードを弾き、体勢を崩す。そこでできた隙に大剣で切りつける。

「グギャー。」セルゲイナスの断末魔と共に右腕が宙を舞い、袈裟懸けに切り込みが入っている。

「ふん。」

パピンも体力は消費しているものの、ゴールデンゴーレムの数を順調に減らしていた。といっても殺すまでいかず、死にかけのものも多い。これが、今後の苦戦に繋がることになる。

傷つきあと一息にまで追い詰められたセルゲイナスが何か唱えようとする、そうはさせないとバルバルーがセルゲイナスに襲い掛かるが、ゴールデンゴーレムの妨害が入り失敗する。

「ベホマズン。」

セルゲイナスが唱えると、大広間にいる全ての魔物の傷が癒える。

「クソッ。」

「しまった。」

セルゲイナスの傷は完全に癒え、ゴールデンゴーレムは続々と立ち上がる。

バルバルー、パピンの状況は悪い方に向かっていた。

 

 

ゲマとパパスは一般人には見えないほどの速さで対峙している。パパスはメタルキングの剣を振るい、ゲマは死神の大鎌を振るいぶつかり合う。

「ふん。はあっ。」

「ホッホッホッホ。なかなかやるものでしょう私も。」

パパスは戦う前までは、大鎌を扱うことと、ゲマの細腕から接近戦を行えば、苦労せずに戦えるのではと考えていた。しかしゲマは細腕とは思えない力と、大鎌の重さを生かした流れるような動きで攻撃を繰り出し、パパスを攻め立てる。パパスの剣とゲマの鎌が何十合とぶつかり合い、激しい金属音を部屋内に轟かす。

パパスもゲマも共に全く傷つくことはなく、全くの互角の戦いであった。

「まさか接近戦でここまでやるとは!」

「私も貴方とデュランとの戦いを見てから少し腕を磨きましたので。」

ゲマはそう言いながら、嫌らしい笑みを浮かべる。自分の優位を確信しているからだろう。

「行くぞ。」

「いらっしゃい。」

再びパパスとゲマは、接近戦でぶつかり合い。今回も互角の戦いになると思われたが、そうはならなかった。「はあっ。ふん。」

「クッ、クッ。」

少しずつゲマが押され始める。パパスはゲマの戦いをよく見てその癖、弱点を見いだしたのだ。それからはパパスは攻勢にでて、ゲマは防戦一方になる。

キン、パパスはゲマの大鎌を弾き、切りつける

「まだまだですよ。」

「浅いか、しかし次できめる。」

強く踏み込み、完全にパパスの間合いに入る。ゲマが大きく息を吸う。

「ちっ冷たく輝く息か。」

パパスは大きく間を取る。冷たく輝く息は威力は高いが、範囲は狭い。

しかし、間を取ったパパスの目前には巨大な火球メラゾーマが迫っていた。

「しまった。」

パパスは咄嗟にドラゴンシールドを構えるが、抑えきれない。巨大な火柱が上がるが、ドラゴンシールドだけでは止めきれず、パパスは大きなダメージを受けることとなる。

「ホッホッホッホ。私のメラゾーマを受けてその程度とはやはり貴方は強いですね。しかし…」

ゲマが喋っている最中に、何処からか凄まじい爆発音と、衝撃波、そして塔が揺らめく感じがした。

「まさか!?」

「ホッホッホッホ。貴方のお仲間があの世に向かったようですね。」

「何!?」

パパスが少し気を反らし、隙ができた。その隙を見逃すゲマではない。

ゲマが宙を滑るように飛び、パパスに接近し、死神の大鎌を振るう。

パパスの隙を狙ったため、パパスの対応も遅れる、ただパパスも歴戦の強者であるため致命傷になるのは避けることができた。鎌の進行方向と同じ向きに飛ぶことにより、鎌によるダメージを極力減らす。

「先程の貴方と同じように浅かったみたいですね。しかし私は貴方と違い遠距離攻撃もあるんですよ。メラゾーマ!」

吹き飛び受け身をとっているパパスに、追い討ちとなるメラゾーマを放つ。

メラゾーマの直撃を受け、全身大火傷の為、意識が朦朧となっている。かなりの精神力で意識を保ち、パパス最強の、いやこの世界(ドラクエの世界)屈指の回復魔法ホイミを唱えようとする。しかし、もう死神は目前に迫っていた。「苦しまないように、首を跳ねてあげますよ。私の優しさにあの世で感謝してくださいね。」

ゲマは、この世のものとは思えないほど残忍で、冷酷な笑みを浮かべ、死神の大鎌を降り下ろす。

「パパスさんに手を出すなー。あと鍵返せー。」と言う声と共に、灼熱の炎がゲマを包みこむ。

「何者ですか。」

灼熱の炎に焼かれながらも、なんとか炎を振り払い、ゲマは尋ねる。

パパスの危機を救い、ゲマに手傷を与えたのはプオーンであった。

「まさか死に損ないで力を失った貴方に、邪魔されるとは全く思っていませんでしたよ。」

ゲマはいつも通りの笑みを浮かべてはいるが、そこには明らかにかなりの怒りが込められている。

「パパスさんは、殺らせない。そしてお前からルドルフに貰った鍵を取り返す。」

「ホッホッホッホ。不意打ちが効いたからといって、いい気にならないでもらいたいものですね。貴方には痛みにもがき苦しみながら、死んでもらいましょうか。」

「私の大事な仲間に手は出させん。」

「!!!なぜ貴方が、貴方はもう死にかけだったはず。」

ゲマが驚きの表情で見つめる先には、大火傷と鎌による傷を癒したパパスが立っていた。

「プオーンが作ってくれた時間で回復することが出来たのだ。プオーンありがとう。」

「はい、パパスのお役にたてて嬉しいです。」

「あとは任せてくれ、もうこのような失敗はしない。」

「本当にしつこいですね。つぎこそは跡形もなく消し去ってくれる。」

パパス対ゲマの第2ラウンドが始まる。



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断てるか、元凶ゲマとの因縁。

パパスが、ホイミによって生還する少し前

 

バルバルーサイド

 

「くらえ五月雨切り。」

バルバルーの威力、手数共に常識はずれの五月雨切りがセルゲイナスを襲う。「ウガー。」

セルゲイナスは、なんとかしと五月雨切りを止めようとハルバートを振るうが、バルバルーの大剣に触れることすらなく、無駄に終わる。そうこうしているうちにセルゲイナスは五月雨切りにより、数十、数百の斬撃が打ち込まれ、体全体に切断面から亀裂が入り、少しずつ崩れ始める。

「とどめだ。正拳突き。」

バルバルーは五月雨切りを止め、大剣を地面に突き立て、全力の拳を叩きつける。

バルバルーの拳は唸りを上げ、セルゲイナスの体に突き刺さる。五月雨切りにより亀裂が入り、崩れ始めていた体が、この一撃により粉砕される。

「意外に時間くっちまったな。それに体力も大分持ってかれた。パピンは大丈夫か?」

「そらそら。」パピンがゴールデンゴーレムを攻め立てる、パピンの怒濤の攻めを行うが、後ろから切りつけてくるゴールデンゴーレムによって一転防戦にはいる。

「数が多すぎる、それに体力的にもそろそろ限界だ。」

数えきれない数のゴールデンゴーレムを相手にして、もう一日中戦っているのではないかとも思われるほど、パピンは疲労していた。

周りはゴールデンゴーレムにすっかり囲まれている。

「万事休すか。」

パピンに最悪の結末が頭によぎる。

ゴールデンゴーレムは一斉にハルバートをパピンめがけて降り下ろす。

「しゃがめパピン!ギガスラッシュ。」

バルバルーの声に反応し、パピンはしゃがむと、パピンの頭上を雷を纏った斬撃が音速を越えた速さで過ぎていく。周りを見回すと、パピンを囲んでいた、ゴールデンゴーレムが上半身と下半身が離れ離れになり霧散している状態だった。

「やっと来てくれたか。」

「わりぃ、遅れた。思ったよりてこずってな。」

「二人で戦況を建て直すぞ。」バルバルーとパピンは背中合わせになり戦いを再開する。

 

 

「はあはあ。倒しても倒してもきりがねぇ。」

「ああ、やっと残りが数えられるぐらいにはなったが、もう剣を振るう力もない。」

パピンはそう顔をしかめながら弱音を吐くと、その手からメタルキングの剣が地面に落ちる。「ははは。握力が先に限界を迎えたようだ。これでは格闘技も使えんな。」

「パピン弱音を吐くな、と言いたいが、幻魔の俺も同じような状態だ。」

バルバルーは大剣を地面に突き刺すも、もう抜くこともできない状態である。

「私達はよくやったよな。」

「ああ、そうだな。」

「もう一度、嫁と息子に会いたかったな。あんまりいい父親じゃなかったな。」

パピンは回想し始め、死亡フラグをたて始める。

「パパスともう一度やりあいたかったぜ。」

バルバルーも諦め始めた。

その二人をゴールデンゴーレムが周りを囲い、一環した動作で、ハルバートをおもいっきり頭上から降り下ろす。

これまでか、という思いが頭をよぎった時だった。

「皆さん大丈夫ですか?危ない、アストロン。」

天使の迎えにきた声かとも思われたが、それは待ちに待っていた、仲間のレイシアの声だった。

ゴールデンゴーレムの降り下ろしたハルバートは、とのハルバートも鋼鉄と化した二人にあたり、刃が砕けたり、柄の部分が折れたりしていた。

「マジックバリア。」

レイシアは上下四方、レイシア、サンチョに魔法をかける。

「準備は整いました。サンチョさんも離れていますし、終わらせます。」

レイシアためていた魔力を解き放つ。

「イオグランデ。」

イオ系最上級の魔法、イオグランデが放たれた。その瞬間計り知れない爆発が部屋の中心で全てのゴールデンゴーレムと鋼鉄と化した二人を巻き込んでおこる。それとともに全てを破壊し、吹き飛ばす衝撃波が部屋中に波及する。

「私達もマジックバリアをかけていてよかった。」

レイシアがふぅとため息を吐く。部屋中爆発により荒れ果てた惨状になってはいたが、最初にかけておいたマジックバリアのおかげで崩れるようなことはなかった。

「すごい魔法ですね。残りは少なかったとはいえ、あれだけいたゴールデンゴーレムを、一網打尽に消し去るとは。」

「ああ、俺達が頑張って一匹、一匹倒していたのが馬鹿らしくなるな。」

アストロンが解けた二人は、周りの惨状を眺め、感想をもらす。

「お二人は大丈夫ですか?いま回復しますね。」

「大丈夫だ。それよりパパスとプオーンの方心配だ。俺達は後で向かうから先に行け。」

「はい。分かりました。では先にいかせてもらいます。」

レイシアはパパスとゲマが戦う場を目指して走り出した。

 

 

 

再開されたパパスとゲマの戦いは終始パパスが押していた、再開された後に放たれた冷たく輝く息を一度みたことにより、呼び動作で息を吐き出す直前に、ほんの少しのけ反るという動作を見切ったことにより、冷たく輝く息がフェイクか、フェイクではないかを見切ったことが、大きかった。

それにより、息を吸ったからといってすぐに回避する必要もなくなり、踏み込んで一撃を叩き込むことができた。

「はあはあ…、私がこのように追い詰められるとは。」

ゲマはパパスの攻撃から逃れる為に、空中に逃げていた。ゲマにはもい余裕がなく、体からは酷く出血をしていた。

「たかが人間ごときに。またもやこの魔法を、使うことになろうとは。」

ゲマは両手を天に向かってあげると、小さな赤い月かと思える火球ができあがる。

「まだまだ。巨大に、そして圧縮して…。くらいなさい、メラガイアー!!」

とてつもなく巨大なメラガイアーがパパスを襲う。以前の記憶が鮮明に思い出される。

「デュランにもらった命をゲマを倒す前に散らすわけにはいかない。しかしどうしたら…。」パパスは避けることも、受けることもできずに呆然としていると。部屋に入ってくる一人の姿。

「マホカンタ。」

パパスの体が青いオーラに包まれる。

メラガイアーがパパスにあたったその瞬間、メラガイアーが向きを変え、放ったゲマに向かっていく。

「まさか、マホカンタを使うとは。」

メラガイアーがゲマに直撃すると、火球が爆発し、壮絶な火柱が巻きおこる。火柱が上がる天井と床が赤くなり炭になっていることからも、その激しさがよく分かる。

火柱が収まると、ローブが焼け落ち、全身がいまにも朽ち果てようかというほどの、大火傷を負ったゲマが宙に浮いていた。「ゲハァ。これは…引かざるを…えませんか。」

「逃がしはせん。アルテマソード。」

空間が揺めき、姿を消そうとするゲマを、パパスが放つ闘気が取り囲む。

その闘気の檻ごとパパスは気を纏った剣で叩き切る。

ズガシャ。

なにかが割れる音と、切り裂く音が交じった音が鳴り響く。

ゲマは下卑た笑みを浮かべ

「一瞬遅れましたね。私はしぶといですよ。」と言い、パパスの剣がゲマをとらえる前に姿を消した。

「くそ、またもや逃げられたか。」

 

 

 

 

「はあはあ、この鍵は、絶対に渡すことはできませんからねえ。これさえ、こちらが押さえておけば。」

空を飛びながら、そのようなことを呟く、ゲマの前の空間が、揺らぐ。

「貴方は。このような所にどういったご用で?私を助けに来てくれたのですが?」

「…………」

「な、何を!?げぐぁ~っ!!。」



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プサンがまさかの……!!

「では、嵌めめますね。」

ボブルの塔での第一の目標のゲマを捕らえ、魔界への行き方を問うということは果たすことが出来なかったが、第二の目標は、ブラックドラゴンの持つ〈竜の右目〉をてに入れ、ゲマの持つ〈竜の左目〉をてに入れたことにより果たされようとしていた。

レイシアは〈竜の右目〉を竜の像に嵌め込み、そしてまた、〈竜の左目〉を竜の像に嵌め込む。

竜の像に両目が嵌め込まれると同時に、何かが音をたてて動き出す。

今までレイシアが右目、左目を嵌め込んでいた竜の像の口が大きい音をたてて開き始める。

『おお~。』

皆が竜の像の口が開くのを見て、感嘆の声をあげる。

開かれた竜の像の口から淡い光が漏れている。つまり、この竜の像の口の中に、レイシアが言う目的の物があるということを表していた。

レイシア達が竜の口から中に入る。竜の像の中は小さな部屋になっていた。その中心部に淡い光の発生源となる、なにかしら不思議な感じがする一本の竜を模した杖が刺さっていた。

「なにか不思議な感じがする杖だな。これがレイシアお前の目的の物なのか?」

「はい。これだと思います。」「思います?」

「ええ。これはとある人に頼まれた物なので、これだと断言することは出来ないのです。さあその人が、私達が帰ってくるのを首を長くして待っていると思います。この杖を持って、天空城に帰りましょう。」

とレイシアが答えると、杖を引き抜き部屋からでていく。

パパス達は誰の依頼かを聞きたくはあったが、レイシアはあまり答えたくはないのか、さっさと出ていってしまったので、天空城につけば分かることかとレイシアに続いて部屋を出ていく。ゲマがボブルの塔から逃げていったために、ボブルの塔からは魔物はいなくなっており、簡単に塔を出て、天空城に帰還することができた。

パパス達が天空城に帰ってくると、なにやら城の中がざわついていた。

なにかあったのか?と人だかりが起こっている所を見てみると、一人の男を兵士が取り囲んでいるように見えた。

男は寝そべり、足と手をジタバタさせて必死になにかを訴えている。傍目に見ると、玩具屋の前であれ買ってと駄々をこねる子供のようにも見える。

「あれは大の大人が取る行動ではないな。」

パパスは呆れながらその状況を見ている。

「なにかあったのですか?」

レイシアは周りの人に聞いてみると、なんでも不審者が城内にはいり込んでいたということであった。

パパス達は人だかりができており、どのような人物かは見ることはできないが、聞き覚えがある声であったので、やれやれといった様子で、しぶしぶひとだかりを掻き分けて、その不審者と思われている男のもとに向かった。

「だ~か~ら~、私は不審者じゃないといくらいったらわかってくれるんですか?」

「この天空城にプサンという人物はいない。」

「貴方はそんなこと言っていると、仕事を失いますよ。」

「コイツなにいっているんだ。放り出そう。」

「何をするんですか。いや~、犯される~。

あっ皆さんいいところで。」

プサンと兵士のやり取りを呆気にとられて見ていた所をプサンが見つけ、満面の笑みを浮かべ走ってきた。

「待っていましたよ皆さん。でレイシアさん、例の物は?」

「これですか?」

「そうです、これこれ。」

プサンはレイシアから杖を渡され、手に持つと、その杖が目映い光を発する。その光が城を包み込む。しばらくし、光がやんだところで徐に目を開けると誰もが言葉を発することが出来ない状態になっていた。

目の前には、プサンではなく、黄金に光るドラゴンが立っていたのだった。

場所は変わって、玉座の間に皆はやって来ていた。

「この姿では初めてなので改めて自己紹介をしよう。私がこの天空城の主で、この世を治めるマスタードラゴンという。」

マスタードラゴンからはプサンの時とは明らかに違い、威厳が漂っていた。

「貴方がマスタードラゴン様だったのですか。」

「ああ、私が城を空けていた時にデュランに乗っ取られてしまい、力はボブルの塔に封印していたために、このようになっていたのだ。皆の衆大儀であった。」

偉そうだなと思いながらも、頭を下げるパパス達であった。

そして本題に入る。

「お前達はなんのようがあってここへ来たのだ。」

マスタードラゴンが尋ねてきたので、これまでの経緯と、魔界への行き方を単刀直入に答え、尋ねた。

「そうか、そのようなことが。私には二つ思い当たることがある。

その一つ目を話そう。

ここから北東の岩山の頂上に、建設中魔物達の大神殿がある。そこの教祖に聞くのが手っ取り早い。」

「では次の行き先はそこになるのですか?」

「そうだ。しかしその神殿は岩山の頂上にありこの天空城でも届かない位置にある。私がお前達をそこまで送り届けてやろう。」

「ありがとうございます。」

「よいよい。私も困っていたところだからな。それに礼でもある。しばらく準備があることと、お前達も疲れているところであろうから、この城でゆっくり養生するとよい。」

「ありがとうございます。」

パパス達は礼を言い、玉座の間を出ていこうとしたが、レイシアはまだようがあるということで、レイシアだけを残して玉座の間から退出した。

「レイシアお姉さん、なんのようがあるんだろう?」

「まあ色々あるんだろうな。」とパパス達が話していると誰かに呼び掛けられた。

 

 

 

 

「今はレイシアと言うのか。久し振りだな。あの時以来全く姿が変わっていないので驚いたぞ。」

「マスタードラゴン様もおかわりなく。」

「私のことはよい。ことの経緯を教えてくれるか?」

「はい。お話します。――――

 

 

 

「貴方がパパスさんですね。」

「ああそうだか、あなたは?」パパスを呼び止めたのは、神官服を見にまとった、天空人であった。

「私はこの城で司祭をしているエルーストと言います。パパス様方をお止めしたのはこれのことでして。」

エルーストは徐に、袋の中からなにかを取り出す。最初にそれに気付いたのはプオーンであった。

「ああっ、それはルドルフがくれた鍵だ。」

エルーストが袋らだしたのは鍵であり、ゲマに奪われていたものであった。

「やはり、皆さんの物でしたか。」

「ああ、私達が探していたものだが、それをどこで?」

「パパス様方が、ボブルの塔から出てこられる前に、ボブルの塔から飛び出してきたボロボロの魔物がおりまして、その魔物が落としていったものなんです。」

「そうなのか?その魔物はどうなったのだ?」

「ふらふらして、海に落ちていきました。」

「そうか。態々ありがとう。エルーストさん。」

「いえいえ、天空城を救っていただいたお礼ができてなによりでした。では。」

エルーストは鍵をパパスに手渡し去っていった。

「よかったなプオーン。大事にしておくのだぞ。」

「うん。ありがとう。あとこの鍵は世界中どんな鍵でも開けられるっていうから、必要な時があったら言ってね。」

「すごい鍵だな。分かった、その時が来たら頼む。」

パパスとプオーンが話す横でパピンが

「あれさえあれば、帰りが遅くなっても閉め出されることはなくなる。」

と誰にも聞かれないように呟いていた。

 

 

 

 

 

「―――ということがありまして。」

レイシアがこれまでの経緯を話すと、顔をしかめながら聞いていたマスタードラゴンは、重たい口を開いた。

「そのようなことがあったのか。あの時から未だにお前の旅は終わっていないのか。そのような大事に気付いてやれずすまなかった。」

「いえ、もうそろそろこの旅もハッビーエンドで終わると思いますから。」

「そうか。でそのことは、皆には話をしたのか?」

「…いえ、まだ…。いずれ話そうかと。」

「そうか。」

自然と玉座の間の空気が暗くなってきたのを悟ったレイシアは、

「では、私も体力を消耗しましたので退出させてもらいます。また後程、御助力のほどよろしくお願いいたします。」

とだけいい、お辞儀をして部屋を出て言った。




ということで、最後の鍵を手にいれたました。手に入れたらすることは決まっているということで、次の話ではパパス達が悪事に手を染めることになるのかもしれません。


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番外編 最後の鍵を手に入れたらすることは。

「では会議を始める。」

天空城の一室で重苦しい空気が漂うなか、大事な会議が始まろうとしていた。集められたのはレイシア、バルバルー、パピン、サンチョ、プオーンである。そして、肝心の議題は〈最後の鍵を使って何をするか〉である。

