神炎聖剣少女ジャンヌオルタさん (ちゅーに菌)
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ジャンヌオルタさん逃げる

この小説をジャンヌオルタが見れると思って開いた読者の紳士淑女諸君。

そこまでだ 残念だったな

この小説に出てくるジャンヌオルタちゃんはジャンヌオルタと言うよりも、"JKジャンヌオルタ"みたいなモノです。

よって基本的にネタまみれかつシリアルで話が進行します。相変わらずの一人称万歳です。

というかジャンヌオルタにホイホイされた人はここ小説の作者の名前を二度見したまえ。このクソ作者に真面目なシリアス作品など期待する方が無駄ですぜ。

というかこれ自体、FGOの無課金のサブアカで10連引いたら前回はタイツ師匠、今回ので10連引いたらジャックちゃんとわらべうたちゃんが同時に出やがった腹いせの小説だチクショウ。本アカに幾ら貢いでると思ってやがる(血涙)。


「レティシア」

 

「……?」

 

どこにでもあるようなとある一般家庭。そこに夫妻と、ひとりの少女が住んでいた。

 

夫妻はある日、少女に対して疑問を投げ掛ける。

 

「どうして礼拝に参加しないの?」

 

朝、教会に出向いて司教の話を聞き、讃美歌を歌うだけの行動をなぜか少女は異様に嫌がった。

 

日常として行われている事なだけに夫妻なりに少女を心配しての言葉でもある。

 

「だっていないよ…?」

 

「いない?」

 

少女は首を傾げ、なぜ当たり前の事を聞くのか疑問に思うかのような様子で呟いた。

 

「この世界に聖書の神様はもういないもん」

 

「え…?」

 

小さな少女から飛び出した言葉の意味が飲み込めず、夫妻は何も言い返せないままに少女は次の言葉を吐く。

 

「それだけじゃないよ。悪魔も殆どいないの」

 

その後、ノートを部屋から取って戻ってきた少女は夫妻にあるページを見せた。

 

それを見た夫妻は驚愕の表情に染まる。

 

 

1. バアル◎

2. アガレス◎

3. ヴァサーゴ

4. ガミジン○

5. マルバス 断絶

6. ヴァレフォール 断絶

7. アモン

8. バルバトス

9. パイモン

10. ブエル 断絶

11. グシオン 断絶

12. シトリー ◎

13. ベレト

14. レラィエ 断絶

15. エリゴス 断絶

16. ゼパル

17. ボティス 断絶

18. バティン 断絶

19. サレオス

20. プールソン

21. モラクス 断絶

22. イポス 断絶

23. アイム 断絶

24. ナベリウス

25. グラシャラボラス ◎

26. ブネ 断絶

27. ロノヴェ 断絶

28. ベリト

29. アスタロト ◎

30. フォルネウス ○

31. フォラス 断絶

32. アスモダイ

33. ゲアプ 断絶

34. フールフール

35. マルコシアス 断絶

36. ストラス

37. フェニックス ◎

38. ハルファス 断絶

39. マルファス 断絶

40. ロイム 断絶

41. フォカロル

42. ウェパル 断絶 ○

43. サブノック 断絶

44. シャックス

45. ウィネ 断絶

46. ビフロンス 断絶

47. ウヴァル

48. ハーゲンティ 断絶

49. クロセル 断絶

50. フールカス ○

51. バラム ○

52. アロケル 断絶

53. カイム 断絶

54. ムールムール 断絶

55. オロバス 断絶

56. グレモリー ◎

57. オセ 断絶

58. アミィ 断絶

59. オリアクス

60. ウァプラ ○

61. ザガン 断絶

62. ヴォラク

63. アンドラス 断絶

64. フラウロス 断絶

65. アンドレアルフス

66. キメリイェス 断絶

67. アムドゥスキアス 断絶

68. ベリアル ◎

69. デカラビア 断絶

70. セーレ 断絶

71. ダンタリオン

72. アンドロマリウス 断絶

 

 

「ね?」

 

そう言って無邪気に笑う少女の姿が、夫妻にとっての悪魔に見え始めるのに時間は掛からなかったと言う。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

人間誰しもが秘密を抱えているものだと私は考えています。

 

失敗の隠蔽から、コンプレックス。人には言えない金額の貯金通帳。

 

宝物、サプライズ、嘘、盗み、負い目、親殺しに子殺し、主人殺しに死体の隠蔽。上げれば切りがないほどにその幅は深く広い。

 

そして、私の場合はその中でも一際異質なもの。

 

私はこの世界自体を、物語でも読んだかのようにの何故か知ってしまっているのです。

 

例えるのならずっと族長物語の時代にタイムスリップして手元にある旧約聖書を読んでいるような気分。そんな可笑しな感覚を私は常に持っています。

 

世界と照らし合わせ、頭の中のそれを現実だと認識するまでに若干時間は掛かりましたが、それだけは確かな事でしょう。

 

何故かと言われれば物心付いた頃から常にそう言った意識があったからとしか言えませんね…。

 

神の啓示なんかよりも、よっぽど凄まじい真理ですよ。まあ、これを普通の人に話せば私は精神病院にfly awayされますよ、ええ。

 

と言うか、現に孤児であり、まだ物心が付かなかった記憶すら曖昧な頃に私の里親に話していたらしく、いつの間にか里親から恐れられ、私はこの聖剣使い養成所とやらにs'envolerですよ全く…。

 

最後に義理の両親が施設の人から何かを貰って喜んでいたのは覚えているので多分、私は売られでもしたのでしょうね。

 

ああ、神よ! なんということでしょう…。惨めな私に慈悲を与えたまえ!

 

………………まあ、その聖書の神様はこの世界にはもういないんですがねー。

 

それはそれとして、この施設に入れられた事で良い事と悪い事がありました。

 

良い事とはなんと! 私は、かのフランスの英雄にして、くっ殺要員のジャンヌ・ダルクの魂を受け継いでいる人間らしいです。

 

更に施設にたまに来る天使の方によれば本物のジャンヌ・ダルクと容姿まで瓜二つだとか。私の方がちょっと肌が白っぽくて、目がかなりやさぐれているらしいですけど。

 

鏡を見ながら、無駄にキャラの立った容姿をしていると思っていた日々は無駄では無かったのですね。

 

ただ、この世界のジャンヌ・ダルクといえば神器に聖剣創造を持っていて、聖剣で竜を作れるテロリスト程度の認識ですね。あれ…? 知識の中でジャンヌ・ダルクの姿が全く頭に浮かばないような…? まあ、私がそれなりに整った容姿をしているので別に気にすることもありませんか。

 

それで悪い事の方ですが、この聖剣使い養成所の所長の名前が"バルパー・ガリレイ"と言うそうです。

 

ええ、この施設確実にヤバい施設です本当に、本当にありがとうございました。

 

…………バルパー・ガリレイと言えば聖剣計画というモノの首謀者。聖剣計画とは、僅かでも聖剣の適正のある子供をかき集め、その子らから聖剣の因子を抜き出して人工の聖剣使いを作り出す計画です。バルパー・ガリレイのこの計画以降は教会では死を伴わずにそれを成し遂げているようですが、逆に考えればプロトタイプとも言えるこの聖剣計画では抜かれた者はほぼ確実に死ぬようですね。ま、死体から搾取するらしく先に毒ガスでお陀仏みたいですけど。

 

この神炎聖剣少女ジャンヌの聖剣因子を抜こうだなんていい度胸ね…。私、怖くて泣いてしまいそうです。

 

おおブッダよ! 寝ているのですか!…………聖書の神様は死んでましたね。それにブッタさんも管轄外でしょう。

 

私は施設の枕があまりにも柔らか過ぎて寝れなかったので、ふかふかした自作のブックカバーで聖書を覆い、それを枕にして眠るほど真摯なクリスチャンですからね。神様の意向は尊重しますよ。勿論、生きていればの話ですが。

 

………と言うことはここで何をしても誰にも咎められることはないと言うことですか。やったねジル! 神罰は実在しなかったわよ!

 

あ、そうです。

 

折角ですからこの施設から脱走するにしても金目のモノを粗方頂いてから、逃げ果せることにしましょう。先立つものはお金。後はコネぐらいです。

 

それに、後ろめたい施設なんですから、きっと本物のレアな聖剣の二本や三本ぐらい置いてありますよね。

 

思い立ったが吉日。私は行動を起こし……。

 

 

 

ぐぅー

 

 

 

………………やっぱり晩御飯を頂いてからにしましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

森に囲まれたとある雪原の平野に作られた建造物群と、それらを取り囲むようにぐるりと囲む巨壁。建物の所々に施された独特の装飾から教会施設だということが見てとれるだろう。

 

外敵の侵入から護るという名目の施設は、内部の者が外に出てしまわないようにと言い換える事も出来よう。

 

現在、その施設内部のあちらこちらから火の手が上がり、外では数人の引率者がこの施設で暮らす多数の少年少女を引き連れて消火に当たっている。

 

そんな最中、地下部分にあたる区画ではけたたましいサイレン音と、赤の非常用誘導灯が絶えず点滅していた。

 

「クソッ! なんだあの化物は!?」

 

一般のこの施設の職員とは若干、衣装の装飾の異なる男がそう吐き捨てる。

 

男はそこそこ名の知れたエクソシストであり、銃を持たせた十数人の施設職員と共に、一本道の通路の先に入る何かに向けて絶えず発砲を続ける。

 

彼らの視線の僅か50m程先では、通路の床、壁、天井に至るまでの全面が赤一色で染まり、天井から滴り落ちる鮮血が小さな水音が響かせる。更には、そこで打ち棄てられた50や60では効かないバラバラに分解された死体が、火の付いた炭のように炎を巻き上げる異様な光景が広がっていた。

 

そして、その最前列を歩むのは、奇妙な装飾の施された古い本を片手で開き、もう片方の手にはきらびやかな銀の柄と赤々と赤熱する刀身が特徴的な剣を持つひとりの少女だ。

 

エクソシストは何れ程銃弾を浴びせようとも結界や障壁のようなものに阻まれ、進行を遅らせることすら出来ていない現実に焦りの表情を浮かべながらも指示を飛ばした。

 

「今すぐ隔壁を閉鎖しろ!」

 

「ですがまだ仲間の退避が……」

 

「バカを言え! アレの後ろに生き残りがいるものか!!」

 

エクソシストが檄を飛ばした事で、施設職員のひとりが壁に付けられた簡素なスイッチを押す。すると少女と彼らの間に70cmは厚みがあろうかという鋼鉄の隔壁が降りた。少女が視認出来なくなった事で、彼らにも多少の安堵の表情が浮かぶ。

 

次の瞬間、鋼鉄の隔壁が、まるでナイフでバターでも切り分けるかの如く斜めに溶断される。

 

さらにもう1本の切れ込みが入り、障壁にバツの字が刻まれた直後に穴が開き、何事もないかように本に目を向けている少女が再び足を進めた。

 

少し背伸びした程度のただの人間には人智を越え過ぎた光景にひとり、またひとりとエクソシストの側にいた施設職員らが職務を放棄し、脇目もくれず逃走を始めたのも仕方の無い事だろう。

 

本から顔を上げ、その陳腐な姿を目にした少女の額に皺が寄る。

 

「逃げるなら最初から歯向かうんじゃないわよ…」

 

少女は剣先を床に突き立てると、マッチを擦るように剣を振り上げた。それにより、正面に1本の炎の線が駆け抜る。

 

「爆ぜなさい」

 

その刹那、炎の線が激しく爆裂し、少女の前方の通路が爆炎で染まる。それは平等にエクソシストも、残っていた施設職員も、逃走した施設職員をも飲み込む。後に残るのは煤けた死体ばかりだ。

 

少女は再び本に顔を戻すと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

ルルイエ異本しか置いてないとかあり得ないんですけど…?

 

え? なんなのここ? マジで表立っては聖剣使い養成施設なの?

 

………まあ、この螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)は割りと便利ですね。これそのものが魔力炉を内蔵した魔導書らしく、ページを開いて念じるだけで魔術が発動します。

 

適当にページを捲り、魔術をバラ撒きながら歩いていたら出てくるようになったヒトデっぽい海魔は、切られると分裂して増えるのでここの施設の連中では苦戦を強いられているようです。

 

『ジャンヌゥッ! まだまだCOOLには程遠いですぞ!』

 

今、何か聞こえたような…。

 

きっと気のせいでしょう。周りは死体だけですし。それよりも、もっと本の中身を確認しなければ。

 

「いあ いあ くとぅるふ ふたぐん…」

 

本の内容を声に出して読み上げながら進んでいると、この本が置かれていた地下施設からやっと出れたらしいです。

 

とは言っても外の建造物の殆どで火の手が上がっており、皆消火活動に奔走しているために元気そうですね。

 

まあ、私が聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)で造ったアレンジを加えた炎属性の聖剣をほぼ全ての建物の燃えやすそうな場所に予め置いておき、脱出すると決行した瞬間に遠隔操作で、全ての聖剣を解放してナパーム弾代わりにしたせいなんですけど。

 

少しばかり火力が高過ぎて、生き物が焼けるような匂いまで風に乗っていますが、ここには子供も含めて死んで困る人種は誰もいないでしょうから気に病む必要もありませんね。

 

視界の端でいつの間にか私より先に地上まで上がってきた海魔が、職員を襲っているのも気にしてはいけません。

 

焼け落ちる施設を横目に、施設全体を覆う外壁に向かって私は歩き出しました。

 

するとその途中で子供達のリーダーに留まるような形で避難誘導をしている見知った顔を見付け、思わず足を止めて声を掛けてしまいます。

 

「こんばんわ。明るくて素敵な夜ですね」

 

「君は!」

 

彼は後にリアス・グレモリーに木場裕斗と名付けられる少年。

 

この聖剣計画の数少ない生き残り。私の記憶ではこの世界の中でも重要な人物のひとりだと記憶しています。

 

「……………え…?」

 

私を見て何故か固まる木場さん。

 

そういえば今の私の身体は返り血だらけでしたね。やだ、なんだか恥ずかしい。

 

