Toloveるダークネス ~トランス兵器編~ (野獣君)
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一年生
日常


お久しぶりです!今回は自分の大好きなToloveるダークネスを書いていきたいと思います!色々可笑しいですがよろしくお願いいたします!


明朝5時、日の出を見ながら、少年はあのときの光景を思い出していた。炎に包まれる研究所、真っ暗な空、地面に転がる死体の山、それぞれの光景が今でもはっきりと脳裏に焼き付いていた。

 

「チッ……」

 

少年は軽く舌打ちしながら薄明かりが灯る道をゆっくりと歩いていった。

 

少年の名前は七原大夢(宇宙人)。16歳。彩南高校一年。銀河最強のトランス兵器でありながらギド・ルシオン・デビルークに代わりデビルーク軍の元帥を勤めている。黒髪短髪、青と黄土色のオッドアイが特徴

 

彼が自宅のマンションに戻ると同居人の少女が白いTシャツに縞パンというなんとも無防備な格好で寝ていた。

 

「芽亜。朝だぞ」

 

「う……ん。おはよう…ヒロ君」

 

「おう。早く朝御飯食べろよ。冷めるぞ」

 

「うん。わかった」

 

大夢が「芽亜」と呼んだ少女こそが彼の同居人である。黒咲芽亜。16歳。彩南高校一年。第二世代トランス兵器。長い赤毛の三つ編みが特徴の美少女。大夢とは同じトランス兵器研究所で生み出された幼なじみである。

 

「ヒロ君。早くしないと遅刻しちゃうよー」

 

「ああ。今行く」

 

芽亜に急かされて大夢は足早に家を出た。季節は6月終盤梅雨も過ぎ去りまた暑くなる頃合いだ。学校に向かう通学路を歩いていると見知った人物に肩を叩かれた。

 

「おはよう。大夢、芽亜」

 

 

 

「おはようございます。リトさん」

 

「おはようございます♪リト先輩♪」

 

このリトという少年は大夢や芽亜の一つ上にあたる先輩でデビルーク家の三姉妹のララ、ナナ、モモと共に暮らしている。大夢は三人のことを姫と呼んでいる。

 

「ところで姫達はご一緒ではないのですか?」

 

「ああ、三人とも先にいったよ。用事でもあった?」

 

「あ、いえ、特に。」

 

「わたしはナナちゃんと一緒に登校したかったなー」

 

芽亜が不満そうに呟く。芽亜とナナは親友であり、とても仲が良い。

 

「仕方ないだろ。ナナ姫は忙しいんだ。」

 

「むー」

 

「はは、また今度だな」

 

三人でいつものように話していたらあっという間に学校に着いてしまった。

 

「じゃ、俺こっちだからまた。」

 

「はい。失礼します。」

 

「またねー。リト先輩」

 

リトと別れ、大夢と芽亜は自分達の教室の1ーBのクラスへと向かう。入り口のドアを開けるとクラスの人数の大多数が楽しそうに談笑していた。大夢達はその中でも奥の方に向かう。

 

「おはようございます。ナナ姫、モモ姫。」

 

「おはよう♪モモちゃん、ナナちゃん」

 

「おーっす!メア、ヒロム!」

 

「おはようございます♪メアさん、ヒロムさん」

 

この二人の少女がデビルーク家の三姉妹のうちの二人である。桃色のツインテールの少女がナナ・アスタ・デビルーク。

桃色のショートボブの少女がモモ・べリア・デビルーク。大夢と彼女達はデビルークの頃からの知り合いであり、よく一緒に遊んでもらっていた。こうやって彼女達と談笑していると周りの男子達の視線が痛いほど感じる。特にモモに至ってはファンクラブまで存在するほど崇高な存在として崇められている。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「それではHRを始めます」

 

教室に入ってきたのは担任のティアーユ先生だ。金髪の長い髪に眼鏡をかけている美人教師。スタイルも良く男子生徒の間では人気が高い

 

「えっと…欠席者は一人ですね。」

 

その欠席者とは俺の隣の席の金色の闇という少女だ。彼女はティアーユ先生の細胞をベースに産み出された人工生命体で第一世代トランス兵器でもあり、芽亜の姉でもある。

 

「メア、今朝ヤミを見てないのか?」

 

「うん、見てないよー」

 

「大夢さんも今朝とかにヤミさんを見てないんですか?」

 

「申し訳ありません。今朝は時間が無くて…」

 

結局授業が終わってもヤミは来なかった。帰りのHRが終わり、身支度を整え昇降口へ向かうと、

 

「あ、ヒロムー!」

 

「ララ姫。これからご帰宅ですか?」

 

「うん!リトとセリーヌちゃんを待ってから帰るのー。ヒロムも芽亜ちゃんとかは?」

 

「芽亜はナナ姫やモモ姫とご一緒するそうですよ。」

 

「そっかぁ」

 

彼女がデビルーク第一王女ララ・サタリン・デビルーク。とても明るく好奇心旺盛な少女だ。

 

「ヒロムもこれから帰るの?」

 

「はい。今日は色々と野暮用があるので。」

 

「そっかぁ。またねー!」

 

ララと別れ、真っ先に家に帰ると小さな小包が届いていた。

 

「差出人は……ギドか。それで中身は……なんだこれ?ビデオ?」

 

再生してみるとまず最初にデビルーク軍の軍歌が流れ、その後にギド・ルシオン・デビルークを崇拝する謎の歌が流れ始めた。最初のうちは面白半分で聞いていたのだが再生してから僅か5分で大夢はDVDのディスクを真っ二つに割ってしまった。

 

「…………ギド後で100回殺す……」

 

溢れるデビルーク王に対しての殺意を抑えながら芽亜の帰りを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後まで見てくださった方ありがとうございます!長くてすいません(泣)。


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たい焼きとペロペロキャンディーと読書

新年明けましておめでとうございます!新年早々ですがやっとできたので投稿します!今回はかなり長めなのでご注意ください


「う……ん眠い……」

 

時計の針はまだ6時を指していた。外はうっすらと朝日が昇ってきていた。

 

「しっかし暑いなー。」

 

大夢の格好は上半身裸に短パンと、かなりの薄着だった。それでも大夢の体からは少しだが汗が吹き出していた。

 

「………芽亜のやつくっつきすぎなんだよ。」

 

彼はそう言って芽亜のおでこに軽くデコピンをかました。

 

「ん……」

 

「さすがにまだ起きないか。」

 

そう言うと彼はタンスからデビルーク製のタブレットを取り出し回線をデビルーク星へと繋いだ。

 

「うっせーな。……誰だよこんな朝早くから。」

 

「よっ。ギド、久しぶり」

 

大夢がライブチャットをしている相手が現デビルーク王のギド・ルシオン・デビルークである。威圧感のある声とは対照的に彼は体がとても小さい。銀河大戦で力を全て使い果たしてしまったからだ。

 

「その声は……大夢か。何のようだ?」

 

「モーニングコール。」

 

「じゃな。切るぜ。」

 

「冗談だ。割りと真面目な話だよ。」

 

「何だよ?」

 

「地球に向かっている宇宙人で要注意人物とかいるか?」

 

「ラコスポ。ぐらいだな」

 

「はぁ?ラコスポ?冗談だろ?」

 

「いや、大マジだ。近いうちにララや結城リトのとこに現れる。殺し屋も雇ったって聞いたぞ。」

 

「成る程ね。リト殿を殺してララ姫を自分のものにしようってか。ただ殺すだけじゃ物足りないな。」

 

「そういうことだ。俺はいけないからそっちは頼むぜ。」

 

「了解した。じゃあギドそろそろ切るよ。」

 

「待った。まだ話さないか?セフィはまだ起きてないし」

 

「いいよ。俺のとこの同居人もまだ起きてないから。」

 

この後大夢とギドは30分位世間話をしてから互いに切った。因みにセフィというのはギドの妻でセフィ・ミカエラ・デビルークのことである。宇宙人一美しく優しい女性だが、怒らせれば宇宙一恐ろしい(ギド談)。

 

大夢がタブレットを片付け終えたのと同時に芽亜が起きた。

 

「おっ。起きたのか。おはよう」

 

「おはよう……。」

 

「芽亜。今日時間ある?」

 

「ん。あるよー」

 

「図書館行かないか?」

 

「いいよー。私も調べたいことがあったし」

 

「悪いな芽亜。寝起きなのに無理させて」

 

「大丈夫だよ。その代わり帰りに

お菓子買ってね♪」

 

「わかったよ。」

 

芽亜は素早く朝食を済ませ、私服に着替えた。夏らしく、そして芽亜らしい可愛い格好だった。因みに大夢の格好はカッターシャツにネクタイとジーバンと、とてもシンプルな格好だった。

 

「……。」

 

大夢はあまりの可愛さに数秒間言葉を失ってしまった。大夢はあまり女性に対して免疫がないため、こういったことには慣れていないのだ。

 

「どうしたの?顔赤いよ?」

 

「あ、いや、今日は暑いなー。ハハ……」

 

「?」

 

「と、とにかく行こうか!」

 

外へ出ると強い日差しが襲ってきた。町行く人達を観察しても誰もが大量の汗をかいていた。

 

「芽亜、日傘ないけど大丈夫?なんなら俺がトランスで作るけど。」

 

「大丈夫だよ。これぐらいの暑さには慣れておかないとね。」

 

「そっか。ヤバいときは言えよ。」

 

「うん。ありがと♪」

芽亜とあれこれ話しているうちに彩南市立図書館に着いてしまった。中は冷房が効いていてとても涼しく、しっかりと防音対策も施されていて、読書や調べものをするのには最高の環境と言える。

 

「じゃあ芽亜、俺こっちだから。」

 

「うん。あとでね。」

 

芽亜と別れたあと大夢はあるジャンルのコーナーへと向かった。

 

「えーと宇宙についての本は……あった!」

 

本のタイトルは宇宙の真実。某有名大学の教授が書いた本である。大夢は本物の宇宙人として、地球の人間が宇宙に対してどのような考えを持っているのかとても興味があった。

 

「(さて、地球人は果てしなく続く宇宙をどう思っているのかな?)」

 

~10分後~

 

「(残念だな。こんな甘い考えで宇宙を語ろうなんて10年早いな。)」

 

彼は落胆しながら次の本を探していると、

 

「あっ。ヤミ」

 

「貴方は……ヒロム。」

 

彼女が金色の闇である。宇宙で最も危険な殺し屋でリト殿の命を狙うトランス兵器の少女である。

 

「……一人で此処へ来たのですか?」

 

「芽亜と一緒に来たんだ。あいつは別のところにいるけどな。」

 

「そうですか……。なら私の読書の邪魔をしないでください。」

 

「はいはい。わかったよ」

 

そう言って大夢はヤミから離れ、芽亜のもとへ向かった。芽亜意外にも料理系のところにいた。

 

「芽亜なに見てるんだ?」

 

「お菓子作りの本だよ。自分で作って食べる食べるのもいいかなって。」

 

「お菓子作りくらい俺がいつでも教えてやるよ。ある程度のものはできるし。」

 

「ほんと!ありがと♪」

 

「それよりもさ今からヤミのとこに行かないか?」

 

「ヤミお姉ちゃんここに来てるの?」

 

「来てるよ。俺はさっき話したばっかりだけどさ。」

 

「そうなんだ…。……私はいいよ。行っても」

 

芽亜に了解を得てから二人でヤミのところに向かった。ヤミはまだ同じとこで本を探していた。

 

「……またあなたですか……」

 

「ヤミ。ちょっと話さないか?芽亜もいることだしさ。」

 

「お断りします。私は人と話すより読書をしている方が好きなので。」

 

「……たい焼き10個……」

 

「仕方ないですね。外へ出ましょう」

 

「聞こえてんじゃねーか」

 

外へ出ると今朝よりも暑さが増していて空気も尋常じゃないくらい蒸していた。

 

「おいおいヤミ、お前大丈夫か?」

 

「……大丈夫ですよ。……少し気温の変化に体がついていけていないだけなので……」

 

次の瞬間ヤミはドサッと地面に倒れた。

 

「お姉ちゃん!?大丈夫!?」

 

「大…丈…夫ですよ……。」

 

「馬鹿言え全然大丈夫じゃないだろ。とにかく今からドクターミカドのとこに連れてくからしっかり捕まってろ。」

 

大夢はヤミを抱き抱えながら芽亜と共に足早にドクターミカドの診療所へと向かった。ドクターミカドの診療所は町の外れのところにあり、見た目は幽霊屋敷のようである。彼女は彩南高校の養護教諭だけではなく、銀河でも有名な闇医者であり、様々な宇宙人の形態に詳しい人物でもある。

 

「ドクターミカド!いますか?」

 

「あら、七原君。どうかしたの?」

 

「ヤミの体調がおかしいので少し見てもらえますか?」

 

「ええ、いいわよ。」

 

ドクターミカドはヤミの体を一目みて、

 

「熱中症ね。少し体を冷やして水分を与えれば大丈夫よ」

 

「そうですか…。」

 

大夢は安堵の表情を浮かべながらその場に座り込んだ。芽亜も大事に至らなくて良かったという表情をしている。

 

「御門先生♪紅茶が出来ました!」

 

「ありがとう。お静ちゃん」

 

奥から出てきたのは村雨静という少女である。彼女は何百年も前に亡くなっているがドクターミカドが作った体に憑依して生活している思念体である。

 

「あ、あとおつかいも頼めるかしら?」

 

「はい!わかりました♪」

 

「あ!お静さん、おつかいは俺達に行かせてくれませんか?もともと彼女が倒れたのは俺の責任でもありますから。」

 

「いいんですか?助かります~」

 

「あら、七原君達が代わりに行ってくれるの?じゃ、お願いしようかしら。」

 

「それで村雨先輩なにを買ってくればいいの?」

 

「メモに書いてあるものだけを買ってきてください。」

 

「了解しました。」

 

「行ってくるねー。」

 

大夢達は三十分もしないうちに買い物を済ませてきた。

 

「結構早かったわね。」

 

「お二人ともすごいです!」

 

「まぁトランスがあるんで…」

 

「ヤミお姉ちゃんは?」

 

「寝てるわ。もうちょっとしたら起きると思うわ。」

 

「そうですか。じゃ、俺達はそろそろ帰ります」

 

「ヒロ君、もう帰るの?」

 

「あんまり長居してもドクターミカドやお静さんに悪いだろ?」

 

「それはそうだけど……」

 

「そういうこと。それじゃお二人とも失礼します。たい焼きはヤミにでも食べさせてやってください。」

 

「ええ。それと、七原君。学校ではちゃんと御門先生と呼ぶように」

 

「さよならです♪」

 

 

「……ん、ここは?」

 

「私の診療所よ。気分はどう?」

 

「もう大丈夫です。ドクターミカドがここまで運んできてくれたのですか?」

 

「私じゃないわ。七原君と芽亜さんよ。」

 

「あの二人が?」

 

「ええ。特に七原君に関してはヤミちゃんが倒れたのは自分のせいだってずっと言ってたわ。」

 

「……!たい焼き……」

 

「七原君達が差し入れでかってきてくれたのよ。」

 

「……本当に誰かにそっくりなお人好しですね……」

 

 

 

「芽亜ー。今日の夕飯なにがいい?」

 

「スパゲッティがいいかなー。」

 

「じゃあこれから食材買って帰るか」

 

「うん!あ、あとお菓子忘れてるよー」

 

「お菓子?ああ。すっかり忘れた。ペロペロキャンディーでいいか?」

 

「お菓子は任せるよ♪」

 

大夢と芽亜はまだ明るい道のりをいつも以上にゆっくりと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 




徐々に作品の文字数が増えてるのは気のせいだろうか


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臨海学校

更新が遅くなりすいません。今回は臨海学校編になります。色々おかしいかもしれませんが、ご了承ください。


「え~では一年生の皆さん臨海学校を楽しんできてください!」

 

校長の話が終わり、クラスごとに一斉にバスに乗り込んだ。

 

「……でなんでこの席なんだ?」

 

大夢達の座席は一番後ろでメンバーは左から、モモ、ナナ、大夢、芽亜、ヤミの順である。無論クラスの男子(V.M.Cのメンバーを含む)からは羨望と殺気が大夢に向けられていた。

 

「……ナナ姫、クラスの男子からの視線が痛いのですが。」

 

「な、なんであたしに言うんだよ!芽亜とかモモに相談しろよ!」

 

「それが……モモ姫も芽亜もこんな状態で……」

 

大夢の言う通り芽亜とモモはぐっすりと寝ていた。

 

「モモは今朝から眠そうだったらからな。」

 

「モモ姫もですか?実は芽亜も夜更かししたらしく今朝はすごい眠そうでした。多分楽しみで眠れなかったんでしょう。」

 

「ヤミは夜眠れたのか?」

 

「私は目を閉じて体を休めるだけで深い睡眠は取らないようにしてます。」

 

「まぁ俺も危険察知という意味でも気持ちよく寝たことは一度もないな。」

 

「あたしにはよくわかんないなー」

 

「仕方ありません。ナナ姫には少し難しいですから。」

 

「ヒロム今あたしのことを子供扱いしたよな?」

 

「え、ちょ、ナナ姫!誤解です!」

 

「んー……なに騒いでるの?」

 

「芽亜!聞いてよ!ヒロムのやつあたしのことを子供扱いしたんだぞ!」

 

「ヒロ君。ダメだよ年頃の女の子を子供扱いしたら」

 

「そう言われても……」

 

「ヤミお姉ちゃんもヒロ君になんかいってよー。」

 

「……彼に言うことなど何もありません」

 

バス内はとても賑やかだった。大夢達のように世間話で盛り上がったりカラオケではしゃぐやつもいたり、トランプを始めるやつらもいた。目的地の旅館まであと少しというところで担任のティアーユ先生が、

 

「目的地までもうすぐなので降りる準備をしてください」

 

「「「はーい!」」」

 

クラス全員が一斉に元気のいい返事をする。このクラスはこういうところだけは謎の団結力があった。

 

「ん……もう着いたの……?」

 

「お目覚めですか?モモ姫」

 

「おはよ。モモ」

 

「おはよー!モモちゃん」

 