この最後の鍵は、世界中のあらゆる鍵を開けることができるという、規格外の鍵である。

「パパス様、このような鍵ですることは一つだと思います。各国の宝物庫「犯罪はいけません。」――」

パピンが言おうとしていたことを先読みし、口を挟み中断させる。

「おいおい、パピンの言うこともしてもいいんじゃねえか?」

「戦争になりますよ。」

「昔俺が見た勇者一向は平然としてたじゃねえか。」

バルバルーはにやりと微笑を浮かべレイシアを見る。

「確かに文献にもあるように、勇者様はそのようなことをしたと書いてありますが、それは勇者様だからこそ許されることです。」

「魔王を討伐を目指しているから許されるというなら、俺達も許されるんじゃねえか?」

今回の討論は明らかにバルバルーのほうが優勢であった。

「しかし、王族が盗みをするというのは、見つかった瞬間国同士の問題になります。」

「消え去り草を使えばいいだろ。」

「しかし…。」

「なにか。」

「……。」グスッ

レイシアはバルバルーに言い負かされ何も言えなくなり、目のはしに涙がたまっている。

「まあ、バルバルーそこまでにしとけ。」

「ハハハ、ああ。普段強気な女は言い負かされたらどうなるのか見たくてな。」

「もう。」

「まあ、盗みはなしにして、私には一つ試したいことがある。レイシア悪いがグランバニアに連れていってくれ。」

「分かりました。」

ということで、パパス達はグランバニアに帰ってきた。事前連絡のない急の帰還であったので出迎えもない。「ついて来てくれ。」

とだけパパスが言うと歩いていく。皆はパパスについていく。パパスの後についていくと、隠し部屋のようなところに着いた。その部屋のなかには牢獄があり、その牢獄の中に宝箱がおいてある。

「パパス様これは?」

「私がずっと気になっていた物だ。隠し部屋のような所に、厳重に守られた宝箱。国の宝だと思うんだがあの厳重な牢獄を開けられなくてな。」

「僕も何がはいっているのか見てみたいな。はいパパスさん。これで開けてみてください。」

パパスはプオーンから最後の鍵を受け取り、牢獄に使ってみる。牢獄の鍵はガシャンと音をたて解錠される。「よし開いたぞ。あとは宝箱だけだ。」

プオーンはもちろんのこと、レイシア、バルバルー、パピン、サンチョも少なからずワクワクしていた。

「あれ?パパス様、隣に石板がありますぞ。」サンチョが宝箱の隣にある石板を見つけ皆にその旨を言う。

「本当ですね。どれどれ『この宝箱を始めに開けることができたものにこれを授ける。この中には人を狂わせる程の力を持つ女性専用の防具が入っている。手に入れた者はその力を試すべくすぐに着用すべし。さもなくば…。』何でしょうね、この思わせ振りな石板は。」

「まあ分かったのは、この宝箱の中の装備は魔界に行くのにも十分な戦力になり、レイシアしか装備できないということだな。」

「なんか嫌な予感が…。」

レイシアは呟くが誰もが宝箱の中身が気になり聞いてはいなかった。

キイと音をたてて宝箱が開けられる。

皆が一斉に覗きこむ。

『………これは……。』

「見えないよお。レイシアお姉さん。」

「見ちゃダメです。」

宝箱の中身を見た者達は一様に、グランバニアの行く末は大丈夫なのだろうかと思わざるをえなかった。

宝箱の中身はドラクエ恒例のエッチな下着であった。

ゴクリと誰か(パピンしかいないが)が唾を飲む音が静まり返った部屋にこだまする。

「まさか私にこれを着ろとはいいませんよね。」

怒気混じりのレイシアの声が部屋に響く。

レイシアは着用するきは更々ない。

しかし、このドラクエの世界はそのような意思をも簡単に越えて、人を操る意思というものがあった。

装備

賢者のローブ

→エッチな下着

なにかの意思が作用した。その瞬間レイシアの装備が変更される。そして時間が止まる。

『!!!』

「ふぇっ!?いやあー。」

レイシアは走り逃げていった。バルバルーとプオーン以外の男達は鼻血を流し意識を手放していた。

その事件があったのちしばらくの間レイシアは部屋に籠って出てくることはなかった。

天の岩宿のようであった。



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囚われの子供たち

このような状態になっていても読んでくださった人もおられたので完結まではもっていきたいと思い帰ってきました。
いまだ文章は稚拙ですがよろしくお願いします。
今まで投稿してきた文章は随時直させてもらいます。


パパス一行は目を疑った。

あるものは憤り、またあるものは悲しみ、そしてまたあるものは憎しみさえも覚えていた。

少し前までは戦場に赴く前の一時ではあったが、空の旅を、そして眼前に広がる壮大な光景を楽しんでいた。

しかし、それも一変してしまった。

パパス一行の気分をそこまで変えたものとは何か。

戦場の舞台となる作りかけの大神殿、しかしそこで働いているのは、年端もいかない少年や少女などがほとんどである。

そして、その子供たちの足には手枷、足枷がはめられ、着るものもボロキレ同然のものであり、監視役の小太りの男たちが鞭を打ち強制的に働かせていた。

少年、少女の目には生気すら感じられず、ただ黙々と働き、誰かが鞭打たれても気にすら止めなくなるというまで蝕まれた状態である。

その情景を見て憤りを隠せないパパスではあるが、皆で話し合った結果少し様子を見ようということになっているので、必死に飛び出していこうとするのを押さえている。

「あれが魔界に通じるゲートが存在する大神殿だ。

まだ地上部分はできあがってはいないが地下の部分はできあがってはいるはずだ。

どうする今日は様子見で天空城へ戻るか?」

マスタードラゴンは悲惨な状況にも動じる気配もなくパパス達に問い掛ける。

しかし、パパス達はその問いに答えることはできない。

確かに今日は様子見であり、一旦戻るのが筋であるが、このような光景を眼前で見せられたのだから答えに窮していた。

だがここでレイシアが苦虫を噛み潰したような表情でパパスを諭し始める。

「パパス様、ここは帰還するべきです。」

そのレイシアの言葉にパパスは憤りを押さえられずに反論する。

「分かってはいるがこの惨状を突きつけられてもそのように申すか。」

恐ろしい剣幕でレイシアに迫るがレイシアも引き下がることはしない。

「確かに薄情ではあるかもしれません。

しかし、彼らを救えるのは私達だけなのです。

一時の感情で飛び出して私達が全滅したらもう彼らは救われることはないのです。

彼らを完全に救い出すためにもここは堪えて帰還し、しっかりと策を考えてから行動すべきです。」

パパスはレイシアをみてハッとする。

レイシアの手はギュッと握られ、間からは血も滲んでいた。

そのさまを見てパパスは冷静になろうとしたが、現状がそれを許さなかった。

突然、下から悲痛な悲鳴が轟いたのだ。

「すいません。お許しください。」

いたいけな少女が小太りの男の前に跪き涙ながらに、土下座をして謝罪をしている。

「貴様俺の足に岩を落としてただですむと思っているのか。」

男の怒声が辺りに響き、また降り下ろされ打ち付けられる鞭の音も響き渡っている。

どうやら少女が運んでいた岩を男の足に落としてしまったことが問題らしい。

必死に少女は謝罪をしているが男の怒りは尋常ではなく、鞭を打ち付けることが止めどなく続く。

その度に、少女の悲痛な叫び声が辺りに響きわたる。

「ふん、まあいいだろう。

ただし条件がある。」

男は鞭を振るうのを止めると少女に語り始める。

「なんでもします。」

少女がすがるように男に懇願すると男は醜く歪んだ笑みを浮かべて

「ではお前の体で償ってもらおう。」

男は言うやいなや少女を倒し馬乗りになり、少女の服に手を掛けた。

少女は必死に助けを求めるが誰もが目を背けていた。

「もう我慢ならん!」

その光景を見ていたパパスは速かった。

マスタードラゴンの背から剣を抜きながら飛び出した。

「しょうがないですよね。」

レイシアもなにか安心したように続く。

「それでこそ尊敬する王です。」

パピンも嬉しそうな笑みを浮かべて続く。

「パパス様ついていきますぞ。」

サンチョもリュカを大事に抱えて飛び出した。

「やっと楽しくなってきたぜ。」

「パパスさんはそうでなくちゃ。」

バルバルー、プオーンも宙に身を投げ出していた。

マスタードラゴンは次々と宙に飛び立つパパス達を見て深いため息を吐きながらも、予期していたかのように頷いていた。

着地してからパパスの行動は迅速であった。

少女に覆い被さる男に引き剥がし、流れるような動きで柄で鳩尾に一撃をいれ昏倒させた。

少女だけではなく、回りの少年、少女、また監視役の男たちすら唖然とし、動くことはなかった。

「みんな行くぞ。ただし子供達にはトラウマにしたくはない。ひとまずは意識を刈り取るぐらいにしておけ。」

パパスがメンバーに命令を告げる。

『はっ(おうよ)』

すかさず了承を告げると皆それぞれ監視役と思われる小太りの男たちを制圧にかかった。

男たちはたいしたこともなく役5分ほどで制圧が完了した。

「大丈夫かい。安心しなさい。おじさんたちが助けてあげるからね。」

パパスが襲われていた少女や回りの子供たちに優しく話しかけていた。

ある子供は声を上げて泣き、またある子供は声をころして泣いていた。

しかし子供たちの涙は安堵と嬉しさ、緊張が解かれたことにより自然と流れるものであった。

「パパス様全て片付きました。」

「ご苦労。」

パピンの報告に頷くパパスは何か考えこんでいた。

その様子を見てレイシアがパパスに声をかける。

「この子たちをどうしようか考えておられるのですが?」

「おっ、おう、その通りだ。

このままここに置いたままでは可愛そうだし心配だからな。」

急に声を掛けられたことに驚きながらもパパスはどうしたらよいものかとレイシアに問い掛ける。

「一旦グランバニアに保護しましょう。

そしてそれから対策を考えればよいと思います。」

レイシアの意見にパパスは同意し、他の囚われの子供たちはいないかしっかり確かめた上で、レイシアの

「ルーラ」

で一度グランバニアに戻ることとなった。



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大神殿を突き進め!!

「予想通りでしたね……。」

ズラリといならぶ黄色い竜騎士シュプリンガーの群れを見ながらレイシアは苦笑いをし、ため息をついた。

「まあなんだ、予想はしていたんだ、予定通り突っ切るぞ!」

パパスの檄を受け皆はひとかたまりになり兵士の群れに突撃を掛けた。

 

――――

子供たちを助けた後にパパス達はグランバニアに戻り、住んでいた場所が分かる子供はその場所にレイシアがルーラで送り、判明しない子供は拐われたなどの訴えがなかったか等を調べ解決に至らせた。

その件に約一ヶ月半を要し、再び大神殿にやって来た所である。

そして大神殿側も労働力を失っただけでなく、監視役の鞭男たちが何も抵抗できずに一掃されたために、再び来るであろうパパス達への備えを行っていた。そのど真ん中に、レイシアのルーラでパパス達一向は舞い降りたのだった。

 

「はあっ!!」

パパスが先頭で立ち塞がるシュプリンガー達を斬り倒し、道を作り、左右から迫るシュプリンガーはパピンとサンチョが相手をし、後方から迫る相手はバルバルーが大剣の一振りで薙ぎ倒していった。

しかし、快進撃も長くは続かない。

手練れの5人+プオーンでも一進一退になるほどに大神殿側の備えはしっかりしていた。

「くそっ、敵が多すぎる。

次から次へときりがない。」

 

パパスが剣を振りながらも愚痴を溢す。

 

「せめて進行方向の敵さえなんとかできれば…」

サンチョがウォーハンマーを振り回しながら疲れたように呟く。

すでに大神殿にやって来てから一時間はゆうに過ぎていた。

ここまで剣や金槌を休める暇がないほどの連戦が続き、さすがに皆に疲れが見え始めていた。

「皆さん私が詠唱を終えるまであと少し耐えてください。」

それまで中心で守られていたレイシアが口を開く。

「お前はここのボスまで魔力(MP)を温存するという話だったはずだが。」

そうパパスがいうように、レイシアの魔法はある意味切り札的な存在であった為に、ボスまでは温存するということに事前に決めていた。

 

「このままではじり貧です。

もう構ってはいられません。

魔法で前方の敵は一掃するのでお願いします。」

鬼気迫る表情で話すレイシアを見て皆が頷いた。

レイシアが詠唱を始めると、レイシアの体の周りから魔力が溢れ出す。

それは魔力を持たない者でも感じられるものである。

詠唱が続くほどに迸る魔力は強さを増す。

その間約30秒ほどであったが、皆が待ちわびた声が響く。

「皆さん発動しますので道を開けてください。ベギラゴン。」

ベギラゴン、上級閃光魔法である。

前方に強烈な閃光を伴う超高温の熱が襲いかかる。

目視が不可能な程の閃光が治まると前方の道は黒く焼け焦げ、全ての敵が灰になっていた。

 

「では行きましょう。」

こともなげにレイシアは話先に歩みを進める。

パパスたちはいつもながらレイシアの魔法に驚きながらも「はい。」とだけ言いついていくのだった。

そして皆の心の中には(レイシアは絶対に敵にまわしてはならない。)ということが浮かんでいた。

前方の敵が一掃されはしたが依然として後方からの追撃は止まらない。

「僕が足止めするからみんな先に行って。」

プオーンが意を決したように突然発言した。

「何を言うプオーン、あれだけの相手一人で勤まるはずがないだろう。」

パパスはプオーンの発言を拒否する。

「でもこのまま走り続けるのは無理だよ。

それに僕ならあいつらをまとめて倒せる技もあるし。

それにみんなの役にたちたいんだ。」

プオーンはパパスに自分の意志はまげないと覚悟の籠ったつぶらな瞳を向ける。

「しかし…」

いいよどむパパスに

「では私も残ります。」

成り行きを見つめていたパピンが口を挟む。

パパスは二人の覚悟を感じとり了承すると同時に

「絶対に生きてついてこいよ。」

とだけ残し、二人を置いて先に進んだ。

 

「あんな大見得きって大丈夫なのかプオーン。」

大勢の敵を前にして少し心配になるパピンだが、プオーンは以前として自信に溢れた表情をしている。

「まあ見ててよ。ゲマとの戦いで身につけた技を。」

プオーンがパピンにそう言うと、一歩前に出て、大きく息を吸い込む。

そして敵の集団が間合いに入った瞬間に何かを吐き出した。

それは灼熱の炎、パパスのピンチに体が反応して覚えた技。

触れるもの全てを焼き尽くす巨大な炎が全ての敵を飲み込んだ。

先ほどレイシアがはなったベギラゴンに勝っても劣らない技であった。

「ふう、どうだった?」

ぽてっと腰を下ろしプオーンは感想をパピンに求めるが。

パピンは呆然としつ「……」となにも返すことができなかった。

――――

「プオーンちゃんたち大丈夫でしょうか。」

心配そうに呟くレイシアに

「二人を信じよう」

と返すことしかできないパパスであったが。

パパスも目的地の直前までやって来ていた。

「どうやらあいつが最後の門番らしいな。」

パパスが見つめる先には大きな扉の前にたたずむ銀色に鈍く輝くドラゴンが赤い目を光らせて全ての侵入者を拒むように立ちふさがっていた。




シュプリンガーはベギラゴン効かないだろなど意見はあるかもしれませんがご容赦ください。


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大神殿の主登場。

「喰らえや!!」

バルバルーが荒々しく、力強い一撃をメタルドラゴンの前足部分を横凪ぎするように振るう。

金属と金属がぶつかり合う激しい音が鳴り響く。

「ダリャアッ!!」

前足の部分で止まった大剣を力で無理やり押しきる。

メタルドラゴンの足はその力業に耐えられずあえなく粉砕され、足の役目を出来なくなる。

メタルドラゴンの巨体は前足を失ったことにより地に伏せる。

そのまま地面に伏した長い頭にまっていたかのように、パパスの洗練された一撃が降り下ろされ、ライトメタルボディも関係無く容易く切り裂き、胴と頭が分断された。

頭部の目はしばらく赤い光を灯していたが、少し経つとその光も命が消えるように光を失った。

「見た目に反してたいしたこたあなかったな。」

バルバルーが大剣を肩に乗せ余裕ある表情で今戦っていたメタルドラゴンの感想を言う。

 

「我々も強くなったということだろう。」

パパスもバルバルーの意見に同意する。

「何かありますぞ!」

メタルドラゴンの残骸を見ていたサンチョが声をあげる。

その声に引き寄せられるように皆が集まる。

サンチョが指を指した場所には宝箱のような物があった。

どうやらメタルドラゴンの体内から出てきたようである。

「少し待っていてくださいね。」

レイシアがおもむろに宝箱に近づき手を当てると

「インパス」

と呟く、呪文がかけられた宝箱は青く光る、それを見たレイシアは表情を緩めて

「この宝箱は安全です。

開けていいですよ。」

とパパスに宝箱を開けるように促した。

「よし開けるぞ。」

パパスが宝箱を開けると白銀に光るいかにも防御力ありますよ的なゴツい鎧が入っていた。

 

その鎧をまじまじと見たレイシアは驚きと喜びが混じりあった声をあげた。

「すごいですよ。

この鎧はあの天空の鎧をもうわまわると言われたメタルキングの鎧ですよ。

私も初めて見ました。

(はぐれメタルの鎧なら店で見たことはありますが。)」

普段クールな彼女が子供のように期待に目を輝かせながら続けて言った。

「ぜひ着てみてください。」

「ああ、分かった。」

今まで見たことがない表情をレイシアがしていたので、パパスも圧倒されながらも、期待を込めて装備をしてみる。

「すごいな。確かに少し重いが、どんな攻撃も跳ね返せるような気がする!」

パパスも装備してみてそのすごさが分かったようで、嬉しそうにメタルキングの鎧をさすっている。

「幸先がいいぞ。

このまま進み、二人が到着した時には全てが片付いている状況にして驚かせてやろう。行くぞ皆。」

力強い声でパパスが宣言すると大きな扉を開け放った。

 

開かれた扉の先に広がっていた光景は、広い室内に敷き詰められた赤い絨毯。何かの祭壇のような前で祈りをあげる巨大な影があった。

「貴様がここの統治者か?」

以前としてパパスに気づいていないのか振り向きもせずに祈りを捧げる巨大な影に、パパスは問いかける。

「我の祈りを妨げるのは何者だ?」

巨大な影がパパスの方へ振り向く。

大僧正のような立派な格好をした…ワニだった…。

『(ワニだ)』

いかにもな格好をしていたので少し期待していたパパスたちであったが、期待が大きく裏切られることになった。

「ライオン(キングレオ)に馬(ジャミ)に猪(ゴンズ)と来て今度はワニ(イブール)か。」

パパスはため息を吐きながらも剣を構える。

「そうか。お前たちがデュランとゲマを倒したという者たちか。

ここに来たということは魔界を目指してここに来たということだろう。

あの警戒網の中やって来るとはたいしたやつだ。

その勇気に免じて完璧な状態で戦わせてやろう。」

イブールはそう言い、杖を振るうと空間が歪み何かの影が現れる。

しばらくしその影が明確になると呆然と何があったのかと疑問符を浮かべる、パピンとプオーンだということが見て取れた。

「お前の仲間をここに連れてきてやった。

次はこちらの番だ。」

再度手に持つ杖を振るうと、またもや空間が歪み、何者かが現れた。

「イブール様、いかがなさいましたか?」

現れた巨体の魔物はイブールに何かありましたかと問い掛ける。

「こやつは我の部下のラマダという。

役者は揃った。お前たちも我が主の供物として捧げてやろう。」

イブールの一声で戦いの幕がきって落とされた。

――――

 

とある薄暗い一室で水晶玉に映ったイブール達とパパス達の戦いを、歪んだ笑み口元に浮かべながら見ている男がいた。

「楽しくなってきたな。

私の思い通りになるといいが、まあならなくとも他にも手はある。そして楽しみが増えるのでどちらでも私を楽しませてくれていいがな。」

男はクックックックと笑い声を堪えられないといった様子で声をあげ、禍々しい愉悦の表情を浮かべていた。



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それぞれの戦い

「バルバルーとパピンはラマダというやつの相手をしてくれ。

見た目で判断するのは危険だが、どうみても物理型だ。

レイシアはこちらを頼む、イブールは魔法特化と思えるからな。

サンチョとプオーンは待機で形勢不利な方に向かってくれ。

行くぞ!!」

パパスが開戦と同時に指示を出す。

「任せろ。」

バルバルーは大剣を構えて、パピンとラマダへ向かう。

「はい。」

レイシアはパパスと共にイブールへ向かう。

「来るぞラマダ、気を抜くな!」

イブールがラマダへ一言呟くとこちらもパパス達を迎え撃つべく構えをとる。

「出方を見るか、それとも突っ込むか。

どうするパピン?」

バルバルーがラマダの動きを逃さず見据えながら、少し楽しげにパピンに問う。

「相手は鈍そうですから一撃を受けないようにしながら突っ込めばいいと思う。」

パピンもバルバルーの問いに密かに笑みを浮かべて答える。

共に先ほどまでの連戦の疲れは感じさせない。

「来ないなら、こちらから行くぞ!!」

焦れたラマダが二人に猛然と突っ込み、巨大な棘つき棍棒を振り回す。

その棍棒は太さだけで大人1人分はあるといっても過言ではない。

ラマダの棍棒は振り回される度に回りのものを破壊する。

一撃でも受ければそく戦闘不能ものである。

しかしながら、バルバルーもパピンも軽やかな足取りで見事に全ての攻撃をかわしきる。

「おのれー!!」

攻撃が全く掠りもしないことからラマダは冷静ではいられなくなり、形振り構わず棍棒を振り回す。

大振りで降られた棍棒をかわし、ラマダの隙ができた所に瞬時にバルバルーとパピンは間合いに入り込む、

「攻撃とはこういうものだ、真空斬り!!」

「五月雨斬り!!」

バルバルーの大剣が空気を切り裂きながらラマダの横腹を大きく抉り、パピンの研ぎ澄まされた幾多の斬激がラマダに数多くの傷をつける。

「ゲハアッ!!」

血飛沫を撒き散らしながら後退するラマダへ、ここぞとばかりに二人は追撃を試みた。

しかし、ここでラマダは血を口から血を流しながらも、不敵な笑みを浮かべていた。

ラマダが腕を前につきだし、

「ベギラゴン!!」

と唱える、目映く、太陽がすぐそこにあるのではないかと錯覚するほどの閃光がバルバルーとパピンを包み込み、焼き尽くす。

『グハッ』

バルバルー、パピンの二人ともラマダが呪文を持っているとも思わず、また追撃に集中していたため真正面からベギラゴンを受けることとなった。

「くっ、俺は耐久力に関しては普通じゃねえから大丈夫だが、お前は大丈夫か?」

身体中に焼け焦げ、酷い火傷負いながらも、気丈に振る舞い、パピンに声をかける。

「もうし訳ないが、少し深手をおった、薬を飲むまで時間をくれ…」

息を切らしながらすまなそうに謝罪するパピンの表情には、悔しさも含んでいた。

「分かった。

そこで休んでいろ、俺1人でかたずけてやるよ。」

ラマダへ視線を向けようとした時には眼前に巨大な炎が迫って来ていた。

「ちっしまった!」

ラマダの追撃の激しい炎である。

今度はこちらとばかりに攻勢に出たラマダが間髪いれずに激しい炎をはきかけた。

迫りくる、避ける暇もない炎にバルバルーは咄嗟にパピンの前に出て、パピンが背負っていたドラゴンシールドを構える。

来るべき炎が降りかかるその時であった。

激しい炎より遥かに大きく、熱量を持った炎が横から激しい炎を飲み込んだ。

唖然とする二人に

「僕も手伝うよ!」

と助っ人が参戦を表明した。

 