「ひとつだけ私からあなた方に。ここの施設の子供達に伝えておいてください」

 

私は精一杯の笑顔を作ると木場さんに言葉を吐きました。

 

「どうか皆様の夭折に幸運のあらんことを」

 

私はそれだけ言って、唖然としている木場さんの横を通り過ぎました。

 

 

 




クリスマスなので楽しんでいただけたら幸いです。この小説はクリスマス企画であり、私からの皆さんへのクリスマスプレゼントです(驚きの白々しさ)。


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ジャンヌオルタさんとルーラーさん

どうもちゅーに菌or病魔です。

次のガチャでフランちゃん入るよ……やべぇよやべぇよ…。確実にジャンヌオルタさん控えてるのにここでフル投入したくなります…。

サブタイトルのルーラーさんに偽りは一切ありません(真顔)。

次の更新はFFBEでエクスデス先生と、ケフカ引くまでリセマラしてからになるのでちょっと遅れると思います。


施設の外壁を作製した爆発する聖剣で脱出し、外に出てからは創造した炎属性の聖剣を光源と暖代わりに使いながら特に宛もなく森を歩いていました。

 

やっぱり人間束縛は少ない方が良いというものです。そうでないと私みたいな悪い子が今回みたいに爆発してしまいますからね。

 

さてこれからどうしたものか。少しばかりの金塊と、二日分ぐらいの食糧は持ってくる事が出来ましたが、このままさ迷って無事で済むと思うほど楽観視は出来ません。

 

足がほしいところですが、ヒッチハイクをしようにもここは雪の積もった深い森の中ですし、そもそも通信機器がありませんけどタクシーが来てくれるとも思えませんね。

 

その辺の野生の狼を捕まえたら背中に乗せてくれるのではないかとも考えましたが、金の延べ棒8本(90kg弱)を持たせたら流石に動けなくなるでしょう。

 

「あら…?」

 

冷たいモノが跳ねる感触を肌に感じ、顔を上げると雨が降って来た事に気が付きました。

 

このタイミングで雨ですか…。この前までずっと雪だったと言うのに季節の変わり目なのか見事な雨。私の幸運値は低いのでしょうか…?

 

何より雨の中を進むなんてことしたら食糧が湿るわよ……。

 

そう思いながらどこか雨宿り出来るところは無いかと周囲を見渡していると、十数m程先の地面に雪が積もっていないことに気が付きました。

 

その近くまで進み、確認してみるとどうやら中々の深さの縦穴の入り口のようです。人の手の入っていない自然の洞窟でしょうが、食糧の味を悪くするぐらいなら私はこの深い縦穴を選ぶわ。

 

私は縦穴の底まで飛び降りました。

 

雨が止むまで縦穴周辺にいても暇なので、便利な聖剣の灯りを頼りに洞窟探検をすることにします。もしかしたらどこかに通じているかも知れませんしね。

 

意外と巨大な洞窟なようで幅も天井への高さも十数mはあるでしょうか。更に何故かコウモリ1匹見受けられず、中は綺麗なものです。

 

そんな感想を考えながら暫く進んでいくと突然、音楽ホールのように扇状に開けた空間に出たようですね。

 

足元を照らす役割をしていた聖剣の灯りだけでは、微妙に見辛い奥の方で何かが見えます。

 

仕方なくを螺湮城教本使う事で幾つもの魔法の光でこの空間を満たし、奥にいる何かがハッキリと視認出来るようになりました。

 

「………え…?」

 

黒い身体に白い腹。ピンクに近い赤の翼膜が張られた黒い翼。一本一本がナイフのように鋭い歯と頭に生える攻撃的なデザインの角。体高だけで10m程ある体躯。

 

それは正に"竜"と呼ぶに相応しい生物がそこに鎮座していました。

 

その上、ドラゴンの目蓋は開いており、爬虫類特有の瞳がこちらを射抜くように向けられています。

 

ドラゴンは体躯を動かし、両手を地面につけるとその口を開きました。

 

そこから放たれた咆哮により、大気が揺れ、ビリビリと直接全身に衝撃が響き渡ります。

 

常人ならその場で気絶するか、軽く飛ばされるかもしれない程の風圧を伴う爆音を聖剣を地面に突き立てながら踏み止まりながらも、私の表情は驚きに塗り潰され、そのドラゴンを唖然と見つめていました。

 

 

 

『こんばんわー!』

 

 

 

なんか無茶苦茶人懐っこそうな声が……なにこれ副音声?

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

どうやら私は竜と会話が出来るようです。今、初めて知りました。

 

触っても良いそうなので触れていますが、さわっとしてつやつやした撫で心地のため、とても感触が良いですね。

 

ちなみに私の目の前で尻尾をはち切れんばかりに振っているこの竜は、クエレブレという種類の邪龍の一個体だそうです。

 

「名前は無いのですか?」

 

『名前?』

 

流石にクエレブレと呼ぶのは犬を犬と呼ぶようなものでしょうと思い、聞いてみましたが、返答は疑問が飛んできました。

 

声色からまだこの竜は大人ではないようですし、聞き方が悪かったでしょうかね。

 

「私はジャンヌ・ダルクという種族で、レティシアという名前がありました」

 

なんか違う気がしますが、だいたいあっているので仕方ありません。本名はもう棄てましたが、こういう時や公式文書を書くときだけ復活します。

 

『名前……ない…』

 

急に竜はシュンとしました。犬のようにブンブン振られていた尻尾は止まり、頭の位置もさっきより下がっています。

 

「なら私が名前を付けてあげます。今日からあなたは"ドラゴンルーラー"です。ルーラーって呼びますね」

 

『え…?』

 

「嫌なら構いませんが……呼び名がないと不便ですし」

 

ちなみに名前の由来は特にありません。何と無く、私がルーラーという言葉が好きなだけです。

 

「私の一番好きな言葉があなたの名前ですよ」

 

『えへへー、ありがとう!』

 

ルーラーはぐるぐると声を上げながら自分の顔を私に擦り付けてきます。

 

どうやら邪龍でも良い子みたいですね。とりあえずはそっとしておきましょう。

『お礼にこれあげるね』

 

ルーラーの頭の下辺りの空間が歪み、柄の黒い長槍が姿を現しました。

 

受け取ってほしいようなので私はそれを手にします。

 

柄が黒い事を除けば多少長めの槍ですね。

 

『"竜槍スマウグ"っていうんだよ』

 

何故か槍を見ていると旗を付けたくなる衝動に駆られます。それだけではなく、この槍からは私が造ったような聖剣が足元にも及ばない程の力も感じる。どうやら良いモノを貰ったようです。

 

「ありがとうございます。では私はこれで…」

 

そう言って私は来た道を戻ろうとしました。

 

ここまで進んで気が付きましたが、どうやらこの洞窟は殆ど一本道になっているようで、何処にも繋がってはいないようです。よって引き返すしかありませんね。

 

『どこへいくの?』

 

ルーラーの呟きに私は足を止めました。

 

どこへですか…。そう言えばとりあえず逃げ出して生きる事は決まっていますが、それ以外の事は何も決めていませんね。

 

「とりあえず暫くは好きに世界を見て回りましょうかね?」

 

『楽しそう…』

 

そう言うとルーラーはなにやら期待を込めた眼差しをこちらに向けてきました。

 

『じー…』

 

ルーラーはご丁寧に擬音付きで、仲間になりたそうな目でこちらを見ています。これがくれたら食べてもいい、というチョビの眼差しですか…。

 

…………まあ、この辺りの豪雪地帯を突破するのに足は不可欠なので丁度良いでしょう。

 

「あなたも来ますか?」

 

『本当!?』

 

ルーラーは嬉しそうな声を上げると、尻尾だけでなく翼までバタ付かせました。

 

ちょ…強風で髪が乱れるから止めなさいよ!

 

『ならそれもあげる!』

 

そう言うとルーラーは身体をルーラーが最初に立っていた方向に向けました。

 

良く見ればそこにはダンジョンの宝物と言わんばかりの箱が置いてあるではありませんか。

 

流石にTHE・宝箱なモノが置いてあるのは奇っ怪過ぎるため、あれはなんなのかルーラーに聞きました。

 

『さあ?』

 

「知らないのですか」

 

『ボクが来たときにはもうあったよ』

 

…………まあ、例えガラクタであれ貰えるものは貰いましょうか。今の私には必要なものが多過ぎますし、何かの役に立つでしょう。

 

とりあえず、開けた瞬間に宝箱が異様に長い手足が生えた生き物に変わって襲って来られたら大惨事なので、スマウグで宝箱をつついてみましたが特に変化はありません。どうやらミミックではないようですね。

 

とりあえず宝箱を開けてみます。

 

するとそこには鞘、柄、刀身に至るまで真っ赤に染めらたひと振りの曲刀が入っていました。刀身は日本刀のようですが、柄は西洋剣のそれという不思議な形状をしています。

 

良く見ればご丁寧に"カムシーン"と銘が彫られていますね。

 

「名刀カムシーン」

 

何故か声に出したくなったので声に出してみましたが、特に意味もありません。

 

これも私が聖剣創造で造れる規格を遥かに越えた業物のようなのでありがたく貰っておきましょう。ありがとうトルネード! …………トルネードって誰ですか?

 

とりあえずこれらを持って外に出ましょうか。雨が止んでたらですけど。

 

「行きますよルーラー」

 

『はーい』

 

私の後ろをドスドスと音を立てて着いてくるルーラー。地味に可愛いと思ったのは内緒よ。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

途中からルーラーさんの背中に乗って縦穴から這い出ると、いつの間にか雨は止んでおり、それどころか既に朝日が射し込んでいました。

 

そして、日の光に照らされながら100を軽く越えるであろうという数の下級から中級の天使が縦穴を中心に私達を取り囲んでいます。

 

雪森の空を埋める天使達は絵画になりそうな幻想的な光景ではありますが、微塵も嬉しさは込み上げてきません。

 

どうやら、悠長に雨宿りなんかしていた報いと言ったところですか。十中八九突破できなければ私は殺されるでしょう。

 

ですが、どうやら向こうは騒然とした様子です。まあ、横にいる明らかに凶暴な邪龍といった風貌のルーラーさんのせいですね。

 

少女を追い詰めたと思ったら邪龍に跨がっていた。大誤算もいいところでしょう。

 

とは言っても攻撃を緩めるような程、甘くはないようで空が天使達による無数の光の槍で染め上げられていきます。少女ひとり殺すには随分と大人気ないんじゃないかしら?

 

『ねぇねぇジャンヌ?』

 

「はい?」

 

『あれ食べてもいい?』

 

「好きにしてください」

 

『やったぁ!』

 

嬉しそうに巨大な咆哮を上げるルーラー。

 

まあ、こう思いましょう。

 

武器の試し斬りの相手が出来たと。

 

ルーラーと、ルーラーに騎乗している私は天使の群れへと飛び出しました。

 

 

 




ジャンヌオルタさん
原作よりだいぶやさぐれているジャンヌ・ダルク。異常なまでに炎や呪詛の扱いに手慣れていたり、人間の言葉を持たない竜と普通に会話を成立させたりすることが可能。やたら竜、特に邪龍に好かれる。


ジャンヌオルタさんのもちもの。

聖剣創造
ジャンヌさんの神器。戦闘から生活まで幅広く使われている。しかし、それが祟ってテロ行為スレスレの事に使われることまで形式美。

螺湮城教本
ジャンヌさん専属の魔術師みたいなもの。物凄く便利。ただ、夢に螺湮城教本の精霊と名乗るギョロ目の男性が出てきたり、巨大なタコっぽい自称旧支配者さんが出てくる事が難点。

食糧
ジャンヌさん曰く2日分。常人曰く15日分。知らないんですか? 聖処女は1食抜いただけで餓死するんですよ?

金の延べ棒
オーラム。この世界では頭の可哀想な店主が居ないために指輪は転がせないので貴重な資金源。

ドラゴンルーラー(黒)
カムシーン(笑)さん主人公でしか戦う事が出来ないが、オープンワールドであるロマサガ3のボス的な立ち位置の四魔貴族(幻影)と同じぐらいかそれ以上に強いドラゴン。ドラゴンルーラーにて最強! 最強なのだ! HP24000中、12000削ると仕様的な第2形態へと移行し、その時の閃きレベルが序盤から戦えるモンスターどころか終盤ボス並な事で有名。閃こう。

そのために、ジャンヌさんもルーラーちゃん本人も気付いていないが、この世界では既に最上級悪魔とサシでやりあえるぐらい強い。しかし、まだまだ子供。

竜槍スマウグ
言わずと知れたロマサガ3最強の槍。ドラゴンルーラーからの極低ドロップ。

この世界では後にジャンヌさんに旗を付けられる事が決定付けられている悲しき宿命の槍。これからのジャンヌさんの主装備。

名刀カムシーン
カムシーン(笑)じゃない方のカムシーン。ドラゴンルーラー(黒)を倒すと手に入るため、完全にスマウグとドラゴンルーラーの閃きのおまけである。

これからのジャンヌさんの副装備。



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ジャンヌオルタさんと悪魔くん

実はジャンヌオルタさんにはここで幾つか分岐ルートがありました。

考えていたのは
リアス眷族ルート
堕天使ルート
気まま(禍の団)ルート
アストルフォの嫁ルート
などですね。

結局、暫く考えた末。fateキャラをムリ無く一番楽にブチ込めるルートに進むことにしました。


 

 

『…………ヌ…』

 

ああ、ジャンヌ。可哀想なジャンヌ・ダルク。天使達に負けた私は裸に剥かれ、まだ幼い姿態を白昼の元にさらされてしまいます。

 

『…ジャ…………ヌ…』

 

そして、白魚のように艶やかな肌に手を掛けられ、異性の欠片すら知らない蜜の花園を乱されてしまうのですね!