「おはようございます。モモ」

 

「着いたのですか?」

 

「ええ。着きましたよ」

 

バスから降りるとところどころ年季の入った大きな日本旅館が彼らを出迎えた。部屋も和を感じさせるのどかな和室だった。

 

「部屋はいいんだが、何故部屋割りが……」

 

大夢達の部屋は三人部屋で大夢、芽亜、ヤミといったメンバーである。ナナとモモは別の部屋である。

 

「ヤミお姉ちゃんと泊まるの楽しみだなー!」

 

「私もですよ。芽亜」

 

「俺は逆に不安なんだが。」

 

「えー?なんでー?」

 

「芽亜とは同じ屋根の下で暮らしてるから何とも思わないんだけど、ヤミは色々読めないからなぁ」

 

「それは私への宣戦布告という事でよろしいですか?」

 

「そうだ。一回殺り合うか?」

 

「望むところですよ。」

 

「じゃあ私も!」

 

「おっとそろそろ飯の時間じゃないか。食堂に行こうか。」

 

「……ヒロ君のいじわる……」

 

芽亜は頬を膨らませながらヤミと一緒に食堂へ向かった。大夢もそれに続いて部屋をあとにした。

夕食後、大夢はティアーユ先生と御門先生に呼び止められた。その中にはモモ姫もいた。一般の男子生徒ならラッキーかと思うが、大夢は嫌な予感しかしなかった。

 

「ごめんなさい。急によびだしたりしてその……ヤミちゃんの様子はどう?」

 

「何の話かと思ったらそれですか……。楽しんでるように見えますよ」

 

「そう言えばヤミさんと七原君はどういう関係なの?」

 

「デビルーク軍に入る前に殺し屋の仕事をしていてそれで知り合ったんですよ。」

 

「えっ。そうだったんですか?」

 

「モモ姫。ご存知なかったのですか?」

 

「初耳ですよ!」

 

「本題に入らせてもらうわね。実はこの旅館付近に異星人のレーダー反応が出たの。」

 

「私もミカドも徹底的に捜索したんだけど何も出てこなかったわ。」

 

「おそらくラコスポでしょう」

 

「ラコスポ?」

 

「モモ姫はご存知でしょう。ララ姫の婚約者候補を名乗り、ヤミもとい金色の闇にリト殿を殺させようとした男です。」

 

「何故彼だとわかるの?」

 

「数日前ギド・ルシオン・デビルークから、近日中にそっちにラコスポが現れる。こんな連絡がありましてね。」

 

「お父様がそんな連絡を?」

 

「ええ。しかもラコスポはどうやらまた殺し屋を雇ったらしく相当の腕利きだそうです。」

 

「彼がこっちに来るのも時間の問題ね。とりあえずモモさんはナナさんに連絡しておいてちょうだい。七原君もヤミさんと芽亜さんに伝えておいてね。」

 

「了解しました」

 

「はい。」

 

「七原君。その……ヤミちゃんと芽亜さんんをよろしくね。」

 

「任せてください」

 

「じゃあ私達は戻るわね。これから自由時間だから有意義に過ごしてね。」

 

御門先生はそう言ってティアーユ先生と共に部屋に戻っていった。

 

「私も用があるので先に戻りますね。」

 

「はい。お気を付けて」

 

モモも急ぐように部屋に戻っていった。

一方、大夢はいつものようにゆっくりと部屋に戻っていった。部屋に戻ると芽亜は部屋着、ヤミはパジャマにそれぞれ着替えていた。

 

「ヒロ君おかえりー。」

 

「芽亜。今何時?」

 

「9時ちょっと過ぎかな。」

 

「もうそんな時間か。二人は風呂入ったのか?」

 

「私は先に入らせていただきました。」

 

「私まだ入ってないよー」

 

「じゃあ芽亜。先に入るけどいいか?」

 

「それなら一緒に入る?」

 

「時間的にはギリギリだが、そうするしかないか」

 

「芽亜。気を付けてください。彼は結城リトと同類です。何をしでかしてくるかわかりません」

 

「安心しろ。俺はリト殿ほど何もないところで転けないし、ダイレクトに突っ込んだりしないよ。」

 

「でも私慣れてるから別にいいんだよね……」

 

結局成り行きと時間の関係で芽亜と入ることになってしまった。

 

「芽亜ー。入るぞー」

 

「いいよー」

 

ガチャっ

 

「……やっぱり恥ずかしいな」

 

「そう?私は別にそうでもないんだけど」

 

「……まぁいいや。先に体洗ってもいいか?」

 

「じゃあ私が背中流してよっかー?」

 

「別にいいけど芽亜は体洗ったのか?」

 

「まただよ。ヒロ君のが終わったらやってもらおーかなー」

 

「は!?なんでそうなる!?」

 

「だってこれでおあいこでしょ?」

 

「あー!もういい!さっさと頼む!」

 

「はーい♪」

 

芽亜は慣れたような手つきで大夢の背中を流していく。大夢は顔を真っ赤にしながら俯いていた。

 

「ヒロ君どう?」

 

「どうって……まぁいい感じかな」

 

「それなら良かった♪」

 

「俺はもういいよ。次は…俺か……」

 

「ちゃんと洗ってくれないとダメだよ~」

 

「わかってるよ。それじゃ、いくぞ」

 

大夢は相変わらず顔を真っ赤にしたままで芽亜の背中を流していた。

 

「よし!これぐらいでいいかなー。」

 

「もう終わりなの?」

 

「当たり前だ。俺は早く出たいし。先に出てるからな」

 

大夢が脱衣場に向かおうと立ち上がった瞬間大夢の腰に巻いていたタオルがほどけ、彼の下腹部が露になってしまった。

 

「ヒロ君も意外とケダモノだね~」

 

「馬鹿!どこ見てんだ!」

 

「もうちょっとよく見させて!」

 

「なにいってんだ!もうでるぞ!」

 

芽亜に強く促すと少し不満げな顔で脱衣場へと向かっていった。

 

着替え終え部屋に入るとヤミはベッドに腰掛け腰掛けながら読書をしていた。

 

「ずいぶん遅かったんですね。芽亜にエッチいことでもしてたんですか?」

 

「してねーよ。てか、逆にされかけたんだけど」

 

「私ヒロ君にエッチいことしたかな?」

 

「自覚がないだけだろ」

 

「私もう寝ます。今日は疲れたので」

 

「あ、待ってくれ。話があるんだ。芽亜にも関係あることなんだけど」

 

「なーに?」

 

「それなら知ってますよ。この近くに異星人が潜んでるかもということでしょう。」

 

「知ってんなら話が早い。近いうちにナナ姫かモモ姫を狙ってくる可能性が高いから頭に頭に入れといてくれよ。」

 

「貴方言われるのは癪ですが、わかりました。」

 

「正体とかはわかってるの?」

 

「ヤミは知ってるけど芽亜は知らないだろうな。」

 

「誰なの?」

 

「ラコスポだ。ヤミはわかるだろ」

 

「あの男ですか……」

 

「ヤミお姉ちゃんと関係があるの?」

 

「ララ姫と結婚するために邪魔だったリト殿暗殺をヤミに依頼した張本人だ。結局奴はヤミに虚偽の情報を伝えのが原因でヤミから裏切られ、ララ姫にもボコボコにされた哀れなやつだよ。」

 

「そーなんだ……」

 

「でも、今回はかなり凄腕らしいぞ。どうする?見回りでも行くか?」

 

「その必要はありませんよ。どうやらドクターミカドが旅館全域に異星人の侵入を防ぐバリアを張ったみたいですから。」

 

「あの人……そんなこと言ってなかったぞ。」

 

「このことはモモちゃんやナナちゃんに伝わってるの?」

 

「伝わってるよ。ただ、ラコスポが現れるとしたら明日になるだろうな。」

 

「どうしてわかるの?」

 

「奴の性格的にそう思っただけだよ。それよりそろそろ寝るぞ」

 

「私は先に寝ます。おやすみなさい」

 

「おやすみ~。ヤミお姉ちゃん」

 

普段は寝ないヤミだが、今日は珍しく寝息を立てながら寝ていた。

 

「俺らも寝るぞ」

 

「ヒロ君ベッドじゃなくて大丈夫?私は別に一緒に寝てもいいんだけど」

 

「気持ちは嬉しいけどいいよ。俺はソファーで寝るから。じゃ、消すぞ。」

 

「うん。おやすみ」

 

部屋の電球が消えたと同時に一気に来た疲れと眠気ですぐに眠りの世界に落ちてしまった。

 




まだまだ臨海学校編は続くのでよろしくお願いいたします!


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臨海学校part2

今回は短くしてみました。


「あっつい……」

 

真夏の青い空に光り輝く太陽、果てしない水平線が続く青く澄んだ海、水着を着ながら戯れる少年少女達。

 

臨海学校二日目は日没まで海水浴という

とてもフリーダムな日程だった。

 

「……旅館に戻るか。することないし」

 

それに旅館に戻ればこの無駄な時間を睡眠にあてることができるしな。そんなことを心の中で思いながらひきかえそうとすると、

 

「ヒロ君どこいくの?」

 

とても悪いタイミングで芽亜とヤミが来てしまった。しかも水着姿で。

 

「ちょっとトイレに……」

 

「トイレは向こうだよ。」

 

「あー、あっちか。じゃ、ちょっくら行ってくる」

「私も行きます」

 

「じゃ、私待ってるねー」

 

最悪だ。まさかヤミが一緒についてくるとは思わなかった。だが、まだトイレまでの道中だ。チャンスが無いわけではない。隙を見図れば……。

 

「何か企んでますね」

 

「どうしてそう思う?」

 

「顔に書いてあるからですよ。早く旅館に帰りたいと。」

 

どうやら見透かされていたようだった。ホント、ヤミは手に負えないやつだと改めて実感したな。

 

「はぁ……。バレてたか」

 

「貴方がわかりやすいんですよ」

 

「俺はお前みたいにポーカーフェイスを保てないんでね。まぁ、そんなことはどうでもいい。お前俺に話があるからついてきたんだろ?」

 

「よくわかりましたね。流石です」

 

「それくらいはわかるさ。で話ってなんだ?」

 

「ラコスポが雇った殺し屋についてです」

 

「へぇ……興味深いな。誰なんだ?」

 

「私と同じ殺し屋…通称‘’クロ‘’です」

 

「クロかぁ……。厄介な相手だな」

 

「はい。ですから今は……下手に動かず相手の出方を待つのが得策でしょう……」

 

「だな。ドクターミカドやティアーユ先生にも伝えておけよ。芽亜達には俺が伝えておくから」

 

「わかりました」

 

「とりあえず戻るか。芽亜達が心配してるしな」

 

ヤミを連れて芽亜達と合流するとモモ姫やナナ姫も合流していた。

 

「二人とも遅いよー」

 

「悪い。意外と混んでてな。それで何するんだ?」

 

「ビーチバレーとかでいいんじゃないか?一応あたしボール持ってるし」

 

「あらナナにしてはいい考えじゃない」

 

「なんだよモモ!その言い方は!」

 

ナナとモモが喧嘩を始めた瞬間大夢は深くため息をついた。

 

「デビルーク王家始まって何回目の喧嘩だろうな」

 

大夢は王宮で彼女らの喧嘩を嫌というほど見てきた。その場で止めたり、時にはザスティンやララ姫と一緒に止めたりと大変な思い出しかなかった。

 

「モモ喧嘩はよくないですよ」

 

「ナナちゃんも喧嘩はダメだよ」

 

ヤミと芽亜がそれぞれモモ姫とナナ姫の説得に回る。これが本当に仲の良い姉妹なんだと実感した。

 

やがて二人も仲直りしたところで俺達は日没まで海を満喫した。

 




次回はなるべく早く投稿できるように努力します


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臨海学校part3

今回も色々おかしいですがよろしくです!


臨海学校もいよいよ2日目の夜になろうとしていた。生徒達は一日中海ではしゃいで疲れているはずなのにむしろさらに盛り上がってるようにも見えた。何故なら、これから男女が二人一組でペアになって肝試しが行われるからだ。

 

「それでは今から肝試しのペアをくじ引きで決めまーす!各クラス男女それぞれでくじを引き同じ番号同士がペアになります!」

 

みんなが前に置かれた抽選箱に一列に並んだ。そして大夢の番が回ってきた。

 

「(まぁ、誰とでもいいよな。じゃあこれで)」

 

「ヒロ君何番?」

 

「42番。芽亜は?」

 

「16だよ。42番は確かヤミお姉ちゃんだっかな」

 

「そうなんだ。てかお前順番早いからもう行ったほうがいいんじゃないか?」

 

「そうだね。じゃあ行ってくるね」

 

芽亜を見送ってからヤミを探しに向かった。彼女をなんとか見つけたものの、ヤミは浮かない顔をしていた。

 

「ヤミ!やっと見つけた。お前番号いくつだ?」

 

「?42ですが。」

 

「じゃあ行くぞ。もうすぐ俺達なんだ」

 

「え?」

 

ヤミは訳のわからないといった顔をしながら大夢に手を引っ張られるままに肝試しに出発した。

 

 

とにかく暗かった。先が見えない道を歩くというのは少し抵抗があった。出発地点から約1キロ歩いたところの境内がゴールである。距離としてはさほど長くないのだがところどころ特殊メイクに変装した旅館の従業員がおどかしてきたりする。大半の生徒はびっくりして戻ってしまっている。

 

「みんな戻ってるけどそんなに怖いか?」

 

「いえ、全く」

 

「まぁ、そうだよな。これだったらセフィさんがキレたほうが100倍怖い」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。ギドでも手に負えないからな」

 

苦笑いしながら大夢が語る。彼自身も恐ろしさをよく知っている。

 

出発してから少し歩くと芽亜の姿があった。こちらに気づくと笑顔で向かってきた。

 

「芽亜。パートナーはどした?」

 

「わかんない。知らないうちに逃げちゃったみたい」

 

「仕方ない……。一緒に行くか」

 

「うん!」

 

パートナーが逃げてしまった芽亜と合流し、再び境内を目指すと、さっきまで黙っていたヤミが口を開いた。

 

「近くに何かいますね……」

 

すると突然地面が揺れだし、いつのまにか空中にいた宇宙船から何かが降りてきた。

 

「なにあれ?」

 

「げっ。あの宇宙船……。ってことは」

 

「ラコスポですね……」

 

案の定宇宙船から降りてきたのはラコスポだった。低身長に太った体、お世辞にもイケメンとは言い難い顔。誰が見てもどこかの国の王子とは言えない容姿だった。

 

「ジャジャーン!ラコスポただいま参上だもん!」

 

「ヒロ君誰だかしってる?」

 

「まぁ一応」

 

「この僕を知らないなんて非常識だもんね!」

 

「貴方を知ったところで得はしませんが」

 

「う、うるさいんだもんね!こーなったら……出てこい!ガマたん!」

 

突然ラコスポの宇宙船から特大サイズのカエルが降りてきた。

 

ちょうどそのとき地鳴りを聞きつけてやってきたナナとモモが合流した。

 

「あれは……イロガーマ!?」

 

「ナナ知ってるの?」

 

「あいつ前に来たときもイロガーマを連れてたんだ」

 

「大夢さん!」

 

「モモ姫!それにナナ姫!」

 

「ヒロム!どうしてラコスポがここにいるんだよ!」

 

「わかりません。しかし今回の目的はララ姫ではないようです」

 

「その通りだもんね!そのために今回は協力な助っ人を呼んだもんね!」

 

突然木陰から黒い弾丸が大夢に向かって撃ち込まれた。大夢はトランスで弾丸を防ぐも数メートル程吹っ飛んだ。

 

「ぐっ!相変わらずいい弾丸だな。クロ!」

 

「こんなところで死神に出くわすとはな……」

 

木陰から出てきた男がクロである。真っ黒の戦闘服に身を包み黒い装飾銃を使いこなし、銀河でも危険人物とされるほどである。

 

「久しぶりだな。お前がラコスポの助っ人というやつか?」

 

「違うな。俺はやつに雇われたりしない。ここに来たのはある任務のためだ」

 

「ってことはラコスポのハッタリ……」

 

「ぐぬぬ……こうなったら……出てこい!ガマたん!」

 

突然ラコスポの宇宙船からニャーという鳴き声がするカエルが降りてきた。

 

「イロガーマか。まだそんなのをペットにしてたのか」

 

「うるさい!みんなスッポンポンにしてやるんだもん!」

 

「メア!危ない!」

 

辛うじてイロガーマの粘液から芽亜を救ったナナだったが、粘液の一部がナナの服に飛び散り溶けてしまった。

 

「ナナ!」

 

「ナナちゃん!大丈夫?」

 

「イテテ……。なんとか……」

 

「ナナ姫。お下がりください。後は俺がやります」

 

「俺も加勢させてもらうぞ」

 

「みんなはここで待っていてください。俺とクロでやつを叩きます」

 

するとクロの装飾銃が赤のオーラを纏い出した。

 

「俺の精神エネルギーをすべてこいつに注ぐ。つまりは本気だ。お前も本気をだしたらどうだ?」

 

「そうだな……。久しぶりに全開でやるか」

 

大夢は目を閉じ、精神を集中させる。体全体を落ち着かせ、一気に力を溜め込む。

 

「これぐらいでいいかな」

 

力を溜め込んだ大夢の姿はもはやいつもの大夢ではなかった。

 

「お父様……?」

 

「ヒロムが……父上に見える……」

 

モモや、ナナには大夢の背中が実の父親であるギド・ルシオン・デビルークに見えてしまった。

 

「ヒロ君……?」

 

「…………。」

 

芽亜やヤミも同じく驚いた表情だった。

特に芽亜が驚いていた。数えきれないほど一緒に戦ったりしたがこんな姿は一度

もしなかった。

 

「行くぜ。ラコスポ」

 

「……散れ……銀河の果てへ……」

 

クロが撃った真っ赤な弾丸はイロガーマを貫き爆発した。爆発したと同時に大夢は一瞬でイロガーマを真っ二つに切り刻んだ。

 

「まだあるぞ」

 

クロはもう一発の弾丸をラコスポ目掛けて放った。空中にいる大夢はトランスで大砲を作り、クロの弾丸に上乗せするように放った。

 

「あ~~れ~~だも~ん!」

 

弾丸を浴びたラコスポは宇宙船をも貫通し、星になった。大夢が地上に降りるとクロの姿はもうなかった。

 

「死神によろしく。と言ってました……。殺し屋クロ……大夢さん。彼は一体何者だったんですか?」

 

「あいつは俺と同じだった。そういうことですよ」

 

「何だよヒロム。ちゃんと説明しろよ」

 

「つまりは命知らずということですよ。クロも同じこと思っているはずです」

 

説明を終えた瞬間大夢は地面にうつ伏せに倒れこんでしまった。

 

「!?大夢さん?」

 

「お、おいヒロム!」

 

「ヒロ君……?大丈夫!?」

 

「しっかりしてください!」

 

旅館に向かう林道には一人の少年を心配する少女達の声が響きわたるだけだった。

 




こんな出来の悪い作品を読んでくださる全ての読者に感謝です!