――――

 

「フン!ハアッ!!」

「なんの。」

パパスの斬激を杖を使ってイブールは巧みに受け流していく。

「なかなかやるな、ではこれではどうかな?」

パパスはギアをあげ始める、初手は難なく受け流したイブールであったが、その怒涛の攻撃と、豪雨のように降り注ぐ数えきれない斬激を裁ききれずに、僧衣や身体に斬激の後と、血を滲ませる。

堪えきれなくなったイブールが息を吸い込む、

「お下がりください!!」

その一挙主を見逃さなかったレイシアがパパスに声をかける。

パパスは指示通りバックステップし、後方にさがるが、まだイブールの間合いであるために、ドラゴンシールドを構える。

イブールの口からは大気中の水分までも凍りつかせるのではないかと思えるほどの、冷たく耀く息が吐き出される。

「フバーハ。」

冷気がパパスを包み込む前に、パパスの身体がホンノリとした光に包まれる。

辺りは白く凍りつき、供物や調度品、はたまた柱等が芯から凍りつき砕けている。その様を見て勝利を確信したイブールであったが、すぐに驚愕を受ける。

後退し、凍りついたと思っていた筈のパパスが眼前まで迫っていたからだ。

「効かぬわっ!!」

レイシアの魔法により冷気を軽減されたことによりパパスは攻撃に転じていた、パパスの袈裟懸けの一太刀が空気を切り裂きながら、イブールの身体を捕らえた。

斬激の勢いが並大抵のものではなく、イブールはその衝撃に後方に吹き飛び壁にめり込んでいた。

「終わらせます。

メラゾーマ!!」

レイシアのイブールへの追撃の筈であった。

しかし、巨大な火球は放ったレイシアに向かい襲いかかっていた。



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吹き荒れる魔法、ワニの教祖様の本領発揮?

「はあはあ…」

「やっと魔力(MP)が尽きたみてえだな。」

巨体を揺らしながら肩で息をするラマダを見て、バルバルーは不敵な笑みを浮かべながらポツリと呟いた。

ラマダが高位の魔法を使うという事が分かってからバルバルーは戦闘に加入したプオーンと共に距離をとり魔法を使わせ続け、予定通り魔力切れを起こさせたのだ。

「よし、距離詰めて一気にぶっ殺すぞ!!」

「うん!」

バルバルーは強く踏み込みラマダとの距離を詰める。

ラマダは距離を詰められるのを嫌い巨大な棍棒をバルバルーに向けてフルスイング、しかし突如バルバルーの影から小さな影が飛び出し、唸りを上げて向かい来る棍棒の前に立ちふさがった。

棍棒とその小さな影はぶつかりあい金属音を鳴らす、受け止めた影は蹄から火花を散らしながら押されたが、確実に棍棒の勢いを奪い失速させ、止めることに成功する。

「今だよバルバルー!」

棍棒を噛みつき受け止めたプオーンはバルバルーに向かい声をかける。

その口許からは黄金の光が漏れる。

「よくやった!死にさらせ、ギガスラッシュ!!」

棍棒を受け止められて守るものがなくなったラマダに、バルバルーは雷を纏いバリバリと音を鳴らす大剣を逆袈裟斬りの要領で切り上げる。

「グギャーーッッ!!」

身体を斜めに両断されたラマダの断末魔が轟く、雷を纏った大剣であるために焼き斬られた為に、一滴の血も垂らすことなく霧散して消えていった。

「お前それどうしたんだ?」

バルバルーはラマダが霧散したことを見届けた後にプオーンの口許を指差し尋ねた。

「これはね《オリハルコンの牙》っていうんだよ。

さっきパピンがくれたんだ。

パピンが倒したテリーっていうイケメンさんが持っていたのを譲り受けたんだって。」

嬉しそうに話すプオーンに言うことはしなかったがバルバルーは心うちでは

(パクっただけだろ!)

と突っ込みを入れていたようだ。

 

――――

イブールに放ったはずのメラゾーマがなぜかレイシアに迫ってきていた。

「マヒャド」

レイシアは急遽防壁となす為にマヒャドで氷の壁を作り出すが、メラゾーマは少し勢いを削がれただけでレイシアに到達した。

巨大な火柱を上げて燃え盛っていた。

「レイシアー!」

パパスはイブールへの追撃も忘れて迫り来る熱をもものともせず、レイシアの元に走りより、焼け焦げたレイシアにホイミをかける。

「やはり、パパスさんのホイミは凄いですね。」

パパスが唱えたホイミは完全にレイシアを癒していた。

完璧にチートホイミである。

ホイミであるのにあるときは毒を癒し、あるときは傷を完全に癒し、あるときは死者をも蘇生させる。

さすがに勇者の祖父となるものである。

「そんなことはどうでもいい。

大丈夫か?」

笑顔で称賛するレイシアを制止し、声をかけるパパスに満面の笑みを浮かべて「大丈夫です」と答えた後に真剣な表情で

「あのイブールには常にマホカンタがかかっているようです。」

「マホカンタ?」

聞きなれない魔法の名前に聞き返すパパス

「マホカンタとは一部の魔法を除き、殆どの魔法を相手に返すという魔法使い殺しの魔法です。」

レイシアの説明を受けたパパスはそんな魔法があったのか、と戸惑いながらも、とある疑問が浮かぶ。

「レイシアはそのマホカンタは使えないのか?」

「一応使えますが…」

使えると言いながらも苦笑いとともに少しスッキリしない言い回しで後を濁している。

「何故使わないのだ?」

当然の疑問、そんなに良い魔法があるのに何故使わないのか、

「説明だけを聞けば完璧な魔法だと思うんですが…回復魔法まで跳ね返してしまうんです。」

レイシアが困ったような笑みを浮かべて話すことを聞いて、使わないことにパパスは納得せざるを得なかった。

「ゴチャゴチャと五月蝿いぞ!イオナズン!!」

イブールがなかなか話を止めない二人に業を煮やし、攻撃を再開する。

丁度レイシアとパパスの間の空間が揺らぎ、空気が収縮し始める。

「危険です。逃げてください!」

レイシアとパパスはその場から直ぐに離れる、収縮した空気が弾ける、建物を揺るがす爆発が起こり、爆風が二人の背を押し、壁際まで吹き飛ばされ打ち付けられる。

「こんな地下でイオナズンを使うなんて…さすがにワニですね……。」

レイシアがうつむきかげんで呟く。

長い髪で表情は見えないが、腹を立てているのは用意に想像できる。

「神殿の主が神殿のことを考えずに魔法を放つなら私も手加減抜きにしましょう……。」

壁に打ち付けられたダメージなどまるでないかのように、レイシアはすっと立ち上がり、賢者のローブの誇りを払う。

無言でイブールに手を向けると手のひらからすべてを剥ぎ取るような、不可視の波動のようなものがイブールを吹き抜けた。

「なに!?わしのマホカンタがとけるだと!」

驚き焦るイブールにレイシアは

「手加減抜きでいきますよ」

綺麗な笑顔であるが、それを見たイブールはなぜか嫌な汗が止まらなかった。

ワニの教祖様VS底知れぬ魔法使い

人智を越えた魔法がぶつかり合う。




ええ、パパスは主人公です。
しかし、次回は休憩です(汗)


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吹き荒れる魔法の嵐、その時イブールは

「メイルストロム!」

何処からともなく現れた巨大な水柱がイブールに襲い掛かる、しかしイブールは焦る様子もなく水柱を一瞬で氷柱に変える、それを余裕綽々の様子で見ていたイブールに火球が迫る、

「目眩ましです。

さあこのメラゾーマはどう避けますか?」

笑顔のレイシアがイブールを試すように問い掛ける、されどイブールはそれにも動ずることはない。

冷静にメラゾーマを見据え、手に持つ杖で打ち返した。

「マホカンタは使わないのですか?」

打ち返されたメラゾーマが天井を貫いて空に昇っていくのを見届けた後に、レイシアは問い掛ける。

「お前にとってマホカンタを消すなど容易いことだと分かったからな。

魔力(MP)を無駄にしないためだ。」

丁寧にイブールは返すが続きがあった。

「まあ、あれぐらいの魔法ならばマホカンタは必要はないがな。」

イブールの挑発じみた発言にレイシアはどす黒い魔力を発散させながら呟いた。

「手加減は終わりです。」

レイシアは自分の魔法が一番であるとい自負はしていない。

目の前で遥かに段違いの魔法をカカロン等に見せられているためだ。

しかし、そんなレイシアであっても長い年月鍛練を欠かさず鍛え上げてきた魔法を馬鹿にされるのだけは耐え難かった。

しかも、たかだかワニの魔物に…ということで怒りが沸き起こったのだ。

「メラガイアー!」

メラ系最上級の魔法を容赦なく放つ。

「さあ、どうですか?

ゲマも使いましたが、私のこれは同等以上ですよ。」

「ここまでの魔法を使えるとは。

だがこの魔法は威力は高いが、効果範囲は狭い。」

イブールは法衣を翻して小太陽とも形容できるメラガイアーを颯爽と避けて見せた。

その動きは、魔法を主力に戦うものとは思えない姿である。

「くっ」

今までに見せたことのない怒りを含んだ表情でそのレイシアは唇を噛んだ。

「こうなったら、メラガイアー!メラガイアー!メラガイアー!」

下手な鉄砲も数打ちゃ当たるとでもいうかのようにメラガイアーを連発する。

しかし、イブールはそれさえも余裕の笑みを浮かべて避け続ける。

怒りに囚われたレイシアは打ち続けたが、当たることはなかった。

「はあはあ、メラガイアー!」

息切れしながらも魔法を唱えるが、もう既にメラほどの火球さえも出ることはなかった。

「魔力が枯渇しましたか。

人間にしてはよくここまで頑張りましたね。

ここであなたを殺すのは惜しい。

どうですか、我が『光の教団』に入ってみませんか?」

イブールは提案と同時に豪華に表装された厚い本をレイシアの元に転移させる。

『イブールの本』

通常価格3000ゴールドのイブールが著者の本である。

「馬鹿にしないで、私はマーサ様以外に使える気はない!」

イブールの行動を挑発ととったのか、更に怒りを顕にし拒絶の意を現す。

再度魔法を唱えようとしたときだった。

「頭を冷やせレイシア。

いつもの冷静なお前になれ。

マーサもそんなお前を信頼していたんだぞ!」

崩れた瓦礫が散らばる部屋の片隅からレイシアに声が掛けられた。

「パパス様……、そうでしたね私としたことがついカッとなってしまいました。

冷静にならなくては。」

パパスの渇によって冷静さを取り戻したレイシアは瓶を袋から取りだし飲みほす。

『エルフの飲み薬』

以前カジノの景品で購入していたものである。

その道具の効力で魔力を再び最大値まで回復させた。

(さて、あのイブールは口だけではなく、今までの相手より遥かに強く、動きが速い。

だからと言って、『ボミオス』なども高い魔法耐性から通用しないだろうし…。

そうかこの移動できる空間を制限すれば!)

レイシアはイブールに向き直ると、

「マヒャデドス!」

魔法を唱える。

ヒャド系最上級の魔法である。

一瞬で部屋中の気温が冷却され至る所が白く氷つく、そこからが本番とばかりに上空から巨大な氷塊、や氷柱が容赦なく降り注ぐ。

マヒャデドス事態が広範囲魔法であるためである。

「なんとか避けきって見せるぞ…なに!?」

降り注ぐ氷柱をイブールは避けようとするが、床に接していた足が張り付き身動きが取れない状況に陥っていた。

「しまっ……」

イブールは降り注ぐ氷柱に飲み込まれた。

その様をレイシアは冷静に見ていたが戦闘体制は依然として解いてはいなかった。

(イブールの魔法耐性から考えるとまだ生きているはず、ならば虫の息になり、抵抗できなくなるぐらいにまで削らなくては。)

部屋の中心辺りの氷の塊が砕け散り、イブールがそこから這い出す。

「なかなかの威力だがま……なに!?」

氷のなかから這い出したイブールを待っていたのはそれまでの低温地獄とは対極に位置するものであった。

網膜を焼き尽くすのではないかとも思えるほどの閃光と同時に、この地球では存在し得ないほどの高熱がイブールに襲い掛かる。

レイシアが唱えた『ギラグレイト』ギラ系最上級魔法が炸裂したのだった。

その場にいる全ての者がもうイブールは戦うことはできないだろうと思っていた。

しかし、全身を黒く焦がしながらもイブールは立ち上がった。

「はあはあ…見事だ…お前達ならば…魔界へ行っても…大丈夫だろう…。

だが、あの方は…こんなものではない…。

わしの最後の魔法を…受けきって見せよ…。さすれば、魔界への道を開いてやろう…。

刮目せよ、イオグランデ!!」その瞬間、神殿だけでなく、神殿があったその岩山さえも消し飛んでいた。

 

おまけ

「パパス様見事でございました。」

パピンがレイシアを立ち直らせた渇について称賛していた。

「当然のことをしたまでだ。

仲間が過った道を進もうとしたら止めなくてはならん。」

「さすがでございます。」

パパスはいい放ち、パピンは更に称賛していたが、内実は(あれ以上魔法を乱射されたらこちらの命が危ない、なんとかせねば)

という思いからでた行動であった。

そして、それまでのメラガイアー連発の壮絶さからその場にいた仲間達は皆恐怖に身がすくんだ状態であった。




なんで最上級魔法は全て名前がカッコ悪いんでしょうか?上級魔法はメラゾーマとか全てカッコイイのに。
最上級魔法では強いて上げても私はマヒャデドスぐらいしかいいとは思えません。


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レイシアの覚悟とイブールの決心

「……何が起こったのだ!?」

上空で様子を見守っていたマスタードラゴンにも予想外のことであった。

神殿内から淡い光が漏れたかと思った次の瞬間には、神殿は粉々に吹き飛び、神殿が建っていた岩山までが半壊の状態になっていたからだ。

未だにその爆発の余波により砂埃が辺り一帯に舞い起こっている。

二、三分が経過し、なんとか視界が晴れ、マスタードラゴンが少し高度を落とし目を凝らしてみると、二つの影が認識できた。

一つ目は黒く焼け焦げた法衣を纏うワニ、この爆発を呪文『イオグランデ』で引き起こした主、イブールであった。

もう一つの影は、役目を果たしきり、ボロボロになった賢者のローブを纏い、身体中血だらけになっているレイシアであった。

イブールはそのレイシアを見て明らかに動揺と驚愕の表情を表していた。

ただ上空で見守っているマスタードラゴンはレイシア以外の仲間が何処にもいないことに不安を覚えていた。

だが、その心配も杞憂に終わる。

瓦礫のしたから這い出してくる影が5つあったからだ。

その5つは、パパス、バルバルー、パピン、サンチョそしてプオーンであった。

それ以上に驚くべきことは、5人全てがほぼ無傷であったことである。

あの爆発に巻き込まれながらも切り傷一つついていなかったのである。

レイシアを見て呆然としているイブールがハッとしたように何かに気付き、レイシアに問い掛けた。

「あの者達には魔法を無効にするための何らかの呪文を、あの短時間でかけたのであろう。

ではなぜお前自信にはかけなかったのだ?」

パパス達の姿を見る限り完全に『イオグランデ』を無効化しているのは、容易に理解できる。

それであれのに、なぜ術者本人はそのように呪文をまともに受け、満身創痍の状態にあるのだろうか。

イブールは考えても、考えても答えが出なかった。

その為本人に問い掛けたのだった。

そのイブールの問い掛けに、微笑を浮かべて、途切れ途切れ答える。

「簡単なことですよ…。

貴方は、「わしの呪文を受けきったら魔界への門を開いてやる。」と…宣言なさって『イオグランデ』を唱え…ました。

ならば…、身を持って受けなくてはならない…と判断しました…。

パパス様…皆様には『アストロン』で回避して頂き…、私一人が呪文を受け耐えきりました…。

これで魔界への門を開いてくれるのですよね。」

レイシアの答えにイブールは何も考えることも、答えることもできなかった。

しかし、どうしても聞きたいことが頭に浮かんだので、そのことを問いただした。

「なぜお前は、命を賭けてまで魔界へ行きたいのだ?」

「簡単なことです。

私の命に代えても御守りしたい御方が魔界におられるからです!」

一転の曇りもない笑顔でレイシアは即答し、そのまま地面に倒れこんだ。

レイシアの元に仲間が集まり、パパスが『ホイミ』を唱え治療を始めていた。

それを茫然として眺めているイブールは、頭の中でレイシアの答えを何度も反芻していた。

 

治療も一段落し、レイシアが眠りにつき、パパス達も安心している所に、イブールが近づいてくる。

皆はすぐにでも応戦できるように、レイシアを守るように前に立ちはだかり、戦闘体勢を取る、しかしイブールには全く殺気すらない。

皆もイブールに全く殺気がないことに気付きながらも、先程まで戦っていた相手であるので気を抜くことはなかった。

「何か用でもあるのか?

まだ戦うつもりか?」

パパスが意を決してイブールに問い掛ける。

すると

「そのレイシアという小娘の覚悟をしかと受け取った。

お前達の望み通り魔界への門を開いてやろう。

まずは、お前達も身体を休めるがよい。

そして、万全の準備を整えたらまたこの場に来るがよい。

魔界への門を開いてやろう。」

イブールはそれだけ告げるとパパス達に背を向け去っていった。

驚きのあまりイブールの背を見送ることしか5人にはできなかった。

「パパス様、ヤツの言うことを信じても良いと思いますか?」

パピンが心配そうな面持ちでパパスに問い掛ける。

「たぶんだが、大丈夫であろう。

あの者の目は真剣であったし、嘘をついているようには到底思えなかった。

レイシアの言葉がよほど心に響いたのであろう。」

パパスも思ったことをそのまま述べたので、仲間達もパパスを信じることにして、イブールの言うように身体を休め、準備をするためにマスタードラゴンに送ってもらい、天空城へ戻っていった。

 

――――

「イブールめ、粋な計らいをしおる。

私の思い通りに事が進んで恐いぐらいだ。

しかし、ヤツがそれを許す筈はないだろう。

私も少し手を貸してやらぬとな。」

水晶玉を通して成り行きを見守っていた男は小さくほくそ笑むと、そのまま瞑想にはいった。



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レイシアの正体

かなり無理矢理感はありますが寛容にお願いします。


パパス、パピン、バルバルー、サンチョ、プオーン、そして怪我から癒えたレイシアが一同に天空城の一室に集まっていた。

「皆に集まってもらったのは、皆に決めてもらいたい事があるからだ。

準備ができ次第魔界へ行くことになるが、魔界は間違いなく、魔物は遥かに強くなり、マーサを救いだしたとしても、魔王と戦うことになるのは避けられないだろう。

そうなれば、命の危険は遥かに高くなる。

皆はここまでよく頑張ってくれた、感謝している。

家族のこともあるだろうから、魔界に行きたくないものは、行かなくてもよい。

感謝することはあっても、恨むことはない。

明日までゆっくり考えてほしい。」

パパスはそういうと、皆に頭を下げた。

パパスが顔を上げた時に

「聞くまでもありません。」

という声がパピンから上がる。

「私は魔界に行くことなど恐れておりません。

最初からどこまでもパパス様のあとをついていくつもりでしたので!」

パピンは誇らしげに語る。

「俺は魔界の魔物や魔王と殺りあいたいしな。

兄弟を1人で行かす訳にもいかねえ。」

バルバルーは豪快な笑みを浮かべてパパスに答える。

「私めも旦那様にどこまでもついていきますぞ。」

サンチョも堂々と宣言する。

「僕も恩返しがしたいし。

魔界なんて恐くないよ。」

プオーンも自分の意見をハッキリと宣言した。

「パパス様、ここにいる私たちは皆パパス様に魔界であろうと、どこであろうとついて行きますよ。」

最後にレイシアが笑顔で占めた。

パパスが皆の顔を見渡すと、皆笑顔で強く頷いた。

パパスは熱くなる目頭を押さえながら、何度も何度も頭を下げ感謝をあらわすのだった。

そして、話は移る。

「レイシアよ。嫌なら話さなくても良いが、なぜ命を張ってまでまでマーサのことを救おうとしてくれるのか聞いておきたいのだが。」

今回のイブール戦でもレイシアは命を賭けてイブールの心を動かし、魔界へ行けるようになった。

なぜここまでできるのか?パパスは魔界に行く前に聞いておきたかったのだ。

少し間が空いた後にレイシアが話し出した。

「ええ、皆さんにもお話しようと常々思っていたことなのでお話します。

ただし、私の過去からお話しなくてはならないので、少し長くなりますが、お許しください。」

レイシアはそういうと、また少し間を開けた。

まだ表情には若干の戸惑いの色が浮かんでいた。

一度目を瞑り、ハッと息をはき、目を開くともうその目には戸惑いや迷い等は一切なくなっていた。

「まずは私が何者かについて話したいと思います。

信じられないかも知れませんが、真実であるので信じてもらうしかないのですが…」

レイシアはふぅと息をつき覚悟を決めたように話す。

「私は数百年前に勇者様と共に魔王と戦った八人の内の一人、ミネアと申します。」

レイシアの告白を聞いた瞬間に、部屋内が静寂に包まれた。

まるで時間が止まったかのようにといっても過言ではない。

バルバルーはこうなるだろうなという表情をし、他の4人は既に混乱して、頭の中を整理できてない状態である。

そんな皆を見渡し少し暗い表情を浮かべながらもレイシアは続ける。

「皆さんが驚かれるのも仕方がないことなのですが、事実なのです。」

 