 

『………………ンヌ……』

 

止めて! 私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに! エロど…。

 

『ジャンヌ』

 

目蓋を開いた瞬間、目が飛び出たような面をした大柄な男性が私の顔を覗き込んでいました。

 

『フンギャァァァァ!!!?』

 

何故か反射的に彼の両目を指2本で突いてしまいましたが、特に問題はありませんね。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

『いやはや、この情け容赦の無い一撃……やはりあなたは私の知るジャンヌに他なりませんな』

 

今、私は妙な空間にいます。

 

単純に森の中にネイルアートが出来そうなぐらい爪が長く、私が目を突いたお陰で目が引っ込んで中々良い顔立ちになった男性と共にいるのですが、どうもその森が可笑しいのです。

 

私たちを取り囲む……いえ、私たちを中心に生えたかのように聳え立つクレヨンで描いたような木々には何故か顔があり、空を見れば燦々と輝く真っ黒な太陽は、小学生が授業中の暇潰しでノートの端に鉛筆で描いたような出来です。

 

これで後は軽快なBGMでも流れていたら完璧ですね。

 

(わたくし)はジル・ド……ではなく、螺湮城教本の精霊でごさいます』

 

そう言いながら恭しく礼をする本人曰く螺湮城教本の精霊さん。

 

まあ、あなたがそう思うならそうなんでしょうね……あなたの中ではね。

 

『願いましてはジャンヌ。私は貴女の忠実なる永遠の僕。貴女の復活だけを祈願し、今一度貴女と巡り会う奇跡だけを待ち望み、こうして時の果てにて漸く我が願望は成就された』

 

「はぁ…?」

 

『いえいえ、勿論、私の思念など貴女を押し付ける事は致しません。貴女はいつも通りCOOLに、あるいは更にCOOLに、若しくは先鋭的なまでにCOOLに!』

 

「………そろそろ起きても構いませんか?」

 

と言うか、これは夢でしょう。どんな夢であれ、夢の中でそれが夢だと気が付くことは中々珍しい事だとは思いますが、何と無くそう思います。

 

序でに言えば、この人にはどうも会話は出来ますが、言葉が通じている気がしません。きっと、私の啓蒙が足りないんでしょう。40ぐらいまで高めたらまた来ましょうね。

 

『ふむ……確かに。僭越ながら応急処置だけは済ませましたが、そろそろ戻らなければ破瓜されるやも知れません』

 

え? 応急処置? 破瓜? なにそれどういうことよ。特に二番目。

 

『ではジャンヌ。貴女の神なき天啓に祝福のあらんことを』

 

ちょ……コラ! 待ちなさい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「巫山戯るんじゃ無いわよ」

 

思わず伸ばされた手で何かを掴みながらそう呟きました。

 

頬に当たるこの地域特有の冷気を孕んだ風からここが現実の世界だという事が伝わってきます。

 

あの夢の男に逃げられたような気分になりながらも、今この手の中にある微妙に温かい感触に違和感を感じて目を開きました。

 

疲れからの気絶のような仮眠とはいえ、眠気特有の感覚によってぼーっとしていましたが、私の周りで真っ赤に濡れたスマウグとカムシーン。さらに雪の上に散乱する色合いが微妙に異なる天使の羽根が、絨毯のように折り重なっている光景が視界に映ります。

 

そして、見上げた視線の先には黒髪で、眼の赤い、私と同じ程の年齢に見える少年が、驚きの表情で薄く目を見開いているではありませんか。

 

良く見ればその少年の手には一際大きなチェスの駒のようなものが確りと握られており、やや興奮していたのか手汗をかいているのもわかります。

 

大分幼くはありますが、私の知識にある顔と参照し、ひとり該当する人間……もとい悪魔がいるようですね。

 

「こんな山奥でピクニックですか? 悪魔の"ディオドラ・アスタロト"さん」

 

「な………!?」

 

その言葉に少年……ディオドラはあり得ないと言った様子の表情を浮かべると、更に目を大きく見開きました。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

ジャンヌ・ダルクの魂を受け継ぐ少女がとある教会施設にいる。

 

この情報を何処からか耳にしたディオドラの行動は速かった。

 

フランスの悲劇の英雄ジャンヌ・ダルク。その在り方そのものがディオドラにとっては、千言万語を費やしても表現し得ない程に甘味なモノだった。それが自分の手に入るかもしれないと来ればディオドラが足を止めない理由は何処にも無いだろう。

 

まず大金を積んでその情報の真偽と、教会施設の正確な場所を突き止めた。その過程でその施設自体の黒い噂も見えたが、そんなことは今の彼には気にならなかった。

 

だが、幾重もの隠蔽魔法を組み、隠密の為に単独で目的の施設に来た彼であったが、早くも壁に阻まれる。

 

ジャンヌ・ダルクがいる場所は壁に囲まれた大型複合施設。その上、かなりの数のエクソシストや、武装兵のような者も警備に当たっていると来ている。

 

会えば言葉で引き込める自信のあったディオドラであったが、これでは門前払いも良いところだろう。

 

まるで、監獄か何かのような光景による成果が上がる筈もない連日の調査の末にすっかり意気消沈したディオドラであったが、そうなってくると黒い噂の方も気になり始め、焦りが生まれる。

 

だが、何が出来るわけでもなく今宵も施設の調査に入ると、施設から連鎖的な爆発音が響く。

 

不審に思ったディオドラが遠見の魔法で上から施設を覗いたところ驚愕の表情を浮かべる。何せ施設全体がまるで地獄のように業火に包まれていたのだ。

 

無論、これを好機と思いディオドラも荷物をまとめ、行動を開始しようとする。彼にとっての一斉一代の大勝負と言ったところか。

 

しかし、彼が居た場所の数百m程離れた場所の外壁が、座布団か何かのように弾け飛んだ事でそちらを向いたままディオドラの動きが止まる。

 

そして、そこから金髪の少女が現れた。見れば莫大な魔力を放つ奇妙な本と、見ただけで全身の毛が逆立つような感覚を覚える剣を持っているらしい。

 

少女はそのまま雪に覆われた森の中に消える。

 

我に帰ったディオドラはジャンヌ・ダルクの保有する神器が聖剣創造であった事を思い出し、使い魔を炎上する施設内に放つと自身は彼女の後を追った。

 

しかし、認識阻害の結界でも張りながら移動しているのか、全く姿が見受けられない。足跡と滴り落ちたような血痕が時より点々としているため、近辺で徒歩で移動中だという事がわかる程度か。

 

雨が降って来た頃、戻ってきたディオドラの使い魔が収集した情報によれば、やはりジャンヌ・ダルクは逃走しているらしい。となると今、追っている少女がジャンヌ・ダルクで正しいのだろう。

 

確信と、天が味方したかのような千載一遇の機会にほくそ笑むディオドラだったが、この近辺に強い光の力が集結していることを感じ、身を隠した。

 

見ればディオドラから少し先の空に多数の下級から中級までの天使が徐々に集結している。恐らく、彼女が捕捉されたのだろう。ディオドラは唇を強く噛む。

 

流石に上級悪魔のディオドラと言えどあの数とまともに当たれば2分と持つことはないだろう。

 

そう考え、自分の存在をひた隠しながら尻込みする中も天使は集まり続け、最後にはディオドラも見たことがない程の大軍勢となっている。

 

やがて雨が上がり、朝日が差し込んだ頃。遂に天使達の攻撃が始まった。

 

 

 

 

 

 

それから1時間程だろうか。周囲には1体も天使は残っておらず、遠くの空でいつの間にか沸いていた1匹の黒いドラゴンが僅かに残った天使達を追撃している。

 

それを確認したディオドラは僅かな望みを掛けて戦闘のあった地点に急いだ。

 

そして、遂に対面する。

 

少女……ジャンヌ・ダルクは雪の上に絨毯のように広がる天使の羽根の中で槍に凭れながら眠っていたのだ。

 

ディオドラは自身の"女王"の駒を取り出し、彼女に近付いた。

 

間近で見る彼女は1枚の絵画のようであり、息を呑む程に美しい。

 

思わず、ディオドラは生唾を呑み込みながらも彼女を起こそうとそっと手を伸ばした。

 

 

 

 

 

「巫山戯るんじゃ無いわよ」

 

 

 

 

 

その呟きと共にディオドラの手が彼女に掴まれる。

 

そして、彼女の目蓋がゆっくりと開き、やや色の薄い金色の瞳がディオドラを射抜く。

 

ディオドラの心臓が高鳴り、思わず彼女から離れようと半歩後退ったが、人間とは思えない力で掴まれている為に無駄に終わる。

 

彼女は目を少し細め、歯を見せるとぎこちない笑顔で笑いながら口を開いた。

 

「こんな山奥でピクニックですか? 悪魔のディオドラ・アスタロトさん」

 

彼女は既に知っていたかのようにディオドラの事を当てて見せる。

 

だが、それ以上に彼女の声色はディオドラも、ディオドラがここに来ることも全て予見していたかのように落ち着き払っている。

 

それが堪らなく不気味であり、それでいて筆舌に尽くしがたい程に婉然に映っていた。

 

ディオドラは確信した。正に目の前の女こそが、聖女であり魔女。ジャンヌ・ダルクという存在そのものであると。

 

 

 




はい、ディオドラ眷族ルートです。皆さん予想は出来たかな?

やったねディオドラ! ジャンヌさんが増えるよ!(勿論、ディオドラ君にはジャンヌオルタさんの内面は見えていません)

Q:なんでディオドラ?

A:ある程度クソ外道悪魔が主かつジャンヌオルタさんが悪魔じゃないと展開的にも内容的にも非常に出しづらいオレンジ頭の快楽殺人鬼がいましてね……。






…………個人的にはシリアル分380%のアストルフォの嫁ルートが非常に捨てがたかったのはナイショ。


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ジャンヌオルタさんが悪魔さん

フランちゃんかわいいやったー!

どうも正月早々ピックアップも無視してストーリーガチャに金を積んだちゅーに菌or病魔です。

あ、り、が、と、う、だ、い、す、き(最終再誕)
す、き(絆MAX)

この片言の二言だけで2万5000円の価値はありましたわ(リアル話)。

FGOでフランちゃんが出るのを心待にしていた……と言うかフランちゃんをいつか使うためにFGOをやる事に決めていた作者としては最終絵も最高でしたしもう大満足ですよ。ブラステッド! ツリィィィ!

暫く感動のあまり80Lvのカレイドフランちゃんか、ドスケベフランちゃんをトップにしていると思いますけど超許してネ!

あ、私にメールくれたらフレ枠のある限りはフレ登録致しますよ。今はフランちゃんなので周回にでも使ってやってください。新章追加時から暫くはオリオン姐さんに、イベント時は適当なイベントキャラに変わりますので使ってやってください、なんry)。





ディオドラはジャンヌの天啓でも聞こえているかのようなような発言と態度に暫く驚いていたが、それこそが彼女をジャンヌ・ダルク足らしめるモノだと納得する。

 

「僕は…」

 

「ええ、わかります。わかっていますとも」

 

ジャンヌはディオドラの言葉を遮ると、身体を寄せ、耳元で語り掛けるように囁いた。

 

女王の駒を持つディオドラの手首をジャンヌは、人間とは思えない程の凄まじい腕力で掴んだまま一向に離そうとしていない。しかし、これまでディオドラが体験した聖職者からは余りにハズれたジャンヌの行動と言動に驚き戸惑っているのと、声や美貌や仕草のジャンヌその物全てが彼の知る限りの最高の女性である事で、そこまで考えは回らないようだ。

 

「私が欲しいんでしょう?」

 

そう言うとジャンヌはディオドラの女王駒を持つ手を胸の前まで引き寄せる。 それはジャンヌの胸元まで後、数cm。指を伸ばすだけで女王の駒が入ってしまう距離。

 

「ならば遠慮することはありません。貴方は誇り高き悪魔なのですから」

 

ディオドラはジャンヌの言葉で見惚れていた感覚を多少引き戻された。

 

アスタロト家の次期当主。由緒ある純血悪魔。ディオドラはジャンヌの褒めた自身のアイデンティティが頭に浮かび、それをジャンヌ・ダルクと比べた。

 

そして、彼の自尊心にまみれた思考はジャンヌを探し始めた頃に既に出ていたひとつの回答を再び弾き出す。自分こそが彼女に相応しい、或いは彼女は自分のモノであるべきだと。

 

ディオドラは誘われるままに女王の駒を持つ指を伸ばした。

 

その瞬間の彼女の表情など気にも止めないままに。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

ワタシデーモンニナッチャッタヨー。

 

1度は声に出したい台詞を言い終え、試しに背中に生えたコウモリのような翼を動かしてみると規則的にパタパタと蠢くようです。身体も人間の頃よりずっと身軽に感じますね。

 

ディオドラはと言うと私を眷族に出来たのがそんなに嬉しかったのかオークションでとてつもない高額のモノを競り落とした人のように小さく変な笑い声を上げながら放心しています。つくづく肝の小さい男性ですね。

 

まあ、一先ずディオドラの事は置いておき、悪魔になった理由。と言うか悪魔に成らざるを得なかった理由が幾つかあったのですよ。

 

ひとつ目は安全の確保。今、私の出来る限りの隠蔽術を施して普通にあの数の天使に補足されたのですから、ここまま逃げれば再び捕まるのも時間の問題と言った所です。

 

次に戦闘になった時に今の数の更に上位の天使や、名前持ちの天使でも来られたら私とルーラーと言えども勝ち目は薄いでしょう。敗北とはすなわち死。私、追撃戦は得意ですが、逃走戦はあまり好きではないんです。勝てない戦も好きではありません。

 

この悪魔は腐ってもアスタロト家という超ビックネームです。休戦中のこの時代では後ろ楯としては申し分無いでしょう。

 

ふたつ目は悪魔の標準装備である"すべての言語を共通のものとしてとらえる能力"が欲しかったからです。

 

ここで質問です。螺湮城教本はプレラーティー氏がいったいどこの言語で翻訳された言語でしょうか?