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臨海学校 終結

やっと臨海学校が終わります


旅館のカーテンの隙間から朝の日差しが零れる。時刻は5時半。起床時間までまだ時間がある。

 

「散歩でもするか……」

 

体を起こそうと布団をめくり上げると二人の少女が隣で寝ていた。

 

「え?なんで?」

 

彼は焦りながらもゆっくり記憶を辿っていく。クロと一緒にラコスポを倒したあと頭が真っ白になったまでは覚えているがそこから先は全く覚えていなかった。

 

「でもなんで芽亜とヤミが…………ん?なんだこれ」

 

机においてあったメモ用紙にはドクターミカドの字でこう書かれていた。

 

「七原君へ。今回あなたが倒れた原因は過労。つまりトランス能力の乱用。もう少し使っていたら身体だけではなく精神にも影響があったかもしれない。こちらの方でも出来る限りの治療はしました。今日は最終日なので学校に着き次第、私の診療所に来なさい。それと芽亜さんやヤミちゃんはあなたを心配してくれています。モモさんやナナさんも同様です。必ずお礼を言うように。御門先生より。」

 

思えばどうやら上半身に包帯を巻いてくれたようだ。

 

「そっか……みんな心配してくれたんだな」

 

思わず涙が出て来てしまった。死にかけたわけでもないのにこんなに心配してくれる人は他にはいない。改めて俺は幸せ者なんだなと強く思った。

 

「どうして泣いているのですか?」

 

突然ヤミが聞いてきた。どうやら少し前に起きていたらしい。

 

「どうして……か。平たく言えばみんなが俺を心配してくれたことかな」

 

「たったそれだけですか?」

 

「ああ。それだけだ。俺は人から信頼されることはあっても心配されることはなかった。お前だってそうだろ?ずっと孤独だったからこそちょっとの優しさがとてもありがたく思えてくるんだ。」

 

「なるほど……納得しました」

 

「だから……ありがとな……ヤミ」

 

そう言うとヤミは顔を赤くして布団に潜ってしまった。

 

「今、言うことですか?」

 

「悪い。でも今じゃないと駄目な気がしてさ……」

 

「では……お礼として今度たい焼きを奢ってください……50個ほど……」

 

「おいおい。50は勘弁してくれよ」

 

「冗談です……。でも奢るのは確定ですから」

 

「はいはい。わかったよ」

 

その後芽亜も起こし、三人で旅館の食堂へと向かった。朝食の時間も迫っているせいか、かなり混雑していた。

 

「先に朝飯とってきていいよ。席はとっておくから」

 

「じゃあお願いねー」

 

二人と一旦別れたあと空いている席がないか探していると五つ空いている席があった。

 

「ここで待つか……」

 

座り始めて数分も経たないうちに教師二人がこちらへやって来た。

 

「相席してもいいかしら」

 

「ええ。どうぞ」

 

「ごめんね。七原君空いている席が見つからなくて……」

 

「大丈夫ですよ」

 

「早速だけど昨日何があったのか教えてちょうだい」

 

「ミカド!」

 

「いいんですよ。ティアーユ先生」

 

大夢は御門先生に思い出せる範囲で説明した。

 

「なるほどね……それは恐らく……」

 

「え?」

 

「やっぱりなんでもないわ。続きは診療所で説明するわね」

 

そう言って御門先生とティアーユ先生は席を離れて行ってしまった。その直後芽亜とヤミがやって来た。

 

「ヒロ君ドクターミカドとなに話してたの?」

 

「そう言えばティアもいましたね。何を話してたのですか?」

 

「別に大したことじゃないよ」

 

「本当に?昨日あんなことがあったのに」

 

「怪しいですね……」

 

「本当に大したことじゃないよ。じゃ、俺先に部屋に戻ってるから」

 

そう言って大夢はさっさと部屋に戻ってしまった。芽亜とヤミは互いに顔を見合わせたまま大夢の後ろ姿を見送ることしかできなかった。

 

 

数時間後バスで彩南町へと出発した。バス内は行きと同じように雑談を楽しむ者、疲れを睡眠で癒す者、携帯ゲームに勤しむ者など様々だった。因みに大夢は行きと同じで一番後ろの席でメンバーもモモ、ナナ、芽亜、ヤミと同じだった。

 

「芽亜、俺暫く寝るから彩南に着いたら起こしてくれ」

 

「うん、わかった」

 

芽亜にそう告げると大夢はすぐに寝てしまった。

 

「よほど疲れたのかな……」

 

「まぁ、そっといといてあげたほうがいいんじゃないか?」

 

「そうみたいね」

 

「…………。」

 

あれから小一時間が経ち彩南の町が姿を表したところで大夢が起きた。

 

「ん……もう彩南か……」

 

周りを見渡しても起きている生徒はヤミぐらいしかいなかった。

 

「寝なかったのか?」

 

「私には短時間の睡眠というのは必要ないことですから」

 

「そっか。でもしっかり寝ないと駄目だぞ?」

 

「あなたに心配されるほどではありません」

 

「はいはい。わかってるよ」

 

彩南高校に着いたときには大半の生徒が目を覚まし帰宅の準備をしていた。

 

「芽亜、俺は寄るとこがあるから先に帰ってて」

 

「うん……」

 

起きたばかりで眠いのか、目を擦りながら返事をした。

 

生徒の点呼が終わり、一斉解散になった。大夢は人混みに押し流させながらもなんとか校門についた。

 

「さて、行くか……」

 

学校から診療所まではかなりの距離があるため、トランスで行くことにした。

 

「え?なんで?」

 

突然トランスの翼が消えてしまった。なんとか地面には降りたが歩きで行くことになってしまった。

 

診療所に着いたときには辺りは暗くなり始めていてこの診療所もより一層不気味に見えた。

 

「ドクターミカド。入りますよ」

 

「…………。」

 

返事がない。不審に思いながらもドアノブを捻るとなにやら強いエネルギーが体全体に伝わってきた。

 

「また何か変な実験でもしてんのかな……」

 

エネルギーを感じた方向に行くと案の定変な実験をしていた。

 

「あら、来てたのね」

 

「さっき来たばっかりですよ。一応呼び掛けはしましたが」

 

「ごめんなさい。周りがうるさくて聞こえなかったわ。まぁいいわ。それよりこのカプセルの中に入ってくれる

?」

 

「わかりました」

 

カプセルの中に入ると海の中で息ができるような状態になった。

 

「ドクターミカド。これは一体?」

 

「これはトランス兵器専用回復カプセルよ。以前ヤミちゃんも怪我したときこの中に入ってたわ」

 

「そう言えば今日トランスが全く使えないんですが」

 

「恐らくそれは疲労ね。このカプセルは疲労回復とトランス能力の回復が目的なの。あと10分そのままね」

 

「今日はお静さんはいないんですか?」

 

「買い出しに行ってるからいないわ」

 

 

10分が経ち、カプセルから降りると、

 

「疲れがない……」

 

試しにトランスも使ってみるが全く支障はない。

 

「すごいですね」

 

「ティアが製作したのよ」

 

「ティアーユ先生が?」

 

「ええ。トランス兵器研究所にあった培養カプセルを一から改造して作ったの。あの子生物以外にも機械に強くてね」

 

「そうなんですか……」

 

大夢はまじまじとカプセルを見つめる。あの先生はこんな質の高いものを作れるのかと、心底感動してしまった。

 

「もう遅いから、そろそろ帰りなさい。治療代は今回はいいわ。私から呼び出したから」

 

「ありがとうございます」

 

大夢は御門先生先生に一礼してから診療所を後にした。

 

「あっ。芽亜に連絡入れないと……」

 

「私ならここにいるよ」

 

「お前……付いてきてたのか……ヤミもいるし」

 

「文句があるんですか?」

 

「そういうことじゃねぇよ。それより帰るぞ」

 

すると突然大夢の頭上に巨大な岩が飛んできた。

 

「ヒロ君!危ない!」

 

「ヒロム!」

 

大夢は振り向き様に右手を素早く刀にトランスさせて岩を切り裂いた。岩は木っ端微塵に砕けちった。

「ヒロ君大丈夫?」

 

「切り裂いたからなんとか大丈夫だ。それにしても上から仕掛けるかよ普通」

 

そう言いながら真っ黒な空を見上げる。空には星が点々としていて晴れているせいか、月も見える。

 

「(今の攻撃……恐らく銀河でも彼しか……)」

 

「ヤミお姉ちゃんどうしたの?」

 

「なんでもないですよ」

「それならいいんだけど……」

 

「二人とも何やってんだ。置いてくぞ」

 

なんだかんだで俺たちの思い出の1つとなった、臨海学校は終了した。

 

 

 

 

 




ティアーユ先生の「機械に強い」というのはオリ設定です。あと次回オリキャラ出したいと思います


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転校生編 新たなる刺客

前から言っていたオリキャラ登場です。テスト近い……


7月中旬相変わらず暑さは続く中彩南高校一年B組に衝撃が走った。今日はヤミは来ていない。恐らくサボりだろう。

 

「転校生?」

 

「うん。なんかかなりの美少年らしいよ」

 

「変な奴じゃなければいいけど……」

 

するとチャイムと同時にティアーユ先生が転校生を連れて教室に入ってきた 。

 

「それではHRを始める前に転校生を紹介します」

 

「初めまして長月奏と申します。これからよろしく」

 

自己紹介が終わった瞬間教室がわっと盛り上がった。

 

「キャー!かっこいい!」

 

「すげえ……かっこいい……」

 

「あの子本当に日本人?かっこよすぎでしょ!」

 

女子はもちろん男子も感嘆の声しか出なかった。しかし大夢は彼をどこかで見たような覚えがあった。

 

「あいつ……まさか銀河警察の……」

 

大夢がそう呟くと長月奏は大夢に向かってウインクしてみせた。その瞬間クラスの女子ほとんどが鼻血を吹き出した。

 

「それでは皆さん長月君と仲良くしてくださいね」

 

ティアーユ先生が教室を出た瞬間女子ほとんどが長月に押し寄せた。

 

「どこから来たんですか?」

 

「好きな食べ物ってなんですか?」

 

「好みのタイプ教えて!」

 

案の定クラスの女子のほとんどが長月の周りに集まり質問攻めをしていた。男子達はその光景を妬ましく見ていた。大夢も同じように彼を見ていた。

 

「妬いてるの?」

 

「まさか。そんなんじゃないよ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「いや……続きはまた今度にしよう」

 

 

 

 

~昼休み~

 

昼休みも相変わらず長月は女子に囲まれていた。恐らく昼飯の誘いだろう。そう思って大夢が昼飯を買いに教室を出ようとすると、突然呼び止められた。

 

「七原君。昼御飯買いに行くのなら僕もご一緒させてもらってもいいかな?」

 

「あいつらはいいのか?」

 

「うん。断ってきたから。それに君とは一度話してみたかったんだよね」

 

彼は不気味な笑みを浮かべる。その不気味さに不安を覚えながら一緒に購買に向かった。買い終えたあとは学校の中庭のベンチに二人揃って腰かけた。

 

「何年ぶりかな。こうやって君と話すのは」

 

「さあな。結構経つんじゃないのか?」

 

「まぁ初めて会ったのが麻薬組織の壊滅作戦のときだったからね」

 

「だいぶ前だな。いつの話だよ」

 

「僕が銀河警察の遊撃隊に入隊して少し経ったころだから……6年前かな……」

 

「時間が経つのは早いもんだな」

 

「だな…………」

 

その後は二人ともずっと黙ったまま時間が過ぎていった。

 

「そろそろ失礼させてもらうね。色々話せて楽しかったよ」

 

「ああ。じゃな奏」

 

「うん。またね」

 

奏はまた不気味な微笑を浮かべながら去っていった。奏が去ったあと大夢も教室に戻ろうとしたら建物の陰からひょこっと芽亜が現れた。

 

「聞いてたのか?」

 

「ごめんね。盗み聞きするつもりはなかったんだけど……それで何話してたの?」

 

「別に。ただの思い出話だよ。大したことは話してない」

 

「そうなんだ。……そう言えばヒロ君と長月君はどこで知り合ったの?」

 

「戦場だ。もうこの話はいいだろう。さっさと教室に戻るぞ」

 

話を途中で切ると大夢はその場から逃げるように去っていった。

 

~放課後~

 

「ヒロ君帰ろー」

 

「おう。行くか」

 

大夢と芽亜が教室を出たあとも奏はクラスの女子に囲まれていた。多分遊びとか一緒に帰ろうとかの誘いだろう。

 

そして帰り道。時刻は5時半を回ろうとしていた。辺りはまだ明るく公園には元気に遊ぶ子どもが見かけられる。

 

「長月君すごいねー。女の子にモテモテって感じだね」

 

隣で歩く芽亜が呟く。大夢も転校初日はわいわい騒がれたが、当時は大夢のコミュニケーション能力が乏しかったため、同性の親しい友人など一人もできなかったのだ。

 

「他の男子はすごい殺気だしてたけどな」

 

「少しゾクッと来ちゃったかも」

 

「やめろ。マジで洒落になんないから」

 

過去にも彼女のスイッチが入ってしまったときは大夢一人では手に負えないほどだった。

 

「冗談だよ♪」

 

「冗談ならいいけどさ」

 

芽亜の冗談だという発言に少しホッとした大夢だったが、自宅のマンションに近づくにつれ、強いエネルギーが体を襲ってくる。

 

「ヒロ君これ……何?」

 

どうやら芽亜もその強いエネルギーを感じ取ったらしく体を震わせていた。

 

「わかんない。今までとは違う感じだ。気をつけろよ」

 

「ヒロ君!後ろ!」

 

芽亜が気付く数秒前に大夢は飛んできた短剣を素早く弾き、臨戦モードに切り替えた。

 

「……気配が無くなった?」

 

不思議なことに大夢が臨戦モードに切り替えた瞬間強いエネルギーは弱くなり、気配も消えた。

 

「なんだったの?」

 

「わかんない。でも狙いは完全に俺か芽亜、または両方だった。」

 

「でも方向的にはヒロ君だったよ」

 

弾かれた短剣を拾いながら芽亜が言う。

 

「何か恨まれるようなことしたの?」

 

「俺は全然身に覚えがない。むしろ芽亜じゃないのか?」

 

「昔ならよくやったけど……最近はないよ」

 

「とりあえず今日はもう帰ろう。また襲ってくるかもしれないし」

 

「うん。そうだね」

 

 

彼は知らなかった。短剣を投げた本人が数百メートル後ろにいることを。

 

「次は逃がさないよ……大夢」

 




ヤバイなテスト勉強してない……来週なのに……


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長月奏という人物

テストなとが重なり投稿が遅れてしまい申し訳ないです。


事件から一夜明けた翌日の土曜日。朝起きても大夢はまだ昨夜の事件のことを鮮明に覚えていた。完全に死角から放たれた短剣、少し遅ければ大夢は確実に死んでいた。

 

「今何時だっけ……」

 

重い体を起こしながらアラームの鳴る電波時計へと手を伸ばす。時刻は7時ちょうど。隣を見ると芽亜はもういなかった。

 

「そういや昨日、明日は朝早くから出かけるっていってたっけ……」

 

昨日の夕飯のときにそんな事を話してたなと思い返してみる。

 

「どこへ行くかも言っていなかったな……」

 

芽亜のことだ。どうせどこかで遊んでるのだろう。とりあえず家にいても仕方ないので着替えてランニングに行くことにした。

 

 

河川敷を過ぎてから自然公園の入口辺りで奏と会った。

 

「おはよう。奏」

 

「大夢か。おはよう。朝早くから散歩かい?」

 

「まぁ……そんなところかな。家にいても暇だしな」

 

「じゃあ、僕と殺り合う?暇なんでしょ?」

 

「別に構わない。本気で来いよ」

 

「冗談だよ笑。君と殺し合うのはまだ早いからね」

 

「どうゆうことだ?」

 

「そういうことだよ。じゃあね」

 

奏が言ったことに大夢はまだこのときは理解ができていなかった。

 

自然公園を出て住宅街から市街地へ出た。さすがに休日ということもあって結構賑わっていた。大夢は特にどこの店にも入らずただぶらぶらと街を歩いていた。駅に差し掛かったところで見覚えのある少年少女がおいかけっこをしていた。いや、正確には少年が少女から逃げていた。

 

「えっちいのは嫌いです……」

 

「うわああー!殺されるー!」

 

その少年少女とはリトさんとヤミだった。どうせまたリト殿がヤミに何か変なことをしたんだろう。やれやれといった顔で一瞬ヤミとリトの間に入った。

 

「はい、ストップ!鬼ごっこはそこまでだ」

 

「大夢!」

 

「大夢。邪魔をするならあなたも殺しますよ」

 

「そう簡単に殺すという言葉を使うな。リトさんがヤミに何をしたのかなんて知らないけど、街中で暴れるのはよくないぞ」

 

事の発端はやはりリトさんがヤミに破廉恥な行為をしたのが原因だった。勿論リト殿も不可抗力で決してわざどではない。ただコケる癖が一向に治らないためこのようなことが起きてしまっている。

 

「ヤミ、とりあえず今回は俺に免じてリト殿を許してやれよ。リトさんだって反省してるし」

 