その声には悲痛なものがこもっている。

「大丈夫だ、お前のことは信用している。

ただ想像の遥か上をいったために驚いているだけだ、安心して続けてくれ。」

パパスはいち早く気を取り直し、声から悲痛なものを感じ取ったために、慰め、先を促した。

「はい。分かりました。

まずは皆さんが疑問に思っているであろう、なぜこの姿で数百年という長い年を生きてこれたかを説明します。」

レイシアはそう言うと、袋の中から少しくすんだ由緒ありそうな金色の腕輪と、古文書を取り出した。

「これが、その説明にかかってきます。

『黄金の腕輪』と『進化の秘法』というものについて書かれた古文書です。」

レイシアが苦々しげに話すと、パパスははっと何かに気づいたように考え出した。

「まさか、数百年前に戦いの発端となった『進化の秘法』か。いまだでも確かラインハットの城で研究されているという。」

パパスはレイシアの方を見るとレイシアは小さく頷いた。

そして自分の過去について話し出した。

「勇者様と共に戦った私たちは魔王ピサロ、そしてその裏で糸を引いていた黒幕を倒しました。

しかし、私の旅はそれでも終わってはいなかったのです。

『進化の秘法』を見つけ出したのは私の父親エドガンでした。

そのため、父の娘である私がこの世から『進化の秘法』を消さなくてはと思い行動しました。

『進化の秘法』は多方面にまで広がり一つ一つ、消していき、ようやく最後の一つに行き当たりました。

――――

運命のその日、私は連絡を下さった、ピサロさんと共に改良して真に迫った『進化の秘法』を使用しようとしている魔物達のアジトに踏み込みました。

「さあ抵抗しないでください。」

既に術式を施そうとしている場面での突入でした。

「お前は勇者一向の、そしてなんと前魔王のピサロ様までいらっしゃるじゃないですか。

そこで見ているといいですよ。

我らが主があと一歩まで迫っていた『進化の秘法』を完成させたものが陽の目を浴びるのをな。」

「させるか!!」

私とピサロさんは共に魔物達に向かって攻撃を仕掛けましたが、間に合いませんでした。

目映い光が部屋中に広がると共に、私が父親の形見として常日頃から所持していた『黄金の腕輪』も連動するかのように光出しました。

光が止んだ時には何も先ほどとは変わりありませんでした。

その日は魔物達を成敗し、アジトを焼き払い、やっと『進化の秘法』をこの世から消せたと喜んでいました。

しかし、絶望に襲われるのはすぐそこまで迫っていたのです。

――――

少し話を止めた所でレイシアは皆に問い掛けた。

「皆さんは進化とはどのような物だと考えますか?」

単純そうでありながらも、内実難しい問い掛けである。

「進化とは、その環境に適応させるということではないか。」

パパスが先陣をきる。

続けて

「実に簡単にしか言えないのですが、強くなるということではないのですか。」

パピンも頭をひねりながら答える。

二人の答えを聞いた後、レイシアは頷き

「お二人の言う通りです。

ただ少し足りません。

お二人の答えの根幹にあるものは『死』の回避です。

強くなることも、環境に適応することも、これに繋がります。

そしてもう一つ、我々が『死』と共に恐れているもの、それは『老い』です。

私の父は、『進化の秘法』を使って我々が恐れる『死』と『老い』から我々人間を解放したかったのだと思います。」

「そ、それでは『進化の秘法』の真の効果とは……。」

パパスは冷や汗を流しながら言い澱む。

そんなパパスを見てレイシアは淡々と

「不老不死です。」

簡潔に答えた。皆が黙り込むなかレイシアが重苦しい空気を払うように軽くいい放つ。

「私は不老不死になった為に今もこの姿でここにいるのです。以前温泉で私の年を答えましたが、あれは進化の秘法を受けた時の年です。

あの時から私の時は止まっています。」

皮肉めいた笑みを浮かべながらも気丈に振る舞うレイシアの気を、知ってか、知らずか、あの男がポツリと

「だから胸が小さいのか…」

と呟いた。

次の時にはウォーハンマーで潰された男が

「空気を変えようとしただけなのに」

と答えて眠りについた。

この息子の空気を読めない所は父親譲りであった。

「おっほん、でレイシアはいつ自分が不老不死になったと気づいたんだ。」

パパスが仕切り直しと言わんばかりにレイシアに問い掛ける。「はい、それは不死については1ヶ月後のことです。

――――

私と姉は勇者様と別れた後はモンバーバラという街で生活していました。

私は占い師として、姉は踊り子として、そして時には街を襲う魔物を頼まれて倒すことも度々ありました。

そして、運命のその日が来たのです。

「ミネア様、助けてください。

めちゃくちゃ強い魔物が一匹街に迫っていまして。」

街の人が焦りながら私のもとにやって来ました。

「今行きます。で姉は?」

「マーニャ様は他の者が呼びに行っています。」

「分かりました。」

私が現場に着くと、四本足で片手に巨大なボーガンを、片手には巨大な剣を携えた魔物が暴れまわり、その魔物がやってきた場所には何人もの兵士が血を流しながら倒れていました。

「皆さん、少し離れていてください。

イオナズン!」

私はすかさずイオナズンを唱えました。

大抵の魔物はこの姉譲りの呪文で終わるはずでした。

しかしその魔物は全くの無傷で砂埃が舞う中で私にボーガンを放ちました。

魔物のボーガンは私の胸を撃ち抜き私は死を覚悟しました。

「メラゾーマ、ミネア!しっかりしなさい。」

駆けつけた姉によって助けられた私ですが、そこにいた人は姉を含めてもう私は助からないと思ったそうです。

本人である私すらそう思っていたのですから当然ですよね。

しかし、私は次の瞬間痛みが消え、出血も止まり、撃ち抜かれた箇所も分からなくなるほど綺麗になっていることを実感し、起き上がりました。

姉や街の人には回復呪文が間に合ったといい、言いくるめましたが、私はこの時不死になったと気がつきました。

そして、その二年後に不老に気づきます。

あれから二年の年月がたっても慎重も何もかも変わらず、年を取っているようにも思えないと、私ではなく、姉が気づきました。

それは年々顕著になり、5年経とうがかわりない姿で、とうとう街では

「ミネア様はいつまで経っても姿が変わらないなんておかしくない?」

「人間じゃねえな。」

「魔物かも知れねえぞ。」

など陰口を叩かれるようになりました。

たとえ魔王を倒した英雄であっても、少しでも自分たちと違いがあれば叩くのが人間です。

私は姉に迷惑をかけたくはなく、街を離れることにしました。

それからは、2~3年ごとに住む場所をかえていきました。

それ事態はたいしたことはなかったのですが、一番悲しかったことは、

「おい、聞いたか、バトランドの英雄ライアンが亡くなったんだとよ。」

または

「サントハイムの女王アリーナ女王が崩御なさったらしい。

大神官のクリフトが取り乱してザラキを辺りに撒き散らしているらしいぜ。」

等の自分の仲間達がこの世を去ったという話を耳にした時が一番のショックでした。

私の知り合いは居なくなる。

しかし、依然として私は年をとることもなく、死ぬこともない。

皆は歩み続けているのに、私は先に進むことも、戻ることさえもできない。

絶望に支配されました。

それからは死ぬためには、ということしか考えていませんでした。どうにかして死のうと、全滅した町があると聞けば、そこでメガザルを唱えたり、魔物が溢れていると言えばそこに向かいメガンテを唱えたりしましたが、全く効果はありませんでした。

そのように死に場所を求めていた時に、マーサ様との出会いがあったのです。――――

皆一様に重苦しい顔をしていたが、レイシアはマーサという言葉を出した時には、おもいだすかのように晴れやかな笑顔を浮かべていた。



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マーサとの出会い、そして時は動き出す

私は長い間死ぬことだけを求めて目的すらない、終わることのない旅を続けてきました。

そしてそんな終着点のない旅のなかで立ち寄った、ある町の酒場でこんな話を聞きました。

『エルヘブンという町の近くに魔界へ通じる道があるらしい』

 この時すでに私は自暴自棄になっていたので、(魔王ならこの不老不死の呪いを打ち消し、私を殺してくれるかもしれない)

そう思い、魔界に行くためにエルヘブンに向かいました。

エルヘブンについた後、現地の人にそれとなく聞いて見たのですが、誰もが口を濁したり、何も話さなかったりと、『魔界へ通じる道』については話すことを規制されているようでした。

行き詰まった私は、酒場で飲んだくれていました。

実際には年齢的にお酒はダメなので、ジュースでしたが。

そこで、運命の出会いがあったのです。

「ねえ、お姉さんは旅の人?」 突然私は誰かに話かけられました。

知っている人もいないこの町で、いやこの町に限らず、世界全てでも現在の私自身を、おとぎ話出てて来るミネアではなく、今現在も生きているミネアを知っている人はもうほとんどいないのですが。

話しかけられた方向を見ると、子供ように誂えられた可愛らしい神官服を着た、約10歳に満たない、色白で髪が方辺りまである、可愛らしいというより、口で言い表せない神秘的な何かを感じさせる少女がいました。

その時の私は、生きることにさえ疲れており、また知り合いを作ったとしても悲しい思いしかすることはないので、人間関係を築くのを恐れ、大体話しかけられても、無視をするか、尊敬する勇者様ばりに、『はい』か『いいえ』のみであしらうことがほとんどでした。

しかし、その時は自分でも気づかないうちに、

「ええ、私は終わりない旅を続けているのですよ」

 となぜか言葉がすらすらと出ていたのです。

その話を聞いていた少女はこちらもつられて笑顔になってしまうような、愛らしい笑顔を浮かべながら、私の話を聞いてくれました。

私もなぜ、こんな小さな少女にここまで自分の話をしたのかは今でも分かりません。

ただ、幼いながらもマーサ様には特別な力があったのでしょう。

今まで凍りつき閉ざされていた私の心も次第にほぐれていきました。

「お姉さんごめんね。もう行かなきゃならなくて。またここでお話してくれる?」

「…ええ、いいわよ、また明日…」

「うん、約束ね」

そういうと少女は走って去って行きました。

それまでの私であれば、一人でいることに慣れていたために、寂しい、などの感情が表にでることなどありませんでした。

しかし、この時少女が去って行ってしまうとき、私は世界にたった一人で取り残されてしまったように感じ、悲しさ、寂しさ、不安などの感情により心がしめつけられるようでした。

次の日も約束した酒場で飲んでいると、

「お姉さん、約束守ってくれてありがとう!」

昨日と全く同じ笑顔で同じ所にその少女は立っていました。

それからまた楽しく話していると昨日と同じ時間になり、名残惜しそうに、また明日の約束をして帰っていきました。

それから毎日のように合い色々な話をしました。

 

まさに日課となったその日々は、私に長い間忘れていた喜びや安らぎを与えてくれました。

話によるとその少女、マーサはこのエルヘブンでも特別な力を有しているということで、悪くいえば軟禁されたような状態であるということを知りました。

そのために私の旅の話には目を輝かせて聞いていました。

 そのような日々が約二ヶ月続きました。

魔界に行くことも、行きたいという気持ちも小さくなっていました。

「ミネアお姉さん。少し聞いていい?」

 いつもはいい意味で遠慮なく聞いてくるマーサ様でしたが、この時だけは躊躇しているようでした。

「なにか悩みがあるなら話してほしいな」

「!!!」

マーサの瞳は私の全てを見透かしているような感覚を受けました。

私は全てを話そうと思いながらも、果たしてこのような重い話をこのような年端もいかない少女に話していいものかと躊躇しました。

しかし、マーサ様の瞳は真剣そのものであり、それまでたった二ヶ月とはいえ、濃密な関係を築いていたので、全てを打ち明けることにしました。

そこから約一時間ほどで、自分の素性、過去について、ここに来た理由全てを告白しました。

マーサ様はいつも私の話を聞くときは、笑顔で聞いていましたが、さすがに今回の話の時には涙ながらに、自分の身になぞらえて聞いてくれているようでした。

私は全てを語り、胸が軽くなった気がしました。

それだけでも、話した甲斐があったと思いました、その後、マーサ様はしばらく俯いて思案した後、いつもの笑顔で顔を上げこうきりだしました。

「最初ミネアお姉さんにあった時に何か、その金の腕輪から大きいけれど、あまりよくないものが、体を取り巻いていたからちょっと気になって話しかけたの。

でも今の話を聞いて分かったの。私ならミネアお姉さんの悩みを解決してあげられる」

 年端もいかない少女とは思えない頼りがいのある感じを受け、マーサ様を信じて身を委ねることにしました。

ただ酒場ではできないということなので、マーサ様の部屋に行くことになりました。

しかし、そこにも問題があり、マーサ様の友達であってもマーサ様の部屋には入ることはできないということで、夜中に忍び込むことになりました。

夜這いをかける男の人の気持ちがよく分かった夜でした。

マーサ様の部屋は、綺麗で整ってはいましたが、本当にここで生活しているのかと疑問に感じるほどに無機質な印象を受けました。

「じゃあ始めましょ」

笑顔でいったマーサ様は次の瞬間真面目な顔になっていました。

マーサ様の体からは誰からも、感じたことがないほど、あの魔王ピサロをも遥かに凌駕するのではないかと、思えるほどの魔力を感じました。

ただなぜかそれほどの魔力を感じても、恐ろしいと感じるどころか、逆に安らぎを受けるような、とても心地よいものであったことを今でも覚えています。

そこで私の記憶はとだえています。

私が目を覚ました時には、隣でマーサ様も寝ており、私が目を覚ましたのに気づくと、目をこすりながら

「もう大丈夫だよ。でもね、あの呪いといってもいいぐらいの力が強すぎて、ミネアお姉さんは体が衰えることだけはなくなってしまったの、ごめんなさい」

マーサ様は私を不死そして、地獄のような終わらない日々から解放してくれました。

体だけは時がとまったあの時から変わりませんが、ちゃんと時間が経つのを感じられるようになりました。

それから、私はミネアという名を捨て、新たにレイシアと名乗りマーサ様の口添えで、マーサ様に仕えることになりました。

――――

 

「というのが、私がマーサ様のためならこの命さえ惜しくないと思える理由なのです」

レイシアの話を聞いていた皆はそれぞれ様々な感想があるのだろうが、話が想像を絶するものであり、声一つ誰も発しなかった。

しばらくたち、サンチョが思い出したかのように話し出した。

「そういえば、パパス様がマーサ様をお連れになって帰られた日に、恐ろしい、魔王さえも震えるほどの形相で魔力を迸らせながらグランバニアに一人で乗り込んできた理由はそこにあったのですね」

「ええ、私の恩人でもあり、大事な親友が『悪漢パパスに拐われた』なんて聞かされたらあのようにもなりますよ」

 恥ずかしそうに、微笑を浮かべて話すレイシアの横で、パパスはその時の惨状を思い出していた。

(あの時は酷かった。死人こそ出なかったが、城中の兵士が尽く戦闘不能にさせられ、幾多の修羅場を潜り抜けてきた私でさえ、初めて『死』の恐怖を明確に意識した日でもあった。

マーサが止めてくれたからよかったが)

身震いしながら過去に思いを馳せた後に、

「皆の思いしかと受け取った。

これからもよろしく頼む。」

 パパスは皆に視線を送り、頭を下げた。

 

大事な妻を、大事な恩人兼親友を、主君の奥方を、兄弟の妻を、恩人の妻を、皆がマーサを救うと再度覚悟を決めた夜であった。




マーサ自体原作でもほんの僅にしか出ていないので、ほぼ私の想像で書かせてもらいました。
次回から『魔界編』に入ると思います。


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マーサの嘆きとパパスの思い

 イブールとの戦いにより、今では小高い丘のようになってしまってはいるが、元は光の教壇本拠地『大神殿』があったセントベレス山にパパス、レイシア、バルバルー、パピン、サンチョそしてサンチョに背負われるリュカ、プオーンが集まっていた。

 リュカに関しては、大変危険な魔界であるために、グランバニアに置いていこうと考えていたパパスであったが、出発する前にパパスが離すと火がついたように大泣きし、抱くと泣き止むということを無限ループのように繰り返した。

 それを見ていたオジロンがパパスに

「リュカもマーサ様に会いたいのではないのですか」

と言った所、満面の笑顔で笑い出したために、仕方がないと連れていくことになった。

 それについてもサンチョが極力戦闘に参加せずに後方で控えているということを前提にした上での考えではあるが。

 7人がその場についた時に、眼前の空間がグニャリと歪み、その歪みが元に戻ったと同時に、前回死闘を繰り広げたイブールが現れた。

「よく来たな。もう準備て覚悟はできているのか?」

イブールがパパスを見て尋ねると、パパスは黙って頷いた。

 その様を見てイブールも満足したように頷き、

「では魔界への門を開いてやろう」

とだけ言うと、天に向かい両手を挙げ

「我が主よ、この者達のために、魔界への門をお開けください」

と祈りを捧げ始めた。

 

――――

 

 イブールのその様子がうかぶ水晶玉を見ている男は、何かを企むかのような醜い笑みを浮かべると、

「やはり魔界への門を開くことを奴が許すはずがないか。イブールが単独で力を込めても到底魔界への門が開くこともないだろう。想定内のことだ。どれ力を少し貸してやろう」

と呟き、水晶玉に向かって魔力が込められた両手をかざし始めた。

 

――――

 

 イブールが祈りを込め始めてしばらく経つが、全く変化が起こらない。

 イブールの焦る様子を見て、不安を感じるパパス達であったが、ここはイブールに任せるしかないと静観している。

 すると、イブールの前の空間が、陽炎がのぼるかのようにユラユラと揺らめき始める、そして黒い点が現れたかと思うと、その黒点が急に広がり、大きな人一人が通れる程の、穴、いや魔界への門が形成された。

 イブールは先程の焦りなどなかったようなドヤ顔でパパス達の方に向き直り、

「さあ魔界への門が開かれた。行くがよい」

とだけ言うと、穴の前からどき、入るようにパパス達へ促した。

 パパス達の前に現れた、穴は、全ての光をも飲み込み、食らいつくすかのような、底無しの恐ろしさを感じさせる程の闇に占められていた。

 しかし、パパス達は足を止める訳にはいかない。どんな困難が待ち受けていようと先に進まなくてはならないと、覚悟を決めパパスが先頭に立ち、その穴に足を運んだ。

 

――――

 

 水晶玉を前にした男は、先程にも増して醜く歪んだ笑みを浮かべ

「他愛なかったな。もう少し奴は抵抗すると思ったのだがな。まあいい、これからわしの思い通りに動くことを望んでいるぞ」

と呟くと、水晶玉の前から姿を消した。

 

――――

 

 地上とも魔界とも違う次元に浮かぶ、強大な力をもつであろう、見た目は老人のような男が、表情も変えず、遠隔透視でパパス達が穴に入っていくのを見ていた。

 パパス達は知るよしもないことである。

 

――――

 

パパスが一寸先も見えない暗闇の中を、真っ直ぐと、ただ真っ直ぐと自分を信じて歩き続けた。

 永遠に続くような闇の中を止まることなくパパス達は歩き続けると、穴の執着点が現れた、強張っていた表情が自然と緩み穴から出ると、目の前に広がる光景に視線が釘付けになった。パパスに続いて穴から出てきた仲間達もその光景に動きが止まった。

 魔界、空に太陽はなく、漆黒の闇が広がっている。

先程通ってきた穴もひどく不安を掻き立てる闇であったが、それを遥かに越えた闇が延々と続いている。

「どういうことだ。全く先が見えん。それに先程の穴とは違い、足を前に踏み出すことさえ躊躇してしまう」

パパスが呟くがそれは、バルバルーを除く全ての者も総意であった。

 その時である。空から懐かしい、求めて止まない者の声がパパス達に降りてきた。

「あなた、レイシア、そして皆さん、なぜ魔界にまで来てしまったのです」

マーサの声であった。

しかしパパスやレイシアが望んでいたものとは違い、非難するようでもあり、また深い悲しみが込められた言葉であった。

「魔王が私の大事な皆に手を出せないように、ここでこうしていたのに……。お願いです。私が再度地上への門を開きますので地上に帰り、リュカと平和に暮らしてください」

悲痛に歪んだ涙声での懇願である。

 その声を聞くだけで、パパス達の覚悟はより強固なものとなっていた。

「バカを申すな。私はお前を助けるためにここへ来たのだ。なにもせずに帰れるか。私とお前の子、リュカもお前を迎えにここまで来ているのだぞ」

「私もマーサ様を救うまでは帰るつもりはありません。強情を張るのなら、心配の種となる魔王でさえも倒して見せましょう!」

パパスもレイシアも力強くマーサに向かって言いはなった。

「………。私は幸せ者ですね。あなたやレイシアの気持ちの強さ、そして頑固さはよく知っています。今から魔界でも地上と同じようにできる物を送ります。無理をなさらないでくださいね…」

