プロローグ&短編・試作集 (黑羽焔)
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『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』転生オリ主
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』オリ主転生物 試作型


次期系列はアニメのテイワズ編前の頃。


厄祭戦(やくさいせん)」と呼ばれた大規模戦争の終結から約300年後のP.D.(Post Disaster)323年。地球の統治機構は大幅に激変したうえ、火星圏では各都市で独立運動の気運が高まり、一触即発の事態となっていた。

 

この物語は火星独立運動の中心にいた組織『鉄華団』。そこでガンダムを駆り活躍した少年『三日月・オーガス』……の姉となってしまったある転生者が介入する事で紡がれる新たな戦い記録である。

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

「ごめんね…ミカ。私がもっとしっかりとしていれば……」

 

「いいよ、姉貴。俺らの事を思っての事だろ」

 

「そうね…。オルガ、ミカ(三日月の愛称)の事をお願い」

 

「あぁ、わかった」

「…子供扱いするなよ姉貴」

 

「いつか絶対に……迎えに行くから」

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

――― 数年後

強襲装甲艦『ハンマーヘッド』。テイワズと呼ばれる木星・小惑星圏の開発を承る巨大組織。その下部組織である『タービンズ』所属の艦は今火星へと赴いていた。

 

ミカとオルガを養えるだけのものを得る為に私はテイワズの長に気に入られたのかその申し出を受け……こう言うのもだけど『身売り』した。

 

だけど、タービンズに入った私に名瀬が言った事は衝撃的であった。

 

「アンタは俺の家族としては扱うが、綺麗なままにしとく。なんでって?そりゃあ本当の家族の元に返す時に困るからな。それまではうちらを家族として見てくれや」

 

戸惑った私だけど名瀬さんのハーレ……家族みんなからの歓迎を受けこの新たな場所で頑張る勇気が出た。

 

そして、火星に仕事へ向かうということで久しぶりにミカ達に会える。…私は少し舞い上がっていた。

 

「なぁに黄昏てんの、シズ!」

「きゃぁ!」

 

同じ艦の仲間…名瀬さんの家族の1人ラフタに驚かされ素っ頓狂な声を上げちゃった……。

 

「久しぶりに故郷に帰れるのに舞いあがちゃって……あははは」

 

紹介が遅れました。私は『雫月(しずき)・オーガス』。タービンズのみんなから『シズ』って呼ばれています。こう見えて弟がいる身でもう1人の弟分と一緒に暮らすために身売りした身ですが、幸運なことなのか綺麗なまま名瀬・タービンズさんの艦に所属。家族の一員として様々な事を覚えながらMS(モビルスーツ)パイロットをやっています。

 

……これは私がこの世界にいるときの役目で、実はと言うと私はなんというか前世の記憶みたいなものを持っているようです。

 

何が言ってるのかわからない?私も気が付いたら白い空間みたいなところに居て、そこで出会った変な爺さん…神様って言ってたけど死んだことを告げられこの世界に転生という形で生まれ変わりました。

 

その世界は『機動戦士ガンダム』の世界という事で、私はそういうサブカルチャーに興味があるオタク…表向きは隠していたから隠れオタクかな。おかげでその世界のSF的な知識は理解できたけど……私の転生したガンダムの世界は知らない作品だった。正確に言えば、私が死んだ後に製作された新作だったみたい。

 

さすがに戦乱のある世界ということで前世のスキルを引き継いだ状態で色々特典をもらったけどね。原作知識やらそのキャラの事はなしでね。

 

「そっか~。…でさ、その弟さんと弟分っていう男の子引き取るの?」

 

「そこは名瀬さん達と要相談かな?出来ればもっとお金やら色々用意してから来たかったんだけどなあ。特に2人の所属する民間企業に対してね……」

 

私は2人の所属する企業の話になったときに纏う雰囲気が変わった。ラフタはそれに煽られたのか恐怖で小刻みに震えはじめた。

 

「……扱いがね…相当ひどいって名瀬さんから色々聞いてね。それで経営状態やら末端の扱いも最悪でもはや企業として糞っていってもいい程なんだ。……出来るなら買収して無能どもを転がしてやりたいよ…今すぐにでも」

 

「ちょ…ちょっと、戦闘でもないのにゴルゴモードは止めて!!!本気でやり出しそうだから今だけは止めて!!!」

 

……おっとトリップしすぎちゃった。前世では会社経営について学んでそういう仕事に就いていたから評価付けや経営管理などが得意なんだ。だから、その企業の評価なんて朝飯前だよ。あとは、ラフタの言っていた『ゴルゴモード』だけど、

 

――― ビービー

 

……警報?何かあったの!