 

ちっ、ちっ、ちっ、ちっ……はい、時間切れ。

 

正解はイタリア語で訳されているのです。

 

何故かフルで日本語の知識のせいで若干自信はありませんが、私は生粋のフランス人ですよ…? 要するにですね…。

 

私は言語の壁のお陰で"螺湮城教本の内容を5%も理解できていない"のです。

 

それであれだけ色々出来たのですからこの魔本が何れ程イカれた超性能をしているかは私が一番良くわかっております。よってこれを誰にも渡す気もありませんし、私以外の者に一文足りとも読ませる気もありません。

 

ですが、私は完璧主義です。どうせならこの魔本の染みのひとつまで習得したいとすら感じています。言語の壁などというもののせいで、内容の理解すら出来ない事は我慢なりません。

 

というか私、遠回りって間怠っこくて嫌いなのよ。……そんなに頭は良い方じゃないし。

 

「ウフ…ウフフ………アハハハハハ!」

 

今、螺湮城教本を開いてみると人間の頃とは違い、明らかに私の知る言語とは異なるのにも関わらず、内容を理解することが出来ます。 思わず嬉笑も込み上げるというものです。

 

そう言えばなぜこの魔本は使われる事もなく、ただ厳重に保管されて居たのでしょうか? あまり気は進みませんが、あの螺湮城教本の精霊に聞いてみる事にしますか…。

 

それでみっつ目ですが、彼の眷族なら私が少しぐらいやんちゃしても気にも止め無いと思ったからです。

 

簡潔に私の知識中のディオドラ・アスタロトの事を説明すると。浅知恵で闇堕ち&NTR好きの小悪党のぼんぼんです。

 

人間は間違える生き物、人間上がりの私もそうでしょう。ならば私のような生娘の可愛らしい()()()などは喜んで目を瞑ってくれる事でしょうね。なんとお優しい。

 

………………今からそうなるように仕込めば良いのよ。

 

とまあ、他にも多少ありますが、大まかにはこんなところです。

 

『ジャンヌ~!』

 

少しの間、動力ルームで飛行石片手に石板の文字を読み上げているスーツの似合うメガネの紳士のような気分で螺湮城教本を眺めていると、私の指示通りに逃げた天使の追撃を終えたルーラーが空から舞い降りました。着地の衝撃で木々が薙ぎ倒され、地面が揺れます。

 

「ひぃぃッ…!!?」

 

その震動で我に返ったらしいディオドラは一目散に私の背中の方に逃げ込みました。私を挟みんでルーラーと対峙する形になりますね。

 

レディーファーストとは父の家督を継げる可能性の無い次男、三男が、裕福な未亡人がいれば近づいて後釜に座る為の作法のハズです。

 

断じてマフィアが女性を弾除けに利用する為では無かったハズですが、どうやら私の見当違いでしたか。アハハハハハハ。

 

………………。

……………。

…………。

………。

……。

 

悪人なのは咎めないけど、その腐った性根は頂けないわね。悪人とクズは違う。後で良く覚えさせてあげるわ。

 

ディオドラから意識をルーラーに変えれば、両手に1体づつ天使を持っているようです。

 

『あーん』

 

ルーラーが目の前で天使を己の口へ捩じ込んだ直後、岩で骨を擂り潰すような異音が響き渡ります。そして、徐々に肉を叩くような音に変わると、最後には呑み込んでしまいました。

 

『みーんな殺したよ!』

 

ルーラーの口にはベッタリと天使の血がこびりき、それを飛ばしながらも誇らしげです。

 

「そうですか。よくやりましたねルーラー」

 

『うん!』

 

ルーラが頭を私に近付け、厳つい顔のどアップが視界一杯に広がりました。おー、よしよし。

 

ちなみに天使を目の前で食べる邪龍という、日常では中々体験する事の無いような異様な光景にディオドラはまだ私の後ろで腰が引けているようです。これで悪魔でもただの竜の声は聞こえないと言うことがわかりました。ルーラーの間の抜けた明るい声を聞きながら怖れる事は不可能でしょうしね。

 

「思ったよりも骨の無い相手でしたね」

 

下級天使や中級天使にそれを求めるのは酷というところでしょうか。最も、既に息があるモノなんて何処にも居ないのですか。

 

ちなみにですが、ルーラーは見た目も明らかに強そうですけど、実力はその上を行っていました。

 

なんというか……身体の大きな竜の戦い方は回避などせず力任せに蹂躙すると私は勝手なイメージを思い浮かべていたのですが……。

 

ルーラーは雨のような光の槍を巨体にも関わらず、ミサイルのような速度と機動で全弾回避しながら毒爪、毒牙、角、尾撃等の身体の部位を使い、天使達を次々と一撃で仕留めていました。

 

私がしていたのはそんなルーラーの背から落ちないように乗りつつ、天使の真横を通り過ぎる時に辻斬りよろしく天使に攻撃を加えていた程度ですね。天使の大部分はルーラーが殺っていましたよ。

 

『え? 殆ど小骨だったよ?』

 

「美味しかったですか?」

 

『とっても!』

 

「なら良かったですね」

 

まあ、子竜の未来への礎となったならきっと天使達も本望でしょう。隣人の為にその身を捧げるなんて信徒の手本です。

 

あなた方の為にもきっとルーラーは大成しますよ。何せこのジャンヌ・ダルクの騎馬ならぬ騎竜なのですからね。

 

『ん~?』

 

ルーラーはディオドラに気付いたようで私から頭をそちらに近付けます。

 

ディオドラはより顔を恐怖に歪め、全身を震わせました。どこかでルーラーの空中戦闘でも傍観していたのでしょうかね。まあ、アレを見たらこの場で殺しに掛かったルーラーから逃げる方法などどこにも無いことは身に染みているでしょうから無理もない反応でしょうか。

 

そして、私とディオドラを何度か交互に見つめてから何か察したのか、楽しげな声を漏らしつつ大きな口を開きました。

 

『こんにちわー!』

 

ああ! ディオドラがルーラーの爆風のような元気な挨拶の声で森の奥へと飛ばされていきます! なんて胆力の無い人なんでしょう!

 

仕方なくディオドラを回収しに向かうと、木に頭を打ち付けたのか気絶して伸びていました。

 

「モヤシですねー」

 

まあ、とりあえずはさっさとここから離れましょう。後続の天使や教会関係者が来るのも時間の問題ですし。

 

私は螺湮城教本に従い、ディオドラを触媒にする事で一番近くの彼の領地へと繋がる魔方陣を形成しました。勿論、ルーラーも通れる程大型のモノです。オカルト研究会の部室にある程度の魔方陣ではルーラーは到底送ることが出来ませんからね。

 

私は魔方陣の中心に立つと、魔方陣を起動させるために悪魔の魔力を練ることにしました。するとどこぞの赤龍帝とは違い、半径5m程のドス黒く紫掛かった球体が掌の上に浮かびます。

 

少し大きく造り過ぎましたかね? それにしてもやはり悪魔の魔力の色は禍々しい程に黒いモノなのですね。それともアスタロトの眷属のイメージカラーのようなものでしょうか。

 

『魔力の色はその人の性格が出るって聞いたことあるよ』

 

アハハハハハ。ルーラーは冗談が上手ね。それならジャンヌ・ダルクであり、敵に神の杖をぶち込みたがるオルレアンの乙女らしい行動を取っているこの私が純白以外の色になるわけが無いじゃない。噂は噂よ。

 

『そうかなぁ…? そうかも…』

 

少し大きく造り過ぎたようなので魔力を弱めると、バレーボール程の大きさまで縮みました。これで通れますね。

 

さて、これで当面の安全は確保出来ましたし、後は転移するだけですね。

 

食糧よし、螺湮城教本よし、スマウグよし、カムシーンよし、ルーラーよし……。これで忘れ物はありませんね!

 

『ジャンヌ忘れてるよ』

 

ルーラーは魔方陣を開くための触媒に使い終えたら魔方陣の外に優しく放り投げておいたディオドラをくわえていました。

 

……………………チッ……。

 

「では3人で通りましょうか。ルーラーはディオドラ………………さんをしっかりくわえていて下さいね?」

 

『はーい』

 

掌を下に向け、魔力を魔方陣に浸透させると、魔方陣全体が燃えるような輝きを帯び、周囲を爆発的な光で包み込みました。

 

 

 




福袋ガチャ(作者が勝手に読んでる有償聖霊石40個で☆5確定のアレ)はドレイク姐さんでした。ウェイバーくんが4枚にならなくて良かったなぁ…(遠い目)。

ちなみに読んでの通りですが、うちのジャンヌオルタさんは結構ナルシストです。自分が一番好きと言うよりはやはり英雄としての意識が、他の英雄派構成員と同じようにヴェルタースオリジナルな存在だと思っているからですね。地味にウザいですが、英雄派の末路を既に知っているために行動はそれなりに弁えているので多目に見てやってください。



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ジャンヌオルタさんとディオドラさん

どうもちゅーに菌or病魔です。

ああ、FGOのガチャが換わらない…早く課金したいんじゃあ(末期患者)。


ジャンヌさんへの些細な質問

Q:お前、何様だよ

A:可愛い可愛い女王様ですけど?



ディオドラが起きるといつの間にか自身がこの国での拠点として使っている屋敷のベッドの上にいた。

 

そのまま暫くぼーっとした頭で高い天井を見上げていたが、少しづつ眠る前の事を思い出し、その中にジャンヌ・ダルクの姿が投影された事で跳ね起きる。

 

「おはようございます。ディオドラ様」

 

すると隣から聞き覚えのあるようで新鮮な聞き心地の声が掛かる。

 

ディオドラが頭を向けると、ベッドの隣に椅子を設置してそこに本を開きながら座っている金髪の少女がいた。少女の服装はノースリーブの黒いシャツに、黒のミニスカートを身に纏い、首に紅いネクタイを巻いた姿だった。

 

ディオドラの記憶にはない彼女…ジャンヌの若者らしい服装に思わず動きを止める。そんな中、ジャンヌは不器用に微笑むと更に話を続ける。

 

「丸1日眠っていたんですよ? 悪魔の眠り病にでも掛かってしまったのかと心配しましたよ」

 

ジャンヌ・ダルクの魂を受け継ぐ女性を自身の眷属に出来た。目の前のそれが紛れもない真実だということを物語り、ディオドラの手に力が入る。

 

神器の中でも最も偉大な神滅器は世界には13個。70億人の人間の内に13個しか存在しないのだからその価値は悪魔にとって大変なモノだろう。

 

それと同じように非常に価値が高いのが、過去の偉人の魂や記憶を宿し、再び産まれ出る人間だ。

 

こちらも当代でひとり。その上、神滅器と違い、存在し続ける可能性があるわけではないため、ある意味では神滅器よりも価値があるとも言えるだろう。

 

その上、ジャンヌ・ダルクという少女はどうしようもない程にディオドラの趣向を擽る存在だ。その上に確実に女王の駒向きの眷属なのだからディオドラにとってこれ以上に自身に幸運な事はない。

 

「ところで」

 

ジャンヌが指を鳴らすとディオドラはよく知る8人の少女が寝室に入ってくる。

 

何故か全員がディオドラの前にいる時の十倍はぎこちなく、何かに怯えたような表情をしているが、目の前のジャンヌ・ダルクという存在に魅せられているディオドラが気が付く事はなかった。

 

「兵士はその8人ですね」

 

するとジャンヌは首元から自身の谷間に手を突っ込むと首から下げるタイプの小さな巾着袋を取り出した。袋を開け、取り出されたその中身は4つの悪魔の駒のようだ。

 

「失礼ながら意識の無いディオドラ様に変わり、私が預からせていただきました。最も安全な場所はココでしょうから」

 

「あ、ああ……」

 

無知故か、狙っているのか元聖職者とは思えないほどに性的表現に富んでいる聖処女に面喰らうディオドラ。

 

若干、狼狽えている様子に特に気にする様子もなくジャンヌは話を続けた。

 

「女王は私の中に。僧侶が2つ、戦車が2つ………騎士の駒は何処に? できれば会ってみたいのですが」

 

「そうか! 少し、待ってくれ」

 

ジャンヌそのものと、悪魔として意欲的なジャンヌの様子に動かされ、ディオドラは本邸で待機している騎士の二人をこの場に喚ぶことにした。

 

するとベッドの前の床に描かれた魔方陣の上から二人の悪魔が出現する。二人の悪魔は呼び出された時から一言も喋らずただ指示を待っているようだ。

 

見ればジャンヌの腰には和洋を合わせたような深紅の刀が下げられている。ジャンヌは椅子から立ち上がると二人の騎士の前に立つ。

 

「あなた達が騎士の駒の転生悪魔ですか」

 

ジャンヌの尋常ではない気迫に気圧され、騎士の駒の転生悪魔らは思わず身を強張らせる。

 

「ディオドラ様。どうか無礼を御許しください」

 

その刹那、鉄と鉄を鳴らしたような音が響き渡る。それがジャンヌの腰に下げられているカムシーンを納刀した音だと気が付けた者はこの空間には居ないだろう。

 

するとジャンヌは深く溜め息を吐き、騎士の二人へ心底残念そうな表情を浮かべながら口を開いた。

 

「どうやらあなた方はディオドラ様の隣人足る資格は無いようですね」

 

ジャンヌは二人の眷属に良く見えるように掌を開く。

 

「だってあなた方……自分が死んだことにすら気が付いて無いんですもの」

 

そこには"ふたつの騎士の駒"が乗っていた。

 

次の瞬間、二人の騎士の眷属の身体が奇妙にずり落ち、灰になるように静かに消えた二人の眷属を前にジャンヌは再び深い溜め息を吐く。

 

「なんて陳腐…なんて下劣…なんて虚弱…ですが悔やむことはありません。元よりフリードによってセリフどころか描写すら無く、死が確定していたあなた方の死が少しだけ早まった程度のこと。そんなお間抜けなあなた方にもきっと父なる主は微笑んでくれるでしょう。ですよねディオドラ様?」

 

「あ…?」

 

目の前で起こった事にディオドラの頭は着いていけていなかった。

 

「ディオドラ様の程のお方にアレはいらないでしょう」

 