「ですがこの男のセクハラは既に能力の域に達しています。今のうちにつぶさないと」

 

「つぶす!?」

 

「落ち着け。仮に能力だったとしても発動されなければ意味はないんだから」

 

「仕方ないですね……今回だけですよ……」

 

「サンキュ。あとでたい焼き奢ってやるよ」

 

「20個ほどでお願いします」

 

「わかったよ」

 

ようやくヤミを納得させた大夢はベンチに腰掛け、ゆっくり深呼吸をした。

 

「ごめんな大夢。俺が悪いのに庇ってもらって」

 

「いいんですよ。これくらい」

 

「それより芽亜は一緒じゃないのか?」

 

「ええ。朝から出かけてていないんですよ」

 

「そうなんだ。珍しいな」

 

「でも芽亜のことなんであまり心配はしてないです」

 

「はは……」

 

リトさんが苦笑いしながら時計を見ると少し慌てるような素振りを見せた。

 

「もうこんな時間か。ごめん大夢、俺先に帰るね」

 

「了解しました。では後ほど」

 

大夢はまた一人になってしまった。特に行くところもないので帰ることにした。

 

家に着いても芽亜はまだ帰ってなかった。じっとしていても仕方がないのでデビルークに繋いでライブチャットをすることにした。

 

「昼間からなんだ?」

 

案の定いつもより機嫌の悪い声でデビルーク王が応答した。

 

「長月奏という人物をしってるかい?」

 

「長月?ああ、知ってるさ」

 

「そいつの経歴ってどうなってるんだ?」

 

「俺が知るわけねえだろ。だが、最近こんな噂が広まってんだ」

 

「どんな噂だ?」

 

「長月が広域有名マフィアの一団を一夜で殲滅したという噂と最近こっちで話題になってる科学者の連続暗殺事件の噂だ」

 

「どっちも惨いな。こっちでもしらべておくか」

 

「だが、あくまで噂だ。あまり深入りはするんじゃねーぞ」

 

「わかったよ。昼間から悪いな。サンキュ、ギド」

 

「全くだ」

 

通話が終了した。短い時間だったけど少なからず収穫はあった。有名マフィアの殲滅、科学者の謎の暗殺。二つとも最近の出来事だったらしく、詳細はすぐにわかった。

 

「マフィアの殲滅は総勢120人を一人残らずか……科学者は13人……」

 

これだけの人数を殺すには一人ではトランス兵器以上の戦闘力が無ければ出来ないことだった。

 

「調べものか?」

 

「ネメシスか……なんのようだ?」

 

ネメシスという褐色肌の幼い少女は突然ダークマターを纏いながら現れた。

 

「久し振りだな。大夢」

 

「そっちこそ。最近現れないから消えたかと思ったよ」

 

「暫く会わないうちに随分生意気なことが言えるようになったんだな」

 

「で、用件は?」

 

「遊びに来ただけだ。芽亜はいないのか?」

 

「芽亜は出掛けてる。もうすぐ帰ってくるんじゃないのか」

 

「ただいまー!ヒロ君帰ったよー」

 

「ほう……噂をすればなんとやらだな……」

 

「お帰り芽亜。遅かったな」

 

「久し振りだな。芽亜、お邪魔してるぞ」

 

「久し振りー。ネメちゃん」

 

「で、何かわかったのか?」

 

「全然。経歴すらも謎だったよ。でもマフィアと科学者の件に関してはほぼ彼の仕業だね」

 

「そっか。ご苦労様。今日はもうゆっくり休んでくれ」

 

「私もそろそろ行くとするよ。どうやら今日は遊ぶ日じゃなさそうだしな」

 

「悪いな。ネメシスまた今度な」

 

「じゃあね。ネメちゃん」

 

 

 

「さてと、ん?メールが来てる……」

 

メールの内容は奏からで今すぐ自然公園に一人で来てほしいとのことだった。

 

「罠かもしれないよ?」

 

「それでも俺はあいつの本性を知りたいんだ」

 

「…………。」

 

「心配すんな。必ず帰るから」

 

芽亜に心配されながらも大夢は奏が指定した自然公園に向かった。




次回もお楽しみに!


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奏の過去

今回はかなり短くしました。そろそろネタが無くなってきた……


「まさか、本当に来るとは思わなかったよ」

 

自然公園に着くとすぐそ

 

「なんでこんな場所を指定した?」

 

「邪魔者が来てもここなら思い切り殲滅できるだろ」

 

「はぁ……。それで何の用だ?俺と殺し合いか?」

 

「そんなんじゃないよ。話をしに来たんだ」

 

「へぇ……俺もお前に聞きたいことがあったんだよ」

 

「なに?」

 

「何の目的があってこの地球に来た?」

 

「僕の標的がこの地球に潜伏してる情報が入ってきてね。それで来たんだ」

 

「本当にそれだけの理由で地球に来たのか?」

 

「逆に理由もなしにこんなところには来ないよ。……そろそろ君にも聞きたいことがあるんだ。いいかな?」

 

「いいよ」

 

「僕の里を焼き払ったことは覚えている?」

 

「なんだよそれ」

 

「覚えてないだろうな……もし覚えていたら僕は君をここで殺していたし、当時君はトランスナイトメアに支配されていたからね」

 

「ナイトメア?」

 

「ダークネスより戦闘力が向上し、さらには全てを焼くまで暴走が止まらない危険なトランス能力だよ。君はそれを科学者達にいつの間にか投与されていたのさ」

 

「俺が……暴走……?」

 

「君が暴走したおかげでみんな死んだよ。 僕と他の子ども以外一人残らずね」

 

里を焼き払った相手が目の前にいるのに奏はとても落ち着いていた。一方大夢は奏の言葉に脳の理解が追い付かず混乱していた。

 

「だから僕はトランス能力の開発に携わった科学者を何人か殺したんだ」

 

「お前は……俺を恨まないのか?」

 

「恨みなんて全然ないよ。むしろ焼き払っってくれて正解だったよ。あの村は完全に堕ちていた。男達は酒とギャンブルに溺れ、女達はその金を工面するために、自らの身体を売った。そして金がなくなれば僕ら子どもを虐待してストレスを解消していた。酷い話だよな」

 

「…………。」

 

「そして僕はある日の夜初めて人を殺した。いつものように男達から集団で虐待を受けていた」

 

「お前以外にも子どもはいたのか?」

 

「いたよ。でも僕よりずっと小さい子達ばかりでね、でも男達はそんな事お構いなしに暴力を振ってきた。それで男達が背を向けた瞬間を見計らって近くにあったガラスの破片で男の頭を思い切り殴った。その場にいた全員が呆然としていたよ」

 

「そこから先は?」

 

「……覚えてないんだ。気づいたら建物の外にいて村が火で覆われていた。周りを見渡しても全部火の海だった。そこで僕は背中に悪魔のような黒い翼を生やした君を見た」

 

「俺が……黒い翼を……?いやそれよりなんでお前は俺にこんな話をしたんだ?」

 

「君が僕とわかり会える唯一の人物だからだよ」

 

そう言って彼は去っていった。

 

「なぁ、奏。俺はお前が一番よくわからないよ」

 

大夢の呟きは誰の耳にも届かず、風に流されていった。

 




受験だった人はお疲れ様です!志望校に無事受かれるといいですね!


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説明

上手く出来ないな……それでも楽しんで頂けたら嬉しいです


「君が暴走したおかげでみんな死んだんだ」

 

昨夜奏から言われた言葉が頭から離れずにいた。それのせいで午前中の授業はまともに聞けなかった。今日はヤミは来ているが、奏は珍しく欠席だった。

 

昼飯の時間も大夢は弁当を広げず、落ち着ける図書室へと足を踏み入れた。適当に本を何冊か取り、席へ向かうとヤミと会った。

 

「珍しいですね。あなたがここに来るなんて」

 

「ちょっとした気分転換だ」

 

そう言ってヤミの近くに座る。

 

「……らしくないですよ。今日のあなたは。……何かあったんですか?」

 

「別になんもないよ」

 

「私に嘘は通じませんよ」

 

「はぁ……わかった話すよ」

 

大夢は昨夜奏と話したことをヤミにも話した。

 

「ナイトメア……聞いたことがありませんね」

 

「俺も昨日初めて知った。どうやらダークネスより危険なトランスらしい」

 

「芽亜にその話は?」

 

「してない。だから一番あいつが心配なんだ。発動条件もわかってないしな」

 

読み終えた本を戻しながらさらに付け加える。

 

「とにかく、芽亜には俺が伝える。発動条件はわかり次第連絡する」

 

「わかりました」

 

教室に戻り、クラスメイトに芽亜の場所を問うが誰も知らなかった。そこでちょうどナナとモモが戻ってきた。

 

「メアなら屋上へ行ったぞ」

 

「何かあったんですか?」

 

「大事な話があるんです。お二方も来てくれますか?」

 

二人は同時に頷いた。

 

 

屋上のドアを開けると夏の熱い日差しが飛び込んできた。辺りを見回すと戦闘服の姿で貯蔵タンクの近くに座っている芽亜を発見した。

 

「芽亜。探したぞ」

 

「ヒロ君。それにナナちゃん、モモちゃん……。どうしたの?」

 

「お前に話しておきたいことがある」

 

ヤミの時と同様に芽亜とナナとモモに説明した。

 

「話はわかったけどなんであたし達にも話したんだ?」

 

「俺か芽亜が発動した場合すぐに駆けつけてくれるようにです」

 

「ネメちゃんには頼まないの?」

 

「ネメシスだとなにするかわかったもんじゃないし、モモ姫が嫌がる」

 

案の定ネメシスという言葉を出しただけでモモの顔色がガラッと変わった。

 

「そういえばヤミは発動の可能性はないのか?」

 

「ヤミは以前ダークネスを発動させたことにより耐性というものがついたんだと思います」

 

「それだったらヒロムさんや芽亜さんはどうなるのですか?」

 

「勿論芽亜も発動の可能性は十分にあります。ですが、条件がわからないのでなんとも言えません……」

 

キーンコーンカーンコーン

キリのいいところで昼休み終了を告げるチャイムがなった。

 

「私達次プールだからもう行くね」

 

「ああ」

 

体育はサッカーか……。最も得意で好きな球技だ。基本的に球技は何でもできるがその中でもサッカーは格別だ。少し楽しみにしながら校庭へと向かった。

 




次回で最終回かな……


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ナイトメア ~芽亜side~

いよいよ最終章です!


~芽亜side~

 

ヒロ君と別れた後私達はプールの更衣室へと向かった。幸い今日は満天の青空で最高のプール日和だった。更衣室ではナナちゃんとモモちゃんが胸の事で口論を始めたり、ヤミお姉ちゃんが拗ねたりと微笑ましい光景が見られた。着替え終えプールサイドで準備体操を始める。今日は最初の授業ということもあり自由時間になった。プールに入るとそれまで暑かった感覚が嘘のように気持ちいいくらいに冷たくなった。私はあまり泳げないのでナナちゃんやモモちゃんに泳ぎを教わったりした。グラウンドの方に目を向けると男子がサッカーをしていた。その中でもヒロ君だけは一際目立っていた。

「ヒロムのやつこんな暑いのによくあんなに走れるな」

 

「昔からだよ。体力バカっていうのもあるけど好きなことに関してはほんとに夢中になってやってたから」

 

「ただ、それのせいで周りが見えなくなることもありましたが…」

 

「あはは……確かにあったね」

 

ヤミお姉ちゃんの少し毒のある言い方に私は苦笑いするしかなかった。

 

「私は…ずっと考えていました。自分はいつまでここにいられるのか。ここにいてもいいのかと。ですが…大夢はそんな不安を晴らしてくれた。以前彼は私にこう言いました。「人間だろうが兵器だろうが進む道なんて関係ないよ。自分が信じた道を進めばいいんだよ」と」

 

「そんなことを言ったんだ…。ヒロ君らしいね」

 

「彼は本当に結城リト以上のお人好しですよ…」

 

「でも私はそんなところに惹かれたのかな。最近やっと理解できたんだよね。誰かを好きになるってことが」

 

「芽亜。それはつまり…」

 

「うん。私ヒロ君が好きみたい」

 

その時、芽亜の体が光だし、トランス能力が暴走を始めた。

 

「芽亜!?どうしたのですか!?」

 

「おい!メア!どうしたんだ!」

 

「芽亜さん!しっかりしてください!」

 

ヤミ、ナナ、モモの三人が慌てて駆け寄るがすでに芽亜はナイトメアへと取り込まれてしまった。

 

 

ナイトメアに取り込まれた芽亜の姿はダークネスとなったヤミ同様に真っ黒の過激な戦闘服に身を包んでいた。

 

「メア…なのか?」

 

「いえ…おそらくこれは芽亜ではありません」

 

「金色の闇の言うとおりだ」

 

するとどこからともなくネメシスが現れた。

 

「あれはナイトメアが芽亜の意識、そして五感の全てを乗っ取った状態だ」

 

そう説明したネメシスがナイトメアに話しかける。

 

「どうだナイトメア。今の気分は」

 

「…全てを壊したいって気分だね」

 

するとナイトメアは学校から数キロに位置にある森を一瞬で焼け野原にしてしまった。

 

「ほう…これがナイトメアの力か」

 

「ねぇ…次は何を破壊していいの?」

 

 

「メア!もうやめろ!」

 

「無駄だ。ナナ姫よ。ナイトメアとなった芽亜には今までの記憶など残っていない」

 

ネメシスの言葉通り芽亜には今までの記憶は一切無く、破壊という任務を心にプログラムされていた。

 

「仕方ないですね。力づくで芽亜をナイトメアから解放しましょう」

 

「今はそれしかないですね…」

 

「だけど、どうやってナイトメアと戦うんだ?」

 

「私が出来る限り引き付けます。その隙に攻撃してください」

 

「でも、それだとヤミさんが…」

 

「私なら心配いりません」

 

ヤミはトランスで腕を剣に変え、ナイトメアに向けた。

 

「貴女の相手は私ですよ。ナイトメア」

 

「あなたが私と一緒に遊んでくれる人?私をどこまで楽しませてくれるのかな?」

 

「ほう。金色の闇と双子の姫が相手か。ナイトメアの能力が十分に見られそうだな」

 

ナイトメアVSヤミ、ナナ、モモ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次は大夢sideとなります!ご期待ください!


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ナイトメア ~大夢side~

上手く書けない…


大夢side

 

暑い。真夏とはいえ、外は立っているだけでも汗が噴き出してくるほどだった。ここ数日は猛暑日が続くらしい。今日の体育はどうやらサッカーらしい。俺の好きなスポーツではあるが、こんな暑い日ではやる気は半減だ。

 

「そういや女子はプールか」

 

少し羨ましいと思いながらも準備運動を始めた。準備運動を終えて体育倉庫からボールを出す。今日は試合形式だったので余った奴と適当にチームを組んだ。因みに俺のチームは俺以外サッカー初心者だった。チームを組み終わったところで早速試合となった。すると奏が遅刻して校庭にやって来た。担当教師に遅刻の理由を説明し終えると俺のチームに入ることになった。

 

「遅かったな」

 

「まぁ、色々あってね」

 

「それよりお前サッカーできるのか?」

 

「少しは出来るよ」

 

「じゃあその少しに期待するよ」

 

だが彼のサッカー技術は同じクラスのサッカー部員よりも上だった。一級品のボールコントロール、狙い済ましたシュートやパス、少しだけやってたとは思えない技術だった。

 

試合が終わり、休憩の時間に入った。試合はというと全試合完封、大量得点で勝利した。みんな大夢と奏の技術に舌を巻いていた。女子のプールを覗きに行き、体育教師につまみ出される輩もいた。

 

「はぁー。暑い…」

 

「女子はプールみたいだよ」

 

「知ってる。俺もプールに入りてぇよ」

 

「入ってくれば?」

 

「馬鹿。水着が無いだろ」

 

「あ、心配するのそこなんだ。女子がいるとかじゃなくて」

 

「興味ない」

 

「でも君自身そんなことを言ってるけど実際どうなの?」

 

「何が言いたい?」

 

「言い方を変えれば君は周りの女性をどう思ってるのか。そういうことだよ」

 

「別に。特別な感情を抱いている人物とかはいないよ」

 

「ふーん。まぁ君ならそう言うと思ってたよ」

 

すると休憩終了の笛が鳴り、再びそれぞれがグラウンドに散った。

 

 

後半戦の試合が始まって数分経った頃突然女子がいるプールから閃光と爆発のような音が聞こえた。

 

「なんだ?今の音は…」

 

するとプールの方から何かが飛んできて校庭に突き刺さった。

 

「これは…ビート板?」

 

それも、かなり硬く、まるで武器のような感じだった。

 

「こんなのに刺さったら一発で死ぬな」

 

「呑気なことを言ってる場合じゃないぞ」

 

「まぁ、それもそうだね」

 

他の男子生徒が避難しているなか俺達はプールの方へと向かった。

 

プールに着くと既に戦闘は始まっていた。過激な戦闘服に身を包んだ謎の人物とヤミ、ナナ、モモの三人が戦っていた。

 

「モモ姫!助太刀いたします!」

 

「大夢さん!どうしてここに?」

 

「詳しいことはあとで話します。それより目の前の敵を…」

 

その瞬間大夢は固まってしまった。過激な戦闘服の人物の顔がはっきりと見えた。芽亜だった。綺麗な紫色の瞳は紅の色に染まり、無表情で、三つ編みも下ろされていた。

 

「モモ姫…あれは…」

 

「あれは芽亜さんじゃありません。トランス兵器ナイトメアです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次は最終回!