 

「…うん、うん。わかったよ。シズ、戦闘よ」

 

了解!ちょうど特典についても説明できるかな。

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

-火星宙域近辺-

ハンマーヘッドに接近する強襲装甲艦とMSが12機。どうやらこの辺を牛耳っている非公式の武装集団が獲物だと思っていたのか今まさに襲撃を駆けようと展開していた。

 

《久しぶりの獲物だ!俺らの領域に入った事を後悔させてやれ!》

 

どうやら、無法者のようで有無を言わさず手当たり次第に襲っている集団は向こう側に気付かれているとは知らず自らのホームグラウンドでもあってか展開は早かった。

 

しかし、タービンズはそれ以上をいっていた。

 

《敵MS確認。照合ではクアン型みたいですね。12機で3機づつで1小隊組んでいます。どうやら交渉の余地はなさそうですね》

 

《そうか…。なら俺らの道理って奴を教えてやるか》

 

《…シズ、一発かましてやりな》

 

「了解」

 

点在する小惑星のひとつ。私の機体は今そこで待機をしている。私は戦闘中は機械的というほど冷静で沈静さがあるってみんなから言われている。さっき言ってた『ゴルゴモード』っていうのはそれ…どっかの作品でそういうキャラいたような。

 

指示が出たという訳で私の機体が持っている狙撃ライフルで狙いを定める。この世界のMSの装甲は強固で本当なら近づいて鈍器で破壊するのが一般的だ。でも、私の機体なら関係ない。その一般的とは逆をいくイレギュラー機体だから……。

 

小隊の隊長機らしき機体に狙いを定めた私は引き金を引いた。

 

――― ドゴォン!!!

 

轟音と共に跳んでいった弾丸はMSの装甲の継ぎ目を狙い通りに貫通し内部から爆発する。コックピットに刺さったからパイロットは助からないであろう……。私は次弾を装填し次の機体を狙い撃つ。

 

《狙撃!MSの装甲が紙のようにだと!》

《どっから撃ってるんだ!》

《旗艦からエイハブ・リアクターの照合情報…げえ、なんだよこりゃあ》

《厄災戦の骨董品だと…》

 

奴等が私の機体に気付いたみたい。『ASW-G-09 ガンダム・グレモリー』厄災戦末期に製作された72機の1機をテイワズが発見。資料を基に改修し再現されたワインレッドカラーのガンダム・フレーム型のMSでその操縦技術の難しさから唯一乗りこなしたのをマクマード代表が認め私専用の機体となったもので、これも神様とやらの特典のひとつらしい。

 

元々は汎用型というらしいけど私専用となったということで自由に装備を組めるということで射撃戦よりの万能型で組んでもらった。私の得意分野で狙撃に才能があったのかテイワズのあのキチガイ博士が専用の狙撃ライフルまで用意してくれた。

 

戦況だけど、私の狙撃で混乱したところをアミダさん・ラフタ・アジーの小隊が突入。瞬く間に敵のMSが落とされていく。回り込む奴にはもれなく私の狙撃くれてやっている。

 

《敵部隊混乱。先行部隊残り3機》

 

《あっさり落ちてるし、つまんな~い》

 

《……練度がなってない。どう見てもど素人が乗っているような感じね》

 

《敵艦から増援。合計で18機。慌てて出してきたような感じですね。厄介だと思ったのか3小隊程グレモリーに向かっています》

 

《シズ、増援の相手は私達がする。ど素人相手なら3小隊9機分やれるね》

 

「…了解」

 

狙撃ライフルを左肩部のラックに接続し、右手に一般的なMSも使っているアサルトライフルを装備する。狙撃を警戒しデブリから回り込んでいる分時間はあるので戦闘ポジションに着くのも余裕。

 

《散開して取り囲め!》

 

それは正しい…だけどコースが丸見え。正面から接近してくる3機に対し引きながら回避し射線を切り1機に対しライフルの速射を浴びせる。怯んだところをライフル下部に搭載したグレネードで吹き飛ばす。爆風で崩れたやつには装甲の継ぎ目にライフルを精密射撃で当て仕留め、残り1機には踵を落としてコックピットを潰す。…これで1小隊目。

 

2つ目の小隊が突っ込んでくるが一斉射を回避しお返しに脚部に装備したミサイルポッドから追尾弾を発射。4機目には直撃し爆散。5機目は回避するも脚部に命中。6機目は完全に回避しこちらに目掛けライフルを放つもすれ違うようにして回避。すかさず左手に装備したガントレッドからワイヤーを射出6機目を絡め取る。

 

「ええい!」

 

私は機体を加速させ6機目を振り回す。そして、損傷し動けずにいる5機目にブチ当て小惑星に押し込ませる。ワイヤーを外すと一気にライフルの弾幕を浴びせる。…残りは1小隊。

 

《格闘戦で仕留めるぞ》

 

3小隊目はどうやら格闘武器…バトルアックスでの近接戦を挑むみたい。私はグレモリーに装備された弾切れのアサルトライフルを投げ捨てミサイルポッドをパージし腰部から大型のマチェットの様なブレードを2つ抜き逆手に持つ。

 

7機目の斬撃を右のブレードで受け流すように躱し背後から向かってくる8機目の胸部分に左のブレードを突き立てる。火花が散り装甲を貫通させたブレードを離すとそのままふわりと明後日の方向に跳んでいく…唖然とする7機目だが思いっきりアックス振りかぶる所を。

 

――― ガァン!ドゴォン!

 

左のガントレッドに内蔵された火器…パイルバンカーで撃ち貫く。これで8機目だけど…残り1機は?