優しさが込められた言葉が終わると、天から青く光り輝く宝石のような石が舞い降りてきた。 パパスがその石を手に載せた瞬間、目映く優しい光りが辺りを照らし出した。

目の前の闇は全て払われ、魔界の真の姿が前に広がっていた。



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魔界を進め、一筋の光を目指して

 マーサに送ってもらった石により闇は払われた、しかし魔界の真の姿もパパス達には、驚きと不安以外の感想を与えなかった。

 地上と変わらない所もある、森や岩山など、しかしながら、それを構成する木々は地上のそれとは全く違うと言っても差し支えはない。

 紫色の幹、漆黒の葉、それ以外にも人間の顔のようなものが樹皮に浮かんでいるものもある。

 石によって闇は払われたとはいえ、それは単に目視できるぐらいにまでというもので、依然として薄暗く、明かりとなるものすら存在しない。

 パパスは気をとりなおすと、光を失ったマーサからの石を見て覚悟を決め、大事そうに懐にしまった。その石がパパスの首を締めることになることを知るのは少し後のことである。

 パパス一行は立ち止まるわけには行かないので、辺りを警戒しながら歩き始めた。

 目的地は分からないが、幸いにして、東にしか道はなかったので、東に向かうことにした。 しばらく皆無言で歩いていると、パパスは動きを止め、皆にも止まるように手を挙げる。

「………!来るぞ!」

パパスの声が静寂を破る、皆はすでに戦闘体勢に入っていた。

 空中には冷気を撒き散らしながら飛来する鳥型の魔物ホークブリザード、空を飛来して地上に降り立つ紫色の体毛を持ち、猿の容貌を持つバズズ、以前戦ったラマダの色違いながら、体格は一回りも違うギガンテス。どの魔物も今まで戦ってきた魔物など比べるべくもない強敵である。

「上空の鳥(ホークブリザード)は私に任せてください」

「じゃあ俺はあのデケエ鬼(ギガンテス)だな。誰も手を出すなよ、俺の獲物だ!」

「じゃああの猿(バズズ)は僕が戦うよ」

レイシア、バルバルー、プオーンがそれぞれ敵に向かっていく。

 確かに敵は強いが、パパス達はさらに強くなっていた。

 「グギャー!」

ホークブリザードが滑空しレイシアに襲い掛かる。

「フフ、空にいればいいのに、でも空にいても私には意味がないのだけど」

レイシアは微笑を浮かべ、滑空して襲い掛かったホークブリザードの攻撃を最小限の動きでかわす。

背を向けて空に再び舞い上がるホークブリザードにレイシアは手を向けて

「メラゾーマ」

と呪文を唱えると、巨大な火球がホークブリザードに襲い掛かり、その冷気ごと焼き付くした。

 遅い来るギガンテスの棍棒バルバルーはを大剣で裁いている。その口許にはうっすらと笑みが浮かんでいる。

「なかなかの攻撃だ。今までの奴らとは重さが違うわ。楽しいじゃねえか!」

そう言いながら上から降りおろされた攻撃を裁くことなく大剣で受け止めた。

「!!!」

驚愕の表情を浮かべるギガンテスに

「じゃあな、楽しかったわ」

バルバルーが言うと同時に力を込め受け止めている棍棒をはねあげ、万歳状態のギガンテスを大剣で横に両断した。

ギガンテスは血飛沫を撒き散らしながらながら上半身と下半身が分けられた。

「ナンダヨオレノエモノハコンナチンケナヤツカヨ」

「チンケだと。許さないぞ」

バズズが喋ったことに驚くことはなく、プオーンは口喧嘩を始める。

「マアイイカ、スグニオワラセテホカノヤツヲクエバ、シニナマヒャド!」

『!!』

戦況を見守っていたパパス達には戦慄が走る。

まさか普通のそこら辺の魔物が上級氷結魔法『マヒャド』を唱えたからだ。

そんな仲間達の驚きを他所にプオーンは微動だにしない。

急激に周囲の気温が低下し、白く凍りつく、そして上空から氷柱が襲い掛かる。

プオーンはまず上空を見上げ吸い込んだ息を吐き出す。

周囲の冷え込んだ空気は一瞬で沸点に達するほどの『灼熱の炎』を吐き出した。

氷柱は全て蒸発する。

プオーンはそのまま顔を下げバズズに視線を送る、視線とともに舞い降りた『灼熱の炎』はバズズの断末魔と共にバズズを飲み込み灰にした。

 パパス達にとっては魔界の魔物でも然程恐れるものではなくなっていた。

「みんなよくやってくれた。では先へ進もう」

パパスはレイシア、バルバルー、プオーンに労いの言葉を掛け先に進んだ。

 そこから約2時間迷路のような道を迷い迷い進んでいくと、前方に巨大な柱のような物が見え始めた。

 その巨大な柱の上にはほんのりとした光さえも見える。

 暗い魔界を歩いてきたパパス達にはそのほんのりとした光でさえも懐かしく感じ、それを目当てに進むこととした。

 さらに二時間歩き続け、柱が目の前に現れたその時であった。

辺りを凪ぎ払うかのような突風がパパス達に吹き付けられる。

砂埃を払いながら見ると、巨大で計り知れない威圧感を持ち、黄金に輝く鱗、巨大な羽、鋭い牙、爪を持つ、魔界の魔物の中でも頂点近くに君臨するドラゴン、グレートドラゴンがパパス達の歩みを妨害するかの如く前に立ち塞がった。

「最後の砦か。どうする?私が殺ろうか?」

パパスが皆に問い掛けると、

「ここは私に任せてください、皆に遅れるわけには参りません!」

パピンが名乗りを挙げた。

パパスは頷くと下がった。

 パピンはメタルキングの剣を抜き構える。

「行くぞ!!」

パピンの強烈な踏み込みから、加速し、瞬時に間合いを詰める、グレートドラゴンも警戒はしていたが、それを上回るスピードでパピンは間合いを詰めていた。

そこからの一閃、グレートドラゴンの硬い鱗を切り裂くが予想以上の硬さに深傷は与えられない。

痛みで怒りに燃えるグレートドラゴンは尻尾で前方を凪ぎ払う、すぐにそれを察知し回避行動をとったパピンではあったが、その攻撃範囲が予想外に広く避けきれず、弾き飛ばされる。

「かなりの力だな…。出し惜しみはなしにするか」

口内の血液を吐き出すと、パピンは剣を構える。

味を占めたグレートドラゴンが再び尻尾を叩きつける。

「ドラゴン切り!!」

パピンの剣が紫電の輝きを見せると、巨大な尻尾が宙を舞っていた。

「グガーーッ!!」

痛みと怒りに刈られグレートドラゴンはなりふり構わず至るところへ炎を吐き出す。

冷静にパピンはそれらをかわすと、再び

「ドラゴン切り!!」

と剣を閃かせると、グレートドラゴンの首が血飛沫を撒き散らしながら地面に落ちた。

「見事」

「やるな」

パパスとバルバルーがパピンの勇姿に称賛を送った。

 



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魔界の村ジャハンナ

「長い梯子だったな」

前回グレイトドラゴンをパピンが倒したために目的地への障害が取り除かれた。

そしてそこに待ち受けていたのが今パパスが登りきり、皆がちょうど登っているそれは長い、長い梯子であった。

「ジャハンナにようこそ」

パパスが後から登ってくる仲間に手を貸していると、突然何者かに声を掛けられた。

その声は新しい町に着くと必ずと言っていいほど掛けられる我が町の名前はという宣言と同じであった。

 パパスは驚きながらも迅速に振り返り、剣を抜く、当然である。

ここは魔界である。地上とは違い人間はまずいないと言っていい。それならばいるのは魔物である。フレンドリーに話しかけられた感じはしたが、魔物であったならば油断できないとパパスは剣を抜いたのだ。

「!!」

 唖然とした、なぜならパパスの前に立っていたのは、人間の女性であったからだ。

どこからどうみても人間である。

「あなた方もマーサ様に人間にしてもらったのですか?」

「!?」

女性は剣を向けられたことに全くといって動揺もせず話しかけてきた。

しかしその話の内容には全くといっていいほど意味が分からないことと、聞き逃してはならない言葉があった。

どのように答えればよいか戸惑っていると後ろから最後に梯子を登りきったレイシアがパパスにかわり、その場を引き取った。

「あなたはマーサ様をご存知なのですか?」

レイシアが探り探り一番聞きたかったことを尋ねる。

「え、あなた達はマーサ様に人間にしてもらったのではないの?もしかして本当の人間?」

問いかけられた女性が驚きの声をあげる。

するとその声を聞きつけた他の村人も興味深そうに近づいてくる。

「ほうまさかまたもやこの魔界に人間が訪れるとはマーサ様以来だ。それにどうもマーサ様を知っているようじゃな」

集まってきた村人の中から人のよさそうな老人がまえに出る。

「驚かれましたかな、この魔界にこのような人間の集落があって」

「はい、かなり」

全く悪意が感じられない朗らかな笑顔で老人が話始めたのでレイシアも正直に頷く。

「私はこの村の村長をしておるものです、そして皆さんが疑問に思っていることにお答えすると、この町はマーサ様が作られたものですじゃ」

『!!!』

衝撃の事実に皆は驚きを隠せない。

皆が唖然としているので村長も少し間を置き、皆が落ち着いたのを見計らって続きを話す。

「この村の者は皆元々は魔物でした。しかし魔界に来られたマーサ様に出会い、その心にふれ改心し、皆が望んでマーサ様に人間にしてもらったのですじゃ」

「なんと、マーサにそのような力があったとは…!!」

「マーサ様恐るべし!」

「僕も人間にしてもらえるかな?」

村長の話を聞きパパス、パピン、プオーンがそれぞれ感想をもらす。

「あ、ちなみに私は元はヘルバトラーですじゃ」

イタズラな笑みを浮かべ村長はつけたす。

「さすがですマーサ様!魔物の四天王まで改心させてしまうとは…!!」

皆が村長が言っていることに疑問符を浮かべているなか、レイシアだけが驚きマーサをさらに誇りに思うようになっていた。

「ところで、なぜ人間のあなた方がこの魔界に来られたのかを聞いてよいですかな?」

再び村長は真面目な顔になるとパパス達に問い掛ける。

 パパス達もすでにその話ぶり、口調、眼差しなどから信用に値すると確信したことにより正直に魔界に至るまでの経緯を村長に説明した。

――――

 

「そのようなことが…。分かりました、私達もマーサ様には大変な恩があります。なのであなた方に協力したいと思いますじゃ、魔界ではゆっくり休める所もないと思いますが、ここでは安心してお休みください。あと町の中には武器屋や防具屋があり、こちらに関しては人間界より品揃えは優れておると自信をもっております。まあ武器、防具に関してはお金を頂きますが、そこで装備を整えていかれるとよいと思われます。ではごゆるりと」

村長は終始笑顔で話すと満足そうに去っていった。

 その後パパス達はジャハンナの村人に囲まれて、質問攻めにあい、宿にはいったのは相当後のことになった。

次の日、パパス達は村長が話ていた武器屋に足を運んでいた。

「なんとため息が出るほどの一品ばかりではないか。メタルキングの剣がなければこの《吹雪の剣》など値段を気にせず買ってしまうほどの一品だ」

とパパスが目を見開いて言えば、

「………」

パピンはパパスとは対照的に黙って武器を手に取ったり、眺め回したりしている。

「ほんとだな、なかなかいい品揃えしてやがるぜ。まあ俺の愛剣の《地獄のサーベル》には及ばねえがな」

とバルバルーも関心はしている。

「パパス様よろしいですか」

パパスのもとにサンチョが何か遠慮がちに話しかけてきた。

「どうしたんだ?」

いつもと違う雰囲気のサンチョにパパスは尋ねると、

「申し訳ないのですが、この武器を購入して欲しいのですが…かなりお高くて…」

サンチョが取り出したのは巨大なボーガン、その名も安直な《ビッグボーガン》であった。

パパスも合点がいった。

サンチョは魔界に来てからはリュカの為に後方に控えており、引け目に感じていた。しかしこのボーガンならば後方からも戦闘に参加出来るために欲しいといったのだなと。

「よし買おう。でいくらなのだ?」

「31000ゴールドです…」

サンチョが答えにくそうに答える。

「なかなかの出費ではあるが、サンチョの為だいたくはない、店主よこれをくれ」

「あいよ31000ゴールド丁度頂やした大事に使ってやってくださいね。それはあっしの仲間が命懸けでキラーマシンからぶんどったものですから」

「……ああ、はい」

サンチョは苦笑いしながら店主からビッグボーガンを受けとると装備した。

「ありがとうございますパパス様」

嬉しそうに感謝を述べるサンチョを見て、これほど喜んでもらえるなら買って良かったと思うパパスであった。




今回は武器屋までです。
防具屋では少し描きたいことがあるので。
ジャハンナの防具屋には性能は抜群でも一風変わったものが。


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セク〇ラ装備で一波乱

「次に行く防具屋も期待できるな」

「楽しみです!」

 ジャハンナの武器屋を出たパパスたちは防具屋に向かっていた。

武器屋の品揃えの素晴らしさから、防具屋への期待もうなぎ登りである。

まして、王でありながら武人であるパパスとかなりムッツリではあるがねっからの武人であるパピンは期待が表情に顕著に表れていた。

サンチョに至っては身の丈ほどある巨大なボーガンを片手に、もう片手にリュカを抱いて両方に頬擦りしている状態である。

 しかし、そんなメンバーのなかでも1人だけ顔色が優れない者もいた。

「どうしたレイシア、顔色が悪いが?」

 

元気がないレイシアを心配しパパスが声を掛ける。

「いえ、大丈夫です。ただ何か嫌な予感がして…」

気丈に返すがやはり元気がない。

「『虫の知らせ』というやつか何事もなければよいが…」

この予感が的中する防具屋に少しずつ、着実に近づいていた。

「へい、らっしゃい!!」

パパスが防具屋に入ると威勢のよい声が店内に響き渡る。

その店の店主であるが、声もでかければ、体もデカイ。

普段なら圧倒されてもしかたがないが、今回は防具への期待が大きいのですぐにきりだす。

「防具をみたいのだが」

「うちは魔界一ですよ!こちらになります」

待っていましたとばかりに笑顔で店主はパパスたちをつれていく、

「こ、これは!!」

 

「逸品揃いです…」

 

パパスとパピンの驚きの声が店内に響く。

「だろ。まああんたが着ているメタルキングの鎧にゃあ敵わねえがどれも自慢の逸品だ。ゆっくり見ていってくれ」

パパスたちの驚きを満足そうに見届けると店主はカウンターにどっかりと腰をおろした。

 そこからは全てがパパス達にとって初めて見るものばかりなので満足するまで手にとったり、装備できるかを確かめたりしながら、パパスたちにとっては至福の時を過ごした。

「欲しいものを持ってきてくれ」

パパスが皆に呼び掛けると、皆がそれぞれ気に入ったものを手にして戻ってきた。

「少し数が多いですが…」

「俺はこれくらいしかねえな」

「僕もあまり装備できるものがなかったよ…」

パピン、バルバルー、プオーンがそれぞれ戻ってきた。

サンチョ、レイシアも戻ってきたのでそのままカウンターに向かった。

「ん、これは?」

カウンター先ででかでかと『店主のオススメの逸品あります!!!』

とでかでかと目立つ所に掲げられている看板がある。

「ほう、これほどの品揃えの中で店主が進めるとは興味があるな、店主見せてもらえるか」

パパスは店主に持ってきてくれと頼もうとした時だった

「パパス様、もう時間も遅くなりました。そろそろ精算して帰りましょう。」

毅然とした態度で反論するレイシア。なにやら鬼気迫る顔である。

「なにを言っていー」

「へい、だんなこれが家の最高の逸品だ!!」

満面の笑顔で店主は現れた。

その手に握られていたものは………。

「……こ、これは!?」

「………」

声が漏れたパピン、そして黙り込むその他一同。

「天使のレオタードだ!!その昔天使が着ていたという物をモデルに作られた逸品で、その呪文耐性、防御力どれも文句ない逸品だ。さあこれしかない逸品だ。魔王と戦うならこれしかない!!」

店主は鼻息を荒くして捲し立てる。

「素晴らしい、魔王との戦いにこれほど適したものはありませんよ!!」

パピンがとてつもない勢いで賛同する。

 

「……。レイシアよ一度着てー」

「拒否します。これを着て町を歩いたり、魔王と戦うなんでどんな痴女ですか!!」

顔を真っ赤に染めて断固として反対する。

「うーん、ここまで反対されたらな」

考え込むパパスに店主とパピンがタッグを組んで崩しにかかる。

「命がかかってるんだ、恥じなんか捨てるべきだぞ。歴代の魔王と戦った勇者たちも装備していたんだ」

「これは防御だけでなく、我々の戦いで荒んだ心も和らげます。ぜひぜひ」

 

二人はこんこんとパパスとレイシアに時始める。パピンに至ってはパパスの耳元でなにかを呟いていることさえある。

説得が続くこと一時間。

パピンの説得か、洗脳が効いたのかパパスがレイシアに必殺の一言を叩きこむ

「頼むレイシア。マーサを救うためだ!!」

「!!、マーサ様のため……」

今まで頑なに拒んでいたレイシアがぐらつく。

「今ですパパス様!!」

「いけーっだんなー!!」

呆れているバルバルー、プオーン、サンチョをよそに、パピンと店主が声援をとばす。

「頼むレイシア、マーサの―」

その時だった。

パパスの胸元が激しく赤く光出した。

「あ·な·た、愉しそうですね」

魔王すら後退りするのではないかという圧倒的な威圧感を持った声が店内に響き渡る。

以前は女神のようで優しさに溢れた声であったが、今は邪神をも彷彿とさせる声だ。

「ま、ま、マーサ!!」

それからのパパスの行動は迅速であった。

赤く禍々しい光を放つ石を取り出すと、自分の前に置き、地に頭をつけ謝罪を始めた。

土下座である。

「いつもそのようにレイシアに対応していたんですね。帰ったらお·は·な·ししましょうね。それにパピンさんについては奥さんに話させて貰いますから」

『……』

二人はただの屍と化した。

「あ、でもレオタードを着て顔を赤らめるレイシアも見てみたいかも」

マーサの意外な声もありレイシアは逃げ場を失った。

「もういいですよ!」

自暴自棄になったレイシアは店主から天使のレオタードを引ったくると試着室に入って行った。

 しばらくすると、真っ白で純白で羽飾りが着いたレオタードを着たレイシアが現れた。

背中部分は大きく開き、胸元はかなりささやかに、どこがとは言えないがかなり際どく鋭角になった部分もある。

健康的な褐色の肌も純白のレオタードによって映えている。

真っ赤になったレイシアは皆の視線に耐えられなくなり走り去った。

「可愛いレイシアが見れたのでよしとしましょう。今回だけは許しますが次回はないと思ってくださいねあ·な·た」

 

『ははあ』

パパスとパピンは石が明かりを失うまで土下座を続けた。

レイシアは天使のレオタードを着てその上に賢者のローブを着るようになったという。

 

 




装備に関しては次回冒頭でまとめさせてもらいます。


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打ち破れ、レイシアのトラウマ

更新遅れて申し訳ありません。


 魔界への準備とジャハンナでの買い物での現在の仲間の装備

 

 

パパス

 

メタルキングの剣

グレートヘルム

メタルキングの鎧

水鏡の盾

マーサの肖像画いりロケット

 

 

パピン

 

メタルキングの剣

グレートヘルム

炎の鎧

ドラゴンシールド

 

バルバルー

 

地獄のサーベル

グレートヘルム

銀の胸当て

 

サンチョ

 

ビッグボーガン

シルクハット

銀の胸当て

鍋の蓋

 

プオーン

 

オリハルコンの牙

銀の胸当て

最後の鍵

 

レイシア

 

グリンガムの鞭

知力の兜

賢者のローブIN天使のレオタード

黄金の腕輪

 

以上が最終装備となります。

 

▽▼▽▼▽▼

 パパス一行は、ジャハンナの長老に魔王ミルドラースの居城が、ジャハンナから北の位置に存在する【エビルマウンテン】にあるという情報をもらいその場に向かっていた。

 しかしながら、【エビルマウンテン】は単純にジャハンナから北に向かえば良いのではなく、まず東に向かいそこから北上し、その後に北西に進むという道のりであった。

 ただでさえ長い道のりであり、更には魔界の魔物、ホークブリザード、煉獄鳥、バズズ、ギガンテス等の魔物がかなりの頻度で襲ってきたので気が休まる暇がなかった。

 やっとエビルマウンテンの姿が微かに目に見える位置にまで来たときであった。

 この日パパス一行は森に入っていた。

「全く慣れることはないな…」

「ええ、全くです…」

うんざりしたような口調でポツリと漏らしたパパスの呟きに、こちらも同じような口調で同調するレイシア。

彼らの前に広がるのは、紫色の樹皮を持ち、漆黒の葉を持つ木々が構成する森である。

 確かに地上に存在する森であれば、茶色の樹皮に癒しを与える生き生きとした新緑と、活力を与えられる物であるが、魔界のものはそれとは真逆のものであり、気を憂鬱にするものであった。

それだけではない、地上の森であれば、鳥の囀り、虫の鳴き声、川のせせらぎなど心を和ませる音があるのだが、この森では魔物のうなり声、何らかの叫び声、断末魔など気が休まるどころではない惨状が広がっている。