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ナイトメア ~終焉~

これでナイトメア編はラストストーリーとなります


「あれが…ナイトメア…」

 

姿はヤミがダークネスを発動したときとおなじように際どい黒の戦闘服に身を包んでいた。ちょっとエロい。

 

「今えっちい事を考えてましたね…」

 

「こんな時にそんな事考える余裕ないっての。それに、どうして芽亜はああなったんだ」

 

「確信はありませんが、恐らくナイトメアの発動条件は「身近な誰かに好意を持つこと」で発動されるようです」

 

「金色の闇の言うとおりだ。芽亜はお前に好意

を抱いていることを金色の闇に打ち明けた」

 

「それで…ナイトメアが発動された…」

 

「そういうことだ」

 

「でも…それならどうしてヒロムは発動しなかったんだ?」

 

「俺は小さい頃にナイトメアを発動させたときに抗体みたいなものができていてそのおかげで発動しなかったということです」

 

「とにかく今は芽亜さんを救うことが第一です」

 

「けどどうやってナイトメアから解放させるんだ?」

 

みんな焦っていた。大夢も奏もモモもナナもヤミも。どうすれば芽亜を助けることができるのか。どうすればナイトメアを打ち倒すことができるのか。すると大夢がある作戦をきりだした。

 

「…俺が芽亜の心に侵入する。そして直接ナイトメアを叩く」

 

「本気で言ってるのか?一歩間違えれば君は死ぬぞ」

 

「わかってる。けど戦うよりかはずっといいだろ」

 

「でも…そんなことをしたら大夢さんは…」

 

「そ、そうだ!死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「モモ、ナナもういいですよ。今回は彼のわがままに付き合ってあげましょう」

 

「ヤミ…」

 

「ヤミさん…」

 

「それで、私達は何をすればいいのですか?」

 

「できる範囲で引き付けてくれ。隙をみて俺が精神侵入《サイコダイブ》を使う」

 

「わかりました」

 

どうやら全員納得させることができたようだが、モモ、ナナは相変わらず心配そうだった。

 

「お二人ともそんな顔をしないでください。大丈夫ですよ。俺は必ず生きて芽亜と一緒に帰ってきますから」

 

「わかりました。必ず帰ってきてください。芽亜さんを連れて」

 

「必ず芽亜を連れてこいよな!」

 

「お二人の思い、受けとりました。行ってきます」

 

 

 

 

「待たせたな。ナイトメア」

 

「随分と長い作戦会議だね。それなのに一人で私と遊ぶつもり?」

 

「私もいますよ」

 

「僕もいるんだけどね」

 

「ナイトメア、遊び相手が三人もいるんだ。退屈だなんて言わないよな?」

 

「そうだね。じゃあ、始めようか」

 

すると、ナイトメアは目にも止まらぬ速さで大夢の目の前に現れ、大剣を降り下ろした。大夢は間一髪で避けたが、次の攻撃が大夢を襲ったが、ヤミがそれを弾きかえした。

そして弾きかえし、体制を立て直すところを狙った奏がナイトメアの懐へ剣を降り下ろし、大夢に言った。

 

「大夢!今だ!」

 

すると大夢は一瞬でナイトメアの近くへと移動し、自身とナイトメアを繋いで精神侵入《サイコダイブ》を発動させた。

 

 

~芽亜の心の中~

 

「ここが…芽亜の心の中…」

 

ナイトメアに支配されているからか、辺りは真っ暗だった。

 

「(もう少し深く潜れば何かわかるかもしれないな)」

 

そして、最深部まで潜ると鎖に繋がれた芽亜を発見した。

 

「芽亜!」

 

鎖をはずそうとするが、全くびくともしなかった。ならばと今度は鎖を破壊しようとするが、こちらも壊れる様子はなかった。

 

「こんなところに侵入者か…」

 

振り向くと大夢と瓜二つの姿をした少年がいた。

 

「なんで…俺が?」

 

「そうか…貴様は私の元主か」

 

「お前は誰だ?何故俺を知っている!?」

 

「私は…ナイトメアだ。そして貴様を知っているのも以前貴様が私を発動させたからだ」

 

「なら、何故芽亜に寄生した?俺でもよかったはずだ」

 

「単純に条件が揃っていた。それだけだ」

 

「そんな簡単な理由で芽亜に寄生したのか!」

 

「私自身も誰かに寄生しなければ生きていけないのだ。悪く思うなよ…」

 

「させない…。芽亜は俺が助ける!」

 

大夢はナイトメアに突進するが、難なく避けられてしまう。

 

「そんな速さで私を倒せるとでも?」

 

するとナイトメアは凄まじい速さで大夢との距離を詰めてきた。咄嗟に体が反応して一撃目は避けることができたが二撃目は避けきれずに腹部を切り裂かれてしまう。

 

「…っ!」

 

「一撃目はよく避けたな。だが、遅い。貴様の本来の実力であれば二撃目も避けることができたはずだ」

 

「……」

 

「もうすぐ彼女への完全支配が完成する。そのときは君も消失するだろう」

 

「完成…支配…?」

 

「言葉通りだ。彼女の肉体、精神、脳を全てナイトメアである私が支配する。それの完成間近という訳だ」

 

「……そうか。それは好都合だ」

 

「なんだと?」

 

「完全支配《パーフェクトインペル》」

 

大夢が使用したのはトランス兵器限定の支配能力で精神侵入《サイコダイブ》使用時のみ発動できる特殊能力であり、精神中の人工生命体を自身の精神の中に封印することができる。

 

「貴様…何をした…」

 

「完全支配間近のとこ悪いけどお前は俺の中に封印させてもらう」

 

「ふざけるな!私にはまだ!」

 

「どうせ芽亜の体を使って地球滅亡とか企んでたんだろ。安心しろ、暫くは寝かせてやる」

 

「……くそっ……」

 

こうしてナイトメアは大夢の中へと消えていった。ナイトメアが消えたことで芽亜を縛っていた鎖も消え、心の中も明るくなった。

 

「戻るか。精神侵入《サイコダイブ》解除」

 

~地上~

 

地上ではまだ戦闘が続いていた。奏、モモ、ナナ、ヤミの四人でナイトメアと戦っているが、いかんせん劣勢だった。

 

「大夢はまだ帰ってこないのか?」

 

「そろそろこっちも限界が…」

 

四人が諦めかけていたその時、ナイトメアの動きが突然止まり、その場に倒れ、過激な戦闘服からスクール水着に戻っていた。それと同時に精神侵入《サイコダイブ》から大夢も戻ってきた。

 

「メア!」

 

ナナが呼び掛けるが、返事がない。

 

「今はまだ気絶してます。少し時間が経てば目を覚ますと思います」

 

「良かった…メア…」

 

「大夢さんもよくご無事で」

 

「大きな怪我なくてよかったよ」

 

「馬鹿いえ怪我ならしてるぞ」

 

そう言って大夢は腹部の切り傷を見せる。かなり深くはいったようだ。

 

「そんなになるまで戦ったのですか」

 

「ヤミだってボロボロだろ。お前も芽亜のために頑張ってくれたんだよな。サンキュ」

 

「あなたのためではありません。妹の芽亜のためです」

 

「はいはい。わかってるよ」

 

ようやくいつもの日常に戻れた気がした。だが、一つだけ非日常なことがある。それは、芽亜がまだ目を覚まさないということだった。保健室に運び込み、ドクターミカドに出来る限りの治療をしてもらった。そこで大夢はみんなに二人きりにしてほしいと頼んだ。みんなは快く承諾してくれた。

 

「芽亜…」

 

保健室には大夢の声だけが響いていた。大夢は芽亜の手をしっかり握って彼女が目を覚ますのを待っている。もうかれこれ一時間経つ。ナイトメアの発動時間も短かったし、そんなに暴れていないからすぐに起きるとドクターミカドは言っていた。

 

「ん…」

 

「起きたか?芽亜」

 

「ここは…?」

 

「学校の保健室だ」

 

「また…私はみんなに迷惑をかけちゃったんだね…」

 

苦笑いしながら芽亜は窓の外を見る。放課後になってからあまり時間が経っていないため、ほんの少し夕焼けが見える。

 

「綺麗だね…」

 

「そうだな」

 

「私…苦しかったんだ。ナイトメアに支配されていてもちょっとだけ私の意識はあったんだ。でもそれさえも支配されそうで苦しかった。でもそんなときヒロ君が助けに来てくれた。自らの命を危険に晒しても私を助けに来てくれた」

 

「助けるのは当たり前だろ。だって…俺はお前の…その…パートナーなんだから!」

 

「あはは…そうだね。……恋人って言って欲しかったな…」

 

「なんか言ったか?」

 

「ううん。何でも」

 

「それよりどうする?自力で帰れるか?」

 

「ちょっと無理かな…」

 

「しょうがないな。俺がおぶってくよ」

 

「ありがと…」

 

芽亜と大夢の会話を奏は廊下でこっそり聞いていた。そした全部聞き終わったところで帰ろうとすると、

 

「もう行くのか?銀河警察の最強の刺客、長月奏よ」

 

「その呼び名はやめてくれないか?マスターネメシス。それに、俺はとっくに銀河警察をやめた身だ」

 

「やはり組織内部の腐敗か?」

 

「それもあるけどこの楽しい日常を無駄にしたくないんでね」

 

「貴様も変わった奴だな」

 

「君ほどじゃあないよ」

 

そうして二人は別れた。お互い変わってるというところはどうやら同じらしい。

 

 

 

「大丈夫?重くない?」

 

「ああ。大丈夫だ」

 

帰り道大夢は芽亜をおぶりながら家を目指していた。

 

「そう言えばナイトメアはどうしたの?」

 

「俺の精神に封印した。暫くは現れないだろう。まぁ出てきたとしても力は残ってないからまた発動なんてことは起きないと思うけどな」

 

「そうなんだ」

 

「……」

 

沈黙が訪れた。どちらも何か話題を出そうと頭をフル回転させながら考えていた。そして、

 

「ヒロ君は好きなタイプの女性ってどんなの?」

 

「俺は…好きになった人がタイプかな…」

 

「へぇ…。そうなんだ…」

 

「でも俺は一番お前がタイプだけどな」

 

そう言って大夢は顔を赤くしてそっぽを向いた。芽亜は何を言われたのかわからないような顔で困惑していた。そして何を言われたのかをようやく理解して、

 

「バカ…」

 

と呟いた。

 

「何か言ったか?」

 

「言ってないよ。それより早く家に帰ろ!みたいテレビが始まっちゃう!」

 

「わかったよ」

 

「いっけーーー!大夢号!」

 

「勝手に人を乗り物扱いするな!」

 

相変わらずどこまでも仲が良い二人だった。やはりこの二人にも共通点があるようだ。それは、どこか「変わってる」というところである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品を最後まで読んでくださった方々ありがとうごさいました!4月は出会いの季節でもあります。学校でも職場でも素敵な出会いがありますように…


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帰省

お久しぶりです!約3ヶ月ぶりの投稿になりますね!実は色々あって復活させました!アブソリュート・デュオの方と平行して進めていきたいと思います!これからもよろしくm(。_。)m


~デビルーク星~

 

「ここも変わらないなぁ」

 

相変わらず変わらない街並み。俺は今故郷であるデビルークに帰省している。理由はナイトメアの件で学校が半壊し、修理のためだ。だが、仕事など色々ある都合上2日までしかデビルークには滞在できない。因みにメアもどこかへ出掛けると言っていた。

 

「さて、まずはギドに会いに行くかな」

 

まずはデビルーク城へと向かった。

 

 

 

 

「城もあまり変わってないな」

 

昔を懐かしみながら門へと向かった。

 

「誰だ貴様?何の用だ?」

 

「デビルーク軍軍師総司令官の七原大夢。これだけ言えばわかるだろ?」

 

「し、失礼しました!中へどうぞ!」

 

門番に名前を言ったらすぐに中へ通してくれた。何年経っても俺が軍師なのは変わらないんだなぁ。

とりあえず数年前ここに来たことがあるのでその時の記憶を頼りにギドがいる場所へ向かった。ちなみにアポ無しです。

 

「どこだっけなぁ。ギドがいる部屋」

 

城の外見は変わっていなかったが、中身はすっかり変わってしまっていた。以前より部屋は増えているし、レイアウトも複雑になっていた。そしていつの間にか迷ってしまった。

 

「参ったなー。どこを行けばいいんだ?」

 

すると後ろから声をかけられた。

 

「何かお困りですか?」

 

あまりにも綺麗な声だったので振り向くとギドの妻であるセフィ・ミカエラ・デビルークさんがいた。

 

「あっ…セフィさん。ご無沙汰してます」

 

「あら、大夢くん。お久し振りです」

 

彼女はいつも通りの格好に顔をヴェールで隠していた。

 

「ところでギドは今いますか?」

 

「ええ、いますよ。案内しますわね」

 

セフィさんは普段このように優しい人ではあるが怒らせると宇宙を制覇したギドでも頭が上がらないほどらしい。

 

「娘達は元気にしていますか?」

 

「3人とも元気に過ごしておられます」

 

「そう、それは良かったわ。みんな、少し甘えん坊なところがあるから…」

 

「それならセフィさん、一度地球に降りてみられてはどうでしょうか?」

 

「そうね…。それもいいかもしれませんね…」

 

「では、姫君に連絡を…」

 

「待って!できればお忍びでいきたいのだけれど…」

 

「わかりました。手配等はこちらでやっておきますので、セフィさんは行く日程をあとで教えてください」

 

「わかったわ」

 

セフィさんとあれこれ話しているうちに大きな扉の前に着いた。その扉は他とはただならぬ雰囲気があった。

 

「この扉の向こうに私の夫がいるわ。それじゃ私はやることがあるから失礼するわね」

 

「案内ありがとうございます。セフィさん」

 

「いいのよ。これくらい」

 

普通の男性なら一発で見惚れてしまいそうな笑顔を見せ、セフィさんは行ってしまった。

 

「さて、行くか」

 

大きな扉を開けると中央に大きな椅子があり、そこにギドは腰かけていた。

 

「久しぶりだな。ギド」

 

「なんだてめぇか…。何の用だ?」

 

「相変わらずそっけないなぁ。短期間の里帰りだよ」

 

椅子に座ったままのデビルーク王は以前見たときは幼児体型だったが、今は成人男性ぐらいの体型になっていた。

 

「力、戻ったのか?」

 

「ああ、これで星1つは吹っ飛ばせるようにまで戻った」

 

「物騒なこと言うなよ…」

 

「冗談だ。それでお前はどれくらいここにいるんだ?」

 

「明日までかな。あまりゆっくりしていられないんだ」

 

「寝床はどうすんだ?」

 

「宇宙船があるから大丈夫だよ」

 

「そうか」

 

改めて部屋を見渡すととにかく広いが、よく整理された部屋だった。それに家族の写真もある。

 

「お前、結構家族思いなんだな」

 

「当たり前だろ。家族を大事にしないで父親が務まるか」

 

「ギドらしい答えだな。安心したよ」

 

「さて、俺の話はこれぐらいでいいだろう。次はお前の身の回りの事を話してもらおうか」

 

「はは…。勘弁してくれ」

 

すると突然城内に敵襲のサイレンが鳴り響き、俺達がいた部屋に一人の兵士が入ってきた。

 

「どうした?」

 

「失礼します!先程デビルーク城付近にて怪しい人物を発見し、問いただしたところいきなり攻撃を仕掛けてきて……現在軍が交戦中です!」

 

「襲撃者は何人だ?」

 

「3人です!」

 

「わかった。軍を退却させろ。後は俺がやる」

 

「はっ!」

 

「さて、ひと暴れしますか」

 

「悪いな。大夢」

 

「気にすることはないよ。ギドの手を煩わせたくなかったから」

 

「怪我するなよ」

 

「わかってるよ。じゃ、いってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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帰省その2

「あー、どこら辺だっけ?」

 

軍の部下から聞いた情報を頼りに襲撃者がいる場所へと向かった。

 

「おー、おー、やってるねー」

 

戦闘が行われていた場所は幸いにも周りに町はなく、荒れ地で戦闘中だった。

軍は20人くらいで応戦していて互角の戦いをしていた。

 

「七原だ。ここから俺が軍の指揮をする。全員城に撤退しろ」

 

「し、しかし軍師殿に一人で戦わせるわけには…」

 

「俺なら大丈夫だ。お前らは怪我人の手当てを優先しろ」

 

「り、了解しました!」

 

軍を撤退させると砂埃の向こうから残念そうな声が聞こえてきた。

 

「なんだぁ?もう終わりかぁ?」

 

「僕たちの強さにびびって逃げ出したんだろうね」

 

「ふっ。哀れな…」

 

なんだか聞き覚えのあるようなないような感じの声だった。

 

「退屈させてすまないね。ここからは俺が相手をするよ。海賊さん」

 

砂埃が晴れた瞬間に互いの姿を確認した。

 

「!?てめぇはあのときの!」

 

「よくもあのときは僕をさんざんいたぶってくれたね!」

 

「あのとき恨み…ここで晴らす!」

 

3人同時に襲い掛かってきたが、大夢をそれをなんなく避け、3人それぞれにカウンターをお見舞いした。

 

「君達が俺の事を知っていても俺は君達のような弱者は知らないしこれから覚えようとすら思わない」

 

「てめぇ「赤毛のメア」の仲間だろ…」

 

「俺の知り合いにメアという子はいるけど「赤毛のメア」なんてやつは知らない。それと君達にはこれから銀河警察にいってもらうから」

 

「ふざけんな!誰がいくか!」

 

その瞬間大夢は海賊の喉元に刃を突きつけた。

 

「答えははい、イエスのどちらがだ。それに、デビルークの地をこうして汚したんだ。責任重大だぜ」

 

その後はザスティンに頼んで銀河警察へと送ってもらった。

デビルーク城に戻ったあとはギドと夜まで語り合おうと思っていたが生憎彼は、俺が襲撃者討伐に向かっている間に急用ができたらしく、どこかへ行ってしまった。セフィさんも政治関連の仕事で忙しい。するとが無くなった大夢は城に残っている部下達に別れを告げ、自身が生まれた村とトランス兵器研究所の跡地がある惑星へ向かうためにデビルークをあとにした。村はあのとき、海賊によって燃やされてしまった。

研究所があった場所には今は何もなく永遠と野原が続いていた。研究所自体は銀河大戦時にある人物によって壊滅させられた。恐らく研究者も彼の手によって全員抹殺されただろう。

 

「なんで俺はここにきたんだろう…」

 

あんな事があったのに。それなのに大夢はここを訪れた。

 

「まだ兵器としての心が俺の中にあるのかな…」

 