 

リアクターの反応が曖昧だ…どうやらやられる前にジャミングを蒔いたようね。

 

その時である。私には感じる敵の殺意みたいなものを電波のように受信した。

 

《もらったぁーーー!!!》

 

最後の1機が強襲してくるも、私が来ることがわかっていたかのように動く。ブレードで腕を斬り飛ばし至近距離から狙撃ライフルの弾を切り替え貫通力の高いAP弾で胸部を撃ちぬく。…これでラスト。

 

来ることがわかっていたのは私がニュータイプだからだ。神様の特典で私はこのニュータイプ…まあ、宇宙世紀に出てくる方だけど高い感受性と予知能力を身に着けることができた。……アムロやバナージ君みたいに感受し過ぎないように気を付けなきゃ。

 

さてと、敵機の回収は任せて最後の仕上げに行くか。

 

 

 

《お、来た来た》

 

敵の旗艦まで行くと既に制圧していたようで辺りをラフタの『STH-05 百里(ひゃくり)』が哨戒し、アミダさん・アジーの『STH-05 百錬(ひゃくれん)』が敵旗艦の自衛兵器を潰しブリッジに対し武器を構えていた。

 

《さぁってと、どうけじめをつけるつもりだ?テイワズ傘下のタービンズに喧嘩売ったんだ…覚悟はできてるだろうな!》

 

《し…知らなかったんだ。天下のテイワズだなんて。なあ、許してくれよぉ~》

 

どうやら、名瀬さんがKOUSYOU中みたいね。

 

《シズご苦労さん。最後の仕上げに入るから準備しな》

 

アミダさんの個人通信が入り私のガンダムを敵のブリッジの正面に立ちふさがるようにして移動させる。そして、敵旗艦のブリッジに狙撃ライフルを突きつける。

 

《……うちの嫁さんたちは気が短いんでな。特に中央のやつは道理外れたやつには容赦がないんでな。……こういうのもなんなんだが言う事は聞いた方がいいぞ》

 

「名瀬さん~、私は外道に容赦がないだけだよ。ただ、OHANASHIなら歓迎ですよぉ~」

 

《ひ…ひぇぇぇ。なんでもしますから許してぇ~~~!》

 

わざと素のとろけるような声で敵旗艦に通信を入れる。ライフルを構えた悪魔72柱の名を持つガンダムの威圧感もあってか敵旗艦にいた武装集団は折れたようだ。

 

とはいっても、今回は後処理の方が忙しくなりそうだけど…どのくらいになるんだろう。

 

ともかく火星での仕事を終えたらミカとオルガ、それに親しい人たちの行方を探さなきゃいけないね。




アニメ『鉄血のオルフェンズ』が面白くてついつい書いてしまった。

なお、本編は終了していないので続きは書くつもりはありません。


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『ファフナー×ゆゆゆクロス』短編試作版
絶望を超えし蒼穹(そら)と勇気ある花たち【お試し】


2015/11/17:誤字及び内容修正(初期案が文に残ってしまっていたため)
2015/11/28:連載に変更につきサブタイトル変更


―――こことは違う場所、自らが住む楽園と呼ばれる島、そして世界を守った2人の少年。

 

その代償はあまりにも多く、楽園へ還ることはできたがその世界からいなくなった。

 

そして、異世界と呼ばれる場所にその存在を移した。

 

そこで出会うのはその世界の神に選ばれ、絶望に相対する勇気ある少女たちの戦い。

 

それを知った少年たちは抗う決意をする。運命に抗うことで掴める希望を知っているのだから。

 

君たちは知るだろう。

 

これから語るのは本来なら交わりもせず記されることもない物語を―――

 

 

 

―――昔、ある所に勇者たちがいました。勇者は人々に嫌がらせを続ける魔王に説得するために旅を続けています。

 

ある時、勇者は旅の途中で、ある2人の少年と出会いました。気が付いたらここにいたという彼らでしたが、勇者はそれを気にせず受け入れました。

 

2人はかつて『楽園』と言われる場所を守り、戦い抜きその命の限りを尽くした別世界の勇者と呼べるような人たちでした―――

 

 

 

――――――――――

 

 

 

真壁(まかべ)一騎(かずき)』と『皆城(みなしろ)総士(そうし)』はシュリナーガルで生き残った人たちを新天地まで退避させ、竜宮島へ戻り戦い抜き希望を勝ち取ることができた。だが、その代償なのか2人は島からいなくなる……命を使い果たし同化現象で死んだ……はずだった。

 

「誰だ? 僕と一騎を何故ここに呼んだ?」

 

【私の名は『神樹』……とある世界での神様。貴方達の世界でいう『ミール』のような存在ですね。ここに来ていただいたのは、貴方達にお願いをするためです。今、私達の世界を無にしようとする存在…今まさに敵が干渉しようとしております。そこで、貴方達に世界を救ってもらいたいのです】

 

異世界の神『神樹』から敵の詳細を聞いた一騎と総士は驚愕する。そして、その世界に行く旨を2人は神樹に伝え、彼らの目に浮かぶ覚悟を感じとった神樹は、

 

【……分かりました。それでは貴方達を『転生』する形でその世界へと送ります】

 

「転生?」

「それは『輪廻転生』という類でいいのか?」

 

『転生』という形で神樹がいるという世界への介入を果たすことになる一騎と総士は無事に転生した。2人にはどうやらそれぞれ役目があるそうで、一騎は近所にいる幼馴染と日常を謳歌しながら来るべき戦いに備え、総士は大赦と呼ばれる組織にて色々と準備を進めていた。連絡と取りあっていたが実際に顔を合わせたのは総士が一騎の通う学校へ転入してきた時であった。

 

そして、ついにその時が来た事で物語が始まる。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「何これ、何処(どこ)ここ! 私また居眠り中?」

 