五感の内でも重要な視覚と聴覚をガリガリと削っていた。

「ん!!警戒しろ!」

突如パパスが声をあげる。

皆が警戒体勢をとる。

「赤い光のような物が見えたのだが…。」

パパスが視線を向けるが何もない。

気が緩みかけた時であった。

「避けろ!!」

パパスの怒号が飛び、皆がその場を離れた直後、皆が先ほどまでいた場所には巨大な矢が地面に深く突き刺さっていた。

その矢が通ってきたと思われる前方には、木々がなぎ倒された凄惨な状態となっていた。

 しばらくすると、〈ガシャン、ガシャン〉という機械音と、〈メリメリ〉という木々が折られる音と共に、見上げるほどの大きさの魔物が出現した。

赤く光るカメラアイ、濃い青色で鈍く光るボディを持ち、片手には巨大なボーガン、片手には切れ味鋭いサーベルを持ち、背にボーガンの替えの矢じりを背負い、安定した四本足を持つ魔物、キラーマシンが現れたのだ。

 皆は既に各々が武器を手に取り戦闘体勢を整えているのだが、一人だけ、腰から崩れるかのように膝を付いて震えている状態の者がいた。

 

「どうしたレイシア?」

 

キラーマシンを見てガタガタと震えるレイシアを見てパパスはただ事ではないと駆け寄ると、

「あ、あれは…」

と俯いて小さく呟いている。

パパスはキラーマシンを見てそういうことかと気づくことになる。

 キラーマシンは過去に不死となってはいたが、レイシアの心臓をボーガンで貫き深傷を与えた因縁の相手であったのだ。

ボーガンで貫かれた恐怖が蘇ったためとパパスは判断した。

 

「酷ではあるが、この恐怖をレイシアには克服してもらわねば」

パパスはそう考えると、皆を集める。

円陣を組み指示を伝えると、皆は頷きキラーマシンを取り囲むように陣取る。

「ハッ!」

先陣を切りパピンが斬りかかる。

しかし難なく巨大なサーベルを器用に動かし、全ての斬激を受け流す、後方からバルバルーも斬りかかるが、それも把握していたかのように素早い身のこなしでパピンを裁きながら避けきる。

プオーンも参戦すべく飛び立とうとした時には、ボーガンから矢が放たれ、プオーンの動きを完全に阻止している。

しばらく経ってもこの状況は変わらない、いや、悪いほうに向かっていた。

 パピンとバルバルーは攻撃を受け流された後に、人間では到底できない剣裁きで、返す刃で切りつけられ、プオーンは連続して射出されるボーガンの矢が段々と正確性を増してきて傷を受けるようになってきた。

 その様子をパパスは苦々しげに見つめ、レイシアに語りかけた。

「レイシアよ。お前の恐怖はよくわかる。しかしそれを分かった上で頼みたい。あの魔物を倒す為にはお前の力が不可欠だ。頼む力を貸してくれ。皆を助けてくれ」

パパスの懇願を受けたレイシアは顔を上げて、キラーマシンと仲間の戦いを見る。

仲間は傷つき、流血し、苦悶の表情を浮かべながらも必死に戦っている。

 その様子はレイシアの心に(仲間を守りたいと)深く響いたのだろう。

震える足に鞭を打ち立ち上がると、

「皆さん下がってください」

と指示をとばす。

その声を聞き、皆は笑顔で頷くと後方に下がった。

「いきます。メラゾーマ!!」

過去に瀕死のレイシアを救う為に、姉がキラーマシンに放った呪文。

そしてその姉に教えられた呪文でもあるメラゾーマで過去の因縁と共にキラーマシンを葬り去った。

 

パチパチと未だに燃え盛る動かなくなったキラーマシンをレイシアは眺めている。

後ろで皆がレイシアを見守っていると、

 

「皆さんは演技が上手いですね。信じてしまいましたよ。ですがありがとうございました」

振り向き、笑顔で感謝の意を伝えたレイシアは晴れやかであり、いつも以上に美しかったという。




PS2版にあったすごろく場を出そうか出さないか迷っている所です。


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潜入エビルマウンテン

「これが魔王の居城があるという『エビルマウンテン』か…」

広大な魔界の森を抜け、さらに岩山を抜けついに目的地にパパス一行はたどり着いていた。

 見た目はただの岩山のようであるが、そこには内部に入ることができる入り口が大きな口を開くように開かれている。

 まるでどこまでも闇が続くような漆黒の暗闇に包まれた入り口。

パパス達はそのなんとも言えない威圧感と不安を掻き立てる雰囲気におされ未だに足を踏み入れることができずにいた。

「パパス様参りましょう。マーサ様がお待ちですよ」

そんな重圧に包まれているメンバーの中で唯一冷静に、恐れていないレイシアが先頭のパパスに声をかける。

「たいしたものだな。この威圧感にも身じろぎ一つしないとは!」

「私は過去にもう二度程魔王城には乗り込んでいますから、さあ参りましょう」

たいしたものだとレイシアに感嘆するパパスに対して、経験からですと笑顔で話すレイシアに勇気付けられ一行はエビルマウンテンに足を踏み入れた。

 闇に支配されていると思っていた一行であるが、足を踏み入れた直後にパパスが所持している、以前魔界の闇を照らし出したマーサからの贈り物である石が、再び仄かに光を発しエビルマウンテンの闇を振り払った。

 闇が振り払われたそこには、居城ということがよくわかる情景が広がっている。

 人間界の城であれば、鎧などが飾られているのだろうが、この魔界の魔王城にはいくつかの魔物の像が鎮座している。

 

「なんか動きそうだね…」

プオーンが恐る恐るその像を見上げて呟くが、皆もその意見に同意したくなるほどの異様な様相をしている。

「この魔王城では何が起きてもおかしくない。皆警戒を怠らずにいくぞ!」

パパスが皆に声をかけると、皆も声は出すことはないが、しっかりと頷いた。

 並び順はパパス、パピン、レイシア、サンチョ、バルバルー、プオーンとなっているが、先程からしきりに後ろを気にしているプオーンにバルバルーが気付き声をかける。

「どうした、何かあったか?」

「大丈夫、たぶん気のせいだと思う……」

首を傾げながら返す返答は、歯切れの悪いものではあるが、皆は先に進んでいくので、気にはしつつも先を進んでいく。

 しばらく進んでもやはりプオーンは後ろを何度も振り返っては首を傾げている。

「どうしたんだ何かあるのか?」

度々立ち止まる後方のバルバルーとプオーンにパパスは問いかける。

「いやなプオーンがしきりに何かを気にしててな」

「プオーンちゃん何か気になっていることがあるなら遠慮せずに言ってくれていいんですよ」

優しい笑顔でプオーンに語りかけるレイシアに安心したのかプオーンはおずおずと話始める。

「なんか後ろから視線と気配を感じる気がするんだ…。ただ気のせいのような気もして、みんなに迷惑をかけたり、不安にしたくなかったから言えなかったんだけど…」

プオーンの表情は真剣であり、確かにパパス達も魔物が全くと言ってよいほどいないのに、何かの気配を感じていたので、後方に目を凝らして確かめてみる。

 薄暗く、不気味な広間に動くものは存在しない。

「なにもないように思われますが」

パピンが左右を警戒しながら答える。

「いえ、プオーンちゃんが言うように違和感があります」

レイシアが後方に一直線に視線を向け、その視線を動かさずに答える。

「あの像ですが、あのような所にありましたか」

少し青ざめながら魔物の像に向かって指をさす。

「そう言えば、あの像があったのは少し前だったな。もう見えなくなっているはずだ」

パパスもレイシアの意見に同意する。

「で、では、私が調べてきます」

「大丈夫かパピン?顔が青いが」

「だ、大丈夫です!怖くなんてありません」

上ずった声に不安は覚えたが、パピンを信用して送り出す。

「こ、この像ですね」

レイシアが指さした像の前にたどり着くとパピンは注意深くその像を調べ始める。

「どこも変な所は………!!!…」

パピンの動きが止まる。

「像と目があった!?いやいやいやいや、見間違いだ。そんなわけあるはずがない」

 

パピンは目を擦りもう一度像を見上げる。

魔物の像はパピンをしっかりと見つめている。

青ざめたパピンに動くはずのない像が口を開いた。

「ミ~タ~ナ~」

パピンは意識を手放した。

「不味いぞ!」

倒れこむパピンを見てすぐにパパス達は走り出した。

土偶のような像が動き出し、倒れこんだパピンにのし掛かろうとしている。

「パピンに手を出すな!」

いち早く飛び出していたプオーンが黄金のオリハルコンの牙で噛みつく。

噛みついた頭部に牙がめり込み砕け散る、だが依然として動きが止まることなくパピンに襲いかかろうとする。

「仲間に手を出すんじゃねえ!!」

怒号と共に横凪ぎに振るわれたバルバルーの大剣地獄のサーベルが依然として動きを止めていなかった像を粉々に粉砕した。

「他愛ねえな」

地獄のサーベルを地面に突き刺したバルバルーは砕けた破片を見下ろし呟く。

「二人ともよくやってくれた。しかしよく間に合ったな」

後れ馳せながら到着したパパスが感謝と驚きを伝える。

「あのパピンの様子じゃあ襲われた時に対応できねえと思ってな」

バルバルーは青ざめたパピンが像に向かった時から既に警戒して、パピンの近くにプオーンと共にスタンバイしていたことを笑顔で話す。

その答えを聞いたパパスは笑顔で頷き。

(この仲間思いの皆であれば必ず本懐を遂げられる)

という思いを強くした。

 




レヌール城の動く石像の話ですが、Ⅴではあれがかなり印象に残っているので使わせてもらいました。


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襲い掛かる魔物達!!

リアルでは迫り来る中間テストに戦慄する日々です…


 床に前進するたびにヒビが入る床など気にする素振りすらなく前からは、銀色に鈍く光るボディーを持ったメタルドラゴンが三体、そして後退することさえも許さないとばかりに、後方からも一体のメタルドラゴンが迫っていた。

「まさか大神殿の門番をしていた魔物が普通に、しかも四体も現れるとはな…」

溜め息まじりにパパスは前後のメタルドラゴンに視線を向けながら呟く。

「へっ、いい準備運動になるからいいじゃねえか。俺は右のやつもらうぜ!」

バルバルーは溜め息をつくパパスの肩をポンと叩くと右前方から迫るメタルドラゴンに向かって走り出した。

「そうですよパパス様行きましょう!」

先ほどの動く石像の前で晒した失態を挽回すべくパピンもバルバルーと同様に左前方のメタルドラゴンに向かう。

「そうだな二人を見習うか。後方の相手はサンチョとレイシアとプオーン頼んだぞ」

「はい、お任せください」

パパスはサンチョ、レイシア、プオーンに指示を出すと、そのまま前方の中央のメタルドラゴンに向かった。

 一番最初に戦いに入ったのはもちろんバルバルーである。

メタルドラゴンは、巨大な足で踏み潰すべく、バルバルーに向けて足を降り下ろす。

「しゃらくせえ!」

降り下ろされる足を全て地獄のサーベルで打ち返す。

風を斬りながら振るわれる地獄のサーベルが巨大な金属の足と触れる度にガキンという金属音が辺りに響き渡る。

 幾度となく続いてきたが、先に折れたのはメタルドラゴンであった。

 メタルドラゴンの前足の間接部分が悲鳴をあげるかのように、スパークが表れ始めたのだ。

 バルバルーの攻撃に前足がついていけなくなっていた。

メタルドラゴンが前足をついた瞬間崩れ落ちるかのように両足が折れ、メタルドラゴンは前倒しになった。

「もう終わりか、つまらねぇ」

崩れ落ちながらも迫ってくる頭部にバルバルーは地獄のサーベルを降り下ろした。

切り裂くというより叩き潰し、牽ききるといったほうがあっているバルバルーの攻撃によりメタルドラゴンの頭部は原型がなくなるほど破壊されて、機能を停止した。

 二番手はパピンである。

バルバルーは全ての攻撃にこちらも攻撃で向かえうつといった戦い方であったがパピンは違った。

降り下ろされ地面に突き刺さる足を紙一重でかわし続ける。

 機械のメタルドラゴンだからこそあるパターンに縛られた攻撃は歴戦の強者であるパピンにとっては、とるに足らないものであった。

 全ての踏みつけを紙一重でかわし続けると、メタルドラゴンは噛みつこうと頭部ごと襲いかかった。

頭部はパピンをすり抜けた。

いや、消えたといった方が正しいのであろう。

噛みつく瞬間までは赤いカメラアイがとらえていた。

しかし次の瞬間には手応えもなく、パピンが姿を消していたのだ。

 対象を見失い辺りを見回すメタルドラゴンのすぐ上から声が聞こえた。

「終わりだ!」

直後、パピンのメタルキングの剣が頭頂部から顎を貫いた。

噛みつく為に襲い掛かってきた頭部に乗り移り、剣を突き立てたのだ。

メタルドラゴンは頭部を炎上させながら崩れ落ちた。

「皆やるな、私も続かなくては」

バルバルー、パピンの瞬殺劇を見てパパスもやる気になっていた。

こちらもパターン化された足の踏みつけを幾度となく繰り返していたが、鮮やかなステップで軽やかにパパスは回避しながらも、前に進み続ける。

両足が大きくあげられ、降り下ろされる。

両足が床にめり込みあたりに粉塵が舞い上がる。

 だがそのような大振りの攻撃には大きな隙ができるのも当然のことであり、パパスは既にメタルドラゴンの下に潜り込んでいた。

「ハアッ!!」

パパスは剣を突き上げた。

剣は見事に腹部に突き刺さる。

血液ではないが、黄色いオイルが流れ落ちる。

「終わりだ。魔神切り!!」

パパスは突き刺さったままの剣を強引に降り下ろす。

剣の切れ味とパパスの剣の技量によりメタルドラゴンは上半身と下半身を分かたれて、機能を停止させた。

「皆さん見事ですね。私たちの力も見せてあげましょう!」

ズシン、ズシンと迫り来る巨体にも物怖じひとつせずレイシアが前に立ちはだかった。

「機械の体ならこの呪文が役にたつはずです。初めてなので少し自信はありませんが」

レイシアはそう呟くと片手を後ろにひく、頭の中でのイメージは常に仲間の前に立ち、どんな敵にも屈したことがない、勇者である。

引かれた腕にバチバチと雷が迸る。

腕を前に突きだすと同時に

「ギガデイン!!」呪文が唱えられた。

発せられた呪文は一直線にメタルドラゴンを貫き体のあらゆる箇所に小さな爆発を起こさせていた。

「いきますぞ!」

爆発で揺れ動くメタルドラゴンの皮一枚で繋がっていたHPをサンチョが穿った。

ビッグボーガンから放たれた矢が顎から後頭部を一直線に貫いた。

メタルドラゴンはそのまま地に倒れ付し炎上した。

「皆ご苦労。もうこの程度の相手では我々の足止めにもならんな」

「ああもうちょっと歯応えがあるやつがいてほしいぜ」

パパスに呼応するようにバルバルーが発言する。

「パパス様。ここは魔王城です。再び気を引き閉めて行きましょう」

パパスを諫めるレイシア。

「そうだったな。よし気を入れ直して先を急ぐぞ」

 パパス一行は再び歩み始めた。

幸い道は一本道であり、メタルドラゴン以降、姿は不気味だがたいしたことのないエビルスピリッツやシュプリンガーなどしか出現せず、然程苦戦することもなく先に進みことができた。

 しかし、先を急ぐパパスの前に立ちはだかるようにかなりの強敵が前に立ちはだかった。

 出口の前に立ちはだかるのは、前回戦ったメタルドラゴンと同じ型ではあるが、黄金の体を持ち、体長はメタルドラゴンより一回り以上大きい約10メートル、黄金の城塞『メカバーン』が立ち塞がった。



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遂に捕らえたマーサの影

辺りに金属と金属のぶつかり合う音が何度も繰り返し響きわたる。

「クッ、なんて硬さだ!」

幾度となくパパス、バルバルー、パピンはメカバーンに剣で切りつけているが、装甲の硬さに手を焼いていた。

 メカバーンもメタルドラゴンとさほど変わらない攻撃パターンなので、巨体であり攻撃範囲はメタルドラゴン以上にあるが、避けるのには苦労はしていなかった。

「どうしたもんか、このメタルキングの剣ですら浅く切り裂くしかできないとは…」

「ああ、装甲が浅い筈の間接部分ですら切り裂けねぇ。どうするパパス?」

苦々しげに話すパパスにバルバルーも悔しそうにやって来て管を巻く。

「多分ですが、あの魔物はオリハルコンでできています」

「オリハルコン!!」

「僕の牙と同じもの!?」

レイシアの言うオリハルコンという単語に驚く皆。

オリハルコンとは神から与えられし金属や、遥か昔大魔王を倒す為に勇者が使った剣もオリハルコンを元に作られていたという伝説的な金属であった。

 プオーンが今所持しているオリハルコンの牙を見るまで、皆も全く知らなかったものである。

「メタルキングの剣とほぼ同等の硬さがあるはずですから、攻撃力をあげる必要があります。私が一人一人にバイキルトをかけるので、その間誰か敵を引き付けていてくれませんか」

レイシアが言った【攻撃力をあげる】と【バイキルト】という単語に反応を示す者がいた。

(私がやらずに誰がやりましょうか!)

 バルバルーが前に出て敵を引き付けようとした時だった。

 後方から、力がみなぎり、勇気付けるようなドラムの音が鳴り響いた。

「なんだこの音は、体の底から力が引き出されるようだ。それに剣も何か特殊な力に包まれているようだ!!」

「今ですぞパパス様、バルバルー殿、パピン殿。私がこのドラムを叩いているうちにやつを倒してください!!」

声のする方を見ると、サンチョが一風変わったドラムを叩いている。

 少し面食らった感じはするが今が好機と皆がメカバーンに向かって走り出した。

 依然として変わらない単調な攻撃を難なくかわしながら、返す刃で切りつける。

「切れるぞ!!」

先ほどまで浅くまた擦り傷程度にしか切れなかった装甲が豆腐を切るかのように容易く切り裂けたのだ。

 足の太さだけでも直径三メートルほどあり一太刀では断ち切れないが、他の三本の足にも皆が切りつけることにより、メカバーンの四肢はその切れ目からその巨体の重さ故に崩れ落ちる。

「オラッ、終わりにするぜ魔神切り!!」

地面をおもいっきり蹴り飛び上がったバルバルーはメカバーンの頭めがけて地獄のサーベルを全力で降り下ろした。

 バルバルーの地獄のサーベルもメカバーンの装甲を難なく切り裂く。

 頭の先から幹竹割りのように真っ二つにされ、バルバルーが着地し、地獄のサーベルについたオイルを払い、背の鞘に戻すと同時にメカバーンは爆発し、姿を消した。

「サンチョそのドラムはどうしたんだ?」

パパスは皆を労った後にサンチョに尋ねる。

パパスには見覚えがないドラムであったからだ。

「このドラムは顔がいくつもある不気味な敵が持っていた物なんですが、何か不思議な力を感じたので、悪いと思いながらも拝借しまして」

サンチョは苦笑いをうかべ、頭を掻きながらパパスに答える。

「いや、今回はサンチョのお陰で助かった。礼を言う。ありがとうサンチョ」

「滅相もありません。頭をあげてください」

とそんなこんなでエビルスピリッツから掠め取った戦いのドラムによってパパスはまた一歩先に進めるようになった。

 メカバーンが塞いでいた先には大きな扉が聳えたっていた。

 パパスが両手で力を入れて押すと、重厚な音をたてて扉が開かれた。

 そして、その先の光景に皆は息を飲んだ。

 その光景とは、今までの城の中のような人の手の入ったものではなく、土の地面で、細い道があり、その両端はきりたった崖となり底無しの闇に包まれている。

 そうエビルマウンテンの山頂に出たのだ。

 見晴らしのよくなった場所であり、先を目を凝らしてみると、なにやら祭壇のようなものが、うっすらとだが目視することができる。

 そして、その祭壇には、美しくも優しい全てを照らすかのような光が見てとれた。

「あ、あの光はマーサ様では!!」

「ああ、間違いない。あれこそ夢にまで見た我が最愛の妻、マーサだ!!今いくぞマーサーー!!」

レイシアとパパスは細く危険な道であることも構わず走り出した。

 走って、走って、走り続けた。

 そしてついに祭壇まであと一歩のところまでたどり着いた時であった。

 パパスとレイシアの前に空から何者かが舞い降りてきた。

「ミルドラースサマノタメニオマエタチヲココデコロス!!」

舞い降りてきた魔物は上半身は人間のようでまた下半身は獣のようであった。

青い肌を持ち、顔はオッサンのようでありながらも、角を持ち、下半身は濃く青い体毛を持ち、足に蹄を持つ魔物、地獄の闘士ヘルバトラーが道を塞いだのだった。

 