確かに俺は兵器だ。けど兵器だからといって人と触れあってはいけないわけではない。現にヤミやメアだってあんなに変われた。

 

「なのに俺はまだ過去のことを引きずってるのか…。情けない話だ…」

 

大夢は帰ることにした。ここにいても何もならないし過去のことだけが甦ってくる。そんな場所にもう用はない。宇宙船に乗り込んでも、もう一度あの研究所跡を見ようとは思わなかった。

 

 

予定より一日早く彩南町に着いた。デビルークは涼しい気候だったが、日本は夏のため暑かった。

大夢はとりあえずメアと同棲しているマンションへと帰った。

 

「メアも出掛けてるはずだからいないよな…」

 

ところが部屋の鍵は開いていてメアも大夢と同じく一日早くこっちに帰ってきてた。

 

「おかえりヒロくん」

 

「お、おう。帰ってたんだな」

 

「うん。特にすることもなかったから…」

 

「何処に言ってたんだ?」

 

「私が生み出されたトランス兵器研究所跡地へ行ってきたんだ。結局帰ってきちゃったけど」

 

「俺と同じだな。なんていうか…辛いだけだよな」

 

「うん。でもあそこは私とネメちゃんが初めて会った場所だから忘れようとしてもできないんだよ」

 

「そっか。そうだったよな…」

 

無理もない。メアにとってネメシスという人物は切っても切り離せないのだから。そんな人物と初めて会った場所を「辛くなるから忘れろ」なんてメアに言えるわけがない。

 

「ヒロくんは何してたの?」

 

「俺はデビルークに行ったあとはメアと同じだよ。研究所の跡地に行ってたんだ。まぁ特に何もなかったけどな」

 

「デビルークの方はどうだった?」

 

「久しぶりにいろんな人に会えたけど以前お前にボコられた奴がデビルークに侵攻してきたんだよ」

 

「へぇー」

 

「覚えてないのか?3人の海賊だよ」

 

「うーん…わかんないや」

 

どうやらメアは覚えていないようだ。あっちの方はあれだけ根に持ってたのにな。

あ、そういえば今日で帰ってきちゃったから明日丸一日暇になるな。何しようか。

 

「ねぇ、ヒロくん明日用事ある?」

 

「いや、無いけど。なんで?」

 

「明日もし良かったらどこか出掛けない?二人で」

 

「いいよ。どこ行く?」

 

「それは明日決めない?だってヒロくん疲れてるでしょ?」

 

「そうだな。そうしようか」

 

少しばかり期待はあった。けれども何故自分を誘ったのかが大夢には疑問だった。普通に遊ぶならナナ姫などをつれていくはずだが。結局寝るまでメアの真意はわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




だんだんどう書けばいいのかわからなくなってきました…。とりあえず色々試行錯誤を繰り返して頑張ろう。


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メアとのデート

今回はメアと大夢のデート回になります。内容が薄い部分もあるかと思いますがおたのしみ下さい。


翌日、朝起きたらメアは既に着替え終えていた。

 

「もーっ!ヒロくん起きるの遅いよー!」

 

「ごめん、ごめん。今着替えてくるよ」

翌日、朝起きたらメアは既に着替え終えていた。

 

「もーっ!ヒロくん起きるの遅いよー!」

 

「ごめん、ごめん。今着替えてくるよ」

 

「わかった!玄関で待ってるね!」

 

何故メアがこんなに急かしているのかというと、そう、今日は俺とメアの初デートの日だからである。デートと言っても一緒に買い物をしたり、ご飯を一緒に食べるといったことをするぐらいである。

 

(なんであいつ今日に限ってあんなにルンルンなんだろうな)

 

そんなことを思いながらも私服にトランスし終え、玄関へと向かった。

 

 

 

「それでどこ行く?」

 

「メアは行きたいところとかあるのか?」

 

「う~ん、特にないかなー」

 

「じゃあ、俺の行きつけのクレープ屋に行かないか?」

 

「うん!行く行く!」

 

俺はメアと歩きながら後ろをチラ見し、微笑を浮かべた。

 

 

~尾行者(モモ、ナナ、ヤミ)side~

 

「大夢さん完全にこっちが尾行していることに気づいていますね…」

 

「あの笑いが気づいたサインですね」

 

「て、ことはメアも気付いてるんじゃないか?」

 

「恐らく、大夢より早くこちらの存在に気付いてるでしょう」

 

「不味いわね…。こんなに早く気づかれるとは思わなかったわ…」

 

「どうするんですか?モモ」

 

「とりあえず少し時間を置いてからまた尾行に移りましょう」

 

モモの判断に二人とも頷き、その場を離れた。

 

~尾行者side終~

 

「やっと撒いたか…」

 

「モモちゃん達のこと?」

 

「うん、メアはいつから気づいてたの?」

 

「ちょっと前だよ。でもどうせまた尾行してくるだろうね」

 

「まぁそれは一旦忘れてクレープ、食べようか」

 

俺はマロンバナナ生クリームを、メアはブルーベリー生クリームをそれぞれクレープ屋のおっちゃんに注文した。

 

「はい、お待ち。大夢くん彼女さんとデートかい?羨ましいね~」

 

「おっちゃん。冗談はやめてくれ、彼女はただの幼なじみだから」

 

「何だ違うのか~。ほいっ、出来たよ」

 

「ありがと。金はここに置いとくね」

 

「あいよ、また来てね」

 

おっちゃんから受け取ったクレープを手に近くのベンチに腰かけた。

 

「おいしいねー、このクレープ」

 

「だろ?こっちに来て初めて食べたのがこのクレープなんだよ」

 

自慢げに語る大夢の話を流しながらメアはクレープを一気に食べてしまった。

 

「おい、メア。もう少し味わえよ…」

 

「ごめんね。美味しかったからつい」

 

そう言いながらさっきから俺のクレープを凝視していた。

 

「…食べたいのか?」

 

俺が聞くとメアは目を輝かせながら頷いた。

 

「はぁ…全く…ほら口を開けろ」

 

メアにあーんをさせる形で食べさせた。正直かなり恥ずかしかったけどメアが美味しそうに食べていたのでそれも気にならなかった。

 

「ヒロくん、口にクリームついてるよ?」

 

そう言うとメアは俺の口についていたクリームを指でとってそのまま自分の口に運んだ。

 

「えへへ、美味しい♪」

 

この予想外の行動に俺の頭はパンク寸前だった。

 

 

 

~尾行者side~

 

「二人ともなかなか大胆ね…」

 

「見せつけてくれますね…」

 

冷静なヤミ、モモとは対照的にナナは赤面しながら二人をじっと見ていた。

 

「あら、ナナどうしたの?」

 

「別に…」

 

「もしかしてリトさんにあれをやってもらいたいとか思ってるの?」

 

「なんでそこでリトが出てくるんだよ!!」

 

「いいじゃない。因みに私はリトさんとあーゆー事してみたいわよ」

 

「お前本当に欲望に忠実だな…」

 

「二人とも、行きますよ…」

 

~尾行者side~終

 

 

その後はデパートに行き、服を買ったり、ゲーセンで遊んだり、レストランで食事したりと恐らく地球に来てから今まで一番有意義に過ごせたと思う。それから公園で少し休むことにした。

 

「ヒロくん今日はありがとね。すっごい楽しかった」

 

「俺も楽しかったよ。ところで…」

 

俺はわざと公園に響くようなでかい声で言った。

 

「お前ら!そろそろ出てきてもいいんじゃないか?」

 

その後公園の叢からヤミ、モモ、ナナが姿を現した。

 

「その…いつから二回目に気づいてたんですか?」

 

「もうクレープを食べてる辺りからバレてますよ。逆にバレてないと思ってたのですか?」

 

「こっちに見向きもしないのでてっきり気づいてないのかと…」

 

「わざと気づかないふりをしてたんですよ、俺もメアも。ヤミにもわからないようにね」

 

「ごめんね~、モモちゃん。実は私も気づいてたんだ~」

 

「迂闊だったわ…よく考えたらこの二人が気づかないわけないじゃない…」

 

「さて、それじゃあとりあえずリトさんの家に行きましょう。そこで説教します」

 

「ここで説教するんじゃないのか?」

 

「再発防止のためですよ。さっ、行きましょうか」

 

この後リトさんの家で一時間説教してやりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくれた方に感謝です。ありがとうございましたm(。_。)m


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セフィ・ミカエラ・デビルークの来日その1

「はぁ~、なんで俺がセフィさんの護衛なんだか…」

 

ぶつくさ文句を言いながら彼女が今歩いていると思われる商店街に向かう。何故こうなったのかと言うと昨日の夜になってセフィさんが地球に行くと言い出し、急遽俺が護衛として抜擢された。その連絡が今朝入ったものだからこうして急いでいるのだ。それならザスティンに頼めばいいじゃないかと言ったらザスティンよりも俺の方が頼みやすいらしい。

 

「早く見つけないとな、もしセフィさんの身に何かあったら俺がギドに殺されるからな」

 

商店街を見回してみるが全然それらしき人物は見当たらない。

するとむこうがなにやらざわついていた。もしやと思いその場所へ行ったら案の定セフィさんだった。

しかもリトさんと美柑さんと接触している。

 

「探しましたよ、セフィさん」

 

「あら、大夢くん。随分遅かったわね」

 

「仕方ないでしょう、連絡が今朝に入ったばかりだったんですよ」

 

「まぁそれもそうね」

 

セフィさんとの会話が終わるとリトさんが俺に聞いてきた。

 

「なぁ、大夢とあの人はどんな関係なんだ?」

「ああ、その事ですか…彼女は…」

 

大夢がリトに説明しようとした時商店街にお馴染みの変態が現れた。

 

「むひょーー!顔が見えずとも隠しきれない超絶美女オーラ!わしの中の神がムクムクと目覚めてきますぞぉーー!」

 

「まぁ…情熱的な方…」

 

「セフィさんどうしますか?切り刻みますか?」

 

「まぁ、ここは私に任せてください」

 

彼女は襲い掛かってくる校長の目を見て言った。

 

「それだけの情熱を世界に向けてくだされば、きっと多くの悲しみを取り払うことができるでしょうね…」

 

その言葉を聞いた校長は突然立ち止まり、脱いだ衣服を身につけ始めた。

 

「貴女の温かいお言葉心に染み渡りましたぞ、ご婦人…。私はこれからゴミ拾いに行くとでもしましょう。では、ごきげんよう…」

 

急に穏やかになった校長にその場にいたほとんどの人が驚いていた。

 

「校長がキレイになった!?」

 

「声をかけられただけであんなに穏やかになるなんて……てゆーかあのピンク色の髪…この人って…」

 

「察しがいいですね、美柑さん。この方はララ姫達のお母様なのです」

 

「「えーーーっ!?」」

 

 

セフィさんが結城家に迎えられたのだが、何故か俺も一緒に来ることになった。改めてセフィさんがリトさんと美柑さんに自己紹介をする。

 

「セフィ・ミカエラ・デビルークです。娘達がいつもお世話になっております」

 

「あ…いえ、こちらこそ!」

 

「ごめんなさいね。本当はもっと早くにご挨拶に伺いたかったのですけど」

 

「いえいえ!お忙しいって話はララさんから聞いていましたし」

 

「そうですか。三人とも元気そうね、安心したわ」

 

ララ姫、ナナ姫、モモ姫を交互に見ながらセフィさんが言う。

 

「あ、そうだ。母上、あいつには近寄っちゃダメだぞ。ケダモノだからな!」

 

「ちょっとーー!!」

 

「こら、ナナ!いつもお世話になってるリトに失礼だよ」

 

「でも、本当のことだろ姉上。もしリトがいつものズッコケで母上の素顔を見たらマズイじゃん」

 

「ん~、そうかな~。大夢はどう思う?」

 

「確かにナナ姫が仰る通りリトさんがセフィさんの素顔を見たら大変なことになりますね。しかし、リトさんがギドや俺のようにセフィさんの能力が通じない可能性もゼロではありませんよ」

 

セフィさんの能力が気になったのか、美柑さんがペケに聞いていた。

 

「ねぇ、ペケ。何で素顔を見たらダメなの?世界一美しい人なんでしょ?」

 

「美しすぎるのも考えものなのです。セフィ様は宇宙一美しい容姿と声を持つ少数民族チャーム人の最後の末裔なのです。種族を問わずあらゆる生物を魅了するその美しさはもはや能力の域に達しており、セフィ様の素顔を見た男性はどんな紳士でもたちまちケダモノとなってしまうのです」

 

「そっかぁ。だから顔を隠しているんですね」

 

「はい。顔を隠せばチャーム人の特性はある程度抑えられますから」

 

特性は抑えられているといえど油断はできない。現に商店街で歩いていたときは既に何人かセフィさんに襲い掛かってきそうだったからだ。まぁ例えリトさんだろうとセフィさんに危害を加える輩は殲滅する。今回は彼女を無事にデビルークまで帰すのが俺に与えられた任務だと思っている。

 

「…大夢くん?どうかしたの?」

 

少しぼーっとしていたのか、我に返るとセフィさんが心配そうな目でこちらを見ていた。

 

「何でもありませんよ。それよりどうかしましたか?」

 

「久しぶりにみんなでお風呂に入ろうと思っているんだけど大夢くんには見張りをお願いできるかしら?」

 

「了解しました。しかし、結城家の風呂では全員入れませんよ?」

 

「大丈夫よ。モモのバーチャル空間に温泉があるらしいから、そこにみんなで入ることになってるの」

 

「ああ、なるほど…」

 

「それじゃあ頼んだわね」

 

ということでみんなの入浴時の見張りを任されてしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は原作を見て書いたので文章がそのままになっていたり、おかしな部分があったりしますがおたのしみ下さい


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セフィ・ミカエラ・デビルーク来日その2

向こうから姫君達の和気あいあいとした声が聞こえる。ここ電脳サファリパークでは動物と話せるナナ姫が過去に友達になった宇宙動物達を保護している場所である。しっかりと動物達が生きていける環境が管理されており絶滅危惧種もここでは多数生存している。

 

「警備と言ってもすることないな」

 

周りを見れば草原が広がり、動物達が有意義に過ごしている。どこにも危険性は感じられない。だが、油断は禁物だ。もし、セフィさんの姿を動物達が見てしまったら大変な事になる。一番の問題はリトさんである。あの人の性格上ここに来ることはまず無いが、もしも何らかの形で迷い混んでしまったら、必ず何かを起こすだろう。その為にも警備を一分一秒も怠ってはいけない。

すると、向こうから何か人が倒れる音がした。嫌な予感がしつつもその場所へ行くと、案の定セフィさんが、リトさんに押し倒されていた。しかもセフィさんの顔を覆っていたベールも取れてしまっている。

 

「お二人ともご無事ですか!って、セフィさん!ベールが…」

 

「え?…あ…」

 

セフィさんもベールを取った張本人リトさんもしばらく固まっていた。とりあえずリトさんが正気に戻るまで軽く絞めることにした。

 

「ペケ、セフィさんを連れて逃げろ!リトさんは俺が何とかする!」

 

「わかりました!行きましょう、セフィ様!」

 

「え、ええ。あ、ありがとう大夢くん」

 

 

 

「さぁリトさん!いい加減に正気に戻ってください!」

 

「タップ!タップ!く、苦しっ…」

 

「え、あれ?」

 

「ぷはっ、はーっ、はーっ。し、死ぬかと思った…」

 

「会話ができている…。理性はまだあるのですか?」

 

「当たり前だ!俺は正気だっての!」

 

「しかし、さっきまで固まっていたではありませんか!」

 

「あんな綺麗な女性が目の前でタオルがはだけたんだから当たり前だろ!」

 

「まさか…どんな紳士でもケダモノになってしまうのに…」

 

どうやらリトさんにも俺やギドと同じチャームが効かないようだ。だが、地球人でセフィさんのチャームに耐えたのはリトさんが初めてだ。

すると、セフィさんがペケと共にこちらへ戻ってきた。

 

「ペケ?どうしたんだ?」

 

「セフィ様のチャームによって暴走した動物達から逃げてきたのです!あちらを見てください!」

 

ペケが指指した方向には大量の動物達が目をハートの形にさせながらこちらへ迫ってきてるのがわかった。

 

「マジか…。…とりあえずペケは俺とでセフィさんとリトさんを動物達から守るぞ。リトさんはセフィさんを連れて逃げてください!」

 

「わ、わかった!セフィさん、こちらへ!」

 

「い、いやっ…彼もチャームにかかっているのでしょう…」

 

「お、俺は正気です!いいからこっちへ!」

 

「な、何ともないのですか!?私の美しい顔を目の前にして…」

 

「な、何ともなくはないです!今だって直視しないようにしてるし…」

 

大夢とペケが時間を稼いでいる間にリトはセフィを連れ、湯気の濃い方へと逃げ込んだ。

一方大夢とペケはチャームにかかった動物達に苦戦を強いられていた。

 

「埒があきませんね…」

 

「仕方ないな…。逃げるぞ、ペケ!」

 

「は、はい!」

 

数も多いし、厄介な敵が多いのでとりあえず逃げるぞことにした。ある程度全力で逃げれば上手いこと動物達を撒けるだろう。

やがて、何とか撒くことが出来た。ペケには姫達と合流してからセフィさんのところに向かうと言っていたが、俺はそのままリトさんとセフィさんのところに向かうとした。

 

 

俺が向かったときには既にペケも姫達を連れて合流していた。

 

「大夢!無事だったんだな!」

 

「ええ、なんとか…リトさんもセフィさんも無事でなによりです」

 

「大夢君にペケ、貴方達のおかげで助かったわ。ありがとう」

 

「いえいえ、私は当然の事をしただけですよ!」

 

「俺もペケと同じです」

 

実際のところ俺は大したことはしていない。セフィさんをここまで連れてきたのはリトさんだし、姫達に危険を知らせたのはペケだし、俺はその時間稼ぎをしただけだ。

 

「それじゃあ改めてみんなでお風呂に入りましょうか。大夢君とリトさんは見張りをお願いしますね」

 

「わかりました」

 

それからまたしばらくリトさんと話しながら女性達の入浴が終わるまで見張りを続けた。

 

 

 