辺りが大きな樹の根っこが絡みあい、色とりどりの樹木に覆われた世界。パニックになってほっぺを抓っている赤髪のセミショートヘアーの少女『結城(ゆうき)友奈(ゆうな)』だったが抓った痛みでここが現実という事を直感していた。

 

「……夢じゃないみたい」

 

「……教室にいたはずなのに」

 

友奈の隣にいる黒髪で車椅子に乗っている親友『東郷(とうごう)美森(みもり)』が幻想的な世界に驚愕しつつも辺りを見渡す。そして、不安になり俯いてしまった。

 

「大丈夫だよ! 東郷さんには私がついている!」

 

「……友奈ちゃん…うん」

 

美森を安心させようと、彼女の震える手を握る友奈。不安を押し止めることは出来たが、どうすればいいかと思考を巡らせようとした。……その時である。

 

――― ガサッガサッ

 

2人は何かをかき分ける音が聞こえたため警戒を強める。友奈は美森を守るかのように音が聞こえる方へと立ちふさがった。

 

「東郷さんは私が守る!」

 

友奈は身構え、美森は恐怖に震え友奈の制服を掴む。

 

「友奈! 東郷!」

 

茂みをかき分けやって来たのは、同じ黄色の髪をもつ2人の少女。長く伸ばしているのは1つ上の学年の『犬吠崎(いぬぼうさき)(ふう)』、

 

「友奈さ~ん!」

「樹ちゃん! 風先輩!」

 

ショートヘアで纏めた1つ下の学年の『犬吠崎(いぬぼうさき)(いつき)』の犬吠崎姉妹である。

 

4人は讃州中学の『みんなのために勇んでやることを実施する』という活動を行う『勇者部』と言われる部活動の集まりである。

 

部長である風はこの状況をみんなに説明する。

 

自分は神樹を奉っている組織『大赦』から派遣された事、入部の際ダウンロードしたアプリの隠された機能の事、ここは友奈たちの世界で奉っている神樹が作り出した『樹海』と言われる結界であるという事、そして、神樹様に選ばれた一同はこの中で敵と戦うこととその敵の目的を聞いた。

 

そんな中、友奈は辺りを見渡した後に風に問いかけた。

 

「ねえ、風先輩。あのここには私達だけなんですか?()()2()()がいません」

 

「それは……」

 

この世界での勇者部には彼女ら以外にも2人の部員がいる。東郷はその2人の身を案じ風に問いただそうとした。

 

「あの、そういえば……この『乙女座』って書かれている点って何ですか?」

 

……が、友奈の一言で風が血相を変えて立ち上がる。

 

「来たわね」

 

風の向いた方向をここにいる全員が向く。そこにいたのは、巨大な存在であった。その存在を『バーテックス』という名であること。そして、それが世界の恵みである神樹のもとまで辿りつき滅ぼし人類を殺すのが目的である。すなわち、神樹に選ばれたものが戦うべき敵である。

 

「「「「きゃぁ!!」」」」

 

乙女座は卵状の塊を4人にめがけとばしてきた。

 

「……そんな…あんなのと戦えるわけが……」

 

東郷が目の前の強大な存在と命を失いそうになった恐怖に震えている。

 

「友奈、ここはまかせて東郷と一緒に逃げて! 早く! 樹も一緒に逃げて!」

 

「は…はい!」

 

「ダメだよっ!! お姉ちゃんを残して行けないよ!」

 

樹は風の制服の袖をギュっと握り、

 

「ついていくよ…何があっても……。どうしたら、いいの?」

 

「―――私達は神樹様に守られているから…大丈夫…樹続いて!」

 

「う…うん!」

 

犬吠崎姉妹が神樹に戦う意思を示し、携帯端末のアプリをタッチすると光に包まれその装いが変わり、その場から飛翔し敵に相対した。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

――― その一方で、その模様を見ている2人組がいた。

「総士、あれが」

「あぁ。()()()()の敵である『バーテックス』だ」

 

神樹の導きにより転生を果たした一騎と総士である。友奈達が言っていた2人の部員とは彼らの事である。

 

「風先輩たちの使ったのがこの世界での力なのか」

 

「そうだ。『勇者システム』、四国を守護する神様である『神樹』の力を扱う為に大赦が開発した討伐システムだ」

「それで『勇者』と呼ばれるのか…っ!?」

 

総士が淡々と説明するも前線にいた風と樹に乙女座の爆弾が命中する。その轟音と爆風が2人のもとまで届く。

 

「本当に大丈夫なのか!?」

「防御システムもあるから心配はない…2人共大丈夫だ!」

 

爆弾が直撃したが姉妹だったが神樹の遣わした世界を守る力である精霊の障壁によって無事だった。『精霊』とは神樹が選んだ勇者に遣わした攻撃の力でもあり、勇者を守る存在でもある。

 

 

 

「風先輩、樹ちゃん!…こっちに来る……?」

「友奈ちゃん、私と一緒にいたら危ない! 私を置いて行って!」

 

乙女座が塊を射出し、爆発する塊が友奈に迫る。

 

「お願い逃げて! 友奈ちゃんが死んじゃう!」

 

「やだ……」

 

友奈が乙女座の方向に向かって駆け出す。そして、無常にも爆発する塊が友奈に直撃する。

 

「友奈ちゃん!!!」

 

「……ここで友達を見捨てるような奴は…勇者じゃない! 嫌なんだ、誰かが傷つく事、辛い思いをする事。みんながそんな思いをするくらいなら、私が頑張る!」

 