もう物語ではオリハルコンの牙を出していますし、ゲマはお亡くなりになってしまったので、ここでヘルバトラーを出すこととあいなりました。


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ついにマーサを救出だ

 パパスとレイシアの前に二体のヘルバトラーが行く手をたち塞ぐべく舞い降りる。

 ヘルバトラーは魔界においてもその強さは屈指のものがあり、それは過去に遡れば、重要な拠点を守る四天王として重用された魔物ですらある。

 そして、対する者も、全人類の中でも当然5本の指に入るであろう、パパスとレイシアである。

 当然比類なき死闘が繰り広げられると思われていた。

「どけーーっ!!」

パパスが声をあげヘルバトラーを牽制するが、動ずることはなく襲いかかる。

 丸太のような腕、鋼鉄すらも紙のように軽々と引き裂くであろう爪がパパスに襲いかかる。

 大きく降り下ろされた攻撃を、体勢を低くしてかわす。

 パパスの上を轟音を轟かせ過ぎ去っていくが、パパスは気にも止めていない。

 パパスはしゃがんだ状態から、全身のばねを遺憾なく発揮し、立ち上がり様に逆袈裟に切りつける。

「ギガスラッシュ!!」

剣は雷を帯び、地面と触れる切っ先は火花を散らす。

 そして、パパスの繰り出す一閃は紫電の輝きを見せ、ヘルバトラーを斜めに切り上げた。

 パパスはヘルバトラーを見ることもなく、剣を鞘に納める。

 カシャンと剣が鞘に納まると同時にヘルバトラーの亡骸は雷に飲まれて消え去った。

「どいてもらいます!」

 レイシアも普段の冷静さなど微塵もなく荒々しくいい放つその表情には鬼気迫るものを感じる。

 ヘルバトラーは迫り来るレイシアに激しい炎を放つ、しかし、今のレイシアには触れることすらなかった。

 直前に唱えたフバーハがレイシアの身を守るように包み込んでいたのだ。

 激しい炎の中を突っ切ってくるレイシアにヘルバトラーがたじろいだその隙をレイシアが見逃すはずがなかった。

「はっ!!」

足を薙ぐように叩きつけられたグリンガムの鞭の一撃に、ヘルバトラーは体勢を崩す、そして間髪入れず呪文を唱えた。

「バシルーラ」

 ヘルバトラーは一瞬の浮遊感を感じたあと、突風を受けたように吹き飛ぶ、しかし、ヘルバトラーさるもの、羽を大きく開き、空中で、勢いを殺し、ついには制止する。

 ニヤリと歪な笑みを浮かべヘルバトラーがレイシアを見おろすと、レイシアは予想通りという感じでヘルバトラーを一瞥した後に呪文を呟いた。

「イオグランテ!!」

 ヘルバトラーを中心にして大気が収縮し、極限まで達し臨界点を越えると同時に比類なき爆発が起こった。

 その爆発はとてつもなく、大気を揺るがすだけでなく、エビルマウンテンすら地震が起こったかのように揺らめいた。

 イオ系最上級呪文『イオグランテ』

以前上の世界で大神殿を岩山もろとも破壊した呪文である。

 レイシアはその二の舞にならないように、ヘルバトラーを空高く打ち上げた後に放ったのである。

 そして、レイシアもパパス同様ヘルバトラーを一瞥することすらせず、また大地の揺れもものともせず、マーサに向かって走り抜いた。

 

「マーサーーーッ!!」

「あなたーーーッ!!」

いち早くたどり着いた、パパスとマーサは抱き合った。

 二人の頬には流れ落ちる一筋の川ができあがった。

 二人が感慨深く抱き合っているところにレイシアもたどり着く。

「マーサ様……」

「レイシア」

レイシアの目にもうっすらと光るものがあり、関をきったようにとめどなく涙が流れ落ちた。

 マーサがレイシアを慰めるように後ろから抱きしめていると、

「奥方様ーーー!!」

という一際デカイ声が、見るとハアハアと息をきらせながらサンチョがマーサの元にたどり着いた。

 

「奥方様、リュカ坊っちゃんです。どうぞお抱きになってください」

サンチョはリュカを背から下ろしマーサに手渡す。

 魔界についたあとも全く泣くこともなかったリュカであるが、マーサに抱かれると抑えていたものが崩壊するようにマーサにしがみつきおお泣きを始めた。

 しばらく、泣いた後、リュカは安心したように眠りについた。

ただし、小さな手は固くマーサの服を握っていた。

 二度と離すことはないように。

 その後合流したパピン、バルバルー、そして初めて対面することとなったプオーンとも挨拶を交わし、ようやく念願のマーサ救出を達成した。

 だが、一同が集まるのを待っていたかのように、一陣の雷が一同を襲う。

 天を裂き、舞い降りる雷は轟音と共に、大地を砕き、喜びにわくパパス達を嘲笑うかのように牙を剥いて襲いかかった。

 一瞬の出来事であった。



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マーサ無双

サブタイ通り今回はマーサのキャラがぶっ飛んでいます。
 それでも良ければお読みください。


 不意討ちで落ちてきた青黒い雷。

 マーサとの再会により沸き立っていたパパス達は誰も反応できなかった。

 しかし、魔王の狡猾さを知っているマーサは別であった。

 皆に身を屈めるように指示を飛ばすと、自らは立ったまま天に向けて手を掲げる。

 どのような雷であろうと、高い所に落ちるのが道理。

 青黒い雷はマーサに轟音を轟かせて襲い掛かった。

「マーサーー!!」

目も眩むような青黒い雷は目の前のマーサに容赦なく降り注ぐ。

 パパスは開けることができない自分の目を恨みながらも悲痛な叫び声をあげる。

「どうしましたあなた?」

「へ?」

パパスの叫びに呼応するように返される返事。

 パパスは何とか目を擦り擦り開けるとそこには無傷のマーサが何事もなかったかのように立っている。

 パパスが口をポカンと開けて呆然としているとレイシアが苦笑いを浮かべながらやって来る。

「パパス様、マーサ様は呪文にはメタル系並の異常な耐性を持っているのでこういう結果になったのですよ」

「もうレイシア、『様』はつけなくていいわよ。それと私を魔物みたいに言わないでちょうだい。私もか弱い女性なのよ」

「はいはい、ですが今の雷はいったい?」

マーサの不満を軽やかにかわして、レイシアはマーサに尋ねる。

「たぶん魔王が放ったものでしょうね。雷だからデイン系かドルマ系。デイン系は勇者の家系しか使えないから、これは地獄の雷のドルマ系でしょうね。私達を皆殺しにしようとしたことを考えると、ドルモーアかドルマドンかしら。ただしあまり威力がなかったからドルモーアじゃないかしら」

「いえ、あれはドルマドンだと思いますよ。マーサでなければ消し飛んでいます…」

「そう?」

今あったことなのに笑顔で話すマーサを見てパパス達男性陣は女性の、マーサの凄さを思い知った。

 話はそれまでとしてパパス達は先を急ぐことにする。

 このままここにいると先程のようなことがあったり、手勢を差し向けられる恐れがあったからだ。

 マーサがいた頂上の頂きから南に進むと再びエビルマウンテンの内部に繋がる洞穴があり、降りていく。

 今までであれば、闇の中を進んでいく恐怖感があったのだが、マーサが加わっただけなのに周りが明るくなったような気がするのも不思議な感じがした。

 後に語られたことだがこの時マーサは人知れず『レミーラ』を唱えていたらしい。

注)レミーラとは、ドラクエⅠのみに登場した不遇な呪文。洞窟などを照らすためだけの照明呪文。

 

 パパスが先頭にたち降りていくと、少し先から赤い光が見えてきた。

 そしてさらに進むと熱気がパパス達を迎えるように包み込む。

「このまま進むのも危険ね。フバーハ」

マーサが呪文を唱えると、パパス達を蝕もうとした熱気がたちどころに消え失せる。

「ありがとうマーサ」

「ありがとうございますマーサ様」

皆が口々に礼を言う後ろで

「私の立場が……」

と項垂れるレイシアがいたのは言うまでもない。

 熱さをものともしなくなったパパス達を迎えたのは、ここが火山の火口であることをまざまざと思い知らせる溶岩の川であった。

「さすがにこれではどうするレイシア」

 

「少し下がってくれますか」

パパスがレイシアに尋ねると、レイシアが皆に下がるように指示をだす。

 皆が下がったのを確認すると

「マヒャデドス!!」

と呪文を唱える。

 辺りが冷気に包まれ、溶岩に絶対零度の冷気が襲いかかる。

 しばらく熱気と冷気の押し合いがあり、周りを水蒸気が埋め尽くすことにはなったが、溶岩が凍りつくことはなかった。

「魔界の特別な溶岩のようですね。これでは進めませんね。少し戻ってこの溶岩をどうにかするアイテムを探したほうがいいと思います。さすがに魔物もこの溶岩を渡ることはできないと思いますのでそういうアイテムがあると考えられます」

「そうだなそうするか」

レイシアの意見に皆が頷いた時である。

 今まで額に手を当てて考えていたマーサがなにかを探し始めた。

「どうしましたマーサ?」

「これを使ってレイシア」

マーサが取り出したのは美しい彫刻がなされ、神聖な感じがする水差しであった。

「マーサこれはどうしたのだ?」

レイシアに渡された水差しを見てパパスがマーサに尋ねる。

 

「以前人間にしてあげたヘルバトラーさんがお礼にとくれたものでなんでも『聖なる水差し』というそうです」

(あのジャハンナの長老か)

マーサの話を聞いた皆の頭の中には人の良さそうな笑顔を浮かべたジャハンナの長老が思い出されていた。

「おおっ!これは!!」

マーサに渡された『聖なる水差し』の水を煮えたぎる溶岩にかけるとたちどころに溶岩は冷え、固まり黒い道が出来上がった。

「では行きましょうか」

笑顔でマーサが先に進んでいく。

 パパス達はそれについていくしかなかった。

 しばらく歩くと数引きの魔物と遭遇する。

「マーサ下がれ魔物だ」

「待ってあなた」

剣を抜き戦闘態勢に入ろうとするパパスをマーサが制する。

 マーサは一歩一歩魔物に近づいていく。

「マーサ危険だっ!」

「大丈夫よあなた」

パパスの制止を制して魔物の前に立つ。

 すると

「マーササマコンナトコロデドウカナサレタノデスカ?」

片言の言葉で魔物が敬語を使ってマーサに話しかける。

「少し魔王にあって説教してくるのよ」

「ガンバッテクダサイ。ワレワレハマーササマヲオウエンシテイマス」

「ありがとう。でもそんなことを声高に言うと魔王派の魔王にひどい目にあわされるわよ」

「ソンナノカンケイアリマセン。ワレワレハイツマデモマーササマノミカタデス」

そのような会話が交わされた後に、魔物はマーサに敬礼をして去っていった。

 その光景にはさすがのレイシアも絶句するしかなかった。

「さあ行くわよ」

「はいっ、マーサ様」

皆はマーサに返事をすることしかできなかった。

 そして、メンバーの中でもマーサの地位がトップになっていたのは言うまでもない。




 マーサのキャラがゲームであまり出ていなかったとはいえやり過ぎた感じもしますが、このままこんな感じのマーサで終わりまで通します。


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姿を現す魔王ミルドラース

色々設定は変わっていますが御容赦ください。


 黒く冷やされ固まった溶岩の道を通りすぎたパパス一行は行き止まりに突き当たり、頭を悩ましていた。

「どういうことだ。ここまで分かれ道などなく一本道であったのに行き止まりとは…」

「この部屋を少し調査してみましょう」

頭を抱えて悩んでいるパパスにレイシアが提案する。

「そうだな悩んでいてもしょうがない皆この部屋を丹念に調査するんだ」

「はい」

パパスの指示により皆はバラバラに部屋の中を丹念に調査し始める。

 調べるにしても部屋の中は暗く調査するのに手間取ることから、マーサがレミーラを唱えてから隅々まで調べることになった。

 しばらく経つと

「みんななんか見つけたよ!」

とプオーンが皆に声をかける。

 皆がプオーンの元にかけよると半径一メートル程の穴がぽっかりと床に空いている。

「この穴なんだけど」

プオーンが蹄を向ける。

「うむ、よく見つけてくれた。しかし、この穴に入るのは勇気がいるな。どこまで続いているか分からんし、罠で底に刃が仕掛けられていたり、先程のように溶岩があってもたまらん、どうするべきか」

穴を前に皆が思案にくれる。

 そんな中をマーサが穴に向けて手のひらを近づける。

「あら穴から風を感じるわ。したには空間があるのは確かだわ」

「じゃあ僕が行ってくるよ」

マーサの話を聞きプオーンが胸を張って答える。

「プオーンちゃん大丈夫なの?」

レイシアが不安そうにプオーンに問いかけると、プオーンは背中を向けて小さい羽を動かしてみせる。

「僕にはこの羽があるから大丈夫だよ」

と言うと颯爽と穴に飛び込んでいった。

 ただプオーンの羽はその体を浮かせることができるのかと疑問を持たされる物だったので、プオーンを待つ皆は不安げに待っていた。

 しばらく時間が経過する。

 皆にはその待つ時間が限りなく長く感じた。

 穴の中からパタパタと羽ばたく音が聞こえる。

 皆が一斉に穴を覗き込むと羽を蜂鳥のように高速で動かしながら上昇してくるプオーンが。

 プオーンが皆の前に降り立つと笑顔で説明を始める。

「下にはマーサ様が言っていたように空間と道が続いていたよ。下までも約3メートル位だし皆ならたぶん大丈夫だと思う」

その説明を聞いた皆は頷き穴に飛び込むことにした。

 例え足を怪我したとしてもパパスの万能『ホイミ』があるからと皆が納得したからだ。

「じゃあ私が先に行こう。バルバルーは悪いが魔物が来るかもしれんので殿を頼む」

「ああ、任せときな」

バルバルーに後のことを託してパパスが一番始めに穴に飛び込んだ。

 その後続々と皆が飛び降りてきた。

 サンチョが地面に尻餅をついて痛がっていたこと以外には別段問題はなかった。

「しかし、この城はどうなっているんだ。階段ではなく穴が空いているだけとは」

パパスは愚痴をこぼしながら先頭を歩いた。

「確かにここの魔物達は体が大きくてこの穴を通れませんしね」

レイシアも続けてそう答える。

「これでいいのよ。魔物達は階層ごとに持ち場があってその持ち場を離れちゃいけないんだから。例え魔王が襲われたとしてもね」

マーサが説明する。

 その答えの中には重要な話が含まれていた。

「魔王とやりあっていても邪魔が入ることはねえってことだな」

「そういうこと」

バルバルーが話すことにマーサが笑顔で正解と言う。

 そんなこんなで再び警戒しながら先を急いだ。

 しばらく進むと大きな空間に辿り着く。

 神殿のような佇まいを残すその空間にはポツンと宝箱がおかれている。

 あからさまに可笑しいと皆は感じているがマーサは近づき造作もなく開く。

 宝箱の中には神々しい輝きを放ち、きらびやかな装飾を施された王冠『太陽の王冠』が納められていた。

「はい、これはあなたが装備するものよ」

マーサから手渡された王冠をパパスが頭にはめるとピッタリと頭にフィットした。

「マーサはこの宝箱に何が入っているか知っていたんですか?」

あまりにも造作もなく宝箱を開けたマーサに疑問を持ったレイシアがマーサに尋ねる。

「ええ、水差しをくれたヘルバトラーさんが教えてくれてね。魔王さえも触れることができない王冠が宝箱に納められているって。本当だったら守っている魔物のヘルバトラーが二体いるって話だったのだけど、そのヘルバトラーが私のところに急遽回ってきたから大丈夫だと思ったのよ。最初私の見張りはゲマっていういけすかない魔物だったんだけどね」

「そ、そうなんですか…」

またもや出てきたジャハンナの長老。

 レイシアも苦笑いするしかなかった。

 次の部屋も前の神殿と大差ない大きな部屋であった。

 ただし、9ブロックに区切られた場所に奇妙な部屋が8つ存在し、その8つの部屋が隣接しあい、まるでパズルのようになっている。

 そしてどの部屋にも部屋の中心にボタンが設置されている。

 先に進めそうなところはない。

 ここにも壮大な仕掛けがあるのだろうと皆で手分けして探ることにした。

「ここの部屋にはここが開いていて、この部屋はここが開いていると」

皆が調査してきた話を聞きレイシアがそれを図にし簡易の地図を作成する。

 そんな中いきなり右下の部屋が大きな音をたてて動き始めた。

「なにがあったんだ!?」

「すいません、部屋の中心のボタンをうっかり押してしまって」

動いた部屋からパピンが出てきて謝罪した。

「そうですか。部屋のボタンを押すとその部屋の横が空いているとその空きの空間に部屋が動くと」

パピンの話を聞いたレイシアがそう呟きながら地図に書き込み始める。

「分かりました。皆さん私の指示にしたがって部屋のボタンを押してください。

まずは右中央、次に右上、その次は中央上、そして最後に中央」

皆がレイシアの指示通りに部屋のボタンを押していくと先に進む道が開かれた。

 先に進むと今まで感じたことがないほどの威圧感を放つ巨大な扉が目の前に現れた。

「この先に魔王がいるのだな。皆準備はいいか」

パパスが皆に視線を送ると皆黙って頷いた。

「よし開けるぞ」

パパスが扉に手を触れると、ギギギギという音をたてながらひとりでに扉が開く。

「!!!」

扉の先に広がる空間には皆が声をなくし、立ち尽くす。

 たった一枚の扉を隔てただけであるのに、次元そのものが違うのだ。

 歪んだ背景に、今まで見たことがない色彩が広がる空間。

 足を一歩踏み出すことさえ、躊躇するほどの威圧感に満ち溢れている。

 皆背に冷や汗をかき、手にあせ握る状態である。

 先に視線を向けると中に浮いた巨大な老人が腕を組み、白いマントを身に纏い眠るようにしている。

 皆は一目見ただけで気づいた。

 そう、その老人こそが魔王ミルドラースであると。



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VS大魔王ミルドラース

ミルドラース老人版の戦いがあまり想像できなくて更新が遅れました。
申し訳ないです。


 桁違いの威圧感、心の底から沸き上がる恐怖感をなんとか抑えつけてパパス達は前に進む。

 パパス達が異空間に入った瞬間、入口が閉じ逃げることができなくなる。

 しかし、幾多の修羅場を潜り抜けてきた一行は動じることなく進み、ついにこの空間の、エビルマウンテンの、魔界全土の支配者大魔王ミルドラースの前にたどり着いた。

 姿は老人であるが、身の丈は人の3~4倍ほどあり、腕はまるで龍の体のようであり、外側は緑色内側は龍の腹のようになっている。

白いマントで身を包み、じっと腕を組んで瞑想をしている。

「お前が大魔王ミルドラースか?」

パパスが覚悟を決めて問いかける。

 ミルドラースはしばらく間をおいた後瞑想を解き、目を開く。

 その時だった、今までの威圧感などたわいもない物と思われる程の圧倒的な底知れぬ恐怖感をもたらすオーラのようなものがパパス達に襲いかかった。

「よく来たな人間どもとマーサよ」

低くドスが効いたミルドラースの声。

 ミルドラースはさらに続ける。

「勇者でもないのによくここまでたどり着いたものだ。その勇気に免じてマーサを置いてここからさるのなら今一時その命を助けてやろう」

見下したような冷酷な瞳でパパス達に視線を向ける。

「何を愚かなことを、我々はお前を倒すためにここまで来たのだ!覚悟しろ!」

パパスが皆の代弁をするように宣言する。

 後ろに控えている皆もそれぞれの得物を構えて戦闘体勢をとる。

「今一時命を長らえてやろうという心意気を無にするか。愚かなる人間どもよ!来るがよい!死よりもおぞましい一時を与えてやろう」

ミルドラースはそうパパス達に告げると身に纏う白いマントをはためかせ、宙を滑るようにパパス達に襲いかかった。

 そのスピードは老人の物とはとても思えない程のスピードで、パパス達も老人の姿に騙されないように構えてはいたが、かわすことができない。

 先頭に立つパパスがなんとかメタルキングの剣で丸太のような腕から繰り出される鋭い爪の切り裂きを受け止めようとする。

 しかし、その力は今までの味わったことがないほどのもので耐えきれずパパスは後方に弾き飛ばされる。

「次は俺だ!」

パパスが吹き飛ぶと同時にその影からバルバルーが大剣を降り下ろす。

「甘いな」

ミルドラースは難なく最小限の動きをもってかわす。

「そちらこそ」

かわされるのを予想していたかのように避けたミルドラースが動いた場所にレイシアが呪文を放つ。

「メラゾーマ」

巨大な火球がミルドラースを襲う。

 火の粉を撒き散らしながら襲いかかるメラゾーマ、しかしその様を見てもミルドラースは余裕を崩さず、徐に右腕を振るうと、メラゾーマはいとも簡単に霧散した。

「まさか!」

あまりにも圧倒的な力に恐れを抱く皆だが、一人の女性が勇気づける。

「あんなのこけおどしよ。休まず攻撃を続けましょう」

マーサはそう皆に声をかけるとミルドラースの前におどりでる。

「グランドクロス」

マーサが指で十字を切ると、ミルドラースに十字の光が襲いかかる。

 その光は神々しくもあり、皆を癒すような生半可な光ではなく、あらゆる邪悪な物を焼き尽くすような苛烈極まるものであった。

「グフッ!」

マーサのグランドクロスにより揺らめいたミルドラースに巨大なボウガンの矢が放たれる。

 回りに突風のような衝撃波を撒き散らしながら飛ぶボウガンの矢はミルドラースの左腕に刺さる。

 紫色の血液が散る。

「畳み掛けるぞ!」

ボウガンの矢を引き抜いているミルドラースに皆が一斉に攻め立てる。

「食らえ剣の舞!」

「受けろや五月雨切り!」

最初に飛びかかったのはパパスとバルバルーであった。

 パパスは舞を踊るように切りつけ、バルバルーは豪雨のような斬撃を見舞う。

 かわせないと判断したミルドラースは腕を交差して防御の体勢をとる。

『大防御』どんな攻撃をも10分の1以下にする最大の防御である。

 パパスとバルバルーの攻撃は小さな傷にしかならない。

「では次は私が!魔神切り」

パピンが当たれば大きなダメージを与えられる魔神切りを放つ。

 動きを止めているミルドラースには当たると判断したためである。

 地を蹴り飛び上がったパピンは大きく剣を振りかぶり降り下ろす。

 ミルドラースは交差した腕の間から視線をパピンに向ける。

『あやしい瞳』

パピンはミルドラースの視線を受けた瞬間強烈な睡魔に襲われ、そのまま攻撃を繰り出す前に落下した。

「危ない」

落下したパピンをすんでのところでプオーンがキャッチする。

「許さないぞ」

パピンをそっと横たえるとプオーンは灼熱の炎を吐き出した。

「迎え撃つか」

ミルドラースは大防御を解くと、口から絶対零度の冷たく耀く息を吐き出した。

 全てを焼き尽くす炎と、全てを凍らす息、対極に位置する攻撃のぶつかり合い。

 白い水蒸気が辺りを凄まじい勢いで覆い尽くす。

 最初は拮抗しているように思われたが、次第にミルドラースの方が押し出す。

 そしてついに灼熱の炎が冷たく耀く息に飲み込まれた。

「フバーハ」

プオーンとパピンが息に飲まれるすんでの所でレイシアの『フバーハ』が二人を覆い致命傷は免れた。

 水蒸気で視界が遮られる中ミルドラースの一瞬の隙をパパスがつく。

 地面を強烈な脚力で蹴りあげあたかも弾丸のようにミルドラースに突っ込む。

「ギガデイン」

マーサがパパスのメタルキングの剣にギガデインの雷を纏わせる。

「これで終わりだギガスラッシュ!!」

バリバリと音をたてながら放たれたパパスの研ぎ澄まされた一閃はミルドラースを袈裟懸けに切り裂いた。

「グハアッ」

大量の紫色の血液を撒き散らしがらミルドラースは地に足をつき、膝をついた。

 