そして翌日、セフィさんがデビルークへ帰ることになった。

 

「もう帰っちゃうの母上」

 

「また通信で会えるでしょ、そのうちまた時間を作って来るわ。それに私も彩南町が気に入ったしね」

 

「またね!ママ!」

 

「ええ。ララ、元の身体に戻るまで無理をしてはいけませんよ」

 

「はーい!」

 

「セフィさん、あの…何か色々すみませんでした…」

 

「いいえ、楽しかったわ。娘達をよろしくお願いいたします」

 

「お母様!またいつでもいらしてくださいね!」

 

「そうさせて頂くわ。それと…」

 

セフィさんがモモ姫に何か耳打ちをしていた。まぁだいたい内容はわかるが。

 

「大夢君も元気でね」

 

「はい、俺もときたまそちらに伺います。恐らく仕事関係になると思いますが」

 

「そう、わかったわ」

 

こうしてセフィさんはデビルークに帰っていった。突然あの人が地球にくると言ったときはどうなることかと思ったけど無事に事なき得て良かった。

 




久しぶりの投稿です。相変わらず色んなとこがおかしいと思いますが、最後まで読んで頂ければとおもいます。


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初の女装

7月中旬。期末試験を終え、結果が通知され、皆がそれぞれの表情を浮かべながら結果を見ていた。もちろん俺とメアも例外ではなく、まるでプレゼントボックスを開けるのかのように慎重に結果を見た。

 

「メア、どうだった?」

 

「上がってたよ。ヒロくんは?」

 

「俺は下がっちゃった。まぁ仕方ないよな」

 

正直今回の試験は余り良い出来とは言えないので内心下がっていることは目に見えていた。けど、まさかメアが上がっていたとは思わなかった。メアのことだ陰で努力していたのだろう。

そんなことを思ってると俺達の教室に一本の放送が流れた。

 

「1年B組の七原大夢くん、黒咲メアさんは至急保健室に来て下さい」

 

保健室ということドクターミカドが待っているということだ。余りいい気はしないが、行ってみることにした。

 

 

 

「失礼します」

 

「失礼しまーす」

 

「二人とも来たわね。それじゃあ、早速本題に入るけど今度の土曜日悪いんだけど診療所の手伝いをしてくれるかしら?」

 

「俺達が、ですか?」

 

「ええ、もちろん報酬は払うわよ」

 

「いえ、そうじゃなくて…」

 

「大丈夫よ結城君達にも言っておくつもりだから」

 

「土曜日はそんなに混むの?」

 

「ええ、もう予約でいっぱいなの」

 

「大丈夫ですよ!私やティアーユ先生もいますから!」

 

お静さんが元気に手を挙げる。逆にこの人がいるとメアが何かしそうで恐いな。

 

「じゃ、そういうことだから土曜日よろしくね」

 

「わかりました」

 

 

 

 

そして、土曜日。俺、メア、リト先輩、ヤミ、モモ姫の五人でドクターミカドの手伝いをすることになった(ナナ姫とララ姫は用事があり、これなかった。)。そして各々が診療所に見合った服に着替えたのだが、

 

「何で俺達もナース服なんだよ!しかも女体化させられたし!」

 

男子二人は何故か女体化し、ナース服を着ていた。これにはドクターミカド達も笑うしかなかった。

 

「結城君の女装もいいけど七原君の女装もなんだか新鮮ね」

 

「そうですねー!」

 

「何いってんですか!?」

 

「だ、大丈夫よ、七原君!充分可愛いわ!」

 

「フォローになってないんですけど!?」

 

ガヤガヤ騒いでいる内に受付開始時間になってしまったので、俺達はそれぞれ指示された持ち場についた。

開始時刻になると一斉に患者が診療所内になだれ込んできた。ドクターミカド曰く今は宇宙風邪や病気のシーズンらしく、怪我などで来院してくる患者は余りいなかった。

 

ある程度患者もいなくなり、更にはお昼時ということで休憩に入った。

 

「みなさん、紅茶淹れましたよ~」

 

お静さんが気を利かせてみんなに紅茶を淹れてくれた。俺は緑茶派なのだが、お静さんが淹れてくれる紅茶は普通に美味しいし、好きだ。

 

「ふぅ、それにしても…結城君と七原君の女装はほんとによく似合うわね」

 

「そうですね、リトさんの女性姿はよく見ますが大夢さんの女性姿は初めてみますね」

 

「…まぁ、悪くないですね」

 

終いにはヤミまでこんなことを言い出した。それほどに彼等の女性バージョンはレベルが高かった。リトは茶髪のショートカットに豊満な胸を持つ少し派手めな美少女へとなった。一方、大夢はセミロングの黒髪に細い体つきをしていていかにも清楚系の美少女という感じだった。

 

「なぁ、モモ。いつになったら元に戻るんだ?」

 

「そうですね…あと30分くらいでしょうか」

 

「ふむ、ということはあと30分しか結城君達の女装を堪能できなくなるということね」

 

「何いってるんですか!先生!」

 

「いいじゃない。結城君はまだしも、七原君はこんな機会あまり無いんだから」

 

「俺は、まだやる可能性があるんですか!?」

 

「でも、もうやりませんよこんな事」

 

「あら、残念。でもそういう子に限って意外といじめがいがあるのよね~」

 

「あ、わかります!」

 

「私も~」

 

「わかるな!……とりあえずもう少しで切れるから着替えてくる。リトさん行きましょう」

 

「あ、ああ!」

 

俺達が更衣室に向かおうとした時、ドクターミカドがたるで狙ってたかのようなタイミングで言い出した。

 

「あ、いい忘れてたけど女性用の看護師の服しか用意していないから」

 

その言葉に俺とリトさんは顔を見合わせ、ため息をついた。

 

「また女の子になるしかないな…」

 

「そうですね…。俺達の名誉の為にもそうしましょう」

 

このまま元の姿に戻ってしまうと変態という不名誉な肩書きがついてしまう。それを避けるために二人はもう少し女性の姿でいることを選んだ。

 

 

 

結局診療所が閉まるまで俺達は女性であり続けた。元に戻り、着替え終えると今日1日の疲れが疲れがどっと押し寄せてきた。

 

「今日はみんなありがとね。また頼むかもしれないからその時はよろしくお願いするわね」

 

「次はちゃんと男物も用意してくださいね…」

 

「前向きに考えておくわね」

 

「えー…」

 

「冗談よ、ちゃんと用意しておくわね」

 

「お願いしますよ…」

 

ドクターミカドから今日の分のバイト代を貰い俺達はそれぞれの帰路についた。

 




お久し振りです。今回もgdgdなストーリーとなってますが最後まで読んで頂ければとおもいます。


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厄日その1

午前7時ちょうど。いつもより遅い時間帯の起床だった。隣を見ると、メアの姿はなく、珍しく俺より早く起きたようだ。制服に着替えてから台所に行くとは、これまた珍しく

メアが朝御飯を作っていた。

 

「おはよー、ヒロくん。もうすぐできるから座ってて」

 

「あ、ああ!」

 

一瞬ポカンとしてしまったが、メアに言われ俺はすぐに座り、テレビをつけた。ちょうど星座占いをやっていて一気にランキングが出ていた。

 

「今日一番運勢が良いのはふたご座のあなた!!今日は素晴らしい1日になるでしょう!そして、今日一番運勢が悪いのはうお座のあなた!災難だらけの1日になるかもしれません。そんなうお座の今日のラッキーアイテムは…」

 

ブツン

 

テレビのアナウンサーがラッキーアイテムを言いかけたところで俺はテレビを切った。

 

「ヒロくん、もしかして怒ってる?」

 

「別に怒ってないよ、俺は占いなんて迷信だと思ってるから」

 

そう言いながら俺はメアが作ってくれた朝御飯の味噌汁をすすった。

 

「おっ、これ美味しい」

 

「でしょー?美柑ちゃんから教わったんだー」

 

「へぇ~」

 

メアの言う美柑ちゃんという人物はリトさんの妹に当たる人物で家事全般は何でもこなし、容姿端麗、頭脳明晰というスーパー小学生である。

 

「俺も教えて貰おうかな~」

 

独り言を呟きながら味噌汁の入ったお碗を取ろうとしたら手が滑り、味噌汁が俺の制服にかかってしまった。

 

「あちゃー…やっちまった」

 

「制服どうするの?」

 

「とりあえず今日はトランスで行くよ。こんなんじゃ着てけないし」

 

「私の貸そっか?」

 

「ふざけんな。また女装させる気かよ」

 

「ふふっ、冗談だよ♪」

 

脱衣場に行き、汚れた制服を脱ぎ、洗濯機へと放りこんでいく。運良く下着は汚れていなかった。そしてトランスで

衣服を制服に変化させ、メアの待つ玄関へと向かった。

 

 

 

昨日の土砂降りの雨とはうってかわって、今日は真夏日となった。だが、道路には所々水溜まりがあり行き交う人達は水溜まりを避けながら歩いていた。

 

「そういえば、ヒロくん制服着てるけど乾いたの?」

 

「いや、トランスを使ってる。学校が終わるまでに持つかどうかわかんないけど」

 

「そんなに体力消耗するの?」

 

「ああ、結構疲れるぞ。メアもやればわかるからこのキツさが」

 

「ふ~ん」

 

すると、後ろから来た車が水溜まりを思いっきり踏み、近くを歩いていた俺にかかってしまい、制服が水浸しになってしまった。

 

「……」

 

「ヒ、ヒロくん大丈夫?」

 

「大丈夫だよ。………殺してやろうかと思ったけど」

 

「お、落ち着いて!あれは仕方の無いことだから!」

 

「わかってるよ。それより、制服どうすっかな…」

 

とりあえず学校に着くまで考えることにしたが、あっという間に着いてしまった。

制服が濡れているからか、色んな意味で注目の的になっていた。

上履きに履き替え、教室に向かおうとすると、向こうからララ姫が何かを持ってやって来た。

 

「大夢ー!」

 

「あ、ララ姫おはようございます」

 

俺がララ姫の方を振り向くと彼女は俺に何かを向けていた。よく見ると、ララ姫の手にはビームを受けた人物の性別を変化させるころころ男女君が握られていた。

 

「まさか…」

 

「それー!ころころ男女君!」

 

「うわぁぁぁぁーー!」

 

気付いたときにはもう既に遅く、俺はころころ男女君のビームをまともに受け、また女の子の姿になってしまった。

 

「ヒロくんが女の子になった!」

 

「ララ姫!発明品は不用意に使うなとあれほど言ったでしょう!」

 

「ごめんね~、改良型をどうしても試したくてね~」

 

「そんなことより、早く戻してください!」

 

ララ姫は何度もスイッチを押すが、装置が起動しない。

 

「ごめんね~改良したら充電が切れるのが早くなっちゃったみたい」

 

「あなたという御方は……またこんな姿になるなんて…」

 

「でも、結構可愛いよ!ヒロコちゃん!」

 

「誰がヒロコちゃんですか!それに全然嬉しくないです!」

 

「そうかな~?私も結構可愛いと思うよ?」

 

「メアまでそんなこと言うのか…」

 

「放課後までは戻らないからそれまでは女の子のままだねー」

 

「…メア、替えの制服あるか?」

 

「お?とうとう着る気になったのかな?」

 

「うるせぇ、借りるのは今日だけだ。一応ティアーユ先生には事情を話して転校生扱いにしてもらう。メアは悪いけど先に教室に行っててくれ」

 

「わかったー」

 

「ごめんね~、大夢」

 

「別にいいですよ。やってしまったのは仕方の無いことですし、今後気をつけてください」

 

「はーい!」

 

 

俺はまだ知らなかった。今日1日がこんなに長く感じることを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿までの間が空いてしまい申し訳ないです。今年もよろしくお願いいたします!


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厄日その2

おひさしぶりです。


ララの発明品により女の子になってしまった大夢はクラスの担任であるティアーユ先生と御門先生に事情を説明しに保健室にいた。

 

「……というわけなんです」

 

「事情はわかったわ。けれど、どう誤魔化すの?」

 

「とりあえず俺の従妹という形にしてもらえませんか?それならクラスのみんなも納得するでしょうし」

 

「大夢君本体はどうするの?」

 

「欠席扱いでお願いします。今日1日乗り切れば元に戻るので」

 

「わかったわ。それじゃあ教室に行きましょうか。私の方も出来るだけフォローはするから安心してね」

 

「ありがとうございます。ティアーユ先生」

 

「やっぱり大夢君女装慣れしてるわね。喋り方も全然違和感が無いわ」

 

「た、確かに…」

 

「あの…全然嬉しくないんですが…」

 

心底がっかりしている俺にお静さんがさらに追い討ちをかける。

 

「だ、大丈夫ですよ!今の大夢さんすごい綺麗ですから!」

 

「フォローになってないです…」

 

 

その頃教室では転校生の噂で持ちきりになっていたが、メア、ナナ、モモは珍しくいない大夢の話をしていた。

 

「なぁ、メア。大夢はどうしたんだ?」

 

「ヒロくん?あ、実はね…ヒロくんララ先輩の発明品で女の子になっちゃったんだ…」

 

「あー、発明品ならあいつ実験台にされたな」

 

「どうして?」

 

「昔からなんですよ。お姉様の発明品の実験台に大抵ザスティンさんか、大夢さんが巻き込まれるんですよ」

 

「へー、ヒロくんそんな事全然話してくれなかったなー」

 

すると、教室のドアが開き、ティアーユ先生と共に一人の美少女が入ってきた。

 

「今日はみなさんに転校生を紹介します。七原さん、どうぞ」

 

「はい。七原大子と申します、よろしくお願いいたします」

 

「七原さんは七原君の従妹なのでみなさん仲良くしてくださいね」

 

ティアーユ先生からの軽い紹介を終えると教室から拍手と歓声(主に男子)が沸いた。

 

(これは、休み時間に質問攻めのパターンかな…)

 

休み時間になると大夢の予想通り男子達が一気に押し寄せてきた。大夢はその間を縫うようにすり抜け、モモ達の待つ屋上へと逃げ込んだ。

 

 

 

「はぁ、はぁ、つ、疲れた…」

 

「おつかれー、ヒロくん」

 

「どうですか?大夢さん、再び女の子になった気分は」

 

「良いとは言えませんね。むしろ最悪です。今すぐ死にたいです」

 

「大丈夫ですよ。時間が経てば自然に戻りますから」

 

「でも、姉上のそれって結構時間経たないと元に戻らないんだろ?」

 

「そうなの?」

 

「うん、だから放課後までこの格好なんだよな…」

 

「大丈夫ですよ、大夢さん。私達がしっかりサポートしますから」

 

「ありがとうございます、モモ姫。それじゃあ、早速一ついいですか?」

 

「なんでしょうか?何でも聞いてください」

 

「…トイレってどうするんですか?」

 

 

数分後、顔を真っ赤にした大夢が教室に戻ってきた。

 

「どうだった?上手く出来た?」

 

「なぁ、メア。女の子って大変だな…」

 

「?」

 

 

4時限目を終え、ようやく昼休みとなった。大子もとい大夢はメア達より先に屋上に向かっていた。だが、屋上に着いたと思ったら意外な人物が待っていた。

 

「おぉ大夢ではないか。いや、今大子の方がよいのか?」

 

「なんでネメシスがいるんだ…」

 

「よいではないか。私も暇をもて余しているのだよ」

 

「街へ行けばいいだろ。わざわざ学校に来る必要なんかないだろ。てか、なんで俺だってわかる?」

 

「ちょうど見てたんだよ。お前が女になる瞬間をな」

 

「やっぱり今日は厄日だな」

 

「まぁそう言うな。お前の女装姿かなり様になってるぞ」

 

「うるせぇ。全然嬉しくないから」

 

「お?照れてるのか?」

 

「あんまりしつこいと消すぞ」

 

「冗談だ。…おや誰か来たようだな。では、私はこれで失礼するか」

 

「あっ、おい!」

 

ネメシスが姿を消したあと屋上の扉が開き、モモ、ナナ、メアとヤミが姿を現した。ヤミは俺をジーっと見つめながら半信半疑で聞いてきた。

 

「本当に大夢なのですか?」

 

「ああ、そうだよ。信じられないかもしんないけど」

 

「いえ、疑うつもりはありません。ただ、なんだか新鮮ですね…」

 

「……」

 

まさか大夢もヤミにこんな事を言われるとは思わなかっただろう。しかし、大夢を知らない者から見れば彼はただの美少女にしか見えない。モモやナナも事前に知らされていなければこの美少女が大夢だと気づくことはなかっただろう。

 

「そういえば、ヒロくん。さっきネメちゃんと話してた?」

 

「どうして?」

 

「なんか来る途中にネメちゃんの気配がしたから」

 

「気のせいだろ」

 

「うーん、そうかなぁ…」

 

「でも、気配がしたんならまだネメシスがどっかにいるっことだろ?」

 

(おや、ナナ姫は意外と鋭いのだな)

 

(なんだよ。結局出てきたのかよ)

 

(思った以上に暇でな。後、それから屋上に何やら妙な奴が近づいてきてるぞ)

 

(おい、それってどういう…)

 

「むひょー!見つけましたぞ!」

 

「ゲッ、校長…」

 

(ネメシスの言ってた妙な奴って校長だったのかよ!)

 

「さぁ!ワシと一緒に愉しいランチタイムにしましょうぞー!」

 

「く、来るなー!」

 

ドゴンッ

 

鈍い音と共に校長が大夢のトランスによって空に吹っ飛んでいった。

 

「はぁ、はぁ、ようやく昼飯が食えるな…」

 

「ヒ、ヒロくん…」

 

「ヒ、ヒロム」

 

「大夢さん…」

 

「大夢…」

 

なんだかみんなが赤面してる。これどういうことだろうか?