煙が晴れると、勇者姿に変化した友奈の無事な姿がそこにあった。友奈は乙女座に向け飛翔、右手で思いっきり殴りつけ乙女座の一部を吹き飛ばした。

 

 

 

「結城は無茶をする……」

 

「……元々ああいう子だからな。誰かのために自分から動く」

 

余談だが転生後の一騎は友奈とは幼馴染のような関係である。

 

友奈のパンチを受けた乙女座は即座に再生を行うも復帰した風からの指示で樹と友奈は散開し取り囲む。そして『封印の儀』と呼ばれるバーテックスを倒すために本体から核である『ミタマ』を分離させ乙女座の撃破に成功した。

 

 

 

「勝った…よかった……」

 

初陣ながらも敵の撃破に成功した友奈・風。樹はその場で喜びを分かち合い、離れた所で美森も恐怖で戦う意思が出せないが彼女らの無事を祈り敵を倒れたことで安堵の表情を浮かべようとしたが、

 

「え、何……なの?」

 

その時である。美森は前線にいる3人の上空から迫る光の玉に気付いた。その光の玉は友奈たちの方へとゆっくりと降りたっていく。まるで空から降る流れ星のようだ。

 

「金色……」

「あっ……」

 

光の玉からその正体が現れる。先程のバーテックス程な巨大さはないが、大きさは人間よりもはるかに大きく、不気味な巨大な口、無脊椎動物のような袋状の身体に触手のような手が数本ついている。

 

その色は一瞬目を奪われるほど美しい金色に輝いている。しかし、友奈たちはその美しさ一瞬惹かれるものの先程倒したバーテックスとは違う異質な感覚に襲われる。その嫌な予感で我にいち早く我に返った風は2人にむかって叫ぶ。

 

「嘘でしょ…樹、友奈! そいつから離れて!!!」

 

「風先輩?」

 

「あいつは…やばい……」

 

「お姉ちゃん、あのバーテックスは?」

 

「大赦が言っていた…金色のバーテックス……」

 

 

 

「神樹が言っていた敵!?」

 

突如出現した未知のバーテックスに対し一騎が前へと出る。

 

「行くのか?」

 

「あぁ。どうすればいい?」

 

総士は一騎の意図を接したかのように言葉を続ける。

 

「簡単だ。アプリに意志を示せばいい。……また飛ぶことになる。飛べるか、一騎」

「……飛べるさ。俺とお前なら。そうだろ」

 

一騎と総士は携帯端末のアプリに触れる。一方は友奈たちの方へ、もう一方は美森のもとへと飛翔する。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「樹、危ないっ!!!」

 

とっさの事で動けずにいた樹に金色に光り輝くバーテックスは触手を伸ばす。風は咄嗟に樹のもとに駆け寄り庇った。

 

「風先輩!」

「お姉ちゃん!!!」

 

それにより風は金色のバーテックスの触手に絡め取られてしまう。手にもった大剣で斬りつけようとするも雁字搦めにされているせいでうまくできない。

 

「このお、離せ!!!」

 

【あなたは、そこにいますか】

 

「(な、何?精霊のバリアが効いてない!?しかも、この感覚…あたしの中からなにかが……なくなって…いく……)」

 

「風先輩を……離せぇぇぇ!」

 

金色のバーテックスは風に接触するような動作を見せる。風の中でなにかが無くなってしまうような感覚に襲われ、ぽっかりと穴が開いたようになってくる。それが危険だとみた精霊が防ごうとするも防ぎきれない。風の体の所々に翡翠色の結晶が生えてくる。

 

風の危機に友奈が助けようと動いた……。

 

【!?】

 

その時である一筋の流星のような閃光が風と金色のバーテックスの間に入る。風が囚われていた触手を切り裂かれ、風を抱えたその流星は地面へと降りたつ。

 

光が治まりその正体が表す。その姿はどこかの組織の制服と思わせる格好に紺色のコートを羽織った井出達で、右手には大型の馬上槍を構えていた。金色のバーテックスの触手をそれで切り裂いたのであろう。

 

「一騎君!」

 

転生後の一騎の幼馴染である友奈が一騎の姿を見つけその名前を呼ぶ。今の一騎の姿はこちらの世界に合わせた戦闘装備である。

 

抱えた風の目が虚ろであることを見た一騎は彼女に手をかざすと風に纏わりついた翡翠色の結晶は砕け、その目に光が戻る。

 

「う、う~ん……」

 

「よかった、『同化』はされてないな…友奈、樹。風先輩を連れて下がってろ!」

 

「は、はい……」

 

一騎は友奈に風を託すと樹も肩を貸し、その場から離れる。

 

《エンロール完了、クロッシングを開始する!一騎…僕が見ているものが見えるか》

 

「ああ…視える」

 

金色のバーテックスは一騎に対し問いかけるように。

 

【あなたは、そこにいますか】

「ああいるさ、……ここにな!」

 

《行くぞ!》

 

一騎は金色のバーテックスと向かい合い、総士の一声と共に両者は戦闘を開始した。

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

これが、僕と一騎の新しい世界での旅の始まりだった。

 

出会うは星の名を関する侵略者と戦う選ばれた勇者。

 

しかし僕たちは知ることになるだろう。

 