女王が騎士を斬り殺す。ただ、それだけの事ではあり、他の悪魔の中でも別段珍しい事柄ではないが、それが自身の目の前で起きているという事は何よりもの異常だろう。

 

ディオドラは呆然とした様子で己の女王の背を見る他無かった。

 

「あの者たちは力量を試すために私が放った剣を受け止めるどころか、死んだことすら気が付きませんでした。こんなつまらない者達がディオドラ・アスタロトの眷属で良いハズがありません」

 

ディオドラの言葉も待たず更に話を続け終えたジャンヌは、ゆっくりとディオドラのいる場所へと振り返る。

 

「ですからディオドラ様」

 

ディオドラはジャンヌの母親が子を見守るように優しげでありながらも、その瞳には何も映ってはない奇妙な眼光に射ぬかれた事で、身体が凍り付いたように強張り、ジャンヌから目を反らすことが出来ない。

 

ジャンヌはディオドラに詰め寄るとディオドラの手をそっと取り、満円の笑みを作ると深く頭を下げる。

 

「私にこの騎士の駒……引いては悪魔の駒を預けてはどうでしょうか? 必ずや貴方様に相応しい眷属を用意いたしましょう。このジャンヌ・ダルクの名に賭けて」

 

ディオドラは行動まで示した特別な彼女の進言に従い、より自身の眷属が強固になるという事で己を納得させた。

 

最早、ディオドラはジャンヌに反論出来るような精神は持ち合わせて居なかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

悪魔に転生してから数日の内に拠点から正しい行き方で冥界へ、そして冥界のディオドラが住む本館に私は居ます。

 

私の知識の中のディオドラ及びディオドラ眷属はグレモリー眷属に手も足も出ず、ディオドラも兵藤一誠ひとりにフルボッコにされるという自業自得とはいえ憐憫なものでした。

 

流石に私が女王にも関わらずあんな目に会うのは頂けないため、折角ですからディオドラ眷属全体を強化しましょうという私の寛大な処置を行う事にしました。ディオドラ本人からも全面的に同意を得られましたしね。

 

『そういうの知ってるよ! 事後しょーだくって言うんだよね』

 

「ルーラーは博学ですね。いいこ、いいこ」

 

『えへへ…』

 

ちなみにルーラーは私の部屋に居ます。

 

与えられた部屋が何故かやたらに広かったので直接転送してみたところ、ギリギリルーラーも入れる事が出来ました。流石悪魔、ディオドラもそういう配慮は出来るようですね。

 

何故か部屋に収まるルーラーを見たディオドラが、度肝を抜かれた顔をしていた気がしますが、気のせいでしょう。

 

もう眷属の選別は終えました。服装から察しましたが、何処かの悪魔令嬢ではなく、ディオドラの趣味で集めた騎士みたいでしたし、斬って正解でした。やっぱりディオドラは私の多少の()()()には目を瞑ってくれるようでやり易い限りですよ。

 

ちなみに兵士の八体はこのまま残しておく予定です。悪魔のお仕事をしてもらわなければなりませんからね。始めから戦闘で期待なんてしていませんよ。まあ、強くなるに越したことはありませんけど程度が知れてますし。

 

レーティングゲームでは私含めて残りの戦車、騎士、僧侶の駒が主として戦闘をこなせば良いだけです。

 

勿論、殺し合いに使える駒でなければなりませんね。レーティングゲームにしか使えない駒なんてゴミに等しいですし。

 

私の知識の中には曹操、ヘラクレス、ジークフリート、そして私自身等しか名と魂を継ぐ者は出ては来ませんが、探せばもっといることでしょう。英雄の魂を受け継ぐ者は強靭な精神と安定した実力が見込めるので是非とも欲しいですね。

 

となると駒の価値を上げる為にディオドラ自体の強化も必須ですか、最低でも駒ひとつで英雄クラスを転生させるぐらいにはなって貰わないと困ります。やはりなんと言っても戦いは数なのですから。

 

まあ、そのためにもディオドラが転生させれそうなレベルを用意しなければなりませんか。まだまだ問題は山積みです。

 

『ねえねえジャンヌ。世界を見て回るんじゃないの?』

 

「ルーラーは冥界に来たのは始めてですか?」

 

『うん、始めてだよ』

 

「ならルーラーにとってもう世界を見て回っている事になるんじゃないですか?」

 

『そっか!』

 

それにルーラーをここに押し止めるのも限界がありますねえ。ルーラーは人を喰らうタイプの邪龍ですし。まあ、邪龍なんてみんなそんなものでしょう。私としては戦闘のついでにお腹を満たせるなんて便利な身体だと思いますが。

 

そろそろ眷属探しという名の世界旅行に出掛けましょうか。金の延べ棒も換金しましたし、ディオドラからお小遣いもせびりましたしね。

 

私は殆どの内容を読み終えた螺湮城教本を閉じると、椅子から立ち上がりました。

 

「さてルーラー」

 

『なーに?』

 

「そろそろ旅の続きと参りましょうか。好きに生き、理不尽に死んでくれるような素敵なお友だちを探しましょう」

 

『うん!』

 

強力そうな中東圏の英雄、良い武器を持ってそうな北欧の英雄、精神が強固そうな日本の英雄、一部の能力に特に秀でた中国の英雄。最初は何処から探してみましょうか? 他の邪龍や、神に会ってみるのも捨てがたいですね。 考えるだけて心が踊ります。

 

でもとりあえずは私の知識の中に触りだけで存在する少し気になる方を調べに行きましょうか。

 

それに何処かにあるという支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)の探索もしたいです。生き物を思い通りに操るなんて素敵じゃないですか。少なくとも兵藤一誠の修学旅行の頃までは誰にも発見されない事は確定していますし。

 

ああ、楽しみですねぇ…ヒヒッ。

 

 

 




ジャンヌオルタさんは完璧主義なので主人の為に良い眷属を集めてくれる素敵な女性です(白目)。

ボソッ……ネクパイジャンヌオルタ。


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ジャンヌオルタさんと養殖焼き鳥さん

どうもちゅーに菌or病魔です。

そう言えばFGOのジャンヌオルタはなんか黒いオーラ出てますよね。

と、言うわけで私なりに黒いオーラをこのジャンヌオルタさんにもつけてみたよ!

その仮定でジャンヌオルタさんの中身が大変なことになったけど……仕方ないね。






現在、空中で認識阻害の魔法を掛けながらルーラーに跨がっていました。ルーラーは鼻の頭をひくひくと動かしながらもホバリングを続けています。

 

『匂う、匂うよ。あっち!』

 

そう言うとルーラーは頭の向きをある方向に向けました。

 

私も釣られてそちらを見つめます。が、私には小高い山がひとつあるだけで他に変わったものは特に映りません。

 

『山をみっつ越えた先に悪魔とか、人間がいっぱいいるよ。それに"あったかふわふわ"もいる!』

 

「そうですか」

 

次の瞬間には私を乗せたルーラーは弾丸のような速度でその方向へと飛び立ちました。

 

ルーラーはやたらに鼻が良く、数十km先の生き物の数を大雑把に言い当てる事が出来ます。その上、力の感受性が他の生物とは比べ物にならない程高いらしく、この距離から魔力やら光力やらの違いで天使の階級、悪魔の家系などを嗅ぎ分ける事が可能なのです。

 

まあ、感性がかなり個性的な上、ルーラー自身も意味を理解していなく、自身の造語で会話をしてくるお陰で私がルーラーの言葉を理解するのは多少困難ですが、愛嬌の範囲でしょう。

 

ルーラーの言葉を聞いた私の口角がつり上がります。

 

ルーラーが"あったかふわふわ"と形容する存在は一柱しか存在しません。幽世の聖杯が渡った後に本格的に開始された事は知識で知っていましたが、やはりプロトタイプは既に造られているようですね。似たような施設を幾つか潰した甲斐はあったというものです。

 

そんなことを考えているうちに3つの山を越え、山に囲まれた盆地にホテルの廃屋のような何かの建造物が見えてきます。

 

地下施設とは中々洒落ていますね。ホント世界の蛆虫共の分際で虫酸が走るわ。

 

『また食べていい?』

 

施設上空で、背に乗る私に少し首をこちらに向け、瞳を後方に動かして私を見つめるルーラー。その小動物のような仕草が堪らなく可愛らしく、ついつい甘やかしてしまいます。

 

「勿論、いつも通り好きにしてくれて構いません」

 

『わーい! ボクがんばるよ!』

 

「さて……」

 

はしゃぐルーラーを横目に私は立ち上がると、スマウグの矛先を天に向けました。

 

刹那、私の身体に黒銀の西洋甲冑が装備され、ドス黒い力が放出され、それと同時にスマウグに竜の紋章の浮いた旗が出現します。

 

私は抱き締めるようにスマウグを掲げると、最後の言葉を紡ぎました。

 

「禁手、"吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)"」

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い地下施設の一角。一体の悪魔の少女が小さな牢に押し込まれていた。

 

悪魔の少女は手足を鎖に繋がれ、全身を投げ出したまま空虚な瞳で天井を見つめている。

 

彼女に名は無く、牢の外のプレートと彼女の右肩と胸の間に"F-000"とナンバーが刻まれているだけだ。

 

悪魔は"すべての言語を共通のものとしてとらえる能力"を持つ。

 

すなわち悪魔とは人間とは違い、物心付いた頃に言語を理解している生物なのだ。それはこの暗く狭い箱のような空間から1度も出たことがなく、鎖に繋がれ白衣姿の姿の者から激痛を受け、何かを採取されるだけの生涯を送っている彼女が見た目通りの知性を持っている事に他ならない。

 

「………………?」

 

彼女は首を上げ、疑問符を浮かべた。それというのもいつも体感的にそろそろ白衣姿の者達が彼女から何かを採取しに来る時間なのだ。だというのに今日はそれが全くない。悲しき順応ではあるが、それが全てである彼女にとってはただただ違和感を覚えるのである。

 

「はうっ…!?」

 

次の瞬間、彼女の牢が激しく震動し、彼女の身体が飛び上がった。それにより、思わず彼女からも小さな悲鳴があがった。

 

その後も細かな震動が時より彼女に伝わる。それだけではなく悪魔として人より遥かに優れた聴覚も持つ彼女には聞こえていた。

 

聞き覚えのある多くの怒号と、けたたましいサイレン、銃声と剣戟に魔法の起動音。余りにも奇っ怪な音に彼女は身体を強張らせる。

 

しかし、煩い程に響いていた音も次第に止み、怒号は悲鳴へと、その他は咀嚼音へ、そしてサイレンはいつの間にか止み、一人の聞き覚えのない女の笑い声が強く耳に響いていた。

 

そして、遂に音は殆ど消え去り、小さな靴音のみが聞こえる。

 

靴音は徐々に強く響き、それは彼女の牢の前で止まった。

 

「おいで」

 

それまで響き渡っていた笑い声に似た声だが、それは彼女が生まれて以来、聞いたことがない程に優しい声色で彼女に投げ掛けられる。

 

彼女は牢の外にいる何かを見ようと顔を上げたが、既にそこには何も存在してはいなかった。更に何かが周囲にいる気配もない。

 

「あ………」

 

夢を見ていたかのような現実に困惑する彼女であったが、手足に繋がれていた4本の鎖が全て半ばから断ち切られている事に気が付き、小さく声を上げる。

 

壁に手を掛けてゆっくりと立ち上がった彼女は牢の扉の前に立つ。恐る恐る扉に手を掛けるとやはりそこに鍵も無く、脱出を防ぐための電流も通っては居なかった。

 

開いた扉を暫く呆然と見つめていた彼女だが、ふとまたあの優しげな声が響いてきた事を感じる。

 

それは笑い声でも怒号でも無く、一定のリズムで言葉を吐き続ける不思議な声であった。それは単純に歌と呼ばれるモノであり、知識的には知ってはいる彼女であったが、それを気が付く事はなかった。

 

ただただ彼女には優し過ぎる言葉と、温かい声に耳を傾けている。

 

始めて牢の外に自分の意思で足を踏み出した彼女は、ふらふらと覚束ない足取りで壁に手をつけながら歌のする方向へと進んで行った。

 

1分程の短い時間を歌を頼りに進むと、薄暗い廊下の突き当たりに5cm程隙間が開いた扉から一筋の光が伸びているのを見つける。音の大きさから考えて、この中に声の持ち主がいるのだろう。

 

意を決して扉を開けて中に入るとそこは大きめのホールだった。

 

部屋中の何処でも見やすい場所に設置された簡素な壇上だけに光が当てられ、等間隔に綺麗に並べられたパイプ椅子には、ピクリとも動かないモノ達が一に壇上に顔を向けて行儀良く座っている。頭部が存在しないモノや、両目が抉り取られているモノも座っているが些細な事であろう。

 

彼女も彼らの視線に合わせ、壇上に顔を向ける。

 

その瞬間、彼女は世界が止まったような錯覚に陥り、そこに存在している者をただ見つめていた。

 

そこにいたのは女性的な肌のラインをなぞる薄い黒銀の甲冑を着用し、旗の付いた槍と、赤い剣を無造作に床に置いたまま目を瞑り楽しげな表情で独唱を続ける少女であった。

 

ゆったりとした手振りを加え、慈愛に満ちた声で語り掛けるように歌うその姿は言葉に表せない程に幻想的である。

 

「え……」

 

暫くそのまま聞き入っていた彼女は、そのうちに歌が終わったことにも暫く気付かず、気付いた時には惜しむように小さく声を漏らした。

 

その呟きが聞こえたから壇上の少女の目が開き、彼女を真っ直ぐに見つめる。

 

それに思わず萎縮する彼女であったが、少女は静かに微笑むと小さく手招きをしながら呟いた。

 

「おいで」

 

それは牢の外から掛けられた声と全く同じモノだと彼女は感じ取り、自身を牢の外に出した存在と目の前の存在が同一だったと確信する。

 

手足に付けられた鉄輪から伸びる断ち切られた鎖を地面に擦らせながらも彼女は壇上の下まで移動した。

 

すると今度は少女が壇上から降り、彼女の隣に並び立つ。

 

彼女にとって眩しいばかりに映る少女に思わず、彼女は数歩下る。

 

彼女の意思を表すかのように"一対の炎の翼"が背中から伸び、自らの身体を抱き締め拒むように、あるいは少女の眩しさから目を背けるように翼で閉じられる。

 

しかし、突如彼女は足と閉じられる炎の翼を止め、呆然と立ち尽くす。

 

「怖くないわ。私はアナタの隣人よ」

 

彼女は少女に正面から抱き締めまれていたのだ。

 

少女は彼女の見たままの熱を持つ翼の業火に焼かれるが、少女の表情にも行動にもそれを咎める様子も、悶える様子も見受けられない。

 

彼女を抱き締める手付きも抱擁もそっと寄り添うように軽く、だが、決して離れないと錯覚する程に強く抱き留められている。

 

「ほら、私はこんなに近くにいるわ」

 

自身でさえも気が付かないうちに頬を伝っていた涙を目の前の少女は指で拭う。

「名前をあげる」

 

安心したのか、彼女は少女の胸の中で徐々に目蓋が重くなっていくのを感じる。

 

「"カトリーヌ"。最初の私の妹と同じ名前。私はアナタの姉、アナタは私の妹。気に入って貰えるかしら?」

 

子守唄のように掛けられる言葉。その中で彼女は誘われるままに瞳を閉じた。

 

彼女はこの場で終ぞ少女の手に握られていた"僧侶の駒"を身体に入れられた事には気が付かないまま。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

"クローン・フェニックス"ゲットだぜ!