 

「なんだよ、みんなしてどうしたの?」

 

「その…スカートが…」

 

「スカートがどうかしたの?」

 

「思いっきりめくれてるんだけど…」

 

「モモー。話って何?」

 

なんとも間の悪いタイミングであろうか。メアがスカートのめくれを指摘したと同時にモモに呼ばれて屋上へとリトがやって来たのだ。

 

「うわっ!ごごご、ごめん!」

 

リトが慌てて出ていった後、大夢はようやく自分が置かれた状況に気づき、ダッシュでトイレまで行き、昼休みが終わるまでそのトイレから出てこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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厄日終

厄日編はこれで終了です。


やっと放課後になったが、発明品の効果は切れず、まだ大夢は女の子の姿でいた。

 

(いつになったら元の姿に戻れるんだろうなー)

 

俺は帰りのHRが終わってもまだ机に突っ伏していた。そこへクラスの男子数人が話しかけてきた。

 

「ねぇ、七原さん。これから俺らとカラオケに行かない?」

 

「悪いけど今日はそんな気分じゃないので」

 

「そう言わずにさぁ~行こうよ~」

 

あまりのしつこさに大子(大夢)もイラッときてたのか、思わず殺意を剥き出しにした目で睨んでしまった。

 

「ひっ…」

 

睨まれた男子は虎に睨まれた小動物のように萎縮してどこかへ行ってしまった。

 

「はえ~女の子になっても相変わらずすごい殺気だね~」

 

「そうですね…」

 

「…からかいに来たのか?」

 

「いや、もう下校時間だから一緒に帰ろうと思って」

 

「ああ、そういやもうそんな時間だっけ…」

 

机から身体を起こし、鞄を持ってメアとヤミの元へと向かった。

 

「ナナ姫とモモ姫は?」

 

「先に帰ってるって。あ、あとモモちゃんから伝言預かってるよ」

 

「伝言?」

 

「うん、えっとね元に戻れるまであと1時間くらいなんだって」

 

「あと、1時間くらい、か。それならあと少しで戻れるってわけだな」

 

「あの1ついいですか?そもそもどうして大夢は女の子になってしまったのですか?」

 

「なんかね、ララ先輩の性別を逆転させる発明品の実験台にされちゃったんだって」

 

「そうなんですか…」

 

「でも、ヒロくん今日ほんとについてなかったよね。やっぱり占いが当たったのかな?」

 

「まさか、そんなわけないだろ。今日はたまたま運が悪かっただけだよ」

 

暫く3人で歩いていると背後から嫌な気配を感じた。

 

「どうしたの?」

 

「いや、まさかな…」

 

不幸にもその気配はすぐに現れた。

 

「むっひょ~!あそこに美少女3人がいるではありませんか!」

 

嫌な気配は校の正体は校長だった。いつも通り服を脱ぎ捨てパンツ一丁のままこちらへ向かってきた。

 

「相変わらずですね…」

 

もちろんいつも通り校長はヤミに空の彼方へ吹っ飛ばされた。パンツ一丁のままで

 

「校長って懲りないよな…」

 

「そうだね…」

 

その後ヤミと別れ、俺とメアの二人になり、河川敷付近を歩いていると突如宇宙船が現れ、筋肉ムキムキのガチムチ宇宙人が降りてきた。

 

「見つけたぜぇ!赤毛のメア!」

 

「誰?」

 

「さぁ?」

 

「さぁ?って…お前が知らなきゃ誰が知ってるんだよ」

 

「私弱いやつ知らないもん」

 

「ごちゃごちゃうるせぇ!死ねぇ!」

 

ガチムチ宇宙人が持っていたこん棒を大子(大夢)達に向かって振り下ろすが、大夢はなんなく片手で受け止めていた。

 

「…ちょうどいいや。朝からフラストレーション溜まりまくってたんだ。あんたで発散させてくれよ」

 

受け止めていたこん棒を粉々に破壊し、ガチムチ宇宙人へ先程クラスの男子に向けていた殺意の目線を向け、近づく。

 

「は、はは…よ、用事を思い出したから今回は見逃してやる!」

 

ガチムチ宇宙人は勢いよく自前の宇宙船に飛び乗り、そのまま逃げるかのようにその場を離れていった。

 

「帰っちゃったね」

 

「もう少し殺りがいのある奴だと思ってたけどな…がっかりだ」

 

「仕方ないよ。賞金稼ぎってのは所詮そういう奴しかいないんだから」

 

「お前も元賞金稼ぎだけどな…」

 

「私は違うよ。あんなのヤミお姉ちゃんを探すためのただの肩書きなんだから」

 

「はいはい、わかってるよ。……あれ、この感じは…」

 

「どうしたの?」

 

突然大夢の身体を「ポンッ!」という音とともに煙が覆った。煙が晴れると大子から大夢へと元に戻っていた。

 

「戻った…。はぁ、やっとか…」

 

「えー、もう戻っちゃったのー?もっと大子ちゃんの姿でいてよー」

 

「やだよ。絶対にごめんだね」

 

「ていうかヒロくんさ元に戻ったのはいいんだけど制服は女の子のままだよ?」

 

「あー、忘れてた…。戦闘服で帰るしかないな」

 

トランスを発動させ、特有の黒い戦闘服を身に纏った。

 

「先に行ってるぞ」

 

「だったら私もトランスで帰る」

 

「理由を聞いても無駄か…。そんならさっさと帰ろうぜ」

 

「うん♪」

 

振り返ってみれば今日はとてつもなく1日が長く感じた。朝から女の子になったり、校長には二度も絡まれるし、リトさんには醜態さらしたり、変な宇宙人に絡まれたり、嫌なことだらけだった。

 

(でも、貴重な体験もあったのかな…)

 

いずれにしろもう二度と女の子にはなりたくない。そう願った大夢であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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結城家にお泊まり!

お久しぶりです。少し間が空いてしまいすみません。


ある日の休日、大夢とメアは結城家に遊びに来ていた。メアが席を外したところでリトからある催しに誘われた。

 

「夏祭り…ですか?」

 

「うん、もうすぐ開催されるんだけどどうかなって…」

 

「いつですか?」

 

「えっと、来週の土曜かな。もしかして何か予定とか入ってる?」

 

「いえ、大丈夫ですよ。行きます」

 

「良かった~、助かるよ」

 

「何故ですか?」

 

「男子俺一人じゃ心細いからね。大夢がいてくれるだけでも助かるよ」

 

「ところで、この話はメアも知ってるのですか?」

 

「うん、知ってるよ。モモとナナに伝えるよう頼んでおいたからね」

 

「ヤミもですか?」

 

「実は、ララやモモが誘ったらしいんだけど行かないって言っててね…」

 

「そうなんですか…。なら、俺が誘ってみます」

 

「いいけど、大丈夫か?ヤミは行かないの一点張りだし…」

 

「なんとかしてみせますよ」

 

「そっか、なら大夢に任せるよ」

 

「ありがとうございます」

 

「さっ、堅苦しい話は終わりにしてさ、今日はゆっくりしてってよ」

 

「はい」

 

「もっとリラックスしてもいいんだよ」

 

「し、しかし…」

 

「そうですよ、大夢さん」

 

「モモ!?いたのか?」

 

「すいません。お二人が何を話しているのか気になって…」

 

「ヤミのことで大夢に相談してたんだ。そしたら大夢も手伝ってくれるっていうから」

 

「そうだったのですか…。それで、大夢さんはヤミさんをどう口説き落とすのですか?」

 

「モモ姫、言葉が悪いですよ。あくまで俺は彼女を説得するだけですから」

 

「冗談ですよ」

 

すると、遊んでいたメアとナナとララと洗濯物を取り込んでいた美柑が下に降りてきた。

 

「ヒロくん、今日ここに泊まって行こーよ!」

 

「駄目だ。みんなに迷惑がかかるだろ」

 

「えー、でもナナちゃんやララ先輩はいいって言ってくれたよー」

 

「だけど…」

 

「そうだよ、大夢さん。どうせ明日も休みなんだから泊まってってよ」

 

「そうだよ、ヒロくん」

 

「…リトさんは良いんですか?」

 

「俺は大歓迎だよ。寧ろこういうのは大人数の方が楽しいしね」

 

「…リトさんがそう仰るなら…」

 

「それじゃあ、晩御飯の準備しちゃうね」

 

「あ、私も手伝います」

 

「あの…俺も何か手伝えることは…」

 

「ダメ。大夢さんとメアさんは今日はお客さんなんだからゆっくりしてて」

 

「…わかりました」

 

 

夕食を終え、風呂が出来るまでリトさんやモモ姫とゲームで対戦していた。

 

「大夢さん、お風呂沸いたけど先に入る?」

 

「いえ、俺は後からで大丈夫です」

 

「じゃあ、俺が先に入らせてもらうね」

 

そう言ってリトさんは風呂場へと向かっていった。それから5分ほどでモモ姫がリビングを出てどこかへ向かっていった。さらに数分後に美柑さんがどこかへ向かった。そして更に数分後に美柑さんの怒号が聞こえたので、声の行く方へ向かうとリトさんとモモ姫が脱衣所で正座し、美柑さんに怒られていた。恐らく原因はモモ姫の風呂場乱入だろう。リトさんとモモ姫が説教をくらっている間に風呂を頂き、風呂から上がってもまだ二人は美柑さんに怒られていた。

 

「あっ、そうだ。二人は寝る場所はどこがいいとかある?」

 

説教を終え、少し疲れた様子で美柑さんが聞いてきた。

 

「寝床ですか…。俺は特に希望は無いです」

 

「私もー」

 

「う~ん、二人で寝ることになっちゃうけど大丈夫?」

 

「構いませんよ」

 

「私も大丈夫だよー」

 

「じゃあ、1階の和室でいいかな。今から布団を敷いちゃうから少し待っててね」

 

「はい、お願いします」

 

 

時間も11時を過ぎ、みんなそれぞれの寝床についていった。俺とメアも美柑さんが敷いてくれた布団にゆっくり身を預けた。布団に入り、少したった頃、メアが話しかけてきた。

 

「ねぇ、ヒロくん。まだ起きてる?」

 

「起きてるよ。…やっぱりメアも眠れない?」

 

「うん…」

 

「そっか、じゃあ少し話をしようか。誰も知らない俺が小さい頃の話を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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大夢の過去

皆様本当にお久しぶりです。色々あって此方の方が全く進めませんでした。すいません!今年もどんどん書いていくのでよろしくです!


俺はメアやヤミと違ってとある星の小さな村で生まれた。小さな村と言っても人口は300人くらいいて、外交や貿易にも力を入れていたから経済的にも豊かな村だった。俺の両親も顔は覚えてないけどそれなりに優しかった。けど、ある日村に悲劇が起こったんだ。

 

「よし!次はサッカーでもやろうぜー!」

 

「いいねー!じゃあ、家からボールとってくるから待ってて!」

 

俺達はいつものようにみんなで遊んでたんだ。日も暮れてきたからこれで最後にしようとみんなでサッカーしてたんだ。そしたら、向こうから見慣れない大柄な男達がこっちに向かって歩いてきてたんだ。俺達は気味が悪くなってみんな家に帰って両親にその事を話したら、

 

「海賊だわ!あなた!家の戸締まりは!?」

 

「今やってる!大丈夫だ!もし何かあってもお前達は俺が守るからな!」

 

「あなたはどこかに隠れてなさい!いい?絶対に出てきては駄目よ!」

 

ものすごい剣幕で言われたのでなんで?と聞き返す余裕も無かった。俺は母の言うとおりに押し入れの中に隠れてたんだ。やがて、ドアをぶち破る音と共に野太い男の声が聞こえた。その後父と男が何か言い争ってるのが聞こえ、すぐにグシャッと何かが潰れる音と同時に母の悲鳴が聞こえた。

 

「うるせえ!」

 

男がそう言ったのが聞こえ、また何が潰れる音が聞こえた。男達が出ていったのを確認すると我慢できなくなった俺は押し入れから飛び出し、トイレで胃の中のものを全てぶちまけた。しばらくして、玄関を覗くと、無惨な姿で殺されていた父と母の姿があった。

 

「…っ!」

 

やっぱりだ。あの音は頭が潰れる音だったんだ。再び沸き上がってくる吐き気を押さえつつ、外に出ると衝撃の光景が広がっていた。

 

「なんだ、これ…」

 

紅の炎1色に染まる村、おびただしい死体の数々、目の前で海賊に強姦や誘拐される女や子供。まさに生き地獄だった。それから、間もなくして海賊は村を出ていった。どうしようもないほど滅茶苦茶にして。悔しかったし、何も出来ない自分が情けなかったよ。村の人達が目の前で殺されてるのに見てることしか出来なかった自分が。残った村人達はなんとか生活していたが、長くは持たなかった。みんな飢餓で死んだ。大人も子供も。奇跡的になんとか生きていた俺は飢えで地べたを這いつくばってるところをある研究者に拾われた。

その人は俺の状態が回復するまで自身の研究所で身の回りの世話をしてくれた。けど、そこである現実を叩きつけられた。俺は人の子じゃなく、人工的に生み出されたのだと。それからは地獄のような日々だった。培養カプセルに入れられ、拷問のような人体実験を何度も、何度もさせられ、トランス兵器へと覚醒した俺は自我を失っていた。

だが、そんな時第一次銀河大戦が始まった。研究者達は刺客として大夢を戦場に送り込んだ。研究者の目論見通りにトランス兵器とかした大夢は惑星を1つまるごと壊滅させ、他の惑星に向かっている時にギド・ルシオン・デビルークと出会った。当時から最強と謳われたギド相手に大夢は無謀にも真っ正面から勝負を挑み、善戦しながらも敗北を喫した。けれど、ギドとの勝負は楽しかった。失われた自我を取り戻すくらいに。互いにギリギリで戦ってたし、どっちが勝ってもおかしくはなかった。

 

「なぁ、お前うちで軍師やんないか?」

 

勝負が終わったあとギドがこう聞いてきたときはこいつ頭大丈夫か?と思ったよ。なんでさっき戦ってたやつにこんなこと言うんだよって。そしたら、

 

「お前がうちにくれば自由な生活を保証すんだけどなー」

 

我ながらまさか、こんな口車に乗るとは思わなかったな。まぁ、そのおかげで今の俺があるんだよなぁ。

 

 

 

「とまぁ、こんな事があったんだよ。昔は」

 

いつの間にか自分の世界に入っていた俺はメアが寝てるのに気づかずに一人で熱弁してたようだ。あぁ恥ずかしい…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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二年生
新たなスタート


皆様大変長らくお待たせいたしました。約2年振りの投稿になります。また長い間待つことになるかもしれませんが、気長に待って頂けたらと思います


今日は新入生の入学式だった。三年生は卒業し、一年生だった俺達は二年生へと進級し、リトさん達は最上級生となった。この時期は環境ががらりと変わるから気が緩みやすくなる。新しいクラスメイト新しい教室、新しい担任。何もかもが新しい。

 

だが、さっきまで初々しい表情をしていた新入生達の顔がいっきに青ざめた。そりゃそうだ。

何せ校長がパン1で真面目な話をしているのだから。よく捕まらんなあの人。

俺達在校生はやれやれといったリアクションをするしかなかった。

 

 

「やったな、メア!同じクラスだな!」

 

「うん!やったね、ナナちゃん!モモちゃんとお姉ちゃんもよろしくね!」

 

「よろしくお願いいたします」

 

「ええ、よろしくお願いいたします♪」

 

 

先程新しいクラスが発表された。芽亜はナナ姫やモモ姫やヤミと同じクラスで嬉しそうだ。

対する俺は…

 

「やあ、僕と一緒だね」

 

「お前かよ…」

 

「酷いな、君は。ナイトメアの時は一緒に戦った仲じゃないか」

 

「確かにあのときには感謝してる。が、それとこれとは別だ。別に俺はお前の事を信頼してるわけじゃないし、仲良しこよしするつもりもない」

 

「まぁ、そう言うと思ったよ。君は本当に信頼した人しか心を開かないようだからね」

 

「……」

 

参った。

本当に厄介なやつと同じクラスになってしまった。ただでさえ何考えてるかわからんのに顔見知りがこいつしかいないのも面倒だ。

だけどこのクラスは他にも面倒なやつがたくさんいそうだ。

 

「おい!我々V.M.Cも新たな会員を増やすぞ!まずは新入生勧誘だ!」

 

「はっ!」

 

 

 

「まじやべぇよな!今週のグラビア!巨乳三昧だぜ!」

 

「うっはー!デカ乳だらけじゃん!!」

 

 

 

「やっぱり七原君×長月君じゃない?」

 

「えー、私は断然長月君×七原君かなー」

 

最後に至っては悪寒さえ感じたが、思ったよりV.M.Cの奴等以外はまともらしい。

学級委員も去年別のクラスでやっていた真面目そうな娘が立候補し、決定した。新しいクラスでの自己紹介も終え、放課後になった。各々部活に行ったり、趣味が合いそうなやつと遊びに行く計画を立てたり、普通に帰宅したりそれぞれの自由だ。

 

芽亜達には先に帰るように伝え俺は保健室へと向かった。ナイトメアの件があって以来こうして定期的にDr.ミカドの診察を受けている。

 

「まだ完全には消えていないわね。もしかしたら不意に出てくる可能性も否定はできないわね」

 

「そうですか…」

 

「私から言えることは疲労やストレスを溜め込まないことね。負の感情に捕らわれてしまったらあっという間にナイトメアに飲み込まれるわよ」

 

「はい、わかりました」

 

「な、七原君!困ったら相談してね!私も出来る限りのことはするから!」

 

「ありがとうございます、Dr.ティアーユ」

 

保健室を出て下校する頃には辺りは暗くなり始めていた。

恐らく腹を空かせて待っているであろう芽亜のために、マンションまでBダッシュで帰った。

 

 

「遅いよ!」

 

「ごめん、すぐ作るから」

 

「いいよ、作らなくて」

 

「え?」

 

「もう作ってあるから、ヒロ君の分も」

 

「え…芽亜が作ったのか?」

 

「うん!前に美柑ちゃんに教えてもらったから!」

 

「へぇ~、すごいなぁ。食べてもいいか?」

 

「どうぞ、召し上がれ♪」

 

「んっ!これはっ……!」

 

「どう?」

 

超しょっぱかった。

 

「う、うまいんじゃないか?」

 

「ほんと!やった、嬉しい♪」

 

あとで芽亜に料理を教えようと思ったのと、たまにはこういうのも悪くないなと思う大夢であった。

 

 



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