彼女たちにおとずれる残酷な真実とその裏に潜む新たな敵を。




EXODUSアニメ版も終了していないのに、ニコ動で関連のMAD動画を見ていたらネタが浮かんでしまったので出力。

以下、簡単な設定
・一騎と総士は『蒼穹のファフナー』の世界で死亡後に『結城友奈は勇者である』の神樹様の依頼で転生。
・一騎たちの戦闘スタイルは『結城友奈は勇者である』の世界に合わせた勇者姿となります。恰好は、第2クール後半ED時の2人のコート姿のイメージで。
・金色のバーテックスは『蒼穹のファフナー』の敵であるフェストゥム能力持ちの星屑のバーテックスです。
・『結城友奈は勇者である』の精霊バリアでも同化は防げない仕様(原作でも水球閉じ込めにバリアは反応してなかったのを採用)。
・転生後の『蒼穹のファフナー』主人公の真壁一騎と『結城友奈は勇者である』主人公の結城友奈は幼馴染という関係。


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初期設定と茶番というな名の・・・

<各原作設定>

●蒼穹のファフナー

・ほぼ正史通り。初期案は、『RIGHT OF LEFT』や『HEAVEN AND EARTH』も関わらせようと思っていた。

 

●結城友奈は勇者である(便宜上『~は勇者である』シリーズと呼ぶ。これは公式での呼称有)

・前日談の『鷲尾須美は勇者である』並びに現在電撃G'sマガジン掲載の『乃木若葉は勇者である』の要素も初期案として要素を加える予定だった。

 

<キャラ設定>

●蒼穹のファフナー

・真壁 一騎

『蒼穹のファフナー』主人公。当小説主人公その1。性格は原作とあまり変わりないが、ファフナーの出来事によりかなりの成長、それなりに他人を思いやることができるようになった。転生したためか、EXODUS原作であった「生きたい」という気持ちが強くなりそれなりに第2の人生を楽しんで過ごしている。

 

EXODUS本編終了後にその命が尽きたという設定。死亡後、神樹からの依頼で『~は勇者である』の世界へ転生し介入。フェストゥムの力を持つバーテックスと戦い、その原因となった歪みと勇者たちに待つ残酷な真実と向かい合う予定。

 

転生後:

両親が忙しいせいか、近所にある結城家にお世話になることが多く。その関係で結城友奈とは幼馴染のような関係である。また、近くの小喫茶『楽園』では料理の腕を見込まれて手伝うことが多々(もちろん勇者部の活動でも出てくる(重要))。

 

・皆城 総士

当小説主人公その2。性格は原作と変わりなし。ファフナーの世界の出来事により、転生後は仲間想いの部分が強くなるのとそれなりに素直になった(一騎談予定)。

 

・転生後

大赦での一族『皆城』家の長男として誕生。大赦にて来るべき戦いに備え準備をし、序盤はジークフリードシステムで同化対策及び指揮をとる。

 

初期案では、『鷲尾須美は勇者である』のある出来事にも関わらせようとしていた。

 

●『~は勇者である』シリーズ

・結城友奈

『結城友奈は勇者である』主人公。ヒロイン候補その1

 

原作との相違点:転生後の一騎と幼馴染設定。

 

・東郷 美森/鷲尾 須美

『鷲尾須美は勇者である』主人公。ヒロイン候補その2

 

原作との相違点(初期案):わしゆでの出来事で総士を見た際に、心に引っ掛かるような違和感があり(記憶喪失の干渉)。

 

・犬吠崎風、犬吠崎樹、三好夏凛、乃木園子

原作と変更なし。それぞれ個別のエピソード予定。乃木園子のみ初期案であるファフナーキャラとの絡みあり。

 

・三ノ輪銀

初期案:イレギュラーによるあの出来事の原作変更あり。

 

<戦闘方法>

『蒼穹のファフナー』側が『~は勇者であり』シリーズの世界と合わせるような専用システムを利用。技術力は、EXODUS終了後準拠。

 

蛇足:大赦側でファフナーを格納しそれに搭乗し戦闘とも悩んだが、あくまで『~は勇者である』世界が中心なので断念することに。

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

以下、初期案でのエピソードと言う名の茶番

●茶番:その時の園子(鷲尾須美は勇者である直後)

瀬戸大橋跡地で、バーテックス相手に満開を繰り返した『乃木(のぎ)園子(そのこ)』は、敵を撃退したものの代償で様々な身体の機能を神樹に捧げてしまい寝たきりとなってなった。

 

口は動くので日記を記述してもらっているものの彼女の心は満たされることはなかった。次第に彼女は後悔に蝕まれていった。

 

「そっか~。わっしーは元の家に戻ってまた勇者になったんだね~」

 

ある日、彼女の病室に突如少年が現れ、親友の1人『鷲尾須美』が元の家に戻り勇者として活動していることを伝えられる。

 

そして、須美の身に起きていることも。いつの間にか園子は少年との話に夢中になり、園子が考えた物語や昔の事だったが久しぶりに同年代の子は話せたことで園子の心は満たされていった。

 

「ねえ、どうして君は私の事を……?」

 

園子は自分の事を気に掛ける少年に対して、さらに深く知ろうとする。自分のようにただ大赦に利用される人間のことをこんなに思ってくれる人はいなかったためでもある

 

「……空って綺麗だと思う?」

 

「ふぇ?……まあ、綺麗だと思うよ~。昔はぼーっと雲を眺めて面白い形を探すのが好きだったんだ~」

 

「へぇ~」

 