 

私の初撃で施設機能はほぼ全壊した研究施設の外で、勝利のポーズと称して右腕を高く上げました。

 

左腕には私が命名したカトリーヌが幸せそうな表情で眠っています。

 

『おかえりー』

 

外にはこの研究施設で造られたと思われる数百体のセンスの欠片もない歪なキメラの死骸が山のように積まれ、その隣でチキンレッグでも頬張るかのような動作でルーラーが食事をしていました。

 

良く見れば足元には幾つもの奇妙な赤いシミが出来ています。あれはそうですね、こうスゴい力で人間サイズの生き物を上からプチっとした時に出来る奴です。

 

『これ美味しいね。色んな味がするよ!』

 

見た目のセンスは兎も角、ルーラー的にはキメラは好評なようです。人間ベースな事も評価点でしょうか。

 

私はルーラーに乗せたリュックから寝袋を取り出し、チャックを開けて一枚の布団へと変えると地面に引きました。その上にカトリーヌを寝せておきます。ルーラーの食事は1~2時間もすれば終わるでしょうからそれまでは寝かしてあげましょう。

 

『その人だーれ?』

 

首を半回転させて器用に首を傾げているルーラーはそんなことを言ってきました。

 

「新しい友達ですよ。でも寝ているので挨拶は静かにお願いしますね」

 

『こんにちわー…』

 

やだ、ルーラーったら下手な人間より全然可愛い……。

 

『ねえねえジャンヌ?』

 

「なんですか?」

 

心なしかルーラーの声色が心配しているように思えます。

「背中大丈夫…?」

 

そう言われてそれまでは大して気にしていませんでしたが、改めて触れてみると、鎧は殆ど焼け落ちており、代わりに激痛が走ります。

 

姿鏡のような聖剣を地面から生やして背中を見てみると、酷く爛れた肌がそこにはありました。まあ、カトリーヌが眠って炎の翼が自然に引っ込むまでバーベキューにされてましたから別段不思議はありません。

 

私は手を小さく動かし、大丈夫だという趣旨をアピールしました。

 

「いいんですよ。これぐらいなら一晩寝れば治りますから」

 

私の身体はどういうわけか異常に治癒力が高いのです。多分、切断でもされない限りは1日で完治すると思いますね。さながらどんな高さから落ちても死なないゲームの主人公のような気分です。

 

まあ、刃物で負った傷が次の瞬間にはまるで無かったかのように消えていれば人間からはどう見られるかなどは考えるまでもありませんね。勿論、もう慣れましたけど。

 

「………丁度いい機会ですね」

 

私は小瓶を取り出しました。そこには1滴の淡く光る何かが詰められています。

 

さっきどさくさに紛れてカトリーヌから搾取した"フェニックスの涙"です。本当はディオドラへの手土産にして、私も模造品がどの程度の効果を持つか知りたかったので兵士の腕でも斬り落として使ってみようかと考えていましたが、手間が省けましたね。

 

姿鏡のような聖剣で背中を見ながら蓋を開けてそれを呷ります。すると全身から疲労という感覚が消え去るのと、背中が小瓶の中の光と同じ色に包まれ、それが晴れるとそこには私の白雪姫も土下座する程に白い柔肌がありました。

 

どうやら、正規品とも大差無いようです。これでは海賊版で作者に遊人やMON-MONと書かれているモノのようですね。

 

まあ、施設の規模を見るに完全なフェニックスのクローン1体を創造することを目的として、ついでにキメラやらの研究をしていたのでしょう。何れ程莫大な資金からカトリーヌが産み出されたのかは想像に難しくありません。

 

「まあ、それより問題は…」

 

私は懐からフェニックスの涙が入っていたのより、少し大きめの小瓶を取り出しました。そこには30匹程の小さな蛇のような黒い物体がうねうねと蠢いています。

 

「この"蛇"てすねぇ」

 

オーフィスの蛇、あるいは蛇。オーフィスの力を分けた小さな蛇で飲み込むことで大幅なパワーアップ可能なドーピングアイテムのようなものです。 まあ、ドーピングと言っても気にする程の副作用が出るわけでもありませんし、使っても消費されることはそんなにありません。

 

"禍の団(カオス・ブリゲート)"の施設を襲撃する度に毎回の如く、実験サンプルだと思われるコレが何処かしらにあるので回収しているのです。小さいので持ち出しには苦労しないという事が利点でしょうか。

 

さてさて、いつも通り。

 

「ぷう…」

 

私は蓋を開けて一気に飲み干しました。

 

今回は量が多いのでシラスの踊り喰いでもしているような気分です。……そう思うと美味しかったような気がしてきました。

 

『ジャンヌってスッゴい身体してるよね』

 

ルーラーが動物園のパンダでも見るようなキラキラとした眼差しで見つめてきています。多分、竜的な尊敬の眼差し何でしょう。

 

まあ、どういうわけか私は幾らでもオーフィスの蛇を呑み込めるようですからね。制御も完璧ですし。

 

ちなみに最初に襲撃した禍の団の施設にも多少のオーフィスの蛇があったので、幾つオーフィスの蛇を入れられるのか一通り試してみました。

 

結果はこの通り

人間 0

悪魔 1

堕天使 1

 

施設で生き残った者に肢体を斬り落とした後で、片端から入れて実験しましたから信用できる情報ですよ。

 

まあ、被験体が悪かったのか、それ以上の数を入れた瞬間に内側から膨張して爆裂し、床にオーフィスの蛇が転がってしまいましたとさ。めでたし、めでたし。

 

でも、私ならもっと行ける気がしたので試してみたら今の通りです。現在、私には100を越えるオーフィスの蛇が完全制御可能な状態で存在しています。やっぱり、かなりの個人差があるようですね。オーフィスの蛇は用法用量を守って正しく使いましょう。聖処女(おねえさん)との約束です。

 

副作用と言えば最近、意識していなくてもオーフィスの蛇による黒いオーラが身体から溢れていることがある程度ですか。多分、コレのせいで奇妙な亜種禁手も使えるようになってしまいましたが、それは良いでしょう。

 

聖剣創造の亜種禁手で造った鎧も、旗も、身体から溢れ出るオーラも、全てが何故か黒いのは私のせいではなく、オーフィスの蛇のせいなのです。私の心は純白の白百合のように清らかです。

 

…………そう言えばディオドラへの手土産はどうしましょうか? フェニックスの涙はさっき使ってしまいましたし、また搾取するのはかんたんでしょうけど、今思えばそんなに日持ちするモノでもありませんしね。

 

ふと、私はルーラーがガッついている人間ベースのキメラの死骸の山を見ました。

 

…………ミート〇ープという精肉会社は挽き肉に期限切れの肉どころか、パンの耳まで入れてかさ増ししていたのだと聞きます。それならば少なくとも死に立てのホヤホヤの肉100%なら随分、上等なものですよね。

 

「ねえルーラー? その肉は美味しいんですよね?」

 

『うん! とっても美味しいよ!』

 

「そうですか」

 

私、料理はとっても上手い方なんです。

 

ディオドラ様はハンバーグはお好きでしょうか? アハハ、今から帰るのが楽しみになってきましたよ。

 

 




ジャンヌオルタさんは聖人スキルに自動回復を選択しているので、寝ればヴァルキュリア人並の治癒力で身体が再生し、戦闘中はアンバサ戦士並の速度でHPがモリモリ回復していきます。

ジャンヌオルタさん(CV:坂本真綾)。カトリーヌちゃんを呼ぶ為に死体の前で歌っていたのはツバサ・クロニクルのスピカです。名曲ですね。

うちのジャンヌオルタさんは路銀や食糧を稼ぐ為にギター一本で路上で歌います。そのうち、KEI顔のアフロディーテと、ロリのラクシュミーとバンドを組む事でしょう(lov感)。


ジャンヌオルタさんのもちもの New!


吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)
体内にオーフィスの蛇を入れ過ぎた事で発現した聖剣創造の亜種禁手。形状は黒銀の鎧と旗。鎧は凄まじく呪耐性に優れ、あらゆる自身に対するバットステータスを打ち消す効果がある。旗は振るう事で空を埋める程の呪属性か炎属性の無骨な聖剣を創造し、それを地表に降らせる事が可能。

オーフィスの蛇
体内に沢山溜め込んでいる。蛇にとってとても居心地が良いのかもしれない。15個越えた辺りからたまに夢に死んだ魚のような目をした黒髪ロリが出てくるようになったらしい。40個越えた辺りから螺湮城教本の精霊と何と無く話が通じるようになったとかなんとか。

カトリーヌ
形式上はティオドラの僧侶。金髪お団子頭のフェニックスのクローン。まだ、強くはないがそのうちロードオブヴァーミリオンとか連打してくるようになる。

挽き肉
産地直送。




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ジャンヌオルタさんと魔王さん

作者かと思いました? 残念メジェド様でした!

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最近のFGOで登場した偉いエジプトの神様↑



 

無垢な寝顔で眠る少女に寄り添うように黒い影がある。

 

良い夢を見ているのか、小さな微笑みを浮かべる少女の目尻から一筋の涙が零れると、黒い影はその黒い甲冑とは真逆の死人のように白い指をそっと少女のほほに這わせ、涙を拭った。

 

その時の黒い影……ジャンヌ・ダルクの姿を普段の彼女を知る者が見たのなら目を疑うような光景だろう。それ程までに今のジャンヌの自然な微笑みは彼女らしからぬ慈愛や博愛に満ちていたのだ。

 

だが、そんなジャンヌの様子はいつの間にか止み、鼻を鳴らすと背後に目をくれる事もなく口を開いた。

 

「淑女を覗き見とは褒められた趣味ではありませんね?」

 

「そうか…いや、すまんなつい…」

 

どうやらジャンヌの目を疑うような光景を見て面食らった者がいたらしい。いつもの彼らしくはない苦笑いを浮かべている。

 

「……それで、なにか他の施設と変わったことはあったか?」

 

「その娘を拾いました。それ以外はいつも通りでしたよ。"アジュカ"様」

 

いつの間にかジャンヌの背後にいた人物は現四魔王のひとり、アジュカ・ベルゼブブその人であった。

 

アジュカはジャンヌから目を変え、視線をジャンヌの膝の上で眠る少女に目を向け、驚愕に目蓋を見開く。

 

「それは…」

 

「ええ、アナタの思う通りかと。ちなみに効果の程ですが多少は劣りますが、オリジナルと遜色無い出来でした」

 

「フェニックスをも複製するテロリストか…」

 

禍の団(カオス・ブリゲート)。それがこのフェニックスを産み出した組織の名である。同時にアジュカが秘密裏にこのジャンヌ・ダルクに研究施設の撲滅を依頼している組織の名でもある。

 

「収入源としては申し分無いでしょう。そこまで保存は効かないとは言え、戦争になれば喉から手が出る程欲しい事を知っているのですから。例えば保守的なアナタ方の上層部や、未だに旧魔王に後ろ髪を引かれている方々」

 

「…………否定できんな」

 

アジュカは老害と言っても差し支えない者達の事を思い浮かべ目頭を押さえる。

 

「更に悪いことに、"カトリーヌ"が既に製造されたという事実がある以上、私の施設潰しも鼬ごっこになりそうです。まあ、止める気は更々ありませんので取るに足らない事ですね」

 

この人並み外れて白く黒い少女。ジャンヌ・ダルクとアジュカ・ベルゼブブの奇妙な関係が始まったのは丁度、1ヶ月程前の事だ。

 

アジュカの元にディオドラ・アスタロトの女王だという者から一通の手紙が届いた事が全ての始まりである。

 

そこには極めて詳細なひとつの座標情報と共に、何故かアジュカが予定の無い休日の日付と指定の時間が書かれ、一言。

 

"世界のダニをひとつ焼却します"

 

そう添えられていたのだ。

 

流石に奇怪に思い、更には自身の本来の家の次期当主の女王からの情報となっては無視する事も出来ず、疑心を募らせながらその場所に向かったアジュカが目にしたのは彼でさえ気の毒になるような惨状と全てを焚く獄炎の中で笑うジャンヌ・ダルクを見たのだった。

 

「カトリーヌ…?」

 

「最初の私の妹の名です。この娘に付けました。もうこの娘は私とディオドラ…様のモノですから」

 

「…………構わん。これだけでも十分過ぎる収穫だ」

 

そう言ってアジュカはいつも通りジャンヌの隣りに積もっている山のような研究資料に手を掛けた。その表情は禍の団の行為に侮蔑を告げていながらも目は研究者の仄暗色に染まっていた。

 

 

 