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暗躍せし人物、表舞台に立つ

 ゲーム本編とは全くの別物になります。


 魔王ミルドラースが遂に地面に足をつけた。

 それだけでなく、膝までもついている。

 この事実は皆を勇気付けた。

 しかし、マーサだけは依然として険しい表情を浮かべている。

「わしに膝をつかせるとはな。全く想定外だ。この屈辱死をもって償ってもらうぞ!!神を越えし我が姿見るがいい!」

 

 ミルドラースから黒いオーラが吹き荒れる。

 黒いオーラの中で、ミルドラースの姿が変わる。

 白いマントは裂け、体が肥大化しているのがおぼろげながら見えてくる。

 トゲが無数に生えた尻尾、腕が4本に増え、体は見上げるほどに巨大になる。

 今までは縦に長かったが、今では横に広い。

 黒いオーラが払われると、そこには赤い体色をした化け物が現れていた。

 その威圧感たるや今までとは比較にならないほど恐ろしいものである。

「これがワシの神を越えし真の姿だ。全てを越え進化した最強の存在だ!」

おどろおどろしい声で話し出す。

 とんでもない話ではあるが、嘘とは到底思えない恐ろしさがそこにある。

 パパス達が震える自分を諌め、戦闘体勢をとろうとした時であった。

「さすがは元は穢らわしい人間。進化したとはいえ、その程度が関の山なのであろう。なあミルドラースよ」

異空間に響き渡る声。

 声のする先の空間がグニャリと歪み何者かが現れる。

 そこには天使のごとき羽を持つ天空人が立っていた。

 その者を見たプオーンが真っ先に声をあげる。

「あっあの人は前に天空城で僕に最後の鍵を返してくれた。たしかエルーストさん!」

「そう言えばそうだな。しかしなぜこんなところに?」

プオーンが気づいた事実にパパスは同意する。

 しかし、沸き上がる疑問なぜ彼がここに。

 そんな中、レイシアが声を震わせながら絞り出すように声を出した。

「あの者はエルーストなる人物ではありません。なぜお前がここにいるエビルプリースト!!」

「ヒヒヒ、さすがはミネアよく分かりましたね。そう私はエルーストではないエビルプリーストと言います」

下卑た笑みを浮かべながらうやうやしく首を垂れる。

 そして持っている杖を両手で折ると、大僧正のような神官服を見にまとう魔物の男がそこにいた。

 

「この杖は変化の杖といい。姿を変えられる物なのですよ。便利でしょ」

軽口を叩くエビルプリーストにレイシアの怒号がとぶ。

「そんなことはどうでもいい。なぜお前が、お前は私たちが倒したはず」

レイシアの疑問。

 数百年前に倒したはずの魔物が、全ての黒幕だった者が突然現れた当然の疑問である。

「簡単なことですよミネア、いや今はレイシアでしたか。あなたたちは私を倒しきれなかったのですよ。あなたの父親が見つけ出した『進化の秘宝』あの力によって欠片として残った私の体が再び再生してこのように復活したわけです。まあ数百年という時間を有してしまったのは誤算ですが」

丁寧な口調で饒舌にエビルプリーストは今までの成り行きと、疑問について答える。

「ではなぜお前の敵となる我々に最後の鍵を渡したのだ?」

パパスが問いかける。

「簡単なことです。

最後の鍵がなくては魔界には来られない。そのために目障りだったゲマを殺しこの鍵をあなたたちに渡すことにしたのです。まあ今回は予想外のイブールの裏切りで、またそれだけでは力が足りないので私の力もお貸ししてこちらに来られる運びになりましたが。そして、あなたたちにミルドラースを倒して欲しかったからです。自分の手を汚さずに事が進むこれほど喜ばしいことはありませんからね」

悦に入った表情で語るエビルプリースト。

「まあそういう訳なのですが、そこの馬鹿が、ミルドラースが聞き捨てならない戯言をほざき始めたので私が直々に足を運んだのです。このお馬鹿さんを殺すためにね。あなたたちはよくやってくれました後程『死』という名の褒美をあげますので、そこで見ていてください。新たなる神の誕生を」

エビルプリーストが発光する先ほどのミルドラースが黒いオーラを出すかのように、黒い光が辺りを闇に染める。

 ビリビリと何かが破ける音。

 バキバキと何かがちぎれ、構成されていく音。

 闇が晴れた時、そこには、巨大な角、ぎょろりと大きく開かれた目、裂けるように大きく、また鋭い牙が数えきれないほどならんだ口をもち、さらに同様の顔が腹部にも現れている、白い銅像のような異形の魔物がそこにいた。

「どうですか?美しいでしょう。これが本当の究極の進化というものです。元々が人間のミルドラースではたどり着くことなど不可能な領域なのです。さあ潔く死んでもらいましょう」

エビルプリーストはミルドラースに襲い掛かった。

「ふざけるな。返り討ちにしてくれるわ」

ミルドラースも同様にエビルプリーストに襲い掛かる。

「私たちはどうすれば良いのだろう?」

茅の外のパパスが誰となく問う。

「見てればいいわ。勝負が決まって生きている方を叩ければ楽よ。漁夫の利ということね」

何事にも動じずに、微笑みながら話すマーサを皆は呆気にとられながら見返すしかなかった。



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大魔王ミルドラースVSエビルプリースト

 パパス達の目の前では、とてつもない戦いが行われている。

 エビルプリーストが鋼鉄をも軽々と引き裂くであろう鋭い爪を降り下ろすと、ミルドラースの体に深々と三本の切り裂かれた跡と、紫色の血液が飛び散りエビルプリーストに降りかかりエビルプリーストは下卑た笑みを浮かべ見下すようにミルドラースをに視線を向ける。

 しかし、ミルドラースも黙って受けているばかりではない。

 切り裂かれたことをものともせず、四本の腕を合わせ、呪文を唱える。

「メラガイアー!」

四本の腕を合わせた中心から直径10mは軽く越える、凄まじい熱量の火球を作り出し、放つ。

 辺りを過ぎるだけで焼き付くす放たれた火球をエビルプリーストは受け止めようとするが、威力が強すぎ防御に徹するのが精一杯であり、着弾と同時に巨大な火柱が上がる。

 次はミルドラースがおぞましい笑みを浮かべるが、火柱はエビルプリーストを焼き付くしてはいなかった。

 白い体色が所々黒く焦げ、ひびや亀裂が入った状態で火を纏いながら飛び出してくる。

 そのまま流れでミルドラースとエビルプリーストは組み合う、そして巻き起こる衝撃波。

 力比べの様相だ。

 両者の力は拮抗し、微動だにしない。

 しばらくの拮抗に先に焦れたのはミルドラースであった。

 組み合った腕は二本、残りの腕で交互にエビルプリーストの脇腹を連打する。

 轟音と共にミシリ、ミシリとエビルプリーストの体から異音が漂う。

 ミルドラースが異音がしだした所を重点的に攻撃を加えだす。

 次第にエビルプリーストの表情に苦悶の色が浮かぶ。

 ミルドラースは愉悦を感じながら続ける。

 その時だった。

 エビルプリーストが少し体をよじると、ミルドラースの腕を腹部の口が噛みついた。

 噛みつかれた腕からは紫色の血液が流れ、バキバキという音と共に引きちぎられる。

 それと同時にエビルプリーストの腹部から冷たく耀く息が放たれる。

 ミルドラースの腹部から流れる血液は凍りつき、腹部も白く凍結しだす。

 ミルドラースも負けずに灼熱の炎を吐きかける。

 灼熱の炎はエビルプリーストの顔面を焼き付くす。

 等々実力伯仲の戦いが繰り広げられている。

 パパス達は呆然と戦いの行く末を見守るしかできない。

 しかしここである人物が皆を集めて話し出す。

「レイシア『アストロン』を唱えなさい。私がこの戦いに決着をつけます」

マーサであった。

 この戦いを前にしても動じることすらなく言いきる。

「そんなことができるのか?」

パパスは不安げに尋ねる。

「ええ、組み合っている今が狙い目なの私を信じてあなた」

自信ありげに話すマーサに若干の不安を覚えるが、パパスは自分の妻を信用することにした。

「分かりました。私も信じます。アストロン!」

レイシアが呪文を唱えると、パパス達は金属の塊と化す。

 それを見守ったマーサはミルドラースとエビルプリーストに手を向けた。

 マーサから迸る嵐のような魔力にミルドラースとエビルプリーストが気づいた時には既に遅かった。

「漁夫の利ね、ビッグバン!!」

「何!!」

「たかが人間が何故この呪文(特技)を!!」

マーサの魔力が宇宙の始まりを想像させる大爆発を巻き起こす。

 中心点はミルドラースとエビルプリーストの間。

 イオグランデなどとは比べることもできない爆発。

 マーサも瞬時に唱えた『アストロン』で難を逃れた。

 しばらく経ちアストロンが解かれた皆の前には、四肢がなくなり体が崩れ始めているエビルプリーストと、こちらも四肢が消し飛び焦げた肉団子のようになりながら虫の息のミルドラースがいる。

 また空間には至るところにひびが入ったり、崩れたりして、外の景色が見栄隠れしている部分さえある。

 あまりの凄惨な状況についていけず目を点にしているパパスに、時間差でアストロンが解けたマーサの声がとぶ。

「あなた今よ!」

「あ、ああ」

マーサの声に後押しされ、パパスが走り出す。

「これで終わりだ!」

パパスの体から放たれた闘気が具現化され一つの檻となりミルドラースを包む。

「アルテマソード!!」

パパスは大きく剣を振りかぶり、闘気の檻もろとも剣で真っ二つに叩き切った。

「ぐひゃあぁぁああ!!神を越えた…私が…敗れるとは…」

断末魔と最後の言葉を残し、ミルドラースは二つに分かれ霧散した。

 念願の宿敵を倒したパパスは振り返りエビルプリーストに走ろうとした時だった。

「ミルドラースは死んだか。では次はお前達だ」

ボロボロになりながらも気丈に話すエビルプリーストに嫌な感じを受ける。

「何を言う。お前ももう虫の息ではないか」

「フハハハハハ。これで勝ったつもりか。いい忘れていたが、わしは後一回進化を残していてな。それを今見せてやろう」

驚愕の真実をエビルプリーストが語ると、エビルプリーストの体が再び発光する。

 血のような赤、奈落のそこのような黒、この二色が合わさったような見るものに底知れない恐怖を与える光が放たれ、そして発光が止んだ時、四肢が蘇り、全ての傷が直り、体色が白から黒に変わったエビルプリーストが立っていた。

「さあ、終わりにするぞ人間達よ!!」

 エビルプリーストとの最後の戦いが始まる。



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禁忌の呪文

「皆さんは逃げてください」

視線は漆黒の体色に変化したエビルプリーストから反らすことなく、レイシアは迷いなく言った。

 あとはエビルプリーストのみと既に臨戦態勢に入っているパパス達に衝撃が走る。

「どういうことだレイシア!」

たまらず声を荒らげて詰め寄るパパス。

皆もパパスと同じ気持ちではあるが、パパスが代表で問いかけたので、成り行きを見守っている。

「皆さんは魔王ミルドラースを倒し、本懐を遂げられました。残るエビルプリーストは勇者様と私たちの因縁の相手です。私が倒さなくてはならない相手なのです」

レイシアはパパスを見据えて真剣な眼差しでそう言い切った。

「しかし、ヤツは強大過ぎる。いくらレイシアが強くても……」

「あなた、レイシアは昔から言ったことを曲げたことはありません。意思を尊重してあげましょう」

「しかし……」

見かねたマーサが口を挟むが、パパスは納得できない。

 当然である、エビルプリーストはあの苦戦したミルドラースさえもはや超えているのだから。

「レイシア、貴女がそこまで言うのならもちろん勝算はあるのよね」

「もちろんです」

レイシアの自信に満ちた答えにマーサは微笑みを浮かべる。

「だそうよあなた」

「分かった。では最後に、王ではなく、一人の仲間として約束してくれ。絶対に生きて我々の元に帰ってくると」

「……善処します……」

レイシアの歯切れの悪い言葉に不安は感じるが、一度言ってしまったことは変えられないので、

「きっとだぞ」

とだけ呟くように告げ後ろを向いた。

「レイシアさん(レイシア)(お姉さん)絶対に生きて帰ってください」

パピン、バルバルー、サンチョ、プオーンも同じ気持ちであった。

「帰ってくるのよ。さあ皆行くわよリレミト」

マーサの呪文の詠唱と同時にパパスたちはの姿は消えていた。

「まさか狡猾なあなたが見逃してくださるとは」

「見逃したつもりはありませんよ。まずは貴女との因縁を潰し。それから他の方々をゆっくり楽しみながら殺してあげようと思いましてね」

エビルプリーストの二つの顔の口角がイビツに歪む。

「それは叶いませんよ。貴方はここで私に倒されるのだから!」

「不老不死でなくなった貴女にこの究極の私を倒すことができるとでも、傷ひとつつけることはできませんよ。やってみなさい!」

エビルプリーストは巨大な腕を振り上げながら襲い掛かる。

(ごめんなさい。約束は守れないと思います)

レイシアは袋から瓶に入った『エルフの飲み薬』を出し、飲み干すと、荒れ狂う程の魔力を体から放出しながら腕を向けた。

(まさかこの呪文が役にたつときがくるなんて)

レイシアに自然と笑みが溢れる。

◇◆◇◆◇◆

「何あの禁忌の呪文を教えてほしいだと」

「お止めになったほうがいいですよミネアさん」

禁忌の呪文を行使することができる唯一の人物である、ピサロさんに頼みこんだが、最初は難色を示され、隣にいたロザリーさんにも止められた。

「私の意思は変わりません!!けして悪用はしません」

私は折れることなく、頭を下げた。

「ミネアよ。あの呪文は作り出した者やその一族、そして魔族以外では唱えた瞬間命を落とす呪文だぞ。それでもいいのか?」

「今の私は死ぬことはありません(死ねたら本望ですが)」

「確かにな」

ピサロさんとロザリーさんの表情が陰る。

「気にしないでください。もう受け入れているので」

「ああ、そうか。しょうがあるまい、お前は自分の意思を曲げることはしないというのは分かっている。教えよう」

「本当ですか」

「ただし、使用しても命の保証はしない。そして、呪文の威力が強すぎるために、地形や生態系さえ簡単に変えてしまう呪文だ。人生でもここぞというときにしか使ってはならない。分かったな」

「はい」

そして、私はピサロさんから呪文の教えを受け、長い時間をかけて習得した。

◆◇◆◇◆◇

「今こそあの呪文を使うとき!」

(パパス王、マーサ様、リュカ様、パピンさん、サンチョさんお幸せに、そして私が死んだらまたマーサ様に呼び戻してもらってくださいカカロン姉さん、バルバルーさん。本当に今までありがとうございました。とても楽しかったです。さようなら)

「マダンテ!!」

「何!!!」

レイシアから解き放たれた莫大な魔力が、荒れ狂い、暴走し、全てを無に返す爆発を起こす!!

「共に逝きましょう」

「こんなところで……」

二人は光に包まれ―――エビルマウンテンと共に消えた…

その天にも昇る光はエビルマウンテンの外にいるパパスたちにも見えていた。



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エピローグ

 


「ウ、ウ~ン」

「お、起きたかリュカよ。なにやらうなされていたようだが、悪夢でも見たか」

「うん。お父さんやみんなが、赤い大きな魔物や白い魔物と戦っている夢を見たの。とても怖かった」

「ハハハ、それは怖かっただろうな。だがもう夢から覚めたんだ。大丈夫だ。そういえば、そろそろこの船も港につく。船長さんたちに挨拶をしてきたらどうだ」

「はい」

僕はリュカ、今話していたのは父さんのパパス。

とっても強くても優しい、自慢のお父さん。

 僕は今世界を旅行している最中なんだ。

 僕はベッドの横に立てかけられている『ひのきのぼう』を背中に背負い、タンスから『皮の帽子』を出しかぶり、扉を開けた。

 爽やかな潮の匂い、眩しく輝く太陽、空を飛ぶカモメが僕が船に乗っていることを教えてくれている。

「おはようごさいます坊っちゃん」

「おはようサンチョ」

僕に最初に声をかけてくれたのは、僕のお世話をしてくれるサンチョ。

 お父さんほどじゃあないけど、とても強かったみたい。

 だけど、僕はサンチョが戦っているところは見たことなくて、優しいところしか見たことがないから分からない。

 僕は、辺りを見回す。

 悪夢で見て心配なことがあったから。

「よおリュカ。オメエも飲まないか」

「ダメですよ、バルバルー」

「相変わらずかてえなあ」

「おはようバルバルーさん、パピンさん」

今僕の前で二人で酒盛りしているのはバルバルーさんとパピンさん。

 二人ともグランバニアで兵士長をしている。

 バルバルーさんはあんまり真面目じゃないけど、お父さんと同じぐらい強いみたい。

 パピンさんは、真面目な時とそうじゃない時の差が大きい。

 前に、お風呂を覗いていたみたいで、奥さんにボコボコにされていたから、あんまり強くないみたい。

「やあリュカ。おはよう」

「あ、プオーン。おはよう」

小さい羽をもった犬みたいな魔物のプオーン。

 プオーンは僕の親友なんだ。

 よく背中に乗せて、外に連れていってくれる、魔物が来ても火を吹いて助けてくれる、ほんとうに便りになる僕の自慢の友達なんだ。

「おはようございます。リュカ様」

「あ、レイシア姉さん」

僕は走っていってレイシア姉さんに抱きついた。

「どうしたんですかリュカ様?」

「夢のなかで黒くなった魔物と一緒にレイシア姉さんが消えちゃった夢をみて…とても悲しくて、心配になっちゃって」

「私はどこにもいきませんよ。私のことを心配してくださったんですね」

「うん」

「ありがとうございます。リュカ様は私のこと好きですか?」

「うん」

「では、私を…痛い」

「何いっているのよレイシア。私はリュカの奥さんが私より年上なんて許さないわよ!」

「私は永遠に16歳ですよ」

「なにいっているのよ。もう百何十歳のお婆さんのくせに」

レイシア姉さんは、僕に呪文や勉強を教えてくれる優しいお姉さん。

 でも、昔から全く変わらない不思議なお姉さん。

 前に聞いてみたら、

「女の人には必ず秘密があるものなんですよ」

と笑って言って教えてくれなかったんだ。

レイシア姉さんと言い争っているのが、マーサお母さん。

 とっても優しいんだけど、お父さんもかなわないほど強いお母さんなんだ。

「リュカの話で思い出したのだが、あの時は本当に焦らされたな」

お父さんが僕の肩に手をおきながら話始めた。

◆◇◆◇◆◇

「なんということだ。エビルマウンテンが跡形もなく消し飛んでしまったぞ」

光の柱が天にそそりたった次の瞬間、巨大なエビルマウンテンが跡形もなくなくなっていたことに、パパスたちは衝撃を受けていた。

「あれは多分禁忌の呪文『マダンテ』よ。使った者はその威力に耐えることができないというほどの呪文で、今は使える者はいない伝説の呪文のはずなんだけど。まさかレイシアが使えたなんて……」

「ではレイシアは…」

「……いいえ、レイシアは帰って来るっていったわ。絶対生きているはずよ」

「そうだ絶対に生きている。皆レイシアを探すんだ!」

「はい(おう)」

僅かな望みにかけてパパスたちはエビルマウンテンが存在していた辺りを捜索し始めた。

 エビルマウンテンが存在していたはずの場は、瓦礫さえも残っていなかった。

 存在するものを、空間ごと消し去ったかのように。

 誰もがレイシアはもう…と思った時だった。

「あなた、皆来て!レイシアがいたわ!」

皆が全速力で走り出す。

 マーサがレイシアを抱き起こしている。

「奇跡が…起こった」

「レイシア起きて、目を開けて」

マーサがレイシアを揺する。

「ウ~ン、ここは、マーサ様も天国へ?」

レイシアが目を覚ました次の瞬間、その役目を終えたとでも言うように、淡い光を放っていた『黄金の腕輪』が崩れさった。

「お父さんが守ってくれたのかな」

「ええ、きっとそうよ」

◇◆◇◆◇◆

「ということだったな」

「ええ、勇者様が果たすことができなかったことも無事に果たせましたし、『進化の秘宝』もこの世から消すこともできました。そして、約束を果たすことができました」

「ああだが、この世にはまだまだ問題も多い。一つ一つ解決していかないとな」

「はい」

 パパスたちは魔王を倒し、マーサを救いだした。

 しかし、だからといって全てが上手くいくこともなかった。

 魔物よりも欲望にとりつかれた人間の方が恐ろしく、ラインハットは御家騒動の末に第一王子ヘンリーは、暗殺され、皇后の欲望のまま治められ、ついには滅びさった。

 これもいくつもあるうちの一つの世界のお話の一つ。




処女作であり、大変お見苦しい作品で、皆さんにも御迷惑をおかけしました。
申し訳ありません。
大変ありがたいお叱りや、痛烈なお叱りもあり心がおれかけたこともありましたが、なんとか終わらせることができました。
本当にありがとうございました。


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