「でも、こうなっちゃってからあまり見れなくて少しさびしいかな……」

 

少年が突如「空は綺麗か」と問いかけ、予想外のことに素っ頓狂な声を挙げてしまうも彼の問いかけに答える園子。園子の寂しい表情を見て少年は続けて言葉を紡ぐ。

 

「綺麗なのにそれが見れないって凄く哀しいことなんだ。以前に俺を変えてくれた1人も空が見れなくってさ、今の俺なら彼の気持ちもわかるかな。それで、同じように悲しんでいる人をなんとなく放っておけなくってさ。だから、ここに呼びだされたのかもしれない」

 

彼の話を聞いて園子の目にはいつの間にか涙があふれていた。散華で機能を失って以来、会う大人たちは園子のことを『世界を救う為に尽力した勇者』と見られていた。だが、目の前にいる少年は自分の事を『乃木園子』として見てもらえる。その事に園子は感情が爆発してしまい、

 

「う……うぅ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

「ちょ…ちょっとなんで泣いているの? 泣かないで!?」

 

少年はあたふたしながらも園子と慰め、園子はなんとか落ち着いた。

 

「ごめんね……」

 

「あはは…」

 

落ち着いた園子は少年に肝心なことを聞くのを忘れていたので少年に質問をする。

 

「そういえば、あなたの名前は?」

 

少年は座っていた椅子から立ち上がり、少し間をおいてから答えた。かつていた世界で苦しみながらも所属する神に逆らった自らの名を。

 

「『来栖(くるす)(みさお)』。それが俺の名前だよ」



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『絶望を超えし蒼穹と勇気ある花たち』の続編予告
『憎しみ』の器、世界を渡りて『理由』を得る


これは、もしかしたらやるかもしれない続編の予告みたいなものである。


2015年7月末、数々の自然災害が日本を襲い、それに追い打ちをかけるかのように現れた人類の敵『バーテックス』。その生命体は人々を容赦なく蹂躙した。

 

彼の生命体の出現直後、日本の各地にて結界が構成され、その内の1つである長野の諏訪地方でもそれが現れた。さらにそんな中、『バーテックス』に対抗しうる力をもった『勇者』、結界を張る土着神の声を聞ける『巫女』と呼ばれる少女たちがいることが判明し、3年間諏訪の地が守られたがついに結界が破壊されてしまう。

 

最期まで日常を守ろうとした長野の勇者『白鳥(しらとり)歌野(うたの)』。彼女は結界が破壊された後でも奮戦したものの連戦の疲労や度重なる負傷によりついに限界を迎えていた。

 

「……みーちゃん、ごめん…。もうここらが限界かも。せっかく出来た夢…守りきれなくて…ごめんね」

 

「…ううん、うたのんは…頑張ったよ」

 

長野の巫女である『藤森(ふじもり)水都(みと)』が歌野の体を抱えながらも彼女の謝罪に首を振る。勇者である歌野はここまでよくやっていた…いつもそばにいた水都は歌野が悪くないという意思を示す。

 

星屑と呼ばれる白い体をもつバーテックスの個体が彼女たちににじり寄る。恐らく、本宮に避難している人たちも既に囲まれているであろう。このまま奴らに食われるのはもはや時間の問題だ。

 

水都は涙に顔を滲ませながら歌野をぎゅっと抱きしめながら自らの最期を覚悟した。

 

「っ!?」

 

歌野は最期まで抗おうと得物である鞭を振るおうとした……が、手が動かない。

 

(お願いします…世界がバーテックスの脅威に晒されながら今日まで生きてきた人たちを…うたのんが守ろうとしてきた日常を…私の大事な友達を…助けて!!!)

 

この地を守ってきた土着神の声は聞こえない。手段がなくなり最期を迎えようとしていた水都だったが自分はどうなってもいい、目の前にいる親友や人々が死ぬのは見たくはない。そう無意識に思い込み願った。

 

だが、彼女の懇願を踏み躙るかのように星屑は一斉に襲い掛かった。

 

このまま彼女たちはなす術もなく……そんな時だった。

 

【・ ・ ・】

 

2人の目の前並びに周囲にいたバーテックスが消滅した。

 

「何……何なの……!?」

 

突如起きた光景に状況が把握できない2人。水都は頭上に輝く何かに気づき見上げると

 

「金の……巨人…」

 

淡い金色をメインに、細部にえんじ色を差し色としている巨人が空に浮かんでいた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

side:金色の巨人

 

「……よもや、すぐに戦闘する事になるとはな…」

 

金色の巨人。いや、ロボットともいえる巨大兵器に搭乗するパイロットが視界に広がる状況を一瞥し呟く。

 

彼は自分のいた世界でこれまでの存在を失い、搭乗している巨大兵器のパイロットとして戦わされていたが、戦いの末に沈静化し彼を『憎しみ』の器とした存在の力に巻き込まれ宇宙へと放逐され眠りについていた。

 

しかし、ふと聞こえた声と共に2人の少女の姿を見えた。

 

――― 1人は体中が傷だらけになっても戦い続ける黄緑の衣装を纏った少女。

 

――― 1人は涙を滲ませながらも戦う少女を見守る赤い袴に白い衣装を纏った少女。

 

そこから離れた所には幾多の人々がいた。

 

(これではまるで…シュリナーガルの時みたいじゃないか!)