アジュカにすれば少しの間であったが、現実では夕陽が見える程まで経過していた。3時間程だろうか。

 

いつの間にかアジュカを護るように斜め後ろにに立ち、身動きすらほぼせずにいたジャンヌにアジュカは声を掛けた。

 

「すまない…熱中してしまった」

 

「お気になさらずに、魔王の側にいれるなんて光栄な事です。私としても今より安全な時間もそうありません。まあ、この前のように他の禍の団の手の者が乱入してくれればまたアナタと共闘出来たのですが……それは少々残念です」

 

そう言って本当に残念そうに肩を竦めるジャンヌ。彼女のかなりひねくれた感性による出会いはアレであったが、ジャンヌはアジュカにとって非常に使い勝手の良いものになっている。

 

眷属以外である程度自由に動かせ、派手な行動は取るが、襲撃した施設で禍の団にも他の悪魔にも決して悟られる事はないというアジュカの駒達にすら無茶な事を平然とやってのけるからだ。

 

何せ最初に施設に大規模攻撃を仕掛け、施設の防衛機構や逃走方法に電信手段を燃やし尽くし、その神器の激しい憎悪から来る呪いをもってして転移魔法と通信魔法を完全に遮断する。

 

こうなってしまえば狙われた禍の団の助かる方法はその足で外に脱出する以外は無くなるが、施設内ではジャンヌ・ダルクが目に入るモノ全てを斬殺し、それを遣り過ごして命辛々外に出れば己より遥かな巨体を持つ竜が、己の何十倍もの速度で襲い掛かってくる。

 

結果どうなったかなど、襲撃を重ねる度にとある戦利品を喰らって徐々に強大になるジャンヌと、原型が殆ど残らない程に蹂躙され尽くした施設を見ればわかる事だろう。更には研究資料は全て無傷で確保し、過程で入手した神器は全て提出しているため言うことはない。

 

単にジャンヌ・ダルクは有能過ぎた。それこそ人の怪物(英雄)と呼ばれるに相応しい程に。これならば彼女が人を止め、悪魔に転生したのは何ら間違った事ではないだろう。

 

アジュカは書類を戻し、相変わらずフェニックスの少女を撫でているジャンヌに向き直った。

「…………ひとつ聞きたい事がある」

 

だからこそアジュカはこの問いを今投げ掛ける事にした。

 

「君は何故悪魔になったんだ? 禍の団に行く事も出来ただろう」

 

1ヵ月程の付き合いだが、彼女の事は多少理解出来た。そして、アジュカはこんな突拍子もない質問をしたのだ。

 

施設を破壊した後の死体、決まって全て終えた後でアジュカを待つ彼女の様子、アジュカが聞き出した彼女の思考など。様々な観点からの判断材料から推測した彼女の性格。

 

それは当代のジャンヌ・ダルクは紛れもなく子供を人質にするどころか、誘拐した敵国の子供に爆弾を括り付けて敵陣へ放り込むのを平然と実行するような外道であるという事だった。

 

だからこその問いだ。ジャンヌのような人種は清流で生きれるような存在では決してない。こんなところではなくテロリストとして活動していた方が余ほどに向いているだろう。実力、或いは精神共に。

 

「…………………………ハァ?」

 

ジャンヌは珍しく面食らったような表情で固まっていたが、やがて頬の口角がつり上がっていった。

 

「アハ、アハハ、アハハハハ!」

 

アジュカの質問が余ほどにツボに入ったのだろう。ジャンヌの目の端には若干の涙が溜まっている。

 

ジャンヌは一頻り笑い終えた後、不器用な笑みを浮かべる。その直後、アジュカは目を見開く。

 

ジャンヌの雰囲気が一変したのだ。まるで慈悲に満ち溢れた聖人とでも対峙しているかのようにアジュカの全身が悪魔としての拒絶反応を示す。それは彼女が何処まで堕ちようとも聖人であった名残であろうか。

 

ジャンヌ・ダルクはゆっくりと口を開いた。

 

「怒りに身を任せて全てを焼却しましょう。復讐の名の元に喉笛に剣を突き立てましょう。地に伏した死に損ないの首を切りましょう」

アジュカは口を閉口する。その方が彼女の機嫌を損ねて話を聞けなくなる可能性は薄いだろう。

 

「私の道の果てに神がおわしめすならば、私には必ずや天罰が下るでしょう」

 

ジャンヌはアジュカから目を逸らし、何処か遠くの空を眺めると、妖艶に映る手付きでそっと笑みを浮かべる。

 

「私はその日まで常に勝つ側についています。尻馬に乗るのなら悪魔。生憎、泥舟に乗る趣味は無いのです」

 

「そうか……」

 

話終えたジャンヌは聖人から悪魔へと戻る。ひょっとすると無自覚でしていたのかもしれない。

 

話を聞く限り、少なくともジャンヌの目的は禍の団の理念の遥か高み……いや、寧ろ下にあるらしい。アジュカはジャンヌが相変わらず信用にはおけないが、悪魔の上層の連中を相手よりはよほどに芯が通り、扱い易いと評価を下した。

 

「ああ、そうそう。少しでもアナタの負担を減らす為に言っておきましょう」

 

ジャンヌ指をピンと立てると嬉しそうに言葉を吐く。

 

「三陣営の和平の事はあまり深く考えなくともいいと思いますよ。禍の団の激化に伴い数年内に必ず成立します。場所は駒王学園でね」

 

「………………それは啓示か?」

 

「どうぞお好きなように受け取って下さい。私は誰でもなく私には嘘を吐きません」

 

ジャンヌはフェニックスの少女を両手で抱き抱えると、巨大な邪龍の足元に立った。

 

「では、アジュカ様。いつも通りテロリスト狩り(この)功績はジャンヌ・ダルク個人ではなく、ディオドラ・アスタロト様の女王。引いてはディオドラ様の功績としてお願い致します」

 

そう言い残し、恭しくジャンヌが頭を下げた直後、魔方陣が起動してジャンヌらは跡形もなく消え去った。自身の王の所に帰ったのだろう。

 

本当に全方面に極めて優秀な女王だとアジュカは溜め息を漏らす。あれで性格と信念と行動原理がマトモならばアスタロト家の時期当主の女王だという事を手放しで喜べただろうに…と。

「…………そうか…」

 

ふと、ジャンヌの事を考えていたアジュカの表情が一変する。更に愛らしい異端者と接してから常に感じていた強烈な違和感の正体に気付き、声を漏らした。

 

当代のジャンヌ・ダルクは裁判に上げられた悪魔のように神へを憎悪し、皮肉を語り、糾弾する。そして、時には無垢な信者すら神を否定させた挙げ句に殺すような事さえも快楽に感じる異常者だ。

 

だが、その実それは全ては如何なる聖者よりも神に盲信しているという事に他ならない。形は醜く歪んでいようと、既に居ないものと知りながらも唄に合わせ英雄伝を語り続ける詩人と彼女の何が違うというのか? 死者を語る上で冒涜は寧ろ必然だという事に彼女は考えて至っているのか?

 

そして、彼女は気付いているのだろうか?

 

狂った英雄ジャンヌ・ダルクという存在そのものが神が居た事の証明に他ならない事を。

 




忘れて暫くした頃にやって来る。どうも、ちゅーに菌or病魔です。

私の中のジャンヌオルタさんへの愛はまだまだ冷めていませんよ。ええ!

それより、私の中で今一番ホットなぽんこつお人好し女神ニトクリスちゃんのちちしりふとももとメジェド様のお話をしませ……うわ粛正騎士さん達なにするのやめ(この作者は聖伐されました)


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ディオドラさんのジャンヌオルタさん

やったねディオドラ! 眷属がふえるよ!


 

 

ジャンヌ・ダルクを女王にしてからのディオドラの生活は一変したと言って過言ではない。

 

例えばジャンヌが眷属集めという名目の旅に出る前にトレーニングシートなるものを作製し、ディオドラに手渡した日の光景に遡る。

 

『ではとりあえずこのメニューを1ヵ月間こなしてください』

 

相変わらず不器用に微笑みながらそう呟いたジャンヌからトレーニングシートを受け取った数秒後、ディオドラの目は驚愕に見開かれる。

 

そこには魔力や肉体共に悪魔でもそこまでやるのかと言わんばかりの超過密トレーニングが刻まれていたのだ。

 

確かに眷属を集めることは委任したが、まさか駒自体の価値を上げる事までディオドラは想定していなかった。いや、頭の片隅程度には想定するにしてもここまで本気でやれと言われると考えていなかったと言うのが正しい。

 

『無理というのはですね、嘘吐きの言葉なのです。途中で止めてしまうから無理になるんです』

 

ディオドラが口を開いたまま暫く固まる。平常時なら何を言っているんだお前はとぐらいは吐くハズであるが、如何せん相手が悪過ぎた。ディオドラは困惑するばかりである。

 

なまじディオドラが全力でやれば出来る限界スレスレの量かつ、極限まで効率を優先しているトレーニングメニューなのが微妙に彼の事を考えてもないような気もしないでもない為に意地らしい。

 

『途中で止めるから無理になるんです。途中で止めなければ無理では無くなります』

 

ジャンヌはそう言うと床に手を付け、その場で倒立をする。

 

更に片腕を離し、片掌だけで全身を支え始めたかと思うと、掌から五指だけで全身を支え始め、次第に1本づつ指を離していくと、最後には小指1本での倒立を成立させてしまった。

 

卓越した技量と、バランス感覚、そして異常な筋力が無ければ無し得ない行動を、準備体操か何かのように続けながら尚もジャンヌは言葉を吐く。

 

『止めさせないんです。血を噴き出そうがブッ倒れようが、とにかく1ヵ月間全力でやらせる』

 

ディオドラの頭に大量のハテナが並ぶ。

 

自分は王で目の前の者は女王、立場は自身の方が上のハズである。だが、目の前のジャンヌの謙ってはいるが、慈悲の欠片もない会話内容にそれさえも気のせいだったような感覚さえ覚える。

 

『無理ではなかったという事です。実際に1ヵ月もやったのだから。無理という言葉は嘘だった』

 

流石にディオドラもどうかと思い反論をした。最も結果はどうなるかなど目に見えているが。

 

『しかし、現実としてやったのですから無理じゃなかった。その後はもう無理なんて言葉は吐けないでしょう?』

 

暴論も良いところだが、バッサリと切り捨てられ、最悪な事に1ヵ月が終了した後も続けさせる事まで付け足されたようである。

 

口は災いの元とは良く言ったもの。ジャンヌは小指倒立の姿勢から後ろバク宙を決め、途中で悪魔の翼を展開して空に舞い上がる。そして、ディオドラでも顔が引き釣るほどの技術のアクロバット飛行を繰り広げた。それを準備体操と称している超人に逆らうというディオドラの意思は急速に萎えて行くのであった。

 

ちなみに実際にそのトレーニングは効果がかなりあり、数ヵ月間で元から血統書付きのディオドラの身体能力をトレーニング開始前の数倍近くにあげる事には成功した事を記しておこう。血と才能だけならディオドラもかなりのものなのである。

 

 

閑話休題。

 

 

そんなこんなでジャンヌと血統以外は月とスッポン程の開きがあり、恐妻などという2文字では収まらない女王に選んでしまったディオドラであるが、実際のところ彼女を眷属にした後悔は殆どない。

 

それというのもレーティングゲームの学校での優越感に浸れる日々を送れるからであろう。

 

悪魔のレーティングゲームの学校は通常部と、高等部の2つに別れており、通常部を卒業時点で悪魔の駒を渡され、それ以上に学びたければ高等部に通うという構成になっている。

 

悪魔の貴族の減少もあり、レーティングゲームの学校ではクラスでかなり年が離れる事もそう珍しくはないが、ディオドラは今のところ義務教育過程のように最短で学業を修めれる年齢で高等部に在籍していた。

 

その在学生らの眷属に比べてディオドラの女王であるジャンヌ・ダルクは究極と言っても過言ではない程の有能さだった。

 

まず、悪魔でさえ知らぬ者の居ないほどの莫大な知名度。それ単体で神滅器に匹敵する程である。更に、女王という駒に適し過ぎている事も拍車を掛ける。絶世の美女と言っても差し支えない容姿、極めて高い魔力と魔法才能、常人には決して至れない技量と筋力から来る身体能力、稀で強力な神器。更に学習能力まで遥か彼方。序でに意外ではあるがかなり家庭的である。

 

そんな誰もが羨望するような超生命体がディオドラの女王なのだ。後悔する方が難しいであろう。

 

そして現在、眷族集めの最中のジャンヌ・ダルクはディオドラの屋敷に帰ってきており、新たに加わった眷属の説明をしていた。

 

「私とは違い神器は保有していませんが、未だ発展途上にも関わらず、高名で高潔な魂によってディオドラ様の騎士の駒を2つ消費した程の眷属になります。戦闘においてのポテンシャルだけならば、私と同格かそれ以上かもしれません」

 

「そ、そうか…」

 

要は日本の織田信長や、フランスのジャンヌ・ダルク、ギリシャ神話のヘラクレス級の代表する英雄の魂を受け継いだ者を眷属にしたと言うのだろう。それも戦闘特化型のだ。ジャンヌの言葉を徹頭徹尾信じるのならば、やはり彼女の多方面への有能さは正に女王のそれだ。

 

ジャンヌが合図を送ると部屋の扉が力強く開け放たれた。それを見たジャンヌの目が密かにひきつり、笑顔のままピクピクと動いていた。ディオドラはそれを触らぬ神に祟りなしの基本精神でそれに気付かないフリをしながら部屋にズカズカと入って来た人物を眺める。そして、ディオドラは目を見開いた。

 

白に近い金髪に、金の瞳、死人か死神並みに白い肌。ほぼ黒一色で固められた服装。更には顔のパーツがやたらジャンヌに似ており、姉妹と言われてもディオドラは納得しただろう。

 

まあ、一番奇妙に思うのは、何故かバケット一杯のターキーを豪快に頬張ったまま現れたのである。ジャンヌが連れてきた以上、ディオドラとしては特に文句を言うつもりは無かったのだが、この光景は流石に貴族の悪魔として目に余る。

 

そんな事はお構い無しといった様子のジャンヌに良く似た少女は、そのまま口を開いた。

 

「どうも(もきゅもきゅ)、ご主人サマ。貴様の(もくもく)可愛い可愛い騎士様だ(もきゅもきゅ)。精々、よろしく頼む(ごくん)」

 

「おい、表出ろ"騎士王"」

 

新たな眷属が、一瞬発言が素に戻ったジャンヌに首根っこを掴まれ、ずりずりと部屋の外に連れていかれる様を呆然と眺めるばかりであったが、その間、一切手にしているターキーを咀嚼する事を止める様子の無い少女にディオドラは呆れを通り越して関心の念すら懐く。

 

ちなみに素のジャンヌ・ダルクはギャルのような喋り方になる事などはディオドラ含め、ディオドラ眷属なら公然の秘密である。ディオドラとしては素のジャンヌの方が良いと思うのだが、それを指摘する勇気は今のところ無い。自分が常日頃から聖女っプリをアピール出来ていると思い込んでいるのが、ジャンヌの唯一にして最大の欠点だろうか。

 

 




ちなみにディオドラの騎士さんは見た目はまだ、黒いアルトリアリリィぐらいですが、勿論この世界ではエクスカリバーを持っていないので成長して何年か経過したら乳上になります(馬と鎧は別売り)。

次回は数日前に遡り、ジャンヌオルタさんと騎士さんの奇遇です。


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ジャンヌオルタさんとアルトリアオルタさん

次の投稿は数ヵ月後かと思いました?