 

【お願いします。もう……私には力が残っていません…失い逝く人々を…彼女たちを救えるのはこの声を受け取れたあなただけ……】

 

その声に応えなくてはいけないと思ったパイロットは声をもたらした存在の最後の力で世界を超えここに来たのである。

 

「位置情報…該当なし。……フェストゥムに似通っていないが同じような化け物が相手か。ここの防衛戦力は?」

 

生命反応を捉え拡大。パイロットの青年の視界に入ったのは血まみれで倒れこんでいる少女とそれを抱える少女だけである。

 

『…みーちゃん。あの巨人はいったい?』

『うたのん、私にもわからないよ…っ!?』

 

水都が頭を抱える。彼女の頭に思考が流れ込み抽象的なイメージが脳裏に刻まれる。歌野はボロボロの体で水都を案ずるが、その隙を狙ってバーテックスが大口を開けて彼女らに迫る。

 

「伏せていろ!」

 

そう叫ぶと巨人は背中のイージス装備を展開。巨大な光学シールドが広域に発生しバーテックスはそれに接触。接触したバーテックスはそのエネルギーの反流に耐えきれず消滅する。

 

【!?】

 

無数のバーテックスが金色の巨人を敵と認識し、長野を総攻撃するための戦力の一部を集結させる。

 

「数が多い。だが……消えろ!」

 

両肩のユニットを展開すると無数の光線を発射し、その光弾は群がるバーテックスのほとんどを吹き飛ばす。

 

(す……すごい)

 

歌野が巨人の力に驚愕する中、その光線の雨を抜けた個体が巨人へと迫るものの手にした槍状の武器で刺し貫いた。

 

人類の兵器が効かず、対抗できるのは神に選ばれその力が宿った武器を振るう勇者のみであるが、巨人はバーテックス・勇者以上の力をもっているそれを歌野と水都は間近で見た。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

side:歌野・水都

 

「う~ん」

「みーちゃん!」

 

蹲っていた水都の意識が戻った。バーテックスは巨人によりほぼ掃討され今は殲滅戦へと移行している。

 

「うたのん」

「大丈夫? 何かわかったの?」

 

自らも傷だからけなものの水都の身を案ずる。水都は歌野に自らが見えた最後の神託を伝える。

 

「あの巨人は、諏訪の神様の声に応えてくれた……『理由』の名を持つ巨人」

 

「『理由』の名を持つ巨人? こりゃあ諏訪の神様もとんでもない切り札をもっていたんだね」

 

「ううん。あの巨人は異世界から来たの」

 

「それ本気?」

 

『そこの2人』

 

水都が頷くと周囲のバーテックスの殲滅を終えた巨人が2人を見下ろす。

 

「……みーちゃん、私の見間違いじゃなければ」

「……うたのんの思った通りだよ。あれはロボットだよ」

 

『ここにいる人は君たちだけなのか?』

 

巨人からの声に2人ははっと気づく。本堂には避難した大勢の人々がいるのだ。

 

「大変! 本堂の人たちが…ぐっ!」

「うたのん、その身体じゃあ無理だよ!」

 

歌野に激痛が走る傷だらけの体で無理に動かそうとした結果だ。

 

『(そんな体で戦っていたのか)少しじっとしていろ!』

 

それを見たパイロットが巨人の手をかざす。

 

「(!?)うたのん!」

 

歌野の体が翡翠色の結晶に包まれすぐに砕け散る。

 

「……? 痛みが…消えた」

 

歌野の体から痛みが消える。体中にあった傷からの血も止血されているようだ。

 

『しばらくそのままにしていろ。…本堂というのは?』

 

「あ、あちらです」

 

水都が指を差す方角を見るとバーテックスが今まさに本堂の人々に襲い掛かろうとしていた。巨人は2人に背を向ける。

 

「ま、待ってください。あなたはいったい?」

 

水都が巨人の事を尋ねる。時間はないのでパイロットは簡潔に答えた。

 

「……『ジョナサン・ミツヒロ・バートランド』。かつてはそう呼ばれていた。この機体はファフナー……『マークレゾン』」

 

「ファフナー…」

「マークレゾン…」

 

背部の羽状のユニットが光り輝くとその巨体が浮き地面から離れた。レゾンは機体を加速させると本堂にむけ発進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 俺の名前はジョナサン・ミツヒロ・バートランド。……『憎しみ』に囚われていた哀れな人形の名前だ。

 

かつて、ベイグラントのコアにより『理由』もない『憎しみ』の器と植え付けられ世界に憎しみを満たそうとした。

 

しかし、それは祝福をうけた人たちによって止められ、俺は機体ごと宇宙へと追放された……。

 

俺はこのまま眠りにつくはずだったがある声により再び目覚める。

 

それが俺であるための『理由』をもたらしてくれる2人の少女……いや、この先で会うことになる子も含めて8人と交わる事と知らずに ―――




『乃木若葉は勇者である』の上の特別書き下ろし番外編『白鳥歌野は勇者である』を見た際に衝動的に浮かんでしまったネタを出力してしまったもの。

『ジョナサン・ミツヒロ・バートランド』も『蒼穹のファフナーEXODUS』にて立場上救われないし、続編があった際に重要キャラとして出てきそうなので主人公化させました。

裏話にあった通り最後までいけたら続編として出したいなあ……。

2016/10/25追記
捏造テーマソング:『僕は僕であって』(angela × fripside TVアニメ版『亜人』第2クールOP)


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