残念同日中ですよ。


 

 

ぎゅるぎゅるきゅるきゅるー

 

 

 

この世に生まれ落ちてから幾十数年、私は最大の危機に瀕していた。

 

まさか、ひとり旅と言うものがここまで過酷なものだとは思ってもいなかったのだ。

 

やはり、夜のキャメロット城のガラスを壊して回り、盗んだ名馬で走り出すような突発的な行動ではいけなかったのか…。

 

私の剣よ、出来ることなら再びあるべき姿に戻してやりたかった。

 

私には解る。"7つ"に分割され、絞りカス程度の力しか発揮できない嘆きが。無念だろう、苦痛だろう、慙愧にたえないだろう。

 

私だってそうだ。お前の無い私などいったい何者なのかすらわからない。

 

 

きゅるきゅるぎゅるぎゅるー

 

 

 

たが……目が霞む、手が震える、内臓が悲鳴を上げる。最早、立ち上がるどころか這う気力さえも私には残されてはいない。

 

ああ、私の花の旅路はここで終わってしまうのか…。

 

 

 

「えーと……大丈夫ですか?」

 

 

 

こんな人気の無い森で女の声が聞こえ、咄嗟に顔を上げる。そこには黒い服装で全身を統一した金髪の女が立っていた。

 

だが、私の視線は女から、背負っているほんのり良い香りのただよう布袋に目が移る。

 

「ッ…!!」

 

私の直感か言っている。この無愛想で強情そうな女には何故か妙な親近感が沸く、要するに信用に価する人物な気がしたのだ。

 

私は残りの精一杯の力を振り絞り声を張り上げる。

 

「頼む……腹が減って動けないんだ!! 何でもする……何でもするから食べ物を恵んでくれ!」

 

私は学習した。プライドで腹は膨れない。

 

後、今ならマッシュポテトとビネガーだけでも美味に感じるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「もきゅもきゅ」

 

久々に地元のフランスに立ち寄り、野宿を始める為にテントを設置していると、散歩から帰ってきたルーラーが"なんか強そうな人が倒れてるよー"と言ってきた事から全ての始まりです。

 

そこに行くと私と同じように肌が白っぽく、黒い服装で全身を固めた同い年程の女性が倒れていました。

 

そして、助けてみたその女性に目の前で私の全ての食糧が喰われて今に至ります。

 

ちなみにルーラーはもうお眠なのか丸まって寝ていますね。

 

それはそれとして私の手元に残ったのは随分とペラペラになった食糧袋のみ。

 

どうしましょう……切り詰めれば3日ぐらいは持つかと考えていたのですが、捕らぬ狸の皮算用になったようです。いえ、食糧自体は手元に存在したたわけですから誤用ですか。アハハハハハ。

 

………………………………ふう。

 

「なんだ随分と面白い顔をしているな。旅芸人か何かか?」

 

…………いけないジャンヌ・ダルク。如何に食い物の怨みは恐ろしいとは言え、相手のペースに乗せられてはいけません。

 

例え、見た瞬間なんだか放って置けないというか、他人とは思えない不思議な感情に駆られてしまったとは言え、食糧を提供したのは私です。つまりは私の落ち度…ええ、そうです。今回は私が悪……。

 

「大味だったな。まあ、腹は膨れた」

 

「いい度胸してるわねアナタ、この国土から肉片の欠片も残さず焼却して差し上げましょうか?」

 

私は聖剣創造で赤熱する聖剣を造り出すと、小癪な戯言を並べる彼女に突き付けました。

 

食糧を全て吸い込んだ彼女を一刀で斬り捨てるのも癪ですから、一応は遺恨ぐらいは聞いてあげましょう。私ったらマジ聖女。

 

「ほう…暖の代わりにはなりそうだな。前言撤回しよう、貴様は良くできた道化(ピエロ)程に価値はある」

 

しかし、かなり高温の物体を向けられているにも関わらず、我関せずといった様子の彼女は座ったまま私の水筒のお茶を飲み干すと口を開きます。

 

「私は"アーサー・ペンドラゴン"だ」

 

「はあ? 誰もアナタの名前なんて知りたくも………アーサー・ペンドラゴン…?」

 

気のせいでしょうか? 今、物凄いビックネームが聞こえたような気が…。

 

アーサー・ペンドラゴン。

 

アーサー王伝説の中核を成す存在であり、ブリテンの王。聖剣エクスカリバーの名を出せば知らぬ者は居ないでしょう。

 

「まあ、私の生まれの名は"アルトリア"だ。呼ぶのならそちらで呼べ」

 

立ち上がった彼女の側の虚空が歪み、そこから悪魔としては異常なまでに神聖に耐性のある私も、多少悪寒を覚える白銀の聖剣が取り出されます。

 

 

「それとコイツは仕方無く家から永久に借りて来た"クラレント"だ」

 

私とて元教会の聖剣使い。名のある聖剣と魔剣の名と能力くらいは未だに覚えています。

 

クラレント。別名は剣の中の王者。アーサー王伝説ではモードレッド卿が叛逆に用いた剣として有名な剣です。

 

「ひょっとしてアナタ、アーサー王の魂を受け継ぐ者なの…?」

 

現物を見たのは今が始めてですが、剣自体では私が見たことのあるグラム等の最上級の剣には劣る性能なようですが、彼女の手にある事によって輝きを増しているように思えました。

 

クラレントの能力は王の身体能力の上昇と、王の各種技能の増幅という、ある意味全剣中最高クラスの補助能力を持っています。まあ、それはアーサー王一人にしか発動しないのですが、そんなクラレントが聖剣のまますんなりと使われているということは、つまりそう言う事なのでしょう。

 

「ああ、そうだ。最もまだ、半人前も良いところだがな」

 

あっけらかんと言い切る彼女…いえ、アルトリアは驚いている私に何故か怪訝な顔を浮かべ、会話を続けます。

 

「こちらが名乗ったのだから名乗り返すのが筋ではないのか?」

 

コイツ、人の食糧喰い尽くしておいてなんでそんなに偉そうなのよ……これだから王様とか、朕とかが一人称の奴らは大嫌いよ。

 

「それは失礼しましたね……私はジャンヌ・ダルク。あなたと同じような存在よ」

 

「ほう……それにしては貴様、人間ではないようだが?」

 

「まあ、一応は転生悪魔ですからね」

 

食糧を犠牲にしただけの価値はあったと思われるので、突き付けていた聖剣を消しました。

 

言動から人と他の種族の区別は付くようなので悪魔の翼を広げます。

 

「私の事はもういいでしょう。それで、騎士王様の迷える魂がなんでこんなところにいるのかしら?」

 

そう問い掛けるとアルトリアは少し暗い表情を取りながらポツリと呟きました。

 

「私の目的は7つに別れた私の剣を1本の聖剣に戻す事だ」

 

「エクスカリバーを…ね……」

 

エクスカリバー。

 

かつて最強とも謳われた伝説の聖剣でしたが、大昔の戦争で折れてしまいました。その破片を教会が回収し、錬金術を用いて7つの特性を破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)祝福の聖剣(エクスカリバー・ブレッシング)、そして支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)の7本の聖剣に分けて作り直されたのが今のエクスカリバーとなっているわけです。ただ、性能は一本分は本来の十分の一以下でしょうね。七個に分けたから七分の一ではなく、そもそもは一本の剣なのですから削ぎ落とせば削ぎ落とす程に著しく弱体化するのが道理。まあ、それでも最強の聖剣の座にいるのですから元の性能が何れ程高かったのかは想像に難しくはありませんね。

 

しかし、彼女旅路はなんと無駄なことでしょうか。放っておけば数年後には結集してエクス・デュランダルとなるというのに。

 

「ほう……」

 

最後に思ったことは伝えずにエクスカリバーについての知識をひけらかしていると、今度は逆にクラレントの先端を私の喉元に突き付けてきました。

 

「貴様中々に詳しいな。もう少し楽しいお喋りを続けようじゃないか」

 

少々口が滑りましたね。

 

英雄としての直感が騒ぎます。クラレントと彼女の組み合わせは本気の私でも手を焼く。幸いな事に今の段階では使い手が未熟な事が救いといったところですかね。

 

腕か足の一本でも代償にすれば勝てるかもしれませんが、彼女も必死なのでしょう。ここは大人しく、もう少し情報を与えておきますか。

 

「破壊の聖剣はカトリック教会、擬態の聖剣はプロテスタント教会、祝福の聖剣は正教会にあります。天閃の聖剣、幻夢の聖剣、透明の聖剣はカトリックかプロテスタントのどちらかに保有されているでしょう。支配の聖剣は失われたと言われていますが、断言しましょう」

 

私は言葉を句切るとクラレントに触れました。身体は悪魔ではありますが、私とて聖人で聖剣使い。触れただけでは手傷にすらなりません。

 

「支配の聖剣はこの世界の何処かで存在しています。これはこのジャンヌ・ダルクが受けた天啓と受け取ってもいい。折り紙つきよ」

 

数秒の後、嘘偽りの無い私の言葉から荒を探すことを諦めたのか、クラレントが下ろされました。

 

「嘘は付いてないようだな」

 

それはそうでしょう。私は私にとっての真実しか話してはいないのですから。最もそれが他者に理解されるかというのは別の話ですがね。

 

「ところで迷える騎士王様。まさか家来も連れずに一人旅の途中ですか?」

 

「………………それがどうした?」

 

いるわけないだろ…と小さな呟きが聞こえた気がしましたが、彼女の名誉の為に聞こえなかった事にしておきましょう。

 

「いえ、ただの確認です。話を戻すと、エクスカリバーには高度な種族間の問題が絡んでいます。アナタひとりでのその目的の達成は限り無く不可能に近いと思いますが? まあ、世界の逆賊(カオス・ブリゲード)にでも下れば話は少し変わるかも知れませんがね」

 

「だったらなんだというのだ? 貴様にどうにか出来ると…」

 

「出来ます」

 

私はアルトリアの言葉を遮り、そう断言しました。流石に面喰らったのか少しだけ面白い顔をしています。

 

「間も無く種族間の冷戦は終わり、三種族の争いも終結する。和平が成立すれば教会が個々に7本もエクスカリバーを所有している意味も薄まります。故に何処かの陣営に所属し、対禍の団殲滅者として名を上げれば、7本のエクスカリバーは三陣営の中で最も必要とされる場所に送られるのはあり得ない話でもない」

 

「…………それで?」

 

「例えば現在の悪魔はレーティングゲームで強ければ強いほど名声が高まる。表向きな実力もそれで評価されるでしょう。私の王は現魔王を排出したアスタロト家の次期当主。知名度、資金、政治力全て上位に食い込んでいると言えます。更に我が王は既にテロ対策に力を入れておられます。後、欲しいのはそう……確かな戦力だけです。何もない存在が、スタートラインとするには十分過ぎるとは思いませんか?」

 

「つまり何が言いたい…?」

 

私は胸元のポーチから騎士の駒を2つ取り出し、それをアルトリアへと向けました。

 

「私達と共に世界を綺麗にいたしましょう? さすれば必ずやアナタの願いは成就される」

 

「……もしだ。エクスカリバーを元の姿に戻せなかった時はどうする?」

 

「聖人ジャンヌ・ダルクの名の元に誓いましょう。エクスカリバーを1本の聖剣に戻せないと為れば、一切の抵抗をせずに屠られる事を誓います」

 

私はそう言い切る。アルトリアは目を少し大きく開いてから閉じます。

 

「妙な奴だなお前は。話す事は全て絵空事かと思えば、それを一切の曇り無く本気で言っているのは目を見ればわかる。まるで既に決まった事のように…だ」

 

アルトリアは目を閉じたまま呟くと、目蓋を開きました。その瞳は私と同じ金色で、真っ直ぐな眼光をしています。

 

「いいだろう。元より、その為だけに全てを捧げた私の旅路だ。今更、悪魔に魂を売るぐらい造作もない」

 

アルトリアは私の悪魔の駒を手に取りました。

 

 

 

 

 

ちなみに、彼女がモードレッドなのではないのかと思う程の素行の悪さに頭を悩ませるのは数日後の事になります。

 

 

 

 

 




この作品のアルトリア・オルタさん

今の実年齢はリリィ
言動はサンタ
持ってる聖剣はクラレント
成長したら乳上

もう特盛だぜ!(現実逃避)


ちなみにアルトリアオルタさんはジャンヌオルタさんの事を既に友達として結構気に入っております。



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